第47回帝国議会　衆議院　本会議　第6号　大正12年12月19日

1. 会議録本文

本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。

• 000・会議録情報

  大正十二年十二月十九日（水曜日）午後一時二十二分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　議事日程　第五號　大正十二年十二月十九日
  　　　午後一時開議
  　第一　大正十二年勅令第四百九號（承諾を求むる件）（府縣會議員任期の件）（貴族院送付）
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　大正十二年勅令第四百三號（承諾を求むる件）（治安維持の爲にする罰則の件）（貴族院送付）
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　大正十二年勅令第四百七十一號（承諾を求むる件）（株主名簿を喪失せる會社の件）（貴族院送付）
  　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　大正十二年勅令第四百七十五號（承諾を求むる件）（法人の破産宣告に關する件）（貴族院送付）
  　第八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=0

  ---

• 001・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔書記朗讀〕
  一去十七日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左ノ
  如シ
  大正十二年勅令第四百九號(承諾ヲ求ムル件)
  (府縣會議員任期ノ件)
  大正十二年勅令第四百三號(承諾ヲ求ムル件)
  (治安維持ノ爲ニスル罰則ノ件)
  大正十二年勅令第四百七十一號(承諾ヲ求ムル
  件)(株主名簿ヲ喪失セル會社ノ件)
  大正十二年勅令第四百七十五號(承諾ヲ求ムル
  件)(法人ノ破產宣告ニ關スル件)
  一今十九日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左ノ
  如シ
  非常徵發令(承諾ヲ求ムル件)
  大正十二年勅令第四百五號(承諾ヲ求ムル件)
  (暴利取締ノ件)
  一議員ヨリ提出セラレタ、ル議案左ノ如シ
  關東地方ノ震災ニ罹リタル者ニ對スル債權ニ關
  スル法律案
  提出者中野寅吉君
  (以上十二月十八日提出)
  露國政變及事變ニ關スル被害者救濟竝對露貿易
  企業促進ニ關スル建議案
  提出者川崎克君柳中次郞君
  鈴木久次郞君本田恆之君
  山道襄一君佐々木平次郞君
  松井鉃夫君平出喜三郞君
  加藤定吉君〓水留三郞君
  (以上十二月十五日提出)
  現役ヲ終リタル在郷軍人ニ選擧權附與ニ關スル
  建議案
  提出者津野田是重君八田宗吉君
  山口義一君久下豐忠君
  志賀和多利君櫻內幸雄君
  (以上十二月十六日提出)
  國政ノ大改造ニ關スル建議案
  提出者荒川五郞君
  輸入稅免除廢止ニ關スル建議案
  提出者小橋藻三衞君砂田重政君
  震災豫防調査機關設置ニ關スル建議案
  提出者星島二郞君
  燒失遊廓再興不許可ニ關スル建議案
  提出者松山常次郞君田川大吉郞君
  橫山勝太郞君
  (以上十二月十七日提出)
  農務省新設ニ關スル建議案
  提出者天春文衞君中倉万次郞君
  長田桃藏君西村正則君
  八田宗吉君守屋松之助君
  川崎克君佐久間啓莊君
  齋藤宇一郞君土井權大君
  (以上十二月十八日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  支那人誤殺事件ニ關スル質問主意書
  提出者仙波太郞君
  上海無線電信臺建設事件ニ關スル質問主意書
  提出者仙波太郞君
  (以上十二月十五日提出)
  一去十六日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員伊坂秀五郞君提出町村長ニ對スル大
  正四年乃至大正九年ノ戰役ニ因ル論功行賞ニ關
  スル質問ニ對スル答辯書
  町村長ニ對スル大正四年乃至大正九年ノ戰後
  ニ因ル論功行賞ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年十二月十二日
  提出者伊坂秀五郎
  贊成者池田猪三次
  外三十名
  町村長ニ對スル大正四年乃至大正九年ノ
  戰役ニ因ル論功行賞ニ關スル質問主意書
  大正四年ヨリ同九年ニ至ル戰役ニ因ル論功行賞
  ハ既ニ各關係方面ニ於テ其ノ發表ヲ見タルニ最
  密接ノ關係ヲ有セシ町村長ニ對スル論功行賞ノ
  未タ發表ナキハ民心統治ノ上甚タ遺憾ニ堪ヘサ
  ルナリ之ニ對スル政府ノ所見如何
  右及質問候也
  大正十二年十二月十六日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員伊坂秀五郞君提出町村長ニ對スル大
  正四年乃至大正九年ノ戦役ニ因ル論功行賞ニ關
  スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員伊坂秀五郞君提出町村長ニ對スル
  大正四年乃至大正九年戰役ニ因ル論功行賞ニ
  關スル質問主意書ニ對スル答辯書
  町村長ニ對スル大正四年乃至大正九年戰役ニ因
  ル論功行賞ハ旣ニ本月四日賞勳局ニ於テ之ヲ發
  表セリ
  右及答辯候也
  大正十二年十二月十六日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲茲ニ揭
  載ス〕
  一去十五日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
  第四部選出請願委員岡田伊太郞君(鐸木三
  郞兵衞君補闘)
  第七部選出請願委員佐々木十秀君(正木照
  藏君補闕)
  第七部選出請願委員齋藤小十郞君(門屋尙
  志君補闕)
  第七部選出懲罰委員藤井啓一君(野田文一
  郞君補闕)
  第九部選出請願委員高橋久次郞君(鈴木周
  三郎君補闕)
  一去十五日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  帝都復興計畫法案外二件委員
  小田切磐太郞君
  小鹽八郞右門衞君
  委員長高橋光威君理事宮崎三之助君
  作間耕逸君
  高木正年君
  震災ニ因リ租稅ヲ減免セラレタル者ノ法令上ノ
  納稅資格要件ニ關スル法律案外一件委員
  委員長石川立三君理事舞田壽三郞君
  保險會社ニ對スル貸付金ニ關スル法律案外一件
  委員
  熊谷
  前田哲米直米太藏太君君君
  委員長廣岡宇一郞君理事河上
  飯塚春太郞君
  奧村安大郞君
  東京帝國大學臨時政府支出金繰入ニ關スル法律
  案委員
  委員長小山田信藏君理事宮澤長治君
  臨時物資供給令(承諾ヲ求ムル件)外一件委員
  一宮房治郞君
  委員長田邊熊一君理事長谷場敦君
  上田彌兵衞君
  大正十二年勅令第四百十號(承諾ヲ求ムル件)
  (租稅減免ノ件)委員
  原夫次郞君
  委員長中西六三郞君理事大林森次郞君
  砂田重政君
  一去十五日東京帝國大學臨時政府支出金繰入ニ關
  スル法律案委員樋口秀雄君辭任ニ付其ノ補關ト
  シテ佐久間啓莊君ヲ大正十二年勅令第四百十號
  (承諾ヲ求ムル件)(租稅減免ノ件)委員野呂駿
  三君辭任ニ付其ノ補國トシテ岡田伊太郞君ヲ同
  委員岡本幹輔君辭任ニ付其ノ補闕トシテ由本厚
  三君ヲ保險會社ニ對スル貸付金ニ關スル法律案
  外一件委員小坂順造君辭任ニ付其ノ補鬪トシテ
  志賀和多利君ヲ震災ニ因リ租稅ヲ減免セラレタ
  ル者ノ法令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案ハ
  一件委員廣瀨鎭之君辭任ニ付其ノ補闕トシテ益
  谷秀次君ヲ臨時物資供給令(承諾ヲ求ムル件)外
  一件委員山道襄一君辭任ニ付其ノ補闕トシテ粟
  山博君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
  一去十五日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
  大正十二年勅令第四百一一十四號(承諾ヲ求ムル
  件)(手形割引損失補償ノ件)
  指田義雄君石井三郞君
  秋本喜七君穴水要七君
  木下謙次郞君成田榮信君
  改野耕三君加藤重三郞君
  米澤與三次君松本孫右衞門君
  中山佐市君橋本喜造君
  齋藤巳三郞君山邊常重君
  松井鉃夫君渡邊昭君
  土居通憲君納富陳平君
  一去十六日辭任シタル常任委員左ノ如シ
  第六部選出豫算委員鈴木富士彌君
  一去十六日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  大正十二年勅令第四百二十四號(承諾ヲ求ムル
  件)(手形割引損失補償ノ件)委員
  (石井三郞君
  委員長指田義雄君理事穴水要七君
  土居通憲君
  一去十六日震災ニ因リ租稅ヲ減免セラレタル者ノ
  法令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案外一件委
  員八並武治君辭任ニ付其ノ補闕トシテ野村嘉六
  君ヲ大正十二年勅令第四百十號(承諾ヲ求ムル
  件)(租稅減免ノ件)委員上塚司君辭任ニ付其ノ
  補關トシテ穴水要七君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定
  セリ
  一去十七日常任委員補闕選舉ノ結果左ノ如シ
  第六部選出豫算委員正木照藏君(鈴木富士
  彌君補關)
  一去十七日臨時物資供給令(承諾ヲ求ムル件)外一
  件委員正木照藏君辭任ニ付其ノ補關トシテ橫山
  勝太郞君ヲ帝都復興計畫法案外二件委員磯貝浩
  君辭任ニ付其ノ補關トシテ古賀三千人君ヲ孰レ
  モ議長ニ於テ選定セリ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=1

  ---

• 002・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ヨリ會議ヲ開キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=2

  ---

• 003・指田義雄

  ○指田義雄君　只今大正十二年勅令第四百二十四
  號特別委員會ヲ開キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=3

  ---

• 004・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　委員會ヲ開クノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=4

  ---

• 005・指田義雄

  ○指田義雄君　サウデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=5

  ---

• 006・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　承知致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=6

  ---

• 007・指田義雄

  ○指田義雄君　ドウゾ委員諸君ハ第二委員室ニ
  御集リヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=7

  ---

• 008・原夫次郎

  ○原夫次郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=8

  ---

• 009・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　原君何デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=9

  ---

• 010・原夫次郎

  ○原夫次郞君　日程ニ入ル前ニ總理大臣ノ御出席
  ヲ願ツテ置キタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=10

  ---

• 011・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　要求致シテ置キマス-國
  務大臣ノ演說ニ對シマスル質疑ハ今日モ尙ホ繼
  續スル筈デアリマシタガ、通告者ヨリソレ〓〓取
  消サシマシテ、殘ス所一人モ無クナリマシタ、仍
  テ今日ハ日程ヨリ之ヲ除キマシタ、是ヨリ日程ニ
  入リマス、日程第一、大正十二年勅令四百九號、承
  諾ヲ求ムル件、貴族院送付、之ヲ議題ト致シマス
  第大正十二年勅令第四百九號(承諾
  ヲ求ムル件)(府縣會議員任期ノ
  件)(貴族院送付)
  大正十二年勅令第四百九號
  朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ
  經テ帝國憲法第八條第一項ニ依リ東京府神奈川
  縣等ニ於ケル現任府縣會議員ノ任期等ニ關スル
  件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
  御名御璽
  攝政名
  大正十二年九月十二日
  內閣總理大臣兼伯爵山本權兵衞
  務大臣
  務大臣子爵後藤新平
  部臣岡野敬次郞
  軍大大大臣財部彪
  鐵司遞農陸海文內外軍男爵田中義
  商務臣臣臣男爵田健治郞
  法信犬養毅
  大大大大大平沼騏一郞
  道臣臣
  山之內一次
  大藏臣井上準之助
  勅令第四百九號
  東京府、神奈川縣、埼玉縣、千葉縣及靜岡縣ニ於
  ケル現任府縣會議員ハ其ノ任期滿了スルモ後任
  議員選擧ノ期日ノ前日迄在任ス
  前項ニ規定スル府縣ニ於テハ前項ニ規定スル選
  擧ノ期日ノ前日迄府縣會議員ノ補關選擧ハ之ヲ
  行ハス
  第一項後任議員選擧ノ期日ハ內務大臣之ヲ定ム
  第一項ニ規定スル府縣ニ於テハ大正十二年ニ調
  製スヘキ府縣會議員ノ選擧人名簿ニ關スル府縣
  制第九條乃至第十二條ニ規定スル期日及期限ハ
  內務大臣ノ定ムル所ニ依ル
  附則
  本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=11

  ---

• 012・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　後藤內務大臣
  〔國務大臣子爵後藤新平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=12

  ---

• 013・後藤新平

  ○國務大臣(子爵後藤新平君)　茲ニ提出ニナリマ
  シタ大正十二年勅令第四百九號、之ニ對シマシテ
  承諾ヲ求ムルノ理由ヲ申述ベマス、本年九月ノ大
  震災ノ爲ニ、豫定ノ期日ニ府縣會議員ノ選擧ヲ行
  ヒ又法ノ定ムル所ニ依ツテ、九月十五日ノ現在
  ニ依リ正確ナル選擧人名簿ヲ調製スルコトハ殆
  ド不可能ノ實況ニ陷シルモノ東京府、神奈川縣、
  埼玉縣、千葉縣、靜岡縣ニ亙ツテ居ルノデアリマ
  ス而モ强テ選擧ヲ行ヒ、又ハ選擧人名簿ヲ調製
  セントセバ災害ノ最後ノ處置ヲ完ウスルコト能
  ハザルノミナラズ、選擧權ノ有無ニ關シ、所在、
  爭議續出スルノ虞アルヲ免レヌノデアリマス、斯
  ノ如キハ公共ノ安定ヲ保持シ、又ハ災厄ヲ避クル
  所以ノ途ニアラズト認メマシテ、憲法第八條第一
  項ニ依リ、緊急勅令ノ公布ヲ仰ギタル次第デアリ
  マス爾來靜岡縣ニ對シマシテハ、名簿調製期日
  ヲ十月十日、選擧期ヲ十月十四日、埼玉縣、千葉
  縣ニハ名簿調製期日ヲ十月十五日、選擧期日ヲ埼
  玉ニ對シテハ明年一月二十五日、千葉ニ對シテハ
  明年一月二十日ト定メマシタ、東京、神奈川ノ二
  府縣ニ對シマシテハ未ダ名簿調製及選擧ノ期
  日ヲ定ムルノ時期ニ達セナイノデアリマス、右
  ノ事情デアリマスカラ、本勅令ヲ尙ホ將來ニ向ヒ
  效力ヲ有セシムルノ必要アルヲ以テ、茲ニ帝國憲
  法第八條第二項ノ命ズル所ニ從ヒ、帝國議會ノ承
  認ヲ求ムルノ必要ガアリマシテ、提案致シマシタ
  ノデアリマス、宜シク御審議ノ上、協賛ヲ與ヘラ
  レンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=13

  ---

• 014・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　此際新ニ議席ニ著カレマシ
  タル議員ヲ御紹介致シマス、其氏名ヲ讀上ゲマス
  カラ御起立ヲ願ヒマス-新潟縣第六區選出議員
  建部遯吾君
  〔建部遯吾君起立〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=14

  ---

• 015・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　只今議題ニナツテ居リマズ
  ル案ニ付テ、質疑ノ通告ガアリマス、其發言ヲ許
  シマス、原夫次郞君
  〔原夫次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=15

  ---

• 016・原夫次郎

  ○原夫次郞君　本員ハ只今議題ト相成ツタル緊急
  勅令ノ事後承諾案ニ關シテ、特ニ總理大臣ノ御答
  辯ヲ得タイ點ヲ質疑致スノデアリマス實ハ只今
  本員ガ質疑セントスル所ノ案件ニ付キマシテハ
  旣ニ總理大臣ノ過日ノ演說ニ對シテ、質疑通告ヲ
  致シテ置イタノデアリマスガ、遺憾ナガラ本日
  マデ其機會ヲ得ナカツタ爲ニ、本日此緊急勅令
  ニ關スル質疑ヲ致ス次第デアリマス、本員ガ第一
  ニ御尋致シタイト思フノハ彼ノ緊急勅令中、現
  內閣ニ於テ既ニ事後承諾ヲ求ムルニ及バザルモノ
  トシテ、閣議ヲ決定致シタト云フコトヲ仄聞
  致シテ居ルノデアリマスガ、其仄聞シタル所ノ
  不提出ノ緊急勅令三件、卽チ彼ノ戒嚴令ノ一部
  適用ニ關スル緊急勅令、竝ニ此緊急勅令ヲ廢シタ
  ル緊急勅令、尙ホ外ニ支拂猶豫ニ關スル彼ノ「モ
  ラトリウム」ニ關スル緊急勅令、此三緊急勅令
  ニ付テ不提出ノ意見ヲ持ツテ居ルト云フコトデ
  アリマスガ、旣ニ諸君モ御承知ノ如ク、彼ノ
  大震災以後應急ノ手段トシテ緊急勅令ヲ發シ
  タルモノ合計十有六件ニナツテ居ルノデアリ
  マチ、此多數ノ緊急勅令ハ兄弟若クハ姉妹案
  デアリマシテ、殆ド是ハ震災直後ノ善後策トシテ
  發布セラレタル殆ド不可分的ノモノデアル其中
  ニ就キマシテハ或ハ直接物質的ノ救濟策トシテ發
  布セラレタルモノアリ、或ハ精神的ノ善後策トシ
  テ發布セラレタルモノアリ是等ノ中デ先程申述
  ベマシタヤウニ、三件ニ付テ分割的ニ此議會ニ提
  案セザリシ理由ニ付テ、本員ガ茲ニ總理大臣ニ伺
  ハントスルノハ、是ハ他ノ法案ト趣ヲ異ニシテ、我
  ガ帝國議會ノ直接審議權ニ重大ナル關係ヲ及ボス
  事柄デアル、言葉ヲ換ヘテ申セバ若シ政府所見ノ
  如ク之ヲ提出セザルニ於テハ、取モ直サズ我ガ帝
  國議會ノ審議權ヲ蹂躙スルコトヽナル案件デアリ
  マス就キマシテハ何ガ故ニ斯ノ如キ我ガ帝國
  會ノ審議權ヲ蹂躪スル所見ヲ持シテ、現內閣ハ此
  臨時議會ヘ臨ンデ居ルノデアルカト云フコトヲ御
  尋致ス斯ノ如キ次第デアリマスカラ、先ヅ私ハ不
  提出ト決定シタ案其物ニ付キマシテ、如何ナルモ
  ノデアルカヲ茲ニ冐頭ニ申上ゲル義務ガアルト心
  得ルノデアリマス、其不提出ノ緊急勅令ハ闇カラ
  闇ヘ葬ラレテ居ル所ノ法律デアル未ダ本議場ニ
  於テ政府カラ此不提出ノ緊急勅令、重大ナル此緊
  急勅令ニ關シテハ殆ド一言半句モ說明スル所ナ
  ク吾々議員ノ側ニ於テモ、未ダ之ニ就テ質問ナ
  セシ者ガ無イノデアリマス本員ノ如キハ敢テ言
  ヲ好ムガ爲デハナイ、吾々議會ノ一員ト致シマシ
  テ御互ニ斯カル重大ナル案件ニ付テハ之ヲ閑却
  スルコトハ國民ニ對シテモ相濟マナイ所デアル
  ト思フノデアリマス一體彼ノ戒嚴令、戎厳令
  ト申スノデアリマスガ、是ハ言葉ノ使方ガ惡イ
  ノデ、本當ノ戒嚴令デハナイ、本當ノ戒嚴令ナ
  ルモノハ日〓、日露、兩戰役ノ場合ニ於テ發布ニナ
  ツタモノガ本當ノ戒嚴令デアリマシテ、今度ノ戒
  嚴令ノ如キハ卽チ、戒嚴令ヲ適用シテ法律ニ依ツ
  テ定ムベキ所ノ緊急勅令デアルノデアリマス、此
  緊急勅令ノ內容ヲ見ルト諸君モ旣ニ御承知ノ如
  ク一定ノ地域ニ限リ別ニ勅令ノ定ムル所ニ依リ、
  戒嚴令中必要ノ規定ヲ適用スルコトヲ得ト云フ規
  定ニナツテ居ル、而シテ此緊急勅令ニ基イテ、普通
  ノ勅令ヲ以テ、戒嚴令ノ一部適用ノコトヲ定メテ
  アルノデアル、其一部適用ノ法令中ニハ卽チ右ノ
  緊急勅令ニ依リ左ノ區域ニハ戒嚴令第九條及第十
  四條ノ規定ヲ適用スル、但シ同條中、司令官ノ職務
  ハ東京衞皮司令官之ヲ行フ、東京市、荏原郡、豐多
  摩郡、北豐島郡、南足立郡、南葛飾郡、斯ウ云フ規定
  ニナツテ居ル、デアリマスカラ、全體斯ノ如キ重大
  ナル緊急勅令ヲ發布スルニ當リマシテハドウシ
  テモ此緊急勅令其モノヽ中ニ此重大ナル規定ヲ爲
  シ斯ノ如キ地域ト竝ニ施行規則ニ關シマシテハ
  之ヲ普通ノ勅令ニ讓ルト云フコトハ到底出來ナイ
  コトデアルノデアル、斯ノ如キ見地カラ見ルナラ
  バ此戒嚴令一部適用ニ關スル緊急勅令ナルモノ
  ハ憲法上違反ノ事柄ヲ規定シテ居ル緊急勅令ト
  見ル外ハナイノデアリマス、聞ク所ニ依ルト此戒
  嚴令一部適用ニ關シテ定メタ所ノ法式ハ曩ニ「ポ
  ーツマス」條約ノ騒ギノアツタ場合ニ、當時ノ政
  府ガ專斷ナル法律ノ規定方ヲ致シタノデアツテ、
  今般其先例ヲ踏襲シテ、斯ノ如キ憲法上疑ハシキ
  規定ヲ爲シテ居ルモノト思ハレル私ガ玆ニ質問
  セントスル所ノ彼ノ緊急勅令ニ關シテ、先ヅ其形
  式ヲ瞥見シタ所デ、旣ニ憲法上斯ノ如ク疑ハシク、
  本員等ノ見ル所ヲ以テスレバ違法デアルト思ハレ
  ルヤウナ形式ノ勅令デアルノデアリマス、而シテ
  此緊急勅令ガ發布セラレテカラ、震災地ニ於キマ
  シテ此勅令發布ノ影響トシテ、如何ナル不祥事ガ
  起ツタカト云フコトハ、玆ニ喋々申スマデモナキ
  事柄デアル、彼ノ甘粕事件ノ如キ、又自警團ノ暴
  行ノ問題ノ如キ、幾多人心ニ不安ノ念ヲ持タセタ
  所ノ其原因ヲ爲シタルモノハ此戒嚴令一部適用
  ニ關スル此緊急勅令施行中ニ屬シテ居タノデアリ
  マイ、而シテ此戒嚴令一部適用ノ緊急勅令ハ去
  ル十一月十五日ヲ以テ、突如トシテ之ヲ廢止スル
  ト云フ更ニ緊急勅令ヲ發布致シタノデアル其十
  五日ニ發布セラレタル當時ハ如何ナル時デアツタ
  カト申セバ此時ハ現ニ我ガ帝國議會召集令ガ發
  布ニナツタ後ニ屬シテ居ルノデアル、此緊急勅令
  廢止案ガ樞密院ニ廻リマシタ際ニ於テ、樞密院ト
  政府トノ間ニハ色〓經緯ガアツテ、色々ノ質問應
  答ガアツタト云フコトデアル本員ノ仄聞スル所
  ニ依ルト、先ヅ樞密院測ニ於テハ此廢止案ニ對シ
  三ツノ質疑ヲ發シタト云フコトデアル、第一ニハ
  戒嚴令一部適用廢止後ニ於ケル震災地域ノ保
  安ノ點ハ如何デアル現ニ此向寒ノ季節ニ際シ
  テ、震災民ガ寒氣ト飢餓ニ泣クガ如キ虞ハナイ
  カ、又政府及民間ノ事業ガ縮小ノ結果、失業
  者ガ激增スル虞ハナイカ、又思想ガ險惡ニ向フ傾
  向等モ懸念セネバナラナイ、故ニ今少シ形勢ノ推
  移ヲ見テ、臨時議會マデ之ヲ存續スベキモノデナ
  イカドウカト云フコトガ第一ノ質問デアツタト云
  フコトデアル、第二ニハ此緊急勅令ハ最近ノ帝國
  議會ニ提出セナイデ、緊急勅令ヲ以テ廢止スルト
  云フコトニ、先例ガ敢テ無イノデハナイケレド
  モ、憲法上議論ノアル所デアツテ、其先例ハ甚ダ
  好マシカラナイ先例デアル、又戒嚴令施行ニ關ス
  ル緊急勅令ハ憲法第八條ノ要項ヲ備ヘテ居ルコト
  ハ明カデアルガノ廢止ノ緊急勅令ガ果シテ憲法第
  八條、卽チ公安維持、議會召集不能ノ要件等ヲ備
  ヘテ居ルヤ否ヤ、大ナル疑問デアル殊ニ今回ハ
  臨時議會ノ召集モ旣ニ其日取ヲ決定シテ居ルデハ
  ナイカ、今日强テ此緊急勅令ヲ廢止スル必要ハ無
  イヂヤナイカト云フ議論ガ第二點デアツタト云フ
  コトデアル第三ニハ政府ハ此廢止シタル緊
  急勅令ヲ臨時議會ニ提案スルノデアルカドウデ
  アルカ、此三點ガ樞密院デ大ニ議論トナツタ所
  デアラウト思フ、之ニ對シテ政府ノ答辯致シタ
  ル所ハ先ヅ此緊急勅令ヲ以テ先ノ緊急勅令ヲ
  廢止スルト云フコトハ專ラ先例ニ基クモノデアツ
  テ、學說上モ差支ナイモノデアルト思フ、又目下
  戒厳令ヲ廢止致シテモ、前途不安ノ念慮ハ有セナ
  イノデアル、次ニ此緊急勅令ヲ臨時議會ニ提案ス
  ルヤ否ヤハ未ダ決定シタル意見ヲ持タナイノデア
  ル斯ウ云フ答辯ニ依リマシテ、樞密院ハ兎モ角
  モ之ニ對シテ承認ヲ與ヘテ、結局先ノ戒嚴令一部
  適用ニ關スル緊急勅令ハ廢止ニナツタト云フコト
  デアルノデアリマス、是ニ於テカ此緊急勅令ヲ廢
  止スルノニ緊急勅令ヲ以テスルノハ、如何ナル憲
  法上ノ理論ニ基クノデアルカト云フ疑問ヲ起サヾ
  ルヲ得ナイノデアリマス憲法ノ第八條ニ依リマ
  スルト、本員ガ申ス迄モナク公共ノ安寧ヲ維持ス
  ル爲メ、緊急刺令ヲ出サナケレバドウシテモ收マ
  リガ付カナイノデアルカラト云フノデ、議會ノ協
  賛ヲ經ルニ不可能ノ狀況ニアル場合ニ於テ、之ヲ
  政府ニ許シテ居ルノデアリマス、然ルニ此緊急勅
  令ノ廢止勅令ナルモノハ其當時果シテ此條件ヲ
  充タシテ居ルカドウカト云フナラバ寧口是
  ハ充タシテ居ナイ所ノ緊急勅令ト言ハザルヲ
  得ナイ、斯ノ如ク先ヅ出發點ニ於テ、先キノ
  緊急勅令ヲ以テ戒嚴令一部適用ノ勅令ヲ發シ
  テ居ル其勅令ヲ當議會ニ提案シナケレバナ
  ラナイ所ノモノデアルト云フ議論,次ニ之ヲ廢止
  スルニ至ツタル緊急勅令ハ、果シテ緊急勅令トシ
  テ取扱ツテ宜シイ勅令デアツタカドウカト云フ問
  題ガ、十分ニ此勅令自體ニ於テ、旣ニ議論ノアリ、
  疑ノアリ、違法ノ嫌ノアル勅令デアリマス(「學校
  ノ講堂デヤリ給へ」ト呼フ者アリ)議會ノ權限ニ
  關スル問題ダ、權限ニ關スル問題デ諸君ノ爲ニ吾
  輩ガ辯ジテ居ルノダ-斯ノ如ク違法ノ疑アリ、
  議論ノアル所ノ緊急勅令自體其モノガ旣ニ布カ
  V、然ルニ政府ハ此違法ノ嫌アル所ノ緊急勅令全
  部ヲ我ガ帝國議會ニ付議セズシテ-我ガ帝國議
  會ニ提案セズト閣議ヲ決定致シテ居ルト云フコト
  デアルノデアル而シテ其理由トスル所ヲ聞クノ
  二、先ヅ其不提出ノ理由ト致シテハ旣ニ從來ノ
  政府ニ於テ先例ノアル所デアル又憲法上ノ純理
  論ト致シナモ提出スベキヤ提出スベカラザルヤ
  ト云フコトニ付テハ五分々々ノ論據ガアルノ
  デアル、斯ノ如キ次第デアルガ故ニ、今政府ガ此
  廢止緊急勅令ヲ提案セズト雖モ、政府ニ於テハ其
  提案セザリシ所ノ緊急勅令ガ、若シ不都合ナモノ
  デアツタトスルナラバ宜シク帝國議會ハ此宜シ
  クナカツタ勅令テアルト云フ故ヲ以テ、政府ハ十
  分ニ責任ヲ負フモノデアル、決シテ不提出ノ
  爲ニ政府ガ責任ヲ回避スルモノデハナイノデ
  アル一體此緊急勅令ヲ提出シナイト云フ爲
  ニハ政府ハ決シテ責任ヲ回避スルモノデハナ
  イノデアル斯ウ云フ其三箇ノ理由ニ基イテ
  不提出ヲ聲明致シテ居ルノデアリマス、所デ
  吾々ノ考フル所ニ依リマスルナラバ第一番ニ此
  憲法上ノ議論ニ致シマシテ、五分々々ノ議論ガア
  ルナドト云フコトハ、是ハ本當ト小理窟ヲ言フ所
  ノ似テ非ナル憲法論者ノ議論デアル、一體其憲法
  デハ言フ迄モナク、立法事項ト勅令事項ハ定マツ
  テ居ルノデアル、故ニ緊急勅令ハ從來多クノ學者
  ノ言ウテ居ルガ如ク、是ガ假リノ法律デアル、
  時的若クハ暫定的ノ法律デアル、此假法律、時
  的法律、暫定的法律ト云フ此名稱自體デ明カデア
  ルガ如ク、此緊急勅令ニ規定スベキ事項ガ、帝國
  議會ノ協賛ヲ經ナケレバナラナイ事項デアルト云
  フコトハ、ドンナ憲法學者デモ之ニ反スル論議ヲ
  爲スコハハ來ナイノデアル全體我ガ帝國議會
  ハ立法府デアル、立法ノ機關デアル此立法ノ機
  關デアルト云フコトハ同時ニ政府ノ行政ヲ監督
  スル所ノ權限ヲ持ツテ居ルノデアル是ハ殆ド異
  論ノ無イ所デアル彼ノ豫算ノ審議(「要領ヲ質問
  シ給ヘ」ト呼フ者アリ)豫算ノ審議若クハ決算ノ審
  議ノ如キハ是ハ明ニ政府ノ行政ヲ監督スルガ故
  ニ、斯ノ如キ權限ヲ有シテ居ルノデアル若シ議
  會閉會中ニ政府ガ豫備金支出ヲ爲ス場合ニ於テ
  ハ必ズヤ是ガ事後承諾ヲ議會ニ提案シナケレバ
  ナラナイ、丁度ソレト同ジコトニ法律ノ審議權
  ニ至リマシテモ、議會閉會中ニ法律デ以テ規定シ
  ナケレバナラナイ所ノ事項ニ付テ政府ガ一時的、
  暫定的ノ法律ヲ發布シタトシタナラバ議會開會
  卽時ニ其假法律ヲ提案致シテ、議會ノ承諾ヲ得ル
  手順ヲ爲サナケレバナラナイ、是ハモウ憲法上議
  論ノ餘地ノ無イ所デアル··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=16

  ---

• 017・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　原君、成ベクドウゾ質問ノ
  要點ヲ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=17

  ---

• 018・原夫次郎

  ○原夫次郎君(續)　憲法第八條ノ第二項ノ末ノ文
  字ニ拘泥致シマシテ若モ將來ニ效力ヲ存續セシ
  メザラント欲スル所ノ、此旣ニ廢止ニ歸シタル所
  ノモノニ付キマシテハ議會ニ承諾ヲ求メテモ何
  モ效力ハ無イヂヤナイカト云フヤウナ議論ハ是
  ハ所謂憲法第八條ノ第一一項ノ文字ノ末ニ拘泥シ
  タル議論デアツテ、憲法ノ全體ノ趣旨ヲ沒却
  シタル議論ト言ハナケレバナラナイト思フノ
  デアリマス、一體緊急勅令デモ、法律案デモ、
  是ガ發布ヲ爲セバ同時ニ效力ヲ存スルト云フコト
  ハ自明ノコトデアル、緊急勅令ノ如キモ既ニ之ヲ
  發布スルニ當リマシテ、發布スル迄ニ憲法第八條
  ノ第一項ノ條件ニ適合シタルモノデアルカドウカ
  ト云フコトヲ此帝國議會デ審査スル所ノ權限ヲ持
  ツテ居ルノデアル、其緊急勅令ガ發令ニナリマス
  ルナラバ其結果トシテ效力ガ持續シマスノハ
  其法律ヲ廢止スル迄ハ當然效力ヲ存續スベキハ明
  カデアルソレ故ニ此論法ヲ引延バスナラバ帝
  國議會ト致シマシテハ緊急勅令ヲ發令スルニ至
  リタル其要件ヲ、果シテ充タシテ居ルモノデアル
  カドウカト云フコトノ審議權ハ非常ナル必要ノ
  問題デアリマシテ、此發令ガ目下公布セラレタ後
  ニ其效力ガ存續スルカ否ヤト云フ問題ニ至ツテ
  ハ是ハ別問題ト言ハザルヲ得ナイ、(「簡單」「分
  ツタ」ト呼フ者アリ)又緊急勅令不提出ノ場合ニ於
  テ、政府ガ當然責任ヲ負フベキモノデアルナラ
  バ責任ハ敢テ回避スルコトヲ爲サナイ、此議
  論ハ是ハ此場合ニ適應スル問題デハナイ、何トナ
  レバ我ガ憲法ノ條章ニ照シテモ、又公式令ノ第一
  條ニ照シテモ苟モ政府ガ緊急勅令ニ副署ヲ爲シ
  テ居ル以上ハ、其副署ノ結果トシテ大臣責任論ガ
  起ルノデアル大臣ハ其副署ニ依ツテ責任ヲ負フ
  ベキモノデアル何ゾ之ヲ不提出ノ理由ニクツ付
  ケテ責任問題ヲ持出ス如キニ至リマシテハ是ハ
  此場合ノ議論トシテハ相應ハシキコトデハナイノ
  デアル最後ニ不提案ノ理由ト致シテ居ル先例ノ
  問題デアル此先例ニ付キマシテハ本員等ノ
  解スル所ニ據レバ旣ニ此先例ナルモノハ明治四
  十三年ノ帝國議會ノ議ニ依リマシテ、旣ニ打切ト
  ナツテ居ル所ノ先例デアルト存ジテ居ルノデアリ
  甲十、明治四十三年、第二十六帝國議會マデニ於
  キマシテハ彼ノ藩閥內閣、若クハ官僚內閣ガ盛ニ
  續イテ、其結果イツモ政府ノ御都合ノ好イヤウナ
  議論ヲ以テ、此緊急勅令ノ不提出論ヲ固執致シタ
  ノデアル、是ハ藩閥內閣ノ遺物デアツタノデアル、
  所デ明治四十三年、第二十六帝國議會ニ於キマシ
  テ、最モ甚シキハ當時發布セラレテ居ツタ所ノ法
  律ヲ緊急勅令ヲ以テ廢止致シテ、其廢止ノ緊急勅
  令ヲ我ガ帝國議會ノ議ニ付セナカツタ重大ナル案
  件ニ到著致シタノデアル、當時我ガ帝國議會ニ於
  キマシテハ政友會ノ鳩山和夫君外四名ノ者ガ首
  唱致シマシテ一ツノ決議案ヲ提出致シテ居ル其
  決議案ハ滿場一致ヲ以テ本院ヲ通過致シテ居ルノ
  デアル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=18

