1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十二年三月四日(木曜日)午後一時十六分開議
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議事日程 第十四號 明治四十二年三月四日
午後一時開議
第一 明治四十一年法律第九號中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第三 耕地整理法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第五 特許法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第七 意匠法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第九 商標法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十一 實用新案改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十三 國債の利子所得税免除に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 登録國債の擔保充用に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 政府に對する保證金其の他の擔保に供したる國債の買入銷却に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 獸畜市場法案(森田俊左久君外二名提出) 第一讀會
第十七 獸疫豫防法中改正法律案(森田俊左久君外二名提出) 第一讀會
第十八 競馬法案(佐々木文一君外二名提出) 第一讀會
第十九 違警罪即決例に關する法律案(松田源治君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 違警罪即決例廢止法律案(卜部喜太郎君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 關税定率法輸入税表中改正法律案(森本駿君外一名提出) 第一讀會
第二十二 燐寸輸出交付金下付に關する建議案(森本駿君外一名提出)
第二十三 商科大學設立に關する建議案(根本正君外五名提出)
第二十四 戰鬪員以外の殉難者遺族及癈疾者救濟に關する建議案(的野半介君外五名提出)
第二十五 韓國横貫鐵道敷設に關する建議案(金尾稜嚴君外六名提出)
第二十六 豫算の款項改正に關する建議案(田川大吉郎君提出)
第二十七 外交文書公表に關する建議案(小川平吉君外一名提出)
第二十八 打狗築港速成に關する建議案(齋藤珪次君外四名提出) (委員長報告)
第二十九 萬國癩豫防會議へ委員派遣に關する建議案(山根正次君提出) (委員長報告)
第三十 (特別報告第十一號)借地權救濟に關する請願 (委員長報告)
第三十一 (特別報告第二十號)借地に關する請願 (委員長報告)
第三十二 (特別報告第二十一號)競馬の善後策急施に關する請願 (委員長報告)
第三十三 (特別報告第二十二號)競馬の善後策に關する請願 (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=0
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001・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 補闕選舉ニ當選セラレタル議員ニシテ本日登院ニナッタ人
ガアリマスカラ之ヲ御紹介致シマス、而シテ紹介ノ場合ニハ其紹介セラレタ議員ハ、起立
セラレンコトヲ望ミマス-宮城縣郡部選出議員遠藤良吉君ヲ紹介致シマス
〔遠藤良吉君起立〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=1
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002・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ左ノ質問書ニ對シ答辯書ヲ送付セラレタリ
公證人法施行ニ關スル質問主意書(岡部司法大臣)
衆議院議員花井卓藏君提出公證人法施行ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候也
明治四十二年三月三日內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
(別紙)
衆議院議員花井卓藏君提出公證人法施行ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一明治四十一年法律第五十三號公證人法ハ其施行ニ必要ナル附屬法令ノ取
調中ナルニ付未タ施行セラルヽニ至ラサリシナリ
二附屬法令ノ制定ニ付參考スヘキ資料ハ必要ト認メタル限リ既ニ之ヲ蒐集シタリ
三公證人ノ員數ハ人口件數其ノ他ノ事情ヲ參酌シテ適當ニ之ヲ定メムトス
右及答辯候也
明治四十二年三月三日司法大臣子爵岡部長職
衆議院議長長谷場純孝殿
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
外交文書公表ニ關スル建議案
提出者小川平吉君服部綾雄君
商事會社ニ關スル法律案
提出者高木益太郞君
一宮古啓三郞君外三名ヨリ國有土地森林原野下戾ニ關スル質問主意書ヲ提出
セラレタリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
國有土地森林原野下戾ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十二年三月三日
提出者宮古啓三郞小川平吉立川雲平
板倉中
贊成者長谷川豐吉
外三十三名
國有土地森林原野下戾ニ關スル質問主意書
一第二十四囘帝國議會ノ當時衆議院ハ國有土地森林原野下戾ニ關スル建議
ヲ爲シ政府ハ明治三十五年五月二十日農商務省訓令第十二號ノ趣旨ニ必
ス違ハサルノ措置ヲ執ルコトヲ望ミタリ其後仔細ニ國有土地森林原野下戾請
求ノ行政訴訟ニ付農商務省ノ執ル措置ヲ觀察スルニ更ニ該訓令ノ趣旨ニ從ハ
ス政府ハ右衆議院ノ建議ヲ採ラサルカ其理由如何
二國有土地森林原野下戾法制定當時ノ衆議院特別委員會ニ於ル政府ノ答辯
ニ依レハ高受ナル土地森林原野ハ其ノ高受ノ體樣カ小物成ナルト否トヲ問ハス
之ヲ民有地ト認ムルノ趣旨ナリシヤ明白ニシテ立法ノ趣旨又之ニ異ナラサルヘキ
カ故ニ已ニ土地森林原野ニシテ高受ナル以上ハ下戾法ニ於テハ之ヲ民有地ト
見ルヘキモノト信ス政府ノ所見如何
三國有土地森林原野下戾請求ノ行政訴訟ニ付行政裁判所ヨリ其ノ國有土地
森林原野下戾ノ申請ニ對スル處分記錄ノ送付ヲ囑託セラルヽモ農商務省ハ之
ニ應セスト云フ凡ソ政府ハ公明正大ニシテ敢テ處分記錄ヲ祕密ニシ行政訴訟
ニ萬一ヲ僥倖セント謀ルヘキモノニアラサレハ裁判上必要トシテ要求セラルヽ書
類ハ之ヲ送付シ正々堂々ト爭論セサルヘカラサルモノト信ス政府ノ所見如何
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一去ル二日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
裁判所構成法中改正法律案外一件
關信之介君翠川鐵三君福岡精一君
山田桃作君田中定吉君武田貞之助君
內野延君安東敏之君花井卓藏君
關稅定率法輸入稅表中改正法律案外一件
千田軍之助君池侃二君
井由之君本君君
盛德君淺紫藤荻森菊芳新市住友區帶 無法育造上海及由新村物理工程有限公司
木荒水三古川野浦五正野垣井野吉雄助藏駿野藤岡
良郞己君君君陽一善君君君武貞力營雄
村木
狩獵法中改正法律案
上埜安太郞君〓峯太郞君高森新君
手塚正次君西澤定吉君川眞田德三郞君
神崎東藏君米田穰君梅原良君
大船渡鐵道鐵業補給ニ關スル建議案
柏原左源太君阿部德三郞君高橋嘉太郞君
伊東祐賢君原岡永江君森泰君
宮內翁助君松田植古場平君
海|||||||||||||||||||||||||||||軍之佐君小 3 番 地 12耕 真 真大智慧型市田兵七君
羽靖君小橋榮太郞君
八束可海君守屋此助君近江谷榮次君
園藝講習所設立ニ關スル建議案
福井準造君松浦五兵衞君鈴木辰次郞君
向坂弘君竹田文吉君鈴木仙太郞君
奧田柳藏君渡邊千冬君服部綾雄君
鐵道建設ニ關スル建議案
佐々木鐵太郞君森茂生君鷲田土三郞君
飯田新右衞門君橋本久太郞君加藤正英君
長場龍太郞君星一君鈴木寅彥君
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
萬國癩豫防會議ヘ委員派遺ニ關スル建議案委員會
委員長山根正次君理事木下吉之丞君
關稅定率法輸入稅表中改正法律案外一件委員會
〔荻野芳報告
委員長大岡育造君理事荒川玉露
淺野陽吉君
狩獵法中改正法律案委員會
委員長上埜安太郞君理事〓峯太郞君
鐵道建設ニ關スル建議案委員會
委員長橋本久太郞君理事飯田新右衞門君
園藝講習所設置ニ關スル建議案委員會
委員長鈴木辰次郞君理事福井準造君
大船渡鐵道鐵業補給ニ關スル建議案委員會
委員長植場平君理事「柵瀨軍之佐君
(伊東祐賢君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=2
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003・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 母病氣ニ付キ昨三日ヨリ二週間水間此農夫君ヨリ請暇
ノ願出ガゴザイマス、許可シテ差支アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=3
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004・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、許可スルコトニ致シマス、同ジ
ク母病氣看護ノタメ今四日ヨリ二週間大石正己君ヨリ請暇ノ願出ガアリマス、許可シ
テ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=4
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005・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、許可スルコトニ致シマス-豫
算委員長栗原亮一君ヨリ豫算追加案ノタメニ豫算會議ヲ本會議ノ時間中ニ開キタイ
ト云フコトヲ申出ラレマシタガ、許可シテ差支アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=5
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006・栗原亮一
○栗原亮一君 豫算委員ノ諸君ハ豫算委員室ニ御集リヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=6
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007・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、宮古啓三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=7
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008・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 今御呼ビニナリマシタガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=8
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009・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 國有土地森林原野下戾ニ關スル質問ヲ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=9
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010・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 ソレナラバ別段演說ハ致シマセヌデゴザイマスカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=10
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011・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 議事日程第一、明治四十一年法律第九號中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第明治四十一年法律第九號中改正法律案(政府第一讀會
提出)
明治四十一年法律第九號中改正法律案
明治四十一年法律第九號ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ土地賣却ニ依リ新營費ニ相當スル金額ヲ得ル能ハサル場合ニ於テハ
繰入金ノ不足額ハ學校及圖書館資金中ノ他ノ部分ヨリ之ヲ補充スルコトヲ得発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=11
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012・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ說明モナク別ニ質問モゴザイマセヌカラシテ、日程ノ第
二、右議案審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ニ移リマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=12
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013・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第二ハドナタモ御發議ハゴザイマセヌカ、是ハ議長指名
ノ委員九名ト致シマシタラドウデゴザイマセウカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=13
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014・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、議長指名ノ委員九名ニ決シ
マスー日程第三、耕地整理法改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ議案ノ朗讀ハ省略致
シマス、押川農商務次官
第三耕地整理法改正法律案(政府提出)第一讀會
耕地整理法改正法律案
耕地整理法
第一章總則
第一條本法ニ於テ耕地整理ト稱スルハ土地ノ農業上ノ利用ヲ增進スル目
的ヲ以テ本法ニ依リ左ノ各號ノ一ニ該當スル事項ヲ行フヲ謂フ
一土地ノ交換、分合、開墾、地目變換其ノ他區劃形質ノ變更若ハ道路、堤
塘、畦畔、溝渠、溜池等ノ變更廢置又ハ之ニ伴フ灌漑排水ニ關スル設
備若ハ工事
二前號ノ事項施行ノ爲若ハ施行ノ結果必要ナル工作物ノ設置其ノ他ノ
設備又ハ其ノ維持管理
三前二號ノ事項ニ關シ必要アルトキ國、府縣、郡、市町村其ノ他公共團
體ノ認許ヲ得テ行フ營造物ノ修繕
第二條本法ニ於テ關係人ト稱スルハ整理施行地ニ付所有權以外ノ登記シ
タル權利ヲ有スル者ヲ謂フ
第三條耕地整理ヲ施行セムトスルトキハ設計書ヲ作リ關係人ノ同意書ヲ
添ヘ數人共同シテ施行セムトスルモノニ在リテハ尙規約ヲ作リ地方長官
ノ認可ヲ受クヘシ但シ關係人ノ同意ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ事由
ヲ記載シタル書面ヲ添附スヘシ
設計書、規約若ハ整理施行地區ヲ變更シ若ハ一人ニテ施行スル耕地整理
ヲ變シテ數人共同ノ施行ト爲シ又ハ事業ヲ停止若ハ廢止セムトスルトキ
ハ之ニ關スル必要ノ事項ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ耕地整理
施行ノ爲爲シタル借入金アルトキハ債權者ノ同意ヲ得ルニ非サレハ事業
ヲ廢止シ、整理施行地區ヲ減少シ又ハ債務ノ分擔ニ關スル規約ヲ變更ス
ルコトヲ得ス
前項整理施行地區ノ變更ニ依リ新ニ整理施行地區ニ編入セラルヘキ土地
ニ付テハ第一項ノ同意書ニ關スル規定ヲ準用ス
地方長官第一項又ハ第一一項ノ認可ヲ與ヘタルトキハ其ノ旨ヲ告示スヘシ
設計書、規約若ハ整理施行地區ノ變更又ハ事業ノ停止若ハ廢止ハ前項ノ
告示アル迄之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
前五項ノ規定ハ耕地整理組合ニ之ヲ適用セス
第四條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ爲シタル處分、手
續其ノ他ノ行爲ハ整理施行地ノ所有者、占有者又ハ關係人ノ承繼人ニ對
シテモ其ノ效力ヲ有ス
第五條整理施行地ノ所有者ニ屬スル耕地整理ニ關スル權利義務ハ土地ノ
所有權ト共ニ其ノ承繼人ニ移轉ス
前項ノ場合ニ於テ被承繼人ハ其ノ土地所有權移轉登記前ノ義務ニ付登記
後二年間承繼人ト連帶シテ其ノ責ニ任ス
第六條本法中別ニ規定アル場合ヲ除クノ外土地ノ所有者、占有者、關係人
其ノ他整理施行地ニ付權利ヲ有スル者ハ耕地整理ノ施行ニ對シテ異議ヲ
述フルコトヲ得ス
第七條地方長官又ハ郡長耕地整理ニ關スル調査ヲ爲ス爲必要アルトキハ
官吏又ハ吏員ヲシテ他人ノ土地ニ立入リ測量又ハ檢査ヲ爲シ障害ノ竹木
土石等ヲ移轉若ハ除却セシムルコトヲ得但シ之ニ依リ生シタル損害ハ之
ヲ補償スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ豫メ其ノ土地ノ占有者ニ之ヲ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テハ公〓ヲ以テ之ニ代フルコト
ヲ得
第八條前條ノ規定ハ耕地整理施行ノ認可ヲ申請セムトスル者、其ノ施行
者、耕地整理組合ノ設立ヲ具申セムトスル者又ハ耕地整理組合ノ創立委
員カ整理施行ノ爲必要ナル準備ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ市町村長ノ許可ヲ受クヘシ
第九條耕地整理施行ノ認可ヲ申請セムトスル者、其ノ施行者、耕地整理組
合ノ設立ヲ具申セムトスル者又ハ耕地整理組合ノ創立委員ハ整理施行地
ヲ管轄スル登記所、土地臺帳所管廳、市役所又ハ町村役場ニ就キ無償ニテ
耕地整理ニ關シ必要ナル簿書ノ閱覽又ハ謄寫ヲ求ムルコトヲ得但シ耕地
整理組合ノ創立委員及組合長ヲ除クノ外其ノ資格ニ關スル市町村長ノ證
明書ヲ提出スヘシ
第十條耕地整理施行ノ爲土地又ハ建物ニ付登記又ハ登錄ヲ爲ストキハ登
錄稅ヲ免除ス
前項ノ規定ハ耕地整理ノ施行ニ伴ヒ大字若ハ字ノ名稱又ハ其ノ區域ニ變
更アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十一條耕地整理ヲ施行スル爲國有ニ屬スル道路、堤塘、溝渠、溜池等ノ
全部又ハ一部ヲ廢止シタルニ依リ不用ニ歸シタル土地ハ無償ニテ之ヲ整
理施行地ノ所有者ニ交付ス
耕地整理ノ施行ニ依リ開設シタル道路、堤塘、溝渠、溜池等ニシテ前項廢
止シタルモノニ代ルヘキモノハ無償ニテ之ヲ國有地ニ編入ス
第十二條本法ニ依ル開墾、地目變換其ノ他土地ノ區劃形質ノ變更又ハ道
路、堤塘、溝渠、溜池等ノ變更廢置ニ關シテハ地租條例第十條ノ一乃至第
十一條、第十六條乃至第十九條ノ規定ヲ適用セス
第十三條耕地整理ヲ施行シタル土地ノ地價ハ整理施行地區內土地ノ現地
價ノ合計額ヲ每筆相當ニ配賦シテ之ヲ定ム但シ第十一條第二項ニ依リ國
有地ニ編入シタル土地ノ面積カ同條第一項ニ依リ交付シタル土地ノ面積
ヨリ多キ場合ニ於テハ整理施行地ノ現地價ノ平均額ヲ其ノ面積ノ差額ニ
乘シタル金額ヲ現地價ノ合計額ヨリ控除シタル額ヲ以テ現地價ノ合計額
ト看做ス
整理施行地ノ地租ハ其ノ整理施行地區ノ全部ニ付土地臺帳ノ整理ヲ完了
スル迄從前ノ地域、地目及地價ニ依リ之ヲ徵收ス
規約ヲ以テ整理施行地區ヲ數區ニ分チタル場合ニ於テハ其ノ各區ヲ以テ
前二項ノ整理施行地區ト看做ス
第十四條耕地整理ヲ施行スルニ當リ其ノ地區內ノ土地總面積ノ五分ノ一
以上ニ當ル土地ニ付開墾ヲ爲シ又ハ地目ヲ變換スル場合ニ於テハ工事完
了ノトキ開墾又ハ變換シタル土地ニ對シ從前ノ地域ニ依リ其ノ地價ヲ修
正シ前條第一項ノ現地價トス
前項ノ場合ニ於テ開墾シタル土地ニ付テハ工事著手ノ年ヨリ二十年目、變
換シタル土地ニ付テハ工事完了ノ年ヨリ六年目ニ至リ修正地價ニ依リ其
ノ地租ヲ徵收ス但シ開墾シタル土地ニシテ工事著手ノ年ヨリ二十年目ニ
達シ地味成熟ニ至ラサルモノニ對シテハ更ニ十年以內ノ延長ヲ許可スル
コトヲ得
地租ヲ課セサル土地ヲ整理施行地區ニ編入シ地租ヲ課スヘキ土地ト爲シ
タルトキハ第十一條第一項ニ依リ交付シタル土地ヲ除クノ外工事完一〓ノ
トキ從前ノ地域ニ依リ其ノ地價ヲ設定シ前條第一項ノ現地價トス
第十五條整理施行地區內ノ土地中開墾著手後九年、地目若ハ地類ノ變換
後五年ヲ經過セサルモノ又ハ地租ノ免除若ハ輕減ニ關スル各種ノ年期ヲ
有スルモノアルトキハ左ノ各號ノ定ムル所ニ依ル
一開墾若ハ地類ノ變換ヲ爲シタル土地、地目ヲ變換シ地價ノ修正ナキ
土地又ハ鍬下年期、新開免租年期、地價据置年期ヲ有スル土地ハ工事
著手ノ際地價ヲ修正シ又ハ設定ス
二荒地免租年期又ハ低價年期ヲ有スル土地ハ工事完了ノトキ從前ノ地
域ニ依リ其ノ地價ヲ修正ス
三第一號ニ依リ地價ヲ修正シ又ハ設定シタル土地ニ付テハ開墾著手後
十年目、地目若ハ地類ノ變換後六年目又ハ年期明ニ至リ修正地價又
ハ設定地價ニ依リ地租ヲ徵收ス但シ工事完了シタルトキハ此ノ限ニ
在ラス
四工事完了シタルトキハ第一號若ハ第二號ニ記載シタル土地又ハ地目
ヲ變換シ地價ノ修正アリタル土地ニ付テハ修正地價又ハ設定地價ヲ
以テ第十三條第一項ノ現地價トス
第十六條工事完了シタルトキニ於テ開墾著手後九年、地目若ハ地類ノ變
換後五年ヲ經過セサル土地若ハ前條ニ記載スル年期ヲ有スルモノニシテ
年期ノ終了セサル土地又ハ第十四條第二項ニ該當スル土地アルトキハ事
業關係者ハ其ノ協議ヲ以テ修正地租ト從前ノ地租トノ差額ノ利益若ハ負
擔又ハ地租ノ免除ヲ受クヘキ土地及金額ヲ定メ政府ニ申告シ殘年期間又
ハ第十四條第二項ニ定ムル期間中ハ其ノ金額ヲ加除シテ其ノ土地ノ地租
ヲ納ムヘシ但シ協議一致セサルトキハ政府ニ於テ之ヲ定ム
第十七條換地ハ別ニ規定アル場合ヲ除クノ外第三十一條第四項ノ告示ノ
日ヨリ之ヲ從前ノ土地ト看做ス
前項ノ規定ハ行政上又ハ裁判上ノ處分ニシテ從前ノ土地ニ專屬スルモノ
ニ影響ヲ及ホサス
第十八條賃借地ニ付耕地整理施行ノ爲賃借ヲ爲シタル目的ヲ達スルコト
能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ賃借人ハ整理施行者ニ對シ解除ニ依リ生シタル損害ノ
補償ヲ請求スルコトヲ得但シ整理施行者ハ規約ノ定ムル所ニ依リ賃貸人
ニ對シ求償スルコトヲ得
第十九條耕地整理施行ノ爲賃借地ノ利用ヲ妨ケラルルトキハ賃借人ハ借
賃ノ相當ノ減額又ハ前拂シタル借賃ノ相當ノ拂戾ヲ請求スルコトヲ得
第二十條耕地整理施行ノ爲著シク賃貸地ノ利用ヲ增シタルトキハ賃貸人
ハ借賃ノ相當ノ增額ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ニ於テ賃借人ハ契約ノ解除ヲ爲シ其ノ義務ヲ免
ルルコトヲ得
第二十一條耕地整理施行ノ爲地上權、永小作權又ハ地役權ヲ設定シタル
目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ地上權者、永小作權者又ハ地役權者ハ
其ノ權利ヲ抛棄スルコトヲ得
第十八條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條整理施行地ノ上ニ存スル地役權ハ耕地整理施行ノ後仍從前ノ
土地ノ上ニ存ス
耕地整理施行ノ爲地役權者カ其ノ權利ヲ行使スル利益ヲ受クルコトヲ要
セサルニ至リタルトキハ其ノ地役權ハ消滅ス
耕地整理施行ノ爲從前ト同一ノ利益ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル地
役權者ハ其ノ利益ヲ保存スル範圍內ニ於テ地役權ノ設定ヲ請求スルコト
ヲ得
第二十三條第十九條及第二十條ノ規定ハ地上權、永小作權又ハ地役權ニ
之ヲ準用ス
第二十四條前六條ノ規定ニ依ル賃貸借ノ解除、地上權若ハ永小作權ノ抛
棄、地役權ノ抛棄若ハ設定又ハ借賃、地代、小作料若ハ地役ノ對價ノ減額、
拂戾若ハ增額ノ請求ハ第三十一條第四項ノ〓示ノ日ヨリ三十日ヲ經過シ
タルトキハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二十五條整理施行地又ハ之ニ存スル建物ニシテ先取特權、質權又ハ抵
當權ノ目的タル場合ニ於テ第二十七條、第二十八條第三十一條第一項第
二項又ハ第四十五條第二項ノ規定ニ依リ拂渡スヘキ金錢アルトキハ整理
施行者ハ其ノ金額ヲ供託スヘシ但シ關係人ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限
ニ在ラス
前項ノ規定ハ整理施行地又ハ之ニ存スル建物カ訴訟ノ目的タリ又ハ整理
施行地區ニ編入後訴訟ノ目的ト爲リタル爲訴訟當事者ヨリ請求アリタル
場合ニ之ヲ準用ス
先取特權者、質權者、抵當權者又ハ訴訟當事者ハ前二項ノ規定ニ依リ供託
シタル金錢ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第二十六條第三條ノ規定ニ依ル整理施行者カ其ノ事業ノ爲借入レタル金
額及其ノ利息其ノ他耕地整理ノ施行ニ依リ生シタル債務ニ付テハ共同施
行者連帶シテ其ノ責ニ任ス但シ第二十九條第一項ノ場合ヲ除クノ外規約
ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ於テ共同施行者ト稱スルハ帝室及國ヲ包含セス
第二十七條整理施行者ハ耕地整理施行ノ爲必要アルトキハ整理施行地區
內ノ工作物又ハ木石等ヲ移轉シ除却シ又ハ破毀スルコトヲ得但シ之ニ
依リ生シタル損害ハ之ヲ補償スヘシ
第二十八條第三條ノ規定ニ依ル整理施行者又ハ耕地整理組合員ハ耕地整
理施行ノ爲受ケタル損害ニ對シ第七條、第八條又ハ前條ノ場合ヲ除クノ
外補償ノ請求ヲ爲スコトヲ得ス但シ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限
ニ在ラス
第二十九條第三條ノ規定ニ依ル耕地整理施行ノ爲他人ニ加ヘタル損害ノ
補償ニ付テハ共同施行者連帶シテ其ノ責ニ任ス
第二十六條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ適用ス
第三十條整理施行地ニ付權利ヲ有スル者耕地整理施行ノ認可若ハ整理
施行地區變更ノ認可又ハ耕地整理組合ノ設立若ハ組合地區變更ノ認可ノ
告示アリタル後ニ於テ監督官廳ノ許可ヲ得スシテ土地ノ形質ヲ變更シ又
ハ工作物ノ新築、改築、增築若ハ大修繕ヲ爲シ又ハ物件ヲ附加增置シタル
トキハ之ニ關スル損害ノ補償ヲ請求スルコトヲ得ス
前項告示ノ後ニ於テ土地ニ付權利ヲ取得シタル者ハ從前ノ權利者ノ爲シ
得ヘキ範圍內ニ於テノミ損害ノ補償ヲ請求スルコトヲ得
第三十一條換地ハ從前ノ土地ノ地目、面積、等位等ヲ標準トシテ之ヲ交付
スヘシ但シ地目、面積、等位等ヲ以テ相殺ヲ爲スコト能ハサル部分ニ關シ
テハ金錢ヲ以テ之ヲ〓算スヘシ
特別ノ事情ノ爲前項ノ規定ニ依ルコト能ハサルモノノ處分ニ關シテハ規
約ノ定ムル所ニ依ル
前二項ノ規定ニ依ル處分ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
地方長官前項ノ認可ヲ與ヘタルトキハ之ヲ告示スヘシ
第三十二條前條ノ規定ニ依ル處分ハ整理施行地ノ全部ニ付工事完了シタ
ル後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス但シ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此
ノ限ニ在ラス
第三十三條整理施行地二以上ノ市町村、大字又ハ字ニ涉ル場合ニ於テ一筆
ノ土地ノ區域ハ二以上ノ市町村、大字又ハ字ニ渉リテ之ヲ定ムルコトヲ
得ス
第三十四條數筆ノ土地ヲ分合シテ換地ヲ交付スル場合ニ於テ既登記ノ土
地ニ對スル換地ハ各筆每ニ之ヲ割當ツヘシ
第三十五條本法中土地所有者ノ數ヲ計算スル場合ニ於テハ共有者ハ之ヲ
一人ト看做ス但シ共有者ノミ共同シテ耕地整理ヲ施行スル場合ニ於テハ
此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ場合ニ於テ第五十一條、第五十二條、第五十四條、第六十條第
二項、第六十一條第二項、第七十條第二項又ハ第七十三條第二項中土地
ノ面積又ハ地價ハ共有者7持分ニ依リ之ヲ定ム
第三十六條住所又ハ居所ノ不分明其ノ他ノ事由ニ依リ耕地整理ニ關スル
書類ノ送付ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ整理施
行者、耕地整理組合ノ創立委員又ハ監督官廳カ公告ヲ爲ストキハ其ノ公
告ノ日ヲ以テ書類ヲ發送シタルモノト看做シ一一十日ヲ經過スルトキハ其
ノ末日ニ於テ書類ノ送付ヲ了リタルモノト看做ス
第三十七條第三十一條第三項ノ認可ラ受ケタルトキハ整理施行者ハ遲滯
ナク既登記ノ土地及建物ニ付登記ヲ申請スヘシ
第三十八條整理施行地區內ノ土地及其ノ上ニ存スル建物ノ登記ニ付テハ
勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第三十九條共同施行又ハ耕地整理組合ニ依ル耕地整理ノ事業ニシテ郡、
市町村又ハ水利組合ニ依リ施行スルコトヲ得ルニ至リタルトキハ特別ノ
情アル場合ヲ除クノ外命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ事業ヲ郡、市町村若ハ
水利組合ニ引繼キ又ハ耕地整理組合ヲ普通水利組合ニ變更スヘシ
前項ノ規定ニ依ル引繼又ハ變更アリタルトキハ地方長官ハ其ノ旨ヲ〓示
スヘシ
第三條第五項ノ規定ハ前一一項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十條監督官廳ハ主務大臣ノ定ムル所ニ從ヒ本法ノ規定ニ依ル職權
ノ一部ヲ下級監督官廳ニ委任スルコトヲ得
第四十一條本法中府縣、郡、市町村、郡長、市町村長、市役所又ハ町村役場
トアルハ府縣制、郡制、市制、町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ之ニ準スヘ
キモノニ該當ス
第二章耕地整理組合
第一款總則
第四十二條耕地整理ヲ施行スル爲必要アルトキハ耕地整理組合ヲ設立ス
ルコトヲ得
耕地整理組合ハ法人トス
第四十三條耕地整理組合ハ整理施行地ヲ以テ其ノ地區トス
第四十四條左ニ揭クル土地ハ之ヲ耕地整理組合ノ地區ニ編入スルコトヲ
得ス但シ第一號乃至第三號ノ土地ニ付テハ主務官廳又ハ公共團體ノ認許、
第四號乃至第八號ノ土地ニ付テハ土地所有者、關係人及建物ニ付登記シ
タル權利ヲ有スル者ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
一御料地、國有地
二官ノ用ニ供スル土地
三府縣、郡、市町村其ノ他勅令ヲ以テ指定スル公共團體ノ公用又ハ公共
ノ用ニ供スル土地
名勝地、舊蹟地
六五四古墳墓地、墳墓地
社寺境內地
七鐵道用地、軌道用地
八建物アル宅地
第四十五條特別ノ價値又ハ用途アル土地ハ土地所有者及關係人ノ同意ヲ
得ルニ非サレハ之ヲ耕地整理組合ノ地區ニ編入スルコトヲ得ス但シ之ヲ
編入スルニ非サレハ耕地整理ヲ適當ニ施行スルコト能ハサルトキハ此ノ
限ニ在ラス
土地收用法第四十七條乃至第四十九條、第五十一條乃至第五十四條、第五
十六條、第五十八條、第六十條及第六十一條ノ規定ハ前項但書ノ場合ニ之
ヲ準用ス但シ組合ノ設立又ハ地區變更ノ認可ノ告示ヲ以テ土地收用法第
十九條ノ規定ニ依ル公告又ハ通知ト看做ス
第一項但書ノ場合ニ於テ補償金ノ拂渡又ハ供託ヲ爲ササルトキハ土地所
有者又ハ關係人ハ其ノ土地ニ付工事ノ施行ヲ拒ムコトヲ得但シ第九十二
條第一項ノ規定ニ依リ決定ヲ得タル金額ヲ供託シタルトキハ此ノ限ニ在
ラス
第四十六條耕地整理組合設立ノ認可アリタルトキハ其ノ地區內ニ土地ヲ
所有スル者ハ總テ之ヲ組合員トス但シ第十一條第一項ノ土地ニ關シテハ
此ノ限ニ在ラス
第四十七條耕地整理組合ノ名稱中ニハ耕地整理組合ナル文字ヲ用ウヘシ
耕地整理組合ニ非サルモノハ耕地整理組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用
ウルコトヲ得ス
第四十八條組合員又ハ組合員タルヘキ者ニシテ組合ノ地區又ハ第五十二
條ニ依リ指定シメル地區所在ノ市町村若ハ其ノ鄰接市町村ニ住所若ハ居
所ヲ有セサル者又ハ土地ノ共有者ハ耕地整理ニ關スル一切ノ行爲ヲ爲サ
シムル爲組合ノ地區又ハ第五十二條ニ依リ指定シタル地區所在ノ市町村
若ハ其ノ鄰接市町村ニ住所若ハ居所ヲ有スル者又ハ共有者中ノ一人ヲ以
テ代表者ト爲シ之ヲ組合又ハ創立委員ニ通知スヘシ
前項ノ代表者ノ權限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ
得ス
第四十九條前條ノ委任ノ終了ハ組合又ハ創立委員ニ通知アル迄之ヲ以テ
善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第五十條第四十八條第一項ノ手續ヲ爲ササル土地共有者ニ對スル書類ノ
送付ハ其ノ一人ニ對シ之ヲ發送シタル時ニ於テ完了シタルモノト看做ス
第二款組合ノ設立及解散
第五十一條耕地整理組合ヲ設立セムトスルトキハ組合ノ地區タルヘキ區
域内ノ土地所有者總數ノ三分ノ二以上ニシテ其ノ區域內ノ土地ノ總面積
及總地價ノ各三分ノ二以上ニ當ル土地所有者ノ同意ヲ得テ設計書及規約
ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第五十二條地方長官ハ組合ノ地區タルヘキ區域內ノ土地所有者ノ總數ノ
十分ノ一以上ニシテ其ノ區域內ノ土地ノ總地價ノ十分ノ一以上ニ當ル土
地所有者ノ具申ニ依リ耕地整理組合ノ設立ヲ必要ト認ムルトキハ假ニ組
合ノ地區ヲ指定シ創立委員ヲ命シ且其ノ旨ヲ告示スヘシ
第五十三條創立委員ハ設計書案及規約案ヲ作リ組合員タルヘキ者ノ總會
議ニ付スヘシ
第七十一條ノ規定ハ前項ノ總會議ニ之ヲ準用ス
第五十四條前條ノ總會議ノ議事ハ組合員タルヘキ者ノ三分ノ二以上ニシ
テ且組合地區內ノ土地ノ總面積及總地價ノ各三分ノ二以上ニ當ル土地所
有者ノ同意ニ依リ之ヲ決ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ組合員タルヘキ者
ノ代理人ヲ許スコトヲ得
第五十五條設計書及規約ノ議決ヲ經タルトキハ創立委員ハ地方長官ノ認
可ヲ受クヘシ
第五十六條耕地整理組合ハ第五十一條又ハ前條ノ地方長官ノ認可ニ衣リ
成立ス
前項ノ場合ニ於テハ地方長官ハ組合設立ノ旨ヲ告示スヘシ
組合ハ前項ノ告示アル迄其ノ成立ヲ以テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
第五十七條組合創立ニ關スル費用ハ組合設立ノ後組合ノ負擔トス
第五十八條組合ハ左ノ事由ニ依リ解散ス但シ第二號ノ場合ニ於テ還了セ
サル組合債アルトキハ此ノ限ニ在ラス
一規約ニ定メタル事由ノ發生
二目的タル事項ノ完成又ハ完成ノ不能
三總會ノ議決
五四合併
事業ヲ郡、市町村又ハ水利組合ニ引繼キタルトキ
六普通水利組合ニ變更シタルトキ
七組合員一人ト爲リタルトキ
八監督官廳ノ處分
前項ノ場合ニ於テ地方長官ハ第三號又ハ第四號ニ該當スルトキヲ除クノ
外其ノ旨ヲ告示スヘ
第五十九條組合ニ於テ設計書若ハ規約ノ變更、組合ノ解散、合併、地區ノ
變更又ハ事業ノ停止ヲ爲サムトスルトキハ之ニ關スル必要ノ事項ヲ定メ
總會ノ議決ヲ經テ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ組合債ヲ負擔スルトキ
ハ債權者ノ同意ヲ得ルニ非サレハ組合ノ解散、合併、地區ノ減少又ハ債務
分擔ニ關スル規約ノ變更ヲ爲スコトヲ得ス
地方長官前項ノ認可ヲ與ヘタルトキハ其ノ旨ヲ告示スヘシ
第六十條組合ノ地區ヲ變史スル場合ニ於テ新ニ組合ノ地區ニ編入セラ
ルヘキ土地アルトキハ組合長ハ編入區域ノ土地所有者ノ總會議ヲ開キ其
ノ議決ヲ前條ノ總會ノ議決ニ添附スヘシ
第五十三條及第五十四條ノ規定ハ前項ノ總會議ニ之ヲ準用ス
第六十一條前條ノ總會議ハ編入區域ノ土地所有者ノ同意ヲ以テ之ニ代フ
ルコトヲ得
第五十一條ノ規定ハ前項ノ同意ニ之ヲ準用ス
第六十二條設計書若ハ規約ノ變更、組合ノ解〓、合併、地區ノ變更又ハ事
業ノ停止ハ第五十八條第二項又ハ第五十九條第二項ノ告示アル迄之ヲ以
テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
第六十三條組合ヲ合併シタルトキハ合併ニ依リ解散シタル組合ニ屬スル
權利義務ハ合併後存續シ又ハ合併ニ依リ設立シタル組合ニ移轉ス
第六十四條組合員一人ト爲リタル爲組合解散ノ場合ニ於テハ其ノ事業ハ
一切ノ權利義務ト共ニ土地所有者ニ移轉ス
前項ノ土地所有者ハ之ヲ第三條ノ規定ニ依ル整理施行者ト看做ス
第六十五條組合解散シタルトキハ第五十八條第一項第四號、第六號又ハ
第七號ノ場合ヲ除クノ外〓算ヲ爲スヘシ
組合ハ解散ノ後ト雖〓算ノ目的ノ範圍內ニ於テハ仍存續スルモノト看做
ス
第三款組合ノ會議
