1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
大正八年三月一日午後一時三十分開議
出席委員左の如し
金杉英五郎君 丸山嵯峨一郎君 伊藤重君
井島義雄君 齋藤紀一君 小山松壽君
行徳建男君 唐端清太郎君 佃安之丞君
片木政治郎君 土屋清三郎君 横山勝太郎君
出席政府委員左の如し
内務省衞生局長 杉山四五郎君
文部省普通學務局長 赤司鷹一郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
結核豫防法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=0
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001・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 開會致シマス、本日
ハ結核豫防法ニ就テノ委員會ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=1
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002・小山松壽
○小山松壽君 「トラホーム」ノ方ハ別ニ御遣リニナリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=2
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003・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 別ニシヤウト思ヒマ
ス、混雜シマスカラ、片一方カラ片付ケテー発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=3
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004・小山松壽
○小山松壽君 本案ハ本會ニ於テ内務大臣ノ說明ニモ
アリマス通リ、結核病ニ依シテ年々死亡スル者ガ約八万人
以上アル、而シテ此數ヨリ推定シタル所ニ依レバ、五十萬
人以上ノ患者ガアッテ、而モ其病勢ハ年々甚ダ寒心スベキ
勢ヲ以テ進ムト云フ形勢デアリマス、是ハ衛生上ノ見地カ
ラ云ヘバ勿論、產業上カラ見テモ、又其結果トシテハ國防
上ニモ影響スルト云フコトデ、頗ル國民保健上ノ問題トシ
テハ重要ナル問題デアリマシテ、政府當局者ガ本案ノ如キ
重要ナル案件ニ其努力ヲ拂ハレルト云フコトハ、吾ミハ頗
ル同感ヲ持ツ者デアリマス、其點ニ於テ本員ハ先ヅ大體ニ
於テ、政府委員ニ其所見ヲ質シタイト思ヒマスガ、政府委
員ハ本案ニ對シテ、質問ニ入ル前ニ御說明デモアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=4
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005・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=5
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006・小山松壽
○小山松壽君 ソレデハ一應ソレヲ承ッテカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=6
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007・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 本議場ニ於キマシテ、當初
大臣ヨリ本案提出ノ理由ヲ說明セラレテ居リマス、而シテ
私ハ本委員會ニ於キマシテ、尙ホ少シク詳細ニ提案ノ理由
ヲ申上ゲテ、御審議ノ御參考ニ供シタイト存シマス、結核
諸病、殊ニ肺結核ハ、全世界到ル處殆ド此侵襲ヲ被ラザ
ルモノハ無クシテ、實ニ人類ノ動敵デアリマスル、所謂庶
民病「フオルクス、クランク、ハイテン」トデモ申シマセウカ、統
計ニ依シテ見マスルト、我國ニ於ケル肺結核死亡者ノ數ハ、
最近十箇年-ト申シマシテモ、明治三十九年カラ大正
四年ニ至リマスル其十箇年ノ平均ニ於テ、八萬五十九人
ー云フ著シイ數ニ達シテ居リマス、吾ニハ口ヲ開ケバ直グ傳
染病ト云フモノノ恐ルベキ事ヲ申シマスルガ、之ヲ一般傳
染病ニ比較シテ見マスルト云フト、旣往十箇年ニ於キマス
ル一般法定傳染病ノ死亡者ハ、平均一万八千六百六十
三人デアリマシテ、卽チ人口一万ニ對スル死亡割合ハ、約
四人强デアリマスルノニ、肺結核ノ方ハ其死亡ガ一万ニ對
シテ約十六人.卽チ四倍デス、法定傳染病ノ四倍ト云フモ
ノヲ示シテ居ル、デ尙ホ其一般法定傳染病ノ方ハ、流行ノ
消長ニ伴ヒマシテ、年々ニ多少ノ異動ガアリマスル、所ガ此
肺結核ノ方ニ至リマスルト云フト、年々階段ヲ昇ルガ如クニ
增加スルノ趨勢デゴザイマスル、試ミニ大正四年ニ於キマス
ル死亡者八万三千二百五十四人ト云フモノヲ、明治三十
九年ニ於キマスル死亡者七万七千四百六十九人ニ比較
致シマスルト云フト、實ニ十箇年ニ於テ九分、卽チ約一割ニ
近イ所ノ增加ヲ示シテ居ルト云フ次第デアリマス、世人ハ
急性傳染病ノ恐ルベキコトヲ知ラナイ者ハアリマセヌガ、獨
リ此肺結核ト云フモノヽ實ニ恐シイト云フコトヲ、サウ餘リ
感ジテ居ラナイカノヤウナ觀ガアルノハ、寧ロ吾とトシマシテ
ハ怪訝ニ堪ヘザル次第デアリマス、殊ニ此肺結核死亡者ノ
實數ハ、前ニ示シマシタ通リノ計數以外ニ、尙ホ夥多ナルベ
キコトヽ云フノハ、今ノ所デハ醫師ニ屆出ノ義務モ何モアリ
マセヌカラシテ、實際死亡スル時ノ診斷書ニ依ッテ之ヲ見ル
ト云フバカリデ、固ヨリ〓數數ニ於テハ、患者數ナリ死亡者數
ガ、此レヨリ多イト云フコトハ御了承ヲ願ヒタイ、而已ナラズ
肺結核ハ今尙ホ遺傳性ノ疾患デアルト云フヤウナ感ヲ持ッ
テ居ル者モアリマスルノデ、其患者ヲ出スコトヲ以テ、家系
ノ一大汚點ト云フヤウナ誤解カラ、隱蔽ニ汲々タルノ現狀
ニ在リマシテハ、實ニ其死亡者ノ非常ナル數ニ達シテ居ル
ト云フコトヲ斷言シテ憚ラナイモノデアリマス、肺結核豫防
ノ問題ガ、社會衞生上實ニ國家ノ一大急務デアルト云フ
コトハ、最早贅言ヲ要シマセヌ、殊ニ本病ノ慘害ヲシテ一層
激甚ナラシムルモノハ、其持質ト致シマシテ、壯者卽チ若者
ヲ侵スコトノ多イト云フコトヽ、經過ガ〓ネ慢性テアルコト
ト、執拗ナル傳染性ヲ有シテ居ルコト、及貧困者ノ斯病ニ
罹ルコトノ多キコトガ、特ニ注意ヲ要スル點ト考ヘマス、之
ヲ統計ニ徴シマスルト、十五歲乃至五十歲ノ者ガ、實ニ肺
結核死亡者ノ七割三分ヲ占メテ居ル、所謂十五歲乃至五
十歲ト云フモノハ、吾〓同胞ノ將ニ活動ノ時期ニ入ラント
シ而シテ最モ活動的ノ時代デアリマス、其者ノ死スル者ガ
實ニ七割三分ヲ占ムルニ至リテハ、實ニ國家ノ爲メニ由々
シキ大問題デアルト考へマス、殊ニ此老幼者ト申シマシテモ、
其肺結核ニ罹リマスルト云フコトノ憫ムベキコトハ、固ヨリ
同一デアリマスル、併ナガラ是ガ傳染ダニ防止スルコトヲ得
マシタナラバ、其害毒ハ患者ノ一身ニ止マッテ、累ヲ他人ニ及
ボスコトガ少ナイ、若夫レ此壯年者ノ死亡ニ至リマシテハ、
大ニ是ト趣ヲ異ニシテ居リマシテ、延テ其庇護ノ下ニ在ル
者ヲシテ、無辜ノ窮民ト爲サナケレバ已マザルノ結果ヲ招徠
致シマスル、加フルニ肺結核ノ經過ハ〓シテ慢性デアリマシ
テ、短クモ數年、長キハ十數年ニ及ビ、殊ニ其侵サレマスル
ヤ、壯者ニ最モ多イト云フコト、其間壯年者ガ活動能カヲ
奪ハレテ、收入ノ途ハ杜絕シ、一面療養ノ爲メニ、多額ノ消
費ヲ生ズト云フヤウナ次第デアリマスルカラ、先ツ富ンダル
者デナケレバ、到底其負擔ニ堪ヘナイ、故ニ中流以下ノ人ガ
一タヒ此結核ノ侵ス所トナリマシタナラバ、貧困窮厄ニ陷
ラザルハ、殆ド稀デアルト申シテ宜シカウラト思ヒマス、且ツ
肺結核ハ、執拗ナル傳染性ヲ有シテ居リマスルだ故ニ、一家
ノ生計ヲ支持スル所ノ壯者ガ、長ク斯病ニ侵サレテ、病床ニ
呻吟シ、而シテ其死スルヤ家財ハ旣ニ空シク、或ハ遺族ノ中
ニハ、既ニ病毒ニ感染セル者ガアルト云フヤウナ次第デ、是
ガ療養ノ足ラザル所ヨリ其經過ハ一層不良デアッテ、其家
族モ亦遂ニ、不幸ニシテ死ノ轉歸ヲ見ルニ至リマスルコト
ハ、比々皆ナ然ラザルハ莫シト云フ有様デアリマス、斯ノ如
クシテ貧困彌〓加ハリ、遂ニ一家ノ離散絕滅ニ歸スルモノ
其例少シトシマセヌ、實ニ我カ同胞ノ爲メニ、一日モ坐視
スルニ忍ビナイ事柄デアリマス、斯ノ如ク肺結核ハ、一方ニ
於テ中流以下和平ノ一家ヲ驅ツテ、貧困窮乏ニ陷ラシム
ル原因ヲ成シマスルコト稀デナイト共ニ、貧困者ヲ侵スコト
ガ多イ傾向ガアルノデアリマス、蓋シ本病ノ發生及傳染病
ハ、住居、榮營、職業等ニ密接ノ關係ヲ有シテ居リマシテ、
是等ノ劣惡ナル狀態ニ在ル貧困者ガ、多ク本病ニ罹ルノハ
數ノ免レナイ所デアリマス、今恩賜財團濟生會ニ於ケル東
京市ノ診療成績ニ鑑ミマスルト云フト、患者ノ一割ハ肺結
核ニシテ、其死亡者ハ總死亡者ノ四割四分ヲ占ムルガ如
キハ、其一斑ヲ窺フコトヲ得マス、之ヲ以上ノ諸點ニ依テ
見マスルニ、肺結核ノ豫防問題ハ、啻ニ衞生上ノ重要ナ
ルニ止リマセズシテ、社會政策上將夕人道上、一日モ看
過スルコトノ出來ナイ、極メテ緊要ノ問題ニ屬スルヲ知ルコ
トガ出來マス、尙ホ之ヲ經濟上ヨリ觀察シマスト、肺結核
患者五十万人ガ-假リニ此死亡數カラシテ推定シマシタ
所ノ五十万人ガ、假リニ一人一日療養費七十錢ヲ要スル
ト致シマスレバ、一箇年實ニ一億二千七百五十万圓ト云
フ不生產的消費ヲ要スルノミナラズ、他方ニ於テ男女老幼
ヲ通ジテ、平均一日三十錢ノ生產ヲ爲シ得ルモノトスレバ、
肺結核患者ガ生產的能力ヲ奪ハレタルノ結果ハ、五千四
百七十五万圓ノ損失ニナリマス、故ニ肺結核ノ爲メニ國
家ノ被ル經濟上ノ損害ト云フモノハ、合計一億八千二百
五十六万圓ト云フ莫大ナル額ニ達スルノデアリマス、是レ
肺結核ノ豫防ト云フ事ガ、又經濟上ノ問題デアルト申ス
所以デアリマス、又肺結核ノ豫防ハ、一國强兵ノ國防ノ問
題ト密接ナル關係ヲ有シテ居リマス、我ガ陸海軍ニ於テ患
者ノ發生、死亡、除隊ニ依ル兵員減耗中、肺結核及胸膜
炎ニ依ル者ガ、陸軍ニ於テハ是ハ大正五年ノ調デアリマス
ガ、胸膜炎二割二分、肺結核二割二分ニシテ合計四割四
分ニ當リマス、海軍ニ於テハ同年、卽チ大正五年ニ於テ肺
結核三割八分、胸膜炎二割一分弱ヲ占メテ居リマシテ、
合計五割九分、卽チ半數以上ヲ占メテ居リマス、是故ニ
肺結核ノ豫防ハ之ヲ兵備ノ上ヨリ見ルモ、一日モ忽諸ニ附
スベカラサル重要ナ案件デアリマス、肺結核ガ國家社會ニ
及ボス害毒ノ激甚ナルハ、前來中述ベタ通リデアリマスル
ガ故ニ、旣ニ歐米先進國ニ於キマシテハ、數十年來官民一
致協力シテ熱心ニ是ガ豫防ニ努メ、就中其施設及成績ノ
最モ見ルベキモノハ、我ガ同盟國ノ英吉利、及敵ナガラ獨逸
ノ二國デアリマシテ、豫防法規ノ制定、貧民住宅ノ改良、貧
民生活狀態ノ改善等、根本的豫防方法ニ力ヲ用ヰルノミナ
ラズ、英吉利ニ於テハ結核豫防國民協會、獨逸ニ於テハ獨
逸結核豫防中央委員會ノ如キ有力ナル大團體ヲ組織シ
マシテ、肺結核豫防ノ〓究、指導、獎勵ノ任ニ當ッテ居リ
マス、又多數ノ肺結核治療院、療養所、森林學校、結核外
來診察所、肺結核保護〓導所、田舍園、休暇圍、囘復患
者森林保養所ノ施設ガ、續々トシテ彼處此處ニ設置セラレ
マシテ、其豫防及治療機關ノ完備スルコト、實ニ羨望ニ堪
ヘナイモノガアルノデアリマス、是等豫防施設ノ結果ニ就テ
見マスルニ、英國ニ於テハ今ヲ去ルコト七十餘年前、卽チ千
八百三十八年頃ニ於テ、肺結核死亡者ハ人口一万ニ付
三十八人强デアッタノガ、今ヤ僅々十人餘ニ減少シテ居リマ
ス、卽チ約四分ノ一ニ減少シテ居ルト云フ實況ヲ示シテ居
リマス、又獨逸ニ於テハ、千八百七十六年ヨリ千八百八十
六年ニ至ル十年間ニ、三十人乃至三十二人デアッタノガ、
千九百九年ニハ十五人ニ減ジ、之ヲ二十年前ニ比較スレ
バ實ニ半數以下ニ減ジ、尙ホ最近ノ統計ニ依リマスルト、獨
逸國ノ「プロイセン」ノ如キハ、人口一万ニ付十四人弱ニ減ツ
テ居リマス、然レドモ其成績尙ホ英吉利ニ及バナイコトノア
ルノハ、蓋シ獨逸ニ於デハ重症結核ニ對スル處置ガ、英吉
利ニ於ケルガ如ク完全デナク、初期患者ノ治療ヲ目的トス
ル療養所ヲ主トスルニ、基因スルノデハアルマイカト考ヘラ
レマス、此點ハ夙ニ獨逸識者ノ鑑ミル所トナッテ、近來ハ大ニ
重症患者ノ爲メニ病院ヲ設ケ、開放結核患者ノ收容ニ努ム
ルニ至リマシテ、千九百七年頃マデハ一七、〇〇ヲ呈セシ
モノガ、千九百十年ニハ一五、二一ニ減ズルニ至リマシタガ、
尙ホ先程申上ゲマシタ十人弱ニ達スルニ至ッタノデアリマ
ス、飜ッテ我國ニ於ケル此肺結核豫防ノ設備ヲ見マスルニ、
肉乳ヨリ來ル結核ノ危險ニ對シテハ、畜牛結核豫防法ヲ
制定シ、結核豫防上最モ緊要ナル咯痰ノ取締ニ付テハ肺
結核豫防ニ關スル内務省令ガアリマス、公衆ノ結核豫防
思想ノ普及及啓發ニ付テモ、ソレ〓〓訓令スル所ノモノガア
リマス、今ノ總理大臣原敬君ガ曾テ內務大臣デアリマシタト
キニ立案セラレマシテ、兩院ヲ通過シ、御栽可ノ上ニ御發
布ニナリマシタ、大正三年法律第十六號ヲ以テ、人口三十
万以上ヲ有スル都市ニ於テハ、主務大臣ガ結核療養所ノ
設置ヲ命ズルコトノ現行法ガアリマスルガ、迚モ此人口三
十万以上ノ市ニダケ結核療養所ヲ設ケシメテ居ルト云フヤ
ウナコトデアッテハ、徹底ヲ缺クノデアリマス、仍テ保健衞生
調查會ニ於キマシテハ、此結核ノ爲メニ一部門ヲ構成致シマ
シテ、此方面ニ關スル專門家ガ集ッテ、大ニ調查スル所ノモノ
ガアリマシテ、而シテ一面ニ於キマシテハ、彼ノ英吉利ノ國民
豫防協會、獨逸ノ國民的大委員會ノヤウナ、丁度ソレト相
並ブヤウナ意味合ニ於テ、結核豫防協會ト云フモノガ日本
ニモ設置セラレマシタ、此豫防協會ニ於テハ、度こ聯合會ヲ
各所ニ開イテ、各方面ニ於ケル所ノ「オーンリチー」ノ人〓ガ
攻究ノ結果、略〓〓日提出シマシタル所ノ案ノヤウナモノガ
出來テ居リマシタガ、其等モ大ニ參酌致シマシテ、我ガ內務
省ニ在ル所ノ保健衞生調査會ニ於テ、尙ホ十分ニ調查攻
究ヲ進メマシタ結果、一定ノ基礎的材料ガ蒐リマシタ、ソレ
ヲ根據トシテ此法案ヲ制定シマシタノデアリマスルガ、此法
案ノ要點ハ、先ヅ結核ノ何デアルカト云フコトノ意義ヲ明ニ
シ、而シテ消毒其他豫防方法ノ指示ノ義務ヲ醫師ニ負ハ
セ、醫師ガ申告ノ義務ヲ負フコトニ致シ、行政官廳ノ消
毒其他豫防方法施行事項ヲ認メ、又行政ニ官廳結核豫防
上必要ナル事項ヲ施行スルノ權限ヲ付與シ、而シテ其費
用ノ關係ヲ明ニシ、又衞生上不良ナル建造物ノ使用制
限、是ガ禁止及補償ノ規定ヲ設ケ、尙ホ人口五万以上ノ
都市及主務大臣ノ特ニ必要ト認ムル所ノ公共團體ニ、此
結核療養所ヲ設置セシムルノ事項ヲ規定シ、而シテ結核療
養所經費ハ、國ガ其建設擴張ニ付テ二分ノ一ヲ、補助シ、經
常費ニ付テハ六分ノ一ヲ補助スルト云フヤウナ、所謂國ト
公共〓體ト相俟ッテ其施設經營ニ當ルコトヲ規定致シマシ
ク、尙ホ三十万以上ノ都市ニ結核療養所ヲ造リマシテカ
ラ、段々現行法ノ不備ナルコトニ鑑ミマシテ、結核療養所ニ
入リマシタ爲メニ、自活スルコトガ出來ナイト云フヤウナ者
ガアルコトモ慮リマシテ、其生活費ノ補給ノコトヲ規定致シ
マシタ、尙ホ健康診斷所ノ施行、物件廢棄ノ費用、及補償
金、生活補助費等ノ國庫補助抔モ規定致シマシタ、尙ホ官
廳ヤ官公立ノ學校ヤ、サウ云フヤウナモノニ就キマシテモ、此法
律ニ準據シテ、結核豫防ノ方法ヲ講ズルコトフ規定致シマ
シタ、尙ホ醫師ガ其指示ノ義務ヲ怠リ、及申告ノ義務ヲ怠
リマシタ者ニ對スル所ノ處罰ヲ規定シ、消毒其他豫防方法
事項ヲ命令シマシタ、其違反者ニ對スル所ノ處罰ノ規定ヲ
モ設ケマシタ、要スルニ固ヨリ政府ハ、此法案ヲ以テ滿足ス
ルモノデハアリマセヌ、先ヅ差向ノ所、取政ヘズ之ヲヤラネバ
ナラヌト云フ所ノ事項ヲ、結核豫防法トシテ制定シタニ過
ギヌノデアリマス、固ヨリ政府ハ他ニ於テ早期診斷所ヲ造
ラシメルトカ、或ハ段々大方志士仁人ノ活動ヲ促シテ、或ハ
寄附金等ニ依シテ、海外ニ於ケルガ如ク、保護〓導所、田
舍園ト云フヤウナモノヲモ造シテ、卽チ民間ノ活動ヲ促シテ、
吾とハ諸君ト共ニ、此法案ヲ成立タシムルト同時ニ、一 一
ニ於テハ民間ニ於テ-此法ト云フモノヲ政府ガ出シテ兩
院ガ協賛ヲセラレルト、而シテ裁可公布ヲ見ルト云フ場合
ニ於キマシテ、冀クハ之ヲ機ト致シマシテ、民間ガ結核ノ實
ニ恐シイト云フコトヲ深ク自覺シ、大方仁人諸君ノ活動振
起ヲ促シテ、以テ官民所謂協力一致ノ力デ、遂ニ吾ミノ勁
敵タル結核病ト云フモノヽ蔓延ヲ豫防シ、又現在スル所ノ
