付託議案○衆議院議員選擧法中改正法律案○昭和十三年法律第八十四號中改正法律案○昭和二十年勅令第五百三十七號(承諾を求むる件)――――――――――――――――――――― 昭和二十年十二月十三日(木曜日)午前十時十三分開會○委員長(伯爵林博太郎君) 只今より衆議院議員選擧法中改正法律案外二件の特別委員會を開會致します○子爵大河内輝耕君 昨日來此の條文を拜見致しまして、政府でも非常に御注意になつて御立案のことで、完全に出來て居るやうに存じますが、唯補闕選擧と再選擧の場合に付きまして、此の制限連記制の趣意を沒却するやうな點があるやうにも我々には考へられるのですが、政府はどう云ふ風に御考へでありますか○内務大臣(堀切善次郎君) 政府の原案に依りますと、さう云ふ點は何等支障なく行つて居るのでありますが、衆議院の修正案に依りますと、投票は十人以下の選擧區に於きましては二人連記すると云ふことになります、政府の原案では五人以下は一人と云ふことになつて居りましたが、今度は一人と云ふことでなく、十人以下二人と云ふことになつて居りますから、只今御質問の補闕選擧の場合に於ては、補闕選擧は二人以上缺員の出來た場合に行はれます、二人闕員が出來た場合に選擧を行ひます府縣が可なり澤山ありますが、さう云ふ場合に於て此の修正案に依りますと、丁度沖繩縣と同じに、是は制限連記でなく、完全連記のやり方で行かざるを得ないことになるやうであります、完全連記と云ふやり方が好ましくないやり方であることは昨日もちよつと申上げた次第であります、さう致しますれば、詰り百人の有權者に五十一人が聯合致しますれば、其の二人を全部當選させることが出來まして、四十九人の方の政黨は一人も出せないと云ふ結果になる譯であります、是は小選擧區で議會政黨對立と云ふやうなことを眼目にして進みますれば、それも一つの方法でありますが、此の選擧法の全體を通じまして是は其の趣旨に反するものと考へます、丁度沖繩縣に付て、勅令で別の手續を定めて居ると云ふことがありますならば、斯う云ふ場合に於ても何か規定がなければ權衡を得ないことになるやうに考へます、更に工合が惡いやうに思ひますのは、再選擧の場合には、御承知の再選擧の規定が現行法にありまして、此の點には今度の改正案では觸れて居ないのであります、此の再選擧を行ふ場合が色々あります、現行法の七十五條に、再選擧を行ふ場合が六つ擧げてあります、即ち「當選人なきとき又は當選人其の選擧に於ける議員の定數に達せさるとき」、「當選人當選を辭したるとき又は死亡者なるとき」とか云ふやうな場合が六つ擧げてあります、此の再選擧をやります場合には、唯一人に付て再選擧を行ふ場合も澤山ある譯でありまして、此の一人を選擧する場合に付きまして此の修正案に依りますと、一人を選擧する場合であつても矢張り二人を書けと云ふやうな規定になりますので、どうも動きがつかないやうに思ひます、是は補闕選擧や再選擧に關する場合の規定を修正案の中に何も規定してありませぬのは缺陷のやうに思ひます、之を初めの政府の原案のやうに致しますれば、五人以下の場合は單記と云ふことになりますから、補闕選擧でも再選擧でもそれは總て皆さう云ふ風に行く譯でありまして、其の邊の具合は好く出來て居る譯なのでありますが、此の修正案に依りますと今のやうな場合に、今申上げましたやうな動きのつかない缺陷が起つて來るやうに考へるのであります○子爵大河内輝耕君 御趣旨は誠に御尤もであります、細かい技術のやうなことでございまして、我々も相當それに對して直したいと存じますが、今の政府の意味を徹底するやうに直すには、どう云ふやうな修正が必要だと御考へでありますか○國務大臣(堀切善次郎君) 直ちに考へますことは、此の部分に對しまして、政府の原案に戻れば、最も具合好く行くのだと思ひます○子爵大河内輝耕君 さうしますと、政府の原案に戻ると云ふのは、五人以下なら二人にすると云ふことなのでありますか○國務大臣(堀切善次郎君) さう云ふことになります○子爵大河内輝耕君 それは暫く別と致しまして、五人は二人と云ふことに致しまして、そして今の缺陷を除く途はないのでありますか○國務大臣(堀切善次郎君) それは考へますれば、ないこともないかと思ひますが、今ちよつと此處で斯う云ふ風にしたらと申上げる迄に準備が出來て居りませぬ○子爵大河内輝耕君 それでは御準備が出來次第御話を伺ひたいと存じます、私の質問は是で終ります○委員長(伯爵林博太郎君) それでは通告順に依りまして御質疑を願ひます、田口君○田口弼一君 今囘の選擧法に依りまして、非常に有權者の數を増し、殊に婦人の選擧權を認めたと云ふことに依りまして、非常に有權者が増加致したのでありますが、此の婦人が果して投票するであらうか、どうであらうか、非常な棄權者が出るんぢやないかと云ふことを考へるのでありますが、政府の方は之に對して、どう云ふ風な御見込を御持ちになつて居りますか、又棄權防止の方法等に付て何か御考があるのでありませうか、其の點を御伺ひ致したい、尚又婦人は今迄政治的に餘り關係がなかつたのでありまするが、突然選擧權を賦與せられたのでありまするが爲に、果して有效に是が投票し得られるかどうか、なかなか誰を投票して宜いか非常に困るであらうと思ひますので、さう云ふことに對しまして、何か政治的に啓發するとか、何かの方法を考へなければならぬかと思ひます、今囘の選擧も日が近いのでありますから、或は不可能かと思ひますが、將來に付きまして、どう云ふ方法で、啓蒙と言ひますか、啓發と言ひますか、さう云ふことに付て何か御考でもありますかどうか、其の點を御尋ね致したいと思ひます○國務大臣(堀切善次郎君) 今御質疑のやうに、婦人に付きましては、棄權が多くなりはしないかと云ふことを心配致して居ります、此の儘で何等の手段を講じませぬければ、婦人の投票は相當棄權が多くなりはしないかと思ひますので、今度の選擧法の改正を機會に致しまして、選擧法改正の趣旨、それから選擧權の尊重すべき所以等を、公民啓發運動に依りまして、出來るだけ啓發運動をやりたいと考へて居ります、文部省と内務省と情報局と一緒になりまして、公民啓發運動を行ふ積りで居ります、殊に婦人に對しましては、棄權をしないやうにと云ふことに、其の運動の中心を置く積りで居ります、各種の團體、教育關係の團體とか云ふやうな、さう團體を出來るだけ動かしまして、さうして公民啓發運動をやつて行く積りで居ります○田口弼一君 それは、若し此の法案が通りますれば、直ちに御始めになりまして、今囘の選擧にも幾らか間に合ふやうなことになる御見込でございませうか、如何でございませうか○國務大臣(堀切善次郎君) 此の選擧法が出來ますれば、直ぐに其の運動を始めまして、今後の選擧に無論間に合はせる積りであります、唯選擧の投票の日に餘り近寄つてやりますと、選擧運動と一緒になりまして、色々誤解を惹起し易いこともありますから、投票日の前の或時期で其の運動は打切らなければならぬと思ひますが、少く共今年一杯位は出來るだけ廣くやりたいと思つて居ります○田口弼一君 參政權の問題の方は其の位に致しまして、選擧區に付きまして、ちよつと御尋を申上げたいと思ひます、昨日來色々選擧區の問題に付きまして御話も承つたのでありますが、私共考へる所に依りますると、小選擧區には非常に其の長所があり、又短所もあるのでありますが、大選擧區に致しましても、亦其の長所があり短所があるので、比較的現行法に依る中選擧區が其の弊害を救ひ、長所を發揮することが出來ると云ふ譯で、比較的良い方法であつたと思ふのであります、今囘は大選擧區を御採りになつて居られるのでありますが、一方では有權者の數が非常に殖えて來て居るのと同時に、又大選擧區制を御採りになつたと云ふことは、何だか混亂と云ふと言葉が不適當かも知れませぬが、非常に混亂を來すやうな感じもあります、昨日からの御説明を承りましても、大選擧區でなければならぬと云ふやうな理由は、餘り判然致して居らぬやうであります、大選擧區は候補者を選擇する範圍が廣いからいいと云ふ御話でありましたが、成る程大選擧區になれば候補者の數が殖える譯であつて、選擇の範圍も廣いのでありますが、今の中選擧區に於きましても、小選擧區に較ぶれば、選擧の範圍が相當ある譯でありますからして、一人一區の場合と違ひまして、殊に選擇もされますから、今度の擴張をして大選擧區にすることの必要は少いやうに感ぜられるのであります、それと新人を出すと云ふことに付て考へて見ますと、大選擧區になりますと、どうしても名を知られた人が投票を澤山集め得ると云ふことになりますので、舊來代議士であつた人とか、或は縣會議員であつた人とか云ふやうな、其の縣内に名を知られた人が當選する場合が多くなるのでありまして、新人が出る機會が寧ろ少いのぢやなからうか、私は斯う云ふ風に考へます、政府の方の御見込では、大選擧區は新人が出易いと云ふ御話でありますけれども、大選擧區になりますと、どうも今迄名を知られた人の方が出易いと云ふことになると云ふやうな感じを持ちます、殊に被選擧權を低下致しまして、二十五歳迄下げると云ふことになりますと、二十五歳か或は三十歳未滿の人で縣内に名を知られたと云ふ人は、全體にすると非常に少いからして、小選擧區の方が若い人なり、新人が出易いと云ふやうな感じを私は持つのでありますが、此の點に付きまする政府の御考はどうでありませうか○國務大臣(堀切善次郎君) 選擧區を變へましたのは、從來の中選擧區にも確かに御話の通りに非常な長所もあると思ひます、併し此の新しい事態に即しまして、是からの新日本を建設して行く基礎となります議會を作るに付きましては、從來の地盤と異つた地盤で選擧を行ふことが必要ぢやないかと云ふことを考へたのであります、從來の中選擧區で可なり長く選擧が行はれまして、所謂地盤がそこに固定して居ると思ひますが、さう云ふ固定した基礎の上に選擧を致しますよりは、今の新しい事態に即應します爲には、選擧する其の基盤を變更することが必要だと云ふやうに考へまして、中選擧區を變更することを考へたのであります、もう一つの理由は、是は總ての選擧區に共通ではありませぬが、選擧區に依りましては、人口の疎開、或は戰災等に依りまして、どうしても現在の選擧區に變更を加へなければならぬ所が可なりあります、それ等を考へまして、さう致しますれば、小選擧區よりは大選擧區の方が宜いと云ふやうに考へまして、大選擧區の案を考へた譯でありますが、御話のやうに大選擧區になりますれば、名前の知れて居る人には有利だと云ふことは、是は確かに其の通りであらうと思ひますが、併し新しく出る人に取りましても、小さな選擧區或は從來の固定した選擧區で參りますよりは、何と申しましても矢張り選擧區が大きくなつて其の選擧區の各方面から投票を集めると云ふことが、比較的やり易いのではなからうかと云ふやうな風に考へたのであります、それからもう一つは、選擧區が小さくなりますれば、自然矢張り地方的の人物が選ばれる傾向が強くなるのではないかと思ひます、選擧區が大きくなりますれば、選ばれる人は自ら大人物と申しますか、地方的よりは寧ろ國家的人物が選ばれる可能性が多いだらうと云ふやうな風に考へた次第であります○田口弼一君 一應御尤もな御話と承りましたのですが、大選擧區になりましても、選擧の實際は各自自分の基本とする所がありますので、中選擧區の時代に於きましても、矢張り小選擧區の場合に於けるやうに自分の最も中心とする場所がありまして、さうして他の所は進出して行つて取れれば宜しいと云ふやうな式でやるのでありますからして、是は大選擧區になりましても、中選擧區でも、大體自分自身の候補者の中心になる地盤と云ふものは一定の地域、丁度小選擧區に當るやうな所が一つあつて行くのであるからして、結局大選擧區になりましても、小選擧區の場合でも、中選擧區の場合でも、其の基本的場所は同じ所に基礎を置いて選擧して居るやうでありますから、私として考へる所は、大選擧區になつたが爲に必ずしも大きい人物が出るとかと云ふことは、さう大した變りはないだらうと思ひます、唯一地方に比較的偉い人が多く居住して居る場合に、小選擧區の場合であるとか或は中選擧區の場合では其の人方が當選し得ない場合に、大選擧區或は中選擧區では當選し得ることになる譯でありますから、其の點に於て大きい人物が割合に選擇されて出ると云ふ機會はあると思ひますけれども、さう私は大した變化はないのであらう、斯う云ふ風に考へるのであります、大選擧區になつたから代議士が總て大きくなるかと云ふとさうではなく、大體は小選擧區で當選するやうな人は、大選擧區でも中選擧區でも當選するのであつて、或幾許かの人が大選擧區であるが爲に當選する、或は中選擧區であるが爲に當選する、大體に於てさう私は變化はないのだらうと思ひます、それで一方から見れば、同じ土地に偉い人が數名居つたが爲に其處の人が當選すると云ふことになると、代議士が一地方から纒つて當選すると云ふことになるからして、或廣い地方に依りましては、代議士がない、其處から選出される人がないと云ふことになりますと、地方代表の意味が非常に薄くなるのぢやなからうかと思ふのであります、勿論大選擧區でも、其の選擧區が一つの地方であるからして、其處から出れば宜いではないかと云ふことになりますけれども、それでは餘り廣過ぎて、地域關係の方から云ふと、縣内の一部にのみ偏して當選者が出て、一部には殆ど代議士がないと云ふことになると、地方代表の精神を非常に缺いて來るのぢやないか、衆議院議員は地方代表の精神が非常に必要なのであつて、是が基本を成すのである、それで何時も選擧法改正の時に起ります議論で、何時も同じことを繰返して解決の付かないのが、衆議院議員の翼贊の方面から見まして、議會で協贊を與へる上に有效な方法を講ずる爲には大人物を出さなければならぬと云ふやうな議論が行はれ、大選擧區が宜い、更に全國を一選擧區としてやれば更に好い人物が出るのぢやないかと云ふやうな議論も行はれるのでありますが、さうなると地方代表の精神が非常に薄くなつてしまふと云ふ風に考へるのでありまして、私は其の點から云ひますれば、矢張り代議士の選擧は小選擧區が一番宜いと考へるのでありますけれども、小選擧區に對する缺點もあり、又必ずしもそれが全部宜い譯でもありませぬからして、先づ今迄採用して居つた中選擧區位が一番其の何れにも偏せずして宜いのではなからうかと云ふ考を持つて居るのであります、結局政府の方では今迄の地盤を基礎にするならば、新人の進出に非常に障碍があるのだらうと云ふ御考のやうでありますが、是は併し何れに致しましても、大選擧區にしても、矢張り實際は幾分かを自分の地盤にして出るのであるからして、大選擧區になつたから必ずしも非常に新人の便利になり、今迄の地盤の人が有利であると云ふことにならない、殊に有權者も非常に殖えて來たのであるからして、矢張り中選擧區位が一番宜いのではないかと云ふ感じを強く持つのでありますが、是は併し意見の相違であると云ふことになれば已むを得ませぬけれども、私はどうも矢張り各各實際の選擧に當りましては、各地自分の何郡かの基礎があるのであるから、中選擧區と大選擧區は實際上は違はないのぢやないかと云ふ感じを持つのでありますが、政府の方ではさう云ふ感じを御持ちになりませぬか○國務大臣(堀切善次郎君) 