1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正六年七月八日(日曜日)
午前九時十二分開議
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議事日程 第五號 大正六年七月八日
午前九時開議
第一 大正六年度歳入歳出總豫算追加案(第一號)審査期限を定むるの件
第二 大正六年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號)審査期限を定むるの件
第三 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件審査期限を定むるの件
第四 大正六年度歳入歳出總豫算追加案(第二號)審査期限を定むるの件
第五 大正六年度歳入歳出總豫算追加案(第三號)審査期限を定むるの件
第六 臨時軍事費豫算追加案審査期限を定むるの件
第七 大正六年度特別會計歳入歳出豫算追加案(特第二號)審査期限を定むるの件
第八 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件(追第一號)審査期限を定むるの件
第九 大正六年度歳入歳出總豫算追加案(第四號)審査期限を定むるの件
第十 大正六年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第三號)審査期限を定むるの件
第十一 裁判所の設立に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十二 大正二年法律第九號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十三 北海道拓殖鐵道建設費利子支出に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十四 輕便鐵道補助法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十五 軍人恩給法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十六 軍事救護法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十七 大正五年法律第四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十八 朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十九 電話事業公債法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十 朝鮮鐵道用品資金會計法廢止法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十一 東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十二 京都帝國大學臨時政府支出金に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十三 學校及圖書館特別會計資金の一部を一般會計に繰入るる件に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十四 農業倉庫業法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十五 戰時海上再保險法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十六 臨時國庫證券法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十七 臨時國庫證券收入金特別會計法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
〔岡書記官朗讀〕
去ル五日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送
付セリ
銃砲火藥類取締法中改正法律案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
工業所有權戰時法案
同日豫算委員分科會ニ於テ當選シタル主査ノ氏名左ノ如シ
第一分科主査子爵前田利定君第二分科主査男爵小澤武雄君
第三分科主査伯爵林博太郞君第四分科主査男爵村上敬次郞君
第五分科主査男爵武井守正君第六分科主査子爵稻垣太祥君
同日豫算委員長ヨリ分科擔當委員ノ兼務ヲ左ノ如ク決定セル旨ノ報告書ヲ
提出セリ
第六分科兼務第五分科擔當委員藤田四郞君
同日請願委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願文書表第二囘報告書
從三位勳二等功三級男爵坂本俊篤君
同日男爵議員補闕選擧ニ當選セラル
一昨六日請願委口長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第一號
從五位子爵板倉勝憲君
昨七日子爵議員補闕選擧ニ當選セラル
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
裁判所ノ設立ニ關スル法律案
大正二年法律第九號中改正法律案
北海道拓殖鐵道建設費利子支出ニ關スル法律案
輕便鐵道補助法中改正法律案
軍事救護法案
軍人恩給法中改正法律案
大正五年法律第四號中改正法律案
電計事業公債法案
朝鮮事業公債法中改正法律案
朝鮮鐵道用品資金會計法廢止法律案
東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案
京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案
學校及圖書館特別會計資金ノ一部ヲ一般會計ニ繰入ルル件ニ關スル法律
案
農業倉庫業法案
戰時海上再保險法案
臨時國庫證劵法案
臨時國庫證券收入金特別會計法案
大正六年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)
大正六年度各特別會計歲入歳出豫算追加案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
大正六年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)
大正六年度歲入歲出總豫算追加案(第三號)
臨時軍事費豫算追加案
大正六年度特別會計歲入歲出豫算追加案(特第二號)
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)
大正六年度歲入歲出總豫算追加案(第四號)
大正六年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第三號)
同日決算委員副委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
大正三年度歲入歳出總決算、大正三年度各特別會計歲入歳出決算審査報
告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 去ル五日本院議員ニ當選セラレマシタ男爵坂本俊
篤君ノ席次ハ小松君ノ次席ト確定イタシマシタ、其部屬ヲ第四部ニ定メマシ
タ、又昨七日本院議員ニ當選セラレマシタ子爵板倉勝憲君ノ席次ハ小笠原子
爵ノ次席ト確定イタシ、其部屬ヲ第八部ニ定メマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、諸君ニ御諮リヲ致
シマスコトガゴザイマス、本會期中委員會ハ必要ニ應ジ本會議開會中ト雖モ
開會シテ宜シウゴザイマスカ、豫メ諸君ノ許可ヲ得テ置キタク思ヒマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ議事日程ニ移リマス、大正六年度歲
入歲出總豫算追加案第一號、大正六年度各特別會計歲入歲出豫算追加案、特
第一號、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、大正六年度歲
入歲出總豫算追加案、第二號、大正六年度歲入歲出總豫算追加案、第三號、
臨時軍事費豫算追加案、大正六年度特別會計歲入歲出豫算追加案、特第二號、
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、追第一號、大正六年度
歲入歲出總豫算追加案、第四號、·大正六年度各特別會計歲入歲出豫算追加案、
特第三號、審査期限ヲ定ムルノ件、本日モ通牒文ノ朗讀ハ總テ省略イタシテ
御異議ゴザイマセヌカ
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ送付文ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
(第一號)大正六年度歲入歲出總録算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
(特第一號)大正六年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
(第二號)大正六年度歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
(第三號)大正六年度歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
臨時軍事費豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
(特第二號)大正六年度特別會計歲入歲出豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
(第四號)大正六年度歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
(特第三號)大正六年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=6
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007・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 私ハ此場合ニ、大正六年度歲計豫算追加案ヲ皆樣
ニ御紹介ヲ致シテ、併セテ政府ノ財政、經濟ニ關シマスル所ノ施設ノ一般ヲ
申上ゲタイト思フノデアリマスル、抑〓政府ノ財政竝ニ經濟ニ關係イタシマス
ル所ノ大體ノ方針ハ既ニ現內閣ノ成立ノ當初、竝ニ三十八議會等ニ於キマシ
テ申上ゲテゴザイマス通リデアリマシテ、卽チ政府ハ時局ノ趨勢ニ鑑ミマシ
テ、財政ノ基礎ヲ鞏固ニシ、時局ノ進展ニ順應イタシマス所ノ諸般ノ施設ヲ
講ジマシテ、內ハ生產事業ノ發達ヲ促進シ、外ハ海外ニ於ケル經濟ノ伸張ヲ
圖ルト共ニ、戰爭ノ終熄ニ伴ヒ生ズベキ財界ノ變動ニ準備ヲ致シマスシ、財
界ノ好況ヨリ生ジマス所ノ各種ノ影響ノ中其利アルモノハ之ヲ助長シテ行キ
マスルシ、其害アリト認ムルモノヲ防止シテ行キマスルト云フ大體方針ヲ定
メテ居リマス、殊ニ日支ノ經濟的提携ハ今日ノ事情ニ於テ誠ニ必要ナルコト
ト考ヘマシテ、著々其經畫ヲ進メツツアル次第デゴザイマス、又聯合與國ト
ノ親誼協力ノ關係ヲ助長イタシマスルガ爲ニ財政等ノ援助ヲ爲スコトニ付テ
モ亦是レ努力ヲ致シテ居ル次第デゴザイマスル、曩ニ第三十八議會ニ於キマ
シテ提出イタシマシタル大正六年度總豫算ハ御承知ノ如クニ不幸ニシテ其成
立ヲ見ルコトヲ得マセヌガ、隨ッテ前年度豫算ヲ施行スルノ已ムヲ得ザル狀態
ニナリマシタノデ、御承知ノ通リニ實行豫算ヲ編製イタシマシテ此年度當初
ヨリ施行イタシテ居リマスル、其實行豫算ノ金額ハ歲入總額ガ六億八百餘萬
圓デゴザイマシテ、歲出總額五億五千百餘萬圓デゴザイマスル、差引五千七
百餘萬圓ノ歲入超過ト云フ計算ニナッテ居リマス、此實行豫算ハ無論前年度豫
算ノ範圍內ニ於キマシテ、編製ヲ致シマシタノデゴザイマス、各般ノ施設ニ
關シマシテ急切ノ必要ヲ充スコトニ足ラナイト云フコトハ申スマデモナイコ
トデアリマス、依ッテ政府ハ今囘追加豫算ヲ編製シマシテ、皆樣ノ御協賛ヲ經
ルコトニ致シマシタノデアリマス、此追加豫算ヲ編製イタシマスルニ際シマ
シテ、政府ハ努メテ注意ヲ致シマシテ、成ルベク緊縮ノ方針ヲ執リ、既定ノ經
畫若クハ政策ニ關シ時局ニ伴ヒ國力發展ニ必要ナリトスル所ノモノノ中デ、
緊要ナル經費ヲ計上イタシマシタ次第デアリマス、玆ニ追加豫算ノ大體ヲ皆
樣ニ申上ゲタイト思フノデアリマスルガ、大正六年度總豫算追加第一號、卽
チ此册子ニ謂ハユル一般會計ノ普通經費ノ追加豫算ニ載ッテ居ルノデアリマ
スルガ、此追加第一號ノ歲入ハ經常部ニ屬シマスルモノガ千六百餘萬圓、臨
時部ニ屬シマスモノガ千七百餘萬圓、合計三千三百餘萬圓ト云フコトニナッテ
居リマス、歲出ハ經常部ニ屬シマスルモノガ四千百餘萬圓、臨時部ニ屬スル
モノガ四千七百餘萬圓ニナッテ居リマシテ、其合計八千八百餘萬圓ト云フコト
ニナッテ居リマシテ、歲出歲入ヲ差引ヲ致シテ見マスルト、五千四百餘萬圓ノ
不足ヲ生ズルコトニナッテ居リマス、此不足ハ曩ニ申上ゲマシタル所ノ實行豫
算ノ上ニ於テ、五千七百餘萬圓ノ歲入剩餘ガアリマスルカラ、之ヲ以テ塡補
スルノ經畫ヲ立テマシタノデアリマス、追加第二號デアリマスルガ、是ハ一
般會計ニ屬スル所ノ臨時事件費ノ追加豫算デゴザイマスル、此歲出ト臨時軍
事費特別會計繰入金ガ千五百餘萬圓、臨時事件豫備費五千三百餘萬圓、合計
六千九百餘萬圓ニ相成ッテ居リマス、歲入ノ總額ガ六千六百餘萬圓デアリマシ
テ、歲出歲入ヲ差引イテ見マスルト是亦二百九十餘萬圓バカリノ不足デゴ
ザイマス、此不足ハ前ニ申上ゲマシタル第一號ノ不足額ヲ實行豫算ノ剰餘額
ヨリ引去リマシテ、其剩餘ガ尙ホアリマスルカラシテ、是等ノ殘額ヲ以テ補
塡イタシマス所ノ經畫ヲ立テタ次第デゴザイマス、追加第三號ハ電話擴張ニ
關シマスル其豫算案デアリマシテ、其歲入總額ガ一一百十九萬餘圓デアリマス、
歲出總額ガ三百十三萬餘圓デ、歲入歲出差引六萬餘圓ノ剩餘ヲ生ズル所ノ計
算ニ相成ッテ居リマス、追加第四號ト云フノガゴザイマスルガ、是ハ簡單ニ申
上ゲマスレバ、追加第一號ノ又追加ト云フコトニナリマスルノデ、豫算ノ編
製ノ次第カラ致シマシテ、多少遲レマシタノデ別號ト致シテ提出シタノデゴ
ザイマス、此第四號ニ揭ゲテゴザイマスル歲入ハ、百十九萬餘圓デゴザイマ
シテ、歲出ガ百二十五萬餘圓ニナッテ居リマシテ、結局差引不足額ガ六萬餘圓
ト云フコトニ相成ッテ居リマス、此不足額ノ六萬餘圓ハ是ハ曩ニ申上ゲマシタ
所ノ追加第三號ノ剩餘ノ六萬餘圓ト云フモノヲ以テ之ヲ補塡スル經畫ヲ立テ
マシタノデゴザイマス、以上追加ノ大體ヲ申上ゲマシタガ、以下少シク詳細
ニ亙リマシテ、尙ホ申上ゲタイト思フノデゴザイマス、卽チ第一號ノ追加豫
算ニ計上イタシテアリマスル所ノ歲入ノ主ナルモノヲ列擧イタシマスレバ、
經常部ニ於キマシテハ官業及官有財產收入ノ增加イタスモノガ約一千萬圓ゴ
ザイマス、預金部特別會計繰入金ノ增加イタシマスルモノガ四百萬圓ゴザイ
やく、臨時部ニ於キマシテ朝鮮及臺灣事業費公債及借入金ニ於テ千五百餘萬
圓。港灣修築費納付金ニ於テ百餘萬圓、地方分擔納付金ニ於キマシテ八十五
萬圓等ガ其主要ナルモノデアリマス、歲出ノ主ナルモノヲ申上ゲマスレバ、
經常部ニ於キマシテハ、國債整理基金繰入ノ增加ガ二千餘萬圓、國庫豫備金
ノ增加ガ三百萬圓、預金利子及預金利子ノ支拂手數料ノ增加ガ四百餘萬圓、
新艦船ニ要シマスル經費二百餘萬圓、是ガ主ナルモノデアリマス、臨時部ニ
於キマシテ軍艦製造費ノ追加千五百餘萬圓、造船奬勵費ノ增加三百餘萬圓、
兵器製造所ノ新設費ガ一一百餘萬圓、製鐵所擴張工事繰上ニ依ル年割額ノ增加
百餘萬圓、斯樣ナモノガ主ナルモノデゴザイマス、右ノ內國債整理基金ノ繰
入金ガ二千萬圓ヲ增加イタシマシテ、此二千萬圓ヲ增加イタシタモノヲ以チ
マシテ、謂ハユル五千萬圓國債償還ヲ現實イタスコトガ出來マス次第デゴザ
イマス、又軍艦製造費ノ追加ハ御承知ノ通リ、其總額ガ二億六千百五十二萬
圓デゴザイマシテ、今年度ヨリ以降七箇年度ノ繼續支出ニ屬シテ居リマスル
ノデ、本年度卽チ前申上ゲマシタ如ク千五百餘萬圓ニナッテ居リマス、是等ノ
追加ニ依リマシテ謂ハユル八四艦隊ト云フ編成ガ現實ニ出來ルト云フコトニ
ナルノデアリマス、次ニ臨時事件ニ關シマス臨時軍事費特別會計ノ豫算ノコ
トヲ申上ゲマスト、臨時軍事費ガ三千百六十餘萬圓デゴザイマシテ、之ニ對
シマシテ二千萬圓ノ豫備費ヲ計上イタシマシタ、卽チ合計五千百六十三萬餘
圓ト云フモノヲ計上イタシマシタ、之ニ對シマスル所ノ歲入ハ一般會計ノ繰
入金及事業收人等ノ二千百餘萬圓ノ外三千萬圓ハ公債又ハ借入金ト致シマシ
テ計上ヲ致シマシタ、又臨時事件費軍事費特別會計ニ於キマスル所ノ臨時事
件關係ノ費用ト一般會計費用ニ於キマスル所ノ臨時事件關係ノ費用ヲ合計イ
タシテ見マスルト、本追加豫算ニ於キマシテ要求ヲ致シマシタ總額ガ一億五
百餘萬圓ト云フモノニナッテ居ル次第デゴザイマス、此臨時事件ニ關係ノコト
ヲ申上ゲマスル際ニ私ハ茲ニ一言附加イタシタイト思フノデゴザイマス、卽
チ我國ガ此戰爭ニ參加シテ以來御承知ノ如クニ靑島ノ戰役以來我ガ軍事的行
動ハ頗ル廣汎ニ亙ッテ來マシテ、我ガ交通貿易ノ保護ヲ致シマスルト共ニ與國
ノ策戰ニ對シテ常ニ出來得ル限リノ援助ヲ與ヘテ居リマスノデ、從ッテ此臨時
事件ニ關係イタシマスル所ノ經費ノ增大ヲ致シマシタト云フコトハ洵ニ已ム
ヲ得ザル次第デゴザイマス、卽チ本年度ニ於キマシテモ前ニ申上ゲマシタ所
ノ此追加豫算ニアリマス額ト、尙ホ本年度ノ實行豫算ニ計上イタシテアリマ
スル所ノ額トヲ、之ヲ合計計上イタシテ見マスルト、一億四千二百萬圓ノ多
キニ達シテ居リマスル、開戰當初ヨリ本年度ニ亙リマシテ通算ヲ致シテ見マ
スルト三億二千九百餘萬圓ト云フコトニナッテ居ルノデゴザイマス、是等ノ
事件費ヲ支出ヲ致シマシテ、今日ニ至リマシタト云フコトハ、特別ノ財源ノ
收入ノアルモノハ是ハ別ト致シマシテ、大體ニ於キマシテ此戰爭ノ當時ニ於
テ豐富ナル剩餘金ガアリマシタト云フコトト仕合セニモ其以後我ガ收入ノ
狀態、卽チ國庫收入ノ狀態ガ非常ニ良好デアッタト云フコトガアリマシタノ
デ、要シマスルニ主トシテ是等ノモノニ依ッテ此經費ト云フモノヲ支辨スル
ト云フコトニナッテ居リマスノデアリマス、併ナガラ此戰局ノ前途ヲ考ヘマス
ルト、其範圍ノ擴大ハ勿論其繼續スルト云フヤウナコトニ付キマシテモ今日
斷定ガ出來マセヌノデ、何ノ時此戰爭ガ休止スルカト云フコトハ何人モ、是
ハ判定ヲ致シ兼ネル次第デアリマスノデ、臨時事件ニ關係イタシマスル所ノ
經費ハ恐ラクハ益、巨額ニ上ルト云フヤウナ傾ニナリハシナイカト考ヘテ居
リマスヤウナ次第デゴザイマス、ソレデアリマスノデ、將來此戰時財政ノ基
礎ヲ鞏固ナラシムルノ方法ニ付キマシテハ政府ニ於キマシテモ愼重ニ考慮ヲ
盡シテ居ル次第デゴザイマス、併シ此特別議會ニ於キマシテ是等ニ付キマス
ル所ノ計畫ヲ十分ニ立テ得ナイト云フコトハ是ハ皆樣モ御諒知下サルコトト
思ヒマスルガ、免ニ角差向キ此臨時軍事費ト云フモノニ從來ハ豫備費ガゴザ
イマセナンダ、ソレニ今囘ハ豫備費ヲ設ケマシテ、尙ホ是等ノ財源調達ヲ便
利ニ致シマスル爲ニ御承知ノ大正五年法律第四號ニ修正ヲ加ヘマシテ、之ヲ
當期議會ニ提出イタシマシテ、既ニ衆議院デ可決イタシマシテ、今皆樣ノ御
協賛ヲ經ムト致シテ居ル次第デゴザイマス、右ノ外電話擴張ニ關係イタシマ
スル事業ハ特別財源ヲ以テ之ヲ經營スルノ計畫ヲ立テマシテ、本年度ニ於キ
マシテ一般會計歲入支辨ニ屬スベキ既定年割額ノ四百五十萬圓ノ外ニ尙ホ三
百萬圓ヲ追加イタシマシテ、後年度ニ於ケル既定及追加總額九千九百五十萬
圓ト共ニ之ヲ公債又ハ借入金ノ財源ニ依ルト云フコトニ計畫ヲ立テマシタノ
デアリマス、電話ノ停滯イタシテ、一般ノ需要ニ應ズルコトノ出來ヌト云フ
コトノ實況ノアルコトハ、是ハ私カラ申上ゲルマデモナイコトデアラウト思
ヒマス、是等ノ實況ガアリマスルカラシテ、何トカシテ此問題ト云フモノモ
解決シテ置カナケレバナラヌノデアリマシテ、ソレ故ニ斯樣ナ計畫ヲ立テマ
シテ、此計畫ノ遂行ニ依リマシテハ恐ラクハ商工業等ニ於キマシテ有利ナル
影響ヲ生ズルコトト政府ハ信ジテ疑ハナイノデアリマス、尙ホ大正六年度追
加豫算中ニ國債ノ發行ニ關スル所ノ主ナルモノヲ玆ニ申上ゲテ見マスルナラ
バ朝鮮事業費ノ財源ニ充ツベキモノ千三百餘萬圓、臺灣事業費ノ財源ニ充
ツベキモノ二百萬圓、電話交換擴張ニ要スルモノ三百萬圓、帝國鐵道改良費
ノ追加豫算ノ財源ニ充ツベキモノ百餘萬圓、其他大正五年法律第三十四號ニ
依リマシテ、內債ヲ募集シテ、外債ヲ償還スルト云フモノガ一千萬圓、朝鮮
國庫債劵ノ借換額ガ三千萬圓、ソレ等ガ主ナルモノデゴザイマス、以上大體
提出ヲ致シテ居リマスル所ノ追加豫算等ニ對シマシテノ說明ヲ終ッタノデア
リマスルガ、是ヨリ序ヲ以チマシテ私ハ我ガ經濟界ニ關スル所ノ所見ヲ皆樣
ノ御耳ニ達シタイト思フノデゴザイマス、御承知ノ如ク我國經濟界ノ狀態ハ
頗ル良好デゴザイマシテ、時局發生以來、昨年ノ末ニ到リマスルマデノ間ニ
外國貿易輸出超過額竝ニ貿易以外ノ收入超過額合計約八億六千萬圓程ニ上ツ
テ居ルノデゴザイマス、是等ノ好況ハ本年ニ入リマシテモ幸ニシテ繼續イタ
シテ居リマシテ、本年當初ヨリ致シマシテ五月ノ末ニ及ビマスル所ノ外國貿
易上ノ輸出超過額ハ二億三千百餘萬圓ニナッテ居ルノデアリマス、之ヲ前年ノ
同期ノ輸出超過額ニ比較ヲシテ見マスルト、三倍餘ノ增加ヲ致シタト云フ次
第ニナッテ居リマスル、此趨勢ヲ以テ假ニ此經濟界ガ持續イタスト云フコトデ
アリマスレバ本年中ニ輸出超過額及貿易外ノ收入超過額ト云フモノヲ通算
イタシテ見マスルト、約八億圓ノ收入超過トナル見込デゴザイマス、是ハ勿論
見込デゴザイマシテ、斷定ハ出來マセヌガ、多分是位ニハナルダラウト政府
ハ考ヘテ居リマス、サウ致シマスルト、此正貨ノ蓄積ニ依リマシテ、自然內
地ノ資金ニ豐富ヲ來スト云フコトハ勿論ノコトデゴザイマス、此資金ヲ如何
ニシテ利用スルカト云フコトニ付キマシテハ、餘程是ハ愼重ノ考慮ヲ要サヌ
クレバナラヌコトダラウト思フノデゴザイマス、左樣ニシマシテ是等ノ方法
手段ヲ豫メ定メテ置キマスルト云フコトハ今日ノ現狀ニ於テ御承知ノ通リ時
々刻々變リ行ク所ノ此時局ノ現狀ニ於テハ餘程困難ナコトデゴザイマス、併
ナガラ大體ヲ申上ゲマスレバ申スマデモナク財政ノ爕理上竝ニ民間ノ生產事
業ニ必要ナル資金ニ之ヲ利用シ、尙ホ之ヲ海外ニ投資スルト云フコトハ即チ
現下ノ經濟狀態ニ於テハ最モ適切ナル所ノ手段デアルト確信ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、内地生產事業ノ發達ハ御承知ノ通リニ非常ニ好況デゴザリマシ
テ、時局發生以來昨年ノ末マデニ銀行會社等ノ新設又ハ增加ノ計畫資本額ハ
殆ド十四億萬圓ニ上ボッテ居ルノデアリマス、本年一月以降五月ノ末マデノ計
數ヲ見マスルト、十四億三千四萬圓ニ上ボッテ居リマス、昨年ノ同期ニ之ヲ比
較イタシマスルト云フト、是亦倍額以上ニ上ボッテ居ルト云フ狀況デゴザイマ
ス、斯樣ナ狀況デアリマスルガ、尙〓此時運ヲ利用イタシマシテ大ニ產業ノ勃
興スベキモノガアルデアラウト政府ニ於テハ考ヘテ居リマスルノデ、依ッテ確
實ナル生產事業ヲ奬勵イタシマシテ、戰時竝ニ戰後ノ經濟的活躍ニ資スル素
地ヲ作リタイト云フコトヲ考ヘテ居ル次第デアリマス、支那ニ對シマスル投
資ニ付キマシテハ、無論對支金融機關ノ統一整備ト云フコトガ心要デアルト
共ニ、合辦事業ヲ奬勵スルト云フコトハ是亦必要デアリマス、之ヲ要スルニ
利害共通ノ實ヲ擧ゲ兩國經濟的ノ實績ヲ擧ゲルト云フコトガ最モ必要ノコト
ト信ジマシテ、是等ノコトニ付キマシテ、政府ハ愼重ナル注意ヲ拂ッテ居ル次
第デゴザイマス、支那ノ政治借款ニ對シマシテハ、列强ト共同イタシマシテ、
是ガ成立ニ盡力ヲ致シテ居リマスルガ、不幸ニシテ支那ハ今日ノ狀況デアリ
マスノデ、未ダ成立ヲ見マセヌ又經濟借款ニ付キマシテハ旣ニ成立ヲ致シ
マシタモノガ尠カラヌノデアリマスガ、尙ホ玆ニ申上ゲテ置キタイコトハ近
時支那ノ經濟的投資ニ付キマシテ、日米資本家ノ間ノ意思ノ疏通ガ稍〓出來ム
ト致シテ居ルト云フコトハ、是ハ私ガ皆樣ト共ニ非常ニ喜ブ所ノ次第デゴザ
イマス、歐米ニ對シマスル所ノ投資ニ付キマシテハ與國ノ軍需品製造ノ如キ
ハ作戰援助ノ爲ニ極力之ヲ引受クルノ覺悟ヲ要スルコトデアラウト思フノデ
アリマス、サウシマシテ是ガ代金調達ニ關シマシテハ又出來得ル限リ是ニ應
ジテヤルト云フコトガ必要デアラウト思フノデアリマス、加之、先刻申上ゲ
マシタ如クニ我國ノ正貨ノ歐米ニ堆積サレル數ガ益〓多イノデアリマス、之ヲ
我國ニ現送ヲ致スト云フコトハ事實ノ上ニ於テ多大ノ困難アルノミナラズ、
又一面ニ於キマシテハ與國ノ財界ヲ動モスレバ動搖セシムルト云フヤウナ所
ノ憂モアリマスコトデ、此爲替相場ノ如キモノガ今日ノ所御承知ノ通リニ甚
ダ順當ニ往ッテ居リマセヌノデ、卽チ謂ハユル片爲替ノ狀況ニ於テ進ンデ居リ
マスノデ、是等ノ現象ハ我國ノ生產品ノ輸出ヲ阻礙スルト云フ憂慮スベキ所
ノ結果ヲ來スト云フコトハ私ガ申上ゲルマデモナイコトデゴザイマス、是等
ノ狀態ニ鑑ミマシテ歐米ニ對スル所ノ投資モ亦刻下ノ急務ナリト信ジマシ
テ、政府ハ國際金融ヲ調節スル所ノ目的ヲ以チマシテ今囘臨時國庫證劵法律
案ヲ帝國議會ニ提出イタシ、既ニ衆議院ヲ通過イタシマシテ當院ノ御協賛ヲ
仰グヤウナ次第ニナッテ居リマス、我國ノ經濟狀態ハ右申シタ如ク頗ル好調デ
アリマスルガ、反面ガ又アルト云フコトヲ忘レテハナラヌト云フコトハ勿論
デアリマス、卽チ裏面ニ於テハ大ニ省慮警戒スベキ所ノ幾多ノ現象ガアルト
云フコトハ勿論デアリマス、ソレ故ニ是等ノコトニ付キマシテハ政府ハ深甚
ナル注意ヲ拂ッテ居リマス、就中此經濟界ノ好景氣ノ爲ニ一般ガ奢侈ニ流レ、
勤儉ノ美風地ヲ掃ハムトスルノデアリマス、此事柄ト云フモノハ誠ニ憂慮ス
ベキ事柄デアラウト思フノデアリマス、ソレ故ニ一般國民ニ對シテ勤儉貯蓄
ヲ奬勵スルコトニ付テハ有ラユル手段ヲ以テ致サナケレバナラヌノデアリマ
シテ、特ニ彼ノ勞働階級ニ屬シマスル所ノ謂ハユル賃銀收入ノ如キモノハ之
ヲ貯蓄セシメテ置クト云フコトハ今日ノ場合ニ最モ必要ナコトデアラウト考
ヘマスルノデ是等、零碎ノ資金ヲ時局ニ應ズル方法トシテ吸收ヲ致シタイト
云フ考カラ致シマシテ、戰時貯金劵法案ト云フモノヲ帝國議會ニ提出イタシ
マシテ、衆議院ニ於テ本案ハ目下尙ホ審査中デアリマスルガ、他日又皆樣ノ
御考ヲ煩ハスコトト信ズルノデアリマス、曩ニ述ベマシタル如クニ、內ハ生
產事業ノ發展ヲ促進シ、外ハ海外ニ於ケル經濟ノ伸張ヲ圖ルト云フコトヲ致
シマスルノニハ、各種ノ手段方法ガアルト云フコトハ勿論デアリマス、併ナ
ガラ此各種ノ手段方法ノ中デ最モ此金融機關ノ完備ヲ期スルコトガ必要デア
ルト政府ハ考ヘマシテ、既設金融機關ノ機能ヲ發揮セシムルト共ニ、金融上
必要ナル其他ノ施設ニ付テモ愼重ニ考慮ヲ致シテ居ルノデゴザイマス、此中
ニハ既ニ成案ヲ得マシテ、當議會ニ其一部分ヲ提出イタシマシタノデゴザイ
マス、第一ハ旣ニ當院ニ於テ御協賛下サレマシタ所ノ產業組合法ノ改正ニ依
リテ下層金融機關ノ金融ヲ滑ニスル、之ニ關聯シテ日本勸業銀行、或ハ農工
銀行、北海道拓殖銀行、斯樣ナ法案ノ改正ヲ提出イタシマシテ、幸ニシテ旣
ニ皆樣ノ御協賛ヲ經テ衆議院ヘ廻ッテ居ル次第デゴザイマス、又普通ノ工業資
金ヲ滑ナラシムルノ方法ト致シマシテ、其一手段ト致シマシテ、日本興業銀
行法ニ改正ヲ加ヘマシテ、是亦本議會ニ提出イタシテ、衆議院ニ於テ目下審
査中デゴザイマス、船舶金融ニ關シマシテハ申スマデモナク是ハ朝野ノ問題
トナッテ居リマスコトデ、此件モデス、斯ノ如キ時局ニ於テ免ニ角解決ヲ致シ
テ置クト云フコトガ必要ト認メマシテ、政府ハ日本興業銀行ヲシテ此業務ヲ
兼營セシムルト云フコトガ最モ必要ナリト致シマシテ其法案ヲ帝國議會ニ提
出イタシマシテ、是亦衆議院ニ於テ目下審査中デゴザイマス、移民ノ金融ト
云フコトニ付キマシテモ亦多年ノ是ハ問題デゴザイマスルノデ、何ノ時カ矢
張リ之ヲ解決イタサネバナラヌノデゴザイマスガ、今日ノ如キ時局ニ際シマ
シント。我國ノ移民ノ發展ヲ圖ルト云フコトハ是ハ最モ必要ナルコトデアラウ
