第40回帝国議会　貴族院　本会議　第6号　大正7年2月13日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　大正七年二月十三日（水曜日）
  　　　　午前十時五分開議
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  　　議事日程　第六號　大正七年二月十三日
  　　　　午前十時開議
  　　第一　男爵關義臣君請暇の件
  　　第二　大正七年度歳入歳出總豫算案竝大正七年度各特別會計歳入歳出豫算案審査期限を定むるの件
  　　第三　豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件審査期限を定むるの件
  　　第四　臨時軍事費豫算追加案（第一號）審査期限を定むるの件
  　　第五　大正七年度歳入歳出總豫算追加案（第一號）審査期限を定むるの件
  　　第六　豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件（追第一號）審査期限を定むるの件
  　　第七　酒造税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第八　酒精及酒精含有飮料税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　第一讀會
  　　第九　麥酒税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十　所得税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十一　戰時利得税法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十二　臨時國庫證券法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　第一讀會
  　　第十三　貨幣法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十四　登録税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　第一讀會
  　　第十五　遠洋漁業奬勵法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　第一讀會
  　　第十六　軍用自動車補助法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十七　鐵道敷設法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　第一讀會
  　　第十八　足尾鐵道及有馬輕便鐵道の買收に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會
  　　第十九　朝鮮事業公債法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　第一讀會
  　　第二十　樺太事業公債法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　第一讀會
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• 001・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  去ル九日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セ
  リ
  徵兵令中改正法律案
  舊韓國貨幣ノ處分ニ關スル法律案
  同日本院ニ於テ採擇スヘキモノト議決シタル帝國在〓軍人會國庫補助ノ請
  願ハ意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送付セリ
  同日第三部ニ於テ理事男爵關義臣君ノ補關選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果男爵宇
  佐川一正君當選セリ
  同日決算委員分科會ニ當選シタル主査ノ氏名左ノ如シ
  第四分科主査子爵西大路吉光君
  同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
  臨時國庫證劵法中改正法律案
  貨幣法中改正法律案
  登錄稅法中改正法律案
  遠洋漁業奬勵法中改正法律案
  軍用自動車補助法案
  鐵道敷設法中改正法律案
  足尾鐵道及有馬輕便鐵道ノ買收ニ關スル法律案
  朝鮮事業公債法中改正法律案
  樺太事業公債法案
  昨十二日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
  東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金繰入ニ關スル法律案
  帝國大學特別會計法中改正法律案
  大正七年度歲入歲出總豫算案竝大正七年度各特別會計歲入歲出豫算案
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  臨時軍事費豫算追加案(第一號)
  大正七年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)

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• 002・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、議事日程ニ進ミマ
  ス前ニ、議長ハ甚ダ悲シムベキコトニ付テ御協議ヲ致シタイコトガゴザイマ
  ス、ソレハ一昨十一日蜂須賀侯爵薨去ノ通知ニ接シマシタ、同侯爵ハ諸君ノ
  御承知アラセラレマス通リ、明治二十四年七月ヨリ同ジク二十九年十月マデ、
  五箇年四簡月間本院議長ノ職ヲ勤メラレマシタ御方デゴザイマス、此度薨去
  ノ報ニ接シマシテ洵ニ痛歎ノ至ニ堪ヘマセヌ、依ッテ弔辭ヲ贈リタイト存ジマ
  ス、又來ル十六日同候爵ノ葬儀ノ際ニ、議長ハ議院ヲ代表イタシマシテ葬儀
  ニ列シタイト存ジマス、此兩件ヲ諸君ニ御諮リヲ致シマス、御異存ゴザイマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・徳川家達

  ○議長(公爵德川家逹君)　御異議ナイト認メマス

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• 004・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第一、男爵關義臣君請暇ノ件、是ハ病氣
  ニ付十八日間ノ請暇デゴザイマス、許可ヲ致シテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 005・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

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• 006・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第二、大正七年度歲入歲出總豫算案竝大正七
  年度各特別會計歲入歲出豫算案審査期限ヲ定ムルノ件、第三、豫算外國庫ノ
  負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件審査期限ヲ定ムルノ件、第四、臨時軍
  事費豫算追加案第一號審査期限ヲ定ムルノ件、第五、大正七年度歲入歳出總豫
  算追加案第一號審査期限ヲ定ムルノ件、第六、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ
  契約ヲ爲スヲ要スル件追第一號審査期限ヲ定ムルノ件
  〔河井書記官朗讀〕
  大正七年度歲入歲出總豫算案竝大正七年度各特別會計歲入歲出豫算案
  右本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月十二日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月十二日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (第一號)臨時軍事費豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月十二日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (第一號)大正七年度歲人歲出總豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月十二日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月十二日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿

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• 007・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ガゴザイマセヌケレバ、日程ノ第二ヨリ第
  六マデ束ネテ問題ニ供シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 008・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　諸君、私ハ玆ニ大正七年度歲計豫算ヲ皆樣ニ御紹
  介ヲ申上ゲテ、併セテ政府ノ財政經濟ニ關係イタシマスル施設ノ一斑ニ付
  キマシテ、所見ヲ開陳ヲ致シタイト思フノデアリマス、暫ク御〓聽ヲ煩ハシ
  タイト希望イタシマス、抑〓帝國政府ノ財政經濟ニ關シマスル大體ノ方針ニ
  付キマシテハ、既ニ現内閣成立以來屢、宣明イタシタ所デゴザイマスルカラ
  シテ、玆ニ之ヲ繰返スノ必要ハナカラウト考ヘテ居リマスル、今ヤ内外
  ノ情勢ニ鑑ミマシテ、帝國ノ施設方策ニシテ急施ヲ要スルモノハ頗ル多イノ
  デアリマス、殊ニ國防ノ充實ノ如キモノハ一日モ忽ニスベカラザルモノデア
  ルト云フコトハ、勿論ノ事柄デアリマスル、故ニ大正七年度ノ豫算ノ編成ニ當
  リマシテ、政府ハ國防ノ充實ニ付キマシテハ出來得ル限リ必要ナル經畫ニ應
  ズベキ所ノ經費ヲ計上イタシマシタ、次ニ時局ニ伴ヒマシテ將來ニ向ッテ國
  運ノ進展ニ資スベキ產業ノ發達、〓育ノ振興等ニ必要ナル經費ヲ計上イタシ
  マシタ、其他一般普通ノ經費ニ付キマシテハ努メテ之ヲ認メザルノ方針ヲ採ッ
  タノデアリマス、以上ノ方針ニ依リマシテ編成ヲ致シマシテ當初衆議院ニ提
  出イタシマシタ所ノ大正七年度總豫算ニ計上シテアリマスル所ノ歲人ハ、經
  常部ニ屬スルモノ六億四千五百餘萬圓デアリマス、臨時部ニ屬スルモノ七千
  六百餘萬圓、合計七億二千百餘萬圓ト相成ッテ居リマス、其歲出ハ經常部ニ
  屬シマスルモノガ四億八千百餘萬圓、臨時部ニ屬シマスルモノガ二億四千餘
  萬圓、合計七億二千百餘萬圓ト相成ッテ居リマス、右大正七年度總豫算中ニ
  於キマシテ、其主要ナルモノヲ玆ニ〓言イタシマスレバ、國防ノ經晝ニ關係
  イタシマシテハ、國家自衞ノ保障ヲ完ウスルノ趣旨ヲ以チマシテ、海軍軍備
  ノ充實········補充ヲ圖ルノ急務ナルヲ考ヘマシテ、大正七年度ニ於キマシテ軍
  艦製造費ノ二千五百四十餘萬圓ヲ計上シマシタ、同年以降大正十二年度ニ亙
  ル六箇年度ニ於キマシテ、總額三億五十四萬餘圓ヲ追加要求ヲ致シテアリマ
  ス、ソコデ既定ノ豫算額ト合セマスルト、大正七年度以降ノ總額ガ五億八千
  四百餘萬圓ト云フコトニ相成リマス、今囘ノ經晝ハ歐洲ノ戰爭ノ實驗ニ鑑ミ
  マシテ、艦型其他ニ變更ヲ加ヘルノ必要ガアリマスルノミナラズ、更ニ艦艇
  增加ノ必要ヲ認メマシタ、尙又物價ノ騰貴ハ既定ノ經費ヲ以チマシテハ本
  年度ニ於テ豫定ノ工程ヲ遂ゲ得ナイト云フ憂ガアリマスルニ依リマシテ、是
  等ニ要シマスル所ノ經費モ追加要求ヲ致シマシタ、其他海軍ニ付キマシテハ
  大正七年度ニ於テ、水陸ノ設備費ノ追加、六百五十九萬餘圓、航空隊ノ設備費
  追加百萬圓、火藥廠設備費二百四十七萬餘圓、準備軍需品費、無線電信所設
  備費、臺灣豫備油田試掘費等ヲ計上イタシマシタ、陸軍ノ軍備ノ充實ニ關シ
  マシテハ、現在ノ兵力ヲ充實スルト云フコトヲ以テ主眼ト致シマシテ、大正
  七年度以降六箇年度ヲ以チマシテ、大體其目的ヲ達スルノ經晝ヲ立テマシタ、
  尙ホ定規ノ豫備後備兵ノ完成ニハ御承知ノ通リニ更ニ十二箇年ヲ要スルコト
  デアリマスルカラシテ、隨フテ本經畫ハ十八箇年度ニ亙リマシテ提出ニナッテ
  居リマスル、其臨時費ノ總額ハ五千五百二十六萬餘圓デアリマスル、同期間
  ニ要シマスル所ノ經常費ノ總額ハ、一億二千八百七十三萬餘圓デアリマス、
  而シテ經常費ノ平年度分ガ八百六十一萬餘圓ト云フコトニ相成リマス、大正
  七年度ニ於キマシテ經常臨時合計イタシマシテ、八百八十五萬圓ト云フモノ
  ヲ豫算ニ計上イタシテゴザイマスル、其他陸軍ニ付キマシテハ幹部要員補足
  ノ爲ニ要シマスル經費、補充兵〓育召集ノ爲ニ要シマスル經費、特種兵器製
  造及試驗費、軍用氣球〓究費ノ增加、自動車〓究費ノ增加、自動車奬勵費等
  ヲ計上イタシテゴザイマスル、國防充實ニ關スル經費ノ外ニ產業ノ發達ヲ圖
  リ、我ガ經濟的基礎ノ確立ヲ期スルノ施設ト致シマシテ、製鐵所擴張費ノ追
  加千百五十八萬餘圓、大阪工業試驗所ノ設置費、緬羊ノ飼育奬勵費、臨時窒
  素〓究所ノ設置費、遠洋漁業奬勵費ノ增加、土地利用費、漁港ノ修築奬勵費、
  農業倉庫ノ建設奬勵金ノ增加、絹業試驗所設置、海外商品陳列館ノ設置補助
  費ト云フ如キモノヲ計上ヲ致シマシタ、〓育ノ振興ニ關シマシテハ、市町
  村立小學〓員ノ俸給ハ其一部ヲ國庫ヨリ支出スルト云フコトガ機宜ニ適シタ
  モノト認メマシテ、之ニ要シマスル所ノ經費千萬圓ヲ豫算ニ計上ヲ致シマ
  シタ、其他福岡農科大學、第十一高等工業學校、第三高等農業學校、第六
  高等商業學校、東京貿易殖民語學校、第九乃至第十二高等學校、藥學專門學
  校等ノ創立ノ經費、東北帝國大學機械工學科ノ設置、航空〓究所ノ創設、科
  學〓究獎勵費等ノ支出ヲ計上イタシマシタ次第デゴザイマス、以上申シマシ
  タ外ニ尙ホ大正七年度豫算ニ計上イタシマシタ所ノ歲出ノ重ナルモノヲ申上
  ゲマスレバ、諸河川改修工事繰上等ニ伴フ年割額ノ增加、預金利子及利子拂
  手數料ノ增加、國庫豫備金ノ增加、議院建築費、田畑地價調査費、國勢調査
  雲、官有財產調査費、地方裁判所支部權限擴張ニ關スル經費、區裁判所設置
  ニ關スル經費、海外通信支拂金ノ增加、恩給ノ增加、內地各地間及東京京城間
  ノ電信線路ノ增設費、無線電信局ノ設置費、電氣工業用發電水力調査費、商船
  學校擴張費等デゴザイマスル、大正七年度總豫算ニ於キマスル所ノ歲出合計
  ハ前段申上ゲマシタ如クニ七億二千百餘萬圓ニ相成ッテ居リマス、之ニ對シマ
  て
  シテ既定ノ歲入ハ其額合計六億八千餘萬圓デアリマシテ、差引キ四千百餘萬
  圓ト云フ歲入不足ヲ見ル譯デアリマスル、此歲入ノ不足ヲ補塡ヲ致シマスル
  爲ニ前年度剩餘金中ヨリ二千六百六十餘萬圓ノ繰入ヲ致シマシタ、尙ホ差引
  キ不足額ノ千四百七十餘萬圓ハ國防計畫ノ遂行上後年度ニ亙リマシテ必要ナ
  ル經費ノ恆久的財源ヲ調達スルノ目的ヲ以チマシテ、租稅收入、專賣局益金
  及通信收入ニ付キマシテ、增收ノ計畫ヲ立テマシタ、其大正七年度ノ歲入ヲ
  以チマシテ右申シマシタ所ノ千四百七十餘萬圓ノ不足ヲ補塡スルノ計畫ヲ
  立ッタノデアリマス、玆ニ增收計畫ノ大要ヲ極メテ簡單ニ申上ゲマスレバ、
  第一ニハ租稅ニ付キマシテハ所得稅及酒稅ノ增收ヲ主體ト致シマシテ、尙ホ
  稅制整理ノ趣旨ヲ以チマシテ、織物消費稅、砂糖消費稅及自家用醬油稅ニ改
  正ヲ加ヘマシテ、〓凉飮料稅ナルモノヲ新設イタシマシタ、通行稅及石油消
  費稅ヲ全廢スルノ計畫ヲ立ッタノデアリマス、通信收入ニ付キマシテハ、-
  般經濟ノ發達竝ニ負擔ノ難易ニ鑑ミマシテ、電報小包及信書料金ニ相當ノ値
  上ヲナスコトノ計畫ヲ立テマシタ、又專賣局ノ益金ニ付キマシテハ、御承知
  ノ如ク近來物價騰貴ニ依リマシテ、專賣事業ニ要シマスル所ノ經費ニ增加ヲ
  來シマシテ、之ガ爲ニ專賣局益金ノ收入ガ減少イタシマスル、之ヲ塡補スル
  ト同時ニ一般財政上ノ必要ニ應ジマシテ、其財源ヲ得ルノ目的ヲ以チマシテ、
  製造煙草ノ各品種ヲ通ジマシテ、其定價ニ對シ約一割七分ノ引上ヲ實行イタ
  シマシタ、右申シマシタ租稅竝ニ官業收入ノ增收計畫實行ノ結果ト致シマシ
  テハ大正七年度ニ於キマシテハ、千四百七十餘萬圓、平年度ニ於キマシテ
  三千七百餘萬圓ノ增收ヲ見ル所ノ計算トナッテ居リマス、尙ホ以上ノ增收計
  畫ニ依リマスル所ノ收入ト共ニ後年度ニ亙リマスル國防計畫ニ要シマスル所
  ノ經費ヲ補充イタシマスル爲ニ、大正八年度以降國債償還額五千萬圓ノ內二
  千萬圓ヲ國防充實ノ財源ニ供シマシテ、以テ將來ニ亙ル帝國財政ノ鞏固ナル
  基礎ヲ維持スルノ策ヲ立ッタ次第デゴザイマス、然ルニ衆議院ニ於キマシテ
  審議ノ結果、右增收計畫ノ中租稅收入ニ付キマシテ、稅制整理ニ關スル分ニ
  對シマシテ、其實行ヲ他日ニ讓ルヲ可トサレマシテ、卽チ織物消費稅法、砂
  糖消費稅法、自家用醬油稅法ノ各改正案、〓涼飮料稅法案、通行稅及石油消
  費稅ノ廢止法律案ヲ否決イタシマシタ、併セテ郵便法改正法案ヲ否決イタシ
  マシタ、而シテ衆議院ハ御承知ノ如ク大正七年度ニ於ケル財政計畫ノ骨子デ
  アリマスル所ノ國防充實ノ計畫ト云フモノハ是認ヲ致シマシタ、之ニ伴フ增
  收計畫ニ付キマシテモ、其增收ノ主體タル所得稅竝ニ酒稅ノ增徵ト云フモノ
  ハ之ヲ認メマシタ、唯現行租稅制度ノ整理ハ主義トシテ、之ヲ認メルケレド
  モ、相當ノ時期迄之ヲ延期スルヲ以テ適當ナル措置ナリトシタノガ、是ガ卽
  チ衆議院ノ論デアリマス、而カモ既ニ衆議院ノ修正ニ依ッテ稅制整理ノ延期
  ヲ致シマシタ以上ハ玆ニ相當ノ餘裕ガ生ジテ來ルノデアリマスル、隨ッテ强
  ヒテ政府ノ計畫イタシマシタ所ノ通信收入ニ於テ增收ヲ圖ラズトスルモ、收
  支適合其宜シキヲ制スルハ難カラヌノデアリマス、卽チ增收計畫其モノ自體
  ニ付テハ、何等ノ支障ヲ生ズルモノデハナイノデアリマス、加之衆議院ハ國
  防充實ニ關スル財源ノ補充ト致シマシテ、既定公債償還額五千萬圓ノ中二千
  萬圓ヲ大正八年度以降ニ於テ減額イタスト云フコトノ計畫モ認メマシタ、以
  テ國防計畫ノ遂行ヲ遺憾ナカラシメタノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマス
  ルカラシテ、政府ハ總豫算ニ於キマスル歲入歲出ノ均衡ヲ保タシムル爲ニ之
  ニ修正ヲ加ヘマシタ、即チ歲入經常部ニ於テ六億四千二百餘萬圓、臨時部ニ
  於テ七千六百餘萬圓、合計七億千九百餘萬圓ヲ計上イタシマシタ、歲出ニ於
  キマシテハ、國庫豫備金ノ增加二百萬圓ヲ削除イタシマシタ、而シテ衆議院
  ハ歲出ニ於キマシテ二三ノ事項ニ削減ヲ加ヘマシタ外、時局ニ伴ヒ國運ノ發
  展ニ資スベキ產業ノ發達、〓育ノ振興等ニ要シマスル所ノ經費、其他歲出ノ
  全部竝ニ公債計畫等ヲ是認イタシタ次第デアリマス次ニ臨時事件ニ關係ス
  ル經費ノコトニ付テ中上ゲタイト思フノデアリマス、臨時事件ニ關係イタシ
  マスル經費ニ付キマシテハ、臨時軍事費、特別會計ニ於キマシテ歲出三千三百
  七十餘萬ヲ計上イタシテゴザイマス、官有物拂下代及雜收入百七十五萬餘圓、
  借入金及公債募集金三千百九十五萬ヲ以テ之ガ財源ニ充ツルノ計畫ヲ立テタ
  ノデゴザイマス、又一般會計ニ於キマシテ、大正七年度ニ於テ臨時事件豫備
  費ガアリマス、此豫備費ノ總額ガ八千四百萬圓ト云フモノヲ計上イタシタノ
  デゴザイマス、右豫備費ノ中ニハ判任官以下臨時手當千七百餘萬圓、物價騰
  貴ニ伴ヒマスル一般經費ノ增加額千七百萬餘圓等特殊ノ經費ヲ包含イタシテ
  居リマス、而シテ之ガ財源ト致シマシテハ山東鐵道收入、靑島事業收入、臨
  時受託造修收入、臨時海上再保險收入、借入金及前年度繰入金ヲ以テ充ツル
  ノ外、時局ノ影響ニ依リマシテ增加シタル所ノ利得ニ對シ戰時利得稅ナルモ
  ノヲ課シマシテ、之ヲ以テ財源ニ充ツル計畫ヲ立テタノデアリマス、開戰以
  來大正七年度ニ亙リマシテ、臨時事件ニ關スル所ノ經費ハ總額四億四千七百
  餘萬圓ニ達シテ居リマス、而シテ時局ノ前途ヲ達觀イタシマスルトキニハ戰
  局ハ愈、紛糾イタシテ、其終熄ノ時期ト云フノハ何人モ之ヲ豫見スルコトハ出
  來ヌノデアリマス、故ニ之ガ推移ニ伴ヒマシテ更ニ之ニ對應スベキ所ノ施設
  ヲ要セヌトモ限ラナイノデアリマス、依ッテ財政ノ按排、經濟ノ調節等ニ深ク
  考慮ヲ盡スベキハ勿論ノコトデアリマスガ、豫メ軍國ノ急ニ應ゼムガ爲ニ政
  府ト致シマシテハ當初特ニ彈力アル財政計畫ヲ立ツル必要ヲ認メタノデア
  リマス、次ニ政府ノ公債發行竝ニ公債償還計畫ニ付テ一言申上ゲタイト思フ
  ノデアリマス、大正七年度ニ於キマシテ公債償還ニ充ツベキ金額ハ前年度ト
  同ジク之ヲ五千萬圓ト致シ、大正八年度以降ニ於キマシテハ之ヲ三千萬圓ニ
  止ムルノ計畫ヲ採リマシタ、惟フニ不生產的國債ハ成ルベク之ヲ多額ニ償還
  シ以テ財政ノ安固ヲ圖ルノ必要ガアルノデアリマス、併ナガラ大正八年度以
  降ニ於キマシテハ、既ニ縷々述ベマシタ如クニ、國防計畫ノ實行上、增收計畫
  ニ依ル歲入ト共ニ其財源ニ充ツル必要ガアリマスルニ依ッテ之ヲ三千萬圓ニ
  減額スルノ已ムヲ得ザルニ至ッタ次第デゴザイマス、大正七年度ニ於キマスル
  公債發行計畫ニ關聯イタシマシテ、玆ニ大正六年度ニ於ケル公債募集ノ狀況
  ニ付テ諸君ノ御參考ノ爲ニ一言ヲ費シタイト思フノデアリマス、大正六年度
  ノ政府ノ募債計畫ハ御承知デアラセラルル如クニ、臨時國庫證劵二億圓ヲ合
  シマシテ、總計三億六千百八十六萬圓ト云フコトニナッテ居リマス、デ、此中ニ
  實行未了ト稱スベキモノガ帝國鐵道特別會計ニ於キマシテ、預金部ヨリノ借
  入金返濟ノ爲ニ發行イタシマシタモノガ二千萬圓、外國債借換ノ爲ニ發行イ
  タシマシタモノガ三千萬圓臨時軍事費豫備費ニ充テマスモノガ二千萬圓、是
  ガ重モナモノデアリマス、此中ノ申上ゲマシタ所ノ前二者ハ金融調節上市場
  ノ狀況ニ依リテハ必シモ之ヲ募集シナケレバナラヌト云フモノデハナイノデ
  アリマス、又前年ノ議會ニ於キマシテ、政府ハ豫算ニ之ヲ計上イタシマシタ其
  際ニモ、其趣旨ハ縷々辯ジテ置イタ次第デアリマス、而シテ一方ニ於キマシテ
  豫算ニ計上イタシマシタ所ノ募債計畫ノ大體ハ之ヲ實行イタシマシタル外ニ
  豫算ニ關聯シマセヌ所ノモノデ未ダ大分募債イタシテ居ルノデアリマス、卽
  チ佛國圓國庫債券同大藏省證劵、英國圓大藏省證劵等ノ發行イタサレタモノ
  ガ旣ニ一億五千六百萬圓ノ多キニ達シテ居リマス、故ニ是等ニ依リマシテ金
  融ノ調節ヲ完ウスルコトヲ得マシタ以上、玆ニ前二者ノ公債ヲ發行スルト云
  フコトヲ政府ハ打切ルコトニ致シマシタ、又第三ノ臨時軍事費ノ公債ニ付キ
  マシテハ今日ニ至ルマデ之ガ發行ヲ必要トスル事件モ發生シマセヌ、ソレ故
  ニ之ヲ募集イタサヌノデアリマス、斯ク申上ゲマスレバ大正六年度ニ於ケル
  政府ノ募債計畫ハ大體ニ於キマシテ完了シタモノト申上ゲテ宜シカラウト考
  ヘテ居リマスノデアリマス、大正七年度ニ於キマスル募債ニ付キマシテハ既
  ニ申上ゲマシタ臨時事件費支辨ノ爲ニ致シマスル公債ノ外、電話事業公債千
  萬圓、鐵道公債二千五百萬圓、朝鮮事業公債千三百二十餘萬圓、臺灣事業公
  債二百萬圓、樺太事業公債百餘萬圓等、各種ノ事業公債ヲ合計イタシマスル
  ト五千百餘萬圓ニ上ルノ見込デアリマス、尙ホ臨時國庫證劵發行ニ付キマシ
  テハ大正六年法律第七號ニ依リマシテ二億圓ヲ其限度ト致シテ置キマシタ
  ガ、時局ニ伴フ我ガ經濟ノ發展、國際經濟ノ狀態ニ鑑ミマシテ爲替資金ノ疏
  通ヲ圖リ、軍需品代金ノ決濟ヲ益〓圓滑ナラシムル要ガ玆ニ起リマスル故ニ、
  二億圓ノ外ニ更ニ三億圓ノ增加ヲ致シタイト云フ見込ヲ以チマシテ他ノ法律
  案ヲ提出イタシテ居リマス、次ニ經濟狀態ニ付キマシテ一言ヲ費シタイト思
  ヒマス、我國ノ經濟狀態ヲ通觀イタシマスト、對外貿易ハ時局ノ影響ヲ受ケ
  マシテ其面目ヲ一新イタシマシテ、時局ノ發生以來昨年末ニ到リマスル輸入
  總額ガ二十六億二千三百餘萬圓ニナッテ居リマス、輸出總額ガ三十七億九千
  九百餘萬圓ニ相成シテ居リマス、此差引キ十一億七千五百餘萬圓ノ輸出超過ト
  云フコトニ相成リマスル、此輸出超過ノ外ニ同期間ニ於キマシテ貿易外ノ收
  入超過額ガ七億圓バカリゴザリマス、之ヲ合計イタシマスルト國際貸借上正
  貨收入超過額ハ約十八億圓ニ達シテ居リマス、此內聯合與國ニ對シマスル財
  政上直接竝ニ間接ノ援助ニ供セラレタリト見ルベキモノガ約十三億圓ノ巨額
  ニ達シテ居リマス、而シテ又內地正貨ノ充實ト產業ノ勃興トニ資シタルコト
  ガ極メテ顯著デアリマシテ、時局發生ノ當時我ガ內地正貨準備ハ御承知ノ如
  ク一億三千二百萬圓デアリマシタ、今ヤ四億六千餘萬圓ニ達シテ居リマス、又
  昨年末マデニ銀行會社ノ新設又ハ增加ノ計畫資本金額ガ二十五億六千餘萬圓
  ニ上ッテ居リマシテ、殊ニ昨年中ニ於キマシテハ、十五億六千餘萬圓ノ多キ
  ニ達シテ居リマス、我ガ經濟ノ發展ヲ期シ其鞏固ナル基礎ヲ樹立イタシマス
  ルニ當リマシテハ、金融機關ヲ整備改善イタシマシテ、其機能ヲ發揮セシムル
  コトノ最モ急務ナルコトハ勿論ノコトデアリマス、此趣意ヲ以テ政府ハ曩ニ
  第三十九議會ニ於キマシテ各種ノ法案ヲ提出イタシマシテ、大體之ガ通過ヲ
  見マシタ、爾來政府ニ於キマシテハ本問題ニ關シマシテ愼重講究ヲ重ネマシ
  テ畫策實行スル所アッタノデアリマス、就中對支金融機關ノ整備ニ關シマシテ
  ハ最モ急務ナルヲ認メマシテ、旣ニ滿蒙ニ對シマシテハ朝鮮銀行ヲシテ貨幣
  統一竝ニ一般金融ノ機關トナラシメ、又東洋拓殖株式會社ヲシテ長期金融ノ
  機關トナラシメ、滿鮮ノ經濟的連絡ヲ圖ルノ方策ヲ實現スルコトヲ得タノデ
  アリマスル、又支那本土ニ付キマシテハ從來內地ノ銀行〓ガ大ニ活躍ヲ致シ
  テ居リマスル次第デアリマスルガ、一層是等ヲシテ活躍セシメ、其外御承知
  ノ如ク有力ナル日支ノ實業家ノ設立イタシマシタ所ノ中華滙業銀行ノ活動ニ
  依リマシテ日支經濟提携ノ實ヲ擧ゲ、彼我經濟上ノ發展ニ資スルコト蓋シ多
  大ナルモノデアラウト考ヘテ居ルノデアリマス、又南洋南米等ニ對シマシテ
  ハ橫濱正金銀行及臺灣銀行ヲシテ貿易金融ノ圓滑ヲ圖ラシムルト共ニ海外興
  業株式會社ナルモノヲシテ移民金融ノ便ヲ圖ラシムルコトニ致シマシタ、又
  日米金融ノ連絡提携ニ付キマシテハ曩ニ政府ハ財政經濟委員ヲ特派イタシマ
  シテ、是ガ實現ヲ圖ラシメマシタ、最近ニ至リマシテ紐育ノ聯邦準備銀行ト
  日本銀行トノ間ニ金融ノ連絡ニ關スル協約ノ締結ガ成リマシタ、玆ニ戰時竝
  ニ戰後ニ於ケル國際金融關係ニ多大ノ便宜ヲ得ルニ至リマシタ、其他日露金
  融ノ連絡等ニ付キマシテモ目下〓究ノ步ヲ進メツヽアル次第デアリマス、右
  ノ外內地金融機關ニ付キマシテハ內閣成立以來幾多ノ改善ヲ加ヘタノデアリ
  マスガ、尙ホ事業資金ノ供給ヲ潤澤ニシ一般金融ノ圓滑ヲ期セムガ爲ニ、之
  ニ必要ナル提案ヲ致シタイト考ヘテ居ル次第デゴザイマス、歐洲戰局ノ現狀
  ハ申上ゲマスルマデモナク米國ノ參戰ニ因リマシテ時局ハ愈〓擴大シ、露西
  亞ノ頽勢ニ因リマシテ愈、混亂ノ狀態ヲ呈シテ居リマスノデアリマス、此結
  果ガ如何ニナルカト云フコトハ何人モ逆メ睹ルコトハ出來マセヌ、此秋ニ當
  リマシテ帝國ト致シマシテハ聯合與國ニ對シ益、財政上ノ援助ヲ爲スト共ニ、
  健全ナル產業ノ發達ヲ圖リマシテ、經濟自給ノ基礎ヲ確立シ、以テ戰後經濟
  ノ變動ニ對シテ豫メ備ヘナケレバナラヌト云フコトハ私ガ申上ゲマスマデモ
  ナイコトデアリマス、旣ニ政府ハ時局ニ適應イタシマスル所ノ戰時經濟施設
  ニ付キマシテハ多少ノ考慮ヲ致シ其實施モ致シマシタガ、尙ホ將來銳意之ガ
  〓究ヲ怠ラズ、機宜ノ畫策ヲ施シテ以テ遺算ナキヲ期シタイト思ッテ居リマ
  ス、而カモ能ク是等ノ實效ヲ擧ゲ所期ノ目的ヲ完ウ致シマスル爲ニハ國民各
  自ノ努力ヲ要スルト云フコトハ是亦勿論ノコトデアラウト考ヘテ居リマス、
  私ハ終リニ臨ミマシテ諸君ガ愼重審議、速ニ豫算案ニ對シマシテ協賛ヲ與ヘ
  ラレムコトヲ切ニ希望イタス次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=8

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• 009・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ通〓ニ依リマシテ發言ヲ許シマス、柳澤伯
  爵
  〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=9

