1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十二年三月十日(土曜日)
午前十時十五分開議
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議事日程 第二十一號 大正十二年三月十日
午前十時開議
第一 競馬法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 大正十年度豫備金支出の件(承諾を求村る件)(衆議院送付) 會議
第三 大正十年度特別會計豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第四 大正十年度特別會計豫備金外に於て豫算超過支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第五 大正五年法律第十六號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 農工銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 日本興業銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 辯護士法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
一昨八日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ即日裁可ヲ奏請シ又可決
ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
大學特別會計法中改正法律案
大正八年法律第十二號中改正法律案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ即日之ヲ衆議院ニ送付セリ
共通法中改正法律案
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
司法省所管事務政府委員
司法省參事官長島毅君
農商務省所管事務政府委員
農商務書記官石黑忠篤君
外務省所管事務政府委員
外務書記官東郷茂德君
同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
陪審法案特別委員會
委員長公爵二條厚基君副委員長河村讓三郞君
中央卸賣市場法案特別委員會
委員長伯爵吉井幸藏君副委員長高橋琢也君
同日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
朝鮮事業公債法中改正法律案可決報告書
臺灣事業公債法中改正法律案可決報〓書
樺太事業公債法中改正法律案可決報告書
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ本院ノ議決ニ同意シ奏
上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
醫師法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
辯護士法中改正法律案
昨九日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
瓦斯事業法案特別委員會
委員長子爵大河内正敏君副委員長男爵中島久萬吉君
同日請願委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第三號
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
競馬法案
ところ
大正十年度豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
大正十年度特別會計豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
大正十年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、日程第一、競馬法
案〓政府提出、衆議院送付、第一讀會
〔左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之
ニ傚フ〕
競馬法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十二年三月九日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
競馬法案
競馬法
第一條馬ノ改良增殖及馬事思想ノ普及ヲ圖ルコトヲ目的トスル民法第三
十四條ノ法人ニシテ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルモノハ本法ニ依ル競馬ヲ
行フコトヲ得
第二條年三囘以上競馬ヲ開催セムトスルトキハ主務大臣ノ許可ヲ受クヘ
シ
競馬開催ノ期間ハ每囘四日內トス
第三條競馬ヲ開催スルトキハ入場者ヨリ入場料ヲ徵收スヘシ但シ主務大
臣ノ認可ヲ受ケ無料入場者ト定メタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第四條第一條ノ法人ハ入場者ニ對シ劵面金額五圓以上二十圓以下ノ勝馬
投票劵ヲ劵面金額ヲ以テ發賣スルコトヲ得
勝馬投票劵ノ發賣ハ競馬一競走ニ付一人一枚ヲ限ル
勝馬投票劵ハ之ヲ讓渡スコトヲ得ス
第五條學生生徒又ハ未成年者ニ對シ勝馬投票劵ヲ發賣スルコトヲ得ス
當該競馬ヲ開催スル第一條ノ法人ノ役員又ハ當該競馬ニ關スル開催執務
委員、調〓師、騎手、馬丁其ノ他競馬ノ事務ニ從事スル者ニ對シ亦前項
ニヨシ
第六條第一條ノ法人ハ勝馬投票的中者ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ當該
競走ニ付テノ勝馬投票劵ノ賣得金ノ額ヲ超エサル範圍內ニ於テ拂戾金ヲ
交付スルモノトス但シ其ノ金額ハ勝馬投票劵ノ劵面金額ノ十倍ヲ超ユル
コトヲ得ス
第七條入場料ノ金額、勝馬投票劵ノ劵面金額及發賣方法竝前條ノ拂戾金
ノ支給方法ニ付テハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第八條勝馬投票劵ヲ發賣シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ賣得金
ノ額ノ百分ノ一以內ニ相當スル金額ヲ政府ニ納付スヘシ
前項ノ規定ニ依ル納付金ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ
得但シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
第九條主務大臣ハ第一條ノ法人ニ對シ馬ノ改良增殖及馬事思想ノ普及ノ
爲必要ナル施設ヲ命スルコトヲ得
第十條第一條ノ法人ハ豫算ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第一條ノ法人ハ每事業年度終了後三月內ニ主務大臣ニ決算報告ヲ爲スヘ
シ
第十一條第一條ノ法人ノ理事及監事ノ就任ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十二條主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ第一條ノ法人ノ定款
其ノ他ノ規則ノ改正ヲ命シ又ハ其ノ總會ノ決議ヲ取消スコトヲ得
第十三條主務大臣ハ第一條ノ法人又ハ其ノ役員ノ行爲カ法令若ハ之ニ基
キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ左ノ處分
ヲ爲スコトヲ得
-競馬ノ停止
二勝馬投票劵發賣ノ停止又ハ制限
三役員ノ解任
第十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ
罰金ニ處ス
-第一條ノ法人ニ非スシテ勝馬投票劵ヲ發賣シタル者
二第十三條第二號ノ停止又ハ制限ニ違反シテ勝馬投票劵ヲ發賣シタル
者
第十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
-第四條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル制限ニ違反シテ勝馬投票劵ヲ
發賣シタル者
二第五條ノ規定ニ違反シタル者
三第五條第二項ニ揭クル者ニシテ勝馬投票劵ヲ購買シタルモノ
四第六條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シテ拂戾金ヲ交付シタル者
五第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタルニ非サル劵面金額ノ勝馬投票劵
ヲ發賣シタル者
第十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-第一條ノ法人ニ非スシテ勝馬投票劵ヲ發賣スル者ヨリ又ハ第十三條
第二號ノ停止若ハ制限ニ違反シテ勝馬投票劵ヲ發賣スル者ヨリ勝馬投
票劵ヲ購買シタル者
二第四條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル制限ニ違反シテ勝馬投票劵ヲ
購買シタル者
三勝馬投票劵ヲ讓渡シ又ハ讓受ケタル者
四第六條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタル拂戾金ノ交付ヲ受ケタル者
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=2
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003・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 競馬法ニ付キマシテ〓略說明申上ゲマス、帝國產
馬ノ現況ヲ見マスルノニ、從來政府ノ努力イタシマシタ所ノ保護奬勵ニ依リ
マシテ、馬匹ノ資質ハ漸次改良セラレマシタガ、未ダ尙ホ其所望ノ點ニ達セ
ヌ所ガ多イノデアリマス、殊ニ國內ニ於ケル馬數ハ比年減少ノ傾向ヲ示シタ
ルノミナラズ、產馬經濟ノ事情モ亦年ト共ニ困難ニ陷ル景況ガアルノデアリ
やく、ソレニ今囘又軍備整理ノ結果トシテ、軍馬ノ購買數ニ減少ヲ來タシ
テ、是ガ爲ニ地方產馬事業ニ與ヘラレタル所ノ影響ハ、尠シトセヌノデアリ
やっく、デ此趨勢ヲ以テ推移イタシマシタナラバ、國防上竝ニ產業上頗ル憂慮
スベキ事態ヲ生ズルヤウニナルカノ虞ガアルノデアリマス、ソレデアリマス
爲ニ、更ニ將來ニ向ッテ各般ノ施設ニ對スル考究ヲ加フルノ必要アルコトハ
勿論、尙ホ進ンデ茲ニ一新生面ヲ開クノ緊要ナルコトヲ認メマシタノデアリ
P·マ、即チ競馬ノ振興ヲ策シマシテ、之ニ依リマシテ國民ノ馬ニ關スル思想
ヲ振起イタシ、馬ノ改良增殖ニ强キ根柢ヲ與フルト云フコトハ、此間ニ處シ
テ極メテ有效ナル一手段ト信ジタ次第デアリマス、ソレガ爲ニ玆ニ競馬法ヲ
制定イタサウト考ヘタ次第デアリマス、デ我國ニ於ケル競馬ノ履歷ニ關シマ
シテハ、皆樣ノ夙ニ知悉セラルル所ノ次第デアリマシテ、ソレガ爲ニ此提出
セラレタル所ノ法案ニ於キマシテハ、其風〓上ニ及ボス影響ヲ局限スル爲ニ
多大ノ注意ヲ拂ヒマシテ、以テ多年物議ヲ釀シタルヤウナ事態ヲ再ビ發セシ
メヌコトヲ期シタ次第デアリマス、ドウゾ御審議ノ上御協賛アラムコトヲ切
望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通〓順ニ依リマシテ質疑ヲ許シマス、湯淺
倉平君
〔湯淺倉平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=4
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005・湯淺倉平
○湯淺倉平君 私ハ大正八年ニ馬政委員ノ官制ガ定メラレマシテ以來、馬政
委員ヲ命ゼラレマシテ居ル者デゴザイマス、政府ガ馬政委員會ヲ設ケラレマ
シタ趣旨ヲ推シ量リマスルト、今日唯今議題ニ上リマシタ所ノ競馬法ノ制定
ヲ以テ其眼目トセラレテ居ッタモノト存ズルノデアリマス、此馬政委員會ニ
ハ馬政ニ關スルコトハ細大トナク、諮問ヲ致サレテ居ッタノデゴザイマス、
然ルニ如何ナル都合デゴザイマスルカ、唯〓議題トナッテ居ル法案ニ付キマ
シテハ、馬政委員會ニハ諮問ガナカッタノデアリマス、ソレ故ニ馬政委員ノ一
人デアリマスルニ拘ハリマセズ、此法案ニ付キマシテ政府ニ對シテ質疑ヲ致
サナケレバナラヌノヲ遺憾トスル者デゴザイマス、明治四十年前後ニ競馬ノ
流行ガ非常ニ盛ニナリマシテ、明治四十一年頃ニハ其絕頂ニ達シタノデアリ
マス、然ルニ是ハ弊害ノ甚ダシカッタト云フ事實ニ鑑ミマシテ、政府ハ英斷ヲ
以テ之ヲ御禁止ニナッタノデアリマス、爾來今日ニ至ルマデ屢〓内閣ノ更迭ガ
アリマシタニ拘ハラズ、何レノ內閣モ競馬法案ヲ制定スルト云フコトニ付
テ躊躇ヲサレタノデアリマス、思フニ競馬法案ヲ制定シテ、馬劵ノ發賣ヲ許
スト云フコトハ賭博ノ禁ヲ解クノデアル、國民ノ風紀ヲ墮落セシムル所以デ
アル、斯樣ナ見地ニ基イタモノデアラウト察スルノデアリマス、競馬ニ伴フ
所ノ馬劵ノ發賣ト云フコトニ付キマシテハ思フニ種々ノ見解ノアルコトトハ
考ヘマスガ、私ノ當局ニ伺ハムトスルノハ此法案ニ定メマシタル方法ニ依リ
マシテモ是ハ刑法ニ云フ所ノ賭博罪ノ一部ヲ公ニ許スト云フコトニナルデア
ラウト考ヘルノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ申シマスルト、國民ノ風紀ノ頽廢
ノ基ヲ造ル、即チ人ヲ犠牲トシテ、馬ノ改良ヲ圖ルト云フコトニ相成ルデア
ラウト考ヘルノデアリマスガ、政府ノ所見ハ果シテ左樣デアルカ否ヤト云フ
である
ノガ第一點デアリマス、次ニハ競馬ヲ許シ、馬劵ノ發賣ヲ許スト云フコトニ
依ラナケレバ、馬匹ノ改良增殖ヲ圖ル途ガ絕對ニナイノデアルカ否ヤト云フ
點デアリマス、政府ハ明治四十一年ニ馬劵ノ發賣ヲ禁止セラレマシテ以來、
競馬倶樂部ニ對スル奬勵金ヲ下附セラレテ、今日ニ及ンデ居ルノデアリマ
ス、之ニ從ッテ爾來各地ニ存在シテ居ル所ノ競馬倶樂部ナルモノハ其命脈ヲ
保ッテ參ッテ居ルノデアリマス、然ルニ何故デアリマスルカ、政府ハ最近ニ
至ッテ競馬倶樂部ニ與ヘル所ノ賞金ヲ減ジテ居ラレマス、又地方ニアリマス
ル所ノ競馬ニ對シマシテモ、奬勵金ヲ減ジテ居ルノデアリマス、政府ガ馬匹
ノ改良增殖、馬事思想ノ發達ヲ企圖スルト云フコトデアリマスルナラバ斯
ノ如キモノニ對シテハ奬勵金ヲ財政ノ許ス限リニ於テ增加スル、競馬ノ賞金
ヲ增スト云フコトガ當然デナケレバナラヌト斯ウ心得ルノデアリマス、又馬
政委員會ノ決議ヲ以チマシテ政府ニ之ガ實行ヲ促シテ居ルニモ拘ラズ政府ハ
之ヲ减額イタサレテ居ルノデアリマス、デ是等ノ競馬倶樂部及ビ地方ニ行ハ
レル所ノ競馬ニ對シテ賞金ヲ增額スルト云フガ如キ方法ハ、馬劵ノ發賣ニ代
ユルニ穩健適法ナ手段ニ依ッテ馬匹ノ改良增殖、馬事思想ノ普及ヲ圖ル所以
ノ途デハナイノデアリマセウカ、又大正八年ノ物價ノ最モ高イ時ニ於キマシ
テ現在ノ競馬倶樂部ヲ存續セシメ相當ノ働キヲナサセルニ付テドレダケノ金
ヲ交付シタナラバ宜シイカト云フ政府ノ見積リニ依リマスルト、約二百萬圓
ノ金ヲ以テスレバ足リルト云フコトデアッタノデアリマス、今日ハ一般行政
整理ノ聲ノ高イ折柄デアリマスルガ、二百萬圓位ノ少額ナ金ヲ以テ競馬ノ奬
勵ヲ致スト云フコトガ出來マスルナラバ一般國民ノ風紀ノ墮墜ノ原因トナ
ルベキ所ノ馬劵ノ發賣ヲ公許セズニ、之ニ代ユルニ今日ノ競馬倶樂部ニ對シ
テ相當ノ奬勵金ヲ增額スル、此財源ヲ求メルノハ必シモ難事デアルマイト考
ヘルノデアリマス、試ニ十數億ノ一般豫算ノ中ニ付テ考ヘマスルト、少額デハ
アリマスケレドモ、若シ國防上馬匹改良增殖ト云フコトガ極メテ喫緊ナコト
デアリト致シマスルナラバ、ソレヨリモ尙ホ必要ノ程度ノ輕シトスルモノヲ
發見スルニ苦マヌノデアリマス、其實例ヲ求メテ見マスルト、農商務ノ所管
ニ於キマシテ等シク畜產ノ奬勵デハアリマスルガ、緬羊ノ奬勵ト云フガ如キ
百萬圓ノ金額ノ計上ガアルノデアリマス、私ハ緬羊ノ奬勵ヲ以テ必シモ不用
ノ費用ナリト斷言スル者デハアリマセヌ、併ナガラ彼ヲ以テ此ニ較ベマスル
ナラバ、緩急自ラ相違ガアリハシナイカト思フノデアリマス、斯ノ如キ費用
ヲ國防上ノ必要ニ振向ケルト云フコトハ、必シモ不當ナ事デハアルマイト考
ヘルノデアリマス、其他御承知ノ通リ各省ニ亙ッテ數十ノ調査會ト云フガ如
キモノガ設ケラレテ居ルノデアリマス、馬政委員會ノ如キモ、即チ其一ツデア
リマス、然ルニ是等ノ調査會ノ或ルモノハ多クハ殆ド開會ヲ見ナイモノガア
リマス、或ハ僅ニ一年三囘開カレルト云フヤウナモノモアルノデアリマス、現
ニ馬政委員會ノ如キモ昨年ハ議會ノ末期最モ議院ノ多忙ヲ極メテ居ル折ニ突
如トシテ僅カニ一囘ノ開會ヲ見タノミデアリマス、本年亦同樣デアリマス、斯
樣ナ種類ノ調査會ガ澤山アルノデアリマス、斯ノ如キモノノ經費モ亦緊切己
ムヲ得ザルモノトハ認メルコトガ出來ナイノデアリマス、凡ソ此種類ノモノ
ヲ一般歲計ニ付テ拾ヒ上ゲマスルナラバ、二百萬圓位ナ少額ノ金ヲ捻出スル
コトハ極メテ容易ナ事デアルト考ヘルノデアリマス、然ルニ政府ハ此手數ニ
出デラレナイノデアリマス、又本案ヲ假ニ實行イタスト致シマスレバ、一般
ノ馬ノ値ヲ騰貴セシムルト云フコトハ論ノナイコトデアルト考ヘルノデアリ
やっく。之ヲ明治四十年カラ四十一年ノ當時ニ顧ミマスルト、其時ニ於キマシ
テ競馬ノ流行スル當時ニ、馬ノ價格ハ殆ド五割ヲ高メテ居ルノデアリマス
是カラ推シマスルト競馬法案、競馬法ヲ制定シ馬劵ノ發賣ヲ許スコトニ
ナリマスレバ、年々陸軍ガ軍馬トシテ購入スベキモノ約四千頭、是ノ一頭ノ
價格ガ二百圓位騰ルト云フ類推ガ出來ルノデアリマス、果シテ然ラバ陸
軍ノ軍馬購買價格ニ於テ八十萬圓ノ支出ヲ多クスルト云フコトヲ豫期シナケ
レバナラヌト思フノデアリマス、斯ノ如キ方法ニ依リマセズニ適法穩當
ノ手段ヲ盡シマシテモ十分ニ馬匹ノ改良增殖ヲ圖ル餘地ガアリハシナイカト
云フ點ヲ疑フノデアリマス、之ニ付キマシテ當局ノ所見ヲ伺ヒタイト思ヒマ
ス、第三ニハ本案ハ誠ニ馬劵ノ發賣ヲ許スモノト致シマシテハ、極メテ微温
的ナモノデアルト思フノデアリマス、馬劵ノ發行ヲ熱望シテ居リマスル所ノ
競馬倶樂部ニ關係ノアル人〓或ハ馬ヲ生產スル所ノ地方ノ人ニハ此法案ノ規
定ガ厲行セラレルモノト致シマシタナラバ之ヲ以テ甘ンズルモノデハナイト
考ヘルノデアリマス、ソレデ此案ハ誠ニ法案自體カラ見マスレバ、極メテ〓
温的ノモノデアル、政府ハ之ニ依ッテ馬劵發賣ノ弊害ヲ局限スルト唱ヘラレ
テ居ルモノデアリマス、併ナガラ馬劵發賣ニ伴フ所ノ弊害ヲ局限イタシマス
ルトスルト致シマスルナラバ、其效果ハ又甚ダ薄弱ナモノデアル、之ニ依ツ
テ利益ヲ受ケル所ノ者モ極メテ僅ナ利益ヲ受ケルニ止マルノデアリマス、
故ニ此法案ガ一度刑法ノ賭博ノ禁ヲ解除スルト云フコトニナリマシタ曉ニ
ハ、次イデ起ル所ノ要求ハ、必ズヤ此制限ヲ緩和スルト云フコトニアルコト
ハ今ヨリ豫見スルニ難カラナイコトデアルト思フノデアリマス、人情既ニ
隴ヲ得テ蜀ヲ望ムト云フコトハ免レナイコトデアルト思フノデアリマス、殊
ニ速記錄ノ配付ヲ受ケマセヌ爲ニ、マダ事ノ眞僞ハ確保イタシマセヌケレド
モ、衆議院ニ於テ陸軍次官ハ現在本會ノ競馬倶樂部以外ニ引續イテ、近キ將
來ニ多數ノ競馬法人ヲ許可スル見込デアルト云フ御答辯ニナッテ居ルヤニ承
ルノデアリマス、果シテサウデアルト致シマスルナラバ、本案ハ即チ其価ヲ
作ルモノデアルト思フノデアリマスガ、政府ノ所見ハ如何デアリマセウ、即
チ一方ニ於テハ此法案ヲ段々ト緩メル、此法案ノ制限ヲ緩メル、續イテハ現
存シテ居ル競馬倶樂部以外ニ、多數ノ競馬團體ヲ許スト云フコトノ弊ニ陷ル
虞ハ無イノデアリマセウカ、如何デアリマスカ、政府ノ所見ヲ伺ヒタイノデ
アリマス、第四ニハ競馬ナルモノハ一般ノ馬ノ生產ヲ、競馬馬ヲ作リ出スコ
トニ偏セシメル虞ハ無イノデアリマセウカ、即チ耕作用ニ用ヰル所ノ馬ヲ作
ルノ馬產家ノ喜バザル所デアル、又輓馬ヲ作出スト云フコトハ、馬產家ノ望
マザル所トナル虞ハ無イノデアリマセウカ競馬馬ニナリマスレバ、其價格
ガ極メテ高イ、高イ所ノモノヲ生產スルト云フコトハ當然ノ結果デアルト考
ヘルノデアリマス、若シ馬產地方ニ於キマシテ農耕用ノ馬ノ生產ヲ輕ンジ
ル、或ハ又輓馬ノ生產ヲ怠ルト云フコトニナリマスレバ、其結果ハ一方ニ於
キマシテハ競馬用ノ馬、或ハ乘馬ノ增加ヲ見マスルト同時ニ、農業一途ニ用
ヰル所ノ馬、或ハ荷車ヲ輓ク所ノ馬ト云フヤウナモノノ生產ヲ減ズル、斯樣
ナ結果ニナリハシナイノデアリマセウカ、政府ハ現在我國ノ馬匹ノ數ガ百五
十萬頭ニ足ラナイ數デアリマスルノヲ、更ニ五十餘萬頭ヲ增シテ二百萬頭ノ
馬匹ノ現存ヲ理想ト致シテ居ラルヽヤウデアリマスガ、一面ニ於テ競馬用ノ
馬ヲ增シ、他方ニ於テハ輓馬、耕馬ノ數ヲ減ズルト云フ結果ニナリハ致サナ
イノデアリマセウカ、或ハ政府ハ輓馬ノ如キモノモ亦農耕用ニ用ヰル所ノ馬
モ矢張リ競馬ニ依ッテ改良セラルヽノデアル、競馬ニ依ッテ優良ナ馬ノ血ヲ農
耕ニ用ヰル所ノ馬ニ混ヘル必要ガアル、斯樣ナコトヲ申サレルノデアリマス
ルガ、果シテ然リト致シマシタナラバ、農民ノ使フ所ノ耕作用ノ馬、或ハ荷
車ヲ輓ク所ノ荷馬車ノ馬ガ、優良ナル馬ノ血ヲ受ケマシタ結果、其價格ガ騰貴
スルノミナラズ、其飼養ガ極メテ困難ニナル、又管理ニ於キマシテモ、同樣
因難ニナルコトト考ヘルノデアリマス、斯樣ナ虞ハ無イノデアリマセウカ、
第五ニハ競馬ノ際ニ於キマシテ往々番狂ハセト云フモノガアルコトハ御承知
ノ通リデアリマス、優秀ナル馬ガ競馬ニ於キマシテ優等ノ結果ヲ現ハスト云
フコトハ、是ハ當然ナコトデアリマスルケレドモ、靈妙ナル馬ノ働ニ於キマ
シテハ、、時トシテ番狂ハセガアルノデアリマス、人間デ言ヒマスト氣分ノ勝
レタトカ、勝レナイトカ云フヤウナコトガ、馬ニ於キマシテモ其日ノ心持ニ
依ッテ氣分ノ違フコトガアル、之ガ爲ニ優秀ナル馬ガ競馬ニ負ケルト云フコ
トハ、往々ニシテアルコトデアリマス、競馬ノ馬劵ヲ買フ者ト致シマ
シテハ此番狂ハセガ最モ興味ガアルノデアリマス、ソレ故ニ過去ニ行ハレマ
シタル競馬ニ於テハ、往々ニシテ八百長ノ勝負ガ行ハレタト云フコトハ是ハ
事實デアリマス、サウ致シマスルト、此法案ガ實行セラレマス場合ニ八百長
