1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十五年一月二十八日（火曜日）午後一時十二分開議
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議事日程 第九號 明治三十五年一月二十八日
午後一時開議
第一 鐵道敷設法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第二 北海道鐵道敷設法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第三 特許法中改正法律案（政府提出貴族院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第四 第五囘内國勸業博覽會參考館へ陳列の爲輸入する貨物關税免除に關する法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第五 害蟲驅除豫防法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第六 登録税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第七 登録税法中改正法律案（塩田忠左衞門提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第八 家祿賞典祿處分法中改正法律案（恒松隆慶外五名提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第九 刑法中改正法律案（安藤亀太郎外二名提出） 第一讀會
第十 刑法中改正法律案（安藤亀太郎外三名提出） 第一讀會
第十一 鐵道列車災害豫防法案（菅野善右衞門提出） 第一讀會
第十二 私設鐵道新線路助成案提出に關する建議案（杉田定一外十八名提出） （委員長報告）
第十三 東北大學設置建議案（松田正久外三名提出）
第十四 家祿處分に關する建議案（佐藤清外二名提出）
第十五 未測の海岸及水路の測量完成に關する建議案（根本正外二名提出）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=0
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001・片岡健吉
○議長片岡健吉君 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
花井卓藏君外一名提出祕露國ニ於ケル移民ノ慘狀保護ニ關スル質問ニ對シ
小村外務大臣ヨリ左ノ答辯アリ
衆議院議員花井卓藏君外一名提出祕露國ニ於ケル移民ノ慘狀保護ニ關スル
質問ニ對シ別紙外務大臣答辯書及御囘付候也
明治三十五年一月二十七日內閣總理大臣子爵桂太郞
衆議院議長片岡健吉殿
(別紙)
衆議院議員花井卓藏君外一名ヨリ提出ノ祕露國ニ於ケル移民ノ慘狀保護ニ
關スル質問書ニ對シ別紙答辯書差進候也
明治三十五年一月二十一一日外務大臣小村壽太郞
衆議院議長片岡健吉殿
(別紙)
衆議院議員花井卓藏君外一名ヨリ提出ノ祕露國ニ於ケル移民ノ慘狀
保護ニ關スル質問書ニ對スル答辯書
一、質問第一及ヒ第三ニ就テハ政府ハ初該移民等ノ歎願ニ接シタルヤ直ニ
在墨國帝國公使及ヒ在リマ帝國名譽領事ニ訓令シテ其報〓ヲ徵シ之ニ據
テ格別異狀ナキヲ諒知シタルモ其後移民等ノ歎願續達シタルニ因リ更ニ
親ク實地ニ就キ精密ニ調査スルヲ必要ト認メ特ニ一ノ外務書記生ニ在リ
マ帝國名譽領事館在勤ヲ命シ各耕地ヲ巡囘シテ實況ヲ調査セシメ且ツ救
濟方法ニ付意見ヲ具申セシムルコトヽシタリ然ルニ同書記生ニ於テ實地
ヲ調査シタル結果大體ニ於テ移民困難ノ狀況ハ歎願書ニ記載セシ如ク甚
大ナラス加之渡航後一時多カリシ病死者ノ數モ漸次減少シタルニ付二三
ノ善後策ヲ施サハ永續セシメ得ヘキ見込アル旨ノ詳報ニ接シタリ依テ政
府ハ移民保護法第十八條ニ依ル最終ノ手段ヲ執ルノ前猶ホ救濟ノ道アル
ヲ慮リ更ニ調査ヲ重ネタル末該移民取扱人ヲシテ大要左ノ方法ニ從ヒ期
ヲ刻シ之ヲ實行セシムルコトニ決シタリ
一移民取扱人ニ於テ移民滿期後ノ歸國取計方ヲ擔保スル事
一移民取扱人ニ於テ雇主ト移民トノ間ニ立チ完全ニ契約ノ履行ヲ謀ル
事
一移民取扱人ニ於テ病弱其他正當ノ事由ニ因リ困難シ居ル移民ヲ救還
スル事
右實行後ノ報告ニ據レハ移民等安堵シテ各自其勞働ニ從事シ目下ノ處敢
テ歸國ヲ願フモノナキニ至リシ旨承知セリ尙今後ノ狀況如何ニ依テハ政
府ハ更ニ救濟ノ方法ヲ講スルニ怠ラサルヘシ
一質問第二ニ就テハ政府ハ移民慘狀ノ歎訴ニ接シ事體不容易ト認メ前
項ニ述ヘタル救濟手續ヲ執リシナリ
右及答辯候也
明治三十五年一月二十二日外務大臣小村壽太郞
政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
明治三十二年度歲入歲出總決算
明治三十二年度各特別會計歲入歲出決算
明治三十二年度歲入歳出決算檢査報告
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法別表中改正法律案
提出者武市庫太君高津雅雄君永田佐次郞君
小崎義明君
委員長理事左ノ通當選セラレタリ
臺灣官設鐵道用品資金會計法案
委員長板東勘五郞君理事西村具太郞君
臺灣ニ在勤スル巡査看守退隱料及遺族扶助料ニ關スル法律案
委員長石谷董九郞君理事花井卓藏君
害蟲驅除豫防法中改正法律案
委員長兒玉仲兒君理事新開貢君
第五囘內國勸業博覽會參考館ヘ陳列ノ爲輸入スル貨物關稅免除ニ關スル
法律案
委員長渡邊猶人君理事中田彌平君
明治三十三年度豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)外四件
委員長土居平左衞門君理事雨森菊太郞君
請願法制定ノ建議案
委員長靑柳四郞君理事江藤新作君
賣藥稅印紙稅規則發止法律案外一件
委員長高須賀穰君理事金岡又左衞門君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=1
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002・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 會議ヲ開キマス、丸山嵯峨一郞君
〔丸山嵯峨一郎君演壇ニ登ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=2
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003・竹内正志
○竹內正志君(九十四番) 私ハ質問書ニ附イテ要領ヲ述べタイト思ヒマス
カ.発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=3
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004・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 今丸山嵯〓一郞君ニ許シマシタカラ、竹內君ハ此次
ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=4
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005・丸山嵯峨一郎
○丸山嵯峨一郞君(百九十一番) 私ハ此內務大臣ノ地方行政ノ監督ニ關スル
質問ヲ提出致シマシテ甚ダ煩雜デアリマスケレドモ一應其趣旨ヲ茲ニ述
ベマスル積デアリマス、チヨット地方ノ問題ニ屬スル如クニ考ヘマスルケレド
モ是ハ地方自治ノ制度ノ上ニ於キマシテ、重大ナ問題デアリマスルカラ暫
ノ間諸君ノ御〓聽ヲ煩シタイト思ヒマス、質問書ノ事項ハ玆ニ一通リ讀上ゲ
テ見マスルガ
一内務大臣ハ町村制第四條ニ基キ町村ノ廢置分合ニ關スル許可ノ處分ヲ爲
スニ當リ之カ調査ヲ遂クル必要ナシト信スルカ及ヒ其理由如何
一內務大臣ハ地方長官ノ稟請ニ對シテ調査スルノ權能ナキカ及ヒ其理由如
何
一內務大臣ハ地方長官ノ詐欺ノ報告ニ由リテ爲シタル其錯誤ノ處分ヲ取消
スノ權能ナキカ及ヒ其理由如何
一内務大臣ハ明治三十四年度ニ於ケル新潟縣ノ町村分合ニ關シ其分合ヲ許
可シタル町村ニ就イテ果シテ町村制第四條第三項ノ場合ニ該當シタル事
實理由アリト認ムルカ若シ理由アリトセハ詳細ナル事實ノ報告ヲ爲スヲ
得ルカ如何
一內務大臣ハ新潟縣ノ町村分合ノ處分ノ結果許多ノ紛擾ヲ惹起シタル事實
ヲ知レルカ若シ之ヲ知レリトセハ此ノ如キハ公益ヲ害スルモノト思ハサ
ルカ及ヒ其理由如何
一內務大臣ハ右ノ處分ノ結果新潟縣下ニ於ケル町村ノ資力ノ差異舊來ニ比
シテ一層甚シク懸隔セルヲ認メサルカ且一縣ヲ通シテ同時ニ町村分合ヲ
强行スルノ理由如何
一內務大臣ハ新洞縣知事ノ稟請ノ趣旨カ果シテ町村制中何レノ規定ニ由リ
タルモノナルカヲ解釋シ得タルカ現實ニ町村制第四條第三項ノ場合ニ該
當セサル稟請ニ對シテ之カ許可ヲ與フヘキ義務ハ町村制中何レノ規定ニ
由リタルモノナルカ及ヒ其理由如何
一内務大臣ハ新潟縣知事ノ如キ法律ヲ無視シ暴戾壓抑ヲ極ムル知事ヲシテ
地方ノ行政ヲ掌ラシムル必要ヲ認ムルカ及ヒ現內閣ノ屬僚中新潟縣知事
柏田盛文ニ勝レル人物ナキカ若シアリトセハ何故ニ獨リ新潟縣ヲ蔑視シ
テ斯ル暴戾非違ノ知事ヲシテ縣治ヲ料理セシムルカ及ヒ其理由如何
一内務大臣ハ本件ノ如キ場合ニ於テ之カ救濟ノ道ヲ講スルノ意思ナキカ及
ヒ其理由如何
是ダケノ項ニ附キマシテ本日質問ヲ致シマスルガ、一々各項ニ附イテハ趣意
ハ述べヌデモ大體ニ附イテ諸君ニ訴フル所ガアリ、政府ノ答辯ヲ煩シタイ
點ガアルノデアリマス元來此質問ノ大體ノ趣旨ハ獨リ今日ニ於テ地方ノ
一出來事ノタメニ致ス次第デハナイ、是カラ先キニ於キマシテ地方行政上
ノ職責ニ附イテ、內務大臣ガ苟モ不法ナル處置ヲスル不正ナル處置ヲスルト
云フ事柄ハ實ニ地方制度ノ上ニ於キマシテハ重大ナル關係ヲ有ッテ居リ
マスカラ、他日斯ノ如キ禍ノ瀰蔓センコトヲ恐レテ私ガ玆ニ演說ヲ試ル次
第デアリマス、町村ノ分合ノコトニ附キマシテ、其處分ヲ强制的ニ之ヲ執行ス
ルト云フコトニ附キマシテハ町村制ノ上ニ於テ極ク場合ガ限ラレテアルノ
デ、決シテ當局者ノ見込通ニ、勝手ニ分合廢置ヲ行フト云フコトハ町村制
ノ上ニ於テ許シテハ置キマセヌ町村制ノ第四條第三項ヲ見マスルト「町村
ノ資力法律上ノ義務ヲ負擔スルニ堪ヘス又ハ公益上ノ必要アルトキハ關係者
ノ異議ニ拘ハラス町村ヲ合併シ其境界ヲ變更スルコトアル可シ」ト云フ明文
ガアルノデ、ソレデ此町村ノ異議ノアルニモ拘ラズ、其廢置分合ヲ强行スル
ト云フ場合ハ今讀上ゲタル通デアッテ、明ニ此法律ノ上ニ於テハ、其町村ガ法
律上ノ義務ニ堪ヘヌ及此公益上或ハ之ヲ分ケンケレバナラヌ、或ハ合セヌ
ケレバナラヌト云フ事實ヲ認メタ上ニ於テ始テ行フベキモノデアル決シ
テ其他ノ理由ヲ以テ町村ノ分合廢置ヲ强制スルト云フコトハ許サヌノデア
ルデ若シ此〓ニ附イテ、町村制ガ果シテ不備デアルカト申シマスレバ決シ
テ不備デハナイ若シ其他ノ理由、例ヘバ〓育上ノ施設ノタメ、或ハ衞生上ノ
施設ヲ要スルト云フ時分ニ、卽チ町村制ノ第六章ニ於テ、百十六條ニ於テ町
村ノ組合ヲ設ケテ、是ガ便法ヲ與ヘテアル、決シテ何レノ場合ニ於テモ町村
ノ分合廢置ト云フモノガ當局者ノ勝手ニ出來ルト云フ事柄デナイ町村ノ自
治ヲ重ズル所カラシテ、斯樣ナル極ク狹イ制限ヲ附シタル制度ヲ拵ラッタノ
デアル、ソレ故ニ當時町村制ヲ發布セラレル時分ニ於キマシテ詔勅ヲ下サレ
テ居ル、其詔ノ中ニ、諸君モ無論御承知デアリマセウガ「鄰保團結ノ舊慣ヲ
存重シ」云々及「町村ノ權義ヲ保護スル」云々、此言葉ハ吾〓臣民ノ謹デ記
憶シテ居ラナケレバナラヌコトデアリマス、此精神ヲ以テ町村ノ制度ト云フ
モノハ施カレテアルカラシテ、容易ニ此町村ノ施設ノ上ニ於テ、當局者ガ勝
手ノ處置ヲスルト云フコトハ許サヌノデアル元來此町村ノ發達ノ上ニ附イ
テ御考ヘ下サレバ殆ド思ヒ半ニ過グルモノガアリマスソレハ御承知ノ通
此町村ノ發達ト云フモノハ元ト人爲デ出來タモノデナイ、其基礎ト云フモ
ノハ自然ノ發達ガ土臺ニナッテ居ルノデアル平タク申シマスレハ、人類ノ發
達ノ順序ニ伴ウテ、初ハ同族ノ者ガ群居シテ自然ニ鄰保團結ノ必要ヲ生ジテ
參リ、其團結ノ中カラシテ、又一地方ニ割據シテ新園結ヲ作ルトカ又ハ開墾
デアルトカ、或ハ或ル一種ノ事業ノタメニ或ル地方ニ町村ヲ形作ッテ新〓
結ヲ爲ストカ云フコトデ、町村ガ發達スルノデアル詰リ其發達ノ上カラ申
シマスレバ人情風俗地形等ノモノガ、最モ多クノ關係ヲ有ッテ居ル、殊ニ利
害ノ關係ノ上カラシテハ町村ノ發達ト云フモノハ著シク各〓差ノアルモ
ノデ、決シテ一樣ノ發達ヲシテ來ルモノデナイ人爲ヲ以テ寸尺ヲ一ニシ
テ、發達ノ程度マデ悉ク作リ出シテ、鑄型ノ中ニ入レタヤウナ町村ガ出來ル
ト云フコトハ望ムベカラザル事柄デアルデ我國ニ於キマシテハ古代カ
ラシテ直接ニ町村ノ事柄ニ關シテ立派ナ法律ト云フモノハ出來テ居ラナ
イ皆區々マチ〓〓ノ規則ガアッタノデアルソレデアリマスカラシテ、此
町村ノ資力及町村ノ區域ノ大小ト云フコトニ關シテハ決シテ一樣ノ形ヲ持ッ
テ居ラナイ一樣ノ規定ト云フモノハナカッタノデアル著シキ例ヲ申シマ
スルト、例ヘバ薩摩ノ如キ所ハ、是ハ舊來カラシテ隨分久シイ間、大藩ノ領
分ニナッテ居ッタソレ故ニ其地方ニ於テ-町村ニ於テ支配スル所ノモ
ノハ多クハ豪族〓士ト云フヤウナモノガアッテ、權力ノ大キイモノデアツ
タサウダ、サウ云フモノヽ支配シタ所ハ町村ガ自然ニ大キクナッテ居ル、
又其反對ノ新潟縣ノ如キ所ハ舊來此小藩ガ非常ニ多カッタ、從ッテ此領分
ト云フモノガ實ニ錯綜シテカラニ、決シテ薩摩或ハ其他ノ大藩ノ如キ有樣デ
ハナカッタノデアル僅ノ區域ニ於テ、藩ガ違ヘバ其利害關係ガ違ッテ來ル、
從ッテ其町村ガ犬牙錯綜シテ、決シテ一樣ニハナッテ居ラナイ其結果トシ
テ小サイ町村ガ非常ニ多カッタト云フコトハ事實デアリマス、是モ詰リ古來
カラシテ日本ニ於テ町村制度ト云フモノガ一定シテ居ラナイカラ自然ノ
結果斯樣ナ現象ガ現レテ居ルノデゴザイマスソレ故ニ此町村制ノ第三條ニ
於キマシテハ此町村ノ資力及大小ト云フモノハ濫ニ壓制的ニ之ヲ作リ出
スト云フコトハ出來ナイノデアルカラ「凡町村ノ從來ノ區域ヲ存シテ之ヲ
變更セス但將來其變更ヲ要スルコトアルトキハ此法律ニ準據スヘシ」ト云フ
規定ヲ、町村制ノ第三條ニ設ケラレテ居ル、此事ハ設ケル程ノ必要ナ規定デ
ハナイガ町村制ノ意志ヲ窺フニハ最モ必要ナ條交デアル濫ニ舊慣ヲ打破
シテ、勝手ナ處分ハ出來ナイゾト云フコトヲ、町村制ニ於テ命ゼラレテアル
ノデアル今此事ニ附キマシテ、實際ノ事實ヲ舉グテ政府ニ質問ヲ致ス其
事柄ハ卽チ新潟縣ノ昨年ノ町村分合ノ處分ノコトデアリマス此町村ノ分合
ノコトニ附キマシテハ明治三十三年度ノ終ニ於キマシテ新潟縣知事カラ
シテ此諮問案ヲ發セラレタ其時ニ於キマシテ此町村ハドウ云フコトデア
ルカ殆ド法律上ノコトヲ知ラヌノデアルソレ故ニ當局者カラシテ既ニ
諮問案ヲ發セラレタ以上ハ是非トモ處分ニ從ハナケレバナラヌト云フコト
ヲ以テ諭サレタタメニ大半ノ町村ニ於テハ諮問案ノ意志ニ依クテ分合致
シマセウト云フ覺悟ハアッタノデアル、所ガ此諮問案ト云フノハ縣參事會
ノ議決ヲ經ネバナラヌ、サウシテ縣參事會ノ議決ヲ經タ後ニ於テ、ドウ云フ
有樣ニ於テ現レタカト申シマスレバ此知事ガ免モ角モ如何ナル標準デアル
カ知ラヌガ、諮問案ヲ發セラレタマデノ計畫トハ全ク遠ッタモノニナッテ
現レテ居ルノデアルサウシテ、曩ニ諮問案ニ對シテ同意ヲ表シテ居ル町村
ニ向ッテ悉ク其組替ヲシテ、却ッテ不同意デアル町村ト强テ合併ヲスルト云
フ決議ノ案ヲ具ヘタノデアリマス、所ガ知事ハ其諮問案ニ對シテ、斯樣ナル侮
辱ヲ受ケ斯樣ナル變更ヲ與ヘラレテモ平然トシテ自分ノ意ヲ貫クコトヲセ
ズ縣參事會ノ決議ノ意思ヲ助ケテ、之ヲ貫徹シヤウト云フ精神デ運動サレ
タ、所ガ町村ノ者ハ、實ニ利害ノ直接ニ己ノ頭上ニ關係シテ居ル所カラ遙ミ
ト東京マデ出張シテ、內務ノ當局者ニ辯疏スル事情ヲ述べテ、是非共己等ノ便
利、町村ノ便利ニナルコトヲ請願シメ所ガ、其目的ヲ貫クコトハ出來ナカク
タ終ニ內務大臣ハ是等ノ事情アルニモ拘ラズ是ガ許可ヲ與ヘタト云フ事
柄ニナッテ居リマスソコデ尙ホ附ケ加ヘテ申上ゲ置クノハ此町村分合ニ
關スル所ノ縣參事會ノ目的ト云フモノハドウ云フモノデアッタカ又此事
柄ニ附イテハ少クモ當局者ハ取調ベテ居ルカラ、大抵御分リデアラウガ、吾ミ
ノ取調ベタ所ニ據ルト町村制ノ趣意トハ全ク相違ウテ居ル、今其縣參事會
ニ於テ變更ヲスル所ノ目的ヲ調査スルニ、縣參事會ハ御承知ノ通、新潟縣ニ
於テ優勢ヲ占メテ居ル進步黨カラ成立ッテ居ル、併シ是ハ純然タル進步黨派デ
ナイカラ、一種ノ黨ト見テ差支ナイ、サウ云フモノカラ成立ッテ居ルモノデ
アル、其分合ノ問題ノ現レタルヲ利用シテ、サウシテ他日總選舉卽チ衆議院
ノ總選舉ノアル場合ニ於テ、己等ノ選舉ノ都合ノ好イヤウニ致サウト云フノ
ガ大體ノ主旨デアル其他ニハ少モ目的ハナイ元來此町村ノ分合ニ附イ
テハ法律ノ命ズル所ノモノヽ如ク、町村ノ資力如何、區域大小如何、ワ
レ等ノコトガ最モ重ナル條件デナケレバナラヌサウシテ尙ホ町村制ニ於テ
