1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
定年に因る退職判事檢事の恩給に關する法律案
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委員氏名
委員長 伯爵 松平頼壽君
副委員長 荒川義太郎君
子爵 酒井忠亮君
子爵 板倉勝憲君
岡野敬次郎君
男爵 島津久賢君
男爵 池田長康君
加太邦憲君
湯淺倉平君
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大正十年二月十六日(水曜日)午後一時三十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=0
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001・松平頼壽
○委員長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ裁判所構成法中
改正法律案ノ委員會ヲ開會イタシマス開會ノ順序
ト致シマシテ、第一ニ政府委員ノ御說明ヲ求メテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=1
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002・島津久賢
○男爵島津久賢君 議事ノ進行ニ付テ一言申上ゲテ
置キマス、私ハ此前ノ議會ノ本案ノ特別委員ニ入レ
テ戴キマシテ、此議會ノ本案ノ委員ニモ又再選ニナ
リマシタ、此コトニ付キマシテ此前ノ委員ノ方ヨリ
モ一言申上ゲテ置クヤウニト云フ事デアリマシタ、
其コトハ本案ニ對シテ、私ト致シマシテハ無論ノコ
ト、他ノ委員ノ方ニ於テモ、反對セムガ爲ニ反對シタ
ト云フヤウナコトデ此前ノ委員會ニ於テハ本案ガ
握リ潰シニナッタト云フコトデハナイ、其コトヲ明ニ
申上、ケテ置キマス、デ會期ハ短クアリマスシ、憲法其
他ノ問題ニ於キマシテモ種々議論ノ多イ案デアリマ
スルガ故ニ、前ノ短期ノ間ニ於テハ十分審議スルニ
至ラナカッタト云フ次第デアリマス、此議會ニ於キマ
シテノ本案ニ於キマシテハ、卽決否決ト云フヤウナ
コトガナイト同時ニ、又卽決可決ト云フヤウナコト
モナイヤウニ、ドウゾ十分ノ審議ヲ盡スヤウニ委員
長ニモ御願ヒ致シ當局ニ於テモ十分ニ御說明ヲ願
ヒタイト思ヒマス、一言此際ニ希望ヲ申上ゲテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=2
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003・大木遠吉
○國務大臣(伯爵大木遠吉君) 裁判所構成法中ノ改
正案ハ昨年ノ特別議會ニモ提案シタ通リデアリマ
シテ、本案モ何等他ニ變更スル所ナク、全ク昨年ノ特
別議會ニ出シタ儘提案イタシタ次第デアリマシテ、
其最モ主トスル所ノ理由ハ判事及ビ檢事ノ退職ニ
付テ一定ノ年齡ヲ定メマシテ、後進ノ途ヲ開イテ、現
下ノ司法部內ノ氣風ヲ刷新シタイト云フ、是ガ第一
ノ要旨デアリマス、其次ハ檢事總長ノ地位ヲ高メマ
シテ之ヲ親任官ニ爲シタト云フコトガ其第二デアリ
マス、其外通譯官、ソレカラ書記長ノ任命等ニ關シマ
シテ改正ヲ企テタルモノデアリマス、是等ハ世ノ中
ノ進步ノ狀態ニ鑑ミマシテ、ドウシテモ通譯官等ヲ
置カナケレバナラヌ必要ヲ適切ニ感ジタノデアリマ
ス、本案ヲ提起シタ次第デアリマス、大體ニ於キマシ
テ昨年ト同一ノモノデアリマスソレカラ之ニ附帶
スル所ノ恩給法中ノ改正モ、是モ全ク昨年ト同樣デ
アリマシテ、本法施行ノ時ニ當リマシテ現ニ判事、檢
事タリシ所ノ者ハ定年ノ爲ニ退職スル者ニ限ッテヽ
普通文官ノ受クル所ノ恩給ヨリモ幾分玆ニ增加ヲシ
テ、卽チ五割ヲ增加スル、併ナガラ本法施行後ニ於キ
マシテ司法部內ニ這入ッテ來ル所ノ者ニハ、是ハ其五
割增ノ特別恩給ヲ給與スルニ及ブマイ、斯樣ナ見地
カラソレハ加ヘナイノデアリマス、要スルニ昨年ト
同樣デアリマス、ドウゾ宜シク御審議ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=3
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004・松平頼壽
○委員長(伯爵松平賴壽君) 御說明ガ濟ミマシタカ
ラドウゾ御質問ヲ願ヒタイト考ヘテ居リマス、大體
ハン)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=4
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005・湯淺倉平
○湯淺倉平君 唯今大臣ヨリ御說明ガアリマシタガ
昨年御提案ニナリマシタ分ト、今囘御提案ノ分ト全
ク同一ノ案デアルカノヤウニ拜承致シマシタケレド
モ、兩案トモ多少文字ニ於テ、內容ニ於テ相違ガアル
ヤウニ思ヒマスルノデゴザイマスガ、前囘御提案ノ
分ト、今囘御提案ノ分ト違ッテ居リマス點ニ付キマシ
テ一應御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=5
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006・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 唯今司法大臣ヨリ、昨
年提案ノ分ト同一デアルト云フコトヲ申上ゲラレマ
シタガ、其趣意ニ於テハ同一デアリマスルガ、唯一二
點些細ノ點ニ於テ違ヒマシタノハ、昨年ノ案ニ於キ
マシテハ地方裁判所ノ書記課ニアル所ノ監督書記
ト云フモノヲ上ボシテ、奏任ニスルト云フコトノ規
定ガアッタノデゴザイマス、ソレハ主ト致シマシテ其
時ノ立案ノ趣意ハ今囘會計法モ改正案ガ提出ニナッ
テ居リマシテ改正法ニ於テ認メタル所ノ金庫制度
ヲ廢スルト云フ所カラシテ、從ッテ供託事務ト云フモ
ノヲ司法省ノ所管ニシテ貰ヒタイト云フ事柄ガ、大
藏省カラ交渉ガアリマシテ、ドウモ供託事務ヲ司法
省デ所管スル、ト云フコトニナリマスト、金錢ノ取扱
ヲ爲シマスルカラ、ドウシテモ地方裁判所ニ書記長
ト云フ者ヲ置イテ其衝ニ當ラシムルト云フコトニシ
ナケレバ責任ガ持テマイト云フヤウナ考カラ致シ
マシテ、監督書記ヲ上ボシテ書記長ニスルコトガ出
來ルト云フコトニ致シタノデゴザイマシタガ、當年
ニ於キマシテハ供託法ノ規定ハ又別問題ニ致シマシ
テ、裁判事務ノ取扱ヲサセヌト云フコトニ致シマシ
テ、今其方面ニ向ッテ議ヲ進メツツアリマス、而カモ
又一面ニ於キマシテハ、此判任官ノ昇格ト云フコト
ニ付キマシテ、政府部內ニ於テモ或年功ノアル者ニ
付テハ昇シテ奏任官ノ待遇ヲ與ヘルコトガ出來ルト
云フヤウナ規定モ設ケ樣ト云フ議モアル所カラ致シ
マシテ、監督書記ヲ奏任官ニスルト云フ規定ヲ、本案
カラ削除致シタノデゴザイマスソレガ一點違フ點
デゴザイマシテ、第二ト致シマシテハ此附則デゴザ
イマス、附則ニ於キマシテ「本法施行ノ際現ニ判事又
ハ檢事ノ職ニ在ル者云々ト此以下ノ規定ヲ置キマ
シタノハ、本法施行ノ際ニ當然六十三トカ六十五ト
カ云フモノニ達シテ居ル者ガアリマスト云フト、其
者ハ本法施行ノ日ニ於テ直ニ此規定ニ依ッテ退職ト
云フコトニナッテシマヒマシテ、本法ノ包含シテ居リ
マスル五年ノ期間ニ於テ、總會ノ決議ニ依ッテ延長ヲ
スルト云フ規定ヲナスコトガ、出來ナイモノガ起ッテ
來ルデアリマセウ、ソレハ延長スベキ必要ノアルモ
ノヲ延長スルコトガ出來ナイヤウナコトニナリマス
ノデ、此處デ附則ヲ置キマシテ、二十日間ニ其手續ヲ
取ルコトガ出來ヤウカラ、二十日內ハ、本法施行ノ日
ヨリ二十日內ハ假令本法ノ年齡ニ達スルトモ、其間
ト云フモノハ退職ヲシナイ、二十日經過後ニ於テ退
職シタモノトスルト云フ附則規定ヲ置キマシテ以
テ延長ノ手續ヲ取ルコトガ出來ルヤウナコトニ致シ