モノヲ治療スル、サウシテ以テ吾〓同胞ノ爲メ、又大キク言
ヒマスレバ、社會人類ノ爲メニ盡シタイ、サウ云フ風ニスル
コトハ、恰モ先進國ニ於ケルガ如ク致シタイト云フノガ、此
法案ヲ提出致シマシタル所以デゴザイマス、冀クハ愼重御
審議ノ上ニ-先程ハ小山君カラ特ニ又此法ニ就テ御賛
同ノ熱心ナル御演說ガアリマシタガ、誠ニ意ヲ强ウスル次
第デアリマス、何卒滿堂ノ諸君、此問題ノ實ニ重大ナルニ
御考慮ヲ下サレマシテ、適當ニ御審議アランコトヲ希望致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=7
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008・小山松壽
○小山松壽君 唯〓政府委員ノ御說明ニ依リマシテ、大
體ノ此立法ニ關スル御精神ハ了解致シマシタ、私ハ元來
素人デアリマシテ、結核其ノモノニ對スル智識ハ固ヨリ貧
弱デアリマスルガ、專門家ノ御〓究ヨリモ、唯〓ノ御說明ニ
アリマシタ通リニ、本案ハ社會生活ノ上カラ、先進國ノ例
モ御引ニナリマシテ、主トシテ英吉利等デハ、貧民ニ關シテ
ノ法規等モアルヤウニ聽取リマシタ、又本案制定ノ結果ニ
依リマシテ、民間ノ活動ヲモ起シ、而シテ此豫防ノ精神ヲ
促スコトニ就テモ努力シタイ、斯ウ云フ御話デアリマスガ、
尙且此患者ガ貧者ニ多クシテ、而シテ其性質ガ慢性デアッ
テ、壯丁ヲ多ク侵シテ居ル〓尙ホ傳染性ヲ有スル、又一方
ニ於テ遺傳性ノ如キ誤解ヲ以テ隱蔽ノ虞ガアリマス、卽チ
病勢ヲ益〓盛ニナラシムルト云フコトノ虞ガアルト一云フコト
ノ御話ガアリマシタガ、吾〓民間ニアル結核豫防等ノ事ニ
付テノ講演、若クハ其事業ヲ援ケルコトニ就テノ相談ニモ、
從來與ッタコトガアリマシテ、極メテ社會ノ幸福ヲ增進スル
上ニ必要ナリト考ヘテ居ッタノデアリマスガ、今ノ御話デ、消
極的ニハ患者ノ爲メニ一億數千万圓ノ費用ヲ要スル、積
極的ニハ其生產費ヲ五千万圓以上消耗スルコトニナルト
云フ、誠ニ恐ルベキ事ト思ヒマス、ソコデ本案ノ制定ノ趣旨
ト本案ノ内容ヲ分ケテ御說明ニナリマシタガ、私ハ今政府
委員ノ說明セラレタル如クニ、社會政策上ノ一事業トシテ、
又民間ノ活動ヲ起サシムル-促進スル方法トシテ、更ニ
國民ノ衞生思想ノ涵養ニ對シテ、法案其ノモノヽ消極的ノ
豫防ヲスルト云フコトモ必要デアリマスガ、積極的ニ國民思
想ノ涵養ニ努メマシテ、而シテ相俟ッテ其目的ヲ達スルト云
フコトニ付テノ、將來ノ御方針ハ如何ヤウニ爲サル積リデア
ルカト云フコトヲ、第一ニ承リタイト思ヒマス、昨日ノ委員
會デ委員長ヨリ、赤司學務局長-文部當局者ノ御出席
ヲ促シテ置キマシタガ、未ダ御著席ガアリマセヌガ、私ハ國民
衞生思想ノ涵養ニ對スル中デ、第一ニ文部當局者ニ對シ
テ學校衞生ニ對スル文部當局ノ所見如何ト云フ事ト、第
二ニハ唯〓說明ニアリマシタ軍隊ノ例ヲ御引ニナリマシテ
ノ御說明デアリマシタガ、陸軍ニ於テ一割二分、海軍ニ於テ
一割八分ト云フ、由々シキ死亡率ヲ示シテ居ルノデアリマス
ガ、此軍隊衞生ニ對シテ、當局者ハ如何ナル考ヲ持ッテ居ル
カト云フコトヲ併セテ御尋シタイト思フノデアリマス、陸軍
當局者ハ此席ニ居ラレマセヌカラ、是ハ他ノ諸君カラモ同
樣ナ請求ガアラウト思ヒマスカラ、此場合質問ヲ保留シテ
置キタイト思ヒマス、第一ニ先刻申上ゲマシタ衞生思想ノ
普及ニ就テ、將來如何ナル方針ヲ執ラルヽカト云フコトヲ
御尋致シマス、ソレデ少シ數字ヲ擧ゲテ御尋シタイト思ヒマ
スガ、一ツ宛分ケタ方ガ宜カラウト思ヒマスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=8
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009・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 其方ガ宜シウゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=9
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010・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 小山君ヨリ此法案ニ就テ
ハ、大體ニ於テ御同感ノ趣ヲ御陳述ニナリマシタ、而シテ進
ンデ國民衞生思想ノ積極的涵養ニ付テ、如何ナル抱負ト
云フカ、所見ガアルカト云フ御尋デゴザイマス、了承致シマジ
タ、此精神病法案ト云ヒ、或ハ今日御審議ヲ仰ギマスル結
核豫防法案ト云ヒ、引續イテ御審議ヲ願フ「トラホーム」豫
防法案ト云ヒ、多ク消極的ノ法案デアリマスガ、進ンデ積極
的ニ國民ノ元氣ヲ皷吹シ、國民ノ心身ノ健全ヲ進ムル上ニ
於テハ、一番重要ナル基礎ハ國民衞生思想ノ普及デアリマ
ス、小山君ノ言ハレマスル通リ政府モ同感デアリマス、此普
及涵養ニ付テハ、是マデ地方長官ニ當局大臣ヨリ或ハ訓
令ヲ發シ、或ハ依命ノ通牒ヲ出シマシテ、兎ニ角衞生思想
ノ普及ト云フ事ニ努メルト云フコトハ、殆ド月並ト云フト弊
ガアリマスガ、年々地方長官會議ニ於テ此事ノ申聞ケラレ
ヌコトハ無イノデアリマス、而シテ之ニ對シマスル地方官憲
ノ爲ス所ヲ見レバ、大體其訓示ノ趣旨ニ則ッテ或ハ衛生展
覽會ヲ開キ、或ハ他ノ活動寫眞ノ方法ニ依ルトカ、先ヅ眼
カラ見セテ衞生思想ノ普及ヲ圖ルト云フコトヲヤッテ居リマ
ス、或ハ又衞生局デ作リマシタ掛圖、斯ウ云フ所カラ傳染ス
ルノデアル、罹ッタラ斯ウ云フ風ニシロト云フコトヲ繪ニ畫カ
セマシテ、之ヲ掛圖ニシテ全國ニ廻シテ居リマスガ、先ヅ目カ
ラヤッテ注意ヲサセルヤウニスルト云フヤウナ、卑近ナ手段ヲ
執リツヽアルノデアリマス、又吾〓他面ニ於キマシテ、私ハ結
核豫防協會ノ理事ヲ致シテ居リマスガ、此協會ニ於キマシ
テハ、常ニ小山內薰君ノ校閱ノ下ニ、某文學者ノ著作デア
リマスル所ノ小說ヲ芝居ニ仕組ミマシテ、結核ハドウ云フ風
ニスレバ傳染スル、斯ウ云フ風ニスレバ癒ルノデアルト云フコ
トヲ、是モ目カラ元シテ、衞生思想ト云フモノヽ普及スル方
法ヲ圖ッテ居リマス、併ナガラ政府ハ目カラ見テ、衞生思想
ヲ自發的ニ促スト云フ方法ダケデハ滿足スルモノデハアリマ
セヌ、此度衞生局總掛リデソレ〓〓ノ専門家ニ懇囑シテ、公
共衞生講習會ナルモノヲ、先月ノ十七日カラ大日本私立
衞生會ノ會堂デ開キマシテ、地方ノ衞生ノ局ニロッテ居ル
主任者ヲ招徠致シマシテ、集リ來ル者百二十五名デアリ
マス、是等ヲ先ヅ衞生ト申シマシテモ随分方面ガ廣ウゴザイ
マスルガ、大體衞生ニ關スル事務取扱ノ上ニ於テ衞生思
想ノ普及改善ニ處スル上ニ於テ、色〓ノ方面ニ亘ッテ彼等
ノ頭ノ開發見學ニ依シテ、此方面カラ進メテ行クコトヲ現ニ
ヤリツヽアルノデアリマス、曩ニ私ヨリ申シテ置キマシタコト
デ、偶、唯今小山君カラ國民衞生思想ノ涵養ニ關スル御
話ガアリマシタカラ重ネテ申シマスガ、吾〓衞生當局ハ、此
衞生講習會ヲ終了シマスレバ、協力シテ最モ通俗的ニ國民
衞生思想ノ開發ニ資スベク、國民衞生思想ノ普及ヲ圖ル
ベク底ノ目的ノ下ニ、一衞生小册子ヲ作リタイト考ヘテ居リ
さく、而シテ出來マシタラ巖谷小波山人ノヤウナ-少年
文學的ノモノデ、二三學年ノ者ニ見セテ、直グ讀メルヤウナ
小册子ヲ作リタイト思フテ居リマス、此小册子ハ殆ド獨逸
ニ於ケル「カイゼルリツヘー、ゲズントハイトブユーフライン」ト
申シマスル獨逸帝國ノ衞生、或ハ亞米利加ノ衞生協會ノ
編纂ニ掛ル「ハウ、デウ、リブ」如何ニシテ生活スベキヤ、是等
ノ例ニ傚ヒマシテ作リタイト思フテ居リマス、獨逸及亞米
利加ニハ斯ウ云フ小册子ガ津〓浦ミマデ行ッテ、殆ド小學兒
童以上ノ者ハ、此書ヲ皆ナ讀マザル者ナク、是ニ依ッテ衞生
思想ノ普及ヲ圖シテ居リマス、其上ニ鑑ミマシテ以テ小册子ヲ
編纂シタナラバ、之ヲ各町村役場、各小學校等ニ配布シテ、
學校ト云フ方面カラ先ヅ直接兒童ニ衞生思想ヲ與へ、間接
ニ兒童ヲ通ジテ家庭ニ此衞生思想ヲ普及セシムルヤウナ方
法ヲ執ッタラドウデアラウカト考ヘテ居リマス、尙ホ此國民衞
生思想ノ涵養ニ付テハ、近ク京都市ニ於テ衞生博覽會ヲ開
催スルガ如キ、衞生局ハ側面カラ斯ノ如キ企ノ、甚ダ國民ノ
衞生思想ノ開發ニ必要ナルコトヲ考ヘテ、便宜ヲ供與シツ
ツアル次第デアリマス、要スルニ何トカ目ナリ耳ナリカラ之
ヲ注入シテ、ドウカ斯ウ云フヤウナ消極的衞生ノ方策ト相
俟ヲテ、積極的衞生思想ノ開發ト、希クハンレニ依シテ戰
後ノ所謂世界改造ト云フ重大ノ任務ニ當ルベキ國民觀
念ヲ奮ヒ起サウ、尙ホソレト同時ニ元氣ヲ活潑ナラシメ、體
力ヲ旺盛ナラシメ、以テ此當面ノ急務ニ應ジタイト云フ考
デアリマス、〓要右樣ナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=10
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011・小山松壽
○小山松壽君 將來ノ方針或ハ抱負トデモ申シマスカ、凡
ン政府ノ意ノ在ル所ハ分リマシタガ、何レモ經費ニ關スル事
デアリマスカラ、其事ハ後ノ場合ニ併セテ御尋致シマスガ、次
ニ本案ヲ能ク見マスルト、病毒傳染ノ媒介トナルベキ事項
ノ制限、若クハ禁止ト云フコトノ條文ガアリマスガ、是ニ付
テ事ハ頗ル重大ト思ヒマスカラ、御趣旨ノ在ル所ヲ承リタイ
ト思ヒマスガ、尙ホ此法文中ニ「客ノ來集ヲ目的トスル場所
ニ付病毒傳播ノ媒介トナルベキ事項」云々トアリマス、シテ見
ルト朝夕客ノ送迎ヲ致シテ居ルト云フヤウナ業態ニ從事ス
ル名は、及其傳染ノ虞アリトスル業態、此中ニハ旅店、料理
店、理髪店ト云フヤウナモノヲ指示シテアリマスガ、其他貸座
敷業ト云フヤウナモノハ、最モ病毒ノ蔓延ヲ來スト云フコト
ニ付テノ恐ルベキ業態ト私ハ思フ、斯樣ナ媒介トナルベキ職
業ニ從事シテ居ル者ヲ一箇所ニ集中シテ置クコトニ付テ
ハ、随分學者ノ間ニモ色と議論ガアリ、又內務當局ニ於テ
モ御〓究モアラウト田心ヒマスガ、私ハ此事ニ就テ一種ノ見解
ヲ有シテ居ルト思ッテ居リマスガ、當局者ハ此貸座敷業ノ如
キ、最モ病毒ノ事ニ就テ恐ルベキ區域ハ、將來集娼制ノ方
針ヲ執ラルヽカ、或ハ散娼制ノ方針ヲ執ラルヽカ、例ヘバ他
ノ事ニ就テ申シマスルト、其業ニ從事スル者ノ關係上、又當
然ノ職業上黴毒ノ-此病毒ノ媒介ヲ爲スト云フコトデ、
丁度娼妓若クハ藝妓、或ハ關西地方ニ於ケル雇女酌婦ト
藝妓ノ間ヲ行キ居ル者、若クハ素人ト藝妓ノ間ヲ行ク女優
ト云フヤウナ、一々例ヲ擧ゲマスレバ澤山アリマス、事ハ少シ
花柳病ノ方ニ偏スルカ知リマセヌガ、結局此問題ニ當ラウ
ト思ヒマス、内務省ハ斯ウ云フ御〓究ガアルカノヤウデ、
數日前ノ新聞ニアリマシタガ「藝妓ト酌婦ニ一一枚鑑札」ト
云フ題デ、ソレニハ斯ウ云フコトガ書イテアル「現在全國ニ
在ル四万五千餘人ノ酌婦ト五万三千餘人ノ藝妓ハ風紀
ヲ紊ス事夥シク且ツ當局ガ掃滅シタリト看做シツヽアル密
娼婦約二万餘ハ再ヒ頭ヲ擡ケ益〓風紀ヲ紊亂スルニ至リ
タレバ之ニ對シ嚴重ナル取締ヲ斷行スルノ必要ヲ認ムルニ
至リ當局年來ノ希望夕ル集娼制ヲ斷行スル事ニ略〓内
定シ近ク內務省ニテ是ガ發布ヲ見ルヘシト云フ其內容
ノ主ナルモノハ從來ノ藝妓酌婦ニ對シ二枚鑑札卽チ藝妓
鑑札ト娼妓鑑札酌婦ハ酌婦鑑札ト娼妓鑑札ヲ受クル事
トナリ從ッテ强制檢徵ヲ實行サルヽモノナリト云フ然レドモ
藝妓ニ對シテハ多少ノ議論アリタル結果實際藝ヲ以テ左
褄ヲ取ルモノニ對シテハ從前通リ一枚鑑札トナシ俗ニ云フ
不見轉藝妓ナル者ハ强制的ニ二枚鑑札ヲ與へラルヽモノナ
リト云ヘバ現在約五万三千餘ノ藝妓中約十分ノ八マデ
ハ右ノ二枚鑑札ヲ附セラルヽニ至ル譯ナリ而シテ右省令ノ
發布ト共ニ日本全國二亘リ實ニ十四万八千餘人ノ公娼ガ
實現サレ從來ノ私娼婦密娼婦ハ根本ヨリ剿滅サルヘシ」ト
斯ウ云フヤウナ記事ガ新聞ニ現レテ居リマス、是ハ先刻來
當局者ノ說明サレマシタ所カラ見マシテモ、又社會組織ノ
上カラ見マシテモ、公衆衞生ノ上カラ見マシテモ、固ヨリ是
等ニ就テ考慮アルベキ筈ト思シテ居ル、國民ノ衞生思想ヲ普
及セシメテ、官民一致協力シテ此目的ヲ達スル上カラ見マ
シテモ、又唯〓將來ノ抱負ヲ御述ニナリマシタ所謂國民衞
生讀本ト云フヤウナ、通俗ナ讀本ヲ以テ、其病毒ノ恐ルベキ
コトヲ知ラシムルト云フヤウナ方針カラ見マシテモ、是等ニ
對スル取締ガ、私ハ焦眉ノ急ヲ要スルト思ッテ居ル、先刻散
娼制ト密娼制ノ事ヲ御尋申シタノハ、密娼制度ヲ執ル
ト、何レモ一方ニ其廓ヲ設ケテ、此所ニ總テノ者ヲ住居セシ
メテ、而シテ一面ニ於テハ、風娼上及國ノ體面上ドウデアラ
ウカト思フヤウナ風俗ヲ露骨ニ現シテ居ル、又一方カラ申ス
ト、其所ニ朝夕多數ノ客ガ送迎レレ居居リマスカラ、隨テ病
毒ノ傳播ノ虞モアリ、又感染シ易イコトニモナラウト思ヒマ
スカラ、何方カト云ヘバ散娼制ヲ執リマシテ、而シテ一方ニ
嚴重ナル取締ヲスル方ガ、寧口目的ヲ達スル上ニ於テ、至大ナ
ル便利ガアリハシマイカ、又昨今都市ノ上デ議論ニナッテ居
リマス料理屋、待合、若クハ之ニ附屬シテ附イテ廻ッテ居ル
藝妓、或ハ關西方面ノ雇女、酌婦ノ類ト云フヤウナ者ハ
或市ノ地區ヲ限ッテ、サウシテ其方面ニ營業ノ許可方針ヲ
執レバ、風紀上ノ事モ、又衞生上ノ事モ、取締リシ易イト
云フ方針デ、〓究サレテ居ル所モアルヤウニ私ハ聞及ンデ居
リマスガ、是等ニ對シテ當局者ハ如何ナル御方針デ如何ナル
取締ノ下ニ本案ノ目的ヲ達セラレルヤウニ御努力ニナル御
考デアルカ、此事ヲ先ヅ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=11
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012・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 本案第五條ノ規定中ニ
「業態上病毒傳染ノ虞アル職業ニ從事スル者」云々、又「結
核患者ニ對シ業態上病毒傳播ノ虞アル職業ニ從事スルヲ
禁止スルコト」、或ハ「旅店、料理店、理髮店、其ノ他ノ客ノ來
集ヲ目的トスル場所ニ付病毒傳播ノ媒介トナルヘキ事項
ヲ制限シ若クハ禁止シ」云々ト云フコトガ書イテアリマス、唯
今小山君カラ其ノ他ノ客ノ來集ヲ目的トスル場所ハ蓋シ
色〓アラウガ、貸座敷等ヲ含ムモノデナイカ、而シテ其前提
ノ下ニ、一轉シテ散娼、密娼、其他孰レニ依ッテ此法案ト相
俟ッテ、適當ナル所ノ措置ヲ執ル考デアルカト云フ御質問ト
心得マスガ、如何ニモ「其ノ他ノ客ノ來集ヲ目的トスル場
所」ノ中ニハ、御尋ノ通リ貸座敷ノ如キハ、殊ニ著シキ其例
ノ一ツデアリマス、併ナガラ實ハ此問題ト固ヨリ關係ガ密接
デアリマスガ、散娼、密娼、其孰レヲ可トスルカニ就キマシテ
ハ、目下保健衞生調査會ノ花柳病ト云フ部門ニ於キマシ
テ、専門家ノ間ニンレ〓〓調査講究ヲ進メツヽアルガ、固ヨ
リ是等ノ問題ハ、啻ニ花柳病學ニ通ジテ居ル所ノ專門家ノ
人ダケノ考ヲ以テハ、解決シ得ラレルモノデハアリマセヌ、仰
セノ如ク是等ハ政治家、學者、實際家、各方面ノ智識ガ集ツ
テ解決サレル所ノ問題ト心得マスガ、免ニ角保健衞生調査
會ナルモノガ、其大體ノ基礎トナルベキ所ノ散娼密娼ノ事
ニ就テ、先ヅ一通リ講究ヲ盡シ、而シテ一定ノ成案ガ出來
マシタラ、廣ク之ヲ開放致シマシテ、所謂識者ノ意見ヲ參酌
シ、而シテ後ニ徐口ニ此問題ヲ解決致シタイト云フ考ヲ以
テ、目下折角調査ヲ進メツヽアリマス、今ノ所デハ散娼可ナ
ルカ、密娼可ナルカ、其孰レニ依ッテ此法案ト相俟ッテ、病毒
ノ傳染、或ハ結核方面、或ハ花柳病ノ方面フ如何ニシテ防
グカト云フコトハ、實ハ遺憾ナガラ其點ハ調査ガ未了デア
リマス、而シテ新聞ニアリマシタ藝妓二枚鑑札云々ニ付テ
ハ、全然ソレハ何等カノ間違ッタ報道ト存ジマス、是ハ此機
會ニ於テ明ニ是正致シマス、固ヨリ前段申上ゲルヤウニ、散
娼密娼ノ問題ノ前提タルベキ所ノ問題ガマダ未解決デア
リマスノデ、直グ斯ウ云フ事ニ至ルガ如キコトハ、マダ何等
調査セラレテ居リマセヌ、併シ唯今小山君カラ寧口散娼ノ
制ヲ執ッテ、結核病毒ノ傳播ノ虞ヲ少カラシムル方ガ宜クハ
アルマイカト云フ御意見ハ、當局ト致シマシテハ大ニ參考
ト致シマシテ難有承ツテ置キマス、大體右ニ御了承ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=12
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013・小山松壽
○小山松壽君 本案ニ取締上ノ事ニ就テ、行政官廳ノ
處分等ノ規定モアリマスガ、此行政官廳ノ取締ニ關スル處
分、若クハ醫師ノ義務、殊ニ醫師ノ義務ヲ怠タ場合、若ク
ハ醫師ノ指示シタ事項ニ違反シタ場合ニ、本案ノ終リニ於
テ罰則ヲ規定セラレテ居ルノデアリマスカラ、此所ハ餘程注
