1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十二年三月九日(火曜日)午後一時九分開議
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議事日程 第十六號 明治四十二年三月九日
午後一時開議
第一 (第一號)明治四十二年度歳入歳出總豫算追加案
第二 (特第一號)明治四十二年度特別會計歳入歳出豫算追加案
第三 軌道の抵當に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第五 擔保附社債信託法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第七 明治四十一年法律第九號中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 地方税制限に關する法律中改正法律案(古井由之君外四名提出) 第一讀會
第九 農會法中改正法律案(築山和一君外十七名提出) 第一讀會
第十 新聞紙法案(村松恒一郎君外一名提出) 第一讀會
第十一 會計法中改正法律案(森本駿君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 非常特別税法中改正法律案(衆第九號)(島田三郎君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 非常特別税法中改正法律案(衆第十號)(島田三郎君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 鹽專賣法廢止法律案(島田三郎君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=0
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001・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
軌道ノ抵當ニ關スル法律案
擔保附社債信託法中改正法律案
一政府ヨリ左ノ質問書ニ對シ答辯書ヲ送付セラレタリ
外交ニ關スル質問主意書(小村外務大臣)
南米移民ニ關スル質問主意書(小村外務大臣)
法廷ノ規律竝ニ附帶控訴ニ關スル質問主意書(岡部司法大臣)
非常特別稅改廢ニ關スル質問主意書(桂大藏大臣)
衆議院議員藏原惟郭君提出外交ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候也
明治四十二年三月九日
內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
(別紙)
藏原惟郭君提出ノ外交ニ關スル質問ニ對スル答辯書
質問第一第二第三及第四ハ何レモ〓國ト商議中ノ事項ニ屬スルヲ以テ未タ之ニ
關シ答辯ヲ爲スノ時機ニ達セサルモノト認ム
質問第五ニ關シテハ政府ハ未タ右ノ如キ要求ニ接シタル事實ナシ
質問第六ノ事項ハ單ニ新聞紙ノ報道ニ止マルノミナラス獨國ノ帝國ニ對スル態度
ハ昨年十一月十日獨逸帝國議會ニ於ケル同國宰相ノ言明ニ據ルモ明瞭ナルヲ
以テ政府ハ右ノ如キ新聞紙ノ報道ニ關シ何等ノ處置ヲモ採ルノ必要ヲ認メサル次
第ナリ
質問第七ニ關シテハ二月二日本大臣カ衆議院ニ於テ演說セル所ノ如シ
右及答辯候也
明治四十二年三月九日
外務大臣伯爵小村壽太郎
衆議院議員田川大吉郞君提出南米移民ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
候也
明治四十二年三月九日
內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
(別紙)
衆議院議員田川大吉郞君提出南米移民ニ關スル質問ニ對スル答辯書
質問第一ニ關シ政府ノ態度方針ハ本大臣カ二月二日衆議院ニ於テ演述セル如
クニシテ南米方面ノ旣ニ調査濟ノ一部地方ニ對シテハ移民渡航ヲ許可スト雖モ
大體ニ於テ尙ホ攻究中ニ屬ス
質問第二ニ關シ政府ハ移民出發ノ際適當ノ注意ヲ怠ラサリシハ勿論ナリ而シテ
其歸來ノ關係ニ付テハ目下事實調査中ナリ
質問第三テ關シ移民會社ハ純然タル營利會社ニシテ政府ノ抱持スル方針翼贊ノ
用ニ供スヘキ機關ニアラス
質問第四ニ關シ政府ハ事實調査結丁ノ上適當ノ處分ヲナス方針ナリ
質問第五ニ關シ帝國政府ハ我移民ヲ苦力ト認メス又政府ノ發給スル旅券ニ記
載セル無職業ナル文字ニ對スル外人ノ誤解ハ假ニ之アリトスルモ少數ノ事例ニ屬
ス而シテ政府ハ旅劵ノ形式變更ニ關シ目下取調中ナリ
右及答辯候也
明治四十二年三月九日
外務大臣伯爵小村壽太郞
衆議院議員高木益太郞君提出法廷ノ規律竝附帶控訴ニ關スル質問ニ對シ別
紙答辯書差進候也
明治四十二年三月九日
內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
(別紙)
衆議院議員高木益太郞君提出法廷ノ規律竝ニ附帶控訴ニ關スル質問ニ
對スル答辯書
一政府ハ裁判所ヲシテ執務時間外ニ於テ開廷セシムルノ命令又ハ內訓ヲ發シタル
コトナシ又裁判所ニ於テ執務時間外ニ亙リテ開廷スルコトアルハ訴訟事件輻輳
スルニ當リ裁判ノ延滯ヲ招カサルカ爲メ臨時施ス所ノ措置ニ過キス平常ニ於テ
ハ開廷ノ日時ニ關シ可成訴訟關係人ノ便宜ヲモ顧ミ夜間ニ亙リテ開廷セサル
樣勗ム可キハ勿論ナリ
一檢事ハ第一審裁判所ニ於テ言渡シタル刑適當ナラスト認ムルカ故ニ控訴ノ申立
ヲ爲スモノニシテ漫リニ刑ヲ加重スルカ爲メ其申立ヲ爲スモノニ非ス又被告人ヲ
威嚇シテ控訴ノ取下ヲ强ユルノ目的ヲ以テ其申立ヲ爲スモノニ非サルハ勿論ナリ
然レトモ尙其適正ヲ期スル爲メ將來ニ於テモ充分之レカ注意ヲ怠ラサルヘシ
右及答辯候也
明治四十二年三月九日
司法大臣子爵岡部長職
衆議院議員〓水市太郞君提出非常特別稅改廢ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯
書差進侯也
明治四十二年三月九日
內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
(別紙)
衆議院議員〓水市太郞君提出非常特別稅改廢ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
一非常特別稅ハ臨時事件ニ困リテ生シタル經費ヲ支辨スルヲ目的トシ平和克復
ニ至リタル翌年三月末日限廢止セラルヘキモノトシテ制定セラレタルモノナリシト
雖戰後國債ノ元利償還金恩給年金等國家ノ義務ニ屬スル經費ノ增加巨額
ニ上リ之ヲ將來ニ繼續スルノ止ムヲ得サルニ至リタルモノナリ
一非常特別稅ノ繼續案ニ付議會ノ協贊ヲ求ムルニ當リ當時ノ政府ハ二箇年ヲ期
シ一般稅法ノ調査ヲ爲シ整理ヲ行フヘキ旨ヲ宣明シ愼重調査ノ上各種租稅
整理案ヲ具シ之ヲ第二十四囘帝國議會ニ提出シタリ
一明治四十二年度ノ財政計畫ハ確實ナル歲入ヲ以テ必要ノ歲出ニ應スルト同
時ニ急劇ニ增加シタル國債ノ整理ヲ爲シ之ニ依リ財政ノ基礎ヲ鞏固ニスルヲ以
テ最モ急務ナリト認メ出來得ル限リ事業ノ繰延、政費ノ節約國債償還額ノ
增加ヲ計ルコトトシタルモノニシテ政府ハ此際歲入ノ滅少ヲ爲スノ餘地ハ之ヲ發
見スルコト能ハス然レトモ稅法ノ整理ニ付テハ政府ニ於テ終始其調査ヲ怠ラス
右及答辯候也
明治四十二年三月九日
大藏大臣侯爵桂太郞
一貴族院ハ本院ノ送付ニ係ル政府提出帝國鐵道會計法案ヲ可決シタル旨同院ヨ
リ通牒ヲ受領セリ
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
曆法ニ關スル建議案
提出者早川龍介君酒井三郞君橋本久太郎君
渡良瀬川改修工事速成ニ關スル建議案
提出者武藤金吉君小久保喜武七君君吉植庄一郞君
齋藤珪次君日向輝小澤愛次郞君
木村半兵衞君津久居彥七君
農科大學增設ニ關スル建議案
提出者木村良君川崎安之助君
新聞紙及定期刊行物ノ郵稅輕減ニ關スル建議案
提出者村松恆一郞君鈴木力君石橋爲之助君
裁判所管轄區域變更ニ關スル法津案
提出者佐々木鐵太郞君平島松尾君長晴登君
齋藤二郞君東武君白石義郞君
鐵道改築ニ關スル建議案
提出者水品平右衞門君
一田邊熊一君ヨリ工場法制定ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆ニ揭載ス〕
工場法制定ニ關スル質問主意書
右成規ニ據り提出候也
明治四十二年三月八日
提出者田邊飴、贊成者竹越與三郞
外三十三名
工場法制定ニ關スル質問主意書
工場法ヲ制定スルハ頗ル重要ノ問題ナリ政府ハ愼重ノ調査ヲ遂ケ法案審査ニ遺算
ヲキヲ期セサル可ラサルハ勿論之ヲ民間工業家ニ諮問シ其意見ニ重キヲ措クハ蓋シ
當然ノ事ナリト信ス依リテ左ノ質問ニ對シ速ニ答辯アランコトヲ望ム
一政府カ實施セントスル時期如何而シテ目下如何ナル程度ニ迄調査ヲ進行セシ
メタルヤ
二現在ニ於ケル法案ノ內容如何
三制定ニ付テハ工業家ノ意見ヲ徵スルノ必要アルモノト思考ス政府ノ處見如何
右及質問候也
(左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一去ル六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
競馬法案
小山田信藏君野久次君一君
田邊熊一君木慶サン·ジョン·アンドル泰藏君
隆慶君田
內藤關東高柚大輔彥武露二君君君君君
公益費用法 3000万円黃金鐘太郎君
入六月澤幾直乏山內鐵彌君
島浦太郞君野延君
米田穰君八束可海君
村松恆一郞君關口安太郞君富島暢夫君
商業會議所法中改正法律案
菊池侃二君水品平右衞門君花村覺三郞君
本駿君荻野芳藏君長谷川豐吉君
〓藏君千田軍之助君町田旦龍君
製造水餃 大床 2.5肇君綾部惣兵衞君天野董平君
中國語大學鈴木摠兵衞君ト中部野武營君
岩下〓周君細野次郞君喜太郞君
宅地地價修正法案外三件
倉中君阿部德三郞君古野孫太郞君
三藏古井由之君
坪翠福天板岡川一
鐵精有效力的滋味晴登君十衞君
田川十郞三大關丹長夏森尾西谷線 16個 平均二年の一年は、賴馬君地 岩 君 君 者 君
大加爾大豆腐 500五 〇 双 三 十 ザ又一君名古屋書店管理
現 新柳藏君壽衞吉君
村田虎次郎君千早正次郞君
淺野陽吉君橋本太吉君鈴木力君
商事會社ニ關スル法律案
永江純一君長島鷲太郞君秋岡義一君
松田源治君神崎東藏君武田貞之助君
山田珠一君和田尊義君橫山金太郞君
動章佩用ニ關スル建議案
遠藤良吉君森國造君大橋賴摸君
中村舜次郞君武市庫太君竹內〓明君
安田勳君髙橋政右衞門君小泉又次郞君
取引所改善ニ關スル建議案
板東勘五郞君立川雲平君河上英君
植場平君吉植庄一郞君阿部孫左衞門君
肥後幸盛君小澤愛次郞君一條特價
坂口仁一郞君津久居彥七君胡本產業界
守山又三君松下軍治君村省吾君
中村豐次郞君高木益太郞君次郞君
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
宅地地價修正法案外三件委員會
(福田又一君
委員長板倉中君理事(大)西新北大明日香港
商業會議所法中改正法律案委員會
委員長菊池侃二君理事一太田〓藏君
〔細野次郞君
商事會社ニ關スル法律案委員會
委員長永江純一君理事橫山金太郞君
勳章佩用ニ關スル建議案委員會
委員長大橋賴摸君理事武市庫太君
取引所改善ニ關スル建議案委員會
委員長立川雲平君理事「細野次郞君
(小澤愛次郞君
競馬法案委員會
(佐々木文一君
委員長宮古啓三郞君理事鈴木久次郞君
米田穰君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=1
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002・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御諮リヲ致シマス、川原茂輔君病氣ニ付去七日ヨリ二週
間山田桃作君母病氣ニ付昨八日ヨリ十日間、首藤陸三君病氣ニ付今九日ヨリ二
週間、柴四朗君病氣ニ付今九日ヨリ十日間、各〓請暇ノ願出ガアリマスガ、許可シテ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=2
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003・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メ許可スルコトニ致シマス、菊池侃二君ヨ
リ商業會議所法中改正法律案委員會ヲ本會議ノ時間中日程第十二ノ討議時刻マ
デ開キタイト云フ請求ガゴザイマス、許可シテ差支アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=3
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004・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 差支ナケレバ許可スルコトニ致シマス、宅地價修正法案外
三件委員原田十衞君病氣ノタメ辭任ノ申出アリ、許可シテ差支ナキヤ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=4
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005・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 差支ナケレバ其補缺トシテ岩本晴之君ヲ指名シマス、競馬
法案委員柚木慶二君他ノ委員ヲ兼ネ多忙ナルト、且ツ病氣ノタメ辭任ノ申出アリ許
可シテ差支ナキヤ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=5
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006・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 差支ナケレバ其補缺トシテ有田源一郞君ヲ指名致シマス、
商業會議所法中改正法律案委員荻野芳藏君他ノ委員ヲ兼ネ多忙ニ付辭任ノ申出
アリ、許可シテ差支ナキヤ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=6
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007・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 差支ナケレバ其補缺トシテ山本悌二郞君ヲ指名致シマス、
御諮リ致シマス、法律案ハ配付後二日ヲ經ナケレバ日程ニ揭載スルコトガ出來ナイ規
則ニナッテ居リマスガ、會期モ追〓切迫ヲ致シマシタカラ、時間ヲ短縮シタイト思ヒマスガ、
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=7
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008・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ其通リニ決定致シタモノト認メマス、島田三
郞君ノ質問演說中ニ議長ニ請求ニナッタ〓ガアリマシタカラ之ヲ調査シマシタ、今其報
告書ヲ朗讀致サセマス
〔書記朗讀〕
報告書
昨日議員島田三郞君ノ質問演說中左ノ一節有之候
議長ト竝ニ當該官吏トノ間ニ此議會ノ權利ヲ侵サレタカ侵カサレサルカト云フ手續
ヲ詳細取調ベラレテ其責任ノアル處ヲ糺シテ將來議會ノ獨立ヲ完全ナラシムルコト
ヲ議長ニ向シテ本員ハ特ニ終リノ請求ノ一言ト致シマス
本件ニ就テハ其當日守衞ヨリ提出シタル報告ニ審ナルヲ以テ別紙供高覽候此報告
ヲ按スルニ議長ハ警部ノ提議ニ基キタル守衞長ノ申出ニ依り總代ハ五名ナルヘシト
心得其總代ニ面會スヘシトノコトヲ承諾セラレ警部ハ之ヲ以テ自己ノ提議ノ採用セ
ラレタルモノト思考シ五名ノ外入院ヲ拒否セントシタルモノニ候元來議長ノ意思ハ五
人ニアラサレハ面會セスト云フニアラス總代ナラハ幾人ニテモ面會スヘキニアリタルナリ
然ルニ警察官カ來衆ニ向テ總代ヲ選フヘシ總代五人ニアラサレハ入院ヲ許サストノ干
涉ハ議長ノ意思ニ反スル警察官ノ專斷ナルカ如キ看アルモ事實ハ右ニ述フルカ如ク
言語ノ行違ニ出テタルモノナレハ强チ警察官ヲ咎ムヘキニアラスト思考致シ候而シテ
事議院構內ニ於テ起リタルヨリ本院議長ノ警察權ヲ侵害シタルカ如キ看アルモ本院
派出ノ警察官ハ議長ノ指揮ヲ受クルモノニシテ法規上今囘ノ出來事モ議長ノ警察
權執行ニ外ナラス別紙守衞長ノ報告ノ如ク議長ニ伺ヒタル上ニ處置シタルモノナレハ
幾分ノ行違アリシト雖モ警察官ノ行動ハ法規上咎ムヘキ點ナキモノト存候
議院法第八十六條ニ曰ク各議院ニ於テ要スル所ノ警察官吏ハ政府之ヲ派出シ
議長ノ指揮ヲ受ケシム衆議院規則第百六十九條ニ曰ク守衞ハ議事堂内警察官
吏ハ議事堂外ノ警察ヲ爲ス但シ議長ノ特ニ命シタル場合ニ於テハ警察官吏議事
堂內ノ警察ヲ行フコトアルヘシ
以上ノ事實ヨリ綜合スレハ今囘本院構內ニ於ケル警察官ノ行動ハ本院ノ權利ヲ侵
害シタルモノニアラスト思考致候
明治四十二年三月七日
衆議院書記官長林田龜太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
報〓書
本日午後十二時半頃小村吉松兩派出警部ノ來訪ニ接シ其要旨ハ織物消費稅廢
止運動員多數陳情書ヲ携ヘ兩院議長ニ面接ヲ乞ハンカ爲メ來院スル趣キ之ニ就テハ
各大臣ヘハ總代五名ヲ限リ面會セシムルノ方針ナルニ依リ當院議長ニ於テモ右同樣
取計ヒ可然ヤトノコトニ付キ右ノ趣議長ヘ相伺候處議長承諾ニ付其旨兩警部ヘ通
告致置キタリ然ルニ同午後二時三十分右多數ノ運動員本院ヘ續々押掛ケ來リ五
名ノミニテハ甚不滿足ノ模樣ニテ遂ニ警察官ト彼是押問答ヲ始メタル際議長ヨリ本
職ヲ招カレ總代全部ニ面會スルニ付第二面談室ヘ案內セヨトノ命ニ依リ本職ハ其
旨田川麴町署長へ相含メ總代關田嘉七郞外十九名ヲ面談室ヘ招致セリ
於是議長ハ右總代全員ニ對シ「議長ヘノ面會ハ五人ヲ限ルト申シタルモノガアル相デ
スガコレハ言葉ノ間違ヒナラン議長ハ多人數來院トノコト故其內ノ總代ニ面會セント
申シタルノミ別ニ五人ト限リタル譯デハアリマセン總代トアラバ幾人ニテモ快ク面會ス
ルノ考ヘナレバ左樣御了承アリタシ」ト夫ヨリ陳情ノ主旨ヲ二三ノ總代ヨリ聽キ取ラ
レタリ
右報告候也
明治四十二年三月三日
守衞長下林貞雄
林田書記官長殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=8
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009・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 右當時ノ〓末デアルト御承知アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=9
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010・島田三郎
○島田三郞君 唯今ノ〓末ニ付テ書記官長ノ意見デ議員ノ權利ヲ侵害シナイト御
認ニナリマシタコトニ付テ、本員ガ大ニ安心致シマシタ、初メヨリ議長カラシテ五名ニ限
ラレタト云フコトハ事實デナイト云フコトモ分明致シマシタガ、本員ノ意見デハ、議員ノ權
利ヲ侵害シタトハ心得マセヌケレドモ、警察官ガ五名ニアラザレバ不都合ナリト云フコト
ハ、誠ニ無益ナル干涉デアッタト云フコトヲ本員ハ確信致シマス、議長ガ確ニ二十名ヲ
延見シテ會談セラレタコトヲ唯今ノ報告ニ依ッテ愈〓本員ノ目擊シタ所ト符合致シテ居
リマス、總代ガ二十名、這入リタイト云フコトガ事實デ、サウシテ五名ナラネバ入レナイト
警察官ガ言ッタト云フコトハ議長ノ意思ニアラズシテ、警察官ノ無益ノ干涉デアッタト云
フコトダケハ本員ハ唯今ノ報告ニ依ッテ動スベカラザル事實ナリト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=10
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011・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第一第二ハ豫算案ナルニ依リ併セテ委員長ヨリ報
告ヲ致サレマス、豫算委員長栗原亮一君
第(第一號)明治四十二年度歲入歲出總像算追加案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=11
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012・福井三郎
○福井三郞君 チヨット此際許可ヲ請ヒマス、請願委員會中ノ專用漁業免許處分ニ
關スル件外一件、及汽船「トロール」漁業禁止ノ件特別調査委員會、竝ニ金祿公債
證書御下附願書ノ變造及破棄ノ證明ニ關スル件ノ特別調査委員會、此二件ノ委
員會ヲ開キタイト思ヒマス、重要ナル議案ノ審査マデニハ濟ムト考ヘマスカラ此段御許
可ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=12
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013・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=13
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014・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマス、栗原亮一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=14
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015・福井三郎
○福井三郞君 ソレデハ兩件ノ委員諸君ハ請願委員室へ御集リ下サイ
〔栗原亮一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=15
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016・栗原亮一
○栗原亮一君 四十二年度第一號及四十二年度特別會計第一號此豫算案ノ審
査ノ結果ヲ御報告致シマス、玆ニ歲入臨時部ノ第十三款前年度繰入金八十七万餘
トアリマスルガ、此第十三款トアルノヲ第十二款ト修正ヲ致シタノデアリマス、其理由ハ
前ノ總豫算ノトキニ於テ第十二款一時借入金二百六十二万圓ト云フモノガアリマシタ
是ハ卽チ阿里山ノ經營デアリマシテ、此費目ガ削除ニナリマシタカラ自然ノ結果、此第
十三款ト云フノガ第十二款ニナル譯デアリマス、ソレハ委員會ニ於テ修正ヲ致シタノデア
リマス、此追加豫算ノ要求ノ重ナルモノハ利根川ノ改修工事費デアリマス、是ハ第一期
明治三十三年度ヨリ起工シ殆ド完成ニ至ラントシテ居ルノデアリマシテ、第二期ガ明治
四十年度ヨリ十箇年ノ豫定ヲ以テ工事中デアリマス、此度第三期工事ヲモ併セテ施
行スルノ必要アッテ此追加ガ出マシタノデアリマス、是ハ近年洪水ガ荐リニアリマシテ其損
害モ甚シク、速ニ此利根川全川ノ改修ヲ爲サナケレバ今後益〓被害ノ虞ガアルト云フ
理由ニ依ッテ追加要求ガ出タノデアリマス、四十二年度ヨリ五十六年度ニ至ル十五年
間ニ割當テヽ既定繼續費ニ更ニ八百四十五万圓餘ヲ增加スルコトニナッタノデアリマ
ス、但シ四十二年度分ハ二十万圓デアリマシテ是ハ地方ノ分擔納付金テゴザイマシ
テ、國庫ヨリハ一文モ增加支出スル譯デハナイノデアリマシテ、此地方ノ分擔納付金ノミ
ニ依ッテ事業ヲ繼續スルト云フノデアリマス、ソレカラ機密費ノ五万圓、紀念章ノ調製
費、是ハ皇太子殿下ガ曩ニ御渡韓ニ相成リマシテ此紀念章ト云フモノヲ調製スルノ經
費ガ三千七百十六圓デアリマス、ソレカラ伊太利ノ地震調査費、是ハ四十一年度ノ追
加豫算案ガ既ニ通過致シマシテ、其金額ガ四千七百四圓デアリマシタガ、更ニ四十二
年度分千八百五十六圓ノ追加要求ナノデアリマス、此追加豫算中ニ於キマシテ最モ主ナ
ルモノハ日英ノ博覽曾ノ贊同費デアリマシテ、總額が百八十万圓、三箇年ノ繼續費ト
ナッテ居リマシテ、四十二年度ガ八十二万餘、四十三年度分ガ九十七万圓餘、四十四
年度分ハ僅ニ五千五百圓餘デアルノデアリマス、此日英博覽會贊同ノ必要ハ當局者ノ
說明ニ依レバ、我國ノ產業ヲ振作シ、貿易ヲ擴張スル上ニ於テ大ニ利益アルモノデアル、又
同盟國ノ關係ヨリシテモ贊同ノ必要ガアルト云フコトデアリマス、我國ト英國トハ同盟益〓
固ヲ加ヘマスルガ、併シ貿易ノ〓カラ申シマスルト甚ダ微々タルモノデアリマシテ、英國ノ
輸入總額六十五億ノ中デ、日本ヨリ輸入額ハ僅三一千五百五十二万圓餘ニ過ギヌノデ
アリマシテ、斯ノ如ク貿易ノ振ハザルハ同盟國ノ關係トシテモ甚ダ遺憾ナル譯デアルカ
ラシテ、此貿易ヲ擴張スル上ニ於テ必要デアルト云フノガ當局者ノ說明デアリマシタ、此
事ノ已ムヲ得ヌト云フコトハ委員會ニ於テ認メタノデアリマシタガ、我同盟國ト致シ其
金額ガ百八十万圓ナノデアリマス=委員會ニ於テ質問ノ起リマシタノハ此博覽會贊同
ハ必要デアルケレドモ、金額ガ是デハ不足デハアルマイカ、折角贊同ヲスルナラバ我國ノ
體面ヲ辱シメナイトコロノ博覽會ヲヤリタイ、斯ウ云フ質疑ニ對シテ當局者ノ答ニ依リマ
スト、英佛博覽會ノトキニ於キマシテモ、佛國政府ノ補助費ト云フモノハ百万圓デアッタ
ト云フコトデアリマス、サウシテ此英佛博覽會ノ當時ノ場所ハ十六万八千坪アリマシテ、
其時ニハ佛國ノ用井タ所ノ土地ハ八千百坪デアッタノデアル、今囘モヤハリ其場所ハ英
佛博覽會ノアッタト同ジ場所テアリマシテ、其敷地ガ日本ノ取分ガ六千八百坪デアルカラ
シテ、此英佛博覽會ニ比シテ見テモ、地積カラ申シテモ、餘リ劣ッタモノデナイト云フコトノ
說明デアリマシタ百八十万デハアリマスケレドモ、出品人及地方補助費等ノ經費ハ此百
八十万圓餘ノ外デアリマスカラシテ、是等ノ經費ヲ加ヘマスルナラバ相當ナル博覽會ハ出
來ル、斯ノ如キ答辯デアッタノデアリマス此博覽會ハ他國ヨリモ英國ニ對シテ申込ガアッ
タサウデアリマスケレドモ、之ヲ謝絕ヲ致シテ殊更ニ我國ノ贊同ヲ求メ來ッタ次第デアリマ
スルカラシテ、此博覽會ノ必要ナルコトハ確カニ之ヲ認メタノデアリマシタ、特第一號ノ方
ハ臺灣總督府ノ十二万圓デアリマスルガ、是モヤハリ臺灣ヨリ出品ヲ致シテ、之ニ贊同ヲ
スル所ノ經費デアリマス、此追加豫算ハ二十万圓ノ地方分擔納付金ヲ除クノ外其他ハ
總テ財源ハ前年度繰入金ニ依ッテ成ッテ居ルノデアリマス、此追加豫算ノ審査ノ結果
ハ此ノ如クデアリマシテ、ツマリ原案ヲ可決スベキモノト決シタノデアリス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=16
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017・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 先ヅ日程ノ第一、卽チ第一號明治四十二年度歲入歲出
總豫算追加案全部ヲ議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=17
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018・大岡育造
○大岡育造君 本案ハ委員長報告通り可決セラレンコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=18
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019・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通リ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=19
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020・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、委員長報告通リニ決シマス、本
案ハ是ニテ確定致シマス、次ニ第二特第一號、明治四十二年度特別會計歲入歲出
豫算追加案全部ヲ議題ニ供シマス
第二(特第一號)明治四十二年度特別會計歲入歲出豫算追加案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=20
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021・大岡育造
○大岡育造君 是モ同ジク委員長報告通リニ可決セラレンコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=21
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022・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通リ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=22
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023・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、委員長報告通リニ決シマス、本
案ハ是ニテ確定致シマシタ、御諮リヲ致シマス、決算第二分科會ヲ第一委員室ニ於テ
開キタイト云フ主査大津淳一君ヨリノ請求ガアリマス、許可シテモ差支アリマセヌカ
〔「異議ナシ」又「反對」「許可セヌコトニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=23
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024・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 異議ガアル以上ハ採決ヲ致シマス、卽チ決算第二分科會
ヲ第一委員室ニ於テ本會議ノ時間內ニ於テ開キタイト云フ主査大津淳一郞君ノ請求
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔「立ツベカラズ」ト呼フ者アリ〕
起立者無発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=24
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025・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 許サヌト云フコトニ決シマス、日程第三、軌道ノ抵當ニ關ス
ル法律案、政府提出第一讀會、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第三軌道ノ抵當ニ關スル法律案(政府提出)第一讀會
軌道ノ抵當ニ關スル法律案
第一條軌道ノ抵當ニ關シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外鐵道
抵當法ヲ準用ス
第二條軌道財團ハ左ニ揭クルモノニシテ軌道財團ノ所有者ニ屬スルモ
ヲ以テ之ヲ組成ス
一軌道線路、其ノ他ノ軌道用地及其ノ上ニ存スル工作物竝之ニ屬スル
器具機械
二工場、倉庫、厩舎、發電所、變壓所、配電所、事務所、舍宅其ノ他工事又
ハ運輸ニ要スル建物及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具機械
三用水ニ關スル工作物及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具機械
四軌道用通信、信號又ハ送電ニ要スル工作物及其ノ敷地竝之ニ屬スル
器具機械
五前四號ニ揭ケタル工作物ヲ所有シ又ハ使用スル爲他人ノ不動產ノ上
ニ存スル地上權、登記シタル賃借權及前四號ニ揭ケタル土地ノ爲ニ
存スル地役權
七六車輛及馬匹竝之ニ屬スル器具機械
保線其ノ他ノ修繕ニ要スル材料及器具機械
軌道營業者カ軌道ニ要スル電氣ノ餘力ヲ以テ電氣供給ノ業ヲ營ム場
合ニ於テハ其ノ供給ノ爲要スル第二號乃至第五號及第七號ニ揭ケタ
ルモノヲ軌道財團ニ屬セシムルコトヲ得
第三條公共〓體カ軌道及附屬物件ヲ買上ケタル場合ニ於テハ鐵道抵當法
第二十六條ノ規定ヲ凖用ス
特許ニ附シタル條件ニ依リ軌道財團ニ屬スルモノヲ無償ニテ國又ハ公共
團體ニ引渡スヘキトキハ其ノ財團ヲ目的トスル抵當權ハ消滅ス
第四條軌道營業者カ株式會社ニ非サル場合ニ於ケル軌道ノ抵當ニ關シテ
ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員山之內一次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=25
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026・山之内一次
○政府委員(山之內一次君) 唯今提出サレマシタトコロノ軌道ノ抵當ニ關スル法律
案ノ大體ノ說明ヲ申上ゲマス、御承知ノ通リ鐵道ノ抵當ニ付キマシテハ曩キニ帝國議
會ノ協贊ヲ經マシテ既ニ法律ニナッテ居リマス、然ルニ軌道條例ニ依リマスルトコロノ軌
道ニ付キマシテハ御承知ノ通リ其性質上カラ申シマシテモ、亦其效用ノ上カラ申シマシ
テモ、鐵道ニ甚ダ類似シテ居ルモノデゴザイマシテ、ヤハリ其線路ヤ車輛其他各種ノ物件
ヲ綜合一括スルニアラザレバ其效用ヲ全ウシ、又其眞價ヲ定ムルコトハ出來ナイノデアリ
マい、然ルニ今日マデ此軌道ノ抵當ニ付キマシテハ特別ノ法律ガゴザイマセヌ故ニ、資金
ノ供給上等ニ付キマシテハ甚ダ不便ヲ感ジテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ此度此法律ニ依リ
マシテ、鐵道ト同樣ニ軌道財團ノ設定ヲ認メマシテ、其抵當權ノ效力竝ニ其實行ノ手
續等ニ付キマシテハ皆鐵道抵當法ニ準ズルコトニ致シマシテ、サウシテ此資金ノ融通上ノ
便ニ供シマシテ益〓軌道ノ進步發達ヲ圖リタイト云フ精神ニ外ナラヌノデアリマス長上の