タノデゴザイマス、ソレダケガ此構成法ニ於テ違フ
點デゴザイマス、ソレカラ次ノ恩給ニ關スル法律案
ニ於キマシテ違ヒマス點ハ、七十四條ノ二又ハ八十
條ノ二ニ規定スル年齡ニ達シタ者、又ハ其官ヲ免セ
ラレ云々ト云フ此文句ハ先年提案致シタルモノト違
フノデゴザイマシテ、七一四條ノ二又ハ八十條ノ二
ノ規定ニ依リマシテ延長スルコトガアル其延長致
シマシタ、延長サレタ者ガ自己ノ都合ニ依テ、願ヒニ
依テ本官ヲ免ゼラレルト云フヤウナ事ガアルノデア
リマス、サウスルト定年ニ達シテ退職ヲ致シマスレ
バ、此百分ノ五十ノ恩給加俸ノ恩典ヲ受ケルガ、年限
ヲ延バサレテ罷メタガ爲ニ百分ノ五十ノ恩給增額ノ
恩惠ヲ被ムル事ガ出來ナイト云フヤウナ不公平ヲ見
ル事ガアリマスルデ此處ニ年齡ニ達シタル後退職
ヲスルカ、或ハ願ニ依ッテ本官ヲ免ゼラレタモノナラ
バ旣ニ定年後ノ退職免官デアルカラシテ、矢張リ百
分ノ五十ノ恩給フ增額シテヤル、斯ウ云フ事ニ致シ
マシタ、此點ガ昨年ノ提案ト異ナル點デアリマシテ、
其他ハ全部昨年ノ案ト同一デアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=6
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007・池田長康
○男爵池田長康君 此法案ハ先ヅ二案ニ分レテ居リ
マスルガ裁判所構成法中改正法律案ノ方デアリマ
スルガ、之ニ付キマシテハ前年特別議會ニ於テ相當
御會議ニナッテ居ル事柄デゴザイマス、本員モ當時ノ
速記錄ヲ拜見イタシマシテ、其論旨ノ那邊ニアルカ
ハ推察イタシマシタノデアリマスガ、要ハ憲法ニ牴
觸スルヤ否ヤト云フ問題、竝ニ構成法自體ノ問題、
括致シマシテ法律上ノ問題、他ハ事實內容ノ問題ニ
ナリマス、又從テ此恩給ニ關スル法案ノ問題ガ之ニ
關係スルヤウニ思ハレノデアリマスガ、憲法ニ牴觸
スルヤ否ヤト云フ事柄ハ事甚ダ重大ナル〓義ノアル
點デゴザイマス、就キマシテハ政府當局ニ於カレマ
シテ、憲法違反ニ非ズト云フ御說明ハ當時ノ御說
明其儘ヲ以テ此委員會ニ御臨ミニナルノデアリマウ
カ、多少又其處ニ補充ナリ又說明ヲ御變へニナッタ點
ガアラバ此際承ッテ置キマスト、大變便宜ガアルヤ
ウニ思ヒマス其點ヲチヨット伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=7
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008・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 先年憲法違反ナリヤ否
ヤト云フ問題ニ付キマシテ、我〓ヨリ御答辯申上ゲ
マシタル趣意ト、今尙ホ抱持シテ居リマスル考トハ
異ナル所ハナイノデアリマス、繰返シテ申上ゲルマ
デモアリマセヌガ、簡單ニ政府ガ見テ居リマス所ノ
違憲ニ非ズト云フ事ノ理由ヲ申上ゲマスルナラバ
憲法五十八條第二項ノ規定ニ依リマスレバ、「裁判官
ハ刑法ノ宣〓又ハ懲戒ノ處分ニ依ルノ外其ノ職ヲ免
セラルルコトナシ此條文ニ牴觸スルコトハナイカ、
是ガマア第一疑ヒガ起ル點デアラウト思フノデゴザ
イマスガ御承知ノ通リ故伊藤公ノ著ハサレタル所
ノ憲法義解ノ疏註ニ於キマシテモ、此老體ノコトハ
法律ヲ以テ定ムルト云フ規定ガアリマシテ、要スル
ニ五十八條ノ二項ノ職ヲ免セラレルト云フ事柄ハ
卽チ通俗言フ所ノ免職免官デアリマシテ、職務關係
ヲ離脫セシムルト云フ精神デナイ、依テ本法ノ如キ
退職處分ヲスルト云フコトニ付テハ憲法五十八條
第二項ニ牴觸ハシナイト云フノガ第一ノ理由デゴザ
イマス而シテ憲法五十八條第一一項ノ刑法ノ宣告又
ハ懲戒ノ處分ニ依ルト云フ、此コトニ依テ職ヲ免ゼ
ラレルト云フコトヲ適用シテ見マスルノニ、其職ヲ
免ゼラレルト云フ事柄ガ退職デナイト云フ事柄ハ明
白デアラウト思フ、デ官ヲ奪フノデ、職ヲ免ズルト云
フコトデナイト云フノハ、刑法ノ宣告ニ於キマシテ、
職ダケヲ奪ヒ取ルト云フ事柄ハ決シテ出テ來ナイノ
デゴザイマス、刑法ノ宜告ニ依リマシテ重罪ヲ犯ス
ト云フヤウナコトガアリマスレバ必ズ免官ニナル
ノデアリマス、免官ニナリマスレバ當然失職スルノ
ハ、是ハ無論論ノナイ話デアル、官ヲ保ッテ居ッテ職ノ
無イ者ハアルノデアリマスガ、官無クシテ職ノアル
者ハナイノデ、ソコデ刑法ノ宣告ニ依ッテハ職ノミヲ
免ズル、卽チ職ノミヲ退カシテ、官ヲ保留シテ置クト
云フ結果ハナイノデアリマスルカラ、卽チ刑法ノ宣
告ニ依ッテ職ヲ免ゼラレルコトナシト云フコトヲ適
用シテ見マスレバ卽チ免官所謂官位ヲ剝奪スル斯
ウ云フコトニナルノデ、ソレカラ懲戒ノ處分ノ方ニ
依ッテ之ヲ見マスルト云フト判事懲戒法ニ依リマシ
テ免職ノ處分ニ致ス、免職ノ處分ヲ致シマシタル場
合ニ於キマシテ、官ヲ失ヒ竝ニ恩給ヲ受クルノ權ヲ
失フ斯ウ云フ事柄ガ明カニ書イテアルノデゴザイ
マス、サウデアリマスカラ、五十八條ノ第二項ノ適用
トシテハ、官ハ保タシメテ職ノミヲ奪フト云フコト
ノ場合ハ、徹頭徹尾生ゼヌノデアリマス由ッテ以テ
此ノ五十八條ノ第二項ノ職ヲ免セラルヽコトナシト
アリマスノハ取モ直サズ免官デアル所謂官職竝ビ
奪フノデアル〓斯ウ云フ規定デアルト解釋ヲシテ居
ルノデ、從ッテ此精神ニ基キマシテ、構成法七十四條
ノ規定ガ生レテ出タモノト解釋イタシマスル卽チ
構成法七十四條ニ依リマスレバ精神又ハ身體ノ衰
弱ト云フコトノ事實ガアッタナラバ、總會ノ決議ニ依
ッテ之ニ退職ヲ命ズルコトガ出來ル、斯ウ云フ規定ガ
アルノデゴザイマシテ、其ノ退職ヲ命ズルト云フノ
ハ、卽チ免職ニ非ズシテ職務ヲ退カシメル職務ヲ退
カシメルノハ卽チ職務カラ離脫セシメテ、官ハ終身
保留セシメル、斯ウ云フ規定ニナッテ居ル、卽チ憲法
五十八條ノ二項ノ精神ニ基イテ、構成法七十四條ハ
生レ來ッタモノト解釋シテ居ルノデアリマス、サウ云
フ次第デゴザイマスカラ、此ノ飽迄モ退職規定ト免
職規定、斯ウ云フモノハ文字ニ於テ違フガ如ク、又精
神ニ於テモ違フノデアル斯ウ云フ解釋ヲ取ッテ居ル
次第デアルノデ、尤モ此ノ當時他ノ法令等ニ依リマ
スト、或ハ免官ト云フ樣ナ文字ヲ使ッタ法令モアリマ
スルガ、要スルニ免官免職ト云フヤウナ言葉ガ、截然
トシテ明確ナ區劃ヲ立ッテ用ヒラレタト斯ウ考ヘラ
レナイノデゴザイマス、法律全體ノ趣意カラ考ヘマ
シテ、此五十八條第二項ト云フモノデ職ヲ免ゼラル
ト云フノハ卽チ免官デアル、斯ウ解釋ヲシテ居ル次
第デアルノデ、他ノ法令等ニ依ッテ見マシテモ隨分
此ノ刑法ノ宣〓又ハ懲戒ノ處分ニ非ズンバ、職ヲ退
ケルコトハナイト書イテアル所モアリマスルシ、又
ハ官ヲ免セラルルコトナシト書イテアル法令モゴザ
イマス、サウ云フコトガ唯構成法ニアルト單純ナル
法律ニアルトノ差異ハアリマスルケレドモ文句ハ
皆同ジニ用ヒヲノテ居ルサウ云フヤウニ法律ニ於
キマシテハ定年制ヲ設ケテ居ルノモアルノデゴザイ
マス、例ヘバ理事ノ如キモノハ刑法ノ宣告又ハ懲戒
ノ處分ニ非ズンバ、其官ヲ免ゼラルルコトナク、六十
歲ニナレバ退職ヲスル斯ウ云フ定年制モアルノデ
ゴザイマシテ、要スルニ此ノ五十八條ノ二項ト申セ
バ、構成法七十四條トハ牴觸シテ居ラヌ、斯ウ云フ考
デ居ルノデアリマス、從ッテ本法モデス、矢張リ構成
法七十四條ノ精神ト異ナル所ハナイ、構成法七十四
條ハ身體ノ衰弱、精神ノ衰弱ト云フコトノ事實ヲ認
定シテ、之ニ退職ヲ命スルコトガ出來ルト云フ規定
デアル、デ今囘提案イタシマシタル法律ハ、法律ノ擬
制ニ依リマシテ此年齡ニ達スレバ裁判官タル所ノ
職務ヲ執ルニ不適當ナリト法律ガ認定イタシマシテ
之ニ退職ヲ命ズルノデアル、斯ウ云フ差異ニ外ナラ
ヌノデゴザイマシテ、精神ハ矢張リ裁判所構成法ノ
七十四條ト同一ノ趣意ニ出デヽ居ルノデゴザイマス
大體政府ノ、本法ガ憲法違反デナイト云フ考ハソコ
ニアルノデゴザイマシテ、而シテ年齡ヲ六十三、六十
五ト云フコトニ取リマシタノハ、日本人ノ先ヅ生理
狀態カラ見マシテ、六十三ト申シマスレバ算へ年デ
稍〓六十五ニナル、六十五ト申セバ稍〓六十七ト、或
ハ六十六ノ場合モアリマスルガ、サウ云フヤウナコ
