第46回帝国議会　貴族院　本会議　第19号　大正12年3月6日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　大正十二年三月六日（火曜日）
  　　　　午前十時十九分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　議事日程　第十九號　大正十二年三月六日
  　　　　午前十時開議
  　第一　恩給法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　岩北軌道株式會社所屬軌道經營廢止に對する補償の爲公債發行に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會
  　第三　中央卸賣市場法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第四　産業組合中央金庫法案（衆議院提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第五　伊曾乃神社昇格の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第六　軍人恩給法中改正の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第七　御肖像掲載の印刷物取締に關する請願　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第八　屯田兵喇叭卒竝其の遺族に土地給與の請願　　　　　　　　　　　　　會議
  　第九　詐稱癈兵取締に關する請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第十　北海道檜山郡厚澤部村に區裁判所出張所設置の請願　　　　　　　　　會議
  　第十一　氣象觀測所増設の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第十二　癈兵竝戰死者遺族待遇に關する請願　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第十三　陸軍除隊兵に軍服支給の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第十四　國定教科書飜刻規定中改正の請願　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第十五　鑛業に因る農耕地の被害救濟に關する請願　　　　　　　　　　　　會議
  　第十六　天賣漁港修築の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第十七　長野縣東筑摩郡會田村に登記所設置の請願　　　　　　　　　　　　會議
  　第十八　北海道雨龍郡深川町に區裁判所設置の請願　　　　　　　　　　　　會議
  　第十九　内地棉花栽培奬勵の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第二十　日光山を帝國公園と爲すの請願　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第二十一　瀬棚港修築の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　第二十二　根室港修築の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/0

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• 001・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ報〓ヲ致サセマス
  〔小林書記官朗讀〕
  昨五日衆議院ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
  身元保證ニ關スル法律案
  借地借家調停法中改正法律案
  社寺現境內地無償下付ニ關スル法律案
  民事訴訟法中改正法律案
  國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案
  所得稅法中改正法律案

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/1

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• 002・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、日程第一、恩給法
  業、政府提出、衆議院送付、第一讀會、通牒文ノ朗讀ハ本會期中省略イタシ
  タク考ヘマス、御異議ゴザイマスマイカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/2