ヲナス者ガ有リト致シマシタナラバ、是ハ如何ニナルノデアリマセウ、試ミ
ニ其結果ニ付テ申上ゲテ見タイト思フノデアリマス、往年行ハレマシタ競馬
ノ場合ニハ、假ニ二千人ガ五圓ノ馬劵ヲ購入シタト致シマスルト、競馬ノ料
金ハ一萬圓ニナルノデアリマス、而シテ先ヅ競馬倶樂部ナルモノガ、其掛金
ノ一割ヲ差引イテ取ルノデアリマス、即チ競馬ノ掛金ガ總計一萬圓デアルト
致シマスレバ、其内ノ千圓ハ競馬倶樂部ノ所得ニ歸シテ、殘ル九千圓ガ馬劵購
入者ノ勝ッタ者ノ所有ニ歸スルノデアリマス、極端ナ話ヲ申シマスルト、假ニ
二千人ガ悉ク其中ノ優秀ナル一ツノ馬ニ掛ケタト致シマスト、其人〓ハ勝馬
ニ適中ヲシタ、即チ勝ッタノデアリマスルケレドモ、其得ル所ハ一人前各〓四圓
五十錢ト云フ額ニナルノデアリマス、即チ掛金ガ五圓デアッテ競馬ノ勝利ニ適
中ヲシナガラ、其得ル所ハ掛金ヨリモ少イ所得ニナルノデアリマス、是一起
端ナル。場合デアリマスルカラ、斯樣ナル場合ハ想像ニ止マルノデアリマスル
ガ、理論上左樣ニナルノデアリマス、之ニ反シテ、若シ二千人ノ中ノ一人ガ或
劣等ナ馬ニ掛ケタト致シマスルト、其人ガ假ニ一人デアッタト致シマスレバ、
一人シテ五圓ノ掛金デ九千圓ノ所得ガアルト云フコトニナルノデアリマス、
是モ極端ナ場合デアリマスルガ、馬ヲ知ラナイ者ガ試ミニ自分ノ所ノ馬ニ掛
ケタ、トコロガ其馬ガ同時ニ競爭ヲスル所ノ中ノ最モ劣等ナモノデアッタ、
何人モ之ニ掛ケル者ガナカッタト云フ場合ニ於テハ五圓ノ掛金デ九千圓ノ所
得ヲ致シタノデアリマス、然ルニ此法案ニ依リマスルト、馬ニ掛ケマシタ人ガ
假令適中ヲ致シマシテモ、其所得ハ掛金ノ十倍ヲ越ユルルコトガ出來ナイノ
デアリマス、左樣デアリマスルト唯今申シマシタ後ノ場合即チ一人ノ人ガ勝
馬ニ適中ヲシタト云フ場合ニ於キマシテハ、一萬圓ノ掛金ノ中ヨリ假リニ競
馬倶樂部ノ所得ヲ一千圓ト致シマスレバ、殘リ九千圓、此九千圓ノ中カラ政
府ガ百分ノ一ヲ差引クト致シマシテ、八千九百圓、此八千九百圓ノ殘リノ掛
金ニ對シマシテ、勝ッテ當テタ所ノ人ハ僅カニ五十圓ヲ得ルノミデアリマス、
五圓ノ掛金ト致シマスルト五十圓ヲ得ルノミデアリマス、サウナリマスルト
八千八百五十圓ト云フモノハ、競馬倶樂部ノ所得ニ歸スルノデアリマス、競
馬倶樂部ノ所得ハ極端ナ番狂ハセノ場合ニ於テハ非常ナル利得ヲ致スノデア
リマス、斯樣ナコトガ頻々アリマスレバ、此競馬倶樂部ニ關係ノ人〓ガ極メ
テ微温的デアル、極メテ利益ノ薄イモノデアル、此法案ノ如キ嚴重ナル制限
ノ下ニ競馬ヲ行ッテモ、是デハ到底競馬ヲ行フコトガ出來ナイトシテ憂フル
所ノモノガ、以外ノ不當ノ利得ヲ致スノデアリマス、簡單ニ申シマスレバ、
公益法人ガ成金トナリ得ル場合ガアルト云フコトニナルノデアリマス、公益
法人ガ成金ト成リ得ルト云フ場合ガアルト致シマシテ、是ガ如何ナモノデア
リマセウ、斯ノ如キ缺陷ガアリト致シマシタナラバ、競馬倶樂部ニ關係ノ
人〓ガ果シテ此缺陷ニ乘ジナイデアリマセウカ、如何デアリマセウ、即チ
八百長ヲ行ハシメタナラバ、競馬倶樂部ハ多大ナ所得ヲスルコトガ出來ルノ
デアリマス、斯樣ナ缺陷ガアリト致シマシタナラバ、人情ノ弱點トシテ、之
ニ乘ズルト云フコトガ無イト云フコトノ保證ガ出來ルデアリマセウカ、如何
ナモノデアリマセウカ、政府ハ或ハ之ニ對シテ答ヘラレルノデアリマセウ、
人ヲ欺イテ不當ナ利得ヲシタト云フコトニナレバ、ソレハ刑法ノ詐欺取財ニ
該當スルモノデアルガ故ニ、之ニ依ッテ相當ナル制裁ヲ課スルトスレバ、其
取締ハ出來ル、斯樣ニ申サレルノデアリマセウ、併ナガラ過去ノ事實ニ徵シマ
シテモ八百長ノ行ハレタカ行ハレナイカト云フコトヲ何人ガ立證スルコト
ガ出來マセウ、或ハ偶然ノ結果ト致シマシテ、之ヲ檢擧シ得ル場合モアルカ
モ知レマセヌ、サリナガラ甲乙口ヨリ口ニ傳ヘテ八百長ヲ行ハシメタ場合
ニ、是ガ立證ト云フコトハ極メテ困難デアル、至難デアルト考ヘルノデアリマ
ス、而シテ此法案ガ之ニ關係アル人〓ノ豫期スル如キモノデハナイ、極メラ微
温的ノモノデアル、極メテ利益ノ薄キモノデアルト致シマシタナラバ、斯ノ如
キ弊害ノ起ラナイト云フコトヲ保證スル譯ニハ參ルマイト考ヘルノデアリ
マスガ、政府ノ所見ハ如何デアリマセウ、第六ニハ本案ニハ種々ノ嚴重ナル
制限規定ガアリマスルガ、此取締ガ果シテ可能デアリマセウカ否カ、殊ニ學
生生徒ノ馬劵ヲ買フコトヲ禁ジテアリマスガ、如何ニシテ其學生タルコトヲ
甄別スルコトガ出來マセウ、之ニ付テモ疑ハナケレバナラヌト思フノデアリ
やっ、且又學生生徒ガ馬劵ヲ買ヒマシタ場合ニハ、之ニ對スル制裁ノ規定ハ
本案中見出スコトガ出來ナイヤウデアリマス、諸君御承知デゴザイマセウカ、
今日不良ノ學生ガ淺草アタリノ酒場ニ於キマシテ、非常ニ言語ニ堪ヘタ不行
跡ノアルト云フコトハ、警視廳當局ノ絕エズ注意ヲ怠ラヌ所デアリ熟知セラ
レテ居ル所デアリマス、短刀ヲ懷ニシテ隊ヲ組ンデ、他人ノ酒ヲ飮ンデ居ル
モノヲ脅迫シテ、サウシテ己レハ之ニ依ッテ無錢飮食ヲスルト云フ事實ハ非
常ニ多イノデアリマス、是等ニ付テ警察ハ十分ニ其事實ヲ知ッテ居ル、是ガ
注意ヲ怠ラレヌヤウデアリマスケレドモ、遂ニ之ヲ根絕スルコトハ出來ヌノ
デアリマス、取締ノ可能不可能ト申シテモ、或ル程度マデノ取締ハ出來マセ
ウガ、之ヲ十分ニ取締ルト云フコトハ言フベクシテ行ハレナイ、蠅ヲ逐フヤ
ウナモノデアルト思フ、不良ナル學生ガ學資ヲ父兄ニ仰イデ、競馬場ニ親シ
ムト云フコトニ相成リマシタナラバ、其結果ハ如何デアリマセウ、誠ニ寒心
ニ堪ヘナイコトデアルト考ヘルノデアリマス、而シテ之ニ對スル所ノ取締ハ
到底出來難イコトト考ヘルノデアリマスルガ、當局ハ之ヲ可能ナリト信ゼラ
レルノデアリマセウカ、明治四十二年第二十五議會ニ於キマシテ衆議院ヨリ
競馬法案ガ提出セラレマシタ時、時ノ政府委員ハ如何ニシテモ取締ヲ爲スコ
トハ出來ナイ、不可能デアル、ソレ故ニ其當時提出セラレタ所ノ法案ニハ反
對スルト云フコトヲ答ヘテ居ルノデアリマス、而シテ時ノ寺內陸軍大臣モ亦
其法案ニハ絕對ニ反對ヲサレテ居ルノデアリマス、今日ノ當局者ハ當時寺內
陸軍大臣ガ到底取締ヲナスコトハ出來ナイ、弊害ガ續イテ起ルト云フコトノ
爲ニ反對セラレマシタ所ヲ、今日デハ是ガ取締ヲナシ得ルト確信ナサルノデ
アリマセウカ、其點ヲ伺ヒタイト思ヒマス、次ニ本案ハ政府ノ御說明ニ依リ
マスルト、國防產業トノ兩方面ノ必要カラ御提案ニナッタト云フコトデア
リマスガ、私ノ見ル所ヲ以テ致シマスレバ、是ハ國防ガ主ニナッテ居ルモ
ノデハナイカト思フノデアリマス、即チ國防上必要ナル馬ノ生產ヲナサシメ
ルト云フコトガ眼目ト云フコトデアルト思フノデアリマス、產業ト云フ方面
カラ考ヘマスルナラバ、一ツハ馬ヲ生產スル所ノ馬產家ノ立場ニ立ッテ考ヘ
ルコトガ其一ツデアリマス、又今一ツハ、農耕ノ用ニ用ヰル馬ト云フコ
トニ付テ考ヘル必要ガアルト思フノデアリマス、先キニモ申シマシタ如
ク、耕作ニ用ヰル馬ハ此法案ニ依ッテ益セラレル所ハナイト考ヘルノデア
リマス、唯單ニ馬ヲ生產スル所ノ地方ニ取リマシテハ、馬ノ價格ガ低落
スルト云フコトニ付キマシテハ、誠ニ同情ニ堪ヘヌノデアリマス、ソレ故
ニ斯樣ナ地方ニ對シテハ、軍馬ノ購入價格ヲ高メルト云フコトガ當然ノコ
トデアル、之ニ對シテモ馬政委員會ニ於キマシテハ、當局ニ委員會ノ決議
ヲ以テ軍馬ノ購買價格ヲ高メラレルヤウニト云フ希望ヲ述べテ居ルノデア
リマス、然ルニ是ハ十分ニ實行ヲ見テ居ラヌノデアリマス、軍馬ノ購買價
格ヲ高メラレルナラバ、馬產地方ノ人ノ救濟ハ之ニ依ッテ出來ルノデアリ
やっ、又競馬法案ニ依ッテ耕作ニ用ヰル馬ノ改良ヲ求メルコトハ出來ナイ
ノデアリマス、或ハ極端ニ申シマスルナラバ、我ガ國ノ如キ山林面積ガ全
面積ノ八割六分ヲ占メテ居ルト云フヤウナ、傾斜ノ多イ國ニ於キマシテハ、
耕作サレル所ノ田畑ガ極メテ小サナ區劃ニ分レテ居リマシテ、而カモソレ
ガ場所ニ依ッテハ柵ノヤウナ工合ニナッテ居ル國柄ト致シマシテ、馬ノ體格
ヲ必要以上ニ大キクスルー云フコトハ是ハ不便デアル、却ッテ在來ノ馬ヲ
以テ便利トスルモノデハナイカト思フノデアリマス、即チ斯樣ナ見地カラ考
ヘマスルト、政府ガ競馬法ヲ制定シ、馬劵ノ發賣ヲ許スト云フコトハ、唯國
防上ノ目的ノミヨリ出デテ居ルト見テ然ルベキデアラウト思ヒマス、果シテ
然ラバ陸軍省ニ屬シテ居リマシタ所ノ馬政局ヲ殊更ニ農商務省ニ移管セシメ
ラレタ理由ハ何レニ在ルノデアリマセウカ、私ハ軍備縮小ノ聲ノ高イ折柄、
陸軍當局者ガ軍縮ノ表面ヲ糊塗スルガ爲ニ、一方ニ減ジテ他ノ省ニ移シ替
-ハ、簡單ニ申シマスルト軍縮ノ一ツノ手品デナイカト思フノデアリマス
ガ、陸軍當局ハ農商務省ニ馬政局ヲ移管シテ之ニ依ッテ以テ國防ノ目的ヲ達
スルコトガ出來ルト考ヘラレルノデアリマセウカ否カ、此點ヲ伺ヒタイノ
デアリマス、最後ニハ、滿洲朝鮮方面ニ競馬倶樂部ノ設立ヲ許シ、馬劵ノ發
行ヲ許スト云フ御見込ガアルノデアリマセウカ否カ、御承知ノ通リ先年大
連ニ彩票ノ發行ヲ許サレマシタ際、支那ヨリ頻々時ノ我ガ政府ニ抗議ヲ申込
ミマシテ、時ノ政府ハ斷然之ヲ禁止セラレタノデアリマス、カルガ故ニ彼地
ニ於テ競馬ヲ許シ、馬劵ノ發賣ヲ許スト云フコトハ、國際道義上如何ナモ
ノデアラウカト云フコトニ付テ、外務當局ハ懸念ヲ有ツテ居ラレタ筈ト思ヒ
マスガ、現今尙ホ政府ハ之ニ付テ同樣ノ考ヲ有ッテ居ラレルノデアリマセウ
カ否カ、以上ノ諸點ニ付キマシテ、當局ヨリ詳細ナル御說明ヲ希望イタシマ
ス
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=5
-
006・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 御答ヲ致シマス、第一ハ賭博ヲ公許シテ、詰リ馬
ノ爲ニ人ヲ犠牲ニスルヤウナコトハナイカト、斯ウ云フ御問ヒデアリマス、成
程是ハ競爭ニ依ッテ此勝負ヲ決スルモノデアリマスカラシテ、賭博類似ノモ
ノニナルヤウニ思ヒマス、併ナガラ此競馬ヲ以テ直チニ他ノ賭博ト同一ト言
フコトハ如何ノモノデアラウカ、斯ウ我〓ハ考ヘルノデアリマス、即チ此競
馬ニ於キマシテハ、馬ト乘手ト、斯ウ二ツカラ觀察ヲ下シ得ルノデ、ソレデ
アリマスカラシテ單ニ勝負ヲ判斷シ得ズシテ、之ヲ賭スルモノトハ大分趣ガ
違ウト、私ハ信ズルノデアリマス、又此競馬ヲ許スト云フコトニ付キマシテ
モ、此馬ノ判斷竝ニ乘御者ノ技倆ト云フコトト、又馬ノ履歷、血種等ニ付
テ大ニ考慮〓究ヲ要シ、人智ヲ開發セシメルコトガアル、此人智ヲ開發シ
テ、サウシテ馬ヲ知ラセ、サウシテ馬ヲ利用スルト云フコトヲ起シタイト云
フノガ、此二ツノ理由ニナッテ居ル次第デアリマス、唯射倖心バカリヲ助長
シテ、而シテソレニ依ッテ人ノ精神ヲ攪亂スル、斯ウ云フモノトハ多少趣ガ
違ウヤウニ我〓ハ考ヘテ居ルノデ、ソレデアリマスカラシテ、單ニ其方面ヨ
リ賭ケヲスルト云フコトカラ見ラレタラ、サウナルデアリマセウガ、私ハ此競
馬ニ趣味ヲ持チ來スヤウニナリマシタナラバ、今申シマシタ通リノ〓究心ヲ
起シ、而シテ其〓究ニ依ッテ馬ト云フコトヲ知リ、即チ此馬ヲ知ッテ利用スルト
云フコトニナルダラウ、斯ウ實ハ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ第二
ハ競馬ヲシナケレバ馬匹ノ改良ハ絕對的ニ出來ナイカ、斯ウ云フヤウナ御質
疑デアリマス、サウシテ此競馬ガ必要デアルナラバ、ナゼ此競馬奬勵金ヲ一
遍殖ヤシテ、之ヲ減ジタカ、斯ウ云フヤウナ御問ヒデアリマス、ソレデ競馬ヲ
セナカッタナラバ、他ニ馬匹ノ改良法ガナイカ、斯ウ云フコトニナリマスト
是ハ他ニ方法ガ澤山アルノデアリマス、アリマスルガ、唯競馬ハ、外ニ於テ
求メ得ヌモノガ求メ得ラレルコトト私ハ信ズルノデアリマス、即チ自己ノ利
害ヲ共ニシテ馬ノ事ヲ深ク〓究シテ、サウシテ馬ノ事ヲ知ッテ、今申シマス
ル通リ之ヲ利用スル、斯ウ云フコトガ私ハ他ノモノニ於テハ其比ヲ見ヌモノ
ト思ッテ居リマス、即チ競馬ヲ外ニシテ出來ナイコトハ此點デアラウト思ッテ
居リマス、ソレカラ競馬奬勵金ヲ殖シマシテ減少シタ、成程大正十年ニ十萬
圓殖エタト思ッテ居リマス、是ハ唯其年度一年限ノ增加ヲ臨時ニ支出シタト
斯ウ云フコトニナッテ居リマス、十一年度ニ於テハ其臨時費ヲ繼續スルコト
ガ出來ズシテ、之ヲ平常ニ復シタ、斯ウ云フ譯ニナッテ居リマスカラ、一年
成程一遍殖エタモノヲ更ニ減少シタト云フ形ニナリマシタガ、アレハ經常費
的ニ殖ヤス事ガ出來ナカッタ爲ニ、唯其年度ニ殖ヤシタト斯ウ云フ事ニナッテ
居ルノデアリマス、私ガ今申シマシタ所ノ競馬ノ外ニ於テ得難キ一點ガア
ル、斯ウ云フコトヲ以テ致シマスレバ、私ハモウ此問題ハ殆ド解決シ得ラレ
テ居ルモノト思ヒマス、唯私ハ玆ニ奬勵金ノミヲ以テ、ソレナラバ馬劵ヲ發行
シテ其目的ヲ達シ得ルカ、斯ウ云フ點ニ付テ一言申上ゲテ置キタイノデアリ
Pは、唯競馬奬勵金ト云フモノニ付キマシテハ、唯其賞與ト、ソレト此競馬
ニ用ヰル所ノ馬匹ノ購買ヲ補助スルト云フコトニ唯ナッテ居ル爲ニ、此競馬ニ
參與スル者ニ前申シマシタ所ノ詰リ馬ヲ知ルコトヲ奬勵サセルコトガ、ソレ
ニ於テハ十分ニ出來ナイノデアリマス、ソレデ此馬劵ノ發行ニ依ッテ多少射
倖心ヲ助長シ得ル弊ガアリマスルケレドモ、其射倖心ヲ多少利用イタシマシ
テ、利害ヲ直接ニシテ、サウシテ馬ノ事ヲ深ク研究サセ、知ラセタイ、サウ
シテ馬ノ需要ヲ漸次殖シタイ、斯ウ云フコトカラ起ッタノデアリマス、此唯
奬勵金デハ其目的ガ或點ニ於テ達シ得ラレヌ、斯ウ云フコトヲ申上ゲテ置
キタイト思ヒマス、第三點ニ於テ微温的デアル、私モ微温的デアルト思ヒマ
ス、併ナガラ之ヲ微温的ダカラシテ漸次擴張シテサウシテ行クカト斯ウ云フ
ノデアリマスガ、元來此〓温的ナラザレバ弊害ガ多出スルノデアリマス、此
弊害ヲ除去スルニハドウシテモ微温的ナラザルヲ得ヌノデアリマス、私ハソ
レデアリマスカラシテ、弊害ヲ助長スルト云フコトニ向ヒマシテハ、ドウシ
テモ是ハ防遏セネバナラヌ、斯ウ考ヘテ居リマス、此微温的デハアリマス
ガ、之ニ依テ兎ニ角利益ヲ收メタイト、斯ウ思ッテ居ルノデアリマス、ソレ
カラ衆議院ニ於テ目下成立シテ居ル十一箇所ノ外ニ尙ホ多數ノ競馬ヲ許ス
ト、斯ウ云フコトヲ申シタト云フコトデアリマスルガ、是ハサウ云フコトハ
私ハナイト信ジテ居ルノデアリマス、ト云フノハ我〓ガ此法案ヲ立テル時ニ
於テ、先ヅ一箇所ノ外ハ許可セヌ、斯ウ云フ精神デ此法案ヲ作ッタカラデア
リマス、ソレカラ第四點ハ此法案ヲ以テシタナラバ、競馬馬ヲ造ルニ偏シテ、
他ノ農耕馬等ノ方ガ減少スルデアラウ、斯ウ云フノデアリマス、是ハ我〓ト
少シク見解ヲ異ニシテ居ルノデアリマス、要スルニ此競馬ハ、昔短距離ニ於
テ、サウシテ輸贏ヲ決スル時分ニハ此極ク薄イ····極ク僅少時間ニ或距離ヲ
迅ク步ク馬ヲ利用イタシタノデアリマスガ、今日ハ其弊害ヲ知リマシテ長距
離、而モ其負擔量等モ增加イタシマシテ、其勞力ニハ堪へ得ル力ト速度ト此兩
方面カラ之ヲ觀察スルコトニナッタノデアリマス、即チ競馬ニ優秀ナル馬ハ之
ヲ種牡馬トシテ非常ニ適當スル、斯ウ云フコトニ目下ノ所デハナッテ居リマ
スソレガ爲ニ此種牡馬トシテ之ヲ利用シマスカラシテ、決シテ此農耕馬ヲ
少クスルト云フコトハ決シテナイコトト、私ハ信ジテ居ル、要スルニ優秀ナ
ル種牡馬ヲ得ルノデアル、斯ウ云フコトニナルト思フノデアリマス、ソレカ
ラ茲ニ於テ私ハチヨット我〓ガ計畫シテ居ルコトヲ申上ゲテ置ク方ガ便利ト
思ヒマスルノデ、一言玆ニ添ヘテ置キタイト思ヒマス、我〓ノ信念ハ軍馬即農
馬、農馬即軍馬、斯ウ云フ方針デ今進ンデ居ルノデアリマス、ソレデアリマ
スルカラシテ、軍馬ニモ適合シ、農馬ニモ適合スル、ソレハドウ云フ種類ノ馬
デアラウカ、斯ウ云フコトカラ〓究イタシマシテ、我〓ハ先ヅ日本ノ馬ハ主
トシテ、輕輓馬ニ適合スルコトヲ以テ、其兩用ニ適シ得ルモノト、斯ウ考ヘ
テ、其種ノ馬匹ニ最モ重キヲ置イテ居ルノデアリマス、斯ウ申シマスルト
云フト、駄馬ヤ重輓馬竝ニ乘馬ノ如キハ等閑ニ附スルカ、斯ウ云フ問モ起
リマセウガ、是ハ土地ト密接ノ關係ヲ有ッテ居リマシテ、土地ニ因リマスル
ト、乘馬ヲ持ッテ行キマシテモ、重キ馬ニ化シテ到頭輓馬ニナッテ仕舞フト云
フヤウナコトガアルノデアリマス、是ハ著シク日本デ見エマスルノハ、即チ
北海道カラ津輕、南部ノ北部ニカケマシテハ、乘馬ガ澤山出來マスガ、秋田
ニ行キマスト輓馬ニ適合スルモノガ自然ニ多クナルト云フノガ、即チソレヲ
表證シテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスルカラシテ、種牡馬ノ配置モ之
ニ適合スルヤウニ自然ニ設置スルヤウニナルノデアリマス、デ如何ニ優良ナ
ル乘馬ヲ持ッテ行キマシテモ、輓馬ニ適合ノ地ニ行キマスレバ、自然ニ輓馬ニ
ナルト云フヤウナ關係ニナッテ居ルノデアリマスカラ、此輓馬モ重イノガ良
イカ輕イノガ良イカト申シマスルト云フト、我國ニ於キマシテハ道路ノ關係
地形等カラシテ、輕輓馬ガ宜シイ、又我ガ武裝ノ關係カライタシマシテ重輓
馬ハサウ澤山要ラヌ、輕輓馬ガ多クアレバ宜イ、斯ウ云フコトニ決著イタシ
マシテアリマスカラ、輕輓馬ヲ主トシテ成ルベク蕃殖サセヤウ、斯ウ云フ工
合ニナッタノデアリマス、又輕輓馬ハ或時ハ利用シテ乘馬ニナシ得、又或時
ハ之ヲ駄馬ニモ利用シ得ルカラデアリマス、デ第五番目ニハ番狂ハセノコト
ニ付イテ御話ガアリマシタ、是ハ御尤モノ御尋デ、是デ競馬ガ甚ダシキ弊害
ヲ發生シタノデアリマス、此弊害ガ先ヅ一番ニ澤山起ッタノハ此競馬關係者
ガ馬劵ヲ買ヒ得ルカラシテ、自然ニ斯ウ云フコトノ弊害ヲ起シタダラウト思
フノデアリマス、ソレト一人デ多數ノ馬劵ヲ買ヒ得ルト、斯ウ云フヤウナ
コトガアッタ爲ニ、此起因ヲナシタモノト思フノデアリマス、ソレガ爲ニ
今囘ハ是等ノ者ノ馬劵ヲ買フコトヲ一切禁止イタシマシタ爲ニ、此弊害ハ
多少除去セラレルコトト私共ハ信ジテ居ルノデアリマス、ソレカラ番狂セ
ニ付テ十倍ヨリ戾金ヲセヌノデアリマスカラ、會社ガ甚ダ多數ノ利益ヲ得ル
カラ、之ニ依ッテ弊害ガ生ジハセヌカト、斯ウ云フヤウナ御考慮ガアルヤニ
拜承シタノデアリマス、是モ御尤モノコトト思ヒマス、併シ是ハ斯クノ如キ
コトガアリマシタナラバ、主務大臣ノ命令ニ依ッテ之ヲ他ノ增殖ノ奬勵ニ用
ヰルト云フヤウナ方法ニ致シタイト自分等ハ考ヘテ居ル、デ拂戾ノ方法ヲ
規定スルトカ云フヤウナコトガ本法文ニ書イテアルノハ、ソレ等ノ爲デアリ
やゝゝ第六項ハ學生ナドニ賣ルトカ······賣ラナイト云フヤウナコトガアルガ
果シテソレガ些ノ遣憾ナク取締ガ出來ルカ、斯ウ云フコトデアリマス、是ハ
決シテ絕無ト云フ譯ニハ是ハ保證シ難イト思ヒマス、法ノ潜ッテ爲スモノガ
頻々アル世ノ中デアリマスカラ、如何ニ法ヲ決メテ置イテモ斯ノ如キ違法者
ヲ生ジ、違法者全體ガ皆是ガ處分ヲ受ケルカト、斯ウ云フコトニナリマスレ
バ、甚ダ結構デアリマスガ、ソレハナカナカ人智ノ及ブ所デハアリマセヌ、
多少此點ニ付テハ法ヲ潜リ、サウシテ其潜ッタ罰ヲ受ケズニ濟ム者ガアルノ
ハドウモ已ムヲ得ヌコトト思ヒマス、併ナガラ是等ノコトハ周到ニ周到ナル
注意ヲ拂ヒマシテ、爲シ得ルダケ斯ノ如キ事ノナイヤウニシタイ、斯ウ思ツ
テ其取締法ヲ色〓ト考ヘテ居ル次第デアリマス、ソレカラ七項ハ國防產業ト
云フガ、恐ラク國防ガ主デアラウ、斯ウ云フノデアリマス、是ハ前ノ第四項
ニ申シマシタコトデ、大〓御分リト思ヒマス、迚モ此國防一點張デ、唯此
平時殆ド農耕ニ使ヘヌ馬ヲ澤山ニ國ニ繫蓄シテ置カウト云フヤウナコトハ、
是ハ出來得ベカラザルコトト私共ハ信ジテ居ル、即チ前ニ申シマシタ通リ、
軍馬ハ農馬ニ適合シ、農馬ハ軍馬ニ適合スト云フヨリ外ハ仕方ガナイト思ツ
テ居ルノデアリマス、之ニ尙ホ一ツノ疑點ヲ挾マレマシテ、斯ノ如ク國防ニ
必要デアルナラバ、何故之ヲ農商務省ニ渡スカ·····馬政局ヲ農商務省ニ渡ス
カ斯ウ云フノデアリマス、私ハ是ハ先年自分ガ大命ヲ拜シタ時カラ、此馬政
局ハ成ルベク早ク農商務ニ移シタイト云フコトヲ申シタノデアリマスガ、唯
其時機ガ來ナカッタ爲メニ、今年ニナッタ次第デアリマス、デ私ハ國防ハ陸軍
ノ一點張ト云フコトハ最早時勢ニ適合セヌト、私ハ考ヘテ居ルノデ、即チ各
省ガ各其職分ニ從ッテ國防ノ方ニ盡力スル、斯ウ云フコトガ私ハ自然デアル
ト斯ウ考ヘタノデアリマス、デアリマスルカラ馬政局ハ、是ハ農商務ニ移サ
ウガ、之ヲ陸軍ニ存置シヤウガ、國防ト云フコトニ付テハ一點ノ差ハナイ、
斯ウ云フコトヲ私ハ信ジテ居ッタノデアリマス、唯此金ヲ陸軍省カラ農商務
ニ移シテ、軍費ノ少イノヲ衒フト云フヤウナ小サナ考カラ之ヲ起シタ次第デ
アリマセヌ、決シテ國防ハ陸軍ガ唯一手販賣ニスルト云フコトハ、此進ンダ
世ノ中ニハ適合セヌト私ハ斯ウ思ッテ居ルノデス、又滿洲朝鮮方面ニ競馬ヲ
許スカ否カト云フ最後ニ御問ガアリマシタ、是ハ私共ハ滿洲朝鮮ニ競馬ヲ許
スヲ可トスルト云フコトニ付テ未ダ決心ヲ持タヌノデアリマス、ソレハ何故
ナレバ取締ノ比較的出來ル日本デサヘモ之ヲ尙ホ許シテ居ラナカッタノデア
リマス、其曉ニ之ヲ滿洲朝鮮ニ先ニ許スト云フヤウナ考ハ、實ハ私共ニ於テ
起ラナカッタ考デアリマス、今後ノ〓究ニテ如何決スルカ、是ハマア未定ノ
問題デアリマス、今日私ノ肚ノ裡ニハマダ決心ヲ有ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=6
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007・湯淺倉平
○湯淺倉平君 段々アトニ質問ノ御通告ニナッタ方モアルト思ヒマスカラシ
テ此上多クハ御尋イタシマセヌ、ガ私ノ了解イタシマシタ所ハ、第一ノ問ニ對
シテハ本案ハ刑法ノ賭博ノ解禁デアル、賭博ノ一部ノ解禁ヲ爲スモノデアル
ト云フ點ハ肯定セラレタヤウデアリマスカラ、此點ニ付キマシテハ御尋イタ
シマセヌ、ソレカラ最後ノ第八ハ滿洲朝鮮ニ對シテ許スカ否カト云フコトハ
未定デアルト云フコトヲ伺ヒマシタノデ、之ニ付キマシテモ此上繰返シマセ
ヌ、第二問ノ······第二問ニ關シテ御答ニナリマシタ中デ、ドウシテモ競馬ニ
依ラナケレバ馬事思想ノ增進ヲ圖ルコトガ出來ナイト云フ御答辯デゴザイマ
シタガ、現在當局ガ御執リニナッテ居リマスル乘馬團體ノ奬勵、此方法ノ如
キハ國民ヲシテ馬ニ親シマシメル所ノ方法デアリ、馬事思想ヲ增進セシメル
方法ノ一ツデアルト考ヘルノデアリマス、殊ニ地方ニ行ハレル競馬ノ如キモ
所謂競馬倶樂部、公認競馬倶樂部デハアリマセヌガ、其外ニ行ハレテ居ル地
方競馬ニ對シテ御奬勵ニナルト云フコトモ、是モ完全デハアリマスマイガ、
矢張リソレ等ノ目的ヲ達スル一ツノ方法デアルト思フ、殊ニ乘馬團體ノ如キ
