第46回帝国議会　衆議院　本会議　第30号　大正12年3月13日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十二年三月十三日（火曜日）午後一時十五分開議
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  　議事日程　第二十九號　大正十二年三月十三日
  　　　午後一時開議
  　　　　質問
  　　一　政務官事務官の區別竝在米日本人の歸化に關する質問（副島義一君提出）
  　　二　朝鮮事務大臣設置に關する質問（多木久米次郎君外二名提出）
  　　三　阿片竝阿片アルカロイドの政策に關する質問（大口喜六君提出）
  　　四　日米通商航海條約に關する質問（植原悦二郎君提出）
  　　五　瓜哇印度及海峽植民地航路運賃値上に關する再質問（清水留三郎君提出）
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  　第一　遠洋漁業奬勵法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二　大正十年法律第百二號中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三　癈兵院法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第四　地方鐵道法中改正法律案（下出民義君外二名提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　第五　産業組合法中改正法律案（瀧正雄君外二名提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第六　日本勸業銀行法中改正法律案（瀧正雄君外二名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　第七　郵便貯金法中改正法律案（瀧正雄君外二名提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第八　國有土地森林原野を地方自治體に下付に關する法律案（清水市太郎君外七名提出）　第一讀會
  　第九　家祿賞典祿給與未濟に關する法律案（萩亮君外七名提出）　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十　家祿引直處分法案（久下豐忠君外九名提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十一　拓殖省設置に關する建議案（牧山耕藏君外十名提出）
  　第十二　舞鶴軍港廢止に伴ふ地方救濟金下付に關する建議案（山道襄一君提出）
  　第十三　寺泊築港に關する建議案（高橋金治郎君外一名提出）
  　第十四　鑛業に因る農耕地の被害救濟に關する建議案（中村清造君外四名提出）
  　第十五　肥料専賣に關する建議案（高田耘平君提出）
  　第十六　所得税法中改正に關する建議案（高田耘平君提出）
  　第十七　青森築港國營に關する建議案（北山一郎君外十二名提出）
  　第十八　科學研究機關統一に關する建議案（近藤達兒君提出）
  　第十九　婦人參政に關する建議案（松本君平君提出）
  　第二十　電氣事業供給區域徹廢に關する建議案（植原悦二郎君提出）
  　第二十一　文官任用令の改正に關する建議案（關直彦君外四名提出）
  　第二十二　栃尾須原間鐵道敷設に關する建議案（木村清三郎君外三名提出）
  　第二十三　和歌浦を中心とする國立公園設定に關する建議案（久下豐忠君外三名提出）
  　第二十四　山陰鐵道局設置に關する建議案（清瀬規矩雄君提出）
  　第二十五　小名濱港修築に關する建議案（白井博之君外五名提出）
  　第二十六　發明奬勵に關する建議案（島田俊雄君外八名提出）
  　第二十七　中津下呂間鐵道速成に關する建議案（牧野良三君外二名提出）
  　第二十八　三國港修築に關する建議案（野村勘左衞門君外二名提出）
  　第二十九　京濱間の運輸交通政策確立に關する建議案（若尾幾造君外四名提出）
  　第三十　比婆山熊野神社昇格に關する建議案（永屋茂君外三名提出）
  　第三十一　開墾助成法施行に關する建議案（伊藤廣幾君外七名提出）
  　第三十二　宮河内谷川改修國庫補助に關する建議案（岡順次君外三名提出）
  　第三十三　京若鐵道速成に關する建議案（風間八左衞門君外二名提出）
  　第三十四　園部篠山間鐵道速成に關する建議案（風間八左衞門君外四名提出）
  　第三十五　花園宮島間鐵道敷設に關する建議案（風間八左衞門君外四名提出）
  　第三十六　高等師範學校設置に關する建議案（伊藤廣幾君外七名提出）
  　第三十七　土浦江戸崎間鐵道速成竝江戸崎郡間鐵道敷設に關する建議案（高野毅君外一名提出）
  　第三十八　四國大學設置に關する建議案（蓮井藤吉君外十七名提出）
  　第三十九　二條三宅間鐵道敷設に關する建議案（安原仁兵衞君外一名提出）
  　第四十　地租過納金下付に關する建議案（日野辰次君外九名提出）
  　第四十一　日本海沿岸鐵道完成に關する建議案（高橋金治郎君外四名提出）
  　第四十二　國有林野法中改正に關する建議案（八田宗吉君外三名提出）
  　第四十三　廣尾港修築速成に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第四十四　根室港修築工事に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第四十五　上士幌ルベシベ間鐵道速成に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第四十六　厚床斜里間鐵道速成に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第四十七　釧路相生間鐵道速成に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第四十八　芽室トムラウシ間鐵道速成に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第四十九　釧路網走間鐵道工事速成に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第五十　津居山港修築に關する建議案（松山常次郎君外一名提出）
  　第五十一　高知新居濱間鐵道敷設に關する建議案（大石大君外六名提出）
  　第五十二　大垣、大野、金澤間鐵道速成に關する建議案（川村數郎君外四名提出）
  　第五十三　支笏湖及倶多樂湖を中心とする國立公園設定に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第五十四　室蘭港灣設備速成に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
  　第五十五　朝鮮に於ける水利事業資金充實に關する建議案（松山常次郎君外一名提出）
  　第五十六　電力政策實施に關する建議案（秦豐助君外七名提出）
  　第五十七　官幤大社三島神社修繕竝境内整理擴張速進に關する建議案（岩崎勲君外一名提出）
  　第五十八　中京大學設置に關する建議案（三輪市太郎君外九名提出）
  　第五十九　化學工業奬勵に關する建議案（鈴木錠藏君外三名提出）
  　第六十　森四日市間鐵道敷設に關する建議案（一宮房治郎君外三名提出）
  　第六十一　柏原梁瀬間鐵道敷設に關する建議案（松山常次郎君外六名提出）
  　第六十二　都市計畫促進に關する建議案（山口義一君外六名提出）
  　第六十三　中湧別網走間鐵道速成に關する建議案（小池仁郎君外六名提出）
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• 001・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一議員ノ異動左ノ如シ
  山形縣第一區選出議員戶〓權之助君死去セラレタ
  リ
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  (第二號)大正十一年度歳入歲出總豫算追加案
  (特第一號)大正十一年度各特別會計歳入歲出豫
  算追加案
  (追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲ス
  ヲ要スル件
  (第一號)大正十二年度歲入歳出總豫算追加案
  大正十一年度第二樣備金支出ノ件
  大正十一年度豫備金外ニ於テ豫算
  超過及豫算外支出ノ件
  大正十一年度特別會計第二豫備承諾ヲ求ムル件
  金支出ノ件
  大正十一年度特別會計豫備金外ニ
  於テ豫算超過及豫算外支出ノ件
  (以上三月十二日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  船舶ヲ以テ衆議院議員ノ一選擧區ト爲スノ法律案
  提出者林田龜太郞君植原悅二郞君
  砂田重政君板野友造君
  (以上三月十日提出)
  米穀法運用ニ關スル建議案
  提出者荒川五郞君高橋久次郞君
  鵜澤宇八君高田耘平君
  川崎克君田中武雄君
  農政調査會設置ニ關スル建議案
  提出者成田榮信君
  國有林野下戾ニ關スル建議案
  提出者阿部武智雄君長峯與一君
  宮古啓三郞君黑住成章君
  野副重一君成田直一郞君
  久慈貫一君遠藤良吉君
  匹田銳吉君戶待權之助君
  兩國驛萬世橋驛間連絡鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者鈴木久次郞君
  木更津久留里間鐵道改良工事速成ニ關スル建議案
  提出者鈴木久次郞君
  國定〓科書國營ニ關スル建議案
  提出者水野吉太郞君上塚司君
  苗代君向井倭雄君
  *內幸雄君阪上貞信君
  大石大君西川嘉門君
  〓竝通選擧ニ關シ一般投票實施ニ關スル建議案
  提出者林田龜太郞君關直彥君
  尼分行雄君
  仙臺、鹽釜、松島野蒜、石卷、金華山ヲ包擁スル國立
  公園設定ニ關スル建課案
  提出者伊澤平左衛門君遠藤良吉君
  菅原傳君佐藤庄助君
  野副重一君高橋長七郞君
  中島鵬六君
  (以上三月十日提出)
  金剛山國立公園設置ニ關スル建議案
  提出者田中萬逸君
  (以上三月十二日提出)
  官幣大社宗像神社境内整理復舊ニ開スル建議案
  提出者中村清造君三好德松君
  崎山克治君
  (以上三月十三日提出)
  決議案(議事改善ノ爲繼續委員ヲ設クルノ件)
  提出者田川大吉郞君
  (以上三月十日提出)
  一去十日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提
  出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
  大正五年法律第十六號中改正法律案
  日本勸業銀行法中改正法律案
  農工銀行法中改正法律案
  北海道拓殖銀行法中改正法律案
  日本興業銀行法中改正法律案
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  千葉縣望陀農學校ニ關スル再質問主意書
  提出者鈴木久次郎君
  滿蒙政策ノ遂行ニ關スル再質問主意書
  提出者久下豊忠君齋藤鷲太郎君
  (以上三月十日提出)
  靑島守備軍司令官ノ爲シタル二百二十万圜ノ責任
  支出ニ關スル質問主意書
  提出者横山勝太郞君田中隆三君
  三木武吉君
  (以上三月十二日提出)
  一昨十二日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員丸山嵯峨一郞君外一名提出地方行政
  ノ監督ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員太田信治郞君提出勞働失業者枚濟及
  輸入勞働者ニ關スル質問ニ對スル各辯書
  衆議院議目安藤正純君提出航空事業ニ關スル質問
  ニ對スル答辯書
  衆議院議員副島義一君提出政務官事務官ノ區別
  竝在米日本人ノ歸化ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員多木久米次郞君外二名提出朝鮮事務
  大臣設置ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  地方行政ノ監督ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年三月一日
  提出者丸山嵯峨一郞
  外一名
  賛成者田邊熊
  外三十一名
  地方行政ノ監督ニ關スル質問主意書
  一林野統一ニ關スル地方長官ノ委任權限ノ範圍如何
  一政府ハ地方長官カ部落有ノ林野ヲ町村有ニ統一セ
  ムトスルニ當リテ部落人民ヲ壓迫シテ之カ統一ヲ强
  行セムトスル不當ノ處分ヲ認容スルカ
  右及質問候也
  大正十二年三月十二日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郎
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員丸山嵯峨一郞君外一名提出地方行政ノ
  監督ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員丸山嵯峨一郞君外一名提出地方行
  政ノ監督ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  一部落有林野ノ統一ハ町村自ラ之ヲ實行スルモノニシ
  テ地方長官ハ町村行政ノ監督官廳トシテ其ノ指導監
  督ヲ爲スモノナリ
  一部落有財產ヲ町村ニ統一スルニ付テハ苟モ强制ニ亙
  ルコトナク努メテ部落關係者ノ自覺ニ俟チ以テ圓滿
  ナル遂行ヲ期セシメツヽアリ
  右及答辯候也
  大正十二年三月十二日
  內務大臣水野鍊太郞
  農商務大臣荒井賢太郞
  勞働失業者救濟及輸入勞働者ニ關スル再質問主意
  書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年三月二日
  提出者太田信治郞
  賛成者望月小太郞
  外三十一名
  勞働失業者救濟及輸入勞働者ニ關スル再質問主
  意書
  去ル二月十日本員提出ノ標記質問ニ對シ二月二十六
  日付政府ノ答辯ハ本員質問ノ三點ニ對シ唯徒ニ將來
  ノ希望ヲ述フルニ過キス政府ノ之ニ對スル目下應急ノ對
  策如何
  右及再質問候也
  大正十二年三月十二日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員太田信治郞君提出勞働失業者救濟及輸
  入勞働者ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員太田信治郎君提出勞働失業者救濟
  及輸入勞働者ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
  一政府ハ各地方ニ於ケル職業紹介所ノ活動ヲ督勵シ求
  職者ヲシテ通當ナル職業ニ就クノ機會ヲ得シメ同時
  ニ民間事業竝官公営事業ニ失業者ヲ採用セシメ之
  カ救濟ニ努力シツツアリ
  一支那人勞働者ニ對シテハ風俗上衞生上及公安保持
  上相當取締ヲ勵行シツツアルト共ニ其ノ邦人勞働者
  トノ間ニ軋轢競争ヲ惹起スルカ如キコトナキ樣注意シ
  ツツアリ
  一政府ハ農村生活ノ向上改善ニ關スル各般ノ施設ヲ講
  スルト同時ニ農村勞働ノ需給ノ圓滑ヲ圖リ以テ地方
  靑年カ都市ニ集中スルノ傾向ヲ阻止スルニ努メツツア
  リ
  右及答辯候也
  大正十二年三月十二日
  內務大臣水野鍊太郎
  航空事業ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年三月三日
  提出者安藤正純
  賛成者副島養
  外三十三名
  航空事業ニ關スル質問主意書
  一航空輸送事業ハ實ニ文化施設上急要ノコトナルノミ
  ナラス國防上ノ一要素タリ而モ我カ國ノ航空事業ハ
  列國ニ比シ甚シキ懸隔アリ政府ハ之カ方針ヲ決定シ
  民間航空輸送事業ニ對シテ十分ナル保護奬勵ヲ爲
  スノ意ナキカ
  一今ヤ我カ國ハ國際航空條約ニ加入シ之カ條約履行
  ノ責任アルモ未夕航空路ヲ施設セサルハ如何而シテ之
  カ開設ハ自然民間飛行ノ成績ニ甚大ナル關係アリ此
  ノ際陸軍省宮內省等ハ其ノ所有ノ土地ヲ割讓シテ航
  空路ヲ開設スルノ意ナキヤ
  一航空機ノ製作竝使用保護法ヲ制定シ民間航空機ノ
  發達ヲ助長スルハ目下ノ急務ナリ之ニ對スル政府ノ
  所見如何
  一航空事業ニ關スル研究機關ハ目下分レ分レトナリ且
  之カ爲ニ濫リニ經費ノ增加ヲ來ス傾アリ之ニ對シテ統
  一ノ必要アリト信ス政府ノ所見如何
  右及質問候也
  大正十二年三月十二日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員安藤正純君提出航空事業ニ關スル質問ニ
  對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員安藤正純君提出航空事業ニ關スル質
  問ニ對スル答辯書
  一航空輸送事業及航空機ノ製作等ニ對スル保護獎勵
  ハ何レモ其ノ必要ヲ認ムルモ其方法ニ關シテハ國情ト
  民間航空界竝工業界發達ノ現況ニ鑑ミ之レニ適
  應スルニ非サレハ穏健ナル發達ヲ期シ難シ依テ航空局
  ヲシテ愼重〓究ヲ爲サシメツツアリ
  尙去ル三月三日貴族院ニ於テ貴族院議員大島健一
  君ノ質問ニ對シ陸軍大臣ハ陸海軍ハ民間工場ノ能
  力ニ應シ適當ニ注文ヲ發シ之レカ發展指導ヲ行ヒツ
  ツアル旨述へタルモノニシテ尙ホ其ノ補助ニ就テハ現
  在ニ在リテハ主トシテ製造技術上ノ援助ヲ奥ヘツツア
  リ
  一國際航空路ノ設置亦其ノ必要ヲ認ムルモ之レガ爲莫
  大ナル經費ヲ要スルノミナラズ隣邦露、支、米諸國ハ
  未タ條約ニ加盟シアラサルヲ以テ之レカ施設ハ時機ヲ
  見テ逐次實施セムトス尙民間航空者ノ爲ニハ〓育其
  他ニ支障ナキ限リ飛行場、演習場等ノ使用ニ關シ努
  メテ便宜ヲ與ヘツツアリ
  一現在ノ〓究機關ハ各其ノ主眼トスル〓究科目ヲ異ニ
  スルヲ以テ之レカ統一ニ就テハ深ク〓究ヲ要シ今直ニ
  實施スルコト困難ナリ而シテ其ノ〓究實施ニ當リテハ
  互ニ重複ヲ來ササル如タ密接ノ聯繫ヲ保持シツツアリ
  右及答辯候也
  大正十二年三月十二日
  陸軍大臣山梨半造
  遞信大臣子爵前田利定
  政務官事務官ノ區別竝在米日本人ノ歸化ニ關スル
  質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年三月三日
  提出者副島義
  賛成者日野辰次
  外三十六名
  政務官事務官ノ區別竝在米日本人ノ歸化ニ關ス
  ル質問主意書
  一政府ハ政務官ト事務官ヲ區別スル制度ヲ立ツル意圖
  ナキヤ
  一政府ハ北米合衆國ノ日本人歸化拒絕ニ對シ何等抗
  議ノ手段ヲ採ル思考ナキヤ
  右及質問候也
  大正十二年三月十二日
  内閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員副島義一君提出政務官事務官ノ區別竝
  在米日本人歸化ニ關スル質問ニ對シ別紙各辯書差進候
  〔別紙〕
  副島義一君提出政務官事務官ノ區別竝在米日
  本人ノ歸化ニ關スル質問ニ對スル谷辯書
  一現在ノ制度ニ於テ既ニ政務官事務官ノ區別アリ之レ
  以上區別スルコトハ目下其必要ヲ認メス
  一在米日本人ノ歸化權拒否ニ對シ直チニ抗議スルノ手
  段ニ出ルヲ至當ナリトハ思考セス但シ歸化權ノ否認
  ニ基ク本邦人ノ差別待週問題ニ付テハ適當ナル機會
  ニ之カ解決ヲ講スル考ナルコト本年一月二十四日付
  〓水留三郎氏提出質問ニ對スル同月二十七日付答
  辯ノ如シ
  右及各辯候也
  大正十二年三月十二日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  外務大臣伯爵内田康哉
  朝鮮事務大臣設置ニ關スル質問主意言
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年三月三日
  提出者多木久米次郎
  外二名
  賛成者山口義
  外二十九名
  朝鮮事務大臣設置ニ關スル質問主意書
  朝鮮總督ヲシテ國務大臣ヲ兼ネシムル必要アリト認ム政
  府ノ所見如何
  右及質問候也
  大正十二年三月十二日
  内閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員多木久米次郞君外二名提出朝鮮事務大
  臣設置ニ關スル質問ニ對シ別紙各辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員多本久米次郞君外二名提出朝鮮事
  務大臣設置ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  朝鮮總督ヲシテ國務大臣ヲ兼ネシムルコトハ目下其ノ必
  要ヲ認メス
  右及答辯候也
  大正十二年三月十二日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  又今十三日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員植原悅二郎君提出日米通商航路條約
  ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  日米通商航路條約ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年三月八日
  提出者植原悅二郞
  賛成者鈴木梅四郞
  外四十名
  日米通商航海條約ニ聞スル質問主意書
  現行日米通商航海條約ハ本年七月ヲ以テ其ノ期限滿
  了セムトス之ニ關スル政府ノ對策如何
  右及質問候也
  大正十二年三月十三日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議員議長粕谷義三殿
  衆議院議員植原悅二郎君提出日米通商航海條約ニ
  關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員植原悅二郎君提出日米通商航海條
  約ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  現行日米通商航海條約ハ本年七月ヲ以テ十二箇年ノ
  期間滿了スルモ兩締約國ノ孰レカヨリ本條約ヲ消滅セ
  シムルノ意思ヲ他ノ一方ニ通告シタル後六箇月ヲ經過ス
  ル迄ハ引續キ效力ヲ有ス而シテ右通告ヲ爲スノ適否ハ
  政府ニ於テ考量中ニ屬ス
  右及答辯候也
  大正十二年三月十三日
  外務大臣伯爵内田康哉
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
  一今十三日内閣總理大臣ヨリ左ノ通發令アリタル旨ノ
  通牒ヲ受領セリ
  朝鮮總督府鐵道部長弓削幸太郞
  政府委員被仰付
  一去十日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
  第四部選出決算委員菊池良一君(齋藤宇一郞
  君補關)
  一去十日理事補闕選擧ノ結果左ノ如シ
  朝鮮事業公債法中改正法律案外二件委員
  理事平出喜三郞君(理事加藤定吉君補闕)
  一去十日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  小作調停法案委員
  水野吉太郞君
  委員長川原茂輔君理事野村嘉六君
  上井權大君
  南鼎三君
  西比利亞引揚ノ爲損害ヲ被リタル者等ノ救恤ニ關ス
  ル法律案委員
  委員長麓純義君理事梅田潔君
  北海道本州連絡完成ニ關スル建識案外一件委員
  委員長木下成太郎君理事栗林五朔君
  熱海大仁間鐵道速成ニ關スル建議案委員
  委員長小泉策太郎君理事森恪君
  宮津河守間鐵道敷設ニ關スル建議案外一件委員
  委員長中村喜平君理事山口義一君
  一去十日八幡濱中村間鐵道遠成ニ關スル建議案委員
  山本〓三郞君辭任ニ付キ共補闕トシテ原夫次郞君
  ヲ同委員竹内明太郞君辭任ニ付キ其補關トシテ淺
  石惠八君ヲ行政及稅制ノ整理ニ關スル建議案委員
  大口喜六君辭任ニ付キ其袖〓トシテ小橋藻三衞君
  ヲ職業紹介法中改正法律案外二件委員中原德太
  郞君辭任ニ付キ其補關トシテ飯塚春太郎君ヲ朝鮮
  事業公債法中改正法律案外二件委員平出喜三郞
  君辭任ニ付キ其補關トシテ山本厚三君ヲ西比利亞
  引揚ノ爲損害ヲ被リタル者等ノ救恤ニ關スル法律案
  委員田邊熊一君辭任ニ付キ其補闕トシテ北山一郞
  君ヲ柳津小出間及只見古町間鐵道速成ニ關スル建
  議案委員靑木恒太郎君辭任ニ付キ其補闕トシテ伊
  藤乕助君ヲ電信電線電話線建設條例第六條ニ依ル
  手當金增額ニ關スル建議案委員木下甚三郞君辭任
  ニ付キ其補闕トシテ若林德懋君ヲ孰レモ議長ニ於テ
  選定セリ
  一去十日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
  官幣小社竈門神社境域擴張ニ關スル建議案
  小泉策太郞君中村〓造君飯島信明君
  海江田準一郞君原夫次郞君古賀三千人君
  定行八郞君村田虎之助君納富陳平君
  藥劑師法制定ニ關スル建議案
  野副重一君鐸木三郞兵衞君大林森次郞君
  加藤紋右衞門君竹澤太一君河上哲太君
  〓水留三郞君中原德太郞君大口喜六君
  宮崎縣中央山手線鐵道敷設ニ關スル建議案
  原田十衞君陣軍吉君富安保太郞君
  久木田叶君春日俊文君三浦得一郞君
  重松重治君鮎川盛貞君松下禎二君
  一昨十二日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
  第七部選出豫算委員田中善立君(古屋慶際君
  補闕)
  第九部選出請願委員阿由葉勝作君(古賀三千人
  君補闕)
  一昨十二日委員長及理事亙選ノ結果左ノ如シ
  官幣小社竈門神社境域擴張ニ關スル建議案委員
  委員長小泉策太郞君理事中村〓造君
  藥劑師法制定ニ關スル建議案委員
  委員長野副重一君理事鐸木三郞兵衞君
  宮崎縣中央山手線鐵道敷設ニ關スル建議案委員
  委員長原田十衞君理事久木田叶君
  一昨十二日西比利亞引揚ノ爲損害ヲ被リタル者等ノ
  救恤ニ關スル法律案委員加藤紋右衞門君辭任ニ付
  キ其補關トシテ岩切重雄君ヲ議長ニ於テ選定セリ

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• 002・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　只今御報告ヲ申シマシタ通リ、山
  形縣第一區選出議員戶狩權之助君ハ、昨十二日逝去セ
  ラレマシタ、洵ニ哀悼ノ至ニ堪ヘマセヌ、先例ニ依リマシテ議
  長ヨリ弔詞ヲ御贈リ致シタノデアリマス、此段御報告致シマ
  ス、是ヨリ會議ヲ開キマス

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• 003・龍野周一郎

  ○龍野周一郞君　議長ノ許可ヲ得タイコトガアリマス

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• 004・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　龍野周一郞君

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• 005・龍野周一郎

  ○龍野周一郞君　是ヨリ農村振興ニ關スル建議案ノ委
  員會ヲ開會致シタイト思ヒマス、御許可ヲ願ヒマス

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• 006・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　宜シウゴザイマス

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• 007・龍野周一郎

  ○龍野周一郞君　同委員ノ諸君ハ第十委員室へ速ニ御
  參集ヲ願ヒマス

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• 008・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御諮リヲ致スコトガアリマス、高橋
  久次郎君病氣ニ付、三月十三日ヨリ三月二十二日マデ、
  請暇ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 009・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス仍テ許可致
  シマス、第七部選出豫算委員田中善立君、第九部選出決
  算委員森達三君、第二部選出決算委員伊藤廣幾君、各
  諸君ヨリ常任委員辭任ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 010・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、仍テ許可
  致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補缺選擧ヲ行ヒ、屆出アランコ
  トヲ希望致シマス

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• 011・高橋金治郎

  ○高橋金治郞君　私ハ請暇ノ申出ハ致シマセヌガ、何カ間
  違デハアリマセヌカ
  〔「久次郞ダ」ト呼フ者アリ〕

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• 012・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　議事進行ニ付發言ヲ求メラレテ居
  リマス、之ヲ許シマス

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• 013・淺賀長兵衞

  ○淺賀長兵衞君　極テ簡單デアリマスカラ當席ヨリ發言
  ヲ致シタイト思ヒマス、本員ハ去ル三月六日ノ本會議ニ於
  キマシテ、靑島在留邦人凌辱事件ニ關シマシテ緊急質問ヲ
  致シマシタ、之ニ對シテ政府當局ハ答辯書ヲ以テ答フルト
  云フコトデ、今日既ニ七日ヲ過ギルニモ拘ラズ、未ダ其答辯
  書ノ提出ナキハ何故デアルカ、餘リニ政府ノ態度ガ不深切
  極リハセヌカト云フコトヲ私ハ憤慨シテ居ルノデアリマス、仍
  テ議長カラ一日モ早ク此答辯書ノ提出ヲ促進セラレタイト
  云フコーヲ、私ハ希望スルノデアリマス

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• 014・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御要求ノ趣ハ早速政府ノ方ニ通
  告致シマス、小山松壽君
  〔小山松壽君登壇〕

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• 015・小山松壽

  ○小山松壽君　只今諸般ノ報告ノ中、議員ヨリ提出シタ
  ル質問ニ對シ、政府ヨリ數件ノ御答ガアリマシタ中ニ、去ル
  五日常議場ニ於テ橫山勝太郞君及三輪市太郞君ノ兩君
  ヨリ、政府ニ對シテ質問ヲ致シマシタ此御答辯ハ、緊急質問
  トシテ提出サレタノデアリースカラ、旣ニ只今ノ答辯中ニア
  ルコトヽ考ヘマシタガ、未ダ其答辯ニ接シマセヌ、就キマシテハ
  私ハ政府ニ向ッテ其各辯ヲ求メタイト思ヒマス、此件ニ付キ
  マシテハ卽チ去ル二月二十六日午前ヨリ午後四時二十分
  ニ至ル、名古屋市役所及市會議事堂ニ於ケル未曾有ノ騷
  擾事件、就中午後全ク無警察狀態ノ爲、社會ノ秩序ヲ亂
  シ公安ヲ害シ、而シテ以來警察ノ威信ハ全然地ニ落チマシ
  テ、洵ニ憂フベキ事態デアルトノ報告ヲ受ケマシタルガ故ニ、
  去ル十二日私ハ同地ニ赴キマシテ、實際ヲ視察シ適當ノ處
  置ヲ速ニ爲スベキコトヲ痛切ニ威ジマシタルガ故ニ、政府ニ
  向ッテ其要求ヲ爲サントスル者デアリマス、本件ニ關シテ去ル
  五日午後本議場ニ於テ口今中シマシタル南君ノ質問ニ對
  シテ、水野內務大臣ノ御答ニ依レバ、斯クノ如キ紛擾ノ起リ
  タルハ洵ニ遺憾トシ、其陳情モ聽キ、同時ニ縣廳ノ報告モ得
  テ居ル、併シ事實ヲ精細ニ調査スルノ必要ヲ認メ、特ニ二名
  ノ內務官吏ヲ派遣シ調査セシメテ居ル、一兩日中ニ歸任復
  命ヲ得ルト思フカラ、之ヲ俟ッテ御各辯ヲ爲サウト思ヒマス、
  御承知ヲ請フト云フコトノ辯明デアリマス、既ニ此御辯明
  ニナリマシテカラ旬日ヲ經過シ、復命ハ御手許ニ得ラレテ居
  ルコトヽ確ク信ジマス、私ノ調査シタ所ニ依リマスレバ、此復
  命ヲ得ラレテ居ル、既ニ御答辯ニナラナケレバナラヌト云フ
  コトニ對シテ、何ガ故ニ左樣デアルカト云フコトノ私ノ調査
  ヲ政府ニ參考ニ中述べテ見タイト思ヒマス(「ンレガ議事ノ
  進行デスク」「議事ノ進行デナイ」ト呼フ者アリ)固ヨリー騒
  擾ノ當時現場ニ出張、具サニ目撃シタル名古屋憲兵隊高等
  課奧村藤吉氏ノ報告ニ依リ、同憲兵隊ハ翌日東京憲兵隊
  司令部ニ對シ、騷擾事件ノ〓末ヲ報告シ陸軍內務兩省ニ
  移牒ノ手續ヲ了シテ居ルコトヲ確メマシタ、又川口知事ハ
  騒擾當日ノ二月二十六日午前中縣廳ニ出仕シ、正午退
  廳、午後官含ニ在リ、官舍ハ市役所ト塀ヲ境ニ隣接シテ居
  リマスカラ、坐リナガラニシテ騷擾ヲ見聞シ得、午後五時ヨリ
  正服巡査十名ニ官舍ヲ護衞セシメ、新聞記者ニ面會ヲ謝
  絕シ、當該ノ報告ヲ徵シツヽアッタノデアリマスカラ、此內務
  大臣ノ議會ニ於テ御答辯ニナリマシタル、縣廳ヨリ報告ヲ
  得テ居ルト云ンコトノ御辯明ノ其報告ハ、此間ニ於テ爲サ
  レタモノト思フノデアリマスカラ、旣ニ政府ニハ此事件ニ對ス
  ル報告ヲ諒トセラレテ居ルト私ハ思フノデアリマス、翌日知
  事ハ縣下國府宮ノ裸祭リヲ見物ニ赴キ、例祭ニ依ル奉幣
  使ニモアラズシテ不在デ居ラレタノデアリマスガ、市民ハ激昂
  シテ居リマスカラ、渦中ヨリ脫シタモノデアリマセウ、宮本警
  察部長ハ二十八日ノ夜ニ上京シテ、本月六日午前八時任
  地ニ歸シテ居リマスカラ、卽チ同警察部長ヨリ內務當局ニ對
  シテハ御報告ニナッテ居ルコトヽ確ク信ズルノデアリマス、矢
  張内務大臣ハ最早報告ヲ接手セラレテ居ルト私ハ思フノデ
  アリマス、水野內相ノ答辯ニ依ル二名ノ官吏ハ、內務事務
  官川村貞四郞及小用屬ノ一行デアリマス、同一行ハ三日
  一日午前八時名古屋到著、直ニ旅館大橋屋ニ投宿シ、市
  內新聞ニ依リ事件ノ〓念ヲ得、縣廳ニ知事ヲ訪問シタルニ
  不在、面會致シマセヌガ、警察部ニ杉山高等課長ニ而談
  件ノ〓末ヲ聽取シ、同日午後二時三十分小川屬帶同市
  役所ヲ訪ヒ、川崎市長ヨリ約一時間半ニ亙リ市廳舍內ノ
  騒擾模樣ヲ聽取シ、更ニ助役室ニ於テ柿本大阪毎日記
  者、塚本名古屋新聞記者ヨリ同樣前後ノ模樣ヲ聽取ッテ
  五時退廳シテ居リマス、三月二日午前十時三十分再ビ市
  役所ニ小頭シ、市長ニ會見、後藤助役、安藤庶務課長ノ案
  内ニ依リ騒擾ノ現場、破壞ノ現場及器物等ヲ檢分シ、正午
  ヨリ一時間ニ互リ、助役應接室ニ於テ左ノ記者ト會見、調
  各資料ニ參考ノ爲詳細ニ其見聞ヲ聽取致シテ居リマス、名古
  尾每日新聞記者吉井滋長、名古屋新聞記者石田忠三、
  新愛知新聞記者近藤至、報知新聞支局記者渡邊武、大
  阪朝日新聞支局記者伊藤雲巖、大電報通信社支局記者
  上野有多路