第六十六條別ニ規定アルモノノ外左ニ揭クル事項ハ總會ノ表決ヲ經ヘシ
第三十一條第一項、第二項ノ規定ニ依ル處分ヲ爲ス事
組合債ヲ起シ起債ノ方法、利息ノ定率若ハ償還ノ方法ヲ定メ又ハ之
ヲ變更スル事
四三經費ノ收支豫算ヲ定ムル事
豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ又ハ權利ノ
抛棄ヲ爲ス事
組合長、組合副長若ハ評議員ヲ選任シ又ハ解任スル事
組合費、夫役現品ノ分賦收入ニ關スル事
九八七六五事業報告書及收支決算書ヲ承認スル事
工作物又ハ設備ノ維持管理方法ヲ定ムル事
訴願、訴訟及和解ニ關スル事
十規約ニ定メタル事項
十一其ノ他組合長ニ於テ重要ナリト認メタル事項
第六十七條總會ハ規約ノ定ムル所ニ依リ其ノ權限ニ屬スル事項ヲ評議員
會ニ委任シ又ハ組合長ヲシテ專決セシムルコトヲ得
評議員會ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十八條總會ノ表決ヲ經ヘキ事件ニシテ臨時急施ヲ要シ總會ヲ招集ス
ル暇ナシト認ムルトキハ組合長ハ專決處分シ次ノ總會ニ於テ其ノ承認ヲ
求ムヘシ但シ設計書、規約若ハ組合地區ノ變更又ハ組合ノ解散若ハ合併
ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
組合長前項ノ處分ヲ爲サムトスルトキハ其ノ處分前評議員會ノ同意ヲ得
ルコトヲ要ス但シ評議員ヲ置カサル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第六十九條總會ハ總組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
第七十條總會ハ組合長之ヲ招集ス
組合員總數ノ五分ノ一以上ニ當ル者又ハ組合地區內ノ土地ノ總面積若ハ
總地價ノ五分ノ一以上ニ當ル者ヨリ會議ノ目的及其ノ事由ヲ記載シタル
書面ヲ提出シテ總會ノ招集ヲ請末スルトキハ組合長ハ十四日以內ニ之ヲ
招集スヘシ
第七十一條總會ヲ招集スルニハ會日ヨリ五日前ニ會議ノ日時、場所及目
的ヲ記載シテ各組合員ニ通知ヲ發スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ニ於テハ
期間ヲ二日迄短縮スルコトヲ得
第七十二條組合員ハ各一箇ノ表決權ヲ有ス但シ規約ヲ以テ表決權總數ノ
五分ノ一ヲ超過セサル範圍內ニ於テ一人ニ付二箇以上ノ表決權ヲ有セシ
ムルコトヲ得
前項ノ規定ハ第七十三條第二項ノ場合ニ之ヲ適用セス
第七十三條總會ノ議事ハ別ニ規定アルモノヲ除クノ外組合員ノ半數以上
出席シ出席者ノ表決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
第五十四條ノ規定ハ第五十九條又ハ第六十六條第一號、第二號若ハ第五
號ノ事項ノ表決ニ之ヲ準用ス但シ命令又ハ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ
此ノ限ニ在ラス
第七十四條組合員ハ總會ニ於テ書面又ハ代理人ヲ以テ表決ヲ爲スコトヲ
得
前項ノ規定ニ依リ表決權ヲ行フ者ハ出席者ト看做ス
第七十五條第三十二條但書ノ規定ニ依リ第三十一條ノ處分ヲ爲サムトス
ル場合ニ於テハ其ノ處分ヲ爲サムトスル土地ニ關スル組合員ノ總會議ヲ
以テ總會ト看做ス
第七十六條組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ選舉シタル議員ヲ以テ
組織スル組合會ヲ以テ總會ニ代フルコトヲ得
第七十七條總會ニ關スル規定ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前
二條ノ規定ニ依ル組合員ノ總會議又ハ組合會ニ之ヲ準用ス但シ組合會ニ
於テハ組合ノ解散、合併又ハ地區ノ變更ノ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第四款組合ノ管理
第七十八條組合ニ組合長一人及組合副長一人又ハ數人ヲ置ク
組合長又ハ組合副長ハ組合員中ヨリ之ヲ選舉ス但シ特別ノ事情アルトキ
ハ組合員ニ非サル者ヨリ之ヲ選舉スルコトヲ得
組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
地方長官必要ト認ムルトキハ職權ヲ以テ組合長又ハ組合副長ヲ指定スル
コトヲ得
地方長官前二項ノ規定ニ依リ認可ヲ與ヘ又ハ指定ヲ爲シタルトキハ其ノ
旨ヲ告示スヘシ
組合長又ハ組合副長ノ就任若ハ解任ハ前項ノ告示アル迄之ヲ以テ他人ニ
對抗スルコトヲ得ス
第七十九條組合長ハ組合ヲ代表シ組合一切ノ事務ヲ管理ス
組合副長ハ組合長ヲ補佐シ組合長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理ス組合副
長數人アルトキハ其ノ代理ノ順序ハ規約ノ定ムル所ニ依ル
第八十條組合長ノ權限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗
スルコトヲ得ス
第八十一條組合ニ評議員ヲ置ク但シ特別ノ事情アル爲地方長官ノ認可ヲ
得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
評議員ハ組合員中ヨリ之ヲ選舉ス
評議員ハ組合長ノ諮詢ニ應シ竝業務及財產ノ狀況ヲ監査ス
組合長ハ規約ノ定ムル所ニ依リ評議員ヲシテ組合ノ事務ノ一部ヲ分掌セ
シムルコトヲ得
第八十二條組合長ハ設計書、規約、組合員名簿、會議ノ議事錄其ノ他組合
ニ關スル書類及帳簿ヲ事務所ニ備ヘ置クヘシ
組合員又ハ利害關係人ヨリ前項ノ書類又ハ帳簿ノ閱覽ヲ求メタルトキハ
正當ノ事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ拒ムコトヲ得ス
第五款組合ノ財務
第八十三條組合ノ費用ハ規約ノ定ムル所ニ依リ組合員之ヲ負擔ス
夫役現品ノ分賦及之ニ代ルヘキ金額ニ關スル規定ハ規約中ニ之ヲ定ムヘ
第八十四條組合員ニシテ組合費又ハ第三十一條第一項第二項ノ規定ニ依
リ支拂フヘキ金錢ヲ滯納スルトキハ市町村ハ組合長ノ請求ニ依リ市町村
稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス
前項ノ場合ニ於テ組合ハ其ノ徵收金額中百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
第一項ノ徵收金ハ組合地區內ノ土地ニ關シ市町村、水利組合其ノ他之ニ
準スヘキモノノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有ス
前三項ノ規定ハ組合員カ夫役現品ニ代ルヘキ金錢ヲ滯納スル場合ニ之ヲ
準用ス
第八十五條組合ニ於テ負債ヲ起シ、起債ノ方法、利息ノ定率若ハ償還ノ方
法ヲ定メ又ハ之ヲ變更セムトスルトキハ地方長官ノ認可ヲ受ク, >
前項ノ負債ハ起債ノ時ヨリ十五年以內ニ之ヲ還了スヘシ但シ特別ノ事由
アル場合ニ限リ二十年迄延期スルコトヲ得
第八十六條組合ニシテ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハサルトキハ帝室及國
ヲ除クノ外組合員ハ之ニ付連帶無限ノ責任ヲ負擔ス但シ耕地整理施行ノ
爲他人ニ加ヘタル損害ノ補償ヲ除クノ外規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此
ノ限ニ在ラス
第三章監督
第八十七條耕地整理ハ第一次ニ郡長、第二次ニ地方長官、第三次ニ主務
大臣之ヲ監督ス但シ整理施行ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル
場合ニ於テハ第一次ニ地方長官、第二次ニ主務大臣之ヲ監督ス
第八十八條主務大臣又ハ地方長官ニ於テ會議ノ表決又ハ整理施行者ノ行
爲カ設計書、規約又ハ法令ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アリト認ム
ルトキハ會議ノ表決ヲ取消シ、組合長若ハ組合副長ヲ解任シ、評議員若ハ
組合會議員ノ改選、事業ノ停止若ハ組合ノ解散ヲ命シ又ハ整理施行ノ認
可ヲ取消スコトヲ得
第八十九條監督官廳ハ整理施行者ヲシテ耕地整理事業ニ關スル報告ヲ爲
サシメ、書類、帳簿、出納又ハ工事ヲ檢査シ設計書又ハ規約ノ變更ヲ命シ
其メ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第九十條監督官廳ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依ル認
可申請ニ對シ申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ認可ヲ
與フルコトヲ得
第九十一條第三條ノ規定ニ依ル耕地整理ノ施行若ハ整理施行地區ノ變更
ニ異議アル關係人、第四十四條若ハ第四十五條ノ規定ニ違反シテ耕地整理
組合ノ地區ニ編入シタル土地ノ所有者若ハ關係人又ハ第三條第二項但書
若ハ第五十九條第一項但書ノ規定ニ依リ異議アル債權者ハ各耕地整理施
行ノ認可若ハ整理施行地區變更ノ認可ノ告示、耕地整理組合ノ設立若ハ組
合地區變更ノ認可ノ告示又ハ第三條第四項若ハ第五十九條第二項ノ規定
ニ依リ當該事項ノ告示アリタル日ヨリ三十日以內ニ主務大臣ニ訴願スル
コトヲ得
前項ノ訴願アリタル場合ニ於テハ地方長官ハ其ノ裁決アル迄目的タル土
地ニ付耕地整理ノ施行ヲ停止スヘシ
第九十二條第四十五條第二項ノ規定ニ依ル補償金ニ付協議調ハサルカ又
ハ協議ヲ爲スコト能ハサルトキハ地方長官ノ決定ヲ求ムヘシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ其ノ決定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ九十日以
內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第九十三條總會議、總會又ハ組合會ノ招集手續又ハ表決カ違法ナル場合
ニ於テ之ニ對シ不服アル者ハ其ノ表決ノ日ヨリ十四日以內ニ地方長官ニ
異議ヲ申立ツルコトヲ得
前項異議ノ申立アリタル場合ニ於テ監督官廳ハ其ノ職權ニ依リ又ハ利害
關係人ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ表決又ハ處分ノ執行ヲ停止スル
コトヲ得
第九十四條監督官廳ノ處分ニシテ本法中他ノ條項ニ於テ地方長官ノ告示
ヲ必要トスル事項ニ相當スルモノニ付テハ地方長官ハ之ヲ告示スヘシ
整理施行者ハ前項ノ告示アル迄其ノ受ケタル處分ヲ以テ他人ニ對抗スル
コトヲ得ス
前二項ノ規定ハ監督官廳ノ命令シタル停止處分ノ解除ニ之ヲ準用ス
第四章罰則
第九十五條耕地整理施行ニ關シ設ケタル標識ヲ移轉、汚損、毀壞又ハ除却
シタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十六條第三條ノ規定ニ依ル整理施行者又ハ耕地整理組合ノ組合長若
ハ組合副長本法又ハ木法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ五十圓
以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ凖
用ス
附則
第九十七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治三十年法律第三十九號ハ之ヲ廢止ス但シ現ニ土地ノ區劃形狀變更ノ
許可ヲ得タル者ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
第九十八條本法施行前耕地整理ニ關シ發起又ハ施行ノ認可ヲ得タル者ニ
付テハ以下數條ニ規定スルモノヲ除クノ外舊法ノ規定ヲ適用ス
第九十九條本法第一條、第二條、第四條、第五條、第八條、第十條、第十七
條、第二十七條、第二十八條、第三十一條、第三十二條、第三十四條、第三十
六條乃至第四十一條、第八十七條、第八十九條及第九十條ノ規定ハ本法施
行前耕地整理ニ關シ發起又ハ施行ノ認可ヲ得タル者ニ之ヲ適用ス
第百條本法施行前耕地整理發起ノ認可ヲ得タル者ハ發起人又ハ整理委
員ノ申請ニ依リ命令ノ定ムル所ニ從ヒ之ヲ本法ニ依ル耕地整理組合ト爲
スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ耕地整理組合ト爲シタルトキハ耕地整理ニ關スル從前
ノ設計書又ハ規約ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ反セサル範圍內
ニ於テ本法ノ規定ニ依ル設計書又ハ規約ト看做ス
第一項ノ規定ニ依ル耕地整理組合ハ耕地整理ニ關スル參加土地所有者共
同ノ權利義務ヲ承繼ス
第百一條本法施行前耕地整理發起ノ認可ヲ申請シ未タ之ヲ得ルニ至ラサ
ル者ハ命令ノ定ムル所ニ從ヒ之ヲ本法第五十一條ノ規定ニ依ル耕地整理
組合設立ノ申請ト爲スコトヲ得
第百二條舊法又ハ明治三十年法律第三十九號ニ依リ爲シタル處分ニ對ス
ル訴願ニ關シテハ各舊法又ハ明治三十年法律第三十九號ノ規定ニ依ル
〔政府委員押川則吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=14
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015・押川則吉
○政府委員(押川則吉君) 唯今議題ニ上リマシタ、耕地整理法ノ改正ノコトニ付テ
一應說明ヲ致シタイト思ヒマス、現行ノ耕地整理法ハ明治三十三年ノ一月ヨリ施行
致シタノデアリマシテ、其後十箇年ヲ經過シテ居リマス、此間ニ整理事業ノ實施ニ付キ
マシタノガ二千百二十七箇所、段別ガ十二万五千餘町步ニ達シテ居リマス、其實施面
積ハ固ヨリ十分ト云フ譯ニハ參リマセヌケレドモ、御承知ノ如ク本事業ハ實施上障碍ノ
多イコトデアリマシテ又費用モ隨分多大ナルモノヲ要スルノデアリマス、故ニ此結果モ寧
ロ良好ト云フテ宜カラウト考ハマス、然ルニ最近ノ調査ニ依リマスト云フト、尙耕地整
理ヲ施行スベキ面積ハ頗ル多イト認ムルノデゴザイマシテ、又尙開墾ヲスベキ土地モ頗ル
多イト思ヒマスルシ、畑ヲ田ニ變ル必要ノアル處モ少ナカラヌト思フノデアリマス、是等ノ
土地ニ整理ヲ行ヒマシテ農產ノ增殖ヲ計ルト云フコトハ本日ノ急務ト考ヘルノデゴザイマ
スル、ソレ故ニ今囘耕地整理法ノ改正案ヲ提出致シタ次第デゴザイマスルガ、其最モ重要
ナルコトハ第一ニ開墾若クハ地目變換ト云フコトニ耕地整理法ヲ適用致シタイト云フコ
トガ、第一ノ要點デゴザイマス、ソレカラ次ニハ此耕地整理ヲ施行スル土地所有者ノ團
體ニ法人ノ資格ヲ與ヘタイト云フノガ第二ノ要點デゴザイマス、ソレカラ整理ノ施行上ノ
コトニ付キマシテ現行ノ法律ニ於テハ手續ガ多少掛ルノデゴザイマシテ、ソレ等ノコトヲ簡
便ニ致シタイト云フコトガ第三ノ要點デゴザイマス是等ノ理由ヲ以テ今囘改正案ヲ提
出致シタ次第デゴザイマスルカラ、ドウゾ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=15
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016・大岡育造
○大岡育造君 本案ハ今卽チ委員選定ノトキニナッテ宜カラウト思ヒマスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=16
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017・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質問ガナケレバ議事日程ノ第四、右議案ノ審査ヲ
付託スベキ委員ノ選舉
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=17
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018・大岡育造
○大岡育造君 地方ノ關係ガ大分重ウゴザイマスルシ、澤山ノ諸君ガ成ルベク此コト
ヲ能ク知ッテ居ッタ方ガ宜カラウト思ヒマスカラ二十七名ノ委員ニ致シタイト思ヒマス、議
長指名デス
〔「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=18
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019・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 二十七名デスカ
(「二十七名贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=19
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020・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 今大岡君ノ動議卽チ此耕地整理法改正法律案ハ、議長
指名ノ委員二十七名ニ付託スルト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=20
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021・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、其通リ決シマス-日程第五、
第七、第九、第十一ハ關聯セル議案ナルニ依リ一括シテ議題トナスニ御異議ハアリマ
セヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=21
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022・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、第五、第七、第九、第十一ハ
一括シテ議題ト致シマスー-押川農商務次官
第五特許法改正法律案(政府提出)第一讀會
第七意匠法改正法律案(政府提出)
第九商標法改正法律案(政府提出)第第第讀讀讀會會會
第十一實用新案法改正法律案(政府提出)
特許法改正法律案
特許法
第一章總則
第一條新規ナル工業的發明ヲ爲シタル者ハ其ノ發明ニ付本法ニ依リ特許
ヲ受クルコトヲ得
第二條自己ノ特許發明又ハ特許出願中ノ發明ニ付改良又ハ擴張ヲ爲シタ
ル者ハ其ノ改良又ハ擴張ニ係ル新規ノ發明ニ付追加特許ヲ受クルコトヲ
得自己ノ特許發明又ハ特許出願中ノ發明ニ付他人ノ爲シタル改良又ハ擴
張ニ係ル新規ノ發明ニ付特許ヲ受クルノ權利ヲ承繼シタル者亦同シ
前項ノ場合ニ於テ特許出願中ノ發明カ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リ
タルトキハ追加特許ノ出願ハ之ヲ獨立ノ特許出願ト爲スコトヲ得此ノ場
合ニ於テ其ノ獨立ノ特許出願ハ追加特許出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモ
ノト看做ス
第三條職務上又ハ契約上爲シタル發明ニ付特許ヲ受クルノ權利ハ勤務規
程又ハ契約ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外其ノ職務ヲ執行セシムル者又
ハ使用者ニ屬ス
職務ノ執行又ハ契約ノ履行ニ依ル勤務中公務員又ハ被用者ノ爲シタル發
明ニシテ職務上又ハ契約上爲シタルモノニ非サル發明ニ付發明前豫メ特
許ヲ受クルノ權利又ハ特設權ヲ讓渡セシムルコトヲ定メタル勤務規程又
ハ契約ノ條項ハ之ヲ無效トス
第四條本法ニ於テ發明ノ新規ト稱スルハ左ノ各號ニ該當セサルモノヲ謂
フ
一特許出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ又ハ公然用井ラレタルモノ
二特許出願前容易ニ應用スルコトヲ得ヘキ程度ニ於テ帝國內ニ頒布セ
ラレタル刊行物ニ記載セラレタルモノ
第五條發明カ左ノ各號ノ一ニ該當スルモ之ヲ新規ナルモノト看做ス
ー發明カ試驗ノ爲前條各號ノ一ニ該當スルニ至リタル時ヨリ二年以內
ニ特許ヲ出願シタルトキ
二同一發明ニ關スル特許出願中若ハ實用新案登錄出願中又ハ其ノ特許
權若ハ實用新案權ノ存續中其ノ發明カ前條各號ノ一ニ該當スルニ至
リタルトキ
第六條左ニ掲クル發明ニ付テハ之ヲ特許セス
一飮食物、嗜好物
二醫藥、其ノ調合法
三秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ衞生ヲ害スルノ虞アルモノ
第七條特許出願カ二以上ノ發明ヲ包含スルトキハ之ヲ分割スルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ最初出願ノ時ニ於テ各出願ヲ爲シタルモノト看做ス
第八條政府、道、府縣若ハ政府ノ認可ヲ得タルモノノ開設スル博覽會、共
進會又ハ工業所有權保護同盟條約國ノ版圖內ニ開設スル官設若ハ官許ノ
萬國博覽會ニ出品スル發明ニ付其ノ開會ノ日ヨリ六月以內ニ特許ヲ出願
シタルトキハ開會ノ日ニ於テ出願シタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ命令ヲ以テ前項ノ出品ニ付豫メ屆出ツヘキコトヲ規定シタ
ル場合ニ於テ其ノ屆出ヲ怠リタル者ニ對シ之ヲ適用セス
第一項ノ外外國ノ版圖內ニ開設スル官設又ハ官許ノ博覽曾ニ出品スル發
明ニ付保護ヲ與フルノ必要アルトキハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條同一發明ニ付各別ニ特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者二人以上アル
トキハ最先ニ發明ヲ爲シタル者ニ限リ特許ス其ノ同時ノ發明ニ係ルトキ
又ハ發明ノ前後不明ナルトキハ最先ニ出願ヲ爲シタル者ニ限リ特許ス但
シ同日ノ出願ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ
特許セス
特許權發生後二年ヲ經過シタルトキハ最先ニ與ヘタル特許ニ限リ有效ト
ス
第十條特許ヲ受クルノ權利ハ之ヲ移轉スルコトヲ得但シ擔保ニ供スルコ
トヲ得ス
特許ヲ受クルノ權利ノ承繼ハ特許出願前ニ在リテハ特許ヲ出願シ特許出
願後ニ在リテハ出願人ノ名義變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者
ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ出願又ハ屆出ニ係ルトキハ關係者ノ協
議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ對抗スルコトヲ得ス
第十一條特許出願ノ發明カ公益ノ爲普及ヲ要スルモノナルトキ又ハ軍事
上必要ナルモノ若ハ祕密ヲ要スルモノナルトキハ特許ヲ與ヘス又ハ制限
ヲ附シテ特許ヲ與フルコトヲ得
發明カ軍事上必要ナルモノ又ハ祕密ヲ要スルモノナルトキハ其ノ發明ニ
付特許ヲ受クルノ權利ハ政府ニ於テ之ヲ收用スルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ政府ハ相當ノ補償金ヲ支給ス
第十二條帝國內ニ在ラサル者ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外帝
國內ニ住所又ハ居所ヲ有スル代理人ニ依ルニ非サレハ特許ニ關スル出願、
請求其ノ他ノ手續ヲ爲シ又ハ特許權若ハ特許ニ關スル權利ヲ主張スルコ
トヲ得ス
前項ノ特許權者又ハ特許ニ關スル權利ヲ有スル者ノ代理人ハ特ニ授ケラ
レタル權限ノ外本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ因ル手續竝特
許ニ關スル民事訴訟、私訴及告訴ニ付本人ヲ代表ス
第十三條前條第二項ノ特許權者又ハ特許權ニ關シ登錄シタル權利ヲ有ス
ル者ノ代理人ノ選任若ハ變更又ハ其ノ代理權ノ變更若ハ消滅ハ登錄ヲ受
クルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
前項ニ該當スルモノヲ除クノ外特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ
爲ス者ノ代理人ノ變更又ハ其ノ代理權ノ變更若ハ消滅ハ特許局ニ屆出ツ
ルニ非サレハ之ヲ以テ特許局ニ對抗スルコトヲ得ス
第十四條特許ニ關スル代理人數人アルトキハ特許局ニ對シテハ共同又ハ
各別ニ本人ヲ代表ス
第十五條特許局長ニ於テ特許ニ關スル代理人ヲ適當ナラスト認ムルトキ
ハ其ノ改任ヲ命スルコトヲ得
特許局長又ハ審判長ニ於テ當事者又ハ其ノ代理人カ手續又ハ演述ヲ爲ス
ノ能力ナシト認ムルトキハ特許辯理士ヲ以テ代理セシムヘキコトヲ命ス
ルコトヲ得
前二項ノ命令アリタル後第一項ノ代理人又ハ第二項ノ當事者若ハ代理人
ノ特許局ニ對シテ爲シタル行爲ハ之ヲ無效ト爲スコトヲ得
第十六條特許局ニ對シ爲スヘキ事項ノ代理業ハ特許辯理士ニ非サレハ之
ヲ行フコトヲ得ス
特許辯理士ノ資格、登錄、監督、懲戒等ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
第十七條數人共同シテ特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲ス者又
ハ特許權ノ共有者ハ特許局ニ對シ各人互ニ代表スルモノトス但シ特ニ代
表者ヲ定メ特許局ニ屆出タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十三條第二項ノ規定ハ前項但書ノ代表者ニ之ヲ準用ス
第十八條特許權者ニシテ帝國內ニ住所ヲ有セサルトキハ第十二條ノ代理
人ノ住所又ハ居所、其ノ代理人ナキモノニ在リテハ特許局ノ所在地ヲ以テ
民事訴訟法第十七條ノ財產所在地ト看做ス
第十九條特許局長ハ外國又ハ遠隔若ハ交通不便ノ地ニ住居スル者ノ爲職
權ヲ以テ又ハ請求ニ依リ特許局ニ對シ手續ヲ爲スヘキ法定ノ期間ヲ延長
スルコトヲ得
第二十條特許ニ關シ出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲シタル者ニシテ法定又
ハ指定ノ期間ヲ懈怠シタルトキハ其ノ出願、請求其ノ他ノ手續ハ之ヲ無
效ト爲スコトヲ得
法定又ハ指定ノ期間ヲ懈怠シタル場合ニ於テ特許局長又ハ審判長宥恕ス
ヘキ障礙ニ因ルモノト認ムルトキハ其ノ障礙ノ止ミタル後十四日以內ニ
限リ請求ニ依リ懈怠ノ結果ヲ免レシムルコトヲ得但シ期間滿了後一年ヲ
經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十一條特許局ニ差出スヘキ書類其ノ他ノ物件ニ付差出ノ效力ヲ生ス
ヘキ時期ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル特許權者又ハ
特許ニ關スル權利ヲ有スル者ノ權利義務ハ其ノ特許權又ハ特許ニ關スル
權利ト共ニ移轉ス
本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ爲シタル手續ハ特許權者
又ハ特許ニ關スル權利ヲ有スル者ノ承繼人ニ對シ其ノ效力ヲ有ス
第二十三條特許局ニ事件ノ繫屬中ニ於テ特許權又ハ特許ニ關スル權利ノ
移轉アリタルトキハ承繼人ニ對シテ手續ニ續行スルコトヲ得
第二十四條本法ニ規定スルモノノ外特許局ニ繫ル手續ノ中斷、中止及續
行ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條特許ニ關スル證明、特許證ノ複本、書類ノ謄本、圖面ノ調製又
ハ書類ノ閲覽若ハ謄寫ヲ要スル者ハ其事由ヲ疏明シ特許局長ニ之ヲ請求
スルコトヲ得但シ特許局長ニ於テ祕密ヲ要スト認ムルモノハ之ヲ許可セス
第二十六條軍事上祕密ヲ要スル發明ニ付テハ本法ニ規定スルモノノ外命
令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第二十七條外國人ニシテ帝國內ニ住所又ハ營業所ヲ有セサル者ハ條約又
ハ之ニ準スヘキモノニ規定アル場合ノ外特許權又ハ特許ニ關スル權利ヲ
享有スルコトヲ得ス
特許ニ關シ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定
ご飯をく
第二章特許權
第二十八條特許權ハ登錄ニ依リ發生ス
特許權者ハ物ノ特許發明ニ在リテハ其ノ發明ニ係ル物ヲ製作、使用、販賣
又ハ擴布スルノ權利ヲ專有シ方法ノ特許發明ニ在リテハ其ノ方法ヲ使用
シ及其ノ方法ニ依リテ製作シタル物ヲ使用販賣又ハ擴布スルノ權利ヲ專
有ス
新規ナル同一ノ物ハ同一ノ方法ニ依リテ製作シタルモノト推定ス
同一發明ニ關シテハ特許權ハ其ノ出願前ノ出願ニ係ル實用新案權ニ依リ
制限ヲ受クルモノトス
第二十九條特許權ノ效力ハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノニ及ハス
一〓究又ハ試驗ノ爲ニスル特許發明ノ應用
二特許出願ノ際現ニ善意ニ帝國內ニ於テ其ノ發明實施ノ事業ヲ爲シ若
ハ設備ヲ有スル者又ハ其ノ承繼人ノ特許發明ノ實施
三單ニ帝國內ヲ通過スル渾輸具及其ノ裝置
四特許出願ノ際ヨリ帝國內ニ在ル物及第一號又ハ第二號ニ依リ製作シ
タル物
第三十條特許權ノ存續期間ハ十五年トス但シ特許權カ分割セラレ又ハ
追加特許權カ獨立ノ特許權ト爲リタルトキハ其ノ存續期間ハ原特許權發
生ノ翌日ヨリ起算ス
前項ノ期間ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ三年以上十年以下之ヲ延長スルコト
ヲ得
第三十一條冒認シタル他人ノ發明ニ付受ケタル特許權ヲ無效トシ正當權
利者ニ特許ヲ與ヘタルトキハ其ノ特許權ハ無效トナリタル特許權發生ノ
日ニ於テ發生シタルモノト看做ス
第三十二條特許權ハ制限ヲ付シ又ハ付セスシテ之ヲ移轉スルコトヲ得
第三十三條特許權ノ移轉、抛棄ニ依ル消滅若ハ處分ノ制限又ハ特許權ヲ
目的トスル質權ノ設定、移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限ハ其ノ登錄ヲ受
クルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三十四條追加特許權ハ原特許權ニ附隨スルモノトス
第三十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ原權利ノ範圍內ニ於テ特許發明
ヲ實施スルノ權利ヲ有ス
一特許カ第四十八條ノ規定ニ依リ無效ト爲リタル場合又ハ同一發明ニ
對スル二以上ノ特許中其ノ一カ無效トナリタル場合ニ於テ善意ナル
原特許權者
二前號ノ原特許權ニ付善意ニ使用又ハ實施ノ權利ヲ得テ登錄ヲ受ケタ
ル者
第三十六條前條ノ權利ハ特許發明實施ノ事業ト共ニスル場合ニ限リ移轉
スルモノトス
第三十三條ノ規定ハ前條ノ權利ニ之ヲ準用ス
第三十七條第三十五條ノ權利ハ其ノ發生後一年以內ニ登錄ヲ受クルニ非
サレハ消滅ス
第三十八條特許發明カ他人ノ時許發明又ハ登錄實用新案ヲ使用スルニ非
サレハ實施スルルコト能ハサル場合ニ於テ特許權者又ハ實用新案權者正
當ノ理由ナクシテ其ノ使用ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ許諾ヲ得ルコト能
ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得但シ特許發明ノ使用ヲ要スル場合
ニ於テハ其ノ使用セラルヘキ發明ノ特許權發生ノ日ヨリ三年ヲ經過セサ
ルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ特許發明ヲ使用セラルル者其ノ使用ヲ必要トスル相手
方ノ特許發明ニ付使用ノ許諾ヲ求メタル場合ニ於テ相手方カ正當ノ理由
ナクシテ其ノ使用ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ許諾ヲ得ルコト能ハサルト
キハ審判ヲ請求スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ他人ノ特許發明ヲ使用スル者ハ特許權者、實用新案
權者其ノ他特許權又ハ實用新案權ニ關シ登錄シタル權利ヲ有スル者ニ對
シ相當ノ補償金ヲ支拂フヘシ
第三十九條前條ノ規定ニ依リ他人ノ特許發明又ハ登錄實用新案ヲ使用セ
ムトスル者ハ補償金ノ支拂又ハ供託ヲ爲スニ非サレハ其ノ使用ヲ爲スコ
トヲ得ス但シ審決又ハ判決確定前ト雖其ノ審決又ハ判決ニ依ル補償金ヲ
供託シタルトキハ其ノ使用ヲ爲スコトヲ得
第四十條特許權者ハ特許發明ノ實施ヲ他人ニ許諾スルコトヲ得
前項ノ實施許諾ヲ得タル者ハ特許權者ノ承諾アルニ非サレハ其ノ實施權
ヲ讓渡スルコトヲ得ス但シ發明實施ノ事業ト共ニスル場合ハ此ノ限ニ在
ラス
第四十一條特許發明ニ付使用ノ許諾、審決、判決又ハ實施許諾ヲ得タル者
ニシテ其ノ登錄ヲ受クルトキハ其ノ使用權又ハ實施權ハ爾後其ノ特許權
ヲ取得シタル者又ハ其ノ特許權ヲ目的トシテ設定シタル質權ヲ取得シタ
ル者ニ對シテモ其ノ效力ヲ生ス
第四十二條特許權者特許發明ノ明細書又ハ圖面ノ不完全ニ作製セラレタ
ルコトヲ發見シタルトキハ特許權改訂ノ許可ヲ受クルコトヲ得
特許權者特許發明ヲ分割シテ二以上ノ特許權ト爲サムトスルトキハ特許
權分割ノ許可ヲ受クルコトヲ得但シ其ノ各部分カ特許出願ノ當時獨立シ
テ新規ノ發明ヲ爲ササルモノナルトキハ此ノ限ニ在ラス
前二項ノ場合ニ於テハ改訂又ハ分割前ノ發明ノ要部ヲ變更スルコトヲ得
ス
特許權ノ改訂及分割ハ登錄ニ依リ其ノ效力ヲ生ス
第四十三條特許權ハ其ノ制限付讓渡ヲ受ケタル者、實施許諾ヲ得タル者
又ハ質權者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ之ヲ改訂シ又ハ抛棄スルコトヲ得ス
第四十四條軍事上祕密ヲ要シ又ハ軍事上若ハ公益上必要ナル場合ニ於テ
ハ特許權ハ之ヲ制限シ又ハ政府ニ於テ之ヲ收用シ、特許ハ之ヲ取消シ又
ハ政府ニ於テ其ノ發明ヲ實施スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ政府ハ相當ノ補償金ヲ特許權者又ハ特許發明ヲ使用若
ハ實施スルノ權利ヲ有スル者ニ支給ス
第四十五條先取特權又ハ質權ハ本法ニ依リ受クヘキ補償金其ノ他特許權
ノ對價又ハ特許發明ノ使用若ハ實施ニ對シテ受クヘキ金錢若ハ金錢以外
ノ物ニ對シテモ之ヲ行フコトヲ得但シ其ノ拂渡前ニ差押ヲ爲スヘシ
第四十六條特許權ノ收用アリタルトキハ其ノ特許發明ニ關スル特許權以
外ノ權利ハ消滅ス
第四十七條正當ノ理由ナクシテ特許權發生後三年以上其ノ發明ヲ帝國內
ニ於テ適當ニ實施セス又ハ三年以上其ノ實施ヲ中止シタル場合ニ於テハ
特許局長ハ利害關係人ノ請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ其ノ特許ヲ取消スコ
トヲ得
前項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ訴願ヲ提起スルコト
ヲ得
第四十八條權利確認ノ査定若ハ之ニ對スル審決確定シ又ハ判決アリタル
爲出願カ特許又ハ許可スヘキモノト決定シタルトキハ其ノ牴觸スル發明
ニ係ル特許ハ之ヲ無效トス
第四十九條特許又ハ特許權ノ改訂若ハ分割ノ許可カ左ノ各號ノ一ニ該當
スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘ
一特許カ第一條乃至第三條、第六條、第九條、第十條第二項又ハ第二十
七條ノ規定ニ反シタルトキ
二特許カ特許ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ニ對シテ與ヘラレタルト
キ
三特許權ノ分割シタル部分カ特許出願ノ當時獨立シテ新規ノ發明ヲ爲
ササルトキ又ハ特許權ノ改訂若ハ分割カ第四十一一條第三項ノ規定ニ
反シタルトキ
四發明ノ明細書ニ其ノ實施ニ必要ナル事項ヲ故意ニ記載セス又ハ其ノ
實施ヲ不能若ハ困難ナラシムル爲必要ナラサル事項ヲ故意ニ記載シ
タルトキ
特許又ハ許可ハ特許權消滅後ト雖之ヲ無效ト爲スコトヲ妨ケス
第五十條特許無效トナリタルトキハ特許權ハ初メヨリ存在セサルモノ
ト看做ス
特許ノ取消アリタルトキハ特許權ハ以後其ノ效力ヲ失フ
第五十一條特許權ハ相續人ナキトキハ消滅ス
第五十二條特許カ取消サレ若ハ無效トナリ又ハ特許權カ抛棄ニ依リ消滅
シタル場合ニ於テ追加特許權アルトキハ其ノ追加特許權ハ獨立ノ特許權
ト爲ル
前項ノ場合ニ於テ獨立ノ特許權ト爲リタルモノニ係ル追加特許權アルト
キハ其ノ追加特許權ハ獨立ト爲リタル特許權ノ追加特許權ト爲ル
前二項ノ場合ニ於テハ六十日以內ニ變更ノ登錄ヲ受クルニ非サレハ第一
項ノ特許權又ハ前項ノ追加特許權ハ消滅ス
第三章登錄、特許證、公報、特許標記及特許料
第五十三條特許局ニ特許原簿ヲ備ヘ特許權及之ヲ目的トスル質權ノ設定、
變更、移轉、消滅、處分ノ制限其ノ他法令ニ定ムル事項ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十四條特許スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判決アリタルトキハ
之ヲ特許原簿ニ登錄シ特許證ヲ下付ス特許權ノ改訂又ハ分割ヲ許可スヘ
シトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判決アリタルトキ亦同シ
第五十五條特許局ハ特許發明ノ明細書及特許公報ヲ發行シ特許發明及之
ニ關スル必要ナル事項ヲ記載スヘシ但シ祕密ヲ要スル特許發明ニ付テハ
此ノ限ニ在ラス
第五十六條特許權者又ハ特許發明ニ付實施ノ權利ヲ有スル者ハ其ノ特許
ニ係ル物ニ特許標記ヲ付スヘシ物ノ性質ニ依リ之ヲ付スルコト能ハサル
トキハ其ノ容器、包裝等ニ之ヲ付スヘシ
特許權者ハ特許發明ニ付使用若ハ實施ノ權利ヲ有スル者又ハ第二十九條
第一號若ハ第二號ノ應用若ハ實施ヲ爲ス者ニ對シ特許標記ヲ付スルコト
ヲ請求スルコトヲ得
特許標記ヲ付スルコトヲ怠リタル爲特許ニ係ル物ナルコトヲ知ラスシテ
其ノ權利ヲ侵害シタル者ニ對シテハ要償ノ訴ヲ爲スコトヲ得ス
前三項ノ規定ハ特許ニ係ル物ノ一部ヲ分離シテ販賣又ハ擴布スル場合ニ
於テ其ノ分離シテ販賣又ハ擴布スル物ニ之ヲ準用ス
第五十七條特許權ノ登錄ヲ受クル者及特許主主ハ特許料トシテ每件左ノ
金額ヲ納付スヘシ
一第一年乃至第三年分登錄ヲ受クルトキ一時金二十圓