宜シク御協賛アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=26
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027・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御質疑モナイヤウデアリマスカラ、日程第四、右議案ノ審査
ヲ付託スベキ委員ノ選舉
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=27
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028・大岡育造
○大岡育造君 此委員ハ十八名トシテ議長ノ指名-同時ニ申シテ置キマスガ、此
第三ヨリ第六マデハ合スルノ意味デス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=28
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029・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名ノ委員十八名ニ付託スルコトニ御異議ハ
アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=29
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030・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ其通り決シマス、日程第五、擔
保附社債信託法中改正法律案、政府提出第一讀會、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第五擔保附社債信託法中改正法律案(政府提出)第一讀會
擔保附社債信託法中改正法律案
擔保附社債信託法中左ノ通改正ス
第四條ニ左ノ一號ヲ加フ
八軌道抵當
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=30
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031・大岡育造
○大岡育造君 別ニ說明ヲ待ツマデモナク第六モ一緒ニ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=31
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032・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第六、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=32
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033・大岡育造
○大岡育造君 前ト同一委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=33
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034・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 大岡君ノ動議、日程第五、擔保附社債信託法中改正法
律案ハ前ト同一委員ニ付託スルニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=34
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035・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第七、明
治四十一年法律第九號中改正法律案、政府提出第一讀會ノ續、特別委員長漆昌
巖君
第七明治四十一年法律第九號中改正法第一讀會ノ續(委員長
律案(政府提出)/報告
〔漆昌巖君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=35
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036・漆昌巖
○漆昌巖君 御報告致シマス、明治四十一年法律第九號中改正法律案、此案ハ極
ク單純ナル案デゴザイマシテ此元ノ法律九號ト云フモノハ學校及圖書館ノ特別會計法
ニ依ッテ所有スルトコロノ東京高等師範學校及東京盲啞學校ノ用地ノ中不用ニ屬ス
ルモノヲ賣拂ヒテ、其金ヲ以テ東京高等師範學校ノ中ノ附屬中學及小學、寄宿舎ノ
一部ヲ新築スル、其經費ニ此不用地ヲ賣拂ヒマシテ充テルト云フノ元ガ法律ナンデアリ
マス、然ルニ其不用地ノ中ノ過半ハ賣却致シタノデスガ、三千坪餘リノモノガ一ツ橋通
リノ地所ガ東京高等商業學校ニ必要ガ生ジテ、ソレニ使用スルト云フコトニシマスルト、
サウシマスルトソコデ曩キノ豫算ニ三十万圓程-二十九万幾ラ、三十万圓程ニ當ル
トコロノ新經費ニ充テル費用ガチヨット十四万圓以上、十五万圓近クノ金ガ此所ニ不
足ヲ生ジタノデアリマス、ソレデ其不足ヲ補フタメニ此今度ノ改正法案ガ出タノデアリマス、
此改正法案ヲチヨット讀ミマスト直グ分リマスガ「明治四十一年法律第九號ニ左ノ一項ニ
加フ前項ノ土地賣却ニ依リ新經費ニ相當スル金額ヲ得ル能ハサル場合ニ於テハ繰入
金ノ不足額ハ學校及圖書館資金中ノ他ノ部分ヨリ之ヲ補充スルコトヲ得」之ヲ加ヘマ
シテ、此働キハドウ云フコトニナルカト云フト學校及其圖書館ノ資金ト云フモノガ、ソ
レガ公債株券ト云フヤウナモノデ百七万一千百七十一圓アル中ノモノヲ此株劵ナリ此
資金ヲ十四万何某、十五万圓程ノモノヲ賣拂ッテ、サウシテ一般會計ヘ繰入レテ此新
經費ノ不足額ニ充テヤウ、斯ウ云フ働キヲスルタメニ左ノ一項ヲ加ヘルト云フコトノ法律
ヲ改正シタノデアリマス、委員會ハ質問モ十分ニ致シマシタガ、本年ニナッテ此所ニ至ッテ
其必要ナ地所ノ外ニ必要ガアルト云フコトヲ豫期シナカッタト云フコトハ、免ニ角計畫ハ杜
撰ナ計畫ノヤウデアリマスガ、今日ノ場合必要ナリトぬメマシテゴザイマスカラ全會一致
ヲ以テ此案ハ原案ノ通リ可決致シマシテゴザイマス、此段報告致シマス
(「報告通リ贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=36
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037・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤト云フコトヲ議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=37
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038・恒松隆慶
○恆松隆慶君 直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=38
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039・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議卽チ直チニ一一讀會ヲ開クト云フコトニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=39
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040・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、直チニ二讀會ヲ開キ、議案全
部ヲ議題ニ供シマス
明治四十一年法律第九號中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=40
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041・恒松隆慶
○恆松隆慶君 二讀會ニ於テ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ決セラレンコトヲ望
ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=41
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042・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議、卽チ二讀會ニ於テ三讀會ヲ省略シ委員
長報告通リト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
明治四十一年法律第九號中改正法律案確定議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=42
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043・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、本案ハ是ニ
テ確定致シマシタ日程第八地方稅制限ニ關スル法律中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、古井由之君外四名提出古井由之君
第八地方稅制限ニ關スル法律中改正法律案(古井由第一讀會
之君外四名提出)
地方稅制限ニ關スル法律中改正法律案
地方稅制限ニ關スル法律中左ノ通改正ス
第一條第一號中「地租百分ノ六十」ヲ「宅地地租百分ノ十三其ノ他ニ改メ「地租額」
ノ土地地租百分ノ二十七ㄴ
ノ下「百分ノ六十」ヲ「宅地ニ在リテハ百分ノ十三、其ノ他ノ土地ニ在リテハ
百分ノ二十七」ニ改ム
同條第二號中「地租百分ノ四十」ヲ「宅地地租百分ノ九其ノ他ニ改メ「地租額」ノ下
ノ土地地租百分ノ十八」
「百分ノ四十」ヲ「宅地ニ在リテハ百分ノ九、其ノ他ノ土地ニ在リテハ百分ノ
十八」ニ改ム
附則
本法ハ明治四十三年度ヨリ之ヲ施行ス
明治四十三年一月一日ヨリ三月三十一日迄ニ宅地地租ニ賦課スル地租附加
稅ハ明治四十二年十二月三十一日現在ノ地租額ヲ以テ課稅標準トス
〔古井由之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=43
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044・古井由之
○古井由之君 唯今議題トナリマシタ地方稅制限ニ關スル法律中改正法律案ハ是
ハ本員ガ曩キニ提出致シマシタ宅地價修正法案竝ニ地租條例改正法律案ノ此二案
ニ伴ヒマストコロノ規則デゴザイマシテ、目下此地方稅ノ制限ト云フモノハ地租百分
ノ六十ニナッテ居ルノデゴザイマスガ、曩キニ提出致シマシタ宅地價修正法案ガ可決ヲ致
シマスルト、アレニ伴ヒマストコロノ自然地價ガ增シマスルガ故ニ、斯ノ如ク改正ヲ致シマ
シハ、地方稅制限ノ均衡ヲ得ルタメニ提出ヲ致シマシタノデアリマスカラ、ドウカ愼重ニ御
審議アッテ御贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=44
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045・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ九名ノ委員議長指名ニ-前ノ宅地價修正案ノ委員ニ付
託セラレタガ便利デゴザイマスカラ、更ニ訂正致スノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=45
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046・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議、本案ハ前ノ宅地價修正ノ特別委員ニ付
託スルト云フコトニ御異議ガゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=46
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047・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ其通リ決シマス、日程第九、農
會法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、築山和一君外
十七名提出-築山和一君
第九農會法中改正法律案(築山和一君外十七名提第一讀會
〓〓
農會法中改正法律案
農會法中左ノ通改正ス
第一條ノ二農會ハ市町村農會、郡農會、北海道農會、府縣農會及帝國農會
トス
第四條削除
第五條中「十五萬圓」ヲ「一一十萬圓」ニ改ム
附則
本法ハ明治四十三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔築山和一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=47
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048・築山和一
○築山和一君 提出ノ理由ヲ聊カ敷衍致シマス、本法ハ施行以來僅ニ九年間デゴザ
イマスケレドモ、其生產ヲ扶殖スル上ニ於キマシテハ、實ニ著シキモノデゴザイマス、而シテ
今之ヲ如何ナル發達ト云フコトヲ調ベテ見マスレバ、沖繩縣ヲ除クノ外一道三府四十二
縣ゝ總テ此設ガゴザイマスル、又北海道ニ於キマシテハ未ダ或ル郡ニ農會ノ設備ガゴザイ
マセヌガ、其外ハ全國到ル處ノ各郡ニ於キマシテモ皆此設ガゴザイマス、サウシテ其郡ニ
設テアリマストコロノ農會ノ數ハ五百六十四ニ及ンデ居リマス、ソレカラ町村ノ有樣ヲ
調ベテ見マスレバ此施行以來昨年十二月ノ末日マヂニ町村農會ノ數ガ實ニ一万二
千十六程ニナッテ居リマス、之ヲ全國町村ノ比例ニ鑑ミマスレバ九分强ニナッテ居ル次
第デゴザイマス、然ルニ玆ニ一ノ遺憾ナルコトハ、此府縣農會ノ上ニ於キマシテ之ヲ統一
スルトコロノ機關ガ備ッテ居リマセヌ、故ニ今日我國ノ經濟ガ世界ト共通致シマスルガ如
〃、又生產力ノ共通モヤハリ自然ニ世界ト共通ヲ同ジウスル譯デゴザイマス、故ニ是ニ於
テ此府縣農會ノ上ニ帝國農會ナルモノヲ設ケマシテ、サウシテ大ニ國家生產力ノ基礎ヲ
固フセントスル提出案デゴザイマスル、(松恆隆慶君「國本培養ダ大贊成」ト呼フ)ソレカ
ラ第四條ヲ削リマシタ趣意ハ、地方ニ於キマシテ農會事業ノ大小、又經費ノ多少ニ依
リマシテ此制限ガアルタメニ大ニ發展シヤウト云フトコロヲ差抑ヘルヤウナ氣味ガゴザイマ
スカラシテ、此制限ハ削除シタイト思ヒマスル、ソレカラ第五條ニ於キマシテ此經費ヲ尙
五万圓要求致シマシタノハ、是ハ此法律ノ改正ト共ニ大ニ必要ガアルト考ヘマシテ、本
案ヲ提出致シマシタ譯テアリマスル、何卒御贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=48
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049・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ九名ノ委員、議長指名アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=49
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050・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託スルト云フコトニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=50
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051・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第十、
新聞紙法案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、提出者村松恆一郞君外
一名-村松恆一郞君
第十新聞紙法案(村松恆一郞君外一名提出)第一讀會
新聞紙法案
新聞紙法
第一條新聞紙、通信又ハ定期ニ發行スル雜誌ハ總テ本法ニ依ルヘシ
第二條前條ノ新聞紙、通信又ハ雜誌ヲ發行セムトスル者ハ發行ノ日ヨリ
到達スヘキ日數ヲ除キ三日以前ニ發行地ノ管轄廳警視廳東京府ハヲ經由シテ內務
省ニ屆出ツヘシ
第三條前條ノ居書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一題號
二記載ノ種類
三發行ノ時期
四發行所及印刷所
五發行人、編輯人及印刷人ノ氏名年齢但シ編輯人二人以上アルトキハ
其ノ主トシテ編輯事務ヲ擔當スル者タルヘシ
第四條前條ノ居出ヲ爲シタル後題號、記載ノ種類又ハ發行人ヲ變更セム
トスルトキハ第二條ノ例ニ依リ三日以前ニ屆出ツヘシ
發行ノ時期、發行所、印刷所編輯人、印刷人ニ變更アリタルトキハ一週日
以內ニ第二條ノ手續ニ從ヒ屆出ツヘシ
第五條發行人死去シ又ハ法律上其ノ資格ヲ失ヒタルトキハ一週日以內ニ
發行人ヲ定メ第二條ノ手續ニ從ヒ屆出ツヘシ其ノ屆出ヲ爲ス迄ハ假發行
人ノ名義ヲ以テ發行スルコトヲ得
第六條發行ノ屆出ヲ爲シタル日又ハ發行休止ノ日ヨリ六箇月ヲ過キテ發
行セサルトキハ其ノ居出ノ效力ヲ失フモノトス
第七條年齢滿二十年以上ニシテ帝國內ニ居住スルモノニ非サレハ發行
人、編輯人、印刷人ト爲ルコトヲ得ス
公權ヲ剝奪セラレタル者ハ發行人、編輯人、印刷人ト爲ルコトヲ得ス
公權ヲ停止セラレタル者ハ其ノ停止間亦同シ
第八條編輯人、印刷人ハ互ニ相兼ヌルコトヲ得ス
第九條發行人ハ保證トシテ左ノ金額ヲ居書ト共ニ管轄廳警視廳東京府ハニ納ムヘ
一東京市ニ於テハ千圓
一京都市、大阪市、橫濱市、神戶市、長崎市ニ於テハ七百圓
一其ノ他ノ地方ニ於テハ三百五十圓
保證金ハ時價ニ準シタル公債證書又ハ國庫金ヲ取扱フ銀行ノ預證券ヲ以
テ之ヲ納ムルコトヲ得
學術、技藝、統計、官令又ハ物價報告ノミヲ記載スルモノハ本條ノ限ニ在
ラス
第十條保證金ハ發行ヲ廢止シ又ハ禁止セラレタルトキハ之ヲ還付ス
第十一條第二條、第四條、第五條ノ屆出ヲ爲サス又ハ保證金ヲ納ムヘキ者
ニシテ保證金ヲ納メス發行スルモノハ正當ノ屆出ヲ爲シ又ハ保證金ヲ納
ムル迄警視總監又ハ地方長官ニ於テ其ノ發行ヲ差止ムヘシ
第十二條發行所及發行人、編輯人、印刷人ノ氏名ハ每號之ヲ記載スヘシ
發行人、印刷人ノ外何等ノ名義ヲ以テスルニ拘ラス其ノ紙面又ハ記載ノ
條項ニ署名スル者ハ總テ編輯人ト共ニ其ノ責ニ當ラシム
第十三條新聞紙、通信、雜誌ハ其ノ發行每ニ先ツ內務省ニ一一部管轄廳東京
警視府ハ
廳及管轄地方裁判所檢事局ニ各一部ヲ納ムヘシ
第十四條新聞紙、通信、雜誌ニ記載シタル事項ノ錯誤ニ付其ノ事項ニ關ス
ル當人又ハ直接關係者ヨリ正誤又ハ正誤書、辯駁書ノ揭載ヲ求メタルト
キハ其ノ次囘又ハ第三囘ノ發行紙面ニ揭載スヘシ正誤書、辯駁書ノ全文
ノ揭載ヲ求メタルトキハ必ス其ノ全文ヲ揭載スヘシ但シ其ノ字數原文ノ
字數ニ超過シタルトキハ其ノ超過ノ字數ニ付其ノ社ノ定メタル普通廣告
料ト同一ノ揭載料ヲ要求スルコトヲ得
正誤、辯駁ノ文章若ハ趣旨法律ニ觸ルルトキ又ハ之ヲ求ムル者其ノ氏名
住所ヲ明記セサルトキハ揭載スルヲ要セス
第十五條官報又ハ他ノ新聞紙、通信、雜誌ヨリ抄錄セシ事項ナルコトヲ明
記シタルモノ其ノ原紙ニ正誤書又ハ辯駁書ヲ揭載シタルトキハ當人又ハ
關係者ノ求メナシト雖其ノ原紙ヲ得タル後其ノ次囘又ハ第三囘ノ發行ニ
於テ正誤スヘキコト前條ノ例ニ依ル但シ廣告料ヲ要求スルコトヲ得ス
第十六條新聞紙、通信、雜誌ニ記載シタル事項ニ付裁判ヲ受ケタルトキハ
其ノ次囘發行ニ於テ宣告ノ全文ヲ揭載スヘシ
第十七條刑律ニ觸レタル犯罪ヲ曲庇スルノ論說ヲ記載スルコトヲ得ス
刑事ノ被告人又ハ刑律ニ觸レタル犯罪人ヲ救護シ又ハ賞恤スル爲ニスル
文書ヲ記載スルコトヲ得ス
第十八條公ニセサル官ノ文書及上書、建白、請願書ハ當該官廳ノ許可ヲ得
ルニ非サレハ詳略ニ拘ラス之ヲ記載スルコトヲ得ス
官廳ノ議事及法律ニ依リ傍聽ヲ禁シタル公會ノ議事ハ詳略ニ拘ラス之ヲ
記載スルコトヲ得ス
第十九條外國ニ於テ發行シタル新聞紙ニシテ治安ヲ妨害シ又ハ風俗ヲ壞
亂スルモノト認ムルトキハ內務大臣ハ其ノ新聞紙ノ內國ニ於ケル發賣頒
布ヲ禁シ其ノ新聞紙ヲ差押フルコトヲ得
第二十條外務大臣、陸軍大臣、海軍大臣ハ特ニ命令ヲ發シテ外交叉ハ軍事
ニ關スル事項ノ記載ヲ禁スルコトヲ得
第二十一條第二十條、第二十九條及第三十條ニ關シ告發ヲ爲ストキハ內
務大臣ハ其ノ新聞紙、通信、雜誌ノ發賣頒布ヲ停止シ假ニ之ヲ差押ヘ其ノ
告發ニ係ル論說又ハ事項ト同一主旨ノ論說又ハ事項ノ記載ヲ停止スルコ
トヲ得
第二十二條新聞紙ニ記載シタル事項ニ付名譽ニ對スル罪ノ訴アル場合ニ
於テ其ノ私行ニ渉ルモノヲ除クノ外裁判所ニ於テ其ノ人ヲ害スルノ惡意
ニ出テス專ラ公益ノ爲ニスルモノト認ムルトキハ被告人ニ事實ヲ證明ス
ルコトヲ許スコトヲ得若其ノ證明ノ確立ヲ得タルトキハ名譽ニ對スル罪
ヲ免ス其ノ損害賠償ノ訴ヲ受ケタルトキ亦同シ
第二十三條裁判確定ノ日ヨリ一週日以內ニ裁判費用及罰金ヲ完納セス又
ハ損害ヲ賠償セサルトキハ先ツ保證金ヲ以テ之ニ充ツヘシ
保證金ヲ以テ裁判費用、賠償及罰金ニ充テタルトキハ發行人ハ管轄廳
警視廳東京〓ハノ通知ヲ得タル日ヨリ一週日以內ニ其ノ闕額ヲ完納スヘシ若完納
セサルトキハ其ノ之ヲ完納スルニ至ル迄警視總監又ハ地方長官ニ於テ其
ノ發行ヲ差止ムヘシ
第二十四條第二條、第四條、第五條ノ屆出ヲ爲サス又ハ第七條、第八條、第
十二條、第十三條ヲ犯シ又ハ保證金ヲ納ムヘキ新聞紙、通信、雜誌ニシテ
保證金ヲ納メス發行シタルトキハ發行人ヲ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二條、第四條、第五條ノ屆出ヲ爲スモ實ヲ以テセサルトキハ罰前項ニ同
第九條ノ末項ニ屬スル新聞紙、通信、雜誌ニシテ其ノ屆出ノ事項外ニ涉ル
記事ヲ揭載シタルトキハ編輯人罰前項ニ同シ
第二十五條第十四條、第十五條、第十六條ニ違フトキハ編輯人ヲ百圓以下
ノ罰金ニ處ス
第二十六條第十七條、第十八條ニ違フトキハ編輯人ヲ一月以上六月以下
ノ禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十七條第十九條ノ禁令ヲ犯シ發賣頒布ヲ爲ス者ハ罰前條ニ同シ
第二十八條第二十條ノ禁令ヲ犯シタルトキハ發行人、編輯人ヲ一月以上
二年以下ノ禁錮又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條ノ停止ヲ犯ストキハ發行人編輯人ヲ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十九條皇室ノ尊嚴ヲ冐瀆シ政體ヲ變壞シ又ハ朝憲ヲ紊亂セムトスル
ノ論說ヲ記載シタルトキハ發行人、編輯人、印刷人ヲ二月以上二年以下ノ
禁錮ニ處シ又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十條社會ノ秩序又ハ風俗ヲ壞亂スル事項ヲ記載シタルトキハ發行
人、編輯人ヲ二月以上一一年以下ノ禁錮又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十一條第十四條ノ場合ニ於テ私事ニ係ルモノハ被害者ノ告訴ヲ待テ
其ノ罪ヲ論ス
第三十二條本法ニ關スル公訴ノ時效ハ六箇月ヲ經過スルニ因リテ成就ス
附則
明治二十年勅令第七十五號新聞紙條例ハ之ヲ廢止ス
〔村松恆一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=51
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052・村松恒一郎
○村松恆一郞君 諸君、本日ハ大問題モアリマスルコトデゴザイマスルシ、殊ニ本案ニ
付テハ多數ノ諸君ノ御異議ノナイコトヽ信ジマスカラ、詳細ハ委員會ニ讓リマシテ長ミシ
イ說明ハ致シマセヌノデアリマスガ、唯一言申上ゲテ置キタイノハ本案ノ提出者ハ僅ニ一
兩名デアリマスケレドモ、事實ニ於テハ本案ハ多年ノ間各新聞社全體ノ輿論トナッテ居
ルトコロノモノヲ現ハシタノデゴザイマスルデ此〓ハ特ニ御諒知ヲ願ヒタイノデアリマス、尙
此本案ノ改正ノ骨子ト致シマスル處ハ詰リ此體刑ヲ廢スルト云フコトガ一ツト、一一八
此豫審ニ關スル事項ヲ揭ゲルコトデ出來ナイト云フ箇條ガ一ツト、此二ツデアリマスルガ、
併ナガラ此體刑ヲ廢スルト云フコトモ、全部廢スルト云フコトニナリマスルト云フト、實際
ノ通過ノムヅカシイ場合ガアルト、思ヒマスカラ、僅ニ其中ノ一部輕イモノヲ一箇條削リ
マシタダケデアリマシテ、モウ一ツ削リマシタノハ豫審ニ關スル事項ト云フコトデアリマシテ、
今日此コトハ諸君モ御承知デゴザイマセウガ、現在先頃待合ノ菊隅ト云フモノヽ主婦ノ
死ンダコトヲ新聞ニ書イタタメニ、東京ノ重ナル新聞ガ十四社モ告發ヲ受ケマシテ、引
續イテ他ノ事件デモ告發ヲ受ケタト云フ事實、サウシテ此事ヲ檢事ノ方ノ意見ヲ聞キマ
スルト云フト總テ此豫審ニ關シタ事柄ヲ書イテハ、如何ナル事柄ヲ書イテモ皆此條ニ
據ルト云フコトデアリマスルガ、然ルトキハ殆ト新聞紙ト云フモノハ事實ニ於テ成立タナイ
ト云フコトニナルノデアリマスカラ、卽チ新聞紙ガ新聞紙トシテノ本分ヲ盡スコトガ出來ナ
イト云フコトニナルノデアリマスカラ、己ムヲ得ズ本條ダケハ削除致シマシタノデアリマシテ、
此〓ハ特ニ諸君ノ御考ヲ願ヒタイノデアリマシテ、其他ノ箇條ハ委員會デ委シク申上ゲ
マスカラ、此所ニハ省略致シテ置キマスガ、ドウカ本案ノ通過致シマスルヤウニ諸君ノ御
贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=52
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053・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ議長指名十八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=53
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054・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名ノ委員十八名ニ付託スルト云フコトニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=54
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055・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第十
-會計法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、特別委員長宮古啓三郞君
第十一會計法中改正法律案(森本駿君第一讀會ノ續(要求人
外四名提出)報〓
〔宮古啓三郞君登壇〕
〔「簡單」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=55
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056・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 極メテ簡單ニ委員會ノ經過ト結果ヲ御報告致シマス、委員會ニ於キ
マシテハ特別調査委員ヲ三人選ビマシテ、議案ノ調査竝ニ政府ヘノ交涉等ヲ致サセマシ
テゴザイマス、而シテ其特別調査委員ニ於キマシテ修正案ヲ拵ヘマシテゴザイマス、其修
a
正案ガ御手許ニ囘ッテ居ル此第八條ノ修正デアリマス、元「ト支出シタル豫備金ノ仕拂ヲ
終リタルトキハ」トアッタノヲ「豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ」ト云フコトニ修正ヲ致シタ
ノデアリマス、玆ニ或ハ此〓ニ付テ後日疑義ガ起ルカモ知レマセヌカラ、極ク簡單ニ申上
ゲテ置キマスガ、此豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出シ
其承諾ヲ求ムルヲ要スト云フ意味ハ、議會召集ノ日マデト云フ意味デハゴザイマセヌデ、
其豫備金ノ支出ヲシマシタ期間ノコトハ政府ニ一任ヲ致シマシテ、成ルグケ召集ノ日ニ
出來得ル限リ近キトキマデノ分モ事後承諾ヲ議會ニ對シテ求ムルト云フコトニスルト云フ
意味デアリマス、ソレカラ尙又次ノ會期ニ於テト云フノハ、是ハ次ノ帝國議會デゴザイ
マスルガ、豫備金支出ノ事後承諾ヲ求ムルコトノ出來ナイヤウナ戰時議會ト云フガ如キ
特別ナル議會ノ分ハ之ヲ含マヌコトニナッテ居リマス、以上ノ理由ニ依ッテ出來上ッタノデ
ゴザイマシテ政府ニ於テハ之ニ同意ヲ表シタノデアリマス、第十二條ノ第一項ノ次ニ加ヘ
マスル一項ニ付テハ政府ハ同意ヲ致シマセヌ、其同意ヲ致シマセヌトコロノ理由ハ今日
豫備金ハ三百万圓デアッテ、ソレヲ殖サンケレバナラヌガ、併ナガラ殖スベキ所ノ財源ニ乏
シイ、ソレ故ニ之ニ同意スルコトハ出來ヌ、カウ云フ理由デゴザイマス委員會ニ於キマシテ
ハ今日ハ成程豫備金ガ三百万圓デアルケレドモ併ナガラ實際ニ使ッテ居ルノハドノ位デアルカ
ト云フト、六七百万圓デアル、ソレデアルカラシテ其金ヲ繰込メバ差支ナイノデアル、卽チ剩
餘金ノ中カラシテ三百万圓ナリ四百万圓ナリノ金ヲ取ッテ、ソレヲ歲入ノ中ニ入レヽバ差
支ナイノデアルカラシテ、ヤハリ此條文ノ通リニシテ置ク方ガ宜シイ、而シテ憲法竝ニ會計法ノ
精神ニ背カヌヤウニ已ムヲ得ナイ場合ニ於テハ議會ノ召集モスルヤウニト云フコトデ、此原
案通ニシテ置ク方ガ宜シイト云フ委員會ノ意見デアリマシテ其通リニ決シタノデアリマス、
此段ヲ御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=56
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057・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ノ第二讀會ヲ開クベキヤ否ヤト云フコトヲ議題ト致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=57
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058・恒松隆慶
○恆松隆慶君 直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=58
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059・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議、卽チ直チニ二讀會ヲ開クト云フコトニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=59
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060・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、直チニ二議會ヲ開キ、議案ノ
全部ヲ議題トイタシマス
會計法中改正法律案第二讀會
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=60
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061・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 此會計法ノ改正案ノ第八條ニ付キマシテハ唯今ノ委
員長カラ御報告ニナリマシタ通リ、文字ノ通デアリマスト事實運バナイ處ガアリマスガ、併
ナガラ次ノ會期ニ出セルダケノ此ユトリノ付キ得ルモノハ成ルベク出セト云フ趣意デアッ
テ、會期ノ直グ前日迄ト云フヤウナ窮屈ナ規定デナイト云フ說明デアリマシタ故ニ然ル
以上ハ政府デモ出來ヌコトハアリマスマイ、又會期ノ僅ナ期間ノトキニハ到底コノ御協賛
ヲ求ムルコトガ出來ヌノデアリマスカラ、是又僅ノ會期ノトキニハ出來サヌデ宜イト云フ委
員會ノコトデアリマシタ故ニ、ソレナラバ政府デモ御同意申上ゲルト云フノデアリマスカラ
此〓ハ特ニ明カニシテ置キタイノデアリマス尙又第十二條ノ改正ニ付キマシテハ5位,
ケハ遺憾ナガラ政府デハ御同意申上兼ネマス、ソレハ第一事變ニ於テ同ク斯ウ云フ支
出ヲ爲サヌト云フコトハ極ク必要ノ場合ニ於テ出來得ナイコトデアリマス加之古例ヲ
立テラレル上ニ於テモ憲法七十條ノ場合ノ外ハ斯ウ云フコトガ出來ヌト云フナラバ法
律ヲ以テ之ヲ定メルノハ理由ノナイコトニナルノデアリマス、又憲法ガ之ヲ認メテ居ルト云
フナラバ法律ヲ以テ憲法ノ規定ヲ制限セラレルト云フコトハ是又穩デナイト思ヒマスニ仍
テ十二條ニ對シテハ政府ハ遺憾ナガラ御同意申上兼ネマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=61
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062・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 荒川五郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=62
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063・鳩山和夫
○鳩山和夫君 私ハ修正ノ意見ガアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=63