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• 016・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　小山君ドウゾ要旨ダケヲ御述べ下
  サイ
  〔「議事進行デハナイ」ト呼フ者アリ發言者多ク議場
  騒然〕

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• 017・小山松壽

  ○小山松壽君(續)　此諸氏デアリマシテ、主トシテ吉井記
  者ヨリ說明シテ、川村事務官ハ席圖等ヲ作リ總テヲ聽取
  リ、最後ニ政友派新愛知新聞記者近藤至氏ニ對シ、諸君
  ノ陳述セラルヽ事實ハ一切之ヲ肯定セラルヽカト質シ、近藤
  ハ其通リト答ヘ、退廳シテ縣廳ニ出頭シ、午後九時過マデ
  約八時間在廳、宮本警察部長上京中不在ノ爲メ、川口知
  事、內務部長、杉山高等課長ト會見シ、尙ホ憲兵隊ニ就キ
  其取調ヲ聽取シ、三月三日午前五時京都ニ出張、更二三
  月六日京都ヨリ再ビ來リ、上京中ヨリ歸任ノ宮本警察部
  長ニ會見シ

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• 018・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　小山君····(發言者多ク議場騒
  然聽取スル能ハス)

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• 019・小山松壽

  ○小山松壽君(續)　斯樣ニシテ既ニ川村事務官ヨリハ京
  都ノ歸歸リニ再ビ寄ラレテ、一切ノ調査ヲシテ七日ニ歸ッテ復
  命シテ居ル、以上ノ事實ニ徵シマスレバ、事件ノ調査ハ既ニ
  綿密ニ亙リ、萬遺漏ナキヲ期シタモノデアル、内務大臣ハ最
  早御手許ニ於テ此議會ニ報告セラレル答辯ハ出來テ居ル
  ト思フノデアリマス(拍手)故ニ私ハ斯樣ニ綿密ナル調査ガ
  出來テ居ルナラバ、一日モ早ク速ニ當議場ニ於テ御答辯ア
  ルベキ筈ノモノト確ク信ジテ此要求ヲ致スノデアリマス、更ニ
  山內司法次官ニ對シテ私ハ要求ヲ致シマス、山內政府委
  員ハ橫山議員ニ對スル答辯ニ、此事件ニ付テハ調査ヲ求メ
  テ居ル、未ダ報告ニ接シナイト云フコトデアリマス、調査ハ求
  メテ居ルガ未ダ報告ニ接シナイ、本員ノ調査スル所ニ依リマ
  スレバ、既ニ名古屋ノ檢事局ニ於キマシテハ、三島、松坂、兩
  事件主任檢事始メ檢事局、殆ド總動員ノ形ヲ以テ其容理
  ヲ進メツヽアリマス、昨夜迄ノ得タ所ノ報告ニ依リマスレバ、
  其檢學局ニ於テ取調ベタル者ハ市役所ノ係員或ハ新聞記
  者等、殆ド十數名ニ亙っテ居リマス、之ヲ一々名前ヲ申スコト
  (議事ノ進行上如何ト思フシ、三長の御注意モアリマス
  カラ、私ハ是ハ省キマス、更ニ最後トシテ昨日ハ午前九時三
  十分ヨリ午後四時ニ至ルマデノ五時間以上ニ亙ッテ、名古
  屋市長川崎卓吉氏ハ三島主任檢事ノ訳問ヲ受ケテ、檢事
  及訊問者共晝食ヲモ認メズシテ、長キ訊問ヲ受ケテ居リマ
  ス、斯ノ如クニシテ本件ノ事件ガ議會ニ發議セラレテ以來
  名古屋檢事局ニ於テハ、右申述ベル通リ活動致シテ居リマ
  スガ、私ハ勿論山内政府委員ノ答辯ノ如ク、刑事事件ニ付
  テハ搜索ノ結果報告ガアッテモ、答ヘルト云フコトハ保證シナ
  イト云フ言明デアリマスガ、私ハ固ヨリ立法議會ノ權能ガ司
  法權ノ內容ニ立至ッテ、是ガ搜索上ノ各辯ヲ求メヤウト促ス
  者デハアリマセヌ、併ナガラ本件ノ起リマスルヤ、サナキダニ從
  來用口知事ノ秕政ニ慊ラザル市民ハ、此暴政ニ憤〓シ、行
  政警察ノ威信全ク地ヲ拂ヒ、地方警察ノ根本義ニ多大ノ
  疑惑ヲ生ズルト云フヤウナ、今ヤ百鬼晝行ノ形デアリマスカ
  ラ、此點ニ付テ私ハ司法大臣及山內政府委員ニ之ヲ答辯
  ヲ求メルノデアリマス(拍手)殊ニ甚シキハ近時ノ工場勞働
  爭議ノ隨所ニ起ルノ際、又愛知縣ハ有名ナル小作爭議ノ
  本場トシテ、實ニ憂フベキ所デアリマス、此地方ニ於キマシテ
  斯ノ如キ事件ガ起リマシテ、而モ之ヲ一日モ速ニ政府ガ答
  辯セズシテ、荏苒其日ヲ送ルト云フコトハ、社會ノ公安上ニ
  モ甚ダ害アルモノト私ハ思フ、更ニ私ハ驚クベキ事ヲ一言附
  加ヘテ政府ノ注意ヲ促シマス(「附加ヘルトハ何ダ」「イケナ
  イ」「議長々々」ト呼フ者アリ議場騒然)本件發生ノ翌二月
  二十七日、自由勞働組合ノ龜田良助、朝鮮人代表金汝春
  ノ兩氏ハ

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• 020・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　質問ノ要點ダケ···

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• 021・小山松壽

  ○小山松壽君(續)　是等ノ人々ガ警察部ニ於テ杉山課
  長ニ會見致シマシタトキニ、斯ノ如キ事態ヲ更ニ警察部ガ
  攪フテ置クヤウナコトニナレバ、遂ニハ直接行動若クハ其他ノ
  非常ノ手段ニ陷ルト云フコトニナルガ、速ニ是等ニ對シテハ適
  當ノ處置ヲ執ックナラバ宜カラウト云フガ如キ種々ナル意見
  ヲ申シテ居リマス、爾來是等ノ人々ハ連日達夜演說會ノ中ニ
  立ッテ是等ノ批判演說ト稱シ、而シテ社界ノ紊レタル狀態ヲ
  訴ヘテ居リマスカラ、今ヤ政府ガ速ニ答辯シテ此事件ノ是
  非曲直ヲ明カニシナケレバ、社會ノ秩序安寧、公益ハ益、と
  紊レ、自治體ハ根本カラ破壞セラレ、各種ノ爭議ハ隨所ニ
  起ルノデアリマスカラ、私ハ之ヲ憂慮シテ政府ニ向ッテ速ニ各
  辯ヲ促スノデアリマス、議長ヨリ宜シク先例ニ基イテ、政府
  ニ答辯ヲ要求サレンコトヲ希望致シママ(拍手)

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• 022・粕谷義三

  ○議長(柏谷義三君)　小山君ノ御要求ハ淺賀君ト同樣
  ニ政府ノ方ニ通ジマス、質問ノ趣意辯明ヲ許シマス、質問ノ
  第一、第二、第四ニ對シマシテハ政府ヨリ答辯書ガ到著シテ
  居リマスカラ、日程ヨリ省クコトニ致シマス、所間第三、阿片
  竝阿片アルカロイドノ政策ニ關スル質問、大口喜六君
  三阿片竝阿片アルカロイドノ政策ニ關
  スル質問(大口喜六君提出)
  阿片竝阿片アルカロイドノ政策ニ關スル質問主意
  書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年三月七日
  提出者大口喜六
  賛成者鈴木海四郞
  外四十三名
  阿片竝阿片アルカロイドノ政策ニ關スル質問主
  意書
  一政府ハ內地、朝鮮、臺灣、開束州等ニ於ケル阿片竝阿
  片アルロイドニ關スル政策ヲ統一シ之ニ對スル根本的
  國策ヲ定ムルノ意思ナキヤ
  二平和條約第二十三條ニ依ル阿片竝阿片アルカロイド
  ニ關スル同盟國トノ協定ハ如何ニ行ハレ居ルヤ其ノ
  內容竝現狀如何
  三世界特ニ東部亞細亞ニ於ケル阿片竝阿片アルカロイ
  ドノ合理的需要ニ對シ之カ供給ニ付我カ國ノ採レル
  方針如何
  右及質問候也
  〔大口喜六君登壇〕

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• 023・大口喜六

  ○大口喜六君　私ハ政府ニ向ヒマシテ阿片竝阿片「アルカ
  ロイド」ノ政策ニ關スル質問ヲ提出シテ居リマス、故ニ此際
  其趣旨ヲ辯明シテ置キタイト思フノデアリマス、私ノ質問致
  シマシタル條項ハ三箇條ニ相成ッテ居ルノデアリマスガ、其第
  一條ハ、政府ハ此內地ハ勿論朝鮮、臺灣、關東州等ニ於ケ
  ル阿片竝阿片「アルカロイド」ニ關スル政策ヲ統一シテ、之ニ
  對スル根本的政策ヲ立テルノ意思ハナイカト云フノデアリマ
  ス、現在我國ノ此阿片ニ對スル政策ハ、内地ハ內地ダケデ
  決ッテ居ルノデアリマシテ朝鮮ハ朝鮮、臺灣ハ臺灣、關東州
  ハ關東州ト、各別ノ方策ニ依ッテ之ヲ行ッテ居ルノデアリマ
  ス、其不統一デアリマスル所ノ結果ハ種々ナル弊害ヲ起シテ
  居リマスルノミナラズ、我國ガ得ベキ所ノ利益モ之ヲ得ズニ
  シマフ形ニ相成ッテ居リマス、是ハ甚ダ遺憾千萬ノ事デアリ
  マスルト思ヒマスルノミナラズ、屢〓此疑フベキ所ノ事實モ其
  間カラ發見サルヽノデアリマス、例ヘバ昨年ノ十一月二十六
  日ニ於キマシテ、横濱稅關ノ保稅倉庫ニ保全サレテ居フタ所
  ノ阿片約二千函ト云フヤウナモノハ、其日ノ一夜ノ間ニ船
  ニ積マシテ何處カヘ出テ行ッテシマッタノデアリマス、デ此事實
  ハ當時新聞ニ出テ居リマシタノデ、私ハ豫算委員會ニ於テ
  之ヲ政府ニ質シマシタ、政府ニ於テハ其事實タリシコトヲ認
  メタノデアリマス、デ然ラバ其行爲ト云フモノハ阿片法ニ牴
  觸スルモノデアッテ、阿片法ニ於ケル罪トナルモノデアルト思
  フガ、ドウデアルカト云フ私ノ質問ニ對シテ、是又内務當局
  者ハ、内務省ニ於テハ是ハ阿片法違反デアルト云フコトヲ
  認メルト云フコトヲ明ニ言ッテ居ルノデアリマス、然ルニ今日
  ニ於テモ何等之ニ對シテ檢擧ノ事實モ見得ルコトガ出來マ
  セヌシ、制裁ヲ加ヘラレテ居ルコトモ圖カナイ、或ハ政府部內
  ニ於テ意見ガ異ル者ガアルデハナイカト吾々ハ思フノデアリ
  マスガ、是等モ色々臺灣ヤ關東州其他ニ對スル阿片ノ政策
  ト云フモノガ、內地ニ於ケル政策ト異ッテ居ル結果カラ起ル
  所ノモノデアルト吾々ハ思フノデアリマス、殊ニ私共ガ甚ダ異
  樣ニ感ジテ居リマスルノハ、内務省ニ於キマシテハ、我國ノ内
  地ニ於ケル所ノ「モルヒネ」ノ必要量ハ一箇年ニ約四千封度
  デアルト云フコトヲ假ニ定メマシテ、之ニ對スル原料トシテ
  十「パーセント」乃至十三「パーセント」ノ「モルヒネ」ヲ含ンデ
  居ル所ノ阿片四万封度ヲ每年輸入スルコトヲ許シテ居ルノ
  デアリマス、然ルニ臺灣ニ於テハ、或ル此癒者ニ對シテー
  阿片癒者ニ對シテ與ヘル所ノ阿片膏ヲ製造スル傍ラ、粗製
  「モルヒネ」ト云フモノガ出來ル、此粗製「モルヒネ」ヲ中ニハ約
  六十五「パーセント」ノ「モルヒネ」ヲ含ンデ居ルノデアリマスル
  ガ、之ヲ我ガ內地ニ輸入スルコトヲ許シテ、昨年ノ如キハ八
  千二百封度ノ粗製「モルヒネ」ヲ入レルコトヲ許シテ居ルノデ
  アリマス、其結果「モルヒネ」ト云フモノガ約五千封度以上出
  來ルノデアルガ、是ハ全然內地ニハ要ラナイ筈デアル、此五
  千封度餘計出來タ所ノ」モルヒネ」ト云フモノハドウ云フ所
  ヘ之ヲ賣ラレテ行クモノデアルカ、是ハ頗ル〓究ニ値スベキ
  事デアラウト吾々ハ思フノデアリマス、斯ノ如キ事ガ出來上ッ
  テ居ルト云フコトガ、矢張是ハ我國ニ於ケル阿片政策ガ一
  定セザル結果デアルト思フノデアリマス、ソレ故ニ吾々ハ我
  國ニ於ケル此阿片竝阿片「アルカロイド」ニ對スル政策ト云
  フモノヲ政府ガ一定ヲシテ、根本的國策ト云フモノヲ此際
  樹テナケレバ、西洋各國ト-外國ト我國ト協約ヲ致シテ
  居ル上ニ於テ、頗ル不都合ナ事ヲ生ズルノミナラズ、國家ノ
  利益ニモ反スルコトガ出來ヤウ、何故ニ政府ハ今日マデ此
  儘ニ之ヲ打棄テヽ置クカ、之ヲ統一シテ一定ノ國策ヲ設ケ
  ル所ノ御意思ハ政府ニ無イカ、果シテ有リトスレバ如何樣ニ之
  ヲ定ムル考ヘデアルカ、又其意思ナシトスレバ其必要ナシト
  認ムルノハ如何ナル理由ニ依ルモノデアルカ、斯ウ云フコトガ
  承リタイノデアリマス、第二箇條ト致シマシテハ、御承知メ如
  ク此平和條約ヲ万國ト結ビマシタル結果、其第二十三條ニ
  於テ阿片竝阿片「アルカロイド」ノ如キモノニ關シマシテハ、
  各國トノ協定ガアルノデアリマシテ、現ニ此平和條約ニ依フテ
  出來テ居ル所ノ事務所ノ中ニハ、阿片ヲ取扱フ所ノ者モア
  ル筈デアリマスルガ、此各國トノ協約ノ精密ナルコトハ、細密
  ナルコトハ如何樣ニナッテ居ルカ、其内容ガ知リタイノデアリ
  マス、其內容ガ分ック上ニ於テハ現在實際ニ取扱シテ居ルノ
  ハ如何樣ナル造方ニ依シテ取扱ッテ居ルカ、現在ノ實情ヲ政
  府ヨリ答辯シテ載キタイノデアリマス、第三箇條目デアリマ
  スガ、是ハ少シ私ハ政府ニ對シテモ說明ヲ要シテ置キタイト
  思フノデアリマス、申スマデモナク此同片膏ヲ喫フト云フ如
  キコト、卽チ俗ニ言フ阿片ノ煙草ヲ用フルト云フガ如キコト
  ハ、街生上極メテ宜シクナイ事デアルノミナラズ、人道上カラシ
  テモ吾々ハ宜シクナイ事デアルト信ズル者デアルガ、併シ支那
  デアルト云フガ如キ旣ニ此習慣ニ囚ハレテ居ル國ニ於テハ、
  所謂阿片癒者ト云フガ如キ者ガ出來テ居シテ、ドウシテモ之
  ヲ一朝ニシテ廢スルコトハ出來ナイ所ノ事情ニ在ル、是ハ醫
  學上カラ見テモ已ムヲ得ザルコトニ相成ノテ居ルノデアリマ
  スルガ、其結果支那ノ如キニ於テハ頗ル多量ノ阿片竝ニ「モル
  ヒネ」ノ輸入ヲ致シテ居ルノデアリマス、私共ノ大體承知スル
  所ニ依リマスレバ、支那ニ這入ッテ居ル阿片竝ニ「アルカロイ
  ド」/金額ハ、每年少クトモ一億三千万圓以上ニ上ルト承
  知シテ居ルノデアリマスガ、或ハソレヨリ多イカモ知レナイ、其
  中ニ於テ亞米利加デアルトカ、英吉利デアルトカ云フ國カラ
  輸入シテ居ル高ノ方ガ、我ガ日本國カラ輸入シテ居ルヨリ
  餘程超過シテ居ルヤウニ私共ハ承知シテ居ルノデアリマス、
  果シテ然リトスレバ、世界各國ガ認ムル程度ニ於テノ東洋ニ
  於ケル阿片竝ニ「モルヒネ」ノ必要量ト云フモノハ、ソレガ所
  謂合理的デアッタナラバ、我國カラモ相當ノ方策ヲ定メテ之
  ニ供給スルガ宜イト吾々ハ思フノデアリマス、我國ガ外國ニ
  表面憚ル所ガアルカノ如クニシテ、漫リニ一部分ニ於テ嚴密
  ナル法ヲ以テ之ニ處シマシテモ、一面ニ於テ大ニ拔ケル所ガ
  アッテ、密輸出密輸入ヲスルガ如キ者ガアレバ、却ッテ外國ニ
  對シテモ宜シクナイ、ンレヨリモ一定ノ方策ヲ定メテ、果シテ
  我國ガ支那ニ對シテ相當ノ供給ヲシテ宜シイト信ジテ居ル
  ダケノコトハ、政府ガ一定ノ方策ヲ樹テヽ寧口公々然ト之
  ヲ我國ガ支那ニ供給シタラパドウデアルカ、サウシタラ我國ニ
  於ケル取締モ簡便ニナルシ、又一面ニ經濟上ニ於テモ頗ル
  有利デアル、若モソレヲ他ノ外國ガ不承知デアルト云フナラ
  バ、他ノ外國ト我國トノ間ニ果シテ眞ニ均衡ガ保クテ居ルカ、
  ドウデアルカ、或國ト或國トハ特殊ノ利益ヲ占メ、我國ダケ
  ガ特ニ掣肘ヲ加ヘラレテ居ルト云フコトガアッテハナラナイト
  私ハ思フノデアリマス、此點ニ對シテハ餘程我ガ政府ニ於テ
  ハ、「モルヒネ」政策ハ阿片政策ヲ一定サレルト同時ニ、世界
  的ニ我國ノ立場ヲモ明ニサレテ、相當ノ國策ヲ定メラレ、外
  國トノ間ニ十分ナル協定ヲ進メラレルコトガ必要デアルト信
  ジテ居ルノデアリマス、今ヤ阿片會議モ開ケヤウトシテ、派遣
  サレル人モ定ッテ居ルヤニ承ッテ居ル場合デアリマスルガ故ニ、
  政府ハ此際ニ於テ我國ノ内地ニ於ケル阿片政策、「モルヒ
  ネ」政策ニ對スル事理ヲ明カニサレルト同時ニ、世界ニ於ケル
  我國ノ立場ハ如何樣ナル主義方針ノ下ニ居ルモノデアル
  カ、又居ラシメヤウトスルモノデアルカ、其邊ニ對シテ根本的
  ノ政府ノ御方針ヲ承ッテ置キタイト思フノデアリマス、是レ私
  ガ此質問ヲ提出致シマシタ趣意ノ大體デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=23

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• 024・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　次ハ質問第五、爪哇印度及海峽
  植民地航路運賃値上ニ關スル再質問-提出者〓水留
  三郞君
  五瓜哇印度及海峽植民地航路運賃値上
  ニ關スル再質問(〓水留三郞君提出)
  瓜哇印度及海峽植民地航路運賃値上ニ關スル再質
  問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年三月八日
  提出者〓水留三郞
  賛成者井上剛
  外三十名
  瓜哇印度及海峽植民地航路運賃値上ニ關スル再
  質問主意書
  -大正十二年二月二十二日本員提出ノ質間ニ對シ
  前田遞信大臣ハ「我南洋輸出貿易上別段惡影響ヲ
  及スモノト認メス」ト答辯セラレタリ荒井農商務大臣
  果シテ同樣ノ意見ナリヤ敢テ問フ
  二若貿易上多少影響ヲ及ホスモノナリトセハ之ニ對ス
  ル處置如何
  右及再質問候也
  〔〓水留三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=24