  ---

• 019・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　原君重ネテ御注意ヲ致シマ
  ス成ベク質問ノ要旨ヲ簡單ニ御述ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=19

  ---

• 020・原夫次郎

  ○原夫次郞君(續)·其決議案ハ-滿場一致ヲ以　テ本院ヲ通過致シマシタル所ノ其決議案ハ卽チ
  「政府ハ憲法第八條第二項ニ基キ廢止シタル緊急
  勅令ヲ速ニ帝國議會ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムヘキ
  モノトス」斯ウ云フ決議ニナツテ居ルサウシマ
  スルト云フト、爾來茲ニ十有三年ノ間未ダ曾テ斯
  ノ如キ不祥事ヲ來シ、斯ノ如ク我ガ帝國議會ノ審
  議權ヲ蹂躪セラレタルコトハナイノデアル然ル
  ニ今回突如トシテ此山本內閣ノ爲ニ、再ビ斯ウ云
  フ非立憲ナル事ヲ繰返サルヽニ至リマシテハ吾
  吾帝國議會ノ員ニ具ハル者ニ於キマシテハ到底
  是ハ默過スルコトノ出來ナイ問題デアル決シテ
  是ハ一政黨政派ノ問題デハナイ、實ニ吾々ノ審議
  權ノ重大ナル權利ニ屬シテ居ル問題デアル政府
  ノ所謂先例ナルモノハ旣ニ申ス如ク、曩ニハ伊藤
  內閣、次ニ山縣内閣、桂內閣、今回ノ山本内閣、
  是等何レモ國民ヲ超越シタル所ノ官僚內閣ニ於
  テ、兎角斯ノ如ク我ガ帝國議會ノ審議權ヲ蹂躪セ
  ントスルガ如キ非立憲ノ擧ニ出ヅルノデアル、
  吾々ハ此場合ニ於テ何處迄モ我ガ帝國憲法政治
  ノ爲ニ又我ガ國家ノ福利ノ爲ニ何處迄モ此點
  ハ追窮シ、何處迄モ此點ヲ問ヒ質シテ、而シテ
  我ガ帝國議會ノ地位ヲ保持シナケレバナラヌ問
  題デアルト思フ、斯ノ如キ次第デ先例々々ト言
  フケレドモ、政府ノ言フ所ノ先例ハ、ソレハ自
  分等ノ方ノ先例ニ過ギナイデ、今日憲法政治ガ
  行ハレ來ツテ居ル其歴史ニ徵シテ、斷ジテ斯ノ如
  キ事ヲ先例ト申ス譯ニハイカナイ、既ニ四十三年
  ニ當リマシテ立憲政治ノ運用ニ任ジテ居ル所ノ我
  ガ帝國議會ノ衆議院ニ於テハ滿場一致ヲ以テ之
  ニ對スル院議ヲ定メテアル卽チ先例ト異ナル所
  ノ打切ノ先例ガ旣ニ決議シテアルノデアル、政府
  ハ和衷協同ノ精神ヲ持スルナラバ我ガ立憲政治
  ノ運用ヲ滑カニセントスル誠意ガアルナラバ何
  故ニ此院議ヲ尊重スルコトナクシテ、今回更ニ官
  僚內閣若クハ閥族內閣ノ遺物ヲ捉ヘ來ツテ、玆
  再ビ憲政ノ逆轉ヲ爲サントスルノデアルカ、本員
  等ハ此點ニ向ツテ怪訝ニ堪ヘナイノデアル(「簡
  單」ト呼フ者アリ)以上申述ベタ所ニ依リマシテ
  政府ガ聲明致シテ居ル所ノ不提出ノ理由ナルモノ
  ハ旣ニ之ヲ打壞シタコトヽ思フ、政府ノ斯ノ如キ
  不提出ノ理由ハ想フニ本當ノ理由デハナクシテ、
  前ニ申述ベマシタ如ク、此不提出ノ勅令中ノ陰ニ
  潜ンデ居ル所ノ色〓ナル不祥事ガアルノデアル
  色ミナル不祥事ヲ世間ニ曝ケ出スコトヲ困難ト致
  シテ、而シテ此憲法第八條第一(項ノ法文ノ陰ニ隱
  レテ唯自己ノ都合好キ政策ヲ遂行センガ爲ニ、
  十有六件ノ澤山ナル勅令中、最モ都合ノ惡キ此物
  令ノミノ不提出ヲナシテ、而シテ我ガ國民ニ對シテ
  是等ノ點ハ闇カラ闇ニ葬リ去ラシメントスルノデハ
  ナイカト云フコトヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマ
  ス、從來山本內閣ハ所謂誠意內閣タト云フコトヲ
  標榜致シテ居ル、又此山本内閣ノ閣員デアル所ノ、
  大養遞相ノ如キニ至リマシテハ現ニ此四十三議
  會ニ於キマシテ院議ヲ以テ定メタ場合ニ於テハ
  當然此院議ヲ尊重シテ居ル所ノ議員ノ一人デァ
  ツタノデアル、旣ニ犬養遞相ノ這入ツテ居ル所ノ
  山本內閣ニ於テ、斯ノ如キ我ガ帝國議會ノ審議權
  ヲ蹂躪スルガ如キ擧ニ出ヅルト云フコトハ洵
  怪シカラナイ事ト申サヾルヲ得ナイ、吾々ノ眼ヲ
  以テスルナラバ、一體此議會ニ於キマシテモ、吾
  吾政黨員ノ側ニ於キマシテモ、只今私ノ述ブルガ
  如キコト、苟クモ議會ノ審議權ニ屬スルガ如キコ
  トハ是ハ第一著ニ先ヅ定メテ置カナケレバナラ
  ナイ事柄デアルト思フ、其他ノ問題ノ如キ、物質
  上ノ問題ノ如キ事柄ニ至リマシテハ、是ハ宜シク
  其時々ノ政策ニ出ヅル問題デアリマセウ、ケレド
  モ既ニ我ガ帝國議會ノ審議權ヲ蹂躪セラルヽガ如
  キニ至リマシテハ何トシテモ此點ハ御互ガ是ノ
  憲政ノ賊トシテ何處マデモ是ト奮闘セザルヲ得ナ
  イ旣ニ我ガ帝國議會ニ於キマシテモ、此故ヲ以
  テ先輩諸子ガ盛ニ此點ニ向ツテ論議セラレタ所ノ
  問題デアル、然ルニ今日ノ有樣ハ如何デアリマヒ
  ウカ、各政黨ノ領袖諸君モ隨分色ミナ問題ニ向
  ツテ御奔走ニナツテ居ルモノデアル、併ナガラ吾
  吾ガ此帝國議會ノ見地カラ申シ、立憲政治ノ
  本義カラ申スナラバ一體是等ノ問題以外ノ問
  題ノ如キハ極メテ小サナ問題デアルト思フ先
  ヅ自己ノ領域ヲ定ムルコトナクシテ、自己ノ領域
  ニ他人ノ侵害スルノヲ防ガズシテ、唯ハ末ニ走ツ
  テ末ノ議論ヲ爲スダケノコトデハ、我ガ立憲政治
  ノ前途ハ洵ニ憂フベキデアルト思フ、是等ノ點カ
  ラ考ヘマスナラバ吾々ノ見ル所ヲ以テシタナラ
  一體彼ノ政權爭奪ノ如キ問題ハ是ハ問題中ノ
  小問題デアリマシテ今日由本內閣ノ實現其モ
  ノ山本內閣ノ現出シタルコトソレ自體ガ既
  吾々帝國議會ヲ侮辱シタモノデアツテ、吾々帝國
  議會ノ意氣地ナサヲ慨歎致サナケレバナラナイ時
  デアル旣ニ多數黨ガ儼乎トシテ在スルニ拘ラズ
  諸外國ノ例ニ倣ハス、議院政治ガ逆轉シツヽアル
  超然內閣ガ出現シ、官僚內閣ガ出現致シテ更ニ色
  色ノ橫暴ヲ極メテ居ル今日デアル然ルニ足等ノ
  橫暴ハ棚ニ上ゲテ置イテ色ミ物質上ノ論議ノミヲ
  致スト云フコトハ吾々院ノ一員ト致シマシテ〓
  歎致シテ居ルノデアル、此不提出ノ問題中ニハ
  今般ノ復興事業ニ關スル物質的、絲經濟的復興ノ外
  二大ニ精神的復興ノ方面ニ於テモ論議致シテ御
  詔勅ノ御趣意ニ報イタイト云フ希望ヲ有シテ居ル
  モノガアル然ルニ拘ラズ是等ノ吾々ノ帝國議
  會ノ當然執ルベキ特權ニ關シテ一大蹂躪ノ事實
  ガアリトスルナラバ之ニ向ツテハドウ
  シテモ吾々ノ更ニ院議ヲ以テ政府ニ迫マルカ、
  更ニ提出ヲ致シテ居ル所ノ各緊急勅令案、此
  點ニ向ツテ解決ガ出來ナケレバ大ニ考慮ヲ費
  サナケレバナラナイ所ノ問題モ數〓アルト思
  フノデアリマスカラ本員ハ此點ニ向ツテ總
  理大臣ニ對シテ相當ナル御答辯ヲ煩ハシタイト
  思フ、本員ノ見ル所ヲ以テスルナラバ是ハ唯
  單ナル憲法上ノ法理論ノミデハナイ、現內閣ノ取
  ツテ居ル所ノ重大ナル政策デアツテ、是等ノ事柄
  、 内一法制局長官ノ理窟上ノ問題トシテ御答辯
  ヲ求メルモノデハナイ、宜シク十分ナル責任ヲ有
  セラルヽ所ノ內閣ノ人ミニ依ツテ、解釋セラルベ
  キ問題デアリマスガ故ニ、何卒總理大臣ノ此點ニ
  關スル答辯ヲ得タイノデアル(「無用々々「簡單簡
  單」ト呼フ者アリ)若シ之ヲ單純ナル憲法上ノ法理
  論トシテ考ヘルナラバ法制局ノ參事官ノ諸君ノ
  如キ人ミハ何レモ此內閣ノ園議ニハ反對デアルト
  思フ併ナガラ既ニ〓議ヲ以テ決定シ、之ヲ法制扁
  (昭和法制局ヲシテ之ニ對シテ何トカ理窟ヲ付
  ケテ吳レト云フコトデアルナラバ先程申シタヤ
  ウニ或ハ先例ヲ持ツテ來ル、或ハ五分々々ノ議論
  ヲ持ツテ來ル、或ハ責任問題等ヲクツ付テ之ヲ欄
  塗セントスルノデアルケレドモ、苟モ是等ノモノ
  ハ理論上ノ理論、卽チ常識ト合致スル所ノ理論テ、
  能ク分ル問題デアル如何ニ總理大臣ガ法律ヲ知
  ラナイト云ウテモ、斯ノ如キ法理論ナルモノハ
  是ハ憲法上ノ「イロハ」ニ過ギナイノデアル、若
  シ何處迄モ何處迄モ山本內閣ガ此不提出ノ意見ヲ
  有スルナラバ本員ノ如キハ一體此山本內閣ノ如
  キモノハ立憲政治ノ名ニ於テ專制政治ノ實ヲ行
  ハントスルモノデアルト申シマシテモ、決シテ
  過言デハナイト思フ、要スルニ本員等ハ山本
  總理大臣ノ此點ニ關スル御答辯ヲ得タ上デ、卽刻
  若クハ近キ將來ニ於テ、我ガ院議ヲ決定スベキ一
  大決議案ノ提出ヲ致サント欲スル者デアリマス
  〔政府委員松本烝治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=20

  ---

• 021・松本烝治

  ○政府委員(松本照治君)　只今ノ御質問ハ、事憲
  法ノ解釋ニ關シマスル極メテ重大ナル問題ト思ヒ
  マスルカラ、出來得ル限リ詳ニ御答ヲシタイト
  思ヒマス、若シ漏レマシタ事ガゴザイマシタナラ
  重ネテ御問ヲ願ヒタイト思ヒマス、原君ノ大
  體ノ御趣旨ハ旣ニ效力ヲ保續セザル緊急勅令
  ヲ、何ガ故ニ議會ニ提出セザルヤト云フコトニア
  ツタカト思ヒマスルガ、又同時ニ政府ノ所見ヲモ
  同時ニ御辯明下サツタヤウデアリマスルノデ、餘
  リ澤山ノ言葉ヲ此點ニハ費ス必要ハナイカト思ヒ
  マス唯〓原君ハ此不提出ノ緊急勅令中、第三百
  九十八號及第四百七十八號、卽チ所謂戒嚴令ナル
  モノト、是ガ廢止ノ勅令ニ付キマシテ、憲法上ノ
  疑義ヲ御質シニナツタヤウニ思ヒマス、是ハ決シ
  テ原君ノ御質問中ノ岐路デハナイ、脇路へ這入ツ
  匁譯デハナカツタラウト思フ、是ハ議會ニハ政府
  ハ提出ヲ致シテ居リマセヌガ、此勅令ニ付キマシ
  テ、勿論、政府ハ責任ヲ持ツテ居ルノデアリマス
  カラ、此點ニ關シテノ御質問ハ恐ラクハ岐路デ
  ハナカツタラウト思ヒマスルノデ、之ニ就テ先ヅ
  御答ヲ致シマス、原君ハ所謂戒嚴令ノ緊急勅令
  ハ施行ノ-適用ノ地域等ニ付キマシテ總テ
  勅令ノ定ムル所ニ依ルト書イテ居ル、是ハ違法デ
  ハナイカト云フ御問ガアツタヤウニ思ヒマスルガ
  是ハ所謂委任勅令ナルモノデアリマシテ、勅令ニ
  法律又ハ法律ニ代ルベキ緊急勅令ガ其細密ノ規定
  ヲ,委任スルコトハ屢〓アルコトデアリマシテ
  此例ヲ一々擧ゲル必要ハナイト思ヒマス、別ニ違
  法ナルコトハ毫モナイト思ヒマス、而シテ原君ハ
  其委任ヲ受ケタ勅令ノ例トシテ、第三百九十九號
  ヲ御擧ゲニナリヤシタガ、此以外ニ第四百一號及
  第四百二號ト云フ勅令モ出テ居リマシテ、時宜ニ
  應ジマシテ、所謂戒嚴令ノ適用ノ地域ヲ變更スル
  或ハ之ヲ擴張シ、或ハ之ヲ縮小スルト云フ必要ガ
  アリマス、此際ニハ極メテ敏速ナル作用ヲ要スル
  ノデアリマス從テ一々此地域ヲ綿密ニ一ツノ緊
  急勅令ニ定メマスルト、極メテ固定的ノモノニナ
  リマシテ、此伸縮自在ト云フコトガ出來マセヌ、此
  種ノ法律ノ性質トシマシテハ、極メテ敏速ニ適用
  ノ地域ヲ變更シナケレバナラヌコトガアリ得ルコ
  トハ言フ迄モナイ、隨テ斯ノ如キコトヲ勅令ニ委
  任シテ居リマスルノハ極メテ宜シイ立法デアル、
  違法ニアラザルノミナラズ、極メテ宜シイ立法デ
  アルト思ツテ居リマス、此點ハ原君ト所見ヲ異ニ
  スル次第デゴザイマス、次ニ原君ハ此緊急勅令ヲ
  廢止致シマシタル緊急勅令、卽チ第四百七十八號
  ニ付キマシテ、種々此樞密院會議ノ模樣等ノ御話
  ガアリマシタガ、此會議ノ模樣ニ付キマシテハ一
  々御答ヲスル限リデハアリマセヌガ、私ノ現ニ知
  ツテ居ル所トハ餘程話ガ違ツテ居リマス、併シ
  其事ヲ一々述ベル必要ハナイノデ、原君ノ御問ハ
  恐ラクハ緊急勅令ヲ廢スルニ緊急勅令ヲ以テシタ
  場合ニ於キマシテ、此後ノ緊急勅令ハ憲法第八條
  ノ要件ヲ具フルモノデアルカドウカト云フコトニ
  アツタカト思ヒマスデ憲法第八條ハ「公共ノ安
  全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲」トアリマス、
  緊急勅令ヲ廢止スルガ如キ勅令ハ公共ノ安全ヲ
  保持スルモノト言ヘルカト云フヤウナ御問デアツ
  タカト思ヒマスガ、抑〓此戒嚴令中ノ必要ノ規定
  ヲ適用シマスルト云フ緊急勅令ハ、非常時ニ於ケ
  ル非常手段デアリマス斯ノ如キ非常手段ヲ執ル
  必要ガナイ、旣ニ平時ニ近キ場合ニ復シタ、此場
  合ニ於キマシテ尙ホ此非常手段ヲ用ヒテ居リマス
  ト云フコトガアリマスレバ是ハ公共ノ安全ヲ保
  持スル所以デナイト云フコトハ當然デアラウト
  思ヒマス卽チ軍規ノ上カラ申シマシテモ、警察
  ノ威信カラ申シマシテモ、總テノ點ニ於キマシテ
  非常手段ヲ要セザル場合ニ非常手段ヲ行フト云フ
  コトハ公共ノ安全ヲ保持スル所以デナイノデ、
  廢スベキトキハ速ニ廢スルコトガ、卽チ公共ノ
  安全ヲ保持スル所以デアラウト思ヒマス此意味
  ニ於キマシテ此廢止ノ緊急勅令ハ立派ニ憲法第
  八條第一項ノ要件ヲ具ヘテ居ルモノト考ヘルノデ
  アリマス次ニ原君ハ豫算外又ハ豫算超過ノ支出
  ノ如キヽ之ヲ議會ニ提出シテ承諾ヲ求ムルノテア
  ル緊急勅令モ亦同ジク承諾ヲ求ムベキモノ將
  來ノ效力ト云フコト、關係ナク提出スベキモノデ
  アルト云フ御話ガアリマシタガ是ハ非常ニ性質
  ガ違フト思ヒマスノデ、豫算外又ハ豫算超過ノ支
  出ノ如キハ一ノ處分デアリマシテ旣ニ效力ヲ
  發揮シ終ツタコトデアリマス、是ハ議會ニ提出シ
  テ承諾ヲ求ムル其承諾タルヤ卽チ單純ナル承
  諾デアル、併ナガラ緊急勅令ニ至リマシテハ其
  效力ハ將來ニ保續サルベキ、或時ノ間效力ヲ持ツ
  所ノ法規デアリマスカラ、之ヲ將來ニ效力ヲ保續
  セシムベキヤ否ヤト云フコトニ付テ、承諾ヲ求ム
  ルコトガ必要デアリマシテ、憲法第八條第二項ニ
  「若シ議會ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ將來ニ
  向テ其ノ效力ヲ失フコトヲ公布スヘシ」トアリマ
  スノハ將來ニ於テ效力ヲ保續セシムル必要アル
  ヤ否ヤニ付テ議會ガ御審議ニナリマシテ、御承
  諾ニナルカナラヌカヲ決メラレルト云フ趣意
  ニ外ナラヌト思ヒマス、若シ此所謂承諾ナル
  モノガ、同時ニ政府ノ責任ヲ解除スルト云フ
  意味ヲモ持ツト云フコトニ致シマスレバ、此二ツ
  ノ條件ハ常ニ爾立シ得ルモノトハ言ヘナイノデア
  リマス、例ヘバ緊急勅令ノ發布ノ場合ニ於キマシ
  テハ極メテ適法デアツ.タ政府ノ責任ハ無イ、併シ
  ガラ將來ニハ效力ヲ保續セシムル必要ガ無イト云
  フヤウニ、議會ガ御認メニナリマシタ時ニハ、議
  會ハ如何ニサレルカ若シ承諾ヲサレナイ.將來
  ノ效力ノ保續ラ要サナイカラ、將來ニ效力ヲ保續
  サセナイト云フ趣意デ御承諾ニナリマセヌト云フ
  コトニナリマスルト責任ノ無イノニ政府ノ責任
  ヲ問フト云フ結果ガ生ズル(ノウ〓〓)反對ニ若シ
  其場合ニ承諾ヲスル卽チ責任ヲ解除スル爲ニ承
  諾ヲスルト云フコトニナリマスルト、保續スベカ
  ラサル勅令ヲ將來ニ保續セシムルト云フ效力ヲ生
  ズル譯デアリマス、卽チ此承諾、不承諾ト云フコ
  トハ將來ノ效力ノ保續ノ爲メノ承諾デアル(ノ
  ウノウ)ト云フコトニ解スル以外ニハ解シヤウ
  ガナイノデアリマス(ノウ〓〓)勿論學說ト
  致シマシテ、此點ニ付キマシテハ反對說ノア
  ルコトハ言フマデモナイ所デアリマス此學
  說上ノ當否ト云フコトヨリモ、政府ハ主トシテ
  先例ニ重キヲ置イテ居ルト云フコトヲ述べマシ
  ク、其事ハ原君ガ代テ旣ニ辯明ヲシテ下スツ
  タノデアリマスガ唯原君ハ第二十六議會ニ於ケ
  ル衆議院ノ決議ナルモノハ卽チ今回ノ場合ニ
  於ケル政府ガ不提出ヲシタコトハ兩立出來ナイ
  所ノ決議デアル卽チ政府ハ院議ヲ尊重セザルモ
  ノデアルト云フ御話ガアリマシタガ、是ハ全然間
  違ツテ居ルコトデアリマスカラ、此點ニ付テ事實
  ヲ御話シナケレバナラヌノデアリマス、第二十六
  議會ニ於キマシテ、當時ノ政府ガ提出シマセヌデ
  シタ所ノ緊急勅令ハ、卽チ法律ヲ力シタ所ノ緊急
  勅令デアリマス、法律ヲ廢シタ所ノ緊急勅令ニ付
  キマシテハ、色々ノ議論ガアリマスガ、寧ロ多數
  ノ說ニ依リマスレバ此緊急勅令ハ議會ノ承諾
  ヲ條件トスルモノデアル若シ議會ガ此緊急勅令
  ヲ承諾シナカツタ時ニハ法律ガ其效力ヲ復活ス
  ルモノデアル、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ法律廢
  止ノ緊急勅令ハ(「簡單」「簡單」ト呼フ者アリ)單ニ
  法律ノ效力ヲ中止シテ居ルマデニ過ギナイト
  云フ說ガアリマスルノデ、是ハ憲法義解其他
  多數ノ著書ガ此說ヲ採ツテ居リマス、當時此
  決議ノ際ニ、提案者ノ鳩山和夫氏ガ述ベラレテ
  居リマスル理由ヲ讀ミマスルト其理由デ
  アリマス、卽チ法律ヲ廢シテ居ル所ノ緊急勅令
  ハ將來ニ於テ效力ノ保續ニ付テ問題ノアル緊急
  勅令デアル斯ノ如キモノヲ提出シナイコト
  ハ不都合デアルト云フ意味ノ說明ラサレテ居ル、
  其意味ニ於テ此決議ハ出來テ居ル卽チ法律廢止
  ノ緊急勅令ヲ提出セザルコトハイケナイト云フ
  コトヲ言ツテ居ラレルノデアリマス、今回ハ法律
  ヲ廢シタヤウナ緊急勅令ヲ提出シナイト云フコト
  ハ一ツモシテ居リマセヌ、全然違フノデ、之ヲ
  以テ先例ト云フコトニ御取リニナツタノハ、事實
  ニ於テ全ク誤ツテ居ルノデアリマスカラ、一言辯
  明シテ置クノデアリマス尙ホ原君ハ此提出不提
  出ヲ議スルニ當ツテ、法制局ニ於テ總テノ參事官
  ガ反對デアツタトカ、色ふノ御話ガアリマシタガ、
  何處デ御聞キニナツタカ知リマセヌガ、私ハ其長
  官トシテ知ツテ居ル所ニ依リマスト、決シテ左樣
  ナコトハナイ、學說トシテ勿論兩方ノ說ハアリマ
  シタガ、併ナガラ多數ハ此不提出ノ先例ニ從フコ
  トヲ可ト認メテ居ルノデアリマス、又是ハ決シテ
  閣議デ決メラレテ法制局ヲ强要シタトカト云フヤ
  ウナコトハナイ、私ガ寧ロ發案ヲシマシテ、閣議
  ヲ乞ウタノデアリマスカラ、此點ハ一言辯明シテ
  置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=21

  ---

• 022・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　口程第二、右議案ノ審查ヲ
  付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=22

  ---

• 023・高見之通

  ○高見之通君　木案ハ政府提出、震災ニ因リ租稅
  ヲ減免セラレタル者ノ法令上ノ納稅資格要件ニ關
  スル法律案外一件ノ委員ニ併セ付託セラレンコト
  ヲ望ミや人
  贊成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=23

  ---

• 024・粕谷義三

  ○議長(粕谷議三君)　見君ノ動議ニハ御異議ナ
  シト認メマス仍テ動議ノ如ク決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=24

  ---

• 025・岩崎勲

  ○岩崎動君　議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提
  出致シマス、卽チ茲ニ第一號、大正十二年度歲入
  歲出總豫算追加案、追第一號、豫算外國庫ノ負擔ト
  ナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、第一號大正十二
  年度歲入歳出總豫算追加、案及特第一號、大正十二
  年度特別會計歲入歲出豫算追加案ヲ一括議題トシ
  テ、本豫算委員長ノ報告ヲ求メ、且ツ其審議ヲ進
  メラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=25

  ---

• 026・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=26

  ---

• 027・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍
  テ動議ノ如ク決シマシタ、卽チ日程ハ變更セラレ
  マシタ、仍テ茲ニ第一號、大正十二年度歲入歳出
  總豫算追加案外三案ヲ一括シテ議題ト爲シ、委員
  長ノ報告ヲ求メマス、豫算委員長山本悌二郞君
  (第一號)大正十二年度歲人歳出總豫算追
  加案(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナル
  ヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  (第一號)大正十二年度歲入歲出總豫算追
  加案
  (特第一號)大正十二年度特別會計歲入歲
  出豫算追加案(委員長報告)
  報告書
  (第一號)大正十二年度歲入歳出總豫算追加案
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決
  致候此段及報告候也
  大正十二年十二月十九日
  豫算委員長山本悌二郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  別紙
  (小字及-ハ委員會修正)
  豫算
  第一條大正十二年度歲入歳出追加額ヲ各
  千百四拾參萬七百八拾五圓
  千四百六拾九萬千參百九拾五圓ト定ム其ノ款
  項ノ金額ハ別册甲號歲入歲出豫算ニ據ルヘシ
  第二條別册乙號所揭ノ費途ハ其ノ規畫スル所
  ニ隨セ大正十二年度以降ノ繼續費ト爲ス
  第三條大正十二年度歲出豫算追加中別册丙號
  所揭ノ費途ハ年度末支出殘額ヲ翌大正十三年
  度ニ繰越使用スルコトヲ得
  甲號歳入臨時部圓
  一-四三〇、七八五
  第九款公債金四、六九一三九九
  復興公債及一四三〇、七八五
  第三項繰替借入金四六九一三九五
  歲出臨時部
  大藏省所管
  第十八款帝都復興院七〇二、四一〇
  第一項俸給一二六、四四七
  第二項事務費四六〇、五一八
  調査及〓究一五、四四五
  第三項
  費
  八帝都復興事六二九一、八〇〇
  第十九款業費八五〇〇
  五七〇五六〇〇
  第一項東京復興費七、九八〇〇
  五八六、二〇〇
  第二項橫濱復興費八六九、〇〇
  十九復興事業費
  第二十款一、二八三、三五六
  貸付金
  地方復興事一、二八三、三五六
  第一項業費貸付金
  〒復興事業費
  第二十一款三、八一六、八一七
  補助
  第一項地方復興事三、八一六、八一七
  業費補助
  二十復興事業債
  第二十二款三八、八一二
  利子補給
  第一項地方復興事業三八、八一二
  債利子補給
  一一四三〇、七八五
  大藏省所管合計価八九一三九五
  大藏省所管
  帝都復興事業費
  總額圓
  三四二、一九二、八〇〇
  新帝都復興事業費四四八无む〇○
  三〇六六七八、四〇〇
  3M東京復興費四〇二、七九三、○〇〇
  三五、五一四、四〇〇
  (요)横濱復興費四五七七七、○○
  年額
  六二九一、八〇〇
  大正十二年度八八五〇
  五、七〇五、六〇〇
  東京復興費七、九八〇〇〇
  五八六、二〇〇
  横濱復興費八六九O
  八七、六〇七、〇〇〇
  大正十三年度一九じ〇
  七七、九五五、四〇〇
  東京復興費一〇六.五八○
  九六五六〇〇
  橫濱復興費三一五一
  八六、八五五四〇〇
  大正十四年度一 七、七九〇、〇〇〇
  七七、五三三、〇〇〇
  東京復興費〇五、一八七、〇〇〇
  九三二二、四〇〇
  橫濱復興費一二、六〇三〇
  六六一九〇、八〇〇
  大正十五年度八四
  六〇、三四九、二〇〇
  東京復興費七六八九八○
  五.八四一六〇〇
  橫濱復興費七一
  五六、二三五、九三四
  大正十六年度七四六七
  五〇、七九三、〇四〇
  東京復興費六四、七七三、八
  五、四四二、八九四
  橫濱復興費六六三七三六七
  三九、〇一一、八六六
  大正十七年度四六六六五、八三二
  三四、三四二、一六〇
  東京復興費四三七一
  四六六九、、七〇六
  横濱復興費五二九三六三三
  說明
  前記ノ費途ハ前揭ノ六箇年度ニ亙リ繼續費ト爲
  スヲ要ス
  丙號
  大藏省所管
  十九
  地方復興事業費貸付金歲出臨時部第二十款復
  興事業費貸付金第一項
  說明
  右ハ東京府及神奈川縣ニ對シ復興事業ノ資
  金ニ充ツル爲貸付クルモノナルヲ以テ當該
  府縣ニ於ケル事業進捗上ノ都合ニ依リ年度
  內支出ヲ了スルヲ期シ難シ依テ本年度ノ支
  出殘額ヲ翌年度ニ繰越使用スルヲ要ス
  報告書
  一(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約
  ヲ爲スヲ要スル件
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段
  及報告候也
  大正十二年十二月十九日
  豫算委員長山本悌二郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  報告書
  一(第二號)大正十二年度歳入歳出總豫算追加案
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段
  及報告候也
  大正十二年十二月十九日
  豫算委員長山本悌二郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  報告書
  一(特第一號)大正十二年度特別會計歲入歳出豫
  算追加案
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段
  及報告候也
  大正十二年十二月十九日
  豫算委員長山本悌二郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔山本悌二郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=27

