1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十二年三月十三日(土曜日)
午前十時七分會議
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議事日程 第十四號 明治四十二年三月十三日
午前十時開議
第一 男爵眞木長義君、男爵川口武定君請暇の件
第二 明治四十二年度歳入歳出總豫算案竝明治四十二年度各特別會計歳入歳出豫算案 會議(委員長報告)
第三 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件 會議(委員長報告)
第四 明治四十一年法律第九號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第五 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第六 軌道の抵當に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第七 擔保附社債信託法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第八 立木に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 外國領海水産組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 國債の利子所得税免除に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 登録國債の擔保充用に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 政府に對する保證金其の他の擔保に供したる國債の買入銷却に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 會計法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十四 民事訴訟法施行條例中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 質屋取締法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 東京都制案(男爵松平正直君外五名發議) 第一讀會
第十七 千代田縣設置に關する法律案(男爵松平正直君外五名發議) 第一讀會
第十八 東京都千代田縣組合法案(男爵松平正直君外五名發議) 第一讀會
第十九 樺太航路開始の請願 會議
第二十 大湊鐵道速成の請願 會議
第二十一 煙草專賣法中葉數査定に關する規定廢止の請願 會議
第二十二 廣島江津間鐵道速成に關する請願 會議
第二十三 小學校正教員官設鐵道無賃乘車の請願 會議
第二十四 山陰縱貫鐵道速成の請願 會議
第二十五 葉煙草葉數査定止竝國立煙草試驗場設置の請願 會議
第二十六 甲府岩淵間鐵道速成の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致シマス
〔河井書記官朗讀〕
去ル十一日本院ニ於テ修正議決シタル政府提出輸入原料砂糖戾稅法中改正
法律案ハ卽日之ヲ衆議院ニ囘付セリ
同日本院ニ於テ議決シタル〓育基金ニ關スル建議ハ文書ヲ以テ卽日之ヲ政
府ニ呈出セリ
同日議員伯爵柳澤保惠君外三名ヨリ百十八名ノ贊成ヲ以テ國勢調査施行ノ
準備ニ關スル建議案ヲ提出セリ
同日各特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
沖繩縣罹災救助基金法案特別委員會
委員長伯爵島津忠亮君副委員長子爵鍋島直彬君
衆議院議員選擧法中改正法律案(衆第八號)衆議院議員選擧法中改正法律
案(衆第九號)特別委員會
委員長伯爵松平賴壽君副委員長南郷茂光君
印紙稅法中改正法律案特別委員會
委員長子爵板倉勝達君副委員長田邊輝實君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
外國領海水產組合法中改正法律案可決報告書
民事訴訟法施行條例中改正法律案否決報〓書
質屋取締法中改正法律案否決報告書
請願文書表第七囘報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
北海道拓殖銀行法中改正法律案
軌道ノ抵當ニ關スル法律案
擔保附社債信託法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ同院提出案ヲ受領セリ
用惡水井路敷潰地買上ニ關スル法律案
醫師法中改正法律案
齒科醫師法中改正法律案
裁判所構成法中改正法律案
昨十二日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
造船奬勵法中改正法律案可決報告書
遠洋航路補助法案可決報告書
同日政府ヨリ立木ニ關スル法律案ヲ提出セリ
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
種痘法案
明治四十年度豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
明治四十年度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル
件)
明治四十年度特別會計豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
明治四十年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル
件)
明治四十年度〓國事件第二豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
明治四十年度韓國派遣部隊豫備費支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
同日衆議院ヨリ左ノ同院提出案ヲ受領セリ
農會法中改正法律案
獸畜市場法案
同日衆議院ヨリ政府提出印紙犯罪處罰法案ハ本院ノ議決ニ同意シ奏上シタ
ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
同日衆議院ヨリ本院ノ囘付ニ係ル政府提出輸入原料砂糖戾稅法中改正法律
案ハ本院ノ修正ニ同意シ奏上シタル旨ノ通牒ヲ受領セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、議事日程第一、男
爵眞木長義君、男爵川口武定君請暇ノ件、眞木男爵ハ病氣ニ付キ本月二十一
日マデ、川口男爵ハ病氣ニ付キ會期中請暇デアリマス、何レモ許可ヲ致シテ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ガナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 議事日程第二、明治四十二年度歲入歲出總豫算案
竝明治四十二年度各特別會計歲入歲出豫算案、會議、委員長報告、第三、豫算
外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、會議、委員長報告、豫算委
員長曾我子爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
明治四十二年度歲入歲出總豫算案
一明治四十二年度各特別會計歲入歲出豫算案
一豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
右衆議院ヨリ送付シタル各案ヲ審査シ總テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモ
ノナリト議決セリ依テ及報〓候也
明治四十二年三月九日
豫算委員長
子爵曾我祐準
貴族院議長公爵徳川家逹殿
〔子爵曾我祐準君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=4
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005・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 明治四十二年度歲計豫算書ハ曩ニ委員ニ付託ニナリマシ
タル後、去ヌル二月十九日委員總會ヲ開キマシテ、大體ノ質間ニ始マリマシ
タ、其大體ノ質問ノ時分ニ重要ト認メマス所ノ二三ノモノニ付イテ先ヅ報告
ヲ致シマス、豫算編製ノ大體ニ付キマシテ資金ノ繰替運用等ニ關スル數字上
ノ問題ハ甚ダ必要ナコトヽハ認メマス、豫算ヲ議スル上ニ付イテ最モ必要ナ
コトヽハ認メマスガ、今玆ニ之ヲ陳述イタシマスノハ非常ニ煩雜デ、且ツ數
字バカリノ話デアリマスニ依ッテ殆ド爲シ能ハスコトヽ思ヒマスニ依ッテ、數
字ニ係リマス所ノモノハ之ヲ略シマスノデアリマス、是ハ速記錄デ御承知ヲ
願ヒタウゴザイマス、其他廉立ッタモノノ二一一ヲ申上ゲマスレバ、地方警察
官ノ俸給ト云フモノハ甚ダ薄イモノデアル、本年司法省ノ增給ハ計上サレテ
居ルガ、警察官ノ增給ノアル模樣モ見エナイガ如何ニ政府ハ之ヲ考ヘテ居ル
カ、斯ウ云フ質問ガアリマシタ、又他ニ海外商工事務官ノ派出ト云フコトハ、
先年兩院デ建議モ通過シテ居ル次第デアル、今年モ此豫算中ニ計上ヲ見ナ
イノハ如何デアルカ、且ツ其必要ヲ懇々說カレマシタ、又或ル議員ハ國勢調
査ノ件、是ハ旣ニ勅令モ出テ三十八年ヨリ施行ノ筈デアッタガ、今日マデ延期
シテ居ル、今年ノ豫算ニモマダ是ガ計上ヲ見ナイガ、是ハ次年度ニハ御出シ
ナサルト云フ腹案ガアッテ御見合セニナッタノカト云フ、少シヒネクッタ質
問ガアリマシタ、モウ一ツハ非常特別稅ハ其名ノ如ク非常特別稅デアレバ、
稅法調査ノ結果トシテ是非トモ提出ニナルベキモノデアル、既ニ一度提出ニ
ナッタガ衆議院ニ止マッタ次第デアル今日モ提出ガ無イガ、是ハイツ提出
ニナルノデアルカ、斯ウ云フ質問デアリマス、右ノ質問ニ對シマシテハ國
務大臣ハ殆ド萬篇一律、目下ノ財政デハ財源ヲ見出サナイ、今日ノ境遇ハ財政
ノ基礎ヲ鞏固ニシ信用ヲ恢復スルノヲ第一ト致シテ居ル、稅法整理其他國家
ノ重要ナル件ハ財源ヲ見出シ次第、財政ノ許ス限リ必ズ案ヲ具シテ協賛ヲ求
ムルデアラウ、又財政整理ノ如キハ一口モ怠ラナイ、調査ノ如キハ一日モ怠
ラナイ、斯ウ云フ御答デゴザイマシタ、又日本大博覽會延期ニ付イテノ質問
モアリマシタ、是ハ評議員ニ相談モセズ斷行シタノハ勅令ヲ守ラナイノデ
無イカト云フヤウナ趣意ノ問デアリマシタガ、之ニ對シテ國務大臣ハ何分、
外交上ノ都合、諮問スベキ時機ヲ得ナカッタ、時機デナイ、時機デナイト云フ
一點張リノ答デアリマシタ、ソレカラ馬券發賣ノ質問、是ハ豫算委員デナイ
所ノ谷子爵ガ委員會ノ承認ヲ請ウテ質問サレマシタ、是ハ長〓シキ質問デア
リマシタ、其大要ハ外國ナドノ馬政ノコトヲ引イテ長イ質問ヲ致サレマシタ、
併シ結局ハ馬券ヲ許サヌ以上ハ馬匹ノ改良ハ出來得ナイト信ズルノデアルカ
ト云フ問デアリマシタ、陸軍大臣ハ之ニ對シテ馬政局ノ設置ノ當時ヨリ說キ
起サレテ、內外ノ馬ニ付イテノ事情、玆ニ十八年計畫デシタカ、ソンナモノ
モアルト云フコトヲ說カレマシテ、サウシテ結局、陸軍大臣ハ牧場ヲ保護シ
產馬ヲ奬勵シテ怠ラズンバ改良ハ出來ルト斯樣ニ申サレマシタ、尙ホ谷
子爵ハ續イテ馬劵發賣ハキット許サヌノデアルカ、馬劵ハ此後決シテ許
サヌノデアルカト云フコトヲ進ンデ問ヒマシタ、ソレニ對シテ今日ノト
コロ馬劵發賣ヲ許スト云フコトハ無イ、斯樣ニ明答サレマシタ、是等ノ
唯今ノ陸軍大臣ノ答辯ハ質問者ヲシテ甚ダ滿足セシメタヤウニ見受ケマ
シタ、又此滿足ハ我〓ニモ一分ヲ分タレマシタ、以上ノ質問ハ質問トハ申シ
ナガラ質問者ハ一ノ希望ヲ有ッテ國務大臣ノ證言ヲ求メラレタル如ク感ジマ
シタニ依ッテ、殊ニ此事ヲ諸君ニ報道シテ置キマス、其他小事件ト認メマス
モノハ一々申シマセヌ、大體ノ質問ヲ終リマシタカラ例ノ如ク各分科ニ付シ
マシタ、ソレハ三月五日ヲ審査報告ノ期限トシテ各分科ニ付シマシタ、以上
ハ正親町伯爵ノ委員長時代ノコトデアリマスガ、本員其後ヲ承ケマシタニ依ツ
テ茲ニ申述ベマス、其後分科ノ主査ハ期日通リ審査結了ノ報告ヲ致シマシテ、
ソレデ三月九日ニ又總會ヲ開キマシテ、先ヅ主査ノ報告ヲ先キニ致シマシテ、
各主査ハ審査ノ詳細ノ趣ヲ報ゼラレマシタ、サウシテ審査ノ結果、原案ノ通
リニ可決シタト申スコトヲ報ゼラレマシタ、又此報〓ト同時ニ各分科ニ於ケ
ル希望ヲ述ベラレマシタ、此各分科ノ審査ノ次第ヲ逐一御報〓ヲスレバ餘リ
長キニ過ギ、又其必要モナイト思ヒマス、ニ依ッテ各分科ニ於テ希望、各分
科ノ主査ヨリ希望トシテ述ベラレタ件々ニ付イテ少シク陳述イタシマス、第
一分科ニハ二ツノ希望ガアリマス、其一ツハ豫算編製上ノコトデアリマス、
元來豫算書ハ隨分了解ニ苦シムモノデアリ、無用ナ所モ澤山ニアルヤウデア
ル、種々ナ點ニ改良ヲ希望シテ居ルガ、今之ヲ持出スノデハナイガ、玆ニ最
モ改良ヲ要スルモノハ歲入ノ部デアル、歲入ノ目ノ明細ガ甚ダ粗漏デアル爲
ニ調査ニモ困リ、從ッテ質問モ多クナルカラ政府モ面倒デアル、コレハ是非
改良ヲ希望スルト云フ論デアリマシテ、贊成者モアリマシタ趣デアリマス、
之ニ對シテ政府ハ今後ハ分リ易イヤウニ改メマセウト云フ返答ヲサレマシ
タ、今一ツハ是モ豫算デアリマスガ、是ハ特別會計ノ帝國鐵道ノ收益勘定デ
アリマス、此說明ノ表ノ作リ方ガ甚ダ不穩當デアルト云フコトデ、是ハ以後
ハ改メラレタイト云フコトヲ希望サレマシタラ、政府ハ之ニ對シテ同意ノ意
ヲ表サレタト云フコトデアリマス、第三分科ニ於キマシテハ内務省ニ付イテ
色〓希望ガアリマシタ趣デアリマスガ、地方長官ノ人選ヲ愼ンデ貰ヒタイ、
竝ニ頻繁········地方長官ノ更迭ヲスルノガ甚ダ頻繁デアルガ、是モ必要已ムヲ
得ヌナラ勿論彼レ是レ申ス譯デハナイガ、格別必要デナイトキニモ更迭ガア
ルガ、以後ハ之ヲ愼ンダラ宜カラウト云フ希望デアリマシタ、之ニ對シテ内
務大臣ハ同意ヲ表サレマシタ趣デアリマス、今一ツハ地方長官ノ交際費ハ、
或ル所ニハ遣リ或ル所ニハ出ナイト云フヤウナ譯デ甚ダ偏頗ニアル、此偏頗
ノ無イヤウニ希望スルト云フコトデアリマス、又同分科ニ於テ文部省ノ件ニ
付イテモ希望ガアリマス、卽チ或ル地方デハ、貯金奬勵ト稱シテ小學校ノ生
徒ニ貯金ヲ强制スル趣デアルガ、是ハ一利一害デアラウ、當局者ニ於テハ十
分ニ此事ニ就イテハ調查········慎重ニ調査スルノ必要ガアラウト思フカラ、ド
ウゾ十分ニ愼重ナル調査ヲサレムコトヲ希望スルト云フコトデアリマス、此
一事ハ豫算總會ニ於テ主査カラ報告サレタノデハアリマセヌガ、分科會ノ速
記錄ニハ留マッテ居ル、サウシテ主査ヨリ特ニ手紙ヲ以テ此席デ述ベテ吳レ
イト云フ依賴デアリマシタカラ、此一事ヲ附加ヘテ置キマス、又農商務省ニ
付キマシテ希望ガアリマシタ、ソレハ製材所ニ關スルコトデ、今官デ伐ル所
ノ材積、材木ノ積デアリマス、此材積ハ年々五百万尺〆餘デアル趣デアルガ、
是ガ今日ノ情態ニ照シテ果シテ適當デアルヤ否ヤ、或ハ多過ギハシナイカ、
又ハ少ナキニ過ギルデハナイカ、是ハ十分ニ調査ヲ希望スルト云フ希望デア
ル、今一ツハ製材所ヲ今度貸渡スト云フ案ガ出テ、ソレハ衆議院デ否決ニナッ
タガ、是ハ貸渡スヨリモ寧ロ賣渡ス方ガ相當デハナイカ、其利害得失ハドン
ナモノデアルカ、是ハ十分ニ調査ヲシテ次囘ニ提出スルコトヲ希望スルト云
フ希望、其他實業〓育ノコトニモ希望ガアリマシタサウデアリマス、是ハ文
部省ニ生徒ノ〓育ヲスルガ如ク又農商務省ニ於テモ講習所ト云フモノガアッ
テ生徒ヲ〓育スルヤウニナッテ居ル、此兩省ノ方針ガ矛盾スルコトハ無イカ、
宜シク政府ハ氣ヲ付ケタラ宜カラウト云フ希望デアリマシタ、又同分科ハ遞
信省ノ部ニ付イテモ希望ガアリマス、ソレハ金銀採掘ノ奬勵ハ目下ノ急務デ
アル、大鑛山主ハ己レ自ラ製鍊所ヲ造ルコトモ出來ルガ、小鑛山主ニナルト
自ラ製鍊所ヲ設クルコトハ殆ド出來ナイコトデアル、故ニ小鑛山主ノ便利ヲ
計ッテ製鍊所ト云フモノヲ特ニ作ッテ置イテ、小鑛山主ガ掘出シタ所ノ鑛石
ヲ以テ直チニ之ヲ分析スルヤウニナッタナラバ、金銀鑛ノ採掘ガ益〓盛ニナ
リ、國家ノ需要ヲ充タスヤウニナルデハナイカ、政府ハ此點ニ就イテ十分ノ
調査ヲ望ムト云フ希望デアリマシタ、又遞信省ニ付キマシテ一ツノ希望ガア
ル、モウ一ツノ希望ガアリマス、ソレハ電話速成料ヲ取切リニスルノハ餘リ
ヒドイヤウデアル、何トカ方法ヲ立テ、若干年ニ速成料ヲ返スト云フ方法ヲ
採ッタラ宜カラウ、是ハ外國デモ其例ガアルカラ、ドウカサウナルコトヲ希
望スルト云フコトデアリマス、各分科ノ希望ハ大略斯ノ如キモノデアリマ
ス、ソレヨリ大體ニ就キマシテ質問又ハ意見ノ陳述トナリマシタガ、是ニモ
亦色〓重要ナル質問ガ出マシタ、其重要ナルモノヽ二三ヲ擧ゲマスレバ、第
一ニ現政府ノ方針ハ、財政ニ於ケル方針ハ自分ハ甚ダ贊成スル所デアル、サ
リナガラ一國ノ財政ハ國ノ經濟界ト相俟ヲテ行カナケレバナラヌモノデアル、
然ルニ近來實業界ノ有樣ヲ見ルニ甚ダ杞憂ニ堪ヘヌモノガアル、現ニ大會社
ニシテモ甚ダ不都合ニ見エルモノガアル、是ハ實ニ杞憂ニ堪ヘヌノデアルガ、
之ニ付イテ政府ハ何ト考ヘテ居ラルヽカ、之ニ對シテ何トカ考ヘラレテ居ル
カト云フ質問ガアリマシテ、ソレニ相當ナル國務大臣ノ返答ガアッテ、質問
者ハ尙ホ進ンデ、大會社ノ重役ナル者ガ脫稅ヲ圖ッタトカ、虛僞ノ帳簿ヲ拵
ヘテ株主ニ配當ヲ多クシタヤウナ事柄ガアルヤウニ聞エルガ、其重役ハ其行
爲ヲ自ラ耻ヅルドコロデナク、或ル雜誌ニ公然自白ヲ載セテ居ル、是ハ實ニ
眼中ニ法律ナク、傍若無人ノ有樣デアルガ、政府ハ是等ニ對シテ何ト處分ス
ル積リデアルカ、ト云フ問デアリマシタ、之ニ對シテハ國務大臣ガ速記ヲ止
メテ之ニ對スル處分竝ニ決心ヲ詳ニ答ヘニナリマシタ、併シ是ハ惜イカナ速
記ヲ止メタコトデアリマスカラ、玆デ御報告ハ致シ兼ネマス、第二ハ稅法ノ
改正ト云フコトデ、是ハ成ルベク速ニ決行ニナルコトヲ切望スルト云フ趣意
デアリマシテ、非常特別稅ハ永ク存在セシムベキモノデナイト云フコトヲ說
カレマシタ、喋々說カレマシテ政府ノ考慮ヲ促サレマシタ、ソレヨリ各省ノ
部ノ議事ニ順序ニ入リマシタ、政府ハ衆議院ノ修正ニ對シテハ一切ニ復活ヲ
希望セヌト云フコトハ豫ネテ明言ヲサレテ居リマシタ、又各分科ニ於テモ、
主査ノ報〓ニ依リマスレバ、各分科ノ調査ニ於テモ、ドノ分科モ一ツモ修正
論ハ出ナカッタ趣デアリマス、卽チ原案通リ可決サレタ趣デアリマス、政府
ハ衆議院ノ修正ノ復活ヲ望マズ、各分科ニ於テハ原案通リ可決シマシタト云
フ譯デアリマスニ依ッテ、議事ニカヽリマシテカラハ一瀉千里ノ勢ヲ以テ進
行シマシタ、サリナガラ其中ニチヨイ〓〓出マシタ所ヲ申セバ、一ノ委員ハ
外務省デ宴會費ノ增加ヲ望ムト云フ說、ソレカラ他ノ一委員ハ內務省ノ部デ
神社ノ合併ヲスルト云フヤウニ見エルガ、是ニハ不同意ト云フ說、ソレカラ
官吏ノ旅費ガ餘リ少ナ過ギテ實費ヲ償フニ足ラヌ、旅費規則ヲ改正セヨ、ト
云フ希望ヲ分科會ニ於テ述ベタト云フコトヲ、其席ニ於テ御述べニナリマシ
タ、某委員ハ大藏省ノ第二款第八項目ノ中ノ衆議院附屬舍、卽チ虎ノ門倶樂
部ノ件、之ニ付イテ政府委員ト度〓ノ問答ガアリマシタ、是ハ別ニ········問答
ガアッタマデノコトデアリマシタ、臺灣總督府ノ所ニ於キマシテ〓育費ニ付
イテ希望ヲ其席デ陳述サレタ委員モアリマシタ、其位ナコトデ、前ニ中上ゲ
マシタ通リ一瀉千里ノ勢ヲ以テ總豫算、各特別會計歲入歲出豫算、豫算外國
庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件トモ全部、衆議院修正通リ可決ニ
ナリマシタ、此段御報告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=5
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006・柳原義光
○伯爵柳原義光君 委員長ニ質問イタシタウゴザイマスガ宜シウゴザイマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=7
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008・柳原義光
○伯爵柳原義光君 唯今ノ御說明ノ中ニ、虎ノ門倶樂部ノコトニ付イテ御問
答ガアッテ其儘デアッタト云フ御報告デアリマシタガ、ドウモ私ニハ能ク呑
込メマセヌガ、モ少シ委シク條理ノ立ツヤウニ御話ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=8
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009・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 其問答ヲ悉ク一字一句違ハヌヤウニ申上ゲルト云フコト
ハ出來マセヌガ
〔伯爵柳原義光君「要領ダケデ宜シウゴザイマス」ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=9
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010・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 要領ト仰セラレマスレバ、虎ノ門倶樂部ノコトハ大藏省
ノ第二款營繕費ノ中ニアリマス、ソレニ付イテハ分科會ニ於キマシテモ議論
ガアリマシタ、度〓政府委員ノ說明ヲ求メマシタガ、何ヤラ公私混淆ラシク
見エルト云フコトデ、甚ダ要領ヲ得マセヌデシタ、分科會ニ於テ決議ノ時分
ニ、大藏大臣ニ一委員ガ尙ホ問ハレマシタ、大藏大臣ハ道路改正ノ結果トシ
テ衆議院ノ內ガ虎ノ門ノ方ニ廣クナッタ、其地面ノ中ニ或ル私人ニ家ヲ建テ
サセ、ソレヲ衆議院ガ借リテ其內ヲ裝飾スル爲ノ豫算デアル、謂ハバ造作付
カズノ借家ト云フ譯ニナル、ソレナラバ公私混淆ト云フ譯、テモナイ、政府ガ
家ヲ借リテ惡ルイト云フコトモ無カラウカラ、其造作ノ金ナラバト云フノデ、
議論ナシデ可決イタシマシタ
〔伯爵柳原義光君「ソレデハ家ヲ返ストキハ其造作ハ御取返シニナル
譯デスカ」ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 柳原伯爵ニ申シマスガ、御相對ノ御話ハ御斷リ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=11
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012・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 返ストキニ、ドウスルト云フコトハ調査イタシマセヌデ
シタ、ナカナカ急ニ返ス必要モ無イヤウニ思ヒマシタカラ········併シ御入用ナ
ラバドウゾ政府委員ニ御尋ネヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際、議題ト致シマスノハ議事日程第二ノ豫算案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御發議モ無イト認メマスカラ採決イタシマ
ス、明治四十二年度歲入歲出總豫算案全部、豫算委員長ノ報〓ヲ可トセラル
諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明治四十二年度各特別曾計歲入歲出豫算案是モ
豫算委員長ノ報〓ヲ可トスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ハ豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要
スル件ヲ議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 全部豫算委員長ノ報告通リデ御異存ノ無イ諸君ノ
起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第四、明治四十一年法律第九號中改正法
律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
〔東久世書記官朗讀〕
明治四十一年法律第九號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十二年三月九日
衆議院議長長谷場純孝
貴族院議長公爵德川家達殿
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
明治四十一年法律第九號中改正法律案
明治四十一年法律第九號ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ土地賣却ニ依リ新營費ニ相當スル金額ヲ得ル能ハサル場合ニ於テハ