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• 010・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　本員ハ茲ニ簡單ナル二三ノ質問ヲ致シマス、第一ノ質問
  ハ航空術ノ〓究調査ニ關スル點デアリマス、本年度ノ豫算ヲ見マスルト、航空
  術〓究及調査ニ關シマシテ文部省海軍省竝ニ陸軍省、此三省ガ相當ノ金額ヲ
  支出シテ居リマス、文部省ニ於キマシテハ東京大學航空〓究所開始ニ伴フ經
  費合計ノ內デ今年度ニ二十四萬圓、海軍省ニ於キマシテハ航空隊設備費ト致
  シマシテ旣定ノ六十三萬餘圓ニ加ヘマスニ五百八十五萬圓ヲ支出シ、是ガ七
  年度以降五箇年ノ繼續デアリマス、合計六百四十七萬圓ノ中デ百十萬圓ノ支
  出デアリマス、陸軍省ニ於キマシテハ航空隊設立竝ニ軍用氣球〓究費、合計百
  十三萬餘圓ノ支出デアリマス、此三省ヲ通ジマシタル總計ヲ見マスト約二百
  四十餘萬圓デアリマス、當局者ニ於キマシテモ相當ニ此技術ニ付キマシテハ
  〓究調査ヲ圖ラレルコトハソレデ分ッテ居リマス、併ナガラ本員考ヘマスル
  ノニ現今本邦ニ於ケル所ノ飛行術ハ軍事當局者ハ如何ナル見ヲ持ッテ居ラレ
  ルカハ存ジマセヌガ、私共素人ノ目カラ見マスルト如何ニモ幼稚デアリマス、
  歐米諸國ノ飛行界ノ大體ノ今日ノ進步發展ニ比ベテ見マスルト迚モ比較ニ
  ナラヌ、是ハ私ハ天下ノ通論ト考ヘマス、大演習ガ各地ニ開カレマシテ之
  ニ參加イタシマス飛行機ノ現狀ハ如何デアリマスカ、殆ド東京カラ僅ニ二三
  百里ノ先キニ行クニ停電セザルナシ、電車デ言ヘバ停電デアル、殊ド落チナ
  イ飛行機ハナイ、私共見ルト飛行機ハ落チルノガ原則デハナイカト考ヘル、
  日本ノ現狀ニ於キマシテ是ハ技術者ノ方ニ未熟ノ所モゴザイマセウガ、又飛
  行機ノ不完全モアラウト思ヒマス、要スルニ技術ノ方面竝ニ人ノ方面ニ於キ
  マシテモ誠ニ私共ハ遺憾ノ點ガ多イト考ヘテ居リマス、此點ハ陸軍竝ニ海軍
  當局者ニ於カレマシテハ如何ナル言辭ヲ以テ御答ニナルカ知レマセヌガ、海
  軍ハ暫ク措イテ、殊ニ陸軍ニ付ラノ缺陷ガ多イヤウニ私ハ考ヘルノデアリマ
  ス、ソレニ鑑ミラレマシテ斯樣ナ所ノ相當ナル增額ヲ致サレマシタノハ誠ニ
  結構デアリマスガ、之ニ付テ當局者ハ現今ノ狀勢ニ鑑ミラレ、將來是ダケノ
  費用ガアレバ最早機械ニ於テモ十分ナモノガ出來ル、又人ニ於テモ十分ナル
  鍛練訓練ガ出來ルト云フ御見込デゴザイマスカ、又飛行將校ノ採用ニ付キマ
  シテハ現時ノ狀態ニ於キマシテハ陸軍ノ少壯ナル所ノ士官ヲ志願ニ依ッテ飛
  行將校ニ向ケテ居ルノデアリマス、斯ノ如ク段々設備ガ大ナルニ從ッテ、果シ
  テ現狀ノ如キ採用法デ宜シイノデアリマスカ、或ハ飛行將校ナルモノハ年齡
  ニ於テ制限ガアル、又其技術ニ於テモ特殊ノモノデアリマスカラ、之ヲ他ノ將
  校ニ比ベマストナカ〓〓及バザル所ノ困難苦痛ガアリマス、而カモ飛行將校
  タルヤ決シテ是ハ大將中將ニマデ行カレルモノデハナイ、殆ド佐官ニ於テ罷
  メラレル人デアラウト思ヒマス、年齡ニ於テ制限ガアリ昇進ニ於テ極メラ
  レテ居ル所ノ此飛行將校ハ矢張リ今マデノ所ノ採用法ニ依ラレルノデアリマ
  スカ、或ハ此將校ニ限ッテ特別任用法デモ設ケラレマシテ將來特別任用ノ途
  ヲ以テ此將校ニ當テラレ、或ハ准將校ノ如キモノトサレルノデアリマスカ、
  此邊ノ御見込ハ如何デアリマスカ、私ハ斯ノ如キ所ノ相當ノ經費ヲ出サレル
  以上ハ、飛行將校ノ採用ニ付テハ相當ノ御考ガアラウト存ジマス、之ニ付テ
  私ハ當局者ノ相當ナル所ノ御意見ヲ伺ヒタイノデゴザイマス、次ニ矢張リ陸
  軍デアリマスガ、今年度ノ豫算ニ於キマシテ特種兵器製造及試驗費ト云フモ
  ノガアリマス、是ハ今年度初メテ出マシテ、五箇年繼續デ百五十萬圓ノ中デ、
  七年度ニ於キマシテハ一一十九萬餘圓ヲ請求サレテ居リマス、此特種兵器ト云
  フモノハ如何ナルモノデアリマスカ、嘗テ前々議會ニ於キマシテ歐洲戰爭ガ
  始マッテ二年後ト記憶シテ居リマス、議員ノ質問ニ對シテ當局者ハ別ニ歐洲
  ノ戰爭ニ鑑ミテ左程學ブベキモノハナイ、大〓分ッテ居ルヤウデアル、左程是
  ハ我ガ陸軍ノ將來ニ對シテ左程ノ〓訓ヲ與ヘルモノデモナイカノヤウナ御返
  事ヲ伺ッタト記憶シテ居リマス、併ナガラ斯ノ如キ所ノ特種ノ兵器ノ製造及
  試驗費ト云フモノガ出マスル所ヲ以テ見マスト、是ハ必ズヤ歐洲戰爭ノ實績
  ニ鑑ミラレテ特別ナ所ノモノヲ造ラウト云フコトデハナイカト考ヘラレマ
  ス或ハ種々ゴザイマセウガ、或ハ英吉利デ使ハレテ居ル「タンク」ノ如キモ
  ノモアラウト考ヘマス、又其他ニ私共素人ノ知ラヌ所ノモノモアラウト考ヘ
  テ居リマスガ、此費用ハ歐洲ニ行ハレマス所ノ現今使ッテ居ル所ノ兵器ノ模
  倣デアルノデアルカ、同ジヤウナモノヲ造ル積リデアリマスカ、或ハ歐洲現
  狀ノ戰爭ノ實績ニ鑑ミテ、ソレニ對シテ優ルベキモノ或ハ一種特別ノ何カ當
  局ニ於テ兵器ヲ考ヘラレタノデアルカ、私ハ具體的ニ其兵器ヲ伺フノデアリ
  マセヌ、詰リ歐羅巴ノ戰爭ニ於テ用ヒラレテ居ル所ノ兵器ノ模倣ヲスルノカ、
  模倣ニ非ズシテ特種ノ自發的發明ガアルノデアルカ、又何カサウ云フモノガ
  アルノデアラウカ否ヤト云フコトヲ伺フノデアリマス、第三ニハ國勢調査事
  業ニ付テ伺ヒタイノデアリマス、是ハ私ハ個人トシテ二三政府委員ニ既ニ伺ツ
  タコトハアリマスガ、個人ノ應答ハ私ハ信ズル譯ニハ參リマセヌ、又十分ニ
  御答ヲ受ケテ居リマセヌ、依ッテ疑ヲ此デ霽ラサウト思フノデアリマス、多
  年ノ懸案タル國勢調査事業ハ此政府ニ於テモ御奮發ニナリマシテ、總額ニ於
  テハ〓或所ニ於テハ五箇年、或所ニ於テハ八箇年ノ繼續費デアリマス、要ス
  ルニ約五百餘萬圓ノ經費ヲ認メラレルコトニナッタノデアリマス、日本ノ本
  州ニ於テハ御承知ノ如クニ七年度ヨリ八箇年ノ繼續費デアリマシテ、二百十
  五萬圓、之ニ地方費ガ百五十五萬圓餘加ハルノデアリマス、ソレカラ朝鮮ニ
  於キマシテハ五箇年繼續デ一百二萬餘圓、臺灣ニ於キマシテハ六箇年三十一
  萬餘圓、樺太ニ於キマシテハ五箇年ノ繼續デ八萬六千餘圓、迄繼續費ノ年度コ
  ソ違ヒハアリマスルガ、要スルニ約五百餘萬圓ヲ計上サレタノデアリマス、私
  ハ玆ニ於テ疑ノアルノハ本土ニ於テハ八箇年ノ繼續、朝鮮ハ五箇年ノ繼續、臺
  灣ハ六箇年ノ繼續、樺太ハ五箇年ノ繼續、是ハ土地ノ廣狹、人口ノ多少ニ依ツ
  テ多少年度ニ違ヒハアルト思ヒマスガ·先ヅ本州ノ八箇年、是ハ經驗ノナキ
  極メテムヅカシイ事業デアリマスカラ、念ニ念ヲ入レテ八箇年トシタノデア
  ラウト思ヒマス、之ニ付テハ多少長イデハナイカト云フ御批難モアリマセウ
  ガ、私共ノ目カラ見テハ是ハ左樣ニ思ヒマセヌ、是ハ然リト思ッテ居リマス、
  然ルニ臺灣ハ六箇年繼續デアリマス、是ハ甚ダ私ハ分ラヌ、臺灣ハ御承知ノ
  如ク戶口調査ノ名前ニ於テ三十八年ニ一囘ノ島勢調查ヲ施行イタシ、大正四
  年ニ同ジク三箇年ノ繼續費ヲ以テ第二囘ノ戶口調查ヲシテ居リマス、卽チ二
  囘ノ戶口調査ヲ過去ニ於テシテ、而カモ其繼續費ハ三箇年デアッタニ拘ラズ、
  今度ノ臺灣ノ國勢調査ハ何故ニ倍ノ六箇年ノ繼續費デアルカ、或ハ前ノ二囘
  ノ調査ニ於キマシテ三箇年ノ繼續費ト云フ名目デアルガ、其實ハ他ノ方法ニ
  依リ他ノ名目ノ費用ニ依ッテ六箇年ニ今マデナッタ、其經驗ニ鑑ミラレテ今度
  眞相ヲ此ニ吐露セラレテ六箇年トセラレタノデアリマスカ、如何ニモ前二囘
  ノ經驗ノアル臺灣ニ三箇年トセズシテ今年ニ限ッテ六箇年ニスルノハ甚ダ私
  ニハ分ラナイノデアリマス、樺太ノ六箇年、是ハ小サイ所ニ似合ハヌ甚ダ長イ
  年限デアリマスガ、是ハ土地ノ關係等モアッテ致方ナイト考ヘテ居リマス、朝
  鮮ノ五箇年ガ又分ラヌノデアリマス、朝鮮ハ人口ガ千五百萬アラウカト考ヘ
  テ居リマスガ、交通機關ノ如キモ又本邦ノ如ク十分ナ所デナイト考ヘテ居リ
  マス、而カモ朝鮮ニハ餘リ斯樣ナコトニ經驗ノアル方ガ無イノミナラズ、
  般ニ內地ヨリ一層新規ノ眼ヲ以テ見ラレテ居ルダラウト考ヘテ居リマス、ソ
  レガ五箇年デ完成スル、是ガ私共最モ分ラヌノデアリマス、二度ノ經驗アル
  臺灣デサヘモ六箇年ト云フノニ朝鮮ガ五箇年、臺灣ガ六箇年、甚ダヲカシイ
  ノデアリマスガ、朝鮮ノ五箇年モ新規ノ初メテノ事業トシテ是ハ短カ過ギル
  ト云フコトハ私ハ分ラヌノデアリマス、此說明ガ今日如何ニモ未ダ私ニハ分
  ラヌノデアリマス、ソレカラ本州ノ八箇年繼續費ノ費用ガ二百五十餘萬圓ガ
  計上シテアリマス、所ガ御承知ノ如ク是ハ地方費ガ大正九年ニ於テ百五十餘
  萬圓アルト考ヘマス、是ハ衆議院ノ豫算委員會ニ於キマシテハ斯樣ニナッタ
  ノデアリマス、地方費ノ負擔ハドウシテモ認メルコトハ出來ナイ、若シ政府
  ニ於テ大正九年ニ百五十餘萬圓ノ全部ヲ負擔スルナラバ國勢調査費ハ認メル
  ガ、若シモ地方ニ負擔ヲ掛ケルナラバ此案ハ否決スルト云フ狀態デアッタノ
  デアリマス、然ルニ其時ノ政府委員ハ斯樣ニ言ハレテ居リマス、甚ダ曖昧デ
  アリマス、是ハ豫算委員三分科ノ速記錄デアリマスガ、市來大藏次官ハ政府
  ハ出來ルダケノコトヲスル、斯ウ言ハレテ居ルノデアリマス、是ハ初メテデ
  アリマス、二度目ニモ出來ルダケノコトヲ政府ハ努メマスト政府ハ言ハレテ
  居ルノデアリマス、斯ウ申サレタノデアリマス、豫算委員會ノ方ハ明カニ大
  正九年ニ百五十餘萬圓ノ地方費ヲ出スト云フコトヲ言明スレバ之ヲ可決スル
  ガ、然ラザレバ否決スル、然ルニ政府委員ハハッキリト百五十餘萬圓ノ費用
  ハ大正九年ニ於テ出スト云フコトヲ言ハレズニ、婉曲ナル言葉ヲ以テ言ハレ
  タノデアリマスガ、此婉曲ナル言葉ハ大藏大臣ニ於キマシテ衆議院ノ希望ノ
  如クニ大正九年ニ於テ百五十餘萬圓ヲ國庫ノ支辨トスルト云フコトヲ玆ニ斷
  言ハ出來ナイカ、御斷言ガ出來レバ甚ダ結構デアリマスガ、ソレヲ御伺ヒシ
  タイノデアリマス、若シモ是ガ衆議院ノ希望通リニ果シテ。地方費ト云フモノ
  ヲ全部國庫デ負擔スルト云フコトニナリマスレバ、然ラバ明治三十五年法律
  第四十九號ハ如何サレルノデアリマスカ、此法律ニ依リマスト、地方費ト國
  庫ノ分擔トスト云フコトガ規定サレテアル、若シモ此地方費全部ヲ國庫デ負
  擔シマスト法律ヲ更ヘナケレバナラスト考ヘテ居リマス、是ハ如何ニナリマ
  スカ、伺ヒタイノデアリマス、ソレカラシテ此衆議院ノ希望ノ如クニ百五十
  餘萬圓ガ國庫ノ支辨トナリマスト繼續費ニ於キマシテ、大正九年ノ繼續費ガ
  殖エルノデアリマス、其繼續費ノ追加豫算ヲ本議會ニ出サレルノデアルカ否
  や、是ハ大正九年ノミノ地方ノ負擔デアリマシテ、其他ニ地方ノ負擔ハ掛ラ
  ヌノデアリマス、併ナガラソレハ大正九年ニ至ルマデ、卽チ大正八年度アタ
  リニ追加豫算ヲ御出シニナルノデアリマスカ、或ハ此議會ニ於テ追加豫算ヲ
  出サレルヤ否ヤ、之ヲ明カニ伺ヒタイノデアリマス、終リニ臨ンデ伺ヒタイ
  ノハ關東州竝ニ靑島ニ於ケル所ノ調査ハ如何デアリマスカ、是ハ靑島ノ如キ
  ハ旣ニ獨逸ガ占領シテ居リマスル時分ニ二囘ヤッテ、戶口調査ヲシテ居ルノ
  デアリマス、是ハ千九百十三年ノ如キハ最モ新シイ所ノ「センサス」ノ方法ニ
  依ッテ靑島デ施行シテ居リマス、併シ此關東州、靑島此二箇所ニ於テ或ハ國
  勢調査ノ名前ヲ附セズト、或ハ戶口調査、或ハ其他ノ人口調査ト云フヤウナ
  名前ニ依ッテ、矢張リ日本ノ國勢調査ト同ジヤウナ時期ニ類似ノコトヲサレ
  ルヤ否ヤ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス、私ハ此答辯ヲ決シテ當局大臣ニ求メ
  マセヌ、大臣ノ簡單ナル、具體的ナラザル御答デハ滿足シナイノデアリマス、
  私ハ次官デモ書記官デモ、私ヲ滿足セシムル所ノ御答辯ヲ希望スルノデアリ
  マス
  〔國務大臣大島健一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=10

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• 011・大島健一

  ○國務大臣(大島健一君)　柳澤伯爵ノ御質問ハ飛行機ノ將來ノ進步ヲ如何ニ
  スルカ、特種兵器ノ製造竝ニ試驗ノ費用ヲ要求シテ居ル、之ニ對シテハ曾テ
  開戰當時斯ルコトノ必要ハアリハセヌカト云フコトヲ言ウタ時分ニソレハ無
  イト言ウタ、又今日此費用ヲ以テ〓究シ、製造スルモノハ歐洲大戰ニ用ヒタ
  所ノ模倣デアルカ、斯ウ云フ御尋ノヤウニ聞エマスル飛行機ノ進步ト云フ
  コトニ付キマシテハ自分モ責任者トシテ深ク遺憾ヲ感ジテ居リマス、併シ
  四十三年以來之ニ關係シテ居リマスル者ハ軍人中ニアッテハ、相當此途ニ堪
  能ナル人、其他博士、學士ト帝國ニ於テハ斯道ニ屈指ノ人ヲ從事セシメテ居
  リマスノデアリマス、又是等ノ人ガ自分ノ見テ居リマスル所デハ非常ニ精勵
  ヲ致シマシテ、今日ノ程度ニ進メマシタ次第デゴザイマス、昨年ノ演習其他
  モ伯爵ノ御考デハ含ンデ居ルカモ知レマセヌガ、成績等ニ付テ甚ダ不十分デ
  アルト云フ御言葉ハ一應拜聽シテ置カスケレバナラヌダラウト思ヒマス、併
  シソレニハ申上ゲレバ相當ナ理窟モアリマスルガ、ソレハ除キマシテ、兒 전
  角此四十三年以來ノ〓究ニ依リマシテ今日ノ程度ニナリマシタノデゴザイマ
  ス、此軍用ノ飛行機ハ單リ飛行ヲスルト云フ、卽チ操縱バカリデナシニ、製
  造スル、日本デ日本ノ式ノ飛行機ヲ自ラ製造シ、之ヲ操縱スルト云フコトニ
  ナラヌケレバナリマセヌノデアリマス、其二ツニ向ッテ段々〓究ヲ致シマシ
  タ結果、此局ニ當ッテ居ル者ノ考デハ、先ヅ凡ソ日本ニ適當ナモノヲ日本デ
  製造シ得ルマデノ經驗ト技能ヲ積ミマシタノデアリマス、操縱者モ相當ニ各
  種ノ操縦法ヲ帝國内ニ於テ〓究シ、乃至ハ外國ニ差遣シマシテ〓究ヲシマシ
  タモノモ數多出來マシテ、凡ソ今後ハ自ラ造リ自ラ使用スルコトガ出來ルト
  云フ程度ニ進ミマシタ、依ッテ今囘之ニ關スル費用ヲ請求イタシマシタ、先
  ホド伯爵ノ御擧ゲニナッタ外ニ飛行機ノ製造ニ於テ最モ困難トシマスルモノ
  又其重ナルモノハ發動機ノ製造デアリマス、發動機ノ製造ヲ主トシテヤル工
  廠ヲ四年間ニ於テ········四年ノ繼續費ヲ以テ完成ヲスル爲ニ三百萬圓ノ繼續費
  ヲ請求シテ居リマス、是等ヲ以テ製造シ、尙ホ此操縱ノ〓究ヲ進メテ行カウ
  ト云フ考デゴザイマス、今囘請求シマシタノデ凡ソ平時ノ編制モ殆ド其全部
  ヲ爲シ、又之ヲ動員シテ戰爭ノ必要ヲ充タス、卽チ製造ニ於テモ、操縱ノ人
  ヲ得ルニ於テモ、今後擴張完成ノ後ニハ平戰兩時ノ所要數ヲ充タシ得ル考ヲ
  有ッテ居リマス、ソレカラ此飛行機將校ノ採用養成ニ付テ、又其將來ニ付テ、
  御心配ノ點ヲ御質問ニナリマシタ、飛行機將校ノ採用ハ今日マデ中少尉階級
  ノ者デ志願者ヲ採ッテ居リマス、其外下士官ノ此技能ニ適スル者ヲ採ッテ〓育
  ヲシテ居リマス、又徵兵令ニハ十七歲以後ニシテ志願兵タルコトヲ得ル制度
  ガアリマスノデ、飛行機ニ乘ルコトノ希望ヲ有ッテ居ル者ハ此志願兵カラモ
  採リ得ルヤウニ、ソレ〓〓聯隊區アタリ徵兵ノ任務ニ當ル者ニハ注意ガシテ
  ゴザイマス、又此飛行機操縱ノ〓育ヲ受ケマシタ者、觀測モ同ジデゴザイマ
  ス、是ハ皆隊ニ居リマス者ノ志願者ヲ採ッテ、一年間〓育ヲシテ隊ノ下ニ置
  イテ時ニ及ンデ復習ヲサシテ戰時ノ用ニ供スル、其年齡ハ凡ソ三十マテ位ト
  考ヘテ居ルノデアリマスカラ、其以後ハ矢張リ隊ニ在ッテ本職ニ於テ順次昇
  進ヲシテ行クノデゴザイマス、養成法ハ唯今中上ゲマシタ如ク志願者ヲシテ
  一年間航空隊ニ在ッテ操縱ヲ學ンデ歸ルコトニナッテ居リマス、今後ハ航空隊
  ガ四ツニナッテ········全國四箇所ニアッテ、是等ガ各〓其志願者ヲ將校下士其
  他志願兵等ノ〓育ヲスルコトニナッテ居ルノデアリマス、將來ト申スコトハ
  唯今申上ゲタ如ク各、其本科ニ········本務ニ從ッテ居リ、長ク又ソレヲ續ケテ來
  ルノデアル、ソレカラ特種兵器ノ〓究竝ニ製造ニ百五十萬圓ノ請求ヲ今囘初
  メテ致シマシタ、是ハ主トシテ大口徑砲デアリマス、攻城竝ニ海岸砲等、但
  シ歐洲ノ戰場ニ於キマシテハ此攻城砲竝ニ海岸ニ使用スベキ非常ナル大イナ
  口徑ノモノヲ若干野戰ニ應用ヲシテ居リマス、例ヘバ獨逸ノ四十珊トカ佛蘭
  西デハ五十珊ト云フヤウナ榴彈砲ガ出來テ居リマヌ、但シ佛蘭西ノハ戰場ニ
  出タト云フコトハゴザイマセヌガ、是等ハ極ク僅カナモノデゴザイマスガ、
  サウ云フコトニ應用ノ出來ル砲デアリマス從來陸軍ニハ日露戰爭以後ニ於
  キマシテ、兵器ノ〓究製造ニ關スル費用ハ相當ニ豫算ガアリマシテ、其時代
  ノモノガ順次繰延ベラレテ猶ホ今日モ殘ッテ居リマス、ソレ等ノ費用ヲ以テ
  常ニ〓究ヲ重ネテ居リマス、又製造ノ費用モアリマシテ、製造モ致シテ居リ
  マス、故ニ先ホド伯爵ノ先キニ斯ル〓究ヲ要スルコトハナイカト云フコトヲ
  云ウタ時分ニ、兵器ニ於テハ左ホド新ラシイモノヲ見出ダサヌト言ウタト云
  フコトノ御話デアリマシタガ、ソレハ私ハ記憶イタシテ居リマセヌガ、元來
  此主要ナル兵器、野砲トカ野戰重砲トカ云フヤウナモノ、乃至ハ小銃、此重
  ナルモノニ於テハ日本ノ制式ガ定メラレテ居リ、之ヲ順次改良ヲシテ居リマ
  シテ、此重ナル多數ナモノニハ歐羅巴ノ兵器ニ讓ラヌナラヌト云フ點ハ殆ド
  見出ダサヌノデアリマス、多分ソレ等ノコトヲ申シタノデアラウト思ヒマス
  デ今囘ノ戰爭ニ於キマシテ最モ新規ト感ズルモノパ四十珊乃至ハ五十珊ト云
  フヤウナ大口徑ノ榴彈砲等ヲ用ヒマシタコトガ最モ著シイモノデゴザイマ
  ス、併シ其數ハ極メテ少ク、又ソレヲ使用シタ場合モ極メテ尠イノデアリマ
  ス、威力ハアルニハ相違ナイケレドモ、之ヲ使用スルト云フコトニハ特殊ノ
  設備ヲ要シマス、併シ我ガ攻城砲ヲ用フル攻城上乃至ハ海岸等ニソレ等ノ新
  ラシク現ハレタモノヲ〓究スル爲ニ今迄モ續ケテ居リマシタガ、非常ニ大キ
  ナモノデアリマス爲ニ、一門ヲ試驗用ニ造ルニモ非常ニ金ヲ要シマス、今マ
  デ持ッテ居リマスル金デハ〓究製造ニ不足ヲシマスニ依リマシテ今囘百五十
  萬圓ヲ請求イタシマシタノデゴザイマス、此金デハ歐羅巴ノモノヲ模倣スル
  ノデアルカト云フ、似寄ッタ鐵砲デハアリマスケレドモ、日本ハ日本ノ今日マ
  デ參リマシタ式ガアリマスルノデ、〓育上ニモ使用ノ上ニモ日本ノ凡ソ式ノ
  モノデ相當ノモノヲ〓究ヲ致シテ居リマス、日本獨得ノモノデゴザイマス、
  此間伊良子崎デ試驗射撃ヲ實施イタシマシタ時ニモ貴族院カラモ若干御出ヲ
  乞ウテ御覽ヲ願ッタノデアリマスガ、アレ等モ新ラシウ〓究ヲシマシテ、此
  費用デハアリマセヌ、前ノ費用デ出來上ガリマシタノデ、最終ノ試驗射擊ヲ
  執行イタシマシタ、卽チアレ等ハ全ク日本ノ式デゴザイマス
  〔國務大臣加藤友三郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=11

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• 012・加藤友三郎

  ○國務大臣(加藤友三郞君)　柳澤伯ノ御質問ノ飛行機ニ對シマシテノ御答ハ
  大體陸軍大臣ノ述ベラレタコトニ依リマシテ海軍ニ關シマシタコトモ略〓盡
  キテ居ルヤウニ考ヘラレルノデアリマス、唯〓囘提案イタシマシタ飛行機ノ
  數ヲ以テ滿足ヲスルカドウカト云フ御質問デゴザイマスルガ、當局ハ今囘ノ
  提案ヲ以テマダ滿足ハ致シテ居ラナイノデゴザイマス、併ナガラ近キ將來ニ
  於キマシテ更ニ計畫ヲ立テマシテ提案スル考ヲ有ッテ居リマス、唯此若干年間
  ハ今囘ノ提案ヲ以テ暫ク滿足イタシテ居ラウト考ヘテ居ルノデアリマス、又
  將校ノ養成ニ付キマシテ御質問デゴザイマシタ、是亦大體陸軍大臣ノ述ベラ
  レマシタノト略〓同樣ナ方法ヲ以テ海軍モ實施イタシテ居リマス、玆ニ特殊ノ
  養成法ヲ講ジテ飛行機乘トデモ申スガ如キモノヲ造ル考ヘハナイカト云フヤ
  ウナ御質問デアッタカノヤウニ拜聽イタシマシタガ、唯今ハ斯ノ如キ考ヘハ
  有ッテ居リマセヌ、此問題ニ付キマシテハ三種ノ意見ガゴザイマス、〓究ハ
  致シテ居リマス、併シ唯今責任ヲ以テ御答ヘ致シマスルノハ矢張リ現ニ居リ
  マス所ノ少壯將校ノ中カラ選拔イタシマシテ、又下士ノ中カラモ選拔イタシ
  マシテ特殊ノ〓育ヲ施シマシテ、是等ヲシテ操縱セシムルト云フ方針デ實施
  イタシテ居ルノデアリマス、ソレダケ御答ヲ致シマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 013・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　柳澤伯ノ國勢調査ニ關係イタシマスル御質問ニ對
  シテ其一部分ヲ御答ヲ致シタイト思フノデアリマス、國勢調查ニ關係ノ經費
  ハ伯爵ノ仰セラルヽ如クニ、衆議院ニ於キマシテ此調査ハ今日ノ場合ニ於テ
  是ガ計畫ヲ立ツルト云フコトハ適切ナル事柄デアル、併ナガラ之ヲ實行スル
  ガ爲ニ地方ノ負擔ヲ增スト云フコトハ是亦一面忍ビザルノ事柄デアルカラ、
  成ルベク負擔ヲ增サナイヤウニト云フ衆議院ニ於テノ論ガアッタノデアリマ
  スソレデ政府ト致シマシテハ、衆議院ノ主張スル所モ一理アルモノト認メ
  マスルニ依ッテ、是等ニ付キマシテハ成ルベク地方ニ負擔ヲカケナイ方法ヲ
  以テ考慮スルト云フ事柄ヲ政府委員ヨリ言明ヲシテ居ル次第デゴザイマス
  ル、若シ斯樣ニ致シマスルトスレバ伯爵ノ仰セラルヽ所ノ法律關係ノ問題デ
  アリマスルガ、之ヲ直チニ國庫ヨリ出スト云フ事柄ニナリマスルト云フト、
  御話ノ如クニ法律ニ牴觸ヲスルヤウナ事柄ニナリマス、併ナガラ地方ニ出サ
  シテ置イテ其代償ヲ國カラ出スト云フヤウナ遺方ヲ致シマスレバデス、法律
  ノ改正ヲシナクテモ行クヤウナ事柄ニモナリマスノデ、此法律ヲ改正スルヤ
  否ヤト云フ事柄ニ付テハ尙ホ大ニ〓究ノ餘地ガアラウト政府ハ考ヘテ居リマ
  ス次ニ然レバ本年ノ今期ノ議會ニ於テ或ハ追加豫算等トシテ左樣ナモノヲ
  出スカドウカト云フ御話モゴザイマシタガ、ソレニ付テハデス、御承知ノ通
  リ是等ノ經費ヲ要スル事柄ハ大正九年度位カラ要スルコトニナリマスノデ、
  今囘ノ議會ニ之ヲ提出ヲ致スコトハ甚ダ困難ダラウト思フノデアリマス、法
  律關係其他ノ前後ヲ能ク考慮シマシテ、大體御質問ノ趣旨ニ依リマシテ將來
  ニ於テ之ヲ提出イタシタイ、斯ウ考ヘテ居リマスノデアリマス、其他國勢調
  査ノ實行方法ニ付キマシテ內地ト各殖民地間ノ間ニ於キマシテ年限ノ相違其
  他ガアル、之ニ付テ御質問ニナリマシタガ、是等ハ伯爵ノ御希望ノ如クニ寧ロ
  政府委員ヨリシテ詳シク申上ゲタ方ガ宜カラウト思ヒマスカラ、私ハ右申述
  ベタダケヲ御答ヘ致シテ壇ヲ降リマス
  〔政府委員白仁武君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=13