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064・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 通告ガアリマスカラ通告順ニ-荒川五郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=64
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065・荒川五郎
○荒川五郞君 此第八條ハ政府モ同意シタコトデアリマスカラ本員モ是デ宜カラウト
考ヘマスガ、第十二條ノ一項ノ次ニ一項ヲ加ヘルト云フコトハ木員ハ反對デゴザイマス、
其理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、此剰餘金ナルモノハ旣ニ議會ノ慣例トナッテ、ソレガタメニ
今日マデ日本ノ憲政ハ旨ク運用サレテ居ルノデアリマス、是ハ決シテ必シモ憲法ニ反スルト
云フ譯デナク、會計法ニ背クト云フ譯デナクシテ今日マデ、二十五囘モ續イテ來テ之ガ運
用宜シキヲ保テ今日マデ至ッテ居ルモノヲ、今更ソレヲ改正スルト云フ必要ハナイ、凡ソ政
治ハ活キタ人ガスルノデアリマスカラ(笑聲起ル)活キタ人ガ働キノ出來ルヤウニ出來得ベ
キダケシナケレバナラヌ、ソレデ軌道ヲ逸シナイヤウニ取締ル箇條ハ必要デアルケレドモ、旣
ニ慣倒トナッテ今日マデ圓滑ニ行ハレテ居ルモノヲ、今日ニ至ッテ制限スルト云フコトニ必
要ノナイノミナラズ、政府委員モ申シタ通リ、憲法ニ反スルト云フコトハ憲法ノ解釋ニ依ル
ベキコトデアル、必シモ玆ニ規定ヲ加ヘルト云フ必要ガナイ、ソレデアリマスカラツマリ是ハ蛇
足デアル、故ニ第十二條ノ一項ノ次ニ第二項ヲ加ヘルト云フ此箇條ハ削除セラレンコト
ヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=65
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066・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 小川平吉君-小川君ニチヨット御諮リヲ致シマスガ、今
鳩山君カラ修正ノ意見ガアリマスノデ、アナタノ御辯論前ニ鳩山君ノ修正意見ヲ許シタ
イト思ヒマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=66
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067・小川平吉
○小川平吉君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=67
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068・鳩山和夫
○鳩山和夫君 第八條ニ文字上ノ修正ヲ加ヘタイト思フノデアリマス「次ノ會期ニ於テ
帝國議會ニ提出シ其承諾ヲ求ムルヲ要ス」トアルノヲ「其承諾ヲ求ムヘシ」幾分カ此文字ノ
意味ヲ輕クスルノデアリマス、其理由ハ極ク簡單デゴザイマス、憲法第六十四條ノ第二
項ニ豫算ノ款項ニ超過シ、又ハ豫算ノ外ニ生ジタル支出アルトキハ後日帝國議會ノ承
諾ヲ要スルト云フ憲法ノ規定ガアル、第七十條ノ緊急支出ノ場合ニハ次ノ會期ニ於テ
帝國議會ニ提出シ、其承諾ヲ求ムルヲ要ストアル、ソレデ會計法ニ於テハ同ジヤウニ六
十四條ニ於テ後日ト云フ幾分カ意味ノ廣イ期間ニ於テ、帝國議會ノ承諾ヲ求ムルヲ
要スルト云フ、此憲法ノ文章ヲ會計法ニ於テ幾分カ修正スルヤウナ形ニナッテハ面白クナ
イト思ヒマスカラ、承諾ヲ求ムルヲ要スト云フコトヲ變ヘテ、唯「承諾ヲ求ムヘシ」ト直シタ
ノデアリマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
〔小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=68
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069・小川平吉
○小川平吉君 諸君、三稅案ノ日程ニ上ボルノヲ御待兼ネデアリマセウカラ、私ハ簡
單ニ演說ヲ致サウト思ヒマス、併ナガラ本案ハ苟モ此憲法ノ附屬法ノ改正ニ關スルコトデ
ゴザイマシテ、特ニ此第十二條ニ至リマシテハ帝國議會ノ豫算ノ協賛權ニ關スルトコロノ
大問題デゴザイマス、之ハ今日ノ儘ニ致シテ置キマスルト、帝國議會ノ協賛權ノ働キト云フ
モノハ殆ド其一部ノ效用ヲ失フコトニナル大問題デアルノデゴザイマス、ソレデゴザイマスカ
ラシテ今日三稅案ノ場合デハゴザイマスガ、數分ノ間御辛抱ヲ願ヒマシテモ私ハ差支ナカラ
ウト考ヘルノデゴザイマス、此憲法政治ノ下ニ於テ一錢一厘ノ金モ帝國議會ノ承諾ヲ經ズ
ニ使用スルコトノ出來ナイコトハ今更喋々スルノ必要モナイコトデアラウト考テ居リマス、
然ルニ諸君、現ニ政府ハ帝國議會ノ協贊ヲ經ナイトコロノ金ヲ、年々或ハ一千万圓或
ハ八百万圓ト云フガ如キ多額ニ使用シテ居ルト云フ事實ハ之ハ如何ナルコトデゴザイマ
セウ、此帝國議會始マッテ以來今日マテ年々歲々或ル二三ノ年ヲ除クノ外、或ハ一千万
圓或ハ二千万圓、近年ニ至リマシテハ四千万圓、五千万圓六千万圓以上ノ剰餘金
ト云フモノヲ政府ハ持ッテ居リマシテ、此剩餘金ニ對シテハ勿論政府ハ議會ノ承諾ヲ經
ルコトナクシテ、勝手自由ニ之ヲ使用シテ居ルト云フ事實ハ旣ニ諸君モ御承知ノ通リデ
アリマス、此多額ナル金ヲ政府ハ如何ナル名義ニ依ッテ之ヲ使用スル-如何ナル法律
ノ明文ニ依シテ之ヲ使用スルカト云ヒマスレバ、憲法ノ明文ニモ斯ノ如キ金ノ使用ヲ許シ
タル處ハナイ法律ノ明文ニモ斯ノ如キ金ノ使用ヲ許シタルトコロハナイ、之ニ反シマシテ憲
法ノ第六十四條ニ於テハ國家ノ歲出歲入ハ總テ帝國議會ノ協賛ヲ經ベキモノデアルト
云フ規定ガアッテ、現ニ此帝國議會ノ協贊ヲ經ナイトコロノ金ハ一錢一厘モ使ッテハナラ
ヌゾヨト云フコトニ憲法ノ明文ハアル、會計法ニ於テモ亦然リ、卽チ憲法モ法律モ帝國議
會ノ協賛ヲ經ザルトコロノ金ハ一錢一厘モ使用スベカラズト誠ニ明カニ書イテアリマスニ
モ拘ラズ、政府ハ此憲法ノ明文ニ反シ、法律ノ明文ニ反シテ、年々歲々少カラヌトコロ
ノ金ヲ自由ニ使用シテ居ルト云フ有樣デアリマス、之ニ對シテ政府ニ向シテ如何ナル名
義ノ下ニ斯ノ如キ多額ナル金ヲ使用スルカト問ヘバ政府答ヘテ曰ク、之ハ責任支出ト
云フモノデアル斯ノ如ク答ヘラレテ居ルノデアリマス、諸君責任支出ト云フノハ如何
ナル意味デゴザイマス政府ノ歲入若クハ歲出ニシテ一錢一厘ダケデモ責任ヲ帶ビナイト
コロノ支出ガアルノデゴザイマセウカ、私ハ如何ナル細微ナル金ト雖モ、政府之ニ支出ス
ル以上ハ、悉ク責任ヲ以テ支出スルモノデアラウト考ヘルノデゴザイマス(ヒヤ〓〓)獨リ
此歲入剩餘金ニ限ッテノミ憲法ニ反シ法律ニ反シテ、之ヲ使用シテ、之ニ對シテ責
任支出ナリト云フハ、私ハ共意味ヲ了解スルニ苦シマザルヲ得ナイノデアリマス、寧口之ハ
責任支出ニアラズシテ無責任支出ナリト斷定シテ差支ナカラウト思フノデアリマス、拍
手起ル)而シテ政府ト段々議論ヲ鬪ハシテ參リマシタトコロ、政府ハ辭屈シテ遂ニ曰ク、
諸君ノ議論モ了承ヲ致シタ、併ナガラ若シ茲ニ剩餘金ヲ使フコトヲ禁ジマシテシマッタナラ
バ現ニ一年度內ニ起ルトコロノ不意ノ事件ニ對シテ如何ナル金ヲ以テ支出シテ宜イカ、
誠ニ當惑スル次第デアル、斯樣ニ答ヘラレル如何ニモ之ハ一年度內ニ於テ隨分不意
ナ事件モ起リマセウ、年度ノ始メニ於テ豫想シナカッタトコロノ事實モ出來シテ參リマセ
ウ、此時ニ方ッテ金ガナカッタナラバ成程政府ハ困難サレルニ相違ナイ、之ガタメニ憲法ノ
第六十九條ニ於テハ憲法ノ第六十四條ニ基イテ現ニ第一豫備金、第二豫備金ト云
フモノヲ設ケテ卽チ總豫算ニ對スル豫備金ヲ置イテアルデハゴザイマセヌカ、此豫備金
ガ卽チ憲法ニアル豫算ニ超過シタル事柄ノ出來タ場合、若クハ豫算外ニ生ジタ出來
事ニ對スル備トシテ此豫備金ハ取シテアリマス、何ノタメニ豫備金ガ取ッテアルカト云
ヘバ卽チ此豫算ニ超過シタル場合、不意ノ出來事ニ備ヘルガタメニ憲法法律ノ明文
ニ基イテ豫備金ガ取ッテアルデゴザイマセヌカ、此豫備金ガゴザリマシタナラバ一年度內ニ
起ル不意ノ出來事ハ之ヲ以テ處辨シテ往カナケレバナラヌト考ヘテ居ル、然ルニ諸君モ常
ニ論ゼラレルガ如ク此帝國議會始マリマシテ以來、八千万ノ歲出入ノ時代ニ僅ニ二百
万圓デアッタトコロノ豫備金ガ今日六億圓ニ近イ歲出入ノ時代ニナッテモ、ヤハリ三百万
圓ト云フ僅少ナル豫備金ニ止マッテ居リマスカラ、今日ノ豫備金ノ高デハ恐ラクバ此一
年度內ヲ越ルトコロノ不意ノ出來事、若クハ豫算超過ノ出來事ニ向ッテ支出スルコトハ
困難ダラウト云フコトハ、之ハ萬目ノ視ル處、誰デモ疑ハヌ事實デゴザイマス、此三百万
圓ノ豫備金ガ一年度內ニ起ルトコロノ不意ノ出來事ニ備ヘルニ足ラヌト云フノデ、政府
ハ果シテ如何ナル考ヲ持ッテ豫算ヲ編成スルデアラウカ、此三百万圓ノ金デ一年度內ノ不
意ノ出來事ニ備ヘルニ足ラヌト云フコトハ、政府ガ旣ニ豫算ヲ編成スル當時ニ於テ豫見
シテ居ルコト、之ハ申スマデモナイコトデゴザイマス、足ラヌ金ハ政府ハ何處カラ之ヲ取ラウト
シテ居ルカ、卽チ政府ハ豫算編成ノ始メニ方ッテ此三百万圓デ足ラヌ分ハ、前年度ニ殘
ル剩餘金卽チ數千万圓殘ルトコロノ此剩餘金ヲ持ッテ往ッテ不意ノ出來事ニ備ヘヤウト
云フコトヲ豫算編成ノ當初ニ於テ、旣ニ政府ノ財政當局者ノ頭ノ中ニ組ンデ居ルニ相
違ナイノデアリマス、若シ三百万圓ノ豫備金ヲ以テ一箇年度內ノ豫備ニ備ヘルニ足レリ
ト云フ考ヲ以テ豫算ヲ編成スルナラバ、之ハ實ニ愚ナル當局者ト言ハナケレバナラヌ、三
百万圓デ足リル氣遣ハナイ、八千万圓ノ出納ノ時代ニ立テタ金デアルカラ、今日足ラヌ
コトハ明カデアル足ラヌトコロノ金ハ剩餘金ヲ持ッテモ往ク考ガアレバ、何故ニ初メヨリ豫
備金ノ高ヲ大キクシテ而シテ豫備金ノ財源ニ剰餘金ヲ持ッテ往テ取ラヌカ、政府ノ當局
者ノ云フニハ豫備金ハ增加シタイガ、之ガ財源ナキヲ如何セン、斯ノ如ク言ハレル財
源ガナイト云フノハ豫算ノドノ上ニ於テナイノデアル、.ドノ上ニ於テナイノデアル活キタ
人-荒川五郞君ノ所謂活キタ人、活キタ大藏大臣、活キタ大藏次官ノ頭ノ中ニハ此
豫備金デハ足ラヌカラシテ豫備金ノ外ニ、第三豫備金トシテ此剩餘金ヲ使ハウト云フ
考ヲ活キタル人ノ頭ニアルノデアリマス、此活キタ人ノ頭ニアル-財政當局者ノ頭ニア
ルコトハ正直ニ豫算ニ持ッテ來テ書キマシタナラバ豫備金ノ三百万圓ハ愚カ、正ニ千万
圓若クハ八百万圓位增シテ此財源ヲ前年度ノ剩餘金カラ取ルト云フコトヲ豫算ノ表ノ
上ニ書カナケレバナラヌ、然ルニ荒川君ノ所謂活キタル人-財政家ノ頭ハ豫算ノ上ニ
書イタ表トハ全ク違ッテ居ル、活キタル人ノ頭ヲナゼ正直ニ豫算ノ上ニ寫シテ來ナイカ、正
直ニ出テ來タナラバ豫備金ガ三百万圓デ足リルト云フヤウナ馬鹿ナコトヲ考ヘテ居ル財
政家ハ一人モナイ、足ラヌト云フ考ガアルナラバ-足ラヌナレバ何ゼ殖ヤシテ書カナイ、
何ゼ殖ヤシテ千万圓ト書カナイカ、此財源ハ豫算編成ノトキニ當局者ノ頭ノ中ニアルトコ
ロノ前年度ノ剩餘金ヲ以テ財源トシタラ宣イデハナイカ、諸君、此豫算表ニ依ッテ見マス
レバ僅ニ二百万圓ノ金モ五百万圓ノ金モ如何ニモナイヤウニ見エルノデアル、併ナガラ
翻ッテ此歲計ノ實況ヲ見マシタナラバ如何デアル、年々歲々年度ノ終リニ於テ凡ツ四千
万圓、五千万圓ト云フ多額ノ金ガ殘ルデハゴザイマセヌカ、現ニ此四十一年本年度
ノ如キニ於テモ今日ノ計算ニ於テハ其歲入ハ二千八百万圓モ豫定ヨリ多ク增シテ居ル
ト云フ話デアル、恐ラク年度ノ終リニ計算致シマシタナラバ、ヤハリ前年度ノ如ク少クトモ
四五千万ノ剩餘金ガアルト云フコトハ私ガ今日此壇ニ於テ斷定スルニ憚ラヌノデアル、
斯ノ如ク年々歲々歲計ノ結果ニ於テ四五千万圓ノ剩餘金ヲ生ズルナレバ何故ニ此豫
算編成ノ當初ニ溯ッテ卽チ歲入ヲ十分ニ大キク紙ノ上ニ書キ、歲出ヲ十分ニ細ク紙ノ
上ニ書イテ斯ノ如ク多額ナル剩餘金ヲ生ジナイヤウニ豫算ヲ編成シナイノデアルカ、若シ
當局者ガ誠心誠意大決心ヲ以テ歲計ノ實況ニ照シ、現計ニ鑑ミテ正直ニ豫算ヲ編成
致シマシタナラバ、豫算編成ノ當初ニ於テ私ハ二千万圓ヤ三千万圓ノ金ヲ餘スト云フ
コトハ、決シテ私ハ難事デナカラウト云フコトヲ信ズルノデアリマス、況ヤ僅々タル八百万
圓若クハ千万圓ニ足ラヌトコロノ豫備金ヲ增加スルコトガ出來ナイ、豫備金ヲ增加スル
コトガ困難デアルト云フガタメニ、憲法法律ノ明交ニ反スルトコロノ剩餘金ナルモノヲ議
會ノ協賛ヲ經ズシテ、勝手自由ニ之ヲ使用シテ而シテ二年モ三年モタッテカラ後ニ始メ
テ帝國議會ノ承諾ヲ求メルト云フヤウナコトヲ、若シ許シテ置キマシタナラバ議會ノ
協賛權ハ如何ニナルノデアルカ、協賛ヲ經ナイトコロノ金ヲ自由勝手ニ使ッテ宜イト云フ
コトニナレバ、協賛權ノ一部分ト云フモノガ殆ド失ハレタモノト云ハナケレバナラナイ、憲
法政治ノ骨髓タルトコロノ此豫算ノ協賛權ト云フモノガナクナリマシタ以上、我帝國議
會ハ半バ死セリト云フテモ宜カラウト思ヒマス。、然ルニ今日マデモ政府ニ於テハ憲法ニ於
テ禁止的ノ明文ガナイ、積極的ノ明文ガナイノヲ奇貨トシテ、種々樣々ナル曲解ヲ採シテ
自由勝手ニ此剩餘金ト云フモノヲ使ッテ居ルノデアルカラシテ、議會ハ卽チ玆ニ明文ヲ以
テハッキリト剩餘金ト云フモノハ使フコトガ出來ナイト云フコトヲ玆ニ規定スル必要ガアルト
云フノハ、卽チ以上述ベマシタ理由ニ基ク譯デアリマスカラシテ、ドウカ諸君滿場一致
御贊成ノ上御可決アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=69
-
070・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 修正ガ第八條、第十二條ニアリマスカラシテ、第八條ト第
十二條トハ別々ニ採決ヲ致シマス、先ヅ第八條ニ對シテ原案ニ對シテハ委員會ノ修正
ガアル又唯今鳩山君カラ修正ガ出マシテ定規ノ贊成ガアルト認メマス、仍テ鳩山君ノ
卽チ修正ハ「第八條豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出シ其
承諾ヲ求ムヘシ」ト斯ウナルノデゴザイマス、此鳩山君ノ修正ハ「求ムヘシ」ト末文ガナッテ、
他ハ委員長報告通リデアリマス、是ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=70
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071・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 多數、十二條ニハ荒川五郞君ノ反對說ガゴザイマス、是ニ
付テ採決ヲ致シマス、卽チ委員長ノ報告ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=71
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072・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 多數、他ハ委員長報告通リ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=72
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073・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマス、其通リ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=73
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074・恒松隆慶
○恆松隆慶君 直チニ三讀會ヲ開キ、二讀會通リ確定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=74
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075・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議、直チニ三讀會ヲ開クト云フコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=75
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076・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマス、直チニ三讀會ヲ開キ議案ノ全部
ヲ議題ニ供シマス
會計法中改正法律案第三讀會
〔「二讀會通リ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=76
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077・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 二讀會ノ決議通リ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=77
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078・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ其通リ決シマス、本案ハ是ニテ
確定致シマシター日程第十二乃至十四ハ同一委員ニ付託セラレタルニ依リ併セテ
委員長、及少數意見ノ報告ヲ致サセマス卽チ日程ノ十二ハ非常特別稅法中改正法
律案、島田三郞君外五名提出、第十三ハ非常特別稅法中改正法律案島田三郞
君外五名提出第十四ハ鹽專賣法 止法律案島田三郞君外五名提出、此三案
ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、先以テ特別委員長ノ報告ヲ致サセマス、特別委員長元
田肇君
〔拍手起ル〕
第十二非常特別稅法中改正法律案(衆第一讀會ノ續(報告委員長
第九號)島田三郞君外五名提出
第十三非常特別稅法中改正法律案(衆第一讀會ノ續(額等)長
第十號)島田三郞君外五名提出
第十四鹽專賣法廢止法律案(島田三郞第一讀會ノ續(報告委員長)
君外五名提出)
〔元田肇君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=78
-
079・元田肇
○元田肇君 御報告ヲ致シマス、非常特別稅法中改正法律案外二件デアリマス、卽チ通
行稅廢止ニ關スル法律案、織物稅廢止ニ關スル法律案、竝ニ鹽專賣法廢止ニ關スル
法律案、此三件ヲ同一委員ニ附託サレマシタニ付キマシテ、委員會ハ凡ソ前後八囘、卽
チ八日間ノ質問討議ヲ重ネマシテ出來得ルノ愼重審議ヲ盡シテ玆ニ御報告ヲ致スコト
ニナッタ次第デアリマス、委員會ノ決定ハ何レモ原案否決ト云フコトニナリマシタノデゴザイ
マス、其理由ヲ前例ニ依ッテ述べル譯デアリマスガ、私ハ極ク肝要ナ〓ト心得マシタ〓ダ
ケヲ玆ニ述ベマシテ、イヅレ報告ガ濟ミマシタナラバ各方面ヨリ代表的ニ御議論ガアルコ
トヽ信ジマスカラ、其御議論ニ依ッテ十分諸君ノ御判斷ヲ煩ハスコトニシテ、私ハ委員
會ニ出マシタトコロノ最モ要〓デアラウカト云フコトグケヲ簡單ニ玆ニ御報告致シマス、贊
成ヲ致サレマシタトコロノ人ノ理由ハ三稅共ニ惡稅デアルト云フコトガ一ツ、鹽稅ノ如キハ就
中貧民ニ對スル甚グ酷ナル稅デアルト云フコトデアリマス、ソレカラ第二ニハ比較的重稅
デアルト云フ卽チ廢シナケレバナラヌト云フ趣意デアリマシタ、第三ニハ織物稅ノ如キハ稅
其者モ宜クナイガ、徵稅上ニ非常ナル煩雜ヲ來シ、不公平ヲ來シ、或ル委員ノ言葉ヲ
以テ言ヒマスレバ腰ダメ稅ト云フ見積稅デアッテ、甚ダ宜シキヲ得ナイト云フノガ又一ノ
理由デゴザイマス、鹽ニ至リマシテハ臺灣ノ鹽、若クハ關東州ノ鹽、其他ノ鹽ヲ輸入致
シマスレバ誠ニ廉イ鹽ガ手ニ入ルモノヲ殊更ニ專賣法ヲ設ケテ此等ノ天產物ヲ阻害致シ
マシテ、高イ鹽ヲ人民ガ用井ナケレバナラヌト云フコトハ甚ダ其宜シキヲ得ナイト云フコト
ノ意味モアリマシテゴザイマス、ソレカラ今日デハ財政ガ之ヲ許サヌ、三稅ヲ廢シテ財源ガ
缺乏ヲ〓ゲテ許サヌト云フケレドモ、廢シテモ必ズ之ヲ充タスダケノコトハ見込ガアルト云
フコトデアリマス、其見込ガアルト云フニ對シマシテ反對論者カラ見込ハドウ云フモノガア
ルカト云フコトヲ問ハレマシタガ、ソレハ遂ニ言明ハゴザイマセナカッタ次第デアリマス、反對
ノ人ノ主ナル理由ハ如何ニモ惡稅ノヤウニアリマスケレドモ、絕對的必シモ惡稅トモ謂ハ
レヌト云フ人モアッタ、何レノ稅モ餘リ宜シキ稅ハナイ、負擔スル者ハ困ムノデアリマスカ
ラ根本的ニ是ガ必ズ惡稅デアルトハ謂ハレヌ、唯負擔ノ輕重宜シキヲ得レバ織物稅ノ
如キニ至ッテモ鹽稅ノ如キニ至ッテモ、人民ハ忍バレヌト云フコトハナイカラシテ、根本
的ニ惡稅ト謂フコトハ出來ナイト云フコトモアリマシタ、ソレカラ徵稅上ノ不都合ガアルト
云ハレルケレドモ、法其者ノ根本ノ性質ガ惡ルイト云フノトハ違フノデアッテ、如何ナル
善イ稅デモ行政官卽チ徵稅吏ガ不公平ナル行動ヲ以テ所謂收歛ノ臣ト云フヤウナ按
排ニ無暗ニ取ルト云フコトヲシマスレバ如何ナル善稅デモサウ云フ弊ハ免レヌカラシテ、
是ハ別ニ爰ニ矯正ノ道ヲ圖ラナケレバナラヌ、卽チ此〓ニ付テハ當局ニ向テ十分ニ徵稅
法ヲ誤ラヌヤウニ薄給ノ收稅吏ガ不當ナコトヲスルト云フコトガアルナラバ、十分ニ警告シテ
直サナケレバナラヌ、併ナガラ之ヲ以テ稅法其法ガ惡ルイト云フコトハ言ハレヌト云フ議論
モアリマシタ、ソレカラ內地ノ鹽田ハ如何ニナラウトモ外國若クハ臺灣關東州ニ於テノ鹽
ガ廉イノデアルカラシテ廉キモノヲ入レテ、日本ノ人民ガ用井ルト云フコトニナレバ經濟上非
常ニ宜イ、例ヘバ綿ノ如キモノニアリマシテモ外ノ印度ノ綿ヲ輸入スルコトニナッタナラバ、
日本內地綿ガ根絕スルダラウト騷イダコトモアッタケレドモ、元來廉キ生產物ヲ作ルモノハ
入レテ斯ノ如ク內地ニ於テ十分廉ク出來ルモノヲ外國ニ輸出スルト云フコトハ、經濟ノ
途ニ適ッテ居ル、現ニ紡績ト綿ハ如何デアルカ、鹽モ亦同樣デアルト謂ハレルケレドモ、日
本內地ノ鹽田、隨分數千町步ニ渉ッテ居ル所ノ鹽田ニ危害ヲ及ボスト云フヤウナ
コトハ吾〓ハ忍ブコトガ出來ナイト云フノモ、亦此鹽稅廢止ニ反對スル人ノ理由ノ一ツ
デアリマス、デ以上ハソレ〓〓稅ニ付テノ意見デゴザイマシタガ、其他ニ尙私ハ根本的ト
認メタノデアリマスガ、反對スル人ノ理由ハ此三稅ハ前ノ議會ニ於テ既ニ否決シテ居ルノ
デアル、當時否決シタ理由ハ諸君モ御承知ノ通リデアリマシテ、或ハ其當時議會ニ御列席
ニナラヌ御方モアルカモ知レマセヌケレドモ免ニ角否決シタ理由ハ天下ニ明カニナッテ居ル
次第デアリマス、財政ノ狀況ドウシテモ之ヲ許サヌト云フコトガ大ナル理由デアッテ否決ニ
ナッテ居ルノデアル、今日ニ至ッテ稍〓一千斤カリノ歲月ヲ經過シマシタケレドモ、財政ノ有
樣ト云フモノハ其當時ヨリ餘裕ガ出テ居ルカドウカ、昨年議會デ否決シタ當時ト今日ト
比ベタナラバ、非常ニ財政ヲ緊縮シテ行カナケレバナラヌト云フコトハアリマスケレドモ、餘
裕ガアッテ斯ノ如キ稅ハ廢シテモ宜イト云フヤウナ經濟界ノ有樣、國家財政ノ有樣ト云
フモノガ變動シテ居ラヌノデアルカラ、サスレバ曩キニ本議會衆議院ガ否決シタト同一ノ
理由ニ於テ、今日モ亦之ヲ否決シナケレバナラヌト云フ一ノ理由デ、是ハ大ナル理由デア
ルト信ジマス、加之其論者ノ意見ニ依リマスト是ハ戰爭中非常ノ場合デアッタカラシテ、
國民モ忍ビ帝國議會モ協贊ヲ表シタノデアルカラ、今ハ旣ニ戰爭ハ濟ンデ居ルデハナイカ
ト申シマスルガ、戰爭ハ旣ニ濟ンダ、戰爭ハ濟ンダケレドモ、戰爭中ニ日本國民ガ負擔
シテ居ルトコロノ彼ノ國債ノ如キ易イ言葉デ言ヒマスト、借財尙借財ヲ拵ヘテ戰爭
ヲ致シマシタケレドモ、今日ニ至ルマデ戰爭ト云フ鬪ダケハ濟ンダノデアッテ、此借財ノ
穴ト云フモノハ依然トシテ決シテ塡ッテ居ラヌノデアル卽チ戰爭ノ當時ニ居ル心持デ國
民ガ進ンデ重稅デモ苦ンデ發展シテ行クコトニシナケレバナラヌ、加之戰後ノ經營ハ吾〓
ガ更ニ一層大發展ヲ致シテ、國力ノ發展ヲ求メ凡テノ諸般ノ發達ヲ圖ラナケレバナラヌ、
今日ニ於キマシテ、費用ハ益、多大ヲ要スルコトデアルノニ、唯民力ヲ休メル一〓ニ氣ヲ著
ケテ、此歲入ノ缺陷ヲ生ズルニモ拘ラズ此稅ヲ廢スルト云フコトハ決シテ宜シキヲ得タモ
ノデハナイ、然ラバ此稅ト云フモノハ到底永遠無窮ニ動カスコトガ出來ナイカト申シマス
レバ、政府モ明言スル如ク假リニ政府ガ-現政府ガ己ノ今日明言シテ居ルトコロノ政
綱ヲ實行致シマシテ-實行セヌトキニハ別問題デアリマスガ、實行致シマシテ先ヅ財政
計畫ノ基礎ヲ鞏固ニ致シマシテ諸般ノ畫策ガ立ッテ行ク時代ニ至リマシテハ、今日ヨリハ
或ハ種々ナル方法ヲ以テ財政ノ計畫ガ大ニ動クト云フコトハアリマセウ、今私ハ爰ニ自ラ
其人〓ノ言フトコロノ內容ヲ想像シテ申セバ言ハレヌコトハゴザイマセヌガ、財政ノ運用ニ
關係スルコトデゴザイマスカラ、暫ク言明スルコトハ、想像スルコトハヨシマスケレドモ、財
政計畫ガ立チ、或ハ四十五年度ニ至リマスレバ或ル法律ノ改正案モ出來ルタメニ、歲入
ガ增スコトニナッテ居ルノデアリマス旁〓斯ノ如キ財政計畫ヲ立テマシテ其結果ト致シ、
又法律ノ改廢等ヲ致シマシテ、爰ニ餘裕ガ生ズルニ至ッタナラバ、何モ四十三年ト云フ
一年越シニ致サナクッテモ其時ハ政府ガ爲サナケレバ吾〓ノ權能デ直チニ改廢ヲ行フコトガ
出來ルノデアル、此場合ニ當テハ啻此三稅ノミ惡稅トカ重稅トカ云フ譯デハナクシテ、諸般
ノ戰爭中ニ掛ケラレテ居ル稅ト云フモノヽ輕重宜キヲ得ルヤウニ審査ヲ致シマシテ、ザウシ
テ根本的ノ整理ラスルト一ムフコトガ必要デアル、其故ニ今日ニ於テハ遺憾ナガラ之ニ
贊成スルコトガ出來ナイト云フノガ反對論者ノ說デアッタト思ヒマスル、此以上ノ事柄ニ
於テ委員長ノ報告ガ或ハ粗漏ニ流レルコトガアルカモ知レマセヌケレドモ、イヅレ是ヨリ各
流代表者ガ御討論ニナルコトデアリマセウカラ、私ノ報告ハ爰ニ止メテ置クコトニ致シマ
シン、ソレヲ御聞キノ上デ十分御討議アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)
〔內閣總理大臣侯爵桂太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=79
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080・桂太郎
○內閣總理大臣(侯爵桂太郞君) 諸君唯今本議場ニ議題トナッテ居リマスル所ノ
織物稅外二案ニ付キマシテ、諸君ノ御討議ニナリマスル前ニ一應政府ノ所信ヲ申述ベ置
キマスルノガ必要ト存ジマス、旣ニ先達當議場ニ一旦此問題ノ現ハレマシタトキニ政府
ハ所信ヲ申述ベテ居リマスル、其後委員會ニ於キマシテモ屢〓委員諸君ノ御質問ニ對
シマシテ、本官始メ政府委員ニ於キマシテ其都度明細ナル御答辯若クハ意見ヲ陳述
致シテ居リマス、ソレ故ニ諸君ニ於カレマシテハ多分政府ノ執ッテ居リマスルトコロノ意見、
卽チ此三稅廢スベカラズト云フコトニ付キマシテハ篤ト御了解ノアルコトト信ジテ居ルノ
デゴザイマス併ナガラ茲ニ重複ヲ厭ハズ尙更政府ノ所信ヲ述べ何ガ故ニ此三稅ノ廢止
能ハナイカト云フコトヲ陳述致シマシテ此案ニ御反對ノアランコトヲ希望致スノデゴザイマ
ス、諸君、今囘政府ノ立ッテ居リマスルトコロノ財政計畫ハ歲入歲出ノ均衡ヲ計リマシ
テ、財政ノ基礎ヲ鞏固ニシ、又公債整理ノ方針ヲ定メマシテ國ノ信用ヲ恢復スルト云
フコトノ根本デアリマス諸君ノ既ニ御承知ノ如ク政府ハ此必要ニ依リマシテ既定ノ事
業ニ致シマシテハ其緩急ヲ計リマシテ、其繰延ベ得ベキモノハ繰延ベ、又普通ノ經費ニ於
キマシテモ其削減シ能フトコロノモノハ削減ヲ致シマシテ、財政ノ計畫ヲ定メタノデゴザイ
マスル、故ニ既ニ諸君ガ御協賛ニナリマシタ歳出ハ此上ニ削減ノ餘地ハナイノデゴザイマ
ス、然ルニ唯今諸君ノ御審議ニナリマスルトコロノ此三稅ノ廢止ヲ實行ヲ致シマスルニ
於キマシテハ、先般モ申述ベマシタ如ク、三千有餘万ノ歲出ニ缺損ヲ致スノデゴザイマス、
ソレ故ニ政府ガ折角整理ヲ致サント致シマシタトコロノ財政ヲ致シマシテ、再ビ心配スベ
キ狀態ヲ繰返スノデゴザイマス、故ニ政府ニ於キマシテハ遺憾ナガラ本案ニ同意ヲ致スコ
トガ出來ナイノデゴザイマス、ドウカ十分御考慮ヲ願ヒマシテ滿場一致此案ニ御反對ノ
アランコトヲ希望シテ止マヌノデゴザイマス
〔「拍手起ル」「ノウノ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=80
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081・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員會ノ少數意見提出者島田三郞君
〔島田三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=81
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082・島田三郎
○島田三郞君 諸君、本員ハ二ツノ職分ヲ帶ビテ唯今此壇上ニ立ッテ本員ノ所思
ト、竝ニ委託セラレタルトコロノ少數意見ノ報告ヲ致シマス、順序ト致シマシテ此議案ノ
番號ヲ見マスト云フト、通行稅、織物稅ガ先キニアッテ、鹽稅ガ其次ニアリマス、併ナガラ
委員會ノ中ノ質問ノ順序、竝ニ討論ノ順序、總テ鹽專賣法ヲ先キト致シマシテ、サウシ
テ織物稅、通行稅ト云フニ至リマシタ、丁度此意ヲ以テ元田委員長ガヤハリ其順ニ報
告セラレタト思ヒマスカラ、本員モヤハリ討論ノ便宜ニ依リマシテ之ヲ一括致シマシテ、順
序ハ鹽專賣法、織物稅、通行稅ト、斯ウ云フヤウニ說明ヲ致ス積リデアリマス、是ハ少
數意見ノ報告モ其順序ニ依リマスシ、提出者タル本員ノ所思ヲ述ベマスルノモヤハリ其
順序ニ致シマス、前段ノ手續ハ元田委員長カラ御話ニナッタ通リデアリマシテ、サウシテ
昨八日ノ午前午後討論ニ移リマシテ、サウシテ其結果唯今委員長ノ報告通リニナリマ
シタ、其外ニ少數意見トシテ同志ノ者ガ出シマシタノデ、其少數ノ割合ハ十七ニ對スル
十五ノ少數ヲ以テ鹽專賣法ガ否決ニナリマシタ、十七ニ對スル十六ノ割合ヲ以テ織物
稅ガ否決ニナリマシタ、通行稅ハ十七ニ對スル十四ノ割合デ否決ニナリマシタ、其理由ハ
略詳略ノ別ハアリマスガ、雙方ヲ取ッテ委員長カラ報告ニナリマシタカラ、重ネテ少數
意見トシテ本員ガ御報告ヲ申スノ必要ハナイト思ヒマス、手續ハ唯今ノ通リデアッテ、本案
ガ否決致サレタニ付テ卽時ニ少數意見トシテ唯今ノ鹽專賣ニ對シテ十五名ノ署名ヲ以テ
少數意見ヲ提出致シ、十一ハ名ノ署名ヲ以テ織物稅ニ對スル少數意見ヲ提出シ、十四
名ノ署名ヲ以テ通行稅ニ對スル少數意見ヲ提出致シマシタ、サウシテ斯ノ如クニ致シテ
少數意見ガ御手許ニ迴ッテアルガ如キモノニ成立ッタノデアリマスガ、是ヨリ以上少數意
見トシテ御報告スルコトノ必要ハナイト本員ハ思ウテ居リマス、此處デ少數意見ノ報
告ヲ終リマシテ、サウシテ第二ノ職分卽チ本案提出者ノ一人トシテ是ヨリ鹽專賣法廢
スベシ、通行稅、織物稅廢スベシト云フトコロノ理由ヲ申述ベルノデアリマス、三案ノ中ニ
付テ主トシテ鹽專賣法ノ宜シカラザルコト、稅其性質ガ宜シカラザルコトデ、サウシテ是ガ
タメニ大ニ國民ガ害ヲ被ッテ居ル、政府ノ得ルトコロ少ナクシテ其得ルヨリモ大ナル割合
ヲ以テ國民ガ損害ヲ被ッテ居ル是ハ改正ノシヤウノナイ其性質ガ專賣トシテ宜シクナイ
ト云フノガ、本員ノ所信デアリマスルカラ之ヲ申述ベマス、併ナガラ之ヲ申述ベルニ付テ、
總論トシテ三案ニ對スルトコロノ意見ヲ申述ベル必要ガアルト思フ、ソレハ他ノコトデモ
ナイノデアリマスルが、此三稅ト云フモノヲ提出致シテ屢〓此演壇カラ廢止スベシト云フコ
トヲ述ベマスルノハ、單ニ三種ノ租稅廢止問題トシテ本員ガ述ベテ居ルノデハナイ、一見
シマスルト云フト單ニ三種ノ租稅廢止問題ノ如ク見エマスルケレドモ、其實ハ左樣ニ單純
ナルモノニアラズシテ其中ニ含マレタルトコロノ主義議論ト云フモノガ一般ノ租稅ノ主義
ニ亙リマスルノト、財政ノ通論ニ亙リマスルノト否ナ、寧ロ官民ノ間ニヤリマスルトコロノ
事業ノ區劃ノ得失論ガ其中ニ含マレテ居ルノデアリマスカラ、之ヲ總論トシテ述ベマセヌ
ケレバ眞ニ同志者ト共ニ二稅廢止案ヲ提出シタルトコロノ精神ガ理解セラレヌト本員ハ思
フノデアル、且又三稅ヲ廢止致シマスレバ吾〓同論者ガ之ヲ以テ滿足スルト云フモノニア
ラズシテ、戰時俄ニ有ラユル稅目ヲ加ヘ、有ラユル稅率ヲ增加致シマシタニ付テ、其全體
ヲ改正スルトコロノ必要ガアリマスケレドモ、是ハ稅其者ノ惡ルイノニアラズシテ、率其者ノ
不公平不平均ト云フヤウナ方ノ論ニ亙リマスルノデ、其中ニ就テ此三種ノ稅ハ稅其者ノ
性質ガ宜シクナイノデ、決シテ稅率トカ負擔ノ割合トカ云フヤウナ稅ノ性質以外ノ手段論
ニアラズシテ、稅其者ノ本質ガ宜シクナイト云フノデアリマスカラ、他ノ營業稅デアルトカ、
所得稅デアルトカ、其他ノモノニ付テハ細カキ調査ヲ要シマシテ、其負擔ノ割合ノ不權
衡不公平ヲ直シマスレバ國家必要ナ財源トシテ永久ニ存スベキノ性質ヲ帶ビテ居ルト、
斯樣ニ理解セラレテ居リマスガ、不幸ニシテ通行稅ノ如キ、織物稅ノ如キ、又ハ鹽專賣
法ノ如キ、是等ノモノハ直シヤウノナイ、其本質ガ宜シクナイノデアリマスカラ、別ニ調査
ヲスル必要ガ無クシテ先ヅ他ノ總テノ稅ヲ改正スル其先驅トシテ此三稅ヲ廢サネバナラヌ
ト云フノガ吾ミノ所信デアリマス、之ガタメニ曩ニモ此演壇ニ述バラレ、唯今又此演壇ニ
述ベラレタルガ如ク、總理兼大藏大臣桂侯爵ハ、是ガタメニ三千五百餘万圓ノ缺
陷ヲ生ズルト云フコトデアリマスガ、是ガ又喫緊問題デアリマスノデ此缺陷ヲ如何ニスル
カト云フコトニ付テ、委員長モヤハリ是ガ緊要ノ論〓トシテ報告セラレ、政府モ亦之ヲ
緊要ノ論〓トシテ述ベラレタノデアリマスルカラ、是ガ結論ニ於テドウシテモ可否ノ岐ルヽ
トコロデアラウト本員ハ思ウテ居リマス、反對論者ハ此稅源ガ不確カデアルカラ稅其者
惡シシト雖モ尙廢止スベカラズト言ハレマスケレドモ、本員ハ却テ其缺陷ヲ生ズルト云フ
コトガ最モ全部ノ改正ヲ促ストコロノ先驅トシテ必要デアルト思ウテ居リマス、本員ハ斯
樣ニ理解スル、稅ダケヲ論ジテ決シテ此方カラ止メルコトガ出來ナイ、稅ヲ論ズル前ニ先
ヅ行政財政ノ全般ニ亙ッテ今改正ヲ加ヘナケレバ稅率若クハ稅則稅法トームフモノダケ
デ此目的ヲ達スルコトガ出來ヌト思フノデアル、ソレ故ニ三千万圓程ノ缺陷ガ生ズル、此
三千万圓ト云フコトハ後ニ詳シク本員ノ所信ヲ述ベマスガ、政府ハ三千五百万圓ト云
ヒ本員等ノ見ル處デハ多分一一千七八百万圓、多クトモ三千万圓ニ至ルマイト、斯樣
ニ信ジテ居リマスガ、此理由ハ後ニ述ベマス、何レニシテモ此三稅ヲ廢シマスレバ、二千