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• 025・清水留三郎

  ○〓水留三郎君　瓜哇印度及海峽植民地ノ航路運賃
  値上ノ問題ニ關シマシテ、本員ハ二月ノ二十二日ニ政府ニ
  質問書ヲ出シタノデアリマス、本員質問ノ大要ヲ申上ゲマス
  ルナラバ、「瓜哇印度及海峡植民地ニ航路ヲ有スル日本郵
  船大阪商船南洋郵便ノ三汽船會社ガ一二ノ外國汽船會
  社ト協調シテ近日其ノ運賃ヲ値上セムトス之レ我ガ輸出
  貿易ニ對シ大打擊ヲ與フルモノニシテ折角ノ販路ヲ根抵ヨ
  リ〓覆スルニ至ルヘシ邦家ノ蒙ルヘキ不利貿易業者ノ受ク
  ヘキ影響甚大ナリ政府ハ之ニ對シ如何ナル處置ヲ採ラルヽ
  カ、是ガ本員ノ提出致シマシタ質問書デアリマス、之ニ對シテ
  政府ヨリ三月三日答辯書ガ參リマシタ、其答辯ヲ見マスル
  ト「本邦ヨリ瓜哇方面行貨物運賃ハ内外汽船會社間ニ於
  ケル競爭ノ結果異常ノ低落ヲ來シ爲メニ近時各會社孰レ
  モ該航路ノ經營上頗ル困難ニ陷リタルヲ以テ今回貿易ノ
  實況竝輸出品ノ運賃負擔力等ヲ考慮シ幾分其ノ引上ヲ
  爲サムトスルモノニシテ之ガ爲我南洋輸出貿易上別段
  惡影響ヲ及スモノト認メス是ガ政府ノ答辯デアリマス、常識
  上ヨリ判斷致シマシテモ、三割内外ノ運賃ガ暴騰シテ別段
  惡影響ヲ及サズト云フガ如キハ、餘リニ無責任ナ答辯ト信
  ジテ疑ハスノデアリマス、本員ノ質問ニ對シテ遞信大臣ヨリ
  御答辯ガアリマシタ、船舶ニ關係ガアルト云フ率カラデアリ
  マセウガ、私ノ希望シテ居リマシタノハ貿易ニ直接關係ヲ有
  スル農商務大臣ノ御答辯デアリマシタ、所ガ農商務大臣ヨ
  リハ何等ノ答辯ノナカッタト云フコトハ、私ノ非常ニ遺憾ト
  存ズルノデアリマス、其結果本員ハ農商務大臣ニ宛テヽ遂
  信大臣ト同樣ナル見解ヲ有セラルヽヤ否ヤト一云フコトニ付
  テ、再質問ヲ致シマシタ、今其質問ノ趣旨ヲ辯明致シタイト
  思ヒマス瓜哇印度及海峽植民地、一口ニ申スト南洋、此南
  洋ニ於ケル我ガ勢力ト云フモノハ、最近十年間ニ長足ノ進
  步ヲ來シタノデアリマス、貿易ノ土地事業ノ統計上顯著ナ
  ルモノガ現レテ居ルノデアリマス、從來南洋ト申シマスルト、
  直ニ醜業婦トカ、又ハ無賴漢ヲ連想シテ居リマシタガ、今日
  ノ南洋ハ一變致シマシテ、全ク日本ガ實業上發展スベキ眞
  面目ナル新天地ニ化シタノデアリマス、最近二箇年間ニ於
  ケル我ガ輸出貿易ノ狀態ヲ見マスト、南洋蘭領印度、瓜哇
  「スマトラ」ヲ包含シテ居ル蘭領印度ノ大正十年度ノ我ガ輪
  出貿易ガ五千四百二十万四千餘圓、大正十一年度ニ於テ
  ハ四千七百四十万圓、英領印度ニ對シテハ大正十年度ニ
  ハ八千四百五十万三十餘圓、大正十一年度ニハ九千
  七百二十万二千圓海峡殖民地ニ對シテハ大正十年度ニ
  於テハ二千七十四万五千圓大正十一年度ニハ二千百三
  十四万一千圓、之ヲ合計シマスト大正十年度ニ於ケル我ガ
  輸出貿易ハ一億六千五百九十四万四千餘圓デアリマス、
  大正十一年度ニ於テハ一億五千九百四十六万二千圓、
  如何ニ南洋ト我國ガ密接ノ關係ヲ有スルカト云フコトハ、
  此統計カラ見テモ明カデアリマス、而シテ我ガ輸出貿易ガ南
  洋ニ於テ長足ノ進歩ヲ爲シタト云フノハ、歐洲大戰ノ賜物
  MAODIAN
  デアリマス、歐羅巴ノ戰爭ニ於テ歐未ノ諸國ガ南洋ニ手ヲ
  出スコトガ出來ナカッタ間ニ於テ、我ガ貿易ハ新販路ヲ開拓
  シタノデアリマス、而シテ日本品ノ賣レルト云フノハ、日本品
  ガ比較的低廉ナノデアリマス、日本品ノ低廉ト云フノハ單ニ
  生產費ノ關係ノミデハアリマセヌ、運賃ガ與カッテカガアルノ
  デアリマス、亞米利加ヤ歐羅巴カラ南洋ニ來リマスル運賃
  ハ、其道程ノ關係カラ運賃ガ日本カラ見ルト高イ、運賃ノ安
  イト云ノコトガ南洋質易ノ發展スル大ナル原因デアッタノデ、
  ゴザイマス、然ルニ最近ニ於キマシテハ戰爭ガ終リマシテ以
  來、世界ノ各國ハ支那及南洋ノ貿易ニ注目致シマシテ、現
  ニ其販路ノ開拓ニ對シマシテハ、佛蘭西ノ如キニ於キマシテ
  ハ態軍艦ニ商品ヲ積ンデ南洋ニ派シ、運賃要ラザル所ノ
  貿易上ノ販路ヲ開拓シテ居ルノデアリマス、又英米ノ貿易
  狀態ヲ見マスルト、随分種々ナル保護政策ノ行フテ居ル、此
  船賃ノ割戾制度ヲ見マスルト、表面ノ契約ト云フモノハ船
  ガ到著致シマシテカラ、荷物ガ到著致シマシテカラ、此船賃
  ノ割戾ハ一割ト云フコトガ是ガ各國ノ協定デアリマス、所カ
  日本ニ於キマシテハ此一割ノ割戾ヲ正直ニ守ッテ居リマス
  ガ、世界ノ國々ハドウデアリマスカ、歐米ノ船ニ於キマシテハ、
  一割ノ制限ハ是ハ表面デアッテ、内實ニ於テハ二割三割ト
  云フ船賃ノ割戾ヲシテ居ルノデアリマス、而モ其割戾ヲ爲ス
  ノニ、日本人ノ貨物ニ對シテハ是グ曝露スルコトヲ恐レテシ
  ナイガ、支那人竝ニ歐米人ノ貨物ニ對シマシテハ常ニ二割
  三割ノ規定以上ノ割戾ヲシテ居ルノデアリマス、此際我國
  ニ於キマシテ各汽船會社ガ非愛國的ニモ、或ハ我利的ニモ
  ニ割以上ト云フヤウナ運貨ノ値上ヲスルト云フコトハ宣
  貿易政策ノ土カラ奇怪至極ナリト言ハナケレバナラナイノ
  デアリマス、輸出貿易ノ實際ヲ見マスルノニ、今日豫約註文
  ト云フモノハ非常ニ減少致シマシタ、減少致シマシタガ、相
  當ニ存在シテ在ルト云フコトハ世人ノ認メテ居ル所デアリマ
  ス、此南洋ト日本トノ豫約註文ナルモノヲ見マスト、電報其
  他ニ依ッテノ註文ノトキニハ二箇月、普通ニ於テハ五六箇月
  ヲ要スルノデアリマス、然ルニ〓回ノ船運賃ノ値上ト云フモ
  ノハ、汽船會社ヨリ外國貿易業者ニ對シマシテ一月ノ中旬
  ニ、二月ノ一日カラ運賃ノ値上ヲスルカラ承知セヨト云フヤ
  ウナ通牒デアリマシタ、是ニ於テカ或ハ神戶、大阪ニ於ケル
  所ノ阪神南洋貿易協會トカ、東京、横濱ニ於ケル所ノ南洋
  貿易同盟會ナドガ中心トナリマシテ、或ハ汽船會社ニ向ッテ
  再三再四交涉シ、及ビ政府ニ向ヒマシテハ遞信省、農商務
  省、外務省、大藏省等ニ對シマシテ各.こ陳情書ヲ出シテ居
  ルノデアリマス其陳情書ノ一端ヲ申上ゲマスルト「今般本邦
  汽船會社中日本郵船株式會社大阪商船株式會社南洋
  郵船株式會社ハ他ノ外國汽船會社ト協定シ其航路中瓜
  哇印度及海峽植民地ノ運賃最高三割三分位ノ引上ヲ行
  ヒ近日ヨリ實施ノ旨發表致シ候右ハ誠ニ突然ノ儀ニテ當
  業者ノ困惑驚惧一方ナラズ現下内外ノ狀況ヨリ見テ受諾
  シ兼候ノミナラズ其影響ヲ及ボス所モ不尠ト存ゼラレ候ニ
  付御賢察ヲ仰ギ度事情具陳申上候抑、我ガ南洋貿易ハ
  他方面ニ比シ我國策上尤モ緊要ノ地位ニアリ其促進發達
  ニ關シテハ豫メ上下腐心相成候處ナルガ戰後ノ經濟戰ニ
  對シ各般ノ施設到底歐米ノソレト比肩シ難ク是ガ善後策
  ニ付テハ關係東西貿易業者ハ更ナリ政府當路者ニ於カレ
  テモ夫〓慎重ニ御講究相成候儀ニテ上下一致シテ戰時獲
  得セシ地盤ヲ失ハザランコトヲ之レ努メツヽアル現狀ニ御座
  候然ルニ貿易上最モ重大ナル運賃ヲ斯ク突然而モ一時ニ
  高率ノ値上ゲヲ斷行セラレテハ差當リ當業者ノ先物契約
  ニ於テ至大ノ損失ヲ蒙ラシムルノミナラズ愈。外國品トノ競
  争ヲ不可能ナラシメ我ガ商品ノ販路ヲ益、阻害シ遂ニハ折
  角過去數年間苦心慘澹シテ確保セシ地盤ヲ根柢ヨリ〓覆
  サレントシ我貿易國策上寒心ノ至リニ不堪候元來船舶業
  ハ貿易必須機關ニシテ獨占的事業ニ屬スルクメ國家ヨリモ
  多大ノ保護ヲ與ヘラレ苟モ貿易ノ障害タルモノハ努メテ芟
  除スベキ儀ニ候處斯クノ如キハ帝國貿易ノ消長ヲ深ク考
  慮セズ內外汽船會社ノ協定成立ヲ利用シ獨占的利益ヲ
  襲斷スルヤノ懸念有之候加之輸出奬勵ノ一策トシテ消費
  節約物價引下ゲノ聲大ナルニ比シ寧口時勢ニ逆行スルモノ
  ト存ゼラレ候各汽船曾社ニ於テハ經營上其他ノ理由ニ因ル
  コトナランガ現行運賃率ハ既ニ一年餘モ實施シ居リ甚シキ
  不利トモ認メラレで値上ゲノ結果却ッテ我輸出業者ノ衰頽
  ヲ誘致シテ運賃總牧入ノ減少モ計リ難シト存ジ候何卒右
  事情御賢察ノ上特別ノ御詮議ヲ以テ協定賃率ノ實施ヲ
  中止シ當分現狀ニ据ユ置ク樣前記汽船會社ニ諭示被成
  下度此段奉懇願候」是ガ各貿易業者カラ政府ニ陳情致シ
  マシタ所ノ陳情書デアリマス、日本ノ商品ガ近來外國ニ賣
  レナイト云フノハ日本ノ製產費ガ高イ、是ガ大ナル原因ヲ爲
  シテ居ルノデアリマス、而シテ吾々ハドウシテモ日本ノ品物ヲ
  多ク外國ニ賣ッテ、サウシテ外國カラ金ヲ入レナケレバナラヌ、
  然ルニ今回ノ運賃値上ト云フモノハ、全ク之ニ逆比例ヲ呈
  スル次第デアリマス、政府ニ於キマシテハ、物價ノ調節ト云フ
  コトヲ三大政綱ノ一ニ入レテ居ル、物價ノ調節ト云フコト
  ヲ叫ンデ居リナガラ、物償暴騰ノ原因トモナルヤウチ運賃ノ
  値上ヲ許シ、外國貿易逆轉ノ端〓ヲ開クト云フコトハ、邦
  家ノ爲メ悲ムベキ事柄ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、況
  ヤ以上申上ゲマシタ汽船會社ノ多クハ、政府若クハ臺灣總
  督府ヨリ補助金ヲ受ケテ居ル會社デアリマス、日本郵船會
  社ノ歐洲航路ガ多クノ補助金ヲ受ケテ居ルコトハ申スマデ
  モナイ、大阪商船會社ハ臺灣總督府ヨリ受ケテ居ル、南洋
  汽船會社ニ於テモ亦政府ノ補助ヲ受ケテ居ルノデアル、政府
  ノ人ハ或ハ言ヲカモ知レマセヌ、〓汽船會社ハ認可率ノ範圍
  內ニ於テ値上ヲシタノデアルカラ據ロナイ、斯ウ言フカモ知
  レナイ、併シ今回ノ運賃ノ値上ト同時ニヘ政府ハ汽船會社
  ニ對シマ「シテ、値上ノ條件トシテ新ニ小荷物樟腦等ニ關シ
  テハ初テ認可權ヲ付與シタノデアリマス、是等ハ明ニ不當ノ
  行爲ト言ハナケレバナラヌ、然ルニ政府ハ是等ノ船舶業者ヲ
  保護シテ、一般貿易業者ヲ壓迫スルト云フコトハ、邦家將
  來ノ爲ニ許スベカラザルモノト言ハナケレバナリマセヌ、斯ノ
  如クニシテ果シテ政府ノ方針デアリマス物價調節/本旨ニ
  副フコトガ出來マセウカ、若シ船舶業者保護ノ必要上已ム
  ヲ得ナイト云フナラバ、貿易業者ニ對シテモ一ノ保護政策
  ヲ行フコトガ必要デアラウト思フ、卽チ國家ハ汽船運賃ノ一
  部ヲ割戾スノ制度ヲ立ツルカ或ハ南洋ニ於ケル金融機關
  ヲ完備シテ、低利資金融通ノ方法ヲ講ズルカ、若クハ販路
  擴張ノ爲ニ政府ガ出來ルダケノ努力ト費用ヲ投ズルカ、
  何カ特別ノ保護奬勵ノ策ヲ講ゼラレナイナラパ、或ハ恐ル、戰
  時中苦心慘澹シテ得タル我ガ南洋貿易ノ立場、此立場ヲ
  根柢ヨリ破壞セラレマシテ、本邦ノ貿易上大打擊ヲ受クル
  モノナルコトハ信ジテ疑ハナイノデゴザイマス、故ニ私ハ茲
  ニ再質問ノ主旨ヲ辯明致シマシテ、政府ノ之ニ對スル答辯
  殊ニ遞信大臣ガ言ハレク如ク此三割以上ノ運賃ノ値上ト
  云ヲモノハ、我ガ貿易上惡影響ヲ及ボスモノト認メズト云フ
  ノト、同一ノ見解ヲ農商務大臣モ有スルノデアルカドウカ、
  此點ニ對シテ私ハ農商務大臣ヨリ答辯アランコトヲ希望シ
  テ此壇ヲ降リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=25

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• 026・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ヨリ質問ノ答辯書ニ對スル意見
  陳述ヲ許シマス、古賀三千人君
  礦業被害ニ關スル質問ノ答辯ニ對スル古
  賀三千人君ノ意見
  〔古賀三千人君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=26

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• 027・古賀三千人

  ○古賀三千人君　私ハ礦業被害救濟ニ關シ政府ノ所見
  ヲ質サントスルノデアリマス、本件ハ國家產業ノ上カラ見マ
  シテモ、又人道上カラ中シマシテモ、極テ重大ナル問題デアリ
  マスガ故ニ、昨年ノ議會ニ於キマシテモ又一昨年ノ議會ニ於キ
  マシテモ、政府ニ向フテ質問致シマシタ所、事實ニ反スル甚ダ
  誠意ナキ答辯デアリマシタガ故ニ、本年三度質問趣意〓ヲ
  差出シテ置イタノデアリマス、然ル所去ル三日答辯書ヲ拜
  見致シマシタル所、行數ニシテ僅ニ五行半、極テ簡單ニシテ
  更ニ要領ヲ得ズ、殆ド各辯書ノ價値ヲ成シテ居ラナイノデア
  リマス、斯ノ如キモノヲ以テ吾々ヲ瞞著セントサレマシテモ、
  事實ハ之ヲ許スコトハ出來ナイノデアリマス、私ハ是ヨリ事
  實ニ付キ意見ヲ陳述致シマシテ、政府ノ反省ヲ促シ、更ニ誠
  意アル答層ヲ要求スルノデアリマス、諸君、近時我國ノ鑛業
  〓ガ益、發展ヲ致シマスルコトハ、是ハ海ニ慶〓ニ堪ヘナイノデ
  アリマスガ、又是ガ爲ニ被害ノ甚シキモノカアリマシテ、是亦
  憂慮ニ堪ヘナイノデアリマス、石炭ヲ採掘致シマスル爲ニ土
  地ハ非常ニ陷落ヲ致シ、又煙毒鑛毒水ノ被害等ガ、鑛業地
  帶ニ於ケル住民ニ對シテ一大脅威トナッテ居ルノデアリマス、
  幾度モ申シマスルガ殊ニ悲慘ナル實例ハ、北九州ノ筑豊炭
  出ニ於キマシテハ、先年炭價未曾有ノ暴〓ニ際シ、盛ニ採掘
  ガ行ハレ、又岩掘ヲ致シマシタル爲ニ其被害ハ頓ニ度ヲ昂
  メ、農耕地ノ陷落ハ勿論、家屋ノ傾斜、陷落、又井戶、河川、
  道路、溜池等ノ被害ガ安ニニ亦亦夥シイノデアリマス、是ガ爲
  ニ物質上又精神上ニモ一大惨劇ヲ與ヘテ居ルノデアリマス、
  卽チ福岡縣ノ如キハ此被害ハ全縣下ニ及ンデ居ルノデアリ
  マスルガ、此調査致シタル所ニ依リマスレバ、陷落地ノ段別
  ハ四千二百十二町步、又礦毒水ノ被害ガ二千八百町步、
  是ヨリ生ズル米ノ減收ガ三万九千九百七十石、又麥ノ
  減收ガ一万四百石、之ヲ價格ニ見積リマシタルモノハ百三十
  八万餘圓ニ達スルノデアリマス、是ハ而モ大正九年ノ一箇
  年ノ損害ニ過ギナイノデアリマス、又其後ノ被害ハ益〓增加
  ヲ加ヘテ居ルノデアリマス、故ニ是ハ此被害トー云フモノハ、全
  國ヲ見マスレバ單リ福岡縣ノミデハアリマセヌ、是ハ其他ノ
  地方ニモ被害ハ甚シイノデアリマスルガ、之ヲ全國ニ通算ヲ
  致シマスレバ、實ニ其被害ノ測リ知レザルモノガアルト思フノ
  デアリマス、此點ニ付キマシテハ此地方ヨリ御出ニナリマシタ
  ル.所ノ議員諸君モ御承知ノ筈デアル、又本員ノ如キ實地ヲ
  目撃踏査致シマシタル者ニ於キマシテハ、實ニ酸鼻ノ狀ニ堪
  ヘナイモノガアルノデアリマス、斯ノ如キ問題ニ對シテ、政府
  ハ今日マデ何等適當ナル處置ヲ講ジナイト云フコトハ、實ニ
  私共ハ奇怪トスル所デアリマス、尙ホ又大正八年二ハ帝國農
  會ヨリ主務省ニ建議書ヲ提出シ、越エテ大正九年ニハ福岡
  縣ノ農會長、郡及町村農會長ヨリ被害ノ狀況ヲ具シテ、此
  慘狀ヲ其サニ陳情ヲ致シテ居ルノデアリマス、如何ニ民情ニ
  通ジナイ、又事實ニ疎イ殿樣內閣ト雖モ、此事ハ旣ニ御理
  解ニナッテ居ル筈デアルト思フ、面モ理解サレテ之ヲ放任シテ
  顧ミナイト云フコトハ、此無情冷酷ハ實ニ唾棄セザルヲ得ナ
  イノデアリマス、此現行鑛業法ヲ見マスレバ、是ハ我國鑛業
  幼稚ノ時代ニ制定サレマシテ、鑛業家ノ獎勵寧口保護的ニ
  頗ル有利ニシテ、被害者ニ對スル損害賠償ノ如キハ、之ヲ何
  等考慮ヲセラレテ居ラナイト思フ、故ニ斯ノ如キ損害ニ對シ
  マシテモ、賠償ノ明文ガアリマセヌ爲ニ、被害者ノ不利ハ洵
  ニ甚シイノデアリマス、有力ナル或ル鑛業家ノ如キハ其賠償
  ヲ致シマスル者モアリマスルガ、其他ノ者ハ之ヲ爲サズ、又一
  旦事業ヲ中止致シマシテ廢坑ニ至リマシタ場合ハ、更ニ是
  等ヲ顯ミル者ガナイノデアリマス、故ニ之ヲ交涉的解決ニ俟
  タントシテモ、容易ニ此解決ハ出來ナイノデアリマス、又已ム
  ヲ得ズ訴訟ヲ爲サントシテモ、民法ノ七百九條ニ依ラナケレ
  バナラヌ、是ハ到底一方ノ有力者ナル鑛業家ニ對シテ貧弱
  ナル被害民ノ對抗スルコトガ出來ナイノデ、遂ニハ悲慘ノ狀
  態ニ陷ッテ居ルノデアリマス、又是ハ如何ナル事デアルカト申
  シマスレバ、主トシテ鑛業法ノ缺陷ヨリ生ズルモノデアリマス
  ガ故ニ、時代ノ要求ニ應ジテ一日モ速ニ鑛業法ノ改正ヲ致
  スト云フコトハ、是ハ最モ緊要ニシテ且ツ急務ナリト私ハ信
  ズルノデアリマス、政府ガ今囘寄越サレマシタル答辯書ヲ見
  レバ、鑛業ニ由ル損害賠償ハ當事者間ニ於テ圖滿ナル解決
  ヲ告ゲツヽアルノ狀態ニ在ルト云フコトデアリマス、實ニ瞹昧
  極マル答辯書デアリマス、然ラバ此事實ハト申シマスレバ、賠
  償ヲ致ス者モアレバ致サ又者モアル、受クル者モアレバ受ケナ
  イ者モアル、所謂泣ク者モアレバ笑フ者モアル、强イ者ガ勝ッ
  テ弱イ者ガ負ケルト云フノガ此事實デアル、斯ノ如キ爭議ノ
  解決ヲ當事者間ニ委セルト云フコトハ事實ニ於テ鑛業者
  ノ犧牲ニ被害者ガナルト云フコトヲ政府ハ傍觀シテ之ヲ顧
  ミナイコトニナルト私ハ思フ、是ハ政府ト雖モ今日缺陷ノア
  ルコトハ承知ハ致シテ居リマスガ、併シ此鑛業家ナル者ガ多
  ク或ル政黨ニ屬シテ、是ガ救濟解決ヲセントスルコトハ非常
  ニ事實ニ於テ言フニ言ハレヌ困難ガアッテ、ソレガ爲ニ此解
  決ヲスルコトガ出來ナイノデハナイカト思フ、私ハ政府ハ所
  謂彼方立テレバ此方ガ立タヌ、兩方立テレバ身ガ立タヌト云
  フ立場ニナッテ、ソレガ爲ニ先ヅ胡麻化セルダケ胡麻化シテ、
  延バセルダケ延バサウト云フノガ眞ニ政府ノ僞ラザル告白デ
  ハナイカト私ハ思フ、又此答辯書ノ末項ニ何ト書イテアル、
  一層適切ナル解決方法ノ樹立ニ付テハ、今調査中デアルト
  書イテアル、此調査中デアルト云フコトハ昨年ノ答辯ニモ、
  又一昨年ノ答辯ニモ斯樣ニ申シテアル、然ラバ政府ニ於テ
  モ現在是ガ不完全デアル、之ニ缺陷ガアルト云フコトハ既ニ
  認メテ居ルデハアリマセヌカ、又去年モ調査、一昨年モ調査、
  今年モ調査、後年經ッテモ調査、調査ト云フ調査ノ陰ニ隱レ
  テ、幾年モ引延バサウト云フコトハ實ニ卑怯デアル、實ニ卑怯
  デハアリマセヌカ、實ニ怠慢モ甚シイト言ハナケレバナリマセ
  ヌ、又玆ニ私ハ最近ニ於ケル適切ナル事實ヲ申上ゲナケレバ
  ナラヌ、福岡縣ノ中間町ト云フ所ニ大正鑛業會社ト云フ炭
  鑛會社ガアル、是ガ石炭ヲ採掘致シマス爲ニ土地ガ陷落ヲ
  致シ、停事場附近一帶ノ家屋ハ非常傾斜ヲ致シマシテ、甚ダ
  危險ノ狀態ニアリマスグ故ニ、其被害民ハ慘狀ヲ會社ニ訴ヘ
  テ應急的施設ヲ要求致シマシテモ、之ヲ甚ダ冷淡ニシテ取上
  ゲナイ、又一方被害ハ刻々其度ヲ加ヘテ、一日モ安ンズル事
  ガ出來ナイノデアリマスガ故ニ、屢〓之ニ交涉ヲ重ネタルモ馬
  耳東風ニシテ、更ニ之ヲ放任シテ顧ミナイ、已ムヲ得ズ昨年
  ノ八月ニ訴訟ヲ提起致シテ居ルノデアリマシテ、今係爭中デ
  アリマス、會社ノ態度ハ彼等ハ無產者ノ集合デアルカラ之ヲ
  一旦訴訟ヲ提起サレテモ三年モ五年モ長ク引張ルト云フ
  强硬ナル態度ヲ而セバ、必ズ費用ニ盡キテ意氣ハ沮喪シ、足
  並ハ崩レ、遂ニハ會社ニ屈服ヲシテ來ル時代ガ必ズ來ル、其
  時ニ解決ヲスルト云フコトガ有利デアルト云フ見込ヲ付ケテ、
  サウシテ非常ニ冷淡ナ態度ヲ示シテ居ル、又最近ニ會社ハ
  其訴訟ノ非ナル事ヲ悟ノテ、サウシテ有ユル手段ヲ講ジテ被害
  者ノ一部ヲ買收シ、會社ニ裏切ラサシテ、サウシテ之ヲ切崩サ
  ント致シテ居ル、尙ホ一面ニハ費用ヲ供給スル金穴ニ手ヲ廻
  ハシテ、之ヲ絕タント致シテ店ルノデアリマス、尙ホ近來此形
  勢ガ益、非ナル事ヲ悟ノテ晝夜兼行デ非常ニ之ヲ切崩シ、攪
  亂ニ著手シテ遂ニ一部ノ者ハ其利益ニ喰ハサレテ、一部
  者ハ訴訟ヲ取下ゲントスルコトニ相成ッタ爲ニ、强硬ナル一
  部ノ者ハ會社ノ陋劣ナル此動作ト、一部ノ者ノ不德義ニ非
  常ニ憤慨シテ激昂ハ其極ニ達シテ居ルノデアリマス、惡質ナ
  ル事業家ガ國家社會ヲ毒スルコトハ是亦少クナイノデアリ
  マスガ、斯ノ如キ無反省ナル人間ノ橫暴ニ虐ゲラレタル被害民、
  此被害民ノ慘害ニ泣ク悲痛ナル叫ガ若シ天ニ通ゼサレバ是
  等ノ恨ミハ發シテ遂ニ如何ナル事ヲスルカモ知レヌト私ハ甚
  ダ寒心ニ堪ヘナイノデアル、政府ハ此事實ヲ如何ニ御覽ニナ
  リ、如何ニ考ヘラレルノデアルカ、又今日ノ工業被害救濟ノ
  叫ビハ、一地方ニ於ケル物質的ノ小問題デハアリマセヌ、國
  家社會ノ大問題トシテ是ハ一日モ看過スルコトノ出來ナイ
  狀態ニ私ハ在ルト思フ、政府ハ是等ヲ顧ミテ責任ヲ感ジ、一
  大勇氣ト決心ヲ以テ一日モ速ニ之ニ對スル適當ナル處置
  ヲ講ズル誠意ガ有ルカ、無イカ此點ニ付テ私ハ政府ノ答辯
  ヲ要求致スノデアリマス、之ヲ以テ終リト致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=27

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• 028・粕谷義三

  ○議長　粕谷義三君)田中萬逸君
  國定〓科書改訂ニ關スル質問ノ答辯ニ對
  スル田中萬逸君ノ意見
  〔田中萬逸君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=28

