第22回帝国議会　衆議院　本会議　第5号　明治39年2月8日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　明治三十九年二月八日（木曜日）午後一時五分開議
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  　　議事日程　第四號　明治三十九年二月八日
  　　　　午後一時開議
  　　第一　陸海軍に屬する臨時事件費特別會計終結に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選舉
  　　第三　作業會計法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選舉
  　　第五　國債整理基金特別會計法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第六　非常特別税法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第七　日本興業銀行法中改正法律案（政府提出貴族院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第八　鐵道敷設法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第九　産業試驗費講習費國庫補助法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十　軍艦水雷艇補充基金の組入に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十一　明治三十五年法律第二十九號中改正法律案（政府提出貴族院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十二　會計法中改正法律案（小川平吉外三名提出）　第一讀會
  　　第十三　裁判所管轄區域變更に關する法律案（久保伊一郎提出）　第一讀會
  　　第十四　航海補助に關する建議案（近江谷榮次外一名提出）
  　　第十五　國本培養に關する建議案（多田作兵衞外十九名提出）
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• 001・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  陸海軍ニ屬スル臨時件費特別會計終結ニ關スル法律案
  作業會計法中改正法律案
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  裁判所管轄區域變更ニ關スル法律案
  提出者久保伊一郞君
  航海補助ニ關スル建議案
  提出者近江谷榮次君淺野陽吉君
  國本培養ニ關スル建議案
  提出者多田作兵衞君中倉万次郞君山壽介君
  藤金作君恆松隆小湯澤愛次郞君
  長晴登君場平樂單君
  東尾平太郞君原佐植々木正城藏開封書籍書法書法 書法用武用者 有限公司村惟昌君
  齋藤宇一郞君田赳市庫太君
  荒川五郞君井上與中喜太郞君
  伊夫伎資弼君朝倉鐵藏君
  渡良瀬川沿岸地方特別地價修正法律中改正法律案
  提出者武藤金吉君木村半兵衞君關口安太郞君
  日向輝武君
  未成年者飮酒禁止法案
  提出者根本正君村松愛藏君中林友信君
  一花井卓藏君、鳩山和夫君ヨリ緊急勅令ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
  〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆ニ揭載ス〕
  緊急勅令ニ關スル質問
  右成規ニ據リ提出候也
  明治三十九年二月七日
  提出者花井卓藏鳩山和夫
  贊成者島田三郞
  外三十名
  緊急勅令ニ關スル質問主意書
  一前內閣ハ緊急ノ必要アリト認メ憲法第八條ニヨリ明治三十八年勅令第二百
  五號(戒嚴令中施行ノ件)及ヒ同年勅令第二百六號(新聞紙雜誌取締ノ件)ヲ
  發布シタリ
  二前內閣ハ又緊急ノ必要アリト認メ憲法第八條ニ依リ明治三十八年勅令第二百
  四十二號ヲ發布シ同年勅令第二百五號及ヒ同年勅令第二百六號ヲ廢止シタリ
  右勅令ニ關スル質問ノ要旨如左
  第憲法第八條第二項ニ依レハ緊急勅令ハ必ス次ノ會期ニ於ケル帝國議會ニ
  提出シテ其承諾ヲ求メサルヘカラス從テ議會提出前ニ於テ擅ニ勅令第二百五號
  及ヒ第二百六號ヲ廢止シ發令ノ審査ヲ帝國議會ニ要求セサリシハ憲法ノ條規ニ
  違フモノト信ス敢テ問フ現政府ノ所見如何
  第二假ニ議會提出前ニ於テ廢止シ得ヘキモノトスルモ憲法ハ爲メニ提出ノ責任ヲ
  免除スルコトナシ又法文ノ以テ其例外ヲ許シタルモノアルヲ見ス故ニ政府若シ之ヲ
  提出セサルトキハ憲法ノ條規ニ違フモノト信ス敢テ問フ現政府ノ所見如何
  第三憲法第八條第一項ニ依レハ緊急勅令ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其災厄ヲ避
  クル必要アルニアラサレハ發スルコトヲ得サルモノニシテ卽チ消極的ニ危害防護ノ目
  的ニ出ツルヲ要シ積極的ニ幸福增進ノ目的ニ出ツルヲ許サヽルノ法意ヲ示シテ餘
  アリ而シテ勅令第二百五號及第二百六號ハ施行ノ必要ナシトシテ廢止セラレタル
  モノナレハ其目的危害ノ防護ニアラスシテ幸福ノ增進ニアルコト明ケシ故ニ假ニ廢
  止シ得ヘキモノトスルモ勅令第二百四十二號ハ憲法第九條ニ則リテ發セラルヘク
  同法第八條ニ基キテ發セラルヘキモノニアラス而シテ事爰ニ出テサルハ憲法ノ條規
  ニ違フモノト信ス敢テ問フ現政府ノ所見如何
  第四現政府ハ憲法第八條第二項ノ條規ニ遵ヒ明治三十八年勅令第二百五號第
  二百六號及第二百四十二號ヲ帝國議會ニ提出シテ承諾ヲ求ムヘキモノト信ス敢
  テ問フ其時期如何
  參考
  一憲法上緊急勅令發布ニ關スル條規アルモ其廢止ニ關スル條規ナシ
  二憲法上緊急勅令廢止ノ場合ニ於テ次ノ議會ニ提出スルコトヲ免除シタル條
  規無シ
  三憲法上緊急勅令ヲ以テ緊急勅令ヲ廢止スルコトヲ許シタル條規無シ
  四明治二十七年勅令第百六十七號ヲ以テ同年勅令第百三十四號(新聞紙
  雜誌及ヒ其他ノ出版物ニ關スル件)ヲ廢止シ及明治二十九年勅令第三百九
  十八號ヲ以テ同年勅令第二百四號(朝鮮國渡航ノ禁ニ關スル件)ヲ廢止シタ
  ル先例アリ然レトモ是レ違憲ノ惡例ニシテ範トスルニ足ラス
  右及質問候也
  明治三十九年二月七日
  一貴族院ヨリ送付セラレタル政府提出案左ノ如シ
  民法施行法中改正法律案
  一指定セラレタル委員左ノ如シ
  日本興業銀行法中改正法律案
  元田肇君本浦向德武
  大井懋者君若鹿三日秀盛輝君君君
  山本トリント教育田築業島麿
  波多野傳三郞君菊是靑堀森森中西新作君
  山田省三郞君池永地家族味道君君中喜太郞君
  鈴置倉次郞君武德君大和久仲弁太郞君
  臺灣銀行法中改正法律案
  岩元信兵衞君三輪傳七君河原林義雄君
  牧野元君井上要君平島松尾君
  谷澤龍藏君山口小一君關口安太郞君
  明治三十五年法律第二十九號中改正法律案
  江間俊一君楠目玄君山森隆君
  澤田耕治郞君星野仙藏君大淵龍太郞君
  關信之介君濱田國松君橫山寅一郞君
  一委員長理事左ノ通當選セラレタリ
  日本興業銀行法中改正法律案
  田肇君理事「日向輝武君
  委員長元靑地雄太郞君
  臺灣銀行法中改正法律案
  委員長山口小一君理事關口安太郞君
  明治三十五年法律第二十九號中改正法律案
  委員長關信之介君理事楠目玄君
  一貴族院ハ本院送附ニ係ル政府提出案臨時事件費支辨ニ關スル法律案明治三
  十一年法律案第三號廢止法律案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒アリタリ

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• 002・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　是ヨリ會議ヲ致シマス、諸君ニ御諮リヲ致スコトガアリマスル
  ガ、松本長平君ヨリ病氣ノタメ、二月五日ヨリ同十五日マデ日數十一日間、請暇ノ
  願ガ出テ居リマス、許可シテ御異議ガゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 003・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガナイト認メマス、許可スルコトニ致シマス、田中藤次
  郞君ヨリ二月五日ヨリ二週間請暇ノ願ガ出テ居リマス、許可シテ御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 004・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガナイト認メマス、許可スルコトニ致シマス、坂本金彌
  君ヨリ病氣ノタメ二月八日ヨリ三週間請暇ノ願ガ出テ居リマス、許可シテ御異議ゴザ
  イマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 005・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガナイト認メマス、許可スルコトニ致シマス

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• 006・森田卓爾

  ○森田卓爾君　本員ハ過日提出致シマシタ質問ニ付イテ、議長ニ要求ガアリマス

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• 007・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　森田卓爾君
  〔森田卓爾君登壇〕

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• 008・森田卓爾

  ○森田卓爾君　演說致ス譯デハアリマセヌ、過日卽チ本月ノ一日ニ本員等ハ政府ニ
  對シテ、法律案提出ニ關スル質問書ヲ提出致シテ置キマシタ、是ハ頗ル簡明ノ事柄デ
  アラノ、一々此處デ申上ゲテ、趣意ヲ辯明スル必要ハナイ、要スルニ年來ノ公論ニナッテ
  居リマス刑法、刑事訴訟法、民事訴訟、裁判所構成法、請願ニ關スル憲法上ニ認メ
  ラレタル臣民ノ權利ニ關スル法律、市制町村制ト云フヤウナ、我國デ最モ大キナ部分ノ
  法律ハ改正ヲ要スルト云フコトデ、政府モソレカラ國民ノ方ノ側ニモ、イロ〓〓案ヲ具ヘ
  テ政府ハ旣ニ提出セラレタコトモ度〓アリマス、本院及貴族院ニ於テモ、議事ノ半バニ
  シテ終ッタコトモ度々アリマス、大體デナク、一部ノ改正案モ諸君カラ度々出タコトモアル
  而シテ其案ト云フモノハ、最早政府ノ方ニ於テ十分ニ審査セラレテ、今尙持ッテゴザル筈
  デアル、若シ之ヲ本期ノ議會ニ出サレルヤ否ヤト云フコトヲ問ウタノデアル詰問デモ何デ
  モナイ、此心持ハ若シ出サレヌト云フコトデアリマスレバ本員ハ自カラ案ヲ具シテ提出ス
  ルノ勞ヲ執ル積ノデアル、所ガ此議會モ最早此十日デ半バヲ經過スル若シ政府ガ出サ
  レヌト云フコトデアリマスレバ是カラ出スト云フ計畫ヲスルニ於テ大イニ急グ所ガアル、此
  問題ハ出ストカ出サヌトカ云フコトノ一點ヲ答ヘテ戴ケバ、ソレデ宜イノデ時局ニモ關係
  ガナク戰後ノ經營ニモ何モ關係ガナク極ク冷カナル問題デアッテ、答ヘルニ易イ問題
  デアル、出シマストカ出シマセヌトカ云フダケノ答ヲシテ戴ケバ宜イニ、提出ノ後八日デアル
  ガ、此案ノ答ガナイ、餘程取紛レテゴザルト見エルガ、モウ豫算モ彼是今日デ御シマヒニ
  ナリマスト、モウ取紛レル事情モ無イヤウニナッテ居ルト思ヒマスカラ、ドウカ出ストカ出サヌ
  トカ云フコトヲ政府カラタッタ一ト口デ宜イカラ御答シテ貫ヒタイ、就イテハ議長ニ要求ガ
  アルト申シマシタハ議長カラドウカ早速ニ答辯ガアルヤウニ、公然御掛合アランコトヲ望
  ミマス

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• 009・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　花井卓藏君
  〔花井卓藏君登壇〕

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• 010・花井卓藏

  ○花井卓藏君　諸君、本員ハ緊急勅令ニ關シマシテ、現內閣ニ對シテ、極メテ善意
  ノ質問ヲシヤウト思フノデアリマス、前內閣ハ緊急ノ必要アリト認メ、憲法第八條ノ規
  基キマシテ、明治三十八年勅令第二百五號、世ニ所謂戒嚴令ノ適用ト稱スルモノ
  デコサイマス、竝ニ同年勅令第二百六號、世ニ所謂嚴重ナル、新聞紙ノ發行停止ト
  稱スルモノデゴザイマス、此二ツノ勅令ヲ發布致シタノデアリマス、是ノ如クニ致シマシテ、
  一時帝國ニ戰ノ東京ヲ作リ、啞ノ東京ヲ作ッタノデゴザイマス、然ルトコロ前內閣ハ矢
  張緊急ノ必要アリト認メマシテ、憲法第八條ノ規定ニ基キマシテ、明治三十八年勅令
  第二百四十二號ヲ發布致シマシテ、戒嚴令適用ニ關スル緊急勅令ト、新聞紙發行停
  止ニ關スル緊急勅令ヲ廢止シタノデゴザイマス、此兩樣ノ緊急勅令ニ關シマシテ、本員
  ノ疑フトコロノ〓ヲ述ベテ、而シテ現內閣モ必ズ本員ト同樣ノ意見ヲ有セラルヽデアラウ
  ト云フコトヲ確信ヲ致シマシテ、サウシテ諸君ノ御贊成ヲ願ヒ、勅令提出ノ時期ノ速ナ
  ランコトヲ望ム所以ヲ簡單ニ一言シヤウト思ヒマス、憲法第八條第二項ノ規定ニ據ッテ
  見レバ、緊急勅令ハ必ズ次ノ帝國議會ニ提出ヲシテ、其承諾ヲ求メナケレバナラヌト云フ
  事柄ガ揭ラレテゴザイマス、蓋シ緊急勅令ハ諸君ノ當然ニ有セラルヽ立法當然ノ權利ヲ
  冒ストコロノ一時ノ變例デゴザイマシテ、已ムヲ得ザルニ出ヅル機宜ノ方法ニ外ナラヌノデ
  ゴザイマスカラシテ、此緊急勅令ナルモノハ、帝國議會ノ當然ニ有スル權利ヲ、或事情ノタ
  メニ、一時代ッテ行フト云フ性質ノモノニ外ナラヌノデゴザイマスカラ、帝國議會開クルノ曉ニ
  於キマシテハ、其爲シタル機宜ノ處分ノ當然ニ出デタルモノナルヤ否ヤト云フコトノ、審
  査ノ要求ヲ政府ハ議會ニ向ッテ爲サナケレバナラヌ趣意デゴザイマス、議會ハ之ヲ受ケテ、
  十二分ノ審査ヲ遂ゲマシテ、彼ガ如キノ緊急勅令ハ果シテ憲法ノ條規ニ反カヌデアラウ
  カ、反イタデアラウカ、或ハ當時ノ事情ト云フモノガ、是有ルニアラザレバ、公共ノ安全ヲ
  保持スルニ足ラナカッタデアラウカ、足リタデアラウカト云フコトヲ調査ヲ致シマシテ、而シ
  テ承諾ヲ與ヘ、若クハ與ヘヌト云フコトヲ決定スベキ當然ノ權利ヲ、帝國議會ハ有スル
  ノデゴザイマス、ソレデアリマスカラ、是ノ如キ緊急勅令ヲ發シマシタ以上ハ、私ノ見ル所ニ據
  レバ、必ズ帝國議會ノ開ケルマデハ途中ニ於テー中途ニ於テ此緊急勅令ヲ廢止スルコトハ
  斷ジテ相成ラヌコトデアルト確信ヲ致スノデゴザイマス、隨意ニ之ヲ廢止スルト云フコトニ
  相成リマシタナラバ帝國議會ガ當然審査ヲスベキ權能ト云フモノハ是ニ依ッテ奪去ラ
  ルヽコトニ相成ルノデアリマシテ、憲法第八條第二項ノ趣旨ヲ沒却スルモノデアルト信ジ
  マス、然レドモ彼ガ如キ緊急勅令ハ一日モ速ニ廢メナケレバナラヌト云フ必要ハ元ヨリ
  無キニシモアラズデアリマスカラ、是ノ如キ場合ニ於テハ如何ニシテ可ナルヤト云ヘバ、時
  其適用ヲ中止シ、若クハ下級ノ官廳ニ訓令ヲ與ヘテ、全然緊急勅令ノ適用ハ相成ラヌ
  ト命令スレバ足リルノデアル、當然緊急勅令ヲ存在シテ置イテ、適用ダニ愼ミ、又ハ下
  級官吏ニ對シテ訓令ヲ以テ之ガ適用ヲ愼ムベキ旨ヲ諭シサヘスレバ足リルノデアリマス、
  政友會ニ於テ此問題ニ關スル決議ガゴザイマシテ、其決議ハ大イニ我意ヲ得タモノデゴ
  ザイマス、一時緊急勅令廢止ノ聲ガ盛ンニ起リマシタ際ニ於テ、政友會ニ於テハ緊急
  勅令ノ適用ト云フモノヲ愼ンデ貫ハナケレバナラヌト云フ趣意ヲ決議サレタノデゴザイマ
  ス、是ハ私ノ見ル所ト同ジデゴザイマシテ、議會開會前ニ緊急勅令ヲ廢止スルト云フ事
  柄ハ斷然出來ナイ、政友會決議ノ如ク適用ヲ愼メバ、ソレデ足リルノデゴザイマス、此
  〓ニ於テ私ハ深ク政友會諸君ノ憲法上ノ條規ヲ遵守セラルヽトコロノ德ヲ頌スルコト
  ヲ憚ラヌノデゴザイマス、平素ハ餘リ頌サヌガ、此問題ダケハ大イニ頌スルノデゴザイマ
  ス、然ルニ前內閣ハ憲法ノ條規ヲ無視致シテ、恣ニ勅令第二百四十二號ヲ以テ、議
  會開會前ニ於テ、戒嚴令適用ノ緊急勅令竝ニ新聞紙發行停止ニ關スル緊急勅
  令ヲ廢止シタノデアリマス、是ハ明白ニ憲法ノ條規ニ違フモノト確信ヲ致シテ居リ
  マスノデ、憲法上明文ノナキコトヲシタモノト考ヘル、現內閣ニ於テハ勿論此〓ニ關シ
  マシテ、本員等ト同樣ノ意見ヲ保持セラルヽト云フコトヲ信ジテ疑ヒマセヌ、又一旦政友
  會ニ於テ決議ニ相成ッタト一云フ事實ニ依ヲテ證據立テラルヽノデアリマスカラ、今日ニ於
  テモ異ナルトコロハ無イト信ジマスルガ、今日有セラルヽトコロノ御意見ハ如何デアルカト
  云フコトヲ質問致スノデ、是ガ第一ノ質問デアリマス、フレカラ假ニ議會提出前ニ於テ
  廢止スルコトガ出來ルト致シタトコロデ、其廢止ニ歸シタリトノ理由ニ依ッテ、此勅令ヲ
  議會ニ提出スルノ政府ノ責任ト云フモノヲ免除スル法律ノ規定ハナイ憲法上ノ
  規定ハ無イノデゴザイマス、當時發布ノ必要アリヤ否ヤト云フコトヲ詮議スルノデゴザイ
  マスカラー事前ニ遡ヲテ審査スルノデゴザイマスカラ、廢止セラレタトシタトコロデ、爲
  事前ノ事實ガ消滅スベキ筈ハナイ、ソレ故ニ議會ニ提出シテ當時果シテ發布ノ必要ア
  リヤ否ヤヲ審査セシメ、議會ハ又之ヲ監査シテ適當ノ處置デアリシヤ否ヤヲ決定スルノ
  機能ヲ有スルノデアリマス、故ニ勿論現內閣ニ於テハ、前ノ緊急勅令ヲ當議會ニ提出
  セラレテ、諸君ニ審査ヲ要求セラルヽト云フコトハ憲法ノ條規ノ上ニ於テ當然ノ事デア
  ルカララ、必ズ左樣ニセラルヽコトヽ確信致シマス、左樣ノ次第デゴザイマスカラ、ソレ故
  ニ若シ之ヲ提出シナイコトニ相成ッタナラバ、確ニ憲法ノ條規ニ違フモノト確信致シマス、
  此〓ニ關スル現內閣ノ所見ハ、本員ト同樣デアルヤ否ヤト云フコトヲ問フノデス、是ガ質
  問ノ第二デゴザイマス、而シテ憲法第八條第一項ニ據ッテ、見マスレバ緊急勅令ハ公共ノ
  安全ヲ保持シ、又ハ災厄ヲ避クルタメノ必要ニ依ッテ發スベキモノニシテ、其他ノ場合ニハ
  一切之ヲ發布スルコトハ出來ナイノデゴザイマス、消極的ニ或危害ヲ防禦スル目的ニ出
  ヅルト云フコトヲ必要ト致シテ居ルノデゴザイマシテ、積極的ニ人民ノ幸福ヲ增進スルノ
  目的ニ於テ發スルコトヲ認メテ居ナイノデゴザリマス、而シテ勅令第二百五號第二百六
  號ハ、最早ヤ施行ノ必要ガ無イ、是ノ如キ惡勅令ハ存置スルノ必要ハナイト云フノ
  デ、勅令第二百四十二號ヲ以テ廢止セラレタノデアリマスカラ、其目的タルヤ危害ヲ防
  止スルト云フ趣意ニアラズシテ、人民ノ幸福ヲ增進スルト云フ趣意ニ於テセラレタモノデ
  アルト云フコトハ、眞ニ明カナ次第デアリマス、故ニ若シ假ニ廢止シ得ベキモノトスルモ、
  此勅令ヲ廢スルニハ普通ノ勅令ニ依ルベク、幸福增進ヲ目的トシテ居ル、憲法第九條
  ヲ以テ廢セラルベキモノデ、危害ノ防禦ヲ目的トスル緊急勅令卽チ憲法第八條ニ據ツ
  テ廢止スベキモノデハナイト思フ、殊ニ憲法上ニハ緊急勅令ヲ廢止スルニハ緊急勅令
  ヲ以テセヨト云フ規定ハ存在シテ居ラヌノデゴザリマス、此〓ニ關シマシテ先例ガゴザリ
  マ、明治二十七年勅令第百六十七號ヲ以テ同年勅令第百三十四號ヲ廢止シタト
  云フ實例ガアル明治二十九年勅令第三百九十八號ヲ以テ同年勅令第二百四號
  ヲ廢止シタト云フ實例ガアル、併ナガラ此先例ハ違憲ノ先例デゴザイマシテ、此先例ノ
  下ニ隱レテ而シテ緊急勅令ヲ廢止スルニ緊急勅令ヲ以テスルト云フノ論據ト爲スト云フ
  コトハ、憲法ノ條規ノ上ニ於テ如何ニシテモ解スルコトガ出來ヌノデアリマス、然ルニ前
  內閣ハ此勅令ヲ廢止スルニ當ッテ、憲法第九條ノ條規ニ基カズシテ、憲法第八條ノ條
  規ニ基キマシタノハ、取リモ直サズ憲法ノ條規ヲ無視シタモノデアルト云フコトヲ確信スル
  ノデアリマス現內閣ノ見ラルヽ所ハ元ヨリ私同樣デアルト確信致シマスガ、併ナガラ其所
  見ヲ確メテ置イテ、是ノ如キ惡慣例ヲ打破シテ、此議會ニ於キマシテ憲法ノ上ニ善慣
  例ノ現ハレ來ッタト云フ德ヲ現內閣ノタメニ頸シテ上ゲタイト云フ趣意ニ於テ、此質問ヲ
  スルノデアリマス、是ガ質問ノ第三デゴザイマス、諸君立法ノ變例ヲ常例ニ恢復ヲ致
  シマスルト云フコトハ、議院ニ於テ有スル當然ノ權利ヲ囘復スル所以デアリマス、又是ノ
  如キノ審査ノ權能ヲ憲法ノ條規ニ基キマシテ完全ニ施行スルト云フコトハ、議院當然ノ
  義務デゴザイマス、現政府ハ元ヨリ本員ノ質問致シマスル第一第二第三ノ理由ニハ深
  ク同情ヲ寄セラルヽコトヽ私ハ確信シテ居ルノデゴザイマス、果シテ然ラバ現政府ハ憲法
  第八條第二項ノ條規ニ從ッテ、明治三十八年勅令第二百五號竝ニ勅令第二百六
  號及第二百四十二號卽チ戒嚴令適用ノ勅令、新聞紙發行停止ノ勅令、竝二之
  ヲ廢止シタル勅令、此ノ三ツノモノハ共ニ〓〓帝國議會ニ提出セラレテ、承諾ヲ要求セ
  ラルヽニ相違ナイモノト確信致シテ居リマス、又必ズ左樣ナカランケレバ相成ラヌ次第デ
  アラウト存ジマス、果シテ私同樣ナ御趣意ニ御解釋ニ相成ッテ居ルト致シマシタナラバ現
  內閣ガ此三ツノ勅令ヲ當議會ニ提出セラレ又諸君ノ審査ヲ請ヒ諸君ガ審査ヲセラ
  レテ、憲法上帝國議會ノ有スル權利ヲ完全ニ現ハシ來ルベキノ日卽チ提出セラルヽノ時
  期ト云フモノハ凡ソ幾日頃ノ御豫定デアルデアラウカ、明日デアルデゴザイマセウカ、明
  後日デアルデゴザイマセウカト云フコトヲ伺ヒタイト云フノガ、是ガ質問ノ第四デアリマス
  質問ノ要點ハ右ニテ盡キテ居リマスル、實ニ緊急勅令ハ非常ノ命令デゴザイマシテ、非
  常ノ場合ニアラザレバ發スルコトヲ得ザル性質ノモノデアル、然ルニ非常ノ場合ナラザル
  ニ名ヲ非常ノ必要ニ藉リテ、非常命令ヲ發布致シマシテ、議會閉會中ニ於テ憲法上
  帝國議會ノ有スル權利ヲ無視シ、輕蔑シ、濫用シ、而シテ議會ト云フモノヲ、權能ヲ認
  メナイ惡慣例ヲ屢〓蠻勇內閣、非立憲內閣、藩閥内閣ガ繰返シテ居リマス、幸ニ立憲
  的ノ內閣、殊ニ政友會ノ内閣-ト申シマシテハ少シク語弊ガアルカ存ジマセヌガ、政友
  會及其他ノ混成內閣、此內閣ニ於キマシテハ、斯ル惡慣例ト云フモノヲ全然打消シテ、
  誠ニ善美ナルトコロノ立憲政體ヲ樹立スルト云フノ基礎ヲ、此緊急勅令不承諾ノ下ニ
  立テラルヽト云フコトヲ希望シマス、此內閣ガ有終ノ美ヲ濟サルヽト云フコトハ、固ヨリ何
  時ノコトデアルカハ存ジマセヌケレドモ、免ニ角有始ノ美ヲ此〓ニ於テナサルヽト云フコト
  ハ、甚ダ善キ事デアラウト思フノデアリマス、誠ニ善意ノ質問ヲ致シタノデゴザイマスカラシ
  テ、善意ノ答辯ラセラレマシテ、サウシテドウカ西園寺內閣ヲ全ク憲政內閣ノ歷史ノ第
  一頁ニ置キタイト云フ、諸君ヨリ御依賴モ何モゴザイマセヌガ、私ニ取ッテハ餘リ譽メタクナ
  イ人ヲ譽メテ上ゲルノデゴザイマス、誠ニ此內闇ヲ極メテ歡迎致シマスルガ故ニ、ドウカ此
  歡迎ガ後ニハ不歡迎ト云フ狀態ニ立至ラナイヤウニ、善意ヲ以テ御答辯アランコトヲ
  切望致シマス、緊急勅令ガ議場ニ出テヽ、當時ノ事情ヲ審査シテ、サウシテ大イニ其非
  ヲ鳴ラシテ、戒嚴令ノ適用、新聞紙ノ取締ノ問題ニ關シテ、盛ンニ爭フベキ時期ガ今ヨリ
  晩クトモ五日若クハ七日ノ間ニアランコトヲ切望致シマス

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• 011・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　議事日程ノ第一陸海軍ニ屬スル臨時事件費特別會計終
  結ニ關スル法律案第一讀會ニ移リマス、議案ヲ朗讀致サセマス
  第一陸海軍ニ屬スル臨時事件費特別會計終結ニ關ス第一讀會
  ル法律案(政府提山)
  〔書記朗讀〕
  陸海軍ニ屬スル臨時事件費特別會計終結ニ關スル法律案
  第一條陸海軍ニ屬スル臨時事件費特別會計ノ年度ハ明治四十年三月三十
  一日ヲ以テ終結ス
  第二條陸海軍ニ屬スル臨時事件費特別會計所屬ノ歲入歳出ノ出納ニ關ス
  ル事務ハ明治四十年十一月三十一日迄ニ悉皆完結スヘシ
  第三條陸海軍ニ屬スル臨時事件費ノ支辨ニ係ル工事、測量又ハ製造ノ事
  業ニシテ其ノ會計年度內ニ經費ノ支出ヲ終ラサルモノハ其ノ支出未濟ノ
  豫算額ヲ一般會計ニ移シ遞次繰越シ使用スルコトヲ得外國注文ニ係ル物
  品ノ購入代及一時賜金ノ支出ヲ終ラサルモノニ付亦同シ
  第四條陸海軍ニ屬スル臨時事件費支辨ノ諸費中復員ヲ爲ササル部隊ニ係
  ル經費ニシテ其ノ會計年度內ニ支出ヲ終ラサルモノハ其ノ支出未濟ノ豫
  算額ヲ一般會計ニ移シ使用スルコトヲ得
  第五條前二條ニ規定シタルモノヲ除クノ外陸海軍ニ屬スル臨時事件費支
  辨ノ諸費ニシテ既ニ契約ヲ爲シ又ハ仕拂ノ義務ヲ生シ其ノ會計年度內ニ
  支出ヲ終ラサルモノハ其ノ支出未濟ノ豫算額ヲ一般會計ニ移シ使用スル
  コトヲ得
  第六條陸海軍ニ屬スル臨時事件費特別會計ニ於テ歲計剩餘アルトキハ一
  般會計ノ歲入ニ繰入ルヘシ
  〔大藏大臣法學博士阪谷芳郎君登壇〕

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• 012・阪谷芳郎

  ○大藏大臣法學博士阪谷芳郞君　此法律案ハ、臨時軍事費特別會計ノ法律ニハ、
  年度ノ閉鎖ニ關シマスル規定ガゴザイマセヌ、此度平和克復ニナリマシタニ付キマシテハ、
  玆ニ閉鎖期限ヲ定メマシテ、臨時軍事費特別會計ヲ、速ニ整理シテ、其整理未濟ノモ
  ノハ、一般會計ニ移シテ、其後ハ特別會計ヲ廢スル、斯ウ云フ趣意ノ法律デゴザイマス、
  御協賛ヲ願シテ置キマス

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• 013・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　別段御質問ガゴザイマセヌ故ニ、日程第二、右議案ノ審査ヲ
  付託スベキ委員ノ選舉ニ移リマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

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• 014・元田肇

  ○元田肇君　本案ノ委員ヲ九名トシ、議長ニ於テ指命スベシトノ動議ヲ出シマス

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• 015・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　元田君ノ發議通、九名ノ委員議長指名ニ御異議ハゴザイマ
  セヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 016・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議カ無イト認メマス、議事日程第三、作業會計法中改
  正法律案第一讀會ニ移リマス、議案ヲ朗讀サセマス
  第三作業會計法中改正法律案(政府提出)第一讀會
  〔書記朗讀〕
  作業會計法中改正法律案
  作業會計法中左ノ通改正ス
  第一條中「廣島鑛山」ヲ「海軍採炭所」ニ改メ第二條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ
  加フ
  海軍採炭所据置運轉資本ハ十萬圓トシ漸次一般會計ヨリ繰入ス
  附則
  本法ハ明治四十年度ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕

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• 017・若槻禮次郎

  ○政府委員(若槻禮次郞)君　海軍採炭所ノ事業ハ、一種ノ作業デゴザイマス故ニ、之
  ヲ一般會計カラ離シマシテ、作業會計トシテ特別ニ經理スル方ガ、相當デアル、斯ウ云
  フノガ本案ノ趣意デゴザイマス、ドウゾ御協賛アランコトヲ希望致シマス

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• 018・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　別段御質問モゴザイマセヌデ、日程ノ第四、右議案ノ審査ヲ
  付託スベキ委員ノ選舉ニ移リマス
  第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

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• 019・元田肇

  ○元田肇君　本案ノ委員モ九名ト致シマシテ、議長ノ指名アルベシトノ動議ヲ提出致
  シンチ
  (「贊成「「議議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 020・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　元田君ノ發議通リ御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=20

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• 021・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガ無イト認メマス、議事日程第五、國債整理基金特
  別會計法案ノ第一讀會ノ續キニ移リマス
  第五國債整理基金特別會計法案(政府第一讀會ノ續(報告)議長
  提出)
  〔長谷場純孝君登壇〕

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• 022・長谷場純孝

  ○長谷場純孝君　國債整理基金特別會計法案外一件、委員會ノ經過ヲ御報告
  致シマス、前以テ御斷リ申上ゲ置キマスノハ國債整理基金特別會計法案外一件ト
  アルノハ、卽チ此非常特別稅法中改正法律案デアルノデゴザイマス、慣例ニ依リマスト、
  二案ヲ同一ノ委員ニ附託セラレタ場合ニ於テハ、凡ソ同時ニ報告ヲ致シ來ッタノデゴザ
  リマス、併ナガラ此二問題ハ誠ニ重大ナル問題ニシテ、本期ノ議會ニ於テハ、此二案ヲ
  以テ最モ重要ナル問題ト、所謂國民ノ上下共ニ之ニ視聽ヲ傾ケテ居ルトコロノ問題デ
  ゴザリマス否ナ、國民ノミナラズ、外國人モ之ニ向ッテハ大ニ注意シテ居ル問題ト信ジマ
  ス故ニ、議事日程ノ順序ニ依リマシテ、此場合ニハ國債整理基金特別會計法案ダケ
  ノ報告ヲ致シマシテ、其討論採決ノ後ニ於テ、又第六ノ非常特別稅法中改正法律
  案此委員會ノ經過結果ヲ御報告致スコトニシヤウト思ヒマスカラ、左樣御承知ヲ願
  ヒマス、國債整理基金特別會計法案ハ、委員ニ附託サレマシテヨリ、五囘ノ委員會ヲ
  開キマシタ、而シテ例ニ依ッテソレ〓〓ノ手續ヲ履ミマシタ末、先ヅ討論ヲ開キ、而シテ此
  討論ニハ數時間ヲ要シタノデゴザイマス、三日間ノ間ニハ悉ク三十六名ノ委員ノ中ヨ
  リ、種々ナル討論ガ出マシテ、ソレニ、政府ハ說明ヲ與ヘラレタノデゴザイマス、其事柄ハ
  速記錄ニ依ッテ諸君ハ既ニ御熟知ノコトヽ信ジマスカラ、私ハ玆ニ贅辯ヲ要シマセヌ、而
  シテ昨日ヲ以テ此案ノ可否ヲ決シマシタ、昨日ノ委員會ハ、委員長ヲ除イテ三十一人
  ノ出席者、其中十三ニ對スル十八ノ多數ヲ以テ、原案ニ可決致シマシタ、先ヅ此原案
  ニ反對サレタトコロノ〓要ヲ御報告致シマシテ、續イテ原案ニ贊成サレタトコロノ〓要ヲ
  御報告致シマス、其詳細ナルコトハ、既ニ業ニ反對贊成共ニ議長ノ手許ニ發言ノ通告
  ヲ爲シテアルサウデゴザリマスカラ、自ラ其人々ヨリ本壇ニ於テ詳細ニ贊否ノ御論ガアラ
  ウト思ヒマスカラ、極メテ簡略ニ御報告ヲ致ス積リデゴザイマス、反對ノ要旨ハ是マデ
  戰時中ニ外債ヲ募集シ得タルハ、帝國財政ノ信用ガ外國ニ厚キニ基ク所以デアル、卽
  チ帝國財政ノ信用ガ外國ニ厚イカラシテ、彼ノ戰時中ニ於テモ、是ダケノ外債ガ出來タ
  ノデアル、尙將來財政ノコトヲソレ〓〓ノ機關ニ依ッテ明カニスレバ、益〓此信用ハ厚ク
  ナルトモ輕クナルノ憂ハナイ、故ニ是ノ如キ法律ヲ特別ニ設クルノ必要ナイ、尙一面ニハ
  內外債ヲ募リ、一面ニハ內外債ヲ減ズルト云フガ如キ手段ヲ執ルノ必要ハナイト、凡ソ
  是ノ如キコトガマア反對ノ〓要デアル、其〓要中ノ〓要デアッタノデゴザイマス、然レドモ
  其論ハ遂ニ成立スルコトガ出來ズ、十三名ニシテ多數ヲ得ナカッタノデゴザイマス、又贊
  成ノ要領ハ、凡ソ戰時中ニ起シタル公債ハ、十二億八千萬圓ニ及ンデ居ル、尙四億
  三千萬ノ公債ヲ募集スルノ計畫ニナッテ居ルノデアルガ、本邦ノ現下ノ現況ニ照シテ、財
  政經濟界ノ事ヲ觀察スレバ、此場合ニ於テ特別ノ方法ヲ設ケ、此十八億ノ負債ニ
  白のう。償還ノ基礎ヲ固ウスルト云フコトハ、最モ必要ナル場合デアル、而シテ內外ノ
  信用ノ上ニ於テ、此特別法ハ最モ基礎ヲ固ウスルモノデアル、若シ是ノ如キ方法ヲ設ケ
  ザルトキニ於テハ、非常ナ疑惧ヲ懷ク者ガ內外ノ間ニ起リ、ソレガタメニ內外資本共通
  ノ道ガ杜絕シテ、從ッテ內國ニ起ルベキ生產事業ノ上ニ、直チニ影響ヲ及ボスハ明カナル
  道理デアル、故ニ此特別法案ハ今日ノ場合ニ於テ、最モ適當ナル方法ト認ムルヲ以テ、
  贊成スルト云フノ理由ヲ以テ、十三名ニ對スル十八名ノ多數ヲ以テ決シタノデゴザイマ
  ス、是モ各贊成諸君カラ議長ノ手許ニ通告ニナッテ居リマスカラ、詳細ナコトハ、自然此
  壇ニ於テ述ベラルヽデアラウト思ヒマスカラ、私ハ之ヲ省略致シマシテ、此國債整理基金
  特別會計法案ノ委員會ノ經過ト結果ヲ御報告ニ止メ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=22

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• 023・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　淺野陽吉君
  〔淺野陽吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=23