最モ該思想ノ奬勵ニナルコトト考ヘルノデアリマスガ、乘馬團體ノ奬勵ト云
フガ如キモノデハ、馬事思想ノ發達ヲ圖ル所以デナイ、斯樣ニ御言明ニナル
ノデアリマセウカ、ソレカラ第三問ニ付キマシテハ、是ハ半バ了解イタシマ
シタ、即チ引續イテ、現存ノ競馬倶樂部以外ニ許可ヲスル見込ハ無イトノ御
答辯デアリマシタカラ、其點ハ了解イタシマシタ、併ナガラ本案ノ各種ノ制
限ガ、ココニ初メテ刑法ヨリ禁ヲ解カレタ、此案ガ成立ツモノト致シマシタ
ナラバ、此各種ノ制限ハ漸ヲ追フテ、競馬ヲ行ヒ、馬劵ノ發行ヲ便利ナリトス
ル所ノ當事者ノ熱心ナル運動ガ之ヲ動カスト云フコトヲ豫見スルモノデアリ
やっく、此點ニ付キマシテハ、或ハ將來ニ對スル豫見ノ相違トモ見ルベキモノ
デアルト思ヒマスカラ、此點ハ重ネテ御尋ヲ致シマセヌ、第四ノ農耕ニ用ヰ
ル馬ノ如キハ若シ優良ナル馬ノ血ヲ混ヘテ、改良スルト云フコトニナリマス
レバ其飼養管理ガ困難デアル、即チ駻ノ高イ馬ノ血ガ在來ノ駻ノ鈍イ馬ニ混
ジルト云フコトニナリマスルカラ、極メテ微妙ナ關係ニ於テ是ガ管理ヲ注意
シナケレバナラヌ、飼養ノ方ニ於テモ亦困難ニナル、又馬ノ値ガ高クナル、
斯樣ナコトニナッテ、其結果ハ左樣ナモノヲ用ヰルヨリモ、値ノ安イ、飼養
管理ノ便利ナモノヲ用フルト云フコトニナリハシマセヌノデアリマセウカ、
殊ニ御承知ノ通リ、馬ノ値ノ高イ爲ニ、或ハ飼養管理ノ爲ニ多クノ費用ヲ要
スルガ爲ニ、朝鮮ノ牛ガ續々トシテ這人ッテ居ルヤウデアリマス、是ハ飼養
管理ノ費用ノ安イモノニ就クト云フ自然ノ經濟上ノ原則ニ從ッテ居ルノデハ
アリマセヌカ、果シテサウデアルト致シマスレバ、競馬馬乃至乘馬ト云フ方ハ
增殖モシ、發逹モ致シマセウガ、農耕用ノ馬、或ハ荷物ヲ運ブ所ノ馬ハ其數
ヲ或ハ減ズルト云フヤウナ結果ヲ起シハ致シハセヌカ、此點ニ付キマシテノ
御答辯ハドウモハッキリ分リマセヌ、ソレカラ八百長ニ依ッテ、公益法人ナル
モノガ不當ノ利得ヲ得ル機會ヲ與ヘル虞ガアルト云フ點ニ付キマシテノ御答
辯ガ事實左樣ナ虞ノアルト云フコトダケハ御認メニナッタヤウデアリマスル
ガ、之ニ對シテハ相當ノ取締ヲ爲スト云フ御答ニ止ッテ居リマシテ、私共ハ
其立證ガ困難デアル、取締ガ殆ド不可能デアルト云フ杞憂ヲ懷キマスル點ニ
付キマシテハ、了解ヲ致スコトガ出來ナカッタノデアリマスガ、是モ或ハ究
極所見ノ相違ト云フコトニ歸スルカモ知レマセヌカラ、之ニ付キマシテモ御
尋ネハ致シマセヌ、第六ノ點ニ付キマシテモ、取締ガ出來ル出來ナイト云フ
所見ノ相違ニ止マル點ニ付キマシテハ御尋ハ致シマセヌガ、制裁規程ガ缺ケ
テ居ルノデハナイカト云フ點ニ付キマシテハ、何等御答辯ガ無カッタヤウニ
考ヘルノデアリマス、第七ノ點ニ付キマシテハ繰返シテ御尋ハ致シマセヌ、
約メテ申シマスルト、乘馬團體ノ奬勵ト云フガ如キハ馬事思想ノ普及發達ニ
非常ニ刺激ノアルモノデアル、斯樣ナ方法ガアルノデハアリマセヌカ、即チ
穩健適正ナ方法、國民ノ風紀ヲ頽廢セシメナイデ、却テ國民ヲ質實剛健ナラ
シムル適當ナ方法ガ他ニ存スルノデハナイノデアリマセウカ、ト云フ點ニ付
キマシテノ御答辯ハ、聊カ不滿ヲ感ジテ居ルノデアリマス、其點ト、ソレカ
ラ特ニ申シマスレバ、第六ノ點ニ付キマシテハ御答辯ガ無カッタ、第四ノ點
ニ付キマシテハ、御答辯ガ要領ヲ得ナイ、斯樣ニ感ズルノデアリマス、其外
所見ノ違ヒマスル點、或ハ了解イタシマシタ點ニ付キマシテハ重ネテ御尋ヲ
致シマセヌ
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=7
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008・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 御答イタシマス、第二點ニ付キマシテハ競馬デナ
ケレバ、馬匹改良ノ途ガナイカ、斯ウ云フコトデアリマス、私ハ競馬ニ於テ
ハ他ニ於テ是程確實ニ出來ルモノガナイ一點ガアル、其一點ヲ唯申上ゲタノ
デアリマス、他ノコトハ私ハソレデアリマスカラ申上ゲナカッタノデアリマ
ス、乘馬團體ノ如キハ、無論是ハ馬事思想ノ普及ニナルノデアリマス、デア
リマスカラ、是ハ目下旣ニ之ヲ奬勵シ又之ニ成ベク補助ヲ與ヘヤウト云フコ
トハ、實際行ッテ居ルノデ、私ハ唯此競馬ノ如キハ、多數ノ人間ガ集リマシ
テ、サウシテソコデ〓究ヲスル、斯ウ云フコトガ出來ル、其一點ニ付テ唯私
ハ申上ゲテ、他ハ申サヌト、斯ウ申シテ居ッタノデアリマスルカラ、ソコニ
於テ缺ケル所ガアッタノデアリマス、ソコハ御了解ヲ願ヲテ置キマス、ソレ
カラ第四點ニ於キマシテ、駻ノ良キ馬ヲ以テ種馬トスルカラシテ、保管管理
ガ困難ニナルダラウ、斯ウ云フノデアリマスルガ、駻ノ良イノハ乘ッテ、サ
ウシテ競走スル、或ハ長距離ヲ走ラス、又重イ物ニ耐エサス、サウ云フ時ニ
於テ起ル駻デアリマシテ、今マデ日本デアリマシタ所ノ三春馬ノ如キ唯ピン
〓〓スルノヲ即チ駻ノ良イト云フノデハアリマセヌ、駻ノ良イ、即チ洋種ニ
ナリマシテ、馬ノ保管管理ハ非常ニ樂ニナリマシタ、例ヘバ我ガ騎兵隊ニ於
キマシテ、其初メハ五頭若クハ六頭ヲ一人デ持ツト云フコトハ非常ニ困難デ
アリマシタ、今日ハ改良ヲ來タシマシテ二十頭若クハ其以上モ一人デ保持シ
得ルヤウニナッタノデアリマス、是ハ私ハ管理ノ困難ト云フコトハナカラウ
ト思ヒマス、又飼養ニ於テハ尙更ノコトダラウト思ヒマス、ソレカラ馬ガ良
クナレバ、是ハ價ガ高クナルノハ相當ト思ヒマス、其代リニ良クナッタダケ
ノ價ガ矢張リアリマスルノデ、是ハ馬ノ糶場ナドニ行キマスルト云フト、良
キ馬ノ方ガ早ク糶落チテ、惡馬ガ殘ルト云フ關係ハ、是ハ馬ノ糶場ニ行クト
種々其證明ヲ見ルノデアリマス、今日ハ矢張リ良キモノヲ用ヰテ多數ノ仕事
ヲシヤウト云フ念ガ起ッテ參リマシタ、是ハ私ハ馬ノ改良ト同時ニ馬ノ値ガ
上ガルコトハ至當デアリマセウガ、ソレガ爲ニ飼養ガ減ズルト云フコトハナ
カラウト、斯ウ信ジテ居リマス、ソレカラ第五ノ番狂ハセ、是ハ私ハ利益カ
ラ斯ウ云フコトヲ故意ニヤルコトガ多イダラウト斯ウ思ヒマス、ソレガ爲ニ
其利益ト云フコトノ本ヲ斷ッタナラバ、斯ノ如キ弊害モ多少減却シ得ルダラ
ウ、實ハ斯ウ云フ意味デ申上ゲマシタノデアリマスガ、私ノ說明ガ惡カッタ
爲ニ其點ガ貫徹シナカッタラウト思ヒマス、ソレカラ第六ノ點ニ於テノ取締
ト云フコトハ、私共ガ細則ヲ設ケテナシ得ルダケ之ヲ取締ッテ行キタイト云
フノデ、實ハ〓究シテ居ルト云フコトヲ、唯申上ゲタニ過ギマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=8
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009・湯淺倉平
○湯淺倉平君 第六ノ點ニ付テハ制裁規定ガ〓ケテ居ルノデハナイカト云フ
點ニ付テハ遂ニ御答辯ガ無イヤウデアリマスガ、其點ヲ一ツ······ソレカラ第
五ノ八百長ノコトニ付キマシテハ陸軍大臣ハ私ノ當初說明イタシマシタコト
ヲ御了解下サラヌヤウニ見エルノデアリマス、私ハ過去ノ競馬ニ於テハ賭ヲ
ナスモノガ八百長ヲナサシメルト云フヤウナコトガ有ッタデアリマセウガ、
今度ハ倶樂部ノ關係者ガ八百長ヲナサシメタ場合ニ於テハ倶樂部ガ非常ナ利
得ヲスル、或ハ馬ノ持主ガ或ル場合ニハ賞金ヲ得ンガ爲ニ、或ル塲合ニハ賞
金ニ望ミナク立派ナ馬ヲ持ッテ居ルト云フ虛榮心ノ發露ヨリ致シマシテ八百
長ヲナサシメル斯樣ナ場合ガ無キニ限ラヌト思フノデアリマス、斯ノ如キ場
合ニ於テノ取締ト云フコトガ困難デアル、困難デアルト云フヨリモ至難デア
ル、殆ド立證スルコトガ不可能デハナイカト斯樣ナコトヲ御尋シタノデアリ
PX、併ナガラ此點ニ付キマシテハ、問答ヲ繰返シマシタ所デ、ソレハ取締ル
ノデアル、出來ルダケノ努力ヲスルノデアルト、斯ウ云フ御答辯以上ノ御答ヲ
得ルコトハ出來マイト思ヒマスカラ、其點ハ最早御尋ヲ致シマセヌ、唯一點
殘リマシタノハ制裁規定ガ缺ケテ居ルノデハナイカト云フ點ニ付テハ、何ノ
御答モナイヤウデアリマス、是ハドウ云フ譯デアリマスカ、其點ダケヲ御尋
イタシマシテ是デ終ル積リデアリマス
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=9
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010・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 第五點ノ番狂ハセノコーニ付キマシテハ、私ハ唯
此競馬ニ關係スル者ガ馬劵ヲ買得タ爲ニ自分ノ利益ニ關係スルコトガアル爲
ニ、八百長ガ多々アッタノデアリマス、ソレカラ此競馬會社ガ乘御者ト結託
シテサウシテ此八百長ヲヤラセル、斯ウ云フコトニ付テハ各〓其制裁ノアル
ト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、詰リ此乘御者ガ馬劵ヲ買得タ爲ニ其利
益ヨリシテ詰リ入百長ヲヤル、サウ云フコトハ根絕シタイト云フノデ、是ニ
ハ詰リ馬劵ヲ買フコトヲ禁ジタ、之ニ依ッテ此方面カラ來ル弊害ハ減少シ得
ルダラウ、ソレカラ會社ト乘手ト結託シテヤリマシタ時ニハ、十倍以上拂戾ガ
出來ナイト云フノデ、其拂戾以外ノ金ハ皆利益ニナルヤウニ御考ノヤウデア
リマスルカラ、ソレハサウデハナイ、ソレガ爲ニ拂戾方法等ヲ規定シテ、斯
ノ如キコトガアッタナラバ、他ノ改良增殖費ニ當テル爲ニサセルノデアルト
云フコトヲ當局大臣ハ申上ゲタノデアリマス、デ今ノ名譽心カラ來ル八百
長ト云フコトハ、私ハ有ルト信ジマス、是ハ道德ノ制裁ニ俟ツヨリ外ナカラ
ウト思フ、殆ド湯淺君ノ申サレタ通リ、微妙ナル關係デアリマスルカラ、是ハ
判斷ハ餘程ムヅカシカラウト思フ、從ッテ之ニ制裁ヲ加ヘルコトモムヅカシ
カラウ、是ハ自然ニ殘ルノデアリマスカラ、是ハ道德ノ制裁ニ委スルヨリ外
ナカラウト自分ハ信ジテ居ル、サウシテ第六ノ方ノ學生ノコトニ付キマシテ
ハ學生ガ買ヒマシテモ、學生ニハ其罪ヲ著セルト云フコトハ規定ガナイノデ
アリマス、唯〓禁ヲ犯シテ學生ニ賣ッタモノハ制裁ヲ受ケルト云フコトガ載。ツ
テ居ルニ過ギナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 湯淺君ハモウ御質疑ハ終リマシタカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=11
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012・湯淺倉平
○湯淺倉平君 甚ダ要領ヲ得マセヌデゴザイマスケレドモ、質問ハ是デ此場
合ハ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 上山君ニ伺ヒタイト思ヒマスガ、是ヨリ上山君ニ
發言ヲ許サウト存ジマスガ、上山君ノ御質疑ハ大分時間ヲ要シマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=13
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014・上山滿之進
○上山滿之進君 少シバガリ時ガ掛リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) チヨット聞エマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=15
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016・上山滿之進
○上山滿之進君 少シバカリ時ガ掛リマス、チヨット何十分ト極メテ申上ゲ
兼ネマスガ十分カ十五分デハ濟ミマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 然ラバ休憩ヲ致シマシテ、午後ハ一時ヨリ開會イ
タシマス
午前十一時四十七分休憩
午後一時十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君)是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、 午前ニ引續キマシテ
居リマス通告順ニ依リマシテ質疑ヲ許シマス、上山君
〔上山滿之進君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=18
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019・上山滿之進
○上山滿之進君 競馬法案ニ付キマシテ二三點質疑ヲ致シタイト思ヒマス、
私ノ問ハムト欲シテ居リマシタコトハ大部分午前ニ湯淺君カラ尋ネラレマシ
テ政府ガ是ニ答辯ガアリマシタ、政府ノ答辯ニハ了解ノ出來ナイ點ガ澤山ア
リマスケレドモ、凡テ其重複スル點ハ省キマシテ唯二三點ダケニ付テ御尋ネ
シタイ、陸軍大臣ハ午前ノ御答辯ニ於テ此競馬法案即チ馬劵ヲ許スコトガ刑
法ニ禁ゼラレタル賭博ノ一部分ノ禁ヲ解イタモノデアルト云フコトハ御認メ
ニナッタ、私ノ聽カント欲スル所ハ、今日ノ如キ時代ニ於テ刑法ノ賭博ノ禁
マデ解イテ、何故馬ノ一部分ノ改良ヲシナケレバナラヌカト云フ點ニアルン
デアリマス、每〓而カモ數年來此議場ノ問題ニナリマシ々綱紀ノ肅正ヲドウ
御覽ニナルノデアリマセウカ、近年ノ社會ノ風〓ノ弛廢シタコト、綱紀ノ紊亂
シタコト、之ニ伴ッテ官吏社會デハ官紀ノ廢頽シタコトハ、普ク人ノ知ル所
デアッテ、現內閣ハ綱紀ノ振肅ヲ以テ重要ナル使命トシテ立ッタノデアリマ
ス、サレバコソ現内閣ハ就任ノ初メニ於テ其三大政綱ノ一、而カモ其筆頭ニ綱
紀ノ振肅ヲ揭ゲテ居ルノデアル、而シテ內閣成立以來茲ニ八箇月、如何ナル
點ニ於テ綱紀振肅ノ實ガ擧ッタノデアリマセウカ、之ヲ言フコトヲ甚ダ私ハ
遺憾トスルノデアル、ソレハ別ト致シテ、斯ノ如キ事情ノ下ニアッテ更ニ風
紀ヲ紊亂シ、綱紀ヲ壞廢スルト云フヤウナコトヲナサルト云フコトガ、ドウ
シテモ諒解ガ出來ナイ、此點ニ付テ今少シ徹底シタ御論ヲ伺ヒタイ、陸軍大
臣ハ陸軍事務ノ主管者デアリマスノデ、斯ル大體問題ニ付テハ餘リ感興ヲ御
惹キニナラヌカモ知レマセヌ、併シ國務大臣トシテハ、最モ深ク御考慮ニナ
ラナケレバナラヌコトデアル、私ハ斯ル立場ニ居ラレル陸軍大臣ノ御答辯ヲ
伺ハウト申サヌ、陸軍大臣ガ御答ヘニナッテモ差支ハアリマセヌガ、出來マ
スナラバ國政ノ全般ヲ背負ッテ居ラレル總理大臣ノ御答ヲ伺ヒタイト思フノ
デアリマス、其次ニ伺ヒタイコトハ唯今提出ニナッテ居リマス競馬法案ト馬
政委員會トノ關係デアリマス、私ハ馬政委員會ニハ何等ノ關係ヲ有ッテ居リ
マセヌノデ、此質問ヲ發スルニ極メテ便利ナ立場ニ在ルト自分ハ思フノデア
リマス、抑モ馬政委員會ハ何ノ爲ニ設ケラレタ、馬ノ行政ニ關スル重要ナル事
項ヲ諮問スルコトニナッテ居ルダラウト思フノデアリマス、馬ノ行政ニ關ス
ル最モ重要ナル事項ノ一ツニ馬劵問題ガ無イト仰セニナルノデアリマセウ
カ、寧ロ馬政委員會ノ設ケラレタノハ、從來賛否兩論ノ紛糾シテ居ッタ馬劵
問題ヲ解決スルノガ私ハ唯一ノ目的デアラウト思フ、然ルニ拘ラズ此度提出
ニナリマシタ競馬法案ハ馬政委員會ニ掛ケナイ、馬政委員會ノ議ヲ經ナイ
デ唯馬政委員會ニ斯ノ如ク議ガ決定シタト云フコトヲ報告シタニ止ッタサウ
デアリマス、凡ソ政府ガ或事項ヲ審議スルニ必要ナリトシテ設ケタ機關ガア
リナガラ、其機關ニ豫テ審議セント欲シタ重要ナル問題ヲ諮問シナイデ、俗
ナ言葉デ申セバ出シ拔イテ、サウシテ進行ヲスルト云フコトハ、ドウ云フ譯
ナノデアリマセウ、甚ダ當局ノ御態度ニ付テ私ハ疑問ヲ抱カザルヲ得ナ
イ、自ラ設ケタ重要ナル機關ヲ自ラ輕ンズルト云フコトガ、軈テ又官紀ノ廢
頽ト云フコトニモナルヤウニ私ニハ考ヘラレル、此惑ヒヲ第二ニ解イテ戴キ
タイ、第三ハ競馬法案ノ提出ノ時期ニ付テノ御尋デアリマス、御承知ノ通リ
ニ馬政ハ從來陸軍ノ所管デアリマシタケレドモ、大正十二年度ヨリハ農商務
省ノ所管ニ移ルコトノ計畫ヲ現內閣ハ立テラレタ、現ニ唯今色〓ノ點ニ於テ
其豫算ガ審査サレテ居ル最中デアリマス、惟フニ是ハ議會ノ承認モ經テ政府
ノ豫定通リ大正十二年度即チ來四月一日、更ニ詳シク申シマスレバ今日ヨリ
二日ノ後ニハ馬政事務ハ全部農商務省ニ移ルノデアリマス、此時期ニ於テ競
馬法案ナルモノヲ陸軍省カラ御出シニナッタト云フコトハ、ドウ云フ趣意デ
アリマスカ、成程事務ノ引繼ギノ場合ニ當ッテ、引繼ノ爲ニ何カ必要ナ過渡
ノ規程デモアレバ、ソレハ當然ノ處置デアリマセウ、併ナガラ競馬問題馬劵
問題ハ馬政ノ上ニ非常ナ重大ナル位置ヲ有ッテ居ルモノデアル、サウシテ是ハ
事務ノ引繼ギニ對シテ何等ノ關係ヲ有タナイ問題デアルト云フコトハ申スマ
デモナイ、ソレヲ此機會ニ於テ御出シニナッタコトハ如何ニシテモ、私ニハ
諒解ガ出來ヌノデアリマス、凡ソ斯ル重大ナル問題ハ其法案ヲ立テ、及ビ之
ヲ實行スル人ガ同一デアル事ヲ必要トスル、如何ニモ農商務大臣モ國務大臣
トシテ此案ニ御賛成ニナッタデアリマセウ、併ナガラ此案ハ明カニ農商務省
デハ審查セラレナカッタ案デアルト私ハ思フ、此案ガ通過ノ曉ニ於テ陸軍大
臣ハ何等ノ責任ヲモ持タナイノデアリマス、是ハ申スマデモナイコトデアリ
やくろ此案ガ出來テ其責任ヲ持ツ者ハ農商務大臣デアル、農商務大臣一個人
ハ現在ノ農商務大臣一個人ハソレハ種々ナ事情カラ何時御更リニナルカ知
レマセヌガ、併ナガラ農商務省ハ永久ニ其責任ヲ有タナケレバナラヌ、尙ホ
人ニ付テ申シマスト、大臣ハ兎モ角モトシテ是カラ先キ實行ノ責任ヲ持ツ者
ハ、實行ノ衝ニ當ッテ苦勞ヲスル者ハ何人カト云フト、農商務省ノ畜產課ノ
人〓デナケレバナラヌ、畜產局ニナレバソレ等ノ人〓ハ其局ニ附屬シテ相當
ノ苦勞ヲシナケレバナラヌ、其實行ノ衝ニ當ルベキ人〓ハ此法案ニ何等ノ意
見ヲモ述ブルコトガ出來ナカッタデアラウト思フ、或ハ之ヲ一見サセラレテ
ハ何カ少々申シタカ、ソレハ私ハ知リマセヌガ、併シ此案ヲ本當ニ實行的ニ
考ヘテ自分ガ責任ヲ取ッテ實行スルト云フ立場カラ考ヘルノト、サウデナイ
ノトハ、其審査ノ程度ニ於テ甚ダシキ深淺ノ差ノアルコトハ、申スマデモナ
イコトト思フノデ、何故ニ此馬劵法案ト私ハ申シマス、馬劵法案ガ必要ナリ
トシテモ、何故ニ農商務省ニ馬政ガ管轄ヲ移サレタ後ニ、農商務省デ徐ロニ
審議ヲ盡シテ而シテ後ニ提出スルカ、或ハシナイカ、提出ヲスルトシテモ如
何ナル形ニ於テ提出スルト云フコトニ決メラレナカッタデアルカ、陸軍大臣
ハ唯〓斯ウ云フムヅカシイモノヲ御決メニナッテ、御決メニナリ放シデ後デ何
等ノ責任ヲ御持チニナラナイ、サウシテ此立案ニ付テ深ク關係ヲ持タナイ、
或ハ何等ノ關係ヲ持タナイ農省務省ノ人〓ガ、此實行ノ苦勞ニ當ラナケレバ
ナラヌ、斯ウ云フ不道理ノコトハ是ハ私ニハ了解ガ出來ヌノデ、此點ヲ御說
明ヲ願ヒタイ、是ハ陸軍大臣ガ御答辯下スッテ何ノ差支ハアリマセメガ、行
政全般ノ統一ヲ保ッテ行クト云フ意味ニ於テ此問題ハ頗ル重大ト思ヒマスカ
う、御都合次第デ總理大臣カヲ御答下サレバ尙ホ結構デゴザイマス、次ニ伺
ヒタイノハ馬政ト產業トノ關係デアリマス、競馬法案ハ國防及產業ノ爲ニ提
出セラレタト云フ陸軍大臣ノ御說明デアリマス、緣ヲ迪ッテグル〓〓廻タラ
バ、產業ニモ關係ガアリマセウガ、直覺イタセバ、實ハ產業ニハ餘リ關係ノ
ナイ案ダト私思フ、抑〓此馬ノ行政ト云フモノヲ將來ドウシタラ宜イカト云
フコトハ、頗ル重大ナ問題デ、ナカナカ困難ナ問題デアル、サレバコソ以前ハ
一般ノ馬ノ行政ハ農商務省デ所管シテ居リマシタガ、陸軍方面トノナカナカ
折合ガ困難デ、遂ニ內閣直屬ノ機關トシテ馬政局ガ設ケラレ、其後ニ馬政局
ガ陸軍ニ移ッテ、又今度農商務省ヘ移ッテ行クト、斯ウ云フ歷史ヲ持ッテ居ル、
陸軍當局ノ希望トシテハ、內地ニ於テ今日ノ百五十萬頭以上ニ多大ノ馬匹ノ
頭數ヲ殖シタイト云フコトガ一箇條デアルラシイノデアリマス、其點ニ付テ
伺ヒタイ、本來土地ニ關スル產業ノ發達ノ歷史ヲ見マスルト、種々ノ變遷ヲ
經テ、其中デ牧畜ナルモノハ其土地ガ發達スレバスル程衰へテ來ルノガ當然
ノ順序デアル、先年嚴手縣知事ヲシテ居ラレタ私ノ友人ガ、巖手縣ノ產業ノ
發達ヲ計ラントスレバ馬ヲ廢メルヨリ外ニ途ガ無イト云フコトヲ公言ヲシ
テ、其爲ニ大變ニヤカマシイ問題ヲ起シタコトガアリマス、此言葉ハ縣知事
トシテハ聊カ矯激ニ亙ッテ居ッタダラウト私モ思フ、併ナガラ其言葉ノ中ニハ
深キ眞理ヲ含ンデ居ルコトヲ同時ニ認メザルヲ得ヌノデ、私ハ今日直チニ產
馬事業ヲ潰シテ仕舞ハナケレバナラヌト云フノヂヤアリマセヌ、凡ソ事業ノ
發逹スルノニハ、ソレゾレノ經路ガアッテ、又各〓歷史ヲ持ッテ居ルコトデ、
一朝一夕ニ人爲ヲ以テ左右スルト云フコトハ勿論出來ナイノデアリマス、又
出來テモスベキコトデハナイ、自然ノ順序ヲ經テ、盛衰共ニ其受クベキ當然
ノ運命ニ歸著スベキヨリ外ハ無イ、決シテ產馬事業ヲ呪咀スルモノデナシ、
又現在ノ產馬事業ノ狀態ヲ破壞シヤウトスルノデハアリマセヌ、唯〓經濟
理法ハ、遺憾ナガラ牧畜業ガ世ノ發達ト伴フテ其勢ヲ減ジテ、而シテ他ノ地
域ニ向ッテ更ニ其生存發達ノ場所ヲ求メルト云フコトダケヲ申スノデアリマ
ス、其意味カラ致シテ日本ノ內地ハ近代、殊ニ此明治維新以來驚クベキ進步
發達ヲ遂ゲテ、其利用狀態ガ大イニ進ンダノデアリマス、此土地ニ於テ現在
ノ產馬事業ヲ維持スルト云フコトスラ旣ニ多大ナ困難ヲ嘗メナケレバナラナ
1、然ルニ更ニ其頭數ヲ增加サセル、之ガ爲ニ廣漠タル牧場ヲ新ニ立テヤウ
ト云フヤウナコトハ行ハルベキモノデナイ、將來ノ產馬政策トシテハ滿蒙ノ
如キ土地ノ利用率ノ低イ方面ニ向向テ、其發展地ヲ求メナケレバナラナイ、
斯樣ニ私ハ考ヘルノデアリマス、殊ニ國防ノ見地カラ言ヒマスルト、私ハ國
防ニ付テハ全然素人デアリマスガ、素人ナガラ思フニ、將來萬々一陸軍ノ大
兵ヲ動カスコトアリトセバ、蓋シ亞細亞ノ東北ノ部分デアラウト思ハレル、
果シテサウデアッタナラバ、其方面ニ於テ軍馬ヲ養成スルト云フコトガ國防
上カラモ適當デナイカト考ヘルノデアリマス、是ハ全然素人ノ申スコトデ、
私確信ヲ持チマセヌケレドモ、サウ云フ風ニ素人ナガラ考ヘテ居ルト云フコ
トヲ附加ヘテ申上ゲルノデアリマス、要領ハ將來ノ產馬事業、是ハ內地ノ關
係、及ビ植民地ノ關係、之ニ付テノ御考ヲ承リタイ、是ハ陸軍大臣カラ勿論
承リマスルガ、實ヲ申セバ、馬政ガ農商務省ヘ移ッテ、軍馬ノ關係、農馬ノ關
係其他各種ノ馬ノ用途ニ付テ、公平ニ愼重ナ調査ヲ農商務省ガ遂ゲタ上デ、
斯クノ如キ問題ヲ決定シテ貰ッテ、サウシテソレヲ我〓ガ承ルコトガ最モ望
