1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十四年三月二十日（水曜日）
午前十時十八分開議
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議事日程 第十六號 明治三十四年三月二十日
午前十時開議
第一 明治三十四年度歳入歳出總豫算案竝明治三十四年度各特別會計歳入歳出豫算案（政府提出衆議院送付） 會議（豫算委員長報告）
第二 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件（政府提出衆議院送付） 會議（豫算委員長報告）
第三 巡査看守退隱料及遺族扶助料法案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第五 内務省所管歳出臨時部土木事業費中信濃川河口修築費繰越に關する法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第七 實業教育費國庫補助法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續
第八 臺灣事業公債法中改正法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會の續（特別委員長報告）
第九 明治三十二年法律第百一號中改正法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會の續（特別委員長報告）
第十 明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選舉法別表中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會の續（特別委員長報告）
第十一 民法中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十三 所得税法中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會
第十四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十五 憲法上の保障に關する上奏案（子爵谷干城君提出） 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=0
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001・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ報〓致シマス
〔小原書記官朗讀〕
昨十九日本院ニ於テ衆議院ノ修正ニ同意シタル政府提出衆議院囘付移民保
護法中改正法律案ハ卽日内閣總理大臣ヲ經由シテ裁可ヲ奏請シ及同意ノ旨
ヲ衆議院ニ通知シタリ
同日議員子爵谷干城君三好退藏君ヨリ三十名ノ賛成ヲ以テ足尾銅山鑛毒事
件ニ關スル質問書ヲ提出セラレタルニ依リ卽日政府ニ轉送セリ
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領シタリ
巡査看守退隱料及遺族扶助料法案
內務省所管歲出臨時部土木事業費中信濃川河口修築費繰越ニ關スル法律
案
同日同院提出關稅定率法附屬輸入稅表中改正法律案ヲ受領シタリ
同日同院ヨリ明治三十三年勅令第二百九十四條ハ承諾スヘキモノト議決シ
奏上セル旨ノ通牒ヲ受領シタリ
又同院ヨリ本院ノ囘付ニ係ル政府提出、鍬下年期、新開免租年期、地價据
置年期ノ延長ニ關スル法律案ハ本院ノ修正ニ同意シ奏上セル旨ノ通牒ヲ受
領セリ
又同院ヨリ左ノ通牒ヲ受領セリ
水害地方田畑地租免除ニ關スル法律案
右案ニ付本院ハ貴院ノ修正ニ同意セサルコトニ決議セリ因テ議院法第五
十五條ニ依リ兩院協議會ヲ開クコトヲ請求候也
明治三十四年三月十九日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
本院ハ水害地方田畑地租免除ニ關スル法律案協議會委員ノ數ヲ十名ト爲
スニ決セリ此段及通知候也
明治三十四年三月十九日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
同日政府ヨリ左ノ通牒ヲ受領セリ
明治二十九年法律第四號中改正法律案
右議院法第三十條ニ依リ撤囘ス
明治三十四年三月十九日
內閣總理大臣侯爵伊藤博文
司法大臣男爵金子堅太郞
同日政府提出明治二十九年法律第四號中改正法律案ハ政府ヨリ撤囘ノ通牒
ヲ受領セル旨衆議院ニ通知シタリ
各特別委員會ニ於テ當選シタル委員長副委員長ノ氏名左ノ如シ
東京都制案外二件特別委員會
委員長公得德川家達君副委員長子爵岡部長職君
明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法別表中改正法律案特別委
員會
委員長伯爵吉井幸藏君副委員長子爵三島彌太郞君
漁業法案特別委員會
委員長子爵京極高典君副委員長村田保君
畜牛結核病豫防法案特別委員會
委員長公爵二條基弘君副委員長子爵內藤政共君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=1
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002・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 唯今報告致シマシタ水害地方田畑地租免除ニ關ス
ル法律案ハ衆議院ヨリ協議會ノ要求ガアリマシタ、當方ヨリモ協議會員ヲ選
定スル必要ガアリマス、議長ニ於テ指名シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=2
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003・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 然ラバ指名シマス
〔太田書記官長朗讀〕
水害地方田畑地租免除ニ關スル法律案兩院協議委員
公爵二條基弘君伯爵正親町實正君子爵相良賴紹君
子爵小笠原壽長君男爵調所廣丈君中村元雄君
男爵長松幹君西村亮吉君野崎武吉郞君
野村恆造君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=3
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004・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ日程ニ移リマス、明治三十四年度歲入歲出
總豫算案竝明治三十四年度各特別會計歲入歳出豫算案、政府提出、衆議院送
付、會議、豫算委員長報〓、谷子爵
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ傚
フ〕
明治三十四年度歲入歳出總豫算案竝明治三十四年度各特別會計歲入歲出
豫算案
右案中別册ノ通修正シ其ノ他總テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノト議決
セリ依テ及報〓候也
明治三十四年三月十九日
豫算委員長
子爵谷干城
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
〔別册略ス〕
〔子爵谷干城君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=4
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005・谷干城
○子爵谷干城君 諸君、唯今議題ニナッテ居リマスル此豫算委員會ノ大體ニ
附イテ單簡ニ御報告ヲ致シマス、デ卽チ既ニ諸君ノ御手許ニ配付ニナッテ居
リマスル通、委員會ニ於キマシテハ、衆議院ノ案ニ附キマシテ修正ヲ加ヘマ
シテゴザンスルデ其修正ヲ加ヘタル重モナルモノヲ擧ゲマスレバ、經常
部ノ所ニ於キマシテ、內務、司法、大藏、農商務、此四省ノ中ニ於キマシテ、
御覽ノ通、ソレ〓〓修正ニナッテ居リマスル、デ又臨時部ノ所ニ於キマシテ
甲號ノ陸軍第四款、海軍ノ第十二款、是ガ又御承知ノ通大キナ修正デゴザンス
ルデ此先ヅ內務、司法ノ所ニ於キマシテ、重モナル修正ヲ致シマシタ趣意ヲ
申上ゲマスレバ、司法ノ方ニ於キマシテハ豫テ御承知ノ通、此少給判官其他
書記等ノ薄給ナルコトニ附キマシテハ從來喧マシイ論モゴザンス、如何ニモ
其儘ニ捨置カレヌト云フ見込ヨリシテ政府當局者ニ於テモ篤ト調査ノ上、其
事情ヲ酌取ッテカラニ此度豫算ニ提出サレタ譯デアリマス、又內務省ノ所ニ
於キマシテハ府縣ノ郡長以下判任官ノ俸給、是レ亦物價ノ騰貴ヲ致シ、事務ノ
次第ニ繁雜ニナルニ從ヒマシテカラニ、唯今ノ如キ俸給デハ到底相當ナル人
間ヲ得ルコトガ出來ナイト云フ苦情ハモウ久シイ後トカラアッタサウデゴザ
イマスデソレ等ノ事情ヲ酌取ッテ政府ニ於テハ必要ト認メテカラニ、之ヲ提
出ニナッタコトヽ見エマスル、デ委員會ニ於キマシテ、ソレ〓〓取掛リマシ
テカラニ、吟味ヲ致シマシタ所ガ、ドウモ是ハ如何ニモ政府原案ノ通ガ宜シ
イデ衆議院ノ削減ト云フモノハ甚ダ苛酷ナモノデアル、云フガ大體ノ趣意
デゴザイマス、デ又衆議院ノ方針等ヲ速記デ見マシテ、意向ヲ窺ッテ見マスル
ト一理是モ無イデハナイ、ト云フモノハ政府ガ財政整理ヲシ、行政整理ヲス
ル、其行政整理等ノ結果ニ依ッテ必ズ人モ或ハ減少スルヤウニモナラウ、種
種變更ニナルラウカラ其結果ニ依ッテ殖スモノハ殖スヤウニシタラ宜カラウ
ト云フヤウナコトヽ見エマス、是モ一理ナイデハナイ、然ルニデス、裁判官
ノ人員等ノ事ニ至リマシテハ裁判所構成法ナドヽ云フモノガアリマシテ法律
ト關係ヲシテ居ルモノデ法律ノ改正ガ出來ヌ以上ハ人ヲ減ストカ殖ストカ云
フコトモ出來ナイ、又殊ニ此監獄等ノ事ニ至ッテハ此控訴事件ニ附イテ身元
保證金ト云フヤウナモノヲ之ヲ廢シテカラト云フモノハ非常ニ控訴ガ多ク
ナッテ殆ド今日デハ如何トモナラヌヤウナ景況ニナッテ居ルト云フコトガ事實
デアリマスル、其他此登記所ノ如キモノモ次第ニ此法律ノ結果トシテ物ガ
精密ニナリ、精密ニナルニ從ッテカラニ之ヲ扱フ所ノ者ガ僅ニ十二圓十五圓
ト云フヤウナ薄給ノ者デハドウシテモ腕ノ立ツ者ヲ雇フコトハ出來ナイ、使
フコトハ出來ナイ、ソレガタメニ遂ニ一日ニ出來上ルベキモノモ二日モ三日
モ掛リ誠ニ人民ノ權利ニ非常ニ關係ヲスル、又罪人デ見マシテモ未ダ罪ト極
ラヌヤウナ者デモ五日デ濟ムモノヲ十日二十日三十日四十日モ遂ニ留置カ子
バナラヌ、ソレガタメニ次第ニ獄ハ積ンデ仕方ガナイ有樣ニナッテ居ル、是ガ
ナカ〓〓此暮マデ待テル勢デハナイト云フコトデアリマス、デサウ云フヤウ
ナ大略主意ヲ以チマシテナカ〓〓行政整理ナドト云フコトヲ待ツ暇ガナイ、
ヤルモノハヤルデ宜シ、若シ行政整理ノ出來タ曉ニ減スコトノ出來ルモノハ
其時ニ減スガ宜イ、ドウシテモ此今日ノ政府ノ有樣ト云フモノハ斯ウスル、
サウスルト云フ約束ヲシタ所ガソレガ實行サレタト云フコトハ誠ニ稀ナコト
テ、早ヤ政府ガクエテ仕舞ウカモ知レヌ有樣デアリマスカラ、スベキ事ハシ
テ置カヌトナラヌト考ヘマスル、此文官少給者ノ增俸ノコトハ大體サウ云フ
主意デ之ヲ政府案ノ通ニ復活致シマシタ、臨時部ノ甲號ノ陸軍第四款、此中
ノ臺灣兵營費、是ハ段々承ッテ見マスルト御承知ノ通臺灣ハ非常ニ氣候ノ惡イ
所之ガタメニ向フヘ行ク所ノ兵營ニ集ッテ居ル兵隊ハ內地ニ居レバ長壽ヲ
保ツコトガ出來ル者ガ彼ノ地ニ行タガタメニ忽チ生命ヲ失フト云フ非常ナ病
人ノ數、死人ノ數ガ多イサウデゴザイマスル、本員モ臺灣ノ地ノ一部分ヲ踏ミ
マシタガ、實ニ其瘴癘毒ノヤウナモノガ今ニ殘ッテ居ルハアノ地方デアラウト
思フ、是ハ政府ノ要求シテ居ル通速ニ兵營ハ完備シテ病人ノ數ヲ減ジ死人ノ
數ヲ減ズルハ國家ガ兵隊ニ對シ國民ニ對スル義務ト認メマスル、ソレ故ニ是
ハ政府案ノ通ニ復活ヲ致シマシタ譯デアリマス、ソレカラシテ同ジ臨時部ノ
海軍、是ニ於キマシテハ誠ニ精密ニ亙ッテ餘程綿密ノ調、綿密ナ議論ガゴザイ
マシタ、又此所ニ於キマシテハ當局者ノ海軍大臣、非常ニ勉强ヲサレ、殘ル所
ナク辯明サレマシテゴザイマスル、然リマスルニ此製鋼所ト云フコトニ附イ
テハ農商務省ト云フモノ卽チ枝光ノ製鋼所ト云フモノガアリマシテ、御承知
ノ通最初枝光ノ製鋼所ニ於テ軍器ヲ造ルト云フコトデ、卽チ此枝光ノ入費ヲ
支出スル初ニ於キマシテ軍器ニ重キヲ置イテ決定ニナッテ居リマスル、然ルニ
其中追〓ト變化シマシテ何分枝光ノ方デハ十分ニ兵器ヲ製造スルコトガ出來
ナイト云フ有樣ニナッテ居ルヤウテアリマスル、併シ之ヲヤレト云フテ責任
ヲ負ハスナラバ枝光ノ方デモ出來ルヤウデアリマスガ、如何セン此海軍ノ方
ニハ大臣ハ固ヨリ其他委員ニモ誠ニ答辯其人ヲ得テ居リマスカラシテ餘程密
ナ答辯モゴザイマシタケレドモ、農商務省ノ方ニ於キマシテハ最モ肝要ナル
製鐵所長官、是ガ不在デアリマスル、此必要ナ人ガ不在デアルガタメ
ニ······衆議院デハ何デモ態〓來テ辯ゼラレタヤウデアリマスガ、貴族院ニ於
テハ和田長官ノ十分ノ說明ヲ聞クコトヲ得マセズシテ遂ニ御報〓ヲ申スコト
ニナッタノハ甚ダ遺憾デゴザイマス、ソレデ今日ノ有樣ハ片言ヲ聞イテ是非
ヲ決スルト云フコトニナルヤウナ有樣ニナッテ居ル、本員ナドハモウ一ツ農
商務省ノ卽チ製鐵所長官ノ明ナ說明ヲ承リタイト考ヘマスルケレドモ、今申
ス通サウ云フ譯デカラニ、ソレヲ得ザッタト云フ有樣デアリマスガ、何シロ
枝光ノ製鋼所ニ於キマシテモ非常ナ大金ヲ掛ケル、又吳ヘ今度造ラウト云フ
海軍ノ設備ニ於キマシテモ非常ナ大金ニナリマスル、デ此後ドノ位先ニ金ガ
掛ルヤラ大凡是デ行クト云フコトハ五百萬圓ソコ〓〓デ行クト云フコトニ
ナッテ居ルヤウデゴザイマスガ、是ハ所謂豫算デ今マテ政府ノ豫算ガ豫算
通ニ行ッタコトハナイ、必ズ何時デモ次第ニ太ッテ行クコトハ諸君御承知デ
アリマスカラ、政府ノ仕事ハ元ト出ス時ニハ小口バカリヲ出シテ端ヲ見セ
カケテ置イテ已ムヲ得ヌヤウニナッテ擴ルヤウニナッテ來ル、是ハ今マデノ實
驗ニ據ッテ諸君モ御承知ノコトヽ考ヘマスル、ソレ故ニ是ハドウシテモ製鐵
所長官ノ意見ヲ聞キ十分調查モシ、又海軍ノ方モ十分モウ一ツ踏込ンデカラ
ニ調ベテ、ソレカラ以上デ決スルガ宜カラウ、何ゾ必シモ今年ニ限ル譯デハナ
イ、動トモスルト此當局者或ハ賛成ノ方ハ東洋ノ形勢、東洋ノ形勢ト云フコ
トヲ言ハレマスルガ、東洋ノ形勢ハ誰モ御承知ノ通デ今日大キナ聲デ言ハイ
デモ分リ切ッテ居リマスガ、實ニ一年延シタ所ガ迚モ間ニ合フ譯ノモノデハナ
イ、是ハ四年五年ノ先キマデ此有樣デ繼續シテドン〓〓金ガ要ルト云フコト
ニナッタラバ我〓ノ考ヘル所デハ遂ニ國家ノ財政ハドウナルカ分ラヌヤウニ
考ヘル、スレバ直クニ間ニ合ハナイ、兎モ角モ間ニ合ハナイコトハ分リ切ッテ
居ル、四年先キデナケレバ出來ヤシマセヌ、ソレカラ先キモ亦ソレカラ始テ著
手シテカラニ習練ヲスルノデアリマスカラ隨分年月ヲ經ルデアラウ、ソレデ
誠ニ其海軍當局者ノ意見ヲ承リマスト極ク旨イヤウデアリマスルケレドモ、
國家經濟ノ上カラ考ヘマスルト枝光ニモ一ツ出來掛ケラ居ルニ又今度呉ニモ
拵ヘヤウト云フノデアリマスルカラシテ、深ク愼重ニ吟味ヲセ子バナラヌ、サ
ウ云フ理由ヲ以テ大體ニ於テ海軍ノ第十二款ノ吳製鋼費ト云フモノハ委員會
ニ於テハ否決ヲ致シマシテゴザイマスカラ、ソレデ之ニ附イテ時宜ニ依リマ
スレバ又私ハ一己ノ意見ヲ述ベル時機モアリマセウカナレドモ先ヅ大略是ダ
ケ御報告ヲ致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=5
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006・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 豫算案ノ議事ノ進行ノ便宜ヲ圖リマシテ、豫算委
員會ニ於テ修正ノアリマシタ分ヲ除クノ外皆御異議ハナイモノト認メルヤウ
ニ致シタイト思ヒマスガ如何デゴザイマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=6
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007・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ委員會ニ於キマシテ修正ノアリマシタ部
分ノミニ附イテ是カラ會議ヲ開キマス、歲出經常部內務省所管
〔國務大臣子爵渡邊國武君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=7
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008・渡邊國武
○國務大臣(子爵渡邊國武君) 私ハ聲ヲチット痛メテ居リマシテ御聽苦シイ
カ知レマセヌガ此際ニ於テ一言致シテ置キタイコトガアリマス、此豫算委員
會ノ初ニ於テモ又終ニ於テモ政府ノ意思ヲ代表シテ申述ベテ置イタコトデア
リマスガ、是ハ此度本院ニ於テ修正復活ニナリマシタ俸給其他ノ事デアリマ
スガ、其復活セラレタ趣意ハ唯今委員長カラモ御述ニナリマシテ、卽チ政府
ノ提出シタル趣意ト同一ノコトデアリマスルガ、曩ニモ申シマシタ通ニ政府
ハ此事ニ附イラハ大體ニ顧ミテ豫算ノ成立ヲ望ムコトノ切ナルガタメニ、復
活ハ望マズシテ衆議院ニ於テ修正サレマシタル所ヲ以テ通過セラレンコトヲ
希望致スト云フコトニナッテ居リマスカラドウゾ、此段ヲ一言致シテ置キマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=8
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009・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) 内務省所管、委員會ノ修正ニ贊成ノ諸君ハ起立ヲ
請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=9
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010・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 過半數ト認メマス、次ハ大藏省所管······是ハ委員
會ノ修正ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=10
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011・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 司法省所管
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=11
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012・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ガナクバ委員會ノ修正ニ決シマス、農商務
省所管······委員會ノ修正デ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=12
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013・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) 其通決シマス、遞信省所管
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=13
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014・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) 御異議ガナクバ委員會ノ修正ニ決シマス、歳出臨
時部陸軍省所管
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=14
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015・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) 委員會ノ修正ニ決シマス、海軍省所管
