1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
明治四十二年二月四日午前十時五十五分開議
出席委員左の如し
高木正年君 岩下清周君 荒川五郎君
千田軍之助君 麥田宰三郎君 高山長幸君
關矢橘太郎君 大坂金助君 大熊三之助君
稻村辰次郎君 肥田景之君 漆昌巖君
守屋此助君 石田孝吉君 根津嘉一郎君
出席政府委員左の如し
臨時國債整理局長 塚田達二郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
國債の利子所得税免除に關する法律案
○委員長(漆昌巖君)開會の旨を宣告す
○高木正年君は預金が鐵道會計に流用するほど豐富なりや統計表を以て示されたしと質問せり
○政府委員(塚田達二郎君)は昨日私から述べおきしが預金は既往の實蹟に徴し社會の進歩に隨ひ増加すへきものと信ず統計表は後日示すべしと答辯せり
○荒川五郎君は(一)戰後各種の賦税増加の今日國債の整理をなさんとせは先づ地方債を整理せさるべからず然るに政府は之を措て國債のみ整理せんとするが如きは國家財政の鞏固を圖る所以に非さるべし此點に關して政府の方針如何(二)此案は國債の聲價を高むるを目的とするに過ぎず然るに僅か二十万圓許りの所得税を免除したりとて直ちに聲價の昂騰に影響を及ぼさざるべし國債には所得税を課するものと否らさるものとあるに於ておや政府の所見如何(三)又國債は外國人の手に渡れば所得税免除せらるるなり故に今日免税したりとて左まで公債の價格に影響なかるべし政府の所見如何
○政府委員(塚田達二郎君)は(一)昨日大藏大臣より説明の通り政府は順序として先づ國債を整理し其の聲價を昂め其の結果として地方債も自ら整理せらるるに至るべし即ち國債整理は地方債整理の手段とも云ふべきものなり且つ地方債に對しても全然放任の方針を採り居るに非らず常に大に干渉し止むを得ざる場合の外起債を許さざるの方針を採り居れり(二)所得税免除は其の額たとへ小なりと雖現今の如く免除の有無區々にして不統一なるときは一般資本家が國債を購買する上に於て幾多の手數を要する爲めに自然購買を躊躇するに至り延て國債の價格に影響を及ぼすものある故に一般に免税となし統一をなせば却て一般資本家に對し取扱上幾多の便利を與ふることとなり自然其の價格にも好良の影響を及ぼすべきものなり(三)所得税法の施行せらるる以上は外國人と雖納税の義務あり決して外國人なるが故に免税すと云ふ理由なし所得税法施行せられざる倫敦等に於ては日本人と雖利子に付て納税することなしと答辯せり
○高木正年君は地方債は放任せられ漸次利率昂騰の傾きありて國債との不釣合の状態に在り政府は此状態を看過する積りなりや又公債利子支拂地は倫敦紐育の外尚ほ有りやと質問せり
○政府委員(塚田達二郎君)は地方債利率の昂まれるは全く金融逼迫の結果にして國債の利子低下せば地方債亦た低下するに至るべし是れ國債の利率は地方債利率の標準なればなり利子支拂地は倫敦紐育の外巴里ありと答辯せり
○高木正年君は國債と地方債との利率が一致せさる塲合は即ち國債は政府が其價格を維持し又は昂上せしむる爲に買上其他種々人爲上の手段を以て之を保護するも地方債には全然此の便なきが故に地方債は常に必らすしも國債と其利率の一致を保つへきものにあらすと述へたり
○岩下清周君は外國に於ては利子を支拂にあらすして利札を買上げ日本銀行に於て現金と引き換へるか此の場合に於て課税するや否やと質問せり
○政府委員(塚田達二郎君)は政府の裏書なき公債を外國人が買取り之を外國市場に於て流通せしむる場合の利子支拂方法は政府は買入償却をなすにより其土地に於て直ちに決算せらるを以て税を課せらるることなしと答辯せり
○荒川五郎君は公債は同じ五分利付にても其の發行期と償還期と同一ならざるが故に免税するも其價格は到底一定せさるへし又此免税に付ては法律によらすして他に方法なきや否やと質問せり
○政府委員(塚田達二郎君)は課税は凡て法律にて定めあるか故に免税も亦法律に據らさるべからず又年限に付ては短期のものに付ては多少の影響あるも二十年以上のものに至りては三五年の差は價格に對し何等の影響を及ぼすことなしとの答辯をなせり
○高山長幸君は政府委員の答辯は國債統一が主となりて時價の増進に付ては甚だ不明なり本案は時價の増進を目的とするものなるが故に此點に付て答辯を求む又國債時價の増進は之を外國に賣出すに若くはなきに本案は免税の結果内地に於て時價昂騰するか故に外國人は之を買ふに躊躇すへしかくては外國に賣出すによりて時價を昂むることを能はざるに至るへし又外之國に於ける利子支拂地は清國にはなきやなくは其理由如何と質問せり
○政府委員(塚田達二郎君)は免税して國債を統一することは即ち時價増進の手段に外ならず又日本内地にては時價は五分利付にして八十七圓なるに倫敦にては四分五厘利付にても九十七圓の價格を有するか故に内地に於て多少の昂騰あるも外人の購買には影響を及ぼさざるべし且つ免税により公債價格昂騰するか故に國家は利することとなるなりと答辯せり
○高山長幸君は免税か直ちに外國人の購買心を起さしむる直接の原因ありやと質問せり
○政府委員(塚田達二郎君)は直接の原因はなきも倫敦、巴里、紐育以外に住する外人が日本國債を購買せし場合に利子支拂を受くるに際し其の住地の銀行に至り割引をなし爲替として横濱に送り横濱にては支拂代金として利札を以て正金銀行に付き支拂を受くる場合には課税するが故に免税の上は隨て購買心を起すに至るべしとの答辯をなしたり
○高山長幸君は外人は態々日本に持ち來り課税を受くるが如きことなかるべし故に右の理由は頗る薄弱なり又清國に於ては買上償還をなすや否やとの質問をなしたり
○政府委員(塚田達二郎君)は清國にて買上償却をなさず隨て清國人は利子の支拂を受くるには爲替作用によりて利札を送付し來るものなりとの答辯をなしたり
○高木正年君は國債の價格は償還期限の長短によりて高低せさるものとせは何故に本年度に於て三千七百万圓の償還増加を豫算に計上せしやとの質問をなしたり
○政府委員(塚田達二郎君)は償還期限の長短は國債の時價に影響なきも償還とは別問題なりとの答辯をなしたり
○高木正年君は政府は從來買上償却の方法によりたるも現内閣に於ては今後抽籖消却を專らにするの方針を採るとの事なるが尚ほ且つ買上償却の法を採らんとするかとの質問をなしたり
○政府委員(塚田達二郎君)は國債償却には買上と抽籖との二償却方法ありて政府は其何れを採るかは全く政府撰擇の自由にして場合の如何により國債整理委員會の決議によりて定まるものにして總内閣は抽籖法を採るとの宣言をなせしや否やは承知せずとの答辯をなしたり
○岩下清周君は本員は現内閣の國債整理方針が抽籖法によるとの事なるに今日政府委員の御説明は之に反するやの點あり故に政府委員は退て大藏大臣に眞相を聽き取られ改めて答辯あらむことを望むと述へたり
○委員長(漆昌巖君)は明日午前十時再開すへきを宣し解散を宣告したり
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