二第四年乃至第六年每年金十圓
三第七年乃至第九年每年金十五圓
四第十年乃至第十二年每年金二十圓
五第十三年乃至第十五年每年金二十五圓
特許權存續期間延長ノ登錄ヲ受クル者及其ノ特許證主ハ特許料トシテ每
件左ノ金額ヲ納付スヘシ
一第一年乃至第三年分登錄ヲ受クルトキ一時金百五十圓
二第四年乃至第六年每年金七十圓
三第七年乃至第十年每年金百圓
追加特許權ノ登錄ヲ受クル者ハ追加特許料トシテ登錄ヲ受クルトキ每件
一時金十五圓ヲ納付スヘシ
特許權存續期間延長ノ場合ニ於テ追加特許權アルトキハ第二項第一號ノ
特許料ニ每件金三十圓ヲ加フ
前四項ノ規定ハ國ニ屬スル特許權ニ付之ヲ適用セス
第五十八條每年ノ特許料ハ其ノ翌年分ヲ前納スヘシ但シ數年分ヲ前納ス
ルコトヲ妨ケス
特許料又ハ追加特許料ヲ納付スヘキ者カ發明者又ハ其ノ相續人ニシテ之
ヲ納付スルノ資力ナシト認ムル場合ニ於テハ前條第一項第一號ノ特許料
又ハ追加特許料ハ二年以內其ノ納付ヲ猶豫シ又ハ之ヲ減免スルコトヲ得
第五十九條利害關係人ハ特許料又ハ追加特許料ヲ納付スヘキ者ニ代リ之
ヲ納付スルコトヲ得
第六十條既納ノ特許料及追加特許料ハ之ヲ還付セス
第六十一條特許料ノ納付ヲ怠リタルトキハ特許ヲ取消スコトヲ得追加特
許料ノ納付ヲ怠リタルトキ其ノ追加特許ニ付亦同シ
第四章審査及再審査
第六十二條特許ノ出願又ハ特許權ノ改訂若ハ分割許可ノ出願アリタルト
キハ審査官ヲシテ之ヲ査定セシム
前項ノ査定ハ第六十三條ノ場合ヲ除クノ外特許スヘキヤ否又ハ許可スヘ
キヤ否ヲ決定ス
第六十三條審査官ハ出願ニ係ル發明カ他人ノ出願ニ係ル發明又ハ特許發
明ト牴觸スト認メタル場合ニ於テハ發明牴觸ノ査定ヲ爲スヘシ但シ特許
又ハ許可ヲ拒絕スヘキ他ノ理由アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第六十四條發明牴觸ノ査定確定シ又ハ審決アリタルトキハ審査官ヲシテ
出願者ノ權利確認ノ査定ヲ爲サシム
前項ノ場合ニ於テ特許局長ハ出願者又ハ特許權者ヲシテ權利ニ關スル始
末書ヲ差出サシムヘシ
前項始末書ノ差出アリタルトキハ特許局長ハ之ヲ相手方ニ送達シ答辯書
ヲ差出サシムヘシ
第七十一條第二項及第七十六條ノ規定ハ權利確認ノ査定ニ之ヲ準用ス
權利確認ノ査定ニ於テハ出願者カ特許又ハ許可ヲ受クヘキ正當權利者ナ
リヤ否ヲ決定シ其ノ出願ニ對スル許否ヲ表示スヘシ
第六十五條第六十二條第二項ノ査定又ハ發明牴觸ノ査定ニ不服アル者ハ
査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ不服理由書ヲ差出シ再審査ヲ
請求スルコトヲ得
再審査ノ請求アリタルトキハ前審査ニ干與セサル審査官ヲシテ更ニ之ヲ
査定セシム
第六十六條査定ニハ理由ヲ付スヘシ
第六十七條審査又ハ再審査ニ關シ必要ナル場合ニ於テハ職權ヲ以テ又ハ
當事者ノ申立ニ依リ證據調ヲ爲スコトヲ得
證據調ニ關シテハ民事訴訟法中證據調ニ關スル規定ヲ準用ス但シ特許局
ニ於テ爲ス證據調ニ關シテハ罰金ノ言渡ヲ爲シ又ハ勾引ヲ命スルコトヲ
得ス
證據調ハ所要ノ事務ヲ取扱フヘキ地ノ區裁判所其ノ他區裁判所ノ事務ヲ
行フ官廳ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第六十八條本法ニ規定スルモノノ外審査又ハ再審査ニ關スル書類ニシテ
送達スヘキモノ及送達ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章審判、抗告審判及出訴
第六十九條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ規定スルモノノ外
左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
一第四十九條ノ規定ニ依ル特許又ハ許可ノ無效
二特許權ノ範圍ノ確認
審判ノ請求ハ審査官又ハ利害關係人ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得但シ審査官
ハ前項第二號ノ審判及第三條、第九條又ハ第十條第二項ノ規定ニ反スト
ノ理由ニ依ル前項第一號ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第七十條審判ノ請求ハ審判請求書ヲ差出シテ之ヲ爲スヘシ
審判請求書ニハ一定ノ申立及理由ヲ記載スヘシ
第七十一條審判請求書ヲ受理シタルトキハ其ノ副本ヲ被請求人ニ送達シ
期間ヲ指定シテ答辯書ヲ差出サシメ其ノ答辯書ヲ受理シタルトキハ其ノ
副本ヲ相手方ニ送達スヘシ
審判ニ關シテハ當事者ノ差出シタル書類ニ對シ相手方ヲシテ答辯書ヲ差
出サシメ又ハ當事者ニ訊問書ヲ發シテ之ニ對スル意見書ヲ差出サシムル
コトヲ得
第七十二條審判ハ審判官三人ノ合議ニ依リ之ヲ行フ
合議ハ過半數ニ依リ之ヲ決ス
審判長ハ審判官中ノ上席者ヲ以テ之ニ充ツ
審判長ハ各審判事件ニ關スル事務ヲ掌理ス
第七十三條審判官ハ各審判事件ニ付之ヲ指定ス
審判官中審判ニ干與スルニ故障アル者アルトキハ其ノ指定ヲ解キ更ニ他
ノ審判官ヲ以テ之ヲ補充ス
第七十四條審判官ハ左ノ場合ニ於テ審判ニ干與スルコトヲ得ス
一當事者カ自己又ハ親族ナルトキ
二當事者ノ法定代理人若ハ保佐人タルトキ又ハ法定代理人若ハ保佐人
タリシトキ
三其ノ事件ニ付當事者ノ代理人タルトキ又ハ代理人タリシトキ
四其ノ事件ニ付利害關係ヲ有スルトキ
五其ノ事件ニ付審査官トシテ審査ニ干與シタルトキ
第七十五條審判長ハ職權ヲ以テ又ハ當事者ノ申立ニ依リ口頭審理ヲ爲ス
コトヲ得
口頭審理ハ之ヲ公開ス但シ公益又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ此ノ限
ニ在ラス
第七十六條請求人又ハ被請求人カ法定若ハ指定ノ期間內ニ手續ヲ爲サス
又ハ期日ニ出頭セサルトキハ審判長ハ審判ヲ進行スルコトヲ得
第七十七條審判ノ結果ニ付利害關係ヲ有スル者ハ其ノ審判ノ終結スル迄
請求人又ハ被請求人ノ一方ヲ補助スル爲其ノ審判ニ參加スルコトヲ得
參加人ハ其ノ參加ノ時ニ於ケル審判ノ程度ヲ妨ケサル限リ審判ニ關スル
總テノ行爲ヲ爲スコトヲ得但シ其ノ補助スル當事者ノ行爲ト牴觸スルモ
ノハ其ノ效力ヲ有セス
第七十八條參加ヲ爲サムトスル者ハ參加請求書ヲ審判長ニ差出スヘシ
審判長前項ノ請求書ヲ受理シタルトキハ之ヲ當事者ニ送達スヘシ
當事者ハ参加ニ付指定ノ期間內ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
參加ノ許否ハ決定ヲ以テ之ヲ審判ス
第七十九條審判ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外審決ヲ以テ之ヲ終結ス
審決ニハ理由ヲ付スヘ
第八十條第三十八條ノ規定ニ依ル審判ニ於テハ補償金額ニ付テモ亦之
ヲ審決スヘシ
第八十一條審判ノ審決、權利確認ノ查定又ハ再審査ノ査定ニ不服アル者ハ
審決又ハ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ抗告審判ヲ請求スル
コトヲ得但シ前條ノ審決ニ依ル補償金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第八十二條第七十條乃至第七十九條ノ規定ハ抗告審判ニ之ヲ準用ス但シ
審判官三人又ハ五人ノ合議ニ依ル
審判ニ干與シタル審判官ハ同一事件ニ付抗告審判ニ干與スルコトヲ得ス
第八十三條抗告審判ニ於テハ自ラ其ノ事件ニ付審決ヲ爲スヘシ
再審査ノ査定ニ對スル抗告審判ニ於テハ單ニ其ノ査定ヲ破毀シ更ニ審査
ニ付スヘシトノ審決ヲ爲スコトヲ得其ノ破毀ノ基本ト爲シタル理由ハ其
ノ事件ニ付テハ審査官ヲ覊束ス
發明牴觸ノ査定ニ對スル抗告審判ニ於テ其ノ牴觸ナシト認メタルトキハ
出願ニ對シ特許又ハ許可スヘキコトヲモ併セテ審決スヘシ
第八十四條第六十七條及第六十八條ノ規定ハ審判及抗告審判ニ之ヲ準用
ス
第八十五條抗告審判ノ審決ニ不服アル者ハ其ノ審判カ法令ニ違背シタル
コトヲ理由トスル場合ニ限リ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ
大審院ニ出訴スルコトヲ得但シ再審査ノ査定ニ對スル審決ニ付テハ此ノ
限ニ在ラス
前項ノ出訴及裁判ニ付テハ民事訴訟ノ上告及其ノ裁判ニ關スル規定ヲ準
用ス
大審院ノ判決ニ於テ審決破毀ノ基本ト爲シタル理由ハ其ノ事件ニ付テハ
特許局ヲ覊束ス
第八十六條本法ニ依ル補償金額ニ付不服アル者ハ補償金額ノ通知又ハ審
決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十七條特許ノ效力又ハ特許權ノ範圍ニ關スル確定審決又ハ判決ノ登
錄アリタルトキハ何人ト雖同一事實及同一證據ニ基キ同一審判ヲ請求ス
ルコト得ス
第八十八條民事又ハ刑事ノ訴訟ニ付特許權ノ效力又ハ範圍ニ關シ査定、
審決又ハ判決ヲ待ツノ必要アル場合ニ於テハ裁判所ハ其ノ訴訟手續ヲ中
止スルコトヲ得
第八十九條審判及抗告審判ニ關スル費用ノ負擔ハ本案ノ審決ヲ以テ之ヲ
定
審判、抗告審判及出訴ノ費用額ハ請求ニ依リ特許局長之ヲ決定ス
第九十條前條ノ費用ノ負擔及費用額ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九十一條審判、抗告審判及出訴ノ費用額ノ決定及本法ニ規定スル補償
金額ノ確定審決ハ强制執行ニ關シテハ公證人ノ作リタル債務名義ト看做
ス但シ其ノ執行力アル正本ハ特許局官吏之ヲ付與ス
第六章罰則
第九十二條他人ノ特許權ヲ侵害シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千圓以下
ノ罰金ニ處ス
他人ノ特許權ヲ侵害スヘキ物ヲ輸入シタル者ハ罰前項ニ同シ
前二項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第九十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下
ノ罰金ニ處ス
一詐僞ノ所爲ヲ以テ特許ヲ受ケタル者
二特許ニ係ラサル物又ハ其ノ容器包裝等ニ特許標記ヲ付シ若ハ之ニ
紛ハシキ表示ヲ爲シタル者又ハ其ノ物ヲ販賣若ハ擴布シタル者
三特許ニ係ラサル物若ハ方法ヲ販賣若ハ擴布スル爲又ハ特許ニ係ラサ
ル方法ヲ使用セシムル爲廣告、看板、引札等ニ其ノ物若ハ方法カ特許
ニ係ルコトヲ表示シ又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
第九十四條第九十二條ノ犯罪ニ因リ沒收スルコトヲ得ヘキ物ニ付判決言
渡前被害者ヨリ請求アリタルトキハ之ヲ相當ノ代價ニ見積リ被害者ニ交
付スル言渡ヲ爲スヘシ
損害ノ額カ交付ヲ受ケタル物ノ見積代價ニ超過スルトキハ被害者ハ其ノ
差額ニ限リ賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第九十五條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事ニシテ特許局
又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルト
キハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第九十六條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當
ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ四十圓以下
ノ罰金ニ處ス
第九十七條特許辯理士ニ非スシテ特許ニ關スル代理業ヲ營ミタル者ハ一
年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第七章附則
第九十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九十九條從前ノ規定ニ依ル特許ハ本法ニ依リ受ケタルモノト看做ス
第百條本法施行前ニ發生シタル特許權ニ關シテハ第九條第二項ノ規定
ハ本法施行ノ日ヨリ一年間之ヲ適用セス
第百一條本法施行ノ際現ニ特許代理業者タル者ハ特許辯理士トス
第百二條第三十五條ノ規定ハ本法施行前無效ト爲リタル特許ニ關シテハ
之ヲ適用セス
第四十條第二項ノ規定ハ本法施行前發生シタル實施權ニ關シテハ之ヲ適
用セス
第百三條舊法第十六條又ハ第十七條ノ報酬額ニ不服アル者ハ本法施行後
六十日以內ニ限リ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第百四條本法施行前受ケタル特許ニ關スル第三年分迄ノ特許料ニ付テハ
舊法ノ規定ニ依ル
前項ノ特許料ヲ除クノ外本法施行前二年分以上前納シタル特許料ニ付テ
ハ其ノ未タ納期ニ至ラサルモノニ限リ本法ニ依リ納付スヘキ特許料ニ比
シテ殘餘アルトキハ順次之ヲ後年分ニ充テ尙殘餘アルトキハ之ヲ還付ス
本法施行前前納ニ係ル特許料ニ付テハ舊法第四十條第二項但書ノ規定ハ
仍其ノ效力ヲ有ス
前二項ノ規定ニ依リ還付ヲ受ケムトスル者ハ本法施行後一年以內ニ限リ
之ヲ請求スルコトヲ得
第百五條舊法ニ依リ利害關係人以外ノ者ノ爲シメル審判ノ請求ハ本法施
行ノ爲其ノ效力ヲ失フコトナシ
第百六條本法施行ノ際現ニ繫屬スル審判ニシテ其ノ事件カ本法ノ抗告審
判事件ニ該當スルモノナルトキハ抗告審判ヲ以テ之ヲ處理スヘシ
本法施行前ノ審決ニシテ其ノ事件カ本法ノ抗告審判事件ニ該當スルモノ
ナルトキハ出訴ニ關シテハ之ヲ抗告審判ノ審決ト看做ス
意匠法改正法律案
意匠法
第一條物品ニ應用スヘキ形狀、模樣、色彩又ハ其ノ結合ニ係ル新規ナル工
業的意匠ヲ案出シタル者ハ本法ニ依リ意匠ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
第二條職務上又ハ契約上爲シタル意匠ニ付登錄ヲ受クルノ權利ハ勤務規
程又ハ契約ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外其ノ職務ヲ執行セシムル者又
ハ使用者ニ屬ス
職務ノ執行又ハ契約ノ履行ニ依ル勤務中公務員又ハ被用者ノ爲シタル考
案ニシテ職務上又ハ契約上爲シタルモノニ非サル意匠ニ付案出前豫メ登
錄ヲ受クルノ權利又ハ意匠權ヲ讓渡セシムルコトヲ定メタル勤務規程又
ハ契約ノ條項ハ之ヲ無效トス
第三條本法ニ於テ新規ト稱スルハ左ノ各號ニ該當セサルモノヲ謂フ
ー登錄出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ若ハ公然用井ラレタルモノ又ハ
之ニ類似スルモノ
二登錄出願前容易ニ應用スルコトヲ得ヘキ程度ニ於テ帝國內ニ頒布セ
ラレタル刊行物ニ記載セラレタルモノ又ハ之ニ類似スルモノ
同一物品ニ應用スヘキ意匠ニシテ自己ノ登錄意匠ノミニ類似スルモノハ
新規ト看做ス
第四條左ニ揭クル意匠ニ付テハ之ヲ登錄セス
一菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ形狀又ハ模樣ヲ有スルモノ
二秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ
第五條同一物品ニ應用スヘキ同一又ハ類似ノ意匠ニ付各別ニ登錄ヲ受ク
ルノ權利ヲ有スル者二人以上アルトキハ最先ニ出願ヲ爲シタルモノニ限
リ登錄ス其ノ同日ノ出顧ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサル
トキハ共ニ之ヲ登錄セス
第六條意匠ノ登録ヲ受クルノ權利ハ之ヲ移轉スルコトヲ得但シ擔保ニ供
スルコトヲ得ス
登錄ヲ受クルノ權利ノ承繼ハ登錄出願前ニ在リテハ登錄ヲ出願シ登錄出
願後ニ在リテハ出願人ノ名義變更ヲ居出ルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ
對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ出願又ハ屆出ニ係ルトキハ關係者ノ協議
ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ對抗スルコトヲ得ス
第七條實用新案ノ登録ノ出願ヲ爲シ登錄スヘカラストノ査定ヲ受ケタル
者其ノ最初ノ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ其ノ實用新案ニ
係ル意匠ニ付登錄ヲ出願シタルトキハ實用新案ノ登錄ヲ出願シタル日ニ
於テ出願シタルモノト看做ス
第八條意匠權ハ登錄ニ依リ發生ス
意匠權者ハ登錄出願ノ際指定シタル物品ニ付業トシテ其ノ意匠ヲ應用シ
又ハ之ヲ應用シタル物品ヲ販賣若ハ擴布スルノ權利ヲ專有ス
同一物品ニ應用スヘキ互ニ相類似スル意匠ノ意匠權ハ最先ニ發生シタル
意匠權ト合體スルモノトス
同一又ハ類似ノ意匠ニ關シテハ意匠權ハ其ノ出願前ノ出願ニ係ル實用新
案權ニ依リ制限ヲ受クルモノトス
第九條意匠權ノ存續期間ハ十年トス
第十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ原權利ノ範圍內ニ於テ登錄意匠ヲ實
施スルノ權利ヲ有ス
-同一又ハ類似ノ意匠ニ對スル二以上ノ登錄中其ノ一カ無效ト爲リタ
ル場合ニ於テ善意ナル原意匠權者
二前號ノ原意匠權ニ付善意ニ實施ノ權利ヲ得テ登錄ヲ受ケタル者
特許法第三十六條及第三十七條ノ規定ハ前項ノ權利ニ之ヲ準用ス
第十一條意匠權ハ其ノ意匠ヲ應用スル物品ニ依リ分割シテ之ヲ移轉スル
コトヲ得
第十二條意匠ノ登錄カ第一條、第一一條、第四條、第五條、第六條第二項又ハ
第二十三條ノ規定ニ反シタルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ登錄
カ登錄ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ニ對シ爲シタルモノナルトキ亦同
シ
第十三條登錄スヘシト査定アリタルトキハ意匠原簿ニ登錄シ意匠登錄證
ヲ下付ス
第十四條登錄スヘシトノ査定ヲ受ケタル者又ハ意匠登錄證主ハ意匠料ト
シテ每件左ノ金額ヲ納付スヘシ
一第一年乃至第三年分登錄ヲ受タルトキ一時金三圓
二第四年乃至第十年每年金二圓
同一物品ニ應用スヘキ互ニ相類似スル意匠ニ付テハ其ノ內ノ一ハ前項ノ
意匠料ヲ、其ノ他ハ各意匠ニ付一時金一圓ヲ納付スヘシ
第十五條意匠ノ登錄ヲ出願スル者ハ各意匠ニ付命令ノ定ムル類別內ニ於
テ其ノ意匠ヲ應用スヘキ物品ヲ指定スヘシ
第十六條意匠登錄ノ出願ヲ爲ス者ハ出願中及登錄後三年以內其ノ意匠ヲ
祕密ニセムコトヲ請求スルコトヲ得
第十七條意匠登錄ノ出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ査定セシム
第十八條審査官ハ第四條、第五條、第六條第二項及第二十三條ノ規定ニ依
リ出願ニ係ル意匠カ登錄スヘキモノナリヤ否ニ付査定スヘシ但シ第一條
又ハ第二條ノ規定ニ該當セサルコトヲ發見シタルトキハ之ヲ理由トシテ
登錄拒絕ノ査定ヲ爲スヘシ
第十九條登錄拒絕ノ査定ニ不服アル者ハ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ三
十日以內ニ不服理由書ヲ差出シ再審査ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ前審査ニ干與セサル審査官ヲシテ更ニ之ヲ查
定セシム
前條但書ニ依ル査定ニ不服アル者再審査ノ請求ヲ爲シタル場合ニ於テハ
審査官ハ其ノ理由ニ付テモ亦審査スヘシ
第二十條審判ハ左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
一第十二條ノ規定ニ依ル登錄ノ無效
二意匠權ノ範圍ノ確認
審判ノ請求ハ審査官又ハ利害關係人ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得但シ審査官
ハ前項第二號ノ審判及第二條、第五條又ハ第六條第二項ノ規定ニ反スト
ノ理由ニ依ル前項第一號ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
審査官ノ請求ニ依ル審判ニ關シテハ其ノ手續ヲ省略スルコトヲ得
第二十一條審判ノ審決ニ不服アル者ハ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十
日以內ニ抗告審判ヲ請求スルコトヲ得
第二十二條特許法第八條、第十二條乃至第十五條、第十六條第一項、第十
七條乃至第二十五條、第二十九條、第三十二條、第三十三條、第四十條第
四十一條、第四十三條、第四十五條、第四十九條第二項、第五十條、第五十
條第五十三條、第五十六條、第五十八條第一項、第五十九條乃至第六十
一條、第六十六條乃至第六十八條、第七十條乃至第七十九條、第八十二條、
第八十三條第一項、第八十四條、第八十五條及第八十七條乃至第九十一條
ノ規定ハ意匠ニ關シ之ヲ準用ス
第二十三條外國人ニシテ帝國內ニ住所又ハ營業所ヲ有セサル者ハ條約又
ハ之ニ準スヘキモノニ規定アル場合ノ外意匠權又ハ意匠ニ關スル權利ヲ
享有スルコトヲ得ス
意匠ニ關シ條約又ハ之ニ凖スヘキモノニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定
一般の
第二十四條他人ノ登錄意匠ト同一若ハ類似ノ意匠ヲ業トシテ同一ノ物品
ニ應用シタル者又ハ其ノ物品ヲ業トシテ販賣若ハ擴布シタル者ハ三年以
下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
他人ノ登錄意匠ト同一若ハ類似ノ意匠ヲ應用シタル同一物品ヲ業トシテ
輸入シタル者又ハ其ノ物品ヲ業トシテ販賣若ハ擴布シタル者ハ罰前項ニ
同シ
前二項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三百圓以下
ノ罰金ニ處ス
一詐僞ノ所爲ヲ以テ意匠ノ登錄ヲ受ケタル者
二登錄意匠ヲ應用セサル物品又ハ其ノ容器、包裝等ニ意匠登錄ノ標記
ヲ付シ若ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者又ハ其ノ物品ヲ販賣若ハ
擴布シタル者
三登錄意匠ヲ應用セサル物品ヲ販賣又ハ擴布スル爲廣告、看板、引札等
ニ其ノ物品カ登錄意匠ヲ應用シタルモノナルコトヲ表示シ又ハ之ニ
紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
第二十六條第二十四條ノ犯罪ニ因リ沒收スルコトヲ得ヘキ物ニ付判決言
渡前被害者ヨリ請求アリタルトキハ之ヲ相當ノ代價ニ見積リ被害者ニ交
付スル言渡ヲ爲スヘシ
損害ノ額カ交付ヲ受ケタル物ノ見積代價ニ超過スルトキハ被害者ハ其ノ
差額ニ限リ賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第二十七條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事ニシテ特許局
又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルト
キハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ輕減又ハ免除スルコトヲ得
第二十八條特許局ヨリ證人、鑑定人、又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當
ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ四十圓以下
ノ罰金ニ處ス
第二十九條特許辯理士ニ非スシテ意匠ニ關スル代理業ヲ營ミタル者ハ一
年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條ノ規定ハ本法施行前無效ト爲リタル意匠ノ登錄ニ關シテハ之ヲ適用
セス
特許法第九十九條、第百二條第二項、第百五條及第百六條ノ規定ハ意匠ニ關
シ之ヲ準用ス
商標法改正法律案
商標法
第一條自己ノ生產、製造、加工、選擇、證明、取扱又ハ販賣ノ營業ニ係ル商
品ナルコトヲ表彰スル爲商標ヲ專用セムトスル者ハ本法ニ依リ商標ノ登
錄ヲ受クルコトヲ得
登錄ヲ受クルコトヲ得ヘキ商標ハ文字、圖形、記號又ハ其ノ結合ニシテ特
別顯著ナルモノナルコトヲ要ス
商標ハ之ニ施スヘキ色ヲ限定シテ登錄ヲ受クルコトヲ得
第二條左ニ揭クル商標ニ付テハ之ヲ登錄セス
一菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ
二國旗、軍旗、勳章、褒章、記章若ハ外國ノ國旗ト同一又ハ類似ノモノ
三秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ
四同一商品ニ慣用スル標章ト同一又ハ類似ノモノ
五世人ノ周知スル他人ノ標章ト同一又ハ類似ニシテ同一商品ニ使用ス
ルモノ
六白地ニ赤十字ノ記章又ハ赤十字若ハ「ジェネヴァ」十字ノ稱號若ハ文
字ト同一又ハ類似ノモノ
七政府、道、府縣若ハ政府ノ認可ヲ得タルモノノ開設スル博覽會、共進
會又ハ外國ニ於ケル官設ノ博覽會若ハ官許ノ萬國博覽會ノ賞牌、賞狀
若ハ褒狀ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ但シ其ノ賞牌、賞狀又
ハ褒狀ヲ受領シタル者カ其ノ商標ノ一部トシテ之ヲ使用セムトスル
トキハ此ノ限ニ在ラス
八他人ノ肖像、氏名、商號又ハ法人若ハ組合ノ名稱ヲ有スルモノ但シ其
ノ承諾ヲ得タルモノハ此ノ限ニ在ラス
九登錄失效後一年ヲ經過セサル他人ノ商標ト同一又ハ類似ノモノ但シ
其ノ登錄失效前一年以上使用セサリシ商標ト同一又ハ類似ノモノハ
此ノ限ニ在ラス
第三條同一商品ニ使用スヘキ同一又ハ類似ノ商標ニ付各別ニ登錄ヲ受ク
ルノ權利ヲ有スル者二人以上アルトキハ最先ニ出願ヲ爲シタルモノニ限
リ登錄ス其ノ同日ノ出願ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサル
トキハ共ニ之ヲ登錄セス
同一商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ互ニ相類似スルモノハ聯合商標
トシテ出願シタル場合ニ限リ之ヲ登錄ス
第四條商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限
リ移轉スルモノトス
前項ノ權利ノ承繼ハ出願人ノ名義變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第
三者ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ屆出ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ
依リ協議調ハサルトキハ共ニ對抗スルコトヲ得ス
第五條商標權ハ登錄ニ依リ發生ス
商標權者ハ登錄出願ノ際指定シタル商品ニ付其ノ商標ヲ專用スルノ權利
ヲ有ス
第六條商標權ノ效力ハ普通ニ使用セラルル方法ヲ以テ自己ノ氏名、商號、
法人若ハ組合ノ名稱ヲ表示シ又ハ其ノ商品ノ普通名稱、產地、品位、品質、
效能、用途、製法、時期、數量、形狀若ハ價格ヲ表示スルモノニ及ハス但シ
商標登錄後惡意ヲ以テ同一ノ氏名、商號、法人若ハ組合ノ名稱ヲ使用シタ
ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七條商標權ノ存續期間ハ二十年トス
前項ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタルモノハ其ノ本國ニ於ケル商標權ト
共ニ消滅ス但シ其ノ存續期間ハ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス
第八條商標權ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ移轉スルモノトス
前項ノ場合ニ於テ商標權ハ其ノ商標ヲ使用スル商品ニ依リ分割シテ之ヲ
移轉スルコトヲ得
聯合商標ノ商標權ハ分離シテ移轉スルコトヲ得ス
第九條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ特許局長ハ職權ヲ以テ又ハ
利害關係人ノ請求ニ依リ商標ノ登錄ヲ取消スコトヲ得
一商標權者其ノ登錄商標ニ世人ヲ欺瞞スヘキ附記又ハ變更ヲ爲シテ之
ヲ使用シタルトキ
二商標權者正當ノ事故ナクシテ帝國內ニ於テ登錄後其ノ商標ヲ使用セ
スシテ一年ヲ經過シ又ハ其ノ使用ヲ中止シテ三年ヲ經過シタルトキ
但シ聯合商標ニ付テハ其ノ一ヲ使用シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
三商標權ノ移轉アリタル場合ニ於テ其ノ相續ニ依ルモノヲ除クノ外一
年以內ニ商標權移轉ノ登錄ヲ請求セサルトキ
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタルモノニ付テハ前項第二號ノ規
定ヲ適用セス
第一項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ訴願ヲ提起ス
ルコトヲ得
第十條商標權者其ノ營業ヲ廢止シタルトキハ商標權ハ消滅スルモノトス
第十一條商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄カ第一條乃至第三條、第四
條第二項又ハ第二十二條ノ規定ニ反シタルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト
爲スヘシ
第十二條登錄スヘシトノ査定又ハ審決アリタルトキハ之ヲ商標原簿ニ登
錄シ商標登錄證ヲ下付ス
第十三條特許局ハ商標公報ヲ發行シ登錄商標及之ニ關スル必要ナル事項
ヲ記載スヘシ
第十四條商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受
クル際每件商標料金二十圓ヲ、聯合商標ニ在リテハ每件金十圓ヲ納付ス
ヘシ
第十五條商標ノ登錄ヲ出願スル者ハ各商標ニ付命令ノ定ムル類別內ニ於
テ其ノ商標ヲ使用スヘキ商品ヲ指定スヘシ
第十六條商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ノ出願アリタルトキハ審査
官ヲシテ之ヲ査定セシム
第十七條登錄スヘカラストノ査定ニ不服アル者ハ査定ノ送達ヲ受ケタル
日ヨリ六十日以內ニ不服理由書ヲ差出シ更ニ審査ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ前審査ニ干與セサル審査官ヲシテ更ニ之ヲ査
定セシム
第十八條審判ハ左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
一第十一條ノ規定ニ依ル登錄ノ無效
二商標權ノ範圍ノ確認
審判ノ請求ハ審査官又ハ利害關係人ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得但シ審査官
ハ前項第二號ノ審判及第二條第八號及第九號、第三條又ハ第四條第二項
ノ規定ニ反ストノ理由ニ依ル前項第一號ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
登錄商標カ第二條第八號若ハ第九號、第三條又ハ第四條第二項ノ規定ニ
反シタル場合ニ於テ商標公報ニ揭載シタル日ヨリ三年ヲ經過シタルトキ
ハ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第十九條審判ノ審決又ハ再審査ノ査定ニ不服アル者ハ審決又ハ査定ノ送
達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ抗告審判ヲ請求スルコトヲ得
第二十條營利ヲ目的トセサル業務ニ係ル商品ニ使用スル標章ヲ專用セム
トスルトキハ本法ニ依リ登錄ヲ受クルコトヲ得
前項ノ標章ニ付テハ商標ニ關スル規定ヲ準用ス
第二十一條特許法第八條、第十二條乃至第十五條、第十六條第一項、第十
七條乃至第二十五條、第二十九條第三十三條、第四十九條第二項第五十
條、第五十三條、第六十條、第六十六條乃至第六十八條、第七十條乃至第七
十九條、第八十二條、第八十三條第一項第二項、第八十四條、第八十五條及
第八十七條乃至第九十一條ノ規定ハ商標ニ關シテ之ヲ準用ス
第二十二條外國人ニシテ帝國內ニ住所又ハ營業所ヲ有セサル者ハ條約又
ハ之ニ準スヘキモノニ規定アル場合ノ外商標權又ハ之ニ關スル權利ヲ享
有スルコトヲ得ス
商標ニ關シ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定
一郎、
第二十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ
罰金ニ處ス
一他人ノ登錄商標若ハ之ヲ付シタル容器、包裝等ヲ同一商品ニ使用シ
タル者又ハ其ノ商品ヲ交付、販賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ之
ヲ所持スル者
二他人ノ登錄商標若ハ之ヲ付シタル容器、包裝等ヲ同一商品ニ使用セ
シムルノ目的ヲ以テ交付、販賣シ又ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所
持スル者
三同一商品ニ使用シ又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ他人ノ登錄商標ヲ
僞造又ハ模造シタル者
四同一商品ニ使用セシムルノ目的ヲ以テ僞造若ハ模造ノ商標ヲ交付、
販賣シ又ハ之ヲ同一商品ニ使用シタル者
五僞造若ハ模造ノ商標ヲ使用シタル同一商品ヲ交付、販賣シ又ハ交付
若ハ販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
六他人ノ登錄商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ使用シタル商品ヲ交付若ハ
販賣ノ目的ヲ以テ輸入シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付、販賣シ若ハ交
付、販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
七他人ノ登錄商標ヲ僞造又ハ模造スル爲其ノ用具ヲ製作、交付、販賣若
ハ所持スル者
八同一商品ニ關シ他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノモノヲ營業ニ用井
ル廣〓、看板、引札、物價表又ハ其ノ他ノ取引書類ニ使用シタル者
前項ノ罪ハ〓訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百圓以下
ノ罰金ニ處ス
一詐僞ノ所爲ヲ以テ商標ノ登錄ヲ受ケタル者
二登錄ヲ受ケサル商標ニ登錄標記ヲ付シ若ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シ
之ヲ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付若ハ販賣シ又ハ交付若
ハ販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
三登錄ヲ受ケスシテ登錄標記又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル商標ヲ
廣告、看板、引札等ニ使用シタル者
第二十五條第二十三條ノ犯罪ニ因リ沒收スルコトヲ得ヘキ物ニ付判決言
渡前被害者ヨリ請求アリタルトキハ之ヲ相當ノ代價ニ見積リ被害者ニ交
付スル言渡ヲ爲スヘシ
損害ノ額カ交付ヲ受ケタル物ノ見積代價ニ超過スルトキハ被害者ハ其ノ
差額ニ限リ賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第二十六條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事ニシテ特許局
又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルト
キハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第二十七條證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當ノ理由ナクシ
テ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十八條特許辯理士ニ非スシテ商標ニ關スル代理業ヲ營ミタル者ハ一
年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
舊法ニ依リ登錄ヲ受ケタル商標ニ付テハ其ノ存續期間內ハ本法第一一條第六
號乃至第八號ノ規定ヲ適用セス第九條ニ定ムル期間ハ本法施行ノ日ヨリ之
ヲ起算ス
特許法第九十九條、第百五條及第百六條ノ規定ハ商標ニ關シ之ヲ準用ス
實用新案法改正法律案
實用新案法
第一條物品ニ關シ其ノ形狀、構造又ハ組合ハセニ係リ實用アル新規ノ工
業的考案ヲ爲シタル者ハ本法ニ依リ實用新案ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
第二條職務上又ハ契約上爲シタル實用新案ニ付登錄ヲ受クルノ權利ハ勤
務規程又ハ契約ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外其ノ職務ヲ執行セシムル
者又ハ使用者ニ屬ス
職務ノ執行又ハ契約ノ履行ニ依ル勤務中公務員又ハ被用者ノ爲シタル考
案ニシテ職務上又ハ契約上爲シタルモノニ非サル實用新案ニ付案出前豫
メ登錄ヲ受クルノ權利又ハ實用新案權ヲ讓渡セシムルコトヲ定メタル勤
務規程又ハ契約ノ條項ハ之ヲ無效トス
第三條本法ニ於テ新規ト稱スルハ左ノ各號ニ該當セサルモノヲ謂フ
一登錄出願前同一又ハ類似ノ物品ニ關シ帝國內ニ於テ公然知ラレ若ハ
公然用井ラレタルモノ又ハ之ニ類似スルモノ
二登錄出願前同一又ハ類似ノ物品ニ關シ容易ニ應用スルコトヲ得ヘキ
程度ニ於テ帝國內ニ頒布セラレタル刊行物ニ記載セラレタルモノ又
ハ之ニ類似スルモノ
第四條左ニ揭クル實用新案ニ付テハ之ヲ登錄セス
一菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ形狀ヲ有スルモノ
二秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ衞生ヲ害スルノ虞アルモノ
