1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
大正十二年二月二十三日午前十時四十五分開議
出席委員左の如し
委員長 武藤金吉君
理事 原田佐之治君 理事 星島二郎君
理事 守屋松之助君
秋本喜七君 白井博之君 野村勘左衞門君
松浦五兵衞君 望月政友君 改野耕三君
瀧正雄君 南里琢一君 牧野良三君
下岡忠治君 鈴木久次郎君
出席國務大臣左の如し
農商務大臣 荒井賢太郎君
出席政府委員左の如し
大藏省理財局長 小野義一君
大藏省銀行局長 黒田英雄君
大藏省參事官 藤井眞信君
大藏書記官 天宅敬吉君
大藏書記官 岡田信君
農商務次官 岡本英太郎君
農商務省農務局長 長滿欽司君
本日の會議に上りたる議案左の如し
産業組合中央金庫法案(床次竹二郎君外十一名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=0
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001・武藤金吉
○武藤委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、前囘ニ引續イテ質
問ヲ繼續致シマス、-守屋君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=1
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002・守屋松之助
○守屋委員 私ハ今囘政友會ノ提案ニ對シマシテハ贊成ノ
意ヲ持ッテ居ル者デアリマスガ、玆ニ一ツ疑ハシイコトノア
リマスノハ、產業組合金庫法ト、現在現存致シテ居ル此產業
組合中央會ト云フモノガ、或ハ事業ノ上ニ於テ牴觸スルノ
嫌ガアルソレハ產業組合中央會ハ組合法ニ書イテアリマ
ス通リ、組合ノ-聯合組合ノ發達指導ヲ主ト致シテ居リ、
又勅令ニ依リマシテ信用組合或ハ購買組合ノ一部ノ事業ヲ
スルコトガ出來ルヤウニナッテ居リマス、先程田村委員カラ
頂戴致シマシニ產業組合中央會ノ成績ヲ見マスト、信用組
合モ餘程發達シテ居ルヤウニ見エテ居リマス、斯ノ如ク產
業組合中央會ガ信用組合ノ事業ヲ致シテ居リマスガ、此外
ニ產業組合中央金庫法ガ出來マシテ、事業ヲ營ムコトニナ
ルト、必ズ事業ノ上ニ衝突ヲ生ズルト云フヤウナ場合ガア
ラウト思ヒマスガ、此點ニ付テ農商務大臣ハドウ云ウ風ナ
御考ヲ持ッテ居ルノデアリマスカ、一應伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=2
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003・荒井賢太郎
○荒井國務大臣 只今一寸ハッキリ御質問ノ所ヲ承リマセ
ヌデシタガ、產業組合中央會ト、本案ノ中央金庫ト何等カ衝
突スル所ハナイカ、斯ウ云ウ御質問ト思ヒマスガ、別段是ハ
衝突スルコトハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=3
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004・守屋松之助
○守屋委員 別ニ衝突スル所ハナイト云フヤウナ御說明デ
アリマスケレドモ勅令ニ依リ信用組合ヲ造ルコトガ出來
ルヤウニナッテ居リマスガ、信用組合ト云フコトニナレバ勢
ヒ中央會ニ於テ各產業組合ノ金ヲ預リ、或ハ金融スルコト
ガ出來ルノデアリマスカラ、衝突ノ無イコトハナイト、私ハ
信ジマスルガ、其點ニ付テモウ一應伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=4
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005・長滿欽司
○長滿政府委員 私ヨリ守屋サンノ御質問ニ御答致シマ
ス、產業組合中央會ニ於キマシテハ、此信用業務ハ爲セナイ
コトニ相成ッテ居リマス、隨ヒマシテ衝突致シマスヤウナコ
トハ無イヤウニ存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=5
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006・守屋松之助
○守屋委員 此產業組合中央金庫法ガ發布サレマスト、產
業組合-各產業組合又ハ產業聯合會ト聯絡ヲ取ルコトニ
ナッテ居リマスガ、サウスレバ此產業組合ト中央金庫法ハ產
業組合ノ一ツノ組合法ノ中ニ、一ツノ仕事トシテ法律ヲ編
成ナサル方ガ、或ハ御監督上適當デアリハシナイガト云フ
ヤウニ考ヘルノデアリマスガ、之ヲ獨立サセテ置キマス方
ガ却テ運用上適當ト御認ニナルノデアリマスカドウカ、ソ
レモ一ツ伺ヲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=6
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007・長滿欽司
○長滿政府委員 私ヨリ御答申上ゲマス、立法ノ形式ト致
シマシテ或ハ產業組合法ノ改正ヲ致シマスコトモ一ツノ方
法カトモ存ジマス、併ナガラ產業組合ノ全體ニ對シマシテ、
金融機關ヲ設ケマス上カラ中シマスト、特別ナ法律ト致シ
マシタ方ガ却テ立法上宜カラウト私共ハ存ジテ居リマス、
例ヘバ獨逸ノ如キモ特別ナル法律ヲ出シテ居ルヤウナ次第
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=7
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008・守屋松之助
○守屋委員 私ハ農商務省ノ方ハソレダケニ致シテ、提案
者ニ一寸御伺ヒ致シタイト思ヒマス、本法ノ中ニ加入者ノ
義務ニ關スル規定ハアリマスガ、權利ニ關スル規定ハ見當
ラナイノデアリマスガ、之ヲ第一ニ御質問致シマス、ソレカ
ラ加入者ノ總會ヲ行ヒマスノニハ、或ハ定款ニ依ッテ之ヲ御
定ニナルノダラウト思ッテ居リマス、併シ株式會社デアリマ
スレバ商法ノ規定ニ依ッテ定款ニ、商法ニアリマス規定ヲ
準用スト書クコトガ出來マスケレドモ本法ハ株式會社デ
モ又產業組合法デモナイ、詰リ獨立シタ一ツノ法律デアル、
共獨立シタ方立ノ場合ニ於テ、加入者ヲ招集シテ總會ヲス
ルトキニ、其總會ヲ招集スル時期、或ハ決議ノ範圍、或ハ其
決議ノ委任事項等ハドウ云フ風ノ規定ニ依ッテ定メタラ適
當デアルカ、其事ニ付テ第二ニ御意見ヲ御伺ヒ致シマス、ソ
レカラ中央金庫ニ加入シタリ脫退シタリスル規定ガナイヤ
ウニ思ヒマス加入脫退ニ付テモ是ハ定款ニ依ッテ御規定ニ
ナルダラウト思ヒマスケレドモ、是亦一ツノ法律トシテ出
