1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年二月二十三日(水曜日)午前十一時五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=0
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001・松平頼壽
○委員長(伯爵松平賴壽君) 前囘ニ引續キマシテ委
員會ヲ開會イタシマス、御質問ガゴザイマスレバ御
發言ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=1
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002・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 前囘ノ御質問ノ際ニ池
田サンカラノ御質問ニ付テ書面ヲ以テ調査ノ結果ヲ
申上ゲルト云フコトヲ申述ベテ置イタノデゴザイマ
ス、其書面ハ御手許ヘ旣ニ御配布ニナッタト存ズルノ
デアリマス、先ヅ申上ゲタイコトハ構成法第七十三
條ニ揭ゲテアル所ノ數個ノ條文ガ七十四條乃至七十
五條ニ如何ナル適用ヲスルカト云フ問題デゴザイマ
スルガ、是ハ表ニシテ書上ゲテ置キマシタガ、先ヅ七
十三條ノ中ニ規定ガアリマスル此ノ轉官ト申シマス
ノハ何レノ條文ニモ此適用ヲ見ルコトハナイノデア
リマス、言ヒ換ヘレバ今日ニ於キマシテハ不要ト云
フコトニナルダラウト思フノデス、ソレカラ轉所、此
轉所ノ規定ハ是ハ現行法ニ於キマシテ七十四條ノ二
ト云フモノニ轉所ト云フ規定ガアリマスルガ抑〓
構成法ガ出來マシタ時ニ於キマシテハ七十四條ノ二
ト云フモノハナイノデ、此七十四條ノ二ト云フモノ
ハ大正二年ノ法律六號ヲ以テ追加シタノデゴザイマ
ス、ソレデアリマスルカラ元カラ申シマスレバ七十
四條乃至七十五條ノ場合ヲ除ク外斯ウゴザイマシテ
モ此轉所ノ規定ハ.後ニ這入ッタノデゴザイマスルカ
ラ、其當時ニ於テハ轉所ト云フ規定モナカッタ、轉所
ト云フ規定ノ適用ヲ受クベキ場合ハ是ハ判事懲戒法
ニ依リマシテ轉所ノ規定ガアルノデゴサイママス
ソレカラシテ停職ノ場合ハ是モ亦懲戒法ニ依ッテ停
職ヲスルト云フ事ニナリマスルソレカラ免職ト申
シマスルノモ七十四條乃至七十五條ニハ免職ノ規定
ガナイノデ、卽チ此免職ト申シマスルノハ憲法五十
八條ノ二項ニ規定ガゴザイマスル文字其モノヲ捕
ヘ來ッテ玆ニ免職ト書イタノデアリマス、茲ニ所謂免
職ト申シマスルノハ退職ニ非ズシテ免官ヲ意味スル
譯デゴザイマス、其適用ト致シマシテハ判事懲戒法
ニ於キマシテ免職處分ヲ受ケタ者ハ免官スル併セ
テ恩給ヲ受ケルノ權ヲ失フ、斯ウ云フ事ニ懲戒法ニ
規定サレテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ減俸ト云
フ規定モデス、是モ七十四條乃至七十五條ニハ規定
ガナイノデゴザイマシテ其減俸ト申シマスノハ懲
戒ニ依ッテ處分ヲ受ケル場合ヲ言フノデゴザイマス
現構成法七十五條ノ俸給半額ヲ給シテ闕位ヲ待タシ
ムル是ハ所謂減俸デハナイノデアリマスガ實際カ
ラ言ヘバ減俸ニナリマスガ、是ハ關位ヲ待タシメル
待命ノ間俸給ノ半額ヲ給スル斯ウ云フノデアリマス
減俸處分ト申シマスルノハ取リモ直サズ判事ノ懲戒
法ニ依ッテ懲戒サレル所ノ一ツノ制裁ト云フ事ニナ
ルノデコザイマスカラ、此七十三條ト云フモノニ書
イテアリマス五六ノ處分規定ト云フモノガ多クハ
刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ依ッテ出テ來ル處分デ
アリマシテ、七十四條乃至七十五條ニ何等ノ適用ガ
ナイ、斯ウ云フ事ニ申シ得ラレルノデアリマス、今日
ハ轉所ノ場合ガ大正二年ニ於テ付加ヘマシタカラ轉
所ノコトガ偶〓適用ヲ受ケルト云フコトニナリマス
ガ、轉所ノ規定モ七十四條乃至七十五條ニ適用ハナ
カッタ譯デ、要スルニ此七十三條ト云フモノハ官ヲ止
メタリ職ヲ退ゾケラレタリ、或ハ減俸轉所ノ處分ヲ
受ケルト云フ事柄ハ意ニ反シテハ出來ヌ、意ニ反シ
テ免職ヲシタリスルヤウナ事柄ハ刑法ノ宣告又ハ懲
戒ノ處分ニ依ルノデアル其處分以外ニ於テハ斯樣
ナ事柄ハ出來ナイト云フ事ヲ示メシタニ過ギナイト
思フノデスソレカラ次ニハ免職免官ト云フ言葉ノ
混用ト云フコトヲ申シマスガ、明治九年太政官達ニ
依リマシテ官吏懲戒令ニ依リマスト、懲戒ノ一方法
トシテ免職ト云フ文字ヲ用ヰルノデゴザイマス免