〔國務大臣山本權兵衛君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=15
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016・山本權兵衞
○國務大臣(山本權兵衛君) 諸君、唯今議題ト相成ッテ居リマスル所ノ海軍
省所管吳造兵廠擴張費追加支出問題ニ附キマシテ一應意見ヲ申述ベタイト考
ヘテ居リマス、既ニ此問題ハ當議院ニ於キマシテハ誠ニ不人望ノ問題デゴザ
イマシテ、第一囘ニ分科會ニ於テハ七ニ對スル五ノ少數デ敗レ、豫算委員總
會ニ於キマシテハ記憶スル所ニ依ルト總數四十二名中二十七ニ對スル十五名
ノ少數デ是レ亦敗レタリ、然レドモ本官ハ此賢明ナル貴族院全體ノ意嚮ハ必
ズ本官ノ喋々ヲ俟タズシヲ國家ノタメ御贊成ニナルデアラウト云フコトヲ深
ク思ヒ且ツ又復活ヲ望ムノデアルノデアリマス、就キマシテハ此問題ヲ解決
致シマスルニハ誠ニ口不調法ナルタメニ諸君ヲシテ滿足セシムルコトモ如
何デアラウカト考ヘマス、且ツ又分科、委員總會等ニ於テ屢〓辯明シマシタ
ルコトヽ重複スルコトガアルデアラウト思フノデアル、然レドモ暫時御忍ビ
下サイマシテ御聽ヲ願ヒタイト思フノデゴザイマス、先ヅ此造船造兵ト云フ
事業ニ附イテ大體ノ沿革ヲ第一ニ御話致シタイト思フノデゴザイマス、先ヅ
造船ヨリ始メマス、造船事業ナルモノハ如何ナル時ヨリ始ッテ今日ハ如何
ナル範圍程度ニ及ンデ居ルヤ否ヤト云フコトヲ諸君ニ御吹聽致サ子バナリマ
セヌ、諸君御承知ノ如ク造船事業ハ舊幕ノ末世ニ於キマシテ佛蘭西人ノ〓師
ヲ傭ウテ其基礎ヲ橫須賀ニ固メタノデアリマス、明治ノ初年政府ガ之ヲ受取ッ
テ而シテ後海軍省所管ト爲ッテ旣ニ三十年ノ歲月ヲ經タノデアリマス、其
三十年ノ間ノ事々物々ノ變遷ハ申スマデモナク技術學術ノ變遷ハ實ニ夥シイ
ト云フコトハ私ノ言ヲ俟タズシテ諸君ハ御承知ノコトデアラウト存ジマス、
扨帝國ノ海軍トシテ最モ重キヲ置イタル橫須賀ノ造船所ニ於キマシテハ、是
ハ一番舊イノデアリマスカラ三十年ノ今日マデニ至ッテ如何ナル軍艦ヲ製造
シテ帝國、卽チ國防ノタメニ本邦ニ游弋シテ居ル所ノ艦船ハ如何ナルモノデ
アルカト云フコトハ、實ニ事玆ニ至ッテハ已ムヲ得ズ諸君ニ訴ヘナケレバナ
ラヌコトニ立至ッタノデゴザイマス、是ハ單リ本官ガ直接ニ此責任ヲ有シテ居
リマスケレドモ國家國民ノ上ニ私ハ均シク諸君ト其責任ヲ同ジクスルト云フ
コトハ申シ難イガ、憂ハ必ズ共ニサルヽコトヽ考ヘルノデアル、明治八九年
頃、工ヲ始メマシテ橫須賀軍港ニ於キマシテ〓輝ト天城ト云フ船ヲ始メテ造
リマシタ、此軍艦ハ如何ナル軍艦デアル卽チ一千噸ニ上ボラヌ小サナ「ガン
ボート」デアル、尙ホ三十四年ノ今日マデニ至ッテ如何ナル働ヲ爲シテ居ルカ
ト云フコトヲ申サナケレバナリマセヌ、今日マデニ製造仕上ゲタ大キナ船ハ
橋立ト云フモノデアル、是ハ四千噸ニ少シ上ノ船デアリマス、扨船ニ就イテ
申セバ四千噸前後ノ艦船ヲ製造シタニ過ギナイ、今日ノ艦船上ヨリ之ヲ委シ
ク御話致セバ中艦ニ過ギナイノデアル、此材料ハ如何ナル物ヲ用ヒテヤッタカ
ト云ヘバ前ニ申シタ通〓輝艦、天城ノ如キハ先ヅ大部分ハ日本ニ在ル所ノ材
木ヲ以テ造ッタ所ノ船デアル、終ノモノハ是ハドウ云フモノデアルカト云フト
是ハ卽チ鐵ヲ以テ造ッテ居ル、此艦船ヲ製造スル所ノ材料ハ如何ナルモノデ
アルカ、何レノ國ヨリ輸入シテ居ルモノデアルカト云フト、悉ク此材料ハ外
國ニ仰イダニ過ギナイ、殘ル所ノ三分ノ一、工費ノ如キ其他僅ニ製作ニ要ス
ル所ノ材料ハ皆本邦產ニ依ッテ製作シマシタガ、其大部分ハ擧ゲテ海外ニ仰
ガザルヲ得ナカッタノデアル、而シテ技術ノ進步ハ駸々トシテ非常ナル勢ヲ以
テ進ミ來ッタノデアリマス、扨此間ニ又御話ヲ申サ子バナラヌト云フコトハ
日〓事件ノコトデアリマス、其當時ハ如何ナル艦隻ガアッタカト云フコトハ
諸君モ御承知デアルデアラウト思ヒマス、其一二年前ニ於キマシテ明治二十
五年ニハ大詔煥發ノ結果トシテ遂ニ富士、八島ト云フ軍艦ヲ始メ其他二三隻
ノ軍艦ヲ製造スルニ立至ッタノデゴザイマス、扨諸君如何デゴザイマシタカ
日〓事件-明治二十七年五月-ノ前後ノ事柄ノ既ニ危險ニ陷ラントスル
ノ時ニ於キマシテ當局者ハ固ヨリ國民ハ如何ナル考ヲ持ッタデアルカ、定メ
シ此貴族院議員諸君ハ國家ニ功勞アル才識經驗ニ富マレタル所ノ諸君ハ種々
ナコトヲ想像サレタデアルデアラウ、當時ノ海軍ナルモノハ如何ナルモノデ
アルカト云フコトヲ其際ニ於テ國民ガ餘程感ジタデアラウト思フ、誠ニ不幸
ニシテ海軍ハ二十五年前後ニ於キマシテハ非常ナル攻擊ヲ受ケマシタタメ
ニ海軍ノ進步ト云フモノハ、ソレガタメニ餘程防遏サレタノデアル、當局ニ
於テハ斯ノ如ク攻擊ヲ受ケル筈ハナイト信ジテ居リマシタガ、如何セン卽チ
不德ノ致ス所、其職ニ在ッテ甚ダ遺憾ニ存ジテ居リマシタ、然ルニ幸ニ二十五
年ノ經綸ニ於テハ幾ラカノ船ガ出來ルコトニナリマシタガ、如何セン是ハ二
十七八年ノ戰役ニ參與スルコトガ出來ナカッタ、其時ニ於テ當局者ヲ始メ國
民ハ若シモ此問題ヲシテ一日モ早ク決シタナラバ又心配ト云フコトモ幾ラカ
薄ライダデアラウト云フコトハ定メシ考ヘラレタデアラウ、又當局者ハ左樣
考ヘタ、ソレニモ拘ラズ彼我ノ船ノ體形及戰鬪力ノ如何ヲ軍事上カラ考ヘテ
見マシテモ容易ナコトデハナイ、艦數ハ遙カニ我帝國ノ艦數ニ倍シ船ノ體形
モ我ヨリ聊カ進ミ、唯望ム所ハ司令長官以下兵卒ニ至ルマデ各〓天賦ノ才幹
ニ加フルニ是マデ〓育訓練ヲ施シ又畏クモ至尊ノ御稜威ノ然ラシムル所ト
ハ雖モ前申ス如キ事柄ニ依リ一方ニハ國民ノ援助ニ依リ且ツ、我〓ガ敬仰ス
ル所ノ先輩諸氏ノ經綸籌策其目的ヲ誤ラズシテ遂ニ千古未曾有ノ戰㨗ヲ致シ
タト云フコトハ今更私ガ此演壇ニ於テ喋々論究スルノ必要ハナイト思ヒマス
ケレドモ何分此問題ノ解決ヲ致シマスルニハソレ程マデ申サナケレバ諸君ヲ
シテ大ニ此目的ノ贊助ヲ願フト云フコトハ容易ノコトデナイト信ズルノデゴ
ザイマス、扨戰終ツタ後當局者ハ國防ノ大計ニ依リマシテ海陸軍ノ擴張ヲ圖
リ、サウシテ貴衆兩院ガ均シク此問題ニ翼賛ヲ與ヘラレマシテ今ヤ其目的ノ
大部分ノ勢力ヲ集中スルコトニ立至ッタノデゴザイマス、諸君此際ニ於キマシ
テ非常ナル大金ヲ擲チ非常ナル艦種ノ區別ヲ革メ之ヲ造ラントスルニ當ッテ、
未ダ一言ノ諸君ヨリ軍艦其物ノ「タイプ」ハドウデアル、大砲其物ガドウデ
アルト云フコトノ御意見ハ承ラナカッタ、扨是ハ誠ニ前任者其當ヲ得マシテ
諸君ガ御信任アッタ結果ト致シマシテ、偏ニ當局者ニ御信任ノ厚キモノト考
ヘナケレバナラヌ、此船ノ如キハ結果如何デアルカト云フコトヲ又一言御吹
聽ヲ致サ子バナリマセヌ、成ル程富士、八島ヲ造リマシタトキニハ一萬二千
三百噸前後ノ船デゴザイマシタケレドモ、隨分內外ヨリノ批評モアッテ斯ノ如
キ大艦ヲ如何ニ操縱シ得ルヤ、又何ノタメニアンナ船ヲ造ルカト云フ批評モ
ゴザイマシタガ、前任者ハ大ニ玆ニ見ラルヽ所アッテ遂ニ今日ニ至リ、我〓
海軍ヲ滿足セシムルノミナラズ、國家ノ上ニ十分ナル勢力アル軍艦ナリト云
フコトヲ最早今日ハ認メラレタノデアリマス、認メラレルト同時ニ此船ナル
モノハ、最早時日ヲ經過シテ居ッテ多少遺憾ノ所ガアルノデアリマス、故ニ軍
備擴張ノ時ニ於キマシテハ是ニ最大ノ技術ノ進步、其他日〓戰役ニ於キマシ
テ得タル所ノ事柄ニ附イテ多少ノ修正ヲ加ヘマシテ、今世界ニ在ル所ノ有數
ナ船ニ一步進ンデ新式ナル裝置ヲ致シタノデゴザイマス、扨此結果ハ遂ニ世
界中大强國トモ海王國トモ言ハレル所ノ海國ノ將士ハ如何ニ之ヲ評シタデ
アルヤ、英國ノ議院ニ於テハ是ニ如何ナル問題ヲ以テ海軍大臣ニ問ウタデア
ルカ、諸君定メシ御承知デアラウト思フノデアリマス、何レノ點カラ見テモ日
本國ノ英國其他ニ於テ製造シタル所ノ戰鬪艦及一等巡洋艦ノ如キハ、大砲ト
云ヒ勢力ト云ヒ、其他操縱上ニ於テ、諸般ノ點ニ於テ遺ス所ナク誠ニ完全無缺
ノ艦船ヲ造ッタト云フコトノ稱讚ヲシタ、其稱讚ハ變ジテ我〓當局者ヲシテ
又一層種々ナル心配ヲ爲サシメタ、如何トナレバ我〓ガ之ニ甘ンジテ諸君ノ
前ニ人ガ褒メルカラ我〓モ足リルト云フコトデアリマシタナラバ、國家ノ前
途ハ甚ダ憂慮ニ堪ヘヌト信ズルノデアル、扨其當時ニ於キマシテ屢〓明言致
シマシタ通、本邦ニ於テ製造シ得ルモノデアリ、且ツ形勢ガ許スナラバ、或
ル數ハ成ルベク本邦デ作リタイト云フコトハ當事者ノ切ニ希望スル所ナルノ
ミナラズ本官等ニ於テモ最モ必要ナリト認メタノデアリマス、故ニ最初ハ
一等戰艦一隻、一等巡洋艦一隻ハ成ルベク日本デ造リタイト云フ考ヲ以テ
一兩年引摺ッタモノガ今最後ニ英國ニ於テ製造シツヽアルノデアリマス、
熟、造船官、竝ニ機關官ノ今日マデ得タ所ノ經驗其他我ガ工場ノ程度如何ヲ
攻究致シマスルト云フト到底本邦ニ於テ裝甲艦以上ノ艦船ヲ造ルト云フコト
ハ遺憾ナガラ當時ノ場合デハ爲シ得ナイノデアル、爲シ得ナイノミナラズ、
薄イ鐵板ヲ張ル小サイ船デスラモ滿足ニ我ガ內國産ノ物ヲ以テ製造スルコト
遺憾ナガラ出來ヌノデアル、扠前ニ申シタ所ノ造船機關官ハ如何ナル力
ノモノデアルカト申セハ、卽チ今造船ノ當局ニ在ル所ノ佐雙總監ノ如キハ明
治四年ヨリ海外ニ出デ殆ド十年以上ノ星霜ヲ經テ造船技術上ニ於テハ最モ有
數ノ人タルト云フコトハ御承知モアルデゴザイマセウ、機關ノ總監タル所ノ
宮原氏ニ於キマシテハ殆ド年齡ノ半卽チ十九年位ノ年月ヲ、前後數囘海外ニ
在ッテ此技術ノ方ニ經驗致シタ人デアル、其他如何ナル人ガ隨從シテ居ルカ
ト云ヘバ海軍ノ諸學校ヲ終リ或ハ帝國大學ヲ卒業致シ數年ノ後海軍ニ實地ニ
從事シ、進ンデ海外ニ出デ〓究致シタ人ガ實ニ數多アルノデアル、加フルニ
職工其者モ、此擴張ノ結果トシテ海外ニ於テハ助手ト爲リ、或ハ職工ト爲テ
傳習サセタ者ガ數多アルノデアリマス、然ルニ國家ハ之ニ向ウテ十分戰闘
艦ヲ造リ得ルダケノ材料ヲ與ヘタナラバ何ゾ今日ニ於テ本大臣ハ斯ノ如キ困
難ナ事情ヲ諸君ニ訴ヘル必要ハ實ハナイノデアリマス、然レドモ如何セン、
世ノ進步ト我〓ガ修メテ卽チ仕事ヲスル所ノ程度トハ正反對デアル、漸クニ
シテ今日ハ此問題ヲ提出スル時機ニナッタノデアリマスガ、實ハ是マデノ經
歷ハ今申シタ通ノ話デアル、是ヨリ議論ヲ轉ジテ造兵事業ノ範圍ニ說及サン
ニ、我〓ノ前任者ニ於キマシテ明治十年前後ヨリ此製鋼ト云フコトニ於テハ
餘程注意ヲ致サレタ結果ト致シマシテ、遂ニ明治十一年頃ヨリ東京ニ造兵
廠ノ一工場トシテ築地ニ製鋼場ノ一部分ヲ拵ヘタノデアル、卽チ小サナ
野砲ノ如キ或ハ彈丸其他軍器ノ大部分ハ之ヲ以テ創始ト致シタノデアリマ
ス、又各造船廠ニ於キマシテハ造船ニ使用スル所ノ「カストスチール」ノ如
キ多少此鋼ニ關係ノアルモノハ工場ノ必要ニ應ジテ小サナル型ヲ設ケタノデ
アル、扠此造兵事業ト云フモノハ如何ニ進デ居ルカト申セバ、造船ノ方ヨリ
ハ今ヲ過グル七八年以前ハ遙ニ下ッタモノデアル、其學問事業ノ程度ハ我〓
カラ申スト殆ド造船事業ノ半ニモ達セナカッタ、如何トナレバ造船ハ明治ニ
ナル五六年前ヨリ段々步ヲ進メテ來テ、四十年ニ垂トスルノ日月ヲ經タノデ
アリマス、併シ此日月ナルモノハ今申上ゲタ通甚ダ遺憾ナル間ニ經過致シテ
居ッタノデアリマス、然ルニ造兵事業ト云フモノハドウデアルカ、明治二十三
四年ヨリドウシテモ此事業ヲ擴張セ子バナラヌト云フガ故ニ吳ニ兵器製造所
ト云フモノヲ設立スルト云フコトノ經〓ヲ海軍省ハ立テタノデアリマス、然
レドモソレハ未ダ土地ヲ選定シ、土地ヲ開鑿スルト云フコトニ過ギナカッタ、
明治二十七八年ノ時分マデハ······、然ルニ日〓戰爭ガ始リマスルト其最初
ニ於キマシテハ此戰ナルモノハ幾歲月ヲ費セバ果シテ此目的ヲ達シ得ルヤト
云フコトハ餘程ムヅカシイ問題デアッタ、其當時我艦隊ノ編制ハドウデアル
カト申セバ、大人モ居リ子供モ居リ種々ナ者ガアッタ、人間ニ例ヘテ見マスル
ト云フト其中大人ニ於テハ一日行程十五里モ走ル所ヲ子供ハ一里二里モ走レ
ヌト云フノモアッタ、彈丸大砲ノ有樣ハドウデアッタカト云ヘバ種々舊式ノ
大砲モアリ、又ハ新式ノ速射砲モアルト云フコトデ、然ルニ新式ノ連射砲
ヲ備ヘタル二三艦ガ敵ニ向ッテ發射シタル彈丸ハ移シイ數デアル、其戰ヲ宣
セラレタ結果、之ヲ海外ニ仰グト云フコトハドウシテモ出來ナイデアル、故
ニ此時ニ於テ山內大佐ガ、當時大尉カ少佐デアッタト記憶シテ居ル、奮然ト
シテ此問題ヲ受ケテドウ致シテモ速射砲ノ彈丸ト云フモノハ諸君ガ御承知
モアリマセウト思ヒマスルガ、丁度短銃ノ彈ノ如キモノデアル、アノ彈ト
「ケース」ガ一緒ニ喰ッ附イテ大約三尺位ノ長イモノデ此藥莢ヲ作リマスニ
ハ一種特別ナモノデアッテ、決シテ尋常ノ仕事デ出來得ベキモノデナイノデ
アリマス、故ニ是等ヲ急施スルト云フコトハ其當時實ニ目前ノ焦眉ナリト認
メラレテ政府ハ一時非常ナル金ノ支出ヲ致シマシテ託スルニ山內氏ニ此問題
ヲ擔ハサレタノデアル、彼進ンデ出テ遂ニ一年以内ニ於テ工場ノ一部ノ設備
ヲ爲シ從ッテ最初ノ目的ノ通彈丸其他ノ兵器ヲ製造スルコトノ運ビニ至ッタ
ト云フコトハ我〓當局者ト雖モ實ニ驚クノ外ハナカッタノデアル、諸君申ス
マデモナイコトデアリマスル、成ル程我〓ガ先輩者ト申スハ歐米各國ノ人ヨ
リカナイ、必ズ之ニ依リ道ヲ學ブノガ始デアッタ、然レドモ國家非常ノ際ニ
於テハ今申ス通何レノ國、一ツデモ嚴正中立ヲ守ルカ、又ハ彼我對戰ノ國
ナラバ其人ヲ工場ニ使フコトハ出來ヌノデアル、故ニ本邦人ノ中ニ知識アル
者ヲ持ッタナラバ國家ハ之ニ向ッテ十分仕事ヲサセ子バナラヌト信ジテ居ル
ノデアリマス、故ニ其當時ヨリ今申シタ山内大佐ガ其責任ヲ擔ウテ來テ、而
シテ吳兵器製造所ナルモノヽ設備ヲ致シタノガ始リデアリマス、二十九年ノ
擴張ノ際ニ於キマシテハ僅ニ六十萬ト云フモノヲ新計畫ニ致シタニ過ギナ
イ、其當時ハ卽チ西〓侯ガ海軍大臣デアッテ拙者ハ軍務局長ヲ奉ジテ居リマ
シタ、其當時山本ナル者ハ甚ダ不明ニ過ギナカッタト云フコトヲ又此議場ニ
訴ヘナケレバナラヌ、卽チ大砲ヲ二十九年カラ造ルト云フコトニ至ッテハ老
婆心ヲ以テ此問題ヲ第一囘ニ看破スルコトガ出來ナカッタ、ト云フモノハ西
〓侯ノ面前ニ於テ山內氏ノ經畫ニ對シテ當時軍務局長ナル拙者ガ何ト申シタ
カト申セバ、此鋼ノ大砲ヲ造ルニハ餘程數月ノ經驗モイルノミナラズ重大ナ
ル責任ヲ持チ若シ一步ヲ誤レバ軍隊ヲ沮喪セシメ又敵ヲシテ我隙ニ乘セシム
ルト云フコトハ甚ダ容易ナラヌコトデアッテ先ヅ度量ヲ披イテ、得ラレルナ
ラバ、外國ノ〓師一二名ヲ呼ブカ、ソレヲ山內氏ノ監督ノ下ニ在ラシメテ職
工數名ヲ雇ウテヤッタナラバ我國ノ職工モ同時ニ訓練スルコトガ出來テ宜シ
ウハナイカト云フタトキニ、西〓海軍大臣ノ前ニ於テ山內氏ガ此拙者ニ申シ
タ、此當時山內大佐ハ官職カラ申スト遙ニ我輩ヨリ下級ノ將校デアリマシタ
ガ、實ニ簡單ナ語ヲ以テ答ヘタ、私ニ御信任アッテ此問題ヲバドウシテモ擔
ウテセイト云フコトデアリマスナラバ何ヲカ厭ハン、私ハ辭ヲ口ノ上デ言フ
コトハ甚ダ嫌フノデアッテ、何事モ言行一致シナケレバナラヌ、故ニ支那事件
ノ問題ノ起ルト此大責任ヲ擔ウテヤリマシタ結果ハ品物ヲ御覽下サレバ分
ルデアラウ、是ヨリ進デ大砲ヲ製造スルコトニ於テ何ヲ躊躇スル暇ハナイ
ノデアル、果シテ若シ之ヲ御信任ガナイト云フナラバ兜ヲ脫イデ御免ヲ蒙ル
ノデアル、是ハ軍人トシテハ出來ヌケレドモ實ニ簡單ナ語ヲ以テ其時ニ海軍
大臣ノ前ニ言明シタノデアル、扠玆ニ至ッテ山本ハ何ト答ヘタカ、此有數ナ
將校ノ前ニ言明シタコトハ自分ノ不明ニ歸シタ、今マデ自分ガ從事スル軍
務局長ノ職責ニ在ル軍事上ノ議論ヲ捨テヽ仕舞ッテ宜イ、ソレナラバ斷
ジテ自分ノ議論ヲ引キ進デ此人ニ託スレバ必ズ滿足スルト云フタメ遂ニ二
十九年來事業ヲ繼續シタノデアル、然ルニ五年ノ此間ノ結果ハドウデアル
カ、海軍へ明治ノ初年ヨリ從事シタ所ノ私ガ斯ノ如キ因循ナル議論ヲ其當
時立テタコトモアリマシタ、貴下方ニ於テモ海軍ノ造兵廠ハドウ云フ範圍
マデ進ンデ如何ナル事業ヲシテ居ルカ、明治ノ初年ヨリ歷史ガアッテ日〓
戰役ノ際ニ從事シタ所ノ艦船ハ如何ナル種類ノモノデアッタカ、今日帝國
ノ海軍トシテ卽チ本邦ニ在ル所ノ艦船ハ如何ナルモノデアッタカト云フコト
ニ附イテハ、御多忙ノ際或ハ御覽下サルコトガ出來ナカッタカモ知レヌ、然
レドモ屢、之ニ向ッテ便利ヲ與ヘルコトヲ私ハ力メテ居ルノデ、尙ホ又將來
力メント欲スルモノデアル、十分ニ御調査下サレテアッタナラバ、今日ノ問
題ニ於テ諸君ガ解決シテ下サルコトハ、イト易イコトデアラウト信ジテ居
ルノデアリマス、ソコデ造兵ノ事業ノ如キハ僅ニ五年ヲ出デナイ內ニ如何ナ
ルコトヲシテ居ルカ、此大砲ヲ造ルト云フコトハ實ニ工業界ノ最モ苦難スル
所デアルト信ジテ居ルノデアル、ソレアルニモ拘ラズ目下製造シ上ゲテ造兵
廠內ニ安置シテアル所ノモノハ大口徑ハ二十一珊以下小口徑ニ至ル數多ノ大
砲デアリマス、既ニ諸君ガ一昨年協賛ヲ與ヘラレタ所ノ造兵工場ノ設備ト云
フハ如何ナルコトヲスルカト申セバ卽チ二十四珊マデ作ルコトノ從來ノ經畫
デアリマシタガ、之ヲ進メテ大口徑ノ十二吋卽チ三十珊半ノ大口徑ノ製作ヲ
スルコトハ諸君ガ滿場一致デ翼贊下サレタ結果トシテ今ヤ造砲工場ハ著々步
ヲ進メテ以テ三十六年度ニ至ッテ三十珊半ノ大口徑ヲ製作スルコトガ出來ル
程度ニ立至ッタノデアル、立至リハ致シマシタガ、又大砲ナルモノハ平戰兩
時ヲ問ハズ軍艦ニ搭載シテアル所ノ大砲ハ年々發數ガ限ッテアル、何發以內
ノ發數ハ有時ノ際有效ナラシメンガタメニ之ニ向ッテ射擊ノ法ガ拵ヘテア
ル、故ニ大砲ハ何十發發射ノ後ニ至ッテハ命數ガ盡キテ廢砲ト爲ラ子バナラ
ナイ、丁度人間ガ老朽スルト同ジコトデアル、此老朽シタ大砲ハ如何ナル修
理ヲ加ヘテモイケナイ、故ニ今拵ヘテアルモノハソレハ豫備砲ト云フ如キモ
ノニ向ッテヤッテアル、扠是ヨリ出シマシタ所ノ問題ニ附イテ御話致サンニ
其裝甲巡洋艦以上ニ備ヘテアル所ノ大砲ハ大口徑ノ大砲ハ無論其以下ノ艦
船ト雖モ八吋速射砲卽チ二十一珊以上ノ大砲ハ如何ナル裝置ニ依ッテ如何ニ
軍艦ノ艦上ニ搭載シテアルカト云フコトハ諸君ガ御承知ニチラナケレバナ
ラヌ是ハ恰モ圓筒形ノ物ノ中ヘ大砲ガ這入ッテ居ルノデアル、ソレハ餘程
厚ミハ非常ニ厚イモノデアリマス、其他小口徑ノ大砲ト雖モ砲障ガアッテ初
テ戰時ニナッテ砲員ヲ其間ニ隱蔽セシメテ、以テ有效ナル射撃ヲ爲シテ其目的
ヲ達セントスルノ手段ヲ平常カラ講ジテ十分ナ豫防法ヲ爲シテアリマス、大
砲ハ斯クマデ完全ニ出來得ルニ拘ラズ其大砲ヲ安座スル所ノ砲塔砲楯ト云フ
モノハ委員總會ニ於ケルマデ二囘ノ敗軍ニ會ッタノデアリマス諸君、如何
デゴザイマセウ、實ニ遺憾ナコトハ當局者ハ申スマデモナク諸君モ斯マデ
御話ヲ致シタナラバ十分御分リニナル御方〓デアルト深ク信ズルノデアル、
扨其大砲ハ出來ル、其大砲ヲ安座スル所ノ砲楯ノ如キ種々ナモノヲ海外ニ注
文セントスルカ、是ハ實ニ容易ナコトデゴザイマセヌ、恐ラク「トランス
ボート」ノ如キ船ニテ運搬致シマスニ上甲板カラ下ニ這入ル穴ノ大キサニハ
限ガアルノデアル、其限ガアルモノニ若シ大キナモノヲ入レルト、ソレガ
タメニ船ノ穴ヲ開クト云フコトモ出來ベカラザルコトデアル、又此重量ナル
モノヲ海外ニ注文シテ運搬スルト今ノヤウナ困難ガアルノミナラズ積ムベカ
ラザル所ニ積メバ船ノ「スタピリチー」ニ於テ非常ニ關係ヲスルト云フコト
ハ是ハ造船技術者ノ普ク御承知ノコトデアル、斯クマデニ困難ナモノデ一方
ニ兵器ノ獨立ヲ致スニ拘ラズ斯ウ云フモノガ出來ル、最早技倆モ十分ニ達シ
テ居ルコトデ、如何ニ申上ゲテモソレハ先ヅ一年延スト云フコトニナリマシ
テハ實ニ國家ノ上ニ甚ダ遺憾ニ存ズルノデアリマス、又之ヲ造船ノ方ヨリ論
究致シマスレバ軍艦水雷艇補充基金法ノ制定ニ依リマシテ三十七年頃ヨリ軍
艦ノ起業ニ掛ラ子バナラヌ、是等ノ軍艦ナルモノハ當局者ハ無論貴衆兩院ノ
諸君ニ於カセラレマシテモ必ズ形勢ガ許スナラバ本邦内ニ於テ製作スルコト
ハ所望サレルデアラウト思フ、是ハ無論デアル、扨所望サレルト同時ニ當局
者ガ既ニ經驗シタ所ヲ以テ起サントスル事業ノ方案ハ是マデニ至ル間ニ敗
ラレテアル、然ラバドウデアルカ、國家ハ軍事上必要ナ問題ニ向ッテハドウ
シテ見テモ其モノニ十分ナル所ノ器具機械ヲ與へ事業ヲ與ヘテセナケレバ
國家ノ發達ト云フコトハ到底出來ナイノデアル諸君、申スマデモナク此日
本國ナルモノハ如何ナル地形デアルカト云フコトハ實ニ三尺ノ童子ヲ待タ
ズシテ明ナルコトデアル、加フルニ明治二十八年ノ五月、馬關條約ノ結果ト
シテ臺灣、澎湖島ガ我有ニ歸シタ以來、本邦ノ海岸線ノ延長シタコトハ是レ
亦私ガ申スマデモナイ、此軍艦ノ配備上、平常ノ任務ト致シマシテモ、ナカ
ナカ非常ナ困難ヲ感ジテ居ル、故ニ如何ニ殖產興業ヲ盛ナラシメントスルデ
モ國ニ必要ナ機關ガナクシテハ之ヲ保護スルコトハ出來ヌノデアル、是ハ申
スマデモナク諸君ハ定メシ御同感デアラウト思フ、若シ國民ガ帝國ノ海軍ヲ
シテ斯ノ如クアラシムルヲ望ムナラバ今申ス如キ目的ヲ十分ニ翼贊ヲ願ヒタ
イノデアル、我己ノ力ヲ測ラズシテ大言壯語ヲ吐イテ國家政府ニ希望スルナ
ラバ是ハ無稽ナ空言ニ過ギナイト考ヘル、併ナガラ斯ノ如キコトハ此議場ニ
於テハ無論ナイコトデアリマス、是ハ國民全般ニ向ッテ言フノデアル、未ダ國
民ハ幼稚デアル、我海軍ニ對スル所ノ眼識モ幼稚デアルト思フノデアル、故
ニ造船ノ事業ヨリ先カラ論究シマシタ通本邦ニ於テ一等戰艦以上ノ裝甲巡洋
