1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年三月八日(火曜日)
午前十時十七分開議
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議事日程 第十七號 大正十年三月八日
午前十時開議
第一 伯爵廣澤金次郎君、富永猿雄君請暇の件
第二 戸籍法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 大正九年法律第五十三號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 特許法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 實用新案法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 意匠法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 商標法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 辨理士法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第九 米穀法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十 米穀需給調節特別會計法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十一 罹災救助基金法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十二 明治三十八年法律第十七號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十三 執達吏規則中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十四 民事訴訟費用法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十五 刑事訴訟費用法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十六 獨逸國等との平和條約賠償條項に基き受領したる賠償物件の輸入税免除に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 作業會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 海軍燃料廠の石炭、煉炭又は燃料油の買入に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
去ル五日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決
ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案
同日本院ニ於テ採擇スヘキモノト議決シタル新舊文官ノ恩給竝遺族扶助料
不權衡更正ニ關スル請願外二件ノ請願ハ各意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送
付セリ
同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
鐵道敷設法改正法律案特別委員會
委員長平井晴二郞君副委員長男爵福原俊丸君
水產會法案特別委員會
委員長伯爵吉井幸藏君副委員長西久保弘道君
同日決算委員分科會ニ於テ當選シタル主査ノ氏名左ノ如シ
第一分科主査子爵本多忠鋒君第二分科主査伯爵中川久任君
第三分科主査安立綱之君
同日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
獨逸國等トノ平和條約賠償條項ニ基キ受領シタル賠償物件ノ輸入稅免除
ニ關スル法律案可決報〓書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
戶籍法中改正法律案
大正九年法律第五十三號中改正法律案
特許法改正法律案
實用新案法改正法律案
意匠法改正法律案
商標法改正法律案
辨理士法案
米穀法案
米穀需給調節特別會計法案
罹災救助基金法中改正法律案
明治三十八年法律第十七號中改正法律案
執達吏規則中改正法律案
民事訴訟費用法中改正法律案
刑事訴訟費用法案
同日可決シタル議員子爵松平康民君ニ對スル弔辭ハ六日之ヲ贈レリ
昨七日決算委員分科會ニ於テ當選シタル主査ノ氏名左ノ如シ
第四分科主査子爵片桐貞央君
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
文部省所管事務政府委員
文部省宗〓局長粟屋謙君
維新史料編纂事務局長柴田駒三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、會期切迫セルニ依
リ、自今議案配付後ニ於ケル定規ノ日數ハ之ヲ短縮イタシタイト考ヘマス、
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=3
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004・江木千之
○江木千之君 本日ハ前田子爵ガ御出席ニナリマシタナラバ、同子爵ヨリ申
上ゲラレルノデアリマシタガ、御缺席ニ付私ヨリ發議イタシマス、豫算審
査ノ期限ハ來ル十二日迄トナッテ居リマスルガ、更ニ五日間ヲ延長シテ來ル十
七日迄ト致シタイト考ヘマス、此段諸君ノ御賛成ヲ得タイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=4
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005・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 江木千之君ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第一、伯爵廣澤金次郞君、富永猿雄君請暇ノ
件、廣澤伯ハ公務上會期中、富永君病氣ニ付十日間ノ請暇デゴザイマス、
何レモ許可ヲ致スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、戶籍法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第讀會
〔左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之
ニ倣ス〕
戶籍法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
戶籍法中改正法律案
戶籍法中左ノ通改正ス
第四十二條ノ二第三十一條乃至第三十四條及ヒ第三十五條第一項ノ規定
ハ共通法第三條ノ規定ニ依リテ內地ノ家ヲ去リタル者及ヒ他ノ地域ノ家
ヲ去リヲ內地ノ家ニ入リタル者ノ戶籍ノ記載手續ニ付キ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣伯爵大木遠吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=10
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011・大木遠吉
○國務大臣(伯爵大木遠吉君) 戶籍法中改正法律案ノ提案ノ理由ヲ申上ゲタ
イト思ヒマス、御承知ノ如ク共通法ノ第三條ノ規定ハ、朝鮮臺灣ニ於キマス
所ノ戶籍ニ關スル手續ガ備ハリマセナンダカラ、備ハリマスル迄其施行ヲ留
保シテ居ッタ次第デゴザイマス、然ニ今ヤ內地人及ビ朝鮮臺灣人ノ間ニ、婚姻
又養子緣組等ノ手續ニ關シマスル所ノ成案ヲ得マシタニ依リ、右共通法第三
條ノ規定ヲ施行スルト同時ニ、內地ト彼ノ地ノ間ニ於キマスル所ノ入籍、或
ハ除籍ニ關スル內地戶籍法ノ規定ヲ補充イタシマシテ、以テ相互ノ婚姻、養
子緣組等ノ關係ヲ圓滿ナラシムル必要ヲ認メタノデゴザイマス、是レ本案ヲ
提出スルノ所以デゴサイマス、何トゾ御審議ノ上御協賛ヲ得タイノデゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質問ナイト認メマスカラ、特別委員ノ氏名
ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔長書記官朗讀〕
戶籍法中改正法律案特別委員
伯爵松浦厚君子爵唐橋在正君子爵東坊城德長君
男爵伊達宗曜君男爵佐竹義準君石渡敏一君
野々村久次郞君石橋謹二君竹村與右衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、大正九年法律第五十三號中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會
大正九年法律第五十三號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
大正九年法律第五十三號中改正法律案
大正九年法律第五十三號中左ノ通改正ス
別表輸入稅表中煙草ノ部ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員男爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=13
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014・齋藤實
○政府委員(男爵齋藤實君) 朝鮮ニ於ケル煙草ノ輸入稅率ハ、大正九年法律
第五十三號、卽チ關稅法、關稅率等ノ朝鮮ニ於ケル特例ニ關スル法律ヲ以テ、
特別ノ稅率ニ依リ關稅ノ賦課ヲ得テ居リマシタノデアリマスルガ、大正十年
度ヨリ朝鮮ニ於キマシテ煙草專賣ヲ實施スルニ付マシテ、此ノ特別例ヲ廢
シ、內地ノ稅率ト同一ニ爲ス必要ガゴザイマス爲ニ、本改正案ヲ提出イタシ
マシタ次第デゴザイマス、何トゾ御審議ノ上ニ御協贊アラムコトヲ希望イタ
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此ノ特別委員ハ、朝鮮事業公債法中改正法律案外
二件ノ委員ニ付託イタシテ、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ニ御諮リヲ致シタイノ
ハ日程第四ヨリ第八迄一括シテ議題トシテ說明ヲ煩ハシタイト考ヘマス、
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第四、特許法改正法律案、第五、實用新案法
改正法律案、第六、意匠法改正法律案、第七、商標法改正法律案、第八、辨
理士法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
特許法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院ノ修正、-
ハ同削除ノ符號ナリ
特許法改正法律案
特許法
第一章總則
第一條新規ナル工業的發明ヲ爲シタル者ハ其ノ發明ニ付特許ヲ受クルコ
トヲ得
第二條特許權者又ハ特許出願者ハ其ノ發明ノ改良又ハ擴張ニ係ル新規ノ
發明ニ付獨立ノ特許ニ代ヘ追加ノ特許ヲ受クルコトヲ得
第三條左ニ揭クル發明ニ付テハ之ヲ特許セス
一飮食物又ハ嗜好物
二醫藥又ハ其ノ調合法
三化學方法ニ依リ製造スヘキ物質
四秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ衞生ヲ害スルノ虞アルモノ
第四條本法ニ於テ發明ノ新規ト稱スルハ發明カ左ノ各號ノ一ニ該當スル
コトナキヲ謂フ
一特許出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ又ハ公然用ヰラレタルモノ
二特許出願前帝國內ニ頒布セラレタル刊行物ニ容易ニ實施スルコトヲ
得ヘキ程度ニ於テ記載セラレタルモノ
第五條特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者カ試驗ノ爲其ノ者ノ發明ヲ前條各
號ノ一ニ該當スルニ至ラシメタル場合ニ於テ其ノ日ヨリ六月以内ニ其ノ
者カ特許ヲ出願シタルトキハ其ノ者ノ發明ハ之ヲ新規ナルモノト看做ス」
特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者ノ意ニ反シテ其ノ者ノ發明カ前條各號ノ
一ニ該當スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ者カ特許
ヲ出願シタルトキ亦前項ニ同シ
第六條特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者カ政府ノ開設シ、道府縣若ハ之ニ
準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ認可ヲ得テ開設スル博覽會又ハ工業所
有權保護同盟條約國ノ版圖內ニ開設スル官設若ハ官許ノ萬國博覽會ニ出
品ノ爲其ノ者ノ發明ヲ第四條各號ノ一ニ該當スルニ至ラシメタル場合ニ
於テ其ノ開會ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ者カ特許ヲ出願シタルトキハ其ノ
者ノ發明ハ之ヲ新規ナルモノト看做ス
前項ニ揭クル萬國博覽會ヲ除クノ外外國ノ版圖內ニ開設スル官設又ハ官
許ノ博覽會ニ出品スル發明ニ付保護ヲ與フルノ必要アルトキハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第七條特許出願ハ一發明每ニ之ヲ爲スヘシ但シ二以上ノ發明カ牽連シテ
利用上一發明ヲ爲スモノト認メ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第八條同一發明ニ付テハ最先ノ出願者ニ限リ特許ス但シ同日ノ各別ノ出
願者アルトキハ出願者ノ協議ニ依リ特許シ協議調ハサルトキハ共ニ特許
セス
第九條二以上ノ發明ヲ包含スル特許出願ヲ二以上ノ出願ト爲シタルトキ
ハ各出願ハ最初出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看做ス
追加ノ特許出願ヲ獨立ノ特許出願ニ、獨立ノ特許出願ヲ追加ノ特許出願
ニ變更シタルトキ亦前項ニ同シ
第十條特許出願カ特許ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者又ハ特許ヲ受
クルノ權利ヲ冐認シタル者ノ爲シタルモノナルニ因リ特許ヲ受クルコト
能ハサルニ至リタル場合ニ於テ其ノ特許出願ノ後ニ爲シタル正當權利者
ノ出願ハ其ノ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル特許出願ノ時ニ於テ
之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル日
三三
ヨリ六十日ヲ、出願公〓アリタル場合ニ於テハ出願公〓ノ日ヨリ六十日
ヲ經過シタル後ノ出願ニ係ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條特許カ特許ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者又ハ特許ヲ受ク
ルノ權利ヲ冐認シタル者ノ受ケタルモノナルニ因リ其ノ特許ヲ無效トス
ル審決確定シ又ハ判決アリタル場合ニ於テ其ノ特許ノ出願ノ後ニ爲シタ
ル正當權利者ノ出願ハ其ノ無效ト爲リタル特許ノ出願ノ時ニ於テ之ヲ爲
シタルモノト看做ス但シ其ノ特許ノ出願公〓ノ日ヨリ五年ヲ經過シタル
○ヨリ三十日ヲ經過シタル
後ノ出願又ハ其ノ審决確定シ若ハ判決アリタル日○後ノ出願ニ係ルトキ
ハ此ノ限ニ在ラス
第十二條特許ヲ受クルノ權利ハ之ヲ移轉スルコトヲ得但シ擔保ニ供スル
コトヲ得ス
特許ヲ受クルノ權利カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ
同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
特許ヲ受クルノ權利ノ承繼ハ承繼人カ特許出願前ニ在リテハ特許ヲ出願
シ特許出願後ニ在リテハ出願人名義ノ變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以
テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ出願又ハ屆出ニ係ルトキハ關
係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十三條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル法定又ハ指定ノ期間ノ
計算ハ左ノ規定ニ依ル
-期間ノ初日ハ之ヲ算入セス但シ其ノ期間カ午前零時ヨリ始ルトキハ
此ノ限ニ在ラス
二期間ヲ定ムルニ月又ハ年ヲ以テシタルトキハ曆ニ從フ月又ハ年ノ始
ヨリ期間ヲ起算セサルトキハ其ノ期間ハ最後ノ月又ハ年ニ於テ其ノ
起算日ニ應當スル日ノ前日ヲ以テ滿了ス但シ最後ノ月ニ應當日ナキ
トキハ其ノ月ノ末日ヲ以テ滿了ス
特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ニ付テノ法定又ハ指定ノ期間ノ末
日カ日曜日又ハ一般ノ祝祭日ニ當ルヘキトキハ其ノ日ノ翌日ヲ以テ其ノ
期間ノ末日トス
第十四條被用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ其ノ勤務ニ關シ爲シタル發明
ニ付テハ性質上使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ノ業務範圍ニ屬
シ且其ノ發明ヲ爲スニ至リタル行爲カ被用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ
任務ニ屬スル場合ノモノヲ除クノ外豫メ使用者、法人又ハ職務ヲ執行セ
シムル者ヲシテ特許ヲ受クルノ權利又ハ特許權ヲ承繼セシムルコトヲ定
メタル契約又ハ勤務規程ノ條項ハ之ヲ無效トス
使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ハ被用者、法人ノ役員又ハ公務
員ノ其ノ勤務ニ關シ爲シタル發明ニシテ性質上使用者、法人又ハ職務ヲ
執行セシムル者ノ業務範圍ニ屬シ且其ノ發明ヲ爲スニ至リタル行爲カ被
用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ任務ニ屬スル場合ノモノニ付其ノ被用者、
法人ノ役員若ハ公務員カ特許ヲ受ケタルトキ又ハ其ノ者ノ特許ヲ受クル
ノ權利ヲ承繼シタル者カ特許ヲ受ケタルトキハ其ノ發明ニ付實施權ヲ有
ス
被用者、法人ノ役員又ハ公務員ハ前項ノ發明ニ付テノ特許ヲ受クルノ權
利又ハ特許權ヲ豫メ定メタル契約又ハ勤務規程ニ依リ使用者、法人又ハ
職務ヲ執行セシムル者ヲシテ承繼セシメタル場合ニ於テ相當ノ補償金ヲ
受クルノ權利ヲ有ス
前項ノ規定ニ依リ使用者法人又ハ職務ヲ執行セシムル者カ其ノ發明ヲ實施スル場合亦同シ
使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ニ於テ既ニ支拂ヒタル報酬アル
トキハ裁判所ハ前項ノ補償金ヲ定ムルニ付之ヲ斟酌スルコトヲ得
本條ニ於テ法人ノ役員ト稱スルハ法人ノ業務ヲ執行スル役員ヲ謂ヒ公務
員ト稱スルハ刑法第七條第一項ノ公務員ヲ謂フ
第十五條特許出願ニ係ル發明カ軍事上祕密ヲ要シ又ハ軍事上若ハ公益上
必要ナルモノナルトキハ特許ヲ與ヘス、特許ヲ受クルノ權利ヲ政府ニ於
テ收用シ又ハ制限ヲ附シテ特許ヲ與フルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ特許ヲ與ヘス、權利ヲ收用シ又ハ制限ヲ附シテ特許ヲ
與フル場合ニ於テハ政府ハ相當ノ補償金ヲ支給ス
收用及補償金支給ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條帝國內ニ住所ヲモ居所ヲモ有セサル者ハ命令ニ別段ノ規定アル
場合ヲ除クノ外帝國內ニ住所又ハ居所ヲ有スル代理人ニ依ルニ非ザレハ
特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲シ又ハ特許權若ハ特許ニ關ス
ル權利ヲ主張スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ出願若ハ請求又ハ主張ヲ爲ス代理人ハ特ニ授ケラレタ
ル權限ノ外本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル手續竝民事訴訟、私
訴及告訴ニ付本人ヲ代表ス
特許權者又ハ特許權ニ關シ登錄シタル權利ヲ有スル者ノ代理人ニシテ第
一項ノ規定ニ依リ手續又ハ主張ヲ爲スモノノ選任若ハ變更又ハ代理權
若ハ其ノ變更消滅ハ登錄ヲ受クルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スル
コトヲ得ス
第十七條特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲ス者ノ代理人ニシテ
前條第三項ニ規定スル代理人ニ非サルモノノ選任若ハ變更又ハ代理權若
ハ其ノ變更消滅ハ特許局ニ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ特許局ニ對抗ス
ルコトヲ得ス
第十八條特許ニ關スル代理人數人アルトキハ特許局ニ對シテハ共同又ハ
各別ニ本人ヲ代表ス
옵
第十九條特許局長○ニ於テ特許ニ關スル代理人ヲ適當ナラスト認ムルト
キハ其ノ改任ヲ命スルコトヲ得
옵
特許局長〓又ハ審判長ニ於テ當事者、參加人若ハ特許異議申立人又ハ其ノ
代理人カ手續又ハ演述ヲ爲スノ能力ナシト認ムルトキハ辨理士ヲ以テ代
理セシムヘキコトヲ命スルコトヲ得
前二項ニ規定スル命令アリタル後第一項ノ代理人又ハ前項ノ當事者、參
加人、特許異議申立人若ハ代理人ノ特許局ニ對シ爲シタル行爲ハ之ヲ無
效ト爲スコトヲ得
第二十條特許局ニ對シ爲スヘキ事項ノ代理業ハ辨理士ニ非サレハ之ヲ行
フコトヲ得ス
第二十一條數人共同シテ特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲ス者
又ハ特許權ノ共有者ハ特許局ニ對シ各人互ニ代表スルモノトス但シ特ニ
代表者ヲ定メ特許局ニ屆出テタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十七條ノ規定ハ前項但書ノ代表者ニ付之ヲ準用ス
第二十二條特許權者帝國內ニ住所ヲモ居所ヲモ有セサルトキハ第十六條
第二項ノ代理人ノ住所又ハ居所、其ノ代理人ナキモノニ在リテハ特許局
ノ所在地ヲ以テ民事訴訟法第十七條ノ財產所在地ト看做ス
을
第二十三條特許局長○ハ外國又ハ遠隔若ハ交通不便ノ地ニ在ル者ノ爲請
求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ特許局ニ對シ手續ヲ爲スヘキ法定ノ期間ヲ延長
スルコトヲ得
第二十四條出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲シタル者之ニ關スル爾後ノ行爲ニ
付指定ノ期間ヲ懈怠シタルトキ又ハ登錄ヲ受クル際納付スヘキ特許料ノ
옵
納付ヲ怠リタルトキハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外特許局長〓ハ
ぅ
其ノ出願、請求其ノ他ノ手續ヲ無效ト爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ出願、請求其ノ他ノ手續ヲ無效ト爲シタル場合ニ於テ
其ノ期間ノ懈怠カ宥恕スヘキ障礙ニ因ルモノト認ムルトキハ其ノ障礙ノ
止ミタル日ヨリ十四日以內ニシテ其ノ期間滿了後一年以內ノ請求ニ依リ
읍
特許局長〓ハ懈怠ノ結果ヲ免レシムルコトヲ得
第二十五條天災其ノ他避クヘカラサル事變ニ因リ法定ノ期間ヲ懈怠シタ
ル場合ニ於テ其ノ障礙ノ止ミタル日ヨリ十四日以內ニシテ其ノ期間滿了
을
後一年以內ノ請求ニ依リ特許局長〓又ハ審判長ハ懈怠ノ結果ヲ免レシム
ルコトヲ得但シ第七十四條ニ規定スル特許異議ノ申立期間ニ付テハ此ノ
限ニ在ラス
第二十六條特許局ニ差出スヘキ書類其ノ他ノ物件ニ付差出ノ效力ヲ生ス
ヘキ時期ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ特許權者又ハ特許ニ
關スル權利ヲ有スル者ノ爲シタル又ハ其ノ者ニ對シ爲サレタル手續ノ效
力ハ其ノ特許權又ハ特許ニ關スル權利ノ承繼人ニ及フ
第二十八條特許局ニ事件ノ繫屬中ニ於テ特許權又ハ特許ニ關スル權利ノ
移轉アリタルトキハ特許局ハ承繼人ニ對シ手續ヲ續行スルコトヲ得
第二十九條本法ニ規定スルモノノ外特許局ニ繫ル手續ノ中斷中止及中斷
中止シタル手續ノ續行ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十條特許ニ關シ證明、特許證ノ複本、書類ノ謄本若ハ圖面ノ調製
읍
ヲ求メ又ハ書類ノ閱覽若ハ謄寫ヲ爲サムトスル者ハ特許局長○ニ之ヲ申
〓
請スルコトヲ得但シ特許局長〓ニ於テ祕密ヲ要スト認ムルモノニ付テハ
之ヲ許可セス
第三十一條軍事上祕密ヲ要スル發明ニ付テハ本法ニ規定スルモノノ外命
令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第三十二條外國人ニシテ帝國內ニ住所ヲモ營業所ヲモ有セサルモノハ條
約又ハ之ニ準スヘキモノニ規定アル場合ヲ除クノ外特許權又ハ特許ニ關
スル權利ヲ享有スルコトヲ得ス
第三十三條特許ニ關シ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ別段ノ規定アルトキ
ハ其ノ規定ニ從フ
第二章特許權
第三十四條特許權ハ登錄ニ依リ發生ス
第三十五條特許權者ハ物ノ特許發明ニ在リテハ其ノ物ヲ製作、使用、販
賣又ハ擴布スルノ權利ヲ專有シ方法ノ特許發明ニ在リテハ其ノ方法ヲ使
用シ及其ノ方法ニ依リテ製作シタル物ヲ使用、販賣又ハ擴布スルノ權利
ヲ専有ス
新規ナル同一ノ物ハ同一ノ方法ニ依リテ製作シタルモノト推定ス
特許權カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル實用新案權ト牴觸スル場合又ハ特
許發明カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル登錄實用新案ヲ利用スルモノナル
場合ニ於テハ特許權者ハ實用新案權者ノ實施許諾アルニ非サレハ其ノ特
許發明ヲ實施スルコトヲ得ス
第三十六條特許權ノ效力ハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノニ及ハス
一〓究又ハ試驗ノ爲ニスル特許發明ノ實施
二單ニ帝國內ヲ通過スルニ過キサル運輸具又ハ其ノ裝置
三特許出願ノ際ヨリ帝國內ニ在ル物又ハ第一號ノ實施ニ依リ製作シタ
ル物
第三十七條特許出願ノ際現ニ善意ニ帝國內ニ於テ其ノ發明實施ノ事業ヲ
爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ特許發明ニ付事業ノ目的タル發明範
圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第三十八條特許ノ無效審判請求ノ登錄前善意ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當
シ帝國內ニ於テ其ノ發明實施ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其
ノ特許發明ニ付事業ノ目的タル發明範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
-同一發明ニ對スル二以上ノ特許中其ノ一カ無效ト爲リタル場合ニ於
ケル登録ヲ受ケタル原特許權者
二特許ヲ無效トシ同一發明ニ付正當權利者ニ特許ヲ與ヘタル場合ニ於
ケル登錄ヲ受ケタル原特許權者
三前二號ニ揭クル場合ニ於テ其ノ無效ト爲リタル特許權ニ付實施權ヲ
得テ其ノ登錄ヲ受ケタル者但シ實施權カ登錄ナキモ第五十二條第一
項ノ效力ヲ有スル場合ハ登錄アルヲ要セス
特許出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ係リ其ノ特許權ト牴觸スル實用新
案權ノ存續期間滿了シタル場合ニ於テ其ノ實用新案權ニ付實施權ヲ得テ
登錄ヲ受ケタル者ハ其ノ特許發明ニ付原實施權ノ範圍內ニ於テ實施權ヲ
有ス但シ原實施權カ登錄ナキモ實用新案法第十三條第一項ノ效力ヲ有ス
ル場合ハ登錄アルヲ要セス
特許權者ハ前二項ノ規定ニ依ル實施權者ヨリ相當ノ補償金ヲ受クルノ權
利ヲ有ス
第三十九條特許出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ係リ其ノ特許權ト牴觸
スル實用新案權ノ存續期間滿了後ニ於ケル原實用新案權者ハ其ノ特許發
明ニ付原權利ノ範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第四十條特許發明カ軍事上祕密ヲ要シ又ハ軍事上若ハ公益上必要ナル
モノナルトキハ特許權ヲ制限シ若ハ政府ニ於テ收用シ、特許ヲ取消シ又
ハ政府ニ於テ特許發明ヲ實施スルコトヲ得
特許權ノ收用アリタルトキハ其ノ特許發明ニ關スル特許權以外ノ權利ハ
消滅ス
第一項ノ規定ニ依ル制限、收用、取消又ハ實施ノ場合ニ於テハ政府ハ相
當ノ補償金ヲ特許權者又ハ實施權者ニ支給ス
收用、實施及補償金支給ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十一條特許アリタル後ニ於テ引續キ三年以上正當ノ理由ナクシテ其
ノ發明カ帝國內ニ適當ニ實施セラレサル場合ニ於テ公益上必要アルトキ
옵
ハ特許局長〓ハ利害關係人ノ請求ニ依リ其ノ實施權ヲ許與シ若ハ其ノ特
許ヲ取消シ又ハ職權ヲ以テ其ノ特許ヲ取消スコトヲ得
特許權者又ハ請求人ハ前項ノ規定ニ依ル實施權許與若ハ特許取消ノ處分
又ハ前項ノ請求ノ却下ニ對シ不服アルトキハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
음
第一項ノ規定ニ依リ實施權ヲ許與スル場合ニ於テハ特許局長〓ハ補償金
ニ付テモ亦之カ決定ヲ爲スヘシ
第四十二條前條ノ規定ニ依リ實施權ヲ取得シタル者適當ニ其ノ特許發明
官
ヲ實施セサル場合ニ於テハ特許局長○ハ利害關係人ノ請求ニ依リ又ハ職
權ヲ以テ其ノ實施權ヲ取消スコトヲ得
實施權者又ハ請求人ハ前項ノ規定ニ依ル取消ノ處分又ハ前項ノ請求ノ却
下ニ對シ不服アルトキハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第四十三條特許權ノ存續期間ハ出願公告アリタル場合ニ在リテハ其ノ出
願公〓ノ日ヨリ、出願公〓ナカリシ場合ニ在リテハ特許ノ日ヨリ十五年
ヲ以テ終了ス
第十條ノ規定ニ依リ正當權利者ニ特許ヲ與ヘタル場合ニ於テ特許ヲ受ク
ルコト能ハサルニ至リタル特許出願ニ付出願公〓アリタルトキハ前項ノ
十五年ノ期間ハ其ノ出願公〓ノ日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
第十一條ノ規定ニ依リ正當權利者ニ特許ヲ與ヘタルトキハ第一項ノ十五
年ノ期間ハ無效ト爲リタル特許ノ出願公〓ノ日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
追加ノ特許權カ獨立ノ特許權ト爲リタルトキハ其ノ存續期間ハ原特許權
ノ殘期間トス第五十三條第二項ノ規定ニ依ル各別ノ特許權ノ存續期間ニ
付亦同シ
特許權ノ存續期間ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ三年以上十年以下之ヲ延長ス
ルコトヲ得
第四十四條特許權ハ制限ヲ附シ又ハ附セスシテ之ヲ移轉スルコトヲ得
特許權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非
サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
第四十五條特許權ノ移轉、抛棄ニ依ル消滅若ハ處分ノ制限又ハ特許權ヲ
目的トスル質權ノ設定、移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限ハ其ノ登錄ヲ
受クルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四十六條追加ノ特許權ハ原特許權ニ附隨ス
第四十七條特許權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ契約ヲ以テ別段
ノ定ヲ爲ササルトキハ他ノ共有者ノ同意ヲ要セスシテ特許發明ヲ實施ス
ルコトヲ得
第四十八條特計權者ハ特許發明ノ實施ヲ他人ニ許諾スルコトヲ得
特許權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非
サレハ特許發明ノ實施ヲ他人ニ許諾スルコトヲ得ス
第四十九條特許權者ハ他人ノ特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施スルニ非
サレハ自己ノ特許發明ヲ實施スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ他人カ正
當ノ理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ他人ノ實施許諾ヲ得ル
コト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得但シ他人ノ特許發明ノ實施
ヲ要スル場合ニ於テハ其ノ實施セラルヘキ發明ノ特許權發生ノ日ヨリ三
年ヲ經過セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ特許發明ヲ實施セラルル者其ノ實施ヲ必要トスル相手
方ノ特許發明ニ付實施ノ許諾ヲ求メタル場合ニ於テ其ノ相手方カ正當ノ
こゝそこは
理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ相手方ノ實施許諾ヲ得ルコ
ト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトシ得
第五十條第四十一條又ハ前條ノ規定ニ依ル實施權者ハ特許權者又ハ實
用新案權者ニ對シ相當ノ補償金ヲ支拂フヘシ
前項ノ實施權者ハ補償金ノ支拂ヲ爲シ又ハ支拂ヲ爲スコト能ハサル場合
ニ於テハ供託ヲ爲スニ非サレハ其ノ特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施ス
ルコトヲ得ス但シ第四十一條ノ決定、審決又ハ判決ノ確定前ト雖決定、
審決又ハ判決ニ依ル補償金ニ相當スル金額ヲ供託シタルトキハ實施スル
コトヲ得
第五十一條第四十九條ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ特許權ニ附隨ス
特許發明ノ實施權ニシテ前項ノ實施權ニ非サルモノハ其ノ實施ノ事業ト
共ニスル場合又ハ特許權者ノ承諾アル場合ニ於テハ之ヲ移轉スルコトヲ
得
第五十二條特許發明ノ實施權ハ之ヲ登錄シタルトキハ其ノ特許權ヲ爾後
取得シタル者及其ノ特許權ヲ目的トスル爾後設定ノ質權ヲ有スル者ニ對
シテモ其ノ效力ヲ生ス
第十四條第二項又ハ第三十七條乃至第三十九條ノ規定ニ依ル實施權ハ其
ノ登錄ナキ場合ト雖前項ノ效力ヲ有ス
第四十九條ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ登錄前設定ノ質權ヲ有スル者ニ對
シテモ其ノ效力ヲ生ス
第四十五條ノ規定ハ實施權ノ移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限又ハ實施
權ヲ目的トスル質權ノ設定、移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限ニ付之ヲ
準用ス
第五十三條特許權者ハ特許發明ノ明細書又ハ圖面カ不完全ニ作製セラレ
タルコトヲ發見シタルトキハ左ノ各號ノ一ニ揭クル事項ヲ目的トスル場
合ニ限リ其ノ明細書又ハ圖面ノ訂正ノ許可ノ審判ヲ請求スルコトヲ得
一特許請求範圍ノ減縮
二誤記ノ訂正
三不明瞭ナル記載ノ釋明
特許權者ハ錯誤ニ因リ二以上ノ發明ヲ一特許出願ニ包含セシメタルコト
ヲ疏明シタル場合ニ限リ各發明每ニ各別ノ特許權ト爲スノ許可ノ審判ヲ
請求スルコトヲ得
第一項第一號ノ場合ニ於テハ其ノ殘部、前項ノ場合ニ於テハ其ノ各發明
カ特許出願ノ際獨立シテ新規ノ發明ナルコトヲ要ス
第五十四條前條ノ場合ニ於テハ特許請求範圍ヲ實質上擴張シ又ハ實質上
變更スルコトヲ得ス
第五十五條特許權者ハ制限附移轉ノ特許權ヲ有スル者、質權者又ハ第十
四條第二項若ハ第四十八條ノ規定ニ依ル實施權者ノ承諾ヲ得ルニ非サレ
ハ特許權ヲ抛棄シ又ハ第五十三條ノ規定ニ依ル許可ノ審判ノ請求ヲ爲ス
コトヲ得ス
第五十六條先取特權又ハ質權ハ本法ニ依リ受クヘキ補償金其ノ他特許權
ノ對價又ハ特許發明ノ實施ニ對シテ受クヘキ金錢若ハ金錢以外ノ物ニ對
シテモ之ヲ行フコトヲ得但シ其ノ拂渡又ハ引渡前ニ差押ヲ爲スヘシ
第五十七條特許カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト
爲スヘシ
-特許カ第一條乃至第三條、第八條又ハ第三十二條ノ規定ニ違反シテ
與ヘラレタルトキ
二特許カ特許ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者又ハ特許ヲ受クルノ
權利ヲ冒認シタル者ニ對シテ與ヘラレタルトキ
三特許發明ノ明細書又ハ圖面ニ其ノ實施ニ必要ナル事項ヲ故意ニ記載
セス又ハ其ノ實施ヲ不能若ハ困難ナラシムル爲必要ナラサル事項ヲ
故意ニ記載シタルトキ
四特許カ第三十三條ニ規定スル條約又ハ之ニ準スヘキモノニ違反シテ
與ヘラレタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一號乃至前號ニ揭クルモノニ
準スヘキモノナルトキ
五特許カ第三十二條ノ規定ニ違反スルニ至リタルトキ又ハ特許カ第三
十三條ニ規定スル條約若ハ之ニ準スヘキモノニ違反スルニ至リタル
場合ニ於テ其ノ違反カ第一號乃至第三號ニ揭クルモノニ準スヘキモ
ノナルトキ
第五十三條ノ許可カ同條第三項又ハ第五十四條ノ規定ニ違反シタルトキ
ハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
特許又ハ第五十三條ノ許可ハ特許權消滅後ト雖前二項ノ規定ニ依リ之ヲ
無效ト爲スヘシ
第五十八條特許カ無效ト爲リタルトキハ特許權ハ初ヨリ存在セサリシモ
ノト看做ス但シ前條第一項第五號ノ規定ニ依リ特許カ無效ト爲リタルト
キハ特許權ハ特許カ同號ニ該當スルニ至リタル時ヨリ存在セサリシモノ
ト看做ス
第五十三條ノ許可カ無效ト爲リタルトキハ初ヨリ許可ナカリシモノト看
做ス
特許ノ取消又ハ第四十二條ノ規定ニ依ル實施權ノ取消アリタルトキハ特
許權又ハ實施權ハ爾後其ノ效力ナキモノトス
第五十九條特許權ハ相續人ナキトキハ消滅ス
第六十條特許カ取消サレ若ハ無效ト爲リ又ハ特許權カ消滅シタル場合
ニ於テ追加ノ特許權アルトキハ其ノ追加ノ特許權ハ獨立ノ特許權ト爲ル
第六十九條第二項ノ規定ニ依リ特許權カ消滅シタルトキハ同條第一項ニ
規定スル追納期間ノ滿了ノ時獨立ノ特許權ト爲ル
前項ノ場合ニ於テ獨立ノ特許權ト爲リタルモノニ係ル追加ノ特許權アル
トキハ其ノ追加ノ特許權ハ獨立ト爲リタル特許權ノ追加ノ特許權ト爲ル」
前二項ノ場合ニ於テハ其ノ日ヨリ六十日以內ニ變更ノ登錄ヲ申請スルニ
非サレハ第一項ノ特許權又ハ前項ノ追加ノ特許權ハ消滅ス
第三章登錄、特許證、公報及明細書、特許標記竝特許料
第六十一條特許局ニ特許原簿ヲ備ヘ特許權及實施權竝之ヲ目的トスル質
權ノ設定、保存、移轉、變更、消滅、處分ノ制限其ノ他法令ニ定ムル事
項ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二條特許スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判決アリタルトキハ
之ヲ特許原簿ニ登錄シ特許證ヲ下付ス第五十三條ノ許可ノ審決確定シ又
ハ判決アリタルトキ亦同シ
第六十三條特許局ハ特許公報及特許發明明細書ヲ發行シ本法ニ規定スル
事項其ノ他特許發明ニ關スル必要ナル事項ヲ之ニ記載スヘシ但シ軍事上
祕密ヲ要スル特許發明ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第六十四條特許標記ハ特許ニ係ル物ニ之ヲ附スヘシ物ノ性質ニ依リ其ノ
物ニ附スルコト能ハサルトキハ其ノ物ノ容器包裝ノ類ニ之ヲ附スヘシ
特許權者ハ實施權者又ハ第三十六條第一號ノ實施ヲ爲ス者ニ對シ特許標
記ヲ附スヘキコトヲ請求スルコトヲ得
特許標記ヲ附セサリシ爲特許ニ係ル物ナルコトヲ知ラスシテ特許權ヲ侵
害シタル者ニ對シテハ損害賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得ス
前三項ノ規定ハ特許ニ係ル物ノ要部ヲ分離シテ販賣又ハ擴布スル場合ニ
之ヲ準用ス
第六十五條特許權ノ登錄ヲ受クル者又ハ特許證主ハ特許料トシテ第四十
三條第一項ニ規定スル十五年ノ各年ニ付每件左ノ金額ヲ納付スヘシ
一第一年乃至第三年每年十圓
二第四年及第五年每年十五圓
三第六年乃至第九年毎年二十五圓
四第十年乃至第十二年每年三十五圓
五第十三年乃至第十五年每年五十圓
特許權存續期間延長ノ登錄ヲ受クル者又ハ其ノ特許證主ハ特許料トシテ
每件左ノ金額ヲ納付スヘシ
-第一年乃至第三年每年百圓
二第四年乃至第六年每年百五十圓
三第七年乃至第十年每年二百圓
追加ノ特許權ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時特許料トシテ每件