ハ法律上ノ義務ニ堪ヘヌカ、又ハ公益ヲ害スル事實ガアルカナイカ、是等
モ條件ニナラナケレバナラヌ、然ルニ其調査ハ聊モシナイ、事實セヌノデア
ルサウシテ其議事ニ下ボツタコトヲ、吾ミガ聞イタ所ヲ以テ見ルニ、或ル
村ニ於テ某ヲ村長ニシナケレバ不都合デアル其者ヲ村長ニスルニハ此村
ト某ノ村トヲ合併シナケレバ、彼ヲ選ムコトガ出來ヌト云フ所カラ合併ヲス
ル、又或ル村ハ從來水入ラズノ反對黨デアルカラ、是ハ孤立セシメタラ宜カラ
ウト云フコトデ、之ヲ据置ニスル、或ル村ハ其請托ヲ容レテ据置キマスル
トカ或ハ或ル人ノ多クノ權力ノアルコトヲ見テ、其人ノ意志ヲ容レテ大キ
ナ町村ヲ形作ルト云フヤウナ事柄デ、少モ町村ノ上ニ命ジタ條件ヲ具ヘタ
合併ハナイノデアルソレカラ申スト詰リ町村制ノ意旨ニ基イタ合併ノ目
的デナク、彼ガ選擧ノ上ニ都合ヲ好シクシヤウト云フ所カラ、分合ヲ圖クタ
ト云フコトデアル詰リ知事ハ一ノ傀儡師ニ過ギヌ彼等一黨派ノタメニ
利用サレテ不法ナル分合ヲ圖ッタトカシカ見エナイノミナラズ此目的
ニ於テ既ニ非ナルノミナラズ其手段ノ醜穢云フベカラザルモノガアル
是ハ一々コヽデ申上ゲル必要ハナイガ例ヘバ己ノ不正ナル目的ヲ達
センガタメニハ或ル町村ノ者カラ自分達ノ獨立据置ヲ願フ其意志ヲ貫
徹スルタメニハ五百圓ノ或ル種ノ金圓ヲ募集シテ彼等ニ交付シタトカ或
ハ諮問案ニモ亦縣參事會ノ決議ニ於テモチヤント合併案ヲ既ニ作ッテアル
ニモ拘ラズ、其自分ノ派ノ者ノタメニハ不都合デアルト云フコトヲ、發見スル
ヤ否ヤ直ニ前ノ決議ヲ取消シテ、新ナル決議ヲスルト云フヤウナ勝手ナ處
分ヲシ、或ハ男帶幾筋カヲ進物ニシタトカ云フ事例モゴザイマス極ク滑稽
ナル話トシテ傳ヘラレテ居ルノハ或ル町村ノモノガ薄葉ノ紙ノ中ニ札ヲ入
レテ、外トカラ大抵ドン位アルト云フコトガ知ラルヽ位ノ程度ニ於テノ薄イ
紙ヲ以テ金ヲ包ミ其前ニ按排シテ自分ノ約束ヲ固メタト云フ滑稽ノ話モア
リマス、斯ノ如ク醜穢云フベカラザル手段ヲ以テ、不法不正ナル目的ヲ遂ゲン
トシタノデアル、是等ノ事實ハ私ガ申スマデモナク、內務省ニ於テハ吾ミヨ
リモ完備シタル機關ヲ以テ居ルカラ、十分ニ御承知デアラウケレドモ、所
斯ノ如ク誠ニ奇怪ナル經過ヲ以テ生ジタ案ハ直ニ此內務大臣ノ許可スル所
ト爲ッテ、甚ダ新潟縣民ノ多數ガ、是ガタメニ迷惑ヲ感ジテ居ルコトニナッ
テ居ル、苟モ地方長官トシテ新潟縣知事ハ、己ガ或ル目的ヲ以テ諮問案ヲ出シ
タニ拘ラズ、其目的ニ大ニ反スル案ニ對シテ一言ノ反對ヲ試ミナイデ、終
ニ縣參事會ノ決議ガ內務大臣ノ承認スル所ト爲ッタト云フコトデアリマス
尤モ此新潟縣知事カラ、此事ノ稟請ヲシタトキニハ內務大臣ハ處置ニ苦ン
ダ樣子デアル所ガ、屢。セサレタ結果、許シタコトデアルガ許シタトキノ
條件ヲ御話スレバ、斯樣ナ事柄デ許可シタト云フコトデアル、內務大臣カラ
知事ニ向ッテ、是ハ重大ノ事柄デ大分新潟縣モ騷ガシイコトデアルガ、兔モ角
モ御前ニ於テ全然責任ヲ帶ビルコトナラ、許可ヲ與ヘヤウト云フ意ヲ知事ニ
漏ラシタソレカラ知事カラハ斯樣ナコトヲ稟請シタ更ニ附ケ加ヘテ言ツ
タ、新潟縣ニ於テ反對ノ奴等ニ、種々運動シテ騒擾ヲ釀スカ知ラヌガ、直ニ
不服ノ町村ハナイ又多少不服ガアッテモ自分ガ責任ヲ帶ビテ鎭撫スルコ
トガ出來ルカラ、許可ヲ與ヘラレタイト云フコトヲ申シテ、是ハ先ニ申出タ
事實ニ反シテ內務大臣ヲ欺イタノカ、內務大臣ガ欺カレタカ何レニシテモ
左樣ヲ條件附デ、町村分合ノ處分ガ許可セラレタノデアル私ハ本案ノ如キ、
地方行政ニ於テ最モ重大ナル關係ヲ持ッテ居ル處分デアリマスルニ此內務
大臣タルモノハ其監督權ヲ有スル所ノ地位ニ居ルモノデ、サウシテ殊ニ是
ハ町村制ノ上ニ於テ、內務大臣ガ之ヲ許可スル、許否スル一ノ職權ヲ持ッ
ヲ居ルト云フコトハ明デアル其内務大臣ガ左樣ナ職責ノアルト云フコトヲ
以テ、新潟縣ノ町村分合ノ處分ニ對シテ許可ヲ與ヘル其與ヘル以上ハ必
ズ自分ガ其責任ヲ帶ビナケレバナラヌト云フコトハ、萬々御承知デアラフト
思フ、何ヲ苦ンデ知事ニ向ッテ知事自ラガ責任ヲ帶ビレバ本大臣ハ之ニ許
可ヲ與ヘルト云フ條件ヲ附シタノデアルカ、又知事カラシテ縱令自ラ責任ヲ
帶ビルト云フコトヲ誓ウテモ法律上知事ノ責任デハ止マラヌ內務大臣ガ
當然責任ヲ帶ビナケレバナラヌ事柄ヂアル官廳ノ內部ノ事柄ニ就イテ實
ニ斯樣ナル關係ガアルトスレバ、誠ニ長大息スベキ事柄デアルガ、併シ如何ニ
厚顏ナルニモセヨ內務大臣ガ公ニ斯ル事實ガアルト云フコトハ此議場
ニ向ッテ言フコトハ出來マスマイケレドモ併ナガラ地方カラ上京致シテ居
ル其當時ノ委員カラ直接ニ吾ミガ聽キ又ハ其他ノ者カラシテ聽イタ所ニ
據レバ正シク此事ガアッタニ相違ナイ、頗ル重大ナ問題デアルカラ御前
ガ責任ヲ帶ビナケレバ、本大臣ハ許可ヲ與ヘルコトガ出來ナイト云フコトノ
條件ヲ附シテ、之ヲ許可シタト云フ事柄ハ吾ミハ確ニ此上京委員ノ口カラ
シテ聽得タノデアル誠ニ國法ノ上カラシテ見マスレバ不屆至極ナル處置
デゴザイマスル、併ナガラサウ言ウテ見タ所デ、囘復ノ出來ル事柄デハナイ
ガ、免モ角モ此內務大臣ガ斯ル重大ナル處分ニ附イテ、之ヲ許可スルトカ或
ハ否認スルトカ云フ場合ニ於キマシテハ十分ニ其調査ヲ遂ゲナケレバナラ
ヌノデアル、何故ニ此事柄ニ附イテ內務省ニ於テハ相當ナ調査ヲ遂ゲナカッ
タノデアルカ調査ヲシナイノハ事實デアル、成ル程各町村ノ人口ノ對照
表或ハ課稅ノ對照表トカ云フヤウナ統計ヲ、一覽シタ位ノコトハアッタニ
相違ナイケレドモ何故此分合ノ處分ガ必要デアルカト云フコトニ附イテ
ハ少モ調査ヲ致サヌノデアル調査ヲシナイノハ事實デアル何故
內務大臣ハ此重大ナル事柄ニ附イテ、調査ヲシナイノデアルカト云フコトヲ、
第一ニ私ハ質問ヲ致スノデアル、此內務大臣ガ何故ニ調査ヲセヌカ又其調
査ヲスルト此本縣卽チ新溷縣ノ事情ト云フモノガ、果シテ分ッテ居ルヤ否ヤト
云フコトニ附イテハ誠ニ疑ハシイ、最初此知事カラシテノ諮問案ヲ見マシ
テモ粗明瞭スルコトデアル、從ッテ其稟請シタル事柄ニ附イテモ少モ
町村分合ノ必要ト云フモノガ說イテナイ唯自分ノ斯樣ニシタイト云フ所ノ
稟請ヲシタノミデアルカラ、內務大臣ハ町村制ノ命ズル以外ニ於テ、新潟縣知
事カラ稟請シタコトニ附イテ、少クモ疑ヲ懷イテ調査ヲシナケレバナラヌ事
柄デアル果シテ新潟縣ノ分合處分ハ町村制ノ第四條ニ該當シテ居ルヤ否ヤ
ト云フコトハ十分ニ調査ヲセネバナラヌ責任ガアルノデアリマス今此諮
問案ニ附イテチヨット申上ゲマスレバ此最初ノ目的ト云フモノハ何カ他
日此新潟縣ニ於テ或一ツノ事業デモ行ハウ、何カ一ツ仕事ヲシヤウト云フ考
ガアッタト見エル何ノ仕事デアルカ世間ニ於テハ知ルコトガ出來ナイ
其希望ヲ以テ先ヅ此町村ノ資力ヲ大キクシテ置カネバナラヌト云フ所ノ考ガ
生ジタト見ユル、ソレデ此案ニ對シテ、固ヨリ不服ノナイ町村ハ格別デアル
ガ偖テ不服ノアル町村ニ向ッテ、ドコマデモ强制的ニ之ヲ處分シテシマフ
ト云フコトニナッテハ實ニ恐多クモ詔勅ニ違背シタル罪ハ免レナイソレノ
ミナラズ、此新潟縣知事ガ町村ノ不服アルニモ拘ラズ、其目的ヲ遂ゲヤウト
云フ所ノ、其事實ト云フモノハ歷々トシテアルノデアル卽チ吾ミハ現實
ニ其事ハ經驗シ得テ居ル、又吾ミニ對シテモ不法ナ處置ヲシタノデアル例
ヘバ陳情委員ガ上京スルトカ或ハ他ニ交渉ヲ開クトカ云フ時分ニハ必ズ
密行巡査ヲ附シテ其人ヲ牽制スル或ハ村民ヲ脅迫シテ陳情ノ途ヲ奪フ
或ハ己ガ濫ニ威逼ヲ張ッテ、村民ト格鬪ヲシテカラニ互ニ負傷スルト云
フヤウナコトガアル實ニ斯ノ如ク壓制至ラザルナキ所ノ處置ヲ致シテ僅
ノ小康ヲ得タト云フ位ノ事實デアル此事實ハ固ヨリ內務省ニ於テハ知ッテ
居ル筈デアル又既ニ新聞紙上抔ニモ歷々トシテ此事ガ揭ゲラレテアルカ
ラシテ當局者ニ於テモ十分此事ハ御承知ノアル筈デアル其結果トシテ
ドウ云フコトニナッタカ斯樣ナル亂暴ナル事柄ヲヤッテ、ドウ云フ結果ヲ
生ジタカト申シマスレバ、爲ニ町村ノ機關ヲ停止シタル所ノ者ガ非常ニ多カッ
タノデアル又ソレガタメニ郡吏ガ出張シテ、僅ニ町村ノ行政ヲ維持シタ
ト云フ實例モアル其他此陳情委員ト-村民ト巡査ヤ或ハ其他ノ公吏ト非
常ナ葛藤ヲ生ジテカラニ實ニ混戰ノ有樣ヲ呈シタト云フ事實モアルノデ
アル斯樣ナル重大ナル問題、サウシテ斯樣ナル重大ナ騷ギガ起キテ居ルニ
モ拘ラズ當局者タル所ノ內務大臣ガ之ヲ馬耳東風ニ付シテ、少モ此事
ヲ心配セズ知事ノ稟請ニ對シテ直チニ之ヲ許可シタト云フ事柄ハ實ニ甚
シキ失態デアラウト私ハ思フソレ故ニ直チニ此內務大臣ノ監督ト云フ上ノ
職責ニ附イテ私ハ質問ヲ致ス、何故其時分ニ此町村分合ノ理由ト云フモノ
ヲ調査シナイカ事實ト云フモノヲ調査シナカッタカ果シテ若シ此內務大
臣ガ調査スルノ權能ガナイト云フコトナラバ權能ノナイト云フ所ノ理由ヲ
聽キタイト云フ趣旨デアル若シ左樣デナクテカラニ調査スル所ノ權能ガ
アルカラシテ內務大臣ガ一應之ヲ調査シタ、サウシテ調査ヲシタガ、先ニ申
シマシタル通ノ條件附デ、新潟縣知事ガ全然責任ヲ帶ビルカラ之ヲ許可シタ
ト云フコトデ、其事實ガ若シ眞正ナ事實デアルナラバ今申シマシタ通其結
果ト云ヒ總テノ點ニ於テ甚ダ新潟縣ハ不穩ノ狀況ニ陷ッテ居ル、又或ル一
部ノ人民ハ非常ナル迷惑ヲ被ッテ居ルソレニモ拘ラズ之ヲ許可シタト云フ
事柄ガ新潟縣知事ノ申立ニ依ッテ、卽チ町村ノ不服ハ少イ不服ガアッテ
モ直チニ鎭撫スルコトガ出來ルト云フ所ノ條件付ノ申立ヲ容レテ、サウシテ
之ヲ許可シタト云フコトデアルナラバ卽チ此〓ニ於テハ其處分ノ卽チ許
可ノ處分ヲ取消ス所ノ原因ガ生ジテアル自分ガ誤ッタ自分ガ誤ッタ
ト云フコトヲ知ルナラバ卽チ先ノハ知事ノ詐欺ノ申立ニ據ヲテ之ヲ許シタ
譯デアルト云フ理由ヲ以テ、直チニ許可ノ處分ヲ取消スベキ理由ガ生ジテ
居ル此取消スベキ理由ノ生ジテ居ルニモ拘ラズ、取消サヌノデアルカ、何
レニシテモ其職責上、內務大臣ハ詰リ此一旦與ヘタル所ノ非ヲ遂ゲンガタメ
ニ、一縣ノ治安ヲモ犠牲ニ供シテシマフト云フ所ノ意思ガ、アルデアラウト
云フコトヲ私ハ推測スルノデアル、ソレデ尙ホ此調査ヲシテモ、之ヲ許可ス
ルト云フ〓ニ附イテ、內務大臣ガ新潟縣知事ノ詐欺ノ申告ニ依ッテ誤ラレタ
ト云フコトナラバ、其〓ニ於テ之ヲ取消スノ手段ヲ何故シナイカ又其處分
ヲスル所ノ權能ガナイカト云フコトノ點ニ附イテ私ハ質問ヲ致シ、ソレカラ
內務大臣ガ旣ニ此許可ヲ與ヘテ、新潟縣ニ於テ町村分合ノ處分ト云フモノハ
一應出來タ出來タガ偖テ其後ノ始末ハドウ云フモノデアッタカト云フコト
モ御參考ノタメニ申上ゲテ置キマス此町村ノコトニ附キマシテハ、一種
ノ關係ガアリマシテ曩ニ申シマシタル通ニ新潟縣知事ガ或ル一派ノ者ト
結托ヲ致シマシテ、一日モ早ク此町村ノ處分ヲ附ケタイト云フノガ一念デ
アッタガタメニ自分ノ主義モ目的モ犠牲ニ供シテ、サウシテ縣參事曾ニ服
從シ、サウシテ内務大臣ニ向ッテ一モ一一モナク早ク之ヲ許可シテ吳レイト
云フコトヲ迫ッタ其結果トシテ此新潟縣ニ於テ分合處分ラスルマデノ準備
ト云フモノハ少モ附イテ居ラヌ、少モ準備セズシテ唯許可ノ處分ヲ受ケタ
ト云フコトニナッテ居リマス故ニ昨年末ノ縣令ニ於テ斯樣ナ笑フベキ事
柄ガアル、卽チ町村ノ合併ハ濟ンダケレドモ町村ノ等級ガ分ラナイ、此町村
ノ等級ヲ定メルト云フ事柄ハ合併處分ヲスルニ附イテ最モ早ク定メテ置カ
ナケレバナラヌ、大體ノ調査ヲ遂ゲテ置カナケレバナラヌ、何トナレバ其等
級ノ事柄ハ直グ其村ノ資力ニ關係シテ居ルコトデアル、又課稅ノ上ニモ直
接ニ關係シテ居ル事柄デアル其重大ナル事柄ヲモ既ニ町村分合ノ處分ヲ
終ツテシマッタ後ニ於テモ尙ホ調査ガ濟マヌサウシテ縣會ニ於テ此事ハマ
ダ調査濟ニナラヌカラ、延ベテ呉レイト云フ所ノ請求デアッタ縣會モ一派
ノ當派カラシテ成立ッテ居リマスカラ、遂ニ其請求ヲ容レタト云フ誠ニ
笑フベキ出來事ガアッタノデアリマス、ソレノミナラズ其合併サレタル所
ノ町村ノ有樣ハドウデアル是マデ經營シテ來タ所ノ事柄ハ大抵之ヲ襲蹈
シテヤッテ居ル、或ハ衞生上ノコトデアリ、〓育上ノコトデアリ皆各大字
ガ獨立シテヤルト云フヤウナ、卽チ町村ヲ合併スルト云フ、直接ナル目的ニ
反シテ居ル所ノ狀態ヲ現ハシテ居ル所ガ澤山アルノデアリマス是等ノコト
モ、卽チ町村ノ分合處分ト云フコトニ附イテハ、最モ注意セネバナラヌ事柄デ
アル、卽町村ヲ合併スル以上ハ、合併シタダケノ效果ヲ收メナケレバナラヌ
然ルニ依然トシテ舊態ヲ改メヌ、總テノ經濟總テノ經營、悉ク各大字デスル
ト云フコトニナッタナラバ町村ヲ合併スルト云フ必要ハ何處ニ在ルカト云
フ、吾〓ハ其理由ヲ見ルニ苦ムノデアル、サウシテ此資力ノ上カラシテ計算
ヲ立ッテ見ルト云フト其合併前ト合併後ノ狀態ヲ較ベマスト因ヨリ合併
前ハ小サイ所ノ村ガ多カッタ併ナガラ法律上ノ義務ニ堪ヘヌト云フヤウナ
村ハ極ク稀デアル稀デアッタガ此處分ニ附イテドウ云フ結果ヲ現シタ
カト云フト合併前ニ於テ地價僅カ一一千圓位ノ所ノモノ卽チ殆ド法律上ノ
義務ニ堪ヘス所ノ村是等ハ曩ニ申シマシタル不正ノ處分ニ依ッテ其据置ヲ
許シテアルサウシテ或ル事情カラシテ、大ナル町村ヲ作ッタ、其大ナルモノ
ハ地價六十万或ハ七十万近クノ町村ガ出來テ居ル一方ニハ二千圓位ノ資力
ノ者、一方ニハ六十万圓以上ノ資力ノ町村ヲ作ッタ斯樣ナ事柄ハ卽チ從前
ノ狀態ニ比シテ、更ニ一層資力ノ上カラ言ヘバ、不平均ナル町村ヲ拵ヘタノデ
アル、又曩ニモ申シマシタ通ニ、越後卽チ新潟縣全體ニ於キマシテ、同時ニ悉
ク町村ガ其資力ニ堪ヘヌト云フヤウナ有樣デアッタナラバ是マデナカノ
騒ギデアル、又國ノ經濟ニ於テモナカ〓〓由ケシキ一大事デアッタノデアル、
然ルニ左樣ナ事實ハ何モナイノデアル、新潟縣ヲ通ジデ同時ニ此町村分合ヲ
シナケレバナラヌト云フ理由ハ何處カラ發見シタ又內務大臣ガ之ニ許可ヲ
與フル理由ハ、ドウ云フモノデアル、吾ミ法律上ノ理由トシテ少モ見ルコ
トガ出來ヌ又事實上ノ理由トシテモ、却テ其不法ナルコトヲ見ルヨリ外ニ、
何等ノ理由ヲモ見出スコトガ出來ヌノデアル實ニ本員ハ此事柄ニ附イテ
ハ非常ナル慮ヲ懷イテ居ル、現ニ近頃ノ新聞ヲ見ルト云フト最早續々ト
其弊害ガ顯レテ居ル、卽チ此分合ノ結果トシテ新ニ町村會議員ヲ選ブ、
其選舉ニ附イテノ紛擾ハドウデアル、其選舉ニ附イテノ紛擾ヲ見テモ、卽チ此
處分ノ結果トシテ、此ノ如キ紛擾ヲ來シタ、卽チ此紛擾ハ正シク公益ヲ害スル
所ノ結果ヲ、卽チ內務省ガ自ラ招イダ所ノ結果デアル斯ノ如キ次第デアリマ
スルカラシテ內務大臣タルモノハ上聖明ニ對シ奉リ下ハ町村ノ人民
ニ對シテカラニ十分ナル責任ヲ負ハネバナラヌ、ソレ故ニ丁寧反覆シ
テ此事ハ御〓究ニナッテ吾ミノ了解シ得ルダケノ說明ヲ與ヘテ願ヒタイ
ソレデ尙ホ內務大臣ニ向ッテ私ハ附ケ加ヘテ注文致シテ置キマス諸君モ御
承知ノ通、本件ノ如キ事柄ハ此立憲治下ニ於テ、將ニアルベキ事柄デハナイ
縱令黨派政治ノ今日デアラウトモ立憲治下ニ於テ斯ノ如キ暴戾殘忍ナル
所ノ處分ヲスルト云フコトハ決シテ許スベカラザル事柄デアル其斯ノ如
キコトヲモ忍シデ地方ノ行政ヲスルト云フ所ノ知事ガ何故ニ內務大臣ノ
信用厚クシテ今日モ尙ホ地位ニ晏然ト地位ヲ安ズルコトガ出來ルカ私ハ
甚ダ疑ヲ懷クノデアルソレ故ニ內務大臣ニ向ッテ私ハ豫メ照會ヲ致シテ置
カウ今日マデ信用ヲ維持シテ來タ所ノモノデアルガ此先マダ何箇月位、
此柏田盛文卽チ新潟縣知事ガ新洞縣ノ行政ヲ司ッテ居ルノデアルカ其事
ヲ照會シテ置キタイノデアル、是ハ吾ミモ亦此新潟縣民ノ一人デ、縣民ト共
ニ吾ミノ生命財產ノ安固ヲ圖ル上ニ於テ又圖ル所ガナケレバナラヌノデア
リマスカ一應此事ヲ照會致シテ置キマス、併シ若シ人物ガ現内閣中ニナイ
自分ノ屬僚中ニ斯樣ナ柏田盛文氏ニ勝ル所ノ人物ガナイト云フコトデアツタ
ナラバ尙ホ其自分ノ藩閥ト云フ所ノ範圍ヲ打破シテ、其他ニ向ッテ人物ヲ
求ムレバ決シテ新潟縣ヲ治メル位ノ知事ハ十分ニアルデアラウト思フ進
步黨中ニモ隨分歷々ナル御方ガアルノデアルカラ、如何ナル人デモ宜イガ
斯ノ如キ立憲ノ主義ニ背イタル暴戾殘忍ノ知事デナケレバ、我新潟縣民ハ大
ニ忍ブコトモ出來ルケレドモ今日ノ如キ殘忍極マル所ノ、壓制極マル知事
ヲシテ、永ク縣民ヲ治メシメルコトハ我當局者ニ於テモ、大ニ心配シナケ
レバナラヌ事柄デアラウト思フ結局內務大臣ニ向ッテハ、私ハ此一言ヲ以
テ請求シテ置ケバ宜シイノデ、事實ハ今申上ゲマス通不正ナ事柄デアル又
許可ヲ與ヘタルコトガ實ニ不法ナル事柄デアル違勅ノ事柄デアル、多ク言
フコトヲ私ハ須井ヌ唯當局者卽チ內務大臣ハ新潟縣ガ斯ル、狀態ニ陷ヲテ
居ル新潟縣ノ此有樣ニ對シテ同情ヲ持ッテ居ルカ新潟縣ノ此憫ナル所ノ
境遇ヲ救濟スル意思ガ果シテアルヤ否ヤト云フコトヲ最後ニ私ハ質問ヲ
致シテ置キマス甚ダ諸君ヲ煩シテ濟ミマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=5
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006・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 竹內正志君
〔竹內正志君演壇ニ登ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=6
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007・竹内正志
○竹内正志君(九十四番) 私ハ軍人分捕ノ件ニ關シテ、過日來政府ニ質問書
ヲ提出致シテ置キマシタ、極ク簡短ニ要領ヲ說明致シマス諸君、北〓事件
ノ際ニ當ッテ我軍隊ガ非常ナ國光ヲ輝シマシタト申スモノハ畢竟勇武ト