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• 003・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス·····法制局長官
  〔左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
  之ニ傚フ〕
  恩給法案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  大正十二年三月三日
  衆議院議長粕谷義三
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  各條ノ小字ハ衆議院ノ修正文、-ハ削除ノ符號及別表第
  一號表乃至第四號表ノ金額ハ總テ修正ニシテ第五號表ハ同
  削除ニ依ルモノトス
  恩給法案
  恩給法
  第一章總則
  第一條公務員及之ニ準スヘキ者竝其ノ遺族ハ本法ノ定ムル所ニ依リ恩給ヲ
  受クルノ權利ヲ有ス
  第二條本法ニ於テ恩給トハ普通恩給、增加恩給、一時恩給、傷病賜金、
  及
  扶助料、-0一時扶助料及一時給與金ヲ謂フ
  及
  普通恩給、增加恩給及扶助料ハ年金トシ一時恩給、傷病賜金、-〇一時扶
  助料及一時給與金ハ一時金トス
  第三條年金タル恩給ノ給與ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生シタル月ノ翌月ヨリ
  之ヲ始メ權利消滅ノ月ヲ以テ終ル
  第四條恩給年額竝一時恩給及一時扶助料ノ額ノ圓位未滿ハ之ヲ圓位ニ滿
  タシム
  第五條恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生シタル日ヨリ七年間
  請求セサルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
  第六條普通恩給又ハ增加恩給ヲ受クルノ權利ヲ有スル者退職後一年內ニ
  再就職スルトキハ前條ノ期間ハ再就職ニ係ル官職ノ退職ノ日ヨリ進行ス
  前項ノ規定ハ普通恩給又ハ增加恩給ヲ受クルノ權利ヲ有スル者退職後一
  第四十二條第一項第一號ニ規定スル宮內職員
  年內ニ宮内官トシテ就職シタル場合ニ付之ヲ準用ス
  第七條時效期間滿了前二十日內ニ於テ天災其ノ他避クヘカラサル事變ノ
  爲請求ヲ爲スコト能ハサルトキハ其ノ妨碍ノ止ミタル日ヨリ二十日內ハ
  時效完成セス
  時效期間滿了前六月內ニ於テ前權利者生死若ハ所在不明ノ爲又ハ未成年
  者若ハ禁治產者法定代理人ヲ有セサル爲請求ヲ爲スコト能ハサルトキハ
  請求ヲ爲スコトヲ得ルニ至リタル日ヨリ六月內ハ時效完成セス
  時效期間滿了前ニ適法ニ請求書ヲ發シタルコトノ通信官署ノ公證アルト
  キハ時效期間內ニ權限アル官公署ニ到達セサルモ之ヲ時效期間內ニ到達
  シタルモノト看做ス
  第八條公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族互ニ通算セラレ得ヘキ
  在職年又ハ同一ノ傷病ヲ理由トシテ二以上ノ恩給ヲ併給セラルヘキ場合
  ニ於テハ其ノ者ノ選擇ニ依リ其ノ一ヲ給ス但シ特ニ併給スヘキコトヲ定
  メタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
  公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族互ニ通算セラレ得ヘキ在職年又
  ハ同一ノ傷病ヲ理由トシテ本法ニ依ル恩給ト宮內官ノ恩給規程ニ依ル恩
  給トヲ給セラルヘキ場合ニ於テ宮內官ノ恩給規程ニ依ル恩給ヲ給セラレ
  タルトキハ本法ニ依ル恩給ハ之ヲ給セス
  第九條年金タル恩給ヲ受クルノ權利ヲ有スル者左ノ各號ノ一ニ該當スル
  トキハ其ノ權利消滅ス
  -死亡シタルトキ
  二死刑又ハ無期若ハ六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキ
  三國籍ヲ失ヒタルトキ
  第十條恩給權者死亡シタルトキハ其ノ生存中ノ恩給ニシテ給與ヲ受ケサ
  リシモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ當該公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ
  遺族ニ給シ遺族ナキトキハ死亡者ノ相續人ニ給ス
  第十一條恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ擔保ニ供スルコトヲ得ス
  恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス但シ國稅徵收法又ハ國稅
  徵收ノ例ニ依ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
  第十二條恩給ヲ受クルノ權利ハ勅令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外內閣恩
  給局長之ヲ裁定ス
  第十三條行政上ノ處分ニ因リ恩給ニ關スル權利ヲ侵害セラレタリトスル
  者ハ處分後一年內ニ內閣恩給局長ニ具申シ其ノ裁決ヲ求ムルコトヲ得
  前項ノ裁決ニ不服アル者ハ裁決ヲ受ケタル日ヨリ六月內ニ内閣總理大臣
  ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
  第一項ノ具申ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十四條內閣總理大臣及內閣恩給局長ノ裁決ハ關係官廳ヲ覊束ス
  第十五條內閣總理大臣第十三條第二項ノ訴願ノ裁決ヲ爲ス場合ニ於テハ
  恩給審査會ニ諮問スヘシ
  恩給審查會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十六條恩給ノ負擔ハ左ノ區分ニ依ル
  一文官及準文官竝其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔ス但シ文官ニシテ國
  庫ヨリ俸給ヲ受ケサル者ノ一時恩給ハ最終ニ之ニ俸給ヲ給シタル者
  之ヲ負擔ス
  二軍人及準軍人竝其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔ス
  三朝鮮、臺灣及樺太ニ於ケルモノヲ除クノ外公立ノ小學校、實業補習學
  校幼稚園及盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ〓育職員
  及準〓育職員竝其ノ遺族ノ恩給ハ其ノ學校又ハ幼稚園ノ所在地ヲ管
  轄スル府縣又ハ之ニ準スヘキ地方經濟之ヲ負擔ス
  四前號ニ規定スル者以外ノ〓育職員及準〓育職員竝其ノ遺族ノ恩給ハ
  國庫之ヲ負擔ス但シ在外指定學校職員ノ一時恩給ヲ除クノ外一時恩
  給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負擔ス
  五警察監獄職員及其ノ遺族ノ恩給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタ
  ル者之ヲ負擔ス
  六待遇職員及其ノ遺族ノ恩給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者
  之ヲ負擔ス但シ官國幣社ノ神職及其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔
  ス
  第十七條前條第一號、第二號又ハ第四號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘ
  キ者ノ在職年中ニ第三號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年又
  ハ第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ受ケサルモノ
  ノ在職年ヲ通算シテ國庫ヨリ恩給ヲ給スル場合ニ於テハ國庫ハ通算セラ
  ルヘキ在職年ニ應シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分擔ヲ第三號ニ揭
  クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ニ恩給ヲ給スル者又ハ第五號若ハ第六號
  ニ揭クル公務員ニ俸給ヲ給スル者ニ對シ請求スルコトヲ得
  前條第三號、第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ
  其ノ遺族ニ恩給ヲ給スヘキ國庫以外ノ者ハ其ノ恩給ノ基礎在職年中ニ第
  5000元第二號若ハ第四號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年又
  ハ第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ受クルモノノ
  在職年ヲ通算シテ恩給ヲ給スル場合ニ於テハ國庫ニ對シ其ノ通算セラル
  ヘキ在職年ニ應シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分擔ヲ請求スルコト
  ヲ得
  前條第三號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ニ恩給ヲ給
  スヘキ者ハ其ノ恩給ノ基礎在職年中ニ他府縣又ハ之ニ準スヘキ經濟ノ管
  轄內ニ於テ在職シタル第三號ニ揭クル公務員又ハ之ニ準スヘキ者トシテ
  ノ在職年ヲ含ム場合ニ於テハ當該他府縣又ハ之ニ準スヘキ經濟ニ對シ其
  ノ合算セラルル在職年ニ應シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分擔ヲ請
  求スルコトヲ得
  前項ノ規定ハ前條第四號若ハ第五號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者
  又ハ其ノ遺族ノ恩給ノ分擔及同條第三號、第五號若ハ第六號ニ揭クル公
  務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ノ恩給相互ノ分擔ニ付之ヲ準用
  ス
  第十八條國庫ヨリ恩給ヲ給スルモ俸給ヲ給セサル公務員ニ俸給ヲ給ス
  ル者ハ其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ國庫ニ納付スヘシ但シ
  〓府縣費ヨリ俸給ヲ給スル文官
  ニ在外捐走事校及國庫ノ支辨ニ展テス地方發ヲ以テ經将スル答蓋救
  付テハ此ノ限ニ在ラス
  國庫以外ノ經濟ヨリ恩給ヲ給スルモ俸給ヲ給セサル公務員ニ俸給ヲ給ス
  ル者ハ其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ其ノ經濟ニ納付スヘシ
  前項ノ經濟ニ對シテハ國庫ハ前項ニ規定スル納金額ノ二分ノ一ニ相當ス
  ル金額ヲ交付ス
  第二章公務員
  第一節通則
  第十九條本法ニ於テ公務員トハ文官、軍人、〓育職員及警察監獄職員竝第
  二十四條ニ揭クル待遇職員ヲ謂フ
  本法ニ於テ公務員ニ準スヘキ者トハ準文官、準軍人及準〓育職員ヲ謂フ
  第二十條文官トハ武官又ハ宮內官以外ノ官ニ在ル者ヲ謂フ但シ勅令ヲ以
  テ定ムルモノヲ除クノ外國庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ在ル者ハ此ノ限ニ
  在ラス
  準文官トハ高等文官ノ試補、判任官見習及國庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ
  在ル者ニシテ前項但書ノ規定ニ基ク勅令ヲ以テ指定セラレサルモノヲ謂
  フ
  第二十一條軍人トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  一陸軍又ハ海軍ノ現役、豫備役、後備役又ハ補充兵役ニ在ル者
  二國民兵役ニ在ル者ニシテ召集セラレタル者及志願ニ依リ國民軍ニ編
  入セラレタル者
  準軍人トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  -陸軍ノ見習士官及海軍ノ候補生
  二勅令ヲ以テ指定スル陸軍又ハ海軍ノ學生生徒
  第二十二條〓育職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  一公立ノ學校若ハ圖書館又ハ在外指定學校ノ職員ニシテ國庫ヨリ俸給
  ヲ給セサル官ニ在ルモノ及判任官以上ノ待遇ヲ受クルモノ
  二府縣立師範學校長
  前項ノ在外指定學校トハ在外國本邦人ノ爲ニ設置シタル學校ニシテ勅令
  ノ定ムル所ニ依リ政府ノ指定シタルモノヲ謂フ
  準〓育職員トハ官立又ハ公立ノ學校ノ職員ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモ
  ノヲ謂フ
  第二十三條警察監獄職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  一警部補、巡査、陸軍警査、海軍警查、貴族院守衞及衆議院守衞
  二看守、女監取締、陸軍監獄看守及海軍監獄看守
  三判任官ノ待遇ヲ受クル消防手
  第二十四條待遇職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  -判任官以上ノ待遇ヲ受クル神宮司廳職員、神宮神部署職員及官國幣
  社ノ神職
  二判任官以上ノ待遇ヲ受クル監獄ノ保健技師、保健技手、〓誨師、〓
  師作業技手、感化院職員及矯正院職員
  三地方待遇職員令ニ依リ判任官以上ノ待遇ヲ受クル者ニシテ勅令ヲ以
  テ指定スルモノ
  四前三號ニ揭クル者ヲ除クノ外國庫ヨリ俸給又ハ給料ヲ給スル待遇職
  員ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
  第二十五條本法ニ於テ就職トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルコトヲ謂フ
  ー文官ニ在リテハ任官但シ終身官タル文官ニ在リテハ任官ノ外復職
  二現役軍人ニ在リテハ任官又ハ入營若ハ入團、非現役軍人ニ在リテハ
  召集ニ依ル部隊編入又ハ志願ニ依リ軍人タル勤務ニ就クコト
  三〓育職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ任官、其ノ他ノモノニ在リ
  テハ任命
  四警察監獄職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ任官、其ノ他ノモノニ
  在リテハ任命但シ巡查若ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手警部補ニ任
  シ又ハ警部補巡査若ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手ニ就職スルトキ
  ハ之ヲ轉任ト看做ス
  五待遇職員ニ在リテハ任命
  第二十六條本法ニ於テ退職トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルコトヲ謂フ
  一文官ニ在リテハ免官、退官又ハ失官位シ終身官タル文官ニ在リテハ
  免官、退官、失官ノ外退職
  二現役軍人ニ在リテハ現役ヲ離ルルコト、非現役軍人ニ在リテハ召集
  セラレタルニ者ニ付テハ召集解除志願ニ依リ軍人タル勤務ニ服スル
  者ニ付テハ解職
  三〓育職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ免官、退官又ハ失官、其ノ
  他ノモノニ在リテハ免職、退職、解職又ハ失職
  四警察監獄職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ免官、退官又ハ失官、
  其ノ他ノモノニ在リテハ免職、退職又ハ失職但シ警部補他ノ官職ニ
  轉シ又ハ他ノ官ヨリ警部補ニ轉シタルトキハ之ヲ退職ト看做ス
  五待遇職員ニ在リテハ免職、退職又ハ失職
  第二十七條第二十五條第一號及前條第一號ノ規定ハ準文官ノ就職及退職
  ニ付之ヲ準用ス
  第二十五條第三號及前條第三號ノ規定ハ準〓育職員ノ就職及退職ニ付之
  ヲ準用ス
  準軍人ノ就職トハ戰務、戒嚴地境內ノ勤務又ハ外國ノ鎭戍ニ服スルコト
  ヲ謂ヒ退職トハ其ノ勤務ヲ終ルコトヲ謂フ
  第二十八條公務員ノ在職年ハ就職ノ月ヨリ之ヲ起算シ退職又ハ死亡ノ月
  ヲ以テ終ル
  退職シタル後再就職シタルトキハ前後ノ在職年月數ハ之ヲ合算ス但シ一
  時恩給ノ基礎ト爲ルヘキ在職年ニ付テハ前ニ一時恩給ノ基礎ト爲リタル
  在職年ノ年月數ハ之ヲ合算セス
  退職シタル月ニ於テ再就職シタルトキハ再在職ノ在職年ハ再就職ノ月ノ
  翌月ヨリ之ヲ起算ス
  第二十九條公務員二以上ノ官職ヲ併有スル場合ニ於テ其ノ重複スル在職
  年ニ付テハ年數計算ニ關シ利益ナル一官職ノ在職年ニ依ル
  第三十條軍人ノ恩給權ニ付其ノ在職年ヲ計算スル場合ニ於テハ十一年ニ
  達スル迄ハ軍人又ハ警察監獄職員以外ノ公務員トシテノ在職年ハ其ノ四
  分ノ三ニ當ル年月數ヲ以テ之ヲ計算ス
  第三十一條警察監獄職員ノ恩給權ニ付其ノ在職年ヲ計算スル場合ニ於テ
  ハ十年ニ達スル迄ハ警察監獄職員又ハ軍人以外ノ公務員トシテノ在職年
  ハ其ノ三分ノ二ニ當ル年月數ヲ以テ之ヲ計算ス
  第三十二公務員其ノ職務ヲ以テ從軍シタルトキハ左記各號ノ規定ニ依
  リ加算ス
  -戰地ニ在リテ戰務ニ服シタルトキハ從軍期間ノ一月ニ付三月
  二戰地外ニ在リテ戰務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月半
  前項ノ加算年ハ內國戰ニ在リテハ其ノ二分ノ一トス
  前二項ノ規定ハ公務員其ノ職務ヲ以テ戰爭ニ準スヘキ事變ニ際シ戰務ニ
  服シタル場合ニ付之ヲ準用ス
  戰爭ノ期間及地域、戰務ノ範圍竝戰爭ニ準スヘキ事變ハ勅裁ヲ以テ之ヲ
  定ム
  第三十三條公務員外國ノ交戰又ハ擾亂ノ地域內ニ於テ危險ヲ顧ミス其ノ
  職務ヲ以テ勤務シタルトキハ在勤期間ノ一月ニ付二月ヲ加算ス
  前項ノ外國ノ交戰又ハ擾亂ノ地域及期間ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十四條公務員戒嚴地境內ニ於テ危險ヲ顧ミス其ノ職務ヲ以テ勤務シ
  タルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付二月ヲ加算ス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ勤務ノ場所カ內國ナルトキハ加算年ハ其ノ二分ノ
  一トス
  第三十五條公務員外國鎭戌ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月半
  ヲ加算ス
  第三十六條航空機乘員タル公務員其ノ職務ヲ以テ航空勤務ニ服シタルト
  キハ其ノ期間ノ一月ニ付二月以內ヲ加算ス
  第三十七條潜水艦乘員タル公務員其ノ職務ヲ以テ在役潜水艦ノ勤務ニ服
  シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月ヲ加算ス
  第三十八條公務員其ノ職務ヲ以テ邊陬又ハ不健康ノ地域ニ引續キ一年以
  上在勤シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月以內ヲ加算ス不健康ナル業
  務ニ引續キ一年以上服務シタルトキ亦同シ
  前項ノ地域相互間ノ轉勤ハ之ヲ引續キタル在勤ト看做ス
  第一項ノ地域及業務ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十九條海上勤務ニ服スル公務員其ノ職務ヲ以テ遠洋航海ヲ爲シタル
  トキハ其ノ期間ノ一月ニ付半月ヲ加算ス
  の
  前項ノ遠洋航海ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第四十條第三十二條乃至前條ノ規定ニ依リ附スヘキ加算年ハ在職年ノ計
  算ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ實在職年ニ從トシテ之ヲ算入ス
  加算年ヲ附スヘキ基礎在職年ハ加算事由ノ生シタル月ヨリ之ヲ起算シ其
  ノ事由ノ止ミ々ル月ヲ以テ終ル
  二種以上ノ加算年ヲ附セラルヘキ期間ニ對シテハ最モ利益ナルモノニ依
  リ其ノ一ヲ附ス
  第四十一條左ニ揭クル年月數ハ在職年ヨリ之ヲ除算ス
  -普通恩給又ハ增加恩給ヲ受クルノ權利消滅シタル場合ニ於テ其ノ恩
  給權ノ基礎ト爲リタル在職年
  二第五十一條ノ規定ニ依リ公務員カ恩給ヲ受クルノ資格ヲ失ヒタル在
  職年
  三在職中六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル場合ニ於テハ其
  ノ月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄
  ノ在職年月數但シ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ此ノ限
  ニ在ラス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月ヨリ刑ノ執行ヲ終
  リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄ノ在職年月數
  四公務員ノ不法ニ其ノ職務ヲ離レタル月ヨリ職務ニ復シタル月迄ノ在
  職年月數
  五宮內職員トシテノ在職年月數ニシテ宮內官ノ恩給規程ニ依リ除算セ
  ラルヘキモノ
  第四十二條左ニ揭クル年月數ハ之ヲ在職年ニ通算ス
  -宮內官ノ恩給規程ニ依リ宮內官恩給權ノ基礎ト爲ルヘキ宮內職員ト
  シテノ在職年月數
  二準軍人ノ在職年月數
  三高等文官ノ試補又ハ判任官見習引續キ公務員ト爲リタルトキハ公務
  員トシテノ就職ニ接續スル其ノ勤續年月數ノ二分ノ一ニ相當スル年
  月數
  四準〓育職員引續キ〓育職員ト爲リタルトキハ〓育職員トシテノ就職
  ニ接續スル其ノ勤續年月數ノ二分ノ一ニ相當スル年月數
  第二十八條、第二十九條及第三十一條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ在年職
  としちゃうよ
  ニ通算セラルヘキ年月數ノ計算ニ、第三十條ノ規定ハ前項第一號第三號
  又ハ第四號ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月數ノ計算ニ付之ヲ
  準用ス
  第四十三條第三十二條乃至第四十條ノ規定ハ準軍人ノ在職年ノ計算ニ付
  之ヲ準用ス
  第四十一條ノ規定ハ前條第一項第二號乃至第四號ノ規定ニ依リ在職年ニ
  通算セラルヘキ年月ニ付之ヲ準用ス
  第四十四條本法ニ於テ俸給トハ本俸及之ニ準スヘキモノヲ謂フ
  本俸ニ準スヘキモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  公務員二以上ノ官職ヲ併有シ各官職ニ付俸給ヲ給セラルル場合ニ於テハ
  俸給額ヲ合算シタルモノヲ以テ其ノ者ノ俸給額トス
  第四十五條公務員所定ノ年數在職シ退職シタルトキハ之ニ普通恩給又ハ
  一時恩給ヲ給ス
  第四十六條公務員公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈疾ト爲リ失
  格原因ナクシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給及增加恩給ヲ給ス
  公務員公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ失格原因ナクシテ退職シタル
  後五年內ニ之カ爲不具癈疾ト爲リ又ハ其ノ程度增進シタル場合ニ於テ其
  ノ期間內ニ請求シタルトキハ新ニ普通恩給及增加恩給ヲ給シ又ハ現ニ受
  クル增加恩給ヲ不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給ニ改定ス
  前項ノ期間ヲ經過シタルトキト雖恩給審査會ニ於テ不具癈疾カ公務ニ起
  因シタルコト顯著ナリト議決シタルトキハ決議後之ニ相當ノ恩給ヲ給シ
  又ハ改定ス
  公務員公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈疾ト爲ルモ公務員ニ重
  大ナル過失アリタルトキハ前三項ニ規定スル恩給ヲ給セス
  第四十七條前條ノ規定ハ準文官、陸軍ノ見習士官海軍ノ候補生以外ノ準
  軍人又ハ準〓育職員ニシテ在職中公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタ
  ルモノ及陸軍ノ見習士官又ハ海軍ノ候補生ニシテ公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又
  ハ疾病ニ罹リタルモノニ付之ヲ準用ス
  第四十八條公務員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又
  ハ疾病ニ罹リタルモノト看做ス
  -勅令ヲ以テ指定スル地域ニ在勤中其ノ地ニ於テ流行病ニ罹リタルト
  キ
  二戰地ニ於テ又ハ公務旅行中流行病ニ罹リタルトキ
  三公務員タル特別ノ事情ニ關聯シテ生シタル不慮ノ災厄ニ因リ傷痍ヲ
  受ケ又ハ疾病ニ罹リ恩給審査會ニ於テ公務ニ起因シタルト同視スヘ
  キモノト議決セラレタルトキ
  前項ノ流行病ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  前二項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ付之ヲ準用ス
  第四十九條公務傷病ノ原因ヲ分ツテ戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ト普通
  公務トス
  戰闘ニ準スヘキ公務ノ範圍及公務傷病ニ因ル不具癈疾ノ程度竝〓育職
  員、警察監獄職員、待遇職員、準文官、準軍人及準〓育職員ノ公務傷病
  ニ關スル規定ノ適用ニ付テノ階等ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第五十條裁定官廳ハ增加恩給ノ裁定ヲ爲スニ當リ將來不具癈疾ノ囘復シ
  又ハ其ノ程度低下スルコトアルヘキコトヲ認メタルトキハ五年間之ニ普
  通恩給及增加恩給ヲ給ス
  前項ノ期間滿了ノ六月前迄傷痍疾病囘復セサル者ハ再審査ヲ請求スルコ
  トヲ得再審査ノ結果恩給ヲ給スヘキモノナルトキハ之ニ相當ノ恩給ヲ給
  ス
  第五十一條公務員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ引續キタル在職ニ
  付恩給ヲ受クルノ資格ヲ失フ
  -懲戒、懲罰又ハ〓員免許狀褫奪ノ處分ニ因リ退職シタルトキ
  二在職中陸軍刑法若ハ海軍刑法ニ依リ死刑、懲役刑若ハ一年以上ノ禁
  錮ノ刑ニ處セラレ又ハ其ノ他ノ法令ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ
  タルトキ
  第二十六條第四號但書ノ規定ハ前項ノ規定ノ適用ニ關シテハ之ヲ適用セス
  第五十二條公務員ニシテ其ノ退職ノ當時仍他ノ公務員トシテ在職スルモ
  ノニ付テハ總テノ公務員ヲ退職スルニ非サレハ之ニ恩給ヲ給セス
  公務員ニシテ退職ノ當日又ハ翌日他ノ公務員ニ就職シ之ヲ勤續ト看做サ
  ルルモノニ付テハ後ノ公務員ヲ退職スルニ非サレハ之ニ恩給ヲ給セス
  公務員ニシテ恩給ヲ給セサル官職ニ轉シ退職シタルモノニ付テハ其ノ轉
  任ヲ退職ト看做シ之ニ恩給ヲ給ス
  第五十三條公務員ニシテ其ノ退職ノ當時仍第四十二條第一項第一號ニ規定
  スル宮内職員トシテ在職スルモノニ付テハ本法ニ依ル恩給ハ之ヲ給セス
  第五十四條普通恩給ヲ受クル者再就職シ失格原因ナクシテ退職シ左ノ各
  號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ恩給ヲ改定ス
  -再就職後在職一年以上ニシテ退職シタルトキ
  二再就職後公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈疾ト爲リ退職シ
  タルトキ
  三再就職後公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ退職シタル後五年內ニ
  之カ爲不具癈疾ト爲リ又ハ其ノ程度增進シタル場合ニ於テ其ノ期間
  內ニ請求シタルトキ
  前項第三號ノ場合ニ於テハ第四十六條第三項ノ規定ヲ準用ス
  第五十五條前條ノ規定ニ依リ普通恩給ヲ改定スルニハ前後ノ在職年ヲ合
  算シ其ノ年額ヲ定メ增加恩給ヲ改定スルニハ前後ノ傷痍又ハ疾病ヲ合シ
  タルモノヲ以テ不具癈疾ノ程度トシ其ノ恩給年額ヲ定ム
  前項ノ場合ニ於テ前後ノ傷痍又ハ疾病カ原因ヲ異ニスルトキハ左ノ區別
  ニ依リ其ノ年額ヲ定ム
  -後ノ傷痍又ハ疾病カ戰闘又ハ戰闘ニ準スヘキ公務ニ基因スルトキハ
  別表第二號表甲號中前項ノ規定ニ依リ定メタル不具癈疾ノ程度ニ相
  應スル增加恩給年額ヨリ前ノ增加恩給年額ト別表第二號表甲號中其
  ノ不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給年額トノ差額ヲ控除シタルモ
  ノヲ以テ增加恩給ノ年額トス但シ後ノ傷痍又ハ疾病ノミニ因ル增加
  恩給年額カ前後ノ傷痍又ハ疾病ヲ合シタルモノニ依ル增加恩給年額
  ト同額ナルトキハ此ノ控除ヲ爲サス
  二後ノ傷痍又ハ疾病カ普通公務ニ基因スルトキハ別表第二號表乙號中
  前項ノ規定ニ依リ定メタル不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給年額
  ニ前ノ增加恩給年額ト別表第二號表乙號中其ノ不具癈疾ノ程度ニ相
  應スル增加恩給年額トノ差額ヲ加ヘタルモノヲ以テ增加恩給ノ年額
  トス
  第五十六條前二條ノ規定ニ依リ恩給ヲ改定スル場合ニ於テ其ノ年額從前
  ノ恩給年額ヨリ少キトキハ從前ノ恩給年額ヲ以テ改定恩給ノ年額トス
  第五十七條前三條ノ規定ハ宮內官ノ恩給規程ニ依ル恩給ヲ受クル者公務
  員ト爲リ退職シタル場合ニ付之ヲ準用ス
  第五十八條普通恩給ハ之ヲ受クル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ
  とおと
  間之ヲ停止ス
  一公務員又ハ第四十二條第一項第一號ニ規定スル宮內職員トシテ就職
  スルトキハ就職ノ月ノ翌月ヨリ退職ノ月迄但シ實在職期間一月末滿
  ナルトキ、軍人以外ノ公務員トシテ恩給ヲ受クル者陸軍若ハ海軍ノ
  兵卒トシテ就職スルトキ又ハ准士官以下ノ軍人若ハ準軍人トシテ恩
  給ヲ受クル者軍人以外ノ公務員トシテ就職スルトキハ此ノ限ニ在ラ
  ス
  二六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキハ其ノ月ノ翌月ヨ
  リ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄但シ刑
  ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタルトキハ恩給ハ之ヲ停止セス其ノ言渡ヲ
  取消サレタルトキハ取消ノ月ノ翌月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ
  受クルコトナキニ至リタル月迄之ヲ停止ス
  前項第二號ノ規定ハ增加恩給ニ付之ヲ準用ス
  第五十九條文官ハ每月其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ國庫ニ納付
  スヘシ
  〓育職員ハ每月其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ國庫ニ納付スヘシ
  但シ朝鮮、臺灣又ハ樺太以外ノ地ニ於ケル公立ノ小學校、實業補習學校、
  幼稚園及盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ〓育職員ハ此ノ限
  ニ在ラス
  待遇職員ハ之ニ俸給ヲ給スル國庫、府縣其ノ他ノ經濟ニ對シ其ノ俸給又
  ハ給料ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ納付スヘシ
  第二節恩給金額
  第六十條文官在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ
  給ス
  前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年未滿ニ對シ退職當時ノ
  百五十分ノ五十
  修給年初ノ一百四十分ノ六ーニ相當スル金額トシ十五を以上一年ヲ
  百五十分ノ一
  每ニ其ノ二十年對シ浪殿當時ノ條籍半細ノ三百十十ノニ相管スル金
  額ヲ加ヘタル金額トス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ外國實勤續在職年十五年以上ノモノヲ
  含ムトキハ其ノ勤續在職年中十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ
  三百分ノ一
  付退職當時ノ條給年額二百四十分ノ一ノ割令ヲ以テ之ニ加給ス
  在職年四十年ヲ超ユル者ニ給スヘキ恩給年額ハ之ヲ在職年四十年トシテ
  計算ス
  第一項ノ在職年ハ國務大臣トシテ退官スル者ニ付テハ國務大臣トシテノ
  在職年五年以上ナルヲ以テ足ル
  第四十六條、第五十四條第一項第二號若ハ第三號又ハ前項ノ規定ニ依リ
  在職年十五年未滿ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年ノ者ニ
  給スヘキ普通恩給ノ額トス
  第四十七條ノ規定ニ依リ準文官ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ退職當時ノ
  百五十分ノ五十
  俸給年額ノ二百四十分ノ六十ニ相當スル金額トス
  第六十一條軍人在職年十一年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給
  ヲ給ス
  前項ノ規定ハ準軍人在職年十一年以上ニシテ退職シ且其ノ身分ヲ免セラ
  レタル場合ニ付之ヲ準用ス
  前二項ノ普通恩給ノ年額ハ退職當時ノ階等及其ノ在職年數ニ依リ定メタ
  ル別表第一號表ノ金額トス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ外國實勤續在職年十五年以上ノモノヲ
  含ムトキハ其ノ勤續在職年中十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ
  付退職當時ノ軍人ノ階等ニ應シ別表第一號表ノ十一年ノ額ト十二年ノ額
  ノ二分ノ一
  トノ差額〓ニ相當スル金額ヲ之ニ加給ス
  在職年五十年ヲ超ユル者ニ給スヘキ恩給年額ハ之ヲ在職年五十年トシテ
  計算ス
  陸海軍准士官ニシテ其ノ官ニ對スル最高ノ俸給ヲ受ケタル者ニハ高等官
  八等ノ額ヲ給ス
  第四十六條、第四十七條又ハ第五十四條第一項第二號若ハ第三號ノ規定
  ニ依リ在職年十一年未滿ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十一年
  ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
  準軍人ノ階等ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第六十二條〓育職員在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通
  恩給ヲ給ス
  前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年未滿ニ對シ退職當時ノ
  百五十分ノ五十
  体給年額二百四十分ノバ十ニ相當ニル金額トシ十五年以上一年ヲ增
  百五十分ノ一
  ニ其ノ一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ一ニ相當スル金額
  ヲ加ヘタル金額トス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ小學校、實業補習學校、幼稚園又ハ盲啞
  學校其ノ他小學校ニ類スル各種學校ノ〓育職員トシテノ勤續在職年十五
  年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十五年ヲ控除シタル殘ノ勤
  百五十分ノ一
  精在職年一年ニ村結職當時ノ條捨年額ノ二百四十分ノ三テ割合ヲ以
  ニ加給ス
  第一項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ中學校又ハ之ト同等以下ノ程度ノ學
  校ノ〓育職員トシテノ勤續在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤
  續在職年中十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ付退職當時ノ俸給
  三百分ノ一
  年額ノ二百四十分ノ一半ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
  前項ノ中學校ト同等以下ノ程度ノ學校ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第四十六條又ハ第五十四條第一項第二號若ハ第三號ノ規定ニ依リ在職年
  十五年未滿ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年ノ者ニ給スヘ
  キ普通恩給ノ額トス
  第六十條第三項及第四項ノ規定ハ〓育職員ニ付之ヲ準用ス
  第四十七條ノ規定ニ依リ準〓育職員ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ退職當
  百五十分ノ五十
  時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ六十ニ相當スル金額トス
  第六十三條警察監獄職員在職年十年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普
  通恩給ヲ給ス
  前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十年以上十一年未滿ニ對シ退職當時ノ俸
  百五十分ノ五十
  給年額ノ一百四十分ノ六下ニ相當スル会通トシ十年以上一年ヲ增ス
  百五十分ノ-
  其ノ一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ一ニ相當スル金額ヲ
  加ヘタル金額トス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ警察監獄職員トシテノ勤續在職年十年
  以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十年ヲ控除シタル殘ノ勤續在
  三百分ノ一
  職年一平ニ付退職當町ノ篠結束親ノ二百四十分ノノノ割合ヲ以テ之
  給ス
  第四十六條又ハ第五十四條第一項第二號若ハ第三號ノ規定ニ依リ在職年
  十年未滿ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十年ノ者ニ給スヘキ普
  通恩給ノ額トス
  第六十條第三項及第四項ノ規定ハ警察監獄職員ニ付之ヲ準用ス
  第六十四條待遇職員在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通
  恩給ヲ給ス
  前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年未滿ニ對シ退職當時ノ
  百五十分ノ五十
  体論年額ノ三百回十分ノ六十ニ相當スル分類トシ十五年以上一年ヲ
  百五十分ノ一
  毎ニ其ノ一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ一ニ相當スル金
  額ヲ加ヘタル金額トス
  第六十條第三項及第四項竝第六十二條第六項ノ規定ハ待遇職員ニ付之ヲ
  準用ス
  第六十五條公務員ノ增加恩給ノ年額ハ退職當時ノ階等、傷病ノ原因及不
  具癈疾ノ程度ニ依リ定メタル別表第二號表ノ金額トス
  前項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ給スヘキ增加恩給ノ年額ニ付之ヲ準
  用ス
  第六十六條下士以下ノ軍人公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈疾
  ノ程度ニ至ラサルモ之カ爲退職シ又ハ退職後一年內ニ之カ爲一種以上ノ
  兵役ヲ免セラレタルトキハ之ニ傷病賜金ヲ給ス
  傷病賜金ハ之ヲ普通恩給又ハ一時恩給ト併給スルヲ妨ケス
  傷病賜金ノ額ハ退職當時ノ階等竝傷病ノ原因及程度ニ依リ定メタル別表
  第三號表ノ金額トス
  前項ノ傷病ノ程度ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第六十七條文官在職年一年以上十五年未滿ニシテ退職シタルトキハ之ニ
  一時恩給ヲ給ス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ノ二分ノ一ニ相當スル金額
  ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
  第六十八條下士以上ノ軍人在職年十一年未滿ニシテ退職シタルトキハ之
  ニ一時恩給ヲ給ス但シ下士以上トシテノ在職年一年未滿ナルトキハ此ノ
  限ニ在ラス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ階等及在職年ノ年數ニ依リ定メタル
  別表第四號表ノ金額トス
  第六十九條〓育職員在職年一年以上十五年未滿ニシテ退職シタルトキハ
  之ニ一時恩給ヲ給ス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ノ二分ノ一ニ相當スル金額
  ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
  第七十條警察監獄職員在職年一年以上十年未滿ニシテ退職シタルトキハ
  之ニ一時恩給ヲ給ス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ノ三分ノ二ニ相當スル金額
  ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
  第七十一條待遇職員在職年一年以上十五年未滿ニシテ退職シタルトキハ
  之ニ一時恩給ヲ給ス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ノ二分ノ一ニ相當スル金額
  ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
  第三章遺族
  第七十二條本法ニ於テ遺族トハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ祖父、祖母、
  父、母、夫、妻、子及兄弟姊妹ニシテ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當
  時之ト同一戶籍內ニ在ルモノヲ謂フ
  公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當時胎兒タル子出生シタルトキハ前
  項ノ規定ノ適用ニ付テハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當時其ノ戶
  籍內ニ在リタルモノト看做ス
  第七十三條公務員又ハ之ニ準スヘキ者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其
  ノ遺族ニハ妻、未成年ノ子、夫、父、世成年ノ子、祖父、祖母ノ順位
  ニ依リ之ニ扶助料ヲ給ス
  -在職中死亡シ其ノ死亡ヲ退職ト看做ストキハ之ニ普通恩給ヲ給スヘ
  キトキ
  二普通恩給ヲ給セラルル者死亡シタルトキ
  前項ノ規定ニ依ル同順位ノ子數人アルトキハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者
  ヲ被相續人トシタル家督相續ノ順位ニ準シ之ヲ定ム
  父母ニ付テハ養父母ヲ先ニシ實父母ヲ後ニス祖父母ニ付テハ養父母ノ
  父母ヲ先ニシ實父母ノ父母ヲ後ニシ父母ノ養父母ヲ先ニシ實父母ヲ後ニ
  ス
  先順位者タルヘキ者後順位者タル者ヨリ後ニ生スルニ至リタルトキハ前
  三項ノ規定ハ當該後順位者失權シタル後ニ限リ之ヲ適用ス
  第七十四條未成年ノ子ハ未タ婚姻セサルトキニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
  夫又ハ成年ノ子ハ不具癈疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養ス
  ル者ナキトキニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
  養子ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ家督相續人タルトキ又ハ公務員若ハ
  之ニ準スヘキ者カ家督相續人ニシテ之ヲ戶主ト看做ストキハ其ノ死亡ノ
  時ニ於テ其ノ家督相續人タルヘキ者ニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
  前項ノ家督相續人ニハ之ニ準スヘキ者ヲ包合ス
  第七十五條扶助料ノ年額ハ左ノ各號ニ依ル
  -公務員又ハ之ニ準スヘキ者戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因ル傷痍
  疾病ノ爲死亡シタルトキハ其ノ普通恩給年額ノ全額
  二公務員又ハ之ニ準スヘキ者普通公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲死亡シタル
  トキハ其ノ普通恩給年額ノ十分ノ八ニ相當スル金額
  三其ノ他ノ場合ニ於テハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ニ給セラルル普通
  恩給年額ノ十分ノ五ニ相當スル金額
  第七十六條公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡後遺族左ノ各號ノ一ニ該當
  スルトキハ扶助料ヲ受クルノ資格ヲ失フ
  -子婚姻シ又ハ其ノ家ヲ去リタルトキ但シ父ノ屬シタル家ヨリ分家シ
  又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ妻若ハ子ニシテ分家スルモノニ伴
  ヒ其ノ家ニ入リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
  二公務員又ハ之ニ準スヘキ者女子ナル場合ニ於テ夫婚姻シ又ハ家ヲ去
  リタルトキ
  三父、母、祖父又ハ祖母其ノ家ヲ去リタルトキ
  第七十七條扶助料ヲ受クル者六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタ
  ルトキハ其ノ月ノ翌月ヨリ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ヲ受クルコ
  トナキニ至リタル月迄扶助料ヲ停止ス但シ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタ
  ルトキハ扶助料ハ之ヲ停止セス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月
  ノ翌月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄之
  ヲ停止ス
  前項ノ規定ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ刑ノ執行中又ハ其ノ執行前ニ在ル
  者ニ扶助料ヲ給スヘキ事由發生シタル場合ニ付之ヲ準用ス
  第七十八條扶助料ヲ給セラルヘキ者一年以上所在不明ナルトキハ次順位
  者ノ申請ニ依リ裁定官廳ハ所在不明中扶助料ノ停止ヲ命スルコトヲ得
  ア
  第七十九條前二條ノ扶助料停止ノ事由アル場合ニ次順位者在ルトキハ停
  止期間中扶助料ハ之ヲ當該次順位者ニ轉給ス
  第八十條遺族左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ失フ
  -其ノ家ヲ去リタルトキ但シ妻夫ノ屬シタル家ヨリ分家シ又ハ遺族タ
  ル子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキ及子父ノ屬シ
  タル家ヨリ分家シ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ妻若ハ子ニシテ
  分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
  二妻、子又ハ夫婚姻シタルトキ
  三不具癈疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナキ夫又
  ハ成年ノ子ニ付其ノ事情止ミタルトキ
  第八十一條公務員又ハ之ニ準スヘキ者第七十三條第一項各號ノ一ニ該當
  シ兄弟姊妹以外ニ扶助料ヲ受クル者ナキトキハ其ノ兄弟姊妹未成年又ハ
  不具癈疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナキ場合ニ限
  リ之ニ一時扶助料ヲ給ス
  前項ノ一時扶助料ノ金額ハ兄弟姊妹ノ人員ニ拘ラス扶助料年額ノ一年分
  乃至五年分ニ相當スル金額トス
  若
  第八十二條文官、〓育職員又ハ待遇職員在職年一年以上十五年未滿ニシ
  〓又ハ警察監獄職員在職年一年以上十年未滿ニシテ在職中死亡シ
  テ在職中死亡シoタル場合ニハ其ノ遺族ニ一時扶助料ヲ給ス
  公務員ノ死亡ノ當時ノ俸給月額ニ相當スル金額ニ其ノ公務員ノ在職年ノ
  前項ノ一時扶助料ノ金額ハ左ノ各號ニ依ル
  年數ヲ乘シタル金額トス
  下士以上ノ軍人在職年一年以上十一年未滿ニシテ在職中死亡シタル場合ニハ其ノ遺族ニ一時扶助
  料ヲ給ス
  前項ノ一時扶助料ノ金額ハ死亡者ノ階等及在職年ノ年數ニ依リ定メタル別表第四號表ノ金額トス
  一小學校、實業補習學校、幼稚園又ハ盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類ス
  ル各種學校ノ〓育職員ノ遺族ニ在リテハ公務員死亡當時ノ俸給月額
  ノ二分ノ一ニ相當スル金額ニ其ノ公務員ノ在職年ノ年數ヲ乘シタル
  金額
  仁文官、前號ノ〓育職員以外ノ〓育職員又ハ侍遇職員ノ遺族ニ在リテ
  ハ公務員ノ死亡當時ノ俸給年額ノ百分ノ一ニ相當スル金額ニ其ノ公
  務員ノ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額
  第八十三條下士以上ノ軍人在職中死亡シタル場合ニハ一時給與金ヲ勅令
  ノ定ムル所ニ依リ遺族ニ、遺族ナキトキハ死亡者ノ相續人ニ給ス
  前項ノ一時給與金ノ金額ハ死亡當時ノ軍人ノ階等ニ依リ定メタル別表第
  五號表ノ金額トス
  附則
  三及ノ適用ニ付テハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第八十四條本法施行ノ期日、各條に付勅令ノ定ムル所ニ依ル
  (第八十五條ヲ第八十四條ニ改メ以下第九十一條迄條數順次繰上ケ)
  第八十五條左ノ法令ハ之ヲ廢止ス
  -官吏恩給法
  一官吏遺族扶助法
  一軍人恩給法
  -市町村立小學校〓員退隱料及遺族扶助料法
  一府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法
  -明治二十四年法律第四號
  -明治二十九年法律第十三號
  一官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則
  -明治二十九年法律第七十八號
  -明治三十三年法律第七十五號
  一明治三十三年法律第七十六號
  一明治三十三年法律第七十七號
  一巡查看守退隱料及遺族扶助料法
  -明治三十五年法律第二十九號
  -在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法
  一明治四十年法律第四十八號
  一明治四十年法律第四十九號
  一明治四十一年法律第三十五號
  -明治四十三年法律第三十號
  一明治四十四年法律第六十一號
  ー明治四十四年法律第六十七號
  ー明治四十五年法律第十一號
  ー明治四十五年法律第十二號
  -大正七年法律第三十號
  大正十年法律第三十五號
  大正十年法律第九十四號
  大正十一年法律第十八號
  大正十一年法律第十九號
  明治二十二年勅令第百三十三號
  一明治二十三年勅令第九十八號
  ー明治二十五年勅令第十八號
  明治二十五年勅令第三十二號
  一明治三十二年勅令第百九十六號
  一明治三十八年勅令第二百二十九號
  -明治四十年勅令第百八十八號
  一明治四十年勅令第百八十九號
  -明治四十一年勅令第七十一號
  一明治四十五年勅令第七十號
  一大正七年勅令第六十二號
  大正十年勅令第二百六十八號
  一大正十一年勅令第八十七號
  一大正十一年勅令第二百八十四號
  明治九年第九十九號達陸軍恩給令
  一明治十五年第四十一號達巡査看守給助例
  -明治十六年第三十八號達海軍恩給令
  ー明治十七年第一號達官吏恩給令
  第八十六條本法施行前給與事由ノ生シタル恩給、退隱料、遺族扶助料其
  ノ他之ニ準スヘキモノニ付テハ從前ノ規定ニ依ル
  從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノハ
  之ヲ本法ニ依リ受ケ又ハ受クヘキ恩給ト看做ス
  前項ノ場合ニ於テ從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他之
  ニ準スヘキモノカ本法ニ依リ給與スル恩給ノ何レノ種類ニ屬スヘキカハ
  公務員及其ノ遺族ノ種類竝給與ノ事由ニ依リ之ヲ定ム
  從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノニシ
  テ本法ニ依ル恩給ニ該當セサルモノアルトキハ本法ニ依ル恩給中最近キ
  性質ヲ有スルモノニ依ル
  第八十七條第五條乃至第七條ノ規定ハ從前ノ規定ニ依リ生シタル恩給、
  退隱料、遺族扶助料、退官賜金、退職給與金、退職一時金、給助金、賑
  恤金、一時扶助金其ノ他之ニ準スヘキモノヲ受クヘキ權利ニシテ本法施
  行ノ日迄ニ從前ノ規定ニ依ル請求期間ヲ經過セサルモノニ付之ヲ適用
  ス
  第八十八條第十條ノ規定ハ本法施行前給與ノ事由ヲ生シタル恩給、退隱
  料遺族扶助料、退官賜金、退職給與金、退職一時金、給助金、賑恤金、
  一時扶助金其ノ他之ニ準スヘキモノニ付本法施行後其ノ給與ヲ爲ス場合
  ニ付之ヲ適用ス
  第八十九條從前ノ規定ニ依リ內閣總理大臣ノ爲シタル裁定ハ具申、訴願
  又ハ行政訴訟ニ付テハ之ヲ本法ニ依ル內閣恩給局長ノ裁定ト看做シ從前
  ノ規定ニ依ル具申ノ裁決ハ之ヲ本法ニ依ル具申ノ裁決ト看做ス
  本法施行ノ際現ニ具申中又ハ訴願中ノ事件ニ付テハ從前ノ手續規定ニ依
  リ之ヲ完結ス
  第九十條府縣ニシテ本法施行ノ際市町村立小學校〓員退隱料及遺族扶助
  料法第十四條ノ規定ニ依リ小學校〓員恩給基金ヲ備フルモノハ本法施行
  後引續キ其ノ恩給基金ヲ備フルコトヲ得
  前項ノ恩給基金ヲ備フル府縣ニ於テハ第十八條第二項ノ規定ニ依ル納金
  ハ之ヲ其ノ恩給基金ト爲スヘシ
  恩給基金ハ其ノ利子ヲ以テ府縣カ給與スヘキ〓育職員若ハ準〓育職員又
  ハ其ノ遺族ノ恩給ニ充ツルノ外之ヲ支消スルコトヲ得ス
  府縣ニ於テ給與スヘキ〓育職員若ハ準〓育職員竝其ノ遺族ノ恩給ハ恩給
  基金ノ利子及第十八條第三項ノ規定ニ依リ國庫ヨリ交付スル給與金其ノ
  他ノ收入ヲ以テ之ヲ支辨シ不足アルトキハ府縣費ヲ以テ之ヲ補充スヘ
  シ
  恩給基金ノ管理ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第九十一條本法施行前ノ在職ニ付在職年ヲ計算スル場合ハ從前ノ規定ニ
  依ル但シ本法施行ノ際現ニ在職スル者ニ付テハ其ノ在職ニ繼續スル在職
  ニ限リ本法施行前ノ在職ト雖加算年ニ關スル規定ヲ除クノ外本法ニ依リ
  其ノ在職年ヲ計算ス
  前項但書ノ場合ニ於テ從前ノ規定ニ依リ特ニ通算シ得ヘキコトヲ定メ
  ラレタル年月數アルトキハ前項但書ノ規定ニ拘ラス之ヲ在職年ニ通算
  ス
  一
  第九十二條內地人タル公務員其ノ職務ヲ以テ臺灣、朝鮮、關東州(關東
  廳及其ノ所屬官署職員ニ付テハ南滿洲鐵道附屬地ヲ含ム)、樺太又ハ南洋
  當分ノ內
  群島ニ一定ノ期間引續キ在勤シタルトキハ。在勤期間ノ一月ニ付半月ヲ
  加算ス
  前項ノ引續キ在勤スヘキ期間ハ軍人ニ在リテハ六月、警察監獄職員ニ在
  リテハ二年、其ノ他ノ公務員ニ在リテハ三年トス
  第四十條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
  (第九十三條ヲ第九十二條ニ改メ以下第百一條迄條數順次繰上ケ)
  第九十三條公務員其ノ職務ヲ以テ國境警備又ハ理蕃ノ爲危險地域內ニ勤
  務シタルトキハ當分ノ內在勤期間ノ一月ニ付一月半ヲ加算ス
  前項ノ危險地域及期間ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
  第四十條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
  第九十四條海軍警吏補ヨリ海軍巡查ト爲リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引
  續キ現ニ南洋廳巡査ノ職ニ在ルモノニ付テハ其ノ海軍警吏補トシテノ在
  職年月數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡査トシテ在職シタルモノト看做
  ス
  第九十五條朝鮮總督府巡査補ヨリ朝鮮總督府巡査ト爲リシ者ニシテ本法
  施行ノ際迄引續キ在職スルモノニ付テハ其ノ統監府巡查補及朝鮮總督府
  巡查補トシテノ在職年月數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡查トシテ在職
  シタルモノト看做ス
  第九十六條臺灣總督府巡查補ヨリ臺灣總督府巡查ト爲リシ者ニシテ本法
  ごと
  施行ノ際迄引續キ在職スルモノニ付テハ其ノ臺灣總督府巡査補トシテノ
  在職年月數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡查トシテ在職シタルモノト看
  做ス
  第九十七條大正九年七月三十一日以前ニ休職若ハ待命ト爲リタル者ニシ
  テ本法施行ノ際迄引續キ休職若ハ待命中ノモノ又ハ其ノ遺族同日以前ノ
  俸給ニ基キ年金タル恩給ヲ受クヘキ場合ニ於テハ其ノ金額算出ノ基礎タ
  ル俸給年額ハ其ノ額ニ勅令ノ定ムル金額ヲ加ヘタル額トス
  第九十八條第四十六條第二項第三項及第五十四條第一項第三號第二項ノ
  規定ハ本法施行前退職シタル公務員ニ付之ヲ適用ス
  前項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ付之ヲ準用ス
  前二項ノ規定ニ依リ給スル恩給ノ金額ハ本法施行前ノ分ニ付テハ從前ノ
  規定ニ依ル
  第九十九條第四十八條ノ規定ハ本法施行前傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ本
  法施行後退職シ本法施行後不具癈疾ト爲リタル者ニハ之ヲ適用セス仍從
  前ノ例ニ依ル
  第百條第五十八條ノ規定ハ〓育職員及〓官其ノ他〓育事務ニ從事スル文
  官ニ付テハ當分ノ內之ヲ適用セス其ノ退隱料又ハ恩給ノ停止ハ仍從前ノ
  例ニ依ル但シ〓育職員及〓官其ノ他〓育事務ニ從事スル文官學習院ノ職
  員ト爲リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
  前項ノ規定ノ施行セラルル期間内ニ屬スル〓育職員ノ在職年ト〓官其ノ
  他〓育事務ニ從事スル文官以外ノ公務員ノ在職年トハ互ニ之ヲ通算セス
  仍從前ノ例ニ依ル〓育職員ノ在職年ト第四十二條第一項各號ニ揭クル在
  職年トノ間ニ付亦同シ但シ學習院ノ職員トシテノ在職年ニ付テハ此ノ限
  ニ在ラス
  第一項ノ規定ノ施行セラルル期間內ニ文官ヨリ〓育職員又ハ〓官其ノ他
  〓育事務ニ從事スル文官ニ轉任シタル者失格原因ナクシテ退職シ年金タ
  ル恩給ヲ受ケサル場合ニ於テハ文官ノ在職年數ニ應シ之ニ一時恩給ヲ給
  ス
  〓育職員ヨリ文官ニ轉シタル者〓官其ノ他〓育事務ニ從事スル文官以外
  ノ文官トシテ失格原因ナクシテ退職シタルトキハ〓官其ノ他〓育事務ニ
  從事スル文官トシテノ在職最終ノ恩給額ニ基キ之ニ恩給ヲ給ス
  第百一條本法施行前死亡シタル者ノ遺族ノ扶助料ニシテ本法施行後轉給
  セラルヘキモノニ付テハ從前ノ規定ニ依ル恩給額ヲ標準トスルノ外本法
  ニ依リ之ヲ給ス
  前項ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リ扶助料ヲ受クル事ヲ得
  ル者ノ權利ヲ妨クルコトナシ
  本法施行前ニ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ有シ且其ノ權利ヲ有セサルニ至リ
  タル者ハ之ヲ受クルノ權利ヲ本法ニ依リ取得スルコトナシ
  第一項ノ場合ニ於テ本法ニ依リ扶助料ヲ受クルニ付先順位ニ在ルヘキ者
  ト雖本法ニ依リ後順位ニ在ル者先ニ扶助料ヲ受ケタル場合ニハ本法ニ依
  リ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ有スルコトナシ
  大正六年法律第六號附則ノ規定ニ依リ恩給ノ增額ヲ受ケサリシ軍人ノ遺
  族本法施行後扶助料ヲ轉給セラルヘキ場合ニ於テ第一項ノ規定ノ適用ニ
  付テハ軍人ノ恩給ハ之ヲ請求ヲ竢タスシテ同法規則ノ規定ニ依リ增額セ
  ラレタルモノト看做ス
  第百二條警察監獄職員公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲死亡シタル場合ニ其ノ遺
  族ニ給スヘキ扶助料ノ年額ニ付テハ當分ノ內第七十五條第一號及第二號
  ノ規定ヲ適用セス仍從前ノ例ニ依ル
  一ノ際現ニ退隱料、、遺族
  第百三條本法施行前退官退職シ從前ノ規定ニ依リ年金タル恩給、ヲ給セラ
  扶助料其ノ他モノヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニ
  レ又ハ給セラルヘカツシ公務以又ハ之ニ遊スヘキ者シシテ本法施行
  シテ〓又ハ扶助料當該金額ニ其ノ
  其ノ權利ヲ有シ本法所定ノ恩給〓ノ金額ヲ受ケサルモノニハ本法施行ノ
  金額ト又ハ扶助料ノ金額トノ
  日ヨリ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法所定ノ各相當ノ恩給ヲ給ス但シ從前ノ
  差額ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ分割遞次增給ス
  規定ニ依ル金額カ本法所定ノ恩給額ヨリ多キトキハ其ノ額ニ依ル
  本法施行前死亡シタル公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ遺族ニシテ第七十三
  條第一項各號ノ一ニ該當シ本法施行ノ際其ノ權利ヲ有シ本法所定ノ扶助
  料ノ金額ヲ受ケサルモノニハ本法施行ノ日ヨリ勅令ノ定ムル所ニ依リ本
  法所定ノ各相當ノ扶助料ヲ給ス但シ從前ノ規定ニ依ル金額カ本法所定ノ
  扶助料額ヨリ多キトキハ其ノ額ニ依ル
  第百二條本法施行後勅令ヲ以テ定ムル時期迄ニ年金タル恩給又ハ扶助料ヲ受クヘキ事由ノ生シタ
  ル者ノ恩給又ハ扶助料ノ年額ハ當該金額ニ其ノ額ト本法所定ノ各相當恩給又ハ扶助料ノ年額トノ
  差額ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ分割遞次增加シタル額トス
  三
  第百四條明治二十四年八月十六日以降明治四十三年三月三十一日迄ニ退
  官退職シ又ハ死亡シタル文官、看守、陸軍監獄看守、海軍監獄看守、陸軍
  警査、海軍警査、貴族院守衞若ハ衆議院守衞又ハ其ノ遺族ニシテ明治四
  十三年四月改正前ノ俸給令ニ依ル俸給ヲ基礎トシ恩給又ハ扶助料ヲ受ケ
  本法施行ノ際迄其ノ權利ヲ有スル者ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ恩給
  又ハ扶助料ヲ本法施行ノ日ヨリ增額給與ス
  前項ノ規定ハ明治四十四年三月三十一日以前ニ退職シタル小學校、實業
  補習學校、幼稚園及盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ〓育職
  員若ハ巡査又ハ其ノ遺族ニシテ本法施行ノ際迄其ノ權利ヲ有スルモノニ
  付之ヲ準用ス
  第百四條勅令ヲ以テ定ムル時期迄ニ公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲死亡シタル警察監獄職員ノ遺族ニ給
  スヘキ扶助料ノ年額ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
  第百五條〓前二條ノ規定ノ適用ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〓北海道屯田兵ノ現役ニ服シタル年月日數ハ之ヲ公務員ノ在職年ニ通算シ本法施行ノ
  日ヨリ其ノ者ノ受クル年金タル恩給ヲ改定シ又ハ新ニ之ニ普通恩給ヲ給ス
  前項ノ規定ハ前項ニ規定スル者ノ遺族ノ年金タル扶助料ニ付之ヲ準用ス
  前二項ノ場合ニ於テハ第五條ニ規定スル請求期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  第百六條第八十三條及第八十五條乃至前條ニ規定スルモノヲ除クノ外本法ノ施行ニ關シ必要ナ
  ル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  (別表)
  第一號表
  階將官及相當官佐尉官及相當官準士官下士兵卒
  在高等官判任官陸軍上陸軍一陸軍二
  職等海軍等兵等卒等卒
  年親任一等二等一三等一四等五等一六等七等一八等一等二二三三四等·印刷海軍二海軍三海軍四
  數等兵等兵
  圓圓圓冒圓圓圓圓圓圓圓日圓圓圓圓圓
  十一年二、九〇〇二、一六七一、八六七一、五三四一、三六〇一、〇八四七人玉ね四六七500二八五三五·二三五二〇〇一八一五五三0
  十二年二、五五〇二、二一〇一、九〇四一、五六四一、三四三一、一〇五七九九五七八四七六四八二元H二三分isisint〓モニ一四元
  十三年二、六〇〇二三四一、九四二一、五九五一、三七〇一、一二七八一五五九〇四八六四一六二九九二九九二三九二三一ha一七日COH
  十四年二、六五〇二、二九七一、九七九15%,一、三九六一、一四八八三〇六〇一四九五四百圓三〇六二七六二四六二一八次八三一六
  十五年二、七〇〇二、三四一二、〇一七一、六五六1コニコ一、一七〇八四六六一三五〇五四三二三三二八二三五三四二〇四八九〓 〓〓
  十六年二、七五〇二、三八四二、〇五四一、六八六一、四四九一、一九一〓六四圓正直四四〇三二〇二九〇c10010二〇〇一九九10
  十七年二、八〇〇二、四二八二、〇九二一、七一七一、四七六1.1m2(8)八七七六三六五二四四四八=allo二九七二六七二二六二六二〇一〓
  十八年二、八五〇二、四七一二、一二九一、七四七一、五〇二Lama八々むたち3114四五六三三四三〇四二四三四ism二〇七一四
  十九年二、九〇〇二、五一五二、一六七一、七七八一、五二九一、二五六九〇八六五九五四三四六時言語三一一六三八二二八二三六
  二十年二、九五〇二、五五八二、二〇四一、八〇八一、五五五一、二七七九二三六七〇ⅢHEI四七二三四八三八六八二五四二三四ニ九二〇一
  二十一年三、〇〇〇二、六〇二二、二四二一、八三九一、五八二一、二九九九三九六八二玉石三四八〇三百五52ml二元云0二四〇三m二一〇
  二十二年三、〇五〇二、六四五二、二七九一、八六九一、六〇八Ialno九五四六九三毛四八八15384三三二0004二六ニ六量一二三
  二十三年三、一〇〇二、六八九一二、三一七一、九〇〇1,584一、三四二たTO七〇五五八一四九六三六九三三九三〇九二三立二七111m
  二十四年三、一五〇二、七三二二、三四一、九三〇一、총一、35Hz九八五七一六五九五〇四its三四六三分二七八二五八157三六
  二十五年三、二〇〇二、七七六三、三九二一、九六一一、六八八一、三八五一、〇〇一七二八六〇〇三五三六三三五三nm二八四二六四ニ兎見二三四
  二十六年三、二五〇二、八一九二、四二九一、九九一し·い一、四〇六一一、〇一六七三九六〇九2010三九〇3400Can0二九〇〓101二豆二四〇
  二十七年三、三〇〇二、八六三二、四六七二、〇二二一、七四一一、四二八一一、〇三三六九五二八三九七二尺4三三七二九六二七六二六一二四六
  二十八年三、三五〇二、九〇六二、五〇四二、〇五二一、七六七一、四四九一一〇四七七六二六二八至每一四〇〇三七四三四四三〇二二八二三五二五二
  二十九年三、四〇〇二、九五〇一二、五四二二、〇八三一、七九四一、四七一一、〇六三七七四六三八五四四三二六三五一con二八八二三m二五八
  三十年三、四五〇二、九九三二、五七九三、一一三1000一、四九三一、〇七八七八五お腹に亞四人人三八三尺ニ四二九四二七九
  三十一年三、五〇〇三、〇三七二、六一七二、一四四一、八四七一四五代一、〇九四ナル六五七300四三五三九五三六小310000二五二100
  三十二年三、五五〇三、〇八〇二、六五四二、一七四一、八七三一、五三五一、一〇九会大夫人五六八DISTE四〇二25ts三三三〇六二九一二七六
  三十三年三、六〇〇三、一二四二、六九二二、二〇五一、九〇〇一、五五七一、一二五八二〇六七六要四三九四〇九三七九flash三三二九七二八二
  三十四年三、六五〇一、六五〇二、七二九一二、二三五一、九二六一、五七八一、一四〇八三一六八五五八四四四六四三六二八三六八ニ八0004六八
  三十五年三、七〇〇8.5m一二、七六七二、二六六一、九五三一、六〇〇一、一五六〓〓〓〓六九五五九二買多DISIニバル」三四可三四三〇九二九四
  三十六年三、七五〇三、二五四二、八〇四二、二九六一、九七九一、六二一一、一七一八四七〇四六〇〇四六〇四三〇四〇〇三五〇三三〇三m090
  三十七年三、八〇〇三、二九八二、八四二二、二三H二、〇〇六一六四三一、一八七八六六七四六〇八四大名四三百四三H三五六三三六三三〇六
  三十八年三、八五〇三、三四一二、八七九二、三五七二、〇三二一、六六四一、二〇二八七七the六一六ロ·モ局四四四四四六三三四二三元三三
  三十九年三、九〇〇三、三八五二、九一七二、三八八二、〇五九一、六八六二三八八八九七三三六二四四八一四五一DIII三六八三四八Lamp三八
  四十年三、九五〇三、四二八二、九五四二、四一八二、〇八五一、七〇七Laison300七〇二六三二四人八四五八四二八三四四三五四三三九三四四
  四十一年四、〇〇〇三、四七二二、九九二二、四四九二、一一二一、七二九一、二四九九三お昼にAno四九九四六五四三五三八〇三六〇三四五三三〇
  四十二年四、〇五〇三、五一五三一〇二九二、四七九一二、一三八一、七五〇一、二六四九二三七六一六四八五〇二四七二四四三三八六三六六三五一三三六
  四十三年四、一〇〇三、五五九三、〇六七二、五一〇二、一六五一、七七二一、二八〇九三五七六五六五〇九四七九四四九三九二3411三五七三四三
  四十四年四、一五〇三、六〇二三、一〇四二、五四〇二、一九一一、七九三一、二九五九四六七八〇六六四五一六四八六四五六三八三六5354三八
  四十五年四、二〇〇三、六四六三、一四二二、五七一Zニベス一、八一五一三一一九五八七九〇む五四四九三四六三四〇四六八三元七三五四
  四十六年四、二五〇三、六八九三、一七九二、六〇一二、二四四一、八三六一Vista九六九九九六八〇五〇五〇〇四七〇四一〇3〓c三七五3140
  四十七年四、三〇〇三、七三三三、二一七二、六三二二、亘一、八五八一、三四二九八一八〇九六八八五三七SEL四七七四三美食三八一三六六
  四十八年四、三五〇三、七七六三三四二、六六二二、二九七一、八七九一、三五七カルト八八六九六五四四正面四八四四二二四〇二三八七三七二
  四十九年四、四〇〇三、八二〇三、二九二二、六九二二、三二四一、九〇一一、三七三一、〇〇四八二八七〇四五五一三三只四二八四〇八38.5OKA
  五十年四、四五〇三、八六三三、三二九一二、七二三二、三五〇一、九二二一、三八八一〇〇〇八三七1ha五九九五二八四人大四三四四四ニテルル三八四
  第二號表
  階親任奏任判任
  傷症勅任三等乃至五等一六等乃至九等一等一二等三等四等
  病狀等勅任待遇奏任待遇判任待遇
  原等官官官士
  因差將佐尉准士官一下兵卒
  圓圓圓圓3
  特別項
  甲戰闘第一項二、四〇〇一、八〇〇一、二〇〇一、〇八〇九九〇九〇〇
  又ハ
  戰鬪第二項二、〇〇〇一、五〇〇一、〇〇〇九〇〇八二五七五〇
  ニ準第三項一、六〇〇一、二〇〇AO七二〇六六〇六〇〇
  スヘ第四項一、二八〇むべつ〓〓〓〓エスト五二八四八〇
  キ公第五項一、〇〇〇七五〇五〇〇四〇〇四一三
  號務三七五
  第六項AO30°四 0三六〇三三〇三〇〇
  圖圓圓□圓圓
  特別項
  乙普第一項一、九二〇一、四四〇九〇八公尺七九二七〇〇
  通第二項一、六〇〇一、二〇〇AOOto1六六〇六〇〇
  第三項一、二八〇込ん六四〇五七六五二八四八〇
  公第四項一、〇二四七六八五三四六一四二三
  三八四
  號務第五項八〇〇300四〇〇三六〇U1010三〇〇
  第六項六四〇四八〇三〇〇二八八二六四一四〇
  備考特別項ハ各號第一項ノ金額ニ其ノ十分ノ五以內ヲ加ヘタルモノトス
  第三號表
  傷病原因症狀等差下士兵卒傷病原因症狀等差下士兵卒
  圓圓圖圓
  第一款一、六五〇一、五〇〇第款一、三二〇一、二〇〇
  第二款一、四八五一、三五〇第二款一、一八八一、〇八〇
  甲乙普
  第三款一、三二〇一、二〇〇第三款一、〇五六九六〇
  第四款一、一五五一、〇五〇第四款九二四八四〇
  通
  第五款九九〇30°第五款七九二七二〇
  務公キヘス準ニ鬪戰ハ又鬪戰
  第六款八二五七五〇第六款六六〇六〇〇
  公
  第七款六六〇六〇〇第七款五二八四八〇
  第八款四九五四五〇第八款三九六cano
  號號務
  第九欵三三〇三〇〇第九款二六四1280
  第十款一六五一五〇第十款一二三、一二〇
  第四號表
  階將官及相當官佐尉官及相當官准士宣下士
  在職等高等官判任官
  年親任一等二等一三等一四等一五等一六等一七等一八等一等三等三等四等
  數
  圓圓圓圓圓圓圓圓圓圓圓圓圓
  一年一六一二三二二(000七六四五六
  二五四二三九三二八三二三三二〇〇一一二三三八一二
  九八八八三五八八四二五三五〇三〇〇三四八云九
  一五三三一、三一七一、〇八三七八四五六七四六七四〇〇二八五二五五三
  ニ、tallen一 九九一、六四六二十四九〇七〇八五六五〇〇三五六三一九二八一
  年年年年年年年三四五番号〓〓
  二、八〇〇二、三〇〇一、九七五二六四、一、一七六七〇〇六〇〇四二八三八三三三八
  十九八七六五四三
  四、三七五三、七九二三分子など二、六八三二、三〇四一、八九六一、三七二九九三八一七七〇〇四九九四四六三元直
  五、〇〇〇四、三三三三、七三三三、〇六七二、六三三二、一六七一、五六八一、一三三九二三QO五七〇五一〇四五〇
  五、六二五四、八七五milo)三、四五〇二、九六三二、四三八一、七六四一、二七五一、〇五〇300六四一五七四五〇六
  年六、二五〇五、四一七四、六六七三、八三三三、二九二二、七〇八一、九六〇一、四一七一、一六七一、〇〇〇と三五六三八五六三
  第五號表
  將官及相當官佐尉官及相當官准士官一下士
  高等官判任官
  親任一一等一二等三等一四等一五等六一等七等八等一等二等三等四等
  圓圓圓圓圓圓圓圓圓圓圓圓圓
  一、八〇〇一、七二八一、六三八L·Inlea一、一〇二八四八元山四九九三尺八三〇六二一六一九二天
  〔政府委員馬場鍈一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/3

