第27回帝国議会　衆議院　本会議　第21号　明治44年3月11日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　明治四十四年三月十一日（土曜日）午後一時十四分開議
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  　　議事日程　第二十號　明治四十四年三月十一日
  　　　　午後一時開議
  　　　　　　質問
  　　　一　米國官憲の在布邦人に加へたる不法行爲に關する質問（千田軍之助君提出）
  　　　二　言論出版の自由及藝術の取締に關する質問（關和知君提出）
  　　　三　藥品取締に關する質問（綾部惣兵衞君提出）
  　　　四　馬匹改良方針に關する質問（澤來太郎君提出）
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  　　第一　東京市區改正條例中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選舉
  　　第三　樺太に於ける漁業免許の取消及漁業料の徴收に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第四　間島に於ける領事官の裁判に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第五　韓國鐵道會計所屬資金の繰入に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第六　鐵道敷設法中改正法律案（中村啓次郎君外三名提出）　第一讀會
  　　第七　東京市借地法案（高木益太郎君外一名提出）　第一讀會
  　　第八　東京市に關する法律案（尾崎行雄君外四名提出）　第一讀會
  　　第九　東京市に關する法律案（福田又一君外六名提出）　第一讀會
  　　第十　貴族院及衆議院速記技手在官年月數に關する法律案（福井三郎君外四名提出）　第一讀會
  　　第十一　酒造税法中改正法律案（黄金井爲造君外二名提出）　第一讀會
  　　第十二　普通選舉に關する法律案（日向輝武君外二十一名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十三　地租條例中改正法律案（塚田啓太郎君提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十四　明治四十一年法律第三十七號中改正法律案（熊本壽人君外三名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十五　御歴世　宮趾保表に關する建議案（八木逸郎君外二名提出）
  　　第十六　名所舊蹟古墳墓保護に關する建議案（八木逸逸君外二名提出）
  　　第十七　臺南水道敷設に關する建議案（村上先君外三名提出）
  　　第十八　鐵道敷設に關する建議案（三浦盛徳君外五名提出）
  　　第十九　鐵道建設に關する建議案（白石義郎君外三名提出）
  　　第二十　人工降雨試驗に關する建議案（早川龍介君提出）
  　　第二十一　日本海員掖濟會國庫補助金増額の建議案（高橋光威君外三名提出）
  　　第二十二　朝鮮穀物及穀粉の移入税に關する建議案（大内暢三君提出）
  　　第二十三　准三后北畠親房公墳墓修理竝南朝三帝の宮址賀名生皇居を特別保護建造物編入に關する建議案（東武君外一名提出）
  　　第二十四　（特別報告第八十四號）煙毒除害工事設備の請願　（委員長報告）
  　　第二十五　（特別報告第八十五號）鹽販賣業者失業に關する請願　（委員長報告）
  　　第二十六　（特別報告第八十六號）葉煙草耕作段別復活の請願　（委員長報告）
  　　第二十七　（特別報告第八十七號）在外國賣婬婦取締法制定の請願　（委員長報告）
  　　第二十八　（特別報告第八十八號）産牛馬組合法改正の請願　（委員長報告）
  　　第二十九　（特別報告第八十九號）勸業銀行拓殖銀行又は農工銀行低利資金を産牛馬組合に運用貸付の請願　（委員長報告）
  　　第三十　（特別報告第九十號）牛疫豫防に關する請願　（委員長報告）
  　　第三十一　（特別報告第九十一號）常任判事檢事任設の請願　（委員長報告）
  　　第三十二　（特別報告第九十四號）岐阜監獄移轉の請願　（委員長報告）
  　　第三十三　（特別報告第九十六號）區裁判所出張所設置の請願　（委員長報告）
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• 001・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  東京市區改正條例中改正法律案
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  千葉縣立園藝專門學校ヲ文部省直轄ト爲スノ建議案
  提出者稻村辰次郞君吉植庄一郞君
  高等學校增設ニ關スル建議案
  提出者宮古啓三郞君三土忠造君三浦盛德君
  借地ニ關スル法律案
  提出者鳩山和夫君戶水寬人君松田源治君
  鵜澤總明君齋藤二郞君
  港灣改良ニ關スル建議案
  提出者松田正久君原敬君元田肇君
  大岡育造君鳩山和夫君杉田定一君
  尾崎行雄君伊藤大八君
  治安警察法中改正法律案
  提出者日野國明君村松龜一郞君服部綾雄君
  高木益太郎君
  初等〓科書中政治法律經濟等ノ事項ヲ增加スル建議案
  提出者村松龜一郞君日野國明君服部綾雄君
  高木益太郞君
  一綾部惣兵衞君提出藥品取締ニ關スル質問主意書ハ提出者ヨリ撤囘セラレタリ
  一荒谷桂吉君ヨリ小坂鑛山鑛煙毒豫防方法及被害救濟ニ關スル質問主意書ヲ
  提出セラレタリ
  一政府ヨリ左ノ質問書ニ對シ答辯書ヲ送付セラレタリ
  一歐米外交ニ關スル質問主意書(小村外務大臣)
  一朝鮮ノ關稅ニ關スル質問主意書(小村外務大臣)
  一對米外交ニ關スル質問主意書(小村外務大臣)
  一治水政策ニ關スル質問主意書(平田内務大臣)
  一郵便貯金ニ關スル質問主意書(後藤遞信大臣)
  衆議院議員藏原惟郭君提出歐米外交ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候也
  明治四十四年三月十日
  內閣總理大臣侯爵桂太郞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  (別紙)
  衆議院議員藏原惟郭君提出歐米外交ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  近來歐米人ノ一部ニ於テ帝國ニ對シ一種ノ誤解ヲ抱ク者アルハ甚タ遺憾ナル次第
  ナリト雖此ノ如キ誤解ハ單ニ少數人士間ニ止マリ帝國ト列國トノ好誼ニ大ナル累ヲ
  及ホス虞ナキノミナラス帝國政府ハ常ニ銳意此等ノ誤解ヲ釋クコトニ努力シツヽアリ
  歐米駐在ノ我外交官モ亦克ク帝國政府ノ趣旨ヲ體シ帝國ト列國トノ交情ノ益敦
  厚トナルヲ圖リ何等怠ル所ナシト確信ス
  右及答辯候也
  明治四十四年三月十日
  外務大臣伯爵小村壽太郞
  衆議院議員早速整爾君提出朝鮮ノ關稅ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
  候也
  明治四十四年三月十日
  內閣總理大臣侯爵桂太郞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  (別紙)
  衆議院議員早速整爾君提出朝鮮ノ關稅ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  帝國政府カ當分ノ內朝鮮從來ノ關稅率ヲ維持スルコトト爲シタルハ一月二十六日
  ノ衆議院豫算委員會ニ於テ演述シタルカ如ク諸外國人ノ朝鮮ニ於テ有スル所ノ經
  濟的利益ニ不利ノ影響ヲ及ホスヲ避クルヲ得策ト認メ又內地朝鮮間ノ貿易關係ニ
  急激ノ變改ヲ加フルノ大ニ考慮ヲ要スヘキモノアルヲ念ヒ帝國政府任意ノ措置トシテ
  右ノ決定ヲ爲セルモノニシテ政府ハ併合ノ際ニ於ケル內外ノ關係ニ顧ミ之ヲ以テ最
  適當ノ措置ナリト認メ居ル次第ナリ
  右及答辯候也
  明治四十四年三月十日
  外務大臣伯爵小村壽太郎
  衆議院議員〓水市太郞君提出對米外交ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
  候也
  明治四十四年三月十日
  內閣總理大臣侯爵桂太郞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  (別紙)
  衆議院議員〓水市太郞君提出對米外交ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  第一項第二項日米條約改正ノ件竝ニ渡米移民ノ件ハ三月二日ノ衆議院會議ニ
  於テ本大臣ノ演說セル通ナリ
  第三項第四項バナマ運河ニ關スル問題ハ從來主トシテ他國間ノ關係ニ屬スルモ帝
  國政府ハ兩大洋ヲ貫通スル同運河ノ一日モ早ク竣工ヲ告ケ通商航海上外國ト共
  ニ其惠ヲ享ルニ至ラムコトヲ期望ス
  右及答辯候也
  明治四十四年三月十日外務大臣伯爵小村壽太郞
  衆議院議員大橋賴摸君提出治水政策ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  也
  明治四十四年三月十日內閣總理大臣侯爵桂太郞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  (別紙)
  衆議院議員大橋賴摸君提出治水政策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  一政府ニ於テ直轄事業トシテ改修工事ヲ施行スヘキ河川ハ從來實地ニ就キ調査ヲ
  シタル流域平地面積ノ廣袤ヲ標準トシ其ノ十平方里以上ヲ有スルモノヲ撰定シタ
  ルモノナリ
  二河川改修計畫ヲ二期ニ別チ利根川外十九川ヲ第一期川トシ其他ヲ第二期川ト
  定メタルハ河川ノ大小竝ニ被害ノ輕重ヲ大體ノ標準トシ地方ノ負擔力ヲ參酌シ
  併セテ改修工事ノ利益ヲ可成各地方ニ普及セシメントスル目的ヲ以テ之ヲ類別シ
  タルモノナリ
  三第一期ニ屬スル河川改修工事施行ノ順位ハ既定直轄河川及旣ニ改修計畫調
  査ノ結了セル河川ヲ先ニシ其他ノ河川ハ漸次改修計畫ノ調査結了ニ隨ヒ起工ノ
  見込ニシテ之レカ順位ハ未タ決定ノ時機ニ至ラス
  四政府ニ於テ曩ニ改修工事ヲ施行シタル河川ハ當初豫定計畫ノ工事ヲ完了シタル
  モノニシテ一時之ヲ中止シタルモノニアラス
  五第一期川及第二期川ハ之ヲ變更セサル見込ナリ
  六六十五川以外ノ河川ハ今日ニ於テハ直轄河川ニ追加セサル見込ナリ
  右及答辯候也
  明治四十四年三月十日內務大臣法學博士男爵平田東助
  衆議院議員石橋爲之助君提出郵便貯金ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  也
  明治四十四年三月十日內閣總理大臣侯爵桂太郞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  (別紙)
  衆議院議員石橋爲之助君提出郵便貯金ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  一日本貯金銀行貯蓄預金ノ引繼ハ預金者ノ動搖ヲ未然ニ防クノ手段トシテ特定
  ノ場所ニ限リ短期間ニ數十万人ノ預金ノ引繼ヲナスノ要アリシヲ以テ當時預金
  者ノ利便ト取扱上ノ簡捷トヲ期スル爲一時之ヲ郵便貯金ニ組入レ引繼期間終
  了後直ニ郵便貯金法第六條ノ趣旨ニ依リ之カ整理ヲナスコトトシシ第三項ニ記
  載セルカ如ク殆ント之カ整理ヲ了シタリ
  二前項ノ如ク普通郵便貯金トシテ取扱ヒタルモノニシテ郵便貯金法第四條第四號
  ヲ適用セス
  三日本貯金銀行ヨリ引繼ニ係ル預金中ノ千圓ヲ超過セルモノハ其總數一千三百
  十口ニシテ此等預金者ニ對シテハ第一項答辯ノ趣旨ニ依リ引繼期間滿了後通
  知書ヲ發シ預ケ人ノ任意ニ依リ減額處分ヲ促シ旣ニ一千二百十八口ハ之カ任
  意ノ整理ヲ了シ未濟ノ分ニ對シテハ目下再應預金者ニ處分方督促中ニ屬セリ
  國政府ハ國民ヲシテ勤儉貯蓄ノ美風ヲ涵養セシムルノ必要ヲ認メ各種ノ施設ニ依リ
  其ノ實效ヲ擧クルニ努メ規約貯金ニ就テモ之カ發達ヲ期セリ然レトモ各官衙ニ於
  テ規約貯金ヲ强制シ如何ナル事情アルモ在職中之カ貯金ノ拂戾ヲ許ササルカ如キ
  事實ナシ
  右及答辯候也
  明治四十四年三月十日遞信大臣男爵後藤新平君
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス)
  一去九日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
  韓國鐵道會計所屬資金ノ繰入ニ關スル法律案
  笠川繼孝君江原節君金額計
  鈴木友治郞君有本國藏君山大大田津坂National〓
  金尾稜嚴君淺羽靖君珠一君
  司法事務共助法案
  山岡國吉君高森新君夏井保四郞君
  中村啓次郞君武市庫太君卜部喜太郞君
  佐野春五君矢島浦太郞君花井卓藏君
  朝鮮銀行法案
  粕谷義三君榊田〓兵衞君稻村辰次郞君
  平中野日田卯太郞君大野久次君
  福秋小岡川義一一吉君君君信一郞君板東勘五郞君
  田又高柳覺太郎君小寺謙吉君
  富田幸次郞君淺羽靖君鈴木摠兵衞君
  岡崎運兵衞君早速整爾君濱岡光哲君
  一明治四十三年勅令第三百二十四號(承諾ヲ求ムル件)委員木戶豐吉君辭任
  ニ付キ其補闕トシテ中村啓次郎君ヲ議長ニ於テ選定セリ
  一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
  朝鮮銀行法案委員會
  川平吉君
  委員長野田卯太郎君理事富粕小田谷義三君
  幸次郞君
  韓國鐵道會計所屬資金ノ繰入ニ關スル法律案委員會
  委員長笠川繼孝君理事山田珠一君
  司法事務共助法案委員會
  委員長卜部喜太郞君理事武市庫太君
  〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
  言論出版ノ自由及藝術ノ取締ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  明治四十四年二月二十三日
  提出者關和知贊成者石田仁太郞
  外三十人
  言論出版ノ自由及藝術ノ取締ニ關スル質問主意書
  政府ノ言論出版ノ自由及藝術ノ取締ハ往々ニシテ人權ヲ抑壓シ文化ヲ沮害スルノ
  嫌ヒアリ其ノ方針如何
  右及質問候也
  小坂鑛山鑛煙毒豫防方法及被害救濟ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據り提出候也
  明治四十四年三月十一日
  提出者荒谷桂吉贊成者竹田文吉
  外三十三人
  小坂鑛山鑛煙毒豫防方法及被害救濟ニ關スル質問主意書
  一鑛毒調査ニ於テ昨年中實施シタル小坂鑛山鑛煙毒豫防ニ付テノ調査及除害方
  法施設ノ實況及其成績如何
  一昨年中ニ於ケル同鑛煙毒被害ノ森林耕作地ノ段別及被害ノ度合ハ之ヲ先年ノ
  調査ニ比較シテ其ノ增減ノ實數幾何ナルヤ
  一同被害地ニ設置セラレタル農作試驗場施設ノ實況如何又其ノ成績ニ付無害地
  ト比較シテ被害ノ度合幾何ナルヤ
  一完全ナル除害方法ヲ實施セサル期間ニ於テハ應急救濟ノ道ヲ講スルヲ以テ至當ナ
  ル所置ナリト信ス其ノ方法トシテハ被害物ニ對シ鑛業者ヲシテ相當ノ賠償ヲ爲サ
  シメ又森林農作物ノ發芽開花結實ノ期ニ於テ製煉高ヲ制限停止セシムルノ外ナカ
  ルベシト思フ旣ニ昨年中四坂島製煉所被害地ニ於テハ當局者監督ノ下ニ鑛業
  者ト被害地ノ間ニ其契約ヲ締結セリト聞ク政府ハ小坂鑛山被害地ニ於テモ該方
  法ヲ採用スルヲ以テ相當ナリト思料セサルヤ又別段ナル考案ヲ有スルヤ
  一小坂鑛山ハ民有森林畑作物ノ被害ニ對シテハ多少ノ賠償ヲ爲シツツアルモ田作
  物ノ被害ニ對シテハ二三箇村ノ外之ガ賠償ヲ爲ササル如シ小坂鑛山ノ被害地ハ
  四坂島製煉所被害地ヨリモ多大ナル事實ハ旣ニ政府ノ認ムル所ナリ而テ未タ何
  等ノ處置ヲ爲ササル其ノ理由如何
  右及質問候事項ハ明白ノ事實ナルヲ以テ其趣旨辯明ヲ爲ササルニ付答辯ハ文書ヲ
  以テセラレ度候也
  朝鮮穀物移入稅ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  明治四十四年三月十一日
  提出者大內暢三石橋爲之助
  贊成者藏原惟郭
  外三十五人
  朝鮮穀物移入稅ニ關スル質問主意書
  朝鮮ニ於ケル輸出及移出品ハ農產物ニシテ就中穀物ヲ以テ輸移出貿易ノ重要品ト
  爲シ常ニ全輸移出額ノ七割內外ヲ占メ每年米穀ノミノ輸移出額少クモ九百万圓乃
  至一千二百万圓ヲ下ラス依テ以テ購買力ヲ增進シ其一箇年ノ輪移入額三千七百
  万圓乃至四千万圓ノ間ニアリ而モ其輸移入品ノ十分ノ八內外ハ悉ク之ヲ母國製
  產品ニ仰キ亦輪移出ノ穀物ハ殆ト其ノ全部ヲ母國ニ移出セリ因テ朝鮮ニ於ケル穀
  物輸移出ノ增減ハ直ニ以テ朝鮮人ノ購買力如何ニ關シ延テ母國製產品ノ朝鮮移
  出ニ大ナル影響ヲ及シ相互ノ不利殆ト計ルヘカラスサレハ現行法ニ依ルトキハ朝鮮ニ
  於ケル一般農民ノ收入ヲ減シ其發達ヲ砠碍スルノミナラス朝鮮ニ於ケル農業ノ進
  步發達ヲ圖ラムトシテ常ニ多大ノ經費ヲ投シ幾多ノ奬勵的方法ヲ講シツヽアル主旨
  ニ矛盾スルモノト認ム政府ノ所見如何
  右質問ハ其趣旨辯明ヲ爲ササルニ付直ニ答辯有之度候也

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• 002・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　會議ヲ開キマス、御紹介ヲ致シマス、補缺選舉ニ當選セラ
  レマシタ大阪府郡部選出議員森秀次君ヲ御紹介致シマス
  〔森秀次君起立〕
  〔拍手起ル〕

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• 003・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　先達御注意ヲ申シテ置キマシタガ、此頃武豐築港ノ特別委
  員會ニ委員諸君ノ御出席ガ無クシテ流會ニナッタコトガ度々アルカラ、特別委員ノ諸君ハ
  此特別委員會ニ限ラズ、他ノ特別委員會ニモ御出席ニナッテ、成ベク委員會ノ進步ヲ
  速ニセラレンコトヲ望ミマス、質問ノ第一ハ提出者ヨリ延期ノ申出ガアリルス、第二、言論
  出版ノ自由及藝術ノ取締ニ關スル質問關和知君-此場合御諮ヲ致シマス、竹內
  〓明君ヨリ病氣ニ付、今十一日ヨリ八日間請暇ノ願出ガアリマス、許可シテ御異議ハア
  リマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 004・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ許可スルコトヽ致シマス
  〔關和知君登壇〕

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• 005・關和知

  ○關和知君　帝國憲法ノ實施セラレテ玆ニ二十餘年、此場合ニ於テ尙吾人臣民ノ
  權利自由ニ關スル疑義ニ付テ更ニ政府ノ答辯ヲ求ムルト云フ如キ事情ニ逢著致シマシ
  タルコトハ、獨リ我憲法ノタメニ悲ムノミナラズ、更ニ以テ我文明ノタメニ惜ムノデアリマ
  ス、帝國憲法ノ第二十八條及二十九條ニ於テハ吾人ノ信〓ノ自由ハ勿論、言論、著
  作、印行、集會及結社ノ自由ニ付テ明カニ保障セラレテ居ルノデアル、其明文ニ於テ、
  或ハ安寧秩序ヲ妨ケザル限ニ於テ、或ハ法律ノ範圍內ニ於テト云フガ如キ文字ハ、畢
  竟スルニ消極的ノ意義ヲ示スモノデアルノデアル、國既ニ立憲ノ制ヲ布キ、民ニ文明ノ政
  治ヲ行ハルヽ以上ハ其國民ノ思想ノ自由、言論出版ノ自由等ニ付テハ之ヲ積極的ニ
  擁護シ、且尊重スルト云フコトハ蓋シ爲政家當然ノ義務デナケレバナラヌノデアル、若モ
  此自由ニ對シテ憲法土ノ消極的意味ヲ濫用スルガ如キコトガ苟且ニモアリマシタナラバ
  憲法ノ明文ナルモノハ全ク無用ノ文字ト化シ去ッテ、臣民ノ思想ノ自由ハ玆ニ蹂〓セラ
  レ、一國ノ文化玆ニ衰ヘテ憲法ノ精神又全ク空シキニ歸スルト云フ次第ニ陷ルノデア
  ル、今私ハ我政府ノ從來、否ナ、現在ニ於テモ此國民ノ自由ニ對スル態度及ヒ方針ニ
  付テ一二意ニ充タザルトコロノモノヲ舉ゲテ、而シテ政府ノ責任アル答辯ヲ求メヤウト思
  ウノデアル、第一ニ質問致スベキ箇條ハ我政府當局者ノ意見トシテハ苟モ日本帝國ノ臣
  民ニシテ、彼ノ社會主義ノ思想ヲ有シ、或ハ社會主義ノ學說學理ヲ〓究スルモノニ對シ
  テ、之ガ言論出版ノ自由ヲ保障セザル意味デアルカ否ヤト云フコトデアルノデアル、社會主
  義ト云ヒ或ハ危險思想ト云フコトハ當議會ノ初メヨリ幾度カ此壇上デ繰返サレタトコロ
  ノ言葉デアリマスル、殊ニ先日澤君ノ質問ニ對スル政府ノ答辯ニ依リマスルト云フト、凡ソ國
  家ノ現狀ヲ破壞シ社會ノ秩序ヲ紊亂セントスルモノ、甚シキハ國家ノ存在ヲ否認セント
  スルモノニ對シテハ社會主義ト云ヒ、無政府主義ト云ヒ、其他如何ナル主義ニ拘ラズ、
  國家ハ相當ナル自衞ノ途ヲ講ジナケレバナラヌ、ト斯ウ云フ意味ノ答辯ヲ致シテ居ル、而
  シテソレニ續イテ社會主義ニ對スル學說上ノ定義ハ政府之ヲ與フルノ必要ヲ認メズト云
  フ答辯ヲ得マシタガ、我輩ノ質問ハ更ニ此答辯ニ依ッテ愈〓其必要ヲ感ジタノデアリマス
  ル社會主義ト無政府主義ト云フモノニ對シテ無論學說上ノ定義等ヲ我〓ハ政府ニ
  要求モセナイノデアル、又政府ガ之ヲ與フベキモノデモナイ、併シ如何ナルモノヲ社會主
  義ト云ヒ、如何ナルモノヲ無政府主義ト云フカト云ヘル此實際ニ付テハ當局者トシテハ
  明カニ認メルトココノモノガナケレバナラヌノデアル、其間ニ同一ナルモノガアルカ、或ハ區
  別ノ存スルモノデアルカト云フコトハ承知シテ居ラナクテハ甚ダ困ルコトデアルト思フ、元來
  無政府主義ト云フモノニ付テハ彼ノ「トルストイ」ダトカ、或ハ「スチルナー」トカ或ハ「ゴル
  ドマン」ト云フガ如キ、全クノ理想派ノ所謂學究的無政府主義ヲ唱フル者ガアルガ、是
  等ハ別ト致シマシテ、彼ノ狂的或ハ暴力的ノ無政府主義、國ノ權力ヲ呪ヒ、動モスレ
  バ國家ノ元首ニ向ッテ危害ヲ加ヘントスルガ如キ、斯ル種類ノ無政府主義ニ對シマシテ
  ハ是ハ言フマデモナク、人道ノ敵デアル、而シテ是等主義者ヲ撲滅シ、之ヲ鎭壓スルト
  云フコトハ、是ハ文明ノ國家國民共通ノ大事業デアルノデ是等ニ付テ嚴重ナル取締
  ヲスルト云フコトハ無論國家ノ責任トシテ必要デアリマス併ナガラ一方社會主義ト
  云フモノニ付テハ是ハ決シテ斯ル狂的野蠻的ナルトコロノ無政府主義ト同一視スベキ
  性質ノモノデハナイノデアル、其間ニ判然タルトコロノ學術上ニ於テモ實際上ニ於テモ、
  大ナル差別ガ存在シテ居ルノデアリマス、私ハ玆ニ自ラ社會主義者ト云フノデハナイノデ
  アル、社會主義者デハナイノデアル、又社會主義ノ學說ニ對シテハ或缺〓ヲモ認メテ居
  ル、又非難スベキトコロノ箇條モ知ッテ居ル者デアル、併シ自ラ知ル限リニ於テ社會主義
  ノ如何ナルモノデアルカト云フコトヲ簡單ニ此處デ申上ゲレバ社會主義ノ思想ト云フモノ
  ハ、是ハ一方極端ナル個人主義ニ反對ヲシテ、共同的、團體的ノ思想ヲ根柢トシテ、
  ソレヨリ起ッテ來タトコロノ一ノ哲學的思想デアルノデアルソレガ實際社會ニ現ハレ來ッ
  テ、最モ勢力ヲ得テ來タノハ、丁度十八世紀ノ中項、歐羅巴ニ於ケル產業上ノ大革
  命ニ依ッテ資本家、勞力者此經濟上ノ位置ニ大ナル變動ヲ生ジテ來ルトコロヨリ是ガ
  實際ニ勢力ヲ現ハシテ、一ノ力アル運動トナッテ來タノデ、而シテ學問上ニ於テ彼ノ「カー
  ルマックス」ナル人ニ依リマシテ、全ク組織ノアル系統ノアル、堂々タル是ハ經濟上ノ
  學說トナッテ居ルノデアル、成程其社會主義ノ間ニモ幾多ノ分派ガアリマシテ、其中ニハ
  稍〓急激ナル論者モアリマスル、過激ナルトコロノ分子モアルニハ相違ナイ、併シ大體社
  會主義ナルモノニ付テ如何ナルモノデアルカト云ヘバ、之ヲ約メテ言ヒマスルト、固ヨリ文
  明社會當然ニ起リ來ルトコロノ貧富ノ競爭、之ニ對スルトコロノ危險ヲ豫防スル經濟
  的ノ方面ヨリシテ、社會ノ多數人民ニ向ッテヨリ好キ平和ト、ヨリ大ナル幸福ヲ與ヘヤウ
  トスルトコロノ理想ヲ實現シヤウト期スルノガ、卽チ社會主義デアルノデ、是ハ儒〓ニ於
  テモ相生養スルノ道ト云フ、是ハ殆ド同ジデアルノデアル博愛衆ニ及ポスト云フ大御心
  モ解釋ニ依ッテハ此〓ニ於テ一致ヲ見出スコトガ出來ルノデアリマス、然ルニ何事デアリ
  マスルカ、我政府ノ當局者ハ社會主義ト云ヘバ、或ハ社會主義ノ學說ヲ〓究スル者ニ
  向ッテモ、尙所謂國家ノ現狀ヲ破壞スル者デアルト認ムルノデアルカ、或ハ社會ノ秩序ヲ
  紊亂スル者ト認ムルノデアルカ、或ハ國家ノ存在ヲモ否認スル者ト認ムルノデアリマスル
  カ、現ニ我親交國ナル殊ニ同盟國タルトコロノ英國ニ於テハ如何デアル、英國ノ現內閣ノ
  閣臣ノ中ニハ彼ノ「ジヨージ」ノ如キ「パーンス」ノ如キ人〓ハ、孰レモ社會主義者デアルノ
  デアル、又社會主義ノ理想ヲ以テ政治ヲ運用スルトコロノ人デアルノデアル、英吉利ニ
  於テ已ニ然リデアル獨逸ノ如キ國家、アノ動モスレバ帝王神權說ヲ振舞ハストコロノ
  國家萬能主義ノアノ獨逸ノ國柄ニ於テヾスラ、彼ノ「カイザル」陛下ノ下ニ於ケル獨逸ノ
  議會ノ中ニハ四十餘人ノ社會主義者、獨逸ハ御承知ノ如クニ幾多ノ小政黨ニ分レテ
  居リマスルカラシテ、四十餘人ヲ有シテ居ル社會主義者ノ一團體ハ、議會ニ於テハ第
  三黨デアッテ、實ニ隱タル一勢力デアルノデアル、其他歐羅巴、亞米利加ニ於テ社會主
  義ヲ唱フル人、社會主義ヲ講ズルトコロノ學者、是ハ數限リナイノデアル、又社會主義
  ノ理想ト云フモノガ現在中央ノ政治若クハ地方ノ政治ニ於テ著々トシテ其實行ノ〓ニ
  付テ居ルト云フコトハ明カナル事實デアリマスル、世界ノ文明國所謂一等國ノ是等ノ國
  國ニ於テハ社會主義ト云フモノハ此ノ如ク尊重セラレ、此ノ如ク勢力ヲ存シテ居ル、極メ
  テ危險ナルモノデナク、極メテ兇惡ナルモノデナク、寬大ニ取扱ハレテ居ルニ拘ラズ、獨リ
  此東洋ノ大帝國タルトコロノ日本ニ於テ、社會主義ト云ヘバ直ニ叛賊ノ子ノ如ク、社
  會主義ト云ヘバ殆ド惡魔ノ叫ノ如クニ迎ヘラルヽト云フコトハ何事デアル、歐米ノ先進
  國ニ於テ此ノ如キ社會主義ガ何ガ故ニ日本帝國ニ於テ獨リ此ノ如ク危險ナルモノト認
  メラルヽノデアル、凡ソ學理ヲ〓究スル、或ハ種々ノ問題ヲ〓究スルト云フコトニ付テハ、
  國民ノ思想ノ自由、自由ノ討究ヲ許スト云フコトガ、是ガ文明國ノ常道デアル、此自
  由ノ範圍ノ廣イダケソレダケ文明國タルトコロノ價値ヲ持ッテ居ルノデアル、然ルニモ拘ラ
  ズ我政府ハ社會主義ト云ヘバ其言論ヲ抑止シ、其印刷物ノ發賣ヲ禁止スル、最近ニ
  至リマシテ聞ク所ニ依ルト外國カラシテ入ッテ來マスルトコロノ社會主義ノ書物、或ハ新
  聞雜誌ニ就テモ、殆ド禁止ノ態度ヲ執ッテ居ルト云フコトニ聞イテ居ル、其一二ヲ言ヒ
  マスルト亞米利加デ發行シテ居リマス、紐育デ出テ居ルトコロノ「コール」ト云フ雜誌、或
  ハ加奈陀ノ晩香坡デ出テ居ルトコロノ「ウエスタンクラリオン」ト云フ、是モ週刊ノ雜誌「シ
  カゴ」デ出テ居ルトコロノ新聞デ「シカゴソシアリストデーリー」ト云フ新聞、或ハ英國ニ於テ
  英國ノ倫敦ノ眞中ニ於テ發行セラレテ居ルトコロノ勞働者ノ機關タル「レーボア、リーダー」
  ト云フ雜誌、是モ昨年十一月頃カラ我政府ハ全ク禁示シテ日本ノ內地ニハ入レナイト
  云フコトニ承ッテ居リマス、之ガ果シテ文明國タリ一等國タルトコロノ名譽デアリマセウカ、
  殊ニ甚シキニ至リマシテハ昨年我文部省ハ全國ノ中學校或ハ圖書館ニ訓令ヲ發シマシ
  テ幾多ノ書物ヲ參考書トシテ用井、或ハ之ヲ閱覽スルコトヲ禁ジタ、其書物ノ中ニ現ニ
  京都大學ノ確カ法科大學長カヲ勤メテ居ルト聞イテ居リマス、何レニシテモ京都大學
  ノ〓授タル法學博士田島錦治君ノ經營原論ノ書物ガ其中ノ一册デアルト云フコト
  デアル、田島博士ノ經濟原論ナルモノハ吾輩モ嘗テ學窻ニ於テ繙イタコトガアル書物デ
  アル、成程其中ニ社會主義ノ記述ハアル併シ其記述タルヤ全ク純粹ナル學術上ノ
  評論デアッテ、而モ其趣旨ハ決シテ社會主義ニ同情ヲ表シ、若クハ是ニ贊成ヲ表シテ居
  ルモノデハナイノデアル明カニ社會主義ノ利害ヲ比較シテ、サウシテ寧ロ之ヲ否定シテ
  居ルトコロノ學說ヲ立テヽ居ルノデアルケレドモ此書物ノ中ニ唯社會主義ト云フ文字
  ガアリ、其一筋ガアルト云フタメニ、之ヲ多クノ學生若クハ公衆ニ觀覽セシムルト云フコ
  トガ危險デアルト云フヤウナ誤解カラシテ、止メテ居ルト云フコトデアリマス諸君經濟學
  ヲ〓究スルニ當ッテ、殊ニ近代ノ經濟學ヲ〓究スルニ於テ、社會主義ト云フモノヲ取除
  ケテ、如何ニシテ經濟學ノ〓究ガ出來ルノデアルカ、又殊ニ經濟歷史ヲ〓究スル上ニ於
  テ、社會主義ヲ取除ケテ聯絡アル系統アルトコロノ經濟歷史ノ〓究ガ出來マスルカ、斯
  ヤウナル誤解、斯ヤウナル不都合ナル取締ヲ行ウテ、而シテ國民ニ取ッテ最モ貴重ナル、
  最モ神聖ナルトコロノ言論、印行ノ自由ヲ束縛スルト云フコトハ、此政府ノ爲ス行爲其
  モノガ-却テ社會主義ト政府ガ認ムルトコロノ其危險ナル思想ヨリモ、或ハ政府ガ認
  メテ安寧秩序ヲ紊ルト云フソレヨリモ、更二一層ニ危險ナル、更ニ一層社會ノ秩序ヲ紊
  亂スルトコロノ政治ノ方針ト斷言シテ憚ラナイ、政府ガ社會主義ト無政府主義ヲ同一
  視シテ社會主義ト云ヘバ直ニ無政府主義ト見、無政府主義ト云ヘバ直ニ社會主義ト
  混同スルトコロノコトハマダシモ恕スベシ、更ニ進ンデ社會主義ト社會政策ト云フコト
  ヲ混同スルニ至ッテハ實ニ沙汰ノ限リト言ハナケレバナラナイ、社會政策ナルモノハ學理ノ
  上カラ云ヒマスルト云フト、根本ニ於テ社會主義ニ反對シテ居ルモノデアル、社會主義ガ
  唱道セラレ、流行スルコトヲ防止センガタメニ、社會政策ナルモノガ最近諸國ノ政治家學
  者ニ依ッテ攻究セラレテ居ルノデアル、然ルニ我政府ハ熱心ナル眞面目ナルトコロノ學者、
  政治家ノ一部ニ於テ、社會政策ヲ最近〓究シテ居リマスル其人〓ノ或者ニ向ッテハ、
  殆ド無政府主義者ニ對スルト同ジヤウナ態度ヲ以テ之ニ刑事巡査ヲ附シ、之ヲ注意人
  物ナリ、之ヲ危險人物ナリト警視廳ノ臺帳ニハ記錄セラレテ、サウシテ其出入動作ニ
  向ッテ嚴重ナル取締ヲ爲シテ居ルト云フコトデアリマス、甚シキ事實ハ現ニ私ノ友人デアッ
  テ能ク知ッテ居ルトコロノ或大學ノ、名前ハ言ヒマセヌケレドモ、立派ナル是ハ學者デア
  ル、其人格思想ノ點ニ於テモ亦極メテ溫厚篤實ナルトコロノ〓授デアル、此人ガ社會
  政策ノ〓究ニ熱心ナリト云フガタメニ或時警察官ガ其人ヲ訪ネテ、其人ニ向ッテ、斯ウ云
  フ質問ヲシタノデアル、アナタハ我皇室ニ對シテ如何ナル御考ヲ持ッテ居ラルヽカ、斯ウ云
  フ突飛ニシテ且無禮ナルトコロノ質問ヲ其警察官ガ此社會政策ノ〓究ニ熱心ナル學者
  ニ向ッテ試ミラレタノデアル、諸君、我皇室ニ向ッテ如何ナル考ヲ持ッテ居ルカト云フガ如
  キ質問ハ是ハ上聖天子ノ寵遇ヲ辱ウシ、下ハ國家ノ文〓ヲ掌ルトコロノ大任ヲ負ウ
  テ居ル其人ミ、ソレニ從フトコロノ我官僚ノ人〓此輩ガ事ヲ國定ノ〓科書ニ假リテ、殆
  ド此全甌無缺ノ國體ニ拭フベカラザルトコロノ罅ヲ與ヘ、萬世一系ノ皇統ニ向ッテ之ヲ
  紛更セント試ムルガ如キ、斯ル危險ナル、斯ル恐ルベキ思想ヲ持ッテ居ル人〓ニ向ッテ
  ヨ、汝ハ我皇室ニ向ッテ如何ナル考ヲ持ッテ居ルカト云フ質問ハ、是ハ値打アル質問デ
  アル、又必要ナル質問デアル併シソレラノ人〓ヲ除イテ此忠良ナルトコロノ五千万ノ同
  胞ガ縱令社會主義ヲ唱ヘヤウガ、或ハ國家主義ヲ唱ヘヤウガ、或ハ個人主義ヲ唱ヘヤ
  ウガ、ソレラノ又學術ヲ〓究スルトコロノ人〓ニ向ッテ、此ノ如キ質問ヲ試ムルト云フハ全
  ク意味ヲナサヾルノミナラズ、其質問ヲ發スルト云フコト自身ガ皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆スルト
  コロノモノト云ウテ差支ナイノデアラウト思フ、斯ヤウナル誤ッタルトコロノ誤解ヨリ、國民
  ノ自由ニ對シ、又國民ノ學問ノ〓究ノ上ニ幾多ノ禍害ヲ與ヘテ居ルカト云フコトハ、我
  當局者ハ承知シテ居ルノデアルカドウデアルカ、此〓ニ付テ政府ノ明答ヲ得タイト思フノ
  デアリマス、其次ニハ我國ノ文學或ハ藝術ニ對スル我政府ノ方針如何デアルノデアリマ
  入、之ガ私ノ質問シタイ第二ノ點デアル、昨年ハ文學藝術ニ關スルトコロノ書籍或ハ新
  聞雜誌ノ其發賣ヲ禁止セラレタル數ニ於テハ、其數ノ多キコトニ於テハ憲法政治創始
  以來殆ド比類ナキ程ノ多數ニ上ッテ居ルノデアル殊ニ確カ九月ノ頃ト記憶シテ居リマ
  スガ、一時ニ二十五種ノ出版物ガ發賣ヲ禁止セラレテ居ル、是ハ時シモ我當局者ガ一
  時神經過敏ニ陷ツタルトコロノ結果デモゴザイマセウガ、兔ニ角モ此ノ如ク多數ノ出版物
  ヲ一時ニ其發賣ヲ禁止スルト云フガ如キコトハ餘リノ狼狽ヘサ加減ト思ハレルノデアリ
  マハ、凡ソ文學或ハ藝術ト云フガ如キモノハ諸君ノ御案內ノ如クニ是ハ現實界實行界
  以上ニ別ノ天地ヲ開イテ居ルモノデアル、此窮窟ナルトコロノ實行界ニ向ッテ或鬱屈セル
  トコロノ蒸氣ヲ漏スガタメノ安全瓣、此安全瓣ガ軈テ文學藝術ノ天地デアルノデアル
  現實界ニ向ッテ一ノ緩和劑ヲ供スルト云フコトガ是ガ文學藝術ノ使命デアルノデアル、成
  程近來我國ニ於ケル幾多ノ小說或ハ雜著ノ中ニハ隨分輕佻ナル浮薄ナル人心ニ投ゼ
  ンガタメニ忌ハシキトコロノ書物ノ發行セラレナイデハナイノデアル、併ナガラ苟モ今日我
  社會ノ殊ニ文學社會ニ於ケル純文藝家ノ作物ト云フモノニ付テハ決シテ此ノ如キ界
  劣ナル目的ヲ以テ常ニ書カレテ居ルノデハナイノデアル、或ハ當局者或ハ一部ノ杞憂ヲ懷
  イテ居ルトコロノ人ミノ眼カラ見マスルト其作物ハ往々ニシテ幼稚ナル讀書ヲ蠧惑スルト
  云フガ如キ氣遣ヲ持ッテ居ルカモ知ラナイ、併シ是ハ事實ニ於テ甚ダ適當シテ居ラヌ觀
  察デアルノデ今日ノ新興文學、近代的文藝ヲ味フダケノ人ミハ少クトモ中學〓育ヲ
  了ヘタルソレ以上ノ知識能力ヲ持ッテ居ル人ミデナケレバ近代文藝ノ味ハ解釋ハ出來
  ヌノデアル、若モ所謂感染スル、或ハ蠹惑サレルト云フガ如キ部類ノ讀者ハ是ハソレ以
  下ノ讀者デ、隨ヲテ又ツレ等ノ讀物ト云フモノハ所謂舊式的ノ文藝、或ハ講談物ト云
  フノデアルノデアル「バチルス」ハ之ヲ暗所ニ隱蔽シテ置クト云フコトハ「バチルス」ヲ撲滅ス
  ルトコロノ方法デハナイノデアル、是ハ白晝堂々ト天日ニ曝シテ、サウシテ之ヲ撲滅スベキ
  モノデアル、若シ之ヲ暗所ニ隱蔽スルヤウナ手段ヲ取リマシタナラバ、其「バチルス」ハ益〓其
  蔓延ノ勢ヲ助長スルノミデアル、ソレガ證據ニハ當局者ガ認メテ以テ發賣禁止スルトコロノ
  書物)或ハ雜誌、小說ノ類ガ却テ世間ノ好奇心ヲ招イテ、意外ナル所ニ多數ノ讀者ヲ
  持ツト云フコトハ事實テアルノデアル、斯樣ナル近眼的ノ又非文明的ノ取締ヲナサルヽ
  結果ト致シテ、一面ニ於テ窮窟ナル取締ヲナス、又半面ニハ所謂世間ノ童謠トカ、或
  ハ俗謠トカ云フ如キ、兒童走卒ノ口端ニ上ルトコロノ彼ノ街ニ唱ヘラレルトコロノ殆ド人
  ヲシテ耳ヲ蔽ウテ走ラシムルガ如キ淫猥、野界ナル流行歌ガ、却テ社會ニ大勢力ヲ持ッ
  テ、社會ノ人心ヲ毒シテ居ルト云フコトハ、明カニ誤レル取締法ノ反動デアルノデアル、
  尙續イテ演劇ノ不取締ニ付テ政府ニ質問ヲシテ見タイ、是ハツイ此程我警視廳ハ演藝
  ノ劇物ノ取締ニ付テ取締規則ヲ發シタ、其取締ノ箇條トシテハ勸善善懲惡ノ趣旨ニ背ク
  コトハ演ズルコトガ出來ナイ、或ハ政治的ノ演劇ヲ材料トスルコトハ許サナイト云フヤウナ
  事柄ガアルノデアル、凡ソ勸善懲惡トカ云フガ如キ是等ノ文字ハ、又是等ノ解釋ハ、決
  シテ區々タル警視廳アタリノ其凡眼者流ニ依ッテ判斷ノ出來ベキモノデハナイノデアル、或
  ハ善ト云ヒ、或ハ惡ト云フコトハ社會ノ進步ト共ニ移リ變ッテ居ルノデアル若シ彼等ノ
  ヤウナ勸善懲惡ト云フ意味ヲ以テスルナラバ現ニ忠臣藏ノ如キハ如何デアル、是ハ今
  日ノ思想ヲ以テスルナラバ一ノ是ハ犯罪的行爲デアルノデアル、又近松ノ傑作トスル
  其重ナルモノハ所謂心中物デアル是等モ到底舞臺ニ上スベキトコロノ性質ノモノデハ
  ナイノデアリマス、社會ノ進步ニ依ヲテ新シキ善ガ生ジ、社會ノ進步ニ依ッテ新シキ惡ガ
  之ニ伴フ、此新シキトコロノ善ト、新シキ惡ト云フモノニ向ッテ、其價値其實質ヲ批判シ
  テ、之ヲ社會ニ供スルト云フコトガ、此演藝作者ノ本領デアルノデアル、又政治的ノ材
  料云々ト云フガ如キコトハ、是ハ時勢後レトモ、頑冥不靈トモ殆ド評シヤウノナイ事柄
  デアル、今日ノ歐羅巴、亞米利加ノ先進國ニ於ケル劇場、彼地ノ舞臺ニ於テ演ゼラ
  レルトコロノ演劇ノ多クハ社會的或ハ政治的ノ仕組ヲ持ッタトコロノ作物ガ、是ガ
  場ニ上セラレテ居ルノデアル、是等ニ依ッテ社會ノ人心ヲ利導シ、之ヲ化導シテ行ッテ居
  ルノデアル、政治的材料政治的意味ヲ持ッタル演藝ヲ禁ズルト云フガ如キハ寧ロ此日
  本ノ文藝ニ對スルトコロノ恐ルベキ迫害デアルノデアル、外ニ向ッテハ日本ノ文學ノ恥辱
  デアル、斯樣ニ述ベテ參リマシタル第一ニ社會主義ヲ講ズルト云フコト、、或ハ社會主義
  ノ思想ト云フコトニ對シテハ、我政府ハ臣民ニ向ッテ憲法上ノ保障ヲ與ヘナイノデアルカ、
  第二ハ我政府ハ文學或ハ藝術ニ向ッテノ取締ニ付キ、今少シク之ヲ尊重視シ、今少シ
  ク是ガ取締ヲ寛容自由ニスルトコロノ意思ハナキカ否ヤト云フ、此二〓ガ私ノ質問ノ要
  旨デアリマス、謹ンデ日本ノ文明ノタメニ、又帝國ノ憲法ノタメニ、此質問ヲ提起シテ我
  當局ノ明答ヲ願フ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=5