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• 029・田中萬逸

  ○田中萬逸君　本員ノ提出致シマシタ國定〓科書ノ改
  訂ニ關スル質問書ニ對シマシテ、先般文部省當局ヨリ答辯
  書ヲ受領致シタノデアリマス、併シ其答辯書ハ甚ダ簡單ナモ
  ノデアッテ、本員ガ我ガ國民性ノ基礎デアル此〓科書ガ時代
  ノ進運ニ伴ハナイ憾ガアルガ故ニ、之ヲ近代的ニ改訂ヲ行
  ハナケレバナラヌト云フ、其近代的ニ改訂ヲ行フト云フコト
  ニ對シマシテ明ニ裏書ヲサレテ居ルノデアリマスケレドモ、偖
  テ其改訂ノ完了スル時期及改訂ノ實施ノ方法、次第、又ハ
  使用ノ時期等甚ダ肝要ナル要點ニ觸レテ居リマセヌガ故
  ニ、會期切迫ノ折柄時間ヲ取リマシテ洵ニ恐縮デアリマス
  ガ、暫時此答辯ニ對スル意見ヲ開陳致シタイト思ヒマス、世
  界ニ於ケル所ノ現在ノ思想ノ潮流ハ、彼ノ大戰ヲ境ニ致シ
  マシテ、明ニ從來ノ帝國主義竝ニ軍國主義ヨリ現在ノ國際
  主義卽チ平和主義ニ移動シテ參リマシタコトハ、天下萬衆
  ノ齊シク之ヲ認メテ居ル所デアリマス、然ルニ我ガ最近ニ於
  ケル思想ノ潮流ヲ見マスノニ、何等此新シキ潮流ニ觸レント
  致シテ居リマセヌ、殊ニ〓育ノ方面、其基礎〓育タル義務
  〓育方面ニ於キマシテモ、此新シキ國際主義ノ潮流ニ棹サ
  ントハセズシテ、依然トシテ古キ湖流ノ上ニ漂ウテ居リマス
  事實ハ明瞭ニ其〓科書ノ上ニ現レテ居ルト云フコトハ、頗
  ル遺憾ヲ覺エザルヲ得ナイノデアリマス、卽チ現在使用サレ
  ツヽアル所ノ〓科書、特ニ讀本修身ノ如キモノハ餘リニ帝
  國主義的ノ色彩濃厚デアッタリ、又餘リニ好戰的ノ記述ガ
  多イニ過ギタリ、一口ニ之ヲ評シマシタナラバ、所謂攘夷思
  想、卽チ排他的ノ愛國心ヲ養成スル所ノ嫌ガアリマシテ、唯〓
  一途ニ兒童ニ對シテ良イ日本人タルコトヲ〓ユルニ止ッテ居
  ルノデアリマス、卽チ〓科書ノドノ部分ヲ見マシテモ、國際主
  義的精神ヲバ兒童ノ新鮮ナル頭腦ニ植付ケテ、其所ニ世界
  的思想ノ涵養ヲ見ルベキ〓新ナル材料ハ、遺憾ナガラ一モ
  見出スコトガ出來ナイノデアリマス、論ヨリ證據、現ニ此國
  定教科書ヲ仔細ニ點檢シテ見テモ、現在ニ於ケル唯一ノ世
  界的平和機關トモ云フベキ國際聯盟ニ關スル記事ガ、全然
  發見シ得ルコトガ出來ナイノデアリマス、單ニ是等世界的平
  和機關デアル國際聯盟ニ關スル記事其モノガ掲載サレテ居
  ラナイノミナラズ唯、國際聯盟ト云フ其文字其四文字サヘ
  發見スルコトガ出來ナイト云フ有樣デアリマス、要スルニ將
  來ノ中堅國民タル我ガ小國民ニ對シテ、世界的思想ノ萌
  芽ヲバ其新シキ頭腦ニ植付ケテ、彼等ヲシテ良キ日本人タ
  ルト同時ニ、良イ世界人タルベク〓養スルト云フコトガ、我ガ
  義務〓育ノ根本精神デアルト言ッテモ宜カラウト信ズルノデ
  アリマス、然ルニ現在ノ國定教科書ハ免角時代ノ進運ニ伴
  ハズシテ、唯〓徒ニ舊式ノ國家思想養成ノ記事ガ其大半ヲ
  占メテ、全然国際主義ニ依レル現代的ノ國民ヲ造ルベキ記
  事ヲバ發見シ得ナイト云フコトハ、明ニ我ガ義務〓育ノ一
  大缺陷デアルト言ウテモ宜カラウト思フノデアリマス、カルガ
  故ニ速ニ缺陷ヲ補ウテ之ヲ現代的ノ卽チ平和的ノ〓科書、
  言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、現代思想ノ添レル〓科書ニ改
  訂スルト云フコトガ、我ガ〓育行政上最大ノ急務デアルト
  確信ヲ致ス次第デアリマス、卽チ之ヲ具體的ニ申シマシタナ
  ラバ、良イ日本人トシテ當然心得置カネバナラヌ所ノ地ノ自
  治ノ精神、又良キ日本人ノ資格タル、立憲國民トシテ當然
  心得置カネバナラヌ帝國議會、是等自治ノ精神竝ニ帝國
  議會ノ次ノ章ニ、是ハ又良イ世界人トシテ當然心得置カネ
  バナラヌ所ノ國際聯盟ノ一章ヲ加ヘルト云フコトガ、最モ必
  要デアルト考ヘルノデアリマス、ソレト同時ニ國民思想ニ非
  常ナ動揺ヲ來セル今日、皇室中心主義ノ發揮ニ努力スルト
  共ニ、主トシテ國民精神ニ觸レル所ノ記述ヲ豊富ニ致シテ、
  世界ニ冠絕セル我ガ國民性ノ陶冶ニ力メ、帝國三千年來
  ノ傳統的精神デアル義勇奉公心ノ作興ニ努メナケレバナラ
  ヌト思フノデアリマス、之ヲ譬ヘテ申シマスレバ、讀本修身ノ
  如キモノハ彼ノ千遍一律ナル復讐ノ觀念ヲ養成スル傾キノア
  ル所ノ猿蟹合戰ノ如キ、反人道的ノモノヤ、又ハ侵略主義
  ヲ皷吹スル嫌ノアル桃太郞ノ昔話デアルトカ、或ハ又時代
  錯誤ノ最モ甚シイ鎧兜ニ身ヲ固メタル武者物語ノ如キモノ
  ハ純正ナル兒童ノ頭腦ニ終生拂拭スルコトノ出來ナイ反
  平和的ノ觀念ヲ養成セシメマシテ、ソレガ爲ニ科學ニ立脚セ
  ル所ノ思考力、推考力、所謂合理的ノ考察力ヲ減殺致スト
  同時ニ、一方ニ於テハ國民精神ノ誤解ヲ招ク基ト相成リマ
  スルガ故ニ、斯ル方面ノ記載ハ餘リニ多キニ涉ラザルコトヲ
  程度ト致シテ、ソレヨリモ國民精神ノ一端ヲ窺ヒ得ベキ所ノ
  彼ノ一太郞ヤイ、此「太郞ヤイノ物語ノヤウナモノヽ方ガ遙
  ニ兒童ノ心ヲ引付ケマシテ、其新シキ頭腦ニ明確ニ愛國的
  ノ思想ヲ取付ケ得ルコトヽ考ヘマスルガ故ニ、斯ル方針ニ依テ
  時代ニ適應セル所ノ一大改訂ヲ行ハレンコトヲ希望致スノ
  デアリマス、又挿圖ノ如キモノモ、從來ノ沒趣味ナ肖像畫ヲ
  羅列スルト云フヤウナ事ヨリモ直接兒童ノ衝動ニ訴ヘルヤ
  ウナ動的ノモノヲ多ク採用スルト云フコトニ努メラレンコト
  ヲ希望致シマス、算術ノ〓科書ノ如キハ、餘リニ現在ノモノ
  ハ內容ガ多キニ失シテ、所謂注入的ノ嫌ガアル、ソレガ爲ニ
  却テ兒童ノ考察力ヲ減殺致シ、數ノ觀念ヲ薄カラシメマス
  ルガ故ニ、寧口內容ヲ少ク致シテ、例證ヲ多クスルト云フ、之
  ヲ譬ヘテ申上ゲタナラバ、歐米ニ於ケル所ノ算術〓科書ノヤ
  ウニ改訂スルト云フコトガ、國民的經濟思想ヲ養成スル上
  ニ於テ必要ナ事デアルト考ヘマスガ、是等ニ對スル改訂上ノ
  方針ハ如何相成ッテ居リマスルカ、本員ノ聞ク所ニ依リマス
  レハ、昨年中ニ何デモ尋常六年マデノ〓科書カヲ改訂ヲセ
  ラレタト承ッテ居リマスルガ、果シテサウデアルヤ否ヤ、而シテ
  高等小學用ノ〓科書ハ何時改訂ヲセラルヽノデアルカ、又
  改訂濟ノ〓科書ハ-尋常六年マデノ〓科書ハ來ル四月
  ノ新學期ヨリ全部之ヲ使用セラレルコトニナッテ居ルノデア
  ルガ、機會ガアルトキニ此點ヲ承リタイノデアリマス、最後ニ
  申上ゲテ置キタイコトハ、改訂ニ際シテ材料ノ選擇ヲバ嚴重
  ニセラレテ、其材料ノ選擇ニ付テ監督ヲバ飽迄モ嚴重ニセラ
  レタキ事デアリマス、嘗テ材料ノ精選ヲ粗略ニ致シタ結果ト
  致シテ、彼ノ南北朝ニ對シテ其正閏ヲ誤リシ記載ガアら
  シガ爲ニ、遂ニ政治問題ヲ惹起致シテ、時ノ內閣ニ致命傷
  タラントセシコト、諸君ノ御承知ノ如クデアリマスルガ、本員
  ハ斯ル失策ヲ再ビセザランコトヲ熱望スルト共ニ、層一層
  材料ノ選擇ヲ嚴密ニセラレテ、斷ジテ誤レル事項ヲ記載セザ
  ランコトヲ望ンデ已マザル者デアリマス、卒直ニ申上ゲマシタ
  ナラバ、〓科書ニ嘘ヲ書カヌヤウニシテ戴キタイノデアリマス、
  〓科書ニ對シテ嘘ヲ書ク書カヌナドヽ申シマスルコトハ、言
  甚ダ奇矯ノヤウニ聞エマスケレドモ、併シ斯ル事實ガアルカ
  ラ、洵ニ遺憾ニ存ズル次第デアリマス、卽チ木員ノ如キ此〓
  育ニ對スル一門外漢ガ、一寸此〓科書ヲ一瞥シタノミデ、
  誤マレル記載卽チ嘘ヲ書イテアル事實ヲ發見致シ、材料ノ
  選擇ニ對スル其粗漏ナルニ一驚ヲ喫セザルヲ得ナイノデアリ
  マス、其實例ト申シマスルノハ-其一例ト申シマスルノハ、
  尋常小學讀本第八、其第二十八乃木大將ノ幼年時代ト
  題スルモノヽ內容デアリマシテ、其內容ハ如何ナルモノデアル
  カト云フニ、斯樣ナモノデアリマス、極ク簡單ナモノデアリマス
  カラ其全文ヲ朗諧致シマス、「或ル年ノ冬大將ガ思ハズ寒イ
  ト言ッタ、スルト大將ノ父ハヨシ寒イナラバ暖カクナルヤウニシ
  テヤルト言ッテ大將ヲ井戶端へ連レテ行フテ、著物ヲ脫ガセテ
  頭ガラ冷水ヲ浴セ掛ケタ、大將ハ是カラ後一生ノ間寒イト
  モ暑イトモ言ハナカッタ」ト云フ是ガ全文デアリマス、卽チ乃
  木將軍幼少ノ時、寒イト一言言ッタガ爲ニ、其父ナル人ガン
  レデハ暖クシテヤルト言っテ井戶端ニ連レテ行ッテ、將軍ヲ裸
  體ニシテ亂暴ニモ頭カラ氷ノ如キ冷水ヲ浴セ掛ケタ、ソレカ
  ラト云フモノハ、將軍ハ一生涯寒イ時ニモ寒イト言ハズ、暑
  イ時ニモ暑イト言ハナカッタト記載サレテ、一種ノ精神修養ノ
  資料ニ供シテアルノデアリマスガ、想フニ是ハ所謂武士道〓
  育ノ本髓ヲ穿キ違ヘタ結果デアルト推察サレルノデアリマス、
  隨テ〓育上何等寸效ナキモノデアルト斷言スルコトヲ憚リ
  マセヌ、世ニ所謂武士道〓育ハ、斯ル「スパルタ」式ノ嚴正ナ
  ル〓育ハ、本員固ヨリ之ヲ望ム所デアリマス、併シ其武士道
  〓育ナルモノハ、決シテ斯ル亂暴ナモノデハアリマセヌ、卽チ
  眞ノ武士道〓育ハ嚴正ナ中ニ餘裕ガアリ、森嚴ナ中ニ興味
  ノ迸レル、所謂花モ實モアル所ノ嚴肅ナ〓育法ヲ言フノデア
  リマシテ、唯單ニ一言寒イト言ッタト云ッテ井戶端ニ連レテ
  行ァテ、裸體ニシテ頭カラ冷水ヲ浴セ掛ケルヤウナ左樣ナ
  亂暴ナ〓育法ヲ言フノデハ斷ジテナイノデアリマス、ノミナラ
  ズ此事柄ガ全然事實ニ反セル間違ッタ記載デアルカラ驚カ
  ザルヲ得ナイノデアリマス、元來此話ト申シマスルノハ、本員直
  接乃木將軍ヨリ聞イタノガソレ〓〓各所ニ傳ヘラレテ、遂ニ
  斯ノ如キ誤リヲ傳フルコトニ相成ッタト考ヘラレルノデアリマ
  ス、而シテ其眞相ト云フノハ、將軍幼少時代、トアル雪ノ降ル
  朝ノコト、藩侯ニ赴クベク身支度ヲシテ玄關ニ降リ立タレル
  ト、足駄ノ褄皮ガ嵌ッテ居ナカッタ、ソコデ幼年ノ將軍ハ其母
  堂ヲ捉ラマヘテ、頻リニ駄々ヲ捏ネテ居ラレルト、折カラ其處
  ニ雪降リノ日デアルガ故ニ、炊事用ノ水トシテ下樸ノ者ガ溜
  桶ニ一杯水ヲ擔イデ來テ、玄關先キニ置イテ去ッテシマヒマ
  シタ、其時ニ居間ニ居ラレタ大將ノ嚴父ハ突然立ッテ來テ、
  駄々ヲ捏ネテ居ラルヽ將軍ヲ鷲攫ミニシテ、一語モ吐カズ、
  將軍ヲバ玄關先ノ雪ノ中ニ叩キ付ケ、默シテ頭カラ件ノ水ヲ
  浴セ掛ケテ、默々トシテ立去ラレタト云フノガ其話ノ大要デ
  アルアリマス、此默々裡ニ於ケル所ノ峻嚴ナル〓訓ガ、將軍
  ノ心魂ニ深ク徹底致シ、終生將軍ノ良心ヲ支配スル唯一ノ
  基礎トナッタノデアリマスルガ、偖テ斯ル條理ノ整然タル記載
  デアルナラバ、明ニ日本固有ノ武士道〓育ノ發露ト致シテ、
  將又我ガ國民性ヲ砥礪スベキ所ノ〓科書ノ材料トシテ、洵
  ニ適當致シテ居リマスルケレドモ、唯、單ニ寒イト言ッタト云フ
  テ、突然頭ニ水ヲ掛ケタガ爲ニ、一生涯將軍ガ暑イトモ寒イ
  トモ言ハナカッタト云フガ如キ、事實ニ有ルベカラサル亂暴ナ
  ル記載ヲ致シテ、之ヲ〓科書ノ〓材ト爲スガ如キ事ハ、所謂
  百害有っテ一利ナク、我ガ〓育上由々シキ大問題デアルト
  信スルノデゴザイマス、文部當局ハ速ニ此一章ヲ削除セラル
  ルカ、或ハ又事實ニ基イテ之ヲ訂正セラルヽカ、何レニ致シテ
  モ、來ル四月ノ新學期ヨリ之ヲ斷行セラルヽコトガ當然ノ措
  置ト信ズルノデアリマス、是等ハ改訂ノ際ニ如何ニ相成ッテ
  居リマスルカ、是亦機會ノアリマシタトキニ、此點ニ付テ具體
  的ノ御答辯ヲ得タイノデアリマス、是デ私ノ意見ノ陳述ハ終
  リマシテ、此壇ヲ去ルノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=29

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• 030・高見之通

  ○鳥見之通君　日程審議ノ都合ニ依リ、各辯書ニ對スル
  意見ノ陳述ハ、之ヲ後日ニ延期セラレンコトヲ希望致シマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=30

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• 031・粕谷義三

  ○議長(相谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、是ヨリ日程ニ移リマス、日
  程第一、遠洋漁業奬勵法中改正法律案ノ第一讀會ノ續
  ヲ開キマス、委員長廣瀨鎮之君
  第遠洋漁業奬勵法中改正法律案(政
  府提出)第一讀會ノ續(〓〓〓)
  報告書
  一遠洋漁業奬勵法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年三月十日
  遠洋漁業奬勵法中改正法律案委員長
  廣瀨鎭之
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔廣瀨鎮之君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=31

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• 032・廣瀬鎭之

  ○廣瀨鎮之君　本案ハ委員會ヲ開キマスルコト二回、質
  問應答ヲ重ネ能ク審議致シマシタ結果、最モ時運ニ適當
  シテ居リマスル案件ノミデアリマスカラシテ、別ニ異議ヲ挾ム
  所ガナイ、可決スル方ガ宜カラウト云フコトデ、委員會ニ於テ
  ハ可決致シマシタ、尙ホ其上希望條件ヲ附シタイト云フノデ
  「政府ハ速ニ農商務省主管ノ下ニ漁船法ヲ制定シ水產行
  政ノ統一ヲ爲スト共ニ積極的ニ奬勵ノ途ヲ講シ水產業ノ
  振典發展ヲ期スヘシ」、斯ウ云フ希望ヲ附ケタイト申スノデ
  ゴザイマス、其理由ハ御承知ノ通リ、漁船ハ漁業ト申ス特殊
  ノ事業ニ從事スル船デゴザイマシテ、其船體構造又裝置等
  ニ至リマシテモ、悉ク其漁業ノ知識ヨリ割出サナケレバナラ
  ナイ特殊ノ船デアルノデアリマス、故ニ之ニ對スル檢査ナリ、
  凡テノ事ハ其知識アル所ノ農商務省ガ主管スルト云フコト
  ガ、最モ適當ノ事デアッテ、若シ遞信省ノ如キ所ニ於テ之ヲ
  檢査致シマスルト云フト、其間ニ二重ノ煩ヲ生ズルヤウナ形
  ニナリマスルノデ、甚ダ當業者ハ其煩ニ堪ヘナイ、故ニ將來
  此目的ヲ貫徹スル上ニ於テ、是非トモ奬勵ノ途ニ適フヤウ
  ニ農商務省ノ主管ノ下ニ制定シテ貴ヒタイ、斯ウ云フ趣旨
  ナノデアリマス、此希望條件モ全會一致ヲ以テ可決致シマ
  シタノデアリマス、左樣ノ次第デアリマスルカラ、ドウゾ全會
  御一致ヲ以テ可決セラレンコトヲ希望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=32

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• 033・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　直ニ採決ヲ致シマス、本案ハ第二
  讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=33

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• 034・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第二讀
  會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=34

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• 035・高見之通

  ○高見之通君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
  省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定セラレンコトヲ望ミ
  マス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=35

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• 036・粕谷義三

  ○議員(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、直ニ第二讀會ヲ開キ、議
  案全部ヲ議題ニ供シマス
  遠洋漁業奬勵法中改正法律案
  第二讀會(確定識)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=36

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• 037・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　別ニ御異議ハナイト認メマス、仍テ
  第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ、可決確定セラレマ
  シタ、日程第二、第三ハ同一委員ニ付託シタル議案デアリマ
  スカラ、一括議題トスルコトニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=37

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• 038・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ日程
  第二大正十年法律第百二號中改正法律案、日程第三、
  癈兵院法中改正法律案、右二案ヲ一括シテ、第一一讀會ノ
  績ヲ開キマス、委員長高橋光威君
  第二大正十年法律第百二號中改正法律
  案(政府提出)
  第一讀會ノ續委員長〇
  報告
  報告書
  一大正十年法律第百二號中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年三月十一一日
  大正十年法律第百二號中改正法律案委員長
  高橋光威
  衆議院議長粕谷義三殿
  第三癈兵院法中改正法律案(政府提出
  貴族院送付)
  第一讀會ノ續(輕鬆盤)
  報告書
  一癈兵院法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年三月十二日
  〓兵院法中改正法律案委員長
  高橋光威
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔高橋光威君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=38

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• 039・高橋光威

  ○高橋光威君　大正十年法律第百二號中改正法律案
  ノ委員會ノ經過竝ニ結果ニ付テ御報告申上ゲマス、本案ハ
  判檢事等ニシテ定年ニ當ヲテ退職致シマスル者ニ、從來普
  通恩給ノ五割增ヲ支給スルコトニナッテ居ルノデアリマス、ソ
  レヲ此法律改正ニ於キマシテ、百分ノ三十卽チ三割增ニ減
  ズルト云フコトニ改正サレルノデアリマス、是ハ御承知ノ如ク
  先般本院ノ議決ヲ經マシタ所ノ恩給法改正ノ結果、俸給
  四分ノ一ガ三分ノ一ト云フ原則ニナッタノデアリマスルガ故
  ニ、一般ノ恩給ハ增額致シタノデアリマス、是ニ於テ尙ホ判
  檢事ノ定年法ニ依テテ退職シタ人々ニ五割增ト云フコトハ少
  シク多キニ過ギル、仍テ之ヲ相當減額スルコトガ必要デアル
  ト云フコトヲ認メラレマシテ、提案サレタノデアリマス、委員
  會ニ於キマシテハ、愼重審議ノ結果滿場一致ヲ以テ之ヲ可
  決シマシタノデアリマス、此段御報告申上ゲマス、次ニ此癈
  兵院法中改正法律案デアリマス、是ハ癈兵院ハ從來陸軍
  省所管デアリマシタガ、今囘是ハ内務省所管ニ移リマシタ、
  其結果トシテ從來陸軍省ニ於キマシテハ、陸軍懲罰令ト云
  フモノニ依リマシテ、其院內ノ秩序維持ニ關スル手段ヲ執ッ
  テ居ッタノデアリマスル、然ルニ内務省所管ニナリマスレバ、以
  前ノ此陸軍懲罰令ニ依ッテ、院内ノ秩序ヲ維持スルコトガ出
  來ナイノデアリマスルカラ、其懲罰ト云フコトヲ懲戒ト云フコ
  トニ改メタイト云フニ外ナラヌノデアリマス、此案ハ滿場一
  致ヲ以テ矢張可決サレマシタノデアリマスガ、玆ニ二三重要
  ナル質問ガアリマシタ、卽チ政府ノ意見ヲ質シタノデアリマ
  ス、委員ノ一人ヨリ內務所管ニスルト云フコトハ國家ニ對ス
  ル特別ノ功勞者、卽チ國家ニ生命ヲ犧牲ニ供シテ癈兵トナッ
  タト云フ、其特別ノ動功者ヲ遇スルノハ陸軍ノ所管ニシテ
  置ケバ、初テ此軍事ニ特殊ノ功勞者ト云フコトガ現レテ、之
  ヲ優遇スル意味ニ於テモ完全デアル、然ルニ內務省所管ニ
  致シマシテ、社會局ノ取扱ニシマスレバ、一般救護ノヤウナ
  意味ニ取レテ、一寸面白カラヌ感ジヲ起シハシナイカト云フ
  ヤウナ質問ガアッタノデアリマス、併シ軍事救護ト云フモノハ、
  從來トテモ内務省所管デアルカラシテ、今囘之ヲ內務省ノ
  所管ニ移シマシタ所デ、別ニ左樣ナル沿革的ノ感情ハドウカ
  知リマセヌガ、事實ニ於テ之カ薄遇スルト云フ譯デモナイノ
  デアリマシテ、殊ニ萬事ノ取扱上便宜ガ多イト一云フ意味ニ
  於テ斯樣ニシタノデアルカラ、左樣ニ了承シテ貰ヒタイト云
  フノガ政府ノ答辯デアリマス、ソレカラ又癈兵ト云フ言葉ガ
  惡イ、是ハ何トカ直ス途ハナイカト云フ質問ニ對シテ、政府
  ハソレハ尤ナ考デモアルカラ、相當考慮致シマセウト云フヤウ
  ナ返事ガアッタノデアリマス、併ナガラ要スルニ是ハ結局滿場
  一致ヲ以テ可決サレマシタノデアリマス、以上委員會ノ結果
  ニ付テ御報告申シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=39

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• 040・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ハ
  アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=40

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• 041・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ハナイト認メマス、仍テ本案
  ノ第二讀會ヲ開クコトニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=41

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• 042・高見之通

  ○高見之通君　日程第二、第三ヲ一括シテ直ニ第二讀會
  ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定
  アランコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=42

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• 043・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ハナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、卽チ茲ニ雨案ノ第二讀會
  ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
  大正十年法律第百二號中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  癈兵院法中改正法律案第二讀會(確定諸)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=43

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• 044・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　別ニ御異議ハナイト認メマス仍テ、
  第三讀會ヲ省略シ、委員長報告ノ通リ可決確定致シマ
  ス-日程第四、地方鐵道法中改正法律案ノ第一讀會ヲ
  閉キマス-提出者下出民義君
  第四地方鐵道法中改正法律案(下出民
  義君外二名提出)第一讀會
  地方鐵道法中改正法律案
  地方鐵道法中左ノ通改正ス
  第十六條中「所管行政廳」ヲ「所管官廳」ニ改ム
  〔下出民義君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=44

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• 045・下出民義

  ○下出民義君　私ハ地方鐵道法中第十六條ニ「所管行
  政廳」トアルノヲ「行政官廳」ト改メタイノデアリマス、其理由
  ハ此鐵道敷設ニ伴ヒマシテ、道路、橋梁、河川、運河、或ハ溝
  渠等ノ土木工事ニ付キマシテハ、從來ハ行政官廳トナッテ居
  リマシテ、卽チ知事郡長ノ許可ヲ受ケテ工事ヲ施行シテ居
  リマシタノガ、地方鐵道法ノ改正ニ依リマシテ、所管行政廳
  トナック爲ニ、市ノ管理ニ屬スルモノハ市長、町村ノ管理ニ屬
  スルモノハ町村長ノ許可ヲ受クルニアラサレバ施行スルコト
  ノ出來ナイヤウニナッタノデアリマス、是ハ其地方ノ利害ヲ考
  ヘ又手續ノ簡捷ヲ圖ル爲ニ、斯ク改正サレタモノデアリマス
  ケレドモ、此實施以來實際ノ模樣ヲ見マスルト云フト、其地
  方ノ町村長ノ許可ヲ受クルト云フコトニナリマシタ爲ニ、其
  地方ノ實際ノ模様ハ如何ト云フノニ、是等ノ地方ハ此鐵道
  線路ノ全體ハ如何ト云フコトヲ見ルノハ稀デアリマシテ、多
  クハ其地方ノミノ利害ヲ考ヘルト云フコトニナリマス爲ニ、
  或ハ線路ガ屈曲ヲスルト云フヤウナコトガアッタリ、或ハ色々
  ノ場所ニ踏切ヲ拵へ、或ハ停留所ヲ斯ウ云フ所ニ持ノテ行ッ
  テ貰ヒタイト云フヤウナ註文ガ非常ニ澤山出テ參リマス、又
  所ニ依ルト非常ニ大キナ河幅ノ廣イ所ノ橋ニ橋脚ヲ設ケテ
  ハ水害ニ困ルト云フヤウナコトデ、橋脚ノ無イ橋ヲ求メラレ
  ルヤウナコトガアリマシテ、是ハ實際ニ於テ非常ニ無理ナ註
  文ノヤウニ思ヒマスガ、サウ云フヤウナ事ガアリマシテ、爲ニ莫
  大ナル寄附金ヲ爲シテ、漸ク是等ノ妥協ガ出來ルヤウナ事
  ガ往々アルノデアリマス、又先程申シマシタ所ノ己レノ、所ニ
  停留所ヲ置カナケレバイカヌトカ云フヤウナ註文ガ出マシテ、
  是等ノ註文ヲ聞クニアラズンバ許可ヲ受クルコトガ非常ニ
  困難デアルト云フコトガ實際ニ間々アリマシテ、ソレガ爲ニ此
  鐵道敷設ヲスルノニ非常ニ長時日ヲ費シ、又ハ其工事費ニ
  莫大ノ金ヲ要スル實際ノ問題デアリマスカラ、是等ノ事ハ若
  シ企業者ガ許可ヲ得ル能ハザル場合ニ於テハ、水利土木ニ
  關係スル事項デアリマシテ、訴願法ニ依クテ訴願ヲ提起シ得
  ルト云フコトハアリマスケレドモ、左樣ナ手續ヲ爲シテ居タナ
  ラバ、長イ年月ヲ費シテ實際ニ其工事ノ進捗ヲ得ルコトガ
  出來ヌノデアリマス、已ムヲ得ズ其地方ト妥協スルト云フノ
  ガ實際ノ例デアリマスルカラ、此條項ハ矢張從前ノ通リニ所
  管官廳ノ許可ヲ受クルト云フコトニ改メ、地方長官ハ是等
  ノ管理者ノ意見ヲ徵スルコトニ致シマシタナラバ、少シモ差
  支ガナイト信ズルノデアリマス、何レ委シイコトハ又委員會ニ
  於テ說明致シマスルガ、ドウカ此事情デアリマスカラ、皆樣ノ
  御賛成ヲ御願致シマス(舶手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=45

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• 046・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ小泉策太郞君外一名提出、熱海
  大仁間鐵道速成ニ關スル建議案ノ委員ニ併セテ付託セラ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「賛成ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=46

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• 047・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ハ御異議ナシト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマス-日程第五乃至第七ハ、
  提出者同一ナル議案デアリマスカラ、一括議題ニ付スルニ
  御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 048・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ハナイト認メマス、卽チ日程
  第五、產業組合法中改正法律案、日程第六、日本勸業銀
  行法中改正法律案、日程第七、郵便貯金法中改正法
  律案、右三案ヲ一括シテ議題ト致シ、其第一讀會ヲ開キマ
  ス-瀧正雄君
  第五產業組合法中改正法律案(瀧正雄
  君外二名提出)第一讀會
  產業組合法中改正法律案
  產業組合法中左ノ通改正ス
  第七十六條ノ二第一項中「又ハ農工銀行」ヲ「、農工銀
  行又ハ產業組合中央金庫」ニ改ム
  同條第二項中「銀行」ノ下ニ「又ハ產業組合中央金庫」
  ヲ加フ
  附則
  本法ハ產業組合中央金庫法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第六日本勸業銀行法中改正法律案(瀧
  正雄君外二名提出)第一讀會
  日本勸業銀行法中改正法律案
  日本勸業銀行法中左ノ通改正ス
  第十五條ノ二中「農工債劵」ノ下ニ「又ハ產業債劵」ヲ加
  フ
  第二十九條第三十四條及第三十六條中「北海道拓殖
  債劵」ノ下ニ「、產業債劵」ヲ加フ
  第三十條及第三十九條中「北海道拓殖債劵」ノ下ニ
  「、產業債劵」ヲ「北海道拓殖銀行」ノ下ニ「、產業組合中
  央金庫」ヲ加フ
  附則
  本法ハ產業組合中央金庫法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第七郵便貯金法中改正法律案(瀧正雄
  外二名提出)第一讀會
  郵便貯金法中改正法律案
  郵便貯金法中左ノ通改正ス
  第四條第三號中「產業組合」ノ下ニ「又ハ產業組合中
  央金庫」ヲ加フ
  附則
  本法ハ產業組合中央金庫法施行ノ口ヨリ之ヲ施行ス
  〔瀧正雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=48

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• 049・瀧正雄

  ○瀧正雄君　玆ニ提案致シマシタル三ツノ法律案ハ、是ハ
  過日本院ヲ通過致シマシタ、產業組合中央金庫法ノ關
  係條文デアリマス、產業組合中央金庫法案ハ只今貴族院
  ノ委員會ニ係ッテ居リマス、他日是ガ成案トナッテ兩院ヲ通
  過致シマス場合ニハ、當然此產業組合法、日本勸業銀行
  法、及郵便貯金法ニ關聯ヲシテ來ル條文ガアルノデ、第一ニ
  產業組合法ニ付キマシテハ、其第七十六條ノ二ニ斯ウ云フ規
  定ガアリマス、信用組合聯合會ガ其組合、卽チ所屬組合ガ
  勸業銀行デアルトカ典業銀行デアルトカ、或ハ北海道拓殖
  銀行デアルトカ、農工銀行ナドカラ借受ヲ爲シタル場合ニ於
  テ其所屬組合ノ債務ノ保證ヲ爲ス事ガ出來ルト云フ規定ニ
  ナッテ居リマス、之ヨ中央金庫ノ場所ニモ、卽チ信用組合聯
  合會ガ中央金庫ノ場合ニモ、其所屬組合ノ債務ノ保證ヲ
  爲スコトヲ得セシムル必要ガアリマスガ、是ガ產業組合法改
  正ノ要旨デアリマス、次ニ日本勸業銀行法ノ改正ニ關シマ
  シテハ、一言以テ之ヲ掩ヘバ勸業銀行ヲシテ產業組合中
  央金庫ノ發行スル所ノ產業債參ヲ引受ケシムルコトヲ得セ
  シムル爲メノ改正デアリマス、卽チ勸業銀行法ノ第二十九
  條ニ於テ此產業債劵ヲ引受ケルコトヲ得セシムル改正ヲ爲
  シ、次デ第十五條ノ二ニ於キマシテ、卽チ勸業銀行ガ割增
  金附ノ勸業債券ヲ發行シテ得タル所ノ其資金ノ用途ニ付
  テ限定シテ居リマスケレドモ、此產業債劵引受ノ場合ニ可
  能ナラシムル爲メノ改正、此二十九條ト第十五條ノ二トノ
  二ツノ條文ノ改正ニ伴ヒマシテ、第三十條、第三十四條、第
  三十六條、第三十九條等ニ關聯シタル改正ヲ爲スト云フノ
  デアリマス、是等ノ改正ハ或ハ其債劵ヲ引受クル爲ニ業務
  ノ狀態デアルトカ、成ハ財產ノ實況等ヲ勸業銀行ヲシテ取
  調ベシムル、卽チ調査ノ權能ヲ與ヘル必要モアリ、又勸業債
  劵ヲ發行スル場合ニ見返リトシテ、卽チ勸業債劵ノ發行ノ
  制限ヲ規定シテアリマスルガ、此ニモ勸業銀行ニ對シテ、產
  業債劵ノ規定ヲ入レシムル必要ガアル、又是等ノ事ニ付テ
  債劵ノ償還方ニ關シテモ、亦産業債劵ノ規定ヲ必要トスル
  コトニナリマスカラ、是等ノ條文ノ改正ヲ加ヘントシタノデア
  リマス、是ガ日本勸業銀行法ニ對スル改正ノ要旨デアリマ
  ス、第三ニ郵便貯金法ノ改正デアリマスガ、郵便貯金法ノ
  第三條ニ於テ、貯金ノ金額ニ關スル制限ガ規定サレテ居リ
  マス、第四條ニ於テ此例外ヲ記メテ居リマス、所ガ產業組合
  中央金庫法ノ業務ノ所ニ於キマシテ、郵便貯金ヲ爲スコト
  ヲ得ト云フ規定ガアッタノデス、然ルニ其金額ガ二千圓以下
  ニ限定サレテ居ッテハ、甚ダ業務執行上不便デアリマスルカ
  ラ、之ヲ第四條ノ例外ノ中ニ認メテ、卽チ產業組合ガ既ニ
  其例外ヲ認メテアリマスルカラ、是ト同樣ニ取扱ヒタイト云
  フ希望カラ、產業組合同樣ニ中央金庫ヲモ例外ノ中ニ規
  定シタイト云フノデアリマス、是ガ改正ノ要旨デアリマス、而
  シテ此三法律案ハ元々產業組合中央金庫法ガ成立シタ曉
  ニ於テ效力ヲ有スベキモノデアリマスルカラ、其施行期日ハ
  產業組合中央金庫法ノ實施セラレタ其期日ヲ以テ施行ノ
  期日トスト云フ附則ヲ附シタ次第デアリマス、斯ノ如ク極ク
  簡單ナル關係法規ノ改正ニ過ギマセヌカラ、速ニ之ニ御協
  贊ヲ莫フ次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=49

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• 050・高見之通

  ○高見之通君　日程第五乃至第七ノ三案ヲ一括シ、議
  長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=50