云フコトニモ原因ヲ致シテ居リマセウト思ヒマスガ一ツハ我軍ハ他ノ列
國軍ニ比シテ秋毫モ侵サヌト云フコトガ重ナル原因デアッタカト思ヒマ
スルデスヽ成ル程列國殊ニ路獨佛アタリ若クハ伊太利アタリノ軍隊ガ當
時亂暴狼藉ヲ致シマシク事實ハ、世界ニ隱レナイ所ノ事實デアリマスルデス、
是等ノ軍隊ト比ベマレタナラバ無論我軍隊ハ非常ナ立派ナ行動ヲ致シマシ
タト云フコトハ內外人ノ認メル所ニ違ヒハナイ吾ミモ亦當時視察ヲ致シ
マシテ、我軍ハ實ニ立派デアッテ、秋毫モ侵サヌノデアルト云フコトハ當
時ハ吾ミモ隨分人ニ向ッテ申シタノデアリマス吾ミハ實地視察ヲ致シマシ
テ多少見聞スル所ガアッタニモ拘ラズ當時ノ狀況上、無論秋毫モ侵サヌ
ト云フコトハ我國ノ名譽ノ上ニ於テ我軍隊ノ名譽ノ上ニ於テ頗ル喜バ
シイコトヽ思ヒマシタカラシテ、世人ニ附和雷同ヲ致シマシテヤハリ我軍
ハ秋毫モ侵サナンダト云フコトヲ諸所ニ於テ報告ヲ致シタコトモアリマス
ル、話ヲシタコトモアリ、スルデス】無論サウ云フ方針デ往ク方ガ宜イニハ違
ヒナイデス、吾ミハ此北〓軍ノ軍隊ノ功績名譽ノ上ニ於テ縱令少々ノ瑕瑾ガ
アリマシテモ、少々ノ失態ガアリマシテモソレハ我同胞我軍隊ノ名譽ノ上
ニ於テハ無論是ハサウナケレバナラヌコトデアルト思ヒマシタカラシテ
當時ハサウ云フコトニ致シテ居リマシタ併ナガラ諸君ノ御承知ノ通ニ段
段此事ハヤカマシクナリマシテ現ニ新聞紙デモ事實ヲ揭ゲテ、何ノ某ガド
コソコニイツ何日ニ斯フ云フコトヲ致シタト云フ風ニ殆ド極ク確實ト
認ムベキヤウナコトモ新聞紙ニ載ッテ居リマス、世論モ段々囂々ト致シマシ
テ追ミヤカマシクナッテ社會ノ一大問題ト爲ルト云フ今日ニナリマシタ
ノデス無論斯ウ云フコトハ私ハ議會ノ問題ト致スコトハ好マナイノデアル
政府、ガ之ヲ早ク捕ヘテ、此事ノ相當ナ處分ヲ致スト云フコトガ國家ノタメ
ニ甚ダ望マシイコトデアッタノデアル然シナガラ政府ガ此事ニ附イテハミ
コマデモ蓋臭主義、卽チ臭イ物ニハ蓋ヲスルト云フヤウナ主義ヲ以テ、成ノ
ベク此事實杯ヲ埋滅スル若クハ之ヲ揉消スト云フヤウナ態度ヲ取ラレタカ
ラシテ成ル程其事ガ十分掩ヒ切レル若クハ揉消スコトガ十分出來タナラ
バ頗ル國家ノタメニ宜カッタカモ知レマセヌケレドモガ今日ノ如ク新聞
紙ニ事實ヲ明記スル若クハ世論ガヤカマシクナッタニモ構ハズ、矢張當局
者ハ之ニ向ッテ何等ノ處置ヲ致サヌト云フコトハ、ドウ云フモノデアルカ私
共甚ダ合〓ガ參ラナイ、是ハ政府ノ失態デナイカト思フ、早ク事ガ大キクナ
ラヌ間ニ十分處置ヲスルコトガ當局者ノ責任デアラウト思フノニ斯ノ如
キ有樣デアルニモ拘ラズ」政府ハ之ニ向ッテ何等ノ處置ヲサレヌト云フコト
ハドウ云フ譯デアラウカ私ハ斯ウ云フ問題ハ、議會ノ問題トスルコトハ
好マヌ位デアリマスカラシテ多少見聞スル所ノ事柄ニ附イテ、今日明ニ名
ヲ舉ゲテ何ノ某ガ斯ウ云フコトヲシタ若クバ斯ウ云フ事實ガアルト云フコ
トヲ、人ノ姓名ヲ舉ゲルコトト、事實ヲ擧グテ御話スルコトハ、頗ル躊躇ヲ致
スノデアル、ソレ故ニ私ハ今日ノ場合ニ於テハ、事實ヲ諸君ノ前ニ御披露ス
ルト云フコトハ、殊更ニ遠慮ヲ致ス積リデアリマスル併ナガラ此事タルヤ
最早所謂常識ヲ有スル者ナラバ大抵我北〓軍ガ如何ナルコトヲ致シタカト
云フコトニ附イテハ、既ニ十分極マッテ居ルコトデハナイカト思ヒマスルノ
デアリマス、若シ今國民ニ此事ヲ果シテ如何ニ考ヘテ居ルカト云フコトヲ問
ヒマシタナラバ國民ハ少クトモ、疑似ノ間ニ我軍隊ハ秋毫モ侵サナン
ダ、立派デアルト思フテ居ル者ハ恐クハ國民ノ中一人モナイダラウト思フ
少クトモ疑似ノ間ニ在ルト云フコトハ私ハ斷言スルコトガ出來ヤウト思フ、
亦衆議院ハ天皇ノ名ニ於テ爲ス所ノ裁判所ノ如ク人ヲ召喚スル若クハ
家宅搜索ヲスルヤウナコトハ無論出來ナイノデアリマスカラシテ何々
ノ事實ト云フコトガ縱シアルニ致シマシテモ其證據ヲ十分ノ證據ヲ茲
ニ列舉シテ證據ヲ舉ゲマシテフレデ御話スルト云フコトハ出來ナイノデ
アル又アルト致シマシテモ、斯ウ云フコトヲ云フノニハ少シク躊躇ヲ致
スノデアリマスソレ故ニ事實ハ申シマセヌガ、免ニ角今日ハ社會ノ一ツ
ノ問題ト爲ッタ、社會ノ一ツノ問題ト爲ッタニモ構ハズ政府ハ之ヲ等閑
ニ附シテ調査ヲスルト云フコトモナケレバ又處分ヲスルコトガナイト云フ
ノハ實ニ政府ノ職責トシテ相濟マヌコトデアラウト思フカラシテ、質問
書ヲ提出致スノデアリマス若シ斯ウ云フヤウナコトガ、假ニ歐洲及列國
アタリニアリマシタラドウデアリマセウカ、無論分捕勝手次第、見テ見ヌ顏
ヲスルノハ別ナコトデアリマスガ、斯ルコトハ若シ軍人云々ハ分捕ヲシタ
强盜ヲシタト云フ問題ガ出マシタナラバ軍人ノ間ニ於テモ此事ハ容易ニ
不問ニ措クト云フコトハサセヌモノデアル我國ノ軍隊ニ取〃テ其軍隊ノ
名譽ヲ損スルコトハ實ニ甚シイモノデアルカラ決シテ軍人間ニ於テモ此
事ハ拾置クコトガ出來ナイ軍隊ノ體面ト致シテ、捨テヽ置クコトガ出來ヌ
問題ト思フ然ルニ吾ミハ此國ノ軍隊ノ間ニ是ニ附イテ非常ナ議論ガ沸騰
シタリ云々シタト云フコトヲ、未ダ聞カヌノデアリマスルデ固ヨリ五師團
云々ト云ヒマスケレドモガ、五師團ノ將校バカリガ、不正ノ處行ガアッタト云
フコトヲ私ハ認メマセヌ、五師團ノ中ニモ隨分玉石混淆デ或ハ〓廉潔白
ニシテ毛皮一枚ヲモ取ラヌト云フ人モアッタラウ現ニ私ノ知ヲテ居ル中ニ
モ指ヲ屈レバ少クトモ五人ヤ七人ハサウ云フ人ガアルダラウト思ヒマス
カラ五師團ノ將校ガ、全然分捕ヲシタ事實不正ノ處行ガアッタトハ言ヘ
ナイ、然ラバ五師團ノ將校中ニ於テモ、斯ル問題ガ起ッタ上ハ默ヲテハ居ラ
レヌコトヽ思フ況ヤ五師團以外ノ我邦ノ全體ノ軍隊ノ非常ナ名譽ヲ傷ケ
ラレルコトデアリマスカラシテ其軍隊中ニ於テモ斯ルコトハ五師團以外
ノ軍隊中ニアッテモ、斯ウ云フ問題ガ起ッタナラバ自分達ノ名譽ヲ傷ケル
コトヲ不問ニ擔イテ默ヲテ居リ恬然トシテ知ラザルモノヽ如クスルト云フ
コトハ出來ヌト思フ、然ルニ我邦ノ帝國ノ軍隊ノ全體ニ於テ此問題ニ附イ
テ云ケシタト云フ如キコトヲ餘リ聞キマセヌデススレバ斯ウ云フ問題ガ
超ツタノヲ之ヲ不問ニ置クト云フコトハ或ハ他ノ軍隊モ共ニ其汚名ヲ被ツ
テ一向此派遣軍ニ關係ナイ支那事件ニ關係ノナイ所ノ軍隊マデガ、矢
張此汚名ヲ被ッテ共ニ泥ヲ浴セラレルノデアルケレドモ其事ニ付イテ我
國ノ軍隊ハ之ヲ默々ニ付シテ知ラザルモノヽ如クシテ唯之ヲ第五師團ノ
コトデアル他人ノコトデアルト云ッテ空嘯イテ居ルト云フノハ軍隊ノ
軍紀ヲ振肅スル上ニ於テ甚ダ私ハ遺憾ニ思フノデアル、又政府ガー軍隊
モ其通デアリマスガ政府ガ之ヲ不問ニ置イテ一切知ラザルモノヽ如ク
成ルベク揉消シ、若クハ臭イモノニ蓋ヲスルト云フ所ノ主義ヲ取ラレルノハ
政府ノタメニ頗ル惜ムノデアル政府ノ職責トシテ是等ハ十分査察ヲ遂
ゲ精査ヲ遂グテソレ〓〓處分ヲスベキモノハ處分スルト云フコトガ至
當ノ事ト思フ新聞アタリデ彼ノ通ニヤカマシク言ッテモ、其方ハ不問ニ置
キ何處マデモ知ヲザルモノヽ如クヤリ切レルモノナラバ宜シイガナ
カ,サウデハナイ今日ノヤウナ大問題ガアルニ矢張政府ハ恬然トシテ知
ラザルモノヽ如クスルト云フコトハ甚ダ政府ノ職責トシテ怪シカラヌコ
トヽ思フ宜シク政府ハ軍隊ノ一般ノ名譽ノタニ我軍隊ノ軍紀ヲ振肅
スル上ニ於テ、、帝國ノ威信ヲ保ツ上ニ於テ此事ハ十分政府ガ調査ヲ遂ゲテ
處分スベキモノハ處分ヲシテカラニ軍隊ノ名譽ヲ完ウシ軍紀ヲ振肅シ
帝國ノ威信ヲ中外ニ保ツト云フコトハドウシテモ政府ノ職責ト云ウテシナ
ケレバナラヌコトヽ吾〓ハ固ク信ズルノデアリマス然ルニ今日マデ何等
ノ處置モ致サヌノハ頗ル吾〓ハ怪訝ニ堪ヘヌ所デアリマス私ハ第三項ノ
十八日ノ夜密告者ヲ陸軍大臣ノ官郎ニ此事件ニ附イテ密告者ガアリマシタ
ト云フコトニ附イテ、少シク辯明シテ置カウト思ヒマス(「確ッカリヤルベシ」
ト呼フ者アリ)私ハ新聞紙ノ事實ヲ悉ク信用致スモノデハアリマセヌ、私ハ
私ノ見ル所、私ガ今マデ調査致シマシタ所ノ事實ニ依ッテ吾ミハ此質問書ヲ提
出致シタンデアリマスガ十八日ノ此陸軍大臣ノ官邸ニ密〓ヲ致シタト云フ
コトニ附イテノ事柄デス此事ハ諸君ノ御承知ノ通、旣ニ政府ガ司法處分ニ
著手シテ密告者ヲ誣〓罪トシテ拘留シテ居ルト云フ今日デアリマスルカ
ラ此事ニ附イテハ彼此申シマセヌ併ナガラ其前ニ立返リマシテドウシ
テモ諸君ニ一言訴ヘナケレバナラヌコトハ前ノ本會ニ於テ私ガ此事ヲ質問
致ス筈デアリマシタ所ガ斯ウ云フ次第デアッタ議長カラ召喚ヲ受ケマシ
テ議長ガチヨット會ヒタイト云フコトデアリマスカラシテ議長室ニ參リ
マシタ所ガ、唯今總理大臣ヨリアナタノ演說ヲ一日ダケ待ッテ吳レヌカト
云フコトガ照會ガ來タガドウカト云フコトデアリマシタンツカチ
固ヨリ此同志ノ間ニ於テ提出致シマシタ所ノ質問デアリマスカラシテ同志一私
存ニモ參リマセヌカラ同志ノ人トモ相談ヲ致シマセウト云フコトデ
ノ人トモ相談ヲ致シマシタ無論待ッテ呉レト云フコトノ趣意ガ要領ヲ得
ルコトナレパ待ッテモ宜シイガ併ナガラ聞ク所ニ據レバ新聞社ヲ云々ス
ル種々ナ風說ガアリマスルガ、若シ惡ルイ意味ニ取タテ、演說ヲ一日待ッテ、政
府ガ吾ミノ解釋スル風聞ノ如キコトニ著手スルタメナラパ毫モ吾ヽハ待ツ
必要ハナイト思ヒマスソレカラシテ書記官長ヲ介シテ、總理大臣ニ要領
ヲ得ルダケノ又質問ヲ致シマシタ、何ノタメニ待ツノデアルカト待ツ必要
ハナイト思フト云フ質問ヲ致シマシタ所ガ、現ニモウ事後ノコトデアリマス
カラ、無論申シテモ宜シイノデアルガ、現ニ今處分ニ著手中デアルニ依ッテ
待ッテ吳レマイカト云フコトデアリマシタソレカラシテ處分ニ著手スルコ
トモ隨分茫漠トシタ意味デアリマスカラ幾樣ニモ解セラレル無論常識
ヲ以テ解スレバ關係者云々ヲ處分スルコトニ違ヒナイケレドモガ吾ミハ
唯政府ガ一二ノ軍吏若クハ下級ノ將校ヲ罸シテ-處分ヲ致シテソレデ以
テ御茶ヲ濁スコトナレバ決シテ滿足スルコトハ出來ナイ毛皮一枚紀念ノ
タメニ取ッタトカ毛皮一枚寒イカラ取ッタトカ何トカ云フコトデアレバ吾
吾ハ斯ウ云フ問題ヲ議會ノ問題ニ致ス必要ハナイト初ヨリ信ジテ居リマ
スソレ故ニ處分ヲスルト云フコトハドウ云フヤウナ處分ノ仕方デアルカ
ト云フコトヲ三囘目ニ書記官長ヲ介シテ吾〓ハ反問ヲ致シ一宮シタ處分ノ
仕方ニ依ッテハ吾〓ハ無論演說ヲ差控ヘテ宣シイ政府ガ處分ヲスルナラ
バ質問書ヲ提出スル必要モナイ政府ガ早ク處分ヲサレナイカラ已ムヲ
得ズ吾ミハ好マヌコトデハアルガ、質問書ヲ提出致シタノデアリマス現れ
此處ニ居ラレマスルガ書記官長ハ關係者ヲ處分スル卽チ責任者ヲ處分ス
ルト云フコトデアルガドウモ何ノ某ヲ斯ウスルト、人ノ名ヲ指シテ今處分
中デアルカラ云々スルコトハ出來ナイト云フ、書記官長ノ言デアリマシタカ
ラ成ル程吾〓モサウ思ッテ、政府トシテ何ノ某ヲ斯ウシ居ルト云フコトハ
言ハレナイノデアル、併ナガラ責任者ヲ處分サレルト云フコトヲ確ニ書記
官長ガ言ハレタノデアリマス書記官長ガ言ハレタノハ、卽チ總理大臣桂太
郞君ガ言ハレタモノト思ッタンデス書記官長ト桂總理大臣トノ間ニ行違
ガアルト云フコトデアレバ隨分胡麻化シニナリマセウガ、併ナガラ私ハ書
記官長ガ言ハレタコトヲ、唯書記官長ハ御使ニ立タレタ人デアルカラ、總理
大臣ガ言ハレタコトヽ信ジテ責任ノアル者ヲ處分スルト言ハレタカラ吾
吾ハ常識ヲ以テ卽チ此分捕問題ニ關係アル者ヲ、處分サレルト思ヒマシタカ
ラシテ、ソレ故同志ノ人ト相談シテソレナラバ强テ演說ヲスル必要ハナイ
ト思ヒマシテ其御處分ヲ拜見致ス積デ、一日猶豫ヲ致シマシタ譯デアリ
マス是ガ猶豫ヲ致シマシタ次第ヲ諸君ニ御話ヲ致シマス所ガ豈料ランヤ
處分ヲスルト云フ言葉ハ密告者ニ就イテ之ヲ拘留ヲスルト云フ方ニ附イテ
頻ニ手ヲ下サレテ今日諸君ノ御承知ニナリマシタ如クニ政府ハヤッテ居
ルト云フ今日ノ場合デアリマス吾ミハ總理大臣ノ言ヲ聽イテ所謂適當
ナ言葉ヲ以テ言ッタナラバ欺瞞ヲセラレタノデアル、俗ニ言ッタナラバ
抔食ハサレタノデアルト云フ考ヲ當時起シタ責任者ヲ處分スルト言ッタ
カラ吾ミハ直グ官報ヲ見ル新聞紙ヲモ一般ニ見ル是ハ議長モサウ云
フヤウナコトヲ言ハレタノデアル私モ見テ居ッタケレドモ一向處分ガナ
イ實ニ私共ハ意外ニ思ウタノデアルドウ考ヘテモ常識ヲ以テ所謂「コ
ンモンセンス」ヲ以テ居ル者ガ考ヘマシタナラバ、責任者ヲ處分スルコトヲ
密告者ヲ處分スルコトヽハ私共ハ思ヘナイノデアル實ニ私共不明デアッ
タカ政府ノ言ヲ信ジテ遂ニハ斯ウ云フ場合ニ立至リマシタ併ナガラ之
ニ附イテ彼此申ス必要モナイカ知リマセヌガ、一應〓末ヲ申ス必要ガアルト
思ヒマスカラ、此事ヲ申シタノデアルドウ考ヘテモ密告者ヲ拘留スルコト
ヲ、處分スルコトヽハ思ハナンダノデアル併シ密〓者ヲ拘留スルト云フコ
トニ附イテハ是ハ無論司法裁判上ノ進行ニ依ッテドウナルカ、是ハ吾ミノ
今日知ル所デハアリマセヌガ併ナガラ吾ミハ臭イモノニ蓋ヲスル若クハ
成ルベク揉消スト云フ手段ヲ取ラレテ、新聞紙ヲ處分スルトカ若クハ拘留
者ヲ拵ヘテ、アヽ云フヤウニヤルト云フコトハ或ハ成ルベク其證據ヲ埋滅
シー、斯ノ如クニ欺瞞ヲサルヽト云フ所ノ事實カラ見ルト、、隨分今日ノ裁判權
ト云フモノモ國民ガ悉ク立派ニ獨立シテ居ルト云フコトハ信ジテ居ラヌ
ヤウデアル其證據ニハ、行政裁判所ニ人民ガ訴訟ヲ起シテモ勝ッタ事實ガ
ナイト云フヤウナコトヲ皆言ッテ居リマス故ニ一方ハ著手セズ、直グ
密〓者ノ拘留ニ著手スルト云フハ證據ヲ煙滅スルタメニヤルノデハナイカ
ト云フマデニ世間ニ言ッテ居ル人ガゴザイマス、此事ハ併ナガラ强テ言フ
コトハナイ、裁判上ノ進行ヲ吾ミハ愼デ見ルマデト思ヒマス、併ナガラ第四
ニ一言申シテ置キタイノハ政府ハ一方ノ此軍人云々ト云フコトニハ毫モ
著手ヲセズシテ責任者ヲ處分スルト云フコトハスッカリ差換ヘマシテ、
密告者ヲ拘留スルト云フコトハドウ云フ譯デアリマスカ、而モ誣〓罪デ拘
留シタト云フコトハ檢事ノ職權デアルト云ヘバソレマデヽアリマスガ、少
シク怪訝ニ堪ヘヌノデアル密告者ヲ誣告ト云フ罪名ニ依ッテ拘引スルト云
フコトハ卽チ若シ一方ノ相手ヲ調ベテ見タ所ガ、何モナカッタノデアルト
云フ場合カ、若クハ其密告者ガ故意ニ何デモナイ事實モ何モナイコトヲ捏造
シテ惡意ヲ以テ何ノ某ヲ陷レント云フタメニ斯ノ如キコトガアルト云フ
コトヲ、密告シタト云フコトガ分ッタナラバ、ソレハ無論サウ云フ罪名ヲ以
テ、人ヲ拘留スルコトモ出來マセウ隨分今日ノ檢事ト云フモノハ非常ナ
權力ヲ或ル場合ニハ有ッテ居ルカラ、誰デモ彼デモ罪名ヲ附シテ令狀ヲ發ス
レバ、無茶苦茶ニ人ヲ拘留スルコトガモ出來ルカ知リマセヌガ、此度ノ場合ノ
如キハ隨分甚シイ一方ニハ何モナクシテ、一方ニハ果シテ是ハ惡意ヲ有ク
テ、事實ノナイコトヲ捏造シテ、或ル者ヲ陷レルコトデアルト云フコトヲ
認メタ以上ニ斯ル所爲ヲサレタモノト吾ミハ認定スル外ナイノデアリマ
スカラシテ、此事ニ附イテモ私ハドウ云フ譯デ誣〓ト云フ罪名ノ下ニ密
告者ヲ拘留サレタカト云フコトヲ、政府ニ質問致シタイノデアリマス、是ダ
ケガ私ガ質問ノ要領ノ趣意デアリマスガ、諸君ノ御承知ノ通、一月二十日
ノ倫敦發ノ電報ト思ヒマシタガ、亞米利加アタリデハ天津ノ亞米利加ノ水
兵ガ銀塊ヲ取ッテ、其銀塊四十万圓バカリ取ッタノヲ、大統領ノルーヅベル
トガ命令ヲ下シテ之ヲ支那ニ送還スルト云フヤウナコトモヤルヤウデアリ
マス、昨年十二月十七八日ノ倫敦ノ電報ヲ見マシテモ、佛蘭西ノフーレート
云フ將軍ガルーベー大統領竝ニ官吏ナル朋友ノ分捕品ヲ受ケルト云フコトガ
アッタカラ、亞米利加ノ方カラ注意ヲシテマルセーユデ之ヲ押ヘテ、分捕品
ヲマルデ押ヘテ、ソレヲ送還スルノミナラズ、フーレー將軍ノ手マデ戾シテ、
支那ノ所有者ニ還シタト云フヤウナコトモアッタカラ、日本ガ秋毫モ侵サヌ
ト云フコトヲ、事實ニシタイトナラバ吾ミハ十分此事ニ附イテハ、政府ガ
精査ヲ遂ゲテ、至當ナ處置ヲサルヽガ相當ト思フ、御承知ノ通ニ兵隊抔ハ
僅カ、死ンデモ、國ノタメ若クハ國家ノ義務ト云フ名ノ下ニ、百圓カ二百圓
ノ僅ノ金ヲ貫ウテ、戰死スルト云フヤウナ今日ノ場合デアル、一方ニハ軍人
ガ斯ウ云フ不正ナ所爲ガアッテモ、此ノ事ニ附イテハ揉消主義ヲ取ッテ、之ヲ
不問ニ置クト云フコトハ、甚ダ軍紀ヲ振肅スル上ニ於テモ、宜シクナイコトヽ
思フノデアル私ハ玉石混淆デ、良イ將校モ惡ルイ將校モ同ジヤウニ扱ハ
ルヽト云フコトハ甚ダ遺憾ニ思フノデアル、或西洋ノ人ガ戰爭ハ少數ノ富
者ヲ拵ヘテ、多數ノ貧者ヲ拵ヘルト云フコトヲ言ッタ戰爭ノ弊害ヲ論ジタ人
モアリマスガ或ハ戰爭殊ニ二十七八年ノ戰爭、一昨年カラ昨年ニ亙ル北
〓事件ニ附イテモ、御用商人ガ官吏ト結托ヲシテ云々ト云フコトハ吾ミガ
目擊スルコトニ於テモ澤山アル、殆ド戰爭ハ少數ノ富者ヲ愈〓富マセテ、多
數ノ國民ヲ貧乏ニスルト云フヤウナ結果ガアリハシナイカト云フコトヲ
國家ノタメニ竊ニ憂ヘルノデアリマスドウシテモ政府ハ、此事ニ附イテハ
十分ナル答辯ヲサレタイコトト思ヒマス、其答辯ノ具合ニ依リマシテハ私
ハ已ムヲ得ズ此議場ニ事實ヲ舉ゲテ、十分要領ヲ得ルダケノ事實ヲ證明シテ、
或ハ再ビ演說ヲスルヤウナ場合ニナルカモ知リマセヌガ、ドウカ一週間ノ中
ニ政府ハ十分ナル答辯アランコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=7
-
008・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ヨリ議事日程ノ第一ニ移リマス、鐵道敷設法中改正
法律案、第一讀會ノ續、委員長ノ報告、大岡育造君
第鐵道敷設法中改正法律案(政府提第一讀會ノ續(発注意)
〓3.4.1.