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• 006・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　第三藥品取締ニ關スル質問ハ提出者カラ撤囘サレマシタ、
  第四ノ馬匹改良方針ニ關スル質問ハ提出者カラ延期サレマシタ、日程第一東京市區
  改正條例中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
  第東京市區改正條例中改正法律案(政府提出)第一讀會
  〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス以下之ニ傚フ〕
  東京市區改正條例中改正法律案
  東京市區改正條例中左ノ通改正ス
  第七條中「五十萬圓」ヲ「百萬圓」ニ「百萬圓」ヲ「一一百萬圓」ニ改ム
  附則
  本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員法學博士一木喜德郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=6

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• 007・一木喜徳郎

  ○政府委員(法學博士一木喜德郞君)　本案ハ極メテ簡單ナル法案デゴザイマス、現
  行ノ市區改正條例ニ於テハ第三條及第五條ヲ以テ市區改正ノ財源トシテ特別稅ヲ
  徵收スルコトヲ認メ、竝ニ河岸地ノ收入ヲ以テ其費用ニ充テルト云フコトヲ規定シテゴ
  ザイマス、然ルニ第八條ニ於テ其金額ヲ制限致シテ五十万圓ヨリ少カラズ百万圓ヨリ
  多カラズト云フ制限ヲ設ケテ居リマスルタメニ、此三條五條ノ財源ガ制限サレテ居ルノデ
  ゴザイマス、然ルニ市區改正ノ事業ハ段々進捗シテ參リマシテ、今後尙擴張ヲ致サナケレ
  バナラヌ事業ガ頗ル多イノデアリマス、就中下水道ノ調査ハ既ニ結了致シマシテ、目下
  之ニ著手シナケレバナラヌ時機ニ達シテ居ルノデゴザイマス、此際ニ於テ市區改正條例ノ
  改正ヲ行ヒ、百万圓ト云フ制限ヲ變更致シテ、二百万圓ト致シマシテ、三條、五條ノ
  規定ニ依シテ收入シ得ベキ其財源ヲ利用致シテ、是等ノ事業ヲ經營致シタイト云フノ
  ガ、本案提出ノ趣旨デゴザイマス、東京市モ此條例ガ改正ニナリマスル上ハ、此財源ニ
  依ッテ下水道ノ工事ニ直ニ著手シタイト云フ希望ヲ持ッテ居ルノデアリマス、因ッテ本案ヲ
  提出致シタ次第デゴザイマス、何卒御協贊ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=7

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• 008・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　別ニ質疑ガナイヤウデアリマスカラ、日程第二、右委員ノ選
  舉ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=8

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• 009・田川大吉郎

  ○田川大吉郞君　議長々々、質問ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=9

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• 010・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　質問デスカ、ソレナラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=10

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• 011・田川大吉郎

  ○田川大吉郞君　唯今提案ニナッテ居ル市區改正條例ノ改正ニ付キマシテハ、東京
  市ノ意向ヲ察シマスルニ、敢テ反對ノ模樣ハナイヤウデアリマス、御說明ニナリマシタ如
  〃本條例ノ改正ヲ了シマシタル結果ヲ期待シテ、東京市ハ改良下水道ノコトニ著手
  セントシテ居ルノデアリマス、故ニ本條例ノ改正ハ東京市ノ希望シテ居ル改良下水道工
  事ノ進捗ニ向ッテ、一段ノ歩ヲ進メルモノデアリマスガ、東京市ノ改良下水道ニ著手致
  シマスルニ付テハ、更ニ一段ノ大切ナル希望ガアル、其希望ハ此改良下水道工事ニ向ツ
  テ國家ヨリ東京市ニ相當ノ補給ヲ仰ギタイノデアリマス、此精神ヲ以テ昨年以來本年
  度ノ豫算ノ編成セラレマスルニ當リマシテ、東京市ハ國庫ノ補助ヲ政府ニ向ッテ希望致
  シタノデアリマスガ、本年度ニ於ケル豫算編成ノ都合上、到底之ヲ實施セラルヽニ至ラズ
  シテ止ンデ居ルノデアリマス、故ニ此場合ニ於テ政府ニ向ッテ御尋ヲ致シ、玆ニ其精神ノ
  アルトコロヲ明カニシテ戴キタイ〓ハ、東京市ガ今囘本條例改正ノ結果ニ依ッテ改良下
  水道ノ工事ニ著手セントスルニ當リ、政府ハ將來財政上ニ餘力アル機會ヲ見計ッテ、東
  京市ノ希望ヲ容レラレ、東京市ノ改良下水道ノ工事ニ補助セラルヽノ意思アルヤ否ヤ、
  是ガ第一點デアリマス、又ソレニ對シテ補助スルニ田リマシテハ、東京市ガ四十四年度ヨ
  リ著手セントスル其四十四年度カラ起ル經費ノ全體ニ向ッテ補助セラルヽノ意思アリヤ
  否ヤ、ツマリ言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ若シ政府ガ四十六年カ、四十七年カ、將來ノ二三
  年ノ後ニ於テ初メテ東京市ノ下水道ニ補助スベキ財政上ニ餘裕ヲ得テ之ヲ提案セラルヽ
  日ニハ、其補助ガ四十六年ナリ四十七年ナリカラ始メルノデナクシテ、東京市ガ四十四年
  度カラ始メテ居ルトスレバ、其時期カラ其時期ノ經費ニ遡ッテ補給ヲ東京市ハ期待スル
  コトガ出來ルヤ否否、此意味ヲ此機會ニ於テ政府ヨリ言明セラレンコトヲ希望スルノデア
  リマス、玆ニ東京市自身ハ此費用ハ東京市ト全國ノ他ノ市トヲ區別シテ二分ノ一ニ相
  當スル費用ノ補給ヲモ仰グ都合ニナッテ居リマスカラ、此事情ヲモ政府ハ含ミ置カレンコ
  トヲ希望スルノデアリマスガ、ソレ等ノコトヲ總括シテ東京市ノ改正下水道工事ニ關スル
  政府ノ意思ヲ示サレタイノデアリマス、願クハ此場合ニ於テ東京市民ヲシテ安心シテ此大
  工事ヲ決行スルニ至ラシムルニ足ルダケノ相當ナル言明アランコトヲ希望スルノデアリマス
  (內閣總理大臣侯爵桂太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=11

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• 012・桂太郎

  ○內閣總理大臣(侯爵桂太郞君)　唯今問題ニ相ナッテ居ルトコロノ法案ノ義ニ付キマ
  シテ、田川君ヨリ御質問ガゴザイマシタ、之ニ對シテ御答ヲ致サウト考ヘルノデアリマス、下水
  道ノ補助ノコトニ付テハ田川君ガ唯今述ベラレマシタ如ク、屢〓政府ハ交涉ヲ受ケタノデ
  ゴザイマシタケレドモ、財源ノナキタメニ之ニ補助ヲ與ヘルト云フ決心ヲ致スニ至ラナカッタ
  ノデアリマス、然ルニ此下水道ノコトタルヤ、、固ヨリ當然必要ノコトヽ考ヘルノデアル、故
  ニ政府財政ノ都合ヲ見計ヒマシテ、此當然ナル業務ニ對シマシテ補助ヲナシ能フ時ガ參
  リマスレバ政府ハ決シテ之ヲ拒ムノデハナイデゴザイマスガ、唯今カラ何年ヨリト云フコト
  ヲ茲ニ明言スル場合ニハ至ッテ居ラヌノデアリマス、而シテ其場合ニ至リ其步合ノ點ニ付
  テハ、是ハ今日ヨリ政府ニ於テ言明スルノマダ場合デナイト考ヘルノデアリマス、左樣御
  承知下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=12

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• 013・田川大吉郎

  ○田川大吉郞君　唯今私ノ申シマシタ先キニ遡ルト云フ意味ハ如何デアリマスカ
  (内閣總理大臣侯爵桂太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=13

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• 014・桂太郎

  ○內閣總理大臣(侯爵桂太郞君)　自然補助ヲスルニ至リマスレバ、當然ノコトデアラ
  ウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=14

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• 015・菅原傳

  ○菅原傳君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=15

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• 016・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　本案ハ議長指名特別委員九名ニ付託スルト云フコトニ御
  異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=16

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• 017・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナイト思ヒマスカラ其通リ決シマス-日程第
  三、樺太ニ於ケル漁業免許ノ取消及漁業料ノ徵收ニ關スル法律案ノ第一讀會ノ續ヲ
  開キマス、委員長川原茂輔君
  第三樺太ニ於ケル漁業免許ノ取消及漁業第一讀會ノ續委員長
  料ノ徵收ニ關スル法律案(政府提出)/報告
  〔川原茂輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=17

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• 018・川原茂輔

  ○川原茂輔君　本問題ハ大變長イ名前デアリマスガ、其內容ハ「樺太ニ於テ漁業ノ
  免許ヲ受ケタル者漁業料ノ納付ヲ怠リタルトキハ樺太廳長官ハ免許ヲ取消スコトヲ得
  樺太ニ於ケル漁業料ノ徵收ニ關シテハ國稅徵收法及明治四十年法律第三十四號ヲ
  準用ス云々」ト斯ウ云フ法案デアリマス、之ハ勅令ノ改正ヲセラレマシテ、從來漁業ヲ許
  シマスル場合ハ競爭入札ノ結果ニ依ッテ料金ヲ多ク出ス者ガ卽チ漁業ノ免許ヲ受ケテ
  居ルト云フ手續デアリマシタガ、ソレヲ改正セラレテ、卽チ樺太廳長官ガ漁業ノ免許ヲ
  與ヘル、斯ウ云フ改正ニナッタ結果モアルノデアリマス、ソレデ是マデ漁業料ノ未納ノタメ
  ニ漁場ノ取消ヲ爲シタルモノガ三十六箇所アルサウデゴザイマス、是マデニ於テ漁業料ノ
  未納ノ金額ガ二十一万六千五百八十六圓ト云フ多額ノ未納金額ニナッテ居ルサウデ
  アリマス、御承知ノ如ク樺太ノ財源ノ中デ一番主ナルモノハ卽チ此漁業料デアリマスガ、
  此法律ニ於テ國稅徵收法ニ於テ其手續ヲ爲スノ規定ガナイタメニ多額ノ未納者ガアル
  _________其取扱ニ甚ダ困ッテ居ルガ故ニ、此法案ヲ提出スルト云フ意味モアルノデアリ
  マス、デ此法案ハ樺太ノ漁業發展、樺太經營ノ上ニ於テ適當ナル法案ナリトシテ、委
  員會ハ之ニ贊成ヲ致スト云フコトニ極ッタノデマリマス、玆ニ至ッテ一ツ本會ニ報告致シ
  テ置キマスルコトハ高橋直治君ヨリ政府ニ向ッテ本案ニ關係ヲ來スコト、云フ意味デ
  質問ヲセラレタルコトガアルノデアリマス、ソレハ北海道ニ於テ鰊ノ締粕ヲ買入レタモノニ
  對スル所得稅ハ千分ノ五百石ニ付キ千三百圓ノ價ニ對シテ六圓五十錢ノ所得稅ヲ
  課シテ居ルサウデアリマス、所ガ樺太ヨリ買入レタ鰊締粕ニ對シテハ百石千三百圓ノ價
  ニ對シテ七十五圓以上ノ所得稅ヲ課シテ居ルト云フ次第ダサウデアリマス、サウスルト
  北海道ノ鰊ノ締粕ヨリ樺太ノ鰊ノ締粕ニ對スル所得稅ヲ課シテ居ルコトノ多イコトハ十
  一倍以上ニナッテ居ルト云フ次第ダサウデアリマス、サウスルト北海道ハ百石ニ付キ六圓
  五十錢、樺太ハ百石ニ付キ七十五圓ト、斯ウ云フ殆ド七十圓所得稅ニ於テ多ク課セ
  ラレルト云フ此結果ハ、卽チ樺太ノ鰊ノ價ガ卽チ廉クナルト斯ウ云フ結果ニナルノデアリ
  マス、之ハ樺太ノ產物發展ノ意味ヨリ考ヘレバ北海道ニ於ケル所得稅ト云フモノガ樺太
  ノタメニ甚ダ不利益ヲ生ズル次第デアリマス、又當業者側ヨリ考ヘテ見レバ、同ジ鰊ニ於
  テ北海道ニ於テハ六圓五十錢ヲ課シ、樺太ニハ七十五圓ヲ課スルト云フ其理由ガアルノ
  デアリマス、ソコデ小樽所得稅ノ調査會ハ之ヲ不當トシテ其審査ヲ求メタトコロガ、小樽
  稅務署ハ遂ニ不同意ヲ唱ヘマシテ、原案ヲ施行シテ卽チ前申上ゲル十一倍餘ノ無理ナル
  苛酷ナル稅ヲ徵收シテ居ルサウデアリマス、小樽稅務署小樽所得稅調査會雙方共其
  意見ヲ附シテ審査會ニ提出シテ居ルサウデアリマスガ、審査會ノ決定ハ未ダ發表セラレナ
  イサウデアル所ガ小樽稅務署ガ調査會ノ決議ニ反對シタル理由ト云フモノハ如何ニモ
  落合ハナイ理由ヲ付シテ居ルサウデアリマス、此問題ハ樺太カラ入ッテ來ル鰊ノ其總額
  ヲ假ニ百トシマスルト小樽ノ方ニ入ッテ來ルモノハ百分ノ二十デアル、函館ニ入ッテ來ル
  モノハ百分ノ八十デアル、ソコデ卽チ二ト八トノ關係ガアルノデアリマス、卽チ百分ノ八
  十入ッテ來ルトコロノ函館ノ方ニ於テハ異議ナク原案ニ同意ヲシテ確定シテ居ルノニ、百
  分ノ二十取ル小樽ノ方ニ於テ此決議ニ同意スルト云フコトハ甚ダ面白クナイト、斯ウ
  云フ意味ヲ付ケテ卽チ小樽稅務署ハ反對ヲシテ原案ヲ執行シタト云フコトデアル、此理
  由ニ至ッテモ甚ダ不明ナルノミナラズ、不道理ナル理由ナリト云フコトハ斷定シテ憚リマセ
  又、ソレデ之ヲ政府委員ニ段々質問ヲ試ミマシタトコロガ、此ノ如キコトハ大藏省ニ於
  テ未ダ聞カナイノデアル又樺太廳長官トシテモ初メテ之ヲ聽イタノデアルト云フコトデ
  アル、前申上ゲル通リ此ノ如キ同ジ鰊ノ〓粕ニ於テ北海道ト樺太ト價格ノ上ニ於テモ、
  百石千三百圓ニ對シテ、片ッ方ハ六圓五十錢、片ッ方ハ七十五圓ト云フ不當ナル稅
  率ヲ課シタ結果ハ樺太ノ產物發展ニ大障碍ヲ與ヘルト云フコトデアルカラ、樺太ノ側
  ヨリ考ヘテ甚ダ不利益トセヌケレバナラヌ、大藏當局者ハ初メテ聽イタコトデアルカラ尙
  取調ベマシテ大ニ注意ヲ致シマスト云フ外ニ答辯ノシヤウガナイト云フコトデアリマス、卽チ
  其答辯ヲ聽イテ將來ノ注意ヲ促シテ卽チ樺太產物發展ノ意味ニ於テ將來ノ注意ヲ促
  シン、本案ニハ全然同意ヲシタ次第デアリマス、ドウカ皆サンノ御贊成アランコトヲ希
  望ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=18

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• 019・菅原傳

  ○菅原傳君　本案ニ對シテ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ
  確定セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=19

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• 020・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シ、委員長報告通り御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=20

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• 021・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ直ニ二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ニ供
  シマス
  樺太ニ於ケル漁業免許ノ取消及漁業料ノ徵收ニ關スル法律確定議
  案

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=21

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• 022・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナイト認メマスカラ三讀會ヲ省略シテ委員長報告
  通リ本案ハ是ニテ確定致シマス-日程第四、間島ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル
  法律案、第一讀會ノ續、委員長橋本久太郞君
  第四間島ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル法第一讀會ノ續(委員長
  律案(政府提出)報告
  〔橋本久太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=22

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• 023・橋本久太郎

  ○橋本久太郞君　此法律案ハ卽チ昨年四月五日ニ既ニ法律ニナッテ居リマスルモノニ
  極メテ簡單ナ修正ヲ加ヘタモノデゴザイマス、諸君モ御承知ノ通り昨年八月ニ日韓合併
  ニナリマシタ、其結果ヨリ以前ノ統監府トアッタノガ朝鮮總督府ト變ルトカ、或ハ又韓國ト
  アッタノガ朝鮮トナッテ居ルト云フ位ノ文字ノ小修正ニ過ギマセズシテ、內容ハ決シテ昨年
  ノ法律トナッテ居リマスルモノト毫モ違ヒハゴザイマセヌ、然ルニ御承知ノ通リ此間島ナル
  モノハ領土權ニ對シテ〓韓ノ一時爭地ニナッタ箇所デゴザイマスル、ソレガ一昨年日〓協
  約ノ結果トシテ〓國ノ所屬トナッテ居リマスルガ、然ルニ其以前ニ遡ッテ參考マデニ委員
  トシ、竝ニ又議會ノ參考ニナラウト思ヒマスル事柄モゴザイマスルカラ、種々其邊ノコトニ
  付テ來歷結果等ニ付テ政府ニ質問ヲ致シマシタ、竝ニ又此日韓協約ノ結果トシテ治外
  法權ヲ〓國ニ對シテ失ウテ居リマスル事柄ニ付キマシテモ、其利害上ヨリ種々政府二對
  シテ質問ヲ致シマシタガ、ソレ〓〓明瞭ナル答ヲ得テ居リマスル、是ハ速記錄ニ明カニナッ
  テ居リマスルカラ御覽ナサル御方ハ御覽下サッタラ分リマスルガ、之ヲ要スルニ間島ノ土地
  ニ是マデ朝鮮人ガ住ンデ居リマスルトコロノモノガ、若シ此治外法權等ノ權利ヲ主張ス
  ルタメニ或ハ所有權、住居權、移住權竝ニ又耕作權等ヲ失ヒマスルヤウナコトニナリマ
  スルト、此間島ハ土地ノ豐穰ナ處デゴザイマシテ、北韓地方ノ供給地トナッテ居リマスル
  ガ、唯今申シマスルヤウナ權利ヲ主張スルガタメニ實利ヲ失フコトニナッテハ甚ダ不得策デ
  アルト云フコトデ、トウ〓〓此北韓地方ノ供給地デアルタメ、大變實利上ニ影響スルト
  コロノ地デアリマスルガタメニ、唯今ノ住居權或ハ耕作權等ヲ得ルガタメニ治外法權上ノ
  權利問題ノコトニ付テハ多少讓步ヲシテアルト云フコトデゴザイマスルガ、ソレ等ノ事柄
  ハ皆卽チ速記錄ニ明カニナッテ居リマスル、昨日ニ至ッテ此修正ノ通リ全會一致ヲ以テ
  可決致シマシタカラ左樣御承知アランコトヲ希望シマス、念ノタメニ修正ヲ申上ゲマスル
  ガ、第一條ニ「朝鮮總督府」ト修正ニナッテ居リマスルノハ以前ガ「統監府」トアッタ文
  字デゴザイマス、ソレカラ第三條ニ「朝鮮總督府」トアルノモ元ハ「統監府」ト云フノデゴザ
  イマシタ、ソレ位ノ修正ニ過ギマセヌカラ、左樣御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=23

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• 024・菅原傳

  ○菅原傳君　直ニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=24

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• 025・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　直ニ二讀會ヲ開クノニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=25

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• 026・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ直ニ二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供
  シマス
  間島ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル法律案第二讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=26

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• 027・菅原傳

  ○菅原傳君　御異議ナケレバ直ニ三讀會ヲ開キ、二讀會通リ決定セラレンコトヲ望ミ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=27

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• 028・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ナケレバ委員長報告通リ第二讀會ニ於テ決定致シ
  マス、直ニ三讀會ヲ開クト云フコトニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=28

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• 029・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ直ニ三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供
  シマス
  間島ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル法律案第三讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=29

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• 030・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ナケレバ第二讀會決定通リ本案ハ是ニテ確定致シ
  マイ、日程第五ハ委員長ノ都合ニ依リ延期ノ申出ガアリマス、御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=30

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• 031・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ナケレバ日程第五ハ延期致シマス、日程第六、鐵
  道敷設法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、提出者中村
  啓次郞君外三名提出
  第六鐵道敷設法中改正法律案(中村啓次郞君外三第一讀會
  名提出)
  鐵道敷設法中改正法律案
  鐵道敷設法中左ノ通改正ス
  第二條第一項近畿線ノ部第二號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  一和歌山縣下和歌山ヨリ湯淺、田邊、勝浦ヲ經テ新宮ニ至ル鐵道
  〔中村啓次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=31