ト考ヘマスノデ、付キマシテハ是等ノ金融ヲ如何ニスルカト云フコトニ付テ
モ熟慮イタシマシタ結果、政府ハ移民事業ニ多年經驗ヲ有シマスル所ノ東洋
拓殖會社ヲシテ移民會社ノ社債ヲ引受ケシメ、又ハ移民會社ヲシテ代理貸付
ヲナサシムル等ノ途ヲ開イテ、此移民金融ノ一端ヲ補ヒタイト云フコトヲ以
チマシテ是等ノ法案ヲ提出イタシマシテゴザイマス、滿蒙ニ對シマスル金融
ニ付キマシテハ、是亦多年ノ問題デアリマシテ、殊ニ此時局ニ際シマシテ解
決ヲ急グノ必要ガアルノデアリマスル、御承知ノ如クニ滿蒙ニ於キマシテハ
普通ノ金融ト致シマシテハ我ガ正金銀行或ハ朝鮮銀行、其他ノ普通銀行ガア
リマシテ、是ハ先ヅ大體ニ於テ不足スル所ハアリマセヌ、併ナガラ長期固定
ノ事業資金ノ供給ト云フコトニナリマスト、是ハ今日正金銀行ガヤッテ居リマ
ス所ノ謂ハユル特別ノ貸付ノ方法ヲ以チマシテハ其目的ヲ達スルニ不十分ナ
リト認メマシテ、政府ハ東洋拓殖會社法ヲ改正イタシテ、同會社ヲシテ滿蒙
ニ於ケル所ノ、謂ハユル長期ノ金融ヲ致サシムル機關ニ致シタイト云フ方針
ヲ執リマシタ、斯樣ニ致シマシタ所以ハ是ハ又特別ノ法案ノ時ニ說明ヲ致シ
タイト思ヒマス、卽チ此案モ本議會ニ提出ヲ致シテアル次第デアリマス、右
ノ外對支金融ニ付キマシテハ政府ハ將來日支合辨銀行ノ設立ヲ期シテ居リマ
スル、併ナガラ今日ノ所ハ遺憾ナガラ未ダ其時機ガ熟シマセヌ、ト申シマシ
テ之ヲ等閑ニ附スル譯ニ參リマセヌノデ、先ヅ當面ノ措置ト致シマシテ政府
ハ特殊ノ旣設機關ト云フモノヲ十分利用イタシマシテ、竝ニ普通銀行ノ支那
ニ向ッテ發展ヲ助長スルト云フ方針ヲ執ッテ居リマス、日露ノ金融ニ付キマシ
テモ是亦此時局ノ上ヨリ致シマシテ大ニ考慮ヲ致ザナケレバナラヌ事柄デゴ
ザイマシテ、即チ此時局ノ結果ニ依ル所ノ經濟的關係ヲシテ、將來益〓密接ナ
ラシメ、尙ホ兩國間ノ親善ヲ厚ウスルト云フコトハ即チ斯樣ナル機關ノ發達
ヲ必要ト致シマスルニ依リマシテ、日露金融ノ問題ニ付キマシテ特ニ政府ハ
橫濱正金銀行或ハ朝鮮銀行ノ如キモノヲ利用イタシマシテ其圓滑ヲ圖ルト共
ニ日露合辦銀行ノ設立ト云フコトニ付キマシテモ、大ニ講究注意ヲ拂ッテ居ル
次第デゴザイマス、以上ハ政府ノ財政經濟等ニ關係イタシマスル施設ノ一班
ニ過ギヌノデアリマス、尙ホ講究ヲ致サヌナラヌ所ノ要件ノ多イト云フコト
ハ勿論デアリマシテ、殊ニ金融機關ノミニ付テ申上ゲマシテモ、廣ク海外貿
易ノ助長ニ關スル金融ノ方法ヲ改善イタシマストカ、或ハ中央銀行ノ基礎ヲ
一層鞏固ニ致シマスルト共ニ、一般金融界トノ聯絡ヲ益〓密密ナラシムルト云
フ必要ノアルコトモ、是亦申スマデモナイコトデゴザイマシテ、是等ノ問題
ニ付キマシテ政府ハ銳意〓究イタシテ居リマシテ、以テ帝國ノ戰時、戰後ニ
於ケル財政竝ニ經濟ノ發展ニ對應セシムル素地ヲ作リタイト考ヘテ居リマス
ル次第デゴザイマス、以上經濟關係ノコトヲ大體申上ゲマシタガ、終ニ臨ミ
マシテ私ハ諸君ガ愼重審議ノ上協賛ヲ與ヘラレムコトヲ切ニ希望イタシテ
置キマス
〔男爵尾崎三良君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=7
-
008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 石黑男爵
〔男爵尾崎三良君「大藏大臣ニ」ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議長ハ石黑男爵ヲ呼ビマシタ
〔男爵石黑忠悳君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=9
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010・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 現內閣ガ言論ニ重キヲ置カズシテ實務實行ニ重キヲ置カ
ルルコトハ我〓之ヲ耳ニ致シテ居リマス、又之ヲ信ジテ居リマス、而シテ現
政府ガ此故ヲ以テ諸般ノ調査ニ力ヲ盡サルル其大ナルモノニ至ッテハ外交調
査會ト云フモノマデモ置カレテ、總テノコトヲ調査サレテ、サウシテ大政ヲ
變理サレ百年ノ長計ヲ立テラレルト云フコトハ頗ル我〓ヲシテ意ヲ强ウセシ
メテ居ルノデアリマス、併シ何事ニ依ラズ、調査ヲスルト云フコトハ數ニ基
カヌモノハ殆ドナイヤウニ考ヘマス、數ニ基クト致シマスト統計ニ依ラザル
ハナイト存ジマス、統計ニ依ラザルナシト致シマスト國勢調査ニ依ラザルハ
ナイト殆ド申シテ宜カラウト存ジマス、然ルニ我ガ帝國、此國勢調査ト云フ
コトヲ行ヒマシタノハ臺灣ノ外ニゴザイマセヌヤウニ私ハ存ジテ居リマス、
現内務大臣ノ後藤男爵ハ嘗テ臺灣ニ在ラレマスルヤ、施政ノ最初ニ於キマシ
テ此國勢調査ヲ施行サレテ、從ッテ又政ヲ爲スノニ基ク所ガアルト云フ所ノ合
名ヲ博サレテ、又此事ニ付テハ學曾ニ向ッテモ誇トサレテ居ル所デアリマス、
今ヤ寺內總理大臣ノ不言實行、專ラ調査ニ〓心ナル、又後藤内務大臣ノ嘗テ
臺灣ニ於テ國勢調査ヲサレテ、サウシテ實益ヲ收メラレテ居ル所ノ實驗アリ
此二ツニ依リマシテモ此內閣デハ世人ハ、殊ニ識者階級ニ於キマシテハ、此
內閣ニ於テコソ此重要ナル多年ノ問題タル國勢調査ヲ速ニ實行サルヽコトト
期待シテ居ルノデゴザイマス、然ルニ今度ハ大正六年ノ豫算ヲ見マスルニ、
此國勢調査ニ付テハ何モ費目ガ擧ッテ居リマセヌ、然ラバ此次ノ年ニ於キマシ
テモ政府ハ此國勢調査ヲ施行サレマス意ノナイモノト存ジマス、抑〓此國勢調
査ニ付キマシテハ滿場ノ諸君ガ御承知ノ通リニ明治三十三年ノ貴族院ニ於テ
モ衆議院ニ於テモ國勢調査施行ニ關スル建議ヲ可決イタシマシテ、サウシテ
政府ニ送ッテ居リマス、同ジク三十五年ノ二月ニハ衆議院ニ於テ國勢調査ニ關
スル法律案ヲ決議サレテ、貴族院ニ〓サレテ、本院ニ於テモ審議ノ上之ヲ可
決イタシテ裁可ヲ奏請イタシマシタ、サウシテ同年ノ十二月一日ニ法律第四
十九號ヲ以テ國勢調査ニ關スル法律ハ公布サレテ居リマスル、サウシテ其第
三條ニハ第一囘國勢調査ハ明治三十八年ニ於テ施行スルト云フコトガ規定サ
レテアリマス、然ルニ政府ハ財政上ノ都合ト戰役後ノ人口職業等ノ常態ニ未
ダ復シマセヌト云フコトヲ以チマシテ、明治三十八年ニハ施行シ難イト云フ
譯デ、明治三十七年十二月ニ於テ國勢調査施行ノ延期ニ關スル法律案ヲ提出
サレテ、サウシテ此法律ノ第三條デ「第一囘國勢調査ヲ行フヘキ時期ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム」トアリマス改正案ヲ提出サレテ、貴衆兩院ニ於テ隨分ヤカ
マシイ議論ガアリマシタガ、政府ノ言ハレル事情巳ムヲ得ヌト云フコトデ、
遂ニ是ガ通過ヲ致シマシテ發布サレテアリマスノデアリマス、其後國勢調査
施行ノコトニ關シマシテハ明治四十三年ノ五月ニ國勢調査準備委員會ト云フ
モノヲ置カレマシテ、本員ナドモ其一人ニ加ッテ居リマシタガ、準備事項ヲ調
査サレテ、ソレデ翌年、四十四年ノ一月ニ於テ此委員會ヨリ致シマシテ國勢
調査ニ關シマス勅令案、閣令案、此中ニハ調査申告書ダトカ、調査申〓書記
入心得トカ、委員心得トカ、町村長心得ト云フヤウナコトマデモ案ヲ具シマ
シテ、サウシテ差出シマシテ、其中ニハ明治四十八年ニ於テ第一囘調査ヲ施
行スルト云フコトヲ其中ニ書加ヘマシテ副申イタシマシテゴザイマス、爾後
每年此國勢調査ニ付キマシテハ政府ニ、或ハ豫算會等ニ於キマシテモ促シ、
促サザルコト殆ドナシト云フヤウニ致シテ居リマシタガ、今ニ一囘モ國勢調
査ヲ實施セラルルト云フコトハアリマセヌノデアリマス、ソレデ既ニ此國勢
調查ニ關シマス法律ガ發布サレマシテ當年デ十五年ニナリマス、偖此行政百
般ノ調査ヲ如何ニ精密ニナサイマシテモ、根本タルベキ國勢調査ガ出來テ居
リマセヌケレバ、精密トハ言ヘマスカ知レマセヌガ、精確ナモノトハ言ヘマ
スマイト私ハ考ヘル、恰モ砂上ニ樓閣ヲ築クヤウナモノデアラウト思ヒマス、
今ヤ政府ガ財政ノ好況ナリ又國內ニ騒ガシイコトノナイ靜平ノ時デ、復遭遇
スベカラザル好機ニ際會シテ居リマスシ、又前途ヲ通觀イタシマスニ食物ノ
供給ナリ貿易ノ發展ナリ、百般ノコト國ヲ堅ウシ國ヲ保チマスコトヲ基定イ
タシマスニ一日モ忽セニスベカラザルモノハ此國勢調査デアラウト思ヒマ
ス幸ニ大正九年ハ歐羅巴諸國ノ中ト亞米利加等ニ於キマシテ國勢調査ヲ致
シマス年ニ當ッテ居リマスカラ、本邦ニ於テ萬國ノ國勢調査ト年期ヲ同ジウシ
テ、步調ヲ同ジクシテ參ラウト云フニハ頗ル宜シイ年デアリマス此大正九
年ニ於テ國勢調査ヲスルニハ最早準備ニ著手イタシマセヌケレバ迚モ間ニ合
ヒマスマイト本員ハ考ヘマス、斯ノ如ク重要ナルモノヲ政府ハ豫算ニ御計上
ニナリマセヌノハ是ハ要ラヌト云フ御見込デアリマセウカ、是ハ果シテ我〓
ノ信ズル如ク國勢調査ナルモノハ必要ナルモノト云フ思召デアラウカ、何時
御著手ニナルカト云フコトヲ質問イタシマス
〔國務大臣伯爵寺內正毅君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=10
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011・寺内正毅
○國務大臣(伯爵寺内正毅君) 唯今石黑男爵ヨリ國勢調査ニ著手スルヤ如何
ト云フ御質問デゴザイマス、此國勢調査ノ必要ナルコトハ何人ニモ能ク分ッテ
居ルコトデアリマス、政府トシマシテハ長イ間ノ懸案デゴザイマスカラ、成
ルベク近イ機會ニ於テ之ヲ片付ケタイト考ヘテ居リマス、目下關係ノ官衙ニ
於テ協議中デゴザイマス、若シ財政其他ニ於テ差支ガナケレバ此冬ノ議會ニ
何等カノ成案ヲ諸君ノ前ニ提出スルコトガ出來ルデアラウカト考ヘテ居リマ
ス、此段御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=11
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012・尾崎三良
○男爵尾崎三良君 私ハ大藏大臣ニ質問ガアリマスノデアリマスガ、極ク單
簡ナコトデアリマスカラ、此席カラ質問イタシテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御登壇ニ相成ッタ方ガ宜カラウト考ヘマス
〔男爵尾崎三良君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=13
-
014・尾崎三良
○男爵尾崎三良君 是ハ大藏大臣、當局者ニ質問イタスノデアリマスガ、併ナ
ガラ事柄ハ內閣ノ方針如何ト云フコトニ必ズ亙ルデゴザイマセウガ、唯今大
藏大臣カラ段々述ベラレマシタ所ノ本年ノ追加豫算案ハ種々アリマシタガ、
其追加豫算ニ付テハ私ハ格別何モ議論ハアリマセヌ、其中ニ電話急設ノ御話
モアリマシタガ、是ハモウ私ハ全然贊成ヲ致シテ居ルノデアリマス、其大藏
大臣ガ一般經濟ノコトニ付テ、且ツ將來ソレニ付テ、財政方針等ノコトニ付
テ縷々述ベラレマシタ、其中ニ澤山ノ箇條ガアリマシタガ一々ハ覺エマセヌ、
詰リ將來ノコトニ關係スルコトデアッテ、其具體的ノモノヲ見ザレバ贊否ヲ決
スルコトハ出來ヌノデアリマス、其中ニハ大藏大臣カラ其御話ハナカッタト思
ヒマスケレドモ、衆議院ナドデハ時々話ガ出マシテ、既ニ豫算會ナドデ大藏
大臣ガ御言明ニナッタコトヲ速記錄ニモ見マスデゴザイマスケレドモ、其點ハ
戰時利得稅ト申シマスカ、戰時稅ト云ヒマスカ、此戰時ニ付テ殊更ニ利益ヲ
得タ者カラ稅ヲ取ルト云フ、是ハ現今戰鬪國ニ於テハソレ〓〓ヤッテ居ルト
云フコトデアリマスガ、既ニ大藏省ニ於テハソレヲ御取調べニナッテ居ルト
云フコトデアリマシテ、先達テノ衆議院ノ豫算會議ノ御話デモ、當議會ニモ
出シタカッタガ、何分是ガ大業ノモノデアルカラ急ニ間ニ合ハヌ、必ズ次ノ議
會ニハ出ス積リデアルト云フコトヲ速記錄デ見マシタガ、是ハ我〓ガ豫テ思
ウテ居ルコトデアリマスカラ成ルベク速ニ出サレムコトヲ希望スルノデアリ
マス併ナガラ今日ハ幾ラ言ッテモ迚モ今日ノ間ニ合ハヌデゴザイマセウガ、
將來ハ必ズ提案サレルコトト考ヘマスガ、ソレニ付テ大抵モウ方法モ御取調
ベニナッテ居ラウト考ヘマスガ、ドレ位ノ所得ガアル積リデアリマセウカ、其
邊ノ御腹案ヲ伺ヘレバ伺ヒタイ、ソレカラ英國佛國伊國ナドモ皆ヤッテ居ル
サウデアリマスガ、是ハ旣ニモウ今日引續イテヤッテ居ルコトデアリマスガ、
是等ハ實際ハドレ位ノ實際所得ガアッタカト云フコトハ御取調ベニナッテ居リ
マスカ、ドウゾソレヲ大體ノ數デ宜シウゴザイマスカラ大體ヲ伺ヒタイノデ
アリマス、是ダケノコトヲ伺ヒタイ爲ニ質問ヲ致シタノデアリマス
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=14
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015・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 唯今尾崎男爵ヨリノ御尋デアリマスガ、戰時利得
稅ノコトニ付キマシテハ、大藏省ニ於キマシテモ略調査ヲ致シテ居リマス
ルノデ、ソレガドノ位ナ略、金額ガ取レルカト云フコトハ、是ハ實ハ餘ホドノ
問題デゴザイマシテ、ト申スノハ、此稅ノ取レル根據トナル所ノ所得ノ計算
方、或ハ之ニ對スル所ノ何割掛ケルカト云フ其取レル割合ノ步合デゴザイマ
ス、是等ハ餘ホド考慮ヲ要スベキ點デゴザイマシテ、此割ヲ掛ケレバ隨分餘
計取レルコトモアル、併ナガラ今日ノ狀態トシテハ、サウ云フ多額ナ割ヲ掛
ケル譯ニハイカヌカラ、是ホドデ止メタラ宜カラウト云フコトニナレバ、ソ
レヨリ一段少クナルト云フコトデアリマシテ、チヨット玆ニ具體的ニドレダケ
取レルト云フコトヲ申上ゲ兼ネルノデアリマスガ、要シマスルニ政府當局ノ
見マスル所デハ、此時局ガ將來如何ニ進ムカハ知レマセヌガ、兔ニ角今日ノ
此狀態ニ於テハ歐米ニ於テ取ッテ居リマス所ノ率、手段方法ヲ以テ其戰時利得
稅ヲ我邦ニ適用スルト云フコトハ、餘ホド困難ナコトデアラウト思ヒマス、
モウ少シ我邦ガ愈〓深ク此戰鬪ニ這入ッテ來ルト云フヤウナコトガアリマスレ
バ別論デアリマスルガ、今日ノ狀態トシテハ左樣ナ無理ナコトハ出來ナイト
存ジテ居リマスノデ、大體ノ調ハ致シテ居リマスガ、免ニ角玆ニドレダケ取
ルト云フコトヲ明言イタスコトハ甚ダ實ハ苦シイ次第デゴザイマスノデ、左
樣ニドウカ御承知ヲ願ヒマス、ソレカラ歐米各國ニ於テ如何ナル方法デ、如
何ナル取得ヲ取ッテ居ルカト云フコトハ、是ハ皆調査イタシタ細カイモノモゴ
ザイマスカラ、私ガ申上ゲマスルヨリカ却ッテ參考書等ト致シテ皆サンニ差上
ゲタ方ガ宜カラウト思ヒマスカラ、ドウカ左樣御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=15
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016・尾崎三良
○男爵尾崎三良君 大藏大臣ノ御說明デ大半分リマシタ、定メテ今ドレダケ
ト云フ御見込ガアッテモ御明言ヲナサルコトハムヅカシイデアリマセウカラ、
ソレハ强ヒテ申シマセヌガ、唯〓御話ニナリマシタ歐米各國デヤッテ居ル方
法竝ニ其所得ノ高ハ御取調ニナッテ居ルサウデアリマスカラ、ドウカソレヲ速
ニ御〓シニナルコトヲ希望イタシマス
〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=16
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017・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 諸君、本員ヲシテ若シ豫算委員タラシメバ、今日此演壇
ニ登ルコトハ避ケルノデアリマス、併ナガラ私ノ質問ハ此時機ニアラザレバ
出ス時機ガゴザイマセヌト考ヘマシタノデ、已ムヲ得ズ玆ニ臨ンダ譯デアリ
マス、事ハ各省ニ亙リマスノデ、或ハ諸君ノ御目カラ見タラ細カイコトデア
ルト云フ御考モゴザイマセウ、又餘リニ此場合ニ於テ申上ゲルコトハ如何デ
アルカト云フ御考ノ方モアラウト考ヘテ居リマス、併ナガラ其邊ハ何卒御同
情ヲ以テ暫時御〓聽ヲ願ヒタイノデアリマス、私ノ質問ノ一二ハ既ニ石黑男
爵竝ニ尾崎男爵ニ依ッテ開陳セラレマシタカラ、私ハ其事ハ玆ニ避ケマスノデ
アリマス、唯私ハ第一ニ政府ニ伺ヒタイノハ、矢張リ統計ニ關スルコトガ一
ツデアリマス、國勢調査ノコトハ申シマセヌ、大正五年五月十日ニ於キマシ
テ前內閣ハ內閣訓令一號ヲ出シタノデアリマス、是ハ統計ノ奬勵ニ關スル所
ノ訓示デアリマシテ、今迄曾テ見ザル所ノ訓令デゴザイマシタ、併ナガラ前
內閣ハ此訓示ヲ出シタニ拘ラズ、單ニ壯大ナル言ヒ觸ラシヲシタ位デアリマ
シテ、其事實ヲ更ニ見ナイノデアリマス、私ハ暫クノ間勘辨ヲ致シテ樣子ヲ
見テ居リマシタケレドモ、其影響ハ多少地方ニ及ンダヤウニ存ジテ居リマス、
地方廳ニ於テハ多少此訓示ニ基キマシテ形式的ニソレ〓〓統計事業改良ヲシ
タカニ考ヘテ居リマス、併ナガラソレガ果シテ此內閣ノ訓令ニ對シマシテド
ノ位ナ效果ガアッタカ否ヤハ私ドモ今日尙ホ疑フノデアリマス、現內閣ハ此
大正五年五月十日ノ訓令ニ對シテ如何ナル御考ヲ有ッテ居ラルルノデゴザイ
マスカ、單ニ國勢調査ノ實行ニ付キマシテハ、唯今總理大臣ガ言明サレタ如
〃、或ハ近キ將來ニ於テ何カ形ニ於テ現ハレルコトト確信シテ居リマスケレ
ドモ、此訓令ニ依ル所ノ一般ノ統計事業ニ對シテハ如何ナモノデアリマスカ、
單ニ國勢調査ノミヲ以テ滿足セラルルノデアリマスカ、將又一般統計事業ノ
奬勵ニ對シテハ矢張リ前內閣ノ訓令ヲ尊重セラレテ居ラレマスカ、或ハ訓令
同樣ノ意見ヲ持タレマシテ、單ニ大言壯語ニアラズシテ、實質的ニ何カノ事
實デ現ハルルコトニナルノデアリマセウカ、私ハ之ニ付テ如何ナル御抱負ガ
アルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、ソレカラ次ニ申シマスノハ、是
ハ敢テ內閣總理大臣ニ伺フノデアリマセヌ、ドナタデモ宜イノデアリマス、
少シ細カイコトデアリマス、此度ノ豫算ノ第四號ノ歲出臨時部、臨時〓育調
査會議諸費ト云フモノヲ計上シテ居ル、二萬圓、僅デアル、是ハ內閣ニ屬ス
ルコトト心得テ居リマスガ、是ハ如何ナモノデアリマスカ之ヲ一ツ伺ヒタ
イノデアリマス、尙ホ大藏省ノ所管歲出臨時部ニ於キマシテ、海外駐筍財務
官增置ニ關スル經費ガ計上シテゴザイマス、今日デハ諸君御承知ノ如ク英國
ニ於キマシテハ財務官ガ駐在サレマシテ、是ハ英國ト佛國トヲ兼ネテ居ル狀
態デアリマス、此度ノ增置ニ依リマスト、支那ト露國ト米國ニ海外駐在財務
官ヲ置クノデアリマス、其經費ハ僅ニ月平均デ一萬四千五百圓位デアリマス、
卽チ九箇月デ十三萬ナニガシデアリマスカラ、此三箇國ノ財務官ニ對シマシ
テ僅カ月平均一萬四千五百圓ト云フノハ甚ダ輕少ナル計上ト思ハレマス、英
國アタリノ海外財務官ノ費用ハ殆ド之ニ向ッテハ餘ホドノ違ヒデアリマシテ、
慥ニ月一萬圓カ二萬圓位デアリマシテ、餘リ此度ノ御支出ガ縮少ノ意味ヲ以
テノ財務官ノ增費デアリマスカラ、是ハ果シテ是ダケデ所要ノ效能ガアルコ
トデゴザイマスカ、當局者ノ期待セラルル所ノ有力ナモノデアリマセウカ、
私ハ疑フノデアリマス、之ニ付キマシテ御答辯ヲ得タイノデアリマス、陸軍
省ノ方ニ付テ私ハ伺ヒタイ、陸軍省ノ方ニ航空隊設備費ノ追加ガ出テ居リマ
ス、是ハ總額ガ百三十二萬餘圓デアリマシテ、是ハ既定ノ繼續費ノ追加、大
正六年度以後六箇年ノ繼續費デ、今囘出テ居ルノハ十八萬餘圓デアリマス
諸君御承知ノ如ク我邦ノ航空術ノ最モ幼稚ナルコトハ夙ニ私ハ遺憾トシテ居
ル所デアリマス、風ガ吹ケバ忽ニ破壞シ、忽ニ人ヲ失フト云フ今日ノ最モ幼
稚ナル所ノ狀態ニ於テ當局者ハ無論御滿足デハナイト考ヘテ居リマス、然ル
ニ斯ノ如キ所ノ設備ヲ追〓設ケラレマシテ、段々ト奬勵セラルルコトト思ヒ
マスルガ、之ヲ完成シマシタ曉ニ於テハ果シテ彼ノ外國ニ於ケル所ノ航空術
竝ニ飛行者ノ技術ニ劣ラザルダケノ御確信ガアルヤ否ヤ、之ヲ以テ六年後ニ
至ッテ矢張リ向ウノ六年後ト同ジ狀態ニ進ムカ否ヤト云フコトヲ甚ダ懸念シ
テ居ルノデアリマスカラ、之ニ對シテ何卒滿足スルダケノ御答辯ヲ得タイノ
デアリマス、ソレカラ司法省所管ニ付キマシテ裁判所ノ費用ガ四十四萬ナニ
ガシデアリマス、是ハ御承知ノ如クニ大正二年行政整理ノ爲ニ地方裁判所支
部ノ權限ヲ縮小サレマシタ、所ガ既ニ縮小サレマシタケレドモ、地方民ハ非
常ニ不便ヲ感ジ各種ノ請願トナリ、復舊ノ陳情トナッテ、遂ニ當局者ハ其中デ
ノ最モ急ナルモノニ二十六箇所ノ權限ヲ擴張イタシマシテ、此度ノ御提案デ
アリマス、尙ホ大正二年法律第八號ヲ以テ百二十八箇所ノ區裁判所ヲ廢サレ
タノデアリマス、是モ行政整理ノ結果デアリマスガ、是モ矢張リ不便ヲ感ズ
ルト云フ不平ガ起ッタ爲ニ今般此復活ヲスルノデアリマス、是ハ本年度ハ最モ
急ヲ要スル四十六箇所ト、之ニ關スル監獄十五箇所ヲ設置スルト云フコトデ
アリマス、之ニ付テ私ハ伺ヒタイノデアリマス、當時ノ議會ニ於テ松田司法
大臣ト考ヘテ居リマスガ、此案ヲ出サレタ時ニ議員ノ有志ノ方ハ甚ダ危ブマ
レマシタ、是ハ行政整理ハ已ムヲ得ヌカモ知レヌケレドモ、單ニ行政整理ト
云フ聲ニ應ズルダケデ、實際入用デアルモノモ要ラヌヤウニ考ヘテ形式的ニ
廢止シテ、如何ニモ行政整理ノヤウニ見エルケレドモ是ハ又數年ナラズシ
テ復活ノコトガ起リハシナイカ、ソレナラバ考ヘタガ宜カラウト云フヤウニ
私共ハ記憶シテ居リマス、今日果シテ其言僞リナラズシテ斯樣ナ復活トナッタ
ノデアリマス、シテ見レバ段々年ガ經チマシタナラバ矢張リ行政整理前ノ狀
態ニ反ルノミナラズ、ソレ以上增設ノコトガアリハシナイカ、甚ダ行政整理
ノ結果トシテ一時喝釆ヲ博シタカ知ラヌケレドモ、事實不便ナモノハ今日再
興ヲ見ルヤウナ狀態デアリマス、此狀態ヲ以テ進ムナラバ又幾クナラズシテ
是以上地方裁判所支部ノ權限ヲ擴張セラレルコトガアリマセウカ、又區裁判
所ノ增置ヲ見ルノデアリマセウカ、將來ドウデアルカト云フコトヲ伺ヒタイ、
ソレカラ農商務省ノ所管ニ付テ、歲出臨時部ニ產業奬勵費二十萬餘圓ヲ計上
セラレテ居リマス、此中ニ副業奬勵ニ關スル經費ガ二萬二千若干計上セラレ
テ居リマス、私ハ農商務大臣ニ伺ヒタイノハ、殊ニ農商務大臣ニ於カレマシ
テハ嘗テ遞信次官デアラレタ時分ニ統計ノ必要ヲ最モ唱導セラレマシテ、斯
ノ如キ地味ナルコトハ誠ニ世間ノ同情ヲ引カヌモノデハアルケレドモ、實際
是ハ必要ナモノデアルト云フコトヲ私ハ築地精養軒ニ於テ次官トシテノ言ヲ
承ハリ今日尙ホ記憶ニ存シテ居ルノデアリマス、然ルニ此副業奬勵ニ關ス
ル經費ヲ御出シニナッテ居リマスガ、全國ノ職業狀態ヲ果シテ御存ジデアル
カ、人民ノ職業狀態ハドウナッテ居ルカ、本業ノ住民ハ何人居ルノデアルカ、
副業ヲヤッテ居ル者ハ何人アルカ、所謂職業統計ニ付テ十分ナル御材料ガアッ
テ後ニ副業ヲ奬勵スベキモノトシテ御出シニナッタノデアリマスルカ、私ハ甚
ダ之ニ付テ疑フノデアリマス、政府ニ於キマスル所ノ各種ノ統計ノ中農商務
省ノ統計程甚ダ杜撰ナモノハナイ、農商務統計ハ實ニ杜撰ナモノデアリマス、
歷代ノ農商務大臣ハ賢明ナル、我〓ノ尊崇スベキ方ガ出ラレテ居ルニ拘ラズ、
農商務統計ノ改善ヲ計ラレタ者ハナイノデアリマス、而シテ行政整理ノ場合
ニ於キマシテ僅カナ費用ノ農商務省ノ統計官ヲ削ラレ、又〓縮小サレルヤウ
ナ場合デアリマス、實ニ今日ハ微々タルモノデアリマス、然ルニ其農商務統
計ニ載セル所ノ事項ハ多々アリマシテ、殊ニ今日產業奬勵ニ對シテ臨時產業
調査局等ヲ御設置ニナル必要ナル材料ガ都テ要ルノデアリマス、其數字ハ農
商務統計ト云フ本ニ出テ居リマスケレドモ、是ハ矢張リ私ノ謂フ僞的統計···
····僞リノ統計デアリマス、例ヘバ牛馬羊豚ノ如キモノニ至ッテハ年末ノ現在
數ト、其年末ノ現在數ヨリ次ノ年ニ於ケル所ノ異動ヲ引イタモノト兩方出テ
居ルニ拘ラズ、年末ノ現在數ナルモノハ每年二樣ノ數ニ出テ居ルノデアリマ
ス、是ハ表ヲ御覽ニナレバ解ルノデアリマス、馬政局ニ於ケル馬ノ數ト較ベ
テモ違ッテ居ル、是ハ牛馬羊豚ノ類デアリマスガ、實ニ杜撰極ッテ居ル所ノ農
商務統計ヲ持タレル農商務省ガ此度產業奬勵ノ爲ニ副業ヲ奬勵サレルト云フ
コトデアリマスガ、果シテ正確ノ材料ヲ持タナイ所ノ農商務省ガ斯樣ナル所
ノ奬勵ヲナスッテモ是ガ有用ナモノデアルカ是ハ甚ダ經費ハ少イノデアリマ
スケレドモ、其效果ヲ疑フノデアリマス、デ之ニ付テ御答辯ヲ得タイト考ヘ
テ居リマス、最後ニ私ハ一般ノ質問トシテ伺ヒタイノハ大正四年六月九日ニ
本院ハ道得維持ニ關スル建議案ヲ可決シタノデアリマス、是ハ全會一致デアッ
タカドウカハ私ハ記憶イタシマセヌガ、要スルニ大多數ノ御贊同ヲ得クノデ
アリマス、現內閣ニ居ラレル所ノ議員ノ方モ當時ノ御賛成者ト私ハ考ヘテ居
リマス、是ハドウ云フ必要ガアッテ建議案ヲ可決セラレタカ、私ハ玆ニ諸君ニ
向ッテ當時ノ建議案ノ內容ヲ說明スルダケノ時間ヲ有チマセヌ、又說明イタ
ス必要ハナイト考ヘマス、其當時ノ建議案ノ出タ趣旨ヲ御覽ニナリマシタ所
ノ現內閣ハ、果シテ此建議ノ趣意ニ對シテ現今如何ニ御考ヘニナリマスルノ
デアリマスカ、或ハ私ハ此建議案ノ内容ニ付テ御考ニナッタナラバ、多少我〓
ノ面前ニ於テ陳謝スベキコトガアリハシナイカト云フコトヲ考ヘテ居リマ
ス、私ハ是レ以上內容ニ向ッテ說明スルコトハ必要デナイト考ヘマス、私ハ相
當ノ根據アル所ノ材料ヲ以テ申スノデアリマス、若シ諸君ニ於テ何デアルカ、
何事ヲ云フノデアルカト云フ方ガアリマスレバ多少事實ヲ申シマシテモ差支
ハゴザイマセヌガ、私ハ是ハ申サヌデモ多分御了解ニナルコトト考ヘマス、
又內閣諸公ニ於テモ私ノ意ノ在ル所ハ御存ジト考ヘテ居リマス、之ニ付テ當
局者ハ此建議案ヲ如何ニ考ヘテ居ラレルカト云フコトヲ私ハ伺ヒタイノデア
リマス
〔國務大臣大島健一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=17
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018・大島健一
○國務大臣(大島健一君) 柳澤伯ノ御質問ノ中ニ航空大隊增設ニ關スル件ガ
ゴザイマシタ、御尋ノ順序デハ途中デゴザイマシタガ先ヅ是カラ御答イタシ
マス、柳澤伯ノ御覽ニナッテ居ルガ如ク目今歐洲戰場ニ於ケル航空機ノ進步ハ
刮目シテ見ルベキモノガアリマス、我軍ニ於ケル航空機モ是非少クモ之ニ匹
敵シ得ル程度ニ進マナケレバナリマセヌノデ折角其經營ハ致シテ居リマス、
玆ニ出シマシタ航空大隊ハ操縱將校ノ〓育、〓育サレタル操縱將校ノ復習等
ヲ致スノガ主デアリマス、漸次之ヲ增員イタシマシテ、數倍ノモノニ致シテ、
軍ノ飛行機隊トシテ屬スルノデアリマス、第一大隊ハ御承知ノ如ク一昨年來
增設イタシマシタ、今囘ノハ第二ノ大隊デゴザイマス、二ノ地方ニ設ケル積リ
デアリマス、唯〓我軍ノ航空事業ハ漸次整備ノ〓ニ就キツツアル狀況デゴザ
イマス、是デマダ完成スルモノデハゴザイマセヌ、順次步ヲ進メテ參ルノデ
ゴザイマス、航空機ノ〓究進步ノ構造等ノコトハ飛行機〓究會デ致シテ居ル、
尙ホソレノ愈〓實地ニ應用シ得ルヤ否ヤト云フ如キ、乘リ試ミル等ノコトハ
飛行機〓究會デ致シテ居リマシテ、此隊ノ方デハ全ク其成ッタモノニ依リマ
シテ〓育復習ヲ致シテ行ク積リデゴザイマス、前申ス、唯今ノ處デハ〓究會
ノ〓究改良構造等ニ依リマシテ、ソレニ依ッテ此隊ノ〓育ヲ進メ復習ヲ致シテ
行クノデゴザイマス、之ヲ以テ御答ト致シマス
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=18
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019・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 唯〓大藏省所管ノ財務官ニ關係イタシマス所ノ御
尋ガゴザイマシタ、是ハ旣ニ御話ニモナリマシタ如クニ現今露西亞ト紐育ニ
ハ實際人ガ出テ居リマス、申スマデモナク露西亞ハ旣ニ我國ガ一億三千五百
萬圓カラノ債權ヲ持ッテ居ル、非常ニ經濟狀態ヲ〓究スル必要ガゴザイマスノ
デ人ヲ出シテ居リマス、ソレカラ紐育ノ方モ御承知ノ通リノ金融狀態デゴザ
イマスカラ、是亦人ヲ出シテ居リマス、是等ノモノヲ先ヅ常置ノモノニ致シ
マスルト云フコトト、ソレカラ一面ハ北京デゴザイマスガ、北京ガ色〓借款
問題ナドガ澤山アリマス、然ルニ各會社或ハ個人等ガ銘々勝手ニ色ミヤッテ
居リマスノデ、是等ノ統一ガ取レマセヌノデ、玆ニドウシテモ一人、人ヲ置
カヌナラヌト云フコトカラ置クヤウナ豫算ヲ提出イタシマシタ、露都及紐育