第五條同一又ハ類似ノ實用新案ニ付各別ニ登錄ヲ受クルノ權利ヲ有スル
者二人以上アルトキハ最先ニ出願ヲ爲シタルモノニ限リ登錄ス其ノ同日
ノ出願ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ之ヲ登
錄セス
第六條實用新案ノ登錄ヲ受クルノ權利ハ之ヲ移轉スルコトヲ得但シ擔保
ニ供スルコトヲ得ス
登錄ヲ受クルノ權利ノ承繼ハ登録出願前ニ在リテハ登錄ヲ出願シ登錄出
願後ニ在リテハ出願人ノ名義變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者
ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ出願又ハ屆出ニ係ルトキハ關係者ノ協
議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ對抗スルコトヲ得ス
第七條發明特許又ハ意匠登錄ノ出願ヲ爲シ特許又ハ登錄スヘカラストノ
査定ヲ受ケタル者其ノ最初ノ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ
其ノ發明又ハ意匠ニ係ル實用新案ニ付登錄ヲ出願シタルトキハ發明特許
又ハ意匠登錄ヲ出願シタル日ニ於テ出願シタルモノト看做ス
第八條實用新案權ハ登錄ニ依リ發生ス
實用新案權者ハ其ノ登錄ヲ受ケタル物品ヲ業トシテ製作、使用、販賣又ハ
擴布スルノ權利ヲ專有ス
同一又ハ類似ノ考案ニ關シテハ實用新案權ハ其ノ出願前ノ出願ニ係ル特
許權又ハ意匠權ニ依リ制限ヲ受クルモノトス
第九條實用新案權ノ存續期間ハ三年トス
前項ノ期間ハ三年間之ヲ延長スルコトヲ得
第十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ原權利ノ範圍內ニ於テ登錄實用新案
ヲ實施スルノ權利ヲ有ス
-同一又ハ類似ノ實用新案ニ對スル二以上ノ登錄中其ノ一カ無效ト爲
リタル場合ニ於テ善意ナル原實用新案權者
二前號ノ原實用新案權ニ付善意ニ實施ノ權利ヲ得テ登錄ヲ受ケタル者
特許法第三十六條及第三十七條ノ規定ハ前項ノ權利ニ之ヲ準用ス
第十一條實用新案ノ登錄カ第一條、第二條、第四條、第五條、第六條第二
項又ハ第二十一條ノ規定ニ反シタルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘ
シ登錄カ登錄ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ニ對シ爲シタルモノナルト
キ亦同シ
第十二條登錄スヘシトノ査定アリタルトキ又ハ實用新案權存續期間延長
ノ請求アリタルトキハ實用新案原簿ニ登錄シ實用新案登錄證ヲ下付ス
第十三條特許局ハ實用新案公報ヲ發行シ登錄實用新案及之ニ關スル必要
ナル事項ヲ記載スヘシ但シ祕密ヲ要スル實用新案ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十四條登錄スヘシトノ査定ヲ受ケタル者ハ其ノ登錄ヲ受クル際每件登
錄料金十五圓ヲ納付スヘシ
實用新案權存續期間ノ延長ヲ請求スル者ハ每件登錄料金三十圓ヲ納付ス
ヘシ
第十五條實用新案登錄ノ出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ査定セシ
ム
第十六條審査官ハ第四條、第五條、第六條第二項及第二十一條ノ規定ニ依
リ出願ニ係ル實用新案カ登錄スヘキモノナルヤ否ニ付査定スヘシ但シ第
一條又ハ第二條ノ規定ニ該當セサルコトヲ發見シタルトキハ之ヲ理由ト
シテ登錄拒絕ノ査定ヲ爲スヘシ
第十七條登錄拒絕ノ査定ニ不服アル者ハ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ三
十日以內ニ不服理由書ヲ差出シ再審査ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ前審査ニ干與セサル審査官ヲシテ更ニ之ヲ查
定セシム
前條但書ニ依ル査定ニ不服アル者再審査ノ請求ヲ爲シタル場合ニ於テハ
審査官ハ其ノ理由ニ付テモ亦審査スヘシ
第十八條審判ハ左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
一第十一條ノ規定ニ依ル登錄ノ無效
二實用新案權ノ範圍ノ確認
審判ノ請求ハ審査官及ハ利害關係人ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得但シ審査官
ハ前項第二號ノ審判及第二條、第五條又ハ第六條第二項ノ規定ニ反スト
ノ理由ニ依ル前項第一號ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
審査官ノ請求ニ依ル審判ニ關シテハ其ノ手續ヲ省略スルコトヲ得
第十九條審判ノ審決ニ不服アル者ハ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日
以內ニ抗〓審判ヲ請求スルコトヲ得
第二十條特許法第八條、第十一條第一項及第三項、第十二條乃至第十五
條、第十六條第一項、第十七條乃至第二十六條、第二十九條、第三十二條、
第三十三條、第四十條、第四十一條、第四十三條乃至第四十六條、第四十
九條第二項、第五十條、第五十一條、第五十三條、第五十六條、第五十七條
第五項、第六十條、第六十六條乃至第六十八條、第七十條乃至第七十九條、
第八十二條、第八十三條第一項及第八十四條乃至第九十一條ノ規定ハ實
用新案ニ關シ之ヲ凖用ス
第二十一條外國人ニシテ帝國內ニ住所又ハ營業所ヲ有セサル者ハ條約又
ハ之ニ準スヘキモノニ規定アル場合ノ外實用新案權又ハ實用新案ニ關ス
ル權利ヲ享有スルコトヲ得ス
實用新案ニ關シ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ別段ノ規定アルトキハ其ノ
規定ニ從フ
第二十二條實用新案ノ登錄ヲ受ケタル物品ヲ業トシテ僞造、模造シタル
者又ハ僞造品、模造品ヲ業トシテ販賣、擴布若ハ使用シタル者ハ三年以下
ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
實用新案ノ登錄ヲ受ケタル物品ト同一又ハ類似ノモノヲ業トシテ輸入シ
タル者又ハ其ノ物品ヲ業トシテ販賣、擴布若ハ使用シタル者ハ罰前項ニ
同シ
前二項ノ罪ハ〓訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三百圓以下
ノ罰金ニ處ス
一詐僞ノ所爲ヲ以テ實用新案ノ登錄ヲ受ケタル者
二實用新案ノ登錄ヲ受ケサル物品又ハ其ノ容器、包裝等ニ實用新案登
錄ノ標記ヲ付シ若ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者又ハ其ノ物品ヲ
販賣若ハ擴布シタル者
三實用新案ノ登錄ヲ受ケサル物品ヲ販賣又ハ擴布スル爲廣告、看板、引
札等ニ其ノ物品カ實用新案ノ登錄ニ係ルコトヲ表示シ又ハ之ニ紛ハ
シキ表示ヲ爲シタル者
第二十四條第二十二條ノ犯罪ニ因リ沒收スルコトヲ得ヘキ物ニ付判決言
渡前被害者ヨリ請求アリタルトキハ之ヲ相當ノ代價ニ見積リ被害者ニ交
付スル言渡ヲ爲スヘシ
損害ノ額カ交付ヲ受ケタル物ノ見積代價ニ超過スルトキハ被害者ハ其ノ
差額ニ限リ賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第二十五條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事ニシテ特許局
又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルト
キハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ輕減又ハ免除スルコトヲ得
第二十六條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當
ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ四十圓以下
ノ罰金ニ處ス
第二十七條特許辯理士ニ非スシテ實用新案ニ關スル代理業ヲ營ミタル者
ハ一年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條ノ規定ハ本法施行前無效トナリタル實用新案ノ登錄ニ關シテハ之ヲ
適用セス
特許法第九十九條、第百一一條第二項、第百五條及百六條ノ規定ハ實用新案ニ
關シ之ヲ準用ス
〔政府委員押川則吉君壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=22
-
023・政府委員(押川則吉君)
○政府委員(押川則吉君) 唯今議題ニ上リマシタ特許法、意匠法、商標法及實
用新案法ノ此四ツノ法律ハ大同小異ノ法律デゴザイマシテ、茲ニ一括シテ說明ヲ致シタ
イト思ヒマスル、現行ノ特許法、意匠法及商標法ハ明治二一十二年ノ制定デゴザイマシ
テ、其當時改正條約ノ實施ノ際デゴザイマシテ其必要ニ應ズルタメニ明治二十一年ニ
制定セラレマシタ特許條例、意匠條例、商標條例、此三條例ニ改正ヲ加ヘテゴザイマ
シテ、急場ノ要ニ應ジタノデゴザイマス、其後時勢ノ進運ニ伴ヒマシテ、改正補修ヲ要ス
ル事項ガ少クゴザイマセヌ、又實用新案法ハ明治三十八年ノ制定デゴザイマシテ其實施
ノ跡ニ依ッテ考ヘテ見マスルノニ、不便ヲ感ズルコトガ少クゴザイマセヌ、ソレ故ニ今囘特
許法外二法ノ改正ト共ニ是モ改正ヲ致スト云フ必要ガアル譯テゴザイマス、其改正ノ要
〓ハ第一ニ工業所有權者ノ權利ヲ確實ニスル併セテ其負擔ヲ輕減スルト云フコトガ
第一ノ要點デゴザイマス、、第二ノ要〓ハ私權ノ享有ト云フコトデ社會公衆ノ利益ヲ調
和スルト云フコトガ第二ノ要點デゴザイマス第三ノ要點ハ出願請求ノ手續ヲ簡易ニ致
シマシテ眞正ノ考案者及商工業者ノ保護ヲ勉メルト同時ニ不正競爭ノ弊害ヲ防遏ス
ルト云フノガ第三ノ要點ボデゴサイマス、其他種々ノ改正ノ事項ハゴザイマスケレドモ、重要
ト思ヒマスル事柄ハ是等今申上ゲマシタ三ツノ事項デゴザイマス、ドウゾ此法律案モ御協
贊ヲ願ヒタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=23
-
024・恆松隆慶君
○恆松隆慶君 本案ハ一括シテ議長指名二十七名ノ委員ニ付託アランコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=24
-
025・議長(長谷場純孝君)
○議長(長谷場純孝君) 本案卽チ議事日程第五、第七、第九、第十一ヲ一括シテ
議長指名二十七名ノ委貝ニ付託スルト云フ動議デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=25
-
026・恆松隆慶君
○恆松隆慶君 サウデゴザイマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=26
-
027・議長(長谷場純孝君)
○議長(長谷場純孝君) 今恆松君動議ノ如ク、日程第五、第七、第九、第十一ハ
一括シテ、議長指名二十七名ノ同一委員ニ付託スルコトニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=27
-
028・議長(長谷場純孝君)
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第十三、
十四、十五ハ同一委員ニ付託サレマシタノデ、併セテ委員長ヨリ報告ヲ致シマス、委員
長漆昌巖君
第十三國債ノ利子所得稅免除ニ關スル法第一讀會ノ續(隱藏本
律案(政府提出)報告
〔漆昌巖君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=28
-
029・漆昌嚴君
○漆昌嚴君 唯今議題ニ上ッテ居リマス國債ノ利子所得稅免除ニ關スル法律案外
二件ノ委員會ノ經過及結果ヲ御報告致シマス、此案ハ案トシテハ至ッテ簡單ナル案デ
ゴザイマスガ、其及ボス處ハ重大ナル問題トシテ現政府ノ財政計畫ノ隨一タル卽チ公債
政略ニ關スル案デゴザイマスカラ、委員會モ七囘程開キマシテ國務大臣モ二度バカリ出
席致シマシテ、委員諸君モ勉勵ニナリマシテ十分ノ質問モゴザイマシタ而シテ此所得稅
ヲ免除スルト云フコトニ贊成ノ趣意ト政府ノ申分トハ卽チ公債ノ聲價ヲ增進シテ海外
ノ信用ヲ增シ、財政ヲ鞏固ニスルト云フコトガ一大眼目ニナッテ居ルノデゴザイマス、免ニ
角是ニハ多數ノ諸君ガ御同意ニナッタノデアリマスガ(「大聲ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)又
多少反對ノ論者モ二三ゴザイマシタ、ソレハ少數意見ト云フ程デハゴザイマセヌガ、二三ゴ
ザイマシタ、過去九年間ノ實際ニ依リマスト、公債ノ所得稅ト云フモノガ、一箇年ニ二十三
万圓ホドアリマス、又買收鐵道ニ今後交附スル公債ニ依ッテ政府ガ得ヤウトスルトコロノ
所得稅が買收鐵道ノ總額四億八千万圓ノ内帝室ノ御所有公法人ノ所有、是ガ三千
万圓ホドアッテ、差引四億五千万圓ホドニナル、サウスルトソレガ四十五万圓ホドノ所得稅
ニナル、ソレヲ併セテ六十八万圓ホドニナリマス、政府ガ此六十八万圓ノ財源ヲ失フト云フ
コトハ甚ダ面白クナイガ、併ナガラ此財源ヲ失ッテモ此公債ノ聲價ヲ增進シテ財政ヲ鞏固
ニスルト云フ目的ガ大ナルモノデアルカラ、此財源ヲ失フト云フコトハ躊躇セヌト云フコトガ、
本案ノ趣意デアリマス、所デ反對論者ハ公債ノ利子所得稅ヲ免除スルハ富豪ヲ保護
スルモノデ、甚ダ面白クナイト云フノガ其趣意デゴザイマス、所ガ此案ヲ採決致シマストキハ
三名ニ對スル九名ノ多數ヲ以テ原案ノ通リニ可決致シマシタノデゴザイマス、ソレカラ日
程ノ第十四、之ヲ御報告致シマスガ、登錄國債ノ擔保充用ニ關スル法律案、此案ハ
全會一致ヲ以テ一人ノ異議ナク可決致シマシタカラ總テノ委員會ノ經過ハ速記錄デ
十分ニ御覽ヲ願ヒマス、日程十五、政府ニ對スル保證金其他ノ擔保ニ供シタル國債ノ
ノ買入銷却ニ關スル法律案、此案ハ多少反對モアッタンデゴザイマス、是ニ贊成ノ諸君
ノ大體ハ政府ガ既ニ勅令ヲ以テ總テ擔保保證金ニ取ルトコロノ國債ヲ債權額マデ取ル
ト云フコトガ定ッテ居ル、卽チ擔保流レノ場合ニ於テ減債基金整理基金ヲ以テ百
圓ノモノヲ百圓デ買入銷却シタイト云フノガ政府ノ案デゴザイマス、然ルニ反對ノ御方ハ
是ハ少數意見ガ出テ居リマスガ、此法律ヲ成立スルト是カラハ、公債ノ時價ト債額トハ
何レノトキデモ一割ト極ック譯デハナイガ、免ニ角九十圓內外ノ公債ヲ以テ百圓ノ擔保
ニ入レテ擔保ヲ流サウトスル、サウスルト玆ニ一割カラノ利益ヲ見ルコトガアルカラシテ、此法
律ガ成立ツト奸商ヲシテ益〓恩澤ニ浴セシムル弊害ガ生ズルカラ此案ハ同意スルコトハ
出來ヌト云フノガ反對論者ノ之ガ大體ノ趣意デゴザイマス、デ此案ヲ採決スルニ當リマ
シテ四人ニ對スル六人デ原案ハ可決致シマシテゴザイマス、併ナガラ少數意見ガ出テ居
リマスカラ左樣御承知ヲ願ヒマス、以上三案トモ結局原案ニ決シマシテゴザイマス、此段
御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=29
-
030・議長(長谷場純孝君)
○議長(長谷場純孝君) 討論ト採決ハ十三、十四、十五各〓別々ニ致シマス、而シ
テ此日程ノ第十五ニ對シテハ少數者ノ意見ガ委員會カラ出テ居リマス、仍テ此少數意
見ハ第十五ノ日程ノ場合ニ於テ御述ベニナル方ガ便宜ダラウト思ヒマスカラ其通リ取計
ヒマス、先ヅ日程第十三、國債ノ利子所得稅免除ニ關スル法律案ノ第一議會ヲ開キ
マス、高木正年君
〔高木正年君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=30
-
031・高木正年
○高木正年君 例ニ依リマシテ病氣デスカラ襟ヲ卷イテ居リマス、唯今報告ニナリマシ
タ委員長ノ報告ニ對シテハ反對ノ意思ヲ表示セネバナラヌノデアリマス、此問題ハ金額
ノ上ヨリ申シマスルト昨年ニ於テハ僅ニ二十三万圓、將來ニ於テハ所謂鐵道買收公債
ガ公債トナッテ民間ニ下渡サルヽトキニ於テ七十万圓乃至九十万圓ノ間ニ國庫ノ收入
ヲ減ズルノデアルト云フノガ、政府ノ言フ所デアリマス、金額ノ上デハ餘リ多額ノ損失デ
ハナイヤウデアリマスルガ、此案ニ付テ政府ガ極力本會ヲ通過センコトヲ努メラルヽ點ニ
付テモ頗ル此問題ガ重要視セラルヽト云フコトハ明瞭テアル有體ニ申シマスレバ、此法
案ハ桂內閣ノ公債政略ノ實體ト申シテモ差支ガナイノデアリマス、先ヅ政府ガ何ニ依ッ
テ此案ヲ重要視スルカ、又此案ヲ必要トスル條件ガ何デアルカト云フト、唯今委員長モ
申サレタヤウデアリマス、第一ハ國債ニ關スル所得稅ヲ免除スル、從來免除公債ト免除
セラレナイ公債トノ二種類アルガ、之ヲ整理シテ此所得稅ヲ免除スルハ公債整理ノ上ヨ
リ必要デモアル、公債價格增進ノタメニモ必要デアル、今一ツハ此公債ヲ外國ニ流出ス
ルニ付テハ從來ノ經驗ニ依ルト公債利子ニ所得稅ガ掛ルモノト掛ラヌモノトノ間ニ於テ
外國人ノ好ヲ異ニスルガ故ニ、所得稅ヲ免除スルガ、卽チ外資ノ輸入ノ一ノ捷徑デアル
ト斯樣ニ政府ハ明言シテ居ル、所ガ此政府ノ云フ所ガ果シテ此公債利子ヲ免除スル
ノ價値アリヤ否ヤト云フコトヲ〓究セネバナラヌノデアリマス、何ガ故ニ私ハ特ニ立ッテ
反對セネバナラヌカ、國民ハ之ニ依ッテ何故ニ反對セネバナラヌカト申シマスルト、元
來此公債ノ利子ニ對シテ所得稅ヲ免除セラレテ居ル從來ノ公債ナルモノハ如何ナ
ル種類デアルカト云ヘバ戰時應急ノ場合ニ國民ガ己ノ財囊ヲ空クシテ國家ノタメ
ニ其公債ノ將來如何ナルベキヤ否ヤヲ慮ルノ遑ナク、唯義務ノ觀念ニ依ッテ應ジタ、
特殊ノ公債ニ對シテ特例ガ與ヘラレテアルノデアリマス、若シ一般ノ公債ニ此所得
稅ヲ免除スルトキニ於テハ、此特權ヲ得タル國債所有者ハ一方ニ於テハ此特權ヲ
シテ他ニ分ツト同樣デアッテ、此間ニ於テ價格ノ上ニ多少ノ特典ヲ奪ハルヽト云フ
ノモ事實ニ於テ間違ナイコトデアリマス、今一ツハ此公債利子所得稅免除ガ一時段、
財界ニ如何ナル影響ヲ及ボスカ、政府ハ謂ヘラク、公債ノ價格增進スレバ從ッテ一般
ノ株劵ノ價ノ上ニ於テ善影響ヲ及ボスノデアル、ソレ故ニ決シテ公債所有者ヲ曲庇スル
ニアラズシテ一般ノ財界ニ利スル處甚ダ大ナリトハ政府ノ聲ヲ大ニシテ言言處デアリマス、
然ルニ先ヅ狭キ範圍ニ公債其物ト同種類ナ所謂有價證劵的ノモノニ付テ考ヘテ見テモ
此公債ト免除セラレル公債ト、公債ノ價格ガ若シ上ルトスレバ、從ッテ從來アルトコロノ
地方ニ於ケル府縣債、市町村債ノ如キモノガ從來ニ於テスラモ國債ニ對シテハ餘程ノ利
增ヲシナケレバ募集ガ出來ズ、借替ノ出來ナイ上ニ殊ニ國庫債劵、國庫ノ所謂債劵ニ
付テハ特ニ斯樣ナ保護ヲ與ヘテ居ルト同時ニ、一方ニ此保護ナキトコロノ所謂府縣債
ノ如キモノ、從ッテ其以下ニ在ルトコロノ市町村債ノ如キモノモ一般ニ其影響ヲ受クベ
キハ自然ノ道理デアルト云ハネバナラヌノデアリマス、此法案ハ若シ我國ノ經濟界ガ非
常ニ金利ガ高クナッテ公債ガドン〓〓下落スルトキデアッタナラバ、或ハ時ニ必要ガアルカモ
知レヌノデアリマス、今ヤ金融ハ緩慢トナリ、預金ノ利率ハ五分以下ニ降ラントスルトキ
ニ於テ、今日ノ公債ノ利囘リト云フモノハ五分五厘以上ニ囘テ居ルノデアリマス、之ニ加
フルニ更ニ所得稅免除ヲ行ヘバ丁度五分利付卽チ額面百圓ノ公債ニ於テ一厘ノ利ヲ
增スト同ジコトニナル、公債ニ對スル所得稅ハ千分ノ二十デゴザイマスカラ、五圓ニ對シテ
十錢ノ所得稅ヲ拂フタノモ拂ハザル卽チ五圓ニ對シテ十錢ノ增打步ヲ與ヘルト同一テア
リマスカラ、一厘ノ利率ヲ增スト同ジコトニナル、タヾデスラ公債ニ向ッテ總テノ貨幣ガ流込
マントスルトキニ於テ公債ノミニ斯樣ナ保護ヲ與ヘルトキニ於テハ一般ノ有價證劵ノ上
ニ付テ必ヤ惡影響ヲ及ボスト云フコトハ火ヲ睹ルヨリモ明カナ事實デアリマス、殊ニ政府
ガ言フ公債ノ利子ニ對スル所得稅ヲ免除スレバ外國人ハ從來ノ如キ選リ好ミヲシナイ
デ、是等ノ公債モ好ンデ海外ニ流出スルコトガ出來ルト言フノハ、是ハ事實ヲ誣ヒタルコ
トヽ言ハネバナラヌノデアリマス、外國人ノ所有スルトコロノ公債ハ決シテ非常ノ場合ニ募
集シタ公債ノミナラズ、其他ノ公債ニ在テ所得稅ヲ賦課セラルヽトコロノ公債モ外國ニ
在ルトコロノ銀行ニ於テ倫敦、紐育、或ハ巴里等ノ如キ、日本銀行ノ代理店、若クハ
正金銀行ノ支店ノアルトコロニ於テハ何レモ此利札ノ買入銷却ヲ爲シ居ルタメニ實際
ニ於テ外國人ノ手ニ公債券ガ渡ルト同時ニ此利子ニ對シテハ所得稅ヲ免除セラレテ居
ルト云フノハ實際デアリマス、此所得稅ヲ免除スルガタメニ公債ノ價格ノ暴騰スル、是ガ
國ノ利益デアルト云フガ、曩ニ申シマシタ如ク若シ五朱ニ當ルトコロノ公債ニ對シテ其一
厘ノ利增ヲ加フレバソレダケノ値打ノ上ルノハ當リマヘデアル、是ハ公債價格ノ增加ト云
フコトニアラズシテ公債ニ對スル打步ノ增スダケ其價格ノ上ルト云フノデ、我邦ノ信用ガ
是ダケ增加セラレタリトハ言ロフコトハ出來ヌノデアリマス、若シ今日ノ公債ノ五分デアルモノ
ヲ若シ五厘上ゲテ之ガタメニ今日ノ公債ガ十數圓ノ價ガ上ツタト言ハヾ、是レ公債ノ利
率ヲ增シタガタメニ上ッタルモノニシテ、公債其物ノ信用ヲ高メタヽメニ公債ノ價格ノ暴騰
シタトハ言フコトノ出來ナイト同一ノ事實デアリマス、斯樣ニ考來リマスレバ公債利子所
得稅免除ト云フ法案ハ少シモ値打ガ無イ、唯徒ラニ國民ノ負擔ノ上ニ付テ八十万圓
ナリ、七十万圓ナリノ金ヲ損シテ、一方ノ公債所有者ヲ曲庇スルト云フノガ、本案ノ實
體ト云ハネバナラヌノデアリマス、桂內閣ノ公債政略ト云フモノハ斯樣ニ淺墓ナル淺
薄ナル、殆ド常識ヲ失シタルトコロノ公債政略デアルカト段々考ヘテ見マスルト、元來今ノ
政府ノ公債政略ナルモノハ殆ド矛盾彌縫或ル〓ニ於テハ全ク墮落セリト考ヘネパナラヌ
點ガ多々アルノデアリマス、ソレハ何デアルカト云フト、私ハ殊ニ茲ニ〓究スル必要ハ何デ
アルカト謂ハヾ、私共國家ノ信用ヲ高ムルト云フ〓ニ付テ其希望ノ熱度ノ高キコトハ寧
ロ現內閣ニ讓ラナイノデアリマス、國ノ經濟ノタメニ何人モ此希望ヲ持ツデアリマセウガ、私
共ノ本來ノ考ヲ申シタナラバ、我邦ノ信用ヲ高メ隨ッテ公債價格ヲ增加スルト云フコト
ハ斯ノ如キ小策ニアラズ、斯ノ如キ偏頗ナル保護ニアラズシテ、其根本ニ在リト云フコト
ヲ考ヘテ居ルノデス、然ルニ桂內閣ノ公債政略ナルモノハ唯今申スガ如ク矛盾彌縫堕
落ト云フガ如キ、總テニ最モ忌ムベキ狀態ヲ具ヘテ居ルカラ、ソレ故ニ斯ノ如キ極ク小策
ナリトモ一時ノ便法ヲ以テ公債ノ價格ヲ維持セネバ桂內閣ノ公債政略ガ實際ニ於テ
通用シナイコトニナックトー云フコトハ頗ル悲ムベキコトデアリマス、何故矛盾彌縫ト謂フカ
ト云ハヾ、政府ハ曾テ内閣ヲ組織スルニ方ッテ公債ト云フ公債償還ニ付テハ務メテ抽籤
ヲ以テ爲スベシ從來ノ如ク未募集公債ヲ歲入ニ入レテ以テ財政ヲ彌縫スルガ如キ策ハ
決シテ採ルベカラズト云フコトヲ明言シタノデアル、是ニ於テカ一般ノ財界ハ頗ル人意ヲ
强ウシテ自然ニ公債ノ價格ヲ增加スルト同時ニ、他ノ經濟界ニモ最モ好キ所ノ反響ヲ
與ヘタノデアッタ、然ルニ議會開クル前後ニ於テ政府ノ此明言ハ或ハ當分ト云ヒ、、或ハ公
債ノ募レナイガタメニ募ラナイノデアルト云フガ如キ、政府ノ言フ處ハ其事實ニ於テハ全
然崩レテ參ッタト云フコトハ公債政略其物ノ最モ近キ間ノ歷史デアリマス、殊ニ甚シキハ
未募集公債ハ歲入ニ組入レナイト明言シナガラ、政府ガ本年出シタトコロ、卽チ四十二
年度ノ豫算ニ大藏省雜入ノ處ニ於テ八百万圓ノ所謂未募集公債ニ屬スベキモノヲ賣
拂シテ之ヲ歲入ニ入レテ居ルト云フコトハ寧口公債政略ノ矛盾ト謂ハンヨリハ公債政
略ノ墮落ナリト私ハ明言スルニ憚ラヌノデアリマス斯ノ如ク其根本ニ於テ誤リ、、斯ノ如ク
財政ノ基礎ニ於テ鞏固ナラザルニ於テハ僅ニ此公債ノ利率ヲ少シバカリ免ジタカラト云ッ
テモ、我邦ノ信用ハ之ニ依ッテ恢復スルモノデナイ、私共ハツレヨリ寧ロ政府ハ眞實熱誠、
國ノ財政ヲ改革シ產業ヲ振興シテ以テ徐ロニ我國ノ財政ノ基礎ヲ固ウスル方ガ、此公債
利子所得稅免除法案ヨリハ頗ル適當ナリト信ズルノデアリマス、政府ハ動モスレバ國
家ハ裕ナラズト云フガ、此裕ナラザルトキニ於テ八十万、七十万ノ國民ノ負擔ヲ增加ス
ルガ如キ案ヲ出スハ、政府者自身ニ說クトコロト全ク言葉ヲ異ニシテ居ルノデアリマス、
何故政府ガ理由ナシト謂フカ、〓育基金ニ於テ其利子ノ五十万圓スラモ政府ハ出ス
コトヲ惜ムノデハアリマセヌカ、其他少キトコロノ金額ニ於テ十分我邦ノ實業發達ノ上ニ
爲スベキコトヲモ國庫餘裕ナシト云フ言葉ノ下ニ政府ハ始終之ヲ付ケテ居ルノデハアリ
マセヌカ、斯ル狀態ニアリテ獨リ國債所有者而モ此國債ナルモノハ鐵道株券ガ公債
トナリ變ルモノデ、其前身ニ於テハ孰レモ所得稅ヲ課セラレテ居ルノデアリマス、殊ニ近來
外國人ガ鐵道公債ニ目ヲ著ケテ、之ニ付テ多額ノ注文アリト云フコトハ昨年來屢明
言スルトコロデアリマス、斯樣ナ事實デアリマスルカラ、此公債ニ對シテ所得稅ヲ免除セズト
モ、悠々綽々トシテ我邦ノ財政ヲ鞏固ニシ、之ヲ恢復スル途ハ他ニアルト思フガタメニ、殊
ニ此案ニ對シテ反對ノ意思ヲ表示スルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=31
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032・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 岩下〓周君
〔岩下〓周君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=32
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033・岩下清周
○岩下〓周君 諸君、私ハ元來公債政策ト云フモノニ非常ニ重キヲ措キマス一人デゴ
ザイマス、隨ッテ唯今議題ニ上ッテ居リマストコロノ國債利子免除法案ニ付キマシテハ私
ハ全然贊成ヲ表スルノデゴザイマス、此案ニ依リマシテ政府ガ國庫ニ失フトコロハ八九十
万圓、百万圓未滿ト申スコトデゴザイマス、是ハ今日ノ財政ニ於テ甚ダ好マシカラヌコト
ハ反對論者ト御同感デゴザイマス、政府ニ於キマシテモ此際百万圓近イ歲入ヲ失フト云
フコトハ、餘程困難ヲ感ゼラレタコトグラウト私ハ考ヘマス、併ナガラ苟モ財政ヲ眞面目ニ
整理シ、我邦ノ發達ヲ圖ラウトシマスルノニハ、ドウ致シマシテモ、此國債ト云フモノカラ
整理ニ掛ラネバナラヌノデゴザイマス、元來此一國ノ信用、一國ノ殖產興業ノ發達ノ程
度、或ハ金利ノ高下ト云フモノハ何ニ依ッテ見ルカト言ヒマスト、公債ニ依ッテ見ルヨリ外
仕方ガナイノデゴザイマス、ソレ故ニ國債ナルモノハ一國ノ信用ヲ代表スルモノデアル一
國ノ富ノ標準トナルベキモノデアル、ソレ故ニ國債ノ廉イ限リハ如何ナルコトヲシテモ廉イ金ヲ
借リルコトモ出來ナイ、殖產工業ヲ發逹サセルコトモ出來ナイノデゴザイマス、ソレカラ此
政府ノ說明ニ依リマスト、單ニ國債ノ聲價ヲ維持スルニアルト云フダケノコトデ、其他ヲ
言ハレマセヌガ、私共ガ見マスト是ハ始メテ政府ガ此財政ノ困難ニ陷ツテ吾〓ガ十年以
來唱ヘ來ッタトコロノコトヲ覺ラレテ此案ガ出タノダラウト私共ハ推測ヲ致シマスノデゴザ
イマス、一體唯今反對論者モ國債カラ稅ヲ取ルト云フコトハ當リ前ノコトノヤウニ御考ノ
ヤウデゴザイマスガ、私共ノ考デハ國債カラ稅ヲ取ルト云フコトガ其事ガ非常識ナ事柄ダト
思フノデゴザイマス(「ノウ〓〓」)「ノウノ」ト仰シヤル御方モアリマスガ、私ノ知ッテ居ル限
リ世界各國何レノ國ニ於テモ自分ノ國債カラ稅ヲ取ルヤウナ非常識ナコトヲ遣ッテ居ル
國ハアリマセヌノデゴザイマス(「アリマス」ト呼フ者アリ)アルナラバ例ヲ舉ゲテ御覽ナサイ、
ソンナモノハナイノデアル(「ナクテモ宜シイ」ト呼フ者アリ)ソレデ、此稅ヲ廢スルト云フコトハ
獨リ國債ノ聲價ヲ維持スルノミデハナイノデアル、日本人ガ非常識ナコトヲシテ居ッタノガ
常識ニ立歸ヲタト云フコトヲ世間ニ知ラセルノデアル(「ノウノマルデ政府委員グ」ト
呼フ者アリ)政府ガ僕ノ說ヲ採用シタノダ-唯今軍事公債ニハ特典ガ與ヘテアルト
云フ反對論者ノ御說デアッタガ、是ハ吾ミガアノ際ニ稅ナドヲ御取リニナルト云フト公債
ハ高ク賣レマセヌゾト云フコトヲ忠告シタノデアル、ソレデ若シアノ時ニ所得稅ヲ掛ケタ公
債ヲ發行シタナラバアノ時出來マシタ値段ヨリモ尙廉ク出來タノデアリマス、諸君ノ御
參考マデニ各國ガドレ程此公債ト云フモノヲ保護シ、人爲的ニ保護シテ居ルカト云
フコトニ付テ、私ノ知ッテ居ル例ヲ少シ申上ゲタラバ反對諸君モ十分ニ御分リニナルダラウ
思ヒマス(「分ッテモ反對スル」ト呼フ者アリ)最モ國家トシテ最モ財政輩固ナル國ハ何處
デアリマセウカ、申スマデモナク北米合衆國ダト私ハ思ウテ居ル、其國デハ公債ヲドウ致シ
マスカ、所得稅ナドハ無論取リマセヌノデス、此國デハ銀行ヲ立テルニハ必ズ公債ヲ持タ
セルノデアリマス、而シテ此公債ニ對シテハ現今デハ百圓ノ公債ヲ持ッテ行ケバ百圓ノ紙
幣ヲ發行シテ呉レルノデゴザイマス而シテ其他貯金銀行是ハ御承知ノ通リ州々ニ
依ッテ違ヒマスガ、V若シ投資法ヲ指定シタ場合ニハ必ズ國債ヲ持ット云フコトガ法律ニ極ッ
テ居リマス、ソレカヲ信託會社ノ受託金、是ハ皆公債ニ放資セネバナラヌノデゴザイマス
其他アラユル方法ヲ以テ此國債ヲ保護シテ居リマス、ソレハドウ云フコトカト申シマスト御
承知ノ通亞米利加ハ新開國デアッテ非常ニ金利ガ高カッタノデアル、最初ハ日本ト同ジコト
ガアッタンデアル、五朱、六朱ト云フ高利ノ國債ヲ募ッタ時代モアッタノデゴザイマス、所デ此
公債政策ト云フコトニ十分力ヲ入レマシテ、サウシテ此海外ヨリ卽チ亞米利加デ申セバ
歐羅巴ヨリ廉イ金ヲ呼ンダノデゴザイマス、ソレガ今日ノ亞米利加ノ盛大ヲ致シテ居ル所
以デアルト私ハ思ウテ居リマス、又英吉利ニ至リマシテモ(「伊太利ノ例ハ如何デス」ト呼
フ者アリ)伊太利デモ稅ヲ課シテ居リマセヌ(「居リマス」ト呼フ者アリ)居リマセヌ、所得
稅ハ課シテ居リマセヌ、公債ニ稅ヲ課シテ居ル處ハアリマシテモ、ソレハ公債ニ利息ノ
アルト云フ處ニハアリマセヌ、サウ云フ處ハアリマセヌ(「英吉利ハ如何」ト呼フ者アリ)英
國ハ申告稅デゴザイマシテ直接ニ公債カラ稅ハ取ッテ居リマセヌノデゴザイマス左樣ナ次
第デ各國何レトモ此公債ト云フモノハ人爲的ニ十分ニ保護シテサウシテ此國ノ利息ヲ
廉クスルト云フコトニ盡力ヲ致シテ居リマスノデゴザイマス、諸君ハ殖產工業ヲ發達セシ
メヤウトカ、鐵道ヲ架ケヤウトカ、種々ナ御注文ガアリマスガ、日本ノ國債が五朱ノ利息
ヲ取ッテ尙額面以下デアル限リ、如何ニ諸君ガ熱心ニ之ヲ希望サレテモ出來ルコトデハ
ナイノデゴザイマス(拍手起ル)ドウシテモ此國債ハ飽マデ保護シ飽マデ人爲的デモ宜シ
イ保護シテ、之ヲ額面以上ニ爲シ、而シテ或ル時機ニ於テハ今日ノ五分ノ公債ヲ四分
ナリ若クハ三分五厘ナリニ整理スルト云フ時代ガ來ナケレバ、到底列强ノ間ニ立ッテ戰
フコトハ出來ナイノデアリマス、ソレデ私ハ此案ニハ全然贊成ヲ表シマスルノデゴザイマス、
尙終リニ一言申シマスガ、殖產工業トカ、或ハ國富ヲ增進スルトカ云フコトヲ希望ナサル
御方ナラバ、必ズ此案ニ贊成ヲナサルダラウト思フ、又ナサラナケレバナラヌノデアル、若シ
此案ニ贊成ナサラヌ方デアルナラバ殆ド人民ノ代表者タル資格ハナイモノダト私ハ斷言
致シマス
〔石橋爲之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=33
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034・石橋爲之助
○石橋爲之助君 諸君、只今ハ桂內閣ノ財政上ノ御師匠サンデアリマス岩下〓周
君カラ段々ト御說〓ヲ承リマシタ(「ソンナ馬鹿ナコトヲ言フナ」ト呼フ者アリ)併ナガラ本
問題ハ如何ナルコトヲ議スルノデアリマスカ、卽チ國債ノ利子ニ所得稅ヲ課スルヤ否ヤト
云フ問題デアリマス、卽チ其問題ハ公債論ノ領分ト云フヨリモ、寧ロ租稅論ノ領分デ
アリマス、一昨日ノ本議場ニ於キマシテ或ル議員ノ御議論中ニ、天下何レノ租稅ガ惡
稅ナラザルモノアランヤト云フ意味ノ話ヲ承ハリマシタガ、是ハ大ナル誤リデアリマス所得
稅ト申シマスルモノハ租稅トシテハ善良ナル租稅デアリマス、殊ニ所得稅中第二種ノ所得
稅ハ最モ善良ナル租稅テアリマス、卽チ第一種第三種ハ申告稅デアリマスガ故ニ、問ミ
虛僞ヲ其間ニ挾ムコトノ出來ル餘地モアリマスルカナレドモ、第二種ノ所得稅ニ至ッテハ
眞正直ニ其所得ヲ露出シテ居ルノデアリマス、尙此第二種ノ公債社債ノ利子ト云フモ
ノハ如何ナル人ガ負擔スルノデアルカト云ヘバ、中等以上ノ國民ガ負擔スルノデアリマス、
サウシテ其稅額ガドノ位ナ負擔デアルカト云ヒマスルナラバ極メテ輕微ノ負擔デアリマシ
テ、額面百圓ノ五分利付公債ニ對スル一年ノ負擔ガ僅ニ十錢デアリマス、斯ノ如キ性
質ヲ持ッテ居ルトコロノ此第二種ノ所得稅デアリマスルガ故ニ、是ハ卽チ租稅ノ原則カラ
申シマスナラバ最モ其目的ニ適ッテ居ルトコロノ善良ナル租稅デアリマス、然ルニ其善良ナ
ルトコロノ租稅ヲ廢シテ、一方ニハ自ラ働イテ儲ケタトコロノ所得ニハ稅ヲ課シテモ、遊惰
ノ民ガ徒食シテサウシテ得ルトコロノ今ノ公債ノ利子ト云フヤウナ所得ニ之ヲ免稅スルト
云フ理由ハ毫モナイノデアリマス(ヒヤ〓〓)政府ハ彼ノ天下ニ囂々トシテ呌バレテ居リマ
スルトコロノ三種ノ惡稅ヲ存シテモ尙比較的最モ善良ナル本稅ヲ廢セントスルト云フハ
實ニ冠履轉倒ノ甚シキモノデアリマス(拍手起ル)此問題ハ動モスレバ三十万圓、若クバ
七八十万圓ノ小問題デアルカノ如ク言ハレマスケレドモ決シテ左樣ナ小問題デハアリマ
セヌ、現在ハ三十万圓デアルカモ知レナイ、或ハ鐵道公債ガ發行セラレタナラバ七八十
万圓ニ上ルカモ知レナイ、併ナガラソレダケニ止ルモノデハナイ此法律ガ存スル限リ未來
永劫國債ノ利子ニハ所得稅ハ掛カラヌコトニナリマスカラ、非常ナル國家ノ歲入ヲ損ス
ル譯デアリマス、是等ハ卽チ租稅論ノ原則ヨリシテ此國債ノ利子所得稅ヲ免ズルコトノ
不可ナル理由デアリマス、次ニ第二ノ反對理由ト致シマシテ、私ハ現政府ノ財政策
ト根本的ニ意見ヲ異ニシテ居リマスカラ、其〓カラ反對致シマス、現政府ノ財政政策ハ唯
公債ノ値上ト云フコト一〓張リデアリマス、ソレダケヲ以テ財政整理ノ能事終レリト
考ヘテ居ルノデアリマス、抑公債ガ今日ノ如ク下落シタル原因ハ何所ニ存スルカ、此
公債ノ下落シタルノヲ引上ゲンガタメニイロ〓〓ナ人爲ノ手段ヲ取ラントシテ居ッテ、
一ハ五千万圓以上ニ此償還額ヲ殖ヤサント云フヤウナ計畫モナシ、又區々タル小刀細
工ヲ以テ此樣ナ案ヲモ提出スルニ至ッタノデアリマスルガ、公債下落ノ原因ハサウ云フ處
ニアラズ、又サウ云フ方法ヲ以テ公債ノ價格ヲ眞ニ上ゲルト云フコトハ出來ナイノデアリマ
ス、原因ハ如何ナル〓ニアッタカト云フナラバ是マデ政府ガ此公債ニ對シテ正直ニ抽籤
償還ノ途ヲ取ラナカッタノガ大原因デアリマス、政府ハ此三千万幾ラト云フトコロノ資金
ヲ以テ、此公債ノ相場ガ廉イトキニ買ヒ、高イトキニ賣リ、政府自身ガ一種ノ「スベクレー
シヨン」ヲ行ッテ居ッタノデアリマス、ソレガ卽チ此公債ノ價格ヲ段々下落セシメタ所以デア
リマス、故ニ若シ之ヲ五千万圓以上トナシマシテモ此昔カラノ仕來リ昔カラデハナイガ、
此過去ノ仕來リヲ以テ繼續スルト云フヤウナコトデアッタナラバ、如何ニ二千万圓ヲ增加
シテモ何等ノ效ヲ奏スルモノデハナイ、況ヤ區々タル此利子ノ所得稅ヲ免ズル位ヲ以テ此
公債ノ價格ヲ引上ゲルト一云フコトハ到底出來ナイノデアリマス、然ラバ如何ニスレバ此公
債ノ價格ヲ引上ゲルコトガ出來ルカト云フナラバ、勿論公債ノ價格ノ上ボルコトヲ希望ス
ルノハ日本國民一人トシテ異論ノナイトコロデアリマス、如何ニシテ引上ゲルコトガ出來ル
カト云フノガ問題ノ分ルヽ處デアル、吾輩ノ信ズルトコロハ此救治策ハ積極的ノ方法ヲ
執ラナケレバナラヌ、卽チ民力ノ充實ト云フコトヲ圖ラナケレバナラヌ、此日本國ノ信用ヲ
高メルト云フコトヲ根本カラ築キ上ゲナケレバ到底此公債ノ信用ヲ維持スルコトハ出來
ナイノデアリマス(拍手起ル)國債ハ必シモ多キヲ憂ヘマセヌ、若シ國債ノ少キガ其國ノ信
用ガ高イノデアルト云フナラバ世界デ暹羅國ノ外ハアリマセヌ、暹羅國ハ千九百五年ト七
年トニ僅ニ七千万圓程ノ外債ヲ募ッタノミデ大外債ト云フモノハ其他ニハアリマセヌ、併
ナガラ彼ノ暹羅國ノ信用ノ程度如何ト云フコトヲ御考ヘニナレバ分リマス、必シモ國債ハ多
キヲ憂ヘマセヌ、其國債ヲ消化シ得ラレルダケノ國民ノ實力ガアレバソレデ宜イノデアリマ
ス、故ニ國民ノ實力ヲ增進スルト云フ積極的ノ方針カラ考ヘマスナラバ、今玆ニ三千万
圓ノ償還金ヲ五千万圓ニ殖ヤス代リニ其二千万圓ヲ以テ惡稅ノ改廢ニ充テルナラバ、
確カニ民力ハソレニ依ッテ大ニ增進スルコトガ出來ルノデアリマス、區々タル本案ノ如キハ
一時ノ人氣取リデアル、唯之ニ依ッテ一時此法案ガ若シ通過スルナラパ神經過敏ノ株
式會社ハ或ハ相場ガ騰ボルカモ知リマセヌ、併ナガラソレハ一時ノ現象デアリマス、ソレ
ニ依ッテ益スルトコロノモノハ株屋銀行家ノミデアッテ我國民ハ却テ迷惑ヲ感ズルノデアリ
マス(「拍手起ル」又「ノウノ」ト呼フ者アリ)以上ノ理由ニ依ッテ吾輩ハ斷乎トシテ此
法案ニ反對スルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=34
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035・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 野田卯太郞君
〔野田卯太郞君登壇〕
〔「モウヨセ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=35
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036・野田卯太郎
○野田卯太郞君 簡單ニ述ベマス、唯今石橋君カラ泊々ト御議論ガアリマシタガ要用
ノ處ダケ私ハ述ベテ、諸君ノ贊成ヲ求メマス、ト云フモノハ一體其御承知デアラウガ、我國
ニ於テハ公債ト云フモノヲ人民ガ貴バナイ風ガアル、何ダカ借金證文ヲ買フヤウニアッテ
吾輩ガ少々金ヲ持ッテ居ッテモ新シク出來ルトコロノ會社ハ大抵失敗スルケレドモ、其株
券ガ何ダカ斯ウ心持ガ宜イト云フ風ガアル、論ヨリ證據、此度ビ戰爭ニ付テ渡シタトコ
ロノ一億五千万圓餘ノ公債ハ人民ガ保ツヂヤラウト思ッテ居ッタ所ガ、案外ニモ賣ッテシ
マッタ、ソレヲ賣ッテドウスルカト云フコトヲ見ルト、吾〓ハ親シク民間ニ居ッテ見レバデス、
多クハ地所ヲ買フ、ソレデ戰爭前マデハ私ノ地方ナドデハ二百圓位ノ價ノ地所ガ戰後
卽チ公債ヲ撒布セラレタ後五百圓ニナッタ、此地所ノ上ガルノモ宜イデス、此地所ノ價ガ