トデ、先ヅ算ヘ年六十五ト云フコトニナレバ、日本人
ノ此ノ頽齡ト言ッテ宜カラウ、而カモ此裁判官ノ如キ
激職ニアル所ノ者ハ國民ノ權利義務ヲ裁斷スル所
ノ重要ナル任務ニ就ク者、而カモ或ル場合ニ於キマ
シテハ山野ヲ跋涉シテ、身體上ノ强健ト云フ事柄モ
亦要素ニナルベキ所ノ職務ヲ執ル所ニアル者デゴザ
イマスルカラ、ドウモ六十三卽チ算へ年ニシテ六十
四若クハ六十五ト云フ事ニナレバ矢張リ一樣ニ法
律上ノ認定トシテハ退職ヲシテ差支ナイノデアル
以テ新陳代謝ノ途ヲシテ、裁判ノ刷新ヲ圖ル、斯ウ云
フコトガ現下ノ急務デアル斯ウ考ヘテ居ル次第デ
アリマス、尤モ人ノ性格ニ依リマシテハ老者ト雖モ
亦壯者ヲ凌グ人モアルノデゴザイマスカラ茲ニ法
律ハユトリヲ取リマシテ五年ノ延長期間ト云フモノ
ヲ設ケテ居ル次第デアルノデゴザイマス、ト云フヤ
ウナ次第デ、此ノ繰返シテ申シマスレバ構成法七十
四條ノ精神ト變ル所ハナイ而カモ曩ニ大正二年行
政財政ノ整理ノ際ニ於テモ、矢張リ裁判官ノ休職處
分ヲ命ジタコトモアルノデゴザイマスカラ、裁判官
ニ休職者若クハ退職處分ヲ命ジマシタ所ガ憲法違
反トハ考ヘナイト云フコトハ、政府ト致シマシテハ
終始一貫變ル所ハナイ次第デアルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=8
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009・池田長康
○男爵池田長康君 唯今鈴木次官ヨリ御說明ヲ伺ヒ
マシタ、元來私ハ此ノ法案ニ對スル憲法論ト致シテ
ハ敢テ憲法違反ナリト云フ〓ヲ以テ出テ居ルノデ
モナイ、又憲法違反ニアラズト云フ見地デ實ハ出テ
居ルノデモナイ、、冷靜ニ考ヘマシテ兩說共ニ一理ア
ルノデゴザイマスガ又兩說共ニ私ハ弱點ノアル樣
ニ考ヘラレル、尙ホ詳細ニ亙リマシテ御質問ヲ致シ
タイノデアリマスルガ其前ニチヨット伺ッテ置カナケ
レバナラヌ一二ノ點ガゴザイマスルカラ之ヲ伺ヒマ
スガ唯今ノ御說明ニ依リマスルト、此ノ職ト官ト云
フェチ、「憲法制定當時ニ於テハ混用サレテ居タト云
フ風ニ私ハ拜聽イタシタノデゴザイマスガ、若シ是
ガ混用サレテ居リマシタナラバ、其ノ有力ナル材料
ヲ私ハ拜見イタシタイ斯ウ考ヘテ居リマス、又憲法
制定當時ニ、此ノ職ト官ガ混用サレテ居リマシテモ、
現在ノ如キ法的現象ニ於キマシテ職ト官トノ區別ガ
付イテ居ルノデアリマス、サウ致シマスルト憲法制
定ノ當時ニ於キマシテ、職ト官ガ混用サレテ居ルナ
ラバ此混用サレテ居ルト云フ事ガ眞實デナケレバ
ナラヌ、其後何等ノ手續ナクシテ、其職ト官ト云フモ
ノガ區別ヲ置カレル此區別ヲ置カレタ事ガ抑〓
怪シク私ハ考ヘルノデアリマスガ、ソコデ私ハ此問
題ヲ判斷イタシマス上ニ、憲法制定當時ニ於テ官ト
職トノ混用サレタ材料ガ、唯〓御言葉デ御返答ヲ承
ルヨリモ寧ロ何〓ニ斯ウ書イテアルト云フ樣ナ事柄
ヲ、書面ニデモシテ戴キマシテ、ソレニ依リマシテ、
其事柄ト對照致シマシテ、能ク考ヘテ見タイト云フ、
私ハ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、其點ヲ一ツ明カニ
シテ戴ク事ヲ御願ヒ致シマス、ソレカラ第二ニ、免職
ノ意義ニ付テハ免官ヲ伴フモノデアルト云フ御說ヲ
拜聽イタシマシタ、然ラバ此免職ト云フ意味ノ中ニ
ハ裁判所構成法等ニ用ヒラレテ居ル免職ト云フ文
字ノ中ニハ總テ免官ヲ伴フ所ノ免職ノ意義バカリ
デアルカ、或ハ又此免職ト云フ中ニ、退職ヲ含マレタ
所ノ免職ト云フモノガ書カレナクチヤナラヌガ詰
リ同ジ法系ニ於テ同ジ文字ノ中ニ、二樣ノ意義ノ存
在シテ居ルモノガアリハスマイカ、總テ同一ト御考
ヘニナリマセウカ、其點ヲ先ヅ伺ッテ見タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=9
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010・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郎君) 書面デ對照條文ヲ出セ
ト云フ御說デアリマ、スカラ、是ハ他ノ法令ト併セテ
對照的ノモノヲ出來ル限リ作ッテ見ヤウト思ヒマス
唯私ガ申シマシタノハ憲法五十八條二項ソレ自身
ガ用ヒテ居リマス免職ト云フ此文字ハ免官デアル
今日ニ於キマシテハ免官免職ト使ヒ分ケテ居ルケ
レドモガ、當時ニ於テ、玆ニ用ヒテアル免職ド云フ字
ハ免官ト讀マザルヲ得ヌ、依ッテ今日ハ免官免職ヲ截
然區別シテ居リマスケレドモガ、此當時ニ於テハ用
語ハ今日ノ如ク使ヒ分ケテ居ラヌト云フコトヲ申上
ゲタノデアリマス、ソレデゴザイマスカラ、此當時發
布セラレタ所ノ法令ニ於キマシテ、對照的ノモノヲ
拵ヘテ御目ニ掛ケルコトニ致シマス、ソレカラ構成
法ニ於キマシテ免職ト用ヒマスノハ、矢張リ此憲法
五十八條二項ト同ジコトデ是ハ免官、斯ウ云フコト
ニ解釋セザルヲ得ヌト思フノデゴザイマス、左樣御
了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=10
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011・池田長康
○男爵池田長康君 唯今混用ノ點ニ付キマシテ所
謂職ト官トノ混用ノ畔ニ付テ御伺イタシマシタ點ニ
付テ、書面ノ御請求ヲ致シマシタ所、ソレヲ戴クト云
フ御約束ガ出來マシタ感謝イタシマス、尙ホ憲法五
十八條第二項ニ付キマシテハ免職ト云フコトハ是
ハ免官ノコトデアル、斯ウ云フ風ニ直チニ解釋スル
ヤウニ今御話デアリマシタガ或ハ意味ノ取違ヒカ
モ知レマセヌガ、免職ト云フコトハ、詰リ免官ヲ伴フ
コトデアルカラニ、茲ニハ免職ト書イテアルガ、是ハ
免官ニ當ルノダト云フ御說明デアリマスカ、或ハ免
職ト書テアルガ是ハ免官ノコトデアル直チニサ
ウ云フ御說明デアルノデアリマスカ、玆デ免職ト書
テアルコトガ、免官ヲ惹起スルカラニ免職ト免官ハ
全ク違フケレドモ玆ニ書カレテ居ル免職ト云フモ
ノハ免官ト云フモノヲ惹起スルカラニ、事柄自體ハ
詰リ免官ノコトニナルト云フコトニ承ハッテ宜シイ
ノデアリマセウカ私ハサウ云フ樣ナ解釋ナラバ私
ハ滿足デアリマスガ其點ヲ一ツ伺ッテ置キタイ、ソ
レカラ免職ノ意義ニ付キマシテ、裁判所構成法ニ一
ツ不審ノ點ガアルノデアリマス、裁判所構成法三十
七條ニ書カレテ居リマス免職ト云フコトニ付テハ
裁判所構成法七十四條ニ對シテ考ヘテ見マスレバ、
此免職ト云フ中ニ退職ガ含マレテ居ルモルノト解釋
シナケレバ、同法ノ七十三條ト七十四條ノ聯絡ガ十
分取レナイ樣ニ私ハ考ヘル、其點ハ、私ノ幼稚ナル頭
ノ判斷カラサウ云フ誤ッタ判斷ヲシテ居ルカモ知レ
マセヌガ、此點ハ私ハ此免職ト云フ中ニハ退職ト云
フ意味ガ含マレテ居ルサウシナケレバ此七十四條
何〓ヲ除クト云フ意味ガ明瞭ニナラナイ、若シ此通
リニ免職ト云フコトデ、退職モ含マヌトスルナラバ、
玆ニ色〓轉職其他ノコトガ列記シテ書イテアリマス
ガ、ソコニ退職ト云フ文字ガナクテハ、七十四條ト七
十三條ノ聯絡ガ取レナイ、其點ハ私ハ一ツ不審ヲ懷
イテ居ル點デアリマス、是ハ或ハ御卽答デナイトモ
宜シウゴザイマス、私モ一ツノ疑問トシテ考慮中ニ
屬スルモノデモアルカラ、唯〓御說明ヲ得ヌデモ宜
シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=11
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012・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 第一問ノ憲法五十八條
ノ二項ノ職ヲ免ゼラルル事ナシト云フノハ職ヲ免
ゼラレタル結果、、免官ニナルト云フノカ或ハ職ヲ免
ゼラレタルト云フ文字其モノガ官ヲ免ゼラルルコ
トナシト書イタト同ジコトデアルノカ斯ウ云フ御
尋ト拜承イタシマシタガ、先程申上ゲマシタ趣意ハ
刑法ノ官告又ハ懲戒處分ニ依ッテ職ヲ免ゼラルルト