七八百万圓乃至三千万圓ノ缺陷ヲ生ズルト云フノデアル、此缺陷ヲ生ズルト云フコト
ハ實ニ戰時稅トシテ課セラレテ、今日マデ荏苒殘ッテ居リマストコロノ全部ノ改正ヲ促ス
第一步デアルト、斯樣ニ信ジテ居リマスカラ、調査ヲ要セズ其性質ノ惡イモノハ一日モ
國民ノ經濟ヲ紊ルトコロノ害物ナリトシテ存スベカラズト思ウテ居リマスガ故ニ、之ヲ廢セ
ント云フコトヲ望ンデ居ルノデアリマス、是ニ付テ更ニ全部ヲ論ジテ見マスルト云フト現
內閣ハ前內閣ニ次デ起リマシタ、其時ノ趣意ハ何デアルカ、其精神ハ何デアルカ、其標
榜セラレタル旗幟ト云フモノハ他ノコトデハナイ、財政ノ整理ト云フコトガ目的デ立タレ
タ、斯ク明言セラレタト云フコトハ世ノ中ノ耳目ニアルコトデ、其當時內閣ノ更迭セシ事
情竝ニ現內閣ノ起リマシタトコロノ事實、ソレニ附帶シテ藏相ガ明言セラレルトコロ
世ノ中ニ告ゲマシタルトコロヲ參照致シテ見マシテモ、總テ財政整理ト云フコトヲ以テ始
メテ此內閣ノ存立ノ意味ガ理解セラルヽノデアリマスガ、此整理ト云フコトニ付テ本員ノ
理解スルトコロ、本員竝ニ同論者ノ理解スルトコロト、現內閣竝ニ現內閣ヲ謳歌セラレ
ルトコロノ諸君ノ意見トノ岐レガ玆ニアルノデアリマス、本員等ノ財政整理ト一云フコトハ
單ニ國債處分ト云フ意味ニアラズシテ、行政ノ改革竝ニ是ニ伴フトコロノ稅制ノ改革ト
云フコトヲ併セテ財政ノ整理ト云ヒ、更ニ政府以外ノ國民ノ關係ヲ論ジマスレバ國民
ノ負擔力ヲ緩メテサウシテ國力ノ發展ヲ促ストコロノ經濟基礎ヲ安固ニシタイト云フノガ
本員ノ意味スルトコロノ廣キ財政整理ト云フコトノ意味デアリマスルガ、不幸ニシテ此意
味ガ現內閣ノ財政整理ト云フコトノ說明竝ニ意味ト符合致シマセヌ、現內閣ハ國債處
分ト云フコトノ極ク單純ナルモノヲ以テ財政整理ト理解セラレテ居ルヤウニ考ヘマスカラ、
此處ガ卽チ意見ノ岐レ目デアリマシテ、三稅廢止ヲ唱ヘマスルトコロノ吾〓同論者ハ唯
今述ベマシタル如ク、民力ノ休養國力ノ發展、財政ノ基礎トナルベキトコロノ國力ノ安
寧、ソレヨリシテ政府部內ニ亙リマスレバ行政ノ錯雜シテ居ル、煩雜ニ亙ッテ居ルトコロノ
モノヲ簡易ニシマシテ、是ニ伴ウテ財政ニ餘裕ヲ生ゼシムルコトガ出來ル、其餘裕ヲ生ゼシ
ムルトコロノ手段ガ深ク信ゼラレルガ故ニ、之ヲ以テ差向キ何レノ方面カラ見テモ其性質
ニ付テ宜シクナイトコロノ此三悪稅ヲ廢スルト云フコトヲ主張スルノデアッテ、此間ニ少シ
モ矛盾シタトコロノ議論ハナイト本員ハ確信シテ居リマス、政府ハ國力ヲ度外ニ置イテ寧
ロ政府ガ孤立シテ目前ノ會計ノ都合ガ宜ケレバ之ヲ以テ財政整理ノ能事了レリト考ヘ
テ居ラレルヤウデアリマスガ、何ゾ料ラン稅ノ裕カナルハ民業ノ振作ヲ基トシナケレバナラ
ズ、國力ノ發揚ヲ基トシナケレバナラヌト云フノデ、是ニ於テ先ヅ會計ノ都合ヲ計ルトコロ
ノ第一義ヲ採ッテ立ッテ居ルノガ現内閣ノ方針デアッテ、サウシテ吾〓ノ考ハ國力ヲ涵
養シ民力ノ發展ヲ計ッテ自然ニ國庫ノ裕カナルトキヲ期セン、斯樣ナル意味デアリマシ
テ、若モ此希望ガ內外多事ノ秋デアッタナラバ、吾〓ノ議論ヲ用井ル餘地ナシト雖モ、幸
ニシテ內外平和ノ時代デアルカラ此希望ヲ容易ニ達シ得ルト云フコトヲ本員ハ信ジテ唯
此時ヲ然リト考ヘマスルガ故ニ、此案ヲ提出致シタ譯デアリマス、斯ウ云フヤウナ譯デ更
ニ其間ニ矛盾モナケレバ黍員長ノ報告セラレマシタ反對論者ノ說クガ如ク、此三稅ヲ廢
止シタラ缺陷ヲ如何ニスベキカト云フコトニ付テ考案モナイトハ本員ハ決シテ言ハヌノデア
ル、此結論トシテ其考案ヲ諸君ニ訴ヘヤウト思フノデアリマス(拍手起ル)元來申シマス
ルト政府ハ吾〓同論者ノ說ヲ容レズシテ今日ノ窮局ニ立タレタノデアル、前內閣モ然リ、
現內閣モ亦然リト本員ハ思ッテ居ル、之ハドウ云フコトカト云フト戰終シテ後ノ處分ニ引
續イテ公債ヲ募ルト云フコトノ案ヲ提ゲテ出デラレタ、戰ノ終ッタトキニ戰ニ供スベキトコ
ロノ金ノ凡ソ一億五千万圓-二億万圓ニ達スルデアラウト云フ巨額ヲ之ヲ拂込
マズシテ其儘繼續事業ニ割當テヽ年限ヲ定メテ皆使拂フトコロノ計算ヲ定メラレタ、之
ガ抑〓今日急遽ニ公債處分ト云フコトノ必要ヲ現內閣ヲシテ神經的ニ感ゼシムル原因
デアッテ、是ハ今日行ハレタルニアラズ、當初戰後ノ財政計畫ヲ誤ッタノガ今日ニ現ハレタ
ト本員ハ思ッテ居リマス、(拍手起ル)且又此場合ニ於テ更ニ公債ヲ殖スベキトコロノ政
路ヲ執ッタニ付テハ、本員ハ豫メ政府ノ朋友トシテ之ヲ贊成セラレタル諸君ヨリハ寧ロ
政府ノ反對ノ側ニ立ッテ居ル吾〓ノ忠告ガ今日ニ至ッテハ口ニ苦カリシ良藥ナリト前內
閣モ現內閣モ覺ラレルデアラウト本員ハ思ッテ居リマス(拍手起ル)ソレハ外ノコトデハナイ、
公債ガ戰ノタメニ殖ヘタ、餘ッテ居ルトコロノ軍費ニ供スベキモノヲ其儘行政費ニ繰込ン
デシマッタ、其上ニ更ニ未募集公頃ヲ豫算ノ上ニ入レタ、其上更ニ五億ニ近キトコロノ國
有鐵道ヲ起シテ其公債ヲ發行スルコトニシタ、其時ニ本員ハ極力反對ヲシタガ不幸ニ
シテ此反對ハ容レラレザルノミナラズ、政府ハ不思議ナル辯解ヲ之ニ加ヘテ鐵道ノ株券ハ
世ノ中ニ行ハレテ居ル一ノ證劵ナリ、國債ハ形ヲ以テ之ヲ引換ヘルノモ一ノ證劵ナリ、ツ
レ故ニ此株劵ヲ引換ヘルノニ公債ヲ以テスルモ、決シテ公債ノ價ニ影響ハセヌト辯解セ
ラレマシタ、事速記錄ニアリ國民ノ記憶ニアリ諸君ノ耳ノ底ニアルノデアル其時ニ政府
ガ全部公債政策ヲヤッタ、ソレハ前內閣ノトキニ行ハレマシタガ事情ヲ綜合シテ見マスレバ
現內閣ノ遺策シテ行ハレタト云フコトハ其當時ノ前首相西園寺侯爵ガ議會ヲ召集セ
ントスル日ニ近ヅイテ内閣ガ代ッタカラ此財政計畫ハ前內閣ノ調査ヲ基礎トシテ提出ス
ル來年ニナレバ更ニ改メテ取調ベテ諸君ノ議ニ付シマセウト云ハレタトコロヲ日ルルト、
前ノ桂內閣ノ遺策タル此增債政略ヲ西園寺內閣ガ直グ行ハシタ未募集公債ヲ載セ
ル、之カラ餘ッテ居ルトコロノモノヲ返サズシテ其儘使じ、五億ニ近イ鐵道公債ヲ募ル、
之ハ皆吾〓ノ反對シタルトコロノモノヲ直グヤラレタ、其時ニ公債萬能政略ヲ行ハレタノデ
アヲチ、今日ニ至ッテハ全ク之ト反對デアッテ、今度ハ唯公債ヲ滅スヨリ外ニ能事ナシト出
ラレタ、之ハ極端ヨリ極端ニ走ッタノデアルト本員ハ思フ(拍手起ル)ソレ故ニ三稅廢止
論ヲ提ゲテ立ツ吾ミニハ誠ニ厥ノ中ヲ執レト云フ簡單ナル古諺ヲ是等ノ御方ニ呈シタイ
ト思ウテ居ル併セテ公債ヲ極度ニ返却スルニ及バズ同時ニ前ノ如ク無理カラ公債ヲ募
ルト云フヤウナ危險ナ政略ヲ執ラルヽト云フコトハ更ニ困ルト云フコトヲ以テ忠告致シタ
イノデアリマス、前車ノ覆ヘルヲ見テ後車ノ戒トナスノデ、モウ少シ鞏固ノ政略ヲ執ラルヽコ
トヲ本員ハ望ムノデアリマス、戰爭ノトキニ期限アル租稅ヲ課シテハ民力ガ堪ヘキレナイ、
併ナガラ國家ノ安危ニハ代ヘラレナイ、ソレ故ニ國民ハ愛國ノ情ニ促サレテ期限アル租稅
ヲ負擔シタ、、當時ノ事情ヲ綜合シテ見マスレバ、當局ノ行政官ハ皆營業者ニ斯樣ナルコ
トヲ口ヅカラ傳ヘテ居ル、唯今大藏次官ヲシテ居ラル、若槻政府委員ノ言トシテ、斯ノ
如キ租稅ヲ徵收スルトキノ說諭トシテ世ノ中ニ傳ハッテ居ルト本員ハ思ヒマス、決シテ之
ハ永久稅ニスルノデナイ、戰後ニハ必ズ此事ノ締リヲ著ケルノデアルカラ、此國家ノ急ノ
タメニ痛ミヲ忍ベト云フコトデアルカラ、此事ハ獻金同樣ナ精神ヲ以テセラレタルトコロノ
諸種ノ稅ガ殘ッテ居ル、然ラバ前ニ公債萬能ノ政略ヲ執ッタルトコロノ政府ハ醒來ッテ公
債ヲ募ラヌト云フコトハ、本員モ同意ヲ致シマスケレドモ、是等ノ信約ヲ無視シテ唯公債
ヲ返却スルノ急アルガタメニ、此間桂藏相ガ此壇ニ立ッテ述ベラレタ短カキ演說ノ中ニ三
千五百万圓ノ缺陷ヲ生ズル、ソレ故ニ此稅ヲ廢メルコトハ出來ナイ、公債ヲ償却シナケレ
バナラヌ、此事ガ第一ノ急務デアル唯今ダケノ公債デハヤラナイノデ、鐵道ノ公債モ是カ
ラ出スト云ハレタ、此鐵道ノ公債ヲ出スニ至ラシメタモノハ苟モ誰ゾヤ、吾ミハ極力之ニ
反對ヲシテ懇切ニ警告ヲ與ヘタノヲ顧ミズ、斯ノ如キ難事ヲ起シテ之ヲ處分スルニ當ッテ
恰モ天外ヨリ落來ッテ公債ガ殖ヘタ如キ態度ヲ執ラルヽガ如キニ至ッテハ、行政ノ能事何
レニアルカト本員ハ思フ(拍手起ル)之ハ速記錄自ラ語ルデアリマセウ、諸君、速記錄ヲ
讀ムダケノ能力ガアリ、諸君ガ未ダ健忘症ニ罹ラザル以上ハ、此歷史的事業ヲ埋沒スル
コトハ出來ヌト思フ、併ナガラ政府ハ幸ニ公債政略ヲ廢メラレタノハ結構デアル、更ハ
極端ヨリ極端ニ、所謂羹ニ懲リテ鱠ヲ吹クト云フ譯デ、公債サヘ返セバ天下ノコト皆爲
スベシト思ッタノハ誤リト云ハナケレバナラヌ、此コトニ付テハ後トデ委シク公債政略ノ誤レ
ルコトヲ論ズル積リデアリマス、併ナガラ三稅廢止ノ詳カナル意義ヲ理解セシメンガタメニ
本員ハ此公債ノコトヲ後トニ讓ッテ、先ヅ三稅ノ上カラ論ズルコトヲ必要ト考ヘマス、國
民ノ生活費ヲ高メテ特ニ課稅ヲシテ人民ニ重キ負擔ヲナサシムルト云フコトハ、一體政
治ノ方針トシテ宜シクナイ、之ハ全ク抽象的ニ私ハ論ズルノデ、唯鹽專賣ダケヲ云フノデ
ナイ、成ルダケ世ノ中ハ平等ニ平均シテ活動スルモノニ自由ニ活動ヲ爲サシメテ、其結果
國力ノ發展國ノ內ニ不平ノ民ナク、內ニ欝屈ヲ訴フルトコロノ人ナクシテ、一國園
結シテ其國力ヲ發展セシムルト云フ健全ナル政治方針ヲ執ラレンコトヲ本員ハ望ムノデ
アリマス、不幸ニシテ今囘政府ノ執ラルヽトコロノ財政方針ハ全ク之ト反對デアル
其一例ハ本員鹽專賣ヲ舉ルニ好キ機會ト思フカラ、總體論カラ進ンデ鹽專賣ノ非ナル
コトヲ論ズルノガ順序ニ於テ宜シイト思ヒマス、鹽專賣ヲ〓括シテ論ジマスレバ鹽田ノ大
地主ニ過當ノ利益ヲ與ヘテ、保護ノ名ニ依ッテ安坐シテ居ルトコロノ者ニ多クノ利益ヲ
得セシムルト云フコトハ宜クナイコトデアル一般ノ多數國民ハ之ガタメニ無益ノ負擔ヲ
被ッテ居ル、若シ此全部ガ國庫ニ這入ルト云フコトデアルナラバ、未ダ尙忍ブベシ、併シナ
ガラ政府ノ國庫ニ此全部ハ入ラズシテ、一ハ大ナル鹽田所有者ニ行キ、其或ル部分ハ
收稅ノ費用ニ消磨シテシマフ、此稅ノ性質ノ宜カラザルト云フコトハ國家政治ノ方針カ
ラ論ジテモ、財政方針カラ論ジテモ、租稅ノ主義カラ論ジテモ、宜クナイト思ッテ居リマ
ス、本員ハ政治ノ目的トシテ政府ト違フトコロノモノヽ箇條ヲ簡約ニ擧ゲテ見ルト、專
賣特許ト云フコトハ封建時代ニ行ハレタ事柄デ、自然家柄ニ依ッテ事業ヲ營マレタル
封建特殊ノ組織ナル專賣ノ遺風デアリマス、サウシテ富民ニ特典ヲ與ヘテ其族ヲ保護ス
ルハ宜クナイト云フノデ、維新ノ改革ノ新天地ヲ聞イタトキ、此特權ヲ破ルト云フヲ以テ
改革ノ目的トシタ、何レノ時代ニ於テモ特權ヲ得タトコロノモノハ其過當ノ特權ヲ破ッタ
デアル、是ガ今日ニ於テ再興シタニ付テハ私ハ是ニ大ナル打擊ヲ加ヘザルヲ得ヌ、營
業ヲ抑壓スルト云フコトハ國民ノ活動ノ上ニ宜シクナイコトデアル、政府ガ直接ニ事
業ヲ營ンデ政府ノ手ヲ經ルト云フコトニナルト、元ノ力ヨリ幾多ノ力ヲ生ズル、斯ノ如ク
官僚主義ヲ以テヤルト云フコトハ、最早遲レタル思想デ、政府ハ政府ノ範圍ヲ守ッテ、
有利ノ資本ヲ民間ニ活動セシメ、國民ヲシテ活動セシムルト一云フ政治ノ方針ヲ、此財政
ノ上ニ適用セシムレバ宜シイノデアル、本員ハ國民ノ負擔ノ平等ヲ望ム、民間營業ノ自
由ヲ望ム、政府事業ノ簡易捷略ヲ望ム、收稅ノ手間ノ要ラザル簡易ノ方法ニ依ッテ收
稅費ノカヽラヌヤウニ、民間ノ關係者ニ時間ト煩勞トヲ多クカケテ貰ヒタクナイ、期ウ云
フ主義ヲ執ッテ貫ヒタイノデアルガ、此方針ヲ以テ見ルト全ク是ニ背イテ居ルノデアルF
ウシテモ吾〓ハ是ニ反對セザルヲ得ヌノデアル、併ナガラ過日此議案ヲ提出スルトキニ本
員ハ惡約ノ惡稅タル所以ハ確定シテ居リマスカラ、今更諸君ノ御聽ヲ煩ハス必要ハナイ、
唯信約約束ガ出來テ居ルカラ其〓ニ於テ國家ノ信用ヲ鞏固ニセンガタメニ惡ルイモノヲ
早ク除カレンコトヲ論ジタガ、圖ラザリキ委員會ノ質問及討論ニ鑑ミマスルト、未ケ斯樣
ナル誤ガ殘ッテ居ル、稅其物ノ性質ガ惡ルキニアラズシテ其方法ヲ改メタナラバ、尙此稅
モ繼續シテ行ケルト云フ思想ガ多數此中ニアリマシタ、サウスルト寔ニ此明カナル道理ヲ
繰返スハ諸君ニ對シ御氣ノ毒テ本員モ煩勞デアルト思フガ、今日自ラ顧ミテ尙其非ヲ
覺ラザルヲ得ヌノデ、サウ云フ人ガアルカラ餘儀ナク先ヅ此鹽專賣法ガ稅其物トシテ宜シ
クナイ、惡稅ノ惡稅タル所以ヲ聊論ゼザルヲ得ヌ、是レ本員ガ辯ヲ好ムニアラズシテ本
員ヲシテ之ヲ辯ゼシムル境遇ガ之ヲ然ラシメタノデアルト云フコトハ前以テ一言附加ヘテ置
カナケレバナラヌノデアル、明治三十八年ニ鹽ノ專賣ヲ實施シタトキ、鹽ノ買上直段ハ
百斤ニ付テ七十六錢テアッタ、然ルニ現今ノ賠償金卽チ購入直段ハ一圓ニナッテ居ル、最
近ノ有樣ニ依リマスト總テノ物價ト云フモノハ不景氣ノタメニ下落シテ居ル、然ルニ鹽
ノ買上直段ハ七十六錢デアッタノガ今日ハ一圓ニ上ッテ居ルノデアル、此間ノ違ヒト云フ
モノハ全ク專賣ノタメニ來タノデアッテ、其結果ト云フモノハ國民ニ餘計ノ費用ヲ負擔セ
シメテ居ルノデアル、若シ是ガ民間ニ於テ、經營シ所謂需用供給ノ理法ニ依シテヤッタナ
ラバ生產費ガ滅ジ一般ノ物價ガ低落ヲスルト云フトキニハ鹽ノ費用モ減ジ其鹽ノ値
モ下ラザルヲ得タノデアル、然ルニ專賣ト云フ規則的拘束ノタメニ逆比例ヲ呈シ物價
ノ下ッテ居ルノニ鹽ノ買入直段ト云フモノハ却ッテ一圓ニ上ッテ居ルト云フ有樣ニナッテ居
ルノデアル、其結果ト云フモノハ一部ノ鹽田主ニハ非常ナル利益ヲ與ヘ、サウシテ一般
國民ニハ無益ナル負擔ヲ與ヘテ居ルノデアル、更ニ臺灣鹽及關東鹽ノ生產費ヲ聞イテ
見ルト、通常ノ品デ百斤ニ付テ二十錢、善イモノモアレバ惡ルイモノモアルガ、最良品デ二
十六錢、神戶著デ六十五錢ト云フコトデアル、卽チ六十五錢デ買ヘル鹽ガ內地ニ於テ
政府ガ一圓デ買ハナケレバナラヌト云フハ、抑〓何ノ必要アッテ斯樣ノコトヲヤルノデアル
カ、神戶專賣局ノ拂下直段ハ百斤ニ付テ二圓五錢デアル、是ニ付テ政府ハ更ニ纏ラ
ヌトコロノイロ〓〓ノ理由ヲ云フテ人ニ依ッテ皆違フ、或ハ內地ノ鹽田ヲ保護スルト云ヒ、
或ハ外國鹽ノ入ッテ來ルノヲ防グト云ヒ、イロ〓〓ノコトヲ云フ、專賣ノタメニ掛ケタト
コロノ三百万圓ト云フモノガ潰レテシマフ、政府ノ損ニナルトニムフ、デ損モ國民ガスルナラ
バ我慢スルソレヲ恰モ政府ハ之ヲ別個ノ私有財產ノ如ク心得テ、國民ノ利益幸福ノ
タメニ制度ノ善惡ヲ見ルニアラズシテ営局者-事務官自分ノ仕事ノ都合カラ事
業ノ繼續ヲ望ムガ如キ語氣ヲ以テ辯解スルト云フニ至ッテハ國民ヲ度外視シタル全體
ニ於テ精神ノ誤リタル申分ト評セザルヲ得ヌ、外國ノ鹽ガ入ルト云フコトヲ憂フルガ、橫
濱デ七十四錢ノ原價ニ十八錢ノ關稅ヲ拂ッテ九十二錢ニナル外國鹽其鹽ト臺灣
鹽關東鹽ノ六十五錢ト較ベテドウデアル外園ノ鹽ガ日本ノ鹽ノ市場ヲ壓シテ居ル
カドウデアル、是ニ依レバ決シテ左樣ナコトガナイト云フコトガ分ル、我國ニ於テ鹽ノ專
賣以前外國鹽ノ入ッタトキニ幾ラ入ッタカ、四千万斤五千万斤位、全體日本ニ於テ使
用スル鹽一億斤位ト聞イテ居ル、スルト外國鹽ハ少ナイ且ツ外國鹽ノ使途ト云フモノ
ハ其元ガ違フ、所謂「テーブル」食鹽、食膳ニ鹽其儘ヲ用ユルノデ、イロ〓〓ノ方面ニ用
三やノ平常ノ生活ノ品物ニ用ユルト云フノデ多額ノ外國鹽ヲ入レルノデナイ、ソコデ
之ヲ更ニ論ズルト、關東鹽臺灣鹽トノ爭ノ點ニナルノデアル、外國ノ鹽ガ日本ニ入ッテ
日本ガ鹽ノ供給ヲ外國ニ仰グ卽チ九十二錢ノ外國鹽ヲ買フカ、神戶デ六十五錢デ
買ヘル臺灣鹽關東鹽ヲ入レルカ、若シ此臺灣鹽藤東鹽ヲ日本ニ入レタナラバ、卽チ此
日本ノ事業ト云フモノガ發展スルコトニナルノデアル、ソレハ恰モ臺灣ニ於ケル砂糖ガ日
本ノ市場ニ段々發展スルト同ジ形勢ニナルノデアル、日本國ノ版圖ニ於ケル鹽ニ付テ何
ニモ差別ヲ付ケル必要ハナイ、此〓ニ於テ臺灣ノ政治ガ統一シテ居ナイト云フコトヲ一
言云ッテ置カナケレバナラズ、臺灣ニ於ケル砂糖ニ付テハ非常ノ保護ヲ加へ、內地ノ製糖業
者ヲ壓倒スル如キ有樣デアッテモ、尙此臺灣ノ砂糖ニ付テ保護ヲ加ヘテ居ル、サウカト思
フト鹽ニ付テハ若干万斤ノ外ハ製スルコトガ出來ヌ、買上金ハ是ダケデアルト極メル夫
故ニソレ以上ヲ造ルコトガ出來ヌ、臺灣ヲ占領シテ日本ノ版圖トシ多クノ金ヲ入レ
多クノ犠牲ヲ出シタノハ何ンデアル、本員ハ此臺灣ニ對シテ其發展ヲ圖ルニ於テ過當ノ
保護デナイ以上ハ敢テ之ヲ非難スル譯アハナイガ、同ジ臺灣ニ於テ砂糖ニハ過當ノ保護
ヲ與ヘテ置キナガラ、何故ニ鹽ノミヲ虐待スルノデアルカ、砂糖モ人生ノ必要品デアレバ
鹽モ亦人生ノ必要品デアル、砂糖モ沖繩デモ出來ル、大島デモ出來ル、鹿兒島デモ幾
ラカ出來ル、ソレ故ニ臺灣ノ砂糖ノミヲ保護スルト云フハ是ハ砂糖業者ハ迷惑カモ知レ
ヌ、併ナガラ國家全體ノ政策トシテトテモ大島ノ砂糖ニ依賴シテ日本ノ市場ノ需用ヲ充タ
スコトハ出來ナイ、沖繩ノ砂糖ニ依賴シテ日本ノ市場需用ヲ充タスコトハ出來ナイ、ソレ
故ニ一番好適ノ臺灣ヲ日本ノ砂糖ノ供給地ト立アタト云フコトニ付テハ相當ノ理由アル
ト本員ハ思フ然ラバ何故ニ純然タル日本天皇陛下ノ統御在シマス所ノ臺灣關東ダ
ケハ鹽ヲ幾千斤ヨリ外ニハ作ッテハナラヌト云フトコロノ打擊ヲ加ヘテ、內地ノ鹽業者ヲ
保護スル必要ガ何所ニアリマスカ、殆ド此ニ至ッテ矛盾ト言ハナケレバナラヌ、保護スルニ
及バナイ、當然ニヤッテ行ケバ天日ニ曝シタ鹽ト燃料ヲ用井タ鹽ト、ドウシテモ天日デ爆シ
タ鹽ノ方ガ廉ク付キマスノデ、ソレハ天然ニ委セテ砂糖ノ方ヨリ必要ガナイノデアル、必要
ガナイノニ何故ニ砂糖ハ損ヲシテモ保護シテ國民ノ需用ヲ充タシ何故ニ鹽ハ造ッテハナ
ラヌト云ッテ鹽田ニ最モ適シタル所ノ地ヲ荒廢セシメテアッテ、是デ國家ノ政略ニ統一ガ
アルト云フコトガ出來マスカ、本員ハ臺灣ニ純然タル日本天皇陛下ノ統治シ給フ版
圖デアリマス、何故ニ版圖ノ中ニ營業ノ自由競爭ノ自由ヲ許サヌト一云フ亂暴ナル隨意
ナル事業ヲヤッテ之ヲ可シトセラレタデアリマスカ、關東民政長官ノ調ニ依リマスト、他ノ產
物ハ遼東半島ニ直接ニ望ハ少ナイノデアリマスガ、鹽田ハ大ニ望ガアルト云フ報告ガ出テ
居リマス、誠ニ是ハ其通リデアラウト思ヒマス、所ガ專賣局デドレ程ヨリハ買上ゲヌト云フ
手心ヲシテ、此上ニ作ルト賣殘リノ危險ガアルカラ是モ發達シナイ、何故ニ多クノ犠牲
ヲ拂ッテ之ヲ勢力範圍ニ入レテ我國ノ力ヲ關東半島ニ盡スノデアリマスカ、セメテハ關東
都督府ノ費用位ハ關東鹽ノ收益ニ依ッテ支ヘル位ナ發達ヲ本員ハ望ンデ居ル、彼モ利
益アリ、我モ廉ク鹽ヲ取ル利益アリト思ウテ見タナラバ內地ノ鹽業ヲ强テ保護スルト
云フコトノ必要ハ何所ニ在リマスカ、本員ハ大ニ之ヲ疑フノデアリマス、關東鹽ハ誰ガヤツ
テ居ルカ、日本ノ資本デ日本人ノ經營デアル臺灣ハ日本ノ純然タル版圖デアルサウ
シテ關東ハ日本ノ勢力範圍內デ日本ノ版圖ヨリ善キ廉キ鹽ノ出來ルノデ、之ヲ抑ヘテ
封建ノ遺習トシテ各領分ニ米ヲ作ラザレバ危シト感ジタル如ク鹽無ケレバ危シト感ジ
ル故ニ、東北、關東、北陸ノ地方ニハ不利益ノ鹽田ガアルノハ此タメデアル、若シ之
ヲ總テ封建ノ儘ニ存シテ置クナラバ政府ガ棉花ヲ免除シテ日本ノ紡績ニ大ナル利益ヲ
被ラシメテ、紡績ノ發達ヲ促シタトコロノ過去ノ政略ヲ失策ナリト云ハナケレバナラヌ、
併シ是ハ失策デハナイ、之ガタメニ內地ニ出來テ居ッタ日本ノ綿ハ自然ニ變ッテ此綿ノ
畑地ハ變ジテ。或ハ麥ノ畑地トナリ、或ハ桑ノ畑地トナッテ、依然トシテ日本ノ富ヲ增殖シテ、
一方ニハ此棉花ノ輸入ノタメニ多クノ紡績ガ出來テ、其紡績ヲ再ビ支那、朝鮮ノ方面ニ
輸出シテ居ルデハナイカ、斯クノ如ク考ヘテ見タナラバ何故ニ鹽ニ限ッテ斯樣ニスルノデアル
カ、本員ハ殆ド之ヲ理解スルコトガ出來ナイ、本員ハ其名ヲ舉ゲテ置キマスガ、關東都
督府ノ前民政長官石塚英藏君ガ此報告ヲシタト本員ハ知ッテ居リマス、利源ノ第一
ノモノハ關東ニ於テ鹽ナリト斯樣ニ言ッテ居リマス、大藏省ノ專賣局ハ之ヲ制限シテ
居ル、サウスルト關東都督府ハ全ク日本帝國政府ノ管轄以外ノモノデアッテ、彼ハ虐
待セラレ繼子扱ヲセラルヽノデアルガ、之ニ反シテ何故ニ吏員ヲ派シテ臺灣竝ニ關東
ノ此種々ナル殖產事業ノ世話ヲセラルヽノデアルカ、是ニ至ッテ殆ド解釋スル所ノ言葉ヲ
得ナイノニ苦ムノデアリマス、ソコデ斯ノ如ク誤ッタ政策ヲ行ヒツヽアル結果ドウナリマスカ、
日本國民ガ當然ニシテ居レバ六十錢乃至一圓以下ノ價ヲ以テ相當ナル鹽ノ額ヲ得
ベキノニ、今日ハ二圓七十八錢ヲ出サナケレバ之ヲ買フコトガ出ナイノデアッテ、-般
國民ノ損失ハ此差ダケガ損失デアリマス、ソコデ屢ノ:吾〓ガ議會デ論ジ、斯ノ如ク攻擊
ヲナスガタメニ、政府モ種々工夫セラレテ、一方ニ買上ノ方ニ付テ苦情ヲ聞クノヲ憂ヘテ、
此買上ノ費用ヲ上ゲルカト思フト、國庫カラ資金ヲ投ジテ、種々機關ヲ作立ッテ、運送
ノ便利ヲ開クト云フノデ、無利息ノ金ヲ使ッテ其分配ヲ計畫シテ居ッタガ、其結果
斯樣ナル驚クベキ奇怪ナル、悲痛ニシテ又滑稽ナル報告ヲ本員ハ得タノデアリマス政
府ハ種々ノモノカラ生產費ヲ計算ガ立テヽアルカラ、凡ソ一升六錢七厘ニ當ルノデアルカ
ラ、六錢七厘ヨリ高キ價ヲ以テ鹽ヲ賣ルベカラズト云フコトノ內訓ヲシタト云フコトヲ承ッ
タノデアリマス、是ハ專賣局ガ直接ニヤツタカ、或ハ各地方長官ニ宛テヽヤラレタカ知リ
マセヌケレドモ、併ナガラ價ト云フモノハ決シテ左樣ニ生產費バカリデ定マルモノデナイ、需
用供給ノ理法ニ支配セラルヽノデアリマスカラ豫メ生產費ヲ積算シテ是デ價ヲ極メル
ト云フコトハ抑〓經濟上ノ原理ニ違反シタ愚カナルコトデアリマス是ニ於テ山形縣カラ
得タ報告ハ斯樣デアリマス、六錢七厘ヨリ以上ニハ鹽ヲ賣ッテハナラヌト云ハレタガ、何
分ソレデハ小賣ガ引合ハヌ、併ナガラソレヨリ以上ニ賣レバ直チニ小賣ノ差止ヲ喰フノデ
アリマスカラ、今マデ定價付ヲ店ヘ出シテ置イタノヲ引込マセテイクラデ賣ルカ知レナイヤウ
ニシテ、事實ハ七八錢ニ賣ッテ居ル、然ラザレハ物品交換ヲヤッテ、此必要品ヲ供給シテ
居ルト云フコトヲ聞イタガ、サモアリサウナコトデアリマス、價ヲ生產費ニ依ッテ極メルト云
フコトハ抑〓ノ誤リテ、需用供給ノ種々ノ分配法カラ出テ來ルモノデアリマスカラ、斯樣ナ
ル人爲ヲ以テ價ヲ極メルト云フコトハ決シテ出來ナイコトデ、之ヲ要スルニチヨット斯ウ云
フ割合ニナリマス、政府が買上ゲタ所ノ鹽ノ直段ト、地方ヘ賣下ゲル所ノ鹽ノ直段ノ差
ヲ凡ソ一千五十万圓カ一千百万圓バカリノ此差ガ出テ居リマス之ヲ日本ノ人口ニ割
當テマスルト、老幼男女殘ラズヲ併セテ小兒マデ入レテ、病人不具者マデ皆入レテ、人
頭ノ稅ガ丁度二十五錢バカリニナル、此通リ政府委員若槻次官ハ左樣ニ答ヘラレタ、
若槻次官ハ之ニ附加ヘテ斯樣ニ言ハレタ一人ニ付テ二十五錢ノ稅ハ決シテ困難ナル
稅ニアラズト、斯樣ニ言ハレタガ、本員ハ之ニ二ツノ答ヲ與ヘヤウト思フ、必要ナラバ一人
ニ付テ五十錢モ致方ナイガ、下ラヌコトノタメニ二十五錢取ラレルト云フコトハ國民ガ之
ヲ拒マナケレバナラヌト云フノデアル、モウ一ツハ一人率二十五錢輕シト言フコト勿レ、廟
堂ニ居リ或ハ錦衣肉食シテ居ル人ハ二十五錢何カアランデアリマスケレドモ、一家五口
トシテ割當テタナラバ一年ニ一圓二十五錢拂ハナケレバナラヌ、一家五口一圓二十五
錢ヲ拂フ人頭稅モ亦辛イ哉ト本員ハ思フ、全體人頭稅ト云フコトハ野蠻法デアルト云
フノハ何デアルカト云フト、凡ソ租稅ノ原則ト云フモノハ財產ニ比例スル、收益ニ比例ス
ルト云フコトガ、一番健全ナル課稅法デアルノデ、頭ニ掛ケルト云フコトハ人ノ身體ニ掛ケル
ノデアッテ貧富、老幼、强弱、悉皆同一、病人モ健康者モ不具潑疾者モ皆頭數ニ稅ヲ掛
ケラレルト云フコト程野蠻ナル方法ハ無イ、鹽ノ今日ノ課稅ハ少シモ人頭稅ト違ハヌノデ
アル、人間ガ活キテ居ル以上ハ或ル分量ノ空氣ト、或ル分量ノ水ト、或ル分量ノ鹽ハ米ト
共ニ日本ノ生活トシテ要スルノデアリマスカラ、之ヲ一人二十五錢ト大藏次官ノ言ハル
ル如ク一家五口一圓二十五錢ノ稅ヲ鹽ニ於テ課スルト云フコトハ人頭稅ト少シモ違ハ
ヌノデ、是ナケレバ生活ノ出來ナイモノガ頭割ニ丁度課スルト同ジコトデアル、殆ド同ジ
分量ヲ用ユルノデアルカラ、人頭稅ト違ハヌノデアル、更ニ進シデ言言ママレバ食物ノ調
理ヲ專ラ鹽ニ依賴スルノト、勞役ヲ執ル人ハ多クノ鹽ノ分量ヲ要スルノデアリマスカラ、
最モ貧民ニ重キ稅ト云ハナケレバナラヌ、此〓カラ觀察スレバ人頭稅ヨリハ更ニ野蠻ノ
稅ナリト本員ハ思フノデアリマス(拍手起ル)是ヨリモウ一ツ惡ルイ點ガアル、人頭稅ナラ
バ誠ニ簡略デアル、一人率二十五錢取ルノデ、多數ノ收稅吏モ要ラナイ、官吏ノ旅費
月給雜費ト云フモノ手數ト云フモノ、又拂下ゲルトキニハ前ニハ鹽屋ガ此方ヘ送ッテ呉
レタト云フ商賣ノ手數ガ變ジテ、コチラヘ鹽ヲ拂下ゲテ下サイト云フ願ヲ出シテ、コチラ
カラ運送ノ費用ヲ拂ッテ買ッテ行クノデアルカラ、人民ノ負擔ハ政府ノ取ル所ヨリ幾數
倍多イカ知レヌ、斯ノ如キ愚ナル、斯ノ如キ手數ノ多イ鹽ト云フモノヲ專賣法ニ依ッテ取ッ
テ、僅ニ六七百万圓ノ收益ヲ得ヤウト云フコトヲ其儘ニ据ヘテ置クニ忍ビンヤ、本員ハ一
日モ早ク斯ノ如キ惡稅ヲ廢シタイト思フノデアリマスガ、更ニ本員ハ斯ウ云フコトヲ附帶
シテ論ジナケレバナラヌ、人生ノ生活ニ於テ斯ノ如キ悲慘ノ狀況ガアルノミナラズ、衞生
ニ大害ガアルノデアッテ、鹽ノ多寡ト云フモノハ健康ニ非常ナル影響ノアルト云フコトハ醫
家ノ定論デアリマス、其一例トシテ本員ハ其事ノ空想ニアラザルコトヲ證センガタメニ、印
度ニ於テハ不幸ニシテ英領ニナッテモマダ鹽ノ專賣法ガ昔ノ遺リ物トシテ今日モ存立シテ
居リマスカラ、志士仁人ガ之ヲ憂ヘテ鹽專賣法ヲ廢セントシテ活動シテ居リマスルガ、
其活動スル宣言ノ一ツニ、鹽ノ用量少キガタメニ、印度ノ皮膚病ガ蔓延シテ困ル、衞生
上斯ノ如キ氣ノ毒ナルトコロノ稅ハナイト云フコトハ印度ノ鹽專賣ニ反對スルトコロノ人
ノ宣言ノ中ニアル、斯ノ如キモノデアリマスカラ本員ガ衞生ニ大害アリト云フコトハ決
シテ疑ナイコトヽ思ヒマス(此時元田肇君發言シタルモ聽取スル能ハス)本員ハ議長ニ
止メラレヌ間ハ此言論ニ付テ完全ナル自由ヲ有ッテ居リマスカラ、如何ナル妨ガアッテ
モ一向之ニ付テハ議論ヲ止メマセヌ更ニ本員ハ鹽ノ用量ハ文明ノ程度ト相比例シテ居
ルト云フコトヲ告ゲテ、此惡稅ノ惡稅タル所以ヲ確定シナケレバナラヌト思ヒマス、凡ソ人
間ノ生活ガ進ンデ職業ガ高マリマスルト、一人宛ノ鹽ノ分量ガ段々上ッテ來マス、本員ノ
調ベク所ニ依ルト、英國ニ於テハ一人ノ鹽ヲ用ユル分量ガ五十斤、獨逸ニ於テ六十斤、
米國ニ於テ五十斤、支那ハ專賣ノ結果十五斤ニナッテ居リマス、ソレカラ朝鮮
ノ文明ハ支那ヨリ低イケレドモ、專賣ガナイタメニ十七斤ニナッテ居リマス、印度ハ文明
ノ程度が低イト同時ニ鹽專賣ノタメニ價ノ高キガ故ニ、僅ニ十斤ニナッテ居リマスルガ、我
國ノ鹽ノ一般ノ平均ハ二十五斤ニナッテ居リマス、是ハ我國ノ文明ノ程度ガ支那朝鮮
ニ比シテ大ニ高イノト、獨逸、英國、、米國ニ比シテ未ダ及バザルト云フコトノ程度ヲ茲ニ
示シテ居ルノデアリマスガ、此他之ヲ說明スベキトコロノ事柄トシテ玆ニ舉ゲテ見マスルト、
何故ニ文明ノ程度ガ高ク、生活ノ度ガ進ミ、職業ガ分レルト鹽ノ分量ガ多ク要ルカト
云フト、是ハ斯ウ云フコトニナル、或ハ漁業デアルトカ、牧畜デアルトカ鑛山デアルトカ、
日本テ言フト農業ニ必要ナルトコロノ種籾ノ選分ケニ鹽ノ水ヲ用ユル或ハ肥料ニ用ユ
ル、或ハ石鹼ノ製造ニ必要ナル鹽ノ分量ガアルトカ、或ハ晒粉ニ必要ナル分量ガアルト
カ、化學製造工業用ニ大ナル鹽ガ必要デアリマスカラ、是ハ鹽ノ高イタメニ大ニ是等ノ
發達スベキ事業ガ、ヤハリソレダケ害ヲ受ケテ居ルト云フコトハ別ニ辯論ヲ待タズシテ
明白テアリマスルが、併ナガラ當局者ハ斯樣ニ申シテ居リマス、斯樣ナ特種ノ用法ノ鹽
ニ付テハ特別ノ恩典ヲ與ヘテ廉ク之ヲ拂下ゲテ居ルカラ、左樣ニ論ズルニ及バヌト云フ
ガ、是レ其一ヲ知ッテ其二ヲ知ラザル誤リデ、本員ハ其誤リタル所以ヲ證サナケレバ頑冥
不靈ナル當局者ヲシテ惡稅ノ惡稅タルコトヲ知ラシメルコトガ出來ヌト思フ、ソレハ斯
ウ云フコト、手數ガ多イ、前デ申シマスト鹽屋カラ鹽ヲ求ムルトキニハコチラカラ端
書ヲ一本出シテヤルト、喜ンデ鹽屋カラ得意先キヘ配達ヲ致シマシタガ、鹽ノ拂下ニ是
等ノ特典ヲ得ンガタメニ、斯樣ナル特種ノ營業ノ廉キ鹽ヲ得ンガタメニハ、特別ノ願書
ヲ出シテ、其願書ヲ持ッテコチラカラ人夫ヲ連レテ、又貯所マデ行ッテ取ッテ來ナケレバナ
ラヌ、サウスルト果シテ之ヲ特別ノ鹽ノ用ニ用井ルヤト云ヲコトヲ檢査ヲシナケレバナ
ラヌ、斯樣ナ僞ヲ云ッテ食鹽ニシヤウト云フノテハナイカト云フ疑ノアルトキニハ嚴重
ナル檢査ヲスル、ソレカラ之ヲ食鹽ニ轉用シテハナラヌト云フノデ、之ニ混ズルニ化學工
業用ニスルモノニハ石油ヲ混ゼルトカ、木炭ヲ混ゼルトカ、紅殼ヲ交ゼルトカ、食鹽トナラ
ヌトコロノモノトスルタメニ、先以テ之ヲ拂下ゲル手數ト、檢査ノ煩雜ナルコトヽ是ニ混和
物ヲ施ストコロノイロ〓〓ノ費用ガ要ルト云フコトデ、小サナ工業場ハ此特典ヲ受ケルコ
トガ出來ナイ、餘程多數ノモノハヤルカモ知ラヌガ、日本ニ於テハ未ダ化學製造工業ガ
獨逸、亞米利加ノ如ク發達シテ居ラヌノデアリマスカラ、比較的小サナ工場デ是等ノモ
ノヲ用ユルトキニハ總テ此不便ヲ受ケルガタメニ、特典ヲ望マナイデ、ヤハリ貴イ鹽ヲ買ウテ
此ノ如キ業ヲ營マネバナラヌ、又是デハ引合ハナイカラ左樣ナ業ヲ止メナケレバナラヌ、卽
チ間接ニ當然我國ニ起ルベキ工業製造其他ノ諸業ヲ皆蹂〓シツヽアル、更ニ海ニ四方
ヲ環ラサレテ居ルトコロノ日本ハ漁業ニ於テ最モ著シイ國產ヲ有ッテ居リマスルガ、其漁
業ガ近海漁業ニハ鹽藏スル魚ニ用ユル鹽ノ特典ガナイ、遠洋漁業ニハ特典ガアルケレド
モ、此拂下ノ手續ノタメニ潮合ガ好イカラ直チニ船ヲ出スト云フヤウナ、斯樣ナ敏活ナル
活動ヲナスコトガ出來ズ、其時機ヲ失フト云フノハ殊ニ北海道方面ニ於テ實驗スルト
コロデアルガ故ニ、政府ノ最モ親シキ友達ト見ラレテ居ルトコロノ大同派ノ中ノ淺羽君ハ
其國體ノ議論ニ拘ハラズ、特ニ此弊害ニ付テハ痛切ニ憂ヲ抱イテ、北海道ノタメニ此事
情ヲ陳辯スルコト殆ド二二一年ノ長キニ亙ッテ居ルノデアリマスカラ、是程ノ事實談ハナイト
本員ハ思ッテ居リマス、ソレカラ斯ノ如キコトノタメニ事實ニ東京ニ現ハレタ實例ヲ舉ゲテ
見ルト、明治四十一年ノ十二月一一十日ヨリ四十二年一月ニ至ルマデ、丁度寒冷ノ氣
候ニ於テ遠クカラ斯ノ如キ鹽藏魚ヲ東京ニ送ルノデアルガ、是ガ其積込ミマシタ船ノ數ニ
於テ七艘、其中ニ入レタ-總テ魚バカリデハナイ、他ノ物ト積合セタノデアリマスルガ、
此七艘ノ船ニ依ッテ東京ニ入レタトコロノ三十三万餘本ノ鹽鱈ト云フモノガ、悉ク腐敗
シテ〓用ニ堪ヘナカッタト云フコトデアリマス、是ハ日本橋ノ市場ニ於テハ故老ト謂ッテ、
文化文政ノ頃カラ今尙纔カニ生殘ッテ隱居シテ居ル所ノ人モ、日本橋ニ於テ北地ヨリ
到ル魚ガ腐敗シタト云フコトハ前代未聞、故老未ダ記憶セザル所ナリト言ッテ之ニ驚イテ
居ル、此事ヲモウ少シ分析シテ本員ハ話サナケレバ、民ノ憂ヲ此議場ニ發表スルトコロノ
本務ヲ盡スコトガ出來ナイト思ヒマスカラ、如何ニ長クトモ本員ノ健康ト音聲ノ續ク間
ハ諸君ノ一考ヲ煩ハス考デアル、ソレハ斯ウ云フコトデアル、唯今デ鹽藏魚ニ用井マストコ
ロノ鹽ノ廉値段ノ特典ハ斯樣ニシテアル、魚ヲ鹽ニ漬ケマシテ、此〓ケタ魚ノ肉ノ斤量ヲ
以テ、ソレニ使フタルトコロノ鹽ヲ推測シテ此稅ヲ薄クスル、ソレガ種類ニ依ッテ五十
二錢、八十四錢乃至九十七錢等ノ廉値段ニ、魚ヲ鹽ニ浸シテシマッタ後ノ魚ノ斤量ニ
依ッテ拂下ヲスルノデアリマスカラ、魚肉ノ百斤ニ付テ是ダケノ廉イモノヲ拂下ゲルト云
フコトニナッテ居ル、昔ハ斯ウ云フコトデアル、昔ハ鹽ヲ多ク使ッテ、肉ヲ安全ニシテ、其
上ニ幾分ノ日ヲ加ヘテ乾カシテ、サウシテ量目輕クシテ、容量ヲ少クシテ、之ヲ多ク船
ニ積込ンデ運賃ヲ減ズルト云フトコロノ商業方法ガ成立ッテ居ッタノデアルガ、唯今ハ魚
ニ取ッテ第一ノ値段ヲ加フベキ鹽ノ値段ガ高イ故ニ、水分ヲ去ラズ、之ヲ乾カサズシテ、
目方ヲ重クシテ送ル、ソレ故ニ鹽ヲ加ヘル分量ガ少ク、水分ヲ加ヘルトコロノ量ガ多ク
シテ、サウシテ之ヲ遠方ニ送リマスカラ、唯今本員ノ舉ゲタル實例ノ如ク、七艘ノ船
ニ積込マレタトコロノ二十三万尾ノ魚ガ悉ク腐敗シタト云フノハ、日本橋ニ住ンテ居
ル故老ノ嘗テ聞イタコトノナイ珍奇ノ異談トシテ之ヲ傳ヘテ居ルノハ、抑〓何者ガ斯ノ如キ
國民ノ生活、國民ノ營業ニ害ヲ與ヘルノデアルカ、鹽ノ專賣卽チ此害デアルト本員ハ思
フノデアル、斯ノ如キ例ヲ舉ゲ來ラバ殆ド鹽一ツノ案ノタメニ諸君ニ一日ノ話ヲシナケレ
バナラヌト本員ハ思ウテ、餘リニ御氣ノ毒ニ考ヘマスカラ本員ハ玆ニ實例ヲ止メマス、併
ナガラ一方ニ斯ノ如ク國民ヲ苦シメ、誤マレル政府ノ政策ノ袖ノ下ニ隱レテ居ルトコロノ不
當ノ鹽田所有者ニ向ッテ痛擊ヲ加ヘナケレバ國民ノ憤リヲ散ズルコトガ出來ナイト本員
ハ思ウテ居リマスカラ、是ヨリソレニ移ッテ御話シヤウト思フ、濱口專賣局長ノ談トシテ
本年二月二日東京朝日新聞ニ揭載シテ居ルトコロハ稍〓如何ニ鹽專賣ヲ辯護シテ居
ル局長ト雖モ、鹽田ノ是ガタメニ騰ッタト云フコトヲ拒ムコトノ出來ナイ實例ヲ玆ニ載セ
テアリマスガ、鹽ノ田地ノ一戶前ト云フノハ一町五段步デアリマシテ、是ガ三十九年ニ
ハ五千八百圓デアッタノガ、四十一年ニハ七千圓デ賣買ニナッタ是レ既ニ不當ナリ、總テ
ノ物價ガ四十一年ニハ落チテ居ル、不景氣ノタメニ落チテ居ルノニ、鹽田ダケハ五千八
百圓ヨリ四十一年ニ七千圓ニナッタト云フノハ、前ノ七十六錢ノ鹽價ヲ政府ガ一圓ニ
上ゲテヤッテ非常ナル利益ヲ鹽田所有者ニ與ヘタル結果直チニ玆ニ現ハレテ來タ、是
反對ノ說ヲ代表スル吾〓ノ調査ニアラズシテ、濱口局長ノ談トシテ揭載サレテ居リマスカ
ラ、是ホド明白ナモノハナイト思フガ、是スラ暴騰デアルガ事實ハ更ニ是ヨリ甚シイ、是ハ
ドウ云フコトカト云フト、四十一年十月香川縣綾歌郡坂出丸サ東濱五番鹽田ガ半戶
前六千二百圓ニ賣レテ居ル、サウスルト一戶前之ヲ倍ニシマスルト一町五段步デ一万
千四百圓、是程ノ田地ガドコニアリマスカ、旣ニ鹽田所有者ノ利益ヲ得テ居ルノハ驚ク
ベキモノデ、尙其上ニ例ヲ舉グレバ更ニ本年一月同所丸サ西濱十五番鹽田ノ一戶前ノ
三分ノ一ヲ四千七百圓ニ賣買取引ガアッタト云フコトデアルカラ、三分ノ一ヲ一戶前
ニ引直シマスルト、田地ノ一町五段步ガ一万三千四百圓ニ賣レタト云フコトハ何者ガサ
シテ居ル何者ガ鹽田所有者ニ斯ノ如キ利益ヲ與ヘルカ、是ハ貧民ノ淚ノ凝ッテ鹽トナ
レル如キモノト本員ハ言ハナケレバナラヌノデアリマス(拍手)更ニ三十五六年ニ鹽專賣ノ
未ダ起ラザルトキノ小作料ハドノ位デアッタカ、專賣以前ハ三百五十圓デアッタノガ、現
今一戶前ノ小作料ハ一千二三百圓ニナッテ居リマス、之ヲ見マシタナラバ此利益ハ政府
ハ鹽ノ營業者ト云ヒマスガ、鹽ノ營業者ト云フモノハ鹽田所有者卽チ地主ノ意味デアッ
テ、此下ニ働クトコロノ鹽ノ小作人ト云フモノヽ利益デハナイノデアリマスカラ、淺羽靖君
ガ證言セラルヽ如ク鹽ノ小作人ハ專賣ニ苦ンデ居ル何トナレバ鹽ノ檢査ガ嚴重デ、政
府ノ方ガ少シ供給ガ多イト是ハ無資格デアル、是ハ不合格デアルト云ウテ屢之ヲ返サ
レルカラ、鹽ノ小作人ハ不安心デアル、ソレ故ニ利スルトコロノモノハ鹽田所有者及大地
主デ、其下ニ働クトコロノ小作人ハヤハリ專賣ノ害ヲ受ケテ居ルト云フコトハ政府ノ
信友トシテ議會ニ立ツ大同派ノ一同僚淺羽靖君ガ之ヲ證言スルノデアリマスカラ、
是ホド確カナ證言ハナカラウト本員ハ思フ(拍手)サウスルト詰リ詰ッテ何デアル、斯ノ
如キ愚カナ法律ヲ拵ヘテ、大地主ニ坐シテ利益ヲ恣ニセシムルノデアッテ、小作人ハ之
ガタメニ歎ジ、國民ハ之ガタメニ憂ヘサウシテ今日起ラントスル工業農業其他牧畜ノ
