議員資格に付異議申立書                    千葉縣選出衆議院議員 東條良平                    千葉縣選出衆議院議員 大澤庄之助                    岡山縣選出衆議院議員 安井丈夫右三名は議院法第七十七條に依り法律上退職者となりたるを以て議院に位列發言せしむへきものに非す右は衆議院規則第六十七條に準據し異議申立書提出に及候也  明治三十六年十二月五日                               矢島浦太郎                               宮古啓三郎                               丸山名政                               平岡萬次郎                               兩角彦六     議員資格に付異議申立書理由一衆議院議員東條良平は明治三十六年九月九日千葉地方裁判所に於て詐欺取財及涜職法違反被告事件に付重禁錮六月罰金十圓監視六月追徴金百圓同大澤庄之助は涜職法違反被告事件に付重禁錮五月罰金十五圓追徴金八百六十六圓六十六錢六厘の裁判宣告を受け同安井丈夫は明治三十六年十一月二十八日大阪地方裁判所に於て明治三十五年勅令第二百五十六號違反事件に付重禁錮五月の裁判宣告を受け孰れも未た其の裁判の確定に至らさるものなり一議院法第七十七條には「衆議院の議員にして選舉法に記載したる被選の資格を失ひたるときは退職者とす」とあり而して選舉法第十一條には「左に掲くる者は被選舉權を有せす」とし其の第四號には「禁錮以上の刑の宣告を受けたるときより其の裁判確定するに至る迄の者」とあり同條の記載は議員被選の要件にして資格に關する消極的規定なり故に同條各號に該當すへき事爲の生したる議員は其の要件を缺くを以て被選の資格を失ふこととなり議院法第七十七條の所謂被選の資格を失ひたるときとあるに該當するものなり同條中選舉法に記載したる云云とあるは選舉法に於ける被選の資格に關する總ての規定(第十條第十一條第十二條第一項及第二項の後段第十三條第二項)を列記するの煩を避け之を援用して其の記載を省きたるに過きす一選舉法第十一條自體は選舉に關する規定なることは勿論なりと雖議院法第七十七條に之を援用し議員の資格喪失の原因となすを以て當選後に於ける議員資格の喪失を決する上にも亦同條の規定に依據せさるへからす一舊選舉法第十七條には「刑事の訴を受け拘留又は保釋中に在る者は其の裁判の確定に至るまて被選人たることを得す」とあり而して同條は議院法第七十七條に援用せられさりしか如き先例なきにあをすと雖同條は改正の際刪除せられたるを以て其の先例は同條と異りたる而かも新に加へられたる第十一條第四號の解釋に對し之を比附援引することを許さす而して同條第四號の解釋に關しては未た曾て議院の問題となりたることなく從て先例と認むへきものなし一判決確定に依り公權を停止せし場合は議院法第七十七條及選舉法第十一條第三號に依り現に退職者と認めたり之と同時に同一規定の下に在る第十一條第四號に該當する退職者あることも亦認めさるへかをす一選舉法第十一條第四號の規定を當選後に至り議員の資格に援用し裁判確定前之を退職者となすは立法論としては之を非議すへきものなきに非す從て其の非難の點に關しては法律の改正を爲すは格別なれとも議院法第七十七條の解釋としては更に疑義を存せさるものなり是を以て法律の成文より解釋するときは被申立人等は議院法第七十七條に依り法律上退職者と認めさるを得す是れ本異議申立書を提出する所以なり