云フコトハナイノデゴザイマス、卽チ刑法ノ宣〓ニ
依リ、若クハ懲戒處分ヲ受ケタ場合ニ於テ免官ハア
ル、デアリマスルカラ、玆ニ規定シテ居リマス、職ヲ
免ゼラルルコトナシト、官ヲ免ゼラルルコトナシト
書イタト同ジコトデアル斯ウ解釋シテ居ルノデア
リマス、勿論先程申シマス通リ、官ノ無イノニ職ノナ
イノハ當然デアリマス、官ヲ存シテ職ヲ持タヌ者ハ
卽チ退職判事、斯ウ云フヤウナモノガゴザイマスカ
ラ、玆ニアリマスル文字ハ職トアッテモ今日用フル所
ノ官デアル、斯ウ解釋ヲシテ居ル次第デゴザイマス、
ソレカラ構成法七十三條ノ規定ハ御疑ノ如ク、私モ
疑ヲ持ッテ居ル、全然是ハ七十四條乃至七十五條トノ
聯絡ヲ考ヘテ見マスルト七十三條ノ處分ニ依リ七
十四條乃至七十五條ノ場合ヲ除クノ外判事ハ云々斯
ウ書イテアルカラ、七十四條乃至七十五條ノ規定ニ
轉官轉職ナドト云フ斯ウ云フモノガアレバ、聯絡ガ
チヨット取レルノデゴザイマスガ御疑ノ如ク七十
四條ハ單ニ退職ノ規定ヲ設ケテ居ルノデアルソレ
カラシテ七十四條ノ二ハ轉所ノ規定ヲ設ケテ居ル
ノデゴザイマスソレカラ七十五條ハ闕位ヲ待タシ
ムル間俸給ノ半額ヲ給スル斯ウ云フ憲法ノ規定ガ
アルノデアル轉官ノ規定ト云フモノハ七十四條七
十五條ニハナイ、之ヲ以テ聯絡ハ取レナイ、ソレカラ
玆ニアリマスル所ノ免職ト申シマスルモノハ、矢張
判事懲戒法等ノ規定ト對照イタシマシテ、矢張リ是
ハ免官、斯ウ云フ風ニ讀ンデ居ルノデアリマス、竝べ
タ數個ノ事柄カ七十四條乃至七十五條ト聯絡ガキッ
シリ行ッテ居ラヌ、中ニ齒拔ケモノヲ生ズルト云フコ
トハ我〓モサウ思ッテ居ル左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=12
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013・池田長康
○男爵池田長康君 唯今御說明ニナリマシタ構成法
七十三條ト、七十四條ノ聯絡ノ點ニ付キマシテハ大
體御疑ヲ御持チニナル點ニ付キマシテハ、私モ同感
デアリマスルガ其退職ノ點ニ付キマシテハアスコ
ノ點ニ退職ト云フ文字ガナイト云フト、七十三條ノ
規定ノ意味ヲ爲サヌ、斯ウ私ハ思フ、所デ私ガ今日玆
デ質問致シマス所ノ二點ハ總テ此問題ヲ判斷イタ
シマス所謂憲法論ト致シマシテ判斷ヲ致シマス實ハ
前提ニナルノデアリマス、又是ヨリ引キマシテ種々
ノ問題ニ付キマシテ、憲法違反ニ非ザルヤト云フ點
ニ付テ判斷ヲ致シタイト思フノデアリマス、唯今質
問致シマシタノハ、其判斷ヲ致シマス前提トシテ最
初ノ疑ノ點デゴザイマス、政府委員ノ御考ハ玆ニ分
リマシタ尙ホ他ノ委員ヨリモ御質問ガアラウト存
ジマス、又番外ノ御方トシテ御質問モアラウト思ヒ
マスカラ、暫ク私ノ質問ヲ保留イタシマシテ、質問ヲ
御讓リ致スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=13
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014・湯淺倉平
○湯淺倉平君 私ハ極ク大體ニ本案御提出ノ理由ニ
付キマシテ二三伺ヒタイト思フノハ唯今司法大臣
及ビ次官ノ御說明ニ依リマスルト憲法第五十八條
ノ第二項ハ裁判官ノ官ヲ保障シタモノデアッテ職ヲ
保障シタモノデナイ、斯ウ云フ御說明デゴザイマス
ルガ、裁判官ノ官ノミヲ保障スルト云フコトガ、裁判
官ノ獨立不覊ノ態度ヲ全クセシメルト云フ上ニド
レダケノ效果ガアルト云フ御考デアハリマセウカ或
ハ憲法ノ規定ハ裁判官ノ職マデモ保障シテ居ルモノ
デナイ、裁判官ノ職ノ保障ヲスルコトハ構成法ニ依
テノミデアルト云フヤウナ御考デアルノデアリマセ
ウカ、其點ヲ第一ニ伺ヒタイト思フ、ソレニ附隨致シ
マシテ私モマダ十分調査ヲ致シテ居リマセヌガ獨
逸ノ新憲法ノ如キハ憲法ノ明文ニ、定年制ヲ定メル
場合ニ法律ヲ以テスルト云フ特別ノ明文ヲ設ケテ居
ルヤウニ存ジマスルガ斯樣ナ特ニ憲法ニ定年制ヲ
設ケル、明文ヲ設ケテ居ル他ノ國ノ例ヲ御調ベニナッ
タモノガアリマスルナラバ御伺ヒシタイト思ヒマ
ス、ソレカラ次ニ本案ハ判事ニ付キマシテハ定年制
ニ依ッテ、從來終身其職ニアッタル者ヲ一定ノ年齡ニ
達スルト同時ニ、當然退職スルト云フコトニナリマ
スルノデアリマスガ一面檢事ニ付キマシテハ從來
ドウ云フ保障ガアッタト云フ譯デアリマセウカ此邊
ハ私共モ門外漢デ甚ダ迂濶ナ御尋デアリマスガ、構
成法ノ八十條ノ規定ノ解釋ニ付キマシテ一ツ當局ノ
御考ヲ伺ッテ見タイト思フ唯〓池田男爵ノ御質問ニ
對スル當局ノ御答辯ニ依リマスト、構成法ノ免職ト
云フ文字ハ憲法、五十八條ヲ當局ガ御解釋ニナルト
同樣ニ免官ト云フ意味デアルサウ致シマスルト構
成法第八十條ハ矢張免官ト云フ風ニ御解釋ニナッテ
ノコトデアラウト思ヒマスサウ致シマスルト現行
ノ構成法ノ下ニハ、檢事ハ其職ニ對シテハ何等ノ保
障モナイモノデアル、サウスルト今囘ノ御提案ニ依
ッテ、檢事モ矢張リ判事同樣ニ定年ノ規定ヲ設ケラレ
テ居リマスルカラ、檢事ハ今囘ノ御提案ニ依ッテ其保
障ヲ非常ニ强クセラレテ居ルモノデアル斯樣ニ解
釋シテ宜シイノデアリマセウカドウカ其點ヲ伺ヒ
タイ、尙ホ御答辯ヲ得マシタ上ニ、追ッテ御尋ヲ致シ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=14
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015・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 官ノミヲ保タシメテ職
務カラ退カシメル卽チ官ハ終身トシテ判事檢事ト
シテ置イテモ、其職務ヲ執ルコトヲ得セシメザルト
云フコトニシタナラバ、裁判ノ公正ヲ保ツト云フ事
ニ支障ナキカ、斯ウ云フ御尋ト第一點ハ承ハリマシ
テゴザイマスガ勿論裁判官ヲシテ終身官タラシム
ルト云フ保障ノアリマスルノハ、卽チ刑法ノ宣〓若
クハ懲戒ノ處分ニ非ズンバ、其官ヲ奪フ事ナシ、斯ウ
云フ事ニ致シマシタノハ行政官ノ掣肘ニ依テ免官
ヲスルゾト云フヤウナ嚇シデ裁判ヲ左右スル事ガア
ッテハナラヌカラ、職務ヲ執リツツアル間ニ於テ後顧
ノ虞アラシムルト云フ事ニナレバ、裁判ノ公正ヲ失
スル、斯ウ云フ精神カラ致シマシテ、構成法五十八條
ノ二項ノ生レ出デタル所以デアラウト思フ、勿論如
何ニ終身ノ保障ヲシテ居リマシタ所ガ狂人ニナラ
ウトモ耳ガ聞ヘズ眼ガ見ヘズ足ガ立タズ腰ガ立タザ
ル樣ニナッテモ、裁判官ダカラ裁判事務ヲ執ラシムル
ト云フ事柄ハヨモヤ構成法ナリ憲法ノ認メラレル
所デナカラウト思フ、之ニ依ッテ構成法七十四條ガ生
レタモノト考ヘルノデアリマスカラ、官ヲ保タシメ
テ職ヲ奪ヒマシタ所ガ決シテ後顧ノ憂アラシムル
ト云フ事ハナカラウト思ヒマス、矢張リ依然トシテ
判事ハ判事檢事ハ檢事デアルノデアリマスカラ、其
點ノコトハ差支ナイト云フ考デゴザイマス、ソレカ
ラ獨逸ノ新憲法ニハ定年ノ事ヲ規定シテアルガ他
ノ國ノ憲法ニハサウ云フ規定ガアルヤ否ヤ斯ウ云
フ御尋デゴザイマシタガ唯今調査シタ所ニ於キマ
シテハ、他國ノ憲法ノ悉クヲ調査シテ居リマセヌカ
ラ、是ハ調査ノ上御答イタシマスガ慣行法トシテハ
現ニ定年制ハ何レノ國ニモ出テ居リマス、是ダケヲ
申上ゲテ置キマス、ソレカラ本法ニ依ッテ、檢事ノ保
障ヲ現行ヨリモ一層確實ニシタモノデハナカラウカ
ト云フ、斯ウ云フ御疑テゴザイマスガ、其點ハ現行法
ト毛頭變ラナイノデアリマス、現行法八十條ニ依リ
マスト唯今申上ゲタ通リ免官ヲスルニハ刑法ノ宣
告、又ハ懲戒處分ニ依ルニ非ズンバ出來ナイ、ソレカ
ラシテ退職ヲ命ズル減俸ヲ命ズルノモ、卽チ構成法
七十四條若クハ七十五條ノ如キモノモ、亦檢事ニ適
用サレテ居ル其檢事ニ適用サレテ居、リマスノハ
裁判所構成法施行條例ノ第二十一條ニ規定シテ居ル
ノデ、卽チ構成法七十四條及ビ七十三條ハ檢事ニモ
亦之ヲ適用ス、斯ウ云フ事ニナッテ居リマシテ現行
制度ニ於キマシテ唯違ヒマスノハ轉所ノ自由ト云フ