シマスレバ加入脫退ノ規定ガナクテハナラヌヤウニ思ヒ
マス、ソレカラ解散、〓算ニ關スル規定ハ第七條ニ商法ノ規
定ヲ準用スルコトガアリマスケレドモ併シ此點ニ付テモ
餘リ漠然ト致シテ居リマスガ、是ハ何ニ依ッテ御規定ニナリ
マスカ、ソレダケヲ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=8
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009・武藤金吉
○武藤委員長 一寸私提案者トシテ大要御答致シテ尙ホ牧
野君カラ補足ヲ願フコトニ致シマス、此本案ガ成立致シマ
スレバ創立準備委員ト云フモノガ任命サレ、其機會ニ定款
ヲ作ラルヽ事ト思フノデアリマス、ソレデ本案起草ニ付キ
マシテハ略〓定款ノ要旨ダケハ腹案ガアリマス、併シ是モ
政府富局トマダ打合セタ譯デアリマセヌ、ソレデ只今御尋
ノ加入者ノ權利義務ノ如キハ定款ニ規定ヲシ、又第一一ノ御
問ニ付キマシテモ、是ハ定款デ規定スルコトガ相當ナリト
信ジマス次第デアリマス、尙ホ詳シイコトハ牧野君、瀧君等
カラ御答ヲ願フコトニ致シマス、尙ホ此機會ニ御尋ハアリ
マセヌケレドモ、主要ノ點デアリマスカラ、提案者トシテ此
案ノ中カラ削除ヲ致シタイト思フモノガアリマス、第十九
條ノ「產業組合中央金庫ハ拂込金額ノ十倍ヲ限リ產業債劵
ヲ發行スルコトヲ得」トアリマス、ソレニ但書ガ「貸付金現
在高割引手形現在高及其所有ニ係ル有價證劵現在高ヲ超過
スルコトヲ得ス」トアリマスノデスガ、段々調査ヲ致シテ見
マスト、拂込金額ノ十倍ヲ限ッテ產業債劵ヲ發行サレルコト
ヲ許サレマスレバ此但書ハ要ラヌモノト思ヒマス、削リタ
イト思ヒマスカラ改メテ此機會ニ御紹介ヲ申上ゲテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=9
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010・瀧正雄
○瀧委員 アナタノ今仰シヤッタ但書ヲ削除ノ件デスガ、私
モ其點ニ付テハ多少考ヲ持ッテ居リマスケレドモ、成ベク此
案ハ憲政會ノ諸君、又庚申倶樂部、革新倶樂部ノ諸君ト共ニ
能ク御相談ヲシテサウシテ懇談ノ結果、練ッタ結果ニ落付キ
タイト思ヒマス、其點モ委員長カラ御提案ハ御提案トシテ
ウモ少シ練ラシテ戴キタイト思ヒマスカラ、御含ミ置キヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=10
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011・牧野良三
○牧野委員 只今守屋委員カラノ御質問ノ一二三四項ニ付
キマシテハ總括的ニ武藤委員長カラ提案者ノ一人トシテ
御答ニナッタコトヲ以テ全部ヲ盡シテ居ルト存ジマスケレ
ドモ、四項目ニ亘ッテ御質問デアリマスカラ、此際私カラ更
ニ簡單ニ申上ゲテ置キタイト存ジマス、加入者ノ義務ニ關
スル規定ガ本案ニアルケレドモ、權利ニ關スル規定ガナイ
ノハ不備デハナイカト云フ御質問ハ一應御尤ノ御質問ト
拜承致シマス、併ナガラ此權利ニ關スリコトハ主トシテ之
ヲ法律ニ規定スルニアラザレバ稍〓不穩當ナル場合ガア
リマスガ、義務ニ關スルコトハ定款事項トスルコトヲ以テ穩
當ト信ジマス、サウ云フ考カラ、此處ニハ義務ニ關スル規定
ヲ致シテ居リマセヌ次第デアリマス、第二點ハ總會ニ關ス
スル規定ガ缺如シテ居リハシナイカ、是モ御尤ト存ジマス、
此點ハ本案第七條ニ「商法中株式會社ニ關スル規定ハ本法ニ
別段ノ規定アルモノヲ除クノ外產業組合中央金庫ニ付之ヲ
準用ス」ト規定致シテアリマシテ、本法ニ規定ナキモノハ商
法中ノ株式會社ノ規定ヲ準用致シタイ、之ニ關シテハ色々
ノ御議論モアリマセウガ、條文記述ノ上ニ於テ、株式會社ニ
關スル規定ノ必要ナルモノヲ、各〓本法律ノ中ニ引用致シ
マスヨリハ總括的ニ斯樣ニ致シテ準用致ス方ガ便利ト考
ヘテ、斯カル形式ニ規定ヲ致シマシタ、隨テ總會ニ關スル規
定モ、商法ノ株式會社ニ關スル總會ノ規定ガ準用サレルモ
ノト御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス第三ノ御質問ハ加入ノ
脫退ニ關スル規定ナキヤ如何、是モ御尤ナ御質問カト存ジ
マス、是モ定款事項ト致スコトヲ適當ト信ジマシテ、玆ニハ
揭ゲナカッタ次第デアリマス、第四ハ解散〓算ニ關スル規定
如何、此御質問ニ對シマシテモ只今第二問ニ御答ヘ致シマ
シタト同ジコトニ、第七條ノ規定ニヨリ商法中株式會社ニ
關スル規定ヲ大體適用シ、其他ニ關スルモノハ是モ亦定款
ニ於テ規定致シタイ、斯樣ナ考ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=11
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012・守屋松之助
○守屋委員 株式會社ノ規定ヲ準用スルコトニナッテ居リ
マスケレドモ加入脫退ニ關スル規定ト云フヤウナモノハ
株式會社ノ方ニハアリマセヌノデ、詰リ是ハ產業組合法ニ
特別ナ法令デハナイカト思ッテ居ル、サウスレバ本法ハ產業
組合法ト略〓同一ナ信用組合ヲ設立シタモノデアリマスカ
ラ、加入脫退ノ如キハ本法ヘ御加ヘニナル方ガ適富デハナ
イカト思フ是ハ私ノ意見デアリマスカラ御相談致スノデ
アリマス、株式會社ノ規定ヲ準用スルコトハ大體出來ナイ
ヤウニ思ヒマスガ一應御意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=12
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013・牧野良三
○牧野委員 只今守屋委員ヨリノ重ネテノ御質問御意見ニ
付テハ十分敬承致シマス、此點ハ御懇談ヲ申上ゲ、且ツ提案
者ニ於キマシテモ考慮ヲ致シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=13
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014・守屋松之助
○守屋委員 本法ノ第十三條、第十四條、第十五條、第十六
條ニ付テ少シ伺ヒタイ、昨日鈴木君ヨリ御尋ガアッタヤウニ
思ヒマスガ、第十三條ノ中ノ「所屬產業組合」ト云フ「所屬」
ト云フ文字ニ付テ御尋ガアリマシタ其時ニ、牧野委員ノ御
答ニ依リマスト、相互的ノ組合デアルカラ、所屬產業組合或
ハ所屬產業組合聯合會ニ對シテ金融ヲ圖ルガ宜イト云フ御
意見デアリマシタ、是ハ御尤ノヤウニ思ヒマス、然ルニ第十
六條ニ所屬デナイ產業組合ニモ貸付金ヲスル途ガ開ケテ居
リマスカラサウスレバ第十六條ノ第二號ノ「公共團體、產
業組合聯合會、產業組合共ノ他營利ヲ目的トセサル法人ニ