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• 004・馬場えい一

  ○政府委員(馬場鍈一君)　總理大臣ガ病氣デアリマスルノデ、此場合私ヨリ
  代リマシテ、唯今日程ニ上リマシタル恩給法案ノ提出理由ヲ簡單ニ申上ゲタ
  イト存ジマス、御承知ノ如ク現行ノ恩給法ハ、明治二十三年ノ制定ニ係リマ
  スル文官恩給法、遺族扶助料法、軍人恩給法、是等ノモノガ基礎ニナッテ居
  リマシテ、是等ノ法規ニ付キマシテモ三囘改正ハゴザイマシタケレドモ、尙
  ホ頗ル現在ノ事情ニ適切デナイノデアリマス、付キマシテ政府ハ數年來研究
  ヲ致シテ居リマシタガ、漸ク成案ヲ得マシタノデ、今囘之ヲ提出イタシタ次第
  デアリマス、デ此政府提出ノ恩給法案ノ主要ナル點ハ、唯今申上ゲタ如クニ恩
  給法規ガ多岐多樣ニ亘ッテ居リマシテ、誠ニ複雜ヲ極メ且ツ種々權衡ヲ得ナイ
  點ガアリマスルノデ、ソレ等ヲ統一整理スルノガ一ツノ點デアリマス、尙ホ現
  在ノ財政狀況ニ於キマシテ許シ得ル範圍內ニ於テ差詰メ差措カレヌ點、即チ
  今日ノ恩給ノ上ニ於キマシテ最モ不都合ナリトスル所ノ遺族扶助料ノ增額ヲ
  企テマシタノデアリマス、尙ホ增加恩給所謂傷病恩給ヲモ增額ヲ致シマシテ、
  更ニ明治四十三年ノ四月前ニ退官退職イタシマシタ文官恩給ニ付キマシテ、
  之ヲ改正ヲ致シマシテ軍人恩給ノ如ク權衡ヲ得ルヤウニ直シマシタノデアリ
  やっゝ、デ此二ツノ主ナル點ヲ以チマシテ、恩給法案ヲ衆議院ニ提出イタシマ
  シタル所、衆議院ニ於キマシテハ、政府ノ提出イタシマシタル趣旨ヲ是認シ
  マシタ上ニ、更ニ一般恩給、即チ文武官ノ一般恩給ノ增加ヲ必要トシマシテ、
  政府案ニ修正ヲ加ヘムトシタノデアリマス、尙ホ北海道ノ屯田兵ノ現役期間
  ヲ恩給年限ニ通算スルト云フヤウナ點モ修正ヲセムトシタノデアリマス、政
  府ハ之ニ付キマシテ財政ノ關係上直チニ衆議院ノ修正ノ通リニ實行ヲスルト
  云フコトハ、困難デアリマスルケレドモ、之ヲ數年間ニ分ケマシテ、遞次增
  加スルト云フコトニ付キマシテハ、財政上ノ都合ガ付クト云フコトヲ認メタ
  ノデ、此趣旨ヲ以チマシテ、衆議院ノ修正ニ同意スルコトニ致シタノデアリ
  やっ、此衆議院ノ修正案竝ニ政府ノ今囘增額ヲ企テマシタ恩給、扶助料、是
  等ヲ合シマスルト云フト、約三千萬圓年額增加スルコトニナルノデアリマス、
  併ナガラ唯〓申上ゲマシタ通リ、之ヲ一時ニ實行スルト云フコトハ到底財政
  ノ許ス所デアリマセヌノデ、凡ソ十二年度ヨリ六箇年間ニ之ヲ遞次增額スル
  ト云フコトニ考ヘテ居ル次第デアリマス、衆議院ニ於キマシテモ、其趣旨ニ
  於テ此修正案ヲ提出シ、政府ノ此趣旨ニ於テ實行スルコトニ衆議院ハ諒解ヲ
  シテ居ル譯デアリマス、斯樣ナ次第デ、衆議院ノ修正ニ對シテモ政府ハ同意
  ヲシテ居ルヤウナ次第デアリマスルカラ、何卒本院ニ於キマシテモ、此修正
  案ヲ是認セラレマシテ、直チニ御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ切ニ望ム次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/4

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• 005・江木翼

  ○江木翼君　簡單ニ質問ヲ大藏大臣若クハ當局ニ致シタイト思フノデアリマ
  ス、唯今政府委員ノ御說明ニ依リマスレバ、衆議院ノ修正ニ對シテハ政府ハ
  同意デアル、而シテ是ガ實行ニ付テハ、財政ノ都合ヲ見計テ大正十二年度ヨ
  リ向フ六箇年間ニ法律全部ノ實行ヲ爲ス、斯樣ナ意味ニ承ッタノデゴザリマス
  ルガ、其政府委員ノ言明デアリマスル財政ノ都合トハ、果シテ如何ナルコト
  デアルカ、苟クモ國家ガ法律ニ依ッテ恩給ヲ增加スルコトノ義務ヲ擔フ、兩院
  ヲ通過イタシマシテ、御裁可ヲ經マスレバ、茲ニ法律トシテ成立スル、國家ハ
  即チ義務ヲ負フノデアル、又其法律ヲ制定スルト云フコトハ、國家ハ義務ヲ負
  フ必要ヲ認メタノデアリマス、國家ハ義務ヲ負フノ必要ヲ認メナガラ、是ガ施
  行ヲ數年度ニ分ケル、或甲種ノ階級ノ者ニハ大正十二年度カラ之ヲ增加スル、
  乙種ニハ大正十三年度、丙種ノ者ニハ大正十四年度カラト云フガ如ク區別ヲ
  立テルト云フコトハ如何ナル意味デアルカ、是ガ而カモ財政ノ都合デアルト
  云フノハ、果シテ國家ハ斯ノ如キ義務ヲ負擔スル能力ガ大正十二年度ニ於テ
  ハナイ、大正十三年度ニ於テモナイ、斯樣ナ意味合ヲ以テ是ガ實施ト云フモ
  ノノ年度ヲ區分セラルヽノデアルヤ否ヤ、其點ヲ財政ノ都合トアリマス以上
  ハ、大藏省當局ヨリ明確ニ御示シヲ願ヒタイト思フノデアリマス
  〔國務大臣市來乙彥君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/5

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• 006・市來乙彦

  ○國務大臣(市來乙彥君)　御答ヲ致シマス、恩給法ノ改正ニ依リマスレバ唯
  今政府委員ヨリ申述ベマシタ通リニ約三千萬圓ノ增加ヲ必要トスル、其内ニ
  付キマシテ、約五百萬圓バカリハ本年度ノ總豫算ニ要求シテアルモノニ屬ス
  ルモノデアリマス、從ッテ差引ヲ致シマシテ、更ニ增加ヲ要スベキ總金額ガ約
  二千五六百萬圓ニ上ル計算デアルト考ヘマス、政府ノ今日ノ財政狀態カラ申
  シマスレバ、之ヲ一時ニ增額ヲ致シマスルト云フコトハ困難デアリマス、デ
  此財政上ノ狀態ニ應ジマスル爲ニ、恩給法案ニ於キマシテハ此金額ヲ一時ニ
  支出イタシマセヌデモ、財政ノ狀況ニ應ジテ、年々之ヲ遞次ニ增加スルコト
  ヲ認メマシテ、其意味ノ案ガ立案サレテ居リマスルノデアリマス、即チ法律
  ノ規定ヲ設ケマシテ、此恩給額ヲ漸次ニ增加シテ行キマスルコトヲ勅令
  ノ規定ニ依テ定メルコトニ相成ッテ居リマス、即チ財政ノ都合ト申シマスル
  ノハ、增加スベキ財源ヲ調達スル必要ガアリマスル爲ニ、財政ノ狀態ニ應
  ジマスル爲ニ、恩給ノ總額ヲ年々增加ヲシテ行クーコトニ致ス、斯ウ云フ意
  味ニ相成ッテ居リマシテ、財政ノ狀態ヲ將來ニ付テ考ヘマシテ、適當ノ金額
  ヲ增加シテ參リマセウ、其金額等ハ各年度ニ於テドレダケノ額ヲ增加スル
  ヤト云フコトハ、今日ノ場合ニ於テマダ決定シテ居ラヌノデアリマス、即チ
  財政ノ狀態ニ依テ適當ノ金額ヲ增加シテ行ッテ、或時期ヲ經過シテ初メテ完成
  セシメヤウ、是ガ法律ノ趣意デアリマシテ、從テ此ノ趣意ヲ實行ヲ致シマス
  ル爲ニ、之ヲ勅令ニ讓ヲテ、規定ガ法律案ニ出來テ居リマスル次第デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/6

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• 007・江木翼

  ○江木翼君　大藏大臣ハ私ノ御尋イタシマシタル趣旨ヲ十分御了解ニナッテ
  居ラヌト思フ、私ハ一ツノ例ニ依リマシテ、少シク嚙碎イテ申上ゲテ見タイト
  思フ、衆議院ノ修正案ニ依リマスレバ、例ヘバ文官ニ付テハ是マデ最低限即チ
  十五年ヲ經過シタル者ニ付テハ二百四十分ノ六十、即チ四分ノ一ト云フモノ
  ヲ恩給ヲ給スルコトニナッテ居ッタノデアルガ、今囘衆議院ノ修正ニ依リマス
  レバ百五十分ノ五十、即チ三分ノ一ヲ最低限トスルト云フコトニナッタノデ
  アリマス、即チ國家ハデス、苟モ退官スル者ニ付テハ今マデハ四分ノ一ヲ恩
  給トシテヤッタノデアルガ、將來ハ三分ノ一ヲヤルノヲ適當ト認メルト云フ
  主義ガ茲ニ確定シタノデアル、斯樣ナ主義ヲ確定シ、サウシテ是ガ義務ヲ
  負フト云フコトヲ國家ガ確定シタ以上ハデス、之ヲ實行スルノニ、或者ニ
  付テハ大正十二年度カラヤル、或者ニ付テハ大正十六年度カラヤルト云フ
  ガ如キ差別待遇ヲ設ケルト云フコトハ、國家トシテ甚ダ不公平ナコトデハナ
  イカ、而カモ斯ノ如キ差別待遇ヲ設ケルコトガ財政ノ都合デアル、唯〓大藏
  大臣ノ說明ヲ承ツテ居ルト、財政ノ都合ハ財政ノ都合デアル、斯ウ云フ御答
  ニシカ聞エナイノデアリマスガ、若シ其財政ノ都合ガ國庫ノ剩餘ヲ生ズル其
  割合ニ應ジテ其年度ヲ決メルト云フ意味デアリマシタナラバ、ソレナラバ
  デス、私ハ何ガ故ニ法律ヲ其時ニ御改正ニナラナイ、若シ今日法律ヲ改正ス
  ルト云フ以上ハ國家ガ其義務ヲ認メルノデアル、其義務ヲ認メル以上ハ國家
  ハ何ト都合ヲシテモ、國力ノ許ス限リニ於テ、是ガ負擔ヲ避ケナイト云フノ
  ガ當然ナコトデハアルマイカ、國庫ニ剩餘ガナイ場合ニ於テハ、或ハ其場合
  ニ於テハ公債ヲ發行スルトカ、何カ適當ナ方法ニ依テ國家ノ義務ヲ果ス、國
  家ノ義務ヲ遂行スルト云フコトガ當然生ズベキデハアルマイカ、斯樣ナ質問
  ヲ致シタノデアリマス、唯財政ノ都合デアル、國庫ノ剰餘ヲ生ズルニ從テ、
  今日ノ財政ノ都合ニ依テヤルノデアルト斯ウ云フ御趣意ダケデハ私ハ何トシ
  テモ了解スルコトハ出來ナイノデアリマス、苟モ國家ガ法律ニ依テ義務ヲ負
  フ、是ハ重大ナコトデアルト思フノデアリマス、然ル以上ハデス、之ニ對シ
  テ相當ナル所ノ財政ノ都合ヲ御付ケナサルノガ、財政當局ノ當然ノ義務デア
  ル、ソレガ出來ナイト云フ以上ハ、其出來ル時ニ法律ヲ改正スルノガ當然デ
  ハアルマイカ、旣ニ法律ハ改正スルト云フ以上ハ、今日ニ於テ其義務ノ遂行
  ヲ當然ナサルト云フコトヲ負擔サレルノガ、蓋シ當然ノ歸結デハアルマイカ
  ト斯樣ニ考ヘルノデアリマス、之ニ對スル大藏當局ノ責任アル御辯明ヲ願
  ヒタイト思フノデアリマス
  〔國務大臣市來乙彥君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/7

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• 008・市來乙彦

  ○國務大臣(市來乙彥君)　恩給法ニ依リマシテ、國家ハ恩給ヲ受ケル者ニ對
  シテ恩給ヲ增加スル義務ヲ負擔シタルハ御問ヒノ通リデゴザイマス、國家ガ
  此義務ヲ遂行スルニハ如何ナル手段ヲ執ルカ、恩給額ヲ增加スルコトガ即チ
  其義務ヲ果ス所以デアリマス、恩給額ヲ增加スル方法ハ如何ニスルカ、勅令
  ヲ以テ適當ニ之ヲ定メル、斯ウ云フコトニ相成ッテ居リマス、デ即チ恩給ヲ
  增加シタル······恩給ヲ增加スル義務ヲ負擔イタシマシテ、此義務ヲ果ス方法
  ハ勅令ヲ以テ定メル、勅令ヲ以テ定メルト申シマスルコトハ申スマデモナク
  法律ガ之ヲ勅令ニ委任ヲ致スノデ、法律自身ガ定メタト同ジコトデアリマ
  ス、恩給ヲ增加スル義務ヲ認メテ之ヲ遂行スル方法ガ適當ニ定マルト云フコ
  トデアレバ、ソレニ付テ私ハ問題ハナイト考ヘルノデアリマス、即チ恩給ヲ
  增加スルコトヲ認メテ之ヲ遂行スル方法ヲ勅令ヲ以テ定ムル、左樣ニ御諒承
  ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/8

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• 009・江木翼

  ○江木翼君　左樣ニ致シマスルト、法律ガ國家ニ義務ヲ負ハシタ、國家ハ此
  法律ノ結果トシテ義務ヲ負フタモノデアル、然ル以上ハ是ガ遂行ニ關シテ勅
  令ヲ以テ適當ナル限度ヲ決メルト云フコトハ、差支ナイト云フ意味デアルト
  致シマスルナラバデス、例ヘバ大正十六年度カラ恩給ヲ增加スルト云フ種ノ
  階級ノ人ニ對シテハ、其人ガ今日大正十二年ノ今月今日ニ於テ受恩給ノ權利
  ヲ有シテ居ルモノト致シマシタナラバ、ソレニ遡ッテ大正十六年度ニ於テ大
  正十二年度乃至大正十六年度間ノ義務ヲモ、國家ノ義務ヲモ遂行セラルヽト
  云ク意味デゴザリマスルカ如何デゴザリマスカ
  〔國務大臣市來乙彥君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/9

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• 010・市來乙彦

  ○國務大臣(市來乙彥君)　今日恩給ヲ受ケル權利ノ生ジタ人ニ對シマシテ、大
  正十六年度ニ至ッテ初メテ恩給ヲ與ヘルヤウナ、サウ云フ場合ハナカラウト想
  像イタシマス、併ナガラ理論上カラ申シマスレバ、唯今恩給ヲ受クベキ權利ヲ
  生ズル人ニ對シマシテ、如何ニ恩給ヲ與フベキカト云フ問題ハ唯今申上ゲマ
  シタヤウニ、恩給法改正法案ニ依レバ、從來受クベキ恩給ニ對スル增加ヲ必要
  トスル關係デアリマシテ、從テ今日恩給ヲ受クベキ權利ヲ得マシタ人ニ對シ
  マシテハ、增加ノ部分ニ屬セザル關係ニ付テハ、固ヨリ相當ノ給與ヲ致サナケ
  レバナラヌコトハ申スマデモアリマセヌ、改正案ニ依リマシテ從來ノ恩給額
  ニ對スル增加ノ部分ノミガ適當ニ勅令ニ依テ定メラレル方法ニ於テ、又時機
  ニ於テ增加給與サレル關係ニ相成ルノデアリマシテ、唯今例ニ御採リニナリ
  マシテ御質問ノアリマシタヤウナ場合ハ起ラナイコトデアルト私ハ考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/10

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• 011・江木翼

  ○江木翼君　私ハ大藏大臣ガ私ノ質問ヲ十分ニ理解シテ居ラレヌト思フノデ
  ゴザイマス、今日既ニ法律ニ依テ既往ニ遡ッテマデ受恩給者ノ思給額ヲ增額
  ヲスルト云フ法律ガ確定イタシマスル以上ハ、其人ハ恩給ノ權利ニ於テ當然
  增加ヲ受ケタモノデアル、唯其施行ノ時期ト云フモノガ後ニ延バサレタニ過
  ギナイノデアル、斯樣ナモノニ對シテ國家ガ義務ヲ負フト云フ主義ヲ確定イ
  タシマシタ以上ハ、國家ガ愈〓其法律ヲ施行スルニ際シマシテハ、或ハ既往
  ニ遡ッテ給與スルト云フコトニスルカ、サモナケレバ今日同時ニ都合ヲ付ケラ
  レテ施行セラレルノガ、私ハ公平上適當ナルコトデアルト思ヒマスルガ、唯〓
  大藏大臣ハ是等ノ點ニ付テ十分ノ御理解ガナイカト思ヒマスガ、此處デ此問
  題ヲ論議スルト云フコトハ便宜デナイト思ヒマスカラ、何レ委員會ニ於テ此
  點ハ最モ重要ナルモノトシテ論議セラレルモノト期待イタシマシテ、此質問
  ハ玆ニ止メマスガ、次ニ伺ッテ見タイー思ヒマスノハ、唯今マデ文官其他ノ二
  三ノモノニ付キマシテ、極メテ進步的ナ、極メテ新ラシキ保險ノ意義ニ適ッタ
  ル制度ガ存在シテ居ッタト思フノデゴザイマス、ソレハ文官ノ遺族扶助ニ對シ
  マスル國庫納金ノ制度デアリマス、即チ文官其他ノ者ニ付キマシテハ、每月月
  給ノ百分ノ一ト云フモノヲ國庫ニ納メル、サウシテ遣族扶助ノ基金ナルモノ
  ヲ造ッテ、其基金ノ中カラ遺族扶助料ト致シマシテ恩給額ノ三分ノ一ニ相當ス
  ル所ノ給與ト云フモノヲ爲シテ居ッタノデゴザイマス、私ハ此制度ト云フモノ
  ハ誠ニ良イ制度デアルト思フノデアリマス、ソレデ私ガ茲ニ御尋ネ致サムト
  欲シマスル所ハ、敢テ此組織ト云フモノヲ更ニ武官ニマデ及ボシナサルカド
  ウカト云フコトハ別ノ問題ト致シマシテ、少ナクトモ此國庫納金ノ制度ヲ
  バ、遺族扶助ダケニ止メズニ、恩給ノ基金ニ達スルヤウナ趣意ニ改メラレル
  ト云フコトニ付テ御考慮ニナッタノデアルカ否ヤ、此點ヲ承ッテ見タイノデア
  リマス、元來近頃歐羅巴ニ社會政策ノ一ツトシテ起リマシタ所ノ社會保險ノ
  組織ナルモノハ、基金ハ斯ル趣意ニ依テ出來テ居ルモノト私ハ信ズルノデア
  リマス、即チ保險料ヲ受ケマス所ノ所謂被保險者ハ、其給料ノ幾分ヲ基金ノ
  中ニ入レル、又被保險者ヲ雇入レテ居リマスル雇主ハ、其給料ノ幾分ニ該當
  スルモノヲ基金ノ中ニ入レル、又社會全般、社會全般モ又是ガ保險ニ對シテ同
  情ヲ持チマシテ幾分ヲ入レル、社會全般ヲ代表イタシマシテ國庫ガ其幾分ト
  云フモノヲ給與スベキ基金ノ中ニ入レル、斯樣ニ致シマシテ此三者カラ集リ
  マシタル所ノ基金ニ依テ保險基金ヲ造ッテ、其幾分ト云フモノヲ出シテ失職ノ
  救濟ニ當テル、疾病ノ救濟ニ當テルト云フ組織ガ出來テ居ルト思フノデアリ
  やっく是マデノ我國ニ於ケル所ノ文官ノ遺族扶助ト云フモノハ恰モ此趣意ガ
  旣ニ古キ明治二十三年ヨリ行ハレテ居ルト思フテモ宜カラウト思フノデアリ
  やって、私ハ此組織ヲ恩給ニマデ及ボス、即チ今マデ百分ノ一出シテ居ッタ所
  ノモノヲ、或ハ百分ノ三、或ハ百分ノ三半ト云フモノヲ納付セシメラレルヤ
  ウニナリマシタナラバ、國庫ハ殆ド大ナル負擔ヲナサズ致シマシテ、今囘ノ
  數千萬圓ノ增額ト云フモノヲ支辨スルコトガ出來ルヤウナ組織ガ出來タト
  思フノデゴザイマスガ、是等ニ付テハ政府ハ何等御考慮ニナラナカッタノデ
  ゴザイマセウカ、如何デゴザイマセウカ、此點ヲ政府當局ヨリ承リタイト思
  フノデゴザイマス
  〔政府委員馬場鍈一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/11

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• 012・馬場えい一

  ○政府委員(馬場鍈一君)　唯今江木博士ノ御質問ノ點ハ政府モ〓究ヲ致シタ
  ノデアリマス、併ナガラ御承知ノ如ク現在ノ國庫納金ノ俸給月額百分ノ一デ
  ハ、僅ニ收入ガ年額百二十萬圓、是ハ尤モ軍人ニ及バズシテ文官ノミデアリマ
  スガ故ニ、百二十萬圓デアル、之ヲ更ニ進ンデ恩給ニ付テノ所謂相互的ノ意味
  ニ於テノ出捐金ト致シマスルニ付キマシテハ、餘程ノ增額ヲセネバ到底足ラ
  ヌノデアリマス、現在デモ遺族扶助料全體ニ付テ言ヘバ千四百萬圓パカリカ
  ト思ヒマス、故ニ之ヲ恩給ノ一種ノ基金的ノ意味ニ於テ增額セムトスルナラ
  バ官吏ノ俸給カラ餘程差引カナケレバナラヌコトニナラウト思フ、又遺族扶
  助料ニ付テノ國庫納金ト云フモノハ、果シテ相互主義ノ意味デ當時制定セラ
  レタカドウカト云フト、私共ノ承知シテ居ル所デハサウデハナイヤウニ思フ、
  今日官吏ノ俸給ノ中カラシテ更ニ百分ノ三、若クハ百分ノ四ト云フガ如キ部
  分ヲ納金トシテ取ルト云フコトハ、果シテ如何ナモノデアラウカ、左程イタサ
  ヌマデモ今日ノ國庫ノ狀態ニ於テ、今囘位ノ恩給增額ニ付キマシテハ、敢テ國
  庫ガ負擔シ切レヌト云フ程デモナイ、斯樣ニ考ヘタノデアリマス、併ナガラ衆
  議院ニ於キマシテモ問題トナリマシタル如クニ、恩給ナルモノハ將來ニ於テ
  可ナリ大キナ國庫負擔トナルコトハ申スマデモナイ話デアリマス、故ニ或ハ
  更ニ研宛ヲ重ネマシテ、此恩給問題ニ付テハ唯今江木博士ノ言ハレタ如キ主
  義ヲ採ル必要ガアルト云フコトニナルカモ知レヌト思フ、是ハ他日ノ〓究ニ
  委ネル積リデ、今囘ハ之ニ付テハ手ヲ觸レナイノデアリマシタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/12

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• 013・江木翼

  ○江木翼君　私ハ武官ノ方ハ特ニ問題ヲ省イタノデゴザイマスガ、文官ダケ
  デ遺族扶助料ガ千二百萬圓ナドト云フコトヲ政府委員ガ仰セラルヽト云フコ
  トハ、如何ニモ數字ヲ暗ジテ居ラレヌカト思フノデアリマス、敢テ私ハ自分
  自身ニモ十分ナル記憶ハ持ッテ居リマセヌガ、左樣ナ高額ニ達シテ居ル理由
  ハ全然無イト思ッテ居リマス、文官ダケノ扶助料ガ千一一百萬圓ニ達スルコト
  ハ萬々無イト思フ、而シテ文官ノ遺族扶助料國庫納金ガ百二十萬圓、此百二十
  萬圓ト云フモノハ些細ナ額デアル、斯樣ナコトヲ仰セラレルト云フコトハ、如
  何ニモ私ハ意外千萬ニ思フノデアリマス、百二十萬圓ハ可ナリ大キナ額デア
  リマス、文官ノ恩給全體カラ比シマシテモ甚ダ少カラヌ割合ニナルト思フノ
  デアリマス、而シテ私ガ之ヲ相互保險ノ主義ニスルト云フ意味ハ全額ヲ國
  庫納金ニ依テ得ヤウト云フ意味デハナイノデアリマス、先程申上ゲマシタル
  如ク被保險人、傭主、社會全般、此三者ガ之ヲ負擔スルノガ適當デアラウ、而シ
  テ官吏等ニ付キマシテハ國庫-云フモノガ傭主デアリ、同時ニ社會全般ヲ代
  表シテ居ルモノデアルカラ、二人分ヲ國庫ガ負擔スルト云フコトハ、蓋シ當然
  ノコトデアラウト思フノデアリマス、斯樣ナ意味ニ付テ將來考慮スルト云フ
  御話デゴザリマスレバ、私ハ委員ガ指名サレルニ當リマシテ委員ニ於テ此點
  ヲ十分ニ御審査ニナラムコトヲ切望スル者デアリマス、實ハ今囘ノ恩給ハ誠
  ニ結構ナモノデアルト思ヒマスルガ、何シロ今囘三千萬圓·····恩給ノ總額ハ
  一億內外ニナルト云フコトハ、實ニ莫大ナル國庫ノ負擔ト言ハナクテハナラ
  ヌ十二億ノ歲計ニ於キマシテハ、軈ヲ一割近クノモノニナルト云フコトハ、實
  ニ莫大ナ負擔ト言ハナクテハナラヌノデアリマス、決シテ輕々ニ看ルコトハ
  出來ナイ問題デアラウト思フノデアリマス、ドウカ此點ニ付テハ十分ノ御審
  議ヲ望ムノデゴザリマスルガ、此遺族扶助料ノ國庫納付金ノコトニ付キマシ
  テ、政府ノ原案ニ於キマシテハ百分ノ一ト云フ從來ノ制度ト云フモノヲ其儘
  認メテ居ラレルノデアル、然ルニ文官全般ノ思給ガ先程申シマシタル如ク、四
  分ノ一ヨリ三分ノ一ニ上ボッタノデアリマス、而シテ遺族扶助料ノ增額ト云フ
  モノハドウ云フモノデアルカト云フト、從來三分ノ一デアッタモノガ、今囘ガ
  二分ノ一ニナッタノデアリマス、遺族扶助料ノ法定額ガ既ニ原案ニ於テモ上
  ボッテ居リ、其上恩給ノ額モ衆議院ノ修正ニ依テ三分ノ一ニナッタ、左樣ニ致
  シマスルト、當然此遺族扶助料國庫納付金ト云フモノヲ增額スルト云フコト
  ガ、私ハ蓋シ當然ノコトデハナイカト思フ、從來ハ例ヘバ最低限ヲ以テ申シマ
  スルナラパ、四分ノ一ノ恩給ヲ貰ッテ居ッタ者ノ遺族扶助料ト云フモノハソレ
  ノ三分ノ一、即チ本俸給カラ申シマスルナラバ、十二分ノ一ヲ貰ッテ居ッタノデ
  アリマス、四分ノ一ノ三分ノ一デゴザリマスルカラ、十二分ノ一······三四、十
  二分ノ一ヲ貰ヲテ居ッタ譯ニナルノデアリマス、トコロガ今囘ノ如クナルト、ド
  ウナルカト申シマスルト、俸給ノ三分ノ一ト、サウシテ其俸給ノ三分ノ一ノ
  恩給ニ對シテ二分ノ一デゴザイマスルカラ、二三ガ六分ノ一ノ遺族扶助料ヲ
  受クル譯ニナルノデアリマス從來本俸十二分ノ一ノ遺族扶助料ヲ受ケマシ
  タ者ハ、今囘ハ本俸ノ六分ノ一ノ遺族扶助料ヲ受ケル譯ニナッテ、詰リ倍額ノ
  遺族扶助料ヲ受ケルト云フ譯ニナルノデアリマス、然リマスレバ自ラ國庫納
  付金ノ額ト云フモノハ百分ノ一カラ百分ノ一半ニスルト云フ、當然增額スル
  ト云フノガ蓋シ必要ナコトデハアルマイカト思ヒマスルガ、此點ニ對シテ衆
  議院ニ於テモ修正ガ無イノデゴザイマスルガ、政府ニ於テハ如何ニ御考ニナ
  リマスルカ伺ヒタイト思ヒマス
  〔政府委員馬場鍈一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/13

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• 014・馬場えい一

  ○政府委員(馬場鍈一君)　先刻私ガ千四百萬圓ト申シマシタノハ、文官ダケ
  ノ遺族扶助料デハ固ヨリナイ、全體ノ遺族扶助料デアリマス、文官ダケノ遺
  族扶助料ハ百五十萬圓位ノモノデアリマセウ、ソレガ今囘增額セラレマシテ
  モ二百五十萬カソコラデアラウト思ヒーマス、ソレハ別問題ト致シマシテ、
  唯今ノ御尋ノ點デアリマスガ、元來此百分ノ一ノ國庫納付金ト云フモノガ、
  之ヲ以テ遺族扶助料ノ基金ニスル、斯ウ云フコトノ主義デ出來テ居ル、斯ウ
  云フコトデアリマスルカ、若クハ遺族扶助料ヲ上ボスレバ必ズ之ヲ上ボセナ
  ケレバナラヌト云フ必要ナルソコニ理由ガアルナラバ、今囘ノ如ク遺族扶助
  料ヲ增シマシタ場合ニ之ヲ增スノガ至當デアリマセウ、併ナガラソコマデニ
  セヌデモ、國庫ハ能ク此負擔ニ堪フルト云フコトデアルナラバ、必然的關係
  トシテ國庫納付金ヲ增ス必要ハナイト思フノデアリマス、併シ國庫納付金ヲ
  增シテ其財源ニスルト云フノモ、一ツノ策デアラウト思フノデアリマス、併
  シ政府ハソコマデニシテ財源ヲ得ヌデモ宜シイ、必ズシモ之ニ依テ不公平若
  クハ不權衡ヲ生ズルモノデハナイ、斯ウ云フ考カラ別ニ增サナイノデアリマ
  ス、御議論ハ左樣ニ拜聽イタシマスガ、政府ノ考ヘマシタ點ハ、ソコマデニ
  スル必要ガナイト云フ點ニ止マルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/14