職ト申シマスルノハ取リモ直サズ今日ハ免官ト申シ
マスコトデ、其後文官懲戒令ト云フモノガ三十二年
ニ改マリマシテ、其三十二年ニ改リマシタル懲戒令
ニ依レバ免職ノ文字ヲ改メテ免官ト云フ事ニナッテ
居ル卽チ今日ニ於キマシテハ免官ト云フ事ニナリ
マス要スルニ明治三十二年マデハ今日云フ所ノ免
官ト云フ事柄ハ其當時ノ免職ト云フ言葉ヲ用ヒテ居
ッタノデアリマス從ッテ憲法ノ發布セラレマシタル
當時ニ於キマシテハ矢張リ明治九年太政官達ノ官
吏懲戒ノ用語ニ倣ヒマシテ免官ノ事ヲ免職、斯ウ云
フ事ニ言ハザルヲ得ヌノデアリマス、從ッテ先般來私
カラ屢〓申上ゲマシタル通リ憲法五十八條ノ第二項
ノ其職ヲ免セラレル事ナシト云フノハ官吏懲戒令ノ
用語ト同ジク免職卽チ今日云フ所ノ免官ト云フ事ニ
該當スル次第デアリマス尙ホ付加ヘテ申上ゲマ
スガ幸ニ古イ記錄ヲ倉庫カラ引摺リ出シテ裁判
所構成法ノ成立ニ付テノ經過ノ記錄ガアリマシテ
其記錄ノ一册ヲ玆ニ持來リマシタガ、其記錄ニ依ル
ト裁判所構成法ノ案ヲ具シテ樞密院ニ諮詢セラレマ
シテ、其修正ノ理由書ヲ窺ヒマスト、明ラカニ憲法五
十八條ノ第二項ノ註釋ガ玆ニアルノデアリマス斯
樣ニ書イテアリマス、「帝國憲法五十八條ニ於テ裁判
官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ由ルノ外其職ヲ免
セラルル事ナシ」ト云フ規定ニナッテ、其職ヲ免ゼラ
ルヽ事ナシトアルノハ判事タルノ官ヲ免ゼラルヽ事
ナキヲ云ヒ單ニ其奉ズル所ノ職ヲ免ゼラルヽコト
ナシト云フ精神ニアラズ、斯ウ云フ風ニ此修正理由
書ノ一節ニ揭グテアリマス、其修正ハドウ云フ所ヲ
修正スルカト云フト。構成法ノ草案ニ依リマスト免
官.退官、休職ト云フヤウナ文字ガ用ヒラレテアリ
マス免官ト申シマスルノハ所謂刑法ノ宣告又ハ懲
戒ノ處分ニ依テ其職ヲ免ズル、ソレカラ退官ト申シ
マスノハ所謂旨ヲ諭シテ官ヲ免ズルト云フノデア
ル卽チ自分ノ御役御免ノ書面ヲ出シテ免官處分ヲ
受ケルト退官ハ構成法ノ草案ニ言フテアリマスソ
レカラ休職ハ今日言フ所ノ退職、斯ウ云フコトニ分
レテ居ッタノヲ、樞密院ノ修正ニ於キマシテ唯今申上
グタ五十八條ノ二項ノ其職ヲ免ゼラレルコトナシト
云フコトノ免官デアッテ退職デハナイ、官ヲ持タシメ
テ其奉ズル所ノ職務ヲ免奪スルト云フノデアルシ
テ見レバ免官、退官、休職、斯ウ言葉ヲ色〓使ヒ分ケ
ル必要ナクシテ免官、退官其モノハ免職ト云フ文字
ニ直ス憲法五十八條二項ノ用語ニ做ヘテ、免職ト云
フコトニスル其官ヲ保タシメテ其職ヲ退カシメル
ノハ休職トセズシテ退職スルト云フ風ニシタ方ガ、
言葉ガ少ナクシテ其精神ヲ變ヘルト云フ事ハナカラ
ウ、ソレカラシテ判事懲戒令ニ於キマシテ免官ヲ以
テ免職ト云フコトニ改メル其時ニ於テハ懲戒法ニ
依テ免職處分ヲ受ケル者ハ免官ヲスルト云フ事ヲ揭
ゲテ置イタナラバ一層解釋ノ誤解ヲ來タス虞レガ
ナカラウ、斯ウ云フコトマデモ其當時ニ於テ論議サ
レテ居ル卽チ判事懲戒法ハ後ニ出來タ法律デゴザ
イマスガ、其法律ニ斯ウ云フ論議ヲ盡サレマシテ、而
シテ現行懲戒法ニ依テ免職處分ヲ受ケタル者ニ付イ
テハ免官ヲスル、恩給權ヲ失フ、斯ウ云フ明文ヲ見ル
ニ至ッタ次第デゴザイマス、要スルニ是等ノ古キ文章
ヲ辿ッテ之ヲ考ヘテモ樞密院ニ於キマシテ議ヲ重ネ
ラレル時ニ於テ、構成法ノ免職ト云フ事柄ハ憲法五
十八條二項ノ免職ト同一ノ意味デアル憲法第五十
八條第二項ノ免職ナル言葉ハ免官ニシテ、所謂官ヲ
免ゼラレルト云フコトデアッテ、職ヲ免ゼラレルト云
フコトデハナイ、斯ウ云フコトカラシテ、此樞密院ノ
修正趣意書ニ明記シテアル次第デアルノデアリマ
ス、其一節ハ御手許ヘ御廻ハシ申シマシタ書面ノ中
ヘ、内規書キヲシテ置キマシテゴザイマスカラ、趣旨
ハ其內規ニ付テ御覽ヲ願ヒタイ次第デアリマスソ
レカラ他國ノ憲法ノ規定ハドウナッテ居ルカ、他國ノ
定年制ノ規定ハドウナッテ居リマスカ、斯ウ云フ御質
問ニ對シテモ是亦御手許ヘ御廻ハシ致シマシタル書
面ニ盡シテアルノデ』ゴザイマシテ憲法ニ於テ此ノ
定年制ヲ規定シテ居リマスノハ丁抹ノ憲法デアルノ
デアリマス、丁抹ノ憲法ニ依リマスルト、六十五歲デ
退職スル云フコトニナッテ居リマス、ソレカラ是ハ前
囘モ申上グマシタ通リ、最近ニ獨逸憲法ニ於キマシ
テハ矢張リ明文ヲ設ケマシテ、法律ニ依テ裁判官ノ
當然ニ退職ニナルベキ年齡ヲ定メルコトガ出來ルト
云フコトヲ、憲法ニ規定イタシマシタ、其法律ニ依テ
當然退職トナルベキ年齡ニ關スル規則ハ目下獨逸ヘ