艦ノ如キ戰鬪艦ノ如キモノヲ造ルト致セバ皆悉ク海外ニ是等ノ材料ヲ注文セ
子バナラヌノデアッテ、五年ノモノハ十年、否、モウ少シ時日ヲ要スルカモ知レ
ヌナカ〓〓容易ナコトデナイ、其上ニ先日來申上ゲマス通是ニハ雛形及圖
面ヲ造ラナケレバナラヌ、雛形ナルモノニ二種アリ、卽チ一ハ木製、一ハ鐵製
デアル、木製ハ氣候ノ變遷ニ依ッテ仲縮ヲ爲ス、從ッテ希望ヲ逹セヌ、鐵ヲ
以テ之ヲ製セント欲セバ之ヲ取外シ、又之ヲ附著スルニ「ナット、スクリュー」
ヲ以テセナケレバナラズ、然ラバ締メ工合デ多少ノ凹凸ヲ爲ス、假令圖面
ニ於テ一分一厘ノ「カーブ」ヲ示シテヤルト雖モ是ハ實際「モデル」·ハン·
ナケレバ何レノ國ニ於テモ出來ベカラザルコトデアルト云フコトハ、私ノ
言ヲ俟タズシテ此中ニ御經驗ノアル諸君ハ必ズ御承知ノコトト思フ、又小サ
ナ船ニ於テモ一吋以內ノ外板ニ張ル所ノ板ト云ッテモ是ハ日本デ造ルコトハ
出來ナイ、故ニ是ヨリ枝光製鐵所ニ向ッテ來歷ヲ說カ子バナラヌ、成ル稈過
ル明治二十四年ノ頃ニ於キマシテハ將來ニ起ル所ノ問題ニ對シテ海軍ニ於テ
製鐵所ヲドウシテモ起サンナラヌ軍事上ノ必要ヲ感ジタノデアリマス、所ガ
其際ハ自白致シマスレバ、マダ海軍ハ幼穉ナモノデ、此技術ニ於テ十分經驗
ヲ得テ居ナカッタ、又需要ガ五六千噸ニ上ラナカッタ、數量ト云フモノハ··
扠其問題ガ段々ト變化致シテ製鐵所ハ農商務省ノ所管ニ屬スルコトニナッ
タ、是ハ無論至當ノコトデアル、如何トナレバ一般ノ需要ニ供スベキモノ
ヲ擧ゲテ必ズ、陸海軍ノ工場ノ範圍內ニ屬スベキモノデナイト斷言シテ憚
ラナイ、ソレデ作業ニ掛ッテ今日收利的卽チ計算的ニ收支償ハナケレバナラ
ヌ事業ハ是ハ致シ方ナクシテ人民ノ程度ガ其度合ニ進ムマデ政府デ處理シ
若クハ之ヲ政府自ラ爲スコトハ必要デアルト信ジテ居ル、故ニ政府ハ枝光製
鐵所ト云フモノヲ起シタ、起シタ時ノ精神ハ成ル程此議場カラモ段々御議論
モアリマシタガ、軍器ノ獨立ヲ爲スタメニソレニ要スル材料ト工業用ノ鋼材
ヲ製スルコトノ二途ニ外ナラナイト云フ其當時ノ當事者ノ說明ガ無用ニナツ
タト云フコトデアリマス、若シ其レアリトシタナラバ其言葉ガ甚ダ此議場ニ
殘ッテ不都合ト云フナラバ我〓ハ政府ノ大臣トシテ誠ニ惡ルイコトデアッタト
云フコトハ決シテ否マヌノデアル、是ハ事實ノ問題デアル、扠枝光製鐵所ノ
コトハサウ云フ言葉デアッタガ、如何ナルコトヲ致シテ居ルカ、政府ノ方カ
ラ諸君ニ申シマスレバ難キヲ後ニシテ易キヲ先ニスル、故ニ普通ノ鋼材卽チ
「レール」ノ如キ或ハ「シップスプレート」トカ「ビーム」トカ「アングルアイヨ
ン」トカ柱トカ鐵道ノ材料ニスルモノトカ卽チ營利的ノ重モナルモノデアリ
マイク。其他軍事上ニハ間接ニ如何ナルモノヲ供給シテ吳レルカト申セバ前途
ニ於テ愈〓、完全ナルモノデアレバ重モナル材料ハ「ピグアイヨン」卽チ銑鐵デ
アリマス、其他艦材ニ用ヰル薄イ板、此板類ヲ變ジテ大砲ノ車臺ニモナルノ
デアリマス、其他小サナ速射砲彈丸用ノ圓棒ノ如キ亦以テ陸海軍ノ用途ニ供
スルコトガ出來ルノデアル、扨此枝光製鐵所ト云フモノハ成ル程軍器ノ獨立
ト云フコトヲ笠ニ冠ッタカハ知ラヌガ其實ハ今言フガ如キ有樣デアリマシ
テ政府ハ一日モ此枝光製鐵所ヲシテ有效ニ收支相償フコトヲ希望シテ已マ
ザル譯デアリマス、然ルニ枝光製鐵所ハ直接ニ陸海軍ノ軍器ニ對スル所ノモ
ノハ今何モ無イノデアル、成ル程大砲ノ材料ト云フモノハ初メ軍器獨立ノ重
モナモノヲヤル積デアッタノガ、是ハ難キヲ後ニスルト云フ側カラ目下事業
ノ進行中ニ在ルモノニハ何モ一ツモ殘ジテ居ラヌノテアル、海軍ハ既ニ一昨年
諸君ノ協賛ヲ經マシテ最早三十珊半ノ大砲ガ出來得ルノデアリマス、今ヤ既
ニ八吋マデ出來ルコトヲ試驗致シテ居リマス、然ラバ殘ル所ハ軍器ニ付テ今
申シタ通如何ニ之ヲ責メテモ詮ナキコトデアル、故ニ陸軍ノ大砲ニ使フ所
ノ數量、大凡二千噸ト云フモノハ此問題ガ成立チマスレバ陸軍ノ方ニモ供
給シ得ルト云フ決心デ居ルノデアリマス、サウスレバ枝光製鐵所ハ軍器ト
云フモノニ向ッテハ軍器獨立ノ一部ヲ幫助スルニ過ギナイ、此一部ヲ幫助
スル所ノ品物ハ卽チ前ニ申述ベタ通ノ品物デアリマス、最初ヨリ枝光製鐵
所ニ於キマシテ、殊ニ政府ニ於キマシテハ此新式ノ「クロームスチール」ノ
鐵板ノ如キハ無論ノコト、其他一般ノ鋼板ノコトニ附イテモ最初ヨリ造ラ
ヌノデアル、諸君ガ如何ニ望マルヽト雖モ最初カラ政府ノ希望ガ其所ニ無イ
ノデアル、唯殘ッテ居ルノハ陸軍ノ砲身ノ材料ノミガ殘ッテ居ル、殘ッタモノ
ヲモ今囘海軍デ造ルガ宜シイト云フコトニ政府ハ卽チ前內閣ニ於テ此問題
ヲ決シタ、此内閣ニ於テモ無論當否ヲ論ジテ終ニ議場ニ出シテ衆議院ヲ通
過シテ本議場ニマデモ上ッタノデアリマス、ソコデ枝光製鐵所ハ如何ナル
コトヲスルカト云フコトハ旣ニ諸君モ御承知デアル、旣ニ二月五日ヲ以テ
火入式ヲ行ヒ其結果ハ未ダ私ノ耳ニハ達シナイガ定メテ漸次良イ材料ヲ造
ルト云フコトハ深ク信ジテ疑ハヌ、幸ニ銑鐵ノ如キ海軍デ要スル所ノ銑鐵
ニ匹敵スルモノガ出來タナラバ國家ノタメニ諸君ト共ニ悅ブノデアル、此銑
鐵ノ如キ燐及硫黃ハ殆ド一萬分ノ二以上ヲ含有シテハ海軍ノ材料ニハナラヌ
ト云フコトハ技術者ガ屢〓斷言致シテ居ルノデアリマス、願ハクバ斯ノ如キ
善良ナルモノヲバ造ルコトヲ努メ且ツ望ンデ居リマス、吳造兵廠ノ擴張費ノ
問題ナルモノハ是ハ如何ナルモノデアルカト云フト、マルデ雲泥ノ違ヒデア
ル、ソコデ吳ノ造兵廠デ造ラントスル所ノモノハ軍艦用ノ裝甲板ノ如キ砲楯
用鋼板竝ニ砲身ノ如キモノヲ造リタイノデアリマス、其他大砲ニ造リマスル
所ノ材料又ハ彈丸及魚形水雷、敷設水雷其他諸般ノ鑄物、擧ゲテ海軍兵器ノ
總テノ獨立ノ基礎ヲ固クスルノミナラズ、國家有事ノ際ニハ之ヲ以テ軍器ノ
獨立ヲ完ウスルト云フコトニナルノデアリマス、扠此問題ヲ提出スルニ至ッ
テハ前ノ政府ニ於テ既ニ枝光ノ行懸リモゴザイマシタカラ深ク講究致シタノ
デアリマス、故ニ枝光製鐵所ノ關係ハ今申シマシタヤウナ理由デアリマスニ
依っつ是ハ兵器ニ直接關係アルノミナラズ、兵器デアルカラシテ兵器ノ獨
立ヲ爲スニハ卽チ海軍省デナスガ宜シイト云フコトニ決定ノ結果、前內閣ニ
於テ之ヲ定メ、此內閣ニ於テモ均シク此目的ヲ以テ進ンダノデゴザイマス、然
ルニ先程委員長カラモ御報告アリマシタ通衆議院ニ於テ和田長官ノ言ノ如
キ云々ト云フコトガゴザイマスガ、是ハ其人ノ議論ヲ駁擊スル價値ハナク、
又駁擊スルノ必要ハナイト私ハ思フ、御承知ノ通政府委員ニアラズシテ枝光
製鐵所ノ長官デアルカラ技術上質問ヲシタイト云フ箇條ガアルト云フ衆議院
ノ豫算委員ノ請求ニ依ッテ農商務大臣ガ呼バレテ其監督ノ下ニ於テ陳辯サレ
タノデアリマス、製鐵所長官ガ言ハレタヤウナコトハ成ル程技術者トシテハ
一己ノ意見ガアルカモ知ラヌ、是等ハ決シテ全ク價値ノナイ議論デアルト云
フコトヲ言フ必要ガナイノデアリマスガ、其事柄ヲ誤解ナサレテハ困ルノデ
アル、所デ貴族院ニ此問題ガ囘リマシタ以來、分科會及委員總會ニ於カセラ
レマシテハ、其選ニ御當リニナリマシタ所ノ御方ミハ本官姑メ政府委員ニ向ツ
テ愼重ノ態度ハ無論申スマデモナク丁寧反覆、非常ナル御議論ノアリマシタ
結果、遺憾ナガラ先刻申ス所ノ悲運ニ遭遇致シタノデアリマス、實ニ此問題
ヲ提出スルニ當リマシテハ、深ク諸般ノ事ヲ考ヘ又國家經濟ノ上ニモ考ヘタ
ノデアル、ソコデドコマデモ此問題ハ全然不同意ダト云フ意味デハナクシテ
一年ヲ延期スレバドウデアル、延期スルニ附イテモ調査モ多少致シタイ、又
農商務省ノ行懸リモアルト云フコトデアル、是レ偏ニ政府ノ責任ニ屬スルコ
トデアッテ御調査ハ如何程アッテモ宜シイ、唯遺憾ナコトハ政府ノ方面ニ於テ
農商務、海軍兩省ノ間ニ行違ガアルト云フコトハ本官ニ御問ニナレバ不肖
ナガラ御答スルコトガ出來ルデアラウト思ヒマス、決シテ斯ウ云フ小サイ問
題ニ論及スル必要ハナイト考ヘテ居リマス、ソコデ一體枝光ノ製鐵所ニ於テ
如何ニ之ヲ望ムトモ政府ハ枝光製鐵所ヲシテ斯ノ如キ事業ヲ爲サシメルト云
フコトハ經濟ノ上ニ於テ不得策ナルノミナラズ、國防ノ大計ニ於テ斷ジテ出
來ヌト云フコトヲ明言シテ憚ラヌ、扠之ヲ地形ヨリ論ズレバ、軍事ニ經驗ア
ル諸君ガ皆居ラレルノデアリマスガ、枝光ノ海邊ニ於キマシテハ浚渫ヲ爲ス
ト雖モ二十二三呎ノ「ドラフト」ニ達シ得ル範圍デナケレバイカヌ、是ハ船
デ申セバ小艦デアル、今ヤ大軍艦ハ如何ナル吃水ヲ持ッテ居ルカト言ヘバ大
抵二十六呎以上デアル、是ハ船ノ吃水ダケ、サウシテ其沿岸ニハドウデアル
カト言ヘバ大軍艦ハ陸地ヲ離レル七八千「メートル」ノ距離ニ碇泊ヲシナケ
レバナラヌ、假令之ヲ枝光ノ製鐵所デ出來ルト假定センカ、之ヲ持ッテ吳軍
港ニ運バシムルト云フコトニ附イテ如何ナル手段方法ヲ採ルカト云フコトヲ
考ヘナケレバナラヌ、又「ライタ」ヲ近イ所ニ入レルコトヲ要スルトスレバ
之ニ向ッテ諸般ノ設備ガ無ケレバナラヌ、卽チ海邊ニ在ッテハ百噸以上ノ「ク
レーン」ヲ用ヒナケレバナラヌ、又枝光製鐵所ハ兵器ヲ造ル所ノ機械ノ設
備ハ一モ無イノデアル、此設備モ亦從ッテ增サ子バナラヌ、故ニ起業費ニ於
テ夥多ノ差ガ起ルト云フコトハ明瞭ナコトデアルト信ズルノデアル、之ヲ
吳軍港ニ於テスレバ今申ス通リ十二吋ノ大砲ヲ製作スルタメニ要スル設備、
器械其物ヲ利用シテ大砲ノ砲楯、砲障、竝ニ軍艦用ノ鋼板ヲ製作スル所ノ器
具機械ヲ造ルモノニマデモ用便ヲスル、誠ニ一擧兩得ノ話デハアリマセヌカ、
扨是ヨリ地形ヲ論ジテ見テモ誠ニ防禦上ニ於テ良港ナルノミナラズ百噸「ク
レーン」ノ起重器ノ下ニハ優ニ大軍艦ヲ橫附ニスルコトガ出來ルノミナラズ、
ソコニハ鐵道ノ敷設モアリ工場ニ直チニ運送スルコトガ出來、以テ有事ノ際
ニハ如何ナルコトヲモ爲シ得ル仕掛ガ今致シテアルノデアル、此場合ニ至ッ
テ直接關係ハゴザイマセヌガ間接ニ我〓海軍軍人竝ニ國民ノ安心ヲスルタメ
ニ大ニ考ヘナケレバナラヌコトガアルノデゴザイマス、海陸ノ動作ハ大ニ異
ナルモノデアルト云フコトハ御承知ノコトデアリマセウ、諸君、旣ニ國家ノ非
常ニ際シテ某軍港ヲ一令ノ下ニ發スルトキニハ軍紀整肅ハ申スマデモナク、
立ドコロニ諸般ノ命令ニ對シテ之ガ長タル者ハ作戰其宜シキヲ収ッテ、
サウシテ始テ其目的地ニ向フノデアル、此場合ニ當リテハ······ナゼカト云ヘ
バ卽チ一囘戰ノ後ニハ如何ナル隊形ニ變化ヲ持ツデアルト云フコトハ是ガ長
官タル者ハ豫メ考ヘ子バナラヌ、此一等戰艦巡洋艦以上ノ船ハ先キニ申ス通
悉ク裝甲卽チ厚イ板ヲ張ッテ居ルノデアル、若シ不幸ナ出來事ニ出遇ヒ、サ
ウシテ一彈ヲ此板ニ被ッタナラバ是ガ修理ト云フコトハ爲スコトガ出來マセ
え、故ニ戰闘隊形ノ勢力ト云フモノヲ直チニ是ヨリ減殺セズバナラヌト云フ
コトハ實ニ忍ビナイコトデアルト深ク考ヘルノデアル、是等後顧ノ憂ヲ遺ス
コトナク實ニ一タビ港ヲ立ツト云フト電信其他ノ聯絡ヲ缺キ終始其責任アル
所ノ長官ノ判斷ニ任セ子バナラヌ、斯ノ如キ重大ナル職責ヲ擔フ所ノ將校以
下ノ任務ニ於テ誠ニ容易ナラヌ考ヲ起サセルト云フコトハ私ハ遺憾ニ思フノ
デアリマス、是ハ諸君モ定メシ御同感デアラウト思フ、然ラバ政府ハ之ニ向
ウテ平常如何ナルコトヲスルカト云フト、今日ノ場合ニ於テ殊ニ東洋多事ノ
際ニ於テ······東洋多事ト云フコトヲ口癖ノ樣ニ谷子爵モ仰セラレマシタガ、
是ハモウ申スマデモナイコトデアル、併ナガラ是等ヲシテ滿足ニドウ云フ日
月ノ間ニ斯ウ云フ經綸デ斯ウ云フ仕事ヲ仕上ゲルノデアルト云フコトヲ思ハ
シメタナラバ、進ムニ勇ニシテ退クニモ亦······進ムニ二倍ノ勇氣ヲ皷シテ總
テノ算畫ガ立ツノデアル、實ニ之ヲ一年延シテ見タラドウデアル、一年延スト
云フコトハ容易ノコトデハナイ、ト云フモノハ此一年間ハ何ヲスルカ、卽チ
之ヲ建テル所ノ經畫ニ依リ約束ヲ致シ、サウシテ材料等ヲ蒐集スルト云フノ
デアル、材料ヲ蒐集スルト云フノハ初年一年ニ亙ラナケレバナラヌ、第二年
度ハ始テ器械ノ据付ニ著手シ、サウシテ又ソコニ建築ヲスルノデゴザイマス、
成ル程一年延シテ四年ニシタラ宜カラウト云フ論ガアリマスルケレドモ、ド
ウシタ所ガ容易ナコトデハナイ、又之ヲ他ノ技術ノ方カラ申シマスレバ既ニ
是マデ〓究ヲ致シ諸般ノ業務ヨリ〓究ヲ致シタ結果トシテ此熱ヲ冷ナラシメ
ルト云フノハ甚ダ容易ノコトデハナイノデ、之ニ加フルニ今日ノ形勢ニ於テ
一刻ダモ之ヲ忽セニシテハナラヌト云フノデアルタメニ今本官ガ諸般ノ點ニ
於テ、會期モ切迫致シタ今日ニ於テ、長イ演說ヲスルト云フノハ甚ダ好マヌ
ノデアリマスルガ、事茲ニ至リマシテハ誠ニ已ムヲ得ヌコトデゴザイマス
ル、故ニ賢明ナル諸君ノ御判斷ニ訴ヘマシテ滿場一致ヲ以テ此問題ヲ御贊
成、原案ノ如ク復活ニ御贊成ニナランコトヲ偏ニ希望致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=16
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017・谷干城
○子爵谷干城君 チヨット言ヒ落シタコトガゴザイマスカラ、チヨット申上ゲ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=17
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018・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=18
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019・谷干城
○子爵谷干城君 爰カラ申シマス、今海軍大臣ヨリ縷々御說ヲ承リマシタ
ガ、前日來ノ御說ト一向變リマセヌ、ソレカラシテ和田長官ヲ喚ンデ貰ヒタ
イト云フコトハ曾我子爵カラシテ主査會デ御請求ニナッタト考ヘマス、トコロ
ガドウモ政府ノ都合、最早期モ切迫シテ居ルカラ、ヨシテ貰ヒタイト云フ斷
リデゴザイマシタカラ、ソレ故ニ曾我子爵モ據ナク御コタヘニナッタコトヽ考
ヘマス、詰リ此前ニ報〓ノ時ニ申シテ置キマシタ通、海軍ノ方ハ誠ニ其答辯
ヲスル方ニ人ヲ得テ居ル、農商務省ノ方ハ遺憾ナガラ其人ヲ得ナイ、又少モ
技倆ト云フサウ云フ方ノ技術ト云フ方ニ關係ノ無イ人ガ出テ居ッタヤウデゴ
ザイマス、此大事業ヲ決スルニ於テハ和田長官ノ說ヲ十分ニ聞イテ然ル後ニ
決スルト云フノガ主査ノ主意デアリマシタカラ、其和田長官ヲ喚ンデ貰ヒタ
イト云フコトヲ請求シタケレドモ、出來ナカッタト云フコトヲ私ガ申落シマ
シタカラ、ソレヲ諸君ノ御參考ノタメニ申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=19
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020・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) 時刻ガ參リマシタカラ休憩致シマス
午前十一時四十九分休憩
午後一時九分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=20
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021・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ報〓ヲ致シマス
〔仙石書記官朗讀〕
今二十日政府提出司法官試補實地修習期間ニ關スル法律案ヲ受領シタリ
水害地方田畑地租免除ニ關スル法律案兩院協議會委員ニ於テ互選シタル議
長及副議長ノ氏名左ノ如シ
議長公爵二條基弘君副議長伯爵正親町實正君
各特別委員會ニ於テ當選シタル委員長及副委員長ノ氏名左ノ如シ
府縣制中改正法律案外三件特別委員會
委員長子爵長岡·護美君副委員長子爵山內豊誠君
北海道鐵道部支部局及派出工場現金前渡官吏設置ニ關スル法律案特別委
員會
委員長子爵平松時厚君副委員長子爵一柳末德君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=21
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022・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ午前ニ引續イテ會議ヲ開キマス
〔男爵岡內重俊君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=22
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023・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 岡內君ハ何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=23
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024・岡内重俊
○男爵岡內重俊君 チヨット意見ヲ述べマスガ·····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=24
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025・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 意見ハ通〓ガアリマスカラ其順序ニ依ラナケレバ
ナリマセヌ
〔子爵曾我祐準君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=25
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026・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 曾我子爵ハ何デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=26
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027・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 本員ハ反對演說ヲ致シタウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=27
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028・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 贊成ノ方ノ通〓ガアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=28
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029・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 唯〓ハ反對ノ方ガ立ツベキ順序デアラウト思ヒマス、通
告ハ致シテアリマセヌガ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=29
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030・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) サウデゴザイマス、宜シウゴザイマス
〔子爵曾我祐準君演壇ニ登ル」発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=30
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031・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 諸君、本員ハ委員會ノ報告ノ如ク否決スベシト云フ論者
ノ一人デゴザイマス、今午前ニ於テ海軍大臣ハ非常ナ熱心ヲ以テ滿腔ノ熱血
ヲ灑イデ本案維持ノ演說ヲサレマシタ、實ニ是ハ近來稀ナル大演說デアリマ
シタ、因ッテ本案ノ提出サレタル理由竝ニ本案ヲ維持セラルヽ所ノ必要ナル理
由ハ諸君篤ト御分リノコトヽ信ジマス、海軍大臣ハ日本ニ於ケル造船ノ歷
史、竝ニ造兵ノ歷史ヨリ說キ起サレマシテ其進步ノ次第、竝ニ現況ニ及ビ、
而シテ裝甲板ノ製造、卽チ兵器ノ製造ニ伴ウテ甲鐵板ノ製造ハ日本ニ於テ一
日モ早ク成立セ子バナラヌト云フ主意ヲ述ベラレマシタ、而シテ又更ニ枝光
トノ關係ヲ述ベラレマシタ、サウシテ漸ク本題ニ入リマシタ、此前過半ニ於
キマシテハ此問題トハ殆ド關係ハ無イヤウナモノデアリマス、唯是マデ海軍
ガ造兵ニ造船ニ力ヲ盡シテ其成效ノ美事ニアッタト云フコトヲ申サレルノ
デアッテ、察スル所最モ此製鋼ノ如キモ必ズ甲鐵板ノ製造ノ如キモ必ズ成效ス