〔大岡育造君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=8
-
009・大岡育造
○大岡育造君(百二十八番) 鐵道敷設法中改正法律案ニ附キマシテ、委員會
ノ結果ヲ報告致シマス委員會ハ審査ノ上、此改正ハ必要ト認メマシテ全
部可決ヲスルコトニナリマシタ、其理由ハ新ニ申シマセズトモ、既ニ豫算ノ
議事ガ進行ヲシマシタルコトヲ以テ、此法案ノ改正ノ必要ヲ證明スルニ足ル
ト云フ譯デアリマス委員會ハ更ニ北海道鐵道敷設法中改正案モ付託セラレ
マシテゴザイマスルガ、是レ亦同ジ理由ヲ以テ、同ジヤウニ可決致シマシテゴ
ザイマス、之ヲ報告致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=9
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010・工藤行幹
○工藤行幹君(百三十六番) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=10
-
011・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 工藤行幹君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=11
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012・工藤行幹
○工藤行幹君(百三十六番) 私ハ修正デゴザイマスルガ、二讀會デナクテモ
宜シウゴザイマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=12
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013・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 二讀會ノトキニ-本案ニ附イテ第二讀會ヲ開クコト
ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=13
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014・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ二讀會ヲ開クコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=14
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015・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=15
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016・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 直チニ第二讀會ヲ開クト云フ恆松隆慶君カラ動議ガ出
マシタガ、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=16
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017・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ナケレバ直チニ第二讀會ヲ開クコトニ致シマス
鐵道敷設法中改正法律案第二讀會
〔工藤行幹君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=17
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018・工藤行幹
○工藤行幹君(百三十六番) 本員ハ此鐵道敷設法中改正法律案ニ附イテ、玆
ニ修正ノ意見ヲ提出スルモノデゴザリマスソレハ如何ニ修正スルカト言ヘ
バ「但明治三十五年度ニ限リ他ノ歲入ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得」ト云フコ
トニナル三十五年度ニ限リ「財政ノ都合ニ依リ」ト云フコトヲ取ッテ「三
十五年度ニ限リ」ト云フコトニ修正シタイト思ヒマス、而シテ其次ノ第九條
ノ修正ハ之ヲ削除シタイト思フノデゴザリマス、故ニ聊カ此修正ノ理由ヲ
申シマス、抑〓案案ハ初本員ノ見ル所ニ據リマシテハ大々的反對ノ意見
デアッタラウト思フデゴザリマス、此議會ノ形勢ハ大々的反對デアラウト
思ッテ居ッタ、所ガ如何ナル風ノ吹囘シデアルカ遂ニ豫算ハ此公債ニ募集
ニアラザル金ヲ以テ、鐵道敷設費ニ充ツルト云フコトニナリ、其結果又此法
律案モ遂ニ政府案ヲ全然贊成スルト云フコトニナッタノデゴザリマス
本員ハ元來此案ニハ絕對的反對ヲ表スル者デゴザリマス、然レドモ此如何
ナル風ノ吹囘シニ依ッテ出タコトカ立憲政體ノ今日ニ於テ、甚ダ忌ムベキ
コトデアリマスルケレドモ、免ニモ角ニモ此豫算案ハ旣ニ公債募集ノ金ニ
アラザルモノヲ以テ、鐵道ノ資金ニ充テルト云フコトニナリマシタ以上
ハ本會ノ意志ヲ徹底スルタメニ絕對的反對ヲ表スルト云フコトハ出來
ナイト云フ場合ニナリマシタノデゴザイマス、故ニ已ムヲ得ズ此修正案ヲ提
出スルノデアルナゼ修正案ヲ提出スルカト云ヘバ元〓鐵道ノ敷設資金
ハ公債ヲ以テスルト云フコトハ本案ノ元ノ法案デアル、又是ハ當然ナコ
トデアル之ヲ普通歲入ヲ以テ、此鐵道抔ノ資金ニ充ツルト云フコトハ抑、
經濟上ノ原理カラシテ違ッテ居ルコトデアルト思フナゼナレバ普通歲入ヲ
徵收スルニ至ツテハ、或ル場合ニ於テハ强制的ノ執行ヲスルモノデアル、ナゼ
人ノ財產ヲ公賣シテモ之ヲ徵收スルカト言ヘバ卽チ國家ノ生存上已ムヲ
得ザル費用ニ充テルタメニ取ルモノデアリマスルカラ已ムヲ得ズ或ル場
合ニ於テハ强制的執行ヲシテモ、此金ヲ徵集スルノデアル然ルニ鐵道敷
設ノ如キハ國家ニ必要ナルモノデハゴザイマスルケレドモ、是ハ公債ヲ以テ
スルト云フコトハ卽チ各年ノ餘裕ヲ茲ニ積ッテ、ソレヲ以テ吾ミ國家ノ將
來ノ利益ヲ增進スルモノデアルノデゴザリマシテ、斯ウ云フ資金ニ對シテ
强制的ノ執行ヲシテ取ッタ所ノ金ヲ以テ、充テルト云フコトハ甚ダ不道理ナ
コトデアルノデゴザリマス是ハ私ノ云フマデモナイコトデアラウト思フノ
デゴザリマス畢竟元ハ公債ヲ以テ支辨シヤウト思フタモノヲ、今日普通ノ
歲入ヲ以テヤルト云フモノハ何故ニ斯クシナケレバ變則ヲ用井ナクチヤ
一方ニハ經費ヲ俄ニ地大一八、八月ノン政府ハ如何ニモ無責任ニ多數ノ事業ヲ起シ、
斯ノ如キ經濟ノ結果ヲ來シテ公債
ヲ募ルコトガ出來ナクナッタニ附イテ、玆ニ出テタノデゴザイマス諸君、凡
ソ國トシテ公債ヲ募ルコトガ出來ナイト云フコトハ其國ノタメニ甚ダ嘆
ハシイコトデゴザイマス、家一家ニシテ見テモ、最早人カラ借入金ノ出來ナ
イト云フコトニナッテ來タナラバ其家ノ信用ハ墜チテ、其家ノ商賣ナリ萬
般ノコトガ出來ナクナルト云フコトハ當然デアル實ニ今日ノ經濟上、我
國デ一步モ公債ヲ募ルコトガ出來ナイ外債ニ向イテ見タ所ガ、彼ノ亞米利
加ノ如キ金ノアル國デモ、尙ホ是ニ應ジナイペケヲ食ラッタト云フヤウナ
如キハ國家ノ耻辱ト謂ハナケレバナラヌ程ノコトデアルノデゴザイマス
然ルニモ拘ラス、政府ハ此改正ノ法律案ヲ出シタト云フモノハ何ヲ以テソ
レナラバ此何ヲ普通歲入ヲ以テ繰替ヘルニ宜イカト云フコトヲ考ヘテ見
マスルト決シテ此普通歲入ノ內ニ澤山剩リ金ノアッテヤルノデハナイノ
デゴザイマス、諸君モ御存ジノ通、曩ニ決議シタ所ノ、支那カラ取ッタ三十九
箇年間ノ收入ニナルベキ公債ヲ一時ニ賣拂ッタ其金ガアルカラ、當年ハ其
金ヲ以テ此公債ノ支辨ノ方ニ向ケテ往カウト云フ計算デアルノデゴザイマ
ス是ハ實ニ不當ナルコトデハゴザリマスルケレドモ、是レ亦議場ノ決議ト
爲ツタ以上ハ、〓ムヲ得ナイコトデゴザイマス、然ルニ此法案ニ據ルト財
政ノ都合ニ依リ、他ノ歲入ヲ以テ是ニ充テルコトヲ得ルモノトスレバ、豈獨
リ此三十五年度ノミデハナイ永遠ニ斯ノ如ク法律ヲ改正シタイト云フノデ
アル本員ハ謂ラク斯ク法案ヲ改正シテ、其金ハ果シテ本年カラ澤山是
タケ此金ガアルカト云フコトハ甚ダ疑ハシイノデゴザリマス、故ニ私ハ委
員會ニ於キマシテ、政府委員ニ質問シタ、政府委員ニ質問シタラバ政府委
員ノ答辯ニ曰ク、昨年增稅ノ結果トシテ、卽チ千二百万圓ト云フモノガアル
ソレハ元ハ此三基金ノ借入、或ハ日本銀行ノ借入ノ返済ニ充ツル積デアッタ
ケレドモ當年ニ於テ先刻申シタ所ノ支那ノ公債ヲ賣ッタ金ガアッテ、ソレ
ヲ以テ充テルモノデゴザイマスカラ此金ノ內カラ今後支那ニ兵ヲ出シテ置
ク處ノ費用、凡ツ二百万圓以上ヲ引キマスレバ其殘リノ金ハ此鐵道ノ資
金ニ流用スルコトヲ得ルト云フコトデゴザイマスソコデ私ハ之ニ反問シテ
曰ク成ル程此三十五年度ハ宜シイ又三十六年度モ宜シイダラウ、併シ諸君
ノ御存ジノ通、此三十六年ガ過ギルト云フト取リモ直サズ地租ノ增徵ト云
フモノハ三十六年分ニ限ルト云フコトニナッテ居リマスカラシテ是ハ是
非稅ヲ減ジナクッチヤナラヌ、其減ズベキ高ハ幾ラデアルカト云フト千百
万圓ト云フモノヲ減ジナクッチヤナラヌ是ガ歲入ニ於テ減ズルノデアル
而シテ他ノ一方ヲ顧ルト云フト海軍ノ維持費ノタメニ三十七年度カラ六
百六十万圓餘ノ金ト云フモノハ支出シナケレバナラヌ、此支出シナケレバ
日本ノ海軍ヲ維持スルコトガ出來ヌト云フコトデ、既ニ三十七年度カラ六百
幾十万圓ノ金ト云フモノヲ、支出スルト云フコトニ、諸君ハ既ニ議了シテ法
律ガ今日存在シテアルノデゴザイマス、然ルトキハ歲入ノ滅ズルモノハ一千
百万圓、支出ノ法律上成立ッテ居ッテ、當然ナケネバナラヌモノガ六百幾十万
圓合テ千八百万圓程ノ金ガ要ルノデゴザイマス所ヘ持ッテ來テ此支那
ヘ使ッテ居ル金、或ハ支那事件ノタメニ恩賞金抔ト云フモノヲ、政府委員ノ
言ハレル通、二百万圓ヲ入レテ見ルト增稅ノ金ト云フモノハ悉皆之ニ
使ッテシマッテ、後トノ差引殘リト云フモノハ極ク零碎ノモノヨリ殘リハセ
ヌノデアル然ラバ此法律ヲ改正シテモ今ノ地租ヲ復舊シテ海軍ノ
維時費ヲ出サウト思ヘバ少モ此鐵道ニ流用シテ來ル金ガナイヂヤナイカト
云フコトハ私ノ疑問デアル故ニ此事ヲ政府委員ニ質問シテ見ルト、政府
委員ノ言フニハ是カラ何モ事業ハシナケレバ是マデノ繼續費ハ歲ヲ經ル
ニ從ッテ減ジテ來ルニ附イテ、新タナル事業サヘ起サナケレバ地租ノ復舊
ニ充テル金ハ出來テ往クニ附イテ、矢張鐵道ノ資金ニ繰入レルコトガ出來ル
ト云フコトデゴザイマス是ガ本員ノ最モ解スベカラザルコトデアルナゼ
ナレバ成ル程繼續事業費ト云フモノハ歲ヲ逐フニ從ッテ減ジテ往クニハ相
違ナイケレドモ現ニ當年ノ豫算ニ對シテモ一方ニ減ズルト同時ニ直グ
ニ繼續事業ハドシー〓增シテ來テ居ルヂヤナイカ當年度ニ於テ繼續費ノ
減ジタモノト、或ハ繼續費ヲ更ニ出シタモノト、比較シテ見レバ尙ホ減ジタ
モノガ多イカラ幾ラカ餘リガアル譯デゴザイマスケレドモ、尙ホ之ヲ徐ニ
考ヘテ見タナラバ現ニ今日ノ如ク諸君等ガ希望スル此議事日程ニモ載セ
テ居ル或ハ私設鐵道ノ補給ヲ要求セラルヽコトガアル或ハ東北大學ノ設
立ト云フモノモアル、其他是モ補助スル、是モ新設スルト云フコトハ續々
起ッテ來ルノデアリマスカラ、到底減ズモノバカリヲ見當ニシテ新ニ增
スモノヲチヨットモ見ヌト云フコトハ到底出來ル話ヂヤナイ、又活世界デ
アルナラバ、絕對的ニ新事業ヲ起サヌト云フコトハ出來ナイデゴザイマセウ、
又本員ハ竊ニ謂ラク、製鋼所ノ如キハ六百万圓ノ豫算デアルケレドモ、恐ラ
クハ之ヲヤリ遂ゲルト云フナラバ千五六百万圓ノ金ハイルダラウ、政府ハ
イツデモ責任々々ト云フケレドモ、イツデモ政府ノ豫算ト云フモノハ繼續
事業抔ハ初ハ小サイ金ノ額ヲ揭ゲテヤッテハ遂ニハ增シテ來ル增サナイト
云フモノハ一モナイ、既ニ官設鐵道ノ既設ノモノニ於テ、政府委員ノ答辯ニ
於テモ、何千何百万圓ト云フモノヲ增サナケレバ、此鐵道ヲ約シテアル所ノ、
法律デ成立ッテアル所ノ鐵道ヲ全ウスルコトハ出來ナイト云フコトハ大
藏省ノ政府委員ガ明ニ辯明シテ居ル、是ニ由リテモ分リ切ッテアルコトデ
ゴザイマス故ニ本員等ノ見ル所デ言ヘバ縱令此法律案ニ財政ノ都合ニ據
リ他ノ歲入ヲ以テ之ニ充テルト云フコトヲ書イテ居ッタ所ガ金ガナケレ
バヤルコトガ出來ナイ、若シ强テヤルト云フ譯ナラバ此後ニ來ルベキ地租
ノ復舊ト云フモノヲヨサナケレバナラヌ地租ノ復舊ヲモット年限ヲ延サナ
ケレバナラヌト云フコトニナルダラウ或ハ海軍ノ維持費ヲ減少シナクチヤ
ナラヌト云フコトニナルダラウト思フ、凡ソ經濟ハ全ク其年度バカリデナイ、
少シ先キヲ見テ掛ラナケレバナラヌノデゴザイマス故ニ此法律案ガ本員ノ
今修正シタ述ベタ通、三十五年度ニ限ルト云ッタ所ガ、何モ差支ナイノ
デアルト云フモノハ三十五年度ノ豫算ハ旣ニ出來テ居ルモノデゴザリマス
カラ、三十五年度ハ之ヲヤラセル、其他ハ他日ヲ見テ果シテ餘裕ガ出來ル譯
ナラバソレヲヤッテモ宜シイノデアル殊ニ私ガ三十五年度トスルコト
ニハモウ一ツノ理由ガアルナゼナレバ既ニ現政府ハ吾ミニ公約シテアル
所ノ財政ノ整理ト云フモノガアル此財政ノ整理ト云フモノハ獨リ現政
府ノミナラズ前政府ニ於テモ之ヲ言ッテアルノデアルガ、今マデ滿足ナル
結果ヲ得ナイノハ吾ミノ遺憾トスル所デアル現政府ガ財政ヲ整理スルト
云フケレドモ、ドノ位ノ整理ヲスルカ果シテ吾ミノ滿足スルダケノ整理ヲ
スルコトヲ得ルヤ否ヤト云フコトハ私ハ甚ダ疑問デアル然ルニ若シ吾〓
ノ滿足スルダケノ財政ノ整理ガ出來テ果シテ地租ノ復舊ガ出來ル又海軍
ノ維持費ヲ出シテモ尙ホ鐵道ニ是ダケノモノヲ充テルモ宜イト云フヤウニ
明ナル整理ノ茲ニ附クナラバ吾〓モ兩手ヲ舉ゲテ、此政府案ニ贊成スルコ
トハ是非ナイコトデゴザイマスケレドモ諸君、恐ラク諸君ノドナタノ腦中
ヲ叩イテ見テモ、現政府ノ財政整理ト云フコトハ果シテ此後ニ滿足ナル整
理ガ出來ルヤ否ヤト云フコトハ決シテ御安心ガ出來ナイダラウト思フ故
ニ此整理ト云フコトハ新聞ニ見ルト、六月マデニ出來ルトカ、又出來サナケ
レバナラヌドウシテモ此年度ニ出來サナケレバナラヌニ附イテハ政府ノ
公約ハ如何ナル程度ニ出來ルカソレヲ見テ果シテ安心ガ出來ルナラバ其
時ハ政府案ノ通、再ビソコデ、此法律ヲ改正シテモ宜シイガ先ヅ以テ此安
心ヲ置カナイ案ニ於テハ斯ノ如ク修正シテ、三十五年度ニハ何モ差支ナイ
コトニシテ置イテ、他日政府ノ御手際ヲ拜見致シマシタ上ニ、永遠ノ法律ヲ
拵ヘタイト思ヒマスルカラ私ガ此修正說ヲ提出致シタノデゴザイマス
尙ホ此次ノ北海道鐵道ニ對スルコトモ同樣デゴザイマスルカラシテ、此案ガ
私ノ修正案ガ成立チマスレバ、次ノ案モ同樣ノ精神ヲ以テ修正スル積デ
ゴザイマスカラドウゾ諸君ハ御贊成アランコトヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=18
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019・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 定規ノ贊成ガアリマスカ
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=19
-
020・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 制規ノ贊成ガゴザイマスカ
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=20
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021・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) チヨット起立シテ、贊成ヲ御呼ビ下サイ
〔此時起立スル者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=21
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022・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 制規ノ贊成ガナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=22
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023・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) ドウカ修正說ニ制規ノ贊成者ゴザイマセヌナ
レバ此案ハ讀會ヲ省略シテ一一讀會デ確定アランコトヲ望ミマス、委員長ノ
報告通
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=23
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024・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀會省略ノ動議ガ出マシタガ、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=24
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025・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略スルコトニ致シマス、本
案ニ附イテハ委員長ノ報告通、原案ニ御異議アリマセヌカ
鐵道敷設法中改正法律案確定議
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=25
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026・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ原案通致シマス、議事日程第二ニ移
リマス
第二北海道鐵道敷設法中改正法律案第一讀會ノ續委員長
(政府提出)(報告発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=26
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027・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=27
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028・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 先キニ委員長ノ報告ガ濟ンデ居リマスガ、本案ニ附イ
テハ直チニ第二讀會ヲ開クコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=28
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029・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ直チニ第二讀會ヲ開クコトニ致シマ
ス
北海道鐵道敷設法中改正法律案第二讀會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=29
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030・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) ドウカ是モ讀會省略デ可決アランコトヲ望ミ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=30
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031・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀會省略ノ動議ガ出マシタガ、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=31
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032・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略スルコトニ致シマス、本
案モ委員長ノ報告通、御異議ハゴザイマセヌカ
北海道鐵道敷設法中改正法律案確定議
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=32
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033・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ原案通決シマス、此際ニ御諮リスル
コトガアリマス豫算ノ第一分科會ヲ此議會中ニ開キタイト云フコトヲ、主
査カラ申出マシタガ許可シテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=33
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034・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許可スルコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=34
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035・新井章吾
○新井章吾君(二百二十三番) ドウゾ第一分科會ノ諸君ハ第一分科ノ委員
室ヘ御出下サイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=35
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036・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 議事日程第三特許法中改正法律案、第一讀會ノ續、委員
長ノ報〓、江島久米雄君
第三特許法中改正法律案(政府提出貴第一讀會ノ續(電話)
族院送付)報告ー
〔江島久米雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=36
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037・江島久米雄
○江島久米雄君(百六十三番) 特許法中改正法律案委員會ノ經過及結果ヲ報
〓致シマス此委員會ハ前後二囘開キマシテ委員長ニハ本員、理事ニハ
高須賀穰君當選セラレマシタ此案ハ全會一致ヲ以テ可決致シタノデゴザイ
マス尤モ此特許法ハ萬國工業所有權保護同盟條約ニ基イテ、發明特許ノ出
願優先期間七箇月トアリマシタノヲ之ヲ白耳義ノ議會ニ於テ十二箇月ト致
シマシタノデゴザイマス、就キマシテハ此本文ニハ七箇月以內トアリマスノ
ヲ、十二箇月以內ト致サズシテ、條約ニ定メタル期間內ト致シマシタノハ
是ハ各部批准ヲ經ナケレバ、實際ニ行レヌモノデゴザイマス故ニ若モ一國
ニテモ批准ガ濟マナケレバ法律ノ效力ヲ得マセヌ故ニ再ビ又議會ノ協贊
ヲ經ナケレバナラヌト云フヤウナ、場合ガ生ズルカモ知マセヌ故ニ、此條約
ニ定メタル期間內ト致シテ置マスレバ縱令批准ヲ經ナイ國ガゴザイマシテ
モ本案通再ビ議會ヲ煩スヤウナ手數ガゴザイマセヌ故ニ、條約ニ定メタ
ル期間內ト斯ウ致シマシタ次第デゴザイマス就キマテシハ本案ハ各國ノ批
准ノ交換モゴザイマシテ旁〓至急ヲ要スル事件サウデゴザイマスル故ニ、讀
會ノ省略ヲ致シマシテ速ニ確定ニナルコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=37
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038・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) ドウカ直ニ二讀會ヲ開カレテ、讀會ヲ省略シ
テ可決アランコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=38
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039・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ノ讀會省略ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=39
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040・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議カナケレバ讀會ヲ省略スルコトニ致シマス、委
員長ノ報告通原案ニ御異議ハアリマセヌカ
特許法中改正法律案確定議
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=40
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041・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ確定致シマス、議事日程第四ニ移リ
マス渡邊猶人君
第五回內國勸業博覽會參考館ヘ陳
第四列ノ爲輸入スル貨物關稅免除ニ關第一讀會ノ續(ヘ委員長
スル法律案(政府提出)/報告
(渡邊猶人君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=41
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042・渡邊猶人
○渡邊猶人君(八番) 第五囘內國勸業博覽會參考館ヘ陳列ノ爲輸入スル貨物
關稅免除ニ關スル法律案、此委員會ノ經過ヲ御報道致シマル、本案ノ委員會ハ
昨日委員會ヲ開キマシテ委員長理事ノ互選ヲ致シ、引續イテ審査會ヲ開キ
マシタ次第デゴザイマス、然ルニ此案ニ於キマシテハ明年大阪ニ開ク所ノ
第五囘內國勸業博覽會ノ參考館ノ方ヘ陳列ヲ致シマスル、外國品ノ輸入物品、
是ニ關稅ヲ免除ヲスルト云フ意味ノデゴザイマス、併ナガラ陳列ノタメ輸入
スル品ニシテ再輸出ヲスルモノニ關稅ヲ免除スルト云フノデ、內國ニ止ル