  ---

• 028・山本悌二郎

  ○山本悌二郞君　簡單ニ此四案ニ關スル豫算委員
  會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、豫算委員會
  ニ只今迄付託サレタル議案ハ、總體デ六案デアリ
  マスガ、其内四案ハ復興ニ關スル所ノ案、殘リ二案
  ハ火災保險ニ關スル所ノ豫算案デアリマス、此內
  復興ニ關スル豫算案四件ニ付テ質問討議ヲ行ヒマ
  シタノデアリマス豫算委員會ハ連日開會ヲ致シ
  マシテ、精勵努力致シマシテ、漸ク本日ノ一時半ニ
  此四豫算案ニ對スル所ノ議決ヲ見ルコトヲ得タノ
  デアリマス、此四案ノ中就中大正十一一年度歲入歲
  出總豫算追加ノ第一號、卽チ帝都復興院、帝都復興
  事業費、其他復興事業ニ關スル所ノ自治體ニ關ス
  ル貸付金、是等ニ關スル豫算ハ最モ重要ナル豫算
  デアッタノデアリマス之ニ關シマシテ質問應答
  ノ際ニ現ハレタル所ノ最モ重要ナル一二ノ點ニ付
  テ茲ニ御報告ヲ致シマス卽チ此復興豫算、之ニ關
  スル財源、此點ガ最モ各員ノ實問ノ焦點トナツタ
  ノデアリマス政府ノ言フ所ニ依レバ、此豫算ニ提
  出致シテアル所ノ繼續費、事業費九億九千何百万
  圓ト云フモノヽ外ニ、尙ホ將來復興ニ關係ヲシテ
  豫算ヲ請求スベキモノヲ合算スレバ先ヅ十五億
  見當デアラウト云フコトデアルノデアリマス之
  ニ對スル所ノ元利支拂ノ財源トシテ相當ノ計畫ヲ
  政府ハ樹テヽ居ラレル、之ニ關シテ大正二十年度
  迄歲計ノ見込ヲ政府ニ於テモ提出サレタノデアリ
  やで、然ルニ此政府ノ所謂元利支拂ノ財源ナルモ
  ノハ、將來漸次此災害ニ依ツテ打擊ヲ受ケタル經
  濟界ガ回復スルニ從ツテ歲入ガ增加シテ來ル、此
  增加ヲ財源ト致シテアルノデアリマス、政府ハソ
  レハ自然增收デハナイ、當然回復シテ收入ヲ增加
  スベキ其收入ヲ見込ンデアルノデアルト斯樣
  ニ申シテアルノデアリマス、併ナガラ委員ノ質問
  ニ依ツテ見マスレバ委員ニ於テ頗ル憂慮シテ居
  ル點ハ卽チ此點デアル其名前ハ自然增收ト言ハ
  ウガ、或ハ回復增收ト言ハフガ、何レニシテモ將
  來ニ於テ起ルベキ歲入ノ增收ト云フコトヲ目的ニ
  シテ居ル點ニ於テハ毫モ軒輊ハナイノデアリマ
  ス、此將來ニ起ルベキ所ノ歲入ノ增加ト云フモノ
  ハ實ハ當ニナルヤウナ、ナラヌヤウナモノデア
  ルト見ナケレバナラナイノデアル之ヲ唯一ノ財
  源トシテ、此十五億ノ計畫ヲ樹テルト云フコトハ
  如何ニモ不安心デハナイカ、斯樣ナ心持ヲ以テ質
  問應答ガ行ハレタヤウデアリマス殊ニ田用大吉
  郞君カラ斯樣ナ質問ガアリマシタ卽チ政府ノ大
  正十三年度ヨリ大正二十年度ニ至ルマデノ〓計表
  ナルモノヲ見ルト云フト、大正十三年度ニ較ベテ、
  大正二十年度ハ歲出ニ於テ一億圓餘ヲ減ジテ居
  ル、從來ノ經驗.實驗ニ依ツテモ、將又當識上ノ判
  斷カラ致シテモ、國家ガ漸次發達スルニ從ツテ
  歲出ハ常ニ漸次增加シテ來ルト云フコトヲ常トス
  ルノデアル大正十三年度ノ歲出ト其六年ノ大正
  二十年度ノ歲出ト相同ジト云フコトデアツテ
  スラモ、旣ニ非常ニ不安ニ思ハナケレバナラ
  ナイ然ルニ何事ゾ大正十三年度ノ歲出ヨリ
  ハ六年先キノ二十年度ノ歳出ノ方ガ一億少イナド
  ド云フヤウナ、斯樣ナル見込ヲ立テヽヤツタナラ
  バ大見當違ヒヲスルデアラウ(拍手)斯樣ナル一
  方ニ於テ歲出ノ減少ヲ見積リ、而シテ一方ニ於テ
  大正二十年度ニ於キマシテ、十三年度ニ較ベテ五
  千万圓許リノ歲ヘ增加ヲ兄積ツテアル卽チ歳出
  ニ於テ一億ヲ減ジ、歲入ニ於テ五千万圓ノ增加ヲ
  見テ差引一億五千万圓ト云フモノ是ガ卽チ此十
  五億ニ對スル元利支拂ノ財源デアルノデアルガ
  如何ニモ是ハ非常識ナ立テ方デハナイカト云フヤ
  ウナ質問モアリマシタ、政府ハ之ニ對シテ、成程普
  通ノ歲計ノ數字ノミカラ見レバ一億圓大正二十
  年度ニ於テ歲出ガ減少シテ居ル姿ニナツテ居ルケ
  レドモ併ナガラ元利支拂、卽チ此十五億ニ對スル
  公債ノ元利支拂ト云フモノハ其金額ヲ之ニ加算
  スレバ矢張大正十二年度ニ較ベルト大正二十年度
  ハ歲出ガ增加スルトモ見ラレルデハナイカト云フ
  ヤウナ答辯ガアリマシタ、併シ此答辯ハ田川君ノ
  質問ト相距ル甚ダ遠イモノデアツテ全ク未ダ唯
  唯一條ノ言葉ノ綾ヲ以テ說明ヲシタト云フニ過ギ
  ナイヤウニ委員長ハ聽イテ取リマシタ、ソレカラ
  復興豫算、今日提出サレテ居ル所ノモノ、是ガ果
  シテ此金額ノ範圍內ニ於テ、此計畫シテアル所ノ
  事業ガ遂行出來ルノデアルカドウカ、將來ニ於テ
  此計畫ヲ實行セント欲スレバ、此現ニ豫算ニ見積
  ラレタル所ノ金額以上ニ、更ニ追加要求ヲスルト
  云フヤウナ場合ガ有ルノデアルカ、無イノデア
  ルカ、斯樣ナ質問ニ對シテ、政府ハ、兎ニ角政府ノ
  計畫ハ何モ彼モヲ合セテ十五億ノ公債ヲ募ツテ、
  之ニ對スル元利ノ支拂ヲスルト云フ其範圍ニ於
  テ歲計ヲ立テヽアルノデアル故ニ此十五億ヲ超
  過スルト云フコトハ許サヌノデアル許サヌノ
  デアルガ、併ナガラ事業ガ此金高ニ於テ果シテ
  遂行ガ出來ルカドウカト云ヘバ政府ハ是ガ遂
  行ハ出來ル見込デアルト申スノデアル斯樣ナ
  答辯デアリマシタ-見込デアルト申スノデア
  ル左樣ニ信ジテ居ルノデアルト云フ答辯以外
  ニハ何等吾々ヲシテ安心セシムル程ノ說明ハナ
  カツタノデアリマス、ソレカラ經濟復興ト云フ
  コトニ付テ、矢張委員ノ諸君カラ質問ガ起ツタノ
  デアリマス、政府ハ單ニ都市ノ外形ノ復興ニノ
  ミ沒頭シテ居ルヤウデアルガ、罹災地ノ經濟上
  ノ復興ト云フコトニ付テハドウ考ヘテ居ルカ、更
  ニ進ンデ全國ノ斯カル場合ニ、此後ヲ引受ケテノ
  全國ノ生活ノ復興發展ト云フコトニ付テハドウ考
  ヘテ居ルカ、今迄ハ少クトモ此點ニ對シテ何等
  施設スル所ハ無イデハナイカ、斯樣ナ質問ニ對シ
  マシテ、大藏大臣ノ說明スル所ヲ見マスレバ將
  來數箇年ニ、亙ツテ、今回豫算ニ提出サレタル所
  ノ殆ド六億ニ近キ復興費ガ支出サレルノミナラ
  ズ、更ニ其以外ノ復興計畫ト云フモノガアツテ結
  局十五億程ノ金ト云フモノガ、東京ヲ中心トシテ
  此罹災地ニ散布サレルノデアルカラシテ、此資金
  ト云フモノ卽チ取モ直サズ經濟復興ニ資スル所
  ノ資金ト看做シテ宜シイデハナイカ、特ニ政府ガ
  資金ヲ貸付ケルトカ、直接ニ援助ヲ與ヘルト云フ
  ヤウナコトハ、餘リ必要ナイト考へルノデアル
  又却テ弊ガアルト思フノデアル公平ニ行カヌト
  思フノデアル、斯樣ナ說明ガアリマシタ、卽チ一
  言以テ之ヲ掩ヘバ大體ニ於テ政府ハ此復興計畫
  ニ依ツテ、罹災地ニ散布サレル所ノ資金、ソレガ
  卽チ經濟復興ニ對スル所ノ資金ノ供給源泉デア
  ル、是レ以外ニハ政府ハ別ニ考ヘル必要ハナイ尙
  ホ大藏大臣ノ說明ノ中ニハ大體此一般ノ金融機
  關ヲ活動セシメテ之ニ依ツテ經濟復興ノ資金ヲ
  供給スルト云フコトガ、最モ自然ノ途デアルノデ
  アル政府ガ直接ニ低利資金ヲドウスルトカ、興
  業銀行ヲ通ジテドウスルトカ云フヤウナコトハ
  寧口十分ニ、公平ニ、徹底的ニ行ハレナイト信ズ
  ルノデアル、要スルニ政府ハ此復興計畫ニ依ツテ
  散布サルヽ所ノ多額ノ貸金、是レ卽チ生產ニ資ス
  ル所ノ、生產ニ要スル所ノ資源ヲ供給スルト見テ
  貰ヒタイ、斯樣ナ說明デアリマシタ、ソレカヲ更
  ニ復興院ト御詔勅ノ關係ニ付テノ質問モアリ
  マシタ、御詔勅ノ中ニ、此事變ニ際シテ其復
  興ヲ圖ルガ爲ニ、特ニ機關ヲ設ケシメテ其審
  議調查ニ當ラシムルト云フ御言葉ガアルノデ
  アリマス、政府ハ復興院ヲ以テ、此詔勅ニ仰セラ
  レタル所ノ特別ノ機關トスルノデアルカ、斯樣ナ
  質問ニ對シマシテ、後藤復興院總裁ハ、御詔勅ニ
  アル所ノ審議調査ト云フ其御言葉ニ對シテ、復興
  審議會ハ卽チ此審議ト云フ文字ニ該當スルモノデ
  アル而シテ復興院ハ其次ノ調查ト云フ文字ニ該
  當スル所ノ機關デアルト、斯樣ニ說明ヲサレマシ
  タガ、山本總理大臣ハ後ヨリ稍〓之ヲ訂正スル
  或ハ緩和スルガ如キ意味合ヲ以テ斯樣ナ說明ガア
  リマシタ、御詔勅ニ於テドノ機關ヲ設ケルじ
  ガ卽チドノ機關デアルト云フヤウナコトヲ決シテ
  御指定ニ相成ツタ次第デハナイノデアル、此事變
  ニ際シ、其後ヲ善クスル爲ニ、臨機應變、適當ナ
  機關ヲ設ケテ復興ヲ圖レト云フ仰セト、斯樣ニ了
  解ヲシテ居ルノデアル、斯樣ナ說明デアリマシタ、
  卽チ此說明ニ依リマスレバ必ズシモ復興院ガ動
  カスベカラザル、詔勅中ニ御指定ニ相成ツタ意味
  デナイト云フコトガ明ニ聲明サレタノデアリマ
  ス其他復興計畫ノ詳細ニ互ツテ頗ル委細ヲ極メ
  タ質問應答ガアリマシタガ、是ハ速記錄ニ讓リマ
  シテ、茲ニ御報告ヲ致スコトヲ省キマス討論ニ
  入リマシテ修正案ガ二ツ提出サレマシタ、其一ハ
  政友會ノ島田俊雄君ヨリ提出サレタル所ノ修正案
  デアリマス此修正案ニ依リマスレバ帝都復興
  事業費ノ六箇年繼績費總額四億四千八百五十七万
  圓此中一億六百三十七万七千二百圓ト云フモノ
  ヲ減額ヲスルト云フノガ一ツノ項目デアリマス
  此結果ト致シマシテ、大正十二年度ノ復興事業費
  年割額ニ於テ二百五十五万八千二百圓ト云フモノ
  ヲ削減スルコトニナルノデアリマス、更ニ復興院
  費卽チ此事業ヲ遂行スル爲メノ復興院ノ事業
  費、是ハ豫算面ニ於テハ十一一年度分ダケヲ請求シ
  テアルノデアリマスガ、參考書ニ依ツテ見マスレ
  バ大正十七年度迄ノ繼續的ノ總額ガ二千二百万
  圓許リニナツテ居ルノデアリマス、其中デ大正十
  二年度ノ此豫算ニ於テ七十万圓餘ヲ要求シテ、居ル
  ノデアル、此復興院ノ經費ハ全部削除スルト云フ
  ノガ卽チ修正案ノ第二點デアルノデアリマス、此
  復興事業費ノ一億六百万ト云フモノヽ削減ノ內譯
  ヲザツト申シマスレバ土地整埋費、卽チ區劃ヲ整
  理スル土地整理費ニ於テ三千五百六十万圓餘ヲ減
  額シテ居ルノデアリマス是ハ政府ノ提案ニ依リ
  マスレバ區劃整理ハ全部國ニ於テ行フト云フコ
  トニナツテ居リマスケレ共、新區劃整理ハ其實行
  上ノ便宜ノ上カラ言ウテモ、又自治體ノ爲スベキ
  事ハ自治體ニ委シテ、成ベクヤルベシト云フ主義
  ノ上カラ申シテモ、新區劃整理ハ組合ニ委シテヤ
  ラセル方ガ適當デアル、而シテ其方ガ却テ目的ヲ
  達スルニ容易デアル、唯、併ナガラ街路修築ニ伴
  ウテ已ムヲ得ザル所ノ區劃整理ナルモノハ是八
  國ニ於テ行ハナケレバナラナイ、國ガ旣ニ街路ヲ
  修築スル以上ハ、其國ノ修築スル街路ニ伴ウテ起
  ルベキ區劃整理ノ費用ハ是ハ國ガ負擔シナケレ
  バナラヌ、故ニ此分ダケハ豫算面カラ殘シテ、丁
  度一億一千万圓許リニナリマス此分ダケハ殘シテ、
  サウシテ後ノ三千五百六十万圓ト云フモノヲ削除スル
  ト云フノガ是ガ内容ノ一ツ、ソレカラ街路費ニ於
  テ十二間幅以上ノ街路ハ國ニ於テ之ヲ修築スルコト
  トシテ、十二間未滿ノ分ハ自治體ヲシテ之ヲ行ハ
  シムル.而シテ其道幅ノ仲縮路線ノ加減、是等ハ
  適當ニ按排ヲスルトシテ、此街路費ノ總額ノ中カ
  ラシテ約二割ニ相當スルモノヲ減額ヲスルソレデ
  東京、横濱ヲ合セテ約七千车万圓餘リノモノガ出テ
  來ルノデアリマス、此區劃整理ノ減額ト街路費ノ
  減額ヲ合セタモノガ、卽チ一億六百万圓ノ減額ニ
  相成ルノデアリマス、復興院ノ豫算ノ全部ヲ削除
  致シマスルガ、併ナガラ此復興事業ナルモノヲ計
  畫スル以上ハ、之ニ伴フ所ノ事務費ナルモノガナ
  クテハナラヌノハ無論當然デアル故ニ假ニ之ヲ
  內務省所管トシテ此事業ヲ行フト云フコトデアル
  ナラバ內務省ノ追加豫算トシテ之ニ要スル所ノ
  經費ヲ要求スレバソレダケノモノハ、議會ハ協賛
  スル積リデアル、尤モ緊急支出ニ依ツテ既ニ來年
  ノ二月迄ノ復興院費ト云フモノヲ取ツテアルノデ
  アル此緊急支出ナルモノハ甚ダ歴代ノ官僚內閣
  ニ多ク行ツタ所デアツテ、吾々ハ必ズシモ之ヲ是
  認スル者デハナイガ、兎ニ角現在ノ事實ハドウカ
  ト云ヘバ卽チ二月迄ノ復興院費ヲ取ツテアルノ
  デアルカラ、若モ追加豫算ノ提出ガ多少遲レタト
  シテモ、此事業ヲ遂行スル上ニ付テハ何等差支ヲ
  生ゼナイノデアル、斯樣ナ意味ヲ以テ寧ロ此厖大
  ナル特別機關ヲ置イテスルヨリハ、之ヲ一省ノ管
  掌ノ下ニ行ハシムル方ガ敏活ニ、而シテ入費ガ少
  クテ濟ムノデアル、故ニ之ヲ削除スル是ガ大體ノ
  理由デアツタノデアリマス、次ニ庚申倶樂部ノ守
  屋君ヨリ修正案ガ提出サレタ、ソレハ復興事業費
  ノ大正十七年迄ノ總額ノ中カラシテ、五千六百万圓
  許リヲ減額スルト云フノガ一ツノ點、ソレカラ同
  ジク復興院費ニ於テ相當ノ削減ヲ加ヘルト云フノ
  ガ第二ノ點デアル此大正十二年度ノ追加豫算ニ
  現ハレタル上ニ於テハ守屋君ノ修正案ニ依レ
  バ復興事業費ニ於テ三百十一万圓ヲ減ジ、復興
  院費ニ於テ四万餘ヲ減ズルト云フコトニナツテ居
  ルノデアリマス其理由ハ行政整理ヲ大ニ徹底的
  ニ行ハナケレバナラヌ場合ニ於テ復興院事務費
  ニ計上シタル所ノ政府ノ支出ハ、餘リニ厖大ニ過
  グルガ故ニ之ヲ削減スルノデアル又復興事業費
  ヲ復興法ニ依ツテ-復興法ノ原案ニハ事業費ラ
  置イテ區劃整理ノ場合ニ一割ヲ提供サセルコト
  ニナツテ居ルノデアルガ、ソレヲ一割五分位ハ提
  供サシテモ宜シイノデアルカラ、ソレヲ一割五分
  位ヲ提供サセルト云フコトニナレバ、此方カラ大
  分金ガ浮イテ來テ是ダケノ豫算面ニ計上シタル
  所ノ金額ヲ投ゼズトモ政府ノ豫定スル所ノ計畫
  ハ出來ルノデアル、此意味ニ於テ全體ノ事業費ノ
  上ニ五千六百万圓餘ノ削減ヲ加ヘタノデアル斯
  樣ナ說明デアリマシタ、採決ニ入リマシテ政友會
  ノ島田俊雄君ヨリ提出サレタル所ノ修正案ガ大
  多數ヲ以テ可決致サレマシタ(拍手)其結果ト致シ
  テ守屋君ヨリ提出サレタル修正案、竝ニ原案ハ否
  決サレタノデアリマス(拍手)採決後ニ於テ島田
  俊雄君ヨリ希望決議ノ提案ガアツタノデアリマ
  スソレハ兎ニ角政府ノ立テタル歳計豫算ニハ甚
  ダ不安ヲ感ズル併ナガラ此際ノ事デアルガ故
  ニ、之ニ修正ヲ加ヘテ通過ヲセシムルノデハアル
  ケレドモ、政府トシテ速ニ斷行シナケレバナラヌ
  モノハ行政整理デアル自然ニ將來增加スベキ、
  若クハ回復スベキ所ノ歲入ナゾヲ唯一ノ財源トス
  ルガ如キ、薄弱ノ立テ方デハイカナイノデアル、
  故ニ根本的ノ行政整理ヲシテ、之ニ依ツテ相當ノ
  確實ナル財源ヲ得ルト云フコトガ必要デアル同
  時ニ此大災害ノ後ニ處シテ勤儉節約ノ美風ヲ國民
  ニ作興セシムルガ爲ニハ政府自ラ行政整理ヲ行
  ツテ、其範ヲ垂レナケレバナラナイノデアル、此
  意味ニ於テ速ニ政府ハ行政整理ヲ行フベシ、同時
  ニ又政府ハ今迄ノ所、經濟的ノ復興ニ關シテハ何
  等施設スル所ハ無イノデアル大藏大臣ノ云フガ
  如キ十五億ノ計畫資金、是レ卽チ復興資金ナリト
  云フガ如キ說ニハ斷ジテ贊成スルコトガ出來ナ
  イノデアル、政府ハ進ンデ復興ニ對スル相當ノ計
  畫ヲ立テ、就中此資金ノ融通ニ向ツテ極力施設ヲ
  爲サナケレバナラヌ筈デアル特ニ又是ハ國家全
  體ニ取ツテ此經濟的復興ト云フコトノ施設ヲセナ
  ケレバナラヌガ、其中ニ就テモ罹災地ノ經濟的復
  興ニ對スル施設ハ一日モ之ヲ怠ツテハ相成ラヌノ
  デアル例ヘバ低利資金ノ融通ノ如キ、或ハ交
  通通信機關ノ急速ナル復活ト云フガ如キコト
  速ニ政府ハ斯ノ如キ方面ニ向ツテ、積極的ニ相當
  ノ施設ヲ爲スヲ相當ト認メル、斯樣ナ意味ニ於テ、
  希望決議ノ文面ハ「政府ハ速ニ行政整理ヲ斷行シ
  確實ナル財源ヲ得以テ財政ノ基礎ヲ鞏固ニスルト
  共ニ勤儉節約ノ範ヲ示シ同時ニ經濟復興ニ關シ更
  ニ進ンデ適當ノ施設ヲ爲スヘシー此附帶決議案ニ
  對シテ採決ヲ致シマシタ所ガ滿場一致ヲ以テ可決
  サレマシタ次第デアリマス更ニ鳩山一郞君ヨリ、
  政府ハ此修正サレタル豫算ノ範圍ニ於テ仕事ヲー
  事業ヲ遂行シテ行クコトガ出來ル見込ガアルノデ
  アルカドウカ、政府ノ所信ヲ聽キタイト云フ質問
  ガアリマシタ、之ニ對シテ總理大臣ハ此質問ハ本
  會議ニ於ケル大勢ヲ見タ上デ御答ヲシタイト考へ
  ル、故ニソレ迄猶豫シテ貰ヒタイト云フコトデア
  リマシタ、卽チ只今申上ゲタ所ガ。t此四案ニ對ス
  ル委員ノ經過竝ニ結果デアリマス、此段御報告致
  シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=28

  ---

• 029・大口喜六

  ○大口喜六君　只今ノ報告ニ對シテ少シ申述ベタ
  イ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=29

  ---

• 030・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　質疑ノ通告ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=30

  ---

• 031・大口喜六

  ○大口喜六君　質疑デハアリマセヌ、只今ノ報告
  ニ對シテ漏レガアルヤウニ思ヒマスカラ、私カラ
  一言申述ベタイト思フ、結局議事進行ニ關シテノ
  發言ニナリマス、

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=31

  ---

• 032・粕谷義三

  ○議長　(粕谷義三君)大口喜六君ニ許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=32

  ---

• 033・大口喜六

  ○大口喜六君　此席ヨリ只今山本委員長カラ精
  シイ御報告ガアリマシタガ、其中ニ於キマシテ島
  田俊雄君ガ出サレタ修正說、此修正說ニ對シテハ
  相當ニ質間ガアリマシテ、其間ニ質問應答ガアツ
  タノデアリマス、此質問應答ノ結果ハ本議場ニ
  御報告ニナツテ置キマセヌト、賛否ヲ決スル上ニ
  於テ餘程影響ガアルト考ヘルノデアリマス、ソレ
  ヲ精シク御報告願ヒタイト思ヒマス又島田俊雄
  君カラ出サレマシタ附帶決議、只今御讀上ニナツ
  タ決議、之ニ對シテハ本員ヨリ賛成ノ意見ヲ述べ
  マシタガ、唯〓單純ニ賛成ラシタノデハナイノ
  デ、相當ナル之ニハ附帶ノ意兄ヲ持ツテ賛成ヲシ
  テアルノデアリマス然ルニ之ニ對シ一言ノ報告
  モアリマセヌ、寧ロ島田君自身ガ一言モ言ハレナ
  カツタ所ノ交通機關ガドウデアルトカ云フヤウナ
  コトヲ却テ委員長ハ御自分ノ意見トシテ御述ニ
  ナツタ、是ハ島田君ノ口カラ言ハレナカツタコト
  デアル、ソレヲ委員長ハ立派ニ報告トシテ申シテ
  居ラレテ、本員ガ之ヲ賛成スルニ對シテ相當ノ附
  帶ヲシテアル意見ヲ御發表ニナラナイノハドウ
  云フ譯デアリマスカ、委員長ノ御意見ヲ承ルト同
  時ニ、是等ノコトヲ精シク御報告ニナルコトヲ希
  望スル、是ガ餘日ガアレバ吾々ハ速記錄ニ依ツテ
  知ルノデアリマスケレドモ、今日先刻御決議ニナ
  ツタコトデアツテ、速記錄ヲ見ル所ノ餘裕ガ御互
  ニ無イノデアリマス、唯〓委員長ノ報告ヲ信ジテ
  爲スコトデアリマスカラ、委員長ハ公平ニ、ドノ黨
  派ノ人ノ言ツタコトデモ、公平ニ御報告ニナラン
  コトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=33

  ---

• 034・山本悌二郎

  ○山本梯二郞君　委員會ニ於テ多數ノ質問應答ガ
  行ハレマシタガ之ヲ一々御紹介スルコトハ出來
  マセヌ、故ニ大要ノミヲ御紹介シテ報告シタ次第
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=34

  ---

• 035・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　質疑ノ通告ガアリマスカラ
  發言ヲ許シマス湯淺凡平君
  〔湯淺凡平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=35

  ---

• 036・湯淺凡平

  ○湯淺凡平君　本員ハ只今委員長ノ御報告ニナリ
  マシタ修正案ニ對シテ、政府ノ所信ヲ質疑致シタ
  イト思フノデアリマス、元老西園寺公ニ依ツテ奏
  薦サレ、而シテ大命ヲ受ケマシタル現内閣ハ超然
  內閣デアル、超然內閣ナリト雖モ、國民ハ此內閣
  ニ向ツテ相當ノ期待ヲ有シテ居ルノデアル、卽チ
  其政綱ノ一端トモ見ルベキ帝都ノ復興、或ハ普通
  選擧ノ卽時斷行ッ若クハ行政財政ノ大々的整理
  或ハ官紀綱紀ノ肅正、斯ノ如キ問題ハ或ハ此内閣
  ヲ迎ヘテ初メテ一刀兩斷的ノ解決ガ見ラレルノデ
  ナイカト云フコトヲ吾々ハ期待シタノデアル、殊
  ニ由本首相以下所謂首相級ヲ網羅シタ此內閣ハ
  强ヒテ吾々之ヲ求メルナラバ其果斷ナルノニ在ル
  ノデアル、其果斷ナルコトヲ期待シテ居ル吾々ハ
  震災以來帝都復興ノ問題ニ對テハ或ハ吾々ノ期
  待ニ甚ダ副ハザルモノガアルデハナイカ、甚ダ之
  ヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、只今御報告ニ
  ナリマシタル修正ハ、議會ノ多數ヲ制スル政友會
  ニ依ツテ提案サレタノデアリマス、故ニ討論ニ先
  ツテ旣ニ其歸結ヲ知ルコトガ出來マス、而シテ此
  修正案ノ內意ニ付テ批評スルコトハ後ノ吾々ノ同
  僚ニ讓リマスガ、兎ニ角曩ニ審議會ニ於テ政府ノ
  提案ニ對シテ一億餘万圓ノ削減ヲ行ハレ、而シテ
  更ニ又之ニ對シテ一億六百有餘万圓、約一億一千
  万圓ノ削減ヲ加ヘラレタルト云フ修正案デアルノ
  デアリマス、然ルニ此修正案ガ如何ニ杜撰デアル
  カ如何ニ根據ナキモノデアルカト云フコトノ批
  評ハ原案ニ對スル所ノ反對者ノ非難ノ言葉ヲー
  儘引用致シマシテ、此修正案ヲ批評スルコトガ出
  來ルノデアル、否、寧ロソレ以上ノ非難ヲ吾々ハ
  加ヘルコトヲ憚ラヌノデアリマス、ソレハ兎ニ角
  ト致シマシテ、斯ノ如ク政府ハ一旦決心ヲ爲シマ
  シテ而モ其決心シタル所ノ復興ノ豫算及計畫
  之ヲ評議員會ノ議ニ付シテ此評議員會ナルモノ
  ハ是等ノ問題ニ對スル所ノ朝野ノ權威、經驗ニ
  於テモ、學識ニ於テモ、又名望ニ於テモ、若シ理
  想的ノ斯ノ如キ〓體ヲ求メタナラバ恐ラク此評
  議員會コソ吾々ガ要求スル所ノ理想的會議制ノ縮
  圖デアルト言ツテ差支ナイノデアル、然ルニ此評
  議員會ガ可決致シマシタ、而モ政府ノ提案ヲ致シ
  テ其提案ニ對シテ評議員會ガ贊成ヲ表シテ居リマ
  ス案ヲ審議會ニ懸ケルノデアリマス審議會ノ諸
  公ハ固ヨリ其經歷ニ於テ吾々ハ相當敬意ヲ拂フ者
  デアリマス、併シナガラ實際ノ問題ト致シマシテ、
  評議員會ノ此會議團體ト比較シマシテ、吾々ハ評
  議員會ヨリモ、必ズシモ審議會ノ此議決ガ、ヨリ
  多ク權威アルモノト認メルコトガ出來ナイノデア
  リマス然ルニ拘ラズ、政府ハ一旦確信ヲ以テ之
  ヲ提案シ、評議員會ノ議決ヲ經テ贊成ヲ得テ居ル
  ニ拘ラズ、唯〓僅ニ審議會ノ二三ノ委員ノ反對
  ニ逢ツテ、忽チ一億有餘万圓ノ削減ヲシ而シテ
  今日ニ至ツテ又此衆議院ニ於キマシテ、更ノ
  又同額以上ノ修正ヲ加ヘラルヽト云フコトデアリ
  マシタナラバ是デ果シテ所期ノ目的デアル所ノ
  帝都復興ノ計畫ヲ遂行スルコトガ出來ルト云フ此
  確信ガアルノデアリマスカ、吾々ハ今日ノ總テノ
  問題ノ行詰リマシタ所ノ其原因ハ多クアリマセウ
  ケレドモ主トシテ是迄ノ行ハレタル所ノ政治ハ
  目的ノ爲ニハ手段ヲ擇バズト云フコトノ其一モツ
  トー」ヨリ發達シタルモノト私ハ考ヘル(拍手)
  若シ政府ニ於キマシテ、此二回ノ修正ニ逢ヒマ
  シテモ結局ハ事業ノ遂行ノ上ニ差シタル差支ガ
  ナイト云フ口葉ヲ以テ或ハ妥協苟合ヲ爲スノデ
  ハナイカト疑ハザルヲ得ナイノデゾリマス、併ナ
  ガラ是レ卽チ日的ノ爲ニ手段ヲ擇バザルモノデア
  リマス、若シ政府ガ一再ナラズ、斯ノ如キ屈辱的
  妥協ノ爲ニ、其方針ヲ二三ニスルト云フコトガア
  リマシタナラバ此國民ガ期待ヲ致シマシタル所
  ノ其趣意ニ、全然反對スルモノデアルノデアリマ
  ス故ニ私ハ此修正案ハ後ノ論爭ニ精シク申スデ
  アリマセウ、右ニ削減ヲ致シマシテモ、左ニ與ヘ
  ラレルノダカラ差支ガナイト云フガ如キハ所謂
  日的ハ同ジデアツテモ、其手段ニ於テ甚ダ相違ガ
  アルノデアリマス、故ニ唯〓手段ガ同ジデアルカ
  ラト云フノデ、此修正案ニ同意ヲ爲サルト云フコ
  トデアルナラバ政府ノ面目威信ト云フモノハ全
  ク地ニ墜チタルモノト思フノデアリマス(拍手)斯
  ノ如キ極メテ曖昧ナル所信ノ下ニ、今後起ル所ノ
  綱紀肅正、官紀肅正或ハ普選ノ問題、行政財政
  ノ根本的整理ト云フガ如キハ甚ダ其前途ヲ危マ
  ザルヲ得ナイコトニナルノデアリマス、故ニ政府
  ノ此復興計畫ノ豫算ニ對スル所ノ態度ト、政府ノ
  將來ニ對スル所ノ運命、國民ノ期待ニ對スル所ノ
  其總テニ對シテ、非常ニ重大ナル關係ヲ持ツモノ
  デアリマスル故ニ、果シテ政府ハ此修正案ニハ贊
  成ヲスルヤ否ヤ、又此修正案ニ贊成ヲ致シマシ
  テ、果シテ罹災者百有餘万人ノ此窮狀ヲ救ヒ、帝
  都ノ復興ヲ成シ遂ゲルコトガ出來ルヤ否ヤト云フ
  コトニ付テ、此壇上ニ於テ明確ナル所ノ所信ヲ披
  瀝サレンコトヲ希望スル次第デアリマス、之ヲ質
  間致シマス(拍手)
  〔國務大臣伯爵山本權兵衞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=36

  ---

• 037・山本權兵衞

  ○國務大臣(伯爵山本權兵衞君)　只今ノ湯淺君ノ
  御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス、今回政府ヨリ提
  出致シマシタル帝都復興計畫ニ伴フ所ノ豫算、及
  之ニ對スル所ノ事務費等ハ必ズヤ當議場ニ於キ
  マシテ各黨各派ヲ論ゼズ、目下ノ急務ニ對シテ、非
  常時ニ際シテハ非常ノ斷ナケレバナラヌノデ、必
  ズヤ之ニ對シテ政府案ニ向ツテ十分御審議ノ上、
  全力ヲ以テ御贊成ナルベキコトヽ深ク信ジタノデ
  アリマス、然ルニ只今議題トナツテ居リマスル豫
  算案ヲ拜聽致シマズルニ、政府案トハ多大ノ差異
  ヲ生ジテ居ルノデアリマス、然レドモ帝都事業-
  -帝都復興事業ノ實行上ニ於テ、將來多少ノ差障
  リラ生ズベキヲ豫想致シマスルナレド、目下ノ狀
  勢ハ御案內ノ通リニ實ニ非常時デゴザイマス、此
  東京市民全體ニ對シ一日モ早ク安寧ヲ期セシメ
  隨テ全國ニ亙リマス所ノ諸般ノコトニ及ボシマシ
  テ重大ナル關係ヲ及ボスコトナリト信ズルノデ
  アリマス、此見地カラ致シマシテ政府ハ之ヲ實行
  致シマスル上ニ於テ、今申ス如ク多少ノ差障リハ
  ゴザイマスルナレドモ、及ンダケ全力ヲ學ゲテ
  東京市民ノ一日モ早ク其急ニ應ズル策ヲ講ズル外
  ナイト考ヘマス、是ハ卽チ大局ノ上ニ對シ萬已ム
  ヲ得ズ、一時ノ出來事ニ對シテ決シテ策ヲ施スベ
  キモノニ非ズト云フ深キ考慮ノ中ニ於キマシテ、
  斯ノ如キ決心ヲ執リマシタル次第デゴザイマス、
  左樣神承知ヲ願ヒマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=37

  ---

• 038・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　委員長ノ報告ニ對スル質疑
  ガアリマス、三木武吉君
  〔三木武吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=38

  ---

• 039・三木武吉

  ○三木武吉君　私ノ質疑ヲ致シタイ事柄ハ、只今
  委員長ヨリ御報告ニナリマシタ、政友會ノ島田俊
  雄君カラ御提出ニナリマシタル修正案ノ內容ニ付
  テヾアリマス此質疑ハ豫算委員會ニ於テモ提出
  セラレ應答セラレタノデゴザイマスケレドモ、
  咄嗟ノ間···
  〔私語スルモノアリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=39