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• 024・淺野陽吉

  ○淺野陽吉君　唯今ノ委員長報告、卽チ政府提出案ニ反對ノ意見ヲ主張致シマシ
  テ、原案ノ廢棄ヲ唱ヘント欲スルモノデアリマス、先日來委員會ニ於テ數日ヲ重ネテ、政
  府當局者ノ本案ヲ出シマシタ趣意ヲ、段々尋ネテ見マスルト、畢竟スルトコロ、此本案
  ヲ政府ヨリ提出致シマシタ趣意ハ、唯今日、ヨリ以上ニ公債ノ價格ヲ引上ゲテ置イテ、
  サウシテ他日益〓公債募集ノ便宜ヲ圖ラウト云フヨリ外ニハ趣意ハナイノデアッテ、今委員
  長報告ノ通此案ヲ以テ減債ノ基金トナシテ、段々公債ノ減額ヲシテ往カウト云フ趣意
  デアルト云フコトハ、口ニ之ヲ言フコトガ出來テ、實際ニ於テ計算上其實ヲ舉グルコトハ
  出來ナイノデ、唯徒ニ此減債基金ト云フ、卽チ國債整理基金ト云フモノヽ實際ハ漸
  次國債ノ價格ヲ增加スルニ止マルノデアルト、私ハ信ズルノデアルカラ、今日ヨリ少シク
  此趣意ヲ述ベテ、反對ノ意ヲ表シマス、戰捷ノ結果ハ幸ニシテ、我國ノ陸海軍ハ戰場ニ
  捨テヽ吳レタ命、卽チ血ト骨トニ依ッテ、我國民ハ歐米各國ノ經濟社會ニ對シテ、偉大
  ナル信用ヲ購ヒ得タト私ハ信ジマス、今日マデ戰時ニ於ケル外債ノ募集ガ遺憾ナク捗取ク
  タノモ、是ハ全ク戰勝ノ效果デアル、卽チ陸海軍ガ戰場ニ捨テヽ呉レタ血ト骨トノ價デア
  ルト信ジマス、「ポーツマウス」ノ講和談判ハ國家ノ元老、若クハ元勳ト云フ名ノアル人々、
  若クハ前內閣卽チ桂內闇ニ依ッテ、遂ニ國家ノ汚辱ヲ〓ジマシタケレドモ、幸ニシテ此
  陸海軍ノ忠勇ナル働キハ、各國民ニ對シテ偉大ナル信用ヲ世界各國ヨリ買ヒ得タト云
  フコトノ恩惠ガアルト存ジマス、此戰勝ノ結果ニ依ッテ購ヒ得タル我國ノ信用ノ程度ハ、
  左程薄弱ナモノデハナイ、强テ今日此公債整理基金ト云フヤウナ制度ヲ作ラナクトモ、
  我帝國ニ於テハ、將來十分ニ信用ヲ維持シテ往ッテ、公債ノ便宜ハ十分ニアルト本員ハ
  信ズルノデアル、又我國民ノ經濟狀態ヲ觀察シマスレバ、戰爭ノ結果膨脹シマシタ通貨ノ
  隋勢ハ今以テ經濟社會ニ橫溢シテ居ルノデアル、貨幣ハ餘ッテ居ッテ、而シテ皆警戒心ノ
  タメニ事業ガ起ラヌ、從ッテ金利ハ漸次低下ノ狀勢ヲ呈シテ居ルノデアル、此際ニ當ッテ强
  テ減債基金ノ如キモノヲ--此制度ヲ設ケナクトモ、公債ノ價格ト云フモノハ、漸次騰貴
  ノ形勢ヲ保ツガ、今日經濟界國內ノ狀況デアルト私ハ信ジマス、此際ニ當ッテ此減債基
  金制度ヲ置イテ、一層公債ノ價格ヲ引上グルト云フコトハ、油ヲ掛ケルト云フコトハ、寧ロ
  是ハ經濟社界ニ對シテノ一ノ惑亂ヲ與ヘル政策デアルト私ハ信ジマス、戰勝ノ效果ニ依ッ
  テ購ヒ得タル國家ノ信用ヨリ自然ニ來ルトコロノ公債ノ價格騰貴コソ、實ニ國家ノタ
  メニ慶ブベキコトデアル、併ナガラ一ノ經濟社界ノ秩序ヲ或ハ感亂シヤシナイカト云フヤ
  ウナ政策ヲ執ッテ、公債ノ價格ヲ上ゲテ、益~公債募集ノ便宜ヲ圖ッテ、サウシテ亂暴ナ
  ル財政計畫ノ便宜ヲ玆ニ圖ラントスルト云フコトハ、如何ニシテモ國民ノタメ國家ノタメニ
  贊成ノ意ヲ表スル譯ニイカヌノデアル、若シ我國ノ政體ガ露國若クハ支那ノ如クニ、國家
  ノ狀態ハ海外ヨリ如何ニシテモ窺フコトガ出來ナイ國デアレバ卒ザ知ラズ、古今未曾有
  ノ戰ヲシテ、古今未曾有ノ勝利ヲ占メテ、サウシテ尙其間ニ財政ヲ維持シ來ッタ、、鞏固
  ナル我國ノ財政狀態ハ、明カニ如何ニ此非立憲的舉動ヲナス内閣ノ下ノ財政ト雖モ、
  歲入出ノ狀態ハ明カニシテ、國家ノ法律ト立憲政治ノ恩惠ニ依タテ世界ニ暴露シテ居
  ル國デゴザイマス、隨ッテ世界列國ノ人ハ減債基金ノ如キモノヲ信用シナイ、寧口直接ニ
  我財政ノ狀態ヲ見テ始メテ信任ヲ下スデアラウト思フ、若シ此基金制度ヲ置キマシタト
  コロガ、万一國家前途ノ財政ニ、此基金ノタメニ危イ兆ヲ生ズルコトガアッテ、財政ノ基
  礎ヲ危クスル憂ガアリマシタナラバ、法律ノ下ニ基金制度ノ存立ヲ世界列國ニ示シマシ
  タトコロガ、列國ノ人民ハ唯基金制度ノ存在ノミヲ信用シテ、財政ノ基礎ヲ見ナイデ、
  我國ヲ信用スル程、卽チ現内閣ノ想像スル程、愚ナル人民デハナイト本員ハ信ズル是
  ガ本員ガ第一ニ此本案ニ對シテ反對ヲ表スル所以デアリマス、本案ヲ採用シマシタナラ
  バ國家今日ノ內外ノ狀勢ニ於テ必要ノナイ本案ヲ採用シマシタナラバ、一二富豪
  ノ一二金持ノ、一二金滿家ノ歡心ヲ得ルカハ知リマセヌガ、國民全體ノ幸福トハナラ
  ヌト信ズルノデアリマス又深ク考ヘテ見マスレバ、此國債整理基金ト云フノガ、果シテ目
  的ヲ達シ得ルコトガ出來ルデアラウカ、疑ハシイト思ヒマス、政府者ガ言フ通、果シテ此減
  債基金國債償還ノ目的ガ是ニ依ッテ達セラルヽノデアラウカト云フコトハ、餘程疑ハシ
  イト思ヒマス、御承知ノ通ニ此三十九年度ノ政府提出ノ豫算案ニ依ッテ、我國將來ノ
  財政ノ狀態ヲ推測シテ見マスレバ、殆ド此國債整理基金ト云フ名ヲ設ケテモ、其實ガ無
  クナルコトニナッテ居ルト私ハ信ジマス、三十九年度ノ歲出入ニ依ッテ、四十年度以下
  ノ|以後ノ財政ノ狀態ヲ推察シマスレバ、如何ニシテモ此歲出ノ總額ハ四億三千萬
  圓以下デハナカラウト私ハ推察ヲ致シマス、本年ノ豫算、卽チ三十九年度ノ豫算ノ中、
  通常經費ニ屬スルノガ、大藏大臣ノ說明ニ據レバ、二億六千万圓デアル、其中時局關
  係ノ中、經常費ノ性質ヲ帶ビテ後年度ニ亙ルノガ一億七千万圓ト云フコトデアル、之ヲ
  寄セレバ四億三千万圓ト云フ金額ハ、四十年度ノ歲出ニ於テ決シテ免カルヽコトノ出
  來ナイ金額デアルト考ヘル、是ハ私ノ推察デハナイ、大藏大臣ノ說明ノ材料ヲ綜合スレ
  バ斯クナルノデゴザイマス、而シテ西園寺首相ハ行政刷新ハ斷ジテヤラヌ、打切リデアルト
  言ハレル、根本ニ行政刷新ヲヤラナイ以上ハ、政費ノ節減ト云フモノハ、ムヅカシイト思
  フ、ソレ故ニ四十年度ノ歲出額ヲ想像シマスレバ、四億三千万圓以下デハ、決シテナカ
  ラウト思ヒマス、是ガ想像シ得ラルヽ歲出ノ豫想額デアラウト思ヒマス、而シテ此歲出ノ
  增加スル理由ノ項目ヲ見マスレバ、十中八九後年度ニ亙ル繼續費ノ性質ヲ帶ビテ居
  ル、陸軍ノ復舊ハ御承知ノ通六箇年、海軍ノ復舊ハ九箇年間ノ性質デアルト云フ
  コトハ陸海軍大臣ノ說明ニ依ッテ明カデアル、尙滿韓派兵費ノ如キモ、將來ニ向ッテ、
  繼續シテ居ッノ、何時之ヲ取除ケルコトガ出來ルカ、殆ド今日ニ於テ當テハナイノデアリマ
  ス、其他滿韓經營費ノ如キ漸次年ヲ逐ウテ、是ハ增スバカリデアラウト思フ、當分ノ中
  ハ-其外ニ陸海軍大臣ノ說明ニ據レバ軍備擴張ハ尙此外デアル、他日時期ヲ待ッ
  テ之ヲ提出セント云フコトヲ明言サレテ居ル、必ズ將來是ハ一二年ノ中ニ出ルコトヽ信
  ジマス、是ノ如ク推測ヲ下シテ見マスレバ、四十年度乃至四十一年、二年度ニ於テ歲
  出ノ總額ハ遙カ四億ヲ超ヘテ五億ニ近イ、金額デアラウト私ハ想像致シマスル、現內
  閣ノ方針ヲ以テ組立テラルヽナラバ、或ハ遙四億ヲ超エテ五億ニ近ク歲出豫算ノ上ニ
  現ハレテ來ルデアラウト私ハ信ズル、サウシテ之ヲ償フトコロノ歲入ノ財力ハ、ドレダケアル
  カト云フコトヲ計算致シマスレバ、三十九年度ノ豫算ヲ見テ看マスレバ、總額四億九千
  万圓ト云フコトデアル、其中ニ公債ノ金額ガ八千万圓上ガッテ居リマスカラ、是ハ無論
  引去ラナケレバナラヌ、サスレバ實收額ハ三十九年度ニ於テ四億千万圓ヲ餘シテ居ル、
  其中ニ戰利品竝ニ船舶ノ如キ、三十九年度ニ於テハ財源デアルケレドモ其以後マデ續イ
  テ財源デアラウト信ゼラレルダケノ彈力ノアル財源ノナイノガゴザイマス、ソレヲ總計シマ
  スレバ御承知ノ通ニ千五百万圓近クニナルノデアル、是ヲ無論引去リマスレバ健全ナル
  三十九年度ノ財源ハ三億九千万少シ上ニ過ギナイノデアル、如何ニシテモ、是ハ四十
  年度以後ノ財源ヲ調ベテ見マスレバ、是以上ニ取レルト云フ見込ハ先ヅ立難イモノト
  私ハ信ジマス、其外ニ大藏大臣ノ說明ニ據リマスレバ、滿韓地方ニ於テハ撫順、若クハ
  東〓、若クハ京義線ノ如キ利源ガアルト云フケレドモ、是等ノ利源ヨリ國家ノ收入ヲ
  增スト云フコトハ多大ノ費用ヲ投ジタ後デナケレバ出來ナイコトデアラウト私ハ信ジマ
  ス、シテ見レバ歲入ト歲出ヲ想像シテ、四十年以下ノ計算ヲシテ見マスレバ、歲入ニ於
  テノ缺陷ハ恐クハ一億ニ近イ〓陷ガ必ズ生ズルデアラウト私ハ信ジマス、是ハ統計ノ上ニ
  斯樣ニ現ハレルノデアル、諸君モ亦必ズ統計ノ數字ニ訴ヘテ計算ヲナサッタナレバ、私ノ
  計算ト略〓同一ノ結果ヲ生ズルデアラウト思ヒマス、是ニ據リマスレバ、如何ニシテモ此
  一億一千万圓ノ國債基金ヲ積ムト云フコトハ、健全ナル財源ヨリ產出スコトハ出來ナ
  イノデアル、八千万以上ニ近イ公債ヲ起サナケレバナラヌ、此一億一千万圓ノ基金ト云
  フモノヲ積ムコトハ計算ガー算盤が既ニ許サナイコトデアルト私ハ思ヒマス、而シテ此一
  億一千万圓ノ內容ヲ段々調ベマスレバ、公債ノ金利ガ既ニ本年モ來年モ再來年モ八
  千万圓以上ニアルノデアル、差引僅カ二千万圓內外ノ元金ヲ拂ハンガタメニ一般收入
  ヨリ早ク旣ニ一億一千万圓ノ金額ヲ引去ラネバナラヌト云フ、玆ニ法律ヲ作ル必要ガ
  殆ドナイト私ハ思フ其名ガアッテ其實ハ殆ドナイノデアッテ、却テ二千万圓ノ元金ヲ拂
  ハンガタメニ、年々今後數年間ハ八千万圓ニ近イ新公債ヲ起サナケレバナラヌ又形勢デ
  アルト信ジマス、是ノ如ク歲入歲出ノ計算ノ上カラ割出シマスレバ、國債整理基金ト云
  フノハ偶〓以テ元金ヲ二千万圓減ラス傍ニハ、年々八千万圓近クノ新公債ヲ起スト
  コロノ法案デアル、差引シテ五六千万圓ノ公債ハ、却テ年々殖エテ往クノデハナイカト思
  ヒマス、若シ之ヲ極端ニ申シマシタナラバ、減債ヲ二千万圓近クヤッテヽ一方ニハ數年ノ
  間八千万圓近クノ增債ヲ行ハナケレバナラヌ、殆ド其名ガアッテ、其實ハ遂ニ亡ビテシマフ
  ト云フヤウナコトハ、此財政ガ斯ク致サシメル結果デアルト私ハ思フ、茲ニ現內閣ノ一員
  デアル加藤外務大臣ノ如キハ野ニ居ラレルトキニハ、極力口ヲ極メテ、現內閣ノ、否
  ナ、前內閣ノ此財政方針ニハ反對ヲセラレテ、併セテ此減債基金ノ如キモノニハ、口ヲ極
  メテ、否ナ、筆ヲ極メテ反對ノ意ヲ表シテ、社會ニ對シテ、〓師ノ地位トナッテ、是ヲ社會
  ニ向ッテ此案ハ非ナリ、減債基金ノ如キモノハ我國ニ於テ採ルベカラザル政策デアルト云
  フコトヲ主張サレタトコロノ一人デゴザイマスルが、一度廟堂ニ立タレテ、玆ニ二十日カ
  三十日僅カ經過シタ今日ニ於テサヘモ寂々寥々一言ノ聞ク所ガナイノデアル、併ナガラ其
  胸中ニハ必ズ是ハ反對デアラウ、政治家ノ德義サモアルベキコトヽ私ハ信ズル是ヲ見レ
  バ此減債基金案ト云フモノニ向ッテハ、內閣ノ全體モ亦一致デナイ、必ズ不一致ノ事
  柄デアルト私ハ思フ、若シ今日ノ加藤外相ノ態度ガ眞正デアルナラバ過日ハ虛僞デ
  アル過日ガ眞正デアルナラバ、今日ノ態度ハ虛偽ト云ハナケレバナラヌ、人間ノ豹變
  是ノ如ク速ニシテ、迅速ニシテ、氣樂ニ往クナラバ、、誠ニ人間ノ生活ハ氣樂ナモノト思フ、
  併ナガラ加藤高明氏、又一個ノ政治家デアル以上ハ、必ズ此基金案ニ對シテハ內閣ノ
  一員トシテ反對ヲ表セラレテ居ルニ違ヒナイ、内閣ノ意見、既ニ本案ニ對シテハ不一致デ
  アルト本員ハ信ジマスノミナラズ此法案ノ完結ヲ〓ゲテ、其目的ヲ達スルニハ、今後三十
  四箇年ノ長歲月ヲ要スルノデアル大藏大臣說明ノ如ク、今日ノ狀態ハ戰後非常ナ變
  化ヲ來スト云フコトハ、誰デモ知ッテ居リマスガ三十四箇年間是ガ無事ニ年々一億一千万
  圓ヅヽ特別會計ニ繰入ガ出來ルト云フコトハ、誰が保證ガ出來ルノデアルカ、歲出ハ益ゝ
  增加ノ傾ガアッテ、歲入ニ如何ニシテモ增加ノ傾ノアルト云フコトハ、事情ガ許シマセヌ、
  ソレニ向ッテ、三十四箇年繼續シテ、之ヲ無事ニ通過セシメナケレバ、此效力ハ吾〓ハ收
  ムルコトハ出來ナイノデアル三十四箇年ノ長年月ニ亙ル玆ニ約束ヲ御互ニ設クルト云
  フコトハ、却テ將來敏腕ナル財政家ガ出タトキニ、卽チ臨機ノ處置ヲシテ、財政整理ノ
  大手腕ヲ振フト云フコトハ、是ニ依ヶテ妨ゲラルヽ、惡因緣ヲ作出スノデハナイカト私ハ思ヒ
  マス、ソレ故ニ是ノ如キコトハナサナイデ、先ヅ八千万圓ノ利子ハ無論拂フタメニ豫算ニ
  計上シナケレバナラヌ、其他ノ元金仕拂ノ如キハ、時ニ從ッテ、暫ク借換政策ヲ執ヲテ是
  ノ如ク法律ヲ以テ三十四箇年ノ長歲月ニ亙ル惡因緣ヲ作ルコトハ止メテ、暫ク時ニ
  從ッテ便宜ノ政策ヲ執ッテ、財政ノ基礎ノ健全ヲ圖ルガ、私ハ得策デアラウト思ヒマス、
  私ハ無論現內閣ノ成リマストキニハ前內閣ヨリモ比較シテ是ハ餘程立憲政體ニ近イ
  内閣ガ出來タト云フコトヲ信ジテ居ル、ソレ故ニ決シテ是ハ惡意ヲ以テノ攻擊ヂヤゴザイ
  マセヌ、唯斯ル三十四箇年ニ亙ッテノ長年月ノ法案ハ、玆ニ財政ノ將來歳出ヲ益ゞ多ク
  シテ歲入ニハ賴ミ寡ナノ今日ニ於テ、是ノ如キ改策ノ根本ヲ立テルト云フコトハ寧口
  內閣ノタメニ不幸デアルト思フ、一度是ガ蹉跌スルコトガアリマシタナラバ、此法案ニ依ッ
  テ公債ノ騰貴ヲ保タウト云フ希望ノ大ナルダケ、他日公債ノ暴落ト云フコトハ免カレヌト
  思ヒマス、一度躓ケバ國家ノ大事デアルカラ、寧ロ之ヲ廢棄スルガ却テ安全デアリ、內閣
  ノタメニモ得策デアル、斯樣ニ眞意ヲ以テ信ズルカ玆ニ、茲ニ反對ノ意見ヲ述ベテ、廢棄
  說ヲ出シマスルノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=24

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• 025・望月小太郎

  ○望月小太郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=25

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• 026・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　望月小太郞君
  〔望月小太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=26

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• 027・望月小太郎

  ○望月小太郞君　諸君、本案ノ運命ハ、議論ヲ鬪ハセズシテ、大勢ハ既ニ定ッテ居リ
  マスニモ拘ハラズ、尙私ハ玆ニ數言敷衍ノ必要ヲ感ジマシタ、ト云フ次第ハ項日委員會
  ニ於テ本案提出ノ政府ノ辯明ト言ヒ、又是ガ贊成ノ御意見ト云ヒ、露骨ニ申上ゲマス
  レバ、說イデ未ダ詳カナラザルト云フ憾ミヲ本員ニハ感ジタノデアリマス、又從ッテ是ニ對ス
  ル反對論ノ御議論ヲ謹聽致シテ見マスレバ大石君ノ如キ、島田君ノ如キ、有力ナル
  議論家ノ間ニスラ、其反對ノ標凖ハ失禮ナガラ多ク是皮想的評論ニ過ギズンバ半バ
  ハ悲觀的想像說ニ過ギナイトシカ本員ハ感ゼヌノデアリマス、況ヤ本案ノ運、命ハ、戰時
  ニ於テ多大ノ犠牲ヲ供シタトコロノ忠愛ナル國民ニ向ッテ、吾〓ハ尙前途其負擔ニ向ツ
  テ堪ヘテ貰ハナケレバナラヌト云フ境遇變轉ノ國運ニ際會シタル今日、惡稅ノ改良スベ
  キモノハ勿論之ヲセナケレバナラヌ、サリナガラ負擔其物ノ增額ニ於テハ勢ヒ是ヲ忠愛ナ
  ル國民ニ向ッテ訴ヘナケレバナラヌト云フ是レ本案ノ緊急ニシテ必要避クベカラズト云フ
  所以デ、其精神ニ向ッテハ、本員之ヲ明白ニ簡潔ニ其所感ヲ述ベテ、諸君ノ御批評ヲ
  願ハウト思ヒマス、本員ガ本案ニ贊成スルト云フ趣旨ハ極メテ簡單デアル、贊成ノ要
  〓ハ之ヲ四ツニ分ケマスル、卽チ本案ハ既往竝ニ將來ニ於ケル外債ニ對スル、否國債ニ
  對スルノ信用維持上避クベカラザル政策デアルト云フ事、是ガ贊成ノ一要點、第二ニ
  於テハ將來ニ於ケル戰後經營ニ必要ナル資金、殊ニ殖產興業上ニ關スル國債信用ノ
  維持上、避クベカラザル必要案トシテ贊成スルト云フ是ガ二〓、第三ハ既往公債ノ整理
  竝ニ內外資本共通ノ便宜ノタメ、本案ハ是又必要避クベカラザルト云フ事、第四ニ於
  テ本來基金制度ナルモノハ其實文明諸國ガ認メテ以テ安全ナル財政政策トシテ居ルモ
  ノデアルト云フ」此此箇ノ論據ヨリシテ、本員ガ贊成ノ趣意ヲ簡單ニ申述ベテ、見ヤウト
  思ヒマス、諸君、國家ノ信用ハ勿論自國ノ實力ニ依ルノハ申マデモゴザリマセヌ、左リナ
  ガラ自國ノ實力ヲ事實ノ上ニ現ハスマデハ自國民ガ思フガ如ク、他國民ガ其國家ヲ信
  用スルモノデナイト云フコトハ論ヨリ證據、日本ノ軍事上ニ於ケル信用、卽チ戰時ノ實
  力ニ對シテ、御同樣ニ日本國民コツ日露戰爭前旣ニ之ヲ確信致シマシタガ、日本ハ勝
  テカシドウゾ破レテハ困ルト同情アル歐米諸國人モ此戰爭ニ"於テハ日本ノ實力ハ
  戰爭其物ノ結果ニ依ラザレバ、之ヲ認メナカッタノデアル〓戰時ニ於ケル國家ノ信用尙
  且是ノ如シ、況ヤ平時ニ於ケルトコロノ國家ノ信用、卽チ日本ノ財政上ノ實力ニ對シテ
  ハ、唯今ノ反對ノ御意見ニハ偉大ナル信用アリト言ハレテ居ルガ、本員ノ見ル所ヲ以テ
  スレバ、戰時ノ實力ヨリハ、尙平時ノ信用ニ對シ今日ハ其信認ノ程度甚グ低クアルト
  云フコトヲ證明セラルヽノデアル何トナレバ連戰連勝ノ我國ガ、而モ同盟國ノ英國ニ
  向ッテ其外債ヲ募集スルニ於テハ、第一囘、二囘、三囘、四囘、此同盟國ノ英國ハ日
  本ガ勝テバ勝ツダケ、自國ノ利益ニナルニモ拘ハラズ、日本ニ貸付ケル外債ノ利子ニ至ッ
  テハ普通英國人ガ仕拂フトコロノ二倍以上三倍ニモ及ンダノデアル、尙其高利ニ於テ
  モ不滿足デアル其以上ノ擔保ヲ出サナケレバナラヌト云フコトハ、縱シ是前內閣ノ財政
  政策ガ公債政略ノ上ニ於テ誤ッタトハ言ヘ、結果ノ上ニ於テハ諸君ノ知ラルヽガ如ク、
  同盟國ノ英國スラモ普通金利ノ二三倍以上ニ搗テヽ加ヘテ擔保ヲ要求シタト云フ、是
  ガ日本ノ財政ノ實力ニ於ケルトコロノ外國ノ信任デアル、英吉利既ニ是ノ如シ、其他ノ
  歐米諸國ガマシテ況ンヤ地理歷史ノ異ナル此日本ノ事情ニ通ゼザルトコロノ外國ニ向ツ
  テ、吾〓日本國民ガ信ズルガ如ク、其財政上ノ實力ヲ信用セヨトマデ待設ケルノハ、是
  ハ諸君世界ニ不通ナルトコロノ議論、卽チ通ゼザルトコロノ議論デハナカラウカト本員ハ思
  フ、免ニモ角ニモ本員ノ見ル所ノ世界カラ見タル日本ノ財政ノ實力ハ、斯ク薄弱ト信
  ズルノデアル、ソレ故ニ歐米諸國ガ日本ハ過去又現在將ニ負擔セントシツヽアルトコロノ
  公債ヲ合セテ、此二十三億ノ國債ハ如何ニ整理シテ往クノデアラウ、是ガ日本ガ平時ニ
  於ケルトコロノ實力ノ試驗デアル、其二十三四億中戰爭前ニ於ケル五億七千万圓ニ
  對シテハ、年々三千六百万圓ヅヽ元利償還ノ基金法モ同樣ナル制度ガ出來テ居ルカラ
  安心デアルガ、殘リ十七億、卽チ日露戰爭ノ結果ニ依テ生ジタル其外債ハ、如何ニ日
  本ハ之ヲ處理シテ往クデアラウカ、豈啻ニ現在ニ於ケル十七八億ノ公債處理ノミナラ
  ズ、將來日本ガ此發展ト共ニ必要ナルトコロノ殖產興業ノ財源ト云ヒ、其他國防上ノ
  經營ニ於テ避クベカラザル財源ト云ヒ、日本國民ハ現存シタル二十三四億以上尙數
  億ノ負擔ヲシテ往カナケレバナラヌ、此勇武ナルトコロノ日本國民ガ、戰爭ニ於ケルト均
  シク、果シテ能ク平時ニ於ケル其財政ノ運用ヲ圓滿ニシテ往クヤ否ヤト云フコトハ、世界
  ノ疑問デアル、諸君故ニ歐米諸國ハ縱シ日本ニ同情アリトハ云ヘ好意ニ同情ヲ持ッテ
  居ルトコロノ財政ノ實力ニ對シテハ實ハ試驗中ト本員ハ信ズルノデアル、斯ル有樣デゴザ
  イマスカラ、此本案ノ目的タル日露戰爭ノ結果ニ依ッテ起スベキトコロノ十七八億ノ國
  債整理ノ方法ガ付カナカッタナラバ、此國債ノ時價ヲ維持スルコトノ出來ザルハ申スニ
  及バス、前途ニ於テ起スベキ殖產興業ニ必要ナル資金ハ何レカラ得ヤウト云フ御希望
  デゴザイマスルカ、卽チ少ナクトモ世界ノ普通金利以上二割三割否二倍三倍ノ增加ヲ
  拂フニアラザレバ、日本ニ放銀スル者ガナイト云フノガ、今日ノ世界ニ於ケル日本ノ財政
  上ノ信用ト見テ居リマスル、ソレ故ニ現ニ前內閣ノ財務委員タル高橋君ガ、昨年ノ十
  一月ニ五千万磅ヲ四分利附キデ、而カモ無擔保デ借リタノデアル、併ナガラ是ハ無擔保
  デアルトハ云ヒナガラ、其實此金ヲ以テ內國債ノ六分利附ヲ二億万圓拂ヒ、而シテ其
  殘部ヲ以テ、外國ノ六分利附ノ一回一一囘ヲ拂フ、此拂フノモ來ル三月カラ之ヲ償還シ
  始メルト、斯ウ云フ條件デコソ、是ハ無擔保デ以テ此公債ガ出來タノデアル、併ナガ
  ラ英國資本家ヘ向ッテ、高橋君ハ如何ナルコトヲ言フタカ、卽チ日本前內閣ノ財政委
  員タルモノガ歐米各國ノ財政家ニ向ッテハ、斯ウ明々白々ニ質言シテアルノデアル我政
  府ノ財政政策ハ日本ノ信用ニ依賴シタルモノニ向ッテ寸毫モ後悔又ハ失望ヲ來タサシム
  ベキ原因是ナキハ予ノ確信スル所ナリ我日本ノ重要ナル財政計畫ノ一ハ國債元利ノ償
  却ニ向ッテ特別基金法ヲ定ムルニアリ、此目的ニ對シ我政府ハ既ニ大藏省中新タ二一
  局ヲ設ク卽チ國債整理局ナリ右ノ基金ハ此局ノ特別取扱ニ屬シ、決シテ他ノ目的ニ
  使用セズ面シテ其額ハ年々一億四千六百万圓ヲ一般歲入ヨリ特別會計ニ移シ以テ國
  債ノ償却ニ應ズ、此特別基金ニ依ッテ我國ハ三十年內外ニシテ全ク國債ヲ償却シ得ラ
  ルベシ云々」是ハ信用アルトコロノ記事ヨリ本員ガ諸君ニ證據ノタメニ提出致ス次第デア
  ル、諸君、日本人トシテハ、如何ニモ遺憾ナル問ハレ方デハアルガ、併ナガラ貸方タル
  英米ノ資本家ガ日本ノ財力ニ付イテ安心ガ十分デナイト云フ結果、此質問ヲ起シタト
  云フコトハ是ハ當然ノコトデアル、此當然ナル質問ニ對シテ、我財務委員ハ是二言質
  ヲ與ヘタノデアル、諸君、本員ハ之ヲ以テ日本國ノ言質ト認メルニ於テハ、獨リ本員ノミ
  ナラズ、大藏大臣モ之ヲ是認シタノデアル卽チ此委員會ニ於テ、本員ガ此〓ニ付イテ、
  大藏大臣ニ質問ヲ致シマシタ時ニ大藏大臣ハ答ヘタ、其速記錄ニハ斯ウ云フコトヲ云
  フテ居ル、「外國人ノ安心スルタメニ必ズ高橋君ハサウ言フタラウト思フ、(笑聲起ル)又
  事情サウ云フコトヲ云フベキデアルト私ハ信ズル(「高橋君ハ日本ニアラズ」ト呼フ者アリ)
  此高橋ノ言質、大藏大臣ノ是認シタル言質、如何ニモ高橋君ハ日本デハナイ、去リナ
  ガラ日本國ヲ代表シタル財政委員ノ此言質ハ、縦シ法律的條件トシテ借リタノデハナ
  イケレドモ、卽チ國家平時ノ財力ヲ試驗スルトコロノ其基礎タル德義的言質ト致シテ、ド
  コニ差支ガアルノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)此德義的言質ニ對シテハ、獨リ前內
  閣ノミナラズ、現內閣ハ勿論、尙況ヤ現內閣ヲ歡迎シタルトコロノ國民ハ、現內閣ノ
  タメデハナイ其實自己ノ利益ノ上カラシテ、此質言ノ有無ニ拘ハラズ、減債基金ノ方法
  ヲ講ゼズシテ往カレヤウトハ、ソレハ自分勝手ノ理屈トシカ本員ハ信ゼラレナイ、(「大出來
  大出來」ト呼フ者アリ)何トナレバ公債整理ノ基金法が、我國ニ於テ出來ナカッタナラバ、
  既往否現在ニ於ケルトコロノ十七八億ノ國債ノ信用ト云フモノハ、直チニ歐米人不安
  ノ念ヨリ市場ニ動搖ヲ來ス目前ノ損害、是レ則チ本員ガ第一ノ理由トシテ此案ハ必要
  〓クベカラザルモノトシテ贊成スル眞意ハ實ニ玆ニアルノデアル更ニ第二ニ至ッテ見ル
  ト、(「簡單」又「謹聽」ト呼フ者アリ)三十年ノ問題ガ簡單ニ往キマスカ(「ヒヤ〓〓大ニ
  ヤルベシト」呼フ者アリ)第二ノ要〓タル將來國防ニ必要ナル財源、若クハ殖產興業ニ
  必要ナルトコロノ財源ハ、勢ヒ是ヲ低利ノ公債ニ仰グト云フコトハ是又諸君ニ於テ
  モ是認セラルヽコトヽ思フ、果シテ然ラバ、現時在存シテ居ルトコロノ公債ノ整理ノ付カ
  ナイノニ、如何ニシテ新ナル公債ガ而カモ日本ノタメ有利ノ條件ニ於テ、之ガ募リ得ラレ
  マセウ、是ガ則チ第二ニ於テ本員ガ此案ヲ贊成スルトコロノ要點デアル、又第三ニ於テ、
  今日ノ公債ヲ整理スルト云フ必要ハ目前ニ迫マッテ居ルト信ジマスル、又内外資本ノ共
  通ハ、間髮ヲ容レザル程、戰後ノ經營上大切ノ問題ト思ヒマス、此〓カラ見マスル
  ト、諸君先刻ノ御議論ニハ、日本ハ戰爭ノタメニ偉大ナル信用ヲ得タト言ハレテ居ルガ、
  本員ハ事實ニ於テ日本ハ決シテ偉大デハナイ、極ク僅少ナル信用シカ得テ居ラヌト云
  フコトヲ數字三示シ得ラレヤウト思フ、(「ノウ〓〓」又「ソレハ往カナイ」ト呼フ者アリ)諸君
  日本ガ偉大ナル信用デアルカ將タ僅少ナル信用ヲ得テ居ルカハ、試ミニ日露戰爭ノタメ
  ニ生ジタル內外公債ノ利子ヲ一覽致シテモ明白デアル、先ヅ外債ノ方カラ見マスルト、
  第一囘六分公債ハ其實幾ラニナッテ居ルカト云フト、八分五厘七毛ニナッテ居ル、第二
  囘ノ六分公債ハ其實幾ラデアルカト云ヘバ是ハ九分三厘一毛デゴザイマスル第三第
  四ノ四分半ノスラモ、其實ハ六分二厘ニナッテ居ル、更ニ內ヲ顧ミマスレバ、第一囘ヨ
  リ五囘マデノ五分利付ノ公債ハ名義ハ五分デアリマスルガ、事實ハ六分六厘八毛ニ
  ナッテ居ル、又六分利付ノ公債ハ其實八分二厘五毛ニナヲテ居ル、斯ク致シマスレ
  バ、日露戰爭ニ依ッテ日本ガ得タト云フ、論者ノ所謂偉大ナル信用ハ、實ハ平均七分
  八厘ニ當ッテ居ルト云フ數字ニナリマス、諸君、今世界一等國ノ公債ハ平均三分以上
  ヲ出ヅル國ガ何處ニアリマセウ、吾ミガ認メテ以テ財政上不安ノ國デアルト云フ「アルゼン
  タイン」ノ如キスラモ、三分半以上六分ノモノハ僅少デアル、白耳義ノ如キモノハ四分五
  厘デアル、戰敗ノ露國デスラモ、尙且三分以上五分ノ公債、然ルニ世界ノ一等國トナ
  リ、英國ノ同盟國タル日本ガ、世界ノ金利ノ二倍三倍以上ヲ拂ッテ、尙是デモ偉大ナ
  ル信用ガアルトハ如何ニ算盤ニ暗イ人ト雖モ、是ハ無理ナル結論ト本員ハ信ズルノデアル
  (「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)然ラバ則チ此高キ處ノ公債ハ一刻モ早クドウシテモ整理シテ、
  世界ノ金利ト平等ヲ保ッテ往カナケレバナラヌ、若シ平等ガ保チ得ラレルトシ、卽チ七
  分八厘ノ金利ガ半頷ニナッテ、世界ト平等ヲ保ツトシタナラバ、今日拂ッテ居ル金利ヲ
  以テスレバ、十八億デハナイ三十六億ノ公債ヲ吾ミハ負擔シ得ラレルノデアル(拍手起
  ル)假ニ此十八億ハ戰爭ノ-不生產的ニ使ッタトシテモ、殘ル十八億ハ殖產興業ノ
  方面ニ綽々トシテ餘裕アル費途ノ明カデアルマテ、吾々ハ公債ノ整理ハ必要デアルト信
  ズル、此公債ノ整理ヲセナカッタ結果ハ、ドウデアルカ、井上君モソコニ見エルガ炭礦鐵道
  會社ノ如キハ、有利ノ條件デ外資ヲ入レタニモ拘ハラズ、思フニ五分五厘以上彼是六
  分ニナラウト思フ、又關西鐵道ノ如キモ是ノ如キモノデアルト思フ、諸君我國ハ世界ノ
  金利ノ二倍以上若クハ三倍ノ金ヲ拂ウテ、而モ其高キ利息ノ金ヲ以テ、如何ニシテ門
  戶開放、各國均霑ト云フ亞細亞大陸ニ於テ吾〓ガ戰後ノ經濟ヲ發達シ得ラレヤウト云
  フコトガドウシテ結論ガ起リマセウ、(望月長夫君「此法律テ廉ク借リラレルト云フコトガ
  全クナイ」ト呼フ)ソレ故ニ若シ元金ヲ拂フコトガ出來ナケレバ、金利ダケ拂ッテ居テモ宜
  イデハナイカト云フ反對ノ議論ノ如キハ俗ニ所謂後家ノ算盤、世界ノ大勢ニ通ゼザルト
  コロノ數字ト私ハ論定セザルヲ得ナイノデアル、斯ク申シマスレバ此基金制度ハ現在ノハ
  勿論ノ事、將來ノタメ吾〓國民ハ戰時同樣、所謂擧國一致ノ熱誠ヲ以テ、アラユル苦
  痛ヲ忍ンデ、此基金制度ヲ通過スルト云フコトハ國家今日ノ財政々策トシテハ緊急
  避クベカラザルモノデアルト云フ是ガ本員ノ贊成ノ第三ノ理由デアル、今一條アリマス、
  諸君第四基金ノ制度ハ、世界ノ强國ガ認メテ以テ安全ナル財政政策ト致シテ居ルト云フ
  コトニ付キマシテハ本員モ曾テ誤謬ニ陷リ卽チ財政上不信任ナル智利、「アルゼンタイ
  ン」ノ外ニハナイモノダト思フタ、所ガ其實英吉利ニモ佛蘭西ニモ獨逸ニモ亞米利加ニモ
  ゴザイマス、否現時之ヲ繼續致シテ居リマス、之ヲ一分間外國ノ例ヲ申スコトヲ御許シ
  ヲ願ヒタイ、簡單ニ諸君、英吉利ノ基金制度ハ三十一年前ヨリ七年前マデ續キ
  マシテ、年々二億五千万圓ヅヽ新基金制度ノ中ヘ入レテ參リマシテ、是ガ「トランスバー
  ル」戰爭ノタメニ動搖シタ結果ハ、ドウデアル百十磅ノ「コンソル」ハ九十磅ニ減ジ、遂ニハ
  十五磅ニ減額致シマシテ、今日英吉利ノ新內閣ハ、此減債基金ヲ復活スルニアラザレ
  バ、英國ハ間接ニ五億万圓ノ損失ヲ來スモノデアルト云フコトガ、有力ナル財政家ノ輿
  論トナッテ居リマス、又佛蘭西ノ如キモ、九十一年前ヨリ實行致シマシテ、年々四千万
  法ダケ、此基金ノ中ニ入レテ其外ソレニシテ尙甘ンゼス、土地賣下代金ヲ以テ此基
  金ニ入レテ居ル、獨逸ノ如キハ元利償却ノタメニ、特別ノ稅源ヲ定メテ、支出シテ居ル、
  卽チ鹽稅國有財產拂下代金、又官有地ノ收入ト云フモノヲ一定ノ基金ニ入レテ居リ
  マス、亞米利加ノ如キ、富强國ニ在ッテモ、、百十數年前ヨリ此制ヲ實行シテ、今日ハ公債
  額ノ百分ノ一以上、若クハ百分ノ五マデヲ年々積立テヽ、基金制度ノ中ニ入レテ以テ
  其國家ノ信用ヲ海外ニ維持シテ居ルト云フ、此安全ナル基金制度ニ對シテ、諸君我國
  ガ之ヲ採用スルノニ何トシテ恥カシイコトガゴザイマセウ、況ヤ日本ハ此戰爭ノタメニ一
  舉ニシテ六倍半以上ノ土地ヲ擴張致シ、一朝ニシテ千二百万卽チ内地人口ノ四分ノ
  一ヲ增加致シ、一年五十六万ノ增加ト見マスレバ二十四年掛ラナケレバ增加シナイ
  トコロノ人口ヲ、一舉シテ吾ミハ增加致シタノデアル以上ハ此六倍大ノ新領土、若ク
  新領土ト見ルベキ所ノ亞細亞大陸、此二十四年ニシテ增加スベキモノガ一朝ニシテ
  增加シタル此人口、此二ノモノニ對シテ-日露戰爭ノ結果トシテ得タル此二ツノモノ
  ヲ、其費用ノ償却法ヲ講ゼナイト云フコトガ、果シテ是ガ安全ナル財政政策デアリマセウ
  カ、此償却法ヲ講ズルタメニ、玆ニ特別基金制度ヲ設クルコトヲ以テ、人爲的ノ政策ダ
  ト攻撃スルナラバ凡ソ世界ノ財政政策ハ皆人爲的政策デナイモノハナイト本員ハ信ズ
  ルノデアル、卽チ八爲的ノ政策ヲ以テ、天然ノ信用ヲ發揮スル、是ガ財政運用ノ妙デ、
  本案ノ如キハ宜シク上下擧ッテ以テ之ヲ贊成スベシト云フノハ、實ニ此原因デアル(「ヒ
  ツ」ト呼フ者アリ)終リニ臨ンテ反對論ノ骨子ト云フモノニ向ッテ一言ヲ加ヘテ置キ
  タウゴザリマス、反對論ヲ謹ンデ承リマスレバ、二ツ三ツ有力ナル御議論ガアル是ヲ玆ニ
  是非辯明スル必要ガアリマスカラ、今數分御割愛ヲ願ヒマス、反對論ノ一ニ曰ク、年々
  〓損ヲ生ズベキ前途ノ財政ニ對シ一ノ遣繰的ノ減債基金ヲ設ケルヨリハ、寧ロ其足リ
  ナイトコロダケ借リタラドウデアルカト云フ御議論、此御議論ハ基金制度其モノヽ目的
  ヲ誤解ナサレテ居ル論旨ト思フ、何トナレバ將來借リルモノハ暫ク措イテ、現在借リ
  タモノヽ整理ヲ付ケルニアラザレバ、如何ニシテ將來起スベキ財源ヲ得ラレマセウ、此故
  ニ是等ノ議論ハ深ク取ルニ足ラズトシテ、次ニ尤モラシク如何ニモ一度之ヲ聞ケバ同情ノ
  感ニ堪ヘナイトコロノ議論ハ、先刻モ承ハリマシタ、卽チ四十年度以後ノ財政ト云フモノ
  ノ上ニ於テハ、歲出入ニ不足ヲ生ズル是ニ對シテ當局者ノ意見ハドウデアルカト云フコ
  トカラ、陸軍大臣、海軍大臣、大藏大臣ヲ追窮又追窮、而シテ其返答が不得要領デアウ
  タ結果、之ヲ以テ愛國心ニ冷淡デアルカノ如ク呼バレタトコロノ御議論ガアル諸君、此
  四十年以後ノ財政計畫ガ不得要領デアルト云フコトヲ攻擊ナサルノハ、寧ロ政界ノ事
  情ニ通ゼザルトコロノ俗論ト本員ハ信ズルノデアル、(拍手起ル)一個人ノ寺內大臣、
  一個人ノ阪谷君、一個人ノ齋藤君ハ各〓軍事財政ノ專門家トシテ一定ノ意見アルニ
  相違ナイ、サリナガラ一個人ノ齋藤君ナリ、阪谷君ナリ、寺內君ナリノ這入ッタトコロノ
  內閣、其内閣ハ諸君ノ認メテ以テ憲政ノ一進步ナリト歡迎シタル其內閣、此內閣ニ這
  入ッタトコロノ三君ハ、內閣ノ生レタトコロノ壽命ト共ニ、其命數ヲ等ウスル卽チ諸君
  ノ歡迎シタル西園寺內閣ハ、生レテ僅カニ四週間、乳ヲ飮ムカ、生キテ育ツカ、此儘斃
  レルカ、(笑聲起ル)ト云フコトニ付イテハ、實ニ國民ガ〓究セネバナラヌトコロデアル、此四
  週間ノ短日月ナル內閣ニ向ッテ、而モ日本ガ前古未曾有ノ大戰爭ヲ爲シタ戰後經營
  ニ對シテ、內閣ノ意見ガドウデアル、戰後經營ノ方策ハドウデアル、此答辯ガ出來ナケレ
  バ是ハ不得要領デアルト一云フニ至ッテハ、是甚ダ事情ニ通ゼザルノミナラズ、試ミニ反對
  ノ諸君ガ日本ノ如キ現狀ニ於テ、政權ノ授受ガ未ダ立憲的ナラザル國ニ於テ、此現內
  闇ノ地位ニ至ッテ、果シテ之ヲ能クシ得ラレマセウカ、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)是ハ寧
  ロ自己ニ於テ出來難キトコロノコトヲ、他人ニ向ッテ難キヲ責ムルモノ(拍手起ル)ト本員
  ハ信ズレバ信ズル程、現內閣ヲ以テ憲政ノ一進步ナリト歡迎シタル其言葉ハ、徒ラニ
  言葉ノ上ノ雅量ニシテ、其行ニ向ッテハ頗ル狹量デアルト云フ遺憾ヲ抱クノデアリマス、
  (拍手起ル)今一ツ反對ノ意見ニハ前途ノ公債ニ對スル基金ヲドウスルカト云フ議論、
  是ハ一應尤デアリマスガ、前途ノ公債ハ其公債ヲ募ルベキモノヽ產出スル所ノ利益ヲ
  以テ、元利ヲ償却シテ往ク方法ヲ講ズルノデアル、卽チ朝鮮問題ニ向ッテハ、朝鮮公債
  モ起リマセウ、滿洲公債モ起リマセウ、鐵道公債モ起ル斯ウ云フ公債ガ多々益辨ズ
  ルダケノ日本ノ將來ノ利源開發ト云フコトニ向ッテ熱中スルノデアル、殷鑑遠カラズ臺灣
  ガ六千万圓ノ公債ヲ募ッテ、臺灣ノ財源ヲ以テ裕ニ收支相償ッテ居ルト云フ、此前途ヲ
  考ヘマスレバ、此將來ニ於ケル公債ノ基金ヲ如何ニスルカト云フコトハ、餘リ憂フルニ足ラ
  ヌトコロノ御議論ト思フノデアル(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)要スルニ戰後ノ國家經濟ト
  致シテハ申スマデモナイコト、御同樣擧國一致ノ實ヲ以テ如何ニシテ民力ノ發達ヲ圖リ、
  如何ニシテ貿易ノ增進ヲ企テルカ此民力ノ發展、貿易ノ增進ト共ニ、政府ノ收入タ
  ルベキ營業稅、所得稅ノ所得ハ增加致シマセウ、更ニ關稅ノ改正ヲ企テル、又ハ惡稅ノ
  改廢ヲ爲シ、進ンデハ滿韓起業ノ利源ヲ以テ、算盤ヲ立ッテ往クト云フ、此外ヨリ八百
  万ノ神樣ヲ以テ内閣ヲ造ッテモ、此日本ノ財政政策トシテハ此上ノ明案ハナイモノト信
  ズルノデアル、(笑聲起リ拍手起ル)以上本員ノ所論ニ反シテ、若シ反對論者ノ希望ス
  ルガ如ク、本案ガ否決ヲセラレタ曉ニハ、如何ナル結果ヲ日本ハ得マセウカ現ニ委員
  會ニ於テ此案ハ否決サレハシマイカト云フ風說ガ、倫敦ニ傳ハルヤ否ヤ、直ニ其公債ハ
  一磅四分ノ一下落シタノデアル、又數日來此賢明ナル忠愛ナル諸君ノ大多數ハ、本
  案ヲ通過スルデアロウト云フ氣配ガ、株式市場ニ現ハルヽヤ、八十圓臺ノ公債ガ九十
  圓九十五圓ニ上ル、外ニ於テハ五分利付ノ公債ガ二三磅騰貴シタ、況ヤ甚ダ極端デ
  アルガ、反對ニ本案ガ否決サレタ曉ニハ如何ニナルカ、差當リ先年借リタ五億万圓ノ新
  舊公債ヲ償還シナケレバナラヌ、卽チ目前ニ迫ッテ居ル三月ノ外國市場ニ於ケル日本ノ
  公債ハ、必ズ響ノ聲ニ應ズル如ク下落スルデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)諸君、百圓
  ニ付イテ二三圓ノ下落ガアッタナラバ卽チ諸君ノ反對ノ聲ガ多ケレバ多イ程(笑聲起ル)
  此下落ノ程度ガ多クナルノデアル、此下落ガ百圓ニ對シ二三圓ト見ルナラバ十八億万
  圓ノ借錢ノ上ニ於テハ、少クトモ三千六百万圓以上五六千万圓ノ損失ヲナス、五圓損
  シタラバ一億万圓ノ損失ガ、吾〓ガ二三分ノ間ニ國家ノ上ニ蒙ラシムベキモノダラウト思
  フ、(拍手起ル)畢竟反對論ノ骨子ハ愛國心ニ媚ンガタメ(「ノウ〓〓」又ハ「ヒヤ〓〓
  ノ聲起ル)敢テ媚ビント云フ-愛國心ノ目的タル國家永遠ノ財政上ノ信用ヲ破壤ス
  ルト云フトコロノ結果マデハ御推論ナサラナカッタトコロノ御議論デハナカラウカト、本員ハ
  信ズルノデアル(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)況ヤ苟モ現內闇ヲ以テ憲政ノ一進步トマデ歡
  迎セラレタ其舌根ノ未ダ乾カザルニ、早クモ此現內閣ノ死活問題デハナイ-國家
  永遠戰後經營ノ第一主義タル此減債基金ニ反對ヲシヤウト云フコトハ、果シテ是ガ諸
  君憲政ノ益友デアルカ(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)抑モ又戰後經營ニ對スルトコロノ、滿
  場一致ノ大多數ヲ以テ通過シナケレバナラヌ問題ニ對スル政治家ノ行動トシテ是認シ
  得ベキモノカ(拍手起ル)本員甚ダ疑ナキ能ハザル次第デアル、申スマデモナキコト、政界ノ
  コトハ兔角感情ニ奔リ易イノハ、吾人共ニ戒メナケレバナラヌ、減債基金ト云フ其他ノ
  感情ノ風ニ吹カレテ、(笑聲起ル)此國家永遠ノ前途ノ利害ニ關スル本問題ニ反對ト
  云フコトハ、本員ハ切ニ反對諸君ノ猛省ヲ望ムト共ニ、一人モ贊成者多ケレバ多キ程、
  日本ノ公債ハ直チニ倫敦デ直グ騰ガルノデ(笑聲又ハ「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)一人モ
  反對者ガ多ナレバ、成程諸君ノ反對ハ一磅ノ何分ノ幾ツト云フモノヲ國家ニ損害ヲ來タ
  スノデアル(笑聲又ハ「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)希クハ此所感ヲ以テ諸君ニ本案ハ、ドウ
  ゾ到底通過スルモノデアル以上ハ、最大多數ヲ以テ平生ノ愛國心ヲ以テ、舉國一致ノ
  贊成アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=27