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• 032・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　諸君、此法律案ハ鐵道敷設法中第二條第一項近畿線ノ部、第
  二號ノ次ニ「和歌山縣下和歌山ヨリ田邊勝浦ヲ經テ新宮ニ至ル」ト云フ一號ヲ加ヘル
  案デアリマス、昨年當議會ニ於キマシテ全會一致ヲ以テ通過致シマシタル紀勢鐵道建設
  案ノ中政府ガ鐵道網ニ編入致シテアリマスル部分タル、卽チ和歌山ヨリ新宮ニ到リマスル此
  部分ヲ唯今ハ豫想線デアリマスモノヲ第一期豫定線ニ繰上ゲタイト云フ法律ナンデアリ
  マく、少シク提出ノ理由ヲ敷衍致シマシテ御贊成ヲ博シタイト思ヒマス、最モ國用多端
  ノ今日ニ於キマシテ無闇ニ多額ナル經費ヲ國庫ヨリ支出セシメテ收支相償ハナイト云
  フヤウナ工事ヲ起スコトハ本員共ノ大ニ考慮シナケレバナラナイコトヽ信ジマシタルガ故ニ、
  此案ヲ提出スルニ方リマシテモ、本員ハ親シク紀州熊野、卽チ此鐵道線ノ架リマスル場
  所ヲ踏査致シマシテ、三四ノ線ヲ比較致シマシタガ、工事ハサマデニ困難ニアラズ、工事
  費ハサマデニ高ク上ラナイ、而シテ非常ニ經濟上有利ナル線デアルト云フコトヲ見定メマ
  シタガタメニ、此法案ヲ提出スルニ至ッタノデアリマス、從來此熊野鐵道ヲ計畫致シマス
  ルモノヽ第一ニ辟易致シマシタル邊ハ田邊ヨリ周參見ト云フ處ニ參リマスル間ニ富田坂ト
  云フ峻嶮ガアルノデゴザイマス、此峻嶮アルガタメニ此鐵道ヲ計畫スルモノ辟易致シ、此
  鐵道ヲ建設スルコトモ全ク杜絕セラレテ居ッタノデゴザイマス、本員ガ踏査ヲ致シマスルト
  キニ方リマシテモ、此峻嶮アルガタメニ隨分苦慮シテ參ッタノデアリマス、所ガ踏査ノ結果
  ハ田邊ヨリ周參見ニ到リマスル此鐵道ヲ敷設スルノニ最モ峻嶮ナリト致シマシテ阻止セ
  ラレタ場所ガ、田邊ヨリ久木ト云フ所ヲ超エマシテ、周參見ニ參リマス線ニ依リマスレ
  バ寧ロ此鐵道線路ノ所ノ部分ヨリハ田邊周参見間ハ却テ極ク平易デ、鐵道ヲ敷設ス
  ルノニハ最モ適當ナル坦々砥ノ如キ道デアルト云フコトヲ本員ハ踏査ノ結果分ッタノデアリ
  マス、故ニ此鐵道線ガ最モ困難ナリトシテ阻止セラレテ居リマシタ難關、此鐵道企畫者
  ガ最モ困難ナリトシテ辟易シマシタ難關ガ、本員踏査ノ結果全ク破レタノデアリマス、以
  上ニ依リマシテ本員ハ此鐵道ハ決シテ從來或者等ガ考ヘタヤウニ非常ナ難工事ノモノデ
  ナイ難工事ノ鐵道デナイト云フコトヲ明言シ得ラルヽノデアリマス、而シテ此鐵道ヲ敷
  設致シマスルノニ此沿道ノ民ガ此鐵道ヲ希望致シテ居ルコトハ大早ノ雲霓トコロノ話ヂ
  ヤナイノデアリマス、、非常ニ此鐵道ノ敷設ヲ希望致シテ居リマスルガタメニ、鐵道敷地等
  ハ無論各町村ニ於キマシテ喜ンデ寄附スルト云フ狀態デアリ、多少ノ步役モ亦寄附スル
  ト云フコトモ又言明シテ居ルノデアリマス、本員少クトモ是等ノ點ハ保證シ得ラルヽコトヽ
  信ジテ居ルノデアリマス、サウ致シマスルト此鐵道ト」云フモノハ決シテ工事ムツカシイモノニ
  アラズ、而シテ工事費ガ比較的多額ノモノデナク出來上ルト云フコトヲ確信スルノデアリ
  マス、サレバ此鐵道ノ收入ハドウデアルカ、此鐵道經濟ト致シマシテ重要ナル收入ノ〓ハ
  ドウデアルカト云フコトモ〓究シナケレバナラナイト思ッテ〓究致シタノデアリマス、先ヅ貨
  物ハドウデアルカト云フコトヲ先ヅ〓究致シマシタ、此鐵道沿線ノ唯今ノ物產ハ年額四
  十万圓ヲ上ラナイノデアリマス、三千六七十万圓ノ間ニアルノデアリマスケレドモ、此一
  朝此鐵道ガ出來マスルトームフト、唯今ノ物產ガ五倍十倍一一十倍ニナルト云フコトハ是
  ハ御互ニ最モ看易イコトデアラウト思フ、一例ヲ申シマスレバ先ヅ紀州ト言ヒマスレバ直
  ニ聯想セラルヽ柑橘-柑橘ニ付キマシテ此柑橘ヲ東京ノ地ニ持ッテ參リマスニハ產出
  地ニ於キマシテ汽船ヲ「チヤーター」シテ參リマスノデアリマスが、東京ニ參リマスル時分ニ
  ハ船足ガ至極結構デアリマスケレドモ、東京ヨリ此產出地ノ方ニ參リマスニハ更ニ荷物ガ
  ナイノデアリマス、空荷デ船ガ歸ラナケレバナラナイト云フヤウナタメニ一箇月七八囘モ航
  行シ得ラルヽ船ガ二三囘位シカ航行シ得ナイト云フヤウナコトニナルノデアリマス、之ガタ
  メニ非常ニ運賃嵩ミ運賃嵩マリ又搬ブニ期日モ掛ルト云フコトニナルノデアリマス、
  期日ガ掛ルタメニ腐敗ヲ來スト云フ虞レアリ、腐敗ヲ防ガンタメニ未熟ノ間ニ採取スルト
  云フヤウナ結果ガ味ヲナクシテ市價ヲ下ゲルト云フヤウナコトニナリマシテ、幾多ノ原因結
  果ヲ以チマシテ經濟上非常ニ不利益ナ立場ニアリマス、之ガ今此鐵道ガ架リマスルト云
  フト、唯今申スヤウナ不利益ハ全ク免レ得ラレテ、而シテ高ク產出スルコトニナルト云フコ
  トハ明カニ知リ得ラルヽノデアリマス、ソレカラ又此紀州熊野ト云フコトヲ思出スト同時
  ニ、頭ニ浮ビマスモノハ木材デアリマス、本員ハ初メテ昨年議會ノ休會中ヲ利用致シマシ
  テ此地ヲ踏査致シタノデアリマスガ、足ヲ熊野ノ地ニ入レマシテ嘆賞措ク能ハザル快感ヲ
  感ジマシタモノハ、此熊野ノ地ハ此天然人爲ノ森林經營ト云フモノハ極メテ行屆イテ
  アッタ一事デアリマス、支那ノ孟子ハ二千年前ニ於キマシテ森林經營ノ忽セニスベカラザ
  ルコトヲ支那ノタメニ警告致シマシタガ、支那人ハ之ヲ服膺シナイデ、今日支那ノ森林經
  營ト云フモノハ殆ド彼等ノ頭ノ如キ有樣ニナッテ居ルノデアリマス、又佛蘭西ノ「コールベ
  ル」ガ十七世紀ノ時代ニ於テ佛蘭西ハ遂ニ木材ノナイタメニ木材缺乏ノタメニ亡ブルト云
  フコトヲ絕叫致シタノデアル、今日此數年ノ間歐洲列國ノ木材市價ト云フモノハ年々非
  常ナ騰貴ヲ致シテ居ルト云フコトハ、諸君ノ御承知ノ通リデアル、亞米利加デアル、加奈陀
  デアル瑞典等ノ森林ガ此四五年ノ間ニ幾十倍ニ價格ヲ高メテ居ルト云フコトハ諸君
  ノ知ルトコロデアル、此ノ如キ時代ニ當リマシテ此熊野地方ヲ踏査致シマシタトコロガ
  其森林ノ經營ト云フモノハ實ニ周到ニ行居イテ居ルト云フコトヲ見マシテ、本員ハ甚ダ
  快感ニ思ウタノデアリマス、所ガ森林ノ植込ミ森林ノ經營ト云フモノハ甚ダ行屆イテ
  居ルガ、之ヲ搬出スルト云フ途ニ於テハ全ク原始時代デアッタニハ一驚ヲ喫シタノデアリ
  マス、木材ヲ伐散ラカシマシテ山ノ谿坂ニ抛ッテ置ク、一年雨期ノ時ヲ以テ始メテ之ヲ流
  出スルノデアル、出材ノ便利ヲ全ク天然ニ委ネテアル、折角山ヲ植込ヲシテ折角十年二
  十年三十年ノ多年ノ間苦辛經營シテ育テタモノヲ伐出ストキニハ一年雨期ノ時二-
  雨ノ時ニ流出スルト云フコトニ至リマシテハ甚ダ遺憾ニ思ウタノデアリマス、斯樣ニ天
  然ニ委ネテ、一年雨期ノ時分ニ流出スルタメニ流失スルモノガ甚ダ多數デ-流レテ
  失ッテシマフモノハ甚ダ多數デアル腐蝕スルモノ多々デアル、破損スルモノモ多々アルガ、流
  失スルモノ頗ル多イノデアリマス、殆ド育テマシタ木材ノ半バ流失致シテシマフモノデアリ
  マ、又此流出當時ニ於キマシテハ木材ガ流失スルタメニ紀州半島ノ沿岸ニ此流失木
  材ノ處分ト云フモノヽタメニ各町村ヲ煩ハス費用ト云フモノハ甚ダ少クナイノデアリマス、
  之ガ一朝ニシテ此鐵道ガ出來マシテ此鐵道ヨリ輕便鐵道ヲ林內ニ引込ムコトガ出來マ
  スレバ、唯今マデ失ウテ居リマシタモノガ悉ク失ハズシテ、天與ノ豐材ヲ悉ク其港灣ニ持ッ
  テ來テ之ヲ市場ニ出スコトガ出來ルノデアリマス、唯今申シタトコロハ一年兩期ノ時分ニ
  於テ流出シ得ラルヽ場所デアリマスガ、流出シ得ラレナイ僻在ノ土地ナドモ此鐵道ガ架リ
  マスルト云フト、完全ニ出材スルコトガ出來ルヤウニナルノデアリマス、デ是等ノ二ツノ事
  例ノ如キハ此鐵道ガ出來マスルタメニ事業家モ利益スレバ山ヲ持ッテ居ル者果園ヲ持ッ
  テ居ル者ハ非常ナ利益ヲ得マスルシ、商業家モ利益ヲ得レバ之ヲ需用スル者モ亦利益
  ヲ得ルノデアリマス、故ニ此鐵道經營ガ是等ノ木材或ハ貨物ニ依リマシテ鐵道經濟ガ
  容易デアルト同時ニ、又國家ノ得ルトコロガ甚ダ少クナイノデアリマス
  〔議長長谷場純孝君退席、副議長肥塚龍君議長席ニ著ク〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=32

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• 033・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　又紀州半島ト言ヒマスルト云フト、環海水族ニ富メルコトハ諸君ノ
  御承知ノ通リデアル、何百万圓ト云フ鯨其他ノ水族ト云フモノヲ年々漁獲シ得ラレテ、
  之ヲ市場ニ出シテ居ルコトハ諸君ノ御承知ノ所デアリマス、所ガ是トテ今日此海ハ極メ
  テ險惡ナル海デアル、迅速ニ之ヲ市場ニ運ブ交通ノ便ナキタメ、大抵ハ之ヲ鹽漬ニ致シ
  テ其價格ハ幾ド十分ノ一ニ致シテ居ルノデアリマス、是等ノ物モ此鐵道ガ出來マスレバ
  十分鐵道經營ニ資スル經濟ニモナリ、從ッテ世ノ中ヲ利スルトコロガ甚ダ大ナルモノデア
  ラウト思フノデアリマス、以上ノ事例ニ依リマシテ此鐵道ハ經濟鐵道貨物鐵道ト致シマ
  シテモ有利ナルモノト信ズルノデアリマス、サレバ旅客鐵道トシテドウデアル旅客ノ收入
  ハドウデアルカト云フコトヲ少シク〓究致シテ見タイノデアリマス、御承知ノ通リ紀州半島
  ハ神武天皇發祥ノ土地デアリマス、最モ日本ノ國ニ於テ古キ國デアッテ、出雲ト共ニ最
  モ古キ國デアル御承知ノ通り神武天皇ガマダ稚御毛沼尊ト申サレタトキニ吾田、築紫
  ノ兵ヲ率井皇兄五瀨尊ト共ニ日向ヲ發ッテ浪速ニ來タッテ、大和ニ進軍シヤウト致シタ
  時分ニ長髓彥ト云フ御承知ノ通リ土賊ニ逆擊セラレテ、而シテ皇軍ヲ紀州ニ轉ジタ、皇軍
  ヲ紀州ニ轉ジテ皇兄五瀨尊ハ唯今ノ和歌山城趾ニ御隱レニナリ、、神武天皇ハ此熊野ノ
  丹敷卽チ今ノ串本ノ土地ニ上陸致シマシテ、、是ヨリ八咫烏ノ嚮導ヲ以テ十津川ヲ經テ
  吉野川ノ川尻ニ參ッタノデアル、而シテ大和ニ都ヲ開キ、日本帝國ノ創肇ヲ致シタト云
  フコトヲ懷フト同時ニ又紀州熊野ト云フコトハ直ニ聯想サレナケレバナラヌ土地デモアル
  シ、此ノ如キ舊國デアル、此靈場古蹟ハ澤山アルノデアル、近年神社合祀ト云フヤウナ
  怪シカラヌコトヲ行ッテ靈場古蹟ハ多少ナクナリツヽアルケレドモ、マグ澤山アルノデアル
  此ノ如ク靈場古蹟ハ澤山アルシ且神社佛閣等ノ尊崇スベキモノガ澤山アル、熊野神
  社ノ如キハ最モ日本國民ガ、日本國民ノミナラズ日本ノ皇室ガ最モ尊崇セラレタ神社デ
  アル、昔ハ伊勢熊野ト併稱シタ、或天皇陛下ノ如キハ伊勢、熊野孰レカ尊イノ
  デアルカト云フ御勅問マデ發セラレタト云フ位デアリマス昔ハ伊勢、熊野ハ併稱セラ
  レタ、此熊野神社ト云フモノハ日本最古ノ神デアル、日本最古ノ神テアッテ宇多、花
  山、白河、其他ノ天皇ガ數囘參詣セラレタトコロノ神テアルノデアリマス、此場合之ヲ參
  詣セラレタト一石フヤウデナイ此熊野ノ神ハ或意味ニ於キマシテハ王政擁護ノ神デアル、
  常ニ幕府ノ心ノ良クナイ、······帝王ハ必ズ此熊野神社王ニ政ヲ擁護スルコトヲ祈ッタノデ
  アル、此ノ如ク熊野、伊勢ト云フモノハ併稱セラレタヤウナ尊イ神デアルガ交通不便ナル
  ガタメニ今日ハ全ク參詣者ノ跡ヲ絕ッテ居ルノデアル故ニ、此鐵道ガ一朝架設セラルヽト
  云フコトニナレバ國民ノ敬神思想ヲ誘起スルニ至リ、熊野參宮者ノタメニ此ノ鐵道ハ十分
  旅客ヲ吸收スルニ足ルト信ズルノデアル唯今モ申スヤウニ此紀ノ國ハ最モ古イ國デアル故
  ニ、古代歷史ヲ〓究致サウト云フ者ハ必ズ此紀ノ國ヲ踏破スベキモノデアル、或ハ王政
  時代ニ於テモ武內宿禰モ此土地ニ生レタノデアル、源平當時平家ハ此熊野ヘ落チ、
  辨慶ハ田邊附近ニ生レ、或ハ平重盛其他平家ノ公達ハ多ク熊野ノ地ニ落行カレタ
  ト云フコトハ諸君ノ知ルトコロデアル、又近項世ノ中ニ囂々タル此建武中興ノ大將軍大
  塔宮ハ旣ニ此紀州熊野ニ居ッタノデアル、大塔ノ峯ナル山カラハ大塔宮ノ昔ヲ語ッテ居
  リ、又吉野朝廷ノ史跡ハ紀ノ川ニ流レテ居ル、又熊野川ノ上流ハ十津川デアルノデア
  ル、南朝ノ事蹟ヲ〓究シ、南朝ノコトヲ論ズル者ハ、此紀州熊野ノ地ヲ踏破シナイデ之
  ヲ論ズルナドトハ幾ド僭上ノ沙汰デアル、此理由ニ依シテ此鐵道ハ族客鐵道トシテ價値
  ノアルモノデアル、又熊野ノ邊ヨリ新宮ニ至リマス熊野川兩岸ノ奇巖怪石ニ富メルコトハ
  幾ド天工ノ最奇最妙ヲ盡シテ居ルノデアル、瀞峽ノ絕勝ハ詩人騷客ノ夙ニ傳フルトコロデ
  アリマス、而シテ紀州南岸ノ絕勝ノ如キハ實ニ優秀壯大ナルモノデアリマス、蘆雪ダノ
  應舉ダノト云フ畫士ハ全ク紀州ノ南岸ニ依ッテ腕ヲ練ッタノデアリマス、故ニ此紀伊ノ地
  ニ到リマスレバ應舉、蘆雪ノ非常ニ妙手ヲ揮ヒマシタモノガアル、或寺院ノ如キハ壁ニモ
  戶ニモ襖ニモ到ル處其蹟ヲ遺シテ居ルノデアル、且此土地ハ嚴冬氷雪ガ無イ、實ニ暖イ
  處デアリマス、且到ル所ニ〓冽ノ溫泉モアルノデアル、斯ウ云フ意味ニ於キマシテ此鐵道
  ハ冬季遊覽鐵道トシテモ最モ價値アルノデアリマス、以上ノ點ヲ考ヘテ見マスト旅客
  鐵道ト致シマシテモ、貨物鐵道ト致シマシテモ、此鐵道ノ利益ガアリマシテ、決シテ政府
  之ヲ架設致シマシテモ、國庫ニ損失ヲ嫁スルヤウナモノデ決シテナイノデアリマス軍事鐵
  道トシテハドウデアル、帝國ノ中央部ニ對シテ南方ヨリ賊軍ガ-外國軍ガ侵入致シテ
  參ルヤウナ時分ニ僅ニ之ヲ擁扼シテ居リマスモノハ紀淡海〓デアル紀淡海峽ニ據リ
  マシテ日本ノ中央部ノ南面ヨリ攻擊シテ參リマスル外國軍ヲ防グノデアリマス、所ガ紀
  淡海峽ノ武備ハ紀淡海峽ヨリ北部-紀淡海峽ヨリ南部ニ於キマシテ初メテ效能ア
  ルモノデアリマシテ、紀州半島ニ外國軍ガ上陸スルトキハ紀淡海峽ノ要ハ何ニモナラヌノ
  デアル、此意味ニ於キマシテ紀州半島ニ外國軍ガ上陸シテ紀淡海峽ヲ攻擊スルト云フヤ
  ウナ時分ニハ紀淡海峽ノ效果ヲ喪フト云フコトハ見得ラルヽノデアリマス、ソレハソレト致シ
  マシテ紀州半島ニ居リマス者ハドウデアルカ、紀州半島ニ居リマス三十万ノ生民ハ外國軍
  ガ紀州半島ニ上陸スル時分ニ於キマシテハ、何等ノ國家ガ保護ヲ加ヘテ居ルモノデナイ、
  赤裸々デ敵ノ爼ノ上ニ乗ッケテアルノデアリマス、紀州半島ニ敵軍ガ-外國軍ガ上陸
  シテサウシテ之ヲ防グニ何ヲ以テスルカト云フト、何モ防グモノハナイノデアル、サラバ是等
  ノ紀州半島ノ生民ハ逃ゲルニモ逃ゲル機關ナク、保護サレルニモ保護サレル設備ガ何モ
  ナイノデアリマス昔ハ三藩ノ一トシテ-親藩ノ一トシテ多少日本帝國ノ他ノ府縣ノ
  諸君ト同ジヤウニ保護サレテ居リマシタ、紀州人ハ明治維新以來今日ニ至リマシテ軍
  事上全ク何等ノ保護ヲ受ケテ居ナイノデアル國庫ニ對シテ國稅ヲ出シテ居ルコトハ他
  ノ府縣ノ人ト同ジヤウニソレハ出シテ居ル、四十二年度ノ現計ニ依リマシテモ三百五十
  七万圓ト云フ國稅ヲ出シテ居ル而シテ他ノ府縣ヲ軍事上保護スルトコロノ兵員ハ三
  万二千ノ多數ノ兵員ヲ出シテ居ル而シテ自分ノ紀州半島ノ生民ハ何ニ依ッテ擁護サ
  レルカト云ヘバ、何モ擁護サレルモノハナイ、、紀州ノ古老ハ斯ウ云フコトヲ言ッテ居リマス、薩
  長政府ハ-薩長政府ハ德川氏ノ三藩ノ一タル吾〓ニ對シテ決シテ同情ヲ持ツモノデ
  ナイノデアル、一朝有事ノ時分ニハ吾〓ヲ焦土ニ委ネルコトハ薩長政府ノ希望スルトコ
  ロデアルト言ッテ居ル、是ハ古老ノ言デアル、甚ダ頑固ナ言葉デアリマスケレドモ、和歌山
  縣ノ人間ハ斯ウ云フヤウニ思フマデ軍事上ノ保護ト云フモノヲ受ケテ居ナイ、卽チ此鐵道
  ガ架リマシタナラバ、或場合ニ軍人ヲ送リマシテ、和歌山縣民ヲ擁護スルモノデアル、和
  歌山縣ガ非常ナ場合ニハ此鐵道ニ依ッテ遁ゲルコトガ出來ル、此鐵道ヲ大和ノ五條アタ
  リカラ十津川ヲ經マシテ之ニ聯絡スル一線ヲ開キマシタナラバ、有力ナル軍事鐵道トナ
  ルノデアリマス、此意味ニ於キマシテモ此鐵道ハドウシテモ架ケナケレバナラヌコトヽ信
  ズルノデアリマス、唯今モ申スヤウニ和歌山縣七千餘万ノ生民ト云フモノハ國稅ハ負
  擔シテ居リマスケレドモ、國庫ノ金ヲ以チマシテ-國庫ノ補助ヲ以チマシテ一尺ノ道
  路モ、一間ノ鑽道モナイノデアル、交通機關ト云フモノハ全クナイノデアル、他ノ鐵道敷設
  等ヲ要求致シマスル諸君ノ申ストコロヲ聽クト云フト、交通機關不備ナリト云フ故ヲ以
  テ要求スルノデアル和歌山縣ニ於テハ交通機關ガ絕無デアル和歌山ト云フ地ハ紀伊
  ノ北端ニ在ル、而シテ和歌山ヨリ南方ニ向ヒマシテハ、一尺ノ道路モ一間ノ鐵道モ國
  家ノ保護ヲ以テ出來テナイノデアル、東西十餘里南北五十餘里三百方里ノ間ト云フ
  モノハ國庫ノ補助ヲ以テ一尺モ一間モ少シモ交通ノ設備ヲ設ケラレテナイノデアル、交通
  ノ設備ガナイタメニ父母ノ病ヲ良醫ノ手ニ委ネテ天壽ヲ完ウセシメントシテモ能ハヌ、、子
  女ノ知識ノ開發ヲシヤウト云フコトハ慈父ノ情デアル、、併ナガラ交通機關ノナイタメニ能
  ハヌ、全ク交通機關ハナイ、交通機關ノナイタメニ帝國ノ文化ハ普及シテ居ナイ、和歌山
  縣ニハ驚クベシ或部分ニナリマスト皇風モ亦見ル能ハザルトコロノ民草ガアルノデアリマ
  ス、曩ニ社會主義者若クハ社會主義者ノ嫌疑者ヲ最モ多ク和歌山縣ヨリ出シタ、是ハ
  本員共ノ甚ダ恐懼ニ堪ヘヌトコロデアリマスガ、一面カラ考ヘマスト云フト此ノ如ク交通
  不便ナルタメニ德化之ニ及バス、而シテ是等ノ或民ガ一朝亞米利加等ニ參リマシテ他ノ
  國ノ政治思想ニ感染シテ歸リ來ッテ不逞ノ徒ト事ヲ共ニスルニ至ッタノデアリマス、是ガ一
  朝ニシテ此鐵道ガ架リマスレバ此ノ如キ危險思想モ亦無クナルト思フノデアル、此〓ハ
  何レノ〓カラ見マシテモ至緊至要ノ鐵道デアリマスガ故ニ、何卒滿場一致ノ御贊成ヲ以
  チマシテ通過スルコトヲ希望スルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=33

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• 034・松田源治

  ○松田源治君　本案ハ議長指命ノ特別委員九名ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=34

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• 035・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　本案ハ議長指名ノ九名ノ特別委員ニ付託スルニ御異議ハゴ
  ザイマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=35

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• 036・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ本案ハ議長指名ノ九名ノ委員ニ付託スルコトニ致シ
  マヽ、次ハ日程第七東京市借地法案ノ第一讀會ヲ開キマス、議案ノ朗讀ハ省略シマ
  ス、高木益太郡君
  第七東京市借地法案(高木益太郞君外一名提出)第一讀會
  東京市借地法案
  東京市借地法
  第一條本法ハ東京市ニ限リ之ヲ施行ス
  第二條建物ノ所有ヲ目的トスル地上權ノ存續期間ハ二十年ヲ下ルコトヲ
  得ス若之ヨリ短キ期間ヲ定メタルトキハ其ノ期間ハ之ヲ二十年ニ伸長ス
  建物ノ所有ヲ目的トスル土地ノ賃貸借カ其ノ期間ノ滿了ニ因リ終了スル
  場合ニ於テハ賃借人ハ建物ノ存續スル場合ニ限リ其ノ期間ヲ更新スルコ
  トヲ得更新シタル期間ノ滿了ニ因リ賃貸借ノ終了スル場合亦同シ
  若契約ノ當時定マリタル建物ノ構造又ハ用方ニ因リ之ヨリ短キ期間ヲ相
  當トスル場合ニハ其ノ期間ニ依ル
  當事者カ建物ノ所有ヲ目的トスル土地ノ賃貸借ノ期間ヲ定メサリシトキ
  ハ其ノ賃貸借ハ建物ノ朽廢スヘキトキニ終了ス但シ民法第六百四條ノ適
  用ヲ妨ケス
  第三條建物ノ所有ヲ目的トスル土地ノ賃貸借ニ付テハ民法第六百十二條
  ノ規定ヲ適用セス
  第四條地主ハ建物ノ所有ヲ目的トスル地代又ハ土地賃貸借ニ付旣ニ其ノ
  支拂期限ト爲リタル最後ノ二年分ノミニ先取特權ヲ有ス
  前項ノ先取特權ハ登記ヲ要セスシテ其ノ土地內ノ建物ノ上ニ存在ス
  同一ノ建物ニ付先取特權ノ互ニ競合スル場合ニ於テハ優先權ノ順位ハ地
  主ノ先取特權ヲ第一ト爲ス
  附則
  本法ハ本法施行前ノ設定行爲又ハ契約ニ因ル地上權若ハ土地ノ賃貸借ニ適
  用ス
  〔高木益太郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=36