對シ短期貸付ヲ爲スコト」此條項ヲモウ少シ延長シマシテ
第十三條ノ方面ヲ延バシタラドウカト云フ意見ヲ持ッテ居
ル者モ多々アルヤウニ承ッテ居リマス、是ハ本法ヲ活用スル
上ニ於テソレガ適當デナイカト思ヒマスガ昨日ノ提案者
ノ御意見ヲ承レバ御尤ナ點モアリマスケレドモ、此點ニ付
テモウ一應御再考ヲ願ヒタイ、サウシテ第十四條ニ產業組合
中央金庫ハ必要ガアッタ場合ニハ、擔保ヲ徵シテ十三條第一
號第二號ノ業務ヲスルトニナッテ居ル、サウスルト第十三條、
第十四條ヲ一〓ニ之ヲ業務トシテ活用致シマス場合ニ、矢
張第十六條第二號ノ範圍ニ移ッテ行キハセヌカト云フコト
ヲ虞レマス、サウ云フ場合モアリマスカラ、第十六條ノ第
二號ヲ、第十三條ノ方面ニ擴張シタ方ガ仕事ヲスル上ニ於
テ適當デナイカト思フ第十六條ノ大體ノ規定ハ日本勸業
銀行法竝ニ農工銀行法ニ規定シテアルヤウナモノカ載ッテ
居リマスカラ、勿論其等ノ規定ヲ參酌シテ御載セニナッタモ
ノト察シテ居リマシテ、大體ニ於テ第十六條ハ適當デアル
ト思ヒマスガ、只今ノ短期貸付ニ付テ產業組合聯合會、產業
組合、其他營利ヲ目的トセザル法人ニ對シテ、第十三條ノ
「所屬」ト云フ文字ニ拘泥セズシテ、業務ヲ擴張サレタ方ガ
適當ト信ズルノデアリマス、サウ云フ事柄カラ考ヘマシテ、
更ニ第十五條ノ定期預金ト云フコトニ關シテ、此定期預金
ハ一般ノ預金以外ニ更ニ定期預金ト云フ規定ヲ第十五條ニ
御設ケニナリマシタ、是ハドウ云フ意味デ特ニ此所ヘ御設
ケニナッタノデアリマスカ、其事ヲ承リタイ、サウシテ是等
ノ中央金庫ニ於テ取扱フ預金ハ、必ズ其中央金庫ノ資本額、
或ハ拂込資本額ノ半分、或ハソレニ相當シタヾケノ預リ金
ニシタ方ガ安全デハナイカト思ヒマス、若シモ此預リ金ノ
制限ヲ付ケナイ場合ニハ、必ズ他ノ銀行業ト中央金庫トガ
衝突スルヤウナ場合ガ起リハシナイカト思ハレル、一面政
府ガ銀行業ノ發達ヲ圖リ一面又中央金庫ノ發達ヲ圖ルコ
トニナリマスレバ、ドウシテモ預金ニ制限ヲ置カナイト、預金
ノ爭奪ヲ生ズルコトニナリマスカラ、斯ル法律ヲ以テ相當保護
シテアル特殊ノ銀行又ハ金庫ニ對シテハ、預金ノ制限ヲ置
クコトガ適富デアルヤウニ思ヒマスガ、此制限ヲシナイ點
ニ付テ提案者ノ御意見ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=14
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015・牧野良三
○牧野委員 重ネテ守屋委員ノ御質問ニ對シテ御答致シマ
ス、第一問ハ第十三條中所屬組合ニ限ッタコトニ付テ其理由
ヲ質シタイ、ソレニ對シ第十四條第十五條、第十六條ニ關聯
シテノ御質問ト承リマシタ、第二問ハ第十五條ニ「定期預リ
金ヲ爲スコトヲ得」トアル、何ガ故ニ定期預金ヲ特ニ此所ニ
揭ゲタカ、而シテ更ニ此預金ノ額ヲ制限スルノ意ナキヤ、此
二項目ノ御質問ト拜承シテ御答致シマス、第十三條ニ「所屬」
ト限リマシタニ付テハ曩ニ御答致シマシタ通リ、多少考慮
致シタ點デアリマス、此金庫ノ成立及發達ニ付テハ各方面
ヨリ相當心配ノ眼ヲ以テ見ラレテ居ル殊ニ心配ノ第一ハ
果シテ三千万圓ノ資本中、其半額デアル千五百万圓ヲ能ク
現在ノ組合中ヨリ、若クハ聯合會中ヨリ出資シ得ベキヤ否
ヤ、此點デゴザイマス御承知ノ通リ此金庫ハ剩餘金ノ配當ハ
致シマスケレドモ、營利ヲ目的ト致シマセズ、殊ニ社會政策
的機關トシテ貸付金ノ利率ガ低ウゴザイマスカラ、剩餘金ガ
多ク出ルコトハ豫想スルコトガ出來マセヌ、又ソレハ豫想
シテハナリマセヌ隨テ其結果トシテ本金庫ノ出資ニ對ス
ル配當ハ頗ル少イモノト云フコトガ前提ニナッテ居リマス、
其少イ配當ヲ受ケル所ノ金庫ノ出資金ヲ競ッテ致スト云フ
ニハ、ソコニ何等カノ利益ヲ與ヘナケレバナラヌ、乃チ出資
者ニ限ルト云フコトニ依ッテ、彼等ノ出資ヲ此所ニ集メル機
會ヲ與ヘル、斯ウ云フ積リデアリマス、此點ニ關シテ時ニ各
位ノ御注意ヲ喚起シテ置キタイノハ最近埼玉縣ノ或ル方
面カラ此「所屬」ト限ッタコトニ付テ多少ノ意見ヲ述ベラレ
タ向ガアルヤウニ承ッテ居リマス、ソレハ誤解デアリマシテ、
其理由トシテハ之ヲ出シ得ナイ組合ガ困ルト云フノデスガ、
御承知ノ通リ本金庫ノ出資金ハ一口ガ百圓、一口ヲ以テモ
出資者タル資格ヲ得ル、而モ此百圓ヲ十箇年ニ納メレバ一
年僅ニ十圓デアリマス、一年十圓ノ金ヲ出シ得ナイ組合ノ
成立ト云フコトヲ吾々ハ認メルコトヲ絕對ニ致スコトガ
出來ナイノデアリマス隨テ此點ニ付テハ何等ノ弊害ナク
其等ハ誤解ニ過ギナイ、少クトモ机上ノ誤解ニ過ギヌト解
シテ居リマス、又是ハ所屬ノ二字ヲ取ッテ一般產業組合又ハ
產業組合聯合會トシテモ別段差支ナイヂヤナイカ、ソレニ
ハ第十六條ノ一項ノ二號ニ於テ所屬ニ非ザル產業組合聯合
會、產業組合ニ貸付ヲ爲スコトヽアルカラ、特ニ第十三條ノ業
務ヲ所屬產業組合聯合會及產業組合ノミニ限ルト云フコト
ハ、稍〓其必要ヲ認メ難イト云フ御考ガ出ルカモ知レマセヌ
ガ、第十三條ノ所屬ノモノニ貸付ケルノハ原則デアッテ、其原
則ニ基イテ餘裕金ヲ生ジタナラバ、其餘裕金ヲ利用スル爲
ニ所屬以外ノ產業組合竝ニ產業組合聯合會ニ貸付ケルコト
ガ出來ルト云フ意味デアリマスカラ、希クハ此本金庫ノ出
資ノ機會ヲ全國產業組合ニ普ク與ヘタイト思フノデ、萬一
這人ラヌモノニマデモ尙ホ餘裕金ヲ貸出スコトガ出來ル、
斯樣ニ致シタラバト云フ意ニ外ナラヌノデス、尙ホ此點ニ
關シテハ別ノ機會ニ於テ御懇談ヲ中上ゲテ、皆懷キマスル
所ノ希望達成シタイト存ジテ居リマスケレドモ、此處デハ
唯〓立案ノ趣旨ダケヲ中述ベテ置キマス、第一一問ノ第十五
條ノ此金庫ガ定期預リ金ノミヲスルコトニ規定シタノハ
他ノ預リ金マデモスルコトニナルト、只今守屋委員ノ御懸
念ニナッタ通リ吾々モ懸念シテ居リマス、卽チ普通銀行トノ
預金ノ爭奪ガアッテハナラヌ、ケレドモ此金庫ハ資金ヲ得ル
ノ途ヲ相當ニ講ジテ置カナケレバナリマセヌカラ、普通銀
行其他特殊銀行ト、預金爭奪ノ弊ニ陷ラザル限リニ於テ培
養的規定ヲシテ置カナケレバナラヌソレニ付テハ定期預
金ト限ルナラバ其弊害ガ比較的少カラウト思フノガ其一、
又定期預金ナラバ大體ニ於テ拂出ノ時期ガ限ラレテ居リマ
スカラシテ、業務遂行ノ上ニ於テ希クハ不便ナキコトヲ期
スルコトガ出來ヤウ、斯樣ニ思ッタノガ其二、左樣ナ童味カ
ラ定期預金以外ニ及バナカッタ次第デアリマス、更ニ定期預
金額ヲ定ムルノ必要ハナイカ、是ハ御質問ヲ承ッテ頗ル思當
ルコトガアリマシテ、此點ハ感謝致シマス、サリナガラ守屋
委員ハ承レバ本金庫ノ事業ノ將來ニ付テハ、非常ナ樂觀說
ヲ持タレ、殆ド全部ノ預金ガ立所ニ集リハシナイカトマデ
思ハレテ居ラレルヤウデアリマスケレドモ、吾々共ハ差當
リソレ程ノ結果ガ立所ニ現ハレルヤウナコトハアルマイト
考ヘテ居リマシタ爲ニ、守屋委員ノ如キ懸念ヲ懷カナカッタ