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• 051・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議チイト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第八、國有土地森林
  原野ヲ地方自治體ニ下付ニ關スル法律案ノ一讀會ヲ開キ
  マス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス、清水市太郞君
  第八國有土地森林原野ヲ地方自治體ニ
  下付ニ關スル法律案(〓水市太郞
  君外七名提出)第一讀會
  國有土地森林原野ヲ地方自治體ニ下付ニ關ス
  ル法律案
  第一條地租改正處分當時又ハ其ノ以前市町村若ハ
  其ノ内ノ部落ニ於テ使用又ハ收益ノ事實アリタル國
  有上地森林原野ニシテ現ニ國有ニ屬スルモノハ本法
  ニ依リ之ヲ其ノ基本財產ニ編入スル爲其ノ所在市町
  村ニ下付ス
  第二條左ノ事實アルモノハ使用又ハ收益ヲ爲シタルモ
  ノト看做ス
  御林山、御留山、圍山、御直山等名稱ノ如何ニ拘
  ラス市町村ノ一部落又ハ數部落ニ於テ主副產物ヲ
  採取シタルモノ、伐採販賣シタルモノ
  二公簿公書ニ百姓樽木山、百姓柴草山又ハ百姓
  山ノ稱アルモノ
  三賣買質入書入ヲ爲シタルコトアルモノ
  四元伐稼ヲ爲シタルモノ又ハ二箇村以上入會ヲ爲
  シタルモノ
  第三條第一條ノ下付ヲ受ケムトスル市町村ハ市町村
  會ノ決議ヲ經テ大正十三年六月三十日迄ニ證據書
  類ヲ添へ主務大臣ニ申請スヘシ
  第四條主務大臣ニ於テ使用又ハ收益ノ事實アリト認
  ムルトキハ其ノ面積ノ一一分ノ一以上三分ノ一一ヲ其ノ所
  在市町村ニ下付ス
  第五條市町村ニ於テ下付ヲ受ケタル國有土地森林
  原野ハ之ヲ賣買譲與スルコトヲ得ス但シ其ノ主副產
  物ハ此ノ限ニ在ラス
  第六條主務大臣ノ處分ニ對シ不服アル者ハ行政裁
  判所ニ出訴スルコトヲ得
  第七條本法施行前行政處分又ハ裁判所ノ判決ヲ受
  ケタルモノ亦本法ニ依リ下付ノ中請ヲ爲スコトヲ得
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=51

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• 052・清水市太郎

  ○〓水市太郞君　極ク簡單デアリマスカラ、本席カラ申上
  ゲルコトフ御許ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=52

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• 053・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=53

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• 054・清水市太郎

  ○〓水市太郞君　本案ハ地租改正處分當時又ハ以前ニ
  置キマシテ、市町村又ハ部落ニ於テ山林カラ立木伐採等ヲ
  致シマシテ、現ニ使用又ハ收益ヲ致シテ居ツタ者ガ、過ッテ地
  租改正ノ際ニ國有林ニ編入サレテ居ルモノガ多々アルノデア
  リマス、卽チ舊幕時代ニ於テハ山國ノ村又ハ部落ガ其村落
  附近ニアル所ノ山カラ立木等ヲ伐採シテ居ッタモノガ、國有
  林ニナック儘ニナッテ居ルノデアリマス、斯ノ如キモノハ人民ノ
  モノデ元とアルノデアルカラ、人民ニ還付サルベキモノデアル
  ト云フ事カラ致シマシテ、此法案ニ依リマシテ、使用又ハ收
  益ノ事實ガ確ニアッタモノハ、人民ノ各市町村又ハ部落ニ還
  付シテ戴キタイト云フ趣意ノ法案デアリマス、斯ノ如キ事ハ
  既ニ第二十五議會ニ於キマシテ、衆議院カラ建議案ガ出マ
  シタ、卽チ地租改正處分以前市町村若クハ其內ノ部落ニ
  於テ使用又ハ收益ノ事實ノアリタル國有土地森林原野ハ、
  相當ノ制限竝ニ取締方法ヲ設ケ、之ヲ該市町村ニ還付シ
  テ其基本財產ニ編入スベシ、斯ウ云フ建議ガ既ニ第二十五
  議會ニ於テ出テ居ルノデゴザイマス、元來地租改正處分以
  前ニ於テ、使用又ハ收益ノ事實ガアリマシタ國有土地森林
  原野ハ、其自由ニ山稼ギヲ致シマシテ、立木ノ採ッテ來タモ
  ノハ其者ノ所有デアルベキ筈デアリマス、故ニ之ヲ人民ノ市
  町村又ハ部落ニ還スノガ最モ適當ナ事デアリマス、卽チ幕
  府ノ時代ニハ立木ヲ採ルコトガ出來タモノガ、幕府以後卽
  チ幕政以後地租改正處分後ニ於キマシテハ、山國ガ山ヲ取
  ラレテシマッテ、サウシテ生活ガ困難ヲ極メルト云フコトハ是
  ハ當然ノ有樣デアリマス、平生ノ時ニ於キマシテモ、此山國
  ハ山ヲ取ラレテ非常ニ困難ヲ極メテ居ッタノデアリマス、況ヤ
  現今ニ於キマシテハ、農村ハ非常ニ困憊ヲシテ居リマス、斯
  ノ如キ農村ノ困憊ヲシテ居ル際デモアル事デアルカラ、特ニ
  昔市町村部落ノ物デアッタモノヲ此際還シテヤッテ、サウシテ
  農村ノ窮乏ヲ救ヲテヤルト云フ事ガ第一必要デアル、加之又
  元ニ人民ノモノデアルノデアルカラ、之ヲ市町村部落ノ使用
  收益ノ事實ヲ擧ゲテ居ッタ者ニ還シテヤルト一云フコトハ、國
  家トシテハ正ニ當然爲スベキモノデアッテ、信ヲ人民ノ間ニ保
  ツ上カラ最モ必要ナル事デアル、卽チ更正ヲ行フト云フコト
  デアリマスクラ斯ノ如キ信ヲ人民ニ保ツ上カラ致シマシテ
  モ、將又現今ノ農村ガ非常ニ困憊シテ居ルコトヲ救ハザル
  ベカラズト云フ時機カラ致シマシテモ、斯ノ如キ使用收益ノ
  事實アリタル國有林ハ、宜シク之ヲ市町村又ハ部落ニ還付
  スルノガ至當デアルト云フコトカラ提出致シマシタモノデア
  リマス、ドウカ御審議ノ上可決確定セラレンコトヲ望ム者デ
  ゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=54

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• 055・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ安達謙藏君外四名提出、農村振
  興ニ關スル建議案外十二件ノ委員ニ併セ付託セラレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=55

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• 056・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決定シマス、日程第九、第十ハ同一
  委員ニ付託シタル議案デアリマスカラ、一括議題ト爲スニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=56

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• 057・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ日程第
  九、家祿賞典祿給與未〓ニ關スル法律案日程第十、家祿
  引直處分法案、右二案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キ、委
  員長ノ報告ヲ求メマス、委員長高橋光威君
  第九家祿賞典祿給與未濟ニ關スル法律
  案(萩亮君外七名提出)
  第一讀會ノ續(〓〓〓)〓〓〓〓
  報告書
  一家祿賞典給與未濟ニ關スル法律案(萩亮君外七名
  提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月十二日
  家祿賞典祿給與未濟ニ
  關スル法律案委員長
  高橋光威
  衆議院議長粕谷義三殿
  第十家祿引直處分法案(久下豊忠君外
  九名提出)第一讀會ノ續報告(長)
  報告書
  一家祿引直處分法案(久下豐忠君外九名提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年三月十二口
  家祿引直處分法案委員長
  高橋光威
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔高橋光威君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=57

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• 058・高橋光威

  ○高橋光威君　本案卽チ家祿賞典祿給與未済ニ關スル
  法律案、萩亮君外七名提出ノ議案デアリマス、委員會ハ審
  議愼重ヲ極メマシテ、十分ニ〓究ヲ致シマシタノデゴザイマ
  ス、是ハ明治九年金祿公債引換前、年々渡スベキ家祿賞
  典祿ノ中、例ヘバ十石渡スベキモノヲ八石シカ渡サヌト云フ
  ヤウナ類デアリマシテ、此未濟ノ分ニ對シテ之ヲ給與ヲスル
  ト云フ法律案デアリマス、是ハ政府ニ於キマシテハ大要今日
  之ヲ調ベマスルニ、全國ニ亙リマシテ約四百七十万圓バカ
  リヲ要スル、到底同意シ難イト云フ意見デアル、併シ理由ハ
  十分ニアリマスルノデアリマスカラ、委員會ニ於テハ滿場一
  〓ヲ以テ之ヲ可決致シタノデアリマス、ソレカラ又次ノ久下
  豊忠君外九名提出ノ家祿引直處分法案、是ハ和歌山縣ニ
  於キマシテ、明治初年ニ他藩ニ卒先シテ祿ヲ引下ゲテ、サウ
  シテ國家ノ爲ニ犧牲ニナッテ之ヲ致シタト云フノデアリマシ
  テ、其情實大ニ稱揚スベキト同時ニ、之ヲ引直シテ救濟スル
  ト云フコトガ必要デアルト云フ法案デアリマス、是モ政府ハ
  同意ハ致シマセヌケレドモ、相當理由アルモノト致シマシテ、
  委員會デハ滿場一致ヲ以テ決定致シタ次第デアリマス、以
  上御報告申シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=58

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• 059・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
  アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=59

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• 060・粕谷義三

  ○議長(柏谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第二
  讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=60

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• 061・高見之通

  ○高見之通君　日程第九、第十ノ兩案ヲ一括シテ、直ニ
  其第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通
  リ、可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=61

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• 062・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題
  ト致シマス
  家祿賞典祿給與未濟ニ關スル法律案
  第二讀會(確定議)
  家祿引直處分法案第二讀會(確定議)

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• 063・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　別ニ御發議ガゴザイマセヌカラ、第
  三讀會ヲ省略シテ、兩案共委員長報告ノ通リ可決確定サ
  レマシタ-日程第十一、拓殖省設置ニ關スル建議案ヲ議
  題ト致シマス、牧山耕藏君
  第十一拓殖省設置ニ關スル建議案(牧
  山耕藏君外十名提出)
  拓殖省設置ニ關スル建議案
  拓殖省設置ニ關スル建議
  我カ國ハ領土狭隘ニシテ資源豐ナラス列强近時ノ經濟
  的發展ト國內ニ於ケル人口增加ノ趨勢トニ鑑ミ帝國國
  運ノ盛衰ハ一ニ繫リテ國民ノ對外發展ニ在リト謂フヘ
  シ今ニシテ之カ根本方針ヲ確立シ拓殖事業ノ保護獎勵、
  移植民ノ指導誘掖ニ努ムルニ非サレハ他日噬臍ノ悔アル
  ヘシ若夫レ朝鮮臺濟關東州樺太及南洋群島ノ開拓發
  展如何ハ図力ノ消長ニ影響スル所極メテ重大ナリ殊ニ是
  等ノ拓殖地ハ政治上經濟上將又社會上內地ト密接不
  離ノ關係ニ在リ拓殖地ヲ輕視シテ帝國ノ國是ヲ樹立シ
  國策ヲ遂行シ得ヘキニ非ス然ルニ從來是等ノ事務ヲ統轄
  スル中央行政機關ヲ見ルニ改廢常ナク微々トシテ振ハス
  拓殖行政ノ實效ヲ期スルニ遺憾眇カラス依テ政府ハ速ニ
  一省ヲ設置シ以テ拓殖行政ノ實績ヲ擧ケムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔牧山耕藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=63

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• 064・牧山耕藏

  ○牧山耕藏君　拓殖省設置ニ關スル建議案提出ノ理由
  ヲ申述ベタイト思ヒマス、一省ヲ新設スベシト云フ建議デゴ
  ザイマスルカラ、可ナリ詳細ニ其理由ヲ申述ベタイト思ヒマ
  マルガ、本日ノ日程尙ホ五十二件ヲ餘シテ居リマスルカラ、
  同僚諸君ノ言論ヲ尊重致シマシテ、極テ簡單ニ提案ノ要旨
  ノミヲ申述ベタイト思ヒマス、我ガ帝國ノ植民地統治ハ臺
  灣ノ領有ニ其端ヲ發シマシテ、爾來二十有餘年間ニ於テ樺
  太ノ割譲ヲ受ケ、關東州ヲ租借シ、朝鮮ヲ併合シ、更ニ歐洲
  大戰ノ結果南洋群島ノ委任統治ヲ受ケマシタ爲メ、今ヤ我
  ガ國權ノ及プ範圍ハ本國ノ約八割ニ相當ヲ致シマシテ、新
  附ノ同胞正ニ二千二百万人ノ多キニ達シテ居ルノデアリマ
  ス、是ガ統治ハ實ニ帝國ノ重要ナル國務デアリマシテ、其成
  敗如何ハ國勢ノ消長ニ重大ナル關係ヲ持フテ居ルノデアリ
  マス、又我國ノ人口增加ノ趨勢ニ鑑ミマシテ、帝國國運ノ
  盛衰ハ一ニ繫ノテ國民ノ海外發展如何ニアリト申シマシテ
  モ過言デナイト思フノデアリマス、卽チ我ガ同胞ハ年々歲々
  八十万人ノ增加率ヲ元シテ居ルノデアリマシテ、今後三十
  年ヲ經過致シマスレバ、我ガ國民ノ數ハ實ニ一億万人ヲ突
  破スルノ盛況ヲ呈スルノデアリマス、今ニシテ是ガ長計大策
  ヲ畫シ、拓殖業務ノ保護獎勵、移植民ノ指導誘抜其宜シ
  キヲ得ルニアラザレバ、必ズヤ他日噬勝ノ悔アルコトハ火ヲ睹
  ルヨリモ炳カナル事柄デアリマス、然ルニ是等重大ナル拓殖
  統治及移植民ニ關スル中央機關-致シマシテハ、僅ニ內閣
  ニ拓殖事務局ノ設ケガアリマスルケレドモ、其規模ハ極テ狹
  少デアリマシテ、到底如上ノ目的ヲ達スルコトガ出來ヌノデ
  アリマス、拓殖統治ニ關スル、我國ノ沿革ヲ見マスルト云フ
  ト、臺灣領有ノ當時ニ於キマシテハ、拓殖務省ヲ設置致シ
  マシタノデアリマスルガ、一年有餘ニシテ之ヲ廢シ、內閣ニ臺
  灣事務局ヲ置キ、北海道ニ關スル事務ハ之ヲ內務省ニ所
  管セシメ、更ニ臺灣事務局ヲモ廢シテ內務省ノ所管ニ移シ
  タガ、朝鮮併合後第二次桂內閣ノ下ニ拓殖局ヲ設置致シ
  マシタガ、第二次西園寺內閣時代ニ至ッテ、又復之ヲ廢止
  シテ内務省ニ移シタノデアリマス、而シテ寺內內閣ニ至ッテ
  再ビ拓殖局ヲ復活致シタノデアリマスルガ、現加藤內閣ニ
  至ッテ、昨冬其規模組織ヲ變更致シマシテ、現在ノ拓殖
  事務局ト相成ッタノデアリマス、是等ノ經過ヲ見マスルト云
  フト、我國ニ於ケル拓殖統治ノ政策ト云フモノハ、一貫シタ
  ル方針ガ無イノデアリマス、卽チ朝三暮四デアリマシテ、甚ダ
  重要ナル植民地ノ統治、及ビ移植民ニ關スル所ノ中央ノ統
  〓機關ト云フモノハ、改廢常ナラザル狀態ニ在ルノデアリマ
  ス、植民地統治ニ關シマシテハ、内閣總理大臣ノ管理ニ屬
  スルノデアリマスケレドモ、內閣總理大臣ハ事實ニ於テ一般
  ノ國務ヲ統轄スルコトニ忙ハシクシテ、拓殖統治ニ關スル所
  ノ實務ヲ見ルコトハ出來ナイノデアリマス、隨テ此重要ナル
  所ノ國務ト云フモノハ、一個屬僚ノ支配ニ委セラレテ居ル
  ト云フコトガ現在ノ狀態デアリマス、一例ヲ申シマスルト、豫
  算ノ編成ニ方ノテ、各植民地政廳ノ首腦者ハ東上ヲ致シマ
  シテ、大藏省ニ對シテ補充金若クハ公債ノ募集額、其他豫
  算ノ編成ニ付テ種々交涉ヲ重ネテ居リマスルガ、一タビ大藏
  省ノ査定ニ會シマスレバ、ンレガ最後ノ決定ト相定ルノデア
  リマス、他ノ各省ノ豫算査定ニ付テハ、ソレ〓〓主管ノ大臣
  ガ豫算ニ關スル內閣會議ニ於キマシテ、自己ノ主張ニ依ッテ
  豫算ノ復活按排サルヽコトハ諸君御承知ノ通リヂアリマス
  ガ、獨リ植民地ノ豫算ニ關シマシテハ、如何ニ其事柄ガ國策
  ノ遂行上必要ナル事項デアリマシテモ、主管大臣ガ無イ爲
  ニ、之ヲ閣議ニ付シテ商議ノ決定ニ俟ツコトハ出來ナイト云
  フノガ現制度ノ實際デアルノデアリマス、賢明ナル諸君ノ前
  ニ歐洲列國ノ例ヲ引クコトハ甚ダ恐縮デアリマスルガ、御承
  知ノ如ク英吉利ニ於キマシテモ、和蘭ニ於キマシテモ、伊太
  利ニ於テモ、獨逸ニ於テモ、其他白耳義、葡萄牙ニ於キマシ
  テモ、苟モ多少ノ植民地ヲ持ッテ居ル國ト云フ國ハ、悉ク植
  民省ヲ設ケテ居ルノデアリマス
  〔粕谷議長議長席ヲ退キ松田副議長代リ著席〕
  殊ニ英吉利ノ如キハ植民省ノ外ニ印度省ヲモ設ケテ居ル
  ト云フヤウナ狀態デアリマシテ、列國ガ植民地統治ニ如何
  ニ力ヲ注イデ居ルカト云フコトハ、此事實ニ徵シテモ明瞭デ
  アリマス、我ガ帝國モ上述ノ如ク本國ノ面積ニ匹敵スル
  所ノ新領土及租借地等ヲ有シテ居ルノデアリマス、且ツ移
  植民ノ重要ナル問題ヲ處理致シマスル爲ニ、新ニ一省ヲ設
  ケ、主務大臣ヲシテ常ニ閣議ニ列シテ、廟議ノ決定ニ參畫
  セシメ、一面ニ議會ニ於テ政府ノ方針ヲ宣明シ、以テ政治
  上ノ責任ヲ擔當セシムルコナハ、世界ノ趨向卜帝國現時ノ
  情勢トニ鑑ミマシテ、最モ適切ニシテ且ツ緊急ヲ要スルモノ
  ト認メマシテ、私共同志ハ此建議案ヲ提出致シマシタ次第
  デアリマス、ドウゾ各位ニ於カセラレマシテモ、愼重御審議ノ
  上御贊成ヲ得マシテ、國家ノ爲メ、一日モ早ク拓殖省ノ新
  設ヲ希望シテ已マヌ次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=64

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• 065・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ阪上貞信君外四名提出、植民政
  策確立ニ關スル建議案外十件ノ委員ニ併セ付託セラレン
  コトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

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• 066・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　高見君ノ動議ニハ異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=66

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• 067・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ
  如ク決シマス-日程第十二、舞鶴軍港廢止ニ伴フ地方
  救済金下付ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者ハ出
  席ガアリマセヌカラ、賛成者ノ〓水留三郞君ノ說明ヲ求メ
  マス
  第十二舞鶴軍港廢止ニ伴フ地方救濟金
  下付ニ關スル建議案(山道襄一
  君提出)
  舞鶴軍港廢止ニ伴フ地方救済金下付ニ關スル
  建議案
  舞鶴軍港廢止ニ伴フ地方救済金下付ニ關ス
  ル建議
  舞鶴軍港カ突然廢止セラレタル結果軍港地在住三萬
  ノ商工民ハ餘リニ急激ナル變化ニ對シ施スノ術ヲ知ラス
  又事實上對策ヲ講スルノ餘裕ナクシテ生活ノ安定ヲ失
  ヒ將ニ破產ノ狀態ニ陷レリ依テ軍港地タル京都府加佐
  郡新舞鶴町中舞鶴町倉俤村ノ二町一村ニ對シ政府ハ
  相當ナル救済全ヲ下付セラレムコトヲ望ム
  右建議ス

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• 068・清水留三郎

  ○〓水留三郞君　極ク簡單デアリマスカラ此席ヨリ御許
  ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=68

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• 069・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=69

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• 070・清水留三郎

  ○〓水留三郞君　御承知ノ如ク華府會議ノ結果ト致シ
  マシテ、我ガ海軍軍備ハ根本的ニ改廢セラレマシタ、大艦巨
  砲ノ廢棄ト共ニ軍港ノ改廢ヲ生ジタノデアリマス、華府會議
  ノ影響ト致シマシテ最大ノ犠牲ヲ拂ウタモノガ舞鶴デアリマ
  ス、舞鶴軍港ガ廢止サレマシテ、一要港部ト化シ去リマシタ
  ガ爲ニ、舞鶴三万ノ住民ハ全ク掌中ノ珠ヲ奪ハレタ如ク、今
  日路頭ニ迷ウテ居ルノデアリマス、元來舞鶴町ハ一寒村ニ
  過ギチカッタノデアリマスガ、三十年前軍港ガ開設サレマシテ
  カラ長足ノ進步ヲ致シマシタ、海軍本位ノ町デ、他ニ何等特
  產物ノアル町デハゴザイマセヌ、殊ニ第四十二議會ニ於キマ
  シテ、八八艦隊ノ案ガ通過サレマシタ當時、海軍ノ當局ニ於
  キマシテハ、舞鶴方面ノ各自治團體ニ伺ヒマシテ、八八艦
  隊ガ決定シタト共ニ、軍港ハ當然擴張セナケレバナラヌ、隨
  テ多數ノ人ガ移住スルカラ、町ニ於テモ住宅ノ增設、學校校
  含ノ擴張、上下水工事ノ改善、道路橋梁ノ改廢等ヲ斷行
  セラレテ、移住者ニ對シテ不便チク、快感ヲ與ヘラレタイト云フ
  コトヲ警告慫慂サレタノデアリマス、其結果大正九年ニ於キ
  マシテ、新舞鶴町、中舞鶴町、倉梯村ノ一一町一箇村ニ於マ
  シテハ、町村債金六十四万三千三百圓ヲ起シマシテ、海軍
  當局ノ希望ニ副ヘタノデアリマス、而シテ昨年卽チ大正十
  一年末迄ニ金三十一万五百餘鬪ダケハ銷却致シマシタガ、
  尙ホ三十三万二千七百餘圓殘ッテ居リマス、若シ鎮守府ガ
  從來ノ如ク存在シテ居リマスルナラバ、今後四五年ノ間ニ之
  ヲ銷却スルコトハ舞鶴トシテハ決シテ困難デハナカッタノデアリ
  マス、所ガ急轉直下軍港廢止トナリマシタ結果、人口ハ著シ
  ク減少致シ、商賣ハ衰退シ中ニハ破產ヲスル者モ頻々トシ
  テ起ッタノデアリマス、故ニ町村債ヲ圓滿ニ返濟スルノ途ハ
  全ク絕エタノデアリマス、八八艦隊ノ聲ニ脅カサレ、海軍當
  局ノ要求ガナカッタナラバ、今日ノ如キ窮境ニハ陷ラナカッタノ
  デアリマス、故ニ其責任ノ一端ハ政府ガ負フノガ當然ナリト
  本員ハ信ズルノデアリマス、元來本員ハ舞鶴ニ對シマシテ何
  等ノ緣故アル者デハアリマセヌ、唯〓關係町村民困憊ノ實情
  ヲ聞キマシテ、同情ニ堪ヘナイカラデアリマス、願クバ政府ニ於
  キマシテモ、町村債ノ殘額ヲ負擔シ、不用土地建物ヲ無償若
  クハ實費ニテ拂下ゲ、以テ海軍軍備縮小ノ機牲トナリマシ
  タ二箇町一箇村ヲ救済セラレルコトヲ希望スルノデアリマ
  ス、軍備縮小ニ因ル退職軍人ヲ救済スル以上ハ、同ジ意味
  ニ於テ犧牲トナリマシタ舞鶴町ノ此町民ヲ救濟セラ、レンコ
  トヲ私ハ希望スルノデアリマス、冀クハ諸君ノ御賛成ヲ望ミ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=70

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• 071・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ大島實太郎君外二名提出、舞鶴
  軍港廢止ニ伴フ地方善後ニ關スル建議案外五件ノ委員
  ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=71

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• 072・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　鈴木君ノ動議ニハ異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=72

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• 073・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ
  如ク決シマス、日程第十三、寺泊築港ニ關スル建議案ヲ議
  題ト致シマス、提出者高橋金治郞君
  第十三寺泊築港ニ關スル建議案(高橋
  金治郎君外一名提出)
  寺泊築港ニ關スル建議案
  寺泊築港ニ關スル建議
  新潟縣寺泊港ハ同縣沿海岸ノ樞要部ニ位シ地形西南
  ニ開キ一面彌彥山ヲ負ヒ西北二十一浬ヲ隔テテ佐渡島
  ニ對シ赤泊港ト定期ノ航海アリ其ノ陸上ノ交通ニ於テ
  ハ寺泊長岡間ノ鐵道ニ由リ大河津驛ニ於テ越後鐵道
  來迎寺驛ニ於テ信越幹線ヲ利用シ伯崎新潟各方面ニ
  連絡ス他日上越鐵道ノ開通スルニ至ラハ本港ノ後方地
  域ハ益擴大セラレ將來ニ於ケル物資ノ集散ハ蓋着シク
  增加スルモノアラムトス而シテ現在ノ設計ハ單ニ漁港タ
  ルニ止マルモ若防波突堤三百間ヲ延長シ北方御子ヶ鼻
  ヲ見通シ港線内適當ノ位置ニ於テ三百間ノ防波堤ヲ築
  造スルニ至ラハ港内優ニ六千噸級以上ノ大船巨船ヲ繫
  留スルコトヲ得ヘシ然ルニ新潟縣ノ重要港タル新潟港(
  其ノ規模甚タ狭隘ニシテ成功ノ後僅ニ三千噸級ノ紛舶
  ヲ繫留スルニ過キサルヲ以テ他日歐露ノ交通回復スルニ
  至ルトキハ本港ノ如キ優良ナル商港ヲ準備シ置クニ非サ
  レハ到底之ニ對應スルノ策ナカラムトス依テ政府ハ速ニ
  寺泊港修築ノ調査ヲ遂ケ之カ提案アラムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔高橋金治郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=73

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• 074・高橋金治郎

  ○高橋金治郞君　本案提出ノ理由ヲ簡單ニ申述ベタイト
  存ジマス、本案ハ四十四議會、四十五議會ニ亙リマシテ、本
  員ヨリ提出致シ、滿場ノ御協賛ヲ得タ問題デアリマスガ、政
  府ニ於テ今日マデ何等ノ〓究發案ヲ見ザリンハ、私ノ最モ
  遺憾トスル所デアリマス、今又此壇上ニ於テ本建議案ヲ重
  ネテ說明ヲ致スコトハ遺憾ニ存ズルノデアリマス、本建議案
  ノ趣旨ハ、裏日本ニアリマス寺泊港ニ對シテ、船舶寄泊ノ港
  ヲ設置セントスルノデアリマス、本港ハ北緯三十七度三十九
  分、東經三十七度四十三分ノ地點デアリマシテ、卽チ新潟
  縣沿岸八十里ノ中央ニ在ルノデアリマス、而シテ本港ハ東
  北ハ直接彌彥山ヲ以テ包圍サレマシテ、西南ニハ遠ク能登
  半島ヲ眺メ、西北佐渡ヶ島ニ對シテ僅カ二十一海里ノ地
  點ニ在ルノデアリマス、而シテ本港ハ佐渡トハ定期航海ガゴ
  ザイマシテ、四時航海ヲ中絶スルコトハ無イ港デアリマス、其
  後方ハ本港ヲ起點ト致ス所ノ長岡鐵道ニ依リマシテ、所謂
  臨港鐵道ニ依リマシテ、其對岸一里ノ地點ニ於キマシテ、越
  後鐵道ヲ横斷致シテ、而シテ新潟縣ノ長岡市ニ至ル信越上
  越ノ各線ニ連絡致シテ居ルノデアリマス、更ニソレヨリ信越
  線ノ來迎寺驛ニ至リマシテ、昨年政府ニ買收致サレマシタ
  所ノ小千谷輕便線ニ連絡致シテ居リマス、將來此鐵道ハ
  長野縣ニ通ジマス所ノ計畫ニナッテ居リマスガ爲ニ、本港ハ
  此鐵道ノ終點デアリ、若クハ上越鐵道ノ終點デアルト云フ
  コトヲ形ノ上ニ於テ申上ゲルコトガ出來ルノデアリマス、要ス
  ルニ其後方ハ實ニ廣漠デアリマス、我ガ新潟縣ニ於キマシテ
  ハ是等ノ築港計畫ヲ致シマシテ、旣ニ完成ノ域ニ達シテ居
  リマスガ、其目的ガ縣經済ノ許サヾル關係上、漁港デアリマ
  スガ故ニ、此自然ノ良港モ其效用ヲ爲サヾルコトヲ本案提
  出者ハ甚ダ遺憾トスル所デアルノデゴザイマス、諸君、我ガ日
  木ノ現狀ヲ以テ申シマスレバ、表日本ガ相當ニ進步發達致
  シテ居リマスノハ、要スルニ港灣ト鐵道ノ設備ガ完備シテ居
  ルノデアリマス、然ルニ裏日本ハ是等ノ設備ガ遲々トシテ居
  リマスガ爲ニ、進步ノ差ガ非常ニアリマス、要スルノニ例ヲ以
  テ申上ゲマスレバ我ガ日本ノ現狀ヲ日本刀ノ如キモノト
  假定致シマスレバ、太平洋ニ面スル方ハ刃ノ如クデアリマシ
  テ、我ガ裏日本ハ峯ノヤウナ感ジガ致スノデアリマス、今ヤ上
  越鐵道ガ大正十六年ニ完成ヲ致シマスレバ、我ガ東京ト浦
  湖トヲ若シ本港ニ依ッテ連絡ヲ致シマスモノト致シマスレバヽ
  最短直線ニナルノデアリマス、要スルニ此港ハ將來有要ノ港
  タルヲ本員ハ確信ヲシテ疑ハヌノデアリマス、其設備ハ現在
  ノ突堤ニ三百間ヲ繼足致シマシア、更ニ二百間ノ防波堤ヲ設
  ケマスレバ、優ニ六千噸級ノ船ヲ遊弋セシムルコトガ出來ルノ
  デアリマス、而シテ是等ニ要スル材料ハ、直グ其附近ノ彌彥
  山若クハ野積ニ無限ニアリマスカラ、此材料ヲ採ルニハ極テ
  容易デアルノデアリマス、隨テ本港ニ對スル經費ハ僅ニ二百
  万圓内外ト存ズルノデアリマス、本港ガ樞要ノ地デアルト同
  時ニ經費ガ非常ニ僅少デアルト云フコトガ明瞭デアリマス
  ト同時ニ、將來奥日本ニ於キマシテ、斯樣ノ僅少ノ經費ヲ
  以テ有力ナル港ヲ買受ケマスコトハ、國家ノ爲ニ本員ハ有
  利ナリト信ズルノデアリマス、特ニ茲ニ申上ゲタイコトハ、我
  ガ新潟縣ノ重要港タル新潟港ハ、其規模ハ狹小デアリマシ
  テ、成工ノ後ニモ僅ニ三千噸級ノ船ヲ寄泊スルニ過ギヌノデ
  アリマス、他日歐露ト交通ヲ開始ノ曉ヲ豫想致シマシテ、裏
  日本ニ於テ斯ル有力ナル港ヲ買置クコトガ、國家ノ爲ニ最
  モ有利ナリト信ズルノデゴザイ、マス、政府ハ直ニ本案ニ付テ
  研究致サレマシテ、發案アランコトヲ切ニ希望シテ已マナイ
  次第デアリマス(拍手)ドウゾ滿場ノ御賛成ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=74