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• 037・高木益太郎

  ○高木益太郞君　諸君、本員ハ曩ニ此第二十五議會ニ於キマシテ全國ニ於ケル善良
  ナルトコロノ借地人ニ對シマシテ不當地主ガ壓迫ヲ加ヘテ過當ナルトコロノ地代ノ誅求
  ヲ防禦スルタメニ尙併セテ國民生活ノ基礎ヲ鞏固ニスルト共ニ市內ノ建築物ノ美觀
  ヲ增加センタメニ、建物保護法ナルモノヲ提案致シマシタ、然ルニ幸ニモ諸君ノ御盡力
  ニ依リマシテ、又議會以外ニ於テモ富井博士、平沼、齋齋各博士ノ御同情ヲ惹イテ殊ニ
  政府モ此提案ニ對シテ同情ヲ表セラレ、滿場一致ヲ以テ衆議院ハ之ヲ可決ニナッタノデ
  アリマス、是ハ實ニ木員ハ又東京市民ノ一人トシテ深ク諸君ニ向ッテ御禮ヲ申上ゲナケレバ
  ナラヌノデアリマス、然ルニ幸ニ本院ハ之ヲ通過シタノデアリマスケレドモ、東京市ノ地主ノ
  中デ唯此目前ノ利益ニ汲々タルトコロノ輩ガ、此案ノ通過アルト云フコトヲ聞クト云フ
  ト、神田ノ錦輝館ニ集會ノ上、土地協會ナルモノヲ組織シテ、且地主一名ニ付テ或ハ百
  圓、或ハ二百圓ノ金ヲ醵集シ、甚シキニ至ッテハ一人ノ地主デ以テ千圓以上ノ反對運動
  費ト云フモノヲ支出致シマシテ、ソレカラ是等ノ人間ト云フモノガ差配人デアルトカ、周
  旋屋デアルトカ云フモノヲ先キニシテ、大ニ貴族院諸公ニ反對運動ヲ試ミマシテ、其結
  果遂ニ諸公ノ御盡力ヲ賜ハリマシタトコロノ建物保護法ノ第二條第三條竝ニ附則ト
  云フモノヲ削除ニナッタト云フコトハ甚ダ本員ノ遺憾ニ堪ヘザルトコロノ次第デアリマス、
  諸君、吾人ノ提案ニ依リマシテモデス、固ヨリ地主ノ地代ノ相當ナル利益ヲ確保スル譯デ
  アッテ、又地代ヲ滯ラストコロノ不正ナル借地人ヲ保護スル次第デモアリマセヌ、吾人ノ
  提案ハ只借地人ニ對スル地主ノ虐待ヲ禁ズルノデアリマス、昔諺ニ牧畜ヲ爲ストコロノモ
  ノガ羊ノ毛ヲ刈ルニ當ッテ、之ヲ半分ニ止ムベキモノデアルニ、餘リ一時ニ慾張ッテ皆刈ヲテ
  シマッタガタメニ、冬ニナルト其羊ガ殘ラズ倒レタト云フトコロノ有名ナ話ガアリマス、所謂
  此反對ノ運動ヲナスモノハ大慾ハ無慾ニ似タリト云フノデアッテ、自分ノ借地人ニ多少ノ
  餘地ヲ與ヘテ例ヘバ木造ノ家屋ヲ建築スル者ニ煉瓦ノ家屋ヲ造ラス、煉瓦ノ家屋ヲ造ル
  者ニ尙立派ナ建物ヲ建テサセル、一階ハ二階ニ、二階ハ三階ト云フ風ニ、立派ナ家屋ヲ
  建テレバ自然其家屋ニ立派ナ人物カ住ム、立派ナ人物ガ住メバ其土地ノ地位ガ上ル、
  地位ガ、上レバ自然地代ガ上ルト云フ雙互ノ利益上カラ來レバ宜イノデアリマスガ、サウ
  デナク、唯目前ノ利益カラ見テ反對運動ガ起ッテ來タノデアリマス、ソレ故ニ本員ハ已ムヲ
  得ズ第二十六議會ニ於テ再ビ諸君ヲ煩シテ前陳ノ全國統一的法津案ヲ本院ニ提出
  シマシタトコロガ、幸ニ委員會ニ附議セラレテ委員會ニ於テ審査ノ際ニ特別委員タル政
  友會ニ於テ錚々タル名士大阪ニ於ケル富豪秋岡義一君カラシテ本員ノ提案ニ對シ
  テ、之ハ借地人救濟ニ關スル請願ニ基イタノダラウ、其請願ニ基イタノデアレバ貴衆兩
  陸於シ云採機スヤラデアル十云ラコトステノ爲カカ其其願願Aヲ聞磯
  部四郞君外六千餘名デアル、所ガ此借地人ト云フモノハ東京ノ一局部ニ止ッテ居ル、
  縦シヤ此一局部ニ地主ト借地人トノ間ニ於テ衝突ガアルカラト云ッテ、其他全國中大
  部分ニ於テハ兩者ノ間ガ圓滿ニ行ッテ居ルノデアルカラ、全國ニ向ッテ統一的ノ法律ヲ
  設ケル必要ガ無イト云フコトヲ御發議アッタノデアリマス、私ノ持論トシテ全國ニ統一的
  ノ法律ヲ設ケタイノデアリマスケレドモ、既ニ絕對多數ノ政友會ノ諸君カラ特別委員會
  ニ於テ此ノ如キ御發議ガアッタ以上ハ、是ハ誠ニ已ムヲ得ヌ次第デアル今日ノ衆議院
  ニ於ケル勢力ト云フモノハ政友會ノ諸君ガ殆ド生殺與奪ノ權ヲ持ッテ居ルノデアリマスカ
  ラ、吾〓ノ持論ヲ多少讓歩シテ政友會選出ノ特別委員ノ說ト又他ノ一面ヲ考ヘテ見
  マスルト、貴族院ニ於ケル多額納稅者ノ意嚮ヲ鑑ミナケレバナラヌ次第デアリマスカラ、私
  ノ本年ノ提案ハ御手許ニゴザイマスル通リ第一條ニ於テ「本法ハ東京市ニ限リ之ヲ施
  行ス」ト限定ヲシタノデアリマス、是ハ古語ニ所謂患臻ッテ是ガ備ヲ爲スト云フ通リ、現
  ニ地震的病毒ノ最モ激甚ナル東京市ニ先以テ此法律ヲ施行シ、同前ニ苦ンデ居ル者
  ヲ助ケテ、而シテ此法律ヲ一年施行シタ結果ガ宜カッタナラバ、次ニ之ヲ名古屋ニ行ヒ、
  之ヲ大阪ニ行ヒ、之ヲ京都ニ行ヒ、尙其結果ガ好カッタナラバ更ニ之ヲ全國ニ行ヒ恰
  モ倫敦市ガ倫〓市ニ特別法律ヲ施行スルガ如ク、土地ニ適切ナル法律ヲ作ッテ之
  ヲ施行シテ其結果ガ宜カッタナラバ全國ニ行フヤウニ致シタイト云フノデ、本年ハ大ニ政
  友會先輩諸君ノ御說ヲ參酌シ、其持論ヲ縮小シテ、東京市ニ限ッテ、之ヲ試驗的ニ施行
  シヤウト云フコトニ致シタノデアリマス、諸君今囘ノ御詔勅ニ經濟ノ情態茲ニ革マリト云
  フ御言葉ガゴザイマス、翻ッテ此御膝下タル我東京市ノ經濟狀態ヲ見マスルト、近來交
  通機關ノ發達ト共ニ民衆ガ全國各地カラ輻輳シテ來マシテ、人口ハ多々益〓激增シ、
  經濟的事情ノ變化ト生存競爭ノ激甚ナル有樣ハ實ニ驚クベキ程デアリマス、就中借地
  人ト地主トノ衝突紛擾ノ如キハ到ル處最モ甚シイモノデアリマスカラシテ、社會政策ノ上
  カラモ國家ハ相當ナル調和策ヲ講ズル必要ガアルト信ズルノデアリマス、諸君、地代ト土
  地ニ賃貸價格ノ騰貴ト云フモノハ必ズ家賃ト營業稅ニ增額ヲ來ス、家賃ト營業稅ノ
  增額ハ必ズ一般物價ノ騰貴ヲ來ス、一般物價ノ騰貴ハ多々益〓細民ノ困難ヲ促ス、
  細民ノ困難ハ延イテ資本主トノ衝突ヲ生ズルト云フコトハ是ハ爭フベカラザル次第デア
  リマスルカラシテ、私ハ此〓ニ於テ先覺者タル諸君ニ深キ御留意ヲ煩シタイノデアリマス、
  唯今東京ニ於テ大地主ト申シマスルト駿河町ノ三井ノ如キ、淺草藏前ノ靑木ノ如キハ、
  東京ニ於ケル一二ヲ爭フ大地主デアリマス、是等ノ大地主タル富豪ガ其借地人カラ如
  何ナル借地證ヲ取ッテ居ルカト云フニ、何レモ活版刷、木版摺ノ借地證デアリマシテ、其
  借地證ハ一年又ハ三年、長クテ五年ヲ期限トシテ居ルノデアリマス、又期限ノ切レナイ
  中ニ御入用ノ節ハ何時ニテモ明渡スト云フヤウナ賃貸證書ヲ入レテ居ルモノデアリマス、
  是ハ民法ノ上カラ云ヘバ所謂虛僞ノ意思表示デアッテ、多年ノ慣習ニ從ヲテ紋切形ノ證書
  ヲ差入レル次第デアリマスガ、其契約者ノ眞意ヲ探究シマスト他人ノ土地ニ多大ノ資本
  ヲ抛ッテ宏大ノ家屋ヲ建築シテ、此處ニ營業ヲスルト云フ以上ハ、貸ス者モ借リル者モ
  其建物ガ朽腐スルマデソレヲ使用スル、使用サセルト認諾シテ居ルコトハ、常識上疑フベ
  カラサルノデアリマス、然ルニ今日實際ハドウデアルカト云ヘバ、頗ル地主借地人間ノ衝突ノ
  激シイノデアリマス、玆ニ其一二ノ例ヲ申上ゲマスルト、東京ノ多額納稅者何某ナル者ガ
  アリマシテ、其多額納稅者ノ持ッテ居ル地面ノ中ニ僅ニ月給十五圓ノ收入アル親子
  三人暮シノ小學〓員ガアル、其住宅ノ地代ハ一箇月三圓デアッタトコロガ、地主ガ俄二六
  圓ニ上ゲルト云フコトヲ言出シタノデアリマス、ソコデ十五圓ノ月給デ三人暮シノ小學〓
  員ガ俄ニ月給ヲ殖シテ貰フコトハ出來ヌノデアルカラ、私ヲ丁度知ッテ居ルト云フノデ、ド
  ウカ地主ノ方ヘ嘆願シテ貰フ譯ニイキマセヌカト、斯ウ云フ話デアリマシタカラ、私ハ甚ダ
  イヤデアリマシタケレドモ、其多額納稅者ノ處ニ參ッテ自分ハ商業上ノ關係デハナイ、唯
  氣ノ毒デアルカラ中間ニ入ル次第デアルケレドモ、何トカ一ツ地代增額ヲ割引ヲシテマッ
  テ貰フ譯ニイキマセヌカ、〓育家ヲ一人助ケルト思ッテ割引ヲシテ貰フ譯ニイキマセヌカト
  云ッテ嘆願シマシタ、尤モ此憫レナル小學〓員ハ私ノ割引的仲裁ニ向ッテ何分宜シク願
  ヒマスト云ッテ、私ノ申シタ地代引上額ヲ承諾シタノデアリマスガ、一方ノ勢力アル多額納
  稅者ノ地主何某ハ言出シタ地代ト云フモノハ倍額ニスルト云フ頗ル激烈ナル上ゲ方デア
  ルニ拘ハラズ、ソレヲ一文モ引カナイ、イヤナラバ退イテ行ッテ貰ヒタイ斯ウ云フ次第デ、遂
  ニ私ハ其關係ヲ斷ッテ、是ガ訴訟ニナッテ居ルト云フノガ私ノ經驗シタル衝突ノ一事例デ
  アリマス、モウ一ツ私ノ關係シナイトコロノ一ノ事實ヲ申上ゲマスルト云フト是ハ昨日裁
  判所デ辯論ノアッタ事件デアリマシテ、其事件ハ政友會ノ領袖元田肇君ノ事務所ニ御
  關係ノアリシ辯護士添田增男君ノ擔任シテ居ル事件デアリマス、卽チ東京地方裁判
  所民事第四部「ワ」ノ第百十八號建物收去土地明渡請求事件ト云フノデアリマシテ、
  其係爭問題ハドウ云フ譯デ衝突シテ居ルカト云ヘバ、場所ハ神田ノ鍋町デアリマス、、其近
  隣ノ地代ガ從來一坪二十五錢デアッタトコロガ、其地主ガ地代ヲ一坪三十錢ニ上ゲル
  ト云フノデ、其土地ノ所有名義ヲ自分ノ親戚ノ名前ニ變ヘテシマッテ、サウシテ坪三十
  錢デ、其近鄰ハ二十五錢デアルモノヲ俄ニ五倍ニ引上ゲノ請求ヲシテ來タ、卽チ一圓
  五十錢ト云フコトニ請求ヲシテ來タ、ソレヲ承諾シナケレバ逐拂フト云フコトヲ言ハレルモ
  ノデアルカラ、借地人ハ已ムヲ得ズ五倍ノ請求ニ對シテ、泣ク〓〓承諾ヲ致シマシタ、
  ソレヲ承諾シタタメニ新ニ賃貸借地證ト云フモノヲ書イタガ、ドウ云フコトヲ書イテアルカト
  云フト、斯ウ云フコトガ書イテアルノデス、當事者雙方ハ示談解決ノ上互ニ相鄰ノ情諠
  ヲ持續シテ圓滿ニ交際スベキコト本件地所ノ賃貸借ノ存續期間ハ無期限ト定ム」ト云
  フ證書ヲ地主ノ方ニ差入レタノデアリマス、所ガ尙是カラ又衝突問題ガ起ッタ、ソレガ昨
  日添田辯護士ガ辯論セラレタコトヲ聽イタノデアリマス、ガ、甚ダ殘念ナコトニハ右借地
  人ハ無期限賃貸借證書(入レテアッタモノデスカラ、民法ノ六百十七條ノ規定ヲ見ルト、
  諸君ノ御承知ノ通リ「當事者カ賃貸借ノ期間ヲ定メサリシトキハ各當事者ハ何時ニテ
  モ解約ノ申入ヲ爲スコトヲ得此場合ニ於テハ賃貸借ハ解約申入ノ後左ノ期間ヲ經過
  シタルニ因リテ終了ス、一土地ニ付テハ一年」斯ウー云フ規定デアリマス、詰リ期限ヲ極メ
  テ無イトキハ一年前ニ地主ノ方カラ豫告スレバ逐拂フコトガ出來ルト云フ民法ノ規定
  デアリマス、此規定ハ田舍ノ田畑モ、東京ノヤウナ宏大ナル家屋ノ建築シテアル市街宅
  地モ、民法ノ起草者ハ同一視シテ深ク注意シナカッタモノデスカラ、土地ナラドンナモノデ
  モ同ジヤウニシナケレバナラヌト云フノデ、土地ハ一年ト云フ豫告デ明渡ヲ求ムルコトヲ得
  ル規定ニナッテ居ルノデアリマス、此規定ガ生キテ居ルトコロデ、借地人ガ差入レタ賃貸證
  ニ期限ガ明カニ極メテアリマセヌカラ、東京地方裁判所ノ民事第四部ニ於テハ其豫告ヲ
  ナシタル後一箇年ヲ經過シタト云フノデ借地人ノ家屋ヲ取壞シヲナシ、地所ヲ明渡ス
  ベシト云フ判決ヲナシマシタ、前ニ三十錢ノ地代ヲ五倍ニ引上ゲテ、コチラハ頭ヲ低ゲテ
  往ッタラ、尙今度ハ地主ガ右借地證ノ條文ニ依ッテ地所明渡ノ請求ヲシタ、其請求ニ
  對シ東京地方裁判所ノ民事第四部ハ今申シタ通リノ判決ヲ與ヘタ、ソレニ借地人ハ不
  服デアルト云フノデ、昨日控訴院デ辯論ガアッテ、其事件ハ尙結局シナイト云フヤウナ次
  第デアリマス、今舉ゲマシタル二箇ノ事實ニ依リマシテモ賢明ナル諸君ハ如何ナル御感ジ
  ヲ生ズルコトデアリマセウカ、若シ此東京地方裁判所第四部ノ判決ノ如シトスレバ其
  結果社會ノ經濟ヲ害シ、都市ノ美觀ヲ損シ、且又個人生活ノ基礎タル住居ノ安全營業
  ノ安固ヲ害セラレテ、其戶主タルモノガ心配スルノミナラズ、一家親族ト云フモノハ居ル
  ニ家ナク、悲境ニ沈淪スルニ至ル次第デアリマス、此ノ如キ民法ノ規定及司法權ノ行
  動ニ依リ社會ノ被ル有形無形ノ損害ハ〓ゲテ數フベカラザル次第デアリマス、因ッテ今
  囘ノ案ニ於キマシテハ其第一一條ニ於テ「建物ノ所有ヲ目的トスル地上權ノ存續期間ハ二
  十年ヲ下ルコトヲ得ス若之ヨリ短キ期間ヲ定メタルトキハ其期間ハ之ヲ二十年ニ伸長ス」
  云々「若契約ノ當時定マリタル建物ノ構造又ハ用方」-例ヘバ「パラック」ノ建物トカ「ト
  タン」葺ノ假小家トカ一時ノ普請小屋ト云フヤウナ建物ノ構造又ハ用法ニ依ッテー
  「之ヨリ短キ期間ヲ相當トスル場合ニハ其ノ期間ニ依ル」ト云フヤウナ提案ヲ致シタ次第
  デアリマス、而シテ此地上權ノ存續期間ニ付テ二十年デハマダ短カ過ギルト云フ御論ガ
  アルカモ存ジマセヌガ、是ハ第二十五議會ノ際ニ政府ト交涉致シマシタ結果、二十年
  以下ノ分ヲ無效ニスルト云フナラ政府モ承諾シヤウ、斯ウ云フコトヲバ政府デモ言ハレタ
  ノデアリマスカラ、少シデモ借地人ノ權利ヲ伸張シタ方ガ宜カラウト云フ考デ、私ハ二十
  年ト云フ提案ヲ致シタ次第デアリマス、是ハ近キ事例ヲ擧グレバ諸君ノ御著席アラセラ
  レテ居ル衆議院ノ如キハ明治二十三年ニ出火ノ難ニ逢ッテ假建築ヲシタ以來、既ニ二
  十有餘年ヲ經過シテ居リマス、國力ヲ以テ建築シタルモノスラ然リデアリマス、況ヤ一個
  人ガ微々タル資本ヲ以テソレヲ經營スルニ困難ナルコトハ言ヲ俟タヌ筋合デアリマスカラ、
  玆ニ二十年間ノ餘裕ヲ與ヘテ其間ニ物ヲ成立セシムルト云フ精神カラ此ノ如ク二十年
  間存續スルト云フ社會公益上ノ規定ヲ設ケタ次第デアリマス、且是ハ民法施行法第
  四十四條ヲ御覽願ヒマスト民法施行前カラ存在シテアル建物ハ其朽腐マデ存續スルト
  云フコトガアリマスカラ、民法施行前タルト施行後タルトニ依ッテ非常ナ差異ノアルベキ
  筈ハナイノデアリマスカラ、斯樣ニ提案致シタ次第デアリマス、所ガ先般或貴族院ノ議
  員ニシテ有名ナル「ドトル」先生ガ地主ガ自分ノ地面ヲ持ッテ居ル以上ハ其地面ヲ自分
  ガ入用ダト云フ場合ニ借地人ニ向ッテ明渡シテ迫ルト云フコトガ何ノ不可カアルト云フ
  コトヲバ御論シニナッタ御方ガアリマスガ、是ハ個人主義ニ偏シタ論テアリマシテ、百年前
  ノ佛蘭西革命時代ノ亂暴ナ思想ヲ持ッタモノデアルト存ジマス、社會ノ現況ハ上ニハ自
  由ガアルケレドモ、下ニハ自由ガ無イ、上ニハ權力財力智力ガアルケレドモ、下ニハ權力モ財
  力モ智力モナイ、債權者ト債務者ト同等デアルカ雇主ト職工トハ同等デアルカ、國家
  ハ既ニ高利貸ニ對シテ契約自由ノ原則ヲ破ジテ利息制限法ヲ設ケテ、高利貸壓迫ヲ
  國家ノ權力ヲ以テ制限シテ居ル、又近ク諸君ハ工場法案ニ依ッテ工場主ニ對シテ職工
  ノ勞働時間ノ制限其他幾多ノ制限ヲナシタル事實ガアルノデアリマス獨リ借地ノ賃借
  ニ對シテ地主ノ專橫ヲ許スト云フコトハアルベキ筈ハナイコトデアル、故ニ私ハ某博士ノ
  言フガ如ク日本ニ於テモ個人主義ヲ實行スルト云フナラバ其地主ト云フモノハ何モ借地
  人ノ資本ヲ借リル必要ハナイノデアリマスカラ、地主自ラ其土地ニ建物ヲ建築スレバ宜
  イト思フ、東京市ノ實況カラ申シマスレバ土地ノ値段ヨリハ借地人ガ其上ニ有スル建物
  ノ値段ノ方ガ高イ故ニ、經濟上ノ〓究カラ言ヘバ土地一坪宜イ地面デ五十圓トスレ
  バ、其上ニ建テヽアル建物ハ百圓以上ノモノガ少ナカラヌノデアリマス、現ニ今度御堀端
  ニ出來タ帝國座ノ如キハ建築費ガ八十万圓以上ニ及ンテ居ル卽チ地主ハ借地人ノタ
  メニ土地ノ價格ヲ騰貴サレテ居ル、其臘貴ハ誰ノ御蔭デアルカト云フト、一方ニ社會全
  體ノ御蔭モアルケレドモ、亦直接ニハ借地人ガ其土地ニ向ッテ家屋ヲ建築シタ資本ノ働
  キ、勤勞ノ働キ、營業ノ働キ、信用ノ働キニ原因スルコトガ多イノデアル、然ルニソレ等ノ
  モノヲ全ク無視シテ其土地ガ繁昌ヲ來スト、唯自己ノ利益ノミヲ主張シ、借地人ノ御
  蔭モアルコトヲ忘レテ、之ヲ虛待スルノハ實ニ解スルコトガ出來ヌノデアリマス、本員ハ尙
  此壇上ニ於テ最モ無情冷血ナル不正地主ニ對シテ一言スベキコトガアル、ソレハ我ガ
  立憲政體ノ思人デアル板垣伯ガ、今囘社會政策ニ關スルトコロノ雜誌ヲ御發行ニナ
  ラウト云フ計畫デアッテ其編輯ノ主任ニハ政友會ノ豫算通ヲ以テ有名デアッタ森本駿君
  ガ當ラレ、サウシテ板垣伯ノ理想トシテハ、我稅制整理ノ第一著トシテ土地增價差
  益稅ヲ斷行セントシテ、頻リニ計畫セラレテ居ル、又日本第一流ノ經濟學者財政學者
  デアルトコロノ會計檢査院長田尻博士ハ「日本ノ現在及將來」ト云フ最近ノ著書ニ於
  テ土地增價差益稅ノ斷行ヲ主張シテ居ル、又此間豫算ノ委員總會ニ於テ大阪第一
  流ノ實業家デアリ、尊敬スベキ紳士片岡直温君カラ大藏大臣ニ向ッテ土地差益稅ニ
  關スル質問ガアッタ、卽チ鐵道ヲ廣軌ニスルニ付テ、其附近ノ場所ガ非常ニ繁華ニナル
  繁華ニナルニ向ヲテハ政府ハ土地ノ差益稅ヲ課スル考ガアルヤ否ヤト云フ最モ有益ナル
  質問ガアッタコトハ、諸君ノ御記憶ニ新ナルトコロデアルト存ジマス、此ノ如ク我國ニ於テ
  モ極端ナル理想家デアル板垣伯ハ右ノ議論ヲ唱ヘ、極端ナル實行家デアルトコロノ田尻
  男爵ハ此ノ如キ議論ヲ唱ヘテ居ル又內ハ此ノ如クデアルシ、外ハドウ云フ狀態デアルカ
  ト云フト、我同盟國デアルトコロノ英國ニ於テハドウデアルカ、私ハ英國ノ倫〓ノ「ミッドル
  テンプル」ノ圖書館ヘ參リマシタ、其時ニ同圖書館デ一番古イ本ハ何デアルカト調ベテ見
  マスト、英國最古ノ法律トシテ「ウットフオール」ト云フ人ノ編纂シタ地主及借地人保護
  法ト云フ本ガ此圖書館ニ於テ古イ本ノ一ツデアリマス、又此外ニ於テハドウカト云フト「イー
  ストロンドン」ニ參リマシタ、倫敦ノ「トインビーホール」ニ借地人保護協會ガアル、サウシテ
  此憫レナルトコロノ借地人ニ對シテ富豪ノ不正地主ガ壓追ヲ加ヘルト倫敦ノ紳士ガ
  醵金ヲシテ之ヲ借地人保護協會ヘ寄附シテ、其寄附ノ金デ以テ立派ノ辯護士ヲ依賴シ
  フ、サウシテ賞民ト富豪ノ間ノ權利ヲ互角ニスル方法ヲ講ニテ居ル丁度昨年接シマシタ
  報〓ガ第十一囘目ノ權利保護ノ報告デアリマス、此ノ如ク英國人ハ權利思想ニ富ンデ
  居ルカラ日本ノヤウニ地主ニ頭ヲ下ゲルト云フノデハナイ、權利ト云フモノハ金持ニ向ツ
  テモ一歩モ讓ラヌト云フ風デアルカラ、ソコデ同情者ノ義俠ニ依ッテ貧民ガ其權利ヲ擴
  張スル方法ガ立ッテ居ルノデアリマシテ、英吉利ノ如キ澤山ナル社會黨ハアリマス、ケ
  レドモ曾テ地主ニ向シテ亂暴ヲ試ミタコトハナイノデアル、而シテ現內閣ノ「アスキス」氏等
  ハドウ云フ政策ヲ施シタカト云フト、既ニ三囘ニ亙ッテ土地差益稅ヲ下院ニ於テ可決シ
  テ居ルト云フコトハ諸君モ御承知ノ通リデアル(「簡單」ト呼フ者アリ)簡單デハナイ、社
  會政策ノ大問題デアル、縱令衆議院ガ通過シテモ貴族院ヘ行ッテ是ガ通過シナケ
  レバ何ニモナラヌ、近クハ一昨晩配付ノ衆議院公報ヲ見ルト、諸君ガ御盡力ニナッタ案
  ガ如何ナル運命ニナリタルカ、衆議院提出案ガ僅カ三ツシカ貴族院ヲ通ッテ居ラヌノデア
  ル、本員ハ衆議院議員ノ一人トシテ、實ニ殘念デアリマス、此議會ノ演說ナルモノ諸君
  ニノミ向,テ言フノデハナイ、日本國民ニ向ッテ訴ヘルノデアリマス(拍手起ル)其他獨逸ニ
  於テ土地差益稅モ亞米利加ニ於テ土地改良稅モドウ云フヤウナ高率ノ稅ガアルカト云
  フコトハ吾〓ガ喋々ヲ俟タヌ次第デアル、内外ノ情勢ハ此ノ如キ次第デアルノニ、一國ニ於テ
  最モ健全ナルトコロノ分子、忠良ナル臣民ハ何デアルカト云フト、借地人デアッテ、彼ハ働
  イテ且食フ人間デアルト云フコトハ疑ノナイ次第デアル、唯先祖ノ遺產ニ依ッテ座ッテ居ッ
  テ、地面ノ收入ヤ何カニ依ッテ〓フ人間デアルトカ、又過去ノ勞働ノ結果土地ヲ買入レ、
  今日ハ寢テ居ッテ食フ人間、是ハ多少宜イ方デアルケレドモ働イテ且ツ〓フ人間トハ違ッ
  テ居ル、借地人ノ如キハ働イテ且食フ人間デアル、此人間ガ日本帝國ノ活動ノ樞軸ニ
  ナル人間デアル、此中等種族ノ盛衰ハヤハリ國力ノ强弱ニ影響スルノデアルカラ國家ト
  シテハ板垣伯ノ議論ノ如ク社會政策ノ上ニ於テ此生活ヲ安全ニ保護スル必要アルコト
  ハ、私ノ論ヲ俟タヌ筋合デアラウト考ヘマス然ルニ貴族院ニ運動ヲナシタルトコロノ或一
  派ノ地主ノ如キハ.此善良ナルトコロノ健全ナル人民ニ向ッテ、壓迫ヲ加ヘ、サウシテ借
  地人ノ地位ヲ安固ニセシメヌト云フコトニナルト、此借地人ノ恨ト云フモノハ積リ積ッテ、
  他日中流階級ガ政治上ノ權力ヲ握ルトキニハ極端ナル反動ヲ起シテ、或ハ最モ率ノ高
  イトコロノ差益稅ヲ課スルコトガナイトモ斷言出來ヌ、現ニ桂總理大臣ハ獨逸ノ〓育ヲ
  受ケテ獨逸ノ眞似ガ好キナ人デアルカラ、既ニ獨逸ニ於テ元土地ヲ買入レタル價格ニ對
  シ其後之ヲ賣却スル價格トノ差金ノ二割五分ノ差益稅ヲ課シテ居ル、其稅法ヲ又日
  本ニ斷行セント云フコトモナイト云フコトヲ保スルコトガ出來ナイノデアリマス、故ニドウシ
  テモ此衝突ガアッタ後ニ於テ之ヲ救フト云フコトヨリハ未ダ衝突ノ甚シカラザル以前ニ於
  テ之ヲ救フコトガ最モ必要デアラフト信ズル、先頃政府ニ對シテ既ニ亂暴人ガ出タト云フ
  コトハ甚ダ殘念ノ次第デアルガ、之ハ再ビ出ナイカモ知ラヌケレドモ、餘リ中流階級ニ
  向ッテ壓迫ヲ加ヘルト今日以後戰慄スベキ亂暴ノ人間ガ出ナイト云フコトヲ本員
  ハ斷言スルコトガ出來ナイ、尙此壇ヲ降ルニ當リマシテ、都市政策ニ付テ一言チヨット
  加ヘテ置キタイノハ、帝都ニ對スルトコロノ政策トシテ我政府ハ一千万圓以上ノ外債ヲ
  募ッテ東京ノ市區改正ヲ斷行シ、尙過日本員カラシテ都市政策ニ付テ政府ニ質問シタ
  トコロニ依ルト、東京市內ノ建築條例モ今ヤ調査中デアルト云フノ御答デアル、カウ云云
  御答デアル以上ハ建物ノ改善ヲ圖ッテ、市街ノ美觀ヲ增サントスルニ方ッテハ、先ヅ建物
  ヲ置クトコロノ根本タル借地關係ト云フモノヲバ確定ヲシテ、此借地關係ヲ一時的朦
  朧的地震的ノ狀態ニ置クト云フコトハアルベキ次第デナイノデアリマスカラシテ、ドウカシテ
  東京ハ日本帝國ノ玄關デアル此玄關ニ宏壯ナル、端麗ナル、建築物ヲ造ル政策ヲ講
  ズルコトハ私ハ論ヲ俟タヌ筋合デアラウト考ヘマス、殊ニ昨年帝國議會ガ閉會後新シク
  生シマシタ事實ハ何デアルカト申シマスレバ、本年春確定致シマシタ宅地價修正ノ結果
  デアリマス宅地價賃貸價額ノ調査ノ結果ハ日本橋ニ於テ二十三万圓、京橋ニ於テ
  六万圓合セテ二十九万圓ヲ減ジタノデス、ケレドモ全市ヲ通ジテハ二十七万圓ガ增加
  シテ居ル、ソコデ過去ノ歷史ヲ顧ミテ見マスルト日露戰爭ノトキニ地租ニ課シマシタトコロ
  ノ非常特別稅ノ負擔ハ實際何人ガ負擔ヲシテ居ルカト云フト、地主ニ課シタモノガ借地
  人ニ課セラレ、借地人ニ課シタモノガ借家人ニ課セラレ、借家人ニ課シタモノガ商品ニ課
  セラレ、商品ニ課シタモノガ需用者ニ課セラレルト云フ、斯ウ云フ結果ヲ見テ居リマシテ、
  是ガタメニ種々ナ困難ノ事實ガ出來テ居リマスガ、更ニ今度宅地價修正ノ結果一一十七
  万圓東京市ニ增額ガアッタ以上ハ地主ハ此儘默ッテ居ラナイ、其負擔ヲ更ニ地代ニ課
  シテ、是ヘ割增ヲ掛ケテヤルト云フ事實ガ現ハレルコトナキカト私ハ信ジマス、サウスレバ
  此法律ヲ定メル必要ハ時々刻々ニ迫ッテ居ルコトデアル、殊ニ前囘ノ本會議ニ於テ大藏
  省ノ金融政策ノ上ニ於ケルトコロノ日本勸業銀行、農工銀行ノ問題ニ關係シマシテ、
  大藏次官ノ若槻君ハ市街宅地ノ建物ニ付テハ低利ノ貸附ヲスルト云フ目的ヲ以テ勸
  業銀行法、農工銀行法ノ改正ヲスル必要ガアルト云フコトヲ御論ジニナッタ、ソレハ現在
  ニ於テ或ハ五十年、三十年ノ永年賦ヲ以テ工場其他市街地ニ於ケルトコロノ建物
  ニモ貸サウト云フヤウナ大藏省ハ御考デアル併ナガラ此御考ハ誠ニ宜イコトデハアルケ
  レドモ、私ハマグ民間實地ノ事情ヲ能ク穿ッテナイ議論デアルト考ヘル、此間勸業銀行ヘ
  行ッテ調ベテ見マシタトコロガ、勸業銀行デ以テ永年賦デ貸スニハ少クモ數十年ノ地
  上權ノアルモノデナケレバ貸サヌデス、何時逐拂ハレルカ知レヌト云フ家屋デ、何時デモ
  御入用ノトキハ明渡ストカ、或ハ一年、三年、五年ト云フ期限ヲ勵行スルモノニ向タテハ、
  ドンナ建物デアッテモ、勸業銀行、農工銀行ハ金ヲ貸サヌデス、ソレデアリマスカラ大藏次
  官ノ社會政策トシテ市街ニ金ヲ囘サウト云フ御考ヲ行フト云ッタトコロガツレハホンノ紙
  ノ上ノ政策デ實地ノ社會政策トシテ行ハレナイト思フ私ハ政府ガ折角ヤル以上ハ根
  木政策トシテ此〓ヲ〓究セネバナラヌノニ、表面農工銀行ヲ保護スレバ宜イ、勸業銀
  行ヲ保護スレバ宜イト云ッテ、其金融ガ市街地ニドウ行ハレルカト云フ實地ノ〓究ヲ爲
  サヌト云フコトハ若槻君ノ如キ賢名ナル次官トシテハ稚過ギル議論デアルト信ズル、
  尙最後ニ一言スベキコトハ外國人ノ土地所有權ニ關スル法律ニ付テ本員ハ外務大臣
  ニ向ッテ屢、〓質問ヲ致シマシタ、外國人ノ權利ト云フモノハ尊重スルケレドモ此法律ガ
  施行ニナル以上ハ今マデ地主ト借地人及小作人ト地主トノ關係ハ主トシテ情愛關係
  デアッタケレドモ、是カラハ專ラ權利義務ノ關係ニナル、ソレニ付テ當局者ハ外國人ノ權
  利ヲ尊重スルケレドモ、內國人ノ借地人ノ權利保護ヲ閑却シテハナラヌカラ、此〓ニ付
  テ政府ハ如何ナル政策ガアルカ、斯ウ云フ質問ヲ致シマシタトコロガ、外務大臣ハ昨年外
  國人ニ土地所有ヲ許ス法案提出ノ際祕密ニ外國人ノ持ッテ居ル地面ガ卽チ條約ヲ犯
  シ、法律ヲ犯シテ持ッテ居ルモノハ、十六万六千坪アル、其外ハ外務省ニハ分ラヌト云
  フ御話デアル、又本員ノ調査シタトコロニ依ッテモ最近ノ興信所ノ報告ヲ見ト、ドンノ
  外國人ガ東京ノ地所ニ向ッテ金ヲ貸シテ居ルト云フコトハ爭フベカラザル事實デアル、サウ
  スルト今マデハ惡辣ノ地主デアッテモ、多少情愛關係ガアッタノガ、今度ハ一切權利義
  務デ行クトコロノ實力ヲ外國人ガ持ツコトニナル、殊ニ過日小村大臣ノ御演說ニ依ル
  ト日米ノ條約改正ガ內定ニナッタト云フコトガアリマス、サウスルト借地人保護ノ法
  律ヲ拵ヘル必要ノアルコトハ論ヲ俟タヌノデアル、然ルニ政府ガ此〓ニ向ッテ何等提案ヲ
  セラレヌト云フコトハ、私ハ甚ダ失當ナ次第デアルト信ジマス、ソレデゴザイマスカラシテ此
  法律案ニ向ッテハ十分御審査ヲ煩シタイノデアリマス、唯玆ニ私ハ政友會ノ賢明ナル諸
  君ニ向ッテ特ニ御注意ヲ煩シタイノハ、今日ノ新聞ヲ見ルト我〓ガ過日提案致シテカラ
  後政友會ニ於テハ深ク此社會政策ニ關スル問題ニ留意セラレ、昨日當議會ニ向ッテ借
  地法案ヲ提案ヲセラレタト云フコトデアリマス、是ハ私ノ案ガ縱シ潰レマシテモ私ハ何モ
  政友會デアル、國民黨ダト云フヤウナ小サナ考ハナイ、社會政策ノ實行ガ出來テ、國民
  ヲ濟フコトガ出來レバ滿足ナノデアリマスカラ、私ノ案ハ參照デモ宜イノデ、政友會ノ諸
  君ハ十分此〓ニ付テ討議ヲシテ戴キタイ、、其中デ最モ私ノ遺憾ニ存ジマスノハ私ノ案
  ノ第三條ガ政友會ノ案ニハナイ、第三條ハドウデアルカト云フト「建物ノ所有ヲ目的トス
  ル土地ノ賃貸借ニ付テハ民法第六百十二條ノ規定ヲ適用セス」ト云フコトガ書イテア
  ル、民法ノ六百十二條ト云フモノハ「賃借人ハ賃貸人ノ承諾アルニアラサレハ其權利ヲ
  讓渡シ又ハ之ヲ轉貸スルコトヲ得ス」ト云フ規定デアル、多クノ地主ノ持ッテ居ル借地證
  ハ賃貸借デアッテ、卽チ地主ガ承諾ヲセネバ復貸シハ出來ヌト云フコトニナルト云フト、
  例ヘバ價額一万圓ノ家ヲ持ッテ居テモ、地主ノ所ヘ行ッテ話ヲスルト、外ノ人間ニ賣ルナ
  ラバ貸サヌト云フコトヲ言ハレヽバ、折角一万圓ノ家屋ヲ持ッテ居ツテモ之ヲ金融ニ供ス
  ルコトガ出來ナイ、人間ハ榮枯盛衰ガアルカラ其財產ヲ他ヘ轉賣スル場合ニ於テ地主ヘ
  交渉ニ行クト三千圓ナラ買フ、サウデナケレバ立退ケ、斯ウ云フコトヲ言ハレル、成程借
  地人ガ變ラナイ場合ハ政友會ノ案デ宜イケレドモ、若シ借地人ガ建物ヲ移轉スル場合
  ニ於テハドウ云フ方策ヲ御執リニナル御考デゴザイマスカ、前門ニ於テ地震的ノ虎ヲ防イ
  テモ、後門ニ於ケルトコロノ地震的ノ狼ヲ防グコトガ出來ナカッタトキハ何ニモナラヌト思ヒ
  マスカラ、政友會ノ諸君ハ私ノ說ガ誤ッテ居ルカモ知レマセヌケレドモ、尙御熟考ヲ願ヒタ
  イ、モウ一ツ餘リ借地人バカリノ權利ヲ保全スルト云フコトモ公平ヲ缺クカモ知レマセヌカ
  ラ、私ハ昨年來地主ニ向ッテ先取特權ヲ與ヘル、借地人ガ逃ゲヤウトモ地主ニハ其建
  物ノ上ニ先取特權ヲ與フルト云フ提案ヲシテ地主ガ安心スルコトガ出來ル、卽チ三百
  代言ノヤウナ借地人ガアッテモ、地主ノ權利ヲ保護スルタメ其先取權ヲ認メルト云フヤウ
  ナ工合ニ法文ヲ書イテ置キマシタ、此〓ハ黨派問題デモ何デモナイ、社會救濟ニ關スル
  重要ナル問題デアリマスカラ賢明ナル諸君ハ十分御審議ノ上、本員提案ノ精神ノ貫徹
  センコトヲ切ニ祈ル次第デアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=37