只今の御説は如何にも御尤もなのでありますが、大體から申しまして、選擧區が大きくなりましても、矢張り從來の或小さな比較的狹い所を主な地盤として外の方に手を擴げて行くと云ふことは、大體に於て矢張りさうであらうと思ひます、併し又一方には、全縣下に亙つて散票を普く集めると云ふことも起つて來ると思ひますし、全縣下に亙つて普く散票を集めて行くと云ふやうなことは、區域が大きくなればなる程工合が宜いのぢやないかと思ひます、中選擧區よりもさう云ふ點は大選擧區になりますれば都合が宜いことと考へられるのでありまして、從つてまあ所謂國家的人物とか、或は新人とか云ふ人が出るにも、都合が好くなつて來るのではなからうかと云ふやうに考へて居る譯であります○田口弼一君 私の質問はまだ色々ございますが、大體御尋ねしたいことの主要な點は今申上げたことでありますが、更にちよつと御尋ねしたいと思ひますのは、此の議會を特に御召集になりまして、此の選擧法を御提案になつたのは、成るべく早い機會に於て衆議院を解散致しまして、新たな人に依りまして出來た議會で、昨日より御話がありました民主主義化をやつて行かうと云ふ御話のやうに承つたのであります、さうすると、此の選擧法が出來ますると、直ちに衆議院を御解散になる御見込でありますか、どうでありますか、御答が出來ますならば伺ひたい○國務大臣(堀切善次郎君) 解散の時期に付きましては、まだ何も閣議でも相談致して居りませぬ、どう云ふ時期にと云ふことは申上げ兼ねるのでありますが、御説のやうに此の議會にはまだ重要法案も懸つて居りますから、それ等を構はずにと云ふ譯にも參るまいと思ひます、一方に於きましては、矢張り選擧法が出來ますれば、之に依つて一日も早く新しい議會の出來ることを希望して居る譯であります、それ等の時期に付きましては、色々な情勢を判斷致しまして決定されることと考へて居る次第であります○田口弼一君 唯憲法に、通常會は「毎年之を召集す」と云ふ規定がありますが、若し本案が通りまして法律となりまして、直ちに解散せられると云ふことになりますと、本年は通常會の召集が出來ないことに相成ると思ふのであります、是は憲法の方から見まして、憲法の「毎年之を召集す」と云ふことが實施されないことになるのでありますが、此の點に付きまして、或は違憲であるか、違憲でないか、それはもう已むを得ないのであらうと云ふ風な議論もありますが、此の點に對して政府は何か御考慮、御研究でもございますか、若しありますならば承りたい○國務大臣(堀切善次郎君) 通常議會は毎年一囘召集されることになつて居りまして、此の冬の通常議會は確か二十四日と思ひましたが、もう既に召集の詔書は發せられて居る譯であります、唯事實議會の成立しない間に解散が出來るかどうかと云ふ憲法上の問題があるやうでありますが、それは憲法の解釋としては差支はないと云ふやうに解釋を致して居るのであります○田口弼一君 召集詔書が出て居ればそれで宜いのであつで、必ずしも議會の集會がなくても、もう既に今月の二十四日から言へば三十日前に召集詔書が出て居るのであるからして、それで宜いのだと云ふ風な解釋のやうに思ふと云ふ御意見と承知致して宜しいのでありますか○國務大臣(堀切善次郎君) さうでございます○田口弼一君 私の質問は大體是で終ります○關屋貞三郎君 私の御質問致したいことは二點あります、只今田口君の御話がありましたことと稍稍似たやうなものでありますが、それに付きまして少つ、詳しく申上げて、内務大臣の御決心即ち政府の所見を承りたいと思ふのであります、選擧の公正を期することは、選擧法の諸規定を遵守すると云ふことにあるのは勿論でありますが、結局是は選擧人各自の心構が第一であるのであります、從來、普選以來矢張り選擧違反と云ふものは甚だ少くなかつたことは、我が憲政史上の汚點でありまして、慚愧に堪へないのであります、それで地方長官の取締は勿論、又前年は選擧肅正中央同盟と申しましたか、さう云ふやうな肅正に關する民間團體もありまして、元の田澤議員又堀切現内相等が中心になられまして、非常に努力をせられたのであります、相當の效果は擧げて居つたのでありまするが、而も尚多數の違反者を出したのであります、是は統計を御覽になりますれば分るのでありまするが、私は嘗て豫算委員として、司法省の豫算の審議に當つたことがありまするが、其の際に衆議院に於て、司法省の豫算に對して、どう云ふ論議があつたかと云ふことを、參考に速記録を見ました時に驚いたことは、他のことは何にも豫算に付てなくて、唯選擧違反の問題だけが非常に澤山あつたのでありまして、殆ど司法省豫算に對する質疑は、選擧違反事件であると言つても宜い位であつたのであります、それで今囘は選擧人の年齡も低下致しましたし、又女子參政權と云ふやうなものもありまして、選擧者が非常に激増したのであります、從つて違反者も或は激増するのではないかと云ふことを憂へるのであります、勿論罰則其の他の諸規定に付きましても、大分改正し、或は寛大になつたものもありまするから、識らずして、割合に無邪氣に、選擧法違反をするやうな者もなくなつたでありませうし、又一般民衆が、今日の此の非常時局に對する覺悟と申しまするか、さう云ふことから致しまして、選擧其のものに對する心構なり、態度なりも非常に改善せられて居ると云ふこともありませうが、然も尚私は非常に此の選擧違反が多くありはしないかと云ふことを惧れるのでありまして、結局是は選擧人の何と申しまするか、心構を矢張り十分に致し、さうして選擧違反の出來るだけ少くなることを考へなければならぬことと思ふのであります、それで御承知の如く從來の例を見ますると、地方人達が、平素は存外皆善良なる人達でありまするが、選擧に關する限りは、割合に選擧違反を簡單に考へまして、隨分立派な村民などが選擧違反に掛かると云ふやうな例がないでもない、或は是は甚だ何ですが、國民性と云ふか、或は選擧其のものにまだ馴れないと云ふか、選擧なるものは國家に對する權利でもあるが、又神聖なる義務でもあると云ふことに心付かないのではないかと云ふことを憂へるのであります、どうしても之に付きましては、矢張り訓練と云ふか、教育と云ふか、之を始終やつて居らぬ以上は、選擧人の心構を直すことはなかなか出來ない、是は一つの餘談でありますが、御參考迄に内務大臣にも申上げて置きたいと思ひます、私は曾て、もう數年前でありましたか、英國人でありまして、當時文理科大學と東京帝大文學部の英文學の講師として聘せられて日本に居つた人があります、其の名を只今記憶致しませぬが、此の方が矢張り「イギリス」の下院の議員であつたのであります、そこで我々同人數名が此の人を招きまして、英國に於ける下院選擧の實情を聽取致したのであります、本當に「イギリス」あたりでは選擧違反と云ふものがないのか、又「イギリス」の選擧費用と云ふものはどの位掛るものであるかと云ふやうなことを隨分突込んで聽いたのでありまするが、其の人の話では、選擧費用と云ふものは「イギリス」では殆ど掛らない、又投票の買收と云ふやうなこともない、殊に政府の干渉何と云ふやうなことは全然ない、萬々一さう云ふことがあれば、一般の社會には非常な「ショック」を起すと云ふ位であると云ふことを申しまして、自分も非常に貧乏人であるけれども、當選は極めて樂であると云ふことを申したのであります、併しながら彼の申しまするのには英國に於きましても昔は隨分選擧違反があつたのである何十年か前はさう云ふことがあつた、中には「ロッテン・ボロー」とか申しまして、選擧區其のものを全部買收すると云ふやうな例もあつたのである、其の位腐敗して居つたのであるが、今日は段々選擧民の訓練に依つて、全く、とは申しませぬが、殆ど選擧違反がなくなつたのである、從つて日本でも何年か經てば選擧違反と云ふものもなくなるであらうと云ふやうなことを申して居りましたが、結局是は選擧と申しますものは、矢張り國民の選擧に對する心構なり、教養なりと云ふものに俟つより外は私はないものと思ふのであります、今囘の衆議院の總選擧は、實に民主政治確立を期するものでありまして、殊に只今では殆ど列國環視の中に行はれると申しましても宜いのでありまして、所謂理想選擧なるものが出來なければならぬのであり、又理想選擧をするのに絶好の機會であるのであります、衆議院に於きましても、段々新黨の組織も不十分ながら出來て居るやうにも見ゑるのであります、又推薦選擧と云ふやうなことは全く今日に於ては排斥せられて居りますのでありまして、此の際政府は選擧法の改正をするに當りましては、如何にして選擧の所謂訓練をなさるのであるか、只今相當に啓發運動をやると云ふやうな御話もありましたが、之に付ては一通りのことでは私は濟むまいと思ふのです、餘程政府は之に付て力を入なければ、如何に選擧法を改正せられましておやりになりましても、所謂佛作つて魂が入らぬと云ふやうなことになりまして、依然たる舊式の選擧、從つて議會も亦同樣な結果になりましたならば、所謂民主政治と云ふものを本當に確立すると云ふことは、出來ないであらうかと思ふのであります、之に付きまして政府の御所見を承りたいと思ふのであります、尚茲に御參考迄に、大臣は夙くに御承知であるのでありますが、政府に對して申上げて置きたいことは、前年大分縣で縣出身の諸君が、同縣の選擧肅正に付て非常に骨を折られたことがあるのであります、是は御承知の通り大分縣は非常に政爭の盛んな所でありまして、選擧も隨分混雜を致したのであるのに鑑みまして、縣出身の先輩諸君が深く之を慨歎せられて、自ら地方に出掛けられまして、選擧の肅正を呼號致したのであります、又是は私自身のことに多少關係致しまするが、栃木縣でございますが、此處でも當時選擧肅正中央聯盟とも相談致しまして、是は縣出身者が若干協議を致しまして、對内各地を殆ど講演行脚を致し、さうして選擧肅正を叫んだのであります、で其の時に申合せでは自分の縣の事は自分でやるのだ、必ずしも中央から名士に來て戴かなくても、自分の縣のことは自分でやるのだ、自分の家の掃除は自分ですべきものであると云ふやうな心構で、相當に東京在住の者が結束致しまして、之に當つたのであります、それで從ひまして實業等に從事致して此の縣内の方に行けないやうな人、又さう云ふことの不得意の人は若干の金を出しまして、其の費用に充てまするし、又肅正運動に出掛けた人も、成るたけ手辨當で參つたのでありまするが、若干の金の集つたものは縣の當局に託しまして支出を致したのであります、それで縣内數十箇所に講演會を開き、或は談話會を催しまして、縣民の諸君に訴へたのであります、縣の者がやると非常に都合の好いことは、外の人が行つて色々立派な御話を致しましても、縣内の何と申しますか、缺點を餘り指摘することを好まないのでありますが、縣出身でありますれば如何にひどいことを申しましても、縣の人もさう惡く思はないで聽いて呉れると云ふやうな利益があるのであります、さう云ふ譯でありまして、隨分やかましく申したのであります、是は大した事もなかつたやうでありまするが、若干好い結果を生じたやうに思ふのであります、殊に非常に愉快に感じましたことは、是は稍稍餘談に屬しまするが、副産物が段々あつたのであります、例へば選擧肅正の運動をやります時に、此の栃木縣と申します所は、當時地方税の成績が非常に惡いのでありまして、全國の順位はなんでも沖繩縣