上ガルノモ宜イガ、此地所ガ三百圓デアッテモ五百圓デアッテモ、ヤハリ取レルシコシカ取
レナイ、米デモ麥デモサウダ是モ餘リ價格ヲ上グ過ギレバ偏頗ニ其災ガ行ク、ト云フモノ
ハ小作米ガ上ガル、此事ハ吾〓ハ好マナイトコロデアル、ソレデ此公債ト云フモノガ無ケレ
バ宜イケレドモ、我國ニハ殘念ナコトニハ諸君ト共ニ協賛シタ戰時ノ公債、其他鐵道ノ
公債澤山ナ公債ガ出來タ、出來タ以上ハ之ヲ能ク按排ヲセネバ、唯今ノ申スヤウニ地
所ガ上リ過ギテ小作米ガ上ガッテ小民ニ災ヲ及ボス、ソレデ經濟ノコトニ種々樣々ノ變化ヲ
來シテ面白クナイ現象ヲ來タス、ソレデ現內閣ガ標榜シテ居ル公債云々是ニ悉ク贊成モ
シマセヌガ、第一其公債ヲマア優遇スルガ宜カラウト思フ、公債優遇ハ卽チ運用デス之
ニ掛ケルベキ所得稅モ免除シテ之ヲ優過シテ一般ノ國民ニ此公債ヲ持タセル習慣ヲ作
ルガ諸君ト共ニ宜カラウト思フ、又此公債ノタメニ商賣上ニモ其偏頗ナ現象ガアル、私
國ニ歸ッテ-此度往ッテ來マシタガ、地方ニハ公債ガ餘リナイデス、地方ニ公債ガナイノ
ミナラズ地方ニハ持ツ氣ガナイ(笑聲起ル)マア一時聞イテ呉レ(「謹聽々々」ト呼フ者アリ
拍手起ル)ソレデ諸君ガ常ニ論ゼラルヽトコロノ貯金獎勵是モ關係ガアル貯金奬勵ノ如
キハ政府ハ何ヲスル何ンデ奬勵スル、或者ハ彼ヲ以テ公債ヲ買ハンガタメニ政府ハ民
間ノ金ヲ取上グルト云フマデ此處デ論ジタ諸君モアラウト思フ、彼ノ貯金ト云フヤウナモ
ノハ勿論惡イコトデナイカラサセテモ宜シイ、宜シイガ、彼ハ預金ト云フモノニナッテ卽チ其
預金政略ニナッテ財政ヲ亂ス、一ノ伏魔殿ト云ッテモ宜カラウト思フ、ソレデ貯金ノ代リニ
此公債ヲ其預金デ人民ニ買ハシタナラバ是ハナカ〓〓ヨイモノニナル話ダ(笑聲起ル)ト
云フモノハ地方ノ銀行ノ如キハ預ヶ金ヲスル片端カラ其土地ノヤツガ又借ルト云フ譯ニ
ナッテ居ル、一方デ預ケ一方デ借ッテ居ル、ソレデ公債ヲ持ッテ往ッテ銀行カラ金ヲ借ッテ、
此銀行ハ日本銀行ニ割引スルト地方ノ利ガモチット下ガル、サウ云フコトハ地方デハ一
向行ハレテ居ラヌ、ソコデ中央ノ經濟界ハ發達シテ居ルケレドモ地方ハ發達シテ居ラヌ、
諸君ト共ニ此富ノ平均ガ偏頗ニナルト云フコトヲ憂ヘテ居ル、然ラバデス、此公債ヲ地
方ノ人民ニ能ク持タセテサウシテ貯金スル金ガアレバ公債ヲ買ウト云フコトヲ此議員ガ皆
チット煽動シタナラバ人民モチットハ公債ヲ持ツダラウト思フ、ソレハ嘘ヂヤナイ眞面目デ
ス(「能ク分ッテ居ル議聽々々」ト呼フ)斯ノ如キコトヲシテ而シテ地方ノ經濟ヲ圓滑ナラシ
メ、而シテ始メテ事業ト云フモノガ廣ク日本ニ行ハレルヂヤラウト思フ、ソレデアルノニ其
公債ノ唯七十万圓カ幾ラカヲ免除スルガ惜シイトカ、ソンナモノハ金持ノ所得稅ダト
云フガドコニソンナ大キナ金持ガアルカ、吾〓ハ總テノモノガ此公債ヲ尊重シテ而シテ此
公債ヲ運用スルコトニナラナケレバ此公債ト云フモノハ決シテ價ヲ持タヌ(拍手起ル)ソ
コデ吾〓此案ニ贊成シタ所以デス、而シテ(「敢テ拓殖會社ノ理事ニナッタ御禮ヂヤ
アルマイ」ト呼フ者アリ)ソレデ(笑聲起ル)唯此七十万圓ノ稅ヲ免ズルカラ是ハ金持ヲ
保護スルノヂヤノ何ンヂヤト云フケレドモ、尤モ此公債ヲ買フ者ハ五十圓買ウテモ金持ハ
金持ダ、迚モ金ヲ持タヌ者ガ公債ヲ買フコトハ出來ヌガ(笑聲起ル)此公債ト云フモノヲ
廣ク人民ニ持タセル方法ヲ立テナケレバナラヌ、此案ニ吾ミガ贊成スルコトハ公債優遇
國民ヲシテ公債ト云フモノハ買フベキモノデアル確實ナルモノデアルト云フコトヲ知ラセサ
ヘスレバ此公債ハ上ガル、又經濟界モ圓滑ニナルト云フ譯デス、ドウカ諸君滿場一致ヲ
以テ御贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=36
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037・恒松隆慶
○恆松隆慶君 討論終結
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=37
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038・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 討論終結ノ動議ガ出タ以上ハ先決問題デゴザイマスカ
ラ討論終結ニハ既ニ定規ノ贊成ガアルト認メマスカラ、討論終結ノ動議ニ付テ採
決ヲ致シマス討論終結ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=38
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039・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 多數、討論ハ終結致シマシタ、本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否
ヤト云フコトニ付テ採決致シマス、其採決ノ方法ニ付テハ既ニ三十七名ノ連署ヲ以テ
衆議院規則第二十七條ニ依リ記名投票ヲ以テ採決アランコトヲ請フト云フ請求ガア
リマスカラ、卽チ之ヲ採用致シマシテ、記名投票ヲ以テ採決致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=39
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040・長谷場純孝
○讀長(長谷場純孝君) 御注意ニ申シテ置キマス、第二讀會ヲ開クベシト云フ諸君
ハ白票ヲ御携ヘニナルヤウ、開クベカラズト云フ諸君ハ靑票ヲ御携ヘニナルヤウ御注意ヲ
致シマス-閉鎖
〔書記氏名ヲ〓呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=40
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041・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 投票漏ハアリマセヌカ-開鎖-開匣
(書記官投票ノ數ヲ計算ス)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=41
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042・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 投票ノ結果ヲ書記官長ヨリ御報告致シマス
〔寺田書記官朗讀〕
投票總數二百十三
可トスル者百五十九
否トスル者五十四
〔拍手起ル〕
〔參照〕
本會ノ二讀會ヲ開クヘシトスル者
根正松下軍治君松元剛吉田井哲
嘉鈴木摠兵衞君小野崎耕夫柳
中未來的時間 5000元垣內藤正君君 君君君君井上角五郞君山田珠郞一野
一川越進君稻茂登三君君君君君君君村省
村〓周君部保次上敏
雙大番付道 (2005年)田虎次郞君松星磯一田藏藏藏夫吉一穰夫吾延藏夫君君君君君君君君君君君君
牧野平五郞君桜井上手尾寅三神有岡西鳩石飯米井木內奧白
恆忠君富田業大第一覽
Camillahere景之君小橋
藤田八傳君戶本田谷山田田國泰金和平精
方法式大管原
山本市川崎大電気 2005年邊修君昌君 若 若 君崎邦輔君
川三中澤岡田佐助君
熊之村舜次郞君松之輔君
中倉万次郞君森泰君內邊熊一君
信五郞君泰君宮田翁助君
招牌醫師吉 佐藤虎次郞君
小澤愛次太郞君村根小武阪古藤金君
日向輝武君條氏玉)山田信藏君飯田新右衞門君
宮古君君名海洋食本正君小林庄一郎君
八木進寶上海由佳井善四郞君築山和一君
川龍古森大福井濱東橋岡精君君春田祐〓君峯太郞君
澤早田賴摸一鈴辰次郞君吉大〓久次君
君を受けたい から國造君手塚木正次君田野虎之助君
急行保健康井由之君花村覺三郞君佐々木文一君
水品平右衞門君川雲先平君君二郞君大生女大大学太郞君
柏原左源太君村立上橋嘉太郞君金助君
阿部政太郞君戶第二章中醫學雜誌助君松本田 橋藤晴君西澤定吉君
三浦盛德君郞君恆橋杉長高齋田六一登丹尾賴馬君
駒田小次郞君上出長次郞君隆次定君君松田吉三郞君
伊東祐賢君木下義之君慶君麥河上英君
向坂弘君中沼信一郞君串本康三君田宰三一郎君
德田讓甫君田桃作君河野郁太郞君神前修三君
中村啓次郞君岩山本晴之君大久保弁太郞君橋本久太郞君
原岡永江君夏井保四郞君高山長幸君細川義昌君
町田旦龍君太田〓藏君古賀庸藏君藏內治郎作君
古野孫太郞君本壽人君此 所野田卯太郞君
浦覺一君高松熊田源治君松田營養費 RAPICA有田源一郞君
高三田露君森新君坂元山岡國吉君
義雄君柚木慶二君奧田榮之進君肥後幸盛君
阪高武原篤行君元明治東武君大繩久雄君
大阪府立井坂阪本稻村辰次郞君
新田書
本案ノ二讀會ヲ開クヘカラストスル者
竹犬養毅君鈴木久次郞君齋藤宇一郞君關直彥君
田文吉君關矢橘太郎君長場龍太郞君佐藤貞雄君
藤代市之輔君津久居彥七君高柳 豊太郞君藤井善助君
荒平谷島松尾君石〓岡文吉君佐賀大明書店舗
井庫君桂吉君添田飛雄太郞君個室
使用方法 7000元東作君三半介君勝人君
民俗電車局面積極上的時敏君藏島福原田井三二大的 印象貫郎 君廣
惟吉郞良郭郞郞君君君君君君信水正年
爲之助君梅原櫻井金守細小高河箕尾屋野寺木野浦
野春五君卜部喜太關口要求此次謙吉嚴助郎吉年中君君君君君君君
行雄君小川平鈴木寅嚴助郎吉
宮國廚丹治郡君坂本金彌君橋本太吉君稜
暢夫君佐々木安五郞君山口熊野君才賀藤
村松恆一郞君加瀨禧逸君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=42
-
043・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ二讀會ヲ開クベシト云フコトニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=43
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044・大岡育造
○大岡育造君 直チニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ可決セラレンコトヲ希望致シマ
ス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=44
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045・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直チ二一一讀會ヲ開クト云フニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=45
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046・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナシト認メマスカラ、直チニ二讀會ヲ開キ、議案全
部ヲ議題ニ供シマス
國債ノ利子所得稅免除ニ關スル法律案第二讀會
(「異議ナシ」「委員長報告通リ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=46
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047・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 大岡君ノ動議三讀會ヲ省略シ二讀會ニ於テ委員長ノ報
告通リニ御異議アリマセヌカ
國債ノ利子所得稅免除ニ關スル法律案確定議
異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=47
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048・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、其通リニ決シマス、本案ハ是ニ
テ確定発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=48
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049・島田三郎
○島田三郞君 此場合ニ國民ノ權利ニ關シテ緊急ナル質問ヲ呈シタイト思ヒマス、幸
ニ總理大臣ガ列席シテ居ラレルニ付テ此場合ニ御許シヲ受ケタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=49
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050・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程ノ第十四、第十五ヲ終ルマデ御待ニナッテハ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=50
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051・島田三郎
○島田三郞君 總理大臣ノ列席ノ時ヲ便利ト致シマスガ、若シ御許シニナラナケレバ
〔「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=51
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052・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 先ヅ日程第十四ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=52
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053・島田三郎
○島田三郞君 唯今ノ請求ハドウナリマシタ、御許シニナラナケレバナラヌト云フコトヲハッ
キリ極リマセヌデハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=53
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054・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程ノ第十四、第十五ヲ終ルマデハ許シマセヌー-日程第
十四、登錄國債ノ擔保充用ニ關スル法律案第一讀會ノ續ヲ開キマス
第十四登錄國債擔保充用ニ關スル法律案第一讀會ノ續(委員長
(政府提出)報告
(「異議ナシ」又ハ「委員長報告通リ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=54
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055・大岡育造
○大岡育造君 直チニ二讀會ヲ開キ、讀會ヲ省略シテ可決確定セラレンコトヲ希望致
シマス委員長報告通リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=55
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056・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直チニ二讀會ヲ開クト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=56
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057・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ其通リ決シマス、直チニ二讀會
ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=57
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058・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 大岡君ノ動議三讀會ヲ省略シ二讀會ニ於テ確定ト云フコ
トニ御異議アリマセヌカ
登錄國債ノ擔保充用ニ關スル法律案確定議
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=58
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059・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマス、本案ハ是ニテ確定致シマシタ、日
程第十五、政府ニ對スル保證金其他ノ擔保ニ供シタル國債ノ買入銷却ニ關スル法律
案第一讀會ノ續ヲ議題ト致シマス、少數意見者ノ報告ガアリマスカラ、卽チ少數意見
者ノ報告ヲ許シマス-守屋此助君
政府ニ對スル保證金其他ノ擔保ニ
第十五供シタル國債ノ買入レ銷却ニ關ス第一讀會ノ續(委員長)
/報〓
ル法律案(政府提出)
〔守屋此助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=59
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060・守屋此助
○守屋此助君 諸君、唯今ノ日程ニナッテ居リマスル議案ニ付キマシテ委員會ニ於ケ
ル少數者ノ意見ヲ御報告ニ及ビマスル、少數者ノ意見卽チ此案ニ對シテ反對ナリト云フ
ノデアリマス、デ其理由ガ四ツ程ゴザイマス、之ヲ茲デ簡單ニ要旨ヲ取摘ンテ御報告ニ及
ビマス、抑〓擔保物ト云フモノヲバ其擔保價格ヲ以テ之ヲ買入レルト云フヤウナコトヲス
ルト云フノハ一ツノ法律上ノ取除法デアル、抑〓擔保ト云フモノハ法律上ノ一定ノ定義
ガアル、何ト致スカト云フト擔保物ハ其擔保物ヲ處分スルトキノ時價ニ依ッテ之ヲ處分
シ之ヲ公賣ノ法ニ處スルトー云フ事柄ガ普通ノ原則デアル、其普通ノ原則ニ取除ヲ設ク
ルト云フノニハ特別ナル理由ガナケレバナラナイ、然ルトコロガ政府ガ此度此法律ノ普通
ノ原則ニ反スル取除法ヲ設ケルト云フ事柄ノ理由トシテハ何ヲ持ッテ來テ居ラレルカト調
ベテ見マスレバ、公債保護ト云フ事柄ヲスルガタメニ此法ヲ以テ國債聲價ノ維持增進ヲ
圖ルト、斯ウ云フノデ、國債ノ價ヲ維持シ竝ニ增進スル此目的ノタメニ普通ノ法律ノ原
則ヲ破ッテ特別ノ法律ヲ拵ヘルト斯ウ云フノデアル然ルトコロガ吾ミモ此公債ヲ保護シ
公債ヲ整理シ斯ヤウナ事柄ヲスルト云フ事柄ノ熱心ノ程度ニ於テハ、政府ト何ゾ擇ム
トコロハナイ、否ナ以上ノ吾ミハ〓心ヲ有ッテ居ル、此法律ヲ拵ヘテハ何ゾ料ラン目的ト
方法ト相齟齬スル、此法律ヲ拵ヘルガタメニ却テ國債ノ聲價ヲ維持增進スルコトガ出
來ナイト云フコトヲ考ヘルノデゴザイマス、、其理由ノ一ト致シテ申シマスルノニハ日本帝國
ノ公債ハ、今ヤ二十二億程アル、今後五億バカリノ公債ガ出ルトスルト二十七八億ニ
ナル、是ダケノ公債ヲ有ッテ居ル此國ガ、僅々タル政府ガ保證ニ取ッタ中ノ公賣處分ニスル
ト云フモノハ擔保物ガ百ノ中一カ二シカナイノデアル、極ク此僅少ナ場合ニ之ヲ市場
ニ出シテ-ー之ガ市場ニ出テ公賣ニ出タトキニソレガタメニ日本帝國ノ公債ガ下落スル
ガ如キ、日本帝國ノ經濟ハ薄弱ナモノニアラズ、又之ヲ公賣ニ處セズシテ政府ガ買上ゲ
ルト云フ事柄ニスル、ソレガタメニ日本帝國ノ公債ノ相場ガ高クナルト云フ、斯ウヤウナ
神經過敏ノ帝國ノ經濟ニアラズ、斯ウ云フ事柄ガ一ノ理由デゴザイマス、ソレカラモウ一
ツノ理由ハ此公債ヲハ今日或ハ五朱利ノ公債ハ今日ハ九十圓シテ居ル、今日ヨリ半年
前ハ八十圓、七十八圓マデモ下ッテ居ッタ、五未ノ公債ガ七十八圓ニモ下ッタトキニハ二
十二圓ノ開キガアッタ、二十二圓ノ開キガアッテ、今日ハ凡ツ十圓程ノ開キガゴザイマス、
之ヲ納メテ公債ヲ保證金ニ納メテ置ク、擔保ニ納メテ置ク、納メタモノガ行政官ノ手都
合ニ依ッテ-都合ニ依ッテ之ヲ公賣ニスルコトガ出來タリ、若クハ價格ヲ以テ買上ゲル
ト云フコトガ出來ルト云フコトニナッテ居レバ、此間ニ此擔保提供者ハ奇利ヲ博スルト云フ
事柄ノタメニイロ〓〓ノ小策ヲ弄シ、此相場ノ開キノ利益ヲスルト云フ事柄ノタメニ脫稅
ノ方法ヲ講ズルト云フ、爰ニ忌ムベキ手段ヲ講ズルト云フ虞ガアル、左樣ナ事柄ヲス
ル擔保提供者ニ餘地ヲ與ヘナイデモ宜シイ、ツマリ百圓ノ公債證書ヲ額面百圓ノ擔保
ヲ取ッテ、此公債ガ百五圓若クバ百十圓トナッタトキニドウスル、政府ハ百五圓ヲ取ルコト
ガ出來ナイノハ分明ナ理窟デアル、ソレナラバ九十五圓、九十圓、八十五圓、七十五
圓ト下ガッタトキニハ其時價ヲ以テ擔保品ヲ處分シテ本人ニ向ッテイツマデモ追徴シテ行
ク是ガ事理ノ分明ナルモノデアルカラ、左樣ナ場合ニ納人ヲシテイロノヽノ奇利ヲ博セ
シムルト云フ、不正ノ利ヲ得セシムルト云フ事柄マデモシテ公債ノ相場ヲ、一般ノ公債ヲ
維持スルト云フ小策ヲ弄スルニハ及バズ、此小策ノタメニ決シテ日本帝國ノ公債ノ價
ガ保チモシナケレバ公債ノ値段ガ上リモシナイ、是ガ第二ノ理由、第三ノ理由ハ此法
律ノ文面ヲ見マスト、政府ニ對スル保證金其他ノ擔保トシテ提供シタ國債ヲ公賣スル
場合ニ於テ、國債證券買入償却法ニ依ッテ國債ノ最近ノ金額ヲ以テ之ヲ買入レ償
却ヲスルコトヲ得ル、斯ウ云フニ得ルデアルカラ、其場合ニ依ッテ行政官ノ手心デ右ニデ
モ左ニデモ出來ル如クニ書イテアル理由書ニ絕對ニ買上ゲルヤウナ理由トナッテ居リマス
ガ、理由書ト法律ノ明文トノ方ハ違フ、理由書ハ絕對ニ買上ゲル必要ガアルト讀メル
デス、讀メマスガ併シ法律ハ理由書ガ確定スルノデナイ、法律ノ明文ニ規定スルノデアリ
マスカラ、此文章ニ依ルト云フト甲ナル人ニ向ッテハ行政官ガ九十四、若クハ八十五圓
シテ居ルモノヲ百圓トシテ買取ルコトモ出來ル、乙ナル人ニ向ッテハ公賣處分ヲスル時分
ニ八十圓ナラ八十圓、九十圓ナラ九十圓ノ時價デ公賣處分ヲスル其取捨採擇ノ權
利ハ一ニ行政官ノ手心ニアル、是ガ法律ノ明文デアル、斯樣ナ手心ヲスルト行政官ト
擔保物提供者トノ間ニ請託ノ行ハレル〓ガアル風ヲ帝國議會ガ行政官ヲ監督シテ行
ク上ニ於テ、法律ニ於テ行政官ガ不都合ヲナセバ爲シ得ルト云フ事柄ヲ法律ニ拵ヘテ
置クヨリハ不都合ヲ爲スニ由ナシト云フ法律ヲ拵ヘテ置ク方ガ、諸君ト吾〓ガ行政官ヲ
監督スル上ニ於テ樂デアル、斯ウ云フ理窟ガ第三ノ理由デス、サウスルト是ニハ斯ウ云フ
コトヲ言ッタ人ガアル左樣ナ行政官ヲ信ジナイト云フ事柄ハ宜クナイカラ、之ヲ信ジテソ
レカラ任スガ宜カラウト、行政官ニ任スナドガ宣ケレバ帝國議會ハ監督權ト云フモノヲナ
クシテモ宜カラウ、又タッタ此間日本製糖會社ノ株劵ヲ擔保ニ取ル事柄ヲ自ノ前デシテ
居ル、行政官デハナイカ、其行政官ガ今日不法ヲ行フト云フ事柄ヲ目ノ前ニ見テ居ル今
日、無論此人ニ向ッテハ百圓九十圓若クハ八十圓デ買取リ、百五圓若クハ百十圓デ
乙ニ向ッテ公賣スルト云フ、此權利ヲ授ケテ置クト云フコトハ行政監督ノ權ヲ有ッテ居ル
帝國議會ノ體面ニ關スルコトデアル是ガ大體ノ理由デゴザイマス、以上取摘ンデ申
上ゲマスレバ公債價格ヲ維持シ、信用ヲ保ツ上ニ於テハ少數意見者モ亦無論熱心ナル
贊成者デアリマスガ、帝國ノ公債ト云フモノハ斯ノ如キ小策ヲマデ弄セナケレバ價格ヲ保
ツコトガ出來ナイ、相場ヲ上ゲルコトガ出來ナイト云フヤウニ、帝國ノ一般ノ經濟界
ハ危イ弱キ神經家ノ如キモノト見ルト云フ事柄ヲ、世界萬國ニ廣〓シテサウシテ日
本ノ公債ヲ維持シヤウト云フノハ是ハ餘リ小策ニ過ギタ愚策デアル、古人ガ言ウタ卽チ
苗ノ長ズスヲ助ケ苗ヲ拔クト云フ事柄ガアル、此公債價格ノ維持增進ノ方法ハ却テ公債
ヲ價格ヲ落ス所以ニナルトモ上ゲルヤウニハナラズ、帝國ノ公債ノ信用ヲ世界ニ廣メルデ
アラウ、如何ニモ廣メルノハ廣メルノデアラウガ、惡ルイノヲ廣メル、斯ウ云フ事ノ結果ニ
ナル、是ニハ反對スベシ、クレ〓〓モ諸君ノ御了解ヲ願ヲテ置カナケレバナラヌノハ吾〓
ハ何處マデモ公債整理ニハ反對致シマセヌ、公債ノ價格ヲ維持スルニ付テ熱心ナ程度ニ
於テハ一步ダモ讓リマセヌ、ヨリ以上斯樣ナ愚案ヲ排スルト云フコトハ現政府竝ニ之ヲ
贊成スル諸君ヨリ、ヨリ以上公債ノ價格ヲ維持スルコトノ熱心者デアルト云フコトヲ御
了解アランコトヲ祈リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=60
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061・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 採決致シマス、二讀會ヲ開クベシト云フ方ニ同意ノ諸君ノ
起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=61
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062・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 多數一讀會ヲ開クベシト云フコトニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=62
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063・大岡育造
○大岡育造君 直チニ二讀會ヲ開キ、二讀會ニ於テ三讀會ヲ省略シ、委員長報告通
リ可決アランコトヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=63
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064・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 大岡育造君ノ動議、直チニ二讀會ヲ開クト云フコトニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=64
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065・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ其通リ決シマス、直チニ二讀會
ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス、而シテ三讀會ヲ省略シ····
政府ニ對スル保證金其ノ他ノ擔保ニ供シタル國債ノ買入第二讀會
銷却ニ關スル法律案
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=65
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066・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 三讀會ヲ省略シテ委員會ノ報告通リ御異議アリマセヌカ
政府ニ對スル保證金其ノ他ノ擔保ニ供シタル國債ノ買入銷確定識
却ニ關スル法律案
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=66
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067・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君). 御異議ガナイト認メマスカラ其通り決シマス、本案ハ是ニテ
確定致シマシタ、此場合御諮リヲ致シマス、生絲檢査所擴張ニ關スル建議案、特別委
員會ヲ委員長佐藤虎次郞君ヨリ本會ノ時間內ニ開キタイト云フ請求ガアリマス、許可
シテ差支アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=67
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068・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ其通リ決シマス-島田君ノ
先刻ノ御發議ハ議事日程以外ノ事ニ付テ發言ヲスルト云フコトデアレバ議事日程ノ變
更ヲ求メルノガ順序ニナリマセウ、此場合ニ若シ議事日程變更ヲ御求メニナルナラバ卒ザ知
ラズ、ソレデゴザイマセヌケレバ又時機ヲ以テ御發言ニナッテハドウデゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=68
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069・島田三郎
○島田三郞君 斯ウ云フコトヲ議長ニ御照會ヲ請求致ス、國民ノ權利竝ニ帝國議會
ノ體面ニ關シテ、本員ハ猶豫スベカラザル事柄ヲ此會ニ報告シテ、サウシテ國務大臣ノ
答ヲ得タイノガ精神デアリマス、國務大臣ガ幸ヒ列席シテ居ラレタカラ、本員ハ取敢ズ議
長ニ先刻ノ發議ヲシタ、サウスルト此案ノ決議ニナラザル以前ニ國務大臣ガ席ヲ去ラレ
ケ、玆デ本員ハ國務大臣ニ此席ニ出テ戴クコトノ趣意ヲ演壇デ述ベマシテ、國務大臣ニ
出テ戴クコトナラバ決議ヲシテサウシテ議長カラ照會シテ戴キタイ、其事柄ハ本院ノ體面
ニ關係スルコトデアル、ソレデモ構ハヌト云フ御方ガアルナラバ、此機會ニ於テハ本員ハ致
方ガナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=69
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070・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ソレハ議事日程ノ變更ヲ御求メニナルノガ議事上ノ順序デ
アラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=70
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071・島田三郎
○島田三郞君 サウスルト變更ヲ求メルノ理由ヲ其處デ述ベマス
〔島田三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=71
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072・島田三郎
○島田三郞君 諸君、本員ハ先以テ諸君ニ本員ガ事ヲ好ムニアラザルモ、何分此儘ニ
過行カレヌ事實ヲ本員ハ目擊シタノデアリマス、其事實ノ大要ヲ御報告シテ斯ノ如キコト
モ尙衆議院ハ御忍ヒニナルカト云フ趣旨ヲ述ペテ、サウシテ總理大臣ニ出テ戴クコトノ趣
意ヲ貫徹シタイノデ、之ヲ申スノデス(「謹聽々々」ト呼フ者アリ)ソレ故ニ其意味ヲ是カラ
御話スル、御話ヲセヌト云フト諸君ノ御同意ヲ得難イト思ヒマスカラ、事ヲ好マヌト云フ
コトダケヲ御斷リヲシテ置キマス、本員ハ此事ヲ實ハ此演壇カラ諸君ニ御諮リヲスルヤウ
ナ機會ヲ作リタイト思ッタノデアリマスガ(「グカラ止メタラ宜イ」ト呼フ者アリ)ソレガ非常ニ
必要ニナッテ來タノデアリマス、昨日三稅調査委員會ノ節ニ(「ヤリ給ヘヤリ給ヘ」ト呼フ者
アリ)總理大臣ガ出席ヲシテ居ラレタニ付テ、總理大臣ニ斯樣々ケナ事實ガアルガ如何
ニ御考ニナルカ、本員ハ御面談ニシタイノデアルカラ特ニ委員長ノ許可ヲ得テ委員會デ
此問答ヲスルト申シタノハ外ノコトデナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=72
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073・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ドウプ簡單ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=73
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074・島田三郎
○島田三郞君 地方ノ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=74
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075・元田肇
○元田肇君 發言ニ反對デハアリマセヌガ、議事日程ヲ變更スルナラ、シテ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=75
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076・島田三郎
○島田三郞君 其變更スルノハ必ズ諸君ニ變更スベキ問題デアルカ、ソレトモ變更ス
ルヤウナ必要ガナイカト云フ御判斷ヲ是非共請ハナケレバナラヌト云フタメニ言ハナケレ
バ變更スル理由ガ出テ來ナイ譯デアリマス(「謹聽々々」ト呼フ者アリ)是ガクレ〓〓モ
本員ノ望ム所以デアリマス、是ハ黨派問題デハナイノデ變更ノ趣意ヲ述ベマスカラ御聽
キ下サラヌ間ハ囂々トシテ居レバ何時マデモ本員ハ此處ニ居リマス、諸君モ御止メニナ
ルマデ何時マデモ私ハ此處ニ居ルノデアリマスカラ(「三時間デモ五時間デモ居レ」ト呼フ者
アリ)守衞ノ力ヲ以テ退ケナイ以上ハ本員ハ此議論ヲ止メナイノデアリマスカラ、議長ヨリ
外ニ本員ヲ退ケシムルモノハナイ(議場騒然)諸君ノ囂々ハ徒ラニ諸君自カラ侮辱セラレル
モノト思ヒマス、地方ノ陳情委員ガ東京へ參リマシタトキニ警察モ無益ノ干渉ヲシテ、総
代ハ五人ヨリ外ニ出スナト云フコトヲ地方委員ニ迫シテ本員ハ斷然迫ッタト申シマスル、斯ウ云
ウヤウナ事實ガアッタニ付テ、一方ナラヌ警保局長ガ議員ノ兩名卽チ細野君、木村君ノ
此兩代議士ニ成ルタケ斯樣ナルコトハ穩便ニシタイカラ、能ク地方ノ其關係ノ選舉區ノ
方ニ注意ヲシテ欲シイト云フコトデアッタニ付テ、細野代議士ガ其事務所ニ至ッテ能ク事
情ノ貫徹スルヤウニ政府ヲ煩ハサヌヤウニト云フ(「新聞テ能ク見テ居リマスカラ分ッテ居
ル」ト呼フ者アリ)コトヲ申シタノデアリマスガ、其間ニ確ニ警察ガ左樣ナコトヲヤッタト云フ
事實ヲ目擊シタノデアリマス、ソレ故ニ本員ガ總理大臣ニ向ッテ、總理大臣ハ左樣ナルコ
トヲナサルヽ御考デアルカ、ソレトモ是ハ間違デアルカト二六フタラバ間違デアルト云フコトヲ
明言セラレタノデアリマスカラ、本員ハ左樣ニ理解シテ居ッタ、所ガ圖ラザリキ衆議院ノ
受付ニ一ツノ騒擾ガ起リマシテ議長ハ五人ヨリ外ニイケナイト云フコトデ警察官ガ之ヲ
制シテ居リマシタカラ、本員ハ議長ニ其事ヲ聞イタラ曾テ左樣ナコトハナイト云フ、ソコデ
議長ハ總代ノ總體ニ會フト云フコトデ二十名ノ總代ヲ議長ガ引イテ話ニナッタノヲ本員
ハ見テ居リマス、何故ニ衆議院ノ管轄內マデモ警察官ガ斯樣ナル不法ナルコトヲヤッテ
(ヒヤ〓〓)議長ノ命デアルト云ウテ斯樣ナコトヲシテ此議會ヲ辱メルノデアルカト云フコ
トヲ本員ハ思ウ、議長ノ管轄內ニ斯ノ如キコトガアッタ、ソレ故ニ他ニモアルデアラウト本員
ハ思ウテ居ッタラ、果シテアッタノデアリマス、昨日此議席ニ列シテ居ラルヽトコロノ大竹
代議士、細野代議士竝ニ其他ノ村松代議士ノ三人ガ御出ニナッテ、途中デ又一ツノ
僅カ三四人間ニ問答ガアッタト云フノデ、サウ云フコトヲスルト却テ人情ニ逆フカラ構ハズ
政友會ノ事務所ニ往クト云フ、陳情委員ナラ御出ニナッタラ宣カラウト云ッタラバ忽チ
斯ノ如キコトヲ云フモノハ拘束セヨト云フコトデ、遂ニ大竹代議士ヲ此警部巡查共ガ引
イテ往カントシタノデアリマス、是ニ於テ大竹代議士ハ別ニ抵抗シマセヌガ、誰ノ命ヲ受ケテ
左樣ナルコトヲヤルト云ッタラバ上官ノ命ヲ受ケテヤルト云フ、是ハ巡査デアルト云フノデ
其命令ヲ下シタ警部ニアルカト云ッタラバ左樣ナ命令ヲ下シタコトハナイト云フ、ソコ
デ大竹代議士デアルト云フコトヲ發見シテ彼等ガ手ヲ止メタノデアリマスガ、斯樣ニ人權
ヲ蹂躙シテ議會ノ門前マデ斯樣ナコトヲナスノヲ議長ノ命ナリト云ウテ議員ノ意ニアラザ
ルコトヲナス警部ハ確ニ議會ヲ辱メタモノデアラウト思フ、然ルニ斯ノ如キ
平和ノ人民が平和ノ行動ヲナスノヲ拘束スルト云フノハ確カニ國民ノ自由ヲ檢束スルノ
デアッテ、內閣ノ意思ニアラザルコトハ本員ハ委員會ニ於テ左樣ニ確メタノデアリマスカ
ラ、總理大臣ノ出席ヲ求メテ此事ノ明白ナルコトヲ求メンガタメニ議事日程ヲ變更シ
テ此事ヲ議題トシテ、更ニ議長ヨリ總理大臣ニ此處ヘ出テ貫ッテ斯ノ如キ不法ノ續々
行ハレテ、諸君ノ肩ノ上ニマデ左樣ナコトノ起ラヌヤウニシタイガタメニ此緊急動議ヲ提
出スルノデアリマス(拍手起ル)終リニ臨ンデ是モ亦議院ノ體面ニ妨ゲナイ國民ノ自由
ヲ妨ゲナイト云フコトデアルナラバ、諸君ハ緊急動議ヲ御取消ニナッテモ差支ナイガ、斯ノ
如キ事柄ヲ議題トシテ此事實ヲ併セテ諸君ニ訴ヘ、サウシテ國民ニ之ヲ知ラシメテ明治二
十三年以來二十年目ノ日本帝國、又斯ノ如キ、不體裁アッテ、サウシテ議會ハ之ヲ
問ハズニ打過ギルコトハ本員深ク議會ノタメニ之ヲ嘆ズルガ故ニ、斯ノ如キコトヲ總理
大臣ニ向ウテ此事ノ嘘ナランコトヲ本員ハ心ニ望ンデ、其タメニ緊急動議ヲ提出致シ
マス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=76
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077・鳩山和夫
○鳩山和夫君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=77
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078・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 鳩山和夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=78
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079・塚田啓太郎
○塚田啓太郞君 議長、議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=79