モノニ置キマシテハ矢張此關稅ヲ課シマスル次第ナノデゴザイマス、畢竟
參考館ニ陳列ヲ致シマスル便宜ヲ與ヘ、且博覽會ノタメニ利益ト云フ所カラ
此案ノ提出ニナリマシタ次第デゴザイマスル因ッテ委員會ハ當然之ヲ可決ス
ベキモノト全會一致ヲ以テ議決致シマシテゴザイマスル、此段ヲ御報道致
シマスル、宜シク御審議アランコトヲ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=42
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043・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 是モ讀會省略デ、直ニ二讀會ニ於テ確定アラ
ンコトヲ希望致シマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=43
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044・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀會省略ノ動議ガ出マシタガ、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=44
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045・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略スルコトニ致シマス、委
員長ノ報告通御異議ハアリマセヌカ
第五囘內國勸業博覽會參考館ヘ陳列ノ爲輸入スル貨物確定議
關稅免除ニ關スル法律案
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=45
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046・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ナケレバ原案通決シマス、議事日程ノ第五ニ移
リマス-兒玉仲兒君
第五蟲害驅除豫防法中改正法律案(政第一讀會ノ續(強化
府提出)/報告発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=46
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047・兒玉仲兒
○兒玉仲兒君(二百六十三番) 御報告ハ極メテ簡短デゴザイマスルカラ、當
席カラ御報告致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=47
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048・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 兒玉君、簡短デモ委員長ノ報告ハ登壇ヲ·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=48
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049・兒玉仲兒
○兒玉仲兒君(二百六十三番) 本案ノ審査會ヲ開キマシテ多少ノ質問モゴ
ザイマシタガ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=49
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050・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 兒玉君登壇ヲ·
〔兒玉仲兒君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=50
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051・兒玉仲兒
○兒玉仲兒君(二百六十三番) 害蟲驅除豫防法改正法律案ノ委員會ノ實況ヲ
御報告致シマス昨日委員會ヲ開キマシテ、政府委員ニ對シ多少ノ質問モア
リ審査ノ上、遂ニ滿場一致ヲ以テ原案ニ同意致シマシタ譯デ、原案ヲ可決
致シマシタカラ此段御報道致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=51
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052・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 是モ讀會ヲ省略シテ、確定アランコトヲ··
〔「贊成々々ノ」聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=52
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053・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀會省略ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=53
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054・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略致シマス
害蟲〓除除防法中改正法律案確定議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=54
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055・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員長ノ報告通、原案ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=55
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056・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 原案ニ御異議ガアリマセネバ原案通決シマス、次ハ議
事日程ノ第六登錄稅法改正法律案第一讀會ノ續、鹽田忠左衞門君
第六登錄稅法中改正法律案(政府提出)第一讀會ノ續(/報〓明治39年金
(鹽田忠左衞門君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=56
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057・塩田忠左衞門
○鹽田忠左衞門君(七十一番) 私ハ登錄稅法中改正法律案委員會ノ結果ヲ御
報告致シマス登錄稅法中左ノ通改正ス、第五條中第五號第七號及第八號ヲ
左ノ如ク改ム、五開墾鍬下年期附與地價千分ノ十、七新関免租年期延長地價
千分ノ十ハ鍬下年期地價据置年期ノ延長地價千分ノ十、是ハ以前鍬下年期
附與トアリマシタノヲ「開墾」ト上ヘ此五ノ方ハ加ヘマシタノデゴザイマス
又七ハ以前ハ鍬下年期ノ繼年期附與トゴザイマシタノヲ、新開免租年期延長
ト改正ニナリマシタ八ハ以前ハ新開免租年期ノ定年期附與トゴザイマシタ
ノヲ、八ヲ鍬下年期地價据置年期ノ延長ト、斯ウ改正ニナリマシタ別ニ委
員會ニ於テハ異論ナク滿場一致デ決議致シマシタ此段報告致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=57
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058・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 序ニ第七ノ說明ヲ願ヒマス、議長ノ許可ヲ得
テ.発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=58
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059・塩田忠左衞門
○鹽田忠左衞門君(七十一番) 是ハドウゾユックリトー是モ登錄稅法中左
ノ通改正ス、第二條第一項第二十一號及第二十二號中「不動產每一箇金十錢」
ヲ「不動產每一箇金五錢」ニ改ム、斯ウ云フ案デゴザイマス、之ヲ改正致シマ
スル理由ハ是マデノ昨年以來ノ登記更正變更抹消ノ稅ハ一箇十錢ニ致シテ
三十錢ニ止メテゴザイマスルサウ致シマスルト一筆カラ一一筆ノ人ハ一筆
每ニ十錢宛ノ稅ヲ約メマシテ四筆カラ百筆ゴザイマシテモ二百筆ゴザイ
マシテモ三十錢ニナルコトニ改正ニ昨年ナリマシタノデゴザイマス是ガ
誠ニ不權衡ト認メマシタノデ、ソレ故此度五錢ニ改正致スコトニ致シマシタ
又之ヲ取調べテ見マスルト餘程小民ニ多ク稅ヲ負ハスコトニナッテ居リマ
ス小民カラ稅ヲ六分三厘程取ルヤウニナリマシテ、後トヲ其四筆以上ノ人
カラ納メルト云フコトニナリマスル是ガ大ニ不權衡ト私ハ認メマシテ出
シマシタノデゴザイマス何故ナレバ此件數ヲ調ベマスト全國ノ抵當質權
ヲ合セマスト三十三年ノ一月ヨリ十二月ノ調ガ百九万二百九十九ゴザイマ
ス大沼所左衛門マスト四百十三万七百筆ニナリマス之ヲ平均致シマ
スノル一ノ證文ガ三筆七九ト爲ルコトニナッテ來マスサウ致シマスルト
下煮〓、一本ノ證文デ一箇デゴザイマスカラシテ三十錢納メンナラヌ譯ニ
ナリマス又二件ノ書入ノ人デゴザイマシタラ凡ソ八十錢納メルト云フ割
合デ、ソレニモ拘ラズ四筆以上ハ、三十錢デ止テアリマスノデゴザイマス大
ニ是ハ權衡ヲ失シテ居ル稅ト思ヒマス故ニ之ヲ五錢ニ改正ヲ致スコトノ案
ヲ出シマシテゴザイマス委員會ニ於キマシテモ多數デ決シマシテゴザイマ
ス(「政府ハドウデス」ト呼フ者アリ)政府ハ又申ス所ガアルトカ何トカ仰シ
ヤッテ、未ダ私ニモ議場デ何カ言フヤウニト云ハレマシタカラ、政府ノ仰シ
ヤルコトガゴザイマシタラ私等ハ調ベタモノガゴザイマス故、政府委員ノ
申スコトヲ承ッテ又私カラ述ベルコトニ致シマス、(「贊成々々」ノ聲起ル)ド
ウゾ是ハ諸君モ唯今申上ゲル通ノ理由デゴザイマスカラ下ノ者ノ迷惑ト申
ス譯ハ-餘リ長ウゴザイマスナラ止メテ置キマス、後トニ又述ベマスカラ、
ドウゾ宜シク願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=59
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060・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 第六ノ日程ハ政府案ノ通ドウゾ讀會省略ヲ以
テ、直チニ可決ニナランコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=60
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061・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀曾省略ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=61
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062・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略スルコトニ致シマス、委
員長ノ報告通原案ニ附イテ御異議ハアリマセヌカ
登錄稅法中改正法律案確定議
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=62
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063・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ原案ノ通決シマス、次ハ日程ノ第七
第七登錄稅法中改正法律案(鹽田忠左第一讀會ノ續(委員長)
衞門君提出)報告発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=63
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064・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 是モ直チニ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマ
ス
(政府委員大藏書記官若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=64
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065・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 本案ニ對シテ意見ヲ申上ゲル前ニ、現行法ト改
正法トノ比較ヲ申上ゲマス、現行法ニ於ケル此稅率ノ所デ見マスト云フト
不動產一筆每ニ十錢宛取ルト云フコトニナッテ居リマシテ、而シテ稅額ハ三
十錢ヨリモ多クナルコトハナイト、斯樣ニナッテ居リマス、改正案ニ據リマ
スト云フト不動產一筆每ニ五錢ニスル併ナガラ三十錢ヨリモ多クハシナ
イ斯ウ云フノデアリマスカラ、改正案ト現行法トノ違フ所ハ詰リ不動產ガ
六筆以下デアル場合ト其以上デアル場合ダケノ違デアル六筆以上ニナリ
マスルト云フト、現行法デモ三十錢、改正案デモ三十錢、斯ウ云フノデアリマ
スカラ現行法トノ違ヒハ一件ノ中ニ不動產ノ數ガ-筆數ガ五筆以下アル
トキニ限ッテ、違ガ起ルノデス、ソレデドレダケノ違ガ起ルカト云ヘバ一
筆ノトキニハ五錢ノ差ガアリマス二筆ノトキニハ十錢ノ差デアリマス、三
筆ノトキニハ十五錢ノ差、四筆ニナルト又十錢ノ差デス、五筆ノトキニハ五
錢ノ差、斯ウ云フノデアリマスカラ改正案ハ現行法ガ高クテイカヌト云フ
テ出マシタケレドモ其高イノハ一番高イ所ヲ取ッテ十五錢ノ差デアリマス
詰リ改正案ハ現行法ハ一件ニ附イテ一番高クテ十五錢、ソレガ高クテイカ
ヌト云フノガ、改正案ノ趣意デアリマスソレデ一件ニ附イテ十五錢デアリ
マスガ、併ナガラ此登錄稅ノ抹消登記ノ稅額ハ全體デ申セバ二十万圓ア
ルノデアリマスカラ、此改正ノヤウニシマスルトチヨット三十二年ノ取扱
件數デ勘定致シマスルト七万圓餘減ズルノデアリマス、其後件數ハ大分增
シテ居リマスカラ昨年度ノ件數デ之ヲ勘定シマスレバ、八万圓位ニハナラ
ウト考ヘルノデアリマス詰リ此法案ハ財源ヲ何モ供給セヌデ置イテ、國庫
ノ收入ヲ七万圓乃至八万圓バカリ減ジヤウト云フ法案デアリマスカラ今
日豫算モ通過シテ何モ確定シタル今日ニ於テ、ソレダケノ金額ヲ減ジヤウト
云フコトニハ御同意申シ兼ネルノデス尙ホ此登錄稅ノ此〓ノ改正ト云フ
モノハ登錄稅法ガ出來テ以來、既ニ二囘モ稅率ガ改正ニナッテ居リマス、其
一番近イ改正ハ昨年四月一日カラ實施シテ居ルノデアリマスカラ、今日マデ
ハマダ一年ニナッテ居ラヌノデアリマス、尙ホ前議會ニ於テハ、此〓ニ附イテ
改正スベキ法案ガ政府カラモ出テ居リマシタシ、議員カラモ三案バカリ出テ
居リマシテ詰リ四案改正案ガアッタノデアリマス其中ニ今日出テ居ル改
正案モ、一ツニナッテ居ッタノデアリマスガ、能ク當院デハ御審議ニナッタ上デ、
此改正案ハ容レラレナカッタノデアリマス、ソレヲ今囘更ニ御出シニナッタト
云フコトデ、斯樣ナ改正案ガ成立スルヤウニスレバ法律ヲ屢〓改廢スルヤ
ウニナリハセヌカト思フノデアリマスカラ、其〓ニ於テハ甚ダ宜クナイト考
ヘルノデアリマス尙ホ改正案ハ斯ウ云フ不公平ガアルノデアリマス、不動
產ニ附イテハ一筆五錢ト云フコトニナリマスガ、船舶ニ附イテハ矢張現行法
通一箇十錢ト云フコトニナリマス、サウスルト現行法デハ船舶ト不動產ト
ハ權衡ヲ取ッテ、同樣ニ取ルト云フノヲ、改正案ハ不動產ダケ下ゲルト云フ
コトデ、此〓ニ於テモ權衡ガ取レヌノデアリマス、旁〓此改正案ニ附イテハ
御同意申兼ネルノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=65
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066・塩田忠左衞門
○鹽田忠左衞門君(七十一番) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=66
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067・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 鹽田君
〔鹽田忠左衞門君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=67
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068・塩田忠左衞門
○鹽田忠左衞門君(七十一番) 唯今登錄稅法ノ改正ノコトニ附キマシテ政
府委員ガ單數ノコトヲ言ハレマシテゴザイマスガ(恆松隆慶君「委員長ノ資格
デスカ提出者ノ資格デスカ」ト呼フ)提出者ノ資格デス甚ダ不辯デゴザイ
マスカラ分ラヌ所ガゴザイマスレバ此儀ニ附イテハ何ナリト御尋ネ下
サイ十分ニ御答致シマス單數ノコトデゴザイマスガ二筆ヲ十五錢ノ違
ト云フコトヲ申サレマシタガ併シ三筆四筆カラニナリマスルト一件ニナ
リマス、下ハ一箇デゴザイマスカラ其違ハ大キナ間違ト私ハ認メル何故
トナレバ證文ニ百圓ノモノヲ三筆ナラ三筆入レナケレバナラヌサウスル
ト三十錢拂ハナケレバナリマセヌ五筆ニナッテモ三十錢拂ハナケレバナラ
ヌソコテ下ノ所ニ於テハ大キナ違ガ出來ルノデアリマス故ニ此改正ノ必
要ハアルト考ヘマス此處ラヲ能ク御承知ヲ願ヒマス、又數ノ所ニ於テハ
三十二年度ト三十三年度ノ違ガアルト申サレマシタガ、三十二年度ト三十三
年度トノ違ハ多クアリマセヌ之ヲ私ガ先刻中シマシタノハ是ハ三十三年
ノ一月カラ十一月マデノデゴザイマス大イシタ政府ノ收入ガ減ルト云フコ
トハアリマセヌ收入ガ若シ減ルトシマシテモ、法律トシテ出ス上ニ於テハ
多數ノ人民ノ迷惑ヲスルコトヲシテ置イテ、此法律トシテ金ヲ取ルト云フコ
トハ是ハ壓制ト云ハザルヲ得ヌト思ヒマスヒヤ〓〓ト」呼フ者アリ)諸
君、能ク御承知下サイ(「モウ分リマシタ」又「鹽田君ニ贊成」ト呼フ者アリ)法
律ヲ度々變ヘルト云フ仰セデゴザイマスケレドモ法律ガ惡ルケレバ何時デ
モ變ヘルノハ是ハ今日ノ至當ノコトヽ私ハ考ヘル(「ヒヤ〓〓ト」呼フ者ア
リ)又船舶ニ於キマシテノコトハ是ハ私ハ調ベテ置キマシタガ、船舶ト申
シマスルノハ實地ヲ十分ニ調ベテ見ヌカラ出シマセヌガ、是ハ僅ノ數デゴ
ザイマシテ其違ハ件數モ筆數モ別ニ違ハナイノデス一割違フカト云ヘバ
一割ハ違ヒマセヌ、一筆ノモノハ十筆デ十一トハナラヌノデス、又一方ノ方
デ申シマスルト此平均ヲ土地書入更正ト變更ト七十八万三千百八十二
件アリマス、此筆數ガ三百二十七万三千六百二十一、之ヲ平均致シマスルト
四筆一八强ニナリマス是程違ウノデアリマス併シマダ數字ノ所ヲ言ハレ
ヌノハ船ト云フモノハ一方ノ地所建家抔トハ、大ニ其境界ガ違フノデアリ
マスソレハ地所ハ多ク農民ガ持ッテ三筆抔モ入レルノハ多クハ小民ト見ナ
ケレバナリマセヌ、船ノ方デアルト少々ノモノデモ融通ノ出來ル所ガアリ
マス、今十石ノ船ヲ造ルニハ三十圓以下デハ出來マセヌ五十石ノ船ヲ造
ルニハ三五、百五十圓、百石ノ船ヲ造ルニハ三百圓ナケレバ造レマセヌ
ソレガ又一筆書入レマスルノニ別シテ大キナ違ハナイノデス、然ル所以デ
ゴザイマスカラシテ此改正案ヲ出シタノデスマダ申スコトモゴザイマス
ガ餘リ辯ガ下手デアリマスカラ、申シマセヌ御尋ガゴザイマスレバ十分
ニ御答ヲ致シマスドウゾ此改正案ヲ御贊成下スッテ、卽決ヲ願ヒマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=68
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069・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ニ附キマシテ、第二讀會ヲ開クヤ否ヤト云フコト
ヲ採決致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開カウト云フ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=69
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070・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス-議事日程ノ第八ニ移リマス
第八家祿賞典祿處分法中改正法律案第一讀會ノ續(電話 :三十五
(恆松隆慶君外五名提出)報報発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=70
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071・多田作兵衞
○多田作兵衞君(二十番) 今ノハ直チニ二讀會ヲ開イテ、極メテ戴キタイト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=71
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072・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 議事日程ノ第八ニ移リマシタ、高津雅雄君
〔高津雅雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=72
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073・高津雅雄
○高津雅雄君(百五十八番) 本案ニ對シマスル委員會ノ經過及決議ノ結果ヲ
御報告致シマス昨年ノ十二月二十八日以來、特別委員會ヲ開キマシタコト
ガ三囘、サウシテ委員會ハ本案ハ至極必要ナルモノトハ認メマシタケレド
モ此法文ニ附イテハ種々ノ議論モアリマスルシ、又修正意見モ段々出マシ
テ、其審議討論ノ結果、御手許ニ御囘シ申シマスル通修正ニナリマシタ、
應朗讀致シマス舊ノ原案ハ
第四條ノ二給與ノ願書ニ對シ不許可ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服ア
ルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
之ヲ委員會ノ修正ハ
第四條ノ二第一條及第二條ノ給與ヲ願出タル者其願出ニ對スル當該行政
官廳ノ處分ヲ不當トスルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
斯ウ修正致シマシタ、此理由ハ原案ハ不許可ノ處分ヲ受ケタルモノ、其處分ニ
不服アルトキ云々トアル此不許可ノ處分ヲ受ケタルトキト云ヘバ、例ヘバ茲
ニ一万圓ノ請願ヲ爲シテ居ル者ガ、大藏省ヨリ五千圓ノ下附ガアッタトキハ
矢張許可ニナッタノデス、故ニ殘リノ五千圓ニ不服ガアッテモ許可ニナッタ
ノダカラ、行政裁判所ヘ往クコトハ出來ナイト云フコトニナルカラ此不許
可ノ文字ヲ取ッテ範圍ヲ廣クシタ方ガ宜イト云フ所カラ、此通修正ニナリ
マシタ之ニ對シテハ政府委員モ出席セラレマシテ全然同意ヲ表セラレマ
シタ此修正案ニ對シテハ政府モ同意シ委員ニ於テモ全會一致ヲ以テ、遂
ニ修正通可決ニナリマシタノデアリマスカラ、本會ニ於テ成ルベク委員會ノ
如クニ御可決アランコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=73
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074・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 直チニ讀會省略ヲ以テ、可決ニナランコトヲ
願ヒマス
(「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=74
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075・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 恆松隆慶君ヨリ讀會省略ノ動議ガ出マシタガ御異議ア
リマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=75
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076・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀會ヲ省略致シマス
家祿賞典祿處分法中改正法律案確定議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=76
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077・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 此案ニハ政府モ同意シテ斯ウナッタト云フノ
デ、最モ此方ガ宜シイノデアリマスカラドウカ委員長報告通可決ナランコ
トヲ希望シ무시
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=77
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078・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員長報告通御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=78
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079・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員長報告ノ通決シマス、議事日程ノ第九ニ移リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=79