一時ニ三十圓ヲ納付スヘシ
特許權存續期間延長ノ場合ニ於テ追加ノ特許權アルトキハ其ノ登錄ヲ受
クル時特許料トシテ每件一時ニ六十圓ヲ納付スヘシ
第五十三條第二項ノ規定ニ依ル各別ノ特許權ノ登錄ヲ受クル者又ハ特許
證主ハ各別ノ特許權ニ付原特許權ノ當該年分ヨリノ特許料ヲ納付スヘシ
但シ既納ノ特許料ノ金額ハ納付スヘキ特許料ノ金額中ニ之ヲ充當ス
追加ノ特許權カ獨立ノ特許權ト爲リタル場合又ハ第十一條ノ規定ニ依リ
正當權利者ニ特許ヲ與ヘタル場合ニ於テハ特許權ノ登錄ヲ受クル者又ハ
特許證主ハ原特許權ノ當該年分ヨリノ特許料ヲ納付スヘシ
第六項ノ規定ハ國ニ屬スル特許權ニ付之ヲ適用セス
第六十六條前條第一項ノ規定ニ依ル第一年乃至第三年ノ特許料ハ一時ニ
之ヲ前納シ其ノ第四年以後ノ特許料及前條第二項ノ規定ニ依ル特許料ハ
前年ニ之ヲ納付スヘシ但シ數年分ヲ前納スルコトヲ妨ケス
옵
特許局長○ハ前條第一項ノ規定ニ依ル第一年乃至第三年ノ特許料又ハ前
條第三項ノ規定ニ依ル特許料ヲ納付スヘキ者カ其ノ特許發明ノ發明者又
ハ其ノ相續人ナル場合ニ於テ之ヲ納付スルノ資力ナシト認ムルトキハ二
年以內之カ納付ヲ猶豫シ又ハ之ヲ減免スルコトヲ得
第六十七條利害關係人ハ特許料ヲ納付スヘキ者ニ代リ納付スルコトヲ得
第六十八條既納ノ特許料ハ之ヲ還付セス
第六十九條特許證主ハ特許料ヲ納付スヘキ期限ヲ經過シタル後ト雖六月
間ヲ限リ特許料ヲ追納スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十五條ニ規定
スル特許料ノ二倍ニ相當スル金額ヲ特許料トシテ納付スヘシ
前項ニ規定スル追納期間內ニ特許料ヲ追納セサルトキハ特許料ヲ納付ス
ヘキ期限經過ノ時ニ遡リ特許權ハ消滅シタルモノト看做ス
第四章審査
第七十條特許ノ出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ審査セシム
第七十一條第九十一條ノ規定ハ審査官ノ審査ノ干與ヨリノ除斥ニ付之ヲ
準用ス
第七十二條審査官ハ出願ヲ拒絕スヘキモノト認メタルトキハ出願人ニ對
シ拒絕ノ理由ヲ示シ期間ヲ指定シテ之ニ意見書提出ノ機會ヲ與フヘシ
第七十三條審査官ハ出願拒絕ノ理由ヲ發見セサルトキハ出願公〓ヲ爲ス
ヘキモノト決定スヘシ
前項ノ規定ニ依ル決定アリタルトキハ特許局ハ出願年月日、發明者ノ氏
名、出願人ノ氏名名稱及住所竝出願ノ要旨ヲ特許公報ニ揭載シテ出願公
告ヲ爲スヘシ
出願公〓アリタルトキハ其ノ出願ニ係ル發明ニ付出願公〓ノ時ヨリ特許
權ノ效力ヲ生シタルモノト看做ス
特許局ハ出願公〓ト同時ニ出願書類及其ノ附屬物件ヲ特許局ニ於テ竝命
令ノ定ムル所ニ依リ出願書類及其ノ附屬物件ヲ其ノ他ノ場所ニ於テ公衆
ノ閱覽ニ供スヘシ
特許局ハ出願人ノ請求ニ依リ出願公〓ノ決定アリタル日ヨリ六月以內出
願公〓ヲ猶豫スルコトヲ得
軍事上祕密ヲ要スル發明ノ出願ニ付テハ出願公〓ノ決定ヲ爲サスシテ査
定ヲ爲スヘシ
第七十四條出願公〓アリタルトキハ何人ト雖出願公〓ノ日ヨリ二月以内
ニ特許局ニ特許異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
特許異議ノ申立ハ特許異議申立書ヲ提出シテ之ヲ爲シ理由ヲ之ニ記載ス
ヘシ
利害關係人ハ特許異議ノ決定アル迄其ノ特許異議ニ參加スルコトヲ得
特許異議ノ參加ニ關シテハ審判ノ參加ニ關スル規定ヲ準用ス
第七十五條特許異議ノ申立アリタルトキハ審査官ハ特許異議申立書ノ副
本ヲ出願人ニ送達シ期間ヲ指定シテ之ニ答辯書提出ノ機會ヲ與フヘシ
審査官ハ前條第一項ニ規定スル特許異議申立期間及前項ノ期間ノ經過後
特許異議ノ決定ヲ爲シ同時ニ其ノ出願ニ對シ特許スヘキヤ否ヲ査定スヘ
シ
特許異議ノ決定ニハ理由ヲ附スヘシ
特許異議ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
審査官ハ特許異議申立ノ結果必要アルトキハ特許發明ノ明細書又ハ圖面
ノ訂正ヲ命スルコトヲ得
第七十六條特許異議ニ關シ爲シタル證據調ノ費用ニ付テハ審判ニ關スル
費用ノ規定ヲ準用ス
第七十七條特許異議ノ申立ナキトキハ審査官ハ査定ヲ爲スヘシ
第七十八條出願公〓後出願ノ抛棄、取下若ハ無效處分アリタルトキ、拒
絕ノ査定若ハ審決確定シ若ハ判決アリタルトキ又ハ第五十八條第一項但
書ノ場合ヲ除クノ外特許カ無效ト爲リタルトキハ第七十三條第三項ノ規
定ニ依ル效力ハ初ヨリ生セサリシモノト看做ス
第七十九條第十條又ハ第十一條ニ規定スル正當權利者ノ出願アリタルト
キハ審査官ハ既ニ出願公告ヲ爲シタルモノニ付テハ更ニ出願公〓ヲ爲ス
コトナク査定ヲ爲スヘシ
第八十條第百條及第百十八條第一項ノ規定ハ審査ニ付之ヲ準用ス
第八十一條査定ニハ理由ヲ附スヘシ
第八十二條本法ニ規定スルモノノ外審査ニ關スル書類ニシテ送達スヘキ
モノ及送達ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十三條民事又ハ刑事ノ訴訟ニ於テ必要アルトキハ裁判所ハ特許又ハ
拒絕査定確定アル迄其ノ訴訟手續ヲ中止スルコトヲ得
第五章審判、抗告審判及出訴
第八十四條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ規定スルモノノ外
左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
-第五十七條ノ規定ニ依ル特許又ハ許可ノ無效
二特許權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ無效ノ審判ハ利害關係人及審査官ニ限リ之ヲ請求スルコト
ヲ得但シ審査官ハ第八條ノ規定ニ違反シ又ハ第五十七條第一項第二號ニ
該當ストノ理由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第一項第二號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
第八十五條前條第一項第一號ノ無效ノ審判ハ特許又ハ第五十三條ノ許可
ノ登錄ノ日ヨリ五年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
前項ニ規定スル期間ハ第五十七條第一項第五號ニ該當ストノ理由ニ依ル
無效ノ審判ノ請求ニ付テハ同號ニ該當スルニ至リタル日ノ翌日ヨリ之ヲ
起算ス
第八十六條審判ノ請求ハ審判請求書ヲ提出シテ之ヲ爲スヘシ
審判請求書ニハ一定ノ申立及理由ヲ記載スヘシ
第八十七條審判ノ請求カ判然許スヘカラサルモノ、法令ニ定メタル方式
ニ適セサルモノ又ハ期間ヲ經過シタルモノナルトキハ審判長ハ直ニ決定
ヲ以テ之ヲ却下ス
前項ノ決定ニハ理由ヲ附スヘシ
第一項ノ決定ニ不服アル者ハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
前項ノ卽時抗〓ニ付テハ民事訴訟法中卽時抗〓ニ關スル規定ヲ準用ス
第八十八條審判長ハ審判請求書ヲ受理シタルトキハ其ノ副本ヲ被請求人
ニ送達シ期間ヲ指定シテ之ニ答辯書提出ノ機會ヲ與ヘ其ノ答辯書ヲ受理
シタルトキハ其ノ副本ヲ相手方ニ送達スヘシ
審判ニ關シテハ當事者ノ提出シタル書類ニ對シ相手方ヲシテ答辯書ヲ提
出セシメ又ハ當事者ニ訊問書ヲ發シテ之ニ對スル意見書ヲ提出セシムル
コトヲ得
第八十九條審判ハ審判官三人ノ合議ニ依リ之ヲ行フ
合議ハ過半數ニ依リ之ヲ決ス
審判長ハ審判官中ノ上席者ヲ以テ之ニ充ツ
審判長ハ其ノ審判事件ニ關スル事務ヲ掌理ス
옵
第九十條審判官ハ各審判事件ニ付特許局長〓之ヲ指定ス
審判官中審判ニ干與スルニ故障アル者アルトキハ其ノ指定ヲ解キ更ニ他
ノ審判官ヲ以テ之ヲ補充ス
第九十一條審判官ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ審判ノ干與ヨ
リ除斥セラル
-其ノ事件ニ付當事者、參加人又ハ特許異議申立人ナルトキ
二前號ニ揭クル者又ハ其ノ配偶者ノ親族ナルトキ
三第一號ニ揭クル者ノ法定代理人、後見監督人又ハ保佐人ナルトキ
四其ノ事件ニ付第一號ニ揭クル者ノ代理人ト爲リタルトキ
五其ノ事件ニ付證人又ハ鑑定人ト爲リタルトキ
六其ノ事件ニ付審査官又ハ審判官トシテ査定又ハ審決ニ干與シタルト
キ
七其ノ事件ニ付直接ノ利害關係ヲ有スルトキ
第九十二條審判官カ前條ノ規定ニ依リ審判ノ干與ヨリ除斥セラルルトキ
又ハ偏頗ノ審判ヲ爲スノ虞アルトキハ當事者又ハ參加人ヨリ之ヲ忌避ス
ルコトヲ得
第九十三條第九十一條ノ規定ニ依リ審判ノ干與ヨリ除斥セラルヘシトシ
テ爲ス審判官ノ忌避ノ申請ハ審判ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス之ヲ爲
スコトヲ得
偏頗ノ審判ヲ爲スノ虞アリトシテ爲ス審判官ノ忌避ノ申請ハ當事者又ハ
參加人カ其ノ覺知シタル忌避ノ原因ヲ主張セスシテ申立ヲ爲シ又ハ相手
方ノ申立ニ對シ陳述ヲ爲シタル後ハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第九十四條忌避ノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
忌避ノ原因ハ之ヲ疏明スヘシ忌避ヲ申請セラレタル審判官ノ職務上ノ陳
述ハ之ヲ其ノ疏明ノ用ニ充ツルコトヲ得
當事者又ハ參加人カ申立又ハ陳述ヲ爲シタル後偏頗ノ審判ヲ爲スノ虞ア
リトシテ爲ス審判官ノ忌避ノ申請ニハ其ノ申立又ハ陳述ノ後ニ忌避ノ原
因發生シ又ハ忌避ノ原因ヲ覺知シタルコトヲ疏明スヘシ
第九十五條忌避ノ申請アリタルトキハ忌避ヲ申請セラレタル審判官以外
○官
ノ審判官ニシテ特許局長○ノ指定シタルモノノ審判ニ依リ其ノ許否ヲ決
定ス
前項ノ規定ニ依ル決定ニハ理由ヲ附スヘシ
第一項ノ規定ニ依ル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第九十六條忌避ヲ申請セラレタル審判官ハ忌避申請ノ許否ノ決定アル迄
其ノ審判事件ニ關シ總テノ行爲ヲ爲スコトヲ得ス但シ偏頗ノ審判ヲ爲ス
ノ虞アリトシテ爲サレタル忌避ノ申請ノ場合ニ於テ猶豫スヘカラサル行
爲ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第九十七條第八十四條第一項第一號ノ無效ノ審判ハ口頭審理ニ依ル但シ
審判長ハ申立ニ依リ又ハ職權ヲ以テ書面審理ニ依ルモノト爲スコトヲ得
前項ノ審判以外ノ審判ハ書面審理ニ依ル但シ審判長ハ申立ニ依リ又ハ職
權ヲ以テ口頭審理ニ依ルモノト爲スコトヲ得
口頭審理ハ之ヲ公開ス但シ公益又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ此ノ限
ニ在ラス
第九十八條利害關係人ハ審理ノ終結ニ至ル迄其ノ審判ニ參加スルコトヲ
得
第九十九條參加ノ申請ハ參加申請書ヲ提出シテ之ヲ爲スヘシ
審判長ハ參加申請書ヲ受理シタルトキハ之ヲ當事者及參加人ニ送達シ期
間ヲ指定シテ之ニ異議申立ノ機會ヲ與フヘシ
參加ノ申請アリタルトキハ審判ニ依リ其ノ許否ヲ決定ス
第九十五條第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル決定ニ付之ヲ準用
ス
第百條審判ニ於テハ申立ニ依リ又ハ職權ヲ以テ證據調ヲ爲スコトヲ得」
前項ノ證據調ハ所要ノ事務ヲ取扱フヘキ地ノ區裁判所其ノ他區裁判所ノ
事務ヲ行フ官廳ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
民事訴訟法中證據調ニ關スル規定ハ前二項ノ規定ニ依ル證據調ニ付之ヲ
準用ス但シ特許局ニ於テ爲ス證據調ニ關シテハ罰金ノ言渡ヲ爲シ又ハ勾
引ヲ命スルコトヲ得ス
第百一條當事者又ハ參加人カ法定若ハ指定ノ期間內ニ手續ヲ爲サス又期
日ニ出頭セサルトキト雖審判長ハ審判ヲ進行スルコトヲ得
第百二條審判ノ請求ハ其ノ審理ノ終結ニ至ル迄之ヲ取下クルコトヲ得但
シ答辯書ノ提出アリタル後ニ於テハ相手方ノ承諾ヲ要ス
第百三條審判ニ於テハ當事者又ハ參加人ノ申立テサル理由又ハ取下ケタ
ル理由ニ付テモ之ヲ審理スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ理由ニ付當
事者又ハ參加人ニ期間ヲ指定シテ意見申立ノ機會ヲ與フヘシ
審判官
第百四條時降局ハ當事者ノ變方又ハ一方ノ同一ナル二以上ノ審判ニ付其
ノ審理又ハ審決ノ併合ヲ爲スコトヲ得
審判官
特〓局ハ前項ノ規定(依リ審理ノ併合ヲ爲シタル場合ニ於テ亞へ審
ハ審決ノ分離ヲ爲スコトヲ得
第百五條審判ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外審決ヲ以テ之ヲ終了ス
前項ノ審決ニハ理由ヲ附スヘシ
事件カ審決ヲ爲スニ熟シタルトキハ審判長ハ審理ノ終結ヲ當事者及參加
人ニ通知スヘシ
審判長ハ必要アルトキハ前項ノ規定ニ依リ審理ノ終結ヲ通知シタル後ト
雖申立ニ依リ又ハ職權ヲ以テ審理ノ再開ヲ爲スコトヲ得
審決ハ審理ノ終結ノ通知ヲ發シタル日ヨリ二十日以內ニ之ヲ爲スヘシ
第百六條第四十九條ノ審判ニ於テハ補償金額ニ付テモ亦之ヲ審決スヘシ
第百七條第八十二條ノ規定ハ審判ニ付之ヲ準用ス
第百八條第七十二條、第七十三條第一項第二項第四項第六項及第七十四
條乃至第七十七條ノ規定ハ第五十三條ノ審判ニ付之ヲ準用ス
第九十八條、第九十九條及第百四條ノ規定ハ前項ノ審判ニ付之ヲ適用セ
ス
第百九條査定又ハ審判ノ審決ヲ受ケタル者不服アルトキハ其ノ査定又ハ
三
審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ抗〓審判ヲ請求スルコトヲ得
但シ第百六條ノ規定ニ依ル補償金額ノ審決ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第百十條第八十六條乃至第百八條ノ規定ハ抗告審判ニ付之ヲ準用ス但シ
審判官ノ合議ハ三人又ハ五人ヲ以テ之ヲ爲シ第九十二條乃至第九十四條
及第百一條ニ於テ當事者又ハ參加人トアルハ當事者、參加人又ハ特許異
議申立人トス
第百十一條抗告審判ニ於テハ審判請求ノ理由ヲ變更シ又ハ新ナル事實若
ハ證據方法ヲ提出スルコトヲ得
第百十二條抗告審判ニ於テハ其ノ事件ニ付審決ヲ爲スヘシ
第百十三條第七十二條ノ規定ハ拒絕ノ査定ニ對スル抗告判ニ於テ其ノ
査定ノ理由ト異ル拒絕ノ理由ヲ發見シタル場合ニ之ヲ準用ス
第七十三條乃至第七十九條ノ規定ハ拒絕ノ査定ニ對スル抗〓審判ノ請求
ヲ理由アリトスル場合ニ之ヲ準用ス但シ特許スヘキ出願ニシテ出願公〓
アリタルモノニ付テハ更ニ出願公〓ヲ爲スコトナク審決ヲ爲スヘシ
前二項ノ規定ハ第五十三條ノ許可ヲ與ヘサル審決ニ對スル抗告審判ニ付之ヲ準用ス
第百十四條拒絕ノ査定ニ對スル抗〓審判ニ於テハ前二條ノ規定ニ依ラス
其ノ査定ヲ破毀シ更ニ審査ニ付スヘシトノ審決ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル審決アリタル場合ニ於テハ其ノ破毀ノ基本ト爲シタル
理由ハ其ノ事件ニ付テハ審査官ヲ覊束ス
第百十五條抗告審判ノ審決ヲ受ケタル者不服アルトキハ其ノ審決カ法令
ニ違反シタルコトヲ理由トスル場合ニ限リ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ
三
六十日以內ニ大審院ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル出訴及其ノ裁判ニ付テハ民事訴訟ノ上〓及其ノ裁判ニ
關スル規定ヲ準用ス
大審院ノ判決ニ於テ審決破毀ノ基本ト爲シタル理由ハ其ノ事件ニ付テハ
特許局ヲ覊束ス
第百十六條第十五條、第四十條又ハ第五十條ニ規定スル補償金額ノ通知
又ハ決定若ハ審決ヲ受ケタル者補償金額ニ付不服アルトキハ其ノ通知又
三
ハ決定若ハ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ通常裁判所ニ出訴
スルコトヲ得
第百十七條特許若ハ第五十三條ノ許可ノ效力又ハ特許權ノ範圍ニ關スル
確定審決又ハ判決ノ登錄アリタルトキハ何人ト雖同一事實及同一證據ニ
基キ同一審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第百十八條審判又ハ抗告審判ニ於テ必要アルトキハ民事又ハ刑事ノ訴訟
手續ノ完結ニ至ル迄其ノ手續ヲ中止スルコトヲ得
民事又ハ刑事ノ訴訟ニ於テ必要アルトキハ裁判所ハ特許ニ關シ審決ノ確
定又ハ判決アル迄其ノ訴訟手續ヲ中止スルコトヲ得
第百十九條審判、抗告審判及出訴ニ關スル費用ノ負擔ハ別段ノ規定アル
場合ヲ除クノ外其ノ事件ノ審決ヲ以テ之ヲ定ム
〓
審判、抗告審判及出訴ニ關スル費用ノ額ハ請求ニ依リ特許局長〓之ヲ決定
ス
費用ノ負擔及額ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百二十條審判、抗告審判及出訴ニ關スル費用ノ額ノ決定竝本法ニ規
定スル補償金額ノ確定ノ決定及審決ハ强制執行ニ關シテハ民事訴訟法第
五百五十九條第一號ノ規定ニ依ル債務名義ト看做ス但シ其ノ執行力アル
正本ハ特許局官吏之ヲ付與ス
第六章再審
第百二十一條左ニ揭クル審判若ハ抗〓審判又ハ出訴ニ付爲シタル確定審
決又ハ判決ヲ以テ終結シタル事件ハ取消ノ請求又ハ原狀囘復ノ請求ニ依
リ之ヲ再審スルコトヲ得
-特許若ハ第五十三條ノ許可ノ效力、特許權ノ範圍又ハ實施權ノ取得
ニ關スル審判
二前號ノ審判ノ審決ニ對スル抗〓審判
三前號ノ抗〓審判ノ審決ニ對スル出訴
民事訴訟法第四百六十八條ノ規定ハ取消ノ請求ニ付、同法第四百六十九
條及第四百七十條ノ規定ハ原狀囘復ノ請求ニ付之ヲ準用ス三
第百二十二條再審ハ當事者カ不服ノ理由ヲ知リタル日ヨリ六十日以內ニ
限リ之ヲ請求スルコトヲ得
審決ノ確定又ハ判決ノ前ニ當事者カ不服ノ理由ヲ知リタルトキハ前項ニ
規定スル期間ハ審決確定シ又ハ判決アリタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
審判、抗〓審判又ハ出訴ノ手續ニ於テ當事者カ法律ノ規定ニ從ヒ代理セ
ラレサリシコトヲ理由トシテ再審ヲ請求スル場合ニ於テハ第一項ニ規定
スル期間ハ當事者又ハ其ノ法律上代理人カ送達ニ依リ審決又ハ判決アリ
タルコトヲ知リタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
審決確定シ又ハ判決アリタル日ヨリ三年ヲ經過シタルトキハ再審ヲ請求
スルコトヲ得ス
第百二十三條審判、抗告審判又ハ出訴ニ於テ爲ス再審ノ請求及其ノ後ノ
手續ニ付テハ本章ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外各其ノ審級ノ手續ニ
關スル規定ヲ準用ス
第百二十四條民事訴訟法第四百六十七條第二項、第四百七十一條、第四
百七十二條第一項第二項及第四百七十五條乃至第四百八十二條ノ規定ハ
審判、抗告審判又ハ出訴ニ於テ爲ス再審ニ關シ之ヲ準用ス
第百二十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テ特許權ノ效力ハ審決確
定シ又ハ判決アリタル後ニシテ再審請求ノ登錄前善意ニ輸入若ハ移入シ
又ハ帝國內ニ於テ製作若ハ取得シタル物ニ及ハス
-無效ト爲リタル特許權カ再審ニ依リ囘復シタルトキ
二特許權ノ範圍ニ屬セストノ審決確定シ又ハ判決アリタルモノニ付再
審ニ依リ之ニ反スル審決確定シ又ハ判決アリタルトキ
第百二十六條前條各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テ審決確定シ又ハ判決ア
リタル後ニシテ再審請求ノ登錄前善意ニ帝國內ニ於テ其ノ發明實施ノ事
業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ特許發明ニ付事業ノ目的タル發
明範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第五十二條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百二十七條實施權ノ取得ノ審決確定シ又ハ判決アリタル後再審ニ依リ
之ニ反スル審決確定シ又ハ判決アリタル場合ニ於テ再審請求ノ登錄前善
意ニシテ帝國內ニ於テ其ノ發明實施ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル
者ハ其ノ特許發明ニ付原實施權ノ範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第三十八條第三項及第五十二條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百二十八條第三者カ請求人及被請求人ノ共謀ニ依リ其ノ第三者ノ權利
又ハ利益ヲ詐害スル目的ヲ以テ審決又ハ判決ヲ爲サシメタルコトヲ理由
トスル不服ノ申立ニ付テハ原狀囘復ノ請求ニ依ル再審ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ請求人及被請求人ヲ以テ共同被請求人トス
第七章罰則
第百二十九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以
下ノ罰金ニ處ス
一特許權ヲ侵害シタル者
二特許權ヲ侵害スヘキ物ヲ輸入又ハ移入シタル者
三特許アリタル場合ニ於テ第七十三條第三項ニ規定スル權利ヲ特許前
ニ侵害シタル者
四特許アリタル場合ニ於テ第七十三條第三項ニ規定スル權利ヲ侵害ス
ヘキ物ヲ特許前ニ輸入又ハ移入シタル者
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第百三十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以
下ノ罰金ニ處ス
ー詐僞ノ行爲ヲ以テ特許ヲ受ケ又ハ審決若ハ判決ヲ受ケタル者
二特許ニ係ラサル物又ハ其ノ物ノ容器包裝ノ類ニ特許標記ヲ附シ又ハ
特許標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
三特許ニ係ラサル物ニシテ其ノ物又ハ其ノ物ノ容器包裝ノ類ニ特許標
記ヲ附シ又ハ特許標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタルモノヲ販賣又ハ擴
布シタル者
四特許ニ係ラサル物又ハ特許ニ係ラサル方法ニ依リ製作シタル物ヲ製
作若ハ使用セシムル爲又ハ販賣若ハ擴布スル爲廣告、看板、引札ノ
類ニ其ノ物若ハ方法カ特許ニ係ルコトヲ表示シ又ハ之ニ紛ハシキ表
示ヲ爲シタル者
五特許ニ係ラサル方法ヲ使用セシムル爲又ハ販賣若ハ擴布スル爲廣
〓、看板、引札ノ類ニ其ノ方法カ特許ニ係ルコトヲ表示シ又ハ之ニ
紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
第百三十一條第百二十九條第一項ニ揭クル行爲ヲ組成シタル物又ハ其ノ
行爲ヨリ生シタル物ニシテ刑法第十九條ノ規定ニ依リ沒收スルコトヲ得
ヘキモノニ付判決言渡前被害者ノ請求アリタルトキハ其ノ物ヲ沒收シ之
ヲ被害者ニ交付スルノ言渡ヲ爲スヘシ
被害者ハ前項ノ規定ニ依ル物ノ交付ヲ受ケタル場合ニ於テハ其ノ物ノ價
額ヲ超過スル損害ノ額ニ限リ賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第百三十二條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事特許局又ハ
其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ
三月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第百三十三條特許局職員又ハ其ノ職ニ在リタル者故ナク其ノ職務上知得
タル特許出願中ノ發明又ハ特許出願者ノ事業上ノ祕密ヲ漏泄シ又ハ竊用
シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百三十四條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正
當ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以
下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ
準用ス
第百三十五條辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ特許ニ關シ爲スヘキ事項ノ
代理業ヲ營ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第百三十六條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百三十七條舊法ニ依ル特許、特許權ノ改訂又ハ分割ノ許可、處分及手
續ハ本附則ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本法ニ依リ爲シタルモノト
看做ス
舊法ニ依リ特許ニ關シ爲シタル出願、請求其ノ他ノ手續ニ付亦前項ニ同
第百三十八條本法施行ノ際現ニ繫屬スル特許又ハ特許權ノ改訂若ハ分割
ノ許可ノ出願ノ處理ニ付テハ仍舊法ニ依ル但シ其ノ出願ニ係ル發明カ本
法ニ依ル特許出願ニ係ル發明ニ牴觸スルトキハ其ノ發明者ハ之ヲ先ニ發
明ヲ爲シタル者ト看做ス
本法施行前送達ヲ受ケタル審決ニ對スル不服申立ノ期間ニ付テハ仍舊法ニ依ル補償金額ニ對ス
ル不服申立ノ期間ニ付亦同シ
第百三十九條特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者カ試驗ノ爲其ノ者ノ發明ヲ
本法施行前第四條各號ノ一ニ該當スルニ至ラシメタル場合ニ於テ其ノ日
ヨリ二年以內ニシテ本法施行ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ者カ特許ヲ出願シ
タルトキハ其ノ者ノ發明ハ之ヲ新規ナルモノト看做ス
特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者ノ意ニ反シテ其ノ者ノ發明カ本法施行前
第四條各號ノ一ニ該當スルニ至リタル場合ニ於テハ第五條第二項ノ規定
ヲ適用セス
第百四十條舊法ニ依ル使用權ハ第四十八條又ハ第四十九條ノ規定ニ依
ル實施權ト看做ス
第百四十一條本法施行前發生シタル特許權ニ關シテハ舊法第二十九條第
二號ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ第三十七條ノ規定ハ之ヲ適用セス
第百四十二條特許カ舊法施行中無效ト爲リタル場合ニ付テハ舊法第三十
五條乃至第三十七條ノ規定及同法第三十六條ノ規定ニ依リ準用スル同法
第三十三條ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ第三十八條ノ規定ハ之ヲ適用セス」
特許カ售法施行前無效ト爲リタル場合ニ付テハ第三十八條ノ規定ヲ適用
セス
第百四十三條舊法施行前發生シタル實施權ニ關シテハ第五十一條第二項
ノ規定ヲ適用セス仍從前ノ例ニ依ル
第百四十四條舊法ニ依ル特許權ノ存續期間ニ付テハ仍舊法ニ依ル
本法施行前既ニ納メタル又ハ納付スヘキ期限ヲ經過シタル特許料及追加
特許料ニ付亦前項ニ同シ
第百四十五條特許料又ハ追加特許料ノ納付ヲ怠リタル場合ニ於テ本法施
行ノ際未タ其ノ特許又ハ追加特許ノ取消ナキモノニ付テハ本法施行ノ日
ヨリ六月間ヲ限リ特許料又ハ追加特許料ヲ追納スルコトヲ得此ノ場合ニ
於テハ舊法ニ依ル特許料又ハ追加特許料ノ二倍ニ相當スル金額ヲ特許料
又ハ追加特許料トシテ納付スヘシ
前項ニ規定スル追納期間內ニ特許料又ハ追加特許料ヲ追納セサルトキハ
本法施行ノ時ニ遡リ特許權又ハ追加特許權ハ消滅シタルモノト看做ス
第百四十六條舊法ニ依ル特許又ハ特許權ノ改訂若ハ分割ノ許可ニ關シテ
ハ本法施行後ニ特許又ハ許可アリタル場合ト雖舊法第四十九條ノ規定ハ
仍其ノ效力ヲ有シ同條ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ於テ同條ニ揭クル舊法ノ
規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ特許又ハ許可カ同條第一項各號ノ一ニ該當スル
場合ニ限リ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第百四十七條前條ノ規定ニ依ル無效ノ審判ハ本法施行前登錄セラレタル
特許又ハ許可ニ關シテハ本法施行ノ日ヨリ五年ヲ經過シタルトキハ之ヲ
請求スルコトヲ得ス
實用新案法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院ノ修正、
ハ同削除ノ符號ナリ
實用新案法改正法律案
實用新案法
第一條物品ニ關シ形狀、構造又ハ組合ハセニ係ル實用アル新規ノ型ノ工
業的考案ヲ爲シタル者ハ其ノ物品ノ型ニ付實用新案ノ登錄ヲ受クルコト
ヲ得
第二條左ニ揭クル實用新案ニ付テハ之ヲ登錄セス
-菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ形狀ヲ有スルモノ
二秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ衞生ヲ害スルノ虞アルモノ
第三條本法ニ於テ實用新案ノ新規ト稱スルハ實用新案カ左ノ各號ノ一ニ
該當スルコトナキヲ謂フ
-登錄出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ若ハ公然用ヰラレタルモノ又ハ
之ニ類似スルモノ
二登錄出願前帝國內ニ頒布セラレタル刊行物ニ容易ニ實施スルコトヲ
得ヘキ程度ニ於テ記載セラレタルモノ又ハ之ニ類似スルモノ
第四條同一又ハ類似ノ實用新案ニ付テハ最先ノ出願者ニ限リ登録ス但シ
同日ノ各別ノ出願者アルトキハ出願者ノ協議ニ依リ登錄シ協議調ハサル
トキハ共ニ登錄セス
第五條特許出願者又ハ意匠登錄出願者カ其ノ特許出願又ハ意匠登錄出願
ヲ其ノ出願ニ係ル型ニ付テノ實用新案登錄出願ニ變更シタルトキハ其ノ
實用新案登錄出願ハ特許出願又ハ意匠登錄出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタル
モノト看做ス但シ特許出願又ハ意匠登錄出願ニ付特許又ハ登錄スヘカラ
ストノ査定ヲ受ケタル場合ニ於テハ其ノ最初ノ査定ノ送達ヲ受ケタル日
ヨリ三十日ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第六條實用新案權ハ登錄ニ依リ發生ス
實用新案權者ハ其ノ登錄實用新案ニ係ル物品ヲ業トシテ製作、使用、販
賣又ハ擴布スルノ權利ヲ專有ス
實用新案權カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル特許權若ハ意匠權ト牴觸スル
場合又ハ登錄實用新案カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル特許發明若ハ登錄
意匠ヲ利用スルモノナル場合ニ於テハ實用新案權者ハ特許權者又ハ意匠
權者ノ實施許諾アルニ非サレハ其ノ登錄實用新案ヲ實施スルコトヲ得ス
第七條實用新案登錄出願ノ際現ニ善意ニ帝國內ニ於テ其ノ實用新案實施
ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ登錄實用新案ニ付事業ノ目
的タル實用新案範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第八條登錄ノ無效審判請求ノ登錄前善意ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當シ帝
國內ニ於テ其ノ實用新案實施ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其
ノ登錄實用新案ニ付事業ノ目的タル實用新案範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
一同一又ハ類似ノ實用新案ニ對スル二以上ノ登錄中其ノ一カ無效ト爲
リタル場合ニ於ケル登録ヲ受ケタル原實用新案權者
二登錄ヲ無效トシ同一又ハ類似ノ實用新案ニ付正當權利者ノ爲ニ登錄
ヲ爲シタル場合ニ於ケル登錄ヲ受ケタル原實用新案權者
三前二號ニ揭クル場合ニ於テ其ノ無效ト爲リタル實用新案權ニ付實施
權ヲ得テ其ノ登錄ヲ受ケタル者但シ實施權カ登錄ナキモ第十三條第
一項ノ效力ヲ有スル場合ハ登錄アルヲ要セス
實用新案登錄出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ係リ其ノ實用新案權ト牴
觸スル特許權又ハ意匠權ノ存續期間滿了シタル場合ニ於テ其ノ特許權又
ハ意匠權ニ付實施權ヲ得テ登錄ヲ受ケタル者ハ其ノ登錄實用新案ニ付原
實施權ノ範圍内ニ於テ實施權ヲ有ス但シ原實施權カ登錄ナキモ特許法第
五十二條第一項又ハ意匠法第十五條第一項ノ效力ヲ有スル場合ハ登錄ア
ルヲ要セス
實用新案權者ハ前二項ノ規定ニ依ル實施權者ヨリ相當ノ補償金ヲ受クル
ノ權利ヲ有ス
第九條實用新案登録出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ係リ其ノ實用新案
權ト抵觸スル特許權又ハ意匠權ノ存續期間滿了後ニ於ケル原特許權者又
ハ原意匠權者ハ其ノ登錄實用新案ニ付原權利ノ範圍內ニ於テ實施權ヲ有
ス
第十條實用新案權ノ存續期間ハ登錄ノ日ヨリ十年ヲ以テ終了ス
第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第十一條ノ規定ニ依リ正當權利
者ノ爲ニ登錄ヲ爲シタルトキハ前項ノ十年ノ期間ハ無效ト爲リタル登錄
ノ爲サレタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
第十一條實用新案權者ハ他人ノ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實施スルニ
非サレハ自己ノ登錄實用新案ヲ實施スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ他
人カ正當ノ理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ他人ノ實施許諾
ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得但シ其ノ實施セラル
ヘキ實用新案又ハ意匠ノ實用新案權又ハ意匠權發生ノ日ヨリ二年ヲ經過
セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實施セラルル者其ノ實施
ヲ必要トスル相手方ノ登錄實用新案ニ付實施ノ許諾ヲ求メタル場合ニ於
テ其ノ相手方カ正當ノ理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ相手
方ノ實施許諾ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得
第十二條前條ノ規定ニ依ル實施權者ハ實用新案權者又ハ意匠權者ニ對シ
相當ノ補償金ヲ支拂フヘシ
前項ノ實施權者ハ補償金ノ支拂ヲ爲シ又ハ支拂ヲ爲スコト能ハサル場合
ニ於テハ供託ヲ爲スニ非サレハ其ノ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實施ス
ルコトヲ得ス但シ審決又ハ判決ノ確定前ト雖審決又ハ判決ニ依ル補償金
ニ相當スル金額ヲ供託シタルトキハ實施スルコトヲ得
第十三條登錄實用新案ノ實施權ハ之ヲ登錄シタルトキハ其ノ實用新案權
ヲ爾後取得シタル者及其ノ實用新案權ヲ目的トスル爾後設定ノ質權ヲ有
スル者ニ對シテモ其ノ效力ヲ生ス
第七條乃至第九條又ハ第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第十四條
第二項ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ登錄ナキ場合ト雖前項ノ效力ヲ有ス
第十一條ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ登錄前設定ノ質權ヲ有スル者ニ對シ
テモ其ノ效力ヲ生ス
特許法第四十五條ノ規定ハ實施權ノ移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限又
ハ實施權ヲ目的トスル質權ノ設定、移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限ニ
付之ヲ準用ス
第十四條實用新案權者ハ登錄實用新案ノ圖面又ハ說明書カ不完全ニ作製
セラレタルコトヲ發見シタルトキハ左ノ各號ノ一ニ揭クル事項ヲ目的ト
スル場合ニ限リ其ノ圖面又ハ說明書ノ訂正ノ許可ノ審判ヲ請求スルコト
ヲ得
登錄請求範圍ノ減縮
二誤記ノ訂正
三不明瞭ナル記載ノ釋明
前項第一號ノ場合ニ於テハ其ノ殘部カ登錄出願ノ際獨立シテ新規ノ實用
新案ナルコトヲ要ス
第十五條前條ノ場合ニ於テハ登錄請求範圍ヲ實質上擴張シ又ハ實質上變
更スルコトヲ得ス
第十六條登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲
スヘシ
-登錄カ第一條、第二條又ハ第四條ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
二登錄カ第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條ノ規定ニ
違反シテ爲サレタルトキ
三登錄カ登錄ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者又ハ登錄ヲ受クルノ
權利ヲ冒認シタル者ノ爲ニ爲サレタルトキ
四登錄カ第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十三條ニ規定ス
ル條約又ハ之ニ準スヘキモノニ違反シテ爲サレタル場合ニ於テ其ノ
違反カ第一號乃至前號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
五登錄カ第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條ノ規定ニ
違反スルニ至リタルトキ又ハ特許法第三十三條ニ規定スル條約君ハ
之ニ準スヘキモノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一
號乃至第三號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
第十四條ノ許可カ同條第二項又ハ前條ノ規定ニ違反シタルトキハ審判ニ
依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
登錄又ハ第十四條ノ許可ハ實用新案權消滅後ト雖前二項ノ規定ニ依リ之
ヲ無效ト爲スヘシ
第十七條特許局ニ實用新案原簿ヲ備へ實用新案權及實施權竝之ヲ目的ト
スル質權ノ設定、保存、移轉、變更、消滅、處分ノ制限其ノ他法令ニ定
ムル事項ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條登錄スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判決アリタルトキハ之
ヲ實用新案原簿ニ登錄シ實用新案登錄證ヲ下付ス第十四條ノ許可ノ審決
確定シ又ハ判決アリタルトキ亦同シ
第十九條特許局ハ實用新案公報ヲ發行シ登錄實用新案ニ關スル必要ナル
事項ヲ之ニ記載スヘシ但シ軍事上祕密ヲ要スル登錄實用新案ニ付テハ此
ノ限ニ在ラス
第二十條實用新案ノ登錄ヲ受クル者又ハ登錄證主ハ登錄料トシテ每件
左ノ金額ヲ納付スヘシ
-第一年乃至第三年每年七圓
二第四年乃至第六年每年十五圓
三第七年乃至第十年毎年二十五圓
第二十一條實用新案登錄ノ出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ審査セ
シム
第二十二條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ規定スルモテノ外
左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
-第十六條ノ規定ニ依ル登錄又ハ許可ノ無效
二實用新案權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ無效ノ審判ハ利害關係人及審査官ニ限リ之ヲ請求スルコト
ヲ得但シ審査官ハ第四條ノ規定ニ違反シ又ハ第十六條第一項第三號ニ該
當ストノ理由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第一項第二號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條前條第一項第一號ノ無效ノ審判ハ實用新案ノ登錄又ハ第十四
條ノ許可ノ登錄ノ日ヨリ三年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得
ス
前項ニ規定スル期間ハ第十六條第一項第五號ニ該當ストノ理由ニ依ル無
效ノ審判ノ請求ニ付テハ同號ニ該當スルニ至リタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起
算ス
第二十四條第十一條ノ審判ニ於テハ補償金額ニ付テモ亦之ヲ審決スヘシ
第二十五條査定又ハ審判ノ審決ヲ受ケタル者不服アルトキハ其ノ査定又
三
ハ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ抗〓審判ヲ請求スルコトヲ
得但シ前條ノ規定ニ依ル補償金額ノ審決ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十六條特許法第六條、第十條乃至第三十三條、第三十六條、第四十
條第四十四條、第四十五條、第四十七條、第四十八條、第五十一條、
第五十五條、第五十六條、第五十八條、第五十九條、第六十四條、第六
十五條第六項第七項、第六十六條乃至第六十九條、第七十一條、第七十