が一番惡かつたが、沖繩縣の次には栃木縣だと云ふ譯で、知事も非常に弱つて居つたのであります、當時の知事は萱場軍藏君でありましたが、さう云ふ譯で、行つた先輩の諸君も皆縣の事情を聞いて、さうして各地で講演を致し、或は談話會を開いたのでありまして、其の際に納税成績の甚だ振はぬことを、矢張り選擧肅正の運動と共に申したのでありますが、其の結果が是は割合に良く行きまして、一年後には殆ど納税成績は全國を通じて、上から四、五番位の程度に上つたと云ふことを知事から承つたことがあるのであります、さう云ふ風で、私共は矢張り骨を折れば骨を折つた甲斐は必ずある、殊に斯う云ふ選擧問題の如きは、矢張り縣の人が自分で進んで縣の仕事をやると云ふことが、非常に效能があるのではないかと思ふのであります、是は御參考迄に申上げて置く譯であります、それで實際今度の此の衆議院の選擧は「ポツダム」宣言を受諾致して所謂民主主義、平和主義の政權を確立すると云ふ、其の一環になつて居るのでありまして、非常に必要な選擧であるのであります、掘切内務大臣は此の途の方には極めて練達堪能の方であり、又次官としては選擧法の權威である坂君が居られるのでありますから、是等の方々の下で衆議院の選擧を致すと云ふことは非常に我々は心強く感じて居るのでありますが、決して私は油斷は出來ない、唯、一通りの啓發運動、それはまあ色々細かく御考になつて居るのでありませうが、中々それでは足りない、どう云ふことに致したら宜しいのでございますか、私は唯參考迄に申上げたのでありまして、必ずしも此の方法が宜いとばかりは申すのではありませぬが、色々十分に御工夫下すつて、今囘の選擧は違反者のないやうにして戴きたいと云ふことを切望するのであります、之に付きまして政府の御用意はどうであるか、と云ふことを第一に承りたいと思ひます、それから第二の問題は、序でに申上げまするが、只今も申上げました通り民主主義、平和主義の政權の復活、強化と云ふやうなことを「ポツダム」宣言で申して居るのでありまして、私は色々ありませうが、結局其の中の主なるものは帝國議會の地位を高めると云ふことが、非常に必要になつて來て居るのである、帝國議會に餘程しつかりして貰はぬと困るのである、唯政府に盲從したのでは困るのであります、過去何年かを我々振返つて見ますると、是は今更致し方ない話でありますが、議會がもう少し何か強い主張を致したならば、多少政府を抑制することも出來たのぢやないか、其の點から申しますると、我々共は實に慙愧に堪へないのでありまして、其の罪は尠くないと云ふことを私は個人として少くとも感じて居る一人であるのであります、さう云ふ譯で兎に角帝國議會の地位を高めると云ふことになりますれば、自然私は兩院議長即ち貴族院議長、衆議院議長の地位を高めることも考へなければならぬ問題である、之に伴つて兩院の副議長、或は議員の地位も考へなければならぬことと思ひまするが、兎も角も兩院議長の地位を、もつと高める必要があると思ふのであります、それで兩院議長の地位と申しましても、自ら社會上で相當に重んぜられては居りまするが、宮中席次を見ますると、割合に兩院議長の地位が低いのであります、之をどうしても私は尠くとも内閣諸大臣の次位には持つて行かなければなるまいと思ふのでございます、それで此の點は稍稍形式になりますが、併しながら形式と申しましてもです、是はさう云ふことをすることが、矢張り議會の地位を高める一つの方法になるのでありまして、從つてさうなりますれば、其の地位に伴ふやうな方が、兩院議長にもなるでありませうし、又副議長、議員の諸君も自ら自重されるやうになると云ふことを疑はないのであります、私は此の「ポツダム」宣言の受諾の後で、此の問題に付ては實は自分のことを申上げては甚だ恐縮でありまするが、非常に長い間考へて居つたことであるのでありまして、宮内省に參りました時に、宮中席次の問題が議せられて居つたのでありまするが、其の時に見ますと、非常に位置が低いのであります、それでどうしても是はもう少し高くすべきであると云ふことを考へたのでございまするが、併し此の問題はさう簡單には行かないのであります、宮中席次と申しますものは片一方高くすれば、片一方が低くなると云ふことでありまして、殊に宮中席次は、皇室儀制令でありますが、皇室儀制令は樞密院の諮詢を經ることになつて居りまするから、さう簡單に片付ける譯には行かない、樞密院が之を同意しない以上は、宮内省で御考になつても、又内閣で色々御心配になつても、之を改良することは出來ないのでありまして、どうしても兩者が一つになつて、而も樞密院が能く了解して戴かぬ以上は、之を改正すると云ふことは出來ないのであります、今囘衆議院議員選擧法の改正と共に、此の兩院議長の席次を高くすると云ふことは、實に絶好の機會であり、又是は是非やらなければならぬものであると云ふことを私は痛感するのであります、唯私は茲に御願ひしたいことは、此處には司法大臣はおいでになりませぬが、大審院長でありますが、大審院長も矢張り兩院議長と同じやうに、其の位置を高める必要がある、是は勿論衆議院議員選擧法には關係のない問題でありまするが、宮中席次の問題と致しましては、兩院議長と大審院長と同じやうに、考へて行くのが矢張り民主主義の政權の確立であると考へるのでありまして、此の事を同時に申上げて置きたいと思ふのであります、唯茲に色々困難な事情を大臣にも申上げて置きたいのは、此の問題は歴代の内閣でも考へて居らぬこともないのでありまして、濱口内閣の時にも此の問題があつたのであります、それから齋藤内閣の時にも此の問題がありまして、特に當時の書記官長、川崎書記官長、其の後は柴田書記官長でありましたが、それが宮内省に來られまして、私共と之に付て協議を致したのでありまするが、矢張り樞密院の通過が困難であると云ふことを惧れまして、到頭之に著手をしないで濟んだのでありましたことは、我々微力を歎ずるのでありまして、甚だ遺憾なことであります、併し今囘は衆議院議員選擧法の改正を爲さる時でありまするから、此の問題に付ては、政府に於きましては強い態度を以て樞密院に御交渉爲さる必要があると思ひます、又樞密院の方でも恐らくは時勢も變つて居りますから、此の問題に付ては了解が出來るものであらうと云ふ風に考へるのであります、どうか此の機會に於て此の兩院議長及大審院長、内務大臣に對しては、兩院議長でありまするが、政府に對しては、大審院長も含めまして、此の三者の地位、從つてそれに隨伴して一般議員、副議長なり議員なりの地位も高めることになるでありませうが、之を高めて行くと云ふことが矢張り議會尊重、或は司法權を尊重すると云ふ意味にもなるのでありまして、民主的又平和的政權の復活強化と云ふことになりまして、所謂「ポツダム」宣言の希望する所に合致し、又將來我が國の政治を強化する所以であると云ふことを確信するのであります、之に付きまして政府の御意嚮を伺ひたいと思ふのであります○國務大臣(堀切善次郎君) 第一の御質疑の點でありますが、御話にありましたやうに、最近我が國に於きましても、田澤義鋪君の非常な御盡力に依りまして、選擧肅正の效果が非常に擧つて參りましたことは、御承知の通りでありますが、隨分是迄色々な弊害のありました所が、相當之に依つて矯正されて居ると思ふのであります、是は是非今度の選擧に於きましても、又元に戻ることのないやうに、益益此の實の擧るやうな風に、是非是はやつて行きたいと思ふのであります、御話がありましたやうに、曾て「イギリス」が非常な買收の弊の多かつた所を、肅正の效に依つて今日は全く其の跡を斷つたと云ふ例もあるさうでありまして、我が國に於きましても、今後有權者も殖えて行く際に、是非是は買收等の忌はしいことは絶對ないやうな風に持つて行きたいものと考へて居るのであります、唯今囘の選擧に於きましては、前にも申上げましたやうに、公民啓發運動として相當力を盡す積りで居りますが、是迄ありました選擧肅正中央聯盟と云ふやうな有力な團體も、只今なくなつて居りますので、是等の點に付きましては、色々工夫を凝らしまして、其の實の上りますやうに、やつて參りたいと考へて居る次第であります、一方から考へますれば、有權者の數が非常に殖え、金の値打が大分下つて居りますから、假に買收と云ふやうなことを考へる向がありましても、實際買收と云ふことは、不可能ぢやないだらうかと云ふやうな風に見る向もあるやうであります、併し金に構はずやれば、是もあることでありませうし、又能く謂はれます選擧に對して、跋扈跳梁致します「ブローカー」とか云ふやうな者を蔓延らしては誠に遺憾なことであります、要するに是等の根本は、公民教育を徹底すると云ふことでなければならないと思ひますので、是等の點に付きましては、文部省の方でも相當考へて居られるやうでありますが、此の際の處置と致しましては、文部省と内務省と情報局と一緒になりました公民啓發運動を中心に致しまして、出來るだけ工夫を凝らしまして、其の實效を收めるやうに致したいと考へる次第であります、第二の議長、副議長、議員等の宮中席次のことに關します優遇の問題に關しましては全く御同感でありまして、是は大審院長は別と致しまして、議長副議長等に付きましては、最近其の實現の運びになるやうな手順を進めて居る次第であります○關屋貞三郎君 只今の御答で私は滿足致します、唯茲に堀切内務大臣に國務大臣として、總理大臣初め内閣の各大臣にも御傳へを願ひたいのでありますが、私は矢張りちよつと選擧法と離れるやうでありますけれども、關聯して居りますから、矢張り此の大審院長の地位を矢張り、此の際に同時に高める必要があると思ふのであります、詰り今日最も必要なるものは國際正義、國内正義と云ふことの確立でありまして、矢張り是が民主主義、平和主義の政權の確立になるのであります、それで動もすると司法部内に於て大審院長よりも司法大臣が偉いのだと云ふやうな考が兎角ある、さうして今迄の例を見ましても、檢事總長から司法大臣になると云ふやうな風で、大審院長と云ふものがどうしても司法大臣の隷下に屬するやうな觀を呈するのであります、勿論司法權は獨立でありますから、大審院長が司法大臣の下にある筈はありませぬけれども、どうしてもさう云ふ觀念がある、之が非常に根本の問題の間違ぢやないか、我々の名譽、財産、生命すらも平時に於ては此の裁判所に任せなければならぬ、斯う云ふやうな大切な場所でありまして、其の最後の決定をする大審院長でありますから、此の大審院長の地位を高めると云ふことが何より必要である現に御承知の通り「イギリス」あたりに於ては大審院長と云ふか何と云ふか、向ふでは大審院に當るものの院長の地位と云ふものは、總理大臣よりも上なのであります、「アメリカ」に於きましても大審院長に當る地位は非常に高い、大統領の下には違ひはないが、各大臣以上であると私は思ふのであります、要するに司法權の尊重、司法權の確立と云ふ方から言ふと、大審院長と云ふものは餘程重んじなければならぬ、矢張り兩院議長と相俟つて立法權、司法權、行政權と云ふことで、矢張り三權分立の一つと申しますか、それが確立しなければ民主的平和的の政權と云ふものの確立は出來ないと思ふのでありますから政府としては同時に大審院長を考慮すると云ふことが必要であると云ふことを、此の際私は力説致しまして、此のことを政府に申上げて、兩院議長の席次を御直しになるならば、同時に大審院長の席次を高めると云ふことに御骨折を願ひたい、是は内務大臣の御所管ではないと思ひまするが、どうか此のことを總理大臣初め各大臣に御傳へを願つて、出來得れば……只今伺ひまして非常に愉快に存じますが、或は兩院議長の席次問題は近く實現するやうでありますが、同時に大審院長の問題も實現するやうに御盡力願ひたいと云ふ希望を申上げまして私の質問を終ります○男爵松平外與麿君 昨日來色々政府當局の御話を承つたのでありますが、もう少しはつきり御意見を承りたいのです、衆議院の修正決議に對して、政府當局の御意見としては、大體に於ては贊成しないと云ふ抽象的の御議論と拜聽したのであります、政府當局の立場と致しまして、此の修正に對して絶對的に同意出來ないが、此の點ならば修正しても構はない、斯う云ふ點に付て御差支がなければ具體的に御話願ひたい、それが第一であります、第二は選擧費用の制限の問題であります、先程の御話で、制限を取ると金を矢鱈に使ふから、矢張り平均二萬五千餘圓と矢張り決めて置いた方が宜いぢやないかと云ふ御話でありますが、是は考へ樣に依りましては、實際是迄の選擧に於きまして、假に選擧費用の制限をしました處で當選せられた人が果して其の選擧費用以内に於て當選した者が衆議院議員數のどの位であるかと云ふことを考へて見ますれば、私共の知つて居る範圍に於きましては、恐らく此の費用制限内で當選し得たと云ふことは、實際上少いぢやないか、さう云ふ點から考へて見ますと、法制上には費用制限を載せるが、實際の行動に於ては、それを犯して居る、而も費用を超過する場合に於ては當選無效迄行くと云ふ話でありますから、是は寧ろ撤廢してしまつたらどうか、今日の時勢から考へまして、舊時代に於ける選擧民の考と、今後の選擧民の考は恐らく變つて來るだらうと思ふ、所謂選擧を金品に依つて買收すると云ふ觀念は段々無くなつて來る、公明正大、自由に自分の意思を表現すると云ふのが今後の選擧民の現状ぢやないかと云ふことから考へますれば、將來の點を考へまして、此の費用制限と云ふ問題に付て、何とかもう少し御研究の餘地があるのではないかと云ふことに付て、一應承りたい、それから第三は選擧の事前の運動でありますが、是は確かに衆議院に於て修正されて來つたものであります、此の新しい選擧法と云ふものが公布せられまして、衆議院議員の改選の行はれる距離はさう長い時期でない、割合短期間に、新しき選擧法に依る選擧が行はれる、斯う考へられます、其の場合に於きまして、内務當局と致しましては、各地方長官竝に之が取締に關する所の警察官憲に對しまして、新しき構成に於ける所の新しき選擧に對する取締の仕方と云ふものに付て、十分に御話置きをなさいませぬければ、今日の時勢、所謂自由の立場で選擧すると云ふ場合に於ては、假に其の警察官の取締に於て誤があつたと云ふことを考へますと、其の非難と云ふものは相當大きいと思ひます、さう云ふ點から考へますと、餘程是等に對する所の處理、指導、監督方法と云ふことは嚴重になされるが宜いのではないかと思ひます、又餘り固くなり過ぎてもいけませぬ、さう云ふ點から考へまして、所謂第一線の立場にある警察官に對しては、從來よりも一層深切に、懇切に、具體的に分り易く、寧ろ法規を楯にして突張るよりも、常識的判斷を以て、之を批判せしめると云ふ所の觀念迄指導する方が宜いと思ひますが、之に對する所の内務當局の御方針を承りたいと思ひます○國務大臣(堀切善次郎君) 