次第デアリマスガ、是モ更ニ御懇談ヲ申上ゲテ、適富ナル
方法ヲ講ジタ方ガ宜イナラバ左樣致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=15
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016・守屋松之助
○守屋委員 モウ一ツ御尋致シマス、第二條ニ「從タル事務
所ヲ設置スルコトヲ得」トアリマス、此從タル事務所ハ何レ
支店若クバ代理店ノヤウナモノダラウト思ヒマスガ、此從
タル事務ヲ設置スル範圍ノ如何ニ依ッテハ、先程私ガ御尋シ
タヤウニ、銀行業者ト衝突ガ起リハセヌカト思フ、現ニ御承
知ノ通リ地方ノ小銀行ハ相當ノ預金利子ヲ拂ッテ居ルニ拘
ラズ、信用アル政府ノ郵便貯金ノ方面ニ向ッテズン〓〓預金
ヲ吸收サレル、尙ホ產業組合ノ相當ヲ預金ハ、其等ノ地方ノ
小銀行ニ預金シテアル傾ガアルサウシテ政府ノ統計ニ依
リマスト、普通銀行ノ預金ノ約倍額ノ預金ヲ郵便貯金ガ持ッ
テ居ル、共內ノ約三分ノ一ハ農業者デアルト云フコトデア
リマスレバ、ドウシテモ中央金庫法ガ布カレルコトニナル
ト、郵便貯金ノ幾分ハ產業組合ノ方ニ吸收サレ其產業組合
ニ吸收サレタモノガ中央金庫ニ吸收サレル、尙ホ民間ノ預
金ハ普通銀行ニ預ケテアルモノヲ引出シテ、中央金庫ニ預
金スルコトニナレバ勢ヒ他ノ金融業者間ニ恐慌ヲ來シハ
セヌカト云フ處ガアル、牧野君ハ私ガ中央金庫ニ付テハ樂
觀說ヲ持ッテ居ルヤウニ御取リニナリマシタガ、全クサウ云
フ狀況カアルダラウト思ッテ居リマス、サウスルト幸ヒ此處
ニ大藏省ノ政府委員ガ御出デアリマスガ、此從タル事務所
ノ設置ノ範圍竝ニ共數ノ如何ニ依ッテハ、必ズサウ云フ弊害
ガ起ッテ、銀行業者間ニ恐慌ヲ來スヤウナコトガアリハセヌ
カト私ハ懸念シマスガ、此點ニ付テハ大藏省ノ政府委員ノ
御意見ノ在ル所ヲ一應承ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=16
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017・牧野良三
○牧野委員 大藏省ノ政府委員ノ御答ハ後ニシテ戴キマシ
テ、只今ノ守屋委員ノ御質問ニ對シテ提出者ノ有スル意見
ヲ先ニ申述べタイト思ヒマス、從タル事務所卽チ普通一般
ノ銀行ノ支店ニ關スル御質問ハ、本法案ノ最モ重要ナル點
ニ關スル御質問トシテ非常ニ傾聽致シタ次第デアリマス
〔牧野委員長代理退席、武藤委員長復席〕
此點ハ此金庫法案ガ成立シタル曉ニ於テ、此金庫ノ運用上重
大ナル關係ヲ有スル點デアリマシテ、私共モ頗ル注意ヲ拂ヲ
テ居ル點デアリマスガ、大體ニ於テ此從タル事務所卽チ支
店ノ如キモノニ關スルコトハ、聯合會デ以テ取扱ハシメタ
イト云フ考デアリマス、守屋委員モ恐ラク御同感デアラウ
ト存ジマスガ、此法案ガ幸ニシテ皆樣一同ノ手ニ依ッテ成立
スルコトニナレバ、恐ラク全國ニ對シテ聯合會ノ非常ナル
普及〓〓ヲヲ國ルコトガ出來ルダラウト思フ、ソレニ付テハ
其範圍箇所等ノ事ハ法律ニハ何等定メテ置カナイデ、定款
ニ於テ定メタイト斯樣ニ思ッテ居リマス、次ニ信用ノ媒介ヲ
本來ノ任務トスル組合聯合會ニ於テ、金融ヲ掌ラシムルト
云フコトハ種々ナル面倒ナ事情ニ付テ需要者ノ信用ヲ適
當ニ調査シタリ、又集散ヲ圖ッタリスルノニ頗ル便利デアラ
ウト斯樣ニ思ヒマスノデ、其爲ニ特ニ此聯合會ト云フモノ
ヲ利用スルコトガ、本金庫ノ目的ヲ達スル上ニ非常ニ有利
デアル、斯樣ニ考ヘマス、第二ニ金ガ集マリ過ギテ地方ノ銀
行ガ恐慌ヲ來シハシナイカサウ云フ事ハ私共ハ考ヘマセ
ヌ、寧ロ預金利率モ餘リ高キモノヲ拂フコトガ出來ナイノ
デアリマスカラ、此點ニ於テハ多少集メルニハ組合ノ觀念
ヲ地方ノ人ニ吹込ンデ、是ハ公共的ノモノデアル又自分等
ノ物デアルト云フコトヲ徹底的ニ頭ニ入レシムルコトニ依ッ
テ、金ヲ集メルヤウニ心配ヲシナケレバナラメ而シテ若シ
其目的ヲ達シテ利子ハ安クトモ本金庫ニ金ガ集マルコトニ
ナレバ、日本國民ガ團生生活ヲ心カラ理解スルヤウニナレ
バ其時コソハ何物ガ犠牲ニナッテモ差支ナイ、否ソレハ犧
牲デナクシテ、日本國民ノ本當ノ力ガ心カラ湧イテ來タノ
デアリマスカラ、洵ニ結構ナ事デアリマス、隨テソレ程銀行
ニ打擊ヲ與ヘルトハ立案者ハ豫想致シテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=17
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018・荒井賢太郎
○荒井國務大臣 守屋君ノ御質問ニ對シテ政府ノ大體ノ
意見ヲ申シマス、業務ノ章ノ中ニ於テ多少政府モ意見ヲ持ツ
テ居リマスガ、併シ是ハ御審議ノ進ムニ從ッテ適當ニ此條項
ガ御審議ニナルト思ヒマスカヲ、其機會ニ於テ政府モ考慮
スベキ點ハ考慮シテ、又意見モ申上ゲヤウト思ヒマス、只今
守屋君ノ御質問ノコトモ案ノ審議ノ進ムニ從ッテ、政府モ意
見ヲ述ブル必要ガアル場合ハ申述べヤウト思ッテ居リマス、
左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=18
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019・守屋松之助
○守屋委員 第三十六條ニ「產業組合中央金庫ハ創立初期
ヨリ十五箇年間政府ノ出資ニ對シ剩餘金ノ配當ヲ爲スコト
ヲ要セス」トアリマスガ、此ト五箇年ニ對シテ政府ハ御同意
ナサルノデアリマスカ、其次ニ此中央金庫ヲ設立致シマシ
タトキニ、登錄稅法ニ關スル規定ハ本法ニ付テモ他ノ法津
デー登錄稅法改正法律案デヾモ御規定ナサル方ガ適當デ
ナイカト思ヒマス、是ハ牧野委員ノ御意見ヲ伺ヒマスガソ
レガ宜カラウカト思ヒマスソレカラ本法ス如キモノハ產業
組合法デモナシ、又商法ノ規定ヲ準用スルノデアリマスカ
ラ、一ツノ獨立法デアリマス、サウスレバ中央金庫ハ民法カ
ラ考ヘテモ、社團法人ト云フコトハ定ッテ居リマス、併シ特
ニ社團法人トスルト云フコトハ明記ガナクトモ宜イモノデ
アルカ、ドウデスカ、是ハ一ツノ立法例デアリマスカラ、御
尋致シマス、次ニ貸付金ノ制限ガ本法ニ規定ガアリマセヌ、
是ハ產業組合ノ出資額ハ大體判ヲテ居リマスカラ、中央金庫
ノ理事長ガ適當ニ處理シテ宜イト云フコトニナレバ構ヒマ
セヌケレドモ若モ或ル產業組合ニ依ッテハ非常ニ事業ヲ致
シマシテ莫大ノ貸付金ヲ有スル場合ガナイトモ限ラナイ、
故ニ矢張此制限モ設ケル必要ガアルト思ヒマス、此點ニ付
テ提案者ノ御意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=19
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020・荒井賢太郎
○荒井國務大臣 三十六條ノ創立初期ヨリ十五箇年間、政