意ヲ要スル事ト思ヒマスガ、衞生ノ事ニ就テ各府縣ノ警察
部ニ衞生課ガアリマシテ、ソレ〓〓衞生事務ノ事ハ致シテ居
ルヤウデアリマスガ、警察事務ノ一般ノ上カラ見マシテ、衞
生ノ事ハ餘リ活動的デナイヤウニ吾ニハ見受クルノデアリマ
ス、警察ノ方面カラ見テ、治安警察若クハ風紀ノ警察、或ハ
近クハ交通警察ト云フヤウナモノガ出來テ居ルヤウデアリマ
スガ、衞生警察ト云フコトニ就テハ、當局者ガ先刻來述ベラ
レル程努力ヲサレテ居ルノニ、地方ニ於ケル衞生警察ノ方
面ハ、活躍シテ居ラヌト思フノデアリマス、既ニ本委員會ニ
於テ決議ニナリマシタ精神病院法ト云ヒ、又同時ニ付託サ
レテ居ル「トラホーム」ノ法律案ト云ヒ、又本法律案ノ如キ、
國民ノ保健上ニ就テ實ニ必要ナル事デ、斯ル事ハ多々益〓
行フコトガ宜カラウト思ヒマスガ、當局者ハ地方ノ
警察ニ於ケル、衞生事務取扱ノ實際ニ當ル所ノ巡查ト云
フモノニ對シテ、今一段ノ考慮ヲ費サレル必要ハ認メナ
イデアラウカ、巡查ノ執務振リヲ見マスルト、多クハ治安警
察ノ方面ニ力ヲ盡シ、少シ政治上ノ問題デモアレバ、全力ヲ
盡シテ政治家、有志者等ヲ訪問シテ步ク、殆ド戶別的ニ訪
問シテ其意見ヲ尋ネ、其情報ヲ得ヤウトスル、又風紀ノ事ニ
就テハ、實ハ彼レ程マデニシナクテモ宜カラウト思フ程ニ嚴
重ニシ、無斷家宅ニ侵入スルヤウナコトマデシテ居リマス、衞
生ノ方面ニ於テモ、若シ彼ト同樣ニ努力ヲシテ居ッタナラバ、
モット成績ガ擧ッテ居ルデアラウト思ヒマスガ、ドウモ此方面
ノ努力グ缺ケテ居ルヤウニ思フノデアリマス、隨テ本案ノ如
キモノヲ施行シテ、衞生思想ヲ普及シ、法ノ目的ヲ達シヤウ
ト思フナラバ、衞生警察ノ方面ニ於テ、尙ホ一段ノ考慮ヲ
要シナケレバナラヌト思ヒマスガ、此點ニ就テ何等カ御考慮
中デアリマスカ、之ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=13
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014・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 地方ノ衞生警察ニ當リマ
ス機關タル巡査抔ノ活動ガ、ドウモ他ノ交通警察、或ハ治
安警察、風紀警察ト云フヤウナモノニ比シテ活動ガ鈍イヤ
ウデアル、之ニ就テ尙ホ一段ノ考慮ヲ要スルモノガアラウト
信ズルガ、政府ハ何カ考ヘテ居ラヌカト云フ御質問デアリマ
スガ、實ハ御申間ノ通リ、地方ノ衞生ハ警察部ノ中ニ一課
トシテ設ケラレテ居ルノデアリマス、此事既ニ衞生當局者ト
シテハ、餘程改善ヲ要スル根本問題デハアルマイカト考ヘテ
居リマス、嘗テ先·年行政整理ノ際ニ、衞生局フ廢シテ警保
局ノ一課トシヤウト云フ如キ、實ニ無定見ト申サウカ、妄斷
ト申サウカ、遺憾ナル議論ガ起リ掛ッタコトガアリマシタ、併
シ政府内ニモ相當有識者ガアリマシテ、其事ハ沙汰止トナ
リマシタガ、吾ミハ衞生局ナルモノガ、唯、單純ニ衞生警察ト
云フ方面カラノミ之ヲ見ラルヽヤウデハ困ル、ソレヨリモモッ
ト超越シタル範圍ヲ有ッテ居ルモノデナケレバナラヌ、幅ニ於
テモ深サニ於テモ、モット「スペース」ノアルモノニシテ、此衞生
ノ本能ヲ發揮シナケレバナラヌト考ヘテ居リマス、之ニ就テ
ハ昨年諸君ヨリ御提出ニナリマシテ、滿場一致ヲ以テ衆
議院ヲ御通過ニナリマシタル、衞生行政中樞機關擴大統一
ニ關スル建議案、是ハ諸君ガ時局ノ重大ナルニ鑑ミテ、戰
時中若クハ戰後ニ於テ、此社會ノ改造ト云フコトハ、結局
衞生ノ方面カラ進メテ行クノ外ハナイト云フ御意志カラ、
此重要ナル建議案ヲ御通過ニ相成ッタノデアラウト思ヒマ
シテ、爾來政府ハ之ニ對シマシテ愼重ニ調查シ、諸君ノ誠
意ニ對スルノ決心ヲ以テ、熱心ニ〓究ノ步ヲ進メツヽアルノ
デアリマス、其成案ハ大體ノモノハ出來テ居リマスガ、未ダ
之ヲ諸君ノ前ニ提出スルコトノ出來ナイノヲ遺憾ト致シマ
ス、兎ニモ角ニモ今日ハ、之ニ對スル政府ノ大方針ヲ立テナ
ケレバナラヌト云フ立場ニ立ッテ居ルノデアリマスカラ、益〓其
調査ノ步ヲ進メテ、蓋シ遠カラザル將來ニ於テ、何等カノ
形ヲ以テ、諸君ノ前ニ提案スルコトニナラウト思ッテ居リマ
ス、乃チ衞生ノ事務ハ、之ヲ內務省ノ一局ト云フコトヨリ超
越致シマシテ、衞生行政ノ機關ガ、モット大キナ機關トナッテ
活動スルコトノ出來ルヤウニナルコトハ、蓋シ遠カラザル中ニ
現レルデアラウト考ヘテ居リマス、サウシマスルト中央ト相
俟ッテ、地方ニ於ケル衞生機關ノ活動ニ向ッテモ、今小山君
ノ仰セノ通リ、均シク深甚ノ注意ヲ以テ之ガ解決ニ當ラナ
ケレバナラヌ、如何ニ中央ダケ頭ガ大キクナッテモ、地方ノ機
關カ麻痺シテ居ッテ、十分ナル活動ガ出來ナイヤウデハ、甚
ダ衞生行政ノ機能ノ缺陷デアルト存ジマス、故ニ其場合ニ
於キマシテハ、警察部ノ一課トシテ、衞生課ガアルト云フヤ
ウナコトデハ不十分デアリマスカラ、斯ル現狀ヲ改善致シマ
シテ、何等カ適當ナル衞生行政機關ヲ設置スル必要ガアリ
ハセヌカト、實ハ是ハマダ定ッタル內務省ノ案デハアリマセヌ
ガ、私一個トシテハサウ云フコトニ考ヘツヽアル次第デアリ
マス、而シテ差向ノ所デハ、ドウモ地方ノ警察部ノ一課デア
ルモノデアルカラ、矢張地方衞生行政ニ從事スル者ガ、單ニ
衞生警察ノミヲ主トスルト云フヤウナ、誤リタル考ヲ持ツ虞
モアリマスカラ、此度内務省ニ於テ公衆衞生講習會ト云フ
モノヲ開催致シマシテ、府縣ノ衞生ノ局ニ當ッテ居ル人ミノ
中カラ、代表者ヲ二三人ヅヽ出サセマシテ、先ヅ衞生ノ局ニ
當ル人とノ頭カラ改メテ掛ラナケレバナラヌト云フコトデ、サ
ウ云フ手段モ致シテ居リマス、殊ニ此時局ノ重大ナル場合
ニ當ッテ、如何ニシテ吾〓ガ國民ノ元氣ヲ鼓舞作興スベキ
カ、如何ニシテ國民心身ノ改善ヲ圖ルベキカト云フコトハ、
御同樣本氣ニナッテ掛ラナケレバナラヌ事デアリマスカラ、今
ヤ各講師ハ皆ナ一致ノ決心ヲ以テ、其等ノ事ヲ注入シツヽ
アル次第デアリマス、寔ニ小山君ノ仰セノ如ク、地方ニ於ケ
ル衞生行政機能ノ十分ニ振ハナイト云フコトハ遺憾トスル
所デアリマス、併ナガラ之ニ向ッテ政府ハ銳意改善刷新ヲ加
ヘル考ヲ持ッテ居リマス、右ニ御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=14
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015・小山松壽
○小山松壽君 唯〓ノ御答デハ、色ミノ御所見ハアルヤウ
デアリマスガ、本法ヲ施行シテ其目的ヲ達スルニハ、甚ダ遺
憾ノ事ガ多イヤウデアリマス、是ハ又何レ後ニ申上ゲル機會
ガアラウト思ヒマスガ、更ニ損害ノ補償及國庫支辨地方費
ノ事ニ關係シタ條項ガアリマス、第二條以下第六條マデハ
取締ニ關スル法規ト思ハレマス、就中五條六條ハ、是ハ人
權及財產ノ事ニ付テノ規定ガアリマシテ、頗ル關係ガ重イ
ト思ヒマス尙ホ此事ニ付テハ訴訟等ノ事ノ規定モアリマス
ガ、此本法ヲ施行シテ將來國庫支辨トナルベキ經費ハ幾
何ヲ要スルト云フ御考デアルカ、又國庫支辨ノ經費ノ割合カ
ラ算出致シマシテ、地方費ノ支辨ニドノ位ナ費用ヲ積算シ
得ルモノデアルカ、又第六條ノ如キハ「豫防上必要ト認ムル
トキハ採光換氣其ノ他ノ關係ニ於テ衞生上不良ナル建
物ノ使用ヲ制限シ又ハ禁止スルコトヲ得」トアリマスレバ餘
程重大ナ事ニナリマス、ト云フノハ既ニ御承知ノ如ク先年
長キ問題デアリマシタ工場法ヲ施行シマシテ、其工場法施
行ノ結果トシテハ、工場建設等ノ場合ニ於テ、當然其工場
若クハ警察ノ方面カラ是等ニ付テノ交涉ヲシタ結果、工場
法ノ規定ニ依ッテ其認可ヲ得ルヤウニナッテ居リマスルガ、是
等ノ一旦認可ラシタモノニ對シテ、更ニ其豫防上ノ必要ト
シテ、制限若クハ禁止ヲスルト云フヤウナ事ガアリマスルト、
一方ニ於テ認可ヲ得、一方ニ於テ更ニ斯樣ナ處分ヲ受ケル
ト云フコトニナリマスルト、非常ニ迷感ヲ其所ニ來スコトデ
アラウト思ヒマス、ソレカラ更ニ此第六條ニ「補償金ヲ交付
ス」トカアリマスガ、此補償金ト云フモノハ、ドウ云フ期間、
若クハドウ云フ方法ニ依ッテ此補償金ヲ案出スルノデアル
カ、若シ其損害ノ補償ニ對シテ、其補償金ノ調停ノ調ハザ
ル場合ニ於テハ、如何ニシテ其補償ノコトヲ定メラレルカ、
此事ハ甚ダ不明ナ廉多シト思ヒマスカラ、此點ヲ承リタイ
卜思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=15
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016・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郎君) 御尋ノ第一點カラ御答致
シマスガ、此法ニ依リマシテ愈〓之ヲ實施シマスルト云フ
曉ハ、人口五万以上ノ市ガ全國ヲ通ジテ三十六市ゴザイ
マス、併ナガラ等シク五万以上ト申シマシテモ、大小ノ區別
ガゴザイマスノデ、大體精神病院ノ如ク之ヲ人口十万以上
八万乃至十万、六万乃至八万、六万以下ト云フヤウ二甲
乙丙丁ト云フ四階段位ニ分ッテ、サウシテソレニ對シマスル
費用ヲ豫定スルノ考ヲ持ッテ居リマス、而シテ甲ノ部ニ屬ス
ル市ニアッテハ、先ヅ當局ノ認メマスル豫定ハ、建設費ガ二
万八千五百圓、乙ニ於テハ二万千三百七十五圓、丙ニア
リマシテハ一万六千六百二十五圓、丁ニアリマシテハ一万
四千二百五十圓、ソレデ此總體ガ合計百四十一万五千五
百圓、而シテ其建設費ノ二分ノ一ヲ國庫ガ補助致シマスカ
ラ、國庫負擔ガ七十万七千七百五十圓、而シテ甲乙丙丁
ニ通ジマシタル三十六市ノ負擔ガ、等シク結局七十万七千
七百五十圓、而シテ經常費ニ於キマシテハ、甲ノ分ニ屬スル
市ニアッテハ、年々九千八百五十五圓、乙ニアリマシテハ
七千三百九十圓、丙ニアリマシテハ五千四百七十五圓
丁ニアリマシテハ四千六百五十圓ト云フヤウナ負擔ニナリ
マス、而シテ此經常費ニ對シテハ、其中國庫ガ其六分ノ一ヲ
負擔シテ、之ヲ補助スル譯ニナッテ居リマス、ソレカラ第六條
ノ關係ニ於テ、工場法ノ事ノ關係ヲ御質問ニナリマシタガ、
是ハ農商務省トモ能ク打合セマシタノデアリマシテ、工場
法ニ規定スル所ノ部分ニ付テハ工場法ニ據ル、工場法ニ
規定シテ無イ所ノ肺結核ニ關スルモノハ、此本法ニ據ル、
斯ウ云フコトニ御諒承ヲ願ヒタイ、ソレカラ補償金ノ事ニ
付テノ御尋デゴザイマシタガ、補償金ハ評價人ノ意見ヲ徴
シマシテ、地方長官ガ之ヲ決定スルノ考ヲ持ッテ居リマス、
而シテ之ニ異議アル者ハ內務大臣ニ申立テマシテ、內務大
臣ガ之ヲ決定スルノ段取ニ致シタイト云フ考ヲ持ッテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=16
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017・小山松壽
○小山松壽君 何レ委シイ事ハ又逐條審議ノ場合ニ御
尋致シマスカラ、大體ダケニ致シテ置キマス、此第五條ノ第
二號ニハ、學校ノ〓員ノ方ヲ含ンデ居ルモノデアリヤ否ヤ、
更ニ健康診斷施行ノ事ガアリマスルガ、此健康診斷ハドノ
位ノ程度ニ健康診斷ヲスルノカ、ンレカラ又其健康診斷ヲ
行フ所ノ目的ヲ達スルト云フコトニ付テハ、ドレダケノ範圍
ニマデ及サレルト云フコトデアルカ、其點ガ不明デアリマス、
前刻申シタ通リ旅店、料理店、理髮店ト云フヤウナコトノ
一例ヲ擧ゲテ示サレテアリマスガ、學校ノ〓員幼稚園ノ媬
母、或ハ市中ニ多ク見マスル栽縫職ヲ致シテ居ル者ガ、弟
子ヲ取ッテ居ルト云フヤウナ場合ト云フヤウナコトヲ擧ゲテ
見マスルー、随分病毒傳播ノ上カラ虞アル職業、及ビ其場
所ガ多イト思ヒマス、是等ノ點ハドレダケ位ノ程度デドレダ
ケ位ノ範圍ニ行ハレルト云フコトノ方針デアルヤ否ヤ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=17
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018・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 第五條第二號ニ付キマシ
テ、學校〓員ニ及ブカト云フコトノ御質問デアリマスガ、御
尤ナル御質問デアリマス、法文ヲ正面カラ解釋シマスレバ、
直チニ其疑ガ起リマスルガ、併シ此立法ハ公務員ハ之ヲ包
含シナイノ考ヲ持ッテ居リマス、而カ致シマシテ職務法ニ基
ヅキマシテ、所謂文部省令デ學校ノ〓員ノ事ニ付テハン
レー〓規定ガアリマ、スルカラ、ソレニ從ハシメタイト云フノ考
ヲ持ッテ居リマス、次ニ健康診斷ニ付テノ御質問、是モ御尤
ナル御質問デアリマスルガ、大體身體ノ上半身、殊ニ胸部ヲ
專門的ニ診斷スルト云フ位ノ考ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=18
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019・小山松壽
○小山松壽君 更ニ此設置ノ條項ガアリマスルガ、此所デ
一ツ御尋シテ置キタイト思ヒマスノハ、結核療養所ヲ設置
致シマスル當局ノ希望トモ見ラルヽ所ハ、先ヅ地形カラ申セ
バ西北ニ山ヲ負ウテ居リ、而シデ東南ノ方ガ開放サレタ、成
ベク光線及ビ氣温ト云フヤウナコトヲ考慮サレテ其地形ヲ
求メラレ、更ニ又其療養所ノ附近ニハ、或ハ森林ヲ有シ、若
クハ森林ノ無キモノハ樹木ヲ要スルト云フヤウナコトガ、療
養所ニ於テノ必要ナル希望條件トデモ申シマスカ、云フヤウ
ナ方針ヲ執ッテ居ラルルヤウデアリマスガ、サウ云フ場所ヲ選
定致シマスルト、是ハ五万以上ノ都會許リデナク、其以下ノ
部落デアリマシテモ、隨分絕好ノ地形ト見ラレルノデアリマ
スカラ、多クハ別莊等ニ當テラレル方面地方ガ多イト私ハ
思フノデアリマス、サウスルト此患者ヲ收容スル方カラ見マ
スレバサウ云フ絕好ノ場所ヲ希望シ、其別莊ナドヲ置カ
レルト云フ方ノ側カラ見レバ、折角其所ニ精神上ノ慰安
ヲ求メヤウトシテ居ル所ヘ、サウ云フ物ヲ置カレルノデアルカ
ラ、随分迷惑ヲスル、斯ウ云フコトデ、ドウモ竝ビ立タヌコト
ガ往々アリハシマイカ、現ニ此三十万以上ノ都市ニ置クト
云フ中デモ、目下猶ホ敷地等ノ定マラヌモノガアリマス、又
將ニ定マラントシテモ、是等ノ苦情ヨリ種々ナル今紛議ヲ起
シテ居ル處モアリマス、是等ノ事ハ一面カラ言ヘバ憐ムベキ
同胞ノ爲メニスルノデアリマスカラ、健康狀態デ而モ資產ヲ
持ッテ居ッテ、別莊デモ持ッテ居ルヤウナ人ハ、其犧牲ニナルベ
キダト云フコトノ自覺ヲ促シタイノデアリマスガ、人情ハサウ
モ往カヌ場合ガアル、サウスルト其療養所ヲ置カレル爲メニ、
其附近ノ別莊地ガ衰頽スル、折角地所ヲ選定シタモノデア
ルガ、別莊ヲ建テルコトヲ見合セルト云フコトニナルト、其附
近ニ直接間接ニ損害ヲ及ボスト思ヒマス、其場合ニ於テ政
府トシテハ間接ノ損害デアルカラト云フコトデ、是レ已ムヲ
得ヌ事ト看做サレルノデアルカドウカ、ソレカラモウ一ツハ唯
今申上ゲマシタ何レモ地形上絕好ノ土地デアルト云フ關
係カラ、國庫支辨、卽チ二分ノ一ノ建設費ノ國庫支辨ノ補
助ヲ受ケマスル金額デハ-豫算デハ到底堪ヘ得ラレヌト
云フ事情ガ起ッテ參ラウト思ヒマスガ、左樣ナ場合ニ於テハ、
尙ホ其凡ン定メラレタル豫算以外ニ、ドウシテモ其場所ノ
選定上必要ナリトセラレタトキニハ、豫算外ニ更ニ其補助
ヲ增額セラレルト云フ風ノ希望ヲ以テ-御意見ヲ以テ尙
ホ其場所ヲ選定シテ、完全ナルモノヲ期シタイト一云フ御意見
デアルカ否ヤト云フコトヲ御尋シタイト思ヒマス、モウ私ノ質
問ハ終リマスガ、ソレカラ次ニ勅令ノ事ガアチラコチラニアリ
マス、是ハ精神病法ノ場合ニモ申上ゲマシタガ、色こ細カ
イ事ノ質問ヲ致シテ參リマスル場合ニ、此勅令等ノ事デ御
定メニナルト云フコトハ、案デモゴザイマスレバ、其勅令ヲ拜
見致シマスルト、此質問ヲ省クコトガ出來、隨テ議事ノ進行
上宜シキコトト私ハ思ヒマスカラ、若シ勅令事項等ノ大
凡-無論未定稿デハアリマセウガ、アリマシタナラバ御示
ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ終ニ於テ先刻此法案トハ關
係ノ無イ事デアリマスガ、併シ公衆衞生ノ事カラ關係アルモ
ノトシテ御尋シマスガ、先刻質問ニ對スル御答ニ、保健衞生
調査會デ花柳病ノ事ニ關シテ、ソレ〓〓〓調査中デアル、〓
究中デアルト云フ御話ガアリマシタガ、私等ノ思フノニ、既ニ
政府當局ノ殊ニ杉山君ノ如キ、衞生上ニ關スル非常ナル御努
力、此御立場カラ見マシテ精神病院法案ヲ出サレ、此結核
ニ關スル法案ヲ出サレ、續イテ「トラホーム」ニ關スル法案ヲ
出サレテ、何レモ是ハ社會政策上ニ最モ必要ナル努力ト私ハ
認メルノデアリマスカラ、更ニモウ一段進ンダ所ノ花柳病ニ