二條、第八十條乃至第八十三條、第八十六條乃至第百五條、第百七條、
第百八條、第百十條乃至第百十二條、第百十三條第一項及第百十四條乃
至第百二十八條ノ規定ハ實用新案ニ關シ之ヲ準用ス
第二十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下
ノ罰金ニ處ス
-他人ノ登錄實用新案ニ係ル物品ト同一ノ物品ヲ業トシテ製作、使用、
販賣又ハ擴布シタル者
二他人ノ登錄實用新案ニ係ル物品ト類似ノ物品ヲ業トシテ製作、使用、
販賣又ハ擴布シタル者
三他人ノ登錄實用新案ニ係ル物品ト同一又ハ類似ノ物品ヲ業トシテ輸
入又ハ移入シタル者
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ
罰金ニ處ス
ー詐僞ノ行爲ヲ以テ實用新案ノ登錄ヲ受ケ又ハ審決若ハ判決ヲ受ケタ
ル者
二登錄實用新案ニ係ラサル物品又ハ其ノ物品ノ容器包裝ノ類ニ實用新
案登錄標記ヲ附シ又ハ實用新案登錄標記ニ紛シキ表示ヲ爲シタル者
三登錄實用新案ニ係ラサル物品ニシテ其ノ物品又ハ其ノ物品ノ容器包
裝ノ類ニ實用新案登錄標記ヲ附シ又ハ實用新案登錄標記ニ紛ハシキ
表示ヲ爲シタルモノヲ販賣又ハ擴布シタル者
四登錄實用新案ニ係ラサル物品ヲ製作若ハ使用セシムル爲又ハ販賣若
ハ擴布スル爲廣告、看板、引札ノ類ニ其ノ物品カ登錄實用新案ニ係
ルコトヲ表示シ又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
第二十九條第二十七條第一項ニ揭クル行爲ヲ組成シタル物又ハ其ノ行爲
ヨリ生シタル物ニシテ刑法第十九條ノ規定ニ依リ沒收スルコトヲ得ヘキ
モノニ付判決言渡前被害者ノ請求アリタルトキハ其ノ物ヲ沒收シ之ヲ被
害者ニ交付スルノ言渡ヲ爲スヘシ
被害者ハ前項ノ規定ニ依ル物ノ交付ヲ受ケタル場合ニ於テハ其ノ物ノ價
額ヲ超過スル損害ノ額ニ限リ賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第三十條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事特許局又ハ其
ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三
月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第三十一條特許局職員又ハ其ノ職ニ在リタル者故ナク其ノ職務上知得タ
ル實用新案登錄出願中ノ考案又ハ實用新案登錄出願者ノ事業上ノ祕密ヲ
漏泄シ又ハ竊用シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當
ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以下
ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ
準用ス
第三十三條辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ實用新案ニ關シ爲スヘキ事項
ノ代理業ヲ營ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第三十四條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十五條舊法ニ依ル實用新案ノ登錄、處分及手續ハ本附則ニ別段ノ規
定アル場合ヲ除クノ外本法ニ依リ爲シタルモノト看做ス
舊法ニ依リ實用新案ニ關シ爲シタル出願、請求其ノ他ノ手續ニ付亦前項
三四シ
第三十六條本法施行ノ際現ニ繫屬スル實用新案登錄ノ出願ノ處理ニ付テ
ハ仍舊法ニ依ル
本法施行前送達ヲ受ケタル審決ニ對スル不服申立ノ期間ニ付テハ仍舊法ニ依ル補償金額ニ對ス
ル不服申立ノ期間ニ付亦同シ
第三十七條本法施行前發生シタル實用新案權ニ關シテハ舊特許法第二十
九條第二號ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ同號ノ規定ヲ準用シ第七條ノ規定
ハ之ヲ適用セス
第三十八條實用新案ノ登錄カ舊法施行中無效ト爲リタル場合ニ付テハ舊
法第十條ノ規定及同條ノ規定ニ基キ準用スル舊特許法ノ規定ハ仍其ノ效
力ヲ有シ第八條ノ規定ハ之ヲ適用セス
第三十九條舊法ニ依ル實用新案ノ登錄ニ關シテハ本法施行後ニ登錄カ爲
サレタル場合ト雖舊法第十一條ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ同條ノ規定ノ
適用ノ範圍內ニ於テ同條ニ揭クル舊法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ登錄カ
同條ノ規定ニ該當スル場合ニ限リ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第四十條前條ノ規定ニ依ル無效ノ審判ハ本法施行前爲サレタル實用新
案ノ登錄ニ關シテハ本法施行ノ日ヨリ三年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求
スルコトヲ得ス
意匠法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
、小字ハ衆議院ノ修正、
ハ同削除ノ符號ナリ
意匠法改正法律案
意匠法
第一條物品ニ關シ形狀、模樣若ハ色彩又ハ其結合ニ係ル新規ノ意匠ノ工
業的考案ヲ爲シタル者ハ其ノ物品ノ意匠ニ付意匠ノ登錄ヲ受クルコトヲ
得
第二條左ニ揭クル意匠ニ付テハ之ヲ登錄セス
一菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ形狀又ハ模樣ヲ有スルモノ
二秩序又ハ風俗ヲ紊ルノ虞アルモノ
三世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ
第三條本法ニ於テ意匠ノ新規ト稱スルハ意匠カ左ノ各號ノ一ニ該當スル
コトナキヲ謂フ
-登錄出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ若ハ公然用ヰラレタルモノ又ハ
之ニ類似スルモノ
二登錄出願前帝國內ニ頒布セラレタル刊行物ニ容易ニ實施スルコトヲ
得ヘキ程度ニ於テ記載セラレタルモノ又ハ之ニ類似スルモノ
意匠ニシテ自己ノ登錄意匠ノミニ類似スルモノハ之ヲ新規ナルモノト看
做ス
第四條同一又ハ類似ノ意匠ニ付テハ最先ノ出願者ニ限リ登錄ス但シ同日
ノ各別ノ出願者アルトキハ出願者ノ協議ニ依リ登錄シ協議調ハサルトキ
ハ共ニ登錄セス
第五條意匠登錄出願者ハ命令ノ定ムル類別內ニ於テ其ノ意匠ヲ現スヘキ
物品ヲ指定スヘシ
第六條意匠登錄出願者ハ登錄ノ日ヨリ三年以內其ノ意匠ヲ祕密ニセムコ
トヲ請求スルコトヲ得
第七條實用新案登錄出願者カ其ノ實用新案登錄出願ヲ其ノ出願ニ係ル意
匠ニ付テノ意匠登錄出願ニ變更シタルトキハ其ノ意匠登錄出願ハ實用新
案登錄出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ實用新案登錄出願
ニ付登錄スヘカラストノ査定ヲ受ケタル場合ニ於テハ其ノ最初ノ査定ノ
送達ヲ受ケタル日ヨリ三十日ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第八條意匠權ハ登錄ニ依リ發生ス
意匠權者ハ其ノ登錄意匠ニ係ル物品ヲ業トシテ製作、使用、販賣又ハ擴
布スルノ權利ヲ專有ス
自己ノ登錄意匠ニ類似スル意匠權ハ最先ニ發生シタル意匠權ト合體スル
モノトス
意匠權カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル實用新案權若ハ商標權ト牴觸スル
場合又ハ登錄意匠カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル登錄實用新案ヲ利用ス
ルモノナル場合ニ於テハ意匠權者ハ實用新案權者ノ實施許諾又ハ商標權
者ノ許諾アルニ非サレハ其ノ登錄意匠ヲ實施スルコトヲ得ス
第九條意匠登錄出願ノ際現ニ善意ニ帝國內ニ於テ其ノ意匠實施ノ事業ヲ
爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ登錄意匠ニ付事業ノ目的タル意匠範
圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第十條登錄ノ無效審判請求ノ登錄前善意ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當シ帝
國內ニ於テ其ノ意匠實施ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ登
錄意匠ニ付事業ノ目的タル意匠範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
-同一又ハ類似ノ意匠ニ對スル二以上ノ登錄中其ノ一カ無效ト爲リタ
ル場合ニ於ケル登錄ヲ受ケタル原意匠權者
二登錄ヲ無效トシ同一又ハ類似ノ意匠ニ付正當權利者ノ爲ニ登錄ヲ爲
シタル場合ニ於ケル登錄ヲ受ケタル原意匠權者
三前二號ニ揭クル場合ニ於テ其ノ無效ト爲リタル意匠權ニ付實施權ヲ
得テ其ノ登錄ヲ受ケタル者但シ實施權カ登錄ナキモ第十五條第一項
ノ效力ヲ有スル場合ハ登錄アルヲ要セス
意匠登錄出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出頭ニ係リ其ノ意匠權ト牴觸スル實
用新案權ノ存續期間滿了シタル場合ニ於テ其ノ實用新案權ニ付實施權ヲ
得テ登錄ヲ受ケタル者ハ其ノ登錄意匠ニ付原實施權ノ範圍內ニ於テ實施
權ヲ有ス但シ原實施權カ登錄ナキモ實用新案法第十三條第一項ノ效力ヲ
有スル場合ハ登錄アルヲ要セス
意匠權者ハ前二項ノ規定ニ依ル實施權者ヨリ相當ノ補償金ヲ受クルノ權
利ヲ有ス
第十一條意匠登錄出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ係リ其ノ意匠權ト牴
觸スル實用新案權ノ存續期間滿了後ニ於ケル原實用新案權者ハ其ノ登錄
意匠ニ付原權利ノ範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第十二條意匠權ノ存續期間ハ登錄ノ日ヨリ十年ヲ以テ終了ス
第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第十一條ノ規定ニ依リ正當權利
者ノ爲ニ登錄ヲ爲シタルトキハ前項ノ十年ノ期間ハ無效ト爲リタル登錄
ノ爲サレタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
第十三條意匠權者ハ他人ノ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實施スルニ非サ
レハ自己ノ登錄意匠ヲ實施スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ他人カ正當
ノ理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ他人ノ實施許諾ヲ得ルコ
ト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得但シ其ノ實施セラルヘキ實用
新案又ハ意匠ノ實用新案權又ハ意匠權發生ノ日ヨリ二年ヲ經過セサルト
キハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實施セラルル者其ノ實施
ヲ必要トスル相手方ノ登錄意匠ニ付實施ノ許諾ヲ求メタル場合ニ於テ其
ノ相手方カ正當ノ理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ相手方ノ
實施許諾ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得
第十四條前條ノ規定ニ依ル實施權者ハ實用新案權者又ハ意匠權者ニ對シ
相當ノ補償金ヲ支拂フヘシ
前項ノ實施權者ハ補償金ノ支拂ヲ爲シ又ハ支拂ヲ爲スコト能ハサル場合
ニ於テハ供託ヲ爲スニ非サレハ其ノ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實施ス
ルコトヲ得ス但シ審決又ハ判決ノ確定前ト雖審決又ハ判決ニ依ル補償金
ニ相當スル金額ヲ供託シタルトキハ實施スルコトヲ得
第十五條登錄意匠ノ實施權ハ之ヲ登錄シタルトキハ其ノ意匠權ヲ爾後取
得シタル者及其ノ意匠權ヲ目的トスル爾後設定ノ質權ヲ有スル者ニ對シ
テモ其ノ效力ヲ生ス
第九條乃至第十一條又ハ第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第十四
條第二項ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ登錄ナキ場合ト雖前項ノ效力ヲ有ス」
第十三條ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ登錄前設定ノ質權ヲ有スル者ニ對シ
テモ其ノ效力ヲ生ス
特許法第四十五條ノ規定ハ實施權ノ移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限又
ハ實施權ヲ目的トスル質權ノ設定、移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限ニ
付之ヲ準用ス
第十六條意匠權ハ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル物品ニ依リ之ヲ分割シ
テ移轉スルコトヲ得
第十七條登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲
スヘシ
-登錄カ第一條、第二條又ハ第四條ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
二登錄カ第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條ノ規定ニ
違反シテ爲サレタルトキ
三登錄カ登錄ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者又ハ登錄ヲ受クルノ
權利ヲ冒認シタル者ノ爲ニ爲サレタルトキ
四登錄カ第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十三條ニ規定ス
ル條約又ハ之ニ準スヘキモノニ違反シテ爲サレタル場合ニ於テ其ノ
違反カ第一號乃至前號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
五登錄カ第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條ノ規定ニ
違反スルニ至リタルトキ又ハ特許法第三十三條ニ規定スル條約若ハ
之ニ準スヘキモノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一
號乃至第三號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
登錄ハ意匠權消滅後ト雖前項ノ規定ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第十八條特許局ニ意匠原簿ヲ備へ意匠權及實施權竝之ヲ目的トスル質權
ノ設定、保存、移轉、變更、消滅、處分ノ制限其ノ他法令ニ定ムル事項
ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條登錄スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判決アリタルトキハ之
ヲ意匠原簿ニ登錄シ意匠登錄證ヲ下付ス
第二十條意匠ノ登錄ヲ受クル者又ハ登錄證主ハ登錄料トシテ每件左ノ金
額ヲ納付スヘシ
一第一年乃至第三年毎年三圓
二第四年乃至第十年每年五圓
自己ノ登錄意匠ニ類似スル意匠ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登録ヲ受クル時
登錄料トシテ每件一時ニ三圓ヲ納付スヘシ
第十六條ノ規定ニ依リ分割シテ移轉セラルル意匠權ノ登錄ヲ受クル者又
ハ登錄證主ハ其ノ意匠權ニ付原意匠權ノ當該年分ヨリノ登錄料ヲ納付ス
ヘシ
第二十一條意匠登錄ノ出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ審査セシム
第二十二條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ規定スルモノノ外
左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
-第十七條ノ規定ニ依ル登錄ノ無效
二意匠權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ無效ノ審判ハ利害關係人及審査官ニ限リ之ヲ請求スルコト
ヲ得但シ審査官ハ第四條ノ規定ニ違反シ又ハ第十七條第一項第三號ニ該
當ストノ理由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第一項第二號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條第十三條ノ審判ニ於テハ補償金額ニ付テモ亦之ヲ審決スヘシ
第二十四條査定又ハ審判ノ審決ヲ受ケタル者不服アルトキハ其ノ査定又
三
ハ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ抗〓審判ヲ請求スルコトヲ
得但シ前條ノ規定ニ依ル補償金額ノ審決ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十五條特許法第六條、第十條乃至第十四條、第十六條乃至第三十條、
第三十二條、第三十三條、第三十六條、第四十四條、第四十五條、第四
十七條、第四十八條、第五十一條、第五十五條、第五十六條、第五十八
條第一項、第五十九條、第六十四條、第六十五條第六項第七項、第六十
六條第一項、第六十七條乃至第六十九條、第七十一條、第七十二條、第
八十條乃至第八十三條、第八十六條乃至第百五條、第百七條、第百十條
乃至第百十二條、第百十三條第一項及第百十四條乃至第百二十八條ノ規
定ハ意匠ニ關シ之ヲ準用ス
第二十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下
ノ罰金ニ處ス
-他人ノ登錄意匠ニ係ル物品ト同一ノ物品ヲ業トシテ製作、使用、販
賣又ハ擴布シタル者
二他人ノ登錄意匠ニ係ル物品ト類似ノ物品ヲ業トシテ製作、使用、販
賣又ハ擴布シタル者
三他人ノ登錄意匠ニ係ル物品ト同一又ハ類似ノ物品ヲ業トシテ輸入又
ハ移入シタル者
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ
罰金ニ處ス
一詐僞ノ行爲ヲ以テ意匠ノ登錄ヲ受ケ又ハ審決若ハ判決ヲ受ケタル者
二登錄意匠ニ係ラサル物品又ハ其ノ物品ノ容器包裝ノ類ニ意匠登錄標
記ヲ附シ又ハ意匠登錄標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
三登錄意匠ニ係ラサル物品ニシテ其ノ物品又ハ其ノ物品ノ容器包裝ノ
類ニ意匠登錄標記ヲ附シ又ハ意匠登錄標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタ
ルモノヲ販賣又ハ擴布シタル者
四登錄意匠ニ係ラサル物品ヲ製作若ハ使用セシムル爲又ハ販賣若ハ擴
布スル爲廣告、看板、引札ノ類ニ其ノ物品カ登錄意匠ニ係ルコトヲ
表示シ又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
第二十八條第二十六條第一項ニ揭クル行爲ヲ組成シタル物又ハ其ノ行爲
ヨリ生シタル物ニシテ刑法第十九條ノ規定ニ依リ沒收スルコトヲ得ヘキ
モノニ付判決言渡前被害者ノ請求アリタルトキハ其ノ物ヲ沒收シ之ヲ被
害者ニ交付スルノ言渡ヲ爲スヘシ
被害者ハ前項ノ規定ニ依ル物ノ交付ヲ受ケタル場合ニ於テハ其ノ物ノ價
額ヲ超過スル損害ノ額ニ限リ賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第二十九條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事特許局又ハ其
ノ嘱託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三
月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第三十條特許局職員又ハ其ノ職ニ在リタル者故ナク其ノ職務上知得タ
ル意匠登錄出願中ノ考案又ハ意匠登錄出願者ノ事業上ノ祕密ヲ漏泄シ又
ハ竊用シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十一條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當
ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以下
ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ
準用ス
第三十二條辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ意匠ニ關シ爲スヘキ事項ノ代
理業ヲ營ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第三十三條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條舊法ニ依ル意匠ノ登錄、處分及手續ハ本附則ニ別段ノ規定ア
ル場合ヲ除クノ外本法ニ依リ爲シタルモノト看做ス
舊法ニ依リ意匠ニ關シ爲シタル出願、請求其ノ他ノ手續ニ付亦前項ニ同
シ
第三十五條本法施行ノ際現ニ繫屬スル意匠登錄ノ出願ノ處理ニ付テハ仍
舊法ニ依ル
本法施行前送達ヲ受ケタル審決ニ對スル不服申立ノ期間ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第三十六條本法施行前發生シタル意匠權ニ關シテハ舊特許法第二十九條
第二號ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ同號ノ規定ヲ準用シ第九條ノ規定ハ之
ヲ適用セス
第三十七條意匠ノ登錄カ舊法施行中無效ト爲リタル場合ニ付テハ舊法第
十條ノ規定及同條ノ規定ニ基キ準用スル舊特許法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ
有シ第十條ノ規定ハ之ヲ適用セス
第三十八條本法施行前既ニ納メタル又ハ納付スヘキ期限ノ經過シタル意
匠料ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第三十九條意匠料ノ納付ヲ怠リタル場合ニ於テ本法施行ノ際未タ其ノ意
匠登錄ノ取消ナキモノニ付テハ本法施行ノ日ヨリ六月間ヲ限リ意匠料ヲ
追納スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ舊法ニ依ル意匠料ノ二倍ニ相當スル
金額ヲ意匠料トシテ納付スヘシ
前項ニ規定スル追納期間內ニ意匠料ヲ追納セサルトキハ本法施行ノ時ニ
遡リ意匠權ハ消滅シタルモノト看做ス
第四十條舊法ニ依ル意匠ノ登錄ニ關シテハ本法施行後ニ登錄カ爲サレ
タル場合ト雖舊法第十二條ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ同條ノ規定ノ適用
ノ範圍內ニ於テ同條ニ揭クル舊法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ登錄カ同條
ノ規定ニ該當スル場合ニ限リ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
商標法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院ノ修正、
ハ同削除ノ符號ナリ
商標法改正法律案
商標法
第一條自己ノ生產、製造、加工、選擇、證明、取扱又ハ販賣ノ營業ニ係
ル商品ナルコトヲ表彰スル爲商標ヲ專用セムトスル者ハ商標ノ登錄ヲ受
クルコトヲ得
登錄ヲ受クルコトヲ得ヘキ商標ハ文字、圖形若ハ記號又ハ其ノ結合ニシ
テ特別顯著ナルモノナルコトヲ要ス
商標ハ之ニ施スヘキ色ヲ限定シテ登錄ヲ受クルコトヲ得
第二條左ニ揭クル商標ニ付テハ之ヲ登錄セス
-菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ
二國旗、軍旗、勳章、褒章、記章又ハ外國ノ國旗ト同一又ハ類似ノモノ
三白地ニ赤十字ノ記章又ハ赤十字若ハ「ジェネヴァ」」十字ノ稱號若ハ文字
ト同一又ハ類似ノモノ
四秩序又ハ風俗ヲ紊ルノ虞アルモノ
五他人ノ肖像、氏名名稱又ハ商號ヲ有スルモノ但シ其ノ他人ノ承諾ヲ
得タルモノハ此ノ限ニ在ラス
六同一又ハ類似ノ商品ニ慣用スル標章ト同一又ハ類似ノモノ
七政府ノ開設シ、道府縣若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ認
可ヲ得テ開設スル博覽會又ハ外國ニ於ケル官設若ハ官許ノ博覽會ノ
賞牌、賞狀又ハ褒狀ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ但シ其ノ賞
牌賞狀又ハ褒狀ヲ受領シタル者カ其ノ商標ノ一部トシテ其ノ圖形
ヲ使用セムトスルトキハ此ノ限ニ在ラス
八取引者又ハ需要者ノ間ニ廣ク認識セラルル他人ノ標章ト同一又ハ類
似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ
九他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用ス
ルタノ
十登錄失效ノ日ヨリ一年ヲ經過セサル他人ノ商標ト同一又ハ類似ニシ
テ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ但シ其ノ他人ノ商標カ登錄失
效前一年以上使用セサリシモノナル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
十一商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アルモノ
商標ノ要部ト認メラルルノ虞アル部分カ分離シテハ前條第二項ニ規定ス
ル特別顯著ノ要件ヲ具備セサル爲又ハ前項第六號ニ該當スル爲登錄ヲ受
クルコトヲ得サルモノナル場合ト雖出願人カ其ノ部分自體ニ付權利ヲ要
求セサル旨ヲ申出テタルトキハ其ノ商標ヲ登錄ス
第三條同一商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ相類似スルモノ又ハ類似
ノ商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ同一ノモノ若ハ相類似スルモノハ
聯合ノ商標トシテ出願シタル場合ニ限リ之ヲ登錄ス
第四條同一又ハ類似ノ商品ニ使用スヘキ同一又ハ類似ノ商標ニ村各別ノ
登錄出願カ競合スルトキハ最先ノ出願者ニ限リ登錄ス但シ同日ノ各別ノ
出願者アルトキハ出願者ノ協議ニ依リ登錄シ協議調ハサルトキハ共ニ登
錄セス
政府ノ開設シ、道府縣若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ認可ヲ
得テ開設スル博覽會又ハ工業所有權保護同盟條約國ノ版圖內ニ開設スル
官設若ハ官許ノ萬國博覽會ニ出品シタル商品ニ使用シタル商標ニ付其ノ
開會ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ商標ノ使用者カ其ノ商標ノ登錄ヲ出願シタ
ルトキハ其ノ開會ノ日ニ於テ出願シタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ命令ヲ以テ前項ニ規定スル出品ニ付豫メ屆出ツヘキコトヲ
規定シタル場合ニ於テ其ノ屆出ヲ怠リタル者ニ付之ヲ適用セス
第二項ニ揭クル萬國博覽會ヲ除クノ外外國ノ版圖內ニ開設スル官設又ハ
官許ノ博覽會ニ出品スル商品ニ使用スル商標ニ付保護ヲ與フルノ必要ア
ルトキハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條商標登錄出願者ハ命令ノ定ムル類別內ニ於テ其ノ商標ヲ使用スヘ
キ商品ヲ指定スヘシ
第六條商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限
リ之ヲ移轉スルコトヲ得
商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ
他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ノ承繼ハ承繼人カ出願人名義ノ變更ヲ
屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ屆
出ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ス
第七條商標權ハ登錄ニ依リ發生ス
商標權者ハ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品ニ付其ノ商標ヲ專用スル
ノ權利ヲ有ス
商標權カ其ノ登錄商標ノ使用ノ態樣ニ依リ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル
意匠權ト牴觸スル場合ニ於テハ商標權者ハ意匠權者ノ實施許諾アルニ非
サレハ其ノ態樣ニ於テ登錄商標ヲ使用スルコトヲ得ス
第八條商標權ノ效力ハ普通ニ使用セラルル方法ヲ以テ自己ノ氏名名稱若
ハ商號又ハ其ノ商品ノ普通名稱、產地、品位、品質、效能、用途、製法、時
期。數量、形狀若ハ價格ヲ表示スルモノニ及ハス但シ商標登錄後惡意ヲ
以テ氏名名稱又ハ商號ヲ使用シタル場合ハ此限ニ在ラス
商標權ノ效力ハ第二條第二項ノ規定ニ依リ權利ヲ要求セサル旨ヲ申出テ
タル部分自體ニ及ハス
第九條他人ノ登錄商標ノ登錄出願前ヨリ同一又ハ類似ノ商品ニ付取引者
又ハ需要者ノ間ニ廣ク認識セラレタル同一又ハ類似ノ標章ヲ善意ニ使用
スル者ハ其ノ他人ノ商標ノ登錄ニ拘ラス其ノ使用ヲ繼續スルコトヲ得營
業又ハ業務ト共ニ其ノ標章ノ使用ヲ承繼シタル者亦同シ
前項ノ場合ニ於テ商標權者ハ標章使用者ニ對シ商品ノ混同ヲ防クニ適當
ナル表示ヲ附スヘキコトヲ請求スルコトヲ得
第十條商標權ノ存續期間ハ登錄ノ日ヨリ二十年ヲ以テ終了ス
第十一條前條ノ存續期間ハ更新登錄ノ出願ニ依リ之ヲ更新スルコトヲ得
但シ其ノ更新登錄ノ出願ニ係ル商標カ第二條第一項第一號乃至第四號第
六號第七號又ハ第十一號ニ該當スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第十二條商標權ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移轉スルコトヲ得
商標權ハ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品ニ依リ之ヲ分割シテ移轉ス
ルコトヲ得
聯合ノ商標ノ商標權ハ分離シテ之ヲ移轉スルコトヲ得ス
商標權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非
サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
第十三條商標權ハ商標權者カ其ノ營業ヲ廢止シタル場合ニ於テハ消滅ス」
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタル商標ノ商標權ハ其ノ本國ニ於ケル
商標權消滅シタル場合ニ於テハ消滅ス審判ニ依リ
第十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ特許局長ハ利害關係人ノ
〓ソ
請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ商標ノ登錄ヲ取消スコトヲ得
-商標權者正當ノ理由ナクシテ帝國內ニ於テ登錄ノ日ヨリ一年間其ノ
商標ヲ使用セサリシトキ又ハ引續キ三年間其ノ商標ノ使用ヲ中止シ
タルトキ但シ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品中其ノ一ニ使用シ
又ハ聯合ノ商標中其ノ一ヲ使用シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
二商標權ノ移轉アリタル場合ニ於テ其ノ相續ニ依ルモノヲ除クノ外移
轉アリタル日ヨリ一年以內ニ商標權移轉ノ登錄ヲ申請セサルトキ
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタル商標ニ付テハ前項第一號ノ規定ヲ
適用セス
商標權者又ハ請求人ハ第一項ノ規定ニ依ル登錄取消ノ處分又ハ第一項ノ
請求ノ却下ニ對シ不服アルトキハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第十五條商標權者故意ニ其ノ登錄商標ニ商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシム
ルノ虞アル附記又ハ變更ヲ爲シテ之ヲ使用シタルトキハ審判ニ依リ商標
ノ登錄ヲ取消スヘシ
前項ノ規定ニ依リ商標ノ登錄ヲ取消サレタル者ハ取消ノ審決確定シ又ハ
判決アリタル日ヨリ五年間同一又ハ類似ノ商品ニ付同一又ハ類似ノ商標
ノ登錄ヲ受クルコトヲ得ス
第十六條商標ノ登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無
效ト爲スヘシ
-登錄カ第一條乃至第四條又ハ前條第二項ノ規定ニ違反シテ爲サレタ
ルトキ
二登錄カ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條ノ規定ニ
違反シテ爲サレタルトキ
三登錄カ商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ノ承繼人ニ非サル者ノ爲ニ
爲サレタルトキ
四登錄カ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十三條ニ規定ス
ル條約又ハ之ニ準スヘキモノニ違反シテ爲サレタル場合ニ於テ其ノ
違反カ第一號乃至前號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
五登錄カ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條ノ規定ニ
違反スルニ至リタルトキ又ハ特許法第三十三條ニ規定スル條約若ハ
之ニ準スヘキモノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一
號乃至第三號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
商標權存續期間更新ノ登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審判ニ依リ
之ヲ無效ト爲スヘシ
一登錄カ第十一條但書ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
二登錄カ商標權者ニ非サル者ノ爲ニ爲サレタルトキ
商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ハ商標權消滅後ト雖前二項ノ規定ニ
依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第十七條特許局ニ商標原簿ヲ備ヘ商標權ノ設定、移轉、變更、消滅其ノ
他法令ニ定ムル事項ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條登錄スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判決アリタルトキハ之
ヲ商標原簿ニ登錄ス
第十九條特許局ハ商標公報ヲ發行シ本法ニ規定スル事項其ノ他登錄商標
ニ關スル必要ナル事項ヲ之ニ記載スヘシ
第二十條商標ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時登錄料トシテ每件
一時ニ三十圓ヲ納付スヘシ
商標權存續期間更新ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時登錄料トシ
テ每件一時ニ五十圓ヲ納付スヘシ
第二十一條商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄出願アリタルトキハ審査
官ヲシテ之ヲ審査セシム
第二十二條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ規定スルモノノ外
左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
○第十四條○又ハ第三十一條
一○第十五條○ノ規定ニ依ル商標ノ登錄ノ取消
二第十六條ノ規定ニ依ル商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ノ無效
三商標權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ取消ノ審判又ハ第二號ノ無效ノ審判ハ利害關係人及審査官
ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得但シ審査官ハ第二條第一項第五號第八號乃
至第十號、第三條若ハ第四條ノ規定ニ違反シ又ハ第十六條第一項第三號
若ハ第二項第二號ニ該當ストノ理由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ
得ス
第一項第三號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條前條第一項第二號ノ無效ノ審判ハ登錄ノ日ヨリ五年ヲ經過シ
タルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス但シ第二條第一項第一號乃至第四號
第六號第七號第十一號、第十一條但書、第十五條第二項又ハ第一一十四條
ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條又ハ第三十三條ノ規定ニ違反ス
トノ理由ニ依ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十四條特許法第十三條、第十六條乃至第三十條、第三十二條、第三
十三條、第四十五條、第五十八條第一項第三項、第六十八條、第七十一
條第七十二條、第七十三條第一項第二項第四項、第七十四條乃至第七
十七條、第八十條乃至第八十三條、第八十六條乃至第百五條、第百七條、
第百九條乃至第百十五條、第百十七條乃至第百二十四條及第百二十八條
ノ規定ハ商標ニ關シ之ヲ準用ス但シ第七十三條第一項第二項第四項及第
七十四條乃至第七十七條ノ規定ハ商標權存續期間更新ノ登錄出願ニ付之
ヲ準用セス
第二十五條登錄無效ノ審決確定シ又ハ判決アリタル後ニシテ再審請求ノ
登錄前ヨリ同一又ハ類似ノ商品ニ付取引者又ハ需要者ノ間ニ廣ク認識セ
ラレタル同一又ハ類似ノ登錄商標ヲ善意ニ使用スル者ハ其ノ登錄商標カ
再審ニ依リ登録ヲ囘復シタル商標ニ牴觸スル爲第二條第一項第九號ノ規
定ニ違反ストノ理由ニ依リ其ノ登錄ヲ無效トセラレタル場合ニ於テモ其
ノ商標ノ使用ヲ繼續スルコトヲ得營業ト共ニ其ノ商標ノ使用ヲ承繼シタ
ル者亦同シ
第九條第二ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十六條營利ヲ目的トセサル業務ニ係ル商品ノ標章ヲ專用セムトスル
者ハ標章ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
前項ノ標章ハ之ヲ商標ト看做シ本法中商標ニ關スル規定ヲ之ニ適用ス
第二十七條同業者及密接ノ關係ヲ有スル營業者ノ設立シタル法人ニシテ
團體員ノ營業上ノ共同ノ利益ヲ增進スルヲ目的トスルモノハ其ノ團體員
ヲシテ其ノ營業ニ係ル商品ニ標章ヲ專用セシムル爲其ノ標章ニ付團體標
章ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
團體標章ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外之ヲ商標ト看做シ本法
中商標ニ關スル規定ヲ之ニ適用ス
第二十八條前條ノ規定ニ依リ〓體標章ノ登錄ヲ受ケムトスル法人ハ其ノ
읍
定款ニ於テ其ノ團體標章ノ使用ニ關スル事項ヲ定メ特許局長〇ノ認可ヲ
受クヘシ其ノ事項ヲ變更スル場合亦同シ
第二十九條團體標章權ノ侵害ニ因ル損害賠償請求權ハ團體員ニ生シタル
損害ヲモ包含ス
第三十條第二十七條ノ法人ノ合併又ハ分割ノ場合ニ於テ一ノ法人カ他
ノ法人ニ〓體標章ノ登錄出願ヨリ生シタル權利又ハ〓體標章權ヲ移轉セ
○官
ムトスルトキハ特許局長〇ノ認可ヲ受クヘシ此ノ場合ニ於テハ第二十八
條ノ規定ヲ準用ス審判ニ依リ
第三十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ特許局長ハ利害關係人
ハン
ノ請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ團體標章ノ登錄ヲ取消スコトヲ得
○官
-法人カ開體員ヲシテ第二十八條又ハ前條ノ規定ニ依リ特許局長〇ノ
認可ヲ受ケタル定款ノ規定ニ違反シテ團體標章ヲ使用セシメ又ハ其
ノ使用ヲ放任シタルトキ
二法人カ〓體員ニ非サル者ヲシテ團體標章ヲ使用セシメ又ハ團體員ニ
非サル者ノ使用ヲ放任シタルトキ