如キ皆其患害ヲ受ケル、衞生ノ上ニモ宜シクナイ、文明ノ上ニモ宜シクナイ、野蠻極マル
ルトコロノ法律ヲ明治四十二年ノ立憲帝國ニ遺スベカラザルモノヲ遺シテ居ルノハ我
邦ノ耻ト思ウテ居ル更ニモウ一ツ證據ヲ舉ゲテ斯ノ如ク地主ガ愚カナル
有志ヲ斯クノ如キ誤マレル方針ニ引入レテ、己レノ利益ヲ堅クセントス
ル例ヲモウ一ツ茲ニ次ニ舉ゲテ見ヤウト思フ、香川縣製鹽會社ノ公課
狀ノ中ニ株式金額三万六千圓一株六十圓六百株ノ會社ガアリマスガ、此利益ガ一
株二十八圓ト云フノデ年々四割六分六厘ノ利益ヲ公課狀ニ記載シテ居ル、其實ハ是
ノ倍デアル、株式ノ表面ハ三万六千圓デアリマスガ、其拂込ハ其半バ一万八千圓デア
リマスカラ、一万八千圓ニ對シ一株二十八圓ト云フモノヲ割ッテ見マスルト、實際ノ配
當ハ九割三分トナル、明治三十九年ノ計算表ニ載ッテ居リマスカラ本員ハ玆ニ明記シテ
速記錄ニ依ッテ普ク鹽田業者ノ暴利ヲ貪ルト云フコトヲ天下ノ憐レムベキ人民ニ告ゲ、
併セテ迷ヘルトコロノ當局ノ迷ヲ醒サセル材料トシテ玆ニ舉ゲルノデアリマスガ、凡ツ日本
ノ天地ニアッテ坐シテ何事モスルナク、安全ニ出來タ物ヲ皆政府ニ買上ゲテ貫ッテ九割
三分ノ利益ヲ占メテ居ル者ガ何故ニ保護ノ必要ガアルカ、保護ドコロデハナイ、半バノ
財產ヲ國民ニ提供スベキ義務ガアルト本員ハ思フノデアリマス、斯クノ如クニシテ一般ノ
國民ハ此誤マレル法律ノ犧牲トナッテ居ルノデアリマス、併シ日本ノ工業、漁業、農業
總テ皆害ヲ被ッテ居ルガ、之ヲ看過シ得ルヤ否ヤ、國民ハ甘ンジテ斯ノ如キ不都合ナル
事實ノ成立シテ居ルノヲ、政府ノ無責任ノ言葉ヲ聞イテ甘ンズルコトガ出來ルヤ否ヤヲ
切ニ諸君ノ御考慮ヲ請ハナケレバナラヌノデアリマスガ、又モウ一ツ道理カラ言ウテ、保護
ト云フノハ何デアルカ、保護トハ恰モ寒氣ニ堪エザルトコロノ草木ヲ室咲キニシテ、サウシ
テ天氣ノ暖ナルノヲ待ツト云フ意味ニ於テ未ダ幼稚ナル萌芽ヲ保護スルタメニ已ムヲ得ザ
ル臨機ノ計略トシテ、國家ノ金ヲ與ヘルノガ奬勵金保護金ニナルノデアリマスガ、是モ此名
ニ依ッテイロ〓〓ノコトヲヤルノハ好マヌガ、併ナガラ或ル場合ニ是ガ必要ト思フ場合ナキ
ニシモアラズ、併ナガラ凡ソ臺灣ト關東州ト此天ノ與ヘル薪ヲ用井ズ、炭ヲ用ヒズ天日
ニ依ッテ良好ナル鹽ヲ製シ得ル日本ノ版圖、日本ノ勢力範圍內ニ成立ツトコロノ鹽
ト、永久炭ヲ用井若クハ薪ヲ用井ルトコロノ此鹽ヲ拮抗セシメテ之ヲ保護スルト云フノハ
凡ソ國家ノ有ラン限リ之ヲ保護シテ之ニ對抗セシムルト云フノデアッテ何レノトキニ於テ暖
キ日ヲ待ッテ室ヨリ引出シテ是ガ當前ノ空氣ノ中ニ咲クダケノ期限ハイツデアルカ玆ニ至ツ
テハ全ク保護ノ意味ガナクナッテ了ッテ誤マレル計算ニ依ッテ暗味ナル政略ガ之ヲ保護ノ名
ニ依ッテ誤ッテ斯ノ如クナサシメテ居ルト云フコトハ最早明白デアルト本員ハ思フ、是ニ於
テ私ハ政府ニ統一アリヤ否ヤト云フコトノ問題ヲ提起シナケレバナラヌ、農商務省ハ漁業
奬勵鹽藏業ノ奬勵斯樣ナルコトヲ頻リニ唱ヘ、水產局ト云フヤウナモノニ金ヲ國家ガ
拂ッテ居ル我國ノ鑛山、牧畜、農業ノ奬勵是ガタメニイロ〓〓ノ局ヲ農商務省ノ中ニ
置イテアル、サウシテ斯ノ如キモノニ金ヲ使フカト見レバ一方ニハ漁業ノタメニ最モ必要ナ
モノデ、化學、工業、牧畜、農業其他ノ製造ノタメニ必要デアルトコロノ其原料トナル
鹽ヲ倍ヨリ以上ニ高メテ居ルト云フノハ、農商務省ノ干涉農商務省ノ奬勵ト云フモノ
ハドコニアルカト云フコトヲ本員ハ理解スルコトガ出來ナイ、大藏省ハ鹽ヲ以テ我邦ニ起
ラントスル製造、工業、鑛山、牧畜、農業、漁業ヲ打擊シツヽ、農商務省ハ諸般ノ事業
ヲ奬勵スルナドト云フコトハ實ニ愚カナル政治ノ統一ナキコトヲ知ルコトガ出來ルノデア
リマス、更ニ本員ハ申シマス、朝鮮ガヤハリ關東鹽ト同ジヤウニ良好ノ鹽田ノ地主ガアル
ト云フコトヲ承ハッテ居リマスガ、定メテ桂首相ノ最モ力ヲ入レラレタトコロノ朝鮮ノ拓殖
會社モヤハリ事業ノ一トシテ鮮鮮ノ海岸ニハ必ズ鹽ノ業ニ目ヲ著ケラレテ居ルデアラウト
思フ、關東鹽スラ既ニ制限スル臺灣鹽スラ既ニ制限スルト云ッタナラバ、朝鮮ノ拓殖會
社ガ海岸ニ目ヲ著ケタトキニハ如何ニ首相ハ此間ニ於テ調和ヲ圖ラルヽカ、先ヅ鹽ダケハ
當分廢メルト云フヤウナ方針デ、其會社ニ訓令ヲシテ暫ク此爭ヲ止メサセルト云フノデア
リマスガ、是ニ於テ本員ハ頗ル統一ガナイ、臺灣ノ砂糖ト臺灣ノ鹽ト關東鹽ノ處分ト內
地ニ斯ノ如キ不都合ナルコトガアルト言ヒ、農商務省ガ少數ノ鹽業者ヲ保護スルト言ヒ、
朝鮮ノ拓殖會社ハ朝鮮半島ニイロ〓〓ノ事業ヲ起スト言じ、皆是ハ積極的ニヤルカト
思フト、內地ニ目前アルトコロノ此五千万ノ國民ニ實價ヨリ倍ノモノヲ拂ハシテ人頭稅
ヨリ更ニ酷ナル稅ヲ徵スルニ至ッテハ、本員ハ實ニ政府ノナストコロハ普通ノ腦髓ヲ以テ
測リ知ルベカラズト云フ評ヲ下シテ此說ヲ終ルヨリ外ニハ此矛盾ヲ解クコトガ出來ナイノ
デアリマス、先ヅ斯ウ云フ意味ニ於テ本員ハ鹽專賣法ハ斷然廢サナケレバナラヌ、保護
ノ意味ハナイノデアル保護ト云フノハ呉〓モ繰返シマスガ、幼稚ナ事業ヲ育テヽサウシテ
健全ニナッタナラバ之ヲ自由ニスルノガ保護ノ意味デアルガ、內地ノ砂糖ガ臺灣ノ砂糖ト
拮抗シ能ハザルハ天然ノ理數ノ然ラシムルトコロ、內地ノ木綿ノ利益ノナイノモ、天然ノ
理數ノ然ラシムルトコロ、內地ノ鹽ハドウシテモ優等ナルモノヲ永年續ケルコトハ頗ル困
難デアルト云フノハ是又天然ノ理數餘儀ナイコトデアリマスカラ、斯ノ如キ暴利ヲ與ヘテ
利ノナイトコロニ利ヲ與ヘテ、恰モ競馬會社ヲ誘ッテ後トデ廢メルガ如キ過チヲ他年ノ後
ニ遺スヨリ、今ニシテ束縛ヲ解クノ最モ勝レルニ如カズ、本員ハ此意味カラシテ此專賣
法ハ速ニ廢サレンコトヲ望ンデ常ニ此攻擊ノ論ヲ絕タヌノデアリマス(拍手起ル)次ニ織
物是カラ織物稅ノ弊害ヲ細カニ諸君ニ御話シナケレバナラナイ(「簡單」ト呼フ者アリ)
簡單ニハ出來ナイノデアリマス(「謹聽ケ々」ト呼フ者アリ)諸外國ノ議會ニハ夜ヲ徹シテ
討論ガアルト承ッテ居ル、サモアルベキコトデアル國民ノ休戚ニ關シテ大ナル委任ヲ受ケ
テ居ルトコロノ議會ガ六時ニナッタナラバ歸ルト云フ怠惰ナコトデ終ルベキモノデナイト本
員ハ思ッテ居リマス、本員ノ健康ノ續カン限リ、此議論ノ盡キザル間ハ、夜半マデモ壇ヲ
退カヌ積リデアリマスカラ、如何ナル反對ガアラウガ、妨害ガアラウガ、一向ソレ等ハ相手
ニ致シマセヌカラ御勝手ニ發聲ヲナサルガ宜シイ、但シ議場ヲ整理スルノハ諸君ガ一齊ニ
選バレタトコロノ議長ノ職權デアリマスカラ、發聲ヲシテ議長ヲ辱メルト云フコトハ諸君ハ
白カラ耻ヂナケレバナラヌト思ッテ居ル(拍手起ル)織物稅ノコトニ付テ本員ハ申シマスル
ガ、斯ウ云フコトガアル、織物稅ニ付テハ設立當時ノ人ノ言葉ヲ聞キマスルニ、何レノ租
稅デモ初メニ作ッタトキニハマグ慣習ガ出來ナイカラ皆其租稅ノ害ヲ告ゲテ苦情ヲ訴ヘル
ノハ當リ前デアル、織物稅モ亦然リ、ソレ故ニ數年ヲ過ギタナラバ織物稅ニ對スルトコロ
ノ苦情ハ自カラ止ムデアラウト、斯樣ニ言ウタノガ當時ノ當局者ノ辯解デアリ、之ニ附和
雷同スルトコロノ政府ノ朋友タル政治家ノ辯解デアッタガ、誠ニ是トハ反對デ、本員が徹
頭徹尾當初ヨリ之ニ反對スルガ如ク、時ヲ經レバ經ル程織物ノ稅ノ苦情ガ盛ニナルト云
フコトハ、此一事ヲ以テ前ニ辯解シタルトコロノ空言タルコトヲ證據立テルコトガ出來ルノ
デアル時ヲ經レバ益〓其害ノ甚シイト云フコトガ明瞭ニナルノハ織物稅ガ稅其モノヽ性
質トシテ宜シクナイト云フコトノ確證デアラウト思フ、今年ノ委員會ニモヤハリ斯ノ如キ
愚ナル不穿鑿ナルトコロノ說ガ出タ、是ハ取方ガ惡ルイコトデアルカラ取方ニ尙注意ヲ加
ヘタラ宜カラウ、是ハ大藏省ガ豫テ國民ノ苦情ニ付テ耳ヲ傾ケザルヲ得ヌノデアリマスカ
ヲ取方ヲ變ヘテヤルコト幾囘試ニ政府ノ朋友タルトコロノ議員諸君ハ自カラ大藏省ニ
行ッテ此取方ヲ變ヘタトコロノ手續ガ幾囘デアルト云フコトヲ聞キマシタラ、本員ノ推測ス
ルヨリハモット數ガ多カラウト思ッテ居ル、併ナガラ時ガ經ツニ從ッテ苦情ガ益〓甚シク取立
方ノ方法ヲ變ジテモ少シモ其害ヲ減ジナイト云フコトヲ見タナラバ織物稅其モノガ甚ダ
宜シクナイト云フコトハ最早分ルデアリマセウ、單ニ本員ハ其箇條ヲ舉ゲテ餘リ細カイト
コロノ說明ヲ一々加ヘナイデ其甚シキモノヲ舉ゲテ說明シヤウト思ヒマスガ、檢査ノ煩雜
ナルコト他ニ比類ナシ、昨日モ同志ノ細野次郞君ガ簡略ニ此コトヲ申サレタガ營業稅、
所得稅、酒其他ノ製造稅ナルモノハ皆檢査ガアルガ、是ハ季節ガアッテ年ニ一度トカ二
度トカ極メルト大抵片ガ付ク併ナガラ織物稅ハ每日檢査スル每日値段ヲ檢査スルト
云フトコロノ稅ガ外ニ何處ニモナイノデ、是ハ織物一ニ限ルノデアリマスカラ、之ニハ眞
實ニ國民ノ利害ヲ感ズルトコロノ諸君ハ之ニ向ッテ眼ヲ屬セラレンコトヲ望ムノデアリマ
ス、每日檢査スル、取引每ニ檢査スルト云フ其煩雜ナル稅ノ取立方ヲスルノハ唯織物
稅アルノミ、ソレカラ此値段ト云フモノハ決シテ生產入費ナドニ支配サレルモノデナイ、意
匠流行ニ依シテ相當ナル資本ヲ掛ケタモノモ價ノ低クナルコトガアレバ、宜イ按排ニ流
行ニ投ジマスルトキニハ其値段ガ大ニ上ガルト云フコトモアルノデ、ソレ故ニ意匠ヲ祕密
ニスルト云フノハ織物ノ上ニ付テ最モ必要ノコトデ、例ヘバ是ハ此地方ノ特殊ノ染方デ
アル、此地方ノ特殊ノ刺繡デアルト云フモノハ皆是ハ祕密ニ屬スル、此祕密ヲ皆檢査ノ
間ニ檢査官ガ之ヲ遠慮會釋モナク改メルト云フコトデアルカラ、商賣人トシテ有ル品物モ
ナイト言ッテ高ク賣ルコトモアレバ無イ品物モ有ルト言ッテ豫約ヲスルコトガアルノデ初メテ
商賣ノ駈引ガ立ツノデアリマスガ、帳面ヲ調ベテ幾ラアルト云フコトヲ公ニセラレルト第
一商賣ノ根柢ヲ破壞スル、意匠流行ニ構ハズ總テノ祕密ヲ訐ク、是ハ意匠ニ依ッテ價ノ
高價ナルコトナドヲ斟酌スル智慧ガ二十三圓平均ノ小役人ノ手ニ依ッテドウシテ遂ゲラ
レマスカ、私ハ思フ、今日三千圓ノ俸給ヲ取ッテ居ルトコロノ局長ヲシテ此任ニ當ラシム
ルトモ彼ノ說明ノ具合ノ迂遠ナルニ考ヘテ見レバ、決シテ斯ノ如キ檢査ヲナスコトノ能力
ハナイト思フ況ヤ二十三圓平均ノ小役人ニ於テオヤト斯樣ニ私ハ思フ、ソレ故ニ是ニ
於テ租稅ノ徵收ニ費用ガ掛ルコトデアリマスガ、內國稅ノ總體ハ百圓ニ付キ一圓十九
錢ノ徵稅費デアルガ、織物稅ハ單ニ織物稅ダケデ十一圓九十七錢掛ル、斯ウ云フ具合
デ非常ニ徵稅費ガ多クナッテ居リマスカラ之ヲ見ルト云フト此租稅ガ甚ダ費用ガ多クテ
官民共ニ苦ムコトガ度々アルト云フノハ必然デアリマス、又脫稅シ易キコト脫稅シ易キガタ
メニ二ツノ害ヲ生ズル一ハ脫稅セシメザランガタメニ檢査ヲ嚴重ニスレバ自家用料ノ反
物モ亦之ヲ檢査シナケレバナラヌ、之ヲ簡略ニスレバ狡猾ナル者ハ脫稅ヲシテ正直ナル者
ハ名譽ノタメニ損ヲシナケレバナラヌ、ソレデ損ヲスルノヲ覺悟シナケレバ此商賣ヲヤルコトガ
ガ出來ナイト云フモノデアルカラ、誠ニ此煩ニ堪ヘヌト云フトコロノ聲ノ起ルノハ此性質ニ
對シテ餘儀ナキトコロノコトデアリマスガ、更ニ之ニ附帶シタトコロノ害ヲ舉ゲテ申シマス
ルト、賄賂ガ行ハレ易キコト、所謂目分量デ價ヲ極メマスカラ役人ノ氣ニ入リマスレバ稅ヲ
輕クシテ貰フコトガ出來ル、役人ニ背キマスレバ縱令金ノ上ニ損害ハ蒙ラザルトモ帳面ヲ
押ヘラレルトカ品物ヲ封ゼラレルコトガゴザイマスカラ、勢ヒ今日ノ狀態ニ於テ賄賂ト云フ
コトガ此間ニ行ハレルト云フコトハ已ムヲ得ヌノデ、或ル議員ガ決算委員ノ集會ニ於テ
苛烈ナル言葉ヲ放シテ今日ノ收稅吏ガ賄賂ノ嫌疑ヲ受ケナイト云フノハ實ニ難儀デアル
ト言ッタノハ殊ニ此織物稅ニ於テ證スルコトガ出來ルト私ハ思フノデアリマスガ、國民ガ斯
ノ如キ間ニ立ッテ居ルカラ陰蔽ノ心ヲ生ズルコト、良民ヲシテ勢ヒ隱セバ稅ガ輕クナルガ明
ラサマニ言ヘバ其損害ニ耐ヘナイト云フノデ、良民ヲ駈ッテ詐リノ心ヲ生ゼシムルコトニナリ
マス、ソレカラ二十三圓平均ノ收稅吏ガ司法權ト立法權ヲ實地ニ用ユルコトガ出來ル、
何故ナレバ收稅吏ガ此品物ガ幾ラデアルト云フ元ノ直段ヲ極メレバ、ソレニ依ッテ法律ニ
定メタルトコロノ率ノ割合ニ稅ヲ掛ケマスカラ、率ノ割合ハ法律ニ定ッテ居リマスケレドモ、
元ノ直段ト云フモノハ役人ノ目分量デ極マルノデアルカラ、率ヲシテ上ラシメ又下ラシム
ル所ノ實地ノ駈引實地ノ運用ハ此收稅吏ノ唯手心一ツニアリマス、其上ニ是ハ規則ニ
背イテ居ルト云フトキニハ直ニ之ニ罰金ヲ科セラレルノデアルカラ、是ハ判事ノ權利ト同ジ
デ國民ニ取ッテハ實ニ驚クベキ恐ルベキトコロノ壓迫ヲ被ラシメルノデアルカラ、是ハ二十
三圓平均ノ全國ニ群ル所ノ收稅吏ヲシテ實際ニ立法權ト司法權トヲ轉ジテ有セシメ
ルコトニナルノデアルカラ、是等ヲ上ゲテ見タナラバ實ニ物質的ノ損害、竝ニ風〓ニ害
ヲ及ボストコロノ其少額ノ害ト云フモノハ實ニ言語ヲ以テ盡スベカラサル所ノモノデアル、
ツコデ本員ハ更ニ數字ヲ舉ゲテ唯今述來ッタトコロノモノヲ事實ニ依ッテ證據立テマス
ト、納稅者ノ犯則處分ヲ受ケタル者ヲ他ノ納稅者ニ較ベテ見レバ非常ニ多イノト、年ノ
加フルニ從ッテ非常ニ增加スルノト、罰金ニ處セラレタル其金額ノ非常ニ增加スルト云フ
コトハ、何ト國民ノ代表會ガ大ニ耳ヲ傾ケテ此數字ヲ記憶シナケレバナラヌトコロノ普通
ノ出來事デハナイト本員ハ思ヒマス、納稅者ノ犯則處分ヲ受ケタル者ガ明治三十八年
ニ五百九十七人デアリマス、是ハ初メテ此稅ノ起ッテ此稅ヲ始メテ通用シタ場合デアリマ
スガ、段々ト苛酷ニナッテ段々ト組織的ニ、段々ト年數ヲ增シ、收稅費用ヲ增シテ脫稅ヲ
防ガントスル善良ノ意思ガ一變シテ苛酷苛察ノ收納トナッタトキノ三十九年ニ至ッテハ、
犯則處分ヲ受ケタル者ガ二千三百七人、四十年ニ至ッテハ二千七百七十八人、丁度
二年ノ間ニ罰金ニ處セラレタルトコロノ者ガ數ニ於テ五倍增シテ居ル罰金ノ金額ガ更
ニ大ニ增シテ居リマスノハ三十八年ニハ三千百八十二圓、三十九年ニハ八十二万六
千七百九十四圓、四十年ニ至ッテハ十七万九千七百九十七圓、三年ニシテ罰金ニ處
セラレタル人ガ五倍ニナル、罰金ノ高ノ增シタルモノガ六十倍ニナッタト云フノハ、卽チ我國
ノ租稅ノ歷史アリテ以來、斯ノ如ク三年ニシテ大變化ヲ與ヘテ、其下ノ國民ガ呻吟ヲ
免レント云フヤウナ事實ハドノ租稅ノ種類ニアリマスルカ、本員ハ不幸ニシテ斯樣ナル例
ハ見ルコトハ出來ナイ(拍手起ル)併ナガラ是ハ當業者ノ憂デ本員ハマダ大ニ告ゲナケ
レバナラヌトコロノモノガ澤山アリマスガ、是ハ當業者ノ憂デ、國家トシテ憂フベキ所ノモ
ノガ二ツアル、是ハ更ニ疾聲大呼シテ本員ガ述ベナケレバナラヌトコロノモノデアル、ソレハ
何デアルカ、日本固有ノ經濟的社會組織ヲ根本ヨリ破壞スルコト、一ハ輸出ヲ減退
セシメ、輸入ヲ增進セシムルコト、是ハ內外ノ政策ニ於テ大藏省モ、外務省モ、內務省
モ、竝ニ農商務省モ、總テ之ニ向ッテハ國家ノ一大問題トシテ大ニ考慮ヲ煩ハスベキト
コロノ重大ノ事件デアルト本員ハ思フノデアリマス、前ニ述ベタノハ全國ニ亙ルトコロノ此
織物ニ關係スル營業者ノタメニ、本員ハ其疾苦ヲ諸君ニ〓ゲタノデアリマスケレドモ、唯
今述ブルトコロノモノハ日本帝國ノ內外ノ政策ニ關係スルコトデアリマス、凡ソ反物ニ
向ッテ稅ヲ掛ケル處ハ世界廣ク國多シト雖モ曾テナイコトデ、唯僅ニ「ブラジル」ノ一國ア
ルノミ、是モ無論製造國トシテデハナイ、大農國デアル、其文明ノ程度モ決シテ高シト
云フコトハ出來ナイ、南亞米利加ノ一個ノ「プラジル」デ反物ニ稅ヲ掛ケテ居ルノミデ、
其他ノ諸國ハ織物ヲ以テ名ヲ顯ハシテ居ル、木綿ニ於ケル英國、絹織物ノ佛蘭西
其他ノ國ニ於テハ反物ニ稅ヲ掛ケナイ、是ハ掛ケルコトノ困難ナルガタメニ掛ケナイノデ
アッチ、決シテ掛ケントシテ掛クルコトノ困難ヲ大ニ感ジテ居ルガタメデアル、是モ亦日本
經濟的組織、竝ニ織物發達ノ歷史ヲ較ベテ見タナラバ、若シモ反物ニ稅ヲ掛ケ得ラルル
モノデアレバ歐羅巴諸國ノ方ガ日本ノ方ヨリハ輙イノデアル、例ヘバ英國ニ於ケル木綿
ノ製造ニ於ケル「マンチエスター」ノ如キ、佛蘭西ノ絹織物ノ里昂ニ於ケル又ハ純然タル
製造都會トシテ成立ッテ其處ハ蒸汽力ヲ以テ大ナル工業製作ノ場合ニナッテ居リマスカ
ラ、此會社ニ向シテ正シキトコロノ檢査官ヲ向ケテ、本當ノ評價ヲシタナラバマグ出來易
ィ、併ナガラソレスラモヤラナイ、佛蘭西ノ絹織物デ有名ナル製造場アリト雖モ、未ダ之ニ
向ッテ一「フラン」ノ稅ヲ掛ケタルコトヲ聞カズ、英吉利ハ木綿ヲ世界ニ供給スル製造所
アリト雖モ、未ダ一「ペニー」ノ稅ヲ掛ケタコトヲ聞カナイノデアリマスカラ之ニ掛ケナイト
云フコトハ世界ノ鑑識ニ於テ決定サレテ居ルコトヽ思フ、併ナガラ日本ノ組織ハ決シテ歐
羅巴諸國ノ如キモノデナイ、日本ノ織物ノ組織ハ京都ノ如キ一二ノ中心〓ヲ除キマシテ
ハ皆農家ノ副產物トシテ發達シタモノデアッテ、山村僻邑ニ散在シテ居ルトコロノ農家デ
アッテ、關東地方ニ有名ナル足利、桐生、或ハ八王子ノ如キ町ニ往テ見マスレバ其町ニ在
ル所ノ織物處ト云フモノハ極メテ少クシテ、皆近〓近在カラ此處ニ集ッテ市ノ中心トナル
ノデ、之ヲ製造場ノ中心タル里昂ノ如キ或ハ「マンチエスター」ノ如キモノニ比スベキモノ
デナイノデアリマシテ、日本ノ製造場ハ全ク農家ノ副產物トシテ發達シテ居ルノデアル、彼
ノ秩父絹ノ如キハ其產地ニ至ッテハ實ニ山ノ狹地、谷ノ深キ處、誠ニ偏鄙ナル處ニ起ルノ
デアリマス、甲斐絹ノ如キモノハ郡内ノ谷間ニ出來ルモノデ物產ハ立派デアルガ、其製造
場ハ苐屋デアル、男子ハ耕シ婦人ハ機ヲ織ルノデアリマスカラ、之ヲ以テ歐羅巴諸國ノ製
造工業ノ中心都會ト同一視スルコトハ斷ジテ出來ナイ、何故ニ左樣デアルカ、三千年ノ發
達ガ然ラシムルモノデアッテ、未ダ國ニ文字有ラズ歷史有ラザル以前ヨリ男ハ耕シ女ハ織ル、
男ハ耕シテ職ヲ得、女ハ織ッテ小遣ヲ得ルト云フノガ日本ノ組織デアル、故ニ農家ノ事業
トシテ機ヲ織ル事業ハ別々ニスルコトノ出來ナイト云フノハ日本ノ社會ノ發達デアル、又
今日ニ於テハ日本ニ特殊ノ必要デアル亞米利加ヘ持ッテ往ッテ日本ノ絹織物ガ如何ニ
關稅ヲ高クサレマシテモ爭フコトノ出來ルノハ、日本ハ〓料ヲ自分ガ取ッテ製造スルカラ
デアル彼ノ如ク人ヲ仕ウテ拵ヘルモノト、自ラ取ッテヤルモノトハ、大變ニ違フノデアル、
其廉ク出來ルト云フノハ卽チ食料ガ廉イカラデアル、是等ハ農家ノ副產物トシテ大ニ
尊重シナケレバナラヌ、若シ之ニ向ッテ取扱ノ制度ヲ立テヽ之ヲ整理致シマシタナラバ
唯今日本ノ資本少ク利子ノ高キ國ニ於テ大ナル工場ニ資本ヲ投ゼンヨリハ半ハ農
家ニ歸シテ居ル斯ウ云フ織物ヲ奬勵シテサウシテ外國ト成敗ヲ爭フト云フコトハ
是程日本ノ社會組織ニ於テ健全ニシテ、且基礎ノ固イモノハナイト思フノデアリマス、
併ナガラ日本ニ於ケル困難ハ此處ニアル、方々ニ散在シテ居リマスカラ、農家ヲ
一々訪問シナケレバ脫稅ナカラシムルコトハ出來ナイ、又人民ノ苦情モ此處ニ
アル、一々民間ノ農家ニ這入ッテ其副產物タル反物ノ檢査ヲスルコトニ致シマス
レバ、到底其檢査ノタメニ堪ヘルコトガ出來ナイ、又人民ノ苦情モ此處ニアル、又今日
ノ如ク苛酷峻烈ナルコトモ此處ニアル、ソレ故ニ過渡ノ時代ニ於テ、若モ漫リニ歐
羅巴諸國ノ顰ニ做フノ政策ヲ廢メテ、固有ノ此健全ナル營業ニ自由ヲ與ヘ、保險ヲ與
六)之ヲ快ク營マシムルコトニ致シマスレバ、日本ノ反物ノ總體ノ出來高ト云フモノハ
非常ニ增加スルニ違ヒナイノデ、試ミニ今日海外ニ博覽曾ガアル內地ニ共進會ガアルト
云ヒマシテモ、日本ノ內デ一番直打ノアル一番實用ト相待ッテ大ナル金嵩ヲ出スモノハ何
デアルカト云ヘバ本員ハ忌憚ラズシテ織物卽チ是レナリト答ヘヤウト思フ、、而シテ前ニ申
シマシタ通リ、煉瓦造リノ大ナル製造所ガナイカラ、三千年ノ歷史ヲ持ッテ文字アラズ歷
史アラザル時代ヨリ發達シ來ッテ、民政ト共ニ民間ニ普ク〓ッテ居リマスル此營業ヲ無邪
氣ナル民、淳朴ナル民ガ營ミツヽアルノヲ机ノ上デ作ッタル稅則ヲ以テ、之ヲ拘束シ之ヲ
束縛シテ其營業ヲ妨ゲ、之ヲ以テ其營業ノ困苦ニ堪ヘヌト叫バシムルニ至ッテハ、之ヲ悲
痛慘憺タルコトヽ本員ハ思ハナケレバナラヌ、之ハ理論デアリマスガ、更ニ本員ハ其事實ニ
付テ之ヲ證據立テマスルト、過日ノ委員會ニ於テ櫻井局長三斯樣ニ間ウタ、脫稅ガアルト
フコトハ正業者ノ常ニ訴ヘテ居ル處デアルガ、脫稅ナカラシムルコトニ付テハ大ニ政府ハ考
ヘナケレバナラヌ、之ト共ニ苛酷ヲ避ケナケレバナラヌト云フ板狭ミノ此問ガ出タノデアリマ
スガ、自家用デ一年ニ十反ノ反物ヲ織ル家ガアッテ、五反自家用ニシテ後ノ五反ノ反物
ヲ賣拂フトキニハ政府ハ之ニ稅ヲ掛ケルカ掛ケナイカト問ウタラバ、櫻井局長ハ此區別ハ
如何ニモ答ヘルコトガ出來ナイデ、無言ニ終ッタコトハ速記錄ニモ明白ナ答ガ載シテ居マ
スノデ明カデアル、之ハ櫻井局長ガ鈍イタメニ困ッタノデハナクテ、此法律ノ組立ガ吾〓ヲ
シテ斯ノ如キ問ヲ發シタトキニ、老練ナル櫻井局長モ如何トモスル能ハザル窮境ニ陷ッタ
ト思フノデ、本員ハ其法ヲ憎ンデ櫻井局長ノ窮境ニハ同情ヲ表サナケレバナラス(拍手
起ル)之ガ日本ノ工業ノ淳朴ナル風ヲ存シテ日本ノ國民ノ誠ニ健全ナル發達ヲ望ム內
務省、健全ナル營業ノ發達ヲ望ムトコロノ農商務省ガ、只稅吏ノ意ニ之ヲ任セテ安
全ト見テ居ルコトハ抑、く如何ナル考デアルカ、本員ガ稅制ノ統一ナシト叫ブハ此爲メデ
アリマス、是ヨリ輸出ノ現在ニ付テ述ベナケレバナラヌノデアリマスガ、之ハ言葉ヲ費スヨ
リハ計數ヲ讀上ゲタ方ガ宜シカラウト思ヒマス「輸出ノ減退三十七年ニ於ケル織物ノ輸
出高」之ハ三十七年始メテ此稅ガ起リマシタカラ、此處ニ舉ゲテ居ルノハ稅ノ掛ラヌト
キノ計數ト本員ハ見テ宜シイト思フ、ソレハ絹織物ニ付テ外國ニ出マシタノガ四千三百
歹、アトノ端ハ除キマス、綿布ニ付キマシテハ四千七百万、其他種々ノ織物ガ百万、合
セテ九千二百万圓ガ三十七年ニ外國ヘ出タ織物ノ價デアリマスガ、之ガ數年間織物
稅ヲ掛ケマシタ結果、如何ナル變化ヲ現ハシタカト云ヘバ四十年ニ至ッテ絹布類ノ外國
ヘ出タモノガ三千百万、綿布類ガ一千九百万、其他ノ織物ガ一千四百万、合セテ
六千五百万、年ヲ經ルニ從ッテ輸出額ノ減ジタノハ他ノ品物ニ付テ其例ヲ見ザル經濟
上ノ一大變化ト言ハナケレバナラヌ、現ニ二千七百万、是ダケ減ジテ居リマス、併ナガラ
更ニ正確ニ之ヲ論ジテ見マスレバ三十七年ニハマダアノ寢床ヤ、其他ニ敷ク「シーチング」
ト名ケル物ハ僅カ二百九十万圓ヨリ外國ヘ出ナカッタノガ、是ダケハ初メカラ外國用トシ
テ稅吏ノ手ニ掛ラヌノデ、之ハ四十年ニ至ッテ殖ヘテ居リマス、五百八十五万圓、サ
ウスルト外國ニモ用井ズシテ稅吏ノ檢査ヲ受ケナケレバナラヌ方ガ減ッテ居ッテ、初メヨリ外
國用ト確定シタモノハ殖ヘテ居リマス、之ヲ引イテ見ルト卽チ減ッタルモノハドレダケデアル
カト云フト、四分ノ一輸出ガ減ジテ居リマス織物ニ付テ、之ハ何デアルカ、此出所ヲ本
員ハ責任ヲ明カニスルタメニ申シテ置キマスガ、大阪織物同業組合長谷口房藏氏ガ〓
育アリ經驗アル筆ヲ揮シテ「工業ノ大日本」ノ第十二號ニ此統計表ヲ舉ゲテアリマスカ
ラ、本員ハ此計數ノ責任アル出所ト云フコトヲ玆ニ申シテ置キマス、ソレナラバ輸入ハ
ドウナッテ居ルカト申シマスルニ、輸入ハ增シテ居ル、三十七年卽チ稅ノ起ッタトキニハ綿布
ガ九百万絹布ガ百万圓、毛織物ガ千九百万、麻織物が三百万、皆端數ハ除キマス、其
他ノ織物ガ八十五万七千圓、之デ總計ガ三千三百万圓ニナッテ居リマスガ、四十年度
ニ至リマスルト之ガ殖ヘテ居リマス、ソレハ木綿ガ一千七百万、絹布ガ四十八万圓、毛織
物ガ千二百万、麻織物ガ百万其他ノ織物ガ六百万圓、總計ガ三千七百万ニナッテ居
リマスカラ、前ニ稅ノ掛カラナイ時ニ外國カラ織物ノ這入ッタ計數ガ三千三百万デ、稅ノ
掛カッタ四十年ニハ三千七百万ニナッテ居リマスカラ、輸入ガ增シテ居リマス、サウス
ルト此怪シムベキ輸出入ノ差ハ何カ之ヲ說明カスモノガナケレバナラヌ、日本ノ經濟上ノ
變化ニアラズシテ織物其業ノ變化ニ依ッテ之ヲ說明カスコトノ出來ルノハ、外國ノ品物
ハ廉ク入ル、送狀ノ直段ヲ稅關デ檢メテ之ヲ元トシテ關稅フ掛ケルカラ、送ル者ト引取ル
者ト、相談上、廉ク積ッテ送狀ヲ書イテアリマスカラ、ソレ以上立入ッテ總テノ直段ヲ計ク
コトモ出來ズ、誠ニ餘儀ナイコトデ、然ルニ之ハ皆見逃シテ內ニ入レルカラ、廉イ直段
デ賣ル者モ買フ者モ危險ガナイカラ、外國ノ取引ハ易クシテ安全デアル、之ニ反シテ
日本ノ內地ニモ用井ラレ外國ニモ用井ラレルモノヲ免稅ヲシテ出サウトスルト收稅署ノ
管轄違ヒノ間ヲ總テ送狀ヲ付ケテ幾箱ヲ何處へ送ッタ、幾箱ハ何處ヘ送ッタト云フコトヲ
幾多ノ手ヲ經テ書イテ出ス、又何處ノ港デ扱ッタト云フコトカラ價モ極メテ外國ヘ出ス
カラ、勢ヒ其煩ニ堪ヘザルガタメニ免稅ヲ求メンヨリ寧ロ稅ノアル儘ニシテヤル然ラザレバ
斯ノ如キ業ハ稅ノアル間ハ止メルヨリ外ニ仕方ガナイト云フモノガ、斯ノ如ク輸入ヲ增シ
テサウシテ輸出ヲ減ズル原因デアルト見タラバ、之ハ大藏省ハ豫テイロノ〓ナ保護稅ヲ以
テ-奬勵金ヲ以テ此內國ノ物產ヲ外國ヘ出サウトシテ居ル農商務省モ、亦是ニ力ヲ
添ヘテヤッテ居ル議會モ、亦イロ〓〓ナ例ヘバ燐寸ヲ輸出シテ、若シソレカ五百万圓一手
賣リニハ幾ラ奬勵金ヲヤルト云フヤウナ案モ、此議會ニ出テ居ッテ本員ハ一種味ヒアル、
一種キタナゲナ案ト見テ居リマスガ、免ニ角左樣ナ案ガ此議會ニ表白シテ居ルコトハ事
實デアリマス、斯ノ如キ思想ガ成立ッテドチラモ何故ニ日本固有ノ望ミアルモノニ奬勵ヲ
加ヘズシテ、自然ニ全國ニ彌漫シテ居ル物產ニ打擊ヲ加ヘテ輸入ヲ多カラシメ、輸出ヲ
少カラシメル惡政策ヲ執ルノデアルカ、本員ハ實ニ疑ハネバナラヌ、今其政策ヲ大別
シテ雜貨ノ如キ、或ハ鐵器類ノ如キ、化學製造類ノ如キ雜貨ハ日本ニ特有ノモノ
モアリマスケレドモ、之ハ比較的少額デアリマシテ、鐵器、機械、化學製造ト古來文明ノ進
步ニ伴ッテ起ルモノハ尙歐羅巴諸國ノ弟分タルヲ免レヌ、唯併シ此類ノ物產タル織物ニ
至ッテハ一種社會ノ組織カラ、日本ガ價ヲ以テ外國ニ競爭スルコトガ出來ルノニ、之ヲ
顧ズシテ此賴ムベキ物產ニ僅カノ租稅ヲ得ンガタメニ、目前國庫ノ唯便利ヲ得ンガタメ
ニ民力ヲ打壞シ、國民ノ社會組織ノ根柢ヲ破壞シテ、サウシテ輸入ヲ多カラシム、輸出
ヲ減ゼシムルト云フコトガ此計表ニ現ハレタルガ如クニナルト云フニ至ッタナラバ本員ハ
政府ニ統一ナク政治ニ方針ナキコトヲ玆ニ論及セザルヲ得ヌノデアリマス、例ヘバ文部
省ニ於テ工業〓育ヲヤッテサウシテイロ〓〓製造工業ヲ起サウトスル、農商務省ガ、保護
奬勵ヲヤル尙共進會ヲヤル、博覽會ヲヤル此等ハ本員ノ目カラ見レバ是レ僞善ノミ
是レ虚僞ノミ、元ヲ養ハズシテ唯世ノ中ニ術フダケノ仕事ヲヤッテ決シテ國利ガ發達スル
モノデハナイ、外國ノ博覽會ニ出品スルニ付テ運送賃ヲ拂ッテヤルトカ、或ハ其他ノ保護
金ヲ與ヘルト云ウテ外國ニ日本ノ產物ヲ示サウト云フナラバ、何故ニ產物ニ力ヲ盡スト
コロノ良民ヲシテ快ク其營業ニ從事セシメナイノデアルカ、界近ナ倒ヲ以テ之ヲ說明シテ
見マスレバ、丁度繼母ガ繼子ニ綺麗ナル衣服ヲ飾リ立テヽ客ニ誇ルトシテモ、其內ヲ顧ミレ
バ眞ノ親愛ガナクシテ叱陀鞭撻シテサウシテ衞生其他生活ヲ顧ミナイト云フ、卽チ餘所ニ
示スニ虛飾ハアルガ、內ニ親愛ト云フモノ營養ト云フモノ〓育ト云フモノヲ缺イデ居ルト
少シモ違ヒナイ、ソレ故ニ此事實ニ依ッテ本員ハ無警ノ政府ト斯ウ云フ人ニ向ッテ批評ヲ
加ヘルコトハ言論ノ範圍ニ於テ愼ムベキコトデアルガ、無警ノ政府ハ大責任ガアルカラ今
日ノ政府ガ我織物製造業ニ對スルコトハ、恰モ僞リ多ク繼母ガ繼子ヲ飾ッテ、サウシテ食料
其他衞生ヲ顧ミナイト同ジコトデアルト斯ヤウニ本員ハ云フノダ(拍手起ル)斯ウ考ヘテ見
タナラバ本員ハ積極的ノ方針カラ論ジテ織物稅ハ決シテ見遁スコトハ出來ナイノデアル、日
本ハ蓋シ斯ノ如キ素養アルトコロノ此機ノ業ニ依ッテ、必ズ東洋ニ生產國ノ覇ヲ爭フコト
ガ出來ル、進ンデハ或ル特權ノ品物ニ於テ歐羅巴諸國ニ勢ヲ爭フコトガ出來ルト思ウテ
居ルノデアリマス、殊ニ濠太利ハ羊毛ノ產地デアッテ、此原料ハ遠ク獨逸、佛蘭西、英
吉利抔ヘ持シテ往ッテ織立テ再ビ東洋ニ來ルノデアル、幸ニ日本ハ航路ノ最モ便利ナルモ
ノヲ持シテ居ッテ、更ニ定期航海ガアッテ濠太利ノ羊毛ハ自由ニ日本ニ費少ナク入ルノ
デアルカラ、後來滿韓若クハ支那方面ニ於テ、毛織物ノ產地ヲ日本ニ求メルト云フコ
トハ自然ノ形勢然ラシムルモノデアルト本員ハ思ウテ居リマスルガ、不幸ニシテ何ノ遠慮モ
ナク、何ノ識見モナク、何ノ方針モナク、何ノ統一モナキトコロノ政府ノ課稅法ハ唯課
稅法ニ於テ批難スベキノミナラズ、併セテ政略ノ方針ニ於テ殖產ノ方針ニ於テ經濟ノ
方針ニ於テ本員ハ大聲疾呼シテ此無方針ナルヲ咎メナケレバナラヌト思ウテ居リマス(拍
手起ル)更ニ通行稅ニ付テ本員ハ簡略ニ述ベマス(「急行デヤッテ戴キタイ」ト呼フ者アリ)
簡略ニ述ベント欲スルモ、三ロフコトガアレバ本員ハ何時マデモ長ク言ヒマス(「ヤリ給ヘ」
「謹聽々々」ト呼フ者アリ)凡ソ人ノ活動ニ妨ヲ與ヘルトコロノ稅ハ、稅トシテ惡稅デアリ
マスガ、特ニ政府ガ鐵道ヲ國有トシテ後ニ若シ欲シイナラバ鐵道ノ賃銀ヲ上ゲタラ如
何デゴザルト私ハ相談シタコトガアル、自分ノ所デ賣ッテ居ル品物ニ自分デ稅ヲ掛ケテ居ッ
テ、依然此不體裁ニ廿ンジテ居ルトハ何事デアル、大藏省ハ一ノ店デアッテ遞信省モ亦別
ノ店デアル、遞信省デ賣ッテ居ル品物ニ大藏省ガ稅ヲ掛ケテ、是レ良稅ナリトハ實ニ笑
フベキコトデアルト本員ハ思フノデアリマス(拍手起ル)後藤遞相ハ斯ヤウニ云フタコトガア
ル、今ニ政府ハ國有鐵道ノ事務ヲ整理シテ成ルタケ賃銀ヲ下ゲル積リデアル、此言ハ幾
何モ信ヲ置クニ足ラヌト本員ハ思フノデアルガ、若シソレダケノコトガアルナラバ、之ヲ取
調ベテ賃銀ヲ下ゲルヨリモ明カニ分ッテ居ルトコロノ通行稅ヲ除クト云フコトニ何故ニ誠
意ヲ致サヌノデアルカ、誠ニ遞相ノ論ズルトコロハ小兒ヲ欺クベキ鬼面ト云ハナケレバナラ
ヌト本員ハ思フ、更ニ市內ノ稅ニ付テ云ウテ見マスルト、是程驚クベキ苛稅ハナイ、東
京ノ例ヲ採ッテ云ッテ見マスレバ四錢ノ電車賃ニ一錢ノ通行稅ハ二割五分ノ稅デアル
是ガ一番百回券五十囘券ヲ買フコトガ出來ナイ、三十回劵ヲ買フコトガ出來ナイト云
フ職工ヤ女工ヤ朝晩遠イ處ノ郊外カラ中央ノ製造場カ、例ヘバ印刷局等ヘ通フトコ
ロノモノガ、皆店賃ノ廉イ地代ノ廉イノヲ欲スルガ故ニ或ハ好キ空氣ヲ吸フ衞生ノ目的
ノタメニ、電車ノ聞カレタルト共ニ郊外ニ家ヲ有ツニ至ッタモノガ多ク、內部ハ市區改正
ノクメニ段々市場ハ大ナル商店ト變ズル時代ニ於テ、此等ノモノニ二割五分ノ稅ヲ掛ケ
ルト云フノハ寳ニ驚クベキ苛稅ト云ハナケレバナラヌ、總體ガ小サイカラ人ガ目ヲ掛ケナイ
ケレドモ、稅トシテハ大ニ批難シナケレバナラヌ、一錢ノ値上ゲニ付テ東京市民ハ騒擾
シテ會社ノ不法ヲ憤ッタトコロノ市民ハ、政府ガ一錢ヲ四錢ノ賃銀ニ掛ケルモノニ向ッテ
ハ如何ニ憤リヲ含ムベキコトデアルカト云フコトハ推察スルニ餘リアルコトヽ思フノデアル、
一錢蒸汽ノ如キモノニ若シ五厘ヲ掛ケタナラバ其掛ケ方ト云フモノハ或ハ倍トナリ、或ハ
倍近キトコロノ稅ヲ課スルノデアルガ、此等ノ人ハ廟堂肉〓ノ有司ハ一錢ヤ五厘何カア
ラント云ハウガ、本員ノ考ヘルコトニ依レバ十万圓ノ人ニ千圓ノ稅ヲ掛ケタヨリモ、百圓
ノ收入ノ人ニ五圓掛ケタ方ガ生活費ニ切込ムノデアルカラ本員ハ深ク氣ノ毒デアルト斯
ヤウニ思フノデアル、社會政策トシテモ政府ノ忌ムトコロノ社會黨ノ起ラザランコトヲ望
ニシテモ、警察官ノ生活ヲ安全ナラシメントスルニシテモ、小學〓員ノ生活ノ安全ナラ
シメントスルニモ、政府ハ此等ノ苛察ノ稅ヲ取續ケルニ及バヌト思フノデアル、況ヤ人口
ガ增シテ市街ガ整頓スルト云フコトニナッタナラバ愈、斯ノ如キ不當ナル稅ヲ廢スルノ
ハ當然デアッテ、其得ル處幾何ゾ、僅ニ一百三四十万圓ノミ之ヲ〓括シテ論ズレバ
總テ三稅ノヤリ方ト云フモノハ政府ハ、多クノ稅ヲ民間カラ取ッテ政府ノ手ヲ經テ賢明
ナル政府ノ計畫ニ依ッテ或ハ滿洲方面ニ業ヲ起ストカ、或ハ韓半島ニ拓殖會社ヲ起ス
トカ或ハ阿里山ノ經營ヲヤルトカ、總テ手品師ノヤル如ク政府ノ手ヲ經レバ元ノ力ヨ
リ倍ノ力ガ出ルト思ッテ居ルノハ桃源ノ遺習デアル、野蠻ノ遺習デアル國民何者ダト云
フコトデアル、此自由活動ノ國家ノ原動力ナルコトヲ理解セザルトコロノ殘ッタ思想ニ
依ッテ稅ヲ取ッタラバ、返シテ再ビ取ルノハ面倒デアルカラ成ルタケ剰餘金ノ名ヲ以テ取ッ
テ置クガ宜イト云フノデアル、之ニ過ギナイ、本員ノ考ハ四海ヲ一家トスルハ王者ノ道デア
ル況ヤ人民ノ總代トシテ憲法ノ下ニ國會ヲ開イタルトコロノ此時代ニ於テハ、國民ノ
資力ニ餘地ヲ與ヘ國家ニ急ガアッタナラバ其得タルトコロノ餘裕ヲ求メルト云フ四海ヲ
家トスルトコロノ大規模ガナケレバナラヌト思フテ居リマスガ、政府ハ斯クセズシテ唯
取レルモノガ一番安全デアッテ、ソレガタメニドレダケ害ガ起ッテモドレ程ノ費用ガ掛ッテ
モソレハ國庫ノ害ニアラズシテ國民ノ害ナレバ我慢シヤウトスルノデアル、試ミニ聞ハン如
何ナル國家モ國民ヲ度外視シテ國家ノ基礎ヲ立ツルコトヲ得ルカ、根柢ノ誤ハ玆ニアル
ト思フ、ソレ故ニ戰爭ガ止ンデ後非常特別稅ヲ無期限ニ延バシテサウシテ稅制改良ト云
フヤウナ美名ヲ藉リテ一日ヲ遷延スルノミデアッテ、此間ニ一點ノ誠意ヲ認メルコトガ出
來ナイノデアルカラ、一々舉ゲテ來マスレバ何レモ明白ナルコトハ火ヲ睹ル如クニシテ、此
間ニ反對論者ノ唯一ノ口實トシテ答ヘルノハ委員長ガ綿密ニ反對者ヲ代表セラレタル
ガ如ク、稅源如何ト云フ問題ニ歸著スルカラ、是ヨリ其本據ヲ突イテ本員ハ結論ニ這
入ラナケレバナラヌ(拍手起ル)本員ノ信條ハ斯ヤウナルモノデル、政務ヲ簡易ニシテ冗費
ヲ省約シ、サウシテ之ニ依ッテ幾ラデモ得ルダケノ金ヲ得タイ、繼續費ヲ繰換ヘテサウシテ
十一年ニ涉ルヤウナ·ホダ手ヲ著ケテ居ラナイモノハ打切ッテシマヒイタイト本員ハ思フ、公債
償還額ノ變更ヲヤッテ、サウシテ其外自然增收ノ見込ミト云フモノヲ併セル、ソレカラ關
稅改正ノ期ニ於テ反對論者モ亦之ニ幾何ノ收入ガアルト云フコトヲ云ッテ見マシタナラバ、
是ニ於テソレダケノ目ヲ擧ゲテ更ニ其細條ニ立ッテ理由ヲ說明シタナラバ頑迷ナル反對論
者ト雖モ尙其足ヲ立テルコトハ出來ナイデアラウ、本員ハ是ヨリ數字ヲ舉ゲテ鬪ハナケレバナ
ラヌ、先以テ議會ニ立ツ人ガ重キヲ政府ノ當局ノ說明ニ置イテ之ヲ金城鐵壁ト考ヘル
ノガ本員カラ見レバ誠ニ怪シイコトデアル藏相ハ三千五百万圓ノ不足ガ出ルト云ハレタ
ガ、本員斷言スル、是ハ懸値デアッテ純益ハ三千五百万ノ收入ハ確カニ政府ニナイト云
フコトハ第一戰ヲ挑マナケレバナラヌ、鹽ガ二千二百万圓ト思ヒマスガ、是ハ無論世ノ中
ニ知レテ居ルコトデ賠償金デ半分ノ餘減ジテシマッテ賠償金デ民間ノ鹽屋營業ヲスレバ
金利ヲ見積ラナケレバナラヌ、ソレカラ運送ト官吏ノ俸給ト雜費ヲ引去ッテシマウ鹽ノ純
收入ハ尠ナイ、見積リニ於テ六百五十万圓、多ク見積ッテ七百万圓ハ本員ハ算定シテ誤
ラヌト思フ政府ノ總テノ事業ニハ金利ヲ見積ッテナイ、其癖公債ヲ借リルトキニハ金利ヲ
氣ニスルノデアル、自分ノ仕事ヲヤル時ニハ金利ヲ勘定シナイ、ソコデ本員ハ千二百万圓バ
カリノ賠償額ノ此金ハ無利息デアルト明言スル、ソレカラ局長ガ三百万圓ノ金ハ土地ト
カ建物トカイロ〓〓ノモノガアルト云ッタガ、是等モ金利ヲ見積ラナイノデアル之ヲ金利
ヲ見積ッタナラバ確カニ民間ノ事業ニシタラ七百万圓ニ成ラウト思フ織物稅ガ表ニシテ
載ッテ居ルトコロハ千九百五十万圓バカリデアルガ、一番徵稅費ノ多イノハ前ニ述ベタト
コロノ手續ヲ御考ヘニナッテモ分リマスガ、徵稅費ガ多分百五十万圓ト思フ、之ヲ引ケバ
純收入千八百万圓トナル、ソレカラ通行稅全部ヲ加ヘマシテ正直ニ云フト二百四十万