  ---

• 040・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=40

  ---

• 041・三木武吉

  ○三木武吉君(續)　質疑者モ應答者モ未ダ究メザ
  ル所ガアツタヤウデアリマスルカラ、私ハ改メテ
  此問題ニ付テ質疑ヲ致シタイト思ヒマス御答辯
  ハ委員長カラ下サイマシテモ、又提案者カラ下サ
  イマシテモ其點ハ少シモ差支ハゴサイマセヌ、只
  今委員長カラ御報告ニナリマシタル修正案ノ內容
  ハ其一ハ復興事業費ニ對スル修正デアリマシ
  テ他ノ一ハ復興院事務費ノ削除デアリマス梨
  復興陸事務費ノ削除ニ付テハ何事ヲモ申ス必要
  ハ無イト思ヒマス、復興事業費ノ中デ、修正案ニ
  依ツテ修正セラレマスル箇所ハ街路費ノ中ヨリ
  東京橫濱ヲ通ジテ約七千万圓、全額ニ對スル二割、
  ソレカラ土地整理費、是ガ東京横濱ヲ通ジテ約三
  千五百万圓ト云フコトデアリマス而シテ此二個
  ノ修正セラレマスル理由ヲ伺ヒマスルト、或ハ財
  政上ノ理由ガアルカノ如クニモ聞エマス、又一面
  カラ考ヘマスレバ斯ノ如キ事業ノ性質上ヨリ致
  シマシテ、之ヲ削減スルノ必要ガアルカノ如クニ
  モ聞エマスガ併シ要ハ此二箇ノ削減ガ、決シテ復
  興院ニ於テ計畫セラレマシタル、而シテ吾々ニ示
  サレマシタル其計畫自體ヲ變更スルモノデナイト
  云フコトニ付テハ疑ガナイヤウデアリマス、
  〔私語スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=41

  ---

• 042・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　私話ヲ御差控ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=42

  ---

• 043・三木武吉

  ○三木武吉君(續)　此ニ於テ私ハ修正案ノ提出者
  ニ對シテ御尋致シタイ、果シテ此修正ノ理由ハ政
  府ノ計書ニ對シテ何等ノ變更ヲ企テルモノデモナ
  1.又帝都ノ復興ニ對シテ少シノ障礙モ計畫ノ上
  コ及ボスモノデナイト云フ確信ト理由ヲ持タレ
  テ居ルノデアルカ、先ヅ之ヲ第一ニ御尋致ス、
  ソレカラ第二ニハ此街路費ニ於テ七千万圓、整理
  費ニ於テ三千五百万圓ヲ削除セラレルケレド
  モ、此計畫自體ニ少シモ變更ガ無イモノトスル
  ナラバ結局此計畫ハ或ハ東京橫濱ノ如キ自
  治團體ニ於テ之ヲ行フ、若クハ只今御報告ノ中
  ニモアリマシタガ、土地整理ノ如キハ地主
  組合ニ於テ行ハシムルト云フコトニ相成ルノデ
  アリマス卽チ此計畫ハ此削除ニ依ツテ變更セ
  ラレナイデ、此計畫ヲ實行スル他ノ機關ヲ以
  テスルト云フコトニナリマス、旣ニ他ノ機關
  ヲ以テ此實行ヲ爲スト云フノナラバ此實行ヲ爲
  スノ經費ハ玆ニ削除セラルヽモ、他ノ方法ヲ以テ
  是ダケノモノハ支出ヲシナケレバナラナイト云フ
  コトニナル、卽チ東京橫濱ノ兩市之ヲ行フモノト
  スレバ、兩市是ガ負擔ヲシナケレバナラヌ、土地
  整理ノ如キハ直接地主組合ヲシテ之ヲ行ハシメ
  ルト云フコトニナレバ此三千五百万圓ノ整理費
  ヲ負擔スルノハ地主組合カ、其上ニ在ル東京市
  若クハ橫濱市ト云フモノガ、此三千五百万圓ヲ負
  擔シナケレバナラヌト云フ結論ニナルノデアリマ
  ス、此ニ於テカ私ハ御尋致シタイ、今日ノ東京橫
  濱兩市ハ七千万圓乃至一億万圓ノ街路費及土地整
  理費ヲ負擔スルノ能力アリヤ否ヤ、之ヲ御尋シナ
  ケレバナラナイ、御承知ノ通リ、現在ノ東京市
  横濱市ハ、旣ニ經濟的ニ申シマシテモ、又行
  政的ニ申シマシテモ、其資力ノ大半ト云フモ
  ノハ失ハレテ居ル、擔稅能力ノ上ニ於テ、負
  擔能力ノ上ニ於テ、旣ニ七割ノ力ヲ失ウテ居
  ルノデアリマス、此七割ノ力、横濱市ノ如キ
  ハ殆ド全然失ウテ居ルト云フヤウナ、此東
  京横濱市ニ茲ニ七千万乃至一億万圓ノ新ナル
  負擔ヲ課シテ、果シテ此事業ノ遂行ガ出來ルモノ
  デアルカドウカト云フコトノ御尋ヲ致シタイノデ
  アリマス、是ハ私ガ茲ニ改メテ申ス迄モナイ、先
  刻モ申上ゲタノデアリマスガ豫算委員會ニ於テ、
  先日三土忠造君ガ大藏大臣ニ對シテ御質問ニナラ
  レテ大藏大臣ト三土君トノ所問應答ヲ謹聽致シ
  テ居ルト、政友會ノ代表者デアル三土君ハ此一億
  万圓ハ愚カナコト、政府ノ吾々ニ提出セラレタル
  修正案ヨリ負擔ノ輕イ此政府案ニ對シテスラ
  モ、東京市ガ負擔ノ能力アリヤ否ヤヲ疑ハレテ居
  ツタノデアリマス現在ニ於テ負擔能力ノ無イコ
  トハ申ス迄モナイガ、此復興事業完成ノ後ニ、年
  年元金若クハ利息ノ債還ヲシナクレバナラヌ二千
  万圓内外ノ東京市ノ負擔ノ支拂ガ出來ルカドウカ
  ト云フコトヲ、詳細事細カニ御議論ニナツテ疑ハ
  レテ居ツタノデアリマス、大藏大臣ハソレニ對シ
  テ、確信アルガ如ク、確信ナキガ如キ御答辯ニナ
  ツテ居ツタガ、私ハ此點ニ對スル三土君ノ御心配
  ハ誠ニ敬意ヲ表シテ謹聽致シタノデアリマス既
  ニ政府ノ原案ニ於テスラモ、東京市ノ負擔能力ガ
  疑ハレテ居ル橫濱市ノ負擔能力ガ疑ハレテ居ル、
  況ヤ其上ニ七千万圓乃至一億圓ノ新ナル負擔ガ來
  テ.ドウシテ此兩市ガ負擔ガ出來ルノデゴザイ
  マセウ、兩市ノ財政ガ立行クデゴザイマセウ、現
  ニ諸君ハ政府ヨリ吾々ノ手許ニ配付セラレタル府
  縣市執行復興事業費一覽表ヲ御覽ニナレバ分ル
  東京市ノ如キ、或ハ橫濱市ノ如キ、僅ニ三十五万
  圓カ、四十万圓ノ復興ニ要スル費用デスラモ、市
  自身ノ手ニ於テ調達スルコトガ出來ナイト云フノ
  デ、總テ國庫ヨリ貸付ヲ受ケテ、其利息ハ復興事
  業完成ノ間ハ据置イテ貰ツテ、其後デ漸クニシテ
  或ハ二十年三十年デ、細マ〓〓ニ償還スルト云フ
  程度デアル、二十万三十万ノ金デスラモ自ラ調達
  ガ出來ナイ此兩市デアリマス、吾々東京市民トシ
  テハ誠ニ殘念、誠ニ申譯ナイ次第デアルガ、事
  實ハ如何ニ强辯シテモ此憐レナル狀態ニ居ル東京
  市ニ七千万圓乃至一億万圓ヲ、横濱市ト共ニ新タ
  ナル負擔トシテ課スルト云フニ至ツテハ私ハ其
  事柄ノ善惡ハ別圖問題ト致シマシテ、第二ノ事ト
  シテ唯〓之ヲ殘酷ト言ヒマセウカ、或ハ不能ヲ强
  ユルト云フノデアリマセウカ、果シテ此提案者ハ
  東京市横濱市ガ斯ノ如キ厖大ナル負擔ヲスルコト
  ガ出來ル能力ガアルカドウカト云フコトノ御說明
  ヲ願ヒタイ、ソレカラ更ニ御尋ヲ致シタイノハ
  先刻モ三土君カラモ少シ話ガアツタヤウデアリマ
  スルガ、其私ノ只今ノ質問ニ對シテハ成程現在
  ノ東京市ト致シマシテハソレダケノ能力ハ無イ、
  故ニ是レダケノ仕事ヲスルニハ、無論政府ガ此金
  ヲ貸付ケテヤルノデアル、或ハ之ヲ補助シテヤル
  ノデアル、斯ウ云フ御議論ガ出ルダラウト思フ、
  而モ此貸付補助タルヤ、全部デナケレバイカヌノ
  デス、假令ソレガ七割デアツテモ駄目デアル八
  割デアツテモ駄日、全部貸付又ハ補助ヲシテ吳レ
  ナケレバ是ハ出來マセヌ、縱シヤ將來ニ於テ東京
  市ガ之ヲ支拂フトシテモ、現在ノ所ハ全部貸付ケ
  テ貰ハナケレバ是ハ出來ナイ、ソコデ提案者ハ斯
  ウ云フ事ヲ仰セラルヽダラウ、現在ノ所デハ兎ニ
  角貸付ケル、而シテ是ハ東京市ガ能力ヲ得タ時ニ
  ハ其幾分ヲ政府ニ返サス、斯ウ云フ事ヲ仰セラ
  ルダラウト思フ、サウ云フ事ハ言ハナイカモ知レ
  ナイガ、サウデモ言ハナケレバ說明ガ出來マスマ
  イ、詰リ東京市ヲシテ事業ヲ執行セシムル橫濱市
  ヲシテ事業ヲ執行セシムル、而シテソレニ要スル
  費用ハ、一厘一毛ト雖モ自ラ調達スルコトガ出來
  ナイカラ、政府ガ之ニ貸付ヲシテヤル或ハ東京
  横濱ノ兩市ガ、外債ノ募集ヲシテ、元利支拂ノ保
  證ヲ政府ガシテヤルト、斯ウ云フ事ニナラナ
  ケレバイケナイ、而モソレダケハイケナイ、ソ
  レダケデハ此東京橫濱兩市ガ其元利ノ支拂ヲ
  何時ノ日ニカシナケレバナラヌコトニナル、
  之ヲウドウスル御考デアルカ、豫算委員會ニ於テ
  ハソレハ幾ラカ適當ノ金額ダケハ補助シテ
  ヤルノデアル斯ウ云フ說明ガアツタ、補助
  シテヤルノデアルト云フガ、補助セラレル以外ノ
  モノハドウスルノデアルカ、補助セラレル以外ノ
  モノハドウスル是ハ矢張東京市ガ拂ハナケレバ
  ナラヌガ、是ハ私ハ說明ヲ聽カナケレバナラヌ、
  先刻三土君ノ御話デゴザイマシタ、此點ハ私モ誤
  解ガアツタガ三土君モ少シ誤解ガアツタ、東京市
  ガ全部負擔スルト云フコトニナルヂヤナイカト私
  ガ言フタラ、イヤ其幾分ハ矢張分擔金ヲ出スヤウ
  ニナツテ居ルノダカラ、元モ國モ損得ナイヤウニ
  ナルデハナイカト云フ御言葉デアツタ、成程能ク
  調ベテ見マスルト街路費ニ付テハ總額ノ二分ノ
  一ヲ分擔金トシテ、政府ノ原案ニ依ルト云フト、
  東京市横濱市ガ負擔シナケレバナラヌコトニナ
  ル而モ此負擔ハ事業完成ノ後ニ、三十箇年ノ年
  賦デ以テ政府ニ償還シナケレバナラヌ、斯ウ云フ
  ヤウナ事ニナツテ居ルヤウデゴザイマスルガ、此
  二分ノ一以外ノ金額、此處ニ約七千万圓トシマス
  レバ三千五百万圓ハ矢張此政友會ノ修正案ニ依
  ツテ新ニ東京橫濱ガ負擔スルノデゴザイマスルカ
  ラ、是ハドウシテモ政府ニ於テ全部補助シテ貰ハ
  ナケレバナラヌ、補助セラレナケレバ矢張此案ニ
  依ツテ東京横濱兩市ガ主ニ負擔ヲ受ケルコトニナ
  ル況ヤ此三千五百万圓ノ整理費ハ全然政府ノ
  負擔ニナツテ居ル、地方ノ分擔金ガ一厘モ無カツ
  タ-一厘モ無カツタモノヲ自治團體若クハ地主
  組合ニ於テ全部負擔シナケレバナラヌコトニナル
  ノダカラ、私ハ此案ト云フモノハ、計畫ヲ變更シ
  ナイ限ハ、國ノ負擔ヲ移シテ以テ地方自治團體ノ
  負擔ニスル、是ダケニシカ其内容ニ於テ異ナル所
  ガナイノデアリマス言換ヘテ見マスレバ國ノ
  負擔ヲ輕クシテ-將來ニ於ケル國ノ負擔ヲ輕ク
  シテ、東京横濱兩市民ヲ苦シメルコトニナルノデ
  ハナイノデアリマスカ、此憐レナル狀態ニ居ル東
  京橫濱兩市民ニ對シテ、國民全體ノ負擔スル所ノ
  負擔ヲ移スコトニナル、而モソレガ現在ニ於テ移
  スナラバ尙ホ地方ノ方ミニ諸君ガ申譯ガアルカ
  知レヌ諸君ノ立場ト致シテ、地方ニ之ヲ宣傳シ
  テ利スル所ガアルカモ知ラヌケレドモ、現在ニ於
  テハ矢張國ガ立替ヘテ拂ウテヤラナケレバイカ
  ヌ、三十年、四十年、五十年、百年ノ後ニ、東京
  市カラ取立テルト、東京ニ重イ負擔ヲサセタト云
  フダケニシカ過ギナイノデアル私ヲシテ言ハシ
  ムレバ狗内ヲ賣ランガ爲ニ羊頭ヲ揭ゲテ地方農
  民ヲ欺カントスル政策ダト考ヘテ居リマスドウ
  カ此點ニ付テ明快ナル御答辯ヲ要求致シマス(拍
  手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=43

  ---

• 044・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　只今委員長ハ御席ニ御出ニ
  ナリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=44

  ---

• 045・三木武吉

  ○三木武吉君　私ハ初カラ御斷リヲ致シテ置キマ
  シタガ、豫算委員長デモ宜シイ、提案者デアル島
  田俊雄君デモ宜シイト申シテ置キマシタ、島田俊
  雄君ハ明カニ其席ニ御出デゴザイマスカラ、ドウ
  カ島田君カラ御答辯ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=45

  ---

• 046・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ヨリ通告ニ依リマシテ討
  論ニ入リマス下岡忠治君
  〔「答辯ガ無イデハナイカ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=46

  ---

• 047・三木武吉

  ○三木武吉君　答辯ガ出來ナイノナラバ私ハ敢
  テ之ヲ追窮シヤウトハシナイ、唯〓諸君ハ政爭ノ爲
  ニ東京市民ヲ犧牲ニスルト云フコトヲ此處ニ斷百
  シテ置キマス··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=47

  ---

• 048・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　下岡君ニ發言ヲ許シテ居リ
  マス下岡君登壇セラレマセヌカ
  〔下岡忠治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=48

  ---

• 049・下岡忠治

  ○下岡忠治君　諸君、本員ハ帝都復興計畫ニ關ス
  ル豫算案ニ付キマシテ意見ヲ述ベヤウト思ヒマス
  ルカラ、暫ク〓聽ヲ煩シマス、木員ハ政府ノ提案
  ヲ致シマシタ原案ガ宜イト云フ考デアリマス修
  正案ニ對シテハ政友會カラモ出、又庚申倶樂部、カ
  ラモ出テ居リマスルガ、何レモ之ニ對シテハ反對
  デゴザイマス、此度ノ震災ハ千古未曾有ノ大事變
  デアリマシテ、政治經濟及文化ノ中心タル所ノ此
  帝都ガ、甚大ナル打撃ヲ受ケタモノデゴザイマス
  ルカラ、隨テ是ガ善後處分ニ關シテハ實ハ全國
  民ノ利害休戚ニ關スル所ノ重要ナル事デアラウト
  思フノデゴザイマス、震災直後ニ於ケル全國ノ熱
  烈ナル救設援助、洵ニ是ハ美シキ事柄トシテ吾々
  ガ認メナケレバナラヌ事デアルガ、此同情此誠心
  ヲ以テ、所謂共存共榮ノ主義カラシテ、此震災善
  後ニ關スル所ノ復興計畫ヲ吾々御互ガ共ニ攻究ス
  ル必要ガアルコトハ勿論デゴザイマス(「財政
  ノ破壞ヲドウスルカ」ト呼フ者アリ)諸外國ガ如何
  ニ此震災ニ對シテ同情ヲ表シテ吳レタカ、又如何
  ニ此震災ノ善後ニ關シテハ我ガ日本民族ガ處理ヲ
  スルデアラウト云フコトヲ、環視ノ間ニ視テ居ル
  有樣デアリマス、此間ニ於キマシテ吾々ガ此復興
  計畫ヲ適當ニ立派ニヤツテ行クト云フコトハ御
  互國民全體ノ責任ト謂ハナケレバナラヌ(拍手)震
  災ノ當時物情恟々タルトキニ當リマシテ、諸君ハ
  遷都論ノ行ハレテ居ツタコトハ御聞キデ御座リマ
  セウ、說ノ當否ハ別トシテ、兎ニ角此議論ニハ隨
  分共鳴スル者ガ澤山アツタ、ドウモ此地震ノ都
  六十年ナリ或ハ八十年ニ於テ、斯ウ云フヤウナ震
  災ガ起ツテ來ルコトハ是ハ大變ダ、帝都千年ノ
  計ヲ講ズル上カラ考ヘマスルナラバ、何トカ此問
  題ニ付キマシテハ考慮一番シナケレバナラヌト云
  フ考ノ起ルノハ、是ハ當然ノ事デアル、併ナガラ
  此混亂ノ間ニ於キマシテ、人心恟々タル間ニ於キ
  マシテ、若シ此問題ニ付テ、國民全體ガ議論ヲス
  ルヤウナコトガアツタモノト假定スルナラバソ
  レコソ實ニ如何ナル珍事變事ガ起ラヌニモ限ラヌ
  ト云フコトヲ、私共當時カラ心配シテ居ツタ然
  ルニ聖斷一下、九月ノ十二日ニ大詔ガ煥發セ
  ラレマシタ、我ガ國都ト云フモノハ從來ノ通
  リ奠都ノ方針ト云フモノハ何時迄モ此儘デ
  行クト云フコトヲ御示定遊バサレタコトガ彼ノ
  大詔ニ依ツテ知レルコトガ出來テ、始メテ大方針
  ガ決ツテ、民心ガ安ジタモノト私ハ存ジマス洵
  ニ聖旨ノ深謀遠慮、實ニ有難キ思召ト云フコトヲ
  考ヘマシテ、吾々ハ實ニ感激ノ至リニ堪ヘナイ
  恐懼ノ至リニ堪ヘナイ譯デアル、扨奠都ノ大方針
  ガ東京ニ決スルト云フコトニナルトスルト、先ヅ
  大體此上カラ御互ニ考へナケレバナラヌ、御承知
  ノ通リ此度ノ震災ト云フモノハ人力デ如何トモ
  スルコトガ出來マセヌ天然ノ破壞力ハ實ニ驚ク
  ベキモノデアルガ、併ナガラ此度ノ地震ニ付テ御
  互ニ見テ見ルト、震災ハ實ニ大シタ程ノ事ハ無カ
  ツタ、震災ニ伴フ大火災ガ非常ニ猛威ヲ逞ウシ
  テ、大厦ヲ烏有ニ歸セシムルコトニナツタノデア
  リマスカラ、隨テ火災ニ對スル相當ノ方法ガ出來
  テ居ツタナラ、斯ノ如キ慘狀ヲ見ズシテ止ムコト
  ガ出來タモノト私共ハ思フノデアリマス、此點カ
  ラ考ヘテ見マスト、千年ノ都ヲ東京ニスルト云フ
  コトデアルナラバ私ハ少クトモ斯ノ如十火災、
  斯ノ如キ害ノ起ラヌト云フコトハ或ル程度マデ
  ハ人力ニ依ツテ防グコトガ出來ルノデアルカ
  ラ、此人力ノ限リヲ盡スコトニ對シテ、相當ナル
  施設ヲ行フト云フコトハ、天下後世ニ對スル吾々
  現代ノ者ノ責任ダラウト思ヒマス(拍手)此見地カ
  ラ割出サナケレバナラヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=49

  ---

• 050・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　三善君、氣ヲ御付ケナサラ
  ヌト發言ヲ禁ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=50

  ---

• 051・下岡忠治

  ○下岡忠治君(續)　此見地カラ割出シテ、是カラ
  先ノ計畫ヲ爲スト云フコトハ吾々ノ努ムベキ責
  任デアラウト思ヒマス、卽チ詔ノ中ニモアリマス
  通リ、善後ノ處置ヲ關シテハ唯:舊態ヲ回復ス
  ルニ止マラズ、進ンデ將來ノ發展ヲ考ヘテ帝國
  ノ面目ヲ一新スルコトヲ爲セヨト云フ此思召從
  來ノ通リデイカナキ震災ノ防備震火災ノ防
  備ト云フ上カラ考ヘデ見テモ、如何ニモ是迄ノ帝
  都ト云フモノガ、甚ダ世界ニ對シテモ劣等ナル
  位置デアツタト云フ點カラ考ヘテ、將來ニ於テ
  ハドウシテモ或ル程度ニ於テ日木ノ面目ヲ一新
  シ、卽チ復舊デハイカナイ、復興ヲ以テヤレヨ
  ト云フ此思召、吾々ガ此大方針ノ下ニ帝都ノ復興
  計畫ト云フコトニ付キマシテ考ヘナケレバナラヌ
  コトハ勿論ゴサイマス、扨此上カラ考ヘテ見マ
  スルト、此度政府ノ提案シタルモノヲ見テ見ルノ
  二、固ヨリ吾々カヲ見レバ澤由ノ缺點ガアル、區
  々ノ點ヲ批評スルナラバ隨分感心セス事ガ澤山
  アリマス澤出アリマスケレドモ、大體ニ於テ
  復舊ナリ、或ル程度マデ復興トシテ、將來ノ禍ヲ
  豫防シヤウト云フヨトニ付テ、相當ノ用意ガ拂ツ
  テアルモノデアルト云フコトヲ私ハ信ズル、政友
  會ノ修正案ニ依リマスト云フト色〓ノ點ニ於テ、
  隨分斧鉞ヲ加ヘラレテ居リマス例ヘバ土地ノ
  整理ヲヤラウ、成程是ハ普通ノ場合ニ於キマシ
  テハ自治體ニヤラセタラ結構デアリマス、耕地
  整理法ニ於テ耕地整理ヲスルニ付テモ、御承知ノ
  通リ組合デヤラセテ居ル故ニ地主ノ組合ヲ設ケ
  テヤラス、是ハ普通ノ場合デ、非常ノ場合ハ非常
  ナ事ヲ行ハナケレバナラヌ、地主ノ同意ヲ得テ組
  合ヲ拵ヘテ、而シテ相當ノ順序ヲ踏ンデ、土地ノ
  整理ヲシヤウト思ヒマスレバ、恐ラク私共ノ考デ
  ハ三年五年掛ツテモ結了シナイ、上野ノ驛カラ
  東京ノ驛ノ間ノ連絡線ハ如何デアリマスカ、ア
  レダケニ三年モ五年モ掛ツテモ解決シテ居ラメ、
  斯ウ云フモノダ、總テ非常時ニ對シテ非常ナ事ヲ
  行フト云フ場合ハ或ル程度迄ハ國家ノ權力ヲ以
  テヤルト云フ考デヤラナケレバ致底出來ナイ翔〓
  手)普通一般ノ場合、尋常ノ場合ヲ考ヘテ、何モ彼
  モ自治體デヤレ、結構テアリマス、決シテ吾々ハ
  惡イトハ言ハナイケレドモ非常ニ遲レル時
  期ガ遲レル之ガ甚ダ帝都復興ノ上ニ於キマシテ
  非常ナル關係ヲ與ヘルモノト思ヒマスカラ、私共
  ノ考カラ言ヘバドウシテモ此際ハ非常變通ノ方
  法ヲ講ジテ、國家ガ或ル程度迄權力ヲ以テ此土地
  整理ニ力ヲ盡スト云フコトハ已ムヲ得ナイ、ソレ
  ヲ普通ノ場合ト同ジヤウニ考ヘテ、耕地整理ト同
  ジヤウニ考ヘテ、地主組合テヤラスコトニナリマ
  スレバ此飢ニ泣キ寒サニ叫ンデ居ル市民ハ土
  地整理ガ出來テ、完全ニ自分等ノ家ヲ造ルノハ
  三年五年ノ後デアルト云フコトヲ私ハ斷言ヲ致シ
  マス(拍手)又此街路ニ關スルコトモ程度問題、成
  程二割ノ削減、色〓ノ理由ヲクツ付ケテゴザル
  二割ノ削減、經費ノ減ルコトハ吾々モ望ム、御互
  ニ儉約シタイケレドモ、帝都復興、卽チ都市計畫
  ヲ行ハウトシマスト、都市計畫ノ根本ハ何所ニ在
  ルカト云フト、實ハ道路計畫、何ト言ツテモ道路
  計畫ガ都市計畫ノ根本デアル、又道路計畫其宜シ
  キヲ得ヌト、御詔勅ノ趣旨ニ悖ツテ、復舊ニ非
  ズ、復興ト云フコトガ出來マセヌ、七十年目カ八
  十年目ニハ矢張同ジ震災ヲ繰返スコトガ無イト
  モ限ラヌ、又サウ云フ憂ハ確ニアルサウ云フ點
  ニ於テ十分ナル用意ヲ拂ツテ、少クトモ街路ニ關
  スル點ト云フモノハ私共ノ考カラ言ヘバ、年限ガ
  遲レテモ宜イ、五年ガ七年デモ宜イ、十年デモ宜
  イガ、元來計畫ニ付キマシテハ、所謂少シク眼ヲ
  將來ニ放ツテ遠大ナル計ヲ講ジテ質實穩健ナル
  態度ヲ以テ之ヲ實施スルヤウニヤラナケレバナラ
  ヌト思フ、此點カラ考ヘマスルト、街路費ニ對シ
  テ二割ノ削減ヲ爲シタト云フコトハ殆ド私共ハ
  無意味ナ事ト考ヘル、又事務費ヲ減ジテ居ラレマ
  スガ、吾々モ實行ガ出來ルモノナラバ實ハ尨大
  ナル復興院ナルモノハ廢メタイ、成ベク經、費ヲ儉
  約シタイノデアリマス聊カ私ノ考ニ於テモ程度
  ガ大キ過ギルノデアリマス感心ハシテ居ラヌケ
  レドモ、之ヲ壞シテシマツテ、內務省ニ一局ヲ設
  ケテソレヲヤラセルト云フノハ少シク無理デ
  ス、到底實際ニ於テ行ハレヌト云フコトハ私ハ
  今カラ明言シテ置キマス(拍手「出來ル」ト呼フ者
  アリ)行ハレテモ、三年モ五年モ掛ツテ出來ルト
  云フ意味デアル、必ズ遲レル、屹度遲レルト云フ
  意味ニ於テ、私共ハ復興院ト云フモノラ必ズシモ
  宜イト云フ意味デハナイケレドモ、苟モ是ダケノ
  大事業ヲ行フト云フ以上ハ、何カ一ツ特別ナル機
  關殊ニ是ハ內閣總理大臣ノ下ニ在ル所ノ機關ガ
  一番宜イト思フ、復興事業ハ遞信省ニモ關係ガ多
  1、大藏省ニモ關係ガ多イ、或ハ農商務省ニモ關
  係ガ多イ各方面ニ關係ノ多イモノヲ、內務大臣
  ノ管下ニ置クヨリハ內閣總理大臣ノ下ニ置イテ
  統一シテ之ヲ行フト云フ方ガ、非常ニ便利デア
  ル是ハ少シク官廳ニ御經驗ノアル方ハ能ク分ツ
  テ居ル、或ハ一局部デソレヲヤルト云フヤウナコ
  トニ致シマスルト仕事ノ統一モ取レズ、聯絡モ
  取レズ却テ仕事ガ矛盾ヲ起シ、不統一ヲ起シ
  テ、非常ナル不結果ニ終ルト云フコトハ明瞭ナ
  ルコトヽ言ハナケレバナラヌ、斯ノ如ク修正案ハ
  實ニ意味ヲ成サヌト私共ハ思フ所ガ貝今內閣總
  理大臣ガ此壇上デ答辯カアリマシタガ意味ガ分ラ
  ヌ、私ニハ-政府ニ斷乎タル決心ガアツテ出シ
  テ居ルベキ筈ノモノデアルト思フガ、ソレニ對シ
  テ實ハ曖昧ナル答辯ガアツテ、ノ西ダ吾々ニ於テハ
  驚カザルヲ得ナイ、固ヨリ政府ガドウ云フ考ヲ持
  ツテ居ルカハ別トシテ、吾々ハ今現ニアル所ノ此
  大正十二年度ノ追加豫算、ソレ自ラニ就テ議論ヲ
  シテ居ル政府ノ意見ガドウデアラウガ、政友會
  ノ意見ガドウデア〓ウガ、吾々ハ吾々ノ所信ニ向
  ツテ意見ヲ述ベル譯ガアリマス(拍手)諸君、吾々
  ハ一方ニ於テハ斯ノ如キ帝都復興ノ大事ト云フ
  コトハ考ヘテ居ルケレドモ、是ト同時ニ國力ノ程
  度、國力ガ果シテ之ニ應ズルコトガ出來ルヤ否ヤ
  ト云フコトハ決シテ閑却シテ居ラヌ積リデアリ
  アイ、過去數年間ニ於ケル所ノ放漫ナル政策ノ結
  果、我國ノ財政、行政ハ非常ナ厖大ヲ來シ、經
  濟界ニ於テモ非常ニ苦ミヲシ、又財政ノ上ニ
  於テモ殆ド行詰リノ狀態デアルト云フコト
  ハ諸君ノ御承知ノ通リデアル、此行詰リノ
  今日ニ際シテ、突如トシテ斯ノ如キ所ノ出次事ガ
  起ツテ是ガ爲ニ非常ナル多額ノ費用ヲ要スルト
  云フコトデアリマスルカラ國民全體ニ取ツテハ、
  實ハ苦痛ノ話デアル、サナキダニ非常ニ困ツテ居
  ルト云フ所ニ持ツテ來テ、斯ウ云フヤウナ事ガ勃
  發シタト云フコトデアリマスカラ、何レノ點カラ
  考ヘテモ、吾々ハ非常ニ困難デアル苦シイノデ
  アル全國民ガ非常ナル苦痛ノ下ニ、此豫算ニ對シ
  テ臨マナケレバナラヌト云フコトハ分リ切ツタ
  事デアリマス併ナガラ今ニモ日本ガ破產スルヤ
  ウナ口吻ヲ漏ス人ガ時々アルガ、私共ハサウハ考
  ヘマセヌ、此度ノ歐洲ノ戰爭ニ因ツテ、各國ガ非
  常ナル打擊ヲ受ケテ居ル狀況ニ較ベテ見マスレ
  バ我國ノ此度ノ被害ハ迚モ是ハ較ベ物ニナラヌ
  位ノ程度ノモノデアルト言ツテ宜イ、而シテ歐洲
  各國ガ有ユル努力、有ユル奮鬪ヲシテ、アノ勢ヲ
  回復スルト云フコトヲ努メテ居ルガ、若シ吾々ガ
  御互ニ本當ニ奮闘努力致シマスナラバ恐クハ
  十數年、或ハ二十年ヲ出デズシテ、日本ノ經濟力、
  總テノ點ヲ回復シ得ル見込ガアルト思ヒマスカ
  ラ左程心配シタモノデモナイ、西伯利出兵ノ爲
  ニ六億ノ金ヲ使ツタ、實ニ考ヘテ見ルト、六億ノ
  金ヲ西伯利少兵ニ使ツテ、殆ド何等意味ヲ成サヌ
  コトニナツタノハ諸君ノ御承知ノ通リデアル、
  斯ウ云フ點カラ考ヘテ見テ、此大事變ニ對シテ、
  復興計畫ノ爲ニ吾々ガ五億、六億ノ金ヲサウ
  吝ムト云フコトハ是ハ御互ニ考物デナカラウカ
  ト思フ吾々ハ一方ニ農村ノ振興デアルトカ
  或ハ地方經濟界ノ發展ヲ圖ルト云フコトニ付テ
  モ、固ヨリ留意シナケレバナラヌ、去年農村振興
  ノ問題ガ非常ニヤカマシクテ、諸君カラモ色〓建
  議案ガ出、吾々モ建議案ヲ出シマシテ、色〓〓究
  シタコトガアリマスガ吾々ハ一方ニ於テハ此
  大豫算ヲ通過セシムルト云フコトハヤリマシテ
  モ、決シテ地方ノ農村振興デアルトカ、產業ノ發
  展トカ云フコトヲ、度外ニ措イテ居ル積リデハナ
  イ、閑却シテ居ル筈ノモノデモナイ、諸君ノ如ク
  出來ナイ相談ヲシテ、地租委讓論ナドヲ唱ヘラレ
  テ居ル方々ガアリマスガ(拍手「ノウ〓〓」)吾々ハ
  サウ云フ議論ハ致シマセヌ、サウ云フ事ハ出來ナ
  イ(「何ガ出來ナイ」ト呼フ者アリ)出來ナイ斷
  ジテ出來ナイ、出來ナイ所ノ相談デアル、地租委
  讓ト云フヤウナコトハ吾々ハ感心ハシナイ、其
  以外ニ於テ爲スベキ途ハ澤山アリマス(「アルナラ
  ヤレ」ト呼フ者アリ)ヤリマス-將來ヤル豫定デ
  アリマス、一方ニ於テ行政ノ整理ヲ行ヒ、之ニ依
  ツテ得タル所ノ金ニ依ツテ農村ノ振興ヲ圖リ、或
  ハ地方經濟界ノ興勃ヲ圖ルト云フコトハ決シテ
  出來ナイコトハナイ、但シ地租委譲ハ出來ナイト
  云フコトハ吾々ハ明言致シテ置キマス、斯ウ云フ
  譯デアリマスカラ、吾々ハ帝都復興計畫ニ贊成シ
  タカラト云ツテ、何カ地方問題ヲ閑却スルガ如
  ク御考ニナルノハ大間違デアル(拍手)適當ナル
  時機ニ於テ農民ノ負擔ノ輕減ヲ圖ラナケレバナ
  ラズ、又地方ノ產業ノ發達ニ付テハ爲スベク
  又爲サヾルベカラザル事ガ澤山アルト考ヘテ居
  リマスカラ、此點ニ付キマシテハ十分ニ意ヲ
  用ヒテヤル積リデアリマス、斯ウ云フ譯デアリ
  マスカラ、吾々ハ此帝都復興ト云フヤウナ大事
  業ニ對シテ、吾々ガ豫算ヲ審議スル上ニ於テハ
  少シク大局ノ上カラ-大方針ノ上カラ割出シ
  テ、此豫算案ニ關シテハ、全體ニ於テ之ヲ協賛ス
  ルガ適當デアルト思フ、政府ガ若シ此原案ヲ提出
  シテ置キナガラ、修正案ニ對シテ屈服ヲスルト云
  フヤウナ意氣地ノナイヤウナ事ヲヤル場合ニ於テ
  ハ吾々ハ決心ガアルノデアリマス斯ノ如キ大
  事業ヲ非常事變ノ際ニ於テ斷行スル場合ニ於テ、
  政府ガ何等ノ定見モナク、朝ニ一城ヲ削ラレ、タ
  ニ一壘ヲ陷レラレルト云フヤウナ態度ヲ以テ政治
  ヲヤルト云フコトデアリマスルナラバ、吾々ハ此
  際ニ於テ斷乎タル決心ヲ以テ之ニ臨ム積リデアリ
  マス(拍手「ノウ〓〓」)大體ニ於テ吾々ハ此原案ニ
  對シテ、固ヨリ區々ノ點ニ於テハ吾々モ批評ハア
  ル併ナガラ此急イデ居ル際、復興事業ト云フモ
  ノハ一日モ忽ニスルコトガ出來ナイト云フ此大事
  ノ時ニ於テハ斯ウ云フ細カイ問題ヲ論ズル時デ
  ナイ大體ニ於テ是ガ協賛ヲシテ、政府ニ十分ノ
  責任ヲ以テ之ヲ行ハシメルト云フコトガ、時宜ニ
  處スル所ノ途デアルト云フコトヲ信ジマス尙ホ
  愈〓是ガ協賛ヲスルト云フ上ニ於テ、吾々ハ種々
  ナル點ニ於テ希望ヲ持テ居ル、殊ニ行政整理ノ
  問題、卽チ豫算委員會ノ決議トシテ現ハレタ所
  ノ行政整理ノ問題ノ如キハ、何レ革新倶樂部ノ
  方〓カラモ御話ガアルデアラウト思ヒマ
  スガ、諸君ガ考ヘテ居ルヤウナ程度ノ行政整理
  デハナイ、モ少シ組織的ナ意義アル所ノ行政整
  理ヲ行ハウト云フ考ヲ以テ、政府ニ向ツテ是ガ
  斷行ヲ迫ルト云ツ考ヲ持ツテ居ルノデゴザイ
  マスガ、尙ホ以外ニ其種々ノ警告希望ヲ爲スベキ
  點ヲ有シテ居ルケレドモ、是ハ此點ニ止メテ置キ
  マシテ、大體吾々ガ本豫算ニ對シテ賛成ヲシタ理
  由ヲ明カニシタ次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=51