御答へ申上げます、便宜上、第一のことを後廻しに致しまして、第二の費用の制限と云ふ點でありますが、是は私其の實情に通じませぬが、實際の御話を聞きますと、從來と雖も費用の制限はあつても其の費用の實際は超過する人が多いのだと云ふことを能く聞きますが、誠に是は遺憾なことでありますが、實情はさう云ふことなのかも知れませぬ、併し嚴重にそれを取締つて行くと云ふことは事實上不可能でありまして、色色な搜査方法をやりましても、なかなか其の證據を擧げると云ふことは不可能であります爲に、さう云ふ風になつて居ることと存じます、それならば一歩之を逆に考へまして、もう斯う云ふ制限は皆撤廢したらどうだらうと云ふことも一應考へまして、それ等に付ても能く研究致したのでありますが、併し選擧費用の制限を全部撤廢すると云ふことになれば、無論さう致しましても、買收、饗應等は無論いけませぬ譯ですが、併し金の使ひやうも色々ありませうから、それに依つて無制限に金を使ふと云ふことになつては、どうも甚だ喜ばしいことではないのみならず、金のある人が無暗と色々な手を使つて、色々な方法でやると云ふことになると、餘りに選擧が不公平になりはしないだらうかと云ふ懸念もありまして、それで矢張り制限は制限として、從來の標準に依つて、唯有權者が増えた分だけは殖えることになりますが、それに依つて費用の制限を置くことは、置いた方が宜からうと云ふことになつたのであります、唯之に對しまして、從來は費用超過に對しまして、罰則の制限もありましたが、實際之を正確に取調べて、公平に其の取締を期すると云ふことは、殆ど不可能に近いのであります、さう云ふ考へから致しまして、是は罰則の規定は附けないで、唯當選無效の制裁だけに致したのであります、當選無效の制裁がありますれば、折角當選しても其の當選は無效にされると云ふ危險がありますから、それで十分締りが付かうと云ふ風に考へまして、是は矢張り費用の制限は從來の標準で存して置こうと云ふことになつた次第であります、それから第三の警察取締の關係でありますが、是は十分に注意を致しまして、寛嚴宜しきを得るやうに指導致す積りで居ります、唯變察官に對しては十分に深切に、懇切に、民衆に對して當るやうにと云ふことは此の選擧の際のみならず、新しい警察の方針と致しまして、民衆と能く接觸し、能くそれに對して十分懇切に、さうして民衆の信頼と協力とを得るやうに、從來應々あつたやうな無理なことのないやうにと云ふことを機會ある度に言つて居る次第でありまして、其の點は尚十分注意致したいと思ひますが、唯今度の選擧の取締に付きまして、我々と致しまして、非常に苦しんで居りますことは、今度の選擧法は根本的に變る譯でありますが、此の變つたことを、法律が公布されて間もなく選擧になります其の短時間の間に改正法の趣旨を警察官のみならず、役場の方も同じでありますが、徹底さしてそこを工合好くやつて行くことはなかなか大仕事でありまして、此の頃それ等に付きまして、絶えず打合せをして居るやうな次第でありまして、出來るだけの手を盡しまして、今の御趣旨に副ふやうにして行きたいと考へて居る次第であります、それで衆議院の修正に關する點でありますが、第一は制限連記に關する部分であります、此の制限連記に關します部分は、御承知のやうに、政府原案と致しましては定員數が五人以下の所は一人、六人以上十人迄の所は二人、十一人以上十四人迄の所は三人の候補者の名前を書いて宜しいと云ふ原案を出したのであります、是は大體申上げましたやうに、大選擧區になりまして、議員の定數が百人餘計になりますと、或一人、二人の人が、極く名前の分つた又一般から信頼されて居ります所謂大人物が居りますと、さう云ふやうな人が一人で澤山の投票を集めてしまつて、さうして他の人には極く僅かしか行かない、場合に依つては當選者も得られないと云ふやうなことも想像されるのであります、さう致しますと、非常に一人で澤山取つた其の點數と云ふものが、一定の當選點以上の票は全く死んだ票でありまして、折角投票した人の其の多數の票が實際の效果を現さないと云ふやうなことになる缺陷を持つて居る譯であります、是もいやそれで差支へないのだと、さう云つてしまへばそれでも宜いのでありますが、それが餘り大きく現れますことはどうであらうかと考へまして、それを矯正する手段として此の制限連記の方法を考へた譯であります、それでありまますから、從來の中選擧區では一つの選擧區が三人乃至五人になつて居りますが、從來の中選擧區の三人乃至五人と云ふ位の所は、今度の改正案に於ても是は從來通り、それは別に是正を考へる必要はないと考へた次第であります、五人以下の府縣と申しますと、五人の府縣が六縣あつたと思ひますし、四人の縣が鳥取縣一つであります、それから後は三人の縣は一つもありませぬ、二人の縣が沖繩縣と云ふことになるのであります、さうでありますから、從來鳥取縣、其の他の五人以下の縣は從來單記投票をやつて居りまして、それ等に對しては格別從來と變へる必要はないと云ふやうに考へたのであります、六人以上の府縣は、是は從來選擧區が二つ、或は三つに分れて居た府縣であります、二つ以上に分れて居た府縣、是が一緒になりまして、十人或は十四人と云ふ所迄行く譯でありますから、是等に對しまして、其の段階を丁度六人以上でありますから、十人に區切りを置きまして、六人以上十人迄が二人書ける、十一人以上の所は三人書けると云ふやうな考を致した譯であります、此の連記投票は、今の或候補者に對して投票が非常に集中偏在し過ぎる弊を矯正しようとした譯なのであります、制限連記の制度は御承知のやうに、此の完全連記とは大部違ひまして、完全連記の方法は御承知のやうに、此の有爵議員の選擧に對して行はれて居る方法でありますが、是は詰り百人の有權者があれば、其の中の五十一人が聯合すれば全部を當選させることが出來て、四十九人は一人も當選させられないと云ふ缺陷があります、さう云ふ缺陷がありますが、此の缺陷は、制限連記に於きましても、連記させる人の數に依つて、其の弊害と申しますか、缺點と申しますか、此の缺點が割合に依つて變るのでありまして、全體の定員數に近い數を連記させますと、今の缺陷が餘計に現れる譯であります、十人の所に二人書かせると云ふことは、さう云ふ弊害は殆ど考へられませぬが、假に四人の所へ二人も書かせると云ふことは、詰り定員の半數を書かせる、二分の一を書かせることになりますが、此の方法に依つて數學的に計算して見ますと、百人の中ならば六十八人の一つの組と三十二人の粗とに分かれたと致しますと、其の三十二人の組は、今の場合には一人も出せませぬ、六十八人の組が二つに分れて、各各二人づづ投票して行けば三十四票づづ取れますが、三十二人の組は、三十二票で一人も當選させられないと云ふ結果になります、それから昨日の朝日新聞には、六十一人と三十九人の例が出て、派が三つに分れて居る例が出て居りましたが、あれも一つの例だと思ひます、二分の一書かすか、三分の一書かすか、四分の一書かすかと云ふ此の割合に依つて、連記制に對する缺陷が餘計に現はれて來ると思ふのであります、さう云ふことを考へますと、六人から十人迄二人、十一人以上三人と云ふことを投票の偏在集中是正の觀點から實は提案した譯であります、之に對しまして、衆議院の方では、五人以下は一人書かせると云ふのを削りまして、六人以上十人迄は二人と云ふのを、十人以下を二人と云ふことに修正したのであります、其の結果、四人の縣、五人の縣が七縣ある譯でありますが、此の縣に於ては、從來は單記であつた所が連記出來ると云ふことになりまして、今の四人の縣に付ては、今私が例を引いて申上げましたやうに、二分の一の連記と云ふものは三分の二に一人加へた人が聯合すれば、其の殘りのものは一人も出せないと云ふ缺陷が現れて、其の缺陷が相當大きくなるのぢやないかと思ひます、五人に付ては、それが少し緩和されると云ふことになる譯であります、さう云ふことを考へますと、矢張り私は四人、五人に付ては單記の方が宜いのではないか、之に對して連記の制度を執ると云ふことは、少し其處に無理がありはしないかと思ふのであります、假に四人以上を連記にすると考へて見ますならば、四人から十四人迄の間の選擧區がある譯でありますから、其の間に、二人書かせる所と三人書かせる所と二つに分けるとするならば、其の分ける所は、丁度四人から十四人の間の八人或は九人の所で區切を付けるべきぢやないか、十人と云ふのは、數は十と纒りますが、區切の付け方が上に行つて居るのではないか、是は極めて機械的なことでありますが、理窟だけであります、さう云ふ點と、それから今の二人、三人の區はありませぬから問題はありませぬが、二人の區は沖繩縣でありまして、沖繩は交通、其の他の現在の状態から申しまして選擧は出來ませぬ、是は出來る時期になりましたら、其の時に、勅令を以て其の日を決めて選擧をすると云ふことになりますが、唯法制の建前の上では、沖繩縣はまだ日本の領土でありまして、時期が來れば選擧を行はなければならないのですが、此の二人の定員の沖繩縣に對して二人を連記させることになれば完全連記になりまして、建前が根本から變つて來ると思ひます、それを是正する爲に、衆議院の修正案では、附則の中に、選擧の方法も別に勅令を以て決めろと書いてありますが、是で補ひは付きます、此の勅令に依り、單記投票の勅令を出せばそれでやれる譯でありますが、併し憲法附屬の斯う云ふ重大な選擧の手續に付きまして、之を勅令に委任してしまふと云ふことはどうも穩當を缺くと考へるのでありまして、是は矢張り其の手續は本文の方に表はすべきではないかと思ふのであります、更に今朝大河内子爵の御質疑に對しまして申上げましたやうに、再選擧及補闕選擧の場合に於きましては、一人を選擧する場合、二人を選擧する場合が幾らも起つて參ります、此の補闕選擧の場合は、一人の場合には補闕選擧をしませぬで、二人以上の場合でありますが、二人の補闕選擧を行ひます場合に、是も二人書かせれば完全連記になりまして制限連記ではありませぬ、是は沖繩でなくともどこの縣にも起り得る問題でありまして、是は少し不合理ではないかと思ひます、更に再選擧の場合になりますと、再選擧の場合は、或は當選無效の訴があつて闕員が出來たとか、資格がなくなつたとか、或は當選者が承諾をしなかつたとか、或は當選者に被選擧權のないことが明瞭になつたとか云ふ場合に選擧をやり直す譯でありますが、それで選擧をやり直す場合には、唯一人に付て選擧をやり直す場合も澤山起ります、一人を選擧する場合に、其の一人を書けと云ふ規定がなくて二人以内とありますが、二人書いて宜いのだと云ふ規定しかありませぬと、どうもやり樣がなくなつてしまふのでありまして、此の點は全く修正案の缺陷のやうに思はれます、今日迄研究致しました所では、どうも方法がないやうでありまして、確かに缺陷のやうに思はれるのであります、是が制限連記に關します衆議院の修正案に對しまして、私が贊成を致し兼ねる點なのであります、それから其の外各條に亙つて居りますが、第九十五條の二、是は立候補屆出前の選擧運動を禁止した規定であります、立候補以前の選擧運動は、今度の政府の原案に於きましては、之を自由にすると云ふ建前を採つたのであります、之に對しまして、是は現行法が之を禁じて居りますが、衆議院の修正は、之を矢張り禁止すると云ふ現行法と同じ建前に行つたのであります、此の點は考へ方でありまして、實は衆議院の方の一部の人は、初めは之を此の際だけの禁止にしようと云ふ考があつたやうでありますが、是は筋道が立つと思ひます、それが段々擴がつて此の際ばかりでなく、將來共に立候補前の運動を禁止すると云ふことになりました、それは現行法は之を禁止して居りますから、今各地に於て、此の政府原案が通るものと豫想して、既に事前運動をやつて居る向があると云ふことが傳へられます、是は現行法が之を禁止して居りますから、それは取締るべきで、取締るやうにこちらの方は處置をして居ります、併し新法で、政府原案が通つて、是が自由だと云ふことになりますると、そこで新しい法律が公布せられますれば、過去の法律に依つて犯した罪でありますから、是は豫審免訴になつてしまふ譯であります、さうすると折角今取締つて居ても、後では是はどうもおつ放されるのだと云ふことを皆が豫想して運動すれば、是はどうも仕樣がないのだと云ふことになりまして、此の際だけはいけないと云ふことにしようと云ふことであつたのですから、是はまあそこの辻褄を合せるのには是も一理あると思ひます、唯立候補前の運動を全般的に之を止めてしまふのが宜いか、之を禁止するが宜いかと云ふ問題になりますと、政府原案の趣意は、大體運動に付きましては自由にしよう、成るべく自由に明朗に選擧させようと云ふ點から、之を自由にした譯であります、まあ謂はば立候補前の選擧運動を禁止すると云ふことは、試驗勉強をするに付て試驗勉強の期間を決めた譯でありまして、其の前は勉強してはいかぬ、驗驗期日の三十日前になつたら勉強を始めろと云ふ規定であります、是も一つの試驗勉強の方法でありますが、其の前から平素から色々勉強して居ると云ふことを止めるのが宜いかどうかと云ふことになる譯でありまして、其の前の勉強と云つても、是は買收饗應等、罰則に觸れるものは是は無論いけませぬ、其の外の方法、或は演説會をやるとか色色なことをやる譯でありますが、之を禁止するが宜いのかどうかと云ふことに付てはどうも、少し疑問ではないかと思ふのであります、先刻關屋さんの御話もありましたが、「イギリス」では選擧費は殆ど掛らないと云ふことを聞きますが、併し是は平素の擧擧區に對しての、選擧區の培養と云ふ言葉が使はれるのでありますが、選擧區を培養して置くと云ふことが非常に大事なことらしいやうに思ひます、それは別に買收すると云ふ意味ぢやないのでありまして、絶えず選擧區に歸つて選擧民と接觸して置くと云ふやうなことのやうであります、前からさう云ふ風な或正當な手段に依つてやつて行く運動であるとしますれば、是も禁止するのはどうであらうかと云ふことを考へるのであります、それから其の次は八十九條、九十條、九十一條、九十二條の、是は選擧事務所の制限、それから休憩所の設備、事務所、休憩所等に關する規定でありますが、是は現行法で之に對して制限をし禁止して居ります規定のありますのを、政府原案は之を皆削除することに提出致しましたのを、衆議院は又それを復活して居ります、さうして選擧事務所を一箇所を原則にして、現行法では場合に依つては三箇所迄設置出來ると云ふ其の三箇所を五箇所迄と云ふことにして居る譯であります、是も考へ方なのでありますが、矢張り選擧を出來るだけ皆が自由に濶達に、さうして餘り煩瑣な規定で選擧違反だとか云つて引つ掛ることのないやうにやつて行きまする上から參りますれば、斯う云ふ點は別に制限や禁止をしないで自由にさして行きたいと思ふのであります、之に對しまして衆議院の方では、いや、さうすると前のやうに選擧事務所を澤山作つたり、投票日に休憩所を投票所の近所に澤山作つたり、此の頃はなかなか家を借りるにも經費が容易でない、それに對して、金に構はず休憩所を何十箇所も作るとか、事務所を何十箇所も置くと云ふことになつては甚だ困る、それだから此の制限は從來通り之を置きたいと云ふことであります、是は矢張り根本の考へ方でありまして、こちらの原案は、出來るだけ選擧を自由に濶達にやらして行きたいと云ふ點から、是等の煩瑣な制限を撤廢した譯でありますが、是もそれぢや金が掛つて困るのだと云ふことでありますれば、是も一つの考へ方であります、まあ原案としては、何處迄も選擧運動を自由に解放して行きたいと云ふ所からの意見の違ひになる譯であります、それから其の次は第百條でありますが、第百條は簡單な規定でありまして、是は命令に委任して、選擧運動の爲に色々出します文書、圖畫類に關して内務大臣が命令を以て制限をすることが出來ると云ふ規定であります、此の百條の規定に依りまして内務省令が出て居ります、是はもう實に詳細を極めた内務省令が出て居るのであります、なかなか色々な場合の色々な文書圖畫に付て色々な規定をして居ります、寸法やら、何やら色々ありますが、是は能く素人が引掛り所でありまして、ちよつと文書の寸法が違ふとか、張札は宜いけれども、引札はいけないのだ、「ポスター」がどうとか、大層細かな規定になつて居ります、斯んな風な煩瑣な、實に形式的なことを自由にしたいと云ふ所から、此の百條を削つて、從つて煩瑣な内務省令を廢止する積りで原案を提出したのでありますが、衆議院の方では之を復活されまして、さうして更に之に對しての復活された時の説明を聽きますと、從來よりも尚餘計に制限をしようと云ふ點があるのであります、是は從來は、例へば立看板及立候補告知の爲の張札は禁止する、其の代りに市町村内の適當の場所に連名の掲示を出すやうにしろと云ふ希望の説明があつたのでありますが、掲示場に候補者の名前を連名を以て出すと云ふことは實行する積りで居ります、唯其の代りに立候補告知の爲の張札は全部禁止してしまひます、是は是迄禁止して居ない所を新に禁止すると云ふことになるやうであります、それから演説會の告知は、從來は張札とか、「ポスター」、「ビラ」は差支なかつたのですが、今度は張札だけにして、外の物は制限すると云ふやうなこと、それから第三者の運動は演説會の告知に付て、是も矢張り「ビラ」や、廣告や、立看板はいけない、從來はさう云ふ制限のなかつた所迄行かう、從來以上に行かうとするのであります、是は甚だ細かなことであり、而も第百條に依つて出す命令の内容でありますが、百條を復活する理由として、さう云ふ風に説明された、其の内容に付きましては、此の百條が通れば、矢張り之を尊重するのが建前であらうと思ひますが、從來以上にさう云ふ風に制限を更に強めて行くと云ふことはどう云ふものであらうか、結局是は一方から考へますれば、從來選擧運動をやつて居りました馴れた人は其の邊のことは割合やり易いかと思ひますが、新しく立候補する者やなんかに取りましては、煩瑣な規定が色々と澤山重つて居りますと云ふことは、新しい新人に取つては不利益であると云ふやうに想像されるのであります、それからもう一つは選擧後の事後の挨拶行爲、百條の二であります、是は矢張り政府原案は之を削除することにして居りましたが、之を復活すると云ふ修正でありました、運動を自由にすると云ふ建前から選擧後の色々な行爲も制限する必要はないと云ふやうな風に考へたのでありますが、是は矢張り一方で非常に金を使つて色々なことをやる者があると誠に困るから、全般的に禁止したいと云ふやうなことで修正になつたやうであります、それから罰則の所で、百二十四條と百二十五條であります、此の規定を政府の原案は削除して居るのでありますが、それを現行法通り禁止すると云ふことであります、百二十四條の方は、色々なことをやつて氣勢を張る行爲を禁止するのでありますが、是は特に斯う云ふ規定を置きませぬでも、此の頃まさか「チンドン」屋のやうなことをして選擧運動をやつて行くことを豫想する必要もないと思ひます、萬々一あつても大したこともないことでありますし、さうして此の規定は色々な氣勢を張る行爲を爲して「警察官吏の制止を受くるも仍其の命に從はさる者は」と云ふやうに、警察官吏が制止することを條件にしての罰則でありますから、斯う云ふ規定を特に置く程の必要がないと云ふやうな風に考へて之を削除したのでありますが、若し選擧運動にこんなことをやれば甚だ面白くないことだから、現行法通り復活して置きたいと云ふことで修正になつたやうであります、それから第百二十五條も矢張り同じやうなことでありまして、選擧に關する色々な犯罪を煽動した者に對しての罪でありますが、是も矢張り現行法通り置いて置くと云ふことであります、此の罰則の二つの規定は、是も考へ樣でありまして、今斯う云ふことを選擧運動にやつた所で、それが有效な方法とも思はれませぬから、やる者もなからう、さう思ふのでありますが、併しいややる者があるかも知れないし、甚だ面白くないことだと云ふ風に考へればそれもさうなのであります、そんな風に各條に亙つて居りまして、結局前に申述べましたやうに、制限連記の所には缺陷があると思ひます、それから選擧運動に關する部分に付きましては、大體の考が出來るだけ煩瑣な規定を撤廢して行くと云ふ考へ方に對して、之を矢張り或程度どうしても制限して行かうと云ふ考へ方の相違になる譯であります、大體さう云ふことであります○委員長(伯爵林博太郎君) 休憩致しまして、午後一時開會致します   午後零時九分休憩     ――――◇―――――   午後一時四十一分開會○委員長(伯爵林博太郎君) 開會致します○男爵松平外與麿君 只今内務大臣から御深切な御答辯を戴きまして了承致しました、將來の希望として一、二申上げたいと思ひます、第一は田口議員、關屋議員も仰しやいましたが所謂選擧權の擴充と之に對する所の政治的教養と申しますか、其の點に付きまして、大體の御話は分りましたが、此の改正立法の趣旨は、新しき擴大された所の選擧民に短時日に十分納得させることは殆ど不可能と思ひます、唯御話に依りますと、此の次の選擧は期日が短かいからうまく行くかどうかと云ふことで御尤と思ひますが、今日限りでなく、將來に於て十分徹底するやうに願ひまして、所謂選擧と云ふものを自由に、公正に全國民が之に關心を持ち、愼重なる態度を以て代議士の選擧をなすことに於て、初めて選擧權の立派な行使となると思ふのであります、此のことに付ては十分御研究の上、之に對する判斷能力の完全するやうに御努力を願ひたいと思ひます、其の次は選擧區の問題でありますが、私個人から考へれば、現在の選擧區で宜いぢやないかと思ひます、色々御話に依りまして、大選擧區と云ふことに立法されたのでありますが、結局選擧區と投票の制度の二つが關聯する問題で所謂連記投票と云ふ問題が出て來るのでありますが、現在の中選擧區に於きましても、非常なる所の非難を受け、又大なる缺陷ありとは考へない、寧ろ暫く樣子を見て、其の結果新たなる選擧區の改正をした方が進み方としては穩當ではないか、又さう云ふ方が宜かつたのではないかと云ふ感じが致します、併し是は自分の考だけを申したのでありまして、新立法が制定せられた以上、此の新立法に依りまして行ふことは已むを得ないのでありますが、此の問題は矢張り將來とも一種の研究問題として殘されるのではないかと云ふことに對しまして、十分なる御研究が望ましく思ひます、以上の希望を申しまして私は質問を終ります○山隈康君 私は極めて簡單に二、三御伺ひしたいと思ひます、第一の點は田口委員より質問せられました事柄に關聯を致しました問題であります、それは婦人の選擧權に關することでありまするが、婦人に選擧權を與へると云ふことが理論上固より當然であります、何人も異論を挾む餘地はないと存ずるのであります、然れども本來の日本婦人は家庭を中心とし、子女の教育に專ら力を盡し、家政の整理を致しまして、男子をして後顧の憂なく外部に於て有らゆる活動をせしめることに努力せしむることを使命として居りました關係から致しまして、國家の政治に對する認識、教養を缺き、從つて國政に對する何等の關心を持つて居なかつたと云ふのが現在の事實であります、都會の婦人は相當政治的教養のある方もあるやうでありますが、多くの婦人は今日選擧權を與へらるるよりも寧ろ一片の「パン」、一塊の薩摩芋を貰つた方が非常な幸福であると叫んで居るのであります、從ひまして此の婦人は衆議院議員選擧に臨む際、恐らく先刻どなたかの質問にありましたやうに、多くの棄權者を出し、又棄權者を出さないと致しました處で、有夫の婦は亭主の命令に依り、又其の他の子女は父兄の指圖に依つて投票する現在の一般婦人の状態に於きまして、候補者の閲歴、才幹等も何等關係しない、甚しきに致つては候補者の氏名すら承知しない者が大部分であらうと思ふのであります、斯樣な状態、即ち亭主の命令、父兄の指圖に依つて投票を行ふ、自己の自由意思に依つて投票をなし得る者と云ふものは極めて稀であらうと思ふのであります、で斯くの如くにして政府の御期待になりまする明朗、新鮮、至公、至純なる選擧の結果を期待すると云ふことは頗る困難になるのではないかと思ふのであります、先刻内務大臣の御説明中には、それは公民教育に依つて、相當婦人の政治に關する關心を高める、今期に於てもさうである、併しながら今日の情勢から見ますると、恐らくは、衆議院の選擧と云ふものは近き將來にあると存ずるのでありますが、其の間に教養をするとか云ふやうなことは、徒に口頭禪に止つて、何等其の間に於て婦人の知識を向上し啓發をすると云ふことは、是は出來得ない相談だらうと思ふのです、先づさう云ふ状態でありますると、婦人に選擧權を與へましたる結果と致しまして、徒に司法事務の繁多を來たし、其の結果は婦人に參政權を與へたが爲に、選擧界の革新に付ては一指を染むることが出來ないのではないかと思ふのであります、此の故に先づ衆議院の選擧は相當後廻しに致しまして、市町村選擧、府縣の縣會議員の選擧等に參加せしめまして、選擧の状態、延いて政治に對する關心を強め、心構が出來ました後に於て衆議院の選