ノモノハ今日ハ先ヅ奏任官ノ程度ノモノデ宜カラウ、ソレカラ支那ハ勅任官
程度ノモノ、斯樣ナ意味ヲ以チマシテ經費ヲ計上イタシテ居リマス、是デ滿
足デアルカト云フヤウナコトデアリマスト將來ハ尙ホ大ニ經費ヲ增シテ行カ
ヌナラヌコトモアラウト思ヒマスガ、今日ノ所ト致シマシテハ左樣ニ機關バ
カリ尨大ニ致シマシタ所デ、第一人間ヲ得ルコトガ困難デアリマス、又政府
ト致シマシテモ成ルベク僅少ナル經費ヲ以テ出來得ルダケノ効果ヲ得ルト云
フコトガ、是レ最モ努メナケレバナラヌコトデアリマスカラ、一見甚ダ僅少
ナ經費デハゴザイマスルガ、先ヅ是デ出來ルダケヤッテ行キタイト云フ考ヲ
持ッテ居リマス次第デアリマスカラ、ドウカ左樣ニ御了承ヲ願ッテ置キマス
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=19
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020・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯〓御尋ノアリマシタ中デ臨時〓育會議ノコトニ
付キマシテ私カラ御答ヲ致シマス、御承知ノ通リニ數年前貴族院カラ〓育調
査ノコトニ付テ御建議ガ出マシタ、其御建議ニ基キマシテ〓育調査會ヲ起シ
タノデゴザイマス、爾來數年間此調査會ノ會員ハ最モ勉强努力イタシマシテ
〓育上ニ付テ諸般ノ調査ヲ致シタノデゴザイマス、又最モ鄭重ニ討論〓究ヲ
重ネタノデゴザイマス、其結果ハ尨大ナル調査會トモナッテ居ル次第デアリ
マス、併ナガラ遺憾ナガラ唯〓マデ多年ノ問題トナッテ居リマスル事柄、又
貴族院ニ於テ〓育調査ノ必要ヲ御認メニナッタ其原因ニナッテ居リマス所ノ問
題ノ解決ト云フコトハ出來ズニ居リマスノデ、將來ニ向ッテハ何トカ此調査會
ノ組織ヲ改メマシテ、諸般ノ問題ノ解決ニ努メナケレバナラヌト云フ場合ニ
ナッテ居リマスノデゴザイマス、然ルニ恰モ歐洲ニ大戰ガ起リマシテ、其大
戰ノ跡ヲ顧ミテ、後ヲ想像シテ見マスト、必ズ此〓育上ニ付テモ諸般改善ヲ
要スルコトガアルト認メラレルノデアリマス、從來ノ問題ヲ解決シ、併セテ
將來ノ施設ヲスルト云フ爲ニハ今日マデノ組織ヲ一變イタシマシテ、尙ホ會
員ノ數ヲモ增加イタシマシテ、多方面ノ有識者ヲ此會ニ網羅シテ諸般ノ問題
ヲ〓究調査シ、解決ヲ圖ルト云フコトノ必要ヲ感ジマシタノデ、今囘ハ從前
ノ〓育調査會ト云フモノヲ廢スルコトニ致シマシテ、新タニ此內閣ノ所屬ト
致シマシテ臨時〓育會議ト云フモノヲ設クルコトニ計畫ヲ立テマシタ次第デ
アリマス
〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=20
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021・仲小路廉
○國務大臣(仲小路廉君) 柳澤伯ノ御質問ニ御答ヲ致シマス、御質問ノ趣意
ハ前年私ガ遞信省ニ居リマシタ頃ニ統計ノ必要ヲ唱ヘタコトガアル、是ハ全
ク仰セノ通リ先年遞信次官トシテ水力電氣ノ調査ニ從事イタシテ居リマシタ
際ニ、確ニ總テノ事物ハ確實ナル統計ヲ根據ニ致サナケレバナラヌト云フコ
トヲ申シマシタニ相違ナイノデアリマス、私ハ今日尙ホ總テノ事柄ハ確實ナ
統計ヲ基礎ニ致サナケレバナラヌト云フコトヲ固ク信ジテ居リマス、今囘農
商務省所管ノ中ニ產業奬勵費ノ中、殊ニ農家ノ副業奬勵ニ關スル經費ノ要求
ヲ致シマシタ、是ハ今日ノ場合ニ農村農民ノ振興ノ爲ニハ副業ノ奬勵ハ誠ニ
必要ト存ジテ居ルノデアリマス、唯此事ヲ實行イタシマスニ付キマシテハ、
能ク地方地方ノ事情ニ適切ナ途ヲ講ジナケレバナラヌノデアリマス、今年ノ
要求ハ其端〓デアリマス、將來之ニ付キマシテハ成ルベク適切ナ方法ヲ執リ
マシテ、地方農民等ニ極メテ適切ナル途ヲ執リタイト存ジテ居リマス、是等
ニ付キマシテハ固ヨリ各種ノ統計ヲ必要ト致ス次第デアリマス、是等ノ點ニ
付キマシテモ十分心ヲ用ヒル考ヘデゴザイマス
〔國務大臣松室致君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=21
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022・松室致
○國務大臣(松室致君) 區裁判所復活ノコトニ付テ御答辯ヲ致シマス、仰セ
ノ如ク區裁判所ハ大正二年ノ行政整理ノ當時百二十八箇所ト云フモノヲ廢シ
マシタ、之ヲ今日復活スルト云フノハ誠ニ先見ノ明ガナイノデハナイカト云
フ仰セニ對シマシテハ、誠ニドウモ汗顏ノ至ニ堪ヘナイ次第デアリマス、併
ナガラ當時ノ當局者ガ玆ニ至リマシタ已ムヲ得ナイ事情ヲ玆ニ打明ケテ御話
ヲ致シテ置キマスルガ、當時一般ノ形勢ニ於テデス、行政整理ト云フモノガ
甚ダ必要デアル、行政整理ヲスルニハ互ニ讓リ合ッテ居ッテハ到底出來ナイノ
デアルカラ、各省ニ豫算ノ何割ヲ節減セヨ、斯ウ云フマア天引ノヤウナコト
ヲヤッタノデアリマス、ソコデ司法省ニ於キマシテハ私モ矢張リ其當時裁判所
ニ居リマシテ當局ノ相談ヲ受ケマシタ一人デアリマスガ、唯今仰セノ如ク裁
判所ニハ節減ノ餘地ハナイト云フ考ヲ有ッテ居ッタノデアリマス、併ナガラ遂
ニ之ニ同意イタシマシタノハ、ドウシテモ金ヲ百萬圓經費ノ中カラ節減セナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フ方針ガ定マリマシタ以上ハ、裁判所ノ數ヲ減ラシテ、
サウシテ人ヲ減ズルヨリ外ニ節減ノ途ハアリマセヌノデ、他ノ地方裁判所ト
カ控訴院トカ云フモノハ到底節減ノ餘地ガアリマセヌカラ、先ヅ區裁判所ヲ
減ジマシテ、サウシテ其金額ヲ合ハシタト云フ次第デアリマスノデアリマス、
又一方ニハ迚モ節減ノ餘地ハナイト思ヒマスケレドモ實行シテ見ナイコトハ
果シテ節減ノ餘地ガナイカドウカト云フコトヲ確信スルコトモ出來マセヌノ
デアリマシタ、唯見込ダケデアリマス、其後此區裁判所ノ廢止ト云フコトハ
遂ニ實行イタサレタノデアリマス、併シ此百二十八箇所ト云フノハ現在獨立
ヲシテ働イテ居ル裁判所ヲ總テ廢シタト云フ譯デハアリマセヌノデ、百二十
箇所ノ中九十五箇所バカリハ獨立ノ働キヲシテ居リマシタノデアリマスル
ガ、其他ハ他ノ裁判所ガ出張シテ其事務ヲ取扱フトカ、一時他ノ裁判所ニ其
事務ヲ併セテ取扱フトカ云フヤウナ有樣デアリマシテ、實ハ種々ノ事情カラ
シテ裁判所ノ名稱ハアッテモ其實ガナイヤウナ有樣デアリマシタノデアリマ
ス、ソコデ實際廢シタノハ九十五箇所ト云ウテ宜イノデアリマス、デ此度ハ
人民ノ不便不利ヲ感ズルト云フ訴ト、ソレカラ當局者ニ於キマシテモ矢張リ
不便不利ヲ感ズルト云フ所カラ致シマシテ、財政ノ許ス限リ最モ急ヲ要スル
モノ四十六箇所ヲ擇ビマシテ、サウシテ此復舊ト云フコトヲ提出イタシマシ
タノデアリマス、デ今後尙ホ增設ノ必要アリヤ否ヤト云フ御問ヒニ對シマシ
テハ、尙ホアリト云フ御答ヲ致シマスノデアリマス、ドノ位ノ程度マデアル
カト申シマスレバ、今日ノ有樣デハ九十五箇所ニ稍〓近イ所マデ囘復スル必
要ガアルダラウト考ヘマス、併ナガラデス、九十五箇所全部復舊スルノ必要
ガアルカト申シマスレバソレマデハナイト思ヒマス、ソレデ何箇所ト云フコ
トハ唯〓此處デ調査ガ整ウテ居リマセヌカラ、明言ヲ致ス譯ニ參リマセヌガ、
先ヅ九十箇所內外ト云フ位ナコトヲ申上ゲテ置クコトハ出來ルダラウト思ヒ
やっ、是ハ當局者ニ於テハ矢張リ殆ド他ト同樣ニ必要ヲ感ジテ居リマスルカ
ラ若シ政府ノ財政ガ許シマスルナラバ、成ルベク早ク增設ヲシタイ、即チ
復舊ヲシタイト云フ考ヲ有ッテ居ル次第デアリマス、ソレダケ御答ヘ申シマ
ス
〔國務大臣伯爵寺內正毅君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=22
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023・寺内正毅
○國務大臣(伯爵寺內正毅君) 柳澤伯ノ御質問ノ中ニ一箇所殘ッテ居リマス
カラ此事ニ付テ御答ヲ致シテ置キマス、第一ハ大正五年ノ五月前內閣ニ於キ
マシテ訓令ヲ出シマシタ、此訓令ノ趣旨ヲ實行スルヤ否ヤト云フコトデアリ
やっ、此趣旨ハ統計ノ必要ナルコトヲ示シ、且ツ統計ヲシテ正確ニ實行シテ
誤リナカラシムルコトニ注意ヲナセト云フコトデアリマス、至極尤モナ趣旨
デアリマス、現內閣ニ於テモ此趣旨ヲ以テ統計關係ノ總テノ關係者ヲ督勵シ
テ實行サセル積リデアリマス、是ハ元來此統計ノコトタル官私疏通シ中央ヨ
リ地方ノ細カイ所マデ一定ノ精神ヲ以テ精確ニヤルト云フコトガ出來ナケレ
バナラヌモノデアリマス、其趣旨ニ於テ了解サセル積リデアリマス、尙ホ實
行ノ上ニ改善ヲナシタイト思ッテ居リマス、サウ御承知ヲ願ヒマス、其外最後
ノ御尋デゴザイマス、道德維持ト云フコトノ御尋デゴザイマス、政府ヨリ道
德維持ニ付テハ専心ニ注意ヲ致サナケレバナラヌ、ガ是ハ全ク道德ノ維持ト
云フコトハ單ニ政治方面ノミデアリマセヌ、〓育關係モアリマセウシ、宗〓
ノ關係モアリマセウ、又上流ノ社會、有識社會、是等ノ人ガ皆相共ニ道德ノ
涵養ニ努メ、道德ヲシテ一大威力アラシムルト云フコトニ努メナケレバナラ
ヌ、其點ニ於テハ政府ハ有ラム限リノ力ヲ盡シテ往カネバナラヌト思ヒマス、
今日ハ此邊ニ止メテ置キマス
〔服部一三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=23
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024・服部一三
○服部一三君 先キニ大藏大臣ヨリ縷々豫算全體ノコトニ付キ、又此度御提
出ニナリマシタ所ノ法律ニ付キ御說明ガアリマシタ、ノミナラズ現在ノ經濟
狀態ノコトニ付キマシテモ縷々御話ガアリマシタガ、船舶不足ニ付テ一般ガ
非常ニ苦シンデ居リマスル、ソレヲ救濟スル等ノコトニ付キマシテハ何等御
話ヲ聽クコトヲ得マセナンダノハ寔ニ遺憾ニ存ジマス、ソレデ此事ニ付テ當
局大臣ニ御尋ヲシタウゴザイマス、此船舶ガ不足シテ居リマスルガ爲ニ各社
ニ於テ貨物ノ停滯シテ居リマスルコトト云フモノハ實ニ夥シイモノデアル、
此停滯ト云フモノハ啻ニ海上ノミナラズ、陸上ノ運輸マデモ影響ヲ及ボシテ
居ルノデアリマス、是ハ皆樣モ御承知ノ通リ、從來船舶ニ依ッテ運輸サレ居ッ
タ所ノ貨物ガ、般舶ガ少クナリ又運賃ガ高クナッタガ爲ニ、近來陸上ヲ運ブト
云フコトニナッテ來タノデ、此遠距離ノ從來ナキ所ノ貨物ノ運輸ノ爲ニハ近
距離ノ貨物其他ニ付テハ非常ナ阻害ヲ與ヘテ居ルノデアリマス、之ニ付テハ
當局者ハ非常ノ御骨折デ、殊ニ鐵道院ナドニ於キマシテハ日夜種々ナ方法ヲ
御講ジニナッテ居ルト云フコトモ承知シテ居リマスガ、船舶ノ方ニ付テハ如
何ナル方法ヲ御講ジニナッテ居ルノカ、此船舶ノ少キ爲ニハ、啻ニ貿易業者ガ
物品ヲ海外ニ輸出スルコトガ出來ヌノミナラズ、從ッテ生產者ノ困ルコトモ勿
論デアリマス、一般ニ此物品ヲ使用スル所ノ者ガ物品ガ早ク屆カヌガ爲ニ非
常ナ困難ヲ感ジテ居ル、又運賃ノ爲ニ物品ガ高クナルノニ苦ンデ居ルノデア
リマス、サウシテ翻ッテ此船舶ノ有樣ハドウデアルカト云フト、昨年中ニハ
日本ノ船舶ニシテ外國人ニ傭ハレタ所ノ船ガ確カ七十四艘ト記憶シテ居リマ
ス又外國人ニ賣ラレタモノガ二十六七艘、又本年ニ至リマシテハ是ガ激增
イタシマシテ、一月、二月、三月、此三箇月ノ中ニ外國人ニ賣渡シタ所ノ船
ガ十六艘、又今日各造船所デ造リ立テテ居ル所ノ船デ是ガ外國人ニ賣ル目的
デ出來テ居ル所ノモノガ多々アルト云フコトハ是モ當局デハ御承知ノコトト
存ジマス、唯本年ニナッテカラノ外國人ニ傭ハルル所ノ契約ガドウモ、ハキト
分リマセヌガ、確カ五十五艘位ニナッテ居ルカト本員ハ存ジテ居リマス、或、
違ッテ居ルカモ分リマセヌ、斯ノ如ク外國人ノ爲ニ働ク所ノ船ハ非常ニ澤山デ
アル、サウシテ内國ノ者ハ船ガ足ラヌ爲ニ寔ニ苦シンデ居ルノデアリマスガ、
之ニ對シ衆議院ニ於テハ、遞信大臣ガ一方ノ事業者ヲ助ケル爲ニ一方ノ事業
者ニ迷惑ヲ掛ケル譯ニハ往カナイ、ダカラ此儘ニシテ置クト云フ御答デアッタ
ヤウニ存ジマスルガ、一方ノ事業者ノミデハナイ、需用者モ皆迷惑シテ居ル
ノデアリマスルガ、之ニ對シテ當局者ニ於テハ、或ハ外國人ニ船ヲ貸ストカ
或ハ賣ルトカ云フヤウナコトヲ嚴重ニ御取締ニナル所ノ御考ハアリマセヌ
カ、是ガ一ツ、今聯合國ノ總テノ有樣ヲ見マスノニ、ドノ國モ己レノ國ノ船
舶ヲ他國ニ賣リ又ハ貸スト云フコトニ付テハ嚴重ナル取締ヲシテ居ルヤウデ
アリマス、確カ日本バカリガ其事ニ付テハ何事モシテ居ラヌヤウデアル、之
ニ付テモ、遞信大臣ノ衆議院ニ於テノ御答デハ、マダサウ云フ時機ニナッテ居
ラヌト云フ御答ヂヤッタカト存ジテ居リマス、ガ我國ハ現ニ戰時狀態ニ在ル、
我ガ忠勇ナル海軍軍人ハ地中海デ戰ヒツツアルノデアリマス、而シテ世界列
强ノ有樣ヲ見マシテモ、實ニ此戰爭ガ起ッテ以來ト云フモノハ、色〓ナ變動ガ
起ッテ居リマス、ガ其變動タルヤ、殆ド豫期サレヌヤウナ變動ガ突然起ッテ來
ルコトガ澤山アル、其最モ著シイモノハ、昨日マデハ堂々タル威嚴アル帝國
モ忽チニ潰レテ、民主制ニ變ッテ仕舞ッテ、今日ハ軟風ガ吹キ廻シテ居ルト云
フヤウナ所モアル、其他此戰時以來ノ列强ノ有樣ハ誠ニ變遷極リナイモノデ
アリマスルガ、サウ云フ時ニ當ッテハ、此豫テノ準備ト云フコトガ必要デアリ
マン、ソレハ申スマデモナイ、豫テノ準備ト云フコトハ必要ニ違ヒナイ、假
ニ此列强ノ種々ナル變遷ヨリシテ、我國ガ陸軍ノ兵ヲ他ニ輸送シナクテハナ
ラヌト云フヤウナ必要ガ起ッタ時分ニ、今日現ニ商賣ノ上デモ不足デ困ッテ居
ルト云フヤウナ船ノミデ、ソンナコトガ十分出來ルモノデアルカ、卽チ海外
ニ貸付ケテアル船ヤ何ゾヲ用ヒル必要ハナイモノデアルカ、ソレデソレニ付
キマシテハ、サウ云フ豫テノ準備ト云フコトハ·······總テノコトヂヤアリマセ
ヌ、唯今ノハ運送船ノミノコトデアリマス、運送船ノミニ付テサウ云フ準備
ハ不必要デアルカ、又必要デアルケレドモガ、其事柄ガ起レバ直チニ出來ル
カラ、心配スルニハ及バヌト云フコトデアルカ、其點ニ付テモ御答ヲ願ヒタ
イ、モウ一ツアリマス、先刻ヨリ申ス如ク、實ニ列强ノ形勢變動極リナキ時
デアリマス故ニ、何時平和克復スルカモ知レナイガ、此平和克復シタ曉ニハ
必ズ列强ノ間ニハ商工業ノ競爭ト云フコトガ起ルノハ、是ハ明カナ話デアル、
此競爭タルヤ、必ズ組織的ノモノニナリ、或ハ船舶業者ナラバ船舶業者ガ皆
共同シ、或ハ他ノ生產者トモ共同シ、政府モ之ニ力ヲ戮セテ、サウシテ他ニ
向ッテ競爭スルト言フコトハ、是ハ各國ノ間ニ必ズ起ルデアラウト思ハレル、
其時ニ當ッテハ、最モ船ヲ澤山持ッテ、輸送力ノ力ガ他ニ優ッテ居ル所ノモノ
ガ、必ズ有利ノ位置ヲ占メルデアルト云フコトニ思ハレル、ガ是等ノ未來ノ
準備ニ付テハ今日ハ何モシテ置ク必要ハナイカ、或ハ是ガ必要トシテ、傭船
或ハ外國へ賣ル船ヲ禁ズルト云フヤウナコトヲシナクテモ、確カニ後レハ取
ラヌト云フコトノ御確信ガアルノデアルカ、ソレ等ノコトニ付テ當局大臣ノ
御答ヲ願ヒマス
〔國務大臣男爵田健治郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=24
-
025・田健治郎
○國務大臣(男爵田健治郞君) 唯今服部君ヨリ、船腹不足ニ對スル處分ニ付
テ、縷々御質問ガゴザイマシタ、御答ヲ申上ゲマス、此船腹不足問題ハ、昨
年以來頗ル重要ナ問題ニナッテ居リマシテ、旣ニ昨年前內閣ノ際ニモ、經濟調
査會ニ於テ反覆攻究セラレタ問題デアリマス、而シテ又現内閣成立以後、私
ハ當局大臣トシテ其點ニ向ッテハ終始深ク〓究ヲシテ居ルノデアリマス、此
問題ヲ詳シク申上ゲヤウト思ヘバ、非常ナ長時間ヲ要スルコトニナリマスカ
ラ、今日ハ御尋ネノ大要ニ對シテ御答ヲ申上グルニ止メテ置キタイト存ジマ
ス、大體此船腹不足ノ時ニ於テハ、之ニ處置シテ、一番船腹ヲ補充スルノニ
シ易イコトハ卽チ今御尋ネノ外國へ輸出ヲ禁ジ、若クハ貸渡ヲ禁ズルト云フ
コトハ確ニ船腹補充ノ一策ニ相違ゴザイマセヌ、卽チ今日ノ所デ歐羅巴各交
戰國何レモ、敵味方トモ殆ド禁ゼザルナク、獨リ歐羅巴ニ止リマセヌ、南北
亞米利加マデモ、サウ云フコトニシテ居ルノガ多クゴザイマス有樣デゴザイ
ママト。之ヲ日本ニ於テ止メヌト云フコトハ一見甚ダ不思議ノ感ヲ御懷キニナ
ルコトハ御尤モデアリマス、去ナガラ歐羅巴ノ交戰國及中立國ガ早クカラシ
テ船ヲ輸出若クハ外國ヘ貸渡スコトヲ止メタノハ餘程理由ノアルコトデゴザ
イマス、免ニ角御尋ネノ中ノ此經濟問題ニ關スルモノニ非ズシテ、貿易トカ
輸出入トカ云フヤウナル事柄ニ非ズシテ、歐羅巴諸國ガ止メテ居ルノハ、卽
チ直接ニ兵ヲ送リ軍需品ヲ輸送シ若クハ殆ド之ニ準ズベキ所ノ國ノ存亡若ク
ハ生存ニ關スルモノトシテ、軍事輸送ニ徵發スルノモ同ジヤウナ性質ニ於テ
ヤッテ居ルノデ、殆ド貿易ナドニ使用サレル船ト申スモノハ英佛以南是等ノ國
ニ於テホンノ一小部分ニ止マルヤウナ譯デアリマシテ、本國ニ居ル船ハ全部
是等ノ間接直接ノ軍事上ニ使用セラレテ居ルト申シテモ宜イノデアリマス、
ソレデアルガ故ニ國家ノ生存問題トシテ此外國ニ貸渡シ賣渡シヲ止メルト云
フコトハ、是ハ免ルベカラザル當然ノ處置ト思ヒマス、然ルニ日本ハ同ジ交
戰國ニハ列シテ居リマスルケレドモ事實ノ事態ハ全ク違フ、最初靑島攻撃
ノ際ニハ如何ニモ商船ノ幾艘カ政府ニ借上ゲラレマシテ、軍事行動ノ輸送船
ナドニ使ハレテ居ッタ如クデアリ、マスルガ、其後ハ殆ド陸海軍ニ於テ軍事輸送
及間接ニ軍事輸送ニ準ズベキヤウナルモノニ向ッテ、運送船ヲ借上ゲテ居ルコ
トハ殆ドナイト言ウテモ宜イ有樣デアリマス、ソレデアリマスルカラ、日本ノ
船舶ノ缺乏ハ國ノ生存問題卽チ軍事及軍事ニ準、ベキヤウナルコトカラ起ツ
タ所ノ不足デハナイノデアル、商賣、貿易、經濟的ニ全ク不足ヲ感ジテ居ル
ノデアリマス、勿論經濟的ノ不足ヲ感ズルト云フコトモ、之ヲ救フコトハ非
常ナ肝要ナコトダト存ジテ我〓ハ其點ニ向ッテ心配シテ居ルノデアリマスル
ガ、併シ經濟的不足ト云フコトヲ軍事的不足、國ノ生存問題ニ關スルモノト
同一視スルコトハ適當ニアラズト信ジマス、詰リ經濟的不足ト云ヘバ生產者
ガ物ヲ拵ヘテ賣ル、貿易業者ガソレヲ外國ニ輸出スル、卽チ國ノ生產事業ノ
發達ニ向ッテ大ナル貢獻ヲスルニ相違ゴザイマセヌケレドモ、元是商業ノコ
トニ違ハナイ、一方ニ船舶ヲ新造シ若シクハ蓄藏シ或ハ貸スト云フヤウナ海
運業ヲヤルト云フコトモ、矢張リ生產事業ニ相違ナイノデアリマス、ソレデ
アリマスルカラ同ジク生產事業トシテ商業トシテ營ンデ居ルモノモ、今船ヲ
絕對ニ賣ルコトヲ止メ、貸スコトヲ止メタナラバ、成程幾ラカ貿易業者、生
產業者ノ船腹ガ豊カニナルカラ助カリモシマセウケレドモ、ソレト同時ニ造
船業者、船舶業者ハ大ナル犠牲ヲ拂ハナケレバナラヌト云フ玆ニ事實ガアリ
マス、如何ニモ服部君ノ御說ノ如ク此外國へ日本船デ貸渡サレテ居ルモノハ、
昨年アタリカラ始終每月ノ統計ヲ調ベテ見マシテモ、上ッタリ下ッタリシテ居
リマスガ、少クトモ十三万噸、多イ時ニハ十八万噸位ナ船ガ外國へ貸渡サレ
テ居リマス、而シテ又外國へ賣ッタ船ト申スモノモ、既ニ十万噸バカリハ賣ラ
テ居リマセウシ、又將來賣ルデアラウト推測サレル船モ其通リ、十万噸以
上モット殖エテ居ルヤウデアリマス、外國カラ注文ヲ受ケタヤウナモノヲ合ス
レバ殊ド二十万噸ニモナリサウデアリマス、併ナガラ是ハ多少又考慮シナク
チヤナラヌノハ、第一外國へ賣ルコトヲ止メルト云フコトニナッタナラバ、今
ノ造船所ト云フモノノ發達ハ全ク止ッテシマフト思ヒマス、戰前ノ十年間ニ製
造シタ平均數ガ三万五千噸位ナモノデアリマス、一箇年、ソレガ今日デハ三
十万噸以上位ニナッテ居ルト云フコトハ畢竟造リサヘスレバ金ノ這入ル如
タニ、賣ッテ賣レル事實ガアリマスル故ニ、造船家ハ爲シ得ル限リ其規模ヲ擴
張シ非常ナ勢ヲ以テ造船ヲ努メテ居ルノデ、卽チ「ストックボート」ナドハ誰
モ注文ヲシナイモノヲズン〓〓造ッテ居リマスノデ、アノ通リ造船ガ非常ナ勢
デ增加シマシタシ、又是カラモ餘程增加スルデアラウト思ッテ居リマス、然ル
ニ是ガ若シ外國へ賣ルコトハナラヌトナッタナラバ恐ラク半分モ造ルコトハ
アリマスマイ、半分モ三分ノ一モアリマスマイ、ト云フモノハ現ニ日本人ノ
注文ニシテ日本人ガ使フベク注文シテ居ル船ト云フモノハ極メテ少イノデ、
多クハ矢張リ外國人ノ注文若クハ外國人ニ賣ルベク注文シテ居ルノガ多イ所
ヲ見マシテモ、其事態ハ分ルノデアリマス、之ヲ若シ止メテ居ッタナラバ殆ド
造船能力ハ戰前ニ違ハヌヤウナ有樣ニナルニ相違ナカラウト思フ、殊ニ是ハ
餘リ詳シク申上ゲ兼ネマスルケレドモ、此貸シテ居ル賣ヲテ居ル船ガ唯漫然ト
中立國ヤラ若クハ外國ノ商業上ニ使ハレテ居ルモノトスルト、我〓ハ餘程考
ヘナクテハナリマセヌ、所ガ今現ニ十八万噸程ノ貸シテ居ル船ト申スモノハ、
其實ハ我ガ聯合與國ノ軍事上若クハ間接ニ軍需品ナドヲ送ル所ノモノニ殆ド
全部ト云ウテ宜イ程ニ從事シテ居リマス、直接間接、一小部分ハサウデナイ
モノモアリマセウガ、大多數ハ皆聯合國ノ爲ニ戰時ノ輸送ニ從事シテ居リマ
ス、而シテ又今新造船ヲ賣ッタ、若クハ今將ニ新造船デ賣ル約束ヲシテ居ルモ
ノト云フモノモ、勿論英佛伊ト云フ如キ我ガ協同ノ戰鬪ニ從事シテ居ル所ノ
聯合國カラノ注文及約束ニ係ッテ居ルノデ、之ヲ杜絕ヲシタナラバ我ガ聯合國
ハソレニ向ッテ非常ナル困難ヲ生ズルト云フコトモ亦明カナコトデアリマス
是ハ我〓ハ政府トシテ此事ヲ直接ニ當ッテ居ルヤウナコトヲ今少シク申上ゲ
兼ネマス、唯要求、此間衆議院ニ於テ英國ヨリ要求ヲ受ケテ居ルガ相談中デ
アルト云フコトダケハ御答シタノデアリマスガ、免ニモ角ニモサウ云フヤウ
ナ事實デゴザイマスカラ、今此賣ルコトモ貸スコトモ止メルト云フコトハ、
容易ニスベキコトデナイ、併ナガラ最後ノ御尋ノ若シ日本ニ一朝有事ノ日ア
ルニ當ッタラバ、ソレニ付テノ準備ガアルヤ否ヤ、覺悟アルヤ否ヤト云フノ御
尋ニ對シテハ、是ハ固ヨリ十分ノ準備十分ノ覺悟アリト申スコトヲ申上ゲナ
クチヤナリマセヌ平日郵船會社ヲ初メ商船會社、東洋汽船會社ナドニ航路
補助ヲ與ヘテ、船體及速力等ノ一定シタモノヲ成ルベク拵ヘテ航運ニ從事セ
シムルト云フコトヲシテ居ルノハ、平時ニ於テ是等ノ海運ノ成ルベク進步發
展スルコトヲ圖ルニ相違ゴザイマセヌケレドモ、一朝有事ノ日ニ於テハ成ル
ベク一定ノ船ヲ何時デモ徵收シテ、ソレヲ國家ノ用ニ供シ得ルト云フコトノ
必要カラ生ジテ居ルト云フコトモ亦明カデゴザイマス、ソレ故ニ今日ニ於テ
ハ先刻モ申ス通リ殆ド一隻ノ船······一二隻アルカモ知レマセヌガ、軍事上ニ
徵用セラレテ居ル船ハナイト申シテモ宜イ位ノ今日ハ有樣デゴザイマスル
ガ、若モ一朝有事ノ日ニ於テ軍事輸送デモセニヤナラヌト云フコトニナッタナ
ラバ、此時ハ縱令重要ナ航路ノ輸送ヲ廢止シテデモ、之ニ充テナケレバナラ
ヌト云フ筈ニナッテ居リマスカラ、其場合ニ於テハ必ズソレ等ノ輸送ニ差支ナ
イダケノ平日ニ準備ハシテ居ルモノト御承知ヲ願ヒタイ次第デアリマス、大
體ノ御答ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=25
-
026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 柳澤伯爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=26
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027・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 此處デ述ベテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=28
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029・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 本員ノ數箇ノ質問ニ對シマシテ、内閣諸公カラソレ〓〓
御答辯ヲ與ヘラレマシタ、本員ハ之ニ對シテ諒承ヲ致シタト申上ゲタイノデ
アリマスガ、遺憾ナガラ私ハ總テ諒承イタシ兼ネルノデアリマス、總テ諒承
ハ出來ヌノデアリマス、故ニ之ニ付テソレ〓〓質問ヲ致シマスレバ、又相當
ノコトヲ御答辯ガアルカト考ヘマスケレドモ、是ハ私ハ此議場ノ諸君ノ爲ニ
御遠慮イタシマス、唯一二其中ニ就イテ御尋イタシタイト考ヘマス、農商務大
臣ノ御答辯ニ付キマシテハ私ノ申上ゲタコトト少シ遠ッテ居リマスノデ、是モ
亦遺憾ト感ジマス、私ハ農商務大臣ニハ農商務統計ノ不完全ナルコトヲ訴ヘ、
尙ホ商工業ノ御調査ニナルコトニ付テハソレニ對シテ十分ノ御調査ナリ、又
ソレニ關スル材料等ハ十分ニ御調ベニナッテ居ルヤ否ヤ、詰リ農商務統計ニ付
テ疑點ガアリマスノデ、ソレヲ伺ッタノデアリマスガ、明ニ之ニ向ッテ將來改
正ヲ加ヘルト云フダケノ御返答ヲ得ナカッタノハ遺憾デアリマスガ、是モ今ハ
申シマセヌ、唯最後ニ申上ゲマシタ道德維持ニ關スルコトニ付キマシテハ總
理大臣ニ建議ニ付テ政府ノ御考ヲ伺ッタノデアリマスガ、ソレニ對シマシテハ
私ハ具體的ノコトヲ申スコトハ甚ダ好ミマセヌ、此先年ノ道德維持ニ關スル
建議案ノ趣意ニ付テ私ハ類似ノ事實ガアルヤウニ、又アッタヤウニ考ヘテ居リ
マスノデ、之ニ對シテ當局者ハ如何ガ考ヘテ居ルカ、斯ウ申シタノデアリマ
ス、少シク首相ノ御答辯ハ廣キニ亙リマシタノデ、ソレハ御尤モデアリマス
ルケレドモ、私ノ質問ノ的トスル所ニ向ッテハ私ハ遺憾ナガラ御答辯ヲ御盡シ
ニナッタモノト信ジテ居リマセヌ、併ナガラ此以上政府ハ御答ガナイトシマス
レバ本員ハ斯ノ如ク考ヘマス、前年ノ道德維持ニ關スル建議ニ付テハ現今ノ
內閣諸公ハ之ニ向ッテ誠意ヲ以テ御考ヘニナラス、斯ク考ヘルノデゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 文部大臣岡田良平君
〔淺田德則君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 唯〓文部大臣ガ發言ヲ求メラレマシタ
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=31
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032・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯〓柳澤伯爵カラ御尋ニナリマシタ事柄デゴザイ
マスガ、明ラサマニ具體的ニハ申サヌト云フ御話デアリマシタガ、察シマス
ル所ガ私ノ此前ノ選擧ニ於キマスル行動ニ關シマスルコトニ付テ御尋ニナッ
タコトト信ジマスノデ、幸ニ御許シヲ得マシテ、此場合私ノ心事ヲ明カニ致
シテ置キタイト存ジマスノデアリマス、過日衆議院ニ於キマシテ某君カラ私
ガ總選擧ノ際ニ二名マデモ前科者ヲ援助シテ奔走盡力シタト云フヤウナ事實
ヲ擧ゲテ質問ガゴザイマシタ、私ハ其質問ニ對シテドウ云フコトヲ指シタノ
デアルカト云フコトハハッキリ其時ニハ分リマセヌデアリマシタガ、併シ斯
ウ云フ事實ガアリマシタノデゴザイマス、本年ノ三月初ト存ジマスガ、私ハ
私事ヲ以チマシテ、御許シヲ蒙リマシテ〓里ヘ歸リマシタノデアリマス、鄉
里ニ於キマシテハ多數ノ知ッタ者モアリマスノデ、是等ノモノカ私ノ爲ニ特ニ
歡迎會ヲ設ケマシタノデアリマス、其歡迎會ノ席上ニ於キマシテ私ハ此前ノ
總選擧ノ時ト此度ノ總選擧ノ時ト私ノ政治上ニ於ケル立場ガ全ク一變イタシ
マシタノデアリマスカラ、其一變イタシマシタ理由ヲ能ク說明イタシマシテ、
私ノ立場ヲ明カニ致シマシタ次第デアリマス、此私ノ演說ガ誤リ傳ヘラレマ
シテ、其地方カラ候補者トシテ立チマシタ所ノ某氏ノ後援ヲ私ガ致シタ、後
援演說ヲ致シタト云フ風ニ世間デ傳ヘラレマシタノデアリマス、勿論私ハサ
ウ云フ意味デハナイ、自身ノ政治上ノ立場ヲ明カニスルガ目的デアッタノデ
アリマス、ソレガ何人ノ利益ニナリマシタカト云フコトハ私ハ考ヘナカッタ
ノデアリマス、サウ云フ事實ガアリマシタノデ、衆議院ニ於ケル某氏ノ質問
ハ必ズ其事ヲ指スノデアラウト存ジマシタカラ、私ハソレハ事實デナイト云
フコトヲ以テ答ヘタノデアリマス、併シ衆議院デ尋ネラレマシタノハ、二人
マデ前科者ヲ推薦シタト斯樣ニアリマスノデ、今一人ト云フノハ誰ノコトヲ
指スノデアラウカ、自分デモ理解イタシ兼子テ居リマシタノデアリマスガ、
其後ニ衆議院カラ質問ガ出テ居リマス、其質問趣意書ヲ見マスルト、其指シ
テアル人ト云フモノハ分リマシタノデアリマスガ、其質問ノ趣意書ノ中ニ書
イテアリマスノハ、鳥取縣ニ於ケル所ノ某氏、島根縣ノ松江ニ於テ候補者ト