繰入金ノ不足額ハ學校及圖書館資金中ノ他ノ部分ヨリ之ヲ補充スルコトヲ
得
〔政府委員岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=21
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022・岡田良平
○政府委員(岡田良平君) 唯今議題ニナッテ居リマス明治四十一年法律第九
號中ノ改正ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、明治四十一年法律第九號ハ旣ニ御承
知アラセラレマス通リニ文部省所屬ノ不用地ヲ賣却イタシマシテ其代金ヲ以
テ學校ノ設立ニ供スルト云フ案デゴザイマス、其法律ニ基キマシテ既ニ不用
地ノ大部分ハ處分ヲ終ヘマシテ、其費用ヲ以テ既ニ建築ニ著手ヲ致シテ居ル
ノデアリマスガ、其不用地ノ內ノ一部分、卽チ一ツ橋ノ外ニアリマスル所ノ
高等商業學校鄰地ノ一筆ガ未ダ處分ヲ終ルコトガ出來マセヌノデアリマス、
卽チソレハ豫定ノ價格ヲ以テ賣却スルコトガ出來マセヌノデ、今一ツニハ將
來此高等商業學校ヲ擴張スルニ當リマシテ、其鄰地ニ適當ナル地面ガ、唯今
アルノニ、之ヲ賣却イタシマシタトキニハ此擴張ニ差支ヘルト云フ虞ガアリ
マスノデ、旁イタシマシテ此土地ノ賣却ヲ見合セマシテ、高等商業學校ニ
アリマスル所ノ基本金ヲ以テ此土地ト交換ヲ致サウト云フ趣旨ヲ以テ此改正
案ヲ提出イタシマシタ次第デアリマス、何卒御協賛ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=22
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023・伊澤修二
○伊澤修二君 質問イタシタイデスガ、其資金ト云フノハ如何ナル性質ノ資
金デアリマスカ、ソレヲチヨット承リタイ
〔政府委員岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=23
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024・岡田良平
○政府委員(岡田良平君) 是ハ高等商業學校ニ屬シテ居リマスル所ノ基金デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第五ニ移リマス、北海道拓殖銀行法中改
正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、議案ノ朗讀ハ省略シテ御異存
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之
ニ傚フ〕
北海道拓殖銀行法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十二年三月十一日
衆議院議長長谷場純孝
貴族院議長公爵德川家達殿
北海道拓殖銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中左ノ通改正ス
第十二條乃至第十四條及第二十條中「第七條第一號ニ依ル貸付金」ヲ「年賦
償還貸付金」ニ改ム
第二十六條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ期限經過後仍五箇年間ハ北海道拓殖銀行ハ前條政府ノ引受ケタル
株式ニ對スル配當金ヲ悉皆準備金ニ繰入ルヘシ
〔政府委員若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=26
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027・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 此北海道拓殖銀行法ノ改正案ハ二ツノ點カラ改
正ニナリマスノデ、一ツハ同銀行ガ發行イタシマス社債ノ高ヲ定メマスル基
礎ニナリマス年賦償還貸付金ノ內ニ公共〓體へ貸付ケマスコトヲ加ヘヤウト
云フノガ一點デアリマス、今一點ハ北海道拓殖銀行ノ株式ヲ政府ガ持ッテ居
リマス、之ニ對シテ唯今デハ配當ヲ受ケナイコトニナッテ居リマスガ、明年
ノ六月限リデ此無配當ト云フコトハ無クナルノデアリマス、此無クナリマシ
タ後更ニ五年間政府ヘ配當スベキ筈ノ金ハ同銀行ノ積立金ニサセヤウト云フ
ノガ改正ノ第二點デアリマス、第一點ノ改正ノ趣意ハ此法律ノ出來マシタ當
時ハ北海道ノ町村ハマダ自治團體ニナッテ居ラナカッタノデアリマスガ、其
後北海道ノ町村ガ皆自治團體ニナリマシタニ付イテ是等ノ公共團體ガ拓殖銀
行カラ年賦償還ヲ以テ借入金ヲナシマスコトガ段々起ッタノデアリマス、旣
ニ年賦償還ノ借入金デアリマス以上ハ、社債ノ見返リ擔保ニシテ、ソレダケ
ノ物ハ發行額ヲ多クシテ宜シイ勘定デアリマスカラ、此點ヲ一ツ改正スルノ
デアリマス、第二點ハ同銀行ガ北海道ノ拓殖上ノ金融機關トシテノ任務ヲ盡
シマスニ付イテハ、マダ此後同銀行ノ働クベキ部分ハ澤山アルノデアリマ
ス、付イテハ此政府ノ持ッテ居リマス株ニ對シテ配當スベキモノニナッテ居
リマス其配當ニ充ツベキモノヲバ、尙ホ五年間同銀行ノ積立金ヘ積立テサセ
マシテ、其基礎ヲ固クスル必要アリト云フノデ、第二點ノ改正ヲ致スノデア
リマス、ドウゾ御審査ノ上ニ御協賛ヲナシ下サルヤウニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第六ニ移リマス、軌道ノ抵當ニ關スル法
律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
軌道ノ抵當ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十二年三月十一日
衆議院議長長谷場純孝
貴族院議長公爵德川家達殿
軌道ノ抵當ニ關スル法律案
第一條軌道ノ抵當ニ關シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外鐵道
抵當法ヲ準用ス
第二條軌道財團ハ左ニ揭クルモノニシテ軌道財團ノ所有者ニ屬スルモノ
ヲ以テ之ヲ組成ス
一軌道線路其ノ他ノ軌道用地及其ノ上ニ存スル工作物竝之ニ屬スル器
具機械
二工場、倉庫、廐舍、發電所、變壓所、配電所、事務所、舍宅其ノ他
工事又ハ運輸ニ要スル建物及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具機械
三用水ニ關スル工作物及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具機械
四軌道用通信、信號又ハ送電ニ要スル工作物及其ノ敷地竝之ニ屬スル
器具機械
五前四號ニ揭ケタル工作物ヲ所有シ又ハ使用スル爲他人ノ不動產ノ上
ニ存スル地上權、登記シタル賃借權及前四號ニ揭ケタル土地ノ爲ニ
存スル地役權
六車輛及馬匹竝之ニ屬スル器具機械
七保線其ノ他ノ修繕ニ要スル材料及器具機械
軌道營業者カ軌道ニ要スル電氣ノ餘力ヲ以テ電氣供給ノ業ヲ營ム場合ニ
於テハ其ノ供給ノ爲要スル第二號乃至第五號及第七號ニ揭ケタルモノヲ
軌道財團ニ屬セシムルコトヲ得
第三條公共團體カ軌道及附屬物件ヲ買上ケタル場合ニ於テハ鐵道抵當法
第二十六條ノ規定ヲ準用ス
特許ニ附シタル條件ニ依リ軌道財團ニ屬スルモノヲ無償ニテ國又ハ公共
團體ニ引渡スヘキトキハ其ノ財團ヲ目的トスル抵當權ハ消滅ス
第四條軌道營業者カ株式會社ニ非サル場合ニ於ケル軌道ノ抵當ニ關シテ
ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員山之内一次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=28
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029・山之内一次
○政府委員(山之内一次君) 唯今議事日程ニ上ボッテ居リマス所ノ軌道ノ抵
當ニ關スル法律案ヲ提出イタシマシタ理由ノ大體ヲ御說明申上ゲヤウト思ヒ
PV、御承知ノ通リ鐵道ノ抵當ニ付キマシテハ曩ニ帝國議會ノ協贊ヲ經マシ
テ既ニ法律ニナッテ居リマス、然ルニ軌道條例ニ依リマス所ノ〓道ハ、其性
質其效用ノ上カラ申シマシテモ、鐵道ト殆ド類似シタモノデゴザイマシテ、
其線路、ソレカラ車輛其他ノ各種ノ物件ヲ綜合一括シナケレバ其效用ヲ完ウ
シ、又其眞價ヲ定メルコトガ出來ナイ性質ノモノデアリマス、然ルニモ拘リ
マセズ此軌道ノ抵當ニ付キマシテハ未ダ何等特別ノ法律ノ制定モゴザイマセ
ヌノデ、資金ノ供給上ニ付キマシテ尠ナカラザル不便ヲ感ジテ居ルノデアリ
すゞ、ソレ故ニ今此法律ニ依リマシテ軌道財團ノ設定ヲ認メマシテ、抵當權
ノ效力デアリマスルトカ、或ハ其執行ノ手續デアリマストカ、其他ノ事ニ付
キマシテハ皆此鐵道抵當法ヲ準用スルコトニ致シマシテ、ドウシテモ準用ノ
出來ナイ分ダケヲ此法律ニ揭ゲマシタ次第デアリマス、サウシテ結局、軌道
ニ關シマスル所ノ資金融通ヲ圓滿ニシテ益此此道ノ進步發達ヲ圖リタイト
云フ精神ニ外ナラヌ次第デアリマス、尙ホ詳細ノコトハ委員會デ御說明ヲ致
シマスルケレドモ、大體右樣ナ次第デゴザイマスカラ、宜シク御協賛アラム
コトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第七、擔保附社債信託法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會
擔保附社債信託法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十二年三月十一日
衆議院議長長谷場純孝
貴族院議長公爵德川家達殿
擔保附社債信託法中改正法律案
擔保附社債信託法中左ノ通改正ス
第四條ニ左ノ一號ヲ加フ
八軌道抵當
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員山之內一次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=30
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031・山之内一次
○政府委員(山之内一次君) 唯今ノ日程ニ上ボッテ居リマス擔保附社債信託
法中改正法律案ニ付キマシテハ、是ハ軌道抵當法ヲ拵ヘマスルニ付キマシテ
必要ナモノデアリマシテ、極ク單純ナモノデアリマスカラ、特ニ御說明スル
ダケノ必要ハ無カラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第六ト第七トノ法案ハ同一委員デ宜カラ
ウト考ヘマスガ、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第八、立木ニ關スル法律案、政府提出、
第一讀會
立木ニ關スル法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治四十二年三月十二日
內閣總理大臣侯爵桂太郞
農商務大臣男爵大浦兼武
司法大臣子爵岡部長職
立木ニ關スル法律案
第一條本法ニ於テ立木ト稱スルハ一筆ノ土地又ハ一筆ノ土地ノ一部分ニ
造林ノ目的ヲ以テ生立セシムル樹木ノ集團ニシテ其ノ所有者カ本法ニ依
リ所有權保存ノ登記ヲ受ケタルモノヲ謂フ
第二條立木ハ之ヲ一箇ノ不動產ト看做ス
立木ノ所有者ハ土地ト分離シテ立木ヲ讓渡シ又ハ之ヲ以テ抵當權ノ目的
ト爲スコトヲ得
土地所有權又ハ地上權ノ處分ノ效力ハ立木ニ及ハス
第三條立木ノ所有者ハ立木カ抵當權ノ目的タル場合ニ於テモ當事者ノ協
定シタル施業方法ニ依リ其ノ樹木ヲ採取スルコトヲ妨ケス
第四條立木ヲ目的トスル抵當權ハ前條ノ規定ニ依ル採取ノ場合ヲ除クノ
外其ノ樹木カ土地ヨリ分離シタル後ト雖其ノ樹木ニ付之ヲ行フコトヲ得」
抵當權者ハ債權ノ期限ノ到來前ト雖前項ノ樹木ヲ競賣スルコトヲ得但シ
其ノ競落代金ハ之ヲ供託スヘシ
樹木ノ所有者ハ競賣ヲ爲スヘキ地ノ區裁判所ニ相當ノ擔保ヲ供託シテ競
賣ノ免除ヲ申立ツルコトヲ得
第一項ノ規定ハ民法第百九十二條乃至第百九十四條ノ規定ノ適用ヲ妨ケ
ス
第五條立木カ土地ノ所有者ニ屬スル場合ニ於テ其ノ土地又ハ立木ノミカ
抵當權ノ目的タルトキハ抵當權設定者ハ競賣ノ場合ニ付地上權ヲ設定シ
タルモノト看做ス但シ其ノ存續期間及地代ハ當事者ノ請求ニ依リ地方ノ
慣習ヲ斟酌シテ裁判所之ヲ定ム
第六條立木カ地上權者ニ屬スル場合ニ於テ其ノ地上權又ハ立木ノミカ抵
當權ノ目的タルトキハ抵當權設定者ハ競賣ノ場合ニ付地上權ノ存續期間
內ニ於テ其ノ土地ノ賃貸借ヲ爲シタルモノト看做ス但シ其ノ存續期間及
借賃ニ付テハ前條但書ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ地上權ノ存續期間ノ定ナキトキハ其ノ期間ハ當事者又
ハ賃借人ノ請求ニ依リ地方ノ慣習ヲ斟酌シテ裁判所之ヲ定ム
民法第六百四條及第六百十二條ノ規定ハ第一項ノ賃貸借ニ之ヲ適用セス
第七條前條ノ規定ハ轉貸ヲ爲スコトヲ得ル土地ノ賃借人ニ屬スル立木カ
抵當權ノ目的タル場合ニ之ヲ準用ス
第八條地上權者又ハ土地ノ賃借人ニ屬スル立木カ抵當權ノ目的タル場合
ニ於テハ地上權者又ハ賃借人ハ抵當權者ノ承諾アルニ非サレハ其ノ權利
ヲ抛棄シ又ハ契約ヲ解除スルコトヲ得ス
第九條立木カ抵當權ノ目的タル場合ニ於テ其ノ所有者カ樹木ノ運搬ノ爲
土地ヲ使用スル權利ヲ有スルトキハ立木ノ競落人ハ其ノ權利ヲ行使スル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ相當ノ對價ヲ支拂フヘシ
前項ノ規定ハ水ノ使用ニ關スル權利ニ之ヲ準用ス
第十條第二條第三項及第三條乃至第九條ノ規定ハ先取特權ニ之ヲ準用ス
第十一條土地又ハ地上權カ質權ノ目的タル場合ニ於テハ其ノ土地ニ生立
スル樹木ニ付所有權保存ノ登記ヲ爲スコトヲ得ス
第十二條各登記所ニ立木登記簿ヲ備フ
不動產登記法第十四條第二項及第十九條ノ規定ハ前項ノ登記簿ニ之ヲ準
用ス
第十三條立木登記簿ハ一箇ノ立木ニ付一用紙ヲ備フ
第十四條立木登記簿ハ其ノ一用紙ヲ登記番號欄、表題部及甲乙ノ二區ニ
分チ表題部ニ表示欄、表示番號欄ヲ設ケ各區ニ事項欄、順位番號欄ヲ設
ク
登記番號欄ニハ各立木ニ付登記簿ニ始テ登記ヲ爲シタル順序ヲ記載ス
表示欄ニハ立木ノ表示ヲ爲シ及其ノ變更ニ關スル事項ヲ記載シ表示番號
欄ニハ表示欄ニ登記事項ヲ記載シタル順序ヲ記載ス
甲區事項欄ニハ所有權ニ關スル事項ヲ記載ス
乙區事項欄ニハ先取特權及抵當權ニ關スル事項ヲ記載ス
順位番號欄ニハ事項欄ニ登記事項ヲ記載シタル順序ヲ記載ス
第十五條登記ノ申請書ニハ不動產登記法第三十六條ニ揭ケタル事項ノ外
左ノ事項ヲ記載スヘシ
一樹木カ一筆ノ土地ノ一部分ニ生立スル場合ニ於テハ其ノ部分ノ位置
及段別、其ノ部分ヲ表示スヘキ名稱又ハ番號アルトキハ其ノ名稱又
ハ番號
二樹種、數量及樹齡
第十六條不動產登記法第百六條及第百七條ノ規定ハ所有權保存ノ登記ニ
之ヲ準用ス
第十七條所有權保存ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ保存登記ニ付土地
ノ登記簿上利害ノ關係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又
ハ之ニ代ルヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第十八條旣登記ノ土地ニ生立スル樹木ニ付所有權保存ノ登記ノ申請アリ
タル場合ニ於テ土地ノ登記用紙中土地又ハ地上權ヲ目的トスル先取特權
又ハ抵當權ノ登記アルトキハ立木登記簿ニ其ノ登記ヲ轉寫スヘシ但シ其
ノ登記ニ抵當權カ樹木ニ及ハサル旨ノ記載アルトキハ此ノ限ニ在ラス
不動產登記法第八十三條第一項及第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
ス
第十九條旣登記ノ土地ニ生立スル樹木ニ付所有權保存ノ登記ヲ爲シタル
トキハ土地ノ登記用紙中表示欄ニ立木ノ登記番號ヲ記載シ登記官吏捺印
スヘシ立木ノ區分ノ登記ヲ爲シタルトキ又ハ立木ノ存スル土地ニ付所有
權保存ノ登記ヲ爲シタルトキ亦同シ
立木ノ登記用紙ヲ閉鎖シタルトキハ前項ノ規定ニ依リテ記載シタル登記
番號ヲ朱抹シ登記官吏捺印スヘシ
第二十條立木ノ分合若ハ滅失アリタルトキ又ハ第十五條第一號及第二號
ニ揭ケタル事項ニ變更アリタルトキハ所有權ノ登記名義人ハ遲滯ナク其
ノ登記ヲ申請スヘシ但シ樹木ノ發生若ハ成長又ハ第三條ノ施業方法ニ依
ル變更ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
立木ノ存スル土地ノ地目、字、番號又ハ段別ニ變更アリタルトキ亦前項
三四)
不動產登記法中建物ノ滅失及其ノ表示ノ變更ノ登記ニ關スル規定ハ前二
項ノ登記ニ之ヲ準用ス
第二十一條立木ヲ目的トスル抵當權設定ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ
申請書ニ不動產登記法第百十七條ニ揭ケタル事項ノ外施業方法ヲ記載ス
ヘシ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員河村讓三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=34
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035・河村讓三郎
○政府委員(河村讓三郞君) 本案ハ曩ニ一トタビ提出イタシマシタコトガゴ
ザイマス、其後十分取調ヲ致シマシテ、修正ヲ加ヘタモノデアリマス、修正
イタシマシタ要點ハ、本案ノ適用ヲ造林ノ目的トスルモノニ限リマシタノデ
ゴザイマス、造林デアリマスレバ、稍正確ニ其物件ノ表示ヲ登記簿ノ上ニ
記載スルコトガ出來マスルノデアリマス、又罰則ハ此案ヨリ除キマシタ、是
ハ刑法ニ相當ノ規定ガ出來マシタ故ニ、此案ニハ加ヘマセヌコトニ致シマシ
タノデゴザイマス、立木ヲ土地ト分離シテ抵當ノ目的ト致シテ金融ノ途ヲ開
クコトハ林業ノ發達改良上ニ必要ナリト認メテ居リマス、御審議ノ上、御協
贊ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第九、外國領海水產組合法中改正法律案、
政府提出、第一讀會ノ續、特別委員長報告、委員長寺島伯爵
外國領海水產組合法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
明治四十二年三月十一日
右特別委員長
伯爵寺島誠一郞
貴族院議長公爵徳川家達殿
〔伯爵寺島誠一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=36
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037・寺島誠一郎
○伯爵寺島誠一郞君 唯今ノ日程ニ上ボリマシタ外國領海水產組合法中改正
法律案特別委員會ノ審査ノ經過ト結果ヲ御報道イタシマス、外國領海水產組
合法ト申スノハ、明治三十五年ニ出來マシタ法律デアリマシテ、此法律ニ依
ッテ外國ノ領海ニ於テ漁業等ニ從事スル帝國臣民ハ水產組合ヲ組織スルコト
ガ出來ルト云フコトヲ規定シタルモノデアリマス、而シテ其第四條ニ「組合
ノ區域内ニ於テ組合員ト同一ノ業ヲ營ム者ハ其ノ組合ニ加入スヘシ」ト强制
的ニ其業務ニ從事スル者ハ此組合ニ加入シナケレバナラヌト云フコトヲ決メ
テゴザリマス、但書モゴザイマスケレドモ、是ハ左ホド必要ガゴザイマセスカ
ラ讀ミマセヌ、ソレカラ第五條ニ」組合ノ設置アリタルトキハ組合、組合聯合
會又ハ組合員ノ名ヲ以テスルノ外他人ノ名義ニ依ルト他人ニ雇ハルル者トヲ
問ハス組合ヲ組織セル營業者ト同一種類ノ營業ニ從事スルノ目的ヲ以テ組合
ノ營業區域ニ渡航シ又ハ船舶若ハ漁具ヲ廻送スルコトヲ得ス」但書ガアリマ
スケレドモ、是ハ左ホド要ハゴザイマセヌカラ讀ミマセヌ、斯ノ如ク此組合
員デナケレバ外國ノ領海ニ出テ漁業等ニ從事スルコトハ出來ナイノミナラ
ズ、組合員デナケレバ外國ノ領海ニ出テ、外國ノ漁業者ニ雇ハレテ此業務ニ
從事スルコトモ禁ジテアルノデゴザイマス、デ卽チ言葉ヲ換ヘテ申シマスレ
バ、是等ノ組合外ノ者ハ大ニ其自由行動ヲ執ルコトヲ禁ゼラレテ居ルノデア
リマス、ソレカラ其次ノ條、第六條ニハ此唯今讀ミマシタ第四條第五條ニ記
載シテアリマスルコトニ對シマスル制裁ヲ揭ゲタノデ、第四條ノ違反者ニ對
シテハ五十圓ト云フ過料、ソレカラ同時ニ其組合員デナイ人〓ガ此第五條ニ
揭ゲテアル規定ニ違反シタル場合ニハ金五千圓ト云フ甚ダ重キ過料ヲ科スト
云フコトヲ揭ゲテアルノデアリマス、ソレデ一方ニ於テハ斯ノ如ク我ガ臣民
ノ側ニ對シテ甚ダ嚴シキ規則ヲ拵ヘテアルト同時ニ、他方ニ於テハ卽チ外國
ノ方ノ········其對手方ノ外國領海ノ主權國ノ側カラ見マスレバ、漁業ニ必要デ
アル所ノ日本ノ漁業者ヲ使用シテ其業務ニ從事シテ行クコトガ出來ナイト云
フコトヽソレカラ我邦ノ極ク整頓シテアル所ノ漁具デアルトカ或ハ又船舶
ト云フモノヲ使用スルコトガ出來ナイヤウニ、之ガ爲ニ規定サレテ居ルノデ、
甚ダ彼ノ方ニ於テモ不都合ヲ感ズル次第デアリマス、デ何ガ故ニ斯ウ云フヤ
ウナ不思議ナ奇々怪々タル條文ヲ拵ヘテ、嚴重ニ取締ッタカト云フコトハ其
當時ノ情態ガ然ラシメタノデアッテ其時ノ有樣ハ我邦ニ於テ斯ノ如キ敵對ノ
心持ヲ有ッタ規定ヲ拵ヘテ彼ニ對スルト云フ必要ガ存シテ居ッタノデアリマ
シテ、ソレハ此議會ニ於ケル多數ノ御方ハ勿論御承知デゴザリマセウガ、其
當時議會ハ勿論、政府、ソレカラ又民間ニ於ケル所ノ斯業ニ關係ヲ持ッテ居ル
實業者等モ全然一致ヲ以テ斯ノ如キ規定ヲ設クルコトニナッテ居ッタノデゴ
ザイマス、デ併ナガラ今日ノ有樣ハドウデアルカト申シマスト、局面ハ一轉
シテ仕舞ヒマシテ漁業上ノ關係ヲ持ッテ居ル外國トノ協約ガ出來テ、サウシ
テ其協約ニ伴ッテ起ッテ來ル所ノ細カイ事項ヲ規定スル所ノ協定モ成立ッテ
居ルノデ、斯業ニ從事スル所ノ帝國臣民ハ彼トノ關係ヲ圓滿ニシテ段々將來
此業ノ發展ヲ望マレツヽアル際ナノデアリマシテ、是等ノ舊イ第四條カラ起
ッテ來ル所ノ第五條ノ如キ法文ヲ設ケテ、以前ノ如ク嚴シク拘束シテ置ク必
要ハ全然無クナッタノデアリマス、ソレデアリマスカラシテ、第五條ヲ削除
スルト云フコトヽソレカラ第四條ニ對スル制裁ノ五十圓デアッタト云フノ
ト、元ノ第五條ニ對スル所ノ制裁五千圓トヲ極ク能ク考ヘテ、其結果トシテ
第六條ニ今度ハソレヲ變更シテ、千圓ダケノ過料ヲ科スルト云フコトニ直シ
タ、デ是等ガ政府委員カラ聞キマシタ所ノ理由デアリマシテ、委員會ハ是等
ノ理由ニ考慮ヲ加ヘテ、誠ニ適當ノモノデアルト認メマシタカラシテ、殆ド
討論ノ必要ナクシテ、一致ヲ以テ可決シタ次第デゴザリマスデ、チヨット是
ダケ御報告イタシマス、併セテ申述ベテ置キマスルノハ、此案ハ至ッテ簡明
ナ案デアリマシテ委員會デモ討論ナクシテ可決シタ次第デアリマスカラ、本
會ニ於キマシテモ讀會ヲ省略シテ直チニ可決アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=37
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038・村田保
○村田保君 讀會省略ヲ贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=38
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039・大久保忠順
○子爵大久保忠順君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=39
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040・大木遠吉
○伯爵大木遠吉君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=40
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041・田中芳男
○田中芳男君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=41
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042・板倉勝達
○子爵板倉勝達君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=42
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043・南郷茂光
○南〓茂光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=43