府ノ出資ニ對シ剩餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズト云フ點
ニ付テハ、是ハ大體政府デハ是デ宜イ積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=20
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021・牧野良三
○牧野委員 守屋委員ニ御答致シマス、第一ハ本法人設立
ノ登錄稅ニ關スル御質問デアリマス、大體此種法人ノ設立
ハ、登錄稅ハ必要ガナカラウト只今思料致シテ居リマス此
點ハ大藏省ノ主稅局トモ打合セタイト思ッテ居リマス第二
ノ御質問ハ本法人ハ社團法人デアルコトヲ明記スル必要ナ
キヤト云フノデアリマスガ、別段其必要ハ無カラウト存ジ
マス、民法第三十三條ニ依ッテ設立スルモノデアリマシテ、
勿論社團法人ニ屬スルコトハ申ス迄モナイト思ヒマス、第
三問ハ貸付金ニ對スル制限ヲ置クノ必要ナキヤ是ハ極テ
實際ノ場合ニ對スル適切ナル御質疑ト存ジマス、此點ハ十
分考慮ヲ費サナケレバナラヌト思ヒマスカラ、更ニ御懇談
ヲ經タイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=21
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022・鈴木久次郎
○鈴木委員 第十六條ニ「預リ金ノ四分ノ一以上ハ國債又
ハ公債ノ買入、大藏省預金部若ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタ
ル銀行ヘノ預金又ハ郵便預金ト爲スコト」ト規定シテアリ
マスガ、此理由ハドウ云フ譯デアリマスカ、貯蓄銀行等ニ於
テハ之ニ類似ノ制限ガアリマスガ、アレハ貯蓄銀行其モノ
ノ信用維持ト、預金拂戾ノ準備ノ上カラ必要ナルコトデア
リマスケレドモ、本法ノ場合ハ徹頭徹尾、政府ノ監督ヲ受ケ
テ居ルノデアッデ、信用ニ付テ懸念スベキ所ハナイ、サウシ
テ見レバ斯ウ云フ制限ヲ設クル必要ハナイト思ヒマス、申
ス迄モナク產業組合中央金庫ナルモノハ、資金ヲ得ルコト
ニ付テ非常ナ困難ガアリヤシナイカト云フ懸念ガアル、又
資金ガ不足シヤシナイカト云フ懸念ガアル、サウ云フ場合
ニ於テ、斯ノ如キ金庫ノ金ヲ束縛スルト云フコトハ、ドウ云
フモノデアルカ、適當ナルコトデアラウカドウカ、一應承リ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=22
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023・牧野良三
○牧野委員 御答致シマス、只今鈴木委員ノ御質問ハ第十
六條第一項第一號ニ預リ金ノ四分ノ一以上ニスル制限ヲ置
クノ必要ハナイジヤナイカト云フ御質問ト解シテ御答致
シマス、必要ハナカラウト云フ御議論ハ尤ナ議論ト私共モ
信ジテ居リマス、サリナガラ何故之ヲ入レタカト云フコト
ノ內輪話ヲ申シマスルト、貯蓄銀行ノミナラズ總テヲ見マ
スルト、農工銀行ニモアッタノデアリマス、サウ云フコトカ
ラ入レタノデアリマスガ、然ラバ其理由如何トナリマスル
ト、是ハ外ノ預金ハ受ケマセヌケレドモ、定期預リ金ヲ受ケ
テ居ル、ソレデ矢張制限ヲ置イテ確實ナル方法ヲ講ジテ置
キマセヌト、行キ當ル恐ガアリハシナイカ、デアリマスカラ
信用ニハ缺ケル所ガナイ勸業銀行、信用ニハ多ク缺ケル所
ガナイ農工銀行、ソレ等ノ例ニ做ヲテ一通ノ形式ヲ整ヘテ
置クノハ實ハ矢張形式上必要デハナイカト解シテ實ハ斯
樣ニ入レタノデアリマス、其邊ノ御心持ヲ持ッテ御覽ヲ願ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=23
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024・鈴木久次郎
○鈴木委員 一應御說明ハ御尤デアリマスルガ、四分ノ一
以上ト云フト當局者ノ役員ノ取計ヒニ依ッテ、幾ラデモ多
クスルト云フコトガ出來ルノデアリマスカラシテ、此點ハ
餘程御考慮ヲ要スルコトデアラウト信ジマス、大體ニ於キ
マシテ此法案ヲ見マスルト云フト、非常ニ何ト申シテ宜シ
カ、官僚的法案ノヤウニ見エル、官僚的ト言ッテハ語弊ガアル
カモ知レマセヌガ、一種是ハ政府國立ノモノカ、若クハ官營
ノモノヽ如キ觀ガアル、勿論ソレハ政府ニ於テモ半額ノ資本
金ヲ出資スルノデアリマス、出資スルノデアリマスケレド
モ、、產業組合ト雖モ民間ニ於テ半額ノ資金ヲ出スノデアリ
マス、多少此產業組合、所謂民間產業組合ト云フモノヽ權利
ト申シマスカ、自由意思ト申シマスカ、サウ云フヤウナモノヲ
所謂民衆氣分トデモ中シマセウカ、サウ云フヤウナモノヲ
法文ニ加ヘル必要ハナイモノデアリマセウカ、日本銀行等
ニ於テスラ斯ノ如キ束縛ハ受ケテ居ラヌ、徹頭徹尾官營ノ
條文ノ書方デアルヤウデ、々認可ヲ受ケ、命令ヲ受ケ、役
員ハ總テ官選デアル、日本銀行以上ノ束縛ヲ蒙ッテ居ルノデ
アリマス、例ヘバ產業組合ニ於テモ、總會ト云フモノハ認メ
ル決算報告ノ總會ト云フモノハヤルノデアル、然ルニ之ニ
ハ總會ノ規定モナイヤウデアリマスガ、ドウ云フコトデア
リマスカ餘リニ所謂官臭紛々タル條文ノヤウデアル、併ナ
ガラ是モ此方面以外ニ橫田サンノ先達テ御說明ニナッタヤ
ウニ、是ハ資金ハ誠ニ不十分ダ、世間デ議論サレルヤウニ不
十分デアルガ、併ナガラ之ニハ預金部ト云フモノガ附イテ
居ル、預金部ノ金ヲ十分ニ利用スルコトガ出來ルノデアル
斯ウ云フ御說明デアル、ソレデ此法文以外ニ言外ニサウ云
フ意味ヲ含ンデ居ッテ、ソレヲ今日ノ當局者モ認メテ、提案
者ノ希望ノ如ク運用ヲサセル、預金部ト云フモノヽ利用ヲ
提案者ノ希望ニ添フヤウニスル、斯ウ云フ御諒解ガ今ノ政
府ニアルト致シマスレバソレハドウ書イテモ宜シイカモ
知レナイ、如何ニ官臭紛々デモ、官僚的デモ、ソレハ宜イカ
モ知レマセヌガ、唯〓此法文自體ヲ其儘直覺シテ見ルト云
フト、サウ云フ風ニ見エル、又左樣ニ提案者ガ現內閣トノ諒
解ガアルカドウカト云フコトモマダ承ラヌ、サウシテ見レ
バモウ少シ產業組合自體ノ權利ヲ認メルト云フヤウナ法文
ノ書方ニハナッテ居ラヌ、ソレ等ノ內情ニ付テ政府若クハ提
案者ノ內情等ニ付テノ御說明ヲ承ルコトガ出來レバ大變幸
ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=24
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025・牧野良三
○牧野委員 御答致シマス、只今ノ御質問ニハ洵ニ恐縮致
シマス、出來ルダケ本當ノ事ヲ中上ゲテ、御了承ヲ願ヒタイ
ト思フノデアリマス官僚的色彩ガ多イヤウニ思フ、之ニ對