  ---

• 052・山本悌二郎

  ○山本悌二郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=52

  ---

• 053・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　山本君何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=53

  ---

• 054・山本悌二郎

  ○山本悌二郞君　先刻豫算委員長トシテ豫算委員
  會ノ結果ヲ報告致シマシタ中ニ、漏シタト思フ點
  ガアリマスカラ、補足シタイト思ヒマス、發言ノ
  許可ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=54

  ---

• 055・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　只今豫算委員長ヨリ、委員
  會ノ結果ニ付テ更ニ之ヲ補足致シタイト云フコト
  デアリマス
  〔「無用無用」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=55

  ---

• 056・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御靜ニ御聽キナサイ、今討
  論ニ入テ居リマスカラシテ、特ニ諸君ノ意見ヲ問
  ヒマス、山本君ヲシテ委員會ノ報告ヲ補足セシム
  ルト云フコトニ御異議ハアリマセスカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」又「異議アリ「異
  議アリ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=56

  ---

• 057・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ガアリマスカ-御
  異議ガアリマスナラバ採決ニ依ツテ決シマス
  〔「異議アリ」「悪例ダ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=57

  ---

• 058・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜ニ御聽キナサイ、此發言
  ヲ許可スルニ御異議ノナイ諸君ハ起立ヲ願ヒマス
  〔異議ナキ者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=58

  ---

• 059・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　多數デアリマス(拍手)山
  本悌二郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=59

  ---

• 060・山本悌二郎

  ○山本悌二郞君　極メテ簡單デアリマスカラ此席
  ヨリ申述ベマス
  〔、「登壇」「登壇」ト呼フ者アリ〕
  〔山本悌二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=60

  ---

• 061・山本悌二郎

  ○山本悌二郞君　先刻採決ノ結果ニ付キマシテ、
  此第一號ノ大正十二年度歳入歲出總豫算追加案ノ
  結果ヲ申上ゲタノデアリスガ、其際他ノ三案ノ結
  果ヲ申シ殘シタヤウニ記憶シテ居リマス、ケレド
  モ或ハ是ハ申述ベテアルカモ知レマセヌ、ソレハ
  追加第一號、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ
  爲スヲ要スル件、第二號、大正十二年度歲入歳出總
  豫算追加案、特第一號大正十二年度特別會計歲
  入歳出豫算追加案、此二案ハ委員會ニ於テ何等ノ
  修正モナクシテ委員會全會一致ヲ以テ可決シマ
  シタ次第デアリマスカラ之ヲ補足シテ御報告ヲ申
  上ゲテ置キマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=61

  ---

• 062・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　三土忠造君
  〔三土忠造君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=62

  ---

• 063・三土忠造

  ○三土忠造君　諸君、本員ハ只今議題トナツテ居
  リマス豫算案ニ對シテ委員長ノ報告ニ贊成致シ
  マシテ、是ガ贊成ノ理由ニ付キマシテ、聊カ所見
  ヲ申述ベテ見タイト思フノデアリマス、此度ノ大
  震災ニ付キマシテ、玆ニ政府ハ臨時議會ヲ召集セ
  ラレ主トシテ所謂帝都復興ニ關スル豫算案ヲ吾
  吾ノ前ヘ提案サレタノデアリマス、此帝都復興計
  畫ナルモノハ金高ヨリ申セバ約六億圓デアリマ
  ス若シ六億圓ノ帝都復興計畫ノミト致シテモ、
  現下ノ我國ノ財政其他ノ狀況カラ考ヘマシテ餘
  程愼重ニ考慮ヲ要スル問題ト考ヘマス、然ルニ吾
  吾ガ茲ニ論議致シマスモノハ單ニ是バカリデア
  リマセヌ、マダ此臨時議會ニ於テ既ニ當然出シテ
  居ラナクテハナラヌモノデ、未ダ政府ノ調査ガ十
  分ナラザルガ爲ニ、次ノ通常議會ニ殘シテ居ル大
  ナル財政計畫ガアルノデアリマス、卽チ帝都復興
  計畫以外ノ所謂復舊費デアリマス、今回ノ大震災
  ニ因ル官廳、學校、郵便、電信、電話其他政府ノ
  營造物ノ復舊費ハ餘程巨額ヲ要スルノデアリマ
  ス、大體承ル所ニ依ルト、大藏大臣ハ各省ノ要求
  ヲ見タ上デ、此總額ヲ約六億圓程度ニ切詰メタイ
  ト云フコトデアリマス、或ハ六億圓程度ニ切詰メ
  得ラルヽヤ否ヤト云フコトハ、餘程困難デハナイ
  カト思ヒマス、其上今回提案サレタル帝都復興計
  畫ナルモノハ東京橫濱ノ二大都市、東京府、神
  奈川縣ノ二縣ニ限ルノデアリマシテ、其他ノ千葉
  縣埼玉縣、靜岡縣等ノ如キ大震災ノ罹災地ノ復
  舊費ハマダ出テ居ラヌノデアリマス、此慘害ノ
  跡ヲ顧ミマシテ、是等罹災地ノ復舊費用ハ相當
  巨額ノ補助ヲ要スルコトヽ思ヒマス是等ヲ併セ
  テ考ヘテ見マスルト、財政上ノ餘程窮乏ヲ告ゲテ
  居ル際ニ於キマシテ、吾々ガ至誠國家ノ爲メ、及
  國民ノ爲ニ考ヘマスナラバ全體ノ計畫ヲ玆ニ提
  案致シテ貰ツテ、徐々ニ財政全體ヲ考ヘ經濟上
  ノ影響如何ヲ考ヘ且ツ此計畫ヲ實施スベキ市民
  府民ノ負擔ノ狀況ヲ考ヘテ、十分考慮ノ上ニ決定
  スルノガ本旨ト考ヘマス、然ルニ不幸ニシテ震災
  以後諸般ノ支障ヲ生ジタガ爲ニ、政府ニ於キマシ
  テモ左樣ナ運ビニ至ラズ、最モ急ヲ要スルト政府
  ノ認メラレマス所ノ所謂帝都復興計畫ナルモノ
  ヲ玆ニ切離シテ吾々ニ提案サレタノデアリマス
  此案ナルモノハ其案ノ內容如何ニ拘ラズ、兎ニ
  角今回ノ大震災ハ申スマデモナク、世界古今ノ歷
  史ニ於テ其類例ヲ見ザル程ノモノデアリマス此
  大慘禍ニ顧ミテ、將來ノ爲ニ圖リ、且ツ是マデ多
  年内務省ニ於テ計畫シ、東京市ニ於テ計畫シ、横
  濱市ニ於テ計畫シテ居リマシタル所謂都市計畫事
  業ヲ、此障害物ノ燒失シタル機會ニ於テ、若干ノ
  程度ニ於テ遂行スルト云フコトニ付テハ、何人
  モ之ニ反對スル人ハナカラウト思ヒマス(拍
  手)唯〓吾々玆ニ最モ考慮ヲ要スルコトハ
  財政上ノ現在及將來ニ於ケル影響如何、經濟
  界ニ及ボス影響如何、竝ニ市民ノ負擔ノ影響
  如何ト云フコトデアリマス、是等ヲ徐々ニ
  攻究ヲシナケレバ容易ニ之ニ贊成スルコトハ出來
  ヌノデアリマス、是ニ於テ吾々ハ實ハ此約六億圓
  ノ豫算デアリマスルガ僅ニ之ヲ衆議院ニ於テ數
  日ノ間ニ審議ヲスルト云フコトハ餘程無理デアル
  ト考ヘマス、併ナガラ只今東京市民ハ如何ナル狀
  態ニ在ルカト申シマスルト震災後政府ハ此計畫
  ヲ有スルガ爲ニ、市民ニ向ツテ本建築ヲ許サズ、
  此寒天ニ向ツテ「バラツク」ノ間ニ生活シテ居ル
  ノデアリマス、抑〓帝都復興ノ最大急務ハ市民ノ
  居住ノ安定、經濟機能ノ復活デアラネバナラヌ(ヒ
  ヤ〓〓)然ルニ此計畫ヲ有スル爲ニ暫クノ間市民
  ニ我慢ヲシテ待ツ〓貫ツテ居ル場合デアリマス、
  故ニ吾々ハ此案ニ對シテ十分審議ヲ盡スダケノ時
  間ヲ與ヘラレヌコトヲ遺憾ト致シマスガ、サレバ
  トテ此成立ニ向ツテハ極力力ヲ致シマスルノデア
  リマスル故ニ、御承知ノ通リ每日々々夜ヲ日ニ
  繼イデ勉强シテ、漸ク今日茲ニ此案ガ決定スル運
  ビニ至ツタノデア共マス、此事ニ付キマシテハ
  政府ハ勿論、又東京市民ハ勿論、全國民モ吾々ノ
  勤勉努力ニ對シテ士分ノ了解ガアル事ト考ヘマ
  ス(一ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」)先ヅ私ハ財政上カラ
  大體ヲ考ヘテ見マスルガ、申ス迄モナク今回ノ大
  震火災ガナカツタト致シマシテモ我ガ國家ノ財
  政ハ餘程窮乏ヲ告ゲテ居リマス是迄過去數年間
  ニ於キマシテハ經濟界ガ頗ル好況デアリマシタ
  每年豫算ニ對シテ自然增收ヲ見積リ、其上尙且
  ツ巨額ノ剩餘金ヲ生ジタノデアリマス隨テ公
  由發行ニ付キマシテモ、サウ無理ヲセズシテ
  相當ナ額ヲ募集スル=コトガ出來タノデアリマス
  然ルニ今ヤ國家ノ財政ハ如何ナル狀態ニナツテ居
  ルカト申シマスレバ、今回ノ大震火災ニ依ツテ我
  國ノ內デ最モ經濟力ノ發達シテ居ル、最モ擔稅力
  ノ强イ東京、橫濱二大都市ヲ中心トシテ、一府四
  府ニ亙ツテノ大慘害ガアツタノデアリマス、此結
  果トシテ國庫ノ收入ニ大激減ヲ來シタコトハ申ス
  迄モアリマセヌ、此歲入激減ヲ來シマシタ爲ニ〃
  政府ハ大正十二年度ノ豫算ヲ遂行スルコト能ハズ
  シテ、豫算ノ編成替ヲ致シタノデアリマス而シ
  テ大正十二年度ノ豫算ノ編成替ヲ致シマスルニ當
  リマシテ、大正十一年度ノ歲入ノ實蹟ニ顧ミテ
  既ニ十二年度ノ實行豫算ニ於テ、當初豫算ヨリモ
  一億圓程ノ經常歳入ヲ多ク見積ツテ居リマス又
  十三年度ノ財政計畫ヲ立デマスルニ付キマシテ
  モ同樣ニ一億圓程ノ自然增收ヲ見積ツテ居ルノ
  デアリマス斯ノ如クニシテ漸ク歲入ノ筒一杯ヲ
  計上シ、且ツ一面ニ於テ殆ド全國ニ亙ル產業ノ開
  發或ハ貿易ノ發展、通信交通機關ノ整備等ニ關
  スル事業費ナルモノヽ餘程巨額ノモノハ、中止若
  クハ繰延ヲ斷行致シテ居ルノデアリマス、斯ノ如
  クシテ漸ク歲入歳出ノ收支ヲ合セテ居ルヤウナ狀
  況デアリマス此政府ノ歲入ノ見積ハ私共ハ決シ
  テ無理トハ思ヒマセヌ、先刻下岡君ヨリシテ地租
  委讓ノ問題ニ付テ御意見ガアリマシタガ、私ガ我
  ガ政友會ヲ代表シテ昨年ノ議會ニ、此處ニ我黨ノ
  主張ニ係ル地租輕減案ヲ提案致シマシタ時分ニ
  其歲人ノ辻褄ヲ合ハスコトハ政府ニ一任スルト云
  フコトヲ申シテ置キマシタケレドモ其後有ユル
  機會ニ於テ私ハ大正十一年度ノ歲入ノ狀況ニ鑑ミ
  テ大正十三年度ノ財政計畫ヲ立テル時分ニハ經
  常歲八ニ於テ一億圓ノ歲入ヲ多ク見積ルコトハ決
  シテ無理デナイ是ノミヲ以テシテモ地租ノ委議
  ノ財源ニ當テ、且ツ此議院ノ決議ニ依リ恩給法ノ
  改正ニ基ク非常ナル增額、此二ツヲ賄ヒ切レルト
  云フコトヲ申シテ置イタノデアリマス、然ルニ政
  府ハ今回我々ノ兒積ツテ置イタ通リ、丁度一億圓
  歲入ノ見積ヲ增加シテ、此財政ノ計畫ヲ立テ居ル
  ノデアリマス、現ニ吾々ノ前ニ地租委讓ヲ唱ヘタ
  コトハ、決シテ間違ツテ居ラナカツタト云フコト
  ガ立證サレテ居ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)
  先ヅ左樣ニシテ歲入歳出ノ辻褄ハ合ツテ居ルノデ
  アリマス、偖テ前途ヲ考ヘテ見マスト云フト、此
  處マデ經常歲入ヲ見積ツテ居リマス以上ハ最早
  大正十三年、四年ニ至リマシテハ國庫ノ剩餘お
  ナルモノハ多ク出ナイト考ヘナケレバナラヌ、先
  ツ無イト考ヘナケレバナラヌノデアリマス、又稅
  ノ減收ニナリマスモノ官業收入ノ減收ニナリ
  マスモノ、此回復モ中〓容易デナイト考ヘナケレ
  バナラヌ、然ルニ一面ニ於テ國家財政計畫ニ於
  テハ殆ド地方ノ開發ニ要スル經費ハ打切ツテ
  居ルノデアリマス大藏大臣ノ說明ニ依ツテ、
  將來ニ亙ル財政計畫ヲ吟味致シテ見マスト、今
  回提案サレマシタル此復興計畫、及ビ是ヨリ通
  常識會ニ提案サレントスル約六億圓ノ復舊計畫
  竝ニ保險會社ニ對スル貸付等、是等ヲ合セマシテ
  約十五億圓ノ公債ヲ發行スルト云フコトデアリマ
  スガ、此公債ヲ發行スル爲ニ、殆ド我ガ國民ノ貯
  蓄ノ全部ヲ擧ゲテ是ニ投ジナケレバナラヌ、隨テ
  政府ハ中央ノ財政ニ對シテ非常ナル緊縮節約ヲ行
  ヒ繰延打切ヲ斷行シタルノミナラズ、地方ノ自
  治團體ニ向セマシテモ、地方長官ニ對シテ緊縮節
  約ヲ奬勵シ、地方債ノ新規募集ハ大體ニ於テ之ヲ
  禁止致シテ居ルノデアリマス斯ノ如クニシテ公
  債ノ消化力ノアラン限リヲ、或ハ公募ニ依リ或
  ハ借入金ノ形式ニ依リ、或ハ臨時國庫債劵ノ形式
  ニ依リ有ラユル手段ヲ以テ此十五億圓ノ金ヲ調
  達シヤウト云フノガ政府ノ計書デアリマス故
  之ヲ言換ヘテ見マスルナラバ地方ヘヤルベキ金
  ハ成ベク差控ヘ而シテ地方デ起スベキ事業ハ押
  ヘテ置イテ、サウシテ地方ニ於ケル貯蓄力ノ全部
  ヲ擧ゲテ、之ヲ京濱ノ地ニ集中シテ、而シテ此十
  五億圓ノ公債ノ財源ヲ充タシテ、サウシテ初メテ
  此復舊事業、復興計畫ガ出來ルノデアリマス(拍手
  「ヒヤ〓〓」)言換ヘテ見レバ全國ノ地方ノ產業發
  展、農村振興等ノ財源ハ總テ之ヲ中央ニ吸集シテ
  サウシテ此全力ヲ注イデ帝都ノ復興、復舊事業及
  ビ罹災地ノ復舊ノ補助ニ當テルト言フ計畫デアリ
  マス(「ヒヤ〓〓」ノウ〓〓」)斯ウ云フ場合デアリ
  マスカラ、私ハ決シテ是ハ無理トハ申シマセヌ
  ガ、斯ウ云フ場合デアルカラシテ吾々ト致シマシ
  テモ又殊ニ東京市民ト致シマシテモ、出來ルダ
  ケノ事ヲ忍ンデ御互ニ我慢ヲ仕合ハナケレバナラ
  ヌト考ヘルノデアリマスソレカラ又吾々トシテ
  更ニ考ヘナケレバナリマセメノハ東京市民橫濱
  市民ノ將來ニ於ケル負擔デアリマス此政府ノ計
  畫ニ依リマスルト云フト東京市ニ於テ復興計畫
  ニ要スルモノハ國ノ負擔ニ屬スルモノト東京市
  ノ負擔ノ形式ニ屬スルモノト合セマシテ五億八千
  五百苗圓ニナルノデアリマス其中純然タル國ノ
  負擔ニ屬スルモノハ二億八千一自萬圓デアル其
  後ノ三億三百萬圓ト云フモノハ東京市ノ負擔ニナ
  ルノデアリマスガ、併ナガラ其大部分ハ或ハ
  國ガ無利子デ貸付、或ハ利子ヲ補給シ、當分ノ中
  京京市民ハ殆ド金ハ出サナクテモ宜イノデア
  リマス而シテ是ガ辨濟ニ付キマシテモ大藏
  大臣ノ說明ニ依リマスレバ、無利子ノモノハ
  勿論何時マデモ無利子デアツテ之ヲ何時カラ債
  還サスカト云フトアニ付テハ事業完反後ノ東京市
  ノ經濟貯態ヲ見ヤウト云フノデアリマス、利子
  ノ補給ハ事業完成ノ年、卽チ大正十七年ヲ限リト
  致シテアリマスガ、是亦其時ノ東京市ノ經濟狀態
  ニ依ツテ或ハ延バスカモ知レヌト云フノガ大藏大
  臣ノ言明デアリマス、又左樣ニ致サナケレバ恐ラ
  ク東京市ハ負擔ニ堪ヘヌデアラウト思ヒマス故
  ニ此計畫ニ依リマスレバ二億八千二百万圓ガ純
  然タル國庫ノ負擔デアリ、東京市ノ負擔ハ僅
  百万圓トナツテ居リマスケレドモ、此億三百万
  固モ亦無利子デ以テ國ガ出シテヤリ、サウシテ有
  ル時拂ヒノ催促ナシト云フ狀況デアリマス、此所
  マデシナケレバ東京ハ立行キマセヌ吾々ハ此東
  京市ノ復興ハ成ベク一日モ早ク致シテ、此巨額ナ
  ル市債ノ元金償却ノ出來ルコトノ一日モ早カラン
  コトヲ希望致シマスガ、中〓其時則ハ容易デナイ
  ト考ヘナケレバナラス、而シテ又一面東京市自體
  ノ歲入ヲ調ベマスルト云フト、是マデノ大正十
  年-御承知ノ通リ大正十一年ガ最モ地方ノ財政ノ
  修脹シタ時デアリマス全國各地ヲ見マシテモ十
  一年ガ一番栖頂デアリマス此時ニ於テ東京市ノ
  稅收入ハ幾ラカト申シマスレバ二千三百万圓デ
  アリマス市民一人當ハ十圓七十五錢テアリマス
  全國ノ都市ヲ見マシテモ全國ノ都市ノ中デ一人當
  十圓以上ノ課稅ヲ致シテ居リマスル市ハ片手デ算
  ヘル位シカナイノデアリマス故ニ十圓以上ノ
  人當ノ課况ト云フコトハ輕イ方デハアリマセヌ、
  斯ノ如キ負擔ヲ致シテ居ツテ、尙旦ツ二千三百万
  圓ホカ代收入ハナイノデアリマス然ルニ此事業
  成後ニ於テ假リニ三億圓ノ負擔ヲ一時公債ヲ以
  テ借入レテ置イテ、此利拂ヲ致スコトニ致シマシ
  テモ、殆ド稅收入ノ全部ヲ持ツテ行カナケレバナ
  ラスノデアリマス、此財源ニ付テ如何ニスルカト
  云フ事ヲ聽イテ見マスト云フト、內務大臣ニ聽キ
  マシタガ能ク分リマセヌソコデ大藏大臣ニ聽イ
  テ見マスト云フト一大藏大臣ノ答辯ニ依リマスレ
  バ大藏大臣ハ東京市ノ特別經濟ニ屬スル電車水
  道等ノ收益ガ長キ年月ノ間ニハ相當ニ生ズル積リ
  デアルカラ、之ヲ以テ一般會計ノ利拂若クハ元金
  債還ノ爲ニ充テル、尙ホ東京市ノ國稅附加稅ニ於
  キマシテハ自治團體ニ許シテ居ル制限外課稅ノ極
  度マデ許シテ八百万圓ノ增收ヲスル計畫ニシテ、
  サウシテ此公債債却ノ財源ニ充テルト云フヤウナ
  計畫デアルヤウデアリマス、併ナガラ此殆ド大都
  市ノ七割マデガ燒失致シ、殊ニ經濟力ノ最モ中心
  地タル下町方面ガ全減致シタノデアリマスガ故
  ニ是ガ回復ハ中〓容易デアリマセヌ、吾々ハ東
  京市ノ將來ノ經濟狀態ヲ考ヘテ見マスト、餘程負
  擔ハ重イト考ヘマスソコデ吾々ハ一面財政上ヨ
  3枚分又東京市民ノ將來ノ負擔ヨリ考ヘマシテ
  出來ルダケ此事業ハ應急已ムヲ得ザル節圍ニ止メ
  ル外ハナイト考ヘタノデアリマス、此ニ於テ先
  刻委員長ガ報告致シマシタ通リ、吾々ハ三ツノ
  點ニ於テ修正ヲ加ヘタノデアリマス第一ハ道
  路ノ費用ニ於テ約二割ト云フ目安ヲ置イタノ
  デアリマス、二割ノ節減デアリマスケレドモ
  吾々ハ此線路ノ全部ニ亙ツテ一々細カニ修正
  スルコトハ立法府トシテハ容易ノ事デハアリセマ
  ヌ、殊ニ此非常ニ短イ時日ニ於テ精密ニ之ヲ一々
  調査致シマスコトハ困難デアリマスガ故ニ、先ヅ
  國家ノ財政カラ考ヘ東京市ノ負擔カラ考へマシ
  テ.成ベク已ムヲ得ザル程度ニ止メルト云フコト
  ニ致スノガ一ツノ趣旨、殊ニ此計畫ノ內容ヲ見マ
  スト或ハ是デ濟メバ宜シイガ、將來ニ於テ事業
  遂行ノ場合非常ニ是ガ增額ニナルカモ知レナイト
  云フ虞ガアルノデアリマス而モ一旦着手スレバ
  ドウシテモ是ハ完成セズニハ置カレマセヌ、ソレ
  デ先ヅ大體ニ於テ金高デ押へ、而シテ狭イ道路、十
  二間幅以下ノ道路ハ先ヅ東京市ニ委ス、面シテ是
  ガ財源ニ付キマシテハ或ハ貸付金ヲスルトカ、或
  ハ補助ヲスルトカ、相當ナ方法ヲ講ズレバ宜シ
  イ要スルニ國ガヤルベキモノハ先ヅ大體大キナ
  路線ニ止メル成ルベク自治團體ノ機能ヲ發揮セ
  シメテ、所謂地方各權ノ大主義ニ基イテ、東京ノ
  如キ我ガ帝國ノ中心地タル模範的大都市自治團體
  トシテ最モ天下ニ率先シテ事業ノ遂行ノ能力ヲ發
  揮シナケレバナラヌ都市ニ對シテ、小サイ事マデ
  國ガ干涉スルコトハ宜シクナイト云フ見地カラシ
  テ、之ヲ修正致シタノデアリマス(拍手)三木君
  ハ-三木武吉君ハ是ガ爲ニ却テ東京市ノ負擔ガ
  增スヤウニ御考ニナツテ居ルヤウデアリマス
  ガ、此二割ヲ減ズル中ニモ東京市ノ負擔ハ隨分ア
  ルノデアリマス、ノミナラズ、十二間以下ノ道路
  ニ付キマシテモ吾々バ東京市ノ負擔ニ堪ヘル範圍
  ニ於テヤルヨリ仕方ガナイト思ヒマス若シ負擔
  ニ堪ヘナケレバ此復興院ニ於テ計畫シテ居ル所ノ
  モノヲ、或ハ變更スル心要ガアルカモ知レマセヌ、
  吾々ハ兎ニ角負擔力ヲ考ヘテ行キマスト、此程度
  二於テ止メルヨリ外ナイ(一計畫ヲ變更スルノカ」
  ト呼フ者アリ)計畫ハ變更サレルカモ知レマセヌ
  故ニ先刻像算委員會ニ於テ吾々同志ヲ代表シテ
  島田君ハ路線ノ面積-幅若クハ工事其他ノ點ヲ
  考慮シテ二割ヲ引イタト言ハレタノデアリマス、
  故ニ若シ政府ガ吾々ノ修正ヲ採用サレテ、事業ヲ
  遂行スル場合ニ於テ金ガ足リナカツタナラバ吾
  吾ハ先ヅ是レ以上ノ金ハ大體ニ於テ許サヌト云フ
  方針デアリマス、此範圍內ニ於テ政府ガ或ハ路線
  ヲ縮メルナリ、或ハ路線ヲ少クスルナリ、相當ナ
  計〓ヲスルガ宜シイト思フノデアリマス、ソレカ
  ラ第二ノ問題ハ區劃整理デアリマス、政府ノ案ニ
  依リマスレバ區劃整理ヲ國ノ力ニ依ツテヤルト
  云フノデアリマス、併ナガラ是ハ元ト政府ガ復興
  審議會ニ提案サレマシタ時分ニハサウデナカツタ
  ノデアリマス、復興審議會ニ提案サレマシタ時
  分ニハ大體ニ於テ路線ノ修築ノ爲ニ必要已ム
  ヲ得ザルモノニ對シテハ國ガ整理ノ事業ヲ致シ
  マスケレドモ、大體ニ於テ地主組合ヲシテ之ヲ
  ヤラセル、卽チ現在ノ都市計畫法ノ制定サ
  レタル精神ニ依ツテヤルト云フノガ、政府ノ方針
  デアツタノデアリマス、然ルニ審議會ニ於テ路線
  ガ削ラレタ爲ニ、事業ノ遂行上支障ヲ生ズルト云
  フ見地ヨリシテ、政府ハ元ノ計畫ヲ變更サレタノ
  デアリマス、吾々ハ此多額ノ金ヲ投ジ全國民ノ
  膏血ヲ搾ツテ、此ニ投ジテ復興事業ヲ完成シヤウ
  トスルノデアリマスカラ、此見地ヨリ考ヘマシテ
  モ東京ノ地主モ相當ナ犠牲ヲ拂ヒ互ニ都市ノ改
  良、都會ノ繁榮、帝都復興ノ基礎ヲ置ク爲ニ、出來
  ルダケノ努力ヲ拂ツテ、御互ニ組合デヤレバ出來
  ルト思フノデアリマス(拍手)又サウスルコトガ當
  然デアル必要已ムヲ得ザル所ハ國ガスベキト云
  フノガ、吾々ノ考デアリマシテ、卽チ元ノ復興審議
  會へ政府ガ提案サレタモノニ引返へシタノガ修正
  ノ骨子デアリマス(拍手)ソレカラ復興院ノ事務費
  デアリマスルガ、此復興院ト云フモノハ最初設立
  サレマシタ時分ノ御計畫トハ變ツテ居リハセヌカ
  ト私共ハ思フノデアリマス最初ハ私共ノ考デハ
  今回ノ復興計畫ノミナラズ、所謂諸官省ノ所管ニ
  互ル復舊事業、其他總テヲ一手ニ引受ケテヤルト
  云フノデアリマシタ、昔ノ所謂工部省ノ如キモノ
  ガ出來テ、サウシテ凡テ土木建築等ノ此大震災火
  災ニ依ル事業ヲ、一手ニ引受ケルト云フヤウナ計
  畫デアツタノデアリマス、ソレナラバ意味ヲ成ス
  ノデアリマス、然ルニ復舊事業ハ各省ノ所管ニ於
  テ之ヲヤルコトニナツテ居ル今回ノ復興院デヤ
  ツテ居ル仕事ハ名ハ復興ト申シマスケレドモ、
  實ハ都市計畫ニ過ギナイノデアリマス、(セヤヒ
  ヤ)卽チ東京横濱兩都市、竝ニ東京府、神奈川縣ノ
  都市計畫、竝ニ道路、橋梁、河川等ノ修築ノ仕事ヲ
  ヤルト云フコトニ過ギナイ、而モ府縣ニ對シマシ
  テハ補助ヲスルニ過ギナイ、主トシテ復興院ノシ
  マスル仕事ハ東京市横濱市ノ二大都市ノ都市計畫
  ノ事業ヲ遂行スルニ過ギナイ、他ニ何モ無イノデ
  アリマスサウ一致シマスレバ斯ノ如キ官省ヲ内
  閣ノ直屬ニスルト云フ必要ハ無イノデアリマス、
  元來行政組織ノ本筋カラ申シマスレバ、内閣ト云
  フモノハ行政事務ヲ執行スル機關デハンイ.行政
  事務ハ各省所管ニ移シテ置イテ、一省デスル、
  省ダケ限リノ仕事デナクシテ、數箇省ニ共通ノ場
  合ニ、已ムヲ得ズシテ内閣ニ行政事務ノ官廳ヲ置
  クノデアリマス今回ノハ左樣デアリマセヌ、如何
  ニ斯樣ナ非常ナ場合ト雖、少シモ內閣ニ置ク必要
  ハ無イ內務省ニ置イテ內務省當然ノ管下ニ屬ス
  ル東京市横濱市ノ仕事ヲスルニ何ノ差支ガアリ
  マセウ(ヒヤ〓〓)其上ニ內務省ニ於キマシテハ
  治水事業ニ致シマシテモ、或ハ道路ノ事業ニ致シ
  マシテモ、港灣ノ事業ニシテモ熟練堪能ナル者
  ガ幾ラモ居ルノデアリマス、此內務省ニ居ル熟練
  ナル經驗家ヲ中心トシテ、サウシテ足ラザルモノ
  ヲ集メテ來テヤリサヘスレバ最モ圓滑ニ行クノ
  デアル、復興院設置以來ノ狀況ヲ見マスルト云フ
  ト折角復興院ヲ置イタガ、復興院ノ官吏ノ任命
  ニ付テハ殆ド布望者ガ無イ、內務省カラ熟練ナ者
  ヲ探ツテ來ヤウトシテモ、內務省カラ來ナイ、大
  藏省カラ採ラウトシテモ、大藏省カラ來ナイ大
  多數ハ兼任デヤツテ居ルノデアリマス寧口是ハ
  內務省ニ置キマシタナラバ內務省ノ是迄ヤツテ
  居ル者ヲ中心トシテ組織スレバ十分出來ルノデ
  アルサウナレバ又事業ノ遂行上ニ於キマシテモ
  却テ便利カト私共ハ考へルノデアリマス、故ニ、此
  復興院ノ事業費ヲ削リマシタト云フコトハ吾々
  ハ復興院ニ對シテ何等ノ考ヲ持ツテ居リマセヌ
  唯復興院ト云フヤウナ內閣直屬ノ機關ヲ置クノ
  ハ法制上本筋デナイ、又實際事務ノ遂行上カラ
  申シマシテモ內閣ニ置クコトガ必要デ無クシテ、
  內務省ニ置ケバ宜イノデアル、是亦非常ナ事業ヲ
  スルノデアリマスカラ、相當ナ機關モ要リマセウ、
  ソレ相當ナ經費ヲ要スルト云フコトハ、吾々ハ何
  時タリトモ適當ナル程度ニ於テハ協賛ヲ致スノデ
  アリマス、斯ウ云フ意味デアリマシテ、要スルニ
  吾々ハ財政ノ見地ヨリ、又經濟ノ見地ヨリ、市民
  ノ負擔ノ將來ヨリ考へ、眞ニ嚴正公半ノ態度ヲ以
  テ、能ク之ヲ考慮致シマシタ上ニ、斯樣ナ修正ヲ
  致シタノデアリマス、東京市民ニモ能ク考ヘテ貰
  ハナケレバナラヌ東京市民ダケカラ申シマスト、
  此際完全ナ程宜シカラウケレドモ前申ス通リ、
  五億八千五百万圓ト云フ原案ニ依リマスト、殆ド
  全部ハ國ガヤル若クハ立替ヘルノデアリマス
  斯ノ如クニマデヤツテ居ルノデアリマスカラ、東
  京市民モ吾々ノ誠意ヲ諒トセランコトヲ希望致ス
  (拍手)又吾々ガ修正致シマシタ案ガ通過致シマシ
  テ、此復興計畫ヲ遂行スルニ付キマシテモ東京
  市民ハ吾々ノ意ノ在ル所ヲ諒トセラレテ、互ニ協
  力一致シ、又其他地主ノ如キ、出來ルダケノ犠牲
  ヲ拂ツテ、吾々ガ組合事業ニ移シマシタ所ノ區劃
  整理ノ事ニ付キマシテハ成ベク此自治團體ヲ援
  ケテ此事業ノ一日モ速ニ完成ニ就テ努力アラム
  コトヲ希望スルノデアリマス、此修正案ニ對シテ
  ハ政府ハ先刻湯淺凡平君ノ御質問ニ對シテ、總
  理大臣ハ誠ニ此修正ニ就キマシテハ餘程重大ナ
  修正デアルヤウニ思フケレドモ、併ナガラ東京市
  民ガ一日モ速ニ其居ニ安ンジ、經濟ノ復活ヲ圖ラ
  ウト思ツテ居ル場合デアルカラ、政府モ不便ヲ忍
  ンデ之ヲ承諾致シタイト云フヤウナコトヲ言ハレ
  タノデアリマス、サウナレバ詰リ政府ハ吾々ノ修
  正案ニ賛成セラレルコトニナル此吾々ノ修正案
  ニ贊成セラレルナラバ何モ憲政會諸君ナドハ
  原案ヲ支持スル必要ハ無カラウト思フ(拍手)ソ
  レ程迄ニ政黨ノ面目ヲ犠牲ニシ.サウシテ政府
  ニ御用振ヲ發揮スル必要ハ無カラウト思フノデ
  アル(拍手)吾々ハ前申ス通リ、忍ブベカラザ
  ルヲ忍ンデ居ル、吾々ガ是ダケノ事ニ就テ修正
  シテ賛成致シマスニ就キマシテハ地方ノ狀況全
  體ヲ考ヘ殊ニ我黨所屬ノ議員ノ中ニハ隨分議
  論ガアリマス、地方問題等ニ就テモ主張ガアルガ、
  皆御互ニ我ガ帝國ノ帝都デアルト云フ考カラシ
  テ、大ナル犧牲ヲ拂ヒ、吾々ハ忍ブベカラザルコ
  トヲ忍ンデ之ニ贊成致シタノデアリマス、政府ニ
  於テモドウカ多少面目ヲ汚スヤウナコトハアサマ
  セウガ、ドウカ政府ニ於キマシテモ我々ノ修正ニ
  從ツテ、成ベク速ニ東京市民ノ安定ヲ圖ルヤウニ
  希望致シテ置キマス、政府ニ於キマシテハ吾々
  ノ案ニ大體同意セラレテ、此案ノ成立ヲ期スルヤ
  ウデアリマスカラ、ドウカ滿場ノ諸君ハ何モ政府
  ニ向ツテ別ニ御用振ヲ發揮スルコトハナイ、吾々
  ノ案ニ賛成セラレンコトヲ希望致スノデアリマス
  (拍手)
  〔橫山勝太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=63