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• 028・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　大石正己君
  〔大石正己君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=28

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• 029・大石正巳

  ○大石正己君　諸君、私ハ此減債基金法ニ反對ヲスル方デアリマスガ、政府ハ此案
  ヲ以テ財政整理ノ根本ナリトシテ、玆ニ辯護サレテ居ル-說明サレテ居ル私ノ見ル
  トコロデハ此案ヨリ外ニ日本帝國ノ財政整理ト云フモノハ、此案以外ニ其根本ガナケ
  レバナラヌ、デ此案ヲ以テ殆ド現内閣ハ生命ニモ繫ルヤウニ大切ニサレテ居ルガ私ハ此
  案ニハ左程ノ重キヲ措カナイ、此案ハ案ツレ自身ノ善惡ニ拘ハラズ、日本政府ノ今日ノ
  狀態デハ到底行フベカラザルモノト考ヘル、固ヨリ此案ハ最早大勢ハ極ッテ居ル案デ、
  敢テ此議場デ勝敗ヲ爭フト云フ趣意デハアリマセヌガ、實ハ内閣諸公ニ日本帝國ノ財
  政ガ是デ往ケルト云フ信用ヲ得ラルヽカ、モウ一ツ元ニ遡ッテ此本年ノヤウナ豫算ノ杜撰
  ナル不健全ナル有樣デ、殊ニ日本帝國ノ財政ノ根本ガ、是デハ決シテ健全デナイト云フ
  コトヲ、國民ハ見テ居ル、此〓ニ十分ニ現政府ガ省慮セラレンコトヲ望ムノデ、私ハ此
  案ト相竝ンデ日本帝國ノ財政ノ根本ガ、外ニ於テ確然ト立タネバナラヌ〓ヲ論ジヤウト
  思フテ又內閣諸公ニモ十分此一ツノ減債基金法案位ヲ以テ、左程是ニ重キヲ措カ
  ズ、モウ一ツソコニ遡ッテ親切ニ帝國ノ財政ヲ料理セラレンコトヲ望ム、故ニ國民ノ現政
  府ニ希望シテ居ル財政上竝ニ其他ノ〓ニ付イテ最モ現政府ニ勸告ヲ致シタイ考テゴザ
  イマス、固ヨリ財政ト云フモノヽ方針ノ立ツ立タヌト云フコトハ、決シテ此財政單獨ニ方針
  ガ立ツモノデハナイ、整理ノ出來ルモノデナイ、其外ニ內閣ノ內外施政ノ方針、陸海軍ニ
  對スル整理及其擴張ノ計畫、或ハ戰後ニ於ケル滿韓其他ノ經營ノ方針、此三大方
  針ガ立ッテ初メテ財政ノ整理ガ付クノデアル、初メテ財政ノ基礎ヲ鞏固ニスルコトガ出來
  ル之ヲ立テズシテ、財政ノミ獨リ鞏固ナランコトヲ欲スルノハ抑〓間違ヲタコトデハナイカ
  ト私ハ信ズル、何トナレバ政治ト云フモノハ金ノ出入ヲスルノガ政治ノ本職デナク、必要
  ナル國家ノ事務ヲナスガ上ニ於テ初メテ金ノ出入ヲスルコトガ超ッテ來ル、其方針ガ立ズ
  シテ此屠政ノ整理ガドコデ付クデアラウカト思フ、故ニ新政府ノ立ツ以來、國民ガ翹望シ
  テ政府ニ聞カント欲スルトコロハ此方針デアル、內外施政ノ方針ノ立方モ間違ヒ、或ハ
  陸海軍整理、及擴張ノ程度ヲ間違ヘルカシテ、御覽ナサイ、此財政ノ整理ト云フモノ
  ハ根本的カラ破レテ來ルノデアル、此減債基金法ナルモノハ、實ハ財政中ノ僅カノ小
  部分ニ居ッテ、決シテ之ヲ以テ日本ノ財政ヲ立テルナドヽ云フコトハ、大ナル間違デアル
  國民ガ此政府ニ向ッテ、施政ノ方針、竝ニ陸海軍ノ整理及擴張ノ方針ヲ聞カントシタ
  トコロノ目的バ甚ダ失望ニ終ッタ總理大臣ガ開會ノ初メニ當リテ、施政ノ方針ト稱
  スルトコロノモノヲ御演說ニナッタ、吾ヽモ護聽致シタ次第デゴザイマスルガ、是ハ私ハマダ
  方針ト稱スル程ノ具體的ノモノデナイト考ヘテ居リマス、成程戰後ノ經營ヲ舉國一致デ
  ガナケレバナラヌト云フ、斯ウ云フコトハ、是ハマダ方針ニハナラヌ、若シ是ガ方針ナラバ、小
  學校ノ生徒モ、車夫馬丁モ皆此位ノコトハ知ッテ居ル、是ハ詰リ戰後ノ經營ハ斯クケ々
  セネバナラヌ、斯ウ云フ重大ナ問題ハ斯ウスルト云フ方針ヲ御示シニナラヌケレバ決シテ
  施政ノ方針ト云フコトニハナラヌノデアル、偶〓内政上ノ方針ト申スベキモノヲ、此處デ無
  理ニ引出シテ見レバ則チ財政整理ニ對スルトコロノ打切、是ハ此席若クハ他ノ席ニ於
  テハ或ハ一應御辯明ヲ願フ譯ニナリマセウカト考ヘマスルガ、定メテマダ言葉ガ足ラズシテ、
  其御意味デハナカッタト考ヘマスルケレドモ、行政整理ヲ唱ヘラルヽコトハ數年以前カラ
  日本帝國ノ今日ノ狀態ハ、決シテ此行政整理ト云フモノヲセナケレバ、(高橋安爾君
  「問題外」ト呼フ)此機關ハ時勢ニ決シテ是ハ適合シナイト云フトコロカラ、行政整理ヲ
  望ムノデアル是ノ如ク日本帝國ノ···(「問題外」ト呼フ者多シ)時勢後レニナッテ數
  年前カラ主張シタトコロノ行政整理ガ、戰後ノ今日ニ於テ、是ガ未ダ整理モセザル中
  ニ是ガ不必要ナリト云フコトハ決シテナイノデアル、固ヨリ此行政整理ノコトタルヤ財
  政ノ上ニ大ナル關係ヲ生ズルノデアル、旣ニ行政上ニ於テ旣ニ不完全ナル〓ガアル、又甚
  ダ此豫算ノ出方ニ於テ杜撰ナル不謹愼ナル〓ガアルト云フコトハ一二ノ例ヲ以テ申シ
  マシテモ、卽チ此經常費ト臨時費ト云フモノヲ大イニ〓倒シタト云フノ感モアル又或ハ
  復舊費、補充費、若クハ新計畫ニ係ル一部分ト看做サルヽトコロノモノモ混同シテ居ル
  ト云フコトハ事實デアル、殊ニ此豫算ノ出方ノ杜撰ナルコトハ、昨日モ委員會ガ僅カ數
  分間ニシテ五百万圓ノ金ヲ一筆ニ削ルト云フコトハ、實ニ奇怪千萬ナルコトデアル是
  ハ當局者ニ於テモ是ノ如キ杜撰ノ豫算ヲ出シテ-成程之ヲ削ッテ一方ニ生產的ニ用
  井ルト云フコトヲ言ヘバ、如何ニモ尤モラシク聞エマスルガ併シ凡ツ內閣大臣ガ責任ヲ
  以テ國會ニ提出スル豫算ノ上ニ於テ、是ノ如キ杜撰ノコトハ將來ハ戒ムベキコトヽ私ハ
  考ヘル、是ノ如キモノデアッテ本年ノ財政ト云フモノハ、殆ド之ハ整理シタト云フ迹ハ見エ
  ズシテ、實ニ紛亂シテ居ル、頗ル此豫算ト云フモノハ杜撰不謹愼ト云フ言葉ノ裡ニ纏メ
  ルコトガ出來ルヤウナ有樣デアル、斯ウシテ此施政ノ方針、竝ニ陸海軍ノ整理、及將來ノ
  擴張ト云フコトニ付イテハ、全ク方針ガナイト云フコトヲ斷言セラレテ居ルノデアル、然ルニ
  此國家ハ一日モ方針ノナイ下ニ活動スルコトハ出來ヌノデアル、凡ソ國務ヲ處理スルト
  云フコトハ、必ズ是ハ繼續的關聯的ノモノデアル、殊ニ陸海軍ニ至ッテハ最モ然リ、軍艦ヲ
  半分造ッテ之ニ乘ル譯ニ往カヌ、大砲ヲ半分造ッテ之ヲ擊ツ譯ニ往カヌ、然ラバ必ズ是ハ
  繼續シタ事業、繼續シタ事業デアル以上ハ、必ズ初メカラ方針ヲ立ッテ、ヤルト云フコトガナ
  ケレバナラヌ、ソレハ或ハ此新內閣就任〓々總テノ調査其他ノコトガ、間ニ合ハヌト云フコ
  トモ成程一理アル理窟デアッテ、是ハ決シテ苛酷ニ責メルト云フ譯デハアリマセヌガ、併ナガ
  ラ政治家ノ野ニ在ルト朝ニ在ルトヲ問ハズ、時ノ國情ニ對スル政策ト云フモノハ、イツデモ
  ナケレバナラヌ、若シ是ガナケレバ政府ヲ攻擊シタト云フノガ、抑〓間違デアル(征矢野半
  彌君「議長、今ハ何ノ問題デアリマス」ト呼フ)是ノ如クニ無方針デ、此國政ヲ料理スル
  ト云フコトハ間違ッテ居ル、(征矢野半彌君「問題外」ト呼フ、又「謹聽々々」ト呼フ者ア
  リ)財政ノ整理ニ付イテ根本的ニ關係ノアル議論ヲシ居ルノデ(「議長ニ注意ス、問題
  外」ト呼フ者アリ)未ダ其連絡ヲ知ラヌモノガ、サウ云フコトヲ云フノデアル(「問題外」又
  ハ「謹聽」ト呼フ者アリ、議場騒然)最モ是ハ國家ノ重大ナル問題デアルカラ、諸君ガ激
  動サルヽコトハ甚ダ尤デアル、(征矢野半彌君「今ハ減債基金ノ議事中ダ」ト呼フ)是ノ
  如ク政府ガ方針ヲ立テズシテヤルト云フ弊害ハ實ニ將來恐ルベキコトデアルト思フ、何ト
  ナレバ陸海軍本年度ノ豫算ハ決シテ本年度ニ打切レルモノデナイ、必ズ是ハ來年度ニ
  至ッテモ此事業ヲ繼續セヌナラヌト云フコトガ、多々起ッテ來ルガ故ニ、政府ガ是ノ如キ
  (「議案ニハ區別ガアル」ト呼フ者アリ)是ノ如キ問題ニ對シテハ、先ヅ速ニ方針ヲ立テヽ、
  其宜シキトコロニ當箝メテ、然ル後ニ財政ノ上ニ、豫算ノ上ニ現ハレテ來ルト云フコトニシ
  ナケレバナラヌ、所ガ是ガ諸君ト共ニ本年度ノ此海陸軍ノ豫算海陸軍ノ豫算ト云
  フモノハ殆ド混同ヲシテ居ッテ計畫スル、新タニ(「豫算外ハ日程外ダ」ト呼フ者アリ)
  新タニ擴張ヲ計畫スルノデアルカ、或ハ唯ニ補充ニ止ムルカト云フコトノ區域ノ分ラヌ間
  ニ、議員ヲシテ盲判ヲ捺カセルト云フコトノ弊ニ陷ルノデアル、是ハ我輩此內閣ノタメニ
  甚ダ惜ムノデアル、判然ト陸海軍々事ノ方針ヲ極メテ、サウシテ此議員ヲシテ賛否ニ迷
  ハシメズ、調査ニ迷ハシメヌトコロニ於テ、利害得失ヲ堂々ト論ジサセルダケノ餘地ヲ與
  へサウシテ政府ハ十分ナル、之ヲ擴張スルノ理由ヲ說イテ、然ル後ニ此贊否ヲ決スルト
  云フコトヲセネバナラヌノデアル、是ノ如キ豫算ノ出方ヲスルト云フコトハ、抑シ此政府ノ
  方針デナイト云フノデアルカ、或ハ勇氣ガナイト云フノデアルカ、吾〓ハ甚ダ是ニ迷フ、若
  シ今日ノ如キ財政ノ有樣ヲ以テ、一面ニハ豫算ノ上ニ大ナル、缺陷ヲ生ジツヽ其缺
  陷ハ或ハ公債ヲ以テ之ヲ補塡スルト云フヤウナ、頗ル不健全ナル有樣ニ財政ヲ置イテヲ
  キナガラ、一方ニ此減債基金ノ制度ヲ設ケタト云フタメニ、ドレ程日本ノ信用ガ增スノ
  デアル又內閣諸公ガ今日ノ如ク日本帝國ノ財政ト云フモノヲ不健全ナル位地ニ置イ
  テ、サウシテ今年ハ方針ガ立タヌガ、來年度ニハ計畫ヲ立テヽ出ルト仰シヤルケレドモ、
  今日ニシテ若シ此方針ガ立タズ、財政計畫ヲ定メナイナラバ、事實ニ於テハ來年ハ愈
  困難ナ處ニ陷ヲテ往クノデアラウト私ハ信ズル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)固ヨリ政府ハ
  終始計畫ガマダ立タヌ、方針ガナイト云フコトヲ以テ避ケラルヽ以上ハ吾〓モ本年限リ
  ハ此陸海軍ノ隨分杜撰ナル豫算ニ盲判ヲ捺スコトノ已ムヲ得ザルニ至ッテ居ル併ナガ
  ラ來年度ヲ待ッテ其擴張ノ程度其利害曲直ト云フコトヲ爭フコトニナルデアラウト是ハ
  感ジマス、併ナガラ此豫算ノ全體ヲ見、日本財政ノ根本ニ遡ッテ考ヘテ見ルノニ、決シ
  テ是ガ來年ニ至ッタナラバ斯ク改マッテ來ヤウト思フトコロノコトヲ今日デハ見出サヌ、吾
  吾ハ唯此政府ノ財政ノ立方ヲ徒ニ攻擊スルト云フ譯デハナイ、若シ政府ノ玆ニ提出シテ
  アルトコロノ財政計畫ノ立方ニ付イテ單ニ批評ヲ下シテ見レバ、玆ニ若シ政府ガ勇氣ガ
  アレバ決シテ困ルコトハナイ、誠ニ易々ノ間ニ之ヲ處理スルコトガ出來ハセヌカト考ヘラレ
  ル、其〓要ヲチヨット申セバ、吾〓ガ斯ウスルガ宜イ、斯ウスルト云フ考デハナイガ、政府
  ノ出シテ居ルトコロノ財政全體ノ立方ニ付イテ一時ノ說ヲ立テヽ見レバ先ヅ世界ノ形
  勢ニ鑑ミテ、殊ニ東洋ニ對スル外國ノ狀態ヲ考ヘレバ、此十四五年ノ間ニ於テハ、東
  洋ニ於テ日本ト衝突ヲ求ムルト云フ國ハ先ヅ之ハナイ、ナイト申スヨリハ寧ロ之ハ不
  可能ノコトデアル、何トナレバ今日ノ戰爭ト云フモノハ、固ヨリ大仕掛ノ準備ヲセヌケレ
  バ戰爭ハ出來ヌ世ノ中デアッテ、玆ニ若シ帝國ト衝突ヲ求ムルト云フ國ガ、苟モ現ハレテ
  來ルナラバ、少ナクモ十五六年ノ歲月ヲ積マヌケレバ衝突ヲスルト云フコトハ出來ナイノ
  デアル、又日本ノ決心次第デ、玆ニモウ四五年ノ平和ガ欲シイト云フナラバ、外交ノ作
  用ニ依ッテ、四五年ノ平和ヲ引延ベルコトガ出來ル、然ラバ東洋ノ平和ハ、確實ナルト
  コロガ二十年ノ平和ガ保テルト云フコトハ、略ゝ豫算ガ立ツノデアル、サウシマスレバ當局
  者ガ今提出シテ居ルトコロノ豫算案ヲ其儘修正シテ、マダ此豫算ト云フモノニハ五百万
  圓カ二三百万圓ハ削減ノ出來ル豫算ダカラ、マダ是ハ〓究シタラ何千万圓出テ來ルカ
  分ラヌケレトモ、併ナガラ先ヅ此豫算ト云フモノヲ正當ナルモノト認メテ、是ニ修正ヲ加
  ハ、チヨット修正ヲ加ヘレバ、卽チ日本ノ財政ノ始末ヲ付ケルト云フコトガ出來ル、何
  トナレバ玆ニ東洋ノ平和ヲ一一十年確實ニ維持セラルヽコトガ出來ルナラバ、陸海軍ノ今
  竊ニ計畫シテ居ルトコロノ、或ハ六年ノモノヲ十二年ニシ、八年ノモノヲ十六年ニ引延ベ
  レバ、卽チ要求スル額ハ半額ニナル是ニモウ一ツ今ノ減債基金ニ一億一千万圓ヲ使フ
  トアルガ、是ハ卽チ公債ノ利子ヲ拂フニ止メテ、八千万圓ヲ引去レバ三千万圓程出テ
  來ル、又此政府ハ先キニ行政整理デ千五百万圓ハ確カニ出來ヤウト云フコトヲ主張サ
  レテ居ッタガ、大イニ是ヲ負ケテヤッテ三分ノ一ニシテモ五百万圓ハ、出來ル、サウスルト
  云フト、詰リ茲デ六千万圓、合計六千万圓位ノ金ハ容易ク此上ニチヨット修正ヲ加ヘ
  レバ出來ルノデアル、此六年ノモノガ十二年ニナリ、八年ノモノガ十六年ニナッタト云フタ
  メニ、決シテ日本帝國ハ危險ヲ感ズルト云フ位地ニハ落チナイノデアル、是ノ如クシテ
  一面ニ民力休養ノタメニ五六年ノ間決シテ增稅ヲシナイ、一面ニハ借金政策ハズット
  止メテシマッテ、固ヨリ此中ニ生產的事業ノタメニ公債ヲ募ルト云フコトハ、別ナ話デ
  アリマスケレドモ、今日ノ如ク免ニ角經常費ニ於テ仕拂フベキ性質ノモノヲ臨時費ニ操
  込ムト云フコトハヨシテ、或軍事ノタメニ費ス金、若クハ公債ノタメニ拂フトコロノ利子ト
  云フモノハ無論此經常歲入ニ仰グト云フコトニシテ、暫ク借金政策ハ一方ニ止メテ、此
  豫算上ニ缺陷ヲ生ゼシメルト云フヤウナ不束ナ財政ノ整理ノ仕方ハ之ヲ改メルナラバ、日
  本帝國ノ財政ノ信用ハ愈鞏固ニナルノデアル(「ヒヤノ」ノ聲起ル)是ト同時ニ一面
  ニハ戰後ノ經營ニ於テ、早ク當局者ガ其方針ヲ立テラレ、愈〓戰後經濟上ノ施設
  ニ急ガレ、又戰勝ノ利益、結果ヲ利用シテ、萬國ニ日本ノ貿易ヲ擴張スルト云フヤ
  ウナコトニナリ、段々ト此戰爭ノ勢力、利益、結果ト云フモノヲ利用スル日ニ於テハ、
  日本ノ貿易其他經濟社會ノ事業ト云フモノハ駸々トシテ此數年ノ間ニ起ッテ來ル、
  然レバ則チ此日本ノ經濟力ト云フモノガ、段々一方ハ民力ノ休養ニ依リ、一方ハ借錢
  ノ政策ヲ止メ、一方ハ事業ガ勃興スルト云フ結果ハ歲入ノ增加ニナルノミナラズ、三
  四年ノ後ニ關稅ノ改正ヲ行ヘバ少ナクトモ三千万圓位ノ歲入ハ增ス、此時ニ至ッテ、
  始メテ此公債ノ償還モ行フベシ、軍備ノ擴張モ急ケナラバ年限ヲ縮小シテ宜カラウト
  考ヘル十分ニ日本ノ信用ヲ高メ、財政ノ基礎ヲ固クスルト云フ方法ハ、吾輩ハ此減
  債基金ニアラズシテ、却テ他ノ此日本ノ財政ノ大ナル料理ヲスル上ニ於テ、當局者ガ意ヲ
  用井ラレルト云フコトガ當然デハナイカト考ヘル(「ヒヤ〓〓」ノ聲起ル)此減債基金ナルモ
  ノソレ自身ノ性質ハ、敢テ重キヲ措クニ足ラヌ、又今日ノ場合ニ於テ、財政ガ是ノ如ク紊
  亂シテ居ル傍ラ、是ヲ置クト云フコトデハ、餘リ效能ハナイデアラウト云フ考ヲ持ッテ居ル
  (「ヒヤ〓〓」ノ聲起ル)實ハ此案ニ付イテハ、十分ニ專門家ノ說明カサレタ方デ、吾〓ノ
  辯ヲ俟ツ程ノナイ案デアリマスルガ、チヨット近イ一二ノコトヲ申シテモ、吾〓ハ二ツノ著
  シキ〓ニ於テ、甚ダ此案ガ正シクナイト考ヘテ居ル、一ツハ先程段々論者モ言ハレタル
  通ニ、日本ノ經濟ガ一方ニ大ナル缺陷ヲ生ジテ居ッテ、其缺陷ヲ補フニ公債ヲ募ルト云
  フ時代ニハ、コチラニ少シバカリノ金ヲ拂フト云フコトガ、ソレ程ノ效能ガナイデアラウ、成
  程大藏大臣ガ先日來公債ニ新舊ノ區別ガアル、段々ニ古イモノヲ借換へテ往クト云フ
  方ニ於テ、大ニ信用ヲ增スト云フコトヲ說カレマシタガ、是モ一理アルコトデアラウト考ヘ
  ルケレドモ、併ナガラ免ニ角一方ニ約八千万圓ノ金ヲ借リツヽ、三千万圓ヲ還スト云フ
  ヤウナコトハ其種類ガ違ヒ、時ガ違ッテモ、免ニ角日本ノ世帶ガ一ツデアルカラ、此一ツ
  ノ世帶ノ中ニ、是ノ如キ大キナ借錢ヲシテ、小サク還スト云フヤウナコトデハ信用ヲ高
  メル方法デハナイデアラウ、又一ツハ三千万圓ノ資金ヲ以テ、公債ノ相場ヲ維持スル利
  益ガアルト云フコトヲ說カレル、是ハ成程多少利キ目ガアルカモ知レマセヌガ、併シ元來
  ノ日本ノ國債額ト云フモノガ、今日ノ如ク約二十億ト云フ場合ニ持ッテ來テ、三千万圓
  位デ此相場ヲ釣上ゲルト云フコトハ、果シテ效能ガアルヤ否ヤ、又若シ利子ニ拂フベキ八
  千万圓ヲ併セテ、相場社會ヘ此金ヲ下シテ、是デ運轉ヲスルト云フコトモヤルカモ知レヌ
  ガ、若シ是ノ如キコトヲスレバ或ハ時ニ儲ルコトハアリマセウガ、失敗ノ極ハ利息ヲ拂ヘヌ
  ト云フヤウナコトニナリハセヌカ、(「ヒヤ〓〓」ノ聲起ル)又是ノ如キ投機的ノコトニ國家
  ガ干與スルトキニ於テハ、其半面ニ生ズルトコロノ弊害ト云フモノハ實ニ言言ニニビヒザル
  モノガ往々アル、免ニ角此案ハ餘リ面白クナイト云フ考ヲ持ッテ居リマスルガ、併シ玆ニ段
  段列國ノ例ヲ引イテ、先日モ大藏大臣ガ埃及アタリハ大分成效シテ居ルト言ハレル、成
  程埃及アタリノ借金ノ始末ハ、今日ハ餘程著イタヤウニアリマスルガ、是ハ一面ニ借リナ
  クシテ、一面拂フト云フコトデアル、借リル方ヲ止メテ置イテ、拂フ方ヲ拂フノデアルカラ、
  段々整理シテ來ル、日本ノ場合トハ少シ違フ、又露西亞ノ如キハ、戰爭以前カラ隨分
  此無盡藏ヲ裝フトコロノ資本ヲ、歐羅巴ノ各都會ニ「インベスト」シテ置イテ、ソレヲ預ケ
  置イテ、ソウシテ相場釣上策ヲヤッタニ相違ナイ、併ナガラ是モ矢張本國ノ財政ノ不健全
  ニナルト同時ニ、其事ハ大失敗ニ終ル、諸君モ御記憶ニナルデアリマセウガ、卽チ戰爭
  中ニ二三億ノ公債ヲ外國ノ市場デ募レヌト云フコトガ幾度モアッタ、詰リ此相場ノ維持
  ト云フコトハ--相場ヲ釣上ゲテ置クト一云フコトハ、唯相場ノ賣買ニ依ッテ左右スルモノ
  ニアラズシテ、其國ノ根本的財政ノ整理ノ强弱ニ依ッテ、之ハ決スル問題デアラウト思フ
  (「ヒヤノヽ」ノ聲起ル)デ私ハ終リニ臨ンデ、此日本國民ガ現政府ニ希望スル〓ガアル
  ト云フコトヲ一言申上ゲテ置ク、此戰後ノ經營ニ於テ、國民的勢力ノ後援ノ必要ナト
  云フコトハ何ガタメデアル殊ニ日本ノ今日ノ場合ニ於テ、國民的勢力ヲ有スル政府デ
  ナケレバ、此難局ニ當レヌト云フ感ジガ、何處カラ起ッタト云フコトヲ考ヘテ見ルニ第
  ハ軍事上ノ要求ト云フモノヲ適度ニ抑ヘテ、財政ト相俟ツトスルノ卽チ擴張ヲサセ卽
  チ一方ニ財政ヲ斷然ト整理スルト云フコトガ、是ガ一ツノ國民ノ要望デアル無論斯ウ
  云フ大戰ノ後ヲ承ケテハ軍人ノ勢力モ膨脹スルト云フコトハ、軍人ガ惡ルイデハナイ、
  是ハ自然ノ勢デアル此勢力ノ膨脹ト共ニ要求ト云フモノガ膨脹シテ來ルト云フコト
  ハ、又自然ノ勢デアル、此秋ニ當ッテ此要求ヲ適度ニ抑ヘルト云フ力ハ、所謂國民ノ後
  援ヲ藉ルトコロノ政府デナケレバ出來ナイ、此〓ニ於テ國民ハ大ニ此新政府ニ望ヲ措イ
  タガ、モウ一ツハ卽チ日本社會ノ非立憲的ノ勢力ヲ、之ヲ駕御スルト云フコトヲシテ、而
  シテ憲政ノ發達ヲ計ルト云フコトデアル、此日本社會ノ非立憲的ノ勢力ト云フモノハ、
  是ハ爭フベカラザル勢力デアッテ、卽チ此外交ノ失敗ヨリ、日比谷ノ大騷動トナリ、或
  戒嚴令ノ實行トナリ、種々此民權ノ抑壓手段ヲ執ッテ來タト云フモノハ、是ハ桂內閣ノ
  獨リノ罪デハナイ、卽チ此社會ノ非立憲的勢力ノ伏在シテ居ルモノガ、桂內閣ヲ藉リテ愈〓
  勃發シテ來タノデアル、是ノ如キ例ヲ舉ゲテ來レバ、日本ノ社會ノ未ダ立憲政治ト云フ
  モノガ根柢ノ强イモノデナクシテ、大ニ此國民ノ勢力ヲ後援トスル政府ノ盡力ヲ俟タナケ
  レバナラヌ、此二ツノモノヲ國民ガ新政府ノ成立ト共ニ、最モ要望シテ居ル〓デアリマス
  カラ、卽チ此豫算ノ編成、日本財政ノ整理ノ上ニ於テハ、十分ニ勇氣ヲ奮ッテ抑ヘルト
  コロハ抑ヘ、而シテ其適度ノ計畫ヲサセルト云フコトノ方針ヲ、今日カラ執ラレルト云フ
  コトガ得策デアラウト考ヘル、若シ此軍事上ノ整理、及擴張ノ方針ニ於テ、一度政府ガ
  深入リヲシテ、或ハ彼ノ虜ニナルト云フヤウナコトニナレバ、此國民ガ政府ニ要望シタトコ
  ロノ目的ガ外レテシマフノデアル、又是ガ大ニ國民ノタメニ悲ムベキコトデアラウト存ジマス
  ルカラ、此二〓ニ付イテハ、宜シク猛省スルトコロアッテ、十分ニ此戰後困難ノ際ニ、日
  本財政ノ整理ヲ勇氣ヲ出シテ斷行セラレンコトヲ希望スルノデアル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=29