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080・安藤亀太郎
○安藤龜太郞君(二十一一番) 第九ダケデアリマスカ、同ジ刑法改正案デアリ
マスカラ九ト十トヲ併セテ議題ニ供セラレンコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=80
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081・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 九、十ノ日程ヲ一括シテ議題ヲ供シテ、御異議ハアリ
マセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=81
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082・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ一括シテ議題ニ供シマス
第九刑法中改正法律案(安藤龜太郞君外二名提出)第一讀會
刑法中左ノ通改正ス
第三百十一條本夫又ハ本婦其配偶者ノ姦通ヲ覺知シ姦所ニ於テ直チニ姦
夫又ハ姦婦ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但本夫又ハ本婦姦通ヲ縱容シ
タル者ハ此限ニ在ラス
第三百五十三條有婦ノ夫又ハ有夫ノ婦姦通シタル者ハ六月以上一一年以下
ノ重禁錮ニ處ス其相姦シタル者亦同シ
前項ノ罪ハ本夫又ハ本婦ノ〓訴ヲ待テ其罪ヲ論ス但本夫又ハ本婦姦通ヲ
縱容シタル者ハ告訴ノ效ナシ
第十刑法中改正法律案(安藤鼠太郎君外三名提出)第一讀會
刑法中左ノ通改正ス
第七條第一號ヲ削ル
第十二條削除
第十三條削除
第十四條削除
第十五條削除
第十六條削除
第三十九條「死刑及ヒ」ヲ削ル
第五十九條第一號ヲ削ル
第六十六條但書ヲ削ル
第六十七條第一號ヲ削ル
第六十八條第一號ヲ削ル
第百十六條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第百十八條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ「無期徒刑」ヲ「有期徒刑」ニ改ム
第百二十一條第一號中「死刑」ヲ「無期流刑」ニ第二號中「無期流刑」ヲ「有期
流刑ニ」「有期流刑」ヲ「重禁獄」ニ改ム
第百二十三條中「死刑」ヲ「無期流刑」ニ改ム
第百二十九條中「死刑」ヲ「無期流刑」ニ改ム
第百三十條中「死刑」ヲ「無期流刑」ニ改ム
第百三十一條中「無期流刑」ヲ「有期流刑」ニ改ム
第百三十八條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第百六十九條中「無期徒刑」ヲ「有期徒刑」ニ「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第二百二十二條第一項中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
同條第二項中「死刑ニ反坐ス」ヲ「無期徒刑ニ處ス」ニ改ム
第二百九十二條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第二百九十三條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第二百九十四條中「無期徒刑」ヲ「有期徒刑」ニ改ム
第二百九十五條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第二百九十六條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第三百六十二條第一項中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第三百六十三條中「有期徒刑」ヲ「重懲役」ニ「無期徒刑」ヲ「有期徒刑」ニ「死
刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第三百八十條中「無期徒刑」ヲ「有期徒刑」ニ「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第四百二條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第四百三條中「無期徒刑」ヲ「有期徒刑」ニ改ム
第四百五條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ改ム
第四百十五條中「死刑」ヲ「無期徒刑」ニ「無期徒刑」ヲ「有期徒刑」ニ改ム
〔安藤龜太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=82
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083・安藤亀太郎
○安藤龜太郎君(二十二番) 諸君、改正刑法案ヲ出シテ置キマシタガ、併シ
目下刑法改正案ハ既ニ貴族院ニ提出セラレテ居ル場合ニ私ガ尙ホ此刑法改
正案ヲ提出シマスルノハ抑昨年來ノコトニ徵シテ出シタ所以デアリマス
昨年モ私ハ矢張死刑ハ廢スル、又男女ノ姦通ヲ同一ノ刑ニ處スルト云フ問
題ヲ出シテ置キマシタガ併シ其當時ニ於テモ尙ホ刑法改正案ハ貴族院ノ
方ニ提出セラレテ居ル場合デ、而シテ刑法改正案ハ遂ニ貴族院ニ於テ委員
付託デ會期ガ終ッタト云フ場合デ、併テ私ノ案ニ於テモ矢張本院ニ於テ
委員付託デ其改正ノ效果ヲ見ルト云フコトガ出來ヌ、次第デアリマシタ故ニ
私ハ是非トモ今ヤ刑法改正案ハ貴族院ニ提出セラレテアルニモ拘ラズ是
非此兩案ハ本院ニ於テ宜シク御審議ヲ願ヒタイト云フ所カラ提出シタ次
第デゴザイマス偖テ第一ハ此男女ノ姦通デアリマスデ此問題ハ年々歲々
出シテ置クニモ拘ラズイツモ之ニ對シテ反對ノ理由モナクシテ唯委員付
託デ終ッテ、所謂握潰シト云フ結果ニナッテ、私ハ甚ダ殘念ニ思フ、諸君、何
故ニ日本ノ此刑法ハ姦通其者ハ惡ルイト云フコトヲ認メテ罰シテ置クニモ
拘ラズ唯婦女子ノ姦通ノミヲ罰シテ男子ノ姦通ヲ罰セヌト云フコトハ
實ニ不當ノ規定デアルト思フ(笑聲起ル)何トナレバ諸君、旣ニ刑法中ニモ
配偶者ノ重婚ヲ爲シタル者ハ罰スルト云フコトガアル重婚其者ガ惡ルケ
レバ姦通其者ハ愈〓惡ルイト云フコトハ明デアル重婚ハ男女共ニ罰スル
ニモ拘ラズ、姦通ハ單リ女子ニ-婦女子ノミヲ罰シテ男子ノ姦通ヲ罰セ
ヌト云フコトハ餘程是ハ男子ノ拵ヘタ法律デアルカラ、男子ニ勝手ナ法律
ヲ作ッタト云フ結果ニナッテ居ル、私ハ之ニ附イテハ喋々理由ハ述ベマセヌ、
既ニ前囘ニモ述ベタコトデアリマスカラ其理由ハ更ニ述ベマセヌガ、何卒
諸君ハ是ハ委員ニ付託セラレテ御審議ヲ願ヒマス而シテ此事ハ社會ノ
風俗又大ニ人權ノ問題ニ關スルコトデアリマスカラ宜シク委員ニ付託セラ
レテ、御審議ヲ願ヒマス、而シテ又死刑ヲ廢スルト云フコトデアリマスガ、
凡ソ人ヲ以テ人ヲ殺スト云フコトハ果シテ是ハ道理ニ適ッテ居ルヤ否ヤ、
既ニ復讎ト云フコトハ諸君明ニ禁ジテアル、若シ遣レバ之ヲ罰スルト云フ
コトニナッテ居ルニモ拘ハラズ、是ハ何ノ理由ダト云ヘバ、人ヲ以テ人ヲ殺ス
ノハ惡ルイ〓又或ル理由ニ於テハ復讎ト云フモノヲ許セバ輾轉シテ底止ス
ル所ヲ知ラヌト云フ所カラ、復讎ト云フコトハ禁ジテアル然ルニ法律ニ於
テハ死刑ヲ行ッテ卽チ人ヲ以テ人ヲ殺スト云フコトハ、如何ニモ國法ニ於
テアルマジキコトヽ思フ殊ニ死刑ノ犯罪者ノ多クヲ見マスルト、大抵挑發
トカ怨恨トカ、其他種々ノ事情ニ激發セラレテ、死刑ノ罪ヲ犯ス者ガ多イ
故ニ此ノ如キモノヲ以テ死刑ニ處スルト云フコトハ甚ダ殘忍無道ニシテ、
死刑ハ決シテ良刑デナイト云フコトヲ、吾ミハ確信シテ居ルノデアリマスカ
ラシテ是モ何卒委員付託ニセラレテ、御審議アランコトヲ切望スル次第デ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=83
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084・花井卓藏
○花井卓藏君(二百八十三番) 參考ノタメニ承ッテ置キタイノデアリマスガ、
安藤君ノ此案ニ對スル理由書竝ニ、唯今承リマシタル御演說ニ依リマシテハ
未ダ死刑ヲ良刑ニアラズト云フコトニナルマイト考ヘラレルカラ成ルベク
安藤君ニ能ク〓ヘテ戴キタイノデアル、安藤君ノ理由書ノ第一ヲ見マスルト
刑ノ目的ハ懲戒及〓育ノ要素ヲ具備セザルベカラズソレ故ニ死刑ニ處シ
テシマッテハ懲戒ノ目的ヲ達スルコトガ出來ズ、〓育ノ目的ヲ達スルコト
ガ出來ヌト云フ風ニアル、サウ致シマスト安藤君ノ目ニ映ズル刑ノ目的ハ監
獄署ト云フモノヲ以テ、一面ニ於テ一ノ學校ト云フガ如クニ御解釋ニナッテ
居ルモノカドウカト云フコトヲ伺ヒタイソレカラ第二ノ理由トシテ、安藤
君ハ自ラノ理由ニ於テ、自ラノ案ヲ殺サレテ居リハシナイカ死刑ヲ廢スル
理由トシテ元來死刑ニ處セラルヽ人ノ殺人罪ハ、常ニ嫉妬ニ起ルトカパジ)
ハ怨恨ニ起ルトカ、若クハ挑發ニ起ルトカ云フ風ニアル、然ルニ現行刑法ヲ讀
ンデ見ルニ深思熟慮、所謂謀ッテ殺シタ場合ガ死刑ニ處セラルヽノデ怨
恨ニ原因シ、嫉妬ニ原因シ、挑發ニ原因スルガ如キ偶然ノ發動ニ起ッタ殺
人罪ハ或ハ故殺ト爲リ或ハ宥恕滅刑ノ理由ト爲ルノデ、深思熟慮ノ結果ニ
アラサレバ謀殺罪ニ處セラレヌニ拘ラズ此案ニハソレ等ノ謀殺ノ場合ヲ
想像セズ、死刑ニ處セラレザル事實ノミヲ列舉シテ、死刑ヲ廢セラルヽニ至ツ
テハ、殆ド提案ノ理由ガ何レニアルカヲ知ルニ苦ムノデアルソレヲ一ツ
伺ヒタイ〓若シ御〓究後ニ伺ッテ宜イコトナラ、次ノ日デモ宜シイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=84
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085・安藤亀太郎
○安藤龜太郞君(二十一一番) チヨット答辯シマスガ、理由書ニ在ル如ク試
監獄ハ一ノ學校ノヤウニ考ヘルカト云フ御問ヒノヤウデアルガ、花井君ノ
第一ノ御問ハ私ニハ分ラヌ、死刑ヲ執行スレバ犯人ノ生命ヲ絕ツ、故ニ懲戒
ト云フコトヲ達スルコトモ出來ズ、又監獄ニ於テ〓悔師ヲ置イテ、感化遷善ノ
途ヲ行ッテ居ル然ルニ其目的ヲ達スルコトガ出來ヌ、故ニ死刑ヲ執行シテ犯
人ノ生命ヲ絕ツコトハ不當デアルト申シタ而シテ又死刑ヲ適用スル場合
ハ豫謀熟慮ノ場合デナケレバナラヌト云フ御論デアルガ、然ルニ私共モ現
行刑法ニ於テナイト云フコトデハナイ明ニアルカラ御同感デアル併ナガ
ラ一時ノ感激トカ或ハ挑發トカ云フコトガ、多ク殺人罪ヲ起スコトニナルノ
デ唯一般ノ原因ヲ理由書ニ書イタト云フコトデアルカラ、アナタモ宜シク
御考ヲ願ヒタイト思フ
〔「委員付託」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=85
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086・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ニ附イテハ、委員九名ヲ議長ガ指名シテ御異議ハ
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=86
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087・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 然ラバ其通致シマス-議事日程第十一ニ移リマス、
菅野善右衞門君
〔花井卓藏君「議長、唯今ノ趣意ナラ私ハ反對ノ意見ヲ述ベル」ト呼フ〕
第十一鐵道列車災害豫防法案(菅野善右衞門君提第一讀會
〓〓
鐵道列車災害豫防法
第一條本法ハ官設鐵道及私設鐵道ニ適用ス
第二條遞信大臣及私設鐵道株式會社長ハ豫テ中央氣象臺ニ特約シ氣象ノ
劇變ニ關スル警報ヲ受ケタルトキハ鐵道職員ニ之ヲ通知スヘシ
第三條前條ノ警報アリタルトキハ保線長ハ保線手及其ノ以下ノ係員ニ運
輸長ハ驛長及運輸係員ニ車輛長ハ機關庫主任及其ノ以下ノ係員ニ之ヲ通
知スヘシ
第四條孰レノ場合ニ於テモ保線長ハ關係保線區ニ警報ヲ周知セシムヘキ
義務アルモノトス
第五條天候險惡ト爲リ又ハ現ニ暴風雨ニ際會シ若ハ其ノ他ノ災害ニ因リ
線路ノ安全ヲ保持スル必要ヲ認メタルトキハ晝夜ノ別ナク巡囘工夫ヲ增
員シ線路ノ巡囘ヲ嚴密ニシ非常ノ報知ヲ敏捷ニスヘシ
第六條隧道、橋梁、コルベルト切取其ノ他豫テ注意ヲ要スヘキ線路ニ
ハ特ニ工夫ヲ配置シテ之カ警戒ヲ爲サシム)>
第七條線路危險ニ陷リ又ハ現ニ故障ヲ生シ列車ノ安全ヲ保チ難シト認メ
タルトキハ現場警戒ノ工夫ハ最近ノ驛長若ハ其ノ前後ノ驛長及受持保線
手ニ報告ノ手續ヲナスヘシ但シ報〓ノ爲其ノ受持ノ場所ヲ離ルヘカラス
第八條前條ノ場合ニ於テ其ノ場所ヘ近寄リ來レル列車アルトキハ直ニ危
害合圖ヲ現示シ列車ノ運轉ヲ停止セシムヘシ
第九條非常警戒ニ從事セシムヘキ工夫ニハ豫テ合圖器取扱方法ヲ習熟セ
シムルヲ要ス
第十條運輸係員ニ於テ運輸長ヨリ暴風雨ノ警報ヲ受ケタルトキハ直ニ所
管內各驛ヲ警戒スヘシ
第十一條驛長ニ於テ運輸長又ハ運輸係員ヨリ警報ヲ受ケタルトキハ爾後
天候ノ模樣ニ注意シ必要ト認ムルトキハ左ノ各號ニ依リ臨機ノ處置ヲ爲
スヘシ但シ本文ノ處置ヲナシタルトキハ直ニ運輸長竝所管運輸係員ヘ其
ノ〓要ヲ報告スヘシ
一風力强暴ニシテ前途運轉危險ト認ムルトキハ列車ノ出發ヲ見合セ其
ノ線路異狀ナキコトヲ確メタル後ニ非サレハ出發セシムルコトヲ得
ス
二列車ノ車數ヲ成ルヘク減少シ空客貨車ヲ聯結スヘカラス但シ族客列
車ヲ減シタルトキハ主要驛ヘ其ノ旨ヲ通知スヘシ
三嚴客列車ニ賃車後附ヲ爲スヘカラス
「テツキ」附五十人乗形客車ヲ聯結スヘカラス
五四二車以上ニ跨ル貨物其ノ他輕量ニシテ巨大ノ物品ヲ積載シタル貨車
ヲ聯結スヘカラス
六風力烈シキ箇所ハ成ルヘク列車ノ速度ヲシテ均一ナラシメ又急ニ節
氣弇ヲ開キ若ハ制動機ヲ締結スルコトハ努テ之ヲ避クヘシ
前途見透シ難キ線路若ハ故障ノ疑アル線路ハ努テ徐行セシムヘシ
八七運轉危險ト認メタルトキハ成ルヘク切取其ノ他安全ナル箇所ニ避難
スヘシ若風力ヲ沮害スヘキ掩屏物ナク又ハ線路ノ狀態ニシテ進行上
危險ノ虞アリト認ムルトキハ機關手ハ後部車掌ニ對シ短急汽笛三聲
ノ合圖ヲ爲シ列車ヲ緊張シテ徐々停止セシムヘシ
第十二條運輸係員ニ於テ運輸長ヨリ警報ヲ受クルニ先チ天候不穩ノ徵ア
ルコトヲ知得シタルトキハ第十條ノ手續ヲ施行スルト同時ニ關係機關庫
主任ニ通知シ直ニ其ノ旨ヲ運輸長ニ報告スヘシ
驛長ニ於テ警報ヲ受クルニ先チ天候不穩ノ徵アルコトヲ知得シタルトキ
ハ第十一條ニ依リ臨機ノ處置ヲ爲シ直ニ其ノ旨ヲ運輸長竝運輸係員ニ報
告スルト同時ニ必要ト認ムル各驛竝關係機關庫主任ニ之ヲ通知スヘシ
第十三條機關庫主任ニ於テ車輛長運輸係員若ハ驛長ヨリ暴風雨ノ警報ヲ
受ケタルトキハ直ニ其ノ旨ヲ機關手ニ通知スヘシ但シ運輸係員若ハ驛長
ヨリ通知ヲ受ケタルトキハ其ノ旨ヲ車輛長ヘ報〓スヘ
第十四條驛長ハ各列車ノ車掌及機關手ニ暴風雨ノ警報アル旨發車前漏ナ
ク告知スヘシ
第十五條車掌及機關手ニ於テ警報ノ告知ヲ受ケタルトキハ運轉中必要ノ
場合ニ於テ臨機ノ處置ヲ誤マラサルコトニ注意スヘシ
第十六條暴風雨ノ警報其ノ他ノ報告ニハ電話ヲ以テ之ヲ爲スヘシ電話ナ
キトキハ電報ヲ以テシ左ノ略號ヲ用ウヘシ
第三條及第十條ノ場合ニ發スル電報ケイカイス
第十一條但書、第十二條第二項ノ報告及通知フオン
第十一條各號ノ場合セコウ
第十二條第一項ノ通知及報告ケイカイシタ
第十三條但書ノ報告ケイカイアリ
略號ノ外必要ノ事項ハ簡短ニ其ノ主ナル〓ヲ附記スヘシ
第十七條第二條、第三條(輛長ヲ除ク細麺屋定7長領域外籍)及第四條乃至第九條ニ違反シタルモ
ノハ百圓以上千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條第三條(保線長)及第十條乃至第十六條ニ違反シタルモノハ二百圓
ヲ除ク
以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十九條本法ニ規定スルモノノ外衝突、脫線、〓覆、失火、轢死、負傷
等ニ關スル豫防方法及列車發著時間取締方法其ノ他必要ナル規程ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
〔菅野善右衞門君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=87
-
088・菅野善右衞門
○菅野善右衞門君(一二十番) 此鐵道列車災害豫防法案提出ノ理由デゴザイマ
スガ此理由ハ理由書ニモ僅ニ書イテ置イタデハアリマスガ聊カ御參考ノ
タメニ、此法案提出ノ理由ヲ申上ゲヤウト思思マス、偖テ鐵道事變ノ近來
多イコトハ今更事新シクコヽデ皆サンニ申上ゲルマデモナク御承知ノコ
トデハアリマスガ實ニ斯ノ如ク近來鐵道事變ノ多イノハ實ハ鐵道ノ延長
ニ伴フ結果デハアルト思ヒマスケレドモ其實鐵道ノ事變ヲシテ豫防致シマ
ス所ノ規則ハゴザイマスケレドモ、之ヲ厲行致シマセヌ結果デアルト私ハ
思フデゴザイマス、例ヘバソレ〓〓報〓書抔ヲ見マスルト鐵道事變ヲシテ
天災地妖抔ニ歸セシメテ多ク報告シテゴザイマスガ其實深ク調査致シマ
スルト大抵鐵道職員ガ規則慣習ヲ遵守セズ、實ハ怠惰ニ歸スル者ガ多イデ
ゴザイマスソレデゴザイマスルノデ私ハ此法律ヲ設ケマシテ所謂現行
ノ規則令達ノヤウナモノヲ纏メテ一ノ法律ト爲シテ鐵道職員ニ遵奉セシ
メラレンコトヲ望ムノデゴザイマスソレデ鐵道ノ災害豫防ノ規則トカ達シ
トカ云フモノハドウ云フ風ニナッテ居ルカト云フテ十四議會ニ於テ政府
ニ質問致シタコトガゴザイマスガ其當時政府ハ其事ハ調査中デアル案ヲ
設ケテ調査中デアルト云フ答辯ヲシタ、ソレデ悉ク調ベテ見ルト、殘ラズ規
則ハ出來テ居ル、ソレヲドウ云フ都合デアルカ隱蔽サレテ一向厲行シテ居
ラナイ偖其規則ガドウ云フ規則カト云フト線路保安方、非常警戒心得ト
云フノモアリマス暴風雨ノ警報アルトキニ於ケル心得方ト云フノモアリマ
ス又氣象ニ關スル警報取扱手續ト云フノモアリマス又臺灣鐵道部ヨリ發
シマシタ暴風雨ノ際ニ於ケル列車運轉上ノ心得ト云フノモアリマス又昨
年八月デゴザイマシタカ作業局カラ出シタ運轉及信號取扱心得ト云フモア
リマス所ガ此等ヲ厲行シナイ有樣ハドウデアルカト云フト明治二十三年
五月デゴザイマシタカ山陽鐵道ノ機關手小林親明ト云フ者ヲ兵庫裁判所
ニ喚出シテ取調ベタ所ガ、暴風雨ノトキハ如何ナル列車運輸上ニ注意ヲ爲
サネバナラヌト云フ裁判官ノ問ニ對シテ彼レ曰ク暴風雨ノ際ニ列車ヲ運
轉スルニ附イテ、別段ノ注意ハイラナイノデアル例ヘバ線路ニ樹木倒レ電
柱橫ハルニアラザルヨリハ更ニ注意スルコトハナイト云フコトヲ、申立ッ
タノデゴザイマス非常ナ亂暴ナコトデハゴザイマセヌカ左樣ナコトハシ
テナラナイト云フ十分ニ注意ヲ爲サネバナラヌ種々ノ達シノアルニモ拘
ラズ機關手ガ裁判所ニ於テ斯ノ如キコトヲ申立ッテ居ルノデゴザイマス
其結果トシテ明治三十二年ニ、鐵道列車ノ吹飛バサレタル例ノ重ナルモノヲ
舉ゲマスルト、明治三十二年六月三十日ニ東海道線デ列車ガ吹飛バサレテ
七十八人バカリノ重輕傷者ヲ出シタノデゴザイマス又同年ノ八月二十八日
ニハ山陽鐵道デ列車ヲ吹飛バシマシテ負傷者ヲ出シタノデゴザイマス
其次ニ十月七日ニ日本鐵道會社デ列車ヲ吹飛バサレマシテ五十六人ノ死塲
者ヲ出シタノデアリマス丁度三度吹飛バサレタ結果トシテ百三十五人許
リノ死塲者ヲ出シテアルノデゴザイマスソレカラ又三十二年ノ鐵道ノタメ
ニ死傷是ガ幾ラアルカト云フコトヲ調ベテ見ルト二千百三十五人バカリ
ノ統計ニナッテ居ル斯ウナ有樣デアルノデ政府ガ茲ニ法律ヲ設ケテ厲
行爲サネバナラヌト思フノデゴザリマス御承知ノ如ク例ヘバ鳥類ノ如キモ
ノデモ、法律ヲ設ケテ保護シテ居ル或ハ獸類ノ如キモノデモ法律ヲ設ケ
テ保護シテ居ル又植物ノ如キモノデモ法律ヲ設ケテ保護シテ居ルノデゴ
ザイマス、玆ニ多クノ人命ヲ損傷セサルコトニ對シテ法律ノナイト云フコ
トハ私ハ奇怪ナコトデアルト思フ此問題ノ如キモノハ、進デ政府ガ議案ヲ
發シテ相當ナ法律ヲ設ケラレルノガ相當デアラウト思フケレドモ政府モ
亦一ノ鐵道營業者デゴザイマスタメニ、嚴重ナル法律ノ下ニ營業スルコトヲ、
好マナイノデアラウト思フノデアリマスソレ故是非滿堂諸君ノ御贊成ヲ得
マシテ、此災害豫防法ナルモノヲ法律トシテ、實行サレンコトヲ望ムノデゴザ
イマス、此案ノ如キモノハ、今申上ゲマシタ所ノ四ツ五ツノ規定ヲ綜合シタノ
デゴザイマスカラ、ドウゾ皆サンニ於キマシテ、宜シク御取調ノ上相當ノ
御決議アランコトヲ希望致シマス、尙ホ委シイコトハ委員會ニ於テデモ御
話申スコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=88
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089・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 委員付託ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=89
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090・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員付託ノ動議ガ出マシタ、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=90
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091・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ、此委員九名ヲ議長ガ指名シマシテ、
御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=91
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092・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、議事日程ノ第十二、鮫
島相政君
────◇─────
第十二私設鐵道新線路助成案提出ニ關スル建議案
(杉田定一君外十八名提出) (委員長報告）
〔鮫島相政君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=92
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093・鮫島相政
○鮫島相政君(二百七十五番) 本員ハ唯今議長ヨリ宣告ニナリマシタ、議事
日程第十二ニ現ハレテ居リマス所ノ問題ニ附イテ特別委員會ノ結果ヲ報告
致シマス、元來此私設鐵道新線路助成案提出ニ關スル建議案ナルモノハ前
期議會ニ於テ、殆ド滿場一致ノ勢ヲ以テ通過シタル、彼ノ私設鐵道新線路敷
設ニ對シ補給利子ヲ附與スル件ニ關スル建議ト云フ此建議ニ基イテ提出
サレタ所ノ建議案デゴザイマス、故ニ政府ガ前期議會ノ決議ニ依リマシテ、助
成案ナルモノヲ提出致シマスレバ重テ本案ノ如キ建議ヲ爲スノ必要ハナイ
ノデゴザリマスケレドモ、如何セン政府ハ今日ニ至ルマデノ間、何等ノ手續ヲ
モ爲サズ、又何等ノ協贊ヲモ求メナイノデアリマスル若シ之ヲ此儘ニ抛棄
シテ置キマスル日ニハ前期議會ニ於テ建議ヲ爲シテアリマスル所ノ、其目
的ナルモノハ何時實行スルコトガ出來ルヤラ更ニ分ラナイノミナラズ、
該建議ヲシテ空シク政府ノ蹂躙スル所ト爲ラシムルノ虞ガアルノデアルワ
レ故ニ已ムヲ得ズ重テ此建議案ガ現レマシタ次第デアリマス、而シテ前期
議會ニ於キマシテ建議致シマシタル所ノ精神ト申シマシテモ、德島鐵道延長
線ニ係ル四國ノ縱貫線ト函樽鐵道ト云フモノガ、重ナル建議ノ理由ト爲ッテ
居リマスルノデゴザイマスカラ、前期議會ヨリ今日ニ至ルマデノ間、何カ新
タナル反對ノ事實事由ガ發生シマセヌ限ハ此建議案ニ對シマシテハ朝三
暮四的前後矛盾的ノ議論ハ到底向ケラレナイ性質ノモノデアリマスルガ
故ニ、委員會ニ於キマシテモ、多少ノ質問等ハゴザイマシタガ、採決ノ場合ニ
於キマシテハ僅ニ一名ニ對スル八名ノ大多數ヲ以テ、原案ヲ可決致シマシ
タ其一名ノ議論ト申シマシテモ絕對的此建議案ニ反對ト云フノデハナイ
先ヅ此度ハ北海道鐵道ダケニ止メテ置イテ、四國縱貫線ノ如キモノハ、暫ク
待ッテモ差支ナカラウ故ニ四國縱貫線ニ關スル所ノ文字ダケヲ、此建議案ノ
中ヨリ削除致シタイト云フガ如キ議論デアッタノデアリマスルケレドモ、前申
シマス通ソレハ一名ノ御議論デ、其說ハ成立チマセナカッタノデゴザイマ
ス、又本員等モ提出者ノ一人デゴザイマスガ、本案ハ勿論感情問題ニアラズ、
又黨略問題ニアラズ、純然タル國家ノ利益問題デゴザイマスカラ前期議會
ニ於ケル建議ノ精神等ニ顧ミラレテ、滿場諸君ノ御贊成ヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=93
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094・小松喜平治
○小松喜平治君(二百番) 質問ガゴザイマス、唯今委員長ノ御報告ヲ伺ヒマ
スレバ此案ニゴザイマスル所ノ北海道及德島鐵道敷設ノコトデアリマス
ガ尤モ此他ニモ鐵道ノ急務ヲ要スルコトハ多々アラウト思ヒマスル就
中彼ノ舞鶴鎭守府ニ達スル京都鐵道ノ如キモノハ既ニ二期線デアッテ、特ニ
昨年鎭守府モ開設ニナッテアリマス今日ノコトデゴザイマスカラ急務中ノ
大急務ヲ要スルモノト考ヘマス是等ノコトニ對シマシテハ委員長ハ何等
カ御考ハゴザリマセヌカ(「問題外」ト呼フ者アリ)此案ニハ書イテアリマセヌ
ガ總テ諸般ニ亙ッテノ言論モアッタコトト考ヘマス一應御尋シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=94
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095・鮫島相政
○鮫島相政君(二百七十五番) 御答ヲ致シマスルガ、唯今御尋ノヤウナ事柄
ハ委員會ニ於キマシテハ、或ル議員ヨリノ質問ナドガ現レマシタコトデハ
ゴザイマスルガ、併ナガラソレ等ノ事ハ別ニ其決定ハ何モ致シタコトハゴザ
イマセヌ元來此唯今ノ此建議案ト申シマスモノハ曩ニ報告致シマシタ通
ニ前期議會ノ建議ニ依ッテ、提出致シマシタ議案デゴザイマスルノデ前
期議會ノ建議ノ精神ニ依リマスト云フト決シテ此四國鐵道ト北海道鐵道ト
