1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治二十九年三月十八日(水曜日)午後一時二十七分開議
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議事日程 第四十一號 明治二十九年三月十八日
午後一時開議
第一 船舶檢査法案(政府提出貴族院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第二 船舶職員法案(政府提出貴族院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第三 船舶職員懲戒法案(政府提出貴族院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第四 馬匹の調査及檢査に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第五 國界變更法律案 第一讀會の續(特別委員長報告)
第六 府縣農事試驗場國庫補助法案 第一讀會の續(特別委員長報告)
第七 商法中改正法律案(小室重弘君外一名提出) 第一讀會
第八 明治二十三年法律第四十六號水利組合條例中改正追加法律案(大田信一君外四名提出) 第一讀會
第九 日本銀行課税法案(石田貫之助君外三名提出) 第一讀會
第十 日本銀行條例中改正法律案(石田貫之助君外三名提出) 第一讀會
第十一 日本銀行課税法案(阿部興人君外三名提出) 第一讀會
第十二 家祿賞典祿處分法案(深山聳つら君外三十五名提出) 第一讀會
第十三 明治二十七年法律第二十號中改正法律案(首藤陸三君外二十八名提出) 第一讀會
第十四 輸入羊毛海關税免除法律案(松尾寛三君外七名提出) 第一讀會
第十五 大阪府兵庫縣境界變更法律案 第一讀會の續(特別委員長報告)
第十六 社寺林地保管法案 第一讀會の續(特別委員長報告)
第十七 岡山縣廣島縣境界變更竝廣島縣下郡界變更法律案(守屋此助君外二名提出) 第一讀會
第十八 廣島縣下郡界變更法律案(井上角五郎君外三名提出) 第一讀會
第十九 蠶種檢査法案(朝倉親爲君外三名提出) 第一讀會
第二十 輸出羽二重檢査所法案(松田吉三郎君外六名提出) 第一讀會
第二十一 清國及朝鮮國在留日本人取締法案(鈴木充美君外一名提出) 第一讀會
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001・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 諸君、是ヨリ諸般ノ報告ヲ爲シマスル
〔佐脇書記官朗讀〕
江藤新作君外四名提出ニ係ル朝鮮國居留臣民保護ニ關スル質問ニ對シ外務
大臣臨時代理西園寺文部大臣ヨリ答辯アリ
衆議院議員江藤新作君外四名ヨリ提出朝鮮國居留臣民保護ニ關スル質問
ニ對シ外務大臣ヨリ答辯書提出ニ付及御囘付候也
明治二十九年三月十八日
內閣總理大臣侯爵伊藤博文
衆議院議長楠本正隆殿
衆議院議員江藤新作君外四名ヨリ提出ノ質問書ニ對スル別紙答辯書差進
候也
明治二十九年三月十四日
外務大臣臨時代理
支部大臣侯爵西園寺公望
衆議院議長楠本正隆殿
(別紙)
衆議院議員江藤新作君外四名ヨリ提出ノ質問書ニ對スル答辯書
本年二月十一日朝鮮國ニ於ル事變以來帝國臣民ニシテ該國暴民ノ爲メニ殺
害セラレタル者アルニ付各地駐在ノ領事及京城駐割公使ヨリ朝鮮國當該官
廳ニ對シ嚴重ナル照會ヲ爲シ目下交渉中ナリ又右事變ノ報ニ接スルヤ政府
ハ各地ニ警察官ヲ增派シ其他種々ノ手段ニ依リ居留帝國臣民ノ生命財產ニ
關シ其保護ヲ怠リタルコトナシ
右及答辯候也
貴族院ニ於テ獸疫豫防法案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒アリ
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
蠶種檢査法案
提出者小畑岩次郞君平島松尾君
國勢調査執行建議案
提出者江原素六君石塚重平君
和田彥次郞君高田早苗君
大竹貫一君、藤田達芳君、中野廣太郞君ヨリ排水器試驗ノ建議ニ關スル件
ニ付眞下珂十郞君ヨリ臘虎膃肭獸ノ獵獲ニ關スル件ニ付政府ニ質問書ヲ提
出セラレタリ
特別委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
(甲)豫定鐵道線路中私設鐵道會社ニ敷設許可ニ關スル法律案外五件
審査特別委員長望月右內君
同理事武市彰一君
京都府下郡廢置法律案審査特別委員長石原半右衞門君
同理事谷澤龍藏君
特別委員左ノ通リ指名セリ
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ開スル法律案外一件審査特別委員
鈴木充美君肥塚龍君直原守次郞君
小川虎一君佐藤里治君廣瀨貞文君
松尾寛三君山本隆太郞君折田兼至君
北海道鐵道敷設法案審査特別委員
大野龜三郞君福田久松君改野耕三君
石坂昌孝君望月右內君鹿島秀麿君
西村甚右衞門君工藤行幹君堤猷久君
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ掲載ス〕
排水器試驗ノ建議ニ關スル質問趣意書
第八議會ニ於テ本院ノ議決ヲ以テ政府ニ致シタル排水器試驗ノ建議ニ對シ
左ノ事項ヲ質問ス
本建議ニ對シ未タ政府ニ於テ何等ノ施設ナキハ其要ナシト見認メタルニ由
ル哉若シ果シテ然ラハ其理由如何
排水器ノ效用如何ハ學理上或ハ明確ナルモノナルヘシト雖トモ我國ニ於テ
ハ實用上未タ其經驗ニ乏シク且此種ノ起業ヲ爲セシモノ多クハ皆失敗ニ歸
セシト農家ハ自然保守的ナルトニ由リ進ンテ其業ヲ企ツル者少ク隨ツテ幾
多有益ノ土地ヲシテ空シク不毛ニ委セシム然ルモ尙政府ハ實驗ヲ示シテ以
テ誘導開示スルノ意ナキ哉如何
政府カ國家ノ富源ヲ開發スヘキ如此緊要ナル建議ヲ忽視シタルハ蓋シ國利
ヲ稽查スルノ念ニ乏シキト農業家ノ實況ヲ觀察スルノ粗ナルトニ依ルモノ
ト信ス故ニ本員等ハ切ニ政府ノ一層深キ注意ヲ用ヒ本院ノ議決ニ滿足ヲ與
ヘンコトヲ懇望ス而モ尙政府ハ熟考シテ其議ヲ容ルヽノ意ナキ哉如何
右答辯ヲ望ム
明治二十九年三月十六日
提出者大竹貫一藤田達芳
中野廣太郞
贊成者石原半右衞門
外三十名
質問書
千島沿海ニ於ケル臘虎膃肭獸ノ獵獲ハ實ニ夥シキ數ニシテ千島ノ內アライ
トパラムシロ占守、ヲンネコタンシンシルウルップノ如キ其棲息
地タルハ各人ノ唱導スル所ニシテ英國スノーハ明治三年以來獵船數百ヲ率
井テ我近海ニ出沒シ其ノ獵獲ノ數モ實ニ巨万ニ達セリト云フ昨二十八年臘
虎船ノ函館ニ來港スルモノイーウェブスター號、ウ井ーウァアー號、ジョ
セフヒン號、アークチック號其他數艘何レモ千島近海ヨリ引上ケタルモノ
ノ如シ而シテ北太平洋臘虎獵業〓況ト題シ
北太平洋ニ於ケル臘虎獵業ノ〓況ニ附キヴァンクーヴァル駐在帝國二等領
事能勢辰五郞ヨリ昨二十八年十一月二十九日附ヲ以テ左ノ如ク報〓アリ
昨冬)(二十七年)以來北太平洋海岸ニ於テ臘虎獵ニ從事セル船舶ハ前月ヲ以
テ悉ク本州ヴ井クトリア府ニ歸航シタリ今同府稅關ニ於テ精査シタル報告
ニ據レバ本年度ニ於テ英領哥倫比亞州所屬臘虎船ノ該獵ニ從事シタルモノ
總テ六十三隻(外ニ休業三隻)噸數三千八百九十二噸ニシテ乘組洋人七百八
十八名土人八百五十四名本邦人ハ僅ニ五十六名ニ過キス而シテ其日本海岸
ニ來リシ者二十二隻他ハ本州西北岸ヨリアラスカ海岸ニ沿ヒテベーリング
海峽ニ出沒セルモノトス本年ハ海上穩ナラス我占守島竝ニ函館沖ニテ難破
セル者二隻洋上ニテ全船覆沒セルモノ一隻アリ本年度ノ捕獲數ハ本州海岸一
万二千百十四枚日本海岸一万八千九百七十九枚アラスカ地方七千四百七枚べ
ーリング海峽三万五千六百二十四枚合計七万四千百二十四枚ニシテ昨年ニ
比シ三万三百五十枚ヲ減少シタリ本年ハ春來引續キ海上風波强キト日本及
露國海岸ニ於ケル警防嚴重ナリシカ爲メ一般ニ捕獲高十分ナラス本州海岸
ニテ四百十一枚アラスカ海岸ニ於テ三十枚ヲ減シ就中日本海岸ニテハ三万十
四枚ヲ減シ昨年ノ捕獲高ニ比シ幾ント三分ノ二ヲ減シタレトモ獨リベーリン
グ海峽ニ於テハ九千二百八十三枚ヲ增加シタリ又ベーリング海峽ニ於テ捕獲
セシモノヽ中牡皮一万五千九百十四枚牝皮一万九千七百十枚ナリシト云フ」
本年度ニ於ケル臘虎船持主ハ勿論乘員等ニ至ルマテ收支僅カニ相償タルノ
ミニシテ就モ失望セルモノヽ如シ前年度ノ如キ一隻ニシテ四千餘枚ヲ獲タ
ルモノアリシニ本年ハ「トライアンフ」號ノ分一一千二百七枚ニ上リ他ハ二
三百枚ヨリ千七八百枚ノ間ヲ往來ス百枚ニ足ラサルモノ四隻アリ之ヲ平均
スレハ每隻千百枚內外ナリシ而シテ本年不漁ノ最モ甚タシキハ本州海岸ニ
シテ數週間ニ一頭ヲモ目擊セサルコトアリタレハ明春ハ該地方ニテ從事ス
ルモノ一隻タモナカルヘク從テ本州所屬臘虎船中從來專ラ本州海岸ニ出獵
セルモノ三十五隻ハ明年六月頃マテハ全ク休業スルニ至ルヘシ該業ニ多年
ノ經驗ヲ有スルヴ井クトリア府ノカピティン、ジェー、ジーコックスノ說
ニ據レハ本州海岸ノ臘虎獵ハ每年四月中旬ヨリ五月下旬マテヲ好季節トス
レトモ五月ハ禁獵季節ナルヲ以テ僅ニ四月中句ヨリ下旬ニ至ル十餘日間ニ
於テセサルヘカラス而シテ該時期ニハ常ニ風波甚シク捕獲十分ナラサレハ
將來本州海岸ハ好獵地ト認ムルコト能ハサルヘシ日本地方ニ往漁ノ船隻ハ
次年度ニ於テ二十餘隻ヲ下ラスシテ本年十二月下旬ヨリ來年一月頃マテニ
本州ヲ出帆スルナラント云フ
從來本州所屬臘虎船ノ出獵方向ニ二方アリテ其日本ニ出獵スルモノハ每年
十二月下旬ヨリ翌年一月十五日前後マテニヴ井クトリア府ヲ出帆シ一月下
旬ヨリ二三月ノ交犬吠沖合ニ達シ四月中旬前後金華山沖ニ至リ五月下旬北
海道厚岸ヨリ目道沿海ニ出沒シ八月上旬ヨリ九月末マテ露領沿岸ニ往來シ
十一月中ヴ井クトリアニ歸港スルモノトシ他ノ一方ハ每年十二月頃ニ南下
シテ本州及アラスカ沿岸ヲ航海シ六月一旦歸港シ更ニ七月上旬ヨリ二十五
六日頃マテニベーリング海峽ヲ出沒シ九、十月ノ交歸港スルモノトス本州
ニテ專業者ハ十數人ニ下ラサルモ其重ナルモノヲヴ井クトリア府ノリセツ
トマービン及ホールノ三名トス該業ニ從事スル獵船ハ皆小「スクーナー」
形帆船ニシテ「アグネス、マグドナード」號「アンニーシームーア」號「プレ
ング」號「サッフイカ」號ノ四隻ヲ除クノ外ハ三十噸以上九十噸以下ニシ
テ一噸ノ新造費〓ネ米金三十弗內外ニ過キス所有主ハ合資又ハ合名營業ノ
者多キニ居レトモ近頃ヴ井クトリア府ニ於テ創立セルモノハ有限ヴ井クト
リア臘虎捕獲及販賣株式會社ト稱シ米金十万弗ノ資本ヲ以テ盛ニ業務ニ從
事スヘシト云フ該會社ノ所有船ハ目下六隻ナレトモ追〓他ノ獵船ヲモ買收
シ二十餘隻ニ達セシムヘキ見込ナリト云フ在ヴ井クトリア當業者マービン
商會員カピテイン、ジエー、ジーコックスハ該業上頗ル經驗ヲ有シ每年五
月頃日本ニ赴キ十月頃歸港スルヲ常トス今同人ノ說ヲ聞クニ該業モ數年前
ハ頗ル利益アリシモ巴里條約實施以來獵域及獵法ヲ制限セラレ日本及露領
海上ニ於ケル警防ノ嚴ナルト同業者增加シ獵船ノ數ハ幾ント加倍シタルニ
反シ近年婦人ノ衣類ニ獸皮ヲ用ユルコト多カラサルヨリ倫敦相場ノ下落セ
ル等都テ該業ノ利益ヲ削減セルモノヽ如シト雖トモ該業ノ有利地方ニ尙ホ
日本近海トベーリング海峽ニ存スレハ明年度ニ於テモ日本近海ニ進入スル
モノ其數ヲ減スルコトナカルヘシト云フ
船長以下ノ給料ハ逐年其額ヲ減シ本年度ニ於テハ船長ハ米金五六十弗ノ間
ニシテ外ニ捕獲ノ獸皮ニ應シテ若干ヲ得又獵手ハ其捕獲ノ獸皮一枚每ニ米
金二三弗ヲ得ルモノトス又日本人水夫ハ月給米金十五弗ト外ニ獸皮一枚每
ニ米金二十五仙ツヽヲ得ルモノトス兩三年前マテハ日本人ノ本州ニテ雇入
ラルヽ者百人內外アリシカ本年ニ至リ減シテ五十餘名ト爲リタリ然ルニ其
多數ハ函館ニ下船シ其ヴ井クトリア府ニ歸港セル者僅ニ二十名ニ過キサリ
シカ此輩モ前月中ヴ井クトリア市ニ在ル獵船水夫宿主齋藤東市ナル者ト共
ニ悉ク歸朝ノ途ニ就キタリ此輩ハ外國獵船ノ給料逐年減少スルヲ以テ寧ロ
本邦ニ赴キ本邦人ト組合ヒ獨立營業セントノ目的ナリ本邦人ハ水夫トシテ
ハ膽力技能共ニ申分ナキモ獵手トシテハ未タ不十分ニシテ其技ニ於テ本邦
土人ニ及ハサルコト遠キハ頗ル遺憾ナリトス
毛皮ノ價格ハ每年十一一月三、四日頃倫敦ニ於ケル新皮賣出相場ニ依リテ一
定セラルヽモノナリ本年十一月中同地ノ相場ハ海狸(ビーバル)ハ本年一月
中ト變動ナク海獺(オツタ-)黃鼬(マーテン)ハ同三月中ニ同シク其他ハ三
月中ニ比シ孰レモ下落ノ方ニテ赤狐ハ一割五分海狼(ヴオルベリン)ハ長耳
猫(リンクス)里熊ハ共ニ二割五分赤熊ハ二割白熊ハ三割五分狼ハ二割方ノ
下落ナレトモ本年獵獲ノ減少セルト品質ノ上等ナルトニ依リ多少騰貴スヘ
シト云フ獸皮ハ獵獲地方ト其季節ニ據リ品質ニ優劣アレトモ又其鹽漬法ノ
適否ニ於テ大ニ價格ヲ增減スルコトアレハ當業者ハ此〓ニ於テ大ニ注意ヲ
要スト云フ
左ニ本年度(二十八年)ニ於ケル獵船竝ニ獵區獵獲明細表ヲ揭ク
捕獲地方及數量
船名出帆月日歸港月日哥倫比アラスベーリン合計
亞日本カグ海峽
「アグネス、マクドナ一月十日十月九日-七一一1一、二六一一、九七二
ード」
「アイーコ」六月十四日十月十五日三二五11タカ尙一、三一九
「アマチユーア」一月二十八日四月三十日六五-11六五
「アンニームーア」六月十四日十月十五日一〇五11一、五四五一、六五〇
「アンニーペイント」一月八日十月五日1一、二一四四一七七六二、〇二二
「アリヱチス」一月二十五日九月二十七日六八〇野丈夫-一、一〇·大
「アオロラ」六月十四日十月十五日一〇八1-七一三八二一
「ビアトリース」※六月十二日十月十八日二三〇-1一四四六一、六七六
「ビアトリース」七月四日九月九日111二〇二二〇二
「ボリアリス」一月四日十月十一日1rand1九一五一、六四八
「ブレンダ」一月十四日占守島ニテ難破1八九五1八五
「シーデーランド」一月十七日十月十日一四〇·1六四一七貫町
「カーロツタ、コツ一月十日九月二十五日1九二〇三六二五一、五六七
クス」
「カスコ」一月十日九月二十五日1一、三〇九三五三一、六六二
「シチー、サンチアゴ」一月四日九月二十六日1三七一二四三1六一四
「ダイアナ」一月八日九月二十四日1八七三二九七1一、一六五
「ダイレクトル」六月四日九月十八日至八七1一九七四九四一、二七一
「ドラ、ステワード」六月十四日十月十四日五〇四11五八二二、〇八六
「イービン、マービン」※一月十日九月二十二日-角貝汁一〇三七六一、三三二
「ヱントルブライス」六月十七日十月十九日二二七1-七二七九五四
「フォーン」六月十一日十月二十二日ご記入1-七七七一、〇二四
「フヒシヤー、メイド」一月二十六日五月三日一〇九1{一·九
「フロレンス、スミス」六月二十二日十月十五日二五11一、一五八ー四四三
「フオルチユナ」七月十八日九月二十四日11二一九1二·九
「ゼネバ」二十七年十二九月二十五日-一、一三七四七〇1一、六〇七
月三十一日
「ヘンリヱタ」六月六日十月十四日11二〇一二〇〇
「アイダヱツタ」一月二十一日十月二日1五七四四八四1一、〇五八
「ケート」六月二十四日十月十五日八11六七三즈 日
「カザリーン」六月十四日九月二十八日一六九11七〇〇八六〇
「フエボライト」六月十五日十月十八日一〇〇-1一、六四七一、七九七
「キルメニー」二月六日五月七日一五1玉五
「ラブラドール」六月二十二日十月十四日五一1-二五九三一〇
「リツビイ」六月十三日十月九日二三四1一、四六九一、七〇三
「メーリーイーレン」一月十一日十月十日1ちたんじ-五二一一、三一八
「メーリーテイラー」一月十五日九月二十六日三六九1西六府八〇三
「マスコツト」二十七年十二十一月二日ちたち一六〇三五七一、三〇四
月二十八日
「モードヱス」六月十四日十月七日二八七11一、三九二一、六七九
「メイベール」六月十七日十月十六日二三四1-一一一三一、三四七
「マーメイド」一月八日九月二十八日1二三七五三I一、八六六
「シンニイ」六月十七日十月七日111六五九六五九
「マウチン、チーフ」二月四日五月三日三九.三九
「オシアンベル」一月四日九月二十八日1一、〇〇六五六二1一、六一八
「オスカーハッテイ」六月十四日十月二十日一四七11一、一六七一、三一四
「オットウ」一月二十四日十月十四日二六五-八三九1一、一二四
「パクウェリス」二月四日四月二十九日六六1-1六六
「ペネローブ」六月十二日十月十四日11+t·もせて
「パヨニール」一月十一日十月十日1八咫と七八〇1一六三七
「ロージー、オルセン」二十七十十二函館ニテ難破1六二七|1大三七
月二十七日
「サジイタルベル」一月十九日十月二日1七四八표二01一、二六八
「サツフワイヤ」六月十四日十月十四日一九二11一、七八三一、九七五
「サーゼー」六月一日十月十九日一九七--五七七七二四
「ソーシーラス」六月十四日十月十九日二五八11401九六〇
「シェルビイ」※二月十三日五月二十九日一二四1-二一四
「サウスベンド」六月二十一日十月二十一日]11一四八一八八
「テレサ」六月七日十月十七日一〇二11八六六九九九
「トライアンフ」六月十四日十月二日三五〇11一、八五七二、二〇七
「アムブリナ」一月十四日九月二十五日1一、六八七五六二1一、七四九
「ウベラ」一月十八日九月二十四日1八五三-11四四九-三一七
「ヴ井クトリア」六月十三日十月十四日二八七11一、一六七三五四
「ウバイバ」一月四日九月二十五日六〇、三六七·九大八
「ウオルタルヱール」二月十六日(北五十二度西百三十九度ニテ全船覆沒)
「ウオルタルリツチ」六月十五日十月十四日一四五五1一、二一四一、三五九
「ウワンデラー」六月十五日十月九日:三五六三五六
土人捕獲(獨木舟ニテ獨立營業スルモノナリ)三、七八七1--三、七八七
米國船ノ捕獲ニシテ本州ニ陸揚シタルモノ一、六七七11-一、六七七
合計ニ、一一四一八、九七九七、四〇七三五、六二四七四、一二四
昨年分一一、七〇三四八、九九三七、四三七二六、三四一九四、四七七
本年增減減四一一減三〇、〇一四減三〇增九、二八三滅二〇、三五〇
(備考)本表中※印アルモノハベーリング及アラスカ海岸ニ於テ獵區又ハ獵法違犯ノ廉ヲ以
テ米國巡邏船ニ拿捕セラレ審問ニ付セラレタルモノナリ
右領事ノ報告ニ據ルトキハ北米ヴ井クトリアノ獵船ニシテ昨年ハ不獵タリト
云フニ拘ハラス日本海岸ニ於テ一万八千九百七十九枚ヲ捕獲セリト稱セリ
而シテ政府ハ昨二十八年臘虎膃肭獸獸獵法ヲ發布シ本年一月ヨリ之レヲ實
施スルモノヽ如シ然ルニ各國獵船ノ近海ニ艤集スルニ當リ政府ハ葛城艦一
艦ヲ發遣シ纔ニ一囘ノ巡航ニ止メ敢テ介意セサルモノハ抑モ何ノ憑ル所ア
リテ然ルカ各國政府ハ常ニ軍艦二三艘ヲ泛ヘテ之カ巡邏ニ從事シ最モ孕胎
期ノ如キハ嚴ニ取締ルト聞ケリ況ンヤ我千島ノ如キハ島嶼羅列シ其棲息地
モ亦之ニ胚胎スルニ於テヲヤ目下旣ニ其獵期ニ向フテ以テ我橫濱ニハ外國
ノ獵船繫留セリト果シテ然ラハ本年ハ千島沿岸ヲシテ十分ナル警戒ヲ加ヘ
シムルヤ否ヤ
右議院法第四十八條ニ據リ及質問候也
明治二十九年三月十七日
質問者眞下珂十郞
贊成者佐々木高榮
外二十九人発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=1
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002・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ヨリ會議ヲ開キマスル-質問ノ辯明ガアリマスル
藤田達芳君
(藤田達芳君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=2
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003・藤田達芳
○藤田達芳君(六十四番) 排水器試驗ノ建議案、是ハ昨年第八議會ニ於キマ
シテ、大竹貫一君外數氏ヨリ此案ヲ當院ニ提出シマシタノデ、ソレデ詳細ナ
理由ハ昨年旣ニ御聽デゴザイマスカラ、諸般ノ問題モアリマスルカラシテ、
單簡ニ一二言質問ノ要領ヲ述べマスソレデ戰後ノ經營ノ今日ニ方リマシテ
ハ最モ財源ノ擴張ヲ必要トシマセニヤナラヌノデゴザイマスルガ、昨年政
府ハ此案ノ院議ト爲リマシテ反省ヲ請ヒマシタニモ拘ラズ、今日ニ至リマス
マデ排水試驗ノ著手ニ至リマセヌノハ敢テ攻擊ヲ致スノデハアリマセヌ
卽チ種々國家ノ事情ヨリシテ、今日ニ至ルマデ此事ノ運ニナッテ居ラヌノデ
アラウト考ヘマスル、ソレデ此沮洳ノ地、卽チ濕氣ノ多イ所ノ水ヲ排斥シマ
シテ、沃野良田ヲ國家ノタメニ開拓スル上ニ就キマシテハ沿海ノ地方及高
低アル地方、河川ノ下流ニ面シテ居ル沮洳界濕ノ地ニ屬スル處ヲ、全國ニ於
キマシテ私共ノ〓略調査スル所ニ依リマスルト七十万町程、此水ヲ排斥シマ
シテ良田沃野タラシムル土地ガアリマスル、其他新ニ乾燥ノ地ハ此器械ヲ用
ヒマシテ水利ノ便ヲ與ヘマスル所ノ土地ガ三十万町アリマスルノデ、〓略之
ヲ合シマスルト云フト一百万町ノ沃野良田ヲ開墾スルコトガ出來ルノデアリ
マ人ソレデ現在ノ排水器ノタメニ是等ノ新ニ生ズル所ノ國家ノ財源ト
爲リマスル所ノモノハ一百万町ニ對シマシテ一段步二石ト致シマシテ二
千万石ノ收穫ヲ得ルノデアリマスルソレデ此地價金ガ一億六千万圓デアリ
マシテ、耕作費ト云フモノヲ〓算四千万圓減ジマシテモ、是ヨリ生ジマスル
所ノ利益ト言ヒマスルモノハ民益ニ屬スル、卽チ人民ノ利益ニ屬シマスル
モノハ一億一千二百五十万圓餘、是ヨリシテ納ムル所ノ地租ニテ七百五十万
圓ノ財源ヲ得ルコトニナリマス、此國家ニ納ムル所ノ地租ト、人民ノ新ニ得
ベキ所ノ利益ト合算スルト合計一億二千万餘圓ノ財源ヲ新ニ得ルノデゴザイ
マスルカラ今日戰後ノ經營ノ事アリトモ、是等ノ財源ハ國家ノタメニ政府
ハ大ニ注意シナケレバナラヌノデゴザイマス、況ヤ戰後ノ經營、最モ財源ヲ
要シマス今日ニ方ッテ、彼ノ新ニ得マシタ臺灣ニ就イテハ收益アリト見タ所
ガ、却テ是等ノタメニ國家ガ暫クノ間ハ損失ヲシテ往カナケレバナラヌ有樣
デアル、一方ニハ軍備擴張ノ如キ、國民ニ對シテ非常ナ負擔ヲ負ハナケレバナ
ラヌ場合デアリマスルカラ、年々一億二千万圓以上ノ財源ヲ發見シ得ベキ排
水器試驗ノ法デゴザイマスルカラ、願クハ政府モ國家財源開發ノタメニ、一
日モ早ク是等ノ試驗方法ヲ定メラレンコトヲ切望スルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=3
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004・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 次ハ眞下珂十郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=4
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005・眞下珂十郎
○眞下珂十郞君(二百四十二番) 本員ハモウ議會ノ時日モ切迫致シテ居ル今
日デゴザイマスカラ別ニ說明モ致シマセヌカラ、ドウカ速記錄ニ載セラレン
コトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=5
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006・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 議事日程ノ第一、船舶檢査法案第一讀會ノ續
第船舶檢査法案(政府提出貴族第一讀會ノ續(特別委員
院送付)長報告
第二船舶職員法案(政府提出貴族第一讀會ノ續(時證券
院送付)(長報告
第三船舶職員懲戒法案(政府提出第一讀會ノ續(Multima
貴族院送付)長報告発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=6
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007・宮崎榮治
○宮崎榮治君(二百八十二番) 委員長ハ少々病氣デゴザイマシテ、又理事ハ
差支ガアリマスカラ、本員ヨリ報告致シマス、尙ホ此場合ニ於テ三案同時ニ
審査ヲ致シマシタ譯デアリマスルカラ、願ハクハ同時ニ報告ヲ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=7
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008・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 宮崎榮治君
〔宮崎榮治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=8
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009・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 第三マデ併テ報告ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=9
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010・宮崎榮治
○宮崎榮治君(二百八十二番) 私ハ委員長ニ代リマシテ、此三法案ノ審査ノ
經過及結果ヲ御報告致シマスル本案ノ特別委員長及理事ノ選舉ハ三月六日
ニ行ヒマシタ、此委員長ニハ西山志澄君、理事ニハ南島間作君ガ當選セラレ
マシタノデゴザイマス而シテ本案ノ審査ハ三月ノ十日、十三日、十四日、
十六日ト四囘審査會ヲ開キマシテ、結了致シマシタノデゴザイマス、其結了
致シマシタモノハ卽チ諸君ノ御手許ニ配付ニ爲ッテ居リマス所ノモノデゴ
ザイマシテ、大體船舶檢査法ニ於キマシテハ、貴族院修正ノ通ニ議決ヲシ、船
舶職員法案ニ於キマシテハ第十五條ヲ一ツ加ヘマシテ、其他ハ皆貴族院ノ修
正通ニ決シタノデ、船舶職員懲戒法案ニ於キマシテハ總テ貴族院修正ノ通ニ
議決致シマシタノデゴザイマス、尤モ諸君ニ配付ニ爲ッテ居リマス所ノモノ
ヘ中ニ少シ誤字ガアリマスカラ、是ハ御訂正ヲ願ヒマスル此十五條ノ中ニ
「此法律執行」トゴザイマスルノハ「施行」トナケリヤナラヌ筈デゴザイマス、
此「執」ノ字ハ「施」ノ字ノ誤リデゴザイマスカラ御訂正ヲ願ヒマスル然ルニ
此船舶檢査法案ノ審査ノ模樣ヲ申上ゲマスレバ、種々政府委員ニ向ッテ質問ヲ
致シマシタデアリマスルガ、今日ニ於テ此改正ヲ要シマスル重モナル〓ヲ舉
ゲマスレバ今日ノ船舶檢査ニ用ヒテ居リマスル所ノ規則ハ、明治十七年ノ制
定ニ係リマシテ、其以後ニ在リテハ我國ノ航海事業ハ非常ニ進步ヲ致シテ居
リマスルノデアリマスルガ、此規則ハ今日ノ場合ニ至リマシテハ種々不完全
ナ〓ガアルト申スコトデゴザイマシテ、其中ノ重ナルモノハ何デアルカト申
シマスレバ現行ノ規則ニ於キマシテ西洋形船舶ノミ檢査ノ效力ヲ及シマシ
テ、日本形ノ船舶ヲ檢査スルト云フコトハナイノデゴザイマス、併シ航海ノ
安全ヲ圖ルト云フ目的デアリマスレバ船ノ構造如何ニ依ッテ區別ノアル
譯ハナイト云フコトガ一ツデゴザイマス、又現行ノ規則ニ依リマスレバ、檢
査證書ノ效力ハ六箇月ト十二箇月ノ二ツニ爲ッテ居リマス、併シ是ニ就イテ
ハ種々ナ不便ガアル趣デゴザイマス、又現行ノ規則ニ依リマスレバ、檢査ヲ
受ケマシタモノガ不服ガアッテモ之ヲ訴ヘルノ途ガナイデゴザイマス、檢查
上ニ於キマシテモ萬誤ナイト云フコトハ保タレマセヌノデアリマスガ、其途
ヲ設ケテナイノデゴザイマス、又現行ノ規則ニ依リマスレバ、外國ノ船籍ニ
在リマスル船ハ檢査ノ效力ヲ及スコトガ出來ヌヤウニ爲ッテ居リマス、併
シ外國船ヲ我國ノ人ガ借入レマシテ航海サセマスル場合ニ至リマシテハ此
航海ノ安全ヲ圖ルト云フコトヽ生命財產ノ安全ヲ圖ルト云フ〓カラ致シマ
スレバ是ヲモ檢査シナケレバナラヌト云フノハ當然ノ事デアル、斯樣ナ
〓ガ今日ノ規則ニハ完全致シテ居ラナイカラシテ此改正ヲ要スルト云フコ
トデゴザイマスル就キマシテハ種々委員會ニ就キマシテモ審議ヲ盡シマシ
タガ、中ニ意見ノアルアリマシタモノハ此第二條中ノ汽船ハ遠洋航海、近
海航船、沿海航船、平水航船ト四種ニ分ッテ居リマスル中ニ、此遠洋航船ト
近海航船ハ一ツニシテ宜シイ、之ヲ別ニスル必要ハナイト云フ說モ出マシタ
ノデアリマスガ、其採決ニ爲リマシテ少數デ否決致シマシテゴザイマス、其
次ニハ此第四條ニ於テ貴族院ニ於テ修正セラレマシタル航行期間デアリマ
シテ、汽船ハ三箇月以上一箇年以內、帆船ハ六箇月以上三箇年以內トアリマ