マシイコトナノデアリマス、今日承ルコトハ其點ダケデ云フト適當デナイト
思ヒマス、併ナガラ斯ル問題ガ矢張リ今ニ馬政局ヲ捨テントセラルル陸軍カ
ラ提出セラレタ以上ハ、矢張リ馬ニ付テ各省大臣ノ中デ比較的智識ヲ持ッテ
居ラレルト推定セザルヲ得ナイ陸軍大臣カラ此點ノ御答辯ヲ伺ヒタイ
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=19
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020・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 御答イタシマス、第一點ノ刑法ノ禁ヲ解イテ、此
風〓上ヲ害スルト云フノハ、綱紀肅正ニ害ガアラウ、斯ウ云フコトデアリマ
ス、私ハ本日午前ニ於テ是ガ全然賭博デアルヤ否ヤト云フコトハ私ハ申上ゲ
ズニ、此競馬ト云フモノニ付キマシテハ、斯ノ如キ著眼點ガアルカラシテ著
シク是ガ違ッテ居ルヤウデアル、斯ウ云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、是
ハ刑法ノコトニ關シマシテハ、司法當局者ヨリ須ク詳細ニ說明シテ頂戴シタ
方ガ宜カラウト思ヒマス、ソレデ風〓ヲ害スル、斯ウ云フコトデアリマシタ
ガ、私ハ此法案ヲ說明イタシマスル時ニ付キマシテモ、此風〓ヲ害スル點ハ
著シク注意ヲ密ニシテ、サウシテ是等ノ弊害ヲ杜絕スルコトニ努メテ、サウ
シテ今度ノ法案ニ於テハ此風〓ヲ害スルト云フコトハ、大體ニ於テ其要ヲ得
タモノト實ハ考ヘテ居ッタノデアリマス、ソレデアリマスカラ、綱紀肅正ヲ
一般ニ行フト同時ニ此競馬法ヲ施行シテ、尙ホ其監督ヲ密ニシタナラバ、此
風〓ヲ紊亂スルト云フコトハ〓略之ヲ杜絕シ得ルモノト信ジテ居ルノデアリ
丁くゝソレカラ第二點ノ問題ニ於キマシテ、馬政委員會ハ主トシテ此競馬法
ニ付イテ設ケラレタ、斯ウ云フヤウナコトデアリマス、是ハ此事モ問題ト
ナッテ付議サレタコトデアリマス、此外ニ付テモ、重要ナ案件ガアリマシ
テ、是ハ各〓其當時付議セラレタノデ、第一期計畫ニ於キマシテハ、大體其
問題ガ〓究サレ終ッテ、殘ッテ居ルノガ、唯此馬劵問題ダケデアリマス、併
シ馬劵問題ト云フコトニ付キマシテモ、其時期ト方法ハ廟議ニ委セルガ、兎
ニ角此馬匹ノ旺盛ヲ來スノニハ、此馬劵問題モ一方法ト云フコトガ會議ニ於
テ認メラレタノデアリマス、サウシテ此會議ニ於テ著シク馬劵問題ハ詳細ニ
論議サレマシテ、大體ニ於テ此缺點等ハ遺憾ナク摘發サレマシテ、凡ソ是ダ
ケノ摘發セラレタモノヲ防止イタシマシタナラバ、先ヅ風〓ヲ害スルコトガ
出來ナイダラウト云フ實ハ方針ヲ得タヤウニ、私ハ考ヘタノデアリマス、ソ
レデアリマスカラ、此論議サレテ改正ヲ要スル點ヲ詳細ニ考ヘマシテ、殆
ド此消極的ニ之ヲ立案イタシマシタナラバ、私ハ實ハ其意思ヲ得タモノト考
ヘタノデアリマス、シテ時期モ漸次切迫ニナッテ居リマシテ、此會議ヲ開ク
ノ時日ヲ失フト云フヤウナ虞ガアリマシタ爲ニ、敢ヘテ會議ヲ開カヌトカ云
フ積リデハナカッタノデアル、其時機ヲ得ズ甚ダ殘念デアッタ次第デアリマ
ス、ソレハ旣ニ決定イタシマシタ爲ニ唯之ヲ報〓ヲスルト云フコトニ致シタ
次第デアリマス、デ斯ウ云フ譯デアリマシテ、私ハ此會議ヲ決シテ無視シタ
譯デハアリマセヌ、其會議ニ論議サレタコトハ著シク尊重シタノデアリマ
ス、尊重イタシマシテ成案ヲ更ニ熟議ヲ願ヒタカッタノデアリマスガ、右ニ
申シマシタ譯デ其時機ヲ得ナカッテ、私ハ甚ダ殘念ニ思ッテ居ル次第デアリマ
ス、決シテ此無視シタト云フ譯デハゴザイマセヌ、是ハ御了承ヲ願ッテ置キ
タイト思フ、第三點ハ此法案ノ提出ノ時機ニ付テ御尋ネガアッタノデアリマ
ス、此案ヲ作リマシテ之ヲ完成スルニ付キマシテ、農商務省ノ當局者トハ熟
議ヲ致シマシテ、農商務省ニ移管シヤウガ、陸軍省ニ於テ之ヲ處理シヤウ
ガ、決シテ異存ノナキマデニ熟議ヲ實ハ凝シタノデアリマス、ソレデアリマ
スカラシテ、實ハ是ハ農商務省ト同時ニ本省ハ出サウカト、斯ウ云フ議モア
リマシタケレドモ、是ハ目下所管ガ陸軍省ニナッテ居ルカラ、陸軍大臣ノ名
デ出スト云フコトニ、實ハシタノデアリマス、デ農商務大臣トモ其協議ハ
宜ク致シマシテ決シテ農商務省ニモ之ニ付テハ、此案ニ付テハ異存モナク、
此實行ニ付テハ又異論ガナキ筈デアリマス、而シテ何故之ヲ農商務省ニ移ス
時期ニ於テ提出シタカ、斯ウ云フコトニ付イテ申上ゲマス、是ハ御存ジノ通
リニ會計ノ十一年度ニ於キマシテ、馬匹ガ著シク減少サレマシテ、陸軍ニ於
キマシテモ年ニ千六百頭ノ馬ノ購買ヲ減少セネバナラヌ、斯ウ云フコトニ
ナッタノデアリマス、百五十萬頭アル中デ千六百頭ノ購買ガ減ッテモ、馬產地
ニハ何等關係ガナイヤウニチヨット考ヘラレマスガ、決シテサウデハナイノ
デアリマス、要スルニ軍馬ノ購買ガ一糶場ニ於テ二、三頭デアッタ所モアリ
マスルガ、之ニ依フテ此糶場ノ景況ヲ維持シテ行クト云フヤウナ狀況デアリ
マス、現ニ十一年度ノ秋ノ購賣ニ掛ッタ時ニ是等小サナ糶場ヲ皆購買ヲ止メ
ルト云フヤウナコトニナリマシテ、其糶場ニ非常ナ打撃ヲ與ヘマシタ爲ニ、
產馬地ニ恐慌ヲ來タシタ、斯ウ云フコトデアリマスカラシテ、何等カ兎ニ角
之ニ代ッテ馬匹ノ生產ヲ多クスル方法ヲ求メネバナラヌ、斯ウ云フコトガ
切ナル爲ニ、此一萬三千頭ノ軍馬ノ減少シタノハ、此一大時期ヲ茲ニ劃シタ
モノト信ジマス、之ヲ補足スル爲ニ一日モ緩フスルコトガ出來ナイ爲ニ、移
管スル其間際ニ提出スルノ已ムヲ得ヌヤウニナッタ次第デアリマス、ソレカ
ラ第四點デアリマスガ、是ハ餘リ此競馬ハ產業ニ關係ガアルマイ、斯ウ云フ
コトデアリマスルガ、是ハ午前ニモ申シ上ゲマシタ通リニ此競馬ニ於テ良種
牡馬ヲ得ヤウト、斯ウ云フノデアリマスカラ、是ガ產馬ノ根源ニナッテ居リ
マスカラ、產業ニ關係ノナイトハ申サレヌヤウニ思フ、ソレカラ陸軍ニ於テ
ハ百五十萬頭ヲ更ニ增加スルコトヲ希望シテ居ル、而モ之ヲ內地ニ求ムル、
斯ウ云フヤウナコトデアリマスガ、是モ馬政委員會ニ掛ケマシテ〓究ヲ願ッ
タノデアル、是ハ種々ノ方面ト交渉ヲ致シマシタ、上山君ノ御尋ノ通リニ內
地ハ著シク開墾サレル爲ニ、此廣漠タル土地ヲ得ルト云フコトハ甚ダ困難ト
云フコトハ、其時ニモ明瞭ニ分ッタノデアリマス、分ッタ爲ニ此馬數ノ增加ハ
多少マダ開墾ノ餘地ノアル原野ヲ有スル地方ニ之ヲ求メネバナラヌノデ、之
ヲ先ヅ北海道ヨリ朝鮮ニ飼養シヤウト云フコトニナリマシテ、現ニ陸軍ノ牧
馬場モ之ヲ一ツハ朝鮮ニ移シ、又一部分ハ內地ヲ止メテ之ヲ北海道ニ移スト
云フヤウニ、著々其意見ヲ實行シツツアル次第デアリマス、上山君ノ御說ニ
依リマスルト云フト、滿蒙ニ求メタナラバ後來豫想セラレル所ノ大兵ヲ動カ
ス地ニ馬ヲ得ルヤウニナルカラ、見ハ宜カラウ······ソレハ御尤ノ御說デアリ
やくろ御尤ノ御說デハアリマスルガ、此滿蒙ガ······甚ダ申シ兼ネマスガ、是
ハ假想デアルカラ、敢テ此處デ申述ベル次第デアリマス、日本軍ノ所有ニ歸
シテ其購買等ガ自由ニナレバ、是ハ如何ニモ上策デアリマスルガ、是ガ領有サ
レルト云フコトハナカナカ一朝一夕デハ到底出來ヌコトヽ思ヒマス、シテ見
レバ滿蒙ノ此良馬ヲナカナカ日本ノ自由ニハ成リ兼ネルモノガ多カラウト思
ヒマス、併ナガラ果シテサウ云フコトガ假想シ得ラルヽナラバ、一部分ナリ
トモ是ハ利用スルコトガ出來マスナラバ、日本ニ於テ之ニ產馬ヲシヤウト云
フコトニナリマスルト、是又隨分困難デハアルマイカト斯ウ云フ節モアリ
やくろ唯糧ニ敵ニ賴ルト云フ方法デ、滿蒙ノ狀態ハ、即チ占領地ノ狀態ハ、
滿蒙ノ馬匹ヲ利用スルト云フコトハ、是ハ假想ノ下ニアッテハ甚ダ良イ策ト
思ヒマスガ、デアリマスカラ此滿蒙ニ於ケル馬匹ハ斯ノ如キ假想ガアルナラ
バ、是ハ取調ベテ置クト云フコトハ甚ダ必要ト、斯ウ云フコトノ結論ニナリ
行クダラウト斯ウ考ヘテ居ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=20
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021・上山滿之進
○上山滿之進君 今日ノ競馬法案ト綱紀問題トノ關係ニ付テ陸軍大臣ノ御答
辯ハ私ニ能ク分リマセヌ、陸軍大臣ハ一方ニ綱紀振肅ヲスル、一方ニ馬劵ヲ出
ス、何ノ差支モナイト云フ御話デアリマス、片手デ胃散ヲ飮ミツヽ片手デ暴飮
暴食ヲスルト云フコトニシカ取レナイ、陸軍大臣ハ綱紀問題ニ付テ餘リ趣味
ヲ有ッテ御出ニナラヌ、此上陸軍大臣ニ向ッテ問フテモ仕方ガアリマセヌ、丁度
總理大臣ガ御出ニナリマシタカラ、總理大臣ニ先刻伺フ積リデ演壇デ申述べ
マシタケレドモ、御出席ガアリマセヌデ、今其要領ヲ極ク簡單ニ申述ベテ御所
見ヲ伺ヒマス、綱紀ノ振肅ガ今日ノ喫緊ナル要務デアルト云フコトハ、總理大
臣モ能ク御承知ノコトデ、又總理大臣ハ之ニ對シテ全力ヲ盡シテ居ルト仰セ
ニナッテ居ル、此時ニ當ッテ一口ニ云ヘバ賭博ヲ許スト云フコトハドウ云フ事
柄ナンデアリマセウ、此馬劵ヲ許スト云フコトガ風紀ニ深ク關係ノアルト云
フコトハ誰モ否認スルコトガ出來ヌダラウト思フノデス、陸軍大臣モ是ハ御
否認ニハナラナイ、唯陸軍大臣ハ此制裁ハ極ク嚴重ニスル、故ニ大部分ハ弊害
ヲ除クコトガ出來ルト信ズルト、斯ウ云フ風ニ仰セニナリマスケレドモ、抑ゝ
國民ニ公ニ賭博ヲサスト云フコト自體ガ非常ナ弊害デアル、其自體ヲ許シテ
置イテ其末節ヲ多少イヂクラレテモ、ソレハ弊害ヲ輕クスルコトニハナリマ
セウガ、弊害ヲ根絕ノ出來ナイノミナラズ、弊害ノ大部分ハ依然トシテ其儘ニ
シテアルノデ、寧ロ言葉ヲ換ヘテ言ヘバ其弊害ヲ起スノガ其馬劵ノ目的デ
アル、ソレヲ起シタ上デ根絕スル方法ヲ採ルト云フコトハ、片手デ暴飮暴食ヲ
シ片手デ胃散ヲ飮ムノト同ジコトデアル、總理大臣ハ今日ノ綱紀問題ヲ如何
ニ御考ヘニナルカト云フコトヲ疑ハザルヲ得ヌヤウニナル、其點ニ付テノ御
所見ヲ伺ヒタイ、尙ホ後ノ陸軍大臣ノ御答辯ニ付テ一二點申述べタイコトガ
ゴザイマスガ、總理大臣ノ唯今ノ御答辯ヲ伺ッタ上デ申述ベマス
〔國務大臣男爵加藤友三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=21
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022・加藤友三郎
○國務大臣(男爵加藤友三郞君) 上山君ノ競馬ト網紀肅正ト之ガ關係ニ付テ
ノ御意見ハ一應御尤モナ御意見ト私モ認メルノデアリマス、勿論綱紀ヲ肅正
イタシマスル上ニハ、之ニ惡影響ヲ及ボスベク考ヘラレマスル事柄ハ如何ナ
ル事柄デモ之ヲ致サナイニ越シタコトハナイト思フ、此點ニ付キマシテハ異
論ノナイコトデアラウト思ヒマス、今囘ノ競馬法案ニ付キマシテ、其內容ニ
於テ金ヲ賭ケルト云フコトガ即チ綱紀肅正ノ趣旨ニ反スルト云フ御意見ハ一
應御尤ニ私モ考ヘル、此見地カラハ私ハ實ハ希望イタサナイノデアリマ
ス、併ナガラ一方ニ於キマシテハ良イ馬ヲ作リタイト云フ希望ハ國家トシテ
モ、軍事上ノ見地カラモ、各種ノ方面カラノ多年ノ要望デアルノデス、而シ
テ此要望ヲ充タサウト致シマスルニハ、今日マデ政府ノ考ヘテ居リマスル所
デハ、、此法案以外ニ良案ヲ見出シ得ナイノデアリマス、良案ヲ見出シ得マセ
ヌガ爲ニ、多クノ弊害ヲ來サナイ範圍內ニ於テハ、一方馬ヲ奬勵スルト云フ
方ノ側ノ利益ガ大デアル、決シテ之ガ爲ニ弊害絕無ナリトハ當局ト致シテモ
考ヘ得ラレナイノデアリマス、良馬ヲ得ル方ノ利益大ナリト考ヘマシテ、此
法案ヲ提案イタシタ次第デアリマス、故ニ綱紀肅正ト云フ一點カラ考ヘマス
レバ、上山君ノ御意見ハ私ハ更ニ異存ハナイ、私一個ト致シマスレバドチラ
カト云ヘバ希望シナイ、綱紀肅正ト云フ一點カラ考ヘマスレバ······併シ良馬
ヲ得ル方法ヲ講究スル上カラ見マシタナラバ、已ムナク此法案ヲ提案シ之ガ
成立ヲ希望イタサザルヲ得ナイ、斯樣ナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=22
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023・上山滿之進
○上山滿之進君 結局意見ノ相違ト云フコトニ歸著スルデアラウト思ヒマス
ガ、今一言此點ニ付テ申述ベタイ、馬劵ノ發行ヲ許シテ乘馬ノ改良ヲ圖ラウ
ト云フコトハ、陸軍ノ多年ノ希望デアリマスコトハ御承知ノ通リデアリマ
ス、古クカラ問題ニナッテ居ッテ午前ニモ質問應答ノ中ニ現レマシタ節ニ、曾
テハ之ヲ默認シテ、弊害ニ堪ヘズシテ中止シタ、更ニ衆議院デ其建議ヲシタ時
ニ、時ノ陸軍大臣寺內伯デアリマシタカ、子デアリマシタカ、明瞭ニ反對ノ
意見ヲ唱ヘタ、寺內陸軍大將ハ馬ノコトニ付テ特別ニ熱心ナ人デアッタコト
ハ私ハ承知シテ居ル、職務上常ニ此馬ノ問題ニ付テ可ナリ烈シク論議ヲサレ
タコトヲ私ハ記憶シテ居ル、斯ル馬ニ熱心ナ陸軍大臣デアッテ矢張リ此馬劵
ニ反對ヲシタ明言ヲシテ居ラレ、又其後寺內伯ガ內閣ヲ組織サレテ、其內閣
ニ於テモ馬劵ノ問題ハ、馬政委員會ニ於テ評議サレタコトト思ヒマスケレド
そ、何モ具體的ノ案ニハナッテ居ラナイ、其後ノ内閣ニモ成ラナイ、斯ノ如
キ歷史ヲ有ッテ居ルコトハ能ク御承知デアラウト思フ、何故サウデアルカト
云フト綱紀ヲ紊亂スルカラト云フコトガ、是ハ唯一ノ理由デアッタト云フコ
トモ御承認ニナルデアラウト思フ、トコロガ近年綱紀ノ紊亂斯ノ如ク甚シキ
時ニナッテ、今度ハ逆ニ綱紀ノ紊亂ヲスルモノヲ御出シニナルト云フ御精神
ガ分ラヌノデアリマス、無論綱紀問題ヲ一切考ヘナケレバ、幾ラ國民ガ博打
ヲシテモ差支ナイ、幾ラ射倖心ヲ煽ッテモ差支ナイ、盛ンニ馬劵ヲ出サレル
方ガ馬ダケハ良クナルデアリマセウ、ケレドモソレデハ國民ハ堪ラナイ、サ
レバコソ長イ歷史ヲ持ッテ居ル馬劵問題ガ今日マデ頭ヲ擡グ得ナカッタノデ
アリマス、然ルニ今日ハ斯ノ如ク綱紀ノ紊亂シタ世ノ中ニ於テハ、又綱紀ノ
肅正ヲ最モ重大ナル任務ノ一ツトシテ居ル內閣ニ於テ、突忽トシテ是ガ現レ
ルト云フコトガ、ドウシテモ不思議ナンダ、況ンヤ先刻申述ベタ通リニ、陸
軍大臣ハ折角設ケラレタ馬政委員會ヲ拔カレテ、サウシテ今日ヨリ日デ數ヘ
テ二十日ノ後ニハ馬政ハ總テ農商務省ニ行カウト云フ今日唯今、陸軍大臣ノ
手ニ依ッテ、此重大ナル案ガ出サレタ、彼是ヲ考ヘ合セテ、如何ニシテモ了
解ガ出來ナイ、此意味ヲ以テ私質問ヲ致シタノデアリマス、此以上質問シテ
モ、意見ノ相違ト云フコトニ結局落付クノデアラウト思ヒマス、私ハ斯ル
時代ニ於テ、斯ル賭博行爲ヲ公認スベキモノデナイト思ッテ居リマス、是ダ
ケニ此點ハ止メテ置キマス、ソレカラ後ノ陸軍大臣ノ御答辯ハ、第三、結リ
何故ニ今馬政ヲ農商務省ニ移サウトシテ居ル此時ニ當ッテ、態〓陸軍省カラ
御出シニナルカト云フ問ヒニ對シテハ、農商務省ト宜ク打合セテアル、斯ウ
仰セニナル、是ハサモアルベキコトナノデアリマス、併ナガラ私ノ申シタノ
ハ、サウ云フコトダケヂヤナイ、矢張リ農商務省ガ自分ノ手ニ此問題ヲ執ツ
テ十分ニ〓究シタ上デ、サウシテ進退ヲ定メナケレバナラヌ性質ノモノデア
ル、ソレダケ重大ナモノデアルト云フコトヲ申シタ、ソレデ私ハサウ考へ
ル、斯ル重大ナモノヲ此場合ニ御出シニナッタト云フコトニ對シテノ御答辯
ハ甚ダ滿足ヲシナイ、陸軍大臣ハ其理由ノ一ツトシテハ一萬三千頭ノ軍馬
ガ市場ニ出テ行クカラ、ソレデ困ルカラ之ヲ出シタノダト云フコトヲ理由ノ
一ツトナサッタ、一萬三千頭ノ馬ガ出テ行クト云フコトハ事實デアリマセウ、
併ナガラ是ハ年々ノコトデナイ、一遍キリデアル、一遍キリノ一萬三千頭ノ
馬ニ依ッテ、馬ノ市價ガドノ位シマセウカ、低落スルノヲ防グ爲ニ永久ニ國
民ハ而モ是ハ靑年ガ餘程之ニ興味ヲ持ッテ居リマスガ、第二ノ國民タル靑年ノ
氣風ヲ廢頽サセルト云フコトヲナサルコトガ分ラヌ、斯ウ云フノガ私ノ趣意
デアリマス、是ニ付テハモウ質問ラ致シマセヌ、ソレカラ第四ノ點ハ即チ日
本ニ馬ヲ盛ンニスルト云フコトハ時代錯誤デアル、サウ云フ主張ハ時代錯誤
ナリト云フコトヲ申シタ、是ハ大體御同意下サッタヤウデアリマス、大變私
滿足イタシマス、唯政府ニ對シテ私ノ質問ノ趣意ヲ述ベルトキニ滿蒙ト申シ
マシタガ、是ハ矢張リ朝鮮ト申スコトヲ申シ落シタ、矢張リ朝鮮滿蒙ト云フ
ノデ······大體ノ趣意ハ同意下サッタヤウデ大變滿足スル、若シ其趣意ニ御同
意デアッタナラバ、內地デ態〓斯ノ如キ綱紀ヲ紊シ、風紀ノ廢頽スル虞ノアル
モノヲ、今泡ヲ食ッテヤラナイデモ、馬政ガ農商務省ニ移ッタ曉ニ於テ、農商
務省デ能ク愼重ナ審理ヲ經テ、然ル後ニ若シ私ノ先刻申述ベマシタ、而シテ
陸軍大臣ガ大體ニ於テ御同意下サッタ點ガ善イト云フコトナラ、其方ニ對シ
テ其軍馬ノ仕事ヲヤルナラバ、內地ニ於ラ斯ノ如キ將來恐ルベキ制度ヲ此場
合ニ設ケルト云フコトハ適當デナイト思フ、旁〓是ガ農商務省ニ行ッテ能ク〓
究サレテ、而シテ此案ヲ出ス出サヌト云フコトニ決メルコトガ適當デナイカ
ト云フ私ノ腹ガアッテ質問シタノデアリマス、其點ハ御尋ネスル必要ハナイ、
第二ノ點ニ戾ッテ馬政委員會ノ問題ハ、今質問スルコトヲ御許シヲ願ヒタイ、
陸軍大臣ハ、馬政委員會デ競馬法案ノ大體ハ同意ヲ經タモノトハ仰セラレナ
カッタガ、同意ヲ經タル同樣ナモノダト云フ御答辯ガアリマシタ、是ハ私ノ
知ッテ居ル限リデハサウデナイ、ドウ云フ點ヲ以テ現ニ提出サレテ居ル競馬
法ノ大體ニ馬政委員會ハ異論ノナイモノダト仰セニナルノデアリマスカ、是
ヲ明カニ御答ヲ願ヒタイ、私ハサウデナイト思フ、馬政委員會デハ、何ノ議
モ決ラナイ、モウ少シ露骨ニ申シマスト、馬政委員會ニ掛ケルト、ナカナカ
面倒デ仕方ガナイノデ、ソレデ馬政委員會ニ掛ケヌデモ宜イト云フ風ニ私ニ
ハ了解サレル、若シサウデアルト甚ダ宜シクナイコトデアリマスカラ御尋ネ
シタノデアリマス、故ニ馬政委員會ハ此法案ヲ大體認メテ居ルモノト云フ風
ノ御答辯デアッタナラバ、若シサウデアッタナラバ、ドウ云フ點ヲ馬政委員會
ガ斯ウ云フ意見ヲ持ッテ居ルト云フコトヲ仰セニナルカ伺ヒタイ、質問ハ此
點ダケ·
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=23
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024・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 御答イタシマス、御答ノ前ニ當リマシテ、私ノ申
シタコトガ少シ誤解サレテ居リマスノデ、私ノ言ヒ方ガ惡カッタノデ、ソコデ
ソコダケ申シマス、私ハ一萬三千頭ガ減ラサレテ、ソレガ市場ニ出ルカラ市
價ヲ安ウスル爲ニ之ヲ設ケル、斯ウハ申サナカッタノデアリマス、私ハ一萬三
千頭ノ馬ガ減ッタ、ソレガ爲ニ千六百頭ノ購買馬數ヲ減ラサネバナラヌヤウ
ニナッタカラト、斯ウ申上ゲタノデアリマス、陸軍省デ買上ゲル馬ガ千六百
頭バカリ減ル譯ニナルカラ、唯ココデ申上ゲタノデアリマスカラ、チヨット
申上グテ置キマス、ソレカラ第四點ニ付テ、朝鮮ニモ產馬ヲ奬勵シタラ宜カ
ラウ、是ハ私共最モ意ヲ得タトコロデアリマシテ、旣ニ著手ヲ致シテ居リマ
スカラ、是ハ御了解ヲ願ヒマス、而シテコヽデチヨット申上ゲテ置カネバ
ナラヌノハ、此產馬地ニ唯軍馬ノ養成ヲシタラ宜カラウ、斯ウ言ヒマスガ、軍
馬ハ唯購買スル場所ダケデ、是ハ僅少ナモノデアル、我〓ガ馬ノ餘計ニ存在
スルコトヲ欲スルノハ戰時ノ爲ニ之ヲ養成スルノデアリマス、ソレデアリマ
スカラ、寧ロ私共ハ產馬地ニ目的ヲ附ケズシテ、馬ハ之ヲ需要スル地方ニ附
イテ居ル次第デアリマス、產馬ノ奬勵ハ詰リ需要地ニ於テ其結果ヲ陸軍ニ持
チ來ス、斯ウ云フヤウナ譯ニナッテ居ル、唯產馬地ハ我〓ガ購買スル馬ノ一
部分ガ買ハレルダケデハ、戰時ニ要スルトコロノ此馬ハ、之ヲドウシテモ需
要地ニ多ク求メネバナラヌ、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアリマスカラ、
假合產馬地ヲ北海道朝鮮ニ移シマシテモ、此馬ノ需要地ハ內地ニシテ置カネ
バ非常ニ不利益ヲ來タス、斯ウ云フノデアリマス、ソレデ內地ニ此需要スル
モノヽ澤山ヲ存サセルコトガ最モ必要ナノデアリマス、ソレカラ私ガ第二
點ニ申シマシタノハ矢張リ私ノ言ヒ方ガ惡カッタ、私ハ御同意ヲ得タコトハ
申上ゲナカッタ、此弊害ノアル點ハ委細論及サレタ爲ニ茲ニ於テ其弊害ヲ除
去スル其標準ヲ得タノデアリマス、標準ヲ得タト心得マシタカラ、其標準ニ
從ッテ消極的ニ此法規ガ設ケラレテアルカラ、大部分意見ニ衝突スルヤウナ
コトハナイノデアラウ、斯ウ私ハ申上ゲタノデアリマス、是ハ實ハ委員會ニ
掛ケタカッタノデアリマスガ、殘念ナガラ其時期ヲ得ナカッタカラ掛ケナカッ
々、此點ヲ申上ゲテ御了承ヲ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=24
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025・上山滿之進
○上山滿之進君 唯〓第二ノ點ニ付テ陸軍大臣ハ馬政委員會ハ、此馬劵發行
ヲ許スト云フコトニ大體同意デアッタト云フ風ニ仰ッシヤッタト承リマシタガ、
是モサウデナカッタノデアリマスカ
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=25
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026・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) ソレハ私ハ此競馬ト云フコトヲ施行セナケレバナ
ラスト云フコトダケハ認メテ貰ッタ、此事ヲ申シタ積リデアッタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=26
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027・上山滿之進
○上山滿之進君 私ハ廣イ意味ノ競馬デ御尋ネシタノデハナイノデ、此競馬
法案ハ、即チ馬劵ヲ骨子トシタ競馬ヲ馬政委員會ハヤラナケレバナラヌモノ
ト云フ意見デアッタト云フヤウナ風ニ御話ニナッタト思フノデアリマス、サウ
デアリマスカ、如何デアリマスカ、若シサウデアレバドウ云フ點ヲ以テサウ
御認メニナリマシタカ、之ヲ具體的ニ伺ヒタイ、モウ少シ具體的ニ申スト、
馬政委員會ノ速記錄ナルモノガアル筈デゴザイマスガ、ソレニ付テ御答ヲ願
ヒタイ
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=27