問合セマシテ、既ニ向フヲ發送シタト云フコトニ聞
及ンデ居リマスノデスガ、未ダ司法省ヘ到著ハ致シ
マセヌガ兎ニ角獨逸憲法ニ於キマシテハ憲法ニ定
年年齡ヲ置ク事ガ出來ルト云フ事ヲ規定ヲ致シマシ
タ要スルニ憲法ニ於テ定年ヲ置ク事ガ出來ルト云
フ明文ヲ揭ゲテアリマスモノハ獨逸憲法ト丁抹ノ憲
法ノ二ツデゴザイマス、而シテ單行法ニ於キマシテ
定年ヲ定メルモノハ、是ハ佛蘭西ニモアリマスシ英
國ノ「カウンチコート」ノ判事ニモ其規定ヲ爲スニ至
ッタノデゴザイマス、唯今獨逸ノ定年年齡ガ分リマセ
ヌガ、佛蘭西ノ例ニ依リマスト、大審院ノ判事ハ滿七
十五歲ヲ以テ定年トシ、控訴院以下ノ判事ハ滿七十
歲ヲ以テ定年トスル、斯ウ云フ規定ニナッテ居ルノデ
アリマス而シテ斯ル定年ニ依テ退職處分ヲ受ケマ
スル者ハ普通文官ノ恩給ニ、比シテ一增優渥ナル恩
給手當ヲ給シテ居ルト云フ事ニナッテ居ルノデゴザ
イマス、ソレカラ此獨逸邊リニ依リマスルト一般官
吏ガ恩給ヲ受ケマスル年齡ハ六十五歲以上トナッテ
居ルノデアリマス、六十五歲ニナッテ初メテ恩給ヲ受
ケル事ガ出來ル所デ日本ニ於キマシテハ御承知ノ
通リ六十歲ニナレバ恩給ヲ受ケルコトガ出來ルノデ
ス、卽チ六十歲ニナリマスレバ身體ガ衰弱シテ、或ハ
精神ガ衰弱シテ職務ニ堪ユルコトガ出來ヌト云フ醫
者ノ診斷書ヲ付ケマセヌデモ六十歲ト云フ年齡ニ
依テ隱居御免ヲ願フコトガ出來ルヤウニナッテ、恩給
金ヲ得ルト云フコトニナッテ居リマス卽チ〓シテ申
シマスルト日本デハ六十デアリマスガ獨逸邊リデ
ハ六十五ト云フモノガ最低年齡ニナッテ居ル、斯ウ云
フヤウナ次第カラ致シマシテ、自然此ノ司法官ノ定
年年齡ト云フモノモ日本ヨリハ多ク、七十五デアル
トカ或ハ七十デアルトカ云フコトニ決メタノデアラ
ウト考ヘルノデアリマス、ノミナラズ此點ニ付キマ
シテハ過般樞密院會議ノ時ニ於キマシテモ、私カラ
申述ベタコトデゴザイマスガ、日本ノ-日本人ノ
此年齡ト云フコトニ付キマシテ、生理上ノ關係カラ
ドウモ歐羅巴人ト同一ニ律スルコトハ出來ナイト思
フノデアリマス、歐羅巴人ノ七十トカ七十五ト云フ
事柄ハ、我ガ國人ノ先ヅ六十、六十五ト云フ位ニ匹敵
スルモノデアラウト私ハ思フノデアリマス勿論是
ハ專門家ノ醫者ニ知覺表ヲ拵ヘテ貰ッタ譯デハゴザ
イマセヌガ〓シテサウ云フコトニナラウ、ドウシテ
モ日本人ノ方ガ早ク老衰スル〓シテ老衰スルモノ
デハアルマイカノミナラズ我ガ法制ノ上ニ於キマ
シテ六十ト云フ事柄ガ總テノ此ノ分岐點ニナッテ居
ルヤウニ心得マスル、例ヘバ民法ノ規定ニ於キマシ
テモ滿六十歲ニナリマスレバ隱居ヲナスコトガ出
來ル斯ウ云フ規定ニナッテ居リマス、所謂六十ト云
フノハ還曆ノ年齡デゴザイマシテ日本人ガ六十ニ
ナレバ〓シテ頽齡ニ赴クト云フノ見地カラシテ民
法モ六十歲ヲ隱居年齡ト定メタモノデアラウト思
フ、サウ致シマシテ今囘ノ定年制ニ於キマシテハ六
十三、六十藏ヨリモ三ツ附加ヘマシテ六十三ト云フ
コトノ規定ヲ設ケタ次第デアリマス、六十三ト致シ
マシテモ屢〓申上ゲマスル通リ、大晦日ニ生レテ元
日デ計算シマスルト六十三ト云フコトハ卽チ六十五
ニナリマス、算ヘ年六十五ト云フコトニナルノデゴ
ザイマス、先ヅ此程度ヲ以テ精神ノ衰弱ト推定スベ
キデアラウ、斯ウ云フ考デ致シマシタ次第デアルノ
デアリマス、チヨット外國ノ年齡數ヲ見マスト七十
五トカ七十トカ云フコトニナッテ居リマスノデ大
變年寄ニナッテ、日本ノ唯今御討議ヲ願ヒマス案ノ
六十三ニ較ベマスト懸隔シテ居ルヤウナ感ガア
リマスルガ以上申上ゲマスル通リ土臺ノ恩給ヲ
受クル年齡ニ付テモ、旣ニ五ツ違フ、我國ハ六十ナ
ルニモ拘ラズ向フハ六十五ト云フコトニナッテ居
ルノデアリマスカラシテ、彼ノ七十ト云フコトハ
我ノ六十位ニ該當スベキモノデアラウ斯ウ云フ
考デアルノデゴザイマス、大體先般ノ池田サン
ノ御質問ニ對シテハ御答申上ゲマシタ積リデゴザ
イマス、尙ホ不足ナラバ更ニ申上ゲルコトニ致シ
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003・池田長康
○男爵池田長康君 唯今鈴木次官カラ詳細ナル御說
明ヲ煩ハシマシテ感謝スル次第デゴザイマス、多少
意見ラシク、又批評メイタ言葉ヲ用ヒマスルケレド
モ、自分ノ疑問ノアル所ヲ明ニスル爲ニ申出ルノデ
アリマスカラ、其邊ヲ御含ミノ上御許シヲ願ヒタイ
ト思フノデアリマス、此憲法ニ對シテ違反デアルヤ、
違反デナイカト云フ問題ニ付キマシテ、過日來本會
ニ於キマシテ總理大臣ガ說明サレ、又司法大臣ガ委
員會ニ於テ御說明ニナリマシタ、大體ノ趣旨トシテ