第十四條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
前
第一項ノ規定ニ依リ團體標章ノ登錄ヲ取消サレタル法人ハ取消アリタル
日ヨリ五年間同一又ハ類似ノ商品ニ付同一又ハ類似ノ團體標章ノ登錄ヲ
受クルコトヲ得ス此ノ場合ニ於テハ第十六條及第二十二條ノ規定ヲ準用
ス
第三十二條團體標章ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時登錄料トシ
テ每件一時ニ百圓ヲ納付スヘシ
團體標章權存續期間更新ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時登錄料
トシテ每件一時ニ百五十圓ヲ納付スヘシ
第三十三條前六條ノ規定ハ公法人カ其ノ地域內ニ於ケル營業者ヲシテ其
ノ營業ニ係ル商品ニ專用セシムル爲團體標章ノ登錄ヲ受ケムトスル場合
ニ之ヲ準用ス
第三十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下
ノ罰金ニ處ス
一他人ノ登錄商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ同一若ハ類似ノ商品ニ使用
シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付シ、販賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以
テ所持スル者
二他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一若ハ類似ノ商品ニ使用
セシムルノ目的ヲ以テ交付シ若ハ販賣シ又ハ其ノ交付、販賣ノ目的
ヲ以テ所持スル者
三他人ノ登錄商標ヲ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルノ目的又ハ使用セ
シムルノ目的ヲ以テ僞造又ハ模造シタル者
四他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ使用シタル同一又ハ類似ノ
商品ヲ交付、販賣ノ目的ヲ以テ輸入又ハ移入シタル者
五他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一又ハ類似ノ商品ニ使用
スルノ目的又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ輸入又ハ移人シタル者
六他人ノ登錄商標ヲ僞造若ハ模造スルノ目的又ハ僞造若ハ模造セシム
ルノ目的ヲ以テ其ノ用具ヲ製作、交付、販賣又ハ所持スル者
七同一又ハ類似ノ商品ニ關シ他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノモノヲ
營業ニ用ヰル廣〓、看板、引札、物價表ノ類又ハ取引書類ニ使用シ
タル者
第三十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下
ノ罰金ニ處ス
ー詐僞ノ行爲ヲ以テ商標若ハ商標權存續期間更新ノ登錄ヲ受ケ又ハ審
決若ハ判決ヲ受ケタル者
二登錄ヲ受ケサル商標ニシテ商標登錄標記ヲ附シ若ハ商標登錄標記ニ
紛ハシキ表示ヲ爲シタルモノヲ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ
交付シ、販賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ所持スル者
三登錄ヲ受ケサル商標ニシテ商標登錄標記ヲ附シ若ハ商標登錄標記ニ
紛ハシキ表示ヲ爲シタルモノヲ營業ニ用ヰル廣〓、看板、引札、物
價表ノ類又ハ取引書類ニ使用シタル者
第三十六條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事特許局又ハ其
ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三
月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第三十七條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當
ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以下
ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ
準用ス
第三十八條辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ商標ニ關シ爲スヘキ事項ノ代
理業ヲ營ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第三十九條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十條舊法ニ依ル商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄、處分及手續
ハ本附則ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本法ニ依リ爲シタルモノト看
做ス
舊法ニ依リ商標ニ關シ爲シタル出願、請求其ノ他ノ手續ニ付亦前項ニ同
第四十一條本法施行ノ際現ニ繫屬スル商標若ハ商標權存續期間更新ノ登
錄出願又ハ商標登錄ノ取消ニ關スル事項ノ處理ニ付テハ仍舊法ニ依ル
本法施行前送達ヲ受ケタル審決ニ對スル不服申立ノ期間ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第四十二條舊法ニ依ル商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ニ關シテハ本
法施行後ニ登錄カ爲サレタル場合ト雖舊法第十一條ノ規定ハ仍其ノ效力
ヲ有シ同條ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ於テ同條ニ揭クル舊法ノ規定ハ仍其
ノ效力ヲ有シ登錄カ同條ノ規定ニ該當スル場合ニ限リ審判ニ依リ之ヲ無
效ト爲スヘシ此ノ場合ニ於テ舊法附則第二項ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ
同項ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ於テ同項ニ揭クル舊法ノ規定ハ仍其ノ效力
アノロ
第四十三條登錄カ舊法第一條又ハ第二條第五號ノ規定ニ違反ストノ理由
ニ依ル前條ノ無效ノ審判ハ本法施行前爲サレタル商標又ハ商標權存續期
間更新ノ登錄ニ關シテハ本法施行ノ日ヨリ五年ヲ經過シタルトキハ之ヲ
請求スルコトヲ得ス
登錄カ舊法第二條第八號第九號、第三條又ハ第四條第二項ノ規定ニ違反
ストノ理由ニ依ル前條ノ無效ノ審判ハ商標又ハ商標權存續期間更新ノ登
錄カ商標公報ニ揭載セラレタル日ヨリ三年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求
スルコトヲ得ス
第四十四條本法施行前舊法第二十三條ノ罪ヲ犯シタル者ハ本法施行後ト
雖〓訴アルニ非サレハ其ノ罪ヲ論セス
辨理士法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院ノ修正、-
ハ同削除ノ符號ナリ
辨理士法
第一條辨理士ハ特許、實用新案、意匠又ハ商標ニ關シ特許局ニ對シ爲ス
ヘキ事項ノ代理ヲ爲スコトヲ業トスルモノトス
第二條左ノ條件ヲ具フル者ハ辨理士タル資格ヲ有ス
-帝國臣民又ハ農商務大臣ノ定ムル所ニ依リ外國ノ國籍ヲ有スル者ニ
シテ私法上ノ能力者タルコト
二帝國內ニ住所ヲ有スルコト
三辨理士試驗ニ合格シタルコト
辨理士試驗ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前條第一項第三號ニ規定スル條件ヲ
要セスシテ辨理士タル資格ヲ有ス
-辯護士法ニ依リ辯護士タル資格ヲ有スル者
二高等試驗ノ行政科試驗若ハ司法科試驗又ハ判事檢事登用試驗ニ合格
シタル者又
三特許局ニ於テ高等官ニ在職シテ二年以上審判若ハ審査ノ事務ニ從事
シタル者又ハ判任以上ノ官ニ在職シテ五年以上審査ノ事務ニ從事シ
タル者
第四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ辨理士試驗委員ノ銓衡ニ依リ第二條第一項第三號ニ規定スル
條件ヲ要セスシテ辨理士タル資格ヲ有ス
-學位ヲ有スル者
二帝國大學ノ學部又ハ之ト學科程度同等以上ト認ムル內外國ノ學校ニ於テ定規ノ課業ヲ卒ハ
タル者
三特許局ニ於テ判任以上ノ官ニ在職シテ五年以上審查ノ事務ニ從事シタル者
五
簡単位左ニ揭クル者ハ辨理士タルコトヲ得ス
-禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者但シ六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セ
ラレタル者ニシテ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨ
リ起算シ三年ヲ經過シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
二
二前項ニ該當スル者ヲ除クノ外第二十一條、特許法第百二十九條、第
百三十條、第百三十三條若ハ第百三十五條、實用新案法第二十七條、
第二十八條、第三十一條若ハ第三十三條、意匠法第二十六條、第二
十七條、第三十條若ハ第三十二條又ハ商標法第三十四條、第三十五
條若ハ第三十八條ノ罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者但シ刑ノ執行ヲ終
リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ三年ヲ經過シタル者ハ
此ノ限ニ在ラス
三破產若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復權セサル者又ハ身代限ノ處分ヲ受
ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者
四業務停止ノ期間中業務ヲ廢止シ未タ其ノ期間ノ經過セサル者又ハ業
務禁止ノ處分アリタル日ヨリ起算シ三年ヲ經過セサル者
六
第五條特許局ニ辨理士登錄簿ヲ備ヘ辨理士ニ關スル事項ヲ登錄ス
辨理士タラムトスル者ハ辨理士登錄簿ニ登錄ヲ受クルコトヲ要ス
辨理士ノ登錄ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
七
悠久保辨理士ノ登錄ヲ受ケムトスル者ハ登錄料トシテ二十圓ヲ納付スヘ
シ
八
住まる辨理士ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル事件ニ付其ノ業務ヲ行フコトヲ
得ス
-相手方ノ代理人トシテ取扱ヒタル事件
二裁判所又ハ特許局ニ在職中取扱ヒタル事件
九意匠又ハ商標ニ關スル事項ニ付裁判所
第八條辨理士ハ特許、實用新案、
ニ於テ本人ト共ニ出頭シテ本人ノ爲演述ヲ爲スコトヲ得其ノ演述ハ本人
卽時ニ之ヲ取消シ又ハ更正セルトキニ限リ本人自ラ之ヲ爲シタルモノト
看做ス
前項ノ規定ニ依リ帝國臣民ニ非サル辨理士出頭シテ演述ヲ爲サムトスル
トキハ裁判所ノ許可ヲ受クヘシ
十
第九條辨理士ハ特許局所在地ニ辨理士會ヲ設立スヘシ
辨理士會ハ支部ヲ設クルコトヲ得
辨理士會ハ辨理士ノ風紀ヲ保持シ業務ノ發達ヲ圖ルヲ以テ目的
第十〓條
トス
二
第十一條辨理士會ハ法人トス
三
第十二條辨理士會ハ農商務大臣之ヲ監督ス
四會議ニ關スル事項、
第十三條辨理士會ハ會則ヲ設ケ役員ニ關スル事項、
辨理士ノ風紀保持ニ關スル事項、謝金及手數料ニ關スル事項其ノ他會務
ノ處理ニ必要ナル事項ヲ規定スヘシ
올
會則ハ特許局長〓ヲ經由シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ會則ノ變更ニ
付亦同シ
五機關ノ組織及監督ニ關シテハ勅令ヲ以
第十四條辨理士會ノ設立ノ手續、
テ之ヲ定ム
六
第十五條辨理士ハ辨理士會ニ加入シタル後ニ非サレハ其ノ業務ヲ行フコ
トヲ得ス
七
第十六條辨理士本法又ハ辨理士會ノ會則ニ違反スル行爲アルトキハ農商
務大臣ハ辨理士懲戒委員會ノ議決ニ依リ之ヲ懲戒スルコトヲ得
辨理士懲戒委員會ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
八
第十化條辨理士ノ懲戒處分ハ左ノ四種トス
-譴責
二五百圓以下ノ過料
三一年以內業務ノ停止
四業務ノ禁止
九
第十八條辨理士會ハ辨理士ニ對シ懲戒ノ必要アリト認メタルトキハ特許
음
局長リヲ經由シテ農商務大臣ニ中〓スヘシ
二十
第十九條農商務大臣ハ前條ノ規定ニ依ル辨理士會ノ申告ニ依リ又ハ職權
ヲ以テ辨理士懲戒委員會ヲ招集ス
읍
第二十〇條過料ヲ完納セサルトキハ特許局長〓ノ命令ヲ以テ之ヲ執行ス
非訟事件手續法第二百八條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル執行ニ付之ヲ準用
ス
二
第二十一條辨理士又ハ辨理士タリシ者故ナク其ノ業務上知得タル發明
者、考案者、特許出願者又ハ登錄出願者ノ發明、考案又ハ事業上ノ祕密
ヲ漏泄シ又ハ竊用シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ
處ス
前項ノ罪ハ〓訴ヲ待テ之ヲ論ス
附則
三
第二十二條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
四
第二十三條特許辨理士令及特許辨理士組合規則ハ之ヲ廢止ス
五
第二十四條本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六號布告刑法ノ重罪ノ
刑ニ處セラレタル者ハ六年以上ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ト
看做ス
六五
第二十五條第四條第一號ニ該當スル者ヲ除クノ外舊特許法第九十二條、
第九十三條若ハ第九十七條、舊實用新案法第二十二條、第二十三條若
ハ第二十七條、舊意匠法第二十四條、第二十五條若ハ第二十九條又ハ舊
商標法第二十三條、第二十四條若ハ第二十八條ノ罪ヲ犯シ刑ニ處セラレ
タル者ハ辨理士タルコトヲ得ス但シ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除
ヲ得タル日ヨリ起算シ三年ヲ經過シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
七
第二十六條本法施行ノ際現ニ特許辨理士タル資格ヲ有スル者ハ辨理士タ
ル資格ヲ有ス
八
Schizophyceae.本法施行ノ際現ニ特許辨理士タル者ハ辨理士ト看做ス
九
第二十八條特許辨理士登錄簿ハ辨理士登錄簿ト看做ス
三十六
第二十九條第十五條ノ規定ハ本法施行ノ日ヨリ起算シ六月間之ヲ適用セ
ス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=18
-
019・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 唯今議題ト相成リマシタル五案ハ總テ一括シ
テ說明ヲ申上ゲマス、此ノ工業所有權ニ關シマスル現行法律ハ、明治四十二
年ニ制定ヲ致シマシテ、爾來今日ニ至ルマデ十有二年ノ年ヲ經テ居ルノデア
リマス、時勢ノ進運ハ工業所有權法規ノ改正ノ必要ヲ促ガシテ居リマス、此
間ニ於テ又今日ノ歐洲大戰ノ結果、工業所有權ノ保護ト產業ノ關係ハ益〓親密
ナル關係ヲ有スルニ至ッタノデアリマスル、私ハ此ノ特許制度ノ改善ハ我國產
業振興ノ基礎トナルコトニ鑑ミマシテ、大ニ必要ヲ感ジテ居リマス故ニ、就
任早々特許局ノ法規ニ關シマスルモノニ付マシテ、一ノ改正調査委員會ヲ設
ケマシテ、斯道ニ最モ關係ノ强イ又最モ造詣ノ深イ諸氏ニ囑託ヲ致シマシテ、
調査ヲ致サシメマシタノデアリマスガ、爾來二年有餘掛リマシテ〓究調査ノ
結果、漸ク此成案ヲ見ルニ至ッタノデゴザリマス、工業所有權ハ申ス迄モナ
ク、單リ此ノ國內ノ產業ト密接ノ關係ヲ有スルニ止ラズ、一面ニ於テ國際的
牲質ヲ有スルモノデアリマス故ニ、此ノ調査會ニ於キマシテハ、諸方面ニ亙
リソレソレ材料ヲ蒐集イタシマスルト同時ニ、廣ク知識ヲ世界ニ求メ、特許
制度ニ關シ戰後列國ノ執ラムトスル趨勢ヲモ考察イタシマシテ、世界ノ大勢
ニ順應スルコトヲ期シタル次第デアリマス、而シテ今囘改正ヲ加ヘマシタル
要點ハ、發明者及ビ特許權者ノ保護ヲ完全ナラシメ、又審査審判ノ公正迅速
ヲ期シ、又一面ハ特許權者ノ利益ヲ保護スルト同時ニ、公共ノ利益ヲモ保護
イタシマシタル如キモノガ大切ナル點デアリマス、又此ノ實用新案、意匠法
及ビ商標法等ニ對シマシテモ、右特許制度ニ準ジマシテソレソレ適切ナル改
正ヲ加ヘタノデアリマス、又新ニ此ノ辨理士法ヲ制定イタシマシテ、前ノ四
法ノ改正ト相俟ッテ、工業所有權制度ノ完成ヲ期シタル次第デアリマス、何卒
御審議ノ上御協賛アラムコトヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=19
-
020・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郎君 簡單デゴザイマスカラ此席ヨリ二點バカリ農商務大臣ニ
御質問イタシマス、此度ノ御提案ハ本員ニ於キマシテハ大體發明ヲ奬勵セラ
レル御趣意デ、如何ニモ時勢ノ必要ニ應ジテ適當デアルト考ヘマス、然ニ特
許局ノ位置ガ今少シク獨立ノ性質ヲ確立セラレテハ如何デアラウカト考ヘラ
レル、此度ノ御提案ニ依リマシテ、辨理士法モ法律トナリ、又衆議院ノ修正
ニ依レバ特許局ノ位置モ上ゲラレルヤウニ見エマスル、然ニ審判官ニ對スル
身分ノ保障、是ハ會計檢査院ノ檢査官及ビ行政裁判所ノ裁判官ノ如キ、矢張
身分ノ保障ヲ確實ニセラレルト云フコトガ審判上必要デハナイカト考ヘラ
レル、ソレ等ニ付テ政府ハ如何ニ考ヘラレルカ、又今一ツハ近年支那ト日本
ト經濟關係ガ非常ニ發達イタシ、貿易ノ大ニ增進イタシタコトハ兩國親善ノ
爲ニ大ニ喜ブベキコトデアリマスガ、然ニ日本ノ商品ニ對スル支那ニ於ケル
特許商標ノ保護ガ甚ダ不十分ナルガ爲ニ、種々問題ガ起ルヤウナ次第デアリ
やす、是ハ支那ガ先年特許法商標法ヲ實施スルト云フコトハ、條約ニ於テモ
既ニ認メテ居ルヤウナ譯デアリマス、此點ニ付テ政府ハ支那政府ト如何ナル
交涉ニナッテ居ルカ、又今後如何ニセラレルカト云フコトニ付テノ御意見ヲ
伺ッテ置キタイト思ヒマス
〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=20
-
021・田中隆三
○政府委員(田中隆三君) 唯〓阪谷男爵カラノ御問ニ付テ御答ヘ致シマス
ガ其ノ一箇條ノ特許局ノ審判官ヲ獨立ノ地位ヲ以テ保障スルト云フコトノ
考ハアルカドウカト云フコトニ承ハリマシタガ、此度ノ法律ヲ改正スルニ至
リマシタ場合ニモ、色〓其點ニ付テ審議ヲ致シテ見マシタケレドモ、元〓特
許局ノ審判官ト云フモノハ純然タル行政官デアリマスルノデ、此身分ヲ保障
スルト云フコトニ關シマシテハ、其他一般ノ行政官ニ對スル。權衡上、餘程考
慮ヲ要シナケレバナラヌコトデアルト云フ意味ヲ以テ、此度ハ矢張是マデ
ノ通リ別ニ身分上ノ保障ニ關スル規定ハゴザイマセヌノデアリマス、尤モ唯
今御質問ノ如ク、行政官ノ內ニモ會計檢査院ニ付テハ保障ノ法令ガアル譯デ
ハアリマスケレドモ、唯今ノ所デハ單ニソレノミニ止ッテ居ルノデゴザイマシ
テ、他ノ一般行政官トノ關係上、マダ其時期ニ非ザルモノト認メマシテ、現
行法通リニナリマシタ譯デアリマス、ソレカラ第二點ノ支那ニ於ケル商標權
ノコトニ付マシテハ、御質問中ニモゴザイマスル通リ、支那トノ條約モア
リ又其條約ニ基キマシテ一日モ早ク商標法ノ制定ヲ致シタイト云フ考ヲ以
テ、態〓日本ノ官吏マデモアチラノ方ヘ派遣イタシマシテ、支那ノ政府ト共
同イタシマシテ、サウシテ商標法ノ草案ノヤウナモノマデモ作リマシタコト
モゴザイマスルノデ、併ナガラ商標ノコトニ付マシテハ各國トノ間ニ色〓
ナ利害關係ガゴザイマスルノデ、英吉利、佛蘭西、墺地利其他ノ間ニ於テ種
種ナ利害上ノ關係カラシテ、主ナル問題ニ付テ十分ニ御互ノ了解ヲ得兼ネテ
居リマスル點ガゴザイマスルノデ、大體ハ進ンデ居リマスケレドモ、此各國
トノ協調ヲ保ツ上ニ於テ、マダ十分ニ了解ヲ得マセヌ事情カラ、今日マデ延
延ニナッテ居リマスル譯デアリマス、併ナガラ數囘ノ交涉ノ末段々困難デアリ
マシタ問題ガ解決サレ掛リマシタノデ、遠カラザル將來ニ於テ商標法ノ制定
ヲ見ルニ至ルコトト存ジテ居リマス、大體ノ問題ガ略〓決著イタシマシテ、僅
ノ所デ今引掛リガ出來テ居ルヤウナ次第デゴザイマス、我ガ商業上ニ於テモ
安心ヲシテ商標權ノ保護ヲ受ケルヤウナコトニ、近クナラウト思ヒマスデゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=21
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022・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 唯〓〓答辯デ一應了承イタシマシタ、右ノ二點ニ付マシ
テハ發明家竝ニ實業家ノ間ニ餘程强イ希望モゴザイマスノデ、ドウゾ當局モ
十分御熟考ヲ願ヲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=22
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023・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 簡單デゴザイマスカラ此席ヨリ伺ヒマス、此ノ特許法始メ
ノコトニ付マシテ、衆議院デソレゾレ修正ガゴザイマスガ其修正ニハ政
府ハ御同意ニナリマシタカドウカ、念ノ爲ニ伺ッテ置キマス
〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=23
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024・田中隆三
○政府委員、 田中隆三君)此度ノ法案ニ付マシテ、衆議院ニ於テ數箇條ニ
亙ッテノ修正ガアリマシタ、政府ニ於キマシテハ總テノ修正ニ付テ、差支ナイ
モノトシテ同意ヲ與ヘマシタノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=24
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025・淺田徳則
○淺田德則君 唯今議題ニ供セラレマシタル五案ハ同一委員ニ付託セラレマ
シテ、其特別委員ノ數ハ十五名ト致シマシテ、其指名ヲ議長ニ一任スルノ動
議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=25
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026・八條隆正
○子爵八條隆正君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=26
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027・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 淺田君ノ日程第四ヨリ第八マデ五案ヲ一括シテ同
一委員ニ付託シ、委員ノ數ヲ十五名、其委員ハ議長ノ選定ニ任ストノ動議ニ
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ、書記
官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔長書記官朗讀〕
特許法改正法律案外四件特別委員
侯爵細川護立君子爵松平直平君子爵片桐貞央君
松室致君和田彥次郞君男爵高千穂宣麿君
木場貞長君男爵池田長康君男爵島津健之助君
岡田文次君江木翼君大村彥太郞君
鈴木摠兵衞君田中源太郞君今井五介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、第十、第十一ハ一括シテ議題トシ說明
ヲ煩シタイト考ヘマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長 公爵德川家逹君)日程第九、米穀法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會
米穀法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
米穀法案
米穀法
第一條政府ハ米穀ノ需給ヲ調節スル爲必要アリト認ムルトキハ米穀ノ買
入、賣渡、交換、加工又ハ貯藏ヲ爲スコトヲ得
第二條政府ハ米穀ノ需給ヲ調節スル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令
ヲ以テ期間ヲ指定シ米穀ノ輸入稅ヲ增減若ハ免除シ又ハ其ノ輸入若ハ輸
出ヲ制限スルコトヲ得
第三條政府ハ帝國內ニ於テ第一條ノ規定ニ依リ米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ爲
サムトスルトキハ其ノ價格及期間ヲ告示スヘシ但シ米穀ノ買換、貯藏米
穀整理ノ爲ニスル賣渡其ノ他必要ト認ムル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第四條政府ハ米穀需給調節上米穀現在高調査ノ必要アリト認ムルトキハ
米穀ノ生產者、取引業者、倉庫業者其ノ他占有者ニ對シ調査ニ必要ナル
事項ノ報告ヲ命シ又ハ官吏若ハ吏員ヲシテ其ノ營業所、倉庫其ノ他ノ場
所ニ臨檢シ帳簿物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
第五條前條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ當該官吏若ハ吏員ノ職務ノ執
行ヲ妨ケタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法ハ大正十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=32
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033・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 本邦ノ主要食品タル米穀ノ生產ハ、年々增加
シツツアルノデゴザイマスガ、未ダ國民需要ノ全部ヲ充スコトガ出來ナイノ
デアリマス、ソレ故ニ平作ニ於キマシテハ常ニ二百萬石若クハ三百萬石ノ不
足ヲ告ゲツツアル狀況デアリマス、而シテ我ガ米穀ハ特殊ノ品質ヲ有ッテ居リ
マスノト、又此ノ販賣區域ガ狹イ爲ニ、ヒドク價ノ高低ヲ激シクシツツアル
狀態デアリマシテ、其年ノ豐凶ニ依リマシテ、需給關係ヲシテ非常ニ均衡ヲ
失シ、延イテ價格ノ變動ガ今申ス通リ激シイノデアリマス、ソレガ爲ニ生產
者ノ不安ヲ來シ、又ハ國民ノ安定ヲ脅シテ、一般經濟社會ニ影響イタシテ、
ソレガ爲ニ發達ヲ妨ゲルヤウナコトハ、是マデ屢〓經驗ヲ致シテ居リマスル現
象デアリマス、政府ハ國民〓糧充實ノ根本方策ヲ立ツルノ必要ヲ感ジマシテ、
曩ニ臨時財政經濟調査會ニ諮詢イタシマシテ、漸ク其答申ヲ得タル次第デア
リマス、此ノ財政經濟調査會答申ノ趣旨ニ基キマシテ、極力〓糧ノ增殖ヲ圖
ルト共ニ、玆ニ本法律案ヲ制定イタシマシテ、米穀需給ノ按配、平準ヲ得セ
シムルノ制度ヲ設ケテ、サウシテ其會計ハ一般會計ヨリ區別シテ特別會計ト
ナシ、國內過剩ノ場合ニ於テハ其ノ剩餘米穀ヲ買入レ貯藏シテ、他日供給不
足ノ場合ニ賣却シ、又必要ニ應ジ、外國米ヲ購入シテ供給ヲ補足シ、尙ホ特
ニ必要アル場合ニ於キマシテハ應急手段トシテ米穀輸入稅ヲ增減免除シ、若
クハ輸出入ノ制限ヲナシ得ルノ規定ヲ設ケテ、以テ外國米ノ流入ガ我ガ米穀
ノ生產ヲ脅威スル如キ場合ニハ其輸入ヲ制シ、又國內〓糧不足ノ場合ニハ外
國米ノ流入ヲ容易ナラシムルノ途ヲ開キ、サウシテ此運用ヲシテ圓滑ナラシ
メムトスル考デアリマス、要シマスルノニ政府ハ國民食糧ノ最モ重要ナル米
穀ノ、年ノ豐凶ニ依ル生產ノ過不足ヨリ生ズル甚シキ需給ト不權衡ヲ調節シ、
其米價ニ及ボス急激ナル騰落ヲ緩和シ、以テ一般國民生活ノ安定ヲ計ルノ制
度ヲ立テルノ極メテ緊要ナルコトヲ認メマシテ、本案ヲ提出シタル次第デア
リマス、何卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ私ハ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十、米穀需給調節特別會計法案、第十一、
罹災救助基金法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
米穀需給調節特別會計法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
米穀需給調節特別會計法案
米穀需給調節特別會計法
第一條米穀需給ノ調節ノ爲ニスル米穀ノ買入、賣渡、交換、加工又ハ貯
藏ニ關スル一切ノ歲入歲出ハ之ヲ一般會計ト區分シ特別ノ會計ヲ立テシ
ム
第二條本會計ニ屬スル經費ヲ支辨スル爲必要アルトキハ政府ハ本會計ノ
負擔ニ於テ借入ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル借入金ノ額ハ第三條ノ規定ニ依リ發行スル證劵ノ額ト
通シテ最高二億圓トス
第三條米穀ノ買入代價ハ外國ヨリ直接ニ買入ルル場合ヲ除クノ外一年內
ニ償還スヘキ證劵ヲ以テ其ノ額面金額ニ依リ之ヲ交付ス
前項ノ證劵ハ無記名證劵トス
第一項ノ規定ニ依リ交付スル爲政府ハ證劵ヲ發行スルコトヲ得
第四條日本銀行ハ前條ノ證劵ノ所持人ノ請求ニ依リ政府ノ定ムル步合ヲ
以テ其ノ證劵ノ割引ヲ爲スヘシ
第五條本會計ノ負擔ニ屬スル證劵及借入金ノ償還金及利子竝證劵ノ發行
及償還ニ關スル諸費ノ支出ニ必要ナル金額ハ每年度國債整理基金特別會
計ニ之ヲ繰入ルヘシ
第六條本會計ハ借入金、米穀賣渡代金及附屬雜收入ヲ以テ歲入トシ米穀
ノ買入代金、米穀ノ買入賣渡交換加工貯藏及運搬ニ關スル諸費、證劵及
借入金ノ償還金及利子其ノ他諸費ヲ以テ歲出トス
第七條本會計ニ於テ支拂上餘裕アルトキハ大藏省預金部ニ之ヲ預入ルヘ
シ
第八條本會計ノ決算上剰餘アルトキハ翌年度ノ歲入ニ之ヲ繰入ルヘシ
本會計ノ每年度歲出豫算ニ於ケル支出殘額ハ遞次之ヲ翌年度ニ繰越使用
スルコトヲ得
第九條政府ハ每年度本會計ノ歲入歳出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト
共ニ帝國議會ニ之ヲ提出スヘシ
第十條本會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ大正十年度ヨリ之ヲ施行ス
罹災救助基金法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
罹災救助基金法中改正法律案
罹災救助基金法中左ノ通改正ス
第十七條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
五米穀ヲ買入ルルコト但シ買入金額ハ罹災救助基金年度初ノ現在高ヨ
リ第三條ノ制限額ヲ控除シタル金額ヲ超ユルコトヲ得ス
附則
本法ハ大正十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=34
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035・高橋是清
○國務大臣(子爵高橋是〓君)』 唯〓農商務大臣ヨリ說明ノ中ニアリマシタル
通リ、食糧問題ヲ解決イタシマスル爲ニ、此度政府ニ於テ必要ト認メマシタ
ル場合ニ於テ、米穀ノ買入ヲナシ或ハ賣渡ヲナスノ制度ヲ立テルコトニナリ
マシタニ付マシテハ、其買入レ賣渡シ、其他收入支出ヲ整理イタス爲ニ特
別會計ヲ設ケルヲ適當ト認メタル次第デアリマス、米穀ノ買入レ其他ニ要シ
マスル資金ハ最高二億圓ヲ見積ルコトト致シマシテ、而シテ米穀ノ買入代價
ハ證劵ヲ以テ交付スルコトト致シテ、且其證劵ハ日本銀行ニ於テ割引ヲナス
コトト致シテ、賣主ノ便利ヲ圖ルコトトナッテ居リマス、此點ガ米穀需給調節
特別會計法案ノ骨子デゴザイマス、此會計ノ働キニ依リマシテ、大體米穀需
給調節ノ目的ハ之ヲ達シ得ル所ノ見込デアルノデアリマス、尙ホ之ニ類似ノ
目的ヲ有シマスル罹災救助基金ニ於キマシテモ米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ爲ス
コトニ致シマスレバ一層有效デアルト考ヘマスルニ依テ、玆ニ其途ヲ開カム
トスル爲ニ、罹災救助基金法ニモ改正ヲ加フルコトニ致シタイト考ヘルノデ
ゴザイマス、御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通〓順ニ依リマシテ質疑ヲ許シマス
〔男爵藤村義朗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=36
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037・藤村義朗
○男爵藤村義朗君 唯今上程ノ米穀法案ハ、法律ノ力ヲ以テ、而シテ極メテ
少數ノ人ノ自由裁量ニ依リマシテ、我〓國民ノ命ノ本デアル所ノ、米ノ需給
的調節ヲシヤウト云フノガ目的デアリマス、國民生活ノ根柢ニ觸レテ居リマ
ス所ノ、容易ナラヌ重要ナ問題デアルノデアル、從ッテ本案ハ決シテ忽々ノ間
ニ議了サレ得ベキモノデナイト思フ、我〓ハ極メテ愼重ニ徹底的ニ審議〓究
ヲ致シマシテ、案ノ完成ヲ期サナケレバナラスト思フノデアリマス、茲ニ私
ハ取敢ヘズ本案ノ根本ニ橫ハッテ居リマス四五ノ疑問ニ付マシテ、農商務大臣
ノ御答辯ヲ煩ハシタイト思フノデアリマス、第一ニハ日本ノ米ハ獨特ノ品質
ヲ持ッテ居ル、外國ノ米ハ日本人ノ嗜好ニハ適ハナイ、日本人ノ口ニ合フ所ノ
米ハ、日本デ作ラレタ米デナケレバナラヌ、卽チ日本人ガ喰フ米ノ供給ノ範
圍ト云フモノハ極メテ狹イ、故ニ供給ガ過剰デアル場合ニハ米ヲ買溜メテ置
イテ、サウシテ凶作ノ場合ニ起ル不足ニ充實シテ········補充シテ、サウシテ自
然的ノ調節ヲ圖ラウト云フノガ、此法案ノ目的ノヤウニ唯今農商務大臣カラ
承ハッタノデアリマス、私ハ右ノ如キ需給的ノ調節ガ本案ニ依テ實效ヲ擧ゲラ
レルコトデアルヤ否ヤ、又目的ガ數量ノ調節ニアル以上、本案ノ如キ運用ノ
至難ナ法律ヲ制定スル必要ガアルヤドウカト云フコトニ付テ、疑問ヲ持ッテ居
ルノデアリマス、政府當局ノ御意見ニ依リマスルト、我國ノ米作ハ平年平作
ニ於テ、現今ノ所ニ於キマシテハ、約三百萬石ホドノ不足ガ始終生ズルト云フ
コトデアル、其位ノ不足ハ生ズルデゴザイマセウ、兎ニ角年々豊凶ガアリ、
從ッテ供給ノ過不足ハゴザイマセウガ、平均イタシマシテ毎年三百萬石ハ不足
スルモノト見テ宜カラウト思ヒマス、今後米ノ生產ハ唯今農商務大臣ノ仰セ
ノ通リ、段々殖エテハ參リマセウガ、其殖エル率ト云フモノハ、一方ニ人口
ノ增加及ビ國民生活ノ向上ニ依テ、殖エマスル消費額ノ增加率ヨリハ餘程少
ナイヤウニ思フノデアリマス、平均今日三百萬石ノ不足デアルトシマスト
今後ハ此ノ不足額ト云フモノハ段々多クナッテ參ルダラウト思フノデアリマ
ス、果シテ左樣デゴザイマスレバ、我〓日本人ハドウシテモ臺灣朝鮮ノ移入
米、若クハ外國ヨリノ輸入米ニ依テ此補充ヲ致シテ行カナケレバナラヌ、現
ニ過去八九年間ニ於キマシテ、二千五百萬石乃至三千萬石ノ移入米輸入米ガ
日本ニ這入ッテ參ッテ、我〓ハソレヲ喰ッテ居ルノデアリマス、斯ノ如クドウシ
テモ長イ間ニ不足ハ免レナイト致シマスレバ、此法律ガ一時的ノ調節ヲ目的
トスルモノデナイ以上、之ヲ以テ永久的ニ或ハ永續的ニ需給的調節ヲ圖ラウ
ト云フコトハ、不可能デアルコトハアルマイカト私ハ思ヒマスル、又此本案
ノ目的ガ數量ノ調節デアリマスルナラバ、餘リ外國へ輸出サレナイト日本米
ノコトデアリマスル故ニ、民間ニ於テ過剩ノ年ニハ貯藏シテ置キマシテモ、
官ニ於テ貯藏シテ置キマシテモ、餘リ變リハナイト私ハ思フ、斯ノ如ク考ヘ
マスルト云フト、外ニ一層有效適切ナル方法ヲ案出イタシマシテ、安ク澤山
ニ一般國民ノ需要ヲ滿タサシメル方法ハナイノデゴザイマセウカ、經濟ノ原
則ニ適ヒマスル所ノ、自然ノ大調節ニ依テ國民生活ノ安定ヲ圖ル方ガ得策デ
ハアルマイカ、今日ノ如キ際ニ於テ、本案ヲ以テ國民ニ臨マムトスルニ於テ
ハ政府ハ都會ノ消費者及ビ小農ヲ犠牲トシテ、所謂地主階級ノ大農ニ迎合
スル爲ニ、此ノ姑息不徹底ノ案ヲ提出サレタモノト誤解サレテモ、ドウモ致
方ナイト思フノデアリマス、是ガ私ノ第一ノ質疑デゴザイマス、第二ニハ此
ノ米穀法案ヲシテ最モ效力アラシムル爲ニハ米穀ノ生產及ビ消費ニ付テ、
正確ナル統計ヲ得ルト云フコトハ最モ必要デアリハセヌカト思フ、卽チ本案
ノ基礎ハ數字的ニアルノデアリマスガ、政府ハ果シテ如何ナル方法ニ依テ米
穀ニ關スル統計ノ完全正確ヲ期セラレムトスルノデアリマスルカ、實際米ノ
生產調査ノ困難ナルコトハ、到底國勢調査ニ依テ人口世帶ノ調査ヲスル如キ
比デハナイト私ハ思フ、專門家ノ玄人ト雖モ、豊作ノ見込ノ如キハ人ニ依テ
悉ク違フ、現在政府ガ唯一ノ賴ミトシテ居ラレル所ノ統計ノ如キハ、畢竟ス
ルニ推定的ノ統計デアリマシテ、「システム」モ統一モナイ唯見込ヲ聞イテ報
告ヲシ、其報告ヲ集メテ統計ヲ作ルト云フ.ニ過ギナイノデアルト私ハ考ヘテ
居リマス、況ヤ消費ノ方ノ方面ニ於キマシテハ、大體ノ數字ヲ得ルコトスラ、
ドウモ正確ナコトハ到底不可能ノコトデアリハセヌカト思フノデアリマス、
消費ノ數量ノ如キハ世間ノ景氣ノ好シ惡シ、財界ノ一上一下ニ依テ始終變更
シテ居ルノデアル、詰リ申サバ米ノ過不足ヲ定ムル決定案ヲ作ルト云フコト
ハ甚ダ困難デアリハシナイカ、若シ宜イ加減ノ見込ヲ以テ實際ニ正確ナラザ
ル假定的ノ需給表ヲ作ッテ、サウシテソレヲ以テ調節ノ基礎トナサムトスルニ
於キマシテハ、國民ハ堪ッタモノデハナイノデアル、極メテ不自然ノ調節ニ陷
リハシナイカト私ハ思フノデアリマス、不自然ノ調節ハ必ズ經濟界ノ何處ニ
モ暴露イタシマシテ、社會的ノ動搖ヲ起サネバ居ラヌノデアルト考ヘラレル、
斯ノ如ク數字ノ正確ハ絕對ニ本案ノ施行ニハ必要ト考ヘマスルガ、ソレニ付
マシテハ政府ハ如何ナル御成案ヲ有ッテ居ラルルカ、是ガ第二ノ質問デアリ
マス、第三ニハ、政府ハ此案ヲ以テ數量ノ調節ナリ、價格ノ調節ヲ目的トス
ルモノデハナイト云フコトヲ仰セラレテ居ル、或ハ少ナクモ數量ノ調節ヲ主
トスルト云フヤウニ仰セラレテ居リマスルガ、若シ果シテ然ラバ私ハ此政府
ノ仰セラレル所ハ、時代ヲ無視シタル御議論デハナイカ知ラヌト思フノデア
リマス、米ガ全國經濟ノ總テノ中心トナッテ居リマシタ、舊幕時代ノ常平倉制
度ナラバイザ知ラズ、今日ノ經濟組織、卽チ資本主義ガ經濟ノ根本ニナッテ居
リマス現在ニ於テ、此案ヲ以テ數量ノ調節ナリト聲言セラレテ、其實價格ノ
調節デアルト云フコトヲ隱シテ居ラレルノハドウ云フ譯デアルカ、私ニハ更
ニ譯ガ分ラヌ、若シ此案ヲ以テ政府ガ數量ヲ主トスル調節デアルト云フコト
ヲ、衷心ヨリ考ヘテ御居デニナリマスレバ、政府ハ果シテ時代錯誤ニ陷ッテ居
ラルルノデナイカト私ハ思フノデアリマス、政府ハ米ノ徵發ヲサレルノデハ
ナイ、御買ヒニナルノデアル、而シテ一方ニハ人民ノ自由賣買ト云フコトヲ
廣ク認メラレテ居ルノデアリマス、專賣デナイ以上、專賣制度ラ斷行セラレ
ザル以上、今日ノ經濟組織ニ於テ價格ヲ無視シテ米ノ調節ヲスルト云フコト
ハ到底出來難イコトデアラウト思フ、若シ左樣デアリマスレバ此米ノ値段
ト一般物價ノ關係ハドウ云フ風ニナリマセウカ、米價ハ一般物價ノ關係ヲ無
視シマシテ上下スルモノデアルト云フヤウナ說モゴザイマスルガ、斯樣ナコ
トハ私ハ斷ジテナイト思フ、ソレハ一時的變調ハゴザイマセウガ、ソレハソ
レデ特殊ノ事情ガ色〓アル、大體ニ於テ實際ニ於キマシテハ、米價ト物價ト
云フモノハ始終相伴ウテ居ルト云フノガ通則デアル、故ニ一般物價ニ觸レズ
シテ米價ノ調節ノミヲ計ルト云フコトハ、私ハ出來難イト思フノデアリマス、
若シ左樣デアリマスト云フト、一般經濟界ニ不自然ノ變動ヲ起ス道理デアッ
テ、唯市場ヲ混亂サスニ終リハシマイカト思フノデアリマス、其邊ニ付マシ
テ政府ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス、第四ニハ唯今申ス如ク此買上及ビ賣
渡ノ數量ハ直ニ米ノ値段ニ影響シテテッテ、延イテハ一般物價ニ影響シテ各
種ノ取引及ビ商業ニモ影響ヲ及ボシテ、自然國民生活ニ關係スルコトデアリ
マスル以上、政府ガ買上及ビ賣渡値段ニ標準ヲ得ルト云フコトハ最モ必要ノ
コトデアルト考ヘマスルガ、此ノ賣買價格ノ基準ハ如何ナル根本方針ニ依テ
定メラレルノデアリマセウカ、其基準ヲ何處ニ置カレマスカ、生產費ニ置カ
ルルカ、或ハ一般物價ニ置カルルカ、幾ラナラ買フ、幾ラナラ賣ルト云フ、
此目安ヲ何處ニ政府ハ御置キニナリマスルカ、色〓ノ關係ヲ考ヘマスルト云
フト、此ノ賣買運用ノ標準ト云フモノハドウシテ定メルカ私ニハ分ラヌノデ
アリマス單ニ其時ノ都合ニ依リマシテ、米ガ足ラヌカラ賣出ス、餘ルカラ買
フト云フヤウナコトデハドウモ私ハ安心ガ出來ナイノデアリマス、其邊ニ付
テドウゾ私共ノ了解ガ出來マスルヤウニ御〓示ヲ願ヒタイト思ヒマス、最後
ニ此法律ガ實行セラレマスル曉ニハ政府ハ國民ノ主食物デアル所ノ米ハ二
億圓マデハドウニデモ左右サレル、加之外國マデ勝手ニ左右シ得ルト云フコ
トニナル、卽チ政府ハ絕大ナル權能ヲ持ツト云フコトニナルノデアリマス、
而シテ此絕大ナル權力ノ執行機關ハ、承ハル所ニ依リマスルト、二三十人ノ
委員ヨリ成ル調査委員會ト云フモノガ出來テ、ソレニ依テ米ノ調節ガ計ラレ
ルヤウデアル、何レ斯道ニ堪能デアル所ノ人〓ヲ集メラレルコトデアルト思
ヒマスルガ、專門家デアレバアルホド、實地ニ於テハ或ハ生產ノ方面トカ或
ハ消費ノ方面、或ハ實際問題或ハ學理トカ、色〓ノ方面ガアリマスルガ、兎