くせんもそべま
シテ立ッタ所ノ某氏、此二人ノ名ガ擧ゲテアリマスノデアリマス、併ナガラ
此鳥取縣ニ於テ候補者トシテ立ッタ所ノ某氏ニ對シテハ何等援助ヲ與ヘタト
云フヤウナ事實ハナイノデアリマシテ、私ハ其選擧前ニ鳥取縣ヘ參ッタコトハ
事實ニ相違ナイ又鳥取市ニ於キマシテ歡迎會ニ列シマシテ簡單ナル講演ヲ
致シタコトモ事實デアリマス、其講演ノ事柄ハ是ハ政治ニ亙ッタコトデナクシ
テ、私ノ憲法上ニ於ケル所ノ所見ヲ述ベタノデゴザイマシテ、政談デハナイ
ト私ハ考ヘテ居リマス、併ナガラ其演說ノ如何ニ拘リマセズ、其某氏ト云フ
モノハ鳥取市デ候補者トシテ立ッタ人デナククテ、郡部ノ候補者デアル、私
郡部ニ於テモ米子ト申ス所デ矢張リ簡單ノ話ヲ致シマシタノデアリマスガ、
此米子ニ於テ候補者トシテ立ッタ人ハ矢張リ此指名サレテ居ル某氏トハ全ク
別デアリマス、玆ニ擧ゲテ居リマス所ノ某氏ハ所謂東伯ト申シマスル鳥取縣
ノ東ノ方ノ郡部ノ候補者トシテ立ッタノデアリマスカラ、私ガ鳥取ニ於テ演說
ヲ致シタト云フコトハ何モ此人ノ後援ヲスルト云フ意味ニハ如何ナル演說ヲ
シタ所ガ全ク事實ナッテ居ラヌノデアリマス、是ハ全ク事實無根ダト申シテ一
向差支ナイノデアリマス、今一人玆ニ擧ゲテアリマスノハ島根縣ノ松井ニ於
テ候補者トシテ立ッタ人デアリマス、其人ニ對シマシテハ之ヲ見マスルト、〓
科書事件ニ於テ收檻セラレタル何某ヲ應援イタシテ云々ト云フヤウナコトガ
書イテ、ヒドク批難シテゴザイマスルガ、併シ其某ナル者ハ〓科書事件ニ關
シテ嫌疑ヲ受ケタト云フコトハ事實デアリマスガ、併ナガラ有罪ニナッテ居ラ
ヌノデス、ノミナラズ此人ハ前內閣ノ時ニ中學校長ニ推薦ヲ致シマシタ、此
總選擧前迄ハ中學校長ヲ勤續イタシテ居ッタモノデス、デ、其今援ケタト云フ
事實ガアリマシタニシタ所ガ、是ハ何等不都合ハナイト私ハ考ヘマスルノデ、
ソレ故ニ此事實無根ト云フコトヲ以テ私ハ答ヘタノデアリマス、併ナガラ應
援演說ヲシタト云フ······奔走盡力シタト云フ、サウ云フ尋ネニ向ッテハ私ハサ
ウ云フ事實ハナイト云フコトヲ答ヘタノデアリマスケレドモ、併シ〓里カラ
出マシタ某ニ對シテハ何等援ケヲ與ヘタコトハナイカト云フコトデアリマス
ナラバ、是ハ全ク援ヲ與ヘタコトハナイト申サレヌノデアリマス、是ハ私ノ
同〓ノ者デアリマシテ、多年承知イタシテ居ル者デゴザイマス、先年過ッテ刑
ニ觸レタト云フコトハ、是ハ事實ニ相違ナイノデアリマスケレドモ、併ナガ
ラ誠ニ氣ノ毒ナル事情ヲ私ハ其本人ヲ能ク知ッテ居リマス爲ニ諒承シテ居ル
ノデアリマス、ソレカラ又其地方ナドニ於キマシテモ其本人ノ刑ニ觸レマシ
タ事情、又悔悟ノ狀況等ニ付テハ知ッタモノハ皆諒承シテ居ルト云フヤウナ
譯デゴザイマス、ソレカラ後ニ兩三囘總選擧ガアリマシタケレドモ、其總選
擧ニハ每ニ當選ヲ致シテ衆議院ノ議場ニ列シテ居ルノデゴザイマス、衆議院
ノ議場ニ於キマシテモ、多クノ人ハ其人ノ舊惡ヲ宥恕スルカ、或ハ之ヲ忘レ
マシタカ、免モ角モ同僚トシテ齒シテ居ッタノデアリマス、サウ云フ譯デゴザ
イマスカラ今囘候補者トシテ起ツニ方リマシテ、私ガ舊來ノ情誼ニ依リマシ
テ、私ノ知ッタ者ナドノ所ヘ手紙ヲ出シタト云フ事實ハアリマス、手紙ヲ出シ
マシテ某ガ今囘候補者ニ起ッタカラ盡力シテヤッテ呉レト云フヤウナコトヲ私
ノ知ッタ者ニ手紙ヲ出シタト云フ事實ハアリマス、之ヲ援ケタト申シマスナラ
バ無論援ケタニ相違ナイノデゴザイマス、併シ私ハ考ヘマシタノデアリマス、
旣ニ數囘衆議院議員トシテ當選シテ議場ニ列シテ居ル、本人モ旣ニ前非ヲ後
悔シ、全ク新タナル人ト自ラ考ヘテ居リマスシ、又其同僚モ殆ド其人ノ舊惡
ヲ忘レテ仕舞ヒマシテ、之ト齒シテ居ルト云フヤウナコトデアリマシテ、旣
ニ年所ヲモ相當經過シテ居ルコトデアリマスカラ之ヲ飽クマデ追責イタシマ
シテ、世ニ立ツ能ハザラシムルト云フガ如キハ、過ヲ改メ善ニ遷ルコトヲ勸
メル途ニ於キマシテ、餘リ過酷デハアルマイカト云フヤウナ私ハ感ジヲ致シ
マシタノデ、懇意ノ者ニモ手紙ヲ送ルト云フヤウナコトヲ致シテ、多少ノ援
助ヲ致シタノデアリマス、併ナガラ尙ホ能ク考ヘテ見マスルノニ、私ガ少シ
舊惡ヲ宥恕スルノ點ニ於テ謹愼ヲ關イタノデアッタト云フコトヲ心付キマシ
タノデアリマス、何ガ故ニ心付イタカト申シマスト、私ハ此事ニ付テハ最早
衆議院ニ於テモ、貴族院ニ於テモ問題ニナラヌト云フコトヲ考ヘテ居リマシ
タ、私ノ感ジト云フモノガ餘リ適當デナカッタト云フコトヲ今日玆ニ了承ヲ
致シタノデゴザイマス、即チ衆議院ノ人モ此罪ヲスッカリ忘レテ新シイ人ト
シテ之ヲ遇シテ居ルノダラウト思ッタノハ少シ思ヒ違ヒデゴザイマス、又貴
族院ニ於テモ唯今ノヤウナ御質問ノ出マシタ所ニ依リマスト云フト、矢張リ
私ノ少シ思ヒ違ヒデアッタ、少シデハナイ、大ニ思ヒ違ヒデアッタト理解イタ
シマシテ誠ニ慚愧ニ堪へマセヌ次第デゴザイマス、私ノ心事ハ右ノヤウナ次
第デゴザイマス、私ハ實ニ斯樣ニ申シマスノハ、甚ダヲコガマシイコトデゴ
ザイマスガ、道德ヲ維持シ、殊ニ國民道德ヲ奬勵スルコトハ不肖ナガラ出來
ベキダケ努力ヲ致シテ居ル積リデゴザイマス、又將來モ其點ニ付テハ出來得
ベキダケ努力イタシタイト考ヘテ居ル場合デゴザイマス、然ルニ斯樣ナ不注
意ノ爲ニ玆ニ問題ヲ起シマシタト云フコトニ付キマシテハ誠ニ慚愧ニ堪ヘマ
セヌ、恐縮千萬ノ次第デゴザイマスルノデ、斯樣ナルコトニ付テハ注意ノ上
ニモ注意ヲ加ヘベキモノデアルト云フコトヲ篤ト了承イタシマシタヤウナ譯
デ、ドウゾ其點ハ宜シク御諒察ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=32
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033・淺田徳則
○淺田德則君 唯今議題ニナッテ居リマスル大正六年度歲入歲出總豫算追加
案以下十號ハ卽チ審査期限ヲ定メルト云フコトデアリマス、會期モ移リマシ
テ剩ス所ハ多クノ日子ヲ有チマセヌ故ニ、日ヲ特ニ定メマセズシテ審査結了
次第報告ヲスルト云フコトニ致シタイト思ヒマス、ドウカ諸君ノ御賛成ヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=33
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034・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=34
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035・青木信光
○子爵靑木信光君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=35
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036・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 贊成
〔此他「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 淺田君ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十一、裁判所設立ニ關スル法律案、第十二、
大正二年法律第九號中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ做フ〕
裁判所ノ設立ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
裁判所ノ設立ニ關スル法律案
埼玉縣秩父郡秩父町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ秩父區裁判所ト稱ス
千葉縣君津郡木更津町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ木更津區裁判所ト稱ス
千葉縣香取郡佐原町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ佐原區裁判所ト稱ス
茨城縣久慈郡太田町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ太田區裁判所ト稱ス
茨城縣行方郡麻生町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ麻生區裁判所ト稱ス
栃木縣那須郡大田原町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ大田原區裁判所ト稱ス
群馬縣利根郡沼田町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ沼田區裁判所ト稱ス
群馬縣新田郡太田町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ新田區裁判所ト稱ス
靜岡縣小笠郡掛川町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ掛川區裁判所ト稱ス
長野縣下水內郡飯山町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ飯山區裁判所ト稱ス
長野縣北佐久郡岩村田町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ岩村田區裁判所ト稱ス
長野縣西筑摩郡福島町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ木曾區裁判所ト稱ス
長野縣北安曇郡大町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ大町區裁判所ト稱ス
新潟縣南蒲原郡三條町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ三條區裁判所ト稱ス
京都府中郡峰山町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ峰山區裁判所ト稱ス
兵庫縣明石郡明石町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ明石區裁判所ト稱ス
兵庫縣揖保郡龍野町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ龍野區裁判所ト稱ス
德島縣那賀郡富岡町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ富岡區裁判所ト稱ス
香川縣三豐郡觀音寺町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ觀音寺區裁判所ト稱ス
高知縣高岡郡須崎町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ須崎區裁判所ト稱ス
岐阜縣安八郡大垣町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ大垣區裁判所ト稱ス
福井縣遠敷郡雲濱村ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ小濱區裁判所ト稱ス
石川縣能美郡小松町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ小松區裁判所ト稱ス
富山縣下新川郡魚津町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ魚津區裁判所ト稱ス
山口縣都濃郡德山町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ德山區裁判所ト稱ス
岡山縣小田郡笠岡町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ笠岡區裁判所ト稱ス
岡山縣阿哲郡新見町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ新見區裁判所ト稱ス
岡山縣眞庭郡勝山町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ勝山區裁判所ト稱ス
島根縣簸川郡今市町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ今市區裁判所ト稱ス
長崎縣東彼杵郡大村町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ大村區裁判所ト稱ス
佐賀縣杵島郡武雄町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ武雄區裁判所ト稱ス
福岡縣八女郡福島町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ八女區裁判所ト稱ス
大分縣速見郡杵築町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ杵築區裁判所ト稱ス
大分縣南海部郡佐伯町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ佐伯區裁判所ト稱ス
熊本縣上益城郡御船町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ御船區裁判所ト稱ス
熊本縣球磨郡人吉町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ人吉區裁判所ト稱ス
鹿兒島縣川邊郡知覧村ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ知覽區裁判所ト稱ス
宮崎縣西臼杵郡高千穗村ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ高千穂區裁判所ト稱ス
沖繩縣宮古郡平良村ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ平良區裁判所ト稱ス
宮城縣柴田郡大河原町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ大河原區裁判所ト稱ス
山形縣最上郡新庄町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ新庄區裁判所ト稱ス
巖手縣二戶郡福岡町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ二戶區裁判所ト稱ス
秋田縣山本郡能代港町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ能代區裁判所ト稱ス
靑森縣北津輕郡五所川原町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ五所川原區裁判所ト稱ス
靑森縣西津輕郡鰺ヶ澤町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ鰺ケ澤區裁判所ト稱ス
北海道壽都郡壽都町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ壽都區裁判所ト稱ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
大正二年法律第九號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
大正二年法律第九號中改正法律案
大正二年法律第九號中左ノ通改正ス
別表裁判所管轄區域表中熊谷區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
埼玉縣ノ內
大里郡兒玉郡
北埼玉郡ノ內
忍町羽生町井村川村廣村
村村持田俣村星木宮田村野加和
埼玉村〓瀨忍井泉太長須共村村村村
星河村巢村岩下太北河原村荒村
中成屈新村村千子林村南河原村田
須影村田村
熊谷中條村島村
比企郡ノ内
松山町小川町大岡村福田村宮前村唐子
菅谷村七〓村八和田村大河村竹坂澤村平村村村
玉川村明覺村龜井村今宿村高村野本
東吉見村南吉見村四吉見村北吉見村
秩父郡ノ内
大椚村槻川村大河原村
秩父
千葉
木更津
八日市場
佐原
水戶
埼玉縣ノ内
秩父郡ノ內
秩父町小鹿野村橫瀨村蘆ケ久保村高篠村國原神谷
皆野村三澤村白鳥村樋口村野上村村村村
金澤村矢納村日野澤村下合大田村尾田様
長若村上吉田村倉尾村三田兩神村大瀧村
白川村中川村久那村浦山村影森村
同表中千葉區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
千葉縣ノ内
干葉郡東葛飾郡印旛郡長生郡夷隅郡
市原郡ノ內
姉崎町五井町八幡町鶴舞町千種村東海
市原村海上村菊間村市東村市村養三老村村村
內田村高瀧村富山西村平
戶田村明治村
濕津村
千葉縣ノ内
君津郡
市原郡ノ內
里見村白鳥村
同表中八日市場區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
千葉縣ノ內
匝瑳郡海上郡山武郡
香取郡ノ內
多古町常磐村久賀村日吉村東村吉田村
村古城村中和條
中村飯髙村豐和村
千葉縣ノ內
香取郡ノ内
佐原町滑河町神崎町香取町小見川町笹川町
小御門村高岡村米澤村瑞穗村新島村東大戶村
大須賀村本大須賀村香四村村大倉村豐浦村
神里村八都村森山村東良津城文宮村府馬村栗源村
萬歲村神代村橘村村豐里村山倉村
同表中水戶區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
茨城縣ノ內
水戶市東茨城郡四茨城郡多賀郡
那珂郡ノ內
湊町平磯町前渡村中野村勝田村川単行
佐野村村松村石神村神崎村額田村電話 :
五臺村柳河村國田村戶多村芳野村木崎村
鹿島郡ノ內
鉾田町夏海村大谷村沼前村巴村德宿村
諏訪村新宮村上島村白鳥村
茨城縣ノ內
久慈郡
那珂郡ノ內
太田大宮町瓜連村靜村大場村二醇中大賀村
玉川村鹽田村山方村檜澤村小野川野口村
長倉村八里村隆郷村
同表中土浦區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
茨城縣ノ內
新治郡北相馬郡
稻敷郡ノ内
江戶崎町龍ヶ崎町君賀村招 村奥村村
阿見村鳩崎村木舟崎島野村村根安朝本中日
君原村民 町
大宮村生板村源〓田村長竿村柴村村
長戶村八原村岡田村馴柴村牛久村莖崎村
土浦太田村高田村大須賀村伊崎村阿波村古渡村
金江津村
筑波郡ノ內
谷田部町筑波町北條町小張村板橋村久賀村
三島村谷井田村眞瀨村豊村島名村旭村
鹿島村十和村福岡村上村作岡村菅間村
田井村小田村小野川村葛城〓村大穗村田水山村
長崎村
茨城縣ノ內
行方郡
鹿島郡ノ內
麻生鹿島町大同村中野村波野村豐郷村豐津村
高松村中島村輕野村若松村矢田部村東下村
稻敷郡ノ内
浮島村十余島村本新島村
同表中宇都宮區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
宇都宮栃木縣ノ內
宇都宮市河内郡上都賀郡芳賀郡
大田原栃木縣ノ內
那須郡鹽谷郡
同表中前橋區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
群馬縣ノ内
前橋市勢多郡佐波郡
群馬郡ノ内
前橋澁川町伊香保町總社町東村元總社村駒寄村
古卷村明治村豐秋村金島村長尾村白〓井村
小野上村
山田郡ノ內
沼田
新田
濱松
掛川
長野
大間々町福岡村
群馬縣ノ内
利根郡
群馬縣ノ內
新田郡邑樂郡
山田郡ノ內
桐生町川內村廣澤村梅田村相生村毛里田村
韮川村休泊村矢場川村境野村
同表中濱松區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
靜岡縣ノ内
濱松市濱名郡引佐郡
磐田郡ノ內
見付町袋井町中泉町町二俣町
豐濱村西淺羽村田長御掛野厨塚村南御厨村十福梅
於保村西貝 行天村明笠束島原
村村村村村村村村村村村村村
井通村無理解富香川岡龍原村浦野廣袖
大藤村今井村佐敷岩久地田川部瀨浦熊光向
山三村村村村
龍川村龍山村
上阿多古村下阿多古村
周智郡ノ内
城西村奥山村
靜岡縣ノ內
小笠郡
榛原郡ノ內
川崎町金谷町相良町勝間田村坂部村吉田村
初倉村至 此下川根村萩間村菅山村地頭方村
御前崎村白羽村
磐田郡ノ內
幸浦村東淺羽村上淺羽村笠西村久努村
周智郡ノ内
森町山梨町久努西村宇刈村飯田村園田村
一宮村天方村三倉村犬居村氣多村熊切村
同表中長野區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
長野縣ノ內
長野市上水內郡上高井郡
更級郡ノ內
稻荷山町篠ノ井町更級村八幡村桑原村鹽崎村
川柳村付 町大岡村信級村日原村牧〓村
更府村信頼町共和村御厨村中津村今里村
笹井村稻里村靑木島村眞島村小島田村西寺尾村
東福寺村榮村
埴科郡ノ内
松代町〓野村西條村豐榮村東條村寺尾村
飯長野縣ノ內
山下水內郡下高井郡
同表中上田區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
長野縣ノ內
小縣郡
北佐久郡ノ内
北御牧村
上田埴科郡ノ內
屋代町坂城町南條村中之條村戶倉村五和村
埴生村杭瀨下村森村倉科村兩宮縣村
更級郡ノ內
村上村力石村上山田村
長野縣ノ內
南佐久郡
北佐久郡ノ内
岩村田町小諸町東長倉村西長倉村伍賀村平
岩村田三井村志賀村高瀨村中佐都村中津村
川三和邊岡根村村村村
南大井村御代田村小沼村北大井村春大日里村村
五郞兵衛新田村南御牧村布施村協
本牧村芦田村橫鳥村三都和村
同表中松本區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
長野縣ノ內
松本市東筑摩郡南安曇郡
松本
西筑摩郡ノ内
楢川村
長野縣ノ內
西筑摩郡ノ內
木曾福島町木祖村奈川村單雜碎新書開村吾開妻田村村
三岳村王瀧村駒ヶ根村其縦讀村
神坂村山口村田立村
大町長野縣ノ內
北安曇郡
同表中新潟區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
新潟縣ノ内
新潟市
西蒲原郡ノ内
卷町道上村大原村赤塚村中野小屋村鎧〓村
峰岡村岩室村漆山 村曾根村和納村四ツ合村
小吉村味方村乳酸菌黑埼村坂井輪村內野村
新潟角田村浦濱村間瀨村松野尾村月潟村
中蒲原郡ノ內
村松町五泉町新津町龜田町小須戶町白根町
橋田村管川內村大蒲原村十全村川東村
巢本村金村村新關村滿日村阿賀浦村大江山村
早通村橫川越津名村大形村鳥屋野村曾野木村石山村
兩川村荻村小合村根岸村鷲卷村大〓村
臼井村小麦店庄瀨村須田村新飯田村茨曾根村
新潟縣ノ內
南蒲原郡ノ内
三條町加茂町裏館村栗林村井栗村大崎村
下條村田上村大島村長澤村森町村鹿峠村
本成寺村福島村
三條西蒲原郡ノ內
地藏室町燕町國上村小池村小中川村米納津村
太田村島上村吉田村松長村彌彥村粟生津村
中蒲原郡ノ內
七谷村
三島郡ノ内
大河津村
同表中宮津區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
宮津京都府ノ內
與謝郡
峯山京都府ノ內
中郡竹野郡熊野郡
同表中神戶區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
神兵庫縣ノ內
戶神戶市尼崎市武庫郡川邊郡有馬郡
石兵庫縣ノ內
明明石郡美嚢郡
同表中姫路區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
兵庫縣ノ內
姫路姫路市飾磨郡印南郡加古郡加東郡加西郡
多可郡神崎郡
龍野兵庫縣ノ內
揖保郡赤穗郡佐用郡宍粟郡
同表中奈良區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
奈良縣ノ內
奈良市添上郡生駒郡山邊郡磯城郡宇陀郡
奈良北葛城郡高市郡
吉野郡ノ內
四〓村高見村小川村上龍門村
同表中五條區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
奈良縣ノ內
宇智郡南葛城郡
吉野郡ノ內
五條上市町下市町十津川村大淀村天川村野迫川村
賀名生村秋野村上北山村下北山村吉野村宗檜村
大塔村丹生村黑瀧村中龍門村龍門村川上村
白銀村中莊村國樔村
同表中德島區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
德島德島縣ノ內
德島市名東郡勝浦郡名西郡板野郡
富岡德島縣ノ內
那賀郡海部郡
同表中丸龜區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
香川縣ノ內
丸龜市仲多度郡
綾歌郡ノ內
丸龜坂出町宇多津町金山村西庄村林村松
王越村加茂村川様村土器村川西田村飯
炭野山村村村
坂本村法勳寺村芝麻雞栗熊村岡田村長
造田村美合村
觀音寺香川縣ノ內
三豐郡
同表中高知區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
高知高知縣ノ内
高知市土佐郡長岡郡香美郡吾川郡
須崎高知縣ノ內
高岡郡
同表中岐阜區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
岐阜縣ノ内
岐阜市稻葉郡羽島郡本巢郡山縣郡武儀郡
岐阜郡上郡
加茂郡ノ內
田原村富岡村
大垣岐阜縣ノ內
安八郡海津郡養老郡不破郡揖斐郡
同表中敦賀區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
敦賀福井縣ノ內
敦賀郡三方郡
小濱福井縣ノ內
遠敷郡大飯郡
同表中金澤區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
石川縣ノ內
金澤市石川郡河北郡
金澤能美郡ノ内
川北村
石川縣ノ內
江沼郡
能美郡ノ内
小松小松町安宅町御幸村苗村大杉谷村
鳥越村白江村同種書板村寺井野村
山上村牧村白作業時代表 明治3年間吉西根粟田尾上津
中海村村村金野村
新丸村尾口村湊村粟久常村
同表中富山區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
富山縣ノ內
富山市上新川郡婦負郡
富山中新川郡ノ内
五百石町東三〓村西三〓村舟橋村寺田村利田村
大森村高野村上段村東谷村下段村釜ケ淵村
立山村
富山縣ノ內
下新川郡
中新川郡ノ內
魚津西水橋町東水橋町滑川町上市町濱加積村早月加積村
北加積村東加積村山加積村南加積村中加積村西加積村
下條村上條村相ノ木村宮川村白萩村柿澤村
大岩村音杉村弓庄村
同表中山口區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
山口山口縣ノ内
吉敷郡佐波郡美禰郡
德山口縣ノ內
山祁濃郡熊毛郡
同表中岩國區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
岩國山口縣ノ內
玖珂郡大島郡
同表中玉島區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
岡山縣ノ內
淺口郡
都窪郡ノ内
倉敷町大高村帶江村萬壽村菅生村中洲村
玉島〓音村常盤村山手村三須村
吉備郡ノ内
岡田村川邊村二万村穗井田村吳妹村箭田村
菌村新本村山田村久代村秦村神在村
岡岡山縣ノ內
笠小田郡後月郡
同表中高梁區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
岡山縣ノ內
上房郡川上郡
高梁
吉備郡ノ內
下倉村水內村日美村富山村大和村
見岡山縣ノ內
新阿哲郡
同表中津山區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
津岡山縣ノ內
山苫田郡勝田郡英田郡久米郡
勝山岡山縣ノ內
眞庭郡
同表中松江區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
松江島根縣ノ內
松江市八束郡能義郡仁多郡大原郡
今市島根縣ノ內
簸川郡飯石郡安濃郡
同表中大森區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
大森島根縣ノ內
邇摩郡邑智郡