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• 014・白仁武

  ○政府委員(白仁武君)　柳澤伯ノ各殖民地間ニ於ケル國勢調査ノ年限ノ相違
  ニ付テノ御尋ネニ御答ヲ致シマス、此事ノ起リマシタ時分ニ各殖民地間ノ當
  局者ハ集會ヲ致シマシテ打合セヲ致シタノデアリマスル、而シテ各〓其所管ス
  ル所ノ管內ノ事情及是迄ノ經驗或ハ用意等ノコトヲ參酌イタシマシテ、各、
  此內地ニ於ケル所ノ調査、八箇年ノ期間ノ範圍內ニ於テ其調査ノ力量、各
  ノ力量ヲ參酌ヲシテ期限及其經費ヲ取極メマシタ次第デアリマス、臺灣ニ
  於キマシテハ唯今ノ伯爵ノ御言葉ノ通リニ、成ルホド戶口ノ調査ヲ二度ニ亙
  リマシテ從來ヤッテ居リマスル經驗ガアリマスル、ソレ故ニ多少今度ノ調査
  ニ付キマシテモ、其經驗ヲ利用スルノ點ハアリマセウガ、御承知ノ通リニ調
  査ノ事項ガ稍〓廣汎ニ亙リマスル故ニ、是迄ハ四箇年デ調查ヲサレテ居リマ
  スル經歷ヲ持ッテ居リマスルガ、今度ノ調査ニ當リマシテハ、初年ニ於テ準備
  ノコトニ從事シ、又最終年度ノ第六箇年目ニ於キマシテハ整理ノ時間ニ充テ
  ルト云フ目的ヲ以テ六箇年ト致シタ次第デアリマス、然ルニ朝鮮ノ方ニ於キ
  マシテハ五箇年ニナッテ居ル、是ガ抑〓伯爵ノ御疑問ノ起ッテ來タ元デアルヤ
  ウニ伺ヒマスルガ、朝鮮ニ於キマシテモ是マデ民勢ノ調査ト云フコトデ、段
  々用意モアリマスルシ、又其一部ニ亙リマシテハ調査ヲヤッタコトモアリマ
  ス、ソレ故ニ全ク臺灣ト事情ガ違フ、全ク新規ナコトト云フコト程ソレ程新
  規ナコトヲヤル譯デモアリマセヌカラ、多少ソコニ用意ガ是マデノ利用スベ
  キモノガアルト申上ゲテモ宜カラウト存ジマス、而シテ人口モ多シ又調査區
  域モ廣イノデアルカラ、臺灣ヨリモ短イ時間デ出來ル理窟ハナイト云フ御疑
  デアラウト存ジマスルガ、唯今申上ゲマスル所ノ、是マデノ用意及經費ヲ、ソ
  レダケ太ク短ク致シマシテ勉强イタシマシタナラバ五箇年デヤリ上ゲルト
  云フコトモ强チ無理ナコトデハナカラウカト存ジマス、併シ伯爵ノ御心配ニ
  ナリマスル通リニ、今度ノ調査ハ全國ニ亙ッテノ調査デアリマシテ、各〓東西南
  北悉ク其調査ノ項目方法其他ノコトガ十分ニ調和ガ取レテ同一ノ成績ヲ得ナ
  ケレバナラヌト云フ大事ナ事柄デアリマスルカラ、若シ萬一伯爵ノ御心配ノ
  通リニ年限ガ足ラナイ、或ハ經費ガ足ラナイト云フヤウナコトガアッテハ甚ダ
  濟ミマセヌノデアリマス、ソレデ此點ハ十分ニ各殖民地ニ於キマシテモ注意
  ヲ致シマシテ、若シ足ラザル所ガアリ、又其期限ガ十分デナイト云フ場合ニ
  ハ、過ッテハ改ムルニ憚ルコト勿レト云フ策ニ出ルヨリ外ハナイト存ジマス、
  此事ニ付キマシテハ尙ホ計數等モ能ク御覽ニ入レマシテ、後日委細其當局ノ
  當事者ヨリモ申上ゲルコトガアラウト存ジマス、樺太ニ於キマシテハ御存知
  ノ通リニ、人口モ他ノ二箇所ニ比ベマスレバ少シ、又其區域ニ於キマシテモ廣
  漠無人ノ境ガ多イコトデアリマスカラ是ハ唯〓ノ豫定ノ期限ニ於テ十分
  ニ成功ヲ遂ゲルコトデアラウト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=14

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• 015・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　尙ホ一言白仁長官ニ伺ッテ置キタイト思ヒマス、御苦シイ
  御答辯ヲ承ハリマシタガ、朝鮮デハ最初斯樣ナコトハナカッタケレドモ聊カ
  進備メイタコトモアルシ、又似寄ッタ調査モシテ居フタカノ如キ御答ヘデアリ
  マシタガ、私ノ承知シテ居ル所デハ、朝鮮デハ警察官ニ命ゼラレテ、名ハ人
  口調査ト申シマシタカ、戶口調査ト申シマシタカ存ジマセヌガ、兎ニ角左樣
  ナ調査ハサレタノデアリマス、併ナガラ此國勢調査ノ方法ハソレト全ク異ナ
  リマシテ、御承知ノ如クニ左樣ナ、是マデ朝鮮デヤッタ所ノ杜撰ナ方法デヤ
  ルノデハナイノデアリマス、故ニ朝鮮ニ於テハ斯樣ナ經驗ガアッタカノ如キ
  御答辯ハ事實ニ當ラヌト存ジテ居リマス、故ニ私ハ此五箇年繼續ハ甚ダムヅ
  カシクハナイカト云フコトヲ申スノデアリマス、臺灣ノハ今ノ御答辯ヲ見マ
  スルト、三箇年計畫ノ豫算デ是マデ二囘ノ實行ヲ見タガ、實際ハ四箇年ニ亙
  ラムトシテ居ル、然ラバ何故ニ今度之ヲ六箇年ニシマスカ、二囘調ベラレテ
  事實ハ四箇年ニ亙ッタトシマスレバ、其二囘ノ經驗ヲ利用セラレマシテ四箇
  年間デ出來ハシナイカ、ソレガ六箇年ト云フノハ何故デアリマスカ、是ハ臺灣
  ノ方ノ政府委員ニ伺ヒタイ、白仁長官デハ御答辯ハ如何ト思ヒマス、樺太ノ
  方ニ付テハモウ伺ヒマセヌ、ソレカラ關東州、靑島ニ付テノ質問ニ御答辯ガ
  ゴザイマセヌ、之ヲ伺ヒタイノデス
  〔政府委員白仁武君演壇ニ登ル〕

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• 016・白仁武

  ○政府委員(白仁武君)　重ネテノ御質問ノ一部ニ答ヘマス、關東州及靑島ハ
  御承知ノ通リニ我ガ勢力ノ範圍、及範圍ニ入ラムトスル所ノモノデハアリマ
  スルガ、マダ今日ニ於キマシテハ外國ノ區域タルヲ免レヌノデアリマス、ソ
  レ故ニ是ハ調査ノ範圍ニ屬シテ居リマセヌ、ソレカラ朝鮮ノ是マデノ取調ノ
  經驗云々ト云フコトハ、私モ決シテ朝鮮ノ是マデノ調査ノ經驗ヲ十分ニ利用
  イタスカラ五箇年デ宜シイト云フ程、力ヲ入レテ申上ゲタ譯デハゴザイマセ
  ヌ、唯民勢ノ調査ニ稍、步ヲ進メ、用意ヲ致シテ居リマスカラ、多少年數等
  ニ於テハ省略スルコトヲ得ルト云フ考ヲ起シタルモノデゴザイマス、臺灣ノ
  問題ニ付キマシテハ、今臺彎ノ政府委員ヨリ御答ヲ申上ゲルコトニ致シマス
  〔政府委員下村宏君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=16

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• 017・下村宏

  ○政府委員(下村宏君)　唯今柳澤伯爵ヨリ、臺灣ノ國勢調査ガ從來ノ經驗
  ニ比シ尙ホ六年マデ延バシタノハ何故デアルカト云フ御質問ト承知イタシマ
  ス、御答ヲ致シマス、臺灣デハ明治三十八年、次イデ大正四年戶口調査ヲ致シ
  マシテ、是ハ四箇年度ニ亙フテ居リマス、今囘ノ第二囘ノ戶口調査モ大正六年
  度ヲ以テ終ルコトニナッテ居リマスルガ、年ヲ逐ッテ調査事項ガ殖エテ參リマ
  シテ、現在ノ人數ダケデハ此年度ニ終了モ餘程困難ヲ感ジテ居リマス、デ此方
  ハ御承知ノ經費ガ約二十二萬五千餘圓デアッタト記憶シテ居リマス、今囘ノ國
  勢調査ノ方ハ三十一萬餘圓デゴザイマシテ、御承知ノ在來ノ戶口調査デ調査
  スル事項以外ニ新タニ調査スベキ事項モ多クナッテ居ルノデアリマス、臺灣總
  督トシマシテハ無論他ノ殖民地ガ何年ダカラドウト云フコトヲ考慮スル遑ガ
  ゴザイマセヌ、唯初メテノ國勢調査デアリマスカラ、從來經驗ハアリマスル
  ガ、尙ホ十分念ヲ入レテ今度ハ遺算ナキヤウニト云フコトデ、戶口調査部ニ於
  キマシテハ大體事業ノ順序トシマシテハ、七年度ニハ共通事項ノ內容等ニ關
  シマシテ準備ヲ致シマシテ、打合セヲ致シマス、八年度ニハ中央ニ於テ是ガ
  協議會ノ會合、又各地方廳ノ吏員ノ練習、九年度ガ準備及實査、或ハ所帶票
  等ノ檢査、或ハ小票計ノ作製、ソレカラ十年度ニハ集計ヲシマシテ、十一年
  度ニハ其結果ヲ編製シ、十二年度ニハ共通事項ノ結果進達等ヲスルト云フ大
  體計畫ヲ立テテ居リマス、無論經費ノ都合モアリマスルシ、又人員ノ割振リ
  方モアリマスカラシテ、是等ノ年度割ト云フモノハ無論絕對ノモノデハアリ
  マセヌガ、從來ノ仕事ノ分量ト年度割ニ比シマスレバ、今度ノ仕事ノ分量又計
  畫等ニ於キマシテハ、丁度之ニ先ヅ二年ヲ加ヘマシタナラバ、在來ノ經驗ニ
  徵シテ遺算ナクヤレヤウカト云フノデ、此計畫ヲ立テマシタ次第デゴザイマ
  ス、御答ヲ致シマス

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• 018・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　本員ハ尙ホ進ンデ伺ヒタイト思フコトモゴザイマスル
  ガ、餘リ細カクナリマスノデ、私ハ他ノ機會ニ讓リマシテ、今日ハ是デ止メ
  マス

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• 019・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　木村誓太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=19

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• 020・木村誓太郎

  ○木村誓太郞君　私ハ簡單ナ質問デゴザイマスルノデ自席デ致シマス、私ハ
  此豫算ヲ議スルニ當リマシテ我國ノ財政經濟ニ一大影響ヲ及ボス問題ヲ發見
  イタシマシタノデ外務大臣ノ御答辯ヲ得タイト思フノデゴザイマス、昨日ノ
  新聞ヲ見マスルニ華盛頓電報ト致シマテ、米國ガ生絲ノ輸出入ニ關シテ特別
  ノ許可ヲ得ナケレバ輸出入トモスルコトガ出來ナイト云フヤウナコトヲ唯今
  專ラ計畫シテ居ルヤウニ見エマスル、此事ニ付キマシテハ何カ外務省ヘ向ケ
  テ通信モアリマシタコトデゴザイマセウカ否ヤト云フコト、又此我國ノ生絲
  ナルモノハナカ〓〓彼ノ鐵ノ問題ノ如キモノトハ違ヒマシテ、一層財政經濟
  ニ非常ナル關係ヲ有ツモノデアリマス、農家ハ勿論、一般社會ニ於テ、若シ萬
  一米國ニ於テ生絲ノ輸入ヲ制限若クハ禁輸入ヲシタナラバ、一時ハ我國ハ實
  ニ火ノ消エタガ如キ有樣ニナラウト私ハ心配スルノデアリマス、付キマシテ
  ハ政府ニ於キマシテハ若シモ是ガ既ニ發表ノ後デハ遲イノデアリマス、デ此
  事ノ發表前ニ於キマシテ外交ノ手腕ヲ以チマシテ米國ト能ク交渉ヲセラレマ
  シテ、我國ノ生絲ノ除外セラレルヤウナコトノ運ビニナスコトノ覺悟ガアリ
  ヤ否ヤト云フコトヲ、併セテ私ハ外務大臣ノ御答辯ヲ得タイト思ヒマス
  〔國務大臣子爵本野一郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=20

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• 021・本野一郎

  ○國務大臣(子爵本野一郞君)　唯今ノ木村君カラノ御質問ノ件ニ關シマシテ
  ハ外務省ノ方ニモ一應ノ電信モ參ッテ居リマス、併ナガラ是ハ大體ノコトニ
  關スルコトデアリマシテ、特ニ日本ノ生絲ニ對シテドウ斯ウスルト云フコト
  ハ未ダ參ッテ居ラヌノデアリマス、御說ノ通リ生絲ガ····生絲ノ輸入禁止ト云
  フヤウナコトニナリマシテハ、我ガ帝國ニ取ッテハ容易ナラヌコトデアリマ
  スカラ、政府ニ於テハ此問題ハ愼重ニ今日マデモ考慮ヲ致シテ居リマスル
  シ、又今日モ考慮ヲ致シテ居リマシテ、是非相當ノ執ルベキ手段ガアレバ之
  ヲ執ラナケレバナラヌコトト考ヘテ居ル次第デゴザイマス、此問題ニ付テハ
  今日ノ所デハ是レ以上ノコトヲ申上ゲル地位ニ居リマセヌ、ドウカ左樣御了
  承ヲ願ヒタウゴザイマス、此問題ハ眞ニ日本ニ取ッテハ重大ナ問題デアリマ
  ス、政府デモ深ク考慮イタシテ居リマス、左樣御承知ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=21

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• 022・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　服部一三君
  〔服部一三君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=22

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• 023・服部一三

  ○服部一三君　私ハ海軍大臣竝ニ農商務大臣ニ御質問イタシタウゴザイマ
  ス、先刻大藏大臣ノ御演說ノ中ニ國防ノコトハ等閑ニ付スベカラザルモノデ
  アルガ故ニ、國家自衞ノ必要ヲ充タスコトノ此軍事計畫ヲシテアルト云フ御
  話デアリマシタガ、海軍ニ於テハ八四艦隊、ソレニ附屬スル所ノ補助艦艇、又
  飛行機等ノ御計畫ニナッテ居リマスルノガ、唯今ノ御計畫ニ依リマシテ、ソ
  レガ完備シタ所デ大正十年若クハ十二年ニナッテモ、是デ日本ノ如キ地勢デ
  臺灣方面、津輕方面、若クハ對馬海峽、又ハ帝都附近ヲ守ルニ是デ十分デア
  ルト云フ海軍大臣ノ御考デアルカ、我〓ノ如キ此軍事上ニ付キマシテハ丸デ
  門外漢デアル者デアルガ、誠ニ不安ノ念ヲ有ッテ居ルノデアル、故ニ海軍大
  臣ハ是デ足ッテ居ルト云フ御考デアルカ否ヤヲ聞キタイノデアリマス、若シ
  又今日ノ財政狀態又其他種々ナ事情ニ依ッテ不足デハアルケレドモ、先ヅ是
  ダケニシテ置クト云フ御考デアルナラバ、軍事上ノコトハ他ノコトト違ッテ
  人ヲ對手ノコトデアッテ直グ勝敗ニ關係スルコトデアリマスカラ、何レ之ヲ
  十分ニ足レリト云フ所マデ御計畫ニナルコトノ必要ガアルモノデアラウト思
  ヒマスルデ、ソレハ何時サウ云フ御計畫ハナサッテ御提出ニナルカト云フ二
  點ニ付テ御答ヲ伺ヒタイ、農商務大臣ハ此物價ノ調節ト云フコトニ付キマシ
  テハ非常ニ御心配ニナッテ居ルト承知シテ居リマス、現今總テノ物價ガ騰貴
  シテ、ソレガ爲ニ隨分一般ノ者ガ困苦ヲナシテ居ルト云フコトハ皆承知シテ
  居ル所デアリマスガ、私ガ問ハムト欲スル所ハ、我國ノ國產ノ中ニ於テモ最
  モ上位ヲ占メテ居リ、又我國ノ人民ノ生活上最モ必要デアル、即チ米ノコトデ
  アリマス、米ニ付テノ御考ヲ伺ヒタイト思ウテ居リマス、先般農商務省ヨリ御
  發表ニナッタ所ノ表ニ依リマスト云フト、昨年ノ米ノ產額ガ五千四百五十萬石
  少シ上デアッタカト記憶シテ居リマス、此統計ト云フモノハドレダケ信用ヲ置
  イテ宜イカ惡イカ是ハ人〓ノ考デアリマスガ、是ハ假ニ確カナモノト見テモ
  日本ノ人口ニ比較シマスト云フト、ドウシテモ百五十萬石以上ハ確カニ不足
  ト云フコトガ分ッテ居ル、又此米ナドノコトニ付テ多年ノ經驗ノアル人ナド
  ノ說デ言フト昨年ノ氣候ハ···複穫近クノ氣候ト云フモノハ米ニハ餘ホド惡
  影響ヲ及ボシテ居ルモノデアルカラ、是ハ全然枡減リノスルモノデアルト云
  フコトヲ申シテ居ルノデアル、是モ或ハ信用スベキコトデアリハシナイカト
  思ハレル、又農商務大臣ガ何處カデ御話ニナッタヤウニ記憶シテ居リマスガ、
  朝鮮ナドカラ日本へ這入ル米モアルカラト云フコトデアリマシタガ、如何ニ
  モ朝鮮米ト云フモノハ常ニハ一年ニ百八十一萬石内外ハ內地へ這入リヨルノ
  デアルガ、併シ今度ハサウ這入ルコトハ恐ラクムヅカシイノデアル、何故ナ
  ラバ朝鮮ノ內地デ消費スル所ノ額モ餘ホド增シテ參リ、又滿洲方面ニ向ッテ
  輸出スル額モ餘ホド增シテ來テ居ルカラ、是ハ迚モサウ澤山內地ニ這入ルコ
  トハ出來ヌモノデアル、又從來ハ麥ヲ食ウテ米ノ不足ヲ助ケテ居ッタ所ノ人
  モ非常ニ澤山アッタ、今日モ無論アリマスルガ、併シ近來小麥ノ高イ爲ニ大
  麥ヲ作ルコトヲ廢シテ小麥ヲ作ル所ニ向ッタ者モ餘ホド殖エタノデアリマス、
  所ガ其小麥ト云フモノハ日本デ消費スル目的デナイ、外國へ小麥粉ニシテ出
  ス目的デ多クハ作ッタモノデアルカラ、是ハ小麥ガ出來タダケハ日本ノ人
  ノ食料ハ減ッタト見ニヤナラヌ、ソレデ如何ニ考ヘテモ米ハ不足デアルト云
  フコトハ私ハ確實デアルノデ、米ノ騰貴ト云フコトモ他ノ物ノ騰貴カラシテ
  影響ヲ受ケテ、サウシテ幾分カハ高ウナッタト云フコトモアリマセウガ、不足
  デアルト云フコトガ大ナル原因デアリハシナイカ、現ニ昨年ノ十月頃マデハ
  外國米ガ日本へ多少這入ッテ居ッテモ、其モノハ日本カラ再ビ南亞米利加ノ方
  ナドヘ向ッテ輸出シタモノデアル、此頃ニナレバ內地デ消費スル方ニ持ッテ行ッ
  テ向ケル影響ガアルノデアル、其高モ少イコトデハナイ、現ニ私ノ調ベニ依
  レバ現在日本ヘ旣ニ著イテ居ルモノ、又四月マデニ日本ヘ這入ッテ來ル所ノ
  外國米ハ六十萬石以上デアル、ソレハ皆內地消費ノ目的ヲ以テデアルノデゴ
  ザイマス、之ヲ以テ見テモ內地米ト云フモノハ不足デアルト云フコトハ證明
  サレルデアラウト私ハ思フ、ソレデ大臣ニ御尋ネシタイノハ、大臣ノ御考
  ヘデハ、第一內地米ハ不足デアルト云フ御考ヘデアルヤ否ヤ、若シ是ガ不足
  デアルト云フナラバ、此米價ノ調節ヲ計ル爲ニ如何ナル方法ヲ御執リニナル
  御積リデアルカ、大臣モ衆議院デモ御話ニナル通リ、物價ノ調節ト云フコト
  ハ需要供給ノ調節ヲ良クスル外仕樣ガナイコトデアラウト思ハレル、ソレニ
  付テハドウ云フ方法ヲ御執リニナルカ、是ハ決シテ其規則ニ依ッテ取締ルト
  カ、何トカ云フコトデハ目的ヲ達シ得ナイモノデハナイカ、現ニ妙ナ現象ガア
  リマスルガ、是ハ農商務大臣モ能ク御調ベニナッテ居ルコトデアルト思ヒマス
  ガ、昨年九月一日ニ暴利取締ニ關スル省令ヲ御出シニナッテ、其九月ヨリシ
  テ御承知ノ通リ現米市場ト云フモノハ東京ト神戶ト二箇所アルノデアリマス
  ルガ、神戶ナドノ現米市場ノ米ノ高ト云フモノハ段々減ッテ仕舞ッタ、サウシ
  テ漸次減ッテ今日デモ現米市場ノ米ト云フモノハ東京デモ非常ニ少イ、米ノ
  値段ガ高クナッタナラバ、市場へ持ッテ來テ米ガ出サウナモノデアル、所ガ米
  ガ出ヌコトニナッテ居ル、是ハ何ニ依ッテデアルカト云フコトハ、是ハ餘程御
  考ヘニナルベキ性質ノモノデハナイカ、其當時九月、十月頃ニ、私ノ承ハツ
  タ所デハ、卽チ此取締令ヲ御働セニナル以前ヨリズット前ニ承ハッタ所ニ依レ
  バ、現米ヲ市場へ持ッテ行ッテモ何時暴利取締令ヲ働カサレテ、ドノヤウナコ
  トガ起ルモ知レヌト云フノデ現米ヲ澤由持ッテ來ナイノデアル、ソレガ爲メ現
  米ガ少イカラ、現米ノ賣買ノ方ノ價ニモ響イテ來タ譯デアルト云フコトヲ言
  フ人サヘモアル、是ハ或ハ私共ノ耳ニ這入ッタノガ間違ヒカモ知レヌ、ソレ
  デ要スルニ私ノ御尋ネシタイノハ、此米價ノ調節ト云フコトニ付テハ、ドウ
  云フ御考ヘデアルカ、米ト云フモノハ不足デアルト云フコトナレバ、無論或
  ル程度迄騰貴スルノガ當然デアラウ、他ノ物價ガ總テ騰貴スル時分ニハソ
  レニ付テ或ル程度迄高クナルト云フコトモ是モ當然ノ話デアリマセウガ、米
  ノ如キ最モ國民ノ生活ニ必要ナルモノニ付キマシテハ容易ク供給卽チ運搬ノ
  便ヲ圖リ、又運賃ノ低下ヲシテ、或ハ又關稅ヲ下ゲルトカ、種々ナ方法ヲ以
  テ出來ルダケノ手段ヲ御盡シニナルコトデアラウト察シテ居マスガ、是等ノ
  コトニ付テハ如何ニ爲サル御積リデアリマスカ、或ハ此儘デ御置キニナルノ
  カ、外國ノ例ナドニ依リマスルト、此農產物、殊ニ生活ニ必要ナルモノノ爲
  ニハ鐵道ナドデモ運賃ヲ下ゲルトカ、或ハ臨時ニ便利ヲ與ヘルトカ云フヤウ
  ナコトハ屢〓スルモノデアル、故ニ當局ニ於テハ之ニ付テ如何ノ御方針ヲ御
  執リニナルカ、ソレヲ承ハリタイト思フノデアリマス
  〔國務大臣加藤友三郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=23

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• 024・加藤友三郎

  ○國務大臣(加藤友三郞君)　唯今ノ御質問ニ御答ヲ致シマス、御質問ノ要旨
  ハ今囘ノ提案デ十分ト思フカドウカト云フノガ一ツト、又將來ノ計畫ニ對シ
  テハ何時頃出ス見込デアルカ、此二點ガ御質問ノ要點ト拜聽イタシマシタ、今
  囘ノ提案ヲ以チマシテ滿足ハ致シテ居リマセヌ、付キマシテハ、此機會ニ今
  囘ノ計畫ヲ立テマシタ所ノ主義方針ノ極ク梗〓ヲ御話イタシマシタナラバ、
  多少ノ御考ニナラウカト存ズルノデゴザイマス、御承知ノ如ク昨年ノ特別議
  會ニ於テ大體ノ方針ヲ立テマシテ、提案イタシタモノノ御協贊ヲ經タノデゴ
  ザイマス、然ルニ歐洲ノ海戰ハ種々ナル經驗ヲ我〓ニ與ヘマシテ、其經驗ニ
  鑑ミマシテ既定ノ計畫、卽チ昨年御協贊ヲ經マシタモノノ其計畫ノ尙ホヨリ
  以上ノ力ヲ增加イタシタイト云フ考ヘヲ有チマシタノデゴザイマス、此力ヲ
  增加イタシマスルニハ、既定ノ計畫ニ屬シマスル艦艇個々ノ力ヲ增加イタシ
  マスルコトト、艦艇ノ數ヲ增加イタシマスルコトノ此二ツノ計畫ヲ立テタ次
  第デゴザイマス、艦艇個々ノ力ヲ增加イタシマスルコトニ付テハ、其攻擊力、
  速力等ニ於テ既定ノ計畫ヲ多少變更イタシマシタ、ソレガ爲メ不足イタシマ
  スル所ノ豫算ヲ今囘要求シテゴザイマス、又艦艇ヲ增加イタシマスル方ノ側
  ハ主トシテ補助艦艇ヲ成ルベク速ニ完成スルト云フ方針ヲ執リマシタノデゴ
  ザイマス、御承知ノ如ク歐洲海面ニ於キマスル所ノ驅逐艦、潜水艇ノ働キハ
  偉大ナルモノデ、今日迄我〓ガ豫期セザル以上ノ效果ヲ生ジテ居ルノデゴザ
  イマス、從ッテ是等ノ艦艇ヲ增加イタシマスルコトガ切實ニ必要デアルト云
  フ感ジヲ持チマシタノデ、今囘ノ計畫ニ於キマシテハ主トシテ此方面ニ力ヲ
  注イダノデゴザイマス、從ッテ旣往ニ海軍當局ガ計畫ヲ立テテ居リマシタ所
  ノ補助艦艇ノ數ヨリ遙カニ今囘提案イタシマシタモノハ多クナッテ居リマス、
  此補助艦艇ヲ增加イタシマスルコトト、尙ホ之ニ加フルニ餘力ノアル限リ主
  力ヲ增スト云フ意味ニ於キマシテ、大艦二隻ノ建造ノ豫算ヲ提出シテ居ル譯
  デアリマス、是等ノ計畫ヲ立テマスルノニハ、一面ニ於キマシテハ、財政ノ
  コトモ考ヘマセナクテハナリマセヌ、又工業能力、編制、此三ツノ者ヲ加味
  按排イタシマシテ、今囘計畫ヲ立ッタ次第デゴザイマス、併ナガラ此計畫ヲ以
  テ當局ハ十分トハ考ヘテ居リマセヌ、尙又次囘ノ計畫ヲ提出イタシマス時期
  ニ付テノ御質問ニ對シマシテ、現ニ現存イタシテ居リマス所ノ艦艇ノ補充、
  竝ニ今日國防ノ方針トシテ決定イタシテ居リマス所ノ方針ヲ滿足イタシマス
  ダケノ計畫ヲ、大正十年頃ニ至リマシテ立テマシテ、皆樣ノ御協贊ヲ經タイ、
  斯樣ナ希望ヲ海軍當局トシテ持ッテ居ル次第デゴザイマス
  〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=24

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• 025・仲小路廉

  ○國務大臣(仲小路廉君)　服部君ノ米ニ對スル御質問ニ付キマシテ御答へ申
  シマス、今日米價ノ問題ハ實ニ社會ノ一般ニ注目イタス問題デアリマス、之
  ニ付キマシテ此際政府ノ所見竝ニ取リツヽアル方針ニ付キマシテ此際服部君
  ノ御質問ニ對シテ御答ヲ致サウト考ヘマス、實ニ近時此經濟界ノ變態ニ依リ
  マシテ、各種ノ品物何レモ騰貴ヲ致スノデアリマス、一面ニ於キマシテハ世
  ノ中誠ニ繁昌ヲ〓ゲテ居リマス、ソレト同時ニ又中流以下及一定ノ俸給ヲ以
  テ衣食イタシテ居リマスル者ハ、此物價ノ騰貴ニ依リマシテ生活上甚ダ困難
  ヲ〓ゲルコトガアリマス、殊ニ最モ食料トシテ大切ナ米穀ノコトデアリマス、
  誠ニ社會中流以下其他ノ者ハ、是ノ高價ニナリマスルコトニ付キマシテハ餘
  ホドノ困難ヲ感ズルノデアリマス、故ニ政府ニ於キマシテハ成ルベク此際ニ
  於テ一般ノ人〓ノ困リマセヌヤウニ、出來得ル限リ斯ル變態ノ際ニ於テ、成
  ルベク一般國民ニ安定ヲ與ヘタイト期シテ居リマス、之ニ付キマシテハ、物
  價ノ高低ハ全ク需用供給ニ關スルコトデアリマス、何ト致シマシテモ物資ニ
  不足ヲ〓ゲテ居リマシテ、ソレニ依ッテ價格ノ〓騰トナルト云フコトニナリ
  マシテハ、是ハ誠ニ容易ナラヌコトデアリマス、昨年ノ夏ノ頃マデハ米穀ノ
  作柄ハ誠ニ宜シカッタノデアリマス、私當局ト致シマシテ昨年ノ作柄ニ付キマ
  シテハ甚ダ喜ンデ居ッタノデアリマス、然ルニ甚ダ不幸ニモ秋ノ頃、卽チ十月
  ノ頃ヨリシテ氣候ノ不順ニ伴ヒマシテ、甚ダ面白クナイ狀況ヲ認メタノデア
  リマス、此結果ニ付キマシテハ甚ダ憂慮ヲ致シテ居ッタノデアリマス、然ルニ
  今年ノ一月ニナリマシテ實收ノ調査ヲ致シマシタ結果ハ、唯〓服部君カラモ
  御話ニナリマシタ如ク、非常ナル傷ミガアリハシナイカト存ジタ割合ニ寧ロ
  米作ハ比較的好都合デアリマシタ、卽チ五千四百萬石以上········加フルニ前三
  箇年間ハ豐作續キデアリマシテ、農商務ノ當局ノ調査ニ依リマスルト、我ガ現
  在ノ狀況ニ於キマシテハ、前三箇年ノ豐作續キニ搗テテ加ヘテ先ヅ昨年ノ米
  作モ平年作以上デアリマシタ故ニ、是等ノ狀況ヨリ推シ測リマスレバ、今日
  現在ニ於キマシテハ供給スベキ物資トシテ左程ノ不足ハナイト認メテ居リマ
  ス、唯世ノ繁昌ニ伴ヒマシテ米穀ヲ消費イタシマスル高ガ增シテ參ル、從ッテ
  之ヲ通常ノ場合ヲ以テ律スル譯ニハ參ラナイ、此故ニ政府ハ最モ苦心ヲ致シ
  マシテ、出來得ル限リハ生產ノ力ヲ增シマスル、先刻御話ニナリマシタ如ク
  二、或ハ米穀ノ外ニ麥類ヲ用ヒマスルコト、各種ノ副食物ヲ用ヒマスルコト、
  一面ニ於テハ又成ルベク穀物ニ付テ節約ノ方法ヲ以テ此供給ヲ充タス途モ講
  ゼヌケレバナラヌ、尙ホ其上ニ或ハ朝鮮来ノコトデアリマス、或ハ臺灣米ノ
  コトデアリマス、場合ニ依リマシタナラバ一般ノ安心ヲ得マスル爲ニ、外國
  米ノ輸入ニ對シマシテ便宜ナ方法モ取リタイ、此理由ニ依リマシテ唯今ハ關
  稅ノ點ニ付テモ攷究ヲ致シテ居リマス、殊ニ運輸運送ノ便、或ハ船舶ニ依ル
  輸送ノコト、或ハ陸上ニ於ケル汽車便ノコト、是皆當局大臣タル遞信大臣ト
  モ協議ヲ致シ、鐵道院總裁トモ常ニ謀リマシテ、各種ノ方法ヲ取リマシテ、
  出來得ル限リ此需用ニ對スルノ供給ヲ滑ニ致スコトニ苦心ヲ致シテ居ルノデ
  アリマス、唯比際唯今ノ服部君ノ御言葉ニ對シテ一言申述ベテ置キマス、政府
  ニ於キマシテハ各種物價ノ昂騰ハ、全ク需要供給ノ關係デ、併ナガラ唯サヘ
  モ斯ル時期ニ於テ物價ハ昂騰ヲシタイ〓騰ヲシタイトシテ居ル其際ニ乘ジ
  テ、此際ヲ利用シテ、玆ニ投機的、或ハ暴風雨ノコトニ依ッテ、甚ダ人〓困
  難ヲ致ス場合、或ハ雪害風害等ニ依ッテ種々人〓ノ困難ヲ致シマスル其時ニ、
  唯自己ノ謂レナキ利益ヲ貪ラムガ爲ニ、玆ニ一般ノ重要ナ關係ヲ有ッテ居リマ
  ス市價ヲ暴騰セシムルガ如キ事柄ハ是ハ取締ラネバナラナイノデアリマス、
  此取締ノコトニ付キマシテ、或ハ不便ヲ感ジ、不自由ヲ感ズル者ハ種々ニ申シ
  TV·去リナガラ是ハ致シ方ガナイト存ジマス、一方ニ於テ出來得ルダケ一
  般國民ノ困ラナイヤウニ、需要供給ノ點ヲ滑ニ致スコトニ努力ヲ致スト共ニ、
  此時期ニ乗ジテ人〓ノ困ルコトニナルベキ行爲ニ付テ、是ハ相當ノ方法ヲ以
  テ取締ヲ致シマスルコトハ已ムヲ得ヌ次第ト存ジマス、以上ニ依リマシテ、
  服部君ノ御質問ニ對シテノ御答ハ完結イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=25