洵ニ私ハ一理アル御說ト考ヘテ居リマス、ケレドモ
是ハ其ノ大體論デアッテ所謂輪廓ヲ附ケル上ノ御議
論デゴザイマスルカラ、隨ッテ立法論トシテソレニ多
少立法論ノ意味ガ含マレテ居ルヤウニ私ハ考ヘル
唯現行法ノ解釋ト致シマシテハ總理大臣又ハ司法
大臣ノ御言葉ダケデハ足ラヌ、此點ニ付キマシテハ
政府委員ヨリ其御趣旨ヲ····憲法違反ニアラザルト
云フ御趣旨ヲ闡明シテ戴ク爲ニ、現行法ノ解釋カラ
御說明ヲ煩ハシテ置イタ譯デアリマス其點ニ付キ
マシテハ多少私ト意見ノ實ハ相違ガアリマスノデ、
說明ノ點ニナルヤウニ私ハ考ヘラレルコトハ寧ロ
此質疑ノ問題デナク討論ノ場合ニ移スベキ問題デア
ラウカト考ヘマスガ、何分法律上ノ解釋問題デアリ
マスカラ、多少意見ガマシイ見地デ質疑ヲ致ス次第
ニナルノデゴザイマスガ憲法五十八條ノ第二項ノ
點ニ付テハ書類モ戴キマシテ、又詳シイ御說明ヲ唯
今承ッタノデアリマスガ、之ニ付テハ尙ホ自分トシテ
參考ニ供シテ見タイト思ヒマスソレカラ構成法ノ
說明デゴザイマスガ、唯今ノ御說明デハ實ハマダ疑
問ガ解ケナイ、何故ニ私ノ疑問ガ解ケナイカト云フ
事ヲ一應申上ゲマシテソレニ對スル又御答辯ヲ煩ハ
シタイト思フノデ是ハ構成法ノ第七十三條、又ソレ
ニ關シマシテ第七十四條カラ第七十五條及ビ檢事ニ
關シマスル方ノ第八十條、及ビ此構成法施行ニ關ス
ル法規ノ第二十一條、之ニ關係致スコトデアラウト
思ヒマスガ、私ガ疑問ヲ生ジマスル點ハ抑モ此構成
法ノ解釋ノ根本ニ於テハ私ガ間違ッタ考ヲ有ッテ居
ルカモ知レマセヌガ、此判事ノ保障ハ憲法ニ於テ五
十八條第二項ニ於テ原則ヲ決メテアル尙ホ法律ニ
依ッテ卽チ裁判所構成法ニ依リマシテ一層深ク判事
ノ身分ノ保障ヲシタモノト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、ソレガ終身官ノ規定ニ外ナリマセヌガ尙ホ詳シ
ク出テ居リマスノハ卽チ同法ノ第七十三條ガ卽チ判
事ノ身分保障ノ規定ダト私ハ解釋シテ居リマスノ
デ、ソコデ第七十四條カラ第七十五條ハ然ラバ是ハ
如何ナル規定デアルカト申シマスルト此ノ身分保
障ニ關スル例外ノ規定ダト私ハ考ヘテ居リマス七
十三條ガ身分保障ノ原則、保障ノ規定デアル、七十四
條カラ七十五條ハ其保障ノ例外ノ規定デアル斯ウ
私ハ解釋シテ居ルノデアリマスデゴザイマスルカ
ラ保障ノ規定ハ何ヲ規定シテモ差支アリマセヌガ
其保障ノ例外ヲ規定スルモノハ何カ保障シテアル事
ヲ規定シテナケレバ例外ノ規定ハ書ク必要ガナイ、
デゴザイマスルカラ此退職ノ場合ハ此保障ノ例外
ダ卽チ七十四條ハ保障ノ例外デアル、故ニ此例外ノ
規定ハ何カ其所ニ別ニ保障ノ規定ガナケレバ例外ノ
生ズル必要ハナイ、ソレデゴザイマスルカラ、七十三
條ニハ此身分ノ保障ニ付テ規定シテ居リマスカラ、
是ニハ退職ノコトガ規定シテナケレバナラヌ、之ヲ
逆ニ持ッテ行キマスト詰リ保障ノ規定デアッテ其保障
ノ例外ノ規定ガナクテモ差支ナイノデゴザイマスカ
ラ、轉官ノ場合ノ如キ七十四條、七十五條ノ規定ガナ
クテモソレハ轉官ノコトニ付テハ保障ノ例外ガナ
イソレダカラ何モ外ノ規定ニ揭ゲテナクテモ、第七
十三條ニ規定ガシテアル、是ダケデ是ハ意味ヲ成ス、
サウ私ハ解釋致シテ居リマス、サウ致シマスルト此
免職ト云フ中ニ退職ト云フコトヲ含メテ、是ハ現行
法ノ解釋ヲスル上ニ於テハ免職ト云フ中ニ退職ト云
フコトヲ含メテ考ヘナケレバナラヌ、又多少法ノ不
備トシテ此所ニ免職以外ニ退職ト云フコトヲ規定シ
テ置カナケレバナラヌ、是ハ保障、保障ノ例外ト云フ
事柄ヲ根據ニ致シマシタ私ノ結論デアリマスソレ
カラ此檢事ニ關シマスル此構成法ノ第八十條ヲ考ヘ
テ見マシテモ之ニ若モ此退職ガ矢張リ含ンデ居ラ
ヌト云フト.意味ヲ成サヌヤウニ私ハ思ハレル是一
非常ニ私ハ不思議ニ考ヘルノデアリマスガ、檢事ノ
場合ハ裁判所構成法施行法デアリマシタカ、二十一
條ニ於キマシテ單ニ七十四條カラ七十五條ヲ適用ス
ル此適用スルト云フコトハ準用ノ誤リデアラウト
考ヘテ居リマスガ、サウ致シマスルト判事ノ方ニハ
七十三條ト云フ詳シイ其保障ノ規定ガアル、檢事ニ
於テハ唯免職ト云フコトダケシカ保障シテナイ、サ
ウ致シマスルト私ノ解釋ノ詰リ此保障ノ例外ダト云
フ根據ガ破レル此檢事ノ場合ニ於キマシテハ却リ,
テ是ハ檢事ノ場合ニ於テハ是等ノ七十四條ヨリ七十
五條ノ規定ヲ準用サレマスルト云フト判事ノ場合
ニハ保障ノ例外デアッタケレドモ、檢事ノ場合ニハ亦
一種ノ保障ト云フコトニ見ラレルヤウナ工合デ、之
ヲ詳シク申シマスレバ檢事ノ場合ハ刑法ノ宣〓、又