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• 030・渡邊敬昌

  ○渡邊敬昌君　質問ガアル、唯今ノ大石君ノ御討論中ニ車夫馬丁····

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• 031・杉田定一

  ○議長　(杉田定一君)大岡君ニ發言ヲ許シマシタ
  〔大岡育造君登壇〕

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• 032・大岡育造

  ○大岡育造君　諸君、私ハ國債整理基金法案ニ贊成ヲスル一人デアリマス、此法案
  ニ對シテハ贊成ノ論者モアリ、又反對ノ論者モゴザイマス、既ニ論旨モ大〓ハ明カニナツ
  テ居ルヤウデアリマスケレドモ、私ハ玆ニ自ラ信ジテ必要デアルト思フトコロヲ簡單ニ申述
  ベヤウト思ヒマス、此法案ヲ要スル所以ノモノハ、日露戰爭ノ結果デアル、日露ノ戰爭
  ハ連戰連勝ニ終ッタト云フハ誠ニ國家ノ幸デアル、而シテ上ハ陛下ノ御稜威、中頃軍
  人ノ忠勇及人民ノ後援ノ力ニ依ルト申シナガラ、二箇年ニ亙ル大戰爭、巨額ノ費用ヲ
  投ジタルトコロノ大戰爭ガ、幸ニ圓滿ニ十分ニ出來タノハ、財政上ノ運ビノ宜カッタ結果
  ト申サナケレバナラヌノデアル、而シテ世界ニ於ケル大戰爭ナルモノヽ困難ヲ致スコトハ、
  表面ニ於テハ戰鬪デアルケレドモ、亦一面ニ於テハ財政ノ計畫デアル、英吉利ノ如キ進
  步シタル國ニ於テモ、英佛戰爭ノ際ニハ、直チニ正貨準備ヲ失ッテ仕拂ガ出來ナクナリ、
  不換紙幣ヲ發行シナケレバナラヌト云フコトニ出逢ッテ居ル、又亞米利加ノ如キ、彼ノ南
  北戰爭ニ於テ同ジ例ヲ履ンデ居ルノデアリマス、然ルニ我後進ナル日本國ガ此大戰爭
  ヲ行フニ方ッテ、一囘ノ不換紙幣ヲ發行シタルコトナク、正貨準備ヲ失ッタルコトナクシ
  テ、遂ニ終局マデ健全ニ至ッタト云フコトハ、內ニ人民ノ後援モ强カッタケレドモ、外ニ於
  ケル列國ノ同情ト云フモノガ、大ニ力アルト評サナケレバナルマイト思フノデアル、今此基
  金ヲ置クコトハ、今ノ日本ノ財政ノ度合ニ於テハ、、實ハ苦シキコトデアル、或論者ガ委員
  會等ニモ述ベラレタガ如ク、此基金ナルモノハ財政整理ノ上ニ現ハレタルトコロノ所謂剩
  餘金カラ來タモノナラバ、甚ダ結構デアル、自然ニ出來タモノナラバ甚ダ都合好キコトデ
  アルケレドモ、其自然ニ出來タモノデナイ以上ニハ斯ウ云フコトヲ遣ルノハ宜シクナイ、故ニ
  モウ少シ自然ノ信用ヲ待ッテ然ル後ニ行フモ可ナリト言ハレテアリマスガ、是ハ日本人自身
  ノ立場カラハ誠ニ都合好キコトデアリマスケレドモ、外ノ列國ノ同情ニ對スル點カラ考ヘテ
  見レバ私ハ俄ニ同意スルコトハ出來ナイノデアル、此大戰爭ヲ斯クマデモ無事ニ經過シタ
  ルトコロノ、財力ヲ供給シタルトコロノ世界ノ同情者ニ對シテ、此基金法ヲ苦クテモ設
  ケテ、彼ノ債主ニ安心ヲ與フルコトハ吾〓日本國民ノ信義ヲ明カニスル所以デアラウト
  思フノデアル(拍手起ル)ソレデ、詰リ言フト自然ニ任カシテ於テモ、日本ノ財政ノ信用ガ
  厚ケレバ、更ニ公債ノ價格ヲ失フコトモナク、財政上ノ信用ヲ低ウスルコトモナイト云フ
  說ガ一番强力デアル、所ガ吾〓自身カラ見レバ誠ニ日本ノ財政ハ堅固デアル、吾〓ノ財
  政ハ姑ク堅固デナイマデモ、吾國力ナルモノハ非常ニ强イノデアルカラ、自カラ疑フコトハ
  ナイケレドモ、外國ノ債主ノ位地カラ見レバ決シテ未ダ安心ハ出來ナイ、吾ミガ知ル程外
  國ノ方面カラハ知ラレテ居ラヌノデアル、一番日本ノ進步シタル〓ハ何處デアルカト云ヘ
  バ、申スマデモナイ、軍備ノ擴張デアル、兵力ノ充實デアル、是サヘモ十分ニ認メル人ガ
  ナカッタ、僅ニ此近キ數年卽チ五年程前ニ、英吉利ガ此事ヲ確認シテ、始メテ日英同
  盟ト云フモノガ出來タノデアル吾ミカラ見レバ當然ノ話デアルガ、彼ノ方面カラ見レバ餘
  程突飛ナコトヲ致シタ譯ニナッテ、現ニ英吉利ノ國民中非常ナル反對ヲ表明シタコトモア
  ルノデアル、況ヤ債主ナル者ハ最初ニ於テ-國債ヲ募ル最初ニ於テ、多ク各銀行ノ連
  絡シタル「シンヂケート」ノ手ニ據リマスケレドモ、此國債ヲ持ツ人ハ中人以下ニ多イノデア
  ル、彼等西洋ノ人〓ガ日常ノ生活ノ有樣ハ、吾〓トハ少シ違ッテ居ッテ、吾ミハ家モ持ッテ
  居ル田地モ持ッテ居ルト云フノガ、中人ノ常デアリマスガ、彼等ノ中人ナル者ハ家モ持ツ
  テ居ル人ガ少ナケレバ、田地ヲ持ッテ居ル人モ少ナイ、併ナガラ一軒ノ家ニ公債ヲ持ッテ
  居リ、株券ヲ持ッテ居ルト云フ人ハ澤山ニアル、其收入ニ依タテ生計ヲ定メル人モ多イノ
  デアリマスカラシテ、吾〓日本ナルモノハ是程進步シテ居ル、是程强イト云フコトハ、政府若
  クハ銀行ト云フヤウナ大キナ機關ヲ持ッテ居ルモノハ知ルニ難クハナイガ、此公債ノ持主
  ニナル中以下ノ人ハ甚ダ知ルニ困難デアル、西洋ノ人ハ餘程進步シテ居ル、進ンデ居ル
  ト昔ハ思ウタガ、今日ノ日本人ノ程度ト左程違ヒハナイ、中以下ノ人ハ政府ノ力ハ此
  通デアル、國家ノ力ハ此通デアル、人民ノ力ハ是ダケノ程度デアルト云フコトヲ、一々知
  リ得ラルヽト見ルハ、少シク無理ノ註文ト云ハナケレバナラヌ、然ラバ誰ニモ分リ易イ方法
  ヲ以テ、是ニ安心ヲ與ヘルノガ一番宜シイ、租稅ヨリ分ケテ一億一千万圓ヲ基金トシ
  テ、是ヲ利息ニ當テ、其中カラシテ元金モ拂フト云フ方法ヲ立テレバ誰ニモ分ル、必
  シモ國家ノ力若クハ兵力ヲ調査セズトモ宜シイノデアル、我見ル所ハ是ノ如シ、然ルニ是
  マデー承ルトコロニ依ルト世界ノ中日本ハ裏カラモ表カラモ十分ニ知リ得ラルヽガ如ク解釋
  シテノ論ガ多カッタノデゴザイマスガ、吾ミハサウハ見ナイ、サウ見ナイト云フコトハ玉ヨ
  ツ諸君ガ知リ得ラルヽ大キナ證據ガアルデハナイカ、日露戰爭ノ起ヲタノハ、要スルニ日
  本ノ力ヲ外國カラ能ク知ラレナカッタ結果ト言ハナケレバナラヌ、若シ是ノ如ク民力ガ强
  〃是ノ如クニ兵力ガ强イト見タナラバ歐羅巴ノ强大國ハ容易ニ彼ノ失敗ヲ取ラナカッ
  タデアラウト思フ、一例ヲ舉ゲレバ是ノ如キデアル、ソレデ併ナガラ減債基金ヲ置イタトコ
  ロガ、一面ニハ還シテモ一面ニハ借入レル、而シテ借入ルヽトコロノモノハ八千万圓ニモ
  上ッテ、減債スルノハ三千万圓デハ無イカ、斯樣ニ言ハルヽガ、是ハデス、常ニ是ノ如キ
  比例ヲ以テ往キマシタナラバ、國家ノ前途ガ危イト云フ判斷ガ出來ルカ知ラヌが、此國力
  ガ十分ニ增進スル事實ガアル以上ハ、此心配ハ終ニ無用ニ歸スルノデアル、若シ我國運
  ガ次第ニ退却シテ、衰微シテ往ク實例ガアルナラバ成程唯今大石君ガ述ベラレタ攻擊
  モ適當デアルカモ知レナイ、併ナガラ我國運ハ決シテ退却スルノデナク、非常ナル長足ノ進
  步ヲナシテ往クノデアル、先ヅ私ガ外國貿易表ヲ繙イテ見マスルニ、十年每ニ三倍以上
  ノ增加ヲ見テ居ル、卽チ明治二十七年ノ輸出高ハ、一億一千三百七万八千五百八
  十七圓デアッタ、而シテ明治三十七年、卽チ其後ノ十年目ニハ三億一千九百二十
  六万八百九十五圓ニナッタ、約三倍ノ進步デアル而シテ更ニ立戾ッテ二十年前、卽チ
  明治十七年ハ如何ニト云ヘバ三千三百九十八万六百八十一圓デアル、二十年前ハ
  三千万圓ノ輸出高ガ、二十年後ニハ三億一千九百何十万圓ニナッテ、殆ド九倍以上
  ニナッテ居ル、十年每ニ三倍四倍、二十年ニハ殆ド九倍進ムト云フ、此國力ノアル以上
  二、一面ニ資金ヲ借入レテ、一面ニ還スト云フコトヲスルトモ、決シテ憂ハナイノデアリマ
  ス、此進ム力ヲバ愈益進ムルト云フニハ、低利ナル外資ヲ輸入シテ、而シテ大イニ國
  力ノ發展ヲ期セナケレバナラヌコトダラウト思フ、故ニ此〓モ亦心配ニ及ブマイト思フ、免
  ニ角反對論者ノ根據ハ、自然ニ任セテ自然ノ信用ヲ厚ウスル、ソレガ一番上策デアルト
  言ハレマスガ、是モ一理アル併ナガラ政治ト云フモノハ、自然ニ任セルモノデハナイ、若シ
  政治ナルモノガ自然ニ任セルト云フモノナラバ、總テノ法律モ規則モ何ニモ彼モ止メテシマヘ
  バ、頂上ニ達スルト云ハナケレバナラヌ、是ハ私ガ〓シテ云フノデアルガ、政治ナルモノハ自
  然ニ甚シク逆フコトハ出來ヌガ、自然ノミヲ賴ムコトハ出來ナイ、時ニ人爲ヲ加ヘテ程好キ
  ニ制シナケレバナラヌコトハ、御諒知デアラウト思フ、先刻大石君ノ親切ニモ此所見ヲ述
  ベラレ、現内閣ニ忠〓セラレ、而シテ此案ニ對スル反對ノ理由トナッタガ、私ハ反對理由
  ヲ傾聽スルニ力メタガ、最モ重キ理由ハ何處ニアルカト云ヘバ、施政ノ方針ガ表明セラレ
  ザルガ故ニ、此基金法モ何ニモ彼モ往カヌト言ハレタ、併シ施政ノ方針ヲ定メルト云フ
  コトハ大切ノコトニハ相違ナイガ、施政ノ方針ヲ具體的ニ舉ゲテ、一々是ヲ演說スル
  ニアラザレバ、不可ナリト云フコトハ私ハ俄ニ同意シナイ、昔頻リニ有リタケノ政治意見
  ヲ表明シテ、而シテ內閣ヲ造ッタモノガアル、其表明シタ政綱ノ一モ行フコト能ハズシテ倒
  レタ例ガアルノデアル、必シモ政治ノ要目ニ付イテ意見ヲ定メテ發表スルガ、政治ヲ行フ、
  所以トモ思ハレヌ、併ナガラ是ハ人ノ立方デアル、大石君卽チ進步黨ノ諸君ハ、之ヲ最
  上ノ方便トセラルヽ人デアルカラ、敢テ非難ハシナイガ、併ナガラ私ハ之ニ從フコトヲ得
  又、今假ニ從ッタナラバ、ドンナ結果ガアル、大石君ハ世界ノ大勢ヲ說クニ於テ、他人ニ
  譲ラヌ、能ク世界ノ大勢ヲ說イタ結果トシテ何ニナルカ、今後二十年間ハ東洋ノ平和ハ
  請合フト云フコトデアル、今後二十年間東洋ノ平和ヲ保證シテ、而シテ軍備ノ擴張ヲ急
  グベカラズ、是ヲ縮小スベシ等ノ意見デアル、成程戰後ニハ往々ニシテ軍備擴張ガ過大ニ
  失スル憂ガアルカラ、是ヲ程宜キニ制シテ財政ト相伴フヤウニスルハ適當ナコトデアリマス、
  併ナガラ二十年ノ間ノ平和ヲ確信シテ、此政治ヲ行ヒマシタナラバ如何ナル大事ガ起ル
  デゴザイマセウカ、前途ハ知ラズ、既往ノ實例ニ於テ如何ナル事ガアリマシタカ、十年ノ間ニ
  開戰ガ三度アリマシタ、明治二十七八年ノ戰爭、三十二年ノ團匪、及三十七八年ノ
  戰爭、此十年ノ間ニ世界ノ大戰トモ謂フベキモノガ二ツ、及世界ノ關係シタル重要ナル
  戰爭ガ一ツ、東洋ノ局面ニ於テ斯ウ行ハレテ居ルノデアル、モウ一ツ私ハ立入ッテ申シマ
  スイル軍備ノ擴張ニ反對セラレタルトコロノ諸君ハ-今私ガ申シタノハ、議會ノ開會
  以來、著シク軍備ノ擴張ニ反對セラレタルトコロノ諸君ハヽ東洋ニ於ケル今數ヘタ戰爭
  ヲ宣言通ニ從ッテ軍備ノ擴張ヲセズニ置イタラドウナッタデセウ、軍備擴張ニ反對ノ主義
  ヲ極力唱ヘラレタル其政治家ニ日本ヲ賴ンデ置イテ、サウシテ露西亞トノ交渉ヲドウシマ
  セウカ(「日英同盟ト云フモノハサウスルト何ノ效果モ無イト云フノデスカ」ト呼フ者アリ)
  日英同盟ナルモノハ相當ニ效果ヲ收ムベキモノト私ハ信ジマス、併ナガラ日英同盟ハアッ
  テモ日露戰爭ハ起ッタノデアルデハゴザイマセヌカ、同盟ハ或程度マデハ力ガアリマスケレド
  モ、其同盟ヲ約束ノ以外ニ於テ、戰爭ノ起ルコトガアルノデアリマス、日本ガ今日世界
  ニ抽デヽ信用ヲ博スルヤウニ至ツター抽デヽトハ申サレマセヌガ從來ノ位置ヨリ抽デ
  テノ、列强ノ間ニ立ック、强國ノ中ニ這入ッテ居ルトコロノ此國ノ位置、及吾こノ名譽ヲ博
  シタノハ何ノタメデアルカト云ヘバ諸君、今演說セラレタ大石君等ノ言フ意味ニ於テハ
  出來ナカッタ、常ニ平和ヲ賴ンデ軍備ヲ縮小シ縮小シ往ッタナラバ今日ノ位置ハ得ルコ
  トノ出來ナカッタト云フコトヲ考ヘテ見ナクテハナルマイト思フノデアル(拍手起ル)故ニ此
  基金法案ヲ議スルニ當ッテ、大體ニ於テ軍備ノ縮小マデシナケレバ、役ニ立タヌト云フヤウ
  ナ反對ハ私ハ取ルニ足ラヌト思ヒマス玆ニ私ハ此案ヲ贊成スルトコロノ理由ハアリマ
  スケレドモ、餘リ多クヲ申サズトモ、反對ノ理由ハ頗ル强力トモ私ハ思ヒマセヌカラ、玆
  單一ニ贊成ノ意ヲ表明シテ終リマス(拍手起ル)
  (「討論終結」ト呼フ者アリ〕
  〔島田三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=32

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• 033・島田三郎

  ○島田三郞君　諸君、本案ニ對シテハ、委員會ニ於テ引續イテ反對致シテ居リマシタ
  ガ、今日モ矢張反對ノ說ヲ諸君ノ前ニ述ベルコトノ機會ヲ得タノハ甚ダ滿足ニ存ジマ
  ス、是マデ本員ノ信ジテ居リマシタルトコロノ反對意見ヲ幾許カ修正シ、若クハ翻然改メ
  テ、本案ヲ贊成スル榮譽ヲ得タイト云フ一點ノ希望ヲ以テ、反對諸君ノ御說ヲ伺ッテ居
  リマシタガ、更ニ此希望ハ充タスコトガ出來ズシテ、依然反對論ヲ述ベナケレバナラヌノハヽ
  甚ダ本員ノ元來ノ希望ニ背イタコトヲ歎息シナケレバナラヌト思ヒマス、唯今政友會ヲ代
  表シテ述ベラレタ大岡君ハ、專ラ憲政本黨ノ大石君ニ對スル駁論デゴザイマスカラ、勢ヒ
  外交論ニ亙リ世界ノ形勢ニ亙ル雄大博論ヲ費サレタニ拘ハラズ本員ノ謹ンデ承ッテ居
  ルトコロニ據リマスルト、實ハ本問題ノ脇ヘ多ク走ッタヤウニ考ヘマス、是ハ甚ダ遺憾デア
  リマス、本員ハ單刀直入此案ノ是非ヲ決シタイ、此案ノ性質ヲ定メタイト云フノガ論旨
  デゴザイマスガ、本案ハ國債整理基金特別會計法案ト題シテアッテ、世ノ中デハ普通ニ減
  債法案ト言ッテゴザイマスカラ、無論日露ノ對戰ニ依ッテ既ニ募リマシタトコロノモノト、竝
  ニ是カラ募リマストコロノモノヲ併セテ、十八億三至リマストコロノ此巨額ノ公債ヲ整理スル
  ノ目的ヲ以テ立案セラレタルモノニ相違ナイ、整理ノ中ニ此負債ヲ減却スルトコロノ方針
  ヲ立テラレタニ相違ナイ、此趣意ニ於テハ何人カ是ニ同意セザランヤ、整理ト云フコトハ不
  整頓デアルトコロノモノヲ整頓スル意味デアッテ、減債トハ有ルトコロノ負債ヲ減却スルノデア
  リマスカラ、是ヲ個人ト致シマシテモ、必要ナコトデアリ、國家ト致シマシテモ必要ナコトデ
  アリマスカラ、是ハ議論ノ無イコトデアル吾ミガ此減債法案、國債整理基金法案ニ反對
  致シマスルノハ、其目的ガ名ト相副ハズシテ、其手段ガ決シテ其目的ヲ遂グルニ足ラヌト云
  フコトガ、論ヲ岐ルヽトコロデゴザイマスカラ、財政ヲ整理スル必要デアルトカ、種々ナコトヲ
  述ベラレルノハ實ハ餘波デアッテ、殆ド本員ノ耳ニハ論ズルニ足ラヌヤウニ聽ユルノデゴザイ
  さん、事實ニ關シテ論ジナイトコロノモノハ實ハ空論デアッテ、數字ヲ除イテ論ゼラルヽト
  コロノモノハ全ク餘談ニ過ギナイト思ヒマスカラ、本員ハ直チニ此本案ヲ評スルノニ、是ハ
  整理法案トアッテ、實ハ整理法案ニアラズ他日ニ紛亂ヲ遺ストコロノ法案デアルト思ヒ
  マス、減債ト云フトコロノ名ガアッテ、實ハ減債ニアラズシテ、增債準備法案ト、本員ハ解
  釋ヲ致サウト思フ、之ガ本當ノ性質デアルト思ヒマスカラ、元來物ノ得失利害ヲ決シマ
  スノハ名義ニ依ッテ決スルノガ正當デアリマスガ、名義ノ如何ニ拘ハラズ事實ニ依ッテ決ス
  ルノガ正當ノ判斷デアルカト申シマシタナラバ、諸君モ必ズ名義ノ如何ニ拘ハラズ事實
  如何ト云フコトニ付イテ、得失利害ヲ判定セラルヽデアラウト思ヒマス、大體ヲ評シマスル
  ト云フト、過度ノ信用ヲ此方法ニ依ッテ拵ヘテ、サウシテ後ノ公債ヲ募ルトコロノ活路ヲ開
  カウト云フノガ、此本案ヲ立案シタ趣旨デゴザイマス、恰モ政府委員ガ說明スル如ク、政
  府委員が說明セントシテ說明スルニ躊躇セラルヽトコロヲ、望月君ガ能ク說明セラレタ
  是デ以テ信用ヲ繫イデ置イテ相場ヲ上ゲテ置イテ、後ノ必要ナル種々ノ公債ヲ募ラウト
  云フノデアルカラ、是ハ減債法案ニアラズシテ、增債準備法案ト本員ガ名稱シタノハ、決、
  シテ牽强附會ノ說デナイト思ヒマス、(拍手起ル)元來信用ト云フノハ實力ト相伴ウテ
  始メテ完全ナル信用デゴザイマスケレドモ實力ニ伴ハヌ虛名ニ伴フ信用ト云フモノハ非.
  常ニ危險ナルモノデアル、若モ己レノ負債ハ安全ニ之ヲ消却スル工夫ヨリモ、多クノ信用ト
  名譽ヲ持ッテ居リマシテ、容易ニ負債ヲ殖シマシタナラバ、個人ニ於テモ一家ニ於テモ危險
  デアルガ如ク、一國ニ於テモ同樣ニ危險デアリマスカラ、果シテ之ガ是ノ如キ目的ヲ遂ゲテ、
  信用ヲ高メ得ルヤ否ヤト云フコトヲ吟味シ、第二ニハ之ガ後來安全デアッテ、愈〓利利
  保全スルニ足ルヤ一否ヤト云フコトヲ吟味スルノガ、全ク至當ノ評定論デアッテ、イロリ
  多岐ニ亙リマシテ、論旨ノアルトコロヲ曖昧ノ間ニ沒了セントスルトコロノ評論ハ、本員失
  禮ナガラ是ヲ聽クノヲ餘リ希望致シマセヌ、諸君ニモ矢張餘リソレニ亙ルコトヲ御聽カセ申
  スコトヲ謹ンデ私ハ避ケナケレバナラヌト思フ、豫算委員ハ詳シク承知セラレテ居リマスカ
  ラ豫算委員ノ多數ヲ占メタルトコロノ兩黨ノ諸君、竝ニ大同派ノ諸君ハ飽マデ御承
  知ノデアリマセウガ、豫算書ニ依リマスルト云フト、後年-八九年若クハ十年ノ後ニ繼
  續政シマスルトコロノ事业禾ノ費用トシテ、今年初メテ其第一ヲ現ハシテ居リマスル費用ノ
  八千·万圓バカリト云フモノハ是ハ經常ノ收入カラ取ラズシテ、臨時ノ募債卽チ公債ヲ
  募ヲテ之ニ塡補致シマストコロノ計算ニナッテ居リマス、サウ致シマスルト、本年一億一千万
  圓ヲ減債ノ基本ニ充テマシテモ、凡ソ十八億ノモノヲ五分ト積リマスルト、利子ノタメニ
  九千万圓取ラレテシマヒマスカラ、減債ニ充テマスルノハ二千万圓デ、大層減債基金ト
  カ、或ハ整理法案トカ謂ッテ名ハ大キイガ、十八億ニ對シテ元金二千万圓ヲ還スト云フ
  算定ニナッテ居ル、一方ニ經常收入デモッテヤラナイデ、國債ニ依ッテヤリマスル事業ガ、年々
  續キマスルコトハ九年若クハ十年デ、是ガ八千万圓ツヽニ致スト云フト、十年後ニハ是
  ガ丁度八億ニナル譯デゴザイマスルカラ、一年ニ二千万圓ヅヽ元金ヲ還シテ、一年ニ八千
  方圓ヅヽ公債ヲ募ルト云フコトガ、是ガ個人トシテモ、一家トシテモ、安全ナル會計ノ立
  方デゴザイマセウカ、信用ヲ博シ得ルトコロノ組織デゴザイマセウカ、此事ニ向ッテ判斷
  ヲ下シマシタナラバ、區々ノ評論ハ無益デアルト本員ハ思ッテ居リマス、ソレ故ニ本員ハ
  斷乎トシテ是ハ增債準備基金法案ナリト、斯ウ評スルノハ、決シテ誣告デモナケレバ議
  誣デモナイト思フ、是ガ信用ヲ繫グニ足リヌト云フコトデアッタナラバ、旣ニ本案ノ精神ト云
  フモノハ破レタリト私ハ思フノデゴザイマスルガ、是ハ今年ノ豫算通ニ來年カラ推往キマ
  スルトコロノ算定デゴザイマスルケレドモ、丁度此委員會ヘ陸海兩相ガ臨マレテ委員ノ
  中カラノ質問ニ答ヘテ、マダ陸海ノイロ〓〓ナ調査ガ出來テ居ラヌカラ、來年ニ至ッタ
  ラバスッカリ調査ラシテ持出ス、其豫定ハドノ位デアラウカト質問ヲ致シマシタラバ海
  軍ニ於テハ一億ノ餘デゴザイマスシ、陸軍ニ於テハ六千万圓バカリアルノデゴザイマスルが、
  此金ノ出所モ實ハ經常收入ニハナイノデ、是ヲ除イテ今年卽チ議シテ居リマスル、三十
  九年ダケデ還スコトガ二千万圓デ、借ルコトガ八千万圓デアルト云フノニ、尙何レノ所カ
  ラ費用ヲ取ランカト云フトコロノモノガ、陸海軍兩省ノミデ唯今申シタヤウナ巨額ナルモ
  ノガゴザイマス、此他滿韓ノ經營費ト云フモノモ、必ズ後來出デ來ナケレバナラヌト思フ
  シ、アチラニ分駐サセルトコロノ軍人ノ兵營ト云フモノモ、是ハドウカシナケレバナルマイト
  云フイロ〓〓ナモノガ含マレテ居リマスカラ、極メテ前途ニ危險デアル、經常收入ヲ以テ、
  經常支出ヲ償フニ足ラヌトコロノモノデアルカラ、禍ヲ早ク見出シテ、速ニ料理スルト云
  フコトガ國ノタメニ忠實デアルカ、禍ヲ不言ノ間ニ延バシテ置イテ、後來其大ナルニ向ッテ
  料理スルト云フコトガ、宜シイコトデアルカト云フコトヲ極メマシタナラバ、早ク此事實ヲ世
  ノ中ニ表明シテ有ル信用ニ依ッテ或經營ヲ立テルト云フコトガ一番眞面目デ、英人ノ
  商業ガ天下ニ信用ヲ得テ居ルノハ、是ノ如キ確實ナルトコロノ考ヲ持ッテ居ルカラデアッ
  テ、相場的ニ無イモノヲ有ルトシテ、多クノ信用ヲ維持シ、其信用ニ依クテ新ナル負債ヲ
  起サウト云フ增債準備法案ニ向ッテハ、本員其精神ニ於テ甚ダ危險ナリト思フノデアリマ
  ス、ソレナラバ一歩ヲ退キマシテ、是ノ如キコトデ信用ヲ繋ゲルカドウカト云フコトヲ吟味シ
  ナケレバナラヌト思ヒマスルガ、前ニ申シマシタル通、此後ニ公債ヲ募ラナイト一云フノデ、此
  整理法案ト云フモノガ倫敦ニ傳ハリマシタナラバ、是マデ金ヲ貸シタルトコロノ者ハ、大ニ
  喜ンデ望月君ノ言ハルヽガ如ク、利息ノ上ルト云フコトモアルデゴザイマセウ、併ナガラ後
  ニ含マレテ居ルトコロノ新ナル公債ヲ募ルト云フコトガ、其額、還ストコロヨリ大ナリト云
  フコトデアッタナラバ、此報告ハ必ズ信用ノ根紙ヲ損害スルニ相違ナイト思ヒマス、甲ヨ
  リ傳ッタルトコロノ減債ノ報告ダケヲ耳ニシテ、乙ヨリ傳ハルトコロノ增積ノ報告ヲ耳ニ
  セザルト云フ-兩方耳ヲ持ッテ居ル英人ナリ米人ナリガ、片聞キスルト云フノハ餘リ
  人ヲ愚ニ見タトコロノ猿智惠デハナイカト本員ハ思ラ(拍手起ル)且又政體ノ根柢ガ違
  ヒマスノデ、路西亞ハ御覽ノ如キノ混亂ノ國デ、總テノ事ヲ祕密ニシテ、其公ニスルトコロ
  ノ官署ノ文書ト云フモノハ當ニナラヌト云ッテ居リマスルカラ況シテヤ祕密ノ上ニ祕密
  ヲ必要トスルトコロノ財政ノ報告ニ至リマシテハ、大層根據ガ堅イヤウデ、黃金ヲ山ノ如
  ク積ンデ居ルト、戰爭ノ始メニ於テモ世界ニ軟聽シタ位デ、事實ハ無カッタト同ジヤウナ譯
  デゴザイマスカラ、或ル點ニ於テハ專制政體デ、宛モ暗室ニ運動スルガ如キ國ニ於テハ、
  或時限ノ間他國ノ信用ヲ過度ニ保ツコトカ出來ル詰リ詐欺的信用ヲ維持スルコトガ
  出來ル併ナガラ立憲政體ハ之ト反對デアッテ宛モ硝子室ノ中ニ仕事ヲナスガ如ク、總テ
  內外ヲ打明シテヤッテ、國民ト共ニ事ヲ計ル政體デゴザイマスカラ、年々ノ公債ノ殖エタ增
  シタト云フコトハ豫算ノ附錄トシテ世ノ中ニ現ハシルノデ、之ニ關係ヲシテ利害ノ觀念ニ
  敏ナルトコロノ債主、竝ニ市場ガ之ヲ知ラズニ居ッテ、晏然トシテ信用ヲ日本二大二置ク
  ト思フノハ、是亦餘リニ人ヲ見ルコト愚ナルトコロノ考デ、是ヲ朝三暮四ノ抽ナル謀ト私
  ハ評サウト思フ、ソレナラバ信用ヲ繫ギ得ナイ、併ナガラ尙一步ヲ退イテ信用ヲ繋ギ得タ
  トシタナラバ、私ハ玆ニ明カニ斷言スル、早ク事實ノ發見セラルヽハ禍ガ速ニシテ其量ハ
  小ナリ早ク事實ガ發見セラレズシテ、後ニ至ッテ其弊極ッテ年々ノ利息ヲ借リタ金ノ元金
  カラ還スト云フヤウナ、恰モ露國ノ深入ヲシタルガ如キ政略ガ、万一ニ祕密ノ間ニ效ヲ
  奏シタト見タナラバ其危撿實ニ大ナルモノデアッテ、恰モ身體ニ出來タ腫物が、早ク切
  斷サレテ治療ヲ遂ゲルト、外部ニ餘リ見エヌガ、內部ニ大ナル毒ガ週ッテ居フタト同ジヤウ
  ナ形勢ニ陷ルデアラウト思フ、本員ノ見ルトコロニ依リマスルト、露國今日ノ動亂ハ、全ク
  此政策ノ報酬デアル、反動デアルト思フ、ソレハ例ヘバ宏大ナル仕掛ヲ以テ、旅順大連
  ニ金ヲ下シタ、滿洲鐵道ヲ經營シタト云フヤウナ、所謂俗士ヲ喜バストコロノ極東遠略
  ノ方針ハ、何所ノ金デヤッタカト云フト、多クハ佛蘭西、白耳義ノ金持カラ借リタ金アヤタ
  タ、ソコデ段ケヤッテル中ニ、露國ノ大ヲ信ジ露國ノ祕密ニ連レテつ貸込ンダガ、一度蹉
  跌シタラバ、新タニ入レヤウト云フ金ガ途切レ、況ヤ戰爭ニ依ッテイロ〓〓ナ事實ガ明
  カニナッテ來タカラ、全ク此金ヲ絕ッテシマッタ、卽チ露國ノ銀行モ狼狽スレバ、總テノ工
  場モ閉鎖スル、總テノ市場ハ破壞サレル、一般ノ生活問題ノ大動亂ヲ起シテ來タカラ、
  彼ノ立憲ノ思想ニ熟セザルトコロノ露國ガ、一同ニ起リ立ッタノハ、蓋シ權利ノ爭ト云
  フヨリハ、生活ノ上ニ非常ナル動亂ヲ起シテ、之ヲ率井ルトコロノモノガ、權利ノ思想ヲ
  以テ率井タノガ、唯今尙露国ヲ危險ニ陷レテ居ル、北動亂ノ原因デアルト私ハ思フ、望
  月君ノ述ベラルヽトコロ、大岡君ノ述ベラルヽトコロハ、敗國タル露國ヲ主トシテ傚ウテ、
  國國ルル本本シシ此此ニ傚ハシメントスル惡ルベキ危險ヲ含ンダルトコロノ誤ッタ
  ル政策デアラウト私ハ思フ(拍手起ル)是ヨリ餘論ニ移ッテ少シク本員ノ意ヲ述ベナケ
  レンバナラヌ、ソレハ日本ノ弱〓ハ何レニアルカト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ、國力ノ上
  ニアルカ、抑、兵力ノ上ニアルカト申シタナラバ海陸軍トモ列國ヲ敬服セシムルトコロノ、
  吾シノモモ信任シ尊重スルトコロノ此忠勇ノ士ガ、國光ヲ大ニ輝セル働キヲ遂ゲテ、列
  國ノ八ニ一言モナイト敬服サセタノデアル、此〓ニ於テ英吉利ノ軍隊ヲ一人モ借リタコ
  トモナケレバ、亞米利加ノ輸卒ヲ一人モ使用シタコトモナイ、全ク日本全國ノ壯丁ヲ驅ッ
  テ是ノ如キ雄大ナル仕事ガ遂ゲラレタ軍備ノ點ニ至ッテハ、日本ハ他國ニ誇ルニ足リルト
  私ハ尊敬ト驚嘆トヲ以テ之ヲ仰ギ見ルノデアリマス、是ハ日本ノ强〓デアル、然ラバ日本
  ハ如何ナル財力ニ依ッテ、此十八箇月戰ヲ續ケタカト申スト、嘆息スベシ、若モアノ連戰
  連勝ノ際ニ亞米利加ナリ英吉利ナリガ同情ヲ持タズシテ金ヲ貸サナカッタナラバ、此驚嘆
  敬服スベキ軍隊モ、其效ヲ奏スルコトガ出來ナイ、本員ノ承ッテ居ルトコロニ依レバ、尙哈爾
  賓ニ進ンデ、大イニ活動ヲスルニハ、前途ニ十八億ノ金ガ要ルカラ、是ノ如キコトヲヤッタト
  コロガ、後トデ之ヲ補塡スベキ見込モ確立セヌノデアルカラ、旣ニ收メ得タルトコロノ勝利
  ヲ以テ、滿足スルト云フコトノ發議ガ、廟堂ノ上ニ、元老ノ口ヲ經テ發セラレタト承ッテ
  居ル、是ハ確カニサウデアルカ、サウデナイカ、本員ハ確聞スルコト能ハズ-確聞スル
  コト能ハザルモ、併ナガラ事情ヲ推シテ考ヘテ見マスレバ、財力ノ上ニ付イテ第一ニ痛心
  セラレテ、尙忠勇ナルトコロノ兵ハ、側カラ訓練シテ側カラ送ツタナラバ、隨分遣リ得ルデ
  アラウト云フ信用ハアッタラウト思フ、然ルニ第一ノ弱〓ト感ジタノハ財力ノ上デアル、英
  吉利ノ兵ハソレ程勇敢デハナカッタケレドモ、「ボア」ノ戰爭ニハ英吉利ハ氣長イ戰爭デ
  アッタガ、自分ノ金デヤッタ、金力ハ强〓デアッタガ、兵力ノ方ハ讓ッタ、日本ハ之ニ反對
  〒、兵力ニ於テハ强ヲ誇ルニ足ッテ、財力ニ於テハ他國ノ資本テ喧嘩ヲシタト云フ有樣
  デロノルカラ、後來大ニ注意スベキコトハ財政ヲ整理シ財力ヲ堅固ニスル、發達スルニア
  ルト云フコトハ、一番理ノ睹易キコトデアルノニ、何ゾ計ラン强ハ益〓强ナラシムルニ、弱
  ヲシテ弱ナラシメントスルコトヲ前途ノ方針ナリト、大岡君ノ說明セラレタノガ、是ガ若シ
  政友會全體ノ志デアッテ、政友會ノ一部デ拵ヘテ居ル內閣ノ志デアッタナラバ、本員ハ
  誤レルノ甚シキモノナリト、全部ヲ併セテ反對ヲ表サナケレバナラヌ、凡ソ人ノ病ヲ醫スル
  ニハ弱キヲ補益シテ、强キニ副フト云フノガ策ノ得タルモノト考ヘテ居リマスガ、今ニ於
  テ顧ミルベキハ國力ノ如何、財力ノ如何ト云フコトニアル、此〓ニ付イテ考ヘテ見レバ、
  名ヲ整理基金ニ藉リテ、負債ノ始末ヲスルノガ、戰後第一ノ務ダト言ハレルガ、其論ト
  精神ハ反對デアリマスケレドモ言葉ダケハ本員ト同ジニナル、ドウシテモ負債ヲ始末シテ、
  負債ヲ殖サナイヤウニスルガ宜イ、全體公債ヲ以テ平素ノコトヲヤルト云フコトハ、図
  取ァテ甚ダ危險デ、萬一事ノアッタ時ニ、公債ヲ募リ得ル餘地ヲ持ッテ居ルノガ、國家變
  ニ備ヘル廣キ意味ニ於テ、軍備鞏固ナルモノト本員ハ信ズルノデアル、然ルニ信用ヲ過度
  ニ高メテ、借リ得ル活路ヲ開イテ尙其上ニ借リタイ、此上ニ借リルニハ信用ヲ高メテ置
  カナケレバナラヌ、名ヲ大ニシテ整理基金法案ト云フヤウナ、如何ニモ俗人ヲ瞞著スル法
  律ヲ立テヽソレヲ以テ今信用ガ低イカラ、モット信用ヲ高メヤウ、信用ヲ高メルニハ、外ノ意
  味デハナイ、二千万圓ヲ返シテ六千万圓ヲ借リヤウト云フ、負債準備ノ法案ヲ是認スル
  ト云フコトハ誤レルノ甚シキモノト、本員ハ全體ニ於テ排斥シナケレバナラヌト思ヒマス、且
  還スト云フコトニ、ソレ程重キヲ置クニ及バヌト思ヒマス、今望月君ノ言レル如ク、望月
  君ハ種ヲ政治年鑑ニ御取リニナッタノデアルガ、英吉利ガドウデアル、佛蘭西ガドウデアル、
  「アルゼンチン」ガドウデアル、大層該博ヲ誇ラレタガ、是ハ數圓ヲ費シテ、丸屋ノ書店
  ニ御求メニナレバ、政治年鑑ノ表ノ中ニ舉ゲテアルノデ、新タニ謹聽スル程ノ事實デモ
  ナイト思フノデアリマス、(笑聲起ル)併ナガラ望月君ノ數ヘラレタ政治年鑑ノ中ノ數字
  ハ、他國カラ金ヲ借リテ英佛ガ減債基金ト云フモノヲ造ッタ例ガアリマスカ、是ハ私ハ曾
  テ聞カザルトコロデアル、現在經常歲入ガ足リナイデ、是カラ借リヤウ、併ナガラ是ダケハ
  三十三年ヲ豫定シテ置カウト云フノハ、誠ニ朝四暮三ノ術ト評スベキ、笑フニ堪ヘタル
  墜語デアルト排斥ヲシナケケバナラヌト思ヒマス、且又此事ハ甚ダ不利デアル、前ニ申シ
  マシタ通、過度ノ信用ヲ行政府ニ與ヘテ、國家ガ此事ヲ政府ニ投機的ニ運用サセルト
  云フコトハ、健全ナル財政ノ根本原則デナイノミナラズ、是ノ如キコトヲシタナラバ、事實
  ニ於テ不利デハナイカ、若シ歲計ニ餘裕ガアッテ、其中カラ少ナクモ利息ヲ拂ッテ僅デモ元
  ヲ拂フコトガ出來ルナラバ、是ハ健全明白ナル政策デアリマスケレドモ、之ニ反シテ多クヲ
  借リテ少ナク拂フト云フコトデアッタナラバ、其差ニ於テ國力ノ根柢ヲ危クスルト云フコト
  ノアッタトキニ、何人ニ依賴シテ整頓シタル軍備ヲ動スコトガ出來マスガ、私ハ今マデ幸
  ニ吾〓ノ唱ヘタルトコロノ國力增進、財力發展ノ議論ガ行ハレテ居ッテ、負債ヲ起ス餘地
  ガアッタカラ、幸ニ日露ノ戰爭ヲ續ケルコトガ出來タト思ヒマス、若シ更ニ活動スルノ餘
  地ガナイ、信用ノアリダケ借リルダケ借リルト云フコトデアッテ、望月君ノ憂ヘラレル如ク、大
  岡君ノ憂ヘラレル如ク、今後强〓ヲ持ッテ居ッテモ、財力ノ弱〓ハ勇敢ナル兵士ガ〓ナク
  衣服ナクシテ立竦ミヲシナケレバナラヌト云フコトヲ深ク本員ハ憂ヘルノデゴザイマス望月
  君ノ言ハレル如ク、歐羅巴ニ借リテアリマス、米國ニ借リテアリマスノハ、利子ハ不幸
  ニシテ高イ、ソレ故ニ或時本員ハ斯ウ云フコトヲ聽イタ、倫敦ニ日本ノ公債ヲ起シマシタ
  トキニ、此コチラデハ、償還年限ガ短イ方ガ受ケガ宜イト思ッタラ、長ク借リテ貫ハナケレ
  バ徒ニ煩雜デ割合ニ手數ヲ要スルノデ、永ク續イテ貰フ方ガ、貸主ノ便利デアル、確
  還スト云フ信用ヲ繫イデ置ケバ、寧ロ利息ノ良イ負債ト云フノハ、短期ヨリハ長期ノ方
  ガ直打ガアルト云フコトヲ記憶セラレンコトヲ望ム、ソレ故ニ遣繰リヲシテ强テ元ヲ還スヨ
  リハ、若干年間利息ヲ拂ッテ、若干年間整理ヲシテ、其中ニ日本ノ財力ガ伸ビデ來ルカ
  ラ、元利ヲ拂フダケノ前途ノ目的ガ著イタナラバ、此五年位ハ元ヲ拂ハナイデモ決シテ財
  政ハ不安ヲ感ズルコトハナイ、利息ノ高イノヲ長ク借リテ居ルト云フコトハ債主ノ望ムト
  コロデアル、唯財政ノ健全ナリヤ否ヤト云フコトガ、根本ノ問題デ、五箇年以後ニ利息
  ト元金ヲ拂ヒ得ルダケノ日本ノ財政デアルカ、日本國民ノ實力ガアルト云フコトハ實地
  ノ問題デアル、名ニアラズシテ實ニアルト云フコトヲ記憶セラレンコトヲ望ム、斯ウ云フ譯デ
  アリマスカラ、サウ慌テヽ遣リ繰リヲスルニハ及ハヌ、遣繰リヲスレバ手數料ヲ取ラレル募
  債手續ノタメニ金ガ要ル、禮モシナケレバナラヌト云フヤウナ譯テ、個人ノ負債ニシテモ、一
  國ノ負債ニシテモ、屢借替ヘル-信用ヲ增サズシテ借替ヘルト云フト、借替ト借替
  トノ間ニ、雜費ヲ散ッテシマウ金ノアルト云フコトヲ記憶シナケレバナラヌ、信用ガ厚ケレバ
  長ク借リルコトガ出來ルノデアルカラ、本員ハ根柢ニ遡シテ今過大ナルトコロノ計畫ヲ立
  テズシテ、安全ナル財政、安全ナル經營ト云フモノハ、國民ト胸襟ヲ披キ精神ヲ開イ
  テ議セラレタナラバ、是コソ外國ニ向ッテ日本ノ根柢堅キ信用ヲ維持スルコトガ出來ルト
  思フノデゴザイマスカラ、全體戰爭ノ間ハ金ノ上ノ損得ヲ議スル餘地ガナイ、國ノ存亡
  ヲ賭スル時デゴザイマスカラ、ドンナコトデモヤラナケレバナラヌガ、平和ノ時期ニ入ッテ尙
  外國ノ公債ガ貸シ易イ、借リ易イト云フ所ニ活路ヲ開イテ、之ヲ無限ニ殖ストコロノ隙
  ヲ明ケテ置クト云フコトハ、財政ノ危險是ヨリ大ナルハナシ、是ノ如キ權力ヲ政府ニ與フ
  ルト云フコトハ、實ニ國會ガー-其職責ヲ懸念スルモノガ御同樣甚ダ相濟マヌコトヽ本員
  ハ思フ、少額タリトモ確カ還スト云フ目的ガ立ッタナラバ年限ヲ追テ何年マデニハ還ス、
  現金拂デ還スト云フテモ決シテ差支ナイ、唯此間ハ高低ノアルコトハ、私ハ信用ニ關係
  スルト思フ今年ハ多ク拂ッタ、來年ハ拂ヒ得ナカッタト云フノハ、甚ダ宜シクナイコトデ、
  還スナラバ還スト云フコトヲ、ハキリト年割ニ當篏メテ、此表ノ如ク還シマスト云フコトハ、
  一番明白ナル健全ナル財政デアッテ、若シ節儉整理ノ結果常收入カラ之ヲナス基礎ガ立
  チマシタナラバ、是ヨリ安全ナコトハナイ、併ナガラ本員ハ爲シ難イコトヲ政府ニ責メルノデ
  ハチイ、唯空中ニ樓閣ヲ構ヘテ、多クノ信用ヲ維持セントスルトコロノ根柢精神ニ反對
  スルノデアリマス、陸海兩相ハ此〓ニ於テ本員ノ委員會ノ質問ニ滿足ナル答ヲ與ヘラ
  レタ、若シ陸海當局者ノ單純ナル意見ヲ以テスレバ是〓ノ金ガ要ルケレドモ、併ナガラ國
  カト相伴ハナケレバナラヌ、財力ト相對セナケレバナラヌカラ、是ハ大藏當局者ト議シタ上
  、デナケレバ、確定ノ意見ト認メザランヤウニ望ミマスト言ハレタノハ、本員ハ其當時ニ於テ
  誠ニ滿足ナル御答デアルト云フコトノ謝辭ヲ述ベル位マデ、此問題ニ付イテハ大イニ喜ン
  ダノデアリマス、詰リ國力ニ相應ズルトコロノ飾リナキトコロノ準備ヲ整ヘテ來ラレルコト
  ハ、本員ノ望ムコトデアッテ、大石君ノ豫言セラレタル如ク、現在ニ於テハ恐ルベキ敵ハ目
  前ニナイ、「クリミヤ」戰爭ノ創痍ハ二十年ニシテ癒ヘタト英人ガ露國ヲ評シテ居リマスケ
  レドモ、今囘ノ打撃ハ恐ラク「クリミヤ」戰爭ノ打擊ヨリ甚シイノデアル、況ヤ今申シマシタ
  如ク、不健全ナル財政ノ結果、巨億ノ國債ヲ外國ニ持ッテ居ッテ、其利ヲ拂フニ苦心シ
  テ居ル露國デアリマスノト、尙內ニ於テハ生活ニ迫レルトコロノ人民ガ動搖シテ居リマス
  ノト、長ク戰爭ヲ維持シテ、既ニ時候後レニナッテ居リマスタメニ、權利ノ思想ニ動カサレ
  テ、海外ニ動亂ガ暴露シテ居リマスノト、總テ綜合シテ見マスルト、「クリミヤ」以後ノ露
  國ヨリハ、滿韓ニ於テ敗レタルトコロノ露國ノ方ガ、苦痛ガ深イデアラウト思フ、之ト反
  對デアッテ、日本ハ此戰ヲナス前ニハ、消極的ノ同盟デアッタガ、今日ハ積極的ノ同盟ヲ
  英國ト結ンタル以上ハ、吾〓ハ强キヲ加ヘテ、彼ハ弱キヲ愈、極メタト云フ形勢デアルナラ
  バ、常識ヲ以テ天ノ知ルトコロ神ノ知ルトコロハ豫測スル能ハザルモ、人ノ智惠ヲ以テ計
  數的ニ較ベテ見マシタナラバ、今日ニ努ムベキハ、國力ノ充實政務ノ整理ニアルト私ハ思
  フノデアル、之ニ反對デ借リルダケハ借リテ、信用ヲ益〓過大ニ維持シヤウ、今マデノ既ニ
  金ノ借リ易イ精神ヲ以テ、此案ニ贊成ヲ表セラレルノハ、國家ニ對シテ不忠實ナルトコ
  ロノ行デアル本員ハ排斥シナケレバナラヌ、況ヤ一言附加ヘベキハ、高橋是〓君ガ日本
  ノ委任ヲ受ケテ、アチラニ參ヲテ金ヲ借リルトキニ、斯ウ云フ約束ヲシタカラ、是ガ日本ノ言
  質デアルト云フニ至ッテハ、實ニ議會ヲ侮辱シ、日本ノ全體ヲ侮辱シタルトコロノ、淺
  シキ言葉ト私ハ言ハナケレバナラヌ、計ラザリキ博覽達識ノ望月君ノ口ヨリ、此演壇ニ
  於テ是ノ如キ報告ヲ受ケントハ、流石ニ政府ハ「レゾブル」シタ答ヲシテ、アッタカモ知レヌト
  言ッテ居ルノハ、政府ノ方ニ常識ハアッテ、之ヲ明言シテ憚ラズ、是ガ日本ノ言質デアル
  ト云フノハ失禮ナガラ常識ニ外レタルトコロノ言葉デアルト思フ、本員ハ高橋君ガ是ノ如
  キ言葉ヲ放ッタナレバ齊東野人ノ語ナリ、國家ノ獨立ト相容レズ、己レノ信ズルトコロヲ
  以テ議決セヨト、諸君ニ向ッテ告ゲナケレバナラヌト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=33