ニ角直接間接ニ關係ノアル、經驗知識ノアル人〓デアラウト思フノデアリマ
ス、「インテレスト」利害關係ノソレソレ異ッテ居ル是等ノ人〓ガ集リマシテ評
議ヲサレテ、サウシテ意見ノ一致ト云フコトガ出來ルデアリマセウカドウカ
ト云フコトヲ私ハ疑フ、結局ハ有耶無耶ノ間ニ好イ加減ノ妥協點ヲ見出スカ、
或ハ不徹底ノ評議デ、ドウニカ斯ウニカ纒メルト云フヤウナコトニナリハシ
ナイカ、若シサウデアレバ洵ニ我〓國民ニ取ッテハ危險千萬ノコトデアル、
從ッテ調節ト云フモノハ甚ダ不自然ノコトニ陷リハシナイカト思フノデアリ
やい、且又米ノ買付ノ如キハ頗ル幾微ニ亙ル觀察ト、專門的知識經驗ヲ必要
ト致シマスル故ニ、迚モ御役人ナドガ買付ガ出來ル仕事デハナイト私ハ思フ、
金サヘアレバ買ヘルト云フヤウナ無造作ノ譯合ニハ參リマスマイト思ヒマ
ス、實行上非常ナル厄介ノコトデアリマシテ、此實效ヲ奏シ得ラレマスヤ否
や、私ハ洵ニ覺束ナク考ヘマス、私ハ國民ガ命ノ種トスル所ノ米ノ自由裁量
ヲ政府ノ手ニ御任セシテ、サウシテ政府ハ又之ヲ二三十人ノ少數ノ人ニ任セ
テ國民ハ安心シテ居レルヤ否ヤト云フコトニ付テ疑フノデアリマス、又此法
案ニハ殆ド有リト有ラユル道德上及ビ金錢上ノ弊害危險ガ伴フノデハナカラ
ウカト思フ、官紀ノ紊亂、奸商ノ跋扈、不正行爲、不當利得、或ハ消費者ト生
產者トノ間ノ軋轢、階級間ノ爭鬪ノ如キ、斯ル國民道德ヲ破壞スベキ危險分
子ガ此法案ノ中ニハ餘程含マレテ居ルノデハナイカト私ハ思フノデアリマ
ス、政府ハサル虞ハ毛頭ナイト信ジラレテ居リマスカ、既ニ過去ニ於テ幾多
ノ實例モアリマスルコトデアリマスカラ、其邊ニ付テハ政府ハ如何御考デア
リマセウカ、ソレモ併セテ伺ッテ置キタイ、其外私ハ此法案ニ付テ議論ハ幾ラ
モ持ッテ居リマスガ、外ニモ質問者ガ控ヘテ居リマスルコトデアリマスカラ、
又特別委員會デ詳細ナル御審議モアラウト思ヒマスカラ、是ダケノ疑問デ差
控ヘテ置キマス、ドウカ時間ノ遠慮ヲ致シマシテ、再應ノ御質疑ハ致サヌ積
リデアリマスカラ、政府ニ於キマシテモ滿足ナル御答辯ヲ與ヘラレムコトヲ
希望イタシマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=37
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038・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御質問ニ御答ヲ致シマスルガ、此ノ御質問ノ
コトヲ以テ考ヘマスルト、先ヅ其御答ヲ致シマスル前ニ、政府ハ如何ナルコ
トヲ以テ此法案ヲ以テ米ノ調節ヲ圖ラムトスルカト云フコトニ付テ大體ヲ述
ベテ、然ル後ニ御答ヲ致シタイト思ヒマス、丁度說明ノ中ニ申シマシタ通リ
ニ年々米ノ不足ヲ生ズル傾ガアリマシテ、ドウモ七八十萬ノ人口ノ增加ス
ルノニ伴ハナイノデアリマス、ソコデアリマス故ニ、常ニ此米ノ高低ガ激シク
テ、ソレガ爲ニヒドク經濟社會ノ總テニ付テ安定ヲ脅スヤウナコトガアルノ
デアリマスカラシテ、此儘捨テテ置クト云フコトハ總テノ方面ニ付テ國家ノ
くどうしやる
タメ不利ナリト思ウタノデアリマス、ソコデドウシタナラバ此ノ充實ヲ圖リ、
或ハ從ヒマシテ價ノ高低ト云フモノヲ激烈ニシナイヤウニスルノデアラウ
カ、其方ハ如何ニシタラ宜カラウカト云フコトニ及ビマシテ、此案ヲ以テ調
査會ニ掛ケ、又政府ニ於テモ種々〓究ヲ致シタル次第デアリマス、ソコニ至
リマシテ、ドウモ日本ノ米ナルモノハ特有的、特殊ノ性質ヲ有ッテ居ッテ、日
本ノ米ガ不足スルカラシテ外米ヲ持ッテ來レバ宜シイ、又日本ニ米ガ幸ニ豐作
デアルカラシテ、餘ッタ故ニ、之ヲ外國ニ賣ッタラバ宜シイト云フ如キ、國際
的貿易關係ヲ十分ニ持チ得ル品物デアリマスルナラバ、是ハ自然ニ委セルト
云フコトハ至當デアリマス、併シ不足シテ而シテ外國カラ外米ヲ持ッテ來レバ
ソレデ十分ナリトスルカト云フト、或點マデハ補ヒ得マスガ、ソレ以上ハ幾
ラ高クテモ日本米ヲ矢張食スルト云フ數ガ多イノデアリマス、又剩餘アッテ
餘リ安イカラシテ、外國ニ行ッテ投賣デモシテ、内ノ價格ガ調節ヲ得マスルカ
ト云フト、是モ外國ニ需要ノ乏シイモノデアリマス、サウ云フヤウナコトデ
アリマスカラシテ、少シク米ガ足ラナクナルト云フコトガアリマスト、一般
ニヒドク價ガ高クナリ、又ソレニ反シテ少シク餘計ニモノガ出テ來ルト、其
剩餘ノ爲ニ一般ノ米ノ價ト云フモノヲヒビク下落セシムルト云フヤウナコト
ガ起ルノデアリマス斯ク過不足ガアッテ、其ノ過不足ノ爲ニ騰落ガ餘リ甚シ
クアルト云フコトハ、生產者ニ對シテモ消費者ニ對シテモ宜クナイ、安クナ
ルト云フコトハ必ズ翌年ト云ヒマスカ、將來ニ至ッテヒドク高クナッテ消費者
ヲ脅カスト云フ時デアル、又ヒドク安クナルト云フコトハ生產者タル者ニ安
心ヲ與ヘナイト云フ時デアル、故ニ之ヲ何トカシテ根本的ニ解決ヲスル途ヲ
ツケタイ、ソレニハ第一ニ米ノ供給ヲ成ルタケ圖リ、始メノ平年ニ於テ二百
萬モ不足ガ起キマスルカラ、其不足ガ起リマスレバ其不足ガナイヤウニ第一
ニスルト云フコトガ必要ナノデアル、其故ニ極力米ノ增殖ヲ圖ルコトニ努メ
ツツアルノデアリマス、農事試驗場ヲ各所ニ設ケテ、品質ノ改良ナリ肥料ノ
改良ヲシテ、而シテ又耕地整理、其外開墾助成法ナドヲ設ケマシテ、サウシ
テ十分ニ此米ノ供給ヲ裕カニスルト云フコトヲ一面ニ於テハ努メツツアル
ノデアリマス、所デソレト又同時ニ、矢張米ノ過不足ト云フモノヲ平均サ
セル途ヲ講ズルト云フコトハ必要デアリマス、ソレモ必要トスレバ何等カノ
機關ヲ設ケテ此ノ過不足ヲ調節ヲスル、斯ウ云フコトガ必要ガアルノデアリ
マス、卽チ米ノ數量ノ調節ヲスレバ、從ッテ價ノ調節モ出來ル譯デアリマスカ
ラ、大〓ノモノハ其品物ノ過不足ニ依テ價ガ定ッテ來ルデアリマス故ニ、此數
量ト云フモノノ調節ヲ圖ルト云フコトガ第一ニ必要デアリマス、是カラ起リ
マシタル此ノ米穀法デアリマス、併シ米穀法ニ於テ常ニ此所デ價ヲ調節ヲス
ル爲ニ屢〓之ヲ行フカト云ヒマスト、此モノハ餘リノアル時ニソレヲ買
ヒ貯藏シテ、他日不作ノ時ニ補フト云フ爲ニ爲スノガ目的デアリマス、
從ヒマシテ出シ入レヲ致シマスト云フ、此著手ヲスルコトハ成タケ民間ノ
賣買、又價格ノ高低ニ任シテ置イテ、已ムヲ得ナイト云フヤウナル、常識ニ
於テ判斷シテ斯ノ如ク高イト云フコトハ是ハドウモ捨テテ置ケナイ、又斯ノ
如ク安イト云フコトニナレバ、生產者ヲ害シテ、從ヒマシテ經濟社會ニ影響
モ及ンデ參ルコトデアルカラシテ、是ハ捨テテ置ケナイト云フ如キ、極端ヨリ
極端ニ走ル間ガアルノデアリマス、其時ニ於テ政府ハ或ハ買ヒ或ハ賣ルト云
フコトヲ以テ、成ダケ其懸隔ノ甚ダシクアルモノヲ、成ダケ高低ニ付テ離レ
テ、ソレヲ懸隔ノ甚シクナイヤウニ狹メテ行キタイ、是ガ第一ニ之ヲ著手ス
ルト云フコトニ付テノ考デアリマス、ソレデ斯ク致シマスト云フト、先ヅ十
ノモノガ七八ハ自然ノ高低ニ任シテ居ルノガ當然デアリマス、併ナガラ其間
ニ餘リ安クナッタ、生產費モ償ヒ得ナイ、而シテ是デハ此儘捨テテ置ケバ、斯ン
ナコトデアレバ、農家ガ段々委靡シテ、サウシテ遂ニハ地方ノ生產者ガ減ズル
ト云フ如キコトガ起リ、又斯ノ如ク高イト云フコトニナレバ、國民一般ノ消費
者ノ爲ニ非常ナ不利デ、遂ニハ一體ニ不安ヲ生ズルト云フヤウナル時ガ起ル
ノデアリマス、サウ云フ時ニ於テ、是ガ餘リ酷クナイヤウニ賣ル、斯ウ云フコ
トカラ元ガ主トシテヤリマシタノデアルカラシテ、酷ク年々此モノヲ以テ、或
ハ買ヒ或ハ賣ルト云フヤウナコトハナイノデアリマス、例ヘバ昨年ノ今日ニ
於キマシテハ當議會ニ於テモ、物價ノ調節ニ付テハ非常ニ喧マシイコトデア
リマシタ、米ハ五十五六圓、六十圓ト云フ如キ價ヲ見テ居ッタ、是デハ國民一體
ニ付テハ安定ヲスルコトハ出來ナイト云フ如キコトデ、酷ク御互ニ苦シンダ
ノデアリマス昨年ノ今日ハサウデアリマシタガ今日ハ如何デアルカ、其高カッ
タ米ガ遂ニ二十六圓七圓ト云フ如キモノニ相成リマシテ、半額ニモ及バヌト
云フコトニナッタノデアリマス而シテ農家ノ生產ガ幾ラノ原價ニ付テ居ルカ
ト言ヒマスト、ソレヨリ遙カ上ニ付テ居リマシテ、今日ノ儘ニ置ケバ生產者ハ
非常ナル農家ハ困難ヲ來スト云フコトニナッテ、其苦情ハ頻々ト現ハレテ居ル
ヤウナコトデアリマス、サウ云フヤウニ極端カラ極端ニ參リマシタ時ニ於テ
ハ、或點迄此米ヲ買上ゲテ、サウシテ他日必ズ又高イ時ガ來ルノデアリマス
カラシテ、其時ノ用意ヲ今日ヨリシテ置ク、左スレバ餘リ市場ニ溢レズシテ、
又價モ酷イ所迄下ラズシテ或點迄ハ維持シテ、サウシテ又一方ニハ米ヲ買入
ルコトガ出來ル、而シテ買ッテ置キマシテ、是ガ明年ニ至ルカ明後年ニ至リマ
シテ、別段米ヲ出スト云フ如キ必要ガナイナラバ、是ハ何年デモ矢張保管
ノ途ヲ以テ置クト云フ積リデアリマシテ、價格ノ上ニ於キマシテ常ニ高低
ヲ制シテ行クト云フ如キ緻密ナ、精細ナル、細カイコトヲソレデヤルト云フ
者デハナイノデアリマス、是ガ第一、此ノ常平倉ヲ建テマスニ付テ色〓方法
ヲ考ヘテ見テモ、ドウモ餘ル時ニ買ッテ他日ノ用意ヲ爲スト云フヨリ外ニ、是
ナラバト云フ方法ヲ見出シ得ナイノデアリマス、衆知ヲ集メマシテ色〓議シ
マシタガ、ドウモソレヨリ外ニ良法ヲ得ナイ、之ヲヤラヌト云フコトニナリ
マスト、米ハ幾ラ下ガラウガ幾ラ高カラウガ、是ハ自然ニシテ置クヨリ外ハ
ナイト云フコトニ歸著スルヤウニ考ヘルノデアリマス、先ヅ先ヅ今日ノ事情
ニ照シテハ、斯ノ如キ程度ニ於テ、サウシテ政府ガ設備ヲ爲スト云フコトハ
先ヅ不完全ノ點モアリマセウガ、今日ノ所デハ最モ必要デアラウト云フコト
デアリマス、ソレガマア大體ノ趣意ニ於テ立テラレマシタノデアリマスガ、
其コトニ付テ今御質問ノ、此貯蓄ニ付テハ民間デ蓄ヘヤウガ政府デ爲サウガ
同ジデアルト云フコトデアッテ、何故ニ政府ハ之ヲヤルカト云フノデアリマ
ス、續キマシテ資產家ヲ保護シテ一般ニ及バヌヤウニ思フガドウカト云フコ
トノヤウニ承知イタシマシタガ、是ハ民間デ貯ヘテ居リマスレバ誠ニ結構デ
アリマス別ニ政府ガ自身ニ是非トモ取ラナケレバナラヌト云フコトハナイ
ノデアリマスガ、今ノ儘デアリマスト民間デ貯ヘル力ガ乏シクシテ常ニ投賣
ヲシ、又生產者中ニモ之ヲ維持スル力ノナイモノガ遂ニ賣ル、ソレガ爲ニ全體
ガ安クナッテ行クト云フヤウナコトニ相成リマスルカラ、サウ云フ時ニ於テハ
政府ハ相當ナ價デ買入レテ置イタナラバ、斯ノ如キ不幸ヲ見ズシテ、サウシ
テソレゾレ生產者ニ於テハ仕末ガ出來ルコトニ相成リマス、併シソレニ付テ
モ數量ニ限リガアリマス、又其價ニ限リガアリマス故ニ、政府ノ出シマシタ
ル價デ宜シイト言ヘバ賣リ、左モナケレバ民間デ維持スル、併シ其民間ガナ
カナカ高イ考ヲ持ッテ賣ラナイト云フモノナラバ、强ヒテ買ハナケレバナラヌ
ト云フコトハナイノデアリマスカラシテ、ソレデ矢張國內ニアルト云フコ
トデアリマスレバ、或程度ニ於テハソレデモ宜イ譯ナンデ、併シサウデナイ、
ドウシテモ安クテモ何デモ賣ラナケレバナラヌト云フモノガ出來ルモノデス
カラ、サウ云フ時ニ於テハ段々ソレヲ買ウテ貯ヘルト云フコトガ必要ト考ヘ
タ次第デアリマス、ソレカラ資產家ヲ保護スルト言ヒマスガ、是ハ少數ノ資
產家ト云フノデハアリマセズ、日本ニ於テノ大部分ヲ占メテ居ル農家ガ、餘
リ安クナルト困ルノデアリマス、其上ニ却ッテ資產家ヨリモ反對ニ、資產家ニ
アラズシテ貧乏ナル中農小農ト言ヒマスカ、其方ガ困ルノデアリマス、資產
家ハ自身ニ見込ヲ立テマシテ、二年デモ三年デモ自身ニ米ガ高クナルト言ヘ
バ、高クナイ時ニ賣ラヌデモ宜イノデアリマスカラ、何ニモ賣ル必要ガナイ、
靜ニ徐ロニ自身ニ考ヲシテ宜シイノデアル、併ナガラ中農少農ニ行クト、其
餘地ガナイ餘裕ガナイノデアリマス、ソコデ安クテモ何デモ賣ラナケレバナ
ラヌト云フコトガ起ルノデアリマスカラシテ、ソレデ此途ニ依リマシタナラ
バ幾分カ彼等ヲ助ケルコトモ出來ルト云フ積リデアリマス、米ノ數量ニ付テ
檢査ガ不十分デアル、是ハ如何ニスルカト云フ、成程今日ノ檢査ハ十分ナリ
トハ申シマセヌ、併シ方法ハ八月九月ノ交ニナリマシテ凡ソ米ガドノ位今年
ハ出來ルカト云フ時ニ、地方長官ニ取調ベヲ命ジマス、地方長官ハ郡村ニ至
リマシテ、サウシテソレゾレ郡村ノ役人ノ手ニ於テ幾ラ今年ハ出來ル見込ミ
デアル、此所ハドウアルカト云フコトヲ集メマシテ、サウシテ全國ノ此收穫
ノ見込高ト云フモノヲ集メルノデアリマス、是ガ九月ノ丁度端境ノ期ニ於キ
マシテ最初ニ一囘、第一ニヤリマス、第二ニ又十月ノ月ニ入リマシテ其時ノ
現在ノモノヲ調ベサセル、尙ホ又一月ニナリマシテ愈、實收ガ········此ノ實收額
ヲ又調べマシテ、サウシテソレデ始メテ確定ヲシテ今年ハ幾ラ出來タト云フ
コトヲ定メルノデアリマス、其三囘調べマシテ、ソレデ先ヅ全國ニ付テハ是
ダケノ今年ハ實收額ガアルト云フコトヲ極メルノデアリマスガ、是ハ是マデ
ニ於テ實收ハ見込ミト云フモノト可ナリ差異ヲ生ズルヤウナコトモ往々アリ
マシタガ、近年ニ至リマシテハ餘程此調ベガ正確ニ進ンデ參リマシテ、大正
七年、八年、九年ニ至ル三箇年ノ如キハ餘リニ狂ヒガナイ、其調ベガ餘程實
際ニ近ヅイテ參ッタヤウナル次第デアリマス、ソコデアリマスカラシテ、今日
ノ調ベハ之ヲ以テ先ヅ適當ナルモノトシテ居リマス、是モ段々進ミマス上ニ
付テハ又改良スベキ點ハ改良イタシマシテ、成ベク其收穫ノ實ニ近カラムコ
トハ、調ベニハ必要ト思ヒマス、色〓當局ニ於テハ其精密ニナルコトニ付テ
ノ調べノ考究ヲ致シテ居ル次第デアリマス、第三ニハ數量ヲ基礎トシテ價格
ヲ基礎トセナイト云フコトハ、何ヤラ價格ヲ隱シテ置イテ、サウシテ行クト
云フノデ、甚ダ面白クナイト云フ如キコトニ付テノ御問デアッタヤウニ承知イ
タシマシタガ、是ハ價格ヲ隱スノデモナケレバ何デモナイノデアリマス、初
メカラ申ス通リニドウシテモ價格ハ數量ヨリ起ル價格デアリマスル故ニ、數
量ヲ主トシテサウシテソレゾレ買入ヲナシ又賣リヲナシタナラバ自カラ價格
ニ影響スルノデアリマス、ソレガ一番根本方針トシテハ必要デアラウト云フ
コトデ、始終此充實ト云フコトヲ主トシテ居リマス、穀物上ノ改良ヲ致シマ
スノモ、全ク食糧ノ充實ト云フコトヲ主トシテ行ク、其充實ノ一部ノ是ハ方
法デアリマシテ、今日ハ何モナイ、米ガ安イ、ソコデ買入レル、此買入レル
ノハ何ノ爲ニ買入レルカト云フト、他日不足ガアル、サウシテ酷ク米ガ高ク
ナル、消費者ヲ脅カスト云フコトガアッテハ困ル、故ニ今ノ間ニ買ウテ他日ノ
用ヲ爲サウト云フ方ノモノデアリマシテ、啻ニ此價格ヲ棄テヽ置クト云フ譯
デハナイノデアリマスカラ、ドウシテモ價格ト數量ト云フモノハ常ニ伴ウ
テ來ルモノデアルト承知シテ覺悟イタシテ居ル次第デアル、ソレカラ委員ヲ
選ブ、此委員ト云フモノハ如何ナルモノカ知ラヌガ、ナカナカ一致スルモノ
ヂヤナイト云フコトデアッタ、是モ一應御尤デアリマスガ、此調節ヲ付ケマス
上ニ付マシテハドウシテモ唯一人ノ人ガナスヨリモ、各方面ニ付テ廉潔ニ
シテ極ク公平ニ、サウシテ其方ニ堪能ナル人ヲ以テ調査委員ト云フモノヲ設
ケルト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマスガ、其ノ委員會ニ諮詢イタスニ付
マシテモ、エライ困難ナルコトデ、常ニ此調節ヲ圖ル上ニ付テ此委員ガ調査
スル、斯ウ言ウテ來ルヨリモ、初メ申ス通リニ十ノモノガ七八ハ捨テヽ置イ
テ、其上廉イ時ハ宜クナイ、此上高イト云フ時ニ斯ウシタイト云フ時ニ起ル
モノデアルカラシテ、ヒドクムヅカシク無クシテ是ハ行クモノデアルト承知
シテ居ル次第デアリマスカラシテ、餘リ困難トハ政府ハ考ヘテ居リマセヌ、
ソレカラ價ヲ定メル上ニ付テ如何ナルモノヲ標準ニスルカ、是モ何ヲ標準ニ
スルト云フ確ト定ッタコトハ此モノニ付テハアリマセヌガ、併シドウシテモ物
ノ價ヲ定メルト云ヒマスルト原價ハ幾ラニ付テ居ル、今日ノ時價ト云フモ
ノハ是ハ正シイモノカ、或ハ何等カノ事情デ斯ノ如ク廉クナッテ居ルモノカ高
クナッテ居ルモノデアルカト云フコトヲ、其時ノ狀況ニ照シテ初メテ判斷スル
モノデ、初メカラ番匠曲尺ヲ以テ此處マデ來タラドウスル斯ウスルト云フガ
如キモノデハナイ、又斯マデモ精密ニスルト云フコトハ却テ宜クナイカラ、
サウ云フ途ニ於テ此委員ニ諮ルト云フ考ハナイノデアリマス、ソレカラ買入
レルモノハ實ニ銳敏ナ機密ナモノデアッテ、ドウ斯ウト云フコトガアリマシタ
ガ、是モ此品物ヲ廉ク買入レルトカ、或ハ是非共是ダケハ斯ウシナケレバナ
ラヌト云フモノデアリマスルト、丁度御質問ノ通リニ相成リマスルガ、私共
ノ思フノデハ是ハ成ベク機密ニヤラヌガ宜シイ、又器用ニヤラヌガ宜シイ、
之ヲ機密ニヤリ、又器用ニヤッテ來マスト云フト、其間ニドウモ色〓ナ弊害ヲ
伴フコトガ往々アルコトデアリマスカラシテ、成タケ世ノ中ニ打出シテ、話
モ分ルヤウニシテ公ニ分ルヤウナ、公ノ途ヲ執ッテ行クヨリ仕方ガナイ、餘リ
巧ミヨリモ、拙ナイ方デモ成タケ人ノ知ッテ、祕密ナラヌヤウナ途ヲ取ル方ガ
宜カラウ、ソレニ付テハ買入レル上ニ付テモ、チヤント場所ヲ示シテ、價格
ヲ示シテ、サウシテ誰デモ持ッテ來イト云フ意味ニ於テ買入レルノデアリマ
スサウ云フヤウニシテ來テ、公ニスル方ガ宜カラウト云フコトデ、斯ウ寧
ロ不器用ナル方ヲ主トシテ置イタル所以デアリマス、ソレカラ一般ノ價格ニ
米價ハ伴フモノデアル、米バカリ高クスルトカ、低クスルトカ云フコトハ一
體ハ出來ナイコトデナイカト云フ御質問モアッタヤウデアリマスガ、是ハ御
質問ノ通リデアリマスガ、併シ唯其處ヲ說明シテ置キマスノハ一般ノ物價ナ
ルモノハ一般ノ經濟ノ消長ニ依テ動イテ參ルノデアリマス、金融上ノ關係、
其他外國市場ノ關係、色〓ナコトニ依テ動イテ參ルノデアリマスカラ、其
一般ノ價ガ高クテ、ソレト矢張比例シテ一般ニ動ク米ノ多イ少イデハナイ、
ソレト同樣ニ米ガ高クナル、又ソレト同ジヤウナ比例ニ於テ米モ廉クナルト
云フモノナラバ此間ニ付テ買ッタリ賣ッタリスル必要ハ何モナイ、例令米ガ
廉クナラウト、一般ノモノガ廉クテ、ソレガ相當ナリトシテ見レバ、何モ買
フ必要ハナイノデアリマス、一例ヲ擧ゲテ見マスルト、大正四年ニ於テ米ヲ
買入レマス時ニハ、米ヲ十五六圓ノ價ト思ウタモノガ、十二圓三圓ニナッテ困
難スルカラシテ買フ、今日ハドウモ一體ノモノガ米ガ二十五圓六圓トシテ、其
時カラ較ブレバ非常ニ高イモノデアルガ、此高イモノハ大正四年ノ米ノ價ヨ
リ、大正十年ノ米ノ價ハ非常ナ高イモノデアルガ、併シ一般ノ物價ニ較ベテ見
ルト此米ハ決シテ高イノデナイ、今日ノ米ハ廉イノデアル、而シテ生產費ヲ
償ハナイノデアルト云フコトニナリマスレバ、其處ニ付テ考ヘナケレバナラ
ヌ、併シ一般ノ消長ニ依テ米ガ消長スルト云フ價デアリマスレバ、ソレデ宜シ
イノデアリマスガ、唯米ガ有ル無イト云フ過不足ニ依テ消長高低ヲ來スト云
フ時ニ於テ初メテ起ル、是ハ勿論デアル、全ク全體ノ物價ノ高低ト云フニ非ズ
シテ、米ノ過不足豐凶ニ依テ、米ソレ自身ノ高低ガ激シクアルト云フ時ニ初メ
テ之ヲ注意スベキコトトシテアルノデアリマス、申サバ一般ノ價ト今日此調
節ヲナシタイト云フ米ノ價ノ其高低ト云フモノハ、殆ド違ッタル原因ニ於テ來
ルモノヲ處理スル心得デアリマス、色〓御質問ノ要點ガ十分ハッキリト分リマ
セヌガ、先ヅ大體サウ云フコトデ御答ヲ致シテ置キマシテ、尙ホ御質問ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=38
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039・藤村義朗
○男爵藤村義朗君 段々詳シイ御說明ニ預リマシタガ、了解イタシ兼ネル點
モ大分アリマス、又分ッタヤウデ分ラヌヤウナモノモアリマス、併ナガラ應答
ヲ重ネテ居リマスト云フト、ナカナカ時間ガ餘計カカルダラウト思ヒマス、
私ハ是デ差止メマスガ、私ノ質問イタシマシタ箇條ニ付テ御答ヘ漏シノ廉ガ
一件ゴザイマスカラ、ソレヲ伺ッテ置キマス、ソレハ此法案ハ色〓官紀紊亂ト
カ或ハ不正行爲トカ云フコトニナル分子ヲ、大分含ンデ居ルヤウデアリマス
ガ、ソレニ付テノソレ等ヲ防止スルコトニ付テ、如何ナル御考ヲ有ッテ御居デ
ニナルカト云フコトデアリマス、ソレカラ尙ホ唯今ノ御答辯ニ付マシテ、此
需給調節委員會ト云フモノガ非常ニ重要ナ機關ノヤウデアリマスガ、一應伺ツ
テ置キタイノハ此ノ委員會ヲ開カレマスル時ニ於テハ、一般公衆ノ傍聽ヲ許
サレマスカ、卽チ唯今モ仰セラレタ通リニ、成タケ公ニシタイト云フモノ
デアリマスレバ此會議ハ公開サレマスヤ否ヤト云フコトヲ一言伺ッテ置キマ
ス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=39
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040・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 公開ハ致シマセヌ、唯諮詢機關トシテ、其時
ニ於テ政府ガ此事ヲ諮詢スルト云フコトニナレバ、其米ノ價ヲ定メル如キモ
ノヲ主モナルモノトシテ諮詢スル積リデアリマス、無論祕密デアリマスカラ、
唯私ガ公ト申シマシタノハ、單リ農商務ナラ農商務大臣トシテ自身ダケガ決
メテ、而シテ指定商人ナドヲ作ッテ、ソレゾレ米ノ買入ニ掛カルト云フヤウナ
コトニアラズシテ、決ッタモノハ今云フ團體ノ諮詢ヲ經テ決メマシテ、サウシ
テ豫メ此價ニ於テ買入レル、サウシテ場所ハドウスルト云フコトヲハッキリ
ト、豫メ世ノ中ニ公〓ヲ致シテ、サウシテソレニ於テ望ミノ者ガアレバソレ
ヲ買入レテヤル、斯ウ云フコトニ致ス、其ノ公デアリマシテ、價格ヲ定メルノ
ニ傍聽ヲドウ斯ウト云フコトデナイノデ、ソレカラ一ツハ何デアリマシタカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=40
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041・藤村義朗
○男爵藤村義朗君 官紀紊亂、奸商ノ跋扈ト云フヤウナコト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=41
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042・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 官紀紊亂トカ、或ハ弊ヲ防グトカ申スコトニ
於テハ、今申ス途ニ於テ、サウシテ世ノ中ニ是デ買入レル、又成ベク數量モ
此位ニ今度買フゾ、又何月何日マデハ何人デモ此價額ナラバ持ッテ御出デナサ
イト云フ如キ途ニ依リマシタナラバ、種々ナル弊モソレニ於テ防ギ得ル、斯
ウ云フ考発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 時間ガマダ早イヤウデゴザイマスガ、通〓者ガ大
分ゴザイマスカラ、此際休憩ヲ致シテ、午後一時十五分ヨリ開會ヲ致シマス
午前十一時五十三分休憩
午後一時二十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
本日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔法案可決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス
〔上山滿之進君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=45
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046・上山滿之進
○上山滿之進君 私ハ去ル一月二十八日ノ本會議ノ議場ニ於キマシテ、常平
倉制度ノコトニ付テ政府ニ質問ヲ致シマシタ、丁度政府ハ御調査中デアッテ、
要領ヲ得タ御答辯ヲ伺フコトガ出來ナカッタ、當時私ノ質問シマシタ故ハ、其
時ノ模樣ガ常平倉ニ關スル法律案ヲ提出ニナリサウデアリマシタカラ、提出
前ニ大體ノ趣意ヲ伺ッテ、サウシテ私ノ申上ゲルコトガ若シ至當デアッタナラ
バ、適當ニ此ノ法律案ヲ制定サルルコトヲ希望シタ趣意デアリマシタ、所ガ
唯今此議場ノ問題トナッテ居リマス米穀法案、卽チ常平倉制度ト一身同體ノモ
ノデアリマスガ、此ノ法律案ニ於テ寔ニ殘念ナガラ私ノ斯クナクテハナラヌ
ト考ヘタ點ガ、考慮ハ致サレタカ知レマセヌガ、相當ニ解決シテ居ナイノデ
アリマス、ソレデ此場合ニ質問ヲ致シマシテ、政府ノ御所見ヲ伺ハザルヲ得
ナイ成行ニ至リマシタ、私ハ前囘ニモ申上ゲマシタ通リニ、常平倉制度ヲ確定
スルト云フコトハ、國民生活ヲ安定スル上ニ於テ大ニ必要ノ事デアルト云フ
持論ヲ抱イテ居ル者デアリマス、是ガ社會問題ヲ解決スル重要ナル前提デア
ルト確信ヲシテ居ル者デアリマス、此見地ヨリシテ此ノ米穀法案ガ本議會ヲ
通過スルコトヲ熱心ニ希望スル者デアリマス、斯ノ如キ希望ヲ有ッテ居リマス
ト同時ニ、其成立ツ法案ガ大體ニ於テ著シキ缺點ノ無イコトヲ、又切ニ望ム
者デアリマス、細目ハ如何ヤウデモ宜シウゴサイマス、大體ニ於テ大ナル缺
陷ガ若シアリトスレバ、之ヲ實行スル上ニ於テ方々ニ夥シキ故障ガ起ル、折
角國民ノ生活ヲ安定シヤウト思ッタモノガ、却テ國民生活ヲ脅威スル結果ヲ生
ズルコトハ疑ノナイコトト思ヒマス、ソレデ本案ノ提出ノ趣意ニハ贊成ヲ致
シマスガ、其趣意ヲ貫徹スル爲ニ此法案ガ大體ニ於テ全キコトヲ得ルヤウニ
希望スル、此意味デ質問ヲ致スノデアリマス、第一ノ質問ハ此前ノ時ニモ御
尋ネイタシマシタガ、米ノ買入、賣出シノ時期數量及ビ價格、是等ヲ決定スル
方法如何ト云フコトデアリマス、私ノ考ニ依リマスレバ、先刻藤村男爵カラ
御述ベニナッタ通リ、委員會ナルモノヲ設ケテ、其問題ノ起ヲタ度〓ニ相談ヲ
シテ、時期數量價格ヲ決定スルト云フコトハ、甚ダ其當ヲ得ナイト斯ウ云
フ風ニ考ヘテ居リマス、其考ヲ以チマシテ一月二十八日ニ、ドウ云フ政府ハ
御考デアルカト云フコトヲ伺ヒマシタケレドモ、調査中ト云フコトデ、- 切
御說明ヲ得ナカッタノデアリマス、私ハ此點ガ相當ニ解決ヲセラレテ、然ル後
ニ法律案ガ提出サレルコトヲ希望シタノデアリマス、遺憾ナガラ唯今我〓ノ
手許ニゴザイマスル法律案ニハ此點ガ解決ヲサレテ居ナイ、ソレニ付テ第一
御尋ネイタシマスガ、此ノ委員會ガ唯今申上ゲタ事柄ヲ決メルニ付テ、第
如何ナル標準ヲ以テスルノデアルカ、是ガ分ラナイノデアリマス、ドウ云フ
根柢ノ下ニ其意見ヲ定メルノデアルカ、甚ダ是ハムヅカシイ問題デアリマス、
委員會ガ如何ナル標準ヲ以テスルカ、如何ナル根柢ニ於テ其意見ヲ定メルカ
ト云フコトノ爲ニハ、提案者デアル本會農商務省ニ於テ相當ノ考ガナケレバ
ナラヌ、所ガ其御考ガ私ノ今日マデ承知イタシマシタ限リデハ、頗ル根據ノ
薄弱ナモノデアルヤウデアリマス、此點ニ付マシテハ後ニ具體的ニ私ノ質
問條項ニ於テ申上ゲル方ガ便利ト思ヒマスカラ、唯今差控ヘマスガ、此場合
申上ゲテ置クコトハ甚ダ根據ノ乏シイモノデアル、其乏シイ根據ノ上ニ成立ツ
タ數字ヲ以テ、農商務省ハ此仕事ヲ進メテ行カウトシテ御出デナサルヤウニ
私ニハ見エルノデアリマス、當ノ責任者デアリ、又之ニ從事スル多數ノ官吏
ヲ持ッテ御出デニナル農商務大臣ニ於テ、旣ニ相當ナ標準ガナイ、相當ナ根據
ヲ御持チニナッテ居ナイト云フコトニナルト、委員會ノ知識モ大〓推測シラレ
ルノデアリマス、私ハ此ノ委員會ヘ其品性ニ於テモ、知識ニ於テモ、能力ニ於
テモ、優越ナル人ガ集ルコトト信ジマス、併ナガラ之ニ集マル人ハ何レ各〓自
分ノ本職ヲ有ッテ居ル人デ專門ニ斯ウ云フ問題ニカカルコトガ出來ヌノデア
リマス斯ノ如ク唯今申上ゲルヤウニ細カイ數字ヲ基礎ニシテノ材料ハ、矢
張政府ノ提出ニ俟ツヨリ外ニ途ハナイモノト思フ、ソレハ其人〓ノ本然ノ
能力ノ問題デナイ、其人ミノ材料ヲ持ッテ居ルコトガ少ナイ、集メルコトガム
ヅカシイ、又之ヲ自分デ〓究スルコトノ餘裕ガナイ、斯ウ云フ點ニ於テ、ド
ンナ人ガ委員ニ當ッテモ、委員自身デ數字上ノ根據ヲ以テ意見ヲ立テルコトハ
出來ナイ、是ハドウシテモ當ノ責任者タル農商務省ノ持ッテ居ル數字上ノ根據
ニ依ラナケレバナラヌ、而シテ其ノ根據ト云フモノガ極メテ薄弱ナモノデア
ルトスルト、委員會ノ協議ノ結果ハ實ニ恐ルベキモノガアル、第二ニ其時〓
ニ當ッテ委員會ガ常識デ以テ只決メル、或ハ之ヲ買上ゲルト決メル、或ハ之ヲ
賣ルト決メ、其價格ガ幾ラ、數量ガ幾ラト云フコトハ、其時ニ思付ニ依テ
決メル、斯ウ云フコトニナリマスト偖此ノ生產者消費者ト云フモノガ、何
處マデ一體心得テ居タラ宜イノデゴザイマスカ、モウ始終不安ノ念ニ打タレ
ナケレバナラヌ、是ガ委員會デ此問題ヲ決メルト云フコトノ一ツノ缺點デア
リマス、又委員會ヲ愈〓開クコトニナリマスト、米ノ經濟界ニ甚ダ動搖ヲ來タ
ス譯デアリマス、是マデ幾ラモ例ガアル、政府ガ米ヲ買入レサウダト云フト、
直グ蠣殻町等ノ相場ガ上ッテ來ル、今度此制度ニ依テ而シテ賣出スト云フコト
ニナレバ直グ下ル、甚ダシキ動搖ヲ其場合來タスノデアリマス、サウシテ最
モ困ルコトハ、先刻藤村男爵モ詳シク御述ベニナッタ、委員會ニ伴フ各種ノ弊
害、之ヲドウシタラ一體防グコトガ出來ルノデアリマスカ、到底私ハ防ギ得
ナイモノト思フ、若シ私ノ今申上ゲタ種々ナ點ガ果シテ其通リデアルトスレ
バ、委員會ナルモノヲ設ケテ其時ニ應ジテ買上ゲ、賣出ノ時期數量價格ヲ決定
スルト云フコトハ、確ニ米ノ經濟社會ヲ攪亂スルモノデアル、此方法ハドウシ
テモ避ケナクレバナラヌト思フノデアリマス、若シ私ノ憂フルガ如ク米ノ經
濟界ヲ攪亂スルヤウナコトニナリマシタナラパ、國民生活ノ安定ヲ得ナイノ
ミデナイ、却テ國民生活ハ大ニ脅カサルヽト云フコトハ申スマデモナイコ
トデアリマス、私ノ見ル所ニ依リマスレバ、問題ノ起ッタ時卽チ米ガ多イカラ
是ハ買ハナケレバナラヌ、少ナイカラ賣ラナケレバナラヌ、其問題ノ起ッタ時
ニ至ッテ彼是評議ヲシテ、其買入ナリ賣出ノ時期數量價格ヲ決定スルト云フコ
トハ宜クナイ、玆ニ相當ナ標準ヲ設ケテ之ニ依テ實行シテ行クト云フコトデ
ナケレバナラヌト思フノデアリマス、理想ヲ申セバ自動的ノ標準ヲ設ケテ一
切人間ノ頭デソレヲ支配シナイ、一度自動的ノ方法ヲ設ケタナラバ、米ヲ買
フモ賣ルモ、總テ定ッテ行クト云フコトノ出來ルコトガ理想デアリマス、併シ
今日理想通リニ世ノ中ハ參リマセヌ、其理想デナケレバナラヌトハ私ハ申シ
マセヌガ、此理想ヲ標的ニシテ相當ナル方法ヲ設ケルト云フコトハ此ノ食糧
政策ヲ解決スルニハ、絕對的ニ必要デアルト私ハ信ズルノデアリマス、此點
ニ付テ農商務大臣ノ御高見ヲ伺ヒタイ、此私ノ希望スル方法ハ如何ナルコト
ニ定メマシテモ、多少ノ缺點ハ伴フコトデアラウト思フノデアル、ドウセ人間
ノ造ルモノデアリマスカラ神樣ノヤウニ參リマセヌ、元〓ガ是ハ普通ノ經濟
理法ニ反シタ無理ヲシヤウ、無理ヲシテモ國民生活ヲ安定シナケレバナラヌ
ト云フ精神デアルノデアリマス、其無理ハ元〓覺悟ノ前デアル、無理ガアル
ト云フコトナラバ、其方法ニ關シテ缺點ノアルコトハ當然デアル、チットモ其
缺點ヲ押ヘルコトハ要ラナイ、唯終局ノ目的ヲ達スレバ宜イ、而シテソレニ
伴フ缺點ハ我慢ヲ致シマスガ、此問題ノ根柢ヲ破壞スルヤウナ缺點ハイケナ
1、其時〓ノ委員會ヲ設ケテ數量價格時期ヲ決定スルト云フノハ問題ノ根
柢ヲ覆ス缺點デアル、是ハドウシテモ許スコトハ出來ヌ、ソコデ其大キナ缺
點ヲ除イテ仕舞フ爲ニハ、外ノ多少ノ缺點ヲ我慢スルト云フコトハ當然ノ覺
悟デアルト思フノデアリマス、此ノ意味ヲ以テ質問ヲ致シマス、ドウゾ御答
辯ヲ願ヒマス、第二ニハ外國米ノ專賣ノコトデアリマス、是モ一月二十八日
ノ此議場ニ於キマシテ私ハ質問ヲ致シマシタ、質問ノ趣意ハ外國米ノ專賣ヲ
シナケレバ、折角ノ常平倉制度ヲ立テテモ、常平倉制度ハ片輪ノモノデアル、
到底其目的ヲ達スルコトガ出來ヌノデアル、常平倉制度ハ外國米ノ專賣ト云
フコトト必然竝行スベキモノト思ヒマスガ、如何デゴザイマスカト云フコト
ガ私ノ質問デアッタ、是ニ對シテハ農商務大臣ハ調査中デアルト云フコトデ、
此以上ノ御答辯ハ伺フコトハ出來ナカッタ、此點ニ付マシテ私ハ常平倉制度ニ
對スル法律案ヲ御提出ニナル時ハ、其前ニ十分ニ御攻究下スッテ、希クバ外國
米專賣ノ制度ト竝行サセルヤウナ御提案ニナルコトヲ希望シタ意味デ質問シ
タノデアリマス、然ニ是亦不幸ニシテ、今日御提案ニナッテ居ルモノニ於テ之
ヲ見ルコトガ出來ナイノデアリマス、甚ダ遺憾ニ思ヒマス、先達テノ議場デ
外國米專賣ノ常平制度ニ伴フコトノ必要ハ私述べマシタカラ、今詳シクハ述
ベマセヌ、唯二三ノ點ニ付テハ申述ベテ質問ノ趣意ヲ再ビ明カニスル必要ガ
アルト思フノデアリマス、政府ノ御考デハ米穀法案ノ中ニ輸入稅ノ增減或ハ
輸出入ノ制限、又米ノ買入レト云フ內ニハ外國米ノ買入レモ含ンデ居ルカラ、
是ハ外國米ニ對スル處置ハ十分デアルト御考ヘニナッテ居ルヤウデアリマス、
併シ是ハ如何ナモノデアリマセウカ、輸入稅ノ增ス、又ハ減ス········輸入稅ノ
增減、輸入ノ制限ト云フコトハ、此法令ヲ出シテ卽日ニ行ハレルモノヂヤナ
1、一例ヲ申シマスト、唯今米ガ安イ、此處デ外國米ガ這入ッテ吳レチヤ困ル
ト云フ事情デアッタト致シテ、ソコデ勅令ヲ以テ輸入ヲ制限スルト致シマシ
テ、既ニ保稅倉庫ニ這入ッテ居ル米ヲ拒絕スルコトハ出來ナイ、輸送中デアル
米ヲ拒絕スルコトハ出來ナイ、又外國デ既ニ買付ケテ居ル米ヲモ拒絕スルコ
トハ出來ヌト私ハ思フノデアリマス、斯ノ如キコトヲスレバ非常ナ暴政デア
ル、商人ハ安ンジテ自分ノ商業ヲシテ居ル所ヘ持ッテ行ッテ、急ニ一片ノ勅令
ヲ以テソレヲ拒絕サレルト云フコトハ、非常ナ打撃ヲ受クルコトデアリマス
カラ、斯ノ如キコトハ出來ナイ、之ト反對ニ米ガ少ナクテ困ル、扨テ入レヤ
ウト云フ時、輸入稅ヲ御減シニナッテモ、是ハ前ノトハ理由ハ違ヒマスケレド
モ、サウドンドン這入ッテ來ルモノデハナイ、又米ノ買入レデアリマスガ、是
モ內地ニ米ガ少ナイカラ、是カラ買ハウト云ッテ見タ所デ、ナカナカサウ買付
ハ出來ナイ、蘭貢ニ致シマシテモ、西貢ニ致シマシテモ、生產ノ時期ガ定マツ
テ、從ッテ之ニ買付スル時期モ定マッテハナカナカ思フヤウニ行カナイ、是ハ
卽チ空論ヲ云フノヂヤアリマセヌ、私ハ大正三四年ノ米ノ非常ニ安イ時ト、
大正六七年ノ大變高イ時ト、二度トモ其職務ニ居リマシテ、實ハヒドク苦シ
メラレタノデアリマス、殆ド忘ルベカラザル程ノ苦楚ヲ具サニ嘗メラ居ル、
又此內閣ニナリマシテ米ヲ御扱ヒニナッタ·······政府ガ御扱ヒニナッタ經過モ大
要承知シテ居リマス、決シテウマク行ッテ居ナイ、輸入稅ヲ減ジマシタケレド
モ、輸入稅ヲ減ジテモナカナカ這入ラナイ、輸入稅ヲ多ク取ッテモナカナカ抑
ヘラレルモノデナイ、政府ガ買ハウトシテモ容易ニ買へナイ、私ハ現内閣ヲ
非難ハ致シマセヌガ、是ハ事實デアリマス、御承知ノ通リ大ニ米ヲ買ハウト
シテ非常ニ御勉强ニナッタ、御努メニナッタ所ノ御苦勞ヲ諒ト致シマス、ケレ
ドモ其結果ハ如何デアルカ、七千何百萬圓ノ金ヲ使ッテ百五十萬石ノ米ヲ買ッ
テ、一石平均五十圓、高イノニナルト百三十圓ニモナッテ居ッタ外國米ガアル、
サウシテ其買ッタ米ハ、〓糧ニナル米モアリマスケレドモ、實ハ食糧ニ到底ナ
ラナイ米ガ多量ニアッタコトハ事實デアル、之ヲ以テ農商務大臣ヲ非難スルノ
ヂヤアリマセヌ、アノ時ノ事情トシテ已ムヲ得ナイ、ソレハサウト思ヒマス
ガ、併シ斯ノ如キマヅイ結果ヲ來タスト云フコトハ、外國米ノ專賣制度ガナ
イカラデアル、外國米專賣ノ制度ヲ設ケテ豫メ之ニ備フル途サヘ立ッテ居レ
バ、斯ノ如キマヅイ結果ニナラナイ、是ハ極ク明カナコトデ、外國米專賣ト
申シマシタガ、私ガ此專賣ト云フコトハ必ズシモ政府ガ國內ニ於テ仲買人小
賣人ノスルヤウナコトヲ自ラスルガ良イトカ、或ハソレニ干與シテ世話ヲ燒
クガ宜イト云フマデノ專賣デハナイ、今日ノ煙草ヤ鹽ノ專賣ノヤウナヤリ口
デ行クノデハアリマセヌ、若シ言葉ガ惡ルケレバ········專賣ト云フ言葉ガ惡ル
ケレバ、是ハ管理トシテモ宜イ、何トシテモ宜イ、意味ハ外國カラ米ガ日本
ニ這入ッテ來ル、日本カラ出テ行ク、ソレヲ政府デ支配ヲスル、是ガ必要デア
ルト云フコトデゴザイマス、私ハ斯ウ云フ風ニ此ノ外國米ノ專賣ヲ餘程重ク
見テ居ルノデアリマスガ、政府ハドウ云フ風ニ御考ヘニナルノデゴザイマセ
ウカ、此點ヲ伺ヒタイ、ソレカラ第三ニハ罹災救助基金法中ノ改正デアリマ
元パ。是ハ御所管ガ大藏省ノヤウデアリマスル、私ノ伺フノハ農商務省ノ御
所管ノ方ノ點ヲ伺フノデアリマス、農商務大臣カラ併セテ御答辯ヲ願ヒタイ、
罹災救助基金法ヲ改正シテ米ヲ買入レルトキニ、罹災救助基金ヲ使フコトガ
出來ル途ヲ御開キニナッタ、一應ノ御說明ハ大藏大臣カラ伺ヒマシタ、ソレハ
ソレト致シテ、實際ノ取扱ヒハドウデアラウ、是ハ私ノ質問デアル、米ヲ各
府縣ノ罹災救助基金デ買入レルト云フコトデアリマスガ、其買入ハ米穀法ニ
依テ中央政府ガナス買入ト、ドウ云フ連絡ヲ有ツノデアリマスカ、中央政府
ガ米ノ買入ノ一部分ヲ手傳ヲスルト云フ意味デアリマスルカ、或ハ中央政府
ノ方ト全然別ニ各府縣思ヒ思ヒニ自分ノ可ナリト信ズル所ニ依テ買フト云フ
コトデアリマスカ、其點ガ私ニ分ラナイ、卽チ若シ中央政府ガ手傳シテ買フ
ト云フコトデアレバ、實ニ餘計ナ話デ、現在ノ金ハ三四百萬圓シカナイ、之
ヲ三府四十三縣ニ分ケルト云フト幾ラニナリマス、洵ニ僅カナモノデ、ソレ
バカリナ金デ援助ヲ得ナケレバ、中央政府ガ米ノ買入ガ出來ヌト云フコトハ
ナイノデアリマス、全ク必要ノナイコトト思フ、若モ中央政府ガ無關係デ獨
立ニ各府縣ガ自分ノ意ノ儘、此米ヲ買フト云フコトデゴザイマシタナラバ、
是ハ大變ナコトデアル、日本全國一ツトシテ中央ニ於テ米ノ買入ノ時期、數
量價格ヲ決シヤウト云フコトサヘ非常ニ是ハ困難ナコトデアリマス、ソレ
ヲ態〓三府四十三縣到ル所デ別々ト云フコトニスルト云フコトデアッタラバ、
大變ナコトデアル、效能ハ小サイ、弊害ガ非常ニ多イ、殊ニ地方ニナリマス
ト、農家ガ非常ニ多イノデ、大多數ハ農家デアリマス、若シ府縣會議員ガ自
己及ビ自己ガ代表シテ居ル人〓ノ利益ノ爲ニ常ニ米ノ買入ヲ要求スル、サウ
シテ買ハレタ米ヲ賣出スコトヲ拒絕スルト云フ情態ニナッタラドウナルノデ
ゴザイマスカ、ソレモ大ナル利益ガアレバ又考ヘモノデアリマスガ、三府四
十三縣皆併セテ現ニ三四百萬圓シカナイ、其時分ニ三府四十三縣ガ斯ノ如キ
混亂ヲ致サナケレバナラヌト云フコトハ私ハ分ラナイノデアリマス、何カ私
誤解ヲシテ居ルカ知ラヌト、自分ノ判斷ヲ疑ッテ居ル位此問題ハ分ラナイノデ
アリマスドウゾ御〓示ヲ願ヒタイ、ソレカラ最後ニ伺ヒマスノハ、此法案
ト目下ノ米價調節ノ問題デアリマス、私ハ此前ノ時モ申述ベタト考ヘマスガ、
常平倉制度ハ國民糧食ノ根本制度デアル、今日ノ現在ノ米價ノ事情ニ依テ、
此ノ根本政策ガ左右セラレルト云フコトハ由々敷大事デアル、斯ウ云フ風ニ
思フ者デアリマス、所ガ不幸ニシテ根本政策ト現在ノ米價問題トガ、相因緣
シテ此議場ニ現ハレタト云フコトヲ私ハ寧ロ遺憾トスル者デアリマス、政府
ハ決シテ現在ノ米ガ安イカラ、之ヲ買ハムガ爲ニ斯ノ如キ根本法デアル米穀
法ヲ出シタノデナイ、斯ウ仰セラレルニ違ヒナイ、又政府トシテハサウ仰セ
ニナラナケレバナラナイ、私モ追究シヤウトハシナイ、之ヲ追究スルノハ野
暮デアル、如何ナ野暮ナ私ニモソレマデ野暮ニナルコトハ出來ナイノデアル、
併ナガラ之ヲ私ハ惡イトハ必ズシモ言ハナイ、ソレハ政治上サウ云フコトハ
アルノデアリマスガ、唯私ハ心配スル所ハ目下ノ米價ノ問題ガアルガ故ニ、
此根本ノ政策デアル常平倉制度ガ禍ヲ受ケヤシナイカ、旣ニ受ケテハ居ナイ
カ、此後受ケハシナイカ、是ガ心配ナノデアリマス、私ハ今日ノ米價ガ高イト
云フ論デハゴザイマセヌ、相當デアッテ是ヨリ上ゲテハイカヌト云フ論デモア
リマセヌ、此問題ハ能ク私ハ分リマセヌ、今ノ米價ガモット上ルベキモノデア
ルカ、上ルベカラザルモノデアルカト云フコトハマダ能ク分ラナイ、場合ニ
依レバ之ヲ買入レテ、米ヲ買入レテ、其値段ヲ上ゲルコトガ目下ノ急務デア
ルト云フ如キ論ニナルカモ知レナイ、併ナガラ若シソレガ必要ナラバ、ソレ
ハソレトサレテ、サウシテ別ニ根本法ヲ定メタラ餘程宜カッタラウト思フノデ
アリマス、其所デ政府ニ伺フノデアリマスガ、此ノ米穀法ノ問題ヲ目下ノ米
價ノ問題ト切リ離スコトガ出來ナイノデアリマスカ、如何デアリマスカ、是
ハ卽チ切リ離サレナイト云フコトデアリマスレバ、更ニ伺ハナケレバナリマ
セヌノデスガ、第一目下ノ問題トシテ政府ハ幾ラ米ヲ買フ、幾ラデ買フト云
フ御考デアリマスカ、農商務大臣ハ政府ニ於テ種々御說明ニナッテ居リマス中
ニ、目下ノ剩餘米ハ約三百萬石デアル、斯ウ仰セニナル、其ノ三百萬石ノ剩ッタ
米ヲ玆デ買上ゲル御考デアルラシイ、三百萬石ト云フコトハドウ云フ基礎ニ
於テ成ッテ居ルカ、ドウ云フ基礎ニ依テ算出サレタカ、是ハ私ハ存ジテ居リマ
ス、昨年ノ米ノ生產高、之ニ對シテ生產高ト昨年ノ端境期ト現在高、之ヲ加
ヘタ數字ニ對シテ本年ノ輸出高、移出高、ソレカラ本年ノ端境期ニ於テ次ノ
年ニ繰越スベキ米、是ハ本年ノ此我〓ガ日々三度ガ三度取ッテ居リマス食事ノ
爲ニ、或ハ其外ノ酒其他ノモノノ爲ニ使用サレル消費量ノ全體、之ヲ對照シ
テサウシテ三百五十萬石今年ニ於テハ未ダ剰ルンダ、斯ウ云フ農商務省ノ計
算デアリマス、私ハ斯ノ如キ計算ノ上ニ現在ノ剩餘米ガ三百萬石デアルト言
ハレルコトハ私ハ甚ダ實ハ驚クノデアリマス、種々ナ點ニ於テ此計算ニ缺點
ガアルノデゴザイマスガ、其最モ甚シイモノヲ申上マスト、今年ノ消費量ト
言ハレル消費量ガドウシテ今分ルノデアリマスカ、消費量ハ農商務省デ從來
年々計算シテ居リマスケレドモ、斯ノ如キ其事ノ前ニ計算シタモノハナイ、
皆前年ノ生產ト輸移入額、ソレカラ殘存持越米、ソレト今度一方ニハ其年ノ
輸移出ヲ引イテ、其殘リノ高ヲ人口ニ割ヲタノガ統計デアリマス、消費量ハ事
ノ後デナケレバ分ラナイ、事ノ前ニハ分リヤウノナイ品物ナンデアル、ソレ
ヲ此度ノ三百萬石ノ計算ハ事ノ前、卽チ今日デ申シマスト三月ノ八日マデニ
ハ、是ハ若シ統計ガ取レルナラバ八日マデノハ確定的事實デアリマス、三月
ノ九日カラ以後ノハチヨットモ分ラナイ、其分ラナイモノガ推測ガシテアル、
少シ數字ガ這入ッテ恐縮デアリマスガ、大事ナ問題デアリマスカラ、暫ク時ヲ
御貸シヲ願ヒタイ、其數字ハドウ云フ數字デアルカト云フト、一人一石九升、
一人ノ一年ニ費ス高ガ一石九升ト云フコトニナッテ、ソレニ凡ソ五千七百萬ノ
人間ノ數ヲ掛ケテ、サウシテ其數字ガ出テ居ル、此一石九升ト云フモノガ誠
ニ怪シイ數字ナンデ、或目的ノ爲ニ使フノニハ怪シクナイ數字デアリマス、
現在ノ米ガ餘ッテ居ルカ、餘ッテ居ナイカト云フコトニ使フノニハ頗ル怪シイ
數字デ、寧ロ不當ノ數字デアル、一石九升ト云フノハドンナ數字カト申シマ
スト過去ノ數年間ノ消費量ノ平均ナンデアリマス、其ノ消費量ハ先刻申上
ゲマシタ此事ノ後ニ於テ、出來タ米、這入ッタ米、ソレカラ出タ米ヲ引イテ、
其殘リノ分量ヲ人口デ割ヲテ仕舞ッタ其ノ消費量、其消費量ノ數年間ノ平均ナ
ンデ、今我〓ノ問題トシテ居ルノハ數年間ノ平均デハナイ、今年幾ラ食フカ、