擧權を與へると云ふことが眞に私は有效適切な方法ではないかと思ふのであります、後で申述べまするが、現在の男子の有權者に於きましても、適正有效に選擧權を行使し得る者が、有權者中何人あるかと云ふことを私は疑ふ、況や婦人の如き政治に關心のない、教養のない、經驗のない、斯う云ふ者に、突如として、何等の心構のない際に選擧權を與へました處が、是は寧ろ私は失敗に終る結果を生ずるのではないかと思ふのであります、第一に之に對する政府の御所見を伺ひたい、第二には、是もさつき一委員より御質問になりましたのと重複を致しまする點がありますが、松平議員の希望意見の一端にもありました選擧肅正の問題であります、是は頗る重要なる事柄でありまして、更に一委員より御質問になりましたよりもつと切下げて、掘下げて御高見を伺ひたいと存じまするから、重複の點は御寛恕を願ひたいと思ふのであります、長く實際に大小幾多の選擧に經驗を有して居りまする私共から考へますると、現在の投票は、買收、誘拐、利益若くは縁故、斯う云ふことに依つて選擧權が行はれて居る、眞に國政の審議の衝に當る練達、達成の士を心から選んで、自分の私慾を離れて、利益を離れて、私を離れて國政審議の衝に當る最も有能なる候補者と云ふことを認識致しまして、それに投票する者が果して幾何あるか、現に相當知識があり教養があつて、憲政の重要なることを承知して居ります人でも、此の候補者は我々と同窓關係がある、或は我々と同郷である、或は我々の友人である、あの候補者に對しては某友人から薦められたから、あれに投票しようと云ふことを、憲政の重要性を承知して居る有識の人の間に於きましても、それ等の縁故を離れ、關係を離れまして、見も知らぬ人であるが、併しながらそれは練達堪能の士である、國政審議の衝に當つて差支なき人であると云ふことを深く信じまして、私を去つて眞にさう云ふ方に投票する者が私は幾人あるか、私自身の胸に考へて、私の友人の行動に考へましても、恐らく選擧は左樣な状態に於て行はれて居ると云ふことが普通であらうと思ふ、先刻内務大臣は肅正運動に依つて、相當の結果を現はしたと云ふことでありますけれども、現に選擧界に沒頭致しまして、關係致して居る私共から見ますと、肅正の效は寸毫も現はれて居らない、唯選擧のやり方が巧妙になつたに過ぎない、益益惡性を極めて居る、是は數年來本議會に於て、若くは委員會等に於きまして、選擧界の腐敗を説き、其の肅正を叫んだことは屡屡であります、政府は之に對して、或は公民教育に於て、或は肅正運動に於て、是等の選擧の肅正を圖ると云ふことの御言明に接しましたけれども、其の實績は今日として現はれて居りませぬ、世の腐敗、風紀の混亂に乘じて更に選擧界は改まつて居ないのが現實であります、今日の如き極めて重大なる時期に於て、而も幾多の難關を突破致しまして、新たなる日本を建設せむとする此の際に於て、國政審議の衝に當る有能なる人物、之を選出すると云ふことは極めて緊要の事柄であると存ずるのであります、野には相當の遺賢があります、隱れたる人があります、是等の高潔なる人は、此の腐敗して居る選擧界に自ら候補者として名乘ることを恥ぢて居ります、選擧が公正に行はれ、立派に行はれたならば、それ等の殘されたる遺賢と云ふものは世の中に出まして國政に參與し、新日本建設に努力する機會があると存ずるのであります、斯う云ふやうな重大なる時代に於きまして、國政審議の衝に當る有能なる人物の選出と云ふことは極めて私は必要であると存ずるのであります、此の故に此の見地から致しますれば、選擧法の改正も一つの方法であらうと思ひますけれども、之に依りまして國民の國政に對する心構を改めさせまして、眞に適正なる選擧を行はしむると云ふことに付きましては、特に私は格段の方法に依らねばならぬと思ふのであります、そこで伺ひたいのは、其の國民の國政に對する心構を改めしむると云ふことが選擧法改正よりももつと重大なる意義があると思ふのです、此の重大なる意義に對して從來の政府は、御坐なり的に國民教育であるとか、肅正運動であるとか云ふやうなことをなさいましたけれども、それは今日何等の效果も現はして居ないのであります、此の故に私は此の問題に對し、國民の心構を改めしむると云ふ重大なる問題に對しては、もつと懸命に研究致しまして、肅正の方法に致しましても、其の後の公民教育の方法に致しましても、具體的の案があるべき筈と思ふのであります、從來のやうな肅正運動、各地に演説會を開いて色々なことを御喋り致しました處が、それは何等の效果がないのであります、此の重要なる問題に對し如何にして之を改めしむべきかと云ふことに付ては、肅正運動に致しましても、其の他の方法に致しましても、新たなる見地に立つて立派な計畫を立てて、其の一定の計畫に向つて進まなければ、心構を一新せしむると云ふ重大なる問題の解決は困難だと思ふのであります、此の點に關する政府の用意、準備計畫が御有りになつたならば御示を願ひたいと云ふのが第二の御尋であります、第三の御尋は、是は小さい問題でありまするが、第三者の選擧運動、是は第三者が練達有能の士を國政審議に當らしむるが爲に適正なる運動をする、是は無論阻止し得べきことではないのであります、唯併し實際の運動は第三者の運動と云ふことに藉口致しまして、選擧に關する巧なる不正行爲を爲す者が一番多い、第三者の選擧運動に對しては餘程嚴格な眼を光らして、之を監視、監督し、是正しなければ、恐らく是が選擧腐敗の因を成すのではなからうかと云ふことを心配して居る、此の故に第三者の選擧運動に對しては、衆議院でも色々の意見がありまして、相當制限を加ふるが宜いぢやないかと云ふ意見があつたやうであります、是は尤もな意見であると思ふのであります、此の第三者の運動に對しては何等の制限をしない、先刻仰せの如く今日の選擧界はそれを自由にして居る、是が時代の要求であると云ふことは無論仰せの通りであります、併し自由にも限度がある、無差別に自由と云ふことが許されぬことは勿論であります、第三者の選擧運動に對して何等の制限を設けぬでも、何等其の間に不適正なことが起らないと云ふ御見込があるならば、其の御見込の所を御示を願ひたい、第四には、是は極めて小さい問題でありますけれども、私が多年選擧長若しくは選擧立會人と致しまして、痛切に感じましたる事柄であります、それは選擧人が投票場に參りまして、投票場の極めて嚴肅なる部屋に一歩踏み入れますると、何だか心が俄に改まるやうな感が致しまして、自分の投票せむとする候補者の氏名を頓に忘れる、そこで選擧事務長、立會人が腰を掛けて居りますと、選擧人がちよこちよこ其處へ入つて、何區から出る其政黨の候補者の名前は何と申しますか尋ねた、斯う云ふ滑稽なことがありまして、其の爲にそれ等の者は氏名を想起すること能はずして白票を投じ、若しくは色々な詰らぬことを書いて居る者があります、又相當の知識ある者でも年齡を取つて居りますと、是亦どう云ふものか自由奔放の外界から嚴肅なる選擧場に入りますると、緊張の爲に是亦頓に氏名を忘れる、そこで自分が選擧せむとする候補者はどう云ふ者か、選擧場を出ると直ぐ思出したが、選擧場では一向氏名を思ひ浮べ出せなかつた、其の故に仕方がなかつたから自分が一向尊敬しない人を唯歸る譯には行かぬから書いて來た、斯う云ふことを屡屡申す機會に接したことがあります、それで私は選擧場にいろは順で各候補者を書いて貼り出して置く、斯う云ふことは從來の選擧法では禁じてありました爲に、場内に於て候補者の氏名を表示し、若くは其の他の方法を用ひることは許さなかつたのであります、今次の選擧法は極めて公正自由なる天地に於て選擧人の意思が十二分に到達する趣旨の下に、御立法に相成りまして、深く敬意を表する次第でありまするが、此の種の事柄は此の選擧法に於て御認になるでありませうか、十分私は改正法等を熟覽して居りませぬから、一應此の點を伺ひまして、後で又御尋ねすることに致します○國務大臣(堀切善次郎君) 第一の婦人の選擧權に關しての御説でありますが、只今迄の状態に於きまして婦人がまだ政治的の教養が十分でなく、其の訓練も足りないではないかと云ふ點に付きましては、是はさう云ふ點もあらうと存じます、或は農村の方のお上りさんと云ふことになりますと、色々なことに絶えず忙しくてなかなか政治上の事に注意をする暇もない、從つて政治に對して餘り興味を持たないと云ふやうな實情が相當ありはしないかと心配致します、是は結局矢張り前に申上げましたやうな公民教育を徹底させることに依つて行くより外はないと存じますが、御説のやうに此の選擧に直ぐに間に合ふ譯でもないと思ひますが、是は出來るだけ其の方法を採るより外はないと考へて居ります、唯併し大體から申しまして近年殊に戰爭中、婦人の働きが都鄙を通じて隨分色々と、男の居ない後を男に代つて色々な仕事をやつて居ります、都會地に於きましても、或は食糧の問題から配給の苦心やら色々な事で苦心をして居りますし、又若い娘達も或は工場に行つたり、挺身隊に出たり色々やつて居りますので、其の間に矢張り自然世の中に對しての批判力も相當加はり、政治に對しての關心も相當出來て來て居るのではないか、此の數年前の婦人の状態とは、最近の状態に於ては相當違つて居るのぢやなからうかと云ふやうに觀察するのであります、さうして何と申しましても矢張り婦人は單純であり、率直である點があると思ひます、さう云ふやうな頭で判斷することが又宜い場合も相當多いのではなからうかと思はれます、固より婦人の投票の大部分は矢張り亭主のある婦人でありますれば、夫婦仲良く多分同じ所に行くことだらうと思ひます、或は娘達は其の家の家長の、否父兄の話す所を聽いてそれに左右されて同じやうに行くと云ふことが大部分ではないかと思ひます、此の間或地方の婦人達が集つて、婦人の投票がどうなるだらうかと云ふ話をした際に、皆の一致した意見としての觀測は、此の儘でうつちやつて置けば、棄權が五割位になりはしないか、殘りの五割の内四割は主人なり父兄と同じ投票になるだらう、五分は女の方が男を引連れるだらう、後の五分がどうなるか分らないと云ふやうに意見が一致したと云ふことを聞きまして、非常に興味のある話に聞いたのでありますが、大體そんな所ではないかと云ふやうな感じが致します、從ひまして今後當局として、我々と致しまして一番力を盡すべきは婦人の棄權の多くなることに對してであります、從ひまして今度の公民啓發運動に於きましても、此の點に一番力を盡さうと云ふやうに考へて居る次第であります、外國の方で婦人に選擧權を與へました實例を聽きますと、「イギリス」邊りでは婦人に參政權を與へた一番初めの選擧には相當棄權が多かつたと云ふことを聽きます、併し二度目の選擧からは棄權率は略略男と同じになつたと云ふやうに聽いて居るのでありますから、此の第一囘の選擧は特に矢張り棄權の點に注意しなければなるまい、二囘、三囘となつて參りますれば、漸次良くなつて行くのではなからうかと云ふやうに考へます、又一方何と申しましても、矢張り婦人は穩健な所がありますから、外國の例でも矢張り婦人の投票は大體極端な方には行かないで、中正穩健な所に大體票が集まると云ふやうな風に聽いて居ります、是等のことを考へますと、變動の非常に激しい今日に於きまして、此の婦人の穩健中正な其の考へ方と云ふものには、或程度期待をして宜いのではないかと云ふやうな感じを持つて居るのであります、何故地方制度を後にして、議會の方に先に婦人の參政權を認めたかと云ふ御質問に對しましては、確かに御説のやうな考へ方の出ることは當然でありまして、昔憲法が發布されまして、帝國議會が初めて置かれます際に、其の當時の山縣内務大臣は、其の數年前に地方制度を先に發布して、さうして地方制度に依つて、或は選擧或は名譽職と云ふやうな制度に依りまして、國政に國民の參與する機會を與へ、國政に參與することに慣熟せしめて、さうして此の憲法の施行に當り備へるのだと云ふことで、地方制度の改正をされましたと云ふ話を伺つて居る次第でありまして、只今の山隈さんの御説も詰りさう云ふ風な考へ方で御考になると云ふことは、是は如何にも御尤だと思ふのであります、併し今日となりましてはもう色々な關係から考へまして、憲法施行當時とは、國情も著しく進んで居りますし、文化も教育も進んで居り、又男の選擧のことに付ても十分に見て居る譯でありますから、今日に於きましては、必ずしも地方制度を先にしないでも宜いのではないか、殊に只今の情勢と致しましては、帝國議會を早く新しい、清新溌剌たるものに作り變へて行くと云ふことは、總ての今後の日本の進むべき道の根柢になると考へましたので、地方制度は色々準備の都合もありまして、間に合ひませぬから、地方制度を後にして、帝國議會の方の婦人參政權を先に實行することに致したやうな次第であります、第二の選擧區の腐敗の問題に付きましては、是は山隈さんが多年の御經驗で、是等の點に付て非常に通曉されて居りますから、我々の素人から觀察を申上げますのも甚だ鳥滸がましい譯でありますが、併し私共の考へて居りまする所では、山隈さんの仰しやるやうなことも是はあるだらうと思ひます、併し又色々人の話を聽きますと、前よりはすつかり改まつて、前より良くなつたと云ふやうな話も隨分聽くのでありますから、是は所に依り地方に依りまして、矢張り肅正の效果はまだ擧つてない所もありませうが、