圓バカリアル、是ダケヲ併セルト二千七百四十万圓バカリニナル、サウスルト多ク見積ッテ
三千万圓、少ク見積ッテ二千七百四十万圓ト云フコトデアリマス、是ダケガドウシテヤリ
クリガ付カヌカ、是ハ程度問題デ本員が冒頭ニ唯三稅廢止ヲ以テ滿足スルコトガ出來ズ
財政論租稅經濟論竝ニ政治ノ方針ト云ッタノハ此譯デアル、第一陸海軍繼續費ノ打
切ト云フコトハ本員明言シテ少シモ差支ナイノデアル、ソレハドウデアル試ミニ繼續費ハ二ノ
理由ニ依ッテ本員ガ云フノ權利ガアルト思フ、昨年ハ有力ナルトコロノ松田正久君ガ大
多數ヲ提ゲテ內閣ニ立ツテ大藏大臣トシテ汗ヲ流シテ計畫セラレタ六年計畫ト云フモノ
ハ是ヨリ外ニハ陸海ノ兩相ハ同意ヲシナイモノデアル、其陸海兩相ハ今日モ在職シテ
陸海ノ責ヲ盡シテ少シモ忌マナイデ、之ヲ今日十一年計畫ニシタノハ何デアル、是ニ於テ
孰レニ責任ガアルカ、若シ昨年ノ事眞ナラバ、陸海ノ兩相ハ冠ヲ掛ケテ大藏省竝ニ
總理大臣、大藏大臣ガ左樣ニ云フナラバ、大藏省ノ帳面ガ合ッタカモ知レヌガ、陸海軍
兩大臣トシテハ國防ノ責ヲ盡スコトガ出來ナイ、昨年一錢一厘減ズル能ハズトシテ六年
ノ計畫ヲ立テタ者ガ、故ナク十一年計畫ニサレテドウシテモ責ヲ盡スコトカ出來ナイト云
フ之ヲ以テ陸海軍兩大臣ハ迭ラナケレバナラヌノデアルガ依然トシテ此人ガ椅子ヲ繼
續セラレテ居ルノハ六年デモ出來レバ十一年デモ出來ルノデアル前ノ總理大臣ガ大藏
大臣ヲ兼ネテ居ラナカッタノハ不幸ニシテ政友會出身ノ大臣ハ陸海軍ヲ抑ヘル力ガナカッ
タト云フコトヲ說明シテ居ル、、更ニ新任ノ桂総理大臣兼大藏大臣本員ハ併セテ此十一
年計畫ヲ或ル年度ニ打切ルダケノ奮發シナカッタカト云フコトヲ照會シナケレバナラヌ、
本員ハ打切ルダケノ事實ヲ舉ゲル、四十五年度ニ海軍ノ繼續費ハ幾ラアルカ、十五万
六千三百九十八圓、四十六年度ハ十二万千六百九十一圓、凡ソ繼續費ハ外國ヘ
艦ヲ誂ヘルトカ、內國デ何カ仕事ヲヤルトキニ一年ニ是ダケノモノヲヤッテ一部ヲ爲シ二
年ニ是ダケノモノヲヤッテ一部ヲ爲シ、段々セッテ行ッテ一年出來上ラナイモノヲ數年ニ割
付ケル、是ガ出來テシマッテ新タニ別ニ立テルノハ繼續費デナイ、其年度々々ニ割當テヽヤル
ト云フコトハ既ニ會計法ノ精神デアル、一年ノ計算ヲ立テルト云フノガ憲法竝ニ會計法
ノ骨子デアリマス、繼續費ト云フモノハ一年デヤリ切レナイコトヲヤルノデアリマスガ是ハサ
ウデナイ、若シ軍艦ヲ拵ヘルト云フコトデアレバ一年ニ十五万六千三百九十八圓ノ金ハ軍
艦ヲドコデ拵ヘルノデアルカ、軍艦ノドコヲ拵ヘルノデアルカ是ハ外ノコトデハナイ出來テ
シマッタ軍艦へ大砲ヲ据付ケル、彈藥ヲ仕込ムト云フノデ、其年度ダケデ極ッテシマフ金デ
アル、然ルニ此年度ハ十五万、其次ハ十六万、サウスルト四十七年度ニ於テ忽チ巨額
ノ金ニナッテ千九百十二万十六圓ニナル、新ラタニ軍艦ヲ拵ヘルノデアルナラバ新規
ニヤラナケレバナラヌガ是ハ戰ヲ開始セラレテ餘ッタ一億六七千万圓カ二億万圓ノモノ
ヲ陸海軍ニ割付ケテ帳面ニ付ケテシマッタカラ繼續費ノ形ニ依ッテ現ハレテ居ルノデアル、
若シ國民ノ如何ヲ思ヒ國家ノ時勢ヲ考ヘ、內外ノ形勢ヲ察シテ先ヅ國民ノ休息ヲ求メ
國家ノ勢力ヲ養フト云フ戊申ノ聖勅ヲ議ミテ御讀ミ奉リタルナラバ斯ノ如キ破綻アル
計算ハ直チニ打切ラレルデハナイカ、本員ハ斯ノ如キ事ヲ戰時ノ間若クハ他國ヨリ我邦
ヲ脅ス間ニ於テ唱ヘタナラバ、反對論者ハ攻擊セラルヽノデアルガ、外務大臣モ其他ノ大
臣モ今日ハ日英同盟、日露協商、日佛協約更ニ海外ニ於テハ如何デアル英露協商
ニ依ッテ日本ノ位地ガ幾ド幾年ニモナキ安全ヲ得タト云ハヌバカリノ口氣ヲ洩シテ更ニ支
那保全ニ付テハ亞米利加ニ文書ヲ入レテ是等平和ノ確證ヲ與ヘ、一方ニ誇リツヽ一
方ニ繼續ナサル、此經續費ナリトシテ斯ノ如ク一見シテ其破綻ヲ見ル豫算ヲ政府ガ是
ヲ見遁サレテ居ルノハ、自カラ爲ス所ノモノデアルガ、監督機關タル所ノ議會ガ之ヲ見遁
シテ居ルニ至テハ其職ヲ空シクスルモノト謂ハナケレバナラヌ、是デモ財源ハナイト云フ、本
員ハ更メテ論ズルノデナイ、豫算ノ議事ニ於テモ此意ヲ洩シタ、速記錄ニ依ッテ證明セ
ラレテアルカラ、健忘症ニ罹ラザル以上ハ反對ノ諸君モ亦記憶セラルヽデアラウ、陸軍
ノ調辨費モ斯ノ如キモノデアッテ六年ノ經續費ガ十一年ニ易々ト延バサレルノハ、中ニ含
マレタノハ是ノ一局部ヲヤリツヽ段々ヤルノデアリマセヌ、此事ヲ終ッタナラバ此事ヲ再ビ
其年度ノ後デヤルト云フノデアルカラ、是ノ繼續費ニアズシテ必要アラバ其年度ニ於テ要
求シテ」可ナリ然ラザルモノハ之ヲ以テ國力ノ涵養ニ使用シテ何ノ差支アランヤ、其故ニ本
員ハ稅ガ減ゼザラントスルノハ減ズル能ハザルニアラズ、爲サヾルナリ、、爲スノ誠意誠心ナキ
ナリト本員ハ云フノデアル(拍手起ル)尙本員ハ是ダケデモマダ金ガ足リナイト云フナラバ、
モット金ヲ出ス公債償還ノ額ヲ改メルモ亦可ナリト考フル、元來公債ノ下ッタ原因ハ國
有鐵道ヲ行ッテ公債增發ノ必要ヲ增加セシメ、未募集公債ヲ數〓豫算ニ計上シテ喜デ
居ラレテ、愈公債ガ下ルマデ安然トシテ居ラレタ手際デ能ク分ッテ居ル、本員元來
公債ノ下ッタ大ナル原因ハ唯今當局ノ考ヘテ居ラレル原因デナイノデアル戰後ノ日本
ガ大ニ國力ヲ涵養シ、民力ヲ休養スル政策ヲ行ッテ平和ノ面目ヲ保ツデアラウト外國人
ガ思ッテ居ッタ、所ガ案外ニ一方ニ租稅ヲ嚴重ニ課シツヽ一方ニハ益〓武裝ヲ嚴重ニスル
ガ故ニ、是ハ日本ガ計ル可カラザル所ノ禍心ヲ包藏シテハ居ラナイカト斯樣ナル神經過
敏症ヲ諸外國ガ起スト一云フノハ、我公債ノ不安全ノ第一ノ理由デアルト思フ、其故ニ
支那保全ノコトデ亞米利加ノ人ガ彼ノカリホルニヤ近傍デ囂々タルモノハ別トシテ、其中
央政治ノ樞軸ヲ握ッテ居ルルーズヴエルト君ノ如キ人ハ、如何ニモ日本ノ知己ト云ッテ宜
シイ一世ノ達人デアリマスガ、此人モ亦日本ノ誠意ヲ曾テハ疑ッタ、支那保全ノコトハ唯
口約束バカリデナク、交書ニ徵スルノ必要ヲ感ジタノハ何故カ、日本ニハ國力以外ノ武力
ヲ貯ヘテ立ッテ居ル、何時比律賓ニ事ガアルカ知ラヌ、布哇ノ方ヘモドウカ防禦ヲシナケレ
バナラヌ、支那ニ事アッタトキニ直チニ兵ヲ出スコトガ出來ルノハ日本デアルカラ、大ニ考
ヘナケレバナラヌト云フヤウナ、所謂積羽船ヲ埋メテ度々種々ノ風聞ガ新聞紙ニ見ヘルノ
デスカラ、海ヲ隔ッテ日本ノ樣子ヲ見レバ一片ノ疑心ヲ生ゼザルヲ得ヌ是等ノコトガ集ッテ
日本ノ政略如何ト云フコトヲ疑ッタノハ政治的原因トシテ公債ノ價ヲ失ッタ最大理由
ノ一デアルト本員ハ思ウテ居リマスガ、ソレカラ未募集公債ヲズンノヽヤッテ居ルガ、何時
之ヲ止メルカ分ラヌモノヲ前ノ内閣ハヤリ續ケテ居ッタ、ソレカラ鐵道公債ヲ出サウトシテ
出スコトガ出來ズシテ、出シタラ大ニ下ラウカラト一云フテ頻リニ氣ヲ揉ンデ居ッタ、是等
ノコトガ綜合シテ公債ガ下ッタガ、元來公債ヲ買フノハ僅カノ少數ノ人ハ是ノ賣買ニ依シ
テ差益ヲ求メルト云フ人ハ是ハ相場ニ上手ナ人デアル併ナガラ一番安全ナル財產トシ
テ手間ノ掛ラザル財產トシテ、尙之ヲ保證ニ入レル、一番確實ナルトコロノ證劵トシテ
持ッテ居ル人ハ、利息ヲキチン〓〓ト拂シテ呉レテ、元金ガ何時デモ返スト云フコトハ必ズ
前途出來ル額面デ必ズ返ル時期ガアルト思フテ居ッタラ、決シテ限リナク公債ハ下ルモノ
デナイ、公債ヲ得タ人ノ心ハ公債ニ依ッテ便利ヲ得タイカラデアル買ッテ又賣ルト云フノ
ハ僅ニ相場ヲヤルト云フ人ニ過ギナイノデアリマスカラ、此消息ヲ理解シタナラバ公債ハ必
ズ返ス、必ズ今マデノ通リ懷金ヲ以テ市場ノ相場デ買フノヲ止メテ籤引キニシテ返ス額
面デ利息ヲ拂フ、是ダケアッテ未募集公債ヲ止メテ、政府ガ平和政策ヲ取ルコトニナッタナ
ラバ是デ以テ前ニ賣レタル公債ノ直段ハ確カニ引戾シ得ベキコトヲ本員ハ信ジテ居リマ
スカラ、其上ニ少シデモ公債ヲ增スコトモ亦可ナラザルニアラズ、併ナガラ是ヨリ更ニ急ナ
ル前ノ如キ國民ノ經濟組織ノ根柢ヲ破リ、其國民ヲシテ淳朴ノ風ヲ失ハシメ、竝ニ官
吏ヲシテ人民一派ノ自由ヲ蹂躙セシメル如キ、彼ノ手續繁キ檢査ヲ要スル課稅法ヲ成
立セシメテ、サウシテ期限アレバ必ズ之ヲ止メルト云フトコロノ信約ヲ何トモ思ハズ之ヲ
破ッテソレデモ尙屈セズ、公債ノ方ニ全力ヲ傾ケナケレバ公債ノ維持ガ出來ヌト云フ如
キ現內閣ノ財政ノ信用又甚ダ寂寞タルモノデアルト本員ハ思フノデアリマス、決シテソレ
ニハ及バヌ、其上ニ尙極度ヨリ極度ニ走ッテ前ニハ五億ノ公債ヲ發シテ國有鐵道ヲ贊
成シタ人ガ、今日ハ又公債ノ下落ヲ大ニ恐怖シテ神經過敏ノ結果、政府ガ公債ノ利子
ヨリ得ル所得稅ノ免除ヲ法律トスルト云フタナラバ翕然トシテ手ヲ携ヘテ之ニ贊成ヲセ
ラレタト云フニ至ッテハ本員ハ前後相揃ハザルトコロノ神經ノ常ヲ得テ居ラヌト思ヒマスカ
ラ、是等ノコトヲ皆繰延シテ是デモ金ガ出來ル、ソレカラ四十四年度ニナレバ關稅改正ノ
結果若干ラ得ルト云フコトハ反對ノ人モ亦言ハルヽノデアリマスカラ、是等ハ辨ズルニ及
ビマセヌ、此二ツノ中ノ一ヲ合シタラ出來マス、更ニ政友會ノ諸君ニ反省ヲ求メンガタメ
ニ結案ヲ下スベキモノガアル、是ハ外ノコトデハナイ、昨年政友會ノ總代トシテ大藏ノ權
ヲ握ッテ居ラレタ松田正久君ガ此壇上ニ立ッテ、唯今ノ大藏次官ガ是ヲ助ケテ此議會ヲ
通過セシメタ酒稅、石油、砂糖消費稅ノ增加ヲ如何ニ考ヘラレルカ、段々增シテ來ルト
云フノデ四十三年度ノ增收ハ一千百四十万圓ト云フコトヲ其時豫言セラレタ、四十六
年度ニ至レバ增收ガ二千万圓ニ上ル、ソレカラ更ニ煙草ノ値ヲ上ゲタ、其結果ガ四十
三年度ニ至ルト七百七十六万圓、四十六年度ニ至ルド九百八十万圓此增收ハ確
ニ政友會諸君ノ責任ノアル增收豫言デアルト本員ハ思フ、此一ヲ通シタラバ如何デアリ
マスカ、是デモ尙本員等ノ提案スルトコロノ是等ノモノハ財源ナキ無責任ナルトコロノ提
案ナリト云フノ勇氣ガ反對ノ諸君ニアルヤ否ヤトー云フコトヲ本員ハ問ハナケレバナラヌ、
此計數ニ至ッタナラバ確ニ政友會諸君ノ豫言デ、松田君ガ此處ニ列席シテ居ラレナイノ
ヲ本員ハ遺憾トスルノデ、辯解ノナカルベキ御方デアルカラ松田君ノタメニハ御便利デアッ
タト本員ハ同情シナケレバナラヌ(「居ナイカラ宜イノダ」ト呼フ者アリ)サウシテ桂總理大臣
モ是等ノ增收ハ彼ノ計畫ノ中ニ見積ッテ居ナイト云フカラ、現內閣ノ言質ト前內闇ノ
豫言ヲ合セテ本員ハ三千万圓ノ金ヲ得ルニハ綽々トシテ餘リアリト斯樣ニ申シマスガ、之
ニ向ッテ次ノ壇上ニ立タルヽトコロノドナタデモ明白ヲ與ヘラレナケレバ本員ハ無責任カ、
健忘カ、虛僞カ、空言カト云フ言ヲ呈スルニ忌マナイ、(拍手起ル)併ナガラ玆ニ御斷リ
ヲシテ置キマスガ、辯解ガアルトキニハ本員ハ必ズ此言葉ヲ言フノデハナイ、辯解ガナケレバ
勢ヒ此言葉ヲ呈セザルヲ得ヌノデアリマスカラ政府竝ニ政府ノ說ニ雷同阿附スルトコ
ロノ大同派諸君、竝ニ政友會諸君ノ明白ナル答辯ヲ得ンコトヲ本員ハ希望シテ此壇ヲ
降リマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=82
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083・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 竹越與三郞君
〔竹越與三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=83
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084・竹越與三郎
○竹越與三郞君 唯今ハ島田君ノ博辯宏辭ヲ伺ヒマシタ、微ニ入リ細ヲ盡シ、斯ノ
如キ論陣ハ島田君ニ於テ其最モ頂上ニ達シタモノト思ウテ本員ハ謹ンテ聽聞致シテ居
リマシタ、私ノ思フニ此聲一ナカルベカラズト思フ、併ナガラ二アルベカラズト思フ一ナカ
ルベカラズト云フコトハ國民ガ租稅ニ對シテ如何ニ考ヘテ居ルカト云フコトヲ當局ヲシテ
知ラシメルト云フタメニハ此聲ナカルベカラズト思フ、併ナガラ二アルベカラズト云フ譯ハ若
シ斯ノ如キ希望ガ實際ニ遂ゲラレタナラバ國家ノ財政ノ基礎ハ破レテシマフノデアル是
レ卽チ二アルベカラズト云フ所以デアリマス、(拍手起ル「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)島田
君ハ此減稅論、廢止論ハ單純ナル租稅論デナイト云ハレタガ、本員モ亦然リト思ッテ居
八、島田君ガ確カニ斯ク言ハレタコトヲ本員ハ甚ダ感謝スルノデアル實ニ此聲タルヤ國
家ノ歲入歲出ガ五億六億ニ達シタルトキ驚嘆ノ餘リニ出タ聲デアルノデス、國家ハ百
年ニシテ或ハ一日ノ如キ生活ヲスル國ガアル、或ハ一日ニシテ百年ノ大業ヲスル國ガアル、
斯ノ如キ迅速ナル進步ヲスル時勢ニ際シテハ、其國ノ勢ニ副フコト能ハズシテ落伍スル
人ミガアルノデアル、此落伍者カラ見レバ國家ノ進運甚ダ迅速デアッテ追付クコトガ出
來ナイ、斯ノ如キトキニ當ッテハ減稅論トナリ悲觀論トナッテ極メテ國家ノ現狀ヲ嘆息
スル聲トナル(拍手起ル)卽チ此三稅廢止論ノ如キモノハ此嘆息ノ心ヨリ出タ聲デアリ
マス(拍手起ル「ノウ〓〓觀察ガ違シテ居ル」ト呼フ者アリ)島田君ハ頻リニ惡稅々々
ト言ハレテ居ルガ、此戰時ノ非常ナ際ニ處シテ課シタトコロノ租稅ガ盡ク惡稅デアルナラ
バ地租ハ五千二十万圓課セラレテ居ル、營業稅ハ千九百万圓課セラレテ居ル、日疋ト織物
稅鹽通行稅ヲ合セタナラバ一億二百万圓ノ非常特別稅ガアルノデアル若モ非常ノ
秋ニ生ジタルトコロノ租稅ヲ、悉ク改廢セネバナラヌト云フナラバ、今日現在一億二百
万圓ノ缺陷ヲ生ズルノデアル、斯ノ如キ租稅ヲ改廢シテ而シテ國家何ニ依ッテ立ツコトガ
出來ルノデアルカ、怪ムベシ非常特別稅ハ約束デアルカラ廢メネバナラヌト云フ聲ノ下ニ、
僅ニ鹽ト、織物ト、通行稅ノミヲ論ゼラルヽノハ如何ナル理由デアルカ、本員ハ其眞
理ヲ解スルニ苦ムノデアル、(拍手起ル)今島田君ハ國家ノ費用ヲ節減スレバ十-分ノ餘
地ガアルト云フコトヲ言ハレタノデアルガ、島田君ハ豫算委員會デ如何ナル政費節減
論ヲ唱ヘラレタカト云フコトヲ記憶スルニ、斯ノ如キコトガアル、島田君ガ釀造試驗所費
ヲ五万八千八百圓、鹽試驗所費十六万三千圓、專賣局貯藏費二万圓、南米航
路費五十八万圓、併セテ八十一万圓ト云フモノニ向ッテ削減ヲ試ミラレタ、(拍手起
ル)島田君ハ豫算委員デアル、豫算委員ハ政府ニ向ッテ十分削減論ヲ試ミル權能ガア
ル島田君ハ此權能ヲ使フニ於テ敢テ躊躇セヌ人デアルト思フノデアル、然ルニ削滅說ヲ
述ベラレタノガ僅ニ八十一万圓デアル、(ヒヤ〓〓)今述ベラレタ大經綸ヲ持ッテ居ラレタナ
ラバ、何故ニ其時ニ御述ベニナラナカッタノデアルカ、(拍手起ル)八十一万圓ヲ以テ三千
五百万圓ノ穴ヲ埋メントスルノハ恰モ鮑具ヲ以テ品川ノ海ヲ埋メントスルモノデアル(「ヒ
ヤ〓」拍手起ル)要スルニ島田君ハ是ダケデハマダ足リヌト云フコトハ御承知デアッテ結局
陸海軍ノ軍費ニ切込マウト云フ御議論デアッタガ、是亦島田君ノ言ハレタコトヲ私ハ承認
スルノデアル、實ハ斯ノ如キ問題ハモウ古イ問題デアッテ、島田君ト吾〓ノ間ニモウ三四年ノ
間討論ヲシテ居ルコトデアル、再ビ此問題ニ歸ッテ來ルト云フコトハ甚ダ遺憾デアルガ、島
田君ガ此論戰ヲ開カレタ以上ハ復タ是ニ答ヘザルヲ得ナイノデアル、諸君二十七年ハ
三十七年ノ事件ヲ產ンデ來テ居ル、三十七年ハ國家ノ位地フシテ今日ノ位地ニ立タシ
メタ、卽チ弓ノ矢ハ既ニ弦ヲ離レテ居ルノデアル、再ビ歸ルコトハ出來ナイ、吾ハ既ニ列
國ノ此舞臺ノ間ニ入ッタ以上ハ、現狀ヲ一步モ退クコトハ出來ヌノデアル(ヒヤノ)諸
君、嫉妬ハ偉大ナルモノヲ圍ンデ居ル、島田君ハ唯今軍備ヲ擴張スルカラ列國ノ疑ヲ受
ケルト言ハレタガ、吾ミガ軍備ヲ縮小シタオフバ列國ハ拍手喝采スルヤ否ヤ、軍備ヲ縮小
スレバ直ニ一歩ヲ進メテ攻メテ來ルノデアル、(「ヒヤ〓〓」「ノウノ」ト呼フ者アリ拍手
起ル)最早今日ノ位地ニナッテハ千里獨往ノ客トナッテ、我自ラノ力ニ依ッテ立ッテ行クコ
トヲ考ヘネバナラヌ、列國ノ「メルシイ」ノ下ニ我國ハ立ツベカラザルモノデアル、(「外國語
ハ用ユベカラズ」ト呼フ者アリ)勿論今日ハ平和デアルト云フコトハ島田君ト吾〓ハ同感
デアル、我國ハ日英同盟ニ依シテ平和ヲ得テ居ル、日英同盟ニ重ヌルニ、日露協約、日
佛協約ヲ以テシ、又更ニ是ニ重ヌルニ米國ノ協約ヲ以テシテ居ルノデアル、凡ソ斯ノ如
ク協約ニ重ヌルニ協約ヲ以テセネバナラヌト云フ國家ノ現狀ハドウデアルカ、卽チ若シ一步
ヲ誤レバ極メテ危險デアルカラ、斯ノ如ク協約ニ協約ヲ重ネテ居ルノデアル(「ヒヤ〓〓
ト呼フ者アリ拍手起ル)故ニ此際ニ當ッテ僅カバカリノ事變ハ外國ノ權力平均ヲ覆ス
ト云フコトハ是ハモウ識者ヲ俟タズシテ明カナコトデアル、凡ソ此演壇ニ立ッテ外交ニ
通ゼラレタ如キ人ミハ、往々ニシテ外交的辭令ヲ振廻スノガ常デアル、何處ノ國トハ平
和デアル、何處ノ國トハ交際ガ宜イ、(「夫子自ラ如何」ト呼フ者アリ)如何ニモ御尤
デアッテ、恰モ其人〓ノ言フコトヲ聽ケバ外務大臣カ全權大使ガ何處カノ國ノ夜會ニ
呼バレテ晩饗ノ食卓デ乾杯ノ言葉ヲ述ベルヤウナコトヲ言ッテ國家ノ現狀ヲ論ジテ居ル、
私ハ甚ダ遺憾ニ思ウテ居ル、外交論ハ極メテ露骨デナケレバイカヌト思フ、露骨ニ
國民ニ語リ、國民ニ我國家ノ現狀ヲ知ラシメ、列國ニ我位地ヲ眞正ニ示セバ平和ハ茲
ニアルト思フノデアル、外交的辭令ヲ列ベテ、國民ヲシテ國家ノ現狀ヲ知ラシメズ、列國
ヲシテ我位地ヲ覺ラシメザル結果ハ往々ニシテ誤解ヲ招クノデアル、(ヒヤ〓〓)而シテ私
ハ露骨ニ言ハント欲スレバ、此問犬養君ガ支那ハ五六年ノ後ハ三十六師團ノ兵ガ出來
ル、此兵ハ卽チ我國ノ兵備ヲ幾ラカ減ラス原因ニナッテモ宜イデハナイカト云フ御話デアッタ、
是ハ至極望マシイコトデアル、併ナガラ此三十六師團ノ兵ガ、我國ノ味方ト算ヘタナラ
バ誠ニ賴母シイコトデアルガ、國家變ナキヲ保タズ、其秋ニ當ッテハ三十六師團ノ兵ハ偶〓
我國ノ軍備ヲ擴張セネバナカヌ本デハナイカト思フノデアル、(「ノウノヒヤ〓〓」ト
呼フ者アリ拍手起ル)又是ハ極メテ島田君ノ御嫌ヒナコトデアッテ、往々議會ヲ威嚇スル
ナドト言ハレルガ、露國ノ兵制デアル露國ハ現ニ貝加爾湖以東ニ十箇師團ノ狙擊
隊ヲ列ベテ居ル、是ハ戰時ノ編制デアッテ我國ノ兵制ニ比ベレバ二十師團ノ兵デアリマ
ス露西亞ハ戰爭以前ニ貝加爾以東ニ五師〓、卽チ我國ノ戰時編制シテ十師團ノ
兵ヲ出シタイ望デアッタガ、其企未ダ成ラズシテ開戰ニナッタノデアリマス、卽チ今日露國
ガ貝加爾以東ニ有シテ居ル兵力ハ、戰爭ノ半項ニ相匹敵スル兵力デアル、私ハ露國ニ
對シテ好意ヲ有シ、餘力ヲ盡シテ平和ヲ開拓スルニ於テハ敢テ人後ニ落チヌ積リデアル
ガ、併シ事實ハ語ラネバナラヌノデアル、此形勢ヲ利用シテ露國ト握手スルコトハ外交
官ノ責任デアルガ、併ナガラ是ニ對スルノ力ヲ養フト云フコトハ、是ハ議會トシテ當然爲
サネバナラヌコトデアラウト思フ(拍手起ル)所謂近世ノ謂フ所ノ國家ノ實力ハ同盟若
クハ協約ニ捺ストコロノ印章デアルト云フコトハ卽チ是デアラウト思フ斯ノ如キ形勢デア
レバ今日ノ計畫ノ中カラ每年三千五百万圓卽チ十二年ニスレバ四億二千万圓ヲ減ラ
スト云フコトハ、是ハ島田君ノ極メテ御好キノ常識カラ判斷シテ到底アルベカラザルコトデア
ラウト思ウノデアル(拍手起ル)是等ノ問題ハ極メテ古キ問題デモウ島田君ト三四年
爭ッテ居ル問題デアル而シテ島田君ガ今日ニ至ッテ尙其意見ヲ抛擲セラレナイト云フコ
トハ、其意見ニ忠實ナルコトヲ本員深ク敬服スル處デアルガ、併ナガラ其行フベカラザルコ
トヲ解セズシテ尙今日ニ於テ述ベルト云フコトハ、所謂株ヲ守ッテ免ヲ待ツノ類デハナイ
イカト思フノデアル、(拍手起ル)併ナガラ島田君ハ廢稅論ニ忠實デアルケレドモ、年々御
進步ガアル、卽チ昨年島田君及島田君ノ一類ハ正貨ガ濫出シテ國家ガ破產ヲスルト
云フコトヲ唱ヘマシタガ、今日ハ一言タリトモ正貨濫出ト云フコトハ御述ベニナラヌ、是ハ
誠ニ同君政見ノ進步デアッテ本員ノ深ク喜ブトコロデアル、(拍手起ル)又同君ハ減債基
金ヲ設ケルトキニ當ッテハ張膽明目シテ御反對ニナッタガ、今日ハ稍〓此反對論モ薄ライデ何
カ籤デ還セバ宣シイヤウナ御論モアッテ是亦我〓ニ近寄ラレタノハ甚ダ賀スベキコトニ思フ、
斯ノ如ク數ヘ來レバ恐ラク同君ハ來年頃ハ我〓ト廢稅論ニ付テハ又同意見ニナラレルデハ
ナカラウカト本員ハ私カニ考ヘテ居リマス、(拍手起ル)是ハ大體論ニ付テ島田君ノ言ハ
レタコトヲ批評シタノデアリマス、島田君ハ鹽專賣ニ付テイロ〓〓ノ御議論ガアリマシタ、
是ハ本員ナドヽハ根本カラ違ッテ居ル、島田君ハ鹽ノ專賣法ヲ以テ封建時代ニ恩惠ヲ
一人ニ及ボシタ、所謂人民ニ許シタ專賣ト云フヤウニ存ジテ居ラレルガ、是ハ國家ノ專
賣デアッテ封建時代ノ恩ヲ人ニ施スノトハ違フ、所謂賦ヲ加ヘズシテ上用足ルト云フコ
トヲ今日ハ行ハントスルノデアル島田君ハ飽クマデ「マンチエスター」派デ總テヲ人民ニ委
シテ行クト言ハレルガ、我〓ハ場合ニ依ッテハ國家ハ鐵道デモ營業サセル積リデアルカラ、
鹽專賣モ亦可ナリト思フテ居ルノデアル而シテ今日既ニ-鹽專賣ハ是カラヤルノデ
ナイ、既ニ出來タ事實デアル、而シテ此出來タ事實ヲ廢メルトスレバ如何ナル結果ガ來
ルカ、島田君ガ先程言ハレテ居ル通リ我國デ用井ルトコロノ鹽ハ十億万斤デアル而シ
テ若シ此專賣ヲ廢シタナラバ、島田君ノ言ハレタ如ク外鹽ガ甚ダ廉イカラ、其廉イ鹽ガド
ン〓〓入ッテ來テ、國家ハ先ヅ關東洲臺灣鹽ノ供給シ得ル二億万斤ヲ除ケバ、餘ル所
ノ八億万斤ハ到底外國鹽ニ依ッテ供給ヲ充タスヨリ外ハナイ、然ラバ正貨ハ少クシテ五百
万圓、多クシテ一千万圓、外國ニ取去ラレル結果ニナルノデアリマス、斯ウ云フ譯デアッ
テ、到底今日鹽ノ專賣ト云フコトヲ廢スルコトハ出來ヌト思フノデアル、又之ヲ約束デア
ルト言ハレタガ、專賣ト云フコトハ戰時非常ノトキニ於テ起ッタリト雖モ、專賣ノ生命ハ
甚ダ長イト云フコトハ最初カラ皆豫期シテ協賛セラタコトヽ思フノデアル(ノウ〓〓)ソレカ
ラ又島田君ハ織物ノ輸出ガ減ジテ輸入ガ多クナッタト言ハレタノデアルガ、織物ニ付テハ
全體ノ統計表-是ハ政府ノ統計表デアル-政府ノ統計表ニ依レバ三十ハ年ニハ輸
出ガ四千二百十二万圓三十七年ニ五千四百九十三万圓、三十八年ニハ五千百
三十九万圓、三十九年ニハ六千三百万圓、四十年ニハ六千二百六十万圓、斯ノ如ク
年々〓シテ進ンデ居ルノデアリマス、決シテ島田君ノ言ハレタ如ク退步ノ事實ハ認メテ居
リヽセヌ、又輸入ニ付テ增加シタト云フ、其輸入ハ島田君ノ言ハレタ如ク多少ノ變化
ハアリマス、併シ三十八年ニ於テ少シク增加シタト云フコトハ之ニハ軍需品ガ入ッテ居ル、
戰爭中羅紗其他ノ軍需品ガ入ッテ居ルカラ、八年ニハ增加シテ居ル、故ニ九年ニハ輸
入ガ減ッテ居ル、更ニ四十年ニハ又減ツテ居ル、斯ウ云云譯デアッテ島田君が今金城鐵壁
ト賴マレタ輸出入論ハ全ク根據ノナイコトデアル、其他モ〓シテ斯ノ如キコトデアラウト思
フノデアル、(拍手起ル)又通行稅ハ甚ダイカヌト云フコトデアッタガ、通行稅ハ歐洲列國
皆然リデ、島田君ハ織物稅ハ歐洲ニハ例ガナイト言ハレタガ、島田君ガ例ヲ歐洲ニ御求
メニナルト、通行稅ハ歐洲ニハ大抵例ガアル、尤モ是ハ生產ヲドウスルト云フ論デハナイ、
政府ノ財政カラ取リヨイカラ取ルノデアル、是等ノ外何等意味ナイト思フノデ、〓シテ論
ズレバ此戰時非常特別稅ヲ若シ改廢セントスレバ、何ゾ必シモ三稅ノミナランヤ總テノ
稅ニ亙ッテ整理ヲシナケレバナラヌコトヽ思フ、(拍手起ル)而シテ今島田君ノ言ハレタ如
ク四十四年ニハ關稅ノ自然收入モアリ、總テノ租稅ノ自然增加モアル而シテ我〓ガ嘗テ
協賛シタトコロノ-唯今島田君ノ言ハレタトコロノ租稅ハ益〓增加シテ來ルカラ、其時ニ
於テ諸君ト共ニ靜カニ此租稅ノ改廢ヲ論ズルモ決シテ遲イコトハナイノデアル、(拍手
起ル)今日租稅ヲ負擔スルト云フコトハ如何ナル租稅ト雖モ苦痛デナイモノハナイ、何ゾ
必シモ三稅ノミナランヤ、併ナガラ我〓ノ祖先ハ言フベカラザル苦難ヲ經テ此祖國ヲ拵ヘ
テ我〓ニ授ケタ、我〓ハ今日ノ負擔ヲ忍ビ、苦痛ヲ忍ンデ、之ヲ後世子孫ニ贈ルト云フ
コトヲ考ヘナケレバナルマイト思フ島田君ハ戰時既ニ止ンダカラ、戰時ノコトハ御免ヲ
蒙ルト云フ御話デアルガ、今日ハ戰時ヨリモ尙大切ナトキデアル、(拍手起ル)故ニ我〓
ハ今日斯ノ如キ問題ヲ提出スルトキデナイ、時期未ダ熟セズ、而シテ其性質モ論ズベキモ
ノデナイト思フノデアル、故ニ此三稅廢止論ハ斷然トシテ我ミハ之ニ反對スルモノデアリ
マス、(「本論ニ入レ」ト呼フ者アリ)終リニ臨ンデ(笑聲起ル)私ハ政府ニ一言セントスル
者デアル我〓ハ此三稅改廢ト云フガ如キ人氣問題ニ對シテ、之ニ贊同シテ一世ノ人
氣ヲ集メルガ如キ術策ヲ知ラザル者デハナイ、若シ之ヲ改廢セントスレバ我〓ノ一言デ事
足ルノデアル、併ナガラ之ヲ改廢セズシテ政府ヲ助ケテ其志ヲ成サシメントスルモノハ、政
府ヲシテ此積極ノ時運ニ際シ積極ノ政治ヲ行ハシメントスルタメデアル、然ルニ此政府ノ
爲ス所ハ內治外交ニ於テ大體我〓ト同主義、同方針デアルニ拘ハラズ、往々ニシテ勤
儉ニ付テ所謂勤儉ノ中毒ヲ受ケントスルガ如キ遣り方ガアルト云フコトデ、內務大臣ノ
官邸ニ入レバ二宮尊德ノ傳記デモ讀マナケレバ御話ガ出來ヌト云フ有樣デアル、斯ノ如
キコトハ決シテ積極ノ時運ニ際會シテ國運ヲ進ムベキ方法デハナイノデアル、二宮尊德ノ
〓ハ一人ニ行ッテ宜シク一〓ニ行ッテ宜シイ、併シ天下ヲ治メル政治ニハ宜イモノデハナ
イ所謂王安石ガ靑苗助役ノ法ヲ田舎ニ行ッテ-中央ニ行ッテ失敗シタト同ジコトデ
アル、斯ノ如キコトヲ以テ今日戰後ヲ經營セントスルガ如キハ甚ダ宜シクナイコドデアラ
ウト思フカラ、是等ノコトハ早速御改メニナル方ガ宜シイト思フ、我〓ハ斯ノ如ク天下ノ
人氣ニ投ゼズシテ政府ヲ助クル精神ニ御同意アランコトヲ希フノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=84
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085・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 中野武營君
〔中野武營君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=85
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086・中野武營
○中野武營君 諸君、先刻總理大臣桂侯爵ハ此演壇ニ於テ、此三稅廢止案ハ全會
一致ヲ以テ反對シテ呉レイト云フ御希望ガアリマシタ、併シ遺憾ナガラソレニ應ズルコト
ガ出來ナイ、否ナ、此案ヲ維持スルハ桂內閣ノタメデアルト思フ、抑〓三稅ノ害アル處、
又惡稅タル處ハ同志諸君カラ旣ニ御演說ニナリマシテ、私ガ喋々申スマデモナイノミナラ
ズ、政府ト雖モ亦反對ノ諸君ト雖モ、此稅ニ付テ左程ノ御論ハナイト思フ、唯之ヲ
廢スルニ付テ財源ヲ如何ニスルカト云フ〓ニ付テ贊否ノ分ルヽトコロト思ヒマス、此〓ヲ
私ガ論ズレバ足リルト思ヒマス、現政府ノ云フトコロニ依リマスト、現政府ハ財政ヲ整理
シ戰時中ノ創痍ヲ療治シヤウト云フコトヲ以テ、立ッテ居ルモノヽ如クニ見エテ而シテ其
趣意ハ既ニ言明サレテ居ルノデアリマス、本案ノ委員會ニ於テ桂侯爵ハ頻リニ稅制ノ整
理ヲ云ハレ、此整理ノタメニハ方案ヲ攻究シ、終始變ラヌデ晝夜苦心シテ居ルト云フコ
トヲ申サレタ、ソレ故ニ桂大藏大臣ノ云ハレタ言明ニ信ヲ置イテ、信賴スベキコトガアリ
マスルナラバ、私ハ靜ニ其成行ヲ待ツモノデアル、所ガ如何セソ言明ハセラレテ居リマスガ、
其言明セラレタトコロニ根據ノ認ムベキモノガナイノデアリマス、根據アッテ言ハレタコトナレ
バ吾〓ハソレニ信賴スルガ、少シモ據所ナク唯心配ヲ致シテ居ル、整理ヲシテ居ルト云ウ
テ、ドウモ其根據ト云フモノガナイカラ、吾〓ハ之ヲ信ズルコトハ出來ヌ、凡ソ財源ヲ求メ
ヤウトスルニハ先ヅ方針ガナケレバナラヌ、方針而シテ歸著點ガナケレバナラヌ、財源ハ
決シテ天カラ降來ルモノデナイ、地カラ湧出ヅルモノデモナイ、政治上ナシ得ベキ途ニ依ッテ
之ヲ求ムルヨリホカナイノデアリマス、ソコデ財源ハ凡ソドウ云フ〓ニアルカト申シマスル
ト、第一ニハ財政整理、卽チ歲出ノ節約、第二ニハ歲入ノ自然增徵、第三ニハ關稅
改正ニ依ッテ生ズル國庫ノ增收、第四ニハ國債整理ニ依ッテ生ズル利益、是等ノ點ニ
於テ現政府ハ何等ノ抱負ガアッテ、是ニ據ルベキモノデアルト信ズベキモノガアルカト段々
委員會デ質問モアリマシタガ、是ニ答フルトコロニ依リマスト、少シモ是等ノ據ルベキ考ガ
ナイト云フコトハ明カデス、第一財政整理ト云フコトガ、四十二年度豫算ニ於テ結了シ
マシタガ、尙四十三年度以後ニ於テ整理シテ餘裕ヲ見出スコトガ出來ルカ、整理スベキ
〓ガアルカト云フコトニ付テハ、最早是以上ノ餘地ハナシ、縱シ多少ノ整理ヲシタトコロ
ガ、之ヲ以テ廢稅ノ財源ニ充ツルコトハ到底イカヌト云フコトデアル第二ノ歲入ノ自然
增徵ハドウ云フモノデアルカ、是ニ對シテハ四十三年度以後ニ於テ十一年計畫ヲ立テ
タ、其十一年計畫ヲ立テタ算盤ニ於テ、別段增徵ヲ見込ンデナイト云フコトデ、更ニ年
年ノ豫算ニハ卽チ四十二年度ノ豫算ニハ增徵ヲ見込ンデ豫算ヲ立テタ、然ラバ此四
十三年度以後ハドウナルカト云フト、自然增徵ガ出來タナラバ其豫算ニ於テ歲出ニ
必要ガアッテ、ソレニ使フベキモノデアル故ニ、自然增徵ハ未確實、卽チ確實デナイ、
所謂財源ト見ルコトハ出來ヌト云フコトデアル、第三ハ關稅ノ改正ニ依ル國庫ノ增收
ハドウ云フ見込デアルカト聽イテ見ルト、是ハ既ニ見込ヲ立テヽ十一年計畫ノ財源ニ充
テヽアル、旣ニ關稅改正ノタメニ生ズルトコロノ國庫ノ增收ハ、十一年計畫ノ財源ニ
充テヽアル使フモノハ拵ヘテアルト云フコトデアル、サウスルト殘ルトコロハ、國債ノ整理ニ
依ッテ生ズルトコロノ利益デアル、是ハ果シテドウ云フ利益ヲ產出スカ、是ハ國債ノ信用
ガ增シ、外國人ガ日本政府ヲ信ズル結果、是マデノ利息ヲ廉イ利息ニ借換ヘル斯ウ云
フヤウナコトカラ利益ガ出テ來ルノデアル、此〓ニ付テ政府ハ餘程望ヲ置カレテ居ル、
併ナガラ私ノ考フルトコロデハ、此國債整理ノ結果カラ生ズル利益ヲ政府ハ當ニナスッテ
居ラルヽガ、今一層進ンダル整理ヲナサランケレバイクマイト思フ、ソレハ何ゼト云フニ國債
ヲ整理シテ信用ヲ保ツト云フコトハ、何カト云フト財政ノ鞏固ニアル、財政ノ鞏固ハ何
ニガ基礎ニナルカ、財政ノ章固ハ卽チ國民デアル、國民ガ負擔シテ居ル租稅ガ基礎デアル、
然ルニ此財政ハ是ヲ鞏固ナリト政府ガ如何ニ外容ヲ粧ッテ見テモ基礎トナルベキ國民ノ
力ガ此負擔ニ堪ヘラレナイト云フ時分ニハ決シテ鞏固トハ云ハヌノデアリマス、ソレハ何
故トナレバ地盤ノ薄弱ナ脆弱ナル所ノ地盤ノ上ヘ、如何ナル建築ノ立派ナモノヲ建テヽ見
テモ、其地盤ガ崩レヽバ建築ハ破壞シテシマウノデアル、國民ガ此租稅負擔ニ堪ヘラレナ
イ過重ノモノハ負フコトガ出來ナイト云フ聲ガ國民ノ聲ノ囂シイトキニ當リマシテ、如何
ニ財政ガ鞏固ナリト云ッタトコロガ國民ノ力ガソレニ堪エラレヌトキハ鞏固トハ人ガ信スル
モノデハナイノデアル、故ニ此財政ノ鞏固ヲ圖ラントスルナラバ、此國民ノ怨嗟ノ聲ガ收
マラヌ限リハ決シテ財政ノ鞏固ト云フコトニハ外國人ハ信ズルモノデナイト私ハ考ヘル私
ハ決シテ他ノ反對論者ノ論抔ヲ捉ヘテ攻擊シタリ、面白イコトヲ申スコトハ出來ナイノデ
アル、唯誠心私ハ思ウテ居ルコトヲ諸君ニ訴ヘルノデアリマス、然ラバ右申ス如ク政府ノ
財源トスベキ將來此租稅ヲ整理スル財源トスベキモノト云フモノハ、政府ハ何モ抱
負ガ無イト私ハ認メタノデアル何ニ依ッテ此方法ヲ立テルカ、更ニ見ルベキ據ルベキ
トコロノモノガナイ限リハ我〓ハ唯答辯デ、心配シヤウ、整理ヲシヤウ、ト云フ言葉ヨリ
外ニハ思ハレヌノデアル、私ハ斯ウ云フノデアル到底此財源ヲ求ムルト一云フモノハ、自ラ爲
シテ之ヲ拵ヘルヨリカ仕方ガナイ、卽チソレハ何カト云ヘバ財政ノ根本ト云フモノヲ整理
シテ行カネバナラヌ、ソコデ財政ノ整理ノ本ト云フモノハ何所ヲ寸ニ立テルカ、何處ヲ
標準ニスルカト云フコトガ頗ル必要デアル、從來戰時中ハ斯樣デアル、戰時中ニ於テハ
出ルガ、急ナル卽チ歲出ニ非常ナ急ヲ要スル必要ト云フモノガアルガタメニ、歲入ト云
フモノヲソレニ對シテ徵收シタノデアル、之ガ爲メニ頗ル膨脹シタトコロノ財政ヲ其程度
宜シキニ戾サウトスルナラバ、先ヅ國民ヨリ取ルベキトコロノ歲入、此歲入ノ程度ヲ能ク
考ヘテ、其程度ニ依ッテ歲出ト云フモノニ節制ヲ加ヘテ、能ク整理シテ行ク外ニハ出來
ルモノデハナイト私ハ信ズル元來歲出ニ於テハ是ダケノモノハ是非使ハネバナラヌト云ッタ
ナラバ、之ヲ整理スルト云フ途ハナイ筈デアル、戰後抔ニ於テハ殊ニ一時膨張シタモノヲ
整理スルニハ宜シク歲入ト云フモノヲ程度ヲ考ヘテ、是程ノモノニシテ國政ヲセネバナラ
ヌト云フ、其標準ニ依ッテ歲出ヲ計畫シテ往クヨリ外ニ整理ノ途ト云フモノハ付カナイ、
然ルニ今日ト雖モヤハリ歲出ヲ本位ニ置キテ、而シテ飽マデモ是ダケノモノガ要ルノヂヤ
ト云ッテ居リマスレバ此稅ノ整理ハ付クモノデナイ、而シテ政府ノ計畫シテ居ルトコロノ
今日ノ財政ハドウデアルカト申シマスレバ、武ニ偏シテ居ル、此武ニ偏シテ居ル卽チ
歲入歲出ト云フモノガ、多ク軍事ニ偏シテ居リマスタメニ、此過重ナル負擔ヲ人民ニ
負ハサナケレバナラヌノデアル、私ハ此日本ノ政治ノ仕事ト云フモノハ外國人ノ頗ル猜疑
ヲ受ケテ、軍事ニノミ力ヲ用井テ居ル如ク外國人ハ感ジテ居ルノデアル嘗テ斯ウ云フコ
トガアッタト云フコトヲ私ハ聞キマシタガ、此四十五年ノ大博覽會ヲ日本政府ガ延期ス
ルト云フコトヲ發表シタラ、亞米利加ニ於テハ日本ガ此實業發展ヲスル機關トナルベキ
博覽會マデ延バシテ、此金ヲ以テ軍事費ニ使ッテ軍備ノ擴張ヲシテ居ルノデアルト云フ
コトヲ、亞米利加テハ新聞デ言觸シ、又亞米利加ノ博覽會ノ委員ガ日本ニ參ラレマシ
タガ、其來ラレタ人モ日本ニ來テ見ルマデハヤハリサウ〓疑ッテ居ッタト云フコトデアル、ソレ
位ナ關係ヲ持シテ居リ、又外國人カ頗ル猜疑シテ居ルノデアル、是等ヲ思切ッテ改メルヨ
リ外ニハ私ハ財源ノ出所ガ無イト思フ、而シテ委員會抔ニ於テ斯ウ云フコトガアッタ、今
日ハ是ハ出來ヌケレドモ、イヅレ近キ將來ニ於テ此事ガ出來ル時機ガアルダラウト云フコ
トハ、政友會ノ諸君ノ御論デアッタノデアル私ハ近キ將來ニ何ヲ以テ此途ヲ講ズルカ、卽
チ唯今申述ベタ如ク、現ニ政府ガ今日マデ之ヲ整理スルト口デ言ヒナガラ、少シモ整理
スル根據ト云フモノヲ捕ヘテ居ラナイ、根據ト云フモノ、據ルベキ途ヲ立テテ居ラズシテ唯
整理スルト言フコトハ我〓ガ信ゼヌト同樣ニ、政友會ノ諸君が或ル時機近キ將來
ニ之ヲ整理スル時機ガアルダラウト言ハレルコトハ、少シモ信ヲ措クコトガ出來ナイ、ソレ故ニ
私ニハ斯ウ云フコトヲ言フノデアル、日本政府卽チ現政府ハ斷ジテ偏武ノ方針ヲ改メ、武
事ニ偏スルトコロノ方針ヲ改メテ大ニ民力ヲ養ヒ、サウシテ官民一致シテ產業、工業ノ發
達ヲ努メ、貿易ノ發達ヲ努メルト云フコトノ途ニ出デナケレバナラヌノデアル、サウシタナラ
バドウナルカト申シマスレバ、民業モ榮へ、從シテ國民モ富ンデ來テ、外國人モ大ニ信賴シ
テ、卽チ國債ヲ整理シタトコロノ效果ト云フモノモ、ソレカラ起ッテ來ルノデアル、又其結
果ハドウナルカト云ヘバ、外交上平和ヲ保ツト云フコトモ、是ヨリ起ッテ來ルノデアル決
シテ國力ハ、卽チ先刻竹越君ノ仰ッタ國力ト云フモノハ、武備ダケデ國力デハナイ、國ノ力