コトガ殊更ニ檢事ノ方ニアルノデゴザイマシテ退
職ノ處分ヲスルトカ減俸ノ處分ヲスルト云フコト
ニ付マシテハ矢張リ總會ノ議ヲ經ナケレバ出來ヌ
コトニナッテ居ルノデアリマス、彼是現行法ト本法ト
ハ檢事ノ位置ヲ鞏固ニシタトカ、檢事ノ位置ヲ現行
法ヨリモ豪クシタト云フコトデハナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=15
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016・湯淺倉平
○湯淺倉平君 構成法ノ七十四條ニ依ル處分ノ數及
ビ檢事ニ對シテハ唯〓ノ御答辯デ分リマシタガ矢
張リ七十四條ニ依ッテ判事ニ對スル處分ト同ジヤウ
ニ、檢事ニ對スル處分モ從來ナサレテ居リマスルカ
ト云フヤウナコトガ御調ガアリマスナラ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=16
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017・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 此七十四條ノ適用ニ付
キマシテ、今日司法省ノ執ッテ居リマス解釋ト昔日
執ッテ居リマシタ解釋トハ少シク違ヒマス昔ハ願ニ
依テ、身體ニ故障ガアルトカ、或ハ精神ノ衰弱ヲ來シ
タ、卽チ神經衰弱等ニ依ッテ精神ニ衰弱ヲ來シタカラ
御役御免ヲ願ヒマスト云ッテ、自ラ免職免官願ヲ提出
イタシマシタ場合デモ形式上七十四條ノ總會ニ掛
ケテ居ッタノデゴザイマス、トコロガ昨今十年此方ニ
於キマシテハ此七十四條ト云フモノハ本人ノ意思
ニ反シテ身體精神ノ衰弱ト云フヤウナ事實ヲ認メマ
シテ、退職ヲセシムル場合ニノミ之ヲ適用スベキモ
ノデアル、本人ガ自ラ免職免官ヲ願ッテ來タ場合ニ於
テハ總會ノ決議ヲ取ル必要ハアルマイ斯ウ云フ解
釋ニ今日ハナッテ居ルノデゴザイマス、ソレデアリマ
スカラ昔日退職命令ヲ出シ或ハ依願免官ノ辭令ヲ
出シマスノニハ悉ク此七十四條ヲ適用イタシマシ
テ、總會ノ決議ヲ取ッタ時代モゴザイマシタ、サウ云
フ次第デゴザイマシテ、數モ多クゴザイマスガ、今日
ハ全ク其意ニ反シテ退職處分ヲスル場合ニノミ總
會ノ決議ヲ取ルコトニナッテ居リマス、ココ四五年ノ
間ニ於キマシテハ、此處分ヲ執ッタコトハ一件モ判檢
事共ニゴザイマセヌ、ソレデ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=17
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018・湯淺倉平
○湯淺倉平君 サウ致シマスルト此七十四條ニ依ツ
テ司法大臣ガ控訴院又ハ大審院ノ總會ニ付議スル發
案ヲナサムトスルト云フ決意ヲ示シマシテ、其決意
ヲ示サレタルガ爲ニ、判事ガ願ヲ出シテ退職シタト
云フヤウナ場合モ相當ニアリハシナイカト思ヒマス
ガ、サウ云フヤウナ事實ハアリマセヌノデスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=18
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019・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴本喜三郞君) 司法大臣ガ、貴樣退職
願ヲ出サヌケレデ總會ノ決議ニ付スルゾト云フ脅喝
手段ヲ採ッテ、强制的ニ退職願書ヲ出サシタト云フ事
例ハ一ツモゴザイマセヌ、ナレドモ直近監督官アタ
リカラ、隨分御前ハ身體ガ弱ッテ居ルヤウダカラ曾
ク靜養シタラドウ、デアルカト云フヤウナコトデ若
干半年ナリ一年ナリ靜養シテモ、未ダ恢復ノ見
込ガ無イト云フヤウナモノニ付キマシテハ監督官
ト相談ノ上、退職願ヲ出シタト云フ事例ハアリマス
アリマスガ、監督官ト雖モ御前ハ退職願ヲ出サヌケ
レバ總會ノ決議ニ付スゾト云ッタコトハ無論アリマ
セヌ、況ンヤ司法大臣ニ於テ左樣ナ非常手段ヲ用ヒ
タコトハナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=19
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020・湯淺倉平
○湯淺倉平君 唯今ノ御答辯ニ依リマスト云フト、
司法大臣ガ構成法第七十四條ヲ適用スルトシテ之ヲ
脅喝シタ云々ト云フ御答辯デゴザイマシタガ若シ
私ノ言葉ガ足リマセヌ爲ニサウ云フ風ニナリマシ
タナラバソレハ私ノ不注意デゴザイマスガソコマ
デノ積リモナカツタノデ斯ウ云フ質問ヲ致シマシ
タ私ノ趣意ハ構成法第七十四條ノ適用ト云フコト
ガ最近ニハ全クナイ斯ウ云フ御答辯デアリマスガ
詰リ從前ニアッタ分ハ判事自身ノ意ニ出タ場合ノミ
デアル判事ノ意志ニ反シテ司法大臣ガ總會ノ決議
ヲ取ッテ退職ヲ命ズル場合ハナイ、斯ウ云フコトデア
リマスルナラバ此七十四條ハ有ッテモ無クテモ宜シ
イコトニナリハシナイカ、現在當局ガ構成法ノ七十
四條ヲ御解釋ニナッテ居ル御取扱振リニ依レバ、構成
法ノ第十十四條ナルモノハ死文デアル、用コ爲サナ
イモノデアル斯ウ云フ結果ニナリハ致シマスマイ
カ果シテサウ云フコトデアリマスルナラバ此ノ第
七十四條ヲ何故ニ御存置ニナルト云フ御趣意デアリ
マセウカ、其邊ガ伺ヒタカッタ爲ニ、其前提トシテ先
キノ質問ヲ致シタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=20
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021・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 此ノ點ニ付キマシテハ
昨年臨時議會ニ於キマシテモ私カラ申シ上ゲタト
記憶シテ居ルノデゴザイマスガ、從來ノ例ニ於キマ
シテ、七十四條ヲ適用シテ意ニ反シテ退職處分ヲ爲
シタノハ一人モアリマセヌガ轉所處分ヲ爲シタノ
ハ確カ一二件アッタノデゴザイマス、トコロデ身體ノ
衰弱ニ依ッテ退職處分ヲ求メルト云フ事ハ有形的事
實デゴザイマスルカラシテ、是ハ醫者ノ診斷等ニ依
ッテ直樣分ルノデゴザイマス、例ヘバ先程モ申シマシ
タル通リ到底人トシテ仕事ヲ爲シ得ルコトノ出來
ナイ、司法官タルノ職務ハ扨置キ、當リ前日常周圍ノ
仕事モ爲スコトガ出來ナイト云フ者ガ、職ニ止ッテ居
ラウトシタト云フヤウナ者ハ今日マデアリマセヌ、
ソレデアリマスルカラシテ、ズン〓〓自分デモ罷メ
テ行ッタト斯フ云フコトデアリマス、トコロガ精神ノ
衰弱ニ依ッテ職務ヲ執ルコトガ出來ナイト云フ事柄
ハ是ハ關係問題デハアリマスルケレドモガ隨分見
樣ニ依ッテハアラウト思フノデス、年齡ノ如何ニ拘ラ
ズデス、所謂世間言フ所ノ老朽ハ勿論ノコト、若朽ニ
於テモ精神衰弱其職務ヲ執ルコトガ出來ナイ、扨此
精神ノ衰弱ト云フコトハ外部カラ見定メルコトハ甚
ダ困難醫者ト雖モ中〓是ハドウモ頭ガ疲レテ居ル
睡眠ガ不足デアル、神經衰弱症ニ罹ッテ居ルト云フコ
トハ判斷ガ出來マシテモ、果シテ是ガ判事檢事ノ職
務ヲ執ルニ適シテ居ルカドウカト云フコトハ是ハ
御醫者サンガ判檢事デナケレバ出來ナイト思フサ
ウ云フ至難ノ事實デアリマスルカラ、總會ノ決議ニ
掛ケマシテモ總會ノ委員ハ所謂人情ヲ汲ミマセヌ
デモ、感情ヲ差挾マナイデモ、中〓同僚ノ者或ハ己ヨ
リ上官ノ者ニ向ッテ、御前ハ精神ガ衰弱シタノデア
ル司法官タルノ職務ヲ執ル事ノ出來ナイ者ニナッタ
ノデアルト云フ認定ヲスルト云フコトハ認定上ノ
至難ガアルノミナラズ、最モ困難ナル事情ガアルノ
デ、又人情カラ申シマシタ所ガ、中〓此認定ト云フノ
ハセラレナイデアリマス所謂肯定的ノ判斷ハ出來
惡イ、是ハ普通ノ人情、ソレデゴサイマスルカラ結
局七十四條ノ適用ト云フモノガ無カッタト云フノハ
其意味、其意味カラ申シマスレバ、湯淺サンノ言ハレ
ル通リ死文デアルト云フ、斯ウ云フ御批評ガ出テ來