  ---

• 064・横山勝太郎

  ○横山勝太郞君　本員ハ此機會ニ於テ罹災地デア
  ル所ノ東京市或ハ橫濱等ノ所謂罹災地ニ於ケル住
  民ノ感情ノ在ル所ヲ率直ニ表白致シテ置キタイト
  考ヘルノデアリマス(謹聽)只今政友會ノ三土君
  ハ旣ニ政府ガ政友會ノ修正ニ同意致シテ居ルデ
  アルカラシテ、彼此原案ニ付テ贊成ノ意思ヲ表示
  スルノ必要ハ無イト云フ御說ガアリマシタガ(「押
  賣ノ必要ナシ」ト呼フ者アリ)是ハ暴論モ亦甚シ
  ク吾々ハ現内閣ニ向ツテ、一ツモ押賣モ何モ致
  シテ居リマセヌ、元來吾々ノ主張ハ政府今回ノ計
  畫ト云フモノハ甚ダ貧弱デアツテ、吾々ノ期待
  ニ副ハナイコト甚シイモノデアルト云フノガ、吾
  々ノ主張デアル此故ニ吾々ハモウ少シ政府ガ遠
  大ナル理想ノ下ニ、モツト偉大ナル計畫ヲ樹テル
  コトヲ希望致シテ居ルノデアリマス、此意味ニ於
  テ、今日ノ場合ニ於キマシテハ總理大臣カラ聲明
  セラルヽ通リ又政友會ノ諸君カラモ御說明ノア
  ル通リ、今日ハ通常ノ場合デハアリマセヌ、非常ニ
  シテ而モ急變ナル場合デアルガ爲ニ、吾々ハ不滿
  足デハアルケレドモガ、政府ノ原案ニ對シテ好意
  ヲ持ツテ居ル者デアル、其原案ニ對シテ吾々ガ贊
  成ノ意見ヲ表白スルト云フコトハ吾々ノ當然ノ
  權能デアル、此議會ハ政府ト政友會ノミノ議會デ
  ハ斷ジテナイ吾々モ十分ニ發言ノ權利ガアル殊
  ニ總理大臣ノ此席ニ於テ言明セラルヽ所ハ、甚ダ
  透明ヲ缺イテ居リマスルガ、總理大臣ノ言フ所ニ
  依レバ此政府ガ責任ヲ以テ提出シタル案ニ付
  テハ全會一致ヲ以テ贊成ヲ得ルコトヽ確信
  ヲ致シテ居ツタノデアルト云フコトヲ言ツテ
  居ル又全會一致ヲ以テ通過スルコトヲ希望
  スルト云フコトヲ矢張言ツテ居ルノデアル
  然レドモ修正ガアル以上ハ帝都ノ復興計畫
  ニハ差障リガアルケレドモガ、遺憾ナガラ之ニ贊
  成セザルヲ得ヌト、斯ウ云フ弱イ音ヲ吐イテ居
  ル、此故ニ吾々ハ此政府ノ聲明ノ誤レルコトヲ正
  ンニ、 、何處迄モ原案ヲ以テ政府ガ最初ノ責任通リ
  勇往邁進センコトヲ希望スルノデアル(拍手)總理
  大臣ノ言動ハ吾々甚ダ遺憾トスル所デアリマ
  ス.政府ハ本日ノ豫算總會ニ於キマシテ、鳩山君
  ノ質問ニ對シテ-此修正案ニ政府ハ同意スルカ
  ドウカト云フ發言ガアリマシタ、之ニ對シテ總理
  大臣ハ言ハレルコトハ是亦甚ダ透明ヲ缺イテ居
  リマシタガ、議場ノ大勢ヲ見テ最後ノ決心ヲ表白
  スルト云フコトヲ言明致シタ然ルニ此席ニ參リ
  マスト、僅カ一時間カ三十分後ニ、此本會議場ニ
  來ルト云フト、湯淺君ノ質問ニ對シテ、議場ノ大
  勞ヲ見ルコトナク、此議案ガドウ云フ運命ニ接ス
  ルカト云フコトヲ能ク考慮シナイ內ニ、數十分前
  ニ於テハ場ノ大勢ヲ見テ最後ノ決心ヲ爲スト
  言ヒ數十分後ニ於テハ此席ニ來ツテマダ討論
  ニモ演說ニモ入ラザルニモ拘ラズ、早ク旣ニ兜ヲ
  脫イデ、東京市民ニ對シテハ帝都復興事業上差觸
  リヲ生ズルケレドモ、之ニ贊成セザルヲ得ヌト云
  フ言明ヲ爲スニ至ツテハ總理大臣ノ無責任ナル
  言動ト云フモノハ吾々決シテ之ヲ看過スルコト
  ハ出來ナイ(拍手)此豫算案ヲ提出スルニ付テハ、
  御裁可ヲ經テ、全責任ヲ以テ此議會ニ提案致シテ
  居ルノデアル、委員會ニ於テ修正ノ動議ガアツ
  テ、ソレガ可決シタト云ヘバ倉皇トシテ此席ニ
  來ツテ、早ク旣ニ鬪フノ意思ヲ失シテ、政友會ノ
  軍門ニ降ルト云フガ如キハ果シテ國務大臣ガ輔
  弼ノ責任ヲ盡シタト云フコトガ言ヘルカドウカト
  云フコトヲ私ハ疑フノデアル(拍手)吾々ハ冒頭ニ
  於テ此事柄ヲ政友會ノ諸君竝ニ內閣ノ諸公ニ申上
  ゲテ置キマス、而シテ進ンデ本案ノ修正意見ニ付
  テ吾々罹災地ニ於ケル罹災民ノ感情ヲ最モ率直
  ニ申上ゲテ、諸君ノ批判ヲ仰ギタイト思フノデア
  リマス吾々罹災地ノ住民ハ、今回ノ震災ニ對シ
  テ、政府ガ最モ遠大ナル理想ノ下ニ官民上
  下ノ共ニ滿足スル大計畫ヲ樹テヽ此帝都ノ
  復興ヲ策スルコトラ希望シ、又ソレヲ信ジテ
  居ツタノデアリマス、此故ニ豫算委員會ニ於
  テモ、一言質問ヲ致シテ置キマシタ通リ、總
  理大臣ハ今日ノ國民ノ民度ニ鑑ミテ、今日ノ
  國民ノ負擔力ニ考慮ヲ致シテ、事業ノ計畫ヲ
  スルト云フコトヲ演說ニサレテ居リマスカラ
  シテ本員ハ固ヨリ事業ノ計畫ニ付テ、現代國民
  ノ負擔力ト云フコトヲ考慮ニ入レルト云フ事柄
  ハ一應ノ根據ノアル事デアルケレドモ、今回ノ
  帝都復興ノ事業ノ如キハ此事業完成ノ結果、其
  復興シタル事業ノ惠澤ニ浴スル者ハ現代ノ國民
  ノミニアラズシテ、將來ノ國民モ亦其惠澤ニ賴ル
  ノデアルカラシテ、將來ノ國民ト共ニ此負擔ヲ分
  ツノ覺悟ヲ以テ、大計畫ナル復興策ヲ立テネバナ
  ラヌト云フコトヲ吾々ハ言明致シテ置イタノデア
  リマス、此見地ヨリシテ、今回提案セラレタル此
  復興計畫ニ關スル豫算案ト云フモノヲ考慮致シマ
  スルナラバ洵ニ貧弱言フニ足ラザルモノデアル、
  東京ヲ初トシテ、橫濱其他罹災地ノ幾百万ノ住民
  カラ考ヘテ見マスルト云フト、如何ニモ情ケナイ
  計畫デアルト云フコトヲ洵ニ遺憾ニ感ズル者デア
  リマス、此故ニ後藤子爵ハ初メ三十五億デアルト
  カ、三十億デアルトカ、餘程大キナル計畫ヲ立テ
  テ居ラレマシタケレドモ、有ユル機會ニ於テ漸次
  漸次縮小セラレテ、サウシテ今日ノ爲體ニナツテ
  居ルノデアル、而シテ此縮小ニ最モ最低度ニ迄縮
  小セラレタル案ニ對シテ、尙ホ且ツ此議場ニ於テ
  何處迄モ之ヲ貫徹セシムルノ勇氣ト熱心ヲ缺クト
  云フコトハ吾々罹災地ノ住民カラ見レバ如何
  ニモ不甲斐ノナイ後藤復興院總裁デアルト云フコ
  トヲ斷言セザルヲ得ナイノデアル(拍手)政友會
  ノ諸君ノ修正ノ第一點ハ土地整理ニ於テ約三千
  五百六十万圓ノ削減ヲ爲サルト云フ、其方法ニ付
  テハ豫算委員會ニ於テモ、可ナリ詳細ノ御話ガア
  リマシタカラシテ、私ハ之ヲ此所ニ報告スルノ義
  務ハ無イト思ヒマスルガ、要スルニ土地整理ト云
  フモノハ、大體現行法ニ依ツテ地主組合ヲシテヤ
  ラシメルト云フ事柄ガ政友會ノ修正ノ本旨デアリ
  マス、御修正ノ趣旨ハ素ヨリ明瞭致シテ居リマス
  ルガ、私ハ此席ニ於テ斷言ヲ致シテ置キマス、若
  シ政友會ノ修正ノ趣旨ノ如クスレバデス、帝都ノ
  復興事業ノ一ツデアル所ノ土地整理ト云フ事柄
  ハ時日ノ遷延ヲ來スト云フコトハ爭フベカラザ
  ル事實デアル今日ノ場合デス、帝都ノ住民ガ斯
  ノ如キ困憊ヲ致シテ居ル時代ニ、土地區劃整理ノ
  方法ニ於テ、假令一日デモ一箇月デモ、計畫ノ遂
  行ガ遲延スルト云フコトデアルナラバ此責任ハ
  政友會及現政府ガ之ヲ負ハナケレバナラヌト私ハ
  斷言シテ差支ナイト私ハ思ヒマス、(拍手)色〓御
  批評ガアリマスルガ、政府自ヲ取ツテ斷行スルト
  云フ今日ニデス、利慾ノ念ニノミ滿チテ居ル或ル
  一派ノ地主ニ之ヲ委シテ置イテ、此事業ノ進捗ガ
  遲レルカ早ク行クカト云フコトハ常識ノ判斷テ
  分ルデハナイカ、(拍子)修正ノ第二ハ街路費ニ付
  テ七千七百万圓卽チ約一一割減ヲヤルト云フ御說デ
  アリマス、此街路費ニ於ケル二割、七千七百有餘
  万圓ノ削減ニ付テハ縷々陳辯ハセラレテ居ルガ
  結局要領ヲ得ナイ、豫算委員會ニ於ケル質問應答
  ノ爲體-アレハ何デアルカ政友會ノ大失態ヲ
  暴露シテ居ルデハナイカ、二割減ノ根據ヲ說明ス
  ルコトガ出來ナイ、而シテ此席ニ於テ三土君ハ曰
  ク餘リ小サイ事ニ進ンデ行ツテ說明スルト云フ
  事柄ハ立法部ノヤル事デハナイト云フ意味ノ言
  ヲ發セラレテ居リマスルガ、何ガ小サイ問題デ
  アリマス、七千七百万圓ト云フ二割ノ天引ヲヤ
  ルト云フ事柄ガ何ガ小サイ問題デアル此多
  數ヲ有ツテ居ル政友會ノ諸君ガ、七千七百有餘
  万圓ノ削減ヲスル其根據ヲ最モ明瞭ニ說明ス
  ルコトガ出來ヌト云フ事柄ハ卽チ此天引說ノ誤
  レル無暴ナル削減デアルト云フコトヲ斷言シテ
  憚カラナイ要スルニ此二割天引ハ政反會ノ諸君
  自カラ表明セラレテ居ルガ如ク、全ク之ハ天引
  デアル算盤ヲ撥イテ削減スベキ根據ガアツテ
  ノ合理的ノ削減デハナイ、政反會ガ或ル一部ノ政
  府者ニ對シテ反感ヲ有ツテ居ル結果、或ル隱レタ
  ル腹ノ中ニ何カ目的ヲ有ツテ居ツテ、所謂禍心ヲ
  包藏シテ、根據ノ無イ二割引ヲ斷行セントスルモ
  ノデアルト云フコトヲ私ハ斷言スル此二割天引
  ノ如キハ商人ノ店頭ニ立ツテ、商品ノ値ヲ知ラザ
  ル田舎者ガ、行キナリ二割負ケテ吳レト云フ馬鹿
  者ト同樣ノ結論デアルト云フコトヲ斷言スル政
  友會ノ諸君ガ或ル日的ヲ腹ノ中ニ持ツテ何ヲ爲サ
  ラウトモ吾々ハ深ク關係ヲシナイ然レドモ是ガ
  爲ニ帝都ノ罹災民ガ困ルト云フコトニ至ツテハ
  吾々ハ斷ジテ之ニ承服スルコトハ出來ナイノデア
  ル(拍手)殊ニ第三ノ復興院ノ編輯一千二百有
  餘万圓ノ削減ニ至ツテハ、政友會ノ諸君ニ果シテ
  罹災民ニ同情ヲスルト云フ人間トシテノ同情心カ
  アルヤ否ヤヲ疑ハザルヲ得ナイ(拍手)御承知ノ如
  ク審議會或ハ復興院ノ如キハ恐レ多クモ御詔勅
  ノ精神ノ在ル所ヲ拜察シタル結果、現內閣ガ其責
  任ヲ以テ制定致シタルモノデアルト云フ事柄ハ
  私此所ニ多ク論スルノ必要ハナイ、過日來豫算委
  員會ニ於テモ、復興院ガ詔勅ノ中ニ所謂特殊機關
  デアルト云フ事柄ハ總理大臣ノ自ラ言明セラレ
  テ居ル御詔勅ノ趣旨万其所ニ在ルコトヲ拜察シ
  テ政友會ノ所謂厖犬ナル復興院ヲ新設致シテ、
  吾々カラ申セバ必ズシで厖大ナル復興院トハ思ハ
  ナイ、眼光豆ノ如キ政友會デハ是デモ大キイモ
  ノト思ツテ居ル又復興院ノ廢止ヲ計畫スルガ爲
  ニ、全然此復興院ニ要スル一一千二百有餘萬ノ大削
  減ヲ爲スニ至ツテハ無責任ナル現內閣ノ言動
  ハ最早批判ノ限リニアラズ、多數黨タル政友會
  ハ此御聖旨ノ在ル所ヲ何ト見ルカ(拍手)此詔勅
  ノ趣旨ヲ曲解シテ、罹災民幾百萬ノ人間ニ迷惑ヲ
  及ボスヤウナ削減ヲスルニ至ツテハ非國民モ
  同樣デアルト私ハ斷言スル要スルニ街路賣ノ二
  割天引ト云ヒ、復興院ノ二千二百有餘万圓ノ削減
  ト云ヒ全ク政友言ガ或ル目的ヲ以テ隱レタル祕
  密ノ目的ヲ心裡ニ包藏致シテ、其禍心ヲ滿足セシ
  メンガ爲ニヤツテ居ル、洵ニ許スベカラザル政治
  的ノ罪惡デアルト云ラコトヲ私ハ斷言スル(拍手)
  吾々ハデス、諸君ガ內務大臣ト爭議ヲ爲サラウ
  ガ總理大臣ニ打突カラウガ、諸君ノ自由ダ、然
  レドモ吾々帝都ノ罹災民ノ側カラ申シマスレバ
  今回ノ震災ニ付テ之ヲ從來ノ內務省ノ古イ官
  央、而モ政友會ト特別ノ關係ノ出來テ居ル方面ノ
  役所、其他ノ自治團體ニ之ヲ一任シテ、此大ナル
  復興計畫ヲ遂行スルコトハ出來ナイト云フコトヲ
  吾々信ジテ居ルノデアル、(「出來ル々々々」ト呼
  フ)君等ガ出來ルト云フノハ君等ノ意見デ、而
  モソレハ間違ツタ意見ダ、吾々ハ今ノ內務省ノ官
  吏ニ對シ、今ノ東京府、今ノ東京市ノ當局ニ對シ
  テ、今回ノ此大災害ノ復興ガ出來ルト云フコトハ
  信ズルコトガ出來ナイ理由ヲ澤山持ツテ居リマ
  ス若シ今ノ內務省或ハ東京府ノ官吏等ニニヲ一
  任スルナラバ五年デ出來ル土地整理、十年デ出
  來ル區劃整理ト云フヤウナモノモ、何十年掛ルカ、
  其結果ヲ豫測スルコトガ出來ヌト云フコトヲ私ハ
  考ヘテ居ル今日ノ場合ハ一日モ早ク燒跡ノ焦土
  ヲ整理シ、街路ヲ整理シ、或ハ修築シミ或ハ道路
  ヲ擴張シ、區劃整理ヲ致シテ、而シテ住民ニ生活
  ノ安定ヲ與ヘテ商工業ノ發達ヲ圖ルト云フコト
  ガ目前ノ急務デアルト私ハ考ヘル、ソレヲ是迄澤
  山ナ事務ヲ持ツテ居ル所ノ從來ノ官廳ニ一 七)
  テ、サウシテ新タナル施設ヲスルコトガ出來ナイ
  トスルナラバ御詔勅ノ精神ニモ反シマシス又眞
  ニ罹災地ノ住民ヲ救濟スルト云フ事柄ヲ政綱ノ一
  ニ揭ゲテ居ル現内閣トシテハドウシテモソレハ
  出來ルコトデハナイ、此故ニ從來ノ官廳ニ依ルコ
  トヲ爲サズンテ、復興院ト云フ制度ヲ設ケテ、內
  閣直屬ノ官廳ヲ作ツテ、サウシテ國家自ラ之ヲ執
  ツテヤルト云フノデアル、元來復興計畫ハ新タナ
  事業デアリマス、九月一日ノ震災ノ結果、突發シ
  タル事件デハアリマスケレドモ、事件ノ性質カラ
  申シマスレバ計畫ハ可ナリ厖大ナモノデナクテ
  ハナラヌ、遠大ナ理想ノ下ニ計畫シナケレバナラ
  ヌ事柄デアリマスケレドモ、事ハ因ヨリ內務行政
  ノ一部デアル、內務行政ノ一部ニ屬スルコトヲ國
  家自ラ取テ斷行スルト云フ事柄ガ、我ガ內務行政
  ノ原則デアルト云フコトヲ私ハ斷言シテ憚ラナ
  イ、此故ニ現政府ノ樹テタ計畫ガ、帝都ノ罹災民
  カラ見レバ、計畫ハ寧ロ小ニ失シテ居ル、ソレヲ
  地方黨員ノ多數ヲ以テ組織セラレテ居ル政友會ノ
  諸君ガ、之ヲ以テ厖大ニ失スルト云フヤウナ議論
  ヲナサルト云フ事柄ハ、未ダ嘗テ燒跡ニ一度モ行
  ツテ見タコトノナイ人ガ、地方カラ漫然帝國議
  會ニ來ツテ左樣ナ議論ヲスルノデアル、全ク
  是ハ机上、ノ空論テアル、諸君ガ京橋デアルト
  カ、日本橋デアルトカ、或ハ本所深川ト云フ方
  面ニ一日デモ半日デモ車ニ乘ツテ行ツテ御調
  查ニナツタナラバ、此計畫ガ小サイカ大キイ
  カ位ノコトハ常識上直ニ判斷サレルコトデ
  アル其燒跡ノ現狀ヲ一瞥スルコトナクシテ、唯ミ
  此席ニ立ツテ二割減ニセヨ復興院ヲ廢止セヨ
  ト云フノハ全ク事情ヲ知ラザル地方ノ住民ニ媚
  ビテ帝都復興ノ大事業ヲ蹂躪セントスルモノデア
  ツテ、吾々ハ何處迄モ政友會ノ修正ニハ反對セザ
  ルヲ得ナイ、先刻モ三土君ノ議論ヲ拜聽致シテ居
  リマスルト、公債ニ依ツテ此帝都復興ノ事業ヲ實
  現セントセシムルガ、此財源ハ全部公債ニ依ル、
  其公債ヲ募ツテ全國ノ資力ヲ東京橫濱ニ集メテ、
  サウシテ此事業ノ遂行ヲスルト云フコトハ全國
  各方面カラ幾多ノ資力ヲ集メテ來テ、單ニ一地方
  ノ人民ノ幸福ノ爲ニ費消スルモノデアルト云フ意
  味ノ演說ガアリマシタ、是ハ思ハザルノ甚シキモ
  ノデアリマス、今回ノ震災ハ吾々ガ申ス迄モナク
  諸君ハ新聞雜誌ニ依ツテ御一讀ニナツテ居ルデア
  リマセウ、百五十万ノ罹災民ヲ作リ十万ノ死傷者
  ヲ出シ、百億ノ財產ヲ焦土ニ歸シテ居ルノデアリ
  マス、此災害ガ歴史アツテ以來ノ大災害デアルト
  云フ事柄ハ何人モ認メテ居ル事柄デアリマス、
  此關東方面ニ於ケル此大災害ハ、決シテ關東ノ一
  地方ノ災害ト見ル事ハ出來ナイ決シテ之ヲ東京
  横濱ノ
  〔粕谷議長退席松田副議長著席〕
  災害ト見ルコトハ出來ナイ、此關東方面ニ於ケル
  一大災害ハ卽チ全國民ノ一大損害デアルト云フ
  コトヲ私ハ斷言スル全國民ノ大損害デアルナラ
  バ、之ヲ全國民ノ資力ノ救援ヲ仰グト云フ事柄
  ハ當然ノ結論デアルト私ハ信ズルノミナラズ、帝
  都ハ帝都固有ノ人民ノミガ棲息ヲ致シテ居ル所デ
  ナイ帝都一一百三十万ノ住民ハ土著ノ人間ハ餘
  リ多クハナイノデアル、其多クハ今回ノ災害ニ於
  テ約百万ノ人口ヲ減少シテ居リマスルガ、其殘レ
  ル約百五十万ノ人間ト云フモノハ或程度迄ハ全
  國各地ヨリ東京ニ移住致シテ居ルノデアル或ハ
  九州カラモ來テ居ルノデアリマセウ、四國カラモ
  來テ居レバ北海道カラモ來テ居ル、此多數ノ全
  國ノ移住者ヲ以テ組織セラレテ居ル帝都デアル
  帝都土著ノ人間ト云フモノハ餘リ多クハナイノデ
  アル卽チ全國民ノ集リデアル具集ツテ居ル者
  ノ損害ヲ全國民ノ資力ニ依ツテ救濟スルト云フコ
  トガ、何ガ惡イノデアル、ソレデアルカラ全國カ
  ラ資金ヲ集メテ公債ノ募集ニ應ジテ、此公債
  ニ依ツテ此事業ノ計畫ヲシテ行クト云フ事柄
  ハ全ク合理的ノ事柄デアルト私ハ斷百シテ憚
  ラナイ、斯ノ如ク吾々ノ信ズル所ニ依レバ全
  ク此計畫ヲ今回政府ノ提出シタル計畫、及ビ之
  ニ伴フ豫算ト云フモノハ、決シテ關東方面ノ
  罹災民幾百万ノ意嚮ニ投ジタモノデハナイ餘
  リニ貧弱ニ失シテ居ルモノデアルト考ヘテ居ル
  其計畫ニ對シテ政友會ガ多數ヲ賴ンデ、或ハ復興
  院費ヲ削リ、或ハ街路貫ヲ削リ、土地整理費ヲ削ル
  ヤウナ、一億有餘万圓ノ大斧鉞ヲ加ヘルト云フ事
  柄ハ全ク此罹災地ニ於ケル幾百萬ノ住民ノ苦痛ト
  云フモノヲ閑却シタル机上ノ暴論デアルト私ハ斷
  言スル、政友會員ハ斯ノ如ク大斧鉞ヲ加フルコト
  ヲ以テ-一億有餘万圓ノ大削減ヲ加フルコトヲ
  以テ財政上止ムヲ得ザルコトヽシテ、恰モ全國ノ
  意思デアルカノ如ク此處デ斷論ヲ致シテ居ラレマ
  スガ、此今回ノ一大國難デアル所ノ關東方面ノ大
  災害ニ對シテ、一億有餘万圓ト云フヤウナ根據ノ
  ナイ大削減ヲ加ヘルト云フ事柄ハ、決シテ善良ナ
  ル我ガ帝國民多數ノ意思デナイト云フコトヲ茲ニ
  斷言シテ憚ラス、卽チ今回ノ災害ニ付テ、全國民
  ガ關東地方ノ罹災民ニ對シテ加ヘタ同情ト云フモ
  ノハ吾々ハ全ク感謝ノ外ハナイノデアリマス、
  或ハ金錢ヲ贈ル者アリ、或ハ衣服ヲ贈ル者アリ、
  或ハ萬死ヲ冒シテ東京ナリ橫濱ノ中ヘ見舞ニ來テ
  居ル、全ク是ハ我ガ帝國多數ノ國民ガ、罹災地ノ
  住民ニ對シテ表ハシタル最高ノ美德デアルト云フ
  事柄ヲ、私ハ全國民ニ感謝致シテ居ル者デアル
  斯ノ如ク全國民ハ個人トシテ非常ナ同情ヲ罹災地
  ノ罹災民ニ對シテ加ヘテ居ルニ拘ラズ全國民ヲ
  代表スル政友會ノ諸君ガ、全國民多數ノ意嚮ヲ無
  視シテ、サウシテ數字上正確ナ根據ヲ以テ說明ス
  ルコトモ出來ナイ天引ヲヤツタリ、事業ノ遂行ニ
  必要ナル復興院廢止ヲ企ツルコトハ妄斷モ亦甚
  シイト斷言シテ憚ラヌ、要スルニ政友會諸君ガ此
  席ニ於テナサレタル事柄ハ全國民多數ノ意志ヲ
  裏切ツテ、全國民多數ノ者ハ罹災地ノ住民ニ對シ
  テ非常ナル好意ヲ持チ、同情ヲ持ツテ居ルニモ拘
  ラズ、此案ニ反對ヲ致シテ一億有餘万圓ノ削減ヲ
  加ヘルコトハ何カ地方ニ對シテ或ル土產物ニデ
  モナルカノ如キ考デ、輕擧妄動スルト云フ事柄ハ、
  政治上許スベカラザル罪悪デアルト云フコトヲ私
  ハ斷言ヲ致シテ置キマス(拍手)現ニ政友曾ノ中ニ
  モ有識者ガアル政友會ノ中デ、東京市選出鳩山
  君ノ如キハ原案ニ對シテ熱心ナル贊成者デア
  ル私ハ此鳩山君ノ言動ハ最モ多ク罹災地ニ於
  ケル罹災民ノ心情ヲ代表サレ居ルト私ハ確信シテ
  疑ハナイ、又本日ノ新聞紙ヲ拜見シマスト、政友
  會ノ代議士萩亮君ハ政友會多數ノ人-政友
  會ノ幹部ガ此復興計畫ニ反對ヲスルト云フコ
  トニ憤慨ヲ致シテ、演說ヲ爲サレツヽアリシ
  際ニ、突如病氣ニ罹ツテ死ンダト云フコトガ
  揭載サレテアル、諸君ハ之ヲ何ト見ル諸君ハ
  諸君所屬ノ議員タル萩亮君ノ公名正大ナル心事ニ
  對シテ恥ヅベキデハアリマセヌカ(拍手)妙ナ削
  減ヲ加ヘテ、良心ノアル自己所屬ノ多數ノ正義ヲ
  壓倒シテ、サウシテ議場ニ於テ自由ナル活動ヲ爲
  サシメズ、或人ヲシテ憤死セシムルニ至ルヤウナ
  擧動ヲ取ルコトハ政友會ノ暴行デアルト私ハ斷
  言スル(拍手)私ハ此席ニ於テ斷言ヲ致シテ置キ
  やく、今回政友會ノ一億有餘万圓ノ削減ト、土
  地區劃整理ニ於テモ、街路費ニ於テモ復興院廢
  止ニ於テモ、何レモ帝都復興ノ大事業ニ對シテ一
  大妨害ヲ與ヘタモノデアルト云フコトヲ私ハ斷言
  スル吾々帝都ノ罹災民ハ一日モ速ニ此復興計
  畫ヲ實現セシメテ、而シテ生活ノ安定ヲ得ナケレ
  バナラヌ、吾々ノ生活ヲ充實シ、吾々ノ生活ヲ向
  上セシメル所ノ、洵ニ人間必然ノ希望ヲ持ツテ居
  ルノデアル、此希望ニ對シテ此議席ニ於テ僅
  カ二百三百ノ多數ヲ持ツテ居ツテ、此吾々ノ正
  義ヲ蹂躪スルト云フ事柄ハ多數ヲ賴ンデ憲政
  ノ上ニ一大暴行ヲスルノデアル吾々帝都ノ
  住民、東京橫濱神奈川縣等ノ住民ニ代ツテ、此事
  柄ハ政友會多數ノ爲デアルト斷言スルヲ憚ラヌモ
  ノデアル凡ソ吾々ガ帝都復興ノ事業ヲ遂行シテ、
  生活ヲ充實シ、生活ノ向上ヲナサントスル此希望
  ヲ、政友會ノ諸君ガ蹂躪スルト云フ事柄ハ全ク政
  友會ガ多數ノ力ヲ賴ンデ、而シテ所謂政治ノ手段
  ニ依ツテ、吾々罹災地ノ住民ノ生活ノ安定ヲ迫害
  スルモノデアルト斷言スル(「頭ヲ冷シテ來イ」ト
  呼フ者アリ)而シテ一面現內閣ノ諸公ニ向ツテモ
  吾々ハ一言セザルヲ得ナイ、一廉ノ苦言ヲ呈セザ
  ルヲ得ナイ、現內閣ノ諸公ハ斯ノ如キ計畫ヲ立テ
  ラレテ、之ニ依ツテ始メテ國家百年ノ長計ヲ斷行
  スルコトガ出來ルト確信サレテ此席ニ出シタノデ
  アル、而シテ政黨政派ノ上ニ超越致シテ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=64

  ---

• 065・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　三善君ニ注意致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=65