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028・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 私ハ馬劵ニ伴フ競馬ト云フコトハ馬匹改良ニハ必
要ヲ認メマス、斯ウ云フコトニ解シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=28
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029・上山滿之進
○上山滿之進君 私唯〓ノ意味ガ能ク分リマセヌガ、私ノ御尋ネシタノ
ハ、馬劵發行ヲ許スト云フコトガ馬匹改良ニ必要ナリト云フコトノ陸軍省ノ
意見ヲ馬政委員會ガ大體ニ於テ認メタノデアル、斯ウ仰セニナッタト思フ、其
通リデアリマスナラバ、何ニ依テサウ仰セニナルカト云フコトヲ伺ヒマス、
私ノ聞ク所ニ依レバサウデナイヤウデアリマスカラ、是ハ大事ナ點デアリマ
ス、若シ陸軍大臣ノ仰セニナルヤウニ、馬政委員會ガ馬劵發行ヲ馬匹改良ノ
爲ニ必要ナリト云フコトヲ大體認メテ居ルト云フコトデアルナラバ、理論
ノ上ハ別トシテ、實質ニ於テハ今度馬政委員會ヘ此案ヲ御掛ケニナラナイコ
トガ自ラ分カルノデ、是ハ私ノ聞ク所ニ依ルト、馬政委員會ハ馬劵發行ノ可
否ニ付テハ何等ノ意見ヲモ是マデ決メテ居ナイ、其決メテ居ナイ馬劵發行ガ
骨子ニナッタ競馬法案ヲ馬政委員會ヘ掛ケヌデ御出シニナッタト云フコトデア
ル故ニ、餘程了解スベカラザルコトデアルト云フコトニ私ハ思ヘルノデ、此
點ハ大事ナ點デアリマスカラ、私ノ先刻承ッタ通リデアリマスレバ、斯ウ斯
ウノ事柄ガアッタカラ左樣ニシタイト云フコトヲ、願ハクバ馬政委員會ノ速
記錄ニ付テ、會議錄ト申シマスカ、記錄ニ依テ御〓示ヲ仰ギタイ
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=29
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030・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 今此處ニハ速記錄ヲ持ッテ居リマセヌカラ、速記
錄ヲ朗讀シテ申上ゲルコトハ出來マセヌ、私ハ斯ウ考ヘテ居リマス、馬劵ニ
伴フ競馬ハ、必要ナラムモ時期方法ハ廟議云々トシテアル、ソレデ私ハ其通
リ申上ゲタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=30
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031・上山滿之進
○上山滿之進君 モウ此邊デ私ノ質問ハ措キタイト思ヒマス、私ノ記憶ト陸
軍大臣ノ仰セニナルコトガ違ッテ居ル、私ノ記憶ノ通リデアルト馬政委員會
ヘ御掛ケニナラヌコトハ非常ニ重大ノコトデアルト思フ、不幸ニシテ唯〓御
手許ニ其ドチラノ記憶ガ正シイカ明カニスル書類ヲ御持合セガナイサウデア
リマス、是ハ書類ノ御揃ヒニナッタ上デ又承ハリタイ但シ勿論此案ハ特別
委員ニ掛ルコトデアリマスカラ、特別委員會デ斯ル點ニ付テ十分ナル審査ノ
アルコトヲ希望シテ置キマス
〔阪本彰之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=31
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032・阪本さん之助
○阪本釤之助君 私ハ若シ此競馬法即チ馬劵發賣ト云フコトガ國防上及產業
上ニ付キマシテ重大ナル關係ガアリ必要ガアルト云フコトデアリマスナラ
バ、或場合ニハ格別ナル犠牲ヲ拂フト云フコトモ已ムヲ得ヌ場合モアルカト
存ジマスノデアリマスガ、私寡聞ニシテ誤ッテ居ルカモ存ジマセヌガ、競馬
ニ使フ馬ヲ作ルト云フコトハ國防上ニ要スル馬及產業上ニ要スル馬トハ殆ド
沒交渉デアルト存ジマスノデアリマス、成ルホド同ジ馬デアリマスカラ、競
馬用ノ馬ノ良イ馬ガ幾ラカ出來マスレバ、其キレッパシガ軍馬用若クハ產業
上ノ用ニ多少供セラルル場合ガアルカモ知レマセヌガ、是ハ不適當ナキレッパ
シデアルノデアリマス、之ヲ譬ヘテ申セバ車夫ガ病氣ヲシテ居ル、或ハ運轉
手ガ居ナイカラ若旦那ヲ雇ッテ來テ車ヲ引カセル、マダ免狀ヲ御有チニナラ
ヌ貴公子ニ「ハンドル」ヲ持タセルト云フコトニ近イト思フノデアリマス、競
馬ニ使ヒマスル馬ハ甚ダ講釋ラシク申スト、私承ッテ居ル所ニ依ルト「サルブ
レツト」ノ系統ニ屬スル足ノ細イ形ノ良イ馬ヲ使フ、是ガ即チ競馬ニ使フ馬
トシテ最モー良イノデアリマス、見ル見ル心地ノ良イ、之ヲ人間デ申シマス
ト、近頃ノ「ハイカラ」ソロリトシタ、私ノヤウナ弱イ方ノソロリトシタ馬デ
ハナイノデ、走ル奴デアリマスカラ、强イ一方デハゴザイマセヌガ、競馬用
ハ形ガ細クテ氣ガ强ク、所謂競馬用ノ馬ト云フモノハ別ニチヤント標準ガ
アッテ作ルノデアル、之ヲ一般ノ軍馬ナリ產業上ノ馬ニ使フ其奬勵ニ必要デア
ルカラ競馬ヲ奬勵シテ馬劵デモ賣ラセナケレバナラヌト云フコトハ私ニハ少
シモ分ラヌノデアリマス、極メテ簡單ニ申シテ宜イコトデアリマスガ故ニ、
產馬ヲ奬勵スルガ爲ニ競馬ヲ非常ニ引立テネバナラヌト云フコトハ、ドウ云
フ所ニ理由ガ存スルノデアルカト云フ根本ニ於テ疑ヲ挾ムノデアリマス、元
來此產馬事業ト云フモノハ實ニ農家ニ於テ甚ダ不引合ノモノデアリマシテ、
之ヲ普通ノ農事ニ比ベテ見ルト詰ラヌモノデアルケレドモ、幸ニ古來ノ慣習
ニ依ッテ產馬地方ハ馬ト云フモノハ可愛イモノデアリマスカラ、飼付ケテ見ル
トオカミサンモ娘モ共ニ此馬ヲ愛シテ養ヒ立テルト云フ良慣習ガ殘ッテ居
リマシテ、ソレ故ニ今日マデ馬ト云フコトハ產馬地方デハ相應ニヤッテ居ルノ
デアリマスガ、偶〓此競馬用ニ使ヒマス馬ヲ少數ノ中デアリマスルガ、一頭ガ
數千圓ニモナル譯デアリマスカラ、此方ニ向ッテヤルノハ不時ナ利益ヲ得ル
ノモアリマスガ、普通唯〓此案ニ付テ御要求ナサル所ノ普通ノ軍馬、軍馬ト
申シテモ將校ノ乘用ヲ首メ、騎兵ノ使フ若クハ平生ノ乘馬用ニ使フ、小学
ハ馬車馬ニ使フ、駄馬ニ使フト云フヤウナ馬ト競馬用ノ馬ヲ作ルト云フコ
トハマルデ別ノ方面ニ向ッテ使フノデアリマシテ、〓チ產馬改良ノ上ニ於
キマシテ「アングロノルマン」若クハ之ニ類スル系統ノ種ヲ取ラナケレバ
ナラヌノデアリマス、是ハ無骨ナ大キイ所ノ式ノモノデアリマシテ、多少
「サルブレット」ノ血ヲ入レルト云フコトモ必要ダサウデアリマスガ、根據
ハ「アングロノルマン」ノ系統ノ方ニ置クベキモノダト承ッテ居リマス、此
方ニ向ッテ目的ヲ達シタ馬ハ競馬ニハ適セヌノデアル、私ニ言ハスレバ此堅
イ大キイ强イ馬ヲ作ルト云フコトナラ、軍馬ノ買上ニ成タケ大キナ金ヲ御拂
ヒニナリ、又產馬地方ニ向ヲテ相當ノ補助ヲ御與ヘニナリ、普通軍用若クハ
產業上ニ使フ馬ヲ產スルト云フコトニ向テ相當ニ農家ニ利益ノアル方法ヲ
御講ジニナルノガ最モ喫緊ノ急務デアルト思フ、之ヲ閑却シテ置イテ、競
馬ヲ許シテ馬劵ヲ賣ラセルカラ、段々馬ガ良クナル、一般ノ馬事思想トハ面
白イ言葉ヲ使ハレマシタガ、馬事思想ヲ發達スルト云フコトハ、私共ハドウ
シテモ信ズルコトハ出來ナイ、先刻上山君ハ某地方官ガ、實ハ我ガ縣下ノ產
業ヲ發逹セシメントスレバ、馬ヲ止メタイト云フ述懷談ヲ申シタト云フコト
デアリマシタガ、是ハ確ニ眞理ノアルコトト私共ハ存ジマスルノデアリマ
ス、古來ノ慣習デ產馬ヲ致シマス所ハ、成ルベク其良慣習ヲ保存シテ、成ルベ
ク國家ノ爲ニ馬ヲ產セシメヤウト思ヒマスルガ爲ニ、地方官ハ相當ニ勉强サ
レルノデアリマスガ、普通ノ農事ニハ······殊ニ養蠶地方ニハ養蠶ヲシタ方ガ
餘程利益ニナリマスルノデ、洵ニ不引合ナ仕事デアリマシテ、國家ノ上カラ
申シテ、產業上ト云フ方カラ申シマスルト引合ハヌ仕事デ、其引合ハヌ仕事
ヲ引立テル爲ニ、競馬ヲ許シテ馬劵ヲ發行スルコトハ、ソレハ單ニ都會ノ地
ニ於テ射倖心ヲ挑發シ、若クハ僅ナ區域ニ於テ、競馬ヲ造ッテ賣出スト云
フ、矢張リ產業上カラ言ヒマシテモ、少シ投機的ノ產馬方法ノ部分ダケガ幾
ラカ利スル點ガアルノデアリマシテ、一般ノ此期セラレル所ノ、此法案ノ
目的ノ期待セラルル所ノ用ハ爲スモノデハナイト私ハ信ズル者デアルノデア
リマス、併ナガラ再三繰返シテ當局大臣ヨリモ御說明ガアリマスカラ、私ノ
申ス所ハ全ク誤ッテ居ル、唯今細イ所ノ形ノ紳士的ノ馬ヲ拵ヘテ、ソレデ車
夫、馬丁、運轉手ハ少シ上品ナ方ニ屬シマスルガ、モウチット勞働者ノ方ニ
向クモノガ、漸次若樣ヲ上手ニ育テルト云フコトヲ目的トシタモノガ、勞働者
ノ側ニモ適當スル、之ヲヤレバ勞働者ガ盛ンニ殖エルノデアルト云フ御議論
ハドウ云フ所カラ出ルノデアリマセウカト云フコトヲ承ッテ見タイノデア
リマス
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=32
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033・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 御答イタシマス、競馬用馬ガ實用馬トハ全ク違ヒ
マシタコトハ、數世紀以前ノコトデア、リマス、例ヘバ四分ノ一哩ヲ早ク走ラ
セ、長クモ一哩デ勝負ヲ付ケヤウト云フヤウナ當時デアリマス、目下ノ競馬
ハ決シテサウ云フヤウナ競馬デハナイノデアリマス、少クモ一哩多キハ三
哩、四哩此長距離ヲ走ラセテ其持續力ヲ試スノデアリマス、ソレデアリマス
カラシテ、此馬政局アタリノ種牡馬デモ、一年一年ニ試驗ヲ致シマスルノ
ハ、其種牡馬中ニ競馬ヲ行ッテ、サウシテ其健康ナルモノハ老年ト雖モ、之
ヲ種牡馬ノ用ニ立テル、斯ウ云フヤウナ工合ニナッテ居ルノデ、ソレデチヨッ
ト此競馬用ノ馬ヲ御覽ニナリマスルト、如何ニモ瘠セタヤウニ見エルノデア
リマス、之ハ總テ脂肪ヲ付ケテ置クト云フト、其競馬ノ時ニ心臟ノ壓迫スル
等ノ弊害ガアルタメ、又抗抵力ヲ增スト云フヤウナ爲ニ、其脂肪ヲ脫去スル
爲ニ汲々トシラ、唯競馬ニ堪エル間ダケノソレダケノ飼料ヲヤルノデアリマ
ス、一朝彼ヲ種馬ニスル場合ハ、通常ノ飼料ヲ與ヘ、多少ノ脂肪ヲソレニ加
ヘマスレバ、普通ノ馬ニナルノデアリマス、骨格其モノガ備ッテ居ルノデア
リマス、ソレデアリマスカラシテ、競馬用ト實用馬トハ少シモ懸隔シテ居ラヌ
ノデアリマス、即チ競馬ニ優秀ナルモノハ、之ヲ種牡馬ニ採用シテ、サウシテ
之ヲ馬產ニ用ユル、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、ソレカラ如何ニモ產
馬地ノミヲ奬勵イタシマスレバ、馬ハ殖エルヤウデアル、斯ウ云フノデアリ
マスガ、是ハ馬ヲ使フ者ガ餘計ナケレバ是モ亦幾ラ馬ガ餘計アッテモ、ヤリ
方ニ困ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ、馬ヲ成ルベク知ラセテ、午前
ニモ申シマシタ通リ、其馬ヲ利用スル人ヲ澤山造ルノガ必要ナノデアリマ
スソレデ先程上山君ノ問ニ御答シタ時ニモ申上ゲマシタガ、陸軍ガ戰時此
馬ヲ徵發スルニハ、產馬地ニアラズシテ却テ馬ヲ用フル地方ナノデアリマ
ス、馬ヲ用フル地方ト產馬ノ地方トハ自カラ違ッテ居ルノデアリマス、其點
ヲ重ネテ私ハ申上グテ置キマス、ソレカラ又競馬ハ都會ノ人ガ云々、是ハ大
ニ趣ガ違ッテ居ル、東京橫濱ニ競馬場ガアルカラサウ仰セデアリマセウガ、
矢張リ是ハ田舍ノ方ニ澤山、十一箇所中ノ多クハ田舎ノ方ニ散在シテ、殊ニ
產馬地ノ方面ニ餘計ニ設ケテアルノデアリマス、デアリマスカラシテ、此產
馬地デ馬ノ直グ出來タモノヲ試ス、又田舍ノ馬ヲ用ユル地方ニ於テハ、益
此馬ノコトヲ深ク知ルヤウニシタイ、斯ウ云フ積リデ、其十一箇所ノ競馬場モ
決シテ都バカリデハナイノデアリマス、地方ニ散在シテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=33
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034・阪本さん之助
○阪本彰之助君 先刻上山君ノ御尋ニ對シテ當局大臣ノ御答ニハ此法律ガ若
シ成立シタ曉ニ許ス所ハ極ク範圍ガ狹イヤウナ御答辯デアッタヤウニ承リマ
シタガ故ニ、斯樣ナ狹イ範圍ダケニ御許ニナルト云フコトナラバ、是ガ全
國的ニ田舍マデ行キ亙ルモノデナイト認メマシテ述ベマシタノデアリマシタ
ガ、假ニ十一箇所御許ニナルモノト見マシテモ、春秋二囘多クモ年二三囘競
馬會ヲ開キ、ソレダケニ使フ馬ト云フモノハ數ニ限リガアル、之ニハ乘手ガ
決ッテ乘ルノデアル、競馬ト云フモノヲ見、競馬ヲ喜ブト云フ範圍ハ·····見ル
ノハ誰デモ素人デ喜ンデ見マスケレドモ、之ヲ非常ニ熱心ニ守リ立テル範圍
ト云フモノハ、餘リ廣イモノデナイ、是ガ盛ンニ行ハレ馬劵ヲ行ヘバ大變人氣
ハ引立チマセウガ、ソレガ爲ニ他ノ產馬ガ盛ンニ殖エルト云フコトハ本員ト
シテハ最モ信ジラレヌノデアリマス、ノミナラズ此方ニ一ツ熱ガ上リマス
ト非常ニ馬ヲ造ル利益ヲ想像シテ、例ヘバ美術ガ盛ンナ時ニ、田舍ノ詰ラナイ
人ガ美術々々デ詰ラナイ物ヲ持出シテ、何時モ博覽會ヘ出シテ落第シテ田舍
ヘ持ッテ歸ルヤウナコトデ、餘リ實用ニ適シナイ馬ヲ造ルト云フヤウナコト
ニナリハセヌカ、故ニ寧口馬ヲ、產馬地ノ馬ヲ殖ヤスヨリモ、需要者ヲ增ス
コトガ必要デアルト云ナラバ、競馬ノ爲ニ使フ需要ト云フモノハ限リアルモ
ノデ、ソレヨリハ總テノ人〓ガ乘馬ヲ好ム思想ヲ起ス方ガ、前年乘馬飼養令
ト云フモノガアッテ、高等官ノ或程度以上ノ人ハ、必ズ馬ヲ一頭カ二三頭飼
ハナケレバナラナイト云フノガアリマシタガ、今日ハ時代ガ變ッテ居リマス
カラ、斯樣ナコトハ行ハレ難イカモ知レマセヌガ、兎ニ角官吏バカリデナシ
ニ、上流ノ人ガ馬ニ乘ッテ步クト云フコトヲ、一ツニハ流行ニナリ、或一面ニ
ハ先程申シマシタ通リニ軍馬ナドハ旣ニ法外ニ高ク、賭博ト云フヤウナ弊害
ニ比ベマスレバ國庫ハ少シ餘計ノ金ヲ御出シニナッテモ構ハヌ種牡馬ナド
ヲ高ク御買ヒニナリ、馬ノ値ヲ糶上ゲテ、サウシテ馬產者ガ喜ンデ馬ヲ造ル、
サウシテ之ヲ利用スルノハ一般ノ上下ヲ通ジテ馬ト云フモノヲ用ヰルト云
フ······近頃自動車ガ流行リマシテ馬車ナドニ乘ラヌヤウニナッタコトハ誠ニ
殘念デアリマス、馬車ヲ無稅ニスルトカ若クハ何等カ方法ヲ設ケテ矢張リ馬
車ト云フモノモ行ハレルヤウニスルトカ、凡テ馬ト云フモノヲ用ヰル範圍ヲ
廣クスルト云フコトヲ政府ハ御考ニナッテオヤリニナッタ方ガ此弊害ヲ僅ニ一
部分ニ止メル、競馬ノ御奬勵ト云フコトヨリハ餘程適當デアルト本員ハ深ク
信ズルノデアリマスガ、是ハ競馬デナケレバ是ヨリ方法ガナイト云フ、斯ウ
仰セニナルノデアリマセウカ、モウ一應····
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=34
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035・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 御答イタシマス、私ハ午前湯淺君ノ御質問ニ對シ
テ馬ニ關スル思想ヲ普及セサルコトニ付テハ、モウ實際アラム限リノ力ヲ盡
シテ縷述イタシテ置キマシタ、ソレガ〓阪本君ノ御話ヲ聞クト全ク誤解サレ
テ居ルヤウニ思ヒマスルガ、私ハ觀覽シテ居ル者ガ馬ノコトヲ〓究スルヤウ
ニナル、競馬ヲ唯見ルト云フノデナクシテ、馬ヲ見ルト云フ能力ガ付イテ來
ル、サウシテ馬ノ趣味ガソコニ湧イテ來ル、ソレカラ漸次馬ヲ乘用スルコト
モアリマセウシ、又ソレヲ他ニ使用スルト云フコトモ考ヘ及ブヤウニナッテ、
漸次ソレガ普及スルヤウニナルダラウト云フコトヲ申シタノデアリマス、ソ
レニ從ッテ需要ガ增スノデアリマス、私ハ唯競馬馬ノ需要ヲ增スト云フコト
ハ是ハ決シテ申サナイノデアリマス、ソレデアリマスカラ、私ハ午前ノ囘答
ニ於テ殆ド盡シ得テ居ルト思ヒマスルノデス、今重ネテ更ニ之ヲ詳細ニ申述
ベルコトダケハ控ヘヤウト、斯ウ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=35
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036・阪本さん之助
○阪本彰之助君 午前ニ(聽取シ難シ)ノ時ニ立チマシタコトデアリマシテ、
或ハ大臣ノ御答辯ヲ聞キ漏シタルカモ知レマセヌガ、併シ實際ニ於テ今日ド
レ程ノ程度マデ一般ノ馬ノ利用ノ御奬勵ニナッテ居ルカト云フコトハ、實ハ
不敏ニシテ認メ得ナイノデアリマス、午前ニ御述べニナッタ中ニ御列擧ニ
ナッタコトデアリマスナラ速記錄ヲ拜見イタシマス、競馬ヲ見ルカラ馬ノ思
想ガ非常ニ發達シテ凡テノ馬ノ需要ガ殖エルト云フコトハ、繰返シヘテ申ス
ヤウデアリマスガ、競馬其モノハ面白イ、馬モナカナカ偉イモンダト云フ
コトハアルカモ知レマセヌガ、ソレヲ見テ俄ニ一般ニ馬ニ乘ッテ見ヤウト
カ、馬ハ必要ダカラ一匹二匹飼ッテ置カウト云フヤウナ思想ヲ起ストハ信ジ
ラレマセヌ、現ニ國技館ノ相撲ヲ見ニ行ッテ、相撲ハ非常ニ面白イ、俺モ一
ツ相撲ニナッテ見ヤウトカ、若クハアンナ肥ッタ人間ニナラナケレバナラヌト
感ズル者ハ、餘程變リ者デナケレバナラヌ、私共モ時ニ相撲ヲ見ニ參リマス
ガ、相撲ハ面白イモノデアル、見ルダケデ······競馬ヲ見ル思想モ多數ノ人ハ
左樣ナモノデハナイカト思ヒマス、ソレハ誠ニ非常ニ意見ニ距離ガアルノデ
アリマスカラ、此所デ御討論ヲ申上グルノハ不都合デアリマスカラ差控ヘマ
スガ、斯樣ナ見地ヨリ私ハ先ヅ以テソレニ付テハ如何デアルカト云フコトニ
非常ニ結構ナ根據ガアルカト思ヒマシタガ、今マデノ所デハ別段大シタコト
モナイヤウニ思ヒマス、尙ホ能ク熟考ヲ致スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 土方君
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=37
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038・土方寧
○土方寧君 此競馬法案ノ是非ニ付キマシテノ意見ハ他ノ機會ニ於テ申スト
云フコトニ致シマシテ、唯今ハ政府ニ對シテ單ニ質問ヲスルニ止メタイト思
ヒマス、質問ハ約十點ホド可ナリ多ク書イテ居リマスガ、ソレデ一ツ一ツノ
點ヲ簡單ニ御尋ネシテ之ニ對スル明瞭ナル御答ヲ得タイト思フカラデアリマ
ス、中ニハ隨分細目ニ亙ッテ質問モゴザイマス、此法案ノ或ル特種ノ箇條ノ解
釋適用ニ付テノ質問ノ如キハ見樣ニ依ッテハ委員會又ハ第二讀會デスルノガ
適當ト思ハレルカ分リマセヌガ、併シサウ云フ細カイ所マデ今此際第一讀會
ノ初メニ伺フト云フノハ何故デアルカト申シマスト、前ニ苦イ經驗ヲ經タ馬
劵付ノ競馬デアリマス、無制限ニ許シテ······ソレニ鑑ミテ此度ハ種々ノ方面
カラ色〓ナ制限ヲ付シテ、其制限內ニ於ケル所ノ今度名ガ變ッテ居リマスガ、
皆サンガ馬劵ト仰ッシヤイマスカラ馬劵ト申シマスガ、馬劵ノ賣買ニ依リ、競
馬ト云フモノハサホド害ガ無イト云フ制限ヲ付ケタラ害ガ無イト云フノデ、
全體ノ法案ガ立ッテ居リマスカラ本員ノ考デハ今意見ハ申シマセヌガ、其制
限ガ決シテ效果ガ無イト云フ考デアリマスルカラ、ソレデ少シ細目ニ亙ルヤ
ウニ見ヘマスケレドモ、法案全體ノ運命ニ關スルト思フカラ伺フノデアリマ
ス、是ハ法文ノ上デハ無論御尋スルマデモナイ極リ切ッタコトヽ思ヒマス
ガ、第一ノ點ハ學生生徒及ビ未成年者、是ハ第五條ノ規定デ馬劵ヲ買フコト
ガ出來ナイコトニナッテ居ル人々デアリマス、斯ウ云フノデアリマシテ、入場
料ヲ拂ッテ競馬場ニ臨ンデ見物スルコトハ毫モ差支ナイコトニナッテ居ルト思
ヒマスガ、云フマデモナイト思フガ、私ニ取ッテハ大切ナコトデアリマス、之
ヲ確メタイ第五條ノ馬劵賣買ヲ禁ゼル者デアッテモ入場金ヲ拂ッテ競馬場ニ
入ッテ見物スルコトハ妨ゲナイト云フコトニナッテ居ルカ、ソレハ確カ其通リ
カ、第二ニハ成年者デアリマシテモ學生生徒ニハ馬劵ヲ發賣スルコトヲ得ナ
イコトニナッテ居ル、其理由ガドコニアルカ、マア私ガ想像シマスル所デハ、
〓育上有害デアラウト云フコトデアラウト思ヒマスガ、ソレダケノ說明ナラ
バ私ハ聞キタクナイ、ソンナラ〓育ノ目的ハ在學中ニ限ルト云フ點カラ來ル
ノデアル、學校ニ居ル間ハ有害デアル、學校ヲ出タラ差支ナイト云フコトノ見
解ヲ聞キタイ、ソレガ第二デアリマス、ソレカラ第三ニハ未成年者、學生生徒
又ハ第五條第二項ニ色〓ナ名前ガアリマスガ、競馬關係者デス、關係者自ラ馬
劵ヲ賣買スル、買フコトハ出來來マセヌガ、ソレガ爲ニ他人ノ名義ヲ以テ買ッ
タナラバデス、其名義人トソレカラ出金者トニ對スル處分如何、是ハ說明シナ
クトモ問題ガ分ルダラウト思ヒマスカラ說明シマセヌ、名義人ト出金者兩人
ニ對スル處分如何、ソレカラ第四デアリマスガ、此馬劵ヲ購買セントスル者ガ
デスネ、大多數マア素人デアリマセウ、ソレガマア斯ウ云フコトヲヤレバ、
自然馬ノ趣味モ覺エルト云フガ、陸軍、農商務等ノ人ハ多ク馬ノコトハ能ク御
分リデセウガ······自分ノ良イト思ッタ馬ニ對シテ馬劵ハ多クハ買ッテモ失敗ス
ル、成ルベク當テタイト云フノガ人情デアリマスカラ、ソコデ馬劵ヲ購買セン
トスル者ガ、第五條第二項ノ自ラ馬劵ヲ買フコトハ出來ナイ競馬ノ關係者ニ
デス、其意見ヲ徵スルト云フコトハ差支ナイカ、內々聞クンデス、自分ハ能ク
分ラナイカラ、ドウ云フ馬ナラ勝ツ見込デアルカト云フ意見ヲ聞ク、自ラ馬
劵ノ購買ガ出來ナイ人ニ對シテ、意見ヲ徵スルノガ差支ナイカト云フコト、
ソレト牽連シテ居ルアレデアリマスガ、第五ニハデス、此競馬關係者ガ馬劵
ヲ購買セントスル者カラ、意見ヲ徵セラレタ時ニ、只デ意見ハ言ハナイト斯
ウ云フ、俺ガ言タ意見ヲ採用シテ競馬ガ勝ツ、若シ的中シタナラバ半分吳レ
イトカ、三分一呉レイトカ云フ約束ヲシタナラバ、其契約ハ有效ナリヤ否
や、ソレカラ第六ニハデス、矢張リ第五條ニ自ラ自己ノ名義ヲ以テ馬劵ヲ購
買シ得ザル者ガデス······實際ハマアヤッテモ分ラヌ場合ガ多イデセウ、競馬
ニ入場出來ルコトニナル以上ハ······ヤッテ見タイガ金ガ無イ、大變ニアレハ
巧イ話デ、當レバ十倍ニモナルト云フコトダカラ行ッテヤッテ見タイガ金ガ無
1、囊中無一文ダカラ金ヲ借シテ吳レヌカ、情ヲ告ゲテ金ヲ借リル、其貸借モ
有效ナリヤ如何、有效ナリヤ如何ト云フノハ、民事上ハ有效ト云フコトデ、
訴ヘレバ金ガ取レルカ如何ト云フ問題デハナイ、自ラ情ヲ〓ゲテ金ヲ借リタ