スル所ヘ汽船ハ三箇月以上二箇年以內、帆船ハ六箇月以上五箇年以內ト修
正スル說モ出マシテゴザイマスケレドモ、是モ少數デ否決致シマシテゴザ
イマス其他ハ總テ貴族院ノ修正通ニ可決致シマシタノデゴザイマス、此船
舶職員法案ニ至リマシテハ、種々質問審議ヲ盡シマシタ所デ、第一條ノ第
二項ニ機關長、運轉士、機關士トアリマスル處ニ於キマシテ、機關長ト云フ
所ノ職名ハ此節新ニ設ケマスルモノデアリマスルカラ、是ハ新ニ設ケルニ及
バナイ、又運轉士、機關士ト云フモノハ、是マデノ通ニ運轉手、機關手ト稱
スル方ガ宜カラウト云フ說モ出マシテゴザイマスケレドモ、是モ少數デ否決
致シマシタ、此第十四條ノ次ニ至リマシテ、五百噸未滿ノ汽船及二百噸以上
ノ汽船ニハ、二等機關士ノ免狀ヲ有スル者ニ機關長ノ職ヲ執ラシメ、又一等
機關士ヲ乘込マシメザルコトヲ得、施行後一箇年ノ間斯樣ナ取除ノ場合ヲ設
ケテ置ク方ガ便利デアラウト云フ說ガ出マシタガ、是ハ採決ニ至リマシテ、
可否同數ニ相成リマシテ、委員長ニ於キマシテハ此第十五條ヲ加ヘルト云フ
コトニ同意ヲ表セラレマシタ故ニ、委員會ニ於テハ此第十五條ヲ加ヘルコト
ニ至リマシタノデゴザイマス、此一條ヲ加ヘマスト云フ所以ノモノハ此改
正案ニ依ッテ見マスレバ近海航船ニシテ登記噸數五百噸未滿ノモノモ沿
海航船ニシテ登簿噸數汽船二百噸以上ノモノモ機關長、一等機關士ト云フ
モノヲ二人乘込マセナケレバナラヌト云フコトニ爲ッテ居リマスルノデゴザ
イマス、然ルニ今日ノ實際ハ如何デアルカト申シマスレバ今日ノ所ハ何レ
モ一人デ濟ムコトニ爲ッテ居リマスル、就キマシテハ當業者ニ於テハ斯樣ニ
規定セラレマシテハ大ニ實際上困難ノ趣ヲ訴ヘマシテゴザイマス、ソレハ
近海航船ニシテ五百噸未滿ノモノハ現在百七艘居リマスノデ、又沿海航船ニ
シテ二百噸以上ノモノハ現在八艘居リマス、此百七艘ニ八艘ヲ加ヘマスレバ
百十五艘ゴザイマス、是マデ機關手一人デ濟ミマシタモノガ、此場合ニ一一人乘
込マセルコトニ相成リマスレバ、丁度百十五人ノ不足ヲ來スコトニ相成リ
マスカラシテ、當業者ニ於キマシテハ困難ヲ感ジマス趣ヲ訴ヘマシタ、然ル
ニ政府委員ニ於キマシテハ、其百十五艘ノ中二十五艘ト云フモノハ現ニ一
人乘込マセテ宜イ所ニ一一人乘込マセテアルノデアル其二十五艘引キマスレ
バ殘ッテ九十艘ニナルノデアル、九十艘ノ中ニモ現ニ海員ノ餘リガアルカ
ラシテ格別ノ不足ハ來サナイノデアル、殊ニ年々海技免狀ヲ渡ス所ノ者モ澤
山アルカラ致シテ、決シテ不足ハ來サヌノデアルト云フノ答辯デゴザイマ
ス、若シ內國人ニ於テ不足ヲ來ス場合ガアッテモ外國人ニシテ免狀ヲ有ス
ル所ノ者モ百有餘人アルカラ致シテ之ヲ以テ補ッテモ差支ナイノデアルト
云フ答辯デゴザイマス委員ニ於キマシテハ深ク審査ヲ盡シマシタ所デハ、
ドウモ今日ノ場合ニ於テ政府委員ノ答辯ニ依ッテ見マシテモ、果シテ過分ノ
モノデアルカ否ヤト云フコトハ確ニ之ヲ認ムルコトガ出來ナイト云フ結果
ヨリ致シマシテ、此場合ニ於テハ此第十五條ノ取除ノ場合ヲ、一箇年設ケタ
方ガ便宜デアラウト云フコトニ相成リマシテ、此一條ヲ追加致シマシタ譯デ
ゴザイマス、ソレヨリ尙ホ委員會ニ於キマシテ此沿海航船ノ欄ニ於キマシ
テ、百噸未滿ノモノヲ二百噸未滿トシ、二百噸未滿ヲ五百噸未滿トシ、二百
噸以上ノモノヲ五百噸以上ノモノト修正ヲ致スト云フ說ガ出マシテゴザイマ
スルガ、是モ其採決ニ至リマシテ可否同數ニ相成リマシタ、委員長ハ原案ノ
儘ニ据置クコトニ同意致シマシタカラ、其修正說ハ否決致シマシタ譯デゴザ
イマス斯樣ナ譯デ此船舶職員法案第十五條ヲ更ニ一條ヲ加ヘルト云フダケ
ニ至リマシテ、其他ハ貴族院修正通ニ決シマシテゴザイマス船舶職員懲戒
法案ニ至リマシテハ、全部貴族院修正通ニ同意ヲ表シマシタノデゴザイマス
是ダケヲ御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=10
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011・佐藤忠望
○佐藤忠望君(二百三十五番) 一寸其誤字ノ處ヲ今一應-此議案ニ誤字ノ
アルト云フコトデ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=11
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012・宮崎榮治
○宮崎榮治君(二百八十二番) 此更ニ一條ヲ加ヘマスル中ニ、此法律執行ノ
日ヨリトアリマスルノガ、此法律施行ノ日ヨリト「執」ノ字ハ「施」ノ字ノ誤デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=12
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013・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 決議ヲ採リマスル、此職員懲戒法マデハ三案共ニ連續
スルモノト心得マスカラ、御異議ガナクバ三案ヲ併セテ、一時ニ決議ヲ採リ
マス
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=13
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014・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 二讀會ヲ開クニ同意ノ諸君ハ起立
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=14
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015・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 大多數、因テ第一、第二、第三、共ニ第二讀會ヲ開クベ
キモノト決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=15
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016・吉本榮吉
○吉本榮吉君(八十二番) 直チニ二讀會ヲ······
(「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=16
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017・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 吉本榮吉君ノ動議、三案共ニ直チニ二讀會ヲ開クコト
ニ御異議ゴザイマスカ
船舶檢査法案(政府提出貴族院送付)第二讀會
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=17
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018・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 然ラバ、直チニ二讀會ヲ開イテ、船舶檢査法ヲ以テ議題
ト爲シテ決議ヲ採リマス、御動議ナクバ全部決議トシテ宜シウゴザイマスカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=18
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019・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 然ラバ船舶檢査法案ハ原案ノ通決シマシタ、ソレヨ
リ第二船舶職員法案ハ第一條ヨリ十四條マデヲ以テ議題ト爲シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=19
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020・吉本榮吉
○吉本榮吉君(八十二番) 直チニ三讀會ヲ確定シタラバ宜カラウ
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=20
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021・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 第十四條マデハ御異議ナキヲ以テ原案通決シマス、十
五條ノ一條ヲ委員會ニ於テ挿入ニナッテ居リマス、是ヲ以テ議題ト爲シマス
(「原案贊成」又ハ「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
船舶職員法案(政府提出貴族院送付)第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=21
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022・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 船舶職員法案十五條、委員ノ修正ニ同意ノ諸君ハ起立
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=22
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023・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 大多數、因テ委員會ノ修正通決シマス、以下ハ原案ニ
御異議ナシト認メマス、次ハ海員懲戒法案全部ヲ議題ト爲シテ決議ヲ採リマ
ス
船舶職員懲戒法案(政府提出貴族院送付)第二讀會
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=23
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024・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 御動議ナケレバ、是レ亦原案ノ通可定致シマシタ、而
シテ此案ハ三案共ニ直チニ三讀會ヲ開クコトニ御異議ナシト認メマス、因テ
直チニ三讀會ヲ開キマス
船舶檢査法案(政府提出貴族院送付)第三讀會
船舶職員法案(政府提出貴族院送付)第三讀會
船舶職員懲戒法案(政府提出貴族院送付)第三讀會
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=24
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025・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 滿場異議ナシト認メマス、因テ三案共ニ總テ確定ヲ報
ジマスル、次ハ第四ニ移リマスル、馬匹ノ調査及檢査ニ關スル法律案委
員長谷河尙忠君
第四馬匹ノ調査及檢査ニ關スル第一讀會ノ續(無刺青春
法律案(政府提出)(長報告
〔谷河尙忠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=25
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026・谷河尚忠
○谷河尙忠君(十番) 此案ノ委員會ノ結果及經過ヲ御報道致テマス、此案ニ
就キマシテハ二三ノ說明ヲ求メマシタ以上、原案ヲ可決スベキモノト委員會
デハ議決致シマシタ、デ、其經過ハ此法律ヲ施行スルニ就イテハ五万餘圓ノ
費用ガ掛ル樣子デアリマスル所ガ、政府委員ノ說明ニハ此五万餘圓ト云
フモノハ別段ニ要求スルデハナイ、三十年度以後ノ軍事費ノ中デ、十分其
支辨ガ出來ル積デアル、斯ウ云フコトデアリマシテ、此經費ノ事ニモ何ノ異論
ガナカッタノデアル、其次ハ此三十四條ノ屆出ノ事、檢査ノ事ニ對シテ、
或ハ違反スル者ガアッタナラバ其制裁ガ如何デアルト云フコトニ就キマシ
テ、其制裁ニ對スル罰則ヲ設クル方ガ宜シカラウト一云フ意見ガ出マシタケレ
ドモ、是モ矢張政府委員ノ說明ニハ、政府デモ其邊ニ心附イテ粗〓其調ハシタ
ケレドモ、此事ニ對シテハ左樣嚴格ナ取締ヲ設ケズトモ差支アルマイ、若シ
左樣ナ差支ヲ見ルヤウナ場合ニハ改正シテモ宜カラウケレドモ先ヅ目下ノ
處デハソレダケノ罰則ヲ設ケルノ必要ハナイト見込デ、其罰則ハ取除デア
ル、斯ウ云フコトデアリマスケレドモ、其委員ノ中ニハ罰則ヲ設ウルガ宜シ
イト云フ意見ヲ持チマシタケレドモ遂ニ成立タヌデ、是ガ矢張原案ニ決シマ
シタ、ソレカラ此法律ヲ施行スルニ就イテハ、北海道、沖繩ノ如キハドウデ
アルト云フ質問ニ對シマシテ、政府ノ說明ハ、ソレハ當分行ハヌ積デアル、就
キマシテ他ノ法律ニ對シテモ、若シ此法律ヲ施行シテ置イテ、其法律ノ中ニ
此法律ヲ施サヌト云フ場合ガアッテハ不都合デアルカラ、果シテサウ云フ譯
ナレバ、其明文ヲ矢張此法律中ニ設ケル方ガ宜カラウト云フ說ガアリマシ
タ、所ガ、政府委員ノソレニ對スル說明ニハ何分此法律ハ事ニ依ルト臨機
ノ處分ヲシナケレバナラヌ、例ヘバ北海道ニ施行シナイト云フテ置イテモ
或ハ臨時之ヲ施行シナケレバナラヌコトモ出來ルコトデアルカラ、ソレデ法
律ノ明文ニハ省イテ居ル且ツ第六條ノ中ニ檢査ヲ行フベキ區域地ニ馬匹ノ
種類其他ノ云々ト云フコトガアッテ其區域ノ如キモ、此六條中ノ範圍內デ
施行スルモ宜イカラト、斯ウ云フ說明アリマシテ、矢張委員ニ於テハ此說明
ヲ聽キマシテ、別ニ異論ガナイト云フノデ、原案ヲ一切可決スベキモノト議
決致シマシタ、何分諸君モ御贊成アランコトヲ望ミマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=26
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027・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 此第五ノ國界變更法案ハ、種類ハ違ヒマスケレドモ、委
員長ガ幸ニ登壇中デアリマスカラ序ニ說明ヲ請求致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=27
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028・谷河尚忠
○谷河尙忠君(十番) 然ラバ議長ノ請求ニ依リマシテ此次ノ日程ノ議題ニ就
イテ說明ヲ致シマス、此國界變更ノ議案ニ對シマシテ、委員會デハ矢張原案ニ
可決致シマシタ其理由ハ元ト此飽海郡ナルモノハ彼ノ最上川ノ海ニ注グ港
灣ノ地ニアッテ有名ノ酒田港ノ所在地デアリマス而シテ彼ノ維新前ニハ
庄內領ト申シテ、酒井左衞門尉ノ領地デアッテ、東田川、西田川、飽海ノ三郡
相連ナル所デアル、然ルニナゼ是ガ右ノ如ク一方ノ間ニ在ル郡デアッテ、目
下羽前ト羽後トニ別レタカト云フコトヲ質シテ見マシタ所ガ、戊辰ノ際ニ酒
井左衞門尉ノ領內ヲ沒收セラレタ際、飽海郡ハ秋田藩ノ管轄ニ屬シ田川郡
ハ越後ノ新發田藩ノ管轄ニ屬シタサウデアリマス、ソレニ對シテ奧羽ヲ七州
ニ分ケル時ニ、出羽ノ國ヲ割イテ飽海郡ヲ羽後ノ國トシ、田川郡ヲ羽前ノ國
トシタノデ、大體ノ地形カラ申セバ、僅ニ最上川ヲ隔テヽ分レテ居リマスル
ノデ、羽後ノ國ノ方ノ境ハ、彼ノ鳥海山大山ノ山脈ヲ以テ隔ッテ居リマス、サ
ウシテ見ルト地形上カラ如何ニモ是ハ羽後ノ國ニ組入レル方ガ相當デアラウ
ト云フ考、且又目下飽海郡モ山形縣ノ管轄內ニアリマスレバ、行政上ノ差支
モナク、原案ガ相當デアルト云フノデ、聊カ意見モ出マシタケレドモ過半
數ヲ以テ此國界變更法案ヲ可決スルコトニ致シマシタ、是ダケヲ御報道致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=28
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029・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 馬匹ノ調査及檢査ニ關スル法律案·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=29
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030・吉本榮吉
○吉本榮吉君(八十二番) 本案ハ讀會ヲ省略シテ直チニ確定セラレンコトヲ
望ミマス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=30
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031・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 讀會省略ノ動議ガ吉本君ヨリ出シマシタ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=31
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032・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 吉本君ノ動議ニハ御異議ナシト認メマス、因テ讀會ヲ
省略シテ、直チニ確定議ニ附キ決ヲ採リマスル
馬匹ノ調査及檢査ニ關スル法律案(政府提出)確定議
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=32
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033・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 御異議ナキヲ以テ該案ノ確定ヲ報ジマス、次ハ第五、
國界變更法律案第一讀會ノ續、唯今委員長ノ說明ハ相濟ミマシタガ、該案ニ
ハ反對ノ通〓ガアリマス-荒井啓五郞君
第五國界變更法律案第一讀會ノ續発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=33
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034・荒井啓五郎
○荒井啓五郞君(百三十一番) 說明ガ極ク簡單デゴザイマスカラ此席ヨリ申
シマス、本案ハ委員長ノ說明ニモアリマシタ通リ、元ト出羽ノ國ヲ割イテ羽
前、羽後ノ國ト爲シタノハ明治四年デアルデス、爾來今日ニ至ル殆ド三十年
ノ慣習歷史ト云フモノヲ備ヘテ居ル管轄デゴザイマシテ、單ニ山嶽ノ地形ヨ
リ論ジマスレバ、此境界ヲ變更セントスル理由モ一理アルヤウデゴザイマス
ガ、併シ爰ニ最上川ト云フ河ヲ境界トシテ割イタ所ヲ見テモ、是亦大ニ最上川
ノ界トシテ國ヲ分ツト云フコトハ大ニ理由ノアル事デゴザイマシテ、詰リ此
一點ニ就イテハ山嶽ヲ界トシテ國ヲ分ツカ、或ハ最上川ヲ界トシテ國ヲ分ツ
カト云フコトハ、詰リ利害相半バスルコトヽ思ヒマス、併ナガラ此國界變更二
就イテハ、更ニ行政區畫ニ就イテハ影響ガナイト云フコトデアル、行政區畫
ニ於テ更ニ利害ノ相分ルヽ所ノナキモノヲ、殊更ニ三十年來ノ歷史慣習ト云
フモノヲ棄テヽ北國ノ境界ヲ變更スル必要ハ毫モ見出スコトハ出來ヌノデ
アリマス若シ行政上ニ便利アリト云フナラバ已ムヲ得マセヌガ、更ニ其便
利ノナキノミナラズ、從ッテ公ケノ役所ニ於テ國名ヲ變ズルト云フコトニナ
レバソレ〓〓煩ハシキ手數ヲ要スルコトデアリマセウシ、又一私人ニ於テ
モ國名ヲ變ズルニ就イテハ從ッテ煩雜ノ手數モ生ズルコトヽ思ヒマスカラ、
毫モ行政上ニ差支ガナイト云フナレバ、三十年來ノ慣習歷史ヲ打破ッテ之ヲ
變更スルノ必要ハナイト思ヒマス、故ニ本案ハ二讀會ヲ開カズシテ廢案ニ至
ランコトヲ希望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=34
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035・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 決議ヲ採リマス、該案ノ二讀會ヲ開クニ同意ノ諸君ハ
起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=35
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036・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 少數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=36
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037・齋藤良輔
○齋藤良輔君(二百九十九番) 異議ヲ申立テマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=37
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038・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 確ニ少數デアリマス、因テ該案ハ二讀會ヲ開クベカラ
ザルモノト決シマシタ、次ハ日程ノ第六、府縣農事試驗場國庫補助法案第一
讀會ノ續、-松尾寛三君
第六府縣農事試驗場國庫補助法案第一讀會ノ續(特別委員)
長報〓
(松尾寛三君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=38
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039・松尾寛三
○松尾寛三君(百五十五番) 私ハ農事試驗場國庫補助法案ニ就キマシテ委員
會ノ結果ヲ報告致シマス、委員長ヨリ報〓スベキ所、委員長ハ少數意見トシ
テ報告ヲ致サレマスカラ、私ハ委員長ニ代ッテ委員會ノ結果ヲ報告致シマス
次第デゴザイマス、委員會ハ三月三日ヨリ同ジク五日、九日、十一日ト四囘
開キマシタ、四囘開キマシタ所、多數ヲ以テ旣ニ配付ヲ致シテ居リマスル所
ノ修正案ニ可決致シタノデゴザイマス、其ノ修正致シマシタ所ノ次第ヲ一通
リ報〓致シマス、第一條ニ「每年十五万圓」トアッタノヲ「十万圓」ト修正致シ
マシタ、是ハ第二條ノ-第三條ノ「府縣ノ負擔額ノ半額以上」ト云フ結
果ニ依ッテ減削シタノデアリマス、其他第三條ノ「府縣ノ負擔額ト同額以內」
トアッタノヲ「半額以內」ト更正ヲ致シマシタノハ、是ハ餘リ多過ギルト云フ
所カラ、半額以內ト云フコトニ致シマシタ、其他ハ字句ノ改正等デゴザイマ
シテ、別段說明ヲ致シマセヌガ、第五條ノ七箇年ヲ一期ト致シマストシタ
ハ、此試驗的ノ事業ト云フモノハ御承知ノ通、成業年ヲ逐フテ參リマセ
ヌケレバ結果ヲ奏スルコトガ分リマセヌ故ニ五箇年デハ短イト云フ所カラ
七箇年ト云フコトニシタ第六條ニ於キマシテ農事講習所ト云フモノヲ加ヘ
マシタノハ府縣ノ狀況ニ依リマシテハ試驗場ヨリモ講習所ノ方却テ宜シ
キヲ得ルト云フヤウナ場合モアリマスノデ、卽チ府縣農事講習所ニモ、此法
案ニ依ッテ補助ヲスルト云フコトノ議論ヨリシテ茲ニ至ッタノデアリマス、
故ニ或ハ農事試驗場ト講習所ト一緒ニ其府縣ニ置クコトモゴザイマセウト思
ヒマス、其他ハ別段說明ヲ要スルコトモ、修正ニ就イテハゴザイマセヌ、抑く
法案ハ委員會ニ於テ多數ノ意見デ確定致シマシタノハ、御承知ノ通、我國ハ
農ヲ以テ國ヲ立ッテ居ル位ノ農國デゴザイマス、而シテ農家ノ有樣ハ如何
ト申シマスニ、諸般ノ事業ノ駸々改良進步スルニ拘ラズ、此農事ノ改良ト
云フコトニ於キマシテハ諸君御承知ノ通、實ニ割合上進步シテ居ナイト云
フコトデアル、我國ヲ富スニハ何ヲ以テ第一トスルカト云ヘバ、卽チ農ヲ以テ
第一ト致サナケレバナラヌ其農ヲ以テ國ヲ富スト云フコトニ於キマシテ
ハ是マデノ農事ノ致方ヲバ改良致サシメテ、例ヘバ米穀ニ致シマシテモ
一石ノ收穫ヲ一石五斗ニモナルト云フヤウナ所ニ力ヲ致サナケレバナラヌ、
偖テ其農事改良ヲ致スニハ如何ニシテ改良ヲスレバ宜イカト云ヘバ或ハ
學理ヲ應用シ或ハ農具ヲ改良シ、或ハ肥料ヲ改良シ、以テ發達ヲ致サナケ
レバナラヌト云フコトハ私ガ喋々ヲ俟タヌ話デアル、偖其改良ヲ致スニハ
必ズ此試驗場ト云フモノヲ置キマシテ、ソレ〓〓試驗ヲ致シテ見マセヌケ
レバ農家自ラ各自ニ試驗ヲ致スト云フコトハ、到底言フベクシテ行フベカ
ラザル事デアル、ソレ故ニ旣ニ農商務省ノ管轄內ニ僅ナ農事試驗場モアリマ
スケレドモ、何分此農事ノ事ト申シマスレバ風土氣候ニ依ッテ其改良試驗
等ノ事ニ於キマシテ趣ヲ異ニスルト云フ譯デゴザイマス、唯全國ニ五箇所ヤ
六箇所ノ試驗場デ試驗ヲ致シマシタトキハ到底全國ニ普及セシメテ、此試
驗ノ結果ヲ應用スルコトハ出來ヌト云フコトハ申スマデモナイ話デゴザイ
マハソレ故各府縣ニ確實ナル農事試驗場ヲ置キマシテ、而シテ其諸般ノ農
事改良試驗ヲ致サシメテ、之ヲ其土地ニ適當スル所ノ結果ニ依ッテ改良ヲ致
サシメタナラバ、是ヨリシテ農事ノ改良ト云フコトガ起ッテ來ルノデゴザイ
マス然ラバ其必要ナルモノデアル故ニ、各府縣ニ於テ、各府縣自治ニ任カ
シテ試驗場ヲ置イテ、必ズ爲シ得ルコトデアル、國庫ガ之ヲ補助シテ以テ奬
勵スル必要ハナイト云フ議論モゴザイマセウ、此各自ニ任カシテ、地方ハ地
方ニ於テ試驗場ヲ設ケテ、決シテ國庫ノ補助ヲ致スト云フコトハ要サヌト云
フ議論ガ少數意見ノ御議論デゴザイマス、諸君ハ能ク地方ノ狀況ニ御熟知
ノ御方ミデゴザイマスガ府縣會ノ有樣ハドウデゴザイマス、決シテ自治ニ
任カシテ置イテ、是ガ十分普及スルカト云フタナラバ、私ハ普及スルコトハ
ナイト斷言スルニ憚ラヌ、如何トナレバ此試驗的ノ事業ノ如キハ、數年ヲ經
テ始メテ結果ヲ得ルモノデゴザイマス、然ルニ府縣會ノ如キハ年々歲々議決
ヲ致スモノデゴザイマスガ故ニ、斯ノ如キ試驗場ノ如キヲ繼續費デ極メルト
云フコトハ容易ニ出來ナイコトデアル、ソレ故ニ是マデ或ル縣ニ於キマシテ
ハ試驗場或ハ講習所ヲ設ケタコトモアルガ、或ハ一年、或ハ二年デ之ヲ廢
シタト云フヤウナ事モゴザイマス、其廢シタ所ガ、試驗ノ結果ガ云々ダト
カ其地方ノ長官ニ對シテ感情ガ惡ルイトカ云フヤウナコトデ、否、ソレヲシ
テ廢滅ニ屬シタト云フコトモ聞イテ居ル、サウ云フコトハアルベキ筈デナ
イノガ、實地ニ於テハソレガアルソレ故ニ此國庫ヨリシテ幾分ノ補助ヲ與
←チ、サウシテ府縣講習所ニシテモ、農事試驗場ニシテモ國庫ノ補助ヲ以
テ繫イテ置キマスレバ、必ズ縣會モ能ク通過シテ必ズ、數年ノ試驗ヲ經テ、始
テ實地ニ應用スルコトノ效果ヲ奏スルト云フ場合ニ爲ルノデアリマスソレ
故ニ必ズ半額以內ノ補助ヲ得ナケレバ地方デ出來ナイト云フ事業デハナ
イ斯ノ如キ必要ノモノデアレバ、必ズ地方ハ地方デ出來ナケレバナラヌ筈
デゴザイマスケレドモ、斯ノ如キ事業ハ國家ガ助ケテ其地方ニ奮勵セシム
ル所ノ奬勵ヲ與ヘナケリャナラヌト云フ趣意カラ、之ヲ贊成スルノデゴザイ
マス既ニ一昨年デシタカ實業學校補助法ガ出マシタ以來、容易ニ興リマセ
ナカッタ所ノ實業學校ハ彼ノ補助ノタメニ各地ニ興リマシテ、其洪益ハイ
カバカリデゴザイマス、僅ナ補助ノタメニ國家ニ利益スル所ノモノハイカ
バカリデゴザリマス、丁度アレト同ジ結果ニ爲ルト信ジマス、尙ホ或ル論者
ハ各府縣ニ斯ノ如キ多數ノ試驗場ヲ置クニ於テハ技師ニ不足ヲ告ゲル、決
シテ學者ハソンナニ澤山居ナイト云フ御議論モアリマス、併ナガラ······(小室
重弘君「ソレハ委員長ノ報告デスカ」ト呼フ)左樣デス、委員會ニ於テ協議致シ
マシタ所ノモノヲ御話致ス、斯ウ云フ少數意見ガアリマスカラ、私ハ此議論
ヲ申シマス、ソレデ技師ガ不足デアルカラト云フ議論モアリマシタケレドモ、
決シテ不足ハ致シマセヌ、若シ技師ガ不足ニシテ所謂第一條ニ定ムル所ノ試
驗場デナイト認メマスレバ、則チ農商務大臣ハ之ヲ認可ヲシナイデ宜イノデ
アル、必シモ善シ惡シモ認可スルト云フノデハナイ、卽チ確實ト認メテ之ヲ