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044・本多忠敬
○子爵本多忠敬君 讀會省略ニ贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=44
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045・吉井幸藏
○伯爵吉井幸藏君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=45
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046・伊澤修二
○伊澤修二君 贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 寺島伯爵ノ讀會省略ノ動議ニハ成規ノ賛成者ガア
ッタト認メマス、讀會省略ヲ可トセラレル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 原案特別委員長ノ報〓通リデ御異存ハゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十、國債ノ利子所得稅免除ニ關スル法
律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、第十一、登錄國債ノ擔保充用
ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、第十二、政府ニ對ス
ル保證金其ノ他ノ擔保ニ供シタル國債ノ買入銷却ニ關スル法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、委員長大原伯爵
國債ノ利子所得稅免除ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
明治四十二年三月十日
右特別委員長
伯爵大原重朝
貴族院議長公爵德川家達殿
登錄國債ノ擔保充用ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
明治四十二年三月十日
右特別委員長
伯爵大原重朝
貴族院議長公爵德川家達殿
政府ニ對スル保證金其ノ他ノ擔保ニ供シタル國債ノ買入銷却ニ關スル法
律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
明治四十二年三月十日
右特別委員長
伯爵大原重朝
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵大原重朝君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=51
-
052・大原重朝
○伯爵大原重朝君 唯今議事ニ上ボリマシタル所ノ國債ノ利子所得稅免除ニ
關スル法律案、外二件ノ委員會ノ模樣ヲ報〓イタシマス
〔男爵尾崎三良君「ドウゾ大キナ聲デ願ヒマス」ト述フ〕
〔「同感」ト呼フ者アリ〕
去ル十日ニ正副委員長ヲ選擧イタシマシタ所ガ直チニ會議ヲ開イテ吳レト云
フ請求ガゴザイマシタ爲ニ、政府委員ノ出席ヲ求メマシテ說明ヲ請ヒマシタ
次第デゴザイマス、此問題ハ財政經晝ニ對スル必要ナ問題デアルト云フコト
ハ大藏大臣ガ議場ニ於テ述ベラレタ次第デゴザイマスケレドモ、極ク簡略
ナ御說明デゴザイマシタカラ、政府委員ニ委シイ所ノ說明ヲ求メマシタ次第
デゴザイマス、其說明モ委シクゴザイマシタガ、又委員モ大分委シク質問モ
致シマシタ、併ナガラ多々ゴザイマス中ニ要領ノ在ル所ノ大要ダケヲ申上ゲ
ルコトニ致シマス、其利子ヲ免除スルト云フ所得稅ノ附イテ居ル國債ハ何程
デアルカ、其免除スル高ハ何程デアルカト云フコトヲ質問サレタ次第デゴザ
イマスガ、政府ノ委員ノ申シマスルニハ五箇年平均デ凡ソ二十三万圓ホドノ
モノデアル是ガ今日マデニ取上ゲタ所ノ〓略、ソレカラ今後鐵道買收ニ對
スル公債ハ四億八千万圓ホドノモノデアリマスカラ、其中ニ御料ノモノモア
レバ公法人ノ稅ヲ取ラヌモノガ凡ソ三千万ホドアル、其殘リダケトシテ四億
五千万圓ホドノモノガアル、此稅金ガ四十五万圓、之ヲ前ノ二十三万圓ニ合
セマスルト、〓略六十八万圓ホドニナル、是ダケガ歲入カラ減ズル所ノ數ニ
ナルノデアリマス、其歲入ヲ減ズルト云フコトハ、現今ノ歲入ノ要ル所ニ減
ズルト云フコトハ如何デアルト云フ問ヒモゴザイマシタ、是ハ六十八万、〓
略七十万圓ホドノ減デハアリマスケレドモ、其減ズルヨリハ得ル所ノモノガ
アルカラ、ソレガ爲ニ減ジテ宜イノデアル、其得ル所ノ利益ハ何デアルカト
云フト、國債所有者ノ俗ニ言フ懷ロ合ヒ、是ガ確メラレルノデアル、尙ホ所
得シテ居ル者カラ見マスルト、所得稅金ト云フモノハ千分ノ二十デアルカラ、
其二十ト云フモノガ二十五ニナルヤラ、三十ニナルヤラ、知レヌト云フ危
ブミモアルノデアル、ソレガ無イト云フコトニナレバ大ニ安心スルノデアル、
是ガ一ツデアリマス、ソレカラ外國人モ今マデ公債ヲ買ッテハ居リマスルケ
レドモ、是モ矢張リ所得稅ガ附キマスル、免除シテ居ルノハ外國債ダケデア
リマシテ內國債ヲ買ヒマストキニハ矢張リ內地ノ方ヘ稅ヲ出スト云フ有樣ニ
ナルノデアリマス、是等ノモノガ所得稅免除ニナリマスレバ安心シテ所有ヲ
致ス譯ニナリマスカラ、ソレニ付イテハ價格モ增加スル、又價格ガ增加イタ
シマスケレドモ需要者ガ多イト云フコトニナル、ソレカラ國債ノ整理ニ於キ
マシテモ統一ニナリマスカラ當局者モ便利デアル、斯ウ云フノデアリマシテ、
減ル所ヲ以テ得ル所ノモノガ數字ニハ現ハレマセヌケレドモ利益ガアルト云
フコトデゴザイマス、ソレカラ其次ノ問題ガ矢張リ關聯シテ居ルデアラウカ
ラ併セテ說明ヲ請ヒタイト云フコトデアリマシテ、其次ノ問題ノ說明ヲ政府
委員ニ請ヒマシタ次第デアリマス、ソレハ登錄國債ノ擔保充用ニ關スル法律
案、登錄國債ト云フモノガ甲乙二種デゴザイマシテ、甲ハ卽チ日本銀行ニ登
錄ヲ致シマスル、登錄ヲ致シマスレバ併セテ國債ノ原簿ニモ登記スルコトニ
ナル、是ハ登記濟ト云フ證ヲ渡シマスルダケノコトデアリマシテ、有價證劵
ト云フモノニハナリマセヌケレドモ確メラレルト云フコトニハ大ニ效用ガア
ルト申スコトデアリマス、ソレカラ乙種ノ方ハ記名公債、固ヨリ記名デハア
リマスガ、登錄イタシマスレバ是ハ有價證劵ヲ發行スルト云フコトニナリマ
ス、デ之ヲ以テ政府ニ對スル法律ノ結果トシテ擔保トナルヤウナコト、或
其他ニ供託シマスルヤウナ所ニモ極ク便利ノ處置デアルト云フコトデアリマ
ス、ソレカラ其登記ハ········登錄ハ何所デ出來ルカト云フコトモアリマシタガ、
ソレハ日本銀行デヤレル、日本銀行バカリデヤレルト云フコトハ甚ダ便利ナ
樣デ甚ダ不便ヲ來タス譯デアルガ、ドウデアルカト云フ質問モアリマシタガ、
是ハ各地方ノ支店ト云フモノニ取扱ハセレバ宜シイケレドモ、重キヲ加ヘテ
本店デ取扱フコトニシテ、支店ノ方デハ其扱ヒダケヲサセテ本店ヘ通知ヲス
ル、本店デ其事ヲ處置シテ又支店ノ方ニ囘スト云フコトデアル、是ハ至極便利
ナ法デアル、斯ウ云フコトデゴザイマシタ、デソレカラモウ一ツノ政府ニ對ス
ル保證金其ノ他ノ擔保ニ供シタル國債ノ買入銷却ニ關スル法律案、是モ併セ
テ說明ヲ請ヒマシタノデアリマスガ、是ハ前ノガトハ違ヒマシタヤウデゴザ
イマス、是ハ四十一年十一月二十八日ニ勅令デ政府ガ擔保トシテ取ル所ノモ
ノハ、額面ノ百圓ナラバ百圓、千圓ナラバ千圓ト云フノデ、時價デナク取扱
ッテ宜イト云フコトガ勅令デ出テ居リマス、其結果デアルサウデゴザイマス、
詰リ擔保トシテ置キマスモノガ擔保流レト見マスレバ則チ時價デ是マデヤッ
テ居ッタノガ額面ト云フコトニナリマスルト、擔保流レニハ幾ラカノ損步ガ
出ルノデアリマス、其損步ハ五箇年ノ累計デ凡ソ八万圓ホドノモノデアル、
其八万圓ノ一割、八千圓ト云フモノガ卽チ損步トナルト云フコトニナッテ居
ルノデアル、斯ウ云フコトデアリマシテ、ソレカラ色〓質問ガアリマシタガ、
ドウモサウ云フ擔保ノ取リ方デハ政府ガ非常ナ損ヲシナクテハナラヌヤウニ
ナリハセヌカ、又惡意ノアル者デアルナラバ、額面デ行クナラバ廉イ所ノモ
ノヲ持ッテ行クヤウニシナケレバナルマイカト云フコトノ質問モゴザイマシ
タガ、ソレニ對スル政府ノ委員ノ話ニハ、例ハ多々ゴザイマシタガ、其中デ
重モナルモノハ酒ノ稅ナドカ〓略百万圓ト致シマスレバ其四分ノ一卽チ二十
五万圓ホドヲ保證金トシテ取ッテ居ルノデアル、デ其一割方ホドヲ損シテ大
ナル利益ノアル、信用ノアルモノヲ大切ニスル爲ノ商業ガ僅ニ二十五万圓ノ
一割グラキデ其信用ヲ失フト云フコトハ極メテ無イ道理ノコトデアル、若シ
是ガアッタトスルナラバ必ズ營業ヲ差止ムルトカ云フヤウナコトモアル其
樣ナモノニハ營業ヲ差許スト云フコトモ無イ道理デアルカラ、サウ云フ御心
配ハ決シテ無カラウト云フコトデアリマシタ、細カイ所ハ多々ゴザイマシタ
ガ、〓略要點ハ其ナ位ナ所デアリマシタ、ソレカラ初メヘ返リマシテ國債ノ
利子所得稅免除ニ關スル法律案ノ討議ニ掛ラウト致シマシタ所ガ、委員ノ方
ヨリ極ク明瞭ナコトデアル、又至極結構ナ案デアルカラ、モウ原案可決デ宜
シカラウ、斯ウ云フコトニナリマシテ全會同意サレタ都合デゴザイマシタカ
ラ、別段ニ議ト云フモノハ起ラヌ次第デゴザイマシタ、全部卽チ三案共ニ政
府ノ案通リデ宜シイト云フコトデ可決イタシマシタ、此段御報〓イタシマス、
デ斯ノ如キ問題デゴザイマシテ甚ダ訥辯ノコトデゴザイマスカラ御分リ兼ネ
ル所モゴザイマセウカラ、委シイコトヲ御尋ネガゴザイマスルナラバ、ドウ
カ政府委員ニ御質問ヲ願ヒタウゴザイマス、右申上ゲマシタ通リ委員會デハ
一向異議モゴザイマセズ可決イタシマシタ次第デゴザイマスカラ、ドウカ讀
會ヲ省略セラレテ三案トモ原案ノ通リ可決アラムコトヲ希ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=52
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053・田邊輝實
○田邊輝實君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=53
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054・大木遠吉
○伯爵大木遠吉君 讀會省略贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=54
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055・寺島誠一郎
○伯爵寺島誠一郞君 讀會省略贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=55
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056・萬里小路通房
○伯爵萬里小路通房君 讀會省略贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=56
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057・加納久宜
○子爵加納久宜君 讀會省略贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=57
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058・松平正直
○男爵松平正直君 讀會省略贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=58
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059・南郷茂光
○南〓茂光君 讀會省略贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=59
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060・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=60
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061・高木兼寛
○男爵高木兼寬君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=61
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062・本荘壽巨
○子爵本莊壽巨君 讀會省略贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 大原伯爵ノ讀會省略ノ動議ニハ成規ノ賛成者ガア
ッタト認メマス、大原伯爵ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 三分ノ二以上ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三案トモ特別委員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十三、會計法中改正法律案、衆議院提
出、第一讀會
會計法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
明治四十二年三月九日
衆議院議長長谷場純孝
貴族院議長公爵德川家達殿
會計法中左ノ通改正ス
第八條豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出シ
其ノ承諾ヲ求ムヘシ
第十二條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
國務大臣ハ憲法第七十條ノ場合ヲ除クノ外豫備費ノ定額以外ニ豫算超過
又ハ豫算外ノ支出ヲ爲スコトヲ得ス
附則
本法ハ明治四十三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十四、民事訴訟法施行條例中改正法律
案、衆議院提出、第一讀會ノ續、委員長報告、副委員長奥山君
民事訴訟法施行條例中改正法律案
右否決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
明治四十二年三月十一日
右特別委員長
伯爵川村鐵太郞
貴族院議長公爵德川家達殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=68
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069・奥山政敬
○奧山政敬君 委員長ガ缺席ヲ致シテ居リマスカラシテ、副委員長ガ代ッテ
御報告ヲ致シタウゴザイマス
〔奧山政敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=69
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070・奥山政敬
○奧山政敬君 唯今議題トナッテ居リマスル所ノ民事訴訟法施行條例中改正
法律案ノ委員會ノ經過ト其結果ヲ御報告ヲ致シマス、去ル二日ニ正副委員長
ノ互選ヲ致シマシテ、一昨十一日ニ委員會ヲ開イタノデアリマス、御承知ノ
通リニ此案ハ明治十年ノ第十九號ヲ以チマシテ大審院ニ上告スルニハ豫納金
十圓ヲ納メロト云フコトノ布〓ガアリマス、ソレカラ明治二十三年十一月一
日ヨリ裁判所構成法ガ施行ニナリマシタニ依ッテ、其構成法中ニ上告ハ區裁
判所ノ判決ニ對スルノハ控訴院トナリマシテ地方裁判所ニ關スル上告ハ大審
院トナッタノデアリマスニ依ッテ前ノ法律ハ大審院トゴザイマシタガ、此
構成法ガ實施サレマスルニ付イテ、明治二十三年ノ第五十號ヲ以チマシテ大
審院トアリマスルノヲ上告裁判所ト改メマシテ當分ノ間其效力ヲ有スルト云
フコトニナリマシタ、矢張リ此構成法ガ施行ニナリマシテモ、民事訴訟法ガ
實行ニナリマシテモ、矢張リ上告ヲ致シマスルニハ豫納金ヲ出スコトニナツ
タノデアリマスル、ソレヲ今般其民事訴訟法施行條例ノ第十二條ヲ削除イタ
シタイト云フ法律案デアリマス、卽チ其十二條ガ當分ノ間效力ヲ有スルト
云フコトニナッテ、矢張リ豫納金ヲ納メルコトニナッテ居ルノデアリマス、
ソレヲ廢スルト云フノデアリマスニ依ッテ先ヅ以テ政府ノ所見ヲ問ウタノデ
アリマスガ政府委員ノ說明ニ依リマスルト此法律ノ出タ所ノ趣意ト云フモノ
ハ、徒ラニ上告ヲスルモノガ多イ、其結果トシテ他ノ事件ノ延滯ヲ來タシ人
民ニ取ッテモ無用ナ費用ヲ掛ケルシ、裁判所ニ於テモ其爲ニ非常ナ延滯ヲ來
タス不都合ガアルニ依ッテ、其上告ヲスル者ハ其豫納金ヲ納メルコトニ致シタ
ノデアル、尤モ勝訴ニナリマスレバ········自分ノ趣旨ガ立チマスレバ納メタ所
ノ豫納金ノ十圓ハ人民ニ還付スルノデアル、今日ニ至ッテモ其制度ハ昔日ニ
異ナルコトハ無イト認メルニ依ッテ、原案ニハ飽クマデ反對ヲスルト云フコ
トデアリマシタ、依ッテ委員中ヨリ續々質問モゴザイマシタデアリマス、ゴ
ザイマシタガ、段々取調ベテ見マスルト、最近二三年ノ上〓ノ結果ヲ調ベテ
見マスルト、棄却ニナッタモノヽ數ガ大變ニ多イノデアリマス、其多イト云
フノハ卽チ濫訴ト云フコトガ明カニ分ルノデアリマスニ依ッテ、之ヲ廢止イ
タシマスルト益〓上〓ヲスル者ガ殖エテ參ル、サウナリマスルト從ッテ他ノ
事件ニモ影響ヲ及ボシテ延滯ヲスルト云フコトハ是ハ數ニ於テ免レヌコトデ
アラウト委員會デハ認メタノデアリマス、依ッテ全會一致ヲ以テ本案ハ否決
トナリマシタノデゴザイマス、マア大略右ノ通リノ次第デゴザリマス、御承
知ノ通リ本案ハ極ク簡單ナモノデゴザイマスカラシテ、讀會省略ヲ以テ
是ハ甚ダ惡ルウゴザイマシタ、直チニ決セラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=70
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071・菊池武夫
○菊池武夫君 私ハ原案ニ贊成イタシマス、是ハ矢張リ副委員長カラ報告ニ
ナリマシタ通リニ、當分ノ間、效力ヲ有タセルト云フノデアリマス、ソレハ
印紙法ト云フモノヲ制定セラレマシテ訴訟ヲスルニ付キマシテハ印紙ヲ貼ラ
ナケレバナラヌ、ソレハ從前ヨリハ餘ホド多イ印紙ノ高ヲ貼用シナケレバナ
ラヌト云フコトヲ定メラレタトキニ、是ハ當然消滅スベキ筈ノモノデアル、
卽チ上〓ニ對スル制限ノ一ツトシテ、モト豫納金ノ制ヲ置キマシタノデゴザ
イマス、ソレガ印紙ヲ貼ルト云フコトニナリマシタ曉ニハ印紙ガ其制限デア
ルノデアリマス、其上ニ尙ホ此豫納金ノ制度ヲ維持スルト云フ理窟ガ無クナ
ッテ仕舞ッタ、ソレガドウヤラ今日マデ殘ッテ來タノデアリマス、道理ノ上
カラ申シマスルト疾ウニ是ハ廢サレベキ條文デアルト考ヘル、ソレカラ又前
年刑事ノ上告ニ付イテノ豫納金ノ規則ガ廢サレマシタ、御承知ノ通リ刑事ノ
方ニハ印紙ヲ貼ルト云フコトガ無イノデアル、ソレユヱ私ナドハ刑事ノ方ニ
ハ此制限ヲ存スル方ガ宜カッタト考ヘテ居ルノデアリマス、刑事ノ方デ、タ
ッタ一ツノ制限デアッタニモ拘ラズ、ソレガ廢セラレタ以上ハ、ソレトノ關
係上、民事ノ方ダケヲ殘シテ置クト云フコトハ餘程ヲカシナコトダラウト思
フ、ソレカラ又之ヲ廢シマシタラバ上告ハ大變殖エテ來テ、ソレガ爲ニ他ノ
事件ノ調べノ延滯ヲ來タスデアラウト云フ御懸念デアリマスケレドモ、見れ、
唯當局者ガサウ御認メニナルダケノ話デアッテ、私ドモナドハ又サウデアル
マイト推測シテ居ル、是ハ推測ト推測デスカラ、ドチラガ當リマスカ分リマ
セヌガ、免ニ角今日ノ現情ヲ申上ゲマスルト、訴訟殊ニ民事訴訟ハ著シク減
ル方ノ傾キデアル、モウ餘ホド五六年前ト今日トヲ比較イタシマスレバ減ジ
テ居ルノデアリマスカラ、其大勢ニ照シテ考ヘテ見マスルト、假令多少此規
則ノ廢止ノ爲ニ件數ガ殖エルト云フコトヲ、マア假ニサウダト致シマシタ所
ガ大シタ影響ハ無イ勢ヒニナッテ居ル、況ヤ唯殖エルダラウト云フノハ「ダ
ラウ」ト云フノデアッテ、殖エナイダラウト云フノト同ジコトデアリマシテ、
何モ據リ所ハ無イ譯デアリマスカラ、旁S此案ハ原案ノ方ガ相當ト考ヘル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=71
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072・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 司法省ノ政府委員ハ御出席ニナッテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 政府委員ハ居ラレマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=73
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074・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 政府委員ガ御出席ナラバ、唯今菊池武夫君ノ御說ヲ聞
クト私ハ尤モノ改正ノヤウニ考ヘマスガ、贊否ヲ決スル前ニ、ドウゾ政府委
員ガ細カク反對ナラ反對ノ理由ヲ一應御述ベアラムコトヲ希望イタシマス
〔政府委員齋藤十一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=74
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075・齋藤十一郎
○政府委員(齋藤十一郞君) 政府ガ本案ニ反對イタシマスル理由ヲ簡單ニ申
上ゲマス、實ハ此案ハ御承知ノ通リニ、第八議會、第九議會ノ兩議會ニ引續
キ衆議院カラ提出ニナリマシタ案デゴザイマス、當時政府ニ於キマシテハ絕
對ニ反對ヲ致スト云フコトデハ無カッタノデアリマス、併ナガラ其後段々取
調ヲナシ實驗ヲ重ネマシタニ從ヒマシテ、唯今ノ情態ニ於キマシテ、マダ此
制度ヲ維持スル必要ガアルト云フコトヲ認メマシタ次第ナノデアリマス、先
キホド委員長カラモ御報告ゴザイマシタ通リニ元、此案ノ起リマシタ趣意ハ
濫訴健訟ヲ防グト云フコトカラ出テ居ルノデゴザイマシテ、是ハ實ハ訴訟人
ノ權利ヲ制限スルト云フ趣意デハナクシテ、却ッテ訴訟人ヲ保護スル趣意カ
ラ出テ居ルノデ、申上ゲルマデモナク、俗ニ三百代言ト稱ヘル階級ノ者ガゴ
ザイマシテ、濫ニ訴訟ヲ〓唆シテ訴訟ガ第一審第二審ト經マシテ勝敗ガ付キ
マシタ場合ニモ、サウシテ其場合デアリマスカラ多數ノ日時、費用等ヲ使ッ
テ居リマスニ拘ラズ、益〓人ノ弱點ニ乘ジマシテ上告ヲ〓唆スルト云フ傾キ
ガアルノデアリマス、斯樣ナ弊害ヲ防ギ能ク利害得失ヲ考ヘテ上〓ヲシテ
モ、爲ニナルモノデアレバ上告ヲスルヤウニサセタイ、斯ウ云フ趣意カラシ
テ費用ヲ納メサセテ、若シ惡ルイ上告ヲ致セバ其金ヲ官ニ沒收サレテ仕舞フ、
斯ウ云フコトニ致シマシテ、篤ト利害得失ヲ考ヘル餘地ヲ與ヘル精神カラ出
テ居ルノデアリマス、ソレデ左樣ナ趣意デ出テ居ルノデアリマスカラシテ、
今日此制度ヲ廢サウト致シマスルニハ濫訴健訟ノ弊害ガ全ク無クナッテ仕舞ツ
タ、斯ウ云フ事實ガ明カデナケレバナラヌト思フ、然ルニ政府ニ於キマシテ
ハ左樣ナ事實ガ今日發生シテ居ルトハ思ハナイ、矢張リ濫訴ノ弊ガ引續イテ
アルモノト認メテ居リマス、先キホド菊池君ガ訴訟印紙ノ制度ガ行ハレタカ
ラシテ、此豫納金ノ制度ハ要ラナイモノニナッタノデアルト云フ御話ガゴザ
イマシタガ、是ハ政府ノ見ル所トハ違ッテ居リマス、訴訟印紙ノ制度ト豫納
金ノ制度トハ全ク別ノ趣意カラ出テ居ルノデ、訴訟印紙ノ制度ノ方ハ寧ロ是
ハ手數料ト云フ方カラ出テ居リマスノデ、其證據ニハ明治十七年ニ訴訟印紙
規則ガ發布ニナリマシテモ、矢張リ上〓豫納金ノ制度ハ廢セラレナカッタノ
デアリマス、全ク左樣ナ趣意ガ違ッテ居ルノデアリマスカラ、片方ノ制度ガ
行ハレタカラ要ラナクナッタト云フコトハ認メテ居リマセヌ、ソレカラ刑事
ノ上告豫納金ハ廢止ニナッテ、民事ノ方ダケ存シテ置クノハ、ヲカシイデハ
ナイカト云フ御說モ承リマシタガ、是ハ更ニ御一考ヲ煩ハシタイノハ、刑事
ノ事件ト民事ノ事件トハ餘ホド異ルト思フ、人ノ身體生命、刑罰ヲ加ヘルト
斯ウ云フ場合デゴザイマスカラ、斯樣ナ制限ノ規則ト云フモノハ却ッテ弊害
ガアルト云フ虞ガアルカモ知レヌ、サウ云フ理由カラシテ刑事ノ方ニハ餘リ
政府デハ反對イタサナカッタ、民事ノ方ハ刑事トハ此點ニ於テ大ニ異ッテ居
ルト認メテ居ルノデアリマス、大體左樣ナ趣意デゴザイマスカラ、政府ニ於
キマシテハ先キホドノ委員長御報告ノ通リニ此案ノ否決ニナリマスヤウニ希
望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 採決ヲ致シマス、本案ヲ第二讀會ニ移スベシトス