同表中長崎區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
長崎縣ノ內
長崎市
西彼杵郡ノ內
上長崎村小ケ倉村土井首村深堀村香燒村伊王島村
高島村蚊燒村高濱村野母村脇岬村樺島村
長崎爲石村川原村茂木村日見村矢上村喜々津村
大草村伊木力村長與村時津村村松村長浦村
龜岳村大串村崎戶村江島村平島村七釜村
多以良村瀨戶村松島村雪浦村神浦村黑崎村
三重村式見村福田村小榊村浦上山里村西浦七村
長崎縣ノ內
北高來郡
東彼杵郡ノ内
大村大村町三浦村鈴田村大村西洋介萱瀨村
竹松村福重村松原村千綿村製菓所川棚村
下波佐見村上波佐見村
同表中佐賀區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
佐賀佐賀縣ノ內
佐賀市佐賀郡神埼郡三養基郡小城郡
雄佐賀縣ノ內
武杵島郡藤津郡西松浦郡
同表中柳河區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
福岡縣ノ內
大半田市山門郡三池郡
河三潴郡ノ內
柳大川町城島町江上村靑村三叉村大森店
蒲池木村田口村濱最新
木佐木村木室村大莞村
久間田村川口村大野島村
八女福岡縣ノ內
八女郡
同表中大分區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
大分縣ノ內
大分市大分郡
速見郡ノ内
別府町石垣村北由布村南由布村
大分北海部郡ノ内
川添村丹生村大在村小佐井村佐賀市村神崎村
大野郡ノ內
大飼町
大分縣ノ內
速見郡ノ內
杵築町日出町御越町豐岡町朝日村川崎村
藤原村大神村東村北杵築村八坂村東山香村
中山香村山浦村上村南端村
杵築東國東郡ノ內
國東町富來町武藏町安岐町上國崎村豐崎村
旭日村中武藏村四武藏村朝來村西安岐村南安岐村
奈狩江村大內村
西國東郡ノ內
朝田村田原村
同表中臼杵區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
大分縣ノ內
北海部郡ノ内
臼杵町佐賀關町一尺屋村佐志生村下ノ江村海邊村
日杵下北津留村上北津留村南津留村下浦村靑江村津組村
日代村四浦村保戶島村
大野郡ノ内
川登村田野村野津市村戶上村南野津村
大分縣ノ內
南海部郡
佐伯
大野郡ノ内
重岡村小野市村
同表中熊本區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
熊本縣ノ內
熊本市飽託郡宇土郡玉名郡
菊池郡ノ內
大津町原水村津田村瀨田村陣內村平眞城村
護川村北合志村泗水村合志村西合志村田島村
阿蘇郡ノ內
熊本錦野村山西村
上益城郡ノ内
白水村
下益城郡ノ內
松橋町小川町海東村守富村河江村小野部田村
當尾村豐福村豐川村杉合村
天草郡ノ內
登立村維和村上村中村湯島村
熊本縣ノ內
上益城郡ノ內
御船町甲佐町木町町河村島倉村
高木村宮內村飯野山村秋濱村津森原村大木村
乙女村下矢部村七瀧津村廣安村御嶽村
御船六嘉村
中島村白旗村龍野村福田村白糸村瀧川村
名連川村瀧尾村水越村豐秋村陣村小坂村
下益城郡ノ內
隈庄町中山村豐野村年禰村東砥用村四砥川村
杉上村豐田村
同表中八代區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
代熊本縣ノ内
八八代郡葦北郡
熊本縣ノ內
人吉球磨郡
同表中鹿兒島區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
鹿兒島縣ノ內
鹿兒島市鹿兒島郡姶良郡伊佐郡熊毛郡
日置郡ノ內
鹿兒島下伊集院村中伊集院村上伊集院村郡山村日置村吉利村
永吉村伊作村田布施村阿多村
囎唹郡ノ内
財部村末吉村
覽鹿兒島縣ノ内
知川邊郡揖宿郡
同表中延岡區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
延岡宮崎縣ノ內
東臼杵郡
高千穗宮崎縣ノ内
西臼杵郡
同表中那覇區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
那覇沖繩縣ノ內
那覇區首里區島尻郡中頭郡國頭郡
平良沖縄縣ノ内
宮古郡八重山郡
同表中仙臺區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
仙臺宮城縣ノ內
仙臺市宮城郡名取郡黑川郡
大河原宮城縣ノ內
柴田郡亙理郡伊具郡刈田郡
同表中山形區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
山形縣ノ內
山形市南村山郡東村山郡西村山郡北村山郡
山形東置賜郡ノ内
中川村
新庄山形縣ノ內
最上郡
同表中盛岡區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
巖手縣ノ內
盛岡盛岡市巖手郡紫波郡稗貫郡和賀郡
膽澤郡ノ內
相去村
二戶巖手縣ノ內
二戶郡九戶郡
同表中遠野區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
遠野巖手縣ノ內
上閉伊郡氣仙郡
同表中一關區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
巖手縣ノ內
西磐井郡東磐井郡江刺郡
一關膽澤郡ノ内
水澤町前澤町佐倉河村眞城村印紙所山田洋
古城村衣川村小山村南都田村我們語本田町
金ケ崎村
同表中秋田區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
秋田縣ノ內
秋秋田市南秋田郡河邊郡
田由利郡ノ內
下濱村
能代秋田縣ノ內
山本郡
同表中靑森區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
靑森縣ノ內
靑森市東津輕郡下北郡
靑森上北郡ノ內
七戶町野邊地町橫濱村天間林村甲地村浦野館村
大深内村六ヶ所村
靑森縣ノ內
北津輕郡
五所川原中津輕郡ノ內
新和村
南津輕郡ノ內
畑岡村
同表中弘前區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
靑森縣ノ內
弘前市
中津輕郡ノ内
〓水村和德村豐田村堀越村千年村駒越村
岩木村相馬村東目屋村西目屋村藤代村大浦村
弘前船澤村高杉村裾野村
南津輕郡ノ内
黑石町女鹿澤村富木舘村野澤村村浪岡村
五〓村六〓村十二里村第一章印町尾藤大居上崎杉村光田寺村
田舍舘村中〓村山形村税額 村金田村
淺瀨石村大光寺村柏木町村(昭和村尾崎村
石川村大鰐村藏舘村碇ヶ關村
鰺ケ澤靑森縣ノ內
西津輕郡
同表中函館地方裁判所ノ部ニ左ノ一項ヲ加フ
壽都北海道ノ内
壽都郡磯谷郡歌葉郡島牧郡
同表中岩內區裁判所ノ項ヲ左ノ如ク改ム
北海道ノ内
岩內岩內郡古宇郡
虻田郡ノ內
倶知安町東倶知安村眞狩村喜茂別村狩太村
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前從前ノ管轄栽判所ニ於テ受理シタル事件ハ其ノ裁判所ニ於テ之
ヲ完結ス
〔國務大臣松室致君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=39
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040・松室致
○國務大臣(松室致君) 裁判所設置ニ關スル法律案、政府提出ノ理由ヲ述べ
やく、是ハ先刻柳澤伯爵カラ御質問ニ對シテ御答ヲ致シテ置キマシタ所ニ總
テ含ンデ居リマスカラ、唯一言申上ゲテ置キマス、土地ノ狀況ト交通ノ便否
ヲ計リマシテ、此四十六箇所ト云フモノヲ選定イタシテ提出イタシタ譯デア
リマスカラ、何卒御協賛アラムコトヲ希望イタシマスソレカラ大正二年第
九號法律中改正案、是ハ唯今述べマシタ裁判所ノ設置ニ付キマシテ、目下現
行ノ裁判管轄ヲ改正セナケレバナラヌ、ソレニ付テ起リマシタ法律案デアリ
マス、是ハ矢張リ裁判所ノ設置ニ關スル法律案ト相離ルベカラザルモノデア
リマス、別ニ理由ハ述ベマセヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=40
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041・江木千之
○江木千之君 此席ヨリ質問イタシタイト思ヒマス、此問題ニ付キマシテハ
先刻豫算案ニ關聯イタシマシテ柳澤伯爵ヨリ質問ガ出マシテ、當局大臣ノ御
答ガアリマシタガ、質問者ニ於テモ此答辯ニ付テハ滿足セヌト云フコトデア
リマシタ、私ハ其質問ト同樣ノ質問ヲ致スノデアリマスガ、此事タルヤ、現
內閣ノ財政方針ノ根本ニ觸レル所ノ問題ヲ含ンデ居ルト考ヘルノデアリマス
カラ、寧ロ大藏大臣ノ御答ヲ受ケタイト考ヘルノデアリマスガ、此裁判所ヲ
廢止イタシマスルコトハ山本內閣ト申シテ宜シイカ、政友會內閣ト申シテ宜
シイカ、當時行政整理ノタメ裁判所構成法マデ改正イタサレタノデアリマ
スガ、此裁判所構成法ナルモノハ申スマデモナク殆ド國家組織ノ根本ヲ成ス
ト申シテ宜シイノデアリマスガ、ソレヲスラ改正ヲ致シテ、サウシテ行政整
理ノ爲ニ金ヲ生ミ出ス、其金額タルヤ誠ニ僅カナモノデアッテ、數十万圓ニ過
ギナイノデアリマス、是ハ斯ノ如キ改正マデ致シテ金ヲ出ス外ナイカト云フ
コトヲ、當時松田司法大臣ニ色〓尋ネテ見タノデアリマスガ、他ニ途ガナイ、
又此行政整理ナルモノハ軍備充實ノ爲ニ資金ヲ要スルノデ、已ムヲ得ヌ次第
デアルト云フノデ、我〓ハ少シ躊躇イタシマシタガ、松田司法大臣ノ英斷、
熱心ヲ以テ行政整理ニ當ラレルト云フ趣意ヲ諒トシテ、我〓ハ賛成ヲ致シタ
ノデアリマス、裁判所ヲ廢スレバ不便ニナルト云フコトハ是ハ其當時カラ分ツ
テ居ルノデアリマシタガ、此不便ハ忍バナクテハナラスト云フノデ斷行イタ
シタノデアリマス、ソレデ其行政整理ヲ致シマスルト、モウ其翌年ノ議會ニ
裁判所設置ノ請願ガ出テ參ヲテ、此貴族院ノ議場ニモ現ハレタノデアリマス
ガ、我〓ハ既ニ行政整理ニ贊成シテ之ヲ廢止スルコトヲ是認シテ居ルノデ、
本年之ヲ又復活スルト云フヤウナコトハ假令政府ノ參考ニスル請願ト雖モ之
ヲ採擇スルコトハ出來ヌト云フノデ、此議場ニ於テハ不採擇ニナッタ位ノコ
トデアリマシタ、其後ハ政府モポツ〓〓提案ヲサレテ、本院ニ於テモ已ムヲ
得ズ協賛イタシタコトモアルト云フコトデ、幾分カ緩ンデハ參ッテ居リマス
ルガ、本員等モ當時行政整理ノ精神、他ニ害ガナケレバ之ヲ舊ノ有樣ニ復ス
ルガ宜カラウト考ヘマスルガ、偖今日ノ財政ノ狀態ハ如何デアルカ、此山本
內閣ノ斷行、英斷ハ軍備充實ノ爲ニ金ガ要ルノデ、已ムヲ得ズ致シタコトデ
アル、然ルニ今日ハ軍備ノ充實ハ果シテ出來ルカドウカ、其後ノ狀態ヲ見マ
スト二個師團增設ハ行ハレタ、行ハレタガ是ハ一時當局者ガ下手ナコトヲシ
タノデ殆ド手ガ著ケラレヌ有樣デアッタノデアリマス、本院ノ如キ二筒年バカ
リ此事ニ付テハ當時盡力サレテ漸ク成立ッタト云フ譯デアリマス、海軍ノ充
實ノ如キハ果シテドウデアリマスカ、唯〓ノ海軍大臣ハ今日提案ニナッテ居
ル所ノ八四艦隊ハ、此冬ノ議會マデニハ之ヲ或ハ八八艦隊ニスルカ、若クハ
此主力艦隊ハ八四艦隊ニ止メテ、附屬艦隊·········奇襲部隊、卽チ驅逐艦、潜航
艇ト云フ方ニ專ラ力ヲ盡スコトニスルカ、此二途ニ付テハ冬ノ議會マデニ講
究シテ、冬ノ議會ニ必ズ之ヲ決定シテ提案スルト云フ意見ヲ有ッテ居ラレル
ヤウデアリマスガ、此事ガ行ハレルトスレバ非常ナ財源ヲ要スルコトハ今喋
々ヲ俟タヌ次第デアリマス、又玆ニ提案ニナッテ居リマス所ノ此際追加ニナ
ル所ノ二億六千万圓、是ハ何ニ計算ガ基イテ居ルカト云フト、從來ノ物價ヲ
標準ニシテ居ル、今日ノ物價ニ照シテ此通リノ金額デ實行ノ出來ヌト云フコ
トハ明カニ見エテ居ルノデアル、或ハ三割カラノ增額ヲ要シハセスカト考ヘ
ルノデアリマスガ、サウ云フ分リ切ッタコトマデモ經費ノ增額ヲセズシテ以前
ノ單價ヲ以テ算出シタ豫算ヲ提出シテ居ラレル、是ハ今後增費ヲ要スルコト
ハ明カナコトデ、陸軍ニ付テ今日御尋スルノハマダ時機ガ早カラウト考ヘマ
スガ、陸軍ノ如キモ將來非常ナ改革ヲ要スルデアラウト云フコトハ、本員ハ
大體ニ於テサウ考ヘテ疑ハヌノデアリマスガ、山本內閣ガ實ニ汗水ヲ流シテ
此行政整理ヲ爲シテ絞リ出シタ金デアリマス、ソレハ軍備充實ヲ目的トシテ
ヤッタコトデアルガ、其軍備充實ト云フモノハ前途ドウナルノデアルカ、其費
用ハ如何ニシテ供給スルノデアルカト云フコトハ、本員等ハ豫算ヲ請取ッテ以
來講究シテ居ルケレドモ、未ダドウナルト云フコトノ考ヲ定メルコトガ出來
ナイノデアル、然ルニ裁判所ハ必要デアル、便利デアル、斯ウ云フノデ先キ
ノコトハ極メズシテ先ヅ裁判所ノコトヲ圖ラルルト云フノハ或ハ先代ガ辛棒
シテ貯メテ置イタ金ヲ相續者ガ氣樂ニ使ッテ、且ツ將來ノコトヲ餘リ考へヌノ
デハナイカト云フヤウナ疑ヲ免レヌノデアリマスガ、此點ニ付テ大藏大臣ハ
我〓ガ明瞭ニ之ヲ了解スルコトガ出來ルヤウニ御說明ヲ願ヒタイト考ヘル
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=41
-
042・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 唯今江木サンヨリノ御尋ハ至極御尤ナ御尋デゴザ
イマシテ、財政經畫ノ將來ニ關シマシテ政府ハ大體ニ於テ相當ナ豫見識見ヲ
有ッテ居ラナケレバナラスト云フコトガ、詰リ根本ノ要義ヲナシテ居ッタヤウ
ニ考ヘラレマスルガ、其點ニ付テハ至極御尤デゴザイマス、然ルニ御承知ノ
如ク現內閣ガ成立イタシマシテ、其當初ニ於キマシテハ前內閣ニ於キマスル
所ノ豫算ヲ踏襲スルノ已ムヲ得ザル狀態デゴザイマシタ、其後唯今此特別議
會ヲ開イテ居リマスルガ、此議會ニ於キマシテモデス、御承知ノ通リニ種々
ナル將來ニ亙ル經畫ヲ致シテ、之ヲ提出スルト云フ性質ノモノデモゴザイマ
セヌデ、ソレデ先ヅ緊急已ムヲ得ザルモノヲ拾上ゲテ此處デ皆サンノ御協贊
ヲ經テ居ルト云フ場合デアリマスルノデ、此豫算ヲ編製シマスル場合ニ於テ
モ將來ノコトニ付テ考ヘヌト云フコトデハアリマセヌガデス、免ニ角現内閣
ト致シマシテ豫算ヲ本當ニ編製シテ斯樣ナ方法デ將來ハ斯樣ニヤルト云フコ
トハ七年度ノ豫算ヲ編製スル場合デナケレバ甚ダ困難ナンデアリマス、詰リ
御話ノ如クニ此海軍ノ物價騰貴ノ問題デアルトカ、或ハ是以上ノ尙ホ國防ノ
問題デアリマスルトカ、或ハ其他國力ノ發展ニ必要ト致シマスル問題デアリ
マストカ、各種ノ時局竝ニ我國ノ將來ニ適應スベキ所ノ問題ガデス、アルダ
ラウト考ヘテ居リマスノデ、是等ノ問題ヲ詰リ此七年度ノ豫算ヲ要求イタシ
マスル場合ニハ能ク〓究調査ヲ致シマシテ、サウシテ此財源ノ振當テヲシ、
或ハ其場合ニ適當ナル財源ヲ求ムルコトノ必要ノアリマスルモノハ其方法手
段ヲ講ジマスルシ、或ハ不必要ナル政費ガアリマスレバ是亦相當ニ整理イタ
シマスルト云フヤウナコトデ、此場合ニヤラナケレバドウモ今日ヨリ致シマ
シテ豫メ之ヲヤルト云フコトハ餘程困難ナル事情ガアルト云フコトハ、是ハ
江木君モ御諒察下サルコトデアラウト私モ考ヘマスルノデス、ソレデ決シテ
政府ハ放漫ナルヤリ方ハ致シテ居リマセヌノデ、一旦此行政整理ニ於キマシ
テ整理サレタルモノヲ復活イタシマスルヤウナ場合ニ於キマシテモ、餘程愼
重ナル考慮ヲ詰リ費シテ居リマスルノデ、御承知ノ通リ行政整理ヲ致シマシ
タ時ノ其事情竝ニ其時ノ各種ノ狀況ト今日トハ又餘程趣ヲ異ニシテ居リマス
ルノデ、今日ハ此臨時事件等ノ爲ニ各般ノ方面ニ於キマシテ色〓此復舊ヲ要
シマスルヤウナ事柄ガアリマスルノデ、左樣ナコトハ非常ナル必要ノアル場
合ハデス、是ハ特ニ矢張リ認メマセヌト云フト國家ノ詰リ行政ヲシテ行キマ
スル上ニ付テ其進行ガ鈍ルト云フコトニナリマスルカラ、已ムヲ得ズ詰リ復
活ヲ致シテ居ル次第デアリマシテ、唯漫然ト之ヲ復活ヲ致スト云フヤウナヤ
リ方ハ決シテ致シテ居リマセヌノデアリマス、尙ホ特ニ此裁判所ヲ復活イタ
スト云フコトニ付キマシテノ其必要ナル理由ハ是ハ寧ロ私ヨリ述ベマスルヨ
リハ、司法當局ヨリ致シテ詳シク御說明ニナル方ガ適切ニ要領ヲ得ラレルト
私ハ考ヘマスルノデ、大體財政ノ當局ト致シマシテ考ヘテ居リマスル次第ハ
大體右ノヤウナ事柄デアリマスカラ、左樣御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=42
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043・江木千之
○江木千之君 委細ハ豫算委員會ノ節ニ御尋ネスルコトニシマシテ質問ハ是
デ打切ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサ
セマス
〔成瀨書記官朗讀〕
裁判所ノ設立ニ關スル法律案外一件特別委員
伯爵吉井幸藏君子爵勘解由小路資承君子爵松平直德君
男爵新田忠純君男爵二條正麿君森山茂君
加太邦憲君古賀廉造君江木翼君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 休憩ヲ宣〓イタシマス
午前十一時五十六分休憩
午後一時九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、日程第十三、北海
道拓殖鐵道建設費利子支出ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會
北海道拓殖鐵道建設費利子支出ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
北海道拓殖鐵道建設費利子支出ニ關スル法律案
北海道拓殖事業促進ノ目的ヲ以テスル鐵道建設ノ爲帝國鐵道會計法第二條
第一項ノ規定ニ依リ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲ストキハ豫算ノ定ムル所
ニ依リ其ノ利子ノ全部又ハ一部ニ相當スル金額ヲ北海道拓殖費ヨリ支出ス
ルコトヲ得
前項ノ金額ハ之ヲ帝國鐵道特別會計ニ繰入ルヘシ
〔國務大臣男爵後藤新平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=46
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047・後藤新平
○國務大臣(男爵後藤新平君) 玆ニ提出ニナリマシタ、北海道拓殖鐵道建設
費利子支出ニ關スル法律案ノ大要ノ說明ヲ申上ゲマス、北海道ノ拓殖ノ計畫
十五年計畫ナルモノハ既ニ御承知ニナッテ居ル通リデゴザイマスルガ、
是ハ明治四十三年ノ所定ニ係ッテ最早七箇年ヲ經過イタシテ居リマス、其實
績ハ豫期ノ如クナリマセヌ、依ッテ此度改正ヲ加ヘテ拓殖ノ進捗ヲ計ラウト云
フコトニナリマシテ、殊ニ交通ノ機關ノ整備ハ此拓殖ノ進捗ヲ計ルノニ最モ
必要デアルト云フコトニ相成リマシタ、然ルニ其鐵道院ノ計畫ニ依リマスト
根室外二線ノ鐵道院ノ計畫ハ大正十五年ニナラヌケレバ著手ガ出來マセヌノ
デアリマスガ、之ヲ繰上ゲマシテ著手ヲナシ、又新タニ旭川線外四線ヲ加ヘ
テ拓殖ニ便ズルヤウニシヤウト云フコトニ相成リマシタ、此成功ヲ大正十年
度ヨリ十三年度ノ間ニ進行スルヤウニ致シマシテ、其繰上ノ爲ニ生ズル所ノ
利子ハ北海道ノ拓殖費ヨリ特別會計、卽チ鐵道ノ特別會計ニ補フコトニナリ
マシタ、サウシテ速成イタサウト云フノガ本案ノ趣旨デアリマス、要スルニ
鐵道院ノ計畫ニ依リマスト早ク著手スルコトノ出來ナイモノヲ北海道ノ拓殖
ノ爲ニ特ニ拓殖ノ鐵道卽チ輕便鐵道ヲ架設イタシマスルニ付キマシテハ、ソ
レダケ早ク成功スル年限ノ間ニ要スル利息ヲ拓殖費用ヨリ支辨シヤウト云フ
コトノ爲ニ此法律案ヲ提出イタシマシタ、御協賛ヲ得タ上デ遂行イタシタイ
ト云フノデアリマス、御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀セシメマス
〔成瀨書記官朗讀〕
北海道拓殖鐵道建設費利子支出ニ關スル法律案特別委員
伯爵〓棲家〓君子爵伊東祐弘君江木千之君
岡喜七郞君渡正元君男爵外松孫太郞君
男爵千秋季隆君西久保弘道君木本源吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十四、輕便鐵道補助法中改正法律案、政府
提出、衆議院送付、第一讀會
輕便鐵道補助法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
輕便鐵道補助法中改正法律案
輕便鐵道補助法中左ノ通改正ス
第三條第一條ノ補助金ノ年額ハ最高百五十萬圓トス
附則
本法ハ大正六年度ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員男爵後藤新平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=49
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050・後藤新平
○政府委員(男爵後藤新平君) 玆ニ提出ニナリマシタ輕便鐵道補助法中改正
ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、此輕便鐵道補助法ハ御承知ノ通リ、制定イタシ
マシテカラ今日マデ其儘ニナッテ居リマシテ、何等改正ヲ加ヘマセヌ、併ナガ
ラ法律ノ一部ハ改正セラレテ········金額ニ於テハ改正イタシマセヌケレドモ法
律ノ一部ハ改正セラレマシテ補助ノ年限ガ倍ニナッテ居リマス、五年ノ補助年
限ノモノガ十年ニナリマシタ、而シテ其補助ノ金額ハ今日マデ改正セラレヌ
デアッタノデアリマス、然ルニ此補助法案ガ出マシタ當時ニ於テハ此百二十五
万圓ノ金額デハ到底補助ニ足リナイデアラウ、澤山願ヒ出テ來ルデアラウト
云フ考デアリマシタガ、却ッテ法律ノ改正ニ於テ餘リニ嚴ニ過ギタ爲ニ補助ヲ
願ヒ出ヅル者ガ少イト云フノデ、目的ヲ達スルコトガ出來マセヌノデアリマ
シタカラ、五年ヲ七年ト致シ其計算法等ニ付テ多少ノ修正ヲ加ヘマシテ、唯
金額ハ其儘ニナッテ居リマスガ、此度百二十五万圓ヲ百五十万圓ト改正スルコ
トハ當然ノコトデアリマスカラ、必要ニ迫ッテ居ルガ爲ニ本案ヲ提出シタノデ
アリマス、御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=50
-
051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ御報告ニ及ビマス
〔成瀨書記官朗讀〕
輕便鐵道補助法中改正法律案特別委員
子爵酒井忠亮君子爵野村益三君黑岡帶刀君
男爵竹腰正己君男爵藤大路親春君男爵岩倉道倶君
江原素六君石橋謹二君星島謹一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十五、軍人恩給法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會
軍人恩給法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院ノ修正、
ハ同削除ノ符號ナリ
軍人恩給法中改正法律案
軍人恩給法中左ノ通改正ス
第十條中「軍人前條ニ該當スル傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルトキノ現官
階」ヲ「第六條ニ依ル官階」ニ改ム
同條第一號中「戰鬪ノ爲」ヲ「戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因リ」ニ改ム
第十四條第一號中「戰鬪ノ爲」ヲ「戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因リ」ニ改ム
第十五條中「前條ニ該當スル傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルトキ」ヲ「現役
ヲ離レタルトキ」三六人
第十八條中「、海軍水雷夫及北海道移住ノ際定規ノ給助ヲ受ケタル屯田兵下
士卒」ヲ「及海軍水雷夫」ニ改メ同條ニ左ノ一號ヲ加フ
八北海道ニ移住ノ際定規ノ給助ヲ受ケタル屯田兵下十卒ニシテ從軍シ
又ハ屯田兵村監視若クハ屯田兵部隊附トナリ軍隊ノ常務ニ服シタル
トキハ其日數
第二十七條第一號ヲ左ノ如ク改ム
ー戰死シ又ハ戰鬪若クハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因ル傷痍ノ爲メ死歿シタルトキ
第二十七條ノ二第十條、第十四條及前條ノ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因ル傷痍ニ關シテハ勅令ノ定ム
ル所ニ因ル
附則
本法ハ大正七年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十八條第八號ノ改正規定ハ本法施行前ニ現役ヲ離レ又ハ現役中死歿シタ
ル者ニモ之ヲ適用ス
前項ノ規定ニ該當スル者又ハ其ノ遺族ニシテ本法施行ノ際本法規定ノ退職
恩給、免除恩給、增加恩給又ハ扶助料ヲ受ケサル者ニハ本法施行ノ日ヨリ
本法規定ノ退職恩給、免除恩給、增加恩給又ハ扶助料ヲ給ス
本法施行ノ際退職恩給又ハ免除思給ト增加恩給トヲ併セ受ケ又ハ受クヘキ
者ニシテ本法規定ノ金額ヲ受ケサル者ニハ本法施行ノ日ヨリ本法規定ノ金
額ヲ給ス
本法施行ノ際扶助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニシテ本法規定ノ金額ヲ受ケサ
ル者ニハ大正九年一月一日ヨリ本法規定ノ金額ヲ給ス但シ下士以下ノ者ノ
遺族ニハ本法施行ノ日ヨリ大正七年十二月三十一日迄ハ本法施行前ノ規定
ニ依リ受ケ又ハ受クヘキ金額ニ該金額ト本法規定ノ金額トノ差額三分ノ
ー、大正八年一月一日ヨリ大正八年十二月三十一日迄ハ同上ノ差額三分ノ
二ヲ併給シ准士官以上ノ者ノ遺族ニハ大正八年一月一日ヨリ大正八年十二
月三十一日迄ハ本法施行前ノ規定ニ依リ受ケ又ハ受クヘキ金額ニ該金額ト
本法規定ノ金額トノ差額二分ノ一ヲ併給ス
本法施行ノ際退職恩給又ハ免除恩給ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニシテ本法規定
ノ金額ヲ受ケサル者ニハ大正十一年一月一日ヨリ本法規定ノ金額ヲ給ス但
大正八年一月一日ヨリ大正八年十二月三十一日
シ大正十年一月一日ヨリ大正十年十二月三十一日迄ハ本法施行前ノ規定ニ
〓八分ノ一、大正
依リ之ケ又ハ受クヘキ余爼ニ該余新ト未法規足ノ金額トノ差額ら二
九年一月一日ヨリ大正九年十二月三十一日迄ハ同上ノ差額八分ノ二、大正十年一月一日ヨリ大正十
年十二月三十一日迄ハ同上ノ差額八分ノ四
ヲ併給ス
前三項ノ場合ニ於テ陸軍卒ニ付テハ陸軍一等卒ノ額ニ依ル
第四項乃至第六項ノ規定ハ第三項ノ規定ニ依リ退職恩給、免除恩給、增加
恩給又ハ扶助料ヲ給スル者ニ之ヲ適用セス
本法施行ノ際陸軍武官傷痍扶助及ヒ死亡ノ者祭粢竝ニ其家族扶助〓則、海
軍退隱令又ハ陸軍武官恩給令ニ依リ扶助料、退隱料又ハ恩給ヲ受ケ又ハ受
クヘキ者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ第四項乃至第六項ノ規定ニ準シ本法規
定ノ金額ヲ給ス
前項ノ規定ニ依リ退隱料又ハ恩給ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ノ遺族ニハ前項ノ
規定ヲ準用ス
第五項又ハ第九項ノ規定ニ依リ扶助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ者權利消滅シタ
ル場合ニ於テ轉給ヲ受クヘキ者ニ給スヘキ扶助料ニ付テハ第五項ノ規定ヲ
準用ス
第三項ノ規定ニ依リ新ニ退職恩給、免除恩給、增加恩給又ハ扶助料ヲ受ケ
ムトスル者及第三項乃至第六項又ハ第九項ノ規定ニ依リ金額ノ增加ヲ受ケ
ムトスル者ハ本法施行ノ日ヨリ七年內ニ之ヲ請求スルニ非サレハ其ノ權利
ヲ抛棄シタルモノトス
第十項又ハ第十一項ノ規定ニ依ル扶助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ハ轉給ヲ受
クヘキ事由ノ生シタル日ヨリ七年内ニ金額ノ增加ヲ請求スルニ非サレハ其
ノ權利ヲ抛棄シタルモノトス但シ大正九年一月一日以後ニ於テ轉給ヲ受ク
ヘキ事由ノ生シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
〔國務大臣大島健一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=52