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• 034・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　井上角五郞君
  〔井上角五郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=34

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• 035・井上角五郎

  ○井上角五郞君　諸君、本員ハ唯今ノ問題タル法案ニ對シテ贊成ヲ表スルモノデゴザ
  イマス、贊成ノ主意ヲ茲ニ簡單ニ述ベタイト考ヘマスノデス、ケレドモ既ニ先輩タル大岡
  君、又望月君ヨリ十分ニ之ヲ述ベラレ、サウシテ是ガ反對タル淺野君、大石君、就中
  唯今ノ島田君ニ至リマシテハ、勿論一二舉ゲテ評スベキコトハアルケレドモ、要スルニ大
  體要領ヲ得ズノ一言ヲ以テ、之ヲ駁スルニ足リルト思フノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」ノ聲
  起ル)本員ハ故ニ極メテ簡單ニ唯所見ヲ述ベテ置ク積デアリマス、諸君、今囘我國ガ露
  西亞ニ打勝ヲタ、此打勝ャタル名譽ノ重モナルモノハ何デアルカ、勿論陸軍ガ强イ、海軍
  ガ强イ、故ニ我國ガ勝ッタト云フコトハ論ノ無イコトデアルケレドモ、私共ハ自カラ信ズル、
  殊ニ平生實業ニ從事スルノ立場ニ於ケル井上角五郞ハ信ズル所ガアルノデアル、卽チ今
  囘戰爭ノ勝利ノ最後ノ名譽ハ、我國財政ノ鞏固ニアルト云フコトニ歸シナケレバナラヌ
  ノデアル、(「然リ〓〓」ト呼フ者アリ)諸君、我國ガー西西亞ト戰端ヲ開ク當時ニアッテ、
  外國ノ新聞、又ハ外國ノ人ミハ如何ニ之ヲ評シ、如何ニ之ヲ期シテ居フタカ、到底日本
  ガ露西亞ト戰ヲシタトコロガ勝ツコトガ出來マイ、間モナク陸軍ハ鴨綠江ア勝利ヲ得、海
  軍ハ旅順港デ勝利ヲ得タトキニモ、外國ノ人〓ハ如何ニ之ヲ言ッタカ、成程戰爭ハ强イ、
  强イガ到底シマヒマデ財政ガ持續カヌダラウ-到底シマヒマデ財政ガ持續カヌダラウ、
  日本ハ之ガタメニ失敗スルノデアル、斯ウ云ッテ居ッタガ、其財政ガ鞏固ニシテデス、卽
  チ既ニ平和克復ノ今日ニ至ッテ未ダ日本ノ財政ト云フモノニ甚シキ紊亂ヲ見ズ、彼ノ貨
  幣制度ハ依然トシテ戰爭前ノ有樣ヲ繼續シテ居ルト云フ、此事コソ今囘ノ戰爭ニ於ケ
  ル最後ノ勝利デアル、最後ノ名譽デアル、是アレバコツ卽チ我國ノ信用ハ忽チ從前ニ倍
  シテ、戰爭前ノ日本ノ公債ハ、幾朱利付ノモノガ幾ラシテ居ッタガ、卽チ海外ノ市場ニ
  於テ、戰爭後ノ今日ニ於テ、其同一ノ公債若クハ利率ノ低イトコロノ公債ガ、今幾ラシ
  テ居ルカ、公債ノ直段ハ能ク此國ノ信用ノ如何ヲ徵スルニ足リル、卽チ一ノ標準トスベキ
  モノデアルト云フヤウニ、此戰爭ハ卽チ我國ノ財政ノ鞏固ヲ示シタル勝利デアッテ、其勝
  利ハ卽チ我國ノ經濟ノ信用ヲ增シタノデアル、此時ニ當ッテデス、我日本ガデス、之ヲ如
  何ニスベキカ、折角得タル此信用ヲ如何ニスベキカト云フコトガ、卽チ大問題デナクテハ
  ナラヌノデアル、諸君、島田三郞君ハ日本ガ戰爭中ニ財政ガ鞏固デアッタト言フケレド
  モー大岡君ハ左樣言ックケレドモ、ソレ程鞏固デアッタノデハナイ、借財ヲ以テ戰爭ヲシ
  タノデアック、島田君ハ日本ト露西亞トノ戰爭中ハ、日本ノ財政ガ鞏固デアルノデモナク、
  日本ノ財政ガ充實シテ居ルノデモナク、借財ヲ以テ戰爭シタノデアル、(島田三郞君「借
  財ト云フノハ外債ノ意味デス」ト呼フ)勿論デゴザイマス、外債ヲ以テ戰爭シタノデアル、
  ケレドモ此外債ガ募リ得タト云フコトハドウ云フコトデアル、非常特別稅法案ヲ實行シ
  テ、國民ノ負擔ハ何倍ニナッタ、サウシテ尙此國民ハ重キ稅ニ堪ヘツヽ、內債ヲ募集ス
  ル場合ニハ之ニ應スルモノ甚ダ多ク、場合ニ依レバ三倍五倍ト一云フ募入金額ニ至ルガ
  如キ、國民ハ重稅ヲ負擔スル上ニ尙能ク公債募集ニ應ズルノ餘力アルト云フコトヲ示シ
  タイト云フ、此信用アレバコソ外債モ募レタノデアル、外債ガ募レタカラ戰爭ガ出來タノデ
  アル、貧乏デアルカラ外債ヲ募ヲテ戰爭シタノデナク、國內ニ能ク外國人ヲシテ能ク信用
  サセル事實ガ充滿シテ居レバコソ外債ガ募レタノデアル、戰爭ガ出來タノデアル、何處ノ
  國ニカ是ハ獨リ國ノミナラズ、一個人一家ニ於テモ、萬一不時ノ場合ニ處スル金ヲ積ン
  デアルモノデハナイ、其場合ニ能ク信用ヲ以テ世間カラ借リ得ル、借リ得タルモノヲ戾シ
  得ル見込ガアレバ人モ、貨スノデアル、卽チ是ニ於テ一家モ立テ、一國モ其不時ノ場合ニ
  應ズルコトガ出來ルノデアッテ、島田君ノ言フガ如ク、貧乏ニシテ金ヲ借リタト云フコトデ
  ナイト云フコトハ、殊ニ島田君ハ名譽アル島田君、我國ガ是程ニ立派ナ國デアルモノヲ、
  殊更ニ曲ゲテ貧乏ナル如ク、玆ニ吹聽スルト云フコトハ其當ヲ得ナイコトデアル、諸君、斯
  樣ニシテ我國ノ信用ハ高マッテ居ルト云フ、此時ニ當ッテ此信用ナルモノガ如何ナルモノデ
  アルカ、今後諸君ハ口ヲ開ケバ戰後經營ト言フ、戰後經營ナルモノハ何デアルカと國內ノ
  產業發達貿易ノ奬勵、若クハ滿洲、朝鮮、樺太等ニ於ケルガ如ク、新領地ノ經營ノ如
  キガ、戰後經營ノ最モ大切ナルモノデアル、是等各種ノ事業ハ、政府ガヤルニモ人民ガヤ
  ルニモ、必ズ資本ナルモノガ要リマス、元デガ要ルノデアル、元デナルモノハ如何ニシテ生ズ
  ルカト云ヘバと獨リ外國カラ借リルガタメニ、政府ノ信用ガ入用ナルノミナラズ、政府其
  モノヽ財政ノ基礎ガ鞏固ナリト云フ、此大ナル一ツノ木ノ下ニ、吾〓人民ハ始メテ安
  心シテ事業ニ著手スルコトガ出來ルノデアル、ソレ故ニ政府ノ財政ハ、基礎鞏固ナリト
  云フコトヲ示サナケレバ、外國ノ信用ハ暫ク措イテ、內地ノ事業モ起ラナイノデアル、故
  ニ是程ニ得テ來タトコロノ日本ノ財政、サウシテ是程得タトコロノ此信用ヲ繼續シテ、此
  信用ト此財政ノ下ニ、戰後ノ經營卽チ國力ノ發達ヲ圖ルト云フノガ、今日ニ大切デア
  ルナラバ、政府ノ財政ノ鞏固ヲ期スルト云フコトガ何ヨリ大切ナ問題デアル、偖テ政府ノ財
  政ノ鞏固ヲ期スルト云フナラバ如何ニスルカ、大石君ハ曰ク、政府ノ施政ノ方針ナルモ
  ノヲ示サス、政府ノ今後ノ財政ト云フモノハ、斯樣々々ニナル筈デアラウ、若シ儉約ヲスレバ
  此位ハ省ケルデアラウ、斯樣ニ述ベラレタガ、政府ノ施政方針ヲ鞏固ニシテ、卽チ今後
  ノ日本ノ財政ハ斯ウシテ往ク、斯フ云フヤウニシテ往クト云フコトハ別問題、是亦必要ナ
  モノデアル、僕ハ大石君ニ其事ハ賛成スル、大石君ノ說ノ如ク、ソレハ必要ナモノデアル、
  ヤルベキ問題デアル、ヤルベキ問題デアルガ唯其大方針ナルモノガ一ツ極ッテ居リサヘスレ
  バ何ニモ要ラナイ、方針バカリ極メテ內閣ヲ拵ヘテ何ニモシナイデハ、直ニ其內閣ハ瓦解
  スル、斯樣ナモノデハナイ、大方針ヲ極メルト云フコトモ必要デアルガ、又各部々々ノ財政
  ノ始末ヲシテ往カナケレバナラヌノデアル、各部々々ノ財政ノ始末ヲシテ往クト云フハ、卽
  チ何デアルヤト云ヘバ、露西亞ト戰爭以前ニ既ニ、我國ニハ募集シタトコロノ公債ガ幾
  億万圓モアル、此幾億万圓ト云フモノハ、其整理ノ方法ガ立ッテ居ルノデアル、今囘新
  タニ戰爭ノタメニ增シタトコロノ公債ト云フモノハ、十何億二十億、斯樣ナ多額ニ至ッタ
  場合ニ於テ、又此多額ナ公債ヲ隨時償還スルト云フガ如キ、往キナリ放題ニ任シテ置
  ケルモノデハナイ、政府ノ財政ニ餘リガアッタラ戾スガ宜シイ、餘リガナケレバ捨置クガ宜
  シイ、其餘リガアッタナラバ、場合ニ依ルトソレヲ以テ、一ツ差向ヲ此稅ヲ減ラシテ呉レト
  カ、彼ノ事業ヲヤッテ呉レトカ諸君ハ望ムニ相違ナイ、サウ云フヤウナコトニシタナラバ、遂ニ
  借リタ金ノ償還スルト云フコトニ付イテノ秩序ガ立タナクテハ、其物ノ始末ガ附カナイ、ソ
  レデアルカラ十何億二十億ト云フ公債ノ殖エタ、此場合ニ當ッテハ、アレタケノ整理方法
  ヲ極メテ置カナケレバナラヌ、是ガ卽チ今囘ノ法案ヲ提出セラレタル政府ノ趣意デアラウ
  ト思フ、何モ此整理ノ方法ヲ極メルト云フコトガ、直接ニ外國ノ信用ヲ得タイト云フノ
  一本鎗デ極メタモノデハナカラウト私ハ思フ、取モ直サズ財政其物ノ整理ヲナシテ、サウ
  シテソレガ出來タ上ニハ、ドウナルカト云ヘバ、自カラ外國ノ信用モ得ラレル、日本公債ノ
  價格モ維持セラレル、其事ニ付イテハ、望月君ガ詳シク述ベタ如クニ、望月君ガ能ク述
  ベラレタカラ、私ハ玆ニ說明シマセヌガ、自カラ日本ノ公債ヲ持ッテ居ルモノモ安心スルコ
  トガ出來、又日本ノ公債ノ信用モ得ラレルノデアル、此事ニ付イテ島田君ハ公債ヲコ
  ンダノ基金ナルモノハ、減債基金ニアラズシテ增債基金デアル、ナゼナレバ信用ヲ得テ外
  國カラ金ヲ借リヤウト云フノガ、是ガ目的デアルト云フ吾〓ノ此國債基金整理ノ問題
  ニ付イテ、政府委員ノ當局者が是ヲ實地ニ行フ場合ニ當ッテ、何モ外國ノ信用ヲ得ル
  ト云フコトノタメニ是ヲ整理スルノガ必要デハナイ、第一ニハ今廉イ利子ノ金ガ借リラレ
  ル、此金ヲ借リテ彼ノ高イ利子ノ金ヲ戾シタナラバ、差引斯樣ナ利益ガ生ズルノデアラ
  ウ、此機失フベカラズ卽チ其利益ヲ取ルニハ國債整理基金ノ重ナル一ノ働キデアル、又
  或場合ニハ日本ノ社會ノ全體ノ金融ノ有樣、又總テ日本ノ株券トカ、或ハ公債ノ價
  格、其他此經濟上ノ有樣ヲ維持スルガタメニ、玆デ此物ヲ買ッテ置ケバ、斯ウ云フヤウナ
  有樣ニ陷ラズシテ、此經濟ノ有樣ヲ舊ニ復スルコトガ出來ルト云フ場合モアル、卽チソレ
  ガタメニハ、直段ヲ引上ゲル手段モ取ルヤウナコトガアラウ、總テソレ等ノコトヲナシ、又此
  金ダケハ此方法デ戾スノデアルカラ安心ナモノデアルゾト云フコトヲ示ス、示スノミナラズ實
  際安全ナルモノニスルガタメニ、特別會計ヲ設ケタノデアッテ、是ガ增債ノ目的デナイト云
  フコトハ分ッテ居ル、且島田君ノ如キ淺野君ノ如キハ、或ハ數字ヲ知ラナイ、數字ヲ知ラナ
  イト云フナラバ、私ハ又何モ言フトコロハナイノデス、恐クハ數字ヲ御承知デアリツヽモ、麗々
  ト能クアノヤウナコトガ述ベラレタト思フ、今囘ノ整理ノ法案ニ依ッテハ、年々二千万圓
  カ乃至三千万ホカ房スコトガ出來ナイ、サウスレバ十年經ッタトコロガ三億戾スニ過ギナ
  イ、三十九年度ノ豫算ノ上カラ見テモ、公債ハ年々八千万位募ラナケレバナラヌ、年
  ニ八千万圓募ッテ、十年トスレバ八億ニナル、二億戾シテハ八億借リレバ、差引六億殖エ
  ルノデアル、斯樣ナ言葉ガ苟モ議員トシテ一國ノ財政ニ與ルダケノ權利ヲ有フタ人ノ口カ
  テ出得ルモノデハナイ、年々國庫ノ收支相償ハズ、年々八千万圓ヅヽ經常費ノ不足ヲ
  公債デ補ハナケレバナラヌト云フ國家ヲ-公債デ補ハナケレバナラヌト云フ國家ヲ拵ヘ
  テ、其衆議院議員トシテ、ソレガ當リ前ノコトデアルト島田君、淺野君ハ思ッテ居ラルヽ
  デアラウカ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)左樣ナコトハ出來ナイカラ、本年-三十九年度
  ノ豫算コソ免ニ角ニ四十年度ノ豫算ニ至ッテハ、政府モ相當ノ計畫ヲ立テルノデアラウ
  シ、吾〓モ亦相當ノ考ヲ籠メテデス、之ガ整理方法ヲ考ヘテ、經常費ノ不足ヲ年々公債
  デ補フト云フガ如キ有樣ヲ殘スベキデハナイノデアル、ソレガ殘ルモノト見レバ二千万還
  シテー-二億万還シテ、八億万借ルコトニナラウケレドモ、ソレ等ハ吾〓自カラモ能ク其
  事ニ注意シテ整理シテ往クナラバ、之デ卽チ此整理法案ハ(拍手スル者アリ笑聲起ル)
  自カラ財政整理ガ出來、其公債ノ償還ガ出來、サウシテ我國ノ信用ガ保タルヽモノデアル
  ト思セマスルカラ、私共ハ此際ニ於テ、最モ此案ヲ必要ナリトシテ、折角戰勝ニ依ッテ得タル
  トコロノ我國ノ信用、我國ノ名譽ヲ維持スルニハ唯一是ノミトハ言ヒマセヌケレドモ、
  此案ハ最モ大切ナリト思ッテ、玆ニ贊成ヲ表スルノデアリマス
  〔拍手起ル「討論終結」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=35

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• 036・長谷場純孝

  ○長谷場純孝君　既ニ本案ニ對シマシテハ、各派ノ代表者ガ交、討論ヲ盡シタト信ジ
  マスカラ、是ニ於テ討論終結ノ動議ヲ提出シマス
  〔「賛成々々」ノ聲起ル〕

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• 037・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　討論終結ノ動議ニ制規ノ賛成ガアルト認メマスカラ、決ヲ採リ
  V、、討論終結ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル又「異議アリ」ト呼フ者アリ〕

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• 038・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ハナイト認メマス、討議ハ終結セラレマシタ
  〔「議長旨イゾ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=38

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• 039・元田肇

  ○元田肇君　直チニ本案ノ二讀會ヲ開カレンコトノ動議ヲ提出シマス
  (「贊成ケ々」ト呼フ者アリ)

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• 040・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　本案ニ付キマシテ、二讀會ヲ開クヤ否ヤト云フコトニ付イテ決
  ヲ切冰リマス、扨テ其採決ノ方法ニ付イテ御諮リヲ致シマス、長谷場君外二十名以上ヨ
  リ記名投票ヲ以テ採決セラレンコトノ要求ガ出テ居リマスル、因テ衆議院規則百二
  十七條ニ據リマシテ、記名投票ヲ以テ採決ヲスルコトニ致シマス、第二讀會ヲ開クベシト
  云フ御方ハ、卽チ白票ヲー白ヲ御持參ニナルヤウニ願ヒマス、又第二讀會ヲ開クベカ
  ラズトスルトコロノ御方ハ、靑キ札ヲ御持參ニナルヤウニ願ヒマス、ワレデ御分リニナリマシタ
  カ
  ハ「分リマシタ」ト呼フ者アリ拍手起ル〕

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• 041・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　閉鎖是ヨリ〓呼ヲ始メマス
  〔書記氏名ヲ點呼ス〕

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• 042・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　投票洩ハアリマセヌカ、ナイト認メマス-開鎖-開匣
  〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕

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• 043・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　投票ノ結果ヲ書記官長ヨリ報告セシメマス
  〔林田書記官長報告〕
  出席總員三百四十七
  可トスル者二百三十
  否トスル者百十七
  〔參照〕
  〔本案第二讀會ヲ開クヘシトスル者〕
  寛君髙木龍藏君有造君敬昌君
  貫一君武市庫太君福林島宜三君星座吸烟長太郞君
  由田藻持小辻若佐君山谷宇平君三輪猶作君佐竹作太郎君
  布中寄田田時尾見濱五郞君口擔君
  書法單點 12石矢嶺中消中善君君君漆濱
  川島植安木達謙藏君昌巖君
  惟義君元太郞君長谷川豐吉君
  宮本嘉樂君鳥海 哲四郞君神前修三君籾木卿太郞君
  村松愛藏君柚水慶二君麥田宰三郞君長谷部倉藏君
  向坂弘君渡邊修君宮井茂丸郞君瀬下秀夫君
  前島元助君松田吉三郞君南條吉左衞門君瀧口吉良君
  藤井牧太君石谷傳四郞君淺靖畑純次君
  山田省三郞君服部小十郞君小山田羽信藏君君大大淵龍太郎君
  藤金吉君一平君井上與一郞君三井忠藏君
  井信君壽介君正是永歲太郎君
  雄七久石武保伊一郞君浦太郞君復三郵中君君井藤シニ
  里〓立石本井鈴夫様邸 特別水摠兵衞君元梨戶哲四秀
  人民〓劑生吉郎君君荒臼森岡哲
  尻邦君君君君君保太郎君茂君五
  竹河野上平君赳君山崎川井行
  內本国産正良雲重山中大千宮栗大原森松高大片崎林岡葉古塚井田元梨戶山ト新城君和郎吾駿一雄郞夫次
  池田惟君佐島津省君本
  上埜安女子山西君藤虎次大學師知事實啓三郞吾君章
  君君君君君君君君君君君君君君君
  郞君青 師信宜禎太郞君
  內山吉育造君谷義三
  造肇君安藤新太郎君友信君四
  本繁多田作兵衞君良純君谷場郎孝郎
  場平野田卯太郞君保存聯合牧福長島042天純
  中心點就在第二章素特別特產生物品添加物品六君君君君君恆松隆慶君三長森晴登君野元
  豐藤林小一郞君浦盛江藤哲藏
  記吉三輪傳七君獨立三郎德君君高橋安爾
  神戶松之輔君台詞業務東大凱君征矢野半彌
  西村專太郞君植庄一郞君上野彌君君君君
  崎榮治君丸山嵯峨一郞君大野久次君遠藤良吉郎
  山宮森隆君中村雄藏君
  山本悌二郞君河原林義雄君
  本日さん大繩久雄君竹越奥三郞君橫井時雄君
  藤喜助鈴木友治郞君管原改野耕三君
  島龜代司駒林廣運君村左小澤愛次郎君
  本江林小參君山村野常右衞門君
  間俊一君元現在地球室內容君君君君君竹田
  藤三君の君を若者若者君君君中村〓一郞君信和 麺溝千代馬鹿尾羓
  牧野逸馬君田齋關谷關坂西北尾賴
  佐永板田山荻山橫鈴原根永工松奧村善右衞門君藤根澤淺楠丹
  中本野口堀木珪柳次介君君目玄君
  定幸芳小三一節吉彦藏一子郞敬勇治君野順平君
  旅途開始正和君村順之助君日向輝武君
  盛典印本晴之君石田孝吉君
  見東勘君君君米田武八郞君須松橋岩本久太郎君川眞田
  寬山根正次君大吉君佐處理解壓
  藤本々
  藤里治君大野龜三郞君嘉吉君兼松凞君
  大久保弁太郎君
  美禰
  寺井亮純
  古栗原
  後井由
  丹直
  內武藤 滿義
  魯
  身體は、
  古賀
  大竹貫
  菅澤
  村松龜一郞君
  堀田連太郞君
  望大熊
  月長
  小內三
  田文
  鳩高山橋勝
  平島
  ドン開始時間
  屋此
  夫伎資
  初
  澤藤肥〓奧梅伊守水田野隆義
  塚
  崎朋
  敬
  
  野上嘉
  井上

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• 044・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　內貴甚三郞君東左右君澤田佐助君
  龍彥君岡田治衞武君橫田虎彥君川原茂輔君
  司君君藤金作君武內美代吉君橫井甚四郞君
  松田正久君中西六三郞君岩元信兵衞君
  景山甚右衞門君福島美之助君奧繁三郞君
  書籍書籍書籍書店君君君君阿部德三郞君元田濱名信平君
  中西光三郞君木暮武太助大學院海野謙次郞君
  廣瀨久政君増田塵ニ遊早田速整爾君
  天野藤三君福岡精一君〓吉君
  庸藏君鳥山敬二郞君
  〔本案第二讀會ヲ開クヘカラストスル者〕
  一君柴四朗君關春茂君淺野陽吉君
  重雄君金岡又左衞門君河野廣中君齋藤宇一郞君
  米田實君江藤新作君島田三郞君
  加藤政之助君入江武一郞君國谷亨君
  ·三分五十五錢郞君關東尾平太郞君
  君電車 內側 時間 : 小川急便局井手武右衞門君
  安國根井口熊野君
  藤岡陸雄木大山村石熊吉君
  野菜美好食器產本金太郞君格之輔君
  小川
  良平貞吉君君
  浦勝村井原橋洋藤井野藤野藤岡 非共口才重董庫仙山竹口村達太郞君
  仁 勝 手 直大阪府道管理公会社会所
  松尾君田原橋津藤井野藤野上肉串燒魚武德君
  寧平太郞君
  坂君 若 若 若 若 若 君 君 話 君 書星萩木福松高大神河天佐星首淳一來太郞君
  雜 ロ卓金田國松君
  四十六鞍木濱澤下謙次郞君
  鵜飼退三谷〓愼君
  井
  朝倉鐵村花帘 冰糖卓雄
  島省三一郎君野左門君台灣開始
  合犬飯養毅君松三郞君荒谷桂
  之君田丹蘭第2第5號田村波多野傳三郞君
  小圓松井新源惟源作內昌內君君君齋藤勘七君
  仲次君中西野木善三郞君
  其先に石田仁太郞君乾奈良吉君鈴置倉次郞君
  兵七君野口源一郞君安島重三郞君鈴木久次郞君
  北畠具雄君榎太次郞右衞門君非正精
  角田眞平君關野善次郞君板神崎東中醫療法
  平君安念次左衞門君佐藤伊助君倉
  要君
  本案ハ二讀會ハ開クベシトスルニ決シマシタ

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• 045・長谷場純孝

  ○長谷場純孝君　旣ニ本案ハ大多數ヲ以テ可決セラレマシタ以上ハ、直チニ二讀會
  ヲ開カレンコトヲ希望致シマス、(「贊成々々」ト呼フ者アリ)而シテ本案ハ委員會ニ於テ
  モ、逐條ニ對シテノ議論ハ一モナカッタノデゴザイマスカラ、逐條ノ朗讀ヲ省イテ、議案
  全部ヲ第二讀會ニ附セラレンコトヲ希望致シマス
  (「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

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• 046・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　唯今長谷場君ノ動議ノ如ク直チニ二讀會ヲ開クト云フコトニ
  付イテ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 047・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガナイト認メマス、是ヨリ直チニ二讀會ヲ開キマス又議
  案ノ全部ヲ議題ト致シマス
  國債整理基金特別會計法案第二讀會
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 048・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　本案ニ付イテ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 049・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガナイト認メマス、本案ハ直チニ··

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• 050・長谷場純孝

  ○長谷場純孝君　既ニ第二讀會ガ異議ナシト決シタ以上ハ、三讀會ヲ省略シ、直チ
  ニ確定セラレンコトヲ希望シマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

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• 051・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　長谷場君ノ發議ノ如ク三讀會ヲ省略シ、直チニ之ヲ確定議
  ニセラレルト云フコトニ付イテ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=51

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• 052・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ハナイト認メマス、本案ニ付キマシテ、二讀會ノ決議ノ
  通御異議ハゴザイマセヌカ
  國債整理基金特別會計法案確定議
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=52