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• 026・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　休憩ヲ致シマス
  午後零時二十三分休憩
  午後一時三十七分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=26

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• 027・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、高木男爵
  〔男爵高木兼寬君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=27

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• 028・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　私ハ持前ト致シマシテ國民ノ衞生問題ニ付キテ御尋ネ致
  シタイノデアリマス、第一ニ總理大臣ニ御尋ヲ申上ゲタイコトハ、政府筋ニ
  於キマシテハ、年々國家ノ根本タル國民ノ健康狀態ニ關スル報告ヲ發表サレ
  ルノデアリマス、依ッテ其内容ハ大臣ニ於カセラレテハ能ク御了知ノコトト
  存ズル次第デアリマス、實現シテ居ル所ヲ申セバ、我ガ國民ノ體力ハ實ニ憫
  レムベキ悲シムベキ程度ニマデ低下イタシテ居ルト申上ゲテ、過言デナカラ
  ウト存ジマス、如何トナレバ、英米獨佛ノ諸國ニ於キマシテハ、年々衞生狀態
  ハ向上イタシマシテ、人ノ死亡スル割合モ年々減少イタシテ參ルノデアリマ
  ス、然ルニ本邦ニ於キマシテハ死亡ノ率ガ減少セザルノミナラズ、却ッテ增加
  ノ傾向ガアルノデアリマス、就中幼少壯年ノ者ノ死亡率ガ增加イタシマシテ、
  殊ニ十五歲ヨリ二十歲ノ間ニ於ケル日本男女ノ死亡スル割合ハ世界第一ト聞
  イテハ驚カザルヲ得ヌノデアリマス、斯ノ如ク幼少壯年者ノ死亡率ガ增加イ
  タス爲ニ、同胞中ヨリ勞役ニ堪ヘル者ノ數ハ漸次減少イタシテ參ル譯デアリ
  やくろ故ニ國力ノ負擔ニ堪フベキ者ノ數ハ比較的ニ減少イタシテ、扶助ヲ受
  クベキ國民ノ數ガ漸次增加スルノ傾ノアルコトハ、卽チ曩ニ申上ゲタル統計
  表ガ示シテ居ルノデアリマス、是ガ諸般ノコトニ及ンデ居ルノデアリマス、之
  ヲ簡單ニ申セバ、日本國民ノ能率ガ次第ニ低下シツヽアルト云フコトヲ意味
  スルノデアリマス、爲ニ本員ハ痛ク此問題ニ付テ心ヲ痛メテ居ル次第デアリ
  マーゝ。業ニ已ニ帝國ノ干城タル陸海ノ兵士ニ迄モ其影響ヲ及ボシテ居ルコト
  ヲ本議場ニ於テモ申述ベタコトガアルノデアリマス、卽チ兵員タラムトスル
  壯丁ノ體格ガ年々不良ニナリツヽアルト云フコトハ今ヤ我ガ同胞中知ラザ
  ル人ハ殆ド無イデアラウト思ヒマス、當局ノ調ニ依リマシテ、多少良イ傾ガ
  アルト云フ御話ハゴザイマスケレドモ、地方ニ參リ當事者ニ承ハッテ見レバ、
  大體ニ於キマシテ向上ノ傾アル所ハ殆ドナイノデアリマス、獨リ壯丁ニ止マ
  リマセヌ、其他ノ者モ是〓デアルト云フコトハ嘗テ申上ゲマシタ、故ニ本日
  ハ之ニ付テハ御尋ネヲ致シマセヌ、御尋ネスベキコトガナイトハ限リマセヌ
  ケレドモ、是ハ他ノ場合ニ讓リ置イテ、今日ハ御尋ネスルノ要ハナイト申シマ
  スノデアリマス、故ニ海軍陸軍ノ兵士達ノ健康問題ニ付テハ何等ノコトモ申
  上ゲマセメ、唯一般國民ノ健康ガ勝レズシテ、命期ハ寧ロ短縮シ、殊ニ幼年、少
  年、壯年ノ者ガ次第ニ虛弱ニ陷リ短命ニナリツヽアルト云フコトヲ痛ク心配
  イタスノデアリマス、之ニ對シ總理大臣ハ如何ナル御所感ガゴザイマスルカ、
  之ヲ伺フノデアリマス萬一私ト御同感デゴザイマスレバ、ソレニ對スル御
  處置ノ方針ト云フモノハ、如何ニ御立テニナッテ居リマスルカ、伺ヒタイノ
  デアリマス、第二ニ御尋ネ申シタイコトハ、〓育ノ當局者タル文部大臣閣下
  ニ御尋ネ致スノデアリマス、現今ニ於ケル·······現在ノ〓育ノ內容ニ付テ伺ヒ
  タイノデアリマス、卽チ體育、智育、德育ノ三ツニ對シ御意見ヲ伺ヒタイノ
  デアリマス、我ガ〓育ハ年ヲ重ネ月ヲ重ネ漸次進步ノ狀態ニナリ、頗ル賀ス
  ベキ狀況ヲ呈シテ居ルコトハ申ス迄モナイコトデアリマスガ、尙ホ之ニ一層
  ノ效果ヲ添フルヤウニ致シタイト云フ希望カラ此儀ヲ御尋ネ致スノデアリマ
  ス、體育ニアレ、智育ニアレ、德育ニアレ理論ヲ主トシ、卽チ理論ニ馳セテ
  實行ヲ顧ミザルノ風ガアルガ如ク本員ハ認ムルノデアリマス、卽チ知ルコト
  ハ知ルガ、行フコトハ行ハズニ置クト云フヤウナ譯デアリマシテ、智識ト行
  爲トハ別物ニナッテ居リマスト云フ感ガアルノデアリマス、當局大臣ニ於カ
  レテハ、卽チ知行合一ノ事實ガ現ハレテ居ルヤ否ヤ、之ニ對スル御所見ハ如
  何デアリマセウカ、モウ一ツ繰返シマシテ、德育、智育、體育共ニ理論ニ馳
  セ過ギテ、實行ヲ不問ニ置クト云フ譯デハゴザイマセヌケレドモ、マアチヨッ
  ト申サバ構ハナイト云フ風ガ今日ノ〓育ヲ受ケタル人ニ現ハレテ居ルガ如ク
  認メ居ルノデアリマス、本員ノ認ムル所ガ誤リデアレバ、其樣ニ御示シヲ願
  ヒタイ、然ラズシテ成程本員ノ申ス通リノ事實ガ現ハレテ居ルト云フ御意見
  デゴザイマスナラバ將來之ニ對スル御處置ハ如何ト云フコトヲ伺ヒタイノ
  デアリマス、其他ノコトハ他日ニ伺ヒマス、次ニハ農商務大臣ニ伺ヒタイノ
  デアリマス、第一ニ日本全國ノ衣服材料トシテ用ヒルモノハ何人モ知ル通リ
  主タルモノガ木綿、今日ニ至リマシテハ毛織物、麻亞麻ト云フガ如キ類ノ
  モノニナッテ居ルノデアリマス、之ニ付テ見ルニ第一木綿ナルモノハ一般ノ
  人ニ用ヒラレテ居リマスルガ、其人〓ハ此木綿ナルモノガ何レニ生產スルモ
  ノデアルカト云フコトヲ辨ヘテ居ルデセウカ、多クハ木綿ノ如キハ本邦ニ生
  產スルモノデアッテ、極メテ容易ニ得ラレルモノカノ如ク考ヘテ居リハシナ
  イカト云フ疑ヲ私ハ抱イテ居ルノデアリマス、如何トナレバ近年ニ至リ之ヲ
  衣服ノ材料トシテ用ヒル程度ハ甚シク向上シタリト申シテ宜カラウト思フ、
  是ガ輸入ノ高モ億ヲ以テ算ヘル程ニナッテ居リマス、我ハ之ヲ知ラズシテ成
  ルタケ多ク之ヲ用ヒテ今日ヲ經過スルト云フヤウナ姿ニナッテ居ル點ハ甚ダ
  遺憾デハナイカト思フノデアリマス、實際申セバ本邦ニ於テハ木綿ハナイ、
  昔日ハ相應ニ木綿ノ產地モゴザイマシタケレドモ、今日ハ內地ニ於テハ殆ド
  木綿ナルモノハ產出イタサヌト申シテ宜シイ位デアル、僅ニ或ル地方ニ於テ
  ハ、自家用棉花ノ耕作ヲ致シテ居ルニ過ギナイ位ノ有樣デアル、仍ッテ國民
  全體ガ日々使用スル所ノ木綿類ハ悉ク外國ヨリ輸入スルモノデアル、故ニ之
  ガ供給ヲ絕タレタトキニハ日本國民ハ木綿著物ヲ著用スルコトハ出來ナイト
  云フ結果ヲ見ルノデアリマス、然ルニ多少近年ニ至リ朝鮮、臺灣等ニ出來ル
  ガ如ク承ハッテ居リマスケレドモ、是等ノ產ヲ以テ如何トモスルコトガ出來ナ
  イ程ノ多量ナル木綿ヲ我ガ同胞ハ使用シテ居ル譯デアリマス、仍ッテ他日之
  ガ供給ガナイトキニハ我ハ何ヲ著用スルカト云フ問題ガ起ルノデアリマスカ
  ラ、今日ヨリ之ヲ考慮シテ置クコトハ我ガ國家ニ取ッテ重大ナル問題デアラ
  ウト思フノデアリマス、仍ッテ當局ハ此問題ニ對シテ如何ナル御所見ガアル
  カト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、第二ニハ獸毛ヲ用ヒテ居リマス、卽
  チ毛織物デアリマス、先年來之ニ付テモ、政府ハ其產出ヲ促サムガ爲ニ方法
  ヲ講ゼラレタコトアルハ能ク承知ヲ致シテ居ル事柄デアリマス、然レドモ之
  ニ付テ伺ハザルヲ得ナイ、歐米ニ於ケル人心ノ傾向ハ寧ロ毛織物ヲ少ク用ヒ
  テ綿織物ヲ之ニ代ヘルト云フ風ガ次第ニ進ミツヽアルト云フコトヲ、今日ハ
  承ハルノデアリマス、彼ハ毛織物ヲ棄テ綿織物ニ移ル時ニ、我ハ彼ノ棄テタ
  ル毛織物ヲ頻ニ重用スルト云フガ如キコトガ或ハ起ラヌトモ申サレナイノデ
  アリマス、仍ッテ此毛織物用ニ付テ將來如何ナル御所見ガアルモノデアリマ
  セウカ伺ッテ置キタイ、此二ツノ問題ハ衣服問題デゴザイマシテ、豫メ用意
  ヲ致シテ居ルト云フコトハ國家トシテハ爲シ置カネバナラヌ事柄デアラウト
  信ジテ居リマス、之ニ次ギ麻、亞麻等デゴザイマス、是以テ又ナクテハナラ
  ナイモノデ、麻ノ如キモ今日輸入ヲ仰イデ居ルガ如ク承知イタシテ居リマス
  亞麻モ蓋シドウ云フコトニナッテ居リマスカ、能ク存ジマセヌカラ、萬一申
  上ゲテ誤リガアッテハ申譯ガアリマセヌ故ニ、此邊ニ於テハ當局ニ於テ御申
  聞ケヲ願ヒタイノデゴザイマス、次ニゴザイマスルモノハ〓物デゴザイマス、
  先キニ服部議員ヨリ米ノコトニ付テ御質問ガゴザイマシタガ、私ハ米バカリ
  デナク、其他ノ食物全體ニ付テ御質問申上ゲタイ、歐洲ニ於ケル戰亂ニ我モ
  荷擔ヲ致シテ居ルコトデゴザイマスルガ故ニ、戰時ノ覺悟ハ我等モ有ッテ居
  ラナケレバナラヌコトデアラウト思フ、承ハル所ニ據レバ此戰亂ニ參加シ
  テ居ル國〓ニ於テハ食物ニ對スル〓究ヲ努メテ居ルト言フコトデアル、然ル
  ニ我國ニ於キマシテハ、一般ニ未ダ何等〓究ヲシテ居ラヌカノ如ク見ユルノ
  デアリマス、是ハ甚ダ遺憾ナル事柄デアルト思フ、第一ニ米ニ付テハ先年ノ
  議會ニ於キマシテ、當時ノ農商務大臣ノ答ヘニ依リマスレバ、如何ニ豐作デ
  アッテモ、平均スレバ年々三百萬石ノ米ノ輸入ヲシナケレバ食料ニ不足ヲ告
  グルト云フコトヲ明確ニ答ヘラレタ、麥穀モ亦年々不足デアル、其時ノ調べ
  ニ依レバ麥ハ七千萬石カ足リナイノデアル、加フルニ大豆モ不足デアル、大
  豆ハ年々百二十萬石不足デアルト云フ御答辯デアリマシタ、斯ノ如ク不足ノ
  モノガアルト致シマスレバ、萬一ニ他ヨリ之ヲ仰グコトガ出來ナイナレバ、
  何トカ之ヲ辨ジナケレバナラヌト云フコトニナル、ソレモ俄ニ斯ノ如キ不足
  ニ遭週イタシタトキニハ手ノ出シヤウガナカラウト思ヒマス、故ニ豫メ之ニ
  對スル覺悟モ亦必要ナリト云ハザルヲ得スノデアリマス、次ニ米、麥、今中
  上ゲタ大豆等ノ不足、之ヲ外國ニ得ナイ········得ルコトガ出來ナイモノト致シ
  マスレバ、內ニ何トカシテ之ヲ供給スル途ハナイカト云フコトヲ〓究スルハ
  自然ノ順序ト云ハザルヲ得ヌノデアリマス、故ニ當局ニ於キマシテハ米ノ
  輸入モ出來ズ、麥ノ輸入モ出來ズ、豆ノ輸入モ出來ヌト云フコトニナリマシ
  タナラバ、如何ニシテ其不足ヲ補フト云フ御準備ガアリマスカ、之ヲ伺ヒタ
  イノデアリマス、又今日マデニ其準備モナイモノト致シマスレバ、將來ノ御
  計畫デアリマス、其御計畫ヲ伺ヒタイノデアリマス、本員一己ニ於キマシテ
  ハ食物ノ獨立ハ敢テ困難ナル事業ニアラズト考ヘル、同胞倶ニ力ヲ盡セバ、
  食物ノ獨立ハ寧ロ易々タリト云フコトガ或ハ出來ヤウト考ヘテ居ルノデアリ
  マヽヽ故ニ全ク本員ノ案ナクシテ當局ニ御尋ネ致ス譯デハゴザイマセヌ、故
  ニ政府ニ於キマシテハ、今申上ゲタ通リ是等ノモノヲ脇ヨリ得ラレナイトキ
  ニハ如何ニスルカト云フ御覺悟ガ出來テ居ルカ、之ニ對シテ御答辯ヲ煩ハシ
  タイノデアリマス、モウ一言御尋ネシタイ、ソレハ住居ノコトデアリマス、
  本邦ハ維新以來外國ノ風ヲ慕ヒ、住居イタス家屋ノ構造モ亦頻ニ外國風ヲ慕
  と、此風ニ依ッテ建設シタル家屋ニ住居イタス者ノ數ガ年々增加イタシツヽ
  アルノデアリマス政府ニ於テハ古來祖先ガ住居イタシタル家屋ヲ改造シテ
  歐米ニ於ケル風ノ建築ヲ日本國民ノ住居ニ充テルガ日本國民ノ健康ヲ保全シ
  若クハ健康ノ程度ヲ高メルニ良キモノト看做シテ御居デナサルヤ否ヤト云フ
  問デゴザイマス、未ダ良否相分ラズト云フコトデアリマスレバ何カ之ヲ知ル
  ノ方法ヲ御盡シニナリツヽアリマスカ今日マデノ所デハ家屋ノ建築法ト云
  フガ如キモノニ付テ何等ノ方法モ國民ニ御示シニナッテ居ラヌヤウニ思フ、是
  ハ甚ダ遺憾ナル問題デアラウト存ジマス、之ヲ御尋ネスルハ餘ノ儀ニアラズ、
  前キニ申上ゲマス通リ小サイ子供、學齡兒童及十五歲ヨリ二十歲、二十五歲マ
  デノ若イ者ノ體力ガ弱クナリマシテ、動モスレバ天折スルト云フ點デアリマ
  ス、是等ノ者ガ滿六歲ヨリ每日數時間ツヽ參入シテ稽古ヲ致ス學校ノ建物ノ
  如キデアリマス、初メニ當ッテハ我國ノ學校ハ稍祖先ノ住居ニ似寄リタル構
  造ノモノガアッタ所ガ、近年ニ至リマシテ益〓歐風ノ家屋ニナリマシテ、風ノ
  通ヒノ惡イ家ノ內ニ居テ修業ヲスルコトニナッタト共ニ、此若イ者共ノ健康
  狀態ガ著シク低落イタシタト云フ事實ガアルト本員ハ確信シテ居ルノデアリ
  F·マ何ヨリ證據ハ統計局デ示ス所ノ死亡率デアリマス、斯ノ如キ死亡率ノ
  原因ハ單ニ家屋ノ建築ニ止マルト云フコトハ出來ナイノデアリマスケレドモ
  數年ノ間、未ダ發育盛リノ者ヲ風通シノ惡イ日ノ當ラナイ所ニ長ク置イテ學
  問等ヲサセナケレバナラヌヤウナコトニ立至ヲテ居ルコトハ政府當局ニ於テ
  モ認メラレテ居ルニ違ヒナイノデアリマス、故ニ此事ヲ政府ニ御尋ネ申スノ
  デアリマス、今日ハ良シトモ惡シトモ言ハズシテ、唯言ウガマニ〓〓人民ガ
  造ルガマニ〓〓任セ置イテアルト云フ事實ガ玆ニ存シテ居ルト思ウテ居リマ
  ス、故ニ御尋ネ申スノデアリマス、政府ニ於キマシテ之ニ對スル御案ガ御有
  リニナルヤウデゴザイマスレバ其御案ヲ拜聽イタシタイモノ無イト致シマ
  スレバ唯〓御伺ヒ致シタ問題ニ付テ如何ニ考慮サレツヽアリマスカ、御示〓
  ヲ願ヒタイノデアリマス
  〔國務大臣伯爵寺內正毅君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=28

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• 029・寺内正毅

  ○國務大臣(伯爵寺內正毅君)　唯今ノ高木男爵ノ御質問ノ第一點デアリマス
  國民ノ保健上ニ付テノ意見ヲ御質シニナリマシタ、實ハ差掛ッタ問題デアリ
  マシテ統計上ノコトヤ何カハ詳シク玆ニ御答ヘシ得ナイノデアリマス必要
  ガアレバ追ッテ御答ヘ致シマスガ大體ノコトニ付テ私ノ所見ヲ述ベテ御答
  ヘニ致シテ置キタイト思ヒマス、全體我ガ國民ノ保健上ノ狀態ハ遺憾ナガラ
  他ノ先進國ニ較ベマシテ優良デアルト云フコトノ御答ハシニクイヤウニ思
  フ、固ヨリ今日マデ兒童其外ノ衞生上ノコト又國民一般ノ衞生上ニ付キマシ
  テモ相當ノ法規其外ノコトガ實行サレテハ居リマス、併ナガラ〓略私ノ記憶
  スル所ニ依ッテ述ベマスレバ、遺憾ナガラ國民全體ノ衞生ハ優良ニアルト言
  ヘナイ、甚ダ遺憾至極デアリマスガ、他ノ先進國ニ較ベマスレバ遙ニ優良デ
  ナイト言ヒ得ルト思フ、而シテ此今日世界ノ趨勢カラ考ヘマシテ、國民ノ保
  健ノ增進ト云フコトハ競爭場裡ニ於テ第一ノ要件デアルト思フノデアリマ
  ス、今日ノ有樣ヲ尙ホ改善イタシ優良ナル衞生上ノ狀態ヲ持チ來シタイト思
  フノデアリマス、又左樣ニ爲サナケレバ世界ノ競爭場裡ニ立ッテ優良ナル地
  位ニ國家ヲ置クコトモムヅカシイデアラウト思フ、依ッテ政府ノ施設ハ固ヨ
  リ、個人各個總テニ於テ衞生ノ增進ト云フコトヲ圖リ、堅剛ナル體力ヲ保持
  スル所ノ將來ノ人民ヲ拵ヘナケレバナラヌト思フノデアリマス、此點ニ付キ
  マシテハ唯〓斯〓ノコトヲ爲スト云フ成案ハ持チマセヌ、漸次是ヨリ今日ノ
  施設ニ付テ改良スベキモノ又直チニ施設スベキモノ、ソレ〓〓講究ヲ致シテ、
  出來ル限リノ施設ハ致シタイト思フ、是ダケノコトヲ申述ベマス
  〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=29

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• 030・岡田良平

  ○國務大臣(岡田良平君)　唯〓高木男爵ノ御尋ネノ第二ハ近來〓育上ノコト
  ハ體育、智育、德育共ニ進步シタニ相違ナイガ、併ナガラ動モスレバ理論ニ偏
  シテ之ニ實行ガ伴ハナイト云フ如キ傾ガアルヤニ感ズルガ、當局者ノ意見ハ
  ドウデアルカ、若シ果シテ然リトスルナラバ、之ニ對スル救濟ノ方法ヲ何カ考
  ヘテ居ルノデアルカドウカト云フ御尋ネデアッタヤウニ存ジマス、此點ニ付キ
  マシテハ當局者モ大體御質問ニナリマシタ高木男爵ト所見ヲ一ニ致シテ居ル
  者デアリマス、確カニ〓育ハ各般ノ方面ニ於テ進步イタシテ居ルニ相違ナイ
  デアリマスガ、智ノ方面ニ屬シマスモノ、意志ノ方面ニ屬シマスモノト其調和
  ヲ得ヌト云フコトハ確カニ認メテ居ルノデアリマス、是ハ如何ナル原因カラ
  左樣ナルコトガ起ッタノデアルカ、之ヲ第一ニ考ヘマシテ、而シテ後ニ之ニ對
  シテ之ガ救濟方法ヲ考ヘナケレバナラヌノデアリマスガ、是ハ無論色〓ノ原
  因ガアルト存ジマスケレドモ、其中デ最モ重ナル顯著ナル原因ハ我國ノ〓育
  制度ニ於キマシテ、宜シキヲ得ナカッタ所ノアル關係デアルト思フノデアリマ
  ス、卽チ下級學校ト上級學校トノ連絡ガ宜シキヲ得ナイ、下級學校ト上級學校
  ノ施設ガ調和ヲ得テ居ラヌト云フコトノ爲ニ學校ガ進ム度每ニ必ズ競爭試驗
  ヲ受ケナケレバナラヌ、激烈ナル競爭試驗ヲ受ケナケレバナラヌト云フコト
  ハ何レノ學校ニモ伴ッテ居ルノデアリマス、故ニ何レノ學校ニ於キマシテモ、
  先ヅ此競爭試驗ニ堪ヘル、競爭試驗ニ於テ勝ヲ得ルト云フコトヲ主ニ致シテ
  〓育ヲ施スト云フコトハドウモ免ルベカラザル所ノ弊害デアノッタノデゴザイ
  やっゝ、故ニ各學校ニ於テ力ヲ用フル所ハ主トシテ此試驗ノ成績ヲ良クスルト
  云フコトガアッタノデス、卽チ手短カニ申シマスレバ智育ノ側ニ最モ力ヲ入レ
  ルト云フコトニ流レルノハ是ハ自然ノ結果デアルト考ヘルノデゴザイマス、
  此弊ヲ去リマシテ智育ノ側、又意志ノ〓育ノ側ト云フモノガ宜シク調和ヲ得
  テ居ルヤウニ致シマスニハ、ドウシテモ〓育ノ制度全體ニ亙リマシテ、〓究ヲ
  遂ゲマシテ、上級學校ト下級學校ノ連絡ヲ宜シク致シ、又上級學校下級學校
  ノ施設ヲ調和ヲ能ク致スト云フコトニ依ッテ此各種ノ競爭試驗ト云フコトヲ
  バ出來得ベキダケ之ヲ減ズルト云フコトニ努メナケレバナラヌノデゴザイマ
  ス、之ヲヤリマセヌケレバ之ヲ假令如何ナル改良ヲ施シマシテモ、先刻高木男
  爵ノ御尋ネニナリマスヤウナ弊ヲ除クト云フコトハ出來マセヌト考ヘテ居ル
  ノデゴザイマス、此點ニ付キマシテハ專ラ唯〓〓育會議ニ於キマシテ〓究ヲ
  盡シテ居ルノデゴザイマス、又其〓育會議デ〓究イタシマシタ其結果ノ一部
  分ハ今囘ノ豫算ノ上ニモ旣ニ現ハレマシテ、其實行ヲ期スルト云フコトニ務
  メテ居ルノデゴザイマス、斯樣ナル手段ヲ執リマシテ此弊ヲ救ッテ參リタイト
  當局者ハ考ヘテ居リマス次第デゴザイマス、ソレカラ最後ニ住居ノ構造ニ付
  テノ御尋ネガゴザイマシタガ、之ニ付テハ主トシテ學校ノ建築ノコトニ關係
  イタシテ居ッタト存ジマスカラ私カラ御答ヲ申上ゲルノデゴザイマスガ、御話
  ノ通リニ從來我國ノ建物ハ外國ノ建物ト異ナッテ居ッテ、建物ノ內外ニ於ケル
  所ノ氣候ノ相違、或ハ光線ノ多少ト云フコトガ誠ニ比較的少クアッテ、サウシ
  テ衞生上ノ或點ニ於テハ必ズ宜シイノデゴザイマセウ、ソレガ段々近頃西洋
  風ノ建物ガ殖エテ參リマシテ、是等ノ特色ガ減ズルト言フコトニナッタノハ
  或點ニ於キマシテハ衞生上宜シクナイコトデアラウト思フノデアリマス、故
  ニ是ハ能ク〓究イタシマシテ、外國ノ建築ノ利益ノアル所ヲ採リ、又其弊ノア
  ル所ヲ除クト云フコトヲ十分ニ注意ヲ致サナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、唯光線ノ多イ方ガ宜シイ、、餘リ室ノ中ニ人間ヲ保護スルコトハ宜シクナイ
  ト申シマシテモ、外ノ便利、外ノ愉快ト云フモノヲ總テ犧牲ニ致スト云フ譯ニ
  モ參リマスマイ其兩方ノ調和ヲ得ルト云フコトガ適當ナコト、必要ナコト
  デアラウト考ヘルノデゴザイマス、學校ノ構造ニ付キマシテハ專ラ此見地カ
  ラ致シマシテ設計イタスコトニナッテ居ルノデゴザイマス、卽チ一方ニ於キ
  マシテハ成ルベク授業上ニ於テモ亦生徒ノ愉快ノ上ニ於キマシテモ都合ノ好
  イヤウナ構造ヲスルト云フコトヲ致スト同時ニ、採光竝ニ通風ト云フ如キ點
  ニ於キマシテ、理論上必要ナル程度ノコトハ必ズ之ヲ實行セシムル、例ヘバ
  窻ノ大キサデアリマストカ、或ハ室內ノ空氣ノ量デアルト云フガ如キ、成ル
  ベク之ヲ多量ニ致シマシテ、授業上ノ便宜、又兒童ノ愉快、衞生ノ點ト相一
  致スルヤウニ努メテ居ル次第デアリマス、之ニ付キマシテ精シイ設備規則ト
  云フモノガゴザイマシテ、之ニ依ッテ多ク學校ノ建築ヲ致シテ居ルノデゴザ
  イマスガ、先年都合ガアリマシテ設備規則ト云フモノハ廢止イタシマシタノ
  デアリマスガ、併ナガラ實際學校ノ建築ニ於キマシテハ此設備規則ノ中ニ付
  キマシテ衞生上及〓育上必要ナルコトハ矢張リ依然トシテ之ヲ採用シテ居ル
  コトニナッテ居リマス、先ツ斯樣ナ方針デヤッテ居ルノデゴザイマス、併シ是
  等ノ點ハ誠ニ大切ナ問題デゴザイマスカラ、將來ニ於キマシテハ尙ホ〓究イ
  タシマシテ不都合ノナイヤウニ致スト云フコトニ努力ハ惜マヌ積リデ居リマ
  ス
  〔男爵石黑忠悳君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=30

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• 031・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　石黑男爵ハドウ云フコトデゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=31

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• 032・石黒忠悳

  ○男爵石黑忠悳君　唯今高木男爵カラノ質問ニ付キマシテ文部大臣ノ御答ニ
  付テチヨット質問イタシタウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=32

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• 033・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　仲小路農商務大臣ガ答辯サレヤウト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=33