ルカ知レマセヌガ、事情ハサウ云フ事情デアルノデ
スソレデアリマスルカラ七十四條ノ外ニ今囘ノ如
キ法律モ時勢ニ依ッテ之ヲ拵ヘル必要ガアル、斯ウ云
フノデゴザイマスサレバ此ノ定年法ガ出來タナラ
バ構成法ノ七十四條ハ削除シテモ宜イヂヤナイカ
ト云フ議論ガ起ルカ知レマセヌガ、ソレハ又サウハ
行カナイ、ソレハ先程モ申シマシタ通リ、若朽者モア
ルノデアリマスカラ定年ニ達セナイ者ニ斯樣ナ事
情ガアッタナラバ、時ニ或ハ之ヲ適用シナイトモ限ラ
ナイ、斯ウ云フコトニナルノデアリマスカラ、是ハ竝
ビ存スベキ法規デアルト考ヘテ居ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=21
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022・加太邦憲
○加太邦憲君 御尋ネ致シマスガ、私ノ御尋ネ致シ
マスノハ少シ先キノ方ヘ離レ過ギルカ知レマセ
ヌケレドモ丁度御質問ガ切レマシタカラ一ツ二
ツ伺ヒマス、此法案ガ行ハレルトシマスルト大分
退職者ガ出來マス昨年、前ノ議會ニ出マシタ時ニ
比ブレバ月數ヲ經マシタダケ、引ク人モ多クナッテ
居ルダラウト思ヒマス餘リ近頃引イタ人ノ話モ
聞キマセヌ、サウシマスルト此法ガ行ハレテ退職
ガ俄カニ大勢出來マスルサウシテ恩給ノ上ニ於キ
マシテ五割ト云フモノガ是マデヨリモ增スト云フコ
トニナリマスト恩給額ガ大分增シテ來ルト云フ譯
ニナリマスガ其豫算ハドウ云フコトニ今度組ム御
考デアリマセウカソレヲ承ハリタイノガ第一、ソレ
カラ第二ニハ兼〓司法省ニ於キマシテハドノ大臣
ガ更ハラレテモ司法部ノ意志ト云フモノヲ行ハナ
ケレバナラヌト云フコトデ、今ノ司法大臣ガソレ
ゾレ是マデ御盡力ガアリマシタガ、其今度ノ改正ノ
恩給ノ方法ニ付キマシテハ、五割增ト云フコトニナッ
テ居リマスガ、五割ヲ增スト云フコトハ增サヌヨリ
宜イコトハ申スマデモアリマセヌガ、本當ニ判事ヲ
引カシテモ安心サセテ行ケルト云フニハドウモ五
割デハ甚ダ少ナク感ズルノデアリマス、引キマシテ
五割、竝ノ恩給ヨリ增シタカラソレデ安心シテ生活
ガ出來ルカト申シマスルト、中〓サウハドウモ行キ
サウモアリマセヌ、少ナクモ俸給ノ三分ノ二、卽チ今
ノ法ニ依リマスト三千圓ノ判事ガ引キマスレバ先
ヅ千圓ガ通例デアリマス、十五年以上勤メタ者ガ千
圓デアリマスカラ、ソレガ五割增サレテ千五百圓ニ
ナルノデアリマスルカラ、詰リ俸給ノ半額デハドウ
モ私ハ足リヌト斯ウ思ヒマス、三分ノ二卽チ二千圓
マデ位ヤラナケレバ衣食ニ足リルト云フ所ニハ行
クマイト思ヒマス、元〓判事ヲシテ安心ヲシテ職務
ニ居ラセルト云フ事ガ卽チ司法官ノ獨立ノ大事ナ
所デアルノデアリマスルガ、引キマシテカラモ給與
ガ厚ケレバ安心シテ長ク職ニ居ッテ、或引カヌナラヌ
時ノ來ルマデハ勤メテ居ルコトニナリマスルガ若
シ引イテカラノ給與ガ少イト斯ウ云フコトニナリマ
スト、始終判事ノ心ガ動イテ居リマシテ、是マデガ全
クソレデアリマスル何カ良イ生活方法ハアルマイ
カ段々會社ガ盛ンニナッテ儲ケガ大キクナル會社
員ハ俸給ガ大層增シ、其上ニ或ハ引ク時ノ恩給モ澤
山ヤルトカ、或ハ賞與ヲ澤山ニヤルトカ判事バカリ
デハアリマセヌガ一般ノ官吏デモ是等ニ比較スル
ト太層不利ノ所カラ、何カ良イ仕事ガアッタナラバ
外ニ變ッテ行カウト云フヤウナコトデ、ドウモ尻ガ是
迄落付カヌノデアリマス、今日ノ如ク法律ハドシド
シ出マス判事トシテハマア何千ノ法律ヲ頭ニ入レ
ネバナラヌ頭ニサウ這入ラナクトモ少ナクモ了解
シナケレバナラヌト云フニハ何處迄モ判事ノ職ニ
就イタ以上ハ終身判事デ死ヌトカ、或ハ法律上已ム
ヲ得ズシテ引クト云フ迄ハ心ヲ動カサヌヤウニシ
テ行カヌナラヌ、斯ウ云フコトガ私ハ大切デアラウ
ト思フノデアリマス、今日迄ノ實際ヲ見マスト判事
デ成程····必ズシモ判事ニ限リマセヌ、司法官全體
デアリマスガ、活氣ガアリ業ガ出來ルト云フ樣ナ者
ハ、判事ニ落付カズシテ辯護士ニ移ッテ仕舞フ、併シ
終身判事ヲ勤メテ居ル人モアリマスケレドモ、サウ
云フ人ハ餘程學者風ノ法律ノ取扱ニ付テハ深ク趣味
ヲ持ッテヤッテ居ルト云フ顏ノ人デ誠ニ特殊ノ人デ
アリマスガ一般ヲ見マスト云フト、ドウモ甚ダ落付
カヌヤウニ考ヘルノデアリマスルサウ云フ所カラ
考ヘマスト司法當局ニ於キマシテ十分判事ニ安心
ヲサセテ、司法部ノ改良ヲ能ク十分ニヤラウト云フ
御考ガアルトスレバモウ少シ今度ノ法案ヨリモ切
メテ引イテカラノ宛行ヒデモ良クナケレバナルマ
イ、尤モ俸給ニ付テモ段々是迄御盡力ガアルヤウデ
アリマスカラ、追々又俸給ノ方面カラ左樣ナ御考ガ
アルカモ知レマセヌガ其邊ガ如何ナル御考デゴザ
イマセウカ、御伺ヒ致シタイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=22
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023・大木遠吉
○國務大臣(伯爵大木遠吉君) 第一ノ點ニ付テ御質
問ハ政府委員カラ第二ノ御質問-チヨット速
記ヲ止メテ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=23
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024・松平頼壽
○委員長(伯爵松平賴壽君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=24
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025・松平頼壽
○委員長(伯爵松平賴壽君) ソレデハ速記ヲ始メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=25
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026・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 唯今加太サンノ御質問
ニ付キマシテ大體司法大臣ヨリ御話モゴザイマシ
タガ、外國ノ立法例ニ依リマスレバ、定年ニ達シテ退
職シタ者ニハ俸給ノ四分ノ三ヲ給スル國モアリマス
シ或ハ俸給全額ヲ給シテ職ヲ退カシムル國モゴザ
イマス、我國ト致シマシテハ、司法官ノ俸給ハ誠ニ貧
弱ナルモノデゴザリマスカラ、唯今加太サンノ御憂
ヒノ通リ退職シタ場合ニ於テ五割位ノ恩給增加ト
云フコトデハ到底衣食ヲ滿タスト云フコトハ出來ナ
イ、其點ニ付テハ司法當局トシテハ甚ダ遺憾ニ思ッテ
居ルノデアリマス、兎ニ角種々迂餘曲折ノ結果、本案
ハ百分ノ五十ト云フコトデ提案ハシタノデゴザイマ
スガ勿論司法當局ダケノ意見トシテハ滿足ハシテ
居ラヌノデアリマス、而シテ百分ノ五十ヲ增加シタ
ナラバ幾何ノ豫算ノ增加ヲ見ルカト云フ仰セデゴ
ザイマスガ、本法ガ通過イタシマシタトシテ、本年度
ニ於テ幾人ノ退職者ヲ出ダスカハ實際ニ於テ分リマ
セヌガ、年齡ニ於キマシテ六十四歲以上ノ者、算ヘ年
六十四歲ニ達シテ居ル者ハ二十五人アルノデゴザリ
やっゝソレカラ爾後、年々六十四歲以上ニ達スル者ガ
大抵十名位ノ所ヲ上下シテ居ル次第デゴザイマス
ソコデ假リニ此二十五人ガ悉ク本法ノ適用ヲ受ケル
モノト假定イタシマシタ所デ、其增加スベキ恩給ト
云フモノハ誠ニ僅少ナモノデゴザイマシテ僅カニ
一万圓カ一万五千圓位ノ數量ニ過ギナイノデ、昨年
四分ノ三デ計算ヲ致シマシタ、其數字ハ玆ニ持合セ
テ偶〓ゴザイマスルガ、昨年四分ノ三ヲ增加スルモ
ノト假定イタシマシテ、假ニ在職年數ヲ二十年ト見
マスルト、其增加額ガ是レ亦三万四千圓バカリデア
リマス、在職年數二十五年ト見マシテ、三万七千圓ノ
增加デアリマス、誠ニ五割ノ增加ヲ致シマシタ所ガ、
恩給額ニ五割ヲ加ヘルノデアリマシテ、俸給ニ五割
ヲ加ヘルトカ云フヤウナ意味デハナイノデアリマス
カラ、誠ニ算出スル數字ト云フモノハ僅少ナモノデ
ゴザイマス、本法ノ如ク五割增ト云フコトニ致シマ