認可シ、相當ナ技師ヲ利用スルト認メテ此補助ヲ與ヘルト云フ結果ニ爲リマ
スカラ、萬一技師ニ不足ヲ告ゲタトキハ補助ノアルタメニ濫ニ不必要ナ試
驗場ヲ興スコトハ決シテ農商務大臣モ許サズ、又府縣知事ニ於テモ與ヘナイ、
縣會デモ許シマセヌ、若シ供給ニ不足ヲ告グマス分ハ或ハ農學校ナリ、或
ハ農學士ナリ、段々其道ノ學問ヲ希望シテ來ルモノモ出來ルノデアル、斯ノ
如キ議論ヲ以テ此不足ト云フコトニ就イテ言ハレタノデアル、以上述ベマ
スル如ク、我國ハ此農事ノ改良ト云フコトハ極必要デアル、又此改良ヲ爲サ
シムルニハ試驗ヲ以テ示サナケレバ功ヲ奏スルコトハ出來ナイ偖テ試驗場
ヲ置クニハ、決シテ府縣ノ自治ニ任セテ置イテハ出來ナイ、不完全ナモノガ
出來ル現ニ今日府縣農事試驗場ト云フモノハ、十四箇所アルノデゴザイマ
ス、其十四箇所ノ中デ極ク少額ノモノハ七十七圓三十錢ノ試驗費ヲ以テ致シ
テ居ルノデアル、到底七十七圓三十錢デ試驗ノ出來ルコトデハゴザイマセ
又、或ハ二千圓ナリ、或ハ六百圓ナリ、或ハ五千圓ナリト云フ各府縣モアリ
マスガ、其中最モ其成蹟其功ヲ奏シマシタノハ、福岡縣ニ於キマシテハ六千
八百圓ヲ以テ試驗ヲ致シテ居リマスガ、其結果ハ實ニ莫大ナモノデゴザイマ
ス、其他兵庫縣、京都府ノ如キハ相當ナ費額ヲ以テ試驗ヲ致シテ居リマス故
二、結果ガ宜イノデアル、併ナガラ其他アリマスル中デ多クハ千圓以內ノ
費額ヲ以テ試驗場ヲ置イテ居リマスカラ、全ク不完全ニシテソレダケノ功ヲ
奏スルコトガ出來ナイト云フ譯ニ爲ッテ居リマス斯ノ如キ自治ニ任セテ置
キマスト、不完全ナル試驗場ヲ置イテ冗費ヲ爲スト云フ嫌モゴザイマスカ
ラ、玆ニ相當ナ補助ヲ與ヘテ而シテ立派ナ試驗場ヲ置イタナラバ爲ニ國家
ヲ益スルコト少カラズ、又僅カ十万圓位ナ金ヲ府縣農事試驗場ニ補助スルト
云フコトハ今日農家ガ負擔シテ居ル所ノ國家ニ對スル義務ノ上カラ申シテ
モ、農家ニ此位ナ金ヲ與ヘテ其改良ヲ勸ムルト云フコトハ國家ノ義務デアル
ト信ジマス、諸君モ必ズ此事ハ大贊成デアラウト信ジマスカラ、ドウゾ速ニ
御確定アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=39
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040・小畑岩次郎
○小畑岩次郞君(二百三十六番) 此第二條ニ在リマス「補助金ヲ交付スヘシ」
今委員長ノ報告ニ依リマスト、國家ノ義務ヂャト云フコトモゴザイマシ
タガ、是ハ府縣會ニ於テ若シ必要ト認メタナラバ自分ガ自分ノ縣デ經濟ヲ立
テル、ナンノ三千圓ヤ四千圓ノ經費ヲ國庫カラ受ケル必要ガナイ故ニ地方
費ヲ以テ立テルト云フ所デモ、此本文ニ依ルト交付スベシトアリマスカラ、
交付スルノデアリマスカ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=40
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041・松尾寛三
○松尾寛三君(百五十五番) サウデス、既ニ今試驗場ヲ設ケテ居リマスノモ
未ダ十分ニ參リマセヌ、故ニ是等モ常ニ國庫補助ノ事ハ希望シテ居ルノデゴ
ザイマス、又縱令現ニ在リマス其功ヲ奏スル試驗場ニ致シマシテモ、先キニ
私ガ申上ゲマス通、府縣會ト云フモノハ或ハ知事不信任トカ、或ハ農事試驗
場ノ技師不信任トカ云フタメニ、或ハ之ヲ廢メルト云フ不幸ニ遇フコトガア
ル、ソレダカラソレ等ノ事ヲシナイデ、縱令知事ガ不信任デモ技師ガ不
信任デモ此事業ヲ立派ニヤルト云フコトヲ致サシムルニハ國庫ヨリ幾分
ノ補助ヲシマセヌト出來マセヌ、ソレ等ハ小畑君抔ハ實地ニ就イテ能ク御承
知ノコトヽ信ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=41
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042・小畑岩次郎
○小畑岩次郞君(二百三十六番) 本員ノ質問スル要旨ハ、三千圓ナリ五千圓
ノ金ハ一地方ノ經濟デ出來ル、然ルニ此法律ニ依ッテ「交付スヘシ」トスルト、
地方ノ自治デヤルト云フテモ、國庫カラ金ヲ下ゲルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=42
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043・松尾寛三
○松尾寛三君(百五十五番) 左樣デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=43
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044・小畑岩次郎
○小畑岩次郞君(二百三十六番) ソレカラ第六條ハ更ニ修正ニ爲リマシテ
「府縣農事講習所」トアリマシテ、農事ノ方ハ是デ分リマシタガ蠶業試驗場
ト云フモノガゴザイマシテ、其儘ニシテアリマスガ、蠶業試驗場ト云フモノ
ハ餘リ全國ニ立ッテ居ナイヤウデアリマスガ、府縣ノ模樣ハ蠶業傳習所ト
云フヤウニ本員ハ思フテ居ル、蠶業傳習所ハ此中ニ這入ッテアル意味デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=44
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045・松尾寛三
○松尾寛三君(百五十五番) 左樣デス-其積デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=45
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046・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 少數者ノ意見說明ノタメ-小松三省君
〔小松三省君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=46
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047・小松三省
○小松三省君(九十四番) 少數者ノ意見ヲ御報道致シマス、先刻松尾君ガ此
農事試驗場ヲ是非補助シナケレバナラヌト云フコトニ就イテ、長ミシキ理由
ヲ述ベラレタデゴザイマスルガ、少數者モ亦全ク反對ノ考ヲ持ッテ居リマス
ルテ、本案ハ否決スベキモノデアルト云フ考テゴザイマス、偖テ何故ニ此農
事試驗場ノ國庫補助ト云フコトヲ否決シナケレバナラヌカト云フニ、固ヨリ
此農事ヲ奬勵スルト云フコトモ、是ハ宜シイ事業デハアル、然レドモ此農事ヲ
奬勵スルニハ各〓方法ガアッテカラ、其方法ヲ誤ルトキニハ却テ益ナクシテ
害ノアルコトガアルデ、斯ノ如キ補助ト云フモノハ此弊害ノ中ニ數フベキモ
ノデアッテカラニ、寧ロ斯ノ如キ補助ヲ與ヘヌ方ガ宜シイト云フノ考デゴザイ
マリ、成程米ガ何石取レルトカ、收穫ガナンボウ餘計ニ爲ルトカ斯ノ如キ
空想ヲ畫イテ、サウシテカラニ此結果ヲ受ケルニハ農事試驗場ヘ補助ヲ與ヘ
ナケレバナラヌト斷定ヲスルト云フコトハ頗ル早計ナ話デゴザイマス斯
ノ如キ補助ト云フモノハ常ニ此補助ノ弊害ヲ濫發スル基本ニ爲ルノデゴザ
イマス斯ノ如キ事ニ盡ク國庫ガ補助ヲ與フルト云フコトニ爲レバ、何モ斯
ニモ常ニ國庫ノ補助ヲ以テ成立タセナケレバナラヌト云フコトノ結果ガ生ズ
ルノデゴザイマスル、地方ノ事業ハ市町村〓事業、卽チ自治體ガ自立自衞ヲ
以テスベキ事柄ヲ、國庫ガ一タビ補助ヲスルト云フコトニ爲レバ補助ノ事
柄ト云フモノハ遂ニ千萬ヲ以テ數ヘナケレバナラヌト云フコトニ爲ルノデゴ
ザイマスル、若シ此農事試驗場ヲ補助スルト云フコトニ爲レバ茲ニ書イテ
アル通、矢張此蠶業モ補助ヲセンナラヌト云フコトニ爲ッテ來ル、機業モ補
助ヲセンナラヌト云フコトニ爲ッテ來ル、林業モ補助ヲセンナラヌト云フコ
トニ爲ル、其他何ヤ斯ヤ盡ク補助ヲ目的トシテ國庫ガ之ニ助力スルト云フコ
トニ爲レバ殆F保護干涉ノ政ト云フモノハ其弊ニ堪ヘラレヌデアラウト云
フ考デゴザイマス、若シ斯ノ如キ事ガ地方ノ負擔ニ堪ヘラレヌ大事業デアル
トカ、又一地方ノ自立シテ爲シ得ザル事柄デアルトカ云フナラバ、國庫ガ之
ニ補助ヲスルト云フコトモ亦巳ムヲ得ヌ次第デアラウト信ジマス、然レドモ
斯ノ如キ補助ハ地方ノ力ヲ以テ十分仕遂ゲ得ベキ事柄デゴザイマスル、十万
圓ノ國庫補助ト云フモノハ、之ヲ地方ニ割ッテ見レバ誠ニ些細ナ金ニ爲ルノ
デゴザイマスル、二千圓乃至三千圓ノ金ヲ國庫ヨリシテ地方々々ヘ補助ヲス
ルト云フコトニ爲ルノデゴザイマスル、僅カ此二三千圓ノ金ガ堂々タル地方
ノ團體デ以テ支辨スルコトガ出來ナイト云フコトハ私ハ殆ド驚ク而モ出來
ナイニ就イテ之ガタメニ國庫ノ補助マデモ仰ガナケレバナラヌト云フコトニ
ナッテハ私ハ誠ニ地方團體ノ力モ亦弱イモノデアルト言ハナケレバナラナ
イ、然レドモ此提出者ノ考ヘルガ如ク、地方團體ハ僅カ二三千圓ノ金ヲ國庫
コリ補助シテ貰ハナケレバナラヌト云フヤウナ微力ノ團體デハナイト云フコ
トヲ確信スルノデゴザイマス、十万圓若クハ五万圓ノ事業、二十万圓、三十
万圓ノ事業ハ常ニ此經營シテ居ル所ノ地方團體デアル其地方團體ガ僅ニ
三千圓若クハ四千圓ノ國庫補助ヲ貫ハナケレバ農事試驗場ハ能ウ拵ヘヌト云
フコトニ至ッテハ地方團體ヲ輕蔑スルト同時ニ、地方〓體ノ無能力ヲ表白
スルコトモ亦甚シイト言ハナケレバナリマセヌ、何故ニ三千圓ノ金-國庫
ノ補助ヲ待タナケレバ農事試驗ガ出來ヌカ、旣ニ福岡ノ如キ、京都ノ如キ、
兵庫ノ如キ、自ラ此農事試驗ノ必要ナルコトヲ知リ、有益ナルコトヲ知ッテ
カラ、地方ノ費用ヲ抛ッテカラ、旣ニ其事業ヲ成就致シテ、十分ニ其結果ヲ
收メテ居ルノデゴザイマス、若シ他ノ府縣ニシテ果シテ此農事試驗場ノ必要
ナルト云フコトガ分ッタ以上ハ、自カラ進デカラ農事試驗場ヲ立派ニ成立テ
カラサウシテ其利益ヲ受クルデゴザイマセウ、凡ソ斯ノ如ク地方ノ團體
ニ屬スベキ事柄、地方ノ分權ニ屬スベキ事柄、地方ノ自治ニ屬スベキ事柄
ニ國庫ノ費用ヲ以テ補助シテ、サウシテ國庫ヨリシテ干渉セラルヽト云フ
コトハ地方ノ人モ誠ニ理由ノ分ラヌ希望ヲスルモノデアルト言ハナケレバ
ナラヌ、國庫ノ補助ノ傍ハ國家ノ干渉ト云フコトガ來ルノデゴザイマスル、國
庫ハ謂レナク無制限的ニ府縣ヲ補助スルコトハ致シマセヌ、補助ヲスルナラ
バ補助ヲスルダケニ檢束ト云フモノハ必ズ地方ノ上ニ來ルノデゴザイマス
地方ノ自治ヲ欲シ地方ノ權力ノ分配ノ廣カランコトヲ望ム所ノ諸君ガ、何故
ニ斯ル案ヲ出シテカラ自ラ此地方權力ニ制限ヲ加ヘント致スノデゴザイマス
ルカ、私ハ殆ド其理由ニ苦シムノデゴザイマス、若シ斯ノ如キ案ヲ出シテ政治
ノ源ヲ紊ルニ至ッタ時ニハ國庫ト云フモノハ殆ド其負擔ニ堪ヘナイコト
ニ爲ル、何モ斯モ國庫ヨリ與ヘナケレバナラヌト云フ結果ニ爲ッテ來ル、卽
チ此一補助ハ百ノ弊害ヲ產ミ出スノ淵源ト爲ルノデゴザイマス、又此三千圓
ノ金ノ性質ヲ御調ベナサイ、誠ニ是ハ補助ヲ受ケルト云フコトハ誠ニ迂ナコ
トガ分ル、此三千圓ノ國庫ノ金ト云フモノハ如何ナルモノデゴザイマスルカ、
是ハ天ヨリ降ッテ來タモノデモゴザイマセヌ、地ヨリ湧イタモノデモゴザイ
マセヌ、國費トシテカラ皆全國ヨリ徵收シテ居ルモノデゴザイマス、ソレガ
一タビ國庫ヘ這入ッテ、其這入ッタ國庫ノ金ヲ又地方ヘ取ッテ來ルト云フ程
迂ナル事ハゴザイマセヌ一タビ地方ヨリ出シタ金ヲ、又府縣ガ割ッテ取ッ
テ歸ル其中間ノ運搬送達ノ手數ハドレ程掛カリマスルカ、寧ロ初ヨリ國
庫ヘ納メズニ、自分ガ地方デ取ッテ自分ガ支辨ヲシテ置クト云フ方ガ、番
簡便ノ支辨方法デアル、殊更ニ一遍國庫マデ納メテ置イテ、サウシテ又持ッテ
歸ランナラヌト云フ、サウ云フ御手數ハ眞平御免ヲ蒙リタイト考ヘルノデゴ
ザイマス、サウシテ又此府縣農事試驗場ト云フモノハ果シテ此實際今日十
分ノ成績ヲ現シテ居ルモノデアルカト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ、是尺
政府委員ノ意見ニ大イニ聽クベキ所ガアル、政府委員ガ固ヨリ此法案ニ對シ
テ絕對ノ不同意ト云フ譯デハナイガ、此案ハ遂ニ實行スベカラザルモノデア
ルト云フコトヲ言フ、或ハ私モ實行スベカラザルモノデアルト考ヘル、此國
庫補助ガアッテ地方ニ此試驗場ガ續々起ルト云フコトハ、最モ憂フル事デア
ルト政府委員ハ言フ何故ニ云フカト言ヘバ、卽チ此府縣農事ノ試驗場ニ供
給スベキ技師ガナイ、今日農學校ヲ卒業ヲシ、其地農事ノ事ニ關係シテ居ル
所ノ人ハ定數ガアル、旣ニモウ殆ド其地位ヲ得テカラ他ニ轉ズルコトノ出來
ナイヤウニナッテ居ル、デ、今日此府縣農事試驗場ガ起ッテ居ルノハ立派
ノ農事試驗場ハ起タタガ、ソレニ對シマシテ差遣ハスベキ技師ガナイ、又技
師ガアッテモ適當ノ技師ハナイ、適當ノ技師ガナク若クハ全ク技師ガナクシ
テ、續々此農事試驗場ガ起ッタト云フトキニナレバ、農事試驗場ノ結果ハ誠
ニ不十分デアリマシテ實ニ農民ノ輕蔑ヲ引クノ中心ト爲ルデ、一度此案
ガ通過シテ續々起ッタ折ニハ農民ハ遂ニ此善イ技師ヲ得ズシテ試驗場ノ成
蹟ガ惡ルイタメニ、試驗其物ハ惡ルイコトデアル、詰ラナイモノデアルト云フ
ノ觀念ヲ起スト云フ、或ハサウ云フ事ガアルカモ分ラナイ私共ガ府縣ニ於
テカラ試驗場ト稱スルモノヲ往々見タ事ガアルガ、民間ノ苗ハ能ク出揃ッテ
居ルニ、試驗場ノ苗ハ誠ニ其處ハ低クナリ此處ハ高クナリ、誠ニ不體裁ナ體裁
ヲ爲シテ居ル、而シテ農夫ニ問ヘバ却テ試驗ハ詰リマセヌト云フテ輕蔑シテ
居ル、是ガ試驗場ノ今日創立前ヨリ振ハヌ所以、各府縣ニ起ラヌ所以デゴザ
イマス、今此案ヲ通過シテ續々試驗場ガ出來タナレバ必ズ此不體裁ヲ以テ
カラ農民ニ示スト云フコトニ爲ル、農民ハ必ズ農事試驗場ト云フモノヲ輕蔑
シテ、モウ農事試驗場ト云フモノハ駄目ヂヤト云フコトニ爲ッテシマヒマセ
ウ、サウシタナラバ折角此農業ヲ振ハスガタメニ興ス所ノ此案ガ、却テ農業
ヲ衰頽セシムルノ原因ト爲ルノデゴザイマス、一面ニ利益ガアル、唯利益ガ
アルト云フテ利益ノアル點バカリ見テ半面ノ害ノアル〓ヲ見ナイト大ナル
弊害ヲ遺スト云フコトハ此類ノ案ノコトデアラウト思フ、若シ此農事試驗ト
云フ試驗場ニシテ創立スルノ必要ガアルカナイカト云フコトニナレバ私ハ
固ヨリ必要ガアル宜シク是ハ全國ニ大農區デモ起スガ宜シイ、今日ノ本場
若クハ支場ノ事業ヲ十分ニ擴張シテ、有效ナル結果ヲ收メラルヽヤウニスル
モ宜シイ、又ハ日本ト云フモノハ西南ヨリ東北ニ向ッテカラ、ヤタラニ延
長シテ居ル國デ、或ハ潮流ノ工合或ハ氣候ノ經緯度ノ變更ニ依ッテ氣候ノ相
違ガ非常デアル、斯ル國ニ向ッテカラ農事試驗ヲ起スト云フコトナレバ、宜
シク此氣候ノ温度、地質ナンドヲ能ク調ベテカラ、サウシテ總テノ此地方ノ
行政區畫ニ依ッテ大キナモノヲ拵ヘテ、ソレニ全力ヲ注イデサウシテ此處ヨ
リ有益ナル試驗ノ出ヅル淵源ヲ作ルト云フコトハ無論必要ナ事デアラウト
思フガ是ハ私ハ他日ノ計畫ニ遺シテ大ニ他日穿鑿ヲスルノ必要ガアラウト
思フ、此實際試驗場ヲ各府縣ニ置イテカラ、サウシテカラ政府ガ之ニ補助ヲ
シテカラ無駄ニ唯費用ヲ使フト云フコトハ、私ハ最モ不同意ナ事デゴザイマ
ス、又此進步黨ノ諸君デモ、又是マデノ改進黨ノ諸君デモ苟モ此自由民權
ノ伸張ヲ望ミ地方分權ノ實ヲ舉ゲントシ自治分權ノ目的ヲ達セントスル
時ニ當ッテカラ、進デ此國家ノ補助ヲ仰ギ同時ニ國家干涉ノ幾分ヲ府縣ニ及
スト云フヤウナ案ニ、私ハ御贊成ナサルヽコトハナカラウト確信ヲスルノデ
ゴザイマス、デ、ドウカ成ルベク贊成ト云フコトデモゴザイマスルナラバ
成ルベク否決ト云フ方ニ私ハ願ヒタイト思フ、サウナケレバ吾〓亦諸君ト共
ニ執ル所ノ此地方分權トカ自治自營トカ云フノ目的ニ於テ、是ハ大衝突ノア
ル事デアル、卽チ干涉特別保護ノ源ハ是ヨリ開ケル事デアルト思ヒマス、私ハ
諸君ガ本案ニ對シテカラ不同意ヲ表スルコトヲ確信スルモノデゴザイマス
少シク少數ノ意見ヲ述ベマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=47
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048・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 通告ニ從ツテ登壇ヲ促シマス-小畑岩次郞君
(「討論終結」ト呼フ者アリ「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=48
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049・小畑岩次郎
○小畑岩次郞君(二百三十六番) 私ガ此案ニ反對ノ通告ヲ致シテ居リマス
ガ、私ハ元來實業ノ事ニ就キマシテハ、極贊成ヲスル人間デアル然レドモ
此案ニ對シテハ如何セン反對ヲセナケレバナラヌ、其所以ハ本案ガ通過致シ
マシテモ希望ノ如ク實行スルコトガ出來ナイト云フコトガアリマス、實行ス
ルコトガ出來ナイモノナラバ、是非反對シテ之ヲ拵ヘルノ必要ガナイ是一
止ル、其理由ヲ少シク述べマス、今此本案ノ第一條ニハ十万圓ト云フ金ヲ
法律ヲ以テ極メテ置イテ年々國庫ニ措ヘテ置クサウシテ府縣ニ試驗場ヲ拵
ヘタナラバ、イヤデモ何ンデモ補助シテヤル、斯ウ云フ趣意ノデス質問ヲ
シマシテモ其通ノデス、然ルニ地方ニ於キマシテハ、地方ノ經濟デ必要ト認
メテ試驗場ヲ置ク、假ニ言ヒマスルト、此東京府ニ於テ一ノ試驗場ヲ起シ
タ試驗場ヲ建テヤウト云フテ建テタ時分ニ、此法律ガアリマシタナラバ、
東京府ノ如キ大キナ府デアリマスルナラバ、三千ャ四千ノ金ハ支出シテ立派
ナ試驗場ヲ起サウト云フニ拘ラズ、此法律ハ尙ホ金ヲヤラウト云フヤウニ
委員長ノ報告デハ聽エマス、是ガ第一不都合デアル、イラヌモノマデモ補助ト
云フ名ヲ附ケテ金ヲヤラウト云フノデアル、尙ホ此十万圓ト云フモノハ如何
ナル分配デアラウカト考ヘマスルニ、今日農商務省ノ所謂認可ヲ得テ試驗場
ヲ設ケテアル府縣ハ六縣ゴザイマス、六縣ゴザイマスルガ、其費用ヲ申シマ
スルト福岡縣デ六千幾ラ、其外ハ四千、三千、二千ト云フヤウナ金額ニ爲ッ
テアリマスルガ、シテ見マスルト其半額ト致シマスレバ、一縣二千圓位ナ金
ヲ補助シヤウト云フ、十万圓デ二千圓ノ金ヲ補助シヤウトスレバ之ヲ分配
シマシタナレバ凡ソ三十何箇所、四十箇所ニ置クヤウナ工合ニ爲リマス三
十箇所ヲモ試驗場ヲ置クトシマシテ、今日試驗場ト云フモノヽ必要ハドレ位
ノ程度ノモノヲ置クカト云ヒマスレバ、十年以前ノ林遠里、或ハ中村眞造ト
云フ如キ老農ノ取ッテ來タ所ノ農事ノ經驗ヲ應用スルト云フ譯デハゴザイマ
スマイ、委員長ノ報告ノ如ク、學理ヲ應用シテ試驗ヲシヤウト云フノデ、果
シテサウデアレバ、此試驗場ニ於テハ必ヤ農學士ノ一人ハ是非必要トシナケ
レバナラヌ、農學士一人必要ナリトスレバ此十万圓支出スル所ニ三十有餘
ノ農學士ガ必ズイルト假定セナケレバナラヌ、ソレニ要スル所ノ農學士ハ今
日ノ有樣ハ如何デアルカト言ヘバ、各府縣ヨリモ請求ヲシテ、農商務省ニ農
學士ガアッタナラバ世話ヲシテ吳レヨト云フコトノ請求ガアルソレニ從ッ
テ農商務省ハ從來世話ヲシテヤッテ居ッタト云フニ今日農學士ノ供給ガ如
何デアルカト言ヘバ、他ノ地方カラ請求ガアル、現ニ近項山形縣、或ハ長崎
縣カラ農學士ヲ世話ヲシテ呉レヨト云フ請求ガアッタガ、此府縣ニ應ジテ世
話ヲスルノ農學士ガナイ、現今農學士ノ手ヲ明イテ、或ハ事故ガアッテ出ラ
レヌト云フモノヲ合セテ十六名農學士ガアルケレドモ、其中ニ於テ今云フ山
形縣、或ハ長野縣ノ請求ニ應ジヤウト云フモノハナイカラ、巳ムヲ得ズ斷リヲ
シタト云フコトヲ私ハ聞キマシタ、是ハモウ極近イ話デアリマス、果シテ府
縣ヨリ請求ガアリ二名ノ農學士スラ請來ニ應ジテ世話ガ出來ヌト云フノ
有樣デアリマス、其場合ニ於テ三十有餘ノ試驗場ニ一人ヅヽ農學士ガ必要
ト致シマスレバ如何ト致シマスルカ、私ハ此農學士ノ相應ニ學力アルモノガ
此外ニアルト云フカ知レマセヌガ、恐ラクハゴザイマスマイト思ヒマス、果シ
テナイトナレバ此事ヲ決議シテモ望ノ通實行スルコトガ出來ナイ、年々十
万圓ト云フモノヲ玆ニ極メテ置イテ、イヤデモ補助スルト云フノハ今日ニ
於テ爲スベキコトヽハ思ヒマセヌ、殊ニ此中央或ハ國庫カラ支出シテスベキ
仕事ハ農事試驗ニ於テモ眼ノ前ニ在ル、昨年モ當議會カラ建議サレマシ
テ、今日政府ガ建テヽ居ル所ノ農事試驗場ハ今少シ擴張ヲシナケレバナラ
ヌ、又支場ヲ殖スト云フコトデアッテ、政府ハ本年度ニ於テ三箇所ノ支場增
設ノ豫算モ出マシタ、其頃私ハ豫算委員會ニ於テ支場ヲ殖ヤスハ宜シイガ、
在來爲シ來ッテ居ル所ノ農事試驗場ノ如キハ完全ナル分析ヲシヤウト云ッ
テモ其機械ニ乏シイ試驗ヲシヤウト云ッテモ其土地ガ狹イト云フノデ不完
全デアル、之ヲ何故ニ擴張セヌカ國家中央ノ仕事トシテ、是ハ大ニ爲ス
ベキ仕事デアルト云フ質問ヲシマシタ所ガ、ソレハ國庫經濟多端ノ折柄デ
アルカラ、大ニ斟酌ヲシテ本年度ノ豫算ニ先ヅ增設ノ事業ダケ出シテ置クト
云フコトヲ聽キマシタ、果シテ然ラバ中央政府、所謂國庫ガ費用ヲ費シテ爲ス
ベキ農事試驗場スラ未ダ完全ニ至ッテ居ラヌ一地方ニ於テ爲スベキコトヲ、
國庫ガ金ヲ出シテヤラセルト云フコトヲ玆ニ決議シテ置クト云フコトハ、甚
ダ不都合ナ事デアルト本員ハ考ヘマス、故ニ反對ノ意思ヲ少シ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=49
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050・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 岡村貢君-登壇ヲ促シマス
〔岡村貢君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=50
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051・岡村貢
○岡村貢君(百十七番) 諸君、本員ハ此府縣農事試驗場國庫補助法案ニ大贊
成ヲ致スモノデゴザイマス、此農事ノ改良セザルベカラザルコトハ私ノ言フ
マデモナク、諸君ノ御承知事デアル、近年各地方ニ於テ農事試驗場ヲ設ケマ
シテ、地方稅ヨリ其經費ノ幾分ヲ輔助シ、或ハ其經費ノ全額ヲ支辨スルモノ
モゴザイマス、然レドモ如何セン、地方稅ハ年々增加シ來リマスルニ依ッテ、
地方會議モ其支辨ニ苦シミ、爲ニ旣設ノ試驗場モ其基礎甚ダ堅カラズ、又未
ダ設立セザル所ニアリテハ、固ヨリ其必要ヲ感ジタルモ經費ノ支辨ニ窮シ
テ設立セザルモノモ澤山ゴザイマス、而シテ此農事試驗場ノ事モ實行ヲ見
ルコトハ難イモノデアルシ、數年若クハ數十年間ノ經驗ヲ要スルコトデゴザ
イマスレバ、其基礎ハ飽クマデ確實ナルヲ要シマス、故ニ國庫ヨリ每年幾分
ノ補助金ヲ下附シ、之ガ奬勵ヲ爲スハ目下ノ急務ナリト信ジマス、且ツ又農
業中蠶業ハ特別ニ發逹致シマシテ、國產ノ首位ニシテ、海外貿易品ノ第一等
ニ位シテ居リマスル、伊太利、佛蘭西、其他ノ競爭勁敵モゴザイマスレバ此
際府縣蠶業試驗場ニ向ッテ、農事試驗場同樣ニ國庫ヨリ補助金ヲ下付シ、以
テ此業ノ改良振張ヲ計ル必要アリト信ジマスル、故ニ金額ニ限リ原案ノ通致
シタイト云フノデゴザイマスル、其他ノ箇條ニ至リマシテハ委員會ニ於テ御
修正通ニ致シタイ、滿場ノ諸君、御贊成アランコトヲ希望致シマス
〔政府委員農商務省農務局長藤田四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=51
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052・藤田四郎
○政府委員(藤田四郞君) 本案ニ就キマシテハ政府ノ見ル所ハ既ニ委員會
ニ於キマシテ一應申上ゲマシタガ、尙ホ一寸此案ニ對シテ申上ゲタイト思ヒ
マス、此府縣ノ農事試驗場ノ儀ハ誠ニ必要ナモノデゴザイマス、又此府縣ノ農
事試驗場ト、中央ニ在ル所ノ國庫ノ支辨ノ試驗場ト相待ッテ、連絡致シテ來
マシテ農事ノ改良ヲ圖ルト云フノハ實ニ是ハ當然ノ順序デゴザイマス、
然ルニ今日如何デアルカト申シマスレバ府縣ノ農事試驗場ハ先程松尾君カ
ラ御話ガアリマシタガ或ル試驗場ハ誠ニ宜ク往ッテ居ルノガゴザイマス、
併ナガラ他ノモノハ良ク往カヌ、又ヤルコトガ出來ナイソレハ唯出來ナイ
ノデハナイ實際金ガアッテモ出來ナイノデアルソレデ斯ノ如ク今日此法
律ニ依リマシテ政府ガ金ヲ出スコトヲ致スト云フコトハ第一ニ財源ニ於テ
許サズ、又第二ニ縱シ財源ニ於テ許スコトガアリトシマシテモ、實際是ダケノ
試驗場ヲ有益ニ有效ニ維持シテ往クト云フコトハ出來ナイノデアリマス
ソレモ時ヲ得マシタナラバ或ハ往クデゴザンセウガ、若シ法律ニ依ッテ斯
ウ云フモノヲ成立タスト云フコトニ爲リマシタナラバ勢ヒ地方ニ於テ續々
起ルノデアル是ハ現ニ文部省ニ於テ彼ノ實業補習學校ノ例ニ於テ能ク分ク
テ居ルノデゴザイマス卽チ今實業補習學校ト云フ方ニ於キマシテモ澤山
成立ツモノニ對シテ、實際人ヲ出スノニハ農商務省ニ於テ多クハ人ヲ選ンデ
居リマスガ實際其人ヲ指名スルニ困難ヲ感ジテ居ルノデゴザリマスデゴ
ザリマスカラシテ此餘ニ農事試驗場ガ今金ヲ出サヌデスラ興ッテ居ルモノ
ヲ、實業補習學校ガ一ツモナカッタノガ、金ヲ出スコトニ爲ッテ僅ニ八百圓
位ノ-六百圓位ノ補助デモ續々興ル、況ヤ是ハ半額以内ヲ補助スルト云フ
ノデ、而モ是マデ現ニアルモノニ一層斯ノ如キモノガ起ッタナラバ益税抜、
起ルノデアル、ソレニ對シテ人ヲ供給スルコトガ出來ヌノデアル、今供給ス
ルコトガ出來ナイノハ適當ナ良イ人ヲ供給スルニ困ルノデアリマス,又政
府ニ於キマシテハ現ニ在ル所ノ府縣試驗場ト云フモノヲ成ルタケ之ヲ維持シ
タイト云フ希望ヲ持ッテ居リマス、故ニ財源ノ許ス場合ニ於テハ豫算ヲ以テ
請求スルコトガ適當ト云フ考ヲ持ッテ居ル、又出來ルダケノ力ヲ盡シテ往カ
ウト云フ方針ヲ執ッテ居リマスカラ、本案ハ甚ダ殘念デゴザリマスガ否決ア
ランコトヲ希望致シマス
(「討論終結」ト呼フ者アリ「質問々々、質問ハ許スベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=52
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053・多田作兵衞
○多田作兵衞君(二百二十五番) 質問致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=53
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054・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 討論終局ノ動議ガアルケレドモ、質問ナラバ仕方ガナ
イ多田作兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=54
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055・多田作兵衞
○多田作兵衞君(二百二十五番) 農學士ノ數ハ三百十五名ゴザリマス、農科
大學卒業者百六十七名、札幌農學校ノ卒業生八十八名中十六名就職シテ居ル
ト云フコトハ、巧者ノ人ノ調テゴザリマスガ、是ハ學術ニモ適當ナ人デナク、
地方ノ農事試驗場ニ遣セバ大變仕損ヒガ出來テ、或ル論者ノ言フガ如ク、大
變ナル農事試驗ヲ妨害スル人達デゴザイマスカ一寸御尋ヲ致シマス
〔「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=55
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056・藤田四郎
○政府委員(藤田四郞君) 多田君ニ御答致シマスガ、成ル程數ハ東京ノ側ト
札幌ノ方ヲ併セテ御話ノ通ゴザイマスル然ルニ其人ト云フモノハ札幌ノ方
ハ多クハ學校ノ〓員ヲ致シテ居リマスル、又此東京農科大學ノ方ノモ、是マデ
出シマシタ者ハ或ハ師範學校、又ハ農學校等ノ〓員ヲ致シテ居リ、又府縣ノ
技師ヲ致シテ居ル者ガゴザイマス、ソレデ此內地方ノ府縣試驗所ノ技師ヲシ
テ居ル人ニハ、多年ノ經驗ニ依ッテ實ニ老農ニモ相竝ンデ往クダケノ技術ノア
ル者ガゴザイマス、又唯今ノ人ノ中ニモ往クミミサウ云フ人ニ爲ル人ガアル
デゴザリマセウガ、併ナガラ殘念ナルコトニハ深ク學問ヲシタ多クノ部分ハ、
農事ノ實際ニ從事スルヨリハ農學若クハ〓育ト云フコトニ身ヲ委ネテ居ル
者ガ多クゴザリマシテ、ソレガタメニ殘念ノ事ハ、續々興ラントスル試驗場ニ
對シテ供給スル方ニハ向カナイノデゴザリマス