ルト云フ前提ニ揭ゲ示サレタモノト推察サレルノデアリマス、本員等ハ豫算
委員ノ一人デアッテ、而シテ又第四分科ノ一人デアリマス、本員等ガ此案ニ
附イテ調査シタ次第ハ速記錄ニ載セテアリマスケレドモ、諸君十分ニ御讀ノ
暇モアリマスマイト考ヘマスニ依ッテ此調査ノ次第ヲ少シ申上ゲマス、此調
査ニ於テ最モ要點ト認ムル箇條ガ四箇條バカリアルカノ如ク認メマシタ、第
一ニハ專賣權ノコトデアリマス、第二ニハ此裝甲板ノ製造及試驗ノコトデア
リマス、第三ニハ技師及職工ノコトデアリマス、第四ニハ代價ノコトデアリ
PV、是等ハ最モ此案ヲ決スルニ附イテ必要デアラウト認メマシタニ依ッテ
隨分詳ニ是ハ問ヒマシタノデアリマス、第一ノ専賣權ノコトニ於キマシテハ
外國ニ於キマシテモ此甲鐵板、卽チ「ニッケルクロームスチール」ト云フモ
ノ卽チ軍艦ニ張ル所ノ板ト云フモノハ「クルップ」ノ發明デアル、最モ良イ
所ノ板ナノデアル、卽チ「ニッケルクロームスチール」ト云フ所ノモノハ「ク
ルップ」ガ發明デアッテ、他ノ各外國ニ於テモ其專賣權ヲ買ヒ、且ツ其専賣權ヲ
先取シテ各國ニ於テモヤッテ居ルコトハ明ナル事實デアル、今吳ニ於テ造ル所
ノモノハ吳「システム」トシテ一種ノモノト名ケテ、卽チ吳式ト名ヲ附ケルト
云フコトデハアリマスガ、ソレハ實際「クローム」ト「ニッケルクローム」ト言ッ
テ居ル、此「ニッケルスチール」ト紛レナイノハ事實デアラウト信ズルノデアリ
マス、ソレカラ今マデノ鋼板デアルト一尺七八寸ノ厚サガナケレバナラヌノ
ガ、此新イ所ノ發明ニ據ルト七寸カ八寸デ防ゲルト云フ非常ニ便益ナ利益ノ
發明デアルト云フコトハ蔽フベカラザルコトデアリマス、是ハ本院デ言フコ
トガ初メデハアリマセヌ、衆議院ニ於テ其事ハ明ニ述ベラレテ居リマス、斯
ノ如キ譯デアルニ依ッテ此專賣ト云フモノハ日本デハ其專賣權ヲ買取ラヌデ
モ宜イカト云フ質問ニ對シテハ政府委員ハ斯樣ニ答ヘラレマシタ、ソレヲ買
ウテ居ルノハ總テ私立ノ會社デ、是ハ歐羅巴亞米利加ニ通ジテ詰リ「パテン
ト」ヲ取ッテアリマスカラ、此專賣權ヲ買ハズニ彼等ニハ出來ナイ、是ヨリ多
クノ說明ハ與ヘラレズ、又是ヨリ多クハ問ヒマセヌデアッタガ、察スルニ亞米
利加歐羅巴デハ「パテント」ヲ買ハナクテハナラヌガ、日本デハ買ハナクテ
モ宜イト云フ意味ノ如ク、而シテ又私立會社デアルナラ買ハナケレバナラヌ、
政府ナラバ買ハヌデモ宜シイカノ如ク取レマス、此事ハ一種ノ法律問題デア
リマシテ〓究スル暇モアリマセヌガ、併ナガラ衆議院ニ於キマシテノ速記錄
ヲ見マスレバ和田製鐵所長官ガ專賣ヲ買ヒニ行キ傳習ヲ受ケテ而シテ此事ヲ
〓究シタ方ガ誠ニ安全デアル最モ安全ナル利益ナル仕事デアルト云フ、斯樣
ニ辯ゼラレテ居ルコトヲ諸君ノ御參考ノタメニ一言辯ジテ置キマス、ソレカ
ラ又第二ノ裝甲板製造及其試驗ノコト、各國ニ於テ「クルップ」ノ發明ノ專賣
權ヲ買ヒ若クハ傳習シテ造ル所ノ各國ニ於テモ、本家本元ノ「クルップ」ノ裝
甲板ノ如キ美事ナモノハ出來ヌト云フコトヲ承リ居ルノデアリマスニ依ッテ、
日本デ今造ル所ノモノハ果シテ本家本元ノ如ク美事ナモノガ出來ルヤ否ヤ、
斯ノ如キ御試驗ハ如何デアルカト云フ斯ノ如キ問ハ自然ノ順序トシテ發セザ
ルヲ得ヌカラ問ヒマシタノデアリマス、ソレニ對シテ言ハルヽニハ〓究致
サナケレバドウモ唯今確答ハ出來マセヌ併ナガラ今日世ノ中ニ現在スル所
ノ裝甲板デ人間ノ力ノ及ブダケノモノハドウカ斯ウカ〓究次第其處マデハ漕
ギ著ケル決心デゴザイマスト言ハレタ、如何デアリマス、唯今確言ハ出來ナイ
ト言ハレタ、屹度十分ナモノガ御出來ニナルカト云フ問ニ對シテ、ソレハ確言
ハ出來マセヌ、併ナガラ人間ノ力デ及ブダケノモノハドウカ斯ウカ〓究次第
デハ漕ギ著ケルデアラウ······漕ギ著ケタト云フノデハナイ是カラ先ノ勉强ト
〓究ニ依ッテドウカ斯ウカ漕ギ著ケルデアラウト云フ、斯ウ云フ答辯ナノデ
アリマス、ソレカラ又第三ノ技師職工ハ如何ナルモノヲ用ヰルヤト云フ問ニ
對シテハ、數年前ヨリ各國ニ人ヲ派遣シテ各所ノ製造所ニ於テ稽古ヲサセテ
居ル、熟練ナ者ヲ數十人得テ居ル、而シテ尙ホ言ハレマスニハ吳ニ於ケル設備
ガ成リ次第ニ〓究ハ十分ニ進ミマセウ、今度要求シタル所ノ金ヲ得テ其製造
所ガ成立シタ以上、卽チ設備ガ出來タ以上ハ〓究ハ十分ニ進ミマセウト言ハ
レタ、是ハ今日〓究ノ十分デナイト云フコトヲ證明シタ語ニ當ル、第四ニハ又
代價ノコトニ附イテ問ヒ質シマシタ、外國カラ買ヒマスト一噸千三百圓モ出
サナケレバナラヌ品ガ吳ニ於テ造レバ千圓デ出來ルト云フ主張ハ衆議院ノ速
記錄ニ明ニ載ッテ居リマス、ソレ故ニ果シテ左樣ニ三割モ違フモノデアルカト
云フ問ヲ出シマシタラバ、ソレニ對シテ斯樣ニ申サレマシタ、千三百圓ノ物
ガ千圓デ出來ルト云フハ材料職工ノ手間ヲ入レテアル、斯樣ナコトデゴザイ
マスニ依ッテ製造所ノ勘定ト云フモノハ斯ノ如キニ止ラヌノデアル、其製造
所ニ下ロシテ居ル所ノ資本竝ニ建物職員ノ給料、總テ籠メ子バ製造品ノ價ハ
出ヌノデアル、ソレヲ入レタラバ如何ナ勘定デアルト問ヒマシタ、ソレハド
ウモ海軍ノ方デハ勘定ガ出來ナイ、種々經濟ガ違ッテ居ルカラ出來ナイト答ヘ
ラレタ、ソレヲ籠メタラ左程安イ物ニハ付カヌデハアリマセヌカト申シタラ、
サウ云フモノモ這入ッテ居リマヒヌ、千圓デ出來テモ高ク付クダラウト云フ
御考ハ或ハ當ッテ居ルカモ知レマセヌ、此第四ノ價ハ政府自身ガ其主張ノ權利
ヲ取消サレタノデアリマスカラ最早辯ズルコトハナイ、卽チ我〓ノ推測スル
如ク安イ物デハナイト云フ御考ガ當ッテ居ルト云フカラ、是ハ最早論ズルコト
ハナイト思フ右四箇條ニ對シテ問ヒマシタコトハ第四分科會ノ速記錄ノ四
十四頁ト四十七頁ノ間ニ在リマス、諸君、本員ノ言ヲ御疑モアリマスマイガ
尙ホ事情ヲ明ニスルタメ御覽下サレバ能ク分リマス、サリナガラ昨日總委員
會ニ於キマシテ政府委員ハ過日分科會ニ於テ申シタ所ハ議事ニ不慣デアッタ
タメニ甚ダ不十分ノコトヲ申シタコトガアルト云ウテ演說若クハ其議論ノ修
正ヲ請求サレマシタ、卽チ修正ノ如キ演說ヲサレマシタ、サリナガラ是ハ議
事ニ不慣デアッタカ知リマセヌケレドモガ、演說ノ修正ヲシ取消スコトガ出來
ヌコトハ貴族院規則ニ在ル通デアリマス、跡ヨリ說ヲ變ヘテ修正スルコトハ
出來マセヌ、寧ロ議事規則ノ方ヲ御慣デナカッタコトデ斯ノ如キコトヲ申サレ
タコトデアラウト思ヒマス、又枝光ノ議論ニ附キマシテ縷々海軍大臣モ先刻
ヨリ申サレタノハ御存ノ通デアルガ、諸君モ御承知ノ通ニ兵器獨立ト云フ問
題ヨリシテ先年本院ヨリ建議ナドニモナリマシテ、度〓政府トモ爭ヒマシタ
結果、製造所卽チ枝光製鐵所ト云フモノガ成立シタコトハ御承知ノ通デアリ
やべ、然ルニ其第一ノ主意ハ兵器獨立デアリマシタガ、數年前ニ農商務省ヨ
リ議院ニ向ッテ四百萬圓要求サレタノヲ始メトシテ、尙ホ追ヒ增シ追ヒ增シニ
ナッテ千何百萬圓ト云フ卽チ二千萬圓ニ近イ金ニナッテ居リマス、是レ亦諸君
御承知ノ通デアリマスガ、其出マス時分ニハ兵器製造ト云フコトハ後ニ殆ド
加ッテ居ラヌカノ形ニナッテ參ッタ、初ハ兵器製造ノ積デアッタガ、後ニハ兵器
製造ト云フコトハ何處ヘカ行ッタ少シ立消ト云フヤウナ形ニナッテ居リマス
コトハ實際デアリマス、サリナガラ兵器ニ使フ鐵ト云フモノハ最モ精良ナル
最モムヅカシイモノヲ要スルガタメニ、ソレハ突然ソレヲ始メルト云フ譯ニ
ハイカヌ、又ソレヨリ始メルノハ甚ダ不利益デアル、ソレ故ニ易キヨリ漸々
進ンデ行クト云フコトガ卽チ枝光製鐵所ノ順序デアリマス、今尙ホアノ上ニ
數百萬圓ヲ加ヘタナラバ、本院ヨリ建議ナドヲ致シタル所ノ第一番ノ目的ニ
立戾ッテ、卽チ海軍ノ需要ヲ充スト云フコトハ出來得ルデアリマセウ、海軍
大臣ハ先刻若モ枝光製造所ガ兵器ノタメニ出來トルト云フ精神ナラバ政府ヲ
代表シテ取消シデモシヤウト云フコトハ言ハレマシタ、是レ亦速記錄ノ取消
ト同ジコトデ、數年前議院ガ其意思ヲ以テ決シタモノヲ今日ヨリ取消シテモ
何ノ效ハ無イ、若シ今日ナラバ取消デハナイ、方法ヲ變ズルノデアル、初メ
製鐵所ヲ要求サレテ我〓ガ贊成シタ時ト云フモノハ卽チ一番ヨリ兵器獨立ト
云フ意味ヲ持ッテ居ルノデ、併ナガラ著手ノ順序トシテハ未ダ製鋼卽チ鋼鐵
ヲ造ルマデニ至ラヌト云フハ、易キ所ヨリ段々難イ所ニ向ッテ進ミツヽアル
事實デアリマス、又日本ノ如キ財政ノ裕餘ナキ國デ斯ノ如キ大金ノ製造所ヲ
造ルト云フコトハ餘程注意セナクテハナラヌ、計算ノ點ヨリ注意シナケレバ
ナラヌ、卽チ枝光ニ二千萬圓ノ金ヲ掛ケテ大キナル製造所ガアル、ソレニ若
シ此鋼鐵板ヲ造ル所ヲ附加ヘタガ果シテ便利デアルヤ、又ハ吳ハ製鋼ノコト
ガ多少進ンデ居ルカラ呉ニ附加ヘタガ良イカト云フコトハ是ハ大ナル問題デ
アル、海軍大臣ハ枝光デハ出來マセヌ、左樣ニ申サレマシタ、果シテ出來ナ
イ、サリナガラ私ハ又ソレニ對シテ、吳デモ出來マセヌト云フ語ヲ使フコト
ヲ決シテ吝マヌノデアリマス、吳デモ出來マセヌ、故ニ六百萬圓要求シテ造
リタイト言フノデアリマスカラ、今日出來ヌコトハ分ッテ居リマス、吳デモ出
來マセス、枝光デモ出來マセヌ、卽チ此軍艦ニ張ル所ノ鋼鐵板ハドッチデモ
出來ヌ、出來ナイカラコソ要求サレタノデアル今日ニ於テ出來ナイコトハ
同樣デアル、卽チ數百萬圓ノ金ヲ投ジタナラバ吳デ出來ルコトハ枝光デ出來
ヌニモ限リマスマイ、和田長官ガ縷々衆議院デ辯ゼラレマシタ所ノモノハア
レハ和田一己ノ說デアル、決シテ政府ヲ代表シタノデハナイ、政府委員デ
ナイト云フコトヲ海軍大臣ハ申サレマシタ、果シテ是ハ其通デアリマス、勿
論和田ハ政府委員デハナイ、又政府ヲ代表シテ言ウタノデハナイ、サリナ
ガラ和田ハ工學博士トシテ斯道ニ餘程達シタ人デアル、而シテ實際枝光ノ事
ハ己ガ擔當シテ居ルカラ、政府ヲ代表シテ言ウタノデナク、一個人デ言フタニ
モセヨ、此人ノ言フコトハ道理ノ立ッテ居ルコト、理窟ノ立ッタ上ニ附イテハ何
等ノ輕重ハナイ、一個人デアラウガ政府ヲ代表シテ言フニモセヨ和田ノ言ウ
タノハ道理デアルト云フコトハ、政府委員ダラウト政府委員ニアラザルトニ
何等關係ヲ持タナイコトハ申スマデモナイコトデアル、先刻委員長ヨリ報
告サレマシタル如ク本案ヲ否決スル主意ト云フモノハ決シテ鋼鐵板ヲ日本
デ造ルコトガ不必要ナリト言フコトデハアリマセヌ、東洋ノ形勢上、日本ニ於
テハ十分ニ軍艦ヲ造ルト云フコトガ決シテ不必要ナルコトヲ認メテデハアリ
マセヌ、不必要デナイト認メマスカラシテ尙ホ之ヲ鄭重ニシテ間違ハヌヤウ
ニシナクテハナラヌ、サリナガラソレト同時ニ日本ノヤウナ金ノ少イ國デ
ハ、無論金ノ多イ國デモ同ジコトデアルガ、別シテ經濟ノ點ニハ日本ノヤウ
ナ國デハ愼マナケレバナラヌ、無駄ナ金ハ使ハヌヤウニシナクテハナラヌ、
無駄ナ金ヲ使ハヌヤウニシナクテハナラヌニ附テハ能ク是ハ調査シナケレバ
ナラヌ、卽チ枝光ニスベキカ、或ハ吳ニスベキカ、而シテ今日海軍省ガ執ツ
テ居ル所ノ傳習モセズ「パテント」モ買ハズ、自分考ト言ッテハ失敬ヂヤガ、自
分考ヲ以テヤラレテ出來レバ結構デアルガ、若シ誤ハシナイカト云フコトハ
大ニ此デ考ヘテ見ナケレバナラヌ、海軍大臣ハ縷々製鋼ノ結果ノ海軍デ好
カッタコトヲ述ベラレマシタ、如何ニモ好カッタニ相違ナイ、サリナガラ以前
ノガ好カッタカラ其後ノモ必ズ好イト云フコトハ期シ難イコトデアル、前ニハ
成功シテ後ニ誤ッタル例ハ外國ニモ日本ニモ其例ハ決シテ乏カラヌ、一例ヲ擧
ケレバユカシウスト云フ發明家、卽チ陸軍大佐ノユカシウスト云フ者ハ澳地
利ノ人デアルガ、是ガ「ユカシウス」式ト云ッテ今日マデ傳ッテ居ル所ノ鋼ノ黃
銅ノ鐵砲ヲ發明シタ、卽チ「ユカシウス」式ト云ッテ今日陸軍デモ使ッテ居ル野
戰砲山砲ハ皆其式デアリマス、其ユカシウスガ「ユカシウス」式ト云フモノヲ
美事ニ成功シマシタ、サリナガラ最後ニ尙ホ大キナ大砲ヲ造ラントシテ誤ツ
テ製造所ヲ燒イテ仕舞ヲタ、ソレガタメニ己ハ殘念デアルト云フ所カラ狂人ニ
ナッタト云フコトヲ承ッテ居ル、前ニ成功シテ後ニ不成功ヲ來スト云フコトガ
アル以上ハ、海軍ノ大砲ニ於テハ其成蹟ガ好カッタ、サリナガラ鐵板ニ附イテ
モ成功ガ必ズ好イト云フ判定ハ下シ得ヌト思ヒマス、海軍大臣ト本員等ノ問
答ト、分科會ヲ始メトシテ本豫算會ニ於キマシテモ又先刻此席ニ於キマシテ
モ繰返シ繰返シ同ジコトヲ度〓聞キマシタガ、詰リ海軍大臣ヨリ辯ゼラレタ
所ハ、是マデノ成蹟ガ好カッタカラ是ハ疑ッテ吳レルナト云フコトヽ東洋ノ
形勢、船ヲ造ルコトノ今日一日モ忽セニスベカラザルト云フ此二ガ重モナ點
デアル、此二點卽チ東洋ノ形勢ニ於テ必要ナルコトハ先刻モ申ス通是ハ滿場
一人モ不同意ハナカラウ、必ズソレハ是認シテ居ルニ相違ナイ、又之ヲ急グ
ト云フコトノ點ニ附イテモ是認シテ居ルニ相違ナイ、サリナガラ縱シヤ一年
此事ヲ後ラシテモ決シテ製鋼ノ上ニ附イテ後レナイト云フコトハ委員會デ喋
喋論ジテ置キマシタ、先刻海軍大臣モソレニ附イテハ議論ガアリマセヌカラ
モウソレハ措キマス、縱シヤ一年後レマシテモ其製鋼ハ一年後レナイト云フ
コトハ委員會ニ於テ調査シ終ッテ居リマス、右ノ理由アルガタメニ本員等ハ
本案ハ否決ズベキモノト決シタノデアリマス、願ハクハ諸君、本員等ノ議論
ヲ能ク御酌取リ下サッテ否決ニ贊成アランコトヲ希望スルノデアリマス
〔男爵本田親雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=31
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032・本田親雄
○男爵本田親雄君 諸君、本員ハ此問題ニ附キマシテ是ハ國家ノ事業ノ中デ
ノ必要缺クベカラサルモノデアル、故ニ熱心ニ之ヲ貫徹センコトヲ希望スル
一人デアリマス、勿論豫算ノ委員デアッテ陸海軍ノ方ニ囘リマシテ第四科ノ
委員ニナリマシテ、今ノ反對者諸君トモ追〓論究モ致シマシタ、又委員總會
ニ於テモ論ジマシタ、ソレデ同ジコトヲ繰返シテ申スヤウデハゴザイマスケ
レドモ、玆ニ至ッテ反對者ノ說ニ附イテ本員等ノ見ル所ヲ申サヌケレバナラ
ヌ場合ニ立至リマシタ、重複ニ渉ル譯デハアリマスガ暫ク諸君ノ御〓聽ヲ煩
ス積デゴザイマス、今、反對者ノ一人曾我子爵ヨリ段々御話ノ中ニ要領ヲ四
箇條バカリ述ベラレマシタガ、第一ニ專賣權ノコトヲ論ゼラレマシタ、是ハ製
鐵所長官ノ和田某ガ、專賣權ヲ買入レテ技師モ雇入レテスル方ガ安全デア
ル、此說ガ宜シイ、斯ウ云フコトデ唯今諸君ノ御聽ノ通デアリマスカラ別ニ
繰返シマセヌガ、本員等ノ見ル所デハ大キニ違ヒマス、抑〓專賣權ノコトハ是
ハ官業ニスレバ專賣ヲ買ハナイデモ宜イトカ、惡イトカ是ハ反對者モ言ハレ
ル通御承知ノ問題デアル、併シ私ハ當局政府ノ大臣ノ言フ所ヲ信ジマシテ、
買ハヌデモ宜イコトヲ固ク信ジテ居リマス、ソレハモウ喋々申シマセヌ、然
ルニ此製鐵所長官ノ和田某ガ一己ノ考トシテ衆議院ノ尋ニ應ジテ答ヘマシタ
主意ト申スモノハ枝光ニ於テハマダ左樣ナ計畫ハ致サヌ、然ルニ農商務省ヨ
リ他ノ用ニ附イテ出シタモノヽ序ニ此事ヲ枝光ニ於テ造ルトキハ如何ナル
手續ヲ以テスルカ、或ハ專賣ハドノ位ノ價デ買ヒ得ルヤ否ヤ、職工技師ヲ雇ウ
テ之ヲ日本ニ建ツルニハドノ位ノ費用ガ要ルヤ否ヤ等ノコトヲ取調ニ掛ッテ
居ル、ソレヲ聞クニハ彼ノ獨逸ト「エゼント」ヲ組ンデ居ル所ノイカサマ、番
頭ミタヤウナ者デアリマセウガ、其處ハ一向能ク知リマセヌガ、ソレニ賴ンデ
探索ヲシテ見タ所ガ凡ソ專賣權ヲ買フニハ八百萬圓位ト云フコトデアルソ
レカラ此鋼鐵ヲ使フニハ一噸ニ附イテ五十圓ヅヽノ專賣稅ヲ拂ハナケレバナ
ラヌト、斯ウ云フコトデアリマシテ、其事ハ電信ヲ以テ促シ、聞イタ所ハ是
等ノコトハ衆議院ノ速記錄ニ見エテ居リマスカラ諸君ハ疾ウニ詳ニ御覽ニ
ナッテ居ルコトデアラウト思ヒマスカラ、是モ委シクハ申シマセヌガ、其八百
萬圓ト申ス中ニ此專賣權ハ籠ッテ居ルヤ否ヤ、此外ニ五十萬圓ヲ拂フヤ否ヤ
ト云フコトハ速記錄ヲ見マシテモソレハ明ニハ分ッテ居リマセヌ、然ルニ我邦
デ之ヲ造ルニハ五十萬圓モ何モ入ラナイ、鋼鐵一噸ニ附イテ五十圓ノ噸稅ト
云フモノヲ出スニモ及バナイ、斯ウ云フコトハ我〓モ信ジテ居リマス、衆議
院ノ速記錄ヲ御覽ニナッタ諸君ハ固ヨリ御承知デゴザイマセウ、其方ガ安全
デアル、此專賣ヲ買ウテ技師技手モ西洋ヨリ傭入レテスル方ガ安全デアルト
云フニ附イテハ、唯ソレバカリ言フタノデハ無イ、是モ速記錄ニ詳ニ載ッテ
居リマスソレハ固ヨリ初テノコトデアルシ、製鐵所長官ノ和田某ハ言葉
ノ續ハ私ガ申スヤウデハアリマスマイガ、其意ハ初テノコトデアリマスカラ
是ハ西洋ノ技師技手ヲ傭フテ專賣權ヲ買ウテスル方ガ安全デアリマセウ、斯
ウ言ウタコトヽ存ジマス、海軍省デハソレニ附イテハ多年ノ經驗モアッテ、自
ラ出來ルト云フ、自ラヲ信ジテ居ル譯デアルカラ、サウ言ハルヽデゴザイマ
セウガ、和田長官ニ於テハサウ云フ自信力ハゴザイマセヌ、自ラ信ズル力ト
云フモノヲ持ッテ居ナイ、ソレデ專賣權ヲ買フテ五十圓ノ專賣稅ヲ拂ウテモ、
向フノ技師技手ヲ傭フテデモ、ソレガ安全デアラウ、斯ウ云フ主意ニナッテ
居リマス、是ハ速記錄ヲ御覽ナサレバ能ク分ル、我輩ハサウ云フ物入リヲセ
ヌデモ、コチラニハ技師モ居リ職工モ居ル、此事ニ附イテハ是モ矢張本邦ニ
於テスル方ガ宜シイ、斯樣ナ大切ナ兵器ヲ本邦デ造リ得ルト云フコトニナレ
バ至極結構ナコトデアルト云フテ喜ンデ本邦ニ於テ造ルコトヲ賛成致シタ
ノデアリマス、ソレカラ其次ニ裝甲板ヲ造リ得ルヤ否ヤト云フ問ニ、政府委
員ノ答デドウカ斯ウカ遣リ付ケマセウト言ウタ言葉ヲ摑マヘテ頻ニ御攻擊ニ
ナリマシタケレドモ、是ハ政府ノ當局者ト雖モ技術官ト雖モ未ダ本邦ニ於テ
鋼鐵板ヲ造ッタコトガナイノデアリマスカラ、ドウカ斯ウカ必ズ目的ヲ達シ
マセウト言ウタノハ、ソレハ造ッテ見ナイノヲ言フノデアリマスカラ、和田ガ
自信力ガナイト云フマデノコトデハゴザイマセヌケレドモ、是マデノ經驗ニ
依ッテ見マスルト、大砲ノ砲身ト言ヒ彈丸ト申シ、皆我ガ學ブ所ノ新式ノ鋼
鐵ヲ以テ製シテ居ル、金ノ沸シヤウモ能ク熟シテ居ル、職工モソレニ熟シテ
居ル者ガアル、ケレドモ此裝甲板ヲ造ル機械ガナイ、依ッテ此節此經晝ヲ出
シテ板ヲ造ラウト云フノデアル、旣ニサウ云フ答ガ出タ筈デアルト我〓ハ信
ズル、ソレデマダ手探リノコトデ、ドウニカ遣ッタナラバ似タモノガ出來マ
セウト云フ位ノコトデハナイ、其事柄ト其場合トニ依ッテ右樣ニ答ヘタ、併
シ曾我子爵モ後トカラ申サレタ通ニ、是ハ言ヒヤウガ惡ルカッタ、場所モ不
慣デアッタカラ、必ズ遣ル主意デアルト言直シタ、此位ノコトハ之ヲ攻擊セ
ラルヽト云フノハ誠ニ薄弱ナ話デアッテ、本員等ハソレヲ取上ゲテドウ斯ウ
申スデハゴサイマセヌケレドモ、諸君ノ御聽ヲ誤ラヌガタメニ之ヲ申シマ
ス、ソレカラ第四ニ外國カラ買ウテハ高ク付ク、本邦デスレバ廉價ニ當ル、
ソレハ職員ノ給料、ソレカラ其作業所ノ家屋等ヲ籠メテ計算ヲシタカト云フ
御問デアッテ、ソレハ入ッテ居ラヌ、ソレガ入ラヌケレバ別ニ廉イト云フコ
ト廉價ナリト云フコトハ言ハレヌヂヤナイカト云フ話デゴザイマスガ、是ハ
此前ニ委員會デノ段々ノ致究ヨリシテ廉不廉ノ話ガ出タノデアリマス、所デ
獨リ鋼鐵板ニ限ラズ新式ノ鋼ニ限ラズ、日本ノ戰鬪力ヲ助クル所ノ海軍ノ武
器ト云フモノヲ海外ヘ是マデ皆注文シテ居リマス、誠ニ本員等ハ常ニソレヲ
〓嘆シテ、是ハドウモ斯ウ云フ有樣デハ日本ノ國防トモ云フ中ノ必要ナモノ
ヲ悉ク海外ニ注文シテ、イザト云フ時ハソレヲ買入レルコトガ出來ナイト云
フコトモ、最モ是ハ憂フベキコトデアル、此上ニ日本ノ財產ヲ外國ニ散ジテ
仕舞フ、ソレハ何トカ云フト、本邦ニ於テ斯樣ナ兵器ガ出來ナイ故デアル、
ソレハ如何ニモ一日モ早ク本邦ニ於テ造ッテ、無駄ニ金ヲ海外ニ費サヌコト
ヲ希望スル熱心ト云フモノハ、是ハ諸君モ同ク憂ヘラルヽコトデアラウト思
ヒマス、ソレデ注文ヲシテ造ルノト、コチラデ造ルノトハドウアルカト云フ
ト、凡ソ何デモ彼デモ皆サウデアルト云フコトハ諸君モ御承知ノ通デアル、然
ルニ大凡マア敷島艦ノ如キモノニ權衡ヲ取ッテ見マシタ所デ、海外ニ注文ス
ルニ附テハ······餘リクダ〓〓シウゴザイマスケレドモ、此處ニ聞イタコト
ヲ書イテ置イタモノガゴザイマスカラ申シマスガ、鐵板ガ一噸ニ付イテ千三
百圓ノ見積、ソレカラ運賃費ガ一箇三十噸ノ比例デ噸ニ附イテ七十五圓、斯ウ
云フヤウナモノヲ集メマシテ、運搬費デゴザルノ保險料デアリマスルノ、或
ハ雛形ヲ造リ、其雛形ヲ入レル箱ヲ造ル、是等ノモノヲ合計シテ凡ソ六百
二十三萬ナニガシト云フモノガ外國ヘノ注文高デアル、之ヲ內國デ製造シテ
出來上高ガ、サウ云フ鐵ノ量モ彼是モ同ジニシテ見タラドウ當ルカト云フ
ト、凡ソ四百四十四萬圓ナニガシト云フモノニ當ッテ差引凡ソ百七十八萬
ソレガシト云フモノガ廉價ニ當ル、斯ウ云フ譯デアリマス、ソレハ曾我子爵
ナドノ尋子ラルヽ所ノ職工ノ賃錢ガ鐵一噸ニ附イテ幾ラニ當ル、家ノ幾坪ガ
幾ラニ當ルト云フマデ計算シタノデハナイノデアリマス、ソレヲ積ッテ見タ
ラ同ジコトデハナイカト云フヤウナ議論モアリマシタケレドモ、我輩ノ廉不
廉ト云フノハサウデハナイ、同ジ價デアッテモガ本邦デ造レバ本邦ニ落チル
金デアル、從ッテ技術モ本邦デ造レバ益〓進シデ行ク、ドノミチ是ハ本邦デ造
ルガ宜イト云フコトノ其價マデモ加ヘマシタナラバ大變ナ廉ニ當ルデアラウ