シタナラバ一万圓二万圓ノ間ヲ往來スル位ノモノ
ト思フノデアリマス、而シテ此恩給ハ補充費途デア
リマスカラ、今囘ノ豫算ニハ、僅カノコトデアリマス
ルカラ、殊更ニ計上ハ致シテ居リマセヌデモ、是ハ融
通ノ附ク次第デアルノデアリマス是ガ大數ノ十万
トカ十五万トカ云フコトナラバ、計上イタサナケレ
バナリマセヌガ僅カ一万ヤソコラノモノデゴザイ
マシテ、而モ本法御協賛後、何時カラ實施スルカト申
シマスレバ、無論年度全部ヲ適用スルコトハアリマ
セヌシマスルカラシテ從ッテ本年度ニ於テ增加ス
ベキ金額ト云フモノハ、至ッテ少額デアラウト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=26
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027・加太邦憲
○加太邦憲君 モウ一ツ伺ヒマスガ、此五割增ノ恩
給ノ立テ方ニ依リマスト、此法文ヲ見マスルト云フ
ト是カラ判檢事ニ任命サレル者ハ、其恩典ニハ與カ
ラヌ樣ニナッテ居リマシテ、確カ本會議ニモ其ノ御說
明ガアッタカト思ヒマスガ、今日ノ問題ハ段々齡ヲ取
ッタ者ヲ引カサウト云フ事カラ出デタノデアリマス
カラ是カラ任命サレル者ヲ今日引ク者ト同樣ニス
ルト云フコトハ少シ問題ガ橫ニ外ヅレルカモ知レ
マセヌガ併シ先刻私ノ述べマシタ言葉ノ中ニモア
リマス通リニ、ドウモ司法官ノ落付ガ惡イシ、折角有
爲ノ者ハ辯護士ニナル單ニ辯護士ニナルト云フ簡
單ナコトナラバ宜シウゴザイマスガ、詰リ判事ノ方
ガ生徒デ、先生分ガ辯護士ヲシテ居ル斯ウ云フヤウ
ナコトデ、隨分內所デ困ルト云フヤウナ話ガ往々ア
リマスガ司法官ハ何處マデモ落著カシテ行カウト
云フニハ丁度今度ノ改正ノヤウナ機會ニ、齡ヲ収ッ
テ引ク者バカリデナク將來判事ニナル者モ矢張リ
同樣ノ恩典ヲ受ケルト云フヤウナコトニナリマシタ
ナラバ大イニ有爲ノ者ヲ御採リニナル途ガ開ケテ
來ルコトデハナイカ斯ウ考ヘマスルガ、併シ法ヲ御
立ニナル方カラ見マシタナラバ餘リ一度ニナルカ
ラ、又追々ニサウ云フコトニシタラ宜シイト云フヤ
ウナ御考カモ知レマセヌガ、又伺フ私ニ致シマシテ
モ餘程是ハ前途ノ長イコトデアリマスカラシテ、其
間ニ是ハ大イニ其コトヲ進メテ行ク機會モアラウト
思ヒマスガソコラモ何カソレニ付テ將來又或機會
ニ宜クシヤウト云フヤウナ御考ガアルノデゴザイマ
セウカ、チヨット念ノ爲ニ伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=27
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028・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 御尤モナル御質問デゴ
ザイマシテ、本法起案ノ際ニモ、唯〓加太サンノ仰セ
ノ通リノヤウナ議論モ出タノデゴザイマシテ苟モ
憲法ガ終身官トシテ官ヲ保タシメル所ノ裁判官ヲ、
退職セシムルト云フコトニナルナラバセメテハ恩
給率ヲ高メテ慰メヲシテヤルト云フ事柄ガ、永久法
デナカラウカト云フ議論モアッタノデアリマス、是ハ
尤モナル論議デアラウト思ヒマスガ、本法立案ノ精
神ニ於テハ兎ニ角今日マデニ於テハ構成法七十四
條ノ外ハ意ニ反シテ退職セラルヽト云フコトハナ
イノデアル固ヨリ刑法ノ宣告、懲戒ノ處分ヲ受ケタ
ル者ハ、是ハ自ラ爲セル所爲ニ依ッテ退職免官サレル
ノデアリマスカラ、是ハ是非ナイコトデアリマスル
ケレドモガ、苟モ恩給ヲ受クベキ者ガ、意ニ反シテ退
職サレルナラバ、優遇ノ途ヲ授ケルノハ他ノ立法例
ニモアルコトデアルカラ、矢張リ永久的ニサセルト
云フコトガ必要ト云フノモ一論ナレドモ併ナガラ
今マデハサウ云フ法律ガナカッタモノガ突然今度定
年制ト云フモノガ設ケラレテ、心ニモアラザル法律
ガ出テ、己ハ六十三歲以上ニナレバ罷メラレルンダ
ト云フコトニナルカラ、先ヅ此者ヲ保護シテヤル必
要ガアリマセヌカ、後ハ偖措キ、兎ニ角此法律ヲ施行
シテ十五年經タナケレバ其問題ハ起ッテ來ナイ譯ニ
ナリマスカラ、十五年ノ間ニ又復改正スル時機モア
ラウガ、目下ノ問題トシテハ現在ノ判檢事ニ俄カニ
定年制ト云フモノヲ設ケテ、豫期ニ反スルヤウナコ
トニナルカラシテ、是ハ矢張リ是ダケノ優遇ヲ與ヘ
ル必要ガアラウ、斯ウ云フ趣意ニ基イテ、本案ハ立案
イタシマシタ次第デゴザイマスソレデアリマスル
カラ、十五年經過スル間ニ於キマシテ、ドウシテモ尙
ホ必要アリマスレバ又之ヲ改メル時機モ來ヤウ
カト思ヒマスルシ又一面ニ於キマシテハ俸給ハド
ウシテモ、之ヲ改正シナケレバナルマイ、俸給豫算
ト云フモノハ何レノ時カ改正シナケレバナルマイ、
俸給豫算ガモウ少シ行政官ト比較ヲ取ッテ、多額ニ取
レルヤウニナッタナラバ是ハ其方デ、補ヒモ附クコ
トモ出來ヤウト云フヤウナ、色〓ナ考カラ致シマシ
テ、此度ハ此案ヲ提出イタシマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=28
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029・荒川義太郎
○荒川義太郞君 私モチヨット伺ッテ置キタイノデス
ガ先刻カラ憲法ノ解釋ニ付テ質問應答ガゴザイマ
シタガ、之ニ付キヤシテハ本員ナドハ一ツ十分ニ〓
究ヲシマシテ、又御尋ヲスル場合モアルカモ知レマ
セヌガ、先刻湯淺君カラ御尋ネニナッタ、構成法七十
四條ノコトデアリマスルガ、之ニ付キマシテハ今囘
御提案ニナッタ七十四條ノ第二項ノ追加ト云フコト
ニ付キマシテ、考ヘテ見マシタガ、第一ニチヨット疑
念ガ起リマシタノハドウモ此七十四條デ殆ド此ノ
七十四條ハ無クトモ十分是デ行ケルヤウニ思フノ
ミナラズ此ノ間本會アタリデモ此ノ前ノ特別委
員會ノ經過ハ本員ハ餘リ承知シマセヌ、能クマダ議
事筆記モ讀ンデ居リマセヌガ、兎ニ角此ノ間議場デ
質問應答ガアッタノヲ御伺イタシマシテモ、又考ヘマ
シテモ六十五トカ六十三トカ云フヤウナ事ニ付キマ
シテハソレデ隨分强壯ナ人モアルノミナラズ隨
分其ノ人ガ少イノデハナイ、多クアルダラウト自分
等モ考ヘテ居リマス從ッテ此ノ七十四條ガアリマス
レバ之ニ依ッテ或ハ自體ノ虛弱トカ或ハ精神ノ衰弱
ニナッタ者ハ其ノ處分ヲスルト云フコトニナレバ出
來ナイ事ハナイ、又此ノ方ガ便利デアルト斯ウ考ヘ
テ居リマシタ、所ガ今湯淺君カラ色〓質問ガアッテ當
局者ノ御辯明モアリマシタガ、ソレニ依ッテ拜聽シマ
スルト云フト、精神ノ衰弱ト云フコトハナカ〓〓見
ルコトガムッカシイ、又人情デ此ノ決議ニ掛ケテ斯ウ
云フ者ニ退職ヲサセルト云フコトハナカ〓〓行ハレ
ナイコトデアルカラ、ト云フヤウナ御答辯ニ伺ヒマ
シタガ、ソレデ併ナガラ醫者ノ見ル所デ····成ル程
先刻モ御話ニナッタ通リ醫者ガ精神ノ衰弱トカナン
カヲ見ルコトハナカ〓〓ムヅカシイデゴザイマセウ
ガ此公務ヲ執ッテ居ル所謂私事デナイ公務ニ於テ
ハ、假令同僚デアラウトモ、公務ヲ處理スルニ私事ヲ
挾ムモノデハアリマセヌカラシテ、其人ガ所小事事
ノ職務ヲ執ルニ付テ堪へルカ否カト云フコトニ付テ
見分ケヲスルト云フ事ハ最モ適當ナル事柄デアラ
ウト私ハ考ヘテ居リマスルソレニ付テ先刻ノ御答
辯デハ、併ナガラ兎ニ角ムツカシイ事柄デアルカラ、
ソレヨリカ矢張リ定年法ヲ置イテヤッタ方ガ極リア
ルコトガウマク行クト云フ樣ナ話デゴザイマシタ、
併シ、ソレデハ是ハ要ラナクナリハシナイカト云フ
湯淺君ノ質問ニ對シテハ、若朽者モアルコトデアル
カラ、之ヲ直グ削ッテ仕舞フト云フ譯ニハ行カナイ、
矢張リ是ハ相俟ッテ共ニ效ヲ奏スルモノデアルト云
フ御話デアリマシタ、サウシテ見ルト云フト若朽者
ナラバ精神ノ見分ケハ附キソレカラ又此ノ今ノ總
會ノ決議モ至難デナイト云フ、卽チ若朽者デハ是ハ
適用出來ルト云フヤウナ意味ナラバ若朽者ニ果シ
テ適用ガ出來ルモノデアリマスレバ矢張リ老朽者ニ
モ適用ガ出來ル樣ニ私共ハ考ヘマスガ當局ハ其邊
ニ付キ如何ニ御覽ニナッテ居リマスカ、ソレヲ伺ヒタ