スル所見如何、斯樣ナ御質問ト解シテ御答致シマス、實ハ此
法文ハ我國ノ特殊銀行其他ニ比較致シマスルト、極テ官僚的
色彩ノ乏シクナッタモノト私ハ信ジテ居ルノデアリマスド
ウ云フ點デ左樣ニ言フカト云フト日本銀行法、勸業銀行法、
農工銀行法、北海道拓殖銀行法、臺灣銀行法、朝鮮銀行法、是
等ヲ參酌致シテ、共中カラ極テ官僚的ナ部分ヲ除ケル、除ケ
ルヤウニシテ是ダケヲ作リ上ゲタノデアリマスカラ、新ニ
別ニ目的ヲ以テ立テルモノトシテノ御議論ナラバ率知ラズ、
現在ニ於ケル我國ノ金融ト致シマシテハ官僚的色彩ノ比
較的薄イモノト信ジテ居リマスガ、其點ニ付テハ比較〓究
ノ足ラザル點ガアリマシテ、御〓ヲ願フ點ガアリマシタナ
ラバ、御注意ヲ戴イテ成ベク官僚的色彩ハ必要以外ニハ著
カセナイヤウニ思ッテ居リマスケレドモ立案ニ對シテハ比
較〓究ニドンナ注意ヲ拂ッタカト云フコトヲ巾上ゲテ置キ
マス、第二ニ此案ハ單純ナ金融機關ト思召サナイヤウニ願
ヒタイ、ト云フコトヲ橫出議員モ提案ノ理由ノ中ニ申サレマ
シタ、私モ昨日此點ニ力ヲ入レテ申シタノデアリマスルガ、
本金庫設立ノ目的及任務ト申シマスルト、其任務トスル所
ハ生產ニ努力スル中產以下ノ人ノ資金ヲ出來ルダケ充足セ
シメテ、彼等ノ總テノ努力ヲ-國家ノ生產ニ對スル彼等
中產以下ノ努力ヲ奬勵シ、隨テ之ヲ維持シ、普及スルコトニ
アルノデアリマシテ、其見地カラシテ是ハ國家ガ行フ社會
政策ノ中ノ極テ重要ナルモノト思フノデアリマス、其國家
ガ行フ社會政策ヲ國家ヨ汝、斯ノ如キ形式ニ於テ之ヲ行
ヘト云フノガ是ガ本案ノ趣旨デアリマス、其形式トハドウ
云フノカト云フト、國家ガ之ヲ自ラ行フガ、併シ只與ヘルヤ
ウニ行ッテハ國民ヲ開發シテ行クコトハ出來ナイ、少クトモ
今ノ我國ノ空氣ニハ副ハナイカラ、組合員ヲ入レテ相互的
ノ組織ヲ以テ之ヲ導イテ行ク、卽チ本會議ニ於ケル農業振
興ノ際ニ、憲政會ノ下岡代議士ガ御述ニナリマシタ趣旨、其
趣旨ヲ相共ニ達スルヤウニ、政府ヲ鞭韃奬勵シテ、サウシテ
社會政策ヲ行ハシメル積リデアルケレドモ、唯々恩惠的ナ
社會政策デハイカヌ、皆ヲ共同ニ入レテ一〓ノ力デ行フト
云フ方法デナケレハイカヌト云フ積リデ拵ヘマシタ、其意
味ニ於テ產業組合ト云フモノヲ引入レテ一〓ニシテ進マウ、
斯ウ云フ考デアリマシタガ、何處迄モ政府ヲシテ行ハシメ
ル社會政策ノ重要ナルモノ、一ツデ、是ガ本案ノ根本的精神
ヲ成シテ居リマス、又次ニ御注意ヲ願ヒタイノハ評議員デ
アリマス、是ハ御承知ノ通リ獨逸ノ、是レノ模範ヲ致シマシ
タ產業組合中央金庫案ニ於キマシテモ、同ジモノヲ認メテ
居リマスガ、此評議員ト云フモノヲ相當權威アルモノニシ
タイ、而シテ此組織ナラバ必ズ權威アルモノニナルニ相違
ナイ、ソレハ皆吾々御互ノ力デ權威アラシメテ行キタイ、サ
ウシテ一緒ニ此目的ヲ達シテ行キタイ、斯樣ニ解シテ居ル
ノデアリマス、大體列國ノ立法例ニ於キマシテモ、略〓之ニ
似寄ッタモノデアリマシテ認可トカ許可ヲスルト云フコ
トガ如何ニモ目立チマスノハ、政府ヲシテ行ハシムルノ意思
ガ其基本ノ一ツニナッテ居ルト云フ點デ御諒解ヲ願ヒタイ、
次ニ總會ニ關スルコトデアリマス、御質問ノ通リ出資者總
會ヲ致シマス、ソレハ第七條ノ規定ノ結果ト致シマシテ、株
式會社ノ規定ヲ適用シタイト存ジテ居リマス、左樣御了承
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=25
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026・鈴木久次郎
○鈴木委員 私マダ一寸意見ガアリマスケレドモ、星島君
ニ讓ッテ後ニシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=26
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027・星島二郎
○星島委員 根本ニ付キマシテノ質問ハ昨日モ中上ゲマシ
テ御答辯ヲ得テ居リマス、私ハ是ハ重大ナ案デアリマスカ
ラ、ドウカ之ヲ玉成シテ良イモノニシタイト云フ精神ガアリ
マスノデ、私ハ本會議ノ際ニ於キマシテ、隨分橫田サンニ失
禮ナコトヲ申上ゲタヤウデアリマスガ、此席デモ〓心ノ餘
リ言葉ニ若シ失禮ガアッタラ御宥シヲ願ヒタイ、私ハ根本ニ
非常ニ矛盾ガアルヤウニ思フ提案者ニ於テモ思切ッテ御修
正ヲ願ヒタイト思ヲノデアリマス、私ガ元來望ンデ居リマ
ス所ノ貯蓄銀行、是ハ一步讓リマシテ聯合會ノ聯合會、日本
全國ニ亘ル產業組合ノ大聯合會ニ對スルトシマシテモ、只
今鈴木サンガ御尋ニナッタヤウニ、又提案者ガ最モ相互主義
ヲ以テ提案サレタト云フコトヲ伺ッテ產業組合ニ興味ヲ感
ズル點ハ中產以下ノ金融ヲ相互主義ニ依ッテヤルト云フコ
トハ社會組織ニ良イ影響ヲ與ヘルト云フ所ニ特段ノ興味
ガアル關係カラ、此金庫法案ガ若シ大聯合會ノ精神デ行ク
ナラバ、其精神ヲ法文ノ上ニ十分現ハシテ行キタイ、其點ニ
付テ今一寸氣ガ付イタ點カラ申シマシテモ、第二條ニ一寸
支店ト云フヤウナモノヲ設クルニシテモ、直グ主務大臣ニ
伺フト云フコトニナッテ居ルガ、私ハ是ハ理事會ノ決議ニ依ッ
テ出來ルヤウニ爲サッテハ如何デセウカ或ハ第七條ニ株
式會社ニ關スル規定ヲ準用サレテアリマスガ、私ハ此點ニ
付テ非常ニ矛盾ガナイカト思ヒマスノハ、此組合ノ相互主
義ノムヅカシイ點ハ、二百口持ヲテ居ル人間モ、一口持ッテ居
ル人間モ、共ニ一票ノ發言權ガアル所謂資本主義ヲ否定ス
ルト云フ點ニ非常ニ面白味ガアル此出資者總會ト云フノ
ガ第四條ニ認メラレテ居リマシテ、政府ノ認可ヲ經テ資本
金ヲ增加ス、ルト云フ點ノミガ漸ク認メラレテ居リマスガ、
此總會ニ關スル規定ハ全然資本主義ニモ當リマセウガ、此總
會ハドウ云フ風ニ發言權ヲ得ラレルカト云フフト第七條ニ於
テ株式會社ニ關スル規定ヲ準用サレルヤウニナッテ居ル、サ
ウスルト一人一票デナクシテ、二百口持ッテ居ル人間ハ二百
ノ權利ガアル、ドウモ產業組合ノ根本精神ヲスッカリ破壞シ
テシマウヤウニ思フノデアリマスガ、此點ニ付テハドウ云フ
御考デアリマセウカ、私ハ產業組合中央金庫法ガ、今迄政府
ノヤラレテ居ル仕事ニ對シマシテ、隨分思切ッテ民本思想ヲ
取入レタモノト思フノデアリマスガ、出資額ヲ限定シ、サウ
シテ何處迄モ一人一票デスルト云フコトニ付キマシテ、第
五條ニ二百口ヲ超ユルコトヲ得ヌト云フノデ產業組合ノ
精神ヲ取入レテアリマスガ、此第七條ニ於テ發言權、所謂決議
權ガ出資口數ニ依ッテ差ガアル、或ハ一組合ガ如何ニ澤山口數
ヲ持ヲテ居テモ同ジ發言權ガアルノデセウカ、御尋シマス、ソ
レカラ混雜シマスガ、便宜上御尋シマス第一條第二條ソレカ
ラ第五條トノ間ニ於テ相互主義カラ行ケバ出資者ヲ以テ組
織スルト云フコトニナレバ、第一條ノ中ニ少クトモ產業組合聯合會
及產業組合竝ニ政府之ヲ組織ス、政府ガ入ラナケレバナラ