關スル法案ト云フモノヲ、近ク御提案ニナルト云フ風ナ御
考ノ下ニ、銳意調査ヲ進メラレテ居ルカドウカト云フコトヲ
承リマシテ、大體ノ私ノ質問ヲ終ラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=19
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020・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 第一ノ御尋ハ此法ヲ施行
スルニ際シマシテ、直チニ起ル所ノ問題、結核療養所ト云
フモノヲ設置スルノニ、其場所ヲ良好ナラシメントスレバ、其
場所ハ多クハ別莊地ニ適スルト云フ處デアッテ、利害關係
ガ牴觸スル、其困難ハ如何ニシテ之ヲ解決スルカト云フヤ
ウナ御趣旨ノ質問ト心得マスガ、一應ハ御尤デアリマスガ、
實ハ近ク大阪デハ御案內ノ通リ市外三里許リノ刀根山ト
申ス處へ、大阪市ノ結核療養所ガ出來テ居リマス、唯今小
山君ノ御述べノ通リ初メ地ヲ此刀根山ニ相スルヤ、其所在
ノ村民ハ實ニ驚キノ眼ヲ以テ之ヲ見、又恐レノ眼ヲ以テ之
ヲ眺メテ、再三反對ノ陳情ヲシ、幾度ガ妨害トハ申シマセ
ヌケレドモ餘程此刀根山ハ地ヲ相シテ大阪人ガ之ヲ造上ゲ
テ了フマデハ、中〓一方ナラヌ所ノ苦心ヲシタコトハ事實デ
アリマス、併ナガラ一度刀根山ノ療養所ガ出來マシテ、是ハ
唯今小山君ノ御述ノヤウニ、松林等モアリマスシ、誠ニ高燥
デモアリ、一寸彼處ニハ日本ニ餘リゴザイマセヌ所ノ「リーギ
ハーレ」トカ獨逸デハ申シマスサウデアリマス、彼處デハ空氣
ヲ始終吸フヤウニ、唯〓上ニ覆ヒダケアッテ、下ニハ「ベンチ」ノ
ヤウナモノヲ拵ヘテ、自由ニ大空ノ大氣ヲ呼吸シ得ルヤウ
ナ、而シテ下デハ日光ニ浴スルト云フヤウナ「リーギハーレ」ト
云フヤウナモノガ、此處ニハ初メテ用ヰラレテ居ルコトデ、是
ハ結構ナコトデアリマス、ンンナ物ヲ置クニ適スルヤウナ、衞
生上ニ誠ニ適當ナ所デアリマス、兎ニ角大阪ノ療養所ガサ
ウ云フヤウナ良イ地形ノ所ニ出來テ、造ルマテハ非常ニ反
對デアリマシタガ、出來テカラハドウデアルカト云フト、神戶
ニ居ル或外國人ガ直グ眞向フニ別莊ヲ建クタ、サウスルトハ
ハア成程空氣デ傳染スルモノデナイ、病院デハ十分ニ汚物等
モ皆消毒シ去ルカラ、何等其眞向フニ別莊ヲ建テテモ、傳染
等ガアルモノデナイ、流石ニ先進國ノ人ハ衞生思想ハ違ッテ
居ルト云フヤウナ事ヲ考ヘテ、ソレカラ我邦人ノ內デモ續々其
附近ニ別莊ヲ建テ行クヤウナ實況デアリマス、實ニ我日本
ノ同胞ノ內ニハ、小山君ノ仰セノ如ク結核療養所ヲ造ルコ
トヲ非常ニ忌ムベキコトノヤウニ考へ、現ニ横濱等デ反對ノ
陳情ヲ持出サントシタ、其日ニ設立ノ場所ノ事ニ付テハ許
可指令ヲ發シマシタカラ、來タ時分ハ指令ガ下ッテシマッタノ
デ、彼等ハ空シク手ヲ引イテ退リマシタ、ドウモサウ云フ事ガ
アリマスノハ、根本的思想ガ貧弱ノヤウデアルカラ、サウ云フ
ヤウナ事ノ無イヤウニ、當局者モ指導シテ往キタイト思ヒマ
スガ、殊ニ結核療養所設置ノ主體ハ、五万以上ノ市デアリ
マスガ、必ズ市內ニ此場所ヲ限ルト云フ決シテ方針デハア
リマセヌノデ、適當ノ場所ハ市外デモ必ズ認ムル、現ニ大阪
ノ刀根山ハ三里市カラ郊外ニナッテ居リマス、サウ云フヤウ
ニ致シマスレバ、大體ニ於テ先ヅ差支ナク、結核療養所ヲ
設置スルコトガ出來ルト云フ考ヲ持ッテ居リマス、ソレカラ
次ノ御尋、實行上ニ於テドウシテモ是ダケ無ケレバナラヌト
云フヤウナ場合、私ガ最初申上ゲマシタヤウナ豫算範圍デ
實行ノ出來ナイ時分ニハ、尙ホ補助ヲナスカト云フ御質問
デアリマスガ、是モ誠ニ御用意深キ御質問ト存ジマス、質
此方ハ傳染病豫防費ノ補助ノ方ニナッテ居リマス、補助費
トナッテ居リマスカラ、政府ハ若シ地方費ニ於テドウシテモ是
ダケ足リナイト云フ場合ハ、補助費デアリマスカラ、隨時大
藏省卜交涉致シマシテ、國庫ノ支出ハ自由ニ出來マスト云
フ考ヲ持ッテ居リマス、ソレカラ次ニ勅令案ノ事ハ了承致シ
マシタ、大體未定稿デアリマスガ、纏メマシテ皆様方ノ御手
許へ御參考マデニ提供シタイト考ヘマス、ソレカラ尙ホ花柳
病ノ事ヲ段々調査シテ居ルサウデアルガ、花柳病豫防法ヲ
偏ムト云フ考ヲ持ッテ居ルカドウカト云フ點デアリマスガ、實
ハ此點ニ付テハ未ダ散唱密娼ト云フ事ノ問題モアリマス
ガ、其方面ノ事ガ未グ幾多ノ攻究スヘキ案件モアリマスカ
ラ、或ハ花柳病豫防法ト云フヤウナモノニナッテ、其一部分
ガ現レル事ニナラウカト考ヘマスガ、今マデノ所ハソレ程的
確ナル條件ヲ生ジテ居リマセヌ、右樣御諒承ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=20
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021・小山松壽
○小山松壽君 唯〓ノ地方ノ支辨ニ、卽チ二分ノ一ヲ負
擔シナケレバナラヌガ、其場合ニ若シ其豫算內ニ於テ其事業
遂行ヲ仕兼ネル場合萬已ムヲ得ズンバ更ニ支辨ヲ厭ハヌ、
又別ニ出ス法アリト云フ御答辯デアリマスガ、サウ致シマス
ルト、其療養所ヲ建設スル場所ガ、唯〓杉山君ノ御說明ノ
通リ高燥ノ地ヲ撰ブト云フヤウナ時ニナリマスト、此處ニ通
ズル道路等ノ新設若クハ改修ノ必要ガ起ラウト思ヒマス
ガ、是等ハ政府建設ノ費用ニ當然伴フベキ支辨ト了解シテ
置イテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=21
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022・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 御問ノ通リデアリマス、刀
根山ハ現ニ左樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=22
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023・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 小山君、一寸申上
ゲマス、唯〓文部ノ方ノ政府委員ガ見エマシタ、貴方ハ何カ
御質問ガアルト云フ御話デアリマスガ、序ニナスッテハ如何デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=23
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024・小山松壽
○小山松壽君 ソレデハ私ガ續ケテ致シマスガ、先刻質問
致シマシタ國民衞生思想涵養ノ事ノ一般方針ト云フ事ヲ
承リマシタ場合ニ、其內ノ一トシテ、學校衞生ニ關シテ文
部當局ノ御意見ヲ承リタイト云フコトヲ申上ゲマシタ所、
御出席ガアリマセヌカラ、保留シテ置イタノデアリマスガ、之
ニ對シテ文部當局ハ如何ナル方針ヲ有セラルヽヤ、申上ゲ
ルマデモナク結核ノ病毒ヲ有シテ居ル者ニシテ、其職業ニ從
事シテ居ル者ノ內、近來小學〓員ニ甚ダ其數多キヲ認ムル
ノデアリマス、先刻杉山政府委員ノ說明中ニ、營養不良ト
云フコトモ其第一點トシテ御擧ゲニナッタノデアリマスガ、小
學〓員ハ由來地方財政ノ關係等ヲ以チマシテ、薄遇ニ居ツ
夕人々デアリマス、近頃ニナリマシテ此物價騰貴等ノ關係
ト、又他ノ職業ニ從事シテ居ル者ノ權衡上、ソレ〓〓中等
程度以下ノ〓育ニ從事シテ居ル者ノ待遇ヲ改メルコトニ
ナリマシテ、旣ニ此頃ノ本會ニ於テモ協賛ヲ致シマシタ地
方稅制限緩和ノ方法等モ其一ツデアルノデアリマスガ、要
スルニ小學校〓員ハ諸君モ御承知ノ如ク餘リ好遇シテ居
ラレヌ、随テ此營養等ニ對シテノ不良モアリ、此〓員中ニ
本法ニ該當スベキ者ガ甚ダ多イト思フノデアリマス、是等ハ
一般衞生上ノ事ヨリ考ヘマシテモ、又國家社會ノ此國民的
見地カラ考ヘマシテモ、殊ニ又多ク壯丁ガ此病ニ罹ルト云フ
ヤウナ統計上ノ基礎カラ考ヘマシテモ、實ニ由々シキ事ト思
フノデアリマス、而シテ唯今此第五條第二號ニ該當スル規
定中ニ、〓員ヲ含ムヤ否ヤト云フコトヲ質問シ夕所ガ、杉山
君ハ公務員ハ之ヲ含マズ、更ニ文部省令ニ於テ之ニ對スル
相當ノ規定ガアルト云フ御答デアリマシタガ、是等ノ事ハ多
ク說明ヲ要セズシテ、文部當局者ハ能ク御承知ノ事ト思ヒ
マスカラ、此小學校〓員ニシテ本法ノ規定ニ該當スル者ニ
對スル御方針ヲ、此場合ニ伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=24
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025・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 肺結核ノ危險デアリマスル
コトハ、今更申上ゲルマデモナイ事デアリマス、ソレカラ又此
小學校〓員ニ肺結核患者ガゴザイマスルト云フ事モ、亦甚
ダ悲ムベキ事實デゴザイマス、ソレデ唯今文部省ニ於キマシ
テ取ッテ居リマスル方針ハ、各府縣ニ近來學校衞生主事ト
云フモノガ大分設ケラレルヤウニナリマシテ、之ヲ文部省ト
シテハ大ニ奬勵ヲシテ居ルノデアリマス、是等ノ者ト連絡ヲ
取リマシテ、而シテ學校〓職員ニ成ベク此身體檢查ナドノ
事ヲ一方ニ於テハ奬勵致シテ參ッテ居リマス、ソレカラ又一
面ニ於キマシテハ、此身體檢査ノ結果、或ハ其他ノ場合ニ
於キマシテ、小學校〓員ガ結核ナドニ罹ッテ居ルヤウナ者ヲ
發見シタ場合ニハ、特ニ-是ハ餘程以前カラ出來テ居リ
マスガ、小學校〓員ニ疾病治療料ヲ給スルコトニナッテ居ル
ノデアリマス、此小學校〓員ノ疾病治療料ノ殆ド大多數
ハ、肺結核ノ〓員ヲ治療スル、或ハ退職サセ治療サセルト云
フコトニ使ッテ居ルノデアリマス、シレハ此狀況ヲ簡單ニ申シ
マスルト、大正五年ニ於テハ肺結核ノ爲メニ休職ヲ命ゼラ
レタ所ノ小學校ノ〓員ガ百一人アリマス、之ニ疾病治療料
ヨ給シマシタ金額ガ、七万三千六百圓許リニナッテ居リマス、
ンレカラ又退職ヲ命ジマシタ〓員ハ五百九十五人、之ニ支
出シマシク金額ガ十三万二千八百九十餘圓ト云フ金額ニ
ナッテ居ルノデアリマス、先ヅ斯樣ニ一面ニ於テハ肺結核ノ
〓員ノゴザイマスル際ニ、是ガ治療ニ努メ、或ハ之ヲ成ルベ
ク學校ノ生徒カラ遠ケルヤウニ致シテ居リマス、又是レト同
時ニ段々此師範學校ノ人學ノ際ニ於テ、身體檢査ノ規
定ヲ餘程勵行致シマシテ、サウシテ苟モ此結核ノ徵候ア
ル者ハ相當ノ措置ヲスルヤウニ、一面ニ於テハ致サセテ居ル
ノデアリマス、先ヅ是ガ今日現在ヤッテ居リマス狀況デアリ
マスルガ、唯〓御尋ノ肺結核豫防法案ト關聯致シマシテ、
第五條ノ第二號ニ關シテドウ云フ風ニスル積リデアルカト
云フ御尋デコザイマスガ、是ハ私ノ方ニ於キマシテハ、御承
知ノ通リ學校衞生ノ委員會ガゴザイマス、其方ニ於テ唯今
丁度學校傳染病ノ規則ヲ審議サレマシテ、ンレガ大體纏ッ
テ唯今成案ニナリツヽアル所デゴザイマス、ンレニ依リマスル
ト、大體ヲ申シマスレバ此學校〓職員ノ肺結核ニ關シマシ
テ傳染ノ危險ノ有ル者ハ、矢張成ベク治療ヲ致サセマシ
テ、サウシテ傳染ノ虞ノ有ル者ハ登校スルコトヲ止メルト云
フヤウナコトニシタイト考ヘテ居リマス、大體此法案トサウ
違ヒハナカラウト、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=25
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026・小山松壽
○小山松壽君 唯〓文部當局ノ御答ニ依レバ、〓員ノ死
亡シタル者百一名、退職ヲ命ジタル者五百九十何名ト云
フコトデアリマシタガ、全國ノ小學校〓員ノ總數ハ一万五
千以上アリマスガ、ソレカラ見マスト、又實際ニ於テ地方デ見
テ居リマスルノカラ、其比例ヲ取リマスト、此死亡ノ場合ハ
別デアリマスガ、退職ヲ命ジタル者五百九十何人ト云フ者
ハ、嚴重ニ身體檢查ヲシマシテ退職ヲ命ズルト一云フコトニ至
リマシタ最少限度ノ者デアッテ、尙ホ嚴肅其健康診斷ヲ致
シマヌレバ、ヨリ以上此退職ヲ命ズベキ境遇ニ在ル者ヲ發
見スルコトナキカドウカ、近頃小學校〓員ガ他ノ戰時ノ影
響等ノ關係モ勿論大部分デアリマセウガ、是等ノ關係上轉
職ヲスル者ガ多イ、隨テ此小學校〓員補充ニ困難ヲシテ居
ル、現ニ先頃豫算會デモ問題ニナツテ居ッタヤウデアリマス
ガ、近年師範學校へ入學スル者ノ數ガ段々減シテ居ル、殊ニ
東京ノ某師範學校アタリデハ、甚ダ入學志望者ノ少數ナノ
ニ困却シテ、一回二回若クハ三回ト、其入學志望者ヲ募集
スルト云フヤウナコトモアッタヤウデアリマス、シテ見マスル
ト、一方ニ於テ缺員ヲ生ジ、之ヲ補充スルニ困難ヲ感ズル、
東京市ノ如キ非常ニ困難ヲ感ジテ居ル、一方ニ於テ師範
學校入學志望者ガ多クナイト云フコトニナリマスト、勢ヒ國
民〓育ニ大切ナル任務ヲ持ッテ居ル者ガ、病毒ヲ有シテ居
ル者デモ、万已ムヲ得ズ之ヲ〓職ニ當ラシムルト云フコトガ
往々アラウト云フ懸念ヲ持ッテ居ルノデアリマス、是等ノ事ハ
洵ニ已ムヲ得ザル事デアリマスガ、併ナガラ一方カラ見レバ、
或ハ地方ノ〓育費ノ關係上、校舍ノ增築新築モ出來ヌト云
フヤウナ關係上、二部〓授ト云フ場合ニモ立至ッテ居ルノデア
リマスカラ、已ムヲ得ザル事トハ言ヒナガラ、見ス〓〓結核ノ
患者デアルト云フ者ヲ以テ、大切ナル小國民ニ接セシムルト
云フコトハ、甚ダ憂ヲ將來ニ貽スモノデアルト田心ヒマスルガ、
是等ニ對シテ尙ホ十分御調査モゴザイマセウト思ヒマスル
ガ、此場合承テテキキスレバ至極〓育界ノ爲メニ喜ブベキ
事ト思ヒマス、尙ホ附加へマスガ唯〓學校衞生會ノ方デ御
〓究ニナッタ成案ガ略〓出來テ居ルト云フコトデアリマスガ、
御差支ナケレバ御元ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=26
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027・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 唯〓ノ御話ノ中ニ私ガ申
シ損ッタノカドウカ、一寸間違シテ居リマシタ點ガゴザイマス
カラ正誤致シテ置キマス、私ガ唯今申上ゲマシタ中ニ、肺結
核ノ爲メニ死亡シタル者ガ百一人ト申上ゲタヤウニ御話ガ
アリマシタガ、サウ申シタノデハナク、休職ヲ命ゼラレタル者ガ
百一人、退職ヲ命ゼラレタル者ガ五百九十五人、或ハ私ノ
申上ゲ違ヒデアッタカモ知レマセヌガ、ソレナラバドウゾ御直
シヲ願ヒマス、ソレカラ實ハ此肺結核ノ事ニ付キマシテハ、
吾ミモ非常ニ心配シテ居リマス、所ガ御承知ノ通リ何所カ
ラ肺結核ト認ムベキカト云フ標準ニ付キマシテハ、是ハ中ミ
學者ノ間ニモ色〓議論ガゴザイマスヤウデ、各府縣デ取ッテ
居リマス所ノ身體檢查ノ標準ガ、ドウモ一様デナイヤウニ
思ハレルノデゴザイマズ、例ヘバ或ル縣ノ統計ヲ見マスト云
フト、非常ニ多イヤウニ思ハレマスガ、或縣ハ大分少ナ過ギ
ルヤウニ思ハレマス、併ナガラ兎ニ角大分肺結核患者ガゴザ
イマスト云フコトハ、事實デゴザイマスカラシテ、是ニ對シ
テ何トカ出來ルダケノ方法ハ盡シタイト云フコトヲ始終考
ヘテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、ンレデ人ニ依リマスルト、
或ハ一面ニ於キマシテハ、此豫防撲滅ヲ獎勵スルト同時ニ、
小學校〓員ニ體育ト云フコトヲモウ少シヤラシテサウシテ
身體ヲ丈夫ニスルト云フコトガ、根本的ニ必要デアルト云フ
論ナドモゴザイマス、是等ノ點モ一面ニ於テ考ヘテ居ルヤウ
ナ次第デゴザイマス、ソレカラ師範學校ノ入學志望者ガ減
ジテ參リマシタト云フコトハ、是モ事實デゴザイマシテ、近年
ハ年々ニ減ッテ參ッテ來テ居リマス、殊ニ昨年以來此物價騰
貴ノ影響ヲ受ケマシテ、實業界ナドニ於キマシテハ、非常ナ
俸給ヲ出スト云フヤウナコトノ關係カラシテ、大分師範學
校ニ入學者ガ減リマシテ、外ノ學校ニ入學ヲスル、其志望
者ガ他ノ學校ニ向ッタト云フヤウナ事實デゴザイマシテ、是
ニ對シテモ何トカ此志望者ヲ殖シタイ、卽チ一面ニ於キマ
シテハ、給費ノ制度ヲ執リマス、此給費ノ額ヲ殖スヤウニ奬
勵シテ居リマス、又一面ニ於キマシテハ成ベク此學校〓員
ヲ優遇スルト云フコトヲ現實致シタイト云フヤウナ方針デ、
此問題ヲ攻究致シテ居ルヤウナ譯デアリマス、ソレデ御話ノ
通リ肺結核ノ問題ヲ極ク非常ニ廣イ範圍ニ於キマシテ、此
肺結核患者ハ凡テ學校ノ〓職員トナルコトヲ得ズト云フ
風ニ腐行致シマシタ場合ニハ、一面ニ於キマシテ學校〓員
ノ供給ト云フ問題ト衝突シテ參ルヤウナコトハ、唯〓御話
ノ通リデアリマス、ソレデ吾ミノ方デ唯今〓究致シテ居リマ