(「討論終、結」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=56
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057・安田益太郎
○安田益太郞君(二百四十五番) 少シ質問ヲシ、尙ホ又之ヲ提出致シマシタ
理由ヲ述ベタイ
(「無用々々討論終結」ト呼フ者アリ「發言終結」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=57
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058・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 質問ナラバ巳ムヲ得マセヌガ、最早大分·
(「反對スル者ガ間違ヲテ居ルカラ是非演說セシメヨ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=58
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059・安田益太郎
○安田益太郞君(二百四十五番) 政府委員ハ人ガナイト言フガ、決シテ人ガ
ナイ筈ハナイ、私共ガ提出致シマシタ此案ヲ拵ヘマシタ者ハ皆農學士、或ハ
現ニ農商務省ニ居リマス卽チ農務課長ヲシタ人達ガ拵ヘタノデアル、ソレデ
人ガアルト云フコトハ能ク分ッテ居ル、政府委員ハ農商務省デ勢力ガナイカ
ラ、金ヲ取ラヌ、能ウ金ヲ取ラヌナラバ、金ヲ能ウ取ラヌト言ッテ否決ト言
フガ宜シイ、吾力ノナイコトヲ言ハズシテ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)農學士
ガナイト云フノハ一向合〓ガ往カヌ(笑聲起ル)農學士ハ三百人カラアル現
ニ此原案ヲ拵ヘタノハ農學士ヤ、現ニ農商務省ノ課長ヲシタ人ガ拵ヘタノデ
アルカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=59
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060・藤田四郎
○政府委員(藤田四郞君) 三年前ニサウ思ッタコトヲ今日モサウト言ッタラ、
或ハ其人達ノ誤解デアラウト思ヒマス
(「討論終結討論終結」ノ聲起ル〕
〔東尾平太郞君發言ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=60
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061・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 討論終結ノ動議ガ成立シマシタカラ、東尾君ハ登壇ヲ
見合セテハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=61
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062・東尾平太郎
○東尾平太郞君(二百八番) 討論終結ガ多數ナラバ據ナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=62
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063・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 討論終局ノ動議ニ附イテ決議ヲ採リマス、討論終局ニ
同意ノ諸君ハ起立
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=63
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064・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 多數、因テ討論終結ニ爲リマシタ-二讀會ヲ開ク如
何ノ決議ヲ採リマス-該案ノ第二讀會ヲ開クニ同意ノ諸君ハ起立
起立者発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=64
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065・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 少數ト認メマス
(「多數々々」ト呼フ者アリ「少數々々ート乎フ者アリ「異議ヲ申立テマ
ス」ト呼フ者アリ議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=65
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066・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 暫ク-御著席ヲ請ヒマス-確ニ少數ト認メマシタ
〔「異議ヲ申立テマス」ト呼フ者アリ「書記官抔ガ數ヘタノハ分ラヌ」ト
呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=66
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067・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) ソレデハ仕方ガナイ、閉鎖ヲ命ズ-時間ヲ多ク費サ
ヌヤウニ記名投票ヲ用ヒマス-二讀會ヲ開クニ贊成ノ諸君ハ白票、反對
ハ靑票ニ記名シテ御持チヲ請ヒマス-〓呼ヲ始メマス
〔町田書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=67
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068・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 開鎖開匣ヲ致シマスル
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=68
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069・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 投票ノ結果ヲ報ジマス
總數百六十二
可トスル者八十三
否トスル者七十八
外ニ靑ノ無效票一
卽チ該案ノ二讀會ヲ開クニ決シマス-著席ヲ請ヒマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=69
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070・吉本榮吉
○吉本榮吉君(八十二番) 斯ウナリマシタ以上ハ、讀會ヲ省略シテ確定セラ
レタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=70
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071・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 直チニ讀會ヲ省略シテ確定議ニ附キ會議スベシト云フ
動議ガ吉本君ニ依クテ提出セラレマシタ
〔「贊成」或ハ「反對」ノ聲交〓起ル〕
(谷澤龍藏君「修正說ガゴザイマス」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=71
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072・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 修正說ハ直チニ讀會省略ヲ以テ議スベシト云フ動議ガ
決シテカラデナクテハナラヌ、直チニ讀會ヲ省略致シテ確定議ヲ採ルト
云フロトニ附イテ決議ヲ採リマス、是ハ三分ノ二以上ノ贊成ヲ要シマス-
讀會ヲ省略スルコトニ同意ノ諸君ハ起立
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=72
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073・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 多數ト認メマス、因テ直チニ讀會ヲ省略シテ會議スル
コトニ決シマシター-委員會ノ修正案ヲ以テ議題トナシマスル、朗讀ハ省略
シマスル
府縣農事試驗場國庫補助法案確定議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=73
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074・谷澤龍藏
○谷澤龍藏君(百六十二番) 少シバカリ修正ヲシタイ、單簡ノコトデスカラ、
此處カラー此第一條ノ農事試驗ノ事業ノ奬勵確實ナラシムルト云フコトガ
アリマス、此確實ト云フコトハ取リタイ、何ゼ取リタイト云フコトハドウ
デアルカト言ヒマスルニ國家ガ此補助ヲスル、國家ガ補助スルニハ卽チ奬勵
スルノデゴザイマス、奬勵スルヨリ外ニ、他ニ確實ナラシムルト云フ事柄カ
ラシテ補助スルト云フヤウナコトハナイ、是ハ大變事ガ小サイヤウデスケレ
ドモ大體ノ趣意ニ關係ヲ來ス故ニ、確實ナラシムルト云フ字ヲ除イテ奬
動セシムルタメニト云フコトニ直シタイ大變此確實ト云フコトハ語弊ガア
ラウ、ソレカラ第二條ニ補助金ヲ交付スベシト云フコトガアル、是ハ交付ス
ルコトヲ得ト云フコトニシタイ、ドウモ求メナイモノニモ無理ニヤルト云フ
ヨトハ大變イカナイ、故ニ二條ヲ「交付スルコトヲ得」ト云フコトニシタイ、
ソレカラ四條ヲ削除シタイ、何ゼト言ヒマスルト斯ノ如キ强制的ノ事ヲシ
テ、國ガ奬勵スルタメニ、此繼續スル所ノ義務ヲ國ニ負ハスト云フヤウナコ
トハ甚ダ强制的ノ事デ面白クナイイケナイ、故ニ四條ヲ削除シタイト云
フ考デゴザイマス、故ニ是ダケ動議ヲ起シマス
〔「贊成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=74
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075・大原重右衞門
○大原重右衞門君(百五十九番) 私モ少シ修正ヲ試ミタイト思ヒマス、此第
六條ニ「府縣農事講習所及府縣蠶業試驗場」ト云フコトガゴザイマス、之ヲ
「府縣蠶業試驗場」ト云フコトニシタイ是ガ何せ「茶」ノ字ヲ加ヘタイト申シ
マスルト既ニ第八議會ニ於キマシテモ此製茶ノ試驗ト云フコトハ最モ目
下ノ急務ナルヲ以テ、宜シク國家ハ試驗場ヲ設ケラレタイト云フコトヲ本院
ガ建議シタ譯デゴザイマス、幸ニ本年ハ豫算案ニモ其事ガ僅少ナガラモ原案
トシテ出サレマシタ譯デゴザイマシテ、幸ヒ本會ノ贊成ヲ得テ通過致シマシ
タ譯デゴザイマス、其趣意カラ申シテモ、若シ此各府縣ニ完全ナル茶業ノ試
驗場ト云フコトヲ設ケマシテ、其仕事ヲ爲サント欲スル者ガアッタナラバ、宜
シク國家ハソレヲ補助シテ、十分ニ製造ト云フコトニ改良ヲ加ヘルト云フコ
トハ目下實ニ必要デアラウト云フ考デアリマス、長クハ述ベマセヌデゴザ
イマスガ、願ハクハ諸君ニ於キマシテモ「茶」ノ一字ヲ加ヘルコトニ同意アラ
ンコトヲ希望致シマス
(「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=75
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076・東尾平太郎
○東尾平太郞(二百八番) 私ハ委員會ノ多數ノ意見ヲ是認シマスカラ、速
ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=76
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077・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 私ハ谷澤君ニ一寸御照會致シタイノデスガ、
第二條ノ「農商務大臣ハ其試驗場ニ補助金ヲ交付スヘシ」トアルノヲ「交付ス
ルコトヲ得」ト訂正致シマスル以上ハ其一條ノ「國庫ハ每年度金十万圓ヲ
支出シテ其費用ヲ補助スヘシ」トアルノヲ「補助スルコト得」トスルノガ至
當ト思ヒマス、此一條ノ方モ修正相成ルコトニ御改メニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=77
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078・谷澤龍藏
○谷澤龍藏君(百六十二番) 唯今少シ心付キマシテ、サウ改メヤウト思ッテ
居リマシタノデ、是ハ草刈君ノ說ノ通ニ改メマス
〔草刈親明君「贊成シマス」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=78
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079・小畑岩次郎
○小畑岩次郞君(二百三十六番) 私モ修正致シマス、谷澤君ニ尙ホ照會致シ
やく、此第一條ノ國庫ハ每年度金十万圓ヲ支出スル云々、此私ハ十万圓ト云
フノヲ取ッテシマフノデ、創立ニ十万圓ヲ支出スルト極メテ、永遠ニ遺スト
云フノハ甚ダ分ラヌ、ソレデ補助スベキモノガアッタナラバ、十万圓ニ限ラ
ズ、十五万圓デモ或ハ少クテ三万圓デ宜ケレバ三万圓デモスルガ宜イ政
府ガ年々豫算ヲ以テスルガ宜イ、法律デ十万圓ト云フテ極メルノハ分ラヌ、
故ニ國庫ヨリ其費用ヲ補助スルコトヲ得、斯ウ致シマシテ、每年度以下支出
シテト云フマデヲ削ル、又費用ヲノ「ヲ」ノ字ヲ「ノ」ニスル、アトハ谷澤君ノ
通ニ致シマス、サウ致シマスレバ、私ハ或ハ稍〓法律ニ爲ルダラウト思ヒマス、
諸君モ-此案ヲ提出セラレタ諸君モ、斯ク修正スルノニ、サウシテ反對モ
ゴザイマスマイト思ヒマス、成ルベクハ斯ウナリマスレバ本年度ニ於テ三
ツデモ、·四ツデモ、必要ノモノガ起シテ補助スルト云フ必要ヲ認メタナラバ
補助スルガ宜イ、ソレガ有ル無イニ拘ラズ、十万圓ヅツヲ每年積ンデ置クト
云フノハ甚ダ分ラヌ、故ニ此處ニ金額ヲ舉ゲヌデモ宜シイナイ方ガ法律ノ
體裁ヲ爲ス、是ハ豫算デスルコトニシタイ十万圓ヲ削除スレバ私ハ同意致
シマスサウナラヌナレバ、第一條ニ於テ本員ノ修正說トシテ出スト云フ考
5発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=79
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080・谷澤龍藏
○谷澤龍藏君(百六十二番) 唯今ノ小畑君ノ說デスガ、別段-大變ニ事柄
ガ、變ッテ參リマスカラ別段ノ說トシテ小畑君カラ御出ニナルヤウニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=80
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081・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 別段ノ問題トシテ決議ヲ採リマス、朗讀シテ贊否ノ如
何ヲ調査シマス
〔町田書記官朗讀〕
谷澤君修正
府縣農事試驗場ノ事業ヲ奬勵スルタメニ國庫ハ每年度金拾萬圓以內ヲ支
出シテ費用ヲ補助スルコトヲ得
小畑君ノ修正
府縣農事試驗ノ事業ヲ奬動スルタメニ國庫ハ其費用ノ補助ヲ爲スコトヲ
得発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=81
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082・谷澤龍藏
○谷澤龍藏君(百六十三番) 前ノ少シ修正ヲ致シマス、「十五万」以內ト云フ
ノヲ「十万圓」以內ト致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=82
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083・小松三省
○小松三省君(九十四番) 本員ハ、此際此案ノ全部ヲ廢棄スルト云フ說ヲ提
出致シマス
(「ヒヤ〓〓」又ハ「往ケナイ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=83
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084・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 谷澤龍藏君ノ修正ニハ、定數ノ贊成ガアリマスカ
(「贊成々々」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=84
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085・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 定數ノ贊成ニ充チマス、小畑岩次郞君ノ修正ガアリマ
スガー小畑君ノ修正ニハ定數ノ贊成ヲ得ラレマセヌ、次ハ第二條ノ修正、
谷澤君ノハ矢張「交付スルコトヲ得」ト改メル、第四條ハ削除スルト云フノハ
谷澤君ノ意見デアリマス、ソレヨリ第六ニ大原重右衞門君ノ修正ガアリマ
7:発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=85
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086・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 私ハ此議案ノ第二條カラ第七條マデ削除致ス
ト云フ說ヲ出シマス、其理由ハ結局小松君ガ先刻御陳述ニナリマシタ所ノ通
ノ說ニ基クノデゴザリマスカラ別ニ喋々致シマセヌサウスレバ本案ハ第
一條ノ府縣農事試驗場ノ事業ヲ奬勵スルタメニ、國庫ハ每年度金十万圓以下
ヲ支出シテ其費用ヲ補助スト云フコトヽ第八條ノ附則、此法律ハ明治二十
九年四月一日ヨリ施行スト云フコトダケ殘ルノデ、左樣御承知ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=86
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087・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 該案ハ讀會省略ヲ以テ決議ヲ採ルコトニ決シテ居リマ
ス第一條、谷澤君ノ修正ヨリ決議ヲ採リマス、-谷澤君ノ修正ニ同意ノ
諸君ハ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=87
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088・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 少數、因テ谷澤君ノ修正說ハ消滅致シマシタ、次ハ委
員會ノ修正ニ就イテ決議ヲ採リマス-委員會ノ修正案ニ同意ノ諸君ハ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=88
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089・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 少數、因テ委員會ノ修正案ハ否決セラレマシタ、是ヨ
リ原案ニ就イテ決議ヲ採リマス卽チ第一條ノ原案ニ就イテ決議ヲ採リマ
ス、-第一條原案ニ同意ノ諸君ハ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=89
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090・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是レ亦少數、因テ第一條原案モ否決セラレマシタ
〔笑聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=90
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091・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 玆ニ至ッテ、本員ガ先刻提出致シマシタ、第
二條以下ヲ削除スルト云フ說ニ就イテ採決アランコトヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=91
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092・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 次ハ第二條及第三條、委員會ノ修正ニ附イテ決議ヲ採
リマス、谷澤君ノ修正「得ル」ト云フコトハ前ニ否決サレテ居ル-委員會ノ
修正案ニ同意ノ諸君ハ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=92
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093・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是亦少數、因テ第二條及第三條ノ委員會ノ修正案ハ否
決致シマシタ、次ハ原案ニ附イテ決ヲ採リマス、第二條及第三條、原案ニ贊
成ノ諸君ハ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=93
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094・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 少數、因テ原案モ亦否決セラレマシタ、諸君、第四條
以下ハ三條マデノ否決ノ結果ニ依ッテ、決議ヲ爲スノ必要ハナイト思ヒマ
ス、因テ委員付託ノ說ガナケレバ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=94
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095・東尾平太郎
○東尾平太郞君(二百八番) 否決スルノ精神デナクシテ、議題ニ於テ成立致
シマセヌ以上ハ更ニ委員ヲ選ンデ調査セラレンコトヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=95
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096・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 東尾平太郞君ノ、更ニ委員ニ付託シテ更ニ其案ヲ起サ
シムルト云フ動議
(「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=96
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097・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ニ同意ノ諸君ハ起立
起立者
〔「多數々々」ト呼フ者アリ「少數々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=97
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098・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 多數ト認メマス
(「異議ノ申立ヲ爲シマス」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=98
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099・東尾平太郎
○東尾平太郞君(二百八番) 委員ハ議長ノ指名デ九名ト云フコトニシタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=99
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100・小松三省
○小松三省君(九十四番) 異議ノ申立ヲ爲シマス
(「贊成々々ノ」聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=100
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101・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 委員ハ、議長ニ於テ指名シマス
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=101
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102・小松三省
○小松三省君(九十四番) 異議ノ申立ガアルノニ、何故ニ議長ハ採決ヲ爲サ
ラヌカ
〔「又此次ニヤリ給ヘ」「整理ノ上デ又反對シ給ヘ」「我慢セヨ」「取消スベ
シ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=102
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103・小松三省
○小松三省君(九十四番) 異議ノ申立ハ取消シマセヌ、旣ニ贊成者ガアリマ
ス
(「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=103
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104・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 最早確ニ其結果ヲ報告致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=104
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105・小松三省
○小松三省君(九十四番) ソレデハ議長ニ伺ヒタイ本員ガ異議ノ申立ヲ爲
シテ、贊成者ガアッタノヲ、議長ハ御聽取ガナイノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=105
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106・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 斯ノ如キ議論ヲ强テナサレバ、議長モ强テ申スデハア
リマセヌガ、大ニ茲ニ平和ノ御相談ヲ遂ゲタ積デアルノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=106
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107・小松三省