ヌ第六條ニ規定シテアルヤウニ金ヲ出スト云フ意味デハ
ナクシテ、政府自ラ一個ノ組合員デアル、斯ウ云フ意味ニシ
テ行ケバ面白イコトニナリハセヌカ第四條ニ資本金ハ三
万圓、トアリマスケレドモ、普通產業組合ハ斯ウ云フコト
ハ書カヌ、唯〓一口百圓ナラバ百圓、但シ二百口ヲ超ユル
コトヲ得ズト云フヤウニシマスレバ組合員モ政府モ共ニ
聯合シテ一ツノ機關ヲ成スト云フノデ、玆ニ本當ノ相互主
義ガ現レテ來ヤセヌカ政府ガ後援スルケレドモ一組合ト
シテ後援スルト云フヤウナ所ニ非常ナ面白味ガ出テ來ヤセ
ヌカト云フコトカラ考へマスト第六條ノ政府ハ千五百万
圓ヲ限ル出資スルト云フヤウナ所ヲ、政府ハ十五万口以上
ハ少クトモ持ツト云フノデ、玆ニ所謂相互主義ノ心持ガ現
レテ來ヤセヌカ、但シ十五万口ヲ持ツト云フモノト、夕ッタ
一口持ツ組合トガ全然同ジ權利ヲ持ツト云フマデニ私ハ極
端ナ事ハ申シマセヌ、此點ニ付テハ特ニ勅令ヲ以テ、或ハ其
他ノ規定ヲシテ〓イテモ結構ト思ヒマス、其點ニ付テハ提
案者ノ御考ヲ以テマシテ御考慮ヲ願ヒタイト思フノデアリ
マス就キマシテハ組合ハ普通ノ組合モ入リ、聯合會モ入リ、
政府モ入ル、ソレデ此組合ガ出來ルコトニアリマス、現在ノ
聯合會ハ七聯合以上ガ基礎ニナッテ居ル、私カラ申セバ單ナ
ル一組合ノ一票ト、其組合ノ親タル聯合會ノ一票ト同ジニ
スルコトハ公平ヲ缺クコトガアリハセヌカ、何カ其處ラニ
聯合會ト普通組合一般組合ト、全然平等ニ見ラルヽ御考デ
アルカ、或ハ一ノ組合ハ一票ニシテ、聯合會ハ七票ナラ七票
トスルトカ云フヤウナコトニ付キマシテ、如何ナル御考慮
ガアリマスカ聯合會モ普通組合モ、全然同ジヤウニ認メラ
レルカト云フ點デアリマス、要スルニ第四條ニアリマス所
ノ出資者總會ト云フ所ノ、總會ノ決議ヲ第七條ノ商法中株
式會社ニ關スル規定云々ト云フヨリモ、產業組合法ニ關ス
ル規定ト、斯ウ云フコトニナリマスレバ定款トシテ旣ニ各組合
ガ用ヰテ居リマス所ノ機關ト云フ風ニナリマスレバ一株一票
ト云フノデナクシテ、一組合一票ト云フコトニナルノデア
リマスガ、此點ニ付キマシテ第七條ノ株式會社ニ關スル規
定ヨリモ、寧ロ聯合會主義デ行カルヽナラバ、所謂產業組合
法ノ規定ニ依ル一般ノ規定ヲ用ヰルト云フノガ妥當デハ
ナイカ、此點ニ付テモ御意見ヲ伺ヒタイ、ソレカラ第二章
ニ行キマシテ、先程鈴木サンカラモ御尋ガアッタノデアリマ
スガ、牧野サンノ御腹デハ實ニ徹底的ニ現在ノ特殊銀行法
ヨリモ、モット官僚臭味ヲ去ラレルト云フ方ニ確ニサウ云フ
御信念デアルト思ヒマスガ併シ事實ニ於キマシテハ今日
日本銀行ノ總裁副總裁ダケガ官選ニナッテ居ル時代ニ、全部
ガ官選デアルト云フコトニ付キマシテ、今少シク-少ク
トモ理事長副理事長以外ノ理事位ハ、組合カラ選擧スルヤ
ウナコトニ、モウ少シ總會、寧ロ機關ト云フモノニ付テ規定
ヲ殊更ニソレヲ擧ゲテ御設ケニナル御意思ハナイカ、先程
ノ御說明ノ俺達ノ組合デアルト云フ心持ヲ現ハスノニハ
ドウシテモ私ハ其所ニ行カナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、此點ニ付キマシテ進ンデ其精神ヲ現ハス爲ニ、若シ不
備ナル點ガアレバ其點ニ付テモ考ヘテ見ヤウ或ハイヤモウ
是デ立派デアルト云フ御考デアルカ、ドチラカモウ少シ打割ツ
タ御心持ヲ承リタイト思フノデアリマス、ソレカラ第三章
デアリマスガ、是ハ實ハ昨日モ又今日モ色々御質問ガアッタ
ヤウデスガ、所得ノ問題、事實私モ昨日御尋シヤウト思ッテ
居ッタノデスガ、今マダ徹底セヌ所ガアルノデアリマス、此
中央金庫法ガ今度上程サレテ非常ニ世間全體ガ喜ンデ居ル
ト云フコトハ、現在ノ各種產業組合ガ困ッテ居ルコトハ
際カラ言ヒマスレバ相互主義ノ徹底カラ政府ノ力ヲ藉リ
ナクテモ、產業組合デモ相當ノ出資ガ出來ル、又サウナケレ
バナラヌノデアリマスガ、悲シイカナ政府ノ御援助ヲ得ナ
ケレバナラヌノデアリマスカラ、大部分ハ本當ヲ言ヘバ實
ハ這入ルカラ貸シテ吳レト云フノデ、其點カラシマシテ初カ
ラ縱シ二百口持ツト云フヤウナ組合ハ餘リ澤山借リルコ
トヲ欲シナイカモ知レヌ、本當ニ金ガ欲シイノハ、寧ロ這入
レナイト云フヤウナ組合ガ欲シイノデハナイカ、先程牧野
サンノ仰セラレタ所ヲ見マスレバ誰ダッテモ入ルト云フコ
トデアリマシタガ、今日信用組合ナルモノガヤッタ實驗カラ
考ヘレバ、君貸スカラ這入レト云フヤウナコトデ、是ガ一般
組合ヲ毒スル一ツノ惡イ精神デアリニシテ、初カラ所屬組
合ト限ッテアル爲ニ、金ガ欲シイ、然ラバ組合員ダケハ貸ス
カラ這入レト云フ所ニ非常ニ今日ノ組合ニ惡イ弊害ガア
ル無論監督官廳其他ノ御監督デ以テ、一旦這入ッテモ信用
調査ヲシタ上デ貸出スコトニナラナケレバナラヌ、サウス
ルト能ウ這入レナイ所ノ組合ハ非常ニ困ル、コヽデ私ハド
ウシテモ組合ヲ組織スル必要ノアル所ノ、組合以外ノ極ク
低イ組合ニ對シテモ自由ニ是ハ貸出シモ出來ルヤウニシナ
ケレバ、此相互ト云フ點ハ差措キマシテ、現在ノ產業組合中
央會大會ノ決議ニ依リマシタル、今日輿論ヲ以テ勸迎サレ
テ居ル根本ノ精神ニ背クコトニナリハセヌカ、ソレハ相互
主義ハ私共ノ希望スル點デアリマスガ、相互主義ヲ徹底ス
ルト云フコトカラ行キマスレバ、組合ノ預金ヲ預ッタリ、或
ハ十五條以下ノ債劵ヤ其他ノ點ガ是ハ又非常ニ矛盾ニナル
ノデアリマスガ、少々矛盾ガアッテモ都合ノ好イヤウニ現
在ノ株式組合ノ發展ヲ圖ルト云フ所カラ發足スルコトニ
ハ、重ニ債劵ノ發行トカ、預金ヲ預カルト云フコトハ是ハ
矛盾シテ來ルカモ知レヌガ、現在信用組合ハ殊更ニ預金ダ
ケヲ預カリ、組合員デナケレバ金ハ貸サヌト云フコトヽハ
其處ニ矛盾ハアリマスガ、此矛盾ハ豫メ或點マデ認メテ宜
イト思フガ、何處マデモ是ハ固執ナサル、ドウシテモ固執ナ
サル御積リナラバ、十五條以下ノ預金云々ト云フコトハ矛
盾ニナリハシナイカ、先程カラノ提案者ノ腹ヲ見マスレバ
私ハドウモ此點ニ付キマシテ御一考ヲ煩ハシタイト思フノ
デアリマス、甚ダ長ク混雜致シマシタガ、大體質問ノ要領ヲ
摘ンダ積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=27
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028・牧野良三
○牧野委員 只今星島委員ノ御質問ハ實際私モ適切ナル御
質問ダト思ッテ、モウ仰シヤルコトハ同感デアリマス、サリ
ナガラ玆ニ考ヘテ戴キタイノハ星島委員ノ今言ハレタ
其思想デ以テ之ヲ作ッタノデアリマス、卽チ吾々ノ理想デ
アリマス、此理想ヲ以テ之ヲ作ッテ、今言ハレタ點ニ其處
ニ私共陣痛ノ惱ヲ感ジテ居ル、ドウカソレダケヲ御承知
ヲ願ッテ置キタイ、大阪ニ行クニ東海道五十三次ハ〓リクド
イカラ汽車デ眞直ニ直接ニ行カウト云フ御說ハ御尤デ
アル、サリナガラ吾々ガ眞ニ實行セシメル上ニ於ケル苦痛
ガ其處ニアル、全ク其理想ハ必ズ從來相共ニ心ヲ同ジウシ