ス所ノ傳染病ノ豫防方法-是ハ省令デゴザイマスガ、ソ
レニ依リマスルト云フト、先ヅ最モ危險ナルモノカラシテ着
手致シマシテ、徐々ニ此經濟問題ト調和ヲ致シマシテ、段ニ
厲行シテ參ルコトノ出來ルナウナ點ニ付テ、最モ考慮
ヲ致シテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、尙ホ成案ニ付キマシ
テハ、是ハ唯〓手許ニゴザイヽセヌカラ後デ御送リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=27
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028・小山松壽
○小山松壽君 大變自分一人デ時間ヲ取リマシテ、諸君
ニ相濟ミマセヌガ、丁度關聯シタコトデアリマスカラ、御尋シ
ヤウト思ヒマスガ、地方ノ小學校ニハ各ミ校醫、卽チ學校ノ
衞生事務ヲ掌ル所ノ御醫者ガアリマス、是ガ實際ノ狀況カ
ラ見マスルト、殆ド學校ノ方ハ內職ノヤウニ致シテ居ルノデ
アリマスカラ、此結核豫防法ノ施行ノ上カラ見マシテモ、又
「トラホーム」ノ豫防法ノ上カラ見マシテモ、先刻杉山君ノ此
徹底的ニ効果ヲ擧ゲタイト云フ御方針カラ考ヘマシテモ、
如何ニモ校醫ナル者ノ今日ノ待遇ガ、其當ヲ得テ居ラヌト
思ヒマスカラ、其所期ノ目的ヲ達スルコトニ遺憾ナルコトガ
多イト私ハ思フノデアリマス、勿論是等ノコトハ其地方々々
ノ經濟財政ノ狀態ニモ依ルコトデアリマスカラ、十分ナコト
ハ望ミ惡イコトデアリマスケレドモ、本案ノ如キ又「トラホー
ム」法案ノ如キモノヲ、一面國民經濟、衞生、國防、產業ト
云フ風ナ上カラ見マスルト、今失フ所若干ニシテモ、將來得
ル所幾許ト云フコトカラ考ヘマシテモ、出來得ベクンバ是等
ノコトハ、其所期ノ目的ヲ達スルヤウニ努メタイト、私共思
フノデアリマスガ、此事ニ付テ文部當局ハ地方長官ヲ經若ク
ハ其自治體等ニ對シテ、何等カ將來是等ノ待遇ノ事ニ付
テ、或ハ待遇ガ良ケレバ專門的ニ私ハ置カナケレバナラヌモ
ノデアルト云フ風ナ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、校醫ト稱ス
ルモノハ從來ハ、私素人デアリマスガ、實際ニ就テ見ルト多
クハ眼ノ方ノ御醫者サンヲ採テ居リマス、是ハ要スルニ主
トシテートラホーム」ト云フヤウナモノヽ觀念カラ來タモノデア
リマセウガ、私素人ナガラ眼ノ御醫者サント云フ者ハ、決シ
テ內科ノコトガ分ルモノデモナイシ、内科ノ方ノ御醫者様ニ
眼ノ方ヲ診セタ所ガ、眼ノ方ハマルデ素人同樣ナモノデアル
ト云フコトニナリマスルト、此結核豫防法案ヲ施行シ「トラ
ホーム」法案ヲ施行シタ場合ニ、眼ノ方ニ關シテハ專門家ガ
アル、結核ノ方ニ付テハ内科ノ人ト云フ風ニ分ケナケレバ、
其目的ヲ達セラレナイト思ヒマスガ、此全國多數ノ小學校、
之ニ從事シテ居ル校醫ト云フモノニ對シテハ、將來ドウ云フ
風ナ御考ガアルカ否ヤ、其事ヲ序ニ承ッテ置キマス、-是デ
私ノ質問ハ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=28
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029・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 學校醫ノ御尋デゴザイマシ
タガ、今日ノ現狀ハ學校醫ニ對シテ支給致シテ居リマス所
ノ手當ハ、甚ダ薄弱ナモノデアリマス、唯〓確トシタ數字ハ
持ッテ居リマセヌガ、記憶ニ依リマスト全國ヲ平均致シマス
ト云フト、六七十圓位ナモノデアッタカト考ヘテ居リマス、誠
ニ待遇ハ薄弱デゴザイマシテ、殆ド學校醫諸君ノ公共ニ
盡サレル精神ニ待ッテ、仕事ヲシテ居ルト云フヤウナ事實デ
ゴザイマス、此點ニ付キマシテハ私ノ方デモ實ハ考ヘテ居リ
マスノデゴザイマス、唯今小山君ノ御話ノ中ニアリマシタ、
專門ノ人ヲ皆置クト云フコトハ、吾〓ノ方デモ希望ヲ致シテ
居リマスルガ、マダ其處マテ直ニ進ムルコトハドウモ財政狀
態ガ餘程六ケ敷クハナカラウカ、サウ云フヤウナ所カラ致シ
マシテ、先ヅ差當リ此學校醫ノ手當ヲモウ少シ增スヤウナ
方法ヲ講ジタイ、ソレカラシテ又學校醫ガ學校ニ依リマスト
云フト、學校ニ極クマア冷淡ト申シマセウカ、或ハ學校ニ出
マス日ナドガ極ク少イト云フヤウナ所カラ致シマシテ、此學
校醫ノ職務規程トカ或ハ資格ニ關シマスル規程ナドニ付キ
マシテ、是モ私ノ方デ調査ヲ致シテ居リマス、是ハマダ此學
校衞生調査會ニ審議スルマデニハ參テテ居リマセヌデゴザイ
マス、是モ早晩學校衞生調査會ニ審議ヲ請ヒマシテ、其上
デ成案ト致シタイ、斯樣ニ唯今ノ所デハ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=29
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030・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 內務省ノ政府委員ニ承リマスガ、此肺
結核豫防法ノ第二條ニハ醫師ガ結核患者ヲ診斷シタ場
合ニ於テ、是ニ豫防消毒ノ方法ヲ指示スル、之ヲヤラナケレ
バ制裁ガアル、第三條ニハ醫師ガ之ヲ指示シタ場合、其指
示ヲ遵守シナイ者ノアッタ場合ニ、當該吏員ニ申告ヲスル義
務ヲ負ハシムル、之ヲ申告シナイ場合ニ對シテ、其醫師ニ對
スル制裁ガアル、又第四條ニハ其申告ニ依ッテ行政官廳ガ
豫防消毒ノ方法ヲ施行シ、若クハ施行ヲ命ズル、ソレヲ遵
守シナカッタ者ニ對シテハ又制裁ガアル、斯ウ云フ事ガゴザイ
マシテ、卽チ此醫師ノ診斷ヲ受ケタ所ノ患者ハ、醫師ヨリ豫
防消毒ノ指示ヲ受ケ、又行政官廳カラシテ此豫防消毒ノ
方法ヲ施行シテ貰フト云フコトガアリマスケレドモ、進ンデ
醫師ノ診斷ヲ受ケナイ者デ患者ガアッタ場合、之ニ對スル一
般ノ檢診ノ規定ガナイヤウニ見受ケラレマスガ、是ハ如何ナ
ル譯デアリマスルカ、言葉ヲ換ヘテ申シマスト云フト、一方ニ
ハ是ガ爲メニ自分デ結核デアルト知リツヽ、醫者ノ診斷ヲ
受ケルコトヲ躊躇シテ、賣藥其他手療治ナドニ依ッテ、適當
ナ治療ノ機會ヲ失フ、又病毒ヲ周圍ニ蔓延スルト云フコト
ニナリハスマイカトカ、又他ノ一方ニハ醫者ノ診斷ヲ受ケナ
イガ爲メニ、殊ニ此病氣ガ貧民ニ最モ多イト云フ關係カラ
シテ、患者ガ自分デ肺結核ニ罹シテ居ルト云フコトヲ知ラズ、
周圍モ亦之ヲ知ラズシテ其傳染ヲ受ケル、斯ウ云フコトニナ
リマシタナラバ、患者ハ是ガ爲メニ其治療ノ機ヲ失シ、周圍
ハ是ガ爲メニ、非常ナル危險ヲ受ケル、斯ウ云フコトニナッテ
ハ、折角此規定ニ依シテ貧民ノ患者ヲ救療シ、又ハ周圍ニ
蔓延スルコトヲ防グト云フ目的ガ、徹底サレナイヤウニナリ
ハシナイカドウカ、成程第五條ノ第一項ニハ或ル、特別ノ職
業ニ從事スル者、又ハ病毒蔓延ノ虞アル場所ニ居住スル
者、若クハ其處ニ於テ職業ニ從事スル者ニ對シテ健康診斷
フ行フト云フ規定ハアリマスケレドモ、一般的ニ檢診スル規
定ヲ設ケラレテナイヤウデアリマス、是ハ如何ナル理由デアリ
マスカ、此點ヲ第一ニ承リタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=30
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031・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 土屋君ヨリ五條ニ規定ハ
アルガ、是ハ特殊ナ場合ニ於ケル健康診斷ノ規定デアッテ、
一般的健康的診斷ノ規定ヲ缺イテ居ルノハドウ云フコトデ
アルカト云フ斯ウ云フ御質問ト存ジマス、政府ノ特ニ此五
條ニ「業態上病毒傳播ノ虞アル職業ニ從事スル者又ハ病
毒蔓延ノ虞アル場所ニ居住シ若ハ其ノ場所ニ於テ職業ニ
從事スル者ニ對シ健康診斷ヲ施行スルコト」特ニ斯ウ云フ
風ナ場合ニ限定致シマシタノハ、健康診斷ト云フコトハ、詰
リ一種ノ人ノ自由ヲ拘束スル譯ニナルノデアリマスカラ、憲
法ノ保障ニ對スル法律ノ下ニ於テ、特ニ或ル特定ノ場合ヲ
規定スルコトハ、法トシマシテハ-憲法治下ニ於ケル法ト
シテハ、其方ガ穩健デアルト考ヘタカラデアリマス、而シテ土
屋君ノ御述ノ如ク、自分ガ罹ッテ居ッテモ、何タカ胸ガ痛イ、
若ヤ肺病デナイカト田心ッテモ、ソレヲ健康診斷スル途ガナイ
爲メニ重ラシテシマフ、是ハ豫防上危險デアルト云フコトハ
御尤デアリマスガ、先程本案提出ノ理由ヲ申シマシタトキ
ニ述ベタ如ク、政府ハ此法律ノミヲ以テ結核豫防ノ目的ヲ
達シ得ルト思ッテ居リマセヌ、官民一致非常ナ覺悟ヲ以テ
豫防ノ方法ヲ講ジタイト思ヒマス、ソレハ大方志士仁人ノ
奮起ニ依リ、又結核豫防協會等ノ活動ヲ促シ、早期診斷
所モポツリ〓〓出來テ居リマスガ、甚グ隔靴搔痒ノ歎ガ
アリマス、先進國ニ於テハ早期診斷所ガ、公設デナケレバ
私設デ出來テ居リマスガ、我國ニ於テモ其等ノ活動ニ依ッ
テ、土屋君ノ御述ノ如キ缺點ヲ補ウテ、所謂官民一致シテ
豫防ニ力ヲ盡シタイ考ヲ持ッテ居リマス、右御了承ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=31
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032・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 尙ホ關聯シテ承リマスガ、肺結核豫防
救助ニ於ケル賣藥ノ弊害デアリマス、賣藥中最モ憂フルノ
ハ〓凉劑ニ亞デ肺病ノ藥ト花柳病ノ藥デアリマス、數アル
賣藥業者ノ中ニハ不都合ナ不道德ナ者ガアッテ、肺病ガ慢
性デアル、其經過ガ甚ダ長クシテ、醫師ノ治療モ效果ヲ見ル
コトガ出來ナイ弱點ニ付込ンデ、新聞ト云フ勢力アル機關
ヲ利用シテ、誇大ノ廣告ヲ爲シ、甚シキニ至ッテハ全然詐欺
ニ近キ行爲ヲヤッテ居ル、之ニ對シテ正直ナル地方ノ患者ハ
是等ノ廣告ニ迷ハサレテ、折角治療ノ步ヲ進メツヽアル所
ノ醫治ヲ中途ニ廢絕シテ、或ハ田畑ヲ抵當トシテ之ヲ買ッテ
居ル、之ガ爲メニ折角治期ニ向ヒツヽアル病勢ヲ元ニ還ヘ
ス、サウシテ醫療ヲ妨ゲル例ハ、實ハ私共ガ日々目擊シテ、非
常ニ不都合デアルト考ヘテ居ルコトデアリマス、隨分世ノ中
ニハ病ニ對スル智識ノ非常ニ幼稚ナ者、或ハ誤解シテ居ル
者ガアッテ、殊ニ此法案ガ通過シマスルト、法ノ精神ヲ誤解シ
テ、前申シマシタ通リ醫者ニ掛カレバ豫防消毒ヲ言ハレル、
ソレヲヤラナケレバ醫者カラシテ警察或ハ市町村ニ屆出デ
ラレル、サウスルト其處カラ來テ色〓八釜敷イ消毒ヲスルヤ
ウナコトカラシテ、成ベク醫者ニ見テ貰ハナイデ、賣藥ヲ迷
信シテ姑息ノ手當ニ日ヲ送リ、之ガ爲メニ自分ノ病氣モ進
ミ、又周圍ニ感染ノ危害ヲ及スコトニナリマスカラ、此法律
ノ目的トスル所ハ湮滅セラルヽヤウニナリハシナイカト思ヒ
マス、ソレデ此法ヲ施行スルト同時ニ、一面ニ賣藥ニ對スル
所ノ弊害ヲ防止スル爲メニ、其廣告中ニ肺結核、肺病、或
ハ之ニ類似シタル文字ヲ挿入シテ、世間ヲ迷ハス如キコトヲ
禁止スルコトガ必要ト思ヒマスカラ、此點ニ對シテ當局ハ如
何ナル御考ヲ持ッテ居ラレマスカ、之ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=32
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033・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 此結核豫防ニ關シテ、賣
藥ニ付テ起リツヽアル弊害ヲ御指摘ニナッテ、之ヲ取締ルコ
トガ十分ニ出來ナケレバ、豫防ノ目的ヲ達成スル上ニ於テ遺
漏ナキ能ハズト云フ御見地カラノ御質問デアリマスガ、如何
ニモ良イ所ニ御氣著下サレマシタコトヽ存ジマス、併シ賣藥
法ノ第十條ニ「地方長官ハ衞生上危險ヲ生スルノ虞アリト
認ムルトキハ賣樂營業者ニ對シ其ノ免許ヲ得タル事項ノ
變更ヲ命スルコトヲ得」トアリマス、又第九條ニ「賣藥ニ關スル
廣告賣藥ノ容器若ハ被包又ハ賣藥ニ添附シ若ハ添附セス
シテ頒布スル文書ニハ左記ノ事項ヲ記載スルコトヲ得ス」第
三號「虛僞誇大ノ證明若ハ醫師其ノ他ノ者カ効能ヲ保證シ
タルモノト世人ヲシテ誤解セシムルノ虞アル記事」此規定ヲ
運用致シマスレバ、土屋君ノ御懸念ノ如キコトハ取締リ得
ルコトト考ヘマス、事實各地方廳ニ於テ適當ノ運用ヲシ
テ居ルヤ否ヤハ、考慮ヲ要スル餘地アリト考へテ居リマスカ
ラ、當局ハ賣藥法ノ厲行ニ努メテ、此法ト相俟ッテ御心配ノ
ナイヤウニ、徹底的ニ努ムル考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=33
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034・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 此法案ハ非常ニ適切ナ法案デアリ、之
ヲ實施スルト云フコトハ、實ニ一大事業デアルト思フノデア
リマス、殊ニ肺結核患者ト云フモノハ、先刻政府委員ノ說
明ニ依リマシテモ非常ニ多イ、連年ノ死亡統計ヲ見マシテ
モ、大〓十万內外、卽チ全死亡數ノ約十分ノ一ト云フモノハ、
肺結核ニ罹テ居ル、又多數ノ學者ノ意見ニ依リマシテモ、
肺結核患者ノ病氣ノ經過ヲ平均四年位ニ見テ居リマス、サウ
シマスルト我國ニ於テ現在ノ結核患者ノ數ハ、少クトモ四
十万以上ハアルト見ナケレバナラヌ、随テ是等ノ人ニ對シ
テ、是等ノ患者ノ中ノ或ル部分ニ現レタル一部ノ者ヲ救療
スルニ付テモ、其經費ト云フモノハ中〓容易ナラナイモノデア
ラウト思フ、然ルニ之ニ對シテ本年度ノ豫算ニ計上サレタ
所ノ金額ハ、私今爰ニシツカリ記憶致シテ居リマセヌケレド
モ、確カ七万圓カ八万圓位デアッタラウト思ヒマス、此大事業
ヲ遂行スルニ此位ノ少額ノ費用ヲ以テ、ドウシテ目的ヲ達
スルコトガ出來ルデアリマセウカ、本年度ハ兎ニ角トシテ、來年
度以降ニ於テモ、斯ル少額ノ經費ヲ以テ此大事業ヲ達成
シ得ルト云フ御考ヲ、當局ハ持ッテ居ラルヽノデアリマスカ、
是ハ大藏省ノ方ミニ直接關係ヲ持ッテ居ル事デアリマスガ、
此機會ニ於テ、一應內務省方面ノ政府委員ノ御意見ヲ質
シテ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=34
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035・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 唯今ノハ結核ニ就テノ御
質問ト存ジマスガ、今七万圓ト仰セラレマシタガ、ソレハ豫
算御審議ノ際ニ、既ニ御協賛ヲ得マシタ通リ、二十六万圓
ヲ八年度ニ計上シテ居リマス、是ハ二ツノ市ヲ豫期シテ居
ルノデゴザイマス、併ナガラ土屋君ノ御述ノ如ク、二十六万
圓計リノ金デハ、先ツ第一年ニタッタ二ツヲ指定スル位デア
ル、其經費甚夕僅少デアル、寧口貧弱ブアルト謂ハナケレバ
ナラヌ、如何ニモ此結核豫防ニ付テ必要アリトシテ、此法案
ノ趣旨ヲ說明シナガラ、單ニ二十六万圓ノ豫算ヲ計上シタ
ルハ是レ何ゾヤト云フ御質問ノ起ルノモ御尤デアリマス
ガ、政府トシテハ少クトモ七箇年位デヤッテシマヒタイ、第一
年ニハ七市ニ建設シ、第二年ニハ六市、第三年ニハ六市、
第四年ニハ五市、第五年ニハ四市ハ第六年ニハ四市、第七
年ニハ四市ト云フ風ニ、三十六箇所ノ人口五万以上ノ市
ニ、七箇年繼續ヲ以テ終了シタイト云フ腹案ハ存シテ居リ
マスガ、ンレガ容ルヽ所トナラヌノハ、是ハ國ノ財政ノ都合
上已ムヲ得難キ次第デアルノヲ遺憾トスルノデアリマス、併
ナガラ是等ハ滿場諸君ノ非常ナル御同情ニ依シテ、〓ニ角
此法案ノ趣旨ハ御同感ノ趣ヲ先程小山君ヨリ、今又貴方
樣カラ拜承スルコトヲ得タノハ、非常ニ當局ヲシテ意ヲ强ウ
セシムル次第デアリマスガ、其御意志ノアラセラレマスル所ニ
鑑ミマシテ、愈〓此法案ガ協賛ヲ得マシテ、御栽可公布ニナ
リマシタル曉ニハ、此九年度カラノ豫算ノ上ニ付テハ十分ノ
熱心ヲ以テ、斯ル國策ヲ遂行スル場合ニハ、唯〓豫定經費
要求書ヲ普通ノ手續ニ依ッテ年々大藏省ニ委シテ、大藏省
ノ下ノ方ノ手ニ掛ッテ-屬僚ノ手ニ依ッテ料理按排セラレ
テ、遂ニ此法案ノ趣旨ヲ徹底的ニ遂行スル能ハザルハ遺憾
千萬デアリマスカラ、今後斯ウ云フヤウナ國策ノ遂行ニ關ス
ル間題ハ、先ヅ閣議ニ於テ其採否ヲ決定シ、大體ノ方針ノ
決定ヲ仰ギ、サウシテ大藏省ノ屬僚ニ之ヲ致スト云フコトニ