ル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=76
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077・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 少數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十五、質屋取締法中改正法律案、衆議
院提出、第一讀會ノ續、委員長報告、委員長大炊御門候爵
質屋取締法中改正法律案
右否決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
明治四十二年三月十一日
右特別委員長
侯爵大炊御門幾磨
貴族院議長公爵德川家達殿
〔候爵大炊御門幾麿君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=78
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079・大炊御門幾麿
○侯爵大炊御門幾麿君 本案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓イタシマス、
本案ハ御承知ノ通リ每年提出ニナリマスル案デゴザイマスガ、今囘ハ第五條
第二項ノ次へ但書ヲ加へルト云フコトガ殖エタカノ樣ニ思ハレマス、ソレデ
此取締法ノ第五條ノ第二項ニハ「質屋ハ質契約ノ證トシテ質札又ハ通帳ヲ質
置主ニ交付スヘシ」斯ウ云フコトガ指定シテゴザイマス、其但書トシテ「但
シ質置主ニ於テ之ヲ必要トナササルトキハ交付セサルコトヲ得」斯ウ云フコ
トヲ附加ヘマシタノデアリマス、デ其理由ハ質屋ガ質置主ニ對シマシテ、質
札或ハ通帳ヲ交付シヤウトシマスルケレドモ、其質置主ノ大半ハ勞働者デア
リマシテ、最モ細民ノ者ニナリマスト、其著テ寢テ居リマシタ夜具或ハ蒲團
ノ如キモノヲ質物ニ致シマシテ、サウシテ米或ハ野菜ヲ買ヒマシテ、朝食ヲ
終ハルヤ否ヤ直ニ出稼ヲスルト云フ樣ナ次第デアリマシテ、通帳或ハ質札等
ノ交付ノ煩雜ヲ厭ヒマスノデアリマシテ、其質屋ガ强ヒテ之ヲ渡サウト致シ
マシテモ、ソレヲ拒ムヤウナコトガ往々アルサウデアリマス、若シモ此質札
若クハ通帳ヲ强ヒテ質屋ガ交付シヤウトスレバ右申シマシタヤウナ次第デア
リマスガ、之ヲ渡サナイト云フコトニナリマスト、同法ノ二十三條ニ據リマ
シテ罰金ニ處セラレルト云フコトデアルサウデアリマス、ソレ故ニ此弊ヲ防
ギタイ爲ニ此但書ガ出マシタノデアリマス、之ニ對シマシテ委員會ニ於キマ
シテハ色〓質問應答モゴザイマシタガ、結局質屋トシテハ誠ニ都合ノ宜イ改
正案デアラウケレドモ、萬一質札或ハ通帳ヲ交付シナイト云フコトニナリマ
シタナラバ、五圓デ受取ッタ品物ヲ質屋ノ帳簿ニ十圓ト書カレテモ證據立テ
ルコトモ出來ナイ、質札或ハ通帳ガ無カッタナラバ五圓ヲ借リテ十圓ヲ仕拂
ハナケレバナラヌヤウナコトガ出來ル虞レガアル、又代理ノ者ヲ差出シマシ
タトキニハ、是亦ドレ程ノ品物デアッタカ證據立テルモノガ無イ、誠ニ不都
合デアルカラト云フノデ、是ハ否決ヲスルコトニナリマシタ、ソレカラ第十
六條、是ハチヨット御參考マデニ全文ヲ朗讀イタシマス「第十六條質物ニシ
テ遺失物若ハ贓物ニ係ルトキハ警察官之ヲ徵收シ被害者ニ還付スルコトヲ得
若被害者知レサルトキハ徵收シタル日ヨリ二箇年ノ後被徵收者ニ還付スヘ
シ」斯ウ云フ全文デゴザイマス、此全文ノ中「警察官」ノ下ニハ「占有者ノ承
諾ヲ得又ハ檢事ノ指揮ヲ受ケテ」ト斯ウ云フ文字ヲ入レルノデアリマス、サ
ウスルト斯ウ云フコトニナリマス、「質物ニシテ遺失物若ハ贓物ニ係ルトキ
ハ警察官ハ占有者ノ承諾ヲ得又ハ檢事ノ指揮ヲ受ケテ之ヲ徵收シ」云々、斯
ウナルノデアリマス、ソレデ斯ウ云フ文字ヲ入レマシタ理由ヲ申上ゲマス
ト警察官ハ質屋取締法ノ第十五條ニ據リマシテ犯罪ノ嫌疑アル品物トカ或
ハ遺失物デアルト認メマシタトキハ、イツデモ其質物或ハ質屋ノ帳簿ヲ檢査
イタシマシタル上デ、其品物ヲ差押ヘマシタリ、或ハ帳簿ヲ警察ヘ差出サシ
ムルコトガ出來マス、ソレデ往々本條ノ規定ヲ楯トシマシテ警察官ガ專斷ヲ
以テ其質物ヲ被害者ニ還付スルコトガ出來マスノデ、ソレ故ニ質屋ガ非常ニ
損害ヲ被ル爲ニ此十六條ヲ改正シタイト云フ案デアリマス、之ニ對シマシテ
委員會ニ於キマシテハ元來此質屋取締法ナルモノハ行政處分デゴザイマシ
テ、檢事ノ指揮ヲ受ケルト云フコトニナリマスト、占有者ガ承諾ヲスレバ宜
シウゴザイマスガ、承諾ヲシナイトキハ檢事ノ指揮ヲ受ケナケレバナラヌ、
然ラバ被害者ニ還付スルコトモ遲延スル弊ガ起ッテ來ル、兎ニ角是ハ行政處
分ノモノデアルカラ、檢事ノ指揮ヲ受ケルト云フコトハ不都合デアル、ソレ
故ニ唯警察官ノ取締ヲ嚴重ニスレバ事足ルノデアルカラト云フノデ、是亦否
決スルコトニナリマシタ次第デアリマス、此段御報告イタシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 採決ヲ致シマス、本案ヲ第二讀會ニ移スベシトス
ル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者無シ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 起立者一人モゴザイマセヌカラ、否決セラレタモ
ノト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十六、東京都制案、第十七、千代田縣
設置ニ關スル法律案、第十八、東京都千代田縣組合法案、男爵松平正直君外
五名發議、第一讀會
東京都制案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治四十二年三月六日
發議者
男爵松平正直男爵船越衞江木千之
谷森眞男山田春三穂積八束
賛成者
伯爵正親町實正
外百十五名
貴族院議長公爵德川家達殿
東京都制
第一章總則
第一款都及其ノ區域
第二款都住民及其ノ權利義務
第三款都條例及都規則
第二章都會
第一款組織及選擧
第二款職務權限及處務規程
第三章都參事會
第一款組織及選擧
第二款職務權限及處務規程
第四章都行政
第一款都吏員ノ組織及任免
第二款都官吏都吏員ノ職務權限及處務規程
第三款給料及給與
第五章都ノ財務
第一款財產及收入
第二款歲入出豫算及決算
第六章都內一部ノ行政
第七章都行政ノ監督
第八章附則
東京都制
第一章總則
第一款都及其ノ區域
第一條從來ノ東京市ノ區域ハ府縣郡市町村ノ區域外トシ之ヲ都ノ區域ト
爲ス
第二條都ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務竝
從來法令又ハ慣例ニ依リ府又ハ市ニ屬スル事務及將來法律勅令ニ依リ都
ニ屬スル事務ヲ處理ス
第三條都ノ境界變更ヲ要スルトキハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
前項ノ處分ニ付財產處分ヲ要スルトキハ內務大臣ハ關係アル都縣郡市參
事會及町村會ノ意見ヲ徵シテ之ヲ定ム
第四條都ノ境界ニ關スル爭論ハ内務大臣之ヲ裁決ス其ノ裁決ニ不服アル
者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
都ノ境界判明ナラサル場合ニ於テ前項ノ爭論ナキトキハ內務大臣之ヲ決
定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
本條ノ裁決及決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ關係團體ニ交付スヘシ
第五條從來ノ東京市ノ區ハ之ヲ都ノ區トス
區ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ其ノ財產ニ關スル事務其ノ他法律勅令ニ依
リ區ニ屬スル事務ヲ處理ス
區ノ廢置分合又ハ境界變更ヲ要スルトキハ內務大臣ハ都參事會及關係區
會ノ意見ヲ徵シテ之ヲ定ム此ノ場合ニ於テ財產處分ヲ要スルトキハ併セ
テ之ヲ定ムヘシ
前項ノ場合ニ於テ都ノ境界ニ涉ルトキハ第三條ノ規定ニ依ル
前條ノ規定ハ區ノ境界ニ之ヲ準用ス
區ノ名稱ヲ變更スルコトヲ要スルトキハ都參事會及關係區會ノ議決ヲ經
都長官ノ申請ニ依リ內務大臣之ヲ定ム
第二款都住民及其ノ權利義務
第六條都內ニ住所ヲ有スル者ハ都住民トス
都住民ハ本法ニ從ヒ財產及營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ都ノ負擔ヲ分任
スル義務ヲ負フ
第七條帝國臣民ニシテ一戶ヲ構フル滿二十五年以上ノ男子二箇年以來都
ノ住民ト爲リ都ノ負擔ヲ分任シ及都內ニ於テ直接國稅年額三圓以上ヲ納
ムル者ハ都公民トス但シ公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後二箇年ヲ經サ
ル者及禁治產者準禁治產者竝六年ノ懲役若ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタ
ル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項二箇年ノ制限ハ都會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ之ヲ特免スル
コトヲ得
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲シタル
納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト看做ス
境界變更ニ由リ都ニ編人セラレタル區域ニ於テ其ノ編入前住所ヲ有シ市
町村ノ負擔ヲ分任シ及直接國稅ヲ納メタル年限ハ之ヲ第一項ノ年限ニ通
算ス
第八條都公民ハ都ノ選擧ニ參與シ都ノ名譽職ニ選舉セラルル權利ヲ有シ
都ノ名譽職ヲ擔任スル義務ヲ負フ
左ノ各號ノ一ニ該當セサル者ニシテ名譽職ノ當選ヲ辭シ又ハ退職シ又ハ
其ノ職務ヲ實際ニ執行セサルトキハ都會ノ議決ヲ經テ一箇年以上四箇年
以下都公民權ヲ停止シ場合ニ依リ其ノ停止年期以內其ノ者ノ負擔スヘキ
都稅ノ十分ノ一以上四分ノ一以下ヲ增課スルコトヲ得
疾病ニ罹リ公務ニ堪へサル者
二業務ノ爲常ニ都內ニ居ルコトヲ得サル者
三滿六十年以上ノ者
四官職ノ爲都ノ公務ヲ執ルコトヲ得サル者
五四箇年以上都ノ名譽職ニ任シ爾後四箇年ヲ經過セサル者
六其ノ他都會ノ議決ニ依リ正當ノ理由アリト認ムル者
前項ノ處分ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二項ノ處分ハ其ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
本條ノ事件ニ付テハ都長官亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九條都公民ニシテ第七條ニ揭載スル要件ノ一ヲ失フトキハ其ノ公民權
ロック·
都公民タル者租稅滯納處分中ハ其ノ公民權ヲ停止ス家資分散又ハ破產ノ
宣告ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復權ノ決定確定スル迄又禁錮以上ノ
刑ノ宣告ヲ受ケタルトキヨリ其ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ヲ受クルコト
ナキニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ都ノ公務ニ參與スルコトヲ得ス現役以外ノ兵
役ニ在ル者ニシテ戰時又ハ事變ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第三款都條例及都規則
第十條都ハ都住民ノ權利義務又ハ都ノ事務ニ關シ都條例ヲ設クルコトヲ
得
都ハ都ノ營造物ニ關シ都規則ヲ設クルコトヲ得
都條例及都規則ハ一定ノ公〓式ニ依リ之ヲ〓示スヘシ
第二章都會
第一款組織及選擧
第十一條都會議員ハ其ノ被選擧權アル者ニ就キ選擧人之ヲ選擧ス
都會議員ノ定數ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ムヘシ但シ六十人
ヲ超ユルコトヲ得ス
都會議員ノ定數ハ總選擧ヲ行フ場合ニ非サレハ之ヲ增減セス
第十二條都公民ハ總テ選擧權ヲ有ス但シ公民權停止中ノ者又ハ第九條第
三項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラス
帝國臣民ニシテ直接都稅ヲ納ムル者其ノ額都公民ノ最多ク納稅スル者三
名中ノ一名ヨリモ多キトキハ第七條ノ要件ニ當ラスト雖選擧權ヲ有ス但
シ六年ノ懲役若ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者及第九條第二項ノ公民
權停止ノ條件又ハ同條第三項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラス
帝國ノ法律ニ依リ設立シタル法人ニシテ前項ノ場合ニ當ルトキ亦同シ
本條ノ直接都稅ノ納額ハ選擧人名簿調製期日ノ屬スル會計年度ノ前年度
ノ賦課額ニ依ルヘシ
第十三條都ノ區ヲ以テ都會議員ノ選擧區トス各選擧區ニ於テ選擧スヘキ
議員ノ數ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
各選擧區ニ於テ選舉スヘキ議員ノ數ハ三名ヲ下ルコトヲ得ス
選擧人ハ住所ニ依リ所屬ノ選擧區ヲ定ム都內ニ住所ナキ者ハ直接都稅ノ
賦課ヲ受ケタル物件又ハ營業所ノ所在ニ依リ若物件又ハ營業所ニシテ數
選擧區ニ在ル場合ニハ之ニ對スル課稅ノ最多キ所ニ依リ其ノ之ニ依リ難
キ場合ニハ本人ノ申出ニ依リ之ヲ定ムヘシ
第十四條選擧人ハ各選擧區ニ於テ之ヲ三級ニ分ツヘシ
選擧人中直接都稅ノ納額多キ者ヲ合セテ選擧人全員ノ納ムル總額ノ三分
ノ一ニ當ルヘキ者ヲ一級トス但シ一級選擧人ノ數五名ニ滿タサルトキハ
納額最多キ者五名ヲ以テ一級トス
一級選擧人ノ外直接都稅ノ納額多キ者ヲ合セテ選擧人全員ノ納ムル直接
都稅ノ總額中一級選擧人ノ納ムル額ヲ除キ其ノ殘額ノ半ニ當ルヘキ者ヲ
二級トシ爾餘ノ選擧人ヲ三級トス但シ前項但書ノ規定ハ二級選擧人ノ場
合ニ之ヲ準用ス
各級ノ間納稅額兩級ニ跨ル者アルトキハ上級ニ入ルヘシ又兩級ノ間ニ同
額ノ納稅者二名以上アルトキハ其ノ都內ニ住所ヲ有スル年數ノ多キ者ヲ
以テ上級ニ入ル若住所ヲ有スル年數同シキトキハ年長者ヲ以テシ年齡同
シキトキハ區長抽籖ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
各選擧區ニ於テ選擧スヘキ議員ハ選擧人每級各別ニ其ノ三分ノ一ヲ選擧
ス若等分シ難キトキハ端數二名ノ場合ハ之ヲ一級及三級ニ配當シ一名ノ
場合ハ之ヲ二級ヨリ選出スヘキ數ニ加フヘシ
被選擧人ハ同級內ノ者ニ限ラス又其ノ選擧區內ノ者ニ限ラサルモノト
ス
本條ノ直接都稅ノ納額ニ關シテハ第十二條第四項ノ規定ヲ準用ス
第十五條選擧權ヲ有スル都公民ニシテ直接國稅年額十圓以上ヲ納ムル者
ハ被選擧權ヲ有ス
左ニ揭クル者ハ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサ
ル者亦同シ
都ノ官吏及有給吏員
二檢事警察官吏及收稅官吏
三神官神職僧侶其ノ他諸宗〓師
四小學校〓員
前項ニ揭ケサル官吏ニシテ當選シ之ニ應セムトスルトキハ所屬長官ノ許
可ヲ受クヘシ
都ニ對シ工事ノ請負物件勞力其ノ他ノ供給契約ヲ爲シ若ハ都ノ爲金錢出
納ノ取扱ヲ爲ス者又ハ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ役員ハ被選擧權ヲ有セ
ス
第十六條都會議員ハ名譽職トス
都會議員ノ任期ハ四箇年トス
議員ノ配當ヲ變更シタル爲解任ヲ要スル者ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム但シ關
員アルトキハ其ノ關員ヲ以テ之ニ充ツヘシ
第十七條都會議員中闕員アルトキ又ハ議員ノ配當ヲ變更シタル爲選擧ヲ
要スルトキハ三箇月以內ニ之ヲ行フヘシ
前項ニ依リ同時ニ二名以上ノ議員ヲ選擧スヘキトキハ一ノ選擧ヲ以テ合
併シテ之ヲ行フ
補關議員ハ前任者ノ殘任期間在任ス
補闘議員ヲ除ク外本條第一項ニ依リ選擧セラレタル議員ハ次ノ總選擧迄
在任ス
補闕議員ハ前任者ノ選擧セラレタル選擧區及選擧等級ニ於テ之ヲ選擧ス
ヘシ
第十八條區長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ十月十五日
迄ニ其ノ區內ノ選擧人ノ資格ヲ記載シタル選擧人名簿ヲ調製スヘシ
選擧人名簿ハ十月二十日ヨリ十五日間每日午前八時ヨリ午後四時迄區役
所又ハ其ノ他ノ場所ニ於テ之ヲ關係者ノ縱覽ニ供スヘシ若關係者ニ於テ
異議アルトキハ縱覽期限內ニ之ヲ都長官ニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ
於テハ都長官ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ十日以内ニ之ヲ決定シ其ノ決
定ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ區長直ニ之ヲ修正スヘシ
前項都長官ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
選擧人名簿ハ十二月十五日ヲ以テ確定期限トシ確定名簿ハ次年ノ十二月
十四日迄之ヲ据置クヘシ
訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ區長ハ確定期限ノ前後ニ拘
ラス直ニ之ヲ修正スヘシ
本條ニ依リ區長ニ於テ名簿ヲ修正シタルトキハ其ノ要領ヲ〓示スヘシ
確定名簿ニ登錄セラレサル者ハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス但シ選擧人名
簿ニ登錄セラルヘキ判決書ヲ所持シ選擧ノ當日投票所ニ到ル者ハ此ノ限
ニ在ラス
確定名簿ニ登錄セラレタル者選擧權ヲ有セサルトキハ選擧ニ參與スルコ
トヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
異議ノ決定確定シ又ハ訴訟ノ判決アリタルニ依リ名簿無效ト爲リタルト
キハ九月十五日ノ現在ニ依リ更ニ名簿ヲ調製スヘシ但シ名簿調製ノ期日
迄ニ選擧權ヲ失ヒタル者ハ名簿ニ登錄スル限ニ在ラス
天災事變等ニ依リ名簿ノ喪失シタルトキ亦前項ニ同シ
前二項ニ依ル名簿ノ調製縱覽修正及確定ニ關スル期日及期限等ハ都長官
ノ定ムル所ニ依ル
第十九條選舉ハ都長官ノ〓示ニ依リ之ヲ行フ其ノ〓示ニハ選擧ヲ行フヘ
キ選擧區及等級選擧會場投票ノ日時竝選擧區及等級每ニ選擧スヘキ議員
數ヲ記載シ選擧ノ日ヨリ少クトモ二十日前ニ之ヲ發スヘシ
各選擧區ノ選擧ハ同日時ニ之ヲ開始スヘシ
選擧ヲ行フ順序ハ先ツ三級ノ選擧ヲ行ヒ次ニ二級ノ選擧ヲ行ヒ次ニ一級
ノ選擧ヲ行フヘシ
第二十條區長ハ選擧長ト爲リ選擧會ヲ開閉シ會場ノ取締ニ任ス
區長ハ臨時ニ其ノ選擧區內ニ於ケル選擧人中ヨリ二名乃至六名ノ立會人
ヲ選任スヘシ
選擧立會人ハ名譽職トス
第二十一條選擧人ノ外選擧會場ニ入ルコトヲ得ス但シ選擧會場ノ事務ニ
從事スル者選擧會場ヲ監視スル職權ヲ有スル者又ハ警察官吏ハ此ノ限ニ
在ラス
選擧會場ニ於テ演說討論ヲ爲シ若ハ喧擾ニ涉リ又ハ投票ニ關シ協議若ハ
勸誘ヲ爲シ其ノ他選擧會場ノ秩序ヲ紊ル者アルトキハ選擧長ハ之ヲ制止
シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ選擧會場外ニ退出セシムヘシ
前項ニ依リ選擧會場外ニ退出セシメラレタル者ハ最後ニ至リ投票ヲ爲ス
コトヲ得但シ選擧會場閉鎖後ハ此ノ限ニ在ラス
第二十二條選擧ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選擧人ハ選擧ノ當日自ラ選擧會場ニ到リ選擧人名簿ノ對照ヲ經テ投票簿
ニ捺印シ投票スヘシ
選擧人ハ選擧會場ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選擧人一名ノ氏名ヲ記載シテ
投凾スヘシ但シ確定名簿ニ登錄セラレタル每級選擧人ノ數其ノ選擧スヘ
キ議員數ノ三倍ヨリ少キ場合ニ於テハ連名投票ノ法ヲ用ウヘシ
投票用紙ニハ選擧人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ス
自ラ被選擧人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スコトヲ得ス
投票用紙ハ都長官ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
選擧人名簿ノ調製後選擧人ノ所屬選擧區ニ異動ヲ生スルコトアルモ其ノ
選擧人ハ前所屬ノ選擧區ニ於テ選擧ヲ行フヘシ
第二十三條第十二條第二項及第三項ニ依リ選擧權ヲ有スル者ハ代人ヲ出
シテ選擧ヲ行フコトヲ得但シ滿二十五年以上ノ男子ニ非サル者禁治產者
及準禁治產者ハ必ス代人ヲ以テスヘシ
代人ハ帝國臣民ニシテ滿二十五年以上ノ男子ニ限ル
第七條第一項但書ニ當ル者第八條ニ依ル公民權停止中ノ者及第九條第二
項ノ公民權停止ノ條件又ハ同條第三項ノ場合ニ當ル者ハ代人タルコトヲ
得ス又一人ニシテ數人ノ代理ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ代人ハ委任狀其ノ他代理ヲ證スル書面ヲ選擧長ニ示スヘシ
第二十四條左ノ投票ハ之ヲ無效トス但シ連名投票ノ法ヲ用ヰタル場合ニ
於テハ第一號及第六號ニ該當スルモノ及其ノ記載ノ人員其ノ選擧スヘキ
定數ニ過キタルモノハ之ヲ無效トシ第二號第四號及第五號ニ該當スルモ
ノハ其ノ部分ノミヲ無效トス
一成規ノ用紙ヲ用ヰサルモノ
二現ニ都會議員ノ職ニ在ル者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
三一投票中二人以上ノ被選擧人ヲ記載シタルモノ
四被選擧人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
五被選擧權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
六被選擧人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所
又ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二十五條投票ノ拒否及效力ハ選擧立會人之ヲ議決ス可否同數ナルトキ
ハ選擧長之ヲ決スヘシ
第二十六條都會議員ノ選擧ハ有效投票ノ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選者
トス但シ各級ニ於テ選擧スヘキ議員數ヲ以テ選擧人名簿ニ登錄セラレタ
ル各級ノ人員數ヲ除シテ得タル數ノ五分ノ一以上ノ得票アルコトヲ要
ス
二囘選擧ニ於テ仍當選者選擧スヘキ議員數ニ達セサルトキハ前項但書ヲ
適用セス
前二項ニ依リ當選者ヲ定ムルニ當リ得票ノ數同シキトキハ年長者ヲ取リ
年齡同シキトキハ選擧長抽籖シテ之ヲ定ム
第二十七條選擧長ハ選擧錄ヲ製シテ選擧ノ〓末ヲ記載シ選擧ヲ終リタル
後之ヲ朗讀シ選擧立會人二名以上ト共ニ之ニ署名スヘシ
選擧錄ハ投票選擧人名簿其ノ他關係書類ト共ニ選擧及當選ノ效力確定ス
ルニ至ル迄之ヲ保存スヘシ但シ選擧及當選ノ效力ニシテ選擧人名簿確定
ノ日ヨリ一年以內ニ確定シタル場合ニ於テハ選擧人名簿ハ仍名簿確定ノ
日ヨリ一年間之ヲ保存スヘシ
第二十八條當選者定マリタルトキハ區長ハ直ニ當選者ニ當選ノ旨ヲ告知
シ且同時ニ選擧錄ノ寫ヲ添へ當選者ノ住所氏名ヲ都長官ニ報告スヘシ
當選者ニシテ當選ヲ辭セムトスルトキハ當選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ五
日以內ニ之ヲ都長官ニ申立ツヘシ但シ第十五條第三項ノ官吏ニシテ當選
シタル者ハ二十日以內ニ其ノ當選ニ應スルヤ否ヲ都長官ニ申立ツヘシ其
ノ期間內ニ之ヲ申立テサルトキハ其ノ當選ヲ辭シタルモノト看做ス
一人ニシテ數級又ハ數選擧區ノ選擧ニ當リタルトキハ最終ニ當選ノ告知
ヲ受タル日ヨリ五日以內ニ何レノ選擧ニ應スヘキカヲ都長官ニ申立ツヘ
シ其ノ期間内ニ之ヲ申立テサル者ハ總テ其ノ當選ヲ辭シタルモノト看做
ス但シ第十五條第三項ノ官吏ニシテ當選シタル者ニ關シテハ本項ニ定ム
ル期間ヲ二十日トス
第二十九條都會議員ノ當選ヲ辭シタル者アルトキハ更ニ選舉ヲ行フヘ
シ
二人以上投票同數ニシテ年長ニ由テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルト
キハ年少ニ由テ當選セサリシ者ヲ以テ當選者トス但シ年少ニ由テ當選セ
サリシ者二人以上アルトキハ年長者ヲ取リ年齡同シキトキハ選擧長抽籤
シテ當選者ヲ定ム