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053・大島健一
○國務大臣(大島健一君) 軍人恩給法中ノ改正案ハ先年來本議院ニモ提出セ
ラレマシテ皆サンモ御承知ノコトト存ジマスル、一應簡單ニ改正スベキ點ヲ
申述ベマス、此案ノ改正スベキ點ハ一一ツデアリマシテ、從來各種ノ恩給額ハ
屢改正セラレマシテ順次殖エテ參リマシタ故ニ、目今恩給ヲ受ケテ居ル者
ガ各種ノ恩給ヲ受ケテ居ルト云フ有樣デ、之ヲ現今ノ恩給額ニ一樣ニ支給ヲ
受クルヤウニ致シタイ、但シ其金額ガ三百万圓程增加セヌケレバナリマセヌ
ノデ、一時ニ此資源ヲ見出スコトガ出來マセヌノデ、五箇年ニ亙ッテ最初ハ不
具癈疾者、次ニ下士以下ノ遺族扶助料、次ニ准士官以上ノ遺族扶助料ト云フ
順序デ、低イ程度ヨリ先ニ支給スルコトニ致シタイト云フノデゴザイマス、
ソレカラ今一ツハ豫備屯田兵村ニ勤務ヲ致シマシタ豫備屯田兵ノ者ガ尙ホ若
干殘ッテ居リマス、ソレ等ノ中屯田ノ業務ヲ擲シテ其兵村ニ於ケル兵村監視若
クハ部隊附等ヲ現役ノ者ト共ニヤッテ居ル者ガアリマス、人員ハ僅デアリマス
シ、金額モ僅ニ二千圓ヲ支給シテ········以内ノモノデアリマス、是ハ全ク現役
者ト同ジ軍務ニ從事シタモノデアルカラ、ソレノ服役年限ヲ恩給ノ中ニ加ヘ
算シテヤルト云フコトニ改メタ、最後ニ戰傷若クハ公務ニ依リマシタ傷痍ノ
程度ニ依リマシテ增加恩給ヲ支給シ、若クハ救恤金モ與ヘマス、其程度ヲ策
定シマスノヲ負傷當時ノ階級ニ依ルコトニナッテ居リマシタガ、實際其傷痍者
ガ職務ヲ離ルヽ時ノ官等ニ依ッテ恩給ト共ニ之ヲ調査シ策定スルノヲ至當ト
認メマシテ、職務ヲ離レル時ノ官等ニ依ルコトニ改メマシタ、此三點デゴザ
イマス、ドウカ御審査ノ上御協賛ヲ賜ハラムコトヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=53
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054・江木千之
○江木千之君 一應政府委員ニ承ハリタイト思ヒマス、其上デ尙ホ當局大臣
ニ質問ヲ致スコトガアルカモ知レマセヌ、今度改正案ニ依リマシテ例ヘバ下
士ノ者デ一ツ承ッテ見タイノデアリマスガ、現行法ニ依ルト下士ノ癈兵タル
者、或ハ兩手ヲ失ッテ居ル者、或ハ兩足又ハ一本足ヲ失ッテ居ル者、斯ウ云フ
者ニ支給サレル恩給ノ額ハ退職恩給ト增加恩給ヲ合シテ之ヲ月額ニスルト凡
ソ十四圓足ラズニナルヤウニ考ヘマスガ、果シテ此改正案ニ依ッテモ其通リ
デアルカト云フコトヲ確メテ置キタイ、一年ニ六十圓ニ八十圓カ、六十五圓
ニ八十五圓デアリマスカ、免ニ角一箇月ニ割ッテ十四圓足ラズニナルカト考
ぐらソレカラ尙ホ此癈兵ニ對シテハ皇后陛下ノ厚キ思召ニ依ッテ義足ヲ
賜ッテ居ル、此義足ハ之ヲ頂戴シタ者ガ實際ニ用ヒテ居ル者ガ幾何、何割位ア
ルト云フコトハ御調ベニナッテ居リマスカ、本員ノ見ル所デハ之ヲ用立テテ步
行シテ居ル者ハ誠ニ小部分ノ者ノヤウニ思ハレル、ナカ〓〓此チヨット義齒ヲ
スルニモ型ヲ取ッテ嵌メルヤウニシテモ齒ハ能ク適當シナイ、軍醫ガ寸法ヲ
取ッテ吳レタ、其寸法デ義足ヲ造ッテ見タ所ガナカ〓〓能ク是ハ適當スルモノ
デハナイ、頂戴シタ義足ハ誠ニ有難イコトデアルト言ッテ床ニ飾ッテ居ル者ガ
多數アルヤウニ考ヘル、之ヲ實際ニ用ヒテ步行ノ用ニ供シ、或ハ義足ノアル
爲ニ多少ノ職業ヲ營ムコトガ出來ルト云フヤウナ者ガ凡ソ何割ニナッテ居ル
カト云フコトヲ先ヅ伺ヒタイト考ヘル
〔國務大臣大島健一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=54
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055・大島健一
○國務大臣(大島健一君) 江木君ノ御質問ニ御答イタシマス、唯今ノ、第
ノ御質問ノ兵ノ給與額ガ之ニ依ッテ變ルカドウカト云フ御尋デアリマシタガ
〔江木千之君「之ニ依シテ月額ガ幾ラニナルカ」ト述フ〕
各種ノ等級ガアリマスガ、陸軍二等卒デ恩給ガ六十圓、ソレカラ此增加恩給
ニナリマスト御承知ノ通リ各項ニ依ッテ違ッテ居リマスガ、其一番低イ一肢ヲ
失ウタニ等シキ、卽チ一肢ヲ失ウタ者ニ準ズベキモノガ二十四圓、ソレカラ
其第一項ノ兩眼ヲ盲シ若クハ兩肢ヲ失ッタト云フヤウナノハ八十三圓ト云フ
モノニナッテ居ル、合セテ百四十三圓ト云フモノニナリマス、是ハ何カ表デデ
モ差上ゲルコトニ致シマス、各階級ガアリマス·
〔江木千之君「イヤ一例ヲ擧ゲレバ宜イ」ト述フ〕
ソレハ兵ノ眞中ノ所ヲ申上ゲマシタ、ソレカラ陛下ヨリ賜ッタ所ノ義足ト云
フ御話、是モ私ハ能ク調ベテ居リマセヌ、相濟マヌコトデアリマス、全國ニ
隨分多數戴イテ居ラウト思ヒマスソレハドノ位實際ニ之ヲ用ヒ、ドレ位ガ
他ニ又造ッテ持ッテ居ルカト云フコトハ實ハ私ハ此處デ御答ヘスルダケノ材料
ヲ持ッテ居リマセヌ、私ノ所デハ或ハ調査ガアルカモ知レマセヌ、一應調ベマ
シテ御返事ヲ致スコトニ致シマス、私モ床ノ間ニ置イテアルト云フヤウナ話
ハ聞イタコトハアリマス、或ハ非常ナ仁慈ニ感ジテ用ヒズニ仕舞ッテ置クト
云フヤウナ者ガアルヤウニ、ソンナコトヲ聞イタ時ニハ、思ッテ居ッタガ、今
御話ノヤウニ、合ハヌト云フ點ニ付テハ、サウ云フコトハアルマイト思ヒマ
スケレドモ、尙ホ一應取調ベテ御返事ヲ致スコトニシマス、唯今囘ノ戰役ニ
ハ御承知ノ通リ、爾來醫學其他機械學ノ進步ニ依ッテ、非常ニ立派ナ義足其他
ガ出來テ居ルト云フコトモ承知イタシマシテ、〓究モ致シテ居リマス、自然
將來ニハ是等モ良クナリマセウ、今迄トハ違ヒマセウガ、今迄ノ狀況ハ何ト
モ申上ゲルコトハ出來マセヌ、調ベテ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=55
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056・江木千之
○江木千之君 今御答ニ依ッテ見マスルト、本員ガ記憶シテ居ル所ト違ハヌヤ
ウデアリマシテ、下士ニシテ兩方ノ恩給ヲ合シテ一本足或ハ二本ノ足ノナイ
者、兩手ノナイヤウナ者カ受ケル所ノ恩給ハ、十四圓ニ足ラナイ位ノモノデ
アルノデアリマス、是ハ不具者デナケレバ決シテ其味ヒハ分ラヌモノデアリ
マスガ、見タ所デハ義足デモ穿ッテ步イテ居レバ、是ハ完全ナモノヲ用ヒテ居
ルカラ步ケルノデアリマス、下士以下ノ者デ立派ナ義足ナドヲ有ッテ居ル者
ハナイ、終身其身體ニ困ッテ居ル、ソレガ僅ニ十圓餘リデ生活ヲ立テナケレバ
ナラヌ、是ハ到底其扶助者ガナクテ長ラヘテ行クコトハ出來ナイモノデアル、
坐ッテ居ルノニ飯ヲ注ギ込ンデヤレバ數月數年間ハ生キテ居ルカモ知ラヌガ、
中〓生存シテ行クト云フコトハムヅカシイノデアル、一人ノ介抱人ヲ雇フト
スレバ、是ハ貴族ガ雇フノモ、貧乏人ガ雇フノモ、人一人雇フノハ大シタ違
ヒハナイ、同ジヤウニ費用ハ掛ルノデアル、十餘圓ヲ以テ到底是ガ永ラヘテ
行クト云フコトハムヅカシイノデアリマス、本員ガ考ヘル所デハ、少クトモ
一箇年三百圓、月ニ二十五圓位ノ金ガナクテハ迚モ永ラヘテ行クコトハ出來
マイト考ヘルノデアルガ、ソレガ誠ニ憫レナ有樣ヲシテ居ルノヲ見ルト、啻
ニ本人ガ國家ノ爲ニ負傷シタコトハ本人ハ憾トシナイカ知ラヌガ、之ヲ見ル
一般ノ者ハ之ヲ以テ何ト考ヘルカ、或ハ之ヲ見テ戒ニシハシナイカト考ヘル、
兵役ハ國民ノ義務デアルカラ無論兵役ニハ就ク、ケレドモ戰爭デ過ッテ負傷
シタナラバ目ノ前ニ見ル某ノ如キ有樣デ終身ヲ終ヘニヤナラヌト云フコトヲ
見テ、果シテ此一般ノ士氣ヲ奬勵スルコトガ出來ルカ、或ハ反對ニ是ガ國民
ノ戒ニスルヤウナコトニナリハシマイカ、ト云フコトヲ本員ハ憂ヘルノデア
リマスルガ、之ニ今少シ費用ヲ增シテヤルト云フコトハ、殆ド財政上ノ問題
デハナク、誠ニ僅ナ金デアル、唯上カラ下マデ階級的ニ算盤ヲスルト、下ノ
方ヘ行クト非常ニ僅ニナルノデアルガ、上ノ方マデ增セトハ本員ハ決シテ申
サヌノデアル、下ノ方ノ部分デ、兵ナリ下士ナリ、苟モ不具者ガ存在シテ行
クダケノ費用ヲ給スルト云フコトハ、國家ノ義務デハナイカト本員ハ考ヘル、
且又將來ノ爲ニ甚ダ一般ノ者ノ戒ニナルト云フガ如キコトヲシテ置クノハ
甚ダ宜シクナイト考ヘルノデアリマスルガ、別段サウ金ノ問題トハ考ヘマセ
ヌガ、當局大臣ハ此際モウ一步進ンデ之ヲ改正スルノ御意見ハナイノデアリ
マセウカ、此事ヲ承ハリタイノデアリマス、ソレカラ義足ノコトニ付テハ十
分ノ御調ベガ付イテ居ラヌト云フコトデアリマスナラバ、强ヒテ今ソレヲ御
尋スル譯デハアリマセヌガ、是ハ本員ガ見ル所デハ、足ニ合ハヌモノガ···
切斷口ニ合ハヌモノガ多イ、ソレハ殆ド用ヲ爲サヌ、足ハ入齒ヲ爲サッタ御
方ニハ、義齒ヲ拵ヘルニ付テノ御經驗デ能ク分ラウト思フガ、齒デスラ其通
リデアル、此重イ體ヲ持タシテ行ク所ノ義足ガ合ハヌトナレバ、迚モ一步モ
步クコトハ出來ナイノデアリマス、餘ホド是ハツライ、デ之ヲ折角ノ恩賜ガ
用ニ立ツヤウニナサラヌ、現ニ本員ガ承知シテ居ル將校ニシテ義足ガ不十分
デアルノデ松葉杖ヲ以テ運動ヲスルガ、晝間外出スルト子供ガ集ッテ見ル、一
本足ダト言ッテ子供ガ澤山附イテ來ルカラ、ソレヲ厭ウテ夜分運動ヲシテ居
ルト云フ有樣デアル、是ハ國家ノ爲ニ犠牲ニナッタ者ガサウ云フ有樣デ居ル
ノデアリマスルシ、其他兵ノ如キニ至ッテハ、之ヲ扶助スル者モナク介抱スル
者モナク、實ニ憫ムベキ狀態ニアルノデアリマスルカラ、是ハ篤ト御調ベニ
ナッテ、ソレニ對スル處置ヲ講ゼラレムコトヲ私ハ偏ニ希望スルノデアリマス
ルガ、尙ホ此金額ニ付テハ今少シ御奮發ガ出來ヌモノデアルカト云フコトヲ、
當局大臣ノ御意見ヲ承ハリタイ
〔國務大臣大島健一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=56
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057・大島健一
○國務大臣(大島健一君) 江木君ノ御尋ニ御答ヲ致シマス、癈兵其他ノ者ニ
恩給ヲ與ヘルト云フコトハ國家ノ義務デアル、因ッテ相當ニ生活ノ出來ル程度
マデ此金額ヲ上ゲル必要ガアルト認メル、大臣ハ何ト思フカ、斯ウ云フ御質
問ノヤウニ拜聽イタシタ、至極御尤ノ御立論ト思ヒマスル、併シ今囘ノ恩給
法ノ改正ハ、現行ノ額ヲ上ゲルト云フコトニ非ズシテ、現行改正以前ノ、各
種異ッテ居ルモノヲ統一シテ、今囘ノニスル、卽チ高メルコトニハナリマス
ルガ、同ジク國家ニ盡シタモノニ、各種ノ恩給、卽チ其當時ノ規定ニ依ッテ各
種變ヲテ居ルト云フコトハ、平衡ヲ得ヌ規定デアルト云フノデ、現行ノモノニ
一樣ニ改メルノデアリマス、尙ホ江木君ノ御意見ノ如ク我〓モ考ヘマスカラ、
段々生活狀態ガ變ッテ參リマスカラ、增シタイト云フ考ハ有ッテ居リマスガ、
隨分多數ナモノデアリマシテ、其恩給ニ掛ッテ居リマスルモノガ········丁度唯
今總人員ヲ持ッテ居リマセヌガ、前申ス如ク增加シマスルノデアリマスノデ、
增加スベキ人員ダケヲ調ベテ茲ニ持ッテ居リマスガ、ソレガ十九万ト云フヤウ
ナモノニナッテ居リマス、是ハ實際ノ人員ハマダ數多ノ多キモノニナリマス
ガ、人員卽チ戶數ニナリマスガ········此所デ私ガ申スノハ戶數、二人一家カラ
出テ居リマスノハ矢張リ二人デ一戶ニナリマスガ、十九万軒ノモノガアル、
是ガ今度增加スル方ニナルノデ、其外ノモノガマダアラウト思ヒマス、非常
ナ數ノモノデ、之ニ僅カ百圓增シマシテモ非常ナ增加ニナルト云フヤウナコ
トデ、是ニハ十分ノ財源ヲ得ヌケレバ直チニ實行ハ出來ヌコトト考ヘテ、唯
今研究イタシテ居リマス、今囘ノハ現行ノ額ヲ增スト云フ考デナシニ、前申
ス通リ現行ノ額ヲ一樣ニシヤウト云フノデ、改正案ヲ提出シタ次第デアリマ
ス、今囘他ニ出マス所ノ軍事救護法案ニ依ッテ、非常ナ悲慘ナ狀態ニアル者ヲ
救フト云フコトヲ一方ニハ方法ヲ執ッテ居リマスノデ、不具癈疾者ソレ等ノ
遺族等ヲ調ベマシタ所デハ、相當ニ財產ヲ持ッテ居リマシテ、中ニハ百万圓以
上ノ財產ヲ持ッテ居ル者モ若干アリマス、一万圓以上位ノ財產ヲ持ッテ居ル
者ハ可ナリアリマス、ソレデ救護セヌナラヌト云フモノガ二万軒バカリノ者
デ、他ノ案ハ提出シテ居リマス、國家ノ義務カラ言ヘバ一番低イ者ガ全ク
恩給デ生活ガ出來ルト云フコトヲシテヤラネバナラヌガ、ソレハ唯今申スヤ
ウニ非常ナ金ヲ要シマス、已ムヲ得ズ財產ノアル者モアルカラシテ、國家ハ
最モ悲慘ナ狀態ニアル者ヲ先ヅ扶助セヌケレバナラヌト云フノデ救護法案ガ
出マシタ次第デゴザイマス、江木君ガ唯今御話ニナリマシタヤウナ、非常ナ
悲慘ナ狀態ニアリマス者モ、アノ法案ガ出マシタナラバ、アレニ依ッテ一時ハ
凌ガレルト云フコトニナラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=57
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058・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 唯今江木君ノ御質問ノ中ニ皇后陛下カラ賜ッタル義手義
足ノ中ニ役ニ立タヌモノモ混ッテ居ルカノ趣ガ御質疑ノ中ニ出マシタ、之シ
對シテハ啻ニ陸軍大臣ノミナラズ、陸軍ノ數輩ノ政府員ガ居ラレマスニ何カ
一言御答ノアルコトト信ジテ居リマシタガ、豈計ラムヤ之ニ對シテハ調査ヲ
シテ御答ヲスルト云フコトデ、誠ニ驚キ入ッタル御答ト本員ハ存ジマス、ドウ
デゴザイマセウ、抑皇后陛下カ我ガ軍人ノ四肢ヲ失ッタ者ニ義手義足ヲ賜
ハリマシタノハ、明治二十七八年ノ役ガ最初デアリマス、其砌ニハ本員モ軍
務ニ從事イタシテ居ッタノデ、此事ニモ關係イタシテ居リマスガ、或ハ國費デ
義手義足ヲ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 石黑男爵ニ伺ヒマスガ、政府ニ質問ヲ御試ミニナ
ルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=59
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060・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 質問デゴザイマス·······去ナガラ特ニ皇后陛下ノ御手許カ
ラ費額ヲ御支出ニナッテ、義手義足ヲ賜ハルコトニナッテ、ソレガ爲ニハ一々
特ニ陸軍デモ軍醫ヲシテ、一々手足ノ寸尺ヲ能ク正シ作ラセマシタル義手義
足ヲ賜ハリマシタ、成ル程外國ノ例モゴザイマスガ、癈兵ニ供シマス義手義
足ハ極メテ精巧ノモノハ給シテゴザイマセヌ、單純ニシテ修覆ガシ易イ、而
シテ便利ナルモノガ選ンデゴザイマス、ソレヲ此陛下カラ賜ハリマシタ、尤
モ此義手義足ナルモノハ、今日出來マシタモノガ、來年モ宜シイ、再來年モ
宜シイト云フモノデハゴザイマセヌ、人間ハ肥エル者モアリ瘠セル者モアリ
マス、本員ノ如ク老骨イタシマスト、腰ノ曲ル者モ出テ參リマス、故ニ一度
付ケテヤレバ萬歲死ヌマデ役ニ立ツモノデハゴザイマセヌ、然ルニ昭憲皇太
后陛下ガ再度思召ヲ賜ハッタ時ハ、實ニ私ハ淚ヲ流シテ恐入リマシタ、ソレハ
義手義足ヲ賜ハリマシテ十何年カ後ニ於テ、陸軍當局者ヲ召サレテ、前ニ賜ッ
タ義手義足ガ、其中ニハ肥エタ者モアラウガ瘠セタ者モアラウ、現今ハ是ガ
適スルカドウカト云フコトヲ御尋ニナリマシタ、是ハ全ク昭憲皇太后陛下ノ
思召デ其御問ガ出マシテ、サウシテ陸軍當局者ハ爲ニ軍醫ヲ處々方々ニ派シ
テ、其義手義足ノ適合シテ居ルカ不適合デアルカト云フコトヲ一々質シテ、其
思召ヲ以テ或ハ短クシ或ハ長クシテ適合セシメタ所ノ例モゴザイマス、斯ク
マデ昭憲皇太后陛下ガ此事ニハ思召ヲ繫ケサセラレマシタコトヲ、唯今ノ御
質問ニ對シテ一言御報道ノナイノハ、本員頗ル怪訝ニ堪ヘマセヌ、現總理大
臣ハ其砌陸軍大臣デ入ラッシヤッタラウト思フ、何故斯ノ如キコトガアッタノ
ニナゼ御一言ノ報告ヲナラレヌカ、一々之ヲ質シタナラバ不適合ナモノモア
ラウガ、昭憲皇太后ガ賜ッタ義手義足ニハ、斯ノ如キ思召ヲ深ク繫ケサセラ
レタト云フコトガ一言モナイノハ如何ナ譯デアリマスカ、質問イタシマス
〔國務大臣大島健一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=60
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061・大島健一
○國務大臣(大島健一君) 石黑男爵ノ御言葉ニ御答ヲ致シマス、不肖大島ハ
實際承知ヲ致シテ居ラナカッタノデアリマス、誠ニ相濟マヌコトト思ヒマス、
併シ先程申シタ如ク私ノ所ノ專任ノ局ノ者ハ相當ニ知ッテ居リマセウト思ヒ
チャン·取調ベテ御返事ヲシヤウト云フコトヲ申シタノデアリマス、又細カク
申サナカッタデゴザイマスガ、唯今石黑男爵ノ御話ノ如ク人ニハ時ニ依ッテ肥
瘠ガアリ、又或人ハ先程モ申上ゲタ如ク一万以上ノ身代ヲ持ッテ居ル者モ少
クナイノデアリマス、例ヘバ不肖大島ガ足ガ一ツナイト云フ場合ニ賜ッタラ、
私實ハ嵌メナイノデアリマス、ソレ等ハ能ク調ベタ上デ御返事申上ゲヤウト
思ッタノデアリマス、百万ノ身代ヲ持ッテ居リマシテ、義足ヲ頂戴シテ嵌メヤ
ウトハ思ハヌノデアリマス、是モ能ク調べテ御返事ヲ致シマス知ラヌト云
フコトハ甚ダ私ハ相濟マヌト思ヒマスガ、事實知ラナイノデアリマス、左樣
御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=61
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062・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 唯今ノ陸軍大臣ノ御答デ分リマシテゴザイマス、右ノ昭
憲皇太后陛下ノ厚キ思召ヲ以テ、一度嵌メマシタ義手義足ヲ更ニ調査ニ相成
リマシタ時ノ報〓ヲ、ドウカ審ニ議場ニ陸軍大臣カラ御報告アルコトヲ希望
イタシマス、ト云フノハ其中ニ一度義手義足ヲ賜ッテ、ソレヲ自分デ綴クリマ
シテ「プリキ」デ闕ケタノヲ繕ヒ、革ノ剝ゲタノヲ繕ヒマシテ、兩足ニ嵌メマ
シテ、日々行商シテ居ッタ龍泉寺町筆屋某ノ義足ヲ見マシテ私ハ落淚イタシ
マシタ、ソレヲ香川皇后宮太夫ノ手ヲ以テ、ソレヲ陛下ノ御覽ニ入レマシタ
コトガアル、ソレ等モ審ニ御調ニナレバ、賜ハリマシタ義足ヲ下層ノ者ガ如
何ニ使用シテ居ルカト云フコトニ於テ、如何ニ恩惠ニ浴シテ居ルカハ審ニ分
リマス、偶ニ一本ヤ二本ノ使ハナイ者ヲ見テ、陛下ノ賜ッタ所ノ義手義足ガ高
閣ニ束ネラレルト云フヤウナ感ジハ全ク拭ヒ去ル程ノ證據モアリマスカラ、
審ナル御報告ヲ今ヨリ希望イタシテ置キマス
〔國務大臣伯爵寺內正毅君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=62
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063・寺内正毅
○國務大臣(伯爵寺內正毅君) 餘計カモ知レマセヌガ一言石黑男爵ニ御答イ
タシマス、二十七八年ノ戰役後、三十七八年ノ戰役後、又三十三年、ソレ等
ノ間ニ於テ負傷者ニ皇后陛下ヨリ賜ハリマシタ義足ノコトニ付テ、皇后陛下
ヨリ屢御軫念ノ在ラセラレタコトモ承知シテ居リマス、私ハ大體ニ於テ二
十七八年三十七八年ノ戰役ノ調査ニ關係シタコトハ、私ガ陸軍當局者ト致シ
マシテ、陸軍ノ方ハ扱ヒマシタカラ········尤モ二十七八年ハ陸軍ノ首腦部ニ居
リマセヌガ、大體ハ承知シテ居リマス、唯今石黑男爵ノ御話ノ昭憲皇太后陛
下ノ厚キ御仁慈ハ能ク承知イタシテ居リマス、併シ今日ハ直チニ飛出シテ御
返事ヲシマセヌノハ、陸軍大臣ガ主宰シテ居リマス、取調ベテ御返事ヲスル
ト云フコトデゴザイマシタカラ控ヘテ居リマシタガ、此點ハ能ク承知シテ居
リマス、又義足モ人ニ依ッテハ有難ク感ジテ用ヒズニ床ノ間ニ置イタノモア
リマス、又用ヒラレナクテ置イタノモアリマスガ、其當時陸軍ノ人ヲ出シテ
調ベタコトモアリマス、又其地方ノ軍事當局者ヨリ報〓ヲ承ハリマシテ取寄
セテ直シ、或ハ向ウヘ人ヲヤッテ直シタコトモアリマス、單ニ唯今江木君ノ仰
シヤルヤウニ總テガ役ニ立タヌモノヲシタト云フコトハナイノデアリマス、
初メニハサウ云フモノモアリマシタ故ニ、イロ〓〓上ニ於テモ御心配ヲ懸ケ
タコトモアリマス、段々サウ云フ所ヘ注意ヲシマシテ、其邊ニ付テハ一通リ
行屆イテ居リマス筈デアリマス、是ダケ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=63
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064・江木千之
○江木千之君 唯今總理大臣ノ御言葉ニ、江木君モ申サレタ如ク總テガ役ニ
立タナカッタ、斯ウ云フコトガアリマシタガ、本員嘗テ斯ノ如キコトハ申シタ
コトハナイノデアリマス、本員ハ常ニ此不具者デアルガ爲ニ、癈兵ナドニ直
接ニハ伺ヒマセヌガ、頻ニ本員ノ所ヘハ同病相憐ムト云フ感ジガアルモノト
見エマシテ、訴ヘテ來ル者ガアルノデ、承知ハ致シテ居ルノデハアリマスル
ガ實ハ折角賜ハル義足ニ付テモ、尙ホ之ヲ取扱フ人ニ此上ノ注意ヲ望ム點カ
ラ本員ハ申スノデアリマスルガ、本員ハ東京ニ住ヲテ居ッテ、手近ニ職人ガ居
ル、ソレガ本員ノ義足ヲ作ルノニ何遍モ來テ型ヲ取リ、型ヲ取ッテ又ソレヲ拵
ヘラノ、幾度モ手直シヲスルガ、ナカ〓〓是ガ工合好クナルノハ容易ナコトデ
ハナイ、固ヨリ恩賜ノ義足ニ於テ用ヲ達シテ居ルト云フコトハ本員地方官時
代ニ於テ、日〓戰爭ニ於テ賜ッタモノガ、日露戰爭後ニ更ニ賜ハルト云フコト
モアッテ、其職務トシテソレヲ取扱ウタコトモアルノデアリマス、隨分職業ニ
從事シテ、ボロ〓〓ニナルマデ之ヲ使用シタト云フモノモ幾ラモアリマス、併
ナガラ何分是ガ合ハヌト云フノデ床ニ備ヘテ置ク者モアルノデアリマス、近
來此陸軍ニ於テ義足ヲ作ラルヽノニ、此前ノ軍醫學校長ナドハ參考ノ爲ニ本
員ノ製造法ニ付テ調ベタコトモアル位デアリマス、是ハドウゾ私ハ十分ニ御
注意ヲ願ヒタイト云フコトヲ申スノデアリマス、ナカ〓〓此重イ義足デ
或所デハ重イ方ガ宜イナドト云フヤウナコトヲ主張シテ居ル部分モアルヤウ
デアリマスガ、重クテ迚モ步ケルモノヂヤナイ、恩賜ノ義足ハ無論輕イノモ
アリマスルガ重イノモアル、併シ一貫目以上ノ物ニナルトナカ〓〓步行ガ困
難デ、本員ハ常ニ五百目以下ニスルヤウニ自ラ工夫シテヤッテ居ルノデアリ
やく、餘程工夫ヲ凝サヌト是ハ用ニ立タヌモノデアル、折角ノ思召ヲ空シウ
セヌヤウニ、此製造法ニ付テハ十分ニ注意セラルヽヤウニ希望スル餘リ申ス
ノデアリマス、此段ハ一應總理大臣ノ今ノ御答モアリマシタカラ、決シテ本
員ノ申シタコトハサウ云フ譯デナイノデアリマスカラ、更ニ辯明シテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔岡書記官朗讀〕
軍人恩給法中改正法律案特別委員
侯爵細川護立君男爵小澤武雄君子爵五辻治仲君
小野田元凞君男爵村上敬次郞君男爵山内長人君
男爵中溝德太郞君鮫島武之助君佐々田懋君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十六、軍事救護法案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會
軍事救護法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
軍事救護法
第一條傷病兵、其ノ家族若ハ遺族又ハ下士兵卒ノ家族若ハ遺族ハ本法ニ
依リ之ヲ救護ス
第二條本法ニ於テ傷病兵ト稱スルハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ヲ謂フ
-陸海軍下士兵卒ニシテ戰鬪又ハ公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ
之カ爲兵役ヲ免セラレタル者
二前號ニ揭クル者ヲ除クノ外陸海軍下士兵卒ニシテ故意又ハ重大ナル
過失ニ因ルニ非スシテ戰地ニ於テ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ之カ爲
兵役ヲ免セラレタル者
第三條本法ニ於テ下士兵卒又ハ傷病兵ノ家族ト稱スルハ左ノ各號ノ一ニ
該當スル者ヲ謂フ
一陸海軍現役兵、應召中ノ陸海軍下士兵卒又ハ傷病兵ノ配偶者又ハ子
ニシテ現ニ之ト同一ノ家ニ在ル者但シ養子ハ家督相續人ニ限ル
二前號ニ揭クル者ヲ除クノ外陸海軍現役兵、應召中ノ陸海軍下士兵卒
又ハ傷病兵ニ依リ扶養ヲ受クヘキ者ニシテ現役兵ノ入營シタル
時、下士兵卒ノ應召シタル時又ハ傷病兵ノ兵役ヲ免セラレタル時
ヨリ引續キ之ト同一ノ家ニ在ル者
前項各號ノ陸海軍現役兵ニハ未入營現役兵及歸休兵ヲ包含セス
第四條本法ニ於テ下士兵卒又ハ傷病兵ノ遺族ト稱スルハ左ノ各號ノ一ニ
該當スル者ヲ謂フ
-戰死シタル陸海軍下士兵卒又ハ第二條各號ノ傷痍若ハ疾病ノ爲死歿
シタル陸海軍下士兵卒若ハ傷病兵ノ配偶者又ハ子ニシテ現ニ下士兵
卒又ハ傷病兵カ死亡ノ時屬シタル家ニ在ル者但シ養子ハ家督相續人
三郎ノ
二前號ニ揭クル者ヲ除クノ外戰死シタル陸海軍下士兵卒又ハ第二條各
號ノ傷痍若ハ疾病ノ爲死歿シタル陸海軍下士兵卒若ハ傷病兵ニ依リ
扶養ヲ受クヘキ者ニシテ下士兵卒ノ死亡ノ時又ハ傷病兵ノ兵役ヲ免
セラレタル時ヨリ引續キ之ト同一ノ家ニ在ル者
第五條救護ハ現役兵ノ入營、下士兵卒ノ應召傷病若ハ死亡又ハ傷病兵ノ
死亡ノ爲生活スルコト能ハサル者ニ對シテノミ之ヲ爲ス
救護ハ生活ニ必要ナル限度ヲ超ユルコトヲ得ス
第六條救護ノ種類ハ生業扶助、醫療、現品給與及現金給與トス
第七條救護ノ程度及方法ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條傷病兵六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ナル場合ニ
於テハ其ノ者竝其ノ家族及遺族ニ對シ救護ヲ爲サス
第九條下士兵卒又ハ傷病兵六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者ナ
ル場合ニ於テハ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄
ノ間其ノ傷病兵及其ノ下士兵卒又ハ傷病兵ノ家族ニ對シ救護ヲ爲サス
第十條下士兵卒又ハ傷病兵ノ家族又ハ遺族六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑
ニ處セラレタル者ナル場合ニ於テハ其ノ者ニ對シ救護ヲ爲サス六年未滿
ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者ナル場合ニ於テハ其ノ刑ノ執行ヲ終リ
又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ間亦同シ
第十一條下士兵卒ニシテ逃亡シ又ハ陸軍懲治隊ニ收容セラレタル者ニ付
テハ其ノ逃亡又ハ收容ノ間其ノ家族ニ對シ救護ヲ爲サス
第十二條下士兵卒又ハ傷病兵ニシテ怠惰又ハ素行不良ナル者ニ付テハ其
ノ傷病兵竝其ノ下士兵卒又ハ傷病兵ノ家族及遺族ニ對シ情狀ニ因リ救護
ヲ爲サス又ハ救護ノ程度ヲ減少スルコトヲ得
下士兵卒又ハ傷病兵ノ家族又ハ遺族ニシテ怠惰又ハ素行不良ナル者ニ對
シ亦前項ニ同シ
第十三條傷病兵ニシテ日本ノ國籍ヲ失ヒタル者ニ對シテハ救護ヲ爲サス
第十四條下士兵卒又ハ傷病兵ノ家族ニ對スル救護ハ下士兵卒又ハ傷病兵
死亡後仍三月內之ヲ繼續スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ救護ヲ受クル者ニ對シテハ其ノ間下士兵卒又ハ傷病兵
ノ遺族トシテノ救護ハ之ヲ爲サス
第十五條下士兵卒ノ家族ニ對スル救護ハ下士兵卒ノ傷病兵トナリタル後
仍三月內之ヲ繼續スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ救護ヲ受クル者ニ對シテハ其ノ間傷病兵ノ家族トシテ
ノ救護ハ之ヲ爲サス
第十六條本法ニ依ル救護ハ他ノ法令ノ適用ニ付テハ貧困ノ爲ニスル公費
ノ救助ニ非サルモノト看做ス
第十七條本法ニ依リ給與ヲ受ケタル救護金品ヲ標準トシテ租稅其ノ他ノ
公課ヲ課セス
第十八條本法ニ依ル救護金品ハ既ニ給與ヲ受ケタルト否トニ拘ラス之ヲ
差押フルコトヲ得ス
第十九條舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ本法ノ適用ニ付テハ六年
ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣男爵後藤新平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=66
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067・後藤新平
○國務大臣(男爵後藤新平君) 玆ニ提出ニナリマシタ軍事救護法案ニ對シマ
シテ大體ノ說明ヲ申上ゲマス、軍事救護法案ハ傷病兵其家族遺族又ハ下士卒
ノ家族遺族ニシテ生計ノ困難ナルモノニ對シテ救護ヲスルコトニ對シテ其程
度ヲ定メタモノデアリマスルガ、從來之ヲ公私ノ團體ニ委ネテ置キマシタ、
又公私ノ團體其他ノ篤志者ニ依ッテ救護ヲ致シテ居リマシタ、併シ政府ニ於
テモ是ガ注意ヲ怠ッタ譯デハアリマセヌガ、主トシテ是等ノ救護ニ委ネテアッ
タノデアリマスガ、到底今日ノ形勢其救護ヲ以テ滿足スルコトガ出來ヌノミ
ナラズ、非常ナ慘狀ニ陷ヲテ來ル有樣デ、他ニ救護方法ヲ定メナケレバナラヌ
ト云フコトニナリマシタ、是ハ御承知ノ通リ屢〓衆議院ニ於テモ建議案トナ
リ、又一囘ハ法案トシテ通過モ致シタヤウナ次第デアリマス、此度其必要ヲ
認メマシテ、玆ニ提案ヲ致シマシタ、勿論明治三十七年勅令第九十四號ニ下
士卒ノ救助令ガアリマス、併ナガラ是デモ其救護ヲ全ウスルコト能ハザルコ
トハ既ニ諸君ノ御承知ノ通リデアラウト思ヒマス、下士卒家族救助ニ關シマ
シテ斯樣ニ救助令ガアリマシテモ尙ホ足ラヌノデアリマスカラ、此度ハ斯樣
ナル制度ヲ設ケテ救護方法ノ備ハルヤウニ致シテ、士氣ノ振作ヲ計ラウト云
フ次第デアリマス、御審議ノ上協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=67
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068・江木千之
○江木千之君 本案ニ付テチヨット伺ッテ置キタイコトガアリマス、此法案ハ
至極結構ダト考ヘマスルガ、本員ノ多年希望シテ居ッタ所デアリマスルガ、偖
之ヲ實行スル上ニ於テ唯今内務大臣ノ述ベラレタヤウニ、是マデハ公私團體
ノ施設ニ委シテ居ッタト云フコトデアリマスガ、其所謂團體ナルモノト、是ト
ノ關係ガ巧ク參ラヌト、折角ノ此良イ法律ガ實施ノ結果甚ダ面白クナイヤウ
ナコトニナリハシナイカト考ヘル、今日マデ團體ノ施設ノ此法案ニアルガ如
キ輩ニ救助ヲ致シテ居ルモノガアルノデアリマスガ、其善後ハドウナサル積
リデアリマスカ、若シ今日マデノ如ク圍體デ救助ヲシテ居ルモノハ團體ニ委
シテ、其上ニ此法律ニ依ッテヤルト云フコトニナッタナラバ、團體ノ事業ト云
フモノハ衰退シテシマヒハシナイカト考ヘル、ドウセ國ガヤルノデアルナラ
バサウ之ヲ骨ヲ折ッテ見タ所ガ、外ノ仕事ニ手ヲ出シタ方ガ宜イト云フヤ
ウニ或ハ傾キハシナイカト云フ心配ガアル、差向キ愛國婦人會トカ、軍人後
援會ノ如キモノトノ關係ハドウナルデアリマセウカ、此點ニ付テノ大體ノ御
意見ヲ伺ッテ置キタイト思フ
〔國務大臣男爵後藤新平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=68
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069・後藤新平
○國務大臣(男爵後藤新平君) 唯今江木君ノ御尋ノヤウナコトニ付キマシテ
モ考慮ヲ費シタノデアリマス、併シ眞ニ此慈善博愛ノ主義ヨリ湧イテ出タ所
ノ事實ハ國ガ之ヲ始メタカラ棄テルト云フコトハ或ル一部ニ於テハ起ルカ知
レマセヌケレドモ、アルベキ筈ハナイノデアリマスカラ、ソレ等ノモノニ對
シテハ相當ノ方法ヲ以テ此制度ガ發布セラレタ爲ニ惡影響ヲ蒙ラザルヤウニ
シタイト云フ考ヲ有ッテ居リマス、又一方ニ於テ是マデ之ニ盡力シタ公私團
體ニ相當ノ補助ヲシタラ宜カラウト云フ意見モアリマス、又ソレヲ要求シツ
ツアルモノモアリマス、是等ノコトハ能ク攻究シテ宜シキニ制シヤウト思ッテ
居リマス、是ハ玆ニ管〓シクハ申上ゲマセヌガ、唯政府ガソレ等ノコトハ考
慮ノ中ニ置イテ宜シキニ制スル覺悟デアリマスト云フコトヲ申上ゲテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=69
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070・阪本さん之助
○阪本釤之助君 唯今ノ御質問ニ付キマシテ尙ホ少シ補足シテ伺ヒタイト思
ヒマスルガ、現在此傷病兵ト稱スルモノガ何人モ知ツ居テルコトデアリマス
ルガ、市中若クハ村落等ニ參リマスルト、如何ハシイ風體ヲシテ、藥ナドヲ
賣ッテ步イテ居ル、或ハ僞物デハナイカト思フモノモアリマスガ、警察官ガ大
分取締ヲ致シテ左樣ナモノハ彷徨シナイヤウニナッテ居ルダラウト思ヒマス
ガ、果シテ然ラバ矢張リ本當ノ傷病兵デアルダラウト思ヒマス、ソレガ憐レ
ナト云フ感ジヲ以テ迎ヘナクテ、民間デハ厭フベキモノデアル、甚ダウルサ
イモノデアルト云フヤウナ感情ヲ以テ此不幸ナル軍人ヲ迎ヘルヤウニナッテ
居リマスガ、如何ニモ實際サウ感ゼラレルノデアリマス、卽チ此法律ガ行ハ
レマスレバ、左樣ナコトハ一掃シ得ルホド優渥ナ補助ガ出來マスルノデアリ
マスガ、矢張リ政府カラ御手當ハ出ルケレドモ、甚ダ薄イカラ矢張リ食フコ
トガ出來ヌト云フ爲ニ、アア云フ者ガ相變ラズ彷徨スル譯デハアリマスマイ
カ、其邊ハ政府ハ如何ナル御所見デアリマスカ、伺ッテ置キタイト存ジマス
〔國務大臣男爵後藤新平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=70
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071・後藤新平
○國務大臣(男爵後藤新平君) 本案ニ付テノ御尋ノ中ニ傷病兵ノコトヲ主ト
シテ御尋デアリマスルガ、傷病兵ノ家族遺族又現役ノ下士卒ノ家族遺族、之
ニ對シテ軍事救護法ヲ布カレルノデアリマス、而シテ此發布ノ後ニ於テハ唯
今阪本君カラ御述ベニナリマシタヤウナ如何ハシキ、社會ニ於テ忌マレルヤ
ウナ者ハ跡ヲ絕ツカ否ヤト云フコトノ御尋デアリマスガ、若シ其者ガ軍人デ
アッテ、下士卒ノ類デアッテ、其痕ヲ絕ツヤウニナルコトヲ希望スル次第デア
リマスガ、是ハ阪本君御自身ノ述べラレタル通リ、眞ノソレデアルヤ否ヤト
云フコトノ疑ハシイコトハ何人モ思ッテ居ル所デアリマス、是ハ警察官ノ力
ニ依ッテ今後一掃スルヤウニ取締ルコトモ出來ルデアリマセウ、ソレ等ノコ
トハ別問題ト致シマシテ、本法施行ノ上ハ從來ノ憂ヲ去ルニ足ルベキ程ニナ
ルコトヲ希望シテ居リマス、今後ニ於テ必ズヤ此實行ノ後ニ於テハ從來ノ憂
ヲ去ルデアラウト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=71
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072・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ハ前ノ軍人恩給法中改正法律案ノ
委員ヲ指名イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十七、大正五年法律第四號中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
大正五年法律第四號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
大正五年法律第四號中改正法律案
大正五年法律第四號中左ノ通改正ス
「又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得」ヲ「借入金ヲ爲シ又ハ公債ヲ發行スルコトヲ
得」ニ改メ左ノ二項ヲ加フ
前項ノ借入金及公債ノ額ハ通シテ三千四百萬圓以內トス
本法ニ依ル特別會計資金ノ繰替、借入金又ハ公債ヲ整理償還スル爲必要
アル場合ニ於テハ前項ノ制限以外ニ借入金ヲ爲シ又ハ公債ヲ發行スルコ
トヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=73
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074・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 御承知ノ如クニ大正五年法律第四號ト申シマスノ
ハ臨時事件ニ關係イタシマスル財源調達ノ法律デアリマス、卽チ此法律ニ
依リマスト特別會計ノ資金ヲ繰替使用シ、又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得ルト云
フコトガアルノデアリマス、然ルニ臨時事件ニ關係イタシマスル所ノ費用ニ
付キマシテ、借入金ト限ッテ置キマスルト云フト、餘程其調達ニ不便ヲ感ジ
マスノデ、借入金又ハ公債ト云フコトニ改正ヲ致シマスノガ一箇條デアリマ
ス、ソレカラ從來ノ法律ニ依リマスルト借入金ト致シマシテモ其制限ガ附イ
テ居リマセナンダ、ソレヲ今囘ハ三千四百萬圓ト云フ制限ヲ附ケマスノデ、
三千四百萬圓ト申シマスノハ、四百萬圓ハ旣ニ借入レテアルモノデゴザイマ
ス、アトノ三千萬圓ハ是ハ今囘追加豫算トシテ皆樣ノ御協賛ヲ經ツツアル所
ノモノデアリマスノデ、卽チ其金額ヲ捉ヘマシテ三千四百萬圓ヲ限度トスル
コトニ致シマシタ、モウ一箇條ハ從來ノ規定ニ依リマスト整理償還ノ規定ガ
ゴザイマセナンダ、是ハ是非斯樣ナル法律ニハ必要ナモノデアリマスカラシ
テ、整理償還ノ規定ヲ置キマシタ、是ガ法律ノ改正ノ趣旨デゴザイマス、ド
ウカ御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔岡書記官朗讀〕
大正五年法律第四號中改正法律案特別委員
侯爵德川圀順君子爵榎本武憲君男爵中川興長君
男爵小早川四郞君男爵高橋是〓君室田義文君
伊澤多喜男君麻生太吉君鎌田勝太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十八、朝鮮事業公債法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會
朝鮮事業公債法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
朝鮮事業公債法中改正法律案
朝鮮事業公債法中左ノ通改正ス
第二項中「借入金」ヲ「公債又ハ借入金」ニ、第三項中「八千四百萬圓」ヲ「九
千六百萬圓」二四人
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=76
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077・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 本年ノ十二月一日ニナリマスルト朝鮮ノ國庫債劵
三千萬圓ノ償還期ガ參リマス、然ルニ朝鮮事業公債法ニ依リマスト公債ノ借
替ヲスルト云フ規定ガ闘ケテ居リマスノデ、此借替ノ規定ヲ挿入イタシマス
ノデアリマス、ソレカラ尙ホ其序ヲ以ヂマシテ朝鮮事業公債法ニ依リマシテ
募集スベキ公債ハ總額八千四百萬圓ト云フコトニナッテ居リマス、然ルニ豫
定ノ計畫ニ依リマスト總額ガ九千六百萬圓ニナリマス、卽チ千二百萬圓バカ
リ增加スルコトニナリマスノデ、此序ヲ以チマシテ公債發行總額ヲ改正イタ
シマス、是ガ此法律案ノ趣旨デゴザイマス、ドウカ御審議ノ上御協賛ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此特別委員ハ日程第十七ノ法案ノ特別委員ト同一
ノ諸君ヲ指名イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十九、電話事業公債法案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會
電話事業公債法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
電話事業公債法
第一條電話交換擴張費支辨ノ爲政府ハ一億二百五十萬圓ヲ限リ公債ヲ發
行シ又ハ之カ繰替支辨ノ爲借入金ヲ爲スコトヲ得
第二條前條ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額ヲ補塡スル爲必要アル場
合ニ於テハ前條ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得本
法ニ依ル公債又ハ借入金借換ノ爲必要アルトキ亦同シ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
事業公債條例中本法ニ牴觸スルモノハ之ヲ廢止ス
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=79
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080・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 本案ハ先刻私ヨリ大體申上ゲマシタ電話擴張ニ要
シマスル財源ヲ公債計畫ニ移シマシタノデ、詰リ一億二百五十萬圓ノ公債ヲ
本年度ヨリ大正十三年度ニ亙ッテ募集ヲ致ス規定デゴザイマスノデ、ドウカ
御審議ノ上御協賛ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=80
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081・高木兼寛
○男爵高木兼寬君 本員ハ本案ニ對スル特別委員ノ數ヲ十五名ト致シ、議長
ニ其選定ヲ御委任イタシタイト存ジマスドウカ滿場諸君ノ御賛成ヲ願ヒタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=81
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082・青木信光
○子爵靑木信光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=82
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083・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=83
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084・山内長人
○男爵山內長人君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=84
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085・淺田徳則
○淺田德則君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 高木男爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=86
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087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ御報告
ニ及ビマス
〔岡書記官朗讀〕
電話事業公債法案特別委員
伯爵寺島誠一郞君子爵一柳末德君子爵牧野忠篤君
小松謙次郞君男爵日賀田種太郞君男爵阪谷芳郞君
男爵本田親濟君男爵本多政以君中島永元君
原保太郞君南弘君鎌田榮吉君
日高榮三郞君福島文右衞門君井芹康也君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第二十、朝鮮鐵道用品資金會計法廢止法
律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
朝鮮鐵道用品資金會計法廢止法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
朝鮮鐵道用品資金會計法廢止法律案
朝鮮鐵道用品資金會計法ハ之ヲ廢止ス
本會計廢止ノ際現存スル現金ハ朝鮮總督府特別會計ノ歲入ニ繰入ルヘシ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=88
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089・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 本案ハ朝鮮ノ鐵道ヲ南滿洲鐵道會社ニ委託經營ヲ
サセマスル結果ト致シマシテ、此會計法ヲ廢止スルノ必要ガゴザイマスノデ
提出イタシマシタ、ドウカ御審議ノ上御協贊ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ御報告ニ及ビマス
〔岡書記官朗讀〕
朝鮮鐵道用品資金會計法廢止法律案特別委員
伯爵林博太郞君子爵靑木信光君子爵池田政時君
阿部浩君男爵久保田讓君古市公威君
男爵神山郡昭君男爵佐竹義準君安田善三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ガゴザイマセヌケレバ、議事日程第二十一、
第二十二、第二十三ヲ束ネテ問題ト致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金ニ關
スル法律案、京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案、學校及圖書館特
別會計資金ノ一部ヲ一般會計ニ繰入ルル件ニ關スル法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會
東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案
時局ニ關シ工科大學ノ擴張ヲ爲スノ費用ニ充ツル爲帝國大學特別會計法第
二條ノ金額ノ外大正六年度ニ於テ金二十一萬千七百四十圓ヲ東京帝國大學
特別會計ニ、金十二萬二千七百六十六圓ヲ京都帝國大學特別會計ニ、大正
七年度以後當分ノ內每年度各金一萬五千圓以內ヲ東京帝國大學特別會計及
京都帝國大學特別會計ニ一般會計ヨリ繰入ルヘシ
京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案
火災復舊ノ費用ニ充ツル爲帝國大學特別會計法第二條ノ金額ノ外大正六年
度ニ於テ金三萬圓ヲ一般會計ヨリ京都帝國大學特別會計ニ繰入ルヘシ
學校及圖書館特別會計資金ノ一部ヲ一般會計ニ繰入ルル件ニ關スル法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
學校及圖書館特別會計資金ノ一部ヲ一般會計ニ繰入ルル件ニ關スル法
律案
大阪高等工業學校校舎新營ノ費用ニ充ツル爲學校及圖書館特別會計ノ資金
ニ屬スル同校用土地及建物ノ賣却代金中新營費ニ相當スル金額ヲ大正六年
度乃至九年度ニ於テ一般會計ニ繰入ルルコトヲ得
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=92
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093・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯今議題ニナッテ居リマス所ノ三案ノ第一ハ東京
帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案デゴザイマス、目下
實業ノ發展ニ伴ヒマシテ、技術者ノ必要ト云フモノガ甚ダ切實ニナッテ居リ
マスノハ御承知ノ通リデアリマス、其中ニ就キマシテモ採鑛冶金ノ關係ノ技
術者竝ニ應用化學ノ關係技術者ト云フ者ガ最モ缺乏ヲ〓ゲテ居リマスノデゴ
ザイマス、ソレ故ニ今囘各大學ニ於キマシテ是等ノ學科ニ付キマシテ聊カ擴
張ヲ行ヒマシテ生徒ノ定員ヲ增加イタシテ、此現在ノ急ニ應ズル計畫ヲ立テ
マシタノデアリマス、ソレガ爲ニ此第一案ノ法律ヲ要スル次第デアリマス、
第二案ハ京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案デアリマス、是ハ昨年
京都帝國大學ニ於キマシテ不幸ニシテ火災ヲ起シマシテ、小兒科ノ〓室ノ一
部ヲ燒失イタシマシタノデアリマス、之ヲ復舊スルガ爲ニハ保險金ノ收入モ
ゴザイマス、又京都大學ノ資金カラ支出シ得ル資金モアリマス、然ルニ其兩
方面カラノ金額ニ尙ホ不足ヲ〓ゲマスノデ、政府カラ別ニ支出金ヲ要スルノ
デ、卽チ此法案ヲ提出イタシマシタ次第デゴザイマス、第三ハ學校及圖書館
特別會計資金ノ一部ヲ一般會計ニ繰入ルル件ニ關スル法律案デアリマス、是
ハ大阪ノ高等工業學校ハ敷地ガ甚ダ狭隘デアリマシテ目下擴張ノ必要ガゴザ
イマスケレドモ、現在ノ場所ニ於テ之ヲ擴張イタスト云フコトガ出來マセヌ
ノデゴザイマス、又此校舍ノ一部ハ既ニ腐朽イタシマシテ之ヲ改築スルノ必
要ニ迫シテ居リマスノデゴザイマス。是等ノ事情ガゴザイマスノデ、幸ヒ大
阪方面ハ一般ノ景氣ガ甚ダ宜シクアリマシテ、現在ノ校地校舍ヲ極メテ有利
ノ條件ヲ以テ賣却シ得ル狀況デゴザイマスニ依ッテ、之ヲ賣却シマシテ其金ヲ
以テ場所ヲ變更イタシマシテ、サウシテ敷地ヲ擴大イタシ、校舍ヲ改築イタ
スト云フ計畫デゴザイマス、是ハ少シモ政府支出金ヲ要シマセヌノデゴザイ
マスケレドモ、會計法ノ關係上斯ノ如キ法律ヲ提出スルノ必要ガアルノデゴ
ザイマス、ドウゾ御審議ノ上御協贊ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=93
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094・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ御報告ニ及ビマス
〔岡書記官朗讀〕
東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案外二件特別委
員
侯爵德川賴倫君伯爵萬里小路通房君男爵高木兼寬君
男爵神田乃武君福原鐐二郞君男爵藤堂高成君
石井省一郞君湯淺倉平君堀内半三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=94
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095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二十四、農業倉庫業法案、政府提出、衆議院送
付第一讀會
農業倉庫業法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
農業倉庫業法
第一條本法ニ於テ農業倉庫業者トハ農業ヲ營ム者カ其ノ生產シタル穀物
若ハ繭ヲ、又ハ土地ニ付權利ヲ有スル者カ小作料トシテ受ケタル穀物ヲ
所有スル場合ニ於テ其ノ者ノ爲ニ本法ニ依リ之ヲ倉庫ニ保管スル者ヲ謂
フ
前項ニ規定スル寄託物ニ付所有權ノ移轉アリタルトキト雖農業倉庫業者
ハ其ノ寄託物ノ保管期間內ニ限リ之ヲ保管スルコトヲ得
農業倉庫業者ハ他ノ農業倉庫業者カ前二項ノ規定ニ依リ寄託ヲ受ケタル
物品ヲ保管スルコトヲ得
農業倉庫業者ハ前三項ノ規定ニ依ル保管ニ支障ナキ場合ニ限リ業務規程
ノ定ムル所ニ依リ前三項ノ規定ニ依ラス物品ノ保管ヲ爲スコトヲ得
第二條農業倉庫業者ハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ前條ノ事業ノ外左ノ事
業ヲ爲スコトヲ得
一受寄物ノ調製、改裝又ハ荷造ヲ爲スコト
二受寄物ノ運送又ハ販賣ノ仲立ヲ爲スコト
三受寄物ノ運送又ハ販賣ノ取次ヲ爲スコト
四自己ノ作成シタル農業倉庫證劵ヲ擔保トシテ貸付ヲ爲スコト
五他ノ農業倉庫業者カ擔保トシテ受取リタル農業倉庫證券ヲ擔保トシ
テ貸付ヲ爲スコト
第三條農業倉庫業者ハ營利ヲ目的トシテ其ノ事業ヲ爲スコトヲ得ス
第四條產業組合、農會、農業ノ發達ヲ目的トスル公益法人竝市町村及之
ニ準スヘキモノニ非サレハ農業倉庫業者タルコトヲ得ス
第五條產業組合カ農業倉庫業者タルトキハ產業組合法ニ規定スルモノノ
外第一條及第二條ニ規定スル事業ヲ目的ト爲スコトヲ得
產業組合ハ組合員ノ爲ニ前項ノ事業ヲ爲スノ外附隨トシテ組合員ニ非サ
ル者ノ爲ニ之ヲ爲スコトヲ得但シ第二條第四號及第五號ノ事業ニ付テハ
此ノ限ニ在ラス
農會又ハ公益法人カ農業倉庫業者タルトキハ第二條第四號及第五號ノ事
業ヲ爲スコトヲ得ス
第六條農業倉庫業者タラムトスル者ハ業務規程ヲ具シ行政官廳ノ認可ヲ
受クヘシ
第七條農業倉庫業者ハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ種類及品位ノ同一ナル
寄託物ヲ混合シテ保管スルコトヲ得
第八條農業倉庫業者ノ作成スル預證劵及質入證劵又ハ倉荷證劵ニハ農業
倉庫證劵ナル文字ヲ記載スルコトヲ要ス
農業倉庫業者ニ非サル者ノ作成スル預證劵及質入證劵又ハ倉荷證劵ニハ
農業倉庫證劵ナル文字ヲ記載スルコトヲ得ス
第九條混合保管ノ場合ニ於テハ農業倉庫業者ハ農業倉庫證劵ニ其ノ旨ヲ
記載スルコトヲ要ス
第十條寄託物ノ保管期間ハ寄託ノ日ヨリ六月以內トス
第一條第一項又ハ第三項ニ規定スル寄託物ニ付テハ保管期間ヲ更新スル
コトヲ得但シ寄託者ハ更新ノ際同條第一項又ハ第三項ニ揭クル者タルコ
トヲ要シ其ノ期間ハ六月ヲ超ユルコトヲ得ス
第一條第四項ニ規定スル寄託物ニ付テハ同條第一項乃至第三項ノ規定ニ
依ル保管ニ支障ナキ場合ニ限リ保管期間ヲ更新スルコトヲ得其ノ期間ハ
前項但書ニ同シ
第十一條商法第三編第五章乃至第七章及第九章第二節ハ本法ニ別段ノ定
アル場合ヲ除クノ外農業倉庫業者ニ之ヲ準用ス
第十二條商法第三百七十六條ノ規定ハ受寄物ノ調製、改裝又ハ荷造ニ關
シ農業倉庫業者ニ之ヲ準用ス
第十三條農業倉庫業者業務規程ヲ變更セムトスルトキハ行政官廳ノ認可
ヲ受クヘシ
第十四條農業倉庫業者ニハ所得稅及營業稅ヲ課セス
第十五條行政官廳公益上必要ト認ムルトキハ農業倉庫業者ニ對シ其ノ指
定スル穀物又ハ繭ノ寄託ヲ受ケ、受寄物ノ檢査其ノ他ノ行爲ヲ爲スヘキ
コトヲ命スルコトヲ得
第十六條行政官廳ハ農業倉庫業者ニ對シ事業ニ關スル報〓ヲ爲サシメ書
類帳簿又ハ業務執行若ハ財產ノ狀況ヲ檢査シ其ノ他監督上必要ナル命
令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十七條行政官廳農業倉庫業者ノ業務執行若ハ財產ノ狀況ニ依リ事業ノ
繼續ヲ困難ナリト認ムルトキ、農業倉庫業者ノ行爲カ法令若ハ業務規程
ニ違反シタルトキ又ハ其ノ行爲カ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ム
ルトキハ事業ノ停止ヲ命シ又ハ認可ヲ取消スコトヲ得
第十八條農業倉庫業者タル法人ノ理事又ハ之ニ準スヘキ者本法又ハ本法
ニ基キテ爲ス命令又ハ處分ニ違反シタルトキハ十圓以上千圓以下ノ過料
こん數
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準
用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=95
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096・仲小路廉
○國務大臣(仲小路廉君) 農業倉庫業法案ヲ提出ヲ致シマシタル理由ヲ申上
ゲマス、時局今日ノ場合ニ於キマシテ倉庫業ノ隆昌ヲ圖リマスコトハ固ヨリ
必要ト存ズルノデアリマス、就中國家ノ基礎トモナルベキ農村農民ノコトニ
付キマシテ此際別シテ心ヲ用ヒルベキコトト思ヒマス、農民農村ノ爲ニ生產
物ニ對スル增加ノ方法ニ付キマシテ有ラユル途ヲ講ズルノモ必要デアリマ
ス、同時ニ重要ナル農產物ノ保存、保管ニ關シマスル、及之ニ依ヶテ中以下ノ