シタイト云フ考ヲ持ッテ居リマス、右ニ御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=35
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036・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 唯〓ノ御答辯ハ、私ハ洵ニ滿足致シマ
ス、次デ文部省當局者ニ伺ヒタイノハ、第一ニ肺結核ニ
罹ッタ〓員ノ救療等ニ對スル方針デアリマス、此結核〓員ノ
保護救療ニ關シマシテハ、先年當議會カラ豫算ヲ取ラレマ
シテ、旣ニ之ヲ實施セラレテ居ルノデアリマスガ、其實施ノ
狀況ヲ見マスルト、各縣ガ區々デアッテ、而モ甚ダソレガ徹底
シテ居ラナイヤウニ考へラレルノデアリマス、例へバ昨年群馬
縣ニ起ッタ一例ノ如キ、學校醫ガ肺結核ナリト診斷シテ證
明書ヲ添付シテ出シタ所ガ、縣廳ニ於テハ是ハ肺結核ニ非
ズ少クトモ結核〓員ヲ保護救療スル所ノ、補助費ヲ交付ス
ベキ肺結核デハナイト云フヤウニ解釋セラレテ、之ガ爲メニ
縣當局ト其學校醫トノ間ニ八釜敷イ問題ヲ起シマシタ、更
ニ其診斷ヲ繰返シマシ夕後ニ、漸ク之ヲ交付シタト云フ實
例ガアルノデアリマス、其時縣當局ノ說明ニ依リマスト、縣
ノ方針トシテハ、縱令肺結核ニ罹ノテ居テモ、結核菌ヲ咯痰
ノ中カラ證明シナケレバ金ハヤラナイ積リデアル、何トナレバ
單ニ臨床上肺結核ハ診斷シタ〓員ニ對シテ、一々金ヲヤラ
ナケレバナラヌトスレバ、今日ノヤウナ少額ノ金ヲ以テハ、到
底〓員ノ中ニ在ル所ノ多數ノ結核患者ニ給與スルコトハ
出來ナイ、斯ウ云フ內規ガアルト云フコトヲ、其當時漏シタ
ト云フコトデアリマス、併ナガラ肺結核ニ罹ッタ者ニ對シテ、
結核菌ノ有無ヲ證明スルニハ、相當ノ技術ト又機械抔ヲ
要スルコトデアッテ、極メテ僻遠ナル地方ニ於テハ、醫師ガ必
シモ其設備ヲ有ッテ居ルトハ限ラナイ、又現ニ肺結核ニ罹
リ、時〓結核菌ヲ咯出スルモノデアリマシテモ、其菌ノ少數ナ
ル場合ニハ、直チニ顯微鏡下ニ現レテ來ルモノデアリマセヌ、
又顯微鏡ニ依シテ結核菌ノ有無ヲ證明シ得タ得ナイト云フ
ノミニ依シテ、直チニ傳染ノ憂ノ有無ヲ決定スル標準ニハナ
ラナイノデアリマス、苟モ學校ニ於テ是ヨリ益〓成長セント
スル所ノ兒童、殊ニ結核ニ向ッテハ感受性ノ强イ小學兒童
ニ、結核ニ罹ッテ居ル〓員ヲ接觸セシムルコトハ甚ダ危險デ
アル、危險デアルガ爲メニ、之ヲ遠ザケシメナケレバナラヌ、ソ
レガ爲ニ相當ノ手當ヲシテヤルト云フコトデアレバ、全國ノ各
府縣ガ皆ナ同樣デアルカドウカ存ジマセヌガ、群馬縣ノ如キ
方法ヲ以テシテハ、徹底的ニ其目的ヲ達スルコトガ出來ナ
カラウト思ヒマス、之ニ對スル文部當局ノ御方針ヲ伺ヒタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=36
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037・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 御尋ノ結核ノ標準ノ事デ
アリマスガ、結核ヲ認定致シマスル標準ニ就キマシテハ、是ハ
先刻モ申上ゲタ次第デアリマスガ、私ノ方デ取ッテ居リマス
肺結核ノ統計ヲ見マスルト、現在ニ於テハ非常ニ割合ノ多ク
出テ居ル所ト、又非常ニ少ナ過ギルヤウニ思ハレル處トアリ
マス、ドウモ其標準ガ一致シテ居ラヌヤウニ思ハレルノデゴザ
イマス、隨ヒマシテ〓員ノ疾病治療ニ關シマシテモ、各府縣
ノ取扱ガ多少區々ニナッテ居ルコトヽ考ヘテ居リマス、此點
ニ就キマシテ之ヲ遺憾ト致シマシテ、一昨々年デアリマシタ
カ、各府縣ニ學校衞生主事ガ置カレルコトニナリマシテカラ、
年々此學校衞生主事ノ會議ヲ本省ニ於テ開イテ居リマス
サウシテ年々ノ宿題トシテ此標準ノ打合ヲヤッテ居リマスガ、
其結果段々各府縣ガ同ジ標準ニナッテ來ルダラウト考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=37
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038・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 モウ一ツ。何ヒマスガ、此法案ガ通過スル
コトニナリマスレバ、是ガ實施ニ關シマシテハ、必ズ學校衞
生委員會ノ審議ニ付スルコトヽ思ヒマス、又先刻モ左様ナ
御意見デアッタヤウニ承知シテ居リマス、先達豫算分科會ニ
於テ中央衞生會ノ事ニ就テモ、同樣ノ事ヲ質問致シマシタ
ガ、同ジ意味ニ於テ此學校衞生委員會ト云フモノハ、其委
員ノ顏觸ヲ見マスルト、文部省ノ高等官吏、竝ニ東大ノ老
〓授或ハ嘗テ〓授タリシ者、若クハ其一派ト申シテハ何デ
スガ、門弟ノ人達ノミヲ以テ占有シテ居ッテ、從來斯ウ云フ
調査會ニ每々見ラレルヤウナ顏觸バカリデアリマス、中央衞
生會モサウデアレバ、保健調査會モサウ云フ風デアル、學校
衞生委員會ニ於テハ、特ニ是ガ著シイヤウニ思ハレル、隨テ
此委員ノ方ミニ於テモ、餘リ熱心ニナッテ居ラナイヤウデア
ル、現ニ其委員ノ一人タル或人ノ如キハ、私ノ問ニ對シテ、
吾ミハ唯〓當局ノ意見ヲ聽イテ之ヲ審議スルー云フヨリハ、
單ニ可否ヲ表スルニ過ギナイト云フコトデアリマシタ、斯ウ
云フコトデアリマスレバ、當局ニ於テハ如何ニ御考ニナッテ居
ルカ知リマセヌガ、學校衞生ノ如キハ、一般社會ト最モ接近
シテ居ルモノデアル、之ニ對シテ一般社會ト餘リ關係ノ密
接デナイ所ノ大學ノ〓授、或ハ其一派ノ人達ノミヲ集メテ
委員會ヲ組織シテ諮問セラレマシテモ、適切ナル效果ヲ見
ルコトハ出來ナカラウト思ヒマス、現ニ先達テモ、犬養氏ガ財
政調査會設置ノ建議案ヲ出サレマシテ、其說明ニ引用サ
レタコトガアリマスガ、私ハソレト同ジ考ヲ、此文部省ノ學
校委員會ニ向ッテ有ッテ居ルノデアリマス、文部當局ハ此學
校衞生委員會ヲ改善セラレテ、今少シ新空氣ヲ注入シテ、
今日ノ如ク單ニ當局ノ意見ヲ說明シテ、之ニ賛成サセルダ
ケノコトニ滿足セズ、改善ラレル意思ハ無イノデアルカ、ドウ
デゴザイマスカ、此點ヲ此機會ニ於テ伺ッテ置キタイト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=38
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039・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 學校衞生調査會ノ組織
ハ中央衞生會抔トハ組織ノ工合ガ大分變シテ居ルノデア
リマス、御承知ノ通リニ是ニハ〓育家モ大分入ッテ居リマ
ス、ソレカラ又衞生ノ專門家ト致シマシテハ、内務省ノ衞生
局ニ居ラレマス方ニモ御面倒ヲ願ヒ、又陸軍ノ方面ニモ御
願ヲシテ居リマス、ソレデ是ハ人數ガ極ク少イモノデアリマ
シテ、極メテ小規模デヤッテ居リマス、是ハ豫算ノ關係、經費
ノ關係杯カラ斯樣ニ人數ガ少イヤウナ組織ニナッテ居リマ
ス、御承知ノ通リ此學校衞生ノ仕事ニ充テヽアリマスル所
ノ豫算ハ、極ク少額デアリマシテ、漸ク本官ト致シマシテ、學
校衞生官ガ一名居リマスル位ノモノデゴザイマシテ、先ヅ學
校衞生トシテハ甚ダ仕事ガ多クテ、手ガ足ラヌト云フヤウナ
狀況ニナジテ居リマス、隨テ今日此原案ヲ提出シマスルヤウ
ナ場合ニハ、中〓原案ノ調ガ實ハ間ニ分ヒマセヌデ、學校衞
生調査會ノ審議スベキモノガ、引續イテ出テ來ルヤウニ中こ
參リマセヌ、併シ今日ノ人員デ出來ルダケノ勉强ハ致シテ
居リマスガ、是抔ニ就テモ私等ノ考ト致シマシテハ、何トカ
之ヲ擴張ヲシタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、隨テ其際ニ於キ
マスル學校衞生ノ委員會ノ事ニ就キマシテモ、私ハ又別ナ
考ヲ持ッテ居リマスガ、唯〓ノ豫算ノ範圍內ニ於テヤッテ居
リマス事ニ於テハ、ドウモ唯今位ノ組織ハ、誠ニ已ムヲ得ナ
イト考ヘテ居リマス、唯今某委員ノ御話トシテ御述ニナリマ
シタ事ハ、私初メテ伺ヒマシタノデ、是等ノ事モ參考ト致シ
テ、謹ンデ拜聽致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=39
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040・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 餘リ長クナリマスガ、モウ一ツ伺ヒマス、
唯〓小山君ニ對スル御答辯ノ中ニ、學校傳染病豫防法ノ
改正ヲ、今審議中デアルト云フ御言葉ガゴザイマシタガ、此
審議ニ當リマシテ、内務省ノ衞生當局ト御交涉ニナッテ居
ルカ如何デゴザイマスカ、實ハ是モ群馬縣ノ例デアリマスガ、
先年斯樣ナ事ガアタ、群馬縣ノ師範學校ニ窒扶斯ガ大變
ニ流行シタ、ンコデ學校內ニ於ケル所ノ豫防施設ガ甚ダ徹
底シナイ爲メニ、周圍ニ蔓延スル危險ガアルト云フ所カラ、
内務省ノ防疫官ガ派遣セラレマシテ視察ヲ致シマシタ所、
學校ハ學務當局ノ管轄ニ屬スルモノデ、衞生局/方ノ文部
省ノ監督ノ下ニ在ルモノデアッテ、内務省トハ全ク交渉ハ無
イ、私ノ學校ニ於テハ、學校ノ傳染病ニ對シテ、學校傳染病
豫防規則ト云フモノガ別ニアッテ、之ニ依ッテヤルノデアルカ
ラ、折角ノ御注意デアルケレドモ、內務省衞生局方面ノ御
指揮ハ受ケマセヌト云フヤウナコトヲ言ッテ其防疫官ハ空シ
ク歸ラレタト云フコトヲ-是ハ餘程前ノ事デゴザイマスケ
レドモ、私ハ承知致シテ「居リマス、デ衞生行政殊ニ傳染病
豫防ノ如キハ所管ヲ限ラレテ、其管內ニノミ行ハレルモノデ
ナクシテ、總テ一般的ノ豫防施設ヲヤラナケレバナラヌ、然ル
ニ此間ノ連絡ヲ缺イテ居ルト云プコトハ、豫防上ニ就テ非
常ナル缺陷デアルノデアリマス、先刻杉山政府委員ノ御言
葉ノ中ニ、政府ハ昨年當議會ノ建議ニ基イテ、所謂衞生行
政ヲ統一スル所ノ中樞機關ヲ設ケル意志ガアッテ、目下調
査中デアルト云フ御意見デアリマシタガ、此統一機關ガ出
現シテ、衞生局ニ於ケルヤウナ今日ノ事務モ、又文部省ニ
於ケル學校衛生モ、或ハ鐵道院ニ於ケル鐵道衞生、農商務
省ニ於ケル工場或ハ工業衞生、是等ノ各衞生行政ヲ統一
スル所ノ中樞機關ガ出來マシタ曉ニハ格別、今日ノヤウナ
狀態ニ於テハ直接周圍ト密接ナル關係ノアル所ノ學校傳
染病豫防ニ關スル規則ヲ制定スルニ當ッテハ、特ニ私ハ內
務省衞生局ノ方面ト十分ナル連絡交涉ヲ執ラルヽト云フ
コトガ、寶際ニ於テハ必要デアラウト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、故ニ此點ニ就テ私ガ冒頭ニ申上ゲマシタ如ク、雙方ニ於
テ此審議ニ對シテ御交涉ニナッテ居ルカ、ドウカト云フコト
ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=40
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041・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 唯〓學校衞生委員會ノ
組織ヲ申上ゲマシタ時ニ、内務省ノ衞生局ノ當局者ニ、委
員ヲ御願シテ居ルト云ノコトヲ申上ゲマシタノデアリマス、
此傳染病ノ豫防方法規則及消毒方法、之ニ就テ制定致
シマスルニ付キマシテモ、此學校衞生委員ノ中ニ特別委員
ト云フモノヲ置キマシテ、親シク原案ヲ審査致シマス、其特
別委員ニ卽チ内務省カラ出テ居リマス委員ヲ御願致シマ
シテ、之ニ十分ナル審査ヲ御願スル譯ニナッテ居リマス、斯樣
ナ事モアリマスルシ又一面ニ於キマシテハ、是ハ內務省ノ
保健調査會抔ニハ、吾ニノ方ノ學校衞生官ガ委員ノ一人ト
シテ出テ居リマシテ、是ハ出來ルダケ今日ニ於キマシテハ連
絡ヲ取ッテ居リマス、尙ホ將來ト雖モ此問題ハ、私抔モ、公
衆衞生ト學校衞生ト相伴ッテ行カナケレバナラヌモノデア
ル、斯樣ニ考ヘテ居リマスカラ、此邊ノ連絡ハ十分取ル考ヲ
持ッテ居リマス、尙ホ唯〓例トシテ御擧ニナリマシタ防疫官
ノコトデアリマスガ、私ハ是ハマダ聞イテ居リマセヌ、併シ若
シ將來ニ於テ斯樣ナ問題ガ起リマシタナラバ、若シ内務省
デ、學校ノ爲メニ防疫官ガ行ッテ吳レルト云フコトハ、吾ニニ
於テ歡迎致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=41
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042・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 齋藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=42
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043・齋藤紀一
○齋藤紀一君 文部當局者ニ御尋ヲシタイ、先程小山委
員カラ小學〓員ニ對スル結核ニ付テノ質問ガアッテ、政府
委員ノ詳細ナル御答辯ガアッテ略と了解致シマシタ、然ルニ高
等ナル所ノ〓育ヲ普及スル大學、高等學校、専門學校、其
他公私立大學、又是ト同等ナル學校〓員ニ至リマシテハ、
何等御說明ガアリマセヌデシタガ、文部當局者ニ於テハ、是
等ノ最モ今日必要ナル〓育ヲ普及スル其〓員ガ、詰核ヲ
有シテ居ルヤウナコトガアッテハ由々敷大事ト思ヒマスガ、此
統計或ハ今日マデ小學〓員ニ補助-給與トデモ申シ
マスカ、サウ云フヤウナ例ガアリマスルカ、又此高等ナル所ノ
學校ニ對シテハ、何等制裁ガ無イデハナイカト一云フ事ヲ御
尋申上ゲマス、苟且ニモ大學ダトカ、或ハ高等學校、其他ノ
專門學校生徒ハ既ニ壯年ノ男子デス、或ハ女子デス、杉山
政府委員ガ先程述べラルヽノモ、此結核ハ實ニ憂フル事ハ
壯年者ニ在ルト云フコトデアリマス、シマスト最モ傳播ヲ受
ケルノハ、是等ノ生徒デハナイカト云フコトヲ吾こハ常こ憂
ヘテ居リマス、又聞ク所ニ依リマスルト、高等ナル所ノ〓員
ニ、結核デアルトカ、或ハ肺病デアルトカ云フヤウナ者ガアル、
是モ吾ニハ常こ承ッテ居リマス、文部當局者トシテ、是等ノ
點ニ就テ如何ナル方法ヲ執ッテ居ラルヽカ、今後ハ如何ナル
處分ヲセラルヽカト云フ事ヲ御尋致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=43
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044・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 御答申上ゲマスルガ、先刻
ハ小學校ノ事ヲ主トシテ申上ゲマシタノデゴザイマス、是ハ
ドウ云フ譯デアルカト申シマスルト、御承知ノ通リ先ヅ小學
校ノ〓員ハ全國ニ十五六万モゴザイマス、デ其中ニ結核患
者ガドノ位アルト云フ風ナ問題デ、中と數ニ於テ餘計ナモ
ノデゴザイマスカラシテ、小學校ノ〓員ノ事ヲ申上ゲタノデ
ゴザイマス、ソレカラ又是ト同時ニ、御承知ノ通リ此小學校
ノ〓員ハ、俸給モ極ク安イモノデゴザイマスノデ、國庫カラ
シテ疾病治療料ヲ補助スルヤウナ事ニモナッテ居ルヤウナ譯
デゴザイマス、所ガ中等〓員ニナリマスルト、其額ハ略〓〓と
數ヲ申上ゲマスレバ、約總テヾ一萬位シカ中等〓員ハ居リ
マセヌ、ソレカラ又ソレ以上ノ高イ學校ニナリマスト、餘程
少クナリマスヤウナ譯デゴザイマス、ソレデ先刻ハ先ヅ小學
校ノ例ヲ申上ゲマシタ、ソレカラ又中等〓員以上ノ者ニ就
キマシテハ、先ヅ大體自分デ治療ガ出來ルモノト見マシテ、
今日ノ所小學校〓員ノヤウナ疾病治療料ヲ給スル途ハマ
ダ開イテアリマセヌ、ソレデ今回先刻モ申上ゲマシタガ、學
校傳染病豫防ニ關シマスル所ノ規則ガ出來マスレバ、之ニ
依リマシテ、下ハ小學カラ、上ハ直轄學校總テニ行渡ルヤ
ウニ唯今作ッテ居リマス、ソレデ總テノ點ニ行渡ラセマスヤ
ウニ講究ヲ致シテ居リマス、此點ハ其案ガ出來マシタ以上
ハ餘程今日ヨリハ進ンデ參ラウカト斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=44
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045・齋藤紀一
○齋藤紀一君 サウシマスト、甚ダ吾こハ國民トシテ憂ニ
堪ヘヌノデス、小學校ノ〓員ノ數ガ多イカラ傳染病ヲ豫防
スル、然ルニ中等學校以上ノ〓員ハ甚ダ少數デアルカラ、
之ヲ恐レヌト云フヤウナ意味ニ私ハ了解致シマス、此傳染
病ノ如キハ實ニ恐ルベキモノデ、今囘此案ニ對シテハ、吾こ