ト思フ、ソレ是レデ反對者ノ何ガナ是ハ不足ノ所ノ穿鑿ヲシテ見ヤウト思召
セバ、我〓ハドウニカシテ本邦デ造ラセタイト云フ腦髓ト其處ガ違フノデア
リマス、是等ノコトハ左マデ喋々論ズルニ及ビマセヌカラ、マア此アタリ
ヲ御聽ニ入レテ置キマス、ソレカラ反對者ノ他ノ御論ニ此事業ヲ起スハ餘程
重大ナルコトデアル更ニ調査ヲ要スルト云フノガ餘程勢力ガアルヤウデアリ
マス、ソレハ無論ノコト調査ヲセヌケレバナリマセヌガ、本員等ノ說ハ旣ニ
此貴族院議員トシテノ調査ヲスルナドヽ云フコトハ技術上ニ渉ッテ、ソレヲ
蹈入ッテドウ斯ウスルコトハ出來ナイ、其造ル場所ト造リ得ルヤ否ヤト云フ
コトヽ甲ノ方デ造ッテ宜イカ乙ノ方デ造ッテ宜イカト云フヤウナ權衡ヲ調査
スルヨリ外ハナイ、ソコデ甲ノ地ノ方ガ宜シイ、地形モ宜シイ、要害モ宜シ
イト云ッタラ甲ノ方ニ極メル、乙ノ方ガアッテモ要害不堅固デアル、場所モ宜
クナイト云フコトナラバ、矢張甲ノ方ニスル、技術ノ如何、技術ノコトハ甲
ノ方ニ備ッテ居ル、技術者モ技術ヲ監督スル者モ、職工モソレ相應ニ備ヲテ居
ル、然ラバ乙ノ方ハドウデアルカ、サウ云フ技術者モナケレバ職工モ備ッテ
居ナイ、サウ云フ經畫モナイト云フト矢張リ甲ノ方ニシナケレバナラヌ、サ
ウ云フコトガ調査デアラウト思フノデアル、ソコデ枝光ト云フコトガ論說ノ
中ニ生ジテ來タ譯デアリマシテ、ソレハ今朝來枝光ト吳トノ利害ハ海軍大臣
ヨリ詳細ニ述ベラレマシタカラ、本員ハ別ニ又繰返ヌ必要ハナカラウガ、併
ナガラ委員會ニ於キマシテモ此要害上ニ於テドウデアルカ、旣ニ今日ノ海外
ノ軍艦ニ搭載シテ居ル大砲ト云フモノハ一萬「メートル」以上モ飛ンデ來ル、
サウ云フ有樣ノ所デアッテ甚ダ不要害ナ點モ見出シタ、ソレカラ其場所ニ備附
ケテアル所ノ起重力モ堅固ナモノガアッテ、其處ニハ一万四五千噸ノ船ヲ橫
著ケニスルコトモ一向差支ナイト云フマデノ天然ノ良港ハ卽チ吳デアル、乙
ノ方ノ枝光ハドウデアルカト云フト、誠ニ危イモノデアル、彼ト是トヲ比シテ
利害得失ヲ攻究シテ見タトキニハ吳ノ方ガ宜イト云フヤウナコトガ調査デア
ラウト思ヒマス、其調査ハ旣ニ我〓ガ爲シ盡シタリト斯ウ云フヨリ外ハナイ、
ソレカラ同ジ國ニシテ兵器ノ製造所ヲ二箇所モ三箇所モ立テルコトハ國ノ經
濟トシテ甚ダ不利益デアル、兵器ノ獨立ハ元ト枝光ヲ以テ目的トシテ、議院
カラモ建白ヲシテソレガタメニ政府ハ巨萬ノ金ヲ抛ッテ枝光ニヤッタデハナイ
カト云フヤウナコトモ、是モ反對者ノ言ハルヽノト我〓ガ信ズル所ト其處ハ
同シコトデアリマスケレドモ、是ハ政府ノ當局者、海軍モ大藏省モ同ジ仕事
ヲ今日デハシテ居ラナイ、枝光デ製シタ物ハ、物ニ依ッテハ海軍ニモ陸軍ニ
モ供給スル、併ナガラ此特種ノ新式ノ鋼鐵ニ至ッテハ枝光デハ造ル經畫ヲシ
テ居ナイ、是ハ必ズ擴張シテ出スヤウナモノヲ造ッテ愈〓是ガ經晝ヲ立テレ
バ、サウ云フコトニ用ヰルコトニ今日デハナッテ居ル、斯ウ云フコトハ農商
務大臣モ衆議院ニ於テ辯明ヲシテ居ル、農商務省ノ總務長官モ亦貴族院ニ於
テ確ニサウ云フコトヲ辯明シテ、是ハ態〓委員會ノ席ニ招キ出シテ之ヲ確カ
メナケレバナラナイ、若シ枝光デ左樣ナ經畫ガアレバ、ソレニナルコトデアル
カラ能ク確メテ置カウト云フノデ態〓呼ンダノデ、其時ニ詳ニ答ヘタ、是ハ筆
記ニモ見エテ居リマス、確ニ私ドモ聞イテ居ル斯樣ナ經畫ハシテ居ラナ
イ、全ク別途ノコトデアルト云フコトヲ辯明シタノデアル、ソレデ此枝光ハ
特種ノ兵器ヲ造ラセルト云フコトハ最早調査ノ何ノト云フ餘地ハナイノデア
リマス、全ク別物ト諸君モ御聞モナサレテ宜イ、別ノ事業ヲスルノデアル、
併シ兵器ト云フノハ廣イ名デアッテ軍艦等ニ用ヰル兵器モ矢張此內ニ含ンデ
居ル、全ク商賣ノ外、兵器以外ノモノバカリ造ラセルト云フデハナイケレド
モ、如何セン特種ノ新式ノ鋼鐵ト云フモノハ、ドウシテモ吳デナクテハ出來
ナイト云フコトハ信ジテ疑ハナイノデアル、右ノ如ク調査ヲ要スルト云フコ
トハ最早餘地モナクナッテ、唯政府ノ仕事ト云フモノハ時トシテ初ハ誠ニ小
サイ經畫ヲ立テルケンドモ、段々ニ增シテ來テ餘程ニ金ヲ費ス癖ガアル、是
ハ宜シクナイト斯ウ云フ說デアル、ソレハ此節ノ如キモ亦サウ云フ手段デ、
初ハ誠ニ小サイ經畫デアルケレドモ、段々ニ是カラ千萬圓ニモ二千萬圓ニモ
ナルデアラウ、是ハサウ云フコトモアリマセウ、我〓贊成者ノ考デハ今ノ通
ノ經畫デ足リナケレバ是カラ三十八年マデノ經畫デアリマスカラ三十九年四
十年ニナッテ愈〓此新事業ガ進ンデ來テ、大砲モ軍艦モ裝甲板モ美事ニ能ク出
來ル、サウシテ我邦ノ用ハ是デ足ル、足ルドコロデナイ、餘リアルト云フ日
ニハ他國ニ賣ッテモ宜シイ、他國カラ注文ヲスルカモ知レヌ、其位ニナラセ
タイ、サウ云フ希望ヲ滿腹持ッテ居ル、ソレデ今ノ反對者ノ論トハ裏表ニナッテ
居ル、凡ソ色〓反對ノ說ガ出マシタケレドモ、今曾我子爵ノ述ベラレタ四箇條
ト、是カラ官業ニスルコトハ今ノヤウナ弊モアルト云フヤウナコトヽ、今年一
年ヲ延シテ篤ト調査ノ上ニ來年度カラスルガ宜カラウ、是レ位ノコトデアル、
篤ト調査ヲスルト云フコトハ何ヲ調査スルカト云フト、之ヲ調査セヌケレバ
ナラヌト云フコトハ一モナイ、此外ニハマダ有ルカモ知レヌケレドモ、ソレ
ハ聞キマセヌ、ソレカラ段々斯ウシテ進行シテ行キ居ルト餘程ノ金額ニナッテ
仕舞フト云フ御懸念デアリマシタ、是ハ本員等モ保證ハ出來マセヌ、出來マセ
ヌケレドモ希望ハ今申ス如ク、マダモ大キウシタイト云フ考デアリマス、大キ
ウスレバ金ガイル、金ガイル日ニナレバ餘程仕事ハ〓練シテ來テ、外國ヘ船モ
注文セヌヤウニナルト思フ、サウ云フトキハ先刻申上ゲタ鐵ノ價カラ考ヘテ
見マスト廉價ニ付クニ相達ナイ、是非無クテナラナイ武器ヲ造レバ必ズ財ヲ
海外ヘ散ゼンケレバナラヌ、ソレヲ日本ニ落スヤウナコトニナレバ此上モナ
イ結構ナコトヽ思フテ居リマス、大抵之ヲ今日ニ決セズシテスルト云フコト
ハ右申上ゲタ外ニハナイノデアリマス、本員等ノ之ヲ贊成スル理由ト云フモ
ノハ委シク申上ゲタイト存ジテ通告モシテ置キマシタガ、朝來、海軍大臣ガ熱
心ニ詳細ナル說ヲ述ベラレマンタカラ、モウ此上贊成員等ノ申ス所ハ盡キタ
リト存ジマスカラ別ニ申上ゲマセヌ、誠ニ是ハ贊成員等我輩ノ考ヘマス所デ
ハ財政上ノ議論ガ段ケゴザイマシタケレトモ、是ハドウゾ諸君モ能ク御考ヘ
下サレテ國家ノ大事業デアルト云フコトヲ一ツ御考ヘ下サレテ、東洋ノ形勢
ナドヽ申スト又叱ラレマスケレドモ、之ヲ言ハ子バナラヌ、今ノ形勢ハドウデ
アルカト云フト、モウ誠ニ危急ナル切迫ナル東洋ノ形勢デアルト云フコトハ
是ハ言ハザルヲ得ス諸君亦大キニソレヲ憂ヘテ御イデナサルダラウト思フ、
其憂フル所ハ贊成者モ反對者モソレハ同ジコトデアラウト思ヒマスカラ別ニ
喋々ハ申シマセヌガ、本員ハ熱心ニ是ハ此業ヲ日本ニ於テ創業シタイト云フ
コトハ豫テ思フテ居リマシタ、所ガ未ダソレヲ實驗シタコトガナイ、昨年ノ
秋······長タラシクハ申上ゲマセヌガ、昨年ノ秋、吳ニ參ッテ、ドウ云フ有樣
ニ製造スルモノデアラウカ、特殊ノ鋼鐵ガ出來侍ルト言フコトヲ聞キマシ
テ、其出來タ品物ヲ見タイト云フ念慮ヲ久シク持ッテ居リマシタカラ態〓參
テ見マシタ、所ガ素人デゴザイマスカラ聞キマシタケレドモ一向分リモシマ
セヌガ、美事ナモノガ出來テ居リマシタ、彈丸ナドモ是レナラバ先ヅ追〓ト是
デ我軍艦ニ續ケテ送ルダケハ差支ナカラウト云フコトニナッテ居ル、此鋼鐵ヲ
以テ是非トモ造ラナケレバナラヌト云フ品ガ兵器ニハ幾ラモアル、ソレカラ
試驗モ良シ、大砲ナドモ十分美事ナモノガ列ベテアル、今ニシテハ軍艦ニ不足
ヲ生ジタトキハ之ヲ以テ補フト云フタケノ力ハ追〓ト附イテ來ル、頗ル安心
ヲ致シタヤウナコト、大砲ガ一挺損ジタナラバ直グ歐羅巴ニ注文シナケレバ
一挺モ出來ナイト云フコトデハ誠ニ遺憾千萬デ、是バカリハ數年頭ヲ病マシ
タコトデアリマス、吳ニ參ヲテ見タ所ガ殆ド此憂ハ解ケタト云フテ安心シタヤ
ウナ譯デアリマシタ、水雷艇ナドモ矢張本邦ニ於テ是モ十分ニ出來タノガ備
ヘテアル、數十ヲ以テ數ヘルダケノ水雷艇ガ追〓ト出來ルト云フコトデアル、
是モ海外ニ注文セヌケレバナラヌト云フノガ、日本デ是モ「パテント」ヲ買ハ
ズニ出來テ居ル、ドウ云フ譯デ斯ウ云フ海外デ祕密ニシテ居ルモノヲ造リ得
タカト云フト、ソレハ私ガ聞イタコトモゴザイマスケレドモ、此公然ノ場所
デ申スベキコトデナイ、餘程祕密ヲ奪ウテ造ッタト云フコトデアル、是レ程マ
デニ日本ノ技術ガ進ムト云フコトハ眞ニ滿足ニ考ヘマシテ、然ラバ此原料ハ
ドウデアルカト云フト、是モ純良ナルモノガ本邦ノ中デ出來ルト云フコトデ
アリマス、今ノ海軍デ今ノ吳ノ製鋼所デ······造兵廠デ造ルダケノ原料ハ十分
ニアル、二千噸グラヰノ原料ガ出來ル、其原料タルヤ誠ニ純良ナモノデアル
ト云フコトヲ聞イテ、是亦大キニ安心ヲ致シマシタ、是モ此造兵廠ヲ擴張サ
レタトキハ陸續トシテ其需ニ應シテ五千噸モ六千噸モ矢張出ルト云フ經畫ニ
ナッテ居ルサウデアリマス、其邊ハ諸君ト共ニ喜ブベキコトデアラウト思フ、
斯ウ云フ次第デ我〓ハ贊成ヲシタ、成ル程「パテント」モ買ハズニ日本デ之ヲ
造ルト云フコトハ甚ダ不安心ナモノデアル、危險ナモノデアルト云フ御懸念
ハ御尤ナコトデ、初ハ本員等モサウ考ヘテ居リマシタケレドモ、能ク承ッテ見
マスルトサウデナイ、ソレデ其危險ナルコトハセヌガ宜シイト云フコトヲ憂
ヘラルヽ如クニ我〓モ之ヲ何時マデモ海外ニ此國ヲ防ギ、國ト爭フ所ノ必要
ナル兵器ヲ他國ヘ仰イデ居ルト云フコトノ危險ナルコトハ、專賣權ヲ買フテ
ヤルトヤラザルハ甚ダ危險デアルト云フ憂ト同ジコトデアッテ、我〓ハ其專賣
權ヲ買ハズニ本邦デ出來ルノハ危險デアルト云フ點ヨリモ萬一事アッタト
キハ海外ヨリ之ヲ求メチケレバナラヌ品デアル、本邦デソレヲ造ルコトガ出
來ヌト云フコトニナッタトキハ其危險ナルコトハ、ナカ〓〓ソンナモノデハ
ナイト考ヘマスカラ、此處ハ本邦ニ於テ之ヲ造ッテサウシテ是ガ熟練シマシ
タナラバ今申上ゲル板モ擴張スルデアラウト、斯ウ思フノデアリマス、併ナ
ガラ是ハ調査ヲシテ一年延シタガ宜カラウト云フノハ鄭重ナ御論デアッテ、ソ
レガ惡ルイトモ申シマセヌケレドモ、一年延スト云フコトガ先ニ一年又延ブ
ト云フ譯ニナッテ.悠々トシテ之ヲ他ノ事業ノヤウニスルコトデハナカラウ
ト思フ、一日モ一刻モ早ク斯ウ云フコトハ熟練ヲシ早ク成功ヲサセタイ、况
ヤ經畫ト申スモノハ裝甲板ノ板コソ是マデ造ッテハ居ナイケレドモ、此鋼鐵
ノ事業ト云フモノハ海軍デハ餘程先年カラ經晝致シテアッテ其試驗モ出來テ
居ルト云フコトハ海軍大臣モ言ハレヽバ海軍ノ政府委員モ詳ニ繰返シテ申ス
コトデゴザイマシテ、是ニハ經驗ノ積マナイ者ヲバ俄ニ新ニ案ヲ起スト云フ
ノトハ大キニ違フ話デアルト思ヒマス、且ツ又是ハ此海防ノ本邦ニ於テ必要
缺クベカラザルコト、是ハ大事ノ事業デアルト云フコト、海軍力ノ消長ニモ
關スルコト軍事ノ强弱ニモ關係致スコトデアッテ、國ノタメニ大事デアルト
云フコトハ、諸君ノ御感ジ下サルコトハ本員等ト同ジコトデアラウト思ヒマ
スカラ、私ハ不辯デアリマスカラ思フ所ノ十分ノ一モ盡スコトハ出來マセヌ
ケレドモ、精神ノ在ル所ヲ御察シ下サレテ國家ノタメニ此案ニ御贊成アラン
コトヲ偏ニ希望イタシマス
〔松岡康毅君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=32
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033・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 松岡君ハ何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=33
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034・松岡康毅
○松岡康毅君 私ハチヨット議長ニ伺フノデアリマスガ、此原案復活ノ唯今ノ
演說ガゴザイマシタガ、是ハ十人トカ若クハ二十人トカ贊成ガ要ルヤウナ譯
デアリマスカ、左モナクテモ宜シイノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=34
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035・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 原案復活ト云フノハドウ云フ意味デアリマスカ、
アナタノ仰シヤルノハ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=35
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036・松岡康毅
○松岡康毅君 唯今本田君ノ述べラレマシタ細字ニ書イテゴザイマス所ノ復
活ノ論デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=36
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037・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) イヤ、ソレハイリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=37
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038・堀田正養
○子爵堀田正養君 私ハ反對ノ理由ヲ述ベタウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=38
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039・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 宜シウイゴザマス
〔子爵堀田正養君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=39
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040・堀田正養
○子爵堀田正養君 諸君、本員ハ吳造兵廠ノ擴張費ニ附イテ反對ノ意見ヲ
持ッテ居リマスルデ簡單ニ反對ノ意見ヲ述ベルノデアリマス、諸君ガ色〓贊成
ノ御說モアリマシタガ、決シテ御贊成ノ御說ヲ駁擊スル譯デハナイ、本員ハ
本員ノ之ニ反對スル理由ヲ簡單ニ申述ベル、ソレハ諸君ノ御說ノ通此吳ノ造
兵廠ノ擴張ト云フモノハ最モ必要デ、國家ニ對スル最モ重大ノ事件ト本員モ
考ヘテ居ル、諸君モ定メテ左樣ナ御考ヘデアラウト思フ尤モソレガタメニ
ハ餘程鄭重ニ之ヲ調査シナケレバナラヌト云フ本員等ハ考ヲ持ッテ居ルカシ
デ一朝誤ッテ斯ノ如キコトニ著手シタ以上ハ將來餘程國家ノ損ヲ來スト云フ
コトハ諸君ト我〓御同感デアラウト思ヒマス、カルガ故ニ之ヲ本員等ハ尙ホ
一箇年延期シテ貰ヒタイト云フノデアリマス、ソレデ其延期ト云フモノハド
ウ云フ譯デアルト云フト、此事ニ附イテハ元ト農商務省ノ管轄ニナッテ居ル
製鐵所ト云フモノハ軍器ノ獨立ト云フコトデ、我〓ニモ其當時ノ政府カラシ
テ頻ニサウ云フ說デ演說モアリマシテ、我〓モ軍器ノ獨立ト云フコトニ贊成
ヲシタノデアル、ソレデ旣ニ今日マデ經過シタノデアリマスケレドモ、マダ此
製鐵所ノ如キハ易キヨリ難キニ及ボスト云フコトニシテ未ダ鋼鐵板ヲ製造ス
ルト云フ所マデニハ著手ニナッテ居リマセヌ、ケレドモ是ハ果シテ製鐵所ト云
フモノハ斯ノ如キ鋼鐵板ヲ拵ヘサセナイモノデアルヤ或ハ拵ヘサセルガ宜シ
イカト云フコトニ附イテハ十分ニ我〓ハ〓究致シタイト考ヘテ居リマス、詰
リ國家ニハ成ルベクサウ云フ鋼鐵板ノ如キモノヲ我國家デ何レナリトモ拵ヘ
テ軍器ノ獨立ニサヘナリ得レバ少モ差支ナイコトヽ考ヘル、カルガ故ニ我〓
モ此製鐵所ニハ軍器ノ獨立ト云フコトニ附イテ協賛ヲ與ヘテ金額モ非常ニ支
出シタト云フ今日ニナッテ、最初ノ目的ヲ失フト云フコトニ付テ甚ダ遺憾ナコ
トニ思ヒマス、然レドモ實際調査ノ結果、出來得ナイト云フコトニナッタナラ
バ是レ亦已ムヲ得マセヌ、ソレカラ又海軍ノ方ノ造兵廠デハ出來得ルト云フ
コトハ當局者ハ言ハレマスケレドモ、是ハ當局者ヲ信用スレバ又サウカモ知
レマセヌ、然レドモ當局者ノ言フコトニ附イテモ果シテ其通デアルカ、海軍
當局者ノ言ハレル通ニ出來得ルヤ否ヤト云フコトニ附イテハ我〓ハ十分ニ調
査スルコトガ必要デアルト思ヒマス、カルガ故ニ本年ダケハ之ヲ延期シタ
イ、延期ノ理由ヲ以テ否決スル、ソレデアッタ場合ニハデス、ソレデハドウシ
テモ海軍ノ請求サレタ通三十八年ニハ出來得ナイカト言ヘバ出來得ルト云フ
本員等ハ考デアル、如何トナレバ既ニ政府ハ行政ノ整理モシ、財政ノ整理モ
スルト云フコトハ當局大臣ガ辯明ヲサレタ、明言ヲサレタ、總理大臣モ亦其
事ハ明言サレタ、其以上ハ財政ノ整理ノタメニ或ハ增稅ヲ必要トスル時モア
ルダラウ、或ハ今日ノ財源デモ剰餘金ガ出來ルト云フ時モアルダラウ、其場
合ニ剰餘金ガ出來レバ尙ホ結構、或ハ此事ニ至ッテ調査ノ結果必要ト見タナ
ラバ增稅モサレル、サウ云フ時機ニ至ッタラバ或ハ是ガ何レニ於テ製造スル
ガ可ナリト極ッタトキニハ詰リ協賛スル所ノ金額サヘ增セバ矢張リ三十八
年ニハ出來ル、來年卽チ協贊ヲ與ヘテモ出來ルト云フコトハ確デアル、如何
トナレバ政府ハ元ト是ハ四箇年ノ要求ヲ海軍ハサレタケレドモ併シ金額ノ都
合ニ依ッテ五箇年ノ繼續費ニナッタト云フコトヲ明言サレタ、シテ見レバ本年
ノ所ハ我〓ニ安心ノタメ十分ノ調査ノ時間ヲ與ヘラレテ、ドウゾシテ來年ニ
至ッテ或ハ農商務省ノ管轄ナリ海軍ノ管轄ナリデ著手スルコトニナッテモ四箇
年アリマスレバ出來ル、卽チ三十八年ニハ政府ノ望ノ通リノ仕事ハ出來得ル
ト云フコトハ明デアラウト思フ、故ニ本員等ハ本年ノ所ハ我〓ニ調查ノ時間
ヲ與ヘラレテ、成ルベク十分ナ玆ニ調査ヲシテ誤ラシメナイ、國家ノタメニ
誤ラシメナイト云フ猶豫ヲ與ヘラレンコトヲ望ンデ、本年ハ之ヲ否決スルト
云フ理由ナンデゴザイマス、決シテ此獨立ガ惡ルイ、軍器ノ獨立ガ惡ルイト
云フノデハナイ、軍器ノ獨立ト云フコトハ我〓ガ二十五年頃ニ建議ヲシタ、
デ決シテ惡ルイト云フノデハナイ、然レドモ之ニ著手スルト云フニ附イテハ
一步誤ルト非常ナ國家ノ不利益ニナルニ依ッテ一箇年ダケ猶豫ヲ請ヒタイト
云フ理由ヲ以テ否決シマスノデゴザイマスカラ、簡單ニ其否決ノ理由ダケ申
述ベマシタ
〔伯爵吉井幸藏君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=40
-
041・吉井幸藏
○伯爵吉井幸藏君 本員ハ此吳造兵廠擴張費ヲ復活スルト云フ意見ヲ持ッテ
居ル者デアリマス、本員ガ述ベタイト思ウテ居リマシタコトハ前賛成者ヨリ
大抵述ベラレマシタニ依ッテ誠ニ簡單ニ本員ノ考ヲ申述ベテ置キマス、此吳製
鋼所費ヲ委員會ニ於テ否決サレマシタ理由ハ未ダ調査ノ足ラナイ所ガアルカ
ラ、ソレヲ調査スルノ必要ガアルト云フノ理由ヲ以テ否決サレタノデアリマ
ス、ソレハ何デアルカト云フト「パテント」ヲ買ハズニヤッテ差支ハナイカ、
其他一二箇條デアリマスガ、ソレハ昨日委員會ニ於キマシテ政府委員ノ詳細
ナル辯明ヲ聞キマシテ本員共ハ少モ差支ナイコトヽ信ズルノデアリマス、ソ
レカラ之ヲ吳デ造ルカ若松デ造ルカ何レデ造ッタ方ガ利益デアルカト云フコ
トガ、モウ一ツ調査ノ必要ガアルト云ハレル一點デアル、成ル程若松製鐵所
ハ元ト軍器ノ獨立ガ國家ニ必要デアルト云フ所カラ若松製鋼所ヲ創立サレタ
ノデアル、本日旣ニ二千萬近クノ金ヲ使ッテ居リマス、サウシテ今日何ヲシテ
居ルカト云フト漸ク二三箇月前ニ釜ニ火ヲ入レタ位デアッテ、是モ今日ノ設備
ハ總テ工業材料ニ向ッテ設備ガシテアッテ、軍器ト云フ方面ニ向ッテハ未ダ幾ド
考モ爲シテ居ラヌト云ヒマシテモ宜シイノデアリマス、是ハ政府委員ガ······
農商務省ノ政府委員ガ證明シテ居ル、前ニアレヲ企テラレタ時分ニハ大砲
ハ出來ルト云フ考ガアッタ、併ナガラ卽チ軍器防禦用ノ鋼鐵板ヲ造ルト云フ
考ハ初カラ無カッタ、加之前年貴衆兩院ノ協賛ヲ經テ軍器ハ吳デ造ルト云フコ
トニ協賛ヲ經テ既ニソレニ著手ヲシテ非常ニ進步ヲシテ今日ハ立派ナ大砲ヲ
造リ、又殊ニ製造ニムヅカシイ「ニッケルクロームスチール」ナドモ出來、卽チ
彈丸モ出來ルノデアル、サウシテ見レバ若松ノ方ハ初メ軍器ヲ造ルト云フノ
ガ目的デ、軍器ノ獨立ト云フノガ目的デ起サレタノデアルケレドモ、中途デ
政府モ亦貴衆兩院モ軍器ハ吳デ造ルト云フ意思ハ吳造兵廠ノ費用ヲ支出サレ
ルコトヲ協賛サレタノデ分ッテ居ル、サウ云フ有樣デ今日ニナッテ來タ、玆デ
吳ハ旣ニ大砲モ八吋マデハ出來、玉ハ十二吋マデ出來ル、卽チ日本ノ海軍ニ
於テ最モ大ナル大砲ハ未ダ出來ナイカモ知レナイガ、是モ追〓ト出來テ來ル、
サウスルト大砲ノ方、彈丸ノ方ハ我海軍デ使フノニ差支ナイモノダケガ出來
ル唯此大砲及小ナサ速射砲等ヲ使用スルニ最モ必要ナル楯ガ要ルノデア
ル、今日速射砲機關砲ノ世ノ中デ、戰サヲスルニ此楯ガ無クテハ砲員ガ直グ