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• 038・松田源治

  ○松田源治君　本案ハ第一ノ東京市區改正條例中改正法律案ト同一委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=38

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• 039・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　日程第一、卽チ東京市區改正條例中改正法律案ト同一
  委員ニ付託スルト云フ松田君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=39

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• 040・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ左樣致シマス、次ハ日程第八、第九ハ共ニ東京市ニ
  關スル議案デゴザイマスガ、一括シテ議題トシテ各提出者ニ意見ヲ述ベサセルコトニ御異
  議ハゴザイマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=40

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• 041・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ一括シテ議題トスルコトニ致シマス、日程第八東京市ニ
  關スル法律案、第九東京市ニ關スル法律案-尾崎行雄君
  第八東京市ニ關スル法律案(尾崎行雄君外四名提出)第一讀會
  第九東京市ニ關スル法律案(福田又一君外六名提出)第一讀會
  東京市ニ關スル法律案
  第一條東京市ノ公共事務ニ付テハ特ニ內務大臣直接之ヲ監督シ市制中府
  知事又ハ府參事會ノ職權ニ屬スヘキモノハ總テ內務大臣ニ専屬ス
  第二條前條ノ事務ニ關シ市制中府知事又ハ府參事會ヲ經由シ行政裁判所
  ニ出訴スヘキモノハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
  第三條市制中府參事會ニ於テ市會又ハ市參事會ニ代リ處分スヘキ場合ハ
  市長內務大臣ノ認可ヲ經テ之ヲ處分シ次ノ市會ニ報告スヘキモノトス
  第四條本法ニ規定スルモノノ外ハ總テ市制ヲ適用ス
  附則
  本法ハ明治四十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
  東京市ニ關スル法律案
  第一條東京市ノ公共事務ニ付テハ特ニ內務大臣直接ニ之ヲ監督シ市制中
  府知事又ハ府參事會ノ職權ニ屬スヘキモノハ總テ內務大臣ニ專屬ス
  第二條前條ノ事務ニ關シ市制中府知事又ハ府參事會ヲ經由シ行政裁判所
  ニ出訴スヘキモノハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
  第三條市制中府參事會ニ於テ市會又ハ市參事會ニ代リ處分スヘキ場合ハ
  市長內務大臣ノ認可ヲ經テ之ヲ處分シ次ノ市會ニ報告スヘキモノトス
  第四條本法ニ規定スルモノノ外ハ總テ市制ヲ適用ス
  附則
  本法ハ明治四十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔尾崎行雄君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=41

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• 042・尾崎行雄

  ○尾崎行雄君　此日程第八第九ハ二案ニナッテ居リマスガ、全ク同一ノモノデアリマ
  ス、其目的ハ東京市ヲ內務省ノ直轄ニ致シタイト云フダケニ過ギナイノデアリマス、是ハモ
  ウ前議會ニモ屢〓此議會ヲ通過シテ、殆ド滿場ノ御贊成ヲ得タ案デアリマス、故ニ今同
  モ御贊成ヲ得ルコトハ疑ハナイノデアリマス、唯困ルコトハ從來市制ニ關スル法律案ガ衆
  議院カラ一ツ出テ、又貴族院カラ一ツ出テ、時トシテハ政府カラモ一ツ出ルト云フ、此三
  案屢〓議場ニ現ハレタノデアリマス、而シテ其中ノ要〓ヲ見マスルト、細カナ〓ハ殆ド皆
  一致シテ居ッテ一番ノ大眼目ト見ルベキトコロモ殆ド異ルトコロハ無イノデアル、此三案
  ノ貴族案、政府案及衆議院案ト云フノヲ見マシテ、其中ノ一番要點ハ何カト云ヘバ、政
  府案ハ暫ク別ニシテ、衆議院案ト貴族院案、卽チ所謂都制案ト東京市ニ關スル特別ノ
  法律案トハ共ニ二ツノ目的ヲ持ッテ居ルノデアリマス、第一ハ東京市ヲ府知事ノ管轄ヲ
  離レテ內務省ノ直轄ニ致シタイト云フノガ一ノ眼目デアル、是ハ東京市關係ノ議員ガ
  年々コチラニ出シタモノモ亦都制法案ト稱シテ、貴族院ヨリ提出シタモノモ、內務省ノ直
  〓ニスルト云フコトハ少シモ違ハヌノデアリマス、ドチラモ同ジコトニナッテ居ル、ソレカラモ
  ウ一ツノ第二ノ眼目ハ參事會ガ現在ハ執行機關デアルノヲ之ヲ變ジテ諮問機關トナサ
  ウト云フノガ目的デアリマスガ、此〓ニ付テモ東京市制案モ貴族院ノ都制案モ全ク同
  一軌デアッテ、少シモ異ナルトコロハナイ、其他ノ點ハソレニ從ツテ起ルトコロノ修正若クハ
  多少ノ改良デアル、比較的餘程小サナ〓デアリマスルガ、其小サナ〓ニ至ルマデモ比較シ
  テ見マスルト、東京市制案モ、貴族院ノ都制案モ、十中七八以上同一デアリマス斯ク
  意見ガ全ク大眼目ニ於テモ一致シテ居ル、小サイ點ニ於テモ一致シテ居リナガラ、是ガ
  恰モ大敵ノ兩立スベカラザルモノヽ如ク世間ニ認定セラレテ、衆議院ハ貴族院案ヲ否決
  シ、貴族院ハ衆議院ノ滿場一致ヲ以テ通過シタ案ヲ否決スルト云フガ如クナリ、、其間ニ
  挾ッテ又眼目ニ於テ卽チ參事官ヲ諮問機關ニシヤウト云フ一〓ト其他ノ細目ニ於テハ
  此兩案ニ殆ド目的ヲ同ウシテ居ルトコロノ政府案マデモ今マデ實行ニ至ラナカッタノハ何
  ノタメデアルカト云フト、元ト同ジ樣ナ目的デアル案ノ出所ガ違フガタメニ互ニ衝突スル
  ガ如ク見違ヘテ居ッタト云フ感情ノタメニ御互ニ殺シ合ヲテ三案トモ潰シ來ッタト云フノ
  ガ、既往七八年間ニ於ケル事績デアリマス、實ニ考ヘテ見レバ馬鹿ラシイコトデアル、大目
  的ニ於テモ、小目的ニ於テモ殆ド同ジデアルモノガ、何時デモ成立タナイト云フノハ全ク感情
  ノ衝突デアッテ、議案其者ノ衝突デハナイト思ヒマス唯貴族院案ノ衆議院ニ異ナルトコ
  ロハ、貴族院ニ於テハ東京市ヲ內務省ノ直轄ニスルト云フコトハ至極宜シイガ、直轄ニスル
  ニ付テハ市長ヲ官選ニシナケレバナラヌト云フコトガ、其直轄論ノ自然ノ結果ト考ヘテ、貴
  族院デハ官選論ヲ出シテ居ル、此ニ至ルト違ヒマス、官選論ト云フコトハ宜イカモ知レマセ
  ヌケレドモ今日既ニ二十有餘年間-特別市制ヲ廢シテカラ十有餘年間民選デ行
  來ッテ、人民ノ方ニ於テハソレデ差支ナイト見來ッタ權利ヲ一朝俄ニ別ニ目的ハナク唯
  直轄ニスルニ付テノ手續トシテ官選ニシナケレバナラヌト云フコトハ宜シイトシタトコロ
  ガ、實行ハシニクイ事柄デアリマスルノミナラズ、從來ノ歷史ヲ見マスルト明治二十二年
  頃ニ此市町村制ガ施カレテカラ以來、三十一年ニ至ルマデ殆ド十年間ハ東京市、大
  阪市及京都ノ市ハ官選デアッタノデアリマス、卽チ府縣知事市長ヲ兼任シタノデアリマス
  ル故ニ、官選市長ヲ實際ニ於テハ戴イテ居ッタ、其官選ノ結果ガ十年間ノ經驗ニ照シ
  テ宜カッタカ惡ルカッタカト云フコトヲ御覽ニナレバモウ辯ヲ俟タヌノデアリマス、何レノ地方
  ニ於テモ特別市制施行地ニ於テハ市長ト市會トハ年々歲々衝突シテ、東京市ノ如キハ殆
  ド巨細トナク事業バ總テ停滯シテシマヒ、僅カ十年間ニ官選市長ヲ更ヘルコト七人、平
  均一人ニ付一年少シ餘ヨリカ其職ニ居ルコトガ出來ナイ仕事モ何モ運ブ氣遣ヒハナ
  イ、市曾ハ幾度モ解散セラレ、衝突、喧嘩絕エナイ、ソレハ獨リ東京ノミナラズ、大阪ニ
  於テモ京都ニ於テモ官選市長ノ經驗ハ確ニ失敗デアッタノデアリマス、宜イコトヽシテモ已
  ニ與ヘタ權利ヲ奪取ルト云フコトハ出來ナイ、其上ニ此失敗ノ歷史ヲ持ッテ居ルノデアル
  カラ今日直轄ニスル手續上官選ニシタ方ガ宜シイト云フガ如キ點ニ於テ、官選論ヲ持出
  スト云フコトハ遺憾ナガラ衆議院ノ同意ヲセヌト云フコトハ無理ハナイノデアリマスル故
  ニ願クハ此官選ト云フダケヲ取除イテ、暫ク是ハ外ニ取除イテ置キマスレバアトニ殘ル
  トコロノ大問題ハ直轄ニスルト云フコトヽ、參事會ヲ諮問機關ニスルト云フコトハ貴衆兩
  院共ニ一致シテ居ル意見デアリマス、此二ツノ大目的ニ於テ、又其他ノ箇條ニ於テ、
  兩院ノ意見ガ全ク一致イタシテ居リマスル故ニ、願クハ此兩大目的ニ付テハ兩院ノ一致
  ノ希望ヲ貫クベキ途ヲ取リタイト云フタメニ今囘ハ此ノ如キ簡單ナ案ヲ出シマシタ、今
  マデハ東京市制案ト稱シテ百數十箇條ニ亙ル都制案ト殆ド同ジヤウナモノヲ出シテ參リ
  マシタガ、是マデノ歷史ヲ避ケテ今度ハ外ノコトハ總テ政府案ニ讓リ、貴族院ニ於テモ贊
  成ヲシ易イトコロノ政府案ニ一任シテシマッテ、之ニ多分贊成スルコトヽシ、而シテ此直
  轄ニスルト云フダケノ點ヲ舉ゲテ四箇條ノ案ニ纏メテ、卽チ從來ノ歷史ヲ繰返サザルガタ
  メニ此案ヲ出シタノハ貴族院ニ對シテ贊成ヲ求ムル便利ノ方法ト考ヘテ、之ヲ提出致シ
  タノデアリマス、而シテ東京市ノ如キモノヲ內務省ノ直轄ニスルコトノ必要ハ本員ノ茲
  ニ辯ズルヲ俟タナイノデ、衆議院ハ幾度モソレニ贊成シテ、其議案ヲ通過シ貴族院モ之ニ
  贊成シテ屢〓都制案ヲ通過シタノデアリマスル、故ニ今日之ヲ辯ズルノ必要ハナイト思ヒマ
  ス、唯極ク形ノ上ニ現ハレタ〓ヲ見マシテモ東京市ガ年々費ストコロノ金ノ高ハ少クシテ
  ハ九百万圓、多イトキニハ一千三四百万圓ノ金ヲ使フノデアリマスルガ、此市ヲ監督ス
  ルトコロノ東京府廳ト云フモノハ-府知事ノ手ニ於テハ年々費ストコロノ金額ハ三四
  百万圓ニ過ギナイノデアル、卽チ其仕事ノ分量、其責任ノ重サ、無論市長ト較ベルコト
  ハ出來ナイノデアリマス、然ルニ其僅ニ三四百万圓ノ仕事及ソレニ對スル責任ヲ持ッテ居
  ルトコロノモノガ多キトキニハ一千三四百万圓ノ金ヲ使ヒ、其責任ヲ持シテ居ル市長ヲ
  監督スルト云フガ如キハ、是ハ唯規則ノ上ニ於テ定ムルコトガ出來ルダケノコトデ、定メ
  タトコロガ實際ノ役ニモ立ッテ居ラヌノデアリマス、サウ云フモノニ監督ハ出來ナイ筈ニナッ
  テ居ルノデアリマス事實ニ於テハ-又實際ヲ見マシテモ少シ大キナ仕事デアリマスレ
  バ獨リ東京ノミナラズ大阪市長ニ至ルマデ直ニ內務大臣ト打合セテ仕事ヲ片付ケ
  テシマウノデ間ニ挾マルトコロノ知事ハ唯形式的ノ文書ノ取次ヲスルト云フニ過ギズシテ、
  實際ノ問題ハ皆直接ニ片付ケテ居ルノデアリマス、然ルニ斯ウ云フ唯法律上-法令
  上形式的ノモノヲ通過シテ居ルガタメ、內務省ト市ノ間ニハ已ニ片付テ居ル問題モ唯形
  式上府知事ニ持ッテ行ッテ其取次ヲ經ナケレバナラヌト云フコトニナリ、ソレガタメニ無益ノ
  手數ト時日ヲ費シテ仕事ノ澁滯ヲ來スト云フ結果ニナルノデアリマスガ故ニ、願クハ直轄
  ト云フ問題ニ付テハ滿場ノ御贊成ヲ得タイノデアリマス、現ニ民選ノモノガ直轄ニナル、
  ナラウトモ或ハ如何ナル位地ヲ與ヘテモ差支ナイト云フ證據ハ貴衆兩院ノ議長アタリニ
  付テ明カニ分ッテ居ルノデアリマス、內務省ニ於テ直轄ニスルト知事ト同等若クハ以上ノ
  市長ト云フモノガ出來ル、サウスルト他ノ知事ニ影響スルト云フヤウナコトヲ言ハレルケレ
  ドモ、現ニ貴衆兩院ノ議長ハ市長ト同ジヤウニ二名ノ候補者ヲ選舉シテ御裁可ヲ經ル
  ノデアッテ、卽チ民選ノ職員デアル其民選ノ職員タル貴衆兩院ノ議長ヲ親任官ノ待
  遇ヲ與ヘテ、而シテ官選ノ書記官長以下諸般ノ職員ノ上ニ於テ之ヲ監督セシメタトコ
  ロガ、ソレガタメニ他ニ何等ノ影響ヲモ及ボシハシナイノデアル、ソレガタメニ書記官長以下
  皆民選ニシナケレバナラヌト云フ議論ハ起ラ「メノデアリマス、故ニ直轄ノ民選市長ヲ作
  ル以上ハ府縣知事又民選ニスベシト云フ議論ガ起ルダラウト云フヤウナ考ハ全ク杞憂デ
  アッチ、サウ云フ筋ノモノデナイコトハ此貴衆兩院ノ議長ノ民選職員デアリナガラ、親
  任官ノ待遇ヲ與ヘラレテ居ッテ官選ノ吏員ヲ統督シテ居ッテ、少シモ差支ナイ事實ニ徵
  シテモ明カナルコトデアリマス故ニ願クハ滿場ノ御贊成ヲ得タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=42

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• 043・高木益太郎

  ○高木益太郞君　私ハ說明ヲ求メタイ、尾崎君ニ說明ヲ求メタイコトハ、尾崎君外
  四名ノ提出ニ係ル東京市ニ關スル法律案ノ次ニ福田又一君外六名ノ提出ニ係ル、東
  京市ニ關スル法律案ト云フモノガ出テ居リマス、尾崎君ハ唯今貴族院ト衆議院トノ例
  ヲ引用セラレテ此參政ノ許可ヲ得ルト言フコトニ付テ喋々議論ノアッタ〓ハ如何ニモ同
  感デアリマス、然ルニ此尾崎君ノ案ヲ見ルト第一ノ案、第二ノ案、文章モ同ジデアリ內
  容モ同ジデアル、然ルニ尾崎君ノ如キハ政友會ノ領袖デアッテ、吾〓後進ノ〓ヲ請フベキ
  人デアリ、又市長トシテハ東京市ノ自治團體ヲ圓滿ニ治メ、全國市町村ノ模範ヲ示ス
  ベキ重要ノ位地ニ居ル人デアリ、個人トシテハ嘗テ進步黨ニ緣故ヲ持タレ、又新會ニ緣故
  ヲ持タレ、今現ニ政友會ノ領袖デアルトコロノ人ガ、ナゼ斯ウ云フヤウナ形式モ內容モ
  同ジ案ヲ別々ニ御出シニナッタノデアルカ伺ヒタイ、自分ノ方デ同ジモノヲ二案トシテ出シ
  テ置キナガラ、貴族院ノ方ニ向ッテ衝突アリトカ、一致セズトカ、攻擊シタトコロガ、利目
  ガ薄カラウト思フ、大政黨ハ宜シク襟度ヲ廣クシテ各派一致シテ其性質內容ノ同ジモノ
  ハ之ヲ纏メテ出ス方法ヲ講ジテ貰ヒタイ、同ジモノヲ別々ニ本院ニ提出スルト云フノハ、ド
  ウ云フ次第デアリマスカ、其次第ヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=43

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• 044・尾崎行雄

  ○尾崎行雄君　御答致シマス、少シモ衝突ナク襟度ヲ披イテ兩方一〓ニ出シタノデア
  リマス、能ク其間ノ調和ヲ得テ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=44

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• 045・福田又一

  ○福田又一君　唯今尾崎君ガ本案ヲ提出シマシタトコロノ理由ニ於キマシテハ十分ニ
  盡シテ居リマス、唯私ハ一言補ッテ置キタイノハ唯今高木君ノ質問ノ〓デアリマスガ、今
  尾崎君カラ答ヘラレマシタカラ、最早述ベマセヌ、本案ハ成ベク本會議ニ於キマシテ可決
  サレテ、東京市ノ求ムルトコロノ法律トシテ發布セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=45

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• 046・松田源治

  ○松田源治君　本案ハ兩案トモ一括致シマシテ、先日議長ヨリ御指名ニナリマシタル
  市制改正法律案外一件ノ委員ト同一委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

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• 047・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　松田君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=47

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• 048・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　御異議ガナケレバ松田君ノ說ニ依リマシテ前ノ市制改正案ノ
  委員ニ付託スルコトニ致シマス、次ハ日程第十、貴族院及衆議院速記技手在官年月
  數ニ關スル法律案、第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ヲ省略シマス、福井三郞君
  第十貴族院及衆議院速記技手在官年月數ニ關スル第一讀會
  法律案(福井三郞君外四名提出)
  貴族院及衆議院速記技手在官年月數ニ關スル法律案
  明治二十三年九月以後明治三十二年四月一日ニ至ル間ニ於テ貴族院及衆議
  院ノ速記ニ從事シ速記技手ニ任用セラレタル者ハ其ノ任用前ノ勤務年月數
  ヲ在官年月數ニ算入ス但シ加算ノ年月數ニ對シテハ官吏遺族扶助法第二條
  ヲ適用セス
  〔福井三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=48

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• 049・福井三郎

  ○福井三郞君　此法律案ハ明治二十三年九月以後、明治三十二年四月一日ニ至
  ル間ニ於テ貴族院及衆議院ノ速記ニ從事シ、後速記技手ニ任用セラレタル者ノ任用
  前ノ勤務年月ヲ在官年月數ニ加算シタイ、斯ウ云フ趣意ナノデアリマス、ソレデ此案ハ
  歴史ヲ持ッタ案デアリマシテ、一昨年デシタカ、野田卯太郞君ニ依ッテ提出セラレタノデア
  リマス、ソレガ本院ハ滿場一致ヲ以テ通過致シマシタノデスガ、貴族院デ否決ニナッタ、其
  貴族院デ否決ニナッタ理由ハ、其在官年數ニ加算ヲスルト云フモノヲ未ダ本官デナカッタ
  雇員中ノ者ノ將來ヲモサウスルト云フ意味デアッタサウデス、故ニ將來ノコトマデモ規定ス
  ルト云フコトニナルト、獨リ貴衆兩院ノ速記技手ニ限ラズ、各官省ニ雇用サレル雇員モ
  亦サウシナケレバナラヌト云フ議論モ起ルデアラウ、サウシテ見ルト云フト此恩給法ノ根本
  ヲ覆スト云フコトニナルカラ不同意デアルト云フコトデアッタサウデス、政府ノ反對モ此趣
  意デアッタサウデアリマス、ソレデ今囘提出ノ法律案ハ此憂ハナイノデス、卽チ既往ダケヲ
  規定シテ將來ヲ規定シナイノデアリマス、ソレダケガ前年ノト變ッテ居ルノデアリマス、ソレ
  デ此案ガ通過シタ曉ニ國家ガ負擔スベキ金ハドノ位カト云フト實ニ驚クベキ少額デアルノ
  デアリマス、現在衆議院ニ於テ三十人バカリノ速記ニ從事シテ居ル者ガアル中デ、確カ十
  九人シカ技手ニ任用サレテ居ルモノハナイ、ソレカラ貴族院ハ二十五六人居ル中デ、十
  三四人シカ此速記技手ノ本官ハナイノデス、サウスルト兩方併セテ三十人餘ナノデアリマ
  ス、而シテソレガ打拾テヽ置イテモ、モウ三四年經チマスト當然恩給ニ浴スルノデアリマス
  カラシテ、其間ノ僅カ三四年間ノ繼足シデアリマスカラ衆議院ノ方ガ、百八十七圓三十
  五錢程一箇年ニ殖エル譯ニナル、ソレカラ貴族院ノ方デハ僅ニ百九十八圓バカリニシカ
  ナラナイ、ソレダケヅヽ年々國庫ガ負擔シテ行クト云フコトニナルダケデアリマス、而シテ此
  案ガ法律ニナリマシタ結果、ソレダケ國庫ガ負擔シテドウ云フ效果ガ現ハレルカト申シマスル
  ト、全體此法律ハ明治二十三年ニ議會ノ開ケマシタトキ直グニ一緒ニ此任用令ガ出來
  テ居ラナケレバナララヌノデアル、然ルニドウ云フ譯デアルカ、政府ノ都合ガアッタノデセウ
  出來ナクッテ、ソレガ三十二年ニ至ッテ漸ク法律三百四十九號ニ三百五十號ト一云フモノ
  ガ、出來テ、ソレデ速記ニ從事スル者ガ速記技手ニ任官スルコトニナッタノデアリマス、其
  任官シテ以後カラデナケレバ恩給年限ヲ勘定シナイカラ、現在ハ速記ニ從事シテ二十年
  モ功勞ヲ積ンデ居ル者ガ、尙且此恩給ニ浴スルコトガ出來ナイト云フコトニナッタノデア
  リマス、例ヲ舉ゲルト名前モ記憶シテ居リマシタガ、チヨト今忘レマシタガ、能ク調ベレバ此
  處ニ書イテアルガ餘リ數字ガ澤山アルカラ搜スヨリ簡單ニ言ヒマスガ、貴族院ニ十七年
  間速記ニ從事シタ餘程精勤ナ人ガアッテ、此程其人ハ亡クナッタノダサウデアリマス、然
  ルニ僅カ三箇月分ノ俸給カ何カ貰ッタノガ卽チ國家ノ恩典ナノデ、其以上何モ貰フコ
  トガ出來ナイ、ナゼナラバ三十二年ニ出來タ法律ニ依ッテ任官以後ノ年月ヲ數ヘルト、
  マダ年限ガ足ラナイト云フノデ、何モ貫フコトガ出來ナイト云フヤウナ有樣デアルサウデア
  リマス、而シテ此速記ノコトハ私ガ講釋スルマデモナク御承知ノ通リニ三十二年ニ法律
  ガ出來タ以後ノ働キヨリハ三十二年ノ法律ノ出來ナイ前ノ働キノ方ガ寧ロ骨ガ折レタノ
  デアラウト思フ、マダ當時ハ議會開ケテ〓々ノトキデアッテ何事モ〓ニ付テ居ラヌ時分デア
  ル、況ンヤ速記ノ如キハ我國ニ發明セラレテ日モマダ淺イノデアル、ソレガ是アルヲ幸トシ
  テ用井ラレテ、大ニ活動シタノデアル吾〓ノヤウナ者ノ詰ラヌ議論ヲスルコトマデ其言フ
  タ聲ノ如ク速記錄ニ殘シテサウシテ議事ノ整理ヲ便利ニスルト云フ功果ヲ積ンダノデ議
  會ノタメニドノ位ナ功ヲ現ハシテ居ルカ分カラナイ、獨リ議會ノコトミナラズ是ガ此速記界
  ノ模範トナッテ、全國ノ手本トナッテ、ソレデ有ラユル方面ニ幾多ノ功績ヲ積ンデ居ルト云
  フコトニ至ッテハ、實ニ其功績ハ沒スベカラザルモノデアラウト思フ、唯之ニ對シテ國家ガ
  多少顧ミタト云フノハ速記ノ發明者デアル田鎖某ト云フ者ニ前年藍綬褒章ヲ賜ックコ
  トガアルサウデアリマス、ソレニ付テ其後一箇年三百圓ヅヽカノ年金ヲ頂戴スルコトニナッテ
  居ルサウデアリマス、ソレダケガ卽チ速記ニ付テ國家ガ功勞ヲ認メタト云フコトノ保證デア
  ル、然ルニ速記ノ功ハ豈唯發明者田鎖某ノ功ノミデハナイ、、卽チ之ヲ大成シテ今日實用
  ニ供スルヤウニ致シマシタノハ卽チ幾多速記ニ從事スル人ガ實ニ其緻密ナル腦ト實ニ勤
  勉ナル働キトニ依ッテ、遂ニ今日ノ大成ヲ見ルニ至ッタノデアリマス、其人ガ現在今衆議院
  ニモ貴族院ニモ從事シテ此處ニ每日緻密ナ腦ヲ費シテ、此ノ如クニ働イテ議會ノ事務ノ
  殆ド全部ヲ助ケテ居ルト云フ始末ナノデアリマス、議會ニ於テ御同樣竝ニ此處ニ傍聽ニ
  來テ居ラレル人ノ如キハ、目リ議場ヲ見テ目リ議員ノ聲ヲ聽イテ居リマスカラ、別ニ今速記
  ノ恩ヲ感ゼズト雖モ、此以外ニ居ル者ハ日本全國津々浦〓何レノ國ノ人モ速記ナカリセ
  バ議場ノコトヲ知ルコトガ出來ナイ、其人ヲ其場ニ見ル如ク、聽ク如クニ一言一句ヲ漏
  サズ想像シ得ル所以ノモノハ實ニ速記ノ功ト言ハザルヲ得ナイ、此〓カラ云フタナラバ
  卽チ見ザル人ニ向ッテハ殆ド此處ニ居ル人ガ汗脂トナッテ盡スト同樣ナ働キヲ以テ國家ニ
  盡シテ居ルト言ハナケレバナラヌ、ソレガ任官前ニ雇ト云フ資格デアッタカラ恩給ノ年限ニ
  加算シナイト云フノハ法律ヲナスノ弊、玆ニ至ルノデアル實ニ謂ハレノナイ話デアル、任官
  ノ前ノ働キト後ノ働キニ依ッテ骨ノ折レ方、頭ノ働キ方ガ何處ガ違フカ、何處モ違ハナ
  イ寧ロ任官前ノ方ガ初期時代ニ屬スルヲ以テ骨モ折レナカ〓〓仕事モエラカッタノデ
  アル、故ニ功ヲ言ウタナラバ任官前ガエラカッタト言ハナケレバナラヌノデアル、然ルニ法律
  ノ制定ノ日ガ遲イカラシテ理由ナキコトデアルニ拘ラズ任官ノ前ガ捨テラレテ居ルノデアリ
  マスカラ、玆ニ法律案ヲ提出シテ諸君ノ贊同ヲ得テ、兩院通過ノ上法律トナリマシタナ
  ラバ、其不道理ナルコトガ取ラレテ多大ナル功勞ニ向ッテ多少ノ御報ヲ致スコトガ出來ル
  デアラウト云フノデ、此法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、而シテ尙一言附加ヘテ
  置キタイノハ此速記ガ今技手ト云フ名目ヲ以テ任官シテ居ルノデアル、ソコデ何處ノ省、
  何處ノ廳ニ於テモ既ニ技手ト云フモノガアル以上ハ、其上ニ技師ト云フモノガアル技師ノ
  下ニ技手ト云フモノガアッテ、技手ノ上ニ技師ト云フモノガアル、此二ツハ離ルベカラザルモ
  ノニナッテ居ル、其片方ダケガアッテ、片方ノナイト云フ所ハ何處ニモナイ、唯是アルハ此貴
  族院、衆議院ニ見ルコトガ出來ルノデアル、貴族院、衆議院ニハ卽チ速記技手ガアッテ、
  速記技師ナルモノハナイ、腦力ヲ費ス上ニ於テモ、技術ノ上ニ於テモ、進ンデ行ッテ始メ
  下手ナ人ガ上手ニナッタラ名ガ變ッテ、進ンデ技師ニナッテ差支ハナイコトデアル然ルニ
  技師ナル制ヲ設ケテナイ、是モ一ノ不備デアル、是ハ今日出マシタ法律案ノ中ニハ書イテ
  アリマセヌケレドモ、追テハ諸君ト深ク御評議ヲ申スベキモノデアラウト思フ又是ナクン
  バ之ヲ奬勵スル途ニ適フマイト思フ、凡ソ速記ノコトハ聞クトコロニ依ルト多大ニ腦ヲ費ス
  タメニ他ノ職業ト違ッテ、早老的デアル、早ク年ヲ取ル種類ノモノデアルサウデアリマス、先ヅ
  二十歲位ヲ初メトシテ、サウシテ三十四五歲、四十歲、ソレカラ五十歲ニナルト、モウ事ニ堪
  エヌサウデアリマス、職業ニ依ッテハ五十歲ハ分別盛リ、是カラ働ク盛リデアルノデアル、然ルニ
  速記者ニ至ッテハハヤ早老ノ扱ヲ受ケテ居ルサウデアリマス、ワレハ其筈デアリマセウ、實ニ
  吾ミノヤウニ極ク靜ニ緩ックリ演說ヲスル者バカリハナクテ、中ニハ一分間ニ何百言ヲ費ス
  ト云フ早イ人モアル、サウ云フ人ノ演說ナドガ殊ニヤカマシイノデ、後トデ速記錄ニソンナコ
  トヲ言ッタトカ言ハナイトカ云フ小言ガ起ル、斯樣ナル場合ニハ最モ緻密ナル腦ヲ費
  シン、唯手バカリ動スノデナク、始終腦ガ働クノダサウデアリマスカラ、多大ナ腦ヲ使フ
  タメニ早ク年ヲ取ルノハ當然ノ結果デアル然ルニ二十年モ奉職シテ今尙恩給ノ途ガナ
  イ、議會ノ開ケル時分ニ三十デ奉職シタトスルト、今日ハ二十年職ニ盡シテ居ッテ、大
  抵五十歲ニナッテ居ッテ、尙何等ノ恩惠ニ與ルコトガ出來ナイト云フ有樣デアル、先ヅ差
  當リ此二三年ノ中ニ恩惠ニ浴セラレルト云フ人ヲ早ク加ヘルタメニ、ソレモ僅ニ兩院ヲ
  合シテ三十名前後、其金ガ兩院ヲ合シテ僅カ二一百圓餘リデアル、故ニ之ヲ早ク不備ヲ
  補ウテ、サウシテ所謂功勞ニ報ユル偏重偏輕ノナイヤウニ目リニ見ル人デアルカラ、
  ツイ近イ所デアルカラ忘レテ居ルト云フヤウナコトデハ相濟マヌ次第デアリマスカラ、此法
  案ヲ重ネテ提出シタ次第デアリマス又是ハ希望トシテ申上ゲテ置キマスガ、怨ラクハ政府
  方ガドナタモ御居デニナラヌヤウデアルガ、其速記ニモ、進ンデ行ッタナラバ技手カラ技師ニナ
  ルヤウナ方法ヲ一ツ講ゼラレテ、政府カラ提案サレルヤウニアリタイト云フコトヲ今カラ希望
  シテ置キマス、何ゼナレバ日本ノ弊ト言ヒマスカ、役人ト云フ名義ガ付テ働カナケレバー
  十年間寢テ暮シテモマサカ十年間寢テ暮スト云フ者モアリマスマイケレドモ、何等ノ功ハナ
  クテモ役人ト云フ名義ヲ持テバ年々段々位階モ進ンテ行クガ、然ルニ之ガ公吏トカ若ク
  ハ役人デナクッテ雇トカ云フモノデアッテ、官員ト云フ名前ガ付テ居ラズニ國家ノタメニイ
  クラ働イテモ、死ニ至ルマデ働イテモ、ドンナ働キヲシテモ、誰モ御苦勞サント云フモノモナ
  イ言換ヘレバ要ラヌ世話ヲスルト云フヤウナ風ニナッテ居ル、役人ト云フ官吏ト云フ
  名前ガ付テ働カナケレバ何年國家ニ盡シテモ其功ガナイト云フ道理ハナカラウト思フノデ
  アル故ニ官吏ニアラズシテ國家ノタメニ官吏以上ニ盡シ、若クハ官吏ト同樣ニ盡シタ人
  ガアッタナラバ官吏以上ニ之ヲ表彰シ、官吏以上ニ之ニ報ヒナケレバナラヌト云フ道理ハ
  アッテモ官吏ヨリ下ニ之ヲ置クト云フ道理ハナカラウト思フ、此〓ニ於テモ政府ハ一ツ方
  法ヲ講ゼラレテ、ドウゾ政府カラ貴族院衆議院ノ技手ハ進ンデ技師ニ至ル途ヲ開キ、國
  家ヨリ相當ノ待遇ヲ受ケセサル方法ニシテ貰ヒタイト云フコトヲ一言茲ニ付加ヘテ申シテ
  置キマス、是ガ本案ヲ提出致シタ所以デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=49