ハ趣意ニ於テハ熱誠ヲ以テ贊成ヲ致シマス、然ルニ文部當
局者ガ、現在ハ此國民ヲ害スル所ノ有害ナル黴菌ヲ有シテ
居ル者ニ〓育ヲ執ラセテ、何等顧ミザルト云フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=45
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046・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 一寸御話中デス
ガ、先程ノ御質問デ此方ガ答辯ヲ爲スッタノデ、今ノハ御意
見ノヤウデスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=46
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047・齋藤紀一
○齋藤紀一君 イヤサウデハナイ、是ハ質問デス、如何ナル
方針ヲ以テヤラレルカト云フコトデス、サウ云云言論ヲ壓迫ス
ルヤウナコトデハ、委員長ノ資格ガ無イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=47
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048・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 私ニ向ノテ議論セヌ
デモ宜イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=48
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049・齋藤紀一
○齋藤紀一君 默シテ居ラッシヤイ、ソレデ實ニ憂フベキ事ト
思フ、吾ミハ御承知ノ通リ傳染スベキ恐ルベキ黴菌ヲ持シテ
居ル者ガ、高等ノ〓育ヲスルノデアルカラ宜イ、小學校ニ於
テハ是ハナラヌト云フヤウナ理由ハ、私ハアルマイト思フ、何
故ニ文部當局者ハ斯ノ如キ方針ヲ執ッテ居ラレマスカ、其
御意見ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=49
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050・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 私ハ決シテ中等學校以上
ノ學校ニ於テハ少數デアルカラ、肺結核ハドウデモ宜イト云フ
ヤウニ申上ゲタコトハアリマセヌ、私ノ申上ゲマシタノハ、詰
リ先刻何故ニ小學校バカリノ話ヲシタカト云フ御尋デゴザ
イマシタカラ、小學校ガ一番人數ガ多イカランレヲ御話申
上ゲタ、斯樣ニ申上ゲテ居ルノデゴザイマス、決シテ肺結核
ト云フモノガ、少數デアルカラ宜イト云フヤウナ考ハ毛頭持ッ
テ居リマセヌ、デ唯、今日マデノ取扱ハ、是ハ私ガ繰返シテ申
上ゲマスマデモナク、公衆衞生ト學校衞生ト、始終密接ノ
連絡ヲ取ッテ行カナケレバナラヌノデスガ、一方ニ於テ公衆
衞生ノ方ガ進ンデ居リマセヌ際ニハ、學校ノ衞生ノミヲ、單
リエライ進步シタ遣方ハ出來ナイノデアリマス、ソレ故ニ多
少-多少ドコロデハナイ、大ニ不十分ノ點ガアッタノデゴザ
イマス、今囘斯樣ナ肺結核ノ豫防法案抔ガ提出ニナリマ
シテ、是ト相俟ジ、益、効果ヲ擧ゲタイト斯樣ニ考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=50
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051・齋藤紀一
○齋藤紀一君 サウシマスト今日マデノ大學或ハ中學以
上ノ學校ハ、放任シテ顧ミナイト云フコトデアリマスカ、ドウ
云フノデスカ、マダ私ハンコノ所ガ了解ニ苦シミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=51
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052・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) 是ハ先刻モ申上ゲマシタ
通リ、學校ニハ學校醫ガアリマシテ、身體ノ檢查ト云フヤウ
ナ事ヲ、成ベク奬勵シテヤラシテ居リマス、デ病人ヲ發見致
シマシタ場合ハ、本人ニ注意ヲ致シマシテ、治療抔ヲサシテ
居ルヤウナ次第デアリマス、決シテ放任ヲシテ居ルヤウナ譯
デハアリマセヌ、唯〓高イ學校ニ於キマシテハ-中等以上
ノ學校ニ於キマシテハ、小學校ト違ヒマシテ、疾病治療料抔
ヲ給與シテ居リマセヌ、左樣ニ御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=52
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053・齋藤紀一
○齋藤紀一君 略〓分リマシタガ、モウ一ツ今度ハ內務省
ノ當局者ニ御尋致シタイ、此第一條ニ「本法ニ於テ結核ト
稱スルハ肺結核又ハ喉頭結核ニシテ病毒傳播ノ危險アル
モノヲ謂フ」ト云フ文章ガアリマスガ、此危險ト云フ文字ハ
隨分歐羅巴抔ノ-多ク亞米利加アタリニナリマスト何レ
ニモ出來テ居リマス、其法則ハ私ハ存ジマセヌガ、唯〓單ニ
危險ト云フ場合ハ、唯〓肺結核ト喉頭結核バカリト云フコ
トニナッテ居リマスカ、之ニハ隨分下等社會ニナリマスト、睾
丸ノ結核トカ、或ハ中耳炎ノ結核トカ、或ハ骨膜ノ結核ト
カモ甚ダ多イ、ソレガ其方此方ヲ顧ミスデ、公衆ノ中モ計ラ
ズ、或ハ人ノ寄ル處モ顧ミナイ場合モ無イコトハナイ、デ斯
ウ云フ事ハ政府ハドウ云フ考デアリマスカ、危險ト云フ二字ニ
鑑ミマシテ御尋致シマス、之ヲ放任シテ置イテ宜イノカ、否
カト云フコトヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=53
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054・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 齋藤君ヨリ此本法第一條
ニ結核ノ定義ガ出テ居リマスガ「肺結核又ハ喉頭結核ニシ
テ病毒傳播ノ危險アルモノヲ謂フ」ト規定シテアルカラ、肺
結核喉頭結核ニシテ重症デアル、卽チ病毒傳播ノ危險アル
者以外ハ含マヌノデアルカ、而シテ含マナイトスルナラバ、サ
ウ云ム者ハ放任シテモ構ハヌカト云フ考カ、斯ウ云フ御質
問卜考ヘマス、唯今御述ノ如ク、當局ニ於キマシテモ、此肺
結核又ハ喉頭結核以外ノ結核ノ種類ハ、段々私ヨリモ專
門テ御出ル所ノ齋藤君ノ御話ノ通リ、結核外デハナイノデ
アリマス、種類カラ申シマスレバ-併ナガラ吾ミノ爰ニ結
核豫防法ヲ制定スルニ付キマシテハ、第二條ニ持ッテ行ッテ、醫
師ハ消毒其他豫防方法指示ノ義務ヲ有ツ、又第三條ニハ
醫師ハ當該官吏又ハ吏員ニ其旨ヲ申告スベシト、醫師ニ
對シテ申告ノ義務ヲ規定致シテ、而モ之ニ對シテ制裁ヲ附
スル如キ次第デアリマス、第一ニ斯ウ云フ制裁主義ヲ以テ
法ヲ編ム以上ハ、最モ誰ガ見テモ是ナラバ分リ易イト云フコ
トニスルガ第一ノ要點モウ一ツハ最モ多ク吾こノ同胞ヲ侵
シテ居ル者ハ何デアルカ、ソレニ向ツテ先ヅ手ヲ著ケルト、斯
ウ云フ側カラ立案シタ次第デアリマス、デ申上ゲルマデモナ
ク、肺結核又ハ喉頭結核ニシテ、病毒傳播ノ危險アル者ノ
最モ多イノデアリマス、我國ニ於テ-ソレデ先ヅ其者カラ
一ツ-此本法ニ於テハ結核豫防法トアリマスガ、本法ニ
於ケル所ノ結核トハ何ゾヤ、ソレハ肺結核又ハ喉頭結核ニ
シテ、病毒傳播ノ危險アルモノヲ意味スル、但シ御案內ノ通
リ獨逸語デハ「オッフネーツレーロース」ト云フモノヲ先ヅ取締
ル、サウスレバ大體ニ於テ結核豫防ノ趣意ハ達セラルヽト斯
ウ云フ考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=54
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055・齋藤紀一
○齋藤紀一君 了解致シマシタ、ンレカラモウ一ツ御尋シ
タイノハ、此本法ニ依リマスト實施ノ困難ナノハ-中流以下
ノ肺結核竝ニ喉頭結核ハ、是ハ何レモ此法則ヲ以テ實行出
來ルト思ヒマス、然ルニ上流社會ニシテ先ヅ貴顯紳士、サウ云フ
方ノ肺結核ノ場合ニ、此本法ヲ以テ之ヲ應用スルカ、或ハ
又上流社會ハ經濟上許スモノデアルカラ、別段ニ別莊デモ
建テテサウシテ保養スルカト云フ點ニ至リマシテハ、政府委
員ノ意見ハ是ハ許スノデアリマスカ、或ハ許サヌノデアリマス
カ、御尋致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=55
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056・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) ドウモ少シク質問ノ要旨ヲ
解シ兼ネルノデアリマスガ、御尋ハ上流ノ同胞ガ自分デ、結
核療養所ト云フヤウナモノヲ建テヽ、其處ニ自分ノ入ルコト
ハ此法規ノ範圍外デアルカ、斯ウ云フ御質問デアレバ御問
ノ通リデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=56
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057・齋藤紀一
○齋束紀一君 分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=57
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058・伊藤重
○伊東重君 文部當局ニ御尋シマスガ、〓員ニ對スル所
ノ一斑ハ承知致シマシタガ、生徒ノ結核患者ニ就テハ、如
何ナル處置方法ヲ執ラルヽ御考デアリマセウカ、結核ノ蔓
延シテ居ル今日デハ、義務〓育內ノ兒童ニモ、本法ニ規定
シテアル所ノ肺結核ナリ喉頭結核患者ニハ、之ニ對シテ文
部當局者ハ、如何ナル處置ヲ執ラレル御考デアルカ承ッテ置
キタイ、例ヘバ唯ニ警告ニ止メテ置クト云フカ、或ハ登校ヲ
禁止スルト云フコトノ御考デモ持ッテ居ラルヽノデアルカ、現
ニ此生徒ノ中ニハ、診察シテ貰ッテ、初メテ喉頭若クハ肺結核
患者ト診斷セラレタ者ニシテ、尙ホ長ク其以前ニ健康ナル
生徒ト一ツノ學級ノ中ニ、是マデ〓授ヲ受ケツヽアッタト云
フ例ハ少クナイ、是等ハ頗ル危險ダト思フ、隨分今學生ノ
中ニモ其類ノ患者ガ少クナイ、サウシテサウ云フ患者ガ大人
シク、〓師ガ品行方正トシテ表彰シツヽアル生徒ノ中ニ隨
分澤山アルヤウニ見エル、是等ニ就テノ御考ハドウ云フ處
置ヲ執ラルヽカ、一應承シテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=58
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059・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郡君) 學校ノ生徒ノ肺結核ニ對
スル御尋デアリマスガ、御承知ノ通リ是ハ統計ノ上カラ見マ
スルト云フト、年齡ノ若イ者ノ方ニハ、肺結核ハ比較的少ウ
ゴザイマシテ、段々十五カラ二十、二十カラ二十五ト云フ
ヤウナ者ガ段々ニ多クナッテ參ッテ居リマスノデアリマス、是ハ
一般ノ統計デゴザイマス、ソレデ之ニ就キマシテ近頃執ッテ
居リマスル所ノ方針ハ、成ベク年々一回此生徒ノ身體檢查
ヲ行ッテ居リマス、體格檢查ヲ-此時ニ發見致シマスレバ、
父兄ニ之ヲ忠告ヲ致シマシテ、サウシテ療養スルヤウニ忠告
ヲ致シテ居リマス、ソレカラ尙又近頃ハ御承知ノ通リ夏休
ニ於キマシテ、此林間或ハ海岸ノ方ニ設備ヲ爲シマシテ、サ
ウシテ虚弱ナ子供ヲ收容シテ健康ヲ圖ルト云フヤウナコト
ヲ、唯〓デハ致シテ居リマス、ソレカラ今度ノ先刻モ御話ヲ
シタ所ノ傳染病ノ豫防ニ關シマスル、唯〓成案ヲ得ツヽア
ル所ノ規則ニ於キマシテハ、矢張是ハ學校〓員ト同ジヤウ
ニ、病氣ノ狀況ニ依リマシテハ、學校長ガ必要ト見タトキニ、
登校禁止ガ出來ル所マデヤルコトニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=59
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060・伊藤重
○伊東重君 ソレデハ今登校ヲ禁ジテ居ルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=60
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061・赤司鷹一郎
○政府委員(赤司鷹一郞君) ソレハ唯〓省令トナリマシ
テ、是カラ内務省ノ法案抔ガ出マシタト相俟チマシテ、サウ
云フ風ノ事ニナッテ行クダラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=61
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062・井島義雄
○井島義雄君 第五條ノ第二號ノ立法ノ範圍ヲ承ッテ見
タイト思ヒマス、職業ニ從事スルヲ禁止スルト云フコトハ、
面社會公安ノ爲メデゴザイマスケレドモ、亦人權ニ關スルコ
ト甚ダ重大ナル事デアリマス、官公吏ヲ包含セヌト云フコト
ハ、先キノ御答辯ニ依シテ明瞭致シマシタガ、法規ニ依ッテ其
資格ヲ造ル、法規ノ保護ニ依シテ職業ニ從事シテ居ル者ガ
アル、例令バ醫師法ノ醫師、辯護士法ニ依ル辯護士、斯ノ
如キ者ニ對シテモ矢張禁止ヲ命令シ得ルモノトシテノ立法
ノ御趣旨デアリマスカ一應伺シテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=62
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063・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 公務員ハ包含セザル趣旨
ヲ以テ立法サレテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=63
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064・井島義雄
○井島義雄君 辯護士竝ニ醫者ハ公務員デハナイト思ヒ
マスガ、其點ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=64
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065・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 公務員ト云フコトガ若シ
當嵌リマセヌケレバ、立法ノ趣旨ハ實ハ一般的ノ結核豫防
ノ規定デアリマシテ、而シテ主トシテ業態上ト申シテ居リマ
スコトハ今ノ所謂辯護士ノ如キ若クハ醫師ノ如キハ、自分
共ハ公的機關ト見テ居リマス、サウ云フ如キモノハ取締ラザ
ル精神デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=65
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066・井島義雄
○井島義雄君 尙ホ序ニ伺ッテ見タイト思ヒマスガ、神職
若クハ僧侶、是ハ法規ニ依シテ一定ノ資格ヲ獲得シテ居リ
マス、斯樣ナ者モ同樣公ノ機關トシテ公務ニ從事シテ居ル
モノト看做サルヽノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=66
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067・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 御問ノ通リニ解シテ居リマ
ス、學校〓員ノ如キ者モ、先程御質問ガアリマシタガ包含
セザル事ヲ申シテ置キマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=67