  ---

• 066・横山勝太郎

  ○橫山勝太郞君　(株)國民ト共ニ多數國民ノ正義
  ニ訴ヘテ此政治ヲヤルト云フコトヲ天下ニ聲明致
  シテ居ル、サウシテ多數黨デアル所ノ政友會ノ牽
  制ニ遭ウテ、一溜リモナク此事業ノ計畫ヲ抛擲シ
  テ.而シテ政友會員ノ前ニ鞠躬如トシテ其削減ニ
  降服スルノ已ムヲ得ザルコトヲ聲明セラルヽニ至
  ツテハ山本總理大臣ノ政治的ノ墮落ハ殆ド者語
  ノ外ニ在リト謂ハナケレバナラヌ、政友會ガ斯ノ
  如キ暴行ヲ逞ウスルナラ、斯ノ如キ政治的ノ暴行
  ヲ逞ウスルナラバ總理大臣ハ宜シク天皇陛下ニ
  奏請シテ、卽時此議會ヲ解散スベキモノデアルト
  私ハ考ヘル議會ノ解散ヲ爲スコト能ハズ、橫暴
  黨ノ前ニ雌伏シテ、而シテ上聖旨ノ在ル所ヲ國
  民ニ徹底セシムルコトガ出來ナイト云フ、此一事
  ヲ以テ現內閣ニ對シテ吾々ハ不安ヲ感ズル者デ
  アル私ガ茲ニ發言致シタル此數百言ハ明ニ罹災
  地ニ於ケル罹災民ノ意思ヲ大膽卒直ニ表白シテ居
  ルモノデアルト云フコトヲ聲明致シマス、而シテ
  此罹災民ニ代ツテ私ノ爲シタル發言ハ此所ニ席
  ヲ有シテ居ル政友會員以外、全國ノ多數國民ノ意
  思ヲ代表シテ居ルモノデアルト云フコトヲ斷言シ
  テ、私ハ此見地ヨリ此豫算ニ對シテ一億有餘万圓
  ノ大削減ヲ加ヘタル政友會ノ暴擧ニハ斷ジテ賛
  成スルコトガ出來ナイ、吾々ハ斯ノ如キ不都合千
  万ナル削減案ニハ斷ジテ賛成スルコトガ出來マ
  セヌ、吾々ハ多數ノ罹災民ト共ニ政治的ノ手段ニ
  依ツテ、政友會諸君ノ責任ヲ問フ機會ノアルコト
  ヲ茲ニ聲明シテ降壇致シマス
  〔吉植庄一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=66

  ---

• 067・吉植庄一郎

  ○吉植庄一郞君　私ハ委員長ノ修正案ニ贄成ノ趣
  意ヲ述ベヤウト思ウテ居リマシタガ、旣ニ內閣總
  理大臣ハ先刻言明ヲ此議場ニ爲サレタ以上ニハ
  多言ヲ要スル必要ハ無イト存ジマス、只今横山君
  ノ如キ御名論モアリマシタガ、最早是等ノ事ハ取
  急イデ此復興ノ事業ヲヤラウト云フ時ニハ成ベ
  ク左樣ナ無益ナ言論ハシナイ方ガ宜イト思ヒ
  唯、委員長報告ノ修正案ニ贊成ノ意思ヲ表明シテ
  此壇ヲ降リマス(拍手)
  〔田川大吉郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=67

  ---

• 068・田川大吉郎

  ○田川大吉郞君　諸君、政府ニ向ツテ戰ハウカ、
  政友會ニ向ツテ戰ハウカ、是ハ一シキリ前マデ惑
  ハサレマシタ、已ムナク兩者ニ向ツテ戰ハウトシ
  テ今此壇ニ立チマシタ、本來ハ私ハ政府ノ復興計
  畫ヲ完全ナリト思ウテ居タ者デハアリマセヌ、サ
  リナガラ東京横濱ニ向ツテ四億五千万圓ノ資金ヲ
  投ゼントスルノ計畫ハ必シモ過大デナイト考へ
  テ居リマシタ、故ニ事ガ順當ニ進ミマスナラパ
  私ハ此壇ニ於テ政府ノ原案ヲ擁護スベキ位置ニ立
  ツ積リデアリマシタ、ケレドモ先程カラ御話ノ如
  ク山本首相ガ此所ニ出テ、而シテ政友會ノ修正
  案ニ貝成スルト言明セラレマセヌマデモ、言明シ
  タト同樣ノ口吻ヲ弄セラレマシタ以上ハ私トシ
  テハ茲ニ辯護スベキ原案ハ無イノデアリマス全
  ク原案ハ無イノデアリマス極テ不可思議ナル議
  會デアル山本首相ハ此處ニ御出ニナリマセヌケ
  レドモ、第一議會以來未ダ曾テ見ザル奇怪ナル議
  會デアル、私共ハ此原案旣ニ倒レマシタル以上
  ハ爲シ得ル限リハ政友會ノ修正案ニ向ツテ贊成
  シタイ、ソレガ此場ニ於ケル私共ノ當然ノ態度ト
  思ヒマス、サリナガラ又贊成ガ出來マセヌト申シ
  マスノハ政友會ノ修正ノ內容ガ甚ダ不正確、不
  確實デアリマス此故ニ贊成ヲ表シ兼ネマス、此
  場合ニ多クノ議論ヲ重ネル必要ハ無イト思ヒマス
  カヲ、簡單ニ政友會ノ諸君ニ向ツテ其內容ヲ不確
  實ナリト認ムル一點ヲ述ベテ御反省ヲ願ヒマス、
  其一點ハ東京市ヲ標準トシテ申シマスガ、政友會
  ノ東京市ノ街路計畫ニ向ツテ加ヘラレタル二割ノ
  削減、金高ハ約六千四百万圓、此削減ノ根據、修正
  ノ根據ガ極メテ不確實デアリマス、政友會ノ方ハ
  十二間以上ノ道路ハ政府ヲシテ施設セシメル六
  間以上十一一間以下ノ道路ハ東京市ヲシヲ施設セシ
  メルト仰セニナリマシタ、隨ツテ街路費ノ三億二
  千万圓メ二削割ヲ消減スルト仰セニナリマシタ、
  政府ガ此度ノ計畫ニ於テ著手セントシテ居ル-
  買上ゲントシテ居ル道路、擴張セントシテ居ル用
  地ノ總面積ハ東京市ニ於テ百九万坪デアリマス、
  此中六間以上十二間幅以下ノ道路ノ總而積ハ必
  要トセラレル總面積ハ四十一万二千坪デアリマ
  ス政友會ハ此四十一万二千坪ヲ政府ノ手ヨリ取
  離シテ束京市ノ手ニ託シテ施設セシメント主張
  セラレルノデアリマス此四十一万坪ヲ政府ノ手
  カラ取去ラレマスコトノ計算ハ六千四百万圓デ
  ハアリマセヌ、故ニ政友會ガ政府ノ街絡計畫ノ中
  カラ六千四百万圓ヲ削減セントセラレルコトヽ
  十二間以下ノ道路ヲ束京市ニ託セントセラレルト
  云フコトヽハ一致致シマセメ(拍手)先ヅ今ノ四
  十一万二千坪ノ價ヲ〓算シテ御覽ナサイ、坪二百
  圓トシテ其處ニ八千万圓ガアル其四十一万坪ノ
  工事、街路ヲ擴張致シマス工事ノ費用ハ少クト
  モ三千万圓ハ掛カルト見ナケレバナリマセヌ、何
  故ナラバ百九万坪ノ工事ニ向ツテ政府ハ七千六百
  万圓ヲ投ゼントシテ居ラレルサスレバ四十一万
  坪ノ擴張ニ向ツテ三千万圓以上ノ經費ノ投ゼラレ
  ルコトハ當然デアリマス此二口デ一億一千万圓
  ニナルノミナラズ政府ハ此百九万坪ノ工事ノ爲、
  雜工雜費トシテ千八百万圓以上ヲ投ゼラレントシ
  テ居ラレル、其四割、ソレハ七百万圓以上ニナ
  ル此三口ヲ合算致シマスルト、是ガザツト一億
  二千万圓ニナルノデアリマス、政友會ガ此四十一
  万坪ノ事業工事ヲ一切束京市ニ讓ラントセラレル
  ナラバ此豫算面カラハ當然ニ一億二千万圓ヲ削
  滅セラルペキ譯デアル、政府ノ提案シテ居ル三億
  二千万圓ニ對シテ一億一一千万圓ヲ削減シテ、約二
  億万圓ト修正セラルベキ筈デアリマス斯樣ニ修
  正セラルレバ、政友會ノ修正總額ノ一億三千万圓
  ハ更ニ增シテ一億八千圓トナルベキデアリマス、
  此復興豫算ノ全計畫ラザツト六億圓ト致シマシ
  テ.政友會ノ方針ニ從ヘバ一億八千万圓ガ削減セ
  ラルベキデアルサウデナケレバ政友會ノ計算ハ
  合致シナイノデアリマス、算盤ガ合ハナイノデア
  リマス其算盤ノ合ハナイ計算ガ此處ニ現ハレテ
  居ル、如何ニ贊成シヤウト思ツテモ、賛成ノ仕樣
  ガナイデハアリマセヌカ(拍手)今日迄私ハ此處デ
  豫算ヲ眺メタコトハ何度カアリマスガコン
  ナ風ニ計算ノ合ハナイ豫算ヲ見マシタコトハ
  初メテヾアリマス(拍手)此初メテノ目ニ遇ヒ
  又吾々ガ討論スル場合ニ、政府ノ原案ガ倒レテ居
  ルト云フ奇態ナル境遇ニ立ツタコトモ、今回ガ初
  メテヾアリマス(拍手)同時ニ其修正案ニモ亦計
  算ガ合致シテ居ナイト云フ不思議ナル豫算ヲ見
  セラレマシタコトモ今回ガ初メテヾアル私共ハ
  政府ニ向ツテ贊成ノ仕樣ガアリマセヌ、サリトテ
  政友會ノ案ニ向ツテ贊成ノ仕樣ガアリマセヌ、已
  ムナク政府ニ向ツテ戰ヒ、政友會ニ向ツテ戰ハナ
  ケレバナラヌ、私ハ私ノ屬シテ居ル革新倶藥部ノ
  同人ガ、此處ニ如何ナル態度ヲ執ラレルカト云フ
  コトヲ、代表的ニ言明スルコトハ出來マセヌケレ
  ドモ、私自ラハ此討論ニ與ツテ、私ノ立場ヲ言明
  シタル後ニ於テ、愈〓採決ヲ問ハルヽ場合ニハ投
  票ヲ棄權スルノ外ハナカラウカト思フドウモサ
  ウダト思フ、政府-現內閣ハ私共ヲシテ斯ノ如
  キ不可思議ナル境遇ニ立タシメラレタノデアル、
  議會政治ノ精神、議會ノ討議ノ方法、其事ヲ山本
  總理大臣ガ果シテ御理解ガアルカヲ私ハ疑フノデ
  アル、斯樣ニ論ジ來リマスレバ、政友會ノ方々ニ
  私共ハ御答ヲスル必要ハ多ク無イノデアリマス、
  ケレドモ三土君ノ言ハレマシタコトニ基イテ、尙
  ホ少シク私共ノ立場ヲ明ニ致シテ置キタイ三土
  君ハ此復興豫算ノ內容ヲ、政府ノ計畫ト東京市ノ
  負擔トニ分タレテ、東京市ノ負擔スベキ總額ガ
  政府ノ負擔スル總額ヨリモ多イヤウニ申サレマシ
  タ此豫算ハ如何ニモ複雜シテ居リマスル爲ニ
  三土君モ計算ニ多少惱マレタデアリマセウ私自
  身モ惱ミマシタ、故ニ私ノ計算ガ必ズ正確テアル
  トハ申上兼ネマスケレド、私ノ計算ニ依リマスレ
  バサウデナイ、此豫算ノ總額ノ中デ、政府ノ純粹
  ナル政府ノ負擔ニ屬スベキ金高ハ約ソニ億三千
  万圓アリマス純粹ナル東京市ノ負擔ニ屬スベキ
  金額ハ約一億八千万圓アリマス故ニ政府ガ約
  五割五分ヲ負擔セラレテ、東京市ガ約四割五分ヲ
  負擔セラルベキ計畫ニナツテ居ルト思フ、此二億
  八千万圓ノ東京市ノ負擔ニ對シテ、市民ノ負擔ガ
  甚ダ重過ギル市民ガ苦シカラウト三土君ハ申サ
  レマシタ、私共ノ市民ノ苦シイ境遇ヲ察シナイデ
  ハアリマセヌケレド尙ホ其計算ハ三土君ノ計
  算セラレタ所トハ違ツテ居リマス、此二億八千万
  圓ノ中ニ、東京市カラ政府ヘ辨濟スベキモノハ約
  一億二千万圓ト私ハ思ツテ居ル之ニハ利子ハ附
  イテ居リマセヌ、東京市ガ他日復興シタ場合ニ
  將來三十箇年ニ亙ツテ之ヲ辨濟スル計畫ト云フコ
  トデアル億二千万圓ヲ三十箇年ニ分ツノデア
  リマスルカラ、一年ノ負擔ハ四百万圓ニナル他
  ノ一億五千万圓ノ負擔、此中ニハ電車ノ事業モア
  レバ上水ノ事業モアレバ、中央市場ノ事業モア
  ル斯ノ如キモノハ皆相當ノ利益ノ伴フ事業デア
  リマス、是ハ計算ノ外ニ除イテ宜シイノミナラズ、
  道路ヲ擴築スルニ當ツテ、受益者ノ負擔ニ屬スベ
  キモノモ、少ク見積リマシテ三千万圓ハアル斯
  ノ如キモノヲ除キ去リマスレバ、純粹ニ東京市
  民ノ負擔トナルベキ金高ハ、此中ニ於テ八千万
  圓ハアリマセヌ、八千万圓以トデアリマス、サ
  ウ計算致シマスレバ他日東京市ガ有利ノ公
  債ヲ支拂ヒマス爲ニ準備スベキ金高ハ元利
  ヲ合セテ一年五百万圓ニシテ足リルト思フ
  一方ニ於テ有利ノ公債ニ對シ元利五百万圓、政府
  ニ對シテ四百万圓、合計九百万圓ヲ負擔スレバヤ
  ツテ行ケラレルヤウニ計算セラレマシタ、東京市
  民ハ此負擔ニ堪ヘ得ルト私ハ信ズル所デ三土君
  ハ從來ノ豫算ニハ剩餘金ガアツタケレドモ、今後
  ノ豫算ニハ剩餘金ガ無イト言ハレタ、私ハ剩餘
  金ヲ見ル豫算ノ編成ヲ惡イ編成方法ダト思ウテ
  多年之ヲ非難シ來ッテ居リマスケレド、ソレハ別
  論デアリマスソレハ別論トシマス、但シ政府ノ十
  三年度ノ歲計ニハ尙ホ剩餘金ガアルト見テ居マ
  ス尙ホ剩餘金ガアリマス、ソレハ十一年度ノ現
  計ニ於テ經常歲入ハ十四億二千万圓ヲ超エテ居リ
  マスソレニ十三年度ノ豫算ニ於テ政府ガ經常歲
  入ニ見積ツテ居ラレル所ノモノハ十二億一千万圓
  デアル故ニ十一年度ノ現計ニ較ベタナラバ其處
  ニ二億一千万圓ノ餘裕ガアルノデアリマス震災
  ニ因ツテ減少致シマシタル歳入ハ、之ヲ一億四千
  万圓ト大藏大臣ハ仰セニナル、此二億一千万圓ノ
  餘裕ノアル時ニ震災ニ因ル減ハ一億四千万圓デア
  リマスカラ其處ニ尙ホ七千万圓隱レテ居ル、私
  ハ此剩餘ノアルコトヲ信ズル者デアル隨テ政府
  ノ立テラレタ豫算ニ對シテハ餘リ批評ヲ致シマセ
  ヌガ、兎ニ角其處ニ七千万圓以上ノ餘力ノ殘ツテ
  居ルコトヲ私ガ主張致シマス、ソレカラ曩ニ委員
  長ノ御報告ノ場合ニ於テ、同志ノ大口君カラ故障
  ヲ申述ベラレマシタガ、政友會ノ方カラ此場合ニ
  行政財政ノ整理ヲ希望セラレマシタコトハ、私共
  同志ニ於キマシテハ同感デアリマスケレド、此決
  議ヲ通過セシメルニ當ツテ私共ノ執リ〓シタ態度
  ニハ御注意ヲ願フ、大口君ハ此政友會ノ御提議ニ
  贊成スルニ當ツテ、ソレハ十年前カラ我ガ同志ノ
  取リ來ツタ方針デアツテ、行政財政整理ト云フコ
  トハ我ガ同志ガ十年以前カラ取來ツタ方針デアツ
  タ(拍手)我ガ同志ガ之ヲ唱ヘル場合ニ於テ、政友
  會ノ方ニハ兎角之ニ反對セラレタ今日政友會ガ
  目ヲ醒シテ下スツタコトハ吾々ノ感謝スル所デア
  リマス(拍手)目ヲ醒サレルコトガ餘リニ遲カツ
  タ我ガ財政、我ガ行政ノ狀態ヲ今日ノ狀態ニ陷
  レタル其大ナル責任ハ政友會ノ負ハナケレバナラ
  ヌ所デアリマス斯樣ニ大口君ハ申サレタノデア
  リマス、此一齣ハ最モ政友會ノ諸君ニ於テ明ニ御
  記憶トサルコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=68

  ---

• 069・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　定刻ニナリマシタカラ時
  間ヲ延長致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=69

  ---

• 070・田川大吉郎

  ○田川大吉郞君(續)　東京市ノ負擔ニ關シテ尙ホ
  一言ヲ附加ヘルコ下ノ必要ヲ感ジマス、ソレハ
  政友會ノ唱ヘラレル地租委讓、政友會トハ申シ
  マセヌ、私共同志ノ唱ヘ來リマシタル地租委
  讓。此事ヲ此時ニ實行セラルレバ政友會ノ主
  張ノ通リニ、此地租委讓ヲ、全國ノコトハ暫ク
  後廻シト致シマス、東京市橫濱市ノ如キ震災ニ
  罹リマシタル此土地ニ、此時ヲ機トシテ地租委
  讓テ實行致サレマスレバ東京市民ノ負擔ニ對
  シテ御心配ナサレル三土君ノ御心配ハ自然ニ消
  エル筈デアリマス、何故ナラバ東京市現在ノ有
  租地ノ面積ガ一千三百万坪アル此法定地價ハ
  九千六百万圓デアリマス、一坪當リ六圓ノ地價
  ニナツテ居リマス、之ヲ六十圓ト見積リマスコト
  ハ左程ムヅカシイ事デハナイデセウ、現ニ政府ノ
  提案ニハ全市ヲ通ジテ平均二百圓ト見積ツテア
  ル、此場合東京市ノ現在ハ六圓ニ地價ヲ見積ツテ
  アリマスガ、之ヲ六十圓ト見積ルコトハ困難デア
  リマスマイ、サスレバ是ハ九億六千万圓ニナル、
  九億六千万圓ニナリマシタ場合ニ、百分ノ
  ノ地租ヲ課シマスレバ、九百六十万圓ガ東京
  市ノ懷ロニ這入ル、若シ二分ヲ課シマスレバ
  千九百二十万圓ガ東京市ノ懷ロニ這入ル、要
  スルニ玆ニ地租ヲ東京市ニ委讓致シマスレバ
  千万圓乃至二千万圓ニ近キ收入ガアリマス
  現在政府ガ東京市ニ對シテ、東京市カラ二百三十
  万圓ノ地租ヲ徵收シテオヰデニナル、此二百三十
  万圓ノ地租ヲ抛ツテオシマヒナサルコトハ政府
  ハ左程困難ナ事デナイ、其二百三十万圓ヲ政府ガ
  抛ツテ之ヲ東京市ニ委讓セラレマスレバ東京
  市ハ立ロニ千万圓以上二千万圓ノ歳入ヲ見ルノデ
  アリマス、其方法ニ依ラズトモ東京市ハ新シク起
  債ノ負擔ニ堪ヘ得ルダラウト思ヒマスケレドモ
  若シ堪ヘ難シトスレバ政友會ノ主張セラルヽ所ノ
  此地租委讓ノ實行ヲ希望セラレテハドウデアリマ
  スカ政友會ノ盡方ニ依ツテ、私共ノ多年ノ希望
  ヲ貫徹スルコトガ出來レバ私共モ甚ダ幸デア
  ル同時ニ東京市民モ其幸ニ浴スル譯デアリマ
  ス隨テ東京市民ノ負擔ガドウデアラウカト云フ
  此場合多ク御心配ナサル必要ガナカリサウニ思フ
  ノデアリマスコヽデ私ハ政友會ノ修正案竝ニ政
  友會ノ主張ニ對シテ、私ノ考ヘテ居リマス一般ヲ
  述べ終リマシタ、私ハ更ニ政府ニ向ツテ希望スル
  所ヲ述べタイト思フ、第ハ其事業ヲ公債ニ
  ノミ依ラレルコトニ私ハ不滿足デアリマス
  此震災ノ結果ヲ全部後世ノ子孫ニ課サル
  背負セラレルト云フコトニ不滿足デアリマス、私
  共今日ノ國民ハ如何ニ苦ミマシテモ此負擔ノ幾
  分ヲ背負ハナケレバナラヌト思フ其計書ヲ御立
  テニナラナカツタ、私共ハ此國難カラ免レテサ
  ウシテ此負擔ノ全部ヲ後世ノ子孫ニ背負セントス
  ル今日ノ財政計畫ニナツテ居リマスカラ、甚ダ不
  快ニ思ヒマス、第二ニ東京市及橫濱市ノ起債致シ
  マス此場合ニ於テ、政府ハ保障ノ位置ニ立タント
  シテオヰデニナルノデアリマスガ、東京市横濱市
  ハ今度ノ震災ニ由ツテ、外國ノ人カラ見レバ全滅
  シタト思ハレテ居ルヤウデアリマス、故ニ政府ガ
  保障ノ位置ニ立タントセラレルノデアリマスケレ
  ド、政府ガ外國ニ向ツテ大ナル公債ヲ起サレマス
  トキニ寧ロ東京市、橫濱市ノ分ヲ一括シテ政府
  ニ於テ起債セラレ、政府ノ餘力ヲ東京市、横濱市
  ニ向ツテ貸與ヘテ下サル方法ニ付テ更ニ繰返シ
  御考ヘ下サルコトヲ希望致シマス其事ガ東京市
  竝ニ横濱市ノ利益デアルノミナラズ、實ニ日本國
  家ノ利益デアリマス、第三ニ築港及京濱運河ノ事
  業デアリマスガ是ハ今日ノ案ニハ現レテ居リマ
  セヌ、併シ來ルベキ通常議會ニ此案ヲ提出セラル
  ル御趣意ノ如ク承リマスガ、私ハ此事業ヲ寧ロ東
  京市ニ向ツテ委ネラレンコトヲ望ム、東京市ハ必
  ズ自己ノ力ニ依ツテ之ヲ經營セントスル準備ガア
  リマセウ、若シ東京市ガ之ヲヤルニ堪ヘナイ場合
  ニ於テハ寧ロ民間ノ會社ヲシテ之ヲ計畫セシメ
  ラレルコトヲ望ム是ハ東京ノ爲ニ、又横濱市ノ爲
  ニ必要ナルコトデアルト仰セニナリマスガ、國ノ
  港灣ヲ國家ノ力ヲ以テ經營シタ所ガ何處ニアリマ
  スカ、倫敦ニセヨ、紐育ニセヨ漢堡ニセヨ、世
  界ノ大都ト言ハルヽ港ハ總テ人民ノ手ニ依ツテ經
  營セラレテ居ル獨リ日木國民ノミガ港ヲ經營八
  ルニ足リナイト云フ筈ハナイ、故ニ政府自ラ此事
  業ヲ經營セラルヽ方針ヲ、此場合ニ寧ロ一擲セラ
  ン、將來ハ此事業ヲ東京市カ若クハ私立會社ノ手
  ニ移サルヽコトヲ希望スルノデアリマス是ガ此
  案ヲ議スルニ當ツテ私ノ政府ニ向ツテ申シ、並ニ
  政友會ニ向ツテ申サントスル大要テアル、私ハ木
  問題ヲ眞面目ニ論議スルナラバモツト諸君ニ愬
  ヘテ見タイ意兄ガ數ゝアリマス、併シナガラ如何
  ニモ骨拔案テアル權威ノナキ案テアル、之ニ向
  ツテ力ヲ注グノハ自ラ顧ミテ洵ニ馬鹿々々シイ感
  ジニ堪ヘマセヌカラ、之ヲ以テ此席ヲ降ルノデア
  リマス暫クタリトモ諸君ノ御聽キヲ瀆シマシタ
  コトヲ甚ダ御迷惑デアツタラウト思ヒマス、御氣
  ノ毒ニ思ヒマス、吾ナガラ殘念デアリマスガ此一
  言ハ遺シテ置カナケレバナラヌ、特ニ山本內閣ノ
  時代ニ於テ此事ノ起リマシタノハ痛恨ノ情ヲ懷
  イテ此一言ヲ遺シテ置クノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=70

  ---

• 071・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　森下龜太郎君
  〔森下龜太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=71

  ---

• 072・森下亀太郎

  ○森下龜太郞君　豫算案ノ魂ハ旣ニ岐阜ニ參ツテ
  居ルノデアリマス私共ハ國民ト共ニ此豫算案ノ
  葬式ヲ其寫眞ニ依ツテスルト云ノ意味ニ於テ、玆
  ニ政友會ノ御修正ニナリマシタ其修正ニ對シマシ
  テ反對ノ意見ヲ述ベタイト思フノデアリマス、申
  スマデモナク國家ノ非常ノ時ニ際シマシテ、とこ
  處スル善後策ト致シマシテハ之ニ順應スル所ノ
  機關ヲ設ケテ、以テ遺憾ナキヲ期スベキデアルト
  云フコトハ固ヨリ言フマデモナイコトデアリマス
  之ヲ問題トナリマシタ地區ノ整理ニ付テ申シマス
  レバ此一大事變ノ後ヲ承ケマシタ善後策ト致シ
  マシテハ私共ノ考ニ依リマスレバ國家最高ノ絕
  對權力ニ依リマシテ、是ガ施設ニ伴フ所ノ一切ノ
  障碍ヲ排除スルト云フ機關ノ下ニ働ヲシナケレバ
  ナラスト考ヘルノデアリマス然ルニ木日豫算委
  員會デ島田君ノ御說明ヲ承リマスレバ斯ノ如キ
  權力ヲ振廻サズトモ彼ノ道路法若クハ都市計畫法
  ナドニ依ツテ之ヲ遂行スルコトハ、決シテ難事デ
  ナイト云フ大體ノ御說明デアリマシタガ、御存ジ
  ノ通リ道路若クハ都市計畫法ノ如キハ面カラ
  申シマスルト人權尊重ノ意味ニ於キマシテ、彼ノ
  地主ナルモノト企業者トノ同ニハ妥協交讓ヲ旨
  トスル所ノ意味ヲ以テ立案セラレタル所ノ平時法
  デアリマシテ斯ノ如キ意味ニ於ケル所ノ平時法
  ヲ國家非常時ニ處スル所ノ一ノ機關ニ當テルコト
  ハ私共ハ其適當ナルコトヲ知ラヌノデアリマス
  (拍手)此見地カラ政友會ノ此地區ノ整理ナル所ノ
  重大ノ仕事ヲ、地主ノ組合ヲシテ其任の位置ニ
  當ラシメルト云フコトハ私共ノ御贊成ヲ申上ゲ
  兼ネル所デアリマス更ニ第二ノ問題トナツテ居
  リマスル街路費ノ問題デアリマス、政友會ノ御修
  正ノ御趣旨ニ依リマスレバ全體國家ノ爲スベキ事
  ト、自治團體ノ爲スベキ事トノ間ニハ自ラ其區別
  ガアルモノデアル是ニ於テカ十二間以下ノ道路
  ニ付テハ是ハ地方團體ヲシテ其責ニ當ラシムルガ
  相當デアル斯ウ云フ意味ニ於キマシテ七千七十
  一万圓ト云フ所ノ大削減ヲ加ヘラレタノデアリマ
  ス私ハ政友會ノ諸君ノ御修正ノ趣旨ニ基キマシ
  テ、斯ノ如キ事柄ハ是ガ假令地方團體ノ負擔ニ屬
  スベキヲ本則トスルト云ヒマシテモ、是ハ平時ニ
  處スベキ事デアリマシテ、實際問題ト致シマシテ
  ハ焦土ニ歸シタル此束京市、竝ニ横濱市ニ對シマ
  シテ此重大ナル責任ヲ背負ウテ立テト申シマシタ
  所ガ、無イ袖ハ振レルモノデハナイト考ヘルノデ
  アリマス(拍手)殊ニ政府ノ提案ニ係リマス豫算案
  ナルモノハ是ハ總テ計畫ノ輪廓ノミヲ定メラレ
  タルモノデアリマシテ、其帝都トシテノ內容ノ充
  實ヲ圖ルベキコトヽ致シマシテハ東京市若クハ
  橫濱市自身ニ於キマシテ之ヲ爲サナケレバナラヌ
  事ハ澤山アルト信ズルノデアリマス、其裸百貫ノ
  東京市若クハ橫濱市ト致シマシテ、澤由ノ文化事
  業、又ハ外國ニ對シマシテ帝國ノ面目ヲ維持スベキ
  所ノ施設トシテ爲スベキ事ガ澤山アルニ拘ハリマ
  もや、一億圓ニ近イ所ノ外債ナルモノヲ自ラ負擔
  シ自ラヤレヨト云フコトヲ强ユルト云フコトハ
  是ハ餘程無理ナル事ヲ强ユル結果ニナルト私ハ考
  ハン東京若クハ橫濱ハ自ラソレヲ負擔スルノ力ハ
  無イ、然ラバ國家ハ之ヲ何トカスルカト云フ問題
  ニナツテ來ルノデアリマス、此點ニ付キマシテハ
  私ハ豫算委員會ニ於キマシテモ、現在ノ國家ハ震
  災前ニ於キマシテ一般ノ財政狀態ニ見マシテモ
  殊ニ私ハ商工都市ニ居ル人間デアリマスガ、外國
  貿易ノ關係ヲ見マシテモ、旣ニ震災前ニ於キマシ
  テ、例年ハ八月末日ノ現存ニ於キマシテ外國質易
  ノ輸入超過額ナルモノハ二億若クハ三億內外デア
  ツタニモ拘ラス.本年ハ震災前ノ八月末ニ於キマ
  シテ四億五千万圓ヲ計上スルニ至ツタノデアリマ
  ス、ソレガ爲ニ外國貿易ハ實ニ萎靡不振ノ極ニ達
  シテ參リマシテ、何トカ是ガ解決ノ途ヲ講ジナケ
  レバ日本ハ終ニ財政上破產ノ悲境ニ陷ルト云フコ
  トヲ識者ハ憂ヘテ居ツタノデアリマス、ソレガ一
  タビ震災ト云フコトノ大事變ニ遭ヒマシテ、其以
  後僅カ三箇月ヲ經タル今日ニ於キマシテ、十一月
  末日ニ於ケル輸入超過額ノ累計ナルモノハ實ニ
  五億七千萬圓ト云フ驚クベキ數額ヲ達シタノデア
  リマスサウ致シマスルト、震災前ニ於キマシテ旣
  ニ我ガ日本帝國ノ財政ハ、數年ナラズシテ或ハ破
  產ノ悲境ニ陷ルデハアルマイカト云フコトノ心配
  ヲシテ居ツタモノガ、此災後ニ於キマシテハヨリ
  以上ニ此憂ヲ深クセネバナラヌ所ノ立場ニアル、
  然ラバ國家ト致シマシテモ、此復興事業ニ於キマ
  シテ吾々ガ豫期シ、或ハ此震災地ノ罹災諸君ガ豫
  期セル程ノ多額ノ經費ノ負擔ヲ國家自身ニ於テモ
  負擔スルコトノ力ガ無イト云フコトヲ思ハナケシ
  バナラヌ、旣ニ罹災地ノ市民ニ於キマシテモ負擔
  力ニ於テハ甚ダ豐富ナラズ、又國家ノ負擔力ニ於
  キマシテモ甚ダ憂フベキ所ノモノガアル、然ラバ
  此復興事業、震災ニ基ク所ノ此復興事業ナルモノ
  ヲ、或ル程度迄ニ完成セシメヤウト思ヘバ、何處カ
  ラ其金ヲ引出スノガ一番適當デアルカト云フコト
  ニ付キマシテ、深ク思ヲ運ラシタノハ卽チ吾々ノ
  ミナラズ、諸君モ同樣デアルト考ヘルノデアリマ
  ス、而シテ私共ハ此思ヲ運シダ末ニ、考ヘ出シマシ
  タノハ彼ノ「フランクフルト」ニ於ケル、地主ヨリ
  土地ヲ提供サセル所ノ一ノ方法デアリマス、御承知
  ノ通リ此震災ニ依リマシテ多數ノ國民ハ非常ノ迷
  惑ヲ受ケマシタ、商人ハ商品ヲ失ヒ、家持ハ建物ヲ
  失ツテシマツタ、然ルニ獨リ何等ノ損失ヲセザル
  所ノ者ハ彼ノ地主デアリマス、彼等ハ燒野原ニナ
  ルト共ニ少シ困難ニナツテシマツタ、一旦ハ他ノ
  一般ノ市民ト同樣ナル運命ニ陷ツタニ相違アリマ
  セヌケレドモ、一タビ帝都復興ト云フ聲ト同時ニ、
  彼ガ一タビ失ウタル損害ナルモノハ忽チ震災前
  ニ引戾サレタノデアリマス假令帝都復興ナルコ
  トガ是ガ實現ヲサレタ曉ニ於キマシテモ、一般商
  人ハ其失ハレタル商品ハ一品ダツテ戾ツテ來ルコ
  トハナイノデアリマス、之ヲ一般家持ニ付テ申シ
  マスナラバ、假令此復興事業ガ完成致シマシテモ、
  一旦燒失ハレタ家、地震デ潰レタ建物ハ再ビ是ハ
  生キテ戾ラヌノデアリマス唯、獨リ此帝都復興ノ
  事業ト云フコトニ付キマシテ、元ニ立戾リ得ルノ
  ハ卽チ私ガ今指シマシタル地主ノミデアリマス、
  随テ此復興事業ニ依ツテ儲カルノハ一ニモ地主、
  二ニモ亦地主デアリマス、サウ致シマスルト、此地
  主ガ他ノ罹災民ト同樣ニ受ケル所ノ立場ニアルナ
  ラバ兎ニ角、地主ハ罹美前ノ狀態ニ復スルノミナ
  ラズ、之ヲ一般ノ各國ノ都市計畫ノ跡ニ付テ見マ
  スレバ都市計畫ノ實行サレタ曉ニ於テハ如何
  ナル所ニ於キマシテモ、其都市計畫ノ以前ノ地價
  ニ比較致シマスレバ二倍若クハ三倍以上ニ其土
  地ト云フモノガ騰貴シテ居ルノガ一般ノ例デアリ
  マス(拍手)サウ致シマスト、此震災ニ依ツテ一般
  ノ人ハ非常ナル損害ヲ受ケタガ、獨リ地主ダケハ
  何等ノ損害ヲモ受ケザルノミナラズ、其損害ヲ受
  ケザルコトハ全國民ノ力ニ依ツテ帝都ノ復興ト
  云フコトノ大事業ヲスルガ故デアリマス全國民
  ノ力ニ依リマシテ震災前ノ地價ニ回復サレルノミ
  ナラズ、尙ホ震災以前ヨリ數倍スベキ利益ヲ受ク
  ベキ所ノ見込ガアル其地主ニ對シマシテ、其
  部ノ利益ノ提供ヲ求ムルコトハ國家トシテ決シ
  テ不都合ナモノデハナイト考ヘル、「フランクフル
  ト」ノ此地區整理ノ方法ヲ見マスレバ公共團體
  若クハ國家ガ其必要上ヨリ其土地ノ提供ヲ求メ
  タ時ニ於キマシテハ地主ヨリ其地區ノ改正ニ依
  ツテ受クル所ノ利益ヨリ見積ラレタルモノデアリ
  マセウカ、其所有土地ノ三割五分ナルモノヲ地
  主ヨリ提供スルコトヲ餘儀ナクサルコトニ
  規定サレテ居ルノデアリマス、又之ト反對ニ地
  主自身ガ自分ノ土地カラ改良シ、利用スル所ノ目
  的カラ此地區ノ改正整理ヲ求ムル場合ニ於キマシ
  テハ國家若クハ公共團體ハ其申出デタ所ノ地上
  ヨリ四割ノ提供ヲ强要スルノ權利ヲ與ヘラレテ居
  リマス今私共ガ諸君ト共ニ此帝都ノ復興セザム
  場合ヲ回想シテ見タイノデアリマス若シ今日ノ
  東京市ガ燒野ケ原ノ儘デ之ヲ放置シテ、全國民ガ
  少シモソレニ對シテ復興事業ニ金ヲ出サヌト云フ
  コトニ致シマスナラバドウ云フコトニナルカ、
  現在ノ地主諸君ハ必ズ一大同盟ヲ造ツテ、假令吾
  々ノ所有地ハ五割デモ六割デモ之ヲ提供スルカ
  ラ、ドウカ此帝都ノ復興ト云フ仕事ヲヤツテ吳レ
  ト云フコトヲ申出デ、彼等ハ泣ヲ入レテ來ルニ相
  違ナイト思ヒマスサウ致シマスト、幸ニ國家
  ハ帝都復興ト云フ仕事ニ取掛ルノデアリマス、何
  モ足元ヲ見テ弱イ者虐メテスル必要ハナイノデ
  アリマス之ヲ以テ私ハ外國ノ例ハ三割五分若
  クハ四割ト云フコトデアリマスケレドモ私
  共ハ政府ノ提案ニ係ル一割ト云フモノヲ引上ゲ
  テ、一割五分ト云フコトニ致シマスレバ其
  五分ノ差額ノミニ於テ、五千六百万圓ト云フ金
  額ヲ茲ニ生出スコトガ出來ルノデアリマス、
  更ニ今度ハ第三ノ復興費ニ關スル問題デアリマ
  ス是ハ政友會ノ修正デハ、全部二割天引ト云
  フ意味ニ於キマシテ削除ニナツテ居リマスガ、
  私共ハ折角政府ガ帝都ヲ復興スルト云フコト
  ニ熱中セラレマシテ、誠心誠意之ヲ提案サレタ以
  上ハ成ベク其計畫ヲ根本カラ覆ヘス態度ニハ出
  デタクハナイ、サリナガラ現在ノ制度ノ如ク餘リ
  ニ厖大ナリト云フコトモ考ヘナケレバナラヌカ
  ラ、ソコデ現在ノ官制ノ分課ハ官房、計畫局、土
  地整理局、建築局、土木局、物資供給局經理局、
  此七ツノ分課ニナツテ居ルノデアリマスガ、ソレ
  ヲ配合致シマシテ、官房ハ之ヲ別ト致シマシテ、
  計畫局ト土地整理局ト云フモノヲ一ツニ纒メマシ
  テ計畫局ナル一ツノ局ニシテシマフ、建築局ナ
  ルモノト土木局ナルモノトヲ、之ヲ一ツニ纒メテ
  工務局ナル新タナル一ノ局ヲ設ケル、更ニ物資供
  給局、經理局、此二ツノモノヲ纏メマシテ經理局
  ト云フ一局ニ管掌セシムルト云フコトニ致シマス
  レバ副總裁ヲ一人減ズルコトモ出來レバ書記官
  ナリ、理事ナリ、總テノ人ヲ減ラスコトガ出來マ
  シテ、其金額ハ約二百四十四万圓ヲ節減スル
  コトガ出來ルノデアリマス、之ヲ前ノ五千六
  百万圓ニ合算致シマスルト、丁度合計五千八
  百四十餘万圓ト云フ金高ヲ計上スルコトガ出
  來マシテ、結局約六千万圓ト云フ金高ヲ茲ニ
  生出スコトガ出來ルノデアリマス、此私共ノ
  考ト云フモノハ政府ノ計畫サレタ所ノ計畫自
  身ニ少シモ踏入ラズシテ、而シテ此東京市及橫
  濱市民ニ對シマシテ、何等經費ノ負擔ヲ加ヘル
  コトナクシテ、而シテ何等苦痛ヲ感ゼザル所ノ
  地主諸君ヨリ、其利益ノ一半ヲ提供セシムルト云
  フコトニ依リマシテ、其大體ノ金高ヲ生出スコト
  ガ出來ルト云フコトニナルノデアリマスカラ、恐
  ラクハ之ヲ虛心平氣ニ諸君ガ御考慮下サイマシタ
  ナラバ、必ズヤ雙手ヲ擧ゲテ滿場一致ヲ以テ御贊
  成下サルモノニ相違ナイト考ヘテ居ツタ所ガ各政
  黨政派ニハソレ〓〓色々駈引ト云フモノガアルモ
  ノト見エマシテ、吾々少數黨ノ提案ニ一顧ダモ加
  ヘラレヌト云フコトハ甚ダ殘念ニ考ヘマスケレド
  モ私共ハ此席ニ於テ諸君ノ御贊成ヲ得ルコトガ
  出來ヌト云フコトハ固ヨリ覺悟ノ前デアリマス
  ガ、議會ヲ通ジテ全國民ニ此〓末ヲ愬ヘマシテ、
  而シテ諸君ノ態度ガ果シテ公正ヲ得テ居ルヤ否ヤ
  ト云フコトヲ全國民ノ判斷ニ愬ヘヲスル必要ヲ以
  チマシテ此反對ノ意見ヲ主張スル者デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=72