ハ懲戒處分ニ依ルニアラザレバ其意ニ反シテ之ヲ免
職スルコトハナイ、サウシテ又七十四條、七十五條ヲ
準用スル結果、此精神ノ衰弱ニ依リ職務ヲ執ルコト
ガ出來ヌ場合ニハ退職スルト云フヤウナ規定ガ準用
サレマスルカラ檢事ニハ元來此ノ退職處分ト云フ
モノニ對スル保障ハナカッタノデ、ケレドモ之ヲ適用
サレル結果今度ハソレモ保障サレ、所謂保障ノ規定
ノ意味ヲ成シテ來ルヤウニ私ハ考ヘラレルサウ致
シマスルト、今度ノ改正案デ定年法案ガ設ケラレテ
定年制ガ設ケラレルト云フ事ニナルト此判事ノ方
ハ寧ロ身分ノ保障ニ對スル除外例トナルニ拘ラズ、
檢事ノ方ハ是レハ又一ツノ身分ノ保障ヲ確立シタヤ
ウナ形ニナリハスマイカ、斯ウ云フ風ニマア考ヘラ
レルノデアリマスガ、ソレハ此裁判所構成法施行法
ノ二十一條ノ適用ノ結果七十四條ヲ適用シテ來ルカ
ラ····ダカラ七十四條ノ例外トシテソレハ意味スル
ノダト云フ御議論ニナルカ知レマセヌガ此七十四
條ガ是ガ私ハ適用スルト云フコトガ非常ニ意味ガ判
然セヌコトニナルヤウニ私ハ考ヘラレル此邊ガ私
トシテハ非常ニ不可能ニ感ゼラレルノデ、自分ガ考
ヘル所ヲ簡單ニ言ッテ仕舞ヘバ構成法ソレ自體ガ法
理ガ甚ダ支離滅裂デハアリハシナイカト云フ風ニ私
ハ考ヘテ居ル要スルニ私ノ疑問ノ出マス所ハ判事
ニ關シマシテ、第七十三條ハ判事ニ對スル保障ノ規
定デアル、七十四條、七十五條ハ其保障ニ對スル例外
ノ規定デアル、檢事ニ付テハソレト是レトヲ較ベテ
見ルト、自分ニハ之ニ對シテドウモ解釋方法ガ甚ダ
困難デアルト云フ私ハ疑問ヲ有ッテ居リマス、是ハ其
疑問ニ對シマシテノ御說明ハ唯今御述べニナリマシ
タ、御說明下サイマシタ事ヲ單ニ御繰返シニナルト
云フコトテゴザイマスレバ、私ハ承ハラナクテモ宜
シウゴザイマス、其邊ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=3
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004・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 檢事ニ對シマシテハ七
十三條ノ如キ規定ハゴザイマセヌ、ソレハ七十三條
ガ適用サレテ、施行法ニ於テ適用サレテ居フヌカラ
デゴザイマス、元來檢事ニ於キマシテハ此轉所ト云
フ事柄ノ保障ハナイノデアリマス、現行法ニ於キマ
シテ轉所ノ規定ハゴザイマセスソレデアリマスカ
ラ轉所ヲ致シマスルニ付テハ懲戒處分ト云フヤウナ
モノヲ用ヰマセヌデモ司法大臣ガ必要ト認メマシ
タル場合ニ於キマシテ勝手ニ轉所ヲ命ズルコトガ出
來ルノデアリマス、先程申上ゲマスル通リ、此轉所ト
云フコトノ規定ハ大正二年ノ法律ニ依ッテ初メテ判
事ノ意ニ反シテナスコトガ出來ルコトニナッタノデ、
ソレ迄ハ此判事ニ對シテハ勝手ニ轉所ヲ命ズルコト
ハ出來ナカッタ、今日デ申シマスレバ池田サンノ仰ッ
シヤル通リ七十三條ノ例外法ト云フベキ七十四條ノ
二ト云フモノガ生レ出タ次第デアルノデアリマス、
ソコデ檢事ニ付キマシテハ轉所ノ保障ナシ、ソレカ
ラ停職、減俸、斯ウ云フヤウナ事柄ハ是ハ矢張リ懲戒
ニ依レバ出來ルノデ、懲戒以外ニ於キマシテハ是又
檢事ニ對シテモ出來ナイ次第デアルノデ況ヤ免職
ニ於キマシテハ卽チ免官、免職ニ於キマシテハ八十
條ノ規定スルガ如キ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分デナ
ケレバ出來ナイ斯ウ云フコトニナルノデゴザイマ
シテ、此ノ定年法ヲ設ケマシタ所ガ現行法ニ比シテ、
檢事ノ保障ヲ厚クシタト云フコトハ毛頭ナイノデゴ
ザイマス其點ハ現行法ト敢テ異ナル所ハ少シモナ
イ、要スルニ此七十三條ト云フモノハ御說ノ如ク後
ニ規定シテアル場合ノヤウナモノハ意ニ反シテデモ
出來ル、卽チ七十四條乃至七十五條ニ規定シテアル
モノナラバ意ニ反シテデモ出來ル、七十四條乃至七
十五條ニ規定シテ居ル場合竝ニ刑法ノ宣告又ハ懲戒
ノ處分デナケレバ意ニ反シテハ此處ニ書イテアル
ヤウナ事柄ハ出來ナイゾト云フマア保障デアル其
保障ヲ七十四條乃至七十五條ニ於テ規定シテアルヤ
ウナ事柄ハ出來ルト斯ウ云フ事ニシタノデゴザイマ
スカラ、所謂保障ニ對スル所ノ例外ト言フテ宜シウ
ゴザイマセウ、併ナガラデス、檢事ニ對シマシテ此規
定ガナイカラト云フテ、サウシテ今囘定年法ヲ設ケ
タカラト云フテモ是ガ爲ニ檢事ニ對スル地位ヲ現
行法ニ比シテ一段安固ニシタト云フコトハ出テ來ナ