○小松三省君(九十四番) 平和ノ御相談ト云フナレバ、私共ハ異議ガアリマ
スニ依ッテ多數ナルヤ少數ナルヤヲ調ベテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=107
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108・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 然ラバ、二十名以上ノ贊成者ガアルヤ否ヤヲ確メマス
(「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=108
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109・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 定數ノ賛成者アリト認メマス-閉鎖-前例ノ通、
記名投票ヲ用ヒマスル、〓呼ヲ始メマスル
〔町田書記官氏名ヲ〓呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=109
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110・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 開匣ヲ致シマスル
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=110
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111・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 投票ノ結果ヲ報ジマスル
總數百四十
可トスル者八十二
否トスル者五十八
因テ議長指名ノ九名ノ委員ニ付託スルコトニ決シマス、-日程ノ第七ニ移
リマス、商法中改正法律案、朗讀ヲ省略致シマス-提出者小室重弘君
第七商法中改正法律案(小室重弘君外一名提出)第一讀會
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
商法中改正法律案
商法第百七十五條中又以下二十五字ヲ削除ス
〔小室重弘君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=111
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112・小室重弘
○小室重弘君(八十八番) 諸君、極ク簡單ニ提出ノ理由ヲ述ベテ置キマス、
全體此商法等ニ關シマスル事ハ法律專門家、或ハ實業家ノ諸君ガ能ク御承
知デアルンデアリマシテ、私共ノ決シテ自ラ是等ノ事ニ就イテ委シイモノデ
ゴザイマセヌガ、唯此箇條ニ就イテ私共ガ改正シナケレバナラヌト云フ必要
ニ迫ッテ居ルコトヲ一言述ベテ置キマスル商法百七十五條ニ株式會社ノ各
株式ノ金額ハ二十圓ヲ以テ最低度トシテゴザイマスガ、資本金ガ十万圓以上
ニ爲リマシタトキハ、五十圓ヲ下ルコトハ出來ヌト云フコトニナッテ居リマ
ス、ソレ故ニ此實際ノ上ニ之ヲ行ッテ見マスノニ、今日ノ事實トシテ十万圓以
上ニ爲ルトキハ五十圓ヲ下ルコトヲ得ヌト云フコトガゴザイマスタメニ
株式會社ノ活用ノ上ニ於テ頗ル妨ガアル、ソレ故私共ノ案デハ商法ノ百七十
五條ノ「又其資本十万圓以上ナルトキハ五十圓ヲ下ルコトヲ得ス」ト云フノヲ
削ッテシマヒタイト思フ、卽チ彼ノ株式會社ノ各株式ノ金額ハ會社資本ヲ一
定平等ニ分チタルモノニシテ、二十圓ヲ下ルコトヲ得ズト云フ是ダケノモノ
ニ百七十五條ヲシテシマフト思フノデアリマス、是等ハ私共ノ私見デハゴザ
イマセヌノデ、現ニ名古屋ノ商業會議所、或ハ四日市、或ハ津、桑名、其
他ノ商業會議所ニ於テ、商法實施以來此事ニ就イテハ〓究ヲシテ、其決議ヲ
以テ此議會ニモ度々請願書ガ出テ居ル譯デアリマス、思フニ小サイ資本ヲ集
メテ大キナ事業ヲ爲スト云フコトハ、此株式會社ノ所以デゴザイマシタナラ
バ、斯ノ如ク十万圓以上ニシタナラバ五十圓ハ下ルコトハ出來ヌト云フヤウ
ナコトハ設ケル必要ハアルマイト思フ、當時法律ヲ作ッタモノハ蓋シ十万
圓以上ニモナル所ノ大キイ會社ニ至ッテ、其株ヲ二十圓ト云フ細カナモノニ
シタナラバ煩雜ニナル憂ガアルト云フ考デアッタカモ知レヌガ故ニ、斯ノ如
ク致シマシタノデアラウガ、今日ニ於テ一方カラ考ヘルト決シテ是ガタメ
ニ煩雜ヲ省クト云フ譯ニ往カナイ、十万圓以上ノモノハ五十圓ヨリモット大
キクシテモ矢張同ジヤウナ譯ニナッテ往ク、例ヘバ十万圓以下ノ會社デゴザ
イマスレバ、其範圍ヲ出來ル丈廣ゲテ往ッテモ二十圓ノ株ガ四千九百九十九
株、十分ニ廣ゲテ往ッテモソレダケデアル、十万圓以上ノ會社デアツタナラ
バ、例ヘバ百万圓ノ會社ガアルトシテモ、五十圓株ガ二万株ニ爲ル、一千
万圓トシタナラバ二十万株ニナルモノデアリマスカラ、會社ノ資本ガ大キク
ナレバ、五十圓ヲ最低度トスレバトテ、矢張煩雜ヲ防イデ往クコトハ出來
ヌ、又私ガ此程諸君ガ決議ニナリマシタ農工銀行等ヲ見マスルニ大キニ此
商法ノ規定トハ違ッテ居リマスル、尤モ是ハ特別ナ法律ダカラ、ドウデモ宜
イデゴザイマセウガ、農工銀行案ヲ見マスト二十万圓ノ資本デアッテ、株式
ガ二十圓ト云フコトニ爲ッテ居ルヤウデアリマス、斯ノ如クデゴザイマシ
タナラバ、今日ニ於テ之ヲドウシテモ削ッタ方ガ宜イデアラウ、又近頃會社ノ
出來マスルノヲ見マスルニ、十万圓ヨリカ下ノ端數ノ附イテ居ル資本ノ會社
ガ、例ヘバ九万九千圓ト云フヤウナ會社ガゴザリマス、何故斯ノ如クデアル
カト云フト、十万圓ニスルコトハ便利デアルケレドモ、株式ノ金額ヲ五十圓
ニシナケレバナラヌト云フ制限ヲ立テラレタタメニ、十万圓以上ニスルコト
ガ出來ヌト云フ場合デゴザイマス、其實際ハ一々玆ニ申上ゲマセヌ、議案ノ
理由書ニ細カク書イテゴザイマスカラ、私ハ略シテ申シマセヌガ或ハ諸君
中ニ斯ウ云フ議論ガアルカモ知レナイ、商法ノ中デ改正シナケレバナラヌ箇
條ハ獨リ是バカリデハナイ外ニ幾ラモアルカラ、ソレ等ノモノヲ一ツ調
テ、一ノ商法ノ改正案ト云フモノヲ拵ヘルガ宜カラウト云フ議論モアッタヤ
ウデス、併ナガラ其事ハサウデゴザイマセウガ、此百七十五條ノ箇條ト云フ
モノハ日本株式會社抔ノ盛ンニ起リマス今日ノ場合デアッテドウシテモ
之ヲ改正シテ置キマセヌケレバ自ラ不都合ガ出來ヤウ、從ッテ株式會社等
ノ活動ノ上ニ妨ガアルト考ヘルデゴザイマスカラ、御贊成ヲ請フ譯デゴザイ
マス、聊カ簡單ニ述ベテ置キマス
〔政府委員法制局長官文學博士男爵末松謙澄君演擅ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=112
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113・末松謙澄
○政府委員(男爵末松謙澄君) 此商法中改正ノ法案ニ就キマシテハ提出者
ニ向ヒ一應再考アランコトヲ希望シ、竝ニ衆議院ニ向ッテ篤ト御熟慮ノ上ニ
御決議ニナランコトヲ希望致ス譯デゴザイマス、一寸見マシタ處デハ如何
ニモ提出者ノ唯今言ハレタ所、竝ニ此理由トシテ本案ニ附加致シタル所ノモ
ノトモ、共ニ大ニ理由アルガ如クニ見エマスケレドモ、篤ト御考ニナリマ
スレバ、決シテ現行法ニ於キマシテハ、唯今言ハレタル如キ漠然タル考ノミ
デ出來タモノデハナイト云フコトヲ發見致サルヽノデアラウト思ヒマス提
出者ノ重ニ立論セラレタル所ハ、今日株式ノ活動ヲ助ケルガタメニ斯ノ如キ
拘束ガアルコトハイケナイト云フコトデアリマス、成程昨今ノ狀況ヲ見マス
レバ株式會社實ニ陸續トシテ起ルヤウナル狀況ニ相違ナイノデアリマス
又其目的タルヤ多クハ殖產興業ノタメニスルモノニシテ、其基礎モ確實ナモ
ノガ多イニ相違ナイノデゴザイマス、決シテ之ヲ希望セザルニアラズ、否ナ、
益〓奬勵スルコトハ當然ノ事デアリマスサリナガラ能クミミ考ヘマスル
ト元來株式會社ナルモノハ如何ナルモノデアルカ、一方ニ於キマシテハ
少額ノ資本ヲ集メテ大事業ヲ爲スガ故ニ、其利益ハ大ナルニ相違ナイケレド
モ、又之ニ伴フ所ノ危險ト云フモノハ頗ル大ナルモノデアル隨分株式ノ名
前ヲ藉リテ種々詐僞詐術ノ起ルヤウナルコトモアル、或ハ詐僞詐術ノ積デ
ナクテモ、其形跡ガソレニ陷ルヤウナ事モ續々ト各國ニ起ル譯デアル、故
各國ニ於キマシテモ、株式會社ニ對スル立法上ノコトハ頗ル鄭重ニ致シテ居
ル譯ニ爲ッテ居ルノデゴザイマス而シテ其危險ナル所以ハ株劵ヲ小ニ致
シマスレバ尙更其事ガ甚シクナルノデアリマス、故ニ凡ソ株ノ一番最下額ト
云フモノハ第一極メテ置カナクテハナラヌノデアル、又ソレノミナラズ、
或金額以上ニハ幾干以上ト、其額ヲ極メルト云フコトモ是モ亦必要ナ譯ニ
爲ッテ來マスルノデアル、勿論之ヲ極メマスルニ就キマシテハ種々理由モアリ
マス社員ガ餘リ多キニ過ギテハナラナイト云フコトモ是モ一理由ニ相違ナ
ィ卽チ提出者ノ言ハレタル如キ意味デアリマスケレドモソレガ決シテ單
一ノ理由デナイ、例ヘバ資本總額ノ少イ所ノ十万圓未滿ト云フ會社ニ於キマ
シテハ先ヅ二十圓位ガ相當デアラウト云フコトヲ唯今ノ商法デ認メタノデ
アリマス而シテ十万圓以上ニモナリマスレバ五十圓ト云フコトニ制限ヲ
致シタノハ自ラ大金額ニ爲リマスト云フト此差ヲ生ズル必要ガ生ズル如
何トナレバ株式會社ノ失敗ヲ來シタル如キ場合ニ於テ一番難儀ヲ被ルモノハ
如何ナルモノニアルカト云ヘバ極ク小前ノモノ卽チ無識ノ細民トモ云フベ
キモノニアルノデアル、二十圓カソコラノ金デモ出シ得ルト云フヤウナルモ
ノニ多イノデアリマス、而シテ總額ノ少イ會社ニ於キマシテハ、自ラ其區域
モ狹イノデアリマスカラ、遠方カラソンナニ評判ヲ聞イテ株加入ヲ申込ミ或
ハ其株ヲ買込ムト云フ如キコトハ少ナイ併シ總額ノ十万圓以上ニモナルト
云フ會社ニナリマシテハ隨分大キナ會社デアリマスガ故ニ、遠方カラモ評
判ダケヲ聞イテ申込ムト云フヤウナ事ガ多ク出來ルノデアリマス、而シテ其
結果若モ其會社ガ斯ノ如ク確實ノモノデアッタラ宜ウゴザイマセウガ、事實
ニ於テサウ行カナイ事ガアルノデアル、故ニ是等ヲ保護シテヤルニハ、矢張
株ノ最下額ト云フモノヲ自ラ極メテ置カナクテハナラナイヤウナル次第ノモ
ノデアリマス、而シテ又株ノ金高ヲ餘リ少額ニ致シテ置キマスルト云フト、
投機ノ性質ガ愈〓容易ニ出來ルコトニ爲ッテ來ルノデアル、卽チ拂込ノ金額ハ
僅ニ致シテ、卽チ直キニ拂込メルコトガ出來ル今日ニ於テ空權利ノ賣買ト
云フコトモ實際ヤッテ居ル、是ハ法律上デハ效能ノナイ事デアリマセウトモ
考ヘラレル、又或ハ法律上デ言拔ケガ出來マシテモ、殆ドモグリ同樣デアリ
マスカラ、暫ク論外ニ致シテモ宜イガ、法律上ノ立派ナ理窟ノ上ニ於テ賣買ノ
出來ル部分ニ至リテモ、其コトガ容易ニナリマス、何トナレバ正當賣買ノ出
來ル四分ノ一ノ金額ガ隨ッテ少額ニ爲リマスカラ、投機賣買ノ機會ガ早ク出來
マス要スルニ大キナ會社ノ續々ト出來ルノニ、此株劵ト云フモノガ僅ノ拂
込デ、直ニ賣買ガ出來ル、廣ク流通スルト云フコトハ宜クナイノデアル是
等ノコトヲ見マシタガ故ニ、既ニ他國ノ立法例ヲ見マシテモ、例ヘバ佛蘭西
ニ於キマシテハ十万圓未滿ノ會社ニ於テハ株券二十圓、其以上ニ於キマシテ
ハ百圓以下ニスルコトハ出來ナイト云フコトニ爲ッテ居リマス(東尾平太郞君
「贊成シナイカラ簡單ニ願ヒマス」ト呼フ)暫ク御聽ヲ願ヒマス、贊成スル爲サ
ヌハ別ニ致シテ-而シテ日本ノ商法制定ノ歷史ヲ見マシテモ、最初商法ノ
草案ノトキニ於キマシテハ、二十圓ト百圓ト斯ウ云フヤウニナッテ居マシタケ
レドモ、ソレハ種々論議ノ末、我日本デハ二十圓ト五十圓位ガ宜カラウト
云フ見込ガ付キマシタモノト見エマシテ二十圓ト五十圓ト云フコトニ今
日ハナッテ居リマス、之ヲ又々下ニ下ゲテ二十圓ト致スト云フヤウナルコト
ハ今日ニ於テ甚ダ望マシクナイコトヽ思ヒマス、一方ニ於テ資本ノ活動ヲ
助ケルト云フコトハ望マシイト同時ニ、一方ニ於テハ是等ノ事ハ十分ニ御考
ニナラナクテハナラヌコトヽ考ヘマス、殊ニ又今日商法ニ於キマシテ民
法ノ修正ト共ニ全體ニ於テ種々調査中ニナッテ居リマスルノデ、若モ果シテ
此箇條ガ修正ヲ要スルト云フコトデアルナラバ其調査ヲ致ス所ノ會ニ於キ
マシテモ十分ニ討議ヲ盡スト云フ考モアルノデゴザイマス何ヲ苦ンデ之ヲ
今日變ヘナケレバナラヌト云フ必要ガゴザイマセウ、又現在諸株式會社ノ組
織ノ模樣抔ヲ見マシテモ、必ズ之ヲ變ヘナクテハナラヌト云フ程ノコトハナ
イノデアリマス、十万圓以上ノ會社ニナレバ-是ヲ唯一應想像ノ上ニ於テ
多少ノ議論ガアレバトテ、容易ニ法典ノ成條ヲ動スト云フコトニ爲リマシテ
ハ甚ダ立法ノ手續上ニ於キマシテモ然ルベカラザルコトヽ考ヘマスル、法
典ノ如キハ十分ニ害アリ益ナイト云フコトヲ認メタ上デナクテハ變ヘナイ
ト云フ方ガ適當ト考ヘマス而シテ今マデ申シマシタ通、此箇條ノ如キ十分
ナル理由ノアッテ出來テ居ルモノデアリマスル故ニ、唯今日風評上確實ナル
會社バカリガ世ニアルト云フヤウナコトノミヲ以テ、直チニ御論ニナリ,直
チニ御改正ニナルト云フコトハ御同意致シ兼ネマスルガ故ニ、諸君ニ於テ
モ成ルベク御再考御熟考アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=113
-
114・小室重弘
○小室重弘君(八十八番) 末松君ニ御尋致シマスルガ、末松君ハ斯ノ如ク長
ク御辯明ニナリマスル譯デアリマシタナラバ私共ハモウ少シ精シク演說ヲ
スル筈デアッタ、全體末松君ノ演說ヲ聽キマスルト自ラトカ、程度トカ云
フヤウナ事柄ガ多イ、私共ハ末松君ノ御演說ニ依ツテ見レバ、是ガ改正ヲス
レバ何ガ害ガアルカト云フコトヲ承ラナケレバナリマセヌ、末松君ニ反問ヲ
致シマス、若モ此株金ヲ少シニスルト云フコトガ害ガアルト云フナラバ、其
株式ノ減少セラレタモノガアルカラ、是ニ就イテノ害ヲ舉ゲテ貫ハナケレバ
ナラヌガ、例ヘバ五六年前第一銀行ガ百圓株ヲ五十圓株ニ引直シタソレヲ
小サクシタノガドンナ害ガアルカ、或ハ日本紡績會社ノ如キハ商法實施以
前ノ設立デアルノデ、二百万ノ資本ノ大會社デモ矢張二十五圓ノ小サナ株式
デヤッテ居ル、斯ウ云フモノハ害ガアッタト云フコトヲ見ルコトガ出來ナイ、
又若シモ十万圓以上ハ五十圓株ト云フコトニ極メテゴザイマスレバ、會社ノ
資本ヲ增シテ行キマシタ時ニ-增資ヲシヤウト云フコトガ行レマシタ時分
ニハ今度ハ株式ヲ持ッテ居ル人ノ頭ヲ減ラシテ參ラナケレバナラヌ、十
万以上ニスルト株式ヲ五十圓ニシナケレバナラヌカラ、株式ヲ減サナケレバ
ナラヌ、ソレガ出來ヌト云フヤウナコトデ增資會社ガ頻ニ苦ンデ居ルト云フ
コトモ末松君抔ハ御存知ノ事ト思フ、其等ニ就イテ御考ノアル〓ハ何レニ在
ルカト云フコトヲ承ッテ置カナケレバナラヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=114
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115・末松謙澄
○政府委員(男爵末松謙澄君) 唯今ノ御尋ニ御答致シマスルガ、株劵ノ額面
ノ極ク小サイノヽ害ト云フコトハ額面ガ小サケレバ小民デモッテ之ヲ所有
スルコトガ出來ル、卽チ貧乏人ガ之ヲ所有スルコトガ出來ル、貧乏人ガ所有
スルノガ惡ルイト云フノデハアリマセヌケレドモ、無理ヲシタ金デ段々持ツ
ト云フ風ニ爲ッテ來タ時ニ、萬一失敗デモアッタトキニハ其恐慌タルコトガ、
最モ甚シイノデアル、恐慌ガ最モ甚シク、ソレガタメニ非常ノ艱難ガ起ルノ
デアル、又詐僞ノ場合ニ於テ多クノ無識ノ細民ガ之ニ陷リ易イノデアリマス、
其等ガ小株ヲ不利トスル第一ノ論點デアルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=115
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116・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 私ハ反對ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=116
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117・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 質問ヲ先キニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=117
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118・星亨
○星亨君(八番) 一寸末松君ニ御答ヲ願ヒタイ、末松君ハ今演說サレタ中ニ
權利株ノ如キハ效ガナイト云フヤウナコトヲ仰シヤッタヤウデゴザイマスル
ガ、末松君ハ法制局長官デアレバ、此議論ト云フモノハ大ニ社會ニ對シテ影
響ヲ生ズルコトヽ考ヘル、私共ハ決シテ權利株賣買ハ效ノナイトハ思ハナイ
ノデアル、ソレデ民法デモ財產ノ權利ト云フモノハ讓ルト云フコトガ出來ル
ト書イテアルノデゴザイマスカラ、若シ末松君ハ或ハ其權利ヲ賣ルコトハ出
來ルケレドモ、ソレガマルデ-會社ハ其人ニ向ッテ權利ガナクナッテシマフ
ト云フダケノ意味デアルナラバ兔モアレ、マルデ賣買ガ效ノナイト云フコト
ニナルト大ナル影響ヲ生ズルコトヽ思ヒマスカラ、一應承ッテ置キタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=118
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119・末松謙澄
○政府委員(男爵末松謙澄君) 唯今ノ星君ノ御尋ニ就キマシテハ私ハ權利
株ト云フ語ヲ用ヒタ積デハアリマセヌ、權利株賣買ハ如何ト確ト法律論ヲシ
タ積デハアリマセヌ、唯世間デハ詰リ斯ウ云フヤウナ會社ヲ起サウト思フ、
ドッコイ己モ一ツ乘ラウ、宜シイ、己ニモ利益ヲ分ケテ呉レロ幾ラカ金ヲ
出サウカラ、君ノ豫約ノ株ヲ幾ラ僕ニ吳レロト云フヤウナ話デ、隨分漠然タル
事デヤッテ居ル者ガアル、サウ云フモノハ隨分法律上疑ハシイモノデアル譯
デアルガ、ソレハ姑ク措キ、若モ本當ニ株券額面何分ノ一ト云フモノヲ拂ッ
タ時ニハ賣買ガ出來ルト云フコトガ商法ニ在ルノデ、其賣買ガ出來ル拂込金
ノ割合ハ額面ノ金高ニ伴フ故、額面ガ少ケレバ其割合モ極低クナル、故ニ投
機賣買ヲスルタメニ早ク流通スル性質ヲ有スルト云フコトヲ重モニ申シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=119
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120・星亨
○星亨君(八番) サウスルト唯今ノ一圓ナリ二圓ナリ拂込ンダ、其〓ニ就
イテハ賣ルコトガ出來ルト云フ〓ダケニ止ルト考ヘマスルガ、ソレデ宜シケ
レバ、私ハ此案ニ就イテハ又考ヲ持ッテ居ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=120
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121・末松謙澄
○政府委員(男爵末松謙澄君) 私ハ今申シマシタ所ハ、一圓ナリ二圓ナリ拂
込ンダ權利ヲ賣ル抔ト云フ類ノ事ガ、違法トカ何トカ極テ論ジタ譯デハナ
ク唯一般ニ世間ニ有觸レタル事ヲ指シタモノデス、卽チ例ヘバ玆ニ人アリ
或ル會社ヲ發起ヲシテ、自分ガ幾株持ッテ居ル時ニ、何モ拂込モナイモノヲ、
將來此株ヲ讓ツテ呉レト云フテ幾分ノ代價ヲ拂フト云フヤウナ事ハ世間ニ多
ク流行シテ居ル、此等ノ事ニ汎然ト言ヒ及シタルマデヾス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=121
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122・星亨
○星亨君(八番) 分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=122
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123・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 私ハ是カラ申シマス、小室君ハ折角御提出ニ
爲リマシタカラ、成ルベク贊成ヲ致シタイト云フ考デアリマスルケレドモ、
ドウ考ヘテモドウモ商法中ノ此一部改正ト云フコトハ甚ダ輕卒ニ失シテ居
ルト云フ考デゴザイマス、到底贊成スルコトガ出來マセヌガ故ニ、聊カ反對
ノ理由ヲ述べマス勿論本案ノ如キハ委員付託ト云フ說モゴザイマセウガ、
商法中ノ一箇條ノ其一部分ヲ削除スルト云フコトニ就イテ、何モ別ニ委員會
ニ之ヲ付託スルト云フ必要ガナイト思ヒマスルガ故ニ、直ニ反對ノ意見ヲ述
ベマス、法律ヲ新ニ設定シタ、法律ヲ新ニ其國ニ實施シタト云フトキニハ
ドウシテモ多少ノ異論ト云フモノハ免レナイ、獨リ商法ニ限ッタ事デナイ、
況ヤ商法ノ如キモノハ最モ其社會ニ廣ク行レテアリマスルガ故ニ、此異論モ
新法ノ設定ト共ニ多イモノデアル、商法ノ此小室君ガ修正サレントスル所
ノ百七十五條モ、或ハ小室君ノ御說明ノ如キ不都合ヲ感ズルモノモゴザイ
マセウ、然ドモ一局部ノモノガ不都合ヲ感ジタカラト云フテ、其故障ト云フ
モノガ果シテ適當ノ故障デアルカ、事實ニ適中シテ居ルカ否ヤト云フコト
ハ先ヅ商法ガ實施ニナッテ未ダ一年足ラズノ今日ニ於テ之ヲ斷定スルコト
ガ出來ナイノデアル、卽チ小室君ニ反對スル所ノ政府委員ノ說明ヲ聽イテ見
レバ或ハ政府委員ノ說明ガ適當カモ分ラナイノデアル殊ニ況ヤ商法ノ如
キハ數百箇條ノ中催カ一部分ダケ實行ニ相成ッタノデゴザイマス、其大部分
ト云フモノハ未ダ實行ガナイノデアル、卽チ此商法ト云フモノニ就イテハ當
時政府ガ法典調査委員會ニ附シテ是ニ修正ノ手續中デアルト云フコトデア
ル、果シテ左樣デゴザイマシタナラバ、此商法ノ百七十五條ニ多少不都合ナ
事ガアルトシテモ全部ノ商法ノ實行ノ期ヲ待タレヌコトモナケレバ又全
部ノ商法ノ實行ノ期ヲ待ッテ他ニ不都合ガゴザイマスル條項ト共ニ、是ガ改
正ヲ爲スコトガ出來ナイト云フヤウナ必要ニ迫ッタ今日デハ私ハナイト思フ
ノデアル、要スルニ今日ハ商法ノ實行尙ホ日淺クシテ、卽チ其全部ノ實行ヲ
見ザルトキデゴザイマスルガ故ニ、小室君ノ所謂五十圓ヲ一株トスルト云フ
コトハ果シテ此日本國ニ害ガアルカ害ガナイカト云フコトハ何人ト雖モ
未ダ見定メノ付カナイコトデアラウト思ヒマス故ニ此百七十五條ノ一箇條
ニ限ッテ今日之ガ訂正ヲ爲サントスルハ少シク事輕燥ニ失シテ居ッテ苟
モ議員タル者ノ爲スベキ事デナカラウト思フノデアル願ハクハ滿場ノ諸君
ニ置カセラレマシテモ、宜シク御考ノアランコトヲ希望致シマスル
〔「採決々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=123
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124・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 該案ニ附イテ二讀會ヲ開ク如何ノ決議ヲ採リマス、該
案ノ二讀會ヲ開クニ同意ノ諸君ハ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=124
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125・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 少數、卽チ二讀會ヲ開クベカラザルモノト決シマシタ、
次ハ第八、水利組合條例中改正追加法律案第一讀會、此ノ以下ハ皆期讀ヲ省略
致シマスル-大田信一君
第八明治二十三年法律第四十六號水利組合條例中第一讀會
改正追加法律案(大田信一君外四名提出)
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
明治二十三年法律第四十六號水利組合條例中改正追加法律案
明治二十三年法律第四十六號水利組合條例中左ノ通改正追加ス
第二十條組合會議員選舉人被選舉人ノ資格、議員ノ數、任期及選舉ノ方法
ハ組合規約ノ定ムル所ニ依ル
組合會議員ノ選舉ニ關シテハ市町村會議員選舉罰則ヲ適用ス
第二十三條選擧ノ規定ニ違背スルコトアルトキハ其事ノ輕微ニシテ選
舉ノ結果ニ異動ヲ生セス若ハ其事ノ更正シ得ヘキ場合ヲ除クノ外其選舉
ヲ無效トス又當選者中其資格ノ要件ヲ有セサル者アルトキハ其當選ヲ無
效トス
選舉權被選舉權及選舉ノ效力ニ關スル異議ハ組合會之ヲ議決ス
議員中其資格ノ要件ヲ有セサル者アルトキハ其職ヲ失フモノトス其要件
ノ有無ハ組合會之ヲ議決ス
本條組合會ノ議決ニ不服アル者ハ次項ノ場合ヲ除クノ外郡參事會ニ訴願
シ郡參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願スルコトヲ得
組合ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル場合及郡內ニ止ルモ郡長
管理者タル場合ニ於テ本條組合會ノ議決ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴
願スルコトヲ得
但組合ノ區域二府縣以上ニ涉ル場合ニ於テ府縣參事會ニ訴願スル者アル
トキハ其關係參事會連署ヲ以テ內務大臣ニ具申シ主管ノ指定ヲ請フヘシ」
本條府縣參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
本條ノ事件ニ付テハ管理者ヨリモ亦異議ヲ申立又ハ訴願若ハ訴訟ヲ爲ス
コトヲ得
選舉人選舉ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選舉ノ日ヨリ七日以內ニ申立ヘ
シ
本條ノ異議、訴願若ハ訴訟ノ爲ニ處分若ハ議決ノ執行ヲ停止スルコトヲ
得ス但議決若ハ裁決確定シ又ハ判決アルニ非サレハ更ニ選舉ヲ行フコト
ヲ得ス
第三十二條
二組合會ノ議事ヲ準備シ及其議決ヲ執行スル事
組合會ノ議決其權限ヲ越ヘ若ハ法律命令ニ背キ若ハ公益ニ害アリト
認ムルトキハ管理者ハ自己ノ意見ニ依リ若ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ
理由ヲ示シテ(議決ニシテ執行ヲ要スルモノハ其執行ヲ停止シ)之ヲ
再議セシメ猶其議決ヲ改メサルトキハ次項ニ揭クル場合ヲ除クノ外
郡參事會ノ裁決ヲ請フヘシ郡參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣參事
會ニ訴願スルコトヲ得
組合ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル場合及郡內ニ止ルモ
郡長管理者タル場合ニ於テ組合會其議決ヲ改メサルトキハ府縣參事
會ノ裁決ヲ請フヘシ但組合ノ區域二府縣以上ニ渉ル場合ニ於テ府縣
參事會ノ裁決ヲ請フ者アルトキハ第二十三條第五項但書ノ例ニ依
權限ヲ越ヘ若ハ法律命令ニ背クニ依テ再議ニ付シタル場合ニ於テ本
條府縣參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
公益ニ害アルニ依テ再議ニ付シタル場合ニ於テ本條府縣參事會ノ裁
決ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第四十三條中「府縣知事」トアルヲ「監督官廳」ト改ム
第四十四條末項中「府縣知事」トアルヲ「監督官廳」ト改ム
第四十五條水利組合ハ次項ニ揭クル場合ヲ除タノ外第一次ニ郡長第二次
ニ府縣知事第三次ニ內務大臣之ヲ監督ス
組合ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル場合及郡內ニ止ルモ郡長
管理者タル場合ハ第一次ニ府縣知事第二次ニ內務大臣之ヲ監督ス
組合ノ區域二府縣以上ニ渉ル場合ニ於テ此法律中府縣知事ノ職權ニ屬ス
ル監督上ノ事項ハ其關係ノ府縣知事協議ノ上之ヲ處分スヘシ若シ互ニ意
見ヲ異ニスルトキハ內務大臣ニ具狀シ指揮ヲ請フヘシ
第四十六條組合ノ行政ニ關スル第一次監督官廳ノ處分ニ不服アル者ハ其