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• 015・江木翼

  ○江木翼君　本恩給法案ノ施行ヲ如何ニモ小切ッテアル、通俗ニ申シマスレ
  バ、或ハケチ臭クデス、大正十二年度カラ六年間ニ分ケテ施行シナケレバナ
  ラヌ程財政ノ都合ガ逼迫シテ居ラレルト云フノニ、ドウモ國庫納付金ガ百分
  ノ一ヲ百分ノ二ニスルノハ左程ノモノデハナイ、ソンナニセヌデモ國庫ハ十
  分餘裕ガアルナドト云フヤウナコトヲ言ハレタノハ、如何ニモ矛盾千萬又如
  何ニモ數字ニ於テ大雜把ノ御考ノヤウニ思ヒマスガ、左樣ナ枝葉ノ問題ニ付
  テ敢テ觸レル必要モゴザイマセス、大體ニ於テ私ノ申シマシタルコトハ、政府
  ニモ能ク御分リニナッテ居ルコトデアラウト思ヒマスルシ、又本案ヲ審査ナサ
  ル委員ニ於テモ御了解ヲ得ベキコトト存ジマスルガ故ニ、此上敢テ申シマセ
  ス、併ナガラ唯今政府委員ヨリ申サレタル遺族扶助料ニ付テハ、百二十萬圓
  ノ國庫納付金ガアッテ、ソレニ國庫カラ僅カニ二十萬圓カ三十萬圓附ケ足シタ
  百四十萬圓ト云フモノデ、文官ノ遺族扶助料ヲ全部出シテ居ルト云フ意味ハ
  明カニ文官カラ出シタモノデ、文官ノ遺族扶助料ヲヤッテ居ルモノデアル、國
  庫ノ扶助ト云フモノハ十分ノ一カ十分ノ二ニ止マルト云フコトヲ明白ニ示シ
  テ居ルモノト私ハ思フノデアリマス、此主義カラ申シマスレバ、遺族扶助料
  ガ倍額ニナッタト云フ場合ニ於キマシテ、矢張リ國庫納付金ノ額ト云フモノモ
  相當ニ殖エルガ適當デハアルマイカ、又既ニ此制度ハ實ニ立派ナル制度デア
  ル、其當時制定サレタ時ニハ或ハ相互扶助ノ精神ガ無イニシテモ、從來歐羅
  巴等ニ行ハレテ居リマスル所ノ社會保險ノ組織ト云フモノハ皆總テ之ニ據ツ
  テ居ル、國家、傭主、被保險者、此三者ト云フモノガ保險料ヲ負擔シテ、其
  基金ノ中カラ危險ヲ負擔シテ貰フト云フ組織ト云フモノハ、實ニ世界ヲ通シ
  テノ大主義ト申シテ宜シイト思フノデアリマス、此主義ガ良イ、旣ニ日本ニ
  於テモ既ニ數十年前ヨリ行ッテ居ルト云フコトヲ御認メデアリマスルナラバ、
  何トカシテ私ハ此主義ヲ徹底シタイモノデアルト思フノデアリマス、少クモ
  文官ニハ之ヲ行ヒタイモノデアルト思フノデアル、幸ニ恩給ハ增加サレタ、
  物價ハ下ガリツヽアル、斯ウ云フ機會コソ、實ニ之ヲ實行スルニハ最モ適當
  ナ機會デアルト云フヤウニ、私ハ考ヘルノデアリマス、所ガ此點ニ付キマシ
  テハ、政府ニ於テモ將來其負擔ノ點ヲ考ヘラレ、又議員トシテモ國民負擔ノ
  點ヲ考ヘマシテ、十分ノ考慮ヲ盡スベキ事柄デアルト私ハ信ズルノデアリマ
  ス、此點ヲ申述ベマシテ私ハ質問ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/15

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• 016・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　唯今ヨリ豫算委員會ヲ開會イタシタイト考ヘマス、委員
  ノ退席ノ許可ヲ要求イタシマス、ドウゾ御諮リヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/16

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• 017・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　林伯爵ノ豫算委員退席ノ要求ハ許可シテ御異存ゴ
  ザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/17

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• 018・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/18

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• 019・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　唯今日程ニ上ボッテ居リマス恩給法案ハ極メテ重要ナル
  案件デゴザイマスガ故ニ、此特別委員ノ數ハ特ニ十五名トセラレムコトノ動
  議ヲ提出イタシマス、滿場ノ諸君ノ御賛成ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/19

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• 020・大山綱昌

  ○大山綱昌君　賛成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/20

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• 021・池田政時

  ○子爵池田政時君　賛成
  〔其他「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/21

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• 022・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/22

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• 023・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
  ヲシテ朗讀イタサセマス
  〔小林書記官朗讀〕
  ○給法案特別委員
  公爵近衞文麿君伯爵副島道正君子爵樋口誠康君
  子爵靑木信光君大島健一君男爵坂本俊篤君
  神野勝之助君男爵船越光之亟君男爵〓誠之助君
  澤柳政太郞君阪本彭之助君福永吉之助君
  南弘君江木翼君伊丹彌太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/23

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• 024・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第二、岩北軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ
  對スル補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
  岩北軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ關スル
  法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正十二年三月三日
  衆議院議長粕谷義三
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  岩北軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ關スル
  法律案
  岩北軌道株式會社所屬好摩平館間軌道經營ノ廢止ニ對スル補償ノ爲政府ハ
  該補償ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
  〔國務大臣伯爵大木遠吉君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/24

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• 025・大木遠吉

  ○國務大臣(伯爵大木遠吉君)　唯今上程セラレマシタ岩北軌道補償ニ關スル
  說明ノ〓要ヲ申上グマス、岩北軌道ハ東北線盛岡驛ヨリ二三驛先キニ當ル所
  ノ好摩ト云フ所ト平館トノ間ノ七哩九分ノ馬車軌道デアリマス、然ルニ昨年
  ノ八月國有鐵道ノ花輪線、好摩ヨリ平館ニ至ル間ノ運輸營業ヲ開始イタシマ
  シタガ爲ニ、之ニ併行シテ居リマシタ所ノ馬車軌道ハ其影響ヲ被リマシテ營
  業ヲ繼續スルコト能ハザルニ立至ッタノデアリマス、昨年十二月會社ハ營業
  ヲ廢止イタシマシタノデアリマス、此處ニ軌道條例第五條ニ依リマシテ補償
  ヲナスガ爲ニ公債ヲ發行スルノ必要ヲ認メマシテ此處ニ此法案ヲ提出イタシ
  タ次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ希ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/25

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• 026・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　辻男爵
  〔男爵辻太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/26

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• 027・辻太郎

  ○男爵辻太郞君　至極簡單ナコトデゴザイマスルガ、チヨット此際ニ此法案
  ニ關聯イタシマシテ質問ヲ致シテ置キタイト思ヒマス、本法案ニ付キマシテ
  唯今鐵道大臣カラシテ御說明ガアリマシタ如ク、此補償ニ對シテハ軌道條例
  ノ第五條ヲ適用サレルコトデゴザイマスガ、軌道條例第五條ナルモノハ地方
  鐵道法ノ第三十六條ノ規定ヲ又準用サレルト云フコトニナッテ居ル條文デゴ
  ザイマシテ、即チ地方鐵道法ヲ準用サレルト云フコトハ、其結果トシテ必ズ起
  テ來ルコトト思フノデアリマス、ソコデ此地方鐵道法ノ鐵道ノ補償若クハ買
  收ト云フコトニ關シテハ、僅ニ三十條カラシテ三十六條マデタッタ七條ノ法
  令ガアルダケデゴザイマス、甚ダ簡略ニシマシテ不備ナ條件ガ七ツアルダケ
  デゴザイマス、ソレガ爲ニ每年軌道若クハ地方鐵道ガ買收サレル度每ニ、此買
  收サレ、或ハ補償サレル會社ト云フモノハ、隨分無理ナ條件ノ下ニ補償サレ
  テ居ル所ガアルノデアリマス、ソレガ爲ニハ政府ハ此地方鐵道法ノ改正ヲシ、
  若クハ鐵道ノ買收法ヲ制定スルト云フ考ガアルカナイカト云フコトヲ私ハ當
  局ニ伺ヒタイメデアリマス、就キマシテハ此地方鐵道法ノ七條ニ對シテ、ドレ
  ダケノコトガアルカト云フコトヲチヨット御說明イタシマス、此地方鐵道法ノ
  買收ノ條項ニ對シマシテハ唯〓申上ゲマシタ如ク簡略不備デアリマシテ、權
  利義務ノ承繼ト云フコトノ主義ニ對シテハ甚ダ不備デアル、先ヅ第一ニ此買
  收サレマスル價格ト云フコトニ付テハ、旣往營業年度三年間ノ平均ヲ取リマ
  シテ之ヲ建設費ニ掛ケテ、其二十倍シタル金額ヲ與ヘル、是ハ當然ト私ハ思
  フテ居リマス、併シ此與ヘラレマスル金額ト云フモノハ公債ヲ以テ與ヘラレ
  ル、此公債ハ額面デアル、ソレハ第三十五條ニ規定サレマシテ、短期ノ公債
  デナイ、即チ五十五年內ニ償還サルベキ五分利ノ公債ヲ以テ此額面ヲ以テ拂
  ハレルノデアリマス、現在ノ如キ狀態デアリマスルト云フト、公債ハ八十圓
  臺カラシテ、九十圓臺ノ所ヲウロツイテ居ルノデゴザイマシテ、是モ天引一
  割カラシテ、一割五分位ト云フモノハ買收價格ト云フモノハ減ッテ居ルノデ
  アリマス、之ヲ政府ハ會社ニ渡シテ、鐵道ノ或ハ軌道ノ權利ヲ取上ゲテ居ル、
  其次ニ申上ゲタイノハ此賠償金額ヲ與ヘルト云フコトニ付テ期限ト云フモノ
  ガ制定サレテ居ラナイ、又其間ニ對シテハ政府ハ何等ノ補償ヲ與ヘナイ、此
  公債ヲ受ケ取リマスルマデノ間、買收ガ始マリマシテカラ受取リマスルマデ
  ノ間ト云フモノハ會社ハ無配當ニ陷ルノデス、甚ダ會社ハ不利ナ位置ニ置カ
  レルノデス、而シテ又〓算人ノ費用ト云フモノハ、是ハ政府ハ少シモ見テヤ
  ラナク、會社ガ負擔シテ〓算人ノ費用ヲ拂ハナケレバナラナイ而カシマ
  シテ此七條ノ中ニハ買收サレマシタ會社ガ不服ヲ訴ヘル途ガ何等制定シテナ
  イ、其上ニ買收サレマスルト必ズ此〓算ノ所得ト云フモノガゴザイマス、之ニ
  對シテ、〓算ノ所得稅又超過所得稅ト云フヤウナモノヲ之ニ課ケラレル、斯樣
  ナ譯デアリマシテ、此買收サレタ會社、此補償サレタ會社ト云フモノハ當然受
  クベキモノカラシテ二割或ハ三割位ハ少イ賠償金高ト云フモノヲ與ヘラレテ
  居ル、斯ノ如キコトハ政府ガ此權利ヲ取上ゲテ、ウッチヤッテ置クト云フコトハ
  私ハヒドイコトダト思フ、全ク是ハ法律ノ不備ナル點カラシテ起ッテ來ル、
  尙ホ此上ニ貯藏物品ト云フモノハ少シモ見テ居ナイ、如何ナル鐵道會社ニシ
  マシテモ軌道會社ニシテモ、多少ノ貯藏物品ハソレハ持ッテ居ル、此貯藏物品
  ハ政府ガ望ムモノハ買フ、要ラナイノハ買ハナイト云フコトガ言ヘル、昨年
  アタリモ二三ノ鐵道ヲ買收サレ、ソレカラ軌道ナドモ買收サレマシタ、本年
  モ茲ニ一ツ出テ居ル、之ニ對シテハ如何ナル處置ガアリマスカ知リマセヌガ、
  私ガ聞イテ居リマスニハ、前年成田鐵道及ビ中越鐵道ヲ買收サレマシタ時ニ、
  成田鐵道ナドハ甚ダ貯藏物品ニ對シテヒドイ目ニ遇ッテ居ルヤウデアリマス、
  其一例ヲチヨット擧ゲマスルト、乘車劵即チ切符デゴザイマス、鐵道ノ旅客ガ
  持ッテ乘車シマスル切符デアリマス、是ハ何處ノ鐵道會社デモ此貯藏品ヲ持ッ
  テ居ルベキモノデアリマス、少クトモ半年ヤ一年ノモノハ持ッテ居ル譯デアリ
  から
  やき、 是ハ決シテ市內ニ於テ販賣サレテ何時デモ供給スルコトノ出來ナイモ
  ノデアリマス、印刷シテ持ッテ居ラナケレバナラヌモノデアリマス、ソレニ
  向ッテ成田鐵道株式會社ト云フコトガ書イテアルト云フノデ政府ハ要ラナイ、
  刎ネテシマッタ、是等ハドウシテモ政府ガ之ヲ繼承シテ使フカ、然ラザレバソ
  レニ對シテ補償スベキモノデアラウト思ヒマス、會社トシマシテハ紙屑ニモ
  賣ルコトガ出來マセヌ、己ムヲ得ズ之ヲ燒棄テタト云フノデアル、是ナドハ詰
  リ買收ノ衝ニ當リマシタ者ガチヨット手細工ヲサレタモノカモ知レマセヌガ、
  斯樣ナコトガ起ルハ法ノ不備ナル爲デアル、斯樣ナ次第デゴザイマスカラ
  シテ、政府ハ宜シク此不備ナル法律ヲ完全ナモノニスルト云フコトヲスルノ
  ガ、私ハ適當デアルト思フ、就キマシテハ此地方鐵道法ノ六條ヲ改正サレル
  カ、鐵道ノ買收法ヲ制定サレルカ、此二ツノモノヲ御考慮ニナッテ然ルベキ
  モノデアラウト思ヒマス、而シテ私ガ今日申上ゲルノハ旣ニ遲イ、昨年タシ
  カ衆議院カラシテ、之ニ對シテ建議案ガ出テ居ルカト思ッテ居リマスガ、マ
  ダソレニ對シ政府ハ何等ノ御處置ガナイヤウデゴザイマス、何卒至急斯ノ如
  キコトハ御改正ニナルナリ、御訂正ニナルナリアリタイト思ヒマスルカラシ
  テ、ソレニ對スル政府ノ御所見ヲ伺ヒタイ
  〔國務大臣伯爵大木遠吉君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/27

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• 028・大木遠吉

  ○國務大臣(伯爵大木遠吉君)　辻男爵ノ御質疑ニ御答ヲ申上ゲマス、地方鐵
  道ノ買收ノ件ニ付テ、種々不備ノ點アリトシテ之ヲ列擧サレテ御陳述ニ相
  成ッタノデアリマス、政府ニ於キマシテモ、地方鐵道ノ買收ニ付キマシテハ、
  更ニ之ヲ制定スルカ、現在ノモノヲ改正スルカ、何トカ多少ノ改正ヲ致サナ
  ケレバナラヌト云フコトヲ認メマシテ、目下考慮ノ中ニアルノデアリマス、
  餘リ遠カラザル中ニ是ハ成案ヲ得ルコトト存ズルノデアリマス、左樣御諒承
  ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/28

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• 029・辻太郎

  ○男爵辻太郞君　成ベク速ニ御提出ニナラムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/29

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• 030・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　本案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サ
  セマス
  〔小林書記官朗讀〕
  岩北軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ關スル法
  律案特別委員
  伯爵佐佐木行忠君子爵稻垣太祥君子爵豊岡圭資君
  子爵新庄直知君中村是公君笠井信一君
  男爵黑川幹太郞君男爵辻太郞君石橋謹二君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/30

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• 031・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第三、中央卸賣市場法案、政府提出、衆議院
  送付、第一讀會
  中央卸賣市場法案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  大正十二年三月三日
  衆議院議長粕谷義三
  貴族院議長公爵德川家達殿
  小字ハ衆議院ノ修正文
  ハ同削除ノ符號ナリ
  中央卸賣市場法案
  中央卸賣市場法
  第一條本法ニ於テ中央卸賣市場トハ地方公共團體又ハ特別ノ事情アル場
  合ニ於テハ民法第三十四條ノ規定ニ依ル法人カ魚類、肉類、鳥類、卵
  蔬菜及果實ノ卸賣ヲ爲ス爲主務大臣ノ指定スル都市及其ノ隣接地ニ於テ
  本法ニ依リ開設スル市場ヲ謂フ
  中央卸賣市場ニ於テハ特別ノ事情アル場合ニ於テハ前項ニ揭クル物品ノ
  一部ノ卸賣ヲ爲サス又ハ其ノ他ノ日用品ノ卸賣ヲ爲スコトヲ得
  第二條中央卸賣市場ヲ開設セムトスルトキハ業務規程及事業計畫ニ關ス
  ル書類ヲ具シ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ中央卸賣市場ノ分場ヲ設置セム
  トスルトキ亦同シ
  第三條左ニ揭クル事項ハ業務規程ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
  一中央卸賣市場ノ取扱品目
  二中央卸賣市場ノ收受スル使用料、保管料及手數料
  三卸賣ノ業務ヲ爲ス者ノ收受スル手數料
  第四條業務規程又ハ事業計畫ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第五條主務大臣必要アリト認ムルトキハ第二條ノ規定ニ依ル認可ヲ與フ
  ルニ當リ之ニ制限又ハ條件ヲ附スルコトヲ得
  第六條主務大臣ハ第二條ノ規定ニ依ル認可ヲ與フルトキハ其ノ中央卸賣
  市場ノ業務ノ開始ニ至ル迄ノ間ニ於テ開設者ノ意見ヲ聞キ其ノ中央卸賣
  市場ノ取扱品目ニ付當該指定區域內ニ於テ中央卸賣市場類似ノ業務ヲ爲
  ス市場ノ閉鎖ヲ命スルコトヲ得中央卸賣市場ノ取扱品目ヲ追加スルトキ
  亦同シ
  第七條開設者ハ前條ノ規定ニ依リ閉鎖ヲ命セラレタル市場ノ開設者及卸
  賣ノ業務ヲ爲ス者ニ對シ損失ヲ補償スヘシ
  前項ノ規定ニ依リ補償スヘキ金額ハ當事者ノ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調
  ハサルトキハ地方長官ノ決定ヲ求ムヘシ地方長官ノ決定ニ不服アル者ハ
  決定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ起算シ九十日內ニ通常裁判所ニ出訴スル
  コトヲ得
  第八條主務大臣ハ開設者ニ對シ命令ノ定ムル設備ニ要スル費用ノ三分ノ
  一以內ノ補助金ヲ交付スルコトヲ得
  第九條主務大臣ハ開設者カ法令若ハ補助ニ附シタル條件ニ違反シ又ハ之
  ニ基キテ爲シタル處分ニ從ハサルトキハ之ニ補助金ノ全部又ハ一部ヲ交
  付セサルコトヲ得
  第十條地方長官ノ許可ヲ受ケタル者ハ中央卸賣市場ニ於テ卸賣ノ業務ヲ
  爲スコトヲ得
  第十一條前條ノ規定ニ依リ卸賣ノ業務ヲ爲ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
  開設者ニ保證金ヲ納付スヘシ
  第十二條開設者ハ中央卸賣市場ノ收受スル使用料、保管料及手數料ニ關
  シ保證金ニ付他ノ債權者ニ對シ優先權ヲ有ス
  前項ノ優先權ハ第十三條ノ規定ニ依ル優先權ニ優先ス
  第十三條第十條ノ規定ニ依リ卸賣ノ業務ヲ爲ス者ニ對シ販賣又ハ販賣
  ノ委託ヲ爲シタル者ハ販賣又ハ販賣ノ委託ニ因リテ生シタル債權ニ關
  シ其ノ卸賣ノ業務ヲ爲ス者ノ保證金ニ付他ノ債權者ニ對シ優先權ヲ有
  ス
  第十四條中央卸賣市場ニ於テ爲ス賣買ニ付テハ糶賣ノ方法ニ依ルヘシ但
  シ業務規程ノ定ムル特別ノ事情アル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
  第十五條第十條ノ規定ニ依リ卸賣ノ業務ヲ爲ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依
  リ開設者ニ對シ賣買値段及取引高ヲ報〓スヘシ
  第十六條開設者ハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ第十條ノ現定ニ依リ卸賣ノ
  業務ヲ爲ス者ニ對シ其ノ業務ヲ停止シ若ハ千圓以下ノ過怠金ヲ課シ又ハ
  賣買ニ參加スル者ノ入場ヲ停止スルコトヲ得
  第十七條主務大臣必要アリト認ムルトキハ中央卸賣市場ノ構造、設備、
  業務規程ノ變更、業務又ハ財產狀況ノ報告其ノ他ニ關シ事業ノ監督上必
  要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
  第十八條主務大臣ハ開設者又ハ卸賣ノ業務ヲ爲ス者本法若ハ本法ニ基キ
  テ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ、業務規程ニ違
  反シタルトキ又ハ公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ左ノ處分ヲ爲ス
  コトヲ得
  一第二條ノ規定ニ依ル認可ノ取消
  二中央卸賣市場ノ業務ノ停止
  三卸賣ノ業務ヲ爲ス者ノ業務許可ノ取消又ハ業務ノ停止
  四第一條ノ法人ノ役員ノ解任
  第十九條主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ官吏又ハ使員ヲ
  〓及之ニ關スル
  シテ開設者又ハ卸賣ノ業務ヲ爲ス者ノ業務。帳簿,財產其ノ他ノ物件ヲ
  檢查セシムルコトヲ得
  第二十條中央卸賣市場ノ廢止ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第二十一條主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ依ル職權ノ一部ヲ地
  方長官ニ委任スルコトヲ得
  第二十二條第六條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ第十五條ノ規定ニ基ク
  報〓ヲ爲サス若ハ虛僞ノ報〓ヲ爲シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
  第二十三條第六條ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者又ハ第十五條ノ規定ニ
  依ル報告ヲ爲スヘキ義務アル者未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ前條ノ
  罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有
  スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
  第二十四條第六條ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者又ハ第十五條ノ規定ニ
  依ル報告ヲ爲スヘキ義務アル者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇
  人其ノ他ノ從業者右命令又ハ業務ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テ
  サル故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
  第二十五條法人ノ代表者又ハ其ノ雇人其ノ他ノ從業者第六條ノ規定ニ依
  ル命令又ハ第十五條ノ規定ニ依ル報告ヲ爲スヘキ義務ニ違反シタルトキ
  あとみ
  ハ第二十二條ノ罰則ハ之ヲ法人ニ適用ス
  第二十六條第一條ノ法人又ハ第十條ノ規定ニ依リ卸賣ノ業務ヲ爲ス者第
  十九條ノ規定ニ依ル檢査ヲ受クル場合ニ於テ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ケ若
  ハ忌避シタル者又ハ檢查ノ際當該官吏吏員ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サス若
  ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
  第二十七條第一條ノ法人ノ役員其ノ職務ニ付賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求
  シ若ハ約束シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス因
  テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササルトキハ三年以下ノ懲役又
  ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ
  沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
  第二十八條前、條第一項ノ者ニ賄賂ヲ交付シ、提供シ又ハ約束シタル者ハ
  一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕シ又ハ免除スルコ
  トヲ得
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/31

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• 032・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　簡單ニ本案提出ノ理由ヲ申上ゲマス、目下我國
  ニ於ケル日用必需品ノ配給機關ノ現狀ヲ見マスルノニ、其設備竝ニ組織ガ如
  何ニモ不完全デゴザイマシテ、是ガ爲ニ無用ノ費用ヲ要スルバカリデナク、
  其間ニ多々弊害ヲ見ルノデアリマスル、依テ政府ハ先ヅ以テ全國ノ重要ナル
  都市ニ對シマシテ是等配給機關ノ整備改善ヲ圖ルト云フコトハ、極メテ刻下
  ノ緊要ノコトト認メマシテ、玆ニ中央卸賣市場ヲ設立スルノ法案ヲ提出イタ
  シマシタ次第デゴザイマスル、此中央卸賣市場ヲ開設シマスト云フコトハ、啻
  ニ消費者ノ爲ニ利益デアル事柄デナイ、又生產者ノ利益ノ爲ニモ頗ル便益ヲ
  增加スルコトト考ヘテ居ルノデゴザイマス、ソレノミナラズ唯今全國ノ重要
  都市ニ於キマシテ、公共團體ガ公設市場ヲ開設ヲ致シテ居リマスル、其公設
  市場ノ中心トナリマシテ、是等公設市場ニ對シ中央卸賣市場ノ設立ハ、一層
  ノ活動ヲ與ヘルニ便利ナルコトニナルト存ズルノデアリマス、又公設市場以
  外ノ小賣商人ニ於キマシテモ安全ナル仕入レ場ヲ得ルコトニ付テ、非常ナ便
  益ヲ得ル次第デゴザイマス、是等ノ理由ヲ以チマシテ本案ヲ提出シマシタ次
  第デゴザイマスル、本案ノ規定中ノ主要ナル條項ヲ申上ゲマスルト、中央卸
  賣市場ハ公共〓體ニ於テ設立スルト云フコトヲ原則ニ致シテ居リマス、公共
  團體ニ於テハ設立ノ出來ナイ場合ニ於キマシテハ、公益法人ヲシテ開設セシ
  ムル、斯ウ云フ次第デゴザイマス、ソレカラ此中央卸賣市場ノ取扱ヒマスル品
  目ハ主トシテ日用食料品ニ限ルコトニナッテ居リマスル、ソレカラ旣設市場
  トノ關係ハ、中央卸賣市場ト既設市場トノ關係ハ、原則トシテハ竝立主義ヲ
  認メテ居リマス、成ベク自由ノ主義ヲ採リマシテ竝立主義ヲ認メテ居ルコ
  トニナッテ居リマスル、ソレカラ中央卸賣市場ノ特別ナル施設ニ對シマシテ
  ハ、政府ハ其費用ノ幾分ヲ補助スルト云フコトニナッテ居リマスル、是等ガ
  本案ノ中ニ規定サレテアリマスル主要ナル點デゴザイマスル、何卒御審議ノ
  上御協賛アラレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/32

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• 033・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ通〓順ニ依リマシテ質疑ヲ許シマス、藤村
  男爵
  〔男爵藤村義朗君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/33

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• 034・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　唯〓農商務大臣ノ御說明ニ依リ、又本案ノ提出ノ理由書
  ニ依リテ見マスレバ、本案ハ日用食料品ノ配給機關ヲ整備イタシテ其供給ヲ
  圓滑ナラシメ、同時ニ取引組織ヲ改善シテ價格ノ決定ヲ公正ナラシムルト云
  フガ本案ノ御趣意デアルヤウニ拜承イタスノデアリマス、左樣イタシマス
  レバ、本案ハ直接我ガ國民生活ニ觸レテ居リマスル所ノ誠ニ重大ナル案件ノ
  ヤウニ存ズルノデアリマス、提案ノ御趣旨ハ目下緊切ナル問題トナッテ居リ
  マスル物價調節ノ一案トモナリ、又社會政策的施設ノ一部トモナリマス、
  御趣旨ニ於テハ誠ニ結構ニ存ズルノデアリマス、私ハマダ本案ヲ十分ニ〓究
  イタシテ居リマセヌノデ、詳シイ内容ニ付キマシラハ承知イタシマセヌガ、
  之ヲ通讀イタシマシテ、私ニ起リマシタ所ノ感ジハ、果シテ本案ガ本案ノ目
  的ヲ達成セシムルカドウカト云フコトニ付テ名少ノ疑ガアリマスルノデ、玆
  ニ農商務大臣ニ大體ノ御計畫ニ付テ伺ッテ見タイト思フノデアリマス、第一、
  本法ニ於テ中央卸賣市場ヲ開キ、サウシテ之ヲ經營シ得ルモノハ、唯〓モ御
  說明ノアリマシタ通リニ、地方公共團體、又ハ特別事情アル場合ニ於テハ、
  民法第三十四條ノ規定ニ依ル法人ト云フコトニ制限サレテアルノデアリマ
  ス、地方公共〓體ト申シマスレバ、恐ラク市役所ノヤウナ所デアラウト思
  フ、又民法第三十四條ノ規定ニ依ル法人ト申シマスレバ、即チ公益ニ關スル財
  團又ハ社團ノ法人ト云フヤウニ解釋サレルノデアリマス、所ガ此市役所又ハ
  營利事業ニ非ザル公益法人ノ役員若クハ事務員ト云フモノハ、如何ナルモ
  ノデアルカト申シマスルニ、〓シテ今日マデノ所デ私共ガ常識的ニ判斷ヲ致
  シテ居リマスル所ニ依リマスルト云フト、色〓繁文縟禮的ノ事務ニハ能ク慣
  レテ、法規ノ枝葉末節ニ拘泥シテ重箱ノ隅ヲ楊枝デ掘ヂクルヤウナコトニ
  ハ、極メテ熟練シテ居ル人達デアリマスルガ、此實際我等ノ生活ニ必要ナル
  日用必需品ノ賣買ニ對シマシテハ、殆ド何等實地ノ經驗モナク、知識モナイ人
  達ノヤウニ思ハレルノデアリマス、斯樣ノ人〓ガドウシテ種々雜多ノ面倒ト、
  煩雜極ハマル所ノ色〓ノ商習慣ヲ有ッテ居リマスル所ノ、各種ノ商賣人等ニ接
  觸イタシマシテ、是等ノ商賣ヲ完全ニ敏捷ニテキパキト取扱ヒ取捌イテ、サ
  ウシテ中央市場ノ業務ヲ經營シ監督シテ行クコトガ出來ルデアリマセウカ、
  是等ノ市役所又ハ公益法人ノ團體ノ人〓ガ魚河岸ヤ或ハ靑物市場ノ玄人ト、
  ドウシテ之ヲ旨ク協同シテ此市場ノ經營ニ任スルコトガ出來ルカト云フコト
  ニ付テ、私ハ殆ド想像ニ及ビ能ハヌノデアリマス、從來斯樣ニ御役所風ノ杓
  子定規ニ囚ハレ居ル頭デ、此市場ノ·····中央市場ノ監督ヲセラレテ、サウシ
  テ私共ハ二三度讀ミマシテ到底私共ノ頭ニ這入リ兼ネルヤウナ此法案ヤ、或
  ハ將來爰ニ規定シテアリマスル如キ市場ノ業務規定ト云フモノデアルトカ、
  或ハ主務大臣若クハ地方長官ガ其時々ニ發シマスル所ノ命令訓示等ヲ盾ニ
  取ッテ、、サウシテ是等ノ役人ガ一々商賣人ヲ取締ラレタ日ニハ、到底玄人ハ
  タマッタモノヂヤナイト思フ、色〓煩瑣ノ規定ヲ盾ニ取ッテヤラレタ日ニハ、市
  場ニアル所ノ魚ナリ肉類ハ、其內ニ腐ッテ仕舞ヒハセヌカト、私ハ心配スル
  程デアリマス、政府ハ果シテ是等ノ公共團體ヲシテ敏㨗ニテキパキ商人ト接
  觸シテ市場ノ事務ヲ進行運用セシムルト云フ御確信ガアルヤ否ヤ、如何ナル
  方法ニ依ッテ政府ハ此市場ノ運用ヲナサレル御積リデアリマスルカ、先ヅ第
  一ニ之ニ付テ大體ノ御意見ヲ伺ヒタイ、第二ニハ此法案ヲ見マスルト云フ
  ト、中央卸賣市場ノ開設ノ强制力ハ此法律ニハナイノデアリマス、各地ノ都
  市デ是非トモ此中央卸賣市場ト云フモノヲ作ラヌケレバナラヌト云フ條文
  ハドコニモ見エマセヌ、甚ダボンヤリシタモノデアル、斯樣ナ法律ノミヲ
  以テシテハ、如何ニシテ本案制定ノ目的、而カモ我〓國民生活ヲ完全ニ仕遂ゲ
  シメルコトガ出來ルデアリマセウカ、ドウモ其邊ニ付テ此法案ガ甚ダ徹底ヲ
  缺イテハ居ナイカト私ニハ思ハレルノデアリマス、ソレニ付テモ一應ノ御話、
  說明ヲ承ハリタイ、第三ニハ本案第一條ヲ見マスルト云フト、市場ニ於テノ
  取扱品目ガ擧ゲラレテ居ル、即チ魚類、肉類、鳥類、卵、野菜、果物、是ダ
  ケニ限定サレテ居ルノデアリマス、所ガ申スマデモナク我〓ニ最モ關係ノ深
  イ我〓ノ生活ニ最モ影響ガ有ル日用食料品ハ米デアリマス、ソレカラ雜穀
  デアリマス、而カモ米ノ配給及ビ米價ノ調節ノ如キハ、今日ニ於テ最モ急務ト
  セラレテ居ル所ノモノデアル、ソレガドウ云フ譯デ此條文カラ省カレテ居ル
  ノデアリマセウカ、米ガ此條文カラ省カレテ、中央卸賣市場ニ於テ取扱ハレ
  ナイト云フコトハ、即チ佛ヲ作ッテ魂ヲ入レナイノト同樣ノモノデハナイカ
  ト私ハ感ズルノデアリマス、其外日用品トシテ最モ必要ナル味噌醤油乾物類
  ト云フヤウナモノモ無イ、政府ハ何故ニ是ダケノ六種ノ品物ダケヲ玆ニ條文
  ニ御擧ゲニナッテ、外ノ最モ必要ナル所ノ米其他ノ日用食料品ヲ包含セシメ
  ラレナカッタノデアリマセウカ、此點ニ付テモ政府ノ御考ヲ伺ヒタイノデア
  リマス、次ニハ此市場ノ計畫ニ付テ、政府ノ御見込デアル所ヲ承ハルト云フ
  ト、先ヅ以テ六大都市ニ市場ヲ開設サセル、サウシテ其設計設備ノ費用ハ東
  京大阪ノ如キハ凡ソ千五六百萬圓要ル、其外ノ都市ハ先ヅ五六百萬圓ト云フ
  ヤウナ御豫定デアルノデアル、其外ニ大正十三年度カラ三箇年ニ亙ッテ、是
  等ノ市場ニ對シテ特別ノ施設ヲ致ス補助トシテ二百四十萬圓ノ補助金ガア
  ル、是ハ豫算ニ出テ居ルヤウデアリマス、ソレカラ其外ニ又冷藏庫設備トカ
  何トカ云フコトニ對シテモ特別ノ補助ヲセラレルト云フ考デアルヤウニ思
  フ、詰リサウ致シマスト云フト、平均一箇所ニ一千萬圓、サウシテ其補助ガ
  一箇所デ四十萬圓ト云フヤウニ勘定サレルノデアル、六大市全體デ以テ先ヅ
  六七千萬圓ノ金ヲ使ハレルト云フコトデアル、斯ノ如キ少額デドウシテ完全
  ノ市場ガ出來マセウカ、是ニ私ノ疑ガアル、ドウモ餘リ費用ガ少ナ過ギハシマ
  スマイカ、斯ノ如キ少額ノ經費デ以テ、如何ニシテ卸賣市場ノ施設ヲ完全ナラ
  シメ、其機能ヲ十分ニ發揮セシメ、配給ノ中心機關トシテ國民生活ノ安定ニ資
  スルコトガ出來ルデアラウカト云フ私ノ疑問デアル、殊ニ政府ノ御方針トシ
  テハ一ツノ都市ニ一箇所ト云フコトニ限定サレテ、サウシテ既ニ在リマスル
  所ノ既設市場ハ閉鎖セシメテ、賠償金ヲ與ヘテ閉鎖セシメルト云フヤウナ御
  方針デアルヤウニ思フ、ソレナラバ尙更ラノコトデ、甚ダ此設備ガ斯ノ如キ
  小サナ金デハ少ナ過ギハセヌカト云フ考ヲ私ハ持ッテ居ル、政府ノ御見込ハ
  ドウデアリマセウカ、ドウ云フ算盤ヲ取ッテ、斯ウ云フ御見込ヲ立テラレタ
  ノデアルカ、其邊ノ計算ヲ示シテ戴キタイト思フ、其次ニハ本案ノ第六條ニ依
  リマスルト云フト、政府ハ中央卸賣市場ノ業務ノ開始ニ至ルマデノ間ニ於テ、
  開設者ノ意見ヲ聞イテ中央卸賣市場類似ノ業務ヲ爲ス市場ノ閉鎖ヲ命ズルヲ
  得ト、即チ此中央市場ノ開業ニ至ルマデノ間ニ之ヲ開業スル者ガ申出ルナラ
  バ詮議ノ上既ニ在ル所ノ市場ヲ閉鎖セシムルコトガ出來ル、即チ魚河岸ヲ閉
  ヂテ仕舞フコトモ出來ル、靑物市場ヲ閉ヂテ仕舞フコトモ出來ルト云フヤウ
  ナコトニナッテ居ル、ソレカラ其以下ノ條項ニ於テ之ニ對スル損失ノ補償又
  ハ制裁等ガ規定サレテアルノデアリマス、是ハ唯〓モ申シタ通リニ、既設市
  場ハ閉鎖セシメテ、サウシテ自由競爭ヲ許サヌト云フ御趣意ノヤウニ考ヘル
  ノデアリマスガ、果シテ左樣デアリマスカ、私ハ何故斯ノ如キ規定ヲ設ケラ
  レテ公共〓體ニ卸賣市場ノ獨占ヲ許サネバナラヌカト云フコトニ付テ、疑ヲ
  持ッテ居ルノデアリマス、私ハ此中央卸賣市場ニ對シテ私設ノ競爭者ガアッ
  テ、相互ニ競爭ヲ致シテコソ、配給ノ整備ヲ圖リ、又價格ノ低廉ヲ期スルコ
  トニ於テ、大ニ國民生活ニ資スル所ガアルト思フノデアリマス、併ナガラ政
  府ハドウモ中央市場ハ獨占的ノモノニスルト云フヤウナ御趣意ノヤウニ承ハ
  ルガ、果シテ左樣デアリマスカ、若シ既設市場ガ此恩典補助ノアル中央市
  場ニ對抗ガ出來ナイトシテ、先方カラ進ンデ閉鎖スルト云フ意思ヲ以テ參リ
  マシタ時ニハ、ソレコソ此中央市場ハ之ニ對シテ賠償ノ責任ガアルト云フ
  コトハ、私ハ當然ノコトト思ヒマスガ、何モコチラカラ進ンデ是等ノ既設ノ
  市場ニ閉鎖ヲ命ズルト云フヤウナ必要ハナイ、而カモソレニ對シテ損失ノ賠
  償ヲスルト云フヤウナコトハ甚ダ無益ナコトノヤウニ思フノデアリマス、政
  府ハ一體此案ニ對シテ唯今自由主義ト云フヤウナコトヲ大臣ガ仰セラレタヤ
  ウデアリマスガ、果シテ中央市場ノ施設ニ對シテハ自由主義ヲ採ラレルモノ
  デアリマスヤ否ヤ、之ニ付テモ一應伺ッテ見タイト思フ、最後ニ伺ヒタイノハ、
  假ニ政府ノ腹案ガ適當デアルトシテ、一箇所平均一千萬圓デ以テ總テノ色〓
  ノ設備ガ出來ルトシテ、政府ノ御見込ハ此中央市場ノ開設ニ依テ、ドノ位
  ノ中間費用ガ節約サレルデアリマセウカ、即チドノ位現在ノ値段ヨリハ安イ
  食糧品ヲ供給スルコトガ出來ルト云フ御確信ガアリマセウカ、私ハ極メテ
  素人考デ、極常識的ニ見ル所ニ依リマスト、斯樣ノ市場ヲ設ケマシタ所
  デ、今日ノ我國ノ生產狀態、又ハ運輸交通ノ狀態、ソレカラ實際經營者ガ、
  ドウ云フモノデアルカト云フコトニ考ヘ及ボシマスト云フト、ドウモ斯ウ云
  フヤウナ中央市場デ販賣サレル所ノ品ハ、却テ今日ヨリハ高ク付キハセヌカ
  ト云フ感ジガアル、ナカナカ御役所仕事デ經費モ餘計ニ掛リマセウ、又金利
  モ少ナカラヌ金利ヲ拂ハネバナラヌ、詰リ經費倒レデ、却テ値段ヲ高クスルヤ
  ウナ結果ニ陷リハセヌカト云フコトヲ私ハ恐レテ居ルノデアリマス、愁ジイ
  途中デモッテ、サウシテマサカ止メテ仕舞ヒマスマイガ、何トカシナケレバ
  ナラヌト云フヤウナ、色〓ナ故障ガ起リマスヤウナラバ、初メカラヤラヌ方
  ガ宜イト私ハ思フ、之ニ付テ政府ハ如何ナル御成算ヲ有セラレマスヤ、ソレモ
  一ツ伺ヒタイ、其他本案ニ付テ見マスルニ、色〓此政府ヤ或ハ地方官ノ干渉
  ガ餘リニ多遇ギル、規則制裁ガ餘リニ繁多ニアルヤウニ考ヘラレル、又肝腎
  ナ此市場ヲ利用シマス所ノ卸賣業者、或ハ仲買業者デアル、問屋業者デアル
  ト云フ者ノ資格其他ニ付テハ何等規定スル所ガナイ、或ハ又市場其物ノ組
  織實質等ニ付テモ餘リ多クヲ語ッテ居ラナイノデアリマス、私ハマダ篤ト此
  法案ノ〓究ヲ致シマセズ、或ハ私ノ了解デ間違ッテ居ルカ知レマセヌガ、本
  案ヲ一讀シテ起ル感ジハ、本案ハ實ニ茫漠雲ヲ攫ムヤウナモノデアル、立法
  ノ精神ガ何處ニアルカサツパリ分ラヌ、誠ニ要領ヲ得ナイ法律案ノヤウニ考
  ヘラレル、甚ダ失禮ナ申分デアリマスガ、率直ニ申シマスト云フト、政府ハ
  單ニ時勢ニ迎合スル爲ニ、深ク法ノ〓究ヲナサラズ、俄カ作リ、極メテ輕卒
  ニ本案ガ提出サレタノデハナイカト云フヤウナ感ジガ私ニハ起ルノデアリマ
  ス、左樣ナコトデハ此國民生活ニ直接ニ關係ガアル社會的施設ト致シマシテ
  ハ甚ダ遺憾ヲ感ズル次第デアリマス、勿論特別委員等ニ於テ十分審查セラレ
  マセウト思ヒマスルガ、取敢ヘズ本案ヲ拜見シマシテ生ジマシタ右申上ゲタ
  數項ノ質疑ニ對シテ、ドウゾ御說明ヲ戴キタイト存ズルノデアリマス
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/34