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• 034・石黒忠悳

  ○男爵石黑忠悳君　ソレデハ後トデ
  〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=34

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• 035・仲小路廉

  ○國務大臣(仲小路廉君)　農商務所管ニ付キマシテ高木男爵ヨリノ御質問ニ
  御答ヲ致シマス、高木男爵ノ御質問ノ第一點ハ衣服ノ問題トシテ今日木綿物
  ト言ヘバ、サモ國內ニ於テ容易ニ得ラレルモノデアルカノ如ク人〓ハ考ヘテ
  居ル、去リナガラ其木綿物ノ原料トナルベキ棉花、是ハ我國ニ於テハナカ〓〓
  得ラレナイノデアル、之ニ付テ年々原料トシテ輸入ヲ俟ツモノガ億ヲ以テ計
  算スル位ノコトニナッテ居ル、之ヲイト容易ニ得ラレルモノダト云フ考ヲ以テ
  餘リ之ヲ贅澤ニ使用シテ居レバ、將來ニ於テハドウ云フ結果ニナルデアラウ
  カト云フ、洵ニ至當ナ御質問デアリマス、高木男爵ヨリ仰セニナリマスル如ク
  二、我國ニ於キマシテハ木綿物ト申サバイト容易ニ手ニ這入ルヤウニ一般ニ
  ハ考ヘテ居ル、併ナガラ今日其原料トナルベキ棉花ニ付キマシテハナカ〓〓
  是ハ容易ナラザル問題デアリマス、其數額ハ仰セノ如ク殆ド億以上ニ亙ッテ
  居ル、幸ニシテ我國ニ於テ加工ヲサレテ、他ニ輸出ヲ致シテ居リマスル綿絲、
  綿布トシテ重要貿易品トハナッテ居リマスルガ、併ナガラ今日ニ於テ消費サレ
  ル高モ少カラヌ高デアリマス、而シテ是ガ原料タルベキ棉花ハ我ガ內地ニ於
  テハ得ラレナイノデアリマス、一ニ之ヲ他カラノ輸入ニ待ッテ居リマスル、是
  ガ普通ノ場合ノ如ク、各國トノ貿易モ總テガ自由ニ參ル時ナラバ、左程ニ苦
  シミモ致シマセヌガ、今日ノヤウナ戰時、テアリマスト、海外ニ對スル輸出、
  輸入共ニ心ニ任セヌコトガ多イ今日ニハ此重要ナ棉花ニ付キマシテ、將來ノ
  自給ノ方法、洵ニ之ニ付キマシテハ十分ニ考慮ヲ致サネバナラヌ時デアリマ
  ス、ソレ故ニ農商務省ニ於キマシテモ何トカ致シテ此棉花ニ付キマシテ將來
  安全ニ之ヲ供給シ得ル途ヲ講ジタイト存ジマシテ、既ニソレ〓〓調査モ盡シ
  テ居ルノデアリマス、幸ニシテ我ガ朝鮮或ハ滿洲、臺灣等ニ於テモソレ〓〓途
  ヲ講ジテ居リマス、去リナガラ迚モ之ヲ以テ將來我ガ供給ヲ充タス譯ニハ參
  ラナイノデアリマス、更ニ進ミマシテ支那方面、各種ノ方面、諸方ニソレソ
  レノ途ヲ講ズル考ヲ有ッテ居ルノデアリマス、去リナガラ之ト同時ニ又高木
  男爵ノ仰セニナリマスル如ク木綿物ハイト容易ニ得ラレルモノダト云フ積リ
  ヲ以テ之ヲ餘リ構ハズニ多クヲ消費スルコトニナリマスレバ、到底其供給ヲ
  全ウスルコトモ出來マセヌノデアリマス、是ハ銘々心ヲ致シテ成ルベク無駄
  ニ之ヲ使ハナイ、成ルベク節約ヲシテ、有要ニ使用イタスト云フ考ガ社會一
  般ニ起ッテ來ナケレバナラヌコトト存ジマス、又外國ニ於テ是マデ多ク毛織
  物ヲ使用シテ居ッタガ、毛織物ヲ使用ハシテ居ルガ漸次ソレガ變ジテ、木綿
  物卽チ綿絲ヲ以テスルノ傾ガアリハセヌカ、是モ仰セニナル如クニ近來ハ莫
  大小、多クハ綿絲綿布ヲ以テ漸次其方ノ使用ガ擴マッテ居リマス、旁、是等ノ
  點ニ付キマシテハ我ガ社會ノ全體ニ於テ國民ノ思想上ヨリ成ルベク綿絲綿布
  ニ付テハ心シテ使用スルト云フ考ニナラナケレバナラヌコトデアラウト存ジ
  R〓〓、尙ホ麻ノコトデアリマスルガ、是モ綿絲、綿布ニ次グ重要ナ物資デアリ
  マイカ、幸ニシテ近來ハ北海道ニ於ケル麻或ハ臺灣等ニ於テ漸次繁殖ノ途モ擴
  マッテ居マス、是ノ供給モ前日トハ餘程變ハッテ參リマシタ、去リナガラ是ノ
  需要モ亦日ニ增シテ多キヲ〓ゲル場合デアリマス、是等ニ付キマシテモ成ル
  ベク需要供給ノ關係ヲ滑ニ致シテ、將來ニ於テ之ニ不足ヲ〓ゲナイダケノ畫
  策ヲシナケレバナラヌト專ラ注意ヲ致シテ居リマス、次イデ重要ナ問題トシ
  テ、此食物ノ點デアリマス、食物ノ問題ハ今日ノ場合ニ於テ社會上實ニ必要
  ナ問題デアリマス米ノコトハ申スマデモナク、或ハ麥ニ致シマシテモ或
  ハ大豆類ニ致シマシテモ、是皆主要〓物ニ次イデ必要ナル副食物デアリマス、
  幸ニシテ今日ハ或ハ肥料ノ點デアリマスルトカ、各種ノ方法ノ講究ニ依リマ
  シテ生產ノ額ハ漸次殖エテハ參リマシタ、去リナガラ年々我國ニ於テ人口ノ
  增加ヲ致シテ、年々六十萬人カラノ人ノ增加ニ伴フコトハ唯今ヨリ將來ノコ
  トハ篤ト考ヘマシテ、其時ニナッテ臍ヲ噬ム悔ノナイヤウニ致サナケレバナ
  ラヌ、卽チ本年ノ豫算ノ上ニ土地利用調査ニ關スル費用ヲ計上イタシタノデ
  アリマス、此趣意ハ唯今申シマスル如クニ、現在ハ姑ク措イテ、將來我ガ人
  口ノ增加ニ伴ヒマシテ、之ニ付テ成ルベク需要供給ノ不足ナカラシムル爲ニ、
  成ルベク生產額ヲ多クスルコトヲ努メナケレバナラヌト思ヒマス、卽チ土地
  利用調査ノ途ニ依リマシテ、或ハ不用ノ山林デアリマスルトカ、或ハ今日マ
  デ荒地トシテ打棄テラレテ居ッタ土地デアリマストカ、其他開墾開拓ヲ致
  シテ然ルベシト思フモノガ我ガ國內ニ少カラヌノデアリマス、是等ニ對シマ
  シテハソレ〓〓ノ調査ヲ盡シマシテ、開拓シ得ベキモノハ之ヲ之ヲ開拓イタ
  シ、干拓ヲ致シ得ベキモノハ干拓ヲ致シテ、又不要存置林デアッテ、之ヲ一
  般ノ用ニ供シタガ然ルベシトスル場合ニハ相當ノ處置ヲ執ッテ之ガ處置ヲナ
  シ、而シテ將來ニ當ッテ出來得ル限リ耕地田畑ノ額ヲ多クスルコトニ努メル
  コトガ是ガ大切ト存ジマス、旣ニ其考ヲ以テ今囘ノ豫算ニ計上ヲ致シタノデ
  アリマス、去リナガラ將來ニ亙ッテ此需要供給ノ調節ヲ計リマスニハ、一面ニ
  於テ生產ヲ增ス方ニモ盡力ヲ致スコトハ當然デアリマス、併ナガラ同時ニ消
  費ト云フ方ニモ亦節約ヲ致シテ行キマセヌトナラヌト存ジマス、今日ノ如ク
  ニ世ノ中ガ繁昌ダ繁昌ダト云フ積リデ、米ノ消費モ極メテ多クナリ、多クノ消
  費ガ贅澤ニ使ハレマシテハ、幾ラ是ガ供給ニ盡力ヲ致シマシテモ不足ヲ〓ゲ
  テ參ルノデアリマス、是等ハ社會全體ノ關係トシテ銘々心ヲ致シテ節約スベ
  キハ節約ヲシテ、成ルベク消費ヲ愼ムコトモ必要デアラウカト存ジマス、一面
  ニ於テ生產ノ方ニ力ヲ盡シ、同時ニ消費ニ對シテ各〓心ヲ致シ、サウシテ我ガ
  國民全體ノ需要供給ニ不足ヲ〓ゲナイ途ヲ執リマスルコトハ是レ正ニ當局者
  トシテ盡スベキコトダト存ジマス、大體高木男爵ノ御質問ニ御答イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=35

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• 036・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　文部大臣ノ御答辯ニ付テ一言申上ゲタイノデアリマス、
  兎角〓育ヲ受ケタル者ノ理論ニ走セ實行ニ遠ザカルト云フコトガアルト云フ
  コトハ認メテ居ルト云フ御答辯デゴザイマシタガ、尙ホ此實地ノ問題ニ付テ
  競爭試驗ガ烈シイノデ、理論ノミニ走セルト云フガ如キ結果ヲ來シタト云フ
  御說明デゴザイマシタガ、是モ御尤モナ御說トシテ承ハルノデアリマス、去
  リナガラ其點バカリデナイト云フ點ヲ本員ハ認メテ居ルノデアリマス、例
  バ小學校兒童ガ小學校デ習ウタコトヲ其儘實行シテ居ナイト云フ點デアリマ
  ス、又小學校兒童ニ付テ色〓〓ヘルコトガアリマセウケレドモ、〓科書デ歷然
  〓ヘテ居リマスケレドモ、其子供等ガ之ヲ日〓實行スベキモノヲ實行シテ居
  ナイト云フコトヲ認メルノデアル、是ハ競爭試驗ノミニ因スル問題デハナイ、
  卽チ〓場ニ於テ何トカ方法ヲ用ヒタナラバ〓室內デ〓ヲ受ケタモノハ〓室外
  ヘ出デテモ其通リヲ實行スルト云フコトニナリハ致サヌカト思フノデアリマ
  ス、今日ノ所デ見レバ室內ニ打籠ッテ守ルガ如ク守ッテ居リマスケレドモ、室
  ヲ離レテ外ニ出デタルトキニハ早ヤ打忘レタルカノ如ク見エルノ風ガアルト
  云フコトニ付テ申上ゲタノデアリマス、先ニ御答ニナリマシタ通リニ全クソ
  レニ違ヒゴザイマセヌ、ソレモ伺ッタ通リノ意味ヲ有ッテ居ルニ違ヒゴザイマ
  セヌガ、ソレバカリデハナイ、唯今申上ゲタ點ヲ如何ニ御認メニナッテ居ル
  カ、唯物ヲ知ラセルト云フニ止メ、行フコトニ重キヲ置カヌ、ソレハ人ノ眼ノ
  前デ言ハレタ通リスルダケデアッテ、而カモ〓ヘタル人ガソコニ居ルトキダ
  ケ其ヤウニシテ居リマスガ、場所ヲ離レテ見ルト〓へタ通リシナイト云フヤ
  ウナ氣風ガ小學兒童等ニ現ハレテ居ルト云フコトハ確カニ認メラレルト思フ
  ノデアリマス、尙ホ御分リ兼ネモアリマセウト思ヒマスルガ、此儀ハ又他ノ
  場合ニ伺ウテ宜シウゴザイマス、モウ一ツ御答へ下サレマシタ建築ノコトデ
  ゴザイマス、是ハ決シテ文部大臣ノ所管ノ下ニ拘ハル問題ノミデ申上ゲタ譯
  デハナイ、天下一般デゴザイマス、卽チ外國風ノ家ヲ拵ヘテ住ム人ノ多キ地方
  ハ確カニ結核病等ガ多イノデアリマス、或ハ和洋折衷ト云フノデアリマスカ、
  日本風ノ家屋デアッテ、硝子障子等ヲ建テ廻シテ居ルヤウナ家ノ多イ地方、例
  ヘバ大阪デアルトカ、神戶デアルトカ、橫濱デアルトカ、東京デアルトカ云
  フ如キ地方ニ於ケル死亡率、殊ニ結核病等デ斃レル者ガ少カラヌ所カラ御尋
  ネヲ致シタノデアリマス、學校ノ校舍モ亦其中ニ數ヘラレル、多數ノ者ガ閉
  籠ッタ家ニ這入ッテ居ルト云フコトニナリツヽアルノデアリマス、設備準則ノ
  コトニ付テ御話デゴザイマシタガ、設備準則ヲ設ケラレテ之ニ依ッテ學校ヲ
  建設シタル日以後ニアッテ確カニ此幼童ノ···日本國民ノ若イ者ノ健康ニ
  層響キヲ生ジテ居ルト云フ事實ガ存シテ居ルノデアリマス、學校ノ爲ニ必ズ
  是ガ起ッタト云フコトハ未ダ證據ヲ十分ニ捉ヘテナイガ故ニ言フコトハ出來
  マスマイケレドモ、設備準則ニ依ッテ學校ノ校舍ヲ建築シタカラ其爲ニ日本ノ
  兒童ガ丈夫ニナッタト云フ證據ハナイ、兒童ノ健康ガ惡クナッタト云フ證據ハ
  統計表等デ擧ゲ得ラレテ居ルト思フ、故ニ今日アル所ノ校舍ノ建築ガ良イト
  云フコトハ頗ル難事中ノ難事ダラウト思フノデアリマス、建テテ入レハ入レ
  タガ、其結果ハ未ダ調査ヲシテ居ラナイ云フコトハ事實デアラウカト思フ、故
  ニ單リ學校ニ止マラナイ、一般ニ我〓國民ガ洋風ノ家ニ住居スルヤウニナツ
  タ爲ニ、健康ガ善クナッタカ、惡クナッタカト云フコトヲ知ルト云フコトハ今
  日ノ場合我ガ國家ニ取ッテハ大切ナ事柄デアラウト思ウテ此儀ヲ御尋ネ致シ
  タノデアリマス、能ク御調査ニナリマシテ此國土氣候、風土ニ適當スルト云
  フヤウナ家屋ヲ拵ヘルト云フコトニナラナケレバ、國民ノ健康ヲ保存スル上
  ニ於テ故障ヲ生ズルダラウト思フノデアリマス、故ニ政府ニ於テ是等ノ點ヲ
  能ク御調査ニナリマシタコトデゴザイマスカ、若シナケレバ御調査ニナルト
  致シマシテ、我國ノ氣候、風土ニ於テ人民ノ住居ニ適スルヤウナモノヲ國民
  ガ建設シテ之ニ住居スルヤウナコトニナルコトガ、國力ノ增進ニ必要ナリト
  認メル所カラ御尋ネヲ致シタノデアリマス、此問題ニ付テハ文部大臣閣下ノ
  御答辯ハ誠ニ有難ク頂戴イタシマスルガ、內務大臣閣下ガ最モ是ハ適任ノ御
  方ト本員ハ認メテ居ルノデアリマス、故ニ內務大臣閣下ヨリ御答辯アラムコ
  トヲ切望イタシマス
  〔國務大臣男爵後藤新平君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=36

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• 037・後藤新平

  ○國務大臣(男爵後藤新平君)　唯今高木君カラノ御質問ト御意見ヲ拜聽イタ
  シマシタガ、全ク御意見ノ通リニ當局ニ於テモ考ヘテ居リマス、サウシテ御
  承知ノ通リ保健調査會ニ於テ一部ノコトハ今著手シテ居リマスルコトモアリ
  ママ、全部ノコトニ付キマシテハ遺憾ナガラ今完全ナル設備ヲ以テ爲シツヽ
  アルト云フコトヲ玆ニ申上ゲルマデニナッテ居リマセヌ、併シ此事ハ等閑ニ
  附スベカラザルコトト考ヘマス、前來內務省ニ於テ調査セラレテ居リマスガ、
  唯今ノ形勢デハ益〓急務ヲ感ズルヤウデアルト云フコトヲ御答イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=37

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• 038・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　本員ノ今日御質問イタシタル箇條ニ付テハ尙ホ伺ヒタイ
  コトハ多々ゴザイマスケレドモ、時間ノ都合モゴザイマス故ニ今日ハ之ニ止
  メテ後日更ニ御伺ヒ申上ゲマス

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• 039・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　唯今高木男爵ノ御質問ニ對シテ內務大臣ノ御返事ガゴザ
  イマシタガ、序ニソレニ付テ內務大臣ニ御伺ヒ致シマシテ宜シウゴザイマセ
  ウカ

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• 040・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　後トデ願ヒマス········若槻禮次郞君

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• 041・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　簡單デゴザイマスカラ此席カラ御尋ネ致シマス、大藏大臣
  ノ先程ノ御演說ハ可ナリニ詳細ニ亙ッテ居リマシタガ、唯衆議院ニ於テ稅法
  竝ニ郵便法中ノ改正案ヲ否決セラレマシタ結果トシテ財源ニ缺減ヲ生ジタ
  ヤウニ感ジラレマスルガ、其點ニ付テノ御說明ハ甚ダ簡單デ、政府ノ御考ノ
  アル所ヲ承知スルニハマダ足リナイヤウニ考ヘルノデアリマス、其點ヲ御尋
  ネシタイト思ヒマスガ、先以テ伺ヒタイノハ、衆議院デ否決ノ結果大正七年
  度ニ若干歲入ノ減少ヲ認メマスガ、又大正八年度以降ニ於テハ其額ガ增加ス
  ルト考ヘマスルガ、其增加スル減少額ノモノガ如何程ニ相成ルノカト云フコ
  トヲ御尋ネヲシタイノデアリマス、御答辯ノ便利トシテ次ニ御尋ネスルコト
  モ併セテ申上ゲマスガ、一體今囘ノ豫算ニ對シマシテハ衆議院ニ於テモ隨分
  意見ガアッタヤウデアリマスガ、我〓モ幾ラカ疑ヲ有ッテ居リマスノハ、他ノ
  歲出ハ皆現在ノ儘增加セヌト致シテモ、政府ノ御答辯ニナル所ニ於テ海軍省
  ニ於テハ、大正八年度カラ今日御要求ニナッテ居ル水陸設備費ノ殘リ千五百
  万圓前後ノモノハ多分御要求ニナルダラウト思ヒマス、海軍大臣ハサウ云フ
  ヤウニモ仰ッシヤッテアルヤウニ思フノデアリマス、又今日ノ午前中ノ質問ニ
  對シテ海軍大臣ノ御答へニナッタ所ニ依ルト、八四艦隊計畫補充ノコトハ此
  豫算ノ中ニ出來テ居ラナイノデアル、豫テ成立ッテ居ル所ノ海軍ノ國防ノ目
  的トシテアル所モマダ行ハレテ居ナイノデアッテ、是ハ大正十年頃カラ要求
  スル積リデ居ル、斯ウ仰ッシヤッテアルノデアリマス、左樣イタスト云フト、
  外ノ歲出ハ皆現狀ノ儘デ增加スルコトガナイト見テモ、海軍關係デ大正八年
  ヨリ更ニ大正十年カラハ益、多ク財源ヲ要スルノデアッテ、其事柄ニ付テハ見
  込ガ御答ヘニナッテ居ナイヤウデアリマス、政府ハ見込ヲ立テテ居ラレナイ
  ヤウニ見エマスカラ、何レ其時ニ至リ財源等ノモノハ、何カノ方法ニ依ッテ
  增稅シナケレバナラヌデアラウト思ヒマス、今日ノ計畫ニ於テハ此事ガ見テ
  ナイヤウニ考ヘテ居ルノデアリマスガ、丁度其場合ニ於テ衆議院デ歲入ノ減
  少ノ意見ヲ提出シタノニ對シテ、是ハ衆議院ガ政府ノ意見ニ反シテ決議シタ
  ノデハナイノデアリマシテ、政府ハ進ンデ之ニ御同意ニナッタノデアリマスカ
  ラ。然ル以上ハ政府ニ於テハ何等カノ御見込ガアルノデナケラネバナラヌ、
  元來財源ノ足リナイ所デ海軍ダケノ問題ニ於テモ早晩更ニ增稅ヲ要シハセヌ
  カト考ヘテ居リマスガ、其際ニ今日御提出ニナッタ計畫ノ中デ更ニ歲入ノ減
  少ニ對シテ政府ハ進ンデ之ニ御贊成ニナッタト云フ以上ハ、此補充ノ途ナル
  モノハ何等カ御考案ガアルト思ハレルノデアリマスガ、其御考案ナルモノハ
  ドウ云フノデアリマセウカ、又其御考案ニ基イタ發案ハ此議會ニ於テ御提出
  ニナルノデアリマスカ、他日御提出ニナル御考デアリマセウカ、其點ヲ伺ッテ
  置キタイ
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 042・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　御答ヲ致シマス、第一ノ歲入ノ減少ノコトニ付キ
  マシテ、歲出トノ均衡ヲ取ル點ニ付キマシテハ先刻私ヨリ大體ハ申シテ置イ
  タノデアリマス、卽チ歲入ニ於テ減少ヲ致シマシタ、此故ニ此均衡ヲ保ツガ
  爲ニ歲出ニ於テ國庫豫備金ノ二百萬圓ト云フモノヲ削除シテ豫算ヲ修正シテ
  提出ヲ致シタノガ一ツデアリマス、尙ホ進ンデ申上ゲマスレバ、大正七年度
  ニ於キマシテハ當然ナコトデアリマスルガ、三十六萬幾圓ト云フモノノ徵稅
  費ガ浮ク譯ニナリマス、ソレカラ五十五六萬圓バカリ前年度剩餘金ヲ繰入レ
  ルコトニナリマス、サウ致シマスルト云フト、大正七年ノ辻褄ハ合ッテ行キ
  マンクソレカラ其以後ノ辻褄ハ矢張リソレ等ノ計畫ニ依ッテデス、チヤント
  立ツノデアリマス、唯茲ニ違フ所ハ衆議院ニ於テ示シマシタ所ノ大正十二年
  度ニ亙ル所ノ財政計畫ノ表ニ付キマシテ、以前ノ表ニハ大正八年九年ト云フ
  ヤウナ所ハ餘裕ガ出テ居ッタモノガ、ソレガ丁度キチ〓〓ニナルヤウナ計數ニ
  ナリマスノデ、其所ガ違ヒマス、此點ハ寧ロ此處ヨリハ委員會等ニ於テ其表ヲ
  御示シヲシテ詳シク御話ヲ致シタ方ガ宜ガラウト考ヘルノデアリマス、第二
  ノ御尋ネハ若槻君ノ豫想ニ依ルト海軍ノ水陸設備費ノ如キ大正八年度以後ニ
  於テ相當增加ヲシナケレバナラヌコトガアル、又海軍大臣ノ說明等ニ依ッテ
  モ、大正十年頃ニ此補充計畫、其他新タナル計畫等モ提出サレルト云フヤウナ
  コトモアルヤウデアルガ、之ニ對シテ政府ハ財源ノ見込ヲ付ケテ居ルカ、是
  ガ御尋ネデアルヤウデアリマス、此點ニ付キマシテハ衆議院ニ於テモ屢、問題
  ガ出マシテ答辯ヲ致シテ居ルノデアリマスガ、大體此事ヲ申上ゲマスルニ付
  キマシテハ、政府ガ本囘提出ヲ致シテ居リマス所ノ歲入ノ豫算、歲入ノ豫算ナ
  ルモノガ如何ニシテ作ラレタカ、此七年度ノ歲入ノ豫算ノミナラズ、大正十
  二年ニ至ルマデノ間ノ其計畫ニ付キマシテ歲入ヲ如何ニ見タカト云フコトノ
  說明ヲ第一申サナケレバナラヌ譯デアリマス、大正七年ノ歲入ニ付キマシテ
  ハ從來ノ形式ニ依リマシテ、卽チ或モノハ大正五年度ノ實績ニ依リ、或モノ
  ハ三年若クハ五年前ノ平均ニ依リ、確實ナル數字ヲ見込ンデアルノデアリマ
  ス、サウ致シマシテデス、尙ホ是等ノ數字ハ確實デアルトハ考ヘテ居リマス
  ルガ、今日ハ卽チ時局ノ際デアリマスルカラシテ、時局ニ依ッテデス、歲入ガ
  殖エタト見込ムベキヤウナモノハ寧ロ多少是ハ減額ヲシタ方ガ宜カラウト云
  フ考ヲ有ッテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ大正九年ヨリ致シマシテ、各稅ニ亙
  リマシテ、要スルニ此時局デ殖エタト云フヤウナモノニ付キマシテハ之ヲ見
  込ンデ減ジテアリマス、卽チ大體カラ申シマスレバ、本囘政府ガ衆議院ノ豫
  算委員會等ニ於キマシテ示シマシタ所ノ將來ニ亙ル財政計畫竝ニ當院ニ
  於キマシテモ必ズ委員會ニ於テハ御示シヲスル積リニ致シテ居リマスケレド
  モ、此財政計畫ナルモノノ歲入ハ極メテ嚴格ニ見積ッテアリマス、而カモ唯
  今申上ゲタ如クニ自然增收ノ如キモノハ見テアリマセヌ、ソレ故ニ從來財政
  ノ經驗ニ依リマスレバ、之ニ對シテ相當ノ餘裕ガ出テ來ルト云フコトハ
  幾ラノ餘裕ガ出テ來ルト云フコトハ明言ガ出來マセヌケレドモガ、想像シ得
  ラレルノデアッテ、又歷代ノ政府ニ於テ斯ノ如キ場合ニハ必ズ斯ノ如ク說明
  ヲシテ居ルノデアリマスノミナラズ此財源ノ、例ヘバ八年度九年度ト云フ
  ヤウナ時ノ財源ト致シマシテハ、御承知ノ通リ大正六年度ノ計算ガマダ能ク
  分リマセヌガ、大正六年度ノ剰餘金ノ如キハ相當巨額アル見込ヲ有ッテ居リ
  マス、斯樣ナルモノ等ガアリマスルナラバデス、玆ニ海陸設備ノ若干ノモノ
  ガ出テ來ル、其他多少必要ニ應ジテ經費ガ殖エルダラウト思ヒマスルガ、斯
  樣ナルモノヲ賄ヒ得ナイト云フコトハ私ハナイト思フノデアリマス、サウ致
  シマシテ海軍ノ將來ノ計畫ニ付キマシテ、海軍大臣ハ要シマスルニ大正十年
  頃ニ補充ノ計畫竝新タナル計畫ヲ出スデアラウ、斯ウ云フコトヲ申シテ居ル
  ノデアリマス、尙ホ之ニ附加ヘマシテ海軍大臣ハ、衆議院ノ豫算總會等ニ於
  テ、或ハ增稅委員會等ニ於テ說明サレテ居リマスルノハ其頃ニ出スデアラ
  ウガ、併シ此年度割ハ詰リドウナルカト云ヘバ、最初ニハサウ巨額ヲ要セナ
  イノデアル、詰リ本當ノ金ヲ要スルト云フコトハ、大正十二年度以降ニ於テ
  之ヲ要スルノデアルト、斯樣ニ說明ヲサレテ居ル、若シサウ云フコトデアリ
  マスルナレバデス、大正十二年頃ヨリ致シテハ六千萬バカリノ餘リガ出、十
  三年ニハ一億以上ノ餘リガ出テ來ルト云フ計畫ニナッテ居リマスルカラシテ、
  是等ノ要求ニ應ジテ行クコトガ相當ニ出來得ルデアラウ、斯ウ云フ考ヲ持ッテ
  居リマスル、大體ソレデ御解リ下サッタコトデアラウト信ズル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=42

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• 043・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　チヨット御答辯ハ私ノ御尋ネシタコトト前後イタシタヤウ
  ニ思ヒマスガ、併シ前後イタシテモ結局關聯ヲシテ居リマスカラ、唯今ノ御
  答辯ニナッタコトハ、私ガ御尋ネヲシタイト思ッタコトノ一部ニハ丁度當ッテ
  居ルヤウデアリマス、但シ大藏大臣ハ海軍ノ要求ガアル場合ニ於テモ、其金
  額ハ餘リ多クナイヤウニ御覽ニナッテ居ルヤウデアリマスガ、此點ハ私共ノ
  考ヘテ居ル所トハ大分違ヒマスノデ、謂ハユル八四艦隊計畫トナッテスラモ、
  補充ノ計畫ガ今出來テ居ナイノデ、此補充ダケデモナカ〓〓大ナル金額ヲ要
  スル、ソレニ今海軍大臣ガ言ハレル所ノ國防ノ方針ト云フモノガ、若シ八八
  艦隊計畫デデモアリマスナラバ、之ニ要スル費用ハナカ〓〓小サナモノデナ
  カラウト思ヒマス、大キクナイコトヲ私ハ望ミハ致シマスケレドモ、事實ハ
  ナカ〓〓大キナ金額ヲ要スル、大藏大臣ハ之ニ向ッテ剰餘金、或ハ自然增收
  ヲ以テ充テルト仰セニナリマスガ、自然增收ナルモノハ歷代ノ內閣ノ中デ曾
  テ之ヲ見込ンデ財政計畫ヲ立テラレタ内閣ガ、一タビハアリマシタケレドモ、
  是ハ議會ノ反對ニ依ッテ中止トナリ、其後ハ自然ノ增收ヲ見込マヌデ立テルト
  云フコトニナッテ居リマスルカラ、之ヲ當テニシテ財源ニ充テルト云フ御說
  明デハ十分デナイヤウニ思フノデアリマス、自然ノ增收ニ對シテハ、此歲出
  モ自然ノ增加ガアルノデアリマス、之ニ向ッテ相當當嵌メテ行カヌケレバナ
  ラヌ、サウスルト海軍ノ計畫ノ如キ大ナル財源ヲ要スルモノハ、ドウシテモ
  ソレニハ特別ノ財源ヲ考ヘテ居ラナケレバナラヌ問題ト思ヒマス、併シ此點
  ハ大藏大臣ト私共ノ考ト違フヤウデアリマスカラ、强ヒテ御尋ネハシマセヌ
  ガ私ノ御尋ネヲシタノハ左樣ナ財政ノ前途ニ關係ガアルノニ、衆議院ガ、今
  御出シニナッタ豫算ニ對スル必要ナル財源トシテ稅法ノ一部、竝郵便法ノ改
  正案ヲ否決シタ爲ニ、玆ニ歲入ノ缺減ガ生ジタノデアル、其缺減モ政府ガ同
  意セヌト仰ッシヤルナラバ何デモアリマセヌガ、衆議院ニ對シテ同意デアル
  ト言ッテ直グニ御賛成ニナッタノデアルカラ、ソレ故ニ其歲入ノ缺減ニ對シテ
  御見込ガナケレバナラヌト云フコトヲ申上ゲタノデアル、然ルニ國庫豫備金
  ノ二百萬圓ヲ減ズルト云フ豫算ヲ政府ガ御出シニナッタ、又徵稅費ヲ增スト
  云フコトモ自然ニ要ラナクナル、其事ハ私モ承知シテ居ルノデアリマス、其
  外ニ衆議院ハ是等ノ豫算ニ對シテ若干ノ削減ヲ加ヘタノデアリマスカラ、是
  ハ財源ニハナルノデアリマス、併ナガラ是等ノ財源ハ數ヲハッキリ仰セニナ
  リマセヌガ、私ノ想像スル所ニ依レバ二百五六十萬圓ニナルダケノコトデア
  ラウト思ヒマス、サウシマスルト是ハ大正七年度ノ歲入ノ不足額ダケヲ補フ
  コトニハナリマセウガ、大正八年度以後ニハドウナルコトカ、不足額ガ七年
  度ト八年度以後ト同額ノモノデアレバ、ソレダケノモノデ宜イト思ヒマスケ
  レドモ、大正七年度ハ二百四五十萬モ不足デアリマセウガ、八年度ニハ八百
  萬圓前後ノ不足デアラウト思ヒマス、ソレニ對シテ唯今ノ二百四五十萬圓ヲ
  八年度以後ニ於テモ補フトシテ見タ所ガ、尙ホ五六百萬圓ノ不足ガアル、ソレ
  ガ、一年デハナイ、大正八年カラ引續イテヤル、繼續ノ間ハ不足ニナル譯デ
  アル、之ヲ進ンデ御同意ニナッテアル以上ハ、其減額ニ對スル何等カ御考ガ
  ナケレバナラヌ、豫算委員會等デ說明ヲスルト云フ仰セデアリマスガ、是ハ
  私共望マシイノデアル、詳シイコトヲ御說明ヲ伺ヒタイノデアル、政府ノ御
  示シニナリマシタ所ノ〓算書、財政ノ將來ノ〓算書ト云フモノモ、今度ノ稅
  法ノ否決、竝衆議院ノ豫算ノ修正ニ基イテ改メタ所デ御示シヲ願ヒタイノデ、
  是ハ豫メ今日カラ御願ヒハ致シテ置キマスガ、極ク大體ノ大正八年度以後、
  年々六百萬圓前後ノ歲入不足ト云フモノニ對シテハ、政府ハ如何ニ考ヘテ居
  ルト云フコトハ、是ハ豫算委員會デナク此公開ノ席上ニ於テ御說明ニナッテ、
  國民ニ安心ヲ御與ヘニナル必要ガアルト思ヒマスカラ、其點ダケハ今一應御
  說明ヲ願ヒタイト思ヒマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=43

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• 044・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　唯今ノ御尋ネニ對シテハ、先刻申上ゲタカト思フ
  ノデアリマスルガ、或ハ言葉ガ足ラナカッタカモ知レヌノデアリマス、大正七
  年ニ於ケル缺陷ノコトニ付テハ若槻君モ御了解ニナッタヤウデアリマス、其
  以後ニ於テ四五百萬········五六百萬ト仰ッシヤイマシタガ、缺陷ガアルヤウデア
  ルガ、之ヲドウスルカト云フ御尋ネデアリマス、確カニ數字ヲ記憶シテ居リ
  マセヌガ、ソレハ約四百二十萬バカリノ不足ガアルヤウニ思フノデス、是ハ
  剩餘金デ以テ塡メテ行クト云フ計畫デ居ルノデアリマス、ソレデ詰リ收支ノ
  釣合ヲ取ッテ居ル次第デゴザイマス、大體ハサウ云フ數字ニナッテ居ル、ソレ
  ガドウ云フヤウナ、年々ノ度合ガドウナッテ居ルト云フヤウナ事柄ハ、是ハ
  寧ロ委員會ノ方ガ能ク事情ヲ盡シテ宜シイカト私ハ思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=44

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• 045・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　唯今仰セニナル剩餘金ト云フノハ、旣ニ生ジテ居ル剩餘金
  デアリマスカ、或ハ將來生ズルカモ知レヌト云フ、想像ニ依ル所ノ剰餘金デ
  アリマスカ、是ダケヲ伺ヒマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=45

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• 046・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　旣ニ生ジテ居ル所ノ剩餘金デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=46

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• 047・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　石黑男爵ニ伺ヒマスルガ、國務大臣ノ答辯ニ依ッテ
  尙ホ何カ質問デモアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=47

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• 048・石黒忠悳

  ○男爵石黑忠悳君　唯今高木男爵ニ御答辯ニナリマシタコトデ伺ヒタイコト
  ガゴザイマス、其外ニモ大臣ニ質問ガゴザイマスルガ、今日ハ時刻ガ遲レテ
  居リマスデ、本員ハ豫算委員長ニ請求ヲ致シテ質問ヲ致スコトニシテ、今日
  ハ是デ止メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=48