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• 053・杉田定一

  ○議長(杉田定一君)　御異議ハナイト認メマス、是ニテ本案ハ確定ヲ致シマシタ-
  議事日程第六、非常特別稅法中改正法律案第一讀會ノ續ニ移リマス
  第六非常特別稅法中改正法律案(政府第一讀會ノ續(委員長)
  提出)〓告
  〔長谷場純孝君登壇〕

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• 054・長谷場純孝

  ○長谷場純孝君　此場合ニ於テ非常特別稅法中改正法律案ノ委員會ノ結果ヲ御
  報告致シマス、其〓要ハ前囘陳述シタ通デゴザイマス、而シテ此案ハ議論ガ三ツニ分カ
  レマシタ、一ハ此案全部ノ反對論、ハ此案ノ第一削除ト云フノヲ、之ヲ又削除シテ第
  二十七條削除トアルノヲ、是ヲ「本法ハ明治四十年三月三十一日限廢止ス」ト斯ウ云
  フ修正案ガ出マシタ、一ハ原案贊成、斯ウ云フコトニナリマシタ、卽チ第二ノ修正案ハデ
  ス、現行法律ノ非常特別稅法中ノ第一條ガ「第一條臨時事件ニ依リ生シタル經費ヲ
  支辨スルタメ、本法ニ依リ租稅ヲ增徵シ若クハ附加シ又ハ印紙ヲ貼用シ若シクハ貼
  用セシム」斯ウアルノヲ此儘活カシテ置タト云フ說デアッタノデゴザイマス、面シテ其第二十
  七條ノ現行法ハ「第二十七條平和克復ニ至リタルトキハ其翌年末日マテ本法ヲ廢止
  ス」トアルノヲ「第二十七條本法ハ明治四十年三月三十一日限リ廢止ス」斯ウ修正ヲ
  加ヘタイト云フ說ガ出タノデゴザイマス、而シテ種々討論ノ末、採決致シマシタトコロガ、此
  原案反對論者モ少數デ潰レ、第二ノ修正論モ潰レ、終ニ此原案贊成論ガ卽チ過半數
  ヲ以テ可決致シマシタ、尤モ其理由ハ自カラ發言通告者ガ出テ、御演說ニナリマセウカ
  ラ、私ハソレダケノコトヲ報告スルニ止メテ置キマス
  〔島田三郞君登壇〕
  (「簡單々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=54

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• 055・島田三郎

  ○島田三郞君　諸君、本員ハ不幸ニシテ矢張リ此案モ反對デゴザイマス、政友會ノ
  諸君ノ中ニ謝スベキコトアリ、將タ御忠告申スベキコトガアル、ソレハ他デモゴザイマセヌガ、
  此案ノ委員長ハ特ニ意ヲ用井テ、成來ッタトコロノ慣習ニ變ヘテ、特ニ報告ヲ分ケラレ
  テシマシタノハ、案ヲ取扱ヒマスルニ鄭重ノ禮デアッテ、本員ハ大イニ是ヲ悅ブノデアリマ
  ス、何故ナレバ衆議院ニ於テ是ヲ議シマシテ、實地ニ國ニ重大ナル影響ヲ及ボスノデゴザ
  イマス、是ヲ議シマスニモ、愼重ニ鄭重ニ謹ンデ議シタト云フコトハ一片國民ニ對スル
  衆議院ノ禮義デアラウト思フテ居リマス、然ルニ何ゾ圖ラン、或方面カラ簡單ニ演ベヨト
  云フニ至ッテハ、甚ダ黨派ノ節操ノ緩ンデ居ルコトハ、本員幾分ノ冷評ヲ以テ迎ヘル、
  院內總理ハ大イニ意ヲ用井マシタガ末卒ニ至ッテハ、未ダ十分號令ガ行屆カナカッタカ
  ト思フト甚ダ御氣ノ毒ニ感ズル、本員ハ若シ意ヲ盡サザレハ、イツ迄モ長ク演ベマスカラ
  確カニ此事ヲ明言シテ置キマス、本員ハ此案ニ絕對ノ反對デゴザイマシテ、種々ナル理
  由ガゴザイマシテ、大イニ長ク論ジナケレバ、意ヲ盡スコトガ出來マセヌ、此法律ハ唯今委
  員長カラ報告セラレタ如ク、至極簡單ナルモノデゴザイマシテ、現在ノ法律ハ二行カ三行
  ニナッテ居リマシテ、初メノ一箇條ト第二十七條ノ終リノトコロデアリマスガ、此改正案ハ
  モット簡單デアル、第一條削除、第二十七條削除、誠ニ文字デ見マスト簡單デ、幾ド述ベ
  ル程ノ理由ノナイヤウナ、斯ウ云フヤウナ案テゴザイマス、併ナガラ其實質ニナリマスルト、
  實ニ重大ナル關係ノアルモノデ、一億六千万ヲ戰時ニ不意ニ課セラレタトコロノ、急激ニ
  課セラレタトコロノ、此臨時特別稅ヲ無期限ニシテ、延期シテ成立タセルト云フノデアリマ
  スカラ、是ハナカ〓〓國民全體ノ生活ニ非常ナル影響ノアルモノデゴザイマス、之ヲ簡單
  ニ議スルト云フコトハ、衆議院ハ其職責ヲ曠クシタト云フ責ヲ免レヌノデアル、總テノ意
  志ヲ盡シテ、急ニ討論終結ナドノ出ヌヤウニ、院內總理ニ之ハ注意セラレンコトヲ衆議
  院ノタメニ望ム、此戰時特別稅ト云フモノハ實ニ國民犧牲ノ精神ノ凝結シタルモノデ
  アッテ、是ガアッタレバコソ、戰ヲ續ケテ國ノ光ヲ輝シテ、國ノ榮譽ヲ全ウシ、國ノ安全ヲ固
  ウシタノデアリマスカラ、之ニ對シテハ無限ノ尊敬ト、無限ノ謹愼ヲ表シテ見ナケレバナラ
  ヌ、ソコデ此案ノ性質ヲ申シマスルト非常特別稅ト題シテアルガ如ク、其名稱ガ其意味ヲ
  示シテ居リマシテ、戰ノトキノ急ニ應ズルトコロノ費用ニ議定シタモノデアリマスカラ、自然
  ノ結果トシテ戰ガ息メバ-平時ニ復シマスレバ、非常特別稅ノ消滅スベキハ本來ノ性
  質デアッタ併ナガラ是ハ政府ガ原案ニ書記シテ、當時大藏大臣ガ說明セラレタニモ拘ラ
  ズ衆議院ハ尙特ニ意ヲ加ヘテ特ニ二十七條ヲ加ヘタノデアリマセウ、ソレデ平和克復ノ
  後ハ、一年ノ間續ケテ後トハ消滅スルト云フコトヲ明記シタノデアル、恰モ表題ハ戰時特
  別稅ト題シ、第一箇條ニ云々トアル、此奧書ヲ衆議院ガ加ヘタヤウナモノデアリマス、此
  期限ニ至ッテハ上下共ニ確實保證シタノデ、平和克復一年ノ後ニ止メルノデアル、確
  カ本員ノ記憶致シマストコロデハ政友會ノ豫算委員長栗原君ガ此文章ノ筆ヲ執ラレ
  タト記憶シテ居ル、斯ウ云フ具合ニ政友會ハ之ニ向ッテ重キ責任ヲ持ッテ居ルコトヲ一
  言述ベテ置カナケレバナラヌ、本員ハ戰後經營ノ第一義トシテ、信義ヲ國民ニ守ラナケ
  レバナラヌト云フ意味カラ、是ヲ無期限ニ輕忽ニ延期スルコトハ反對シマス、第二ニハ現
  內閣ガ誠意ヲ表シテ舉國一致ヲ國民ニ求メラレタ宣言ハ、一度ナラズ二度三度ニ至ッ
  タノデ、深ク內閣ノ誠意ヲ國民ニ表セラルヽコトヲ本員ハ信ジテ居ル、此信ジテ居リマス
  ルコトヲ事實ニ現顯シタガタメニ、事實ニ現ハレタガタメニ、矢張此案ニ反對セザルヲ得
  ナイ、西園寺政友會總裁ハ其大會ニ於テ、此意味ヲ演說セラレタ、國民ト共ニ國政ヲ
  議サウ、戰時ニ於テハ舉國一致、戰後ノ經營ニ付イテハ之ヲ鞏固ニ國事ヲ經營シナ
  ケレバナラヌ國力ヲ發展シナケレバナラヌト云フ演說デアリマシタ、其後此壇ニ現ハレテ、
  首相ノ資格ヲ以テ演說セラレタノハ同ジヤウナ意味デゴザイマシタが、謹ンデ是等ノ演說
  ヲ本員ガ是ヲ聽キ是ヲ目ニシテ、其言ヲ聽キ其交ヲ讀ミマスルト、實ニ西園寺首相竝ニ
  政友會總裁ノ兩資格ヲ以テセラレダ演說ハ、抽象的ニ同ジ演說デ、唯辭令ヲ巧ミニ述
  ベラレタダケデ、事實ハ何ニモ捕マヘドコロガナイ、是ヲ政治方針ト云ヒマスレバ幾ド方
  針モナケレバ政策モ別ニナイ、併ナガラ其中ニ捉ヘベキトコロヲ考ヘタナラバ、〓國一致
  上下心ヲ同ジクシテ國事ヲ此多難ノ際ニ切拔ケテ、立派ナ日本帝國ニシタイト述ベラレ
  タ此精神ニ付イテハ、本員ハ滿腹ノ同意ヲ表スル、舉國一致ノ意味ヲ解釋シタナラバ、
  皆ゾロ〓〓同意ヲ表スルノ意味ニアラズ、國民ガ同情シテ政府ト共ニ、道理アルトコロ
  ノ國家ニ利益アルトコロヲ、心腹ヲ吐露シテ決定シタイ、協力シタイト云フノガ、舉國一
  致ノ誠意ノ表彰デアラウト思ッテ居リマス、本員ハ其手段ニ於テ西園寺內閣ノ提出セ
  ラレタ此案ニ絕對反對スル事實ニ於テ誠意ヲ表スルニ最モ良キ方法ト思ヒマス、之ヲ
  黨議トシテ本案ノタメ同意ヲ表スルト云フ人間ハ、舉國一致ヲ以テ誠意ヲ披瀝シ國
  民ト共ニ國事ヲ議サウト云フ內閣ノ豫望ニ背イタモノト思ヒマスカラ、矢張善意ヲ以テ
  反對ヲ表サナケレバナラヌト思フ、抑國民ガ痛ミヲ忍ンデ急卒ニ、而カモ一年二年ノ
  增稅ニ服シテ、一人ノ苦情モ述ベズ、此稅ヲ拂ッタト云フコトガ露國ノ强大ナル勢力ニ
  打勝ッタトコロノ大ナル助ケデアッタ、誠ニ其當時モ既ニ本員ハワレヲ評論シ、後トニ於テ
  モ事實已ム能ハザルモノ故ニ急遽之ヲ議定シタノデアリマス、其額一億六千万圓其內ニ
  含マシテ居ル稅目ハ巨多デゴザイマス此內ニ何人ガ見テモ愚カナル惡稅ト云フモノガ含
  マシテ此內ニイロ〓〓ゴザイマス、本員ガ見テ惡稅ト評シテモ、一方ノ方カラサウデナイト
  云ハルヽカ知リマセヌガ、何人ガ見マシテモ本當ニ笑フニ堪ヘヌト云フノハ、銀行ノ小切
  手ニ稅ヲ課シテ、一方ニハ貯金ヲ奬勵スルトコロノ金ヲ掛ケタ役人ノ働キガアルカト思フ
  ト、一方ニハ貯金ヲ成ルベクサセナイト云フ稅ヲ課シテ何ノ得ルトコロモナク國民ノ勤儉
  心ヲ破ッタノハ愚ナル稅ト苟モ識慮ノアル人ハ皆之ヲ批難スルノハ、其意味ニ於テ殆ド
  異論ガナイ、ソレカラ本員ガ當時モ既ニ評論シタル如ク、彼ノ玉繭ニ輸入稅ヲ課シタノ
  ハ、日本ニハ玉繭ガ澤山出來テ、品質ガ劣ルカラ、其劣ルモノヲ出シテ、日本ノ繭ノ善
  イモノヲ製出シテ、內ニ入レタモノニ付イテハ價ヲ十倍ニモ二十倍ニモナシ、紋縮緬ノ
  如キモノヲ製造シテ、國力ヲ增スト云フノデアルカラ、苟モ狂人ニアラザル限リハ、其惡稅
  タルコトニハ何人モ異論ガナイ、米ノ稅ノ如キ、本員ハ絕對ニ惡稅ナリト思ッテ居リマス
  ガ、一方ニ惡稅デナイト云フ人ガアリマスカラ、是ハ議論トシテ鬪ハス餘地ガアリマスガ、
  小切手ノ課稅ノ如キ、或ハ玉繭ニ輸入稅ヲ課スル如キハ、狂愚ノ稅ト擯斥シテ之ヲ舉
  ゲタノデ、是ノ如キモノガ含マレテ一億六千万圓ニナッテ居リマスカラ、此稅ハ急卒ニ思
  慮ナク議定シタモノデアル、併シナガラ戰爭ノ間ニハ餘義ナイト云ッテ、其痛ミヲ忍ビ、其不
  利ヲ忍ンデ居ッタ國民ノ精神ニ對シマシテハ本員ハ無限ノ尊敬ヲ拂ハナケレバナラヌト思ッ
  テ居リマスガ、然ラバ國民ハ是ノ如ク愚ナル稅ヲ含マレテ居ルトコロノ、而モ巨額ノ一億六
  千万ノ稅ニ堪ヘテ苦情ヲ言ハナカッタノハ何カト云ヘバ是ニハ二ツノ理由ガアリマス、ーハ
  國難ニ於テ金ヨリモ貴イ血ヲ流スノヲ惜マズ、己レガ愛スルトコロノ子弟ヲ戰場ニ送ッテ
  モ淚ヲ流サヾル忠勇ナル國民ハ、如何ニシテ其財產上ニ加ヘラレタル損害ニ對シテ苦情
  ヲ唱ヘル餘地ガアリマスカ國ノ安危ニ繫ッテハ己レノ身ヲ國ノタメニ捧ゲ己レノ愛スル子
  弟ヲ捧ゲルトコロノ國民ハ、愚ナル稅ト雖モ、唯愚ナルハ衆議院デ之ヲ議定シタル人ノ
  責任デアルトシテ、國民ハ致方ガナイト思ッテ刀心ンデ居ッタノデアラウト思ヒマス、モウ一ツ
  ハ何カト云ヘバ、臨時特別稅デアリマスガ、戰爭ガ止ンダラ平和克復ノ後一年ニシテ元
  ヘ戾ルノデアルカラ、限リアル稅ヲ忍ブノハ、痛シト雖モ尙忍ブダケノ勇氣ヲ出サナケレバナラ
  ヌト思ッテ、惡稅トシテ擯斥ハシテモ、此二ツノ理由カラ巨額ノ一億六千万圓ヲ忍ンダ
  ノデアリマス、此精神ニ向ッテ本員ハ無限ノ尊敬ヲ拂ハナケレバナラヌト思フ、政府モ勿
  論ノコト、國民ニ對シテ大ニ感謝ノ意ヲ表セラルベキ筈デアルト思ッテ居リマス、此精神ガ
  凝結シテ、有形ノ事物ニ於テハ武器モナカ〓〓彼ガ精巧デアリ、人數モ多イノデアル、
  一人トシテ見マシタナラバ體力モ彼ガ强クシテ且大ナルモノデアルガ、ソレニモ拘ハラズ、世
  界ガ見テ角力ニハナラヌト思ッテ居ッタトコロノ日露ノ戰爭ガ、彼ニ多大ノ損傷ヲ被ラシメ
  テ、首尾能ク强露ヲ擊退シタト云フノハ、此精神ガ無形ノ間ニ活動シタ結果デアッテ、決
  シテ有形的器械的力ニ依賴シテ、此目的ヲ遂ゲルコトハ出來ナイト思ヒマスカラ、戰後ノ
  經營ニ於テモ、此精神ヲ國民ニ發揚セシメ、瀰蔓セシメテ、此多難ノ時期ヲ切拔ケルノ
  ガ第一ノ著眼デアルト思ウテ居リマス、斯ウ考ヘマシタナラバ、無限ニ所謂簡單ナル四文
  字ヲ以テ、此信約ヲ破ッテ平和克復後一年ノ後ニハ此稅ガ止ムト思テ居ッタトコロノ國
  民ニ唯一片ノ法律ノ改正ヲ以テ、之ヲ無限ニ延バサントスルノデアルカ、而モ本員ハ委
  員會ニ於テ大臣竝ニ委員長ニ注意シタル如ク、國債整理基金法律案外一件ト云フノ
  デ、一時ニ之ヲ議サウトシタノニ、本員ハ反對ヲ致シタ、是ノ如キ重大ナル關係是ノ如キ
  國ノ永久ノ利害ニ關係スル國民ニ對スル敬重ノ觀念ヲ含ンデ居ルトコロノ、此議案ハ愼
  重ニ議シテ鄭重ニ扱フト一云フコトヲ本員ハ望ムタメニ、當時其委員長竝ニ委員會ノ定
  例ヲ破ッテモ確カニ愼重ニ議シタイト云フ注意ヲ與ヘマシタハ此譯デアリマス、斯ウ云フ
  譯デアルカラ、政府ガ輕率ニモ是ノ如キ改正ヲ加ヘテ、而モ本年十二月三十一日ニアラザ
  レバ消ヘナイトコロノ法律ヲ改メ、條件ヲ付ケシメントシテ、中ニ一ノ議會ヲ挿シデ置キナ
  ガラ、恰モ之ヲ無期限ニ延バサウト云フ法律ノ改メ方ノ形式ニ於テ、本員ハ第一ニ不
  同意ヲ表サナケレバナラヌト思フ、國民ノ希望ヲ破リ、竝ニ國民ニ對シテ禮儀ヲ破ルト
  云フコトニ付イテハ、國ニ取ッテ重大ナルコトデアルト思ヒマス、且顧ミテ見マスルト云フ
  ト、政友會ノ諸君ガ曾テ國民ニ親切ナル舉動ヲセラレタコトヲ本員ハ思ウテ居リマス、ソ
  レハ何デアルカト云フト、地租ニ關係致シマシテ、一千万圓ニ滿タザル租稅ヲ、戰爭ノ間ニ
  モ內閣ト往復致シテ、之ヲ減ジテ貰ヒタイト云フコトヲ論ジラレタコトガアリマシテ、本員ハ
  其算定ヲ與ヘテ見マスルト、此處デ簡約ニ申シテ見マスト、田畑三箇六ト云フモノヲ增
  スト云フ原案デアッタノヲ、六ヲ減ジマシテ三箇ニシタノデゴザイマス、此田畑三箇六ヲ增
  スノヲ三箇ニ引上ゲタノハ、其金額ハドノ位カト申シマスト、七百五十万圓ニ過ギナイ、
  唯一箇所地租ト云フ中ノ宅地稅-ノモノヲ取除ケタ田畑ダケデ僅ノ所デ金額カラ
  見マシタラ七百三十万圓ニ過ギナイモノデアルガ、矢張交涉委員ヲ設ケテ、當時其衝ニ
  當ッテ桂首相ト折衝サレタノハ、唯今ノ內務大臣原君、司法大臣松田君、此兩君ガ
  アッテ、是マデ匆卒ノ間ニ注意ヲ拂ッテ、而モ戰時匆卒ノ間ニ注意ヲ拂ッタ、此諸君ガ
  一度內閣ニ這入ラレタカラ、一億六千万圓ヲ一筆ニ抹殺シテ國民ノ希望ヲ破リ、尙是
  ノ如キ略式ニ依シテ無限ノモノニ改メヤウト云云コトニ同意サレタノハ、本員大イニ解セヌ
  トコロデアル(拍手起ル)之ヲ惡ルク評シマスレバ、位置ニ依ッテ節ヲ變ヘルノデアッテ、紳
  士タルモノハ果シテ是ノ如キモノデアルカ、黨人ノ信用ハ是ノ如クニシテ國民ノ間ニ存
  立セシムルコトヲ得ルカト評スルモノガアッテモ、本員ハ之ヲ辯解スルコトガ出來ヌト思フ
  (拍手起ル)此事ニ付イテハ政友會ノ責任ガ最モ重イト本員ハ反覆之ヲ評シマス、今
  二三行ノ法文ニ依ッテ、之ヲ無制限ニ致シマスコトニ付イテハ、大イニ考ヘナケレバナラ
  ヌ無論國力ト云フコトニ付イテハ、有形ノ事物ヲ發達セシムルノモ肝要デアリマスケレ
  ドモ、國民ヲシテ政府ヲ信用シテ、政府ニ同情セシムルト云フコトガ、根柢ノ國力發
  展ノ必要條件ト思ヒマス、食ヲ足シ兵ヲ足シ民之ヲ信ズ、〓ヲ棄テ兵ヲ棄ツルモ民信
  ナクンバ立タズト云フノハ、古人ノ格言デアルガ、少ナクモ東洋ノ倫理東洋ノ道德ヲ維持
  シテ居ル、竝ニ黨人ト國家ノ關係ガ是ノ如キ基礎ノ上ニ立テラレテ居ルノガ日本帝
  國ノ組織デアルノニ、信用ナキコトヲ揭ゲルノハ輕薄ノ極ト思ヒマスカラ、國民ノタメニ確
  約シテ、政府モ一年後ニハ之ヲ消滅セシメ衆議院モ是ニ奧書シテ、一年後ニハ消滅
  セシメルト言ウタ此法律ヲ、今匆卒ノ間ニ尙後トニ一囘ノ議會ヲ控ヘテ居リナガラ、是ヲ
  無限ニ延バスト云フニ至ッテハ本員民ノ信ヲ失フトコロノ舉動デアルト思ヒマス、尙國民
  ノ希望ヲ破ル〓ニ於テハ、大イニ前內閣ヨリ今内閣ニ亙ル云爲ヲ論ジナケレバナラヌト
  思フ、國民ハ此二囘ノ戰事稅ニ服從シテ、苦情ナク之ヲ拂ッテ居リマス、其事ノ、前ニ
  モ申述ベタ通、戰爭ガ終レバ是ハ止ムモノダト云フ希望ニ繫カレテ居ッタ然ラバナゼ戰爭
  ガ終ッタナラバ、是ガ止ムデアラウト考ヘテ居ッタカト云フニ、ソレハ他ノ事デハナイ、連戰
  連勝我國民ノ忠勇ナル子弟ヲ、驅ッテ戰場ニ赴カシメ、一囘モ敗レヲ取ラナイ、陸海軍
  ノ働キニ依ッテ必ズ償金ヲ得テ、戰時ニ受ケタル損害ヲ辨償シ得テ餘リアル、其償金ニ
  依シテ國債モ還デアラウ、戰爭ノ後ノ經營モ之ニ依ッテ出來ルデアラウ、年金ヤ遺族ノ手
  當モ此金デ出來ルデアラウカト斯ウ國民ハ思ッテ居ッタ、サウスレバ此一億六千万ハ自然
  ニ消滅シテモ、强テ經濟上政府ノ理財上ニ變動ヲ起サヌト思ッタ、此希望ハ國民ノ空
  想デアッテ、國民ガ斯樣ニ思ッタノハ惡ルイノデアルカ、善イノデアルカ、是ハ別問題トシ
  テ、唯國民ガ斯樣ニ思ッタノミデハナイ、局ニ當ル政府モ亦左樣ニ思ッテ居ッタノデアル、
  私ハ如何ニシテ戰後ニ殘ラズノモノヲ消滅シテ差支ナイト云フ法律ヲ出スコトガ出來ル
  カ、衆議院モ矢張其豫期ガアッタレバコソ、戰後一年ニシテ此法律ヲ止メルト云フコトヲ
  確言シテ、之ヲ議決シタノデアリマスカラ、唯直接國民ガ左樣ニ思ッタバカリデナイ、局つ
  當ル政府モ直接ニ左樣ニ思ッテ居ッタ衆議院ノ議員モ貴族院ノ議院モ、左樣ニ思ッテ
  居ッタ唯日本ノ國民ガ左樣ニ思ッタバカリデイ、丁度外交折衝ニ當ッテ居ル對手國ノ「ウ
  井ッテ」ニ於テモ、矢張サウ思ッテ居ッタノデアル、又「ポーツマウス」ニ集ッタ諸外國ノ新聞
  記者通信員モ、亞米利加人ノ多數モ左樣ニ思ッテ居ッタ、償金ナシニ此平和條約ハ結
  バレマイト思ッタ、所ガ其條約ガ結バレテ見ルト償金ト云フモノガ一文モナイ、「ウ井ッテ」ガ
  一哥克モ拂ハズシテ、平和ガ成立ッタリト云ッテ、【躍リ上ッテ喜ンデ、其當時集ッテ居ッタ
  朋友通信員等三言ッタト一云フコトガ明記サレテアルトコロヲ見マスルト、意外ニモ償金ヲ
  拂ハズニ片付イテ、誠ニ良イ手際デアッタト喜ブノニ引換ヘテ、コチラハ意外ニモ確カニ
  取リ得ベキモノト信ジテ居ッタ、其豫想ガ破レタ、彼ノ豫想モ自然ニ破レ、我ノ豫想モ
  破レタト云フタナラバ、其責ガ誰ニアルカト云フト、局ニ當ル人ガ國民ノ希ウ王ヲ破ッタノミ
  ナラズ、天下ノ人ガ想像シテ居ッタトコロノ想像ヨリモ、數等低キトコロノ不手際ノ條約
  ヲ結ンダ結果、今日諸君ト共ニ戰時稅ヲ繼續シナケレバナラヌトカ、何トカ此議論ヲ要ス
  ル形勢ヲ現出スルニ至ッタナラバ前ニハ國民ガ喜ンデ國ノ難ニ應ジテ租稅ヲ拂ウタノハ、政
  治家ガ感謝シナケレバナラヌシ、日本ガ不手際デ、更ニ平和克復ノ後國民ニ重キ負擔ヲ
  與ヘタト云フコトヲ局ニ當ル人ハ慚謝シナケレバナラヌコトデアラウト思フ然ルニ平然ト
  シテ之ヲ出シテ、當然拂フベキモノデアルト云フガ如キ、進退ヲ爲スニ至ッテハ本員ハ國民
  ニ代ッテ其不當ヲ鳴ラサヾルヲ得ヌト思フ、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)併ナガラ、是ハ前
  內閣ノ事デ、今內閣ハ與ラヌト云ヒマスガ、何レノ會社デモ前重役ノヤッタ失策ニ付イ
  テ、直接ノ責任ガ無クトモ、相對シテ居ル者ニ向ッテハ、相當ノ禮儀ヲ拂フコトハ少シモ
  ヒドクナイコトデアル、是ガアレバコツ重役ニ向ッテ株主ガ尊敬ヲ拂ブノデアル、私ハ之ヲ扱
  フニ付イテ、爲シ得ベキダケ信用ヲ維持スルトコロノ形式方法ヲ執ッテ、其最モ忌ムベキ租
  稅ヲ除イテ、之ヲ後來ニ引繼グト云フコトハ、誠ニ穩當ナコトデアッテ、決シテ難キヲ政府
  ニ責ムル要求デハナイト思ッテ居リマス、然ルニ此戰時稅ヲ容易ニ今囘ノ議場ニ出サレタ
  ニ付イテハ本員ハ大イニ不服デアルノデ、容易ニ之ヲ議決スルコトヽナッタナラバ、非常ニ
  後來ノ事ガ心配ニ堪ヘヌ、イツデモ政府ト云フモノガ、約束ニ背クモノデアル、國政ノ變
  化、時勢ノ變遷ト云フ、此簡單ナル文字ガアレバ、如何ナル約束モ常ニ破ラレルト云フコ
  トニナレバ、丁度唯今議決ニナリマシタトコロノ彼ノ減債基金ノ事モ、此年限ヲ極メテ
  年ニ一億一千万圓ヅヽヲ取除ケテ置イテ、其中カラ二千万圓ヲ拂フト云フ約束モ、時
  勢ノ變遷、政局ノ變化ニ依ヶテ破ラレルト云フコトニナレバ、是亦不信用ノ結果、折角可
  決セラレテ吾〓ガ、之ヲ冷評ヲ以テ迎ヘマシタケレドモ、歡迎セラレタ諸君ノ盡力ガ水ノ泡
  ニ歸シタト、國民ニ看做サレルデアラウト私ハ思フ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)斯ウ考ヘテ
  見マスルト、之ヲ大イニ苦慮シテ已ムヲ得ズシテ增スト云フコトノ事實ヲ國民ニ示シタイノ
  デアル、古人ガ民ヲ見ル傷メルガ如シト言フタノハ此事デアラウト思フ、暖衣飽食水ノ人ガ
  僅カノ租稅ガ上ッタカラト云ッテ、生活ニ響クモノデナイト想像シテ居ルノデアリマセウケレ
  ドモ、今日彼ノ東北ノ饑饉地方ノ如キハ、己レノ愛スル子弟ヲ戰場ニ送ッテ、其歸ルヲ
  待ツト云フコトハ、家族ガ一日千秋ノ思マ待ッテ居ルデゴザイマセウケレドモ、一人ノ人ガ
  歸ッテ家ニ來ルト云フト、一人ノ口數ガ殖エルカラ戰場カラ早ク歸ッテ來ラレテハ困ルト云
  フコトヲ、饑饉地方ノ者ガ訴ヘテ居ルト云フコトヲ聞イテ居リマス、是ハ天災ニ遭ウテ饑
  饉ニ際會シタノデアリマスカラ、此苦ヲ訴ヘル者ガアルノデアリマスケレドモ、多數ノ人ニ
  至ッテハ、何レノ地方カ然ラザラン、租稅ヲ議スルニ當ッテハ、大ニ是等ノ事ハ考ヘナケレバ
  ナラヌト思フノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)政府ガ初メヨリ斯ノ如キ考ヲ持ッテ國民
  ニ臨マレタナラバ、國民ハ此政府ニ向ッテ、大ニ同情ヲ拂フデアラウト思フ、過日西園寺
  總裁ガ大會ニ於テ演說ヲサレタ如ク此壇ニ登ッテ、演說ヲサレタ、簡單ニシテ無味ナルト
  コロノ、捉ヘドコロノナイ政治方針トシテ見ルベカラザル此演說ノ中ヨリ捉ヘテ見レ
  バ誠意ヲ披瀝シテ一致スルト云フ〓ニ落著スルデアラウト思ヒマス、此精神ガ能ク發展
  シタナラバ、國ノ總テノ事ガ平和ニ調和セラレテ、能ク運ブデアラウト思フ、抑〓西園寺侯ノ
  桂伯ニ異ルトコロノモノハ何ンデアルカト云ヘバ、西園寺侯ノ桂伯ニ異ルトコロハ、西園寺
  侯ガ平素立憲政治ヲ重ンジ、自由ヲ尊重シ、國民ニ對シテ同情ヲ持ツト云フコトニアル、
  是ガ必ズ桂伯ノ爲ストコロト異ルデアラウト本員ハ思ッテ居ッタ、現內閣ガ前內閣ト異ル
  トコロハ、何ンデアルカト云ヘバ立憲主義ヲ謹ンデ守ルト言ハレタノデアル、之ガ今ノ内
  閣ニ向ッテ一〓希望ヲ屬シテ居ッタノデアリマスケレドモ、果シテ此言語ノ實ニセラルヽヤ
  否ヤト云フコトハ、此案ノ形式竝ニ提出方ニ於テ、本員ハ吟味スベキトコロノ一ノ試驗
  場デアラウト思ッタ(「ヒヤ」ト呼フ者アリ)既ニ立憲主義ヲ謹遵スル上ハ、立憲主義
  ノ財政ト云フコトハ、他ノ事デナイ、國ヲ經營スルニ必要ナル事物ヲ確定シテ、之ヲ必要
  ナル費用トシテ、國民ガドウシテモ拂ハナケレバナラヌト云フ義務ヲ負フヤウニシナケレバナ
  ラヌ、先ヅ其事ガ必要デアルカ不必要デアルカト云フコトヲ確定シテ、ソレガ確定セラレタ
  以上ハ、如何ナル痛ミヲ忍ンデモ、租稅ヲ拂ハナケレバナラヌト云フコトニナルノデアル、事
  實ヲ確定シテ、出スヲ量ッテ入ルヲ爲スト云フ、所謂專制政體ノ入ルヲ量ッテ出ダスヲ爲
  スト云フコトノ反對ノ理財ノ計畫、卽チ事實ヲ先ヅ定メテ、サウシテ是ニ應ズルトコロノ
  租稅ヲ拂ハシムルト云フノガ、立憲主義ノ財政ノ根柢原則デアラウト私ハ思ッテ居リマ
  ス、然ルニ此繼續案ハ果シテ此原則ヲ適用シテ居ルヤ〓百ヤトニ云フニ、是ハ非立憲的ノ
  財政計畫デアルト云フコトヲ、此壇ヨリ明言致シマス、ソレハナゼカト云ヘバ、西園寺首
  相竝ニ陸海ノ兩相ガ、委員會ニ於テ未ダ戰後ノ經營ハ完カラヌ、凱旋兵士ハ未ダ國ニ
  到著セザルニ當ッテ、目前ノ事ダケヲ前內閣カラ引繼イダノデアルカラシテ、後ノ事ハ追
  テ出ス、今日ハ〓究ノ時代デアル、考案ノ時代デアルト云フタナラバ、永久ニ引繼グ事務
  ト云フモノハ、未ダ確定セラレヌノデアル、抑此臨時特別稅ヲ繼續スル必要ノ起ッタノ
  ハ何ンデアルカト云ヘバ、戰ニ依タテ國ノ有樣ガ變ジタカラ變ニ應ズルトコロノ新シキ經營
  ガ必要ガアルカラ、新シキ租稅ヲ此經營ノタメニ充テルト云フ事柄カラ、之ヲ必要トスル
  ニ至ッタノデゴザイマセウ、唯今本員ノ述ベタル如キ事實ヲ確定シテ國民ガ感服シテ之ニ
  應ズルトコロノ費用ヲ出サナケレバナラヌト云フ精神ヲ表セシムルニハ、先ヅ事實ヲ確定シ
  テ之ニ應ズルトコロノ費用ヲ要求セラルヽノガ、立憲主義ヲ謹遵セラルヽトコロノ內閣ノ
  遣方デアラウト私ハ思ッテ居ル、然ルニサウデナイ事實ハ今考案中デアル、〓究中デアル
  ガ、租稅ハマダ償ハナイカニ、保險ヲ付ケテ一度之ヲ國民ニ還スト云フコトニナッタナラバ、
  再ビ之ヲ取ルニ骨ガ折レルカラ、先ヅ取ルモノハ取ルト云フ意味合ノ租稅徵收方法形
  式ト云フモノデ、立憲的財政策ノ容スベカラザル、租稅ノ徵收要求方法デアルト本員ハ
  思フ、何故ニ民ヲ信ゼザルカ骨モ獻ズレハ血モ獻ズルト云フトコロノ國民ニ對シテ、何故
  ニ必要ナル政費ヲ保險ヲ付ケテ置カナケレバアブナイ、面倒デアルト云フノデアルガ、己レ民
  ヲ信セズシテ、民ヲシテ內閣ヲ信ゼシムルト云フノハ、抑〓無理ナル要求デアルマイカト本
  員ハ思フノデアリマス斯ウ云フヤウナ精神ヲ以テ、戰役ノ經營ヲ爲スニ當ッテハ、本員ハ
  誠意ノ表彰ハ疑フベキコトデアッテ、口ニ立憲的ノ主義ヲ唱ヘテモ、其精神ニ於テハ前內
  閣ト何ノ異ナル所ハナイト云フ不幸ナル結論ヲ與フルト思ヒマス、殊ニ多年政黨ヲ發
  展セシメルコトニ熱心ナル所ノ政友會ノ諸氏ハ、何故ニ此內閣ニ對シテ立憲的ノ監
  督ヲシナイカ、又此代表者トシテ内閣ニ入ラレタ原君ト云ヒ、松田君ト云ヒ、何故ニ立
  義ヲ內閣ニ注文シテ、政治家タルノ職分ヲ盡サレヌノデアルカト云フコトヲ疑フノデ
  アル、漫然トシテ之ニ同意ヲシテ、入用ガアル時ニハイツデモ稅ヲ掛ケテ置クト云フノデ
  ハ、國民ハ決シテ信任セザルコトヽ思フ、斯ノ如ク論ジマスレバ本員ハ唯徒ニ難キヲ責
  メテ、議事ノ進行ヲ止メ、法律ノ前途ニ妨ヲ與フル者ノ如クニ誤解シテ居ル人モアルガ、
  本員ハ決シテ難キヲ責ムル者デハナイ、御承知ノ通リ平和克復ノ一年間ハ、此法律ハ
  成立ッテ居ルカラ、會計年度ハ來年ノ三月三十一日デアリ、修正ノ年限ハ本年ノ十二
  月三十一日マデアリマスカラ、十二月三十一日マデハ法律ノ結果トシテ租稅ハ取レルノ
  デアル其額ハドノ位カト云ヘバ、來年ノ三月三十一日ノ會計年度ニ持ッテ往ケバ一億
  六千万デアリマス、サウシテ十二月三十一日マデ持ッテ往クト、一億五千万取レルト云フ
  コトヲ當局者ハ答ヘタ、ハッキリ一億五千万デハナイガ〓略サウナル、サウスルト一千万
  圓ノ差デアル一千万圓ノ差デアレバ、今之ヲ議定シナケレバ政務ニ障リヲ生ズルト云
  フコトハ言ヘルモノデハナイ、本年十二月三十一日マデニ取レルモノハ是ダケノ額デアッ
  テ、其必要ナルモノハ臨時議會ヲ開キ、或ハ通常議會ヲ繰上ゲテ開クトカ云フ手段モ取
  レルデアラウ、戰爭ノ場合ニハ急遽ニ稅率ヲ定メタコトモアルノダカラ、政務上ニ議定セ
  シムルガ必要デアルト云ヘバ、本年十月マデニ臨時議會ヲ開キ、或ハ繰上ゲテ通常議會
  ヲ開クマデニ、十分財政ノ調査ヲ仕遂ゲ、相當ナル社會ノ輿論ニ從ヒ、要求ニ應ズ
  ル改正法案ヲ出シタナラバ、議會ハ此既ニ定マレル費用ハ出サヾルベカラズ、要求通リ
  ノモノヲ出サナケレバナラヌト云フ國民ノ意ヲ體シテ、議スルコトモ出來ルノデアル、何故
  ニ此調査ガ出來ナイノデアルカ、何故ニ當局者ニ於テハ此調査ハ出來ヌト云フノテアル
  カ、戰爭ノ場合ニハ急卒ノ間ニ二囘マデモ議會ヲ開イテ、二囘ノ增稅ヲ出シタ、二囘
  開クコトノ出來ル政府ガ、一年ノ猶豫ガアルノニ、此改正ノ法案ヲ立テルコトガ出來ナ
  イト云フハ、蓋シ爲ス能ハザルニアラズ、爲サヾルナリト云フ評ヲシナケレバナラヌ、之ヲ何
  故ニ讓員諸君ハ餘義ナイコトデアルカラ、之ニ向ッテ同意ヲシナケレバナラヌト、斯ウ云フ
  事ヲ言ハレルノデアルカ、本員ハ前ニ例ヲ舉ゲテ、何人モ異論ナキ惡稅ノ一二ヲ舉ゲマシ
  タガ、其他之ニ含マレテ居ルモノハ澤山アル、一日モ早ク營業ノ安心ヲ得、一日モ早ク
  良民ノ職分ヲ盡シテ、國力ヲ養フコトニ勉メタイト思フテ居ルモノガ、此稅ノタメニ妨ゲ
  ラレテ居ル者ガ澤山アル、取ルトキニハ急遽ニ取ルケレドモ、痛ミハ一年ドコロデハナイ、二
  年ノ間調査ノ時限ガ掛ルト云ヒナガラ二年ノ間痛ヲ忍バセルト云フコトハ、實ニ當局者
  怠慢ノ責、眞ニ遁ルベカラズデアル、是レ國民ニ對シテ不親切ナル者ト言ハナケレバナラ
  ヌト思フノデアル、諸君ハ何ノタメニ議會ニ出デラレタノデアルカ、國民ノ意思ヲ代表ス
  ル職分デアッテ、何故ニ當局者ニ對シテ忠言ノ責ヲ盡サヌノデアルカ、(「無禮ダゾ」「何
  ガ無禮ダ政友會顏色アルカ」ト呼フ者アリ)是ノ如キモノデアル、決シテ私ハ無禮ダトハ思
  ハ〓 々決シテ「オブストラクシヨン」ヲー妨碍ヲ政務ノ進行ニ與フル者デハナイ、事實ニ
  於テモ數ニ於テモ、著々議論スベキ論據ガアルノデアル、ソレナラバ今年十二月三十一
  日ニ於テ、修正ノ方ノ期限ハ盡キテシマッテ、三箇月缺ケテアッテ、一千万圓ノ差ガアルト云
  フガ、今マデノ經歷ニ依レバ幸ニシテ豫定シタ額ヨリ多クノ收入ガアルノデ、是ハ甚ダ御
  國ノタメニ賀スベキコトデ、大凡一千万圓マデニハ至ルマイト思フ、六七百万圓ノ不足
  ヲ生ズルノ算定ニナラウト思フ、斯ウ云フヤウナ場合ニ當局者ハドウ云フコトヲシタカ、急
  要ノトキニハ借入ヲシタコトモアリ、大藏證券ノ發行シタコトモアル、其高ハ一千万圓位
  デハナイ、六七百万ニ止マッタモノデハナイ、モット多ク出シテ居ルノデアル、愈く十月ニ
  臨時議會ヲ開イテ改正稅率ヲ議シ、十二月ノ通常議會マデ待ツトシテモ、議決セラレ
  ヌデ、來年ノ一月ニナッタトシテモ僅ニ大藏省證券ヲ發行スレバ之ヲ以テ其不足ヲ補フ
  ニ、決シテ先刻申シタ六七百万圓ニハ上ラヌト思フ、是亦爲シ能ハザルニアラズ爲サヾ
  ルナリト思フ、其精神ヲ分析スレバ、一旦議會ノ承諾ヲ得テ租稅ヲ議定セシメタ上ハ、
  一度之ヲ消滅セシメテ、再ビ之ヲ謀リ出スト云フハ、誠ニ手數デアリ、且其時ハナカノ
  反對ガ强クテ出來マイト云フ懸念カラ、斯ノ如キ簡略ナル形式ヲ取ラレテ、先ダッテ要求
  セラルヽト云フノハ、決シテ私ノ邪推ニアラズシテ、議論ヲ詰メレバ左樣ニナルノデアルカラ、
  六七百万圓ノタメニ、五千万ノ忠義ノ國民ニ向ッテ、之ヲ訴ヘルト云フコトハ忍ブ能ハザ
  ルコトデアル、是レ卽チ國ノタメ三不利益デアルト思フノデアル、斯ノ如キ手續ハ取ラ
  レヌコトヲ本員ハ望ムノデアル、立憲主義ニ於テモ國民ニ於テモ、戰時特別稅ヲ議定
  セシ當時ノ形勢ニ徵シテ見テモ、約束ハ約束デ履ンデ、新ナル法律ハ新ニ出シ、飽迄國
  民ヲ感服セシメテ、政務ノ費用ヲ徵收シテヤラレルノガ何ノ妨ガアラウ、本員ハ決シテ政
  務ノ上ニ已ムベカラザル費用デアルナラバ、今日反對ヲスルニ拘ラズ進ンデ贊成ノ先鋒ト
  ナラウト思フノデアル、斯ノ如キ事ハ明言シテ差支ナイ、本員ハ違約スル必要ハ後來ニ
  於テ萬無イト思ヒマス、然ルニ事爰ニ出ズシテ、國民ニ信用セシムルトキニ-國民ヨリ
  子弟ヲ取ッテ之ヲ戰場ニ送リ、一タビ事ガ出來上レバ斯ノ如キ舉ニ出ルトコロノ內閣ヲ、國
  民ハ如何ニシテ信用スルコトガ出來ルカ、舉國一致ヲ要求セラレタ根柢ノ精神ハ、斯ノ
  如キ手續ニ依ッテ破壞セラルヽト思フノデアル、立憲的主義ヲ標榜セラレタ所ノ內閣モ、
  忽チニシテ此主義ハ傷ケラレルト思フ、本員ハ善意ヲ以テ內閣ヲ迎フル者デアリ、政黨
  ノ發達ヲ希望スルガタメニ、内閣ニ緣故アル政黨諸公ニ忠告ヲ呈サナケレバナラヌ、斷然
  之ヲ否決シテ、正當ノ處置ニ出デラルコトハ、朋友ニ善ヲ勸ムルト云フ筆法カラ、男子
  ラシキ舉動ニ出ルコトヲ期シテ之ヲ申スノデアル西園寺公ハ誠意ヲ披瀝シテ舉國一致
  ヲ求メ、又立憲主義ニ依ッテ行動スルト言ハレナガラ、爲ス所若シ之ニ反スルナラバ、恰
  モ破戒僧ノ空念佛ノ如ク、輿論ノ非難ハ內閣ニ向ッテ來ルト思ヒマスカラ、本員ハ內閣
  ノタメニ計リ、又内閣ニ緣故アル政黨諸君ノタメニ計リテ、此案ノ否決ヲ熱心ニ主張致
  シ·ハ
  〔元田肇君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=55