區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル場合及郡內ニ止ルモ郡長管理者
タル場合ニ於テハ內務大臣ニ訴願シ其他ノ場合ニ於テハ府縣知事ニ訴願
シ府縣知事ノ裁決ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
此法律中ニ規定スル異議若ハ訴願ハ處分書若ハ裁決書ヲ交付シ又ハ之ヲ
告知シタル日ヨリ十四日以內ニ其理由ヲ具シテ之ヲ提出スヘシ但此法律
中別ニ期限ヲ定メタルモノハ此限ニ在ラス
此法律中ニ規定スル行政訴訟ハ處分書若ハ裁決書ヲ交付シ又ハ之ヲ告知
シタル日ヨリ二十一日以內ニ提出スヘシ
行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ內務大臣ニ訴願スルコ
トヲ得ス
訴願及訴訟ヲ提出スルトキハ處分又ハ裁決ノ執行ヲ停止ス但此法律中別
ニ規定アリ又ハ當該官廳ノ意見ニ依リ其停止ノ爲ニ組合ノ公益ニ害アリ
ト爲ストキハ此限ニ在ラス
第四十七條組合費賦課ノ錯誤ニ關スル異議ハ管理者之ヲ決定ス
本條管理者ノ決定ニ不服アル者ハ次項ニ揭クル場合ヲ除クノ外郡參事會
ニ訴願シ郡參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願スルコト
ヲ得
組合ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル場合及郡內ニ止ルモ郡長
管理者タル場合ニ於テ本條管理者ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴
願スルコトヲ得但組合ノ區域二府縣以上ニ涉ル場合ニ於テ府縣參事會ニ
訴顯スル者アルトキハ第二十三條第五項但書ノ例ニ依ル
本條府縣參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
本條ノ異議ハ賦課令狀ノ交付後三箇月以內ニ之ヲ申立ツヘシ
本條ノ異議若ハ訴願ノ爲ニ處分ノ執行ヲ停止スルコトヲ得ス
第五十一條水利組合關係者若ハ總代人總會議ニ出席セサル爲總會議ヲ開
クコト能ハサルトキ若ハ其議決スヘキ事件ヲ議決セサルトキハ府縣知事
ハ府縣參事會ノ議決ヲ經テ處分スルコトヲ得但組合ノ區域二府縣以上ニ
涉ル場合ニ於テハ關係府縣參事會ノ意見ヲ聞キ內務大臣ノ指揮ヲ請ヒ處
分スルコトヲ得
水利組合會招集ニ應セス若ハ成立セサルトキ又ハ其議決スヘキ事件ヲ議
決セス若ハ議了セサルトキハ管理者ハ監督官廳ノ指揮ヲ請ヒ處分スルコ
トヲ得
水害豫防組合會ニ於テ組合事業ノ爲必要ノ費用ヲ否決シ若ハ議決スト雖
必要ノ給需ヲ缺クトキハ管理者ハ監督官廳ノ指揮ヲ請ヒ處分スルコトヲ
得
第五十四條第二十九條及第三十條ニ依リ組合ノ事務ヲ管掌スル官吏及市
町村吏員ヲ除クノ外組合ノ吏員ニ對シ懲戒處分ヲ要スルコトアルトキハ
次項ノ場合ヲ除クノ外町村制第百二十八條ノ例ニ依ル
組合ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル場合及郡內ニ止ルモ郡長
管理者タル場合ニ於テ前項ノ處分ヲ要スルトキハ市制第百二十四條ノ例
ニ依ル但組合ノ區域二府縣以上ニ渉ル場合ニ於テ府縣參事會ノ裁決ヲ要
スルコトアルトキハ第二十三條第五項但書ノ例ニ依ル
附則
此改正法律ハ發布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔大田信一君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=125
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126・大田信一
○大田信一君(九十二番) 諸君、私ハ明治二十三年法律第四十六號水利組合
條例ノ改正案ヲ提出シマシタル一人デゴザイマス故ニ簡單ニ其理由ヲ述ベ
テ諸君ノ御贊成ヲ仰ガウト存ジマス、然ルニ此水利組合條例ノ改正案ハ既
ニ諸君モ御承知ノ如ク第八議會ニ於テ本院ニ之ヲ提出シマシタコトデゴザイ
マスサウシテ第八議會ニ於キマシテハ幸ニ諸君ノ御贊成ヲ得マシテ、大多
數ヲ以テ本院ヲ通過シマシタコトデゴザイマシタガ、不幸ニモ貴族院ニ於テ
二三ノ少數デ以テ否決ヲ致シマシタコトデゴザイマス其貴族院ニ於テ否決
サレマシタル理由トスル所ハ一ハ訴願訴訟法等ノ不完全云々ト云フ論據モ
アリマシタガ、重ナル所ハ唯斯ノ如キ議案ハ本年ノ場合ニ議スルトキデナ
イ斯ウ云フヤウナ誠ニ薄弱ナル議論デ以テ僅々三四名ノ少數デ否決ヲ致シ
タコトデゴザイマス、誠ニ此〓ニ就キマシテハ私共ハ遺憾トスル所デモゴザ
イマスル又獨リ私ガ遺憾トスルノミナラズ、幸ニ本院ガ多數ヲ以テ通過ヲ
致シタル議案デゴザイマスル上ニ、諸君モ共ニ御同感ノコトヽ私ハ信ジテ疑
ハヌノデゴザイマス、ソレデ其畢竟スルニ唯本年ノ如キ時機ニハ、斯ノ如キ
議案ハ議スル必要ガナイ、斯ウ云フガ如キ諸君デアッテハ畢竟此水利組合
條例ノ不完全デアル是非改正ヲシナケレバナラヌト云フ必要ヲ感ジナイ
之ヲ平タク言ヘバ則チ水利組合條例ヲ實行スルトニムフコトノ經驗ノナイ諸
君デアッタデアラウト私ハ信ズルノデアリマス尤モ此水利組合條例ナルモ
ノヲ常ニ活用シテ、卽チ適用ヲシナケレバナラヌト云フ所ノ地方人民ニ至リ
マシテハ悉ク此現行法ノ不完全ニシテ、ドウシテモ改正ヲシナケレバナ
ラヌト云フコトヲ熱心ニ思フテ居ルト云フコトハ私ノ喋々ヲ俟タナイ次第
デゴザイマス、況ヤ此法律ヲ活用シナケレバナラヌト云フ地方カラ選出セラ
レテ居ル所ノ議員諸君ニ於テハ勿論御同感デアラウト私ハ信ジマス、ソレ
デ此改正ヲシナケレバナラヌト云フコトノ理由ハ既ニ前ニ申上ゲルガ如ク、
昨年大多數ヲ以テ本會ヲ通過シマシタルコトデモゴザイマスルカラシテ、別
段此理由ニ至ッテハ私ハ喋々ヲ述ベマセヌデゴザイマスルガ、唯希ハクハ最
早本年ノ會期モ、諸君ノ御承知ノ通餘程切迫ノ今日ニ爲ッテ居ル次第デゴ
ザイマスル、ソレデ此場合ニ幸ニ諸君ノ御贊成ヲ得マシテ、貴族院ニ送付ノ
手順ニナリマシタ所ガ、萬一貴族院ニ於テ又昨年ノ如キ場合ト爲リマスレ
バ誠ニ私ノ遺憾トスルノミナラズ、之ヲ活用シナケレバナラヌト云フ地方
カラレテ選出セラレテ居ル所ノ諸君ニ於テモ、定テ御同感デアラウト存ジマ
スカラ、成ルタケ此場合ニハ速ニ本案ヲ通過セラレテドウカ此現行ノ水
利組合條例ノ完全ヲ期スルト云フコトニ致シタイト存ジマスルコトデゴザ
イマス、且又昨年卽チ第八議會ニ於テ、此案ハ委員ニ付託ニナリマシタ當時
ニ、委員會ニ於テモ數囘ノ特別委員會ヲ開キマシテ、ソレニハ當時ノ政府委員
前縣治局長江木君デゴザイマスガ、每囘出席サレテ其委員諸君ノ意見ト、又政
府委員タル江木前縣治局長ノ意見ト互ニ交涉ノ上デ、反覆審議ヲシタ末、唯
今諸君ニ御頒チ申シテアルガ如キ議案ガ、乃チ委員會ノ決議ト爲ッテ、其委員
會ノ結果ガ今諸君ニ御頒チニナッテ居ルガ如キモノニ相成ッタノデゴザイ
マス、ソレデ本年モ昨年モ本案ヲ通過シタ如クノ儘、一字一〓ノ相違モナイ
所ヲ以テ本院ニ提出致シタ譯デゴザイマスルカラ、諸君ハドウカ其邊ヲ御諒
知戴キタイト思ヒマス、且ツ又此修正ノ箇所ニ就キマシテハ大體ノ意味
ヲ變ヘルト云フコトハ、卽チ諸君ノ御承知ノ通一一三箇所ニ過ギナイコトデゴ
ザイマス併ナガラ色〓字句ノ上、其他些末ナ場所、些末ナ改正ヲスルコト
ハ箇所ニ依ッテ多クアリマスルカラシテ一々是ガ諸君ノ御尋ヲ蒙リ、又是ニ
對シテ應答ヲスルト云フコトハ餘程頰雜ヲ極メマスル譯デゴザイマスカラ、
卽チ諸君ニ御渡シヲ致シマシタ議案ノ末尾ニ、參照書類トシテ其理由、及市
町村制等ノ規則ヲ引用致シタ所ノモノヲ添付致シテアリマスカラ、諸君モ御
承知デアリマセウ、ドウカ諸君ニ於テハ此改正ヲシナケレバナラヌト云フノ
理由トシテ、其箇條ニ就イテ宜シク御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス、何分今申
上ゲマシタ如キ理由デゴザイマスルカラ、ドウカ本案ヲ速ニ諸君ノ御贊成ヲ
得テ、本會ヲ通過セラレンコトヲ偏ニ希望シマスル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=126
-
127・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 通告ガアリマスル-草刈親明君
(草刈親明君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=127
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128・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 本案ハ昨年ノ議會ニ提出ニ相成リマシテ、サ
ウシテ本院ハ首尾能ク通過致シテ、貴族院ニ囘ッテ否決セラレタト云フ事柄
ハ大田君ガ唯今御演說ニ相成ッタ通ニ相違ナイコトヽ信ジテ居リマス、併
ナガラ貴族院ガ此議案ヲ否決致シタト云フ理由ニ至ッテハ、大田君ノ言フ所
ト大變ニ違ッテ居ルノデアル、實ハ昨年議會ニ於キマシテハ本員等モ能ク
此議案ト云フモノヲ考ヘマセイデ、卽チ盲判ヲ押シテ、サウシテ此議場ヲ通
過セシメタト云フヤウナ考ガ後トカラ分ッタ、卽チ貴族院議員ノ意見ヲ聞イ
テ後始テ覺ッタ、而シテドウ云フ考ヲ起シタカト云フト、實ニ衆議院ハ貴族
院ニ對シテ面目次第モナイコトヲ致シタ、大失策ヲ致シタノデアルト云フコ
トヲ感ジタノデアル、卽チ貴族院ガ此議案ヲ否決致シマシタ所ノ理由ハ此
議案ハ人民ノ權利ヲ縮小スルモノデアル、民權ヲ擴張シナケレバナラヌト云
フ今日ノ時代ニ於テ、民權ヲ縮小スル議案ヲ出スト云フコトガナイ、法律ヲ
拵ヘルト云フ倒サマナル理窟ハナイト云フコトデ貴族院ガ否決シタ、卽チ其
條項ヲ尋ネテ見レバ、如何ニモ貴族院ノ言フ通リニナルノデゴザイマス貴
族院ノ言フコト少シモ過チガナイノデアル是ニ於テ衆議院タルモノ、卽チ
直接ニ人民ヲ代表スル者ハドウシテモ害ガアルト言ハナケレバナラヌト私
ハ思フノデアル、先ヅ水利組合條例ヲ改正セントセラルヽ〓ハ何處デアルカ
ト云フニ現行水利組合條例ノ第二十條、第四十六條、ソレカラ第四十七條
ノ此三箇條デゴザイマス、其他ハ法律ノ改正ノ結果、卽チ第二十條ノ法律ノ精
神ヲ改メタル故ニ、何十條ハ斯樣ノ手續ニシナケレバナラヌ、斯ウ云フ法律
ヲ適用シナケレバナラヌト云フ如キ、若クハ字句ノ修正ノ如キニ過ギナイノ
デゴザイマス、故ニ此改正案ノ根本、土臺ト云フモノハ唯今申シマシタ所
ノ二十條、四十六條、四十七條ノ三箇條デ改正スルト云フコトデゴザイマスル
ガ故ニ、此三箇條ニ對シテ反對ナル以上ハ卽チ全部ニ對シテモ反對デナケ
レバナラヌト信ジマスルガ故ニ、私ハ全部反對ノ演說ヲ致スノデアル偖
テ其前ニ一言申シテ置カナケレバナラヌト思ヒマスノハ抑〓昨年度ノ議會
ニ水利組合條例ト云フモノヽ改正法律案ガ提出ニ爲ッタ、其提出案ハドウデア
ルカト斯樣ニ考ヘテ見レバ、單ニ二十條ヲ改正スルダケノ法律案デアッタノ
デス而シテ是ヲ委員會ニ付託シタ所ガ、委員會ニ於キマシテハ唯今大田君
ノ言フ通、大變ナル條項ノ改正案ヲ可決シテ此議會ニ報告シタ、而シテ其委
員會ガ修正シタ所ノモノハ誰ガ拵ヘタモノデアルト思ッテ探ッテ見レバ政
府ノ御拵ヘニナッタノヲ直チニ頂戴シテ此議場ニ報告シタノデアル、參考書
ト爲ッテ居ル所ノ此法文ノ全部、及理由ノ全部ト云フモノハ、政府ガ拵ヘタ
モノヲソレヲ委員會ガ貰ッテ、サウシテ委員會ノ意見トシテ此議場ニ報告シ
タノデアル、斯ウ云フノデアル故ニ、其議案ノ改正ニ爲ッタ跡ニ就イテ之ヲ
見レバ、貴族院ノ云フ通、一方カラシテハ人民ノ權利ヲ縮小セントスルモノ
ト又一方ヨリシテハ行政官ノ權利ヲ擴張セントスルモノヽ二ツニ過ギナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=128
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129・徳増源太郎
○德增源太郞君(三十五番) 其時ニ草刈君ハ贊成シタノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=129
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130・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 贊成ハシナカッタラウト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=130
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131・徳増源太郎
○德增源太郞君(三十五番) 盲判ヲ押シタト云フノハドウ云フ譯デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=131
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132・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 此議場デ可決シタノダ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=132
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133・徳増源太郎
○德增源太郞君(三十五番) 君ハ贊成ヲシタノダラウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=133
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134・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) ソンナ事ハ默ッテ御出ナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=134
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135・徳増源太郎
○德增源太郞君(三十五番) 盲判ヲ押シタナラバ辭職シ給ヘ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=135
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136・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 此議案ノ第二十條ヲ見マスレバ二十條ノ理
由ニドウ云フコトガアルカ、驚入ッタコトヲ書イテ居ル、私ノ演說ヲ傍聽ス
ル人ノ如キハ、此條項ヲ讀ンデ說明セラレタナレバ、顏カラ汗ガ流レルデア
ラウ、ドウ云フコトヲ書イテアルカト云フト、現行ノ法律ニ依レバ、組合員
タル以上ハ總テ組合會員ノ選舉權ヲ有シテ、サウシテ被選舉權ヲモ有スルノ
デアル、故ニ組合會員ノ選舉權ト云フモノニ制限ヲ置カナケレバナラヌノデ
アル、今日ノ水利組合員ト云フモノヽ其上ニ制限ヲ置カナケレバナラヌ、卽
チ語ヲ換ヘテ言ヘバ是マデノ選舉權ト云フモノハ廣過ギルカラ、此選舉權
ヲ狹クシナケレバナラヌカラ縮メナケレバナラヌト斯ウ云フノデアル、是
ガ果シテ今日ノ國論ニ適フテ居リマスカ、私ハ甚ダ怪訝ニ堪ヘナイノデアル
斯樣ナ法案ヲ攻擊シテ、サウシテ自由主義ヲ執ル人ミヨリ御叱ヲ蒙ルト云フ
コトハ實ハ意外千萬デアル、偖テ現行法ノ第二十條ヲ見ラレヨ現行法ノ
第二十條ヲ見レバ斯ウナッテ居ル「組合會議員ハ其組合會ニ於テ之ヲ選舉ス
ヘシ云々」成ル程斯ウゴザイマスルガ故ニ、水利組合員ナルモノヽ選舉權ト
云フモノハ普通選舉、卽チ無制限選舉ナルガ如クニ見エテ居ル、無制限選
舉ハ我國ニ行レテ居ラヌカラ、制限ヲ附ケルト云フノハ尤ナル議論デアル
デゴザイマセウガ、此箇條バカリヲ讀マナイデ、其他ノ條項モ御讀ミナサ
イ此水利組合會ナルモノハ二ツアルノデアル、一ハ普通水利組合會、一ハ
水害豫防ノコトヽ云フノデアル而シテ普通組合會ノ其組合會員ハドウ云フ
資格ヲ有スルカト云フテ見レバ、第七條ニ「普通水利組合員ハ組合事務ノタメ
利益ヲ受ケル土地ヲ以テ區域トス」其土地所有者ヲ以テ組合員ト云フノデア
ル、卽チ水利組合員ナル者ハ其區域内ニ在ッテ土地ノ所有者デナケレバナ
ラヌト云フコトニ爲ッテ居ル、諸君、旣ニ水產組合員タル者ハ不動產ヲ有スル
所ノ立派ナル公民デアル不動產ヲ有スル所ノ實ニ今日世間ヨリ名譽アル人
トシテ尊マルヽ所ノ人民デアル、偖テ又水害豫防組合ノ方ニ移ッテ見マスレ
バ第十四條ニゴザリマシテ、是ハソレト少シ違ヒマス、卽チ水害豫防組合
員ノ組合議員タル者ハ、土地ヲ有スルノ外ニ家屋ヲ有サナケレバナラヌ普
通水利組合議員ハ土地ヲ有スレバ宜シイガ、水害豫防組合員ハ土地ヲ持ッタ
上ニ家屋ヲ持タナケレバナラヌ家屋ヲモ有シテ居ル土地ヲ有シテ居ル所
ノ人間ガ卽チ組合會員トナル、水利組合員ト爲ルベキ要素ハ不動產ヲ有サナ
ケレバナラヌト云フモノデアルトシタナラバ其不動產ヲ有シタ所ノ全部カ
ラ各自ガ信ズル所ノ議員ヲ舉ゲテ、サウシテ組合會ノ議員トシテ何ノ不都合
ガゴザイマス(「簡單々々」ト呼フ者アリ)是ハ條項ガ長ウゴザイマスカラ、サ
ウ云フ譯ニハイキマセヌ、デ、何シロ簡單ニ言ヒマス唯今謂ッタ通デアレ
バ何故ニ此上ニ又資格ト云フモノヲ定メナケレバナラヌト云フ必要ガアル
ヤ而シテ水組合ト云フモノハ御承知ノ通リ、第一條デ定メラレテ居リ
マス所ノ府縣稅、又ハ郡費ノ支出ニ屬セザル所ノ水利、土工事業ニ關スル組
合デアル、卽チ一縣一郡ノ全體ニ深ク利害得失ヲ有スルモノデゴザイマス
デ、其費用ノ如キモ縣費ヲ以テ出スモノデナケレバ、郡費ヲ以テ出スモノデ
モナイノデゴザイマス實ハ是等ノ如キハ民法デ申シタナラバ、唯ノ組合
トテモ云フベキモノニ屬スルカノ疑ナキ能ハザル所ノ至ッテ國ニ取ッテハ輕
少ナル組合デアル、其組合ノ組合員ガ唯今ノヤウナ資格ヲ有スレバ、此上ニ
地租ヲ幾ラ納メナケレバナラヌトカ、何年間其土地ニ住居ヲシナケレバナラ
ヌ、ドウ云フコトガナケレバナラヌト云フコトヲ此上ニ拵ヘル必要ハナイ、
卽チ言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、先キモ言フ通大ナル權利ヲ有シテ居ル水害組合員
ノ權利ヲ、此法律改正案ヲ以テ權利ヲ小サクスル、縮メテシマフ、是ガ所謂今
日ノ輿論デゴザリマセウカ、是ガ自由主義ニ適フモノデゴザリマセウカ私
ハ御再考ヲ得タイモノデアルソレカラ又第四十六條ニ移ッテ申シマセウ
御承知ガナケレバ御贊成ニナリマスカラ私ハ申シテ置キマス、現行ノ四十六
條ニ依レバ、組合會員タルモノハ其組合ノ管理者卽チ一郡ヲ以テ一區域ト
シテ居ルナラバ郡長、一村ヲ以テ區域トシテ居ルモノナラバ、村長ノ處分ニ
就イテ不服アルトキニハ或ハ縣會、或ハ府縣參事會、或ハ內務大臣等ニ訴願
スルコトガ出來ヌノデアル、而シテ其訴願スル條項ノ如キハ限ラナイ何
事デモ、自分ガ其管理者ノ所爲ニ就イテ不服ガゴザリマシタナラバ訴願ス
ルコトガ出來ルト云フコトデアルガ勝敗ハ暫ク措キマシテ······所ガ是ガ〓
正シテサシテ訴願スル權利ト云フモノヲ制限スルコトガ、改正法律ノ理由デ
アル、デ、訴願ノ權利ヲ制限シナケレバナラヌト云フ理由デアルカト考ヘテ
理由書ヲ見レバ、現行法ノ如ク其制限ヲ置カザル以上ハ行政官ガ頗ル困難
ヲスル、卽チ行政理事者ノ行爲ヲ萎縮セシムルモノデアル、行政官ノ權利ヲ
小サクスルモノデアルカラ、人民ノ權利ヲ縮メテ行政官吏ノ權利ヲ大キクシ
ナケレバナラヌト云フ改正ノ理由デアル、是ガ何故ニ國論トシテ見ルコトガ
出來マセウカ今日ノ官吏ノ權利ヲ大キクシタイタメニ、今日ノ人民ノ權
利ヲ少サクスル、コンナ法律ガ此議場ヲ通ッタナラバ、ソレラハ私ハ驚クノ
外ハナイ、ソレカラ又第四十七條ノ方ヲ見レバ第四十七條ノ方ニハ斯ウナッ
テ居ル、稅金ノ賦課ノ事デゴザリマス、組合會デ費用ヲ議定スルサウスレ
バ直チニ組合會員ニ其費用ノ徵稅ニ掛ル現行法ニ依ッテ見マスレバ例ヘバ
組合會員ガ一人ニ就イテ一圓ノ負擔額ヲ議決スル、サウスレバ此議決ガ不當
ナリト云フ場合ニ於テ組合員ハ直チニ郡長ナリ、郡參事會ナリ、縣參事會ナリ
ニ訴願スルコトガ出來マス、然ルニ今度此法ヲ改メテドウスルカト云フト町
村制ノ規則ニ依ッテ-市町村制ノ規則ニ依ッテ、サウシテ左樣ナ場合ハ賦
課令狀ノ交附期ノ三箇月前ニ限ッテ之ヲ爲スコトヲ得ルト云フノデアル今
ノ法律デハ今日議決シタ、ソレガ不都合トナレタラ直チニ連判狀ヲ取ッテ訴
ヘルコトガ出來ルガ、此改正案ハ今決議シタ甚ダ不都合ヲシタト云フテ言〃
テモ割符ノ令狀ガ來ナケレバ訴ガ起サレナイ、玆ニ實際ヲ舉ゲテ滿場諸君
ノ御參考ニ供シタイコトガ、我地方ノコトヲ申スモ異ナコトデゴザリマス
ガ、言ハネバ事實ガ舉リマセヌカラ申シマスガ、我仙臺市デハ昨年虎列刺病
ノ大變猖獗ノ際ニ、市參事會ガ市會ノ決議ヲ經テ三万餘圓ノ臨時豫防費ヲ徵
收スル決議ヲナシタ、市參事會ハ其金ヲ一時借入シテ支辨スルト云フ決議ヲ
ナシタ、其時ニ、仙臺市ノ有志ガ怒ッテサウシテ騒出シマシタ所ガ、市長ガ
縣知事其他ノ間ヲ奔走シマシテ、サウシテ市會ヲ開イテ、市會ガ此處分ヲ是
認シタ、市長ノ所爲ハ始メ市會ノ決議ヲ履ンデサウシテ三万圓ト云フ稅額ノ
負擔ヲ人民ニ命ジタガ、抑〓其事タルヤ必要巳ムコトヲ得ザル事デアルカラ、
此市會ハ之ヲ是認スルト決議シタ、此決議ニ對シテ市民ガ頗ル不服ナノデア
リマス、不服ナルガ故ニ直チニ訴願スル、訴ヘントスルガ、ソレガ出來ヌ
ナゼ出來ヌカ、先キニ言フ通其金ト云フモノハ市債ヲ起シテサウシテ一時支
辨シテ置クノデゴザリマスガ故ニ、市債ノ返濟期限ガ來タ時ニ徵稅切符ヲ發
スル、卽チ今日惡ルイコトヲシタガ、三年ノ後ニ返スコトニシタカラ、其三
年ノ後ニ至ッテ始テ切符ヲ出ス、唯今市町村ニハ割符ノ配付ニナラナケレバ
訴ヲ起サレナイカラ、旣ニ今日不都合ナコトガアッテモ、市民ガ泣イテ三年
ノ後ヲ待ッテ其訴ヲシナケレバナラヌト云フヤウニナッテ居ル、然ル所諸君
今日アッタ三万圓ノ金ハ三年ノ後マデモアルカ、三年ノ後ハドウナルカト
言ヘバ、私ハ此以上ニ言葉ヲ續ケル必要ハナイト思ヒマス、卽チ此水利組合條
例ニシテ現行法ノ如クデアッタナラバ、水利組合ガ不法ナ決議ヲシタ、一方
ニハ直チニ訴ヲ起ス、一方ニ於テハ假處分ヲ爲シテ其不法行爲ヲ中止スルコ
トガ出來ル、然ルニ此改正案ノ如クスレバ三年ノ後ヲ待ッテ割符サレタ徵
收票ガ下コテ後デナケレバ、訴ガ起セヌト云フノデアル建物ヲ拵ヘル河
ヲ掘ル、土地ヲドウスル、凡テノ事旣ニ去ッタ後ノ仕事ニ屬スル、滿場ノ諸
君、此改正案ニ就キマシテハ十分ノ御考慮ヲ煩シタイト存ジマス、私ハ徒ニ
反對ヲ致スノデハナイ、旣ニ昨年衆議院ガ大多數ヲ以テ決シマシタ所ノ議案
デアルカラ大抵ノ事ナラバ泣イテ此議案ニ服從致シマスケレドモ、能ク貴
族院等ノ意見ヲ聞イテ熟考致シテ見マスレバ、實ニ此議案ト云フモノハ國民
ノ權利ヲ縮小スル、而シテ國民ノ權利ヲ縮小スルハ何ノタメデアルカ、何ノ
必要ニ依ルカト云ヘバ行政官ノ權利ヲ膨脹サセ、擴張センガタメデアル、
擴張センガタメデアルナレバドウシテモ私ハ此議案ヲ通過セシムルコトハ
出來ナイコトヽ存ジマス、デ、是ダケノ理由ヲ述べマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=136
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137・田中鳥雄
○田中鳥雄君(百二十八番) 本案ハ提出者ヨリモ述ベマシタ通、實ハ昨年モ
大多數デ可決シマシタカラ、速決デモ宜シカラウト考ヘマシタガ、唯今草刈
君ノ御演說モアリマシタ、何程カ不完全ナ處ガアルカモ知レマセヌ寧ロ特
別委員ヲ設ケマシテ、モウ一應調査シタ方ガ宜シクハナイカト考ヘル、九名
ノ委員ヲ議長指名ヲ以テ選定セラレンコトヲ希望シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=137
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138・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 田中鳥雄君ノ委員付託ノ動議ニハ、別ニ御異議ハアリ
マセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ草刈親明君「異議アリ、反對ノ演說ヲシタ以
〔「上ハ異議アリ」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=138
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139・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 然ラバ起立ニ諮ヒマス-九名ノ議長指名ノ委員ニ付
託スルコトニ同意ノ諸君ハ起立
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=139
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140・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 多數、因テ其通決シマス-次ハ日程ノ第九ニ進ミマ
スル、日本銀行課稅法案第一讀會、-提出者石田貫之助君
第九日本銀行課稅法案(石田貫之助君外三名提出)第一讀會
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲メ茲ニ揭載ス〕
日本銀行課稅法案
日本銀行ハ其ノ純益金ヲ配當スルニ當リ株金拂込高ニ對シ年五分以上ノ割
合ニ當ルトキハ純益金ノ內ヨリ年五分ニ相當スル金額及積立金竝前季繰越
金ヲ控除シ其ノ殘額ノ十分ノ五ヲ政府ヘ納稅スヘシ
但シ納稅期限ハ一箇年ヲ兩度ニ區分シ前半季分ヲ八月三十一日後半季分
ヲ翌年二月二十八日限リ納ムルモノトス
此ノ法律ハ明治二十九年七月一日ヨリ施行ス
(石田貫之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=140
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141・石田貫之助
○石田貫之助君(二百四十八番) 日本銀行課稅法案ハ、既ニ數年前カラ拙者
又ハ同志ノ諸君カラ本院ニ提出ヲ致シマシテ、而シテ前會ニ於キマシテハ大
多數ヲ以テ課稅ヲスルト云フコトニ決シタノデゴザリマス)デ、最早本法ノ
理由等ニ至リマシテハ、說明ヲスルニ及バナイト考ヘルノデゴザイマス、デ、
旣ニ前年ニ於キマシテモ此稅ノ均一ヲ保ツ上ニ、且國家ガ斯樣ナル一會社
ニ向ッテ特典ヲ與ヘタ結果トシテ、其利益ノ幾分ヲ割イテ以テ納稅セシムル
コトハ極適當ナ處分デアルト云フコトハ本會ニ認メラレタ所デゴザリマシ
テ、殊ニ戰後ノ今日、卽チ數多ノ人民、細民マデニモ此善後策ノ結果ニ對シ
テハ新稅ヲ課シ、或ハ增稅ヲスル今日デゴザリマスルカラ、益〓本案ノ必要
ヲ感ズル次第デゴザリマス、其稅率等ハ是ニ記載シテアリマスル通、又此稅
率ニ依ッテ、此結果卽チ納稅ノ金額等モ參考書ニ示シテゴザリマス、デ、最
早本案ニ就イテハ理由ヲ陳述スル必要ハナイト考ヘマス、唯此日本銀行カラ
諸君ノ御手許ヘモ囘ッテモ居リマスルデアリマセウ、又私ノ附言ヲ致シテゴ
ザリマスルガ、本案ガ出マシテカラ、卽チ日本銀行ガ特權ト任務ノ比較ト云
フモノヲ囘シテ居リマス、デ、此參考書ナルモノヽヤウナモノヲ以テ、此立
法府デ如何、堂々ト論ズルノハ極非ナ事デゴザリマス、然レドモ是ハ他ヨ
リ若クハ一個ノ有志ヨリ出タルモノデハナクシテ、端的其日本銀行ニ課稅
ヲセントスル所ノ日本銀行其モノカラ參考書トシテ囘シテ居ルノデアリマ
ス、前年日本銀行ガ或團體或ル會議所ト云フヤウナ所カラ囘シテ、圓滑
ニ遠囘シニ囘シテ來タ意見書ナルモノトハ違フノデアル、乃公ガ自ラ所謂責
任ヲ負フテ算盤ヲ立テ、責任ヲ負フテ任務、此特權ト云フモノヲ對照シテ出
シテ來タモノデアリマスルカラ、聊カ私共ノ見ル所ト違フ一二ノ要〓ヲ玆デ
論ジテ置クト云フコトハ亦諸君ノ御參考ニナラウト思フノデゴザリマス、
ソレデ色〓私共ハ此要〓ヲ見マスルト云フト、得心シナイ廉ガ澤山ニゴザリ
マシテ、先ヅ此利益ト云フモノヲ揭ゲテ居リマスルノハ、卽チ明治二十三年