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• 050・日向輝武

  ○日向輝武君　チヨット提出者ニ質問ガアリマス、私ハ此案ヲ尊重スルタメニ、特ニ提
  案者ニ辯明ヲ求ムルノデアリマスガ、提案者ガ滔々トシテ述ベラレマシタ本案提出ノ理由
  ハ要スルニ速記者ノ效能ヲ述ベラレタノガ要點デアラウト思ヒマスガ、唯今ノ御演說ニ
  依ルト若シ此議會ニ速記ナクンバ議場ニ於ケルトコロノ言論ハ此列シテ居ルトコロノ議員
  及傍聽者以外ニハ聞ケナイト云フノデアル、然ルニ獨リ速記ノ效能ニ依ッテ辯明ヲ日本
  國中ニ擴メルノデアル、故ニ速記ノ效能ハ重大デアル、之ヲ以テ速記ニ對シテハ國家ガ
  相當ナル待遇ヲシナケレバナラヌト云フ理由デアリマスガ、サウスルト活版職工ニシテ活版
  二從事シテ居ル職工諸君ニモ、亦相當ナル待遇法ヲ立テナケレバナラヌト思ヒマス、何ゼ
  ナレバ活版職工ガナケレバ其文字ヲ見ルコトガ出來ヌノデアリマス、此ノ如キ薄弱ナル理
  由ニ於テ此案ヲ通過セシムルト云フコトハ縱シ本院ハ通過シテモ貴族院ニ於テハムツカ
  シイコトデアラウト思フ、又提案者ハ此速記ト云フモノハ非常ニ腦力ヲ費スモノデアル故
  ニ、速記者ノ年齡ハ短イト云フ御說明モアリマシタガ、腦力ヲ費スト云フモノハ豈獨リ速
  記者ノミナラヌヤデ活版職工ノ如キハ彼ノ細カイトコロノ字ヲ拾ヒテ、其業務ニ從事シテ
  居ルノデアル、然ルニ提案者ハ速記者ノミ獨リ優遇ヲ與ヘントシテ一般ノ活版職工者ニ
  ハ與ヘヌト云フノデアルカ、、或ハ又他ニ相當ナル理由ガアルナラバ本員ヲシテ感服セシムル
  トコロノ理由ヲ御述ベニナルコトヲ望ムノデアリマス、唯其勞ガ過大デアル、議場ノ言論
  ヲ國中ニ傳ヘルト云フ效能ノミデハ本案提出ノ理由トシテハ薄弱ト思ヒマスカラ、更ニ御
  說明ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=50

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• 051・福井三郎

  ○福井三郞君　速記者ガナカッタナラバ此議場ノ目リニ居ルトコロノ者ノ外ニハ誰モ此
  議會ノ事情ヲ知ルコトガ出來ナカラウト言フタノハ、少シク狹カッタカモ知レマセヌ、此處
  ニハ新聞記者ナルモノガ居ッテ、ソレガ誠ニ大キナ眼ヲ張ッテ椽大ナ筆ヲ以テ全國ニ傳ヘ
  マスカラ是亦與ッテ多大ノ效能ガアルニハ相違ナイガ、併ナガラ一字一句モ漏サズニ現在
  ノ儘、エヘント云フコトマデ實寫的ニ書取ルモノバ他ニナイノデアリマス、腦ヲ使フト云フコ
  トハ豈一人速記者ノミナラズ、何事モ腦ヲ費スニハ相違ナイノデアリマス、少シモ腦ヲ使
  ハヌ者ハドンナ者デモナイガ、唯厚薄ノ差ガアルノデアル、活版職工モ腦ヲ使ヒマス、彼モ盲
  目デハ出來ヌ、マンザラ字ヲ知ラズニハ出來マスマイ、活版職工ノ費ストコロノ腦ト速記
  者ノ費ス腦トハ自ラ區別ガアルノデアリマス、故ニ活版職工ハ衆議院ニ居ルトコロノ活
  版職工デナクテモ餘所カラ連レテ來テモ出來ルノデアリマスガ、速記者ハ然ラズシテ先ヅ
  臨時ニ何處カラカ連レテ來ヤウトシテモ出來ナイノデアル、始終之ヲ養成奬勵シテ置カヌ
  ト間ニ合ハヌ、ソレダケ品物ガ違フノデアリマス、是ニ於テカ卽チ澤山ニ疲勞セルモノニ、澤山
  腦ヲ使フ者ニ御馳走料ヲ拂フト云フタメニ、此速記者ニ向ッテ此法律案ヲ提出シテ、國
  家ガ多少酬ヒタイト云フ次第デアリマス、尙精シイコトハ委員ニ付託セラルヽコトデアリマ
  スレバ、委員會ニ於テ詳細ニ私ノ腦ヲ費シテ說明ヲ致シマス

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• 052・松田源治

  ○松田源治君　本案ハ議長指名九名ノ禾女員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=52

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• 053・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　議長指名九名ノ委員ニ付託スルト云フ松田君ノ動議ニ御異
  議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 054・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ左樣ニ決シマス、日程第十一、酒造稅法中改正法律
  案ノ第一讀會ヲ開キ、、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、黃金井爲造君
  第十一酒造稅法中改正法律案(黃金井爲造君外二第一讀會
  名提出)
  酒造稅法中改正法律案
  酒造稅法中左ノ通改正ス
  第六條中「三月」ヲ「五月」ニ改ム
  第八條第二項ヲ左ノ如ク改ム
  酒類ノ造石數ヲ査定スルハ容器ノ容量ニ依ル但シ〓酒ニ限リ命令ノ定ム
  ル所ニ依リ査定石數百分ノ二以內ノ滓引減量及査定石數百分ノ二以內ノ
  貯藏減量ヲ控除スルコトヲ得
  附則
  本法ハ明治四十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔黃金井爲造君登壇〕

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• 055・黄金井爲造

  ○黃金井爲造君　本員等ノ提出致シマシタ案ハ現行酒造稅法中ノ第六條第八條ノ
  二項ノ改正案、第六條ニ於テハ酒造稅ノ納期三月ヲ五月ニ繰下ゲ、第八條ノ二項ニ
  於テ現行法デ滓引減量百分ノ二ヲ控除サレテ居ル外、貯藏中ニ於ケル貯藏減量トシ
  テ百分ノ二ヲ減ズルト云フコトニシタイト云フノガ趣意デアリマス、御承知ノ如ク現行ノ
  酒造稅法中酒造稅ノ納期ハ其年ノ七月、十月、翌年ノ二月、三月ト云フ四期ニ分納
  スルコトニナッテ居リマス、此三月ヲ五月ニ繰下ゲルト云フ必要ハ、酒ヲ販賣致シマス
  ルトキガ多ク市場ニ賣出シマス酒ハ新酒ニアラズシテ、古酒デゴザイマス、其年出來マシ
  タ酒ノ過半ハ翌年度ニ持越スノデアッテ、持越スノミナラズ市場ニ釀造場カラ賣出シマシ
  テ後三箇月乃至六箇月位ノ後ニアラザレバ醸造主ノ手ニハ財源ガ入ッテ參ラヌノデ
  アリマス、ノミナラズ、二月、三月ノ頃ハ醸造季節中最モ資金ヲ要スルトキデアル資 料
  際ニ當ッテ二月、三月引續キ納稅スルト云フコトハ當業者トシテ最モ苦痛ヲ感ズル次第
  デゴザイマス、ソレカラ、又貯藏減量トシテ百分ノ一一ヲ控除スルト云フ必要ハ、、申スマデモ
  ナク日本ノ〓酒ナルモノガ市場ニ現ハレマスルニハ相當ノ期間ヲ貯藏シタ後ニ賣出
  サレルタメニ其貯藏中ニ於ケル減量ガ其貯藏ノ巧拙ニ依ッテモ違ヒハゴザイマスルガ、多
  キハ百分ノ八、少ナキモ百分ノ二半位先ヅ全國ヲ通ジテ平均致シマシタトコロ百分ノ三
  以上ハ貯藏中ニ減量ヲ生ジテ居ルノデゴザイマス、是等貯藏中ニ於ケル減量ハ當業者ノ
  利益ニモナラズ、需用者ガ消費シタモノデモナク、〓酒ヲ貯藏スル上ニ於テ自然ノ缺減ニ
  ナルベキモノデアリマス、併シ事實ニ於テ減量致スモノデゴザイマスカラ、其減ル部分ダケ
  ハ代金ニ加ヘテ販賣スレバ當業者ニ於テ何等差支ナイヤウナモノデゴザイマスルガ、現今
  商賣場裡ノ競爭ノ結果、酒ノ稅金ハ一石二十圓デアル、需用者ノ方デモサウ考テ居リ
  マスルト同時ニ、又當業者モ競爭場裡ニ於テハ缺減ノ損失マデラモ含ンデハ到底供給シ
  得ルコトガ出來ナイヤウナ現狀デゴザイマスル、一般ニ此國民ノ酒ヲ需用致シマスル國家
  ノ狀況ハドウ云フ風ニナッテ居ルカト云ヘバ、近年中層以上ノ國民ノ嗜好ハ含有酒精ノ
  最モ少イモノヲ嗜好スル傾ガアリマス、日本酒ノ最モ需用ノ多クハ國民ノ中層以下ノ人ニ
  多イト云フヤウナタメニ國庫歲入ノ最モ多額ヲ占メテ居ル、酒造稅ノ負擔者ハ、中層以
  下多數ノ國民ノ負擔ニ歸スルト云フコトハ言フマデモナイノデゴザイマスル、ソレニ加ヘテ
  當業者ハ前申上ゲル通リノ場合デ國庫歲入ノ大多額ノ納稅取次人デアル、一面ニハ納
  稅保證者ノ地位ニ立ッテ居ルト同時ニ一面ニ於テ競爭シツヽ往カネバナラヌ、競爭ノ結
  果今言ヒマスルトコロノ缺減量ヲ含ンデマデモ賣レナイト云フヤウナコトニナリマスルト、
  丁度國庫ノ八千有餘万圓ノ稅金ヲ徵收致シマスル手續ニ於テ、酒造當業者ハ無給
  料ノ徵稅者ト云フヤウナ位地ニ立ッテ居ルノデゴザイマスル、之ヲ要スルニ此提案ヲ致シ
  マシタノハ國庫財源ノ保護ヲスル意味ニ於テ、國民多數ノ徵稅ヲスル上ニ於テ、無給
  料ナル徵稅者ヲ保護スル上ニ於テ是非共滿場諸君ノ御贊成ヲ得テ可決セラレンコトヲ
  希望致シマス(拍手起ル)

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• 056・松田源治

  ○松田源治君　本案モ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ切王ミマス
  (「贊成々々ト」呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=56

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• 057・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　議長指名九名ノ委員付託ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=57

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• 058・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ左樣致シマス、次ハ日程第十二、普通選舉ニ關スル
  法律案、第一讀會ノ頓ヲ開キマス-委員長山口熊野君
  第十二普通選舉ニ關スル法律案(日向輝第一讀會ノ續(民生)五月
  武君外二十一名提出)報告一

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• 059・山口熊野

  ○山口熊野君　報告ハ極メテ短カウゴザイマスカラ當席カラ述ベマス(「登壇」ト呼フ者
  アリ)本案ガ當議會ニ現ハレタコトハ隨分長イ歷史ヲ持ッテゴザイマシテ其間ニ於テハ反
  對贊成ノ議論ハ十分諸君ニ徹底シテ居ルトコロノモノデゴザイマス、併ナガラ本問題ノコ
  トハ極メテ重大ナルコトデアリマス、卽チ國民參政ノ上ノコト、又憲法運用ノ本義タルト
  コロノ衆議院議員ノ選舉ノ改正ノコトニナル、重大ナル案デゴザイマスルガ故ニ、吾〓委員
  會ニ於キマシテモ最モ愼重ナルトコロノ態度ヲ以テ此案ニ對シタノデゴザイマス、卽チ提出
  者ノ意見ヲ承リ又政府示賣員ノ之ニ對スルトコロノ意見ヲ承リマシテ、更ニ速記マデ中止
  致シマシテ政府當局者竝ニ委員ノ間ニ懇談ヲ盡シタンデゴザイマス、サウシテ更ニ反對ノ
  意見ヲバ鬪ハシ-反對ノ意見竝ニ贊成ノ意見ヲ十分ニ鬪ハセマシテ、サウシテ此案ニ
  對スルトコロノ可否ノコトヲ決シタンデゴザイマスル、唯此間ニ於キマシ委員會ノ詳細ナル
  コトヲ玆ニ申述ベルコトハ私ハ必要ガナイト思ヒマスル卽チ諸君ノ前ニ今日必ズ此反
  對贊成ノ意見ハ十分ニ討論セラルヽコトヽ思ヒマスカラ此點ニ於キマシテハ諸君ハ十
  分ノ御滿足ヲ以テ此案ノ是非ヲ決スル材料ガアラウト思ヒマス、大體ニ於キマシテハ其
  採決ノ結果ト致シマシテ多數ヲ以テ本案ヲ可決シタト云フコトダケヲ委員長ノ報道トシ
  テ止メテ置キマス

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• 060・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　荒川五郞君
  〔荒川五郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=60

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• 061・荒川五郎

  ○荒川五郞君　諸君、私ハ此普通選擧案ニ贊成スルコトノ出來ナイ理由ヲ簡單ニ申
  上ゲヤウト思フノデアリマス(「謹聽々々」ト呼フ者アリ)此案ニ贊成ノ出來ナイ理由ハ實
  質ト形式トノ上ニ兩樣ノ意見ガゴザイマスルノデ、抑ニ此選舉ノ權利ヲ廣メテ一般ニ及ボ
  シテ、ソレデ更ニ外ニ損モナイ、不利益モナイト、云フコトデアリマスレバ、何ヲ苦ンデ制限ヲ
  スル必要ガゴザイマセウ、併シ選舉ヲスレバ政治ハ宣シイト云フコトデハナイ、選舉スレバ
  選舉デ能事終レリトスルモノデハナイ、選舉ハ其政治ヲ致ス元デアリマス、其政治ハ國利
  民福ノタメニアルノデ、利用厚生ノタメニ致スノデアル決シテ理窟ヲ理窟デ現ハスト云
  フノミノコトデハナイノデアル、、政治ナルモノハ決シテ理窟ノミデハ出來ナイ、下級ノ細民ハ
  理窟ヲ與ヘルヨリカハ先ヅ生活ヲ與ヘナクチヤナラナイ、生活ノ途ノナイモノガ徒ニ理窟
  ニ空權ソレニ憧ガレテ何ノ役ニモ立タヌノデゴザイマスル、生活ノ途ノナイモノハソレガ選
  舉運動ヲシヤウト思ウテモ出來ナイ、其日凌ギノ勞働者或ハ皆此普通選舉ヲ主張セラ
  レル諸君ノ車ヲ挽イテ居ルモノ、ソレ等ニモ選舉權ヲ與ヘヤウト云フノデアリマセウケレド
  モ、ソレ等ガ車モ挽カズニ選舉運動ヲヤッテ居ッテハ、ドウシテ生活ガ出來マス(此時發言ス
  ル者アリ)靜ニ御聽キナサイ、ソンナニシテ唯サウ云フ權利、空權ヲ與ヘヤウト云ウテモ生活
  ノ出來ナイモノハ脊ニ腹ハ換ハラヌノデアリマスデアルカラ、第一ニ生活ヲ與ヘネバナラ
  又、國家ノ目的ハ理窟デ騒グトコロデナイ、生活ヲ安穩ニシテ豐カニシテ、以テ國民ト國
  家ノ富强安寧ヲ期スルノガ目的デアル、デアリマスルカラシテ先ヅ可ナリ口モ〓ヘルヤウニ
  七つ、口ガ〓ヘテサウシテ政治上ニ盡力シナケレバ、決シテ隱健ナ仕事ハ出來ナイ、國
  家ヲ健全ニスルコトハ出來ナイ、ソコデ衣〓足ッテ禮節ヲ知ルト云フノハ卽チ此意味デア
  ル恆ノ產ガアッテ初メテ恆ノ心ガ出來ルノデアリマス、ソレデアルカラ或財產ノ階級ヲ設
  ケルト云フコトハ卽チ以テ國民ノ進步奬勵ノ上ニ必要デアル、此權利ヲ諸君ハ大切ナモ
  ノト思ハレル、大切ナ權利デアレバ或財產ノ程度ヲ設ケテ、其程度マデナッタラ權利ハ
  得ラレル誰デモ權利ハ剝奪シテ居ラナイ與ヘテ居ルソレハ働イテサウシテソレダケノ權
  利ヲ得ナサレバ宜イ、ソレハ誰ニモ與ヘナイト云ウテ居ラナイ相當ニ働イテサウシテ其財
  產ヲ得ルモノハ誰ニデモ權利ヲ與ヘル、此所マデドウシテモヤッテ來イ、ソコマデ皆働イテ勉
  メテサウシテ產業ヲ作リ、サウシテ身代ノ基礎ヲ作ルコトヲ得タナラバ、國民ガ皆相當ノ地
  位ト相當ノ財產ヲ有スルコトニ至リマシタナラバ、初メテ政治ノ大目的ヲ達セラレルノデア
  ル、財產モ得ナイシ、獨立ノ生活モ能ウ致サナイモノガ、啻ニ空權(「ソコニ到ルハ千年ノ
  後デアル」ト呼ヲ者アリヲヲヲルルトト、殊ニ是ニハ階級ヲ限ッテア
  ルヤウニ理由書ニ書イテアリマスルガ、決シテ此制限ト云フモノハ階級デハナイ、制限ト階
  級トハ全ク違フノデアル、階級ハ或ハ階級ヲ限ルノデアリマス、財產ノ制限ハ其財產ノ制
  限ニ達シサヘスレバ誰デモ是ヲ許スノデアル、國民ニ皆其權利ヲ得ヤウト云フ希望ガアレ
  バ、皆働イテ其權利ヲ得ルダケノ財產ヲ作ルガ宜シイ、サウ云フヤウニシテ初メテ國ノ
  人-初メテ眞面目ニサウシテ信用ノアル確實ナル人間ヲ作ルコトガ出來ルノデア
  ル(「君ノ財產幾許ゾ」ト呼フ者アリ、笑聲起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=61

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• 062・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　靜ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=62

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• 063・荒川五郎

  ○荒川五郞君　免角日本人ハ理窟ニ走ル、理窟デ決シテ政治ハ出來ナイ、理窟デイ
  ケナイ、國ノ健全ハ決シテ口デハイカナイ、世ノ中ニハ口ノ人ハ要サナイ、ドウカ手デ働ク
  人ヲ作ラネバナラヌ、働ク人ヲ作ルニハ卽チ國民トシテ或希望ヲ掛ケテ此希望ノ目的ヲ
  達セラレルヤウニスルノガ宜シイ、諸君、文明ハ競爭ヲ意味スル、競爭ナカリセバ進步ハナ
  イ、互ニ此財產ヲ得ヤウ、或ハ地位ヲ得ヤウ、名譽ヲ得ヤウト云フ其希的王掛掛テ働イ
  テ初メテ進步ガアル、發達ガアル、此進步發逹競爭ヲナイモノニシテ徒ラニ此空權ニ憧ガ
  レテ、ワヤノヽト騷イデ居ルト云フコトニナレバ國家ノ秩序モ國ノ安寧モ立テルコトハ出
  來ナイノデアル、此〓ニ於テ第一ニ此財產ノ制限ナルモノハ階級ニアラズシテ、是ハ國民
  奬勵ノ規定デアル、一部ニ於テハ相當ナル納稅ヲスル、其納稅ニ對シテ又ソレニ伴フ權
  利ヲ生ズルト云フノハ此制限ノ一ノ理由デゴザイマセウケレドモ、ソレ以外ニ於テ此財產
  ノ程度ヲ極メテ、ソレニ國民ガ進ンデ往カウト云フ其奬勵、其競爭、發達が、卽チ國家
  利用厚生ノ上ニ文明進步ノ上ニ最モ大ル利益ヲ致ス所以デアル、提案者ノ中ニハ亞
  米利加ハ普通選舉ノ國デアル、獨逸ハ普通選舉ノ國デアルソレダカラ發達シテ居ル盛
  ンデアルト云フコトヲ二言ハレル人モアリマスルガ、ソレハ本末ヲ誤ッタ議論デ、決シテ普通選
  擧デ發達シテ居ルノデハナイドコロカ、實際ハ今日苦ンデ居ルノデアル、斯ウ云フ理由デア
  リマスルカラ第一ニ相當ニ國民ヲ奬勵進步サスト云フコトモ總テノ政治ノ上ニ必要デア
  ル、況ンヤ此權利ガ大切ナルモノナラバ其權利ヲ得サス途ニ是ダケ奬勵ノ規定ヲ置クト云
  フコトモ最モ必要デアルト思フノデアリマス、ソレカラ此普通選舉案ハ制限ヲ除クト云フ
  ヤウデアリマスガゝ制限ヲ除クト云フコトニモ此議案モナッテ居ナイ、是ニモ一ノ制限ガアル、
  若シ制限ヲ撤去スルト云フ意見ナラバ、總テヲ撤去ナサルガ宜シイ、、是ニモ帝國臣民ト云
  フコトヽ男子ト云フコトヽ二十五歲以上ト云フ條件、一箇年以上其區內ニ住居ス
  ルコト、竝ニ引續キ住居スルコト、斯ウ云フ數箇條ノ制限マデモ置イテ居ラレルデアリマ
  セウ、絕對ニ普通選舉ヲ希望セラレルナラバ、是ダケノ制限モヤハリ理由ノナイコトニナル、
  此制限モ無用ニナル譯デアリマセウ、況ンヤ諸君、今日市町村ノ制度ニ於テ或制限ヲ
  設ケテ居ル、若モ衆議院ノ選舉ニ於テ制限ヲ撤去シヤウト思ハルヽ論者ハ第一ニ地方ノ
  市町村府縣、ソレ等ニ向ッテモ此權限ヲ與ヘル選舉權ノ制限ヲ撤去シナケレバナラヌ、ソ
  レ等ヲ論ゼズニ措イテ唯此衆議院議員ノ選舉ソレノミノ制限ヲ撤去スルト云ヒナガラ、
  或部分ヲ限ラウト云フコトハ是ハ甚グ論理ノ立タヌ次第デアルト思フノデアリマス、殊ニ
  此普通選舉論者ハ選舉人ガ多ケレバ腐敗ヲ防グ、斯ウ云フコトガ大ナル理由ニナッテ居
  ルソレハサウハ往クマイト思ヒマス、何デアリマスルカト云ヘバ、前ニハ制限ガ納稅額ガ十
  五圓デアッタモノガ十圓ニナッタ、十五圓デアッタ時分ヨリ十圓ニナッテ下ッテドレダケ腐敗
  ガ減ッテ居ルカドウカ、一層選舉場裡ノ腐敗ヲ增シテ居ルヂヤアリマセヌカ、況ヤ前ノ制限
  ト程度ノナイ或部分ヲ擴メタイト云フコトハ一層腐敗スルコトハ分ッタ話デアル或ハ普
  通選舉論者其人ハ或ハ雄辯家デアリ、能辯家デアルカラ自分ニ便利デアラウト思ハレテ
  モ若モ金錢デヤルト云フモノガ出テヤッタラドウシマス、是ハ絕對ニ金錢或ハ其他デ買
  收腐敗ト云フコトヲ防グコトハ出來ナイノミナラズ、倍サウ云フ唯金テ買收スルト云フヤ
  ウナコトガ跋扈スルカモ圖ラレヌ譯デアル、殊ニサウ云フ腐敗ト云フモノハ必シモ其日ノ買
  收デハナイ、之ガイロ〓〓ナ問題ニ立障ッテイロノ〓ナコトガ此議員ノ手足ヲ縛ルコトハ永
  久ノ上ニドレダケノ國家ノ進運ノ上ニ障害ヲ來スカモ分ラヌノデアリマス、殊ニ普通選舉
  論者ハ選舉區劃ヲ廣クシ選舉人ヲ多クスルト云フー-ソレナラバ市ノ獨立ヲ何デ認メテ
  居リマスカ,市ハ僅カノ所ニ限ッテ居ル、是等ハ普通選舉ヲ主張スル以上ハ市ノ獨立ヲ
  認メルコトハ最モ撞著シタ議論ト言ハナケレバナラヌト田心フノデアリマス、全體此說ハ自然
  法主義若クハ天賦人權說カラ來テ居リマス、決シテ是ヲ今日行ウテ居ル國モ喜ンデ
  行ウテ居ルデハナイ、已ムヲ得ズシテ今日ニ至ッテ居ル非常ニ實際ニ苦ンデ居ルノデアリ
  マス、我日本ハ幸ヒニサウ云フ惡弊ヲ受ケズニ、隱健ナル、サウシテ此日本ノ民情ニ適スル
  此制限法ヲ啻ニ外國ニアルカラト云ウ、ソレニ傚ハウト言ハルヽノハ最モ此根本ニ於テ誤
  リナリト思フノデアリマス、勿論此制限ニ於テソレヲ五圓ニスルガ宜イカ、十圓ニスルガ宜
  イカ、十五圓ニスルガ宜イカ、其制限ノ多寡ハ別論デアリマス、是ハ私モ議論ガアリマスケ
  レドモ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=63

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• 064・手塚正次

  ○手塚正次君　議長議事ノ整理ニ付テ······
  (「妨害スルナ」「發言中ダ默ッテ聞給ヘ」「遠慮シロ」ト呼フ者アリ、議場騒然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=64

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• 065・手塚正次

  ○手塚正次君　唯今勘定スルト··
  〔「何ヲ云フ」「確ニアル」「默レ」ト呼フ者アリ、議場騒然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=65

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• 066・手塚正次

  ○手塚正次君　議事ヲ開キ決議ヲナスコトヲ得ズトアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=66

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• 067・荒川五郎

  ○荒川五郞君　ソレナレバ御待チナサイ-何カ根本ノ意見ガアレバ別デアリマス(「進
  行進行」ト呼フ者アリ)諸君(「簡單ニヤレ」ト呼フ者アリ)此普通選舉ハ斯樣ナ次第デ我
  日本ノ國體ニモ反シ、又家族制度ニモ反スルノデアリマシテ、決シテ此日本ノ國情ニ適ス
  ベキモノデナイノミナラズ、此恆ノ產ナクシテサウシテ獨立ノ生計モ立テ得ナイ者ニ此權ヲ與
  ヘルト云フコトハ是ハ幸福デナイノミナラズ、又國家進運ノ上ニ甚ダ執ルベカラザルコトデア
  ルノデゴザイマス、ドウモ世ノ中ニハ兔角其大勢ナ衆愚ニ媚ブル弊ガアル、衆愚ニ媚ビテハ
  識者ノ效能ハナイ、識者ハ衆愚ノ上ニ一段上ニ立ッテ、サウシテ衆愚ヲ指導スベキモノデ、
  之ガ卽チ識者ノ效能デアリマス、然ルニ選舉ノ公權ヲ擴メテサウシテ衆愚ニ媚ビルヤウニ
  ナッタナラバ決シテ國家ノ富强ノ目的ヲ達スルコトハ出來ナイノデアリマス、是等ノ理由
  ニ依リ實質上ニ於テ本案ニ反對スル所以デアリマス、諸君ハ甚グ氣短デ此大問題ト言
  ヒナガラ其問題ノ議論ダケ盡スニスラ吝マルヽヤウデアリマスカラ、此ノ如キ諸君ニ向ッテ
  長イ辯舌ハ甚ダ詰ラヌト思ヒマスカラ簡單ニ致ス-致スガ爰ニ一ツ又形式上ノ理由
  ヲ述ベンケレバナラヌ(「謹聽」ト呼フ者アリ)形式上ニ於テ其普通選舉ニ關スル法律案ト
  云フノハ若モ是レ衆議院選舉ノ普通選舉ヲ希望スルモノナラバ衆議院議員選
  擧法ノ第八條ノ是ハ修正案デアル第八條ノ第一號、第二號、第三號トアル其第三號
  ニ財產ノ制限ガアル、納稅ノ制限ガアル唯ソレヲ削ラウト云フノデアル然ラバ是ハ單
  行法ニアラズシテ衆議院議員ノ選舉法中ノ一箇ノ改正案デナクテハナラヌ、然ルニ之ヲ
  出テ居ル單行法トシタル結果ハ尙種々ノ之ニ差支ガ生ズル、何故ナラバ單ニ此單行
  法ト致ス以上ハ總テノ例外ハ之デ認メナイガ、例ヘバ此衆議院議員選舉法ノ第十一
  條、或ハ第十二條ニハ斯樣々々ノ權利ヲ得ラレナイト云フコトガ規定シテ居ル、縱令臣
  民デモ二十五歲以上デモ一箇年以上居ッテモ行ケナイト云フコトガアル、ソレ等ヲ此原
  案者ハドウ致サレルノデアル、是ダケノ法律ガ通ッテドウ云フ場合ニ此選舉ノ權利ヲ實際
  ニ運用セラルヽカ、是等モ實地ニ行フ形式ノ上ニ於テモ(笑聲起ル)其用ヲ爲サナイ目
  的ヲ達スルコトノ出來ナイ案ト言ハナケレバナラヌ(議場騒然)

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• 068・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　靜ニ·

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• 069・荒川五郎

  ○荒川五郞君　全體此ヤウナ案ガ年々議會ニ出ルト云フコトハ出ルスラ私共悲ムベキ
  モノト思フ(議場騷然)國利民福ヲ發達スル上ニ相當ナル地位アリ又眞面目ナル國民
  ヲ造ル上ニ於テ、法律ハ十分ニ愼重ナル注意ヲ要スルモノト思フ(「ノウ〓〓」ト呼フ者
  アリ)ソレデ普通選擧論者、以テ贊成セラレンコトヲ希望致ス
  〔「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ〕

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• 070・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　松本君平君
  〔松本君平君登壇〕