限ッタノデハナイノデ、他ニ矢張今御尋ノ如キ處ノヤウナ鐵道モソレ〓〓此
兩鐵道ノ如キ準備ガ整ヒ程度ガ進ミマスレバ、勿論ヤル積ニ違ヒハナイト云
フ提出者ノ說明抔モアッタノデゴザイマス、左樣ニ御承知ヲ願ヒマス
〔降旗元太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=95
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096・降旗元太郎
○降旗元太郞君(五十番) 私ハ唯今鮫島君ノ御報告中ニゴザイマシタ、特別
委員會ニ於ケル唯一人異樣ノ議論ヲ唱ヘタ者デアルデ此問題ハ甚ダ鎖末ナ
取捨御決シニナルコトハ大早計デアラウト思フ私ノ申
一總統一切片心情タイト思ヒマス、全體私ハ此日本ノ鐵道ノ延長ヲ、
第一期ノ著手ヲ終リシモノトハ認メラレヌト云
、常ニ申シテ居ル一人デアルカラ、唯今四千哩ニモ延長ノ達セザル
現況ニ於テハ年々歲々諸君ト共ニ既ニ著手ヲシテ居ル一期線ノ工事ノ竣
功ヲ政府ニ迫リ、其他有ラユル鐵道ニ附イテノ調査ハ諸君ト共ニ年々歲々
シテ調査ノ結果ハ政府ニモソレヲ建議シタ場合モアッタノデゴザイマス、故
ニ此私設鐵道會社ガ國家重要ノ線路ニ著手ヲシテ居ッテ、ソレニ向ッテ國家ガ
助成ヲスルト云フコトヲ必シモ否認スルノデハナイノデゴザイマス、、併ナ
ガラ殆ド銀ト鉛トヲ接續シテ、總テニ均シク銀ノ價ヲ支拂ヘト迫ルガ如キ本
案ニ向ッテハ、贊成スルコトガ出來ナイノデゴザイマス故ニ此建議書ニ向ウ
テ私ハ修正ノ動議ヲ提出スル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=96
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097・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 修正說デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=97
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098・降旗元太郎
○降旗元太郞君(五十番) サウデス、要ハ德島鐵道延長線ニ關スルコト
ヲ是ヨリ削除シヤウト云フノデゴザイマス故ニ文章ノ上カラ申シマス
ト建議書ニ記載シテゴザイマスル「北海道鐵道」ト云ヘル文字ノ下デ「及
四國縱貫線ナル德島鐵道延長」ト云ヘル十四交字ヲ削除スレバ私ノ意ハ徹
底スルノデゴザイマス、デ何故ニ此ノ如キ修正ノ動議ヲ提出スルカト云ヘ
バ先刻鮫島君ノ演說中ニゴザイマシタ前期議會ニ於テ國家必要ノ鐵道
線路ヲバ政府ガ一日モ速ニ敷設ヲシ、若クバ私設鐵道會社ヲ助成シテ
ナリトモ完成ヲ期セナケレバナラヌト云フ我衆議院ノ院議ナルガ故ニ、之
ヲ此院議ニ基ケル此建議案ト云フモノヲバ、當期議會ニ於テモ、亦吾〓一
同ハ贊成シナケレバナラヌモノヽ如ク言ハレマシタケレドモ末段ニ鮫島
君自ラ辯明セラルヽガ如ク、此二ヲノ鐵道會社ニ向ッテ助成ヲセヨト云フコ
トハ前期議會ニ於テ諸君ガ共ニ決議セル幾多ノモノヽ中デ、此二ツノモ
ノハ特ニ緊急拾置クベカラザルモノナルガ故ニ此二ツニ向ッテ助成セヨト
云フコトヲ迫ルノデアルト鮫島君自身ガ說明セラルヽ言葉ニ依ッテ明白デ
アル此言葉ノ精神ニ本員ハ基イテ、此北海道鐵道及德島鐵道ト云ヘル二ツ
ノモノニ就イテ最モ急且ツ要ナル北海道ニ向ッテノ助成ヲ政府ニ建議シ
テ比較的急且ツ要ナラザル德島鐵道、尙ホ言葉ヲ詳シク申シマスルナラ
バ德島鐵道ヨリモ尙ホ且急要ナル線路ガ、幾ツモゴザイマスノデゴザイマ
スカラ、ソレ等ノ線路ニ向ッテ、政府ガソレ〓〓財政計畫ヲ立テヽ自ラ建設
スルナリ又ハ其ノ他ノ方法ヲ取ルナリ此德島鐵道ヨリモ急且ツ要ナルモノ
ニ、向ッテ、適當ノ經營ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ信ズルガタメニ、比較
的急且ツイナラザル德島鐵道ヲ、此中ヨリ除カウト一云フノデ、卽チ鮫島君ガ
此案ニ向ッテ說明セラレタル精神ヲ、最モ明白ニ且ツ適確ニスルガタメニ
斯ク修正シナケレバナラヌト申スノデゴザイマス、ソンナラバ北海鐵道ハ何
故ニ其通ニ大切デアルカ、急要デアルカト言ヒマスルト、云フト御承知ノ
如ク北海ニゴザイマス第七師團ト要塞トノ聯絡ヲ付クルニモ此函樽鐵道
デアル而シテ西伯利亞東岸ニ於ケル漁業、工業、貿易、諸會社ガ、追〓ニ拵
ヘラレテ參リマスルケレドモ是等ノモノト日本トノ聯絡ヲ附ケルガタメ
ノ航海線路ハ露西亞政府ニ於テモソレ〓〓著手セラレツヽアルノデアル
我帝國ニ於テモ亦之ニ對シテ對シテツレ〓〓ノ經營ヲ目下忽ニスベカラズ
ト朝野共ニ叫ンデ居ル時デアル、此西伯利亞東岸トノ聯絡ヲ附ケル小樽函
館ノ港ノ間ヲ內ニ在ッテ最モ適切ニ聯絡ヲ附ケテ、貨物ノ集〓其他萬般ノ
中樞ニナルモノハ此函樽鐵道デアルノデゴザイマス、而シテ此鐵道ノ沿道
百五十哩中ニゴザイマスル沃野數百町步ノ開墾ハ、現在ノ農業ノ發達シタ
卽チ農產物ノ增加シタ有樣カラ見マシテモ人口戶數ノ同時ニ益〓增加シテ
參リマスル實況ニ照シテモ沿道ニゴザイマスル良鑛良材ノ多々ナルコトニ
照シテ見マシテモ此北海鐵道ノ利ハ、國防上カラモ、對外通商上カラモ
富源開拓ノ上カラモ一日モ捨置クベカラザル急要ノモノデアルノデアル
之ニ反シテ德島鐵道ヲ見マスルト云フト前モ申上ゲル如ク、前期議會
ニ於テ吾ミガ政府ニ向ッテ、一日モ捨テ置ケザルモノトシテ建議シタ其幾
多ノモノ二三十ノモノヽ中ニ於テハ、比較的劣等ナルモノデアル、若シ
此德島鐵道ニ向ッテ助成ヲスルト云フコトニ相成ッタナラバ、此德島鐵道ト同
ジ位ノ必要ナ程度ノ線路、及是ヨリモ急且ツ要ナル鐵道線路ニ向ッテ、各數
府ノ利子ノ補給ヲ目的トシテ會社ヲ設立シテサウシテ同樣ニ政府之ニ對シ
テ補給ノ豫算案ヲ提出シロト云ッテ議場ニ向ッテ要求スルモノガ二三十
アッタナラバ諸君ハ悉ク二三十贊成シヤウトスルカ若シ左樣ニ致シタ
ナラバ其財源ハ何レノ所ニ求メヤウトスルカ、是ハ殆ド未必ノコトヲ豫想
シテ申上グル如ク御聽取ガアルカモ知ラヌケレドモ斯ノ如キ線路ニ向ツ
テ、玆ニ衆議院ガ決議シテ、政府ニ補給利子ノ豫算ヲ提出セヨト云フコトヲ
迫ル場合ニ於テハ此他ノ線路ニ於テ、同等若クハ是以上ノ線路ヨリ續々
利子ノ補給ヲ目的トシテ請願シテ來ルモノガ出來ルト、私ハ信ズルノデアル
故ニ此德島鐵道ハ、此建議案中ヨリ削除シタイト云フノデゴザイマスケレド
モ更ニ私ハ一步進ンデ、日本ノ現在ノ鐵道經營ノ方針ニ附イテ一言ヲシタ
イト思フ、何故ナレバ現在ノ鐵道經營ノタメニ要スル年々歲々ノ費額ハ、非常
ナモノデアルニモ拘ラズ、其經營ノ方針ト云フモノハ殆ド今日立ッテ居ル
カ居ラヌカ分ラヌ實況デアル試ニ思ヘ鐵道敷設法中ニ規定シテゴザイマス
ル第一期線路ト云フ七ツノ線路ニ向ッテハ先キニハ六千万圓ノ公債ヲ募
集シテ、此七ツノ線路ノ工事ヲ完成スルト期シテ居ッテ、法律ノ明文之ヲ明
ニ記シテ置イタニモ拘ラズ、遂ニ前期議會ニ於テハ、此六千万圓ヲ九千五百万
圓ト改正セザルヲ得ナクナッテ來タノデアル何トナラバ追ミ年々使ヒ拂ッテ
來ル若シ之ニ追加豫算卽チ六千万圓ニ對シテ、三千五百万圓ノ追加豫算
ヲ、議會デ決議シナカッタモノナラバ七ツノ線路ノ工事ヲ一時中止シナケ
レバナラヌト云フコトニ相成タタ實況デアッタカラデアル、ソレナラバ此九
千五百万圓ト前期議會デ修正サレタル金額ニ依ッテ、一期線ノ七ツノ線路ヲ
悉ク完成シ得ルノカト云フトサウデナイ、政府ハ明ニ前期議會ニ於テモ
前々期議會ニ於テモ吾ミノ質問ニ答ヘテ、明ニ速記錄中ニモ記シテアル
デハゴザイマセヌカ、此九千五百万圓ニテハ、尙ホ二千八百七十万圓不足シ
テ居ルト云フコトヲ、明言シテ居ルデハゴザイマセヌカ而シテ此二千八百
七十万圓ト云フモノヽ追加豫算ハ未ダ帝國議會ノ協贊ヲ經テ居ラナイノ
デアル法律ノ明文ニモ載セラレテ居ラヌノデアルソンナラバ此二千八百
七十万圓ダケノ工事ハセズニ途中ヘ往ッテ七ツノ線路共ニ隧道ヲ掘掛ケ
テソレデ工事ヲ止メテシマッテ其沿道十數哩ノ線路ハ無用ニ歸セシムル
ノカト言ヘバ斯ノ如キ馬鹿氣タルコトハ政府モ議會モ共ニ見遁シテ置カ
レル筈ガナイカラシテ是非共是ダケノ追加豫算ハ本院之ヲ協定シテサ
ウシテ政府ヲシテ其工事ノ進行ヲ圖ラナケレバナラヌ筈デゴザイマスルノ
ニソレモ一ツモ出來テ居ナイト云フノガ實況デアル加之此一期線ノ外
ニ先刻ドナタカラカシテ、鮫島君ニ質問セラレタル舞鶴軍港鎮守府ノ京
阪トノ聯絡線デアル福知山カラ先キノ阪鸛鐵道線及園部カラ先キノ京鶴
鐵道線、是ハ最初兩鐵道會社カラシテ政府ニ向ッテ鎭守府トノ聯絡ヲ附ケ
ル大切ノ、國家軍防上一日モ忽ニスベカラザル線路ナルガ故ニ、會社ニ向ッテ
利子ノ補給ヲ求メタ所ガ、政府ハ之ニ對シテ、私設鐵道會社ヘ利子ノ補給
ヲセズトモ政府自ラ是ニ向ッテ線路ヲ敷設シナケレバナラヌカラ相當ノ
價額ヲ以テ此私設鐵道會社ノ線路ヲ買上ゲテ、未設ノ部分ハ政府自ラ之ヲ數
設スルト云フコトノ方針ニ依ッテ、今ノ願書ヲ却下サレタト云フコトヲ承タテ
居ル、然ルニ斯クマデ大切ナル此舞鶴鎭守府ノ聯絡ト云フモノハ、今日如何
ナル實況ニナッテ居ルカト云フト政府ハ此十五議會ニ於テ貴衆兩院
此敷設費ニ關スル豫算案ヲ提出シヤウト云フノデアッテ、提出ニ關スル書類
等ハ完備シタト傳ヘ承ッテ居リマシタケレドモ、貴族院ニ於テ增稅問題ガヤ
カマシカッタヽメデアラウカナカラウカ、其前後ヨリ遂ニ是ハ消ヘテ提出
ニ相成ラナカッタノデゴザイマス而シテ今期議會ニ於テ今ニ至ルマデ是
ヲ提出サレテ居ラナイ加之モウ一ツ北陸線ト北越線トノ間ヲ接續スル富山
直江津線、是ハ政府ハ當初ヨリ殖產興業上ニ於テ緊急捨置クベカラザルモ
ノデアル、是ハ既定一期線ト同樣ノモノデアルト云フコトヲ、明言サレテ居ツ
タノデアル而シテ吾〓一同モ亦此政府ノ明言スル通ニ信ジテ居ッタノデ
アル、而シテ政府ハ前ノ舞鶴ノ聯絡線ト共ニ十五議會ノ末ニ於テ、追加豫
算案トシテ本院ニ提出スベク、總テノ順序ヲ立テラレタト云フコトヲ傳ヘ承ク
テ居ル、此富山直江津線ニ對スル政府ノ現在ノ狀況ハドウデアルカト云フト、
吾ミノ曾テ受取リシ豫算中ニ出テ居ナイ而シテ諸君ノ口ヨリ未ダ之ニ對シ
テ打捨テ置クベカラズト云フ言葉ヲ聞イタコトガナイノデアル斯ルコトハ
政府ノ曾テ調査セル所、卽チ軍備上ニ於テモ、殖產興業上ニ於テモ一日モ捨
テ置クベガラズト言ヒシ言葉ガ誤リナラザリセバ是ノ緊急捨テ置クベカラ
ザルコトハ今日尙ホ昨日ノ如キデアラウト信ズルノデアル、而シテ之ニ對シ
テハ一ノ經綸ガナイノデアル加之前ニ申シマスル如ク、此鐵道敷設法ニ
依ッテ經營セラレテ居ル第一期線ト云フモノガ、最初ハ六千万圓ノ豫算デアツ
テ、之ヲ明治二十六年度ヨリ明治三十七年度マデノ間ニ竣工スルト云フノデ、
各年度割ガ殘ラズ出來テ居ッタ所ガ、是ハ皆當初ノ見積リ通デ、成功ガ出來ナ
イノデアッテ、現ニ九千五百万圓ニ增シテ、尙ホ今日二千八百七十万圓ノ不足
ガアルト云フコトデアリマスカラ、年々追加豫算ヲ政府ガ提出スル而シテ議
院カラモ是ニ對スル助成ノ意見ガ出ル、故ニ一番初ニ定ッテ居ル豫算年度割ノ
表トソレカラシテ是マデニ於ケル大藏省ノ決算ノ表トヲ比ベテ見マスルト
殆ド豫算ト決算トノ對照ガ極メテ不明瞭ナルカノ如クニ、一見見エルヤウニ
相成ッテ居ル加之追加豫算ガ始終提出サレテ、ソレガ必シモ通過シテ、其通工
事ガ進行サレテ居ルカト云フト或ル年度ニ於テ工事ヲ中止スルト云フヤウ
ナコトモアリサウシテ其年度ノ工費ヲ翌年ニ繰下ゲルト云フヤウナコトモ
アッテ、其間ニ始終日本帝國ガ國家ノ現況已ムベカラザル必要上敷設スル所
ノ、鐵道經營ノ費用ト云フモノガ年々同ジ程度ニ往シテ居ラヌノデゴザイマ
ス國力ニ伴ヒ、國家財政ノ實況ニ伴ウテ、鐵道敷設ノ費用ヲ支出スルト云フ
ナラバ豫算ニ於テハ各年度ニ亙ッテ凡ソノ國力ニ應ズル見積リ金額ダケ
ガ略〓標準ヲ失ハザルヤウニ出テ居ッテ而シテ決算表ニ其通現レデ來ナケレ
バナラヌノガ實際ノ狀況ガ其通ニナッテ居ラヌト云フ有樣ニナッテ居リ
マス故ニ若シ諸君ガ財政紊亂ト呼ブナラバ所謂財政ノ整理此邊ヨリ著手
セナケレバナラヌ筈ト私ハ信ズルノデゴザイマス然ルニ此財政紊亂ヲ呌ン
デ、財政整理ヲシナケレバナラヌト云フ所謂財政整理委員會ナルモノハ
近日政府ニ於テ設ケラレルト云フコトデアルケレドモ國民ノ聲ヲ代表セル
此財政紊亂ト叫ブ聲ヲ出セル諸君ノ口デ、他ノ方面ニ向ッテ如何樣ナル舉
動ヲシテ居ルカト云ヘバ前期議會ニ於テ諸君ガ此鐵道敷設法改正案ヲ提出
シテ政府ニ建議セラレタル所ノ內容ニ附イテ之ヲ調べテ見マスルト云フト
諸君ガ此線モ敷設法中ニ加ヘナケレバナラヌ此線モ加ヘナケレバナラヌ
此線モ加ヘルト云フコトヲ、殘ラズ合スルト云フト殆ド五億万圓ノ金ヲ費
サナケレバ諸君ノ集リニ依ッテ、サウシテ鐵道敷設法ヲ改正シヤウト云フ
所謂建議案ノ總テノ線路ノ工事ヲ完成スルト云フコトハ出來ヌト云フノ
ガ其內容デアル他ニ向ッテ財政ノ紊亂ヲ呌ブ諸君ノ口ハ他ノ側面ニ
向ッテ斯ノ如キ要求ヲ政府ニナサレルナラバ此五億万圓ノ財源ヲ何レノ所
ニ於テカ定メテ置イテ此要求ヲシナケレバナラヌ筈ト私ハ信ズル斯ノ如
タ思ヒ來レバ本員亦此鐵道問題ニ熱中スル上カラシテ、特ニ自ラ顯ミテ、
心ニ愧ヅル所ナカラント欲スルモ得ナイノガ、吾ミノ心情デアル而シテ國
家ノ現狀ニ對スル眞ノ觀察デアル、斯ノ如キ有樣デゴザイマスルガ故ニ、吾ミ
ハ總テ國家ノ經營シヤウト思フ鐵道ノ延長ニ附イテハ冒頭ニモ申ス如ク、
一万二三千哩マデハドウシテモ仕上ゲナケレバ、鐵道工事ノ第一期ハ終リシ
モノトハ云ヘヌト云フ大體ニ於テハ考ヲ持ッテ居ルガ故ニ政府ニ向ッテ
此鐵道經營ノ方針ヲ、是ミノ線路デ出來ナケレバナラヌト云フコトヲ建議ス
ルノハ宜シイデ、又此經營ノ方針ヲ吾〓御互ガ〓究モシ調査ヲスルノハ宜シ
イ宜シイレケドモ目前此年度ニ於テ、是ダケノコトヲ斯クセネバナラヌト
云フニ附イテハ、自ラ緩急ニ依ッテ取捨ヲ決サナゲレバナラヌ筈ト私ハ信ズ
n然ルニ世間デハ此吾〓ノ席ヲ占メテ居ル、衆議院ニ於ケル舉動、若シ一步
ヲ誤ルト云フト近來ノ如ク極テ散漫ナル計畫ニ依ッテ、、現在直チニ私設鐵道
會社ノ線路ヲ買上グルト云フ所謂鐵道國有論者モ思ノ外ニ、現在ノ經濟社
會ヲ控ヘテ居ル現在ノ財政ノ實況デアル政府ニ向ッテ迫ルサヘ此ノ如キ
モノガ顯レル責ムル罪ハ諸君ト共ニ自ラ顧ミナケレバナラヌコトガアル筈
ト私ハ信ズル、故ニ私ハ此案ニ向ッテ、先ニモ申ス如クニ修正ヲシヤウト云フ
コトヲ申スノデゴザイマス然ルニ先刻モ他ノ場所ニ於テ、或ル者ガ私ニ向ク
テ云フノニ、是ハ建議案ダカラ宜イヂヤナイカ若シ政府ニ於テ何レヲ取ラ
ウガ何レヲ拾テヤウガ、構ハヌヂヤナイカト云フコトヲ言ハレタ人ガアル
若シ此ノ如キ誤リヲ吾ミノ中ノ一人デ申シマスレバ、大ニ警醒シナケレバナ
ラヌト私ハ信ズル、吾ミガ國家ノタメニ是ハ打捨置ケヌカラ斯クセヨト、政
府ニ向ッテ建議スルモノニ向ッテ此中ニハ惡ルイ者ガアルカモ知レナイ、其取
捨ハ政府ガ御隨意ニナサイト云フガ如キ取捨ノ權ヲ政府ニ任セテ、吾と
ハ御參考ノタメニ陳情ヲスルト云フガ如キ微弱ナル此衆議院ノ決議トシ
テ、政府ニ送付スル必要ハアルマイト信ズル苟モ吾ミガ決定シテ政府ニ
送付スル以上ハ、政府ヲシテ斯ク爲サネバナラヌト信賴セシメルモノダケヲ、
精細適確ノモノヲ送付シナケレバナラヌモノト私ハ信ズル、故ニ私ハ前ニモ
申述べマスル如ク國防上ニ於テモ對外通商上ニ於テモ富源拓殖ノ上ニ於
テモ一日モ捨置クベカラザルモノ卽チ北海道鐵道ノ補給ハ政府一日モ
忽ニセズニ、斷然豫算案ヲ此貴衆兩院ニ提出セヨト卽チ信賴スベキ建議ニ
依ヲノ政府ニ迫リ、而シテ比較的此北海道鐵道ニ對シテハ無論ノコト此
案ニ顯レザル他ノ總テノモノヽ中ニ又德島鐵道ヨリ優ルモノ德島鐵
道ニ附イテハ玆ニ贊成シテ、政府ニ向クテ其精細適確ナルモノヽ中ニ在ツ
テ、惑ヲ生ゼシメナイヤウニシタイト云フノガ本員ノ精神デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=98
-
099・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 高木君ニ御尋ネ致シマスガ、高木君ハ反對デスカ、修
正論デスカ反對ナレバ登壇ヲ許シス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=99
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100・高木正年
○高木正年君(二百五十三番) 反對デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=100
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101・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 高木君ニ發言ヲ許シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=101
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102・高木正年
○高木正年君(二百五十三番) 私ハ唯今降旗君ノ反對意見ガアルト云フノ
デ、演說ヲ止メル考デアリマシタ唯今承リマスト降旗君ノ御論ハ修正說
デ詰リ二讀會デ承ルコトヽ思ッテ居リマシタソレ故ニ巳ムヲ得ズ當席
ヨリ極ク簡單ニ自分ノ反對ノ趣意ヲ辯明シタク思ヒマス、一體當議會ニ此ノ
如キ建議案ノ出ルト云フノハ如何ニモ私ハ不可思議ニ感ズルノデアリマス、
當議會ニ於テ豫算案ニ對スル諸君ノ決定セラレタ御意見ハドウデアルカト
云フト事實ニ於テハ隨分無理ナル減額モ爲シテ居ルノデアリマス彼ノ裁
判官ノ神聖ヲ有タシメルタメニ增給スベキ必要アル判官ノ俸給モ之ヲ減
額シテ忍ンデ居ルデハゴザイマセヌカ、國民ノ生活ノ上ヨリ增給スベキ、彼ノ
判任官ノ俸給モ唯今申スト同樣ナ次第デ、本年ハ堪ヘテ居ル次第デゴザイマ
ス今一ツ申シタナラバ、當議會ノ大部分ノ方ミガ、目下國ノ經濟ノ遺繰ノ
上ニ附イテ、懸念ヲ懷イテ〓國債券ノ價格ヲ減少シ其議論ノ上カラ申シ
タナラバ、尙ホ七十圓ハ高シ七十圓デハマダ安心スルコトガ出來ヌト云フ、
御議論ニナラネバナラヌノデアリマス、他方ニ於テハ議會ノ經過ガ既ニ此ノ
如ク財政ノ上ニ附イテ懸念ヲシテ居ルト同時ニ、又一方ニ於テハ所謂財政
行政ノ整理ヲ俟ツベシ是ハ必要デアルト云ウテ諸君ガ之ヲ條件ニシテ、
豫算案ヲ通過シテ居ルデハゴザイマセヌカ然ルニ不思議ニモ是ト同時ニ私
設鐵道補助法案等ノ出ルト云フノハ如何ニモ私ハ怪訝ニ堪ヘヌノデアリマ
ス凡ソ當議會ニ於テ最モ緊急ナル事柄トシテ諸君ノ熱中セラレルノハ何
デアルカト云フト此頃ノ日程ニ載ッテ居ル所ノ、大學問題デアル、諸君ノ希
望ハ誠ニ結構デアルガ、種々ノ希望ヲセラレテ、所謂提出案ガ他ノ提出案ヲ殺
スト云フモノハ、如何ニモ下體裁ノコトデアッテ、而モ諸君ノ御意思ニ附イテ、
疑ヲ懷カナケレバナラヌノデアリマス、若シ諸君ガ東北大學ノ設置ガ必要デ
アッテ、建議ヲ爲スト云フナラバ是モ甚ダ前途危キコトデアル政府ハ近
キ將來ニ於テ施設スルト云フ、是モ甚ダ根據ナイコトヽ思ッテ居リマスガ斯
ル危キ運命ノ中ニ是非トモ東北大學ヲ建テナケレバナラヌト云フ議會ノ御
方針デアルナラバ、其他障害ト爲ルベキ財政ノ上ニ起ル問題ハ成ルベク後囘
シニシナケレバナラヌト云フコトハ相當ノ順序デアリマス且ツ鐵道ノコ
トニ附イテハ降旗君ヨリ詳シク〓ヲ受ケタノデアリマス降旗君ハ北海道
ノ鐵道ハ補助スベキ必要ガアル、成ル程其通デアラウト思ヒマスガ私ハ全
然之ヲ廢スト云フノハ姑ク斯樣ナコトハ整理ノ後ヲ俟ツベシト云フノデゴ
ザイマス降旗君ガ引證セラレタ所ノ御議論ノ中ニ北海道ヨリハモツト急
務ナ鐵道ヲ政府ガヤラヌト云フコトヲ攻擊セラレタガ、此議論ハ卽チ北海道
ヲ、今日直ニ補助スル必要ガナイト云フ解釋ニナルト私ハ思ヒマス彼ノ北海
道ノ鐵道ハ師團ト鎭守府トノ間ノ連絡上、必要ガアルト申サレマシタガ降
旗君ガ引證セラレタ所ハ舞鶴鎭守府ト既ニ出來上ッタ鎭守府ト京都ノ鐵道
トノ連絡サヘ出來ナイ今日デアリマス北海道ノ鎮守府、必要デアッテモ未ダ
形モ今日出來テ居ラヌノデアリマス、一體斯樣ナ補助ヲ爲ス上ニ附イテハ成
ルベク水平ニ成ルベク公平ニ、總テノ鐵道ヲ調査シ、總テノ方針ヲ一定シテ
補助スベキ必要ガアルナラバ其時ニ爲スベキガ相當ノ順序デアリマス以
上申上ゲタ理由ニ依ッテ此案ヲ全然廢棄セラレンコトヲ希望致シマス
〔山本幸彥君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=102
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103・山本幸彦
○山本幸彥君(二百二十六番) 私ハ贊成演說ヲ致シマス、實ハ今日ハ此案ニ
附イテ贊成演說ヲスル考モナカッタノデアリマスガ唯今降旗君カラ修正
說ガ出マシテ尙ホ續イテ高木君カラ反對說ガ出マシタ故ニ簡短ニ贊成ノ
演說ヲ致シマス私モ此案ノ提出者ノ一人デアリマスガ、案ノ必要ナコトハ
先刻委員長ノ報告ニ於テ具サニ述ベラレタノデアリマス又北海道ノ鐵道或
ハ四國ノ縱貫線ノ如キモノヽ必要ハ旣ニ法律ニ揭グテアル譯デアリマシテ
尙更此必要ヲ申述ベル要モナイト信ジマス故ニ左樣ナコトハ申サナイノ
デアリマス降旗君ハ長ク縷々述ベラレタノデアリマシテ半バ以後ノ演說
ニ於テハ總テ此案ニ反對ヲセラルヽ如キ御演說ノ如ク聽エタノデアリマス
ガ、然ルニ御精神ハ四國縱貫線ト云フノヲ削除シテ、サウシテ北海道ノ鐵道ノ
ミニ助成ヲスルト云フ意見ノ如クニ、聽取ラレタノデゴザリマス、要スルニ降
旗君ノ御意見ハ絕對ニ此案ニ反對デナクシテ唯程度ニ於テ四國ノ線路ヲ
後トニ囘スモ差支ナイダラウト云フ意味ヨリ、削除セラルヽコトデアラウト
考ヘマス然ルニ私ノ考デハ、北海道ノ線路ハ必要デアッテ、比較的四國ノ線
路ハ不急デアルト云フコトハ、私ニハ了解ガ出來ナイ、北海道線路ニ附イテ
必要ナル〓ハ或ハ師團ノ連絡トカ、又ハ西比利亞鐵道ノ連絡トカ、或ハ拓
殖上ノ必要カラ緊急ノモノデアルト云フノ御意見デアリマシタガ、私抔モ
卽チ降旗君ノ御說ノ通ニ、北海道ノ鐵道ハ斯樣ナ條件ヨリ最モ急ナルモノト
認メルノデアリマス然ルニ之ト同時ニ、四國ノ縱貫線ノ如キモ亦同樣ナ
必要ヲ感ジテ居ルノデアリマス、デ四國ノ縱貫線ノ必要ヲ感ズルノト、北海道
ノ鐵道ノ必要ヲ感ズルノトハ、原因ヲ繹ネマスレバ、土地ガ御承知ノ通、北海
道ハ拓殖ヲ今日盛ンニ行ハナケレバナラヌト云フ場所デアリ、又四國ノ如キ
ハ島國トハ雖モ、內地ト同樣總テノコトガ行レテ居ル場所デアリマス、故ニ趣
キヲ異ニシテ居ル、故ニ必要ヲ感ズル原素ヲモ或ハ違フカモ知レマセヌ、其〓
ニ於テハ違フカ知リマセヌガ、國家カラ見テ鐵道ヲ敷設センナラヌト云フ緩
急ニ於テハ、毫モ私ハ差異ノアルコトヲ認メナイノデアリマス、物ハ比較デ
アリマス、卽チ降旗君ノ北海道ト四國トノ比較ヨリ、四國ハ北海道ヨリハ急ナ
ラザルモノデアルト云フノ論定ノ如クニ見エマスサスレバ私モ四國ヲ以テ
他ニ比較ヲシテ一言申上ゲテ見タイ、鐵道ハ今日誠ニ法律ニ揭ゲテアルガ如
キ物ニ對シテモ、未ダ其進行ハ遲々トシテ進マナイ誠ニ私共遺憾トスル所デ
アリマスガ、然ルニ今日內地ニ於テハ凡ソ大動脈トモ爲ルベキ所ハ殆ド
敷設セラレテ居ルト言ッテ宜シイ尙ホ敷設セラレザル所モ著々步ヲ進メテ
敷設シツヽアル、尙ホ將ニ敷設セントスル場合ニ立至ッテ居ルト申シテモ
宜カラウト思ヒマス四國ノ如キハ諸君モ御承知ノ通、彼處ノ線路ハ總テ二
期線ニ置カレテアル、故ニ未ダ國家ガ之ニ著手ヲスル場合ニハ立至ッテ居
ラヌノデアリマス一期線スラモ未ダ著手ノ出來ナイ場所モアリマス故
ニ二期線マデモ著手スルト云フコトハマダ〓〓餘程先キノコトデアラウト
信ジテ居リマス然ルニ四國ノコトヲ申シマスレバ凡ソ四國ノ面積ハドレ程
アルト云フコトヲ御承知ニナッテ居リマセウ、私ノ見ル所デハ面積ハ凡
ソ幾ラデアリマスカ一千方里程アルト見テ居リマス、之ヲ九州ニ比較シテ見
マスレバ、九州ハ先ヅ倍トシテ見テ宜シイ然ルニ之ヲ山陰ニ比較ヲシテ見マ
セウ鳥取島根ノ如キ所ニ比較ヲシテ見マスレバ四國ノ面積ヨリハ殆ド半
分ニシテ當ラヌノデアリマス或ハ人口ニ於テモ丁度其比例ヲ爲シテ居ル
四國ノ三百万ノ人口ヲ有シテ居レバ九州ハ六百万ノ人口ヲ有シテ居ル又
山陰ニ於テハ二百万足ラズノ人口シカ、有シテ居ラヌト云フコトニナッテ居
リマス商業若クバ物產ノコトニ附イテハ詳シキ調ベヲ持ッテ居リマセヌ
故ニ今諸君ノ前ニ御披露ハ出來マセヌガ、四國ハ島トハ云ヘドモ、總テノ
事物ハ內地同樣ニ、今日マデ發達ヲシテ居ルト云フコトハ私ガ四國ノ者ニ
シテ親シク知ッテ居ッテ、此處デ申上ゲルノデアリマス、唯島ト云フ海ヲ渡ッ
テ行クト云フ地位ニ在ルノミデ、總テ萬般人文ノコトカラ〓育ノコトカラサ
ウシテ事業ノコトカラ、總テノコトガ內地ト大差ハナイト云フコトヲ、私ハ
信ジテ居リマス、是ハ內地ニ比較シテ見マスレバ四國程ノ人口ヲ有チ、若ク
ハ國ノ稅ヲ拂フ、卽チ國稅ノ上カラ見テモ殆ド五百万以上ノ國稅ヲモ拂ッ
テ居リ、人家ノ稠密ナルコトハ、今申上ゲル通ノモノデアル萬般ノコトガソ
レニ準ジテ、今日ノ形勢デアルニモ拘ラス內地ト比較シテ見マスレバ斯
ノ如キ所ニハ必ヤ鐵道ヲ國家ガ敷イテアル、又未ダ落成セザル所ノモノハ
將ニ之ヲ落成セントスル場合ニ至ッテ居ル尙ホ落成セザルモ、是ニ附イテ
ハ將ニ著手セントスル場合ニ至ッテ居ル、唯今日ハ島國デアルト云フコトヽ
一ツハ鐵道敷設法ニ於テ二期線デアルガタメニ、鐵道ノ思澤ヲ蒙ラナイト云
マデヽアル、尤モ鐵道ノ敷設法ハ、最早十箇年前ニ制定セラレタルモノデアリ
マシテ其當時ニハ師團ガ此地ニハ置イテナイ、殆ド國防ノ上カラ言ヘバ
防禦線外ニ置カレテ居ッタト云フガ如キ有樣デアッタガタメ且ツ又諸君ノ
前デモ四國ト云フコトガ、今日程知ラレテ居ナカッタ程デアラウト考ヘマス
n、總テ四國ノ線路ハ二期線ニナッテ居ルノデアリマス併ナガラ今日ハ四
國ニ師團ガ置カレテアル其外ノコトハ前ニ申上ゲル通ノ關係ニナッテ居ル
ノデアッテ若シモ今日敷設法ヲ制定スル場合デアッタナラバ吾ミノ信ズ
ル所デハ必ヤ山陰道ノ如キ所トハ同一ニ必ズ一期線ニ制定セラレテ居〃
タコトデアラウト思フ、此箇條ニ附イテ四國線路ガ必要デアル、何ニ附イテ必
要デアルト云フコトハ別ニ申上ゲマセヌガ、大體ノ形勢ヨリ御覽下サルナ
ラバ、內地ト同樣ニ必要デアルト云フコトヲ、御承知下サルコトガ出來易カラ
ウト思ヒマス故ニ私共ハ北海道ノ必要ヲ認メルト同時ニ、四國縱貫線ノ助成
ノ必要ヲ認メテ居ルノデアリマスノデ、此建議ヲ提出シテ差出シタ譯デアリ
マスル、斯樣ナ譯デアリマスル故ニ此案ヲ無論贊成致シマスルト同時ニ、四
國ト北海道ト區別ヲシテ、事業ノ緩急ニ差等ヲ附ケテ、而シテ德島鐵道以下
ノ文字ヲ削除スルト云フ修正說ニハ反對ヲ致スノデアリマスル而シテ高
木君カラノ反對說ガアリマシタガ、是ハ主ニ本年ニ現レタ豫算ノコトニ附イ
テ、反對ヲ唱ヘラレタヤウデアリマス豫算ハ本年ハ無理ナ削除ヲシテアル、
之ニモ拘ラズ鐵道助成ヲセヨト云フノハ無理デアルト云フ御說ノヤウニ聽
エタノデアリマスルガ、豫算ニハドンナ無理ガシテアリマスルカ、本員抔ハ豫
算ニ無理ヲシテアルト云フコトハ一向覺エナイ、本年ノ豫算ハ諸君モ御承