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• 035・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　藤村男爵ノ御質問ニ對シマシテ御答ヲ致シマ
  ス、第一ノ御質問ガ中央卸賣市場ノ經營者ヲ公共〓體、地方公共團體若クハ公
  益法人ニ限ル、斯樣ナモノノ經營ハ往々形式ニ囚ハレ、官廳式ニ囚ハレテ完全
  ノ效果ヲ奏スルコトハ難イト思フガ意見如何、斯ウ云フヤウニ承リ申シタ、是
  ハ卸賣市場ガ公益事業デアリマスルガ爲ニ、成ベク營利會社ニハ斯樣ナコト
  ヲ經營サセルコトハ宜シクナイト云フ趣意カラ致シマシテ、地方公共團體又
  ハ公益法人ヲ其經營ノ主體ト致シマシタ、デ若シ此市場ニ於キマスル賣買其
  他ノコトニ付テ、公益地方〓體即チ市役所トカ或ハ町村役場、斯ウ云フ吏員ガ
  直接其事務ニ當ルト云フヤウナコトデアリマシタナラバソレハ藤村男爵ノ
  仰セノ通リ不慣レナ仕事ヲヤルト云フコトデアリマシテ、其邊ガ圓滑ニ行カ
  ナイト云フ虞レモアリマスデゴザイマセウガ、是ハ經營ノ主體ヲ公益法人若
  クハ地方公共〓體ニ致シマシタ、此市場ノ中ニ於テ取引ヲスル所ノモノハ、從
  來ノ卸賣業者即チ問屋業者ト云フヤウナ、總テノ斯業ニ經驗ノアルモノガ其
  中ニ集リマシテ小賣人ニ對シテ卸賣賣買ヲスルト云フコトニナッテ居リマス、
  賣買ノ當事者ハ何レモ斯業ニ關係アル商人デアリマシテ、唯經營主體ガ地方
  公共團體デアルト云フダケデゴザイマスデアリマスカラ藤村男爵ノ仰セノ
  ヤウナコトハ生ジナイト私ハ考ヘテ居リマス、現ニ今日ニ於テ各都市ニ於ケ
  ル公設市場ノ經營者ハ、矢張リ地方公共〓體デアリマシテ、實際直接其事務
  ニ當ル所ノモノハソレソレ堪能ノ者ガ當ッテ居リマスノデゴザイマスカラ、
  是ハ何等其中ノ直接ニ仕事ヲスル者ガ市役所デアルト云フコトデハナイノデ
  ゴザイマスカラ、私ハ左程藤村男爵ノ御心配ニナルヤウナコトハナカラウ、
  斯ウ考ヘテ居リマスソレカラ第二ニ本法ハ重要都市ニ於テ中央卸賣市場ヲ
  開設サセルト云フコトデアルガ、併シ何等都市ニ命ジテ開設セシメル强制力
  ヲ備ヘテ居ナイカラ、果シテ政府ノ考ヘ通リニ開設セシメラレルヤ否ヤト云
  フコトニ付テ疑ヲ有ツト云フコトデアリマスガ、是ハ成程强制力ヲ備ヘテ
  居リマセヌ、又是ハ必ズシモ强制シテモ開設サセルト云フモノデナカラウト
  考ヘテ居リマス、併ナガラ此事ハ必要ノコトデアリマスルカラ、成ベク其
  開設ト云フコトニ付テハ、便宜ヲ與ヘルト云フ方法ヲ執ッテ、之ヲ奬勵シテ
  行ク積リデゴザイマス、カルガ故ニ本法施行ノ曉ニ於テハ、私共ノ考デ各重
  要都市ニ於テ必ズ此計畫ガ進ンデ行クコトト信ジテ居リマス、ソレダケノ奬
  勵勸奬ノ途ハ十分ニ執ル積リデゴザイマス、ソレカラ第三ニ中央卸賣市場ニ
  於テ取扱フ品物、即チ日用品食糧品ノ中最モ重要ナル米ヲ省イタノハ如何ナ
  ル理由デアルカ、御尤モナ御質問デゴザイマスルガ、大體ニ於テ此法案ニ於テ
  取扱ハセルト云フ品目ハ、日用食料品ノ中デ最モ腐敗シ易イモノヲ選ンデ取
  扱ハセルコトヲ主ト致シテ居リマス、ソレデ唯〓ノ狀況ニ於キマシテハ是等
  ノ配給機關ガ不備ナ點カラシテ、鮮魚デアリマストカ野菜デアリマストカ云
  フモノハ、兎角腐敗ニ陷ッタリ何カシテ、完全ナ新鮮ナモノヲ配給スルコト
  ガ出來ナイト云フ狀態デアリマス、ソレ故ニ本案ニ於テ主トシテ取扱ハセル
  モノハ、左樣ナ腐敗シ易イ所ノ食料品ト云フモノヲ主眼ニ致シマシタ、ソレ
  ト今一ツハ······ソレ故米ノ如キハ省キマシタ、ソレトモウ一ツ米ヲ省キマシ
  タ理由ハ、米ニ於キマシテハ特別ノ法令ガアリマシテ、唯今市場ヲ開イテ居
  ルノデゴザイマスカラ、强ヒテ之ニ據ラセル必要ハナイト、斯ウ認メマシタ、
  併ナガラ此第二項ニ於キマシテ、特別ノ事情アル塲合ニハ、前項ニ揭グマシタ
  品物以外ノ品物ヲモ取扱ハセルコトガ出來ルト云フコトニナッテ居リマスカ
  ラ、此米ノ中デ精白米、白米、白米ダケハ或ハ場所ニ依テハ取扱ハセルコト
  ガアルカモ知レマセヌ、是ダケノコトヲ申上ゲマス、ソレカラ第四ニ、差當
  リ六大都市ニ公設中央卸賣市場ヲ開設セシメル、斯ウ云フコトデアルガ、政
  府ノ豫算ヲ見ルト僅カ二百四十萬圓ノ補助デアル、而シテ此市場ノ開設ニハ
  少カラザル經費ヲ要スルト思フガ、此位ノ補助ヲ以テ開設ヲセヨト云フコト
  ハ無理デハナイカト云フ、斯ウ云フ御質問デゴザイマス、如何ニモ御尤モデア
  ハ、此政府ノ豫算ニ求メマシタ二百四十萬圓ト申シマスルモノハ、中央卸賣
  市場ノ中デ特別ノ施設ヲ要スルモノガアル、例ヘバ冷藏庫デアルトカ、或ハ引
  込線デアルトカ、或ハ地下室デアルトカ、自働車ノ設備ダトカ、斯樣ナ特別
  ノ施設ヲ要スルモノガゴザイマスガ、凡ソ其經費ノ三分ノ一以內位ヲ補助ス
  ルト云フ、斯ウ云フ見込デ二百四十萬圓ト云フモノヲ積算イタシマシタ譯デ
  ゴザイマス、而シテ中央卸賣市場全體ノ經費ニ付テハ、是ハ政府カラシテ低
  利資金ヲ融通シヤウト云フ考ヲ有ッテ居リマス、此全體ノ經費ハ六大都市デ
  凡ソ四五千萬圓ハ掛カルデアラウト考ヘテ居リマス、之ニ對シテハ低利資金
  ヲ融通イタシタイト云フ、斯ウ云フ考ヲ有ッテ居リマス、ソレカラ次ニ第五
  ノ御質問トシテ、第六條ニ於テ中央卸賣市場ノ開設前ニ、開設ニ際シテ若シ
  必要アリト認メル時ニハ、既設市場ノ閉鎖ヲ命ズルト云フコトガアル、之ニ
  依テ見ルト云フト、政府ノ方針ハ中央卸賣市場ヲシテ獨占セシムルト云フ方
  針ヂヤナイカ、單ニ旣設市場ノ存立ヲ認メナイト云フコトノ主義ヲ採ルデハ
  ナイカト云フ御質問ノヤウデゴザイマスガ、是ハ左樣デアリマセヌ、私ハ提
  案ノ理由ニ於テ說明ヲ申上ゲマシタ通リ、政府ノ主義トシテハ竝立主義ヲ
  採ッテ居ル、藤村男爵ヨリ唯〓理由トシテ述ベラレマシタ通リ、斯樣ナルモ
  ノハ竝立サセテ置ク方ガ宜シイノデアリマシテ、又一區域ノ一場所ニ中央卸
  賣市場ヲ設ケマシテモ、隅〓マデ行渡ルト云フコトハ、事實ニ於テ或ハ不便
  カモ知レマセヌ、其隅〓ニ於テハ又既設ノ市場ヲ補足的ニ開設スルト云フコ
  トガ必要カモ知レヌト思フテ居ルノデゴザイマスカラ、決シテ獨占主義ヲ
  採ッテ行カウト云フ趣意ハ少シモアリマセヌ、サウ云フ積リハアリマセヌ、
  唯開設前ニ於テ己ムヲ得ズ此卸賣市場ヲ開設スルニ當ッテ此市場ノ閉鎖ヲ命
  ジナクテハ、中央卸賣市場ノ開設ニ妨ゲガアルト云フヤウナ事情ノ下ニ於テ
  已ムヲ得ズ其モノニ對シテ特別ニ閉鎖ヲ命ズルト云フコトノ途ヲ開イテ置キ
  マスノデ、是ハ極メテ變態ノ場合デアリマス、原則トシテハ矢張リ竝立主義
  ヲ認メテ行ク、斯ウ云フ積リデゴザイマス、最後ノ御質問トシテ、斯樣ニ中
  央卸賣市場ヲ設ケタ所ガ、物價調節上ニ餘リ效力ハナカラウト思フト云フヤ
  ウナ御趣意デ、結局今日ヨリ廉價ニ日用食品ヲ賣捌クコトハ出來ナカラウ
  ト思フ、此邊ハ如何デアル······政府ノ考ヘル所デハ左樣デハナイノデゴザイ
  やっと、申上ゲル通リ公設市場ヲ、此ノ中央卸賣市場ヲ設ケルト申シマスルノ
  ハ、從來ノ配給機關ガ如何ニモ不備デゴザイマシテ、其爲ニ無用ナ費用ヲ要
  スルノデ、一例ヲ擧ゲテ申シマスルト、魚ノ如キモノガ······鮮魚ノ如キモノ
  ガ、鹽釜アタリカラ隅田川驛マデ、停車場マデ送リマス費用ハ一噸ノ價約七
  圓幾ラデゴザイマス、然ルニ此隅田川驛カラシテ魚市場マデ持ッテ來ル市內ノ
  運賃ハ幾ラデアルカト申シマスルト、其二倍ノ十五圓餘ニ當ッテ居ル、斯樣ナ
  次第デアッテ、消費者ノ手ニ渡ル時分ニハ鮮魚ノ價ガ非常ニ高クナッテ居ル、
  斯ウ云フ狀況ニナッテ居ル、其他鮮魚ノミナラズ靑物ナドニ至リマシテモ、
  生產者ノ手カラ消費者ノ手ニ渡ルマデニ餘程今日ハ高價ニナッテ居リマス、
  デ是ハ一ツハ唯今申上ゲマシタヤウニ、配給機關ガ不備デアル、ソレデ之
  ヲ卸賣市場ヲ設ケマスレバ其中ニハ引込線モ入レマスル、冷藏庫モ置キマス
  ルト云フヤウナコトノ設備ヲ取リマスカラ、唯〓ノヤウナ費用ハ餘程節約ス
  ルコトガ出來ヤシナイカト考ヘテ居リマス、其外又價格ノ點ニ於テモ本案ハ
  原則トシテ糶賣ノ方法ニ依テ賣ルノデゴザイマシテ、明カニ公定ノ價格ヲ以
  テ賣買スル、世間ニ明カニ知レ得ル賣價デ以テ賣買ノ方法ヲ採ッテ居リマス、
  然ル場合ニ於テハ、今日ノ如ク價額ノ決メ方ニ於テ弊害ノ生ズルヤウナコト
  モ少ナクナルノデアラウト思フ、今日ハナカナカ生產者ノ手カラシテ種々ナ
  ル機關ヲ經テ小賣屋ノ手ニ渡リ、小賣業者カラ消費者ノ手ニ渡ル間ニ於テ、餘
  程價格ニ相違ヲ來タシテ居ルノデゴザイマスガ、本案ニ依リマスレバ先ヅ以
  テ卸賣市場ニ於ケル價格ガ公表サレル次第デゴザイマスカラ、其點ニ付テモ
  公平ナル價格ヲ以テ賣買サレルコトニナリマセウ、ソレ等ノ點ニ付テモ矢張
  リ現在ヨリハ低廉ナル價格デ消費者ノ手ニ渡ルノデアラウト政府ハ考ヘテ居
  リマス、其他本案ニ付テ甚ダ不備ノ點ガアルガ、或ハ一夜作リノ案デハナイカ
  ト云フ御尋モアリマスルガ、決シテ左樣デハアリマセヌ、藤村男爵モ御承知ノ
  通リ、中央卸賣市場ハ先年來カラノ問題デアッテ、社會事業調査會ニ於キマシ
  テ、十分調査ヲシ、〓究ヲシタ結果、政府ニ建議ヲ致シマシテ、其建議ニ基イテ
  尙ホ調査ヲ重ネテ、今囘提案ヲ致シマシタノデアリマスカラ、仰セノ如キ一
  夜作リノモノデハアリマセヌ、併シ詳細ハ委員會ニ於テ御說明ヲ申上ゲマス

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• 036・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　休憩ヲ致シマス、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタ
  シマス
  午後零時一分休憇
  午後一時四十五分開議

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• 037・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　是ヨリ報〓ヲ致サセマス
  〔長書記官朗讀〕
  昨五日可決シタル議員津島源右衞門君ニ對スル弔辭ハ本日之ヲ贈レリ

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• 038・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、藤村男爵

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• 039・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　午前ノ私ノ質疑ニ對シマスル農商務大臣ノ御答辯ハ、ソ
  レソレ拜承イタシマシタ、マダ全ク諒解イタシ兼ネマスル點モゴザイマスル
  ガ、是ハ委員會ノ經過ニ徵スルコトト致シマシテ、唯一點或ハ大臣ガ私ノ質
  疑ヲ取違ヘテ御居デニナリハセヌカト云フ點ニ付テ今一應伺ヒマス、ソレハ
  私ノ質問ノ第四ノ點、私ハ此市場ノ特別ノ施設ニ對シテ、政府ガ二百四十萬
  圓ノ補助ヲ爲サル、此補助金ガ少ナ過ギルデハナイカト云フコトヲ御尋シタ
  ノデハナイノデアリマス、大臣ガ仰セニナリマシタ此六大都市ノ市場ヲ造
  ル、即チ政府カラ低利資金ヲ御貸付ニナル、此基本金タル五千萬圓、確カ大臣
  ハ五千萬圓ト仰セラレタヤウデアリマスガ、此五千萬圓位ノ金デ六大都市ニ
  市場ガ完全ニ造ラレルカドウカト云フコトヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

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• 040・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答イタシマス、六大都市ノ市場ノ開設費ヲ五
  千萬圓ト見積リマシタノハ、詳細ニ亙ッテ計算ヲ致シマシタ結果デゴザイマ
  スルガ、併ナガラ之ヲ以テ必ズシモ是ダゲデ滿足ダト申ス譯デハナイノデア
  リマス、併ナガラ最初ヨリ餘リ大キナ計畫ヲ致シマシテモ、財源其他ノ關係
  モアリマセウシ、先ヅ以テ凡ソ此位ガ適當デアラウト思ヒマシタ費用ヲ積リ
  マシタノデアリマス、先ヅ開設當初ニ於テハ是位デ宜カラウ、斯ウ當局デハ
  考ヘテ居リマス
  〔山脇玄君發言ノ許可ヲ求ム〕

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• 041・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　山脇君ハドウ云フコトデスカ

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• 042・山脇玄

  ○山脇玄君　少シ荒井農商務大臣ニ伺ッテ見タイ···

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• 043・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　通〓ガゴザイマスカラ、通〓ガ濟ミマシテカラ願
  ヒタイ、上山君

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• 044・上山滿之進

  ○上山滿之進君　私ハ簡單ニ二ツノ點ニ付テ御尋シタイト思ヒマス、此席カ
  ラ御許シヲ願ヒマス、午前藤村男爵ノ質疑ニ對スル農商務大臣ノ御答辯ノ中
  ニ此中央卸賣市場ト、之ニ類似シタ私ノ私設ノ市場トハ竝立ヲサス、又竝
  立ガ望マシイコトデアルノデアッテ、竝立スルコトヲ希望スル、唯萬已ムヲ
  得ザル場合ニ六條ニ依テ閉鎖ヲ命ズル、斯ウ云フ御答辯ガアリマシタ、此法
  案ヲ一讀イタシマシタ時ハ、私ハ寧ロソレト全ク反對ノ解釋ヲシテ居ッタノ
  デアリマス、特別ノ政府ノ保護ノ下ニ即チ補助金ヲ受ケ、更ニ低利資金ノ供
  給ヲ受ケテ經營ヲスル中央卸賣市場ナルモノガ出來タ曉ニ於テ、是ト同ジ種
  類ノ私ノ市場ガ成立ツモノトハ考ヘラレナイ、私ニハ······ソコデ中央市場ヲ
  設ケル場合ニハ、非常ナ例外ハ是ハアルカモ知レマセヌガ、先ヅソレハ別ト
  シテ置イテ、大體既設ノ市場ヲ閉鎖ヲ命ジ、之ニ賠償ヲ與ヘルモノデアル、
  斯ウ思ツタノデアル、此閉鎖ヲ命ズル權限ヲ第六條デー與ヘテアルノデアッテ、
  第六條ハ原則トシテハシナイノデアル、スルコトモアルト云フ意味デ「コト
  ヲ得」ト書イタノデナクシテ、其閉鎖ヲ命ズル權限ヲ第六條デ與ヘテ、其意
  味ニ於テ「コトヲ得」ト云フ文字デアル、斯ウ思ッタ、所ガ御說明ガ全クソレト
  違ッテ居リマスノデ、ソレデ此點ヲ第一ニ伺フノデアリマス、竝立ヲ許スト
  仰セニナリマスガ、果シテ特別ノ保護ノ下ニアル新ナル中央卸賣市場ト、何
  等ノ保護ヲ受ケナイ所ノ市場トガ、競爭シ得ルモノデナイト私ハ思フノデア
  リマスガ、ドウ云フ譯デソレハ競爭シテ竝立シ得ルノデアリマセウカ、是ガ
  第一ニ伺ヒタイ、ソレカラ萬已ムヲ得ザル場合ニ閉鎖ヲ命ズル、斯ウ云フ仰
  セデアリマスガ、ドウ云フ場合ガ萬已ムヲ得ザル場合デアルノデアリマセウ
  カ、萬已ムヲ得ザルト云フコトハ、中央卸賣市場設立者ノ方ノ側カラ萬已ム
  ヲ得ザルト云フコトヲ判斷スルコトノヤウニ伺ヒマシタ、私ノ考デハ中央卸
  賣市場ヲ設ケル方ノ人ノ立場カラ云フト、何モ閉鎖ヲ命ジテ貰ハナケレバナ
  ラヌ必要ハ考ヘラレナイ、中央卸賣市場ガ一タビ出來上ッテ、其經營宜シキ
  ヲ得サヘスレバ、是ト對立シテ居ル他ノ市場ハ必ズ潰レルノデアリマスカ
  ラ、ソコデ中央卸賣市場經營者ノ立場カラ云フト、何ノ閉鎖ヲ命ジテ貰ハナ
  ケレバナラヌ必要ガナイ、何モ賠償金マデ出シテ閉鎖シテ貰フ必要ハナイ、
  其萬已ムヲ得ザル必要ト云フノハドウ云フコトナンデアリマセウカ、私ノ
  考デハ此閉鎖ヲ命ジ及ビ之ニ賠償ヲ與ヘルト云フコトハ、中央卸賣市場經營
  者ノ方ノ側カラデナクシテ、既設ノ私ノ市場ノ經營者ノ方ノ側カラコソ必要
  ガアル、旣得權ト云フト少シ文字ガ當リマセヌケレドモ、是マデ相當ニ受ケ
  テ居ル利ヲ一朝ニシテ潰サレル譯デアリマスカラ、ソレヲ忍プコトガ出來ナ
  イ又國トシテモソレヲ度外ニ置クコトガ出來ヌ、其方カラ畢竟起ルノデア
  ラウト思フ、所ガ農商務大臣ノ午前ノ御說明ニ依リマスト、中央卸賣市場經
  營者側ノ方カラ萬已ムヲ得ザル必要ガアル時ト云フ斯ウ云フ風ニ受取レタノ
  デアリマス、サウデアリマシタナラバソレハドンナ場合デアリマセウカ伺ヒ
  タイ、尙ホ若シ農商務大臣ノ御說明ニナリマシタ通リデアリマスルナラバ、
  第六條ハ寧ロ要ラヌコトニナリハセヌノデゴザイマセヌカ、非常ナ例外ノ場
  合ニ閉鎖ヲ命ズル、殆ド想像サレナイ場合、寧ロ是ハ無クテモ宜イヤウニ思
  ハレルヽ彼レ此レノ點デ甚ダ疑ヲ起シマシタノデアリマスカラ、此點ヲ先ヅ
  御說明ヲ伺ヒタイ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

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• 045・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答イタシマス、私ガ藤村男爵ノ御質問ニ御答
  ヲシテ、既設市場ト中央卸賣市場トハ竝立主義ヲ認メテ居ルノデアル、原則
  トシテ竝立主義ヲ認メテ居ルノデアル、斯ウ申上ゲタ、別段此既設市場ノ
  竝立ヲ望マシイコトデアルトマデハ申シマセヌノデゴザリマスルガ、
  唯現在ニ於キマシテモ此東京市ノ如キハ市場ハ十箇所モアリマスル、其他ノ
  都市ニ於キマシテモ數箇所ノ市場ヲ備ヘテ居ルノデゴザリマスカラ、中央卸
  賣市場ト云フモノハ成ベク完備ノモノヲ造リマシテ、隅々ノ所ニ行キマスト、
  或ハコノ村落ト接シテ居ル所アタリニ、小サナ靑物市場ガ出來ルト云フヤウ
  ナコトハダ、矢張リ補足的ノ意味ニ於テ必要ノ場合モアラウト思ヒマスルカ
  ラ、之ヲ何モ一々閉塞ヲ命ズルヤウナ必要ハナイ、寧ロ自然ニ任シテ互ノ效
  用ヲ發揮スルヤウナコトデアルナラバ、竝立主義ヲ原則トシテハ認メル方ガ
  宜カラウ、斯ウ申上ゲタノデアリマス、此法ノ精神ハ斯クノ通リデアル、ソ
  レカヲ六條ノ閉鎖ヲ命ズルコトヲ得ト云フノハ、是ハ雙方ノ點ガアルノデス、
  併ナガラ主トシテ新卸賣市場ノ必要ノ爲ニ閉鎖ヲ命ズルコトヲ得ルヤウニ、
  主トシテハ規定シテアル、ト申シマスルノハ、中央卸賣市場ヲ開設イタシマ
  シテ、ソレニ從事スル所ノ卸賣業者、問屋業者ノ如キモノハ、從來ノ左樣ナ
  業務ヲ取扱ッテ居。ッタ人ヲ收容スルノ必要モ生ズルノデゴザイマス、中央卸
  賣市場ノ活動ヲ圖ラウト云フ爲ニハ、左樣ナ場合ニ於テハ舊市場ニ對シテ補
  償ヲシテ閉鎖ヲ命ズルト云フヤウナコトガ生ジ得ルコトト思ヒマスル、又
  方カラ申シマスレバ、左樣ニ閉鎖ヲ命ジタ結果ハ、唯一部ノ品物ニ付テハ殘
  ル、例ヘバ中央卸賣市場ニ於テハ品目ヲ列擧スル譯デゴザイマスルカラ、是
  〓ノ品目ニ付テハ同一市場ノ閉鎖ヲ命ズル方ガ中央卸賣市場ノ機能ヲ全ウ
  スルノニハ必要ト認メテ、其品物ニ付テハ閉鎖ヲ命ジマシテモ、後ニ僅ナ品
  物ガ自由ニ殘ッテ居リマス、其爲ニ中央卸賣市場ト競爭スルコトガ出來ナイ
  デ、自然ニ萎靡シテ困ルト云フヤウナコトガ起ラナイトモ限ラナイノデアリ
  マス、既設市場ノ方カラ申シマスルト、サウ云フ場合ニハ併セテソレモ補償
  ヲシテ閉鎖ヲ命ズルト云フヤウナ場合モアルト思ヒマス、其點カラ見マスレ
  バ既設市場ノ利益ノ爲ニ閉鎖ヲ命ズルト云フヤウナ場合モアラウト思ヒマ
  ス即チ補償ヲシテ閉鎖ヲ命ズル、斯ウ云フ場合モアラウト思ヒマスカラシ
  テ、雙方カラト申シテモ宜イト思ヒマスガ、主トシテハ唯〓申上ゲタヤウ
  ニ、卸賣市場開設ノ必要上、其時ニ際シテ閉鎖ヲ命ズルモノガアレバ左樣ニ
  シヤウ、斯ウ云フコトニナッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/45