二人以上投票同數ニシテ抽籤ニ依テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルト
キハ抽籤ノ爲當選セサリシ者ヲ以テ當選者トス但シ抽籤ノ爲當選セサリ
シ者二人以上アルトキハ選擧長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
第三十條當選者其ノ當選ヲ辭セサルトキハ都長官ハ直ニ其ノ住所氏名
ヲ〓示スヘシ
第三十一條選擧人選擧又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧ニ關シ
テハ選擧ノ日ヨリ當選ニ關シテハ前條告示ノ日ヨリ七日以內ニ之ヲ都長
官ニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ都長官ハ七日以內ニ都參事會ノ
決定ニ付スヘシ都參事會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ十四日以內ニ之ヲ
決定スヘシ
都長官ニ於テ選擧又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ第二十八條第一
項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ都參事會ノ決定ニ付スルコトヲ
得
本條都參事會ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
本條ノ事件ニ付テハ都長官亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十二條選擧ノ規定ニ違反スルコトアルトキハ選擧ノ結果ニ異動ヲ生
スルノ虞アル場合ニ限リ其ノ選擧ノ全部又ハ一部ヲ無效トス
當選者ニシテ被選擧權ヲ有セサルトキハ其ノ當選ヲ無效トス
第三十三條選擧又ハ當選ニシテ無效ト確定シタルトキハ更ニ選擧ヲ行フ
ヘシ但シ得票數ノ査定ニ錯誤アリタル爲又ハ被選擧權ヲ有セサル爲當選
無效ト確定シタルトキハ第二十六條ノ例ニ依リ更ニ當選者ヲ定ム
第三十四條都會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被
選擧權ニ關スル異議ハ都會之ヲ決定ス
都長官ニ於テ都會議員中被選擧權ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ
都會ノ決定ニ付スヘシ
本條都會ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ都長官亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
都會議員ハ其ノ被選擧權ヲ有セストスル決定確定シ又ハ判決アル迄ハ會
議ニ列席シ議事ニ參與スルノ權ヲ失ハス
第三十五條本款ニ規定スル異議ノ決定ハ直ニ之ヲ告示スヘシ
第三十六條都會議員ノ選擧ニ付テハ衆議院議員選擧ニ關スル罰則ヲ準用
ス
第二款職務權限及處務規程
第三十七條都會ノ議決ヲ經ヘキ事件左ノ如シ
-歲入出豫算ヲ定ムル事
二決算報〓ニ關スル事
三法令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料手數料加入金都稅及夫役現品
ノ賦課徵收ニ關スル事
四不動產ノ處分及取得ニ關スル事
五基本財產及積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
六歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及
權利ノ抛棄ヲ爲ス事
七財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律勅令中ニ規定アルモ
ノハ此ノ限ニ在ラス
八其ノ他法令ニ依リ都會ノ權限ニ屬スル事項
第三十八條都會ハ其ノ權限ニ屬スル事項ノ一部ヲ都參事會ニ委任スルコ
トヲ得
第三十九條都會ハ法律勅令ニ依リ選擧ヲ行フヘシ
第四十條都會ハ都ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ都長官又ハ內務大
臣ニ呈出スルコトヲ得
第四十一條都會ハ行政廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
都會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ都會招集ニ應セス若ハ成
立セス又ハ意見ヲ呈出セサルトキハ當該行政廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ
直ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十二條都會ハ議員中ヨリ議長副議長各一名ヲ選擧スヘシ
議長副議長ハ議員ノ總選擧每ニ之ヲ改選スヘシ
第四十三條議長副議長ノ選擧ヲ終ル迄ハ都長官又ハ其ノ代理者議長ノ職
務ヲ行フヘシ
第四十四條議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アル
トキハ臨時ニ議員中ヨリ假議長ヲ選擧スヘシ
第四十五條都長官及其ノ委任又ハ囑託ヲ受ケタル者ハ會議ニ列席シテ議
事ニ參與スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者ニ於テ發言ヲ求ムルトキハ議長ハ直ニ之ヲ許スヘシ但シ之
カ爲議員ノ演說ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第四十六條都會ハ通常會及臨時會トス
通常會ハ每年一囘之ヲ開ク其ノ會期ハ三十日以內トス臨時會ハ必要アル
場合ニ於テ其ノ事件ニ限リ之ヲ開ク其ノ會期ハ七日以內トス
臨時會ニ付スヘキ事件ハ豫メ之ヲ告示スヘシ但シ其ノ開會中急施ヲ要ス
ル事件アルトキハ都長官ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ付スルコトヲ得
第四十七條都會ハ都長官之ヲ招集ス
招集ハ開會ノ日ヨリ少クトモ十四日前ニ告示スヘシ但シ急施ヲ要スル場
合ハ此ノ限ニ在ラス
都會ハ都長官之ヲ開閉ス
第四十八條都會ハ議員定數ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコ
トヲ得ス
第四十九條都會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決
スル所ニ依ル
第五十條議長及議員ハ自己又ハ父母祖父母妻子孫兄弟姉妹ノ一身上ニ
關スル事件ニ付テハ其ノ議事ニ參與スルコトヲ得ス但シ都會ノ同意ヲ得
タルトキハ會議ニ出席シ發言スルコトヲ得
第五十一條法律勅令ノ規定ニ依リ都會ニ於テ選擧ヲ行フトキハ本法中別
段ノ規定アル場合ヲ除クノ外一名每ニ匿名投票ヲ爲シ有效投票ノ過半數
ヲ得タル者ヲ以テ當選者トス若過半數ヲ得タル者ナキトキハ最多數ヲ得
タル者二名ヲ取リ之ニ就キ決選投票ヲ爲サシム其ノ二名ヲ取ルニ當リ同
數者アルトキハ年長者ヲ取リ年齡同シキトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此
ノ決選投票ニ於テハ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選者トス若同數ナルトキ
ハ年長者ヲ取リ年齡同シキトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム其ノ他ハ第二十
二條及第二十四條ノ規定ヲ準用シ投票ノ效力ニ關シ異議アルトキハ都會
之ヲ議決ス
前項ノ選擧ニ付テハ都會ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選又ハ連名投票ノ法ヲ
用ウルコトヲ得其ノ連名投票ヲ用ウル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ル
第五十二條都會ノ會議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
-都長官ヨリ傍聽禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二議長又ハ議員三名以上ノ發議ニ依リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
前項議長又ハ議員ノ發議ハ討論ヲ須キス其ノ可否ヲ決スヘシ
第五十三條議長ハ會議ノ事ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開
閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十四條都會議員ハ選擧人ノ指示又ハ委囑ヲ受クヘカラス
議員ハ會議中無禮ノ語ヲ用ヰ又ハ他人ノ身上ニ涉リ言論スルコトヲ得
ス
第五十五條會議中本法又ハ會議規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ル議員
アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ又ハ發言ヲ取消サシメ命ニ從ハサルトキハ
議長ハ當日ノ會議ヲ終ル迄發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシメ必要
ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
議場騷擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉
ツルコトヲ得
第五十六條傍聽人公然可否ヲ表シ又ハ喧騒ニ涉リ其ノ他會議ノ妨害ヲ爲
ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要ナル
場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
傍聽席騒擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ
於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
第五十七條議場ノ秩序ヲ紊リ又ハ會議ノ妨害ヲ爲ス者アルトキハ議員又
ハ第四十五條ノ列席者ハ議長ノ注意ヲ喚起スルコトヲ得
第五十八條都會ニ書記ヲ置キ議長ニ隸屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第五十九條議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ製シ會議ノ〓末及出席議員ノ氏名
ヲ記載セシムヘシ會議錄ハ議長及議員二名以上之ニ署名スルコトヲ要ス
其ノ議員ハ都會ニ於テ之ヲ定ムヘシ
議長ハ會議錄ヲ添へ會議ノ結果ヲ都長官ニ報告スヘシ
第六十條都會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設ケ內務大臣ノ許可ヲ受
クヘシ
會議規則ニハ本法及會議規則ニ違反シタル議員ニ對シ都會ノ議決ニ依リ
五日以內出席ヲ停止スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三章都參事會
第一款組織及選擧
第六十一條都ニ都參事會ヲ置キ都長官都高等官三名及名譽職參事會員八
名ヲ以テ之ヲ組織ス
都高等官ニシテ都參事會員タルヘキ者ハ內務大臣之ヲ命ス
第六十二條名譽職參事會員ハ都會ニ於テ其ノ議員中ヨリ之ヲ選擧スヘ
シ
都會ハ名譽職參事會員ト同數ノ補充員ヲ選擧スヘシ
前二項ノ選舉ニ關シテハ第二十二條第二十四條第二十六條及第二十九條
ノ規定ヲ準用シ投票ノ效力ニ關シ異議アルトキハ都會之ヲ議決ス
名譽職參事會員中關員アルトキハ都長官ハ補充員ノ中ニ就キ之ヲ補關ス
其ノ順序ハ得票ノ數ニ依リ得票ノ數同シキトキハ年長者ヲ取リ年齡同シ
キトキハ抽籤ニ依ル仍闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ臨時補關選擧ヲ行フ
ヘシ
補闕員ハ前任者ノ殘任期間在職スルモノトス
名譽職參事會員及其ノ補充員ハ都會議員ノ總選擧每ニ之ヲ改選スヘシ但
シ名譽職參事會員ハ後任者就職ノ日迄在職スルモノトス
第六十三條都參事會ハ都長官ヲ以テ議長トス都長官故障アルトキハ高等
官參事會員議長ノ職務ヲ代理ス
第二款職務權限及處務規程
第六十四條都參事會ノ職務權限左ノ如シ
一都會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決
スル事
二都會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ都長官ニ於テ之ヲ
招集スルノ暇ナシト認ムルトキ都會ニ代テ議決スル事
三都長官ヨリ都會ニ提出スル議案ニ付都長官ニ對シ意見ヲ述フル事
四都會ノ議決シタル範圍內ニ於テ財產及營造物ノ管理ニ關シ重要ナ
ル事項ヲ議決スル事
五都費ヲ以テ支辨スヘキ工事ノ執行ニ關スル規定ヲ議決スル事但シ
法令中ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
六都ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事項ヲ議決スル事
七其ノ他法令ニ依リ都參事會ノ權限ニ屬スル事項
第六十五條都參事會ハ名譽職參事會員中ヨリ委員ヲ選擧シ之ヲシテ都ニ
係ル出納ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ檢査ニハ都長官又ハ其ノ指命シタル官吏若ハ吏員之ニ立會フコト
ヲ要ス
第六十六條第四十條第四十一條第四十五條第四十七條第三項第四十九條
第五十一條第五十三條乃至第五十五條第五十八條及第五十九條第一項ノ
規定ハ都參事會ニ之ヲ準用ス
第六十七條都參事會ハ都長官之ヲ招集ス名譽職參事會員半數以上ノ請求
アル場合ニ於テ相當ノ理由アリト認ムルトキハ都長官ハ都參事會ヲ招集
スヘシ
都參事會ノ會期ハ都長官之ヲ定ム
第六十八條都參事會ノ會議ハ傍聽ヲ許サス
第六十九條都參事會ハ議長又ハ其ノ代理者及名譽職參事會員ノ半數以上
出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第六十四條第二號ノ議決ヲ爲ストキハ都長官及高等官參事會員ハ其ノ議
決ニ加ハルコトヲ得ス
第七十條第五十條ノ規定ハ都參事會ニ之ヲ準用ス但シ同條ノ規定ニ依
リ參事會員ノ數減少シテ前條や一項ノ數ヲ得サルトキハ都長官ハ補充員
ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者ヲ以テ第六十二條第四項ノ順序ニ依リ臨時
之ニ充テ仍其ノ數ヲ得サルトキハ都會議員ニシテ其事件ニ關係ナキ者ヲ
臨時ニ指名シ其ノ關員ヲ補充スヘシ
議長及其ノ代理者共ニ除斥セラレタルトキハ年長ノ會員ヲ以テ假議長ト
爲スヘシ
第四章都行政
第一款都吏員ノ組織及任免
第七十一條都ハ有給ノ都吏員ヲ置クコトヲ得其ノ定數ハ都會ノ議決ヲ經
テ之ヲ定ム
前項ノ都吏員ハ都長官之ヲ任免ス
第七十二條都ニ都收入役區ニ區收入役ヲ置キ官吏吏員ノ中ニ就キ都長官
之ヲ命ス
第七十三條都ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置ク
コトヲ得
委員ハ名譽職トス
委員ノ組織選任任期等ニ關スル事項ハ第一項ノ都條例中ニ之ヲ規定スヘ
シ
第二款都官吏都吏員ノ職務權限及處務規程
第七十四條都長官ハ都ヲ統轄シ都ヲ代表シ其ノ行政事務ヲ擔任ス
都長官ノ擔任スル事務ノ〓目左ノ如シ
-都條例及都規則ヲ發布スル事
二都費ヲ以テ支辨スヘキ事件ヲ執行スル事
三都會及都參事會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發スル事
四財產及營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事
務ヲ監督スル事
五收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
六證書及公文書類ヲ保管スル事
七法令又ハ都會若ハ都參事會ノ議決ニ依リ使用料手數料加入金都稅
及夫役現品ヲ賦課徵收スル事
八其ノ他法令ニ依リ都長官ノ職權ニ屬スル事項
第七十五條都長官ハ議案ヲ都會ニ提出スル前之ヲ都參事會ノ審査ニ付シ
若都參事會ト其ノ意見ヲ異ニスルトキハ都參事會ノ意見ヲ議案ニ添へ都
會ニ提出スヘシ
第七十六條都長官ハ都ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ都吏
員ニ臨時代理セシムルコトヲ得
第七十七條都長官ハ都吏員ヲ指揮監督シ其ノ任免ニ係ル都吏員ニ對シ懲
戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職ト
ス
都長官ハ都吏員ノ懲戒ヲ行ハムトスル前其ノ停職ヲ命シ且場合ニ依リ給
料ヲ支給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二箇年間都ノ公職ニ選擧セラレ又ハ任命
セラルルコトヲ得ス
第七十八條都會又ハ都參事會ノ議決若ハ選擧其ノ權限ヲ越エ又ハ法令若
ハ會議規則ニ背クト認ムルトキハ都長官ハ其ノ意見ニ依リ又ハ内務大臣
ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ直ニ其ノ議決若ハ選擧ヲ取消シ又ハ議決ニ付
テハ再議ニ付シタル上仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ
前項取消處分ニ不服アル都會又ハ都參事會ハ行政裁判所ニ出訴スルコト
ヲ得
都會又ハ都參事會ノ議決公益ヲ害シ又ハ其ノ議決都ノ收支ニ關シ不適當
ナリト認ムルトキハ都長官ハ其ノ意見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ
理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付
シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請フヘシ
第七十九條都長官ハ期日ヲ定メテ都會ノ停會ヲ命スルコトヲ得
第八十條都會又ハ都參事會招集ニ應セス又ハ成立セサルトキハ都長官
ハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ
得第五十條第七十條ノ場合ニ於テ會議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
都會又ハ都參事會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ都會ニ於テ
其ノ招集前〓示セラレタル事件ニ關シ議案ヲ議了セサルトキハ前項ノ例
二飲ん
都參事會ノ決定スヘキ事項ニ關シテハ前二項ノ例ニ依ル此ノ場合ニ於ケ
ル都長官ノ決定ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準シ訴訟ヲ提起スルコトヲ
得
本條ノ處分ハ次ノ會期ニ於テ之ヲ都會又ハ都參事會ニ報告スヘシ
第八十一條都參事會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ都長官ニ
於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ都長官ハ專決處分シ次ノ會期
ニ於テ其ノ處分ヲ都參事會ニ報〓スヘシ
第八十二條都參事會ノ權限ニ屬スル事項ノ一部ハ其ノ議決ニ依リ都長官
ニ於テ專決處分スルコトヲ得
第八十三條官吏ノ都行政ニ關スル職務關係ハ本法中規定アルモノヲ除ク
ノ外其ノ國ノ行政ニ關スル職務關係ノ例ニ依ル
第八十四條都收入役ハ都ノ出納其ノ他會計事務及法令ノ定ムル所ニ依リ
國ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌ル
都收入役故障アルトキハ都長官ノ命ヲ受ケタル官吏又ハ吏員其ノ職務ヲ
代理ス
第八十五條區長ハ都長官ノ指揮監督ヲ承ケ區ノ事務ヲ管掌シ區ヲ代表
ス
第七十四條第二項第二號乃至第七號ノ規定ハ區ノ事務ニ關シテハ之ヲ區
長ニ準用ス
區長ハ都長官ノ指揮監督ヲ承ケ都長官ノ委任ニ依リ又ハ法令ノ定ムル所
ニ依リ區内ニ關スル都ノ行政事務ヲ管掌シ又ハ都長官ノ命ヲ承ケ區內ニ
關スル都ノ行政事務ヲ補助執行ス
本條ニ揭載スル事務及區長ノ管掌スル國ノ行政事務ヲ執行スル爲要スル
費用ハ都ノ負擔トス
第八十六條區收入役ハ區ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌ル
區收入役ハ都收入役ノ指揮監督ヲ承ケ都收入役ノ委任ニ依リ又ハ法令ノ
定ムル所ニ依リ區內ニ關スル國及都ノ出納及會計事務ヲ掌リ又ハ都收入
役ノ命ヲ承ケ區內ニ關スル都收入役ノ事務ヲ補助執行ス
本條ニ揭載スル事務ヲ執行スル爲要スル費用ハ都ノ負擔トス
第八十四條第二項ノ規定ハ之ヲ區收入役ニ準用ス
第八十七條都ノ有給吏員ハ都長官ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
第八十八條委員ハ都長官ノ指揮監督ヲ承ケ都有財產又ハ都ノ營造物ヲ管
理シ其ノ他都行政事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ處辨
ス
第八十九條都ノ事務ニ關スル處務規程ハ都長官之ヲ定ム
第三款給料及給與
第九十條有給都吏員ノ給料額旅費額及其ノ支給方法ハ都長官之ヲ定
ム
第九十一條都會議員名譽職參事會員其ノ他名譽職員ハ職務ノ爲要スル費
用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
費用辨償額及其ノ支給方法ハ都會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ都長
官之ヲ定ム若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ內務大臣之ヲ定ム
第九十二條有給都吏員ノ退隱料退職給與金死亡給與金遺族扶助料及其ノ
支給方法ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ム
第九十三條給料旅費費用辨償退隱料退職給與金死亡給與金遺族扶助料ノ
給與ニ付關係者ニ於テ異議アルトキハ之ヲ都長官ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ都參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ行
政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
本條ノ事件ニ付テハ都長官亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十四條給料旅費費用辨償退隱料退職給與金死亡給與金遺族扶助料其
ノ他諸給與ハ都ノ負擔トス但シ區會議員ノ費用辨償ハ區ノ負擔トス
第五章都ノ財務
第一款財產及收入
第九十五條都ハ不動產積立金穀等ヲ以テ基本財產ト爲シ之ヲ維持スル義
務アリ
臨時ニ取得シタル財產ハ基本財產ニ加入スヘシ但シ寄附ニ係ル物件ニシ
テ寄附者其ノ使用ノ目的ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
都ハ特定ノ目的ノ爲特別ノ基本財產ヲ設ケ又ハ金穀等ヲ積立ツルコトヲ
得此ノ場合ニ於テハ基本財產ニ加入スヘキモノノ全部又ハ一部ヲ特別ノ
基本財產又ハ積立金穀等ニ加入スルコトヲ得
第九十六條舊來ノ慣行ニ依リ數個人又ハ都內ノ一部ニ於テ特ニ營造物又
ハ財產ヲ使用スル權利ヲ有スルトキハ其ノ舊慣ニ依リ都會ノ議決ヲ經ル
ニ非サレハ其ノ舊慣ヲ變更又ハ廢止スルコトヲ得ス
前項ノ營造物又ハ財產ヲ新ニ使用セムトスル者アルトキハ都會ノ議決ヲ
經テ之ヲ許可スルコトヲ得
第九十七條都ハ前條第一項ノ使用者ヨリ使用料ヲ徵收シ同條第二項ノ使
用ニ關シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徵收シ又ハ使用料加入金ヲ共ニ
徵收スルコトヲ得
第九十八條都ハ營造物又ハ公共ノ使用ニ供スル財產ノ使用ニ付使用料ヲ
徵收スルコトヲ得
數個人又ハ都內ノ一部ヲ利スル營造物又ハ財產ノ使用ニ關シテハ使用料
若ハ一時ノ加入金ヲ徵收シ又ハ使用料加入金ヲ共ニ徵收スルコトヲ得
都ハ特ニ一個人ノ爲ニスル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第九十九條都ハ第九十六條及前條ニ規定スル財產ノ使用方法ニ關シ都會