知ノ通、經常臨時合テ二億六七千万圓ノ要求ヲセラレタノデアリマスル
ガ、ソレニ就イテ衆議院ハ緩急ヲ見計ッテ僅々五十万圓位ノ削除ヲシタ位デ
アリマス、殆ド政府ノ要求ハマルデ採用ヲシタト云ッテモ宜イ豫算ニ相成タテ
居ルノデゴザイマス毫モ無理ハシテアリマセヌ或ハ財政整理ヲ呼號スル
今日ニアッテ、助成ノ如キモノヲ要求スルト云フノハ不都合デアルト云フ
如キ御說ノヤウデアリマシタガ是ハ一應御尤モノ說トモ聽エマスガ併シ
財政整理モ必要デアリマセウガ、又吾〓モ最モ此必要ヲ感ズルノデアリマス
ルガ是ガ必要ノタメニ國家ノ必要ナコトヲマデ止メヤウト云フコトハ、是
コソ無理ナ御注文デアルマイカト存ジマスル、高木君ノ反對ニ對シテキツ
ク辯ズル程ノ必要ハナイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=103
-
104・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 議長採決、委員長報告通発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=104
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105・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 降旗君ノ修正說ニ贊成ガアリマスカ
〔「贊成々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=105
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106・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 定規ノ贊成ガナイト認メマスガ、贊成ノ御方ハ立ッテ、
贊成ヲ御表シナサイ
(「ナイ〓〓」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=106
-
107・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) ナイト認メマス、原案ニ附イテ採決ヲ致シマスル、委
員長報告通原案ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=107
-
108・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス、原案通決シマス-次ハ議事日程ノ
十三
第十三東北大學設置建議案(松田正久君外三名提出)
帝國大學ヲ東北ニ增置スルハ國家ノ急務ナリト認ム依テ政府ハ速ニ其ノ計
晝ヲ定メ追加豫算トシテ本期議會ニ提出セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=108
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109・尾崎行雄
○尾崎行雄君(五十二番) 東北大學ノ建議デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=109
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110・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 左樣
〔尾崎行雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=110
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111・尾崎行雄
○尾崎行雄君(五十二番) 東北大學設置建議案ニ附イテ、提出ノ理由ヲ說明
致シマス元來此建議ニハ二百有餘名ノ贊成者モ既ニ署名シテアリマスル
故ニ此處ニ於テ提出ノ理由ヲ說明スルノ必要ハナイノデアリマス、併ナ
ガラ諸君ニ向ッテ、說明スルノ必要ハナイケレドモ政府ニ向ッテハ大ニ說
明スルノ必要ガアルコトヲ感ズルナゼナラバ第十四議會ニ於テモ大多數
ヲ以テ同樣ノ建議ガ、通過シテ居ルニモ拘ラズ、政府ハ今尙ホ設置ノ案ヲ提
出致シマセヌ故ニ十分ニ其理由ヲ辯ゼズシテ、此案ヲ通過スルナラバ此
建議ニ對シテモ政府ハ又從來通ノ不德義ナル舉動ヲ爲スカモ測ラレマセ
ヌ故ニ私ハ政府ニ對シテ、此建議ノ已ムベカラザル理由ヲ、簡短ニ說明シ
テ置カウト思フ第一ニ中學高等學校等ニ附イテハ從來段々ノ設備ガ
アリマシテ、今日ニ於テハ其人員モ充滿シテ居ル、政府ハ此充滿シテ段々
大學ノ門戶ヲ叩イテ來ル者ニ對シテ、如何ナル處置ヲスル積デアルカト云フ
コトノ、方針ガ立ッテ居ラヌノデアル、文部省自身ノ調ニ據リマシテモ、本年
高等學校ヲ卒業シテ中學校ヲ卒業シテ高等學校ニ這入ラントシタ者ハ
殆ド三千有餘人ニ溢レテ居リマスル、此三千有餘ノ人間ト云フモノハ、帝國ノ
將來ヲ負擔スベキ有爲ノ人間デアル、皆大學ニ這入ラウト云フ目的ヲ以テ、
自分モ勉强ヲ致シ、其父兄モ就學セシメタモノデアッテ、何ノ謂レナク是ニ
於テ斷然三千有餘ノ人間ヲ排斥シテ、方向ニ迷ハスルト云フコトハ頭數ハ
少イケレドモ、帝國ノ將來ニ對シテ、餘程ノ影響ヲ及スベキ事柄デアル又此
三十四年度ニ於テ溢レタル三千ノ生徒ハ三十五年度ニ參リマスレバ
非常ニ增シマス、三十六年度ニ至リマスレバ益〓增シマス、唯九州大學一
校ヲ設ケテ、醫學生ヲ收容スル位デハ決シテ其需ニ應ズルコトハ出來ナイ
ノデアル、現ニ三十四年度ニ於テハ、中學ノ卒業生ハ凡ソ八百八千人餘リ
デアリマスルケレドモ三十五年度ニ於テハ增加シテ一万有餘ニ及ブベキ豫
算デアル、三十六年度ハ一万二千有餘ハ必ズ中學校ヲ卒業シテ參リマスル、此
全部ハ無論高等學校ニ入リ若クハ大學ニ這入ラントスル者デハナイケレド
モ其大部分ハ矢張大學ニ入ル方針ヲ以テ、卒業シ來ル者デアル、斯ク年々
歲々生徒ガ增加スル、之ヲ收容スル大學ガナイト云フコトニ至ッテハ實ニ
人ノ子弟ヲ賊フノ甚キモノデアッテ、國家トシテ其責任ヲ盡サヌモノト申サ
ネバナラヌ又獨リ我邦ノ現狀ニ於テ斯クアルノミナラズ、他ノ歐羅巴ノ國
國ト較ベテ見マシテモ、將來ニ於テ大ニ大學ヲ增設シナケレバナラヌト云フ
コトハ明ニ分ッテ居リマスル世界何レノ所ヲ見テモ、凡ソ日本位ノ人口ヲ
有ッテ居ル國デ、二万三万ノ大學生ノナイ國ト云フモノハ世界何レノ處ニモ
アリハシナイ、而シテ日本ニハ現在ドレダケノ大學生ガアルカト云フニ僅
ニ三千五六百ヨリ外ハナイノデアル、私立大學マデ慶應義塾ノ如キ私立ノ大
學マデ入レテ、大學生ハ僅々三千五六百人ヨリ外ハナイノデアル、日本以
下ノ小サイ國、人口ノ大ニ劣ル所ノ英吉利、佛蘭西、或ハ孛漏生ノ如キモノ
デアリマシテモ皆二万若ハ三万ノ大學生ヲ有ッテ居ル斯ク大學生アリ
文化ノ進步シテコソ、國ノ富强ヲ得ラルヽノデアル、僅カ三千四千位ノ大
學生ヲ以テ滿足スルト云フヤウナコトハ、ドウ云フ方針ヲ採ッタ所デ出來ル
モノデアリマセヌ又日本程ノ稍ッ小サイ國ハ孰モ二万三万ノ大學生ヲ有ッ
テ居ル小サイ國ハドウデアル彼ノ白耳義ト云フナラバ歐羅巴ニ於テ
モ最モ小サイ國デアル其面積ハ我九州ニ較ベテモ小サイ我東北ニ較ベテ
無論小サイ、面積ハ九州東北ヨリモ小サイ人口ハ九州東北ト伯仲ノ間ニ在
ル所ノ白耳義ニ於テスラモ三千六百ノ大學生ハアリマス、九州ダケノ白耳
義スラモ三千六百ノ大學生、卽チ日本現在ノ大學生ト同ジ程ノ數ハアリマス、
然ルニ是ダケノ大帝國ニ於テ、僅カ四千ノ大學生モ收容スルコトモ出來ナイ
ト云フ事柄ハ、此儘ニ拾置キマシテ、文明ノ進步ヲ圖リ、國家ノ富强ヲ希望
スルト云フガ如キハ、所謂木ニ綠テ魚ヲ求ムルノデアッテ、其門ヲ鎖シテ唯
獨リ國ノ進步ヲ圖ルト云フ結果ニ陷ルノデアル、是等ノ內ノ事實ニ照シテ見
テモ外ノ狀勢ニ鑑ミテ見マシテモ、日本ノ將來ニ縱令實業〓育奬勵ノ方針
ヲ採ラウトモ或ハ農學工學其他ノモノヲ奬勵致サウトモドウ致シマシテ
モ尋常ノ大學生ト云フモノハ近キ中ニ遠カラザル中ニ、一万以上ノ數ニ上
ルト云フコトハ鏡ニ懸ケテ見ルガ如ク、明デアル然ルニ今ヤ四千ノ大學
生ヲ收容スルノ設備モ出來テ居ラヌ、近キ將來ニ於テ確ニ一万以上或ハ少シ
年月ヲ經レバ、二万ノ大學生ト爲ランコトヲ希望スル者ノ起ルト云フコトハ
確ニ見エテ居ルニモ拘ラズ、僅カ三四千ノ生徒ヲ收容スル設備ヲ、今日ノ儘
ニ置キマシタナラバ是レ亦國家ノ前途ニ人ノ子弟ヲ賊ヒ兼テハ國ノ
進步ヲ害スルト云フ結果ヲ及スコトハ明デアル故ニ縱令學制ヲドウ調査ス
ルトカ〓育制度ヲ如何ニスルトカ云フヤウナ問題ハ別トシ如何ナル方法
ヲ以テ致シマシテモ誰ガ案ヲ立テヽモ、此末ハ大學ヲ段々增設シナケレバ
ナラヌト云フコトハ明デアリマス、世間或ハ他ニ〓育方針ヲ改メサヘスレバ
此上大學ノ必要ハナイガ如ク誤想シテ居ルモノガアルケレドモ是ハ非常ナ
ル間違デアッテ、如何ナル〓育制度ヲ施キマシテモ一万以上ノ大學生ハ必ズ
日本ニ於テハナケレバナラヌ或ハ二万三万ニナルト云フコトハ將來ニ於
テ又豫期セラルヽコトデアル、ドウ云フ方法ニシテモ、今日ノ如ク各分科ヲ具
ヘタル大學若クハ分科獨立ノ大學ヲ、漸次殖シテ四ツト爲シ、五ツト爲スト云
フコトハ、將來ニ於テ缺クベカラザルコトデアッテ、而モ今日ニ於テ其設備ヲ
ナサズンバ到底間ニ合フコトハ出來ナイ、大學ヲ作リマシテモ、大學ハ工事
ヲ急グバ直チニ出來ル、併ナガラ是ガ〓授タル者ハ、少クトモ二年三年ノ歲月
ヲ掛ケテ養ハナケレバ、〓授ハ出來マセヌ、然ラバ前途ニ於テ大學增設ノ必要
アルト同時ニ、今日ヨリ其方針ヲ確定シテ、〓授養成ニ著手シナケレバ、縱シ
如何ニ財政上ノ都合ガ附キマシテモ、大學ヲ開クコトハ出來ナイ、是レ大學ノ
己ムベカラザル要〓デアリマス、次ニ當局者ニ向ッテ注意ヲ促シタイノハ全
體文部大臣ト增設問題トノ關係ニ附イテ、本員ハ大ニ怪ム所ガアルノデアル、
此頃政府ノ當局者ニ向ッテ談ジテ見マスルト、本員等ハ此大學ヲ設置セシムル
ガタメニハ、或ハ言葉ヲ穩カニシテ請求モ致シ、或ハ言葉ヲ强クシテ要求モ致
シ、種々雜多ノ方針ヲ以テ談判ハ致シテ見マシタケレドモ、今日マデノ結果ニ
據リマスレバ、政府ニハ調査未了、未ダ調ガ附カナイト云フ口實ヲ以テ、容
易ニ設置シヤウト云フ明言ハ致シマセヌ是ニ附イテ本員ハ大ニ怪ムノデア
ル若シ調査未了デアルナラバ、先日此席ニ於テ文部大臣ハ近キ將來ニ於テ、
必ズ大學ヲ置クト云フ答ヲ爲シタノハ、アレハ何デアル、若シ調査未了デ分ラ
ヌナラバ近キ將來ニ於テ置ク置カヌト云フ答辯ノ出來ヤウ筈ハナイノデア
ル、既ニ置クト云フ明答ヲ豫算委員會デモ爲シ、又本員ノ質問ニ對シテモ爲シ
タ以上ハ、卽チ大學ヲ置カナケレバナラヌト云フダケハ、彼等ハ調査ヲ俟タズ
シテ、承知ヲ致シテ居ラナケレバナラヌ筈デアル、然ルニ一方ニ於テハ、此答
ヲ爲スト同時ニ、一方ニ於テハ調査ガ未ダ分ラヌト云フコトハ、同ジ內閣員ニ
シテ二枚ノ舌ヲ使フト謂ハザルヲ得ナイ、又調査ノ出來ヌト云フコトニ附イ
テモ、本員ハ大ニ疑ヲ存スル、今ノ文部大臣ハ〓育社會ニ於テ、國家ノ俸祿ニ
衣食スルコト殆ド二十有餘年、此間何ヲ爲シテ居ッタノデアル、文部大臣デハ
ナクトモ、國家ノ俸祿ニ二十有餘年モ衣〓シテ居ッタナラバ、將來大學ハ如何
ニシタラ宜シイ、〓育制度ハ如何ニセバ宜シイト云フ位ノ意見考案、若クバ取
調ガナクテハナラヌ筈デアル然ルニ今ナイト云フナラバ二十有餘年間ニ
ハ出來ナカッタノデアル、是カラ調査會ヲ開キ、半年一年ノ日月ヲ假セバドウ
シテ調査ガ出來ルノデアル二十有餘年ニ出來ナカッタモノガ、此末半年間
ニハ出來ルト云フ請合ハドウシテ出來ル故ニ此ノ如キコトハ皆議員ヲ瞞
著シテ世問ヲ欺ク一時ノ遁辭ニ過ギズシテ、眞正ニ精神ノアル所デアルト了
解スルコトハ出來マセヌ、能ク考ヘテ見レバ或ハ文部大臣其他ノ者ノ謙遜
ノ言葉デアルト云フコトモ考ヘラルヽ併ナガラ謙遜ハ一個人トシテハ美德
デアル國家ノ公職ヲ帶ビ其職務ヲ行フニ方リテハ餘リ謙遜ナサラヌ方ガ
宣シイノデアル、職務ダケハ謙遜セズ十分行ハレナケレバナラヌ、是ハ文部大
臣し增設問題ニ附イテ、本員等ノ了解スルコト能ハザル點デアリマスガ、
又內閣ト內閣トノ關係ニ附イテモ一應疑ノ存スル所ヲ明言シテ置カナケレ
バナラヌ內閣ハ屢〓變ル、然シナガラ同ジク是レ天皇陛下ノ內閣デアル以
上ハ甲ノ內閣ガ天下ニ向ッテ公約シタ所ノモノハ乙ノ內閣ハ其意見ニ絕對
的ニ反對セサル以上ハ、縱シ反對黨ノ內閣ノ公約ト雖モ、之ヲ履行スル責任
ト云フモノハ世界何レノ國ノ內閣員ト雖モ有タナケレバナラヌ筈ノモノ
デアル、然ラズンバ內閣ガ變ッタカラ知ラヌト云フガ如キコトヲ致シマスル
ト實ニ人民ハ常ニ五里霧中ニ彷徨シナケレバナラヌ、殊ニ近來ノ如ク屢
內閣ノ變ル場合ニ於テ、甲ノ内闇ノ約束ハ乙ノ內閣ハ一向反古ニシテ知ラヌ
ト云フガ如キ有樣デアリマシテハ、國民ハ一日モ安心スルコトガ出來ナイ然
ルニ此問題ニ附イテ、外ノ問題ニ就イテモ多々アリマスルガ、此內閣ガ大學
增設ト云フ問題ニ對シテノミノ約束ヲ算ヘマシテモ、前內閣ノ國家ノ及人
民ニ對シテ公約ヲ致シタ義務ヲ、乙ノ內閣ガ之ヲ繼承シナイト云フ事實ハ
殊ニ明白ニ現レテ居ル卽チ當然內閣トシテ盡サナケレバナラヌ義務ヲ怠ッテ
居ルト云フコトハ確ニ現レテ居リマス元ト東北大學ト云フ問題ガ、公二
行政部ニ現レタノハ明治三十一年ノ頃デアリマシテ、卽チ山縣內閣ノ人モ
此時ノ時ノ支部大臣タル樺山伯爵ハ殊ニ宮城縣會ニ訓令ヲ下シテ、大學ヲ
設置スルニ附イテ、寄附金ヲ促シタノデアル最初ハ二十五万圓ヲ寄附スル
ト云フ決議ヲ、宮城縣會ハ爲シタ所ガ文部大臣ハ更ニ二十五万圓デハ足ラ
ナイカラ、三十五万圓ニ增サナイカト云フ內訓ヲ再ビ下シテ、更ニ臨時縣會
ヲ開イテ、宮城縣會ハ三十五万圓ヲ寄附スルト云フ約束ヲ、政府ニ答申ヲ致
シタ、此ノ如キコトハ山縣內闇ノ責任デアル、誰ガ後ノ內閣ヲ繼承致シマシ
テモ其事ガ絕對的ニ非ナル事柄ニアラザル以上ハ、斯ク人民ニ約束ヲ致シ、
二度マデモ縣會ニ向ッテ內訓ヲ下シタコトニ附イテハ其義務ヲ繼承シナケ
レバナラヌ筈デアル然レドモ今ノ總理大臣桂大臣ハ其時ノ內閣員ノ一人
デアッタト記憶スル然ラバ山縣內閣ノ責任ニ附イテハ見ズ知ラズノ他人
ノ內閣ニ附イテモ、其責任ハ免レヌ筈デアルノニ、己自ラ内閣員ノ一人デアッ
タ以上ハ先輩ニ對スル義務、同僚ニ對スル責任トシテ、繼承シナケレバナ
ラヌ筈デアル然ルニ之ヲ繼承セヌ、又山縣內閣ノ時ニハ次ノ年度ニ於テ
ハ提出スルト云フコトヲ、豫算委員ニ於テ-豫算特別委員會ニ於テ政
府委員ガ明言シテシマヒマシタガ次ニ伊藤內閣ノ時ニ至リマシテモ又
當衆議院議員ノ質問ニ對シテ、總理大臣ノ伊藤侯爵ハ時ノ文部大臣ノ松
田君ト兩君ノ名義ヲ以テ、翌年度ニ於テハ東北大學ヲ設置スルト
云フ答辯ヲ、當議場ニ於テ致シテ居リマス、是モ其內閣ガ天下ニ
向ヲテ爲シタ公約ノ一ツデアル而シテ其時ニ於テ今ノ內閣員中、殊ニ有力
者ト聞エタル山本權兵衞君ハ其時ノ內閣員デアッタト記憶スル、然ラバ此
人モ己ノ首領ニ對シ、己ノ同僚ニ對シテノ責任トシテ、ソレヲ實行センケレ
バナラヌ責任ハ無論ノコト免レヌノデアル此ノ如ク關係ナシト雖モシ
ナケレバナラヌ筈デアルノニ況ヤヨレ自ラ其內閣ニ於テ其答辯ヲ爲ス前
ニ當リテハ、閣議ヲ開イテ其相談ニ與ッテ居リナガラ、內閣ガ變ッタカラ是
ハ知ラヌ、又調ベル幾度調ベルデアル、山縣內閣ノ時ニモ翌年ト言ッテ行
ヒ得ナカッタ伊藤內閣ノトキニモ翌年ト云ッテ行ヒ得ナカッタ、又調ヲ翌
年ト申シテ居ル、サウ度々翌年度ニサレテタマルモノデハナイ且ツ適切ニ
論ズレバ山縣内閣デスラモ翌年度ヲ約束シテ實行シ得ナカッタ、伊藤內
閣デスラモ翌年度ヲ約束シテ實行シ得ナカッタ、如何ニシテ桂內閣ダケ翌年
度約束ハ實行シ得ルト云フ見込ガ立ツカ、吾ミヲシテ淡泊ニ言ハスレバ、此內
闇コソ最モ危イ內閣デアル最モ短命ニアルベキ內閣ガ、此議會スラ無事ニ
通過スルコトノ出來惡イ內閣ガ、此唯僥倖ニシテ此議會ヲ無事ニ通過スル
コトニナッタト云フノハ、意外ノ儲ケ物ト言ハナケレバナラヌ此內閣ガ翌
年度ヲ約束スルト云フコトハ全體分外ナル心得ト言ハナケレバナラヌ、次
ハ內閣及議員ガ建議ニ對スル心得ニ附イテモ本員竊ニ疑ナキヲ得ナイノ
デアル、立憲政體ノ本旨ハ多數ノ意見ヲ重ズルト云フノガ立憲政治家ノ責
任デアル、若シ自ラ多數ヲ動カスコトガ出來ナケレバ多數ニ從ッテ往クヨ
リ外ニ、立憲政治家ト云フモノハ仕方ガナイモノデアル、力若シ衆議院ヲ動
カスコトガ出來ルナラバ東北大學ハ無用ト云フ議論ヲ提出シテ衆議院ヲ
動カシテ見ヨ若シ力足ラザレバ多數ニ從フヨリ立憲政治家トシテ爲スベ
キ途ハナイノデアル然ルニ從來ノ有樣ヲ見ルト、衆議院ガ幾度カ建議ヲ致
シ其建議ニ對シテハ內閣ハ大體打捨テ置ク、衆議院ハ又建議スル內閣ハ
又捨置クト云フノガ、從來ノ慣例ニナタテ居ル、玆ニ於テ衆議院ガ大多數ヲ
以テ決議シタ、通過シタ建議ニ對シ、殆ド五割若クハ六割以上ハ大體高閣ニ
束ネテ何モ爲サズニ置クト云フノガ內閣ノ慣例デアル、是ハ單リ桂內閣ニ
對シテ言フノデハナイ、總テ立憲政體ノ何物タルヲ通曉セザル從來ノ內閣ハ
皆其通致シテ來タノデアル、將來ニ於テハ少シク立憲政治家ノ心得ヲ起シテ、
議會ノ多數デ自ラ支配スルコトガ出來ズンバ多數ニ從フト云フ德義ハ是非
持ッテ貫ハネバナラヌ、又論ジテ此處ニ至レバ衆議院モ亦自ラ顧ミテ己
ノ行動ヲ愼重ニシナケレバナラヌト思ヒマスル有體ニ白狀スレバ、從來ノ
建議ナルモノハ、餘リ輕ミシク爲シタト云フ嫌モナキコトハ出來ヌノデアル
是ニ於テ建議ヲ爲シテ、內閣ニ度外視サレテ居ッテモ、衆議院ハ己ムヲ得ズ默ッ
テ今マデ來ッタノデアル是ハ衆議院自ラ其體面ヲ瀆シ、自ラ己ノ決議
權ノ重大ナルコトヲ輕ジタノデアリマスル、故ニ内閣ノ不明不德義ヲ責ム
ルト同時ニ、衆議院モ又其過ヲ悛メナケレバナラヌ、故ニ此建議案抔ニ附イ
テハ非常ニ多數ノ賛成者ガアリマスルガ贊成者ガ多數デアレバアル程、此
建議案ヲ蹂躪セラレタトキニハ諸君ノ面目ハソレダケ潰レルノデアルサ
レバ此建議ニ贊成スル者ハ言フマデモナク今日此處ニ之ヲ決スレバ必ズ
之ヲ實行セシムルト云フダケノ御決心ハ言フマデモナク御持チアランコト
ヲ希望スル然シテ諸君ガ決心スレバ必ズ行レルノデアル建議ヲ抛リ出シ
テ、投グ放シニシテ置ケバ誰モ行ハヌ必ズ行ハセルト云フ決心ガアレバ
必ズ行フノデアル行ハヌトキハ其不德義ヲ責ムルコトモ出來ル、政府ニシ
テ我道理アル理窟ヲ拒絕スルトキハ而モ謂レナク之ヲ拒絕スルニ於テハ
國務ノ進行ヲ妨ゲザル限ハ政府ノ要求モ拒絕スルト云フ權利モ持ッテ居ル
彼ガ謂レナク拒絕スレバトテ、復讎的ニ政府ノ要求ヲ拒絕セヨトハ言ハナイ
併ナガラ可否相半バスル所ノ議案ハ、幾ラモ政府ガ出シテ居ル、可否相半バス
ルドコロデハナイ、物ニ依ッテハ否ノ方ガ六分以上占メテ居ル議案ガ隨分出マ
ス、唯從來ハ政友會ハ妥協ノ結果トシテ、進步黨ハ政見暗合ノ結果トシテ、先
ヅ可否相半スルト雖モ、之ヲ通過スルト云フ方針ヲ執ッタノデアル、其ヤウナ
方針ヲ執ッテ居ル以上ハ、此建議案ト雖モ恐ラクハ捨テヽ置カルヽダラウ、故
ニ此建議ニ贊成スル以上ハ從來ノ方針モ悛メ暗合ノ方針モ悛メ、妥協ノ
方針モ悛メテ、必ヤ是ヲ實行セシムル否ラズンバ衆議院ハ己ノ建議ニ依ク
テ立ツト云フコトヲ-多衆ニ依クテ立ツト云フコトヲ、御決心アランコト
ヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=111
-
112・加藤政之助
○加藤政之助君(九十五番) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=112
-
113・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 加藤政之助君、御質問デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=113
-
114・加藤政之助
○加藤政之助君(九十五番) 簡短ニ贊成ノ意ヲ述ベル、本案ニハ吾〓十分ニ
贊成ヲ表シマス、デ卽決ヲ希望致シマス
(「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=114
-
115・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ノ可否ノ採決ヲ致シマス、本案ニ同意ノ諸君ノ起
立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=115
-
116・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 大多數ト認メマス、本案ハ可決致シマシタ、議事日程
第十四ニ移リマス
第十四家祿處分ニ關スル建議案(佐藤〓君外二名提出)
政府ハ曩ニ法律第五十號家祿賞典祿處分法ヲ以テ家祿賞典祿ニ關シ錯誤ノ
處分ニ依リ相當額ノ給與ヲ受ケサル者及相當額ノ給與ニ不足アル者ヲシテ
各其ノ給與ノ恩典ニ浴セシメタリ然ルニ法文偏狭ニシテ單ニ明治三年藩
制施行以後ニ限ラレタル爲藩制以前ニ於ケル同一ノ錯誤若ハ當局者ノ懈怠
ニ因リ處分未濟等ノ爲無告ノ悲境ニ沈淪セル東北其ノ他各藩士卒ノ如キ此
ノ恩典ニ與ル克ハサルハ極メテ偏頗ノ處置ニシテ一視同仁ノ聖旨ニ背戾
スルモノト謂ハサルヘカラス依リテ政府ハ此等不幸ノ士卒ヲシテ均ク救濟
ノ恩典ニ浴セシムヘキ適當ノ法案ヲ制定シ帝國議會ニ提出アラムコトヲ望
右建議ス
〔佐藤〓君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=116
-
117・佐藤清
○佐藤〓君(百六十一番) 詳細ノ說明ハ時間ノ許サマル所デゴザイマス、況
シテ本案ハ(委員付託ト呼フ者アリ)前議會ニ於キマシテ諸君ノ贊成ニ依リ
委員付託ニナリマシタル問題デアリマスル、殊ニ復祿問題ハ諸君ノ御熟知ノ
如ク多年ノ宿題ニナッテ居リマスノデアリマスカラシテ玆ニ多辯ヲ費ス
ノ必要ハナイノデアリマスルガ、サリナガラ我東北ニ於キマシテハ他藩ト
ハ異ナリマシテ、悲ムベキ歷史ヲ有スルト共ニ(「大贊成ダ委員付託ダ」ト
呼フ者アリ)一種特別ノ事情ヲ有ッテ居リマスカラ、簡短ニ其事情ヲ述ベテ、
本案提出ノ已ムヲ得ザル所以ヲ、賢明ナル諸君ニ訴ヘタイト思ヒマス、忌憚
ナク東北ノ卽チ一種ノ特別ノ狀況ヲ申シタナラバダ、維新ノ當時ニ於キマ
シテ此朝敵ノ汚名ノ下ニ征伐セラレマシタルト同時ニ非常ナル壓制ヲ受
ケタノデアル、而シテ家祿ノ如キモ、未ダ調査ヲ致シマセヌ未了ノ間ニ在ッ
テ、遂ニ屢〓嘆願ヲシマシタケレドモ、容レラレナカッタノデアル其後種々
ノ法律ガ出來マシテ、拒絕セラレタ、幸ニ法律五十號ガ出マシタノデ部
ノ失權者ハ救濟ノ道ヲ得マシタケレドモ、悲シイカナ法文第一條ニ於テハ明
治三年九月十日以後ニ於ケル、卽チ藩制施行以後ニ於ケル失權者ニ對スル
ノミノコトデアリマシテ、吾〓其藩政施行以前ニ於ケル事柄ニ及バヌノデア
リマスルソレ故ニ一方ニハ與ヘマシテ、一方ニハ與ヘヌト云フヤウナ結果
ニナルノデ、甚ダ不公平ハ勿論ノコト、未ダ處分ノ了セザル東北各縣ニ於テ、
非常ナ困難ヲ蒙ッテ居リマスノデアリマスノデ、カラシテ諸君ハ是等不幸ノ士
卒ニ對シテドウカ一片ノ同情ヲ寄セラレテ、本案ノ成立致シマスヤウ只
管御贊成ヲ希ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=117
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118・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 議長指名ノ九名ノ委員ヲ希望致シマス、續テ
次ノ日程モ直ニ委員ヲ御指名アランコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=118
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119・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 恆松隆慶君カラ、特別委員ヲ選ブト云フ動議ガ出マシ
タガ、九名ノ特別委員ヲ、議長ガ指名シテ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=119
-
120・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通決シマス-議事日程第十五
第十五未測ノ海岸及水路ノ測量完成ニ關スル建議案(根本正
君外二名提出)
內外ノ交通日ニ月ニ頻繁ヲ加ヘ航海ノ事業逐年發達ヲ來セルモ北海道臺灣
等ノ沿岸其ノ他各離島ノ水路未測ノ處尙尠シトセス殊ニ未測區域ノ多キハ
帝國海圖第九十三號北洲第八十三號父島列島第百一一十九號南方諸島及第百
十一號東京灣ヨリ和泉海ニシテ航海ノ危險尠カラス政府ハ速ニ未測海岸島
嶼ノ測量ヲ完成セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=120
-
121・恒松隆慶
○恆松隆慶君(二百二十四番) 是モ議長ノ指名ヲ願ヒマス、提出者モ演說ヲ
シナイト申シマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=121
-
122・根本正
○根本正君(二百八十四番) 時刻ガ大分過ギテ居リマスカラ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=122
-
123・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ニ附イテ委員付託ノ動議ガ出マシタガ、九名ノ特
別委員ヲ議長ガ指名シテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=123
-
124・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 諸君ニ御諮リスルコトガアリマス、御異議ガナケレハ
其通リ決シマス市島謙吉君病氣ノタメ本月二十五日ヨリ五週間、阿部孫左
衞門君ヨリ病氣ノタメ本月二十八日ヨリ二週間ノ請暇、各〓是ハ許可シテ御
異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=124
-
125・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許可スルコトニ致シマス、來ル三十
日本會ノ日ハ卽チ孝明天皇祭デアリマスラ、此日ハ休會致シマシテ、來月ノ
一日ニ本會ヲ開ク積デアリマス、議事日程ハ公報ヲ以テ御通知スルコトニ致
シマス今日ハ是ニテ〓會ヲ致シマス
午後五時五分散會
衆議院議事速記錄第九號正誤
頁段行誤正
一四三上三三スルコトニナスベキ者ニ在
ルシリテハ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001613242X01019020128&spkNum=125
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