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• 075・中野寅吉

  ○中野寅吉君　議長、私ハ本案ニ質間ガアリマス

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• 076・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　中野君
  〔中野寅吉君登壇〕

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• 077・中野寅吉

  ○中野寅吉君　今ノ高橋金次郞君ノ提案ニ質問致シマ
  ス、高橋君ハ國家ノ爲、國家ノ爲ト云フコトヲ繰返シタケレ
  ドモ、國家ノ爲ト云フコトヨリ寧ロ新潟縣選擧區ノ第八區
  ノ爲ト云フコトニナッテ居ル、モウ少シ眞面目ニヤッテ貰ヒタ
  イ(「何ヲ言ウテ居ル」ト呼フ者アリ)眞而目デナイ(「君ガ眞
  面目デナイト」呼フ者アリ)何ガ眞面目デナイ、眞面目デナイ
  ト云フコトハマダ分ラナイ、言ハヌ中ニ分ルカ、永屋君ト雖モ
  木村君ト雖モ、私ガ一言ヲ吐カヌ中ニ眞面目デナイカ、眞面
  目デアルカ分ルカ、(「眞面目デナイ」ト呼フ者アリ)然ラバ眞
  面目デナイト云フ點ヲ言ウテ見給へ、何處ガ眞面目デナイ

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• 078・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　中野君質疑ヲ御述ナサイ

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• 079・中野寅吉

  ○中野寅吉君(續)　何處ガ眞面目デナイト云フ點ヲ、木
  村君デモ永屋君デモ言ウテ見給へ、何テ眞而目デナイト云
  フ、眞面目デナイ點ヲ言ヲテ見ロ、ドノ點デアル、能ク聽カナク
  チヤイカヌ、ソレダカラ新潟縣ノ者ハ肋骨一本足リナイト言
  ウダ(「ソレガ不眞面目ダ」ト呼フ者アリ)能ク聽クモノダ、人
  ノ言フコトヲ聽カナクチヤイカス、ソコヘ書キ給へ高橋君、俺
  ガ言フカラ、木村君ナド何ダ甚ダ眞面目デナイ(「君ガ眞面
  目デナイ」ト呼フ者アリ)君ガ眞面目デナイト云フコトヲ言ッ
  タノダ

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• 080・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　質問ノ趣旨ヲ早ク述ベ給へ

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• 081・中野寅吉

  ○中野寅吉君(續)　餘リ癪ニ障ルカラ言フノダ(「サウ癪ニ障
  リ給フナ早クヤリ給へ」ト呼フ者アリ)ンンナコトハ違フ(「ド
  ウシタノダ廢メルノカ、言へナイノカ」ト呼フ者アリ)其所ニ能
  ク書キ給へ、俺ガ言フコトガ彼方此方ニナッテハ困ルカフ、寺
  泊築港ノ完成ヲ希望スルト云フコトデアルガ、寺泊築港ハ
  漁港トシテ完成シテ居ルノダ、君ハ連絡港トシテノ完成ヲ望
  ムカ、漁港トシテノ完成ヲ望ムノカ、之ヲ一ツ聽カウ、イヽカネ
  ソレカラ北緯三十九度東經三十七度ノ此港ニ於テダ、何
  處ニ船ヲ出スト言フノダ、簡單明瞭ダラウ、ソレカラ長野縣
  ノ方ニ大河津ヲ通ジテ連絡スルト云フコトヲ言ウタガ、長野
  縣ノ何處ニ到達スルノダ、具連絡-海ト陸トノ連絡ダ、ソ
  レヲチヤント明瞭ニ言ッテ見ロ、俺ノ所ニ-ドウダ、漁港···シ
  テハ大正三年十二月大浦象武子ガ內務大臣ノ時ニ、坂仲
  輔ガ知事ノ時ニチヤント完成シテ居ルデハナイカ、四十六万
  六千圓ノ豫算デドウダ(此時發言スル者多シ)默シテ居レ、彌
  次ランデ聽ケ、木村-君ハ何ノ爲ニ新聞ヲ經營シテ居ルノ
  ダ、サウ云フコトヲ言フト田舍新聞社長ダト言っテ冷カサレル
  ソ、確カリシロ、モット確カリシテ居レ、ソレカラ現在ニ於ケル港
  ヨリモ、ドノ位擴ゲテ何噸ノ船ヲ入レタイト云フノカ(「六千
  噸ト言ッタデハナイカ」ト呼フ者アル)六千噸這入ルモンカ、馬
  鹿ナコトヲ言フナ、二十四尺ノ深水デ六千噸ノ船ヲ八レタ
  ラ皆壞レテシマフデハナイカ、ソンナ馬鹿ナコトヲ言フナ、サア
  是レ以上言ッタナラバ或ハ高橋君ガドウカ待ッテ呉レト言フ
  カモ知レヌカラ、是ダケデ止メル(「答辯ノ必要ナシ」ト呼フ者
  アリ)答辯ノ必要ガ無イトハ何ダ、質問ニ對シテ答辯ノ必要ガ
  無イトハ何ダ(「餘リ不眞面目ダカラ」ト呼フ者アリ)不眞
  面目ヂヤナイ(「不眞而目ダ」又「ソンナ馬鹿ナ質問ガアルカ」
  ト呼フ者アリ)不眞而目ヂヤナイ、之ニ答辯シテ見ロ

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• 082・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　高橋君答辯シマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=82

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• 083・高橋金治郎

  ○高橋金治郞君　簡單デゴザイマスカラ此席カラ答辯致
  シマス、我ガ新潟縣ニ於テ港灣ハ大正十二年-本年完成
  スルコトニナッテ居リマス、ソレカラ六千噸級ノ船ヲ人レマス
  ノニハ現在ノ突堤ヲ三百聞補足致シマシテ、更二一方ニ三
  百間防波堤ヲ築キマスレバ、優ニ六千噸級ノ船ヲ寄泊セシ
  メルコトガ出來ルト信ズルノデアリマス、ソレカラ長野縣ニ通
  ズル云々ト云フコトハ、鐵道綱ヲ御覧下サレバ質問者ハ能ク
  御分リニナルト思フ

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• 084・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ大島實大郞君外二名提出、舞鶴
  軍港廢止ニ伴フ地方善後ニ關スル建議案外六件ノ委員
  ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス

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• 085・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　鈴木君ノ動議ニ異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 086・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ
  如ク決シマス、日程第十四、鑛業ニ因ル農耕地ノ被害救濟
  ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、中村〓造君
  第十四鑛業ニ因ル農耕地ノ被害救濟ニ
  關スル建議案(中村〓造外四名
  提出)
  鑛業ニ因ル農耕地ノ被害救濟ニ關スル建議案
  鑛業ニ因ル農耕地ノ被害救濟ニ關スル建議
  時運ノ趨勢ニ鑑ミ農工業ノ併進ヲ圖ルハ國力ノ充實ヲ
  期スル所以ニシテ國家存立上最緊要ノコトタルヲ信ス近
  時我カ國ニ於ケル鑛業ノ發展益著シキモノアルハ洵ニ慶
  質ニ堪ヘサル所ナリト雖之カ爲農業ニ及ホス慘害甚シキモ
  ノアルハ實ニ憂慮措ク能ハサル所ナリ然ルニ現行鑛業法
  ハ專ラ鑛業經營ニ關スル規定ニシテ耕地ノ損害補償ニ
  對シ何等ノ明文ナキヲ以テ被害者ノ賠償ハ一般民法ニ
  依ルノ外ナク不利甚シ政府ハ宜シク鑛業地方ノ實情ヲ
  洞察シ此ノ點ニ関スル各國ノ制度ヲ參照セラレ耕地ノ
  保全損害補償ニ關スル適切ナル方法ヲ講セラレムコトヲ
  望ム
  右建議ス
  〔中村〓造君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=86

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• 087・中村清造

  ○中村〓造君　本案ニ付キマシテハ實ハ多少說明ヲ要シ
  マスルノデゴザイマスルガ、此際ハ簡單ニ申述ベタイノデゴザ
  イマス、本年ノ議會ハ農村問題ヲ中心トシマシテ、是ガ振興救
  濟ニ付キマシテハ、目下盛ニ論議〓究ヲサレテ居リマスガ、ン
  レガ將ニ具體案トシテ近日ノ中ニ私等ハ現レルト思ッテ喜ン
  デ居ルノデアリマスルガ、私ハ玆ニ農村問題トシテ一ツ取殘
  サレタルコトニ付キマシテ、玆ニ諸君ノ御同情ニ訴ヘタイト思
  フノデゴザイマス、近時鑛業ガ一大進步ヲシマシテ、國利民
  福ヲ-國利國益ヲ增進シツヽアルト云フコトハ詢ニ感謝ス
  ベキ事デアリマスガ、是レノ半面ニ於キマシテハ、農業地ニ於
  ケル損害ヲ被ルコトモ亦甚大ナルモノガアルノデアリマス、之
  ヲ譬ヘテ申シマスレバ、鑛業地ニ於キマシテハ、其採掘ノ爲ニ
  或ハ耕地ノ陷落スルコトガアリマス、或ハ鑛毒ノ放出ニ依リ
  マシテ收獲ヲ或ハ皆無ニスルコトモアリマス、又水源タル所
  ノ溜池ガ漏洩シマシテ、其爲ニ折角ノ際ニ灌漑水ヲ失フコ
  トモアルノデアリマス、又土地ノ變形ニ依リマシテ、用水路ガ
  其用ヲ爲サヾル等ノコトモアルノデゴザイマス、是等ノ損害ガ
  積リ〓〓マシテ、或ル地方ニ於キマシテハ數十町步ノ耕地ヲ
  荒廢ニ歸セシメ、又百幾十万圓ノ損害ヲ受ケテ居ルト云フ
  ヤウナル實例ガアルノデアリマス是ハデス、全國ニ亙リマシテ
  苟モ鑛業ノアル所ニハ必ズヤ伴ウテ居ル所ノ問題デアラウト
  私ハ思フノデゴザイマスガ、此事ニ付キマシテハ農商務省ナ
  リ、内務省ナリニ於テハ、十分御調ニモナッテ居ラウト思フノ
  デゴザイマスガ、偖テ是等ノ被害者ニ對シマシテ救濟ヲデス、
  是レノ被害者ガ其損害ヲ要求スルニ當リマシテ、幸ニ大ナル
  鑛主デアルカ、又ハ理解アル所ノ會社デアリマスレバ、ソレガ
  圓滿ニ解決スルコトガ出來ルノデゴザイマスルガ、又彼ノ土
  地ノ如キモ直ニ其鏡主ニ依ッテ卽チ損害ヲ被シテ居ル所ノ土
  地ハ、直ニ鑛主ニ依ッテ賠償サルヽコトモ出來ルノデゴザイマ
  スガ是ガ、小鑛主ニ至ッテハ甚ダ是ガ解決ニ困難ヲ感ズルノ
  デゴザイマス、現在ノ鑛業法ガ損害賠償ト云フコトノナイ爲
  ニ、如何ニ之ニ交涉ヲシテモ、テンデ小鑛主ハ相手ニシナイト
  云フコトガアリマス、若シ又之ヲ鑛業行政ノ訴訟ノ手續-
  民事訴訟ノ手續ヲ執ラントシマシテモ、貧弱ナル所ノ農民ハ
  之ニ對抗スル資力モナク遂ニ泣寝入ノ姿ニナリツヽアルト
  云フヤウナコトモアルノデゴザイマス、ソレガデス、其鑛業權ガ
  甲乙丙ト云フ風ニ轉々シテ居ル場合、又ハ其被害ノ面積ガ
  數國ニ跨ッテ居ルト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、是ハ相
  手ニスル所ノ責任者ガ殆ド塗リ合ヲ致シマシテ、之ヲ捉ヘル
  ノニ甚ダ困難デアリマス、サウシテヾス特ニ甚シイモノハ彼ノ
  廢坑等ノ場合ニ於キマシテハ、之ヲ如何トモスル能ハズト云
  フノ現況デゴザイマス、御承知ノ如ク農業者ハ大ナル損害
  ヲ被リツヽアリマスルガ、御承知ノ如ク今日ハ卽チ農業
  ノ-農民ノ振典救濟ニ付キマシテハ、既ニ天下ニ喧シクア
  ルノデアリマス、且又政府ニ於キマシテモ、曩ニ開墾助成法
  案ヲ發布致シマシテ、耕地ノ擴大竝ニ食糧ノ自給自足ヲ
  圖ヲテ居ル際ニ、苟モ我ガ農民ノ一部分ニ於テヾス、假令鑛
  業地ノミトハ言ヒナガラ、一部分ニ於テ斯ノ如ク物質上ニ
  モ、將又精神上ニモ呻吟シテ居ル者ノアルト云フコトハ私ノ
  洵ニ同情ニ堪ヘナイ所ノ事柄ト思フノデゴザイマス、畢竟シ
  マスルニ是ハ卽チ鑛業法ノ私ハ不備デアラウト思フ、現在ノ
  鑛業法ハ是ハ鑛業家ヲシテ地中ノ利源ヲ開發スル爲ニ急
  ナリシ際ニ、出來テ居ッタ所ノ法デアリマスガ故ニ、今日カラ
  見マスルト云フト、甚ダ不備ナ點ガアリマスル故ニ、是ハ卽チ
  根本ニ遡フテ是ガ救濟ノ途ヲ講ジナケレバナラヌト存ズルノ
  デゴザイマスガ、各國ノ例ニ做ヒマシテ卽チ政府ハ鑛業法ノ
  一部ヲ改正シマシテ、此國土ノ保全ト竝ニ損害賠償ノ途ヲ
  開カレンコトヲ私ハ切ニ希望スル所以デアリマス、希クハ滿
  場ノ御賛成ヲ願ヒタイモノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=87

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• 088・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ政府提出、小作調停法案外一件
  ノ委員ニ、併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=88

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• 089・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　鈴木君ノ動議ニ異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=89

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• 090・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ
  如ク決シマシタ、日程第十五、第十六ハ提出者同一ナルニ
  依リ、一括議題ト爲スニ異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=90

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• 091・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍テ一括
  議題ト爲スコトヲ宣告シマス、日程第十五、肥料專賣ニ關
  スル建議案、第十六、所得稅法中改正ニ關スル建議案、提
  出者高田耘平君
  第十五肥料專賣ニ關スル建議案(高田
  耘平君提出)
  肥料專賣ニ關スル建議案
  肥料專賣ニ關スル建議
  政府ハ農業者ニ品質優良ナル肥料ヲ廉價ニ供給スル爲
  其ノ專賣ヲ爲シ以テ農家經濟ノ安定ヲ圖ルト共ニ食料
  充實ノ一端ニ資セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  第十六所得稅法中改正ニ關スル建議案
  (高田耘平君提出)
  所得稅法中改正ニ關スル建議案
  所得稅法中改正ニ關スル建議
  所得稅法中左ノ點ニ付改正ヲ望ム
  一第十四條第一項第五號ノ控除率ニ準シ田畑等ノ所
  得ニモ控除率ヲ設クルコト
  一勞力ニ依ル所得ニ對シ第十五條ノ控除率ニ準シ控除
  率ヲ設クルコト
  右建議ス
  〔高田耘平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=91

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• 092・高田耘平

  ○高田耘平君　私ハ先ヅ十五ヨリ說明シヤウト思ヒマス、卽
  チ肥料專賣ノ建議案デアリマス、本年ハ農村振興ニ關スル
  諸種ノ法律案、建議案ガ提出サレマシテ、今ヤ各委員會ニ
  於キマシテ熱心ニ討議サレテアルコトハ農村振興ノ爲ニ洵
  ニ喜ブペキ現象デアルト思フノデアリマス、併ナガラ私共ノ考
  デハ此農村ノ現狀ヲ改善シテ、農民ニ生活ノ安定ノ基礎ヲ
  得セシムルノニハ、枝葉末節ノ方法デハ到底之ヲ救濟スルコ
  トガ出來ナイト思フノデアリマス、小作爭議ノ問題ト云ヒ種
  種農業上ノ問題ガアリマスルガ、其歸著スル所ノ大本ハ、要
  スルニ現代ノ農業ガ商工業其他ニ比較シテ、心勞ニ對スル
  所得ノ比較的少イト云フコトガ有ユル問題ノ出發點デアラ
  ウト思フノデアリマス、之ヲ故濟シ、農業ノ確立ヲ圖ルト云
  フコトニ付キマシテハ、我國農產物ノ主タル物タル米穀ノ價
  格ヲ安定シ、同時ニ又肥料ノ專賣等ニ依シテ農業者ノ支出
  ヲ減殺シ、併セテ成ベク其支出ヲシテ餘リニ增減ナカラシム
  ルコトガ必要ナル政策デアラウト思フノデアリマス、此見地
  ヨリ中シマスレバ、私ハ小管劍之助君ガ第四十五議會以
  來、今囘モ提出シマシタル米穀專賣法ト、而シテ此肥料ノ
  專賣法トガ相倚リ相俟ッテ之ヲ實行スルニアラザレバ、到底
  完全ニ我國ノ農家經済ヲ維持スルコトハ出來ナイト確ク信
  ズル者デアリマス、併ナガラ此問題ハ極テ重要ナル問題デア
  ルト同時ニ、又及ブ所ガ複雜ニシテ固ヨリ一朝一夕ニ之ヲ
  決定シ得ル問題デハナイト思ヒマス、ケレドモ少クトモ現在
  ノ農村ニ於キマシテ、米ノ專賣及肥料ノ專賣ノ兩方ニ依。ツ
  テ、農家經濟ノ安定ヲ圖ルト云フコトハ、何ヨリ必要ナル政
  策デアルト農民ノ大部分ガ主張シ、現在ニ於テ旣ニ多數ノ
  此意味ニ於キマシテノ請願言ガ、各方面ヨリ提出サレテ居
  ル場合デアリマスカラ、吾々ハ米ノ專賣ト同時ニ肥料ノ專賣
  ヲ實行致シタイト思フノデアリマス、第四十五議會ニ於キマ
  シテハ政友會ノ津野田君ヨリ建議ガ出マシタ、尙ホ私モ第
  四十五課會ニ提案致シマシタガ、遺憾ナガラ委員會ニ移スト
  ノ動議ノミデ實際ニ於キマシテ委員會ノ議ニ付セラレナ
  カッタコトハ、私ハ頗ル遺憾ト思フノデアリマス、本年ハ津野
  田君ハ何カ別ニ感ズル所アッタカ、御提出ニナリマセヌ、故ニ
  私ハ至難ニシテ複雜ナル問題トハ存ジマスガ、サリナガラ農
  村ノ救濟問題トシテ絕好ナル問題デアルガ故ニ、之ヲ提案
  シテ諸君ノ御賛成ヲ得タイト思フノデアリマス、尙ホ私ハ極
  テ簡單ニ申上ゲマスルガ、農家ノ生產費ノ主タルモノハ肥料
  デアル、少クトモ大正八九年頃カラ以來一箇年、所謂輸入
  肥料其他內地デ生產シタル肥料ヲ合セテ、販賣肥料ト名ク
  ベキモノガ三億數千万圓ノ多キニ達シテ居ルト思フノデアリ
  マス、此肥料ガ如何ナル者ノ手ヲ經テ需要家ノ手ニ這入ル
  カト云ヘバ、製造家ヨリ仲買人、小賣人、而シテ農家ノ手ニ
  這入ル、此間ニ於キマシテ種々ナル機關ヲ經ル爲ニ、生產サ
  レタル價格卽チ製造價格ヨリ少クトモ二三割ノ價格ガ向
  上スルヤウニナッテ居ルヤウニ思フノデアリマス、殊ニ小作農
  ノ如キハ其實際肥料ヲ買フカノ無イ爲ニ、肥料ヲ仕入ル
  ト同時ニ、肥料代金ヲ之ヲ證書卜シテ肥料商店ニ差入レ
  テ、一割五分乃至二割ト云フヤウナル高利ヲ現在拂ッテ居
  ルヤウナ狀況デゴザイマス、故ニ此肥料ノ官營ヲ爲シテ、而シ
  テ成ベク優良ナル肥料ヲ一般農家、殊ニ中小農ニ供給スル
  ト云フコトガ非常ニ必要ナル事ト思フノデアリマス、是等ハ
  常識的ニ申ス肥料ノ專賣ノ理由デゴザイマスルガ、私ハ特ニ
  二ツノ理〓田ヲ申上ゲタイト思フノデアリマス、其一ツノ理由
  ハ米穀法ノ制定ノ結果ニ依リマス、卽チ米穀法ハドウ云フ爲
  ニ制定サレタカト中シマスレバ、無論數量ノ調節デアル、其
  結果從デテ格格ノ調節ニモ幾分ナルコトハ明カデアリマスル
  ケレドモ、同時ニ生產者ノ利益トナルカ、消費者ノ利益トナ
  ルカト言ヒマスレバ、私共ハ現在ノ狀況ヲ以テシテハ、生產
  者ノ利益ヨリモ寧ロ消費者ノ利益トナルコトガ多イト思フ
  ノデアリマス、例ヘパ物價ノ暴騰ノ場合、卽チ經濟界ノ膨脹
  ノ理由ヨリ、或ハ米ノ不作等ノ理由ヨリ、米價ガ騰貴スベキ
  場合ニ於テ政府ガ買入レタル貯藏米ノ壓迫ニ依ッテ、他ノ一
  般ノ物價ハ非常ニ暴騰スルケレドモ、米價ノミガ騰貴シ得ナ
  イ狀況ヲ呈スルコトハ明カナル次第デアリマス、斯カル場合
  ヲ想像スレバ、米穀法ノ制定ニ依ッテ米ノ生產者タル農民
  ハ、明ニ經済上ノ膨脹其他ノ理由ニ依ッテ、受クベキ當然ノ
  利益ヲ奪ハレルト云フ結果ニ相成ルノデアリマス、故ニ私ハ
  米殻法其モノガ現在ノ通リ實行サレテ居ルト云フ事柄ハ、
  已ムヲ得ナイト致シマシテモ、此法律ニ依ッテ農家ノ所得ガ
  或ル場合ニ於テ奪ハレルコトノ明カデアル以上ハ、其支出タ
  ル卽チ生產費ノ主ナルモノデアル所ノ肥料ニ向ッテモ相
  當ナル方法ヲ講ジテ、肥料ノ暴騰ヲ防グト云フ事柄ハ、米穀
  法ノ制定ト同時ニ國家ガ爲サナケレバナラヌ一ツノ]施設デ
  アルト思フノデアリマス、更ニモウ一ツハ最近現ハレマシタ肥
  料製造業者ノ一種ノ生產制限ノ事デアリマス、此間ノ新聞
  ノ報ズル所ニ依リマシテモ、肥料製造業者ガ肥料ノ價格ノ
  暴落ヲ防グ爲ニ、日本ノ製造業者ガ相會シテ、或ル程度ノ
  生產制限ノ決議ヲ爲シタ、是ガ若シ完全二實行サレルヤウ
  ニ相成リマスレバ、其結果ハドウデアルカト言ヒマスレバ農
  業者ノ支出ノ主タルモノデアル肥料ハ、此僅カナル製造業
  者ノ生產制限ニ依リマシテ、肥料ノ價格ガ下落スベキ場合
  ニ於テモ下落スルヲ得ズ、製造業者ノ此生產制限ニ依シテ、
  農家ノ支出ノ主ナル肥料ハ、其價格ガ非常ニ昂騰スルト云
  フヤウナ狀態ニ立チ至ルノデアル、卽チ農家經濟ガ肥料製
  造業者ノ爲ニ非常ナル壓迫ヲ蒙ル次第ニ相成ルノデマリマ
  ス、聞ク所ニ依レバ此肥料ノ生產制限ハ未ダ完全ニ實行セ
  ラレナイト云フコトデアルカラ、今日ニ於テハ尙ホ恐ルヽノ必
  き
  要ナシトスルモ、漸次肥料製造會社ガ一種ノ「トラスト」ヲ
  作ッテ、自分等製造業者ノ利益ヲ圖ル爲ニ、米價其他ノ物
  價ノ下落セル時代ニ拘ラズ、肥料ノ製造ヲ制限スルト云フ
  次第ニ相成リマシタナラバ、全ク恐ルベキ現象ヲ呈スルデア
  ラウト私ハ思フ、此恐ルベキ弊害ヲ除却スル爲ニハ、政府ガ
  肥料ノ專賣ヲ爲スト云フントニ在ルト信ズルノヾアリマス
  以上大體ノ理由ヲ申上ゲマシタガ、ドウシテモ米專賣ト記
  料専賣トヲ實行スルニ非ザレバ、農家生活ノ基礎ヲ安定ス
  ルコトハ出來ナイト信ズルノデアリマス、此際附言致シタイコ
  トハ近頃非常ニ農村ガ困憊シタト云フコトヲ言フ、而シテ
  其理由ハ何デアルカト言ヘバ、要スルニ負擔ノ激增デアル
  祖稅其他有ユル公課ノ激增デアル、又第二ニハ農村ニ投機
  ノ弊風ガ侵入致シマシテ、農村ニ於ケル所請有志家有力家
  ト稱スル人々ガ投機ニ手ヲ出シ、是ガ爲ニ非常ナ失敗ヲシ
  タト云フ者ガ各地方到ル處ニアルノデアリマス、是モ私ハ農
  村ノ困態ヲ來ス一原因デアラウト思フ、更ニモウ一ツハ大
  正七八年ノ交、非常ニ米穀ノ價ノ騰貴シテ、其騰貴シタコ
  トニ連レテ、農民ノ生活程度ガ非常ニ向上シタ、所ガ其反
  動トシテ急激ニ米價ガ下落シテ其割合ニ他ノ物價ガ下ラ
  ナイ、然ルニ一旦向上シタル農民ノ生活ハ、急ニ之ヲ減ズル
  コトハ能ハズシテ、其爲ニ今日非常ニ生活上ノ壓迫ヲ受ケツ
  ツアルヤウニ思フノデアリマス、更ニ私ノ見ル所デハ、社會上
  ノ種々ノ關係ヨリ十數年以前ヨリモ現在ノ農民ハ、農業ニ
  對シテ勤勞スル時間ガ極テ少クナックヤウニm心フノデアリマ
  ス、是モドウ云フ理由デアルカト言ヘバ社會組織ノ複雜ニ
  ナッタ爲モアリマセウケレドモ、[要スルニ農民ガ或ル意味ニ於
  テ、自分ノ經濟ト云フコトニ重キヲ置キ過ギル傾ガアルノデ
  アリマス、是ハ妙ナ言葉ニナリマスガ、例ヘバ肥料ノ問題ニ致
  シマシタ所ガ、ドウデアルカト言ヘバ、現在自分ノ山野ヨリ植
  物ヲ採取シテ來テ、之ヲ推積シテ肥料トスレバ立派ニ其用
  ニ堪フルノニ、農業使用人ノ傭賃ノ騰貴ノ結果、自然ニ山
  野ニ在ル肥料ヲ用ユルコトヲ避ケテ、而シテ所謂販賣肥
  料ヲ多ク使フコトニナッタト云フコトモ事實アアリマス、要ス
  ルニ農村荒廢ノ原因ハ、負擔ノ增加、農村ニ於ケル投機心ノ
  侵入、隨テ之ニ伴フ社界上ノ種々ノ弊害及米穀ノ價ノ一時
  的暴騰ニ依フテ生活ガ向上シ、而シテ今日下落ヲシテモ其
  向上シタ生活ヲ低下スルコトノ出來ナイト云フコトガ、主タ
  ル原因デアラウト思フノデアリマス、卽チ此點カラ申シマスレ
  バ現在ニ於ケル農村疲弊ノ原因ハ、明ニ最近四箇年間ニ
  於ケル政友會內閣ガ、財政經濟策ヲ誤ノタ結果デアルト私
  ハ論斷シテ差支ナイト思フノデアリマス、第二ニ所得稅法改
  正ニ付テ說明致シタイト思ヒマス、(「簡單々々」ト呼フ者アリ)
  簡單ナドヽ申スト長クナリマス、私ハ極テ簡單ニ申上ケテ
  居ル積リデアリマスガ、如何ニモ問題ガ重大デアル、鐵道ノ
  一本ヤ二本トハ違ヒマス-次ハ所得稅法改正ノ問題デ
  アリマスガ、是ハ所謂法人所得ヨリ四割ヲ控除スル
  ト云フ所得稅法第十四條第一項第五號ノ規定、之ヲ他ノ
  第三種ノ所得ニモ及ボシタイト斯ウ云フノデアリマス、第二
  ハ第十五條ノ控除卽チ体給衣食者ニ對シテ特別ニ控除率
  ガアル、此控除ヲ勞力ニ依ル所得ニモ及ポシタイト、斯ウ云
  フ事デアリマス、卽チ所得稅法ニ於テ甚ダ不公平ノ位地ニ
  在ル者ガアルカラ、之ヲ公平ノ課稅ニ引直シタイト云フコト
  デアリマス、此ノ第十四條ノ第一項ノ第五號、卽チ法人ノ所
  得ニ對シテ四割ノ控除ヲ爲スト云フ事柄ハ、其基礎ニ於テ
  決シテ完全ナル理由ハナイノデアリマス、毎四十二議會ニ於
  キマシテ所得稅法改正案ガ撮案サレマシタ場合ニ於テ、原
  案ニハ此控除ノ事ガ認メテナカッタノデアリマス、所ガ第四十
  二議會ニ於キマシテ二割ヲ控除スルト云フコトニ修正リレ
  マシタ其理由ハ法人ノ所得ヲ得ル爲ニ、卽チ配當等ヲ得ル
  爲ニハソレ〓〓借入金ヲ以テ充當スル人ガ多イカラ、先ヅ其
  利息ト兄テ配當ノ中ヨリ二割ヲ控除シヤウヂヤナイカト云
  フコトノ意味ガ、大體二割トシタ理由デアリマス、其當時ニ
  吾々ハ配當所得ヨリ二割控除スルノデアレバ、他ノ商業所
  得、農業所得ヨリモ相當ノ控除ヲ爲スガ當然ニアラズヤト
  質問ヲ致シマシタ所ガ、政府ハ之ニ答ヘテ田畑ノ所得、其他
  商工業ノ所得ニ付テモ、借入全ノアル場合ニ於テハ之ヲ控
  除スルノデアルト云フコトノ御答辯ガアッタノデアリマス、併ナ
  ガラ其控除スルト云フコトハ其時ノ高橋大藏大臣ノ說明ニ
  依レバ、甚ダ範圍ガ狹カッタ、卽チ勸業銀行及農工銀行等ヨ
  リ農民ガ土地ヲ買入レル場合ニ於テ、必要ノ資金トシテ借
  入レタル證據ガアル場合ニ於テハ、ソレノミニ付テ借金ノ利
  子トシテ控除スルト云フコトノ御答デアッタノデアリマス、又
  政友會ノ或ル人々ガ委員會ニ於テノ御話ニ依レバ、其他ノ
  借入金ノ利子ニ付テモ必要ナルモノデアル、卽チ肥料買入
  代金等デアレバ控除メベキモノデアルト云フヤウナ意味モ答
  ヘラレテ居ッタヤウニ思フノデアリマス、所ガ第四十二議會ハ
  御承知ノ通リ、衆議院ヲ通過シテ貴族院ニ送付サレテ、其
  內ニ解散ニナッタ、第四十三議會ニ於テ、卽チ解散後ノ議會
  ニ於テ此法案ガ提案サレマシタ、所ガ是ガ二割控除カ三割
  控除ニナッタノデアリマス、其理由ハ一割ハ源泉課稅ニスル
  一割ハ源泉課稅ニシテ、三割ヲ配當所得カラ控除ズル、斯
  ウ云フコトヲ衆議院ハ通過シテ、貴族院ニ送付サレマシタ、
  所ガ貴族院ハ是モ亦四割ニシタノデアリマス、四割控除、其
  理由ハ何デアルカト言ヘバ、甚ダ曖昧ノヤウニ思ヒマスルケ
  レドモ、利子モ含ンデ居ルケレドモ、課稅ノ激變ヲ防グ、斯ウ
  云フコトノ意味ヲ以テ一割ヲ增シマシテ、詰リ法人ノ所得ニ
  付テハ四割ヲ控除スルト云フコトニナリマシタノデアリマス
  ガ、具體的ニ何等ノ理由ガ無イノデアリマス、勿論配當所得
  ヲ受ケル中ニ殆ド其全部ガ借金ノ人モアリマセウ、又一錢
  一厘ノ借金ヲ持タナイ人モアルト思ヒマス、一錢一厘ノ借金
  ヲ持タナイ人デモ、詰リ十万圓ノ配當ナレバ、之ニ四割ヲ控
  除シテ所得稅ヲ課ス、全部借入金デ株劵ヲ持ッテ居ル人デ
  モ四割ヲ控除シテ居ル、斯樣ニ不公平ナル結果ニ相成ッテ
  居ルコトデアリマス、其後田畑ノ所得等ニ對シテ、果シテ各所ニ
  於ケル稅務署ガ借入金ノ利子ヲ控除シツヽアルヤ否ヤト云フ
  コトヲ言ヒマスレバ、決シテ控除致シマセヌ、私共ハ控除シタ
  ル實例ヲ知ラナイノデアリマスノミナラズ、田畑等ニ對スル所
  得ノ標準決定ハ、最近ニ於テ全ク辛辣ヲ極メマシテ、各方
  面共田畑ニ依シテ得ル實際ノ所得以上ニ所得額ガ決定サ
  レテアルト云フヤウナ狀況デアリマス、而シテ農家ノ借入金
  ハドウデアルカト云ヘバ、前申上ゲマシタ通リ、一時的物價ノ
  暴騰ノ爲ニ僅カノ間其生活ガ非常ニ樂デアリマシタガ、大
  正九年ノ米價暴落以來、已ニ戰爭前以上ニ其農民ノ借金
  ガ殖エタコトハ明カナル事實デアリマス、勿論所得稅ノ本旨
  ト致シマシテハ、之ヲ外國ニ於ケル二三ノ所得稅法等ヨリ
  觀察スレバ、純所得ニスルト云フコトガ當然デゴザイマセウ、
  我國ノ所得稅ハ所得稅トシテハ實際ノ所得稅デハアリマセ
  ヌ.併シナガラ今日ノ我ガ日本人ノ納稅ニ對スル觀念ヨリス
  レバ借金ノ利子ヲ全部控除スルト云フコトハ中く是ハ困
  難デゴザイマスルカラシテ、配當所得ノ場合ニ於テ四割ヲ控
  除シテ置クト云フ現在ノ立法モ、私ハ全然之ニ反對スル者
  デハアリーセヌ、甚ダ不公平ナルモノニナッテ居ルケレドモ、是
  亦已ムヲ得ナイト思フ、併ナガラ配當所得ニ付テハ四割ヲ控
  除スル、借金ノ有無ニ拘ラズ四割ヲ控除スル、所ガ他ノ農業
  田畑ヨリ生ズル所得及商工業等ノ第三種所得ニ付テハ、
  如何ニ借金アルモ其利子トシテ一錢一厘モ控除シナイト云
  フ現狀ハ、明ニ私ハ差別的ノ待遇ヲ爲スモノデアルト論斷シ
  テ差支ナイト思フノデアリマス、此弊害ヲ除却シ、此差別的
  待遇ヲ撤廢スル爲ニハ、勿論純所得ト云フコトニ所得稅ノ
  立場ヲ改正スルコトハ最モ宜シイ方法デアルト思ヒマスケレ
  ドモ、是ハ中〓困難ノ事デアル、故ニ法人所得ニ對シ一定ノ
  控除ヲ爲スト同一ノ意味ニ於テ、同一ノ程度ニ於テ、他ノ
  第三種ノ所得ニ對シテ控除ヲ爲スト云フコトハ、私ハ最モ
  公平ナルモノデアルト信ズルノデアリマス、此意味ニ於テ所
  得稅法中改正ノ第十四條第一項第五號ノ控除率ニ準ジ、
  田畑等ノ所得ニモ相當ノ控除率ヲ設ケラレンコトノ建議ヲ
  提出スル所以デアリマス、更ニ第二ハ第十五條ニ關係ノ問
  題デアリマス、第十五條トハ何デアルカト云ヘバ、俸給其他
  ノ所得、卽チ勤勞所得ニ對シテ二割乃至一割ノ控除率ガ
  現在アルノデアリマス、是モ私共ハ俸給生活者ガ他ニ何等
  控除スベキモノナク純所得ヨリ出發シテ課稅スルニアラザル
  以上、俸給衣〓者ハ何等控除スルモノガナイノデアリマス、
  此場合ニ於テ一割乃至二割ヲ控除シツヽアル現在ノ法律
  ガ惡イト云フノデアリマセヌ、併ナガラ是ガ若シ宜イト致シマ
  シタナラバ、他ノ方面ニ於テ例ヘバ大工ノ棟梁、左官ノ棟梁、
  仲仕頭、人力車宿、斯ウ云フヤウナ者ニ更ニ控除率ガナイノ
  デアリマス、勿論必要ナル經費ハ控除スルト稱シマス、併ナガ
  ラ斯ノ如ク大工、左官、其他工場勞働者ニアラザル有ユル
  勞働者、是等ノ人々ガ得ル所ノ所得ニ對シテ何等控除スル
  所ガナイ、他ノ一方ハ官吏、銀行、會社員等一定ノ收入ヲ
  持ノテ居ル所ノ勤勞所得者ニ對シテハ控除スル、而シテ斯ノ
  如ク純然タル勞働ニ從事スル各種ノ勞力ニ依ル所得ニ對
  シテハ、一錢一厘ノ控除ガナイト云フコトハ、是亦私ハ不公
  平ナル立法デアルト思フノデアリマス、故ニ是等ノ勞力所得
  ニ對シテモ、普通ノ勤勞所得、卽チ官吏其他ノ一定ノ所得
  ニ依クテ衣食スル人々ニ對スル控除率ト同樣ニ、是等ノ勞力
  所得ニ對シテモ控除ノ率ヲ設ケルト云フコトガ當然デアルト
  信ズルモノデアリマス、以上ノ理由ヲ以テ所得稅法ヲ改正
  致シタイト思フノデアリマス、實ハ私共ハ法律案トシテ之ヲ
  提出シタイト思ヒマシテ、種々〓究ヲ重ネマシタガ、如何ニモ
  其關係スル所ガ多イノデアリマス、第三種ノ所得ニ於キマシ
  テ、法人ノ所得ノ如ク他ノ一般ノ第三種ノ所得ニ混同スル
  コトニナレバ收入ニ於テ餘程ノ減額ヲ來スノデアリマス、併
  ナガラ中々此算盤モ吾々素人ニハ出來マセス、故ニ私ハ此二
  ツノ不公平ナルコトヲ列擧致シマシテ諸君ニ訴へ、之ヲ委員
  會ニ付シテ御〓究ヲ願ヒマシテ、政府ノ調査ヲ待チ、何トカ
  シテ此法律ヲシテ公平ナルモノト致シタイト云フコトガ、本
  案建議ノ趣旨デゴザイマス、ドウゾ諸君ノ御賛成ヲ得テ本
  案ヲ通過サセマシテ、第四十六議會ニ於テ此意味ノ法律案
  ノ改正ヲ政府ヨリ提出サレタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=92