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• 049・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　私ハ先ホド高木男爵ヨリ內務大臣ニ對シマシテ質問サレ
  タ、其點ニ付テ第一ニ御答辯ガゴザイマシタガ、ソレヲ一應確カメタイト考
  ヘマス、高木男爵ハ我國ニ於ケル歐風家屋ト死亡ノ關係ニ付テ御心配ニナツ
  タヤウニ思ヒマス、ソレデ學校ノ設備ノミナラズ總テノ歐風ノ建築ガ、餘ホ
  ド非常ニ影響ガアリハシナイカ、ソレニ對シテ內務大臣ハ御同感デアルト云
  フ風ニ伺ヒマシタガ、若シ私ノ聞違ヒデナケレバ內務大臣ニ於キマシテハ
  我國ノ左樣ナ健康狀態、或ハ死亡增加等ハ餘ホド歐風家屋ニ原因スルモノデ
  アルト云フコトヲ御確カメニナッタノデアリマスカ、其邊ヲ念ノ爲メ伺ヒタイ
  ノデアリマス
  〔國務大臣男爵後藤新平君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=49

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• 050・後藤新平

  ○國務大臣(男爵後藤新平君)　唯今柳澤伯爵ヨリノ御尋ハ高木男爵ノ御間ニ
  對シマシテ御答ヘシマシタコトカラシテ、高木男爵ノ意見ニ同意ヲシ、且ツ
  之ヲ確カメタノデアッタカ、斯ウ云フコトノ御尋デ、一部ハ高木男爵ト感ヲ同
  ジウシテ居ルノデアリマス、併ナガラ之ヲ以テ悉ク之ヲ確カメルト云フコト
  ノ責任ハ有タヌノデアリマス、高木男爵ノ述ベラレル所ト感ヲ同ジウシテ居
  ル所ガアルト云フコトヲ申述ベタノデアリマス、而シテ之ヲ以テ原因結果ノ
  關係ヲ講究シテ、之ヲ確カメルト云フコトヲ致スト云フ譯デハナイ、斯樣ニ
  御承知ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=50

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• 051・淺田徳則

  ○淺田德則君　唯今議題トナッテ居リマスル日程ノ第二ヨリ第六、卽チ豫算
  關係ノ諸案デアリマス、其審査期限ヲ定メマスルコトハ三月五日マデト致シ
  タイト考ヘマス、ドウカ諸君ノ御贊成ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=51

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• 052・前田利定

  ○子爵前田利定君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=52

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• 053・青木信光

  ○子爵靑木信光君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=53

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• 054・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　淺田德則君ノ審査期限ニ關スル動議ニ御異議ゴザ
  イマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 055・徳川家達

  ○議長(公爵德川家逹君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=55

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• 056・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第七、酒造稅法中改正法律案、第八、酒
  精及酒精含有飮料稅法中改正法律案、第九、麥酒稅法中改正法律案、第十、
  所得稅法中改正法律案、第十一、戰時利得稅法案、政府提出、衆議院送付、
  第一讀會、諸君ニ於テ御異議ガナケレバ、第七ヨリ第十一マデノ議案ヲ束ネ
  テ問題ニ供シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=56

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• 057・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　ソレカラ御諮リヲ致シタイノデアリマスガ、本日
  ハ通牒文ノ朗讀ハ總テ省略ヲ致シタイト思ヒマス、御異議ゴザイマセスカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 058・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  〔左ノ送付文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之
  ニ做フ〕
  酒造稅法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  大正七年二月七日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  小字ハ衆議院ノ修正、
  -ハ同削除ノ符號ナリ
  酒造稅法中改正法律案
  酒造稅法中左ノ通改正ス
  第一條ノ六中「稗」ノ下ニ「、玉蜀黍、馬鈴薯」ヲ加フ
  第四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  酒類ヲ製造スル者ニハ其ノ造石數ニ應シ左ノ割合ヲ以テ造石稅ヲ課ス
  濁酒
  第一種酒精分二十三度以下ノ酒類一石ニ付二十三圓
  以下ノ〓酒、白酒及酒精分三十度以下ノ味淋、燒酎
  第二種酒精分二十三度ヲ超エ四十五度ヲ超エサル燒酎
  二十三圓
  一石ニ付酒精分二十三度以上一度
  ヲ增ス每ニ八十錢ヲ前號ノ金額ニ
  加ヘタル金額
  三十五度以下ノ燒酎一石ニ付二十九圓
  第三種酒精分二十三度ヲ超ユル〓酒、濁酒、白酒、味淋及酒精分四十五
  度ヲ超ユル燒酎
  一石ニ付酒精分一度每ニ一圓
  第四種酒精分四十度以下ノ燒酎一石ニ付三十五圓
  第五種酒精分四十五度以下ノ焼酎一石ニ付四十一圓
  第六種酒精分二十度ヲ超ユル濁酒、酒精分二十三度ヲ超ユル〓酒、白酒、酒精分三十度ヲ超
  ユル味淋及酒精分四十五度ヲ超ユル燒酎一石ニ付酒精分一度每ニ一圓
  第五條中「百石」ヲ「三百石」ニ、「五十石」ヲ「百石」ニ、「五石」ヲ「十石」ニ、「第
  「濁酒ニ在リテハ一石ニ付二十圓、〓酒又ハ
  燒酎ニ在リテハ一石ニ付二十三圓ノ割合」
  四條第一項ノ稅率」ヲ「一石ニ付二十三圓ノ割合」ニ改ム
  第八條第二項但書ヲ左ノ如ク改ム
  但シ命令ノ定ムル所ニ依リ〓酒ハ査定石數百分ノ五以內ノ滓引減量及貯
  藏減量ヲ、味淋ハ査定石數百分ノ二以內ノ滓引減量ヲ控除スルコトヲ得
  第三十三條中「處罰又ハ處分セラレタル者」ヲ「處罰若ハ處分セラレタル者
  又ハ三年以上引續キ酒類ヲ製造セサル者」ニ改ム
  附則
  本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  酒類製造ノ免許ヲ受ケ本法施行ノ際現ニ酒類製造者タルモノニ限リ第五條
  ノ規定ノ適用ニ付テハ當分ノ内仍從前ノ例ニ依ル
  酒類製造ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ本法施行前ヨリ引續キ酒類ヲ製造セサ
  ルモノニ付テハ第三十三條第一項ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月七日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
  酒精及酒精含有飮料稅法中左ノ通改正ス
  第二條酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料ヲ製造スルトキハ一石ニ付原容量百
  分中純酒精ノ容量一箇每ニ一圓ノ割合ヲ以テ其ノ石數ニ應シテ造石稅ヲ
  課ス但シ一石ニ付二十四圓ノ割合ヲ下ルコトヲ得ス
  第五條ノ二中「金二十一圓」ヲ「二十四圓」ニ改ム
  第二十三條ノ二中「處罰又ハ處分セラレタル者」ヲ「處罰若ハ處分セラレタ
  ル者又ハ三年以上引續キ酒精若ハ酒精ヲ含有スル飮料ヲ製造セサル者」ニ
  改ム
  附則
  本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料製造ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ本法施行前ヨ
  リ引續キ酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料ヲ製造セサルモノニ付テハ第二十三
  條ノ二第一項ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  麥酒稅法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月七日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  麥酒稅法中改正法律案
  麥酒稅法中左ノ通改正ス
  第三條中「金十圓」ヲ「十二圓」ニ改ム
  第十九條ノ二中「處罰又ハ處分セラレタル者」ヲ「處罰若ハ處分セラレタル
  者又ハ三年以上引續キ麥酒ヲ製造セサル者」ニ改ム
  附則
  本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  麥酒製造ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ本法施行前ヨリ引續キ麥酒ヲ製造セサ
  ルモノニ付テハ第十九條ノ二第一項ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  所得稅法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  大正七年二月七日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  所得稅法中改正法律案
  もう
  (-ハ削除ノ符號ナリ)
  所得稅法中左ノ通改正ス
  第三條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
  第一種法人ノ所得
  甲合名會社、合資會社所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅
  率ヲ適用ス
  五千圓以下ノ金額千分ノ四十五
  五千圓ヲ超ユル金額千分ノ五十五
  一萬圓ヲ超ユル金額千分ノ六十五
  一萬五千圓ヲ超ユル金額千分ノ七十五
  二萬圓ヲ超ユル金額千分ノ八十五
  三萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百
  五萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百十五
  七萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百三十
  十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百四十五
  二十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百六十
  三十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百七十五
  乙株式會社、株式合資會社、其ノ他ノ法人千分ノ七十五
  第二種此ノ法律施行地ニ於テ支拂ヲ爲ス公債ノ利子千分ノ二十、
  社債ノ利子千分ノ三十
  第三種前二種ニ屬セサル所得所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ
  各稅率ヲ適用ス
  千圓以下ノ金額千分ノ三十
  千圓ヲ超ユル金額千分ノ四十
  二千圓ヲ超ユル金額千分ノ五十五
  三千圓ヲ超ユル金額千分ノ七十
  五千圓ヲ超ユル金額千分ノ八十五
  七千圓ヲ超ユル金額千分ノ百五
  一萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百二十五
  一萬五千圓ヲ超ユル金額千分ノ百四十五
  二萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百七十
  三萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百九十五
  五萬圓ヲ超ユル金額千分ノ二百二十
  七萬圓ヲ超ユル金額千分ノ二百四十五
  十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ二百七十
  二十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ三百
  第四條ノ三中「山林伐採ノ所得」ヲ「山林伐採ノ所得、山林讓渡ニ因ル立竹木
  ノ所得又ハ立竹木ノミノ讓渡ニ因ル所得」ニバル
  第四條ノ五中「百圓」ヲ「百五十圓」ニ、「五十圓」ヲ「百圓」ニ改メ「五百圓以下
  ナルトキハ百五十圓ヲ」ヲ削ル
  第六條中「四百圓」ヲ「五百圓」ニ改ム
  第四十二條中「其ノ年十一月一日ヨリ十五日限」ヲ「其ノ年十一月一日ヨリ
  三十日限」ニ、「翌年一月一日ヨリ十五日限」ヲ「翌年一月一日ヨリ三十一日
  限」ニ、「翌年三月一日ヨリ十五日限」ヲ「翌年三月一日ヨリ三十一日限」ニ
  改ム
  第五十條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ第八條ノ申告ヲ爲シタル者ハ大正七年ニ於ケル沖繩縣ノ調査委員、
  補關員及調査委員選擧人ノ選擧ニ關シ第十四條及第十五條ノ規定ノ適用
  ニ付テハ前年所得稅ヲ納メタル者ト看做シ第二十四條ノ任期ハ大正七年
  ニ於テ選擧シタル沖繩縣ノ調査委員及補關員ニ限リ三年トス
  附則
  本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三種ノ所得ニ付テハ大正七
  年分所得稅ヨリ之ヲ適用ス
  戰時利得稅法案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  大正七年二月七日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  戰時利得稅法
  (小字ハ修正文、
  ハ同削除ノ符號ナリ
  第一條帝國內本法施行地ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本法ニ依
  リ戰時利得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
  第二條前條ニ該當セサル者本法施行地ニ資產又ハ營業ヲ有スルトキハ其
  ノ利得ニ付テノミ戰時利得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
  第三條戰時利得稅ハ左記各號ノ利得ニ付之ヲ賦課ス
  -所得稅法ニ依リ所得稅ヲ課スヘキ法人ノ利得
  二所得稅法ニ依リ所得稅ヲ課スヘキ第三種ノ所得中俸給、給料、手當、
  歲費、年金、恩給、退隱料ヲ除キタル個人ノ利得
  三船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業ニ關スル權利若ハ設備ノ賣却ニ因ル個人ノ
  利得
  前項第三號ノ船舶ニハ製造中ノ船舶ヲ含ム
  第四條戰時利得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
  -法人ノ利得利得金額百分ノ二十
  二個人ノ利得利得金額百分ノ十五
  第五條法人ノ戰時事業年度所得金額カ平時事業年度ノ平均所得金額ヲ超
  過スル場合ニ於テ其ノ超過額中平時事業年度ノ平均所得金額ノ百分ノ二
  十ヲ超過スル金額ヲ以テ法人ノ利得金額トス
  前項利得金額計算ノ場合ニ於テ左記各號ニ該當スルモノアルトキハ各其
  ノ定ムル所ニ依リ平時事業年度ノ平均所得金額ヲ計算ス
  -何レノ平時事業年度ニ於テモ所得金額ナキトキ又ハ平時事業年度ノ
  平均所得金額カ平時事業年度ノ平均資本金額ニ對シ年額百分ノ十未
  滿ナルトキハ平時事業年度ノ平均資本金額ニ對スル年額百分ノ十ノ
  割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ平時事業年度ノ平均所得金額トス
  二大正三年八月一日以後第一次ノ事業年度終了シタル法人ニ付テハ戰
  時事業年度ノ資本金額ニ對シ年額百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル
  金額ヲ平時事業年度ノ平均所得金額トス
  三戰時事業年度ノ資本金額カ平時事業年度ノ平均資本金額ニ對シ增減
  アル場合ニ於テハ平時事業年度ノ平均資本金額ニ對スル平均所得金
  額ノ割合ヲ以テ戰時事業年度ノ資本金額ニ付算出シタル金額ヲ平時
  事業年度ノ平均所得金額トス此ノ場合ニ於テ第一號ノ規定ノ適用ニ
  付テハ戰時事業年度ノ資本金額ヲ以テ平時事業年度ノ平均資本金額
  ト看做ス
  四平時事業年度ト戰時事業年度ト期間ニ相違アルトキハ戰時事業年度
  ノ月數ニ應シ月割ヲ以テ平時事業年度ノ所得金額ヲ計算ス
  資本金額ノ算定方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第六條個人ノ所得金額カ大正二年以前二年ノ平均所得金額ヲ超過スル場
  合ニ於テ其ノ超過額中大正二年以前二年ノ平均所得金額ノ百分ノ二十ヲ超
  過スル金額ヲ以テ第三條第一項第二號ノ利得金額トス但シ所得金額中相續
  財產ヨリ生スル所得アル場合ニ於テハ之ニ對スル大正二年以前二年中ノ
  被相續人ノ所得金額ヲ相續人ノ所得金額ト看做シ平均所得金額ヲ計算ス」
  前項利得金額計算ノ場合ニ於テ大正二年以前二年中所得稅法第四條ノ三
  第三號ノ所得アルトキハ之ヲ除算シ大正七年以後其ノ年分ノ所得中所得
  稅法第四條ノ三第三號ノ所得アルトキハ其ノ所得金額ニ付命令ノ定ムル
  所ニ依リ算定シタル金額ヲ前項ノ平均所得金額ニ加算ス
  第一項ノ場合ニ於テ大正二年以前二年ノ平均所得金額千圓未滿ナルトキ
  又ハ其ノ平均所得金額ナキトキハ所得金額ノ半額ヲ以テ利得金額トス
  利
  所得金額三千圓未滿ナルトキハ戰時利得稅ヲ課セス
  第七條船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業ニ關スル權利若ハ設備ノ賣却金額ヨリ命
  令ノ定ムル所ニ依リ算定シタル價額ヲ控除シタル金額ヲ以テ第三條第一
  項第三號ノ利得金額トス但シ其ノ利得金額カ第三條第一項第二號ノ利得ニ
  屬スルモノナルトキ又ハ利得金額三千圓未滿ナルトキハ此ノ限ニ在ラス」
  前項ノ利得金額ハ前年中ノ總額ニ依ル
  第八條所得稅法其ノ他ノ法令ニ依リ所得稅ヲ免除セラレタル所得ニ付テ
  ハ戰時利得稅ヲ課セス
  公共〓體又ハ慈善其ノ他ノ公益事業ニ對シ爲シタル贈與ノ價額ハ利得金
  額ヨリ之ヲ控除ス
  第九條第三條第一項第三號ノ利得ニ付納稅義務アル者又ハ第六條第一項
  但書ニ該當スル所得ヲ有スル者ハ每年四月中ニ其ノ利得又ハ所得ノ種類
  及金額ヲ政府ニ申告スヘシ
  納稅義務者前條第二項ノ贈與ヲ爲シタルトキハ每年四月中ニ其ノ金額ヲ
  政府ニ申告スヘシ
  第十條法人ノ利得金額ハ政府之ヲ調査決定シ個人ノ利得金額ハ所得稅法
  第十一條ノ所得調査委員會ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定ス
  第十一條利得金額ノ決定ニ對シ審査ノ請求アリタルトキハ所得稅法第三
  十七條ノ所得審査委員會ノ決議ニ依リ政府之ヲ決定ス
  第十二條利得金額ヲ隱蔽シテ通稅シタル者ハ其ノ連稅金高三倍ノ罰金又
  ハ科料ニ處ス但シ自首スル者ハ其ノ稅金ヲ追徴シ其ノ罪ヲ問ハス
  第十三條利得ノ調査又ハ審査ニ干與スル者其ノ調査又ハ審査ニ關スル事
  項ヲ他ニ漏洩シタルトキハ三十圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ規定ニ依リ處罰セラレタル者ハ其ノ職ヲ失フモノトス
  第十四條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條
  第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六
  十六條ノ例ヲ用ヰス
  第十五條所得稅法第九條第二項、第十條、第二十九條乃至第三十一條、
  第三十四條乃至第三十六條、第三十七條第四項第五項、第三十八條乃至
  第四十一條、第四十二條第一項第三項及第四十三條ノ一乃至第四十五條
  ノ規定ハ戰時利得稅ニ關シ之ヲ準用ス
  第十六條本法ニ於テ所得金額ト稱スルハ所得稅法ニ依リ政府ノ決定シタ
  ル所得金額ヲ謂フ
  本法ニ於テ平時事業年度ト稱スルハ大正三年七月三十一日以前二年內ニ
  終了シタル各事業年度ヲ謂ヒ戰時事業年度ト稱スルハ大正七年一月一日
  以後ニ於テ終了スル各事業年度ヲ謂フ
  附則
  本法ハ法人ニ付テハ大正七年一月一日ヲ含ム事業年度分ヨリ、個人ニ付テ
  ハ大正七年分ヨリ之ヲ適用ス
  本法ハ法人ニ付テハ講和條約調印ノ日ノ屬スル年ノ末日ヲ含ム事業年度分
  限リ、個人ニ付テハ其ノ年分限リ之ヲ廢止ス
  沖繩縣ニ於ケル法人ノ平時事業年度ノ所得金額及個人ノ大正二年以前二年
  ノ所得金額ハ當時ノ所得稅法ニ依リ算出シタル金額トス
  本法ハ小笠原島及伊豆七島ニ之ヲ施行セス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=58

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• 059・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　唯今議題トナッテ居リマスル日程第七、第八、第
  九、之ヲ先ヅ簡單ニ說明ヲ致シマス、今囘國防計畫ニ付キマシテ其財源ノ補
  充ト致シマシテ、酒ニ付キマシテハ大體一石ニ付キマシテ三圓增課イタスト
  云フコトニ致シマシタ、ソレカラ造石稅ノ外ニ酒精其他ノモノニ付キマシテ
  ハ約一割五分ノ程度ニ於テ增收ヲ圖ル、斯樣ニ致シマシタ、麥酒稅ニ付キマ
  シテハ一石十圓ノモノヲ十二圓ニ致ス、斯樣ニ致シマシタ、大體ノ所增率ハ
  左樣デアリマスルガ、多少整理イタシマシタ事柄ガアリマスルノデ、ソレハ
  御承知ノ如ク從來酒ノ滓引減量ト云フモノヲ認メテ居ッタノデアリマスガ、貯
  藏減量ト云フモノハ認メテ居リマセナンダノデ、ソレ故ニ今囘ハ貯藏減量ト
  云フモノヲ認メルコトニ致シマシタ、滓引減量ノ百分ノ二ト合シテ百分ノ五
  ト云フモノヲ差引イテヤルト斯樣ニ致シマシタノガ大體ノ改正ノ趣旨デアリ
  やさ、之ニ付キマシテ衆議院ニ於キマシテ段々討論ノ結果ト致シマシテ、政
  府ガ濁酒ニ付テ多少申上ゲテ居ルト云フコトハ、下層民ノ慰安ノ飮料ニ對シ
  テ如何ナモノデアラウカ、是ハ舊來ノ通リ差置イタガ宜イデハナイカト云フ
  論ガ出マシタ、ソレカラモウ一ツハ燒附ノ類デアリマスガ、之ニ對シテ政府
  ノ提案ハ「アルコホール」含有分量ガ强度デアリマスル爲ニ多少率ガ多クナツ
  テ居リマシタノデアリマス、ソレヲデス、矢張リ是モ下層ニ於テ使用スル所
  ノモノモ多イノデアルカラシテ、一般ニ一割五分ト云フヤウナ率ニ致シタラ
  宜カラウ、斯ウ云フヤウナ議論ガ出マシタノデアリマス、段々審議ノ結果ト
  シテ衆議院ニ於テ是等ノ論ノアルコトハ政府ニ於テモ亦尤モト考ヘマシテ、
  此點ニ付テハ同意ヲ致シマシタ、之ニ依リマシテ政府ガ當初計畫イタシテ居
  リマシタ所ノ增收收入カラ申シマスルト約四五十萬圓ノトコロ平年ニ於テ減
  ルコトニナル計算ニナリマス、大體酒ノコトハ左樣ナコトニナリマス、次ヘ
  所得稅ノ改正デアリマスルガ、所得稅法ノ改正ハ法人、個人トモニ大體現今
  ノ率ノ二割ノ程度ニ於テ增徵ヲシタイト云フノガ、是ガ根本ノ趣意デアリマ
  ス、左樣イタシマシテ社債ノ利子ヲ千分ノ十引上ゲルト云フコトニ致シマシ
  タ、尙ホ所得稅ニ付キマシテハ、是モ多少稅ノ整理ノ意味ヲ以チマシテ、最
  低ノ限度ガ御承知ノ如ク四百圓ニナッテ居リマスノヲ五百圓トシマシテ、五
  百圓マデハ詰リ免稅ト、斯樣ニ致シマシタ、尙ホ千圓以下ノ所得者ニ對シテ
  ノ控除金ニ付テモ多少ノ手心ヲ致シマシタ、ソレカラモウ一ツ變ハッテ居リ
  マスル事柄ハ法人竝ニ個人ノ最高累進率ノ既定ノモノノ上ニデス、尙ホ一段
  ヲ設ケタト云フ事柄デアリマス、是ガ此改正ノ趣旨ナノデアリマス、之ニ付
  キマシテ大體衆議院ノ同意ヲ得タノデアリマスガ、唯山林伐採ノ所得ト云フ
  コトニ付キマシテデス、政府ハ御承知ノ通リ法律ノ缺陷ヲ補フ爲ニ他ノ勅令
  ヲ以チマシテデス、規定イタシテ居ル所ノモノガアルノデアリマスガ、其勅
  令ガ或ハ法律ト牴觸ヲシハシナイカト云フ意味ガアルノデアリマスル、ソコ
  デ寧ロ此勅令ニ規定シテアル所ノモノヲ此法律ノ中ニ書イタ方ガ整理ノ上ニ
  於テ宜イト云フ意味ヲ以チマシテ之ヲ所得稅法ニ規定ヲ致シマシタ所ガ、
  衆議院ニ於キマシテハ從來ノ通リデモ宜カラウト、斯ウ云フ大體ノコトデア
  リマスルノデ、從來ノ通リニ修正ニナリマシタ、此事ニ付キマシテモ政府ハ
  別ニ之ニ對シテ異議ヲ唱ヘル程ノコトデモアリマセメカラ、其儘ニ致シテ置
  キマシタ、大體所得稅法ノ改正ハ左樣ナコトデアリマス、戰時利得稅ニ付キ
  マシテハ、法人ニ付キマシテモ、個人ニ付キマシテモ、大體ノ立テ方ガ同ジ
  デアリマスルガ、卽チ戰前ノ二年ノ所得ノ平均ヲ取リマシテ、戰時ノ所得ト、
  其差ヲ見マシテ、サウ致シマシテ尙ホ此平年、卽チ平年ノ事業、法人デ申セ
  バ事業年度ニ二割ヲ增シテ居ルト云フヤウナモノハ是ハ當リ前ノ增加トシテ
  徵ラナイ、其以上ニ付テ增シテ居ル利得ニ付テ法人ニ付テハ二割、個人ニ付
  テハ一割五分ト云フモノヲ徵ル、是ガ大體ノ趣旨ナンデアリマシテ、此法律ハ
  戰後ニハ詰リ戰ノ續イテ居ル間之ヲ行フ、斯ウ云フ大體ノ趣旨ニナッテ居
  リマスノデ、之ニ付キマシテ、尙ホ衆議院ニ於テ一ノ修正ガアリマシタ、ソ
  レハ個人ノ所得ノコトデアリマスガ、政府ノ當初提出イタシマシタ所ノ案ニ
  ハ個人ノ所得三千圓以下ノモノハ稅ヲ徵ラナイ、斯ウ云フコトニ致シテ居リ
  マシタ、所ガ衆議院ノ方ノ論ト致シマシテ三千圓デハ········所得三千圓デハ少
  シ酷デハナイカ、寧ロ利得三千圓トスル方ガ妥當デハアルマイカ、斯ウ云フ
  論ガアリマシタノデ、政府モ是等ノ論ヲ參酌イタシマシテ其修正ニ同意ヲ致
  シマシタ、此同意ノ結果ト致シマシテ戰時利得稅ニ於キマシテ政府ノ推算イ
  タシテ居ルモノヨリ約五十萬圓バカリハ減少ニナル積リデアリマス、大體左
  樣ナ筋合ノモノデゴザイマスルガ、何分御審議ノ上ニ御協贊ヲ願ヒタウゴザ
  イマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=59

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• 060・石黒忠悳

  ○男爵石黑忠悳君　私ハチヨット伺ヒタウゴザイマスガ、此酒稅ニ付テデゴザ
  イマスガ、政府ハ此日本ノ米ヲ以テ製シマス酒、ソレカラ麥酒若クハ葡萄酒
  ト云フヤウナモノノ、人間ノ體ニ及ボス害ノ關係、若クハ日本人ノ常食ト致
  シマス米ヲ此釀造ニ向ッテ費スト云フコトヲ省イテ、サウシテカラニ常食ヲ
  足スト云フヤウナ趣意ヲ以チマシテ、或ハ弊習ヲ抑制スル、サウシテ米デ拵
  ヘナイ酒ヲ奬メルト云フヤウナ御考ガアリマスカ、アリマセヌカ、伺ッテ見テ
  置キタウゴザイマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=60

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• 061・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　唯今ノ石黑男爵ノ御尋ハ御尤ノ御尋ノヤウデアリ
  マスガ、今日ト致シマシテハ御承知ノ如クニ酒造稅ナルモノハ財政ノ上ニ於
  テ重モナル收入ヲナシテ居リマスルノデ、之ヲ詰リ石黑男爵ノ御尋ノヤウナ
  趣旨ニ致シマスト云フコトニナレバ大ナル財源ヲ失ッテ、種々政府ノ企畫シ
  テ居ル所ノ事柄ハ出來スノデアリマシテ、將來ニ於テハ是等ノ點ニ付テハ相
  當考慮ヲ致サヌナラヌト信ジマスルガ、今日ノ所ニ於テ唯今御尋ノヤウナ事
  柄ハ政府ハ考慮イタシテ居リマセヌ實ニ已ムヲ得ザル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=61

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• 062・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　大藏大臣ニ質問ヲ致シマス、此酒稅ノコトニ付キマシテ稅率
  ヲ增シマス結果、今大藏大臣ガ言明セラレタ如ク收入ノ增加ト云フモノヲ來
  スト云フコトハ無論ノコトデアル、併ナガラ此稅率ヲ高メタ爲ニ果シテ期待
  スルガ如キ收入ノ增加ヲ得ルモノデアルカト云フコトニ付テハ定メテ種々御
  調ベガアルコトト思ヒマス、從來ノ經驗ニ依ッテ先ヅ稅率ヲ高メタトキハ大抵
  收入ヲ增スコトニナッテ居ル、併ナガラ近來ノ成行ヲ見マスト云フト、酒ノ
  消費ト云フモノハ餘リ殖エナイ、人口增加ニ比シテ酒ノ消費ノ殖エ方ト云フ
  モノハ比較的少イ、是ハ今石黑男爵ノ御心配ニナリマシタ點カラ申シマスレ
  バ、誠ニ結構ナコトデアル、併ナガラ當面ノ目的ハ收入ノ增加ト云フコトガ
  財政上アルノデアリマス、果シテ其通リノ目的ヲ達シ得ルコトガ出來ルト云
  フ根據ノアル所ヲ伺ヒタイ、今一ツハ矢張リ之ト關聯イタシマシテ、此場合
  ハ大藏大臣ニ御伺ヒ致シマシタガ今ノ酒稅所得稅及戰時利得稅ノ外ノ色ミノ
  增廢減稅案ト云フモノガ衆議院ノ修正ニ依ッテ御撤囘ニナリマシタ、其理由
  ハ一ト通リ伺ヒマシタガ、ソレハ政府ガ豫ネテ言明スル所ハ、卽チ社會政策
  及稅制整理ト云フ最モ重大ナル目的ヲ達スルガ爲ノ手段デアリマシテ、卽チ
  政府施政ノ方針ト申シテ宜シイ所ノ最モ大切ナ所デアリマスガ、是ハ衆議院
  ノ修正ニ依ッテ撤囘セラレタ、併ナガラ衆議院ガ之ヲ否認シタ譯デハナイ、
  是認スルケレドモ、本年ハ之ヲ延期スルト云フコトニナリマシタ、其延期ヲ
  スル理由ハ如何ナル理山デアルカ、勿卒ノ際ニ斯ノ如キ大ナル目的ヲ達スベ
  キ仕事ヲ致シテハ過ガアルカモ知レヌカラ、之ヲ緩〓調査ノ上デ以テ行フト
  云フコトデアリマスカ、其邊ノコトヲ伺ヒタイ、ソレト同時ニ伺ヒタイノハ
  成ルホド通行稅、又ハ其他ノ稅ヲ廢スルト云フコトハ至極宜シイト同時ニ
  又頗ル煩瑣ナル所ノ稅制ヲ設ケルト云フコトデアリマスガ、元來稅制整理ト
  云フモノハ成ルベク稅ノ種類ヲ餘リ煩瑣ニ亙ラナイヤウニ、單純ナラシムル
  ト云フコトガ整理ノ目的デナケレバナラヌ、而シテ能ク是等ノ徵稅ノ目的ヲ
  達シテ煩瑣ニシテ人民ヲ苦シムルト云フコトハ政府ノ稅制ノ整理ノ上カラシ
  テ之ヲ除カナケレバナラヌト云フコトニ信ジテ居リマスケレドモ、大藏大臣
  ノ御計畫ニナッタ所ハソレト稍〓反シテ居ルヤウニ考ヘル、併ナガラ今撤囘セ
  ラレタ以上ハ進ンデ强ヒテ其事ヲ伺フノデハアリマセヌガ、果シテ來年ニ至ッ
  テ、矢張リ此目的デ同ジヤウナ性質ノ增廢稅ヲ行ッテ稅制ノ整理、社會政策ナ
  ルモノヲ實行セラルヽ御趣意デアルヤ否ヤト云フコトヲ伺ッテ置キタイ、此
  二點ニ付テハ願ハクハ御答辯アラムコトヲ希望イタシマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=62