擊殺サレル、ソレガ爲ニ甚ダ不利益デアル、現ニ黃海ノ戰爭ノ時ノ有樣ヲ一
見シテモ分リマスガ、大砲ガ大事デアルカ、楯ガ大事デアルカ、其場合ニアッ
テハ大砲ヲ使用スル人間ガ最モ大事デアル、如何ナル良イ大砲デモ之ヲ使用
スル人間ガナケレバ仕方ガナイノデアル、故ニ此楯ト云フモノハ彈丸ト又大
砲ト比較シテ何レガ最モ必要デアルカト云フト殆ド甲乙ノ無イモノデアル、
其二ダケハ卽チ大砲彈丸ダケハ旣ニ出來ル、其楯ガ未ダ出來ナイ、ソレヲ今
度造ラウト云フノハ尤ノ主意デ、段々擴張シテ之ヲ造ルト云フ考デアルダラ
ウト思ヒマス、又大砲ノ楯ノミナラズ卽チ軍艦ニハ號令臺ト云フモノガアル、
其號令臺ノ中ニハ船ノ全部カラ電話ガ架ッテ居ル、是ハ軍艦ノ首腦トシテ居ル
所デアル、戰爭ヲスルトキニハタッタ一人ノ指揮デ行クノデアリマス、此中ニ
ハ總テ人間デ云ヘバ我〓ノ腦髓ト同樣ノ場所ガアル、是モ斯ウ云フ鐵板ヲ以
テ保護セヌケレバナラヌノデアル、ソレデ斯樣ナ必要ナモノヲ此處デ造ラウ
ト云フノデアル、ソレヲ造ルニ附イテ出來ル出來ナイト云フ議論ハ我輩ハモ
ウ政府ノ說明ヲ聞キ、又自分ガ現ニ見テ承知シテ居ルガ、決シテ是ハ出來ナ
イト云フコトハ見ナイ、必ズ出來ルト云フコトハ疑ナイノデアル、唯此板ヲ
造ルニ附イテ其道具ガ要ル、卽チ壓榨器トカ或ハ「ロール」トカ云フモノガ
イル、卽チ又板ヲ造ル諸器具ガ要ルノデアル、サウ云フモノニ重モニ使フノガ
今度要求サレタ費額デアルデアラウト思ヒマス、ソレデ是ハドウシテモ此處
デ「パテント」ヲ買ハナケレバ如何デアルトカ、或ハ出來ルカ出來ナイカト云
フニ付テハモウ決シテ疑ヲ置カズ、決シテ調査ノ必要ハ無イト思ヒマス、ソ
レカラ場所ニ附キマシテハ若松ノ方ハ最初目的ハ軍器ヲ造ルト云フ目的デ先
刻申シマシタ通、アソコニ据エマシタノデアルケレドモアソコハ今日二千
万圓近クモ使ッテ工業材料ヲ造ルト云フ點マデニシカ進ンデ居ラヌ、是ハ誠ニ
幸デアルト我輩ハ考ヘル、既ニ先刻モ申シマス通諸君ハ協賛ヲ與ヘラレテ吳
テ軍器ヲ作ルコトニナッテ吳デソレヲヤッテ居ル、若松ノ方デハマダソコニ至
ラズシテ工業用ノ材料ノ設備シカシテ居ラヌ、是ハ誠ニ國家ノ幸デアルト思
フ、何故カナラバ既ニ二千万圓モ使ッテ、マダソレダケノ金デハ今日日本ニ於
テ使用スル所ノ工業材料ノ鐵材ハ、アレダケノ設備デハ國家ノ需要ヲ充スコ
トニハ足ラヌト思フ、年々鐵材ノ這入ッテ來ルノハ十萬噸以上アッテ鐵デ造ッ
タ船ガ這入ッテ來ルノハ何萬噸アルカ分ラヌト思フ、決シテ今ノ設備デ我輩ノ
考デハ倍ニシテモ足ラヌト思フ、デアルカラ若松ノ方ハ工業材料ニ向ケテ
段々〓究シ擴張シタガ宜シイ、海軍ノ軍器楯ハ吳デヤッタガ宜イ、斯ウ云フ考
デアリマス、加之尙ホ若松デ軍器ヲ造ルト云フニ附キマシテハ尙ホ不利益ナ
點ガアル、何デアルカト申シマスレバ枝光ノ工場ノゴザイマス所ハ海岸ヲ去
ルコト僅カ七千「メートル」以內デアル、ソコヘ七千「メートル」ノ所マデハ一
等巡航艦卽チ一萬噸以上ノ軍艦ヲ持ッテ來ルコトガ出來ルノデアル、其軍艦ニ
積ンデ居ル大砲ノ彈ハドコマデ行クカト云フト、一萬「メートル」以上行クノ
デアリマス、然ラバ敵ノ船ハ七千「メートル」以內ノ所ニ來テ一萬「メートル」
行ク鐵砲ヲ以テ枝光ヲ擊ツコトガ出來ル、サウ云フ敵ノ船ガ來テ彈ヲ擊込ム
ヤウナ場所ニアル工場ニ於テ、他デ決シテ容易ニ出來ナイ「クロームスチー
ル」トカ何トカ云フヤウナ特種ナ物ヲ作ル場所ヲサウ云フ危險ナ所ニ置クノ
ハ最モ不利益デハアリマセヌカ、加之吳ハドウカト云フト佐賀ノ關、紀淡海
峽藝豫海峽等、常ニ通ルニモ困難ナ場所ガ多イ、又軍港附近ニ於テハ特ニ防
禦ガアルニ違ヒナイカラ是ヨリ安全ナ所ハナイ、ドウカ今日枝光デ軍器ガ出
來ルト云フテモ決シテアスコデ造ルノヲ許スノハ國家ノ不利益デアリマス、
故ニドコデ造ルカト云フコトハモウ調ベルニモ及バズ、ソレカラ「パテント」
ヲ買フトカ製造ガ出來ルカ出來ヌカト云フコトモ、少モ疑ナイト存ジマスニ
依の,調査ノ必要ハナイノデアリマス、然ル上ハドウカ諸君モ直ニ此製鋼
所ノ費用ヲ復活スルコトニ御贊成アランコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=41
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042・南郷茂光
○南〓茂光君 討論終局ノ動議ヲ提出致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=42
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043・谷干城
○子爵谷干城君 贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=43
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044・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 討論終局ノ動議ガアッテ十名以上ノ賛成ガアッタト
思ヒマス、討論終局ト認メテ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=44
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045・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ハ無記名投票ヲ以テ採決サレンコトヲ希望スル
ト云フ要求ガ出テ居リマスカラ······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=45
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046・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 記名デゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=46
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047・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 無記名デス、ソレデハ無記名投票ヲ行ヒマス、此
採決ノ前ニチヨット御注意ヲ致シマス、委員會ノ修正ニ贊成ノ諸君ハ白イ球、
反對ノ諸君ハ黑イ球ヲ御入レニナルヤウニ致シタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=47
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048・本田親雄
○男爵本田親雄君 政府ノ原案ニ戾スト云フノハドチラデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=48
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049・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 政府案ニ復活シヤウト云フ考ノ諸君ハ黑イ球
ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=49
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050・末松謙澄
○男爵末松謙澄君 チヨット伺ヒマス、唯今ハ製鋼所ダケガ一ノ問題ニナッテ
居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=50
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051・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) サウデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=51
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052・末松謙澄
○男爵末松謙澄君 サウスレバ委員會デハ否決デアレバ矢張原案デ決ヲ御採
リニナルノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=52
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053・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 委員會ハ修正ニナッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=53
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054・末松謙澄
○男爵末松謙澄君 修正ニナッテモ一ツ別ニ問題ニナッテ居ル以上ハ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=54
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055・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ誤解ノナイヤウニモウ一遍申シテ置キマ
ス、政府カラ要求シタ金額ガ總體デ百六十一萬三千八百十五圓六十九錢三厘、
ソレヲ製鋼所ノ三十四年度ノ分ダケヲ除キマシタ五十三萬千六百六十二圓五
十三錢、是ダケハ委員會デ殘スノデアリマス、百六十一萬三千八百幾ラノ中
カラ五十三萬幾ラヲ引タモノヲ削ラウト云フ修正デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=55
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056・三浦安
○三浦安君 修正案ハ白票、政府案ハ黑イ球デアリマス子発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=56
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057・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) サウデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=57
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058・尾崎三良
○男爵尾崎三良君 チヨット伺ヒマス、豫算委員ノ說ニ贊成ノ者ハ白イ球ヲ入
レル政府ノ原案ニ復活シヤウト云フモノハ黑イ球ヲ入レルト云フノデスナ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=58
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059・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) サウデス、ソレデハ是ヨリ氏名點呼ヲ行ヒマスカ
ラ名刺ヲ御忘ナイヤウニ願ヒマス
〔無記名投票執行〕
〔氏名點呼ヲ行フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=59
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060・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ開函シマス
〔書記官投票ヲ計算ス〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=60
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061・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 投票ノ結果ヲ報道シマス、出席總數二百三十九人、
委員會ノ修正ヲ可トスル者卽チ白球ヲ入レタ者百二十七人、委員會ノ修正ニ
反對ノ者卽チ黑球ヲ人レタ者ガ百十二人、卽チ委員會ノ修正通決シマシ
タ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=61
-
062・芳川顯正
○子爵芳川顯正君 是ヨリ請願委員會ヲ開キマスガ、許可ヲ請求シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=62
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063・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 宜シウゴザイマス······其他ハ委員會ノ修正通デ御
異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=63
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064・谷干城
○子爵谷干城君 モウ一切濟ミマシタノデス子発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=64
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065・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) マダアリマス、ソレカラ乙號全部ヲ問題ニ供シマ
ス、委員會ノ修正ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=65
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066・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレカラ跡ヘ戾リマシテ歲入經常部及臨時部、是
モ委員會ノ修正ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=66
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067・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 前ノ「豫算」ト云フ所、是モ御異議ガナクバ修正ノ
通決シマス、ソレカラ特別會計歲入歲出豫算
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=67
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068・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) 御異議ガナクバ委員會ノ修正通ニ決シマス、次ハ
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スルノ件
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
右衆議院議決案ノ通可決スヘキモノト議決セリ依テ及報〓候也
明治三十四年三月十九日
豫算委員長子爵谷干城
貴族院議長公爵近衛篤麿殿
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=68
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069・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ガナクバ原案ニ決シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=69
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070・谷干城
○子爵谷干城君 此際ニ於キマシテ議事日程ヲ變更セラレテ一昨十八日配付
ニナリマシタ第二號追加豫算、明治三十三年度歲入歲出總豫算追加案、ソレカ
ラ特追第二號、明治三十三年度特別會計歲入歲出豫算追加案、是ハ先刻報〓
致シテ置キマシタガ、續テ議了セラレンコトヲ希望致シマス
〔「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=70
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071・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 谷子爵ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ、···ソレ
デハ之ヲ議事ニ付シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=71
-
072・谷干城
○子爵谷干城君 簡短デゴザイマスカラ此席ヨリ報〓ヲ致シマス、此豫算案
ニ於キマシテハ政府案ノ通卽チ衆議院送付ノ通修正ナシニ委員會ニ於テ可決
致シマシタ、諸君ノ御贊成ヲ希望致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=72
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073・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) 御異議ガナクバ原案ニ決シマス、巡查看守退隱料
及遺族扶助料法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、朗讀ハ略シマス
〔左ノ送付文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之
ニ倣フ〕
巡査看守退隱料及遺族扶助料法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
明治三十四年三月十九日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
巡查看守退隱料及遺族扶助料法
第一條巡查又ハ看守勤績十年以上ニシテ左ノ各號ノ一ニ當ルトキハ退隱
料ヲ給ス
一年齡五十歲ヲ超ヘ退職シタルトキ
二傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ其ノ職ニ堪ヘス退職シタルトキ
三廢官廢廳ニ依リ退職シタルトキ
四身體若ハ精神ノ衰弱又ハ事務ノ都合ニ依リ退職ヲ命セラレタルト
キ
前項ノ退隱料年額ハ退職當時ニ於ケル月俸三箇月分トシ勤續十年以上三
十年ニ至ル迄一年ヲ加フル每ニ退職當時ノ月俸額十分ノ一ヲ增加ス
第二條巡查又ハ看守勤續一年以上十年末滿ニシテ第一條第一項各號ノ一
ニ當ルトキハ一時金ヲ給ス但シ退隱料ヲ受クル者又ハ受クヘキ者ハ此ノ
限ニ在ラス
一時金ハ退職當時ニ於ケル月俸額ノ三分ノ二ニ勤續年數ヲ乘シタル額トス
第三條退隱料ヲ受クル者又ハ受クヘキ者再ヒ前職ニ就キ勤續一年以上ニ
シテ第一條第一項各號ノ一ニ當ルトキハ前後通算シテ勤續三十年ニ至ル
迄後ノ勤續一年ヲ加フル每ニ後ノ退職當時ニ於ケル月俸額十分ノ一ヲ退
隱料年額ニ增加ス
一時金ヲ受ケタル者又ハ受クヘキ者再ヒ前職ニ就キ第一條第一項各號ノ
一ニ當ルトキハ前後通算シテ勤續十年以上ニ至ル者ニハ第一條ニ依リ退
隱料ヲ給シ十年未滿ノ者ニハ第二條ニ依リ後ノ勤續年數ニ對スル一時金
ヲ給ス
第四條巡査又ハ看守職務ノ爲傷疲ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ一肢以上ノ用ヲ
失ヒ又ハ之ニ準スヘキ者ト爲リ其ノ職ニ堪ヘス退職シタルトキハ退隱料
ヲ給ス
前項ノ退隱料年額ハ退職當時ノ月俸三箇月分乃至六箇月分トス
第一條及第三條ニ依リ退隱料ヲ受クル者又ハ受クヘキ者本條第一項ニ當
ルトキハ其ノ退隱料年額ニ退職當時ノ月俸四箇月分以內ヲ增加ス
前二項ニ依ル退隱料年額及增加金額ハ傷痍疾病ノ輕重ニ依リ之ヲ定ム