イ元〓此檢事ニ對シテハ轉所スラモ保障シテ居ラ
ナカッタノデアル、ソレカラ七十四條乃至七十五條ニ
揭ゲテアリマスル事柄ト七十三條ニ揭ゲテアル事柄
トハドウモ全ク事柄ガ違フノデアル其職ヲ離レカ
ス所謂此樞密院ノ議ニ於テ現ハレマシタル言葉デ
申シマスルト云フト現實ニ職務ヲ執ラセナイト斯
ウ云フコトヲスルノニハ七十四條カ七十五條或ハ懲
戒裁判或ハ有罪ノ宣〓ヲ受ケル斯ウ云フ場合デナ
ケレバナラヌ、云フ事柄ヲ七十三條ガ示シタノデゴ
ザイマス、ソコデ七十三條中ニゴザイマスル所ノ此
免職ト云フ文字ハ七十四條ニゴザイマスル退職ト云
フノトハ意味ガ違フノデアリマス、是ハ先程申上ゲ
マシタ通リ七十三條ノ免職ト云フノハ憲法五十八
條二項ノ免職ノ言葉ト同ジニスルト云フ事ハ先程申
上ゲマシタ通リデゴザイマス、サウシテ其次ノ七十
四條ト云フモノハ草案ニ依リマスト休職ト云フコト
ニナッテ居ッタノデアリマス、其休職ト云フ事柄ハ結
局職務ヲ執ラセナイ、斯ウ云フ事デアルカラシテ退
職ト云フ事ニ改メタ方ガ宜カラウ、斯ウ云フ意見ニ
依ッテ休職ノ文字ガ····草案ノ休職ノ文字ガ改ッテ退
職ト云フ言葉トナッテ七十四條ガ現ハレタ次第デア
ルノデゴザイマス、尙ホ繰返シテ申シマスルガ、先般
モ申上ゲマシタル通リ此七十三條ニモアリマスル所
ノ免職ト云フ此言葉ガ、所謂七十四條ノ退職ト云フ
文字ト同事デナイト云フ事柄ハ今申上ゲマスル推
理カラモ解釋ガ出來ヤウト思フ、ソレハドウ云フ事
デアルカト云フト、懲戒ノ處分ニ依ッテ退職ト云フ事
ハナイノデアル必ズ懲戒處分ニ依リマスレバ免職
卽チ免官或ハ停職卽ヲ一時職務ノ執行ヲ停止スル
斯フ云フ事ヨリ外アリマセヌ、又刑法ノ宣告ニ依ッテ
卽チ犯罪ニ依ッテ罰セラルヽ場合ニ於キマシテハ是
亦其退職ト云フ處分ハナイノデ職ヲ退カセルト云
フ退職ト云フ事ハゴザイマセヌノデ、免官ニナル卽
チ免職、七十三條ニ書イテアリマスル免職トシテモ、
刑法ノ宣告ニ依リマシテ退職ト云フモノガゴザイマ
スルナラバ、七十三條ニ書イテアル此免職ト云フ言
葉ハ免官退職共ニ含ムト云フ解釋モ出テ來ルカモ
知レマセヌガ到底刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ依ッ
テハ退職ト云フコトハ決シテ出テ來ナイ、必ズ免官
ニナルノデ、故ニ七十三條免職トハ所謂免官デ、斯ウ
云フコトニ立至ル次第デゴザイマシテドウシテモ
此七十三條ノ免職ト云フ事柄ハ次ノ條ノ七十四條ノ
退職トハ違フ斯ウ云フコトニ解釋セザルヲ得ヌト
考ヘテ居リマス、左樣御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=4
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005・池田長康
○男爵池田長康君 唯今鈴木次官ヨリノ御說明デ政
府トシテノ御趣旨ノアル所ハ能ク分リマシタ、併シ
マダ私ハ十分諒解シ兼ネルノデアリマスガ唯今後
段ニ御述ベニナリマシタ點ニ付テ伺ヒマスガ成ル
ホド刑法ノ宣告ト云フコトニ依リマシテ其退職ト云
フ言葉ガ免官ト云フ結果ヲ起ス、ソレヲ豫想シテ規
定シタト云フ御話デゴザイマスガ私モサウデアラ
ウト考ヘマスソレカラ懲戒法ニ依リマシテ現行ノ
法規ハ成ルホド處分トシテ退職ト云フコトヲ表ハシ
テ居ラヌト考ヘマスガ併シ此懲戒ニ對スル處置ト
シテハ退職ト云フ處分ヲ加ヘルコトガ出來ル唯現
在ノ懲戒法ニ於テハ退職ト云フ事ハナイカモ知レマ
セヌガ、併シ此退職處分ヲ懲戒處分トシテ退職ヲセ
シムルト云フコトハ此懲戒法トシテ可能ノコトト
私ハ考ヘルデゴザイマスカラ必シモ懲戒法ニ退職
ト云フコトヲ處分トシテ、ソレガ表ハレテ居ラヌカ
ラサウダトハ私ハ一〓ニ言ヘヌダラウト斯ウマア考
ヘテ居リマスガ、併シ何ダカ其邊ハ考違ヒヲシテ承
ハッテ居ルカモ知レマセヌ、ソレカラ構成法ノ點ニ付
キマシテ今度ハ少シ方面ヲ變ヘテ伺ッテ見タイト思
ヒマス七十四條ハ是ハ退職ノ場合ニ對スル例外斯
ウ私ハ解釋イタシテ居リマス、然ルニ此退職ニ對シ
テ其判事ガ何等カ保障ヲ受ケテ居リマセヌト致シ
マシタナラバ七十四條ノ規定ガ出テ來ヤウ筈ガナ
イ、デアリマスカラ此退職サセナイト云フ原則ガド
コカニ無ケレバナラヌ、構成法ニアルカ、憲法ニアル
カ、又構成法第七十三條ニ無ケレバ外ニドコカニソ
レガ無ケレバナラヌ、サウデナケレバ構成法ノ第七
十四條ガ意味ヲ成サナイ、全然私ノ解釋ノ是ガ保障
ノ例外デナイト云フ御解釋デアリマスレバ兎ニ角結
論ト致シマシテ私ノ言フヤウナコトガ出テ參リマセ