ナラバ、是ハ法律上ノ關係デアルカラ、犯則者ニナルカナラヌカト云フ意味
モ含ンデ居ル、ソレカラ第七ニハデス、本法ハ色〓ナ制限ガ附シテアル、ソ
レヲ取詰メレバ弊害ヲ陸軍大臣ハ除却スルコトガ出來ルト仰ッシヤル、私ハ信
ジマセヌケレドモ、サウ仰ッシヤル、ソレガ爲ニ、取締ル爲ニ經費ヲ要シヤウ
ト思ヒマスガ、今度ノ豫算ニハ何ニモ此法律ヲ實施スルニ付テノ必要ノ經費
ガ計上シテナイ、無一文デ取締ガ出來ルト云フ積リデアルカ、若シ金ガ要レ
バドコカラ出ス積リデアルカ、無駄ノ金ヲ出スト云フナラバ、經費節減ト云
フ趣意ニ反スル、無駄ナ金ガ殘ッテ居ルト云フコトデアルカ、ソレヲ伺ヒタ
イ、經費ガ要ラヌト云フコトデアルカ、要ルト云フコトナラバ、追加豫算デモ
御出ニナルカ、ソレカラ第八ニハ是ハ本日湯淺君ガ第一ニ申サレタコトデア
リマスガ、ソコガハッキリセヌカラ更ニ伺ヒマス、此馬劵賣買ト云フコトハ、
刑法ノ賭博又ハ富籤ダノノ性質ノモノヂヤナイカト云フ質問ガアッタ、陸軍
大臣ノ御答ハ多少賭博ノ性質ヲ持ッテ居ル、ケレドモドノ馬ガ勝ツダラウト
云フコトニ付ラノ判斷力ヲ要スルカラ、全クノ僥倖ヲ期スルノトハ趣ガ違
フ、ソレハ私ハ尤モト思フ、ソレハ判斷力ハ要リマセウ、ソレダカラ純粹ノ賭
博トハ違フト思フト云フ御答ガアッタ、ソレハ私ハ幾分ハ御尤ナ御答ト思フ、
判斷ヲスルニハ馬ノコトヲ〓究シナクチヤナラヌ、ソレガ爲ニ馬ニ趣味ヲ
一〇〇、〇サウ云フ御答デアリマシタガ、併シ判斷ノ力ヲ要スルカラト云ッラ、
ソレナラバ政府トシテ是ガ賭博ノ性質ヲ持ッテ居ルモノデハナイト云フコト
ガ責任ヲ以テ斷言スルヤ否ヤト云フコトヲ重ネテ伺ヒタイ、隨ッテ未成年者
ガ、自己ノ名義ヲ以テ馬劵ヲ買ッタト云フコトニ付テデスネ、別ニ之ト云フ
制裁ガ無ケレバ、刑法ノ條項ニ依ッテ刑罰ヲ科セラレルナリ、何ナリト云フ
コトニナリマスカ、其事ヲ確メテ置キタイ、ソレカラモウ一ツ伺ヒタイノ
ハ、本案ノ全體ノ考案ノ骨子トナッテ居ルモノハ、前ニヤッタ無制限ノ馬劵ノ
賣買ハ弊害ガ有ッタカラ、物議ガ起ッテ之ヲ廢止シタ、之ニ反シテ今度ハ制限
ヲシテ弊害ガ無クナルヤウニ、少クナルヤウニト云フ色〓ノ制限ガアリマス
ガ、此制限ヲ設ケテ、制限內ノ馬劵ノ賣買ハ適法デアル、制限ヲ一步デモ越
セバ違法デアル、罰金刑、若クハ自由刑ヲ科スル、サウシテ犯則ノ無イヤウ
ニ取締ル、ソレデモドウモ犯則者ガアレバ仕樣ガナイ、ソレガ發覺スレバ罰ス
ル、サウ云フヤウナ法律ヲ作ルト云フコトハ殊更ニ犯人ヲ作ル法律ヂヤナイ
カト云フコトヲ伺タヒイ、是ガ無ケレバ罪人ガ出來ナイノダカラ、罪人ヲ作ル
法律ヂヤナイカト云フコトヲ伺ヒタイ、ソレカラモウ一ツ第十トシテ伺ヒタ
イノハ、此案ハ一體陸軍關係ノ方ハ大變御熱心デアリマスガ、我國ノ現在ノ
壯丁ノ體格ト云フモノハ、徵兵檢査デ陸軍關係ガ一番能ク御承知デアリマ
ス、私共統計ニ徵シテ見ナクテモ、情ケナイコトニハ我國ノ靑年ノ體格ハ、
歐米文明國ノ靑年ヨリ劣ッテ居ル、之ヲ改善スルト云フコトニ付テハ大イニ
出來ルダケノ盡九ヲ盡サナクチヤナラヌト思ヒマス、現在ニハ〓育ノ制度モ
アリマスガ、ソレダケチヤ十分デナイ、近年ハ幸ニ諸種ノ競技運動ガ盛ンニ
ナッテ來マシテ、最近ニハ文部內務省ナドデモ、國庫カラシテ多少補助ヲス
ルト云フヤウナ方針ニナラレタト云フコトデ、誠ニ結構ナコトト思ッテ居リ
マスガ、其外ニ最モ有效デアラウト思フコトハ丁度此競馬法ヲ作ルヤウ
ニ、素人角力ヲ奬勵ナサッテハドウカ、今マデモ昔カラ全國至ル所ニ年々一度
位ハ鎭守ノ祭ノ時ニ素人角力ナドガアリマスガ、是誠ニ年ニ一囘位範圍ガ
狹ク行ハレテ居ルガ、若シ素人角力ヲ奬勵スルト云フコトニナリマスト、其方
法トシテハ、馬劵ヂヤナイ、人劵ダ、勝者投票劵······勝者投票劵ト云フモノノ
賣買ヲ許スコトニシタナラバ、ドウデアルカ、忽チ全國津〓浦〓ニ至ルマデ、
春夏秋冬、年四囘位ハ行フ、其結果ハ實ニ著シク見エルダラウト思フ、ソレ
ダケ御勇氣ハ無イノカ、馬ノ改良ノ爲ニ投機心ヲ起シテ宜イ位ナラバ、人身ノ
改善、强健ナラシムルニ必要ナ手段トシテハヤッテ宜ササウダ、ドウデス、
ソレヲ伺ヒタイ、ソレガ十一デス、一番終リハ是ハ漠然トシタコトデアリマ
スガ、ドウモ此法案ニ付テ政府當局ハ御說明ノ大意ヲ伺ッタ所デハ何分ニ本
員ノ腑ニ落チヌコトガ多ウゴザイマス、斯ウ云フヤウナ競馬法ヲ實施スルト
云フコトニナリマスト云フト、〓育勅語ノ精神、之ヲ根據トシテ居ル德育、
智育、體育ナド·····德育ノ趣旨ニ背反スルコトハナイカ、先刻モ質問中ニア
リマシタガ、此內閣ハ綱紀振肅ト云フコトヲ政綱ノ一眼目トセラレテ居リマ
スガ、斯ノ如キ投機心ヲ挑發シテ輕佻浮薄ノ人心、旣ニサウ云フ狀況デアル
ノニ、ソレヲ助長セシムル惡結果タルヲ知ッテ實施スルト云フコトデアッテ、ド
ウシテ綱紀振肅ト云フコトガ出來マセウカ、諸種ノ疑獄事件ガ起ッタリ、實
ニ是ハ文明國ニ曾テ見ルコトノ出來ナイ著明ナ人ガ連續的ニ禁獄ニナッテ居
ル、近年之ハ斷ジテ文明國ニ見ルコトノ出來ナイ實ニ嘆カハシイコトデア
ル、其本ハ心ガ治マラヌカラデアル、私ハ最後ニ伺フノハ斯ウ云フ法案ヲ
施行シテ、〓育勅語ノ趣意ニ反スルト思ハヌカ、內閣ノ一眼目トセラルル所
ノ官紀振肅ト云フ施政方針ニ背反スルノデハナイカ、此點ニ付テハ實ハ滿足
ノ御答ガナケレバ、政府ノ誠意ニ疑ヒヲ抱カザルヲ得ナイト思ヒマスガ、意
見ハ他日述ベマス
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=38
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039・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 先ヅ第一ニ上山君ノ御問ニ對スル不十分ナル答解
ガアリマシタカラ、ソレダケ先キニ一ツ申上ゲマス、此答申案ニハ斯ウ云フ
コトガ戴ッテ居リマス、「競馬法ヲ制定シ、極メテ嚴密ナル監督ノ下ニ馬劵ノ
發行ヲ許スコトハ云々」ト、斯ウ云フコトニナッテ居リマス、是ハ私ハ馬劵ノ伴
フ競馬法、斯ウ解釋ヲシタ次第デアリマス、是ダケ御答イタシマスル、ソレカ
ラ土方君ノ御質問ニ御答イタシマスガ、一ヨリ九ニ至ルマデハ私ヨリカ司法
當局カラ答解ヲシタ方ガ適切ト思ヒマスカラ、司法當局ニ讓リマス、第十ノ
素人相撲ヲ入レテハドウカト云フコトデアリマスガ、是ハ體育ニハ各學校ニ
於テハ定マッタモノモアリマスカラ、是デ體育ト云フモノハ十分出來ルト思
ヒマス、併ナガラ凡テニ競技ト云フモノガアリマス、此競技ニハ相撲モアリ
Rv.鬼ゴトモアリマス、競走モアリマス、是ハ私ハ今デハ陸軍ニ於テモ其
體操ノ外ニ競技ト云フモノヲ設ケテ、是ハ實際行ッテ居ルカラ、是ハ又日本人
トシテ自然ニヤッテ居ルコトト思ヒマス、第十一ノ德育ニ反セザルヤト云フ
問題デアリマス、是ハ上山君ノ問ニ對シテ、總理大臣ガ明瞭ニ御答ヘニナッ
タト思ヒマス、私モ德育ニ多少害ガアルト云フコトハ認メテ、今朝來御答シ
テ居ルノデアリマス、併ナガラ是ハ他ニ取締方法モアリマスルカラシテ、其
害ハ大ナラザルモノト判定スル次第デアリマス
〔政府委員林賴三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=39
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040・林頼三郎
○政府委員(林賴三郞君) 唯今ノ土方博士ノ御質問ノ中デ法律問題ニ關スル
部分ニ付テ、私ヨリ御答ヲシタイト考ヘマス、第一ハ學生、生徒、未成年
者、是ハ馬劵ヲ買ウコトハ出來ヌノデアルガ、入場料ヲ拂ッテ見物スルノハ宜
シイカ、是ハ宜シイコトニナッテ居リマス、ソレカラ第三ニ御尋ネニナリマシ
タノハ第五條第二項ニ揭ゲテアルモノガ、他人ノ名義ヲ以テ馬劵ヲ買ッタ
場合ニ、名義人ノ出金者、之ニ對スル處分ハドウナルカ、斯ウ云フ御尋ネデ
アリマスガ、是ハ刑法ノ一般ノ原則ニ依テ支配イタシマスノデ、其實際ノ關係
如何ニ依テ、或ハ〓唆者トナリ、或ハ正犯トナリ、或ハ從犯トナリマセウ、
要スルニ刑法ノ共犯ニ關スル一般ノ理論ニ依テ之ヲ決スル、即チ刑法ノ總則
ニ讓ッテアル次第デアリマス、ソレカラ第四ハ馬劵ヲ買ハムトスルモノガ、
第五條第二項ニ揭ゲテアル所ノ意見ヲ徵スルノハ差支ナイカト、斯ウ云フ御
尋ネデアリマスガ、差支ナイカト云フ御趣意ハドウ云フ意味デアルカ、能ク
諒解シ兼ネマスガ·····
〔土方寧君「ドウナルカ否ヤ」ト述フ〕
別ニソレハ禁止シテゴザイマセヌ、從ッテ制裁モゴザイマセヌ、單ニ意見ヲ
聽クト云フコトニ止マルナラバ·····併ナガラ是モ實際問題デ、或ハ共犯關係
ガ生ズルコトガアルデアラウ、又實際問題トシテ考ヘレバ、共犯關係ガ生ズル
コトガ多イトハ考ヘマセヌ、單ニ意見ヲ聞クダケト云フコトデアレバ、禁止ハ
ナイ、斯ウ云ウ風ニ御答ヘシテ差支ヘナイト考ヘマス、ソレカラ第五、第六、是
ハ意見ヲ徵セラレタ場合ニ勝ッタラバ半分分ケルト云フ契約ヲスル、或ハ情ヲ
告ゲテ金ヲ借リタ場合ニ、ソレ等ノ契約ノ效力ハドウデアルカト云フ御尋ネ
デアリマスガ、此法案ニ於テハサウ云フ點ニ付テ、民法ノ除外例ヲ決メテ居リ
マセヌ、ソレデアリマスカラ、サウ云フ問題ハ民法ノ原則ニ從ッテ、其效力ヲ
決スル、斯ウ云フコトニ御諒解ヲ願ヒタイ、ソレカラ第八デアリマスガ、馬劵
ト刑法ノ賭博若クハ富籤トノ關係ハドウナッテ居ルカ、斯ウ云フ御尋ネニ拜
承イタシマシタ、御承知ノ通リ、此馬劵ニモ色〓種類ガアリマスノデ、單二
此馬劵ト廣ク申シマスト云フト、刑法トノ關係ガ簡單ニ申スコトハ困難デ
アリマス、此法案ニ定メタ馬劵ハドウ云フ關係ガアルカト云フコトニ制限
シテ御答ヘヲ致シマス、無論御尋ネモサウダラウト考ヘマス、申スマデモナ
〃、通俗ノ賭博、博奕ト申シマス事柄ハ此法律的ニ正確ニ申シマスト、是ハ
少シ専門的ニナッテ恐レ入リマスガ、大凡三ツニ分ケラレテ居リマス、即チ
狹イ意味ノ賭博、ソレカラ富籤、ソレカラ單純ナ射倖行爲ト云フ三ツニ分ケラ
レテ居リマシテ、賭博ト富籤ハ刑法デ定メテ居リマス、ソレカラ單純ナ射倖
行爲ハ特別法規デ定メテ居リマス、要スルニ射倖心ヲ挑發シテ、社會ノ風
〓ニ甚シキ害ノアルヤウナ行爲ハ色〓ナ方法ヲ以テ取締ヲシテ居リマス、其
三ツノ廣イ意味ノ賭博行爲ガアルノデアリマスガ、其區別ハ是ハ學問的ニ
申スト色〓ムヅカシイ問題モアリマス、又或ル部分ハ學者ノ說モ一定イタシ
テ居ラヌノデアリマス、併シ根本ノ違フ點デアリ、且ツ殆ド多數ノ學者ノ異論
ヲ容レタ點ヲ述ベテ其區別ヲ申上ゲマスト云フト、賭博ノ方ハソレニ關係シ
タ當事者ガ互ニ損失ヲ負擔スル危險ヲ負フノデアリマス、偶然ノコトニ依ッ
テ利益ヲ得ルコトノアル代リニ損失ヲスルコトモアル、ソレハ其當時者雙方
ガサウ云フ狀態ニ置カレル、ソレハ賭博ノ特質ト申シテ居リマス、ソレカラ
富籤ノ方デアリマスト、一方ノ當事者ガ非常ニ儲ケルコトガアルト同時ニ、
うです〓
賭ケタ金ヲ損スルコトモアル、一方ノ當事者ハ損ハ絕對ニシナイ、サウ云フ
ノガ富籤デアリマス、富籤ヲ賣リマシテ、サウシテ當ッタ者ハ非常ニ儲ケル、
當ラヌ者ハ皆取ラレテ仕舞フ、賣ル方ハ結局自腹ヲ切ラヌ、集メタ金ノ中デ
仕拂フ、斯ウ云フノガ富籤デアリマス、若シ普通ニ云フ富籤デアリマシテ
モ、賣ル者モ損ヲスルト云フ關係デアレバ刑法ノ意味デハ賭博ト云フコトニ
ナリマス、ソレカラ射倖行爲ニ付テハ御尋ネハナカッタノデアリマスガ、ソ
コマテ申サヌト〓ノ關係ガ十分分ラヌト思ヒマスカラ、附加ヘテ申上ゲテ置
キマスガ、賭博富籤ニ屬セズシテ射倖心ヲ唆ルヤウナ行爲ガアリマス、是ハ
懸賞デアリマス、景物ヲ附ケル、物ヲ賣ル場合ニ景物ヲ籖ニ依ッテ附ケテヤ
ル、或ハ入場劵ヲ賣ル時ニ番號ニ依ッテ、或物ヲヤルト云フヤウナコトガ行
ハレル、ソレヲ貰ヒタイ爲ニ買フトカ、這入ルヤウナコトガアリマスノデ、
是モ矢張リ射倖心ヲ或程度ニ於テ唆ル、此方ハ特別法規デ取締ッテアルノデ
アリマスガ、賭博富籖ト違ヒマス點ハ、此方ハ拂ッタダケノモノヲ得ルトカ、
拂ッタダケノ權利ヲ得ルトカ、入場劵ヲ買ッテ入場シテ見ルコトガ出來ル、代
金ヲ拂ッテ物ヲ受取ル、少シモ之ハ損失ハナイ、損失ハナクシテ偶然ノコト
ニ依ッテ利益ヲ得ル、是ダケノ關係ニナリマス、利益ヲ得ルカドウカト云フ
コトガ、矢張リ偶然ノコトニ繫ガルト云フ關係ニナッテ居リマス、大體ノコ
トデアリマスガ、今申シタヤウナ三ツノ分類ガ出來テ居リマス、ソコデ此法案
ニ於テ認メマシタ馬劵ヲ賣リマス關係デアリマスガ、是ハ賭博ニハ當リマセ
ヌ、刑法ノ狹イ意義ノ賭博ニハ當リマセヌ、法案デ御承知下サイマス通リ、
此法案ニ於キマスル馬劵ト云フモノハ、第一條デ定メマシタ公益法人、馬事
思想ノ普及ヲ圖ルコトヲ目的トスル公益法人、之ガ一方ハ當テヽアリマス、
一方ハ馬劵ヲ買フ者デアリマス、買フ者ト法人トノ間ノ關係ガ生ズルノデア
リマスカラ、買フ者同士ノ間ニハ何等ノ關係ガ生ジナイ、ソコデ買フ者ト
法人トノ關係ヲ見マスト云フト、買フ者ノ方ハ巧ク當レバ十倍以下ノ利益
ヲ得ル代リニ、當ラナケレバ馬劵ノ代金ヲ損スル、斯ウ云フ關係ニナリマ
ス偶然ノコトニ依ッテ一方ノ者ハ利益ヲ得ルコトモアレバ損ヲスルコトモ
アル、偶然ト云フコトニ付テモ色々論ガアルノデアリマス、競馬ハ無論普通
ノ博打トハ趣ガ違ヒマスケレドモ、矢張リ刑法ノ學問ノ方面カラ申シマス
ト、其部類ニハ這入ッテ參リマス、趣キハ無論違ヒマスガ、這入ラヌト云フ譯
ニハ行キマセヌ、兎ニ角一方ハ損失ヲ負擔スル危險ガアリマスガ、併ナガラ
法人ノ方ハマルキリ損ヲ負擔スル危險ハナイ、法人ノ方ハ馬券ヲ賣得シタ金
ノ範圍內ニ於テ之ヲ仕拂フト云フコトガ第六條ニ明記シテアリマス、法人ハ
絕對ニ損失ハ負擔シナイ趣意ニ出來テ居リマス、ソレデアリマスカラ賭博ト
云フ中ニハ這入リマセヌ、結局法人ガ馬劵ヲ賣リマシテ、サウシテ其馬劵ヲ
買ヲタ者ガ競馬ノ勝負ニ依ッテ利益ヲ得、或ハ損失ヲ負擔スルト云フ關係ニナ
リマス、結局當籤ト云フコトニナルコトヽ考ヘテ居リマス、ソレデアリマスカ
テ、此競馬法ガ無イモノトシラ斯ノ如キ行爲ヲスレバ矢張リ刑法ニ於テ罰セ
ラレル關係ニナリマス、併シ此法案ガ成立イタシマシテ、勝馬投票劵ガ認メ
ラレマスレバ、其關係ハ刑法ノ賭博若クハ富籖カラ離サレテ、此法案ノ取締
法規ニ觸レル範圍ニ於テ制裁ラ受ケルト云フ關係ニナリマス、御尋ハ大體ソ
レダケト心得マシテゴザイマス、一應御答ダケヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=40
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041・土方寧
○土方寧君 本員ノ質問ノ大部分ハ司法當局及ビ陸軍大臣カラ御答ヲ得マシ
タガ、ドウモ滿足イタシ兼ネマスガ、主モニ意見ノ違ヒニナルデアリマセ
ウ、司法當局者カラト言ッテ政府委員ガ代ッテ御答辯ニナッテ一番詳シク伺ッタ
ニハ伺ッタガ、馬劵ノ賣買ハ賭博又ハ富籤ノ性質ヲ有スルモノデハナイト云
フ詳シイ御話デ、却テ私ノ問ハムトスル要領ニ觸レテ居ラヌ、此競馬法案ガ
法律デアッタモノト見タ上ノ話デ、私ハ是ハ法律ニナッテ居ナイ競馬法案ガ
法律ニナル前ニ於テ、若シ馬劵ノ賣買ガアルトスルナラバ、刑法ニ照シテドウ
云フコトニナルカト云フコトヲ聽カムトシタガ、ドウモ今ノ長イ御話ヲ捉ヘ
ルト、刑法デ賭博ヂヤナイヤウダガ、先ヅ富籖ト云フ制裁ヲ受ケナケレバナ
ラヌト云フヤウニ聞エマシタガ、ナルカナラヌカ分ラナカッタ語尾ガ·····ソ
レデ除外例ヲ設ケルト云フヤウナコトデ、ソンナラ意味ガ分ル、此法案ニ除
外例ヲ設ケレバ······其處ヲ聽キタカッタ、ソレカラ何ハ御答ヲ得ナカッタ、斯
ウ云フ法律ガナケレバ取締ル必要モナイシ、犯罪人モ出テ來ナイ、一定ノ制限
ヲ附シテ馬劵ヲ許スト云フコトニナルト、制限內ハ適法デアル、制限ヲ超エ
レバ違法デアル、罪人ヲ造ルト云フコトニナリハセスカト云フコトヲ御尋ネ
シマシタガ、ソレハ御答ガナイ、ソレカラ第二ノ質問モ御答ガナカッタ、學
生、生徒、未成年者ニ限ヲテ何故馬劵ヲ賣ルコトガ出來ナイカ、マダ御答モ
得ナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=41
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042・林頼三郎
○政府委員(林賴三郞君) 私ノ御答ノ仕方ガ不十分ナー爲ニ重ネテ御尋ヲ蒙ッ
テ恐縮ノ次第デアリマスガ、若シ此法案ガ、成立セズト云フコトニシマシテ、
此法案デ認メタヤウニ馬劵ノ關係ガ刑法トドウナルカト申シマスト云フト、
富籤ニ該當スル、斯ウ云フ趣意デアルト御答シテ居ッタノデアリマス、ソレ
カラ又此法案ハ犯罪ヲ製造スル法案デハナイカト云フ御尋ガアッタト云フ
コトデアリマスガ、實ハソレハ獨立ノ御尋ネト考ヘズニ居ッタモノデスカラ、
御答ヲシナカッタノデアリマス、ソレハマルデ反對ノコトデアルト考ヘテ居
ルノデス、今御答シマシタ通リ此法案デ認メナケレバ富籤ニ當ルノデアリマ
ス、一切ノ行爲ガ刑法デ罰セラレルコトニナリマス、此法案デ刑法ノ例外ヲ認
メテ或ル範圍ニ於テ罰シナイコトニシタ、ソコデ法律ニ定メタ制限ニ反スル
者ノミヲ罰スル、制限ニ反スル者ハ罰スル譯デアリマスカラ、條文ノ數ハ成ル
ホド多イノデアリマス、併ナガラ罰スベキ事柄ハサウ云フ意味ニ一ツ御諒解
ヲ願ヒタイ、ソレカラ第二ノ御問ヒデアリマシタガ、是ハ純粹ノ法律間題デ
ナイト思ヒマシタカラシテ、私ハ御答シナカッタノデアリマス、要スルニ此競
馬ニ馬劵ヲ作ルト云フコトハ、馬事思想普及ノ爲ニ極メテ必要デアルト同時
ニ、一面ニ於テ此倖射心ヲ唆ルト云フヤウナ心配スベキ事情ノアルト云フコ
トハ是ハ先ホド總理大臣カラモ申サレタ通リデアリマス、ソレデアリマスカ
ラマダ學事ニ勤シムデ居ルト云フヤウナ者デアルトカ、或ハ未成年者デアル
トカ云フヤウナ者ハサウ云フ者ハ携ルコトヲ禁ズルト云フコトガ宜カラウ、
是ダケノ趣旨デアリマス、勿論其未成年者デナクテ、學校へ行ッテ居ラヌ者
デアルトカ云フ者、其點ニ付テ御不審ガアッタヤウデアリマスガ、ソレハ學校
デ今〓育ヲ受ケテ居ル者ト、ソレカラ又年ハサウ行ッテ居ラヌケレドモ、當人
ハ社會ニ立ッテ色〓ノ仕事ヲヤッテ居ル者トハ、是ハドウモ區別シナケレバナ
ラヌト思フ、ソコニ此法案ノ區別ヲ立テタ趣旨ガアルノデアリマス、左樣ニ
御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=42
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043・土方寧
○土方寧君 モウ少シ·······重軍大臣ニ先刻伺ッタ問題ノ御答ノ中ニ諒解シナ
カッタ點ガアル、此事ハ案ノ比較ノ上カラ法案ヲ見テ伺ッタダケデ、靑年ノ體
格云々ト云フコトハソレハ外ニモ方法ハ有ラウト私ハ考ヘル、私ノ考デハ素
人相撲ノヤウニデスネ、勝者投票劵ヲ許スト云フコトガ一番宜カラウ、其時
ニハ判斷力ヲ要スルト思フ、甲ガ勝ッタ、乙ガ負ケタト云フコトハ、アレハ
品行方正デアッテ酒モ飮マヌ、優等學生ダ、實ニ感心ナ奴ダ、ソレデアルカ
ラキット勝ツト云フヤウニデスネ、マア投票劵ヲ買フト云フコトニナル、ソ
レガ間接ニハ德育ノ奬勵ニナルノデ非常ニ宜イコトト思フンダガ、其外ニ方
法ガアルカナイカ知ラヌ顏ヲシテ馬ダケガ競馬ニ依ッテ出來ルト云フコトハ
アルマイ、馬ハ特別ノモノダカラト云フト·····馬ト人トノ輕重ヲ〓倒シタニ
過ギナイ、全體人ヲ以テスルカ、馬ヲ以テスルノカ······ソレヲ一ツ伺ヒマス
〔國務大臣山梨半造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=43
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044・山梨半造
○國務大臣(山梨半造君) 私ハ大變ニソレハ考ヘガ違ッテ居ルヤウニ思ヒマ
ス、人間ヲ〓育スルニハ各〓國ニ決ッタモノガアリマシテ、ソレデ其範圍ヲ越
ヘヌヤウニシテ行ッテ行クノデアリマス、ソレデアリマスカラシテ茲ニ體格
ヲ奬勵スルガ爲ニ素人相撲ヲ奬勵スルト云フヤウナ考ハ私ハ毛頭浮バヌノデ
アリマス、素人相撲デナクシテ、詰リ此學校ノ規定シテアル所ノ體操ノ科目
ヲ見マスルト云フト、其年齡ニ從ッテ其體格相當ニ總テノ規定ガアル、又〓
員ハ其科目ヲ適當ニ綜合シテ體格ニ應ズルヤウニ行ッテ居ル、即チ其外ニ先
ホド申上ゲマシタ競技ト云フモノガアッテ、其競技ガ體格相當ニ適合シテ之
ヲ當箝メテ居ルノデアリマス、デアリマスカラ之ヲ馬ト同事ニスルト見テ
ハ私ハ却ッテ本末ヲ誤ルト云フヤウニ考ヘテ居ルノデアル、ソレカラモウ
ー、、第七點ニ於テ囘答スルコトヲ落シマシタガ、此事ヲ申上ゲマス、此法
案ニ於テ實行シタナラバ監督ノ爲ニ金ガ要ルダラウ、斯ウ云フ點デアリマス、
是ハ今勝馬投票ヲ許シテ居ラヌ場合ニ於テモ取締ヲ十分ニシテ居ルノデアリ
マスカラ、其取締リノ方法ヲ考ヘ、サウシテ其注意ヲ致シマシタナラバ、此
人員等デ實際行ヒ得ルコトト今ハ信ジテ居ルノデアリマス、從來之ガ益〓發
展シマシテ人ガ澤山這入ルト云フヤウニナッテ人員ガ澤山要ルト云フヤウニ
ナル、斯ウ云フコトニナリマスレバ、實際費用ヲ增加スルヤウニナルダラウ
ト斯ウ思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=44
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045・土方寧
○土方寧君 今ノ素人相撲ノ奬勵ト申シタノハ、自分ハ宜イト思ッテ申シタ
ノデハナイ、唯比較ニ申シタノデアリマス、ドウモ唯〓ノ御答辯デハ滿足出
來マセヌガ、繰返シテモ同ジコトデアリマスカラ、意見ヲ述ブル時ニ述ベル
コトニ致シテ、モウ今日ハ之デ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=45
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046・上山滿之進
○上山滿之進君 先刻陸軍大臣ガ馬政委員會ノ答申書ニ依ッテ、私ノ質問ニ
御答ニナリマシタガ、實ハ初メノ方ヲ少シシカ御讀ミニナッテ居ナイ、全部
御讀ミニナルト違ヒマス、私ノ記憶スル所ト陸軍大臣ヨリ其前ニ御述ベニ
ナッタノトハ全ク裏腹デ、ソレハ此答申書ノ全部ガ公表サレレバ、ソレデ能ク
分ルコトト思フノデアリマスガ、併シ問題ガ細末ニ亙リマスカラ、ドウゾ特
別委員會デ十分御審査ヲ願ヒタイ、私ハ馬政委員會ニ於テハ大體馬劵ニ賛成