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• 046・上山滿之進

  ○上山滿之進君　唯〓ノ御答辯ニ依リマシテ、閉鎖ヲ命ズルノガ原則デアル
  ト、斯ウ私承リマシタ、午前ノ御答辯ニ依リマスト、極メテ稀ナ場合ニ閉鎖
  ヲ命ズルノデ、普通ハ竝立サスト云フ風ノ意味ニ、私誤解カ知レマセヌガ了
  解イタシマシタ、ソレガ元トナッテ種々ノ疑念ガ起リマシタカラ、唯今御尋
  ネヲ致シタノデ、唯〓ノ御答辯ニ依ルト寧ロ閉鎖ヲ命ジナイ、竝立サセテ置
  ク方ガ例外デ、閉鎖ヲ命ズル方ガ原則ト申シマスカ、大部分ト申スカ、サウ
  云フ風ニ了解イタシタ、私モサウデナケレバナラヌト思フ、或者ニ閉鎖ヲ命
  ジテ、同ジ地域ニアル外ノ市場ハ閉鎖ヲ命ジナイデ、特別ノ保護ノ下ニア
  ル中央卸賣市場ノ自由ナ壓迫ノ下ニ抛ッテ置クト云フコトハ出來ナイ、又ス
  キコトデナイ、ダカラシテ矢張リ同種類ノ私設市場ガアレバ閉鎖ヲ命ジ、之
  ニ賠償ヲ與ヘルト云フコトハ當然ノ道理デアルト思フノデアリマス、サウ云
  フ風ニ了解イタシマス、此點ハ是ダケニ止メテ置キマス、今一ツ御尋ヲ致シ
  マス、中央卸賣市場ノ經營者ヲ公共〓體ニナサッタコトマデハ分リマシタガ、
  公益法人ニ之ヲ許スト云フコトハドウ云フ必要カラ起ルノデスカ、斯ノ如キ
  經營ハ、公益法人デ出來ルモノデナイヤウニ私ニハ思ハレル、申スマデモナ
  ク社團法人ニシテモ財團法人ニシテモ、公益ノ法人ハ利益ヲ目的トシナイ出
  資ヲスル人ガナケレバナラヌ、其出資タルヤ斯ノ如キ卸賣市場ノヤウナモ
  ノニナルト可ナリ大キクナケレバナラス、サウ云フ出資ガ出來ルト云フコト
  ガ、ドウシテ想像ガ出來ルノデアリマセウ、私ニハ想像ガ出來ナイ、但シ先
  年米騒動ノアッタ後デ、富豪カラ寄附金ガ澤山ニアリマシテ、其殘リ金ヲ以
  テ東京府ガ財團法人ヲ作ッタ、ソレヲシテアノ公設市場ナルモノヲ經營サシ
  テ居ッタ、斯ウ云フコトハ絕無トハ申シマセヌガ、併シ是ハ大變ナ例外ナ場
  合デ、而カモ一時ノ問題デアッテ、永久ニ經營ヲセネバナラナイ中央市場ノヤ
  ウナモノノ資金ヲ、斯ノ如キ方法ヲ以テ得ルト云フコトハ想像ガ出來ナイ、
  之ヲ許シテ置キマスト公益法人ノ名ニ隱レテ、少數者ガ私利ヲ營ム團體ガ出
  來ル虞レガアル、先達テ本議場ニ於テ湯淺倉平君カラ質問ニナッタ其中ニモ
  アリマシタ通リ、競馬會ナルモノガ公益法人デ出來テ居ッテ、ソレハ澤山儲
  ケテ種々ナ名義ヲ付ケテ出資者及ビ關係者ニ金ヲ吳レテ居ル、配當ハ公益法
  人ダカラ出來マセヌガ配當同樣ノモノ或ハ配當以上ノ利益ヲ關係者ニ受ケ
  サスト云フコトハ、過去ニ於テ旣ニアッタ、サウ云フコトヲスル目的デ此公
  益法人ヲ作ルモノガアルカモ知レマセヌ、併シ斯ル私ノ考ヲ以テ出來上ッタ
  公益法人ニ依テ經營ヲサセルト云フ中央卸賣市場ガ健全ナル發達ヲスベキ道
  理ハナイ、是等ノ意味カラ致シテ、公益法人ニ經營ヲ許スト云フコトガ私ニ
  ハ分ラナイ、ドウカ其處ヲ御說明ヲ願ヒタイ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

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• 047・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答ヲ致シマス、公益法人ニ經營ヲ許スト云フ
  コトハ如何ナル理由ニ基イタカ、是ハ午前ニモ申上ゲタヤウデゴザイマス
  ガ、元〓中央卸賣市場ノ仕事ハ公益事業ト認メテ居ルノデス、ソレ故營利會
  社ノ如キモノニハ之ヲ認メナイデ、主トシテ成ベク公共團體ガ直接ニ經營ス
  ルコトヲ希望イタシマス、併ナガラ何等カ事情ガ存シテ、地方公共團體ガ直
  接經營ガ出來マセヌ場合ニハ、公益法人即チ營利ヲ目的トシナイ所ノ法人ニ
  經營ヲサセタイ、斯ウ云フ趣意デ出來テ居ルノデゴザイマシテ、事業其モノ
  ノ性質ガ營利事業トシテ營マセルト云フコトハ、折角ノ公益ノ爲ニ設ケルト
  云フ趣旨ヲ沒却スルノ虞ガアルカラシテ、公益法人、少ナクトモ公益法人マ
  デノモノデナクチヤ認メナイ、斯ウ云フコトニ致シマシタ、而シテ民法三十
  七條ニ依ル公益法人ガ左樣ナ名前ノ下ニ隱レテ、何カ御例示ニナリマシタヤ
  ウナ私利ヲ營ムト云フヤウナコトガアレバ、是ハ無論十分ニ取締ラナクチヤ
  ナラヌノデゴザイマシテ、左樣ナコトハ取締ノ上ニ於テ十分注意ヲシテ、公
  益法人ハ何處マデモ公益法人タル範圍ヲ脫セシメナイヤウニ致ス積リデゴザ
  イマス、是ダケノコトヲ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/47

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• 048・上山滿之進

  ○上山滿之進君　農商務大臣ノ御希望ハ別ト致シマシテ、私ノ伺ッタノハ)
  斯ノ如キ公益法人ガドウシテ出來ルト御考ニナリマスカト云フコトヲ伺ッタ、
  多額ノ資金ヲ醵出シテ公益ノ爲ニ供スル、斯ウ云フモノガドウシテ出來ルト
  御考ヘニナリマスカト云フコトヲ伺ックノデ、若シ出來ルナラバソレニ依テ
  關係者ガ相當ナ利益ヲ少ナクトモ出資者ニ對シテ相當ナ配當ト同樣ナ金ヲ
  出スト云フコトガナケレバナカナカ出來ナイ、ソレハ或ル狭イ範圍ニ於テ、
  又特別ニ關係ノアル場所ニ於テ、公益的ノ金ヲ募ッテ此財團ナリ社團ナリヲ
  作り、極ク限ラレタモノ又緣故ノ深イ仕事ヲシテ行クト云フコトニ
  ハ、斯ウ云フ法人ハ澤山ニ出來テ居ルノデアリマス、ソレト是トハ大變違
  フ、例ヘバ東京市、東京市ノ魚ノ供給ト云フコトニ付テ中央卸賣市場ヲ造ル
  ノニ、之ニ向テ多額ノ金ヲ出資シテ、何等ソレニ依テ利益ヲ求メナイト云フ
  ヤウナ人ガアラウトモ考ヘラレヌ、ドウシテサウ云フ公益法人ガ出來ルト御
  考ヘニナリマスカト云フコトヲ伺ッタノデアリマス、其點ニ付テハ御答辯ハ
  ナイヤウデアリマス、若シ私ガ諒解シ得ルヤウナ御答辯ガゴザイマスナラバ
  伺ヒタイ、私ハイッソノコト公益法人ハ止メテ御置キニナッテ、公共團體ガ
  自カラ經營シ得ルヤウナ時ニ至ルマデ御待チニナル方ガ最モ安全デハナイカ
  ト、斯ウ云フ風ニ思フノデアリマス、サウ云フ意見ヲ持ッテ居ル故ニ唯今ノ
  ヤウナ質問ヲ致シタノデアリマス、尙ホ何カ御答ガゴザイマスレバ大變仕合
  デゴザイマス
  〔政府委員鶴見左吉雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/48

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• 049・鶴見左吉雄

  ○政府委員(鶴見左吉雄君)　唯〓ノ御質問ニ御答ヲ申上ゲマスルガ、成程
  御質問ノ通リニ、公益法人ガ市場ヲ目的ニ致シマシテ設立ヲスルト云フコト
  ハチヨット考ヘマスルト甚ダ困難ナヤウニ思ハレルノデアリマスルケレド
  モ、矢張リ初メハ相當ノ寄附ナリ、或ハ出資ニ依リマシテ、民法三十四條ニ
  依リマスル所ノ法人ヲ作リマシテ、ソレガ國ノ低利ノ資金等ヲ借リマシテ、
  相當ノ設備ノ下ニ市場ヲ經營シテ行クト云フコトハ出來ナイコトデハナカラ
  カト信ズルノデアリマス、現ニ御承知デモゴザイマセウガ、東京ニ於キマシテ
  モ市場協會ト云フヤウナ一ツノ財〓法人ガ出來テ居リマシテ、ソレニ依テ現
  在東京ノ公設市場ガ經營サレテ居ルノデアリマス、監督等ノコトニ付キマシ
  テハ十分ナ考慮ヲ拂ハナクチヤナラヌノデアリマスケレドモ、是ハ相當ニ方
  法ヲ講ジマシタナラバ、出來ナイコトデハナイト信ジテ居ルノデアリマス
  大體左樣ニ御承知ヲ願ヒタウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/49

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• 050・上山滿之進

  ○上山滿之進君　モウ澤山申上ゲルコトハアリマセヌガ、唯今政府委員ノ御
  述ベニナッタコトハ先刻私ガ申シテ居ルコトデアリマス、東京ノ財團法人
  ハドウシテ出來タカト云フコトハ御承知デアラウト思ヒマス、アレハ元〓米
  騷動ノ後デ、世ノ中ノ人氣ガ大變惡クナッテ、ソコデ富豪カラ金ガ醵出サレタ
  殘リノ金ガ東京府ニアッタ、ソレヲ東京府知事ガ廻シテ財團法人ガ出來上ッタ
  〓記憶シテ居ル、デ斯ノ如キ騷ガアッタ時ハ種々ナ事情カラシテ意外
  ニ澤山ナ金ガ集ルモノデアリマス、日頃サウ云フコトハ所期サレナイ、又論
  ヨリ證據、其金ヲ基礎ニシテ出來タ財團法人ノ經營ニ係ル東京府公設市場ナ
  ルモノハ、初メノ勢ハ全クナクナッテ、非常ナ經營困難ニ陷ッタト云フコト
  ハ、農商務省デモ能ク御承知デアラウト思ヒマス、若シモ政府ノ御考ニナル
  ヤウニ、富豪ナルモノガ喜ンデ幾ラデモ寄附金ヲスルモノデアッタナラバ、
  何ヨリ此差當ッテ困ッテ居ル東京府公設市場ノ經營ヲ緩和スルヤウナ寄附金ガ
  何處カラカ出サウナモノヂヤナイカ、ソレガ出ナイ、米騒動デモアッタラ出ル
  カモ知レマセヌガ、出ナイ、ソレガ世ノ中ノ經濟狀態デアル、此經濟狀態ノ
  中ニ立ッテ御希望ハサルコトナガラ、唯御希望ダケデハイカナイ、實行ノ見
  込ノアルモノデナケレバナラヌ、私ニハ實行ノ見込ガ誠ニ少ナイ······絕無ト
  ハ申シマセヌガ誠ニ少ナイ、ソレハ意見ノ相違ニナリマスカラ、唯、唯今ダ
  ケノ御話ヲ承レバソレデ宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/50

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• 051・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　鈴木摠兵衛君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/51

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• 052・鈴木そう兵衞

  ○鈴木摠兵衞君　簡單デゴザイマスカラ自席ヨリ質問イタシテ宜シウゴザイ
  マスカ······農商務大臣ニ質問イタシマスガ、此中央卸賣市場ノ法案ニ付キマ
  シテ大體ニ付テ自分ノ了解シ兼ネル點ガゴザイマス、如何トナレバ從來ノ當
  業者ハ、營業稅所得稅其他各府縣市等ノ附加稅モ負擔シテ今日業務ヲヤッテ
  居ル、シテ見レバ無論高クナルコトハ當リ前ノコトデアル、然ルニ一方政府ノ
  援助ヲ被ル、國庫ノ優待スル所ノ市場ト云フモノヲ拵ヘルト云フコトハ、自
  然民業ノ壓迫ニナリハシナイカト云フノガ、是ガ一ツ、ソレカラ第二ニハ從
  來ノ當業者ニアッテハ營業稅所得稅ノ收入ガアリマス、之ヲバ此制度ヲ設ケ
  マスト、自然當業者ガ(聽取シ難シ)這入ルヤウニナルト一時臨時的ニ出ス、
  此補償金ハ別トシマシテ、營業稅所得稅ニ於テ國庫ノ收入ガ減ズルト云フ
  コトハ、モウ眼前分ッテ居ルガ、此補塡ノコトハ如何ナサレルト云フ御考デ
  アリマスカ、其二點ヲ伺ヒタイ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/52

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• 053・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答ヲ致シマス、鈴木君ノ御質問ノ通リ斯樣
  ナ國庫ノ援助ノ下ニ中央卸賣市場ト云フモノガ出來マスレバ、從來同種ノ業
  務ヲ營ンデ居ッタモノハ多少ノ競爭者ヲ現シタ譯デアリマスカラ、其爲メニ
  壓迫ヲ被ルト云フコトハ是ハ其通リデアラウト思フノデアリマス、併ナガラ
  是ハドウモ已ムヲ得ナイコトデハナカラウカ、即チ今日ニ於テ舊來ノ市場ガ
  完全デアリマシテ、何等差支ガナケレバ斯樣ナモノハ作ラナクテモ宜シイ
  ノデゴザイマス、併ナガラ前申上ゲマシタ通リ現在ニ於ケル配給機關ノ狀態
  ガ如何ニモ不備デアッテ、其爲ニ一般消費者ガ非常ニ不便ヲ被ル、故ニ政府
  ハ相當ノ援助ノ下ニ完全ナ配給機關ヲ作ッテ、一般消費者ノ幸福ヲ增シ、生
  活ノ安全ヲ圖ルヤウニシタイト云フ趣意デ、是ガ出來マスノデゴザイマス、
  其爲ニハ多少從來ノ同業類似ノモノガ迷惑ヲ被ルト云フコトハ是ハ巳ムヲ得
  ナイコトヂヤナカラウカ、總テノ事業ニ付テモ左樣デアラウト思フ、例ヘバ電
  車ガ出來マスレバ今マデ車ノ營業ヲシテ居ッタモノハ、ソレダケ利害ノ關係ガ
  影響ヲ受ケル、斯ウ云フヤウナ總テノ便利ナ改良ノモノガ出來マスレバ、從
  來ノ不便ナルモノハソレダケ影響ヲ受ケルト云フコトハ、是ハドウモ已ムヲ
  得ナイヤウニ私ハ考ヘテ居リマス、併ナガラ其點ニ付テモ、政府ハ閉鎖ヲ命
  ズルヤウナコトガアリマスレバ、其市場竝ニ其市場內ニ於テ卸賣業ヲ營ンデ
  居ッタモノニ對シテハ補償ヲスルコトダケニナッテ居リマス、併シ是ハ閉鎖ヲ
  命ジル場合ダケノコトデアリマス、全部ノ營業者ニ對シテ其爲ニ不便ヲ被
  ルカラ、ドウモ斯樣ナ改良ノ必要ナ機關デモソレヲ作ルコトガ出來ヌト云フ
  ヤウニ致シマスト云フト、總テ改善シテ行クコトハ困難ト云フコトニナリハ
  シナイカ知ラヌト思ヒマス、ソレカラ成程營業稅其他ニ於テ多少ノ減額ハ見
  ルデアラウト思ヒマスガ、是ハ已ムヲ得ナイコトデアリマシテ、大シタ減額
  ヲ見ルコトデモナカラウト私ハ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/53

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• 054・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　山脇玄君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/54

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• 055・山脇玄

  ○山脇玄君　私モ極、簡單ナ質問デゴザイマスカラ、此席デ述ベテ宜シウゴ
  ザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/55

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• 056・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/56

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• 057・山脇玄

  ○山脇玄君　本案ヲ私サウ深ク〓究シタノデハアリマセヌガ、午前ノ藤村男
  質.唯今ノ上山君ノ御質問ニ依テ益〓私ハ疑ヲ深ウシマシタカラ一言農商務
  大臣ニ伺ッテ置キタイノデゴザイマス、私ハ農商務大臣ト物價調節ニ付テハ
  同ジ意見ヲ持ッテ居ルノデス、物價調節ノ機關トシテノ手近ナ屈强ナ機關ハ
  此市場デアル、幸ヒ東京府、東京市ハ公設市場ヲ設ケテ居ルト云フコトハ
  非常ニ我〓共喜バシイコトデアルト思ウテ居ル、所ガ開設以來數年ニナッテ
  段々改良シテ行ッタト思ッテ居タ所ガ改良ハシナイ、一向進步發達シテ居ナ
  イ、不思議デ堪ラヌ、斯ウ云フ結構ナ機關デアリナガラ、ソレハ品物ニ於テモ
  價格ニ於テモ一向進步發達ヲシナイ、誠ニ遺憾ナコトデアルカラ、第一ニ農商
  務大臣ハ此今設ケテアル公設市場ト云フモノハ、斯ウ云フ有樣デウツチヤッ
  テ置イテ宜イカ、又是ハ是非改良シナケレバナラヌト思フカ、其第一御見込
  ヲ伺テ見タイト思ヒマス、ソレカラ此公設市場、現在アル所ノ公設市場ト、今
  度此法案ニ依ッテ出來ル所ノ卸賣市場トノ關係ハドウナッテ居ルカト云フコト
  ガ、ドウモ私共此法案ヲ一讀シタ所デ一向分ラナイ、午前藤村男爵ノ言ハル
  ルヤウニ、此法案ハ實ニ茫漠タルモノデ、其內容ヲ詳シク見ルト、罰則勅令
  命令デ殆ド滿サレテ居ッテ、內容ノ規定ハ甚ダ少イ、ドウモ之ヲ一讀シタ所
  デ雲ヲ攫ムヤウナモノデ一向要領ヲ得ナイ、ソレデ私ハ一番御尋シタイノハ
  卸賣市場ト現行シテ居ル所ノ公設市場ハドウ云フ關係デアルカ、我〓ノ希望
  ヲ申上ゲルト、モウ少シ東京市ノヤウナ大キナ町ニ市場ヲ設ケル時ハ中央
  ノ卸賣市場ヲ設ケナケレバナラヌ、此中央ノ卸賣市場ガ無ケレバ、即チ車ノ
  兩輪ノ一ヲ缺クト云フヤウナ姿デアル、ドウシテモ是ハ公設市場ヲ設ケル
  時ハ中央ノ卸賣市場ト云フモノガ無ケレバナラヌモノト考ヘテ居ッタ、ケレ
  ドモソレガ其時分御設ケガナクシテ今日ニ至ッテ遲蒔ナガラ設ケラルヽノハ
  惡イト私共ハ思ハヌケレドモ、其公設市場トノ關係ガ此法律デハ一向明瞭デ
  ナイ、ドウ云フ關係デアルカ、我〓共ノ希望ヲ申上ゲルト、此中央市場デ需
  要品ヲ集メテソレカラ自動車位デ各地ニ在ル所ノ市場ニ運ブト云フコトニ、
  ドウシテモナラナケレバナラヌト思フ、ケレドモドウモ其關係ガ一向私ニハ
  見エナイ、或ハ規定シテアルカモ知レマセヌガ、ドウモ私共一讀シタ所デ一
  向分ラナイ、其點ヲ一應伺ヒタイト思ヒマス、今一ツ上山君ノ御質問ニ付テ疑
  ノ起ッタノハ、第六條ノ解釋デアリマス、第六條ノ解釋ハ藤村男爵ニ御答ニナ
  ッタヤウニ併立主義デナケレバナラヌト思ヒマス、ドウデアリマセウカ、上山
  君ニ御答ニナッタヤウニ是マデノ問屋ニ閉鎖ヲ命ジテ賠償スルト云フコトハ、
  大變ナ騷ガ起ルト思フ、騷ドコロデハナイ、コンナコトヲシテ、公共〓體ノ設
  ケタ卸賣市場ガ、是マデノ問屋ノ用ヲナスヤ否ヤ、甚ダ疑ハシイ、公共團體
  ハドウシテモ、ソレト同樣ナ働ガ出來マイト思フ、ソウナレバ併立主義デハナ
  イコトニナル、此卸賣市場ガ出來テ、是マデノ問屋ニ閉鎖ヲ命ズルコトニナ
  レバ、現在ヨリモ却ッテ配給機關ハ不備トナリハスマイカト、私ハ思フガ、
  農商務大臣ハ如何デアリマセウカ、私ハ藤村男爵ニ御答ニナッタ併立主義ト
  云フ方ガ相當デハナイカト思ヒマス、モウ一應ソレニ付テ伺ヒマス
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/57

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• 058・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答イタシマス、現在ノ公設市場ニ付テハ、改
  良ヲ要スベキ點ガ多々アルト思ヒマス、是ハ社會事業調査會ニ於キマシテ
  モ、中央卸賣市場ノ建設ヲ建議スルト共ニ、現在ノ公設市場ニ關スル改善ノ
  方針モ立テヽ建議ヲ致シテ居リマス、是モ內務省ノ所管デアリマスカラ、唯
  今ソレゾレ改善ニ對シテ手ヲ盡シテ居ルコトヽ存ジテ居リマス、ソレカラ今
  囘ノ中央卸賣市場ト公設市場トノ關係、是ハ別段ニ法文ノ中ニ規定シテアリ
  マセヌ、併ナガラ是ハ先刻、案ノ御說明ヲ申上ゲタ時ニ述ベマシタ通リ、ド
  ウシテモ十分密接ナ關係ヲ取ル必要ガアラウト思ヒマス、今日ノ公設市場
  ハ中央卸賣市場ガアリマセヌ爲ニ、其販賣スル所ノ品物ハ、矢張リ各問屋
  若クハ公設市場ヲ預ッテ居ル者カラ勝手勝手ニ仕入レテ賣ルト云フヤウナコ
  トニナッテ居リマスガ、此卸賣市場ガ出來マスレバ、先ヅ主トシテハ卸賣市
  場ヘ來テ仕人レテ、サウシテ公設市場ヘ持ッテ行ッテ、一般消費者ニ賣渡ス、
  斯ウ云フヤウナ聯絡ガ取レテ行キマシテ、此間ガ非常ニ良クナルダラウ、此聯
  た目
  絡ハ是非付ケテ行カナケレバナラヌト思ヒマス、ソレカラ第三ノ竝立主義ト
  云フコトハ是ハ私午前ニ答辯ヲ申上ゲタ通リニ上山君ノ御質問ニ對シテ私ハ
  竝立主義ハ認メナイト云フコトハ決シテ申シマセヌ、矢張リ午前ト同様ニ必
  要ノアル場合ニハ補償ヲ拂ッテ閉鎖ヲ命ズルコトガアル、併シ原則トシテハ
  竝立主義ヲ認メテ居ルト云フコトヲ申上ゲタノデアリマスガ、上山君ガ自分
  ニ於テ農商務大臣ノ答ハ斯樣デアルト云フヤウニ御解釋ニナッタヤウデアリ
  マスガ、私ハ午前ノ答ト更ニ異ッタ答辯ヲ致シタ考デハナイノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/58

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• 059・山脇玄

  ○山脇玄君　今一應伺ヒタイ、成ル程、旣設公設市場ト卸賣市場トノ關係ハ
  唯〓ノ御說明デ分リマシタガ、モウ一步進メテ此法案ハ此卸賣市場ガ各現行
  ノ市場ニ物品ヲ運ブヤウニ、公設市場カラ買ヒニ行クノデナクシテ、卸賣市
  場カラシテ其品物ヲ分配シナケレバナラヌ制度ニシテ貰フト、私共大層便利
  ト思ヒマスガ、ソコマデ御進メニナラヌノハ、如何ナ理由デゴザイマセウカ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/59

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• 060・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　卸賣市場デ賣捌キマスモノハ、主トシテ小賣人
  ヲ目標トシテ居リマス、ソレカラ小賣人以外ニ於キマシテハ、旅館デアル
  トカ、料理屋デアルトカ云フ大量ノ仕入レヲスルモノモ、直接ニ卸賣市場カ
  ラ買取ルコトガ出來ル、斯ウ云フ積リデアリマス、ソコデ小賣人ノ中ニハ
  小賣人ヲ相手ニ致シマス、其小賣人ノ中ニハ公設市場モアラウト思ヒマ
  ス、ソレカラ一般公設市場以外ノ小賣人モアルノデゴザイマス、ソレデアリ
  マスカラシテ、之ヲ單ニ公設市場ニ限ッテ賣渡スト云フコトニスルノハ餘程
  公設市場外ノ小賣人ニ對シテ不公平ニナリマスノデアリマシテ、又其必要モ
  ナイノデアリマスカラ、此法案ニ於テハ時ニ公設市場ニ優先權ヲ與ヘルヤウ
  ナコトヲ致サナイ積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/60

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• 061・山脇玄

  ○山脇玄君　モウ一應シツコイヤウデアリマスガ、唯今私ノ申シマシタノハ
  公設市場へ······中央へ集メタモノヲ公設市場ヘ敏速分配ヲシヤウト云フ趣意
  モ此法律ニ規定ヲシテ貰ヒタイ、何モ公設市場ヘ分配シタト云フテ、外ノ小
  賣商人ニ卸賣ヲシテハナラナイト云フ趣意デハナイノデアリマス、公設市場
  ガ設ケテアルカラ、其方ヘハ中央カラ迅速ニ公設市場へ運ブト云フ規定ヲ法
  律デ揭ゲタ方ガ宜シクハアルマイカ、併シソレガ爲ニ公設市場外ノ小商人ナ
  ドニ賣渡スコトヲ許サナイト云フコトデハナイ、其點ヲ今一應伺ヒタイ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/61

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• 062・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御希望ノ通リニ實際ハ運ンデ行クコトガ出來ル
  ト思フ、何レ是ガ成立チマスレバ、公設市場トノ間ニ十分聯絡ヲ執ッテ、ド
  ンドン公設市塲トノ關係ヲ付ケテ行キタイ、斯ウ云フ積リデ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/62

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• 063・上山滿之進

  ○上山滿之進君　唯今農商務大臣ノ御言葉ノ中ニ、私ノ名前ヲ御引キニナリ
  マシテゴザイマスカラ、此點ニ付テチヨット申述ベテ、重ネテ今一點ダケ伺
  ハナキヤナラヌコトニナッタ、公私竝立ノ問題ニ付テノ農商務大臣ノ御答辯
  ハ午前ト午後トハ私ニハ全ク違ッテ居ルヤウニ聞エタ、是ハ違ハヌト仰セ
  ニナルノデ······ソレヲ爭ハウトハ申シマセヌガ、何ダカ私ガ言ヒ懸リデモ拵
  ヘテ農商務大臣ガ全ク說ヲ御變へニナッタト、無理遣リニ押付ケデモスルヤ
  ウナ意味デ今御答辯ニナリマシタガ、甚ダ遺憾ニ思ヒマス、一々是ハ項目ヲ
  擧ゲテ申シマスル必要ハナイ、滿場ノ諸君ガ御聽キニナッテ居リマシテ、又
  速記ニモ載リマスンデスカラ、果シテ違ッテ居ッタカ居ナイカ後デ分カル、ソ
  レハソレトシテ、ソレニ付テ伺ハナキヤナラヌハ、農商務大臣ノ仰セニナル
  ヤウナ唯〓······午前デナク唯〓仰セニナルヤウナ竝立ガ原則デアル、例外ト
  シテ閉鎖ヲ命ズルンダト云フコトデアルト、伺ハナキヤナラヌノデアリマス
  ルガ、早速是ハ六大都市ニ行フト仰セニナル、サウシテ此卸賣市場ニ······(聽
  取シ難シ)ソコデ伺ヒマスガ、六大都ニ於テ······此六大都市ニ中央卸賣市場
  ガ設ケラレル曉ニ、閉鎖ヲ命ゼラレル御積リガアリマスカ如何デアリマスカ、
  ソレヲ伺ヒタイ、或ハ斯ウ云フ御答辯ガアルカモ知レマセヌ、ソレハマダ經營
  者ノ意見ヲ聞カナケレバ何トモ決メラレナイ、斯ウ仰セニナルカモ知レマセ
  ヌガ、サウ云フ御答辯ナラ伺ヒタクナイ、經營者ノ希望ニシテ來ルノハ當リ
  前デアリマス、多分希望シテ來ルダラウ、サウスルト是ハ矢張リ全部閉鎖
  ヲ命ゼラレルモノト思フ、ソコハ如何デアリマスカ、伺ヒタイ、サウデアル
  トスレバ原則トカ例外トカ云フ爭ハ、ソレデ無クナルノデ、原則ト云ッテモ
  例外ト云ッテモ、矢張リ少ナクトモ六大都市ニ於ケル魚市場ハ全部閉鎖ヲ命
  ズルンダ、斯ウ云フコトニナル、私ハソレヲ伺ヒタイ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/63

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• 064・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答ヲ致シマス、是ハ上山君ノ唯今仰ッシヤッタ
  通リニ、是ガ成立シマシテ實際經營者ノ意見ヲ承ッテ、其時其時ニ依テ適當
  ニ決メテ行クヨリ外仕方ナイト思ヒマス、唯今カラシテ六大都市ノ魚市場ハ
  皆閉鎻ヲ命ズルト云フヤウナコトハ分カル譯ガナイノデ、唯〓御答申上ゲタ通
  リ必要ガアル場合ニ限ッテ、閉鎖ヲ命ズルノデゴザイマスルカラ、ソレデサ
  ウ云フ必要ガナケレバ閉鎖ヲ命ゼヌデモ何等差支ハナイノデ、是ハ其時ノ事
  情ニ應ジテ決メルヨリ外ナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/64

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• 065・上山滿之進

  ○上山滿之進君　サウ云フ唯形式的ノ御答辯デハ分ラナイ、サウ云フ點マデ
  計畫ナクシテ、斯ノ如キ重要ナ法律案ヲ御出シニナッタ御眞意ガ、私ニハ了
  解出來ナクナル、サウ云フ問題ハソレハ愈〓ノ場合ニ如何ニ變化スルト云フ
  コトハ、是ハ世ノ中ニ幾ラデモアル、ケレドモ豫メ相當ニ計畫ガナケリヤナ
  ラヌガ、其計畫ノ中ニ閉鎻ヲ命ズルカ命ゼヌカト云フコトハ重要ナ問題、是
  ガ爲ニ多額ノ資金ガ要ル、ソレデハ何ニモ考ヘナイデ、先ヅ設立者ガ言ッ
  テ來タナラ緩〓ト考ヘヤウ、斯ウ云フノデアッテハ如何ニモ此法案ニ對スル
  御深切振リガ分ラヌ、私ハ事實ハサウデナイ、大體御計畫ガアルト思フカラ
  伺ヒタイ、併シ誠ニ言ヒニクイト云フ仰セニナレバ仕方ナイ、ソレナラバ別
  ノ方面カラ伺ッテ宜イノデゴザイマスガ、此閉鎖ヲ命ズルニハ多額ノ資金ガ
  要ル、之ニ對シテ低利資金ヲ供給セラレルコトデアルト思ヒマス、低利資金
  ノ供給ハ此卸賣市場ノ爲ニ供給スル低利資金ハドノ位ノ御計畫ニナッテ居ル
  カ、是ハ計畫ガナイトハ言ヘナイ、金ノ問題デアル、金ガナケレバヤレヌ、
  金ガナケレバ融通ガ出來ナイ、是ハ議論ヲ許サナイ、幾ラ低利資金ヲ融通ス
  ル御計畫ニナッテ居リマスカ、其方面カラドウゾ深切ナル御答ヲ得タイ、形
  式ダケノ御答ハ此場合ハ濟ムカ知レヌガ、天下ノ人民ガ許サナイ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/65

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• 066・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答イタシマス、先刻申上ゲタヤウデアリマ
  ス凡ソ六大都市ニ於テ此市場建設ノ爲ニ五千萬圓近クノ資金ヲ要スルト認
  メテ居ルノデアリマス、ソレヲ標準トシテ低利資金ヲ融通シヤウト、斯ウ云
  フ考デゴザリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/66

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• 067・上山滿之進

  ○上山滿之進君　私ノ伺ッタコトヲ御答ヘニナラヌ、建設ノ爲ニ五千萬圓····
  私ハソンナコトハ伺ハナイ、市場閉鎻ノ爲ニドレダケノ低利資金ヲ御用意ニ
  ナッタカト云フコトヲ伺ッタノデ、ソレヲ正面カラ御答ヲ願ヒマス
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/67

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• 068・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　市場閉鎖ノ爲ノ補償金デスカ、ソレハ低利資金
  ヲ見積ッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/68

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• 069・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　唯〓日程ニ上ボッテ居リマスル中央卸賣市場法案ニ付
  0
  キマシテハ、極メテ重要ナル案件デアリマスルガ故ニ、此特別委員ノ數ヲ十五
  名ニセラレムコトノ動議ヲ提出イタシマス、滿場諸君ノ御賛成ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/69

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• 070・池田政時

  ○子爵池田政時君　賛成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/70

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• 071・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/71

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• 072・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
  ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
  〔小林書記官朗讀〕
  中央卸賣市場法案特別委員
  伯爵吉井幸藏君子爵松平直平君子爵野村益三君
  子爵戶澤正己君子爵大浦兼一君上山滿之進君
  若林資藏君男爵坪井九八郞君男爵赤松範一君
  藤田四郞君高橋琢也君伊澤多喜男君
  大谷嘉兵衛君片岡直輝君平尾喜三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/72