現行兌換銀行券條例發布以來ノ平均ヲ取ッタ、ソレハ卽チ二千二百七十七万
餘デアルト云フコトデアル物ニ、數箇年ノ平均ヲ取ルト云フコトハ極公平ラ
シクゴザリマシテ、隨分必要ナ事デアルケレドモ、平均ト云フモノモマルデ
今日カラ見レバ趣ヲ異ニシ、趨勢ヲ異ニシテ居ル所ノモノヲ混合シテ平均ヲ
取リマスルト平均ト云フモノハ必要ノミナラズ、マルデ實ヲ失フト云フコ
トニ爲ルノデアル二十三年ノ此兌換銀行條例ガ出マシタ時分ト云ヒマスル
モノハ極ソレハ經濟ノ-此日本ノ經濟ノ國位一般カラ云ヒマシテモ、亦
日本經濟ノ運用上カラ云ヒマシテモ極ク小サイ時デアル、今日ノ、否今日
デハナイ、近年ノ膨脹シタル所ノ日本ノ經濟トハ決シテ比較スベキモノデハ
ナイ平均抔ニ成ルベキモノデハナイ、スルカラ適當ニ之ヲ平均ヲ取ルト云
フナレバ、兩三年ト云フ最近ノ平均ヲ取ッテ見レバ、決シテ實ヲ得タモノデ
ナイト云フコトヲ一言シテ置クノデアル、ソレカラ又此國庫金ノ取扱金ニ於
テ二十万圓損ヲスル是等モ私共ハ信ジナイノデゴザリマス、唯損ヲ-責
費ノ損ヲスルト云フコトガ書イテアル、日本銀行ト云フ銀行ハ最モ名譽ア
ル銀行デアル、國家ニ重キヲ措カレル所ノ銀行デアルカラ以テ、斯ク斷言ス
ル以上ニ於テハ一〓ノ社會カラ疑ヲ容レルベキ事ハ記載スベキモノデハナ
イ然レドモ私ハ是ニ疑團ヲ抱ク、決シテ其實費ナルモノハ六十万ト云フヤ
ウナ實費ニハナラヌト云フコトヲ私ハ申スサリナガラ當局者デナイ又一
一算盤ヲ取ッタモノデハゴザリマセヌ、此推測ハドウ云フ推測カラ來ルト云
フナラバ私ガ此案ヲ起スニ就イテ二十四年ノ事デアル、是ニ控ガゴザリマ
スルガ、日本銀行ノ未ダ今日ノ如ク出張所ト云フモノガ出來ナイ時分デア
ル-多數ニナイ時分デス、ソレハ全國ノ各國立、若クハ私立銀行ニ澤山
ニ此國庫金ノ取扱ヲ委託シテ居ル時ノ話デアル、サウシテ日本銀行ニ其時ハ
五十万圓出タ時デアル其內ヲ幾ラ日本全國ノ各銀行ノ取扱所ニ渡シテ居ル
トカ云フ金額ヲ締メテ見ルナラバ二十三万有餘圓デアル其アト日本銀行ガ
卽チ自身ノ取扱費ト云フモノデ歲入ト云フモノニナッテシマッテ居ルノデア
ル、其當時ヨリハ日本銀行ガ出張店ト云フモノモ自ラ行フ所ノモノガ多數
殖エテ居リマスシマスルカラソレカラ澤山ニ事務ガ殖エタト云フ譯デモ
ナイカラ以テ、今日日本銀行ガ各國立銀行、私立銀行ニ委託シテ取扱料ヲ出シ
テ居リマスルモノガ、ソレヨリ多分ニ殖エテ居ラヌト云フコトハ事實上ニ於
テ私共ハ固ク信ズルノデアル、卽チ日本銀行ノ本行若クハ大阪ノ支店、其他
出張店ニ於テ二十万ト云フヤウナ是ガ別ニ分ケテ見マシタ所ガ、實際實費
ガ掛ルト云フコトハ容易ニ私共信ヲ措クコトガ出來ヌ、是ヲ詳細ニ算盤ヲ立
テヽ見マシタナラバ二十七年ノ日本銀行ノ決算報告ガゴザイマスガ、日本
銀行ノ悉皆ノ費用ヲ積算シテ見テ、ドノ位ニナルト云フコトガ分カル、ソン
ナコトニ爲リマスト、日本銀行ハ殆ド國庫ノ金ヲ扱フテ居ッテ、其他ノ仕事ハ
出來ナイト云フコトノ算盤ガ出ルカラ、是等ハ私ハ信用ガ出來ナイ、ソレカ
ラ兌換劵取扱ノ二十万ト云フヤウナコトハ差ガアッタ所ガ聊デアル、次
ニ百七方幾ラト云フモノガ利損ガイクト云フ、ドウモ是等ハ妙ナ算盤ノ立テ
方デアリマシテ、言ハヾ兌換劵ヲ出ス所謂無利息ノ紙幣ヲ出ス、無利息ノ紙
幣ヲ出スノハヂヤ保證準備ト云フモノガアル、ソレデ公債證券ヲ備ヘテア
ル、スルカラ利分ガ安イト云フノデアル、ソレハ利分ガ安イニ相違ナイ、ソ
レデ損ガ往クト云フコトハ決シテナイノデアル、無利息ノ紙幣ヲ出スガタメ
ニ、ソレダケ五分ノ利ト云フモノガ取レル、二千万圓ナラバ百万圓ト云フ利
息ガ取レル、丸取リニナル若シソレガ一割モイケルトナラバ二百万圓儲
カル公債證書ヲ保證ニ備ヘテ居ルカラ、百万圓ヨリ取レヌゾト云フコト
デ、損ガイクト云フ勘定ノ立テ方ハ餘程妙チキリンナル立テ方ト云フコトヲ
考ヘル、斯樣ナ算盤モアルモノカ知リマセヌケレドモ、サウ云フ立テ方ヲ致
シマシタナラバマダ〓〓百五十万カ七十万カノ所デ千万圓ノ損ガ往クト云フ
コトモ立テラレルヤウニ思ハレル、ソンナ算盤ノ立テ方ハ知ラヌソレカラ
義務ト云フ一段ニモ澤山羅列シテアリマスケレドモ、要ハ私共斯樣ナモノガ
一大特典ヲ受ケテ、三十万圓若クハ四十万圓ト云フ無利息義務ヲ發行シテ居
ル所ノ損分ナリ、或ハ義務ナリト云フヤウナコトニハヂヤ、比較シテ一々論ズ
ル程ノ是ガ事項デハナイト思フノデアリマス、ソレデ斯ク書キマスナラバ、
利益ノ〓モ澤山掲ゲルコトガアリマセウト思ヒマス、日本銀行ハ國庫金ヲ
取扱フガタメニ大ニ世ノ中ノ信用ヲ受ケル其信用ヲ受ケル結果トシテハ、
半年ニ二億有餘万ノ預リ金ガ出來ル、其利益ハ隨分廣大ナルモノト云フ箇條
書ガ出來ルデアラウ、是ハ決シテ空說デアリマスマイト思ヒマス、又日本銀
行ガ國庫金ヲ取扱フ、又ハ發行權ヲ持ッテ居ルト云フガ上ノ間接ノ信用上ノ
利益ト云フモノハナカ〓〓容易ナラザルモノデアル、近クハ國立銀行ヲ株
式會社ニセネバナラヌト云フトキニ、國立ト云フ文字ヲ取リトモナイト云フ
コトデ、大變煩フタコトデアル、ソレハドウ云フモノカト言ヘバ國立ト云
フ文字ヲ省イテシマフトマルデ私立會社ノ如キモノニ爲リマス、サウスル
ト世ノ中ノ信用ヲ薄カラシメルト云フコトハ私共度々國立銀行ノ人達カラ
聞イタコトデアル況ヤ國家ノ全國ノ國庫金ヲ取扱フト云フ信用ト云フモノ
ハ實ニ廣大モナイモノデゴザイマセウ、利益ト云フモノハ、漸ク此頃コソ必
要カ將タドウ云フ感ジガ二千万圓ノ拂込ニナリマシタケレドモ、ツイ昨年マ
デハ千万圓ノ銀行デアル、僅々千万圓ノ銀行デアル、然ルニモ拘ラズ此二十
何億ト云フ金ノ運轉ヲ致スト云フコトハ卽チ丁度仰山ノ箇條ガ書イテア
ル所ノ反比例デ、國庫金ヲ取扱フ事、紙幣ヲ出ス事、其公債證書ヲ出ス事等
ノ信用ノ結果デ、サウ云フコトニ爲ルト思ヒマス最早此上理由ハ必要ガナ
イト考ヘマス、ドウカ速ニ御決議アランコトヲ望ミマス、又是マデハ貴族院
ニ於キマシテハ、本案ニ於テハ殆ド贊成ノナイガ如クニ承ッテ居リマスケレ
ドモ戰後ノ今日トシテ諸稅ヲ課スル上ニ於テ、私共他院ノコトデアルカラ
固ヨリ其實ハ分ラヌガ、當然ノ論理上カラ言フテ見レバ、今日ノ境遇上カラ
言フテ見レバ昔日ノ如キデナイ、今年ハ稅ノ均一ヲ保チ、且戰後ノ經營ノ
一端トシテ稅源ヲ始テ開クコトガ出來マスカラ、悅デ居リマス、希望ヲ持ッ
テ居リマス、ドウカ速ニ御決議アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=141
-
142・漆間民夫
○漆間民夫君(二百十七番) 此石田君外三君ノ御提出ニ係ル日本銀行課稅法
案ノ此贊成者ノ署名ノ中ニ、本員ノ名ヲ加ヘテゴザイマスガ、是ハ一向存ジ
致シマセヌノデ、何カ間違デ斯樣ニナッテ居ッタモノト考ヘマスカラ、議長
ニ於テ御取消ノ御取計ヲ願ヒタイ豫テ申シテ置キマスガ日本銀行條例改正
法律案ニモ右樣ニナッテ居リマスカラ、是レ亦併テ御取消ノ御取計ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=142
-
143・松尾寛三
○松尾寛三君(百五十五番) 議長、質問致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=143
-
144・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 該案ニハ通告ガアリマスガ、質問ナレバ先キニ許シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=144
-
145・松尾寛三
○松尾寛三君(百五十五番) 質問致シマス、唯今提出者ノ石田君ノ御演說ヲ
承リマスト此理由書ニハ兌換劵發行ノ特權ヲ以テ居ル故ニ此銀行ニ課稅
スルト云フ趣旨ニナル、然ルニ此法律案ヲ見マスニ、日本銀行ハ其純益金ヲ
配當スルニ當リ云々ト云フノデ、全體ノ營業ノ上ニ掛ッタ利益ノ中ヨリ課稅
ヲスルト云フノ意味ニ爲ッテ居ルヤウニ私ハ考ヘマスガ、又今ノ御演說中ニ
ハ或ハ利益ガ澤山アルカラト云フヤウナ意味モアリ又信用ガ日本銀行ハ
アル故ト云フ御說モアルシマスルト此理由書ノ一ヲ見マスレバ兌換券發
行ノ特權ガアルタメニシテ、其特權ニ對シテ課稅ヲスルト云フ一方面ニ爲ッ
テ居ルヤウデアル、併ナガラ御演說中ニハ今申シマスル通、種々ナ事ガ含蓄
シテ居ルヤウデアリマスガ、其趣旨ニ依ッテハ吾〓ハ大ニ反對シナケレバナ
ラヌ、私ハ決シテ先刻御話ノ日本銀行カラ何カ比較表ノヤウナモノガ來タカ
ラ云々ト云フヤウナ考デナイ昨年モ私ハ反對致シタノデアル、ソレデ其御
趣意ハ孰ガ根本ニ爲ッテ居ルカ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=145
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146・石田貫之助
○石田貫之助君(二百四十八番) 根本ハ此理由ニ書イテアリマス通特典ト云
フコトデアリマス國家ガ爲スベキ所ノモノヲ日本銀行ニ卽チ特典ヲ與ヘタ
ト云フノハ根本デアリマシテ、卽チ特典ノ結果ハ卽チ大ナル利益ガアル、斯ウ
云フノデゴザイマス、信用云々ト云フコトハ信用ガアルカラ稅ヲ課スルト
云フコトハ述ベナカッタノデゴザイマス、日本銀行ガ卽チ斯樣ナ任務ヲ帶ビ
テ居ルト云フ箇條ガ多々書イテアリマスルカラ、以テ此反對ヲ云フタナラバ、
卽チ其任務ナルモノガアルガ故ニ、大ナル信用ガアルト云フ利益ガアルダラ
ウ、信用ト云フモノヽ卽チ利益ガ附クト、斯ウ云フ事ヲ述べマシタノデ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=146
-
147・松尾寛三
○松尾寛三君(百五十五番) 此法案ヲ見マスルト兌換券發行ノタメニー
發行ヨリ生ズル利益ヲ--利益ノ中ヨリ課稅ヲスルト云フコトハ見エナイ、
單純ニ是ハ營業ノ純益金ヨリシテ、其總額ヨリ五分ノ配當ヲ引イテ、其殘ノ
中ヨリ年五分ノ利益ヲ引イテ云々ト云フコトデアッテ、サウスルト全體ノ上
ニ課スルト云フ御趣意デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=147
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148・石田貫之助
○石田貫之助君(二百四十八番) ソレデ此稅法ノ精神ト申シマスルモノハ、
因テ起ッタ根原ト云フモノハ、今御尋ノ通卽チ理由書ニ書イテアル、此特典
-特典ノ結果ハ大利益ガアルト云フノデ、サリナガラ是ハ保證準備ナルモ
ノト、彼ノ資本金ト區別シテ札ヲ分ケテ置イテ、又ハ金庫ヲ別ニシテ置イテ
營業ノ出來得ベカラザルモノデアリマスソレヲ區別セヨト云フノハ殆ド難
事デアッテ、又必要デモナイ、又縱令特典トスル所ノ利益ヲ生ズルモノヲ主
トシテ稅ヲ取ルニモセヨ他ニ關係ガアルカラ少モ一步モ足ヲ蹈込マレヌト
云フ譯デモナイ或ハ斯ウ云フ特典ノナイ會社ニ稅ヲ課スルコトモ出來マ
ス、又有リモシマセウト思ヒマスカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=148
-
149・松尾寛三
○松尾寛三君(百五十五番) サウシマスト、兌換劵發行ニ課稅スルト云フノ
デ、利益ガ多イカラト云フノデハナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=149
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150・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 通告ニハ贊成、反對各〓兩名アリマス--加賀美嘉兵
衞君
〔加賀美嘉兵衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=150
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151・加賀美嘉兵衞
○加賀美嘉兵衞君(二百八十八番) 本員ハ唯今ノ案ニ對シテ反對ヲ致シマ
ス反對論者ノ主眼ト致ス所ハ日本銀行ガ兌換劵ノ特權ヲ得テ居ル其特
權カラシテ相當ノ利益ヲ占メテ居ルカラ是ニ向ッテ課稅スルガ至當デアル
ト云フコトニ外ナラヌト思ヒマス、是ハ誠ニ單純見易キ、尤モナル道理ト心
得マスガ、然ラバ茲ニ例ヲ設ケテ、若シ玆ニ一ツノ營業會社ガアル其營業
會社ニ向ッテ政府ガ國家ノ任務ヲ命ジテ從事セシムルト假定メタナラバ、是ニ
依タテ生ズル費用ハ矢張國家ハ償ハナケレバナラヌト云フコトハ是モ亦見
易キ道理ト心得マス、然ラバ日本銀行ガ兌換劵ノ特權ニ依ッテ得ル利益ガア
ルト同時ニ、兌換券ノ特權ヲ行フガタメニ生ズル費用ガアッテ、其費用ハ何
人ガ出スカト謂ッタナラバ矢張國家ガ出サナケレバナラヌト云フコトモ亦
明デアラウト思ヒマスサウシテ其國家ノ出スベキ所ノ費用ト、日本銀行ノ
兌換劵ノ特權ヲ付與サレテ居ル、ソレガタメニ得ル所ノ利益ト相對照シテ、
若シ平衡ヲ得タ場合ニハ課稅論ノ根據ト云フモノハ既ニ破レナケレバナラ
ヌコトヽ心得マスル、此議論ヲ證明致シマスルニハ重モニ數字ノ排列ヲシ
ナケレバナリマセヌカラシテ、多少諸君ノ嫌厭ヲ來ス恐ガアルカ知レマセヌ
ケレドモ極簡單ニ其要ヲ摘ンデ申シマス尤モ本員ハ唯今石田君ノ御述ニ
ナッタ通、矢張日本銀行カラ刷物ニナッテ居ル特權ト任務ト云々ト云フ書類
ヲ披閱致シテ居リマス、其書類ノ中ニ書イテアル計算ハ本員ハ信用ヲ置
クモノデゴザイマス、如何トナレバ日本銀行ハ名譽アル、信用アル、我國ノ
一大銀行デゴザイマスレバ、其銀行ガ自分ノ名ヲ署シテ議員ニ配付シタ所ノ
書類ハ信用ヲ置イテ宜カラウト思ヒマス、其書類ノ中ニ揭グテアル所ノ計算
ニ依リマスレバ又其書類バカリデナク、本員等ノ平生取調ベマシタ所ノ書
類ニ依リマシテモ、日本銀行ガ兌換劵發行ノタメニ得ル所ノ利益ト、兌換劵
發行ノタメニ費ス所ト、其外國庫ノ任務ヲ負フタメニ費ス所ノ金ト差引キマ
スルト、僅カ-其差ハ僅々タルモノニ止ルト云フコトハ明デアラウト思ヒ
マスデ、之ヲ詳シク述べマスニハ、何千何万圓ト云フ數字ヲ申上ゲナケレ
バナリマセヌケレドモ是ハ敢テ必要モナカラウト思ヒマスカラ、私ハ此處ニ
省イテ置キマス、唯石田君ノ演說中兌換劵ノ發行費ダトカ、或ハ國庫金
取扱費ダトカ云フモノガ、日本銀行ノ取調書ニ四十万圓ト書イテアルノハ、
頗ル多キニ失スルト云フコトデゴザリマシタガ、縱シ是ハ一步ヲ讓ッテ石田
君ノ御說ノ通多キニ失スルト致シタ所ガ、僅々四十万圓、卽チ百何万圓ノ中
ノ四十万圓デゴザイマスカラ、是ハ別ニ致シテ、保證準備ノ公債ト云フモノ
ハ、是ハ明ナル日本銀行ノ損失ト見テ宜イト考ヘマス、然ルニ石田君ハ是ハ損
失ト見ルコトハ出來ナイ、矢張公債證書ニ備ヘテ置イテ利益トナッテ居ル
カラ、損失ト見ル必要ハナイト云フコトデゴザイマシタガ、日本銀行トテモ
普通ノ矢張營業ヲ目的トシテ居ル所ノ銀行デゴザイマスレバ其資本ヲ運用
スル場合ニ、世間普通ノ利益ヲ得ルト云フコトハ出來ナケレバナラヌ、然ル
ニ保證準備トシテ公債證券ヲ備ヘテ居ルガタメニ、世間普通ノ利子ヨリモ安
イ所ノ利子ヲ取ッテ居ナケレバナラヌ、卽チ普通六朱ニ囘ル所ガ世間普通
ノ利益ト見タナラバ五朱ノ利益トスレバ兌換劵發行ノタメニ、保證準備ニ
備ヘルガタメニ一朱ノ損失ヲ招イテ居ルコトハ明ナル事實デアリマスゝ是
ヲ以テ損失ノ一ニ數ヘ舉ゲタノハ不適當ナ事デナイト考ヘマス、是等ノモノ
ヲ舉ゲマシテ、サウシテ日本銀行ノ兌換券發行ノ特權カラ得ルモノト對照致
シマスト、其剩ス所ハ殆ドナイト謂ッテモ宜イト思ヒマス、又日本銀行ガ兌
換券條例制定以來、卽チ一一十三年以來、平均ノ額ヲ舉ゲテ兌換券ノ發行高ヲ示
シタノハソレハ當ヲ得テ居ラヌ、二十三年四年ノ如キ社會不景氣ノトキ
ト、社會人心ノ膨脹シタトキト一ツニ長イ間ノ比例ヲスルコトガ出來ナイ
ト云フ御說ハ尤デアルガ、併ナガラ極度マデ發行シテ見タ所ガ、三千三百万
圓ニ過ギナイ、其中ヲ二十三年以來ノ平均高二千二百七十万圓カ發行シテ
居ルノデアリマスカラ、假令最近三四年ノ平均高ヲ舉ゲテ見マシタ所ガ、二
千二百七十万圓ト云フモノガ三千万圓、三千五百万圓ト爲ルコトハ出來マセ
ヌ、極度ノ三千三百万圓ノ極度マデ殘ラズ發行シ得ベキト云フコトハ、金圓ヲ
運轉シ得ル以上ニ於テ爲シ得ベカラザルコトヽ考ヘマス、將來ノ情勢ト、經濟
社會ノ有樣ニ考ヘテ置カナケレバナラナイ殘ラズ使ハウトシテモ使フコト
ノ出來ヌ場合モゴザイマスカラ、極度マデ行ッテ見タ所ガ三千三百万圓、此內
デ二十三年カラ等差ヲ取ッテ見テモ、此間ニ於テ大差ノナイト云フコトハ分
ルダラウト思ヒマス、既ニ日本銀行ガ兌換劵發行ノ特權ヲ付與サレタルコト
カラ生ズル利益ト、是ニ對シテ支出スル費用ト對照シテ、格別ノ差ガナカッタ
ト云フコトガ明ナラバ、日本銀行兌換券發行ノ特權ノタメニ利益ヲ得ルコト
ガ多イカラ、是ニ向ッテ課稅スルト云フコトモ議論ノ根據ハ破レルダラウト信
ジマス、若シ外ノ論點、卽チ日本銀行ハ格別ニ利益ガ多イカラ、是ニ向ッテ課
稅シテモ宜イト云フコトカラ參ッタラ、矢張日本銀行ハ他ノ大ナル銀行ト比
ベテ、實ニ利益ノ多クナイト云フコトモ、日本銀行ノ報告書抔ニ就イテモ明
カデアリマス、例ヘバ二十年カラ二十八年マデノ平均ニ據レバ、日本銀行ハ資
本金ニ對スル配當ガ一割三分七厘七毛ト云フコトニナッテ居ル、然ルニ京濱
間ノ銀行ノ配當ハ是ヨリ下ッテ居ルモノハ僅カ一二デアリマシテ、是ヨリ上ッ
テ居ル者ハ一割五分ニ至ッテ居リマス積立金ニ對スル配當モ此例ニ依ッ
テ多クアリマセヌ、或ハ石田君ハ日本銀行ハ無形ノ信用ト名譽ガアル故
澤山ナ預リ金ガアル、故ニ大ナル利益ガアルト言ハレマシタケレドモ成
程不釣合ナ利益ガアルニ相違ナイ又間接ニ利益スル所ガ多イニ相違ナイ
併ナガラ數字ノ上ニ現レル利益ハ、資本金ナリ積立金ナリニ對シテ多クナ
カッタラ、他ノ銀行ヨリ特別ナ利益ガアルト云フコトハ言ヘナイ、サウスルト
矢張日本銀行ハ利益ガ多イカラ、課稅スルト云フ議論ニ致シテ見タ所ガ、是レ
亦其論據ハ破レヤウト心得マス單純ナ理窟ヲ以テ兌換劵ノ發行ハ國家ノ權
利デアルカラ之ヲ一銀行ニ付與シテ、其結果トシテ得ル利益ハ稅ヲ課シテモ
宜シイト云フコトハ或ハ外形上日本銀行ガ利益ガ多イト云フヲ以テ、日本
銀行ニ輕々シク課稅スルコトヲ議決シタナラバ其結果甚ダ恐ルベキ事ガア
アラウト思ヒマス、假リニ數步ヲ讓ッテ、日本銀行ハ澤山ナ利益ガアルマダ
兌換券ノ發行ニ依ッテモ得ルコトガ多イト云フコトニシテ見タ所ガ、尙ホ課
稅スル理由ハアルマイト思ヒマス、若シ日本銀行ニシテ今日ノ日本銀行ノ爲
スコトニ滿足ヲ致シテ居ルナラバ格別、是ヲ外國ノ中央銀行ノ爲ス所ニ比べ
テ見マシタナラバ國家ニ對スル中央經濟機關ノ任務ト致シテ、盡シ方ノ足
リナイ所ハ多クアラウト思ヒマス、然ラバ是ニ向ッテ尙ホ鞭達奬勵シテ任務
ヲ盡サシムルコトハ宜カラウト思ヒマスケレドモ、却テ之ヲ徵稅ニ苦メテ、
其業務ヲ收縮シテ、中央機關銀行ノ圓滑ヲ缺クト云フヤウナコトニ陷ラシム
ルト云フコトハ甚ダ不得策デアラウト考ヘマス現ニ近頃ノ新聞ニ現レテ居
ル所ノ、彼ノ橫濱ノ貿易商ガ生絲ノ不捌ノタメニ日本銀行ニ向ツテ、救濟策
トシテ一千万圓ノ無利子ノ金ヲ借リタイト云フコトガ書イテアル是等ノ事
ハ姑ク措イテ、國家ノ經濟上非常ナル事ガアッテ、其救濟ヲ求ムル場合ニ至ッ
テ、何レノ處ニ持ッテ行ッタラ宜カラウカト云フト日本銀行ヨリ外ニハ
ナイ、故ニ一ノ貿易ヲ爲シ、一ノ殖產ヲ開クニモ、金ニ基カヌモノハナイ、
其金ノ運轉ヲ滑ニシテ、差支ナイヤウニシヤウトスルニハ中央機關銀行ノ
働ヲ請フヨリ外ニ仕方ガナイ我日本ハ前途貿易ナリ殖產ナリ總テノ事
ニ向ッテ、經濟社會ガ頗ル多事ニ苦ンデ居ル場合デアリナガラ、其中央ノ機
關銀行ニ向ッテ稅ヲ課シテ、其働ヲ止メ、其圓滑ヲ缺イテ、サウシテ事業ノ
發逹ヲ求ムルコトハ恰モ木ニ緣ッテ魚ヲ求ムルノ例ト同ジテアルト思ヒマ
ス、僅々日本銀行カラ數十万圓ノ稅金ヲ得ルタメ、國家ノ中央機關ノ運轉ヲ
缺クコトニ至ッタラ甚ダ殘念ニ思ヒマス故ニ假ニ數步ヲ讓ッテ日本銀行ニ
課稅スル如キ餘地アリト雖モ、尙ホ之ヲ鞭達奬動シテ、中央機關銀行ノ任務
カラ盡サナケレバナラナイ、況ヤ課稅スベキ餘裕ナキニ於テハ大ニ顧慮シナ
ケレバナラヌコトヽ考ヘマス、故ニ私ハ本案ニ反對ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=151
-
152・東尾平太郎
○東尾平太郞君(二百八番) 私ハ此日本銀行ノ課稅問題ハ、餘程重要ノ問題
ト思ヒマス、尙ホ吾ミヨリモ課稅法案ヲ出シテアリマスルカラ、日程ノ第九、
第十及第十一ヲ併セテ議長指名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=152
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153・星亨
○星亨君(八番) アナタノ仰シヤルヤウデハ、マルデ日本銀行ハ利益ノナイ
ヤウニ思ハレルノデ、サレバ其日本銀行ハナゼサウ云フヤウナ馬鹿ナコトヲ
シテ、サウシテ任務ヲ盡シテ居ルノデアリマスカ、ソレヲ伺ヒタイ、第二ハ
アナタハ日本銀行ノ株主デハナイカト云フコトヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=153
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154・加賀美嘉兵衞
○加賀美嘉兵衞君(二百八十八番) 第一ノ御問ハ利益ガナイト云フノハ、
損ノアルト云フコトヲ申シタノデハナイ、利益ガナイカラ、ナゼ日本銀行ガ
引受ケテ居ルカト云フコトニ就イテハ今日私ガ日本銀行ヲ代表シテ御答申
ス必要ハナイ、第二ノ御尋ニ就イテハ、御答申スノ必要ハナイト思ヒマス
(「委員付託贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=154
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155・早川龍介
○早川龍介君(二百十一番) 詰リ三案ヲ合セテ、免ニ角是ハ委員ニ付託致ス
ト云フ東尾君ノ說ニ贊成致シマス
(「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=155
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156・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 日程ノ第九ヨリ第十一マデ、三案ヲ合セテ議長指名
ノ委員ニ付託スルト一云フ動議ガ、東尾君ヨリ提出セラレマシタ、但シ日程ノ
第十、及第十一ハ未ダ議題ト爲ラズ、從テ是ニ就イテマダ說明モナク、討論
モゴザイマセヌケレドモ、此三案ハ互ニ相關聯シテ居ルモノデアルニ依ッテ、
三案共ニ直チニ同一委員ニ付託スルト云フ東尾君ノ動議ニ就イテ決ヲ採ルコ
トニハ御異議ナイト認メマス、因テ決ヲ採リマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=156
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157・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 御異議ガナケレバ東尾君ノ動議ノ通決シマス
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
日本銀行條例中改正法律案
明治十五年第三十二號布告日本銀行條例中第十條ヲ左ノ通改正ス
第十條純益金總額ヨリ第一株主割賦金ヲ引去リ其殘額ヨリ十分ノ一以上
十分ノ三以下ヲ左ノ目的ヲ以テ積立金ト爲スヘシ
第資本金ノ損失ヲ補フ
第二割賦金ノ不足ヲ補フ
日本銀行課稅法案
日本銀行ハ兌換銀行券條例第二條第二項ニ該當スル諸種ノ保證劵ニ據リ發
行セル兌換劵ノ每一箇月ノ平均發行高ニ對シ其ノ發行稅トシテ一箇年千分
ノ七ノ割合ヲ以テ政府ヘ納稅スヘシ但シ政府ノ特命ニ依リ一箇年千分ノ十
若ハ其ノ以內ノ低利又ハ無利足ヲ以テ政府又ハ其他ヘ貸付ケタル兌換券ニ
對シテハ其ノ納稅義務ヲ免除ス
納稅期限ハ一箇年ヲ兩度ニ區分シ前半季分ヲ八月三十一日後半季分ヲ翌年
二月二十八日限リ納ムルモノトス
此ノ法律ハ明治二十九年七月一日ヨリ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=157
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158・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 次ハ日程ノ第十二、家祿賞典祿處分法案第一讀會-
深山聳峮君
第十二家祿賞典祿處分法案(深山聳峮君第一讀會
外三十五名提出)
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
家祿賞典祿處分法
第一條明治三年九月十日藩制施行以後家祿賞典祿ヲ有セシ者及本法實施
ノ日ニ於テ現ニ其ノ家名繼襲人タル者ニ限リ左ノ各項ニ該當スル者ハ明
治九年第百八號布告及同年第百五十二號布告ノ規定ニ依リタル金祿公債
證書額ニ相當スル金額ヲ家祿整理ノ爲メ發行スル處ノ公債證書ヲ以テ給
與ス
但シ正當ノ手續ニ依リ沒祿若ハ減祿ノ處分ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ在
ラス
第一項
家祿賞典祿ヲ全ク給與セサル者
第二項
家祿賞典祿ニ對スル相當額ノ給與ニ不足アル者
第二條前條ノ祿高ヲ金額ニ換算スルハ明治八年第百三十八號布告ニ依ル
第三條第一條ノ給與ヲ受ケムト欲スル者ハ元祿高及整理未濟ノ證據事情
ヲ具シ地方廳ヲ經由シテ大藏省ニ願出ヘシ
但シ本法施行ノ日ヨリ六箇月以內ニ願出サルトキハ給與ヲ受クル權利
ヲ抛棄シタルモノトス
附則
第四條明治六年第三十五號布告及明治九年第百二十三號ノ布告ハ此ノ法
律實施ノ日ヨリ其ノ效力ヲ失フモノトス
〔深山聳峮君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=158
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159・深山聳つら
○深山聳峮君(二百三十番) 諸君、本員等ハ嘗テ諸君ノ御手許ニ迴ッテ居リ
マスル、家祿賞典祿處分法案ヲ提出致シマスルニ依ッテ、聊カ此提出ノ理由
ヲ申述ベヤウト思ヒマス成ルベク簡單ニ申述ベヤウト思ヒマス、併シ此問
題ハ御案内ノ如ク隨分大問題デアリマスルニ依ッテ或ハ少シノ時間ヲ拜借
シナケレバナラヌト思ヒマスカラ、暫クノ間御靜聽ヲ願ヒマス偖テ此復
祿處分問題ハ、諸君モ御案內ノ如ク是マデ數年間貧窮ノ士卒族等ガ、我立法部
ニ向ッテ出願ヲシ來ヨルト云フコトハ最早今日ニ於テ諒〓シク申上ゲルデ
モナイ事デアル、而シテ彼等ガ斯ク出願致シヨルト云フノハ、果シテ其理山
アルカナイカト云フコトニ就イテハ豫メ諸君モ早御承知ノ事デアル旣
昨年第八議會ニ於テ彼等ノ請願ニ係ル所ノ卽チ願書ハ本院ニ於テ御採擇ナ
サレタコトデアル、其採擇ノ結果政府ニ向ッテ願書ヲ差出シタコトデアル
而シテ本年モ數多出願シ來ヨルモノデゴザイマス、然ル所此法案ヲ提出致シ
タト云フノハ今日ニ於テ之ヲ處分スベキカスベカラザルカト云フコトニ就
イテハ一ノ問題デアラウト考ヘル、卽チ政府ニ向ッテ私共ガ曩キニ要路ノ
大臣ニ對シテ尋ネタコトモアリマス、此復祿問題ハイツマデモ棄置クト云フ
コトハ出來ナイコトデアラウト考ヘルソレハ如何トナレバ既ニ彼ノ二十七
年ニハ佐賀縣等ノ國事犯ニ對シテ斯ノ如キ恩典ヲ與ヘ、又明治十二年ヨリ二
十二年マデノ間ニハ高知ノ如キ或ハ薩摩ノ如キ其他ニ對シテ矢張彼ノ士族
ニ對シテ又華族ニ對シテ恩典ノ處分ヲ致シテ居ルノデス、然ルニ他ノ出願
シ居ル所ノ者等ニ對シテハ幾度ノ出願ヲスルモ未ダ其處分ヲシナイト云
フハ彼等モ等シク日本臣民デアル、等シク臣民デアリナガラ、彼ニハ厚ク
是ニハ薄イト云フノハ、所謂輕重ノ處置ヲ致シテ居ルト言ハナケレバナラヌ、
否輕重ナレバ宜シイガ、一方ニハ之ヲ與ヘテ一方ニハ與ヘナイト云フ偏頗
ノ處置ヲ致シタト言ハナケレバナラヌ、然ル以上ハ彼等ガ今日ニ於テ出願ヲ
致シヨルト云フノハ實ニ尤モノ事デアリマス、例ヘバ本會ニ於テ此處分案ガ
現レズトモ、所謂彼等ハ屈セズ撓マズ、此處分ノ爲シ得ラレルマデハ殪レテ
巳マヌト云フ決心ヲ以テ續々出願ヲシテ來ルニ違ヒナイ、今日ハ申スマデモ
ナク戰後ノ議會デアリ、大切ノ時デゴザイマス、此法案ニ對シテ此處分ヲ爲