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• 071・松本君平

  ○松本君平君　唯今ハ我尊敬スベキ友人荒川五郞君ガ本案ニ付テノ反對ノ演說ヲ
  致サレマシテ、私ハ此尊敬スベキ友人ノ說ヲ反駁センガタメニ此席ヘ上ッタノデハナイノデ
  アリマス、尙此跡ヨリモ反對ノ論者モ出ルデゴザイマセウガ、私ハ普通選舉ニ反對スルト
  コロノ議論ヲ反駁センガタメニ、此案ヲ維持スルモノデハナイノデアリマス、此案ノ中ニ含
  マレテ居ルトコロノ極メテ單純ニシテ明白ナルトコロノ眞理ヲ諸君ニ訴ヘントスルノデアリ
  マスデ、吾〓同士ハ議會ニ於テ既ニ八年ノ間每年此案ヲ提出シテ居ルデアリマス、此
  年々歲々提出シテ居ルトコロノ此普通選舉ノ案ガ世ノ中ヨリ一般ニ誤解サレテ常ニ甚
  ダ悲ムベキ運命ヲ持ッテ居ルト云フコトヲ遺憾ニ思フノデアリマス、是ハ吾〓同士ガ未ダ
  努力ノ足ラナイノデアルカ、未ダ時機ガ早イノデアルカ、若シ努力ガ足ラヌナラバ甚ダ殘
  念ノ至ニ堪ヘナイノデアリマスルシ、又若シ時ガ至ラヌノナラバ吾〓ニハイツマデモ隱忍シテ
  時ノ來ルノヲ待タウト思フノデアリマス、私ハ此議論ヲシテ此普通選舉ノ案ヲ維持シヤウ
  トハ思ハナイノデアリマス、又此案ニ付テイロノ〓ノ議論ヲシタナラバ一年演壇ニ立ッテ
  居ッテモ言ヒ盡セナイ程ノコトガアラウト思ヒマス、唯歐米各國ガ今日人文ノ發達文明
  ノ進步ニ依シテ普通選舉ノ時代ハ既ニ過去ッテ婦人ニマデサヘモ政治上ノ權力ヲ與ヘン
  トスルトキニ我邦ニ於テハ、幾ンド百年百五十年立憲政治ノ進步ニ後レテ居ルト云フコ
  トハ實ニ遺憾ナコトヽ思フノデアリマス,五千万人ニ對シテ僅ニ百六十万人シカ選舉權
  ヲ持ッテ居ル者ガナイト云フコトハ立憲政治トシテ唯其名ヲ有スルノミデアッテ、其事實ハ
  幾ド立憲政治ノ體ヲ作シテ居ラヌノデアル、私ハ此案ガ每年議會ニ出テ反駁セラルヽニ
  付テ、世ノ所謂學者ナル者ガ普通選舉ニ對シテ反對セラルヽコトハ怪マヌノデアル、何ト
  ナレバ世ノ所謂學究學者ナハ者ハ徒ラニ制度ノ弊害ヲ見テ世ノ中ニ幾何ノ利益ヲ與
  ヘ、如何ナル經綸ガ其問題ノ內ニアルト云フコトヲ論ジナイノデアル、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ恰
  モ學者ナル者ハ單ニ物ノ害ヲ多ク剔抉シテサウシテ利ヲ論ジナイ時世ヲ論ジナイト云フノデ
  アル、故ニ是等ノ人ガ反對スルコトハ怪マヌ、又保守的思想ヲ持ッテ居ル人ガ此案ニ付
  テ反對セラルヽト云フコトモ怪マナイ、何トナレバ如何ナル時代ニ於テモ如何ナルトキニ於
  テモ保守的思想ヲ有ッテ居ル人ハ新ラシキ思想新ラシキ制度ニ常ニ危險ナル考ヲ持ッテ
  居ラルヽノデアル彼等ハ常ニ石橋ヲ叩イテ渡ルノデアリマスカラ、普通選舉ニ付テ反對
  セラルヽノハ怪マヌ、恰モ國會開設ノ當時所謂保守黨ガ國會尙早シトシテ國會開設ヲ
  無謀ナリト云ッタト同ジコトデアル、又官僚ノ家柄ガ此案ニ付テ反對スルノモ私ハ怪マヌ
  ノデアル、何トナレバ官僚ノ家柄ハ世ノ中ノ專制政治ノ遺物デアッテ、蝙蝠ノヤウニ暗イ
  處ニ居ッテ政治ヲシヤウト云フ連中デアル、公明正大ノ普通民政ノ下ニ於テ政治ヲシヤ
  ウト云フコトハ蛇蝎ノ如ク恐レテ居ルノデアル、故ニ是等ノ人ガ普通選舉ニ反對スルト
  云フコトハ敢テ怪マヌガ、獨リ怪ムベキハ民政ノ味方デアルベキモノヲ民政ノ消長ヲ以テ
  生命トナストコロノ議會ノ政治家ガ此制度ニ向ッテ反對スルト云フコトハ最モ怪ムベキコ
  トデアルト思フ、諸君國會開ケテ以來旣ニ二十有餘年、當時紅顏綠髪ノ政治家ガ議
  會ニ入ッテ而シテ今日白頭霜ヲ戴クヤウナ方〓ハ澤山アル年々歲々是等ノ英雄ハ所謂日比
  谷原頭ノ剛將勇士ナルモノハ年ト共ニ開落シテシマッテ居ル、是等ノ人ハ目前ノ眼前ノ
  榮辱ノタメ得失榮辱ノタメ鎬ヲ削リ合ッテ、サウシテ互ニ勢力消耗シテ憲政樹立ノ大本
  ニ至ッテハ之ヲ閑却シテ居ルノデアル、是ハ議會ノタメニモ又議會政治家ノタメニモ最モ
  悲ムベキコトデアラウト思フ、吾〓如キモノハ是等ノ老政治家ト運命ヲ共ニシナケレバナラ
  ヌト思ヘバ、誠ニ嘆息ニ堪ヘナイノデアリマス、諸君ガ蝸牛角上ノ目前ノ政治問題ニ付
  テ論戰シツヽアル間ハ、議會政治ハ發達スルコトガ出來ナイノデアル、又官僚ノ侮リヲ防
  グコトモ出來ナイノデアル、此ノ如クシテ議會政治ノ發達ヲ求メタナラバ百年河〓ヲ待ツ
  ト何ゾ異ナラヌノデアリマス、世ノ中ニ是等ノ問題ガ常ニ閑却サレテ居ルト云フコトハ議
  會ノ振ハヌ所以デアル、情意投合モ蓋シ是ヨリ起ッテ來タノデアラウト思フ、(拍手起ル)
  諸君天ヲ摩スルトコロノ「ピラミット」ノ礎ハ廣大無邊ナルモノデアル此廣イ礎ノ上一建テラレ
  テ居ル「ピラミット」ハ數十年ノ間立ッテ居ッテモ其基礎ハ搖ガヌノデアル國民ノ全體ノ
  上ニ建設セラレタモノデナイ、議會ハ長ク永遠ノ生命ヲ維持スルコトモ出來ナケレバ、又
  光榮アル歷史ヲ持ツコトモ出來ナイノデアリマス、私ハ思フニ今日ハ議會ノ政治家ガ總
  テノ問題ヲ擲シテ此普通選舉案ヲ通過セシメテ、而シテ完全ナル國民全體ノ上ニ打建
  ツトコロノ大ナル基礎ノ上ニ憲政ヲ樹立シナケレバナラヌ秋デアラウト思フ(拍手起ル)諸
  君希臘ノ文明ガ最上ノ絕頂權力ガ最上ノ絕頂ニ立ッタトキハ選擧權ヲ持ッテ居ル人ハ二
  十-人ニ一人シカナカッタ、羅馬ノ文明羅馬ノ武力ガ最上ノ絕頂ノ位地ニ立ッタトキハ選
  擧權ヲ持ッテ居ル者ハ四人ニ對シテ一人シカナカッタノデアリマス、希臘ニ於テハ二十人
  ニ付テ一人、羅馬ニ於テハ四人ニ付テ一人、希臘ノ文明ガ早ク衰ヘ希臘ノ勢力ガ速ク
  消耗シタト云フコトハ、而シテ羅馬ノ權力、羅馬ノ文明ガ比較的長ク永遠ニ生存シタ
  ト云フコトハ全ク其政治ノ基礎、羅馬ノ文明ノ基礎ガ廣カッタ、政治ノ權力ノ基礎ガ
  廣カッタト云フコトハ主ナル原因デアッタト云フコトハ、彼ノ「モンテスキユー」ガ羅馬ノ盛
  衰記ニ結論シテ居ル雄大ナル議論デアリマス、私ハヤハリ帝國ノ總テノ運命、帝國議會
  ノ盛衰得失ハ全ク此案ノ內ニ含マレテ居ルモノト信ズルノデアリマス、免ニ角帝國議會
  ハ最高ノ立法府デアッテ、而シテ國民ノ意志ヲ發表スル最高ノ機關デアルナラバ、其
  基礎ハ百六十万人ト云フ五千万人中僅ニ百六十万人ヲ帝國議會ノ基礎トスル
  狹イ範圍ニ立テルヤウナコトデハイカヌ、帝國議會ガ振ハザル所以ハ此帝國ニ於
  テ憲法政治ノ發達シナイ重ナル所以デアラウト思ヒマス、而モ此明々白々トシテ爭フ可カ
  ラザル理論アルニ拘ラズ、尙此案ガ如何ニモ不幸ナル運命ニ絕ヘズ逢フテ居ルト云フコト
  ハ、二ツノ理由ガアラウト思ハレル、ソレハ第一ハ社會主義デアル、社會主義ハ普通選舉
  ガ行ハレタトキハ社會主義ガ跋扈スルデアラウ、社會主義ガ勢力ヲ得ルデアラウトト云フ
  コトヲ虞ル人ガアル、是ハ大ナル誤解デアッテ、恰モ天ノ堕ルコトヲ虞レテ逃出シタ昔ノ杞
  八ノ憂ト異ナラヌノデアリマス、何トナレバ我邦ホド昔ヨリ名ハ社會主義ト謂ハナカッタケ
  レドモ、日本ホド昔ヨリ社會主義ガ行ハレテ居ル國ハナイ日本ホド完全ニ社會主義ノ
  理想ガ徹底シテ居ル國ハ昔ヨリナイノデアリマス、而モ仁德天皇ノ如キハ殆ド社會主義
  ノ權化ト謂ッテモ宜イノデアル、我邦ニ於テ社會主義ノ蔓延ヲ恐ルヽト云フガ如キハ抑〓
  我邦ノ國體、我邦ノ成立ヲ知ラヌトコロノ愚劣ノ論デアルト私ハ思フ、故ニ普通選舉ハ
  決シテ恐ルヽニ足ラヌノデアル、此ノ如キコトヲ虞ルヽ人ハ所謂天ノ墮ルコトヲ虞レテ逃
  出シタ昔ノ杞人ノ憂ニ彷彿タルモノデアリマス、今一ツハ卽最後ノ理由ハ議員自身ガ此
  素ニ付テ恐レルト云フ〓デアル、ソレハ何デアルカト云ヘバ、普通選舉ニ依ッテ選擧權ガ
  擴張シタナラバ選擧費用ガ非常ニ殖ヘル、デアラウト云フコトヲ恐レル、是モ非常ナル
  誤解デアル、非常ナル誤リデアル、議員ヲ選舉スルトコロノ卽チ選舉民ガ無論普通選舉
  ニ依ッテ增加スルノハ當リ前デアル、此普通選舉ニ依ッテ選舉民ノ數ガ增加シタル結果
  ハ選舉費用ト云フモノハ少シモ掛ラナイノデアル是ハ何ニ依シテ證明スルカト云ヘバ各
  國ニ於テ選舉權が擴張スレバ擴張スル程選舉ノ費用ガ要ラヌト云フコトハ英吉利ノ例
  ニ於テモ、佛蘭西ノ例ニ於テモ、何レノ國ノ例ニ於テモ之ヲ證明スルコトガ出來ルノデア
  リマス、若シ私ガ時ガアッタナラバ巨細ニ是等ノコトヲ申述ベタイケレドモ、賢明ナル諸君
  ハ私ノ辯ヲ待タズシテ明カニ之ヲ推察スルコトガ出來ルト思フ普通選舉ニナレバナル程
  費用ハ掛ラヌ、諸君ハ-諸君ハデハナイ、之ニ反對スル諸君ニ於テ之ヲ考ヘテ、選舉
  人ガ殖ヘレバ殖ヘル程選舉費用ガ多クナルト云フ安想ヲ抱イテ、成ベク選舉權ヲ縮メヤ
  ウトスルノハ大ナル誤解デアッテ、選舉權ガ擴張スレバスル程、普通選攀ニナレバナル程、
  選舉費用ハ少シモ掛ラヌー少シモ掛ラヌトハ云ハヌガ、少クナル、英吉利ノ如キハ少
  イトキガ三百圓、多イトキガ三千圓ニ過ギナイノデアル、亞米利加又然リ、佛蘭西又然
  リ古二十年、三十年、五十年、選舉權ノ狭イ時代程選舉費用ガ多ク掛ッテ居ル、今
  日目本ノ如キモ前ニハ或ハ何万圓、何千圓ト云フ費用ヲ掛ケテ居ッタケレドモ、選舉權
  ガ非常ニ擴張シテ以來選舉費用ト云フモノガ非常ニ下ッタト云フコトハ之ハ歷史ガ證明
  シテ居ル、疑フベクンバ幾多事實ヲ玆ニ舉ゲテ又證據ヲ舉ゲテ諸君ヲ滿足スルコトガ出
  來ルト思フノデアリマス、此二ツノ誤解ハ今日普通選舉ノ案ニ對シテ大ナル障害デアルト
  考ヘマスカラ、之ハ此席ニ於テ私ハ辯ズルノデアリマス、尙謹ンデ賢明ナル諸君ガ此案ノ
  成立ニ付テハ御盡力御熱誠ヲ願ハンコトヲ切ニ希望スルノデアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=71

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• 072・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　渡邊千冬君
  〔渡邊千冬君君壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=72

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• 073・渡邊千冬

  ○渡邊千冬君　諸君、此普通選舉ニ關スル法律案ハ既ニ昨年此議會ニ於テ大多數
  ヲ以テ否決セラレタノデアリマス、本年モ亦同ジ運命ニ到著スルノデアラウト思ヒマス、
  (「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)又本員ハ既ニ昨年以來本會議ニ於テ此席
  ヨリモ、亦委員會等ニ於キマシテモ、十分此案ニ贊成スルコトガ出來ナイ理由ヲ述
  ベテ置イタノデアリマス、今更私ハ玆ニ普通選舉反對論ヲ述ベル必要ハナイト思フノデ
  アリマスルガ、併ナガラ此普通選舉ノ說ヲ持ッテ居ラルヽ人ハ之ヲ主張スルニ當リマシ
  テ、動モスレバ普通選舉ノ利益ト云フコトヲ誇張ニ-誇大ニ唱道致シマスルカラシ
  テ、私ハ却テ其結果ヲ恐ルヽガ故ニ、玆ニ又本年モ普通選舉ニ對シテ提出者諸
  君ガ主張セラルヽトコロノモノヲ一々駁擊シテ見タイト思フノデアリマス、(「謹聽」ト呼
  フ者アリ)昨年モ本年モ此普通選擧ヲ贊成セラルヽトコロノ諸君ハ何時モ同ジ論法
  ニ出ラレテ、唯人ノ感情ニ訴ヘルバカリデアッテ、一モ確然タルトコロノ根據ヲ見出ス
  コトガ出來ナイノデアリマス、私ハ此ノ如キ大體論ハ避ケマシテ、精密ニ本年此議院
  內ニ於テ私ノ聽キマシタトコロノ普通選舉贊成ノ理由ヲ一々玆ニ辯駁シテ破壞シ
  盡サウト思フノデアリマス、私ハ之ヲ類別致シマシテ四ツト致スノデアリマス、先ヅ第
  一ハ人權論デアリマス、此普通選舉ナルモノヲ以テ人權ヲ主張スル已ムヲ得ザル結果
  ノ如ク唱道スルトコロノ一ノ說ガアルノデアリマス、之ハ其誤リデアルコトハ昨年モ私ハ
  申シタノデアリマスガ、又本年モ先日ハ日向君ニ依ッテ說カレ、又今日ハ松本君ニ依ッテ
  說カレテ居ルノデアリマス、此人權論ト云フモノト普通選舉ト云フモノハ私ハ直接ナル關
  係ハナイモノデアルト思ウテ居ルノデアリマス、抑〓人ニ絕對ナルトコロノ自由ト云フモノハナ
  イノデアリマス、又絕對ニ人ノ自由ヲ束縛スルト云フコトハ出來ナイコトデアリマス、思想
  ノ自由ノ如キハ如何ニ是ハ國法ガ束縛シヤウト思ッテモ束縛スルコトハ出來ナイ、唯此思
  想ヲ現ハストキニ於テ始メテ國法ノ作用ト云フモノヲ見ルノデアリマスガ、此ノ如ク人ニ絕
  對ノ自由ナク、又人ノ自由ヲ絕對ニ奪フコトガ出來ナイノデアリマス、人權ト云フ意味ハ
  法律上カラ解釋スレバ此場合ニ於テ意味ヲナサヌノデアリマスガ、唯今私ノ申シマシタ通
  リ是ハ所謂世間ニ用井ラレテ居ルトコロノ自由ト云フ意味ニ用井マシテモ、其普通選舉
  ヲ唱道スルトコロノ人ガ普通選舉ハ吾〓固有ニ持ッテ居ルトコロノ人權ニ歸ルト云フトコ
  ロノ說ハ、今日ノ法治國ニ於テハ毫モ其根據ガナイノデアルト私ハ信ズルノデアリマス、普
  通選舉ヲ唱道スルトコロノ人ハ吾ミハ元來生レナガラニシテ國政ニ參與スルトコロノ權利
  ヲ持ッテ居ルガ、現在ノ選舉法ハ此權利ヲ制限ヲ致シテ居ルソレダカライケナイ、吾〓
  ハ本ニ歸ルト云フ斯ウ云フ意味ノ人權論ヲ主張シテ居ルノデアリマスガ、此觀念ト云フ
  モノハ今日ノ憲法政治ノ國、法治國ニ於テハ全ク採ルニ足ラヌトコロノ說デアルノデアリ
  マツ、我國ニ於キマシテモ吾〓人民ノ持ッテ居ルトコロノ權利義務ト云フモノハ、憲法第
  二章ニ依ッテ始メテ茲ニ確定セラレテ居ルノデアル、此法律上ノ意味ノ人權ト云フコト、
  ソレカラ普通選舉ヲ唱道スル人ガ大聲疾呼スルトコロノ人權ト云フ意味トハ全ク意味ガ
  異ッテ居ルノデアリマス(「勿論」ト呼フ者アリ)ソレデ今日吾ミガ現行法ニ依ッテ規定セラ
  レテ居ルトコロノ選舉法ヲ制限選舉法ト云ヒ、之ニ對シテ普通選舉法ト云フ言葉ヲ用
  井マスケレドモ、是ハ唯ノ形容的ノ言葉トシテハ宜シイノデアリマスガ、法律上ノ言葉トシ
  テハ是ハ誤ッテ居ルノデアリマス、吾ミノ選舉權ト云フモノハ今日ノ現行法ニ依ッテ規定サ
  レテ居ルトコロノ程度マデ是ハ法律ニ依ッテ確保セラレテ居ルノデアリマシテ、之ヲ尙一層
  擴張スルト云フ意味デアレバ宜シイノデアリマスケレドモ、然ラズシテ普通選舉ヲ唱道スル
  人ノ言フガ如ク、吾〓ガ持ッテ居ルトコロノ天賦ノ權ヲ現行法ニ依ッテ制限セラレテ居ルカ
  ラ、是ハ制限選舉法ダカラ、吾ミハ本ニ歸ッテ自由ノ束縛ヲ受ケズシテ選舉權ヲ行フ卽
  チ國政ニ參與スル權利ヲ行フト云フ說ノ如キハ、是ハ法理上全ク採ル價値ノナイ說デア
  ルノデアリマス若シ果シテ此人權ト云フコトヨリシテ論ズルナラバ、其議論ハ結局是ハ婦
  人ノ選舉權ニ往カナケレバナラヌノデアリマス、流石英國人ハ普通選舉ヲ行フ結果トシテ
  今日婦人ノ選擧權ノ說ガ行ハレテ居リマスガ、此處マデ行ケバ始メテ今日此壇上ヨリシ
  テ普通選擧ヲ人權論ヨリ唱導セラレタ人モ其理論ノ貫徹スルノヲ見ルノデアリマスガ、我
  今日ノ普通遷擧ヲ唱導スルトコロノ人ハ、人權論ヲ根據トシテ唯滿二十五歲以上ノ男
  子ニ限ッテ居ルトコロカラ見レバ、是ハ世間ニ用井ラレテ居ル法理以外ノ文學上ニ用井ラ
  レテ居ル自由ト云フ意味カラ申シテモ、人權ト云フ上カラ申シテモ、是ハ論理ガ貫徹シテ
  居ラヌノデアリマス、昔カラ此婦人ニ參政權ヲ與ヘルト云フコトハ決シテ珍シイコトデハナ
  イノデ、彼ノ佛蘭西ノ有名ナル學者又革命時代ニ有名ナル「コンドルセー」ト云フ人、又
  彼ノ「スチユワードミル」ト云フガ如キ人ハ婦人ノ參政權ヲ唱道シテ居ッタノデアリマス、議
  論ガ進ンデ玆ニ至レバ始メテ貫徹スルノデアリマスガ、滿二十五歲以上ノ男子ニ限ルト
  云フ理諭ノ貫徹ト云フモノハ少シモナイノデアリマス、是ハ唯人ノ感情ニ訴ヘルトコロノ人
  權論トカ自由論トカ云フノデ、是ハ餘リ根據ノナイ說ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、
  此人權論ト云フモノハ是ガ第一、次ニ普通選擧論者ノ言フノハ是ハ實益論デアリマス、
  普通選舉ヲ行フコトガ實益ニナルト云フ論デアリマス、是モ時間ヲ省クタメニ簡單ニ列舉
  的ニ申シマスレバ、第一ハ普通選舉ヲ行フニ依ッテ國民ノ知識ヲ普及セシメルト云フ說テ
  アリマス、是ハ一昨日ノ委員會ナドニ於テ極メテ熱心ニ唱ヘラレタトコロノ說デアリマス、
  普通選舉ヲ行フコトニ依ッテ國民ノ知識ガ上ルト云フマデニ言フ勇氣ノアル人ハアリマ
  セヌデシタガ、併ナガラ普通選舉ヲ行フコトニ依ッテ政治上ノ知識ガ一般ニ普及セラルヽト
  云フ說ガアリマシタ、是ハ或程度マデハ眞理デアルカモ知レマセヌガ、選舉法ノ目的ト云
  フモノハ國民ヲ〓育スルコトデハナイト云フ此一言ヲ以テ是ハ理由トスルニ足ラヌト云フ
  コトハ明カデアルノデアリマス、、殊ニ政治上ノ知識ト申シマシテモ是ハ本當ノ知識デハナ
  イ、唯ソレニ對シテ興味ヲ持ツト云フダケノ話デアッテ今日滿二十五歲以上ノ男子ガ悉
  ク選舉ニ關係シタト云ッテモ一國ノ政治上ノ標準ガ高クナルト云フコトハ決シテ希望スル
  コトガ出來ヌノデアリマス、次ニ實益論ノ第二トシテ選舉費ガ減少スルト云フ說デアリマ
  ス、是ハ一昨日モ松本君ガ英國ノ例ナドヲ引イテ御述ベニナリマシタケレドモ、私ハ決シ
  テ之ヲ信ジナイノデアリマス、英國ガ昔幾ヲ選舉費ガ掛ッタ、今日幾ラ掛ッタト云フヤウナ
  コトハ、能ク外國ノ新聞雜誌ニモ出ルノデアリマスケレドモ、是ハ皆爲ニスルコトガアッテ
  勝手ニ言フノデアリマス、今カラ五十年モ八十年モ前ニ於テ選舉費ガ幾ラ掛ッタト云フ
  ヤウナコトハ分ル筈ガナイ、今日我邦ニ於テ選舉費用ガ幾ラ掛ッタト云フヤウナコトハ
  ナカ〓〓是ハ分ラヌモノデアリマス、且縱令是ガ分ッタト致シマシテモ、其選舉費用ナルモ
  ノハ選舉ヲ行フ場所ニ依ッテ異リ、又選舉ヲ行フ人ニ依ッテ異ルノデアリマス、又英國ノ
  如キハ昔ハ政治上ノコトガ非常ニ腐敗シテ居リマシタガ、今日ハ世界ノ模範ト一云ハレル
  如ク美シクナッテ居ルノデアリマスカラ、此際英國ノ選舉費用ガ縱令少シ位減少スル事
  實ガアリマシテモ普通選舉ヲ行ヘバ必ズ選擧費用ガ減少スルトハ云ヘヌト思フノデアリ
  マス、之ヲ松本君ハ餘程重大問題ノ如ク態〓列舉サレタノデアリマスケレドモ、是ハ毫モ
  採ルニ足ラヌ說ト思フノデアリマス、又實益論ノ第三ハ國力發展ト云フコトヲ申サレルノ
  デアリマス、是ハ昨年モ日向君カラ米國ヤ獨逸ノ如キハ普通選舉ノ御蔭デアノ通リ國
  力ガ發展スルト言ハレタノデアリマスガ、是ハ事理ノ〓倒シテ居ルト云フコトハ私ガ玆ニ
  改メテ申サナクテモ分ッテ居ルコトデ、國力ガ發展シ工業ガ興シテ、サウシテ玆ニ初メテ社
  會問題ト云フモノガ〓究サレ、サウシテ其後ニ此普通選舉ノ說ト云フモノガ起ッテ來ヌ
  ノデアリマス、決シテ普通選舉ヲ行ッタカラ亞米利加ノ國家ガ今ノ如ク發展シタト云フ
  タナラバ、亞米利加人、獨逸人ハ笑ッテ之ヲ聽クデアラウト思フノデアリマス、ソレカ
  ラ實益論ノ第四トシテハ干渉ガ困難ニナルト云フ說デアリマス、是ハ殆ド採ルニ足ラメ說
  デアリマシテ、日向君ガ悲憤慷慨シテ今日ノ國情ヲ憂ヘ、今日ハ今ノヤウナ選舉法デア
  ルカラシテ、我邦ノ社會ノ一部分ノ人ガ勢力ヲ得テ居ルト云フヤウナ說デアリマスガ、吾
  吾ハ決シテ其樣ニ議員ガ腐敗シテ居ルトモ思ハヌ、又閥族ガ死命ヲ制スルト云フ御言葉
  ガ日向君ノ御演說ノ中ニアリマシタガ、私ハ此ノ如ク自ラ界メテハ居リマセヌシ、又諸君
  ノ多數モ其樣ナ御考ハ持ッテ居ラレヌト思ヒマス、今日ノ議員ノ死命ヲ制シテ居ル者ハ
  決シテ他ニナイ、、議員ハ獨立シテ立派ニヤッテ居ルノデアリマス、其次ニ第三ハ人情論デ
  アリマス、人ノ人情ニ訴ヘテ普通選舉ニセヨト云フ論、是ハ松本君ナドハ餘程前カラ唱ヘ
  テ御出デニナル說デアルヤウデアリマスガ、國民ハ兵役ノ義務ガアル、國民ハ血稅ヲ拂ッテ
  居ルノデアルカラ、是ニ選舉權ヲ與ヘルノガ當然デアルト云フ論デアリマスガ、是ハ人情論
  デアッテ、又一ノ報償論ト名ヲ付ケルコトガ出來ルカモ知レマセヌ、併ナガラ人ニ或物ヲ
  與ヘテ喜バシメントスルニハ彼ノ欲スル物ヲ與ヘナケレバ喜バヌノデアリマス、今日我國民
  ハ決シテ普通選舉ヲ要求シテ居ラヌノデアリマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)現在ニ於テ
  ハ昨年モ私ハ申シタ通リ選舉每ニ棄權スルトコロノ人ガ七分ノ一ト云フ者ハ棄權シテ選
  舉場ニ赴カヌノデアリマス、此ノ如キ國民ニ向ッテオ前達ハ戰ニ行ッテ我邦ヲ護ル干城デ
  アルカラ、選舉權ヲ與ヘルト云フノハ人ノ欲セザル物ヲ人ニ與ヘテ、人ヲ喜バセヤウト云云
  ノデ此ノ如キ人情論ハ毫モ役ニ立タヌト私ハ思フノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)
  第四ハ法理論デアリマス、第一ノ人權論ノ中ニ其中ノ一部分ハ述ベタノデアリマスケレ
  ドモ、法理上カラ此普通選舉ヲ可トスル說ニ對シテ私ノ意見ヲ述ベテ見ヤウト思フノデ
  アリマス(齋藤二郎君「簡單ニ願フ譯ニイキマセヌカ」「ヤルベシヤルベシ」ト呼フ者アリ)第一
  ハ選舉ト云フコトヲ以テ民法上ノ委任法理ト混同シテ居ルノデアリマス、卽チ吾〓衆議
  院ノ議員ハ國家ヲ代表スルノデアルカラシテ、國家ヲ代表スルト云フ以上ハ多數ノ人ノ
  委任ヲ受ケナケレバナラヌト、斯ウ云フ說デアリマス、併ナガラ是ハ餘程能ク御考ヲ願ハ
  ナケレバナラヌ、吾〓ハ選舉人ニ選舉セラレテ居リマスケレドモ、吾〓ヲ選舉シク國民ノタ
  メニ此處ニ居ルノデハナイノデアリマス吾〓ハ國利民福ヲ計ラナケレバナラヌノデアリマ
  ス、吾ミヲ選擧シタ人カラ委任ヲ受ケテ、彼等ノ意思ヲ茲ニ傳ヘルタメニ此處ニ議員ト
  ナッテ居ルノデハナイノデアリマス、是ガ吾〓ハ國民ノ代表機關デアルケレドモ、吾ミハ國
  民ノ委任機關デナイト云フ所以デアルノデアリマス、之ヲ誤ッテ或ハ之ヲ「ピラミッド」二譬ヘ、
  或ハ之ヲイロ〓〓ナ言葉ヲ以テ多數國民ノ意思ニ根柢ヲ置カヌ議會ハ其用ヲ爲サヌト
  云フヤウナコトヲ言ハレマシタガ、是ハ唯徒ラニ言葉ヲ大ニセラレテ人ヲ誤ルモノデアッテ、
  決シテ是ハ採ルニ足ラヌ論デアルト思フノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)議員ト云
  フモノハ是ハ公職デアリマス、決シテ一個人ノ利益ヲ計ルモノデナイ、天下國家ノ利益ヲ
  計ラナケレバナラヌノデアリマス、ソレカラ又其他採ルニ足ラヌ說ガ澤山アリマス、例ヘバ
  今日ハ普通〓育ガ盛ンニナッテ居ル、國民ノ知識ト云フモノガ進ンデ居ルカラ、ソレデ普
  通選舉ヲ行ハナケレバナラヌト云フ說ガアリマスガ、決シテ國民ガ國家ヲ負擔スル觀念ト
  云フモノハ知識トハ正比例ヲシテ居ラヌノデアリマス、知識ハナクトモ納稅義務ト云フモ
  ノト、ソレカラ參政權ト云フモノハ是ハ歷史上ニ深イ緣故ノアルコトヽ思ヒマス、今日直接
  國稅十圓ト云フモノヲ納メル者ニ選舉權ヲ與ヘルト云フコトハ決シテ偶然ノコトデハナイ
  ト思ヒマス、ソレ故ニ普通〓育が發達シテ居ルカラ普通選舉ニシナケレバナラヌト云フ如
  キ說ハ取ルニ足ラヌト思フノデアリマス、以上此ノ如キトコロノ人權論、實益論、人情
  論法理論、此四論トモ悉ク私ハ取ルニ足ラヌ說デアラウト思フノデアリマス、凡ソ社會
  ノ目的ト云フモノハ社會ニ存シテ居ルトコロノ凡テノ仕事ヲ發逹セシメ、凡テノ智力ヲ發
  達セシメサウシテ其調和ヲ圖ラナケレバナラヌノデアリマス、又社會ノ凡テノ階級ノ改善
  ヲ圖リ、凡テノ階級ヲ調和セシムルコトヲ目的トシテ居ルノデアル、此目的ニ普通選舉ガ
  適フナラバ私ハ普通選舉ニ贊成スルノデアリマス、ケレドモ併ナガラ普通選舉ト云フモノ
  ハ決シテ此等ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイノデアル、私ハ少シモ積極的ノ理由ナクシテ
  サウシテ普通選舉ヲ唱道スル人ノ理由トスルトコロハ、右申シマスル通リ、毫モ取ルニ足ラ
  ヌト認メマスカラシテ、此所ニ普通選舉法ニ反對ヲ表スル所以デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=73

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• 074・菅原傳

  ○菅原傳君　討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=74

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• 075・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　討論終結ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=75

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• 076・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ討論終結ト致シマス-日程第十二ニ付テハ反對、贊
  成ノ兩方ニ岐レテ居リマスガ故ニ、先ヅ反對ノ方カラ決ヲ採リマス、卽チ本案ヲ廢棄ス
  ベシト云フ說ニ御同意ノ諸君ハ起立
  起立者
  〔「多數」「少數」ノ聲交〓起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=76

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• 077・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　唯今ノ宣告ハ少シハッキリ致シ兼ネテ居リマス故ニ、改メテ本
  案二讀會ヲ開クベシト云フ說ニ御同意ノ諸君ハ起立
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=77

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• 078・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　二讀會ヲ開クベシト云フ方ガ多數ト認メマス
  (「直ニ二讀會ヲ開クコトヲ望ム」「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=78

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• 079・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　日向輝武君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=79

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• 080・日向輝武

  ○日向輝武君　私モ直ニ二讀會ヲ開クベシト云フ動議ヲ出サウト思ヒマシタ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=80

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• 081・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　直ニ二讀會ヲ開クト云フニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=81

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• 082・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　ソレデハ直ニ二讀會ヲ開クコトニ致シマス
  普通選舉ニ關スル法律案確定議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=82