デアルト云フ意見ヲ出シタト仰セニナッタラシイ、陸軍大臣ノ御見解ト、私
ノ承知シテ居ルコトトハ全然違ッテ居ル、此處デ詳シク論議スル事ヲ差控ヒ
マスカラ、特別委員會デ能ク御審査ヲ願ヒタイ、是デ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是デ通〓者ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=47
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048・西大路吉光
○子爵西大寺吉光君 唯今議題ニナッテ居リマス競馬法案ハ重要ナル案件デ
アリマスカラ、本法案ノ特別委員ヲ十五名ニサレムコトノ動議ヲ提出シマ
ス、滿場ノ諸君御賛成ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=48
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049・大山綱昌
○大山綱昌君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ本案ノ委員ノ數ヲ十五名トスル動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
競馬法案特別委員
侯爵細川護立君伯爵兒玉秀雄君子爵高倉永則君
子爵井上匡四郞君子爵秋田重季君子爵西尾忠方君
男爵字佐川一正君荒川義太郞君男爵名和長憲君
男爵伊藤文吉君石渡敏一君加太邦憲君
川上親晴君湯淺倉平君犬上慶五郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 次ハ御異議ナケレバ日程第二ヨリ第四マデ一括シ
テ說明ヲ煩ハシ議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、大正十年度豫備金支出ノ件、第三、大
正十年度特別會計豫備金支出ノ件、第四大正十年度豫備金外ニ於テ豫算超過
支出ノ件、承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會議
大正十年度豫備金支出ノ件
大正十年度特別會計豫備金支出ノ件
大正十年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過支出ノ件
右本院ニ於テ承諾スヘキモノト議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送
付候也
大正十二年三月九日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵徳川家達殿
一大正十年度豫備金支出ノ件
一大正十年度特別會計豫備金支出ノ件
一大正十年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過支出ノ件
右帝國憲法第六十四條第二項ニ依リ承諾ヲ求ムル爲
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正十二年二月十日
內閣總理大臣兼男爵加藤友三郞
海軍大臣
外務大臣伯爵内田康哉
陸軍大山梨半造
臣臣
司法大岡野敬次郞
內務大臣水野鍊太郞
農商務大臣荒井賢太郞
大藏大臣市來乙彥
文部大臣鎌田榮吉
遞信大臣子爵前田利定
〔國務大臣市來乙彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=54
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055・市來乙彦
○國務大臣(市來乙彥君) 唯〓議題ト相成リマシタ大正十年度ノ事後承認ノ
件ニ付キマシテ說明ヲ致シマス、大正十年度ノ一般會計ノ第一豫備金ノ豫算
額ハ六百萬圓デゴザイマシタ、之ヲ支出イタシマシタル金額ハ五百九十四萬
圓デゴザイマス、支出ヲ致シマシタル主ナル事項ハ外務省ニ於ケル電信料內
務省ニ於ケル檢丁竝ニ新兵旅費、農商務省ニ於ケル染料ノ製造奬勵等ニ關ス
ル經費デゴザイマス、竝ニ大正十年度ノ一般會計ノ第二豫備金ノ豫算額ハ八
百萬圓デゴザイマシテ、之ヲ支出イタシマシタル金額ハ七百八十餘萬圓デゴ
ザイマス、其主ナル事柄ハ國際聯盟總會ノ參列費、華盛頓會議ノ參列費、竝ニ
各省所管ノ災害復舊費等デゴザイマス、右ノ一般會計ニ於テ支出ヲ致シマシ
タ外ニ、朝鮮總督府臺灣總督府竝ニ其他ノ特別會計ニ於テモ豫算ノ超過ノ支
出竝ニ豫算外ノ支出ガアリマスルノデゴザイマス、以上ハ何レモ緊急已ムヲ
得ザルガ爲ニ支出ヲ致シマシタモノデゴザイマス、何卒御審議ノ上承諾ヲ與
ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=55
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056・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 別段御質疑モナイト在ジマスカラ、特別委員ノ氏
名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
大正十年度豫備金支出ノ件外二件(承諾ヲ求ムル件)
特別委員
伯爵松木宗隆君伯爵大原重明君伯爵實吉安純君
黑岡帶刀君男爵武井守正君男爵土屋光金君
男爵安藤直雄君橋本圭三郞君麻生太吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=56
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057・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第五、大正五年法律第十六號中改正法律案政
府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
大正五年法律第十六號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十二年三月七日
右特別委員長
男爵古市公威
貴族院議長公爵徳川家逹殿
〔男爵古市公威君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=57
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058・古市公威
○男爵古市公威君 大正五年法律第十六號中改正法律案ノ特別委員會ハ本月
三日ト七日ト兩度ニ開キマシテ審查ノ結果、出席委員ノ全會一致ヲ以テ本案
ヲ可決スベキモノト議決イタシマシタ、提出ノ理由ハ農商務大臣ノ說明ニ依
テ諸君御承知ノコトデアリマスガ、要スルニ〓究所當初ノ計畫ニ齟齬ヲ生ジ
マシタ、一方收入ニ於テ資金ノ募集ガ意ノ如クナリマセヌデ、約二百萬圓ノ豫
算ニ比シテノ缺陷ヲ生ジ、又一方支出ノ方デハ物價ノ騰貴ニ依テ是亦二百數
萬圓ノ豫算ニ比シテノ超過ヲ生ジマシタ、尤モ總テ物價騰貴トハ申サレマセ
又、例ヘバ敷地ノ如キハ當初官有地ヲ借用スル考デアリマシタ、現在ノ敷地
ハ四十何萬圓カデ購買スルニ至ッタヤウナ始末デ、豫算ニ狂ヒヲ生ジタコトモ
アリマス、右ノ次第デアリマスカラ旣ニ昨年度即チ十年度ニ於テ資金トシテ
保存イタシタ金額カラ經常費ヲ補ッテ居ルヤウナ次第デアリマス、此儘ニ繼
續イタシマスト、四五年ノ中ニ資金ヲ皆消費シテ仕舞ハナケレバナラヌ、即
チ〓究所ノ自滅デアリマス、是ハ重大ナ事柄デ各國ニ於テモ、殊ニ此歐洲大
戰以後競フテ理化學ノ研究ニ熱心シテ居ル場合、此〓究所ガ衰微スル、次第
ニ依ッテハ自滅スルヤウナコトガアッテハ一大事デアリマス、〓究所ハ設立以
來五六年ニ過ギマセヌガ、既ニ見ルベキ成績ヲ擧ゲテ居ルノハ御聞キ及ビノ
コトト存ジマス、頗ル將來有望デアル場合デアリマスカラ、何トカシテ之ヲ
救濟セネバナラヌト云フコトハ、是ハ誰モ考ヘル、然ラバ更ニ資金ヲ得ル手
段ハアルカト云フト、今日ノ財界ノ狀況デハ迚モ望ムベカラザルコトデア
ル、茲ニ於テ政府ガ斷然意ヲ決シテ國庫ノ補助ヲ增加スルト云フコトニナリ
マシタノデアリマスカラ、是ハ最モ時宜ニ適シタ處分トシテ大イニ賞讃シテ
宜シイト考ヘルノデアリマス、偖テ案ニ依リマスト二百十五萬圓ヲ增加スル、
サウシテドウナルノカト申シマスルト、既ニ決定シテ居ル國庫補助ニ之ヲ加
ヘマシテ大正十二年度カラ二十一年度マデ十箇年ノ間每年二十五萬圓宛ノ資
金ヲ〓究所ガ得ルコトニナル補助ヲ······ソレニ今二百萬圓ホドノ資金ガ殘ッ
テ居リマス、是ガ約七分ニ廻ッテ居リマスカラ、是デ十四五萬圓ヲ得ラレル、
兩方合セテ約四十萬圓ノ金額ガ得ラレル、大正十一年度ノ經常費ノ豫算ハ
四十萬圓デアリマス、先ヅ其金額ハソレデ得ラレル、此四十萬圓ト云フ金額
ニ付テモチヨット申上ゲテ置イテ宜カラウト思フコトハ、最初ノ計畫デハ確
カ資金カラ三十五六萬圓ノ利息ヲ一年ニ得ル計畫ニナッテ居リマスガ、ソレ
ヲ經常費ニ當分充テルト云フ考デアッタノデアリマスガ、其當初ノ三十五六
萬圓ノ計畫ニ比スルト云フト四十萬圓ト云フ金ハマダ少ウゴザイマス、今日
ノ物價カラ考ヘテ······先ヅ是デ計畫ヲ立テル、尤モ此外ニ既ニ〓究所ニ於テ
發明イタシマシタモノカラ收益ガアリマス、是ガ今日ノ所デハ約二萬何千圓
カホド一年ニアル、是ハ遠カラヌ將來ニ十萬圓ニハ達スル見込デアル、サ
ウ致シマスト五十萬圓ト云フ金額ニナルノデアリマス、而シテソレデ大正二
十一年度マデ行ク、後ハドウナルカ、後ハマダ此案デハ何モ決マッテ居ラヌ、
從ッテ此案ハ百年ノ計デハナイ、其先ハ未知數ノコトデアリマスガ、今カラ
十年ノ中ニ於テ今日マデノ理化學〓究所ノ成績カラ推シテ見ルノニ、必ズ
ヤ又相當ノ成績ヲ擧ゲテ此有要ナルコトヲ益〓世ノ中デ知ルヤウニナルダラ
ウ、又一般ノ狀況モ何時マデモ今日ノヤウナ狀態デ居ルモノモアルマイ、
然ラバ他ニ資金ヲ得ル手段モアルダラウ、斯ウ云フ考デアルノデ、未知數ノ
コトデ勿論アリマスルガ、委員會ニ於テハ、先ヅ今日ノ處分トシテ、此急ヲ
救フ、此邊ガ此程デ然ルベキモノト認メテ可決イタシタノデゴザイマス、尙
ホ附加ヘテ申シマスレバ、或委員カラ元來、此理化學〓究所ハ、公益法人
デ基礎的ノ〓究ヲセネバナラヌノダカラ、妄リニ收益ヲ目的トシテ、而シテ
應用ニ沒頭スルヤウナコトガアッテハ宜シクアルマイト云フ考ヘガアリマシ
テ、ソレニ對シテ政府ハ勿論其考デアルト答ヘマシタ、ソレカラ一ツ希望
トシテ、何分此〓究所ガ相當ノ成績ヲ擧ゲルノニハ、人ガ必要デアル、〓究
員ガ必要デアル、今日ハ專任ノ研究員ガ九人、兼任ノ研究員ガ十五人デアリ
やつり、合セテ二十四人、兼任ニハ大學ノ〓授ナドガ居マス、モット専任ノ〓
究員ガ欲シイデハナイカト云フ說ガアリマシテ、ソレニ對シテ政府ノ答ハ勿
論サウデアリマスカラ、今度ノ豫算ニハ専任〓究員ハ約十五人ヲ置ク積リデ
計算シテ居ル、併シ又委員會ノ論デ十分ニ安心シテ〓究ニ從事スル爲ニハ
相當ノ待遇ヲ厚クセネバナラヌ、其點ハ如何デアルカト云フニ對シテハ、〓
究員ノ俸給ハ月額百圓乃至五百圓、其範圍ニ於テ出來ルダケ厚クスル考デア
ル、委員會ハ其邊ニ注意ヲ加ヘテ、十分〓究ノ目的ヲ達スルヤウニ政府ニ於
テモ注意スルコトヲ希望スルト云フ希望ガアリマシテ、ソレデ前申シタ通リ
ニ、本案ハ可決イタシマシタ、右御報〓ニ及ビマス、委員會ノ決議ノ通リニ
本案ノ成立スルコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=60
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061・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=61
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062・藪篤麿
○子爵藪篤麿君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ木案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス、全部ヲ問題ニ供シマス、
原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=65
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066・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=66
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067・藪篤麿
○子爵藪篤麿君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、第二讀會ノ決議通リデ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=69
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070・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=70
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071・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第六ヨリ第九マデ同一委員ニ付託セラレマシ
タカラ、委員長ノ報〓モ一括シテ煩シマス、且ツ四案トモ一括シテ議題ト致
シマス、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=71
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072・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第六、日本勸業銀行法中改正法律案、第七、
農工銀行法中改正法律案、第八、北海道拓殖銀行法中改正法律案、第九、日
本興業銀行法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員
長報告、細川侯爵
日本勸業銀行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十二年三月七日
右特別委員長
侯爵細川護立
貴族院議長公爵德川家達殿
農工銀行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十二年三月七日
右特別委員長
侯爵細川護立
貴族院議長公爵徳川家達殿
北海道拓殖銀行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十二年三月七日
右特別委員長
侯爵細川護立
貴族院議長公爵徳川家逹殿
日本興業銀行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正十二年三月七日
右特別委員長
侯爵細川護立
貴族院議長公爵徳川家達殿
〔候爵細川護立君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=73
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074・細川護立
○侯爵細川護立君 唯今日程ニ上リマシタ日本勸業銀行法中改正法律案外三
件ノ特別委員會ノ經過及結果ヲ御報告イタシマス、本案ノ趣意ハ、改正案
ノ趣意ハ旣ニ本議場ニ於キマシテ、去ル二月二十六日大藏大臣ヨリ御說明ガ
アリマシタ、私ガ玆ニ申上ゲル必要ハナイト思ヒマス、委員會ニ於キマシテ
ハ更ニ詳シク說明ガアリマシテ、之ニ對シマシテ種々ノ質問ガゴザイマシ
タ、其質問ハ煩雜ニ亙リマスカラ、之ヲ省略イタシマスガ、唯全體ノ今日ノ
生產ノ金融ニ關スルコト、或ハ住宅組合ヲ此法律案ニ入レテアルガ、是ガ果
シテ適當デアルカ否ヤト云フ質問ガアリマシタ、或ハ今日ノ特殊銀行ノ狀態
ト當局監督ノ模樣ナドノ質問ガアリマシタ、斯ノ如クシテ委員會ハ二日ノ
後ニ質問ヲ終リマシテ、直チニ討議ニ入リマシタ、討議ニ入リマシタガ、四
案トモ別ニ反對ノ意見ハアリマセヌ、唯本改正案ノ趣旨ハ何レモ異論ハナイ
ケレドモ、此法案ノ改正ニ伴フ運用上ニ於テ之ヲ誤ルニ於テハ非常ナ害ガ多
イカラ、此點ニ付テ政府富局ノ深甚ナル注意ヲ望ムト云フヤウナ事柄デアリ
マスカラ、列席委員何レモ異議ナク、此法案四案トモ可決シタ次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 四案トモ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=76
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077・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=77
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078・藪篤麿
○子爵藪篤麿君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 直チニ四案ノ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス、全部ヲ問題ニ供シマス、
原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=81
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082・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=82
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083・藪篤麿
○子爵數篤麿君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=83
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084・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 直チニ第三讀會ヲ開イテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス、第二讀會ノ決議通リデ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=86
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087・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第十一、辯護士法中改正法律案、衆議院提
出、第一讀會
辯護士法中改正法律案
右木院提出案及送付候也
大正十二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族議長公爵徳川家達殿
辯護士法中改正法律案
辯護士法中左ノ通改正ス
第十八條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ所屬辯護士ノ數寡少ニシテ辯護士會ヲ組織スルニ適セサルトキハ司
法大臣ノ認可ヲ受ケ他ノ地方裁判所所屬辯護士ト合同シテ辯護士會ヲ設
立スルコトヲ得
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
一ノ辯護士會ニ屬スル辯護士三百名以上ニシテ內百名以上ノ同意アルト
キハ司法大臣ノ認可ヲ受ケ別ニ辯護士會ヲ設立スルコトヲ得発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 之ニハ質疑ノ通〓ガゴザイマスカラ發言ヲ許シマ
ス、磯部四郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=88
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089・磯部四郎
○磯部四郞君 甚ダ恐縮デゴザイマスガ、未ダ步行ニ苦シミマスカラ、著席
ノ儘質疑ヲ致スコトヲ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=90
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091・磯部四郎
○磯部四郞君 衆議院提出案ノ此辯護士法改正ト云フコトニ付テハ、私ハ大
體ニ於テ甚ダ諒解ニ苦ム點ガゴザイマスノデ、私ノ今日マデ三十有餘年ノ
間、辯護士ノ職務ニ從事イタシマシタ經驗上或ハ紛爭ヲ來シ、種々雜多ノ業
務ガゴザイマスケレドモ、此辯護士界程穩カニ今日マデ經過シ來タモノハナ
イノデアリマス、甚ダ時間モ切迫シテ居リマスルカラ、長クハ申上ゲマセヌ、
一二ノ質問ノ點ダケヲ申シテ置キマスルガ、此提案者ハ即チ速記錄ヲ見マス
ルト、朝野法曹ノ意見ノ一致スル所デアルカラ云々ト云フ意見ヲ、即チ此案
ノ理由トシテ申シ出テ居ラレルノデアリマス、斯樣ナコトハ全ク案外デゴザ
イマシテ、即チ東京辯護士會ハ勿論日本辯護士協會並ニ東京辯護士會評議會
及ビ大阪アタリノ即チ辯護士會等ガ悉ク原案即チ衆議院案ニハ反對デアル
ノデアリマスノミナラズ、此案ガ何處カラ出タカト申シマスルト、近頃辯護
士會ト云フモノガ若イ先生等ガ澤山ニ殖エテ來マシテ是ガ爲ニ從來ノ老成ナ
ル辯護士諸君ガ占領シテ居ラレタル所ノ役員派ト云フモノガ悉ク少壯ノ人ニ
奪ハレタ形デアルノデアリマス、是ガ爲ニ所謂私ガ考ヘマスレバ、老成ナル
先輩諸氏ハ先ヅ若イ者ヲ宜シク指導シテ、サウシテ靄然トシテ平和ニ辯護士
會ト云フモノヲ導クヤウニナサレルノガ親切ナ次第デハアルマイカト思ヒマ
ス、所ガ少壯辯護士ガ數多クシテ或ハ東京辯護士會千七百有餘人アリマシテ、