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• 093・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　日程第十五ハ政府提出小作調停法案
  外二件ノ委員ニ併セ付託シ、日程第十六ハ林田龜太郞君
  外一名提出、明治四十一年法律第三十七號中改正法律
  案外八件ノ委員ニ、併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=93

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• 094・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　鈴木君ノ動議ニ異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=94

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• 095・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ
  如ク決シマス、日程第十七、靑森築港國營ニ關スル建議案
  ヲ議題ト致シマス、北山一郞君
  第十七青森築港國營ニ關スル建議案
  (北山一郞君外十二名提出)
  靑森築港國營ニ關スル建議案
  靑森築港國營ニ關スル建議
  政府ハ靑森港ニ對シ第一種ノ資格ヲ與へ國費ヲ以テ速
  ニ擴張工事ヲ加ヘラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔北山一郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=95

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• 096・北山一郎

  ○北山一郞君　靑森築港國營ニ關スル建議案、本案ニハ
  幾多ノ理由ヲ持クテ居リマスルガ、極テ簡單ニ其要點ヲ中述
  ベテ見タイト思ヒマス、靑森港ハ日本ノ三大連絡ノ一ツデア
  リマス、三大連絡ト申シマスレバ、御承知ノ如ク關釜連絡、
  關門連絡、靑爾連絡、此三ツニナッテ居リマスルガ、朝鮮ニ於
  キマシテノ釜山ノ如キモ是ハ國費ヲ以テ修築ヲ加ヘラレテ
  居リマス、又下關ノ海岸整理、門司ノ築港ノ如キモ、是ハ國
  費ヲ以テ修築ガ加ヘラレツヽアルノデアリマス、然ルニ等シク
  其連絡ノ上ニ於テ資格ヲ同ジウシテ居ル所ノ靑森ト函館
  ノ連絡、此靑森ニ對シマシテハ地方事業トシテ此港ハ經營
  サレテ居ルノデアリマス、然ルニ又函館ノ方ハ如何デアルカト
  申シマスレバ、是レハ拓殖費卽チ國費ヲ以テ修築ヲ加ヘラレ
  テ居ルノデアリマス、斯ノ如ク靑函連絡ナルモノハ一方ノ北
  海道ニ屬スル地點ハ國費支辨ニナッテ居リマシテ、靑森ノ部
  分ハ地方事業ト云フコトニナッテ居リマシテ、寔ニ公平ヲ缺
  イタル所ノ結果ニナッテ居ルノデゴザイマス、是ハ私共ノ最モ
  遺憾トスル所デアリマシテ、願クハ日本ノ全體ノ上ヨリ見マ
  シテ、此重要ナル所ノ連絡地點ハ同一ノ取扱ヲ以テ、矢張
  國庫ノ支辨ト致シテ貰ヒタイト云フ希望デアルノデアリマ
  ス、尙又我帝國ノ全體ヨリ見マシテ、東北地方ニハ未ダ一ツ
  ノ國營ノ港ガナイノテアリマス、卽チ國費ヲ以テ經營シツツ
  アル所ノ港ハ一モナイノデアリマス、之ヲ關東ニ致シマスレバ橫
  濱ノ如キ、之ヲ關西ニ致シマスレバ神戶若クハ下ノ關、門司
  ノ如キ、之ヲ北陸地方ニ致シマスレバ敦賀ノ如キ、何レモ國
  費ヲ以テ支辯セラレテ居リマスルガ、未ダ曾テ我ガ束北地方
  ニハ一ツモ國智支辯ノ港ハ無イト云フコトハ非常ニ不公平
  ナコトデアリマシテ、吾々ハ之ヲ遺憾トスルノミナラズ、或意
  味ニ於テ一種ノ虐待デハアルマイカト思フ程ニ感ジテ居ル
  次第デアリマス、所デ靑森港ノ外國貿易、卽チ政府當局ガ
  國費支辯ノ資格ヲ與へル所ノ條件ト致シテ居ル所ノ外國
  貿易ノ狀況ハ如何デアルカト申シマスレバ、靑森港ニ於ケル
  最近五箇年ノ貿易ハ約六十倍ニ達スルノ結果ヲ示シテ居
  リマシテ、函館ノ稅關ノ管轄內ニ於キマシテ、其「パーセント」
  ガ第一位ヲ占メテ居ルノデアリマス、是ハ函館稅關ノ發表ス
  ル所ノ統計ニ依フテ判然タルモノデアリマス、所ガ現在ノ靑
  念ノ築港ノ狀態ガ如何デアルカト申シマスレバ、アノ地點ヲ
  御通過ニナッタ方々ガ御覽ノ通リデアリマシテ、其規模ハ
  甚ダ狹少デアリマシテ、總面積ハ僅ニ四万一千七百坪ニ過
  ギナイノデアル、隨テ單ニ此鐵道連絡船ヲ入レルダケデア
  リマシテ、其他ノ一般商船ハ悉ク港外ニ碇泊シナケレバナラ
  スト云フ所ノ遣憾ヲ持フテ居ルノデアリマス、然ルニ築港ノ
  規模ハ狹小ナルノニ加ヘマシテ、西防波堤ト云フモノハ稍〓
  比較的完全デハアリマスルガ、東防波堤ガアリマセヌノデ、
  屢〓東風ガ襲ヒ來リマシテ、現ニ昨年ノ一月築港內ニ於キマ
  シテ、大小ノ雜船ガ十六艘沈沒シタト云フ事實ガアッタノデ
  ゴザイマス、右樣ナ次第デアリマシテ本州北端ノ而モ束北
  本線ト奧羽線ノ二大鐵道ノ幹線ノ終點トナッテ居リマスル
  形勝ノ地ヲ占メテ居ル所ノ靑森ノ港ヲ完全ニ利用スルコト
  ガ出來ナイト云フコトハ、洵ニ遺憾ナ次第デアリマスルカラ、
  ドウカ北日本ノ發展ノ爲ニ、陸上交通ト海運ノ連絡ヲ完全
  ナラシメテ、將ニ勃與シツヽアル所ノ機運ニ應ズル爲ニ、願ハ
  クハ之ニ向ッテ國費ヲ以テ修築ヲ加へ、同時ニ此港ヲ第一種
  ノ港ノ資格ニ繰上ゲマシテ、速ニ其擴張工事ヲ進メラレンコ
  トヲ切ニ希望スル次第デアリマス、願ハクハ滿場ノ御審議ヲ
  得マシテ、御賛成ノ上本案ノ通過セラレンコトヲ希望スル次
  第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=96

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• 097・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ阿部武智雄君外八名提出、北海
  道本州連絡完成ニ關スル建議案外二件ノ委員ニ併セテ付
  託セラレンコトヲ〓エミマス
  〔「贊成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=97

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• 098・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　鈴木君ノ動議ニハ異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=98

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• 099・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍テ動議
  ノ如ク決シマス-日程第十八、科學〓究機關統一ニ關
  スル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者近藤達兒君
  第十八科學〓究機關統一ニ關スル建議
  案(近藤達兒君提出)
  科學〓究機關統一ニ關スル建議案
  科學〓究機關統一ニ關スル建議
  政府ハ各省竝民間ニ散在スル各種ノ科學〓究機關ヲ
  整理統一シ以テ產業立國ノ基礎ヲ確立スヘシ
  右建議ス
  〔近藤達兒君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=99

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• 100・近藤達兒

  ○近藤達兒君　私ハ本案ノ提出者ト致シマシテ極テ簡單
  ニ提出ノ理由ヲ說明致シマス、凡ソ產業ノ發達ガ科學的知
  識ノ進歩ニ俟ツモノデアルト云フコトハ申ス迄モナイ次第
  デアリマス、單リ產業ノ發展ノミナラズ、歐洲戰亂ニ於キマ
  シテ戰爭ニ參加致シマシタル列國ガ、有ユル方面ニ向ッテ最
  新科學ノ知識ヲ應用致シマシタル點カラ見マスレバ、蓋シ國
  防ノ要諦亦此ニ存スルト云フコトハ申ス迄モナイ次第デア
  ラウト存ジマス、然ルニ現時我國ニ於ケル所ノ產業ノ有樣
  ヲ見マスレバ、先進諸國ノ顰ニ傚ウテ徒ニ之ヲ模倣シ、唯〓
  其後塵ヲ拜スルニ過ギザル有樣デアルノデアリマス、然ルニ
  今ヤ世界ノ大勢ハ武力戰ヨリ一轉致シマシテ、產業戰ニ移
  リツヽアルノデアリマス、此時ニ方リマシテ我國ガ歐米ノ先
  進諸國ノ間ニ介在致シマシテ其地位ヲ維持シ、其國力ヲ仲
  張セント努メマスルニハ、須ク力ヲ科學ノ〓究ニ致サネバナ
  ラヌト考ヘルモノデアリマス、我ガ政府ニ於キマシテハ、曩ニ
  輸出品檢査所ヲ設ケラレマシテ、此制度ニ依シテ產業ノ發
  展ヲ圖ラント企テラレタノデアリマスガ、斯ノ如キハ徒ニ其根
  ニ培ハズシテ其枝ヲ矯メントスルノ類ニ過ギナイノデアリマ
  ス、之ガ爲ニ歐米列國ノ低廉ニシテ而モ精巧ナル所ノ製品
  ハ、我ガ製產品ヲ壓倒致シマシテ、之ガ爲ニ、今日我國ノ產
  業ハ倍、萎靡衰頽ヲ極メントシテ居ル有樣デアリマス、此時
  ニ方リマシテ、我國ノ科學的〓究機關ノ有樣ハ如何デアル
  カト〓ミマスレバ、官業ト云ハズ、民業ト云ハズ、各種ノ方面
  ニ幾多ノ〓究機關ハ設ケラレテ居リマスルガ、而モ此間ニ何
  等ノ聯絡關係無ク、各ミ一方ニ割據致シテ居ル有樣デアル
  ノデアリマス、譬ヘテ見マスレバ文部省ノ所管ニ屬スル所ノ
  榮養〓究所、或ハ農商務省ニ於キマシテ多額ノ補助金ヲ
  與フル所ノ理化學〓究所、若クハ衛生試驗所、是等ノモノ、
  其他飛行機ノ〓究ニ致シマシテモ、陸海軍各一方ニ割據
  致シ、又別ニ帝國大學ニ於テ是ガ〓究ニ從事致シテ居ルト
  云フ有樣デアリマス、其他民間ニ於キマシテモ、此種ノ〓究
  所ハ幾多存在致シテ居リマスガ、而モ此間ニ何等ノ聯絡關
  係ガ存右シテ居ラヌ爲ニ、各〓其〓究致シマシタ所ノ結果
  ヲ對比攻究致シマシテ是ガ大成ヲ企ツル途ト云フモノガ餘
  リ開ケテ居ラヌノデアリマス、ソレ故ニ此際政府ハ是等官民
  ノ間ニ存在スル所ノ各種各樣ニ亙ル幾多ノ科學〓究機關
  ヲ統一致シマシテ、秩序アリ而モ脈絡アル所ノ統一的ノ機
  關ヲ造ルト云フコトハ、我國ノ現狀ニ照シマシテ最モ必要ナ
  リト考ヘマシテ、一本案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、何
  卒御賛同アランコトヲ希望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=100

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• 101・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ議長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付
  託セラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=101

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• 102・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　鈴木君ノ動議ニハ異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=102

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• 103・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍テ動議
  ノ如ク決シマス-日程第十九、婦人參政ニ關スル建議案
  ヲ議題ト致シマス、提出者松本君午君
  第十九婦人參政ニ關スル建議案(松本
  君平君提出)
  婦人參政ニ關スル建議案
  婦人參政ニ關スル建議
  婦人ノ智能意思感情ヲ全然度外シタル政治ハ全社會
  全國家ノ幸福ト利益ヲ考慮シタル善良ナル政治ト謂フ
  ヘカラス婦人カ國ノ政治ヨリ遠サケラレ政治的要素トシ
  テ認メラレサル間ハ遂ニ其ノ地位ヲ向上シ人格ヲ發達ス
  ル機會ヲ失ヒ長ク屈辱ト輕侮ヲ免ルル時ナシ從來婦人
  カ文明史上ニ重要ナル位地ヲ占ムルコト能ハサリシモノ
  ハ婦人ノ天賦ノ本質ノ然ラシムルニ非ス主トシテ〓育及
  環境ノ結果ニ外ナラス女性トシテ人類社會國家ニ奉仕
  スル所ノ使命ハ固ヨリ男性ニ比シテ輕重貴賤ノ差異ア
  ルヘカラス婦人ヲシテ國家及法律ニ對シ男子ト同等ノ權
  利ヲ保有セシメ婦人ニ對スル不合理ナル各種ノ制限ヲ
  〓廢シ男子ト均等ノ境遇ニ立タシムルハ正義ト人道ノ
  義シキ要求ニシテ女性ノ完成ニ缺クヘカラサルノミナラス
  國家及民族ノ組織ヲ强大ナラシムル所以ナリ
  世界大戰爭ニ依テ深刻ナル慘苦ヲ嘗メタル文明國民カ
  茲ニ醒覺スルトコロアリ婦人ノ參政權ヲ認容スルニ至リ
  タルハ決シテ偶然ニアラス健强ナル國家ト純眞ナル文化
  ハ男女均等協力ノ基礎ノ上ニ建設セラレサルヘカラス政
  府ハ速ニ我カ國婦人ニ對シテモ參政權附與ノ制ヲ定メ
  ラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔松本君平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=103