ノ議決ヲ經テ都規則ヲ設クルコトヲ得
第百條財產ノ賣却貸與工事ノ請負及物件勞力其ノ他ノ供給ハ競爭入札
ニ付スヘシ但シ臨時急施ヲ要スルトキ又ハ入札ノ價額其ノ費用ニ比シテ
得失相償ハサルトキ又ハ都會ノ同意ヲ得ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百一條都ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ爲スコト
ヲ得
第百二條都ハ其ノ必要ナル費用及從來法令若ハ慣例ニ依リ府若ハ市ノ負
擔ニ屬シ又ハ將來法律勅令ニ依リ都ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務
2g)
都ハ其ノ財產ヨリ生スル收入使用料手數料過料過怠金其ノ他法律勅令ニ
依リ都ニ屬スル收入ヲ以テ前項ノ支出ニ充テ仍不足アルトキハ都稅ヲ賦
課徵收スルコトヲ得
第百三條都稅トシテ賦課スルコトヲ得ヘキモノ左ノ如シ
-國稅ノ附加稅
二特別稅
附加稅ハ直接ノ國稅ニ附加シ均一ノ稅率ヲ以テ都ノ全部ヨリ徵收スルヲ
常例トス
特別稅ハ別ニ稅目ヲ起シテ課稅スルコトヲ要スルトキ賦誤徵收スルモノ
トス
第百四條三箇月以上都內ニ滯在スル者ハ其ノ滯在ノ初ニ遡リ都稅ヲ納ム
ル義務ヲ負フ
第百五條都內ニ住所ヲ有セス又ハ三箇月以上滯在スルコトナシト雖都内
ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ使用シ若ハ占有シ又ハ營業所ヲ定メテ營業
ヲ爲シ又ハ都內ニ於テ特定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ土地家屋物件營業若ハ
其ノ收入ニ對シ又ハ行爲ニ對シテ賦課スル都稅ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ
法人タルトキ亦同シ但シ國ノ事業又ハ行爲ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
第百六條納稅者ノ都外ニ於テ所有シ使用シ若ハ占有スル土地家屋物件若
ハ其ノ收入又ハ都外ニ於テ營業所ヲ定メタル營業若ハ其ノ收入ニ對シテ
ハ都稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
住所滯在都及府縣ニ渉ル者ノ收入ニ對シ關係都府縣市町村ニ於テ課稅ス
ルハ命令ノ定ムル所ニ依ル都及府縣ニ涉リ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ且
其ノ營業又ハ其ノ收入ニ對スル本稅ヲ分別シテ納メサル者ニ對シ關係都
府縣市町村ニ於テ附加稅ヲ賦課スルトキ亦同シ
第百七條所得稅法第五條ニ揭クル所得ニ對シテハ都稅ヲ賦課スルコトヲ
得ス
神社遙拜所寺院祠宇佛堂ノ用ニ供スル建物ニシテ其ノ境內地ニ存在スル
モノ及其ノ境内地〓會所說〓所ノ用ニ供スル建物及其ノ構內地ニ對シテ
ハ都稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ賃貸者ニ賦課スル場合及住宅ヲ以テ〓
會所說〓所ノ用ニ充ツルモノハ此ノ限ニ在ラス
國府縣郡市町村其ノ他公共團體ニ於テ公用又ハ公共ノ用ニ供スル家屋物
件及營造物ニ對シテハ都稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ賃貸者及使用收益
者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
國有ノ土地家屋物件ニ對シテハ國ニ都稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
前各項ノ外都稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別ニ法律勅令ノ定ムル所
二粒ノ
皇族ニ係ル都稅ノ賦課ハ從來ノ例ニ依ル
第百八條數個人ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ其ノ關
係者ニ負擔セシムルコトヲ得
區ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ都會ノ議決ヲ經其ノ
區ヲシテ之ヲ負擔セシムルコトヲ得
數個人又ハ區ヲ利スル財產ニ付テモ亦本條ノ例ニ依ル
第百九條數個人又ハ都內ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ不均
一ノ賦課ヲ爲スコトヲ得
第百十條都稅及其ノ賦課徵收ニ關シテハ法律中規定アルモノノ外勅令ノ
定ムル所ニ依ル
第百十一條都ハ急迫ノ必要ニ依リ夫役及現品ヲ納稅義務者ノ全部又ハ一
部ニ賦課スルコトヲ得但シ學藝美術及手工ニ關スル勞役ヲ課スルコトヲ
得ス
夫役ヲ課セラレタル者ハ其ノ便宜ニ從ヒ本人自ラ之ニ當リ又ハ適當ノ代
人ヲ出スコトヲ得
第百十二條都稅ノ賦課ニ關シ必要ナル場合ニ於テハ當該官吏吏員ハ日出
ヨリ日沒迄ノ間營業者ニ關シテハ仍其ノ營業時間家宅營業所ニ臨檢シ又
ハ帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第百十三條都長官ハ納稅者中特別ノ事情アル者ニ對シ會計年度內ニ限リ
納稅延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合ハ都參事會ノ議決ヲ經ヘ
シ
都長官ハ特別ノ事情アル者ニ限リ都參事會ノ議決ヲ經テ都稅ヲ減免スル
コトヲ得
第百十四條使用料手數料及特別稅ニ關スル事項ニ付テハ都會ノ議決ヲ經
都條例ヲ以テ之ヲ規定スヘシ其ノ條例中ニハ二十圓以下ノ過料ヲ科スル
規定ヲ設クルコトヲ得營造物又ハ財產ノ使用方法ニ關スル都規則ニ付亦
同シ
過料ニ處シ及之ヲ徴收スルハ都長官之ヲ掌ル其ノ處分ニ不服アル者ハ行
政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第百十五條都稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認
ムルトキハ徵稅令書ノ交付後三箇月以內ニ都長官ニ異議ノ申立ヲ爲スコ
トヲ得
財產又ハ營造物ヲ使用スル權利ニ關シ異議アル者ハ之ヲ都長官ニ申立ツ
ルコトヲ得
本條ノ異議ハ之ヲ都參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ行
政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
使用料手數料加入金ノ徵收及夫役現品ノ賦課ニ關シテモ亦前數項ノ例ニ
依ル
本條ノ事件ニ付テハ都長官亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百十六條都稅使用料手數料加入金過料過怠金其ノ他都ノ收入ヲ定期內
ニ納メサル者アルトキハ都長官ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ
夫役現品ノ賦課ヲ受ケタル者定期内ニ其ノ履行ヲ爲ササルトキハ都長官
ハ之ヲ金額ニ算出シ期限ヲ指定シテ其ノ納付ヲ命スヘシ
前二項ノ場合ニ於テハ都條例ノ規定ニ依リ手數料ヲ徵收スルコトヲ得
滯納者第一項又ハ第二項ノ督促又ハ命令ヲ受ケ其ノ指定ノ期間内ニ仍之
ヲ完納セサルトキハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分スヘシ
本條ニ記載スル徵收金ハ國ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付
及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
本條都長官ノ處分ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
本條第四項ノ處分中差押物件ノ公賣ハ處分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止
ス
第百十七條都ハ其ノ負債ヲ償還スル爲又ハ都ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ支
出ヲ要スル爲又ハ天災事變等ノ爲已ムヲ得サル場合ニ限リ都會ノ議決ヲ
經テ都債ヲ起スコトヲ得
都債ヲ起スニ付都會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及
償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
都ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲本條ノ例ニ依ラス都參事會ノ議決ヲ經テ一時
ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘシ
第二款歲入出豫算及決算
第百十八條都長官ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ遲クトモ年度開始ノ
一箇月前ニ都會ノ議決ヲ經ヘシ
都ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
豫算ヲ都會ニ提出スルトキハ都長官ハ併セテ財產表ヲ提出スヘシ
第百十九條都長官ハ都會ノ議決ヲ經テ旣定豫算ノ追加又ハ更正ヲ爲スコ
トヲ得
第百二十條都費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ施行スヘキモノ
又ハ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ都會ノ議決ヲ經テ其ノ年
期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
第百二十一條豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設ク
ヘシ
豫備費ハ都會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百二十二條豫算ハ議決ヲ經タル後直ニ之ヲ內務大臣ニ報〓シ且其ノ要
領ヲ告示スヘシ
第百二十三條都ハ都會ノ議決ヲ經テ特別會計ヲ設クルコトヲ得
第百二十四條都ノ支拂金ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ支拂金ノ例ニ依
ル
第百二十五條都ノ出納ハ每月例日ヲ定メテ檢査シ且每會計年度少クトモ
二囘臨時檢査ヲ爲スヘシ
檢査ハ都長官又ハ其ノ命ヲ受ケタル官吏吏員之ヲ爲シ臨時檢査ニハ名譽
職參事會員ニ於テ互選シタル參事會員二名以上ノ立會ヲ要ス
第百二十六條都ノ出納閉鎖ハ翌年度六月三十日ヲ限トス
決算ハ出納閉鎖後一箇月以內ニ證書類ヲ併セテ收入役ヨリ之ヲ都長官ニ
提出スヘシ
決算ハ次ノ通常會ニ於テ之ヲ都會ニ報告スヘシ
都長官ハ決算ヲ都會ニ報告スル前都參事會ノ審査ニ付スヘシ若都長官ト
都參事會ト意見ヲ異ニスルトキハ都長官ハ都參事會ノ意見ヲ決算ニ添ヘ
都會ニ提出スヘシ
決算ハ之ヲ內務大臣ニ報告シ且其ノ要領ヲ〓示スヘシ
第百二十七條豫算調製ノ式及費目流用其ノ他財務ニ關スル必要ナル規程
ハ內務大臣之ヲ定ム
第六章都内一部ノ行政
第百二十八條區ニ區會ヲ置ク
區會議員ハ都ノ名譽職トス
區會議員ノ定員任期及選擧ニ付テハ都會議員ニ關スル規定ヲ準用ス
第百二十九條區會ハ區有財產其ノ他區ノ事務ニ關シ第三十七條第一號乃
至第七號ニ記載スル事項及區ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事項其ノ他
法令ニ依リ區會ノ權限ニ屬スル事項ヲ議決ス
前項ノ外區會ニ關シテハ都會ニ關スル規定ヲ準用ス
第百三十條區會ニ關スル費用及區有財產其ノ他區ノ事務ニ關シ必要ナル
費用ハ區ノ負擔トス
前項ノ外區ハ法律勅令ニ依リ區ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ
第百三十一條本法ニ規定スルモノノ外區ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第七章都行政ノ監督
第百三十二條都ノ行政ハ內務大臣之ヲ監督ス
第百三十三條本法ニ規定スル異議ハ處分ヲ爲シタル日ヨリ十四.日以內ニ
之ヲ申立ツヘシ但シ本法中別ニ期間ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
本法ニ規定スル行政訴訟ハ處分ヲ爲ン又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受
ケタル日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ告示ノ日ヨリ二十一日以內ニ之ヲ
提起スヘシ
本法ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ付シ之ヲ申
立人ニ交付スヘシ
本法ニ規定スル異議ノ申立ニ關スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ
依ル
異議ノ申立アルモ處分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政廳ハ其ノ職權ニ依
リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第百三十四條内務大臣ハ都行政ノ法令ニ背戾セサルヤ又ハ公益ヲ害セサ
ルヤ又ハ其ノ事務錯亂澁滯セサルヤ否ヲ監視スヘシ内務大臣ハ之カ爲行
政事務ニ關シテ報告ヲ爲サシメ書類帳簿ヲ徵シ及實地ニ就キ事務ヲ視察
シ出納ヲ檢閱スルコトヲ得
内務大臣ハ都行政ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ處分ヲ爲スコトヲ得
第百三十五條内務大臣ハ都ノ豫算中不適當ト認ムルモノアルトキハ之ヲ
削減スルコトヲ得
第百三十六條內務大臣ハ勅裁ヲ經テ都會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
都會解散ノ場合ニ於テハ三箇月以內ニ議員ヲ選擧スヘシ
解散後始テ都會ヲ招集スルトキハ都長官ハ第四十六條第二項ノ規定ニ拘
ラス內務大臣ノ許可ヲ得テ別ニ會期ヲ定ムルコトヲ得
第百三十七條都吏員ノ服務規律ハ內務大臣之ヲ定ム
第百三十八條左ニ揭クル事件ハ內務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
-都條例及都規則ヲ設ケ及改廢スル事
二學藝美術又ハ歷史上貴重ナル物件ヲ處分シ又ハ大ナル變更ヲ爲ス
事
三使用料手數料加入金ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
四基本財產ノ處分ニ關スル事
五特別基本財產及積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
六第九十六條ノ處分ヲ爲ス事
七寄附又ハ補助ヲ爲ス事
八不動產ノ處分ニ關スル事
九均一ノ稅率ニ據ラスシテ國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
十第百八條ニ依リ數個人又ハ區ニ費用ヲ負擔セシムル事
十一繼續費ヲ定メ又ハ變更スル事
十二特別會計ヲ設クル事
第百三十九條左ニ揭クル事件ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クルコト
フルガツ
-都債ヲ起シ竝起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ變更
スル事但シ第百十七條第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二特別稅ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
三直接國稅二分ノ一ヲ超過スル附加稅ヲ賦課スル事但シ法律勅令中
別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
四間接國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
五法律勅令ノ規定ニ依リ國ヨリ交付スル步合金ニ對シ支出金額ヲ定
ムル事
第百四十條都ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事件ニ付テハ主務
大臣ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍内ニ於テ更正シテ許可ヲ與
フルコトヲ得
第百四十一條都ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事件中其ノ輕易
ナルモノハ勅令ノ規定ニ依リ許可ヲ經スシテ處分スルコトヲ得
第百四十二條内務大臣ハ委員ニ對シ懲戒處分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處
分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職トス
第七十七條第三項ノ規定ハ本條ニ依リ解職セラレタル者ニモ之ヲ適用ス
第八章附則
第百四十三條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百四十四條本法施行ノ際都會都參事會及區會ノ職務ニ屬スル事項ニシ
テ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間都長官之ヲ行フ
第百四十五條本法施行ノ際議員ヲ選擧スルニ必要ナル選舉人名簿ノ調製
ニ限リ第十八條ノ期日及期限等ハ勅令ヲ以テ別ニ之ヲ定ムルコトヲ得但
シ其ノ選擧人名簿ハ翌年調製スル選擧人名簿確定ノ日迄其ノ效力ヲ有
ス
第百四十六條本法施行ノ日迄引續キ東京市ニ於テ住所ヲ有シ其ノ負擔ヲ
分任シ直接國稅ヲ納メタル年限ハ之ヲ第七條第一項ノ年限ニ通算ス
第百四十七條本法ニ定ムル直接稅ノ種類ハ內務大臣及大藏大臣之ヲ〓示
ス
第百四十八條從來ノ東京市ノ營造物及財產ハ本法施行ノ日ヨリ都ニ屬ス」
本法施行ノ際從來ノ東京府ノ營造物及財產ノ處分ハ內務大臣之ヲ定ム
第百四十九條府縣稅ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クル迄都
稅ニ關シ仍其ノ效力ヲ有ス
第百五十條東京市區改正ニ關スル法令ハ本法施行ノ爲其ノ效力ヲ失フ
コトナシ
第百五十一條東京都ニ於テハ現行ノ法令中府又ハ市トアルハ都ニ、府知
事又ハ市長トアルハ都長官ニ該當シ其ノ他總テ此ノ例ニ依ル但シ此ノ例
ニ依リ難キモノハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第百五十二條本章ニ規定スルモノノ外本法施行ノ爲必要ナル事項ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
千代田縣設置ニ關スル法律案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治四十二年三月六日
發議者
男爵松平正直男爵船越衞江木千之
谷森眞男山田春三穗積八束
贊成者
伯爵正親町實正
外百十五名
貴族院議長公爵德川家達殿
第一條東京府ヲ廢シ千代田縣ヲ置ク
從來ノ東京府ノ區域中東京都ノ區域ト爲スヘキモノヲ除キ其ノ他ヲ以テ
千代田縣ノ區域ト爲ス
第二條本法施行ノ際縣會及縣參事會ノ職務ニ屬スル事項ニシテ急施ヲ要
スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間縣知事之ヲ行フ
第三條本法施行ノ際議員ヲ選擧スルニ必要ナル選擧人名簿ノ調製ニ限リ
府縣制第九條乃至第十二條ノ期日及期限等ハ勅令ヲ以テ別ニ之ヲ定ムル
コトヲ得但シ其ノ選擧人名簿ハ翌年調製スル選擧人名簿確定ノ且迄其ノ
效力ヲ有ス
第四條現行ノ法令中東京府郡部トアルハ千代田縣ニ該當ス
第五條本法ハ東京都制施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第六條本法ヲ施行スル爲必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
東京都千代田縣組合法案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治四十二年三月六日
發議者
男爵松平正直男爵船越衞江木千之
谷森眞男山田春三穗積八束
贊成者
伯爵正親町實正
外百十五名
貴族院議長公爵德川家達殿
東京都千代田縣組合法
第一條東京都及千代田縣ノ共同事務ヲ處理スル爲東京都千代田縣組合ヲ
置ク
組合ニ於テ處理スヘキ共同事務ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
組合ハ法人トス
第二條東京都千代田縣組合ニ組合會ヲ置ク
組合會議員ハ名譽職トス
組合會議員ノ定數ハ東京都會及千代田縣會ノ議員定數ヲ合シタル數ノ三
分一トス但シ端數ハ之ヲ除算ス
第三條組合會議員ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ議員中ヨリ選擧ス
各會ニ於テ選擧スヘキ組合會議員ノ數ハ內務大臣之ヲ定ム
第四條組合會議員ノ定數及其ノ配當ハ第五條第一項ニ依リ選擧ヲ行フ場
合ニ非サレハ之ヲ變更セス
第五條組合會議員ノ選擧ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ各其ノ總選擧每
ニ之ヲ行フヘシ
組合會議員ノ定數又ハ配當ヲ變更シタル爲解任又ハ選擧ヲ要スル場合及
補闕選擧ニ關シテハ府縣制第七條第三項及第八條ノ規定ヲ準用ス
第六條組合會ノ議長及副議長ハ前條第一項ニ依リ選舉ヲ行フ每ニ之ヲ改
選スヘシ
第七條組合會ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ選擧スヘキ組合會議員定數
各半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第八條組合會ノ職務權限及處務規程ニ關シテハ本法中別ニ規定スルモノ
ヲ除クノ外都制第二章第二款ノ規定ヲ準用ス
第九條東京都千代田縣組合ニ組合參事會ヲ置キ都長官高等官三名及名譽
職參事會員八名ヲ以テ之ヲ組織ス
第十條名譽職參事會員ノ選舉ニ關シテハ第三條第四條及第五條第一項ノ
規定ヲ準用ス
東京都會及千代田縣會ハ各其ノ選擧スヘキ名譽職參事會員ノ關員ヲ補充
スル爲之ト同數ノ補充員ヲ選擧スヘシ
第四條及第五條第一項ノ規定ハ名譽職參事會員ノ補充員ノ選舉ニモ之ヲ
準用ス
名譽職參事會員ノ配當ヲ變更シタル爲名譽職參事會員及其ノ補充員ノ解
任又ハ選舉ヲ要スル場合ニ關シテハ府縣制第七條第三項及第八條第一項
第三項ノ規定ヲ準用ス
第十一條組合參事會ノ組織及選舉竝職務權限及處務規程ニ關シテハ本法
中別ニ規定スルモノヲ除クノ外都制第三章ノ規定ヲ準用ス
第十二條組合會議員及名譽職參事會員ノ費用辨償ニ關シテハ都制第四章
第三款ノ規定ヲ準用ス
第十三條東京都長官ハ東京都千代田縣組合ヲ統轄シ之ヲ代表シ其ノ行政
事務ヲ擔任ス
都長官其ノ他官吏ノ組合行政ニ關スル職務關係及處務規程ニ付テハ府縣
制第四章第二款ノ規定ヲ準用ス
第十四條組合ノ費用ハ財產ヨリ生スル收入其ノ他ノ收入ヲ以テ充ツルモ
ノノ外之ヲ東京都及千代田縣ニ分賦スヘシ
組合費用分賦ノ割合ハ組合會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
組合費用ノ分賦方法ニ關スル必要ノ事項ハ內務大臣之ヲ定ム
第十五條府縣稅ニ關スル事項ヲ除クノ外府縣制第五章ノ規定ハ之ヲ組合
ノ財務ニ準用ス
第十六條組合ノ監督ニ關シテハ府縣制第六章ノ規定ヲ準用ス
第十七條本法ニ規定スルモノノ外東京都千代田縣組合ニ關シ必要ナル事
項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條本法ハ東京都制施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第十九條本法施行ノ際組合會及組合參事會ノ職務ニ屬スル事項ニシテ急
施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間東京都長官之ヲ行フ
第二十條本法施行ノ爲必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=82
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083・穗積八束
○穗積八束君 發議ノ趣旨ヲ述ベタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=83