擧つて居る所も矢張り相當あるものではなからうかと考へるのであります、是は是非斯う云ふ方に出來るだけ力を盡して行かなければならないことは、勿論でありますが、其の方法と致しましては、何と申しましても是は矢張り公民教育の徹底と云ふことに俟つ外はないと思ひます、殊に此の度の國情に依りまして民主主義の復活強化と云ふ方向に國全體が向はなければならない此の際と致しまして、教育の方面から申しましても、公民教育に特に力を盡して行かなければならないと云ふことは、文部大臣も言明して居られる所でありまして、今後斯う云ふ方面、公民教育の方面に於て特に力を盡すべきであり、又是が根本であらうと考へるのであります、併し其の外にも何か良い方法がありますれば、是はもう絶えず全力を盡して其の方向に進むべき筈なのでありますが、只今の處今日迄此の選擧肅正の運動が民間の運動としてずつとありましたが、戰時中の色々な事情から之がなくなつて、只今其の團體はないことになつて居りますので、急に作るのにも間に合はず、只今の處ぢや別に方法がないのでありますが、又是等に付きまして何か御考の具體的の方法がありましたならば、御教を戴ければ非常に有難いと存じます、是等の方法がありましたならば、其の方法に付ては、矢張り出來るだけ絶えず力を盡して行かなければならないと深く感じて居る次第であります、第三に第三者の運動のことでありますが、此の第三者の運動は見方、考へ方に依りまして、御話のやうに候補者を通じてそこに色々面白くないことが行はれることも、是はあることだらうと存じます、併し又一方から考へますれば、第三者として候補者を推し、候補者の爲に働いて行きたいと云ふ氣持が可なり色々な人の中には相當あるものぢやないだらうかと思ふのであります、それが今日迄色々な點から運動方法が演説と推薦状に限るとか云ふやうなことで、非常に限定されて居りますことが、一方から考へますれば、非常に遺憾なことでありまして、皆が大いに政治に關心を持ち、選擧に非常に關心を持つて、さうして自分の信頼し、尊敬する人の爲に大いに働きたいと思つても、其の方法が非常に制限されて、思ふやうに働けないと云ふやうな状態にありますことは、是は矢張り其の人の志を暢ばさしめて、大いに第三者として働くと云ふことを認めることも、是も矢張り必要なことであり、選擧に對しまして、殊に國政參與に對して、國民をして十分の關心を持たせ、責任を持たして行くと云ふ點から考へましても、是は結構なことぢやないかと考へるのであります、さう云ふ點から致しまして原案に於ては第三者運動も自由に致したのでありますが、是は衆議院の修正に依つて制限されたやうな次第であります、それから最後の投票所の例でありますが、伺ひましても誠に滑稽なことに伺ひましたが、さう云ふやうなことがあるかも知れませぬ、今度は投票所の入口に掲示板のやうなものに候補者の名前をずつと竝べて書くと云ふことを衆議院の方で要望して居ります、それを今度は實行する積りで居ります、投票所の入口にはそれが出來るのでありますが、投票所の中にそれを掲示することはまだ考へて居りませぬのであります、色々の關係もありますから能く研究致したいと思ひます○山隈康君 多少意見の相違もあるやうでありますし、更に若干御尋をしたい點もありますが、一應此の程度に止めます○中川望君 極めて簡單な二三の點に付て御伺ひ致します、衆議院議員選擧法は最も衆議院議員に利害關係がある問題でありますから、衆議院の意見は第一に尊重すべきものと存じます、唯大臣の懇切なる御説明に依りまして、私は今囘の政府原案は短期間の御調査と致しましては極めて立派な原案を御提出に相成つたと存じて居ります、殊に現下の情勢に極めて適應する御考を以て數囘に修正改正案を樹てられたやうに存じて居ります、唯それに對して衆議院に於ては相當の修正を加へられまして、御説明に依りましても、最も重大な點は制限連記の點にあるのであります、如何に衆議院の意見を重んずるに致しましても、苟も法に缺陷を生ずるやうなことがありましては、是は是正を要するものではないかと存じます、第一衆議院に於ける修正に付きましては、種々なる點がございますか、此の中各派を通じての希望と云ふものがどれ程のものがございませうか、又各派の意見は必ずしも一致して居らぬと云ふやうなことになつて居りませうか、私は是等の情勢が明かでございませぬから、若し政府の是等に對する御所見を伺へれば幸せと存じます、それに依つて又我々の考も定めたいと存ずる次第であります、それが第一であります、後は小さな問題でありますが、殊に是迄の御説明で大體諒承したのでありますが、文書の運動に付きまして、是は選擧運動の中で演説會と竝び最も候補者の政見發表に付て效果ある方法と存ずるのでありますが、政府は之を無制限に自由ならしめむとする原案を御作りになつて居ります、唯衆議院の方でも考へられたことと思ひますが、紙不足の現況からしてそれが果して十分出來るかどうかと云ふ點、紙不足、或はそれ等の經費の關係等より之を制限すると云ふことになつたのではないかに考へますが、其の紙の供給は政府の方でどれ程迄に御考になつて居りますか、又其の紙の供給があるとしても、資力のある人のみが、之を買占めると云ふやうなことがないやうにするにはどんな風にするか、私は文書は政府の御考の上に出來るだけ十分に無制限にやらせることが良いのではないかと考へて居る一人であります、殊に今度の選擧は嚴寒の際で火の氣のない演説會場に人の集ることも如何でありませうか、又終戰後の今日の状況から見まして、斯う云ふ演説會場に出る人がないと云ふやうなことになりますと、折角の選擧が十分徹底しない、新人の候補者にも非常な障害があると云ふことになると云ふやうに考へて居りますが、それ等の點に付ての御考を伺ひたいのであります、それから第三に事前運動を自由ならしめむとする御趣旨は先刻午前中にも詳細御説明を承つたのではありまするが、修正案のやうに全面的に事前運動を禁止すると云ふことになりますと、此の點が先刻の御説明の如く、殊に斯う云ふ場合に、國民の間に此の選擧の趣旨を徹底せしめる上から申しましても、遺憾なことでありまするし、又今日の場合に限らず、所謂公民教育の點から申しましても、事前運動と、運動と言ふからして角が立つやうでありまするけれども、本當はそれが政治の實際の教育になつて行くのではないか、又其の人に對する判斷も、それ等のことがあるに依つて、平生に依つて判斷して行くのでありますから、斯う云ふことを矢張り政府の御考のやうに、十分に自由ならしめると云ふことが結構なのではないかと考へるのでありまして、此の點に付て尚もう一度政府の御考を御聞きして置きたいと存じます、それから是も極めて小さなことでございまして、屡屡此の選擧の際の經驗に依つて氣の付くことでありまするが、選擧の當日に投票所の附近に事務所を設けることに付て、是は甚だ一面から申しますと、體裁の惡いことにもなりますし、又人の防害をする爲に、澤山の事務所を設けると云ふやうなことも行はれて居るやうでありまするが、衆議院の修正も、是等の點に著眼されたものでないかのやうに考へますが、是等に付ても、政府の御所見を極めて簡單で結構でありますから、念の爲に伺つて置きたいと存じます○國務大臣(堀切善次郎君) 第一の各派の意見のことに付きましては、政府委員の方から申上げることに致します、第二の文書運動に關することも政府委員の方から申上げますが、紙に付きましては、選擧に要する紙に付きましては、衆議院の委員會の方で、政府の只今計畫して居る所を御話したのでありますが、各候補者に對して一人當り十連乃至二十連を公定値で御世話をすると云ふやうに頼んであります、十連迄は大丈夫なのでありますが、出來れば平均二十連配付するやうに致したいと思ひまして、色々苦心して居るのであります、先づ十連乃至二十連公定値で各候補者に配付すると云ふやうに申したのであります、唯、現在紙は非常に不足して居りますから、斯う云ふ風に政府の方で世話を致しますもの以外には、紙はなかなか手に入り難いと思ひますので、若し手に入れようとすれば非常な闇値段が伴ふと云ふやうなことは事實であらうと思ふのであります、それから第三番目の事前の運動に付きましては、前に申上げましたやうに、考へやうに依つては、平生選擧民、選擧區の方と能く接觸をして居ると云ふことが必要なのではないか、又決して惡いことではないのではなからうか、殊に新しく出ようと云ふやうな人に取りましては、矢張り斯う云ふことを認めて置きますれば、選擧間際になつて短期間の間に運動は到底徹底致しませぬから、さう云ふ方面にも都合が好いではないかと云ふやうな風に考へて、之を撤廢することを考へたのであります、固より事前運動と申しましても、或は買收とか、饗應とか云ふやうな選擧違反になる取締らるべき行爲に對しては、是はもう無論選擧前でありましても、十分取締る譯でありますから、弊害なく是が行はれることも十分出來る餘地はあるだらうと思ふのであります、衆議院の方に於きましては唯さう云ふ風にすると、矢張り一方で盛んに金を使つて盛んにやられては困ると云ふやうな大體の意味であつたやうに思ふのであります、それから最後の選擧の當日、投票所の近所に休憩所を作ると云ふやうなことは、ずつと前に斯う云ふことが認められて居りました時にありました、實際の實情は是はどうも餘り感心したものでないやうに私等も考へます、休憩所で以て、色々投票所に行く人に對して接待をしたり何かすると云ふやうなことは買收の一つの機會になることもありませうし、又選擧の品位を維持して行くと云ふ點から言つても餘り感心したものではないやうに考へます、唯數年前と今日とは餘程時勢が違つて居りますから、今日敗戰後皆非常に眞劍になつて居ります際に、選擧當日休憩所なんかを作つて、さうして景氣の好いやうに見せて今のやうなことをやると云ふことは、今日の實情に於て、果して選擧戰術として有效なのかどうかと云ふやうな點に付て疑問を持つのであります、さうすればいつそのこと、是等に對する制限を撤廢してしまふ方が宜いではないかと云ふやうに考へまして、立案したやうな次第であります○政府委員(入江誠一郎君) 只今御尋の各派の修正案に對する態度でありますが、先づ選擧の方法であります、選擧の方法に付きましては、進歩黨は只今の修正案通り十人以下を二人連記にする、自由黨と社會黨は比例代表制を採りまして、單記移讓の比例代表制であります、社會黨と自由黨と異りますのは社会黨は政黨本位の單記移讓であります、自由黨は普通の單記移讓であります、次に行爲の問題でありますが、行爲の問題に付きましては、進歩黨は現在の修正案を提案致しまして、社會黨、自由黨の贊成を得たやうな次第であります、選擧運動に付きましては、自由黨は内務省の原案と同樣な意見でありまして、大體に於て選擧運動を自由にすると云ふ内務省案の通りであります、それから進歩黨は御存知の通りでありまして、社會黨は略略進歩黨と同じでありますが、唯異なりましたのは、第三者の運動を社會黨は制限すると云ふ案を主張して居ります、次に罰則でありますが、罰則に付きましては社會黨は内務省の案の通りでありまして、現在の罰則は内務省が立案致した通り、百二十四、百二十五條を削ると云ふ案であります、進歩黨と自由黨は之を復活さすと申しますか、現行法を活かすと云ふ案であります、尚御手許の修正案には現はれて居りませぬけれども、一つの大きい問題でありまするが、御參考迄に申上げますると、選擧區の問題であります、選擧區の問題に付きましては、進歩黨は内務省原案の通り七都道府縣二選擧區にする案であります、自由黨と社會黨は七都道府縣に付きましても、一選擧區に致しまして、全國を都道府縣單位の大選擧區にする、斯う云ふ案であります○政府委員(鈴木幹雄君) 私から只今御尋のありました文書の制限に關しましての御答を申上げたいと存じます、申上げる迄もなく言論、政治運動の自由の認められました今日に於きましては、選擧に付きましては、文書の運動と云ふことを制限致しますことは時代の要請に即しないと考へまして、原案には、之を現在九十八條の二及百條の規定に依ります内務省令に依りまして、相當詳細な、枚數でありますとか、或は寸法でありますとか、或は紙別でありますとか、印刷方法と云ふやうな點に關しましての制限を致して居るのを全部撤廢致しまして、文書戰を自由ならしめむとする趣旨に出たのであります、之に對しまして衆議院の修正案に於きましては、現行法通り微細の點に付きましては、要望と致しましては、或は用紙印刷の關係から致しまして、より以上の制限強化を要望されて居るやうな次第であります、先程御質疑の中にもありました通り、本囘の選擧が何れ豫想せられるのでありますが、さう云ふやうな、豫想せられます時期に於きましての文書戰の占める位置と云ふものは、相當に重大なものがあるであらうと考へるのであります、御述になりました通り嚴寒期でありまして、此の選擧運動と致しましては、演説會と共に、最も有效であり、最も望ましいと考へられます文書戰が非常に強く要望せられるのではなからうかと考へるのであります、殊に今度新人が輩出すると云ふやうな要望をせられて居る時に於きまして、演説會にして或は氣候の關係から或は客觀的社會情勢から致しまして、多數の聽衆に對して滿足を與へることが出來ないと云ふやうな場合に於きましては、特に文書に於きます所の效果と云ふものは相當甚大なものがあらうと考へます、先程大臣からも御述になりましたが、政府に於かれましては此の點から候補者に對しまして十連乃至二十連の紙を特に配給を確保致しまして、此の文書に備へたいと云ふやうな御用意を願つた次第でありますが、此の範圍に於きましての紙は勿論潤澤ではないのであります、之を自由に或は演説會の立看板に、或は張札若くは引札、是は候補者の創意工夫に依りまして最有效に活用致しますれば、此の十連乃至二十連の紙を以ちましても相當に有權者に、殊に新しい有權者にも愬へる機會が多からうと存じまして、是等の内容に付きましては、一に候補者各位の創意工夫に依る所の新機軸を出して戴くと云ふやうな趣旨から見ますれば、此の制限は寧ろ無い方が宜いのではなからうかと云ふやうに、私共は考へて居る次第であります、殊に是は犯罪の面から見まして、過去の現行法に依ります所の文書の制限は非常に形式犯を犯し易いと云ふやうな缺點を持つて居るのであります、殊に新人が出ますやうな場合に於きましては既は選擧界に角逐致しまして、多年經驗を有つて居ります方々に於きましては有益でありませうが、新人に於きましては法を知らざるが故に罪を犯すと云ふやうな形式犯を釀成する虞があります、取締の面から見ましても是はとも致しますれば、選擧干渉を誘發すると云ふやうな弊を招くやうなことも考へますので、旁旁政府原案に於きましては之を撤廢致して、自由なる活動を期待致したやうな次第であります○中川望君 