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• 063・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　鎌田君ニ御答イタシマス、第一ニ酒ノ稅ヲ增スト
  云フヤウナコトデアレバ、其消費ヲ減ジテ隨ッテ歲入ヲ減ラスト云フヤウナ
  事柄ガアルデアラウ、此事柄ニ付テ政府ハドウ考ヘテ居ルカト云フヤウナ御
  問ノヤウニ伺ヒマシタ、大體ニ於キマシテハ鎌田君ノ仰セラルヽ通リデアリ
  尺マ、ソレ故ニ今囘政府ガ酒ノ稅ヲ徵リマスニ付キマシテハ餘ホド用意周到
  ニ致シテ居リマスルノデ、ト申シマスルノハ、酒ノ消費ハ昨年ノ如キハ約四
  百六七十萬石ニ上ッテ居ルノデアリマス、ケレドモガ政府ノ立テテ居リマス卽
  チ收入ノ基礎トシテ押ヘテ居リマス所ノモノハ四百萬少シバカリノモノヲ押
  ヘテ居リマスノデ、尙ホ之ト同時ニ稅ヲ上ゲルニ付テモ餘リ之ヲ餘計上ゲル
  ト消費減ト云フノガ立チマスカラシテ、先ヅ從來ノ經驗ニ依リマシテ、三圓
  位ナラバサウエライ消費減ハアルマイト云フノデ之ヲ三圓ニ致シタノミナラ
  ズ。大正十二年ニ至リマスル所ノ財政計畫ヲ立テル上ニ付テモ、凡ソ消費減
  ハ從來ノ經驗ニ依リマスル所ノ數字ヲ取リマシテ、ソレヲ皆落シテゴザイマ
  ス、ソレデ唯今鎌田君ノ御心配ニナッテ居ルヤウナ事柄ハ、今囘ノ計畫ト致
  シマシテハ斷ジテナイト信ジテ居リマス、次ニ政府ガ衆議院ニ提出イタシマ
  シタ增廢減稅ノコト、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、稅制整理ノコトニ付テノ
  御尋ネデゴザイマス、政府ガ稅制整理ノコトヲ出シマシタコトハ先刻申上
  ゲタ中ニモ述ベマシタ如クニ、今囘ノ目的ハ何デアルカト言ヘバ、國防充實
  ノ爲ニ增收ヲ圖ルト云フコトガ卽チ目的デアルノデアリマス、此國防ノ財源
  トシテ一方ニ於テハ減債基金ヲ流用シ、一方ニ於テハ增收計畫ヲ立テタ、斯
  ウ云フコトデアリマス、其增收ノ計畫ト云フモノヲ立テマシタ中ニ、增稅ノ
  收入ト云フモノヲ一ツ置キマシタノデアリマス、其增稅ノ收入ト申シマスル
  モノハ先刻中上ゲル通リ增收計畫トシテハ卽チ重モニ此所得稅竝ニ酒ト云
  フモノニ付テ取ル積リデアリマシタ、併ナガラ政府ノ當初考へマシタ所ハ玆
  ニ增收計畫ト云フヤウナコトヲヤルナラバ、卽チ租稅ヲ增スト云フヤウナコ
  トヲヤリマスナラバ、一面ニ於テハ矢張リ此稅制整理ト云フ事柄モ出來得ル
  ダケ致スコトガ當然デハナカラウカ、斯ウ考ヘタノデアリマス、又殊ニ此時
  局ニ於テ是等ノ稅ノ整理ヲ幾分ナリトモ出來得ルモノナラバシタラバドウカ
  ト云フコトヲ政府ハ考ヘタ、併ナガラ之ヲ衆議院ニ出シテ見マシテ、段々討
  論審議ノ結果、衆議院ノ論ハ此時局デアルカラシテ左樣ナモノハ暫ク延バシ
  タラ宜イヂヤナイカ、時局ガ濟ンダ後ニ左樣ナモノヲヤッタラ宜イヂヤナイ
  カ、斯ウ云フ論デアリマス、稅制整理ヲ致スト云フコトニ付テハ、鎌田君ノ
  唯今申サレタル如クニ、何レノ部面ニ於テモ反對ハナイノデアリマス、唯政
  府ガ此時局デアルカラ斯樣ナ增收ヲヤルナラバ加味シテヤッタラ宜イヂヤナ
  イカト云フコトヲ言フニ對シテ、斯樣ナ時局デアルカラシテ暫ク延シテ吳レ
  タラ宜イチヤナイカ、斯ウ云フ詰リ論ノ別レ目デアルノデアリマス、左樣ナ
  論ニ付テハ政府ト致シマシテモ、段々以前カラ攷究モ致シテ居リマスノデ、
  既ニ衆議院ノ多數ガ此稅制整理ノ主義ヲ認メテ、其實行ヲ時局ニ鑑ミテ延期
  スルコトガ得策ナリト、斯ウ云フコトデアルナラバ政府ト致シテモ、之ヲ固
  執シテ、何所迄モヤッテ行カナケレバナラヌト云フモノデモナカラウ、是ハ
  他日ノ機會ニ於テ相當ニヤッタラ宜カラウト云フ考ヲ以チマシテ、同意ヲ詰リ
  致シタ次第デゴザイマス、此廢減稅、卽チ稅制整理ノコトニ付テノ政府ノ意思
  竝ニ衆議院ト政府トノ關係ニ於ケル事情ハ右申シタ通リデアリマス、サウ致
  シマシテ次ノ御尋ネハ鎌田君ノ御意見ニ依リマスルト、今囘政府ガ稅制整理
  トシテ出シテ居ルモノノ中デ、或ハ通行稅ヲ廢シ、或ハ石油消費稅ヲ廢ス、
  斯ノ如キモノハ稍〓意味アリト認メル、併ナガラ其他ノ稅ニ付テハ如何ニモ
  煩瑣デアッテ、斯ノ如キモノハ稅制ノ整理ニ副ハヌヤウデアル、ト云フノ
  ガ詰リ鎌田君ノ御見解ノヤウデアルノデアリマス、是ハ尙ホ詳細ニ御議論ヲ
  伺ッテ見ナケレバ私ハ能ク了解イタシマセヌガ、兎ニ角稅制整理ト云フ事柄
  ハ、尤モ此大小ガアリマス、或ハ厚薄モアリマセウケレドモガ、何ガ一體稅
  制整理ト云フコトデアルカト申セバ、負擔ノ均衡ト云フコトガ卽チ一番重イ
  事柄デ、稅ヲ賦課スルト云フコトニ付テハ私共ガ常〓〓ヘラレテ居ル所ニ
  依ッテモ、公平ニヤッテ行カナケレバナラヌト云フコトガ是ガ稅ノ根本原則デ
  アル、サウ云フ以上ハ例ヘバ政府ガ茲ニ砂糖消費稅ト云フモノヲ取ッテ居ル、
  茲ニ砂糖ト同ジ效能ヲ爲シテ、而カモ其範圍ヲ日日侵蝕シツヽアルヤウナ品
  物ガアッタナラバ、之ニ對シテ稅ヲ取ルト云フコトガ卽チ稅ノ均衡ト申ス上
  カラ言ヘバ相當ノコトデアリハシナイカ、斯ウ考ヘラレル、又織物稅ト云フ
  モノヲ取ッテ居ル、サウ致シマスレバ織物ト同ジヤウニ使用サレル代物ニ付
  テハ莫大小ノ如キハ相當稅ヲ課ケルト云フコトガ、是亦當然デハナカラウカ
  ト云フ詰リ事柄デアリマスノデ、斯ノ如キモノハ整理ト云フ意味ノ上ニ於キ
  マシテハ、極メテ小サイト云フコトニ言ヒ得ルカモ知レマセヌガ、兎ニ角
  稅ノ整理ト云フコトハ、斯樣ナ種類ノモノガ集ヲタモノガ稅ノ整理デアラウ、
  斯ウ思フノデアリマスノデ、將來政府ガ稅ノ整理ヲ致スヤウナコトニ付テハ、
  尙ホ鎌田君ノ御希望ノヤウナル大ナル整理ヲ致スベキ所ノモノガアレバ是
  モ出來得ルダケ整理ヲ努メマスガ、右ノ如キヤウナモノモ矢張リ其整理ヲス
  ルト云フ以上ハ、整理ヲシナケレバナラヌノデハナイカト云フ考ヲ今日ハ有ッ
  テ居リマス、大體御答イタシテ置キマス

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• 064・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　唯〓大藏大臣ノ御趣意ノアル所ハ拜聽イタシマシタ、此酒稅
  ノ增率ニ付テハマダ少シク疑ガアリマスガ、唯今ノ御答辯デハ私ノ疑惑ガ氷
  解イタシマセヌ、ト申シマスノハ從來ノ經驗ニ依ッテ今囘ノ如ク增率ヲ致シタ
  ナラバ、唯〓ノ御說明ノ趣意デアリマスルト、先ヅ增稅當年ノ消費減少トカ、
  或ハ其翌年ノ一部ノ消費減少ト云フコトハ既ニ見込ンデ居ル、是ハ永久ニ收
  入ノ增加ヲ來タスモノデアル、斯ウ云フコトニ伺ヒマシタ、無論其增稅ヲ致
  ストキハ其考デ致スノデアリマス、併ナガラ近年ノ形勢ヲ見マスルト、隨分
  此酒ガ高イ、酒ガ高イカラ飮マヌト云フコトハ誠ニ國民ノ保健上結構ナコ
  トデアリマスケレドモ、收稅徵稅ノ上カラ言フト餘リ喜バシクナイ、今日酒
  ノ消費ガ人口增加ニ比シテ、酒ノ消費ガ相變ハラズ四五百萬石、舊幕府時代
  モ四百萬石ノ酒ヲ消費シテ居ル、今日ハ調査ガ嚴密ニナッテ人口ガ當時ノ倍
  ニナッタニモ拘ラズ、矢張リ四百萬石ノ程度ニ止ッテ居ルト云フコトハ種々ノ
  原因ガアリマセウ、種々ノ原因ガアリマスガ、又一方カラ申セバ道德上、保
  健上結構ナコトデアルガ、矢張リ此稅ノ非常ニ高イト云フコトガ、此消費ノ
  增加シナイ原因ニナッテ居ルト私ハ考ヘマス、其證據ニハ下層社會ノ者ノ非
  常ニ酒ヲ好ム者ノ狀態ヲ見マシテモ、元ト一合飮ンダ者ガ一合飮ンデモ迚モ
  今ノ酒ヲ········唯〓酒ヲ飮ンデ十分ニ醉ヲ買フコトガ出來ナイノデ、此「アンベ
  ラ」カラ榨ッタ「ブランデー」ノヤウナ非常ニ猛烈ナモノニ水ヲ混ゼテ飮ムヤウ
  ナ習慣ガ段々起ッテ來テ居ル、是非醉ヲ買ハナケレバナラヌガ、到底十分ナル
  酒ヲ飮ンデ醉フダケノ錢ハ拂ヘナイト云フヤウナ譯デ、斯ウ云フヤウナ譯デ
  酒ノ消費ト云フモノハ減ル、シテ見レバ增稅ノ爲ニ、增稅當年ノ減收ト云フ
  モノガ長ク減收トナル、是ガモウ程度ヲ超エテ居ル、其上ニ增收スルト尙ホ徵
  稅ガ困難ニナル、或ハ極端ニ申スト減稅ヲシタ方ガ政府ノ收入ガ殖エハシナ
  イカト私ハ反對ニ考ヘテ居ル位デアル、併ナガラ今大藏大臣ノ御說明ハサウ
  云フ根據ノ上ニ增率ニナッタト云フナラバ御趣意ハ分リマシタ、ソレト稅制整
  理是ハ負擔ノ均衡ト···ハ無論負擔ノ均衡ハ稅制整理卽チ稅法ノ上ニ最モ
  大切ナコトデ、十分ニ權衡ヲ得、公平ニナラナケレバナラヌ、併ナガラ徵收
  ノ便宜ト云フコトモ考ヘナケレバ、徒ラニ徵稅費ト云フモノガ殖エルバカリ
  ニナッテモ實入リガ少イ、現ニ今若槻君ニ御答辯ニナリマシタ通リ、今年度一
  年度ノ缺陷ハ徵收費ガ浮イテ來タカラ一部分ハ埋合セルコトガ出來ル、其位
  ニ徵稅費ガ要ルノデアル、稅ヲ取ラナイ代リニ徵稅費ガ減ッテ來ル、ソレデ缺
  陷ノ一部ヲ補ハレル、サウシテ見ルト稅モ取レルガ、一方ニ徵稅費ガ掛カル、
  何故ニ斯ノ如キ多額ナ徵稅費ヲ要スルカト云ヘバ、卽チ煩瑣ナル稅ヲ取ルト
  云フコトハ卽チ一項目ニ付テ收入ノ少イ三十萬トカ四十萬トカ云フ稅マデ取
  ルト云フコトダカラ、徴稅費ガ多ク要ルト云フコトニナル、殊ニ間接稅ニ於テ
  ハ必シモ物アレバ必ズ稅ヲ課スルト云フ主義ニ依ラズトモ、或稅ニ轉嫁スル
  所ノ稅法ヲ旨ク考ヘテ、或物ニ成ルベク單純ニ稅ヲ課シタナラバ、一般ノ者ガ
  ソレヲ負擔スルト云フコトニナッテ、例ヘバ砂糖ニ稅ヲ課シマシテモ、般
  ノ人民ガ富ノ程度ニ從ッテ砂糖ノ消費額ニ等差ガアルモノナラバ、ソレニ依ツ
  テ消費稅ヲ拂ッテモ、砂糖ニ課ケタカラ必ズ密ニモ課ケナケレバナラヌ、飴
  ニモ課ケナケレバナラヌ、國民一體ニ課ケル、木綿ニ課ケル以上ハ必ズ「メ
  リヤス」ニモ課ケナケレバナラヌト云フコトハ私ハナイヤウニ思フ、サウシ
  テ見レバ成ルベク稅目ヲ簡單ニシテ而シテ便宜ニ徵收スル、費ヤス所少クシ
  ラ得ル所ノ多イト云フ稅種ヲ撰擇セラルヽコトガ、私ハ稅制整理ノ本旨ダラ
  ウト思フ、是マデ又外國ノ例ナドヲ見マスト云フト、隨分煩雜ナ稅ヲ課ケル、
  何デモ物アレバ必ズ稅アリト云フヤウナノハ、國民トシテハ實ニ是ハ堪ヘラ
  レナイノデアル、又手數ヲ要スル、政府ニ於テモ手數ヲ要シ費用ヲ要シ、之
  ヲ負擔スル人民ニ於テモ非常ニ煩雜ナル手數ヲ要シ、又時間ヲ費ヤスコトガ
  多イノデアリマスカラ、總テノ物ヲ成ルベク物品ノ上カラ負擔ノ均衡ヲ圖ル
  ト云フ稅制整理ハ、私ハ稅制整理ニ非ズシテ、益、稅制ヲ紛糾セシムルト云
  フコトニナルダラウト常ニ考ヘテ居ル、然ラバ今囘ノ增稅案ガ失敗ニ終ッタ
  コソ幸ヒデアル、將來ニ於テ稅制ヲ整理スルト云フニハ、成ルベク稅種ヲ簡
  單ニシテ而シテ一般ニ負擔ノ均衡ヲ圖ルト云フ、而シテ徵稅ノ便宜ヲ圖ラレ
  ルト云フ方針ヲ御取リニナラナイト云フト、私ノ考デハ非常ニ害多クシテ利
  ノ少イコトカト考ヘル、是ハ私ノ希望デアリマス、希望ハ是マデ餘リ成立シ
  マセヌヤウデアリマスケレドモ、併ナガラ何レ來年ナリ時局ノ關係上此事ハ
  御實行ニナルノデアリマセウカラ、此事ニ付テハ私ハ若シ今日マデ御取リニ
  ナッタヤウナ方針デアルト、遺憾ナガラ反對シナケレバナラヌト考ヘマス、併
  シ是ハ將來ノコトニナリマスカラ、別段敢テ申ス譯デハアリマセヌガ

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• 065・鈴木そう兵衞

  ○鈴木摠兵衞君　大藏大臣ニ質問イタシマス、戰時利得稅ノ個人ニ對スル割
  合ガ十五、法人ニ對シテハ二十、此區別ガアル、是ハ如何ナル權衡カラ斯ノ
  如クニナッタモノデアルカ、次ニ政府ノ見積リデハ本年度ハ···(聽取リ難シ)
  昨年度ニハ三千五百萬圓位ノ見積ト想像シテ居ル、世間ニハ七八千萬圓或ハ
  一億圓以上ニモ至リハセヌカト云フ說モアリマスガ、ソレニ付テハ如何ナル
  御考デアリマスカ、其二點ガ伺ヒタイノデアリマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 066・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　戰時利得稅ノ收入ニ付キマシテ、世間ニ色〓ナ調
  査竝ニ論ノアルト云フコトモ承知イタシテ居リマス、只今鈴木君ノ御話ノコ
  トハ矢張リ此御意味ガ重モナコトダラウト思ヒマスルガ、是ハ一應政府ノ調
  査ヲ申シテ置カナケレバナリマセヌノデ、政府ガ此戰時利得稅ノ收入額ノ豫
  算ヲ作リマスルトキハ、卽チ昨年ノ八九月頃カラシテ調査ヲ始メタ譯ナノデ
  アリマシテ、玆ニ豫算ヲ出スト云フコトデアリマスレバ、精確ナ基礎ニ依ッテ
  出サナケレバナラヌ、サウ致シマスレバ此利得稅ニ付テ何處ヲ押ヘルカト申
  セバ、大正五年ノ利得ニ付テ押ヘテ行カナケレバナラヌト云フコトハ申スマ
  デモナイコトダラウト思ヒマス、此大正五年ノ利得ニ付キマシテ全國ノ稅務
  署其他ヲシテ十分ナル調査ヲセシメタ結果ガ、今囘豫算ニ計上シタ數ニナッテ
  居リマスルノデ、之ニ付キマシテ如何ニモ其額ガ少イヂヤナイカト云フ仰セ
  ガ、段々アルノデアリマス、尤モ大正五年ノ利得ヲ押ヘテアリマスルカラシ
  テ、大正六年七年ト云フ此等ガ經濟上ノ狀態ガ良好ニシテ其利得等ガ多少多
  イト云フコトカラシテ、之ニ幾分ハ增スデアラウト云フ考ハ政府ハ持ッテ居
  リマス、併ナガラ世間ガ言フ如クニ三千二百萬圓ト政府ガ計算シテ居ルモノ
  ガ、是ガ一億ニモナリ一億以上ニモナルト云フヤウナ事柄ハドウシテモ想像
  ガ出來ナイノデアリマス、現ニ左樣ナ說ヲ致サレル方ニ就イテ色〓伺ッテ見
  マスルト云フト、多少政府ト此計算ノ點ニ付テモ見ル所ヲ異ニシテ居ルヤ
  ウナコトデアリマスルノデ、五年度ノ利得ヲ押ヘテ居リマスル以上ハ、茲シー
  多少ノ增加ヲ致スト云フコトハ是ハアルダラウト思ヒマスルガ、世間ノ言フ
  如クデス、一億若クハ一億以上ノ增加ガアルト云フヤウナコトハ、今日ト致シ
  マシテ政府ハ考ヘテ居リマセヌデゴザイマス、ソレカラ法人ト個人ニ付キマ
  シテノ課稅ノ率ノ相違ニ付テノ御話ガアッタヤウデアリマスガ、此事ニ付キ
  マシテハ尙ホ詳細ハ、委員會等ニ就イテ政府委員等ヨリ述ベマセウガ、大體ニ
  於キマシテハデス、個人ノ利得ニ付キマシテハ法人ニ較ベマスルトデス、各
  種ノ點ニ於テ計算上不利益ナ點ガ大分アルノデアリマシテ、ソレ故ニデス
  之ヲ達觀上法人ヨリカハ個人ノ方ニ率ヲ少クシテ、之ガ適當デアラウト云フ
  ノデ法人ヲ二割、個人ヲ一割五分ニ致シマシタノアリマス、何レ詳細ノコト
  ハ委員會デ能ク內容ヲ

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• 067・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　諸君ニ御諮リヲ致シマス、唯〓問題ト致シマシタ
  法案ハ、同一委員ニ付託シテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 068・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

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• 069・阪本さん之助

  ○阪本彰之助君　極ク簡單ナコトデアリマスガ、チヨット御尋ネ致シタイ、此
  戰時利得稅法ノ附則ニ依リマスト、「本法ハ小笠原島及伊豆七島ニ之ヲ施行セ
  ス」トアリマス、唯〓普通ノ所得稅法ヲ持チマセヌカラ、普通ノ所得稅法ガ
  是等ノ所ニ施行サレテ居ラヌノデアルカ知リマセヌガ、ドチラニシテモ、伊
  豆七島ノ中デモ八丈島ナドハ中〓可ナリ開ケテ居リマス、之ヲ鹿兒島縣ノ離
  島、沖繩縣下ノ離島ニ比シマスレバ、其霄壤ノ差ガアルト思ヒマスガ、是等
  ハ矢張リ施行サレテ、東京ニ近イ伊豆七島ノ如キモノガ、施行サレナイト云
  フノハドウ云フ譯デスカ、チヨツト御尋ネヲ致シマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 070・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　戰時利得稅ノ總テノ規定ハ、所得稅ガ根基ニナッテ
  居リマスノデ、所得稅法ニ於テ唯今阪本君ノ仰セラレタヤウナモノハ除外サ
  レテ居リマスノデ、戰時利得稅法ニ於テモ、之ヲ除外イタスコトニ致シマシタ、
  或ハ極メテ具體的ナル問題ニ對シテハ、唯今阪本君ノ御心配ノヤウナコトガ
  アルカモ知レマセヌ、併ナガラ是ハ法制ヲ定メル上ニ於キマシテハ、大體ヲ
  見ナケレバナリマセヌノデ、詰リ所得稅ト權衡ヲ取リマシテ、斯樣ニ規定ヲ
  致シマシタ次第デゴザイマス

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• 071・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　唯今議ニ付セラレタル法案ノ委員ハ十八名トシ御指名ア
  ラムコトヲ願ヒタイ、之ニ御贊成アラムコトヲ希望イタシマス

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• 072・石黒忠悳

  ○男爵石黑忠悳君　贊成

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• 073・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　高木男爵ノ、委員ノ數ヲ十八名トスルト云フ說ニ
  御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 074・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
  ヲシテ朗讀イタサセマス
  〔河井書記官朗讀〕
  酒造稅法中改正法律案外四件特別委員
  伯爵柳澤保惠君子爵稻垣太祥君子爵靑木信光君
  子爵前田利定君男爵中川興長君大久保利武君
  男爵村上敬次郞君山本達雄君男爵武井守正君
  谷森眞男君若槻禮次郞君橋本圭三郞君
  菅原通敬君伊澤多喜男君桑田熊藏君
  田中源太郞君鈴木摠兵衞君美馬儀一郞君

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• 075・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第十二、臨時國庫證劵法中改正法律案、
  政府提出、衆議院送付、第一讀會
  臨時國庫證劵法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  臨時國庫證劵法中改正法律案
  臨時國庫證劵法中左ノ通改正ス
  第二條中「二億圓」ヲ「五億圓」ニ改ム
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=75

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• 076・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　唯今議題トナッテ居リマス法律案ハ先刻私ノ演說
  中ニモ申シテ置キマシタ如クニ、爲替ノ調節ノ必要ノ爲メ、竝ニ軍需品代金
  決濟ノ必要ノ爲ニ、臨時國庫證劵ノ從來ノ最高限額二億圓ヲ高メマシテ、五
  億圓ト致シタイト云フ事柄デアリマス、ドウカ御審議ノ上御協贊アラムコト
  ヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=76

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• 077・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタサセマ
  ス
  〔河井書記官朗讀〕
  臨時國庫證劵法中改正法律案特別委員
  伯爵松平賴壽君子爵三島彌太郞君男爵阪谷芳郞君
  男爵伊東義五郞君男爵小早川四郞君福永吉之助君
  武石橘次君鎌田勝太郞君堀正一君

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• 078・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第十三、貨幣法中改正法律案、政府提出、
  衆議院送付、第一讀會
  貨幣法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  貨幣法中改正法律案
  貨幣法中左ノ通改正ス
  第五條第二號ヲ左ノ如ク改ム
  二銀貨幣
  五十錢純銀八百分參和銅二百分
  二十錢十錢純銀七百二十分參和銅二百八十分
  第六條第四號乃至第六號ヲ左ノ如ク改ム
  四五十錢銀貨幣一匁八分
  五二十錢銀貨幣八分
  六十錢銀貨幣四分
  第十條第二號ヲ左ノ如ク改ム
  二銀貨幣五十錢ハ每片一厘八毛一千枚每ニ九分二十錢ハ每片一厘二毛
  一千枚毎ニ六分十錢ハ每片八毛一千枚每ニ四分トス
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  從來發行ノ銀貨幣ハ從前ノ通通用スヘシ
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=78

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• 079・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　唯今ノ議題トナッテ居リマス法律案ハ、補助銀貨ヲ
  改造ヲ致シタイト云フ事柄デアリマス、御承知デ在ラセラルヽ如クニ、時局
  ノ爲ニ銀ノ變動ガ頗ル激シクゴザイマシテ、殊ニ一時ハ五十四「ベンス」ト云
  フヤウナ高イ値段ヲ現ハシタコトナドモゴザリマスルノデ、卽チ言葉ヲ換ヘ
  テ申セパ、是等ノ補助貨ハ鑄潰シ點ニ詰リ來テ居ル譯ナノデアリマス、左樣
  ナコトデアリマスカラ、將來ヲ考ヘマシテモ我國ノ補助銀貨ニ付キマシテ、
  其點ニ付キマシテハ餘程考慮ヲ加ヘナケレバナラヌト思ヒマスルノデ、今囘
  貨幣法ヲ改正ヲシテ、五十錢二十錢十錢ト云フヤウナ、此補助銀貨ノ改造ヲ
  圖リタイト云フノガ、此法案ノ骨子デゴザイマスノデ、御審議ノ上御協賛ア
  ラムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=79

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• 080・阪本さん之助

  ○阪本彰之助君　チヨット御尋ヲ致シタイノデアリマスガ、唯今現ニ出テ居リ
  マスル五十錢以下ノ銀貨ト云フモノハ、ドレダケアルノデアリマスカ、又將
  來本案ガ通過シタ上、御出シニナル所ノ小貨幣ハドノ位ノ額ヲ御出シニナル
  御積リデアリマスカ、本員ガ考ヘマス所デハ、左ナキダニ銀貨ヲ近頃出シ惜
  ム風潮ガ現ハレテ、現ニ補助貨ヲ得ルノ困難ナルコトハ目ノ前ニ見タノデア
  リマスガ、現ニ是カラ出ル所ノ貨幣ト、從來ノ貨幣ト對照シテ見レバ、如何
  ナル下級ノ人デモ直チニ大小ガ分リマスノデ、是ハ大キナ方ハ取ッテ置ク方
  ガ得デアル、若クハ大キナヤツハ鑄潰シヲシタ方ガ宜カラウト云フ考ノ出ル
  ノハ、洵ニ見易キコトデゴザイマス、鑄潰シ溶解ニ付テハ太政官ノ布告ヤ大
  藏省令モ出テ居リマスノデアリマスガ、其法令ハ貨幣ヲ內々鑄潰スナドト云
  フコトニ、十分ナル效力ガアルトハ思ハレヌノデアリマス、加之此小紙幣ガ
  近頃發行サレテ居ルノデアリマスガ、若シ現在ノ發行シテ居ル銀貨ノ在ル上
  ニ、是カラ小サイ銀貨ガ澤山出來ル、ツレヘ持ッテ行ッテ小紙幣ガ平和克復後
  一年內マデハアルト云フコトニナルト、小貨幣ノ流通ガ非常ニ多クナッテ、物
  價騰貴ト云フコトニ影響シハセヌカト云フコトヲ虞レルノデアリマス、ソレ
  等ノ點ニ付テハ無論愼重ノ御詮議ガアッタコトト思ヒマスカラ、唯今申シマ
  シタ點ニ付テ、我〓ノ了解シ得ルダケノ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 081・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　補助貨ノ流通高ハ現今大約一億二千五百萬圓バカ
  リデアリマス、サウ致シマシテ此補助貨ガ幾ラ流通シ得ルヤ否ヤト云フ事柄
  ニ付キマシテハ、是ハ大體經濟上ノ趨勢ニ依ッテ極ル事柄ナノデアリマス、阪
  本君ノ御心配ノ點ハ第一ニハ既ニ補助貨ノ發行サレテ居ルモノガアル、今囘
  又補助貨ヲ發行スルト云フコトニナリマスレバ、補助貨ガ多クナリハシナイ
  カト云フコトガ一ツトソレカラモウ一ツハ大キナ補助貨ト小サイ補助貨ガ
  出ルト、大キナ補助貨ト云フモノハ使用ヲ吝マレハシマイカト云フヤウナ、
  御心配デアッタヤウデアルノデアリマス、此點ニ付キマシテハ第一ノ事柄、卽
  チ此補助貨ノ多寡デゴザイマシテ、是ハ一般ノ經濟市場ノ狀況ニ依ッテ大體
  決マルノデアリマス、サウ無暗ニ補助貨ヲ又出スベキモノデハアリマセヌ
  併シサウカト申シテ市場ガ之ヲ要求スルノニ付キマシテ、補助貨ヲ出サヌ譯
  ニモ參リマセヌノデ、ソレハ市場ヲ常ニ見テ居リマス政府ガ、相當ニ緩急ヲ
  圖ヲテ卷舒シナケレバナラヌ事柄デアラウト思フノデアリマス、次ニ大ナル
  補助貨ト小ナル補助貨トノ關係ノコトデアリマスルガ、是ハ或ハ無識ノ階級
  ニ行キマスルト、阪本君ノ御心配ニナルヤウナ事柄ハ多少アルダラウト思ヒ
  マンカ併ナガラ阪本君モ既ニ仰セラレマシタ如クニ此補助貨ノ鑄潰シ等ニ付
  テハソレ〓〓制裁ガアルノデアリマシテ、左樣ナコトハ取締ヲ致シテ居リ
  マスカラ出來ナイ、是ガ出來ナイト致シマスレバ、大キナ物ヲ取ッテモ小サ
  イ物ヲ持ッテ居リマシテモ、詰リ其表價ダケシカ價格ガナイト云フコトデア
  リマスレバ、大體ニ於テ左樣ニ御心配ニナル程ノコトデモソレハナカラウト
  思フノデアリマス、ソレカラ補助紙幣ノコトデアリマスルガ、是ハ既ニ當院
  ニ於カレマシテ御審議下サイマシタコトデアリマスルガ、是モサウ無暗ニ出
  スト云フノデアリマセヌノデ、卽チ今日ニ於テ補助貨ガ缺乏ヲ致シテ居ル、
  此缺乏イタシテ居ル補助貨ヲ補足スルニ補助貨ヲ以テスルト云フ事抦ハ
  面ニ於テ貨幣法改正ノ考モアルノミナラズ、造幣ノ能力ニ於テモ足ラヌ、ソ
  レ故ニ取引ヲ圓滑ニセシムル爲ニ彼ノ小紙幣ヲ出シタト云フコトデアリマシ
  テ、是モ詰リ市場ノ需要ニ應ジテ適宜ニ政府ハ出スコトニ致シテ居リマスカ
  ラ、是ガ發行ニ付キマシテハ、既ニ御承知ノ通リニ永久出ス譯デハゴザイマ
  セヌ、戰サガ濟ミマスレバ一年ノ間經過イタシマスレバモウ出サヌト云フ
  コトデ、ソレ〓〓囘收シテ整理ヲ致シマスル次第デアリマスカラ、御心配ノ
  ヤウナ事柄ハ起ッテ來ナイト、政府ニ於テハ堅ク信ジテ居リマス

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• 082・阪本さん之助

  ○阪本彰之助君　略〓了解シマシタガ、唯今チヨット伺ヒ漏シマシタガ、銀ノ
  相場ト云フモノハ始終高低ガアルモノデアル、其高低ノ度每ニ貨幣ノ量目ガ
  變化ヲ來スト云フコトハ甚ダ困ッタモノデアリマス、尤モサウ屢〓ナサル譯デ
  ハアリマスマイガ、唯今ノ銀ノ相場ト云フモノハ詰リ永久ニ下ル見込ハナイ、
  唯今ノ量目デ決メテ置ケバ先ヅ以テ永久的ニ銀相場ト云フモノハ變ハラヌト
  云フ御見込ガ立ッテ居リマスカ、又唯今ノ御說明ニ依リマシテ鑄潰シハサウ
  澤山アルマイ、斯ウ云フ御斷定ノヤウデアリマス、果シテ其言ヲ信ジマスレ
  バ一億二千五百萬圓ニ近イ所ノ小貨幣ガ出テ居ル、ソレハ幾ラカ市場ノ狀
  況ヲ斟酌スルト仰ッシヤイマスガ、既ニ出來得ル以上ハ衆議院ニ於テ御答辯ニ
  ナッタヤウデアリマスガ、段々御出シニナル御考デアリマセウ、サウシテ小紙
  幣ハ衆議院デ御答ニナッテ居ル所デ見ルト一億四五千萬圓マデ出スト云フヤ
  ウデアリマス、ソレハ素ヨリ必要ニ應ジテ緩急ハゴザイマセウガ、大體場合
  ニ依ッテハ一億四千萬圓マデハ小紙幣ハ出シ得ルモノデアル、サウシテ其三
  ツノモノガ一時ニ寄合ッテ來ルト云フコトニナレバドウシテモ今日マデヨリ
  補助貨幣ノ流出若クハ汪溢スルコトガアリハシナイカト思フ、ドウシテモ是
  ガ矢張リ小商ヒノ物價騰貴ノ手傳ヲシハセヌカト深ク氣遣フノデアリマス
  我〓ガ〓ヘマスルニ小貨幣ハ金融界デハ小紙幣ノ發行ガ止ムトキニ初メテ實
  行サレル、唯〓丁度小紙幣ト從來ノ銀貨トヲ以テ市場ノ用ヲ達シテ居ルト云
  フコトハ極ク適當ナ處置デハナイカ、是ハ意見デアリマス、唯今申述ベタヤ
  ウニ銀ノ價ニ付テノ御見込ト、又一時ノ作用デ物價ノ影響ハナイト云フ御確
  信ガアルカ否ヤ、此二點ヲモウ一應伺ヒタイ