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• 104・松本君平

  ○松本君平君　諸君、本員ハ玆ニ婦人參政權ニ關スル建
  議案ヲ提出致シマシテ、諸君ノ御賛同ヲ得タイト思フノデア
  リマス、十九世紀ニ於テ最モ有名ナル哲學者デアリ且ツ經
  濟學者デアル「ジヨン、スチユアード、ミル」ガ千八百六十八年
  今カラ丁度五十五年前ニ、英吉利ノ議會ニ婦人參政權ヲ
  提出致シマシタトキニ、其當時如何ニ此問題ガ英吉利ノ議
  會ニ於テ冷笑ヲ以テ迎ヘラレタカト云フコトハ、私モ承知シ
  テ居ルコトデアリマス、本案ハ初テ當議會ニ現レタル所ノ議
  案デアリマシテ、此帝國議會ガ如何ニ之ヲ取扱フカト云フコ
  トハ、最モ興味アル大問題ト考ヘテ居ルノデアリマス、此間
  題ガ如何ニナラウトモ、帝國議會ガ之ヲ否決シヤウトモ、或
  ハ之ヲ可決シヤウトモ、又如何ナル迫害ヲ受ケルト致シマシ
  テモ、此問題ハ未來ニ於テ大ナル光明ニ滿サレ、必ズ此議場
  ヲ通過スベキ運命ヲ持〓テ居ルモノト思フノデアリマス、何時
  カ諸君ガ必ズ此案ニ賛成ヲ表サナケレバナラナイ時ガ來ル
  ト自分ハ確信シテ居ルノデアリマス、故ニ此問題ヲ初メテ此
  處ニ提出シタル時ニ於テハ、其意味ヲ十分ニ明瞭ニシテ置
  ク必要ガアルト思フノデアリマス(「分ッテ居リマス」ト呼フ者
  アリ)分ッテ居ル御方ハ必ズ御賛成ノ方デアラウト思ヒマス
  ガ、元來此問題ハ普通選擧ノ延長ノ問題デアリマシテ、本
  來ノ意味カラ言ッタナラバ、婦人參政權ト普通選擧ハ全然
  一致スベキ所ノモノデアリマス、婦人參政權ノ目的ガ達セナ
  ケレバ眞ニ普通選舉ノ理想ニ到達シタト云フコトハ言ヘナ
  イモノト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、人類ハ總テ神ノ前ニハ
  平等デアル如ク、人間ガ人間トシテノ價値ハ平等デナケレバ
  ナラヌ、卽チ人類ノ自由、平等、相愛ノ此大ナル精神カラ玆
  ニ普通選舉ナルモノガ出發シテ來タモノデアルナラバ、婦人
  モ人トシテ國民トシテ、男子ト異ル所ナク、男女ノ間ニハ差
  別待遇ヲ致サズ、女ト云フモノヲ特殊ナル人間トシテ取扱ハ
  ナイヤウニスルノガ、實ニ公明ナル態度デナケレバナラヌト自
  分ハ考ヘルノデアリマス、諸君歐洲ノ戰爭ガ人類ニ多クノ政
  治的〓訓ヲ與ヘタルコトハ申スマデモナイコトデアリマスガ、
  特ニ婦人問題ニ於テ新シキ局面ヲ開展シテ來タノデアリマ
  ス、卽チ從來ノ政治ノ組織ノ根柢ニ大キナル缺陷ノ有ルコ
  トヲ見テ、玆ニ婦人ニ自由ヲ與ヘ、政治的ニ之ヲ解放シテ參
  政ノ權ヲ與ヘナケレバナラヌト云フ大勢ヲ作ッタノデアリマ
  ス、世界ノ國民中ニ於テ最モ秩序ヲ尊ビ保守的傾向ヲ持ッ
  テ居ル所ノ英吉利ガ、婦人ニ參政權ヲ與ヘサウシテ今ハ九
  百万ニ近イ所ノ婦人ガ選擧權ヲ持ツヤウニナっテ居ルト云フ
  コトハ諸君ノ知ラレル、所デアル昨年末ノ總選擧ニ於テ保
  守黨ノ政府「ボナーロー」氏ノ政策ヲ助ケテ現在ノ保守黨政
  府ヲ維持シタ者ハ、多クハ此婦人ノ投票デアッタト云フコト
  ヲ言ハレテ居ル、面シテ英吉刊ニ於ケル非常ナル不安ノ政界
  ノ空氣ヲ安定スルコトニ與ッテカガアッタト云フコトハ事實デ
  アリマス、又亞米利加モ旣ニ四年前ニ於テ憲法ヲ改正シテ
  婦人ニ參政權ヲ與ヘ、婦人ハ完全ナル參政權ヲ得テ、サウ
  シテ先年ノ大統領ノ選舉ニ於テハ「ソパプリカン」黨ノ政策
  ヲ婦人ガ助ケタルコトニ依ッテ、「ハージング」ガ大多數ノ投票
  ヲ得テ大統領ニ選擧セラレタ、而シテ此「ハージング」ヲ動カ
  シテ華盛噸ニ平和會議ヲ開カセタル所ノ主モナル政治上ノ
  動力ハ婦人ノ〓體デアッタト云フコトモ諸君ガ御永知ノコト
  デアリマス、今日世界ノ運命ヲ支配スル所ノ大國民ノ政治
  的活動ニハ、其國ノ婦人ノ知識、感情、思想、斯ウ云フモノ
  ガ織込マレテ其政治ガ新シキ文明ノ建設ノ爲ニ、人類ノ進
  步ノ爲ニ驚クベキ貢獻ヲシテ居ルト云フコトモ吾々ハ認メナ
  ケレパナラヌノデアリマス、今日我國ノ婦人ノ狀態ヲ見テ、諸
  君ハ果シテ如何ナル感ヲ懷カレルノデアリマセウカ、人間ノ
  自由ハ徳性ノ中ニ於テ最モ貴キ生命デアル、其獨立ハ人生
  ニ於テノ最大ノ幸福デアルガ、此大切ナル二ツノ自由ト獨
  立ト云フモノハ、今日ノ我國ノ女性ニ於テハ認メルコトガ出
  來ナイノデアル、許サレテ居ラナイノデアル、主義ニ於テモ現
  實ニ於テモ、此最モ大切ナル自由獨立ノ主義ハ、婦人ニハ
  認容サレテ居ラナイノデアリマス、今日ノ婦人ハ尙ホ依然ト
  シテ昔ノ儘ナル、一言ニシテ言ッタナラバ奴隷ノ狀態ニ居ッテ、
  長キ間無智ノ境遇ニ置カレテサウシテ法律ヤ宗〓ヤ道德ヤ
  總テノ周圍ガ此女性ニ盲目的服從ヲ要求シテ居ルノデアリ
  マス、久シキ間虐グラレタ、此女性ガ殆ド萎縮シ夕日蔭ノ蕾
  ノ如ク、開ク力モ無イヤウナ狀態ニ今日居ルノデアリマス、政
  治ノ方面ニ於テ之ヲ見タナラバドウデアルカ、政治上ニ於テ
  ハ今日ノ女性ハ殆ド「ゼロ」デアル、何等ノ力モ持タズ又何等
  ノ權威モ持ッテ居ラナイ、全ク政治ヨリ除外サレテ居ル、僅ニ
  昨年衆議院ニ於テ治安警察法ノ第五條ヲ改正シテ、婦人
  ガ政談ノ自由ヲ得タヾケデ、ソレ以上ニ婦人ハ政治上ニ何
  物モ持ッテ居ラナイノデアル、又法律ハ今日ノ日本ノ女性ヲ
  ドウ云フ風ニ取扱シテ居ルカト云フト、全ク不公平ナル不條
  理ナル狀態ニ女性ヲ置イテ居ルノデアル、例ヘバ民法ヤ刑法
  ヲ見レバ能ク分ルノデアリマスガ、女子トシテハ相續權ニ於
  テ非常ナ不合理ナル立場ニ置カレテ居ルノデアル、又妻トシ
  テハ離婚ノ條件ニ於テ、或ハ契約ノ能力ニ於テ或ハ、財產ノ
  管理ニ於テ、非常ニ不合理ノ狀態ニ置カレテ居ル、又母トシ
  テハドウデアルカト云フト、親權ノ行使ニ對シテ男性ニ比シテ
  不合理ナル狀態ニ置カレテ居ル、斯ノ如キ若シキ差別待遇
  ヲ法律上ニ於テ今日ノ女性ガ受ケナケレバナラヌト云フ原
  因ハ、何デアルカト言ヘバ、ソレハ何デモナイ、唯〓女デアルト
  云フガ爲ニ、斯ノ如キ特殊ナル取扱-差別待遇ヲ受ケテ
  居ルト云フ狀態デアリマス、更ニ私ハ此宗〓ガドウ云フ狀態
  ニ此女性ヲ導キ、婦人ヲ置イテ居ルカト云フコトヲ一言言ハ
  ナケレバナラナイノデアル、宗〓ハ女性ニ對シテハ大ナル呪ヲ
  持ノテ居ル、佛〓ハドウ云フ風ニ婦人ヲ取扱シテ居ルカ、卽チ
  女人ハ永生ノ地獄ヨリ免ルヽコトハ出來ナイ、罪惡ノ根元
  ハ婦人デアル、所謂七難五障ハ悉ク女性ヨリ來ッタモノデア
  ルト云フコトヲ論ジテ居ル、恰モ姉人ハ人間デナイ、惡魔ノ「シ
  ンボル」デアルガ如クニ佛〓ガ之ヲ極論シテ居ルコトハ、釋迦
  ノ說イタ所ノ大菩薩經或ハ首楞嚴經或ハ涅槃經ヲ見レバ、
  ンノ中ニ此女性ニ關スル驚クベキ釋迦ノ考ヲ述ベテ、女性ニ對
  スル大ナル迫害ノ力ヲ振ッテ來タコトガ分ルノデアリマス、又儒
  〓モ同ジク孔子ノ說カレタ所ノ論語ヲ見テモ、女子ト小人トハ
  養ヒ難シ、卽チ小人ト女ト云フモノヲ同ジ階級ノモノニ之ヲ取
  扱ッテ居ル、三從七去ノ說ニ依シテ、長イ間婦人ノ服從ヲ要求
  シテ來テ居ルト云フコトガ、如何ニ此日本ノ道德ガ女性ト云
  フモノラ壓迫シテ來タカト云フコトノ著シキ例デアリマス、
  斯ノ如ク數千年ノ間、總テノ方面カラ女性ハ壓迫ヲ受ケテ、
  獨立モ奪ハレ、自由モ許サレズ、殆ド絕望的狀態ニ置カレテ
  來テ居ルノデアリマス、卽チ現代ノ哀ナル婦人ノ地位、性質
  思想、境遇ト云フモノハ、全ク此男性ノ都合ノ好イヤウニ宗
  〓、法律、制度、是等ノモノニ依ッテ作リ上ゲテ來タノデアリマ
  ス、諸君、國民ノ全半數ヲ占ムル所ノ女性ヲ、此哀ムベキ不
  合理ナル狀態ニ置クト云フコトガ、果シテ正シイ事デアルカ、
  或ハ正シカラザル事デアルカ、是ガ此問題ノ中心デアリマス、
  暫ク男性ヲ本位トシタル所ノ地位ニヨリ離レテ、私ハ此問
  題ヲ「ヒユマニテイ」卽チ人道ノ上カラ見、或ハ正義上カラ見
  テドウデアルカト云フコトヲ吟味シテ見タイト思フノデアル、
  女ハ果シテ人格ヲ持ツ所ノ人トシテ見ルベキカ、或ハ人格ノ
  無イ一ツノ貨物トシテ取扱フベキカ、今日ノ常識アル人ノ考
  ヨリ之ヲ見タナラバ、無諭婦人ハ人トシテ見ルベキコトニ異
  議ハナイノデアリマス、人格ノ無イ者ハ貨物デアリマス、婦人
  ヲ人格アル人トシテ認ムルナラバ、人間トシテノ義務ト權利
  ト云フモノモ認メザルヲ得ナイノデアリマス、此觀念カラシテ
  男女ノ平等ヲ認定シナケレバナラヌト思ヒマス、卽チ男女ニ
  依リ性ノ區別ニ依クテ差別待遇ヲシ、取扱ヲ異ニスルト云フ
  コトハ不合理デアル、勿論此男性女性ノ性ノ區別ト云フモノ
  ハ、之ヲ混同スルコトハ出來ナイ、男子ガ女子ノ領分ニ立入
  ルコトハ出來ナイガ如クニ女子ガ男子ノ傾分ニ這入ルコト
  モ出來ナイケレドモ、人類トシテ男子ニハ男子ノ尊キ使命ガ
  アルガ如ク、女子ニモ女子ノ尊キ使命ガアルコトヲ認メネバ
  ナラヌ、人間トシテノ使命、男女兩性ノ價値ニ於テハ平等デ
  アル、其平等デアレバ、其間ニ貴賤上下ノ差別アルベキ筈ハナ
  イノデアリマス、然ルニ女性ナルガ故ニ、婦人ナルガ故ニ、特
  殊ナル所ノ制限、或ハ束縛ヲ設クルト云フコトハ、正シカラ
  ザルモノ、不合理ノモノデアルト謂ハナケレバナラナイノデア
  リマス、正義ト人道ノ觀念カラ見テ、從來ノ政治上ニ於ケル、
  法律上ニ於ケル、宗〓上ニ於ケル、女子ニ關スル偏重ノ義
  務、束縛、是等ハ全ク不合理ナル、不正當ナルモノト斷言シ
  ナケレバナラナイ、又之ヲ改メテ行カナケレバナラナイト思フ、
  是ハ正義ト人道ノ强キ要求デアリマス、婦人參政權ノ原則
  ハ此點カラ出發シテ來ルノデアリマス、卽チ參政權ノ要求ハ
  女モ人間デアル、男モ人間デアル、人間トシテノ使命ノ價値
  ニ於テハ男女平等デナケレバナラナイ、男ノミ國民デ、女ハ
  國民デナイト云フ理由ハ無イ、男ヲ國民ト認ムルナラバ、均
  シク女ヲモ國民ト認メネバナラヌノデアル、婦人參政權ノ要
  求ハ女モ男モ同樣ニ之ヲ國民ト認ムルノニアリマス、國民ト
  シテ義務ヲ果シ權利ヲ行ハントスル此要求ハ、眞ニ美シキ、
  又正當ノ要求デアリマス、何人ガ之ニ對シテ拒ム所ノ權利
  ヲ持ッテ居ルノデアルカ、人道ト正義ノ上カラ見マスレバ、婦
  人參政權ノ問題ニ對シテ、之ニ反對スベキ所ノ正當ノ理由
  ハ何モノモナイノデアリマス、然ルニ爰ニ或ル一種ノ反對論
  ガアリマス、婦人參政權ノ問題ハ、婦人自身ノ問題デアッテ、
  男ノ問題デハナイ女ノ問題ハ女ニ任セテ置ケバ宜イデハナイ
  カ、且ツ此問題ハ僅ニ一部ノ婦人ノ要求デアッテ、一般姉人
  ノ要求デナイ、故ニ此問題ハマダ論ズルニハ早イト云フコト
  ハ蓋シ諸君方ノ仰シヤル所デアリマセウ、私ハ左樣ニ之ヲ
  考ヘテ居ラナイノデ、此間題ハ左樣ナ淺薄ナル問題デハナイ
  ノデアリマス、是ハ婦人ノ爲ノ婦人ノ問題デハナイ、國民全
  體ノ爲ニ考ヘナケレバナラナイ問題デアル、更ニ民族全體ノ爲
  ニ考ヘナケレバナラナイ問題デアリマス、若シ人類ノ進步ト
  云フモノガ或ハ社會ノ發達ト云フモノガ、男女ノ協力ニ依ラ
  ナケレバナラナイモノデアルナラバ、婦人ガ人問トシテ向上ス
  ルカ否ヤト云フコトハ、是ハ婦人ダケノ問題テハナイ、是ハ決
  シテ婦人ダケノ問題デハアリマセヌ、男子ガ劣等ナ女性ヲ協
  力者トシテ持ツコトハ、單ニ男子カラダケ言ッテモ是ハ一大
  不幸デアリマス、女子ガ參政權ヲ要求スルトカセナイトカ云
  フコトハ、是ハ問題デハナイ卽チ參政權ノ問題ハ婦人ヲ開放
  スルコトニ依ッテ、而シテ之ヲ政治ニ參加セシメルコトニ依フ
  テ、婦人ノ地位ヲ向上セシメ、サウシテ高キ人類ノ生活ニ導
  クト云フコトガ、卽チ此問題ノ中心デアリマス、政治生活ハ
  多クノ人間ノ生活ニ於テ最モ中心問題デアリマス、婦人ガ
  結局政治ニ生キルデナケレバ、眞ニ其地位ノ向上シ、人格ノ
  完成ヲ期スルコトハ出來ナイト信ズルノデアリマス、故ニ此
  婦人ガ參政權ヲ要求スルト云フコトハ、ドウシテモ婦人ノ性
  格ヲ完成スル上ニ於テ、又其位地ヲ向上スル上ニ於テ先ヅ
  政治的ニ生キルト云フコトヲセナケレバナラナイト思フノデア
  リマス、第二ニハ斯ウ云フ反對ヲ唱ヘテ居ル、婦人ハ本質ニ
  於テ男子ニ比シテ劣等ナ者デアル、體力ニ於テモ、能力ニ於
  テモ、共ニ男性ノ比デハナイ、故ニ婦人ハ永久ニ男子ニ屈從
  スベキ者デアル、平等ナドアルベキモノデハナイ、又參政權ノ
  如キ婦人ニ政權ヲ許スト云フコトハ間違.ソテ居ル、斯ウ云フ
  反對ノ議論ヲ唱ヘル人ガアルノデアリマス、今日ノ議論ハ皆
  サウ言ノテ居ル、蓋シ諸君モ亦其一人デアラウト思フ、此議
  論、所謂女子輕蔑論ハ、今日一般ノ多クノ男性ノ人ガ考ヘ
  テ居ル所ノ議論デアリマス、又古來ノ宗〓モ多クハ此點ニ
  於テ高調シテ居ルノデアリマス、曩ニ言フ所ノ釋迦ノ議論、
  孔子ノ議論、皆是デハナイカ、又近代ノ學者ニモ此說ヲ唱ヘ
  ル者ガ澤山アル、例ヘバ「シヨーペンハウエル」ノ如キ、或ハ「ニ
  イチヱ」ノ如キ、皆極端ニ此議論ヲ唱ヘル者デアリマス(「政治
  ハ實際問題ダ」ト呼フ者アリ)是ガ實際ノ問題デアル、天下是
  ヨリ外ニ實際ノ問題ガ何レノ地ニ在ル、近代ノ科學者ニシテ
  又醫者デアル、殊ニ代表的ノ人物ト言ハルヽ獨逸ノ醫者ノ
  「メービス」ト云フ人ガアリマス、此人ガ著シタ所ノ本ハ廣ク
  世界ニ傳播サレテ、女性輕蔑論者ノ殆ド代表的トナッテ居
  ルヤウナ次第デアリマス、其本ニ依ルト、女ハ男ニ比シテ腦ノ
  發育ガ惡イ、又女ハ知識的或ハ創造的能力ニ於テ遙ニ男
  ニ比シテ貧弱デアル、又感覺ヤ機能ヤ其他ノ體ノ組織ガ不
  良デアッテ、障害ガ多イガ爲ニ、生理的ニ於テ此比較解剖學
  ヨリシテ女性ガ男性ヨリ遙ニ劣シテ居ル、隨テ女性ガ男性ト
  同權ヲ求ムルコトハ問違ッテ居ル、女ガ政權ヲ要求スルコト
  ノ誤リデアルト云フコトヲ盛ニ唱ヘテ居ルノデアリマス(一ソン
  ナコトハ信ジマセヌ」ト呼フ者アリ)諸君ガ信ジナケレバ、私ハ
  知己ヲ得タリトシテ喜ブノデアル、斯ノ如ク近頃ノ科學者ガ
  科學的事實ヲ基礎トシテ、婦人ノ低能デアル、男女平等ガ
  不可能デアルト云フコトヲ盛ニ論ジテ居リマス、此論ハ誤ッテ
  居ルト思フ、力强キ科學的議論デハアルガ、其議論ハ大ナル誤
  リデアルト自分ハ信ジテ居ル、ソレハ「ジヨンスチユワードミル」
  ガ既ニ論ジテ居ルガ如ク、女子ガ男子ニ劣ッテ居ルコトハ、ン
  レハ女子ノ本質デハナイ、長イ問男子ガ腕力的濫用、女子
  ニ加ヘタル所ノ壓制ノ結果ガ、斯ノ如ク今日ノ女子ノ身體
  或ハ精神ニ於ケル所ノ劣等ヲ來シタルモノデアッテ、若シ此
  座制ヨリ女子ヲ取離シテ解放シテ、サウシテ男女同等ノ發
  達ヲ遂ケサセタナラバ、必ズ女子ハ男子ニ劣ラザル所ノ能力
  知識ヲ發達スルコトガ出來ルト云フコトヲ既ニ「ミル」ハ論ジ
  テ居ル、私ハ此方ガ正シキ議論デアリ、又斯クアルベキモノデ
  アルト信ジテ居ルノデアリマス、男ガ女ヲ征服シテ其支配者
  トナシテ、専制君主ノ如ク女子ニ臨ンデ以來、茲ニ數千年ノ
  歲月ヲ經テ居ル、此長キ間ニ於テ男子ノ優越ヲ保持スル爲
  ニ、女子ノ自由ヲ壓迫シ、サウシテ男性中心ノ法律制度ヲ
  作ッタノデアリマスガ、此長キ壓制ノ間ニ、女子ガ服從ト過勞
  ヲ要求サレク結果、婦人ハ精神的ニ於テモ、肉體的ニ於テモ、
  其發達ガ阻害サレテ來タト云フコトハ疑ノナイ、事實デアル
  ト自分ハ信ズル勿論男女雨性ヲ個々別々ニ比較シテ見タ
  ナラバ、婦人ノ中ニモ随分男子ヨリ優レタル所ノ者ガアリマ
  ス、唐ノ則天武后ノ如キ、或ハ神功皇后ノ如キ漢ノ呂后ノ如
  キ平ノ政子ノ如キ、或ハ「ジヤンダーク」ノ如キ、「ガザリン」女
  帝ノ如キ、斯ウ云フヤウナ隨分歴史的ニ-大キナ歴史上
  ノ事實ヲ殘シタル所ノ人ガ女子ノ中ニモ澤山アリマス、又男
  子ノ中ニ於テモ隨分患劣ナル又劣等ナル人モ澤山アルノデ
  アリマス、個人々々ニ付テ此性ノ區別ニ付テ、女ト男ト云フ
  モノヽ考ヲ生理的ニ之ヲ論ジタナラバ、此問題ヲ正シク解決
  スルコトハ出來ナイト思フ、大體ニ於テ私ハ「ミル」ノ唱ヘタル
  ガ如ク、今日ノ女子ノ劣等ナル狀態、低能ナル狀態ガアリトス
  レバ、ソレハ多年ノ壓迫ト白由獨立ヲ奪ハレテ來夕所ノ其狀
  態ガ斯ノ如ク長キ歳月ノ間ニ女子ヲ馴致シタルモノト思ンノ
  デアリマス、第三ノ反對論者ハ、政治ハ男子ノ仕事デアッテ、
  婦人ノ携ハルベキ所ノモノデナイ、婦人ノ係ハルベキ問題デ
  ナイ、政治ニ這人ルコトニ於テ、婦人ノ生命トスル所ノ優美
  圍雅ナル性質ヲ失フノデアル、故ニ婦人ハ政治ニ干與スベカ
  ラズト云フ所ノ議論ガアルノデアリマス、政治ハ婦人ノ携ハ
  ルベキ所ノ仕事デナク、男子ノ獨占スベキモノナリト云フ此
  思想ハ、會テ政治ト云フモノガ貴族ノ獨占ノ事業デアッテ、百
  姓町人ハ政治ニ干與スベカラズト云ッタ舊キ思想ト同ジ系統
  ヲ持ッテ居ルモノデアラウト思フ、今日ノ政治ハ特殊階級ノ獨
  占スベキモノデハナイ、男性ノ獨リ占ムベキモノデハナクシテ、國
  民全權ノ干與スベキ問題デアッテ、所謂政治ハ國民生活其
  モノデアルト私ハ思フノデアル、婦人ハ政治ニ生キナケレバ獨
  立自由ハ得ラレナイノデアル、自由ト獨立トノ無イ處ニハ
  人格ハ存在シナイノデアル、人格ノ無イ處ニハ理性モ無ク正
  義モ無ク、眞ノ愛ト云フモノモ無イノデアリマス、卽チ女ハ人
  間トシテ認メラレナイカラ、人間トシテ認メラレナイ所ノ女ハ何
  ニ優美デアッテモ、如何ニ園雅デアッテモ、ソレハ唯〓美シキ奴線
  如美シキ人形ニ過ギナイノテアリマス、男女ノ關係ハ依然トシ
  テ暴君ト奴隸トノ關係デアリマス(ノウ〓〓)ドンナニ男ガ女ヲ
  愛シテモ、其愛シタルコトハ猫ヲ愛スルト同ジ心理ニ過ギナ
  イノデアリマス、斯ル社會ニ於テハ眞ノ意味ニ於ケル良妻モ
  無ク、眞ノ意味ニ於ケル賢母モ生レナイノデアリマス、今迄政
  治ガ男性ノ獨占スベキ所ノ事業デアッタガ爲ニ、如何ニ政治
  ノ內容ガ腐敗シ荒ンデ來タカト云フコトハ、今日ノ政治ノ狀
  態ヲ見テ明ニ分ルノデアリマス、政治ガ殘忍ニナリ、殺伐ニナ
  リ、粗暴ニナリ、有ユル方面ニ於テ現代ノ政治ガ男子ノ弱點
  ヲ暴露シテ居ルノデアル、婦人ノ特性デアル優美ト閑雅、其
  優美ト圍雅竝ニ平和ト慈愛ト云フ此特性ガ政治ノ中ニ流
  レ入ッテ、如何ニ其政治ガ改善セラレ美化セラレルカト云フ
  コトハ疑ノナイ事實デアル、既ニ婦人ガ參政權ヲ得テ政治
  上ノ大ナル力ヲ成シテ居ル所ノ先進國ニ於キマシテハ、其日
  尙ホ淺キニモ拘ラズ、其政治ガ非常ニ緩和的ニナリ、純潔ニ
  ナリ、又眞面目ニナッテ來テ居ルト云フコトハ明白ノ事實デ、
  諸君ノ知ラルヽ所デアル、又人道ト正義ノ觀念ガ是等ノ先
  進國ノ政治ニ於テ著シク濃厚ニナッテ來タ事實モ、亦諸君ノ
  疑フコトノ出來ナイ所デアリマス、第四ノ反對論ニ付テ尙ホ
  一言ヲ辯ジテ置カナケレバナラヌノデアリマス、ソレハ婦人ニ
  參政権フ與ヘレバ選擧ノ度每ニ家庭ノ園滿ヲ壞ル、夫婦ノ
  間ニ意見ノ衝突ヲ起シテ圓滿ナル家庭ガ破壊サレルト云フ
  コトニ因フテ婦人ニ參政權ヲ與フルコトニ反對スル所ノ議論
  ガアリマス、今日ノ參政權ノ理想ハ國家ノ組織ノ最少ノ單
  位ノ各個人ノ人格ヲ尊重シ、之ヲ政治的ノ要素ニスルト云
  フコトガ參政權ノ理想デアリマス、總テノ人ノ意思ヲ國政
  ノ上ニ表現シテ、サウシテ有ユル人ノ考ト感情トヲ
  國ノ政治ノ上ニ現スト云フコトガ今日ノ參政權
  ノ理想デアル、婦人ガ結婚ヲシテ家庭ヲ造ルト云フ
  コトハ婦人ノ人格ヲ失フモノデハナイ、今迄ハ婦人ガ家庭
  ヲ造ルト、婦人ト云フモノガ家庭ノ內若クハ良人ノ人格ニ
  沒入サレテ居ッタ樣ニ考ヘラレタノデアルガ、是ハ婦人ノ人格
  及獨立ヲ認メナイ所ノ時代デアッテ、婦人ノ眞ノ自由ト獨立
  トヲ認メ、其人格ヲ尊重スルナラバ家庭ハ單ニ婦人ノ人格
  ノ沒却デハナクシテ、尊重セラレタル認識セラレタル所ノ女ノ
  人格ヲ現ス所ノ場所ニナラナケレバナラナイノデアリマス、故
  ニ夫婦ノ對等ノ人格ガ互ニ人格ヲ尊重シ、或ハ承認シ、何
  所迄モ個性ヲ維持シテ行クト云フ所ニ、其人格ノ自由ト獨
  ネーガ實現スルノデアリマス、故ニ婦人參政權ハ何處迄モ
  此婦人ノ個性ト人格トヲ尊重シテ、ソレヲ承認スル所ニ意
  義ガ在ルト思フノデアリマス、婦人ニ參政權ヲ與ヘタナラバ、
  家庭ガ破壞サレルノデアラウトカ云フヤウナコトハ、全ク其眞
  ノ新シキ家庭ノ意義ヲ誤ッタルモノデアッテ、眞ニ圓滿ノ家庭
  ガ起レバ夫婦ノ間ニ意見ノ衝突ノアルベキコトハナイ、ヨシ
  ンバンレガアッタ所ガ、其異レル政治的思想ガ政治ノ上ニ現
  ハレルコトニ仮。ノテ眞ノ參政權ノ理想ガ達セラレルノデアル、
  ヨシンバ其理想ガ夫婦ノ間ニ違シテ居クテ、若シンレガ苟合彌
  縫シテ現レズニ居ッタナラ、更ニ是ハ惡イコトデアル、寧ロ意
  見ガ違フナラバ、違ッタ其意見ガ政治上ニ現ハレルコトガ眞
  ノ立憲政治ノ理想デナケレバナラヌ、此意見ガ違フ爲ニ選
  擧ノ度每ニ夫婦ノ間ノ圓滿ヲ缺キ、或ハ家庭ガ破壞サ
  レルト云フヤウナ薄弱ナル家庭ナラバ、他ノ理由他ノ色
  色ナ生活上ノ問題ニ於テ、疾ニ斯ノ如キ家庭ハ破壞サレル
  ノガ當然デアリマシテ、獨リ政治ノ主義ノ異レルガ爲デハナ
  イノデアリマス、是等ノ反對ノ議論ハ、私ハ婦人參政權ガ人
  道ト正義トノ理想ノ上ニ立脚地ヲ持ッテ居ル、此大ナル問
  題ニ對シテ、幾何ノ價値ヲモ有シテ居ルモノデハナイト信ズル
  者デアリマス、諸君平和ト愛ノ支配スル太古ノ人類ノ社會
  ニ於テハ、會テ女性ガ政治ノ中心デアッタ時代ガアリマス、是
  ハ信ズベキ理由ガアルノテアリマス、此時代ニ於テハ「コント」
  ガ言フ如クニ婦人ガ神ノ最善ノ人格化アル、此時代ニ於テ
  ハ婦人ガ大ナル實在者ノ代表者デアッタ時代デアリマス、卽
  チ政治ノ實權ガ婦人ノ掌ニ在アッタ、サウシテ女ガ尊クシテ
  男ハ全ク奴隷ノ狀態デアッタ時代デアリマス、吾々ハ過去ニ
  於テ是ノ如キ時代ガ存在シテ居クタ事ヲ信セザルヲ得ナイノ
  デアリマス、併ナガラ人類ガ增殖シテ生存競爭ガ激シクナッテ、
  サウシテ腕力ガ世界ヲ支配スル時代ガ起ッテ來テ、茲ニ男性
  中心ノ世界ガ生レテ來テ、强者ノ力ガ卽チ權利デアル「マイ
  ト、イズ、ライト」卽チカガ權利デアルト云フ、斯ノ如キ現代ノ
  社會ガ生レテ來テ、最モ弱キ婦人ハ長イ間虐ゲラレテ、サウ
  シテ今日婦人ハ全ク〓倒シタル地位ニ至ッタノデアリマス、
  サウシテ男ハ尊クテ、女ハ卑シク、男ハ專制君主デアル、女ハ
  奴隷ブアルト云フ狀態ガ、過去三千年ノ間人類ノ歴史ニ於
  テ續イテ來タ、併ナガラ斯ノ如キ狀態ガ果シテ正シイモノデ
  アルカ、私ハ婦人ガ非常ナル壓制ト暴虐ノ下ニ屈服シテ來
  タト云フコトハ、男性ガ其力ニ依ッテ斯ノ如キ社會、法律制
  度ヲ作リ上ゲタノデアルガ、是ハ女性ノ不幸許リデハナイ實
  ハ人類ノ大ナル不幸デアッタト思フノデアル、吾々ハ人類ノ進
  步ト幸福ノ爲ニ、更ニヨリ善キ所ノ社會ト、法律ヲ考ヘナケ
  レバナラナイ時ガ來テ居ルノデアル、ソレハ正義ト人道ヲ基
  礎トスル所ノ男女均等ノ社會デナケレバナラヌト信ズルノデ
  アリマス、男女兩性ガ均等協力ノ社會ニ於テノミ、眞ノ人類
  ノ進步文明ガ培ハレルノデアルト思ヒマス、婦人ガ參政權ヲ
  得テ政治ニ生キルト云フコトハ、卽チ此時代ヲ開拓スベキ所
  ノ第一ノ關門デアルト信ズルノデアリマス、今日ノ議會ガ果
  シテ此案ヲ容ルヽダケノ理想アリヤ否ヤハ私ノ知ラナイ所デ
  アリマスガ、如何ニ此案ガ帝國議會ニ迎ヘラレ、如何ニ現代
  ノ婦人ノ力ガ政治的ニ改善サレルカト云フコトハ、卽チ諸君
  ノ任務デアルト思ヒマス、玆ニ此建議案ノ趣旨ヲ說明シテ
  諸君ノ御贊同ヲ得タク思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=104

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• 105・鈴木錠藏君

  ○鈴木錠藏君　本案ハ濱田國松君外八名提出、市制中
  改正法律案外五件ノ委員ニ、併セテ付託セラレンコトヲ望
  ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=105

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• 106・副議長(松田源治君)

  ○副議長(松田源治君)　鈴木君ノ動議ニ異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  〇 所議長(松田源治君)異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ
  如ク決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=106

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• 107・鈴木錠藏君

  ○鈴木錠藏君　殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ動議ヲ提出
  致シマス
  〔「贊成」「貧成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=107

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• 108・副議長(松田源治君)

  ○副議長(松田源治君)　殘餘ノ日程延期ニ異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=108

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• 109・副議長(松田源治君)

  ○副議長(松田源治君)　異議ナイト認メマス、仍テ殘餘ノ
  日程ハ延期ト決シマシタ、諮問事項ガアリマス、第五部選出
  豫算委員中野正剛君ヨリ豫算委員、辭任ノ申出カアリマ
  ス、許可スルニ異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X03019230313&spkNum=109

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• 110・副議長(松田源治君)

  ○副議長(松田源治君)　異議ナイト認スマス、仍テ其部ノ
  諸君ハ速ニ補缺選舉ヲ行ヒ、御屆アランコトヲ望ミマス、次
  ノ日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ是ニテ散會
  午後五時三十四分散會
  衆議院議事速記錄第二十九號中正誤
  頁段行誤正
  六三六上二八得ラレナイ得ラレ
  同同三四政治的
  同中一二過去ノ行衍衍
  同同一一二是ハ現ニ
  六五四下十四行以下二十五行マデ衍
  六六〇上三十二行以下四十五行マデ衍
  六六三中十六行以下二十九行マデ行

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