イ、ソレカラ此ノ前ノ特別委員會ノ事ニ付テ、私ハ能
ク知リマセヌガ、唯一應伺ッテ置キタイノハ六十五
年トカ六十三年トカ云フ詰リ年ガ出タノハドウ云フ
コトデアリマスカ是モ大體承ッテ置キタイ、ソレカ
ラモウ一ツハ先刻湯淺君カラ外國ノ憲法其ノ他ニ付
テドウナッテ居ルカト云フ御話ノ中ニ、外國デバ單行
法トシテ出テ居ルノガ隨分アルヤウニ記憶シテ居ル
ガ、又調ベテ渡スト云フ話デアリマシタガ、其ノ御調
ベノ時分ニ、其ノ單行法ト云フモノガ出テ居ル國ハ
憲法ノ定メガアッテ、ソレカラ單行法ガ出タモノデア
リヤ否ヤト云フコトモ、一ツ御調ベヲ願ヒタイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=29
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030・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郎君) 私ガ先程老朽者ニ對シ
テ七十四條ヲ適用スル事ハ困難デアル然ラバ七十
四條ト云フモノハ死文デアルカラ削除ト迄ハ湯淺君
仰セデアリマセヌガサウ云フ私ハ言葉ヲ用ヒタノ
デ、削除シテモ宜イヂヤナイカト云フヤウナ論議ガ
起リハセヌカ、デアルガケレドモガソレハ若朽者
モアルコト」ダカラシテ是ヲ抹殺スルコトハ出來ナ
イ、兩々相俟ッテ働キヲ爲シテ行クノデアルカラト云
フ御答ヲ申シマシタニ付テ、唯今荒川サンカラシテ
若朽者ニ七十四條ノ適用ガ出來ルモノナラ何デ老朽
者ニ對シテ適用ガ出來ナイカト云フ御質問ハ成程
論理トシテハ御尤ナ御質問デアリマスル、私ハ老朽
者ニ對シテモ、若朽者ニ對シテモ、ソレハ勿論適用ス
ルノデアリマシテ若朽者ノミニ適用スベクシテ老
朽者ニハ適用ヲセヌト云フコトヲ申シタ譯デハナイ
ノデ、唯此ノ條文ノ適用ト云フモノニ付テ實際上至
難デアルト云フコトヲ申上ゲタノニ過ギナイノデゴ
ザイマシテ、又裁判官タルベキ者ガ私情ヲ挟ンデ、同
僚デアルカラト云フテ私情ヲ挾ムト云フ不屆千萬ノ
事ハナイ、是モ御尤ナコトデアリマス、ソレデアリマ
スカラ其私情ヲ挾ムト云フ事柄ノ如キ不公平ノ處置
ト云フコトハ勿論ナイノデアリマシテ、ソレハナイ
ニ決マッテ居リマスケレドモ、先程申上ゲタ通リ此ノ
外形上ノ生理上ノ障害、生理上ノ障害モ是ハ誠ニ容
易ク認定ノ出來ルモノデアリマスル醫者ノ診斷ニ
依ッテモ信憑スルコトガ大ニ出來ルノデゴザイマス
ケレドモガ、內部的障害、所謂精神上ノ障害、是ハイ
ロイロ認定ニ困難ナルノミナラズ、ソレカラ程度ニ
モ依ルノデデ隨分若イ判檢事トシテ····豫審判事
デアルトカ檢事デアルトカ云フ事デアリマスレバ
先程モ申上ゲマシタ通リ、アッチコッチヘ馳廻ラナケ
レバナラヌ樣ナ事モアルノデゴザイマスカラ、是ハ
身體上ノ障害モ考ヘナケレバナラヌ、ソレカラ又年
老ッタ者ノ精神上ノ障害ト云フコトニ付テ、先程加太
サンカラモ御話ガ出マシタガ幾多ノ新法律ヲ〓究
シ又外國ノ判決等ヲモ對照シ、〓究ニ〓究ヲ重ネル
知識ト云フモノヲ量ルト云フコトガ是ハナカ〓〓
ムヅカシイノデゴザイマシテドレダケノ程度デア
ルナラバ、ドレダケノ頭ヲ有ッテ居ルナラバ、所謂精
神上衰弱者ト見ルカ、ドレダケノ程度デアルナラバ
未ダ精神上衰弱ト見ルコトガ出來ルカ出來ナイカト
云フコトハ是ハ甚ダ困難ナコトデ、之ニ付テ敢テ老
朽若朽ノ區別ヲ取ルコトハ出來ナイノデ、併ナガラ
人間ノ生理狀態カラ申シマシテ通常〓シテ身體上
ノ障害、精神上ノ障害共ニデス、ドチラニ多イカト云
フコトヲ見マスレバソレハ若朽者ニ····若朽者ト
云フテハイケマセヌガ、若イ者ニハ全ク少ナイノデ
ドウモ年ヲ老ルニ從ッテ記憶ヲ失スル斯ウ云フコト
ニナッテ、精神上ノ障害ト云フモノハヨリ多ク生ジ
テ來ヤウト思フノデ、其ノ場合ニ於キマシテ此ノ七
十四條ノ適用ハ困難デアルトスルト結局ドウモ七
十四條デ老體者ヲ····老衰者ヲ退ケシメルト云フコ
トハ出來ナイ、從ッテ裁判ノ改良進步ト云フコトニ障
害ヲ來タス、故ニ法律ガ此ノ犠牲ヲ設ケテ、七十四條
ノ精神ニ準ジテ定年制ト云フモノヲ置ク斯ウ云フ
次第ニ致シマシタ次第デアルノデゴザイマスソレ
カラ第二問トシテノ他ノ外國ノ立法例ノ事ヲ先ホド
申上ゲマシタガ憲法ノ方ノ條文ハ只今主ナル國ニ
付テノ調査ハ遂ゲテ居リマセヌガ單行法トシテ若
干調ベタモノモアリマスルアリマスルガ同時ニ先
ホド御約束ニ基キマシテ憲法ノ規定ト單行法トノ規
定トヲ對照イタシマシテ、書面ニ認メテ御廻シスル
コトニ致シマスノデゴザイマセウ左樣御諒承ヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=30
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031・池田長康
○男爵池田長康君 最早散會ノ時刻ニナラウト存ジ
マスルガ、今度私ノ少シ質問申上ゲタイ事ハ是ハ憲
法ト牴觸スルヤ否ヤト云フ直接問題デハナイノデゴ
ザイマス、裁判所構成法自體ノ問題デ、先ホド私ガ申
上ゲマシタ七十三條ト七十四條トノ關係ノ問題デア
リマス是ハ今囘ノ改正法トハ直接關係ハアリマセ
ヌガ、之ヲ一ツ私ハ明ニシテ置キタイト存ジマスル
デ、但シ本員ハ反對センガ爲ニ反對スル實ハ譯デハ
ナイ、又此七十三條ノ免職ト云フ字ノ中ニ退職ト云
フ文字ガアルト申シテ、憲法違反ノ問題ニ其事實ヲ
持ッテ行カウト云フ考デモナイ、此點ハ一ツ次ノ委員
會ニ於キマシテ質問致サウト存ジマスカラ、單ニ反
對センガ爲ニスルノデゴザイマセヌカラ、又憲法違
反ニソレヲ直ニ持ッテ行カウト云フ意思デモナイ、七
十三條ト七十四條ノ現行法ニ付テ少シ疑ヲ挿ンデ居
リマス、是ハ次ノ委員會ニ御尋ネ致シマスカラ、政府
委員ニ御〓究ヲ願ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=31
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032・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 此點ニ付キマシテハ
先程申上ゲマシタ通リ玆ニ四五ノ事柄ガアリマス
ルガ、是ハ七十四條乃至七十五條ニ悉ク當篏ッテハ居
ラナイト云フコトヲ申上ゲテ置キマシタカラ- 1
條文ヲ拵ヘマシテ而シテ只轉官ト云フコトハドノ條
ニ當ル、轉所ト云フハドノ條ニ當ルト云フヤウニ、此
七十三條ニ揭ゲテアル項自ト各條文ト對照シタモノ
ヲ作リマシテ御目ニ掛ケルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=32
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033・松平頼壽
○委員長(伯爵松平賴壽君) 如何デアリマセウカ、
大分御質疑モゴザイマシタシ致シマスルガ、今日ハ
コレデ閉ヂマシテ改メテ日ヲ定メテ申上ゲルコトニ
致シマス
〔「贊成賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=33
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034・松平頼壽
○委員長(伯爵松平賴壽君) ソレデハ之デ閉會致シ
マス
午後三時二十三分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵松平賴壽君
副委員長荒川義太郞君
委員
男爵島津久賢君
男爵池田長康君
加太邦憲君
湯淺倉平君
國務大臣
司法大臣伯爵大木遠吉君
政府委員
司法次官鈴木喜三郞君
司法省刑事局長豐島直通君
司法省監獄局長谷田三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00119210216&spkNum=34
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