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080・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 鳩山君ニ發言ヲ許シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=80
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081・鳩山和夫
○鳩山和夫君 島田君ニ質問スルノデスガ、議事日程ヲ變更シタル後ニ議スベキ問題
ヲ筋道ナシニ極ク簡單ニ一ツ言フテ戴キタイ、ソレデナイト議事日程變更ニ贊成スルヤ否
ヤガ分ラナイ筋道ナシニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=81
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082・島田三郎
○島田三郞君 議事日程變更ハ唯今ノコトヲ總理大臣ニ直接ニ問ヒタイガタメニ、總
理大臣ヲ議長カラ御照會ヲ請ウテ之ヲ議題トシタイ、ソレガタメニ日程變更ヲ希望シタ
ノデス、出席ヲ拒マルヽヤ否ヤト云フコトヲ確メテ、拒マレタラソレヨリ又第第ノ手段ヲ講
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=82
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083・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 島田君ニ御尋ヲ致シマスガ餘リ長ウゴザイマシタカラシテ御
分リニクイ御方ガ多イヤウニ伺ハレマス、ソレデ其要領ハ此方カラ御尋致シマス、其要領
ハ昨日織物業者ガ衆議院ノ門前ニ來タコトニ付テ、總理大臣ノ出席ヲ請ウテサウシテ
質問シタイコトガアル、ソレガタメニ緊急動議卽チ議事日程ノ變更ヲシテ、此場合ニ總理
大臣ノ出席ヲ請ヒタイト云フ、此通リデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=83
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084・島田三郎
○島田三郞君 サウデス、先ヅ決議ヲシナケレバ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=84
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085・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 免ニ角唯今ノ通リノ要旨テアリマスカラ議事日程ノ變更ト
云フコトニハ卽チ定規ノ賛成者ガアルヤウニ見受ケマス
〔「贊成々々」「反對」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=85
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086・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 贊成者ガアル以上ハ採決ヲ致シマス、島田君ノ日程變更ノ
動議ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=86
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087・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、日程第十六、第十七ハ同一ノ提出者ナルニ依リ一
括シテ議題トナスニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=87
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088・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ日程第十六、第十七ハ一括シテ
議題ニ供シマス、獸畜市場法案外一件ノ第一讀曾ヲ開キ議案ノ朗讀ハ省略致シマス、
提出者森田俊左久君
第十六獸畜市場法案(森田俊左久君外二名提出)第一讀會
第十七獸疫豫防法中改正法律案(森田俊左久君外第一讀會
二名提出)
獸畜市場法案
獸畜市場法
第一條本法ニ於テ獸畜ト稱スルハ牛馬羊豚ヲ謂ヒ市場ト稱スルハ牛馬羊
豚ヲ蒐集シテ賣買取引スル場所ヲ謂フ
第二條市場ヲ分テ常設市場定期市場不定期市場及臨時市場ノ四種トス
第三條市場ヲ設立セムトスル者ハ行政官廳ノ免許ヲ受クヘシ
第四條行政官廳ハ常設市場ニ限リ主務大臣ノ認可ヲ得テ地區ヲ定メ市場
ノ免許ヲ與フルコトヲ得
前項地區內ニ於テ販賣ニ供スル目的ヲ以テ獸畜ヲ地區外ヨリ搬入シ又ハ
蒐集シテ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ス
第五條常設市場ノ免許期間ハ一一十箇年トス但シ繼續ノ出願ヲ爲スコトヲ
得
第六條市場ニ於ケル賣買取引ノ方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條行政官廳ハ市場ノ行爲命令ニ違反シ衞生上危害ヲ生シ又ハ公益ヲ
害シ若ハ公衆ノ安寧ニ妨害アリト認ムルトキハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一市場設立免許ノ取消
二市場ノ業務停止
三市場賣買物件一部ノ停止又ハ禁止
第八條行政官廳ハ官吏ヲシテ市場ニ臨檢セシメ建物其ノ他ノ物件ヲ檢査
セシムルコトヲ得
前項ノ外行政官廳ハ市場ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコ
トヲ得
第九條本法第三條、第四條第二項ニ違反シタル者ハ二百圓以上五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
附則
第十條本法ハ明治四十二年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十一條本法施行前ニ認可ヲ得タル市場ハ本法施行ノ日ヨリ三箇年間ハ
本法ニ依リ免許セラレタルモノト看做ス但シ既設ノ市場ハ命令ノ定ムル
期日迄ニ行政官廳ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス此ノ期日ヲ經ルモ仍認可ヲ
申請セサルトキハ免許ノ效力ヲ失フ
獸疫豫防法中改正法律案
獸疫豫防法中左ノ通改正ス
第十條第一項第四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
五乳汁發賣ヲ禁止シタルトキ評價額三分ノ二
同條第二項ヲ左ノ如ク改ム
手當金額ハ第一ノ場合ニ於テハ一頭六十圓、第二ノ場合ニ於テハ一頭二
百圓、第三ノ場合ニ於テハ一頭五百圓、第四ノ場合ニ於テハ總計五十圓
第五ノ場合ニ於テハ一頭三十圓ヲ超過スルコトヲ得ス
第十五條ノ二〓韓及西比利亞地方ヲ發シ又ハ通過シタル畜牛ノ輸入ヲ禁
ス但シ屠殺ノ目的ヲ以テ檢疫委員ノ指示シタル屠殺場ニ於テ屠殺シタル
モノハ此ノ限ニ在ラス
〔森田俊左久君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=88
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089・森田俊左久
○森田俊左久君 私ハ唯〓御報告ニナリマシタ案ノ提出者ノ一人デゴザイマス、極ク簡
單ニ提出ノ理由ヲ說明致シマス、我國ニイロ〓〓ナ市場卽チ「イチバ」ガ澤山ゴザイマス
んが、此市場ニ付キマシテハ未ダ完全ナル法律ガ無イノデゴザイマス、爲ニ去ル第十八議
會以來度〓本案ガ問題トナリマシテ或ハ可決トナリ、或ハ中止トナッテ懸案ニナッテ居ルコト
デゴザイマシテ、諸君ハ既ニ此案ノ內容ハ御存ジデアラウト考ヘルノデアリマス、サリナガラ
既往提出ニナッテ居ル案ニ付キマシテハイロ〓〓ナ市場ガゴザイマシテ「ブールス」ナドヲ一
緒ニシテ一ノ法律デ取締ルト云フヤウナ案デゴザイマシタガタメニ、或ル論者ハ此澤山ノ市場
ヲ一ノ法律ヲ以テ取締ルト云フコトハ多少事情ガ異ッテ居ルガタメニ宜シクナイト云フ反
對ノ御議論モアッタノデアリマスタメニ、今日マデ成案ニナラヌノデアリマスガ、就中此獸畜
ニ關スル市場ハ多數アル市場ヨリ一層弊害ガ多イノデゴザイマス、ソレデ取分ケ此獸畜
ニ關シテ其事ヲ緊急ト致シマシタガタメニ既往ノ案ヨリ取除ケマシテ此案ヲ制定シ、此弊
害ノ最モ多イ市場ノ取締ヲシ、一方牛疫ノ豫防ヲ致サウト云フ案デゴザイマスル宜シク
御審議ノ上御贊成アランコトヲ願ヒマス、其次ニ第十七ノ日程ニナッテ居リマスル獸疫
豫防法中改正法律案、是ハ去ル明治二十九年ノ制定デゴザイマス、此獸疫ノ豫防法
ト申シマスルモノハ御存ジノ通リニ獸疫が發生シタ場合ニ、此豫防ヲ致シマスルノニハ必ズ
此畜類ノ撲殺ヲ以テ此豫防ノ實ヲ舉ゲルコトニナッテ居ルノデアリマス此撲殺ヲ致シマス
ル獸畜ニ對シテハ國家ハ相當ノ賠償ヲ致サンケレバナラヌノデアル、其賠償價格卽チ法
律ノ面デハ手當金トナッテ居リマスガ、實ハ賠償デゴザイマス、其賠償價格ガ其當時ト今
日トハ物價ノ相違ガゴザイマスガタメニ、今日デハ非常ナル當業者ガ困難ヲ致シテ居ル
ノデゴザイマス、此〓ニ付テハ當業者ハ或ル機會或ル方法ヲ以テ其筋ニ嘆願シテ
居ルノデアリマスケレドモ、今以テ営業者ノ請願ヲ滿足ニ目的ヲ達スルコトニナラヌノデ
ゴザイマス、タメニ此手當金ノ增額ヲスルガタメニ法律ノ改正ヲ要スルコトデゴザイマス、
尙獸疫ノ豫防ハ最モ此畜產界ニ於キマシテ必要ナコトデゴザイマス、ケレドモ此獸疫ヲ全
ク豫防致シマスルノニハ〓韓若クハ西比利亞地方カラ參リマスルトコロノ牛畜ヲ禁止
シマセヌケレバ、此獸疫ノ撲滅ヲ計ルコトガ出來ナイノデゴザイマス、タメニ十五條ノ次ニ
一項ヲ加ヘタ譯テゴザイマス、幸ニシテ本案ガ委員會ニ上リマシタナレバ十分ニ說明ヲ
致ス考デゴザイマスル、デ宜シク御審議ノ上御贊成アランコトヲ願ヒマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=89
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090・恒松隆慶
○恆松隆慶君 十六、十七ノ問題ハ一括シテ議題トナシ、議長指名ノ九名ノ委員ニ
付託セラレンコトヲ希望致シマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=90
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091・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議卽チ十六、十七ノ日程ノ法律案ハ議長指名
ノ九名ノ特別委員ニ併セテ付託スルト云フニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=91
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092・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、其通リ決シマス-日程第
十八、競馬法案ハ提出者ヨリ延期ノ申出ガアリマス、許可シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=92
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093・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、日程十八ハ延期スルコトニ致
シマスー-日程第十九、第二十ハ同一委員ニ付託シ且ツ關聯セル案デゴザイマスカラ
一括シテ議題トナスエ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=93
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094・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、委員長ノ報告ヲ許シマス、委員
長立川雲平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=94
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095・立川雲平
○立川雲平君 是ハ本日ハ延期ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=95
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096・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 第十九、二十共ニデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=96
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097・立川雲平
○立川雲平君 二題共デス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=97
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098・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 第十九、二十ハ委員長ヨリ延期ノ請求ガゴザイマス、御異
議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=98
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099・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ日程第十九、二十ハ延期スル
コトニ致シマス、日程第二十一關稅定率法輸入稅表中改正法律案ノ第一讀會ヲ
開キ、議案ノ朗讀ハ省、略致シマス、提出者森本駿君而シテモウ一ツ御諮リヲ致シ
マイ、提出者ヨリ日程第二十二燐寸輸出交付金下附ニ關スル建議案ヲ同時ニ說明
致シタイト云フコトデゴザイマスガ、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
第二十一關稅定率法輸入稅表中改正法律案(森本第一讀會
駿君外一名提出)
第二十二燐寸輸出交付金下付ニ關スル建議案(森本
駿君外一名提出)
關稅定率法輸入稅表中改正法律案
關稅定率法輸入稅表中左ノ通改正ス
一一〇黃麟及赤燐每斤〇、一六
一二六靑化剝篤亞斯及靑化曹達無稅
一二六ノ二格魯兒酸剝篤亞斯每百斤二、二六
一二七重格魯謨酸剝篤亞斯同二、五三
一七四パラレ井ンワックス
一融解〓攝氏五十度未滿ノモノ〇、五四
二其ノ他同同
一、三〇
三七二亞鉛
二板
乙其ノ他
イ二號板同同〇、八三
ロ其ノ他二、二七
附則
本法ハ明治四十二年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
燐寸輸出交付金下付ニ關スル建議案
燐寸ハ我カ重要輸出品ノ一ニシテ現ニ千萬圓內外ノ輸出アリ內地需用品ト
併セテ每年千二三百萬圓ノ製產高ニ及フト雖其ノ重要輸出先タル印度ノ如
キハ外品ノ競爭激甚ニシテ我カ輸出高年ヲ逐フテ減退スルノミナラス支那
ニ至リテハ外品ノ競爭ニ加フルニ支那各地ノ燐寸製造業頻ニ勃興スルアル
ヲ以テス若シ我カ燐寸業ヲ現狀ノ儘ニ放棄シ置カハ幾年ナラスシテ我カ燐
寸輸出ノ跡ヲ絕ツニ至ルノ虞アリ此ノ如キハ國家經濟ノ發達ヲ阻碍スルヤ
論ヲ俟タス依リテ政府ハ每年五百萬圓以上ノ燐寸ヲ輸出スル者ニ對シ輸出
高千分ノ五十ニ相當スル輸出交付金ヲ下付シ以テ我カ產業ノ發展ニ資シ且
從來發達シ來レル此ノ新事業ノ基礎ヲ確實ナラシメムコトヲ望ム
右建議ス
〔森本駿君登壇〕
〔「拍手起ル」「簡單々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=99
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100・森本駿
○森本駿君 諸君、極ク簡單ニ諸君ノ希望通リニヤリマス、此關稅定率法輸入稅表中
改正法律案ハ數種ノ稅目ニ付テ現行ハ無稅ニナッテ居ル品物デアリマス、其無稅ニナッテ
居ル品物ヲ有稅ニシヤウ、是ハ詰リ內地ノ補助ノ上ニ於テ關聯ヲスルノデアリマシテ、卽チ燐
寸輸出交付金下付ニ關スル建議案ト聯帶致シマスカラ一括シテ說明ヲ述ベタイ希望ヲ
述ベタ次第デアリマスガ、便宜ノタメニ燐寸輸出交付金下付ニ關スル建議案ノ方カラ
說明ヲ致シマス、而シテ輸入稅表中改正法律案ニ論及シテ諸君ノ御贊成ヲ請ヒタイト
思ヒマスル、從來我燐寸ノ輸出業ト云フモノハ一時餘程盛ンニナッテ居リマシタノデアリ
マスケレドモ、今日ニ於テハ輸出先キデ外國ノ競爭若クハ輸出先キニ於テ燐寸ノ製造場
ガ出來ルト云フヤウナ自國品ノ競爭ト併セテ內地ノ燐寸ガ輸出スル時分ニ非常ナ打擊
ヲ受ケテ遂ニ一時千万圓以上ノ輸出ヲシテ居ッタトコロノ燐寸ガ、四十一年度ノ如キハ
八百四十万圓ト云フヤウナ金額ニ減退シタト云フヤウナ事實ヲ以テ居リマスノデス、
是ハ我國ノ新事業トシテ折角千万圓以上ノ輸出ヲ見タモノヲ八百万圓臺マデ減
退セシメタト云フコトハ如何ニモ、遺憾ニ感ズルノデアルカラシテ、將來燐寸ヲ輸出スル
場合ニ於テ五百万圓以上ノ輸出ヲ取扱ッタモノニ對シテハ、輸出額ノ千分ノ五十ノ
交付金ヲ下付シテ、我國產ノ發達ニ資スルヤウニスル方針ヲ政府ニ於テ執ラレンコトヲ
希望スルト云フ建議案ヲ茲ニ提出致シタノデアリマス、卽チ五百万圓ト云フ輪出ヲシタ
モノニ千分ノ五十ノ交付金ヲ下付スルト云フト、二十五万圓ノ交付金ヲ下付スルト云
ふな
フコトニナル、現在ニ於テ煙草ヲ輸出スル場合ニ於テモ、交付金ヲ下付スルカラ、我國
產ノ發達スルタメニ是ダケノ奬勵ヲスルト云フ方針ヲ執ラレタイト云フ建議ヲ玆ニ提出シ
マシタ、而シテ現在ニ於テ燐寸ノ輸出額ハ唯今申スガ如クニ一時千万圓以上モ輸出シ
タノデアルケレドモ、四十一年ニハ八百万圓臺ニ下ッテ居ルヤウナ金額デアルト云フコトヲ
御承知ニナッテタラバ、此交付金ヲ五百万圓以上ヲ輸出スルモノニ對シテ千分ノ五十ヲ
ヤルト云フコトハ敢テ多額ノ交付金トモ見ナイ、之ガタメニ千万圓以上ノ輸出ガ出來ル
ト云フコトニナレバ我國產ノ發達ニ大ニ資スルコトヽ信ジマスル、而シテ斯ノ如キ交付金
ヲ下付スルト云フガタメニ要スル財源ハドウカト云フト、今日ノ財政ノ上ニ於テ以テ縱令
二十五万圓ニ致シマシテモ、財源ニ困難ヲ感ズルノデアラウト云フコトヲ信ジマシテ、是位
於テ關稅定率法輸入稅表中改正案ヲ提出致シマシテ、燐寸ノ原料ニ供セラレテ居
ルトコロノ品物ガ今日ハ無稅ノ取扱ニナッテ居ルノデアリマスルケレドモ、元來是等ノ品
物ハ總テ有稅品デアッタノデアリマス、併ナガラ燐寸ノ保護ノ爲メニ之ヲ無稅品トシ
テ-原料ハ無稅トシテ燐寸ノ發達ヲ助ケル方針デ關稅定率法ヲ取ッタノガ卽チ現行
法デアル、然ラバ原料ガ無稅デアルナラバ旣ニ其保護ガ至ッテ居ルノデハナイカト云フコトデ
アリマスルケレドモ、之ヲ無稅ニシテ以來ノ實驗ニ依ッテ見マスルト云フト、原料ハ無稅ニナツ
タガ、其無稅ノ原料ヲ使用スルトコロノモノハ必シモ內地人ノミニ限ラズシテ、或ハ他國人
ガ株主トナッテ居ルトコロノ燐寸製造會社ノ利益ニ歸スルト云フガ如キ實迹ヲ現ハシテ居
ルガ現狀デアリマスルカラシテ是ハ外國條約ニ於テ協定率ガ現存シテ居ル、協定率ガアル
ニモ拘ラズ、關稅定率法ハ、之ヲ無稅ニ致シタト云フノデアルカラシテ、其原料品ニ對シ
テハ協定率ノ額ダケヲ課スルト云フ方針ヲ執ッテ、其結果トシテ得ルトコロノ金額ガ約五
六十万圓ノ金額ニナラウト思ヒマス、五六十万圓ノ金額ニナルノデアルカラシテ、此關稅
定率法ガ行ハレタ結果トシテ、此國庫ノ收入スル金額ヲ財源トシテ五百万圓以上ノ輸
出ヲスル燐寸ノ輸出ニ交付金ヲヤッテ國產ノ發達ヲ助ケルト云フ方針ヲ執ラルヽヤウニシ
タイト云フ建議ヲ、政府ヲシテ之ヲ實行シタイト思フノデス、卽チ關稅定率法輸入稅表中
改正法律案ヲ提出シテ以テ法律ニ於テ協定率ノ金額ダケノ稅ヲ取ルコトニシテ、之ヲ財
源トシテ國產ノ發達ニ交付金ヲ與ヘルト云フ方針ヲ執ラレタイト云フ建議ヲ提出シテ、
政府ハ此目的ヲ四十三年度ノ豫算ニ於テ實行セラルヽヤウニシタイト思フノデアルカラ、
此關稅定率法輸入表中改正法案ヲ提出シ、他ノ一面ニ於テハ燐寸ノ交付金下付ニ
關スル建議案ヲ提出シタ所以デアリマスカラシテ、何卒御審査ヲ經テ兩案共御贊同下
サルコトヲ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=100
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101・恒松隆慶
○恆松隆慶君 森本君提出ノ二案ハ同一委員議長指名十八名ニ付託セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=101
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102・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松隆慶君ノ動議、卽チ日程第二十一、第一一十二ノ議
案ハ同一委員議長指名ノ十八名ニ併セテ付託スルト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=102
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103・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、其通リ決シマス-日程第
二十三、商科大學設立ニ關スル建議案ヲ議題トシ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマスー
提出者根本正君
第二十三商科大學設立ニ關スル建議案(根本正君外五名提出)
商科大學設立ニ關スル建議案
本院ハ第二十三囘及第二十四囘議會ニ於テ國家大發展ノ機運ニ際シ商業界
ノ牛耳ヲ執ルヘキ有爲ノ人物ヲ陶冶スルハ焦眉ノ急務ナルヲ以テ政府ハ商
業ニ關シ必要ナル各種ノ科目ニ付最高等ノ〓育機關ヲ設置スヘキコトヲ建
議シタリ然ルニ今ニ於テ之カ設備ヲ爲ササルハ本院ノ深ク遺憾トスルトコ
ロナリ政府ハ宜ク建議ノ趣旨ヲ採納シ此ノ急務ニ應スヘシ
右建議ス
〔根本正君登壇〕
(「簡單ケ々」ト呼ヒ拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=103
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104・根本正
○根本正君 紳士諸君、商科大學設立ニ關スル建議案ノ理由ヲ簡單ニ述ベマス、本
件ニ付キマシテハ議會ノ開會ノ始メニ於キマシテ建議案ニスルヤウナ手數ヲ省クタメニ質
問ヲ致シマシタ、故ニ細カシイコトハ申上ゲマセヌ、然ルニ政府ハ單ニ調査中デアルト云
フ答デアッタ譯デアリマス、其時ノ質問中ニモ若モ精細ナル答辯ガナカッタナラバ已ムヲ得ズ
建議ニスルヤウニナルノデアラウト云フコトモ附加ヘテ置キマシタガ、此建議ハ卽チ第二十
三囘及第二十四囘ノ兩議會ニ於キマシテ滿場一致ヲ以テ可決シマシタ重大ナル問
題デアリマス、尙此度ノ建議案モ各派ノ方ミガ署名シテ提出シタ譯デアリマス、此實業
ノ進步ト云フモノハ實ニ驚クベキ進步デアリマス、然ルニ之ニ關スル最高ノ學校ト云フモ
ノハナク誠ニ遲々トシテヤハリ二十年、三十年前ノ有樣ニナッテ居リマス、故ニ此學校ハ是
非我商業界卽チ實業界發展ノタメニ最モ必要デアルト云フコトハ、皆サンモ御承知ノ
通リデアリマス、玆ニ其事實ヲ簡單ニ申上ゲタイト思フ、明治元年ヨリ昨年マデ四十一
箇年間ノ外國貿易ト云フモノヲ調査シテ見マスルト云フト、其金額ト云フモノハ合計ニ於
テ百二億七千七百万圓ニナッテ居リマス、ソレデ此輸出ノ高ハ幾ラデアルカト云ヘバ四十
七億九千百万圓デアル、又輸入ノ高ハ五十四億八千六百万圓デアリマス、故ニ差引
シマスルト云フト六億九千五百万圓ト云フモノハ輸入超過ニナッテ卽チ殆ド七億万圓
ト云フ大金ガ輸入超過ニナッテ、卽チ正貨ト云フモノヲ我日本帝國ヨリ外國ニ出シタ譯
ニナッテ居リマス、斯ノ如キ有樣デアリマスガ故ニ、此西十一箇年ノ間ニドウ云フ風ニ我日本
帝國ノ外國貿易ガナッテ居ルカト云フコトヲ調査シテ見マスト、先ヅ此年限ヲ三ツニ分ケ
ル-此年限ヲ三ツニ分ケテ調ベマスト、商科大學ヲ起シ實業社會ノ牛耳ヲ執ル人ヲ
作ルノ必要ナルコトガ分ルノデアル、會社ガ續々失敗シ、諸君ガ御迷惑ヲ受クルコトガ
アル、之ヲ防グニモ此商科大學ガ必要ナノデアル、此貿易ガ最初ノ十四年間ガ六億八
千二百万圓、次ノ十四年間ガ十八億一一千三百万圓、最後ノ十三箇年ガ之ガ大キナ
金額ニナッテ七十七億七千百万圓トナルノデアリマス、而シテ最初ノ十四年間ニ於テハ
七千七百六十四万圓ノ輸入超過、次ノ十四年ガ七千二百四十二万ノ輸出超過デ、
最初ノ十四年ニ七千餘万圓ノ輸入超過デアルガ、次ニハ七千餘万圓ノ輪出超過デア
ルカラ、明治元年カラ二十八年間ハ輸出入差引平均シテ居ッテ帝國ガ損シナイノデア
ル、然ルニ後ノ第三期ハ非常ナル輸入超過デ六億九千三百七十七万圓ノ輸入超過
デアル、斯ノ如ク最初ノ十四年間ト後ノ十三箇年間トノ外國貿易ヲ調ベマスルト十倍
ノ進步發展デアル、實業界ニテ之ヲ取扱フ實業家ハヤハリ右ノ明治十五年二十年アタ
リノ〓育ノノ人ガ多クテ之ヲ支配スル人ガ不十分ノ智識ノ人ダカラ其結果ハ押テ知ルベ
キデアル、諸君モ新聞抔デ御承知ノ通リデアル、故ニ我外國貿易ノ發展ノタメ是非共
國家發展上此根本タル商科大學ヲ起サナケレバナラヌノデアル、海軍ガ何故ニ世界ニ名
譽ヲ得ルカ、陸軍ガ何故ニ世界ニ名譽ヲ得ルカ其理由ハ陸海軍ニハ共ニ大學校ガアッテ
今日理想的ノ戰ヲスルコトガ出來タノデアル、實業社會デモドウシテモ知識アル人物ヲ
養成シナケレバナラヌノデ商科大學ヲ起シ、此帝國ノ貿易ノ發展ヲ計ラナケレバナラヌ
ノデアル、旣ニ七億万圓ノ金ハ外へ出テ居ルカラ之ヲ後來ニ戾スニ何ヲシテ其目的ヲ達
スルカト云フト、適材ノ人ヲ拵ヘナケレバナラヌノデアル東北ニ金山ガアリ九州ニ石炭ガ
アッテモ之ヲ支配スル人ヲ得ナケレバ國家ノ用ニナラヌ、橫濱神戶等デ外國人ノ「ブロー
カー」卽チ仲買人、獨逸人ナリ亞米利加人ナリ英吉利ナリ是等ノ者ニ口錢ヲ取ラレテ
居ル、如何ニ大キナ貿易ヲシテモ人ガナイタメニ口錢ヲ外人ニ取ラレテ居ル、此人ヲ得ル
ニハ商科大學ヲ起サナケレバナラヌ、近來英國デモ益〓大學ヲ盛ンニシテ、獨逸デハ商科
大學ガ五ツモアッテ益〓盛ンニナッテ、其國ガ發展シテ居リマス、亞米利加ノ各大學ニモ商科
大學ガアリ、伊太利ニモ佛蘭西ニモアル「ハンガリー」ノヤウナ處ニモ商科大學ガアル我
帝國ニ於テモ之ガ必要デアルト云フコトハ今日ノ輿論デアル然ルニ政府ガ冷淡故出來
ルカ出來ヌカ分ラヌ所カラ、旣ニ今日新聞ニモアルガ、高等商業ノ生徒ガ心配シテ千四
百人ノ者ガ今ニモ一揆ヲ起サウト云フ有樣デアル、之ハ學生ガ惡ルイノデモナイ、校長ガ
惡ルイノデモナイ、校長モ熱心、生徒モ熱心ノ餘リ玆ニ至リタノデアリマス、詰リ政府ガ
輿論ヲ取ラヌカラデアル、政府ガ十分ニ盡力シタナラ校長モ生徒モ親睦シテ國家ノタメ
ニ大ニ發展ヲスルコトニナルノデアルサウスレバ是迄ノ七億万圓ノ輸入超過ト云フコトモ、
後來外國ヘ輸出超過ノコトニナルト、眞ニ國家ノ發展ヲ實視スルニ至ルト思ヒマスカラ、
ドウカ愼重ニ審議サレ帝國ノタメ御贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=104
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105・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ議長指名、九名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=105
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106・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託スルコトニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=106
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107・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ其通リ決シマス、次ハ日程二
十四、戰鬪員以外ノ殉難者遺族及廢疾者救濟ニ關スル建議案、議案ノ朗讀ハ省略
致シマス、提出者的野半介君
第二十四戰鬪員以外ノ殉難者遺族及癈疾者救濟ニ關スル
建議案(的野半介君外五名提出)
戰鬪員以外ノ殉難者遺族及癈疾者救濟ニ關スル建議案
日〓日露ノ二大戰役ニ關シ之ト前後シテ國難ニ殉シタル志士ノ遺族ヲ救濟
シ若ハ廢疾者ニ對シテ相當ノ救濟ヲ爲スヘシ
右建議ス
〔的野半介君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=107
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108・的野半介
○的野半介君 私ハ戰鬪員以外ノ殉難者遺族及癈疾者救濟ニ關スル建議案ヲ提
出致シタ一人デアリマス、簡單ニ其理由ヲ申述ベマス、日〓、日露ノ大戰爭ニ於テ帝
國軍人ガ忠勇義烈ヲ發揮シテ非常ナル功勞ヲ爲シタコトハ炳トシテ爭フベカラザルコトデ
アリマス、此際ニ軍人以外ノ者デ戰爭ヲ助ケテ非常ニ貢獻シタ人ガ不幸ニシテ殪レタケ
レドモ、法規ノナイタメ其始末ガ出來ヌト云フ今日ノ有樣デ遺族デアルトカ、癈疾者デア
ルトカ云フ者ノ狀態ハ實ニ悲慘極マルコトニナッテ居ルノデアリマス、卽チ此支那浪人ト
ナッタ人ノ遺族ノコトニ付テハ是非諸君ニ向ッテ御相談スルノ急務ナルコトヲ感ズルノデ
アリマス一體日清戰爭ノ如キモノニ於テ軍人ガ武勇ヲ發揮シ、勝利ヲ得クニ違ヒナイガ、
日〓戰爭ヲシテ茲ニ至ラシメタ働キハ何デアルカ、明治十年ノ戰爭ニ於テ武器ヲ以テ政
府ト戰ウテ力盡キ矢折レテ、到底武器ヲ以テ抵抗スルコトガ出來ヌ、ソコデ再ビ大部隊ヲ
率イテ政府ト戰フコトヲ避ケテ、民權論ヲ藉ツテ政府ニ突込ンダコトハ諸君ト共ニ御同樣
ニ實際ニヤッタコトデアラウト思ヒマス、其一面ニ於テ確カ十五六年頃カラシテ最早小サ
キ日本ニ在ッテ、日本ノ政治ニ向ッテ彼此言フヨリハ寧ロ廣キ亞細亞ノ改革家トシテ外
ニ向テ働ケト云フコトハ確カニ是ハ不平家仲間ノ有志間ニ於テハ十分之ヲ努メタコトヂ
ヤラウト思ヒマス、サウシテ支那ト云フコトニ目ヲ著ケタカラシテ、迚モ小サイ日本ノ政治
ニ向ッテ彼此言フヨリモ寧ロ廣キ亞細亞ノ改革家トシテ働ケト云フノ上カラシ
テ支那ニ向ッテ手ヲ著ケ、遂ニ學校ヲ起ストカ、或ハ支那ノ當局者ニ向ッテ迫ルトカ、或ハ
新聞ヲ起ストカ云フガ如キ、種々ノ手段ヲ以テ支那ニ向ッテ支那四億ノ人口ガ塗炭苦ニ
陷ッテ居ルノヲ救ッテ以テ世界平和ノ-人道平和ノ上ニ資シヤウトシタコトハ諸君ト
共ニ深ク感謝セネバナラヌコトグラウト思ヒマス(「簡單々々」ト呼フ者アリ)私ハ演說ガ
下手デアルカラシテ······(「謹聽ケ々」ト呼フ者アリ)ソレカラ明治十七年位カラ、初メテ
支那ニ東亞學館ト云フモノヲ起スニ付テハ熊本ノ宗像政君ヤ或ハ末廣重恭トカ、其邊
ノ人ガ支那ニ向ッテ東亞學館ト云フモノヲ起シタコトガアルソレカラ續イテ平岡浩太郞ガ
上海ニ向シテ浪人倶樂部ヲ拵ヘタコトガアル續イテ荒尾精ノ如キ貿易〓究所ト云フモ
ヲ拵ヘタコトガアル是等ノ人ガ支那ニ向ッテ非常ニ働イテ支那ノ地理人情總テノコトニ
通ズルヤウニマデ至ラシメテ、サウシテ明治政府ニ於テハ恐クハ戰爭ノ用意ハナカッタラ
ウ、戰爭ヲ爲サシムルニ至ラシメタ者ハ恐クハ支那浪人デアッタラウト思ヒマス、サウシ
テ支那浪人ガ盛ンニ戰爭ノ議ヲ唱ヘテ殊ニ金玉均ガ二十七年三月ニ殺サレタ砌
ハモウ支那ニ向ッテノコトヽ云フモノハ到底此儘デハイケナイカラシテ金玉均ニ對スルノ
一義トシテモドウシテモ支那ト云フモノハ頑冥不靈デアルカラ、叩折シテシマッテ後ニ更ニ
支那ヲ救フト云フ途ヲ講ズルノ外仕方ガナイト云フコトデ、以上カラシテ支那問題ト云
フモノヲバ盛ンニ唱ヘテ遂ニ當時ノ內閣、伊藤總理ナドト云フ人ハ最モ非戰論者デアッタ
ニ拘ハラズ、先ヅ一番ニ東學黨ノ起ルト同時ニ浪人仲間デモッテ支那ニ向ヒ、朝鮮ニ
向ヒ、世話シタト云フコトハ事實デアッタラウト思フ、ソレカラ支那戰爭ト云フモノハアノ
通リノ始末ニナッテシマッテ、サウシテ支那戰爭ノ砌ニ於テ非常ニ盛ンニ働イタ人間ノ如
キト云フモノハ恐クハ犬死ニナッテ居ル石川伍一、山崎羔三郎、藤崎三郞、鐘崎三
郞ノ如キ盛ンニ働イタ人間ハ大抵即潰サレテシマッテカラ、是ハ法規ヲ以テ其遺族ヲ救
フコトガ出來ナイト云フ狀態デアル、潰サレタ儘ニナッテ居ル、是ハ諸君ノ力ヲ以テ諸君
ト共ニ之ヲ救フノ道ヲ講ズルヨリ外仕方ガナイト思フ、ソレカラ日露戰爭ニ於テモ朔北
沍寒ノ野ニ走リ込ンデカラシテ盛ンニ軍隊ヲ背面側ヨリシテ助ケタト云フコトハ、滿洲軍
ヲ率井テ居ル人ハ之ヲ事實ニ認メタト云フコトハ諸君ノ記憶セラルヽトコロデアラウト思
フ、斯ル人ノ遺族ニ於テハ現在ドウデアルカ、實ニ憐レムベキ狀態ニナッテ居ルカラシテ、
之ヲ以テ諸君ト共ニ法規ヲ拵ヘルカ相當ノ途ヲ拵ヘルコトガ、私ハ今日ニ於テ支那浪
人ノ側カラ見テモ必要ト思フカラ諸君ニ向ッテ御賴ミスル者デアル、私ハ話ヲ十分盡スコ
イガ出來ヌカラ、此邊デ之ヲ恆松君ニ御願申シテ(ヒヤ〓〓)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=108
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109・恒松隆慶
○恆松隆慶君 賴マレマシタカラ、本案ハ九名ノ委員ニ付託ニナランコトヲ願ヒマス、
提出者モ滿足デゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=109
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110・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議、本建議案ハ議長指名ノ委員九名ニ付託
ト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=110
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111・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第二
十五、韓國橫貫鐵道敷設ニ關スル建議案ヲ議題トナシ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、
提出者金尾稜嚴君
第二十五韓國橫貫鐵道敷設ニ關スル建議案(金尾稜嚴君外六名
提出)
韓國橫貫鐵道敷設ニ關スル建議案
韓國橫貫鐵道中京城若ハ平壤ヨリ元山ニ達スル鐵道ノ敷設ハ戰後經營上特
ニ緊急ナリト認ム政府ハ之カ規畫ヲ建テ速ニ案ヲ具シ帝國議會ニ提出セラ
レムコトヲ望ム
右建議ス
〔金尾稜嚴君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=111
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112・金尾稜嚴
○金尾稜嚴君 本案提出ノ理由ヲ極メテ簡單ニ述ベマス、韓國ノ我日本帝國ノ保護
權ニ歸シマシテ以來、統監府設置以來旣ニ五箇年ヲ經過シテ居リマス、而シテ其功績
ノ微々タル者ハ諸種ノ原因モゴザイマセウガ、一ニ韓國ニ於ケル交通機關ノ具備シテ居
ナイト云フコトガ最モ大ナル原因デアラウト考ヘマス、諸君御承知ノ如ク韓國ハ道路ノ設
備ハ不行屆デアリマスルシ、鐵道ハ漸ク釜山ヨリ京城ヲ經テ義州ニ達シマスルトコロノ京
釜鐵道ト、京義鐵道トノ二線路、他ニ京城ヨリ仁川ニ岐レテ居リマスル枝線、又ハ三
浪津ヨリ木浦ニ岐レテ居リマスル枝線、尙今日工事中ノモノガ鎭南浦、平壤間ノ鐵道
デアリマス、韓國ノ西海岸卽チ支那ニ對スル一帶ノ方面ニ於キマシテハ、先ヅ不完全ナ
ガラモ唯今申上ゲマスダケノ鐵道ハ出來テ居リマスルガ、韓國ノ東海岸卽チ我母國ノ北
陸、山陰ニ對シマスル地方ニ於キマシテハマダ一ノ鐵道線路モアリマセヌノミナラズ、此
韓國ノ西海岸ニ沿ヒマスル一帶ノ地方ト東海岸ニ沿ッテ居リマスル一帶ノ地方ノ間ニ
鐵道ノ連絡ガ取レテ居リマセヌガ故ニ、今日ノ韓國ハ全ク半身不隨ノ有樣ニナッテ居
リマス、ソレ故近來多ク我日本帝國ノ同胞ガ入込ミマシテモ交通ノ機關ガ不完全デゴ
ザイマスカラ富源ノ開發スベキモノハ澤山アリマシテモ、之ヲ開發スルコトガ出來ナイ、多
クノ人ハ入込ミマシテモ商業モ之ガタメニ活氣ヲ帶ビナイ、約ルトコロ其原因ヲ申シマ
スルト全ク交通機關ノ缺ケテ居ルト云フコトニ最モ大ナル淵源ヲ有ッテ居ルデアラウト
考ヘマスル、此京城若クハ平壤ヲ經テ元山ニ達シマスル橫貫鐵道ハ韓國ノ經營戰後ノ
經營中最モ緊急中ノ緊急ナルコトデアリマシテ、戰時デ申シマスルト既ニ京城ト元山ノ
間ハ殆ド土地ノ收用モ出來テ居リマシテ、兩端ヨリ既ニ工事ニ著手シテ居リマシタ、媾
和條約ガ今五六箇月モ遲カッタデアリマセウナラバ、今日ハ既ニアノ間ニ鐵道ガ出來テ居
ルニ違ヒナイ、ソレ故ニ軍事上ノ必要ト申シマスルコトニ付テハ今更改メテ申上ゲルマデモ
ナイ、又政治上カラ申シマスルト今日韓國ニハ種々ノ暴徒ガ起リマシテ僅カナ警察隊ヲ
以テ之ヲ鎭撫シマスノデ、從ッテ鎭メレバ從ッテ起ル、斯ウ云フ有樣、基ク處ハ何デゴザイマ
セウカ是又ヤハリ交通機關ノ缺ケテ居ルト云フトコロカラ起ルノデゴザイマセウ、貿易上ノ
〓ニ於キマシテハ我母國タル日本帝國ノ北陸山陰ノ地方ト、韓國東海岸ニハ卽チ日本