ヌカ知レマセヌガ併シ是ガ判事ノ保障ニ對スル例
外ト致シマスレバ外ノ規定ハ退職ニ關スル判事ノ保
障ノ規定ガ無ケレバナラヌ、斯ウ私ハ考ヘテ居リマ
ス、ソレデ外ニ何カ此第七十三條ノー退職ニ關スル保
障ガアルモノダト云フ推定ヲ下サナケレバナラス
ソレデ是ハ退職ト云フ文字ニ付テ規定ヲ忘レタノ
カ、或ハ免職ト云フ中ニ退職ノ規定ガアルノデハナ
カラウカト云フ風ニ私ハ考ヘマスガ第七十三條ノ
規定ハ退職ノコトハナイト云フ御說明デアリマスカ
ラ、特ニ退職ニ關スル判事ノ身分保障ノ規定ガ無ケ
レバナラヌト、斯ウ私ハ單純ニ考ヘラレルノデアリ
マスガ、ソレハ如何デゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=5
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006・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 七十三條ノ免職ト云フ
言葉ノ中ニハ退職ト云フ言葉ハ含ンデ居ラヌト自分
等ハ解釋シテ居リマス、又其根據ハ先程申上ゲマス
通リ樞密院ノ修正理由書等ニモ其理由ハ窺ヒ得ラレ
ルノデアリマス、併ナガラ退職ト云フ事柄ニ付テ何
等保障ノ根基ガナケレバ七十四條ナドト云フ事ヲ喚
起ス必要ハナイデハナイカ、斯ウ云フ御議論デアリ
マスガソレハ此七十三條ニ於キマシテ七十四條ヲ
除クノ外云々ト規定シテアル七十四條以外ニ於キ
マシテハ退職處分ハナイト云フ事柄モ七十三條ガ示
シテ居ル卽チ七十三條ガ保障シテ居ルト見レバ保
障シテ居ルノデアリマス、七十三條ニ於キマシテ七
十四條ノ場合ヲ除クノ外退職セラル·コトナシト
書イテアルト同ジト思ヒマス唯茲ニ七十三條中ノ
免職ト云フ文字ノ中ニ退職ハ含ンデ居ラナイ、ト云
フノハ先程列ベテ申シマスル通リ、七十三條ニ規定
シテアル七十四條乃至七十五條ト云フ此條文中ニ七
十三條ニ列記シテアル五ツ六ツノモノガ悉ク書イテ
ゴザイマスレバ丁度正面ニ七十三條ハ保障ノ例外
規定ヲ七十四條以外ニ於テ規定シタ、斯ウ云フコト
ガ言ヘマスケレドモ先程申上ゲマス通リ七十四條
乃至七十五條中ニ書イテアル事柄ト七十三條ニ書イ
テアリマスル其意ニ反シテ轉官、轉所、停職、免職、減
俸、此五ツノ事柄ハ七十四條乃至七十五條ニハ悉ク
無イ、唯有ルモノハ先程申上ゲマシタル轉所ノ規定
ダケデアル其轉所ノ規定トテモ此七十四條乃至七
十五條ト書キマシタ當時ニ於キマシテハ轉所ノ規定
モ無カッタ大正二年ニ於テ初メテ入ッテ來タ轉所規
定デアルノデアリマスカラ、七十四條乃至七十五條
ト云フモノノ中ニハ轉官、轉所、停職、免職、減俸ト云
フモノハ無カッタ、斯ウ云ヘルノデゴザイマスソコ
デ七十四條ガ生ジタ保障デアル退職處分ガ出來ナ
イト云フ事ノ保障ガアルノハ矢張リ七十三條ガ保障
シテ居ル七十四條ノ場合ヲ除クノ外云々斯ウアル
ノガ七十三條ニ退職處分ハ書イテ居リマセヌガ退
職處分ヲナサムトセバ七十四條ニ依ルノデ、七十四
條ニ依ルニアラズンバ退職處分ガ出來ナイト云フ事
柄ハ、自ラ七十三條ニ依ルコトニナリマスカラ、無暗
ニ退職處分ガ出來ナイト云フ事柄ハ取リモ直サズ七
十三條之ヲ保障シテ居ルト申シテ宜シカラウト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=6
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007・池田長康
○男爵池田長康君 唯今鈴木次官ヨリノ御說明デ、
唯今マデ私ガ解釋ニ苦ンデ居リマシタ點ニ付キマシ
テ、略〓如何ナル御解釋デアルト云フ點ハハッキリ私
ニハ分リマシタ、但シ自分ノ解釋ト政府トハ全然一
致シテ居ル譯デハアリマセヌガ、政府ノ御說明ガ能
ク私ノ腑ニ落入リマシタ其點ニハ滿足シテ居ル次第
デ、ソコデ次ニハ檢事ノ場合ノ第八十條デ此七十四
條ヲ適用スルト云フ場合ニナリマスルト此八十條
ニハ七十四條七十五條ノ場合ヲ除クト言フコトハ別
ニ玆ニ書イテナイサウ致シマスルト、唯今政府委員
ノ御說明ニ依リマスルト此檢事ノ場合ノ說ガ聊カ不
明瞭ニナッテ來ルヤウニ考ヘラレル、先程判事ニ對シ
テハ七十三條ガ保障ヲシテ居ル、ソレデ七十四條カ
ラ七十五條ハソレニ對スル保障ノ例外デアル、トコ
ロガ此檢事ニ付キマシテハ第八十條ガ保障シテア
ルソコデ此規定ノ適用ノ結果七十四條カラ七十五
條ヲ持ッテ來ル是ハ保障ノ例外デアル斯ウナリマス
ルト此ハ八十條ニハ七十四條七十五條ト云フノハ除