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084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御登壇ヲ請ヒマス
〔穗積八束君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=84
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085・穗積八束
○穂積八束君 此案ハ實ハ當院ノ宿論デゴザイマシテ、新ニ玆ニ御披露ヲ致
スマデモナイコトヽ思フノデアリマス、既ニ三囘モ大多數ヲ以テ議決ニナッ
テ居リマス、今私ドモガ此案ヲ我物顏ニ出スモ憚ル位ナコトデゴザイマシテ、
實ハ是ハ諸君ノ御自身ノ御案デアリマス、故ニ深ク其理由ヲ辯明スルマデモ
ナクシテ、諸君御自身ノ御案デアッテ全會一致若クハ大多數ヲ以テ直チニ是
ガ通過イタシマシテ、又衆議院ノ公平ナル審査ヲ請フヤウニ致スト云フ順序
ニナルコトヽ存ジマス、此案ノ內容ハモウ昨年モ一昨年モ其前モ度〓諸君モ
御聽キアキニナッテ居ルコトデアラウ、我〓モモウ述ベアイタ所デアッテ御
尋ネガアレバ知ッテ居ルグケハ申シマスガ、全ク是ハ昨年ノ案ト同一ナコト
デアルト御覽クダサッテ少シモ間違ヒハアリマセヌ、昨年ノ案ニ多少筆ヲ加
ヘマシタ所ガゴザイマス、ガソレハ唯、新シク刑法ガ實施サレマシタル結果
等ニ據リマシテ、中ニ公權剝奪若クハ公權停止等ノコトガ規定シテアリマシ
タガ、ソレ等ノ文字ガソレ〓〓現行法ニ對シテ差支ヘマスルカラ、之ヲ實質
ヲ其儘ニシテ形ダケ削リマシタ譯デゴザイマス、文字ハ削ッテアリマスルガ、
矢張リ昔ナラバ重罪ヲ犯シタ者ハ政權ヲ行フコトガ出來ヌ等ノ實質ハ同ジデ
アリマス、其他多少ノ字句ヲイヂリマシタガ、誠ニ唯「テニヲハ」ノ改正ノ如
キモノデアリマシテ、一々御報告ハ致シマセヌ、ト申シテ此案ノ提出ノ理由ヲ
一言モ述ベズニ退クモ餘リ體裁ガ惡ルウゴザイマスガ········此案ノ必要ナルコ
トハ最早是コソ輿論ト申スモノデ、何人モ疑ハザルコトデアラウト思ヒマス、
併シ其細目手段方法ニ至ッテハ種々議論ガアルカモ知レヌ、我〓ドモヽ此東
京市ノ行政ヲ整ヘタイト思フコトノ熱心ニ於テ頗ル切ナルモノデゴザイマス
ル而シテ今日ノ行政ノ巧ク運バナイト云フコトヲ考ヘテ見マスレバ、我〓
自身ノ罪、卽チ市民全體ノ罪モアルダラウト思ヒマス、必シモ今日東京市ノ行
政ニ當ッテ居ル當局ノ人ノミヲ責ムベキモノデハナク、東京市民タル我〓ノ
罪ガ多イデアラウト思ヒマスル、故ニ一方ニ於テハ此東京市民ノ全體ノ空氣
ヲ洗濯イタシマシテ、サウシテ我〓人心ヲ新ニシテ此制度ノ運用ニ臨マナケ
レバナラヌノデアリマス、併シ之ト同時ニ制度其モノヽ改革ガ必要デアル、
制度ヲ能ク整ヘマセヌトキニ於キマシテハ、タヾ一方ノミニ盡力イタシマシ
テハ勞多クシテ、サウシテ益ハ少ナイデアラウト思ヒマスカラ、我〓ハ十分
ニ人心ヲ洗濯スルコトノ必要ヲ考ヘルト同時ニ此案ヲ以テセネバナラヌト考
ヘルノデアリマス、此都制案ノ趣意ハ先刻モ申ス通リ甚ダ簡單ニシテ明瞭デ
アリマス、東京ト申シマスル此全國ノ首府、政治ノ中心デアリ、經濟ノ中心
デアリ、風俗文化ノ中心デアル所ノ此東京ハ他ノ地方ノ小サイ市都トハ區別
ヲ付ケマシテ、現在ノ東京市ト東京府トヲ合シマシテ一ツノ東京都ト云フモ
ノニ致シマシテ、サウシテ之ヲ以テ直チニ中央政府ノ監督ノ下ニ立タシメム
ト思フノガ改正ノ趣意デアリマス、總テノ此案ニ載ッテ居ルコトハ皆此一點
カラ出テ居ルノデアリマシテ、是ダケガ趣意デアリマス、今デハ東京市ト云
フモノハ東京府ノ下ニ在リ其上ニ內務大臣ガアルト云フ三階造リニナッテ居
リマス、然ルニ此東京市ナルモノハ、東京府トハ名ハ異ッテ居リマスケレド
モ、實際ハ東京デアリマシテ、實際ニ於テ一ツモノデアルト言ッテモ宜イ場
合ガアルノデアリマス、ソレ故ニ此監督ノ階級ヲ減ラシマシテ椽ノ下ニ在ル
東京市ヲ座敷ノ上ニ引出スダケノコトデアリマス、總テノ改革ハ此點カラ出
テ居リマスル、サウシマスルト云フト多少東京都ノ機關ガ今マデノ最下級ニ
在ル市ノ機關ト較ベマシテ權限ニ於テ多少ノ差ヲ見ナケレバナラスト云フ結
果ガ起ル、故ニ一方ニ於キマシテハ東京都ニ長官ヲ置キマス、其長官ハ獨リ
行政ノ責任ニ當ルモノデアリマシテ、權力ハ頗ル强ク致シテ置カナケレバ、
此複雜ナル都會ノ百般ノ事ヲ支配シ、又頗ル權力强キ中央ノ大臣ニ當ルノデ
アリマスルカラ、其長官ナル者ノ地位モ重ク權力モ重ク責任モ重ク致サネバ
ナラヌノデアリマス而シテ東京都ノ參事會ト云フモノヽアルコトハ、今日
ノ東京市ニ參事會ガアル如クデアリマスルガ、東京都ノ參事會ハ專ラ協議ヲ
スル機關ニ組立テヽアリマスル、總テ皆人ノ言フガ如ク、仕事ヲスルノハ一人
ガ宜イ、協議ヲスルトキコソ多數相手ガ欲シイノデアル、故ニ東京都ノ參事
會ハ相談相手ニスル積リデ、此協議ノ機關ニスル積リデアリマス、頗ル重キ
權力ヲ持ッテ居ルノデアリマス、併ナガラ今日ノ東京市ノ參事會ハ、參事會
ト云フ合議體デアッテ、而シテ行政ノ事務ヲ自ラ擔任シテ居リマスルカラ、
事頗ル煩雜ニ亙リ宜シクナイト云フコトハ實驗ノ上デ分ッテ居リマスルカラ
之ヲ分ケテ行政ノ責任ト、而シテ行政ニ對スル批評及協議、議決機關等ヲ分
ケタノデアリマス、此二ツノ機關ヲ分ツト云フコトハ、是ハ全體ニ通ジテ必
要ナルコトデアリマシテ、東京都ノ制度ノミデモアリマセヌガ、併シ小サナ
團體ニ於キマシテハ、斯ク理論ニ依ッテ區別ヲ付ケマセズトモ、同一ノ機關
ガ、行政及協議ノコトヲ兼ネテ行ッテモ差支ガアリマセヌケレドモ、東京都
ノ如キ煩雜ナル仕事ヲスベキモノニ至リマシテハ、之ヲ明カニ分ツコトガ必
要デアルト思ヒマスル、ソレカラ東京都長官ハ先刻モ中ス通リ執行機關デア
リマスル、此機關ハ官選ニ依ルモノト云フ考デ此案ガ組立テラレテアリマス
ル、是ハ東京府知事ノ地位ト東京市長ノ地位トヲ合併シタモノデアリマスル、
官選ニスルガ宜イカ、民選ニスルガ宜イカト云フコトハ或ハ世上ニ議論ガア
ルカモ知レヌガ、ソレ等ノ詳細ノコトニ付イテ議論ガアレバ或ハ委員會等デ
モ又御話ガ出ルコトデアラウト思ヒマス、唯選擧ト云フコトハ何モ權利デモ
何デモナイノデアリマシテ、實ハ權利デナイト申シテハ語弊ガアルカ知レマ
セヌガ、能ク既得權ハ剝グベカラズト云フコトヲ法律家ガ言ヒマスルノハ
總テ私權ニ付イテ云フ話デアル、權利ト云フモノハ本人ノ利益ノ爲ニ與ヘラ
レタルモノヲ多ク指スノデアリマスカラ、或ハ私權等ニ付イテハ旣ニ與ヘテ
アル所ノモノヲ法律ヲ以テ之ヲ又取上グルト云フニ至ッ、テハ頗ル愼重ヲ要ス
ルノデアリマスルガ、今東京都制ヲ施クニ付イテ、東京都ヲ支配スル者ヲ選
擧ニ依テ選ブベキカ、或ハ政府ガ選ブベキカ等ノ問題ハ、全ク制度ノ問題デ
アッテ權利問題デハナイト云フコトハ、言フマデモナイコトデゴザイマスケ
レドモ、新聞ナドデソンナコトヲ書ク者ガアリマスルカラ一言申シテ置キマ
ス、選擧ト云フノハ實ニ格別重キヲ置クモノデハナイノデアッテ官デ選ブモ民
デ選ブモ選擧ト云フコトノ文字ハ幾ラ法律ヲ高尙ニヒネクッテ見マシタ所ガ
文字ダケノ意味デアル、適任者ヲ選ブト云フコトノ外ニ何モ意味ハ無イノデ、
今日ノ情態ニ顧ミマシテ我〓ドモハ市民········市會等ニ投票ヲサシタガ都長官
ヲ選ブニ適任者ヲ得ラルヽデアラウカ、暫ク政府ノ方デ人選シタ方ガ適任者
ヲ得ラルヽデアラウカ、斯ウ云フ問題デアル、選舉ソノモノヲ絕對ニ宜イト
カ、惡ルイトカ云フ話デハナイノデアリマス、今日ノ情況ニ見テ此案ヲ立テ
ヽアルノデアリマス、今日ノトコロ此時弊ヲ救ヒ改良ヲ施サウト思フ場合ニ
當ッテ今ノ市民ニ選擧ヲサシタ方ガ適任者ガ得ラレルデアラウカ、或ハ大權ニ
依ッテ御選擇ニナッタ方ガ適任者ガ得ラレルダラウカト云フコトガ問題デア
ッテソコガ見込ノ話デアリマス、何モ是ガ權利問題デモ何デモナイノデアリ
ママ、其旨ヲドウゾ御承知ヲ願ヒタイ、東京都制案ノ他ニマダ二ツアリマス
ガ、千代田縣設置ニ關スル法律案、千代田縣ト東京都トノ組合法案、是等ノモ
ノハ附隨ノモノデゴザリマスル、是ハ度〓此所デモ說明ノアリマシタ通リ、
郡部ナルモノガ今アリマシテ、郡部ハ矢張リ郡ノ會モアリマス、郡ノ參事會
モアリマス、郡ノ財產モアリマシテ、自ラ公ケノ法人體ヲ事實ナシテ居ルモ
ノデアリマスカラ、東京市ト東京府ヲ合シテ東京都ニ致シマシタル結果、其
殘ッテ居ル所ノ郡部ヲ獨立ノ千代田縣ニシタイト云フニ過ギナイノデアリマ
ス、又組合法案ハ從來ノ東京市ト東京郡部トデ組合ヲシマシテ、組合ト云フ
名前デナクトモ連帶ヲ致シマシテ、事業ヲシテ居ルコト等モアリマス、故ニ
ソレ等ノコトノ現在ノ有樣ヲ尙ホ引續イテ行ハシムルニ付イテハ組合法案ヲ
提出スルガ必要デアラウト思フカラ、是モ併セテ提出ヲ致シタモノデアリマ
ス、此三案トモ頗ル重要ナル案デゴザイマスル故ニ、昨年ノ例モアリマスル
カラ、ドウカ十五名ノ委員ヲ議長ニテ御指名ニナリマシテ御審査ヲ御命ジニ
ナルコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=85
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086・板倉勝達
○子爵板倉勝達君 チヨット質問シタイ、其質問ノ趣意ト云フノハ他デハナ
イ特別市制ヲ廢スノニモ色〓ノ議論ガ出マシテ自治體ノ市制ガ施カレタ、
然ルニ今日都制ト云フ名ヲ以テ是デ市長ヲ官選ニスルト云フノハ事實自治體
ヲ解イテ仕舞フコトニナル、今日ノ市制ニ於テ弊害ガアッテ、ドウシテモ今ノ
市制デハ二百五十万ノ市ノ人民ガ不幸ヲ來タス、ソレデ止スガ宜カラウト云
フ趣意デアルカ、其趣意デアルナラバ將來必ズ自治體ニナル、イツマデモ是ハ
此儘ニ置クコトナクシテ市制ト云フ自治體ニナルト云フ御說デアリマスカ、
唯今ガ宜クナイトシテ一時此都制ヲ施イテ又人民ガ段々良クナッテ參ッタナ
ラバ其進步ニ從ッテ又都制ヲ改メテ市制ニナサルト云フ御趣意デアラウカ、
ソコハ私ニ分ラヌ、一體今日ノ弊ハ人ニアルノデ、今ノ人ガイケナイト云フ
ナラバ其人ヲ替ヘテヤレバ又市制ガ立派ニナル、人ニ依ッテ是ハ行ハレルモ
ノデアラウト思フ、都制トナルノハ何ノ爲ニ變ヘルノデアルカ、今日ノ僅カ
ノ弊ヲ以テ變ヘルノデアルカ、万代不朽ノ都制トナルノデアルカ、其點ヲ一
ツ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=86
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087・穗積八束
○穂積八束君 御尋ネノ御要領トスル所ヲ或ハ十分ニ捕ヘテ居ラヌカモ知リ
マセヌカラ、若シ私ノ申上ゲル所デ御不滿足デアリマシタラ、私ノミデハナ
ク澤山此所ニ贊成者同志者ガ居リマスカラ、ソレカラ又重ネテ申上ゲマスガ、
私ノ考ヘマシタ所デハ都制法案ト云フハ今日ノ制度ガ今日ノ東京市制ト云フ
制度ガ惡ルイカラシテ、其制度ヲ改メタイト云フ點カラ制度ヲ改メルニ制度
ヲ以テスルノデアル、ソレデ此案ハ一時ノモノデアッテ永久ノ積リデハナイ
カ、又市民ガ進步ヲスレバ止メルノデアルカト云フヤウナ御話デアリマシタ
ガ、私ノ考ニハ決シテサウ云フヤウナ考デハナイノデアリマシテ、是ガ今ノ
市政ヲ行ッテ見タガ今日ノ人民ニハマダ早イカラ、ソレデ跡戾リヲシテ之ニ
スルト云フヤウナコトデハ決シテナイノデ、私ドモガ若シ當時政府ニ居ッテ
力アル者デアッタナラバ、初メカラ私ハ此制度ヲ施イテ置クノダト思フノデ
スケレドモ、御互ニサウ自由ニハ出來ナイ、ソレデ決シテ是ハ當分ノ間、戒
メノ爲ニスルト云フヤウナ考デハナイノデ、矢張リ是ガ立派ナモノデアリマ
シテ、決シテ是ガ此都ノ制度ヲ施イテ都ノ人民トシテ我〓ガ其支配ヲ受ケ
テ少シモ恥カシクナイ、是ガ立派ナ自治制度デアリマス、何ダカ御言葉ノ中
デ斯クナレバ自治制デナクナルトカ、或ハ自治制度ガ跡戾リヲスルカラ、他
日自治制ニ復スカト云フヤウナ御話ニ聞キマシタガ、若シサウデアレバ、決
シテサウ云フヤウナコトデハアリマセヌ、其他御話ノコトモアリマシタガ、
ドウカ唯今ノ答ノ所デ········尙ホ委シイコトハ委員會ナリ第一讀會ノ續ノトキ
ニ御述ベヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=87
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088・柳原義光
○伯爵柳原義光君 本員ハ政府ニ質問ヲ致シタイノデアリマスガ、唯〓穗積
博士モ板倉子爵ニ對スル御答辯ノ中ニ御言葉ガアリマシタガ、御互ニ自由ニ
ナラヌ、併ナガラ政府者デアッタナラバ自由ニナルカノ如キ御言葉デアリマ
シタガ、私ハ一體此案ニ付イテ疑問ヲ有ッテ居ルノハ昨年アタリハ此案ノ發
議者デアッタリ贊成者デアッタル所ノ現內閣ノ平田內務大臣、岡部法相、小
松原文相ノ如キモ、此案ノ發議者若クハ贊成者デアッタラウト信ジテ居ルノ
デアリマス、又此所ニ居ラレル一木次官ノ如キハ、タシカ此案ニ依ッテ今日
ノ穗積博士ノ役目ヲ御勤メニナッテ御演說ニナッタト心得マス、政府ガ何故
ニ此案ヲ發案ヲナサラヌカト云フコトガ私ガ甚ダ了解ニ苦シム點デアリマス
ガ、唯貴族院ニ議席ヲ有ッテ居タトキニハ之ニ贊成シタガ、一タビ自分等ガ
政府ニ立ッタトキニハ他ノ人ニ出サセテヤルト云フコトハ私ニハ分ラヌノデ
アリマス、ナゼ進ンデ政府自ラ御提出ニナラナカッタカト云フコトヲ伺ヒタ
ウゴザイマス
〔政府委員一木喜德郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=88
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089・一木喜徳郎
○政府委員(一木喜德郞君) 柳原伯ノ御問ニ御答ヲ申シマス、唯今御述べノ
通リ此案ガ昨年提出セラレマシタ際ニハ、今日國務大臣トシテ內閣ニ列シテ
居ル人〓ノ中ニ贊成モゴザイマスシ、提出者モアリマス、本員自身モ提出者ノ
一人デアル、又唯今御質問ニナッタ柳原伯ノ如キモ御贊成ニナッタト思ッテ
居リマス、ソレデ此案ハ先刻穂積君ヨリ御述ベニナリマシタ如ク、貴族院ノ
宿論ト認メテ宜イ案デアラウト思ヒマス、本年如何ナル御決議ニナルカハ、
ソレハ今後ニ徵サナケレバ分リマセヌケレドモ、兎ニ角數囘本院ニ提出セラ
レマシテ、大多數ノ御賛成ヲ得テ可決ニナッテ居ル所ノ案デアリマス、ソレデ
其初メニ於キマシテハ殆ド一人モ異議者ハ無カツタト思ヒマス、昨年ハ多少
ノ反對ノ御方モアッタ、又衆議院ニ於キマシテモ東京市ノ制度ヲ改正スルノ
必要ヲ認メラレテ居ルコトヽ見エマシテ、旣ニ本年モ東京市制ナルモノヲ提
出セラレテ居ル、昨年モ矢張リ同ジヤウナ法律案ガ提出ニナリマシテ、昨年
ニ於テハ同院ノ可決ヲ經テ居ルヤウナ譯デアリマス、東京市ヲ何トカ改善シ
ナケレバナラヌト云フコトニ於テハ兩院ノ意見モ一致シテ居ルト云ウテ宜シ
カラウカト思ヒマスガ、此案ハ貴族院ノ宿論デアリマスカラ、多分本年ニ於テ
モ當院ヘ御提出ガアルコトデアラウト思ヒマス、又衆議院ニモ矢張リ東京市
ノ制度ノ改善ニ付イテハ意見ガアルノデアリマスカラ、多分本年ニ於テモ提
出ニナルコトデアラウト思ッタガ、果シテ提出ニナッタノデアリマス、昨年ニ
於キマシテハ此都制案ニ就キマシテ兩院表向ノ交渉ト云フコトデハアリマセ
又カ、各市制ノ改善ヲ期スルト云フ點ニ於テハ一致シテ居リナガラ、案ニ異
同ガアルガ爲ニ常ニ互ニ其案ヲ固執シテ居ルト云フコトデハ、イツマデモ解
決ガ付カナイカラ、何トカ打解ケテ協議ヲシタラ宜カラウト云フコトカラ兩
院ヨリ委員ノ名義デハアリマセヌケレドモ三人ヅヽノ議員ガ出テ協議ヲ致シ
タコトモアッタヤウニ承知イタシテ居リマス、サウ云フヤウニ兩院共ニ市ノ
制度ヲ何トカ改善シタイト云フ點ニ於テハ一致シテ居ルノデアリマスカラ、
是マデノ歷史ヲ逐ウテ本年ニ於テモ多分都制案ヲ提出ニナルコトデアラウト
考ヘマス、果シテ今日提出ニナッタノデアリマス、卽チ昨年ノ例ヲ逐ウテ兩
院ニ於テ篤ト御協議ニナルコトヽ思ヒマス、サウ致シマシタラ兩院ノ意見ノ
一致ヲ見テ此兩院共ニ一致シテ居ル市制改善ト云フコトニ付イテノ結果ヲ得
ルコトガ出來ヤウカト思フノデアリマス、其方ガ詰リ市制ノ改善ヲ圖ルト云
フコトニ付イテハ尤モ適當ナ順序ダラウト考ヘテ居ルノデアリマス、併シ先
刻、今日內閣ニ立ッテ居ル所ノ大臣ノ名ヲ指シテコレ〓〓ノ人ハ贊成者デ、コ
レ〓〓ノ人ハ提出者デアッタデハナイカト云フ御話デアリマシタガ、其人〓
ノ考ニ付イテハ玆デ申述ブベキ筋デ無カラウト思ヒマスカラ、其人〓ニ就イ
テ御志ヲ御タヾシ下サルコトヲ希望イタシマス、政府ガ都制案ヲ提出イタシ
マセヌ所以ハ此都制案ハ貴族院ノ宿論デアッテ兩院ニ於テ各見ル所ヲ以テ市
制ノ改善ニ付イテ御骨折ニナッテ居ルコトデアリマスカラ、政府ニ於テハ都
制案ヲ出ス出サヌト云フコトニ付イテ別ニ詮議ヲ致シマセナンダノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=89
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090・柳原義光
○伯爵柳原義光君 然ラバ更ニ質問ヲ致シマスガ、政府ハ此案ニ付イテ御同
意デアリマスカ、或ハ御同意デ無イノデアリマスカ、伺ヒタイノデアリマス
〔政府委員一木喜德郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=90
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091・一木喜徳郎
○政府委員(一木喜德郞君) 本案ガ幸ニ兩院ノ意見ノ一致ヲ見マスニ於キマ
シテハ政府ニ於テハ異議ハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 穂積君ニ伺ヒマスガ、此演壇デ提出ノ理由ヲ御述
ベニナリマシタアトデ、此案ノ特別委員ハ十五名ニシテ議長指名ニシタイト
云フコトヲ御申述ベニナッタヤウニ考ヘマスガ、確メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=92
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093・穗積八束
○穗積八束君 サウデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=93
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094・田健治郎
○男爵田健治郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=94
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095・南郷茂光
○南〓茂光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=95
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096・伊澤修二
○伊澤修二君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=96
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097・下條正雄
○下條正雄君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=97
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098・松平正直
○男爵松平正直君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=98
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099・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 穗積君ノ十五名ノ特別委員ニ付託シ其委員ハ議長
ノ指名ト云フ說ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=99
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100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=100
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101・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ請願ノ會議ニ移リマスガ、此前ノ本會議ノ
節ニ曾我子爵ヨリ請願ニ關スル質問ヲ請願委員長ニ致サレマシタ、トコロガ
委員長ガ此席ニ居ラレマセヌノデ、質問ノ趣意ヲ議長カラ委員長ニ御傳ヘヲ
致スコトヲ曾我子爵ニ中上ゲテ置キマシタ、本日ハ三宅請願委員長ガ著席ヲ
セラレテ居リマスカラ此際、三宅請願委員長カラ過日曾我子爵ノ御質問ニ對
スル御答辯ノアルコトヲ議長ハ望ミマス、三宅君演壇ニ御出デヲ願ヒマセウ
〔三宅秀君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=101
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102・三宅秀
○三宅秀君 過日ハチヨット本員ガ退席ヲ致シテ居リマスル際ニ、曾我子爵
カラ彼ノ競馬善後策急施ノ請願ニ付キマシテ、ドウナッテ居ルカト云フ御質
問ガ出マシタサウデアリマス、本員ガ在席イタシテ居リマスレバ卽答ヲ申上
ゲル筈デゴザイマシタガ、ツイ一兩日御答ガ延ビマシタノハ甚ダ申譯ガナイ
次第デアリマス、是ヨリ彼ノ競馬請願ニ付キマシテ、ドウナッテ居ルカト云
フコトヲ御答辯イタシマスルガ、簡單ニ申シマスレバ、去ル八日コヽノ日程ニ
上ボリマシタノヲ再調查ノ意味ヲ以テ委員會へ取戾シテ居リマスノデ、丁度
翌日一日ヲ置キマシテ十日ガ請願委員會ノ定日デゴザイマスルカラ、請願委
員會ノ定日ヲ機ト致シマシテ委員長ハ之ヲ再議ニ付シマシタノデアリマス、
其節ニ調査ヲ要セナイト云フ見込ノ委員ハ調査ヲスルニ及ブマイカラ今日採
擇カ不採擇カト云フコトヲ卽決シテ宜カラウ、斯ウ云フ委員モ數名ゴザイマ
シタ、又其反對ノ側ノ委員ハ再調査ト云フコトデ戾シテ參ッタノデアルカラ
愼重ナル調査ヲ致サナケレバナラヌ、ソレニハ今日卽決ト云フコトハ出來ヌ
カラシテ尙ホ數日ノ日子ヲ置イテ、サウシテ愼重ニ調査ヲシヤウ、斯ウ云フ
論者ガゴザイマシテ、遂ニ卽決ノ意見ヲ有ッテ居リマスル方ノ委員ガ多數ヲ
占メルコトガ出來マセヌ爲ニ、今日マデ審査中ニナッテ居リマス、ソコデ委
員長ハ會期モ切迫シテ居リマスルシ、又谷子爵カラノ御忠告モゴザイマシタ
カラ成ルベク此請願ハ早ク調査ヲ致シタイ考デゴザイマスルケレドモ、唯今
ノヤウナ結果ニナリマシテゴザイマスカラ、次ノ會ノ日ニハ是非之ヲ問題ニ
シテ議シマスカラ、ドウゾソレマデ調査ヲ必要ト認メラルヽ諸君ハ十分ニ御
調査ヲナサッテ下サレタイ、其次ノ會ト申シマスルノハ來ル十七日ガ水曜日
デゴザイマシテ、是ハ豫ネテノ約束通リ請願委員會ヲ開ク日デアリマスカ
ラ、其時ヲ約シマシテ、其時マデニ十分御調査ヲ爲サツテ下サルヤウニト云
フコトニナッテ卽チ今日ハ審議中ノ有樣デアリマス是ダケ御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=102
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103・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 唯今ノ請願委員長三宅君ノ御報〓ハ其半バヲ領シマシタ
ガ半バハ分ラナイ、依ッテ更ニ質問ヲ致シマス、御迷惑デハアリマセウガ御
辯解ヲ願ヒマス、ソレハ八日ノ本議場ノ日程ニ載リマシタ唯今述ベラレマシ
タ競馬ノ善後策急施ノ請願、是ガ日程ニ載ッテ居ッタノデアリマス、然ルニ委
員長卽チアナタガ尙ホ調査スル所ガアル、調査不十分ノ所ガアルカラ一應日
程カラ取下ゲテ更ニ調査シテ出シタイト云フコトヲ御述べニナッタト私ハ記
憶イタシテ居ルノデアリマス、ソレニ對シテ谷子爵カラ何ノ點ニ就イテ調査
ヲシナケレバナラヌノカ其理由ガ分ラヌト云フ御問ヒガアッタラ唯分ラヌコ
トガアルカラト云フノデ日程カラ取下ゲラレタノデアリマス、然ルニ唯今ノ
報〓ヲ承ルト、去ル八日········間違ヒマシタ、十日ニ請願委員會ヲ開イテ相談
ヲシタ所ガ、卽決スベキモノデアルカ、サウデナイカ、或ハ採擇スベキモノ
デアルヤ否ヤト云フコトヲ議シタ所ガ、十分其事ガ纏マラナカッタカラ今日
マデ報告ヲスルニ至ラヌト云フ御報告デアリマシタ、ソコガ本員ノ解シ難イ