斯ウ云フ問題デアル、我〓米ヲ食フモノハ過去ノ平均ヲ考ヘテ三度三度箸ヲ
取ッテ居ル譯デハナイ、欲シケレバ〓ベル欲シクナケレバ〓ベナイシ、米ガ澤
山買ヘルナラバ澤山食フシ、懷ガ寂シクッテ買ヘナケレバ〓ハナイ、是ガ實際
デアル、ソレニ拘ラズ數年ノ平均ノ消費量ヲ以テ來テ、サウシテ昨年末ノ人
口ニ掛ケテサウシテ今年ノ消費量デアル、今年是ダケ費スカラ是ダケ米ガ殘
ルト云フコトハ、殆ド了解ニ苦シム、此意味ヲ明ニスル爲ニモウ少シ申上ゲ
マスガ、一石九升ト云フノハ唯今申上ゲマシタヤウニ數年間ノ平均デアリマ
ス、所ガ農商務省ノ統計ニ依リマスト、大正八年ノ一人當リノ消費量一石一
斗四升五合デアリマス、大正九年卽チ昨年ハ一石一斗二升九合、大變其間ニ
開キガアル、若シモ今年ノ米ノ一人當リノ消費量ハ大正八年ト同ジデアルト
假定シマスナラバ、卽チ一石一斗二升九合ト假定ヲ致シマスナラバ、農商務
省ノ言ハレマス通リ、三百五十幾萬石殘ルト仰ッシヤル數字ハ百四十萬石ニ
ナッテ仕舞フ、若シモ今年ノ消費量ガ大正八年ト同ジデアルトスルト一石一斗
四升五合、其數字ハ五十萬石デアル、五十萬石位ノ米デアルナラバ買ハナケ
レバナラヌトカ、買ッテハイケナイトカ云フ問題ノ起ル程ノ高デハナイ、斯ノ
如キ數字ヲ基礎ニシテ、サウシテ農商務大臣ノ仰セニナル、量ノ調節ナリト
云フ方策ヲ御實行ニナルト云フコトハ、一體如何ナモノデアリマセウカ、又
價格ノ點ニ付マシテモ、是ハ農商務大臣ノ衆議院デ御言明ニナッテ居ラヌヤウ
デアリマス
〔副議長候爵黑田長成君議長席ニ著ク〕
帝國農會ナドデ申シテ居リマスノハ三十五六圓ト申シテ居ル、今二十五圓バ
カリ、ドウ云フ算盤デサウ云フモノガ出ルカ、ドウ云フ算盤カ、統計ハ扱ヒ
方ニ依テ如何樣ニデモ數字ヲ働カスコトガ出來ル、根本ノ數字ハ動カセマセ
ヌガ、是カラ出テ來ル所ノ結論ノ材料トナルベキモノハ如何樣ニモ動カサレ
ル。此ノ三十五六圓ノ算盤ノ基礎モ承知シテ居リマスガ、是ハ餘リ精シクナ
リマスカラ省キマス、其基礎ノ取方デドンナニデモナル、斯ウ云フ點ニ重大
ナ疑問ガアリマス私ガ第一ニ質問ヲ致シタ時ニ、委員會ハ如何ナル標準ニ
依リ、如何ナル根柢ニ立ッテ此ノ數量價格ヲ決定スルデアラウカ、甚ダ疑ハシ
1。不思議デアル不可能デアルト自分ハ思フ、其事ハ後ニ精シク申上ゲルト
申シマシタガ、唯今申述ベタコトデアル、旣ニ斯ウ云フ不完全ナ材料ヲ基礎
ニシテ、サウシテ今年米、大正九年ニ出來タ米ヲ今數簡月ノ中ニ買フト云フ
コトハ一體出來ルノデアリマスカ如何デアリマスカ、私ハ不可能デアルト
思フ、玆ニ於テ先刻申上ゲタ目下ノ米價調節問題ト、此ノ根本政策ヲ切離シ
タラ如何デゴザイマスカト云フ質問ニナルト、目下ノ米價ハ非常ニ安イカラ
是ハ是非買ッテ高クシナケレバナラヌト云フコトノ可否ハ私ハ論ジナイ、私ハ
ソレヲ買フ方ニ贊成スルカモ知レナイ、六七分私ハソレニ傾イテ居ルヤウニ
思フノデアリマス、今玆デ明言スルコトハ出來ナイ、私ハ相當ノ根據ヲ有タ
ナイカラ明言スルコトハ出來マセヌガ、唯大體ノ見當カラ、幾ラカ買ッテ幾ラ
カ上ゲテモ宜カラウカト云フ位デアリマス、反對デモ何デモナイケレドモ
一時ノ問題ハ一時ノ問題デ處理シテ貰ヒタイ、ソレガ根本ノ問題ト合セテ處
理ガ出來ルナラバソレデモ宜シウゴザイマスガ、政府デハサウ御考ヘニナッテ
居ルヤウデアリマス、ケレドモ若シモ一時ノ問題ヲ處理スルニ急ニシテ、根
本ノ問題ガ甚シク根柢的ニ打擊ヲ受ケルコトヲ顧ミルコトガ出來ナイヤウナ
破目ニナッタナラバ、國民ノ生活ノ將來ハドウナル、是ハ私ノ最モ憂フル所デ
アリマス、私ハ此ノ米穀法案ナルモノハ大體ノ趣旨ハ宜シイト思ヒマス、併
ナガラ之ヲ實行スルニ付テハ、實行ノ手段方法ハ更ニ愼重ノ調査ヲ遂ゲテ、
玆ニ始メテ出發スベキモノト思フ、此大體ノ方針ヲ此議場ニ於テ、此機會ニ
於テ、決メテ置カレルコトハ私ハ非常ニ熱望スルノデアリマス、併ナガラ目
下ノ問題ヲ採ラムガ爲ニ、此ノ根本方針ノ基礎ニナル缺陷ヲ殘シタ儘、世ノ
中ニ生レテ出ルト云フコトハ何ト言ッテモ忍バレナイ、是ガ私ノ趣意デアリマ
ス。之ヲ實行スルニ付テ方法手段ヲ精シク考ヘ、精密ニ考ヘルト云フコトニ
ナルト、是ハ二月ヤ三月四月デハ間ニ合ハナイ、ソレハ確デアリマス、ナゼ
合ハナイカト申シマスルト、農商務大臣ハ調節ハ量デアル量デアルト仰セラ
レナガラ、唯今申上ゲタ三百萬石ノ計算ガ出テ來ル、一人ノ消費量一石九升、
ソレヲ基礎ニシテ、是ヨリ外ニ農商務省ノ方ニハ材料ハナイヤウデアリマス、
斯ノ如キモノヲ基礎ニシテ自然實行サレタナラバ、折角立テヤウトシタ重大
問題、〓糧政策ノ根本ハ覆サレルノデアリマス、目下ノ問題ハ目下ノ問題ト
シテ仕末ヲシテ貰ヒタイ、其ヤリ方ハ善クテモ惡クテモ一時限リノ影響デア
ル、ケレドモ永久ニ亙ッテ國民生活ノ上ニ安全ニシヤウト云フ食糧政策ノ根本
ニ向ッテ、其ノ出發點カラ大ナル穴ヲ開ケテ置クト云フコトハドウシテモ忍バ
レナイ、世間デハ〓糧政策ノ此ノ米穀法案ガ確定イタシテ法律ニナリマシタ
曉ニハ、米ヲ買ヲテ貰ヘル、而モソレハ餘程ノ高イ値段デ買ッヲ貰ヘルト云フヤ
ウニ考ヘテ居ルヤウデアリマスガ、ソレデ今色〓ノ運動モ靜マッテ居ルヤウニ
思フノデアリマス、私ハ非常ニ其人〓ニ氣ノ毒ニ思フ、其期待ニ裏切ラレル
コトガ私ハアルダラウト思フ、サウナラザルコトヲ得ヌコトニナル、三百萬
石買フ、三百萬石ノ基礎ハ何處ニアル、一石九升ノ一人消費量、斯ウ云フ立
テ方デアルガ、サウ云フコトハアリヤウガナイ、平均デ我〓ハ〓ッテ行クモノ
デハナイ、昨年ノ消費量、本年ノ消費量ト比べテ私ガ豫想イタシマスルニ、
私ハ本年ノ消費量ハ昨年ノ消費量ヨリ必ズシモ少ナイトハ考ヘナイ、米ガ安
イカラ澤山喰フト云フノハ事實デアリマス、澤山喰ヘバ減リマスカラ消費量
モ多クナリマス、今度ハ剩餘米モ滅ル譯ニナリマス、是ハ全ク明瞭ナコトデ
アリマス、少シ米ノコトヲ知ッテ居ル者ニハ直ニ分ル、ドウゾ私ノ希望スル
所ハ、食糧政策ノ根本ヲ確實ニスルト云フコトハ私ハ非常ニ贊成デアリマス
ガ其根本ノ政策ニ重大ナル病氣ヲクッ付ケタ儘世ノ中ニ出スコトハイケナ
イ、步カヌ中ニ必ズ病氣ガ起ッテ倒レル、步キ出シテ直グ病氣ガ出テ倒レテ仕
舞ヲテハ困ル、私共ハソコカラ申シマスルト成立タセタクナイ、其病氣ハ何デ
アルカ、目前ノ問題ニクッ付ケテ仕舞フ爲ニ起ルコトデ、目下ノ問題ヲクッ付
ケルト云フコトハ必ズシモ反對イタシマセヌガ、クッ付ケタ爲ニ斯ノ如キ大キ
ナ缺點ヲ伴ハシテ社會ニ押出スト云フコトハ私ハ不賛成デアル、斯ウ云フ私
ハ考ヲ有ッテ居リマス、申上ゲマシタコトハ甚ダ多岐ニ亙リマシタガ、大體趣
旨ハ御了解下スッタコトト思ヒマス、ドウゾ御〓示ヲ煩ハシマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=46
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047・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御答ヲ致シマスガ、米ノ價格ハ如何ナル標準
ニ依テ定メルカト云フコト、ソレガ決マラヌト非常ナル全體ノ不安定ヲ來ス
基ニナルト云フ、御尤モデアリマス、併シ價格ナルモノヲ道理上カラ申シテ
見マスレバ、無論其ノ生產額ノ大小增減ト又一般ノ價格ト共ニ高低ヲスルモ
ノデアリマスカラシテ、此生產ノ數ト又一方ニ、一般ノ價格ト云フモノヲ考
慮ニ加ヘマシテシタナラバ、大體ノコトハ分リ得ル譯デアリマスガナカナ
カ實際ニ當ッテ見マスト云フト、其通リニハ參リマセヌ、此間ニハ非常ナル人
氣又其時ノ出來事ナドト云フモノガ件ッテ參ルモノデアリマスカラシテ、此價
格ヲ初メヨリ斯ク決メテ行クト云フコトハ、實際トシテハ殆ド不可能ト云ウ
テ宜シイカト思フノデアリマス、若シソレヲ唯人爲デ之ヲ決メマシテ、斯ク
スルト云フコトニ相成リマスト、却テ實際ニ付テ不便又障碍ヲ來シテ、不適
當ナル結果ヲ現ハスコトト思ヒマス、ソコデアリマスル故ニ是ハ此度此價額
ノ買上ゲナドヲ致シマスレバ相當ナル人〓ヲ以テ組織シテ、而シテソレ
ニ諮詢ヲ致シマシテ決メルト云フヤウナコトガ、今日實際ニ最モ近イ價額ヲ
決メルコトデアル、唯徒ニ「テーブル」ノ上デソレヲ決メルト云フバカリデハ
ドウシテモ宜シクナイ、是カラ起ッタノデアリマス、既ニ衆議院ニ於テモ度〓
其點ニ於テハ質問ヲ受ケマシタガ、先ヅドウ云フコトヲ標準トシ參考トスル
カト言ヘバ、其時ノ一般ノ物價、又米ノ收穫ノ其增減、ソレカラ又米ソレ自身
ノ其時ノ市價、斯ウ云フモノヲ參考トシ標準トシテ、而シテ後ニ適當ナルモノ
ヲ定メルト云フヨリ外ニ、ドウモ適當ナル標準ハ見出シ得ナイ、斯ウ云フコト
ヲ信ズルノデアリマス、ソレカラ次ニ價格ヲ定メレバ一般ニ不安ノ念ヲ生ズ
ルト云フノデアリマシテ、是ハ今申ス如キコトデアリマシテ、價ガ定マリマセ
ヌト云フト一般ニハ固ヨリ如何ナルコトニ決メルデアラウカト云フコトヲ氣
遣フノハ、是ハ當然ノコトデアリマス、當然ノコトデアリマスガ、價格ナルモ
ノハ矢張其間ニ付テ米ガ三十圓スルトカ、或ハ三十五圓スルトカ若クハ二十
五圓スルト云フヤウナコトハ自然ニ價ガ定マッタモノデアリマス、何故市價ガ
米ガ今下ルカト云フニ、下ル譯ハナイノガ大變下ルガドウ云フコトデア
ル、又上ルガ上ルト云フノハ如何ナルコトニ依テ上ルカト、之ヲ〓究シテ見マ
スト、サウシテソレガ要ヲ得ルカト云フト頗ル困難ナコトデアリマス、困難ナ
コトデアリマスガ、米ト云ヒ麥ト云ヒ總テノ諸物價ト云フモノハ、矢張需給
關係、總テノ事情ニ依テ價ガ定マッテ賣買ガアルノデアリマス、都カラ津〓浦
浦ニ至ルマデソレゾレ相當ナ價ヲ以テ其處デ定マッテ居ルノデアル、此自然ニ
定マッテ來ル如キ價ハ、餘程考慮ヲ費ヤシテ行カナケレバナラヌト思ヒマス、
之ヲ初メカラ此物ハ幾ラデアルト言ッテ定メマシタ所デ、ナカナカ其通リニ
容易ニ行ケルモノヂヤナイ、尙ホ實際ニ於テ不可能ト云ッテ宜イ位ノコトト思
ヒマスカラ、斯ウ云フコトニ付テハ能ク········唯僅カ一人一種ノ考ノミナラズ、
能ク考ヘテ然ル後ニ徐ロニ決スルト云フコトガ、一番適當ナモノト思ッテ居ル
次第デアリマス、是ニ致シマシタナラバ、之ヲ定メル上ニ於テドノ位ニ今度買
フ物ハ定メルト云フヤウナコトハ起リマセウガ、必ズ賣ラウト云フ者買ハウ
ト云フ者ノ間ニ、矢張其價ヲ凡ソ注意シテ見テ居ッテ、サウシテ出來ルモノト
思ヒマス、ソコデアルカラ價ガ定ッテ參リマスレバ、ソレガ爲ニ非常ニ價格ヲ
動カスト云フヤウナコトハ爲シ得ナイコトト思ヒマス、若シ其儘ニシテ市場
ヨリモ高イモノ、間違ッタ價ヲ定メタナラバ、忽チニシテ多クノ米ガ賣リニ來
ルノデアリマス、又ソレニ反シマシテ世ノ中ガ斯ウト思フヨリモ廉イ價デ定
メマシタナラバ、幾ラ買ハウト思ッテモ持ッテ來ルモノデハナイノデアリマス、
其處ガ需給ノ關係上自ラ是ガ適當ナルコトガ起ルコトト考ヘマス、ソレニ
依テヤルカラシテ餘リ御氣遣ヒニナルヤウナコトハアルマイト思フノデアリ
やマ、次ニハ外國米專賣ノコトデアリマシタガ、是ハ成程外カラ參リマス米
ヲ內ノ需要、或ハ米ノ生產ノ其價ニ依テ米ヲ何十萬石、或ハ今年ハ幾ラト云
フコトヲ取捨按排シテ、サウシテ政府ハヤルト云フコトガ一時限リデハ餘程
理詰ニ會ッタヤウナコトデアリマスガ、此米ヲ幾ラ入レルトカ、政府ガ數量ヲ
定メテ而シテソレヲ買入レルト云フコトノ數量ヲ決メルト云フコトハ、頗ル
又是ガ困難ナコトデアリマス、既ニ上山君ガ是マデ御話ノ通リニ度〓御
經驗ノアル方デアリマス、殊ニ大正七年ノ如キモノハ、其時ノ事情ニ依テ指
定商ヲ設ケテ外米ヲ管理イタシマシテ、サウシテ政府ニ於テ數量ヲ定メテ、
ソレゾレ注文ヲシ買ハシタコトデアリマス、是モ政府ガ此位買ッタラ宜シイト
思ヒマシタル數ヨリモ、却テ後ニ於テ餘計ナルモノガ入ッテ來テ居ル、數字ノ
上カラ起ヲテ來テ居ルノデアリマス、又現政府ニ於キマシテ、此ノ外米ニ付テ
百五十萬石買入レマシタ時ニ於テハ、民間ハ自由ニ買ハレル途ヲ取リマシテ、
算盤ノ上デ買得ルナラバ、何百萬石デモ自由ニ買入レル途ヲ取ッタノデアル、
而シテドウシテモ政府ノ手デ入レナケレバ米ガ不足シテ、國民ノ生活ヲ脅威
スルト云フ場合ニハ政府ガ買入レルコトニシテ、算盤·······採算ノ上デ宜イナ
ラバ、民間ノ貿易商ニ任セルト云フコトデヤッタノデアリマス、其時ノ七年八
年ノ外米ニ於キマシテハ、民間デ入レマシタノガ三百五十萬石ト云フ外米ヲ
入レテ居リマス、ソレデモ足リマセズシテ、彌ガ上ニモ米ガ高クナリマシテ、
皆不安ノ狀態ヲ來タシマシタガ故ニ、段々高クナッテ、モウ商人ノ手デハ到底
入レ得ナイ、ソコデ次ニ於テ政府ガ自ラ買フコトガ起ッタノデアリマス、ソレ
ガ百五十萬石、雙方合シマシテ五百萬石以上ノ米ガ外國カラ入ッテ來ルト云フ
ノデ、ドウモ比較ヲ決メルト云フコトハ餘程困難ナコトデアリマス、ソレデ
其上ニシテモ第一管理ヲスルコトニ付テ餘程困難ヲ感ズルノデアリマス、又
ソレノミナラズ一體此ノ米穀法ナドヲ玆ニ設立シテ參ルノハ何デアルカト申
シマスルト、先刻申シマシタ如ク、日本ノハ特殊ノ品質ヲ有ッテ居ルカラシテ、
假令米ガ多クテモ外ニ餘リ出ナイ、又少ナクトモ外カラソレヲ補フコトガ頗
ル困難デアル、現ニ大正七年ノ如キ、米ヲ以テ政府ガ色〓ヤリマシタケレド
モ、價ハ餘程安クシテ、サウシテ外米ヲ一般ガ食ヒ習フト云フコトヲスルト
云フコトハ餘程必要デアル、安クトモドウモ或階級ノモノマデハ食ベルガ、
或階級ハドウシテモ之ヲ食シナイ、サウスルト矢張限リガアルカラ、ソレ
ヨリ一般ニ食フコトヲ普及サセヤウトシテ、時ノ內閣、又現內閣ニ於テモ努
メタヤウナ次第デアリマス、ソレガナカナカ此景氣ノ好イ時ハ食スルコトヲ
好マナイ
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
サウ云フコトデ特殊ノ性質ヲ有ッテ居リマスガ故ニ、剩餘ノアル時ハ之ヲ買ッ
テ、サウシテ貯ヘテ置イテ、不足ノ時ニ之ヲ賣ッテ、サウシテ調節ヲ圖ル、頗
ル市場ノ狹イモノデ、是ガ一體世界ノ貿易品トナッテ居リマセヌカラシテ、斯
ウ云フヤウナ窮屈ナコトヲ起シタ所以デアリマス。ソコデアリマスカラシテ、
此ノ外米ヲ入レル上ニ付マシテモ、內ガ安イ、安イ故ニ甚ダ外米ノ來ルノ
ガ其當時ニ於テハ困ルノデアリマス、併シ內ニ安クテ、內ニ餘リガアルト云
フトキニハ、所謂外カラ來ルノガ頗ル少ナイノデアリマス、唯內ニ不足シテ
困ルト云フトキニ幾ラデモ外米ハ入ッテ貰ヒタイト云フトキニ、外米ハ多ク
入ッテ來ルノデアル、サウ云フヤウナコトデ、自然ニソレガ調節ノ助ケヲ爲シ
テ居ルノデアリマス、之ヲ平常ニ於テ政府ガ管理シテ、サウシテ數ヲ定メテ
外米ヲ今年ハ幾ラ買フ、又明年ハドウトカ云フコトヲ其時ニ圖ッテヤルコトハ
餘程困難デアリマス、ソレヨリ寧ロ其方ニ常ニ經驗ノアル貿易商ノ採算ノ上
カラ出入スル方ニ任シタ方ガ、却ッテ適切デアル、ソレ故ニ先ヅ本義トシテハ
自由ニ出入ヲ商人ノ手デサセテ、而シテ內地ノ場合ニ於テハ、ドウシテモサウ
入ッテハ困ルト云フトキニ於テ之ヲ制限シ、若クハ又輸入ヲナスト云フコト
ヲ、關稅其他ノモノニ依テヤッテ居タト云フ位ノコトガ、丁度味ノ宜イ所デ、
餘リ嚴シクスルト却ッテ弊害ガ起ル、又適切ニ行クマイカト云フ考デ、此ノ外
米ヲソレゾレ管理スルト云フコトニ付テハ平常ニ於テ極ク重キヲ置イテ居
ラヌノデアリマス、而シテサウスルト、愈〓ト云フ時ニハモウ既ニ約束ノモノ
ガアッテ、又入レル、買入レル既ニ積込ミツツアルモノガアルノデアリマス、
サウ云フコトデ充實シナイ、ソレハ無論皆無デハナイデアリマセウ、併シソ
レハ其時ニ法律ヲ出シマシタ時ニ至リマシテ、既約ノモノハ此規則ノ外ニ於
テ取扱フト云フヤウナコトヲ致シマスレバ、サウヒドクソレガ爲ニ豫算ガ狂
フト云フヤウナ大キナ數字ハアルマイト信ズルノデアリマス、又必ズサウ云
フコトガアレバ豫メ分ルコトト思ヒマスカラ、如何ナル手段デモアラウト思
ヒマスソレカラ次ニハ此ノ罹災基金ノコトデアリマスガ、是ハ農商務省ニ
於テハ直接ノ關係モ有ッテ居リマセズ、罹災ノコトハ御承知ノ如ク、內務省ノ
管轄ニアルノデアリマス、而シテ一部ハ大藏省ニ關係シテ居ルノデアリマス、
併シ此モノハ元備荒貯蓄ナドカラ起リマシテ、今日罹災基金ト稱ヘマシテ、三
府四十三縣ニソレヲ行ハレテ居ルノデアリマス、政府ニ於テ今日殊ニ米穀法
ト云フモノヲ設ケテ、サウシテ備荒的性質ヲ帶ビタ米ノ調節ヲ圖リマス時ニ
於テ、罹災基金ニ於テ幾ラ用意ノ金ガアッテモ、米ヲ買フコトガ出來ナイト
云フヤウナコトデアレバ、餘リ窮屈ナモノデアリマス、或ハ其時ニ至レバ罹
災基金ノ中ヲ以テ幾萬ノ米ヲ其ノ縣々ニ於テ買入レラ販賣スルヤウナコトモ
起ルノデアリマス、ソコデ是ハ矢張ソレヲ必要ノ場合ニハ爲シ得ルト云フ
コトノ、一ツノ法律ヲ加ヘテ置イタナラバ、其時ニ於テ適當ノ處置ガ出來得
ルノデアリマスカラシテ、是ハ法律上爲シ得ナイト云フノデナシニ、爲シ得
ルト云フコトニシテ置イテ、サウシテ其時ノ事情ニ依テ方法宜シキヲ得タナ
ラバ宜カラウ、斯ウ云フコトデ罹災基金ノ改正ヲ起シタコトト承知シテ居リ
マス、此上運用方法ナドニ付マシテハ、如何ニスルカト云フコトハ、其時
ノ事情ニ於テ爲シ得ルコトデアルト承知シテ居リマス、ソレカラ最終ニ至リ
マシテ、米穀法ハ主義ニ於テハ頗ル宜シイコトデアル、併シ是ハ永久的ノモ
ノデアッテ、ソレニ今日ノ狀況ニ照ラシテ米ノ價格ヲ釣上ゲタリ、下シタリス
ルト云フヤウナコトニ、其場合ニ於テ之ヲ法律ニ設ケルト云フコトハ、甚ダ
此效力ヲ薄カラシメル虞ガアル、是モ御尤ナコトデアリマスガ、是ハ能ク申
シテ置カナケレバナリマセヌガ、政府ニ於キマシテハ決シテ今日切リ離シテ
ドウスル、或ハ國民ガ色〓運動スルカラ、ソレガ爲ニドウスルト云フコトニ
於テ、酷ク重キヲ置イタ譯デハナイノデアリマス、御承知ノ通リニ此ノ常平
倉案ナルモノハ度〓其時ノ政府ニ於テ論議サレルコトデアリマス、既ニ前ノ
內閣ノ時分ニ於テモ、前々內閣ノ時分ニ於テモ、此事ハドウカシテ米ノ調節ヲ
圖ルノニハ如何ニスルカト云フコトハ、經濟調査會ノ問題ニモ出マシテ、前
ノ內閣ニ於テ既ニ答申ガ農商務ニ出テ居ルヤウナコトデ、又現政府ニ於キマ
シテモ、大正七年八年九年、常ニ此米ノコトニ付テハ酷ク一般ノ人氣ヲ刺戟
スルモノデアリマスカラ、何トカシテ是ハ相當ナル根本的解決ヲシタイト云
フノデ、一昨年ノ冬デアリマシタト記憶シテ居リマスガ、臨時經濟調査會ニ
諮リマシテ、サウシテ此ノ事實ニ付テソレゾレ諮問ヲ致シマシテ、其答案ノ
一ツトシテ常平倉ハ最モ宜シイモノデアルトシテ出タヤウナコトデアリマ
スソコデ是ハ何モ今起ッタモノデハナイノデアリマス、ナイノデアリマス
ガ、斯ノ如キコトヲ實行スルノニ付テハ、餘程時ガ必要デアリマス、幾ラ法
ガ出來テモ實行ノ出來ヌ時ニハ何ニモナラヌ、假ニ之ヲ一昨年常平倉ハ宜シ
1、昨年宜シイト云フコトヲ決シタト假定シテシマッテ、扨之ヲ實行スルコト
ニシマスト、一昨年ハ米ガ五十圓以上六十圓ト云フ價ヲ持ッテ居ルノデアリマ
ス、而シテ米ハ不足デ、大金ヲ費シマシテ外國ノ米ヲ買入レナケレバナラヌ
ト云フ時ニ際シテ居ルノデアリマス、如何ニモ火ノ附イテ來タヤウナ狀態デ
アリマスカラシテ此ノ常平倉ヲソコデ設ケマシタ所ガ、最初ヨリ國民ノ安
定ヲ來ス爲ニ何處マデモ買ッテ行カナケレバナラヌヤウナ狀態デアリマスカ
ラシテ、此ノ外米ヲ買ウテ行クト云フヨリ他ニスル途ハナイノデアリマス
又昨年ニ至リマシテ稍〓安定ヲ〓ゲマシテ、米ハ六千七十萬程出來テ參リマシ
タガ、一體昨年ノ間ニ於テ稍〓安心ガ出來テ參リマシタガ、昨年ノ八九月ノ候
ニ至ッテ若シ米ガ不足デアルナラバ、忽チニシテ又米ガ高クナル、ソコデアリ
マスル故ニ、唯ダ昨年ノ八九月ノ候ニ此度ハ如何ニナルカト、氣遣ヒツツアッ
タノデアリマス、ソレ故ニ政府ハ五十萬石ノ外米ヲ所持イタシマシテ、其時
ニ忽チ必要ノ生ズルコトガ起リマスルカラシテ、酷ク之ヲ惜ンデ貯蓄シテ、
サウシテ他日ノ用ニ備ヘテ置ク、昨年ヨリ何年ノ間之ヲ持ツカヲ調ベマシテ、
サウシテ持ッテ居ルヤウナコトデアリマス、幸ニ八九月ノ交ニ至リマシテ天候
ガ好ク、第一囘、二囘、三囘トソレゾレ報告ノ上ニ付テ、六千三百十六萬石
ト云フ嘗テナイ豐作ガ起リマシタ、一昨年ハ六千七十萬石、昨年ハ六千三百
十六萬ト云フ如キ二年ノ間何時ニナイ豐作ガ起リマシタ爲ニ、ヒドク米ニ於
テハ考ヲ致シマシタガ、今日ハ却ッテ生產費ハ償ハズ、非常ニ生產費ヨリモ下
ニ潛ッテ居ル、又全體ノ物價ガ安クナリマシタガ、生全體ノ物價ニ比較シマシ
テモ、米ガ一番安クナッテ居ル、日本銀行邊リノ指數ニ依テ調ベマスト、先ヅ
一體ノ物價ガ境ガ出來タ、其下ル割合ニ付テ米ノ價ト其比例ニ依テ考ヘテ見
マスト云フト三十五圓內外ノ價ヲ以テ一般ノ指數ト割合ガ同ジ位ノモノダ
ト云フコトニナルノデアリマス、ソレニモ拘ラズ、今日ハ二十七八圓、或ハ
安イノハ二十五圓以下ト云フコトニナリマシタ、餘程一般ノ物ヨリモ米ガ著
シク下ッテ居ル、而シテソレト同時ニ農民ニ於テハ餘程困難シテ居ル、斯ウ云
フコトデ、サウシテ剩餘ハドウスルカト云フト、剰餘ハナカナカ今ノ生產費
カラ見ルト餘計アル、斯ウ云フ際デアリマスカラ、初メテ此モノガ宜シイト
言ヘバソレヲ實行スルニ付テハ最好ノ機會ニナッテ居ルノデアリマス、幾ラ
買入レヤウトシテモ、米ガ不足ナラバ買入レルコトハ出來ズ、又高ケレバ買
入レルコトハ出來ヌノデアリマス、米ハ多イシ從ッテ安シト云フコトデアリマ
スレバ、此ノ常平倉ガ宜シイトシテ見レバ、法律ヲ今日出シテ、サウシテ買
入レルト云フコトハ、最上ノ機會デアルト云フコトニ於テ、是ハ起リマシタ
ノデアリマシテ、何カ農家ガ運動ヲスル、運動ノ爲ニ政府ハ殊更ニスルノヂ
ヤナイカ、斯ウ疑フベキ御言葉ガアッタヤウデアリマスガ、ソレハソレガ爲ニ
ドウ斯ウト云フモノデ決シテシタ譯デハナイノデアリマス、併ナガラ又彼等
ノ言フ困難ヲ無視スル、抛ッテ置クカ、是モ政府トシテ、國家トシテ餘程考ヘ
ナケレバナラヌコトデアリマス、ソレデ政府ノ方針ヲ實行スル上ニ付テ、又
今日ノ實況ニ照シテ、今日ハ誠ニ宜シイ機會デアルカラシテ之ヲ行フ、斯ウ
云フコトデアリマス、ソレカラ私ガ衆議院ニ於テ凡ソ三百萬石位ヲ目的トシ
テ居リマス、斯ウ云フコトヲ申シタ、其ノ三百萬石ト申シタコトガエライ意
義ノアル、根據ノアル如ク御了解ニナッタヤウデアリマスガ、是ハ先ヅ政府ニ
於テ二億萬ノ資本ヲ以テ買入レルト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、偖二
億萬圓デ買入レマスガ、今年買入レルトシタナラバ、幾ラノ數量ヲ當テニシ
テ、幾ラノ價格ヲ見當ニシテ買プノカト云フ御質問ニ對シマシテ、先ヅ政府
ノ見込トシテハ約三百萬石位買ッタナラバ宜カラウカトシテ居リマス、其見込
デアリマス、價格ニ付マシテハ委員ヲ設ケマシテ然ル後ニ決スルコトデア
リマスカラシテ、是ハ何等見込モ今日立ッテ居リマセヌ、斯ウ云フコトヲ申シ
タソレデアリマス、併シ一一百萬石ト私ハ言ッテ、凡ソ見込ヲ立テテ居リマス
ガ、若シ三百萬石買フ前ニ於テ、此米ガ高イ政府ノ凡ソ斯ウデアルト云フ豫
定ヨリ價格ガ大變高クナルト云フヤウナコトガ起リマスレバ、三百萬石ヲ買
ハヌコトガ起ルノデアリマス、又ソレト同時ニ、政府ハ適當ナリトシテ居ル
價格ヲ定メテ居リマス、併シソレハ買ウテモマダ續々ト米ガ出テ來テ下ッテ行
クト云フコトデアルナラバ、是モ亦其時ニ考ヘナケレバナラヌコトデアリマ
ス、ソコデアリマスカラ、唯資本ヲ二億萬圓トシテ此ノ二億萬圓ヲ其事情ニ
依テ適當ニ使ッテ行クト云フコトニ考ヘテ居リマスソコデ此ノ三百萬石ハ唯
私ガ此位ナラバト云フ見込ヲ以テ········必ズ三百萬石ヲ買フト云フ考デハアリ
マセヌ、唯見込ヲ申上ゲマシタ譯デアリマス、ソレカラ數量ニ付テ多イ少ナ
イト言フガ、ソレハ分ラヌモノデアル、前以テ分ルモノデナイ、消費シタ後
ニ於テ始メテ分ル、成程ソレモ實際ハサウデアリマスレドモ、物ヲ定メ
ルノニハ、凡ソ既往ニ於テハドウナッテ居ル、サウシテ既往ノコトヲ調べ、數
年ノコトヲ調ベマシテ、然ル後ニ將來ニハ凡ソ此位ノモノナラバ宜カラウ、
斯ウ云フコトデ定メルヨリ外ニ、定メヤウハ餘程困難ノコトデアルト私ハ思
フノデアリマス、現ニ此米ナルモノガ今年三百萬石四百萬石殖エタト申シマ
シテモ、景氣ガ良クシテ酒ヲ造リ、或ハ貧民ニ至ル迄モ米ヲ景氣ノ良イ爲ニ
食フノデアルト云フコトニナリマスレバ、百萬石ヤ二百萬石ノ米ハ直グニ不
足ヲ生ズルヤウナコトニナル、又ソレト同時ニ景氣ガ惡ク、酒ヲ飮ム者モ少
ナイ、又米ノ飯ヲ食スルヨリモ成タケ副食物ヲ食ッテ行カナケレバ生計困難
ナリト云フヤウナ時期ニナリマスルト、又米ノ百萬ヤ二百萬ハ餘ルト云フコ
トモ起ルノデアリマス、又人氣ノ上ニ於テ今年ハ米ハ十分ナリト思ヘバ、米
ハサッサト市場ニ出テ行キマス、又將來高クナリ、又不足スルダラウト云フ一
般ノ感覺ヲ持チマスルガ爲ニ、米ハ市場ニ出ナイカラ、米ハ減ズルト云フコ
トハ、實驗上已ムヲ得ヌコトデアリマス、百萬石ヤ二百萬石ノ米ハサウ云フ
人氣ノ上デモ市場ニ出タリ出ナカッタリスルコトハ起ルノデアリマスカラシ
テ、一人前一石一斗或ハ一石九升ト云フヤウナコトニ付テモ、其當時ニ於テ
多少ノ違ヒハ起ルノデアリマス、併シ全體ニ於キマシテハ、旣往ノコトヲ調
ベテ凡ソ斯ウト云フ見込ヲ立テル外、甚ダ因難ナルコトト思フ次第デアリマ
ス、大體発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=47
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048・上山滿之進
○上山滿之進君 質問ト答辯トガ時〓別々ノコトガアルヤウニ思ヒマス、行
合ハナイ點ガアル、一々申シラ居リマストナカナカ時ガ掛リマスノデ、大〓
ニシテ置キマスガ、唯一言チヨット御伺ヒシテ見タイコトヲ尙ホ申上ゲマス、
罹災救助基金ノコトハ大藏省ノ所管デアルカラ、一口ニ申セバ他省ノ所管デ
アルカラ、詳シク知ラヌト云フヤウナ意味ニ聞エマシタ、ソレハ御尤モデア
リマス、ソレハ申シマセヌガ、私ノ御尋ネシマスノハ、米穀法卽チ常平倉ヲ
行ヒ、食糧政策ノ根本ヲ立テル、之ニ伴ッテ罹災救助基金ヲ改正シナケレバナ
ラヌト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、ソコデ中央デ行フ食糧政策、各府
縣知事ノ行フ食糧政策、ソレガ衝突スルヤウナコトハナイカ、アッテハ困ル、
斯樣ナコト迄シテ、罹災救助基金ヲ改正シナケレバナラヌ程ノコトハナイノ
デハアリマセヌカト云フコトヲ伺ッタノデアリマス、ソレハ唯〓御答辯ハ要リ
マセヌガ、ヨク兩省ト御打合セヲ願フコトガ必要ダト思ヒマス、私ノ唯今承
知シテ居リマス限リニ於テハ、〓糧政策ニ伴ヒ罹災救助基金ノ改正ヲスル必
要ハ毛頭ナイヤウニ思ヒマス、別ノ理由デ改正スルナラバ是ハ全ク別ノ問題
デアリマス、食糧政策ノ根本ヲ立ツル上ニ罹災救助基金ヲ改正スルト云フ理
由ハ、ドウシテモ發見セラレナイ、ソレガ私ノ質問ノ一ツデアリマス、三省
關係ノコトデアルト思ヒマスカラ、其中ニ御打合セヲ願ッテ置キダイ、甚ダ失
禮ナガラ御願ヒシタイ、ソレカラモウ一ツ申上ゲマスノハ、三百萬石今年買
フ、是ハ大體ノ見當ダカラ、都合ニ依テハソレダケ買ハナイカモ知レヌ、斯
ウ云フ御話デゴザイマシタ、是ハ私ノ御尋ネシタ點トハ少シ道ガ違ッテ居ル、
此問題ニ付テ私ノ御尋ネスル趣意ハ、農商務大臣ハ本年ノ剩餘米三百萬石ト
仰セニナル、其ノ三百萬石ノ基礎ハト云フト斯ク〓〓デアル、其基礎ノ中ノ
重大ナル缺點ハ過去數年間ノ平均ヲ取ッテ一人當リノ消費量ヲ決メテ、ソレヲ
現在ノ人口ニ御掛ケニナッタ所ガ大變ニ誤リデアルト思フ、サウ云フモノヲ根
本ニシテ、基礎ニシテ本年ノ剩餘米ヲ御判斷ナサルト云フコトハ如何ナモノ
デアラウカ、斯ウ云フコトデアリマス、此以外ニ何カ本年ノ剰餘米ヲ御定メ
ニナッタ基礎ガアルナラバ伺ヒマスガ、私ハ窃カニ聞ク所ニ依レバ、別ニナイ
ヤウデアリマス、別ニナイトスルト是ダケデアルトスルト、如何ニモ寧ロ驚
クベキ誤ッタ基礎ノ上ニ立ッテ居ル、デ唯今見込ヲ付ケルコトハ不都合ハナイ、
見込ガ付カナケレバ仕事ハ出來マセヌカラ········併シ見込トハ言ヒナガラ、農
商務大臣トシテ仰セニナル見込ハ、相當ノ根據ガナケレバナラヌ、又其ノ御
見込ニ依テ實際ニ仕事ヲセラレテ居ル、其結果ハ帝國ノ經濟社會ニ大ナル影
響ヲ及ボスコトデアリマス、ソレデ玆ニ伺ッタノデアリマス、三百萬石ノ剩餘
ノ見込デアルト仰セニナルガ、其基礎ハ一人ノ消費量一石九升、一石九升ト
云フモノハ過去何年間ノ平均デアル、何故ニ農商務大臣ハ此平均ナドヲ採ラ
ナイデ、寧ロ大正九年ノ消費量大正八年ノ消費量ト云フモノヲ基礎ニ御採リ
ニナラナイ、大正八年ノ消費量、大正九年ノ消費量ヲ御採リニナルト、三百
萬石ガ年々八十萬石ヤ五十萬石ノ違ヒハ出來ル、是ガ五十萬石ト云フ計算ニ
ナルト、米ガ餘ッテ居ルト云フコトハ出來ナイ、全ク平均デ我〓ハ米ヲ〓ッテ
居ナイ、過去三年ナラ三年ノ平均デ、三年間ニ是ダケ食ッタカラ平均シテ今年
ハ〓ハウト云ッテ我〓ハ〓ッテ居ナイ、若シ平均シテ日本國民ガ米ヲ喰ッテ居ル
ト云フコトニナレバ、農商務大臣ノ計算シタル其時ノ模樣ニ依テ多ク喰フ、
ソレデ若シ過去ノ事實ヲ標準トシテ御採リニナリマシタナラバ、少ナクトモ
昨年或ハ一昨年頃ノ狀況ト比較シテ、其比較ニ依テ相當ナ根據ヲ以テヤラナ
ケレバナラヌ、併シソレハ意見ノ相違デ、ソレハ別トシテ其通リノ計算ニナ
リマスト、過去數年ノ平均ヲ持ッテ來テ、是ガ今年ノ消費量デアル、其ノ消費
量デアルカラ三百萬石ハ餘ルト仰セニナッテモ、ソレハドウシテモ道理ニ合ハ
ナイ、ソレダケ計算ノ基礎ヲ以テ本年ノ剰餘米ヲ御判斷ナサルト云フコトハ
ドウシテモ分ラナイ、分ラナイト云フト甚ダ失禮デアリマスガ、此數字ヲ以
テ農商務大臣ガ天下ニ呼號ナサルト云フト、現ニ米ヲ持ッテ居ル人ハ三百萬石
買ッテ貰ヘルト思フ、是ガ大變關係ノアル問題デアルガ故ニ、其價格ニ付テモ
同ジコトデアル、私ハ餘リ細カク考察イタシマセヌカラ申上ゲマセヌガ、農
商務大臣ノ仰セニナリマスノハ、一石三十五圓ガ今日ノ外ノ物價ニ比ベテ相
當デアル、斯ウ仰セニナル、其根據ハ何デアルカハ私ハ存ジテ居リマス、ソ
レハ日本銀行ノ物價指數表ニ依テ、其ノ物價指數表ノ中ノ明治四十年カラ大
正二年ニ至ル七箇年ノ物價ヲ平均シテ、ソレヲ基準トシテ百トシテ、サウシ
テ今日ノ物價及ビ米價ニ充テテ御出ニナル、日本銀行ノ物價指數表ハ、御承
知ノ通リ明治三十三年十月ヲ基礎ニシテ、ソレヲ百ト見テソレカラズット今日
迄ノ指數ダケ、ソレハ古イト言ハレルデアラウガ、斯ウ云フモノハ古イ程良
イト思フ、ソレハ議論ニナリマスガ、兎モ角モ何カ知レマセヌガ、卽チ今日
明治四十年カラ大正二年卽チ戰前七箇年ヲ平均シテ、サウシテソレヲ百トシ
テ、其百ニ對シテ今日ノ諸物價ノ平均ト米價トヲ比例ナスッタ、ソレハモウサ
ウ云フ風ニシマスレバ三十五圓デモ四十圓デモ、モット下ゲタイト思ヘバ二十
圓デモ十四圓デモ是ハ統計ト云フモノハ扱ヒヤウニ依テドウニデモナル、元
ノ數字ハ違ヒマセヌガ、斯ウ云フ結果ヲ出サウト思ヘバドンナニデモナル、
都合ノ良イ年ヲ取ッテ行ケバ都合ノ良イ結果ニナル、都合ノ惡イ年ヲ取レバ都
合ノ惡イコトニナル、ドウ云フ根據デ明治四十年カラ大正二年ヲ御取リニナッ
タノカ私ニハ分ラナイ、サウ云フ譯ガナイ唯何カナシニ七年、戰前七年、斯
ウ云フコトデアル、ドウモ譯ハ無論ナイト思フケレドモ、戰前七年ト云フコ
トハ何ノ意味カ分ラナイ、無意義ダ、無意義ノモノヲ以テサウシテ今日ノ諸
物價ノ平均デ米價ニ較ベテ、是ハ米價ハ三十五圓ガ相當ダト云フコトヲ仰セ
ニナルニ至ッテハ、世ヲ惑ハスノ甚シキモノデアルト思フ、是ハ大變大切ナコ
トデアリマス、農商務大臣ハ本年ハ三百萬石餘ッテ居ル、價格ハ今三十五圓ガ
相當ト仰セニナリマスト、地方デ米ヲ持ッテ居ル者ハドウ云フ感ジヲ起スカ、
是ハ私ノ申上ゲル點デ、是ハ由々敷非常ナ誤解ヲ起ス、又サウ仰セニナル以
上ニハ農商務大臣トシテ、現政府トシテドウシテモソレヲドウカシテヤラナ
ケレバナラヌ破目ニナル、政府ノ爲ニモ國家ノ爲ニモ私ハ大變之ヲ憂フルノ
デアル、私ハサウ云フコトノ意味デ三百萬石ト云フ基礎ノ批評ヲシテ御所見
ヲ伺ッタノデ、何カ仰セニナルナラバ伺ヒマスガ、私ハ別ニ御答辯ハ要求イタ
シマセヌ、斯ンナコトデ途ヲ違ヘテ居ッテハ方ガ著キマセヌカラ、私ハ質問ハ
是デ止メマス、ドウカ外ノ機會デ伺フ折ガアレバ能ク伺フコトニ致シマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=48
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049・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 辯明イタシマス、私ハ三百萬石ニ付テ、三百
萬石ヲ決メタト云フモノヲドウ云フコトニ依タノカ、三百萬石ニ非常ナル力
ヲ以テ數千言ヲ御費シニナリマスカラシテ、三百萬石ト云フモノハ唯衆議院
ノ其會議ニ於テ、確ト決マッタコトハ分リマセヌガ、先ヅ見當デ申シマスナラ
バ此所等アタリヲ見當トシテ、サウシテ買ヒタイト思ヒマス併ナガラ其
價ノ如何ニ依リマシテハ此增減ハ無論起ルコトデアリマス、例ヘバ三百萬石
ト思ヒマシテモ、價ノ高イモノヲ妄リニ政府ハ三百萬石買ハナケレバナラヌ
トシテ、價ノ如何ニ拘ラズ買フト云フコトハ致シマセヌ、ソレ故ニ唯ドノ位
買フカト申シマシタ故ニ其コトヲ申シタル次第デアリマス、ソレカラ價格ノ
コトニ付テ是モ亦大間違デアル、其價格ヲ如何ニシテ決メルカ、斯ウ云フコ
トノ御質問ニ對シテ、今日當リ前ノコトデ申シマスルト價格ナルモノハ一般
ノ物價ト共ニ〓低スルモノデアリマス、其昂低カラ申シマスト日本銀行ノ
指數ヲ以テ擧ゲテ見マスト、今日ハ一般ノ物價ト共ニ下ッテ來テ居ル割合ニ付
テハ、三十五圓位ニナルコトガ其指數ノモノト相成ッテ居リマス、併ナガラ實
際ノ米ハ二十七八圓、若クハ二十五圓以下ニナルト云フガ如キ狀態デアリマ
スカラシテ、此價ト云フモノモ餘程考慮ヲスベキモノデアリマス、唯物價ガ
斯クアルカラシテ、ソレニ依テヤレト云フコトハ、ソレハ容易ニ出來ナイコ
トデアリマス、唯當リ前ノコトヲ言ッテ見レバ斯ウナルガ、實際ニ於テハサウ
云フコトヲ以テ之ヲヤルト云フコトハ困難デアリマス、ソレデアリマスカラ
シテ、唯價ヲサウ云フヤウナコトダケデハ定メラレマセヌガ、其事ヲ申シタ
ノデアリマシテ、是ガ指數デアル故ニ、此見當デ買フトカ買ハヌトカ云フヤ
ウナコトハ全然違ッタコトデアリマス、ソレデ初メカラ申シタ譯デアリマシ
テ、此價格ヲ定メル上ニ付テハ自然物價ノ高低ト相當割合シテ高低スルコト、
或ハ其品物ノ產出高ノ增減ニ依テ起ル其物自身ノ價、又其時ノ事情人氣ニ依
テ亦高低スルコトモアリマス、斯ウ云フヤウナコトガ色〓綜合シテ初メカラ
市價ト云フモノガ出來ルノデアリマス、又市價ト云フモノヲ以テ之ヲ取捨シ
テ、サウシテ價ヲ定メナケレバナラヌコトデアリマスカラシテ、豫メ唯此基
礎ニ於テ斯クスルト云フガ如キコトハナカナカ價ヲ定メルノハ困難デアリ
マスカラ、ソレハ致シマセヌ、其時ノ事情ニ依テ委員會ニ諮リマシテ、適當
ト思フ價ヲ以テ其賣買、或ハ買フ或ハ賣ルト云フコトニシタイ、殊ニ此賣出
シマスコトナドニ付テハ、無論其時ノ價格デナケレバ賣レヌノデアリマス、
市價ニ重キヲ置クト云フコトハ是ハ無論ノコトデアリマス、又買入レマスニ
付テモ如何ニ政府ガ安イトシテ見テモ、其時ノ價ト云フモノニ之ニ重キヲ
置カズシテ、サウシテ政府ガ離レタル價ヲ持ツヤウナコトニシタナラバ、大變
ナコトガ起ル、ソコデアリマスカラシテ、其價格ト云フフモノハ果シテ安過
ギルカ高過ギルカト云フコトモ餘程考慮シナケレバナラヌト同時ニ、又其時
ノ價ヲ無視シテ行クヤウナコトヲスレバ、ソレハ亂暴ナル値打ガ出テ來ル
又亂暴ナル處置ト云ハナケレバナラヌ、サウ云フコトハ決シテ私ノ精神デハ
アリマセヌ、能ク說明シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=49
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050・上山滿之進
○上山滿之進君 唯〓ノ御說明ニ依リマスルト、此ノ法律案ガ出マシタナラ
バ、早速出來ルダケ早ク、現在ノ大正九年ノ產米ヲ買上ゲヤウト云フ政府ノ計
畫デアルニモ拘ラズ、政府ニハ此ノ價格數量ヲ決定スル委員會ニ提出スベキ、
必要ナル基礎材料ノ御調ベガマダナイ、斯ウ云フコトニ歸著イタスノデアリ
マスガ、爾カク了解シテ差支ゴザイマセヌカ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=50
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051・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 材料ハナイカト云フノデアリマスカ、出來テ
ハ居ナイカト云フノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=51
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052・上山滿之進
○上山滿之進君 農商務大臣ガ、今年ノ剩餘米ハ是位デアラウト仰セニナル
材料ハ、先刻私ノ申シマシタモノト、農商務大臣ノ御說明ニナルアノ品物デ
アル、ソレカラ又價格ハ現在ノ所デ諸物價ト見合ハスレバ凡ソ三十五圓ト思
フト仰セニナル材料、是レ亦私ノ先刻玆デ申上ゲル通リノモノデアルト云フ、
此二ツ共ニ甚ダ不確實デアルト思ヒマス、又農商務大臣ハ御自身モ確實ナル
モノデナイト斯ウ仰セニナル、サウスルト此法律ガ通過イタシマシテ、成ベ
ク早ク米ヲ買ハウト云フ政府ノ御考デアル、御考デアルニ拘ラズ、買フベキ
數量價格ヲ決定スベキ委員會ニ提出スルコトヲ要スル、原案トシテ或ハ原案
ノ參考トシテ提出スルコトヲ要スル數量及ビ價格ニ付テノ基礎材料ガ、農商
務省ニマダ御出來ニナッテ居ラヌモノト私ハ了解スル、御出來ニナッテ居レバ
伺ヒタイ、御出來ニナッテ居ラヌモノトシテ唯〓ノ御答辯ニ依テ爾カク諒解シ
テ質問ヲヤリマス、差支アリマセヌカ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=52
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053・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 今日ハ其案ヲ作ッテ居リマセヌ、作ッテ居リマ
セヌガ直キニ出來マス、モウ委員ガ出來マシテ、サウシテ來レバ、是ハ是デ
アルガ如何カト云フコトノ御質問デアリマスカラ、直グニ出來ル、私ノ考デ
ハ其案ヲ出スコトハ時間モ何モ費サナイト思ヒマス、初メ申ス通リニ、今日
ノ時價幾ラデアル、生產費ハ幾ラデアル、而シテ斯ウ云フコトヲ材料トシテ、
是位ナラバ適當ト思フガ如何カト云フコトノ御質問デアリマスガ、ソレハモ
ウ誠ニ早ク出來ルコトト思ヒマスガ故ニ、豫メ斯ウ云フ基礎ニ於テヤルト云
フガ如キ番匠曲尺ヲ作ッテサウシテ行クト云フコトハ、今ノ生產費ガ幾ラ掛ル
カ一體ノ物價ハドノ位スルカ、米ノ現在ハドノ位シテ居ルカ、サウスレバ
此位買ウタナラバ是ノ買入ハドウカト云フコトデアリマスカラ、直グニ出來
ルト私ハ確信シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=53
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054・上山滿之進
○上山滿之進君 モウ質問致シマセヌ、私ハサウ出來ヌモノト思フ、是ハ私
ハ多分間違ヒデアラウト思ヒマス、唯農商務大臣ノ近キ將來ニ於テ委員會ニ
御出シニナル原案ハ、今頃斯ウトハ申シマセヌ、ソノ原案ニ出來ルヤウノ基
礎材料ヲ頂戴シタイト思ヒマス、今日ニハ限リマセヌ、之ヲ要求イタシテ置
キマス
〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=54
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055・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 私ハ簡單ニ五點ニ付テ御伺ヒシタイノデアリマス、其中
ノ三點ハ主トシテ數量ニ關スルコトデアリマス、其他ノ一點ハ數量以外、他
ノ一點ハ臨時財政經濟調査會ニ關スルコトデアリマス、御答辯ハ敢テ農商務
大臣ヲ煩ハサヌデモ宜イノデアリマス、私ノ質問ニ對シテ簡潔ナル、眞率ナ
ル御答ヲ得レバ滿足スルノデアリマス、第一ハ、此米穀法ノ第四條ニ關スル
私ハ條文ノ質問ヲ致スノデアリマセヌ、此四條ノ條文ハ極メテ重大ナル關係
ヲ此法案ノ實行上ニ持ツモノト存ズルノデアリマス、之ニ依リマスルト、米
穀ノ需給調節ノ必要上、米穀ノ現在高ヲ調査スルコトニナルノデアリマス、
其場合ニハ米穀ノ生產者ト取引業者、倉庫業者其他占有者ニ對シテ報告ヲ命
ゼラレルノデアリマス、是ハ如何ナル方法ニ於テサレルノデアリマスルカ、
私ハ此調査ハ極メテ重要ナルコトト信ジマスルガ故ニ、其方法ノ大體ヲ伺ヒ
タイノデアリマス、併ナガラ此調査ガ出來ルトシマシテモ、其差額ヲ御算定
ニナルニハ、米穀ノ或時期ニ於ケル所ノ全國ノ數量ヲ基トスル必要ガアルノ
デアリマス、是ガ第二デアリマス、其全國ニ於ケル所ノ米穀數量ヲ如何ニシ
テ得ラルルカ、先程農商務大臣ハ農商務統計ニアリマスル所ノ、米穀ノ豫想、
實收等ニ付テ其報告ノ來ル所以ヲ御說明ニナリマシタ、私モソレハ承知シテ
居リマス、併ナガラ米穀ノ豫想高ハ兎ニ角、是迄米穀ノ實收高ナルモノハ
如何ナル數量ノ固リデアリマスカ農商務大臣ハ單ニ地方官憲ノ提供スル所
ノ材料ニ主トシテ重キヲ置カレルノデアリマスガ、アノ數量ハ私ガ屢〓本議場
或ハ其他ノ場合ニ於テ申シマシタル如ク、アレハ若シモ私ニ言フコトヲ許
セバ、アレハ僞リノ數量デアリマス、私ハ之ヲ僞的統計ト申シタイノデアリ
〒v,8統計デハナイ、或假想ノ數字ノ排列デアリマス、是ハ親シク府縣ニ就
テ其ノ主任者ニ就テ御聞キニナレバ分ル、是ハ決シテ正確ナル材料デナイノ
デアル、併ナガラ農商務當局ハ其數量ニ先ヅ重キヲ置イテ居ラレルノデアリ
やき、ち今日デモ尙ホ斯ノ如ク杜撰ナル信憑スベカラザル所ノ數量ニ矢張根
據ヲ置イテ、ソレカラ御必要ノ場合ニ或時期ニ米穀ノ現在高ヲ見テ、其差額
等ヲ御參考ニサレルノデアリマスガ、或ハ大臣ハ今申シマシタ所ノ或時期ニ
於ケル米穀ノ數量、是ハ基礎極メテ宜シクナイ信憑スベカラザルモノデアル、
故ニ將來ニ於テハ人口ニ對スル國勢調査アル如ク、此米穀ニ對シテモ同樣ナ
方法ニ於ケル所ノ收穫統計ヲ得ル御見込デアリマスルカ、是ガアリトスレバ
根據ノ數ガ出ルノデアリマスカラ、從ッテ第四條ノ御報告ヲ得ラルルニ付テモ