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• 056・元田肇君

  ○元田肇君　諸君、私ハ本案ニ贊成スルモノデアリマス、贊成ノ意ヲ述ベルコトハ多々
  ゴザイマスケレドモ、私ハ島田三郞君ノ如ク眞ニ辯ニ富ミマセヌ故ニ、骨ダケヲ述ベテ後ト
  ハ諸君ノ御諒察ヲ仰ギタイト思ヒマス、尙茲ニ一言述ベテ置キマスルガ、本案ヲ贊成スル
  ノヲ平然トシテ贊成スルノデハアリマセヌ、如何ニモ戰爭中ノ非常特別稅デアリマスカラ、
  法律ノ規定通ニ、戰爭ガ濟ンダ翌年ニハ之ヲ止メルコトデナケレバナラヌ、サウアリタイノ
  デアリマスデアリマスガ如何セン今日ノ時局ニ於テ政府案ニ贊成シナケレバナラヌ必要ヲ
  認メタノハ平然デハアリマセヌガ、又之ニ贊成ヲセザルヲ得ザル必要ヲ認メテ贊成ヲ致スノ
  デアリマス島田三郞君ノ御演說ヲ駁シナガラ私ハ自分ノ意見ヲ貫クコトガ出來ルダラウ
  ト思フ、島田三郞君ノ御議論ハ、非常ニ長ク御述ベニナッタコトデアリマスガ、如何ニモ辭
  令ニ巧ミノ辯論デハアリマスガ、其骨ハ何處ニアルカ分ラヌ、島田三郞君ハ頻リニ戰爭ノ翌
  年ニ止メベキモノガ、償金ガ取レナカッタノハ何タル不都合カト云フヤウナ、御說モ御述ベ
  ニナッタガ、是ハ現內閣ガ提出スル法案ニ向ッテ發言セラルベキモノデハナイト思フ苟モ立
  憲政治ノ何物タルヲ御心得ニナッタナラバ此席ニ於テサウ云フコトハアルベカラザルコト
  ト思フ、(「ノウ〓〓」「ヒヤノ」ノ聲交〓起ル)又其他種々ナルコトヲ言ハレタケレドモ、
  要スルニ此稅ト云フモノガ必要ガアルカナイカト云フコトニ付イテハ少シモ御述ベニナッテ
  居ラヌト思フ、私ハ玆ニ贊成シナケレバナラヌコトヲ申述ベマスガ、國家ハ一日モ活動ナ
  カルベカラズ、活動スルニ付イテハ必要ノ費用ガ要ル、其費用ガアルカナイカト云フコト
  ガ、贊否ノ別ルヽ所以ト思フ、今日ノ豫算ヲ御覽ニナレバ分リマスガ(「ノウ〓〓」ト呼
  フ者アリ)進步黨ノ諸君ニ御願ヲ致シマスルガ、暫ク御〓聽ヲ煩シタイト思ヒマス、(「ノウ
  ノウ」「謹聽々々」ト呼フ者アリ)今日ノ歲出ト云フモノハ何程ニナッテ居ルカ、經常ノ歲
  出ガ二億何千万圓デ、歲入ガ幾ラ、是ハ私ガ玆ニ數字ヲ一々申上ゲナクモ豫算ニ現
  ハレテ居ルノデ、非常特別稅ヲ除イテ、經常歲入ニ屬スル分ヲ以テ、總テ諸般ノ經費
  ノ支出ガ出來ルカ、是ハ出來ナイコトハ斷然明カデアル、既ニ經費ヲ支辨スルニ足ラナイ、
  而モ先刻マデ御反對ノ御議論ガアッタケレドモ、大多數ヲ以テ可決シタル基金ト云フモ
  ノハ、一億一千万圓ヅヽ据置カナケレバナラヌト云フコトヲ本院ガ認メタル以上ハ、如
  何ニ反對ノ御方ガ「ノウ」ヲ仰シヤリタクモ、可決シタル以上ハ、此極ッテ居ル經常臨時
  ノ歲出ノ外ニ、一億一千万圓ト云フ金ヲ置カナケレバナラヌト云フコトハ明カニナッテ居ル
  ノデアルカラ、之ニ向ッテ財源ガナケレバナラヌト島田三郞君ハ喋々述ベラレタガ、如何ナ
  ル財源ヲ以テ之ニ充ツルト云フノデアルカ、支出ハ幾ラアルカ、其支出ニ對スル財源ハ何デ
  アルカト云フコトニ至ッテハ、島田三郞君ノ論據ハ甚ダ薄弱デ、モ之ニ對シテ言ハヌノデ
  アル、此〓ニ付イテ進步黨ノ諸君ハ如何ニ辯論ヲ爲サルカ、委員會ノ修正案ヲ承ッタ
  トコロガ今年ノ暮デシマフト、三十九年度一杯ニスルト、不足ガ一千万圓デアルカラ、修
  正案ヲ提出シテ明治四十年三月三十一日マデ、卽チ會計年度一杯ト云フコトニスル、現
  ニ此議場ニモ配ッテアル、成程之ヲ出セバ一年度ダケノ歲計ハ相合スルヤウニナル、是
  一年度ダケニシテモ進步黨ノ諸君ハ歳出ト歲入ノ比較ヲ取ッテ御出シニナッタノデ、眞ニ
  敬服ニ堪ヘナイガ、之ヲ敬服スルト同時ニ、島田君ノ辯論ハ無責任デアルト云フコトハ
  明カデアラウト思フ、(「ヒヤ〓〓」又ハ「進步黨トハ何ノコトダ」ト呼フ者アリ)ソコデ進步
  黨ノ諸君ト申シテ惡ルケレバ、角田君デアリマシタカ、發言ガアリマシタガ、是ヲ三月三
  十一日マデト云フコトニ延ベルノハ歲出入ノ權衡ヲ得ルマデニセラレタノハ明カデアル、既
  ニ是ダケヲ御認メニナッタナラバ、私ヨリ諸君ノ方ガ豫算ニ詳シイ御方デアルガ、此中ノ
  非常特別稅ヲ廢シテハ基金ヲ置クコトモ出來ズ、計算モ立タヌト云フコトハ御承知デア
  ラウト思フ何ニモ一年度-三箇月間延バシテ足リルモノデハナイ、二年三年ニ亙ッ
  テ計算ノ足リヌコトハ、數字ノ上ニ明カデアル、既ニ明カデアルナラバ、進步黨ノ諸君ハ
  僅カ三箇月間ヲ延ベルト云フ道理ニ服シナガラ、モウ少シ進ンデナゼ之ヲ永年ニスルコト
  ニ同意シナイノデアルカ、(「ノウノ」「ヒヤ〓〓」ノ聲起ル)私ノ說明ハ諸君ニ取ッテ御
  分リ惡イカ知ラヌガ、論理トシテハ明カデアルト思フ、ソコテ第二ニ來ルベキ問題ハ、島田
  三郞君モ言ハレタ如ク、成程非常ノ惡稅ガアル、是ハ本員モ甚ダ立派ナル稅法トハ信
  ジテ居ラヌ、居ラヌガ、之ヲ修正スル必要ガアルニ付イテハ玆ニ委員會ニ於テ政府ニ確
  メテアルコトガアル政府ハ永久無限ニスルノデアルカドウカ、是ニ付イテ大藏大臣ハ政
  府ヲ代表シテ曰ク、二箇年間ニ調査會ヲ特ニ設ケテ、廣ク朝野ノ人士ヲ集メテ、稅法
  ノ改正ヲ計ル其改正ヲ計ッテ二箇年間ニ惡稅ヲ廢棄シ、改正スル積デアルト明言セラレ
  タノデアリマス、二箇年間ニ於テ此事ガ出來ル譯デアル、シテ見ルト一部ノ方ガ之ヲ三月
  三十一日マデ延ベル、後トノ一年二年ハ延ベラレヌト云フ論據ガ立ッテアラウガ、其論
  據ハ少シモ立タヌト思フ、結局致シマスニ、多辯ハ致シマセヌ、是ハ表面ハ永久ノ如クシ
  テ置イテ、調査會ヲ設ケテ、漸次ニ改廢シテ往ク、是カラ先キ政府カラ案ヲ出シテ改正
  ヲシテ往クシテ見レバ詰リ表ト裏ダケノ違ヒデ、少シモ違ハナイ、勿論一部ノ方ハ現政
  府ヲ信用セヌ御方デ、信用ヲセヌト、云ヘバ何等ノ良案デモ御信用ニナラヌカモ知レヌ
  ガ、苟モ虛心坦懷良心ニ訴ヘテ御考ヘニナッタナラバ、調査會ヲ起シテ二年間ニ惡稅
  ヲ修正シテ、非常特別稅ノ性質ヲ失ハシムルト云フコトデアレバ、少シモ異論ハ無イコ
  トデアルト思フ、尙諸君ニ一言スルコトガアル、既ニ本院ガ基金法ト云フモノヲ御認メニ
  ちチ、反對論者ハ、國民ノ意志ヲ代表スルト絕呌サレル諸君モアリマシタガ、如何セン
  國民ヲ代表スル我議院ニ於テ、大多數ハ一部ノ人ノ意見ト違ッテ基金ヲ置クハ至當ナ
  リト云フ決定ニナッテ居ル、(「ヒヤ〓〓」「ノウノ」ノ聲起ル)此決定ヲ是認セラレタ譯
  ハ先キニ種々之ヲ論ゼラレタノデ分ッテ居ルガ、是ハ置クコトガ第一ニ安心ヲ與ヘル、內外
  ノ市場經濟界ヲ圓滿ニ往カシムルニ必要デアル經濟界ニ安心ヲ與ヘル條件デ基金ヲ置
  クコトニナッタナラバ基金ハ置カレタケレドモ、一年デ非常特別稅ヲ廢シテシマフト云フ
  コトニナルト、是ニ充ツルモノハ何レニモ無イコトニナル、ドウモ唯一言ノ言葉ヲ以テ國民
  ニ安心ヲセシムルト云フコトハ出來ヌコトデアラウト思フ、基金ヲ置ク必要ガアルナラバ、
  此金ハ確カニ這入ルト云フトコロノ稅源ヲ備ヘテ置クト云フコトガ、益〓大切ナ事ト思フ
  ノデアリマス(「ノウ/」ト呼フ者アリ)諸君ガ「ノウ」ト云ッテモ本員ハサウ云フ理論ヲ認メ
  テ、既ニ基金問題ヲ可決シテ居ルノデアル、故ニ私ハ以上ノ理由ヲ以テ贊成致スモノデ
  ゴザイマス、而シテ本件ハ··
  〔東尾平太郞君「質問ガアリマス」ト呼ヒ「答辯ノ必要ナシ」「ヤレ〓〓」ト呼フ者
  アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=56

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• 057・元田肇君

  ○元田肇君　有要ナル質問デアレバ答ヘルコトハ躊躇シマセヌガ、大抵私ノ趣意ハ御
  分リニナッタコトヽ思ヒマス、非立憲的トカ立憲的ト云フコトヲ、島田君ハ言ハレマスケレ
  ドモ、是等ノコトハ一言ヲ以テ御答シマス、却テ島田君ガ非立憲的デアルト私ハ信ズル
  ノデアリマス、單簡ニ是ダケニ致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=57

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• 058・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　波多野傳三郞君
  〔波多野傳三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=58

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• 059・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　最早定刻ノ六時ニ垂ント致シマスカラ、時間ヲ延長致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=59

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• 060・波多野傳三郞君

  ○波多野傳三郞君　唯今政友會ノ院內總理タル元田肇君ノ明言セラルヽガ如ク抽
  象的ニ論ジマスレバ、政友會ノ諸君ニ於カセラレテモ、勅旨ヲ奉ジテ本案ヲ當院ニ提出
  セラレタル總理大臣以下ノ各大臣ニ於カセラレテモ、蓋シ此案ヲ提出スルト云フコトハ不
  本意デアルニ相違ナイト本員ハ信ズルノデアリマス、併ナガラ具體的ニ之ヲ論ズレバ、今
  ノ財政ハ本案ヲ提出スルコト已ムヲ得ズト認メラルヽノガ、總理大臣以下ノ各大臣竝ニ
  之ヲ贊成セラルヽ政友會、其他ノ諸君デアルト考ヘマスルガ故ニ、本案提出ガ果シテ必
  要デアルヤ否ヤト云フコトノ事情ヲ盡サネバナラヌト本員ハ存ズルノデアリマス、本員ハ本
  院ニ此本案ヲ提出スルノ必要ハ無シト第一ニ斷定ヲ致シマス、何故ナイカト申シマスル
  ト云フト、平和克復後ノ翌年、卽チ來ル十二月三十一日マデハ此法律ハ效力ヲ持ッテ
  居ルノデアリマスルガ故ニ、政府ニシテ果シテ稅率ヲ改正スルト云フ眞意ガアルナラバ、其
  間ニ諸稅率ヲ改正スルニハ決シテ難キ事デハナイ、之ヲ改正セザルハ能ハザルニアラズシテ
  爲サヾルナリト云フコトデ、本員ハ諸君ノ前ニ陳述シヤウト存ジマス、何故左樣ニ申ス
  カ、旣ニ委員會ノ速記ニ於テ諸君ガ承知セラルヽデアリマセウガ、當局ノ大臣ハ宅地
  地價修正法、醤油稅則ノ改正法、國稅定率法、取引所稅法ノ改正法、公債條例ノ
  改正法等ハ當議會ニ提出スル積リデアルト明言シテ居ラルヽノデアリマス其中ノ宅地地
  價修正ト云フ如キハ、果シテ易イカ難イカト申シマスルト云フト、二十三年ニ帝國議會
  ガ開カレマシテ以來ノ歷史ニ徵シマスレバ、長キ問地價修正ノ問題、尤モ地價修正ハ
  田畑ノ地價修正デハゴザイマシタガ、長イ問題デアッタ、サレバ地價修正ノコトタル決シ
  テ易イ業デハナイニ相違ナイ、併ナガラ難キハ卽チ難シト雖モ、政府ニシテ之ヲ行フノ眞
  意アレバ行ヒ得ルト云フコトヲ玆ニ表明シテ居ルト存ジマス、卽チ昨年非常特別稅ヲ協
  贊致シマスル場合、政府ニ向ッテ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=60

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• 061・奧野市次郞君

  ○奧野市次郞君　今ノ波多野君ノ御議論ハ修正ノ意見デスカ、全廢ノ意見デスカ、
  ドチラデスカ承リタイ
  (「默ッテ聽イテ居レ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=61

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• 062・波多野傳三郞君

  ○波多野傳三郞君　先以テ全廢ノ意見ヲ述べ、己ムヲ得ザル場合ニハ修正ト云フコ
  トニナルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=62

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• 063・奧野市次郞君

  ○奧野市次郞君　二ツデスネ、二枚舌··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=63

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• 064・波多野傳三郞君

  ○波多野傳三郞君　全廢論デス、波多野傳三郞ハ全廢論ヲ唱ヘルノデアリマス、卽チ
  能ハザルニアラズシテ爲サヾルナリト申スガ、昨年非常特別稅協賛ノ場ニ、政府ハ一
  年ヲ期シテ宅地地價修正ヲスルト言ハレ、卽チ議會ニハ宅地地償修正法案ヲ出スト明
  言セラルヽデハアリマセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=64

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• 065・奧野市次郞君

  ○奧野市次郞君　波多野君ニ質問シマス、波多野君ハ自分ノ意思ト仰ルケレドモ、角
  田君カラ出タ修正ノ贊成者ガアリマス、其贊成ハ御取消ニナッタノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=65

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• 066・波多野傳三郞君

  ○波多野傳三郞君　ソレハ議長ニ向ッテ-分リマシタ、唯今明言致シマシタル如ク、
  萬一波多野傳三郞ノ名義ガ贊成者中ニアルナラハ取消ヲ求メマス
  〔「宜シイ」「男ラシイ」「モウ止メ給ヘ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=66

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• 067・波多野傳三郞君

  ○波多野傳三郞君　卽チ之ヲ爲サントスレバ、決シテ難キコトデナイト云フハ、卽チ宅
  地地價修正案ヲ出スト明言セラレタノデ明カデハアリマセヌカ、然ラバ次ノ議會マデノ間
  ニ、政府ニシテ果シテ稅法ヲ改正シテ、本院ニ提出スルト云フ眞意ガアレバ、決シテ難イコ
  トノナイト云フコトハ此一事ガ表明スルコトガ出來ルノデアリマス、然レバ第一段ノ議論ノ
  岐レ目トナリマストコロノ、政府提出案ノ如クセザレバ、果シテ歲計ノ上ニ於テ差支ガ有
  ルカ無イカト云フコトニ於テハ、尙一年ノ效力ノアルトー云フコト、而シテ其一年間ニ政府
  ニ信義ガアレバ、確カニ修正案ヲ出シ得ルト致シマスルト、此〓ヨリ論ジマシテ、決シテ
  玆ニ無期トナルベキノ本案ヲ、此院ヲ通過ゼネバナラヌト云フ論據ハナクナッタト存ジマ
  ス、第二段ニハ國家ノ財政、出スヲ量ヲテ入ルヲ爲スト云フニ、出スヲ果シテ量ッテ居ル
  ヤ否ヤ、委員會ノ場合ニ屢〓國務大臣ノ明言セラレテ居ルガ如クニ、陸軍海軍共ニ未
  ダ國防ノ計畫ガ立ッテ居ラヌト言ハルヽノデアリマス、然レバ國防ノ計畫立タズト致シマス
  ルト云フト、出スヲ量ラントシテモ、未ダ出ス根據ガ立ッテ居ラヌノデアリマス是モ亦確カニ
  茲ニ其證據ヲ舉ゲルコトガ出來ルト存ジマスル、當議會ニ政府ガ出サレマシタトコロノ諸
  種ノ豫算案中ニ、陸軍海軍ノ復舊費ト名ヲ付ケマシタモノガ、合セテ五千万圓アッタ
  ノデゴザイマス、然ルニ政府ハ眞ニ出スヲ量ルノ所信ガアレバ、此五千万圓ハ飽マデ貫カルヽ
  筈デアリマスニ元々出スヲ量ル根據ナキノ豫算デアルガ故ニハ、如何デアリマスルカ、旣
  ニ今日ノ豫算委員會ニ於テ、政府ヲ代表シテ大藏大臣ガ明言セラレタルガ如ク、共、
  割五百万圓ハ減ズルコトヲ承諾セラレテ居ルト云フガ如キ態デアリマス、是ハ元々何ニ基
  クカト申シマスレバ、出スヲ量ル其本ガ未ダ立タザルヨリ起リタルコトハ、此一事デモ明カ
  デアルト存ジマス、然レバ未ダ此法律ノ效力ノアル其間ヨリシテ、慌テヽ此修正案ヲ出ス
  ト云フコトノ必要ハ果シテ何處ニアルデアリマセウ、斯ク申ス本員等トテモ、國家將來ノ
  財政ノ有樣ヲ見マスレバ、決シテ此稅ヲ廢シテ其儘デ出入相償フカト云ヘバ蓋シ償ハ
  ヌデアラウト云フコトハ豫測スルノデアリマス、唯豫測ハ致シマスルガ、戰時咄嗟ノ間ニ協
  贊シタル法律其儘ハ甚ダ感心シナイト思フノデアリマス、先ヅ其一例ヲ申シマスレバ旣
  ニ年度ヲ過去リマシタル三十七年度ニ、砂糖消費稅ハ幾許ノ收入アル豫定デアッタカト
  申シマスルト、一千百十万圓ト云フ豫定デアリシニ、實際ノ收入ハ其內ヨリ八百三十
  五万圓ヲ減ジテ居ルト云フガ如キハ、卽チ如何ニモ此非常特別稅ナルモノガ、戰時咄嗟
  ノ間デ杜撰ヲ免レザリシト云フコトノ一例トシテ、玆ニ諸君ハ蓋シ御認メニナルコトデアラ
  ウト存ジマス、又今一ツノ例ヲ申シマスレバ、是ハ三十八年度ニ至リマシテ、十一月マデ
  ノ調査シカ出來居リマセヌガ故ニ、十二月以降三月マデノ間ニ幾干ノ收入ガアルカハ分
  リマセヌケレドモ、通行稅ハ豫定三百十八万圓デアルニ、十一月マデノ收入ハ僅ニ百四
  十七万圓ニ過ギヌノデアリマス、今一ツノ相續稅ハ四百三十万圓デアルニ、十一月迄ノ
  收入ハ僅ニ三十二万圓ニ過ギヌト云フ態デアリマス、斯ノ如キハ戰時咄嗟ノ間ニ協賛
  シタ稅法デアッテ、已ムヲ得ザルトハ申スモノヽ、如何ニモ杜撰極マルト」云フコトハ、諸君
  ニ於テモ蓋シ御認メニナルニ相違ナイト存ジマス、然レバ此ノ如キ諸種ノ稅ヲ今ニ於テ改
  ムルノ必要ノアルト云フコトハ、諸君モ確カニ認メラレ、政府モ之ヲ認メラレテ、ソレガ故
  ニハ殊更ニ調査會ヲ置クト云フコトモ明言セラルヽノデアリマス、併ナガラ是モ亦諸君ガ
  御承知ノ如ク、二十三年以來ノ歷史ニ就イテ考ヘマスレバ、官民混淆ノ調査曾ト云フ
  ガ如キガ、果シテ效力ガアッタカ、寧ロ責任ヲ互ニ讓合ッテ、利ハ少ナキヤウニ見ルノデアリ
  V、、鐵道會議ノ如キ、土木會議ノ如キ、本員等モ其末班ヲ汚シタコトガアリマスルガ、
  製鐵事業調査會ノ如キ、官民混淆ノ調査會ト云フガ如キハ、却テ責任ヲ相讓ルノ態ガ
  アッテ決シテツレ程ノ效ハ無イノデアリマス、然レバ眞ニ西園寺內閣其責任ヲ重ンゼラル
  ルトナラバ、官民混淆ノ調査會ヲ置イテト云フヤウナ姑息ナ手段ハ執ラズシテ、其局ニ當
  ル人ガ自ラ責ニ當ッテ、此法律ノ效力ノアル間ニ調査セラルヽト云フコトハ、、難キコトハナイ
  筈デアリマスル、卽チ宅地地價修正法ヲ一年ト豫約スレバ、地價修正ノモノタル數年
  ニ亙ッテ難イト云ッタモノガ、一年ニモ出來ルト云フ此一事ニ依ッテモ、爲スノ心アレバ決シ
  テ爲セヌノデハナイ、是ハ卽チ今ノ政府及之ヲ贊成セントセラルヽトコロノ諸君ハ、唯易キ
  ニ就カルヽニ過ギヌノデアルト本員ハ信ズルノデアリマス、實ニ易キニ就クガ果シテ相當デア
  ル、總理大臣モ舉國一致ヲ希望スルト言ハレテアル、實ニ二十七八年ノ戰役ト云ヒ、又
  三十七八年ノ戰役ト云ヒ、幸ニ我國ガ連戰連勝ノ勢ヒヲ得タノハ何デアルカト一云フト、
  舉國一致ノ力、其擧國一致ヲ將來モ尙續ケントナレバ、先以テ政府ヨリシテ信ヲ失ハ
  ヌダケノ働キハセラレネバナラヌ筈デアル、ソレモ能ハザルコトナラバ已ムヲ得ヌト承知スルデ
  アリマセウケレドモ、宅地地價修正法ノ一ツニ依ッテモ、玆ニ明カナル例證ガアル、又今ノ
  政府ノ財政ハ未ダ根據ノ立タヌト云フコトハ、陸海軍兩大臣ガ明言セラレテ、且旣ニ一
  度ハ提出シタル豫算ヲ、直チニ五百万圓モ減ゼラルヽト云フ一事ニ依ッテモ明カナ位ナコ
  トデアリマスルデ、本員ハ本案ヲ政府自ラガ撤囘セラルヽコト然ルベシト信ズルノデアリマ
  ス

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• 068・橫田虎彥君

  ○橫田虎彥君　本員ハ意見ヲ述ベタイノデスガ、演題ニ登ル前ニ一應大藏大臣ニ確メ
  タイコトガアリマス、其〓ハ委員會ニ於キマシテ大藏大臣ハ(「登壇々々」ト呼フ者アリ)唯
  一言確メテカラ、登壇致シタイ、委員會ニ於キマシテ此案ニ付イテハ、相當ナル調査機
  關ヲ設ケテ、二箇年以內ニ十分ナル調査ヲシテ、改廢修正ヲスル積リデアルト云フコトヲ
  確カニ明言セラレタノテスガ、果シテ二箇年以內ニ十分ニ調査シテ、此稅法ノ完全ヲ期
  セラルヽト云フ決心デアルヤ否ヤト云フコトヲ、此議場ニ於テ今一應確メタイ
  〔大藏大臣法學博士阪谷芳郞君登壇〕

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• 069・大藏大臣(法學博士阪谷芳郎君)

  ○大藏大臣(法學博士阪谷芳郎君)　橫田君ニ御答致シマスガ、唯今御尋ノ通リ政
  府ハ稅法調査會ヲ設ケマシテ、愼重ニ調査ヲ致シ、二箇年以內ニ是ヲ結了シテ更ニ諸
  君ノ御協賛ヲ求メタイト考ヘテ居リマス
  〔東尾平太郞君「大藏大臣ニ說明ヲ求メタイ」ト呼フ〕
  〔橫田虎彥君登壇〕

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• 070・橫田虎彥君

  ○橫田虎彥君　旣ニ本案ニ付キマシテハ、反對竝ニ贊成ノ御意見トモ詳細ナル御議
  論ヲ拜聽致シマシテ、最早此上ニ諸種ノ議論ヲ致シマスニ餘地モナイヤウニ考ヘマスガ、
  唯最モ簡單ニ本員モ玆ニ贊成ノ意志ヲ表スルタメニ、其意見ヲ陳述致シ置キマス、尤
  モ本員ハ反對ノ論者トシテ詳細ニ御述ベニナリマシタトコロノ島田君ノ御演說、竝ニ唯
  今波多野君ガ縷々數千言ヲ費サレマシタトコロノ演說中ノ、其理由ノ大部分ト云フモ
  ノハ、徹頭徹尾贊成ヲ表スルモノデアリマス、尤モ其中ノ冗長ナル駄辯ヲ除キマシタ、
  其骨髓ニ於テハ最モ贊成ヲ表スルノデアリマス、卽チ反對論者ノ御意見トシテ述ベラレ
  マシタトコロノ精神ヲ伺ヒマスルト、今日ノ此非常特別稅法ト云フモノハ、非常ノ場合ニ
  於テ萬已ヲ得ズ、十分ノ調査ヲナスノ暇ナクシテ、之ヲ可決シタモノデアル、故ニ其
  內容ニ至ッテハ所謂世ニ惡稅ト唱ヘルトコロノモノヲモ含蓄致シテ居ル、是等ノモノハ
  十分ナル改廢ヲシナケバナラヌ、又此稅法ハ時局ノ終局後一箇年ヲ期シテ以テ必ズ廢
  スルト云フコトノ約束ヨリ成立ッタモノデアルガ故ニ、國民ニ對シテ以テ此法律上ノ約束
  ヲ履行シナケレバナラヌ、之ヲ改廢セズ又此約束ヲ履行セズト云フ如キニ至ッテハ、殆ド
  立憲政治其モノヽ精神ニモ反スルコトデアルト云フコトノ議論ニ歸著スルノデアリマス、ソ
  コデ其大體ノ理由ニ至ッテハ、本員ハ全然之ニ同意ヲ表スルノデゴザイマスガ、唯其主
  文ニ至ヲテ本員ノ意見ヲ異ニスルノデアリマス、私ハ此〓ニ於テ簡單ニ此異ナルトコロヲ
  述ベマスレバ、旣ニ元田君モ述ベラレマシタル如ク、所謂今日ノ戰後ノ始末、戰爭後ノ
  總テノ始末ヲ著ケマスル上ニ於キマシテモ、又戰後ノ經營ヲ圖リマスル上ニ於キマシテモ、
  又今日ノ國運ノ發展上ニ於キマンテモ、到底已ムヲ得ザルノ上ニ於テ、是ヲ贊成シナケ
  レバナラヌト云フコトハ、最早茲ニ喋々多辯ヲ要シナイト本員ハ信ズルノデゴザイマス、併
  ナガラ旣ニ已ムヲ得ズ之ヲ贊成スルト云フノデゴザイマスガ故ニ、永久無期ニ之ヲ已ムヲ得
  ザルノ狀態ヲ存シテ以テ贊成ヲスルト云フコトハ本員ハ出來ナイノデ、卽チ茲ニ特ニ大藏大
  臣ニ明言ヲ求メマシタル如ク、政府當局者ニ於キマシテモ、此稅法其者ニ於テ修正ヲ要
  スベキモノ改廢ヲ要スベキモノハ多々アルト云フコトハ、殆ド上下ニ異論ノナイノデアル
  併ナガラ今日ニ於テ、十分ニ調査ヲシテ此議會マデニ提案ヲスルト云フ暇ガナイガ故ニ、
  十分ナル調査ヲ爲スノ餘地ヲ與ヘナケレバナラヌト云フコトニナッテ、卽チ唯今大藏大臣
  ノ明言ヲ求メマシタル如ク、特ニ調査機關ヲ設ケテ、一一箇年以內ニ愼重ナル調查ヲシテ、
  以テ案ヲ具シテ此帝國議會ニ御諮リヲスルト云フコトノ決心デアルト云フコトヲ明言セラ
  レタノデアリマス、卽チ本員等ハ此明言ノ下ニ於テ、本案ニ贊成ヲスルノデアリマス、由來
  此調査ト云フコト、或ハ期限ト云フコトニ付キマシテハ、往々ニシテ或ハ名ヲ調査ニ托シ
  テ、事ヲ曖昧ニ附セントスルガ如キ、或ハ又其期限ノアルニ拘ラズ、其期限ガ十分ニ履
  行ヲセラレナカッタト云フヤウナコトガアルガタメニ、或ハ反對ノ諸君ハ此〓ニ於テ、大ニ氣
  遣ハレルト云フヤウナ模樣ガアルヤウデアリマス、卽チ絕對的反對ヲセラルヽトコロノ諸君
  ニ於キマシテモ、進步黨ノ如キハ一面ニハ修正案ヲ提出セラレテ、唯其修正ノ年限ニ本
  員ノ如キハ二箇年ノ間ニ十分ノ調査ヲセラレテ、以テ所謂此獨リ本法ノミナラズ、稅法
  ノ根柢マデモ修正シナケレバナラヌト云フ位ノ考ヲ以テ居ルニ拘ハラズ、進步黨ノ諸君ニ
  於キマシテモ、矢張相當ナル極メテ短期ナル時日ヲ藉シテ、以テ修正調査ヲセシメナケレ
  バナラヌト云フ意思ニ過キヌノデアル、併ナガラ稅法修正ノ如キ調査ノ如キ、固ヨリ是等
  ノコトニ致シマシテ、唯短簡ナル僅カ數月ノ間デ以テ、十分根柢ヨリ調査ヲスルト云フ
  コトハ、固ヨリ望ムベクシテ實際ニ行フベカラザルコトデアル、況ヤ又假ニ修正調査ヲ致シ
  マシテモ、十分ナナル根抵ヨリ是ガ調査ヲシテ然ル後ニ之ガ調査ヲシテ然ル後ニ是ヲ議
  場ニ諮ッテ、以テ永久ニ我財政稅法ノ根本ヲ定メルト云フコトニ至ラナケレバ姑息ノ
  修正姑息ノ調査ト云フコトハ、決シテ本員ガ玆ニ望ムベキコトデハナイト思フ、ソレ故ニ
  私ハ此調査ノ上ニ於キマシテモ、或ハ名ヲ調査ニ藉ッテ、以テ徒ニ遷延セシムルト一云フヤウ
  ナ嫌ガアルカハ知リマセヌケレドモ、玆ニ大藏大臣ガ明言ヲセラレタル以上ハ、之ヲ信ゼナ
  ケレバナラヌ、又是ヲ信ゼント欲スル者デアル而シテ若シ此事柄ガ二箇年以內ニ至ッテ
  十分ノ調査ガ出來ナイ、二箇年以內ニ至ッテ、尙之ヲ政府ハ案ヲ具ヘテ、議場ニ諮フト
  云フコトガ出來ヌト致シマシタナラバ、此時コソハ吾〓ハ卽チ正々ト鼓ヲ鳴ラシテ其責任
  ヲ問ヒ、或ハ自カラ進ンデ其稅法ヲ改正スルコトモ決シテ差支ヘナイト思フ、私ハ決シ
  テ此調査或ハ年月ト云フコトニ付キマシテ、輕ミシク見テ居ラナイノデアル、此事ニ於キ
  マシテハ深ク是ニ重キヲ有シテ居ルノデアリマス、ドウカ政府ノ大臣ニ於キマシテモ、此
  コトヲ議場ニ明言シテ、一時逃レニ斯ノ如キコトヲ言ッタト云フコトハ、假ニモナイヤウニ
  今日豫メ希望致シテ置クノデアリマス、旣ニ此〓ニ於テ今日ハ已ムヲ得ズシテ以テ此案
  ヲ贊成ヲスルトシナケレバナラヌ以上ハ、此上ニ於テ最早多辯ヲ要スル必要ハナイト思
  フ、唯茲ニ一言シテ置クノハ、私ハ此反對論者ノ述べマスルヤウニ、日本ノ今日ノ財政竝
  ニ國民ノ經濟ノ狀態ニ於キマシテ、斯ル一億六千万圓位ノ增加ノ負擔ガ出來ナイト云
  フヤウナル、詰ラナイモノデハナカラウト云フコトヲ信ズルガ、又今日ノ上ニ於キマシテモ之
  ヲ修正シ改廢ヲスルト云フコトニ於キマシテモ、必シモ是ヲ以テ何處アテモ此稅法ヲ全廢
  ヲシテシマハナケレバナラヌト云フヤウナ考ヲ以テ言フノデハナイ、卽チ稅法ノ根柢ヲ改正
  シテ、以テ財政ノ基礎ヲ鞏固ニスルト云フコトノ精神ヲ以テ、十分ナル調査ヲシ、十分ナ
  ル審査ヲシテ、以テ卽チ此稅法ノ根柢カラ改正ヲスルト云フコトヲ希望スルノデアリマス、
  謹ンデ一言ヲ述ベマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=70