クト云フ事ヲ書イテナイノデアリマスルガ、之ニ對
スル說明ガ非常ニ御困難ニナリハシナイカト考ヘマ
スガ如何デセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=7
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008・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 成程檢事ニ關スル八十
條ノ規定ニ於キマシテハ七十四條七十五條ヲ除クノ
外ト云フコトハゴザイマセヌガ、施行條例ニ於キマ
シテ此退職ノ規定ヲ適用サレル、ソレカラ待命ノ場
合卽チ俸給ノ半額ヲ給スルト云フ事柄ガ規定サレテ
居リマスルソコデ元來當時ノ立法カラドウ云フ論
議デ斯ウ云フコトニナリマシタカ其點ノ詳細ナル
記錄モゴザイマセスカラ、或ハ深ク調査イタシマシ
タラ又他ノ記錄ガアルカモ知レマセヌガ、土臺此檢
事ニ付キマシテ構成法施行條例ニ之ヲ適用シタト云
フ事モ同樣ノモノデアラウト云フ事ハ自分等ハ疑
フノデ既ニ施行條例ノ二十一條ニ於テ之ヲ適用スル
モノデアルナラバデス、構成法ノ本法ニ入レタガ宜
カッタダラウト私ハ思フ、本法ニ入レタナラバ矢張リ
此七十三條ニ類スルヤウナ規定ガアッタダラウト私
ハ思フノデ、唯七十三條ノ轉所ノ規定デアル、檢事ノ
方ニ轉所ノ保障ハシテナイ、七十三條ヲ取ッテモ此ヤ
ウナモノハ置ケナイデセウ、七十三條ニ類スルヤウ
ナモノヲ八十條ノ方ニ置クベカリシデナカッタカト
今カラ思ヘバ想像スル當時ノ立法ハ同ジイ事柄ヲ
立法スルナラバ施行條例ニ設ケテアル斯ウ云フ所
カラシテ從ッテ池田男爵ノ仰シヤラレタ七十三條ニ
七十四條乃至七十五條ノ場合ヲ除ク外ト云フ事ヲ八
十條ニ置カレナカッタカト思フ、私ハ若シソレヲ置ケ
バ施行條例ニ規定シナイデ本法ニ規定スルモノト思
ヒマス本法ニ規定シタモノデアルナラバ七十三條
ニ類スル規定ハ八十條ニアッタト思フ、元來私ノ申ス
マデモナク施行條例ハ過渡法デアルカラサウデア
ルナラバ施行條例ノ二十一條ノヤウナモノハ本法ニ
組入レテ然ルベキモノト思フガ、組入レテナイカラ
斯ウナッタト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=8
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009・池田長康
○男爵池田長康君 唯〓御說明ヲ拜承イタシマシ
タ尙ホ此點ニ付キマシテハ私ノ質問イタシマスノ
ハ法律上ノ問題デゴザイマスシ、極細カイ問題デア
リマシテ定メシオウルサク御感ジニナルカモ知レマ
セヌガ、大體論ニ付キマシテモ既ニ私ガ先程申上ゲマ
シタ樣ニ根本ニ關スル事ニ付テ相當ノ御見解、確ニ
適當ナ御見解モアリ得ルヤウニ考ヘラル、既ニ此法
規ヲ仕上ゲマス上ニ現行法規規定ノ解釋、或ハ現行
法規ト矛盾ノナイヤウニ十分詮議イタシマシテ置ク
必要上斯樣ニ細カイ點ニ亙ッテ質問イタシタノデア
リマスル此點ニ付キマシテハ十分ニ考ヘテ見ナケ
レバナリマセヌ、私ハ自分ノ說ヲドコマデモ固執ス
ル譯デハアリマセヌガ、最早時間モ大分參ッテ居リマ
スル尙ホ政府委員ノ御說明ニ付テ篤ト考ヘテ次ソ會
議ニ於キマシテ質問イタシタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=9
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010・松平頼壽
○委員長(伯爵松平賴壽君) 今日ハ時間モ參リマシ
タカラ是デ閉會イタシマス
午後零時五分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵松平賴壽君
副委員長荒川義太郞君
委員
子爵酒井忠亮君
子爵板倉勝憲君
男爵島津久賢君
男爵池田長野
加太調査官方
山之内一次君
湯淺倉平君
國務大臣
司法大臣伯爵大木遠吉君
政府委員
司法次官鈴木喜三郞君
司法省民事局長山內確三郞君
司法省刑事局長豐島直通君
司法省監獄局長谷田三郞君
司法省參事官飯島喬平君
司法省參事官池田寅二郞君
司法書記官近藤三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004401130X00319210223&spkNum=10
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