テ立テタイ、ソレニ星島サント吾々一〓ニ努力スルト云フ
コトニ最モ實行シ易イ點、サウシテ多少理論ニ亘ル點ダケ
ハ割愛シタイト云フノデ、全ク同感デアリマス、其點ニ付テ
ハ割愛シタモノト御了承ヲ願ヒタイト思ヒマス、サウシテ
稍〓各項ニ亘ル點ニ付テ申シタイト思ヒマスガ、從タル事
務所ノ設置ニ付テハ理事會ノ決議ニ依リマシタラドウカ
政府ノ許可ナドハ必要ガナイデハナイカ、是モ官僚生義ト
見ラルヽ點デアリマスケレドモ、是モ御了承ヲ願ヒタイ事
ハ、政府トシテ行ハシメルト云フコトハ、社會政策ノ重要ナ
ル所ノ一ツト云フ點ニ目ヲ付ケテ居ル、而シテ當事者ノ利
益ハ產業組合ノ要求スル所、而シテ政府ガ爲サントスル所
ト玆ニ一致シテ行キタイ、斯樣ナ趣旨ニ過ギナイノデアリ
マス、ソレカラ第七條ニ關聯致シテ株式會社ヲ適用シテ居
ル、此處デ總會ノ事ニ言及ヲナサイマシタ總會ノ規定ハ第
七條ニ依リマシテ、株式會社ノ規定ガ當然此中ニ列シテ居
ルモノト御覽ヲ願ヒタイ、而シテ此部分ニハ株式會社ト云
フ活字ガ這入ッテ居ルモノト御覽ヲ願ヒタイ、而シテ此點ニ
於テ株式會社ノ事項ヲ適用スルヨリモ、卽チ資本主義的ノ
方針ヲ採ルヨリモ、產業組合法ヲ適用シテ以テ新ラシキ一
人一票主義ヲ徹底セシメテ、相互主義ノ精神ヲ現スヤウニ
シタラドウカト仰セラレル點ハ吾々非常ニ現ニ此規定ヲ
スルトキニ心配致シタ點デアリマス、此點ハ左樣ヲ譯デア
リマスカラ、委員皆樣トモ更ニ懇談ヲ重ネマシテ、十分考慮
ヲ拂ッテ遺憾ナキヲ期スルヤウニ致シタイ、唯〓只今ノヤウ
ニ行ハレントスル努力ノ爲ニ、兎ニ角折衷主義ヲ採ッテ、多
少不徹底ニ流し夕點ガアリマスガ、ソレハ矢張生ルヽモノ
ノ痛ミト御解釋ヲ願ヒマス、ソレカラ第一條ノ第二項ニ關
シマシテ、相互主義ヲ徹底セシムル爲ニ、政府ヲモ亦組合員
ニ入レテ、政府ノ出資ヲ十五万ロト云フヤウナコトニシテ、
矢張同ジ出資者ト云フ風ニ中ニ入レル扱ヲシテ行ッタラド
ウカ、此御說モ御尤デアリマス、現在ノ國家ノ制度又時代ノ思
想.我國民思想ト中シマスカ、時代思想ト申シマスカサウ
云フモノヲ參酌シテ見ル必要ガアルト思ヒマス、若シモ政
府ヲ產業組合員ト同ジヤウニシテ、議決權ヲ行使スルト云
フヤウニスレバ「ブライベートリー」ナ關係デハ宜シウゴザイ
マスケレドモ、公ナ關係ヲ持ッテ居リマスカラ、ソコデ議決
權行使ニ至ッテ意見ガ合ハヌ時ニ付テ田ル結果ヲ生ジハシ
ナイカ、寧ロ政府ガ爲ス社會政策ヲ國民ガ一緒ニナッテ彼
ノ力ヲ指導シテヤル、鞭撻奬勵シテヤルト云フ意味ニ於テ政
府ハ此處ニ入レナイデ置ク方ガ宜クナイカ、又左樣ニシテ
當分行ッテ行ク方ガ便利ヂヤナイカ、斯樣ニ考ヘタノデアリ
マス、次ニ組合ト組合聯合會トハ議決權行使ニ同一ニ見ルカ
ト云フ御質問ニ對シテハ、大體ニ於テ同一ニ見テ進ミタイ、
此考デ案ヲ立テタノデゴザイマス、次ニ理事ノ官選ヲ改メル
ノ意ナキヤ否ヤ、是モ全然同感デアリマス、此點ニ於テ適當
ナル意見ヲ此處デ戰ハサレテ其結果玉成スルコトガ出來タ
ナラバ、ソレニ從フコト決シテ吝デナイノデアリマス、此點
ハ政府當局者トモ相當ニ打合セヲシテ、皆サント力ヲ合セ
テ行キタイト思ッテ居ル一ツデアリマス、唯〓玆ニ御了承ヲ
願ハナケレバナラヌ事ハ、多少官僚主義ガ取レナイデヤナイ
カト言ハレテ居リマスガ、此點ニ付テ理事ハ特殊銀行ハ例
外ナク理事ハ營業ヲシテハナラヌ、商業ヲシテハナラヌト
云フ規定ガアリマスケレドモ、ソンナ規定ヲ置クト官僚式
ノ人デナケレバ引張ッテ來ルコトガ出來ナイ、デスカラコチ
ラノ仕事ヲシテ一方營業ヲヤッテモ宜イコトニシテ、好イ適
任者ヲ入レル、コチラノ仕事ヲヤリ、アナタノ仕事モヤッテ
下サイ、サウ云フコトニシテ天下ノ人才ヲ入レタイ、斯樣ナ
趣意デ官條主義ヲ此處ニモ拔イタノデアリマスソレカラ
所屬組合ニ限リマシタ事ニ付テ、中心ニ觸レタ御質問ガア
マシタ、是モ同感デアリマスガ、資金ヲ貸セルカラ這入レト
云フ趣旨ハ實ハ毛頭持チマセヌ、其點ハ立案者ハ全然持ッ
テ居リマセヌ事ヲ明言致シマス、サウ云フ心持ハ兎ニ角本
當ノ團體精神ヲ養成セシムル所以デナイ、唯〓組合ト云フモ
ノヽ組織ヲ完成シテ行カウトスル、團體精神ヲ涵養シテ行
カウトスル精神ヲ、苟モ彼ニシテ持ツナラバ、必ズ一口卽チ
最少限度ノ一口十年間ニ百圓ノ出資ガ出來ナイ筈ハナイ、
是デ押ヘテ行ク汝ニシテ若シ公共ニ盡スノ意アラバ十年
間ニ百圓ノ金ガ出セナイ筈ハナイヂヤナイカ是デ首ッ玉ヲ
押ヘテ行キタイ、這入レ然ラバ與ヘント云フ考ハ毛頭持ッ
テ居ラナイ、然ラバ本案ノ目的トスル所ハ中小產者ノ必要
トスル資金ト、其爲サントスル事業ノ性質ト、其內容ト其計
畫トヲ見テ、好イ事業ヂヤ寔ニ好イ事業ヂヤ、而モ好イ許
リデヤナイ、其計畫モ立派ダ、併ナガラ資金ヲ持タナイト云
フトキニ、其資金ノ需要ニ應ジテ、而モ社會ノ立場カラ見テ
滿足サシテヤル、是ガ目的デアル、ダカラ玆ニ一人ノ若者ガ
アル、彼ハ都會ニ出ナイデ田舍ニ於テ立派ナ仕事ヲヤッテ行
キタイ、牛ヲ一頭飼ッテ事業ヲシテ行キタイト云フノニ、牛一
頭ヲ買フ力ガナイ故ニ組合ニ相談ヲスルト、其計畫、乳ヲ
搾ッテ賣ル計晝ハ實ニ適當ダ、サウシテ斯樣ニシテ行キタ
イ、其計畫ハ適切ダト組合ガ見ルト、組合ハ中央金庫カラ金
ヲ持ッテ來テ若者ニ貸シテヤル、スルト若者ハ其金デ牛ヲ一
頭買フ、サウシテ乳ヲ搾ッテ賣ッタラ組合ニ報告シ、子供ガ生
レタナラソレモ報告シ、ソレガ三年五年ノ間ニ立派ナ牧場ニ
ナッテ來テ、更ニ幾多ノ若者ヲ使用シテ更ニ地方ヲ發達セシ
メ、公共ノ精神ヲ涵養セシメル、其人ノ力ハ乏シクトモ其
計畫ト其計畫ノ內容ニシテ立派ナモノハソレヲ社會的立
場カラ見、個人的方面カラ見テ適當デアルナラバ、金ヲ貸ス
ト云フ風ニシテ行ク、コヽハ何處迄モ精神的ニ重キヲナス
ノデアルカラ、本案ノ規定ハ何處迄モ運用ニ對シテ大ナル
目的ヲ持ッテ居ルカラ、ドウシテモ是ハ何處ノ案ト云フコト
ナシニ、完膚ナキ迄ニ修正セラレルト云フコトデモ、玉成ノ
目的デアルカラ、少シモ私共ハ頑ナノ立場ハ取ラナイ積リ
デアル、皆樣ト力ヲ協セテ此趣旨ヲ達セシメタイ、而シテ星
島委員ノ意見モ私ノ意見モ其中ニ於テ寸分違ハナイト思フ
ノデアル、唯〓折衷說ヲ取ッタノハ全ク實行ノ餘儀ナキ惡事
ト思召シテ、御見遁シノ程ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=28
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029・武藤金吉
○武藤委員長 今日ハ此程度デ止シマセウ
午後零時二十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004612839X00419230223&spkNum=29
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