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• 083・日向輝武

  ○日向輝武君　三讀會ヲ省略シテ一讀會ニ於テ決議シタル通リ決セラレンコトヲ希望
  致シマス
  〔「贊成々々」又「反對」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=83

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• 084・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　日向君ノ動議ノ如ク三讀會ヲ省略シテ、本案ヲ確定スルコト
  ニ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=84

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• 085・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ本案ハ是ニテ確定ト致シマス-次ノ日程第十三、
  地租條例中改正法律案ハ委員長ヨリ議事延期ノ申出ガアリマス、御異議ハアリマセヌ
  カ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=85

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• 086・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　日程第十四、明治四十一年法律第三十七號中改正法律
  案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長熊本壽人君
  明治四十一年法律第三十七號中事業人戶
  第十四改正法律案(熊本壽人君外三名第一讀會ノ續(一
  報〓
  提出)
  〔熊本壽人君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=86

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• 087・熊本壽人

  ○熊本壽人君　委員會ノ經過ノ結果トヲ御報告致シマス、本案ハ御承知ノ通リ地
  方稅及町村稅ノ稅率ガ三通リニナッテ居ルガタメニ全國ノ市町村役場ハ非常ナ手數ヲ
  煩ハシテ居ルガタメニ成ベク之ヲ整理シタイト云フ案デゴザイマシタノデ、委員會ヲ開イテ
  審議討論致シマシタ結果、此原案ヲ可決スルト云フコトニ滿場異議ハナカッタノデアリ
  マ、、而シテ政府モ亦是ニ對シテ同意デアルト云フコトヲ言明サレタ譯デアリマスカラ、速
  ニ御決定アランコトヲ希望致シマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=87

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• 088・菅原傳

  ○菅原傳君　本案ハ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ決定セ
  ラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=88

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• 089・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略スルコトニ御異議ハアリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=89

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• 090・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ直ニ二讀會ヲ開キマス
  明治四十一年法律第三十七號中改正法律案確定議
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=90

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• 091・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　委員長報告通リ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=91

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• 092・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　委員長報告通リ本案ハ是ニ確定ト致シマス-次ハ日程
  第十五、第十六-此二議案ノ提出者ハ同一デアリマスカラ、一括シテ議題トナスニ
  御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=92

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• 093・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ一括シテ議題ト致シマス-八木逸郎君
  第十五御歷世宮趾保表ニ關スル建議案(八木逸郎君
  外二名提出)
  第十六名所舊蹟古墳墓保護ニ關スル建議案(八木逸郎
  君外二名提出)
  御歷世宮趾保表ニ關スル建議案
  御歷世宮趾保表ニ關スル建議
  列聖ノ御遺靈ヲ崇拜シ御遺德ヲ仰慕スルハ我カ國三千年來ノ國民性ニシテ
  御陵墓御宮趾行宮趾ノ尊保敬表ヲ重スルハ今更說明ヲ待タサル處トス而シテ
  御陵墓ニハ已ニ諸陵寮ヲ置カレ保崇修理ノ職掌アルモ御宮趾ニハ未タ其ノ擧
  ナク全數五十三箇所中其ノ保表アルハ僅々五六箇所ニ過キス其ノ他ハ〓ネ湮滅
  シ國民ノ仰慕歷史ノ考證ニ途ナカラムトス是レ眞ニ我カ國體上缺典ニ非スシテ何
  ソヤ故ニ政府ハ速ニ相當ノ機關ヲ設ケ精細之ヲ考査シ形跡在ルモノハ之ヲ修保シ
  形跡無キモノハ石標ヲ建設シテ之ヲ保表シ以テ國民ヲシテ仰慕尊崇ノ念ヲ全ウセ
  シメラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  名所舊蹟古墳墓保護ニ關スル建議案
  名所舊蹟古墳墓保護ニ關スル建議
  名所舊蹟ノ如キハ歷史上關係尠ナカラサルノミナラス旅人ヲシテ一種ノ趣味ヲ有セシ
  メ或ハ懷古ノ情ヲ喚起シ人心作興上大ナル利益アルノミナラス外國ニ對シテモ誇ト
  爲スヘキモノノ一ニ屬ス聞ク英國ノ如キハ國家ハ此等ノ保存ニ向ッテハ最意ヲ注キ毫
  モ經費ノ多少ヲ顧慮セサルノ風アリト然ルニ我カ國維新以來此等保存ニ意ナキカ爲
  漸次壞敗湮滅ニ歸セムトス是レ實ニ我カ三千年來歷史上ノ誇ヲ減殺スルモノト謂フ
  ヘシ
  又古墳墓ノ如キ文武ノ忠臣又ハ學者ノ墳墓ニシテ全ク形跡ナキモノ、只タ口碑ニ傳
  ハルモノ或ハ苔蒸ノ下ニ湮滅スルモノ甚タ多シ今之ヲ修覆シ其ノ功蹟ヲ彰表スルニ於
  テハ國家ノ功勞者尊崇上、歷史考證上、人心作興上大ナル利益アルノミナラス
  國民〓育上數百萬ノ兒童ヲシテ常ニ大ナル感化ヲ與フルハ論ヲ待タス加フルニ近時
  歐米國人ノ我カ國ヲ觀光スルモノ年ヲ追フテ增加スルカ故ニ此等ノ場所ト事蹟及功
  蹟等ヲ案內記ニ示スニ於テハ我カ國今日ノ勃興偶然ニ非サルヲ感知セシメ延テ國威ヲ
  海外ニ宣揚スルニ於テモ亦大ナル利益アルヲ信ス依リテ政府ハ速ニ此等ノ調査機關
  ヲ設ケ相當ノ方法ヲ講シ之カ修理保存ノ舉ニ出テラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔八木逸郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=93

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• 094・八木逸郎

  ○八木逸郞君　時間ガ迫ッテ居リマスシ此案ハ三度流シタヤウナコトデアリマスシ、此案
  ニ尙引續イテ澤山ノ建議案モアルヤウデスカラ簡單ニ述ベマス、玆ニ書イテアリマス通リ
  此列聖ノ御遺靈ヲ崇拜シ、御遺德ヲ仰慕致シマスノハ我國民ノ性デアリマシテ、爲
  御歷代ノ御墳墓トカ御宮趾ニ對シテ尊保致シマシテ敬表ヲ致シマスルコトノ大切ナルコ
  トハ申スマデモナイコトデアラウト思ヒマス,御陵墓ニ對シマシテハ諸陵寮ヲ置カレマシテ
  各御修理ニナッテ居リマスルケレドモ獨リ宮趾ニ至リマシテハ五十三箇所中ニ保表サ
  レテ居リマスルノハ、僅ニ五六箇所デ、近江ノ大津、山城ノ長岡、大和ノ橿原、河內
  ノ樟葉位デアルノデアリマス、而シテ寬文年間ニ於キマシテ有志ノ士ハ之ヲ能ク調ベテ既
  ニ四十餘箇所モ調査シテ居ルノデアリマスガ、今日マデ棄テヽアリマスガタメニ〓ネ湮滅
  致シマシタリ、又ハ痕跡ダケ殘ッテ居ルコトハ誠ニ國體ノ上ニモ歎カハシイコトデアラウト
  思ヒマスガクメニ、政府ハ相當ノ機關ヲ設ケテ之ヲ能ク考査シテ、歷史考證ノ上ニ於キ
  マシテモ、國民ガ仰幕致シマスル上ニ於テモ、痕跡ノアルモノハ修保ニ、痕跡ノ無イモノ
  ハ石碑デモ建テ保表シテ、國民仰慕ノ念ヲ完カラシメタイト云フノガ、此建議案ノ趣意
  デアリマスカラ、ドウカ滿場ノ御贊成ヲ願ヒタイト思ヒマス(拍手起ル)其次ノ名所舊蹟
  古墳墓保護ニ關スル建議案デアリマスルガ、詳シキコトハ委員會デ申シマスケレドモ、申
  スマデモナク此名所ナリ舊蹟ナリト云フモノハ歷史ニ非常ナル關係ヲ持ッテ居リマスルノ
  ミナラズ、旅人ガ是ガタメニ一種ノ趣味ヲ以チマシテ、又旅人ノ品位ヲ高尙ニサセル上ニ
  於テモ大變ナル利益ノアルモノデアルノデアリマス、殊ニ日本ノ如ク三千年來ノ舊國ニ於
  キマシテハ種々ナル意味ノアルモノガ澤山遺ッテ居ルノデアリマス、然ルニ御承知ノ通り今マ
  デ名高イ名所ノ中ニ於キマシテハ段々湮滅シタリ、若クハ湮滅シナイマデモ其名所ト云フ
  モノヽ實ヲ失ヒ掛ケテ頽廢シテ居ルモノガ澤山アルノデアリマス、月ケ瀨ノ梅ガ段々枯死
  シテモ之ヲ補樹スル途ガナイ、吉野ノ櫻ガ枯死シマシテモ之ヲ補樹スル力ガナイコトガアル
  ノデアリマス、又舊蹟ニ至リマシテモ、千有餘年前ノ光明白王后ガ大慈大悲ノ立願ヲ立テ
  ラレテ最モ忌ハシク思フトコロノ癩病患者ヲ寄セテ施療施藥ヲサレテ特ニ蒸氣浴ヲ設ケ
  テ是ガ治療ヲシテ癒シタイト云フコトヲヤラレタノガ、現ニ民間ニ歸シテカラハ、民間ノ者
  ガ其儘ニ棄テヽ居ルト云フ事實ガアルノデアリマス、吾〓ノ知ッテ居ル外國ノ者ガ參リマシ
  タトキニ、案內ヲ致シテ其歷史ヲ言ヒマシタナラバ、何故ニ民間ノ有志ガ之ヲ保存シナイ
  カ、何故ニ國家ガ此ノ如ク美德ノ上ニ於キマシテモ亦衞生ノ上ニ於キマシテモ一ノ最モ
  誇ルベキ舊イ歷史ヲ滅却スルト云フコトハ、誠ニ以テノ外デアルト云フコトヲ能ク言ハレテ
  吾ミガ耻ヅルノデアリマス、又大覺寺ノ如キニ至リマシテモ現在ハ存シテ居リマスケレド
  モ、寺一己テ以テハ保存ヲシ兼ネテ居ルノデアリマス、卽チ南朝ノ後龜山帝ガ後小松帝
  ニ三種ノ神器ヲ讓ラレタト云フ場所デアリマス、斯樣ナモノガ續々遺ッテ居リマスケレドモ、
  維持ニ困難シ、若クハ維持セラレナイデ居ル所ガ澤山アルト思ヒマスルガ故ニ、此ノ如キ
  モノヲ國家ハ相當ノ機關ヲ設ケテ調査シタイト云フコトデアルノデアリマス、(「贊成々々」
  ノ聲起ル)此古墳墓ニ致シマシテモ隨分ニ文武ノ忠臣ナリ若クハ學者ノ墓ガマルデ其儘
  ニナッテ居ルノガ澤山ニアルノデアリマス、此事ニ向ッテハ委員會デ申サウト思ヒマシタケレ
  ドモ、是等モ修保シテ、サウシテ永ク存シテ國民ノ道德心ヲ涵養スル上ニ於テモ、亦昔時
  ノ元勳學者ニ對シテ尊敬ノ意ヲ表スル上ニ於キマシテモ、人心ノ作興上ニ大ナル利益ガ
  アラウト思ヒマスルガタメニ、相當ノ機關ヲ設ケテ之ヲ國家ガ修理スルコトガ當然デアラウ
  ト思ウテ此建議ヲ出シタ次第デアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=94

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• 095・菅原傳

  ○菅原傳君　兩案ヲ一括シテ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマ
  ス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=95

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• 096・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　議長指名九名ノ特別委員ニ付託スルト云フコトニ御異議ハ
  アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=96

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• 097・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ左樣ニ致シマス-次ハ日程第十七、臺南水道敷設
  ニ關スル建議案ヲ議題ト致シ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、村上先君
  第十七臺南水道敷設ニ關スル建議案(村上先君外三名提出)
  臺南水道敷設ニ關スル建議案
  臺南水道敷設ニ關スル建議
  臺南ハ臺灣ノ古都ニシテ現今ニ於テモ亦臺北ニ亞クノ大都市ナリ然ルニ臺北基隆
  淡水等ハ早ク水道ノ敷設アリ更ニ明年度ヨリ打狗及嘉義ニモ之ヲ敷設セムトスルニ
  モ拘ラス未タ臺南水道ノ敷設ヲ見ルニ至ラサルハ臺灣施政ノ一缺典ト言ハサルヲ得
  ス殊ニ臺南ハ從來飮料水ノ不良ヲ以テ名アリ之カ爲疫癘ノ侵ス所トナルモノ甚タ多
  シ因リテ政府ハ明治四十五年度ニ於テ臺南水道敷設ノ計圖アラムコトヲ望ム
  右建議ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=97

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• 098・村上先

  ○村上先君　時間切迫ノ場合デアリマスカラ、簡單ニ自席ヨリ說明致シマス、本案ハ
  極ク明白ナ建議案デアリマスデ、其〓要ヲ申シマスレバ臺灣ノ臺南市街ハ臺灣ニ於ケ
  ル舊都テゴザイマシテ、唯今ノ人口ハ殆ド六万ニ垂ント致シマシテ臺北ニ亞ギマスルトコ
  ロノ大都市デアリマス、而シテ此臺南市街ハ臺灣ノ南部卽チ熱帶地方ニアリマスル飮
  料水ガ最モ不良ヲ以テ名ノ有ル地方デアリマス、然ルニソレニモ拘リマセズ、臺灣政府ハ
  未ダ臺南ニ於テ水道敷設ノ計畫ヲセヌト云フコトハ是ハナ室灣政府ノ施政ノ一大缺〓ト
  云ハザルヲ得ヌノデアリマス、因テ本員ハ速ニ政府ハ臺南ニ完全ナル水道ヲ敷設センコト
  ヲ希望スルノデアリマス、否ナ速カデハアリマセヌ、明治四十五年度ニ於テ其敷設ヲ爲サ
  レンコトヲ希望スル次第デアリマス、而シテ臺灣財政ノ狀態ヲ目九マスルト云フト、明治二
  十九年ニ於テ二百六十万圓ノ歲入ガ唯今ハ殆ド十七倍卽チ四千三百万圓ニ達シテ
  居リマスルカラ、臺南水道ノタメニ要スルトコロノ費用ハ臺灣財政上、而モ發達シテ止
  マザルトコロノ臺灣ノ財政ニ對シマシテハ、九牛ノ一毛デアリマスルカラシテ、此建議案ニ
  對シテハ政府ハ滿腔ノ同情ヲ以テ歡迎スルデアラウト一云フコトヲ確信シテ疑ハヌノデアリ
  マハ、何卒滿場一致ヲ以テ御採決アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=98

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• 099・菅原傳

  ○菅原傳君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=99

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• 100・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　議長指名九名ノ特別委員ニ付託ト云フコトニ御異議ハアリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=100

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• 101・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ左樣致シマス、次ハ日程第十八、第十九ハ鐵道ニ關
  スル議案デアリマスカラ、一括シテ議題ト爲シ提出者ヲシテ各其趣旨ヲ辯明ヲ爲サシム
  ルコトニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=101

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• 102・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ兩案ハ一括シテ議題ト致シマス、議案ノ朗讀ハ省略致
  シマス、提出者三浦盛德君
  第十八鐵道敷設ニ關スル建議案(三浦盛德君外五名提出)
  第十九鐵道建設ニ關スル建議案(白石義郞君外三名提出)
  鐵道敷設ニ關スル建議案
  鐵道敷設ニ關スル建議
  一巖手縣下盛岡ヨリ秋田縣下大館ニ至ル鐵道
  右鐵道ハ東北產業ノ發展上必要ナル線路ト認ム依リテ政府ハ速ニ建設ニ著手セ
  ラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  鐵道建設ニ關スル建議案
  鐵道建設ニ關スル建議
  一福島縣下白河ヨリ分岐シ茨城縣下水戶ニ接續スル鐵道
  右ハ產業ノ發達交通ノ不備ヲ補フ爲必要ニシテ且奧羽線及岩越線ト水戶線トノ連
  絡上必要ナリト認ムルニ依リ政府ハ速ニ調査ヲ遂ケ相當ノ處置ヲ採ルヘシ
  右建議ス
  〔三浦盛德君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=102

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• 103・三浦盛徳

  ○三浦盛德君　諸君、私ハ簡單ニ此案ノ提出ノ理由ヲ說明シヤウト思ヒマス、此建
  議案ハ秋田縣下大館ヨリ陸中國鹿角郡毛馬內花輪ヲ經テ巖手縣下好摩盛岡市ニ
  到ル鐵道ヲ建設シタイト思フノデアリマス、其距離六十三哩工費約一千万圓、一種
  平均十五六万圓ヲ要スルノデアリマス、此線路ハ明治三十年中ニ私設鐵道ヲ計畫ス
  ルモノアリ、政府ハ之ヲ許可シテ假免狀ヲ下附シマシタ又三十三年中第十四議會ニ於
  テ鐵道敷設法改正案ノ提出セラルヽヤ衆議院ハ之ヲ可決致シマシタ、又最近ニ在テハ
  昨年ノ五月政府ハ船塚技師以下十數名ヲ派遣シマシテ、同年九月線路全部ノ測量
  ヲ了ヘタノデアリマス而シテ經濟上ヨリ是ヲ見ルモ奧羽鐵道中旅客ニ在テハ弘前秋
  田、大館ノ順位ナルモ貨物ニ於テハ此大館ガ秋田ノ二倍半、弘前ノ約二倍ニ當ッテ居リマ
  ス、之ヲ鑛山ト云フ上カラ見マスルト、彼ノ有名ナル小阪鑛山ノ如キ、日本最古ノ小猿
  澤鑛山ノ如キ、靑森秋田兩縣ニ跨ルトコロノ不老倉鑛山ノ如キモノハ、皆此線路ニ沿フ
  テアリマス、其他此線路ノ敷設ヲ待ッテ今後採掘セラルベキ諸鑛山ノ數ニ至ッテハ百有
  餘ノ多キモノデアリマス、又此線路ニ沿フテアルトコロノ山林ハ彼ノ日本三大美林ノ一
  タルトコロノ長木澤ノ國有林ヲ始メ、僅ニ杉ノ一種ノミデモ六千万尺メ餘リアリマス、
  之ヲ時價ニ積算致シマスレバ四億二三千万圓乃至五億圓ノ價ノアル大森林ガ此線路
  ニ沿ウテ居リマス、又之ヲ軍事上ヨリ見マスレバ、第二師團ト第八師團トノ距離ヲ最モ
  接近セシムルモノデアリマス、殊ニ弘前師〓ト盛岡騎兵旅團工兵大隊トノ距離ヲ近接
  セシメルノミナラズ、上野ヨリ靑森ニ到リマストコロノ彼ノ日鐵線ヨリハ三哩近ク、奧羽
  線ニ依ルヨリハ十二哩近ク、弘前ヨリ上野ニ到リマスニハ四十八哩近イノデアリマス、
  而シテ一朝事ノアルトキニハ彼ノ米澤線ノヤウナ不便不利ナ線路ノ不足ヲ補フテ此線
  路ハ餘リアルモノト私ハ信ジマス、此ノ如ク軍事上、國家經濟上、東北ノ發展奧羽ノ
  振興ノ上ニ巖手縣、靑森縣、秋田縣ノ將來ノタメニ、此線路ヲ開キマスノハ、此第二
  十七議會ニ於テイロ〓〓鐵道建設ガ建議セラレテアルケレドモ、其鐵道中デ最モ有益
  且必要〓クベカラザル線路ト私ハ信ジマスルガ故ニ、諸君ハオイヤナラ反對スルモヨシ
  私ナラバ此鐵道ホド良イモノハナイト思ヒマスカラ、願クハ滿場ノ諸君ノ御贊成ヲ請ヒマ
  ス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=103

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• 104・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　白石義郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=104

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• 105・根本正

  ○根本正君　簡單デアリマスカラ此席カラ述ベマス、本鐵道建設ニ關スル案ハ福島縣
  東白川郡ヨリ茨城縣久慈郡及那珂郡ヲ經マシテ水戶ヘ達スルトコロノ七十哩ノ分岐
  線デアリマス、此線路ハ生產的卽チ農產物ヲ運輸スルコト又材木及鑛物ヲ運搬スル
  ニ付テ最モ必要ナル鐵道デアリマス、此白河ヨリ水戶マデ達スル間ニハ最モ繁華ナル棚
  倉町ナドモゴザイマシテ、此棚倉町ノ如キハ每日百五十車ヅヽ物貨ヲ送ッテ居リマス、是
  ハ白石義郞君ガ親シク調査サレタモノデアッテ、此百五十車ト云フモノヲ東京ヘ出スニハ
  十二哩北ノ方ヘ運ビ、又十二哩南へ出スト云フノデ、東京へ出スニハ二十四哩ヅヽ無益
  ナル里數ヲ運ブノデアリマス、此鐵道ガ出來マスレバ卽チ此棚倉ニ於ケルトコロノ物貨ヲ
  水戶ヲ經テ參リマスト、實ニ非常ナル利益デアリ、加之其地方ヲ開發スルトコロモ莫大
  ナモノデアリマス、又茨城縣ニ於キマシテモ此鐵道ノ通ジマス所ニ大子町ト云フ所ガアッ
  テ、其大子町ニハ大ナルトコロノ煙草ヲ生產シ蒟蒻紙、其他材木ト云フモノガ非常ナモ
  ノデアリマス、又ハ八溝山ト云ッテ近頃金山ガ發見サレマシテ大ニ鑛業ガ興リ、又其地
  方ヨリ那珂郡ヘ參リマスト山方村ト云フ所ガアッテ、此所ニモ近頃金山ガ發見サレテ今
  採掘ヲ實行サレテ居リマス、其他大宮町ト云フ所ハ茶モ出來、或ハ煙草ノ專賣所モア
  リマシテ、大ニ國家ノ發展ノタメニ必要ナ所デアリマス、其他瓜連ト云フ所カラハ農產
  物ガ多ク輸出サレ、此所ヲ經テ水戶ヘ參リマス、水戶ハ昨年兵營ヲ置カレマシテ、此鐵
  道が出來マスナラバ軍事ノタメニモ非常ナル利益ガアル譯デアリマスカラ、此鐵道ハ國家
  ノタメ一日モ早ク建設ヲ望ム次第デ、審議ノ上本案ヲ通過サレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=105

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• 106・菅原傳

  ○菅原傳君　唯今說明ニナリマシタ兩案ヲ一括シテ日程第六ノ法律案ノ委員ト同一
  ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

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• 107・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　菅原君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=107

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• 108・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ前ノ同一委員ニ付託スルコトニ致シマス、次ハ日程第
  二十、人工降雨試驗ニ關スル建議案ヲ議題トシ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、早川
  龍介君
  第二十人工降雨試驗ニ關スル建議案(早川龍介君提出)
  人工降雨試驗ニ關スル建議案
  人工降雨試驗ニ關スル建議
  時世ノ進步ニ伴ヒ電氣ノ應用大ニ發達シタル今日我カ農國ニ於テ人工降雨ハ極メ
  テ有益ノ問題タリ政府ハ本年夏期ニ於テ該試驗ヲ行ハレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔早川龍介君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=108

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• 109・早川龍介

  ○早川龍介君　是ハ唯御贊成ヲ願ヒタイト申シテ降ッテモ宜イト思ヒマスガ、事柄ガ事
  柄テゴザイマスカラ極ク簡單ニチヨット申上ゲマス、是ハ旣ニ實驗ヲサレタ事實デアリマスカ
  ラ、ソレヲチヨット申上ゲテ置キタイ、凡ツ其機械ノ價ハ二三百圓乃至四百圓ニ止ルモノデ
  サウシテソレニ要シマス一日ノ人夫卽チ是ハ乾電池ノ發電機デアッタノデアリマスカラ、其
  人夫ノ費用ガ凡ツ其當時デハ六七十圓掛ックト云フコトデアル、サウシテ其實驗ヲ致シ
  マシタ場所ハ奈良縣高市郡ノ畝傍山ニ於キマシテ、實驗ニ明治三十三年八月十五日
  正午ニ著手ヲ致シマシテ、翌十六日午後三時ニ沛然トシテ雨ヲ降ラシタ、又其次ハ宮城
  縣仙臺附近ノ大寺山ト書イテアリマスガ、此處ニ於キマシテ三十四年四月五日午後
  五時ニ著手致シマシテ、七日午前四時ニヤハリ雨ヲ降ラシタノデアリマス、又第三ハ德
  島縣麻植郡飯尾村ノ天神山ト申ス處デ三十四年八月十九日午前二時ニ著手ヲ致
  シマシテ翌二十日ノ午前四時ニ雨ヲ降ラシタノデアリマス、チヨット玆ニ一言申シテ置キ
  タイノハ倫敦電氣協會長「ヘヱランチ」氏ノ此電氣力ニ付テ述ベマシタ說ノ中ニ今後
  此電氣ノ作用ニ依ッテ發熱燈火動力ハ勿論ノコト、肥料トナルベキ硫化「アンモニヤ」ヲ
  採リマシテ農事ニ用ユルヤウニナリ、尙進ンデハ地面ヨリ上騰セシ水分ヲ電氣力ニ依ッテ
  雨ト化サシメテ之ヲ降下シ、又其タメニ田園ノ灌漑若ハ洪水防禦等ニ用ユルコトガ進ン
  デハ容易ク出來ルデアラウト云フコトヲ申述ベテ居ル、又此德島縣デ試驗ヲ致シマシタモ
  ノニ英吉利カラ日本ニ照會ヲ致シテ其事實ヲ知ラシテ貫ヒタイト申シテ、實際縣廳ニ照
  會サレタコトモアル、御承知ノ如ク此雨ニ付キマシテハ昨年ノ如キ大暴水、果シテ是ガ
  事實ノ上ニ行ハレルヤ否ヤト云フコトヲ私ハコヽデ確言ハ致シマセヌガ、凡ソ爲政家ノ民
  ヲ御スルニ仁ヲ以テスルニ士心ヲ厚クスルノハ當然ノコトデアリマシテ、此僅カノ金額ヲ以テ
  或ハ二万三万ノ金額ニ致シマシテモ、之ヲ以テ或ハ暴水ヲ凌ギ、又ハ灌漑ニ充ツルヤウナ
  コトガ電氣作用ニ依ッテ若シ出來ルト云フコトニナリマシタナラバ、實ニ是ハ大變ナル幸福
  ヲ得ルコトデアラウ、御承知ノ如ク飛行機ノ試驗デモ殆ド七十万圓程ノ金ヲ費シ、又ハ白
  蟻ノ試驗デモ三万餘圓ノ金ヲ費スヤウナトキデアリマス、縱令此試驗ハ若シ十分ナ效果
  ヲ得ヌ結果ニ終リマシテモ、決シテ不仁ノ道ニ於テ心ヲ盡シタノデナク、何處マデモ國民ヲ
  シテ安全ナラシメンコトノタメニ盡スト云フ意味ノ上ニ於テ決シテ是ハ無用ノ試驗トハ存
  ジマセヌ故ニ、ドウゾ是ハ委員會ニ移サレマシテ說明ヲ十分ニ致シテ、其ヤリマシタ實驗者
  若クハ機械等ノ說明モ十分ニ致シマシテ、此試驗ノ實行セラレルヤウニ御贊成下サラン
  コトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=109

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• 110・菅原傳

  ○菅原傳君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=110

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• 111・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　議長指名九名ノ特別委員ニ付託ト云フコトニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=111

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• 112・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ左樣致シマス、御諮ヲ致シマスガ、モウ時間ガ·····
  (「モットヤリマセウ」「大丈夫」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=112

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• 113・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ次ノ日程ニ移リマス、日程第二十一、日本海員抜濟
  會國庫補助金增額ノ建議案ヲ議題トナシ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス-高橋光
  威君
  第二十一日木海員披濟會國庫補助金增額ノ建議案
  (高橋光威君外三名提出)
  日本海員掖濟會國庫補助金增額ノ建議案
  日本海員掖濟會國庫補助金增額ノ建議
  通商ノ發達國富ノ增進ハ主トシテ海運政策ニ繫リ海運ノ發達ハ船舶ノ增加航路ノ
  伸張ニ在ルヲ以テ國是トシテ造船航海ヲ奬勵スルト共ニ船舶操縱ノ任ニ當ル海員ノ
  養成ヲ爲ササルヘカラス然ルニ高等海員ノ養成ハ官公立商船學校アリト雖其ノ多數
  ヲ占ムル尋常海員ノ養成ニ至リテハ其ノ機關トシテ口ハ日本海員〓濟會アリテ海員ノ
  保護ト共ニ之ヲ爲スアルノミ將來海運ノ發展ニ伴ヒ航海ト人命貨物トノ安全ヲ圖リ
  又一朝有事ノ日ニ方リ船舶行動ノ圓滑ヲ期セムトスルニハ尋常海員養成ノ事最急
  切ノ業タラスムハアラス然ルニ現在唯一ノ機關タル日本海員掖濟會ノ實況ヲ見ルニ
  其ノ資力尙甚乏シク爲ニ十分其ノ力ヲ發揮スル能ハサルノ憾アリ故ニ政府ハ今後同
  會ニ交付スル補助金年額ヲ增加シ以テ造船航海ヲ奬勵スルノ精神ト相俟テ終始一
  貫同會ヲシテ此等ノ事業ヲ遂行スルニ遺憾ナカラシムルヲ要ス
  右建議ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=113

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• 114・戸水寛人

  ○法學博士戶水寬人君　提出者ノ一人トシテ本員カラ說明致シタウゴサイマス、日
  本海員掖濟會ナルモノハ何デアルカ、如何ナル仕事ヲシテ居ルモノデアルカト云フコトハ、
  諸君大抵御存ジデゴザイマスカラ、精シイコトハ申シマセヌガ、建議ノ趣意ヲ述ベルニ付テ
  ハ一言ソレニ及バナケレバナラヌカト思フノデゴザイマス、日本海員掖濟會ハ今日ニ於テハ
  社團法人デアリマス、總裁ニハ恐多クモ有栖川宮殿下ヲ戴イテ居ルノデアリマシテ誠ニ堂
  堂タルモノデアル、其事業ヲ申シマスト、第一ニ海員ノ養成、第二ニハ海員ノ保護、高等
  海員ノ養成ヲスル場所ハ掖濟會ノ外ニマダアリマス、卽チ官立ノ商船學校、公立ノ商船
  學校ト云フモノガアリマスケレドモ、尋常ノ海員ヲ養成スル場所ト云フモノハ此日本掖濟
  會ヲ除イテハ他ニ一ツモナイノデゴザイマス、是マデ養成シタトコロノ海員ノ數ハ旣ニ四万
  五千人アルノデス、而シテ國庫カラ每年五千圓ノ補助ヲ仰イデ居ルダケデアリマシテ、其
  他ニハ一切仰ガナイ、ツコデス餘リ五千圓ト云フモノガ少イカラドウゾ是カラ餘計ニ補助
  シタラ宜カラウト云フ考ヲ持ッテ居ルノデゴザイマシテ、此建議案ヲ提出致シマシタ、ドウゾ
  御贊成アランコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=114

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• 115・菅原傳

  ○菅原傳君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=115

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• 116・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託ト云フコトニ御異議
  ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=116

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• 117・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ左樣致シマス、モウ時間ガ切迫致シマシタカラシテ今日
  是テ止メマス、御諮ヲ致シマス、議員岩本晴之君ヨリ病氣ニ付、明後十三日ヨリ十日
  間請暇ノ願出ガゴザイマスガ、ゝ許可シテ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=117

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• 118・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　然ラバ許可スルコトニ致シマス、報告ガゴザイマス
  〔書記朗讀〕
  一貴族院ヨリ送付セラレタル政府提出案左ノ如シ
  明治二十三年法律第百三號廢止法律案
  一貴族院ハ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
  朝鮮事業公債法案(政府提出)
  朝鮮事業公債金特別會計法案(政府提出)
  朝鮮鐵道用品資金會計法案(政府提出)
  (第四號)明治四十三年度歲入歲出總豫算追加案
  (特第四號)明治四十三年度各特別會計歲入歳出豫算追加案
  森林法中改正法律案(本院提出)
  又左ノ議案ニ對シテハ第二讀會ヲ開カザルコトヲ議決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領
  セリ
  國有土地森林原野下戻申請期間ニ關スル法律案(本院提出)
  衆議院議員選舉法中改正法律案(本院提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  廣〓物取締法案
  提出者松田源治君〓崟太郞居田中定吉君
  大橋賴摸君吉植庄一郞君
  一提出者大橋賴摸君外一名ヨリ左ノ議案ヲ撤囘セラレタリ
  屋外廣告取締法制定ニ關スル建議案
  一大內暢三君外一名ヨリ朝鮮穀物移入稅ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
  一武藤金吉君ヨリ東京株式取引所ノ新株式直取引ニ關スル質問主意書ヲ提出セ
  ラレタリ
  一佐々木安五郞君ヨリ外交ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=118

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• 119・肥塚龍

  ○副議長(肥塚龍君)　本日ノ議長指名ノ委員ハ追テ公報ヲ以テ御報告ヲ致シマス、
  ソレカラ次囘ノ日程モ追テ公報ヲ以テ御報告ヲ致シマス、本日ハ是デ散會致シマス
  午後六時一分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X02119110311&spkNum=119

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