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• 073・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　日程第四、產業組合中央金庫法案、衆議院提出、
  第一讀會、通〓順ニ依リマシテ質疑ヲ許シマス、藤村男爵
  產業組合中央金庫法案
  右本院提出案及送付候也
  大正十二年三月三日
  衆議院議長粕谷義三
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  產業組合中央金庫法案
  產業組合中央金庫法
  第一章總則
  第一條產業組合中央金庫ハ法人トシ其ノ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
  產業組合中央金庫ノ組織ハ有限責任トス
  第二條產業組合中央金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ從タル事務所ヲ設置ス
  ルコトヲ得
  主務大臣ニ於テ從タル事務所ヲ必要ナリトスルトキハ產業組合中央金庫
  ニ命シテ之ヲ設置セシムルコトヲ得
  れたるが
  產業組合聯合會ハ產業組合中央金庫ノ業務ヲ代理スルコトヲ得
  第三條產業組合中央金庫ノ存立期間ハ設立許可ノ日ヨリ五十箇年トス但
  シ政府ノ認可ヲ經テ存立期間ヲ延長スルコトヲ得
  第四條產業組合中央金庫ノ資本金ハ三千萬圓トシ之ヲ三十萬口ニ分チ一
  口ノ金額ヲ百圓トス
  產業組合中央金庫ハ資本金全額ノ拂込前ト雖出資者總會ノ決議ニ依リ政
  府ノ認可ヲ經テ資本金ヲ增加スルコトヲ得
  第五條政府、產業組合聯合會又ハ產業組合ノ外產業組合中央金庫ノ出資
  者タルコトヲ得ス
  產業組合聯合會及產業組合ノ有スヘキ出資口數ハ二百口ヲ超ユルコトヲ
  得ス
  第六條政府ハ千五百萬圓ヲ限リ產業組合中央金庫ニ出資スヘシ政府ハ其
  ノ出資額ニ對シ設立當初ニ於テ五百萬圓ヲ拂込ミ爾後每年五百萬圓宛拂
  込ムモノトス政府以外ノ出資者ハ其ノ出資ニ對シ設立當初ニ於テ出資額
  ノ五分ノ一ヲ拂込ミ爾後十箇年間ニ其ノ殘餘ヲ拂込ムモノトス
  政府ノ產業組合中央金庫ニ對シテ所有スヘキ持分ニ關シ必要ナル事項ハ
  命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第七條產業組合法中產業組合ニ關スル規定ハ本法ニ別段ノ規定アルモノ
  ヲ除クノ外產業組合中央金庫ニ付之ヲ準用ス
  第八條產業組合中央金庫ニハ所得稅及營業稅ヲ課セス
  登錄稅法及印紙稅法中產業組合聯合會ニ關スル規定ハ產業組合中央金庫
  ニ付之ヲ準用ス
  第二章役員
  第九條產業組合中央金庫ニ理事長、副理事長各一人理事、監事各三人以
  上ヲ置ク
  第十條理事長ハ產業組合中央金庫ヲ代表シテ其ノ事務ヲ總理ス
  副理事長ハ理事長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理シ理事長缺員ノトキ其ノ
  職務ヲ行フ
  副理事長及理事ハ理事長ヲ補助シ定款ノ定ムル所ニ從ヒ產業組合中央金
  庫ノ業務ヲ掌理ス
  監事ハ產業組合中央金庫ノ業務ヲ監査ス
  そう
  第十一條理事長、副理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ任命ス
  理事長、副理事長及理事ノ任期ハ五箇年監事ノ任期ハ三箇年トス但シ其
  ノ任期滿限ノ後再任ヲ命スルコトヲ得
  第十二條產業組合中央金庫ニ評議員二十名以內ヲ置キ主務大臣之ヲ任命
  ス但シ其ノ半數以上ハ產業組合關係者中ヨリ之ヲ選任スルコトヲ要ス
  評議員ハ名譽職トシ定款ノ定ムル所ニ依リ業務經營ニ關スル重要ナル事
  項ニ就キ理事長ノ諮問ニ應スルモノトス
  評議員ノ任期ハ三箇年トス
  第三章業務
  第十三條產業組合中央金庫ハ左ノ業務ヲ營ムモノトス
  一所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ニ對シ擔保ヲ徵セスシテ五箇
  年以內ノ定期償還貸付ヲ爲スコト
  二所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ニ對シ手形ノ割引又ハ當座預
  金貸越ヲ爲スコト
  三所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ノ爲ニ爲替業務ヲ爲スコト
  四產業組合聯合會、產業組合、公共團體其ノ他營利ヲ目的トセサル法
  人ヨリ預リ金ヲ爲スコト
  第十四條產業組合中央金庫ハ必要アリト認メタル場合ニ於テハ擔保ヲ徵
  シテ前條第一號及第二號ノ業務ヲ爲スコトヲ得
  第十五條產業組合中央金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用
  スルコトヲ得ス
  -國債又ハ公債ノ買入、大藏省預金部若ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル
  銀行ヘノ預金又ハ郵便預金ト爲スコト
  二產業組合聯合會、產業組合、公共〓體其ノ他營利ヲ目的トセサル法
  人ニ對シ短期貸付ヲ爲スコト
  第十六條無擔保ニテ借入ヲ爲シタル府縣市町村其ノ他法律ニ依リ組織セ
  ル公共團體ニ於テ元利金ノ拂込期日ヲ過キ之ヲ拂込マサルトキ又ハ期限
  前ノ償還請求ニ對シ其ノ拂込ヲ爲ササルトキハ產業組合中央金庫ハ監督
  官廳ニ其ノ處分ヲ請求スルニトヲ得
  前項ノ場合ニ於テ產業組合中央金庫ハ府縣ニ對シテハ內務大臣ニ市町村
  其ノ他法律ニ依リ組織セル公共〓體ニ對シテハ第一次監督官廳ニ其ノ請
  求ヲ爲スヘシ
  監督官廳請求ヲ受ケタルトキハ府縣市町村其ノ他法律ニ依リ組織セル公
  共團體ニ命令シテ延滯元利金ヲ拂込マシムヘシ
  第十七條產業組合中央金庫ハ本法ニ記載セサル業務ヲ營ムコトヲ得ス
  第四章產業債劵
  第十八條產業組合中央金庫ハ拂込金額ノ十倍ヲ限リ產業債劵ヲ發行スル
  コトヲ得但シ貸付金現在高割引手形現在高及其ノ所有ニ係ル有價證劵現
  在高ヲ超過スルコトヲ得ス
  產業債劵ノ發行ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  登錄稅法中社債ニ關スル規定ハ產業債劵ニ付之ヲ準用ス
  第十九條產業債劵ハ劵面金額五拾圓以上トシ無記名利札附トス但シ應募
  者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコトヲ得
  第二十條產業組合中央金庫ハ產業債劵借換ノ爲一時第十八條ノ制限ニ依
  ラス低利ノ產業債劵ヲ發行スルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ產業債劵ヲ發行シタルトキハ發行後一箇月以内ニ抽籤
  ヲ以テ其ノ發行劵面金額ニ相當スル奮產業債劵ヲ償還スヘシ
  第二十一條產業組合中央金庫ニ於テ產業債劵ヲ發行セムトスルトキハ主
  務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第二十二條產業債劵ノ消滅時效ハ元金ニ在リテハ十五箇年、利子ニ在リ
  テハ五箇年ヲ以テ完成ス
  第二十三條產業債劵ノ模造ニ關シテハ通貨及證劵模造取締法ヲ準用ス
  第五章計算
  第二十四條產業組合中央金庫ノ事業年度ハ一箇年トス
  第二十五條產業組合中央金庫ハ每事業年度ニ於テ準備金トシテ剩餘金ノ
  十分ノ一以上ヲ積立ツヘシ
  第六章監督及補助
  第二十六條主務大臣ハ產業組合中央金庫ノ業務ヲ監督ス
  本法中主務大臣トアルハ農商務大臣及大藏大臣トス
  第二十七條產業組合中央金庫ハ其ノ定款ヲ變更セムトスルトキハ主務大
  臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第二十八條產業組合中央金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非レハ剩餘金
  ノ處分ヲ爲スコトヲ得ス
  第二十九條產業組合中央金庫ハ主務大臣ノ命令ニ從ヒ其ノ業務ニ關スル
  諸般ノ狀況及計算報告書ヲ差出スヘシ
  第三十條主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ產業組合中央金庫ノ貸付又
  ハ割引ノ金額若ハ方法ヲ制限スルコトヲ得
  第三十一條產業組合中央金庫ノ貸付金利子ノ最高步合ハ每事業年度ノ初
  ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ經テ之ヲ定ムヘシ其ノ事業年度內ニ於テ之ヲ變
  更セムトスルトキ亦同シ
  第三十二條主務大臣ハ特ニ產業組合中央金庫監理官ヲ置キ產業組合中央
  金庫ノ業務ヲ監視セシム
  第三十三條產業組合中央金庫監理官ハ何時ニテモ產業組合中央金庫ノ業
  務及財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
  產業組合中央金庫監理官ハ監視上必要ナリト認ムルトキハ何時ニテモ產
  業組合中央金庫ニ命シテ業務上諸般ノ計算及狀況ヲ報告セシムルコトヲ
  得
  產業組合中央金庫監理官ハ出資者總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見
  ヲ陳述スルコトヲ得但シ議決ノ數ニ加ハルコトヲ得ス
  第三十四條產業組合中央金庫ハ創立初期ヨリ十五箇年間政府ノ出資ニ對
  シ剩餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ要セス
  第七章罰則
  第三十五條左ノ場合ニ於テハ產業組合中央金庫ノ理事長、副理事長、理
  事又ハ監事ヲ百圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
  -本法ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受クヘキ場合ニ其ノ認可ヲ受ケサルト
  キ
  二主務大臣ノ命令ニ反シタルトキ
  三第十五條ノ規定ニ反シ業務上ノ餘裕金ヲ使用シタルトキ
  四第十七條ノ規定ニ反シ本法ニ規定セサル業務ヲ營ミタルトキ
  五第十八條第一項及第二十條第二項ノ規定ニ反シタルトキ
  第三十六條非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前條ノ過
  料ニ之ヲ準用ス
  附則
  第三十七條主務大臣ハ設立委員ヲ置キ產業組合中央金庫ノ設立ニ關スル
  一切ノ事務ヲ處理セシム
  第三十八條設立委員ハ定款ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後出資者ヲ
  募集ス
  第三十九條設立委員ハ出資者ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申立書ヲ主務
  大臣ニ提出シ產業組合中央金庫設立ノ許可ヲ禀請スヘシ
  前項ノ許可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出資第一囘ノ拂込ヲ爲
  サシムルコトヲ要ス
  第四十條創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ產業組合中央
  金庫理事長ニ引渡スヘシ
  第四十一條產業組合中央金庫設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ
  定ム
  〔男爵藤村義朗君演壇ニ登ル〕

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• 074・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　極メラ簡單ニ政府ニ質問イタシマス、實ハ私ハ質問ハ總
  理大臣ニ御答辯ヲ願ヒタイト存ジテ居リマシタガ、御病氣ノ爲ニ御出席ガナ
  イト云フコトデアリマス、ドナタデモ御出席ノ國務大臣カラ御答辯ヲ願ヒマ
  ス、此產業組合中央金庫法案ハ衆議院ニ於テ床次君其他ノ政友會所屬ノ議員
  カラ提案セラレマシテ、衆議院ニ於ケル本案ノ說明ハ橫田千之助君ガ爲サレ
  タヤウニ承ハッテ居ル、所謂政友會案デアルノデアリマス、故ニ世間ニ於テ
  ハ此案ハ明年ノ總選擧ニ對スル農村ノ選擧民ノ御機嫌取リ案デアル、地方民
  ノ歡心ヲ求メル爲ノ所謂黨勢擴張案デアル、本年ノ衆議院ハ各派ヨリ爭ッテ
  農村振興ニ關スル建議案デアルトカ或ハ地租委讓ノ案デアルトカ云フヤウナ
  モノガ大分出マシテ、各派トモ爭ッテ黨利黨略ヲ圖ルニ汲々タルモノガアル、
  此案ノ如キハ平生ハ犬猿啻ナラザル政友會憲政會兩派ガ大體ニ於テハ一致シ
  テ衆議院ヲ通過セシメタノデアル、之ニ依ッテ見テモ此案ガ提出サレマシタ
  動機ニ對シテ、ソレヲ幾微ノ間ニ見ルコトガ出來ルト云フヤウナコトヲ頻ニ
  世間デハ傳ヘテ居ルノデアリマス、私ハ敢テ是等ノ言葉ヲ信ジテ、政友會諸
  君ノ御提案ニナリマシタ誠意ヲ決シテ疑フモノデハアリマセヌ、又疑ハムト
  欲スルモノデモナイノデアリマス、私ハ今日疲弊ヲ極メテ居リマス農村ノ振
  興ト云フコトニ付テハ、敢テ衆議院ノ諸君ニ讓ラナイ程ノ〓心ヲ以テ振興ヲ
  希望シテ居ルノデアリマス、唯私ハ衆議院ニ於テ此案ノ提出サレマシタル際
  ニ橫田君ガ此案ノ說明ヲナサレルニ際シテ·······其說明ノ中ノ結論ヲ拜讀シテ
  多少疑ナキ能ハズト云フヤウナ感ヲ持ッテ居ルノデアル、横田君ハ此案ノ說明
  ノ結論ニ於テ斯樣ナコトヲ仰セラレテ居ルノデアル「吾〓ハ地租委讓ヲ唱
  ヘ、而シテ又地方自治制ノ政治的參與ノ方面ニ大擴張ヲ加へ、更ニ此方面カラ
  シテ、地方民ノ經濟的ノ自治ニ向ッテ自覺ヲ促シテ居ル、斯ノ如ク地租ノ委
  讓地方行政ニ對スル參與ノ區域擴大、而シテ本案ノ提出、是等ノ三方カラ攻
  寄セテ來テ是カラ打出ス所ノモノガ、眞ニ日本ノ國體、國情、民情ニ合致シタ
  ル所ノ選擧權ノ擴張トナルト云フコトヲ今日カラ御話ヲシテ置ク、更ニ是等
  ノ法案ト云フモノハ、我黨經綸ノマダ閃ニ過ギナイ、諸君ハ冷笑サレルガ目ヲ
  刮マシテ、我黨將來ノ活動ヲ見ヨ我黨經綸ノ閃ニ過ギナイ、此閃カラ數千條
  ノ光芒ヲ發シテ、陸離トシテ國家民人ノ前途ヲ照スノモ長キ未來デハナイト
  云フコトヲ玆ニ斷言スル」斯樣ニ仰セラレテ居ルノデアリマス、私ハ思フ、
  本案ノ如キ純然タル地方經濟ニ關スル實際的問題ハ、矢張リ純然タル社會政
  策的若クハ經濟的ノ見地ノミヨリシテ立論セラレネバナラヌト私ハ考ヘルノ
  デアル、之ニ聊カニテモ政黨的氣分ヲ含マレタル論ヲ爲サレタト云フコト
  ハ、政友會ノ爲ニモ、又本案其物ノ爲ニモ、甚ダ不幸ナルコトデアッタト私
  ハ思フノデアリマス、固ヨリ案ノ內容實質ニ於テ橫田君ガ言ハレマシタ通リ
  ニ此案ノ中ニ對人信用ヲ本トシ中產階級以下ニ對スルモノデアルト云フヤウ
  ナ御精神ガ此中ニ含ンデ居リマスレバ、其趣意ハ誠ニ結構ナコトデアッテ、
  私モ此案ニ全然賛成スルコトヲ躊躇シナイ者デアリマス、併ナガラ苟モ聊ニ
  テモ黨利黨略ガ之ニ含マレテ居ルモノトスレバ、或ハ又少シデモ政黨的色彩
  ガ茲ニ染マッテ居ルヤウナモノデアルナラバ、旣ニ提案ノ動機ニ於テ私ハ聊
  カ疑ナキ能ハズデアル、兎ニ角若シ左樣ナ不純ナ動機ガ含マレテ居ルモノト
  シマスレバ私共トシテハ、此案ノ審議ニ向ッテハ愼重ノ考慮ヲ加ヘナケレバ
  ナラナイト思フノデアリマス、內容サヘ善ケレバ其動機ノ如何ノ如キハ敢テ
  問フ必要ハナイト云フヤウナコトヲ仰セラレマスカモ知レマセヌガ、ドウモ
  サウモ參ラヌト私ハ思フ、現ニ最モ顯著ナル最近ノ實例ハ此昇格案デアル、
  昇格案ハ昨年ノ議會マデハ、是ガ提案ニ際シテハ中橋前文相ノ言動ニ付テ
  我〓ハ多少ノ疑ヲ持ッテ居ッタノデアリマスノデ、大分其爲ニ此貴族院モ揉メ
  マシテ之ニ關スル建議案ガ一ツモ二ツモ出テ遂ニ其結果ハ昇格案其物ガ潰サ
  レテ仕舞ッタノミナラズ、是ガ直接ノ原因トナリマシテ高橋前內閣モ遂ニ潰
  レテ仕舞ッタヤウナ有樣デアル、昨年マデハ昇格案ノ內容實質ノ可否ノ如キ
  ハ殆ド問ハレテ居ラナカッタ、唯中橋前文相ノ言質ダケガ問題トサレテ居ッタ
  次第デアル、併ナガラ本議會ニ於テハ新内閣ニ依ッテ再ビ提案サレマシタノ
  デ、今日デハ此昇格案ノ內容實質ノ可否ト云フコトニ付テ、目下愼重審議サレ
  テ居ルト云フヤウナ有樣デアル、之ト同樣デ若シ本案ガ政治的ニ取扱ハレル
  モノデアルトシマスレバ、甚ダ面白クナイ、遣憾ノコトデアルト私ハ思フノデ
  アリマス、デ私ガ政府ニ伺ハムトスル所ハ右申上ゲタ點ニ付テ政府ハ如何ニ
  御考ヘニナッテ御出ニナルデアラウカ、萬々一此中央金庫法案ガ議會ヲ通過シ
  マシテ法律トナリマシタ際ニ於テ、萬々一是ガ政黨ノ政爭ノ具ニ供セラレル
  ト云フヤウナコトガアリマスルト、ソレコソ大變ナコトデアル、農工銀行ト云
  フガ如キモ、私共ノ聞及ンデ居リマス所ニ依リマスレバ、大分政黨ノ政爭ノ
  具ニ供セラレテ居ルト云フコトデアリマス、私ハ此案ノ前途ニ付テ其健全ナ
  ル發達ヲ望ンデ居リマスルガ爲ニ、前以テ若シ此案ニ政府ハ御同感デアレ
  バ、右申シタ點ニ付テドウ云フ御考ヲ有ッテ居ルカト云フコトヲ、政府ノ御
  方ニ御伺ヒシタイト思フノデアリマス、ソレカラ今一ツハ政府ハ本當ニ此案
  ニ御賛成デアルヤ否ヤ、此案ヲ實ニ時勢ニ適合スル所ノ必要ナル案トシテ同
  感ヲ表セラレテ居ルヤ否ヤト云フコトヲ伺ヒタイ、若シ果シテ同感ヲ表セラ
  レテ此案ヲ緊切缺クベカラザルモノナリト云フコトヲ感ジテ御出ニナルナラ
  バ、何故政府ハ政府自カラ同一目的ノ案ヲ此議會ニ御提出ニナラナカッタノ
  デアルカ、之ヲ伺ヒタイ、私ノ承知イタシマシテ居ル範圍ニ於テハ、本案ハ
  其骨子ハ產業組合中央會ニ於テ作ラレタ、サウシテ政府モ旣ニ御諒解ガアリ、
  此案ヲ政友會ガ自己ノ囊中ニ收メテ提案サレタモノデアルト云フコトデアリ
  やる、實際果シテ事實デアリマスカ、ドウカ、ソレハ承知イタシテ居リマセ
  ヌガ、兎ニ角政府トシテ此法案ノ提出ニ何故ニ御考ヘ及ビニナラナカッタカ、
  政府ハ政府自カラ此案ヲ提案スルヤウナ御意思ガナカッタノナラバ、本案ヲ餘
  リ重要視シテハ居ラレヌヤウニ思ハレルノデアリマス、如何デアリマスカ、之
  ニ付テノ御所見ヲ承リタイノデアリマス、ソレカラ內容ニ立入ッテ、モウ一
  件チヨット伺ッテ置キタイノハ、橫田君ノ提案ノ御說明ニ依リマスト云フト、
  本案ノ精神ニ付テ斯ウ云フコトヲ仰シヤッテ御出ニナル、「相互組織ノ組合ニ
  基礎ヲ置クト云フコトニナッテ居ル」、或ハ又「經濟的獨立、經濟的自治ノ觀念
  ヲ養ハナケレバナラヌ必要ガ今日最モ迫ッテ居ル」、或ハ又「地方民ノ經濟的自
  治ニ向ッテ自覺ヲ促シテ居ル」ト云フヤウニ、此法案ハ頗ル自治的ノ法案デア
  ル、相互的ノ法案デアルト云フヤウニ說明サレテ居ルノデアリマスガ、此法
  案ヲ一讀イタシマシタ所ニ依ルト、隨分政府ガ之ニ干渉ヲ加ヘラレルヤウナ
  規定ニナッテ居ル、其一例ハ本案第十一條ニ於テ「理事長、副理事長、理事及
  監事ハ主務大臣之ヲ任命ス」、或ハ十二條ニ於テモ「產業組合中央金庫ニ評議
  員二十名以內ヲ置キ主務大臣之ヲ任命ス」ト云フヤウナ、最モ重大ナル役員
  ノ任命マデモ政府デモッテ任命スルト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、近
  頃特殊銀行若クハ特殊會社ノ內容ニ付テ、色〓缺陷ガ起ッテナカナカ世間ノ
  問題ニナッテ居ル、而シテ是等會社銀行ノ重役ノ任命ハ政府ノ任命デアル、
  斯ルヤカマシキ議論ガ起ッテ、或ハ是等特殊會社、特殊銀行ノ重役ノ任命ハ
  宜シク公選ニスベシ、民選ニスベシト云フヤウナ議論ノアル際ニ、殊ニ今
  申シタヤウナ橫田君ノ提案ノ說明ガ、是ハ相互的自治的ノ基礎ニ置カレテア
  ルト云フヤウナ御說明ガアリマスルニ於テハ、斯樣ニ重役ノ任命ヲ政府ニ於
  テナサレナケレバナラヌト云フヤウナ理由ガ何處ニアリマスルカ、或ハ是
  ハ政友會ノ提案デアル、政府ニ於テハ敢テ之ヲ固執スルモノデナイト云フヤ
  ウナ御精神デアルヤ否ヤ、其點ニ付テモ農商務大臣ノ御意見ヲチヨット伺テ置
  キタイノデアリマス
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/74

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• 075・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　藤村男爵ノ御質問ニ御答ヲシマスガ、第一ノ御
  質問ノ衆議院ニ於ケル提案者ノ說明ニ付テ云々ノコトガアッタガ、其點ニ付
  テ如何ト云フヤウナ御質問デアリマシタガ、是ハ私カラ提案者ノ說明ニ付テ
  御答スルコトハ難イト思ヒマス、併シ政府ハ此案ハ衆議院ニ於テ農村振興其
  他ノ農村ニ對スル〓心ナル〓究ノ結果、此案ガ誠ニ農村ノ金融ニ付テハ極メ
  テ現時ノ狀勢ニ照シテ必要デアルモノト認メテ、各派ガ協議ヲシテ是ハ出來
  上ッタモノト見テ居リマス、私ハ此案ハサウ云フ趣意デ產業政策カラシテ出
  來テ居ルモノト見テ居リマス、次ニ此案ニ對シマシテ政府ハ如何ニ考ヘテ居
  ルカ、政府ハ本案ハ極メテ必要デアルト考ヘテ居ルノデ、政府ハ本案ニハ同
  意ヲ致シテ居リマス、然ラバ何故ニ政府ガ自ラ進ンデ本案ヲ提出シナイカ、
  斯ウ云フ御尋ネデゴザイマシタガ、如何ニモ御尤モナ御尋ネデゴザイマス、
  此中央金庫ノコトニ付キマシテハ、政府內ニ於キマシテモ、多年ノ是ハ懸案
  デアリマスル、現ニ農商務當局ナドニ於キマシテハ、此點ニ付テハ隨分取調
  ヲ進メテ居リマシタノデ、結局今日ニ於テ此產業組合ガ一萬三千以上モ出來
  テ居リマスガ、是等ノ中樞トナルベキ金融機關ガナイノデ、相互的自動的ノ
  金融機關ヲ必要トスル譯デハゴザイマスルガ、今日マデナイ、其事ニ付テ
  ハ隨分政府ノ方デモ考究ヲシ、調査ヲシテ必要ヲ認メテ居リマス、併ナガラ
  御承知ノ通リ產業方面ニ於キマシテモ、種〓ナ計畫ガアリマスノデゴザイマ
  スカラ、ツイ政府ノ方モ是マデニハ手ガ及バヌデ提出ヲ致サナカッタノデゴザ
  イマス、然ルニ幸ニ今囘衆議院方面カラシテ此案ガ出マシテ、政府モ之ニ交
  ッテ各〓意見ヲ述ベマシテ成立ツコトガ出來ルヤウニナリマシタカラ、政府ハ
  衆議院ニ於テハ本案ニハ賛成ヲ致シマシタ、ソレ故今日ニ於テ政府ハ本案ニ
  付テ全然同意ヲ表シ、又極メテ必要ノモノト認メテ居ル次第デゴザイマス、
  ソレカラ第三ノ斯樣ニ相互的自治的ノ機關ニ對シテ理事長以下ヲ悉ク官選ニ
  スルト云フコトハ如何ナルモノデアラウカ、其點ニ對シテ政府ノ意見ハドウ
  カ、是ハ衆議院ニ於テモ······衆議院ノ委員會ニ於テモ議論ガアリマシタ點デ
  アリマス、其點ニ關シマシテハ、政府ハ必ズシモ官選デナクチヤナラヌト云
  フコトニ政府ノ立場カラ固執スルコトデハナイ、其時ニモ申述ベタ次第デ結
  局考ヘテ見マスルト、普通ノ會社デアリマスレバ所謂自然人ガ株主デゴザイ
  やって、ソレカラ凡ソドノ位以上株ヲ持ッテ居ルモノカラシテ重役ヲ選擧スル、
  百株トカ、二百株以上ヲ持ッテ居ルモノカラ重役ヲ選擧スル、斯ウ云フヤウ
  ナコトニナリマスカラ、凡ソ選擧ノ目當モ付キマシテ恰好ナ人、適當ナ人ヲ
  選擧サレ得ルヤウデアリマスガ、今囘ノ中央金庫ノ加入者ト云フモノハ全國
  一萬三千餘ノ產業組合ガゴザイマス、此產業組合ガ自然人デナクシテ所謂公
  法人デアリマシテ、各株主ト申シマスルモノハ各產業組合デゴザイマス、而
  シテ其產業組合ガ口數ノ多寡ニ拘ラズ、餘計持ッテ居ルモノモ、又少ナイ口
  數ヲ持ッテ居ルモノモ皆平等ニ一票シカ持タナイ、斯ウ云フコトニナッテ居
  ル、斯クテ株主ノ中デ票數ヲ決メマセヌデ、此產業組合ガ平均一票ヅヽノ投票
  ヲ持ッテ居ル、斯ウ云フコトニナル、サウスルト法人ガ株主デアリマスカラ選
  擧イタシマスル場合ニ、果シテ圓滑ニ參リマスカドウカト云フコトノ疑ヲ持
  チマス、ソレデ或ハ產業組合ガ不幸ニシテ仲間割レヲスレバ一方ノモノハ團
  結シテ何ノ某ヲ持ッテ來ル、一方ガ〓結シテ何ノ某ヲ持ッテ來ル、斯ウ云フヤ
  ウナ感情ノ衝突デモ起シマスルト、却テ選擧ニ依ルガ爲ニ適當ナル理事長ヲ
  得ルコトガ出來ナクシテカラニ不結果ニ陷リハシナイカ、斯ウ云フ虞モアリ
  いよう
  マスルシ、其點ハ寧ロ官選ニシタ方ガ總テ弊害ガ生ジナイデ適當ナ人ヲ入レ
  得ルコトニナリハシナイカ、斯ウ考ヘテ居リマス、是ハ普通會社ト違ヒマスカ
  ラ、ソレ等ノ選擧ノ點ニ於ケル障碍ヲモ考ヘナイトイカナイト思ヒマスカ
  ラ、寧ロ是ハ官選ノ方ガ宜イノヂヤナイカ、決シテ此官選ハ官權ヲ何處マデ
  モ助長シテ入レヤウト云フ意味デハナイノデ、寧ロ選擧ヨリ此方ガ宜シイデ
  ハナイカ、斯ウ考ヘテ居ル次第デゴザイマス

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• 076・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　政府ハ此案ノ提出ニハ、政府ハ之ニ對シテ何等ノ意見ヲ
  有ッテ居ラヌト云フコトデゴザイマス、ソレナラソレデ宜シウゴザイマス
  〔矢口長右衞門君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/76

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• 077・矢口長右衞門

  ○矢口長右衞門君　衆議院ヨリ提出ニナリマシタル此產業組合中央金庫法案
  ニ付キマシテハ、唯〓藤村男爵ヨリ大體ニ關スル質問ガゴザイマシタ、私ハ玆
  ニ大體ノコトヲ避ケマシテ玆ニ自分ガ疑問トスル所ノ二三點ヲバ政府······大
  臣ニ問ヒタイト思フノデゴザイマス、此本案ガ提出サレマスルモノハ私ノ考
  ト致シマシテハ、今日ノ時期ニ於テドウデアラウカ、斯ウ云フ第一ニ私ハ疑問
  ガ起ルノデゴザイマス、申スマデモナク唯〓工業ト云ハズ產業ト云ハズ、總
  テ整理ノ時代ニ屬シテ居ル、ソレデアルカラ斯カル時ニ殊更ニ新タニ別ノ利
  益ヲ起スヨリ寧ロ是マデニアルモノヲ扶導シテ、ソレヲ助長シテ利益ヲ高メ
  ル方ガ宜カラウ、產業界ニ於テ資金ガ足ラヌトスレバ農工銀行モアリマス、又
  中央ニハ勸業銀行等ガアッテ其手ヲ經マシテ其十分ニ資金ノ供給ガ出來ルノ
  デゴザイマス、唯〓勸業或ハ農工デ以テ最モ困リマスノハ何デアルカ、一番
  資金缺乏シテ、一番資金ガ足ラナイデ、是サヘ充實イタシテ居リマスレバ思
  フヤウニナル、貸方モ、又產業組合カラモ意見ノ······十分ニ供給モ出來マス
  ノデゴザイマス、然ルニ〓新ニ之ヲ茲ニ銀行同樣ノモノヲ拵ヘルトシマスル
  ト、大イナル費用ヲ要サナケレバナラヌ、理事長モ選バナケレバナラヌ、理
  事モ選バナケレバナラヌ、從テ幾多ノ費用ト云フモノガ非常ニ其間ニ要ルノ
  デゴザイマス、之ヲ一方勸業或ハ農工ノ手ヲ經テ貸付ケマスルト云フコトニ
  ナリマスレバ、左樣ナル費用ト云フモノハ要ラズシテ、而シテ其利スル所ハ
  寧ロ即チ多イコトニナル、斯ウ私ハ考ヘマス、何ヲ苦ンデ殊更ニ此場合ニ中
  央金庫ナドヲ玆ニ拵ヘルト云フコトハ、私ハドウモ了得出來ヌノデアリマ
  ス、又本法等ニ付テ仔細ニ點檢イタシマスレバ、幾ラモ缺陷ヲ非常ニ見出ダ
  スノデゴザイマス、併ナガラモウ時間モ大分切迫イタシテ居リスマカラ私ハ
  餘リ多ク問フコトヲ止メマシテ、此中ノ二三點ヲ伺ヒマスルガ、本法ノ第二
  十六條ニ「主務大臣ハ產業組合中央金庫ノ業務ヲ監督ス」「本法中主務大臣ト
  アルハ農商務大臣及大藏大臣トス」トゴザイマス、サウ致シマスルト是ハ農
  商務ト大藏省ト兩方デ監督ヲ致ス、ソレガ私ノ疑〓トスルノデアル、何處マ
  デガ農務務省ノ區域デ何處マデデ大藏省ノ區域デアルカ其邊ノ狀況ト云フモ
  ノガ更ニ分ラナイノデ、若シ又意見ノ相違等ガ出來マシタナレバドウ云フ風
  ニナル、幸ニ總テノ意見ガ一致シマスレバ宜シイケレドモ、萬一ニモ農商務ト
  大藏省トノ間ノ意見ガ衝突ガアリマシタナラバ如何ニ之ヲ解決イタシマス
  カ、例ヘテ言ハバ一ツノ店員ガ二人ノ主人ヲ持ッテ居ルヤウナモノデ、甲ノ
  主人ノ命ヲ聞カンカ、乙ノ命ヲ背カヌケレバナラヌ、斯ウ云フコトガ事實ト
  シテ起ルダラウト思フ、ソレ等ノコトヲ考ヘテ見マスレバ、甚ダ不徹底ナル
  本法案ナリト思フヨリ外ナイノデゴザイマスルガ、是等ニ對シマシテ其區域
  ヲドンナ風ニ範圍ヲ定メル御積リデゴザイマスカ、本法ニ依リマスルト云フ
  ト、非常ニ樂ニ債劵ガ發行出來ルヤウナ風ニ出來テ居リマスル、所謂產業債
  劵トカ云フモノヲ發行スル、サウ云フ條項ニナッテ資金ノ調達ニ利セントス
  ル積リデゴザイマスカ、御承知ノ如ク勸業銀行デスラモ過日チヨット問題ニ
  ナリマシタ、巨額ノ割增金ヲ付ケマシテ辛フジテ之ヲ募債シテ居ルヤウナ狀
  況ニ於テ、果シテ能ク豫定ノ債劵等デ十分ナ資金ヲ得ラレルモノデアル
  カ、ソレ等モ本員ノ甚ダ疑〓トスル所デゴザイマス、要スルニ此案タルモノ
  ハ討究ヲスレバスルホド種々ノ缺陷ヲ見出スノデ、俗ニ申シマスルト一夜作
  リデアルト云フヤウナ感ヲドウモ起サザルヲ得ナイノデゴザイマス、右ニ對
  シテ大臣ハ、如何ナル御考ヲ持ッテ居リマスルカ、ソレニ付キマシテ御伺ヒ
  ヲ致シタイモノデゴザイマス、農商務大藏兩大臣ノ中デ御協定ノ後ドナタデ
  モ宜シウゴザイマス、御答辯ヲ願ヒマス
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/77