所デアル、何トナレバ委員長ハ過日八日ノ會議ニ於テ尙ホ調査スル所ガア
ル、調査不十分ノ廉ガアルカラト云フノデ、此議場カラ取下ゲラレタノデハ
アリマセヌカ、然ラバ更ニ委員會ニ於テ調査シヤウカ、シマイカト云フコト
ヲ審議スル必要ハ無イ、無論直チニ調查ニ著手シナケレバナラヌト考ヘルノ
デアリマス、尤モ請願委員會ノ內容ハ少シク承リ及ンダコトモアリマスガ、
ソレハ申述ベマセヌガ、ドウ云フ譯デアルカ、其點ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=103
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104・三宅秀
○三宅秀君 御答ヲ致シマス、調查ヲ必要トシナイ所ノ委員カラ、更ニ調査
スル必要ハ無イト認メルカラ採擇不採擇ヲ卽決シタラ宜カラウト云フ論ガア
リマシタノデ、尤モ多數ノ委員カラ調査不十分デ十分ニ遂ゲナイ所ガアルカ
ラ延期ヲシテ再調查ニ付シタイト云フ申立ニ依ッテ、委員長ノ資格デ當議場
カラ取下ゲタト云フ譯デアリマス、ソレ故ニ果シテ調査ヲスル、愼重ニ調査
ヲスルニハ若干ノ時日ヲ要シマスカラ、今日マデ猶ホ調查中ニナッテ居リマ
ス、ソレ故ニ此次ノ例會ノ日ヲ期シテ此日ニハ何トカ決シタイト存ズルカラ、
ドウゾソレマデニ調査ニナリタイト云フ御方ハ十分ニ御調査ヲ爲サッテ下サ
ルヤウニト云フコトニナッテ居リマス、今日デハサウ云フ情態デアリマス、
御分リデシタカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=104
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105・市川文藏
○市川文藏君 請願委員長ニ質問ヲ致シマス、私モ委員ノ一人デゴザイマス
ガ、唯〓ノ委員長ノ報〓ニ依リマスルト、去ル八日ノ議場ニ於キマシテ本案ヲ
撤囘シマシタノハ、多數ノ委員カラ再調査ノ必要ガアルト云フコトデアッタカ
ラ、サウシタト云フ御話デゴザイマスガ、私ハ未ダ昨今ノコトデ斯ウ云フ場合
ノ例ヲ存ジマセヌデゴザイマスガ、其當時ノ考ヘデハ委員長ニハサウ云フ權
利ガアルコトヽ存ジテ居リマシタガ、ドウモ自分デ考ヘテ見マスルノニ、一旦
請願委員ノ總會デ可決シテ議長ノ御手許マデ提出シタモノナラ、ソレヲ取戾
スニハ矢張リ相當ノ委員會ヲ開イテ議決シタ上デナケレバナラヌト思ハレマ
ス、然ルニ私等ニハサウ云フ御相談ハゴザイマセス、是ハ私バカリデハゴザ
イマセヌ、委員中ノ一人タル眞田男爵モ御承知ガ無イト云フコトデゴザイマ
ス、ソレカラ森委員モ御承知ガ無イト云フコトデアリマスガ、一體サウ云フ
權利ガ委員長ニアルヤ否ヤ、他日ノ參考ノ爲ニ伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=105
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106・三宅秀
○三宅秀君 御答ヲ致シマス、ソレハ多數ノ委員ガ更ニ調査ヲ要スルト云フ
コトヲ申出デラレタト云フノハ、各分科ノ主査ガ代ッテ委員長へ御中出デニ
ナリマシタノデゴザイマス、各分科ノ主査ガ其分科內ノ委員ノ多數カラ申出
デガアッタレバコソ御取次ニナッタモノト思ヒマスカラ、ソレヲ取纒メテ、委
員長ガ代表シテ此議場へ申立テタダケデ、決シテ委員長ガ自己ノ考ヲ以テ皆
サンニ御諮リヲ致サズニ取下ゲタ譯デハナイト心得テ居リマス、サウ云フコ
トニ御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=106
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107・久保市三郎
○久保市三郞君 私ハ委員長ニ御忠告申上ゲマス、委員長ハ伊達男爵ノ質問
ニ答ヘテ今日ハ猶ホ調査中デアルト言ハレマシタガ、調査ト云フ名目ノ內ニ
··ケレドモ又ソレデハ今日マデ本會議ニ提出ニ至ラヌ事情ヲ報告スルノニ
其手順ヲ盡サヌ所ガアルト思ヒマス、モウ少シ實際、請願委員長カラ今日マ
デ議長ニ報告ニ至ラヌ內容ヲ寧ロ正當ニ答辯セラレタラ宜カラウト思ヒマ
ス、ソレダケ委員長ニ御忠告申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=107
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108・三宅秀
○三宅秀君 久保君ニ申上ゲマスガ、ソレホド委シク實況ヲ御承知ナラ、委
員長ニ代ッテ久保君カラ御報〓ヲ願ヒタイト思ヒマス、委員長ハ先刻···
〔久保市三郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=108
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109・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) マダ三宅君ガ發言中デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=109
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110・三宅秀
○三宅秀君 先刻ノデ曾我子爵ヘノ御答ニハ十分ト心得テ居リマス、若シ其
上ニモ十分ニ曾我子爵ノ御問ニ御答ヘナサリタケレバ實況ヲ御承知ノ久保君
カラ御答ヘニナルコトヲ私ハ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=110
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111・久保市三郎
○久保市三郞君 委員會ノ內容ハ········委員長カラ私ニ内容ヲ御話シ申スヤウ
ニト云フコトデアリマシタガ、是ハ委員長ガ其當然ノ任務ヲ盡サナイモノト
思ヒマス、現ニ此前ニ此問題ガ出マシタトキニ、委員長ハ此議場ニ出テ居ラレ
ナイ、副委員長ハ出テ居ラレマシタガ、、答辯ヲスル意思ガ無イト云フコトデ何
モ御話ニナラナカッタノデアリマス、委員長ノ今言ハレルガ如ク他ノ委員カラ
御話申シテモ宜イ譯ナラバ此前ノ本會ニ於テ申シテモ宜カッタノデアリマス、
請願委員會ニ委員長副委員長ヲ決メテアル以上ハ、其委員會ノ內容ハ委員長
或ハ副委員長カラ本會ニ向ッテ報告ヲスルノガ其職責カト思ヒマス、現ニ今日
ハ委員長ガチャント出席ニナッテ居リ、內容モ委シク知ッテ居ラルヽノデアルカ
ラ、此本會議ニ於テ質問ガアッタラ正當ニ請願委員會ノ内容ヲ御話シ申シテ、
サウシテ今日マデ報告ニ至ラヌト云フコトヲ申サレタラ宜カラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=111
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112・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 是ハ初發、私ノ質問ガ火元ニナッタノデアリマスカラ、
言申述ベタウゴザイマス、詰リ本案ヲ速ニ決シタイト云フノガ私ノ質問ノ趣
意デアリマスカラ、唯〓委員長ノ仰セニハ七日ト十七日ニ議スルト云フコト
デアリマスガ、急ギマスカラ初メノ私ドモノ質問ノ趣意ニ對セラレテ三日バ
カリニ御議決ニナッテ報〓ニナラムコトヲ希望シマス、ドウカ皆サン御贊成
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=112
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113・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 曾我子爵ニ伺ヒマスガ、三日バカリト云フト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=113
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114・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 三日デ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=114
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115・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本日カラ三日間デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=115
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116・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=116
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117・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 曾我子爵ニ贊成ハ致シマスガ、三日バカリデハナイ、本
員ハ明後十五日中ニ御報告アルヤウニ、斯ウ云フコトニ致シタイト存ジマ
ス、願ハクハ曾我子爵ニ於テモ御同意アラムコトヲ希望シマス、之ヲ御相談
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=117
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118・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 卽チ三日デアリマス
〔「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=118
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119・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 伊達男爵ニ伺ヒマスガ、本月十五日中ニ唯今ノ問
題トナッテ居ル請願ヲ此議場ニ報告スル、ソレデ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=119
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120・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=120
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121・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 伊達男爵ノ動議ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=121
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122・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=122
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123・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十九、樺太航路開始ノ請願、第二十、
大湊鐵道速成ノ請願、第二十一、煙草專賣法中葉數査定ニ關スル規定廢止ノ
請願、第二十二、廣島江津間鐵道速成ニ關スル請願、第二十三、小學校正〓
員官設鐵道無賃乘車ノ請願、第二十四、山陰縱貫鐵道速成ノ請願、第二十五、
葉煙草葉數査定廢止竝國立煙草試驗場設置ノ請願、第二十六、甲府岩淵間鐵
道速成ノ請願、會議
〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚
乙
意見書案
樺太航路開始ノ件
靑森商業會議所會頭樋口喜輔呈出
右ノ請願ハ南樺太ノ我カ版圖ニ歸セシヨリ以來靑森ト同島トノ間ニ旅客及
漁夫ノ往來頻繁トナリ隨テ食料其ノ他必要品ノ輸送夥シキニ至リタルモ交
通機關ノ連絡ヲ闕キ不便尠カラサルヲ以テ政府ハ速ニ兩地間ニ定期航路ヲ
開始セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵桂太郞殿
意見書案
大湊鐵道速成ノ件
靑森縣下北郡田名部町平民農西山廣外百九十九名呈出
右ノ請願ハ靑森縣下北郡大湊ハ我カ海陸ノ要衝ヲ扼シ又同郡ハ水陸ノ物產
豐饒ナレトモ運輸機關ノ闕如スル爲之ヲ他方面ニ搬出スルノ便ヲ闕キ空シ
ク僻隅ニ孤立スルノ有樣ナルニ依リ國防上及經濟上ノ關係ニ鑑ミ奧羽線中
野邊地附近ヨリ分岐シテ大湊ニ至ル鐵道ヲ第一期線ト爲シ之ヲ急設セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵桂太郞殿
意見書案
煙草專賣法中葉數査定ニ關スル規定廢止ノ件
神奈川縣中郡秦野町農大野與五右工門外三百五十二名呈出
右ノ請願ハ煙草專賣法中煙草葉數査定ニ關スル規定ハ收納上ノ犯則者ヲ拘
束セムトシテ反テ誠實ナル一般耕作人ヲ過度ニ牽束スルノミナラス査定上
ノ手數繁苛ニシテ煙草耕作ノ振興ヲ害シ且一般農業ニ餘殃ヲ及ホスノ弊ア
ルヲ以テ之ヲ改メテ量目査定ノ法ヲ採用セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
明治四十二年月日
貴族院議長公爵德川家逹
內閣總理大臣侯爵桂太郞殿
意見書案
廣島江津間鐵道速成ニ關スル件
廣島縣雙三郡三次町長長岡純一外七十五名呈出
右ノ請願ハ廣島江津間ノ鐵道ハ啻ニ沿道地方ニ於ケル交通運輸ノ利便ヲ開
發スルニ必要ナルノミナラス國防上及對外貿易上最緊要ナルヲ以テ之ヲ第
一期線ニ繰上ヶ速成セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵桂太郞殿
意見書案
小學校正〓員官設鐵道無賃乘車ノ件
茨城縣北相馬郡高井村平民農中久木周平外十二名呈出
右ノ請願ハ小學校〓員ハ兒童ヲ〓育シ其ノ智能ヲ啓發スルノ重任ヲ荷フモ
ノナルヲ以テ學術ノ講習又ハ實地ノ視察ニ關シ旅行ヲ爲スノ必要アルハ言
ヲ俟タスト雖菲薄ナル俸給ノ到底之カ費用ヲ支フル能ハサル所ナルカ故ニ
尋常科正〓員竝本科正〓員ニシテ其ノ筋ノ證明ヲ得テ公務上ノ旅行ヲナス
トキハ之ニ對シテ官設鐵道ノ無賃乘車ヲ許可セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
明治四十二年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣侯爵桂太郞殿
意見書案
山陰縱貫鐵道速成ノ件
山口縣吉敷郡山口町長八木宗十郞外二十名呈出
右ノ請願ハ山陰縱貫鐵道中今市ヨリ山口町ヲ經テ小郡ニ達スル線路ハ石見
一帶ノ地ヲシテ南海岸ニ連接セシメ行政軍事殖產等ノ利便ヲ增進シ國家ノ
發展ヲ期スルニ於テ頗緊要ノモノナルモ第二期線ニ屬シ起工ノ時期未タ明
ナラサルハ最遺憾ナルヲ以テ速ニ工事施行期ヲ定メ且今市小郡ノ兩端ヨリ
起工セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十二年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣候爵桂太郞殿
意見書案
葉煙草葉數査定廢止竝國立煙草試驗場設置ノ件
栃木縣大山田煙草生產同業組合組長靑柳與平呈出
右ノ請願ハ煙草専賣法中煙草葉數査定ノ制ハ煙草ノ耕作者ヲシテ往往其ノ
採收ノ時期ヲ誤ラシメ爲ニ其ノ品質ヲ害シ量目ヲ減シ之ニ多大ノ損失ヲ被
ラシムルノミナラス國家ノ經濟上亦不利ナルヲ以テ之ヲ廢止シ尙全國有數
ノ產地タル栃木縣下ニ國立煙草試驗場若ハ支場ヲ設置シ以テ其ノ耕種採葉
ノ方法ヲ講シ斯業ノ改良發達ニ資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
明治四十二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣候爵桂太郞殿
意見書案
甲府岩淵間鐵道速成ノ件
靜岡縣靜岡市新通一丁目士族醤油釀造米穀商磯野新藏外十二名呈出
右ノ請願ハ甲府岩淵間ノ鐵道ハ本州中部ヲ橫斷シテ東海道ト中山北陸兩道
トノ連絡ヲ完カラシメ國防上及地方產業ノ振興上緊要ナルノミナラス近時
〓水港ノ發達ハ益之カ急設ヲ促スヲ以テ豫定ノ工事ヲ最近年度ニ繰上ヶ速
ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
明治四十二年月日
貴族院議長公爵德川家逹
内閣總理大臣侯爵桂太郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=123
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124・田中芳男
○田中芳男君 請願委員長ニ質問イタシタウゴザイマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=124
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125・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) ドノ請願ニ付イテデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=125
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126・田中芳男
○田中芳男君 二十一ト二十五ニ付キマシテ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=126
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127・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=127
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128・田中芳男
○田中芳男君 御迷惑ナガラ伺ヒマス、此葉煙草ノコトハ耕作人ガ收納所ヘ
納メテ參ッタトキニ葉數デ檢査ヲサレテハ困ルカラ荷物ニ造ッタマヽ目方デ
引取ッテ吳レイト云フコトノヤウデアリマス、請願書ハ二通デアルガ其實ハ
殆ド同ジヤウデアリマスガ、成ルホド耕作者ニ取ッテハ葉ヲ一枚ヅヽ改メラ
レテハ中ニ屑ナドガ這入ッテ居ッタトキニ、ソレヲハネラレテハ大キニ困難
ダラウト思ヒマスガ、荷造リノマヽ貫目デ受取ルト云フコトニナレバ、中ニ
疵物ヤ木ノ屑ガアッテハ貫目ノ儘デ受取ルト云フコトニナルト、其受取ッタ
方デ甚タ不都合デ、專賣局ノ方デハ損耗ヲセンナラヌコトガアラウト思ヒマ
スガ、是ハ專賣局ヘデモ能ク御相談ニナッタコトガアリマセウカ、若シ然ラ
ザルトキハ甚ダ不都合ノ案ノヤウニ思ヒマスガ、一應御取調ニナリマシタコ
トヲ承リタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=128
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129・三宅秀
○三宅秀君 田中君ノ御問ハ能ク聽取レマセヌデアリマシタガ、二十一ト二
十五ト詰リ同樣ナ請願デゴザイマス、此二點ニ付イテノ御質問ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=129
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130・田中芳男
○田中芳男君 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=130
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131・三宅秀
○三宅秀君 二十五ノ方ハ少シ違ッテ居リマス、國立ノ煙草試驗場設置ト云
フコトガ籠ッテ居リマスノデ、其他ノ半分ハ第二十一ト殆ド同ジヤウナ請願
デアリマス、此度ハ請願委員會ニ於キマシテ政府委員、專賣局等ノ人カラハ何
モ承ッテ居リマセス、此請願ハ隨分度〓出マス所ノ請願デゴザイマシテ、耕
作者ノ爲ニハ餘ホド迷惑ナ事柄デアル樣子デゴザイマス、ソコデ政府委員ニ
承ッテ見マスト全ク之ヲ廢ス譯ニハ行カナイ、葉ノ數デ行ク方ノ檢査ハ必要
デアル、又乾カシタ方ノ數量デ行ク方法モ必要デアル、ガ段々迷惑ノ方ノ生
葉デ數ヘルコトハ區域ヲ狹メテ行クト云フ方針デアルガ全廢スルト云フ譯ニ
ハ行カヌト云フ說明ヲ政府ノ方デハ申シテ居リマス、併ナガラ耕作者ノ苦痛
ニナリマスコトデ檢查ヲ經ナイ中ニ嵐ヲ食ッテ十分發生シタ所ノ煙草ヲ悉ク
失ッテ仕舞フト云フガ如キハ如何ニモ氣ノ毒ノ樣ニ考ヘマスカラ、是ハ兎モ
角モ參考ノ爲ニ政府ニ移スベシトシテ斯樣ナ譯デ採擇サレテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=131
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132・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程ノ第十九ヨリ第二十六マデノ請願ハ全部
請願委員長ノ報告通リ採擇ヲ致シテ政府ニ送付シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=132
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133・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=133
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134・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ本日ノ議事ハ終リマシタ、御委託ニナリマ
シタ特別委員ノ選定ヲ致シマシタカラ、其氏名ヲ書記官長ヲシテ朗讀ヲ致サ
セマス
〔太田書記官長朗讀〕
明治四十一年法律第九號中改正法律案特別委員
子爵野宮定穀君子爵本莊壽巨君男爵辻新次君
男爵船越衞君男爵金子有卿君男爵杉溪言長君
山田春三君伊澤修二君淺野長太郞君
北海道拓殖銀行法中改正法律案特別委員
伯爵柳原義光君子爵稻垣太祥君子爵靑木信光君
小牧昌業君男爵千秋季隆君男爵本 多政以君
富田鐵之助君加藤宇兵衞君伊藤長次郞君
軌道ノ抵當ニ關スル法律案外一件特別委員
伯爵德川達孝君男爵北垣國道君子爵靑山幸宜君
子爵鳥居忠文君男爵田健治郞君千坂高雅君
千頭〓臣君室田義文君岡谷惣助君
立木ニ關スル法律案特別委員
伯爵柳澤保惠君子爵前田利定君子爵松平親信君
村田保君男爵武井守正君谷森眞男君
藤田四郞君富井政章君岡野敬次郞君
會計法中改正法律案特別委員
伯爵松木宗隆君子爵高木正善君子爵水野直君
長谷部辰連君平山成信君男爵高千穗宣麿君
男爵中島久万吉君中島永元君杉下太郞右衞門君
東京都制案外二件特別委員
侯爵德川賴倫君伯爵松平賴壽君子爵堤功長君
子爵梅小路定行君男爵松平正直君男爵園田安賢君
男爵關義臣君德久恆範君男爵南光利君
男爵南岩倉具威君西村亮吉君南郷茂光君
穗積八束君辰巳楢太郞君宮崎喜久太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=134
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135・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明後日ノ議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビ
マス、今日ハ是デ散會イタシマス
午後零時三十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002503242X01419090313&spkNum=135
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