信ズベキ所ノ額ガ出ルノデアリマス、其邊ノ御考ハ如何デアリマスカ、第三
ハ先刻屢〓質疑ガアリマシタ所ノ、例ア三百萬石云々ノ件デアリマス、衆議院
ニ於ケル所ノ委員會ノ速記錄ヲ見マスルト、先刻仰セラレタ如ク、先ヅ大正
十年度ニ三百萬石位買ヘル見込デアル、而シテソレニ對シテハ斯ノ如ク言ハ
レテ居ル、地方ニアル所ノ收容スベキ倉庫ハ今日三百二十餘萬石ノ力ガアル、
斯ウ言ハレテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ先程三百萬石ニ付テノ增減アリト
言ハレマシタモノモ、減ルコトハ宜イガ假ニニ一百五十萬或ハ四百萬ト云フ場
合ニハ迚モ地方ノ收容力ガ足リヌノデアリマスカラ、買ヒタクテモ買へヌト
私ハ思ヒマス、此ノ三百三十餘萬石ノ收容倉庫ノ力アルト言ハレタコトハ、
私ノ誤解ナシトスレバ、ソレハ成ベク地方別ニシテ、尙ホ詳シク或ハ郡村別、
市別トシテ、ドノ縣ドノ郡ドノ地方ニ斯ノ如キ所ノ力ガアルカ、卽チ全國ト
申サズ地方別ニシテ、詳細ニ郡市別ニシテ、各地ニ付テ收容力アル所ノコト
ヲ伺ヒタイ、是ハ恐ラク御卽答ハ出來ヌト考ヘマス故ニ、書面ヲ以テ第三ノ
御答ヲ得タイト思ヒマス、第四ノ質問ハ、此法案ノ第五條ニハ五百圓以下ノ
罰金ニ處スル制裁ガアリマス、勿論此ノ以外刑法等ニ觸レル場合ニ刑法上ノ
制裁モゴザイマセウガ、此法案ニ於ケル所ノ制裁力ハ僅ニ五百圓以下デアリ
マス、卽チ「前條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ當該官吏若ハ吏員ノ職務ノ執
行ヲ妨ゲタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス」斯ウナッテ居リマス、私窃カニ思
フニ五百圓位ノ罰金ヲ出シテ喜ンデ命令ニ違反スル者ガアリハシナイカ、數
萬圓數十萬圓ノ利得ガアルコトヲ豫想シタトキニハ、斯ノ如キ僅ナ制裁ハ甘
ンジテ受ケテ、或ハ不正ナ行ヲシナイカト云フコトヲ疑フノデアリマス、故ニ
五百圓以下ノ罰金ハ輕クハナイカト考ヘマスガ、當局ハ是デ宜イト仰シヤイ
マスカ、尙ホ之ニ付テ詳細伺ヒタイ、私ハ體刑ニ處シ或ハ重キ罰金トシナケ
レバ、此實效ハ擧ラヌト考ヘマスガ、此邊ノ御見込ヲ伺ヒタイ、最後ニ伺ヒ
タイコトハ臨時財政經濟調査會ニ於ケル所ノ決議ノコトデアリマス、私ハ之
ヲ傳聞イタシマスニ、當時米穀法或ハ常平倉案ト申シマスカ、此法案ニ關ス
ル所ノ審議ノ場合ニ於テ、農商務大臣ノ御意見ト大藏大臣ノ御意見トハ反對
デアル、此點ニ付テ見テモ大藏大臣大藏次官其他二三ノ方ガ反對サレタノデ
アリマス、然ニ今般大藏大臣モ之ニ同意サレテ玆ニ御出シニナッタノハドウ云
フコトデアリマスカ、其時ニ反對サレタコトガ、或ハ其後ニ於テサウ云フ誤
解ガ直リ、大藏大臣ハ別ニ之ニ御反對ガナイノミナラズ、之ニ對シテ附隨法
案モ出サレタコトデアリマスカラ、御意見ノ一致ガ出來タコトト考ヘマスガ、
其邊ノ消息ヲ私ハ參考ノ爲ニ承ハリタイノデアリマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=55
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056・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御答イタシマス、御質問ノ第四條ノ數量檢査
ノコトデアリマスガ、此法ヲ施行シマスル上ニ於テ、ソレソレ調査ヲスルコ
トガ其場合ニ依テ起ルノデアリマスガ、場合ニ依リマスト云フト、此現數ヲ
豫想シテ是ダケアルト思ッタモノガ、遂ニ增減ヲスルト云フヤウナコトノ虞レ
ガアリマスカラシテ、其必要ヲ感ジタトキニ於テハ、ソレニ關係シテ居ル部
下ノモノニ向ッテ調査ヲ命ジテ、而シテソレガ若シ違約シタトカ、命令ニ付テ
適當ナル返答ヲシナイト云フヤウナコトガ起ッタナラバ、ソレニ付テ今御話ノ
如ク五百圓ノ金高ノミデナイ、體刑ニ處シテモ宜イト云フ論議モアリマシタ
ガ、先ヅ此ノ五百圓以下ト云フモノデ相當デアラウト云フコトニ相成リマシ
テ、斯ウ置イタ所以デアリマス、ソレカラ倉庫ノ所在ノコトデアリマスガ、
之ヲ施行シマス上ニ付マシテハ、ソレ〓〓調査ヲ致シマシテ、三府五港ヲ
始メ地方ノ必要アル所ニ於テ、ソレ〓〓調査イタシマシタ所ニ於テ百三十幾
萬ト記憶シテ居リマスガ、是ハ局長ヨリ申上ゲルコトニ致シマセウ、ソレゾ
レ縣々ニ付テノ調ヲ徵シテ居ルノデアリマス、ソレカラ唯今ノ米ノ調査デア
リマスガ、是ハ決シテ當局ニ於テモ完全デアルトハ存ジマセヌ、併シ今日ノ
現況ニ於キマシテハ地方官憲ノ調べヲ三囘モ執リマシテ、其三囘ニ於テ初メ
テ、是ダケアルト云フコトヲ決スルモノデアリマスカラシテ、是ヨリ外ニ
尙ホ良キ調査ノ機關ガアルト云フノデアリマセヌカラシテ、今日ハ之ニ依ル
外仕方ガナイノデアリマス、而シテ其物モ實際ニ照ラシマシテ、段々精密ニ
ナッテ參リマシテ、大ニソレヲ信ズル程度ニ進ミツツアルノデアリマスカラ、
先ヅ是デ今日ハ已ムヲ得ズヤッテ居ルノデアリマス、併ナガラ此ノ穀物倉ナド
ガ出來マシテ、又十分ニ此產額ノ調査ト云フモノガ必要デアルト云フコトニ
付テ益〓感ズルコトデアリマスカラシテ、是ハ或時期ニ於テ尙ホ好キ方法ヲ以
テ調査ノ途ヲ圖リタイト思ヒマス、當局ト致シマシテハ、是マデモ其邊ヲバ
調査イタシマシテ、ソレ〓〓部下ニモ諮ッタコトガアリマスガ、色〓財政等ノ
都合ニ依テ思フ通リニ行カナイトキデアリマスカラ、追〓ハ尙ホ信用ノ出來
ル調査ニ進ンデ行キタイト思ヒマス、臨時財政經濟調査會ニ於キマシテ、大
藏大臣ト私ト意見ノ相違ガアッタガ、是ガドウカ、ドウシテ調停ガ付イタカト
云フ御質問デアリマスガ、成ルホド臨時財政經濟調査會ニ於キマシテ、贊否
ヲ徵シマスル時ニ於テ、大藏大臣ハ反對イタシタルノデアリマス、併シ其反
對ノ理由ヲ深ク述ベタノデモアリマセヌ、併シ後デ聞キマスト、自身ハ一體
常平倉ト云フモノニ反對シタノデナクシテ、自身ニハ追〓ニハ官營デモシテ
見タ方ガ宜カラウト云フ議論デアル、併シ此方ノヤリ方ニ於テハ過渡期デア
ルカラシテ初メカラ完全ナコトヲ望ム譯ニハ行カヌカラシテ、今日ノ狀態ニ
照シテ完全セナクッテモ、先ヅ最初ノコトデアルカラシテ、斯ノ如キ事カラ
始メテ追〓完全ナ道ニ運ブヨリ外ニ仕方ガナイト云フヤウナコトデ、矢張此
方ニ於キマシテハ快ク承諾ヲ致シタコトデアリマス、其他ノコトニ於キマシ
テハ、ドウゾ當局者ヨリ御說明申上ゲル方ガ宜カラウト思ヒマス
〔政府委員岡本英太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=56
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057・岡本英太郎
○政府委員(岡本英太郞君) 唯今ノ御質問中ニ、倉庫ノ收容力ニ付テノ御質
問ガゴザリマシタカラ申上ゲマスガ、米ノ收容力ニ付マシテハ本年ニ至リ
マシテ、先月デス先月各地方ノ主ナル所ヲ調査イタシマシタ、東京、橫濱、
大阪、神戶、門司、下關、長崎、熊本、名古屋、四日市、仙臺、新潟、富山、
此ノ十三都市ニ亙リマシテ實地調査ヲ致シマシテ、現在米ヲ貯藏シ得ルニ足
ル設備ノアル倉庫ニ致シマシテ、明イテ居ルモノガ總計デ二百七十萬石バカ
リニナッテ居リマス、其他ニ農業倉庫ガゴザリマシテ、其調ベマシタ中ニ尙ホ
六十數萬石收容シ得ラレル、是等ヲ合セマスト云フト約三百二三十萬石ノ米
ヲ收容セラルル譯デゴザイマス、其外ニ尙ホ都市ニ於キマシテ取調ノ至ッテ居
ラヌ所ガゴザイマス、是等ニ於キマシテ今日ノ時節柄デゴザイマスカラシテ、
尙ホ尠カラズ收容シ得ル倉庫ガアルト信ジテ居リマスガ、是ハ調査ヲ致シテ
居リマセヌカラシテ、ハッキリ此所デ申上ゲル譯ニ參リマセヌ、調ベマシタダ
ケニ付テ唯今申シタ通リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=57
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058・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 唯今政府委員ヨリ御說明ノアッタ收容倉庫ニ付マシテ
ハ、數字ニ亙リマスノデ、ドウゾ是ハ書面ニ致シテ戴キタイト思ヒマス質
問ハ是デ見合セマス、ソレカラ第四條ニ付テチヨット伺ヒタイノデアリマ
スガ、少シク御答ガ不徹底ニ感ジマスカラ伺ッテ見タイ、曾テ寺內內閣ノ時ニ
農商務當局ハ、地方ニ向ッテ米ノ在高ヲ調ベテ見タコトガアル、其方法ニ付テ
ハ私共ハ多少意見ガ違ヒマスガ、餘リ十分ナル結果ヲ得ラレナカッタヤウニ考
ヘテ居ルノデアリマス、此度ノ四條ヲ見マシテモ矢張アア云フ風ナ方法デ
調ベルノデナイカ、例ヘテ申シマスルト、米穀ノ生產者ノ如キモノハ大慨御
調ガアリマセウ、取引業者モ左樣デアリマセウ、倉庫業者モ左樣デアリマセ
ウガ、其他占有者ト言ッテモ廣イ範圍デ、誰ガ米ヲ持ッテ居ル人ト云フコトガ
分ラナイ、故ニ之ヲ徹底的ニスルニハ農業家ハ無論ノコト、各戶ニ就テ調べ
ナケレバナラヌ、サウスルト中〓急速ニハ豫期スル結果ハ得ラレヌノデアリ
マスガ、斯ノ如キコトハ最モ迅速ナル調ニ依ラザレバ何ノ效果モ無イノデア
リマスガ、其邊ハ如何デアリマスカ、之ヲモウ一遍伺ヒタイ、ソレカラ米穀
統計ニ於テハ當局者ハ地方ノ官憲ニ命ジテ三囘調ベタト言ハレルガ、囘數ガ
何囘アッテモ元トガイカヌノデアリマスカラ、斯樣ナモノハ參考ニナラヌト思
フノデアリマスガ、當局者ハ參考ニ調ベテ居ルヤウデアリマス、併シ將來ニ
於テ何カ改メテ國勢調査的ノ方法ニ依テヤラウト云フヤウナ御考デモアリマ
スカ、ソレヲ伺ヒタイ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=58
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059・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 唯今調査ヲシタイト云フコトニ付マシテノ
腹案ハ、是迄ノ如ク官憲ニ依テ町村ノ手デ調ベテ參リマスト、ドウモ責任上
十分行カナイカト思フコトガアリマス故ニ、若シ財政ガ許シマスナラバ、矢
張各方面ニ於テ、サウシテ之ヲ調ベル相當ナル有給者ヲ雇用イタシマシテ、
サウシテ調ベタイ、斯ウ云フ考デ一通リノ方法ヲ以チマシテ、ソレ〓〓當局
者トハ相談ヲ致シマシタガ、何シロ財政上許シマセヌ爲ニ其儘ニナッテ居ル次
第デアリマス、先ヅ今日ノ腹案ト申シマスレバ、今ノ方法ニ依テヤリタイト
云フコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=59
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060・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 マダ一ツ殘ッテ居リマスガ、ソレハ第四條ノコトヲ伺ッタ
ノデス、先年寺內內閣ノ時ニ、農商務當局ガ米穀ノ貯藏ニ付テ取調ガアッタ、
併ナガラ其得タ結果ハ十分デナイヤウニ思ッテ居リマスガ、此度若シ第四條ノ
コトノ御實行ニナルニモ、矢張左樣ナコトハアリハシナイカ、何トナレバ
占有者ニ就テ調査ヲスルト申シマシテモ、中〓是ハ多數デアッテ、到底一定シ
テ居ラナイ、故ニナカ〓〓是ハ御調ガ迅速ニ付カナイデアラウカラ、之ヲ早
クヤラウト云フニハ困難デアル、併シ何カ迅速ニヤル御考ガアルナラバ伺
ヒタイト申シタノデアリマス、序ニ伺ッテ置キマスノハ、第一ノ御返事ニ付テ
ハ、財政ガ許スナラバ云々ト仰ッシヤル、是ハ私ハドノ位ノ入費デアルカ存ジ
マセヌガ、ソレニ依テ米穀ノ額ガ確實ニナリマシタナレバ、非常ナ利益ヲ得
ルノデハナイカト思フノデアリマス其邊ヲ伺ヒタイ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=60
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061・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 唯今ノ入費デ相談イタシマシタル所ハ約二百
萬位ニナル考デアリマス、ソレカラ寺內內閣ニ付テ云々ト云フ事情ニ付マシ
テハ、政府委員ヨリ御答申上ゲマス
〔政府委員岡本英太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=61
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062・岡本英太郎
○政府委員(岡本英太郞君) 唯今ノ御質問ハ或ハ御答ヘイタスコトガ違ッテ
居ルカト存ジマス、能ク了解イタシマセヌデスガ、斯ウ承ハリマシタデスガ、
第四條ニ必要ナル事項ノ報告ヲ命ズルトカ、或現場ニ立入ッテ調ベル規定ガア
ルガ、其調ベラレル人ハ生產者或ハ取引業者、倉庫業者、是等ハ速ニヤル方
法モアラウガ、占有者ト云フコトニナルト非常ニ範圍ガ廣イカラ、急速ニ調
査ヲ命ズルト云フ場合ニハ支障ガアラウ、現ニ寺內內閣ニ於テ在米調査ヲ命
ジタガウマク行カナカッタト云フ御質問ノヤウデアリマスガ
〔伯爵柳澤保惠君「サウデアリマス」ト述フ〕
占有者ニ限ラズ在米ヲ調ベルト云フコトハ、或人ニ限ッテヤル場合モゴザイマ
セウシ、又ハ一地方ニ限ッテ取調ベル場合モゴザイマセウ、又全國ニ涉ッテ調
ベル場合モゴザイマセウ、ソレハ其時ノ必要ニ應ジテヤルコトモゴザイマス
ガ、急速ニ或市場ヲ調ベルト云フ場合ニ於キマシテハ、占有者ノ如キ者ハ遍
ク調ベルト云フコトハ甚ダ困難デアラウト思ヒマス、例ヘバ運搬中ノモノデ
アリマストカ云フヤウナコトナラバ、速ニ調ベラレマスガ、一般占有者ニ向ツ
テ調ベマスト云フコトハ、多少ノ時日ヲ要シマス、併ナガラ是等ハ其必要ニ
應ジテ普遍的ニヤル譯デアリマセズ、常時其取調ヲ致ス譯デモアリマセヌ、
適當ノ場合ニ於テ調査ヲ致スヤウニ本文ニハ規定ガ出來テ居リマスノデ、ソ
レガ爲ニ廣イ意味ノ占有者ト云フコトニナッテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=62
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063・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 私ハ常平倉制度ノ變名デアリマス米穀法案ニ付テノ、根本
ニ付テ伺ヒタイ所ガ大分アッタノデゴザイマスガ、藤村男爵竝ニ其他ノ方ノ御
質問ニ依リマシテ、根本ノコトハ最早御質問申上ゲナイ、條文ニ付テ御伺ヒ
シタイノデアリマスガ、御答辯ハドウゾ藤村男爵等ニ答ヘラレタヤウナ詳說
ニ涉ラヌデモ宜シウゴザイマス、斯ウデゴザイマスカト伺ヒマシタラ、サウ
デゴザイマストカ、サウデナカッタナラバサウデナイト云フヤウニ、極メテ簡
單ニ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、第一ニ伺ヒタイノハ、此ノ米穀法ノ目
的ハドウ云フコトデアリマスカト云フコトデアリマス、第一條ヲ見マスト云
フト「米穀ノ需給ヲ調節スル爲必要アリト認ムルトキハ」斯ウアリマス、農商
務大臣ハ屢〓是ハ數量ノ調節デアルト云フ御說明ガアッタヤウデアリマス、過
日豫算委員會ニ於テ大藏大臣ハ、日本ノ如キ特殊ノ米ヲ持ッテ居ル、其米ニ付
テハ豐年ノ時ニ買ヲテ置イテ、凶作ノ時ニ備ヘル爲ノ法律ト云フヤウナ御說明
デアリマス、矢張數量ヲ調節スル爲ダト云フヤウナ御說明デアッタカノヤウニ
思フノデアリマス、若シソレデアレバ第二條ニ外國米········外國ニ輸出シタリ、
輸入シタリスルコトヲ制限ヲスルト云フコトハ、輸出ノ方ハ或ハ制限ノ必要
ガアルカモ知レマセヌガ、輸入ニ付テ色〓制限ヲ加ヘルト云フ必要ハナイト
思ヒマス、第二條ニアルノハ、是ハ價格ノ調節デアラウ、第一條ノ需給ト云
フコトハ、農商務大臣竝ニ大藏大臣ハ數量ノ調節デアルト仰セニナルガ、第
二條ノ案ヲ以テ見ルト、此法律ハ價格ノ調節ヲ目的トシテ居ルヤウニ見エル
ノデアリマス、需給ヲ調節スルト、其附ケタリノ結果トシテ價格ニ影響スル
ト云フヤウナ御說明ガアッタヤウデアリマスガ、ソコデ伺ヒタイノハ本法ノ目
的トスル所ハ數量ノ調節デアッテ、唯價格ハソレニ伴ッテ、數量ノ需給ノ調節
ヲスレバ自ラ價格ノ調節ニモナルト云フダケノ目的ヲ持ッテ居ルノデアリマ
スカ、或ハ數量ヲ調節スルト共ニ矢張價格モ調節スルト云フ目的デアルノデ
アリマスカ、ソレヲ伺ヒタイ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=63
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064・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御質問ノ目的ハ數量デアリマス、而シテ數量
ニ依リマシテ價格モソレニ伴ウテ參リマスカラシテ、先ヅ主體トシテ數量、
而シテンレニ又從トナッテ此價ト云フモノモ考慮イタサナケレバナリマセヌ、
主ハ數量デアリマス、ソレカラ第二條ノソレナラバ外國米ハドウカト云フコ
トデアリマス、是ハ先刻上山君ノ御質問ニ御答イタシマシタル如ク、政府ニ
於テハ必要已ムヲ得ナイ狀態ニ參リマシタ時ニ於テ、之ニ制限ヲ加ヘ增減ナ
リヲ致シマスガ、先ヅ日本ノ米ナルモノハ特殊ノ品質デアリマスル故ニ、此
コトニ於キマシテハ政府ガ自ラヤッテドウト云フヤウナ所マデニ重キヲ置イ
テ考ヘテ居ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=64
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065・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 日本ノ〓糧ノ不足ヲ補フ爲ニ、凶作ノ場合ニ食品ガ缺乏シ
テハナラヌカラト言ウテ、豐年ノ時ニ米ヲ買入レテ之ニ備ヘルト云フコトカ
ラ、數量ノ調節デアルト云フコトデアリマスレバ、外國カラ米ガ這入ッテ來ル
コトハ幾ラ這入ッテ來テモ差支ハナイト思ヒマス、唯外國カラ無暗ニ這入ッテ
ハ困ルト云フノハ、一方ニ於テ價格ヲ調節ナサラウト云フ場合ニ、外國カラ
餘リ自由ニ這入ルト其目的ヲ達スルコトガ出來ヌカラ、ソコデ制限ガ起ルノ
デアリマス其目的ヲ伺フト價格ノ調節ト云フコトガ目的デナク、數量ノ調
節ダケガ目的デアルト仰セニナルコトハ分リ兼ネルノデアリマスガ、併シ餘
リ深クソレヲ申シマスト、又農商務大臣ノ御答辯ガ長クナルト思ヒマスカラ、
私ハ唯ソコニ疑ヒヲ存シテ置イテ、更ニ數量ノ調節デアルト云フ御答辯ニ對
シテ、數量ヲ伺ヒタイノデアリマスガ、先程此議場ノ問題ニナッタ三百萬石ト
云フノハ、ソレハ唯今年殘ヲテ居ル米ガ三百萬石程餘ルラシイ、政府モ亦三百
萬石ダケヲ此度買フ意思ヲ持ッテ居ル、ソコ迄行カヌカモ知レヌガ、先ヅソコ
ノ邊迄行ク見込デアルト仰セニナッタ譯デアリマス、私ノ御尋ネシタノハサ
ウデナイノデアリマス、數量ノ調節デアリマスナラバ、凡ソドレ位日本デハ
常ニ常平倉ニ貯ヘテ置イタナラバ、凶作ノ間ニ合フカト云フ、何レ數量ノ調
節ト云フコトガ本ニナッテ、農商務大臣ハ御調ベガアラウト思ヒマスガ、其數
量ハ如何程ヲ凡ソ見當ニシテ、此法ガ出來テ居ルカト云フコトヲ伺ヒタイ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=65
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066・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 數量ノ約三百萬石位ト申シマシタノハ現在
ニ於テ此位ナラバ宜カラウト申シタ譯デアリマス、平生ニ於テ幾ラ貯ヘテ置
イタラ宜イカト云フコトハ、是ハ分リマセヌ、日本ノ全體ノ趨勢カラ申シマ
スト、米ガ剰ルト云フコトハ誠ニ稀ナンデアリマス常ニ平年ニ於テ不足勝
デアリマス、二三百萬石不足ヲ生ズルト云フノガ今日ノ國情ニナッテ居リマ
ス、ソコデアリマス故ニ、是ガ是マデノ經驗デ申シマスルト、米ヲ貯ヘテサ
ウシテ何百萬石ヲ持ッテ居ルト云フコトハ隨分困難デアラウト思ヒマス、ソコ
デ政府デハ此ノ常平倉ヲ米穀法ヲ用ヒマシテ、多イ時ニハ買ッテサウシテ
凶作ノ用意ヲ致シテ居リマスガ、偖常ニ米ヲ何百萬石持ツコトガ出來ルカド
ウカト云フコトハ、是ハ其年ノ豐凶如何ニ依テ起ルコトデアリマスガ、一體
ノ見込ミトシテハ隨分困難ナコトデアルト思フ、從ヒマシテ數量ヲ幾ラ持ツ
ト云フコトハ、今日豫定シタ額ハアリマセヌ、唯二億萬ト云フ金ヲ以テ取捨
シタナラバ、大〓其時ノ需給ニ於テ程好キ調節ガ出來ルデアラウ、斯ク承知
シテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=66
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067・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 米穀法ヲ御制定ニナッテ、而モ其目的ガ數量ノ調節デアルト
云フコトニナッテ、而シテ政府ニハ數量ハドレ位凡ソ持ツベキカト云フ御見込
ミガナイト云フ事柄ハ、私ハ誠ニ驚カザルヲ得ヌト思ヒマスガ、御見込ミガ
ナイト云フコトデアレバ、ソレハ仕方ガアリマセヌ、ソコデ今一步進ンデ御
尋ネシタイノハ、數量ノ調節デアッテ價格ノ調節デナイト云フ御答辯デアリマ
スガ、例ヘバ今年ハ三百萬石程ノ剰餘米ガアル、政府ハ其ノ三百萬石程ヲ御
買ヒニナッテ、其ノ三百萬石アレバ他日凶作ノ時ニハ先ヅ備ヘラレルト云フ、
十分デナイニシテモ先ヅ備ヘラレルト云フ見込ミノ付テ居ル場合ニ、來年モ
再來年モ豐作デアッテ、米價ガ下落イタシタ時ハ、ソレハ米價調節ガ目的デナ
イカラ、ソレハ構ハヌト云フ御考デアリマセウカ、ソレヲ伺ヒタイ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=67
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068・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) ソレハ矢張米ガ明年ニ於テ殘額ガ出テ來
テ、サウシテ之ガ消費シ得ナイト云フ狀態ヲ示シタモノト思セマスサウシ
マスト云フト其時ニ於テ亦相當ナル價格ヲ買ウテ行クト云フコトガ必要ニナ
ルト思フノデアリマスソレハ二億萬圓ノ資金ヲ持シテ居リマスナラバ、相
當ナル調節ガ出來ルダケノ米ヲ買得ル見込ミニ於テ立テタル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=68
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069・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 農商務大臣ハサウ致スト剰餘米ヲ常ニ買フト云フ御考デ、
此法律ヲ御出シニナッタヤウニ聞エルノデアリマス、私ハサウデハナク數量ノ
調節ト仰シヤル以上、凶作デ不足スル時ニ備へル爲ノモノヲ御買ヒニナル、
其數量ガアレバ其以上ニハドレダケデアッテモ御買ヒニナラヌ、若シ米價調節
ガ目的デアルナラバ、米ノ下ッタ時ニハ他日ノ備ヘガアッテモ、尙ホ之ヲ買フ
ト云フコトニナリマスケレドモ、米價調節ガ目的デナイナラバ、凶作ニ備ヘ
ルダケノ目的ヲ達スルナラバ、其以上ハ御買ヒニナラヌモノト思ウテ居ッタ所
ガ、唯今ノ御答辯デハ明年デモ米ガ安イ、剩餘米ガアレバ矢張買フト仰シ
ヤル、サウスルト凡ソノ目標ハチットモナク、要スルニ剩餘米ガアレバ買ッテ
置クト云フヤウニ聞エマスガ、左樣デアリマスカ、モウ一遍········尙ホ種々質
問ハアリマスケレドモ一ツヅツ伺ッテ次ヘ行キタイ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=69
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070・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 資本ハ二億圓ニ限ッテ居リマス、兎ニ角無限ニ
買フコトハ出來ナイ、其場合ニ於テ調節スルト云フ考デ二億圓ト記シテアル
ノデアリマス、ソレデ御分リニナリマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=70
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071・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 資本ハ二億圓ト限ラレテ居ル以上ハ、米ノ數量ニ付テモ農
商務大臣ハ凡ソ限ラレタ見當ヲ以テ御出ニナルト思フ、ソレデナケレバ資本
ヲ二億ト、斯樣ナ數字ガ出ルト云フコトハ分ラヌノデアリマス、ソレガ數量
ニ付テノ見込ミガナイト仰シヤルコトハ私ハ誠ニ分ラヌコトダト思ヒマス
ガ、併シ分ラヌコトハ何時マデ經ッテモ分ラヌノデアリマスカラ、其次ノ質問
ヲ致シマス、先程カラ大分問題ニナッテ居リマス第三條ノ「米穀ノ買入又ハ賣
渡ヲ爲サムトスルトキハ其ノ價格及期間ヲ告示スヘシ」買入ヲシヤウト云フ
時ニハ價格及ビ期間ヲ告示スルト云フコトニナッヲ居リマスガ、先程伺ッテ
居ルト、農商務大臣ハ價格ヲ定メテ告示スルト云フ言葉ヲ御使ヒニナッテ居
ル、生產費及ビ市價ニ依テ定メルト云フコトヲ御答辯ニナッタノデアリマス、
私ハ此法文ヲ見タ時ニハ、價格ハ其價格ニ依テ告示シテ買入レルト思ウテ居ツ
タ所ガ、サウデハナク價格ヲ定メラレルノハ生產費ト市價ニ基ク、サウスル
ト農商務大臣自カラ御認メニナッタ通リ、若シ定メタ價格ガ實際ノ價格ヨリ以
下デアッタナラバ、何遍告示ヲシテモ賣ルモノハナイ、之ニ反シテ其價格ガ實
際ノ價格ヨリ高カッタナラバ競ッテ買ヲテ貰ヒタイト、ソレハ全國競ッテ集ッテ參
リマス、騒動ガ起ルト私ハ思ヒマス、ノミナラズ成タケ其價格ヲ高クシヤウ
トシテ運動ガ玆ニ起ッテ來ル、其運動ノ爲ニ腐敗ヲ生ズル、今度ハ極ッタ其高
イ値段デ自分ノ米ヲ買ッテ貰フト云フ爲ニ又腐敗ヲ生ズル、是ハ大變ナコトニ
ナルヤウニ思フノデアリマス、法文自身ニハサウ云フコトハナイヤウデ、或
價格デソレデ買フヤウニ見エル、私ハサウデアラウト思ッテ居リマシタガ、農
商務大臣ノ先程カラノ御答辯ニ依テ、新タニ一種ノ價格ヲ作ッテ御買上ゲヲ
ナサルヤウニ聞エルノデアリマスガ、ソレデハ大騷動ガ起ルニ違ヒナイト思
ヒマス、其點ハ如何ニ御考ヘデアリマスカ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=71
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072・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 其時ノ必要ナル價格ト信ジマスルモノヲ以
テ、サウシテ之ヲ公ニ致シテ買入レルノデアリマス、何等其事ニ付テハ騷
動モ何モ起キナイト思ヒマス、今日モ政府ガ定ムルト云フコトデアリマスレ
バ米其他ニ於テ總テ賣買サレテ居ル凡ソ常識デ判斷シ得ル價ガアルノデア
リマス、其常識ニ依テ判斷シ得ルモノニ付テ判斷シタナラバ、ヒドク騷動モ
何モ起キナイ、唯無理ナコトヲ致シマスト其騷動ガ起ッテ來ルノデアリマス、
政府ハ成ベク無理ヲシタクナイ、衆知ヲ集メテ價ヲ定メテ之ヲ買ヒタイ、例
ヘバ今日米ガ幾ラスルカト言ヘバ二十七圓ナラバ二十七圓シテ居ル、此ノ二
十七圓ト云フモノハ適當ナモノデアルカラ二十七圓ニ買入レル、而シテソレ
ハ此度幾ラ幾ラヲ以テ二十七圓何月幾日マデニ於テ持ッテ來レバ、相當ナル途
ヲ以テ買入レル、賣リタイ者ハ持ッテ御出デナサイ、斯ウ云フコトヲ明カニシ
テ置クノデアリマス、而シテソレガ適當ノモノナラバ適當ナモノモ參リマセ
ウ、或ハ其時ニ於テ不適當ナル價ヲ定メテ來ルト云フモノナラバ、ヒドク米
ガ來ルト云フコトモアレバ、又ソレニハ賣ラヌト言ッテ、賣ラヌト云フコトモ
起ッテ參リマセウ、ソコデ是ナラバ賣リ得ル、又買ヒ得ルト云フ賣買ノ間ニ於
テ定マルベキモノガアリマスカラシテ、ソレニ依テヤッタラ決シテ困難デハナ
イト云フ考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=72
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073・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 今ノ御答ナラバ、私モ大抵自分モ同樣ニ考ヘテ居ッタヤウナ
コトデアリマス、先程生產費及ビ市價ヲ斟酌シテ定メルト仰シヤッタ、サウダ
ト云フト新タナル値段ガ極マルヤウニ思フ、今ノ農商務大臣ノ御話ニ價ヲ認
メル、其認メルノニ衆知ヲ集メテ獨リデハ認メナイデ、皆ガ此地方ノ直段ハ
是ダト認メタ處デ、其價ヲ〓示スルト云フヤウナ御話ニ伺ヒマシタガ、其通
リデアリマセウカ否ヤ、ソレカラ米ノ直段ハ地方ニ依テ違ヒマスガ、ソレデ
アルト矢張農商務大臣ハ其地方地方ノ相場ヲ認メテ、ソレニ依テ御考ヘニ
ナルコトト思ヒマスガ、其通リデアリマスカ否ヤ、併セテ伺ヒマスガ、其代
金ハ融通手形デ御拂ヒニナルカ、證劵ヲ發行シテ拂ハレルコトデアリマスカ、
サウスルト其證劵ト其直段ニハドウ云フ關係ニナリマスカ、百圓デ買ッタモノ
ハ百圓ノ證劵ヲ御與ヘナサルノカ、或ハ證劵ハ一年二年ノ手形デアルカ、其
割引サレタ處ソレヲ還元ト云ヒマスカ何ト言ヒマセウカ、百五圓ナラ百五圓
ト云フコトニ證劵ヲ御與ヘニナルノデアリマスカ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=73
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074・山本達雄
○國務大臣、男爵山本達雄君) 買入レル場所ヲ凡ソ指定ヲ致シマシテ、或ハ
東京、大阪、神戶、若クハ新潟何處此處ト云フ要所要所ニ於テハ買入ヲスル
見込デアリマス、而シテ其買入レマス價格ハ、其指定シテ居ル場所ニ參リマ
スル其價ヲ以テ定メル、例ヘバ三十圓シテ居ルト云フモノガ、地方ニ於テハ
二十八圓九圓シテ居ル、併ナガラ東京ニ持ッテ參リマシタラ、運賃諸掛リ總テ
ヲ定メマスレバ、ソレデ賣リ得ル、斯ウ云フコトニナリマシタナラバ、ソレ
ヲ標準トシテ、ソレ〓〓價ガ定マリマシテ持ッテ參リマス、此買入レル處ノ價
ヲ定メテ置キマスレバ、敢テ差支ナイト信ジテ居リマス、ソレカラ第二ハ何
デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=74
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075・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 手形···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=75
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076・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 其手形ハ無論其時ニ定メマシタル價ニ依テ手
形ヲ振出ス積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=76
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077・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 其時ニ定メタ價ニ依テ振出スト云フコトガ私ハ分ラヌ、伺ツ
テ居リマスガ、前申上ゲタ通リ米ノ直段ガ全體ガ三千圓ト云フコトニナリマ
シタ時ニ、手形ノ額面三千圓ヲ御渡シニナルノデアルマイト思ヒマス、何レ
一年二年手形デ割引スベキモノデアリマスカラ、其手形ノ直段ハ其時ハ九百
五十圓アリマスカ、或ハ九百六十圓アルカ存シマセヌガ、ソンナコトニナル
デアラウト思ヒマスガ、其割合ニ依テ算出シタ金額ハ融通手形デ御渡シニナ
ルノデアリマスカ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=77
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078・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 全ク其時ノ價デアリマス、例ヘバ三十圓デ買
フト云フコトガ起リマスレバ、其三十圓ダケノ手形ヲ渡スノデアリマス、而
シテ其者ハ金ニナリマセヌ故ニ、其間ハソレデ以テ金ヲ借ルトカ或ハ手形ノ
賣買ト云フコトモ、ソレゾレ割引シテ起ルコトト思ヒマスソレデアリマス
故ニマア買入レマスル價ヲ定メマスル時ニ於テ三十圓ノ價ヲシテ居ルカラ三
十圓ニ政府ガ買フト云フコトニシテ買ヒマスレバ、直グニ金ニナラズシテ其
手形ハ一箇年融通シテ、ソレソレ割引シテ取ルノデアリマスカラ、是ハ實際
ハ二十八圓トカ九圓トカ云フヤウナコトガ起ルノデアリマス、ソコデアリマ
スカラシテ、其時ノ直段ヲ定メル上ニ於テ大ニ考慮ス可キ事柄チヤト思ウテ
居リマス、ソレガ唯其時ノ時價一方デイケナイモノハ、價ヲ定メル委員デモ
選バンケレバナラヌト云フコトノ必要ガソレニ依テ起ルノデアリマス、唯其
時ノ價デ買フト云フナラバ、何モソンナモノヲ設ケマセヌデモ、公定相場ニ
今日二十圓ダ明日ハ二十五圓ダト云フノデ買入レル、左モ無クシテ適當ナモ
ノヲ買フト云フノデ、初メテソレデ價ヲ定メナケレバナラヌト云フコトガ起
ルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=78
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079・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 是ハ私ノ考ヘテ居ッタコトト大變違フノデアリマスカラ、能
ク明カニシナケレバナラヌガ、甚ダ失禮デハゴザイマスケレドモ、證劵ノ事
柄ハ特別會計ノアリマス方ノ大藏省ノ委員ニ伺ヒタイノデアリマス、大藏省
ノ委員ニ唯一言デ宜シウゴザイマス、私ガ申シタノニ對シテ然リデアルヤ否
ヤト云フ答辯デ宜シウゴザイマスガ、ソレヲ伺ヒマス
〔政府委員神野勝之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=79
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080・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 米ノ價ガ三十圓デアリマスレバ、三十圓ノ額面
ノ證劵ヲヤルト云フコトニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=80
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081・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 サウスルト米ヲ賣ル者ハ非常ニ損ニナリマス、ソレデ農商
務大臣ノ言ハレルヤウニ、實際ノ相場ハ三十圓デアルノニ農商務省カラ三十
五圓デ一石買"テヤルト云フ保證ヲセラルルコトニナル、サウセヌト他ノモノ
ト大變違ッテ參リマスカラ、夫デアリマスカラ大變ナソコニ齟齬ガ生ジマス、
此價ヲ定メル時ニ、ソレコソ如何ナル委員ガ出來テモナカナカ手形デ渡スノ
ト實際ニ拂フノトガ、ドウ云フヤウナ實價ヲ定メテ宜イカト云フコトガ、大
變ナ問題ニナル、私ノ考ヘタ處デハ米ヲ三十圓ノモノヲ買入レテ、三十圓ト
定メテ置イテ、手形ヲ渡ス時ニ三十五圓ナラ三十五圓ノ手形ヲ渡スモノト思ッ
テ居リマシタガ、サウデ無イト云フコトデ今農商務大臣カラモ言ハレマシタ、
大藏省ノ政府委員カラモ言ハレマシタガ、モウ一遍確メマスガ、其通リデア
リマスカ否ヤ、農商務大臣カラモウ一遍伺ヒタイ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=81
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082・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 其通リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=82
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083・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 證劵ノ割引歩合ハ政府ガ定ムル步合ヲ持っテ居ルノデアリ
マスガ、此步合ハ一般ニ此米ノ買入ニ付テ出シタ融通手形割引步合モ、今ハ
斯ウスル、二箇月先キニナルト又政府ハ今頃ハ割引ハドウスルト云フヤウニ
御變ヘニナルノデアリマスカ、或ハ明日ニ發行サレル融通手形ダケヲ割引ヲ
スル、斯ウスルト云フ風ニ御定メニナルノデアリマスカ、ソレヲ伺ヒタイ
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=83
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084・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 大藏ノ政府委員カラ御答シタ方ガ適當ト思ヒ
マス
〔政府委員神野勝之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=84
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085・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 割引ノ步合ハ、或一定期間ハ定メテ置カナケレ
バナラヌト考ヘテ居リマス、ソレガ半箇年續クカ、或ハ一年續キマスカ、其
場合ニ依リマスルガ、唯今我〓ガ考ヘテ居リマス處ハ、マア一年位ハ一定ノ
步合ニ定メテ置カナケレバナラヌカト考ヘテ居リマス、年ニ依テ其步合ハ變
ハルコトモアラウト思ヒマスルガ、少ナクトモ或期間ハ一定シテ置カナケレ
バナラヌト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=85
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086・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 割引步合ノ全體ニ付テ定メラレル模樣デアリマス、唯今御
答辯ニ依ルト而シテ此期間ハ餘リ動カサヌヤウニト云フコトデゴザイマ
スガ、其處ハ分リマスガ、米ヲ買入レルノ時期ハ違ッテ居ルノデアリマス、而
シテ一方ハ割引歩合ハ何月ノ何日カラ幾ラト云フコトニナッテ居ルガ、米ヲ買
フ時ノ時日ニハ大變相違ガアリマスカラ、初メ買ッタ時ニ定ッテ居ッテ、割引步
合ガ又其手形ノ期間ノ來ナイ中ニ變ル場合ガアラウト思ヒマス.金利ガ高ク
セラレルヤウナ場合ガナイトモ限ラヌノデアリマスガ、ソンナ時ハサウ云フ
コトガ多イト致シマスト、サウ云フ所ヘ持ッテ行ッタナラバ、大變變ナモノニ
ナリマスカラ、此ノ融通手形ヲ受取ッテ、ソレヲ直グ日本銀行ヘ持ッテ行ッテ割
引ヲシナケレバ、誠ニ不安心ナモノニナルヤウデゴザイマスガ、初カラ買入
金ハ當リ前ノ評價デアルガ、相方ノ便利デ宜カラウト思ヒマス、其點ハ如何
デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=86
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087・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 例ヘバ是ハヤリマス方法ハ色くアリマストハ考
ヘマスルガ、例ヘバ手形ノ滿期日ヲ年度ノ末日ト致シマシテ、卽チ三月三十
一日ヲ以テ滿期ト致シテ置キマスレバ、其米ヲ賣ッタ人ガ受取ル手形ハ誠 氏
一年ノ期限ノ手形ヲ受取ル人モゴザイマセウシ、或ハ半年ノ期限ノ手形ヲ受
取ル人モアル、又其間ノ期間ノ手形ヲ受取ル人モアラウト思フノデアリマス、
其間ニ割引步合ガ一定イタシテ居リマスレバ、早ク割引ヲ受ケタラ損、遲ク
受ケタラ得スルト云フコトハナイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際時間ノ延長ヲ宣〓イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=88
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089・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 是ハナイト御考ヘニナルト云フコトデゴザイマスガ、政府
ガ定メル步合ヲ以テシマスルト、此定メル步合ハ時〓動クモノト見ナケレバ
ナラヌ、或ハ一年ノ期間ハ續クカモ知レマセヌ、一一年ノ期間ハ續クカモ知レマ
セヌガ、其法律ハ期限ガナイ以上ハ先ツ永久ニ行ハルヽモノトシテ見ナケレ
バナラヌ、サウナッテ參リマスト、ドウシテモ手形ノ進行中ニ、期間ノ進行中
ニ割引步合ガ變ッテ來ルト想像シナケレバナラヌノデアリマス、未來ノコトデ
アリマスガ、受取ッタモノハ變ルカ變ラヌカト云フコトハ、チヨット分ラヌノ
デアリマス、サウナルト云フトドウシテモ不安心デ持ッテ居ラレヌノデアリマ
ス、直グ行ッテ割引シテ貰ッテ置カヌト不安心ノヤウニナルト思ヒマスガ、而