ト云フモノハ國民ノ力デナケレバ國力トハ云ヘナイ、唯ダソレヲ衞ルタメニ軍備ガアルノデアル
カラ、國力ニ相當シタトコロノ武備ニシナケレバ私ハ國家ノ經濟ハ立タヌモノデアルト信ズル、
私ハ此希望ハ國民ノ輿望デアルト確信シテ居ル、立法府トシテハ國民ノ此輿望ト云フモ
ノヲ達シテヤルト云フコトガ、卽チ立法府ノ務デアル、先ヅ其順序トシテ卽チ又此稅制ヲ
整理スルトコロノ第一著步トシテ、此三稅廢止案ヲ提出スルト云フノハ私ハ當然ノコト
デアル政府自ラ爲スコトヲ爲セヌト云フ政府ナラバ之ヲ突付ケテ立法部カラシテ註文
ヲ爲シテ往クト云フコトハ當然ナ事デアルト私ハ信ズルノデアル而シテ此案ノ成立ヲ計ッ
テ政府ヘ之ヲ突付ケテ行キ、サウシテ大ニ政府ノ決心ヲ促シ、四十三年度ノ豫算マデ
ニ於テ十分ナル計畫ヲ爲シテ、卽チ偏武ノ財政ヲ改メテ國力相當ナル程度ニ財政ヲ直
スト云フコトヲ、吾〓ガ求ムルノハ當然ナコトデアル、私ハ決シテ多辯ヲ好ム者デハアリマセ
又、是ダケノコト··
(「討論終結ノ動議ヲ提出シマス」ト呼フ者アリ〕
(藏原惟郭君「唯今ノ議場ハ何等ノ醜態、議長ハ議場ヲ整理スルコトハ出來ナ
イノカ」ト呼フ〕
(村松恆一郞君「他人ノ演說ヲ妨害スル者ヲ何故議長ハ制セヌノカ」ト呼フ「議
長ハ退場ヲ命スベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=86
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087・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 贊否共ニ發言ノ通告ガ三十餘名アリマスカラ、今日ハ議
長ハ夜ヲ徹シテモ討論ヲ續ケヤウト思ヒマスカラ、各自靜聽ヲ希望致シマス
〔片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=87
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088・片岡直温
○片岡直溫君 諸君、私ハ本案ニ對シテ反對ノ意見ヲ述ベルノデアリマス、私ハ十年
目ニ此議會ニ列シマシタノデゴザイマスルガ故ニ、先輩諸君ニ敬意ヲ拂フタメニ今日マデ
本場ニ於テハ一語モ發シタコトハナイノデアリマス(「イヤ已ニアリマス」ト呼フ者アリ)唯
委員長トシテ僅ニ報告ヲ致シタダケデアリマス、此案ハ皮相上カラ見マスルト頗ル人氣問
題デアリマス、又深ク之ヲ考ヘマスレバ戰後ノ經營、卽チ財政ノ基礎ニ影響ヲ及ボストコ
ロノ重大ノ問題ト考ヘルノデアリマス、(「サウ云フ筆法デ行カニヤイカヌ」ト呼ラ者アリ)故
ニ今日マデ沈默ヲ致シマシタ代リニ、暫時御〓聽ヲ煩ハシタイト存ジマス、(「謹聽」ト呼
フ者アリ)此問題ヲ解決致シマスルニハ勢ヒ此非常特別稅ノ起リマシタ當時ノ卽チ戰
時中ノ財政計畫ヨリシテ、次ニ戰爭ノ結果、卽チ「ポーツマス」ノ契約ヨリシテ如何ナル狀
態ニナッタカト云フコトヽ、其後卽チ戰後ノ經營ヲ立テ尙四十二年度ノ豫算ニ及ンデ以
テ之ヲ論ゼナケレバナラヌ筈デアラト思フノデアリマス、島田君ノ如キハ殆ド此三十七八
年ノ戰爭ニ關スル費用ハ總テ打切ラレテ、何等關係ヲ持クヌカノ如クニ仰セラレタノデア
リマスルガ私ノ見ル處ニ依レバ戰役ノ跡始末ハ今ガ最モ肝要ナトキデアリハセヌカト考ヘ
〓、如何ニモ此織物稅、鹽ノ消費稅、竝ニ通行稅ニ關シテ提出者竝ニ之ヲ贊成セラル
ルトコロノ諸君ノ御說ヲ伺ッテ見マスレバ、大體ニ於テ私ハ異論ヲ挾マヌノデアリマス、唯
奈何セン戰爭ノ跡始末ガ落著ヲ告ゲザル今日ニ於テ、本案ノ如キモノヲ通過致シマ
シタナラバ、此財政計畫ハ崩レテシマッテ其反對ニ非常ナル苦痛ヲ御互ノ頭上ニ及ポスモ
ノデアリハセヌカト考ヘル、言換ヘテ見マスレバ本案提出ノ精神ニ對シテハ木員モ一步
モ讓ラザルノミナラズ寧ロ其熱情ノ厚イモノデアルト考ヘル、何トナレバ凡ソ戰爭中ノ經
費ヲ支辨スルタメニ、今更私ガ喋々ヲ論ズルマデモナク(笑聲起ル)喋々スルマデモナク諸
君ノ歷史上御承知ノ通リ此戰爭ノ經費ハ多クハ增稅ヲ以テシ、或ハ一時ノ借上金ヲ
以テシ、已ムヲ得ズンバ不換紙幣トマデシテ以テ其經費ヲ調達スルノデアリマス、故ニ此
日露ノ戰爭中ニ於テ我邦ガ公債ヲ起サズ、增稅ノミヲ以テ此戰爭費ヲ支辨シタリトスレ
バ、ソレハ或ハ島田君ノ言ハルヽガ如ク戰爭ノ決算ガ濟メバ直ニ此稅ヲ減シテ掛ルト云フ
コトハ出來得タカモ知レマセヌ、併ナガラ斯ノ如キコトハ此多クノ費用ヲ負擔スルガ如キ
コトハ國民ノ堪ヘ得ザル所デアル、故ニ國庫債劵ヲ發行シ、尙且外國債ヲ起シタノハ是
ハ已ムヲ得ヌ、又當時ノ機宜ニ適シタ政策デアッタカト私ハ考ヘルノデアル、或ハ千七百二
十年カラ千八百十五年ノ間、彼ノ西班牙皇位繼承ノ戰爭以來數囘ノ戰爭ニ於テ、英
國ガ此數囘ノ戰爭ノタメニ非當ノ費用ヲ負擔シテ、國民ガ非常ニ苦痛ニ陷ッタト云フガ
如キコトハ諸君ノ了知セラルヽ所デアラウト考ヘル、其他「クリミヤ」ノ戰爭ニシアモ、英佛戰
爭ニシテモ、、或ハ南北戰爭ニシテモ、英米戰爭ニシテモ、其實例ハ澤山アルノデアル卽チ
英國ノ如キハ二十四年間モ不換紙幣ヲ繼續シタト云フ實歷ヲ有ッテ居ル、若シ我邦ニ
シテモ外債ヲ起サズシテ、以テ此十九億餘ノ豫算ヲ立テントシタナラバ、恐ラクハ不
換紙幣ニ陷ッタト云フコトハ免レ得ナカッタト考ヘル、然ラバ其借リタ金ノ始末ハ戰後
ニ於テ關係ヲ有ッテ來ルト云フコトハ是ハ當然ノ順序デハアリマセヌカ、若シ戰後ニ直グ
ト打切ヲスルト云フコトデアレバ、其處ハ要スルダケノ金ヲ一時ニ纏メルト云フコトガ當然
デアル、若シ一時ニ纒メルコトガ出來ズシテ借入金ヲシタト云ヘバ、其借入金ヲ返スタ
後ニ苦痛ガ殘ルト云フコトハ、是ハ自然ノ順序デアル(「ソレハ當リ前デアルガ仕組ガ惡イ
ノデアル」ト呼フ者アリ)サウシテ此戰爭ノタメニ內債ニ於テ四億八千万國ノ國庫債券
ヲ起シタノデアリマスが、此中ニ於テ償還ヲセラレタ金額ハ僅ニ七千万圓シカ無イデハアリ
マセヌカ、卽チ第四回第五囘ノ兩囘ニ於テノ二億万圓ニ對シテハ、四朱利付ノ外國
債ヲ以テ之ヲ償還シタノデアリマスケレドモ、ソレハ唯借掛ヘタノデアル、第一囘國庫
ノ債券ノ一億万圓ニ對シテ七千万圓許リハ減債基金ノ內ヲ以テ償還サレタノテア
リマスガ、アトノ三千万圓ハ卽チ乘換ヲシタノデアル、然ラバ外國債ノ方ハドウナッテ
居ルカト云フト、前後一億六千四百万磅ノ公債デアリマスルガ、此中ニ六朱ノ利息デ
最初ニ借リタ一番高イ二千二百万磅ハ五朱利付ノ最後ノ外債ヲ以テ償還ヲシタノデ
アリマス、然レドモ其五朱ノ公債ハ尙八千二百万磅ヲ存シテ居ルデアリマセウ、斯ノ如
ク戰時中ニ負債ヲ起シタトコロノ始末ハ遺憾ナガラマダ付イテ居ラヌ、而シテ戰爭ノ結果
ハ連戰連捷、實ニ諸君ト共ニ慶賀ニ堪ヘヌ次第デアリマスルガ、併ナガラ此結末、卽チ
平和條約ニ對シテ云フマデモナク朝鮮ハ保護國トシ、遼東半島ノ租借ヲナシ、樺太ノ半
分ヲ取ルト云フ位ニ止ッテ、以テ此經費ヲ償還スルト云フ費用ニ關シテハ、露國ノ捕虜
ノ收容費ヨリ外ニ何ニモナイノデアル、然ラバ之ヲ注込ンダダケノ金ハ之ヲ償還スルトコ
ロノ重ナルモノヽ財源ハ何モ他ヨリ這入テ來テ居ラヌノデアル、二十七八年ノ日〓戰爭
ニ至リマシテハ戰爭ノ後ニ償金ガアル卽チ償金ヲ以テ種々ノ計畫モ立テ、戰爭中ノ創
痍ヲ癒シタノデアリマスガ、日露戰爭ハ不幸ニシテ右申述ベタ通リデアル、然ラバ戰爭中
ニ注込ンダトコロノ金ニ對シ、借金ニ屬スルモノハ國民ガ是ヨリ償還スルトコロノ費用ヲ
負擔スルヨリ外ニ何物モ是ニ加ハルモノハナイノデアル、(「ソレハ政府ノ人氣問題ダ」ト呼
フ者アリ)或ハ政府ノ人氣問題カモ知レマセヌガ、政府ノ人氣問題ハ取モ直サズ吾ミノ
頭ニ負擔スルトコロノ間題デアル、而シテ此保護國トシ、租借地ト致シ、尙領地ト致シ
タ處ニ對シテモ、國トシテ相當ノ設備、其責任ヲ完ウスルダケノコトヲ要スルコトハ是亦
費用ノ論デアル然ラバ寧ロ經費ハ是ヨリ增加スルトー云フコトモ免ルベカラザル狀勢デゴザ
イマセウ、卽チ戰爭前ニ於テ歲出入ノ總計ハ二億八千二百万圓ノモノガ、四十年度ニ
於テハ六億三千五百万圓ニ增加ヲ致シタ、是レ卽チ諸君ガ協賛ヲ血ハヘラレテ居ルノデア
ル、而シテ此戰爭ノ後ニ於テ財政ノ計畫ハ-諸君ガ協賛ヲ與ヘラレタトコロノ財政計
畫ニ於テハ、本員共ニ於テ全然同意ヲ表スルコトガ出來ヌモノガアル、卽チ公債ノ價格ノ
差ノアルトキニ又公債ヲ以テ鐵道ノ國有ヲ斷行致シ、尙其國有方法ノ不完全ナルガタ
メニ累ヲ今日ニ及ボシテ居ルト云フガ如キコトハ是ハ財政計畫上私ハ全然同意ヲ表
サヌトコロノモノデアル、(「ソレハソッチヲ向イテ言給ヘ」ト呼フ者アリ)或ハ諸君ノ中ニ於カ
レマシテハ卽チソッチヲ向イテ言ヘト言ハルヽ方ノ部分ニ居ルトコロノ諸君ハ一度說ヲ
唱ヘテ容レラレザレバ己レハ全ク責任ナシト言ハンガ如キ態度ヲ取ラレマスカナレドモ、凡
ソ議會其モノヽ多數ニ依ッテ決議致シタ以上ハ、其決議ニ對シテ服從ノ義務ガ自然ア
ルノデアル、然ラバ本員ノ如キ鐵道國有其物ハ甚ダ不贊成デアル、不贊成デアルナレド
モ既ニ議會ガ法律ヲ作ッテ之ヲ施行致シタ以上ハ、今後ニ於テ其國有ノ目的ヲ達スル
タメニ成ルベク利益アル、成ルベク國民ノ便利ナル、或ハ殖產興業ノ上ニ於テモ利益ア
ルトコロノ方法ヲ講ジテ、或ハ政府ニ忠告ヲナシ或ハ提案ヲナスト云フコトハ是ハ當然デ
アラウト思フ、一度ビ反對ヲシテ置キサヘスレバ自分ノ責任終レリト云フガ如クニ考ヘル
ニ至リマシテハ、聊カ同情ヲ表シ難イノデアル而シテ前申述ベル如ク此戰時中ニ立テタ
トコロノ財政計晝ガ、戰爭ノ結果ニ依ッテ之ヲ節減スルノ道ハ見出サナイ、卽チ戰後ニ於
テ戰時中ノ補充ヲモセンケレバナラヌ、卽チ諸君ハ多少軍備ノ擴張ニモ協贊ヲ與ヘラレ
テ居ル、然ラバ此經費ノ自然增加ヲ致シテ來テ他ヨリ入ッテ來ルモノガアッタナラバ、非常
特別稅デアルガ故ニ之ヲ打切リモシタデアリマセウガ、其目的ヲ達セザルガ故ニ之ヲ通常
稅ニ引キ直シタト云フ結果ニ終ッタノデアル而シテ其計畫ヲ進メテ來タトコロノ四十年度
ノ豫算ニ於テ既ニ六億三千餘万圓ニ達シ、昨年中ノ如キハ全體ノ經濟狀態ハ如何デ
アル、政府ノ卽チ財政計畫ノ宜シキヲ得ザル點モ多少ゴザイマスガ、諸君モ是ニ協賛ヲ
與ヘラレタトコロノ責任ヲ持ッテ居ル、其結果ハドウデアルカト言ヘバ卽チ公債ノ價ハ七
十圓臺ヲ切ッタノデアル、(「片岡ハ議員デナカッタ」ト呼フ者アリ)無論拙者ハ議員デハ
ナカッタガ、反對ト言ハヌノデアル暫ク御聽キナサイ、卽チ公債ハ其價ガ七十圓
臺ヲ切リ、總テノ經濟狀態ハ萎靡振ハザル狀況ニ至ッタノデアル而シテ尙此國有ノタ
メニ政府ガ拂渡ストコロノ公債ハ殆ド五億內外ニ達シテ居ル、、是モ五年間ニ與ヘルト云フ
方法ハ諸君ノ協賛ヲ與ヘタトコロデアリマスガ、五年ノ中既ニ三年ハ經過シタノデアル、而
シテ其公債ノ市場ニ於ケル價ハ右申上ゲル通リデゴザイマスガ故ニ、是ニ於テカ財政整理
ノ必要ノ事柄ガ起ッタノデアル、卽チ前内閣ガ代ッテ以テ今日ノ內閣ガ作ラレタト云フ狀
況ニ立至ッテ居ルノデアル、而シテ四十二年度ニ對スル財政計畫ニ對シテハ諸君ガ現ニ協
贊ヲ與ヘラレタノデアル、ノミナラズ、此財政計畫ニ對シテ最モ公債ノ整理ニ重キヲ置カ
レタトコロノ總テノ法律案ニ對シテモ諸君ニ於テ協賛ヲ與ヘラレタノデアル然ラバ(「協
贊ヲ與ヘナイ」ト呼フ者アリ)或ハ一人ノ協賛ヲ與ヘナイモノガアルトシテモ、多數ガ協賛
ヲ與ヘタル以上ハ如何トモスルコトガ出來ナイ、然ルニ諸君ガ若モ此三稅廢止ヲ四十三
年度ヨリ決行スルト云フコトナラバ先刻ドナタカノ御說ニアリマシタガ、卽チ四十二年
度ノ豫算ヲ議スルトキニ於テ、今少シ具體的ノ御意見ガナケレバナラヌ筈デアルノミナラ
ズ、此豫算ヲ議スル所ノ場合ニ於テ、ソレト同時ニ此三稅廢止案ナルモノガ議論ニ現ハレ
ルノガ當然デアル、若モ此方ノ手續キハ多少此提出者ニ於テ遺漏アリト云フコトモ私ハ
敢テサウ急激ニ攻擊ハ致サヌノデアル、併シ之ヲ四十三年度ヨリ直チニ廢スル、而シテ其
財源トシテ島田君ノ述べラレ又中野君ノ述ベラレタトコロノ御論ヲ伺ッテ見マスルニ、遺
憾ナガラ是ニ同意ヲ表スルコトノ出來ナイモノデアラウト考ヘマス、何トナレバ島田君ノ御
說ヲ〓括シテ申シマスルト、自分ニ相手方ナクシテ卽チ既定ノ歲出ナドト云フヤウナコト
モナクシテ、自分ノ勝手ニ作ルト云フ一家ノ經濟ナラバ御說ノ通リ出來マセウ、苟モ相
手ガアリ、又法律規則ガアッテ相當同意ヲ求メナケレバナラヌト云フモノヲ、自分勝手ニ
之ヲ極メテシマッテ敢テ主張スルガ如キコトハ、多少缺ケタ所ガアリハセヌカト私ハ遺憾ニ
存ズルノデアリマス、又中野君ノ御說モ一家ノ經濟トシテ論ズレバ入ルヲ量ッテ出ルヲ制
シテ行キサヘスレバ宜シイ譯デアリマスガ、國ト國トノ間ニ立ッテ殊ニ戰爭ト云フ大キナ仕
事ヲシタ後トデ其始末ヲ附ケルト云フ時ニ至ッテ、此場合ニ於テハ遺憾ナガラ中野君ノ御
說ニ對シマシテモ私ハ同意ヲ表シ兼ネルノデアリマス、然ラバ唯遺憾ニ此提出者ノタメ
ニ思ヒマスルノハ、此織物稅ノ如キハ如何ニモ徵稅ノ上ニ複雜デアル、殆ド稅トシテハ
惡稅デアルト云フコトノ御主張ニ對シテハ、私モ異論ノナイモノデアル、併ナガラ此織物
稅ヲ全部廢スルト云フガ如キコトハ他ノ間稅ト比較シテ以テ餘リ一方ニ輕クシテ一方
ニ重キニ失スルト云フコトノ結果ニ了ルノデアル、全然廢スルト云フガ如キコトハ私ハ同意
シ難イ、、要スルニ此大事業ノ終リヲ附ケルトキニ當リマシテハ、漸次其所ニ至ラシメルト云
フ方策ヲ立テルト云フコトハ是ハ當然デアル、諸君ニシテ此所ニ一ツノ稅源ヲ明カニ御求メ
ニナゼナラナカッタト云フコトヲ私ハ御勸告ヲ申シタイ、卽チ此都府ノ宅地價デアル、都府ノ
宅地價ト云フモノハ殆ド二一厘ト云フ名稱ノ下ニアルモノモアリ、サウデナイモノモゴザイマス
ガ、凡ソ買求メラレタ賣買ノアッタ當時ノ價格ト今ノ價格トハ何レニシテモー尤モ昨
今ニ賣買セラレタ人ハ格別デアリマセウガ、餘程違ッテ居ル、然ルニモ拘ラズ之ヲ此儘ニ
置イテアル若シ宅地價ノ修正ガ出來ヌトスレバ、或ハ庭園稅ヲ設ケラレルモ亦一策デ
アル、斯ノ如キ稅ハ中流以上ノ頭ニ關スルコトガ多ウゴザイマスルガ故ニ、隨分議案ト
シテハ通過セシムルコトニ於テハ出來ニクイコトデアラウト思フ、最モ貴族院ノ如キ地位
ニアラルヽトコロノ人ミニ取ッテハ直接ニ苦痛ガ多クシテ、御本人ハ卒ザ知ラズ或ハ支配
人ノ地位ニ居ラルヽトコロノ御家令ノ如キ者ガヤカマシクテナカノムヅカシイ問題ト考
ヘルノデアル併ナガラ若シ政府當局者ニ手腕ガアッタナラバ、戰爭中ニ此庭園稅若クハ
宅地價修正ノ如キモノヲ此戰爭ヲ前ニ控ヘタトキニ提出セラレナカッタト云フコトハ、其
當時ノ局ニ當ラレタ人ノタメニ甚ダ遺憾ニ考ヘルノデアリマス、然レドモ諸君が敢テ稅源
ヲ求メルトスレバ斯ノ如キ難キコトヲモ難ヲ冒シテ通過セシムルト云フ勇氣ヲ以テ、其案
ヲモ備ヘテ以テ此三稅ノ輕減ヲ圖ル、或ハ廢スルト云フ策ニ何ゼ出デナイノデアルカ、或
ハ剩餘金ヲ目的ニシ甚シキニ至ッテハ島田君ノ如キハ、此公債ヲ償還スルトコロノ費
用ニ充テヽ居ルトコロノ減債基金ノ一部ヲ割イテ此三稅ノ廢止ノ費用ニ充テタラバ宜
シイト云フ御論デゴザイマスガ、若モ今日ノ公債ノ上リ掛ケテ來タトコロノ卽チ公債ノ
整理ノ目的ヲ達セント、スルトキニ臨ンデ、又一面ニ一ツノ穴ヲ明ケテサウシテ上ニ騰ル
モノヲ下ゲルト云フコトデゴザイマシタナラバ直チニ明年ニ差迫テ居ルトコロノ一億八千
万圓ノ國庫債券ハ如何ニシテ之ヲ償還スルコトガ出來マスカ、一方ニ以テ乘替ヲスルト云
フコトモ一方ニ募替ヘルト云フコトモ、畢竟百圓ノモノハ百以上ノ價ヲ持ッテトカ、ソレ
相當ノ價ヲ持ツト云フコトデ初メテ出來ルノデアリマセウガ、今此所二一億八千万圓ノ國
庫債券ヲ償還スルトコロノ財源ハ何處ニアル、而シテ是ハ外國債ニアラズシテ現ニ內國債
デアルノデアリマス、此一億八千万圓ノ借金ノ始末ヲスルダケニシテモ、差掛リ今日ニ立
テラレタトコロノ財政計畫、卽チ諸君ノ協贊ヲ與ヘラレタトコロノモノハ、是ハ蓋シ已ムヲ得
ザル順序デアルデハアリマセヌカ、況ヤ凡ソ世界ノ一等國ト言ハレルモノガ、外國債ニ於テ
五朱以上ノ利息ノ金ラ借リテ居ル國ガ何所ニアル、無論亞米利加ノ如キハ金利ハ貴イ
所デゴザイマスガ、五朱ニシテ手取ガ尙百圓以內ニ屬スルト云フガ如キ金ヲ借ラナケレバ
ナラヌト云フ境遇ニアル國ハ何處ニアル、(「日本ニアル」ト呼フ者アリ)卽チ日本ニアルガ
故ニ、此地位ヲ高メテ以テ安心ヲ與ヘテ以テ正當ナル餘リ恥ヂザルトコロノ、一方ニ於
テ利益アルトコロノモノニシナケレバナラヌト云フガ如キコトハ、戰後ノ財政ノ計畫トシテ
モ、亦一面體面上カラ見マシテモ、是ハ當然ナコトデアリハセヌカト思フノデアル、然ラバ
今日ニ於テ明年卽チ四十三年度ヨリ三稅ヲ廢スルト云フガ如キコトハ一面ニ非常ニ
堅固ノ方策ヲ立テル如ク見セテ、一面ニ直キ引落スト云フガ如キ計畫ヲ立テルト同ジコ
トデアル、故ニ私ハ此三稅廢止、獨リ三稅ト言ハズ所謂非常特別稅ト云フ名目ノ下ニ
立テラレタトコロノ租稅ニ對シテ、是ハ漸次偏重偏輕ヲ矯メルト云フコトハ是ハ當然ナコ
トデゴザイマスルガ、國ノ進步ト共ニ今直チニ非常ニ費用ヲ減ズト云フガ如キコトハ到
底出來得ナイモノデアルト私ハ思ッテ居ル、又之ヲ決シテ減サズシテ、斷然進ンデ以テ國ノ
信用ヲ高メ事業ヲ進メルト云フガ如キコトノ勇氣ヲ國民ガ非常ナ奮發力ヲ以テ持タナケ
レバナラヌ筈デアル若シサウデナケレバ卽チ前ニ申シタトコロノ大戰爭ヲ經タトコロノ其
國ガ、今日英國ノ如クナリ、今日佛蘭西ノ如クナリ、佛蘭西ノ如キモノハ五十億法
ノ償金ヲ背負ッテ、尙獨逸ノ駐在軍ノ費用マデ負擔シテ、サウシテ今日ハ斯ノ如シ、又
亞米利加ニシテモ其通リ、日本ハ僅カ二年ノ戰爭ヲ經テ十億位ノ費用ヲ負擔シタト
言ッテ其後トヨリ直チニ四十三年カラ稅ヲ減サナケレバナラヌト云フコトハ、ソレハ國民ヲ
喜バシメルニハ最モ宜イノデアリマセウガ、國民ヲ發達セシムル方ノ計畫トシテハ畢竟萎
靡サセルトコロノ方策デアル、(拍手起ル)斯ノ如キ勇氣ノナイトコロノ立場ヲ以テ、本場
ニ臨マレル者ガ多イト云フコトハ私ハ甚ダ遺憾ニ考ヘルノデアル、寧ロマグ多少ノ稅ヲ負
擔シテモ卽チ庭園稅ヲ掛ケ、或ハ宅地ノ修正ヲシテヾモ、積極的ニ仕事ヲスベキコトハシ
テサウシテ民力ノ發達ヲ期スルガ如キー氣氣ヲ私ハ持チタイト思フ、併ナガラ通行稅ノ如
キ一錢ニ一錢ノ稅ヲ課スルトカ、彼ノ手數ノ煩雜ナルトコロノ織物稅ノ如キモノハ多少
ノ修正ヲ加ヘル如キコトハ、是ハ當然デアル、卽チ一般ニ非常特別稅ニ向ッテ多少ノ修
正、卽チ整理ヲナスト云フコトハ必要ナコトデゴザイマスガ、唯此所ニ甚ダ一合一升ノ鹽
ノ價ヲ論ゼラルヽガ如キ、緻密ナル、誠ニ敬服スル、長時間ノ御演說ニ對シテモモウ少シ
財政的耐久力ヲ養成セラレンコトヲ偏ニ希望致スノデゴザイマス、私ハ此三稅ニ對シテ
諸君ガ述ベラレタトコロノ事實ノ大體ニ於テハサウ異議ヲ狹ムベキモノデナイ、併ナガラ戰
後ノ始末ノトキニ於キマシテハ今直ニ四十三年ヲ期シテ直チニ三稅ヲ廢止スルガ如キコ
トハ是ハ殆ド自滅ヲ圖ルガ如キ仕事デアル、(拍手起ル)國ノ國トノ間ニ信ヲ滅却スルノ
致方デアルト思フ、(拍手起ル)故ニ本案ニ對シテハ反對ヲ述ベマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=88
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089・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 神崎東藏君-モウ六時ニナリマスケレドモ討論ヲ續ケマ
スカラ、時間ヲ延バシマス
〔神崎東藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=89
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090・神崎東藏
○神崎東藏君 私ハ憲政本黨ノ黨議ニ基キマシテ、憲政本黨ヲ代表致シマシテ唯今
(ノウ〓〓)案件ニ上ッテ居リマストコロノ三稅廢止案ニ對シ贊成ノ意見ヲ述べヤウト思
ヒマス(「代表デハナイ黨中ガ異議ガ起ッテ居ル」ト呼フ者アリ笑聲、拍手起ル)第一ニ此
鹽ノ問題デゴザイマス、此鹽ノ問題ニ付テハ島田君カラ委シク御說ガアッタノデゴザイマスカ
ラ、私ハ單ニ鹽ノ專賣ト云フモノハ人生ノ必需品ニシテ不廉ノ價ヲ拂ハシメテ國民ノ健
康力ヲ損スルト云フコトヲ一言述ベテ置キマスル諸君ハ山間僻地カラ來ラレタ人モアル
デゴザイマセウガ、鹽專賣廢止以前ニハ(「廢止以前デハアルマイ施行以前デアラウ」ト呼
フ者アリ)鹽專賣施行以前ニハ鰯デアルトカ、或ハ鯛デアルトカ、誠ニ鹽ノ辛イ鹽漬ガ山
間僻地一モ行渡ッタノデゴザイマス、ソレガタメニ多數ノ農民、多數ノ樵夫、悉ク體力ヲ健
全ニ備ヘテ居ッタノデゴザイマスガ、本案施行ノ後ニナリマシテ(笑聲起ル)此鹽ガスッカリ
ナクナッタノデゴザイマスカラ、國民ノ健康ニ及ボストコロノ影響ハ非常ナモノデゴザイマス、
(笑聲起ル)笑フベキ問題デハゴザイマセヌ、現ニ兩三年間ノ陸軍壯丁ノ體力ト云フモノ
ハ非常ニ惡ルクナッテ居ル、少クトモ鹽ヲ餘計用井ナイトコロノ原因デアルト云フコトヲ私ハ
斷言スルニ憚ラナイノデゴザイマス、(笑聲起リ拍手起ル)政府ノ當局者ハ鹽ト酒トヲ混
同シテ居ル鹽ト煙草トヲ混同シテ居ル吾〓ハ酒ニ向シテハ隨分不廉ナ代價ヲ拂シテ
居リマス、煙草ニ向ッテモ高イ錢ヲ出シテマヅイ物ヲ吸フテ居リマス、、併ナガラ酒煙草ト鹽
トヲ混同セラレテ、鹽ニ向シテモ尙高イ代價ヲ拂ハナケレバナラヌト云フコトハ、如何ナル
理由デゴザイマスカ、若シ世間ニ鹽ノ供給ガ少ナケレバ格別テゴザイマスケレドモ、鹽ト云
フモノハ日本ハ環海國デゴザイマスカラ、何處デモ出來ルノデアル、今日ノ進歩シタル方
法ニ依レバ何處デモ出來ル、臺灣デモ出來ル、關東州デモ出來ル、朝鮮デモ出來ル、立
派ニ鹽ト云フモノガ出來ルノニ何ヲ苦ンデ高イ鹽ヲ人民ニ嘗メサセルノデゴザイマスカ、
(笑聲起ル)當局者ハ鹽專賣法ヲ廢止スルニ於テハ、鹽田ガ廢滅スル、鹽業者ガ自滅
スルト斯ウ云フコトヲ申シマスケレドモ、是ハ一ヲ見テ二ヲ知ラザル所ノ愚論デアル、鹽田
ガ若シ荒廢致シマシタナラバ、之ヲ變ジテ他ノ田畑ト爲スコトガ出來ルノデゴザイマス、
(「出來マセヌ」ト呼フ者アリ)出來マス、鹽業者ト云フモノハ業ヲ他ニ轉ズルコトモ出來
ルノデゴザイマス、東洋拓殖會社ト云フモノガ出來タノデアルカラ、若シ食ヘナケレバ其方
デ保護ヲシテ朝鮮ヘ連レテ往ッテモ差支ナイノデアル(笑聲起ル)況ンヤ當業者ト云フ所
ニ依ルト、現ニ當業者ノ五六分ト云フモノハ此鹽專賣ノ廢止ヲ希望シテ居ルト云フコト
ハ事實デゴザイマス織物稅ニ至リマシテハ同一ノ收稅吏、同一ノ役人ニ扱ハシテ置イテ
他ノ諸般ノ租稅ニ對シテハ格別ノ苦情ガナイニモ拘ラズ、此織物稅ニ對シテハ非常ナル
苦情ガアル、多數ノ犯罪者ガ出ルト云フ事實ハ織物稅其モノガ、稅ノ性質ニ於テ非常ニ
惡稅デアルト云フコトヲ證明シテ居ルノデゴザイマス、唯是ダケデ十分デアル通行稅ニ
至リマシテハ是ハ誠ニ貧民ヲ窘メル稅デアッテ、早イ話ガ電車ノ賃錢デモ分ルノデアル、
十錢二十錢ノ賃金ヲ取ル所ノ勞働者ガ五錢ノ金ヲ拂ッテ居ル、四錢ニ對シテ一錢ノ稅
ヲ拂フノデアル諸君ノ如キハ囘數乘車券ヲ買ハレルノデ、五十囘ノ囘數乘車券ニ對シ
僅五錢ヲ拂ヘバ宜イノデアルガ、一囘每ニ買フ所ノ-此貧民ヲ窘メルトコロノ稅ト云
フモノハ其額ハ僅カ二百十万圓ト云フコトデアリマスカラ、之ヲ廢スルト云フコトハ私ハ
當然ノコトデアルト信ズルノデアル、卽チ此三稅トモ性質ニ於テ宜クナイ稅デアルト云フコ
トハ諸君ニ於テモ認メテ居ラルヽコトヽ信ズルノデゴザイマス、殘ル所ノ問題ハ何デアル
カ、殘ル所ノ問題ハ單ニ財源問題デアル、政友會ノ未來ノ總理大臣ヲ以テ任ゼラル
トコロノ博覽强記學和漢ヲ兼ネラルヽトコロノ竹越與三郞君ハ(笑聲起ル)此三稅廢止
案ヲ以テ財政ノ基礎ヲ破壞スルモノデアルト云フコトヲ細イ聲デ述ベラレタ、併ナガラ何
故ニ財政ノ基礎ヲ破壞スルノデアルカ、六億ニ垂ントスルトコロノ歲計ノ中ニ於テ僅ニ
其五分ニシカ足ラヌトコロノ金ガドウシテ節減ガ出來ナイノデアルカ、(拍手起ル)若シ
內閣ノ諸公ガ誠心誠意事ヲ取ッタナラバ、僅カニ五分ノ節減ガ出來ヌト云フコトハ斷ジ
テナイノデアル百圓ノ收入アル者ガ五圓減ゼラレテ九十五圓デ暮シガ立タヌト云フコト
ガドウシテアリマスカ、(「ソレハ君ノ家ノ暮シノコトダ」ト呼フ者アリ)況ヤ豫算ノ編成ノ仕
方ガ誠ニ懸直ノ多イ杜撰ナル豫算ガ終始シテアルト云フコトハ、年々歲々ノ剰餘金ガ
頗ル多額ニナッテ居ルト云フ事實ニ於テ證明セラレテ居ル、此〓ニ於テハ先刻小川君ヨ
リ會計法改正ノ場合ニ於テ委シク述ベラレマシタ通リニ少シク注意シテ豫算ヲ編成致シ
マスレバ、年々ニ四千万ヤ五千万圓ノ金ハ直グ出テ來ルノデアル譯ハナイ話デアル、然
ルニ內閣ノ諸公ハ之ヲ努メナイト云フノハ私ハ誠ニ國民ニ對シテ不親切極マルトコロノ
コトデアラウト思フノデゴザイマス、唯今又片岡直温君ガ政府委員的態度ヲ以テ頻々金
ノ計算ヲセラレタノデゴザイマスガ、片岡直溫君ノ議論ト中野武營君ノ議論トヲ比較シ
テ此實業界ニ於ケル兩者ノ地位經歷ヲ較ベテ見テ、ドチラガ民ノ聲デアルカ、ドチラガ御
用商人ノ聲デアルカ、ト云フコトハ一目シテ私ハ分ルデアラウト思フ(拍手起リ笑聲起ル)
免、ニモ角ニモ(「ドチラモ御用商人ダ」ト呼フ者アリ)免ニモ角ニモ吾〓ハ國論ヲ代表シテ
此三稅ノ廢止ヲ主張スルモノデゴザイマス(「憲政本黨ガ國論代表ガ出來ルカ」ト呼フ
者アリ)三稅廢止ヲ贊成セザルトコロノ諸君ハ國論ニ背馳シタル諸君ト言ハナケレ
バナラヌ(ヒヤ〓〓)政友會ノ諸君ノ三稅ノ廢止ニ反對シテモ尙多數ヲ得タリト
呼號シテ居ラレル人ガアルカモ知レヌガ、是ハソレガタメニ多數ヲ得タノデハナイ、アスコ
ニ坐ッテ居ル原敬君ノ手腕ニ依ッテ多數ヲ得タノデアリマス(拍手起リ笑聲起ル)マ
グ〓〓日本ノ政黨ハ餘程程度ノ低イノデアルカラサウ云フコトデ自惚レテ居ルト大キナ
間違ガ起リマスルゾ(「憲政本黨ノ全滅ハ誰ノ力ダ」ト呼フ者アリ)日露戰爭ノ際ニ桂總
理大臣ガ局ニ當リマシテ、此非常特別稅ト云フモノヲ吾ミガ協賛ヲシタノデアリマス今
日桂總理大臣ハ日露戰爭ヲ輿論ニ從テ起シ「ポーツマス」條約ノ失敗ニ當ッテハ輿論ニ
從ッテ是ハ內閣ヲ明渡シタノデアル、而シテ今日ハ幾分輿論ニ從テ內閣ニ立タレテ幾分
カ輿論ヲ容レラレル形勢ガアリマスカラ、此輿論ノ問題ナルトコロノ三稅廢止ヲ容レラレ
ナケレバ其心ノ程ヲ疑ハザルヲ得ナイ、殊ニ現内閣ニハ平田內相ノ如キ二宮尊德翁ヲ
尊敬シテ殆ド其衣鉢ヲ傳ヘテ居ル人ガアルノデアリマス、勤儉力行ヲシタナラバ三稅廢
止ノ出來ナイコトハナイト確信シテ居ルノデアル、況ンヤ陸軍ニモ海軍ニモ其部內ニ於テ
威望竝ビナキトコロノ兩大臣、而モ豫算ノ上ニ於テ隨分融通ノ利クトコロノ兩大臣ガ
居ラレルノデアルカラ、三稅廢止ハ私ハ出來ナイコトハナイ(「一ノ犬養君ヲ奈何セン」ト
呼フ者アリ)アレハ人間デナイ(笑聲起ル)憲政本黨ハ此政務調査會ニ於テ三稅廢止
以後ノ財政ノ整理ニ付テハ十分ナル成案ガアルノデゴザイマス、ソレ故ニ私ハ憲政本黨
ヲ代表シテ本案ニ贊成ノ意見ヲ表シマス、最後ニ諸君ニ向ッテ希望スルノハ諸君ハ此國
民ノ耐久力ヲ考ヘ下サッテ、財政ノ耐久力ト同時ニ國民ノ耐久力ニ注意セラレンコトヲ
希望シマス、ソレカラ一番シマイニ申シマスガ唯今立川雲平君クモヒラ君ノ御言
葉ニ對シマシテ私ガ犬養君ニ對シテチヨット無禮ナ言葉ヲ吐キマシタガ、アレハ犬養ト云
フノデ、チヨット洒落レタノデアルガ此〓ハ謹ンデ取消シマス(「ノウ〓〓」「討論終結」ト呼
フ者アリ)
〔鳩出和夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=90
-
091・鳩山和夫
○鳩山和夫君 諸君、分リ切ッタコトヲ-諸君靜ニ御聽キニナラヌト暇ガ掛リマ
ス-分リ切ッタコトヲ時々繰返サナイトナラヌコトガ世ノ中ニ屢〓アル、此處デ諸君ノ如
キ賢明ナル前ニ於テ諸君ヨリ尙學識經歷ニ於テ劣ッテ居ル人ニ向ッテ言ハナケレバナラヌ
ヤウナコトヲ言ヒマスカラ御許シヲ請ヒマス、卽チ此減稅廢稅ト云フヤウナ問題ハ金
ノ剩ッタトキニ起ル問題デアリマシテ、足リナイトキニ起ル問題デナイト云フコトヲ一ツ此
處デ言フノデアル極ク分リ切ッタ話デアル(「ヒヤノ」)ソレカラ今一ツニハ國ノ財政ヲ
議シマスルノニハ歲出ヲ先キニ議シテ其途ガ極ッタ後ニ於テ收入ニ移ルト云フノデアリマ
ス、御互個人ノ家ノ經濟ト違フト云フノガロガガ學者ガ屢〓言ウテ居ル、經濟學ノ初步
ヲ讀ムトキニイツデモ是ガ書イテアルノデアル(「反對說モアリマス」ト呼フ者アリ)先ヅドレ
ダケノ事業ヲ國家ガ爲サナケレバナラヌト云フ事業ノ上カラ極メテ來テ、ソレカラシテ其事
業ニドレダケノ費用ガ要ル、ソレカラ是ダケノ仕事ヲスルノニハ財源ヲ何ニ取ル、是モ極
マリ切ッタ話、此二ツナガラ分カリ切ッタコトヲ劈頭ニ申上ゲテ置クト外ノ問題ガ非常ニ
早ク解決セラレルノデアル、(ヒヤ〓〓)島田君其外カラシテ三稅廢止ト云フ-鹽ノ專
賣廢止其他二稅ノ廢止ト云フ案ガ出テ居リマスガ、云ハ唯今私ガ申上ゲマストコロノ
分カリ切ッタコトヲ頭ニ置イテ觀ルト、是ハ此場合ニ出ルベキ場合デナイト云フコトガ直グ
分ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」「ノウ〓〓」)支出ハモウ極マッテ居ルノデアル、先刻竹越君
デアッタカト思ヒマスガ島田君ハ豫算委員會ニ於テ八十万圓バカリノ削減說ヲ出サレタ、
是ハ否決セラレタ、斯ウ云フ特ニ本年度ノ豫算ハ歲出ハモウ極マッテシマッテ居ルノデ、獨
リ本年度ノガ極ッテ居ルノミナラズ戰後ノ經營ナルモノハ二十三議會ニ於テ大體議會ガ
極メテシマッタノデアル、是ハ本年ノ豫算ノミナラズ昨年ノ豫算、一昨年ノ豫算ニ於キマ
シテ戰後經營ノ大方針-我帝國ノ大方針ト云フモノガ極ッテシマッテ居ルノデ、之ヲ
變更スレバ免モ角モ日本ガ此方針ヲ變ヘズ、此國是ヲ守ッテ往ク上ニ於キマシテハ今財
源ヲ減ラスト云フ案ノ出シヤウガナイノデアル戰後ノ經營ト致シマシテ爲スベキコトハ
種々アリマセウ、其中ノ一ツハ財政ニ關スルモノデ、先ヅ其財政ト申シテモ是ヲ分ッテ考
ヘレバ戰時ニ高イ利息デ借リテ-短期ノ金ヲ借リタ、此高イ利息ヲ短期ノ公債ヲ募ッ
タ戰爭ガ濟ンダナラバ此公債整理ト云フモノヲ一ツヤラナケレバナラヌト云フコトハ極マリ
切ッタ話デアリマス、何處ノ國ノ歷史ヲ見マシテモ戰爭中ニ借リルトコロノ金ハ利息ガ高
イ而シテ多クハ短期デアル、戰爭後ニ於テ此公債整理ト云フコトヲヤラナケレバナラヌト
云フノハ極マリ切ッタ話デアリマス、唯一ツ公債整理ヲヤルノミデハイケナイ、其外ニヤハリ
事業ノ勃興ト云フコトモ吾ミハ圖ラナケレバナラヌノデアル、一方ニ於テハ公債ヲ整理シ、
一方ニ於テハ國ノ富ヲ增スト云フ計畫ヲ一ツヤラナケレバナラヌノデ、今一ツニハ軍備ノ充
實ト云フコトヲヤラナケレバナラヌ、戰爭中ニハ船モ壞ハレマスル、彈藥モ大ニ使フ、又陸
兵ニ於テモソレ〓〓損スル處ガアル是等ノモノハ擴張ハセズトモ少ナクモ充實ハシナケレバ
ナラナイ、ダカラ戰後ノ仕事ト致シマシテ國ノ爲スベキモノハ多々アリマスルガ、大別スレバ
公債ノ整理、ソレカラ國ノ富ヲ增ストコロノ手段ヲ執ルコト、ソレカラシテ戰爭中ニ損ジ
タトコロノ機關等ヲ充實スルコレダケノコトハヤラナケレバナラナイノデアル、ソレダケノコト
ハヤル積リデ戰後ノ經營ヲ今爲シツヽアルノデアルノデス、此〓カラ考ヘテ見マスルト今日
ノ場合減稅トカ廢止稅トカ云フヤウナ問題ハ未ダ起ルトキデナイト思フノデアル、片岡君
ハ大分財政通デ隨分委シク述ベラレマシタケレドモ、私ハ全ク同意デアル、假リニ二十
億ノ公債ニ於テ五朱拂ッテ居ルモノヲ一朱ヲ引下ゲテ四朱ノ利子ニ乘換ヘバ二十億
ノ百分ノ一ハ二千万圓デアル、二千万圓ト云フモノガ玆ニ浮イテ來ルノデアル、若シ假
リニ尙日本ノ財政ノ基礎ガ固クナリマシテ、三分五厘ト云フ金ヲ借リルコトガ出來レハ
尙其上餘裕ガ生ジテ來ルノデアル、公債ナルモノハ何處マデモ皆拂ッテシマフ必要ハナイ
ノデアル、高イ公債ヲ借リテ居ルノハ一番イケナイ、高イ金ヲ借リテ居ルト云フノガ一番イ
ケナイノデアル國ノ信用ガ增シマシテ財政ノ基礎ガ鞏固ニナッテ、世間竝ノ卽チ歐米諸
國ガ全ク借リテ居ル世間竝ノ利率ニ於テ日本ガ借リ得ルト云フ程度マデ進ンダナラバ
吾〓モ亦金ヲ借リテモ宜イカモ知ラヌノデアルソコマデ行ッテ今度皆償却スルマデ公債ヲ
拂フ必要ハナイ、現內閣ノ執ッテ居ル方針ヲ見マスルト此公債政略ト云フ〓ニ於テハ誠
ニ我意ヲ得タモノト私ハ考ヘルノデアル、ツマリ唯今マデ議會ガ協賛ヲ與ヘ來ッタトコロノ
豫算及ヒ法律案デ財政ニ關スルトコロノモノハ總テ此戰時ニ高イ利息デ以テ短カイ期
限ノ金ヲ借リテ居ル、此公債ヲ整理スル其下地ヲ作ルト云フ方針ヲ以テ成立テ居ルノデ
アル、之ハ戰後經營ノ一部ト致シマシテ吾〓ハ兩手ヲ舉ゲテ贊成スルトコロデアルノデ
アル、之ヲ行フニハ今玆ニ三稅ヲ廢スルト云フヤウナ案ヲ通過スルハ甚ダ邪魔ニナルノ
デアル、惡稅々々ト云フ聲ガ、大分聞ヘルガ、或ル〓ニ於テハ島田君ニ御同意ヲ申スノ
デアル、鹽ノ稅ノ如キガ隨分或ル供給ニ向ッテ或ハ又或社會ノ人ニ向ッテ下層ノ人ニ
向ッテ困難ナル稅デアルト云フコトモ御同意申ス、織物稅ト云フモノガ此徵收方法ニ
於テ隨分公平ヲ缺ク卽チ稅務官吏ノ取扱振リニ依シテ公平ヲ缺クト云フコトニ付テハ
御同意ヲ申ス、併ナガラ其小サイコトヲ今言フテ居ルトキデナイ、非常特別稅ナルモノハ此
三稅ニハ限ラナイ、其他ニモ戰時ニ起シタトコロノ稅ガアル、戰時ニ起サズトモ戰時ニ率
ヲ增シタ稅ガアル、是等ト云フモノハ無論同時ニ最モ苦シイモノカラシテ整理シテ行カナ
ケレバナラナイノデアル、今整理スル餘地ガアルカ先刻申ス通財政ヲ整理スルトカ或ル
稅ヲ減ラストカ云フ問題ハ先ヅ此處ニ金ガアル餘裕ガアルトキニ生ズル問題デ、無
イトキニハ幾ラ考ヘテモ之ハ駄目ナ話デアル貧乏人ガ金ヲ持ッタナラバト云フヤウナ夢
テモ見タナラバ兔モ角モ(「餘裕ガアル」ト呼フ者アリ)餘裕ガナイ、餘裕ガナイ、此財政ノ
場合ニ於テ〓究シテモ歐目ナ話デアル單リ〓究シテモ駄目ナ話デアルノミナラズ、先刻
御話スル通リ支出ノ途ガ極マッテ之ニ協賛ヲ諸君ガ與ヘテ居ルノデアル、片岡直溫君ノ
如キハ國有鐵道ガ嫌ヒデアルケレドモト云ッテ愚痴ヲ少シ述ベラレテ、而シ吾〓ガ協賛シテ
シマッタ帝國議會ノ多數ガ極メタ以上ハ、モウ仕方ガナイカラ其通デアル、今カラ鐵道ノ
國有ヲヨシテ之ヲ拂下ゲルト云フヤウナコトヲヤリ出シテモソレハ出來ルモノデモナシ、到底
爲シ得ベカラザル事柄デアル、出來タ事柄ハ出來タ事柄トシテ一ツ議論シテ見タイト思
フノデアル、島田君ハ財源ニ付キマシテハアルト云ハレタ、今日ノ島田君ノ御演說ハ實ハ
全部聽取リ得ナカッタ、併ナガラ太陽ニ島田君ノ名ヲ署セラレシトコロノ論文ガ出テ居リマ
シテ、ソレヲ拜讀スルノ榮ヲ得タカラ、ソレト今日此處デ御述ベニナッタ處ハ大差ナシト私ハ
考ヘテ居ルノデアルガ、此太陽ニ揭ゲテアルノト今日ノハ餘リ實ハ長カッタモノデスカラ其間
ニ實ハ聽漏ラシタコトガアッタ、太陽ニ揭ゲテアッタトコロト今日ノ御演說ト大差ナシトスレ
バ島田君ハ此財源ハアル卽チ行政整理ニ依ッテ財源ガ得ラレル其行政整理ト云フ
ノハ何カト云フト、政府ハ違フタトコロデ同ジヤウナコトヲヤッテ居ル、一方ニ馬政局ト云フ
モノヲ置イテ居リナガラ、農商務省ニ於テ馬匹改良費トー云フモノガアル、又陸軍ニモ馬匹
供給ニ付テノ或ル項目ガアルコンナヤウナモノヲ一所ニ集メテシマウトソコデ行政整理ガ