海橫斷ノ航路モ是非早ク開カナケレバナリマセヌ、是ガ開ケルト同時ニ韓國ノ東海岸ト
西海岸ヲ連結シマスル唯今本案ヲ提出致シテ居リマストコロノ鐵道ハ最モ必要デアリマ
ス、サウシテ此鐵道ハ或ハ京城ヲ經テ義州ニ向ヒマスカ、平壤ヲ經テ鎭南浦ニ臨ミ、又
ハ義州ニ向ヒマスカ、南滿洲ト我日本帝國ノ山陰北陸トノ聯絡ガ取レルト云フ最モ大
切ナ線路デアリマス、ソレ故ニ段々是マデ政府ヘイロ〓〓迫リマシテ、又政府ニ於テモ既
ニ十分其必要ト云フコトヲ認メラレテ居リマスガ、尙イツマデモ捗取リマセヌ故ニ一昨年デ
ゴザイマシタカ、鐵道會社ヲ起シテ政府ノ補給ヲ受ケテ許可ヲ得ルト云フコトニナッテ朝
野有力ノ人ガ餘程贊成ニナッテ居リマス、伊藤統監ナドモ政府ガドウアッテモ出來ナイト
云フコトナラ私設鐵道デモ許シタラ宜カラウト云フ意見デアッタヤウニ聞イテ居リマス、然
ルニ其後陸軍大臣ガ朝野ヲ視察セラレマシタ其結果、私設鐵道ハ許可シナイト云フコトニ
ナッタト云フコトヲ傳聞キマシテ、遂ニ鐵道會社ノ出願ハ今日マデ其儘ニナッテ居リマス、
過日政府ニ質問シテ見マスト十分其必要ト云フコトヲ認メテ今取調中デアル、斯ウ云フ
答デアリマス、イツマデモ取調中々々ケト云フコトデ政府自ラ進ンデヤルコトモシマセヌ、或
ハ鐵道會社ノ出願ヲモ許可致シマセヌサウ云フ有樣ニナルト韓國ノ經營ハ何レノ時ヲ
待ッテ其目的ヲ達スルデゴザイマセウカ、要スルニ必要ハ必要デアルガ詰リ金ノ問題デア
ル、金ガナイカラ仕方ガナイト云ウテ居リマスナラ、何モ此儘ニ手ヲ束ネテ見テ居ルヨリ
外ニ仕方ガナイノデゴザイマス、斯ノ如キ鐵道政策ナドハ所謂借金政策ヲ取リマシテモ
一日モ早ク計畫ヲ立テマシテ日露戰爭ノ大主眼タル韓國ノ經營ヲ一日モ速ニ發展ノ
途ヲ付ケテ、目的ヲ達スルト云フコトハ政府モ國民モ力ヲ協セテヤラナケレバナラヌコトヽ
考ヘマス、尙其當時取調ベマシタ物貨ノ集散ナドノコトニ付キマシテハ精シク調ベタモノガ
アリマス、之ヲ一々數字ヲ本會ニ於テ讀上ゲ諸君ノ御倦厭ヲ來タスノハ恐縮デアリマス
カライヅレ精シイコトハ委員會ニ於テ御尋ニ對シ御答スルコトニ致シマセウ此案ハ各派
ヨリ御提出者ガアリ、又御贊成モ各派トモ足竝ヲ揃ヘテ御多數ノ御贊成ヲ得タノデスカ
ラ、ドウカ宜シク御審査ノ上成立チマスヤウニ御贊成ノ程ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=112
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113・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託致シタイ···
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=113
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114・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 九名デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=114
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115・恒松隆慶
○恆松隆慶君 九名デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=115
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116・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 唯今恆松君ノ動議、本案ハ議長指名ノ九名ノ委員ニ付
託シタイト云フコトデスガ、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=116
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117・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、其通リ決シマス-日程第
二十六、豫算ノ款項改正ニ關スル建議案ヲ議題トナシ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、
提出者田川大吉郞君
第二十六豫算ノ款項改正ニ關スル建議案(田川大吉郞君提出)
豫算ノ款項改正ニ關スル建議案
我カ歲出豫算編成ノ方針ハ往々費途別ノ處ナキニ非サルモ〓シテ役所別ト
爲レルカ如シ陸海軍省ノ軍事費モ一般ノ樣式ニ據リ左案ノ如ク改定シ司法
省ノ裁判所費ヲモ同シク左案ノ如ク區分セラルルヲ至當ト認ムルヲ以テ政
府ハ來ル四十三年度ノ豫算ヨリ新ニ方針ヲ改メ提出セラレムコトヲ望ム
一陸軍省所管軍事費ヲ左ノ數項ニ區分ス
軍隊費軍衙費學校費工廠費病院費監獄費癈兵院費特務
機關費守備費駐屯費
一海軍省所管事費ヲ左ノ數項ニ區分ス
鎭守府費艦隊費軍衙費學校費工廠費病院費監獄費特務
機繭費滿韓防備費
一司法省所管〓判所費ヲ左ノ數項ニ區分ス
大審院費控訴院費地方裁判所費區裁判所費
右建議ス
(田川大吉郞君登壇)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=117
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118・田川大吉郎
○田川大吉郞君 豫算ノ款項改正ニ關スル建議ヲ致シマシタタメ、其趣意ニ付テ二三
ノコトヲ申上ゲテ置キマス、本來私ノヤウナ新參者ガ此問題ヲ提出致シマシタコトハ少シ
ク大膽ニ過ギタル振舞デアリマス(「如何ニモ其通リ」ト呼フ者アリ)ケレドモ議會ノ歷史
ヲ溯ッテ考ヘマスレバ第十三議會、第十四議會、第十五議會ニハ既ニ本案ト同一趣
意ノ建議案ガ提出サレテ居リマス、卽チ當議會ニ存在セル傳來ノ精神ノ跡ヲ追ウテ此
提案ヲ試ミマスルコトハ新參者ト雖モ憚ルベキデハナイト考ヘマシタ、ソレカラ豫算ノ款
項ト稱シテ居リマスルケレドモ、一般ノ豫算ノ款項ニ對スル改正ヲ希望スルノデハアリマ
ヒヌ、提出ノ建議案ノ內容ニ揭ゲテ置キマシタル通リニ、陸海軍竝ニ司法ノ三省ニ涉ッテ
款項ノ改正ヲ求ムルノデアリマス、ソレニ拘ハラズ一般豫算ニ關スル疑アルガ如キ一般的
ノ文字ヲ用井マシタノハヤハリ前來ノ記錄ニ從ヒ、ソレガ多大ノ差支ナイト信ズル限リ之
ヲ襲用スル方ガ便利デアラウト思ッタノデアリマス、併シ改正ヲ求メマスル所以ノ趣意ハ
當時ノ議會ノ人〓トハ聊異ニシテ居ル〓ガアリマス、以前ノ記錄ニ依ッテ考ヘマスレバ陸
海軍ノ款項ノ編成ガ過大ニ失スル、隨ッテ其款項ニ屬スル-款項以下ノ費用ニ屬ス
ル流用ノ範圍ガ廣キニ過ギルト云フコトガ改正ヲ希望セラルヽ所以ノ最モ大ナル趣意ト
ナッテ居リマス、私モ此〓ニ於テハ感ヲ同ジウスルモノデゴザイマスケレドモ、玆ニ建議ヲ致
シマシタ趣意ハ其〓ヨリモ其點ヲ寧ロ第二ニ置キマシテ、第一ト致シテハ各省ノ款
項ノ規定ノ間ニ統一ヲ缺イテ居ル其不統一ヲ矯メタイタメニ此希望ヲ提出致シマシタ
ノデス、ソレデ本年始メテ豫算ヲ調査致シマスルニ當リ、各款項ノ間各省ニ渉ッテ不統
一ノ嫌ノアル〓ハ幾ツモ發見致シマシテ、其一部分ニ付テハ曩ニ豫算委員會ニ於テ質問
ヲ試ミマシタトコロ政府ニ於テモ其不穩當ナルコトヲ既ニ十分心付テ居ラレ、改正ノ內
意ガ確ニアルト云フコトデゴザイマシタ、私ハ政府ニ此改正ノ內意ノアル意思ニ應ジテ議
會ノ力ヲ以テ更ニ陸海軍ノ豫算ニ對スル改正ヲ迫ッテ、前年カラ此議會ニ存在シテ居
リマシタトコロノ希望ヲ、此機會ニ成達致シタイト希望スルノデアリマス、サウ希フノデアリ
マス、其區別ノ仕方ハ尙提案ノ中ニ精シク例示致シテ置キマシタガ、例ヘバ陸軍省ノ軍
事費一款トシテ七千有餘万圓ノ巨額ヲ要求セラレテ居リマス、其內容ヲ軍隊費、軍衞
費、學校費、工廠費、病院費、監獄費、廢兵院費、特務機關費、守備費、駐屯
費-守備費ハ是ハ臺灣、樺太ニ對シ駐屯費ハ滿洲及朝鮮ニ對シテ滿洲及朝
鮮ニ對スル部分ヲ駐屯費ノ名ノ下ニ一括シテ樺太及臺灣ニ關スル部分ヲ、守備費ノ
名ノ下ニ一括シテ、各〓之ヲ款ニ立テタイ、斯ウ云フノガ私ノ提案ノ希望デアリマス、海
軍省ニ於テモ略〓是ト同樣ナル區分ヲ爰ニ設ケテ居リマス、司法省ニ對シテハ從來裁判
所費トシテ一款ノ下ニ要求セラレテ居ッタモノヲ大審院費、控訴院費、地方裁判所費、
區裁判所費ノ四款ニ分ケテ現ハシタイ、此司法省ノ分ヲ四款ニ分ケマスルコトハ從
來ノ建議ト全ク趣旨ヲ同ジクシテ居ル、陸海軍ノ軍事費ヲ今申上ゲマシタ趣旨ニ依ッテ
分チマスルコトハ十三、十四、十五議會ノ建議ノ趣旨トハ少シク趣キヲ異ニシテ居リマ
ス、斯クテ此不統一ヲ矯メタイト申シマスル私ノ趣旨ヲ更ニ明カニ致シマスルタメ數言ヲ加
ヘマスレバ各省ノ豫算ノ編成ノ仕方ハ總テ役所別ニナッテ居リマス、一箇ノ役所ヲ標
準ト致シマシテ一箇ノ役所ノアル處ニハ卽チ一款トシテ經費ノ要求ニナッテ居ル、然ルニ
陸海軍省ニ於キマシテハ今申シマシタ軍事費ト云フ名ガ示シマスル如ク、是ハ費用別ニ
ナッテ居ル、經費ヲ基本ト致シテ其費用ヲ要求セラレルコトニナッテ居ル、豫算ヲ編成ス
ルニ當リマシテ費用別トシテ編成致シマスルカ、或ハ役所別ヲ標準トシテ編成致シマスル
カ、其二ツノ方針ノ利害得失ニ付テハ議論ノアルコトデ私ハ必シモ役所別ヲ最善ノ方
法トシテ認メテ居ル譯デハアリマセヌ、併ナガラ政府ガ旣ニ役所別ヲ標準トシテ他ノ各省ノ
豫算ヲ編成致シテ居リマスル際ニ、陸海軍省ノ如キ最モ多クノ役所ヲ組織シテ居リマストコ
ロノ陸海軍省ガ、獨リ經費別ノ編成方針ヲ採ルト云フコトガ宜シクナイ、一ツノ政府トシ
テ議會ニ向ッテ要求スルニハ必ズ一定ノ標準ナカルベカラズ、若シ役所別ノ編成方針ヲ
政府ノ適當ト信ズル方針ト致シマスナラバ同ジク陸海軍省ニ向シテモ其方針ヲ適用シ
テ編成シテ貰ヒタイ、然ルニ他ノ各省ニ向ッテハ役所別ヲ標準トシテ豫算ヲ編成シツヽ
陸海軍省ニ向ッテハ經費別ヲ標準ト致シテ豫算ヲ編成シマスル、是ガ卽チ大ナル不統一
デアル、此不統一ノ弊ヲ矯メテ諸君ト共ニ議會ノ豫算ニ對スル監査ノ便ヲ計リ又其監
督ヲ嚴正ニシサウシテ以前ノ提案者ガ屢、試試マシタガ如ク豫算ノ區域、豫算ノ組織
ヲ成ルベク簡明ニ致シマシテ、且ツ其實際ノ費用ノ流用區域ヲ幾分カ制限致シタイ、斯
ウ云フコトガ提案ノ目的デゴザイマス、提出ノ理由ノ中ニ編成審査ノ不便少ナシトセズト
云フ文字ヲ用井テ居リマスガ、未ダ豫算ノ編成者デナイ私ガ編成ノ文字ヲ用井マシタコト
ニ向ッテハ、尙一言ノ辯解ヲ加ヘテ置キマス、是ハ政府自身ガ今日ノ豫算ノ編成ニ不便不
自由ヲ感ジテ居リ、之ヲ改良シタイト云フコトノ意思ヲ言明セラレマシタ場合デアル故ニ、
此文字ヲ用井マスルコトモ必シモ不適當デナカラウト信ジテ用井マシタ、卽チ政府モ自
カラ不便ト信ジ、議會モ審査ノ間ニ多大ノ不便ヲ感ジテ居リマスルガ故ニ、編成ト審査
ト兩方ノ不便ヲバ斯ノ如ク款項ノ改正ヲ企ツルコトニ依ッテ匡正ヲ致シタイ、斯ウ希望
致スノデアリマス、尙提出文字ノ幾ラカ圓熟ヲ缺イテ居ル所ガアッテ氣ニナリマスルケレド
モ、是ハ大旨ノ御了解ニハ不足ナシト信ジマスルカラ、敢テ其誤謬ノ〓ヲ訂正致シマセ
ヌ、略以上ノ如キ趣旨デアリマスルガ故ニ、願クハ審査ヲ遂ゲラレテ此案ガ成立致シマ
スルヤウニ、而シテ諸君ト共ニ來ル議會ニ於テハ新ナル方針ニ基イテ、一ノ政府ノ提案
ヲ迎ヘテ、十分ノ審査ヲ圖ルコトガ出來ルヤウニ致シタイト切ニ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=118
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119・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本建議案ハ議長指名、十八名ノ委員ニ付託セシムルコトノ動議ヲ提
出致シマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=119
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120・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議、本建議案ヲ議長指名ノ委員十八名ニ付
託スルコトニ御異議ハゴザリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=120
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121・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナシト認メマスカラ其通リ決シマス、日程第二十
七、外交文書公表ニ關スル建議案ヲ議題トナシ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、提出者小
川平吉君
3
第二十七外交文書公表ニ關スル建議案(小川平吉君外一名提出)
外交文書公表ニ關スル建議案
外交ニ關スル文書ヲ公表シ外交ノ眞相ヲ國民ニ明示セムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=121
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122・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 小川君ニ代ッテ服部綾雄君ガ說明致シマス
〔服部綾雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=122
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123・服部綾雄
○服部綾雄君 私ハ小川君ト共ニ外交文書公表ニ關スル建議案ヲ提出致シマシタ
故ニ其理由ヲ此所ニ述ベマスル、日〓戰爭竝ニ日露戰爭ノ當時ニ當リマシテ、國民一
般ガ協力シテ海陸軍人ノ後援ニナッタル譯ハ、第一ニ軍事當局者ニ於テ出來得ル限リ速
ニ戰況ヲ國民ニ知ラセラレタルコトニ依ルト思ヒマス、又新聞記者ノ從軍ヲ許サレテ戰爭ノ
實況ヲバ詳シク國民ニ報ズルノ自由ヲ與ヘラレタルコトニモ依ルト思ヒマス、又宗〓家其他
ノ男女ノ特志家ヲバ慰問ノタメニ自由ニ戰地ニ出入スルコトヲ許サレテ、能ク其實況ヲ知
ラシメテ之ヲ故國ノ人〓ニ報ズルコトノ便ヲ與ラレタルコトニモ依ルト田心フ、平時ノ戰爭
卽チ外交ニ於テモ亦同ジク國民ノ後〓ガナクテナラヌモノデアルナラバ、外交ノ實況ヲハ
國民ニ知ラシムルト云フノハ必要ナルコトデアルト私ハ信ズルモノデアリマス、外務大臣ニ
於テモ此必要ヲ認メラレテ居ルモノデアルニ相違ナイ、過日モ本院ニ於テ院內各派ノ代
表者ト會見セラレテ日英博覽會ニ關スル四十二年度總豫算追加案ヲ提出セラレルニ際シ
テハ、餘リ立入リテ質問セバ又成ルベク贊成サレタキ者ノ希望ヲバ述ベラレテ、議院ノ贊
成ヲ前以テ求メラレタルコトガアル實ニ帝國ノ外交ハ日英ノ同盟ニ重キヲ置カレテ、之
ヲ帝國外交ノ骨膸トシテ居ラレルコトハ小村外相ノ言ニヨリテ明カナルモノデアリマスル
ガ、私共又此日英博覽會ノ問題ニ付テイロ〓〓ト尋ネテ見タイ疑問モアル、ナ
ゼカナラバ實際ノ事情ニ明カニ知ラヌ今日マデ此問題ニ付テモイロ〓〓ノ公文書
ナドモ取交ハサレタコトガアルモノデアリマセウ、外交ニ關シテ實際ノ立場ヲ明カニシ
テ居ル吾〓デアルナラバ、大切ナル問題ガ議場ニ現ハレルトキニ戰時ニ於テ國民ガ軍
人ノ後援トナッテ、喜ンデ其金ヲ出スニ躊躇セザリシガ如ク、帝國ノ臣民ハ喜ンデ外交
當局者ノ後援トナルハ明カナルコドデアルト思フ、併ナガラ我國ニアッテハ外交ノ公文書ヲ公
示セラレザル結果議員モ國民モ世界一般ノ外交ナドト云フコトハ論ジマスルガ、實際
我國ノ今日ノ外交ノ實況ヲ詳ニセザルガ爲ニ、大ニ彼國ト此國トノ關係ナドニ付テ先ヅ
博覽曾ノ如キモノヽ問題ガ起リマシテモ是ヲ議スルニ誠ニ困ルコトガゴザイマスル、甚ダシ
イ不便ガアルコトデアル、願クハ當局者ニ於テハ帝國外交ノ成行、竝ニ其現況ヲ明ニセ
ンガタメニ國民ヲシテ帝國ノ外交ニ疑ヲ挾ムコトナク、其信用ニ障害ヲ與フル憂ナカラシ
メンガタメニ、政府ハ外交文書ヲバ公示シテ、一切ノ誤解ノ原因ヲ取除カレルヤウ致サ
レルコトハ最モ得策ト認メマシテ、玆ニ此建議案ヲ提出シタル次第デアリマス、若シ諸君
ノ贊同ヲ得テ此建議ガ政府ノ容ルヽトコロトナリマシタナラバ或ハ多少ノ金額ハ要ス
ルコトデアラウト思ヒマスガ、是ハ喜ンデ支出セラレンコトヲ希望スル次第デゴザイマス、今
日ハ米國ニ於テハセオドールルーズベルド氏ノ任期滿チテ退カレ、國政指導ノ任ヲ
離レテ偉大ナル模範的士民ノ生活ニ入リ又ウ井リアム、タフト氏ハローズベルド氏ノ繼續
者トシテ北米合衆國ノ衆望ヲ擔ッテ、靜ニ元首ノ位置ニ就カレルノ日デアリマス、此
國政ノ讓渡ノ今日ニ於テ爲セルトコロノ米國ハ長ク我國ト其親交ヲ續ケナケレバナラヌ
トコロノモノデゴザイマス、殊ニ鄰國ノ米國ノ事情ナドニ付テハ一層國民ヲシテ其事情ヲ
明カナラシメズニ置キマシタナラバ大ニ將來悔ユルトコロガアルデアラウト思フ此タフト氏ノ
就職任期中兩國ノ親交ヲシテ益〓厚カラシメンガタメニハ、特ニ日米間ノ公文書ノ如キハ
吾〓見タク思フトコロデゴザイマス此事ヲ加ヘテ遙ニ鄰國ノ政權ノ讓渡シアル此日ニ於
テ私ハ之ヲ祝スルト同時ニ、此國ト我國トノ關係ヲ長ク平和ノ中ニ續ケンガタメニ外交
ノ現狀ヲバ明カニ國民ガ知リマシテ當局者ノ後援トモナリ得ルヤウ願クハ政府ニ於テモ
此文書ヲバ公示セラルヽノ道ヲ取ラルヽコトヲ希望スルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=123
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124・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本建議案ハ九名ノ委員議長指名ナランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=124
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125・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君動議、本建議案ハ議長指名ノ委員九名ニ付託ス
ルト云フコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=125
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126・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ其通リ決シマス、議事日程第
二十八、打狗築港速成ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、委員長齋藤珪次君
第二十八打狗築港速成ニ關スル建議案(齋藤珪(委員長報告)
次君外四名提出)
〔齋藤珪次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=126
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127・齋藤珪次
○齋藤珪次君 本案ノ審査委員會ノ結果ヲ御報告致シマス、本案ハ御承知ノ通リ
四十二年度ヨリ尙向フ五年間ゴザイマス、打拘ノ築港繼續事業ヲ二年間短縮致シタ
イト云フノ建議案デアリマス、之ニ付テハ政府モ同意テアリマシテ寧ロ同意ト云フヨリモ、
今日ノ臺灣ノ發達ノ狀況ニ照シテ職責上短縮ヲナサネバナラヌト云フコトヲ自覺シテ居
ルト、斯樣ニ申サルヽノデアリマス、併ナガラ二年ヲ短縮致シマスルニハ百四十万圓ノ經費
ヲ要スルシ、又一年ヲ短縮セントシテモ七十餘万圓ヲ要スル次第ナノデアリマスノデ、目
下臺灣特別會計ノ狀況ニ照シテ之ヲ直チニ引受ケテ斷行スルコトハ請合フコトガ出
來ナイ、サリナガラ此事タルヤ前申スガ如クニ職責トシテ爲スベキコトヲモ自覺シテ居ル場
合デアルガ故ニ、爲シ得ラルヽトコロノ範圍ニ於テ此短縮ヲ實行致スコトニ致シタイト斯
樣ニ當局者モ明言致スノデアリマス、ソレガタメニ此建議案ニハ適當ナル更正案ヲ本議
會ニ提出セラレンコトヲ望ムトアリマシタノヲ本期議會ナル四字ヲ「帝國議會」ト云フ四
字ニ改メマシテ、卽チ本期ニ於テ訂正セザルモ來期ニ於テ訂正セラレテ相當ナリト認ムル
ト云フ修正ヲ致タシノデアリマス、是デ何等異議ナク委員會ハ通過致シタ次第デゴザイ
マス、ドウカ幸ニ御決定ヲ願ヒマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=127
-
128・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長ノ報告通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=128
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129・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通御異議ナイモノト認メマスカラ本建議案ハ
只今委員長ノ報告通リ決定致シマス、日程第二十九、萬國癩病豫防會議ヘ委員派
遣ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、特別委員長山根正次君
第二十九萬國癩豫防會議ヘ委員派遣ニ關スル建(委員長報告)
議案(山根正次君提出)
〔山根正次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=129
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130・山根正次
○山根正次君 諸君私ハ諾威ニ於ケル萬國癩豫防會議ヘ日本ヨリ委員ヲ特派スル
コトニ付テノ委員會ノ經過及結果ヲ御話致シマス、委員會ハ全員悉ク出席ヲ致シマシ
テ、此案ハ全會一致ヲ以テ贊成ヲ致シタノデアリマスルガ、政府委員トシテハ內務省ノ
衞生局長ガ出ラレテ是ニ對シテハ希望デアルト云フコトヲ述ベラレマシタ、併シ金ノコトハ
ドウモ云フコトハ出來ナイカラト言フコトデアリマシテ、委員ノ請求デ大藏省ノ委員ニ出ル
ヤウニト云フコトデアリマシタガ、差支ガアッテ丁度出ラレナカッタ、ソレデアリマスカラ委員
ノ中ヨリ是ニ對シテハ委員長ガ交渉ヲシテサウシテ金ヲ出スヤウニスルヤウニト云フコトデ
アリマシタカラ政府委員ニ交涉ヲシマシタガ、直グ金ヲ出スト云フコトノ話ハ與ヘナイ
ノデアリマスガ、先ヅ政府ニ於カレマシテモ贊成ガアルヤウナ具合ニコチラハ聽取ッタノデゴ
ザイマス、是ヨリ私ハ暫クノ間諸君ノ御〓聽ヲ願ヒタイコトガアル(「簡單々々」ト呼フ者ア
リ)併ナガラ餘リ長クハ申シマセヌケレドモアナタ方ニ於カレマシテモ斯ノ如キコトヲ能ク
御聞キニナッテ居ルト、將來此患者ニ付テノ同情ト云フモノガ起ッテ我國ニ於テ斯ノ如
キ病氣ガアルト云フ時ニ於テハ皆防グコトニ注意ヲシナケレバナラヌト云フコトノ要〓ガ
御分リニナラウト思ヒマス(「委員會以外ノコトデスカ」「ソレハ速記錄ニアルカラ宜シカラ
ウ」ト呼フ者アリ)速記錄ハアリマセヌ、速記ハナシニ少シ簡單ニ述ベタノデゴザイマス
少シ御聽取ヲ願ヒマス、諸君癩豫防法ガ明治四十年三月法律第十一號ヲ以テ發布サ
レテ居リマスルガ、是デ傳染病タルコトハ確然シタノデアリマスルカラ、一般ノ人ガ之ニ
對シテ注意ヲセネバナラヌノニ拘ハラズ、熊本ヲ除イテハ未ダ隔離所ガ香川縣ト此大阪
バカリニ於テ今出來掛ッテ居ルノデアリマシテ、東京ハ御存ジノ通リノ有樣デゴザイマシテ
未ダ隔離所ガ出來ナイト一云フヤウナ有樣デゴザイマスル斯ノ如キコトカラシテ此東京ニ病
人ガ放置サレテアルト云フヤウナ有樣デナカ〓〓之ガ蔓延ヲシツヽアルノデアリマスル陸
軍省カラ貰ヒマシタトコロノ統計ニ據リマスレバ三十八年之ハ委員會デ皆申シタコ
トデアリマス、三十八年ニハ五百二十六人デアリマス、之ハ壯丁ノ檢査デ五百二十六人
デアルガ、之ニ女性ニモアルト云フコトモ考ヘネバナリマセヌ、殊ニ六師團ノ如キハ可哀サウ
ニモ一師團デ百二十人ト云フ患者ガ出テ居リマス、千人ノ壯丁ノ中四人强ノ癩病患者
ガアルト云フニ至ッテハ實ニ寒心セザルヲ得ナイ次第デアリマスル、外ノ表ハ速記ニ讓リマシ
テ申シマセヌガ、斯ク多數ノ壯丁ガ選兵ニ旣ニ此病人ガアリマスル、ソレカラ內務省三
十八年ノ調査ノ統計ニ據リマスレバ各神社佛閣其他路傍ニ徘徊スル行路患者ノ數ハ
實ニ三万七千四百三十一人デアリマス一定ノ居所ヲ有スルモ治療ノ資ノナイト認ム
ル者ガ六千八百七十七人アルノデアリマス、此數ヲ御聞キニナリマシタナラバ實ニ諸君ハ
驚ヲ喫セラルヽデアラウト私ハ信ズルノデアリマスサウシテ此病氣ハ誠ニ殘念ナコトハ印
度マタカスカル」日本ハ世界デ一等國デアルノデアリマス、斯ノ如キノ一等國ハ甚タ恥
ヅル次第デアリマスル、日本ニ於キマシテモ、以前ハ聖武帝ノ頃ニハ十分ニ此豫防ノ法
ガ立ッテ光明皇后ガ十八軒ノ奈良ノ長屋ヲ拵ヘテ隔離ガシテアッタ、又鎌倉北條時
賴ノ時代ニ於テハ忍性律師ガ極樂寺ニ此癩病院ヲ設ケテ治療ヲサシテ居ッタノデアリマス
又德川時代ニ於テモ癩村ガ設ケラレテ隔離サレテ居ッタガ明治ノ昭代ニ於テハ却テ此隔
離ガ疏カニナッテ癩村ヲ設ケテアッタノガ交通ノ便利ノタメニ四通八達ニナッタカラ彼方此
方へ〓漫ヲ致シタノデアリマス、デアリマスルガ故ニ非常ニ危險ナル今日ノ場合ニナッタノ
デアリマス、殊ニ武藤金吉カラ又前代議士江原素ハ君カラ此事ヲ話シテ呉レイト云フノ
デ、一昨日ノ委員會ニ於テモ話シマシタガ、草津ノ溫泉場ノ如キハ上町下町トノ區別ガア
リマスガ、下町ニ於テハ四十餘戶ノ戶數ガアルガ、主人モ癩病、家內モ癩病デ旅人宿
ヲ營業シテ居ルモノガ十二戶デ四百餘人ノ癩患者ガ集ッテ居リマスルガ、是等ニ付テノ
十分ナル方法ガ行ハレテ居ラヌ、交通機關ニ對シテ檢疫モナイシ、學校ニハ癩患者ノ子
供ガ皆學校ヘ通フテ居ル、サウシテ而モ癩ニ罹ッテ居ルトコロノ醫者ガ外ノ癩病デナイ人
ノ治療ヲシテ居ルト云フヤウナ有樣デ、又ハ齒醫者ガ癩病デアッテサウシテ他ノ健康ナ人
ノ齒ヲ治療ヲシテ居ルト云フヤウナ危險ナ有樣デアリマスルサウ云フヤウナ有樣デゴザイ
マスルカラ、此病氣ハナカ〓〓蔓延ヲスルモノト思ハナケレバナリマセヌ、而シテ近頃ニ至リ
マシテ內務省ハ之ニ對スル豫防ノ訓令ガ法律ノ結果トシテ出テ居リマスケレドモマ
ダ〓〓十分目的ヲ達スルコトハ出來ナイ有樣デアリマスル、然ルニ諸君此前申シマシタ
如ク諾威ニ於テハ能ク此目的ヲ達シマシテ此不幸ナルトコロノ患者ヲ收容シテ、サウシテ
之ニ治療ヲ加ヘサウシテ之ガ傳染病タルトコロノ病氣デアルト云フコトヲ能ク知ラシメテ
隔離ヲ行ヒマシタ結果、卽チ黴菌ヲ發見致シマシタル當時ニ於テハ一年ニ二百人アッタ
新患者ガ今日ハ三四人位ニ減少シタノデアリマス、日本帝國ハ一年ノ間ニ新患者ガ
一千人モアリマセウカ長ク續キマスルト、兵隊ニ癩病患者ガ出ナケレバ筒ガ持タレヌト云
フヤウナコトニナルカモ分リマセヌ、此諾威ノ消毒ノ能ク行ハレテ居ル處ヘ日本カラ特別ニ
派遣ヲ致シマシテサウシテ此事ヲ能ク調ベマシタナラバ大變ニ好イ目的ヲ後來ニ達シ此
不幸ナルトコロノ患者ノ治療ガ出來隔離ノ方法又ハ患者ノ德義心ト云フヤウナコトノ
模樣モ見テ日本ニ報告サレマシタナラバ大變ニ良イ結果ヲ見ルデアラウ、人民ノ幸福
是ヨリ大ナルモノハナイト思ヒマスカラ、滿場諸君ノ御贊同ヲ願ヒマス(拍手起ル)
〔參照〕
自明治三十八年徵兵不合格中瀨患者明治四十二年二月調
至同四十一年
三十八年三十九年四十年四十一年
區別被檢者每被檢者每被檢者每被檢者每
實數千比例實數千比例實數千比例實數千比例
第一六八〇·八三六〇〇·六九四六〇·五二二四〇·四四
第二二五〇·七九二二〇·七二二五〇·八〇二三〇·八三
第三五七一·六四四三一·二三四〇一·一三四〇一·五二
二七〇·七九二四〇·七六二二〇·六七一七〇·六七
八〇·六二二三〇·九七二四〇·八九二九一·五九
一二二〇四·一六八七三·〇二八二二·八九三重五
七八
二〇·二九四〇·五八四Co.H.A.八〓·五〇
三七一·三七三六一·七二四五一·六三二五一·三二
三二一·二〇二九一·一九二三〇·九四一五〇·八三
師二九一·〇二三六一·三〇二七一·〇一一九〇·九一
第第第第第第第第第第第第第第第五二一·九二三三一·三一四六一·八二二三一·一三
五九二·一一三九一·三八四六一〇〇二八一·三九
國洲太灣八七六五四三二一十九八七六五四一三〇·五一
管十十十十十十一九〇·五三
四〇一·七六
二六一·二一
一七〇·九〇
十十三四一七七
一二·〇三一·九四
韓關樺臺二二·六八
東
二一·二五
計五二六一·三七四三六一·一六四三三一·一二四八一一·一一
備考明治三十八年乃至同四十年ニハ第十三師管乃至第十八師管ノ設置ナク又明治三十八、九
年ハ未タ樺太、關東洲及韓國ニ於ケル徵兵檢査ヲ行ハス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=130
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131・鈴木力
○鈴木力君 本員ハ我同胞ノ日本民族ノ〓淨ナル血肉ノタメニ、滿腹ノ熱情ヲ以テ
本案ヲ贊成致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=131
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132・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=132
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133・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマス、委員長報告通リ決シマス-日
程第三十乃至第三十三ノ請願ハ便宜上一件每ニ委員長ノ報告ヲ爲サシメ、逐次議
題トナシテ之ヲ採決致シマスー次ニ日程第三十、三十一ハ同性質ノ請願ニ付キ一
括シテ議題ト致シマス、特別報告第十一號借地權救濟ニ關スル請願外一件ヲ議事ニ
付シマス、請願委員長立川雲平君
第三十(特別報告第十一號)借地權救濟ニ關ス(委員長報告)
ル請願
第三十一(特別報告第二十號)借地ニ關スル請願(委員長報〓)
〔立川雲平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=133
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134・立川雲平
○立川雲平君 御報告致シマス、特別報告第十一號借地權救濟ニ關スル請願、之
ハ野々山幸吉外千九百九十三名ノ請願デアリマス、今一ツハ特別第二十號借地ニ關
スル請願之ハ五味道藏外一一千二百九十九名、此二件ノ請願人ノ數ヲ併セマスルト五千
二百九十四人ノ請願デアリマス請願ノ件數モ隨分多ウゴザイマスナレドモ、此案件ノ如
ク多クノ人ガ請願ヲ致シタコトハ最モ稀ニゴザイマス而シテ之ハドウ云フ請願ノ趣旨デ
アルカト申シマスレバ彼ノ都下ニ行ハレル所謂地震賣買ト云フ弊ニ堪ヘナイノデ、借地權ヲ
保護シテ呉レイト云フ趣旨ニ外ナラヌノデゴザイマス、而シテ此事ニ付キマシテハ當院ハ既
ニ法律ヲ制定致シマシテ、此法律ハ今ハ貴族院ノ審査中ニ係ヲテ居ルノデゴザイマス、是
マデノ慣例ハ請願ノ事件ニ致シマシテ既ニ請願ノ目的ガ到達ヲ致シテ居リマスルナラバ、
態〓請願委員長ハ玆ニ出テ報告ヲシテ、諸君ノ御採擇ヲ請フト云フコトハゴザイマセヌ
ノデゴザイマス然ルニ此案件タルヤ實ニ其情實ノ切實ナルコトニハ請願委員四十五名
ハ悉ク同情ヲ寄セタノデゴザイマス而シテ今之ガ救濟ノ法律案ガ出來テ居リマスケレド
モ上院ニ在リマスル以上ハ運命ハドウナルカ計ラレヌノデアリマス、ソレ故ニ此案件ニ限ツ
テハ既ニ法律ハ制定セラレテ居リマシテモ、特ニ院議ニ附シテ滿場諸君ノ一致ノ御同意
ヲ得テ以テ今上院ニ在ルトコロノ彼ノ法律ノ運命ヲシテ完カラシメント希望致シマス
ルガタメニ、特ニ茲ニ御報告致スコトヲ請願委員會ニ於テ決シマシタ次第デアリマス、此
段御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=134
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135・恒松隆慶
○恆松隆慶君 委員長報告通リ····
「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=135
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136・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程ノ第三十、第三十一、特別報告第十一號借地權救
濟ニ關スル請願特別報告第二十號借地ニ關スル請願、此兩案ハ唯今委員長報告通
リ採擇スルト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=136
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137・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ採擇スルコトニ決シマス、日程
第三十二第三十三ハ同ジク關聯セルモノデアリマスカラ一括シテ、議題ト致シマス、特別
報告第二十一號競馬ノ善後策急施ニ關スル請願及外一件ヲ議ニ付シマス
(特別報告第二十一號)競馬ノ善後策(委員長報告)
第三十二急施ニ關スル請願
第三十三(特別報告第二十二號)競馬ノ善後策(委員長報告)
急施ニ關スル請願発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=137
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138・立川雲平
○立川雲平君 諸君、今將ニ本日ノ會議ノ終ラントスルニ當リ競馬ニ關スル議題ヲ報
〓致シマス、必ズ諸君ハ簡單ナルコトヲ望マルヽニ相違ゴザイマセヌ、併ナガラ此競馬ノコ
トタルヤ一部ノ人ハ其事柄ノ野部ナルガタメニ內容ヲ知ラズシテ之ヲ擯斥セント欲シ、一
面ノ人ハ其局ニ當ッテ數多ノ財產ヲ失ウト云フ場合デゴザイマスカラ、之ヲ救濟スルコト
ノ方法ヲ求ムルニ最モ急ナルノデゴザイマス、之ハ少シ長クナリマスカ分リマセヌガ、御辛
抱下サリマシテ、此競馬ノ內容ト此競馬ニ對スル政府ノ處置ニ付キマシテ、成ルベク詳
密ニ報告ヲ致シタイト思ヒマスカラシテ、之ハ此段豫メ御斷リヲ致シテ置キマス(「謹聽謹
聽」ト呼フ者アリ)諸君、我帝國ノ堅甲利兵ハ列國ニ對シテモ毫モ遜色ハゴザイマセヌ、
唯怨ムラクハ軍馬ノ供給ト云フコトニ付テハ實ニ其局ニ當ル人ハ勿論、上下共ニ其
不足ナルト云フコトハ、外國ニ對シテ劣ルコトニ付テハ心配ヲ致シテ居リマス、畏レ多ク
モ至尊陛下ニ於カレマシテ此〓ニ付テハ深ク叡慮ヲ惱マセラレテ居ルト云フコトヲ承ッテ
居リマス而シテ日露ノ大戰爭ハ吾人ニ多クノ〓訓ヲ與ヘラレマシタ、唯最モ有益ナルモ
ノハ此軍馬ノ不足ト云フコトデアル若シ軍馬ノ不足ト云フコトヲ以テ、忌憚ナク彼ノ
日露ノ戰爭ノ平和ニナラザル先ニマデ思ヲ致シマシタナラバ實ニ寒心スベキ想像ヲモ抱
カネバナラヌノデゴザイマス、是ニ於テカ明治三十八年ノ十二月ドウシテモ我國ニ於テ馬
匹ノ改良ト云フコトヲ致サネバナラヌ、之ハ戰後ノ經營ニ於ケル一大急務デアルト云フコ
トヲ當局ニ於テモ考ヘマシタ而シテ之ヲ致シマスルノニハ馬政局ト云フ一ツノ官署ヲ置
クコト竝ニ全國ノ人ミヲシテ馬ト云フコトニ對スル思想ヲ涵養ヲ致サネバナラヌ之ヲ致シ
マスルノニハ競馬卽チ此賭馬ト云フコトニ趣ヲ有ッテ、之ヲ國民ヲシテ競馬ニ趣味ヲ有ツ
ヤウナ方法ヲ執ラネバナラヌト云フガタメニ、或ハ財團法人トシ、或ハ株式會社トシテ、サ
ウシテ此各地ニ競馬會ヲ開イタノデアル、此トキニ方ッテ廟堂ニ於テ一ツノ心配ヲ生ジタノ
デアル其廟堂ニ於テ心配ヲ生ジタノハ何デアルカト云ヘ バ競馬ヲ致シマスルニ付テ
ハ馬劵ヲ販賣ヲセネバナラヌ、所謂馬劵ヲ賣ッテサウシテ其勝ッタ者ニハ幾分ノ金ヲヤリ、
其一部ハ會社ノ費用ニ充ルコトニナラネバナラヌ、此行爲タルヤ賭博ニナリハセマイカ、所
謂金錢ヲ賭シテ輸贏ヲ期スルモノデアル、刑法ノ禁止スルトコロデアリハシマイカト云フコト
ガ廟堂ニ於テカラニ心配ヲサレタ一ツデアル、或ル大臣ハ法律ノ問フトコロニアラズト主
張モ致シマシタラウ、或ル大臣ハ默許シヤウト云フコトヲ主張シタデアラウ、其內容ハ詳シ
存ジマセヌケレドモ、此競馬ニ付テハ刑法ノ賭博ト見ルニ及バヌモノデアル、競馬會ヲ盛
ニセント欲スレバ、馬券ノ發賣ハドウシテモ禁止スルコトハ出來ナイモノデアル馬券ヲ發
賣シテ、初メテ競馬ガ盛ンニナル、競馬ヲシテ盛ンニナラシムレバ、國民ヲシテ趣味ヲ有タ
シムルノデ、國民悉ク趣味ヲ持ツニ至ッタナラバ馬匹ノ改良ハ期シテ待ツベキモノデアル
ト云フコトデアッタデアル、ソレガタメニ或ハ警保局長ノ名ヲ以テシ、或ハ局ニ當ルトコロノ局
長其他ノ人〓ガ此事柄ハ刑法ニ當ラナイモノデアル、刑法ニ所謂賭博デハナイト云フタ
メニ、ソレ〓〓下僚ニ向ッテ通牒ヲ致シタノデアル、之ハ賭博デハナイカラ間違ッテ檢舉ス
ルコトノナイヤウニト云フ通達ヲ致シマシタ、是ニ於テカ人民ハ安心ヲ致シマシタソレガタメ
ニ何十万ト云フ金ヲ掛ケ、ソレガタメニ多クノ設備ヲ致シマシタ、サウシテ到ル處ニ競馬ガ
盛ンニナッタノデアル、アノ勢デ參リマシタナラバ隨分馬匹ノ改良ハ期セラレタコトガアッタ
ラウト思フ、窈窕タル淑女モ尙馬ノ名ヲ解スルコトガ出來タラウ、或ハ紳士ガ卓ヲ圍シデ
馬券ノ高低ヲ論ジテ居ッタデアラウ、併ナガラ物ハ一利アレバ一害アルモノデ、、競馬ガ斯ノ
如ク盛ンニナリマシタトキニ當テ、又是ニ於テ大ニ憂フベキ害ヲ見出シタノデアル、ソレハ
何デアルカト云フト彼ノ競馬場ヘ往ッテ見マスルト云フト手ニ貨幣ヲ持ッテ、サウシテ其
血眼ニナッテ駈迴ッテ居ル有樣ト云フモノハ實ニ見ルニ忍ビナイ、本員ノ如キモ一二囘之
ヲ見マシタ、此弊ハ何カ矯正スル方法ヲ執ラネバナラヌト云フ考ハ何人モ起スノデアッタ、
所ガ是ニモイロ〓〓弊ガアル、此競馬ニ參ッテ馬券ヲ買ヲテ洵ニ好結果ヲ得タルトコロ