詳細なる御答に感謝致します、尚もう一つ、大臣の御説明の中に、選擧の訓練、教育に付きまして、婦人團體を通じてと云ふ御話がちよつとあつたやうに存じます、其の點に付て是は内務省の御關係でありますか分りませぬが、伺ひたいのは、是迄は、殊に戰時中では御承知のやうに愛國婦人會、國防婦人會が、是が大日本婦人會と云ふものに統一されて居つたのでありますが、其の後大日本婦人會の解散された後の此の選擧に關する婦人團體かぼつぼつ出來るやうなことになつて居りますが、政府としては、婦人團體と云ふものに付て、どう云ふ今日御考を持つて居るのでありますか、それを今日伺ふことが出來れば簡單に伺ひたいと思ひます○國務大臣(堀切善次郎君) 私の團體を通じて、と申しましたのは、主として文部省關係の教育會に働いて貰ふと云ふことを文部省の方で立案して進行して居ります、其のことを申上げたのでありまして、婦人團體が之に手傳つて貰つてどれだけ效果があるかどうか、今出來て居ります團體に付きましては、まだ十分に調査を致して居りませぬ○中川望君 全國的の婦人團體を作ると云ふやうなことに付ては、政府は別に御考は持つて居りませぬか○政府委員(入江誠一郎君) 婦人團體の問題に付きましては御存じの通り大日本婦人會は先般解散致しまして、其の後の政府の方針と致しまして、各地方に於て自發的に婦人團體が結成されます場合には、之を別段禁止すると云ふ方針は執つて居りませぬ、全國一律に婦人團體を積極的に慫慂して結成すると云ふことは差控へて居りますやうな次第であります○子爵水野勝邦君 司法大臣も御見えになつて戴くと宜かつたのでありますが、此の問題は何かの機會に、もう一度機會がありましたら、伺つて見ると云ふことに致しますが、婦人參政權のことに付きまして、ちよつと御尋ねして置きたいのでございますが、今度の衆議院議員選擧法の改正に於きまして、婦人參政權を認められたと云ふことに付きましては非常な期待を私共持つて居る譯でございますが、其の選擧權の地位は得られましたが、他の法律、民法或は刑法などに於ける婦人の地位と云ふものは今此處に戴きました印刷物に依りますと、衆議院に於て御答があつて、目下の所考慮して居らぬと言はれて居るやうでありますが、是は將來どの程度迄地位を高められる御考でありますか、男女同權と云ふやうなこと迄行くべきものでありますか、もつと進んで、女子を尊重する外國の風を取入れる所迄將來は行くべきものであるかと云ふ御考で婦人參政權を先づ今度の選擧法改正の中に御加へになつたのでありますか、其の點を伺ひたいのであります○國務大臣(堀切善次郎君) 婦人に對しましては政治上の參政權を此の際先に認めた譯でありますが、之に關聯致しまして、民法上、刑法上等に於きまして、婦人をどう云ふ風に取扱つて行くかと云ふことに付きましては、まだ決定致して居りませぬ、併し婦人に對して參政確を與へると云ふ其の根本の趣旨は、是は矢張り從來の我が國に於て婦人が、まあ何と申しますか、束縛を受けて、不當な束縛、不當な壓迫を受けて居つた點もあると思ひます、さう云ふ點から之を解放して婦人の個性を尊重して行くと云ふ點が本だと考へて居るのでありますが、併し又一方、我が國と致しましては、建國以來の我が國としての特殊の家族制度が總ての社會秩序の本になつて居ることでもありまするから、其の家族制度の破壞されるやうな風なことは今考へて居ない譯なのであります、それ等のことを頭に置いて、此の婦人に對しまする不當な束縛、不當な壓迫があれば、是は矢張り解放して行くと云ふ方向に向ふべきものだと考へるのであります、民法、刑法が之に關係すると思ひますが、民法、刑法に付きましても、司法省内に根本的に之を改正して行く委員會が出來て、前から調査が進められて居る模樣であります、それ等の其の調査會等に於きまして此の新しい事態に即しましたやうな考へ方を持つて進んで行かれることと考へて居るのでありますが、我々と致しましては、今直ぐに其の點に對してどう云ふ風に直して行くと云ふやうな風に、具體的に改正の案を今持つて居ない次第であります○子爵水野勝邦君 其の程度伺つて置きまして、私の質問は終ります○男爵伊江朝助君 此の次に施行せられまする選擧に於きまして沖繩縣が全く選擧の執行が出來ないと云ふことは誠に遺憾の次第でありますが、併し情勢上已むを得ず内務大臣方の御苦心に對しても多とする次第であります、私は此の際少し選擧法とは懸け離れた問題でありますが、事内務省關係の法律案でありまする故に、少しばかり希望を述べさせて戴きたいと思ひます、現に沖繩縣から九州各縣に疎開して參りました、主に女と子供でございますが、是等は非常に疲弊困憊を致して居りまして、此の寒さに非常に困難を致して居ります、是等の困難は、皆さん御視察下さいますれば能く御分りのことと思ひまするが、實に沖繩縣から參りました者は、此の寒さには非常に堪へ難く苦しんで居ります、是ばかりぢやなく、「フィリピン」の「ダバオ」から約七千名の移民が歸つて來て居ります、御承知の通り、「フィリピン」には日本移民が約一萬九千人居りまして、今囘の「フィリピン」事件で約一萬三千人に減り、後六千何百人は、向ふで戰死若くは饑餓に飢えて死んで居りまして、約一萬三千五百人ばかり居りまして、其の中の七割が沖繩縣の移民でございます、是が今日浦賀、それから鹿兒島、長崎、福岡に皆歸つて來る、さうして是等の中に約一日に十人乃至二十人も死んで居ります、尚是等は御承知の通り「フィリピン」の暑い所から參りましたものですから、寒さに堪へず、先に申上げます通り、又榮養失調、其の他の爲に死んで居ります、そして彼等の持つて來た金と云ふものは大概軍票でございまして、こつちで「ヱックスチヱンヂ」が出來ない、それで以て私は現に沖繩縣協會の會長を致して居りまして、是等の救濟に東奔西走致して居ります、まだ目途が付かないのであります、此の點に付きまして、政府の方でも相當に御援助下さつて居りますけれども、是ではなかなか捗らない、現に、御承知の通り、沖繩縣の農民と云ふのは主に藷を作り、砂糖を作つて居りまして、耕す耕地がないのであります、今日各飛行場、其の他宮内省邊りの御料地貸下の申請中でございまするが、是もなかなか捗つて居りませぬ、さうして東京在住の沖繩縣民數萬の人間は、私に彈劾案を叩き付けて居ります、甚だ盡力が足りない、貴衆兩院議員宜しく自決すべしと云ふやうな彈劾案を戴いて居る關係上、私も無論力が足りないで、唯謝罪を致して居るだけでありまするが、此の點に於きましても、内務省の方でも然るべく善處されむことの希望を述べまして、若し之に對する内務大臣の適當の御考でもございましたら承りたいと思ひますが、内務大臣の方でも適當なる御案が今日御ありでなければ、必ずしも今日御答辯を承らなくても宜しうございますから、一つ然るべく善處して戴きたいことを希望して置きます○國務大臣(堀切善次郎君) 沖繩縣の諸君は、從來海外雄飛の先頭として各地に活躍されて居ります、又此の戰爭中、沖繩縣が戰場と相成りました際に縣民の諸君が現はされた忠誠の事實に付きましては、我々國民と致しましても、誠に感激に堪へない次第なのであります、其の後各地から引揚げて來まする人達、或は又九州方面に引揚げて居りまする人達の状態に付きましては、只今伊江男爵の御話になりました通り、誠に御氣の毒に堪へない次第であります、浦賀の方に參られました人達に付きましては、是は伊江男爵も御承知と存じますが、數日前に此の議會中、忙しい所を厚生大臣が實地視察に參りまして、皆の誠に御氣の毒な、苦んで居られる模樣を視察して歸り、歸郷の對策を急いで居るのであります、内務省と致しましても、各地方長官を督勵致しまして、又沖繩縣に對しましては、只今福岡縣、其の他に沖繩縣の事務所を置きまして、沖繩縣の内務部長を置いて、是が沖繩縣の方々の御世話をされることになつて居るのでありますが、尚其の方面、或は各地方長官を能く督勵致しまして、出來るだけの御世話を致したいと考へて居る次第であります○男爵伊江朝助君 是以上申上げる必要もないのでありまするけれども、尚一つ御參考の爲に、向ふの方の事情をほんの五分間位御話致します、御承知の通り沖繩本島の人口は、本島だけであります、離島は別と致しまして、人口は約四十萬居るのであります、其の中に疎開者が約五萬人、後三十五萬人で、其の中の二十萬人の女と年寄は北の方に居る、後十五萬が南の方に出まして戰線に參加して居る次第であります、恐らくは此の十五萬人は戰死して居るだらうと思ふのでありまするが、併しはつきりした事情は分りませぬ、是等の者は男女共皇軍と共に奮戰して皆討死したものと思ひまするが、沖繩終戰の三日前に、盛脇と云ふ陸軍の中尉が牛島司令官の命を受けて沖繩から脱出した、其の道案内をした者が海軍の二等兵曹の上地と云ふ男、此の男は沖繩出身で、大學の學生でありましたけれども、召集されまして海軍に入つた男であります、是が萬難を冒して盛脇と云ふ中尉を連れて脱出して、奄美大島の徳之島迄行つた、盛脇中尉は非常に感謝して居つたのでありますが、徳之島に上陸すると盛脇中尉は、今囘の沖繩戰線の失敗は琉球人の「スパイ」行爲に因ると云ふことを放送した、其の上地二等兵曹は非常に憤慨しまして、刺違へて、やらうと云ふ考を起した、然るに考へて見ると、司令官の命令で脱出して大使命を持つて居るからと云ふので其の儘にして居つた、さうして此の人が九州地方を廻つて、九州の疎開地に、今囘の沖繩戰線は沖繩縣人の「スパイ」に因つて負けたのだと云ふやうなことが流行つて、沖繩五萬の疎開民が受入地から非常に脅迫されたと云ふ事情もあるのであります、我々から考へますと、非常に殘念に思ふのであります、さうして疎開地の人間は、迫害された爲に、帝國臣民たる光榮に對して疑問を起すと云ふ迄憤慨して居る次第であります、斯う云ふ點は無論内務大臣の御耳には達しないでありませうが、斯ふ云ふこともあつたと云ふことだけはちよつと御耳に入れまして、私の希望を打切ることに致します○委員長(伯爵林博太郎君) 他に御質問なさる方はございますか、まだ質問の中に留保しておいでになる方もあることは承知致して居りますが、御異議がございませぬければ、本日は此の程度で散會致しまして、明日午前十時開會を致したいと思ひます、──では是で散會致します   午後二時五十七分散會 出席者左の如し    委員長  伯爵 林博太郎君    副委員長 男爵 渡邊修二君    委員         公爵 徳川家正君         侯爵 佐佐木行忠君         侯爵 淺野長武君            關屋貞三郎君         子爵 大河内輝耕君         子爵 伊東二郎丸君         子爵 富小路隆直君         子爵 水野勝邦君         子爵 京極高鋭君            小原直君            安井英二君            川村竹治君         男爵 伊江朝助君            田口弼一君         男爵 松平外與麿君         男爵 中御門經民君         男爵 北大路信明君            中川望君            山岡萬之助君            丸山鶴吉君            瀧正雄君            三橋四郎次君            山隈康君            齋藤万壽雄君            奧主一郎君 國務大臣      司法大臣 岩田宙造君      内務大臣 堀切善次郎君 政府委員   内務省地方局長 入江誠一郎君   内務省警保局長 小泉梧郎君     内務書記官 鈴木幹雄君     同     鈴木俊一君    神祇院副總裁 飯沼一省君   司法省刑事局長 佐藤藤佐君