出來ル、ソコデ私ハ一ツドノ位金が減ルカト思フト馬政局ノ費用ハ僅ニ百六十万圓、之
デハ三千万圓ニハチト足ラヌノデアル、先刻君ノ竹越君ノヲ集メテモ二百万圓バカリニシ
カナラヌ、今一ツハ打切リ繼續費ノ打切デアル、サウスレバ財源ガ玆ニ生ジテ來ルト云ハレ
〓、繼續費ノ打切ト云フコトハ何ヲ意味スルノデアル、此繼續費ノ打切ト云フコトハ軍備ノ
縮小ト云フコトヲ意味スルノデアル之モモウ極ッテシマッタ問題デアル軍艦ノ五十万噸ソ
レカラシテ師團ノ十九デゴザイマス、是等ノコトヽ云フモノハ業ニ既ニ二十三議會デ極ッテ
シマッタ話デアル、假リニ今度繰延ノ結果或年度ニ於テ十五万トカ十四万トカ云フ僅カ
ナ數字ガ出テ居ルケレドモ、ソレハ其繰延ノ結果デ其年ニハソレダケシカ要ラナイノデアル
ガ遂ニ千万圓ト云フヤウナ大キナ數字ガ出テ來ル、此計畫ナルモノハ政府ト諸君ト共ニ
相談ノ上デ議會ノ協賛ヲ經タ上ニ極マッテシマッタモノデアルカラ繰延ノ打切ト云フコトハ
軍備縮小ト云フコトヲ意味シテ、之ハ國是ノ變更ト云フコトヲ意味スルノデアルカラ、ワ
コマデ議論ヲ持テ行ケバ論理ダケハ立ツ、併シ實際ニハ行ハレナイノデアル(拍手スル者ア
リ)實際ニ行ハレナイ問題ヲ今時分擔出シテ長ク吾〓ノ時ヲ費ヤスト云フコトハ議會ノタ
メニモ餘リ面白クナク國民ニ對シテモデス、行ハレザル說ヲ此處ニ持ッテ來テサウシテ國民
ヲ騒ガスノハ餘リ親切デアルマイト思フ(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=91
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092・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 大養穀君
〔拍手起ル)
〔犬養教君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=92
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093・犬養毅
○犬養毅君 最早論旨ハ十分ニ盡キタヤウニ感ジマスルノデ、私ガ此場合ニ多クノ言
葉ヲ用井ル必要ハナイト思ヒマス、殊ニ島田君ノ綿密周到ナル御演說ニ於テ十分吾ミノ
意思ハ盡サレテ居リマスカラ、今更多クノ言葉ハ費サヌ積リデアル、唯私共聊カ同志ヲ代
表シタル言葉ヲ爰ニ一言述ベル必要ガアル最早三稅ノ得失ト云フコトノ細目ニ於テハ
多ク論ゼラレテ既ニ盡キタモノト思ヒマス、ソコデ要スルニ論〓トナッテ居リマスノハ餘裕ノ
有ルカ無キカ財源ハ如何ナル處デ拵ヘルカ財源ガ有ルカ無イカ、斯ウ云フコトガ御懸念ナ
サレル一番ノ終點トナッテ居ルヤウデアリマス所ガ此餘裕ノ有ル無イト云フコトハ、餘裕
ヲ拵ヘルカ拵ヘナイカト云フ問題デアル、財源ガ有ルカ無イカト云フコトハ財源ヲ拵ヘルカ
或ハ拵ヘザルカノ問題デアル、ソコデ此問題ハ內閣ハ如何ニ見テ居ラルヽカト申セバ丁
度三稅ノ委員會ニ於テ桂大藏大臣ノ御答ヘニナッタ言葉ニ斯ウ云フコトガアル、細野君
ノ質問ノ言葉ニ自然ノ增收ガアル、是ハ如何ニナサレルカ、大藏大臣曰ク、自然ノ增收
ニ對シテハ將來政務ノ膨張シテ行クトコロノモノニ充テヽアルノデアル然ラバ關稅改正
ヨリ將來生ズルトコロノ增收ハ如何ニナサレルカ、是ハ十一年計畫ノ方ニ充込ンデ居ルカ
ラ之モ使ハレヌ、ソコデ現在ノ收入ハ勿論ノコト未來永遠殆ド是カラ生ジテ來ルトコロノ
自然ニ增加スルモノ、法律ノ改正其外カラ增加スルモノハ凡テ政府ガ使ッテ行カウト云
フ考此計畫ナラ無論餘裕ノアル筈ハナイ、餘裕ドコロデハナイ餘裕以上ノモノヲ使フト
云フ計畫デアレバ無論出來ナイノデアリマス、併ナガラ吾ミハ餘裕ヲ拵ヘナケレバナラズ、
又餘裕ヲ拵ヘ得ルト信ジテ居ルノデアリマス、元來何デ吾〓ガ三稅デ苦ンデ居ルカ其外
ノ租稅デ苦ムカ借金デナゼ苦ムカト云フコトハ獨リ戰爭ノミデハナイ、戰爭後ニ生ゼラレ
タルトコロテ所謂戰後經營デアル、此戰後經營ハ立派ニ失敗シタノデアル、其戰後經
營ト云フコトデアルガ、一面ニハ軍隊ノ所謂軍備補充デアル-補充及擴張、ソコデ軍
備ノ補充擴張ヲ爲シテ之ヲ以テ東方ノ平和ヲ維持スルト同時ニ此有力ナル海ニ於テハ
五十万噸ノ軍艦、陸ニ於テハ十九師團ノ兵ヲ以テ之ヲ後援トシテ外交上ノ大發展ヲ
爲サウト云フ考デアル、ソコデ外交的大發展ヲ爲シテ是ガ吾〓ノ商工業ノ前驅トナッテ、
日本經濟力ノ大發展ヲヤラウト云フ是ガ所謂戰後ノ經營デアル、戰後經營ハ此三ツノ
柱カラ成立ッテ居ル、所デ此經營ノ全體カラ考ヘテ見レバ誰ガ考ヘテモ左樣ナモノデアル、
惡ルイコトハナイ、唯是ガ能ク調和ヲ得ラレタルヤ否ヤト云フコトガ間題デアル、ソレデ又
之ヲ產業ノ方面經濟力發展ノ方面ニ幾分ヲ用井ラレテ、軍備擴張ハ幾分ヲ用井ラレル
トシテ能ク調和ヲシテ居ルカ、不調和デアルカト云フコトノ問題デアル、吾〓ガ見ルトコロ
ニ依レバ其不調和ノ爲メ今日ノ苦ミヲ生ジテ居ルノデアル、所デ此不調和カラ生ジタ强大
ナル軍備、戰ヘバ必ズ勝ツ、海ニ於テモ陸ニ於テモ戰ヘバ必ズ勝ツト云フ此軍備ヲ後援トサ
レテ、外交上ノ大發展ガ何處ニ出來テ居ルカ、此外交上ノ大發展ガ前驅トナッテ我商
工業ノ發達トナルベキ前路ガ何處ニ開カレタカ、近イ例ハ亞米利加ハドウデアルカ、突進
デ吾〓同胞ガ金ヲ儲ケル場處デアルガ、此金ヲ儲ケル場處ガ近來ドウナッテ居ルカ、事實
ハ渡航禁止デアル事實渡航禁止デアッテ之ニ代ヘルモノハ何デアルカト云フニ大侮辱ヲ
受ケル幾ラカ程度ヲ減ズル侮辱ノ程度ヲ減ジテ條約上得タル權利ヲ蹂躪サレテモ其儘
デ居ルト云フ大失敗デアル、(拍手起ル)所デ海外ニ持ッテ往ッテ金ヲ儲ケサセテ、我同胞
ノタメ經濟力發展ノ前路ヲ開カレルト云フコトハドウナッテ居ルカ大失敗デハナイカ五十
万噸ノ海軍平時ニ於テ二十二万五千人ト云フ大兵ヲ養ッテ居ル、此武力ヲ後ニ控ヘテ
最モ外交上ニ經驗アル諸君ガ之ニ當ラレテ、尙此位ノ有樣ダト云フコトハ實ニ驚入ッタ
モノデアル、經濟力ノ發展ハ如何ニシテ出來ルカモウ少シコチラノ方ニ迴ルトドウナッテ居
ルカ此吾〓ガ苦ンデ居ル具合此吾〓ノ苦ンダ租稅、之ヲ以テ何ヲ得タノダ、戰爭ニ何ヲ
得タカ無形ニハ無論宏大ノ利益ヲ得テ居ル、無形ニハ非常ナ賜物ヲ得タニハ相違ナイ
ガ、此無形物ヲ除イテ有形物ノ今日存在スルモノハ南滿洲ニ於ケル一本ノ鐵道ノミデア
ル鐵道ニ伴隨スルトコロノ權力デアル、此權力ガ如何ニ使用サレテ居ルカト云フコトヲ
見タラ驚クベキモノデアル、此鐵道沿線ニ付テノ權力間島問題ハドウナッタノデアルカ、殆
ド要ラザルノ平地ニ風波ヲ生ジテ此間島問題ハドウシテ居ッカ、遼東問題カラ退イテ忽
チ御辭儀ヲスルト云フ有樣、斯樣ナ有樣デ所謂外務大臣ガ云フ朝鮮カラ滿洲ニ持ッテ
行ッテ日本ノ殖民ヲシテヤルト云フコトガ此位ノ微力デドウシテ出來ルカ、此鐵道ノ利益
ト云フモノハ近頃スラモ將來トテモ此利益ハ保全セラルヽト云フ御見込カ、新民屯ノ問
題ハドウナッタカ、新奉線ノ問題ハドウナッタカ、ソレカラ引續イテ此港灣問題ガ生ジテ居
ル是ハドウナッテ居ルカ、斯樣ナモノハ若シ此上ニ御辭儀ヲシテ引込マレタナラバ吾〓ガ
苦ンデ居ル三稅ノミデナク、戰時ノ租稅戰時ノ國債此以上ニ又貴イ吾〓ノ再ビ購フベカ
ラザル人命ヲ以テ買得タルトコロノ南滿洲ノ鐵道ノ利益ハ忽チ消滅スルノデアリマス、ソコ
デ經濟力ノ發展ト云フガ外務大臣ガ此方面ニ向テ一段ト人ヲ移ス、移シテ何ヲサセルカ、
無權力デ何モ利益ガナイ、其處ニ人ヲヤッテドウナサルンダ、ソコデ此海陸軍ノ非常ナ後援
ヲ有ッタ外交ハ斯ノ如キモノデアルト云フコトハ諸君ト私ハドウシテモ驚カネバナラヌ、
ツハ確カニ失敗シテ居ル、ソコデ此不調和-元來一體ドウ使ハレルンダ戰後經營、
內ニ在テハ河川改良何年經ッテモ之ハヤラヌ、是ハ繰延ベテ居ル、鐵道是モ繰延ベテ居
ル、港灣改良海陸連絡皆繰延ベラレテ居ル、斯樣ナモノヲ繰延ベテ置イテ只一
方軍備ノ擴張ト云フ事ガ果シテ諸君ノ所謂之ガ積極方針デアルナラバ斯樣ナ積極
方針ハ所謂退嬰スルト云フトコロノ積極方針デアル、是デハ仕方ガナイ、大失敗ニナッ
タノデアリマス、ソコデ此失敗ニナッタノデアリマスカラ戰後經營ノ元ニ立返ッテ元カラ改
メテ來ナケレバドウシテモ三稅問題ノ甲斐ガナイ、ソコデ元ニ戾レバドウスルカト云ヘバ
ドウシテモ吾ミハ多クノ費用ヲ使ハレルトコロノ軍事當局ノ御考ヲ煩ハス方ヨリ外ニ仕
方カナイノデアリマス、(ヒヤノ)ツコデ片岡君ナリ其他ノ御話デアリマスガ、借金ハ無
論拂ハナケレバナラヌ、吾〓ハ確カニ借金ヲ拂ハナケレバナラヌ、所ガ借金ヲ拂ハナケ
レバナラヌト云フ急ナモノガアルガ故ニ、使フトコロノ金カラ先ヅ考ヘナケレバナラヌ、若シ
吾〓ガ拂フ借金ナク租稅ヲ課ケテモ苦シマヌトキナラバ斯樣ナ軍事問題ニ吾〓ハ立入ラ
ナイノデアル、所ガ一番急用ナ經濟力ノ發展ノ方面ニ向ッテハ使フコトガ出來ナイ、一切
有用ナルコトハドウスルコトモ出來ナイ、借金ヲ拂フコトモ出來ナケレバ有用ニ使ハレヌト云
フ困難ガアルナラバ、如何ニ必要トシテモ幾ラカ此繼續事業ノ中、卽チ十一年計畫ト云
フモノニ付イテハ多少軍事當局者ハ此上ニ御考ヘニナラナケレバ今日ノ切盛リハ出來ナ
イ譯ニナル、(拍手起ル)ソレ故ニ私ガ云フ餘裕ト云フノハ此方面ニ向ッテ餘裕ヲ求メル、
唯是ダケデアルツコデ隨分イロ〓〓ナ御批評ガ出マシタガ、私ノ賤名ヲ引合ヒニ御批評
ニナッタ分ダケヲハ一應申シテ置カナケレバナラヌ、私ハ此間此豫算ニ付テハ此三稅ガ出マ
ス故ニ四十三年度カラシテ廢サナケレバナラヌカラ、其御用意ニハ此中ノ細目ヲ舉ゲヌガ、
豫算ニ於テ御用意アリタイト云フコトヲ述ベタ、其中ニ私ノ言ッタ竹越サンノ仰シヤル三十
六箇師團ト云フコトハ確ニ言ッタ、所ガ此三十六箇師團ガ支那ニ於テ出來タナラバ之ヲ
敵ニスル兵ガ要ルト云フノハ私ハ實ニ驚入リマス、凡ソ鄰國デ宗〓上ノ關係、學問上ノ
關係、八種上關係、地理上ノ關係、數千年來最モ親密ナル鄰國、而モ吾〓ガ開導シ
テ、吾ミガ奉井テ、サウシテ此開明ニマデ持ッテ來タモノヲ、之ヲ敵ニスル程ノ下手ナ外交ヲ
ヤラナケレバナラヌ外務大臣ナラ要ラナイ(拍手起ル「日〓戰爭ハドウシテ出來マシタカ」
ト呼フ者アリ)此下手ナ、此親密ナ關係ノアルモノマデモ敵ニスルト云フ下手ナ外交、拙
劣ナ外交デアルナラバ外務大臣モナイ方ガ餘程安全デアル、(「萬一ノ「アクシデント」ニ
備ヘルト云フノデス」ト云フモノアリ議場騒然「君ノ黨派ノ有樣ハドウタ」ト呼フ者アリ
「支那マデ行カヌ內輪デサヘ起ルヨ」ト呼フ者アリ)私ノ意味ハ斯ウ云フコトヲ言ッタノデア
ル御聞キナサイ、何故ソレガ必要デアルカ、今日ノ軍備カラドウ云フ事柄ガ成立ッテ居
ルカ、(「黨ヲ御スル能ハザルノ首領ノ演說ハ價値ナシ」「默レ」ト呼フ者アリ議場騒然)若
シ北方ニ備ヘテオマケニ鄰國ノ微弱ナルモノヲ扶植スルト云フマデニ、卽チ支那保全ト云
フコトニ必要ナラバ、彼レ自ラ守ル位ノモノガ出來タラ此方面ニ安全ダト云フコトヲ私
ハ述ベタ確ニ左樣デアル(「ソレダケノ決心ガアレバ進步黨ハ分裂セズ」ト呼フ者アリ)
ソレ故ニ凡ソ此他國ニ兵ガ增スノハ何箇國增ストモ、其數ダケヲ增スト云フコトハ如何
ナル國力、日本ノ國力ガ今日カラ二倍、三倍、十倍スルト雖モムヅカシイノデアリマス、ソ
レ故ニ唯一切外交ト云フコトハ棚ニ上ゲテ、一切政略ト云フコトハ棚ニ上ゲテ、大砲ノ重
ミト鐵砲ノ重ミヲ以テ竸爭スルナラバ、諸君ノ仰シヤルヤウニナル、(議場騒然)私ハ唯一
言致シマス、唯外交ト云フモノヲ棚ニ上ゲテ、無能ニシテ、無爲ニシテ、唯大砲ノ重ミダ
ケデ競爭スルト云フ政略デアルナラバ、私共ハ此政略ニ供スルダケノ今日金ヲ持ッテ居ラ
ヌ、其位ノ兵ハ今日無イト云フノデアリマス、ソレ故ニ一言シテ私ハ此案ヲ解決シヤウト
思フ今日唯餘裕ガアルナイノ問題デハナイ、私ノ言フ餘裕ハ吾〓ガ造ラネバナラヌ、財
源ガアルナイノ問題デハナイ、確ニ財源ハ吾〓ノ計算上カラ出ル、之ヲ以テ三稅ヲ廢シタ
イト云フダケノ理由デアリマス、(拍手起ル)
(「討論終結」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=93
-
094・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 宮古啓三郞君
〔宮古啓三郞君登壇〕
〔「討論終結」ト呼ヒ議場騒然タリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=94
-
095・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 宮古君ニ發言ヲ許シマシタ
(「討論終結」ト呼ヒ議場騷然タリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=95
-
096・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 討論終結ノ動議ニ贊成アルト認メマスカラ採決ヲ致シマス、
討論終結ノ動議ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=96
-
097・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ニテ討論ハ終結シマシタ、御諮リヲ致シマス、旣ニ討
論ハ終結致シマシタカラ、旣ニ討論終結致シマシタカラ、採決ハ日程第十二、十
三、十四ト、別箇ニ採決シヤウト思ヒマス、而シテ採決ノ方法ハ記名投票ヲ以テ採決
ヲ致シマス、(拍手起ル)先ヅ日程ノ第十二、非常特別稅法中改正法律案、第二讀
會ヲ開クヤ否ヤニ付テ採決ヲ致シマス、重ネテ申述ベマス、此採決ハ記名投票ヲ
以テ採決シ、卽チ本案ニ贊成ノ諸君ハ白票、本案ニ反對ノ諸君ハ靑票、閉
鎖-氏名〓呼ヲ始メマス
〔書記氏名ヲ〓呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=97
-
098・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 投票漏ハアリマセヌカ、開鎖-開匣
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=98
-
099・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 投票ノ結果ヲ書記官長ヨリ報告致シマス
〔林田書記官長朗讀〕
出席總員三百四十一
可トスル者百十六
否トスル者二百二十五
〔拍手起ル〕
〔參照〕
本案ノ二讀會ヲ開クヘシトスル者
犬養毅君高橋文質君鈴木久次郞君大津淳一郞君
石田仁太郞君齋藤宇一郞君關直彥君水野正己君
肥塚龍君內藤利八君竹田文吉君西村眞太郞君
長場龍太郞君佐藤貞雄君坂口仁一郞君
田又一君加藤政之助君綾部惣兵衞君藤代市之輔君
田勳君木村格之輔君津久居彥七君木村半兵衞君
ベトナイト正君鈴木仙太郞君森田勇次郞君高柳覺太郞君
天野董平君武田貞之助君藤井善助君
久保田與四郞君藤澤幾之輔君澤來太郞君
松尾君柵瀨軍之佐君石〓岡文吉君小山內鐵彌君
兵七君竹內〓明君國井庫君加保藤正英
吉添田飛雄太郞君神東誠作君君君
三郞君勝暢桂的野半介君本
人三君君君君佐藤庫喜君時敏君
三郞竹貫高河武福野富廣中君
小大紅烏魚大雞 250
惟郭君澤三大藤輪信次君君君*小正年君
元久造郞一堀谷左治郞君
3つまおとをの ·
梅良君櫻井一君多
謙春五君鈴木ト部國際鐵道
小熊小 500円資本君 君 君鈴細佐木野野次郞君加瀨禧次逸力株絫水 ジング助君
寅彥君近江谷榮署發部綾雄君
平
此西村丹治郞君天パー金
夫吉助君君君花井卓藏君橫山金太郞君嚴
- )暢太佐々木安五郞君山口熊野君安江才金坂東間賀尾本之一吉嚴彌吉君君君君君
武營君敏俊藤稜
淺野陽吉君中野
稻茂登三郞君西村治兵衞君磯部保次君
〓水市太郞君村田虎次郞君高橋政右衞門君丸山孝一郞君
牧野平五郞君富田幸次郞君豐增龍次郞君小橋榮太郞君
和田尊義君大繩久雄君阪本彌一郞君稻村辰次郞君
本案ノ二讀會ヲ開クヘカラストスル者
正次君安達謙藏君淺羽靖君松下軍治君
剛吉君臼井哲夫君須藤嘉吉鈴木摠兵衞君
單君岡井藤之丞君小青森六一福留〓四郞君
中華守兩大使用崎運兵衞君竹內正荒川工期山田珠一君
又三君內野紫垣一君君君君君君川越進君
虎彥君戶水寬良 人 延 志君君君君石周貢雄木村省吾君
岩仙下〓齋藤巳三郞君
信三郞君木村
鈴木久五郞君井上敏夫君片岡直溫君中村豐次郞君
八束可海君千早正次郞君中村彌六君星一君
米田穰君森田俊左久君松尾寅三君飯田精一君
加治壽衞吉君加藤恆忠君石田平吉君肥田景之君
和夫君大岡育造君元田肇君村野常右衞門君
繁三郞君五兵衞君伊藤大八君菅原傳君
金藏君昌巖君岡崎邦輔君森久保作藏君
秋菊岡西奧鳩岡池田谷繁山藏君有岩漆松本田 浦田信君川崎安之助君天川三藏君
田
義侃泰二 五國藏君植場平君本出保太郞君
一君準造君田中龜之助君長谷川豐吉君
中村舜次郞君坪福田井十郞君改野耕三君森本駿君
橫山寅一郞君木下吉之丞君中倉万次郞君古森泰君
竹越與三郞君田邊熊一君橋光威君山際敬雄君
靑柳信五郞君山本悌二郞君阪高泰碩君宮內翁助君
小澤愛次郞君齋藤珪次君塚田啓太郞君武藤金吉君
根岸峮太郞君佐藤虎次郎君日向輝武君吉植庄(明礬若者)
長島鷲太郎君板倉中君東條良平君鵜澤總明
小山田信藏君飯田新右衞門君小久保喜七君宮古啓三郞君
濱名信平君根本正君關信矢島中君
小林庄一郞君江原節君高久倉和苑金之君君君君逸郞
東京府村井善四郞君原亮村大八松井木君君君
築栗山和愛ト藏新
茂生君橫井甚四郞君
龍介君福岡精一君田祐〓君鈴木友治郞君
在大阪市金井市場所藤文一郞君秋山裕君大〓春峯太郞君澤田寧君
賴摸君鈴木辰次郞君野久次君佐竹作太郞君
國造君手塚正次君住宿舎丸ノ島電力島田保之助君
古井由之君花村覺三郞君一君水品平右衞門君
安川保次郞君翠川鐵三君雲平君齋藤二郞君
佐立治川原敬君
佐々木鐵太郞君柏原左源太君幸平君
阿部德三郞君村上先君高橋嘉太郎君大坂金助君
阿部政太郞君戶狩權之助君長晴登君阿部孫左衞門君
西澤定吉君三浦盛德君鷲田土三郞君杉田定一君
荻野芳藏君川繼孝君丹尾賴馬君駒田小次郞君
上出長次郞君橋笠次六松田吉三郞君筏井甚吉君
東本祐君君君木下義之君恆松隆慶君
上埜安太郞君河伊英賢
山勇君上向坂弘君中沼信一郞君
德橫園井時雄君串本康三君麥田宰三郞君望月圭介君
田讓甫君河野郁太郞君神前修三君中村啓次郞君
千田軍之助君板東勘五郞君大久保弁太郞君橋本久太郞君
中川虎之助君田中定吉君三土忠造君武西山彰君
景山甚右衞門君夏井保四郞君高山長幸君市庫太君
細川義昌君町田旦龍君太田〓藏君古賀庸藏君
藏內治郞作君古野孫太郞君熊本壽人君庄野金十郞君
野田卯太郞君永江純一君富安保太郞君三浦覺一君
松田源治君松田正久君有田源一郞君高田露君
森新君原田十衞君坂元英俊君山岡國吉君
肥武高義雄君柚木慶二君奧田榮之進君鮫島慶彥君
後滿幸盛君高原篤行君坂本元明君東武君
白石義郞君遠藤良吉君川眞田德三郞君井阪光暉君
森肇君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=99
-
100・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ二讀會ヲ開クベカラズト云フコトニ決定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=100
-
101・早川龍介
○早川龍介君 アトハ起立デ決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=101
-
102・島田三郎
○島田三郞君 議長ノ宣告ヲ翻スト云フコトハ惡慣例デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=102
-
103・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 滿場一致デ··
〔議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=103
-
104・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 諸君靜ニ-滿場一致デ異議ナク起立ヲ以テ採決ト云フ
コトニ御同意ガアレバ、ソレデモ宜シウゴザイマスケレドモ、既ニ異議ノ申立ガアリマスル以
上ハ同ジコトヲ再ビ繰返サナケレバナラヌ故ニ、日程ノ第十三モヤハリ記名投票ヲ以テ採
決致シマス
〔識場騒然拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=104
-
105・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 靜ニ-閉鎖-日程第十二ノ例ノ如クニ日程第十三
非常特別稅法中改正法律案ノ第一一讀會ヲ開クヤ否ヤニ付テ採決致シマス-第二讀
會ヲ開クベカラズト云フ諸君ハ靑票、第二讀會ヲ開クベシト云フ諸君ハ白票-氏
名〓呼
〔書記氏名ヲ〓呼ス)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=105
-
106・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 投票洩レハアリマセヌカ-開鎖-開匣
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=106
-
107・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 投票ノ結果ヲ書記官長ヨリ御報告致シマス
〔林田書記官長朗讀〕
出席總員三百四十
可トスル者百二十八
否トスル者二百十二
〔拍手起ル〕
〔參照〕
本案ノ二讀會ヲ開クヘシトスル者
犬養毅君高橋文質君鈴木久次郞君
石田仁太郞君齋藤宇一郞君關直彥君野-正己君
肥塚龍君內藤利八君竹田文吉君
關矢橘太郞君長場龍太郞君佐藤貞雄君
福田又一君加藤政之助君綾部惣兵衞君
安田勳君津久居彥七君木村半兵衞君正君
鈴木仙太郞君森田勇次郞君高柳覺太郞君
天野董平君武田貞之助君藤井善助君税 等電話番號
久保田與四郞君藤澤幾之輔君澤來太郞君平島
柵瀨軍之佐君石〓岡文吉君小山內鐵彌君市田F〓3
竹內〓明君國井庫君加藤正英君池田一般社旣
荒谷桂吉君添田飛雄太郞君西能源四郞君神保東作君
福井三郞君大內暢君君的野半介君福本誠君
純米大冒険次郞君箕勝郞人三佐藤庫喜河武野富敏君
東藏君島西原田浦三君貫正廣時年中君君
高木益太郞君藏惟櫻藤三大井澤輪竹信号お
石橋爲之助君大郞郎郭君君君元左治郞君
原良君小泉又五次一一次逸力久造郞一君君君君君君君君
梅
謙吉君佐野五君鈴木恆春季米贈碧老君
小關小川口寺安太郞君細野次春郞君加瀨禧
國立金城集中継局報告書
平吉君鈴木寅彥君近江谷榮綾雄君
橋守屋此助君西村丹治郞君入江武一郞君金彌君
本太吉君花井卓藏君橫山金太郞君
富島暢夫君佐々木安五郞君淺山口熊野君嘉藤稜
村松恆一郞君淺野陽吉君羽靖君中国的美容器君
小野崎耕夫君中野武營君江間俊一君加中八岩稻須才金坂茂登三君君
治兵衞君木村省吾君中安信三郞君
微博設計保次君安東敏之君可海君
〓水市太郞君藤村束下
村田虎次郞君高橋政右衞門君千早正次郞君彌六君
丸山孝一郞君牧野平五郞君森田俊佐久君恆忠君
大富田幸次郞君豐增龍次郞君小橋榮太郞君和田尊義君
繩久雄君阪本彌一郞君井阪光暉君稻村辰次郞君
本案ノ二讀會ヲ開クヘカラストスル者
正次君安達謙藏君松下軍治君松元剛吉君
君鈴木摠兵衞君大野龜三郞君岡井藤之丞君
垣川田井根五柳哲福留〓四郞君岡崎運兵衞君竹內正志君
山田珠一君守山又三君內野延君
松片木紫荒奧臼山一溫良雄郞藏夫君君君君君橫田虎君戶水寬人君仙石
村齋藤巳二酸化合胃酸菌素有木久五郞君上敏
岡直中村豐次郎君星鈴一君石米井田
八肇吉穰夫貢君君君君君君
尾寅三君飯田精一加治壽衞吉君田平
肥田景之君鳩山和岡育造君田
村野常右衞門君繁三藏藏郞夫君君君君君浦五兵衞君岡伊元藤大
菅原傅君泰金有岩漆松大昌信巖君崎邦輔君
作藏君秋菊岡西奧池田谷田君植川崎安之助君
天森川谷三藏君侃二君國場平君
本出保太郞君岡義君福井本郞造藏君君君田中龜之助君
長谷川豐吉君君坪田十準改野耕三君
本駿君密 出木下吉之丞君
中倉万次郞君
森泰君竹越與三郞君田邊熊一君橋光威君
武宮山古森阪高泰碩君
際敬雄君靑柳信五郞君山本悌二郞君
翁助君小澤愛次郞君齋藤珪次君塚田啓太郞君
藤內金吉君根岸峮太郞君佐藤虎次郞君日向輝武君
吉植庄一郞君長島鷲太郞君板倉中君東條良平君
總明君小山田信藏君飯田新右衞門君小久保喜七君
古啓三郞君濱名信平君根本正君關信之
島中君小林庄一郞君江原節君高久倉藏介君君君
松井木鳥古澤逸郞君はず、原亮
澤鈴村大八矢宮鵜ト茂甚至君 君 君春築栗和〓一一
愛藏新君君大阪府中心區海素蘭機材 有限公司田山
龍精祐との積水分と
木友治郞君〓
田寧君橋賴次摸助郎裕君君君大野久次君
佐竹作太郞君香榭牙利潤花天大使用藥排 除外藥正佐吉鈴本田木女房屋島田保之助君
古井由之君村覺三三郎大樓 書店一君水品平右衞門君
鐵立川雲平君原齋藤二郞君
國際空港左源太君佐治幸平君敬君
東京市麴石區中央賴馬君駒田小山頂端上出長次郞君
次六木松吉三郞君筏井吉君埜安太郞君
祐義之君恆松隆甚慶君村國上山勇君
上向坂弘君中沼信一郞君上先君
德橫鷲長高河伊橋田井田 橋 東本橋嘉太郞君大坂金助阿部政太郞君戶狩權之助君
晴阿部孫左衞門君君君荻西澤定吉君三浦德君
田11/2雄郡電話杉田定一野芳藏君笠川繼盛孝君
時串本康三君麥田宰三郞君望月圭介君
讓助電信河野郁太郎君神前修三君中村啓次郞君
千田軍十)板東勘五郞君大久保弁太郞君橋本久太郞君
中川虎之助君田中定吉君三土忠造君西山彰君
景山甚右衞門君順明珠四海鮮書館高山長幸君武市庫太君
義昌君田旦太田〓藏君古賀
(株)渡辺住宅七田路熊本壽人君庄野全部售罊君君
武商站所有效力田田正純整合法 第一五十五十四所以前三浦覺一君
源一條煙草君君君原松永田田江坂有富田源一郞君田露
森十元英俊君山高國君君
滿義雄君柚木慶二君奧田榮之進君鮫島岡彥吉君
慶
肥後幸盛君高原篤行君坂本元明君東武君
白石義郞君遠藤良吉君川眞田德三郞君森肇君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=107
-
108・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第十三、非常特別稅法中改正法律案ハ第二讀會
ヲ開クベカラズト云フコトニ決定致シマシタ、此場合御諮リヲ致シマス、モウ此三案ノ中
二案ハ記名投票ニ依シテ採決サレマシタ、凡ソ大體ハモウ殆ド定ッテ居ルト思ヒマスガ、滿
場御異議ガナケレバ此第十四、鹽專賣法廢止法律案ハ起立ヲ以テ採決致シタイト思
ヒマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=108
-
109・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=109
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110・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ソレデハ日程ノ第十四、鹽專賣法廢止法律案ノ第二讀會
ヲ開クベシト云フ、卽チ原案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=110
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111・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數デアリマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=111
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112・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第十四鹽專賣法廢止法律案ハ二讀會ヲ開クペカラ
ズト決シマシタ、御諮リヲ致シマス、取引所改善ニ關スル建議案委員松下軍治君病氣
ノタメ辭任ノ申出ガアリマス、許可シテ御差支アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=112
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113・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 差支ガナケレバ其補缺トシテ岡井藤之丞君ヲ指名シマス、
商事會社ニ關スル法律案委員和田尊義君病氣ノタメ辭任ノ申出ガアリマス、許可シ
テ差支ナキヤ
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114・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 差支ナケレバ其補缺トシテ稻茂登三郞君ヲ指名シマス、諸
般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ左ノ質問書ニ對シ答辯書ヲ送付セラレタリ
淀川下流減水ニ關スル質問主意書(平田內務大臣)
衆議院議員石橋爲之助君提出淀川下流減水ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候也
明治四十二年三月九日
內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
(別紙)
衆議院議員石橋爲之助君提出淀川下流減水ニ關スル質問ニ對スル答辯
淀川改良工事ノ內大阪市內河川ノ水利ニ影響スルモノハ主トシテ毛馬聞門ト洗堰
ノ二者トス其ノ內閘門ハ單ニ舟楫ノ便ニ供シタルモノニシテ水量ニ關係ナシ又洗堰ハ
常二一定ノ流量ヲ市內ニ導クヲ目的トスルモノニシテ去ル四十年三月竣成シ同月四
日之ヲ開放シタリ爾後ノ經過ハ開放前後大川筋ニ於テ數囘流量測量ヲ爲シ異動
ナキヲ認メ得タリ然ルニ昨四十一年五月下旬ヨリ六月中旬ニ亙ル間及ヒ七月八月
ノ兩月ハ共ニ例年ニ比シ降兩量甚タ少ク其ノ影響トシテ六月下旬及九月ニハ市內
河川ニ減水ヲ來シタリ其ノ後相當ノ降雨アリタルヲ以テ漸次良好ノ狀態ニ復シ本年
一月ノ如キハ水量甚タ潤澤トナレリ而カモ淀川減水ノ場合ニ於テ洗堰ノ通水量ヲ
增加セシムヘキ設備トシテ新淀川ニ制水工ヲ施行スルノ必要ハ洗堰築造ノ當時ニ於
テ期待シタル所ニシテ調査未了ナリシ洗堰通水量ト水位ノ關係モ昨年ノ狀況ニ依リ
明カニナリタルヲ以テ今ヤ該工事施行準備ニ著手スルノ場合トナレリ又之ト同時ニ
洗堰近傍ニ於ケル低水敷ノ浚渫ヲ爲スヘキヲ以テ是等工事竣成ノ後ハ洗堰ノ通水
量整調ヲ完フシ得ヘシ
右及答辯候也
明治四十二年三月九日
內務大臣法學博士男爵平田東助
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
地租輕減ニ關スル建議案
提出者荒川五郞君齋藤宇一郞君西村丹治郞君
安達謙藏君平島松尾君川眞田德三郞君
淺羽靖君佐藤庫喜君木村良君
靑木新治郞君
普通選舉ニ關スル法律案
提出者日向輝武君立川雲平君上埜安太郞君
森本駿君松田源治君
東京市制案
提出者稻茂登三郞君渡邊勘十郞君高木益太郞君
松下軍治君中野武營君福田又一君
森久保作藏君藏原惟郭君肥塚龍君
關直彥君山根正次君江間俊一君
治水事業費繰延復活ニ關スル建議案
提出者植場平君吉植庄一郞君木村半兵衞君
牧野平五郞君西村丹治郞君
「ローマ」字普及ニ關スル建議案
提出者根本正君石橋爲之助君竹內正志君
田川大吉郞君
民事訴訟法中改正法律案
提出者佐々木文一君岩田信君神崎東藏君
一田川大吉郞君ヨリ滿韓移民及之ニ關聯スル政策ニ就キ質問主意書ヲ提出セラ
レタリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆ニ揭載ス〕
滿韓移民及之ニ關聯スル政策ニ就キ質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十二年三月九日
提出者田川大吉郞贊成者才賀藤吉
外三十九名
滿韓移民及之ニ關聯セル政策ニ就キ質問主意書
一移民保護法ハ勞働ニ從事スル目的ヲ以テ〓韓兩國以外ノ外國ニ渡航スル者ヲ
移民ト稱スト限定セリ去月二日小村外務大臣ハ本院ニ於テ帝國ノ移民ヲ新ニ
満韓方面ニ集中セントスト演說セルカ此ノ如キハ移民保護法ノ規定ヲ蹂〓スルノ
嫌ナキヤ如何
二果シテ滿韓地方ニ移民ヲ集中ストセハ政府ハ之カ實行手段トシテ現ニ如何ナル方
法ヲ講シツヽアリヤ例ヘハ移住地ノ選定移住民送致ノ補助奬勵方法移民數ノ豫
測等ニ關シ政府ノ計畫如何
三且滿韓一帶ノ地域ニ我民族ノ移住ヲ謀ルニ當リテハ國民〓育ノ根本方針ニ於
テモ專ラ〓韓人ヲ相手トシテ百般ノ經營ニ從フヘキ素養ヲ授クルノ必要アリ同時
ニ歐米人ヲ相手トシ世界ニ濶步スヘキ素養ヲ授クルハ寧ロ第二義ニ落ツヘシト思
ハル政府ハ此ノ如キ方針ヲ以テ國民〓育ヲ行ハントスルカ所見如何
四小村外務大臣カ滿洲ニ於ケル帝國ノ機會均等主義ヲ宣明スルヤ同盟國ノ新聞
紙ハ隙サス法庫門鐵道ニ對スル帝國ノ讓步的解決ヲ要請セリ同鐵道ノ建設ニ對
スル政府ノ方針如何
五小村外務大臣ハ更ニ對外商工業ノ發達ヲ阻害スヘキ事項ハ努メテ之ヲ避クル必
要アリトノ前提ニ由リ加奈太及合衆國ヘ移民ヲ制限シツヽアリト說明セリ政府ハ
加奈太及合衆國ヘノ我移民ヲ以テ日加及日米間ノ通商貿易ヲ阻害シタト爲スヤ
如何
六合衆國大統領ルーズヴヱルト氏ノ意見ナリトシ外電ノ傳フル所ニ由レハ合衆國政
府ノ意思ハ在米國日本人ノ數ト在日本米國人ノ數トヲ略ホ同一ナラシムル程度
マテ日本人ノ渡航ヲ制限セントスルモノヽ如シ政府ハ此標準ヲ是認スルヤ如何
附南米祕露ニ向ヒ志ヲ果サスシテ空シク歸來シタル五十餘名ノ壯丁ハ今尙
橫濱ノ病院若クハ客舎ニ呻吟シツヽ有リ政府カ其發程ヨリ歸著ノ日マテ及
歸著ノ日ヨリ今日迄ノ間ニ干與シタル事項及取締ノ經過ハ今日モ未タ聞知
スヘカラサルカ重ネテ政府ノ所見ヲ問フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X01719090309&spkNum=114
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115・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知ヲ致シマス本日ハ是ニテ
散會
午後七時三十一分散會
衆議院議事速記錄第十ハ號正誤
頁段行誤正頁段行誤正
三一〇下二九大西吾一郞大西五一郞三二六上六稅制增稅
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