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• 071・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　鳩山和夫君
  〔鳩山和夫君登壇〕

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• 072・鳩山和夫君

  ○鳩山和夫君　諸君、此問題ニ付キマシテ、元田君モウ一人橫田君ト申シマスカノ御
  演說ヲ拜聽致シマシタ、最早モウ反對黨ハ私共ノ主張スル議論ニ降伏セラレテ居ルノデアル
  カラ、此上タント論ズル必要ハナイノデアル、降伏トハ何ンデアルカ、、元田君ノ御議論ノ中
  ニ委員會デ大藏大臣ノ說明シタトコロデハ、二年間ニ稅法ヲ調査シテ案ヲ出ス、今此處
  デ横田君ハ更ニ大藏大臣ヲ引出シテ、活キタ證人ヲ出シテ、二年間ト云フコトヲ明言
  セシメテ是ヲ以テ論ノ根據トセラレタノデアル、旣吾輩等ノ議論ニ降伏セラレタト云
  フノハ此事デアル(ヒヤ〓〓ト呼フ者アリ)二年トームフ短イ期限ノモノデアルカラ、我慢シ
  ロト云フ斯ウ云フトコロノ話デアッテ、實質其物ニ付イテ爭ハレルノデハナイノデアル、非常
  特別稅ナルモノハ、始メカラ有期限ナモノデ、期限ガ到來スレバ必ズ是ハ其期限ノ通廢
  スベキモノデアルト云フコトハ元田君モ御承知デアリ。橫田君モ御承知デアル、ソコ
  デ僅ニ二年ト云フ逃口上ヲ以テ來テ、此二年ノ後ロニ隱レテ辯護セラルヽノデアル(立
  川雲平君「三箇月ニ隱ルトハ如何」ト)ソレデアルカラ吾輩ハ諸君ハ無論議論ノ根據
  ト云フモノハナイト見テ宜カラウト思フノデアル、ワレカラ順々ニ申シテ往クト(「簡單々々」
  ト呼フ者アリ)僕ノハ短イカラ早ク聽イテ御シマヒナサイ、島田三郞君ノ演說ヲ元田君ガ
  非評シテ、一體償金ガ取レタナレバコンナ心配ヲ今シナイノデアルト云フトコロヲ捉ヘテ、
  是ハドウモ西園寺內閣ニ其罪ヲ歸シテ、西園寺內閣ニ向ッテサウ云フコトヲ云フノハ
  無理デアルト言ハレタ、サウ强チ無理デモナカラウト思フ、何トナレバ西園寺侯ハ、其當
  時內閣ノ總理大臣デハナカッ「ポーツマウス」條約ガ出來タ當時ニ、是ヲ非難セズシテ、
  其當時ニ於テハ是位ハ仕方ガナイノデアラウト云フコトヲ、世ノ中ニ發表セラレタノデ
  アル(拍手起ル)然ラバ桂前内閣總理大臣ト其〓ニ於テ同ジ意思ヲ持ッテ居ラルヽノ
  デアルカラ、島田君カラ多少ノ愚痴ヲ向ケラレテモ仕方ガナイノデアラウト思フ(拍手起
  ル)過去ッタコトデアルカラ、是ハ無論誰ガ言ッテモ愚痴ニ相違ナイ、今カラ怒ッテ見テモ無
  論其償金ハ取レナイ、既往ノ事實デアルカラ愚知ニ相違ナイ、然ラバ少々ノ愚痴ヲ言ハ
  レルダケノ覺エガ西園寺侯ニアッテモ宜カラウト思フノデアル(拍手起ル)ソレカラ元田君
  ノ御演說中ニ、何ント言ッテモ是ハ金ガナクチヤイケナイノデハナイカ、斯ウ云フ御言葉デハ
  ナイガ免ニ角金が要ルノデアル、島田君ノ議論ト云フモノハ、甚ダ無責任ダト言ハレタガ
  サウデナイ、島田君ノ演說ハ私モ聽イテ居リマシタケレドモ、免ニ角本年ノ十二月マデ
  取レルノデアルカラ、一億六千万圓ノ內ノ一億五千万圓ハ取レル、事ニ依ルト思ッタヨリハ
  餘計這入ッテ來ルコトニナルカラ、不足ハ僅カ五六百万圓シカナイト云フコトヲ島田君ハ
  言ハレタノデアルカラシテ、マルデ無責任デハナイノデアル、五六百万圓ダケガ事ニ依ッタラ
  無責任カモ知ラヌガ、サウスルト元田君ノ攻擊ノ根據ト云フモノハ一億六千万圓ニ
  アラズシテ、五六百万圓ト云フ小サイモノニナッテシマヒマスカラシテ、此批評ノ價モ亦
  僅カナルモノニナルト思フノデアリマス(「拍手起ル」「立川雲平君無責任ハ一ナリ」ト呼
  フ)ソレカラ先刻二年間ノ調査會ヲ作ッテ、朝野ノ者ヲ集メテ此調査ヲスルト云フ話デア
  ル是ハドウモ波多野君モ言ハレタ通デアルガ、私ハ信用シナイノデアル、或ハ調査會ダ
  ケハ設ケルカ知ラヌケレドモ、二年間ノ中ニ調査會ヲ設ルカモ知ラヌ、此調査會ガ何年
  間調査シテ居ルカ、ソレハ分ッタモノデナイノデアル(立川雲平君「サウ云フコトハ斷ジテ
  ナイ」ト呼フ)立川君ハ實ニ人ヲ信仰スル力ガ多イガ、僕ハソレ程信仰スル力ヲ持タヌ、元
  來其位置ニアル者、其責任ヲ受ケル人ガ、自分ノ抱負ナク計畫ナクシテ、其位置ニア
  ルト云フコトハ間違ッテ居ルノデアル、西園寺侯始メコヽラニ居ラレル先生達ガ內閣
  ヲ引受ケルナラバ、戰後ノ仕事ハ何ンダト云ヘバ誰ガ言ハナクテモ財政ニアルト云フ
  コトハ分リ切ッテ居ル、其財政ニ付イテ抱負ナク、計畫ナクシテ、內閣ノ責任ヲ受ケラ
  レタト云フノガ可笑シイノデアル(拍手起ル立川雲平君「其內閣ヲ歡迎シタ進步黨モ
  可笑シイ」ト呼フ)英國ニ於テ內閣ガ引込ムト、自由黨ノ內閣ガ代ッテ出ル、出ルヤ否
  ヤ、直グ自分ノ施政ノ方針ト云フモノヲ世ノ中ニ發表スルノデアル、ソレデアルカラ西園
  寺侯モ多少施政ノ方針ガ未ダ出來上ッタモノガナイニシテモ、頭ノ中ヲアチラコチラ徘徊
  シテ居ル位ナモノハアルダラウト思フ、ソレヲ纏メマスルノニ、今日カラ二年ダト云フコトデ
  アル十二月マデニマダ時ガアルノデアル、此議會ニモ提出スルコトガ出來得タカモ知レナ
  イノデアル、既ニ有ル者ハ出ス意味ダト云フタデハアリマセヌカ、ソレデ今此議會ニ案ヲ出
  スコトガ出來ナケレバ暮ノ議會マデ、若クハ此大問題デアリマスルカラシテ、臨時議會ヲ召
  集シテモ、次ノ四十年度ノ豫算ヲ編成スル間ニ合フノデアル、サスレバ二年ト云フヤウナ
  コトヲ、玆ニ言出ス必要ガナイ、又言ウテ來ナイ、二年ノ中ニ世ノ中ハ一體ドウ變っテ來
  ルモノカ分ックモノデハナイ、ソレデモウ一ツ元田君其他二年說ヲ主張スル御方ニ申上ゲ
  タイノハ二年ト云フコトガー良イノナラバ、吾ミハ此案ガ若シ潰レルト、三箇月延期ノ修
  正說ガ出マスケレドモ、矢張本年ノ十二月マデハ一年バカリアリマスカラ、モウ一年延バ
  シマスト二年ニナルカラシテ、法律ヲ以テ期限ヲ定メテ、大藏大臣ノ一言ト云フモノヲ當
  テニシナイデ、法律ヲ以テ期限ヲ定ムルト云フコトニシタナラバ幾分カ世間ノ信用ヲ繫
  グコトガ出來ヤウト思ヒマスガ、大藏大臣ノ一片ノ言葉ノミヲ信ジテ、而モ其調査會ハド
  ウ云フ性質ノモノデアルカ、マダ明言モセラレナイ當テニナラナイモノヲ當テニシテ二年待ツト
  云フコトニハ御同意ガ出來ヌコトデアル、全然元田君、初メハ大體ニ於テハ吾ミト同ジ
  御議論デアルヤウニ見テ居ッタ、卽チ反對贊成ニ分レテ居ルケレドモ免ニ角非常特別稅
  ナルモノハ期限ノ到來ト共ニ廢スベキガ原則デアルト一云フコトニ付イテハ、御同意ト見エ
  ル、ソレ故ニ其他ノ議論ハ甚ダ根據ノ薄イヤウニ承リマシテゴザイマス

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• 073・長谷場純孝君

  ○長谷場純孝君　討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
  (「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=73

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• 074・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　長谷場君ノ討論終結ノ動議ニ定規ノ贊成ガアルト認メマス討
  論終結ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 075・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガナイト認メマス、討論終、セセラレマシタ、本案ニ付キ
  マシテ、二讀會ヲ開クヤ否ヤニ付イテ、決ヲ採リマス、第二讀會ヲ開クベシト云フ御方ハ
  御起立ヲ願ヒマス
  起立者多數

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• 076・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　多數ト認メマス
  〔「少數デアル」「多數デアレバ異議ヲ申立テル」「議長々々」「記名投票ヲ以テ決
  セラレンコトヲ望ム」ト呼フ者アリ議場騒然〕

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• 077・長谷場純孝君

  ○長谷場純孝君　此採決ノコトニ付イテ一言致シマス、既ニ各員ノ見ル所明カニ多
  數デアルト云フコトハ分リ切ッテ居ッテ、議長ガ宣告ヲシテ居ル、ソレデ異議ガアレバ、反
  對ノ方ノ起立ヲ採ッテ見タラ、宜カラウト思ヒマス
  〔議場騷然〕

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• 078・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　靜カニナサイ、異議ノ申立ノ御方ノ起立ヲ願ヒマス-異議
  ノ申立ニ贊成者ガ二十名以上アリマスカラ、議長ハ本案ハ記名投票ヲ以テ採決ヲ致シ
  マス
  〔拍手起ル〕

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• 079・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　靜カニ願ヒマス、本案ノ二讀會ヲ開クベシト云フ御方ハ白札
  ヲ御持參ヲ願ヒマス、又二讀會ヲ開クベカラズト云フ御方ハ、靑札ヲ御持參願ヒマ
  ス-閉鎖〓呼
  〔書記官氏名ヲ點呼ス〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=79

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• 080・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　投票洩ハゴザイマセヌカ-投票漏ハナイト認メマス-開
  鎖-開匣
  〔書記官投票數ヲ計算ス〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=80

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• 081・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　投票ノ結果ヲ書記官長カラ報告ヲ致シマス
  〔林田書記官長朗讀〕
  出席總員三百四十七
  可トスル者二百二十二
  否トスル者百二十五
  〔拍手起ル〕
  〔參照〕
  〔本案第二讀會ヲ開クヘシトスル者〕
  望月小太郞君立川雲平君築山和一君大津井ト新君
  池田惟貞君上埜安太郞君栗塚省吾君島良知君
  森本駿君佐藤虎次郞君靑柳信五郞君千葉禎太郞君
  後藤文一郞君岡井章吾君宮古啓三郞君毛里保太郞君
  松本孫右衞門君大新育造君安藤新太郞君林友
  義三君吉太繁造君植森中肇信君君
  森磯內部山四君君君山山崎本良純君場平君
  松隆慶君久保作藏郎工藤発祥江原素
  横福野恆多粕井島用橋麻谷會會盡要請勿重管原改野耕三君長谷場純孝營業大方
  鈴木友治郞傳君君製作專河原林 後
  時雄君奧野市次神遠山山森吉隆君中村雄藏君
  野久郞次郞君君君戶藤良君宮崎榮治君
  大竹書建築人民幣トーム奧上大野彌一管理局(No.西村專太郞君
  丸山嵯峨一郞君田義人君吉植庄一郞君彥太郞君
  池松豐記君郞君木暮武太夫君江林久藤 保小一郞君
  三浦盛德君鳥米中川商業株式会社郞君古賀庸藏君哲藏君
  征矢野半彌君郞君遊田〓吉君天福野岡精一君
  牧野元君海野謙次郞君伊藤傳右衞門君藤三君
  長晴登君高橋安爾君柳田藤吉君景山甚右衞門君
  武滿義雄君橫井甚四郞君古井由之君阿部德三郞君
  中西光三郞君元田肇君栗原亮一君村野常右衞門君
  松田正久君岩元信兵衞君中西六三郞君武內美代吉君
  繁三郞君蘆田鹿之助君廣瀬久政君內藤魯一君
  小君原敬君本君漆昌巖君
  名信平參君福島美之助植西根山彰正村左吉君
  長谷川豐吉君君茶葉茶小石北川〓君
  布惟義君前修三後木更直平君澤愛次郞君
  嘉樂君鳥神海哲四郞慶二君
  木卿太郞君向吉三郞君前柚島水元助君
  坂弘
  松バイバイバイブラックス愛吉良君若者若君君宮井茂九郞君
  渡村邊修藏請求後關福綿出生米其 大吉石谷傳四郞君
  與 小牧吉吉寧
  畑山田信藏君
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  橫山正中君
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  順英顛芳田輝茂廣赳純平俊馬藏郞武輔運城佐助馬禰龍彥介
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  竹田千代左右
  中央幸書いている。
  湯山壽江間俊一君
  正和君橫山寅一郞君永見寬二君松本大吉君
  板東勘五郞君橋本久太郞君和牛乳業施設
  川村仙臺北京市公安局海淀分局高梨哲四郞君雄倉茂次郞君我國大學
  林有高小木田貫一君山根正次君敬昌君
  星野長太郞君龍藏君福島宜三君中谷宇平君
  三輪猶作君持田若佐君藻寄鉄五郞君武市庫太君
  成 分謙藏君田中喜太郞君嶺山時善君尾見濱五郞君
  矢島中君江角千代次郞君
  〔本案第二讀會ヲ開クヘカラストスル者〕
  角田眞平君野上嘉平君梅野初實君榎本次郞左衞門君
  谷〓愼君木村半兵衞君飯島省三郞君佐々木正藏君
  澤鞍來太郞君高橋金治君國井庫君中西新作君
  〓口四七人大人民智社古い味噌汁久次郞君愛澤寧堅君藤澤幾之輔君
  兵七君久保田與四郞君尾形兵太郞君
  河井重藏君村松龜一郞君望月長夫君星野仙
  小田文行君齋藤勘七君井上要君川島瀧茂藏藏君君君
  澤田耕治郞君小川·大吉金岡又左衞門君關春
  關野善次郞君井手武右衞門君〓水隆德君
  安念次左衞門君鐵藏君淺見竹太郞君三分鐘 150 分鐘 450
  一郞君サンダイスターチェーン安島重三郞君
  住所產業伊助君野木善三郞君安田勳君星天大大使 小林家熊吉君
  承諾塔東尾平太郎君根津嘉一郞君董平君
  良桌菅澤重雄君入江武一郞君松三郞君
  西苑的同學神崎東藏君堀田 連太郞君波多野傳三郞君
  東大語磐塚龍君柴四朗君
  守屋此助君肥
  口仁一郞君加藤大津淳一郞君西村丹治郞君
  關坂戰役/切勿名第首藤陸三君北畠具雄君
  直彥君江藤
  平末即君乾奈良吉君藤宇一郞君義書館
  岡田藤田利八君鳩山和養平箕木靑烏龍下麻辣椒
  卓爾君福井村惟勝人君
  堀國荒安森內山竹內正若 君 君 に 書 法 書田喜德實昌毅君君君君君松尾君
  谷桂雄亨吉吉君君君佐治集幸正三幸關口安太郞君
  谷松濱高小加佐菊米田犬齋庫武須見千次郞君
  谷左治郞君時間朋禧近江谷榮次君
  京·お酒魚、卵、井田橋川瀬藤池吉逸淺野陽吉君
  大島花竹田井三凱君勝平七君君君君君三輪信次郞君
  旅程序
  野左門君貫君國神藤才一君
  倉仲次一源內松松本恆之助君
  暢君君八小鉢倉ガールズ早速整爾君脇榮太郞君
  米田武八郞君辻寬君濱口擔君
  鵜飼退藏君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=81

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• 082・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　本案ハ第二讀會ヲ開クベシトスルニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=82

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• 083・長谷場純孝君

  ○長谷場純孝君　直チニ第二讀會ヲ開カレンコトヲ希望致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=83

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• 084・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　直チニ第二讀會ヲ開クト云フ長谷場君ノ動議ニ御異、議ハア
  リマセヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=84

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• 085・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　御異議ハナイト認メマス、是ヨリ本案ノ第二讀會ヲ開キマス、
  第一條ヲ議題ニ供シマス
  非常特別稅法中改正法律案第二讀會

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• 086・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　角田眞平君
  〔角田眞平君登壇〕

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• 087・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　チヨット申上ゲマスガ、第一條ヲ議題ニスルト申シマシタガ、全
  部ヲ議題トシテ採決ノ場合ニ至ッテハ、各條ニ付イテ採決ヲ致シマス

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• 088・角田眞平君

  ○角田眞平君　修正案ハ御手許ヘ迴シテゴザイマスカラ御覽ノ通デゴザイマスノデ、私
  ハ便宜ノタメニ一條ト二十七條ニ付イテ修正意見ヲ述ベマスル、此非常特別稅ナルモ
  ノハ、僅ニ一時間ノ間ニ決定ヲセラレテ、法律トナッタモノデアル、ソレ故ニ吾ミハ翌年ノ
  末日ヲ以テ、此效力ガナクナルト、云フコトヲ特ニ記シテ、爲政家ガ之ヲ執行スル上ニ
  餘地ヲ與ヘタノデゴザイマス、此時ニハ種々ノ說ガアッテ翌年ノ末日トナルト少ナクモ十數
  月ト云フコトニナルノデアルカラ、多過ギルト云フ議論ガアッテ、ヤカマシウゴザイマシタノ
  デ、御列席ノ諸君モ御承知ノ通各派折合ッタ上ニ、其位ハ多クシテヤラネバ次ノ事ノ計
  畫ニ差支ヘルト云フ意味ヲ以テ、是ニ全然同意ヲ致シテ、翌年ノ最終ノ日ニ效力ヲ失
  フト云フコトニ致シマシタ、而シテ先刻來ノ討論ノ末ニ其通履行スルト云フ說ハ潰レテ、
  遂ニ今ハ第二讀會ニ移リマシタノデ、是ニ於テ私ハ滿堂ノ諸君ノ贊成アルベキヤウニ修
  正案ヲ提出シタ、卽チ其意味ハ何デアルカト云フト、第一條ヲ削ルト云フ原案ノ此五
  文字ハ是ヲ削リマシタ、サウスルト此現行法律ノ通ニナリマス、第二十七條ト云フノハ
  「本法ハ明治四十年三月三十一日限リ之ヲ廢止ス」ト是ヲ訂正ヲシマスノデゴザイマ
  ス、先刻來諸君ノ高說ヲ拜聽シテ居リマスルト、吾〓ニ反對ノ諸君卽チ原案ニ贊成ノ
  諸君ト雖モ、是ヲ無期限ニスルノ有害ナルコトヲ自ラ玆ニ喋々論ジテ居ラレ、遂ニ是ヲ形
  式上ニ社會ニ知ラセルカタメニ、甚ダ氣ノ毒ニモ大藏大臣ヲ態〓呼出シテ、芝居的行
  動ニ依ッテ二年ノ間ニ調査ヲスルト云フコトヲ言ハシメタノデ、(「ノウ〓〓」又ハ「ヒヤ〓〓」
  ト呼フ者アリ)若シソレガ「ノウ」デアレバ、然ラバ諸君ハ永久ニ是ヲ繼續ヲシヤウト云フノ
  デアルカ、驚入ッタル話デアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)少ナクトモ、諸君ハ此事ノ永
  久ハ不便デアルカラ、二年ノ中ニハ止メルコトニ致シマス、二年ノ中ニハ事ニ依ルト、來
  年ニモ止メルモノガアルカモ知レヌト、ホノメカシテ諸君ノ說ヲ社會ニ照會シテ、是デ逃ゲヤ
  ウト企テタノデハゴザイマセヌカ、是ハ事實デアル、若シ是ガ事實デナク、永久ニスルト致ス
  ナラバ、何ヲ苦ンデ斯樣ナ芝居ヲ此議場デ打タレタノデアル凡ツ事ハ露骨三言ッテ世間ノ
  同情ヲ受ケルノハ結構デ吾ミハ諸君ノ二年說ヲ持ッテ居ラルヽト云フノデ、多少ノ同情
  ガアルノデ、若シ夫レ之ヲ取消サバ氣ノ毒ナガラ諸君ハ此言論ヲ總テ取消サナケレバナ
  ラヌ、境遇ニ陷ラネバナラヌ、旣ニ諸君ハ二年說ヲ唱ヘ制限ノ上ニ於テハ吾〓ト同一ノ
  議論デアル、此時ニ當ヲテ是ヲ法律ニ書イテ制限ヲスルガ宜シイ、日外ハ大藏大臣某ガ、
  彼モ一時此モ一時ト議會ニ辯明ヲシテ、笑ヲ招イダコトガゴザイマス、二年說ヲ主張シテ
  誠意ニヤル積リデゴザイマシタガ、國情斯樣デ許サナイ、事情斯樣デ許サナイ故ニ、報
  告スルノ時期到來セズトアッタナラバ三年、四年、五年、六年或ハ十年ニナルカモ知
  レヌデハゴザイマセヌカ、果シテ然ラバ諸君ト共ニ滿足ニ之ヲ法律ニ明記シテ、國民ニ安
  心ヲ與ヘルト云フコトハ、御互ニ努ムベキコトデアッテ、又當局者モ蓋シ歡迎スベキ說デ
  アラウト思フ(「ヒヤ〓〓」ト呼フモノアリ)僅二一時間ニ一億六千万圓ノ議案ヲ可決セシ
  メテ、而モ之ヲ提出シテ變更ヲシテ、卒爾ノ間此國難ニ出遇ッタカラト說明ヲシタノデ、
  之ヲ改廢シ稅制ヲ改良シテ後カラ、出シテ來ルノニ、一年ノ猶豫ヲ與ヘテ出來ヌ內閣
  諸公ノ腕トハ認メヌ、又諸君ガ左樣ニ腕ノナイ內閣トシテ御贊同ヲ表シテ居ラヌコトヽ
  私ハ信ジマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)果シテ然ラバ吾〓ハ前ノ說ガナクナリマシタ以上
  ハ、卽チ前ノ履行ヲスル說ガナクナリマシタ以上ハ、少ナクモ豫算ノ上ニ於テハ來年ノ三
  月マデハ支出ヲ可決セネバナラヌノデアル、此豫算ノ執行ニ安心ヲ與ヘ收入ヲ確保ス
  ルト云フ上カラハ、是ヲ三箇月延バシテ、年度ノ調和ヲ計ルト云フノガ職責ノ上ニ於
  テー今ノ場合ニ於テ卽チ第一案ガ倒レタ場合ニ於テハ、相當デアッテ而モ猶豫ヲ與ヘ
  ル上ニ於テハ、當局ノ腕ニ任セル餘地ガアルト信ジテ疑ハヌノデゴザイマス、殊ニ當局大
  臣ノ言ハルヽトコロニ依リマスト、是々々々ノ稅ト云フモノハ、既ニ取調ベテアル、尙此外
  ニ此稅モ此稅モ取調ベツヽゴザイマスト報告ヲシテ居ル、ソレ故ニ調査ヲ致シマスルナラ
  バ思ヒノ外ニ其中カラ-片一方カラ拔イテ往ッテ、案外此中カラ稅制ヲ改正スルコ
  トノ速ニナルカモ知レヌト云フコトハ明言ヲセラレテ居ル、是ノ如ク此以前カラ準備ヲサレ
  テ來テ、旣ニ今會ヲ開イテ、準備調査委員會ヲ開カウト云フ組織案マデナッテ居ル以上
  ハ、此事ニ付イテ御不同意ハナイ筈デアラウト信ジテ疑ヒマセヌ、畢竟スルトコロ、豫算
  ト云フモノヽ上ニ付イテ、御互ガ三十九年度ノ豫算ヲ議定スル上カラハ、三十九年度
  ノ豫算執行ノ上ニ於テ、之ヲ確保シ能フダケノ途ヲ聞イテ置キマシテ、是デ異論ガゴザイ
  マスレバ、政府當局ノ人ノ心事ヲ疑フト云ウテ宜カラウト思フ、速ニ御贊同アッテ今マデ
  御述ベニナリマシタトコロノ、二年稅ヲ御再考ニナルト云フト、長キニ失シテ而モ甚ダ薄
  弱誠ニ適當ナル調和ヲ得タル法律ノ上ニ明記シテ、此國民ニ安心ヲ與ヘルトコロ
  ノ修正案ニハ御贊同アランコトヲ希望致シマス
  〔拍手スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=88

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• 089・元田肇君

  ○元田肇君　唯今修正案ガ角田君ヨリ出マシテゴザイマスガ、此修正案ハ委員會ニモ
  提出サレ、動議トシテ起サレテ尙先刻配ラレテ-實ハ配リヤウガ早カッタンデアルト云
  フ斷リデアリマシタガ、既ニ配ラレテアリマスカラ、本員ハ演壇ニ於テ此〓マデモ不同意デ
  アルト云フコトヲ演說致シテ置キマシタカラ、ソレ故ニ唯今事新シク之ニ向ッテ別段ニ辯
  駁ヲ加ヘルノ必要ハナイト思ヒマス、是ノ如キ修正ハ決シテ許スベキモノデナイト云フコト
  ハ明カデアリマスカラ、別段ニ演壇ニ登ラヌデ是ダケヲ申シテ置キマス
  (「討論終結」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=89

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• 090・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　討論終結ニ定規ノ贊成ガアリマスカ
  〔「アリマス」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=90

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• 091・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　定規ノ贊成ガアルト認メマス、討論終結ニ御異議ハゴザイマセ
  ヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=91

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• 092・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　御異議ハナイト認メマス-採決致シマス-角田君ノ修
  正、卽チ第一條ニ付イテ採決ヲ致シマス、此修正ハ削除デアリマスルデ、原案ニ就イテ
  採決致シマス、原案卽チ政府原案ニ御同意ノ御方ハ起立ヲ願ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=92

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• 093・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　大多數デゴザイマス-二十七條ニ付イテ採決致シマス、二
  十七條、卽チ角田君ノ修正デアリマス、此角田君ノ修正ニ付イテ決ヲ採リマス、角田
  君ノ修正ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ願ヒマス
  起立者少數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=93

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• 094・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　少數デアリマス、原案ニ付イテ決ヲ採リマス、原案ニ同意ノ御
  方ハ起立ヲ願ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=94

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• 095・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　多數デアリマス、原案ニ決シマス、是デ二讀會ハ決シマシテゴ
  ザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=95

  ---

• 096・長谷場純孝君

  ○長谷場純孝君　直チニ三讀會ヲ開カレテ確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=96

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• 097・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　長谷場君ノ動議ノ通リ直チニ三讀會ヲ開クト云フコトニ付イ
  テ、御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=97

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• 098・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガナイト認メマス、直チニ三讀會ヲ開キマス
  非常特別稅法中改正法律案第三讀會
  (「二讀會通異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 099・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　二讀會ノ決議通御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=99

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• 100・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　二讀會ノ決議ノ通決シマシテゴザイマス、是ニテ本案ハ確定致
  シマシタ
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=100

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• 101・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　日程第七、日本興業銀行法中改正案ノ第一讀會ノ續キニ
  移リマス
  第七日本興業銀行法中改正法律案(政第一讀會ノ續甜蜜香油
  府提出、、貴族院送付)報告
  〔元田肇君登壇〕
  〔「簡單々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=101

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• 102・元田肇君

  ○元田肇君　少シクドウゾ御聽キヲ願ヒマス、短クヤリマスカラ-委員會ニ於キマシ
  テハ、本案ハ今日ニ於テ最モ必要ナリト認メマシテ、可決致シマシタ、(「贊成々々」又「ソ
  レデ宜シイ」ト呼フ者アリ」)ドウゾ內容ハ此書面ニ書イテゴザイマスカラ、御贊成ヲ願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=102

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• 103・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　鈴置倉次郞君
  (「委員長報告通異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X00519060208&spkNum=103

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• 104・鈴置倉次郞君

  ○鈴置倉次郞君　本員ハ本問題ニ反對ノ意見ヲ有スル者デアリマス(「簡單ニ願ヒマ
  ス」ト呼フ者アリ)簡單ニヤリマス(「贊成々々」又ハ「無用々々」又ハ「謹聽々々」ト呼フ者
  アリ)本員ハ發言權ヲ得マシタ、興業銀行ノ資本金ヲ增加致シマシテ、內外共通經濟
  ノ機關タルコトニ於テハ、本員ハ固ヨリ異論ノナイトコロデアリマス、大イニ贊成ヲ表スル
  トコロデアリマスガ、此働ヲナス上ニ於キマシテ、此改正案ノ必要ヲ本員少シモ認メナイ
  ノデアリマス、第一ノ改正條項ハ七百五十万圓增資ノ件デアリマスガ、是ハ興業銀行
  法第二條ノ但書ニ「但シ政府ノ認可ヲ得テ之ヲ增加スルコトヲ得」ト書イテアリマシテ、
  資本金增加ト云フコトハ立法手續ニ據ラズシテ、政府ノ認可ニ據ッテ出來ルコトニナッテ
  居リマスカラ、第二條ノ修正ハ不必要デアリマス、然ラバ此改正ノ主眼ハ、何レニアルカト
  申シマスルト、第三條ノ百圓株ヲ五十圓株ニ切下ゲルト云フコトガ、主眼ニナッテ居ルノ
  デアリマス、現今ハ百圓株デアリマシテ、之ガ現在拂込金ハ五十圓ニナッテ居リマス、然ルニ
  商法ノ規定ニ據リマスレバ、全額拂込以前ニ增資スルコトガ出來ナイト云フコトニナッテ
  居リマスカラ增資前ニ一時ニ拂込ヲスルト云フコトハ、甚ダ株主ニ氣ノ毒デアル故ニ、株
  金ヲ切下ゲテ未拂込ノ五十圓ト云フモノハ、新株ノ形ニ致シテ日本人ノ所有スル株ハ、
  四分ノ一拂込ンデ宜イ、西洋人ノ所有スベキ株、十五万株ハ直チニ全額ヲ拂込ム、斯
  ウ云フコトニ致シマシタノデアリマス、斯ル見苦シキ小刀細工ガ卽チ改正案ノ骨子ニナッテ
  居リマシテ立法上是ハ甚ダ忌ハシキ點デアルト本員ハ考ヘルノデアリマス、全額拂込ヲシ
  マシタトコロデ、高ノ知レタ五百万圓ノ株デアリマス、此五百万圓ノ拂込ガ困難デアラ
  ウ-日本ノ今日ニ於テハ困難デアラウトハ、如何ニモ情ケナイ觀察デアリマス、如何ニ
  モ我國民ノ財力ヲ輕蔑シタル觀察ト云ハネバナリマセヌ、我國民ハ四億八千万圓ノ公
  債ニ應ジ、又一億六千万圓ノ特別稅ヲ負擔シテ居ルノデアリマス、然ルニ此株金ノ拂
  込ト云フモノハ、非常特別稅ノ如ク、脅迫的ノ性質ノモノデナイ、苟モ株主タル以上ハ、
  未拂込ノ金額ヲ拂込ム覺悟ハ、豫テアルベキ筈デアリマス、勿論多數ノ株主ノ中デ、三
  人ヤ五人ハ一時拂込ニ困ル人ガアルカ知レマセヌガ、ツレハ金融機關ノ發達シタ今日、
  株金ノ拂込ヲスルハ易イ話デアル、拂込ヲスレバ、擔保ノ價格ガ增加スルノデアリマスカ
  ラ、拂込ニハ少シモ困難ハナイノデアリマス、一方ニ外資輸入ヲ計ルト同時ニ、又五百
  万ノ拂込ヲ懸念スルト云フヤウナコトデアッテ、ドウシテ外資輸入ノ目的ヲ達シ得ルノデア
  リマスカ、本員ハ少シモ此改正案ノ必要ヲ感ジナイノデアル、又現ニ日本國民ノ財力ハ、
  事實ニ於テ日〓ニ發達シツヽアルノデアリマス、此〓ニ於テハ私ハ國民ノタメニ斯ル想像
  ニ對シテ寃罪ヲ雪イデ置クノ必要ガアルト思ッテ玆ニ一言スル、通過如何ハ固ヨリ問フ所
  デナイ、日本ノ財力ニ向ッテ斯ル憫レナル觀察ヲ下スベキ必要ガナイト云フコトヲ一言
  スル必要ガアリマス、政府委員ハ財務委員ガ英吉利デ約束シタ今日デアルカラ、何トモ
  致方ガナイト云フ御答辯ヲ委員會デ致サレマシタガ、日本政府ノ財務委員ガ立法權ニ
  立入ッテ約束ヲスルト云フコトハ不都合デアル、所謂是ハ議會ノ經過ヲ條件トシテ約束
  シタモノト推定スル外ハナイ、若シ議會ノ經過ヲ條件トシテ約束シタモノナラバ、其約束
  ヲ以テ議會ノ決議ヲ强ユルト云フコトハ出來ナイノデアリマス、故ニ私ハ此改正ヲ爲サズ
  シテ直チニ全額ヲ拂込マセ、卽チ五百万圓ヲ拂込マセマシタナラバ直ニ大藏省カラ增資ノ
  認可ヲ與フルデアラウ、シテ見レバ斯ル迂遠ナル手續ヲスルヨリモ、五百万圓全額拂込ヲ
  直チニサセル方ガ早ク出來ルダラウト本員ハ信ズルノデアリマス、斯クスレバ斯ル不體裁ナ
  法案ヲ議會ニ出ス必要モナク、直チニ迅速ニ此目的ヲ達スルデアラウト思ヒマスカラ、此
  〓ヲ國民ノ體面ノタメニ一言致シテ、此改正案ノ不必要ナルコトヲ一言致シテ置キマ
  ス

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• 105・元田肇君

  ○元田肇君　私ハ委員會ノ委員長トシテ、諸君ガ能ク御分リニナッテ居ルト云フコトデ
  アリマスカラ、簡單ニ結果ダケヲ報〓シタノデアリマスガ、諸君ニ於テ萬一御分リニナラヌ
  所ガアッテ、委員會ノ經過ヲ御聞キニナリタイト云フコトナラバ何時デモ御答ヲ致シマスカ
  ラ、此段申シテ置キマス
  〔「討論終結」ノ聲起ル〕

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• 106・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　討論終結ニ段々御贊成ガアルヤウデゴザイマスガ、別段御異議
  ハゴザイマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 107・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　御異議ナイト認メマス-此法案ニ付イテ二讀會ヲ開クヤ否
  ヤト云フコトニ付イテ決ヲ採リマス、二讀會ヲ開クト云フニ御同意ノ御方ハ起立ヲ願ヒ
  マヌ
  起立者多數

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• 108・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　大多數デゴザイマス、二讀會ヲ開クト云フコトニ決シマス

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• 109・元田肇君

  ○元田肇君　直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ希望致シマス
  〔「贊成々イ」ノ聲起ル〕

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• 110・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　元田君ノ發議ノ通直チニ一一讀會ヲ開クニ御異議ハアリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 111・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　御異議ナイト認メマス直チニ二讀會ヲ開キマス
  日本興業銀行法中改正法律案第二讀會

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• 112・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　全部ヲ議題ニ供シマス

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• 113・元田肇君

  ○元田肇君　本案ハ貴族院送付ノ通リ委員會ニ於テハ一ノ修正モゴザイマセヌ、各派
  ノ御方モ大體御贊成ガアッタノデゴザイマスカラ、讀會ヲ省略シテ直チニ全部確定アラン
  コトヲ望ミマス

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• 114・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　三讀會ヲ省略シテ二讀會ニ於テ直チニ確定ニシタイト云フ元
  田君ノ御發議ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 115・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　御異議ガナイト認メマス
  日本興業銀行法中改正法律案確定議

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• 116・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　本案ニ付イテ決ヲ採リマス、本案ニ贊成ノ御方ハ御起立ヲ願
  ヒマス
  起立者多數

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• 117・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　大多數デス、本案ハ確定シマシテゴザイマス、チヨット報告ガゴ
  ザイマス
  〔書記朗讀〕
  一委員ヲ指名スル左ノ如シ
  陸海軍ニ屬スル臨時事件費特別會計終決ニ關スル法律案
  遊田〓吉君柚木慶二君丹後直平君
  美禰龍彥君木村格之輔君榎本次郞右衞門君
  宮部襄君野尻邦基君神藤才一君
  作業會計法中改正法律案
  武田千代足君本出保太郞君前島元助君
  平岡浩太郞君關春茂君佐治幸平君
  是永歲太郞君藤井牧太君鵜飼退藏君

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• 118・議長(杉田定一君)

  ○議長(杉田定一君)　次囘ノ議事日程ハ追テ公報ヲ以テ御報告致シマス、今日ハ
  是デ散會致シマス
  午後七時二十五分散會

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