ノ人ハソレデ宜シウゴザイマスルガ、不結果ヲ得テ所謂此囊底ニ金錢ヲ剰サナイト云フ場
合ニハ、何トナシニ競馬ガ面白クナイ、此人若シ筆ヲ持ッテ社會ニ通達スル機會ガアッタ
ナラバ競馬ヲ惡ルク書ク、此口ヲ以テ意思ノ傳達ヲ敏活ニスル人デアッタナラバ競馬ノ
惡口ヲ云フ、一面ニハ利益ヲ得タル人ハ默ッテ居ルガ、害ヲ受ケタ人ハ競馬ヲ攻擊スル、
此聲タルヤ天下ノ到ル處ニ大キクナッテ來タ、必ズ新聞紙等ニ報道スル弊害ガ必ズソレダ
ケアルトハ思ハナイケレドモ、其弊害ノ幾分ハ確カニアッタニ相違ナイ、是ニ於テカ此競馬
ニ對スル議論ガヤカマシクナッテ、昨年ノ九月ノ二十七日デゴザイマシタカ九月二
十七日デアッタト信ジマス、此上方ノ神戶ノ在ノ鳴尾ト云フ所ニ競馬會ガアッタ、此競馬
會ノアッタトキニ神戶ノ地方裁判所ノ檢事正ガ多クノ檢査官或ハ警部等ヲ引連レテ以
テ之ニ臨ンデ、賭博デアルト云ッテ之ヲ檢舉シタノデアル、是ガ競馬界ニ於ケル一大恐慌
デアリマシタ、九月ノ二十七日デアル、サウシテ此コトハ遂ニドウナッタト言ヘバ遂ニ罪ニ
問フベキモノガナクテ放免ニナッタノデアリマス、此コトアルヤ天下ノ競馬ヲ面白クナイト感ジ
テ居ッタトコロノ人ミハ、聲ヲ勵マシテ現內閣ノ英斷ニ出デタルコトヲ謳歌シタデアル、何トナレ
バ今マデ競馬ヲ勸誘シ、競馬ヲ利用シテ此馬券發賣ニ對シテハ相當ノ保護ヲシツヽアッタノ
ガ、俄ニ犯罪者ナリト云ウテ捕ヘテ、競馬會ヲ建テヽ居ルトコロノ會ノ重役ハ相當ノ身分デ
アル人或ハ華族等ガ此役員ニナッテ居ル會社モアルノデアル、是等ノ人ニ向ッテ賭博開帳ノ
罪デアルト云フコトヲ以テ檢舉ヲシタノデアル實ニ無關係ノモノデアッタナラバ何トモ思ヒ
マセヌガ、競馬ニ少シデモ關係ヲ有シタモノデアッタナラバ此恐慌ハ非常ナモノデアッタラウ
ト思フ若シ競馬デナクシテ、一般ノ人ノ關係ヲ有ッテ居ルモノデアッタナラバ實ニ彼ノ所謂
日比谷ノ騒動ヨリ、ヨリ以上ノ大騷動ガ起ルデアラウ、幸ヒニ其幾分ガ競馬會ノ人〓デ
アッタカラシテ、餘リ多クノ騷動ガナカッタケレドモ、今申シマス通リ大勢ノ人、身分ノアル
人ガ檢舉ヲセラルヽト一云フ姿デアル、是ニ於テチヨット御注意マデニ文章ヲ拔イテ御話シテ
置キタイノハ、此コトガゴザイマシタカラ競馬會ノ人〓ハ我同僚ノ中ニ於テモ畏敬ヲ拂フ
人、之ニ直接ニ關係ノアル方ミガアル、是等ノ人モ此具合デ行クナラバ大變デアル、
一度政府ガ勸誘シ一度政府ガ勸メテ置キナガラ、俄ニ斯ノ如キ檢舉ヲシテ大
恐慌ヲ來スノハ容易ナラヌト云フガタメニ、其開催ニ迫ッテ居ルトコロノ各競馬會社
ノ人々ハ頗ル疑惧ノ念ヲ抱イタノデアル、直接管掌タル馬政局長官ニ向ヲテ是ガ如何ニ
成リ行クカト云フコトヲ表向キナリ私ニ突留メタノデアル其トキニ當ッテ馬政局ノ書記
官ハ斯樣ナ書面ヲ各競馬會社ニ與ヘタノデアル「競馬開催取締上ニ關シテハ兼ネテ及
訓示置候次第モ有之候處頃日新聞紙上種々ノ風評ヲ記載スルモノ有之候ヘ共本局
ニ於テハ從來ノ方針ニ從ヒ處理スヘキニ付豫メ屆出ノ開催期日等ヲ變更スルコトナク一
層靜肅ヲ主トシ愼重事ヲ處シ場內ノ秩序ヲ保チ世人ノ同情ヲ失セサル樣深ク注意ヲ
加フヘシ右長官命ニ依リ此旨及諭達候也明治四十一年十月一日」十月一日デアリ
マス、サウシテ各競馬會社理事宛ニシテ書記官ガ出シタ、是ニ於テ安心セネバナラヌ、總
テガ安心ヲシテ一時神戶ノ檢事ガ檢舉シタノハ何カ間違デアラウト云フノデ、其後十月
二日三日四日ノ間松戶ニ於テ競馬ヲ開催シタ、此競馬會ニハ多クノ馬政局ノ役員
モ出テ居リマシテ、既ニ警察官其他ガ出張ヲシテ此競馬會ヲ無事ニ經過セシメタノデア
ル、是ニ至ッテ此競馬會ハ前途此方針ヲ以テ進ムデアラウト思ッテ居リマシタ、所ガ豈圖
ランヤ同年十月六日前ノ諭達ハ十月一日デアルガ、十月六日ニ於テドノヤウナ通達ヲシ
タカト云フト「競馬會ニ於ケル馬券發賣ヲ差止ヘキ旨其筋ヨリ通牒相成候間依命此
段及通牒候也明治四十一年十月六日馬政局書記官落合芳藏」是ガ世ニ所謂馬
券發賣禁止ノ諭達デゴザイマス此一事ハ諸君ニ能ク記憶ヲ願ッテ置キナタイノハ九
月二十七八日ニ鳴尾ニ於テ檢舉セラレタトキニ舊刑法ノ支配ノ下ニアッタ帝國ノ時代
デ、卽チ明治四十一年十月一日ヨリ新刑法ハ實施セラルヽ故ニ舊刑法時代ニ於ケル
鳴尾ハ檢舉デアル、而シテ松戶ニテ開催シタノハ十月二日三日四日デアル、卽チ新刑
法現刑法ノ時代デアル、而シテ十月六日ニ於テ此馬券發賣ヲ禁止スルト云フコトヲ政
府ガ諭達シタノデアル、ソレカラ後此競馬ハドウナッタカト云フナラバ、二三競馬會ヲ開キ
マシタケレドモ、何樣ニモ馬券ノ發賣ヲ禁止シテカラハ何人モ入ル者ガナイ、ソレマデハ五
圓二圓、三圓ト云フ入場料ヲ拂ッテ入ッタ者幾千ヲ數ヘタ、然ルニ其後馬劵ノ發賣
ヲ禁止シタカラ何ノ興味モナイ、何ノ趣味モナイ或ル競馬ノ如キハ僅カニ三人シカ見ニ
來ナカッタ、其三人モ警察署ノ刑事探偵デアッタト云フ位デアッタ、是デハ到底競馬ガ立
行ク道理ガナイ競馬ガ立行ク道理ガナイカラ、競馬ナルモノハ打遣ッテ宜イ、競馬會
社ナルモノハ是程ノ迷惑ヲ被ッテモ宜シウゴザイマセウカ、競馬會ハ或ハ財團法人デアル、
或ハ株式會社デアル是皆法律ノ下ニ保護セラレテ、帝國ニ於テ確カニ權利ヲ有ッテ居
ル法人デアル、此法人ハ馬券發賣ヲ禁止シタト云フタメニ殺サレテシマフノデアル、人ヲ作ツ
テ十分ニ働カシメ、此働キツヽアル人間ヲ又殺スト同ジコトデアル此競馬會社ガ何トカ
處置ヲシテ貰ヒタイト當院ヘ請願ヲ致シテ來タノデアル、誠ニ私ハ無理ナラヌコトデアラウト
思フ、所謂「一人其處ヲ得サル者アルモ朕カ罪ナリ」トハ吾〓ガ常ニ奉戴スルトコロノ聖
意ノ存スルトコロデアリマス、然レバ縱令其執ルトコロノ業務ガ野界デゴザイマシテモ、下
等デゴザイマシテモ、卽チ法律ノ保護ノ下ニ立ッタトコロノ會社ガ、一朝政府ノ不法ナル命
令ニ依ッテカラニ、此會社ガ生命ヲ絕タレテシマフ、財產ヲ滅却シテシマフト云フコトニナ
リマシタナラバ之ニ同情ヲ寄セナケレバナリマスマイ縱令競馬ナルモノハ小人ノ爲スモ
ノデアルト云ウテ、此競馬其モノヲ斥ケラルヽトコロノ士君子ト雖モ、此境遇ニ立ッタトコ
ロノ會社ノ人々ニ向ッテ誰カ一滴ノ淚ナカランヤ、同情ヲ寄セナケレバナラヌデハゴザイマセヌ
カ、而シテ請願委員會ニ於テハ初メ分科會ヲ開キ、ソレヨリ後ニ特別委員ヲ選ビ、政府
ノ人々ト折衝ヲ致シマシタ、政府ハ私ガ前申ストコロノ事實デアリマス、故ニ此事實ニ
向ッテ政府ノ人々ガ何ト答辯ヲスルカト云フ、其答辯ハ最モ窮シテ居ル遁辭デアル其窮
スルトコロハ知ルニ十分デアル(村松恆一郞「立川君ニチヨット申シマスガ、私ハ立川君ノ
御說ハ成ルベク詳シク伺ヒタイノデアルガ、唯今ハ委員長ノ御報告ト心得テ居リマス「私
ハ私ハ」ト御自分ノ意見ヲ御述ニナリマスト、甚ダ判斷ニ苦ミマス」ト云フ)敬愛ナル村松君
ヨリノ御注意デゴザイマスガ私ノ語中若シ「私ガ」ト云フ語ガアリマスレバ、ソレハ委員長
ナル本員ト御承知ヲ願ヒマス(拍手起ル「議論ヲ云フノカ事實ノ報告カ」「事實ノ報告
ダ」ト云フ者アリ)是ハモウ少シ十分ニ述ベテ反對ノ御意見ガアルナラバ立派ニ議論ヲ鬪
ハシタ方ガ、天下ニ對シテ宜カラウト思フ、斯ウ云フ問題(「贊成々々」ノ聲起ル)尙暫
ク御〓聽ヲ煩ハシマス、政府者ノ答フルトコロハドウデアルカト云フナラバ、政府者ハ一
度ハ陸軍大臣ハ初メハ默許シタノデアル、後ニ至ッテハドウモ餘リニ弊害ニ堪ヘラレヌカラ
默許ヲヨシタノデアル、斯ウ云フ、所ガ司法大臣ガ答辯シテ云フニハ、舊刑法ハ賭博
ト見テ居ラナカッタ、舊刑法ノ時代ニハ賭博ト見テ居ラナカッタ、新刑法ニ於テハ賭博
ト見タカラ差止メタノデアル、此申開キハ齟齬スルコトガ出來ル、舊刑法ニハ成程賭博デ
ナイト云ッテアル、卽チ五月二十七日ノ鳴尾競馬ヲ檢舉シタノハ何デアルカ、舊刑法ノ時
代デアリマセヌカ、新刑法時代ニ賭博ト認メタナラバ松戶ノ競馬ハ新刑法施行中デア
ル、十月二日、三日、四日ノ競馬、卽チ松戶ノ競馬ヲバ當局ノ人〓ガ保護シテナサシ
メタノハ何デアルカ、若シ舊刑法ニ於テ之ヲ賭博ト見ナイト云フナラバ、此鳴尾ノ競馬ヲ
檢舉シタノハ大失體デアル若シ新刑法デ之ヲ賭博ト見タナラバ、松戶ノ競馬開催ヲ檢
舉シナイノハ是亦大失體ト云ハナケレバナラヌ、政府ハ右ニ遁ルヽ能ハズンバ左ニ遁ル
能ハズ、ドチラニ對シテモ不當ヲ極メテ居ル、而シテ又刑法ニ是ガ賭博ト云ウテ居ルカラ
差止メタト云フナラバ、何故刑法ニ置イタコトヲ皆差止メナイカ刑法ニ置イタコトヲ差
止メルナラバ以來人ヲ殺シテハナラヌ、以來人ノ物ヲ取ッテハナラヌト云フ通達ヲシナケレ
バナラヌ、刑法既ニ之ヲ禁止シテアルナラバ何ヲ苦ンデカ此通牒ヲ十月六日ノ通牒ヲ以
テ發賣ヲ禁止スルコトガ必要デゴザイマセウカ、是レ卽チ政府ノ誤デハゴザイマセヌカ、人ノ
權利ニ立入ッテ甚ダ不當デハゴザイマセヌカ、コヽラノ〓ヨリシテ政府ガ始メ競馬ヲシテ其當
時ノ刑法ニ問ウテ賭博デハナイカト思ウテ居ッタトカ、默許ヲシタト云フコトハ皆遁辭ニ
過ギナイノデアル、其實ハ決シテサウデナイ其證據ニハ始メ舊刑法ニ於テ賭博デアルカナ
イカト云フコトヲ調ベル場合ニ當ッテモ、明治三十八年デハゴザイマセヌカ、新刑法ハ何時デ
アルカト云ヘバ昨年十月一日デアル、併ナガラ新刑法ハ昨年十月一日二天カラ降ッテ來タ
モノデモナイ、地カラ湧イタモノデモナイ是ハ三十八年ニハチヤント議ニ附シテアル、或ハ
決議ヲシテ此法律ハ成立ッテ居ル、當局者ノ机ノ上ニハ立派ナ新刑法ガアルノミナラズ、
啻ニ當局者ノ机ノ上ノミナラズ、吾人帝國臣民ハ將ニ四十一年十月一日ヨリ行ハレル
新刑法ハ此通リデアルト云フコトハ疾クニ既ニ能ク承知シテ居ル、此承知シテ居ッタ新刑
法ニ當ル賭博デアルモノヲ、是ガ實施ノ前デアルカラト云ウテ之ヲ差止メナイノハ何事デ
アルカ、體行政官ニ吾ミハ尊敬ヲ拂ヒ、國政ノ料理ヲ委託シテ置クノハ何デアルカ、人
民ヲシテ漫リニ俄ニ非常ナル害ヲ受ケシメナイヤウニ、非常ナル苦難ニ遭遇セシメナイヤウ
ニシテ貰ハンガタメニ行政官ニ吾ミハ尊敬ヲ拂ヒ、卽チ此國政ヲ料理セシメルモノデアル、
然ルニ十月一日ヨリ行フトコロノ新刑法ニ於テハ是ハ賭博デアルカラ止メタト一ムヒナガ
ラ、其事實事態ニ於テ間違ヒダラケノコトハ前述ノ次第デアル、、政府ハ之ニ向ッテ何ト答
辯致シマセウカ私常ニ思フ若シ此問題ガ競馬デナカッタナラバ政府ノ大責任問題デアリ
マス是ガ競馬デアルト云ウテ人ノ同情ヲ惹クニ甚ダ難イ、又新會アタリニ居ルトコロノ
聖人君子ノ同情ヲ惹クコトハ難イカ知ラヌケレドモ、(笑聲起ル)此常識ノアルモノ、吾〓
ノ常識ニ富ムモノハ誠ニ此競馬ニハ御氣ノ毒ニ堪ヘラレナイノデアリマス、其癖當人ハ競
馬ハ一向嫌ヒデアリマスケレドモ、此報告ノトキニハ意見ガ何時デモ混ジルノデス(「宜シイヤ
レヤレ」ト呼フ者アリ)御辛棒ナサイマセ、右ノヤウナ次第デアリマシテ、政府ノ答フルトコ
ロ一モ要領ヲ得ナイ、如何ニモ競馬ヲ差止メタコトス其當ヲ得マセヌ、是ニ於テカ吾ミハ大
多數ヲ以テ採擇スルニ決シタノデアル、其理由ハ斯ウ云フ委員中ニ議論モゴザイマシタ、
競馬ト云フモノハ實ニ社會ニ害毒ヲ流シタモノデアル、此競馬ガ社會ニ害毒ヲ流シタモ
ーデアルカラシテ、其位ナ目ニ置ウテモソレハ宣シイ、ソンナコトハ顧ルニ足ラヌト云フ、斯
ウ云フ議論ガアリマシタ、成程一應御尤ナヤウニ思フ、併ナガラ若シ天下ニ道ヲ造ッテ、
此道ニ悉クノ人ハ通行セヨト云ッテ通行セシメタ、而シテ半バニ於テ此道ヲ通ルコトハナ
ラヌト禁止シタ、偶〓其途上ニアル人ハ我ハ博徒デアルトカ、刑餘ノ人デアルト云フヤウ
ナ場合ニハ汝評判ノ惡ルイ男、汝平生カラ尊敬ヲ拂フ人デナイ、故ニ此位ノ艱難ニ遭
ウテモ構ハヌト云ッテ見遁スコトガ出來マセウカ、一度之ヲ〓ヘテ此道ニ依ッテ此事ヲナセ
ヨ、上下ノ望ミタル馬匹改良ニ付テハ之ニ依ッテナセト云フコトヲ〓ヘテ置キナガラ、俄
不法ニモ之ヲ杜絕シテ、而シテ彼等數十万ノ財產ヲ抛タナケレバナラヌ、滅却セシメナケ
レバナラヌト云フコトニ至ラシメタノハ政府者ノ不穩當ナル處置デアル、失當デアルト云
ヘナカッタナラバ不穩當デアル、政府ハ斯ノ如ク不穩當ナル處置ヲシテ、尙人民ニ向ッテカ
ラニ責任ガナイト云ヘマセウカドウシテモ責任ヲ有スベキコトデアラウト思ヒマス、故ニ競
馬其物ハ別ノ問題デアル、競馬ノ好キト嫌ヒ競馬ノ善イト惡ルイト、是ハ此後ニ於テ
生ジテ來ルトコロノ競馬法案ニ於テ十分議論ヲシテ宜シウゴザイマスケレドモ、今玆ニ直
チニ競馬其物ガ惡ルイカラト云ウテ、此政府ノ不當不利ナル此不穩當ナル處置ヲ寬容
スルコトハ、ドウシテモ出來ナイト私ハ信ズルノデゴザイマス、而シテ請願委員ニ於テ政府ニ
向ッテ競馬ヲヨシテドウスルカト云フコトマデモ交涉ヲシタトコロガ、當局ノ人ハ豫算二三
十八万圓ノ金ヲ出シテ、サウシテ此金ヲ以テ競馬ヲドウカ成立タシメタイト思ッタケレドモ、
是ハトテモ三十八万圓テハ目的ヲ達スルコトガ出來ヌト見テ、サウシテ此衆議院ハ之
ヲ否決ヲサレタノデアル、是カラ先ニ此競馬ナルモノハ何トスルカト云ッタナラバ別ニ策ハナ
イト云フ、唯此儘デヤハリ馬匹ノ改良ハ希望スルノデアルト云フ馬匹ノ改良ヲスルノニ
ハ競馬ヲヤラナケレバナラヌ、馬券ノ發賣ヲ致サズシテ競馬ト云フモノハ決シテ成立チ得
ベキモノデハナイ、若シ之ニ伴フ弊害ガアルナラバ其弊害ヲ矯正スル方法ヲ他ニ講ジテデ
モ之ヲ許サナカッタナラバ到底競馬ナルモノハ成立ツベキモノデナイ、競馬會ニシテ成立
ツコトガ出來マセナカッタナラバ馬匹ノ改良ハ決シテ目的ヲ達スルコトガ出來ナイ、木一
緣ッテ魚ヲ求ムルガ如キモノデアルト信ズルノデ、故ニ請願委員會ニ於キマシテハ大ニ此請
願ヲ理由アリトシテ、大多數ヲ以テ贊成ヲ致シテ採擇スルコトニナッタノデゴザイマス是ハ
二案出テ居リマスガ、二案共同一デアッテ、是ハ善後ノ策ヲ講ズルニ當ッテ政府宜シク其
責ニ任ズベキモノデアルト云フ趣意デアリマス、政府ニシテ若シ政策ナクンバ吾等ハ之ニ對
スルトコロノ政策ヲ講ジテ、以テ馬匹ノ改良ト云フ上下一致ノ希望ヲ充タスニハ十分力
ヲ致サナケレバナラヌト思ヒマス是等ハ諸君ト共ニ吾人ガ有スル責任デアラウト思ヒマ
ス、請願委員トシテノ報告ハ少シク長クナリマシタガ、前申ス通リノ次第デアリマスカラ、
諸君ガ御〓聽下サレタコトヲ厚ク感謝致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=138
-
139・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 通告ガアリマスカラ通告順ニ發言ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=139
-
140・阪本彌一郎
○阪本彌一郞君 緊急動議ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=140
-
141・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 何ノ緊急動議デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=141
-
142・阪本彌一郎
○阪本彌一郞君 此問題ヲ延期シタイト云フ動議デス、發言ヲ御許シニナリマスカ
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=142
-
143・村松恒一郎
○村松恆一郞君 其前ニ委員長ノ御報告ニ付イテ申シタイコトガアリマスガ、御許シ
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=143
-
144・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 緊急動議ガ出テ贊成ガアル以上ハ、通告ガアリマスカラ議
長ハ通告順ニ討論シテヤリタイト思ヒマシタケレドモ、旣ニ緊急動議ガ出テ贊成ガアル以
上ハ緊急動議カラ先ニヤラナケレバナラヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=144
-
145・阪本彌一郎
○阪本彌一郞君 チヨット其理由ヲ申述ベマス、本日日程ノ十八ニ競馬法案ト云フ
モノガ出テ居リマスガ、是ハ提出者ノ都合ニ依リマシテ本日ハ議セラレナカッタノデアリマ
ス、唯今立川委員長ノ流暢ナル辯ヲ以テ丁寧反覆ニ、而モ御論告的ニ御演說ニナリ
マシタトコロニ依リマスレバ競馬會社ハ畢竟馬券ノ賣買ヲ禁止セラレタガタメニ損害ヲ
被ッタト云フコトデアリマス、然ルニ本日提出ニナッテ居ルトコロノ佐々木文一君外二名
ノ競馬法案ニハ明カニ此馬劵ヲ發賣ヲスルト云フコトヲ許スト云フコトノ議案ニナッテ
居ルノデアル是ハ二百十餘名ノ贊成者ガアリマシテ、無論私共ハ今日カラ或ハ此議場ハ
通過スルモノデハナイカト云フコトヲ認メテ居ル一人デアリマス、若シ此案ニシテ通過スル
ト云フコトニナリマシタナラバ、言ハズシテ此競馬會社ノ損害ト云フモノヲ償フコトガ出來
ルノデアル、卽チ馬券發賣ト云フコトヲ許スト云フコトニナリマシタナラバ、競馬會社ハ斯
ノ如キ救濟ヲ求メル理由ハ消滅スルノデアリマス、シテ見マスレバ此先決問題トシマシテハ
競馬法案ヲ採用スルヤ否ヤト云フコトヲ決スルコトガ第一デアリマス、其結果ニ依リマシ
テ此請願委員ノコトハ消滅スルカドウカト云フコトガ生ズルノデアリマスカラ、私ハ此競馬
法案ノ議事ガ濟ミマスルマデ此請願ニ對シテノ採否ヲ議決スルコトハ延期シタイトニムフ
動議デアリマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=145
-
146・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 阪本君ノ緊急動議ニ贊成諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=146
-
147・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、卽チ是ハ通告順ニ依ッテ討論ヲ用井マス、村松恆一
郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=147
-
148・村松恒一郎
○村松恆一郞君 私ハ先ニ討論ニ入リマス前ニ、委員長ノ御報告ニ漏レテ居ルコトガ
アルト思ヒマス、ソレガ採決ノ折ニ差響ノアルコトヽ思ヒマスカラ、委員長ニ少シ伺ヲテ置
キタイ宣シウゴザイマスカ
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=148
-
149・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長ニ質問デスカ、宜シウゴザイマス-村松君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=149
-
150・村松恒一郎
○村松恆一郞君 立川委員長ノ唯今ノ御報告ノ中ニハ此請願委員ニ於テ此競馬ノ
善後策ニ付テノ、特別委員會ニ於ケル御報告ガナカッタヤウデアリマス(「ヒヤ〓」)之ヲ
少シク御報告ヲ願フテ置キマセヌト云フト、討論ニ入ル譯ニイキマセヌカラ、ドウゾ御苦勞
ヂゴザイマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=150
-
151・立川雲平
○立川雲平君 村松君ニ御照會シマスガ、ヤハリ同ジ特別委員會ヲ開イテ終局ハ採
擇ニアッタ、斯ウダト云フコトノ報告ヲシタノデアリマスガ、其特別委員中ニ於ケルトコロノ諸
君ノ言論ヲ一々報告セヨト云フ意味ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=151
-
152・村松恒一郎
○村松恆一郞君 サウ云フ込入ッタ譯デハナイノデスガ、免ニ角此特別委員會ニ於テ
特別ニ調査セラレタ結果ニ付テ、特別委員長カラ御報告ガアッタ、リレヲ一應委員長カ
ラ御報告下スッタ方ガ宜カラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=152
-
153・立川雲平
○立川雲平君 ソレデハ前ノ報告ヲ少シク補ッテ置キマセウ、特別委員ヲ置キマシテ、サ
ウシテ其特別委員デモヤハリ政府ノ人ニモ問答ヲ致シマシタガ、政府ノ方ニ於テハ是ニ
對シテ何等爲ストコロノ考ガナイト云フコトデアル、ソレ故ニ此特別委員ヲ始メ置クトコ
ロノ目的ハ、若シ政府ニシテ此善後策ニ對スル考ガアリシナラバト云フ意味デアッタ、、所ガ
政府ニ於テハ其考ハナイト云フコトデアリマシタカラ、此儘請願委員會ハ本會ニ於テ此
請願ハ採擇スル卽チ此馬券發賣禁止ニ對スル善後ノ處分ヲ相當宜シキヲ得テ施設ヲセ
キバナラヌデハナカラウカト云フ意味ニ於テ、採擇ニ決シタノデゴザイマスガ、若シ是ヨリ以
上ニ私ノ申シタ言葉ニ漏レテ居ルヤウナコトガアリマスルナラバ委員中ノ諸君ノ中ニハ特
別委員モゴザイマスルシ、他ノ委員モゴザイマスルカラ、ソレ等ノ人カラデモ宜シウゴザイマ
スシ、但シ又速記ニ依ッテ御承知下サルカニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=153
-
154・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 村松恆一郞君
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=154
-
155・藏原惟郭
○藏原惟郭君 議長-議長-質問ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=155
-
156・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 村松君ニ發言ヲ許シマシタ
〔村松恆一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=156
-
157・村松恒一郎
○村松恆一郞君 諸君、最早時間モ切迫シテ居リマスルノニ、諸君ノ御〓聽ヲ煩ハスノハ
甚ダ心無イコトヽ存ジマスカラ、成ルベク簡單ニ申上ゲル積リデアリマス、唯今立川委員
長ヨリ熱心ナル御報告ヲ得マシテ、甚ダ其勞ヲ感謝致シマスルノデ、立川君ハ願クバ他ノ請
願事件ニ對シテモ、是ト同樣ニ御熱心ニ報告ヲ願マス(拍手起ル)立川雲平君(「私ハ喜
ンデヤル、唯聽ク人ガ堪ラヌ」ト呼フ)デ唯今此立川委員長ノ御報告ニ依リマシテ、諸君
ハ大體此請願委員會ノ經過ト云フモノハ御承知デアラウト思ヒマスルガ、私モヤハリ請
願委員ノ一人ト致シマシテ、分科會ニ於テモ、總會ニ於テモ、實ハ反對ノ意見ヲ表シテ
置キマシタノデ、故ニ私ハ此席デハ餘リ長ク申上ゲマセヌ積リデアリマスルガ、此分科會及
總會ニ於テ述ベマシタトコロノ意見ヲ玆ニ搔摘ンデ申上ゲタイト思フノデアリマス(「謹
聽々々」ト呼フ者アリ)此競馬ノ善後策ニ付テノ請願ヲ採擇スベシト云フトコロノ、諸君
ノ御意見ヲ伺ヒマスルトー云フト、政府ハ曩ニ之ヲ奬勵ヲシテ、サウシテ馬券ノ發賣ヲ默
許シテ置イテ、後ニ至ッテ之ヲ禁止シタト云フノハ不都合デアル、故ニ政府ハ是ニ對シテ
賠償ヲスベシト云フ御議論デアルト思フノデアリマス、併ナガラ私ハ是ハ全然理由ノ無イ
コトダト思フ、何トナレバ成程此政府ガ奬勵ハシタニ違ナイ、又默許モシタニ違ヒナイノデ
アリマスケレドモ、政府ガ奬勵ヲシタカラト云ッテ、必シモ其奬勵ニ應ジナケレバナラヌト云フ
義務ハ無イ、政府ハ脅迫モシナケレバ命令モシナイノデアル、卽チ撰擇ノ自由ガアルノ
デアルカラ既ニ己ガ是ナリトシテ選ンダナラバ若シ反對ノ不利益ノ結果ガ來ッタナラバ、其
不利益ノ結果ハ自カラ忍バナケレバナラヌト云フコトハ自然ノ結果デアラウト私ハ思フ
ノデアル、且又默許ト云フコトハ何ンデアルカ云ヘバ卽チ見テ見ヌ振リヲスルト云フコト
デアル、見テ見ヌ振リヲスルト云フコトデアレバ、眼ニ餘ッタ場合ニハ之ヲ禁止スルト云フ
コトモ亦已ムヲ得ナイコトデアル假リニ政府ガ明カニ之ヲ許シタトシテ-ドウデアル
カ、許シタ場合トシテドウデアルカ、凡ソ此總テ立派ニ許可サレテ居ルトコロノ營業ニ致
シマシテモ、若シ其事柄ガ社會ノ風俗ヲ害シ、社會ノ秩序ヲ紊ル場合ニハ、國家ハ何
時タリトモ之ヲ禁止スルダケノ力ハ持ッテ居ルノデアル(拍手起ル)而シテ此場合ニ於テハ
國家ハ何等ノ賠償ヲスベキ義務モ責任モ無イノデアル、是ハ行政法一般ノ原則デアルト
私ハ信ジマスデ若シ其場合ニ於テ政府ノ處置ガ不法デアッタトカ政府ノ處置ガ違法デ
アッタトカ云フナラバ或ハ行政訴訟ヲ起スナリ、或ハ訴願ヲ起スナリノ途ガアルダラ
ウト思フ、然ルニ此問題ニ付テハ行政訴訟ヲ起ス餘地モ無ケレバ、訴願ヲ起ス餘地モ
無イ程ノ明白ナ問題デアルノデアルノデアル已ムヲ得ズシテ是ハ請願ノ途ニ出テ來タモノ
デアラウト思ヒマスルガ(拍手起ル)然ラバ此會社法人ガ損害ヲ被ッタト云フ事實ヲ道ノ上
カラ見テ、如何ニ判斷スベキカト云フコトデアル既ニ是ガ法律ノ問題デナイトナッタナ
ラバ卽チ道德上ノ問題ニ訴ヘルヨリ外ニ仕方ガ無イ卽チ會社法人ガ損害ヲ被ッタト云
フ事情ガ氣ノ毒デアルカラ、政府ガ賠償スベキカ否ヤト云フ議論デアル、成程此最初競馬
ヲ企テタトコロノ人〓ノ中ニハ隨分名譽アル紳士モ澤山御アリニナリ、或ハ眞ニ此馬匹
ノ改良發達ヲ希望スル目的カラ御始メニナッタカモ知レヌノデアリマスル、故ニ是ガ馬券
禁止ノタメニ打擊ヲ受ケテ、大ナル不利益ヲ被ッタト云フナラバ其事情ハ如何ニモ氣ノ毒
デアル併ナガラ其會社ノ被ッタ損害ト馬券發賣ノタメニ社會ノ被ッタ損害ト、イヅレガ
大ナルカト云フコトヲ調ベナケレバナラヌノデアル(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ拍手起ル)故
ラニ詳シク申上ゲル必要ハアリマセヌガ、競馬ノ馬券ヲ許サレテ以來、僅々二箇年間
ニ於テ如何ニ社會ニ害毒ヲ流シタカト云フコトハ、諸君ハ時々此新聞紙デ御覽ニナッテ、
旣ニ御分リナッテ居ルコトデアラウト思ヒマス(「特ニ朝日新聞ニ於テ然リ」ト呼フ者アリ、
笑聲起ル)豈啻ニ朝日新聞ノミナランヤ、都下ノ新聞ハ悉ク皆書イテ居ルノデアル、若
シ書カナイ新聞ガアッタナラバ會社ノタメニ操縱セラレテ居ル新聞デアル、(拍手起ル)私ハ
其事實ヲ一々列舉スルノ遑ハアリマセヌケレドモ、此馬券發賣ノタメニ身代ヲ潰シタ者、
若クハ最愛ノ妻ヲ苦界ニ沈メ、最愛ノ娘ヲ醜業婦ニ賣ッタト云フ事實ヲ頻々トシテ吾〓
ハ聞イテ居ル(「議員ニナッテモ貧乏シタ者ハ澤山アル」ト呼フ者アリ、笑聲
起ル)又多クノ社會ニ於テ馬劵ノタメニ自己ニ損害ヲ被ッタ者ハ非常ニ澤山アルノデ
アル、卽チ其當時ノ新聞ニ依リマシテモ競馬ノ開催セラレタル當時ニ於テハ其前後
ハ質屋ガ非常ニ繁昌シタト云フ位ノ事柄デアル、卽チ此競馬ニ趣クトコロノ者ハ馬ノ
知識モ何モナイ人間デ、唯一時ノ僥倖ヲ期シテ赴ク者デアル、卽チ此馬券ノタメニ國
民ノ射倖心ヲ助長セシメタコトハ非常ナモノデアルノデアル、競馬論者ハ動モスレバ軍馬
ガ必要デアル、軍馬ガ必要アルト言ハルルケレドモ、每度吾〓ノ言フガ如ク馬ガ大切デア
ルカ、人ガ大切デアルカト云フ問題デアル、諸君ハ軍馬ガ不完全デアルカラト云フコトヲ
遺憾トセラルヽガ、其遺憾ノ〓ハ吾〓モ同樣デアリマスゲレドモ、日露戰爭ハ馬ガ勝ツタ
ノデアルカ、人ガ勝ッタノデアルカト云フコトヲ御考ヲ願ヒタイ(拍手起リ「名論ダ」ト呼フ
者アリ)成程日露戰爭ニ於テハ單リ馬匹ノミナラズ、兵器モ劣ッテ居タノデアル兵數モ
寡ナカッタノデアル、然ルニモ拘ラズ連戰連勝ヲセラレタト云フコトハ卽チ馬ガ多クノ關
係ヲ持ッテ居ナイト云フ證據デアラウト思フ、然ラバ何ニ由テ勝ッタカト言ヘバ卽チ國民
ノ燃ユルガ如キ愛國心、軍隊ノ忠勇義烈ニ依ッテ勝利ヲ得タモノデアルノデアル
然ルニ一方ニ於テ馬匹ノ奬勵モ宜シイガ、馬匹ノ奬勵ノタメニ社會ノ風俗ヲ壞リ、社會
ノ人心ヲ傷ヒ、而シテ國民ノ品性ヲ堕落セシメマシタ、其結果ハ如何デアリマセウ、如何
ニ戰場ニ立派ナ馬ヲ送ッテモ、其軍隊ノ主要部タル兵卒ナルモノガ愛國心ナク、獻身的
ノ心ガナクシテ、戰ニ臨ンデ果シテ勝ツコトガ出來マセウカ(拍手起ル)何レノ戰爭ニ於テ
モ戰ノ結果ハイツデモ士氣ノ立ッテ居ル、卽チ風紀ノ正シイ軍隊ガ常ニ勝ヲ占メルノデアル、
普佛戰爭ノ場合ニ於テハドウデアルカ、如何ナル人モ獨逸ガ勝ツー普漏西ガ勝ツト
云フ者ハ世界ニナカッタノデアル、佛蘭西ハ軍隊モ立派デアル、兵數モ多イ、兵器モ完備
シテ居ルト云フコトデアッタノガ、一敗地ニ塗レテ佛蘭西ガ城下ノ盟ヲ爲シタノハ何ンデ
アッタカト云ヘバ、卽チ軍制ノ腐敗ト云フコトデアル軍制ノ腐敗ト云フノハ何カト云ヘバ
卽チ人間ノ品性ガ墮落シテ居ッタノデアル、卽チ軍人ハ軍人トシテノ精神ヲ有ッテ居ナカッ
タノデアル日露戰爭ニ於テ露國ガ日本ニ對シテ兵數ニ於テモ、兵器ニ於テモ、馬匹ニ於
テモ優ッテ居ッタニモ拘ハラズ、アノ如キ敗北ヲ取ッタノハ何ンデアルカト云ヘバ、卽チヤハリ
軍制ノ腐敗デアッダノデアル、卽チ此理窟カラ見マシテモ馬ノ良イト云フコトガ軍隊ニカヲ
添ヘルカ、人ガ良イト云フコトガ軍隊ニ力ヲ添ヘルカト云フコトハ明ガデアラウト思フノデ
アル、競馬論者ハ馬ノミヲ觀テ人ヲ見ナイノデアル、馬ハ人間ノ使用ノタメニ造ラレテ居
ルノデアル、人間ノ品性ガ堕落シタ場合ニ於テハ如何ニ立派ナ馬ヲ造ッテモ、軍人ニ愛
國的精神ガナクシテ、金錢ノタメニ國ヲ賣ルト云フコトガアッタナラバ如何デアルカ、幾十
万ノ馬匹ガ揃ッテ居テモ何ノ役ニモ立タヌノデアル、此〓カラ見マシテモ軍馬ノ完備ハ
必要デアルケレドモ軍馬以上ノ社會ノ道德ヲ進メ、社會ノ風儀ヲ良クスルト云フコ
トハ極メテ必要ナ事柄デアラウト思フ、然ルニモ拘ラズ、此競馬ノ馬券ノタメニ社會
ガ大ナル風儀ヲ紊サレ、大ニ秩序ヲ紊サルヽト云フコトデアッタナラバ、之ヲ差止メタ政
府ハ當然ナコトヲシタノデアルサウシテ今日マデ社會ガ被ッタ其害毒ハ會社ガ被ッタ
損害ヨリ幾千倍、幾万倍ノ甚シキデアッタノデアリマス(拍手起ル)之ニ向ッテ此競馬ノ
法人ノ損害ガ氣ノ毒デアルカラト云ウテ、之ヲ賠償スル必要ハナイト思フ、成程政府
ガ許スベカラザルモノヲ許シタト云フ責任ハアリマス(「ソコダ」ト呼フ者アリ)併シ之ハ政
治問題トシテ政府ノ責任ヲ攻メルガ良イ、政治問題ハ必シモ賠償ガ伴フモノデハナイ、
政府ノ責任ヲ問フ一事ニ至ッタナラバ私ハ競馬論者ノ諸君ト或ハ一致ニ出ルカモ知
レナイ、併ナガラ此請願ノ要旨タル賠償ヲ求ムルト云フコトニ對シテハ、私ハ斷ジテ
反對ヲ致スノデアリマス、サウシテ更ニ此問題ヲ採擇スベカラズト云フ一ノ理由ハ唯今
委員長カラ報告ガアリマシタガ、特別委員會ヲ請願委員會ノ中デ作ッテ政府ト折衝シ
タ結果、政府ハ賠償ハ如何ナル場合ニ於テモスルコトガ出來ナイ、而シテ馬匹ノ奬勵費
ヲ削除セラレタル今日ハ、其他ニモ之ヲ救濟スベキ方法ガ一モナイト云フコトヲ政府ガ斷
言シテ居ル、而シテ特別委員會ハ之ニ對シテ如何ナル見解ヲ持ッテ居ッタカト云ヘバ、特
別委員會モ別ニ何等ノ方法ガナイト云フコトヲ、恆松委員長カラノ報告デアッタノデアル、
然ラバ假リニ之ヲ採擇スベキモノトシテ見テカラガ、政府モ何等ノ爲スベキ方法ガナイト
答ヘル又委員會ニ於テモ何等ノ爲スベキ方法ガナイト言フナラバ、之ヲ採擇シタ上デ如
何ニシテ請願者ノ目的ヲ達セラレルノデアルカ、之ヲ採擇論者ニ私ハ御尋ネヲシタイト思
フ、採擇シテ效力ガナイモノナラバ初メカラ採擇シナイガ宜シイノデアル(「政府ガ反對スレ
パ何テモヤラナイカ」ト呼フ者アリ)故ニ政府ガ方法ガナイト云フ、アルナラバナゼ委員會ハ
示サナイカ、政府ガ方法ガナイト云フ場合ニ之ヲ採擇スベシト云フナラバ宜シク方法ヲ
指示スル位ノコトハシナケレバナラヌ、方法ヲ指示サルヽノミナラズ方法ガナイト云フコトヲ
云フテ、サウシテ之ヲ採擇スベシト云フノハ餘リ無責任ナルコトデアルト思フ、故ニ何レノ
〓カラシテモ此請願ハ採擇スベカラザルモノト思ヒマスカラ、是ハ採擇セラレザランコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=157
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158・福井三郎
○福井三郞君 本員ハ今ノ村松君ノ演說ニ對シテ反對ヲスルノデモ、贊成ヲスルモノデ
モアリマセヌ、少シ村松君ノ演說中ニ、是非自身ガ委員長ノ報告ヲ補ウテ置カヌナラヌ
ト信ズル點ガアリマスカラ、此場合一言述ベテ置カウト思ヒマス、本員ハ此件ヲ審査スル
分科ノ主査デアル、而シテ其特別委員モ本員ノ指名ニ依ッテ出來タル特別委員デアル、故
ニ前後ノ關係ハ聊カ責任ヲ有シテ居ルノデアル、然ルニ今村松君ノ御議論中ニ、特別
委員モ何等方法ガナイ、政府モ何等方法ガナイ、又特別委員ノ報告ヲ受ケタル分科會
モ何等方法ガナイ一切方法ガナイ、政府ニ聽クモ亦方法ガナイ何處モ彼處モ方法
ノナイモノヲ採擇シテ、何トスルカ、斯ウ云フコトデアリマシタ、斯ノ如ク論ゼラルヽト委
員會ハ甚ダ審査ガ行屆イテ居ラヌヤウニ聽エルノデアル、委員會ハ左樣ナ無責任ノ審査
ヲ致シタノデハナイノデアリマス、免ニ角政府ガ始メカラ默許デハナイ、勸メテヤラシテ居ル
ノデアル、ソレハ有形ノ證據ガアルノデアル、然ルニ之ヲ止メルニ相當ノ手續モ盡サズ、止
メタト云フノハ妄斷デアル其妄斷ヨリ生ズル善後ノ處置ヲセヨト云フコトハ政府ニ於
テ必ズ責ヲ負ハナケレバナラヌト認メタノデアルヽ卽チ之ヲ救フトコロノ方法ヲ具體的ニ委
員會ヨリ描イテハ出サヌガ、政府自ラ案ヲ描イテ救ヘト云フノデアル故ニ議會が採擇シ
テ政府ニ之ヲ送ッタナラバ、政府ハ此案件ヲ採擇シタル議會ニ向ッテ如何ニスルカ答辯セ
ヨ卽チ報〓ヲ求メルト云フ具體ノ報告ヲ委員長ハ致シテ居ルノデアリマス、委員長ノ言葉
ノ報告ノ中ニハ漏レテ居ルガ、特別報告ニ付テ二樣ニ御覽ニナレバサウ云フ報告ガシテアル
ノデアル、故ニ方法ノナイモノヲ擔出シタノデハナイノデアリマスカラ、是ダケヲ補ウテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=158
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159・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 藏原惟郭君
(「討論終結」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=159
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160・藏原惟郭
○藏原惟郭君 本問題ニ付テハ最早論旨ハ盡キテ居ッテ、明々白々天日ノ如キモノデ
アルカラ、拙者ハ別ニ述べマセヌ
〔「大出來大出來」ト呼フ者アリ(拍手起ル)〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=160
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161・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 討論終結ノ動議ニ定規ノ贊成ガアリマスカ
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=161
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162・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 討論終結ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=162
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163・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ討論終結ニ致シマス-採決致
シマス、委員長ノ報告ハ本請願ヲ採擇スベシト云フノデアリマス、ソレカラ反對ノ意見ハ
今村松君が述ベラレタ採擇スベカラズト云フノデアリマス、ソレデ委員長ノ報告ヲ先ヅ第
一ニ採決致シマス、本請願卽チ日程第三十二、第三十三ハ委員長報告通リニ採擇
スベシト云フ方ニ御同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=163
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164・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 多數、是ニテ日程ノ第三十二、第三十三ハ採擇スルコト
ニ決シマス、御諮リヲ致シマス、根本正君外三名提出ノ衆議院議員選舉法中改正法律
案委員鈴木力君御病氣ノタメ辭任ノ申出ガアリマシタガ、許可シテ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=164
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165・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ、其補缺トシテ田川大吉郞君ヲ指名致
シマス、諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
國有林野ヲ地方自治體ニ下付ニ關スル建議案
提出者小川平吉君宮古啓三郞君立川雲平君
戶水寛人君淺羽靖君福井三郞君
恆松隆慶君三浦盛德君
地方稅制限ニ關スル法律中改正法律案
提出者古井由之君長晴登君神前修三君
景山甚右衞門君森本駿君
勳章佩用ニ關スル建議案
提出者大橋賴摸君鈴木辰次郞君
農會法中改正法律案
提出者築山和一君中倉万次郞君松尾君
荒川村良君丹治郞君
川元町高等工業大學長駒木四川大腸胃の五兵衞君
晴受注青秋熊松西平木岡本浦村島壽人君
恆松
武市庫太君濱名信平君義一君
齋藤宇一郞君佐藤庫喜君新次郞君
新聞紙法案
提出者村松恆一郎君鈴木力君
取引所改善ニ關スル建議案
提出者吉植庄一郞君築山和一君橫井甚四郎君
荻野芳藏君
砂糖專賣法案
提出者大橋賴摸君神崎東藏君木村艮君
的野半介君大野久次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=165
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166・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニテ散
會致シマス
午後五時二十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01519090304&spkNum=166
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