其中二三百人ノ所謂老成者ガ若イ者ヲ振リ棄テテ、自分等ガ別段ニ即チ辯護
士會ヲ作ッテ殆ド東京ノ町ニ於テ紛爭ヲ來タス一原因ノ最モ甚ダシイモノヲ
玆ニ惹キ起サウトシタノガ、即チ衆議院案ノ提出セラレタル一理由ノヤウニ
承ッテ居リマス、併シ私ハ茲ニ證據ヲ擧ゲテ一言イタシマスガ、即チ大阪ノ
辯護士會ニ於キマシテハ會長竝ニ常議員其外ニ二百七十餘名ノ方ガ即チ斯ノ
如キ反對ノ決議ニナッテ居リマス、吾人ハ目下衆議院ニ附議セラレテアル
是ハ決議ノ前デアリマス······辯護士法中改正法律案ハ全ク反對デアルト云フ
コトニ決議シテ居リマス、ソレカラシテ東京辯護士會ノ決議案ト申シマスル
モノモ矢張リ第四十六囘帝國議會ニ衆議院議員ヨリ提出セラレテ居ル所ノ辯
護士法中改正法律案ハ否決スベキモノデアルト云フ決議ニナッテ居リマス、
又之ト同ジク辯護士會ノ常議員會モ亦同ジク否決イタシテ居リマス、ノミナ
ラズ日本辯護士協會ニ於テモ矢張リ之ヲ否決シテ居ルノデアリマス、然ルヲ
本案ヲ提出セラレマシタル理由ニ付テハ、在朝在野ノ法曹ノ一致スル所デア
ル、分離スル事ヲ······斯ウ云フコトノ名義ヲ以テ斯ノ如キ案ガ出マシタノモ、
其理由ヲ種々考ヘテ見ルト、是ガ要シマスルニ少壯辯護士ノ數ガ殖ユテ、サ
ウシテ是マデノ總テ辯護士會ノ役員ト云フ如キモノノ地位ヲ少壯多數ノ人ガ
奪ッテ仕舞ッタ、玆ニ於テ老成ナル諸君ガ之ヲ反省セシムルコトニ努メラレズ
シテ、其若イ者ヲ置イテキボリニシテ自分等ガ志ヲ得ンガ爲ニ小團體ノ辯護
士會ヲ組織シテ依ッテ以テ殆ド少壯辯護士ヲ特殊部落ノ中ニデモ入レテ仕舞
ハウト云フヤウナ考ヲ以テ此案ガ出タノデハナカラウカト考ヘテ居リマス
ル、是ハ甚ダ間違ッタ話デアルカラシテ、私ハ三十年來·······三十二年辯護士
ノ職務ニ從事シテ居リマスカラ、何レノ團體ニモ關係イタシマシタケレド
モ、辯護士會ハ平和ニシテ曾テ爭ヒモナケレバ誠ニ和氣靄々ノ裡ニ今日マデ
過シテ居リマス、而シテ其爲ス所ハ日々訟廷ニ於テ或ハ敵トナリ、或ハ味方
トナッラ爭ッテ居リマスケレドモ、是ハ其事件ニ關スルノミデ、其事件ヲ離レ
タ以上ニハ、誠ニ平和ニシテ居ルノデアリマス、サウ致シマスルト、此案ハ
所謂少數派ガ我意ヲ貫カンガ爲ニ提出セラレタ案デハナカラウカト疑フテ居
リマス、疑フテ居ルノミナラズ、詐言ヲ以テ所謂在朝在野ノ法曹悉ク一致ス
ル所ノ是ハ案デアルト云フ如キコトヲ玆ニ揭ゲマシテアルノハ甚ダ遺憾ニ考
^ソレデ私ハ今日茲ニ於テ質問ト致シマシテ伺ヒマスノハ、即チ其第一
ハ提案者ハ本案ノ主張ハ朝野法曹ノ意見ノ一致セル所デアルト云フコトヲ申
シテ居リマスルガ、政府當局ニ於カレテハ此主張ヲ御認メニナリマスヤ否
や、是ガ第一ノ質問デゴザイマス、第二ニハ提案者ハ東京辯護士會ニ紛爭ヲ
生ジ、見ルニ忍ビザル醜態ガアルト云ハレテゴザイマスルガ、果シテドウ云
フ事實ヲ以テ見ルニ忍ビザル所ノ醜態デアル、斯ウ云フ事柄マデモ當局ニ於
テ御認メニナッテ居ルカ否ヤト云フコトヲ伺ヒタイ、之ハ勿論チヨット申上ゲ
マスルガ、辯護士ハ御承知ノ通リ兎角口ガ過ギマスルノデ、何カ爭ヒマスル
時ニハ口デ云フコトデハ迚モ追"付キマセヌカラ、場合ニ依リマスト椅子ヲ降
ラセムトスルヤウナコトハ五年ニ一遍七年ニ一遍位ハゴザイマスケレドモ、
ソレハ其時限リノコトデ、ソレカラ役員選擧等ガ決ッテ仕舞フト云フト、御互
ニ相笑ッテサウシテ交際ヲシテ居ルノデアリマス、然ルニ今日態〓東京ノ如キ
二千人ニ足ラザル人ノ居リマスル所デ僅カ三百カ四百ノ人ガ相別レテ是ガ老
派ト稱シテ、サウシテ一團體ヲ作ッテ、サウシテ今日是ヨリ世ノ中ニ頭角ヲ現
ハサウト云フ若イ少壯辯護士ヲ指導シテ成長ニ近ヅケルコトニ御努メナクシ
テ之ヲ見棄テ、三四百ノ人ガ此東京ヲ支配シテ行カウト云フ如キ論ハ私ノ考
ヘル所デハ甚ダ陋デアル、成程役員カラ追ヒ出サレタ以上ハ暫ク謹愼シマシ
テ、私モ明治四十一年ニ丁度役員カラ追ヒ出サレマシテ旣ニ今日マデ謹愼シ
テ即チ平······平辯護士デ居リマスケレドモ、其業務ヲ執ル所ニ於テハ自由自
在、何人モ自分ノ行爲ヲ干涉スル者ハアリマセヌ、何人モ自分ニ對シテ彼是
レ云フ者モナク、又敵モ味方モ靄々ノ裡ニ、今日マデ和氣靄々ノ裡ニ送リ來ッ
タノデアリマス、然ルニ此狹イ東京ニ於テ僅カ千七百人ノ相當〓育アル所ノ
辯護士ガ其辯護士會ヲ故ラ東西ニ分ッテ、サウシテ茲ニ互ニ爭ハシムルト云
フコトガ是ガ、即チ此案ガ左樣ナ紛擾ヲ釀ス所ノ案ニ對シマシテ却ッテ平和
ヲ破ル所ノ案デハナカラウカト思ヒマスルガ、司法當局ニ於テハ如何御認メ
ニ相成リマスルカト云フガ第二ノ質問デアリマス、ソレカラ元來政府ニ於カ
レテハ所謂本案ノ如キモノニ依ラナケレバ、何カ辯護士會ニ是ト云フ弊害
ガアッテ、之ヲ救フニハ是ヨリ外ニ途ナキモノト政府ニ於テ御認メニナッテ居
リマスカ否ヤト云フコトヲ第三ニ伺ヒタイ、ソレカラ第四ニハ現ニ承ル所ニ
依リマスルト、今日辯護士法ニ付テ根本的ニ一ノ改正案ヲ今御調査中ニ相成
〓テ居ルヤウデゴザイマス、其御調査中ニ於キマシテカラ立派ナ法律ニナデウ
ト云フサイ先キニ、僅カ昨年ノ五月ノ辯護士會ノ役員改選ニ於テ何カ縺レテ
若手ニ支配サルルノハ甚ダ殘念ダト云フノデ此處ニ來タノデゴザイマスカラ
シテ、政府ニ於カレテハ此案ヲ暫ク中止セラレテ、宜シク根本的ニ即チ何ト
カ方法ヲ講ゼラレル御考ヘデモゴザイマセウカト云フコトヲ伺ヒタイ、ソレ
カラモウ一ツ假リニ少壯辯護士ガ老成ナル辯護士ニ對シマシテ無禮ヲ働キ、
或ハ禮ヲ失スルヤウナコトガゴザイマスルナラバ、辯護士會ハ如何ニモ自
由デアリマシテ、行クモノハ追ハズ、來ル者ハ拒マズデアリマスカラ、嫌ナ人
ハサッサト御逃ゲナサレテ、浦和ナリ、千葉ナリ、橫濱ナリノ方ノ辯護士會ニ加
入セラレテモ差支ナイ、私ノ見ル所ニ於キマシテハ斯ノ如キ案ハ唯徒ニ將來
恢復スベカラザル紛爭ノ種子ヲ播ク案ト考ヘテ居リマスルガ、政府當局ニ於
テハ如何ナル考ヲ有ッテ居ラレルカ、相成ルベクハ御漏シヲ得タイト考ヘマス
〔政府委員山內確三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=91
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092・山内確三郎
○政府委員(山内確三郞君) 唯今ノ磯部博士ノ御質問ニ御答へ致シマス、第
一番ニ此法律ハ朝野ノ法曹ノ一致シタル意見ニ基イテ出來テ居ルト云フコト
デアルガ、在朝法曹ハ之ニ對シテ一致ノ意見ヲ出シタカト云フヤウナ御話ノ
ヤウデアリマス、在朝法曹ト云フコトハ、多分判事或ハ檢事ト云フ事柄ダラ
ウト思フ、判事ナリ、檢事ナリガ個人トシテ賛成ヲシタヤ否ヤ、是ハ私ハ承知
ヲ致シマセヌ、勿論司法當局ニ正式ニ政府ニ對シテ此點ノ交涉ノアッタコトハ
私ハ承知イタシマセヌ、ソレカラ第二、此法案ガ出タナラバ辯護士會ノ平和ヲ
破ルモノデナイカ、ト云フ意見ヲ持ッテ居ナイカト云フ御話、帝國議會ノ權能
ニ於テ法案ガ出ルト云フコトガ或ル團體ノ平和ヲ破ルトハ考ヘテ居ラス、ソ
レカラ其次ニ此外ニ何カ辯護士ノ平和ヲ維持スル方法ハナイカト云フ御話
デアリマス、色〓辯護士會ノ平和ヲ維持スル方法ハアリマセウ、唯今磯部サ
ンノ言ハレルヤウナ極メテ平和ニ行ッテ居ル其方法ヲ續ケテ行ッタナラバ、矢
張リ平和ガ維持サレルカモ知レヌ、私ハ果シテ今日辯護士會ニ紛擾アリヤ否
ヤト云フコトハ調査シテ居リマセヌ、併ナガラ私ハ斯ウ云フ範圍內ニ於テ
ハ聞イテ居ル、言ハレタコトガ違フカモ知レナイガ、要スルニ東京辯護士
會ト云フモノハ非常ニ人數ガ多イノデ、正ニ二千人ニ垂ントシテ居ル、斯ノ
如キ多數ノ辯護士會ヲ秩序能ク完全ニ維持シテ行クト云フコトハ困難デハア
ルマイカ、此點ダケニ付テ私ハ聞イテ居ル、紛擾論モ色〓衆議院ニ出マシタケ
レドモ、私ハ紛擾ノコトハ假リニ耳ニシナイコトニシテ此法案ニ對シテハ意
見ヲ述べタイト云フコトヲ言ッテ居リマス、サウ云フ次第デアリマスカラ、是
ガドウシテ平和ヲ維持スルカ、否ヤト云フコトニ付テハ、何モ考ヘテ居ラヌ、
ソレカラ中止ヲ望マザルヤト云フ御尋ネ、是ハ帝國議會ノ權能ニ於テ出サレ
タ法律案、政府ガ法律案ヲ出ス準備ガ整ハザルガ爲ニ、之ヲ理由トシテ法律
案ノ議會ヲ通過スルコトニ付テ私ハ之ヲ止メルトカ、中止スルトカ云フ考ハ
持タナイ、ソレカラ結局此案ハ良イカ、惡イカト云フ御尋ネノヤウデアリマ
ス、政府ハ是ハ衆議院ニ於テモ申シマシタ通リニ、此案ニ對シテ敢テ反對ス
ルト云フ考ハ持タナイ、併ナガラ司法省內ニハ、唯今磯部君ノ御話ノヤウニ
辯護士法改正調査委員會ト云フモノガアリマス、ソレデ全體ノ辯護士法ヲ調
査イタシテ居ル、此法案ガ議會デ問題ニナリマスルニ付テ、更ニ其委員會ハ
不日會ヲ開イテ此問題ヲ議スルコトニナッテ居ル、反對スル考ハアリマセヌ
ケレドモ、併ナガラ此委員會ノ調查ノ結果、審議ノ結果ガドウナルカト云フコ
トガ二三日ノ間ニ繫ヲテ居ル、司法省ニ於テ確定シタル省議ヲ定メルニ付キマ
シテハ此委員會ノ決議ノ結果ヲ見タイト思ヒマス、從ッテ唯今此案ガ良イカ、
惡イカト云フコトニ付テ確定シタル省議ヲ玆ニ發表スルコトハ暫ク留保イタ
シタイト思ヒマス、ドウゾ左樣御承知ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=92
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093・磯部四郎
○磯部四郞君 唯〓司法次官ノ御答ニ依リマシテ其意ヲ得マシタガ、私ガ御
尋イタシマシタノハ、今日此辯護士會ニ弊ト稱セラレル所ノモノガアリト御
認メニナッテ居リマスカ否ヤ、即チ見ルニ忍ビザル所ノ醜態ト云フモノガ今日
ノ辯護士會ニアリヤ否ヤ、是ハ政府當局ノ御考ヲ煩スマデモナイ、サウ云フ事
實ガ苟モ辯護士會ニアリヤ否ヤト云フ事柄ヲ認メテ居ラレルカ、之ヲ御尋シ
タイ、ソレカラ今一ツ在朝在野ト云フコトガ、是ハマア語ノ勢デゴザイマセウ
ガ、蓋シ在野法曹ノ意見ガ一致セル所デアルト云フテゴザイマスガ、ンレハ
私ヨリモ證據ヲ擧ゲマシタ通リ反對ガ大變ニ多イノデアリマスルガ、其事實
ハ御認メニナリマセヌカ、ト云フコトダケヲ御尋シタノデ、將來此案ニ付テ
留保ヲナサル、サウシテ大體ノ法律案ガ出マシタ所デ緩ックリト審議ヲ經ラ
レル、勿論之ニハ異論ハアリマセヌケレドモ、現在ノ所デ少シク辯護士會ガ
强ヒラレテ居ルト私ハ考ヘマス、現在ノ辯護士會ニ於テハ多數ノ勢ヲ以テ從
來役員ヲ奪ッテ居ル、是ハ餘リ面白クナイ、若イ所ノ方々ハ先ヅ老成ナル先
輩ニ讓ッテ自分ノ職務ニ就カレルノガ希望スベキコトデアリマスケレドモ、
權利ノ爭ニナリマシテ選擧ノ結果其地位ヲ占メラレタモノヲ、之ヲ今何トモ
スルコトガ出來ヌデゴザイマスカラ、私ノ希望イタシマスル所ハドウカ相成
ルベクハ若イ方〓ヲ善道ニ導カレタ方ガ當リ前デアル、ソレガ相互ニ紛爭ス
ルト云フ事柄ハ何ダカ少シクドウカ知ラント斯ウ考ヘマスカラ、其事實ヲ紛
擾見ルニ忍ビザルモノガアルト云フコトハ御氣付キガアリマシタラ伺ヒタ
イ、在野法曹悉ク此案ニ一致シテ居ルト云フヤウナコトハ、果シテ司法省ニ
於テ御認メニナッタノデアルカ、ソレダケヲチヨット御示シヲ下サレバ宜シウ
ゴザイマス
〔政府委員山内確三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=93
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094・山内確三郎
○政府委員(山内確三郞君) 在野法曹ガ皆一致シテ居ルカ否ヤト云フ其事實
ハ私ハ調査シテ居リマセヌカラ承知イタシマセヌ、又言フニ忍ビザル醜態
ガ此東京辯護士會ノ中ニアルカト云フ御話デアリマスガ、言フニ忍ビザル醜
態ダカ私ハ承知イタシマセヌ、要スルニサウ云フコトニ付テハ聞イタコトハ
アリマセヌ、知リマセヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=94
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095・矢口長右衞門
○矢口長右衛門君 本員ハ唯今磯部君ノ御質疑ニ對シマシテ、別ニ提灯ヲ點
ケルト云フ趣旨デハゴザイマセヌ、此事ニ付キマシテ僅カナル疑義ガゴザイ
マスルカラ、チヨット御尋イタシマス、私ハ本案提出ノ眞ノ意思ハドコニア
ルカト云フヤウナコトヲ私ハ問フ者デモゴザイマセヌ、而シテ此法案ガ提
出サレマシテカラ、先刻磯部君ノ申サレタ如ク、東京辯護士會ニ於キマシテ
一大紛擾ガ起ッタノデゴザイマス、而シテ此間反目、嫉視シテ居リマシテ、實
ニ兄弟牆ニ鬩グト云フヤウナ有樣ニナッテ居ルノデゴザイマス、言フマデモ
ナク、辯護士ハ社會ノ上層者デ、高等ナ智識ヲ有セラレル方デアリマス、若
シ此間ニ於テ紛擾等ノアリマスコトハ實ニ由々シキ事柄デ、國家トシテモ實
ニ是ハ捨テ置クベキコトデゴザイマセヌ、ダカラ斯ウ云フコトニ際シマシテ
ハ努メテ政府ニ於テモ愼重ノ態度ヲ以テ此事ニ當ルト云フコトガ、是ハ最
モ緊要デアラウト本員ハ信ズルノデアリマス、デ先刻司法次官ノ御辯明中ニ
本會ニ付テハ未ダ可否ハ決セヌ、サウ云フ御聲明デゴザイマスルカラ、本員
モ聊カ意ヲ安ジマスケレドモ、丁度是ハ物ニ譬ヘレバ一家內ノ紛擾ノ如キモ
ノデ、兄弟ノ論爭ヲシテ居ル際ニ、唯其親タル者ガ一方ニバカリ偏シテ叱言
ヲ云フヤウナコトハ甚ダ宜シクナイ、能ク其間ヲ調停スルノガ寧ロ親タル者
ノ義務デアル、サウ云フ見地カラ申シマスレバ、政府ハ此際ニ於テ此問題
ニ付テハ暫ク愼重ノ態度ヲ執リ、何レトモ可否ト云フヤウナコトヲ決スルコ
トヲセラレズシテ、暫クハ形勢ヲ見テ居ルト云フノガ、是ハ最モ必要デアラ
ト思フノデアル、先刻御言明ノ中ニサウ云フ御趣意ガゴザリマシタガ、本員
ハ今少シク確然タル、サウ云フ御決心ヲ持ッテ戴キタイト思フノデアリマス、
之ニ對シマシテ當局ハ如何ニ御考デゴザイマスルカ、今チヨットデ宜シウゴ
ザイマスカラ御答ヲ願ヒマス
〔政府委員山內確三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=95
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096・山内確三郎
○政府委員(山内確三郞若) 御答ヲ致シマスルガ、可否ノ問題ニ付テ、意見
ハ唯今申シマシタ通リニ留保イタシテ置キマス、併ナガラ是ガ或時期ニ於テ
可トスル意見ガ定マレバ、ソレハ可トスル意見ヲ言ヒ、否トスル意見ガ確定
シタナラバ否トスル意見ヲ言フ積リデアリマス、併ナガラ唯今御話ノヤウ
ナ法曹ノ中ニ若シ紛擾アリトセバ、是ハ其紛擾ニ付テ當局モ責任ヲ以テ調和
シタイト云フ考ノアルコトハ勿論デアリマス、此間ノ辯護士會ノ中ニ紛擾
ガアルト云フヤウナコトハ新聞ニ出テ居ルノデ、監督ヲ嚴重ニ能ク其中ニ這
入ッテ調查ヲ致シテ居ルノデアリマス、併ナガラ既ニ是ハ法律案トナッテ、衆
議院ヲ出マシテ、サウシテ玆ニ貴族院ニ於テ議セラレル際ニ於テハ、ドコマ
デモ曖昧ノ態度ヲ執ッテ、調和的ノ態度ノミヲ執ッテ意見ヲ言ハナイト云フ譯
ニハ行クマイト思ヒマス、可トスル場合ニハ可トスル意見ヲ申上ゲヤウ、併
ナガラ今ノ矢口サンノ御注意的ノ御質問ニ對シテ、私ハ敬意ヲ表スル積リデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=96
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097・板倉勝憲
○子爵板倉勝憲君 私チヨット政府委員ニ御尋ヲ致シマスガ、唯〓司法次官ノ
御話デハ辯護士會ノ紛擾ノコトハ能ク知ラヌト云フガ、辯護士會ノ會場ニ於
テ紛擾ノ續イタコトハモウ私達ガ素人デアッテモ兩三年サウ云フコトノアッ
タコトヲ知ッテ居リマス、殊ニ今年ノ辯護士會ノ如キハ紛擾其度ヲ失シテ居
ル、是ハ先キ磯部サンノ御話デゴザイマシタガ、口ガ多イノデ、ツイ口デハ言
ヘナイト云フヤウナ御話ガアッタガ、口ノ人ガツイ手ヲ用ヰタト云フコトハ新
聞デモ傳ヘテ居ル事柄デ、私達モ知ッテ居リマス、之ヲ司法當局ハ知ラヌト言
ハレルノハ私ハ甚ダ如何カト思フ、辯護士ハモウ二千人ニ垂ントシテ居ル、
其間ニ紛擾ガアル、之ヲ會ヲ二ツニ分ケルトカ或ハ三ツニ分ケルトカ云フコ
トニナルノハ何等不都合ハ無イ、其點ヲ一ツ司法當局者ニ伺ヒタイ、ソレカ
ラ私ハ此案ニ賛成ノ意味ヲ持ッテ居ル者デゴザイマスルカラ申上ゲマスガ、
先程カラ此御話ノ通リ其方ガ却ッテ圓滿ニ行クト云フヤウナ考ヲ持ッテ居ルヤ
ウデアリマスガ、之ニ對スル當局ノ御意見ハマダ可トモ否トモ言ハヌト云フ
ヤウナ曖昧ナ御囘答デゴザイマスカ、何レ辯護士法ト云ノモノヲ改正ニナリ
マセウケレドモ、是ハ二年ノ後ニナルヤラ、三年ノ後ノ末ニナルヤラ、ソレハ
分リマセヌケレドモ、先ヅ當初ノ內ニ今度ノ改正案ノ如キモノモ通過シタ
方ガ却ッテ辯護士會ノ紛擾ヲ緩和スルト云フ意味ニナリハセヌカ、此二點ニ付
テ司法當局ノ御意見ヲ伺ヒタイ
〔政府委員山內確三郞君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=97
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098・山内確三郎
○政府委員(山内確三郞君) 御答ヲ致シマスガ、年々辯護士會ニ或ハ紛擾ガ
アルトカ、或ハ議論ガ嵩マッテ結局議論以上ノコトニナル、或ハ此間非常ナ紛
擾ガアッタノデ、新聞ニ載ッテ居ッタト云フコトモ噂ノアルト云フコトハ私
個人トシテ知ッテ居リマス、併シソレハ個人トシテ知ッテ居ルノデアリマシ
テ、當局トシテマダ責任ヲ以テ調査シテ居ラヌノデアリマス、司法當局ニ聽カ
レタ時ニ、責任ヲ以テサウ云フ事實アリト斷言スルコトハ出來マセヌ、新聞
ノ記事ハ私讀ミマシタ、ソレカラ私ガ今日マダ意見ヲ留保スルト云フノモ、
辯護士法ノ全部ノ改正ヲ終ルマデ意見ヲ留保スルト云フ考デハナイノデアリ
マス、辯護士法ノ全部ノ改正モ朞年ナラズシテ提案ノ運ビニ至ルダラウトハ
考ヘテ居リマス、併ナガラ此問題ガ起ッタニ付テ辯護士法改正調查委員ハ特
ニ此問題ニ付テ今審議ヲスルト云フコトニナッテ居ル、ソレガ此十四日ニ會
議ヲスルト云フコトデアリマス、ソコデ此辯護士法ノ問題ニ付キマシテハ特
ニ辯護士法改正調査委員會ト云フモノヲ作リマシテ、朝野ノ法曹及ビ行政裁
判所ノ評定官等モ委員トシテ今審査イタシテ居ルノデアリマス、此機關ニ敬
意ヲ表スル考ニ於キマシテ、機關ヲ差措イテ、未ダ機關ガ決定ヲセザル場合
ニ可トカ否トカ言フノハ、少シ私ハ避ケタイト思フ、勿論私個人トシテハ意
見ガアルノデアリマス、個人ノ意見ハ茲ニ言フ限デハナイノデアリマス、當
局ガマダ省議ヲ決定スルニ至ラザル事由ハサウ云フ所ニアルコトヲ御了承ヲ
願ヒタイノデアリマス、勿論初カラモ申シマシタ通リニ、此案ニ反對スルト
云フ考ヲ今持ッテ居ナイ、是ハ今申上ゲテモ宣イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=98
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099・板倉勝憲
○子爵板倉勝憲君 モウ一應唯一點ダケ伺ヒマスガ、此間ノ辯護士會ノ紛擾
ニ對シテ司法當局ハ唯新聞デ見タダケデ、當局トシテ調査シタト云フコトハ
言ハナイノデアリマスガ、アレハモウ昨日ヤ一昨日ノ話デハナイノデアリ
やっゝ、其御調ト云フモノガ······兎ニ角辯護士會ノ紛擾ト云フコトガ一月モ二
月モ前ノコトデアルノニ、マダ今日マデ司法當局デ其事實ヲ御調べニナラヌ、
マダ能ク分ラヌ、アレハ新聞ヲ唯見タダケダト云フコトニナルト、二月モ
以上ノ前ノ辯護士會ノ有樣ノコトハイツ當局ハ御調べニナルノカ、是ハ期限
ハ付シテハゴザイマスマイガ、餘リニ緩漫ナ御話デハナイカ、是ハ昨日辯護
士會ノ紛擾ガアッタ、一昨日アッタト云フコトデアレバ、是ハマダ能ク知ラナ
イ、唯新聞ヲ見タダケデアルカラ、當局トシテ責任アル答辯ハ出來ヌト云フノ
ハ御尤デアリマス、餘程期限ガモウ長クナッテ、或ハ微ガ生ヘテ居ル次第デ
アルト思フ、ソレニマダ調ベナイ、責任ヲ以テ何トモ言ヘヌト云フコトハ、
私少シ了解シ兼ネマスガ、此點ヲ一應質問ヲ致シマス
〔政府委員山内確三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=99
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100・山内確三郎
○政府委員(山内確三郞君) 御答ヘ致シマスガ、私ハサッキマダ調查ヲ致シテ
ナイ、新聞デ見タト申シマシタノハ、ツイ此間ノコトデアル、ソレハ辯護士
會ノ決議ニモ影響スル事柄デアル、新聞ノ報ズル所ニ依レバ二樣ノ決議ガ出
テ居ル、ソコデ其點ニ付キマシテハ、監督官廳ニ於テ調査ヲ致シテ居ル、併
ナガラ未ダ報告ニハ接シナイコトデアル、ズット古イコト等ニ付キマシテハ、
司法省ノ紛援報告ト云フモノノアルノヲ見ナイノデアリマス、私ハツイ此頃
此政府ノ司法當局ニナッタノデアリマシテ、承知スル所ガ甚ダ少イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=100
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101・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 他ニ御質疑モナイト存ジマスルカラ、特別委員ノ
氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
辯護士法中改正法律案特別委員
伯爵堀田正恒君子爵板倉勝憲君松室致君
男爵太秦供康君男爵毛利五郞君木內重四郞君
伊澤多喜男君竹村與右衛門君花井卓藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=101
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102・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマ
ス、本日ハ是ニテ散會イタシマス
午後四時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X02119230310&spkNum=102
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