シテソレカラ先ハ意見ノ違ヒニナリマスガ、其持ッテ居ル人間ガ割引ニ行ク
カ、或ハ期間ガアッテモ何時迄モ持ッテ居ル見込ニナリマスカ、强ヒテソレハ
御尋イタシマセヌ、唯サウ云フ事情ニナリマスト云フコトヲ申上ゲタイ、ソ
レハ農商務大臣ノ先程述ベラレタ硬貨ノ價デ買フノデナク、手形ノ價デ米ヲ
買フト仰シヤルカラ、サウ云フ不便ガ出テ來ルノデアリマスソレハ政府ト
シテ餘程御考ヘニナラナケレバナラヌ點デナイカト思ヒマスガ、今日ノ御答
辯ニ依ルトサウ云フコトニナルノデアリマス、ソレカラ今度ハ農商務大臣ニ
伺ヒタイト思ヒマスルガ、此法律ガ實行セラレマシテ、米ノ買入レヲスルト
カ、或ハ賣渡ヲスルト云フヤウナ場合、卽チ米ガ安イカラ買フ、米ガ高イカ
ラ賣ルト云フ事實ハアリマスガ、農商務大臣ハ數量ノ調節ト仰シヤルケレド
モ、數量ノ調節ト云フヤウナコトハ、唯是ハ表面ノ言葉ヲ飾ッテ言フコトデ、
事實ハ價ノ調節ニナルト云フコトニ決ッテ居ルノデアリマス、ソレヲ丁度安イ
時ニ政府ガ買ハムトスル、高イ時ニ政府ガ賣ラムトスルコトニナリマスト、
今安イカラ買ハムトスルコトガソレトナク分リマスレバ、皆ンナ農家ノ人間
ハ賣惜ミヲシテ容易ニ出シマセヌ、又安イ時ニ政府ガ賣ラムトスルト云フコ
トガ分リマスルト云フト商賣人ハ何時米ノ値段ガ下ルカ分ラヌカラ、ウッカリ
米ヲ買ヘバ損ヲスルカラ買溜ヲシナイト云フコトニナリマシテ、私ハ此法律
ノ實行ト云フモノガ米穀ノ配給ヲ非常ニ妨ゲルコトニナッテ、ソレガ爲ニ都會
ノ消費者ト云フモノガ、不當ノ値段ヲ以テ米穀ヲ買ハナケレバナラヌ場合ガ、
此法律ノ結果トシテ起リハセヌカト思ヒマスガ、其點ニ付テ農商務大臣ノ御
考ハドウデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=89
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090・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 此法律ヲ實行スルコトニ相成リマスト、此米
ノ相場ヲ致シ.マス者ハ窮屈ニ相成リマス、相場社會ノモノニハ餘程ノ痛手デ
ゴザイマセウガ、併シ一體ニ此ノ生產者消費者ト云フモノニ行キマスレバ、
ヒドク價ノ高低ガナクシテ緩和ヲ致シマスカラ、餘程宜シクナルダラウト思
ヒマス、唯價ヲ定メテサウ云フコトヲシマセヌト、米ノ多イ時分ニハ何處迄
下ルカ知レヌデ、此米ヲ下ゲテ、サウシテ働ケルト云フ者モ起ル、又少ナク
ナルト云フコトニナリマスト、一方ニ力ニ依テ頻リニ煽ッテ買ヒ上ゲテ、サウ
シテ利益ヲ貪ボルト云フヤウナコトガ起ルノデアリマス、併シ政府ニ於テ餘
リ安イ時ニハ米ノ剩餘ガアルト云フ時ニハ、自然ニ或程度迄政府ガ米ヲ買ケ、
又米ガ少ナイト云フ時ニ至ッテ、常平倉ヲ拵ヘテソレヲ賣ルト云フコトニ相成
リマスルト、商賣人ガ唯其時ニ依テ非常ニ不當ノ得ヲスルト云フヤウナコト
ガ餘程民間ニハ多イノデアリマス、ソレデアルカラ是ガ餘程緩和ノ助ケニナ
ルト存ジテ居リマシテ、却ッテ御質問ト反對ノ結果ヲ現ハスコトト、私ハ信ジ
テ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=90
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091・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 モウ質問ハ是デ止メマスガ、反對ノ結果ヲ現ハスト御信ジ
ニナレバソレ迄デアリマス、私ハ其點ガ此ノ米穀法ニ伴フ最モ注意スベキ點
デアルト思ヒマス、至ッテ輕ク御考ヘニナッテ居ルヤウデアリマスガ、此法律
ノ施行ニ付テハソレヲ十分御考ヘニナラヌト、都會ノ人間ハ金ヲ持ッテ居ッテ
米ガ得ラレヌト云フ場合ガナイトハ限ラヌト云フコトヲ我〓ハ大ニ憂慮シテ
居ルノデアリマス、是カラ先ハ御互ノ所見ノ違ヒデアリマスカラ、是ダケデ
質問ハ止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是デ通告者ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=92
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093・淺田徳則
○淺田德則君 唯今問題ニナッテ居リマス、第九、米穀法案外二件、是ハ特別
委員ハ同一ノ委員ニ付託セラレマシテ、其數ハ十八名トシテ、議長ニ於テ指
名セラレムコトヲ望ミマス、此際動議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=93
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094・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=94
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095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 淺田君ノ日程第九、第十、第十一、三案トモ同一
委員ニ付託シ、委員ノ數ハ十八名トシテ、其委員ハ議長ノ指名ニ任スト云フ
動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=95
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096・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
ヲシテ朗讀イタサセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
米穀法案外二件特別委員
伯爵奧平昌恭君子爵牧野忠篤君子爵榎本武憲君
子爵戶澤正己君前田正名君岡田良平君
上山滿之進君男爵長松篤棐君男爵藤村義朗君
男爵〓誠之助君男爵中川良長君谷森眞男君
木內重四郞君若槻禮次郞君橋本圭三郞君
伊澤多喜男君津村紀陵君横山章君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=96
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097・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十二、明治三十八年法律第十七號中改正法
律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
明治三十八年法律第十七號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
明治三十八年法律第十七號中改正法律案
明治三十八年法律第十七號中左ノ通改正ス
第一條中「大藏省預金部ヨリ」ヲ削リ「六千萬圓」ヲ「九千八百萬圓」ニ改メ同
條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ借入金及融通證劵ハ遲クトモ翌年度ニ於テ之ヲ償還スヘシ
第二條大藏大臣ハ前條第一項ノ借入金又ハ融通證劵ノ發行ニ代ヘ當該會
計年度內ニ限リ國庫餘裕金ヲ繰替使用スルコトヲ得
第三條ヲ削ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三條ノ改正規定施行ノ期日ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
參照
明治三十八年法律第十七號
第一條專賣局及製鐵所ノ据置運轉資本ニ不足ヲ生シタルトキハ大藏大臣
ハ大藏省預金部ヨリ借入金ヲ爲シ又ハ融通證劵ヲ發行シテ一時之ヲ補足
スルコトヲ得但シ其ノ金額ハ專賣局ニ在リテハ九千萬圓製鐵所ニ在リテ
ハ六千萬圓ヲ超過スルコトヲ得ス
第二條前條ノ借入金又ハ融通證劵ハ遲クトモ翌年度ニ於テ之ヲ償還スヘシ
第三條本法ニ依リテ發行スル融通證券ニ關シテハ本法ニ規定スルモノノ
外大藏省證劵條例ヲ準用ス但シ大藏省證劵條例第四條第一項ハ此ノ限ニ
在ラス
〔政府委員神野勝之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=97
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098・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 明治三十八年法律第十七號ハ御承知ノ通リ、專
賣局及製鐵所据置運轉資本補足ニ關スル法律案デゴザイマスガ、本案ノ改正
ノ第一點ハ、製鐵所据置運轉資本ノ補足額ガ現在六千萬圓デゴザイマスガ
製鐵所ノ事業ノ擴張竝ニ貯藏品ノ增加ニ伴ヒマシテ、六千萬圓デハ事業ニ支
障ヲ生ジマスカラ、三千八百萬圓ヲ增加シテ九千八百萬圓ト限度ヲ改正シタ
イト云フノデアリマス、第二點ハ從來ノ專賣局及製鐵所据置運轉資本ノ補足
ハ、大藏省ノ預金部ヨリノ借入金及ビ融通證劵ト云フコトニ限ラレテ居リマ
シテ、其ノ借人先ハ預金部トナッテ居リマシタガ、此ノ預金部ト云フ文字ヲ削ツ
テ。何處カラデモ借リルコトガ出來ル餘裕ヲ存シタイト云フノガ一ツト、是
ト同時ニ資本補足ノ爲ニ國庫餘裕金繰替使用ノ途ヲ開キタイト云フノデゴザ
イマス、斯ノ如ク致シマシテ財政運用ノ便ヲ開キマシテ借入金及ビ融通證劵
ノ利子ノ負擔ヲ減ジタイト云フノデゴザイマス、第三ノ第三條ヲ削リマシタ
理由ハ、會計法及ビ國債ニ關スル法律ノ改正ニ伴ヒマシテ此機會ニ於テ特ニ
整理ヲ致シタイト云フノデゴザイマス、御審議ノ上御協賛アラムコトヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=98
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099・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ於テ御異議ガナケレバ、本案ノ特別委員ハ
會計法改正法律案外三件ノ委員ニ付託イタシマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=99
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100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十三、第十四、第十五ハ一括シテ問題トシ
說明ヲ煩ハシマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=100
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101・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=101
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102・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十三、執達吏規則中改正法律案、第十四、
民事訴訟費用法中改正法律案、第十五、刑事訴訟費用法案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會
執達吏規則中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
執達吏規則中改正法律案
執達吏規則中左ノ通改正ス
第十九條中「四百五拾圓」ヲ「六百圓」ニ改ム
附則
本法ハ大正十年分ヨリ之ヲ適用ス但シ執達吏規則第二十一條ノ規定ノ適用
ニ付テハ大正九年八月一日以後恩給ヲ受クヘキ事由ノ生シタルモノニ付之
ヲ適用ス
民事訴訟費用法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
民事訴訟費用法中改正法律案
民事訴訟費用法中左ノ通改正ス
第二條中「金二錢五厘」ヲ「五錢」ニ、「金十錢」ヲ「二十錢」ニ改メ同條ニ左ノ
一項ヲ加フ
司法代書人法第五條ノ規定ニ依リ地方裁判所長ノ定ムル所ニ從ヒテ司法
代書人ニ支拂ヒタル金額カ前二項ニ定ムルモノト異ナルトキハ其額ニ依
ル
第三條中「金五十錢」ヲ「一圓」ニ改ム
第九條當事者及ヒ證人ノ日當ハ出頭一度ニ付キ二圓以内ニ於テ裁判所ノ
意見ヲ以テ定ムル所ニ依ル
第十條削除
第十一條中「金五十錢乃至五圓」ヲ「二圓乃至十圓」ニ改ム
第十二條當事者、證人、鑑定人及ヒ通事ノ止宿料ハ一日五圓以內ニ於テ
裁判所ノ意見ヲ以テ定ムル所ニ依ル
第十三條第二項ヲ削リ同條第一項ヲ左ノ如ク改ム
當事者、證人、鑑定人及ヒ通事ノ旅費ハ鐵道又ハ汽船ヲ通スル水路ニ在
リテハ二等以下ノ汽車賃又ハ船賃ニシテ裁判所ノ相當ト認ムルモノニ依
リ汽船ヲ通セサル水路ニ在リテハ一海里每ニ五錢其他ニ在リテハ一里毎
ニ三十錢トス但一海里未滿又ハ一里未滿ノ端數ハ之ヲ切捨ツ
第十四條中「滯在費」ヲ「止宿料」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前要シタル費用ニ付テハ仍從則ノ例ニ依ル
刑事訴訟費用法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月五日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
刑事訴訟費用法案
刑事訴訟費用法
第一條左ニ揭クルモノヲ以テ公訴ニ關スル訴訟費用トス
豫審又ハ公判ニ付呼出シタル證人、鑑定人及通事ニ給スヘキ日當、
旅費及止宿料
二第三條第二項ニ規定スル費用
第二條證人ノ日當ハ出頭一度ニ付二圓以內ニ於テ豫審判事、受託判事又
ハ裁判所之ヲ定ム
第三條鑑定人及通事ノ日當ハ出頭一度ニ付二圓以上十圓以內ニ於テ豫審
判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム
鑑定又ハ通譯ニ付特別ノ技能若ハ費用又ハ長時間ヲ要スルトキハ日當ノ
外豫審判事、受託判事又ハ裁判所ノ相當ト認ムル金額ヲ給スルコトヲ得
第四條證人、鑑定人及通事ノ旅費ハ鐵道又ハ汽船ヲ通スル水路ニ在リテ
ハ二等以下ノ汽車賃又ハ船賃ニシテ豫審判事、受託判事又ハ裁判所ノ相
當ト認ムルモノニ依リ汽船ヲ通セサル水路ニ在リテハ一海里每ニ五錢其
ノ他ニ在リテハ一里毎ニ三十錢トス但シ一海里未滿又ハ一里未滿ノ端數
ハ之ヲ切捨ツ
第五條證人、鑑定人及通事ノ止宿料ハ一日五圓以內ニ於テ豫審判事、受
託判事又ハ裁判所之ヲ定ム
第六條證人、鑑定人及通事ノ日當、旅費及止宿料ハ豫審ニ付テハ其ノ終
結前公判ニ付テハ判決前ニ請求スルニ非サレハ之ヲ給セス
第七條共犯人ヲシテ訴訟費用ヲ負擔セシムル場合ニ於テハ連帶負擔トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
刑法施行法第六十二條乃至第六十七條ヲ削ル
陸軍刑法施行法第三十一條中「刑法施行法第六十三條乃至第六十六條ノ規
定」ヲ「刑事訴訟費用法」ニ改ム
海軍刑法施行法第三十一條中「刑法施行法第六十三條乃至第六十六條ノ規
定」ヲ「刑事訴訟費用法」ニ改ム
本法施行前要シタル費用ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
〔國務大臣伯爵大木遠吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=102
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103・大木遠吉
○國務大臣(伯爵大木遠吉君) 唯今議題ニナリマシタ三案ノ中、執達吏規則
中改正法律案ノ說明ヲ申上ゲマシテ、續イテ訴訟費用ノ兩家ノ說明ヲ致シマ
ス、執達吏規則ノ第十九條ニ依リマス所ノ補給額ハ、現在ノ經濟事情ニ鑑ミマ
スルト、甚ダ少額ニ失スルノデアリマス、之ヲ增額スルノ必要ガアルノミナラ
ズ、大正九年七月三十一日ノ現在ニ於キマシテ、執達吏規則第二十一條ニ依リ
恩給ヲ受ケ又ハ受クベキモノニハ、大正九年勅令第三百二十三號ノ規定ノ適
用ハアリマスケレドモ、爾後恩給額ハ右受クベキモノトシテハ勅令ノ適用ガ
ナキ爲ニ、是等ノモノノ恩給額ハ右勅令ニ準ジマシテ、之ヲ增額スル必要ヲ認
メタノデアリマス、玆ニ本案ヲ提出スル所以デアリマス、尙ホ民事訴訟費用
法中改正法律案、及ビ刑事訴訟費用法案、此ノ兩案トモ民事訴訟費用法ハ明治
二十三年ノ制定ニカカリマスル所ノモノデアリマシテ、刑事訴訟費用ニ關ス
ル刑法施行法ノ規定ハ明治四十四年ノ制定デアリマシテ、所定費額ガ現今ノ
經濟狀態ニ適セザルモノガ多イカラデアリマス、宜シク是モ增額シテ以テ訴
訟關係人ヲシテ其實費ヲ償フコトヲ得セシムルコトノ必要ヲ認メマシテ、本
案ヲ提出シタ所以デアリマス、何卒此三案トモ御審議ノ上御協賛アラムコト
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=103
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104・阪本さん之助
○阪本彰之助君 チヨット伺ッテ見タイト思ヒマスガ、最後ノ十五デゴザイマ
ス、刑事訴訟費用法ハ、此證人其他ノ費用ノ金額ガ此法案ノ改正ニ依テ幾ラ
カ增スノデアリマスガ、尙ホ私ノ伺ヒマスノハ、此金額デ實際其人ノ費用ヲ
辨ジ得ル程度ニ於テ御定メニナッタト云フ御考デアリマスカ、マア是迄ノ額ニ
シテ少シ增シテ置イタラ宜カラウ、迚モ此人ノ一日ノ日當トカ旅費トカ宿泊
料ガ足リナイコトハ分ッテ居ルケレドモ、慣習上此位デ宜カラウト云フ御考デ
御定メニナッタノデアリマスカ、此點ヲ伺ッテ見タイ、私共ノ考デハ此位ニ御
改正ニナッテ、此金額デ一人ノ人ガ宿屋ニ泊リ、若クハ其日ノ日當ニ當ルト云
フコトニハ大變距離ガアルト思ヒマスガ、此立案ノ趣意ハ足リナクテモ仕方
ガナイト云フ御積リデアリマスカ、ソレヲチヨット伺ッテ見タイノデアリマス
〔政府委員鈴木喜三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=104
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105・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 御答ヲ致シマス、現行刑法施行法ニ定メテアリ
マスル所ノ費用ハ、日當ニ於キマシテモ一日五十錢ト云フヤウナコトニナッテ
居ル、ソコデ今囘ハ二圓以下ノ範圍ニ於テ之ヲ定メル、斯ウ云フコトニ致シ
マシタノハ、五十錢ノヲ二圓トスルノデゴザイマシテ、步合ニ致シマシテモ、
隨分多イコトデアルノデ、之ヲ個人的ニ鑑別イタシマシテ、立派ナ生活狀態
ニアル人ヲ二圓デ日ニ賄ヒヲシロト云フコトハ、實際ニ適合シマセヌコトハ
當然デアリマス、去レバトテ刑事ノ關係人ニ給スル所ノ費用ト云フモノヲ、
一躍シテ個人個人ニ之ヲ識別シテ十圓以內トカ十五圓以內トカ云フコトニ致
シマスノモ、急激ナル變化ト思ヒマシテ、實情ニハ當ラヌトハ思ヒマスケレ
ドモ先ヅ此位ノコトデ漸次增加スルノ外ナイト考ヘテ、本案ヲ提出イタシマ
シタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=105
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106・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今司法大臣ノ說明セラレマシタ日程第十三、第
十四、第十五、三案トモ同一委員ニ付託シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=106
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107・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ御報告
ニ及ビマス
〔成瀨書記官朗讀〕
執達吏規則中改正法律案外二件特別委員
子爵舟橋遂賢君子爵松平直德君男爵新田忠純君
男爵高崎弓彥君加太邦憲君磯部四郞君
岡本榮吉君矢口長右衞門君秋山源兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=107
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108・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第十六、獨逸國等トノ平和條約賠償條項ニ基
キ受領シタル賠償物件ノ輸入稅免除ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會ノ續、委員長報告
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ做フ〕
獨逸國等トノ平和條約賠償條項ニ基キ受領シタル賠償物件ノ輸入稅免除
ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月五日
右特別委員長
服部一一一
貴族院議長公爵德川家達殿
〔服部一三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=108
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109・服部一三
○服部一三君 獨逸國等トノ平和條約賠償條項ニ基キ受領シタル賠償物件ニ
シテ、政府ノ輸人スルモノノ輸入稅ハ之ヲ免除スト云フ、此案ニ付マシテ特
別委員會ノ經過ヲ御報告イタシマス、此案其モノハ至ッテ明瞭ニシテ、且ツ
必要ナモノデアリマシテ、賠償物件ヲ政府ガ受取ッテ之ニ向ッテ輸入稅ヲ拂ヒ
マスレバ、一方ノ手ヨリ金ヲ出シテ一方ノ手デ之ヲ收入スル譯デアリマスル
カラ、誠ニ無駄ナ手續デアリマス、且ツ是ハ一時的ノモノデアリマスル、故
ニ此ノ輸入稅ハ免除シヤウト云フ案デアリマスル、併シ如何ナル物件ガ輸入
サレルカ、又其高ハ大凡ドレ位アルモノカト云フヤウナコトハ、一應知ッテ置
ク必要ガアリマスル故ニ、委員會ニ於キマシテハ、政府委員ト委員トノ間ニ
質問應答ヲ重ネマシテ、其得マシタ事實ト云フモノノ極ク重立ツ所ノ大略ヲ
申上ゲマスレバ、日本ガ賠償物件トシテ受取リマスル所ノモノハ船舶、染
料、藥品デアリマス、而シテ此船舶ハ平和條約ガ締結ニナリマシタ當時、獨
逸國ガ所有シテ居リマシタ所ノ千六百噸以上ノ船ハ全部、又千六百噸以下千
噸以上ノモノハ五割、其他ノ船ニ付マシテハ二割五分、「トロール」モ同ジ
コトデゴザイマスルガ、ソレヲ獨逸國カラ聯合國ヘ提供スルト云フコトニナッ
テ居リマス、其内デ日本ガ受領イタシマスル所ノモノハ八艘デアリマス、ソ
レデ之ヲ噸數ニ致シマスレバ凡ソ四萬七千八百噸、サウシテ其八艘ノ內二艘
ハ既ニ日本ヘ到著イタシマシタ、ソレカラ此染料ノ方ニナリマスルト、是ハ
平和條約締結ノ當時現在シテ居リマシタ所ノ染料ノ五割、卽チ半分ト云フモ
ノハ聯合國ヘ提供スルコトニナリマシタ、其後千九百二十五年、卽チ大正十
四年一月一日マデノ所ハ、獨逸ガ日々產出イタシマスル染料ノ二割五分ト云
フモノヲ提供スルト云フコトニナッテ居リマスルガ、日本ハ平和條約ノ締結ニ
ナリマシタ時分ニ、八十八噸ヲ分配シテ貰フコトニナリマシタ、其後分配ヲ
申出デタ所ノモノガ大凡四百噸デアリマス、タシカ三百六十何噸カト記憶シ
テ居リマスルガ凡ソ四百噸、又藥品ニ付マシテハ是モ同ジ條件ノ下ニ日本ガ
受ケマスル所ノモノガ七千四百「キログラム」デアリマシテ、此染料、藥品、
何レモ日本ニ到著シテ居ルモノモ是ハマダ到著シナイモノモアリマスル、又
到著シタモノハ總テ保稅倉庫ニアリマスルノデ、如何ナルモノガドレダヶ著
イテ居ルト云フコトハ能ク分リマセヌ、而シテ此藥品モ染料モ唯今申シマシ
タ高以上ハモウ日本ハ請求シナイト云フコトデアリマスル、之ニ就キマシテ
ハイロイロ理由ガアリマスルケレドモ、是ハ此案ニ直接關係ガアリマセヌカ
ラ省キマス、而シテ此染料、藥品ヲ如何ニシテ政府ガ拂下ゲルカ、此拂下ゲ
ヤウニ依リマシテハ、當業者ニ隨分迷惑ヲ與ヘルコトデアルデアラウト云フ
ノデ、色〓委員ノ方〓ヨリ質問ガ出マシタノデアリマス、政府委員ノ申サレ
ル所ニ依リマスルト藥品ノ方ハ是ハ農商務省ニ於テ悉皆試驗用ニ用ヒラレ
ルノデ、一般ニ賣拂フト云フコトハ致サヌト云フコトデゴザイマス而シテ
染料ノ方ニ付マシテハ、之ヲ賣拂フニ付テハ、政府ニ於テハ特ニ委員ヲ設ケ
テ十分調査シテ、當業者ノ迷惑ニナラヌヤウニ、其一時ニ賣ル所ノ高ニシテ
モ、價ニシテモ十分ソレ等ノ品ニ注意ハ拂ウテ賣拂フヤウニスルト云フ御答
デアリマシタ、ソレデ大體輸入スル所ノモノニ付テハ今申上ゲル通リノ事柄
デアリマシテ、ソレデ此本案ニ付マシテ決ヲ採リマシタ所ガ、委員全會一致
ヲ以テ之ヲ可決イタシマシタ、ドウゾ至ッテ明瞭ナル案デアリマスルデ、讀會
省略ヲ以テ可決セラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=109
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110・徳川厚
○男爵德川厚君 服部君ノ讀會省略ノ動議ニ贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=110
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111・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=111
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112・八條隆正
○子爵八條隆正君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=112
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113・村上敬次郎
○男爵村上敬次郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=113
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114・伊集院兼知
○子爵伊集院兼知君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=114
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115・淺田徳則
○淺田德則君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=115
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116・京極高備
○子爵京極高備君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=116
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117・豐岡圭資
○子爵豐岡圭資君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=117
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118・本多忠鋒
○子爵本多忠鋒君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=118
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119・藪篤麿
○子爵藪篤麿君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=119
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120・吉田清風
○子爵吉田〓風君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=120
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121・上山滿之進
○上由滿之進君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=121
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122・池田政時
○子爵池田政時君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=122
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123・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 服部君ノ本案ノ讀會ヲ省略スルト云フ動議ニ、同
意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=123
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124・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、原案ニ御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=124
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125・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、日程第十七、第十八ハ同
一委員ニ付託セラレマシタカラ、委員長ノ報告ハ兩案束ネテ煩ハシタイト考
ヘマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=125
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126・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=126
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127・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十七、作業會計法中改正法律案、第十八、
海軍燃料廠ノ石炭、煉炭又ハ燃料油ノ買入ニ關スル法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
作業會計法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正十年三月四日
右特別委員長
和田彥次郞
貴族院議長公爵德川家達殿
海軍燃料廠ノ石炭、煉炭又ハ燃料油ノ買入ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月四日
右特別委員長
和田彥次郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔和田彥次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=127
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128・和田彦次郎
○和田彥次郞君 日程第十七、第十八ノ兩案ニ付テ委員會ノ〓末ヲ報〓イタ
シマス、此ノ法律案ノ改正ハ、政府委員ノ說明ニ依リマスルト、其要點ガ三
ツト認メマシテゴザイマス、一ツハ印刷局ノ作業ニ要シマス所ノ据置運轉資
金ト云フモノガ、從來四十七萬圓デゴザイマシタガ、近時收入印紙、郵便切
手、郵便葉書、其他ノ印刷ヲ要シマス所ノ額ガ增シマシテ、到底從來ノ運轉
資本デハ不足ヲ〓ゲル、依テ之ヲ百萬圓ニ增加スル、詰リ從來ノ分ニ對スル
不足額五十三萬圓ヲ增加スルト云フコトガ一點、第二ニ於キマシテハ、此度
海軍ニ於テ新ニ設ケラレマスル所ノ船艦ノ燃料トスベキ原油ヲ買入レテ、製
油ヲ致シマス事柄ニ付マシテ、此運用イタシマス所ノ据置資本ト云フモノ
ヲ二百萬圓ヲ要スル、其中十萬圓ダケハ海軍ニ於テ從來經營シテ居リマスル
採炭所及ビ煉炭所ノ運轉資本ガゴザイマスルノデ、其ノ十萬圓ヲ加ヘマス
ルト、外ニ百九十萬圓ト云フモノヲ本年ヨリ十二年度ニ亙ル所ノ三箇年ノ中
ニ、一般會計ヨリ此ノ据置資本金ニ繰入レルト、斯ウ云フノガ第二點、第三
ハ此十七ノ方ノ案ニ屬シマスルガ、其燃料ヲ製油イタシマスニ付マシテ、
前渡金百五十五萬圓マデヲナシ得ルト云フコトノ法律、此三點ガ改正案ノ要
領デゴザイマス、大藏省及ビ海軍省ノ政府委員ヨリ懇篤ナル說明ヲ得マシテ、
引續イテ質問ニ移リマシタ、委員中ヨリ種々ノ質問ガゴザイマシタガ、之ニ
ハ政府委員ノ御方モ懇切ノ御答ガゴザイマシテ其要領ヲ得マシタ、續イテ審
議ニ移リマシテゴザイマス、然ル處其中ニ、或一員ヨリ是ハ委員會ノ決議デ
ハゴザイマセヌガ、或一員ヨリ希望ガゴザイマシタ、其希望ハデス、年々百
五十五萬圓モ前渡ヲスルト云フヤウナコトヲナサズシテ、必要ナ金額ダケヲ
政府ヨリ求メテ、斯樣ナコトヲセヌ方ガ宜クハナイカト云フ希望ガゴザイマ
シタ、之ニ對シテ政府委員ハ、御尤ナ御希望デアルデ、篤ト熟慮イタシマス
ト云フ答デゴザイマシタ、結局本案ノ如キハ極メテ必要ナモノデアッテ、事理
明白デアル、殊ニ海軍ノ燃料ト致ス所ノ原油ヲ買入レテ、之ヲ製油シテ其用
ニ充テムトスルガ如キハ、朝野共ニ今日比事ハ必要ト認メ、速ニ自製自給ノ
途ヲ圖ルコトヲ求メテ居ル場合デアルカラ、何等此點ニ付テ異議ナク、一日
モ速ニ完成ヲ望ムト云フ趣意ニ於キマシテ全會一致デ可決イタシマシテゴザ
イマス、左樣御諒承ヲ願ヒマス、願クバ早ヤ今日モ餘程時刻モ迫ッテ居ルコト
デゴザイマスカラ、ドウカ讀會省略ヲ以テ御決定アラムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=128
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129・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 讀會省略ニ贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=129
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130・八條隆正
○子爵八條隆正君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=130
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131・本多忠鋒
○子爵本多忠鋒君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=131
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132・細川立興
○子爵細川立興君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=132
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133・服部一三
○服部一三君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=133
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134・白川資長
○子爵白川資長君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=134
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135・徳川家達
○議長(公爵徳川家逹君) 本案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請
ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=135
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136・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=136
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137・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=137
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138・八條隆正
○子爵八條隆正君 讀會省略ノ動議ハ成立シマセヌデシタカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=138
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139・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 成立イタシマセヌカラ、議長ハ第二讀會ヲ開クヤ
否ヤニ付テ決ヲ採リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=139
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140・吉井幸藏
○伯爵吉井幸藏君 直ニ第二讀會ヲ開クニ贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=140
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141・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ直ニ第二讀曾ヲ開クベシトノ動議ニ
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=141
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142・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、議長ハ採決前ニ日程第十
七、十八ヲ束ネテ問題ニ供スルコトヲ御諮リ致スノヲ落シマシタガ、無論委
員長報告モ兩案束ネマシタカラ御異存ナイト認メテ居リマスガ、如何デゴザ
イマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=142
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143・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス、兩案全部ヲ問題ニ供シマ
ス、原案總ベテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=143
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144・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=144
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145・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=145
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146・吉井幸藏
○伯爵吉井幸藏君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=146
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147・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=147
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148・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、兩案第二讀會ノ決議通リ
デ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=148
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149・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ノ議事日程ハ決定次第
御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會
午後四時四十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01719210308&spkNum=149
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