スト云フコトハ事或ハ輕卒デハナイカト云フ謗ガアルカモ知レナイ、併ナ
ガラ此處分案ハデス、此所ニ決シタ所ガ必シモ二十九年度內ニ於テ彼等ニ對
シテ直ニ處分ヲスルト云フノデナク、所謂國力ガ許スナレバ片時モ早ク此處
分ヲスルガ宜シイ、併ナガラ國力ガ許サヌナレバ仕方ガナイカラ、二年先デ
與ヘルカ三年先デ與ヘルカ、五年先デ與ヘルカ、斯ノ如ク卽チ五年先ナラ
五年先ヨリ與ヘルト云フ處分ヲ今日附ケ與ヘタナラバ彼等モ滿足スルコト
デアラウト考ヘル、故ニ此處分案ヲ提出シタトテ必シモ二十九年度ヨリ與
ヘルト云フコトデハナイカラ、諸君モ其事ハ豫メ御承知置ヲ願ヒタイ、而シ
マシテ-然ラバ此處分ヲ致シマスレバドレダケ程ノ金額ガイルカト云フコ
トハ第一ニ眼ヲ注ガナケレバナラヌ點ダラウト考ヘル、又諸君ノ方ミノ中
ニモ其說ガ隨分アルノデアル、先ヅ昨年ヨリ今年ニ向ッテ出願致シ來ル所ノ
其出願人ノ員數、及彼等ガ請求シ居ル所ノ金額ヲバ豫メ取調ベレバ、人員ハ一
万六千百二十人ト爲ル、ソレカラ此金額ハ四百九十六万七千八百四十三圓七
十一錢ト爲ル、此金額ハ確定ノ金額トハ見ラレマセヌ、サリナガラ是ヨリ多額
ナルコトハナカラウト考ヘルノデアル、或ハ出願ノ中ニモデス、採用スベカ
ラザル分モアリマスケレドモ是等ハ最早請願者ニ於テモ觀念ヲシテ居ル
コトデアル、所謂處分シ得ルダケノ理由ヲ具ヘテ居ルモノガ、前段申ス如キ
人員ナリ金額デアラウト考ヘル、而シテ此金額ハデス、減ルコトハアルモ增
スコトハナカラウト考ヘル、所謂彼等ノ要求額デアル以上ハ、此處分案ガ他
日實施ノ場合ニ至リマシテモ、果シテ彼等ガ藩制ノ時ニ幾ラ貰ッテ居ッタ賞
典祿、幾ラ貫ッタ所ガ、是ハ永世祿ヲ貫フベキモノガ當リ前デアッタト云フ
ヤウナ、ソレ是ノ小差ハ隨分アラウト思フ、此ニ至ッテ或ハ此中ニハ幾分カ
蟠ルモノガアラウカト考ヘル卽チ除ケルモノガアラウカトモ考ヘルノデア
ル、然ラバ此金額ヨリ增ス氣遣ハナイト考ヘル、或ハ是マデノ說デハ一千万圓
ヲ要スルトカ、或ハ二千万圓ヲ要スルトカ云フコトデアッタガ、到底二千万圓
ノ三千万圓ノト云フコトデ、到底此處分ヲスルコトハ出來ナイ限アル金ヲ
以テ限ナキ望ヲ滿サシムルヤウナコトハ出來ヌト云フコトデアッタガ、結局
之ヲ取調ベテ見マスレバ、今申ス如クデアリマシテ是ダケナラバ餘リ多額
ト云フモノデモナカラウカト考ヘルノデアル、ソレカラ先ヅ此出願シ居ル所
ノ者如何ナル者等ガ此出願ヲシテ居ルカ、ドウ云フ者等ニ對シテ是ハ處分ス
ベキモノデアルカト云フコトハ御參考ノタメニ一二ノ適例ヲ舉ゲテ御話ヲ
シヤウト考ヘル(「簡單」ト呼フ者アリ)先ヅ第一ニ御話ヲ致シマスレバ(「簡單
簡單」ノ聲起ル)簡單ニヤリマスガ、先刻モ申ス通、御承知ナイ方モアラウカラ
申上ゲル方ガ宜カラウト考ヘルノデ、此處分ヲ致サウト云フコトノ中ニモ、最
大憫ムベキモノハ舊祿ヲ全部廢止セラレ、及士籍ニ編入セラレルノガ當リ前
デアルノニ、平民籍ニ墜サレテ一錢厘毛モ與ヘラレズニ居ル者ガアル、實
憫ムベキノ至デ、是ヨリ甚シキモノハアルマイ其者等ノ一點ニ就イテ御話
ヲスレバ、明治三年ノ五百七十九號ノ達ニハ如何ナル事ガ書イテアルカ所謂
藩制デアリマシテ、藩制ノ第六項ニハ「功アッテ祿ヲ增シ罪アッテ祿ヲ褫キ
一切ノ死刑等ハ朝裁ヲ請ヘシ一時ノ賞竝ニ流以下ノ刑ハ收錄シテ年末ニ可差
出事」斯樣ニ書イテアル、是ガ卽チ藩制ノ中ノ第六項デアリマシテ、今申ス
ガ如キ場合ガ此明治三年九月十日以後祿ヲ貫ッテ居ッタ所謂卒族デアッタナ
ラバ、必ズ此藩制ニ依ラナケレバナラヌ、之ヲ處分スルニ於テ然ラバ藩
制第六項ニ功アッテ祿ヲ增シ罪アッテ祿ヲ褫グ是等ハ皆朝裁ヲ請フトアル
然ラバ朝裁ヲ經テ卽チ平民族ニ陷シ、或ハ族ヲ廢シタト云フナラバ致方モナ
イガ、然ルニ其手續モ經ナイデ、徒ラニ此處置ヲ致シタト云フ如キハ寶ハ
傍若無人ナル處置ト斷言シナケレバナラヌ、是モ所謂藩々區々ノ時デアッ
テ、藩ハ其藩ニ依ッテ徒ラニ處置スル時デアッタナラバ、ソレハ今日ノ新政
府ニ對シテ此答ヲ爲スコトハ或ハ顧ミナケレバナラヌガ、然ルニ明治三年九
月十日以後ハ謂フマデモナク此藩制ヲ施イタ時デアルガ故ニ、所謂政令一途
ニ歸シテ、一ツノ法律ヲ以テ全國ヲ支配シ、全國ノ各藩ヲ處置スルト云フコト
ニ爲ッタノデアリマスカラ、藩ガ其時ニ當ッテ、其以後廢藩置縣ト爲ルマデ
ノ間政治ヲ致シテ居ッテモ、言ハヾ新政府ノ委任ノ政治デアリマス、先ヅ新
政府カ責任ヲ持タナケレバナラス、ソレガ故ニ此本案ノ如キモ起〓ガ明治三
年九月十日以後ハイカヌト書イタノデアリマス、然ルニ今申シタ如ク此朝裁
ヲ經ナイデ徒ラニ處置方ヲ致シタト云フノデアル又明治五年ニハ二十九號
ヲ以テ布告ガアリマス、是ニハ何ト書イテアルカト言ヘバ是ハ諸君ノ御聽
ヲ願ヒタイト考ヘマス「各府縣貫屬卒之內從前番代ノ節抱替等ノ稱ヲ以テ其
倅等ヘ祿高ヲ給與シ自然世襲ノ姿ニ相成居役分ハ自今士族ニ可被仰付候條調
書ヲ以テ大藏省ヘ可伺出尤家祿ノ儀ハ從前ノ通リ可相心得事」トアル、其但
書ニ「但新規一代限抱ノ輩ハ平民ニ復籍セシメ給祿ハ是迄ノ通可遣事」ト云フ
コトガ書イテアル、然ルニ斯ノ如キコトガアッテモ、所謂前段ノヤウナ無法ノ
處置方ヲシテ居ルガ故ニ、此法文ハ蛇足デアル、無用ノ長物ニ爲ッテ仕舞ッ
タ(「簡單」ト呼フ者アリ)簡單ト云ッテモ言フダケハ言ハナケレバナラヌ、ソ
レカラ然ラバ此處置方ガ果シテ各藩共ニ斯ノ如キ無法ナル處置方ヲシタカト
云フニ決シテサウデナイ、所謂此適例ヲ舉ゲテ御話スレバ隣藩ノ中ニ三
十二万三千石ノ家格ノ藩ト、六万石ノ家格ノ藩トアル、而シテ三十二万三千
石ノ藩ハ、士族ハ今日ニ於テ幾人アルカト云フト、僅ニ千三百人デアル、又一
方ノ六万石ノ藩ハ士族ガ幾人アルカト云フト、是モ千三百人アル、卽チ三十二
万三千石ト六万石ト同一ナル士族ノ員數デアル、是ハ如何ナル譯カト云ヘバ、
申スマデモナク、三十二万三千石ハ前申ス如ク嚴酷ノ處置ヲシタモノデア
ル、故ニ今日ニ於テ續々出願ヲシテ居ル、又六万石ノ方ハ如何デアル此處
分ヲ致シテ呉レト云フ請願ヲシテ居ルカト云フト、決シテ一人モナイ、ナイ筈
デアル規則通ニ守ッテ來タノデアル明治五年ニハ今朗讀シタ通ニ士族
ニ編入シ祿ヲ與ヘルト云フコトガ書イテアル、此通ニシタカラ今日一人モ不
服ハナイ一方ハ申スマデモナイ斯ノ如キ無法ナル處置ヲシタタメニ今日ノ
出願ヲシテ居ル、所謂多言ヲ要セズシテ是ハ不法ノ處置ヲシタルコトヽ考ヘ
ルソレカラ明治六年ニハ三十五號ノ達ヲ出シマシテ、如何ナル事ヲ卽チ三
十五號ニ書イテアルカト云フト是モ諸君ノ御耳ヲ煩ハシタイト考ヘル、明治
六年三十五號中ニハ「舊藩々貫屬祿高人員帳ノ內舊官員調違ノ趣ヲ以テ當今
ニ至リ屢"引直方申出或ハ卒ノ者士民ヘ編籍方今以申出向モ有之祿高調方
ニ差支不都合ノ次第ニ付右樣ノ類ハ都テ來ル三月三十一日限大藏省ヘ可申立
右期限後ハ一切採用不致候條民籍編入ノ儀可相心得事」ト書イテアル、成ル
程此通至當ニ守ッテ來テ、サウシテ申出ザル者ガアル-未ダ申出ザル者ガ
アル或ハ是迄ノ處分ガ、或ハ永世祿ヲ貰フ者ガ終身祿ヲ貰フト云フコト
デ、其事ヲ出願シ來ッタ者ガ澤山アルカラ、來ル三月三十一日マデニ申出ザ
ルモノハ採用シナイト云フコトデ、實際此事ヲバ實行セラレタナラバ宜シイ
ガ、畢竟スルニ名アッテ其實ガナイ、何ゼトナレバ旣ニ不法ノ處置方ヲシ
タモノナラバ、此時ニ當ッテ此出願ヲ出サヌケレバ採用セヌ、受理セヌ唯
刎附ケテシマッテ受理シナイ故ニ、斯クノ如キコトガ三月三十一日マデニ申
出ヨト云フコトガアッテモ、申出テモ採用セヌ限ハ致方ハナイ、所謂名アツ
テ其實ハナイ、又明治九年ニハ如何ナル事ヲ達シタカト云ヘバ所謂百二十
三號ノ不都合ナル卽チ達デアル、是モ一應朗讀シナケレバナラヌ「明治六年
ニ第三十五號ヲ以テ舊藩々貫屬高引直シ願ノ儀同年三月三十一日限リ可申出
月
右期限後ハ一切採用不致旨布告候處爾後祿高ニ關シ種々願出候向モ有之候得
共本年肌第百八號布告ヲ以テ祿制改正候ニ付總テ現今ノ處置ヲ以テ定度トシ
如何樣ノ事實有之共一切採用不致候條此旨更ニ布告候事」ト云フコトヲ書イ
テアル、是デ詰リ切ッテシマフタノデアル、其以後所謂斯ノ如キ不法ノ處置ヲ
スルガタメニ、不法ノ處置ヲセラレタヨリ、屈セズ撓マズ今日彼等ガ願ッテ
來ル如キコトヲバ政府ニ向ッテ出願ヲシタノデアル、所ガ、明治九年ニ於テ
又百二十三號ヲ以テ一切採用ヲセヌト云フコトヲ達シタノデアル、其後尙屈
セズ撓マズ出願シテ居ルガ百二十三號ノ達ガアルト云フノデ、幾度出願ス
ルモ採用セズ、此百二十三號デ止メテ置イタト云フコトデアリマス、尙ホ今
日ト雖モ百二十三號ト云フコトヲ政府ガ云フノデアル、實ニ無法ノ處置方ト
言ハナケレバナラナイ不法ノ處置方ト言ハナケレバナラナイ又今一ツノ
コトヲ申シマスレバ、此藩債デアル此明治三年矢張藩制ノ第十二項ニ在リ
マスガ、舊藩ニ於テ藩債ナルモノハ、所謂藩主ノ如キ士族ナリ、又公廨費ト
云フモノヽ中カラ其支消方法ヲ立テヽ屆出テヨト云フコトガ書イテアル、
然ルニ早ク此法ヲ守ッテ所謂此法ヲ遵奉致シテ、其方法ヲ立テヽ屆出テタ
者ハ所謂家祿ノ中デ、例ヘバ茲ニ其適例ヲ申シマスレバ舊ト草高ト云フモ
ノハ二千石ノモノデアルソレカラ明治二年ノ一般ノ祿高改正ガアッテ、卽
チ實收額ト唱フル所ノ額二千石ヲ百石ニ減ラシタノデアル今ノ祿制ト云
フモノガアッテ是ハ明治二年ニ達シマシタ、藩主ニ達シタ、藩主ハ是マデ
ノ實收額ノ十分ノ一ト云フコトニナリマシタタメニ、士族ハ其振合ニ依ッテ
減額シタタメニ二千石ヲ百石ト改メタ、ソレ等ハ彼ノ藩制デ藩債ハ其士
族卒及公廨費ヨリ支辨セヨト云フコトノ達ガアッタタメニ、此百石ノ中ヲ
減石ヲ致シテ、八十石ヲ其藩債ニ入レ、後トノ二十石ダケヲ所謂家族ノ生活
費ト云フモノニ與ヘタノデアル、ソレデ年數ヲ定メテ-十箇年ト云フ年數
ヲ定メテ、サウシテ十箇年ノ後ハ舊トニ復ス、十箇年ノ間ハ藩債、卽チ藩ノ
借金ニ入レルト云フコトニ致シタノデアル、其旨ヲ屆ケヲ致シタノデアリマ
ス(「簡單」ト呼フ者アリ)所ガ、斯ノ如キ事ガアッタタメニ此支消法ヲ立テ
タガ、後チニ於テ明治五年ニ於テ百二十六號ノ達ヲ以テ、藩債ハ免除スルト
云フコトノ達ガアッタノデアル、是ハ何ト書イテアルカト云ヘバ「舊藩債ノ
儀ハ一藩ノ石高ニ關スル事ニ付支消年限目途相立舊知事竝士族卒家祿ノ內ヘ
モ分賦償却可致旨庚午九月中相達置候處今度負債ノ儀ハ悉ク大藏省ヘ引受處
分可致且公廨費ノ儀モ一定ノ規則相立候ニ付テハ負債支消或ハ公廨費等之內
ヘ是迄家祿ヲ以差出來リ候分自今總テ差免候事」ト云フコトガ書イテアル、
是ニ依ッテ卽チ此家祿ノ中ヨリ藩債ノ中ヘ加入致シテ居ッタモノハ差許サレ
テシマッタ、果シテ是等ハ悉クサウデアッタカト云ヘバ、各藩共ニ此藩制ノ
第十二項ヲ守ッテ、直ニ支消方法ヲ立テヽ皆其藩債ノ祿高ノ中ヘ加入致シ
タカト云ヘバサウデナイ所謂正直ニ守ッタモノハ其屆ヲナシテ、藩債ノ
償却ヲ致シツヽアッタト云フノデアル、所ガ、正直ニ守ッタモノ等ハ、所謂明
治五年ノ彼ノ達ガ出テ差許ニナッタノデアル、然ルニ舊ニ復スルノハ當然デ
アル、舊ノ實收額、例ヘバ二千石ノ草高ノモノハ百石ニ減ラサレタナラバ、
其百石ノ改正額ニ對スル公債證書ヲ明治十年ニ與ヘルノガ當然デアリマセ
ウ、然ルニ彼ノ藩債支消ノタメニ入レテ居ッタ八十石ト云フモノニ對シテハ
與ヘナイ唯二十石ニ對シテ與ヘタト云フ如キコトデアル實ニ無法ノ處置
方ト言ハナケレバナラナイ所デ、此藩債ノ支消ヲ立テナンダ藩ハ如何致シ
タカト云ヘバ、其儘デアル、所謂今言フ通、二千石ノ草高ノモノガ千石ノ實
收額ニ改正ヲセラレタナラバ今ノ八十石ヲ減ゼラレテ二十石ノ公債證書
ヲ貰ッタカト云フトサウデナイ、百石ニ對スル公債證書ヲ與ヘテアル、所謂
ズルヲ構ヘタモノハ幸福ナル處分ヲ受ケ、正直ニ守ッタ者ハ無法ノ處置方ヲ
致シタト云フ如キコトデアル、其以來幾度出願スルモ、是等モ矢張百二十三
號ノ達ノ次第ガアルカラ採用ニ及バヌ、實ニ無法ノ處置法ト言ハナケレバナ
ラナイ(「モウ宜カラウ」ト呼フ者アリ)尙ホ歸田法ノ如キ、是等モサウデアル、
歸田ト云フコトヲ大變勸メテ所謂士族ヨリ農ニ歸セヨト云フコトヲ勸メ
テ、其資本金一人ニ就イテ三百圓ヲ遣ラウ、耕地八段步ヲ遣ラウト云フコトヲ
申シタノデアル歸田法ヲ勸メラレテ、其通、歸田ヲ致シタナラバ、其通
實行致シタカト云ヘバ決シテ實行シナイ、何故トナレバ藩債ノ支消ヲシナ
ケレバナラヌカラ、藩債ニ其祿ヲ入レヨト云フ如キコトデアッテ、遂ニ其處
分ヲ得ズシテ、一錢モ與ヘナクシテカラニ、遂ニ平民籍ニ下シ入レ、又幸ニ
シテ士族ノ籍ニ囘復致シタ所ガ、無祿ノ士族デ、一錢厘毛モ與ヘル如キコトガ
ナカッタノデアル、段々簡單ト云フ御話デアリマスカラ、述ベタイコトハア
リマスケレドモ、述ベマセヌガ、斯ノ如キ無法ナル處置ヲヤラシタノデアル、
其他枚舉スレバ限ガナイ、或ハ永世祿ヲ與ヘル所ノモノハ、終身祿ト云フ卽
チ半額ヲ與ヘ、或ハ終身祿ヲ與ヘル所ノモノハ年限祿ヲ與ヘテ、其四分ノ
一ヲ與ヘルト云フ如キハ、實ニ不法モ亦甚シイ、言ハヾ一々列舉スレバ限ノ
ナイ事デアリマス、斯ノ如キ無法ナ處置方ヲ致シタモノ等ガ、所謂一昨年來
本年ニ至ッテ續々請願シ來ルノデアリマス、斯ノ如キモノニ對シテ、此議會
ガ先キニ彼ノ請願書ヲ採擇セラレタ以上ハ、無論此議會、イヤ、本院ニ於テ
ハ孰カ卽チ處分ヲシテヤルト云フコトハ、豫メ其決心ノ上デ採擇セラレタ
モノデアリマス、然ラバ今日ニ於テ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=159
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160・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 定規ノ時間ニ達シマスカラ、少シク延長シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=160
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161・深山聳つら
○深山聳峮君(二百三十番) 此處分ヲ致シ與ヘルト云フノガ極至當ノ事ト考
ヘマス幸ニ滿場ノ諸君、此恩典ナル處分ヲバ與ヘラレンコトヲ希望致シマ
ス、尙ホ委員ハ、十八名ノ委員ヲ議長指名ヲ以テ付託セラレンコトヲ希望致
シマス
〔「委員付託」ト呼フ者アリ又「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=161
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162・東尾平太郎
○東尾平太郞君(二百八番) 委員ハ議長指名デ十八名ニセラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=162
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163・新井啓一郎
○新井啓一郞君(二百二十九番) 發言ノ許可ヲ得テ居リマス、本案ヲ見マス
レバ執行期限ガナイヤウデゴザイマスルガ、卽チアナタノ御演說ノ如ク國
力ノ許ス時執行スルト云フ御趣意カラ期限ヲ是ニハ附ケヌノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=163
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164・深山聳つら
○深山聳峮君(二百三十番) 執行期限ノナイノハ、卽チ法律ヲ發布シタ時ヲ
以テ實施ノ期ト御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=164
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165・新井啓一郎
○新井啓一郞君(二百一一十九番) 第二ニハ志願ノ人數トカ、若クハ身分等ヲ
明ニ御演說ニナリマシタガ、是ハ本院ニ出願致シマシタル所ノモノヲ悉ク集
メタノデゴザイマスルカ出願中ニモ本院ニ於テ採擇スベカラザルモノモ澤
山アリマスルガ、ソレ等ノ數モ這入ッテ居ルノデゴザイマスルカ、ソレヨリ以
上ノ金額ハ這入ラヌト云フコトヲ明ニ御明言ニナリマシタガ、其寫ハ何ニ
依ッテ判定ニ爲リマシタカ、第三ニハ御演說ヲ聽キマスレバ、本年度ニ於
テ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=165
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166・早川龍介
○早川龍介君(二百十一番) 此十二ト十三ヲ併セテ、委員ニ付託セラレンコ
トヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=166
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167・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 質問ハ委員會ニ於テ委シクナサル方ガ宜カラウト思ヒ
マン、餘程質問ガ多イト思ヒマスカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=167
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168・新井啓一郎
○新井啓一郞君(二百二十九番) 私ハ贊否ヲスルニ困リマス、御許ニナリマ
セヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=168
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169・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 政府委員曾根靜夫君
〔政府委員大藏省國債局長曾根靜夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=169
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170・新井啓一郎
○新井啓一郞君(二百二十九番) 政府委員ニ御許ニナッタノデスカ、ソンナ偏
頗ノ事ハナイ
(「委員付託委員付託」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=170
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171・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 質問ガアレバ後トデ幾ラモ出來マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=171
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172・新井啓一郎
○新井啓一郞君(二百二十九番) 是マデサウ云フ例ハナイト思ヒマス、提出
ノ理由ヲ御演說ニナッタ後ニ質問ト云フテ、發言ノ權ヲ得タ中ハ差止メルト
云フコトハナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=172
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173・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 差止メルト云フコトハアリマセヌガ、質問ハモウ濟ン
ダノデセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=173
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174・新井啓一郎
○新井啓一郞君(二百二十九番) マダ濟ミマセヌデス、演說中デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=174
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175・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 先ヅ免ニ角委員說ノ決ヲ採リマセウ、委員說ガ消滅ヲ
スレバ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=175
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176・新井啓一郎
○新井啓一郞君(二百二十九番) 如何ニモ偏頗ト思ヒマス、答ヘル答ヘヌニ
拘ラズ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=176
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177・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 委員說ハ先決問題トシテ決議ヲ採リマス、卽チ東尾君
ノ日程ノ第十二ヲ十八名ノ議長指名ノ委員ニ付託スルト云フ動議ニ就イテ決
ヲ採リマス
〔政府委員大藏省國債局長曾根靜夫君演壇ヲ降ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=177
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178・關信之介
○關信之介君(百十四番) 唯今決議ニ就イテ一言致シマス、本員抔ヨリ差出
シマシタ所ノ明治二十七年ノ此二十號改正案モ併テ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=178
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179・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 委員說ニ就イテ-先決間題ノ決議ヲ採リマス-東
尾平太郞君ノ日程ノ第十二、卽チ家祿處分法案ヲ議長指名ノ十八名ノ委員ニ
付託スルト云フ動議ニ同意ノ諸君ハ起立
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=179
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180・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 多數デアリマス、因テ日程ノ第十二ハ、十八名ノ議長
指名ノ特別委員ニ付託スルコトニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=180
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181・井上角五郎
○井上角五郞君(二百七十六番) 本員ハ唯今ノ議長ノ處置ニ就イテ、一應意
見ヲ述ベマス、卽チ議長ハ偏頗ナル處置ヲシタト云フコトヲ述ベルノデアリ
マス本員ハ此問題ヲバ卽決ヲ以テ否決スルノ意見ヲ抱イテ居ル一人デゴザ
イマス、卽チ反對ノ意見ヲ持ッテ居ル(「モウ往カヌ」ト呼フ者アリ)ソレダカ
ラ偏頗ト云フノデアル、政府委員ハ何時トナク演說ヲスルノ權利ガアルノニ
卽決問題デアルト云フコトヲ以テ、政府委員ヲ退ケタト云フノハ、卽チ此案
ヲシテ委員ニ付託セシムルコトヽ云フコトニ不公平ナル利益ヲ與ヘタモノ
ト思ヒマス、今政府委員ガ演說ヲシ掛ケタノデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=181
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182・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 政府委員ニ一旦相談ヲシテ、卽チ先決問題ノ決議ヲ採
ルト云フコトニシタノデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=182
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183・井上角五郎
○井上角五郞君(二百七十六番) 政府委員ハ演說ヲシ掛ケテ居ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=183
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184・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) シ掛テ居ッテモ、議長ハ協議ヲ致シタ、卽チ委員說ガ
消滅スレバ、政府委員ニ許スト云フ順序ニ爲ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=184
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185・井上角五郎
○井上角五郞君(二百七十六番) 折合ッタナラバ仕方ガナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=185
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186・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ヨリ明日ノ議事日程ヲ報ジマス
〔佐脇書記官朗讀〕
議事日程第四十二號明治二十九年三月十九日(木曜日)
午後一時開議
第一地方學事通則中改正法律案(政府提出貴族院送付)第一讀會
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選舉
第三東京府下郡廢置法律案(政府提出)第一讀會ノ續(特別委員)
(長報告
第四香川縣下郡廢置法律案(政府提出)第一讀會ノ續特別委員)
長報告
第五明治二十七年法律第二十號中改正法律案第一讀會
(首藤陸三君外二十八名提出)
第六輸入羊毛海關稅免除法律案(松尾寛三君外七名提第一讀會
五五
第七大阪府兵庫縣境界變更法律案第一讀會ノ續長報告特別委員)
第八社寺林地保管法案第一讀會ノ續特別委員)
長報告
第九岡山縣廣島縣境界變更竝廣島縣下郡界變更法律案第一讀會
(守屋此助君外二名提出)
第十廣島縣下郡界變更法律案(井上角五郞君外三名提第一讀會
出
第十一蠶種檢査法案(朝倉親爲君外三名提出)第一讀會
「おお
第十二輸出羽二重檢査所法案(松田吉三郞君外六名提第一讀會
出
第十三〓國及朝鮮國在留日本人取締法案(鈴木充美君第一讀會
外一名提出)
第十四帝國圖書館設立ノ建議案(鈴木充美君外三名提
四
第十五棉作改良奬勵費豫算案ニ關スル建議案(喜多川
孝經君外二名提出)
第十六牛痘苗製造業者處分ニ關スル建議案(脇坂行三
君外三名提出)
第十七絹織物保護建議案(久保九兵衞君外三名提出)
第十八水產傳習所官設建議案(改野耕三君外五名提出)
第十九測候所增設ニ關スル建議案(濱田儀一郞君外二
名提出)
第二十天氣豫報暴風警報ヲ全國ニ普及スル建議案(多
田作兵衞君外三名提出)
第二十一高等學校ヲ獨立セシムルノ建議案(波多野傳
三郞君外五名提出)
第二十二義勇兵團設置建議案(直原守次郞君外一名提
出
第二十三別格官幣社ヲ臺灣ニ建設スルノ建議案(北原
信綱君外二名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=186
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187・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ニテ散會ヲ報ジマスル
午後六時九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X04118960318&spkNum=187
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