農民資金利用ノ途ヲ立テマスル、及販賣等ノ點ニ付テ總テ共同運搬共同販賣
ノ途ヲ付ケマス、是ハ實ニ農民ノ爲ニ必要ナ施設デアルト存ズルノデアリマ
ス、是等ノ趣意ニ依リマシテ玆ニ農業倉庫ヲ普及ヲ致シタイト存ジマス、政
府ニ於キマシテ相當ノ補助ヲ致シテ、成ルベク各地方ニ普及ノ途ヲ立テタイ
ト存ズルノデ、今日ノ場合ニハ斯樣ナ法律ヲ提案イタシマシタノハ、實ハ此
事柄ハ專ラ地方農民ニ於テ其衝ニ當ルノデアリマス、國庫ハ之ニ對シテ補助
ヲ致スノデアリマス、其經費ハ何レモ地方ノ府縣會ノ經費ニ計上ヲ致シテ協
贊ヲ受ケル筈デアリマス、一日モ速ニ大體ノ方針ガ定マリマセヌト、各地方
ニ於キマシテモ種々ノ經營上ニ差支ヲ生ジマス、是等ノ理由ヨリ誠ニ短イ時
日デアリマスガ此議會ニ提案シマシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上協賛
アラムコトヲ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=96
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097・阪本さん之助
○阪本釤之助君 唯〓提案ニナッテ居リマス農業倉庫ノコトデゴザイマスガ、
本員モ此事ハ嘗テ少シ調ベタコトガアルノデアリマスガ、頗ル農業ノ發達ノ
上ニハ必要ナコトト信ジテ居ル者デアリマスガ、然ルニ此法案ヲ拜見イタシ
マスト、第四條ニ「產業組合、農會ノ發逹ヲ目的トスル公益法人竝市町村及
之ニ準スヘキモノニ非サレハ農業倉庫業者タルコトヲ得ス」ト書イテアリマ
ス、此各種ノ者ニ非ザレバ農業倉庫ノ營業者タルコトハ出來ヌ、如何ニモ薄
利ナモノデアリマシテ面倒ナ仕事デアリマスカラ營利業者トシテハ餘程ムヅ
カシイモノデアルカトモ存ジマスケレドモ、實際熊本縣下アタリデハ斯ウ云
フモノデナクテ營業ヲシテ居ルノガアル、ナカ〓〓巧ク行ッテ居ルヤウニ思
ヒマス、然ルニ政府ハ之ニ限リ、若シ普通ノ會社組織デ致シタイト云フノガ
アリマシテモ、之ヲ許サヌト云フ意味デアリマスカ、唯〓補助云々ノ御話ガ
アリマシタカラ、或ハ補助等ノ方法ニ依ッテ營利會社ハ先ヅ暫ク見合セタガ
宜カラウカト云フ御意見カト想像イタシマスガ、旣ニ倉庫會社ト云フモノハ
澤山アルノデ、詰リ一種ノ農產物ノ倉庫會社デアルト云フコトハ無論含ンデ
居ル品物デアリマスカラ、場合ニ依ッテハ普通ノ營利會社ニ許サレテモ差支
ナイモノデアルマイカト云フコトヲ疑フノデアリマス、ソレガ一ツ、モウ一
ツハ此法案ノ第五條ノ第三項ニ「農會又ハ公益法人カ農業倉庫業者タルトキ
ハ第二條第四號及第五號ノ事業ヲ爲スコトヲ得ス」ト斯ウアリマスカラ、言
ヒ換ヘテ見ルト、第四條ノ農會ト公益法人ガ此農業倉庫ヲヤリマスル時ニハ
第二條ノ四號五號卽チ證劵ヲ擔保ト致シテ貸付ヲ爲スコトガ出來ヌ、又他ノ
倉庫業者ガ發シタ所ノ證劵ヲ擔保トシテ謂ハユル割引ヲ致スヤウナ二重貸ヲ
致スコトガ出來ヌ、卽チ此二箇條ノ事業ヲ致スコトガ出來ヌト云フ制限ヲ加
ヘテ居ラレルヤウデアリマスガ、何故ニ農會又ハ公益法人ハ出來ナイカ、產
業組合若クハ市町村デサヘ出來ルノデアル、產業組合ノ如キハ金融機關ヲサ
ヘモ兼營スルコトガ出來ルノデアル、然ルニ農會トカ公益法人トカハ何故ニ
ソレガ出來ナイカ、市町村ガ營利ノ事業ヲ致シテ居ル實例ハ澤山アルカラ、
其例ニ依ッテ營利事業ヲシテモ宜イ、併シ農會トカ公益法人トカ云フモノハ
性質ニ於テ金融機關ヲ扱フコトハ宜シクナイト云フコトハ一說カモ知レマセ
ズカ、本員等ノ見ル所デハ甚ダ權衡ヲ失シテ居ルヤウデアリマスガ、ソレ等
ニ付テハ廟議ノ存スル所ハドウ云フコトデアリマスカ、御示シヲ願ヒタイト
思ヒマス
〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=97
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098・仲小路廉
○國務大臣(仲小路廉君) 阪本君ノ御質問ニ御答ヘ致シマス、御質問ノ第一
點ハ本法ノ第四條ニ於テ產業組合、農會若ハ農業ノ發達ヲ目的トスル公益法
人其他、市町村等ノモノデナケレバ之ヲ營ムコトヲ得ズト、然ルニ是等ノモ
ノデナクッテモ既ニ各地方ニ於テ農業倉庫業ヲ營ンデ居ル者ガアル、是等ニ
對シテハ將來ドウ云フ考ヲ有ツノデアルカト、御話ノ如クニ熊本ニ於キマス
ル農業倉庫ノ如キ、其他或ハ酒田、各地方ニ農業倉庫モ今日アルノデアリマ
スガ、此法律ヲ立テマシタ趣旨ハ專ラ農村農民ノ爲ニ、主トシテ營利ヲ目的
トセズニ、公益ノ爲ニ盡ス農業倉庫ス設置シタイト考ヘルノデアリマス、卽
チ農村農民ノ爲デアリマスカラ、營利ヲ目的トセズシテ、主トシテ公益ヲ目
的トスル爲ニ、政府ニ於テ相當ノ助成ヲ致シマス、又ソレニ付テ種々ノ特權
ヲモ許スコトニナルノデアリマス、故ニ此法律ニ基ク特權ヲ得ルトカ、若ク
ハ補助ヲ得ルト云フモノナラバ、此法律ニ基イタル公益法人デナクテハナラ
ヌ、去ナガラソレガ爲ニ從前ヨリアルモノハ、ソレニハ少シモ影響ヲ及ボサ
ナイ、又此法律ノ規定スル特權若クハ條件ニ依ラナイモノデアリマスナラバ
是ハモウ普通ノ法律ニ基ク通常ノ倉庫デアリマス、此法律ノ立テ方ハ唯今申
ス趣旨デアリマス、ソレカラ尙ホ第二ノ御問ハ第五條ニ於テ「農會又ハ公益
法人カ農業倉庫業者タルトキハ第二條第四號及第五號ノ事業ヲ爲スコトヲ得
ス」是ニモ餘ホド注意ヲ致シタ積リデアリマス、此農業倉庫業ハ相成ルベク
ハ公益的、殊ニ農村農民ノ爲デアリマスカラ、產業組合其他農業ノ發達ヲ目
的トスルモノ、市町村等ニ於テ成ルベクハソレニ當ッテ參ルガ宜シイコトト
思フノデアリマス、併ナガラ農會其他ニ於テモ固ヨリ此農業倉庫ノ事業ヲ營
マセナイト云フノデハナイノデアリマシテ、固ヨリ之ニ當ルコトガ出來ルノ
デアリマス、成ルベクハ唯今申スヤウナ趣旨ニ依リマシテ農會其他ソレニ適
スルモノガ自ラアルノデアリマス、是等ニハ此第二條ノ第四號、卽チ農業倉
庫證劵ヲ發行シテ之ニ向ッテ貸付ヲ爲ス方デアルトカ、或ハ他ノ倉庫業者ガ
擔保トシテ受取ッタル證劵ヲ引當トシテ貸付ヲスルコト、斯ウ云フコトハ取
扱ハセナイコトニスルノガ、農會ノ本旨ニモ適スルコトデアラウト思ヒマス、
何レ之ニ付キマシテハ取扱ハセテモ宜カラウト云フ御意見モアルカモ知レマ
セヌガ、是ハ全ク意見ニ屬スルコトデアリマス、尙ホ此案ノ內容ノ詳細ニ渉
リマシテハ、委員會等デ詳細申述ベマシタ方ガ宜シカラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=98
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099・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 農商務大臣ニチヨット伺ヒマスガ、此農業倉庫業者タルモ
ノガ此規定ニ依リマスルト多少營利的ニ關係スルコトガアル、他ニモ倉庫業
者ガアッテ營利的ニヤッテ居ル、ソレハ營業稅法ノ範圍內ニ這入ッテ居ル、是等
ノ營業稅法ノ範圍內ニ這入ルカ或ハ購買組合等ノ如ク無稅ト爲スノデアリマ
スカ、其邊ハ如何デアリマスカ
〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=99
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100・仲小路廉
○國務大臣(仲小路廉君) 鈴木君ノ御質問ニ御答ヘ致シマス、チヨット御質問
ノ趣旨ヲ了解イタシ兼ネタノデアリマスガ、私ハ斯ウ云フ風ニ承ッタト思フ、
此法律ニ依ッテ今度出來マスル農業倉庫業ハ全ク公益的ノ倉庫ヲ造ラセル積
リデアリマス、之ニ付テハ各種ノ租稅ニ對スル免稅其他種々ノ特典ガアリマ
ス、殊ニ又此農業倉庫ノ建設ニ付キマシテハ、國家ニ於テ相當補助ヲ致ス積
リデアリマス、此方ノ農業倉庫ハサウ云フノデアリマス、ソレカラ從前行ハ
レテ居リマスモノニハ、單純ノ商業上ノ倉庫モアリマスルシ、又農業倉庫モ
アルノデアリマス、從前ノモノハ此法律ノ下ニ於テノ恩惠特典條件ヲ受ケヤ
ウトスレバ、此規定ニ從ハナケレバナラヌ、左モナイ以上ハ別段是ト關係ハ
ナイノデアリマス、ドウゾ其趣旨ニ御了解ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=100
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101・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 唯今ノ御答辯デ尙ホ盡キマセヌカラ再應伺ヒマスガ、既
此第二條ノ第二ニ於テハ「受寄物ノ運送又ハ販賣ノ仲立ヲ爲スコト」第三ニ於
テ「受寄物ノ運送又ハ販賣ノ取次ヲ爲スコト」ト云フコトガアリマス、又金錢
ノ融通ト云フコトモアリマス、是等ハ多少ノ手數料或ハ其報酬金ヲ取ッテヤ
ルカ取ラヌデヤルカト云フ、其業務ノ上ニ於テ、營業的ニナルカ公益的ニナ
ルカト云フコトハ分レルノデアリマス、其點ニ付テ明瞭ノ御答ヲ願ヒマス
〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=101
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102・仲小路廉
○國務大臣(仲小路廉君) 御答ヲ致シマス、此第二條ノ規程ニ於テ茲ニ農業
倉庫業トシテ取扱フベキ種々ノ事項ヲ定メテアリマス、固ヨリ之ニ對シテ必
要已ムベカラザル費用ハ徵收イタス積リデアリマス、而シテ是ハ營利ハ目的
ト致サナイノデアリマス、主トシテ公益ヲ基トスルノデアリマス、其費用ノ
決メ方ナリ、取扱ノ方法等ハ此法律ニアリマスル如クニ「農業倉庫業者ハ業
務規程ノ定ムル所ニ依リ」ト斯ウ云フノデアリマス、其業務規定ニ於テソレ
〓〓詳細ノ規定ヲ致ス積リデアリマス、之ニ依ッテ御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=102
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103・阪本さん之助
○阪本釤之助君 曩ニ御尋ヲ致シマシタトキノ大臣ノ御答辯中、少シ承ハリ
兼ネマシタ所モゴザイマスガ、第一ノ御問ニ對シテハ唯今鈴木君ヘノ御答ニ
依ッテ略〓了解イタシマシタノハ、唯今マデ存立ヲ致シテ居ル會社ガヤッテ居ル
モノハ商法ノ規定ノ下ニ依ッテ居ル、斯ウ云フ御趣意ノヤウニ分リマシテゴ
ザイマスガ、第二ニ此農會ト農業ノ發達ヲ目的トスル公益法人ニハ許サナイ
ト云フコトガ性質上許サナイノデアルカ、今日ノ農會及農業發達ヲ期スル公
益法人ト云フモノハ、今日ニ於テマダ幼稚デアルカライカナイト斯ウ云フノ
デアリマスカ、併シ農業ノ發達ヲ主トスル公益法人ト〓括ニ書イテアレバド
ンナエライモノガアルカモ知レマセヌ、ドウモ今日ハイカナイト云フノモ、少
シ如何デアリマスカ、性質上許スベキモノデナイト云フコトハ本員等ハ甚ダ
疑フ、ドチラノ御趣意デ此法文ガ決メラレタノデアルカ、御面倒デアリマス
ガ拜聽シタイ
〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=103
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104・仲小路廉
○國務大臣(仲小路廉君) 農業倉庫業ヲ營ミマス者ノ中ニ、農會ヲ入レテ然
ルベキモノデアルカ否ヤト云フコトハ、是ハ大分議論ガアッタノデアリマス、
農會ノ本質其物ガドウ云フモノデアラウカ、是ハ申スマデモナイ、農業上ノ
發達ニ付テ種々致究ヲ致ス所デアリマス、ソレガ直接ニ各種ノコトニ當ルト
云フノハ、ドウ云フモノデアラウカ、斯ウ云フ議論ガアッタノデゴザイマス、
唯今日マデノ現狀ニ於キマシテハ農會等ノ·········全ク之ヲ此ニ置クニハ及ブマ
イ、唯制限サレタ範圍ニ於テ之ニ扱ハセルガ宜カラウ、斯ウ云フ考デアリマ
ス、其意味ハ敢テ農會ガ··今日ノ農會ガ不信用デアルトカ何トカ云フノ
ヂヤナイノデ、農會其物ノ性質上、第二條第四第五等ニ屬スルコトハ取扱ハ
シメナイガ宜シイ、斯ウ云フコトデアリマス、其他公益ニ關スル農業ノ發達
ヲ目的トスル公益法人云々ト云フノモ矢張リ之ト同ジ趣旨デアリマス、尙ホ
何レ此詳細ノコトハ更ニ又詳シク申上ゲテ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=104
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105・男爵高木兼寬君
○男爵高木兼寬君 本案ノ特別委員ヲ十五名ト定メ、此選定ハ議長ニ御委任
申上ゲタウゴザイマス、滿場諸君ノ御贊成ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=105
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106・子爵靑木信光君
○子爵靑木信光君 贊成
〔其他「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=106
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107・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 高木男爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=107
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108・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス········特別委員ノ氏名ヲ御報
告ニ及ビマス
〔岡書記官朗讀〕
農業倉庫業法案特別委員
伯爵奧平昌恭君子爵靑山幸宜君子爵東坊城德長君
子爵片桐貞央君子爵米津政賢君前田正名君
男爵平野長祥君男爵靑山元君男爵東郷安君
磯部四郞君田中源太郞君江原芳平君
依田仙右衞門君佐藤友右衞門君鈴木周三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=108
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109・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第二十五、戰時海上再保險法案、政府提
出、衆議院送付、第一讀會
戰時海上再保險法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
戰時海上再保險法
第一條政府ハ保險業者カ海上保險契約ニ依リ戰爭ニ因リテ生スルコトア
ルヘキ損害ノ塡補ヲ約シタル場合ニ於テ其ノ損害ノ塡補ニ付本法ニ依リ
再保險ヲ爲スコトヲ得
前項ノ再保險ハ日本ノ保險業者又ハ外國保險業者ノ日本ニ設ケタル支
店、事務所若ハ代理店カ主務官廳ノ定ムル海上保險料率以下ニ於テ爲シ
タル第一次ノ元受保險契約ニ付テノミ之ヲ爲ス
元受保險契約カ豫定保險ノ方法ニ依リタルモノナルトキハ海上保險料率
ニ關シテハ保險ノ各目的ニ付船舶出港ノ時ニ於テ契約ヲ爲シタルモノト
看做シ前項ノ規定ヲ適用ス
第二條再保險ノ目的ハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノナルコトヲ要ス
-日本ニ船籍ヲ有スル船舶
二日本ヨリ輸出シ若ハ之ニ輸入スル積荷又ハ前項ニ揭クル船舶ニ搭載
スル積荷
第三條主務官廳必要ト認ムルトキハ命令ヲ以テ再保險ノ範圍ヲ制限スル
コトヲ得
第四條保險業者カ本法及本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ船舶出港前再保
險ノ申込ヲ發シタルトキハ政府ハ之ヲ承諾シタルモノト看做ス
再保險ノ申込ハ其ノ申込ヲ發シタル日ノ午後十二時ニ之ヲ發シタルモノ
ト推定ス
再保險ノ申込書ニハ申込ヲ發シタル日ヲ記載スヘシ
第五條再保險金額カ命令ニ依リテ政府ノ引受クヘキ保險金額ヲ超過スル
トキハ其ノ超過シタル部分ニ付テハ再保險ハ無效トス
同一ノ目的ニ付同時ニ數箇ノ再保險ヲ爲シタル場合ニ於テ其ノ保險金額
カ前項ノ保險金額ヲ超過スルトキハ各保險業者ニ對シテ引受クル金額ハ
其ノ各自ノ保險金額ノ割合ニ依ル
第六條再保險料、再保險金額ノ支拂及豫定保險ノ方法ニ依ル再保險ニ關
スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條再保險ニ付テハ商法中保險ニ關スル規定ヲ準用ス但シ命令ヲ以テ
別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第八條船舶ニ付政府ノ引受クヘキ保險金額ヲ査定セシムル爲戰時海上再
保險審査會ヲ置ク
戰時海上再保險審査會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條保險業者若ハ船舶所有者又ハ其ノ法定代理人、代表者若ハ從業者
左ニ揭クル行爲ヲ爲シタル場合ニ於テハ保險業者又ハ船舶所有者ヲ五百
圓以上五千圓以下ノ過料ニ處ス
-再保險ノ目的タル要件ヲ具備セサルニ拘ラス惡意又ハ重大ナル過失
ニ因リ之ヲ具備シタルモノトシテ再保險ノ申込ヲ爲シタルトキ
二第四條ノ再保險ノ申込書ニ虛僞ノ日附ヲ記載シテ之ヲ發シタルトキ
三戰時海上再保險審査會ニ對シ不正ノ文書ヲ提出シ又ハ虛僞ノ陳述ヲ
爲シタルトキ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準
用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戰時海上保險補償法ハ之ヲ廢止ス
本法施行前ニ成立シタル保險契約ニシテ本法施行後五日迄ニ保險業者ノ責
任ヲ生シタルモノニ付テハ仍戰時海上保險補償法ニ依ル其ノ保險契約ニハ
本法ヲ適用セス
〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=109
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110・仲小路廉
○國務大臣(仲小路廉君) 本案提出ノ理由ヲ說明イタシマス、今囘歐羅巴ノ
大戰亂ニ伴ヒマシテ、海上ノ運輸業者及海外貿易ニ從事イタシテ居リマスル
者ノ安定ヲ圖リマスル爲ニ、時局開始ノ初メニ於キマシテ海上保險ニ關スル
補償法ナルモノガ制定セラレマシテ、海上保險ニ關スル損害ノ八割マデ政府
ニ於テ補償ヲ致スト云フ法律ニ依ッテ今日マデ實行サレテ參ッタノデアリマ
ス、固ヨリ此法律ノ結果ト致シマシテ海外貿易ニ從事スル者其他ハ餘程利益
ハ蒙ッタニ相違ナイノデアリマス、併ナガラ戰局以來今日マデ實際海上ノ保
險ノ損害ニ基キマシテ、政府ガ補償イタシテ居リマスル高ハ既ニ千七百万圓
近クノ多キニ達シテ居ルノデアリマス、當初豫想イタシマシタコトヨリモ意
外ノ多額ニ達シテ居リマス、而カモ戰局ハ漸次擴大ヲ致シマシテ、此後海上
ニ於ケル損失損害ガドレ程ノ程度ニ達シマスルヤラ、測リ知レナイ今日デア
リマス、是マデノ法律ハ政府ハ常ニ損害ノ八割マデハ之ヲ補償イタシテ居リ、
總テ之ヲ引受ケテ居ル、而シテ一面ニハ何等ノ利益ヲ見マセヌガ、唯危險ニ
對スル損害ノ負擔ノミデアリマス、其上ニ尙ホ戰局ノ擴大ニ伴ヒマシテ、益、
海上ノ損失ガ多クナルニ至リマシテハ、國庫ノ上ヨリ考ヘマシテ、玆ニ餘程
將來攻究イタサネバナラヌノデアリマス、殊ニ又保險ノ海外ニ賣出サレテ居
ル等ノ點、其他各種ノ點ヨリ考ヘマシテ、ドウモ今日マデ行ハレテ居リマシ
タ戰時海上補償法ハ戰局擴大ノ今日ニハ適シナイ、今囘之ヲ改メマシテ、海
上保險ノミハ之ヲ政府デ實行イタス、恰モ各國皆其道ヲ執ッテ居ルノデアリ
やく、る再保險ノミヲ政府デ實行イタスコトニ致シマシタ、サウナリマスルト
危險ノ負擔ハ固ヨリ致シマスト同時ニ、又他ノ方カラ收入モ國庫ニ入ルコト
ニナル、是等ノ道ニ依リマシテ海上運送業者ノ爲メ竝ニ海外貿易業者ニ差支
ハナクシテ、而シテ一面國庫ノ大ナル負擔ヲ幾何タリトモ減少スルコトガ出
來ルコトハ甚ダ得策デアルト存ジマシテ、玆ニ今囘ノ法律案ヲ提案イタシタ
次第デアリマス、何卒御審査ノ上御協賛アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=110
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111・高木兼寛
○男爵高木兼寛君 本案ノ特別委員ヲ十五名ト定メ、其選定ハ議長ニ御委任
申上ゲタウゴザイマス、ドウゾ各位ノ御贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=111
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112・武井守正
○男爵武井守正君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=112
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113・青木信光
○子爵靑木信光君 贊成
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=113
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114・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 高木男爵ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=114
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115・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ御報〓ニ及ビマス
〔岡書記官朗讀〕
戰時海上再保險法案特別委員
伯爵松浦厚君子爵松平直平君子爵本 多忠鋒君
男爵武井守正君男爵肝付兼行君男爵宮原二郞君
男爵毛利五郞君男爵楠本正敏君富井政章君
福永吉之助君木場貞長君桑田熊藏君
瀧川辨三君廣瀨滿正君尼崎伊三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=115
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116・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ガナケレバ、議事日程第二十六第二十七ヲ
束ネテ問題ニ供シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 臨時國庫證劵法案、臨時國庫證券收入金特別會計
法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
臨時國庫證劵法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
臨時國庫證劵法
第一條政府ハ輸出爲替資金ノ疏通ヲ圖リ又ハ聯合國ニ對スル輸出軍需品
代金ノ決濟ヲ便ニスル爲運用資金ノ必要アリト認ムルトキハ五年內ノ期
限ヲ以テ臨時國庫證劵ヲ發行スルコトヲ得其ノ借換ノ爲必要アルトキ亦
同シ
第二條臨時國庫證劵ノ最高發行額ハ二億圓トス但シ借換ノ爲發行スルモ
ノハ此ノ制限ヲ超過スルコトヲ得
第三條臨時國庫證劵ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ臨時國庫證劵ニ關シテハ大藏省證券條例第四條第二項及第五條以
下ノ規定ヲ準用ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
臨時國庫證劵收入金特別會計法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正六年七月七日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
臨時國庫證劵收入金特別會計法
第一條臨時國庫證劵ノ發行ニ依ル收入金ノ會計ハ特別トシ一般ノ歲入歲
出ト區分スヘシ
第二條本會計ノ資金ハ金銀地金及有價證劵ヲ以テ之ヲ保有シ其ノ他確實
ナル方法ヲ以テ之ヲ運用ス
前項ノ運用ハ日本銀行ヲシテ之ヲ取扱ハシム
第三條本會計ハ臨時國庫證劵ノ發行ニ依ル收入金、運用利殖金及附屬雜
收入ヲ以テ其ノ歲入トシ臨時國庫證劵ノ償還金、利子、割引料、附屬諸
費及損失金ヲ以テ其ノ歲出トス
第四條臨時國庫證劵ノ償還金、利子、割引料及其ノ發行償還ニ關スル諸
費ノ支出ニ必要ナル金額ハ之ヲ國債整理基金特別會計ニ繰入ルヘシ
第五條本會計ノ資金ニシテ每年度內ニ使用セサルモノハ遞次翌年度へ繰
越スヘシ
本會計ノ每年度歲出豫算ニ於ケル支出殘額ハ遞次繰越シ使用スルコトヲ
得
第六條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第七條本會計終結ノ場合ニ於テ剩餘アルトキハ之ヲ一般會計ニ繰入レ不
足アルトキハ之ヲ一般會計ヨリ繰入レ補充スヘシ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=117
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118・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 本案ハ先刻大體ノ趣旨ハ申上ゲテ置キマシタ如ク
デアリマシテ、今日ノ狀況ニ於キマシテ外國爲替ノ片爲替ニナリマスルモノ
ヲ調節シ、竝ニ軍需品ノ財源ノ調達ヲ滑ニスルト云フコトニ付キマシテハ啻
ニ之ヲ民間ノ力ニダケ依賴シテ居ル譯ニ行キマセヌノデ、ソレデ今囘政府ニ
於キマシテハ短期ノ國庫證劵ヲ發行イタシマシテ、卽チ五年以內ノ期限ノ國
庫證劵ヲ發行イタシマシテ、民間ノ資金ヲ是デ以テ吸收イタシマシテ、サウ
シテ唯今申上ゲマシタ所ノ二箇ノ目的ヲ達シタイ、斯ウ考ヘルノデアリマス、
其最高額ヲ二億圓ト致シマシテ、此外之ヲ整理········借替スル爲ニハ尙ホ其以
上發行スルコトノ出來ルト云フコトニ決定ヲ致シマシタ、尙ホ此臨時國庫證
劵ヲ發行イタシマシテ、唯今ノ如キ目的ヲ達シマスルニハドウシテモ運用ノ
機關ガナクテハナリマセヌノデ、卽チ之ヲ一般會計ニ於テ運用スルコトハ到
底出來マセヌノデ、特別會計ヲ設ケマシテ、或ハ其會計ニ於キマシテ外國ノ
證劵ヲ引受ケ運用イタシマスルトカ、或ハ正貨ヲ買ッテ運用イタシマスルト
カ云フコトニ致シマシテ、此目的ヲ達シタイト考ヘテ居リマス次第デアリマ
ス、要シマスルニ此時局ニ對シマシテ一日モ棄置キ難イ法案デゴザイマスカ
ラ、ドウカ御審議ノ上御協賛ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=118
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119・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセ
マス
〔岡書記官朗讀〕
臨時國庫證劵法案外一件特別委員
伯爵柳原義光君男爵尾崎三良君子爵稻垣太祥君
子爵三島彌太郞君山本達雄君仁尾惟茂君
若槻禮次郞君木村誓太郞君美馬儀一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=119
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120・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ議事ノ日程ハ決定次第本院彙報ヲ以テ御通知
ニ及ビマス、本日ハ是デ散會
午後二時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003903242X00519170708&spkNum=120
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