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068・井島義雄
○井島義雄君 甚ダ此第二號ト云フノハ此文字ガ不完
全デ、實際ノ適用ニナリマスレバ樣〓ナ問題ガ生ズルモノト
信ジテ居リマスカラ、其爲メニ蛇足デアルカ知リマセヌガ御尋
シテ置キタイノハ、按摩或ハ「マッサージ」トカ、齒醫者トカ云
フヤウナ者ハ患者ノ身體ニモ接近スル危險ノ多イモノデス
ガ、斯樣ナ者モ公ノ機關トシテ御認ニナリマスカ、是モ試驗
ニ依シテ資格ヲ受ケ法律ノ保護ニ依シテ其職ニ從事シテ居
ルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=68
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069・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 按摩「マツサージ」ハ認メマ
セヌ、隨テ左樣ノ人ミニシテ結核ニ罹ルトカ、喉頭結核肺結
核ニシテ傳染性ノ危險アリト云フ場合ニハ、此適用ヲ受ケ
シムル趣旨ニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=69
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070・井島義雄
○井島義雄君 ソレデハ第五條第二號ハ法規ニ依シテ其
資格アリ、法規ニ依ッテ其職ヲ行フテ居ル者ニハ適用シナ
イ、其特別ノ法規ノ如何ニ依シテ其資格ノ有無ガ生ズル譯
デアルカラ、特別ノ法規ニ依シテ其資格アリテ、其業務ヲ執ッ
テ居ル者ニ對シテハ、適用セヌモノト解釋シテ宜イノデアリ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=70
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071・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 御問ノ通リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=71
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072・井島義雄
○井島義雄君 尙ホ伺ッテ置キタイノハ、明治三十七年二
月四日內務省令ノ第一號肺結核豫防ニ關スル件ト云フ
單行法ガアリマスガ、此省令ノ規定ハ御承知ノ如ク主ニ場
所ノ管理、結核豫防ノ施設命令及之ニ關スル制裁ヲ定メ
テアルヤウデス、或ハ本法第五條ノ第三號以下ノ實施規定
ノヤウニナッテ居リマス、此規定ハ矢張本法ト併セテ御用ヰ
ニナル積リデアリマスカ、或ハ本法實施後ニ於テ内務省令
第一號ハ改正セラルヽ御豫定デアルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=72
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073・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 解釋上カラ申シマスレバ、
本法ガ施行サレマスレバ當然現行ノ今御示ニナッタ三十七年
ノ省令ハ廢止セラルヽノデアリマス、消滅スルモノト解シテ居
リマスが、併シ實ハ之ヲ施行スルニ付テ、當然幾多ノ施行
命令ヲ出シマスカラ、後段ノ御問ノ如ク今ノ三十七年ノ省
令ハ自然改正ノ手續ニ依ル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=73
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074・佃安之丞
○佃安之丞君 唯〓杉山政府委員ノ御辯明ニ依シテ見ル
ト、此業務ト云フ事ニ付テ種類ガアリマスガ、是ハ何レモ各
地方ニ於テ殊ニ醫師ニ制栽ヲ附ケラレテ居ル箇所モアルヤ
ウデアリマスガ、何レノ地方ニモ在ル醫師會ニ於テ是ガ必ズ
〓究スル論點ニナルト思ヒマス、之ニ付テハ此職業ニ付テ何
カ第二號ノ如キモノヲ明カニシタモノガアリマスレバ、御示シ
テ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=74
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075・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 御答致シマスガ、唯〓井島
君ヨリ御質問モアリ、佃君ノ御述べノ如ク、成程適從上ニ
於テ疑問ヲ生ズルカト思ヒマスカラ、何レ一般的法規ノ施
行命令中ニ明カニシマスカ、若クハ大體ノ標準ヲ決メテ之
ヲ內訓ノ形式ニ於テ御示ヲスルカ、何レカノ途ニ出ント欲
スルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=75
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076・井島義雄
○井島義雄君 尙ホ其點ニ付テ一言申上ゲテ置キタイノ
デスガ、之ヲ施行命令其他ノ法規ノ中ニ於テ御解決ヲ願
ヒマセヌト、二ツノ法律ガ併存致シテ居リマスカラ、本法第
五條ノ各項ニ違反致シマスト、併セテ內務省令第一號ノ
違反トナリマシテ、刑法第四十八條ニ依ッテ罰金ト他ノ刑
トヲ併セ科セラルヽコトニナリマスカラ、二ツノ罰ヲ受ケル結
果トナラウト思ヒマス、ドウカ明確ニ願ヒタイト思ヒマス、モ
ウ一ツ御尋シマスガ明治四十三年七月十四日勅令第三
百十號、是ハ風俗上取締ヲ要スル稼業ヲナスモノニ關シテ、
治療竝ニ設備ニ關スル件デアリマスガ、此第二條ニ依リマ
スト所謂娼妓ニ主ニ適用セラルヽノデ、第三條ノ患者卽チ
傳染性疾患ヲ帶ビタル者ニ對シテハ、之ニ收容スベキ必要
ナル設備、卽チ病院ヲ設ケナケレバナラヌト云フコトデ、貸
座敷ノ所在地ニ於テハ、各縣トモ病院ガ出來テ居リマス、
此病院ニ於テハ主ニ花柳病ノミヲ治療致シマシテ、傳染性
疾患ト云ヒマスケレドモ、結核ノ方ニ對シテハ何等考慮シ
ナイ〓日ノ現狀デル、然ラバ曩ニ小山君カラ御質問ニナリ
マシタ此傳染病性ト云フ事ニ付テハ、娼妓ハ多ク美人細
腰ト申シテ、肺結核患者デモ何デモ容貌ガ美シケレバ、ド
ン〓〓營業シテ居ル〓日ノ狀態デアリマス、斯樣ナ者ガ肺
結核ニ罹シテ危險ト認メタ場合ニハ、本法ニ依シテ地方長
官ハ結核療養所ニ入所セシムルト云フ事ニナルノデアリマ
スカ、或ハ又第八條ニ該當スベキ場合デアッテモ勅令第三
百十號ノ貸座敷所在地ノ病院、卽チ花柳病ヲ主ニ治療ス
ル病院ニ入院セシメテ、其處ニ委任シテ置クト云フヤウナ
形ニナルノデアリマスカ、其點ヲ一寸伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=76
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077・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 娼妓ハ娼妓取締規則ノ明
文ニ依リマシテ、結核ノ場合ニハ娼妓稼業ヲ廢サセマス、卽
チ娼妓ガ結核ニ罹リマスレバ、其瞬間ニ娼妓ヲ廢メンケレ
ハナラヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=77
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078・井島義雄
○井島義雄君 實際ハ必ズシモサウ云フ事ニナッテ居ラヌ
ノデアリマシテ、私ナドノ間イテ居リマスル事實上ノ關係ニ
於キマシテハ、藝者ニ於キマシテモ或ハ娼妓ニ於キマシテモ、
結核ニ罹ンテ居ル者ハ、其業態ニ從事スルコトハ出來ナイコ
トニナッテ居リマスケレドモ、實際ハ滔々トシテ其職ヲ執ッテ
居ルト云フヤウナ有樣デゴザイマスルガ、其事實ヲ御認ニナッ
テ居リマスカ、ドウデアリマスカ、モウ一ツ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=78
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079・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) ソレハ第二號ヲ適用スル
考デアリマス、理髮業ノ如ク··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=79
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080・井島義雄
○井島義雄君 實際ニ於テ肺結核ニ罹ッタ者ヲ悉ク禁止
シテ居ルカ、ドウカト云フコトヲ一寸承リタイ、取締上カ
ラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=80
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081・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 左様ニ心得テ居リマス、今
日ノ取扱ニ於テハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=81
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082・井島義雄
○井島義雄君 第四條ノ結核患者ガ死亡シタ場合ニ於
テノ黴菌ノ危險性ヲ私ハ能ク專門的ニ存ジマセヌガ、傳染
病豫防法ニ依リマスルト、死體ハ火葬スルコトガ本則ニナッ
テ居ルノデゴザイマスルガ、肺結核病患者ノ死體ト云フモノ
ハ別段火葬ト云フコトヲ條件トセズシテ、左マデ危險ハナイ
ト云フ御見込デアルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=82
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083・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 丁度本會議ニ齋藤君カラ
靑山墓地ノ問題ガ出マシテ、之ニ答辯スル際ニ、何レ答辯
書ニ出テ參ル筈デアリマスガ、結核患者ガ死ニマスレバ、之
ヲ土葬致シマシテモ、他ノ黴菌ノ作用ニ依シテ、其結核菌ナル
モノハ消滅スルコトニ科學的ノ〓究ガ著イテ居リマス、別段
傳播ナドハナイモノト當局ハ認メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=83
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084・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 最早結核病院ニ
付テノ御質問ハ終リマシタルモノト認メテ差支アリマセヌ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=84
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085・伊藤重
○伊東重君 本案ハ結核豫防ニ付テ甚ダ必要デアルガ、
政府當局者ハモウ一步進メテ結核患者ヲ診斷シ、若クハ
死體ヲ檢案スル場合ニ、其都度屆出サセルト云フ御考ハナ
イデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=85
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086・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 私ハ本法ヲ制定スルニ際
シテ、伊東君ノ唯〓御述ノ如ク、外國ニ於ケル如ク一步ヲ
進メテ屆出シムルト云フコトニハ山〓シタイ考ヲ持ッテ居ル
ノデアリマス、若シ全國ノ醫師ガ伊東君ノ如ク進ンダル御
考ヲ持ッテ居ラレテ、而シテ法案制定ノ際ニ於テ、屆出ノ義
務ヲ負ハシメテモ、喜ンデ進ンデソレヲ實行スルト云フヤウ
ナ、献身的、國家的、公共的、進ンダル考ヲ持タレルナラバ、
喜ンデ此法ヲ修正致シタイト考ヘテ居リマス、併シ唯今ノ
所デハ色ミノ機關ヲ通ジテ、ドウモ其所マデ進ムコトガ可能
デナイ、先ヅ此邊ノ所デ暫ク忍ブノ外ナイト云フ趣旨デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=86
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087・伊藤重
○伊東重君 此人口五万以下ノ市ニ對シテハ、如何ナル
方法ヲ執ル御見込デアリマセウカ、今日ノ儘現狀ノ儘デ拾
置クト云フ御考デアリマスカ、又此濟生會ノ救療病人モ、
實際ハ總テノ病氣デハアルケレドモ、貧困者ニ結核ガ多イト
云フコトヲ以テ、結核患者ヲ治療スルト云フコトガ主ニナッ
テ居ル、又一方ニハ赤十字社デモ結核患者ヲ救療スルト云
フ方法ヲ執ノテ居リマスガ、間と地方ニ於テハ互ニ衝突シ重
復スルヤウナ事モナイデハナイガ、當局ニ於テハ此點ノ救療
機關ヲ如何ニ統一スベキカト云フヤウナ御考ハアリマセヌ
カ、此點ニ付テ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=87
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088・杉山四五郎
○政府委員(杉山四五郞君) 人口五万以上ノ都市ハ現
在三十六アリマシテ、三十万以上ノ既ニ現行法ニ依シテ設
置シ若クハ設置シツヽアルモノガ六ツゴザイマス、合セテ四
十二ニナリマス、サウスルト三府一道四十三縣ニ對シテ、殘
リ僅ニ五市デアリマスガ、伊東君ノ問題ハ其五ツノ市ニ對
シテノ施設如何ト云フ御質問ト心得マス、如何ニモ御尤デ
アリマスガ、何レ此五ツノ市ノ屬スル所ノ府縣ニハ、御案内
ノ通リ赤十字ノ支部ナルモノガアリマシテ、支部ノ事業トシ
テソレ〓〓或者ハ病院ヲ持チ、病院ヲ持タナイ者ハ特定ノ
醫師ニ託シマシテ、赤十字ノ事業トシテ結核ノ豫防治療ニ
當ッテ居リマス、尙ホ是等ノ市モ年々ノ人口增加ニ依リマシ
テ、今三万五千、四万位ノ處モ皆遠カラザル中ニ五万ニ達
シマスレバ、ドウセ此法ノ適用ヲ受ケマスコトヽ考ヘマス、而
シテ第二段ノ御問ハ偶〓私ノ答辯ヲ補充スルニ丁度好イ御
問ト心得マスガ、御問ノ如ク濟生會、是ガ又赤十字ト相
待ッテ活動ヲ開始シテ居リマス、先ヅ其邊ノ所デ成ベク人口
五万ニ達セヌ所ノ殘ル市ニ向ッテノ經營施設ハ、大體ヤッテ
行ケヤウカト思ッテ居リマス、而シテ一番終リノ赤十字ニ付
テノ統一的考ハナイカト云フ御質問ハ、是ハ主トシテ陸軍
省關係デアリマシテ、私カラ差出ガマシク答辯スルコトハ出
來兼ネマスルデ赤十字ニ關スル事デアリマスレバ、陸軍ノ方
ノ政府委員カラ御聽取アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=88
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089・小山松壽
○小山松壽君 先刻文部當局ニ御尋致シマシテ、其次ニ
陸軍當局ニ御尋シタイト云フコトヲ申シテ置キマシタ、保留
デアリマス、就キマシテハ、次回ニ陸軍當局ノ御出席ヲ求メ
マシテ、サウシテ私ノ保留致シタ質問ヲ繼續シタイト思ヒマ
ス、サウシテ諸君ガ御同意デアリマスレバ、本日ハ散會ヲ願
ヒマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=89
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090・金杉英五郎
○委員長(醫學博士金杉英五郞君) 御賛成ガ多イヤウ
デアリマスカラ、次回ニハ陸軍當局ノ出席ヲ求メテ、尙ホ質
問ヲ繼續致スコトニ致シマス、本日ハ是デ散會シマス
午後五時二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004111914X00519190301&spkNum=90
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