第五條前條ノ規定ハ職務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ退職シタル後一
年以內ニ其ノ傷痍疾病ニ起因シ前條第一項ニ當ルニ至リタル者ニ之ヲ準
用ス
第六條巡査又ハ看守交互ニ轉職シ又ハ他ノ官職ニ轉シタルトキハ事務ノ
都合ニ依リ退職ヲ命セラレタル者ト看做ス
第七條巡査又ハ看守左ノ各號ノ一ニ當ルトキハ遺族ニ扶助料ヲ給ス
一職務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ在職中死亡シタルトキ
二勤續十年以上ニシテ在職中死亡シタルトキ
三退隱料ヲ受ケ又ハ受クヘクシテ死亡シタルトキ
扶助料年額ハ前項第一號ノ場合ニ在リテハ第四條ニ依リ査定シタル金額
ノ三分ノ二トシ第二號ノ場合ニ在リテハ第一條又ハ第三條ニ依リ査定シ
タル金額ノ三分ノ一トシ第三號ノ場合ニ在リテハ其ノ退隱料年額ノ三分
ノ一トス但シ職務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ退職シタル後一年以內
ニ其ノ傷痍疾病ニ起因シテ死亡シタルトキハ第四條第五條ニ依リ査定シ
タル金額ノ三分ノ二トス
第八條扶助料ハ寡婦ニ給ス寡婦死亡シ又ハ扶助料ヲ受クヘカラサルトキ
ハ子ニ給ス
數子間ニ在リテハ法定家督相續ノ順位ニ依リ最先者ニ給メ最先者死亡シ
若ハ扶助料ヲ受クヘカラサルトキハ順次次位者ニ轉給ス
民法第九百六十九條ニ依リ家督相續人タルコトヲ得サル者及推定家督相
續人ニシテ廢除セラレタル者ニハ扶助料ヲ給セス但シ疾病其ノ他身體又
ハ精神ノ狀況ニ依リ家政ヲ執ルニ堪ヘサルカ爲廢除セラレタル者ハ此ノ
限ニ在ラス
養子ハ家督相續人ニ非サレハ扶助料ヲ給セス
第九條扶助料ヲ受クヘキ寡婦及子ナキトキハ扶助料ハ直系尊屬ニ給ス
前項ノ場合ニ在リテハ先ツ父ニ給シ父死亡シ又ハ扶助料ヲ受クヘカラサ
ルトキハ母ニ給ス母ヨリ祖父ニ祖父ヨリ祖母ニ轉給スルハ順次此ノ例ニ
依ル
第十條扶助料ヲ受クル者ナクシテ死亡シタル者ノ家ニ在ル兄弟姊妹二十
歲未滿又ハ篤疾若ハ廢疾ニシテ自活スルコト能ハサルトキハ扶助料ニ相
當スル金額ノ三箇年分以內ヲ一時限リ給スルコトアルヘシ
第十一條退隱料ヲ受ケタル者又ハ受クヘキ者左ノ各號ノ一ニ當ルトキハ
之ヲ給セス
-國籍ヲ喪失シタルトキ
二重罪ノ刑ニ處セラレタルトキ
三在職中ノ犯罪ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
第十二條遺族ニシテ左ノ各號ノ一ニ當ルトキハ扶助料ヲ給セス
一前條第一號又ハ第二號ニ當ルトキ
二寡婦婚姻シタルトキ
三子年齡二十歲ニ滿チタルトキ
四尊屬ノ女婚姻シタルトキ
第十三條子二十歲ニ滿ルモ篤疾又ハ癈疾ニシテ自活スルコト能ハス他ニ
扶助料ヲ受クル者ナキトキハ其ノ事由ノ存續スル間扶助料ノ三分ノ一ヲ
給スルコトアルヘシ
第十四條退隱料ヲ受クル者又ハ受クヘキ者左ノ各號ノ一ニ當ルトキハ其
ノ間退隱料ノ支給ヲ停止ス
一公權ヲ停止セラレタルトキ
二六箇月以上行方不明ナルトキ
退隱料ヲ受クル者又ハ受クヘキ者再ヒ判任官待遇以上ノ官職ニ就キタル
場合ニ於テハ其ノ俸給月額ニ退隱料月割額ヲ合シ退職當時ニ於ケル俸給
月額ニ超過スルトキハ其ノ超過額ニ對スル退隱料ノ支給ヲ停止ス
第十五條扶助料ヲ受クル者又ハ受クヘキ者前條第一項各號ノ一ニ當ルト
キハ其ノ間扶助料ノ支給ヲ停止シ第八條第九條ノ順位ニ依リ之ヲ次位者
ニ轉給ス
第十六條退隱料及扶助料ノ年額竝一時金ノ圓位未滿ハ圓位ニ滿タシム
第十七條巡査又ハ看守ノ勤續年數ハ就職ノ月ヨリ起算シ退職ノ月ヲ以テ
終ル但シ十二箇月末滿ノ端數ハ之ヲ算入セス
休職及〓習中ノ月數ハ勸續年數ニ算入ス
第十八條巡査又ハ看守其ノ職務ヲ以テ從軍シタルトキハ軍人恩給法ノ算
則ニ照ラシテ從軍年ヲ加算ス
第十九條本法ニ於テ寡婦、子、尊屬ト稱スルハ巡査又ハ看守タリシ者死亡
ノ當時ヨリ引續キ其ノ家ニ在ル者ヲ謂フ但シ父死亡後出生シタル嫡出ノ
子ハ死亡當時其ノ家ニ在ル者ト看做ス
第二十條退隱料及扶助料ノ支給、停止及廢止ハ其ノ事由ノ生シタル翌月
ヨリ之ヲ行フ
第五條ニ依ル退隱料ノ支給ハ事由認定ノ翌月ヨリ始マリ前條但書ニ依ル
扶助料ノ支給ハ出生ノ翌月ヨリ始マル
第二十一條退隱料、一時金及扶助料ハ之ヲ受クヘキ事由ノ生シタル日ヨ
リ三年以内ニ請求スルニ非サレハ之ヲ給セス
第二十二條退隱料ハ民事訴訟法第五百七十條及第六百十八條ノ規定ニ關
シテハ恩給ト看做ス
第二十三條本法ニ依ル給與金ノ支給ニ關スル事項ヲ裁定スヘキ行政官廳
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四條本法ニ依ル給與金ハ巡査又ハ看守最後ノ退職又ハ死亡當時ニ
於テ俸給ヲ受ケタル經濟ノ負擔トス
第二十五條本法ニ依ル給與金ノ一部又ハ全部ヲ拒否セラレタル者其ノ拒
否ヲ不當ナリトスルトキハ訴願ヲ提起スルコトヲ得違法ニシテ權利ヲ傷
害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第二十六條本法ハ陸軍監獄看守、海軍監獄看守、海軍警査、貴族院守衞、
衆議院守衞及其ノ遺族ニ之ヲ適用ス
附則
第二十七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條明治十五年太政官達第四十一號巡査看守給助例ハ巡查、看守、
陸軍監獄看守、海軍監獄看守、海軍警査、貴族院守衞、衆議院守衞及其ノ遺
族ニ之ヲ適用セス但シ巡査看守給助例ニ依リ現ニ給助ヲ受クル者又ハ旣
ニ受クヘキ事由ヲ生シタル者又ハ其ノ事由ニ起因シテ一年以內ニ重症ニ
趨キ又ハ死亡シタル者ニ對シテハ其ノ第一條乃至第七條ヲ適用スルノ外
本法第三條、第十一條、第十二條、第十四條、第十五條、第二十條第一項、第
二十一條、第二十三條及第二十五條ヲ準用ス
明治十五年太政官達第六十六號ハ巡査、看守ニ明治三十三年法律第三十
號ハ巡査、看守、陸軍監獄看守、海軍監獄看守、海軍警査、貴族院守衞、衆議
院守衞及其ノ遺族ニ之ヲ適用セス
〔政府委員大森鍾一君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=73
-
074・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) チヨット簡單ニ此法律案ヲ提出シマシタ理由ヲ申
上ゲテ置キタイト思ヒマス、今日ノ巡査看守ノ給助法ハ大分舊ク制定ニナツ
テ居リマスル所ノ規則デアリマシテ、今日ヨリ見マスレバ餘程不完備ナ點モ
多〓ゴザイマスルデ、例ヘパ巡査ノ俸給ノ如キ從前六圓以上十圓以下ト云フ
ガ如キ規則デアリマシタ當時ノ制定デアリマス、其時分ノ一定不動ノ恩給額
ニナッテ居リマス、然ルニ今日ハ巡査俸給ハ九圓以上十五圓以下ト云フガ如
キコトニ相成ッテ居リマス、從ッテ其恩給ト給料トガ餘程權衡ヲ失シテ居ルヤ
ウナ類ノ所モゴザイマス、又今日ハ警察事務、監獄事務ニ從事スル所ノ人ヲ
募集シマス上ニ於キマシテハ餘程困難ヲ感ジマスノデ、隨ッテ其ノ待遇ノ法ガ
十分今日ノ時勢ニ應ズルヤウニ相成リマセヌト、事務ヲ擧ゲル上ニ非常ナ困
難ヲ感ジマス、彼是本案ヲ必要ト致シマシタ所以デアリマス、尙ホ詳細ナコ
トハ委員會ニ於キマシテ辯明致シマス心得デゴザイマス、御賛成ヲ偏ニ請ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=74
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075・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 特別委員ノ選擧ニ移リマス、此特別委員ハ議長指
名デ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=75
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076・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 內務省所管歲出臨時部土木事業費中信濃川河口修
築費繰越ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、朗讀ハ略シマ
ス
内務省所管歲出臨時部土木事業費中信濃川河口修築費繰越ニ關スル法律
案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
明治三十四年三月十九日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
明治三十三年度迄ニ竣功スヘキ内務省所管信濃川河口修築ニ係ル繼續費ニ
シテ竣功遲延ノ爲同年度迄ニ支出ヲ終ラサル金額ハ明治三十五年度迄遞次
繰越使用スルコトヲ得
〔政府委員大森鍾一君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=76
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077・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 是モチヨット此法律ヲ出サヌケレバナラヌコトニ
相成リマシタ理由ヲ申上ゲヤウト存ジマス、此信濃川ノ改築工事ハ元ト二十
九年ヨリ三十三年マデノ繼續事業デアリマシタ、其金額ハ百十九萬六千餘圓
ノ額ヲ以テ繼續費デ極ッテ居タノデアリマス、然ルニ此事業ニ掛リマシタ際、
恰モ二十八年ヨリ三十年ニ掛ケマシテ、此信濃川筋ニ於キマシテ非常ナ大洪
水ガアリマシタ、ソレガタメニ此工事ニ用ヰマス所ノ材料、其他ニ非常ナル
缺乏ヲ〓ゲマシテ、遂ニ此工事ヲ豫定通執行スルコトガ出來ヌヤウナ場合ニ
相成リマシタ、ソレガタメニ二十九年三十年ノ兩年度ノ如キハ僅ニ低水工事
ノミヲ行フニ止メタヤウナ次第デゴザイマス、其突堤工事ノ如キニ至リマシ
テハ辛ウジテ三十一年ヨリ始テ著手スルト云フヤウナ餘儀ナイ場合ニ相成リ
マシタ、實ニ此突堤工事ノ如キハ、北海ニ面シテ居ルコトデアリマシテ、平
素非常ニ風波ノ狂暴ナル所デアリマスニ依ッテ猶更豫定通其事業ヲ終ヘルコ
トガ出來ヌデアリマシタ、已ムヲ得ズ三十三年度ニ成效致スコトガ出來ヌヤ
ウナ場合ニ相成リマシテ、遂ニ本案ノ如ク三十六年度マデ繰越ノ請求ヲ致サ
ヌケレバナラヌコトニナリマシタ、之ヲ會計法ニ照シテ見マスト、僅ニ一年
度ヨリ繰越スト云フコトハ出來ヌコトニナッテ居リマス、ソレデ特ニ此法案
ヲ提出致シマシテ三箇年間ノ繰越ヲ要求致サヌケレバナラヌコトニナリマシ
タ、尙ホ詳細ナコトハ委員會デ申上ゲマス、是ハ速ニ御協賛ヲ希望致シマス
次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=77
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078・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 委員選擧ニ移リマス、此委員モ議長指名デ宜シウ
ゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=78
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079・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 實業〓育費國庫補助法中改正法律案、政府提出、第
一讀會ノ續
〔政府委員梅謙次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=79
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080・梅謙次郎
○政府委員(梅謙次郞君) 此法律案ハ一昨日委員長ノ報〓ガアリマシタケレ
ドモ、之ニ關スル豫算ヲ衆議院ニ提出致シタルコトニ附イテ本院ニ於テ種々
ノ御議論ガアリマシテ其結果、一昨日竝ニ昨日ハ延會ト相成リマシタ譯デア
リマスガ、實ハ法律案ガ出マシテ、其法律案通過ノ曉ニ其結果ト致シテ必要ナ
ル所ノ費額ハ法律案通過ノ上デ豫算トシテ之ヲ提出致シマスルノガ無論普通
ノ順序デアリマスノデ、政府ハ力テ斯ノ如キ手續ヲ執ッテ居リマスル、此度モ
斯樣ナル次第デアリマスカラ、實業〓育費國庫補助法中改正法律案ハ議會開
會早々ニ提出致シマシテ、成ルベク速ニ之ガ通過ヲ希望シテ居リマシタガ、
不幸ニシテ今日マデ本院ニ於テ御議定ニ相成ラヌヤウナ次第デ、然ルニ會期
ハ最早切迫致シマシテ、若シ此法律ヲシテ有效ナラシメント欲シマスレバ是
非此會期中ニ豫算ヲ提出シナケレバナリマセヌガ、唯今本院ノ議事ニ上ボッ
テ居ルヤウナ次第デアリマスカラ、是ガ全ク通過致シマスルノヲ待ッテ、ソ
シカラ豫算ヲ提出致シマシテハ到底此年度ニ間ニ合ヒマセヌノデ、普通ノ順
序デハアリマセヌデアリマシタガ豫算ヲ提出致シマシタガ、併シ衆議院ニ於
テハ此法律案ガ本院ニ於テ通過セザルタメニ其議事ヲ延シテ此豫算ノ方ハ議
サナイデ居ルヤウナ次第デゴザイマスカラ、ドウゾ其邊ヲ御酌量下サイマシ
テ此法律案ヲ必要ナリト御認メナサルナラバ速ニ通過サレルヤウニ偏ニ希望
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=80
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081・村田保
○村田保君 此案ハ一昨日昨日トモ御延シニナッテ居リマシタカラ、本員モ篤
ト考ヘテ居リマシタガ、是ハ今日出シマセヌデモ差支ハナイダラウト思ヒマ
ス、何ゼト申シマスルニ此二十五萬圓ト云フモノヲ以テ補助シテ居リマ
シタ所ガ今度ハ之ヲ年々豫算デ以テ極メラ、サウシテ補助シヤウト云フノデ
ゴザイマスガ、一體此豫算ト云フモノデゴザイマスルト年々出スモノデアリ
マス、然ル處國庫補助テドヽ云フモノハ〓子一定ノ金額ト年限ヲ定メテアル、
旣ニ文部省デモ其他ニモ補助ヲシタモノガアル、例ヘテ見マスレバ日本體育
會ト云フヤウナモノニハ年々一萬圓宛五箇年間補助スルトカ其他補助ト云ヘ
バ大〓年限ト金額ガ定メテアル、然ル處年々豫算デ定メルト云フコトニ致シ
マスレバ當局者ニ依リマシテ或ハ減ラスコトモアリ或ハ殖ヤスコトモアルカ
モ知レマセヌガ、減ラサレルトキハ補助ヲサレルモノハ甚ダ迷惑デアル、ソレ
故ニ國庫補助ト云フモノハ大〓年限ガ定メテアル、尤モ一昨年此小學校〓育
費國庫補助ト云フモノハ是ハ豫算デ定メルト云フコトガゴザイマシタガ、是
ハ餘程性質ノ違ッタモノデ小學校ト云フモノハ年々殖エテ參リマス、日本ノ
人口ハ年々四十万以上モ殖エマスカラ、ドウシテモ學校ガ殖エテ參リマスカ
ラ、是ハ一定ノ金額ヲ定メルコトハ出來マスマイケレドモ、實業〓育ナドト
云フモノハ餘程性質ノ違ッタモノデアリマス、ソレニモ拘ラズ今日ハ二十五
万圓ト云フ補助デゴザイマスカラシテ、當局者ハ或ハ此定額內デ以テヤレバ
澤山ナ要求者ガアッテモ防グコトガ出來マスケレドモ、之ヲ年々豫算デヤリ
マスルト幾ラ出テ來ルカ知レナイ、ソレニモ拘ラズ、ドウモ今日二十五万圓
ノ極ッテ居ル金額デサヘモ此實業補習學校ニハ餘程弊ガアルノデス、ドウカ
年々金額ヲ以テ定メルナドト云フコトニナッテハ言フベカラザル弊害ガ生ジ
ハシナイカト云フコトヲ本員ハ考ヘタ、ソレ故ニドウゾ此事ハ本會ニ於キマ
シテハ······當議會ニ於キマシテハ否決シテ貰ヒタイ、ソレデ此後段々必要ト
見タナラバ既ニ是ハ二十七年ニ十五万圓ヲ定メマシタンデゴザイマスガ、此
三十一年ニ又十万圓殖エテ居リマス、初カラ殖エテ居リマスカラ明年ニナリ
マシテ二十五万圓デ足リナケレバ三十万圓ニシテモ三十五万圓ニデモスルガ
宜イ、年々豫算デ定メルト云フコトハ補助ノ性質ニモ如何デアラウト思ヒマ
スカラ、當會ニ於キマシテハ否決ガ宜カラウト思ヒマス、就イテハドウカ二讀
會ニ移サレザルヤウニ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=81
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082・長岡護美
○子爵長岡護美君 今村田君カラ御演說モアリマシタガ、我〓委員ノ中デモ
サウ云フヤウナ考ハアリマシタンデ、ソレデ十分ニ委員會デハ此事ヲ討議シ
タ譯デアリマスガ、何分今日ハ〓育ノ事ハ或ル地方ニ於テハ必要デアラウト
云フノデ、本員等ハ原案ヲ賛成シタ次第デ、村田君ノ如ク法律的ノ御議論ハア
ラウト考ヘマシタノデアリマスケレドモ、奈何セン地方ノ情況今日ノ場合ニ
於テハ先ヅ二万圓位ノ所時勢ニ應ジテ補助ヲスルコトガ必要デアラウト、斯
ウ云フコトニ委員ハ致シタ次第デアリマスカラ、其事ヲ一應述ベテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=82
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083・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ本案ハ第二讀會ニ移スベキヤ否ヤノ決ヲ
採リマス、本案ヲ二讀會ニ移スベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者名數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=83
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084・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 過半數ト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=84
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085・山井兼文
○子爵山井兼文君 直ニ第二讀會ヲ開カレコトヲ希望致シマス
〔「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=85
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086・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ガナクバ直ニ第二讀會ニ移ルコトニ致シマ
ス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=86
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087・近衞篤麿
○議長〔公爵近衞篤麿君〕 御異議ガナクバ原案ニ決シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=87
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088・谷干城
○子爵谷干城君 チヨット請求致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=88
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089・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 此案ニ附イテヾスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=89
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090・谷干城
○子爵谷干城君 イエ、此議事日程ノ仕舞ニ出テ居リマスル私ガ提出致シテ
置キマシタ··
〔「直ニ三讀會ヲ開カレンコトヲ······」ト述フル者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=90
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091・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 暫ク御待下サイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=91
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092・谷干城