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• 083・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　此際議長ハ會議ノ時間ノ延長ヲ宣告イタシマス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 084・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　御答イタシマスルガ、銀ノ價格ニ付テハ勿論高低
  ガアリマスルガ、今日ヨリ此銀ノ前途ヲ豫見シテ見マスルト遠キ將來ハ率ザ
  知リマセヌガ、銀ガサウ下ガルト云フヤウナ事柄ハナイデアラウト考ヘテ居
  リマス、其詰リ觀察ノ下ニ於テ今囘ノ改正ヲ致シマスルノデ、御承知ノ通リ
  ニ在來ノ我國ノ舊補助銀貨、是ノ鑄潰シ點ガ三十三「ペンス」幾ラト云フコト
  ニナッテ居リマス、ソレカラ新銀貨ノ、今度出ス方デハナイ、一ツモウ既ニ出
  テ居ル新銀貨、是ガ四十三「ベンス」幾ラ、斯ウ云フコトニナッテ居リマス、
  然ルニ先刻申上ゲマシタ如クニ、銀ノ時價ガ五十四五「ペンス」ニナッテ居ル
  ノデアリマス、今囘ハ之ヲ外國ノ例ニモ大體參照シテ見マスト、要スルニ六
  十四五「ペンス」此位ノ所デ相當ナル囘收ヲ實行イタシテ居リマスナレバ、是
  マデノ歷史等ニ鑑ミマシテモ、是レ以上ニ詰リ銀ガ上ガルト云フヤウナ事柄
  モナイデアラウ、ト云フ大體ノ信念カラ致シマシテ、此案ヲ提出イタシマシ
  タノデアリマス、又此補助貨ナリ或ハ補助紙幣ノ多クナルガ爲ニ物價ニ影響
  ヲ致シテ非常ニ困ルコトハナイカト云フ御心配ニ付キマシテハ、是ハ餘程〓
  究モノナンデアリマス、其問題ヲ考ヘマスト云フト、斯ウ云フコトニナリマ
  ス、今囘ノ物價騰貴ト云フコトハ通貨ガ多イ爲ニ物價ノ騰貴ヲ來シテ居ルカ、
  詰リ物價ガ騰貴シタ爲ニ通貨ガ多クナッテ居ルカト云フ、此所ハ矢張リ微妙
  ナ實ハ問題ナンデアリマス、兎ニ角今日ノ所ニ於キマシテハ、此時局ノ影響
  ヲ受ケマシテ、商工業其他ノ殷賑ヲ極ムル結果トシテ、補助貨ガ非常ニ拂底
  イタスノデアリマス、又之ヲ假ニ今日出テ居リマスル日本銀行ノ兌換劵其他
  ノ比例カラ致シテ見マシテ、ドウシテモ六七千萬圓位ハ補助貨ガ殖エナケレ
  バチヨット補助貨ト其他ノ通貨トノ割合ガ取レナイト云フ狀況ニナッテ居リマ
  スノデアッテ、此際多少ノ補助貨ヲ增スト云フコトハ誠ニ已ムヲ得ザル次第デ
  アラウト思フノデアリマス、併ナガラ是等ノ關係ヨリ致シテ、若シ此物價ノ
  騰貴ト云フコトヲ誘致スルト云フ弊害ガ甚シキニ於キマシテハ又之ニ付テノ
  相當ノ措置ヲ執ラナケレバナラヌト思ッテ居リマス、要スルニ是ハ其時〓ノ
  事情ニ依リマシテ、臨機ノ措置ヲ執ッテ唯今阪本君ノ御尋ネノヤウナ弊害ノ
  生ジナイヤウニ致ス外、致方ハアルマイカト斯樣ニ考ヘテ居リマス

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• 085・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマ
  ス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  貨幣法中改正法律案特別委員
  伯爵吉井幸藏君子爵八條隆正君男爵北島齊孝君
  男爵坪井九八郞君男爵二條正麿君石井省一郞君
  鮫島武之助君福島文右衞門君高崎三重郞君

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• 086・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十四、登錄稅法中改正法律案、政府提出、
  衆議院送付、第一讀會
  登錄稅法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  登錄稅法中改正法律案
  登錄稅法中左ノ通改正ス
  第六條第三項乃至第五項ヲ削ル
  第十九條ニ左ノ一號ヲ加フ
  五產業組合、產業組合聯合會、產業組合中央會、漁業組合又ハ漁業組
  合聯合會ニ付產業組合法又ハ漁業法ニ基キテ爲ス登記
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 087・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　登錄稅法中改正案ノ趣旨ハ第三十九議會ニ於キマ
  シテ、政府ハ產業組合ノ發展ヲ圖ル爲ニ法案ヲ提出イタシマシテ皆樣ノ御協
  贊ヲ經タノデアリマス、尙ホ此產業組合ノ發展ニ付キマシテハ、種々ナル方
  面ヨリシテ之ヲ助長サセタイト云フ考ヲ有ッテ居リマス、卽チ產業組合ナル
  モノニ對シマシテハ此登錄稅ヲ免除シタイト云フノガ此法案ノ精神デアリマ
  ス、既ニ登錄稅ヲ產業組合ニ付テ免除イタシマスル以上ハ、之ト同樣ナル所
  ノ公益ノ財團トカ法人トカ云フ如キモノモ矢張リ同時ニ登錄稅ヲ免除シタラ
  宜カラウト云フ事柄ガ卽チ此案ノ骨子ニナッテ居ル次第デゴザイマス、御審
  議ノ上御協賛ヲ願ヒマス

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• 088・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマ
  ス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  登錄稅法中改正法律案特別委員
  伯爵松平直之君子爵西大路吉光君子爵榎本武憲君
  子爵秋月種英君阿部浩君荒川義太郞君
  男爵靑山元君男爵東郷安君星島謹一郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=88

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• 089・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十五、遠洋漁業奬勵法中改正法律案、政府
  提出、衆議院送付、第一讀會
  遠洋漁業奬勵法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  遠洋漁業奬勵法中改正法律案
  遠洋漁業奬勵法中左ノ通改正ス
  第一條中「二十萬圓」ヲ「三十萬圓」ニ改ム
  第三條主務大臣ハ遠洋漁船檢査規定ニ定ムル構造ニ適合シタル日本船舶
  ヲ以テ遠洋ニ於ケル漁獵業又ハ漁獲物處理運搬業ニ從事スル者ニ對シ業
  務ノ種類、場所、期間若ハ方法又ハ漁獲物ノ處理若ハ販路ニ付條件ヲ附
  シ漁業奬勵金ヲ下付スルコトヲ得但シ其ノ總額ハ第一條ニ依ル豫算定額
  ノ十分ノ三ヲ超ユルコトヲ得ス
  第四條削除
  第五條第一項各號ヲ左ノ如ク改ム
  -船體總噸數每一噸四十五圓
  二蒸汽機關實馬力每一馬力二十二圓
  三發動機關純馬力每一馬力三十圓
  四冷藏機械冷却力製氷量毎一噸千五百圓
  五副漁具評價額ノ十分ノ三
  同條第三項及第四項ヲ左ノ如ク改ム
  主務大臣ハ漁船ノ改良ニ關シ適當ト認メタル設計ニ依リ日本船舶ヲ新造
  シ又ハ新造セシメタル船舶所有者ニ對シ其ノ船舶新造費ノ三分ノ一以內
  ノ漁船奬勵金ヲ下付スルコトヲ得但シ其ノ總額ハ第一條ニ依ル豫算定額
  ノ十分ノ二ヲ超ユルコトヲ得ス
  前項ノ船舶新造費ハ冷藏機械及副漁具ノ新造費ヲ包含ス
  同一ノ船舶ニ付第一項及第三項ノ漁船奬勵金ヲ併セ下付スルコトヲ得ス
  第六條中「第三條第一項又ハ第五條」ヲ「前條」ニ改ム
  第七條漁業奬勵金ヲ受クヘキ者第三條ノ條件ヲ履行セサルトキ又ハ每業
  務期間ニ於テ其ノ業務ニ從事スルコト業務期間ノ四分ノ三ニ滿タサルト
  キハ主務大臣ニ於テ正當ノ事由ニ因リ已ムヲ得サルモノト認ムル場合ニ
  限リ奬勵金ノ全部又ハ一部ヲ下付スルコトヲ得
  第十一條遠洋漁業ノ指導監督又ハ遠洋漁業練習生ノ養成ノ爲必要ナル費
  用ハ第一條ニ依ル豫算定額中ヨリ之ヲ支出スルコトヲ得但シ其ノ總額ハ
  豫算定額ノ十分ノ二ヲ超ユルコトヲ得ス
  主務大臣ハ必要ト認メタル場合ニ於テ營利ヲ目的トセサル法人ニ對シ遠
  洋漁船船員ノ養成又ハ遠洋漁業者若ハ海外出漁者ノ利益增進ノ爲第一條
  ニ依ル豫算定額中ヨリ其ノ十分ノ一以內ヲ下付スルコトヲ得但シ必要ナ
  ル船舶ヲ新造スル場合ニ於テハ其ノ新造費ニ充ツル爲之ヲ超エサル限度
  ニ於テ更ニ十分ノ二以内ヲ下付スルコトヲ得
  第二十一條本法ハ大正二十二年三月三十一日迄效力ヲ有ス
  第二十二條ヲ削ル
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅合ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行前奬勵金下付ノ指令ヲ受ケタル者ニ付テハ其ノ奬勵金ニ關シ仍從
  前ノ例ニ依ル
  〔國務大臣仲小路廉君演壇ニ登ル〕

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• 090・仲小路廉

  ○國務大臣(仲小路廉君)　本案提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、今日ノ場合
  ニ於キマシテ、我ガ水產業ノ發達ヲ奬勵イタシマスルコトハ最モ大切ナコト
  ト存ジマス、就中遠洋漁業ノ奬勵ハ目下ノ場合最モ必要ト存ズルノデアリマ
  ス、然ルニ今日迄實行サレテ居リマスル遠洋漁業奬勵法ハ最早有效期間ガ前
  途僅ニナッテ參リマシタ、今日ノ場合甚ダ必要デアリマスルカラ、此有效期限
  ヲ更ニ向ウ十五箇年延長イタシマシテ、ソレト同時ニ今日迄ノ金額ハ二十萬
  圓ヲ限度トシテ居リマシタガ、更ニ其額ヲ殖ヤシマシテ三十萬圓ヲ最高額ト
  致シテ、之ト同時ニ今日迄ノ實驗ニ徵シマシテ、內容ニ變更ヲ致シマシテ、
  新規ニ漁場ノ開拓ヲ致シマスル場合デアリマスルトカ、或ハ海外ニ販路ヲ擴
  張イタシマス場合デアリマストカ、或ハ大型船舶ヲ用ヒマスル場合デアリマ
  スルトカ、或ハ海外ニ出漁シテ種々改善ノ方法ヲ採ル團體等ニ奬勵金ヲ交付
  イタシタイト云フ考デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=90

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• 091・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマ
  ス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  遠洋漁業奬勵法中改正法律案特別委員
  伯爵松浦厚君子爵小笠原勁一君男爵肝付兼行君
  男爵平野長祥君男爵長松篤業君藤田四郞君
  木場貞長君室田義文君日高榮三郞君

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• 092・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十六、軍用自動車補助法案、政府提出、衆
  議院送付、第一讀會
  軍用自動車補助法案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (小字ハ修正文)
  軍用自動車補助法
  第一條政府ハ豫算ノ範圍內ニ於テ陸軍ノ軍用ニ適スヘキ自動車ノ製造者
  又ハ所有者ニ對シ補助金ヲ下付スルコトヲ得
  前項ノ製造者又ハ所有者ノ其ノ自動車ニ關スル業務ノ承繼人ハ之ヲ前項
  ノ製造者又ハ所有者ト看做ス
  第二條補助金ヲ受クルコトヲ得ヘキ製造者又ハ所有者ハ帝國臣民又ハ帝
  國臣民ノミヲ社員若ハ株主トシテ帝國法令ニ依リ設立シタル法人ニシテ
  帝國內ニ於テ自動車製造所又ハ自動車ヲ有スルモノニ限ル
  前項ニ揭クル者ノ外公共〓體ニハ補助金ヲ下付スルコトヲ得
  製造者及製造所ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三條補助金ヲ受クルコトヲ得ヘキ自動車ハ主務大臣ノ定ムル規定ニ依
  リ製造シタルモノニシテ主トシテ貨物ノ運搬ヲ目的トシ一英噸以上ノ積
  載量ヲ有スルモノ又ハ之ニ改造シ得ヘキモノニ限ル
  第四條製造者ニハ其ノ製造ニ係ル自動車一輛ニ付二千圓以內ノ製造補助
  金ヲ下付スルコトヲ得
  製造者其ノ製造ニ係ル新ナル自動車ニシテ製造補助金ヲ受ケタルモノヲ
  所有シテ使用シ又ハ他人ヲシテ使用セシムル場合ニ於テハ自動車一輛ニ
  付更ニ五百圓以內ノ增加補助金ヲ下付スルコトヲ得
  第五條所有者ニハ製造補助金ヲ受ケタル新ナル自動車ヲ其ノ製造者ヨリ
  購買シテ使用シ又ハ他人ヲシテ使用セシムル場合ニ於テ自動車一輛ニ付
  千圓以内ノ購買補助金ヲ下付スルコトヲ得
  第六條增加補助金又ハ購買補助金ヲ受ケタル自動車ヲ所有スル者之ヲ使
  用シ又ハ他人ヲシテ使用セシムル場合ニ於テハ其ノ期間ニ應シ自動車一
  輛ニ付一年三百圓以內ノ維持補助金ヲ下付スルコトヲ得
  維持補助金下付ノ期限ハ增加補助金又ハ購買補助金下付指令ノ日ヨリ五
  年ヲ限リ製造補助金下付指令ノ日ヨリ十年ヲ超ユルコトヲ得ス
  維持補助金ハ每年其ノ年分全額ヲ下付指令ノ際自動車ヲ所有スル者ニ之
  ヲ下付ス
  第七條製造補助金ヲ受ケタル自動車ハ其ノ補助金下付指令ノ日ヨリ左ノ
  各號ノ一ニ該當スルニ至ル迄ノ間之ヲ保護自動車ト稱ス
  -自動車ノ所有者カ第二條第一項ノ規定ニ該當セサルニ至リタルトキ
  二第六條第二項ノ期限ヲ經過シタルトキ
  三第十二條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ補助金ヲ受クルノ資格ヲ廢
  除セラレタルトキ
  第八條主務大臣ハ軍用ノ爲何時ニテモ保護自動車ヲ收用又ハ使用スルコ
  トヲ得
  前項ノ規定ニ依リ收用又ハ使用シタル場合ニ於テハ自動車ノ所有者ニ補
  償金ヲ下付ス其ノ金額ハ主務大臣之ヲ定ム
  補償金額ニ對シ不服アル者ハ收用又ハ使用ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月以內ニ通常裁判所ニ出
  訴スルコトヲ得
  前項ノ出訴ハ自動車ノ收用又ハ使用ヲ停止セス
  第九條保護自動車ノ所有者ハ主務大臣ノ定ムル場合ヲ除クノ外保護自動
  車ノ構造又ハ能力ヲ變更スルコトヲ得ス
  第十條保護自動車ハ之ヲ輸出シ又ハ外國人ニ對シ讓渡シ、貸付シ若ハ擔
  保ニ供スルコトヲ得ス
  第十一條主務大臣ハ保護自動車ノ保續ヲ期スル爲其ノ構造及能力ヲ檢査
  シ所定ノ構造又ハ能力ヲ有セスト認ムルトキハ其ノ所有者ニ對シ期限ヲ
  指定シテ之カ修理ヲ命スルコトヲ得
  前項ノ外主務大臣ハ保護自動車ノ所有者ニ對シ其ノ保續ニ關シ必要ナル
  命令ヲ爲スコトヲ得
  第十二條主務大臣ハ前條第一項ノ規定ニ依ル檢査ニ依リ所定ノ構造又ハ
  能力ヲ有セスト認メタル保護自動車ニ對シテハ修理ヲ命シタル場合ヲ除
  クノ外補助金ヲ受クルノ資格ヲ廢除ス其ノ修理ヲ命シタル場合ニ於テ修
  理完成ノ檢査ニ合格セス又ハ指定期限迄ニ其ノ檢査ヲ受ケサルトキ亦同シ」
  主務大臣ハ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ依リテ爲ス處分ニ
  違反シタル者ニ對シテハ違反ノ事實アリタル時ヨリ當該自動車ニ對スル
  補助金ヲ受クルノ資格ヲ廢除シ又ハ停止スルコトヲ得
  主務大臣ハ前條第一項ノ規定ニ依リ修理ヲ命シタル自動車ニ對シテハ前
  條第一項ノ規定ニ依ル檢査ノ時ヨリ修理完成ノ檢査ヲ受ケタルモノニ在
  リテハ合格不合格決定ノ時迄、其ノ檢査ヲ受ケサルモノニ在リテハ指定
  期限迄補助金ヲ受クルノ資格ヲ停止ス
  第十三條主務大臣ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反スル犯罪ノ
  爲起訴セラレタル者ニ對シテハ裁判確定ニ至ル迄ノ間補助金ノ支給ヲ中
  止スルコトヲ得
  第十四條主務大臣ハ第十五條乃至第十七條ノ規定ニ依リ處罰セラレタル
  ○又ハ第二條第一項ニ該當セサルニ至リタル者
  者○ニ對シ當該自動車ニ付既ニ下付シタル補助金ニ相當スル金額ノ全部
  又ハ一部ヲ償還セシムルコトヲ得
  前項ノ償還金ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但シ先取
  特權ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
  第十五條詐欺ノ所爲ヲ以テ補助金ヲ受ケタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ二
  千圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
  第十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰
  金ニ處ス
  -第八條第一項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ヲ拒ミタル者
  二第十條ノ規定ニ違反シタル者
  第十七條第九條ノ規定ニ違反シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下
  ノ罰金ニ處ス
  第十八條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル自動車ノ檢査ヲ拒ミ、
  妨ケ若ハ忌避シ又ハ檢査ニ關スル當該官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サス若
  ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
  第十九條製造者又ハ所有者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ
  本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ製造者又ハ所有者ニ適用スヘキ罰則ハ法
  定代理人ニ適用ス但シ其ノ業務ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成
  年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
  第二十條製造者又ハ所有者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其
  ノ他ノ從業者其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シ
  タルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス
  第二十一條前二條ノ場合ニ在リテハ懲役、禁錮又ハ拘留ノ刑ニ處スルコ
  トヲ得ス
  第二十二條明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル
  命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ニ依リ製造補助金ヲ受クルコトヲ得ル自動車ト同等以上ノ能力ヲ有ス
  ル新ナル外國製自動車ヲ所有シテ使用シ又ハ他人ヲシテ使用セシムル者ニ
  ハ當分ノ內自動車一輛ニ付千圓以内ノ補助金ヲ下付スルコトヲ得
  前項ノ補助金ヲ受ケタル自動車ハ本法ノ製造補助金及購買補助金ヲ受ケタ
  ルモノト看做ス
  前二項ノ規定ハ官立工場ニ於テ製造シタル自動車ニ付之ヲ準用ス
  〔國務大臣大島健一君演壇ニ登ル〕

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• 093・大島健一

  ○國務大臣(大島健一君)　唯今議題トナリマシタ、軍用自動車補助法提出ノ
  理由ヲ單簡ニ申上ゲマス、自動車補助法ノ趣意ハ自動貨車ヲ民間ニ使用セシ
  メテ、主トシテ有事ノ際ニ之ヲ徵用シタイト考ヘマスルノデゴザイマス、由
  來自動車ノ········軍用自動車ノ〓究ヲ進メマシテ、東洋ノ地形ニ於テ我軍ニ用
  フベキ軍用自動貨車ノ制式ハ略〓〓究ヲ終リマシテ、三噸級四噸級ノ二ツヲ
  定メマシテゴザイマス、特殊ノ自動車ハ無論軍部ニ於テ準備貯蓄イタスベキ
  デアリマスガ、最モ多數ヲ要シマスル自動貨車ハ之ヲ民間ニ使用セシメマシ
  テ、有事ノ日ニ徵用ヲ致ス制度ヲ執リマスルコトガ、此制式ノ常ニ進步イタ
  シマスル今日ニ於テ新陳代謝ノ途ヲ得ル上カラモ必要ト感ジテ居リマスノデ
  アリマス、併ナガラ其製造工業ノ程度ガ歐米等ノンレト同等ニ參ッテ居リマ
  セヌ所ヨリ、日本デ製作イタシマスルモノハ外國輸入ノ貨車ヨリハ餘程高ク
  ナリマス、段々進步シマセウガ、唯〓迄陸軍デ調製シ調査シタ所デハ、帝國
  デ造リマスモノハ高クナリマス、又使用イタシマスル點ニ於テモ、各種ノ費
  用ヲ要シマスル爲ニ馬車等ニ較ベマスト餘程同ジモノヲ運搬スルニ費用ガ掛
  リマス、此製造ヲ補助シ又使用上運搬費ノ嵩ミマスルノヲ相當ノ補助ヲ與ヘ
  マセヌケレバ、到底今日ノ狀況ニ於テ民間ニ用ヒサセマスルコトハ困難デア
  リマス、是等ノ製造、購買、使用ニ對シテ、相當ノ補助金ヲ與ヘマシテ、廣
  ク民間ニ用ヒサセタイト云フ考デゴザイマスシ、馬ノ乏シイ國ニ於キマシテ、
  或ハ又此速度ヲ利用シテ今後益〓戰場輸送力ノ大ナルコト、速イコトヲ要ス
  ルノニハ是非之ヲ必要ト認メマス、ドウガ御審議ノ上、御協賛ヲ賜ハラムコ
  トヲ祈リマス

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• 094・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマ
  ス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  軍用自動車補助法案特別委員
  伯爵川村鐵太郞君子爵樋口誠康君子爵大河內正敏君
  高崎親章君男爵外松孫太郞君男爵德川厚君
  海江田準一郞君廣瀨滿正君松尾廣吉君

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• 095・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十七、鐵道敷設法中改正法律案、第十八、
  足尾鐵道及有馬輕便鐵道買收ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第
  讀會、御異議ガナケレバ第十七、第十八ハ束ネテ問題ニ供シ、委員モ同一委
  員ニ付託シテ宜シウゴザイマスカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  鐵道敷設法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  鐵道敷設法中改正法律案
  -ハ衆議院ノ修
  (正削除ノ符號ナリ
  鐵道敷設法中左ノ通改正ス
  第二條第一項中央線及北陸線ノ連絡線ノ部第一號及第二號ヲ左ノ如ク改ム
  -岐阜縣下岐阜ヨリ太田、高山ヲ經テ富山縣下富山ニ至ル鐵道
  同項北越線ノ部ノ次ニ左ノ如ク加フ
  上越線
  -群馬縣下高崎ヨリ新潟縣下長岡ニ至ル鐵道
  同項山陰線ノ部中「萩ニ至ル鐵道」ヲ「萩ヲ經テ下關ニ至ル鐵道」ニ改ム
  同項山陰及山陽連絡線ノ部ニ左ノ一號ヲ加フ
  -岡山縣下岡山ヨリ鳥取縣下米子ニ至ル鐵道
  同項四國線ノ部中「琴平」ヲ「觀音寺」ニ改ム
  同項九州線ノ部中第四號ヲ削ル
  第四條削除
  「第二章第一期鐵道及公債募集」ヲ「第二章第一期鐵道」ニ改ム
  第七條第一項第一號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  -中央線及北陸線ノ連絡豫定線岐阜縣下岐阜ヨリ太田、高山ヲ經テ富
  山縣下富山ニ至ル鐵道中岐阜縣下岐阜ヨリ太田ヲ經テ高山ニ至ル鐵
  道
  同項第五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  一上越豫定線群馬縣下高崎ヨリ新潟縣下長岡ニ至ル鐵道
  同項第十一號中「北條ニ至ル鐵道」ヲ「松田ニ至ル鐵道」ニ改ム
  同項第十五號中「萩ニ至ル鐵道中」ヲ「下關ニ至ル鐵道中」ニ、「萩ニ至ル鐵
  道」ヲ「小串ニ至ル鐵道」ニ改メ同號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  一山陰及山陽連絡豫定線ノ内岡山縣下岡山ヨリ鳥取縣下米子ニ至ル鐵
  道
  同項第二十二號中「中香川縣下多度津ヨリ愛媛縣下西條ニ至ル鐵道」ヲ削ル
  同項第二十三號ヲ左ノ如ク改ム
  四國豫定線ノ内香川縣下觀音寺ヨリ高知縣下高知ヲ經テ須崎ニ至ル
  鐵道中香川縣下觀音寺ヨリ德島縣下池田ニ至ル鐵道及高知縣下山田
  ヨリ高知ヲ經テ須崎ニ至ル鐵道
  同項第二十六號中「中鹿兒島縣下川內ヨリ鹿兒島ニ至ル鐵道」ヲ削ル
  第七條第二項中「第一期工事トシ特ニ公債ヲ募集スルコトヲ得」ヲ「第一期
  工事ト爲スコトヲ得」三八人
  第八條削除
  第九條削除
  足尾鐵道及有馬輕便鐵道ノ買收ニ關スル法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  足尾鐵道及有馬輕便鐵道ノ買收ニ關スル法律案
  第一條政府ハ現ニ借入使用スル足尾鐵道株式會社所屬ノ鐵道及有馬輕便
  鐵道株式會社所屬ノ輕便鐵道ヲ買收ス
  第二條前條ノ鐵道及輕便鐵道買收ノ期日ハ政府之ヲ指定ス
  第三條買收價額ハ買收ノ日ニ於ケル鐵道又ハ輕便鐵道ノ建設費以內ニ於
  テ之ヲ協定ス
  前項ノ建設費ハ政府カ借入契約ニ依リ建設改良又ハ補充ノ爲支出シタル
  工事費ヲ控除シタルモノトス
  第四條買收代價ハ政府ノ定ムル價格ニ依リ五十五年內ニ償還スヘキ五分
  利附國債證劵ヲ以テ之ヲ交付ス此ノ場合ニ於テ五十圓未滿ノ端數ハ之ヲ
  劵面金額五十圓トス
  政府ハ買收ノ爲必要ナル額ヲ限度トシ前項ノ公債ヲ發行スルコトヲ得
  第一項ノ場合ニ於テ特ニ要求アルトキハ現金ヲ以テ買收代價ヲ交付スル
  コトヲ得
  〔政府委員男爵後藤新平君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=95

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• 096・後藤新平

  ○政府委員(男爵後藤新平君)　玆ニ提出ニナリマシタ鐵道敷設法中改正法律
  案ノ大體ノ理由ヲ申上ゲマス、本案ハ鐵道ノ普及今日ニ急務タルコトヲ以チ
  マシテ提出シマシタコトハ勿論デゴザイマスガ、殊ニ此戰後ノ我ガ國民生活
  ノ狀態ニ顧ミマシテ、今囘ハ是マデ提出シマシタヨリ、ヨリ多クノ線路ヲ提
  出スルコトニナリマシタ、鐵道線路網制定以來、鐵道當局ニ於テモ、此線路
  ノ選定ニハ段々攷究ヲ重ネマシテ、此案ニハ豫定線ノ中、第一期線ニ繰入レ
  タルモノモアリマスルシ、第一期線ノ中繰上ゲマシタモノモアリマス是等
  ノモノハ二百餘哩ニ達シテ居リマス、又新豫定線ニシテ第一期線ニ直チニ組
  入レマシタモノモアリマス、是等ノモノガ二百餘哩ニナッテ居リマス、大體四
  百五十哩バカリノモノガ提案ニナッテ居リマス、衆議院ニ於キマシテ、四國線
  ノ一部、觀音寺線ヲ否決セラレテ居リマス、是ハ政府ニ於テハ鐵道會議ノ協
  贊ヲ要シマシタモノデアリマシテ、最善ノ選定ト考ヘマシテ是ニハ同意ヲ致
  シマセヌ、右申述ベマシタヤウナ理由ニ依ッテ玆ニ提案ニナッテ居リマス譯デ
  アリマス、御審議ノ上、御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス、次ニ第
  十八、足尾鐵道及有馬輕便鐵道買上ニ關スル法律案、是ハ第三十九議會ニ於
  テ既ニ買上ゲマシタ所ノ鐵道、是ハ民設ノ鐵道ヲ借入レテ、政府ニ於テ運輸
  上ノ統一便宜ヲ圖ル爲ニ使用シテアッタ所ノモノデアリマス、其三十九議會
  ニ於テ買上ゲマシタモノハ、買上ゲノ結果モ甚ダ圓滿ニ善良ノ成績ヲ見テ居
  リマス、此度モ此借入レテアル所ノ鐵道ヲ整理シテ統一イタシ、又運輸ノ便
  ヲ圖リタイト云フ爲ニ提案ヲ致シタノデアリマス、御審議ノ上、協賛ヲ與ヘ
  ラレムコトヲ希望イタシマス

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• 097・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致
  サセマス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  鐵道敷設法中改正法律案外一件特別委員
  侯爵細川護立君男爵小澤武雄君子爵松平直平君
  子爵新庄直知君古市公威君男爵島津久賢君
  石黑五十二君阪本 多之助君森田庄兵衞君

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• 098・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第十九、朝鮮事業公債法中改正法律案、
  第二十、樺太事業公債法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、是モ御異議
  ガナケレバ兩案トモ束ネテ問題ニ供シ、同一委員ニ付託イタシタイト思ヒマ
  ス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  朝鮮事業公債法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  朝鮮事業公債法中改正法律案
  朝鮮事業公債法中左ノ通改正ス
  第三項中「九千六百萬圓」ヲ「一億六千八百萬圓」ニ改ム
  樺太事業公債法案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正七年二月九日
  衆議院議長大岡育造
  貴族院議長公爵德川家達殿
  樺太事業公債法
  第一條樺太ニ於ケル事業費支辨ノ爲政府ハ五百五十萬圓ヲ限リ公債ヲ發
  行シ又ハ之カ繰替支辨ノ爲借入金ヲ爲スコトヲ得
  第二條前條ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額ヲ補塡スル爲必要アル場
  合ニ於テハ前條ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得本
  法ニ依ル公債又ハ借入金借換ノ爲必要アルトキ亦同シ
  附則
  本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣勝田主計君演壇ニ登ル〕

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• 099・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　朝鮮ノ事業公債ハ御承知ノ如クニ、其法定額ガ今
  日ノ所、九千六百萬圓ト云フコトニナッテ居リマス、然ルニ尙ホ威鏡線ノ完
  成、鎭海線、或ハ京釜線、京義線ノ改良、其他ノ工事ヲ致ス必要ガゴザイマ
  スルノデ、八箇年ニ亙リマシテ七千百三十七萬二千百圓ヲ使用イタシタイト
  云フノデアリマス、ソレ故ニ此公債額ヲ增加イタシテ一億六千八百萬圓ト致
  シタイト申スノガ法ノ精神デゴザイマスルノデ、御審議ノ上、御協賛ヲ願ヒ
  タウゴザイマス、併セテ其次ノヲ說明イタシマス、樺太拓殖ノ目的ヲ以チマ
  シテ、同島ニ於キマシテ二百五十三哩ノ鐵道ヲ敷設イタシタイ、之ニ要スル
  所ノ經費ガ千二百四十四萬圓要ルノデアリマス、而シテ公債計畫ト致シマシ
  テハ、此金額ヲ抑ヘマセズト、大正七年ヨリ同十一年ニ亙ル五箇年間ノ經費、
  卽チ千五百四十七萬四千圓ト云フモノヲ抑ヘマシテ、此公債發行額ト致シテ
  御協賛ヲ經タイノデアリマス、御審議ノ上、御協賛ヲ願ヒタウゴザイマス

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• 100・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマ
  ス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  朝鮮事業公債法中改正法律案外一件特別委員
  伯爵正親町實正君淺田德則君小松謙次郞君
  男爵毛利五郞君男爵眞田幸世君男爵岩倉道倶君
  男爵佐竹義準君麻生太吉君佐藤友右衞門君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004003242X00619180213&spkNum=100

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• 101・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　次ノ議事日程ハ決定次第御通知ニ及ビマス、本日
  ハ是ニテ散會
  午後四時二十八分散會

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