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• 078・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　矢口君ノ御質問ニ御答ヲ致シマスガ、第一ノ御
  質問ハ斯樣ナモノハ作ラズトモ現在勸業銀行其他ノ銀行モアルカラシテ、其
  方デ金融ノ途ヲ付ケテ行ク方ガ宜イヂヤナイカ、斯樣ナモノヲ作ルノハ却テ
  費用ヲ要シテ蛇足ヂヤナイカ、斯ウ云フヤウナ御質問ニ承ハリマシタガ、此
  產業組合中央金庫ハ全ク勸業銀行、農工銀行ノヤウナ銀行ノ性質ヲ帶ビテ居
  ルモノトハ異ッテ居ルノデアル、成ルホド矢口君ノヤウナ御意見モ御一說デ
  アラウトハ信ジマスケレドモ、併ナガラ大體ニ於テ勸業銀行農工銀行ノ方ハ
  貸付ヲ致シマスルニモ、銀行業務ノ趣意カラ見マシテ長期ノ貸付ヲスルト云
  フヤウナコトガ原則ニナッテ居リマスル、勿論短期ノ貸付モ致シマスルガ、
  原則トシテハサウ云フ大キナ資金ヲ貸付ケルト云フコトニナッテ居リマスル、
  此中央金庫ノ方ハ左樣ナ銀行ノ力ノ及バヌ所、即チ信用ヲ基礎トシテ貸付ケ
  ル、詰リ業務ヲ御覽ニナリマスト分リマスガ、五年以下ノ期限ヲ以テ貸付ケ
  ル即チ銀行業務ニ於テハ寧ロ例外トシテ居ル方ヲ此方ハ原則トシテ貸付ケル
  コトニナッテ居リマス、而シテ又貸付先ノ如キモ所屬產業組合ニ限ッテ居ル、
  唯餘裕金ノアッタ時ニハ公共團體ノヤウナモノニハ、餘裕金ノ運用方法トシ
  テ貸付ケルコトガ出來ルト云フ風ニハナッテ居リマスケレドモ、趣意トスル
  所ハ所屬組合ニ限ッテ貸付ケル、其貸付モ信用ヲ基礎トシテ貸付ケル、斯
  ウ云フコトニナッテ居リマシテ、全ク銀行業務トハ性質ヲ異ニシテ居ル、詰
  リ銀行業ノ力ノ及バザル所ヲ此產業組合ガ相互ノ主義ノ下ニ於テ互ニ信用ヲ
  基礎トシテ貸付ヲシヤウ、斯ウ云フ主義ニナッテ居リマス、是亦ドコノ例ヲ調
  ベマシテモ一種ノ金融機關デアリマシテ、斯ウ云フノハ中以下ノ者ニ對シテ
  ハ、餘程良イ働ヲ致シマスル、現在ニ於キマシテ產業組合ガ矢張リ勸業銀行
  アタリカラ融通ヲ受ケテハ居リマスガ、是ハ主トシテ擔保ヲ提供シテ融通ヲ
  受ケルト云フヤウナ狀況ニナッテ居リマスノデ、本案ニ規定シテアル如ク、信
  用ヲ基礎トシテ成ルベク貸付其他ヲヤッテ行クト云フヤウナコトニハナッテ居
  リマセヌ、デ此點ガ全ク銀行業ト異ッタ趣意ニ於テ金融ノ便ヲ計ッテ居ルノデ
  アリマスカラ、今日ノ狀況カラ見マシテ、社會政策上カラ考ヘマシテモ、斯樣
  ナモノハ極ク必要デアラウト認メマスル、ソレカラ次ニ監督機關タル主務大
  臣農商務大臣ニ亙ルコトニ付テノ御質問デゴザイマスガ、是ハ產業組合ト云
  フ方カラ申シマスレバ、農商務大臣、ソレカラ一方三千萬圓ノ中半額千五百
  萬圓ト云フモノハ國庫ガ出資者デゴザイマスカラ、國庫ノ出資者タル點カラ
  見マシテモ亦債劵ヲ發行スル點カラ見マシテモ、勿論是亦大藏大臣ノ管掌ス
  ル所デゴザイマスカラ、兩大臣ノ主管ト致シタ次第デゴザイマス、斯樣ナ
  コトハ其他ノコトニ付テモ多々アリマスノデ、其例ヲ以チマシテ主務大臣ヲ
  極メマシタ譯デゴザイマス、第三ノ債劵ノ發行ノコトニ付キマシテハ是ハ成
  ルホド矢口君ノ御意見ノ通リ債劵ノ發行ト云フコトハ金融市場ノ狀況ニモ關
  シマスルコトデゴザイマスカラ、隨分困難ノコトデアラウトハ存ジマス、併
  ナガラ發行ノ仕方如何ニ依テハ相當成績ヲ擧グルモノデゴザイマスルシ、是
  以テ一時ノ規定デナクシテ永久ニ亙ル規定デゴザイマスカラ、此組合ノ金庫
  ノ資金ヲ充足セシムル方法ノ一ツトシテハ、債劵ノ方法ヲ認メテ置クト云フ
  コトガ必要デアラウト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/78

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• 079・矢口長右衞門

  ○矢口長右衞門君　唯〓農商務大臣ノ御答辯中ニ、政府ノ手ヲ經テ勸業銀行
  ニ貸付ケル金ハ極ク少額デアル、斯ウ云フ仰ノヤウニ拜聽イタシマシタ、本
  員ノ調査シマスル所ニ依リマスレバ、大正十一年十月ノ現在一千三百萬圓ホ
  ド勸業銀行ハ貸シテアルヤウデゴザイマス、所謂民間ノ產業組合等ニ貸出ス
  爲ノ資金ト心得テ居リマス、少額ト仰セラレマシタガ、其千三百萬圓ナルモ
  ノハ本員ハ少額デナイト思ヒマス、之ヲ一ツ伺ヒタイ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/79

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• 080・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答ヘ致シマスガ、少額ト申シマシタカ、私ソコ
  ノ所ハ左樣ニハ申サヌヤウニ思ヒマシタガ、勸業銀行アタリカラ貸付ケマス
  ノハ、銀行業務ノ方カラ貸シマスルカラシテ、擔保ヲ徵スルト云フコトニナッ
  テ居ルノガ多ウゴザイマスカラ、本案ノ信用ヲ基礎トシテ少額ノ金ヲ多數融
  通スルト云フヤウナコトトハ性質ガ異ッテ居ル、斯ウ申上ゲタヤウニ思ヒマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/80

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• 081・矢口長右衞門

  ○矢口長右衛門君　唯今擔保云々ト云フコトヲ申サレマシタガ、本員ノ調査
  スル所デハ矢張リ連帶保證ト云フモノノ信用ノ貸付ガ餘程多イヤウニ思ヒマ
  ス、ソレハ如何デゴザイマス
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

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• 082・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　連帶保證デアルノデゴザイマス、併シ擔保ヲ徵
  シテ居ルコトモ相當アルヤウニ信ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/82

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• 083・矢口長右衞門

  ○矢口長右衛門君　此問題ハ非常ニ緊要ナル、且ツ利害複雜シテ居ル問題デ
  アリマス、唯今ノ農商務大臣ノ御說明ハ私ハ十分ニ了承イタシマセヌガ、何
  レ委員モ選定セラレルデアリマセウシ、適當ナ御調査モアルデアラウト信ジ
  テ、私ハ質問ヲ之ニテ止メテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/83

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• 084・大谷嘉兵衞

  ○大谷嘉兵衞君　極ク簡單ナコトデアリマスルデ、自席ニ於テ願ヒタイト存
  ジマス、第五條ノ「政府、產業組合聯合會又ハ產業組合ノ外產業組合中央金
  庫ノ出資者タルコトヲ得ス」、之ニ付キマシテ伺ヒタイノデアリマス、產業
  組合ト云フモノハ、詰リ產業組合ト云フ名稱デアリマスノハ總テ法人デアリ
  やく、其外ニハ產業ノ爲メ其產業者ガ組合ヲ設ケテ居リマスルノガアリマ
  ス、產業ト云フ名稱ハナイノデアリマス、ナイケレドモ、產業組合ニ相違ナ
  イノデアリマスガ、サウ云フモノハ此金庫ノ株主トナルコトヲ得ナイノデア
  リマスカ、唯產業組合トスレバ唯今申シタ如クデ皆法人トシテ產業組合ト云
  フモノガアル、ソレデ產業組合ノ名ハナクシテ產業組合ト同等ノモノガアリ
  P々、此二點デアリマスルガ、之ニ付テ御伺ヒ申シタイ
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/84

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• 085・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　御答イタシマスガ、是產業組合法ニ依テ設立
  サレテ居リマスル產業組合ニ限ルノデゴザイマシテ、其以外ノモノハ出資者
  タルコトガ出來ナイト云フコトニナルノデゴザイマス

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• 086・菅原通敬

  ○菅原通敬君　私モ本案ニ付テ簡單ナ御尋ネヲ致シタイト思ヒマス、先刻矢
  口君ノ質問ニ對シテ、農商務大臣ノ御答辯ニナリマシタ所ヲ伺ヒマスト云フ
  ト、主務大臣ノ二人以上ノ場合ハ他ニ先例モアルコトデアルカラ、ソレニ從
  テ主務大臣ト云フモノヲ農商務大臣及ビ大藏大臣ニサレタノデアル、斯ウ云
  フ御說明デアリマシタガ、其先例ト云フノハドウ云フモノガアルノデアリマ
  スカ、ソレヲ伺ヒタイモノデアリマス、私ハ寡聞デアリマスカラ、或ハ承知
  イタシテ居ラヌノデアラウト思ヒマスルケレドモ、或ハ特殊ノ事務ニ付テ、
  例ヘバ農商務大臣ト大藏大臣、或ハ大藏大臣ト內務大臣ト云フヤウナモノヲ
  主務大臣ト定メテ置クト云フヤウナ例ハアルヤウニ記憶イタシテ居リマス
  ガ、此主體タルモノノ全部ノ業務ヲ監督スル場合ニ於テ、ソレガ農商務大臣
  及ビ大藏大臣ト云フヤウニ兩立シタルヤウナ先例ト云フモノハ、餘リ見出シ
  テ居ラヌヤウニ考ヘルノデアリマスガ、ドウ云フヤウナコトガアリマスカ、
  念ノ爲メ伺ヒタウゴザイマス
  〔國務大臣荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/86

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• 087・荒井賢太郎

  ○國務大臣(荒井賢太郞君)　地方財政其他ニ付テ先例ガアルサウデゴザイマ
  ス、併シ私ハ唯今此所ニ其先例ヲ記憶シテ居リマセヌカラ、取調ベテ御答ヲ
  致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/87

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• 088・菅原通敬

  ○菅原通敬君　多分サウ云フコトヲ仰セラレルデアラウトー思ッタノデアリマ
  スガ、詰リ地方財政ノ問題、殊ニ地方稅ノ監督ニ付テハ、內務大臣大藏大臣
  之ヲ監督スルコトニナッテ居リマス、併ナガラ地方團體ノ全部ノ業務ヲ監督
  スルニ當ッテ、之ヲ兩大臣ニ共屬サセルト云フヤウナコトハ、私ハ此權限ノ
  明確ヲ缺クモノデアラウト思フノデアリマス、尙ホ御調ベノ上ニ伺ヒタイト
  思ヒマス、尙ホモウ一ツ伺ヒタイト思ヒマスガ、大藏大臣ノ主務大臣トシテ
  此金庫ヲ監督スルト云フコトニ付テノ理由トシテ、農商務大臣ハ御說明ニ
  ナッテ、大藏大臣ハ千五百萬圓ノ出資ヲスル、國庫トシテ出資スルノデアル、
  其關係及ビ產業債劵ヲ發行スルト云フ關係ニ於テモ、大藏大臣ハ關係ノ厚イ
  モノデアルカラ、依テ以テ大藏大臣ヲ矢張リ主務大臣ノ一人ニ加ヘタノデア
  ル、斯ウ云フ風ニ御說明ニナッタノデアリマシテ、此中央金庫ナルモノノ業
  務ガ、金融機關トシテ大藏大臣ノ監督ノ下ニ立タナケレバナラヌト云フ必要
  ガアルモノデアルト云フヤウナ理由ニ付テハ、何等御說明ガナカッタノデア
  リマス、是ハ私大藏大臣ニ御尋ネシテ見タイト思ヒマス、第三章ニ中央金庫
  ノ業務ヲ定メテアリマスガ其第一ヨリ第四ニ至ル所ノモノハ、或ハ定期償
  還ノ貸付ト言ヒ、或ハ手形ノ割引、又ハ當座預金ノ貸越ト言ヒ、又ハ爲替業
  務ト言ヒ、又ハ預金ヲ爲スコトト言ヒ、總テ是レ銀行業務デアルト私ハ思フ
  ノデアリマス、寧ロ此業務ノ實際カラ云フト、農商務大臣ノ監督ヨリモ大藏
  大臣ノ監督ニ屬セシメテ置ク方ガ適當デアラウト思ヒマスガ、之ニ對シテ大
  藏大臣ハ如何ナ御考ヲ御有チニナッテ居リマスカ、私ハ大藏大臣ニ伺ヒマス
  〔國務大臣市來乙彥君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/88

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• 089・市來乙彦

  ○國務大臣(市來乙彥君)　御答ヲ致シマス、產業組合中央金庫ニ對シテ、大
  藏大臣ノ監督權ノ生ズル基礎、是ハ先程農商務大臣ガ述ベラレマシタ通リ
  ニ、第一ニハ政府ガ出資ヲシテ居ル、此出資ハ大藏大臣ノ所管ニ屬スベキモ
  ノデ、從テ監督權ノ基礎ハ茲ニアル、又產業組合中央金庫ニハ債劵ノ發行ヲ許
  シテ居ル、債劵ノ發行ニ付キマシテハ、其取扱ハ大藏大臣ノ職權ニ屬スベキ關
  係デアリマス、從テ此點ニ於テモ大藏大臣ニ監督權ノ基礎ガ存スルノデア
  ル、尙ホ一々大藏大臣ノ監督スベキ職權ノ基礎ヲ擧ゲマスルナラバ、マダ他
  ニモアルコトハ申スマデモナイノデアリマス、農商務大臣ガ主ナル點ヲ擧ゲ
  ラレタコトヽ考ヘマスガ、尙ホ其他ニモ列擧スルコトガ必要デアルト致シマ
  スレバ、唯〓菅原君ノ仰セニナリマシタ通リニ、產業組合中央金庫ハ金融ヲ
  ヤッテ居ル、金融ニ對シマシテハ、大藏大臣ノ又監督スベキ關係ヲ持ッテ居
  ル、是モ御意見ノ通リデアルト考ヘマス、尙ホ種々擧ゲマスレバ、或ハ未ダ
  他ニ細カナ點モアルカモ分リマセヌ、併ナガラ大藏大臣ノ監督ノ基礎ヲ明カ
  ニシマスルノニ、此二點若クハ三點ヲ擧ゲテ極メテ明瞭デアルト私ハ考ヘマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/89

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• 090・菅原通敬

  ○菅原通敬君　唯今ノ御答辯ハ前段ノコトニ付テハ、チヨット御說明ハ願ヒ
  マシタガ、後段ニ私ガ伺ヒマシタ此業務、第三章ノ業務トアリマス中ノ、第
  十三條ノ各業務ニ付テ御尋イタシタイノデアリマス、茲ニ書イテアリマス四
  ツノ業務ト云フモノハ、是ハ當然銀行業務ト云フヘキデナイカ、否ヤト云フ
  コトヲ伺ヒタイノデアリマス
  〔大谷嘉兵衛君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/90

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• 091・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　唯〓大藏大臣ガ答辯ヲ致シマス
  〔國務大臣市來乙彥君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/91

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• 092・市來乙彦

  ○國務大臣(市來乙彥君)　御答イタシマス、銀行ガ取扱ヲ致シマスル業務ハ
  銀行業務デアリマス、併ナガラ產業組合中央金庫ガ取扱ヲ致シマスル業務
  ハ直チニ銀行業務ナリト云フコトハ、形式ノ關係ニ於テハムズカシイト考
  ヘマス、併ナガラ實質上ノ取扱上カラ申上ゲマスレバ、銀行ニ於テ取扱ヒマ
  スル業務ニ異ルコトノナイ點ニ於テ、實質上ハ銀行業務デアルト云フコトハ
  出來ヤウト考ヘマスルノデゴザイマス、此關係カラ考ヘマシテ、金融ニ關ス
  ル事項ハ大藏大臣ノ職權ノ下ニ監督サルベキデアリマスカラ、此點モ亦一ツ
  ノ監督ノ職權ノ基礎ノ存スル點デアルト申シテモ差支ナイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/92

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• 093・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　大谷嘉兵衛君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/93

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• 094・大谷嘉兵衞

  ○大谷嘉兵衛君　唯今ノ質問ニ對シテ農商務大臣ノ御答ハ、甚ダ私ハ遺憾ニ
  思フノデアル、ソレハ一言申シテ置クダケノコトニ致シマスガ、茶業組合中
  央會議所ト云フモノハ法人デハゴザイマセヌ、法人デハアリマセヌケレドモ
  ガ、明治十七年ヨリシテ本年四十年ニ亙ッテ居ル、決シテ法律ニアル所ノ組
  合ヨリモ、最モ信用アルベキ、又最モ働キヲシテ居ルノデアリマス、ソレガ
  產業組合ノ名ガ無イカラ此株主トナレヌト云フ、ナレナイト云フノハ如何ナ
  ルモノデアリマセウカ、若シ是ガナラヌトスレバデス、甚ダ產業ハ總テ政府
  ノ子供デアルト云ノテ宜カラウト思フ、其中デ同ジ業デ以テ其組合ヲ拵ヘテ
  居リナガラ、是ガ此中央金庫ノ株主トナラレヌト云フコトハ甚ダ公平ヲ缺イ
  テ居ル、此一言ヲ申シテ置キマスル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/94

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• 095・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　菅原君ハマダ御質疑ガゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/95

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• 096・菅原通敬

  ○菅原通敬君　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/96

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• 097・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　產業組合中央金庫法案ハ重要ナル案件デアリマスルガ
  故ニ、本案ノ特別委員モ亦十五名トセラレムコトノ動議ヲ提出イタシマス、
  賛成ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/97

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• 098・大山綱昌

  ○大山綱昌君　賛成
  〔其他「賛成」ト呼フ者アリ〕
  〔大谷嘉兵衛君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/98

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• 099・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　大谷君ハ何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/99

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• 100・大谷嘉兵衞

  ○大谷嘉兵衛君　意見ガアリマス、唯〓申シタダケハ申シテ置クト申シマシ
  タケレドモ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/100

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• 101・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　大谷君、御意見ハ第一讀會ノ續ノ時ニ願ヒタウゴ
  ザイマス、唯今ハ質疑ニ止メタイト思ヒマス、御意見ヲ御述ベニナルコトハ
  御差控ヲ願ヒマス、西大路子爵ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/101

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• 102・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシ
  テ朗讀ヲ致サセマス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  產業組合中央金庫法案特別委員
  伯爵勸修寺經雄君服部一三君子爵八條隆正君
  道家齊君男爵山本達雄君荒川義太郞君
  仲小路廉君男爵福原俊丸君男爵橫山隆俊君
  男爵小畑大太郞君永田秀次郞君村野常右衛門君
  今井五介君金杉英五郞君二階堂三郞左衛門君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/102

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• 103・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ガナケレバ、日程第五ヨリ第十四マデ問題
  ニ供シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/103

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• 104・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　日程第五、伊曾乃神社昇格ノ請願、第六、軍人恩
  給法中改正ノ請願、第七、御肖像揭載ノ印刷物取締ニ關スル請願、第八、屯
  田兵喇叭卒竝其ノ遺族ニ土地給與ノ請願、第九、詐稱癈兵取締ニ關スル請
  願第十、北海道檜山郡厚澤部村ニ區裁判所出張所設置ノ請願、第十一、氣
  象觀測所增設ノ請願、第十二、癈兵竝戰死者遺族待遇ニ關スル請願、第十
  三、陸軍除隊兵ニ軍服支給ノ請願、第十四、國定〓科書飜刻規定中改正ノ請
  願會議
  〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ倣
  フ〕
  意見書案
  伊曾乃神社昇格ノ件
  愛媛縣新居郡神戶村縣社伊曾乃神社社司加茂通太郞呈出
  右ノ請願ハ愛媛縣新居郡神戶村ニ鎭座セラルル伊曾乃神社ハ伊勢神宮ノ分
  社ニシテ古來延喜式內ノ神社トシテ御由〓正シキ靈社ナルニ拘ハラス其ノ
  社格縣社ニ過キサルハ致敬ノ念ヲ闕クモノナルヲ以テ國幣社ニ昇格セラレ
  タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
  議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  軍人恩給法中改正ノ件
  佐賀縣小城郡小城町陸軍步兵少佐岡孫六外百十五名呈出
  愛媛縣新居郡神拜村退役陸軍步兵中尉千種元一外二十六名呈出
  福島縣信夫郡野田村平民無職業佐藤保吉外二百二十七名呈出(二通)
  千葉縣安房郡北條町士族陸軍少將久米猪一外百十七名呈出
  廣島縣廣島市段原町豫備陸軍砲兵少佐奥村鈕吉外四百八十六名呈出
  (六通)
  京都府紀伊郡深草町陸軍軍醫監村上彌穂若外八十九名呈出
  秋田縣平鹿郡境町村平民獸醫堀江又太郞外三十一名呈出
  群馬縣高崎市山田町平民無職業古屋みな外八十一名呈出
  神奈川縣足柄下郡小田原町退役陸軍少將木全多見外十八名呈出
  岐阜縣惠那郡中津町陸軍一等計手西本豊八外一一一百名呈出
  東京市神田區表神保町豫備陸軍二等軍醫正原精一外百十八名呈出
  廣島縣呉市西二河通平民海軍特務少尉三木兼四郞外八十二名呈出(二
  通)
  京都府南桑田郡保津村後備陸軍工兵少佐村上耕之助外九十九名呈出
  京都府紀伊郡伏見町豫備陸軍工兵特務曹長山下德松外百十六名呈出
  千葉縣君津郡龜山村平民農笈川顯外十七名呈出
  秋田縣秋田市保戶野中町後備陸軍一等獸醫渡邊勘之助外九十六名呈出
  (五通)
  東京府荏原郡大井町陸軍騎兵一等卒水澤鐵造外四十五名呈出
  東京府豊多摩郡澁谷町士族陸軍少將稻村新六外百四十六名呈出
  東京府豊多摩郡戶塚町無職業太田榮次郞外四十名呈出
  京都市上京區今出川通寺町陸軍少將小野寺實外一一百九十五名呈出
  東京府北豊島郡瀧野川町平民無職業藤谷淺吉外二十二名呈出
  三重縣安濃郡安東村退役陸軍步兵中尉鈴木興三郞外百九名呈出(十五
  通
  右ノ請願ハ大戰後諸物價暴騰ノ爲軍人恩給享受者ハ生活ノ困難甚シ斯クテ
  ハ軍事思想ノ消長ニ關スルコト甚大ナルヲ以テ大正九年軍人恩給法ニ改正
  ヲ加ヘラレタルモ其ノ額尙現今ノ經濟狀態ニ適應セサルモノアルヲ以テ改
  正當時ノ御言明ノ如ク同法ヲ根本的ニ改正シテ其ノ增額ヲ圖ラレタシトノ
  旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
  六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵徳川家達
  内閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  御肖像揭載ノ印刷物取締ニ關スル件
  山梨縣甲府市柳町鍼術業長田保春呈出
  右ノ請願ハ御肖像ヲ新聞雜誌其ノ他ノ印刷物ニ奉揭スルハ不知不識ノ間ニ
  不敬ヲ犯スノ因トナルヲ以テ取締法ヲ制定シ之ヲ禁止スルカ或ハ附錄等ニ
  奉揭シテ永久保存ヲ爲シ得ルヤウセラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
  ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送
  付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵徳川家達
  内閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  屯田兵喇叭卒竝其ノ遺族ニ土地給與ノ件
  北海道札幌郡江別町士族農安部孝吉外十四名呈出
  右ノ請願ハ請願人等ハ北海道屯田兵ノ家族ニシテ數年間喇叭卒ノ任務ニ服
  シタル者若ハ其ノ遺族ナルモ戶主ニ非ラサル理由ニ依リ屯田兵土地給與規
  則ノ恩典ニ浴スルヲ得サルハ遺憾ナルヲ以テ請願人等ニ對シテモ相當ノ土
  地ヲ給與セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
  ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵徳川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  詐稱癈兵取締ニ關スル件
  大阪市東區寺山町平民醫後藤幾太郞外八十名呈出
  右ノ請願ハ近時詐稱癈兵ノ橫行甚シク爲ニ眞ノ癈兵ノ名譽ヲ毀損シツツア
  ルハ請願人等ノ忍ヒサル所ナルヲ以テ言語動作ニ依リ若ハ傷病軍人徽章類
  似ノモノヲ佩用シテ癈兵ト稱シ行商スル者及癈兵ト誤認スル恐アル文字等
  ヲ商號中ニ使用スル者ニ對シ適當ノ取締法ヲ制定セラレタシトノ旨趣ニシ
  テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條
  ニ依リ別册及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  北海道檜山郡厚澤部村ニ區裁判所出張所設置ノ件
  北海道檜山郡厚澤部村平民商小川七治郞外七十四名呈出
  右ノ請願ハ北海道檜山郡厚澤部村ハ大字俄虫、安野呂、赤沼、目名、鶉
  館及土橋ノ七部落ヨリ成リ地域廣大ニシテ人口多ク登記事件繁多ナルニ拘
  ハラス之ヲ管轄スル江差區裁判所ハ距離遠ク住民ノ不便尠カラサルヲ以テ
  登記所所在地トシテ適當ノ地位ナル俄虫村字下俄出ニ大正十二年度ヨリ區
  裁判所出張所ヲ設置セラレタク所要ノ敷地建物等ハ設備ノ上貸供スヘシト
  ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
  第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵徳川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  氣象觀測所增設ノ件
  大阪府泉北郡高石町士族大阪每日新聞社長本山彥一呈出
  右ノ請願ハ高層竝海洋氣象ノ〓究ハ四面環海ノ我國ニ在リテハ須要ノ事業
  ナルニ拘ハラス從來觀測所設備ノ不完全ナルハ甚遺憾ナルニ依リ國費ヲ以
  テ高層氣象ノ〓究ニハ北海道後志岳、陸前金華山、伯耆大山、豊後祖母
  岳、薩摩開聞岳及臺灣大屯山ノ山上ト海洋氣象ノ〓究ニハ隱岐、壹岐及五
  島等ノ島嶼トニ最新設備ヲ有スル觀測所ヲ設置シテ旣設ノ中央氣象臺、神
  戶海洋氣象臺及茨城縣高層氣象臺ト相連絡シテ氣象觀測ノ完備ヲ圖ラレタ
  シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
  院法第六十五條ニ依リ別册及送付候他
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  癈兵竝戰死者遺族待遇ニ關スル件
  宮城縣仙臺市定禪寺通櫓丁陸軍三等軍醫正粟野令助外十六名呈出
  右ノ請願ハ癈兵竝戰死者遺族ニ對スル國家施設ノ當否ハ國民思想ノ歸趨ニ
  密接ノ關係アルヲ以テ癈兵竝戰死者遺族ニハ官公立學校ノ授業料ヲ免除シ
  それがあるときように
  及職業〓育ヲ施シ雇用法ヲ創設シ且傷痍記章ヲ國定〓科書ニ揭ケテ國民ニ
  周知セシムル等相當ナル施設アリタシトノ趣旨ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
  ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵徳川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  陸軍除隊兵ニ軍服支給ノ件
  靜岡縣磐田郡中泉町陸軍步兵大佐片倉千萬多外三名提出
  右ノ請願ハ經費節減ノ結果陸軍除隊兵ニ支給サルル軍服ハ本年度ヨリ廢止
  セラルルトノコトナルモ該軍服支給ノ如キハ比較的經費僅少ニシテ之カ在
  〓軍人ノ志氣ニ及ス效果ハ頗ル大ナルニ拘ハラス徒ニ經費節約ノ爲之ヲ廢
  止セラルルハ甚遺憾ナルヲ以テ在〓軍人ノ志氣振興上且海軍トノ權衡上依
  然軍服ヲ支給セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
  モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  國定〓科書飜刻規定中改正ノ件
  東京市京橋區西紺屋町株式會社秀英舍社長杉山義雄外五十三名呈出
  右ノ請願ハ國定〓科書ノ飜刻及出版ノ權利ハ二三會社ニ限定セラレ一般印
  刷業者ニ指定セラレサルハ國民〓育ノ典範トシテ飜刻ノ完全ヲ期スルノ點
  ニ於テ甚遺憾ナルヲ以テ一般印刷業者ニモ其ノ權利ヲ有セシメラレタシト
  ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
  第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/104

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• 105・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是等ノ請願ハ、請願委員長ノ報告通リデ御異存ゴ
  ザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/105

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• 106・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/106

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• 107・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　次ハ日程第十五ヨリ二十二マデ問題ニ供シマス、
  御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/107

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• 108・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/108

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• 109・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　第十五、鑛業ニ因ル農耕地ノ被害救濟ニ關スル請
  願第十六、天賣漁港修築ノ請願、第十七、長野縣東筑摩郡會田村ニ登記所
  設置ノ請願、第十八、北海道雨龍郡深川町ニ區裁判所設置ノ請願、第十九、
  內地棉花栽培奬勵ノ請願、第二十、日光山ヲ帝國公園ト爲スノ請願、第二十
  一、瀨棚港修築ノ請願、第二十二、根室港修築ノ請願、會議
  意見書案
  鑛業ニ因ル農耕池ノ被害救濟ニ關スル件
  福岡縣福岡市福岡縣農會副會長大森武雄外八名呈出(九通)
  右ノ請願ハ鑛業ノ發展ニ伴ヒ農耕地等ニ及ス慘害ハ益激甚ナルモノアルモ
  鑛業法ノ規定ハ專鑛業經營者ニ有利ニシテ損害ヲ補償スルノ明文ナキヲ以
  テ被害者ノ不利甚シク殊ニ鑛業地ニ鄰接セル福岡縣內ニ於ケル數郡ノ農村
  ノ如キハ生活ノ安定ヲ脅威セラルルコト甚シキニ依リ鑛業法ヲ改正シテ農
  村土地ノ保全竝損害補償ノ規定ヲ設ケラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
  意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
  送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  天賣港修築ノ件
  北海道苫前郡天賣村平民商木村字太郞外二百六十名呈出
  右ノ請願ハ北海道苫前郡天賣村ハ四面環海ノ島嶼ニ在リテ附近一帶ハ豊富
  ナル海產物ヲ有シ漁場トシテ古來有名ナルノミナラス近時戶口繁殖シ漁業
  亦發展セルニ拘ハラス沖合漁業ニ適切ナル完全設備アル漁港ナキカ爲ニ漁
  船ノ遭難スルモノ多キハ產業發達上甚遺憾ナルヲ以テ速ニ天賣漁港ヲ修築
  セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
  候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵徳川家逹
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  長野縣東筑摩郡會田村ニ登記所設置ノ件
  長野縣東筑摩郡五常村長丸山久三外八十八名呈出
  右ノ請願ハ長野縣東筑摩郡會田、五常、中川及錦部ノ四村ハ俗ニ嶺間部ト
  稱シ山間ニ僻在シテ自ラ一部落ヲ爲シ四隣ノ交通不便ヲ極ルノミナラス管
  轄登記所ノ距離遠隔ニシテ住民ノ困難甚シキヲ以テ右四村ヲ管轄スル登記
  所ヲ會田村ニ新設セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
  擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  北海道雨龍郡深川町ニ區裁判所設置ノ件
  北海道雨龍郡深川町酒造業東野虎吉外百八十三名呈出
  右ノ請願ハ北海道雨龍郡深川町ニ近接スル地方ハ夙ニ農產、林產ニ富ミ戶
  口日ニ繁殖シ裁判事件益夥多ナルニ拘ハラス之ヲ管轄スル旭川區裁判所ハ
  距離遠ク住民ノ甚不便トスル所ナルヲ以テ將來交通上ノ中心地タルヘキ深
  川町ニ區裁判所ヲ設置シ雨龍、空知及樺戶ノ三郡中ノ十七箇町村ヲ管轄セ
  シメラレタク之ニ要スル敷地ハ寄附スヘシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
  大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付
  候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  內地棉花栽培奬勵ノ件
  鳥取縣西伯郡富益村伯州綿信用購買販賣利用組合長永見億次郞外二
  名呈出
  右ノ請願ハ棉花ハ國民生活上竝軍事上必須品ナルニ拘ハラス內地棉花ハ逐
  年減少シテ國民需要ノ十分ノ一ヲ充タスニ過キス餘ハ悉ク米棉印棉ノ輸入
  ニ賴レルハ寔ニ寒心ニ堪ヘサルヲ以テ內地棉花ノ耕作奬勵ノ爲政府ニ於テ
  國立棉花試驗所ヲ設ケテ各種ノ〓究ト指導トヲ圖リ又ハ加工機械ノ貸與生
  產品販賣ニ關スル保護等適等ナル施設ヲ實行セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
  族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
  リ別冊及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  日光山ヲ帝國公園ト爲スノ件
  栃木縣上都賀郡日光町長石井信〓外百名呈出
  右ノ請願ハ日光山ノ美ハ天下周知ノ事實ニシテ世界的樂園タルニ耻チサル
  ヲ以テ之ニ隣接スル足尾中禪寺等ノ勝ヲ包擁セル一帶ノ境域ヲ帝國公園ト
  シテ設備セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
  ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  瀨棚港修築ノ件
  北海道瀨棚郡瀨棚町公吏關琢治郞外九百五十名提出
  右ノ請願ハ北海道瀨棚郡瀨棚港ハ瀨棚、太櫓兩郡ニ於ケル貨物ノ集散地ニ
  シテ船舶ノ出入夥シキノミナラス他日國縫、瀨棚間鐵道開通ノ曉ニハ海陸
  交通ノ連絡點ト爲リ且漁業ノ發展ニ資スル大ナルヲ以テ速ニ同港ヲ修築セ
  ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
  因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵加藤友三郞殿
  意見書案
  根室港修築ノ件
  北海道根室郡根室町平民牧畜業中島義一外三百四名呈出
  右ノ請願ハ北海道根室郡根室港ハ根室原野ノ豊富ナル農產ト「ヲコック」海
  ノ無盡藏ナル水產トヲ集散スル北方唯一ノ港灣ナルニ依リ既ニ拓殖費ヲ以
  テ第一期修築ノ工ヲ施サルルモ該工事ノミニテハ未同港利用ノ完全ヲ期シ
  難キニ依リ徹底的第二期工事ヲ續行セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
  ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及送付候也
  大正十二年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵加藤友三郞殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/109

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• 110・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　是等ノ請願モ請願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザ
  イマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/110

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• 111・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス、是ニテ本日ノ會議ヲ終リ
  やっく明後八日午前十時ヨリ開會イタシマス、議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御
  通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イタシマス
  午後三時三十八分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004603242X01919230306/111

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