○子爵谷干城君 ······次ニ延スコトヲ請求致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=92
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093・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレハ時機ガ早ウゴザイマス、直ニ第三讀曾ニ移
ルコトニ致シマス
〔子爵谷干城君「コヽデハドウデゴザイマス」ト述フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=93
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094・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 今第三讀會ニ移ッテ居ル所デアリマス······御異議
ガナクバ原案ニ決シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=94
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095・谷干城
○子爵谷干城君 如何デス、コヽナラバ宜シウゴザイマスカ、ドウゾ次ノ日
程ニ上サルヽコトヲ希望致シマス、少シ提出者ニ都合ガゴザイマスカラ······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=95
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096・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 一番後トノ日程デゴザイマスカ、之ヲ止メヤウト
云フノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=96
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097・谷干城
○子爵谷干城君 今日ハ止メヤウト云フノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=97
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098・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ガナクバ······臺灣事業公債法中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、特別委員長報〓、坊城伯爵
臺灣事業公債法中改正法律案外一件
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
右特別委員長
明治三十四年三月十九日伯爵坊城俊章
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
〔伯爵坊城俊章君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=98
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099・坊城俊章
○伯爵坊城俊章君 諸君、臺灣事業公債法中改正ノコトニ附キマシテ委員會
ノ經過ヲ報〓致シマス、是ハ委員會ニ付セラレマシテ委員ハ調査ヲ致シマシ
タル所、一二ノ質問ハゴザイマシタガ、其質問ハ報告スルマデノ事ハゴザイマ
セナンダ、一年ト云フノヲ三年ニ改メルト云フノデアリマシテ、是ハ御手許
ニ上ガッテ居リマスル通ノ理由ニ外ナラヌノデゴザイマス、如何ニモニュー
シテハ爲シ得ラレヌ、三年ノ年限ニ換ヘタイト云フダケノコトデゴザイマス、
政府委員ノ說明モソレダケノ事デ外ニ何モゴザイマセヌヤウナコトデ、尙ホ
御質問モゴザイマスルナレバ政府委員ニ質問ヲ願ヒマス、サリナガラ是ハ簡
單ノ問題デアリマスカラ讀會ヲ省略セラレマシテ速ニ可決セラレンコトヲ希
望致シマス
〔「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=99
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100・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 讀會省略ノ賛成ハ十人以上アッタト認メマス、之ニ
同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=100
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101・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 三分ノ二以上ト認メマス、讀會ハ省略致シマス、次
ニ御異議ガナケレバ本案ハ原案ノ通ニ決シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=101
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102・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 明治三十二年法律第百一號中改正法律案、政府提
出、衆議院送付、第一讀會ノ續、特別委員長報告
〔伯爵坊城俊章君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=102
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103・坊城俊章
○伯爵坊城俊章君 是モ同ジク昨日委員會ヲ開キマシテゴザイマス、其結果
ヲ報〓致シマス、是ハ法律第百一號ト云フモノハ是マデゴザイマセヌノデゴ
ザイマス、何ゼニ此度之ヲ入レマシタカト申スノハ、外國等ニ募リマスル所ノ
便宜ガアラウ、卽チ募ルベキヤウナモノガアル、ソレガタメニ之ヲ此法中ニ
入置クノ便利ヲ見タ、ソレダケノ話デゴザイマス、此度之ヲ入レルト云フコ
トニシマシタ、尙ホ右ニ附キマシテ御質問等モゴザイマスレバ政府委員ニ御
質問ヲ願ヒマス、サリナガラ是モ矢張簡單ナ案デゴザイマスカラ、ドウゾ前
同樣ニ各讀會ヲ省略サレマシテ速ニ御議決アルコトヲ希望シマス
〔「賛成」ト呼フ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=103
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104・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 讀會省略ノ動議ハ成立ッタヤウデゴザイマス、之ニ
同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=104
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105・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤應君) 三分ノ二以上ト認メマス、讀會ハ省略ニナリマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=105
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106・天春文衞
○天春文衞君 此次ハ第十ノ·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=106
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107・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) チヨット御待下サイ、マダ讀會省略ノ議ガ極ッタダ
ケデ本案ハ決シテ居リマセヌ、御異議ガナケレバ本案ハ可決ト認メマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者名シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=107
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108・名村泰藏
○名村泰藏君 先程司法官試補實地修習期間ニ關スル法律案、是ハ最モ必要
ナモノデアリマシテ急ヲ要スルモノト認メマスカラ議事日程ヲ變更シテ此處
デ御議シニナルヤウニ願ヒタイ、ドウゾ皆樣御贊成ヲ······
〔「贊成」ト呼フ者アリ」発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=108
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109・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 唯今ノ名村君ノ動議ニ御異議ガアリマセヌケレ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=109
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110・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 然ラバ之ヲ議題ニシマス、司法官試補實地修習期
問ニ關スル法律案、政府提出、第一讀會
司法官試補實地修習期間ニ關スル法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治三十四年三月二十日
内閣總理大臣侯爵伊藤博文
司法大臣男爵金子堅太郞
司法官試補ノ實地修習期問ハ今後三箇年間ハ一年六箇月マテニ減縮スルコ
トヲ得
〔政府委員波多野敬直君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=110
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111・波多野敬直
○政府委員(波多野敬直君) 唯今議題ニナリマシタ本案ハ一昨日本議ニ上ボ
リマシテ昨日撤回ヲ致シマシタル明治二十九年第四號改正法律案ト同一ノ趣
意デアリマス、然ルニ右第四號法律ニ附キマシテハ御意見モゴザイマシタカ
ラシテ、一應撤囘ヲ致シマシテ更ニ本案ヲ提出致シマシタ次第デゴザイマ
ス、就キマシテハ此事柄ハ旣ニ本院ニ於テ御調査濟ニナッテ居リマスノミナ
ラズ會期モ切迫致シタ場合デアリマスカラシテ、ドウブ速ニ御協賛アランコ
トヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=111
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112・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 特別委員ノ選擧ニ移リマス、此特別委員ハ議長ニ
於テ指名シテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=112
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113・天春文衞
○天春文衞君 此第十ノ議事日程ノ三十三年第七十三號ノ衆議院議員選擧法
ノ改正案デアリマスガ、唯〓此議場ヲ見渡シマスル所ガ、委員長モ副委員長
モ闕席ノヤウデゴザイマスルシ其他ノ委員諸君モ御闕席ノヤウデゴザイマス
カラ是ハ明日ニ讓ラレンコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=113
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114・鳥越貞敏
○鳥越貞敏君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=114
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115・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 今ノ天春君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=115
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116・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ延期致シマス、民法中改正法律案、衆議
院提出、第一讀會
民法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
明治三十四年三月十八日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
民法中左ノ通改正ス
民法第三百七十四條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ハ抵當權者カ債務ノ不履行ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請
求スル權利ヲ有スル場合ニ於テ其最後ノ二年分ニ付テモ亦之ヲ適用ス但
利息其他ノ定期金ト通シテ二年分ヲ超ユルコトヲ得ス
〔政府委員梅謙次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=116
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117・梅謙次郎
○政府委員(梅謙次郞君) 此案ハ衆議院提出ノ案デアリマスガ、御參考ノタ
メニ之ニ對スル政府ノ意見ヲ申上ゲヤウト思ヒマス、此改正案ハ民法第三百
七十四條ニ一項ヲ加ヘルト云フ案デアリマシテ.政府ノ見ル所デハ此規定ハ
ナクトモ現行法ノ儘デ同一ノ解釋ニナルベキトハ思ヒマスケレドモ、既ニ大
審院ニ於テ反對ノ判決例ガアリマスルノデ、ソレデ此法案ガ出マシタ次第デ
アリマスカラ、卽チ民法ノ趣意ヲ變更スルノデハナイ、多少疑アッテ反對ノ判
決例ヲモ招イタ次第デアリマスカラ、之ヲ明ニシヤウト云フ案デアリマスカ
ラ、政府ハ別ニ反對ヲ致シマセヌ、但シ衆議院ニ於テ提出ニナリマシタ原案
ニハ大分瑕砒ガアリマシタガ、卽チ修正ニナリマシテ衆議院カラコチラニ
囘ッタ案ハ政府ニ於テハ反對ハナイノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=117
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118・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 委員選擧ニ移リマス、此委員モ議長選定デ宜シウ
ゴザイマセウカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=118
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119・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 所得稅法中改正法律案、衆議院提出、第一讀會
所得稅法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
明治三十四年三月十八日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
所得稅法中左ノ通改正ス
第二條中「職業ヲ有スルトキ」ヲ「職業ヲ有シ若ハ公債社債ノ利子支拂ヲ受
クルトキ」ニ改ム
第四條第一項第一號中「同年度總損金、」ノ中ニ「賞與金、」ヲ加フ
同條第一項第三號中「田畑ヨリノ所得」ヲ「山林ノ所得ハ前年ノ所得ニ依ル
田畑ノ所得」ニ改ム
第九條ニ左ノ一項ヲ加フ
調査委員會閉會後第三種ノ所得アル者新ニ納稅義務アルコトヲ申出タル
トキハ政府其ノ所得金額ヲ決定ス
第四十條山林ノ所得ヲ除クノ外第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者所得金
額四分ノ一以上ヲ減損シタルトキハ政府ニ申出テ所得金額ノ更訂ヲ求ム
ルコトヲ得但シ翌年一月三十一日ヲ過クルトキハ所得金額ノ更訂ヲ求ム
ルコトヲ得ス
所得金額決定後贈與ヲ爲シタル爲所得金額ヲ減損シタル場合ニハ前項ヲ
適用セス
第四十三條ヲ第四十三條ノ一トシ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第四十三條ノ二第三種ノ所得ニ付二箇以上ノ稅務署管內ニ於テ所得金
額ノ決定アリタルトキハ政府ハ納稅者ノ住所地若住所ナキトキハ居所
地以外ニ於ケル所得金額ノ決定ヲ取消スヘシ
附則
此ノ法律ハ明治三十四年分所得稅ヨリ之ヲ適用ス
〔政府委員目賀田種太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=119
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120・目賀田種太郎
○政府委員(目賀田種太郞君) 此衆議院提出ノ案ハ大體舊來存スル所ノ法律
ノ不分明ノ點ヲ修正致シマシタコトデ、至極適當ナ案デゴザイマス、唯其中此
第四條中ニ於キマシテ控除スベキ事項ノ中ニ不確定ナル賞與金ノ一項ヲ加ヘ
マシタダケハ政府ニ於テ同意致シテ居リマセヌ、他ハ速ニ此修正ノ成立タン
コトヲ希望シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=120
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121・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 委員選擧ニ移リマス、是モ議長指名ノ委員デ宜シ
ウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=121
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122・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) ソレデハ本日ノ議事ハ是ニテ終リマシタ、御委託
ニナリマシタ特別委員ノ氏名ヲ御報道シマス
〔太田書記官長朗讀〕
巡査看守退隱料及遺族扶助料法案特別委員
伯爵坊城俊章君子爵本莊壽巨君子爵松平康民君
小原重哉君男爵紀俊秀君男爵眞田幸世君
山脇玄君磯邊包義君松永安彥君
內務省所管歲出臨時部土木事業費中信濃川河口修築費繰越ニ關スル法律案
特別委員
子爵堤功長君子爵綿織〓久君子爵梅小路定行君
男爵松平正直君石井省一郞君渡正元君
中島永元君古市公威君五十嵐甚藏君
所得稅法中改正法律案特別委員
子爵松平乘承君子爵久松定弘君子爵靑木信光君
松岡康毅君男爵有地品之允君男爵吉川重吉君
武井守正君天春文衞君角田林兵衛君
民法中改正法律案特別委員
子爵唐橋在正君子爵黑田和志君男爵尾崎三良君
三好退藏君名村泰藏君男爵生駒親忠君
富井政章君安廣伴一郞君櫻井三郞右衞門君
司法官試補實地修習期間ニ關スル法律案特別委員
伯爵德川達孝君子爵本莊壽巨君子爵丹羽長保君
名村泰藏君男爵中川興長君石井忠恭君
兒玉淳一郞君下條正雄君五十嵐甚藏君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=122
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123・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 今日ハ散會
午後三時三十二分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01519010320&spkNum=123
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