  ---

• 073・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　岩崎動君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=73

  ---

• 074・岩崎勲

  ○岩崎動君　討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
  〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=74

  ---

• 075・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　討論終局ノ動議ニ異議ア
  リマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ」

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=75

  ---

• 076・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍
  テ討論ハ終局致シマシタ、是ヨリ採決致シマス
  先ヅ第一號大正十二年度歲入歳出總豫算追加案ヲ
  採決致シマス、是ハ委員長ノ報告ガ修正デアリマ
  スカラ委員長ノ報告ニ付テ採決致シマス、本案ハ
  記名投票ヲ以テ採決致シマス委員長ノ報告ニ贊
  成ノ諸君ハ白票反對ノ諸君ハ靑票ヲ御持參ニナ
  リタイ閉鎖-氏名點呼ヲ命ジマス
  〔大木書記官氏名ヲ點呼ス〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=76

  ---

• 077・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　投票漏ハアリマセヌカー
  投票漏ハナシト認メマス投票函閉鎖-開匣-開
  鎖-投票ノ結果ヲ書記官長ヨリ報告致サセマス
  〔中村書記官長期讀〕
  投票總數三百四十七
  可トスル者白票二百四十一
  否トスル者靑票百六
  〔參照〕
  委員長報告ヲ可トスル議員ノ氏名左ノ如シ
  石井三郞君石川善盛君
  石川立三郞君石川淳君
  石黑長平君今井今助君
  今泉嘉一郎君岩崎宗茂助君
  岩崎動君岩本平藏君
  岩切重雄君市村貞造君
  〓房治郞君禱苗代君
  飯島信明君伊坂秀五郞君
  伊澤平左衞門君井上敬之助君
  井上角五郞君井坂豐光君
  池田泰親君池田猪三次君
  原田佐之治君原田藤次郞君
  原夫次郞君八田宗吉君
  蓮井藤吉君長谷川宗治君
  長谷場敦君花城永渡君
  濱口吉兵衞君波多野承五郞君
  秦豐助君西澤定吉君
  西川嘉門君西村正則君
  西村伊亮君本多貞次郎君
  堀切善兵衞君水寛人君
  富安保太郞君床戶竹二郞君
  次
  陣軍吉君小田切磐太郞君
  小山田信藏君小川平吉君
  大石大君島實太郞君
  林森次郎君岡大大馬太郞君
  森貞資君崎矢
  長岡大大邦輔君
  順次君岡田伊太郞君
  田桃藏君渡邊祐策君
  若尾幾造君河相三郞君
  河崎〓君河上哲太君
  河野喜藏君川原茂輔君
  川村數郞君改野耕三君
  海江田準一郞君加藤重三郞君
  加藤久米四郞君加藤紋右衞門君
  風間八左衞門君金光庸夫君
  春日俊文君横田千之助君
  吉植庄一郞君吉原正隆君
  吉野小一郎君吉木陽君
  米原於莵男君米澤與三次君
  高橋光威君高橋金治郞君
  高橋善五郞君高見之通君
  高柳淳之助君高山長幸君
  付澤太一君竹上藤次郞君
  武田德三郞君田中定吉君
  田邊熊一君田村順之助君
  龍野周一郞君瀧正雄君
  大道寺慶男君添田敬一郞君
  津崎尙武君塚原嘉藤君
  土屋興君坪田十郞君
  鶴見孝太郎君辻勇夫君
  中西六三郞君中山佐市君
  中村〓造君中村喜平君
  中島鵬六君中島守利君
  中島照寛君中橋德五郞君
  中倉万次郎君仲田德三君
  成田直一郞君永井作次君
  南里琢一君長峰與一君
  向井倭雄君武藤金吉君
  梅田潔君植竹龍三郞君
  植場平君字野勇作君
  鵜澤總明君上塚司君
  上埜安太郎君內山安兵衞君
  野村勘左衞門君野村治三郞君
  野副重一君野口忠太郞君
  野田卯太郞君野呂駿三君
  則元由庸君國重政亮君
  國澤新兵衞君黑住成章君
  熊谷直太君栗林五朔君
  久慈貫一君久下豐忠君
  久木田叶君山本悌二郞君
  山本条太郞君山田永俊君
  山口熊野君山口嘉藏君
  山崎猛君谷津新八郎君
  柳原九兵衞君矢野丑乙君
  八木逸郞君松浦五兵衞君
  松實喜代太君松岡俊三君
  松野鶴平君松山常次郞君
  松本孫右衞門君牧野良三君
  牧山耕藏君丸山嵯峨一郞君
  前田米藏君舞田壽三郞君
  益谷秀次君麓純義君
  福井三郞君福井甚三君
  深見寅之助君古林新治君
  小橋一太君小鹽八郞右衞門君
  小川線喜七君小坂順造君
  六水要七君阿部武智雄君
  秋本喜七君東武君
  赤田瑳一君天春文衞君
  靑木恆太郞君靑柳郁次郞君
  佐野正雄君佐藤寅太郞君
  佐藤良平君佐藤庄助君
  佐藤榮吉君齋藤鷲太郞君
  齋藤壽雄君三枝彥大郞君
  阪上貞信君坂本素魯哉君
  崎山克治君櫻內幸雄君
  榊田〓兵衞君菊川惣吉君
  〓瀨規矩雄君吉良元夫君
  宜保成晴君木村〓三郞君
  木村作次郎君木下謙次郞君
  木下成太郞君北山一郞君
  三好德松君三土忠造君
  三善〓之君三浦權兵衞君
  水野吉太郎君宮崎友太郎君
  宮古啓三郞君宮澤長治君
  三輪市太郞君自井博之君
  下出民義君島本信二君
  島田俊雄君〓水市太郞君
  廣岡宇一郞君廣瀨鎭之君
  樋口伊之助君樋口典常君
  平田民之助君匹田銳吉君
  毛里保太郞君門田新松君
  元田肇君森恪君
  望月圭介君望月政友君
  菅原傳君菅野傳右衞門君
  鈴木隆君鈴木巖君
  鈴木錠藏君鈴木義隆君
  鐸木三郞兵衞君井上孝哉君
  奥村千太郞君荻田悅造君
  鎌田三郞兵衞君難波作之進君
  松田三德君南鼎三君
  守屋松之助君
  委員長報告ヲ否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
  柳仲次郞君飯塚春太郎君
  磯貝浩君石井〓二君
  井上剛一君濱口雄幸君
  早速整爾君本田恆之君
  本間三郞君中馬興丸君
  岡本幹輔君大津淳一郞君
  門屋尙志君神谷彌平君
  金澤安之助君金田平兵衞君
  横山勝太郞君横山金太郞君
  吉田磯吉君武內作平君
  賴母木桂吉君高田良平君
  高橋久次郞君田中武雄君
  田中善立君田川平三郞君
  建部遯吾君內藤濱治君
  永井柳太郞君中野寅吉君
  中原德太郞君鵜澤宇八君
  野村嘉六君黑金泰義君
  山道襄一君山邊常重君
  山本厚三君八並武治君
  正木照藏君松井鉄夫君
  牧口義矩君降旗元太郞君
  古賀三千人君小山松壽君
  小池仁郞君小泉又次郞君
  木檜三四郞君出口直吉君
  淺川浩君安達謙藏君
  阿由葉勝作君佐々木千秀君
  佐藤啓君佐竹庄七君
  齋藤巳三郞君齋藤小十郞君
  定行八郞君作間耕逸君
  作久間啓莊君三浦得一郞君
  三木武吉君箕浦勝人君
  重松重治君〓水留三郞君
  下岡忠治君樋口秀雄君
  平出喜三郞君森達三君
  森田茂君粟山博君
  關和知君鈴木周三郞君
  鈴木富士彌君鈴置倉次郞君
  石川長右衞門君濱田國松君
  西村丹治郞君星島二郞君
  富永孝太郞君土居通憲君
  大口喜六君渡邊昭君
  高柳覺太郞君高草美代藏君
  中川幸太郞君中野正剛君
  植原悅二郞君野溝傳一郞君
  倉石知藏君前川虎造君
  小橋藻三衞君古島一雄君
  近藤達兒君秋田〓君
  齋藤宇一郞君關直彥君
  鈴木久次郎君砂田重政君
  山邑太三郞君小菅劍之助君
  森下龜太郞君仙波太郞君
  大濱忠三郞君根本正君
  山科愼次郎君安藤正純君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=77

  ---

• 078・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　本案ハ委員長報告通リ修
  正議決致シマシタ、他ノ三案ハ一括シテ採決致シ
  タイト思ヒマスガ、異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=78

  ---

• 079・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス、仍
  テ追第一號、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ
  爲スヲ要スル件第二號、大正十二年度歲入歲出總
  豫算追加特第一號、大正十二年度特別會計歳入歲
  出豫算追加右三案ハ委員長ノ報告ハ可決デアリマ
  ス委員長ノ報告通リ異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=79

  ---

• 080・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　異議ナシト認メマス仍
  テ三案トモ委員長ノ報告通リ可決確定致シマシタ
  (拍手)是デ豫算案全部議了致シマシタ、日程ニ這
  入リマス、日程第三大正十二年勅令第四百三號、
  承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト致シマス、政府ノ辯明ヲ
  求メマス、國務大臣平沼騏一郞君
  第三大正十二年勅令第四百三號(承諾
  ヲ求ムル件)(治安維持ノ爲ニスル
  罰則ノ件)(貴族院送付)
  大正十二年勅令第四百三號
  朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ
  經テ帝國憲法第八條第一項ニ依リ治安維持ノ爲
  ニスル罰則ニ關スル件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
  御名御璽
  攝政名
  大正十二年九月七日
  內閣總理大臣兼伯爵山本權兵衞
  外務大臣
  部務大大子爵後藤新平
  岡野敬次郞
  軍財部彪
  軍男爵田中義
  大鐵司遞農陸海文内商務大大大大大臣臣臣臣臣臣臣臣臣男爵田健治郞
  犬養毅
  法信平沼騏一郞
  藏道大大由之內一次
  井上準之助
  勅令第四百三號
  出版、通信其ノ他何等ノ方法ヲ以テスルヲ問ハ
  ス暴行、騒擾其ノ他生命、身體若ハ財產ニ危害ヲ
  及ホスヘキ犯罪ヲ煽動シ安寧秩序ヲ紊亂スル
  ノ目的ヲ以テ治安ヲ害スル事項ヲ流布シ又ハ人
  心ヲ惑亂スルノ目的ヲ以テ流言浮說ヲ爲シタル
  者ハ十年以下ノ懲役若ハ禁鋼又ハ三千圓以下ノ
  罰金ニ處ス
  附則
  本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣平沼騏一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=80

  ---

• 081・平沼騏一郎

  ○國務大臣(平沼騏一郎君)　只今議題ト相成リマ
  シタ治安維持ノ爲ニスル罰則ニ關スル緊急勅令、
  此緊急勅令ノ承諾ヲ求ムル理由ヲ申述ベマス
  〔松田副議長退席粕谷議長復席〕
  今回ノ震災ニ際シマシテ、一部ノ人ハ極メテ沈靜
  デゴザリマシタニ拘ラズ、一部ニ於キマシテハ人
  心極メテ不安ニ陷リマシテ、此時ニ際シマシテ人
  心ヲ惑亂シ、社會ノ安寧秩序ヲ紊ルガ如キ行爲ヲ
  ナスノ虞ガアリマシタノデゴザリマス、此緊急勅
  令ハ之ヲ防遏致シマスル爲ニ發布致シタルモノデ
  ゴザリマス、政府ハ此緊急勅令ニ依リマシテ治安
  維持ノ上ニ相當ノ效果ノアリマシタルコトヲ認メ
  テ居ルノデゴザリマス、而シテ今日ハ震災直後ニ
  比較致シマスレバ社會ノ狀態ハ餘程平靜ニ赴イテ
  居リマスルナレドモ、災禍ノ跡ハ未ダ十分ニ復舊
  ヲ致シテ居リマスセヌ、且ツ餘震尙ホ熄マザルノ
  狀態デアリマシテ、人心未ダ全ク常ニ復セザル次
  第デゴザリマスル、之ニ依リマシテ此緊急勅令ニ
  定ムルガ如キ所ノ非行ヲ防止致シマシテ、人心ノ
  安定ヲ圖ルベキ緊切ノ必要ハ尙ホ依然トシテ繼
  續シテ居ルモノト認ムルノデゴザリマス、仍テ此
  緊急勅令ハ尙ホ將來ニ於テ效力ヲ有セシムルノ必
  要アリト考ヘマシテ、憲法第八條第二項ニ依リマ
  シテ承諾ヲ求メマスル次第デゴザリマス、宜シク
  御審議ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=81

  ---

• 082・原夫次郎

  ○原夫次郞君　此案ニ付キマシテ本員ハ質問ノ通
  告ヲ致シテ置イタノデアリマスガ、モウ既ニ時刻
  モ段々延ビテ居リマスカラ其質問ノ通告ヲ撤回致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=82

  ---

• 083・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　日程第四、右議案ノ審査ヲ
  付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第四右議案ノ審查ヲ付託スヘキ委員ノ
  選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=83

  ---

• 084・高見之通

  ○高見之通君　委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長
  ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=84

  ---

• 085・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=85

  ---

• 086・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、仍
  テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第五、大正十二年
  勅令第四百七十一號、承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト致
  シマス
  第五大正十二年勅令第四百七十一號
  (承諾ヲ求ムル件)(株主名薄ヲ喪
  失セル會社ノ件)(貴族院送付)
  大正十二年勅令第四百七十一號
  朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ
  經テ帝國憲法第八條第一項ニ依リ震災ニ因リ株
  主名簿ヲ喪失シタル會社ノ株主總會等ニ關スル
  件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
  御名御璽
  攝政名
  大正十二年十月三十一日
  内閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  內務大臣子爵後藤新平
  文部大臣岡野敬次郞
  臣財部彪
  軍男爵田中義
  男爵田健治郞
  犬養毅
  臣臣臣臣臣臣臣平沼騏一郞
  藏道法信山之內一次
  萬元起業 高溫度 10000元
  井上準之助
  外務男爵伊集院彥吉
  勅令第四百七十一號
  大正十二年九月ノ震災ニ因リ株主名簿ヲ喪失シ
  タル會社ニ名義人ヲ確知スルコト能ハサル記名
  株式アルトキハ會社ハ其ノ旨ヲ公告スヘシ此ノ
  場合ニ於テハ其ノ株式ハ商法中株主總會及優先
  株主ノ總會ニ關スル規定ノ適用ニ付之ヲ無記名
  式ノモノト看做ス
  附則
  本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣平沼騏一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=86

  ---

• 087・平沼騏一郎

  ○國務大臣(平沼騏一郞君)　只今議題ト相成リマ
  シタル緊急勅令ハ震災ニ因リ株主名簿ヲ喪失致
  シマシタル會社ノ株主總會等ニ關スル件デゴザリ
  タス御承知ノ如ク株式會社、株式合資會社ニア
  リマシテハ商法ノ規定ニ依リマシテ每年一定ノ
  時期ニ於キマシテ株主總會ヲ招集スルコトヲ要ス
  ルノデゴザリマス、而モ十一月、十二月ノ交ハ怡
  モ下半期ノ決算期ト致シマシテ、多數ノ會社ニ於
  キマシテ株主總會ヲ招集スベキ時期ニ當ツテ居リ
  マス然ルニ今次ノ震災ニ依リマシテ株主名簿ヲ
  喪失致シマシタル會社ハ其數極メテ多クゴザリ
  マシテ、是ガ爲ニ會社ハ記名株式ノ名義人ヲ確知
  スルコトノ出來マセヌモノガ多々アルノテゴザリ
  て 、斯ノ如キ場合ニ於キマシテ株主總會ヲ招集
  セント致シマシテモ記名株主ニ對シマシテ、商
  法ノ規定ニ從ヒマシテ總會招集ノ通知ヲ爲スルコ
  トガ出來ナイノデゴザリマス之ニ依ツテ本令ニ
  於キマシテハ株主名簿ヲ喪失致シマシタル多數ノ
  會社ノ爲ニ特例ヲ設ケマシテ、名義人ヲ確知スル
  コトノ出來マセヌ記名株式ノアリマス場合ニ於キ
  マシテハ會社ヲシテ其旨ヲ公告セシメテ、其株
  式ハ總會ニ關スル商法ノ規定ノ適用ニ付キマシテ
  ハ之ヲ無記名式ノモノト看做シマシテ、該株主ニ
  對シマシテハ各別ニ總會招集ノ通知ヲ爲スコトヲ
  要シマセヌデ、公告ノ手續ヲ爲スヲ以テ足ルモノ
  ト致シマシテ、之ニ依ツテ適當ナル總會ノ招集ヲ
  爲スコトヲ得セシムルコトヽ致シタノデゴザリマ
  ス、此緊急勅令ハ將來尙ホ其效力ヲ存續セシムル
  ノ必要ガアルノデゴザリマス之ニ依ツテ憲法第
  八條第二項ニ依リマシテ、承諾ヲ求メマス次第デ
  ゴザリマス、宜シク御審議ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=87

  ---

• 088・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　日程第六右議案ノ審查ヲ付
  託スヘキ委員ノ選舉ヲ議題ニ致シマス
  第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=88

  ---

• 089・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ政府提出、大正十二年勅令
  第四百二十五號、承諾ヲ求ムル件、手形割引損失
  補償ノ件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマ
  ス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=89

  ---

• 090・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナシ
  ト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=90

  ---

• 091・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ提出致シ
  マチ。卽チ茲ニ政府提出、震災ニ因リ租稅ヲ減免
  セラレタル者ノ法令上ノ納稅資格要件ニ關スル法
  律案ノ第一讀會ノ續、及大正十二年勅令第四百二
  十三號、承諾ヲ求ムル件、卽チ選擧人名簿調製ノ
  件ヲ議題トシ、次ニ政府提出東京帝國大學臨時
  政府支出金繰入ニ關スル法律案ノ第一讀會ノ續
  ヲ開キ、次ニ大正十二年勅令第四百十號、承諾
  ヲ求ムル件、卽チ租稅減免ノ件、及大正十二年
  勅令第四百十一號、承諾ヲ求ムル件、卽チ輸入
  稅減免ノ件ヲ一括議題ト爲シ、各〓委員長ノ報告
  テ求メ逐次其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=91

  ---

• 092・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=92

  ---

• 093・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、仍
  テ動議ノ如ク決シマス、卽チ日程ハ變更セラレマ
  シタ-震災ニ因リ租稅ヲ減免セラレタル者ノ法
  令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案ノ第一讀會ノ
  續大正十二年勅令第四百二十三號承諾ヲ求ムル
  件、右二案ヲ一括シテ議題トシ、委員長ノ報告ヲ
  求メマス、委員長石川玄三君
  震災ニ因リ租稅ヲ減免セラレタル者ノ法
  令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案(政
  府提出)第一讀會ノ續
  報告書
  一震災ニ因リ租稅ヲ減免セラレタル者ノ法令上
  ノ納稅資格要件ニ關スル法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段
  及報告候也
  大正十二年十二月十九日
  震災ニ因リ租稅ヲ減免セラレ
  タル者ノ法令上ノ納稅資格要
  件ニ關スル法律案委員長
  石川立三
  衆議院議長粕谷義三殿
  大正十二年勅令第四百二十三號(承諾ヲ求ム
  ん作(選舉人名簿調製ノ件)
  報告書
  一大正十二年勅令第四百二十三號(承諾ヲ求ム
  , 作
  右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議決致候
  此段及報告候也
  大正十二年十二月十九日
  大正十二年勅令第四百一一十三
  號(承諾ヲ求ムル件)委員長
  石川玄三
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔石川玄三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=93

  ---

• 094・石川玄三

  ○石川玄三君　大正十二年勅令四百二十三號ハ
  卽チ震災地ニ於ケル選擧人名簿調製ノ件デアリマ
  ス之ニ付キマシテハ委員野村君カラ政府ニ對シ
  テ、政府ハ果シテ來ル五月ノ總選舉迄ニ選舉人名
  簿調製ガ間ニ合フカ、若シ其期日迄ニ間ニ合ハナ
  イトシタナラバ其地方ヨリ選出サレタル現任議
  員ヲ如何ニ扱フカ、更ニ解散ニ依ツテ選擧ノ期日
  ガ早メラレタトシタナラバ其場合ハ政府ハ如何
  ニ處置スルカ、之ニ對シマシテハ、政府ハ來ル五
  月ノ總選擧迄ニハ必ズ選擧人名簿ノ調製ヲ間ニ合
  ハセル、考デアル解散ト云フコトハ今豫想シテ居
  ナイ、故ニ之ニ對シテ何等ノ考慮ヲシテハ居ラナ
  イガ、左樣ナ場合ニハ期日ノ決メ方ニ依ツテモ調
  和サレルコトデアルカラ、此場合ニモ必ズ間ニ合
  ハセル、斯ウ云フ政府ノ答辯デアリマシタ、井上
  君ヨリシテ、今回ノ如ク一時ニ多數ノ選擧人ガ離
  散シタ場合ニ、政府ハドウ云フ方針ニ依ツテ調
  査シテ其名簿ヲ調製スルカ、之ニ對シマシテハ
  政府ハ先ヅ以テ申告ヲセシムル方針デアル併
  ナガラ單リ申告ノミニ依ラズシテ、多數一時ニ離
  散シタ選擧人ノ如キハ元ノ住所ヲ捨テザルモノ
  ト推定シテ名簿ヲ調製スル、更ニ南君ヨリノ質問
  ニハ東京橫濱ノ如キ多數ノ人口ガ一時ニ減ツタ
  所デハ或ハ選擧人ハ其申告ヲ煩スストシテ、自ラ
  之ヲ放棄スル者ガアリハシナイカ、左樣ナ場合ニ
  ハ議員ノ定數ニ變化ハ來サナイカ、斯ウ云フ御尋
  ガアリマシタガ、政府ハ斯ル震災直後ノ一時ノ現
  象ニ依ツテ人口ノ減ジタモノハ減ジタルガ爲ニ
  別表ノ改正ト云フコトハ出來難イ、仍テ此場合モ
  矢張現行ノ別表ニ依ツテ執行スル意思デアル斯
  樣ナ答ガアリマシテ、全會一致ヲ以テ承諾ヲ與フ
  ルコトニ決定致シマシタ、他ノ一件、震災ニ因リ
  租稅ヲ減免セラレタル者ノ法令上ノ納稅資格要件
  ニ關スル件ニ對シマシテハ大正十二年勅令四百
  十號ニ依ツテ震災地ノ租稅ヲ減免セラレタル當然
  ノ歸結ト致シマシテ、是亦委員會ハ全會一致ヲ以
  テ可決致シマシタコトヲ報告致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=94

  ---

• 095・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　右兩案ニ對シテハ何等ノ通
  告モアリマセヌ、仍テ直ニ採決ヲ致シマス採決
  ハ各別ニ致シマス先ヅ震災ニ因リ租稅ヲ減免セ
  ラレタル者ノ法令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律
  案ノ第二讀會ヲ開クヤ、否ヤヲ御諮リ致シマス、
  第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=95

  ---

• 096・粕谷義三

  ○議戶(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、仍
  テ第一一讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=96

  ---

• 097・高見之通

  ○高見之通君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三
  讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定セラ
  レンコトヲ望ミマス
  賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=97

  ---

• 098・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=98

  ---

• 099・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認ヌマス、直
  ニ、第一一讀會ヲ開キマス
  震災ニ因リ租稅ヲ減免セラレタル者ノ法
  令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案
  第二讀會確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=99

  ---

• 100・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ノ如ク三讀會
  ヲ省略シテ委員長ノ報告通リ可決確定サレマシ
  タ、次ニ大正十二年勅令第四百二十三號、承諾ヲ
  求ムル件、本案ニ對シテ承諾ヲ與フルコトニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=100

  ---

• 101・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍
  テ承諾ヲ與フルニ決シマシタ、次ハ東京帝國大學
  臨時政府支出金繰入ニ關スル法律案ノ第一讀會ノ
  續ヲ開キマス委員長山田信藏君
  東京帝國大學臨時政府支出金繰入ニ關ス
  ル法律案
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一東京帝國大學臨時政府支出金繰入ニ關スル法
  律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段
  及報告候也
  大正十二年十二月十九日
  東京帝國大學臨時政府支出金繰入
  ニ關スル法律案委員長
  小山田信藏
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔小由田信藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=101

  ---

• 102・小山田信藏

  ○小山田信藏君　只今上程セラレマシタ東京帝國
  大學臨時政府支出金繰入ニ關スル法律案ノ委員會
  ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス本案ノ內容
  ハ極メテ簡單デアリマシテ、過般ノ大震災ニ因リ
  マシテ帝國大學ノ各科ノ建築物ノ一部及機械等カ
  破壞又ハ消滅致シタ爲ニ、緊急已ムヲ得ザル分ニ
  向ツテ一般會計ヨリ百七十四万圓ヲ特別會計へ繰
  入レタイト云フ案デアリマス委員會ニ於キマシ
  テハ多少質問應答ガァリマシタガ滿場一致ヲ以
  テ之ヲ可決シマシタ、此段御報告申上ゲマス印
  手

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=102

  ---

• 103・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　本案ノ二讀會ヲ開クニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=103

  ---

• 104・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍
  テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=104

  ---

• 105・高見之通

  ○高見之通君　直ニ第一一讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
  省略シテ委員長ノ報告通リ可決確定セラレムコト
  ヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=105

  ---

• 106・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異一議ア
  リマセヌカ
  〔「異議ナシ「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=106

  ---

• 107・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍
  テ動議ノ如ク決シマシタ、直ニ第二讀會ヲ開キマ
  ス
  東京帝國大學臨時政府支出金繰入ニ關ス
  ル法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=107

  ---

• 108・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ノ如ク、第三
  讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ可決確定サレマ
  シタ、次ニ大正十一一年勅令第四百十號承諾ヲ求ム
  ル件、大正十二年勅令第四百十一號承諾ヲ求ムル
  件、右二案ヲ一括シテ議題ト爲シ委員長ノ報告ヲ
  求メマス、委員長中西六三郞君
  大正十二年勅令第四百十號(承諾ヲ求ム
  ル件)(租稅減免ノ件)(委員長報告)
  報告書
  一大正十二年勅令第四百十號(承諾ヲ求ムル件)
  右ハ木院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此
  段及報告候也
  大正十二年十二月十九日
  委員長中西六三郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  大正十二年勅令第四百十一號(承諾ヲ求ムル
  件)(輸入稅減免ノ件)(委員報長告)
  報告書
  一大正十二年勅令第四百十一號(承諾ヲ求
  ムル件)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段
  及〓候也
  大正十二年十二月十九日
  委員長中西六三郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔中西六三郞登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=108

  ---

• 109・中西六三郎

  ○中西六三郞君　兩件ノ委員會ニ於ケル經過結果
  ヲ御報告申シマス、勅令第四百十號ニ就キマシテ
  ハ運用上ニ對シテ仔細ノ質問ガ行ハレマシタガ、
  案ノ承諾ヲ否定スベキ何等ノ意見ナク、全會一致
  ヲ以テ承諾ヲ與フルコトニ決シマシタ、勅令第四
  百十一號、此方ノ審查ニ就キマシテハ洵ニ重要
  ナ事項ニ關シテ質問審查ガ行ハレマシタカラ、其
  〓略ヲ御報告申上ゲマス、震災當時ニ於テ、應急
  ノ措置トシテ此勅令デハナク、米穀法ノ運用ニ於
  テ米ノ關係ヲ撤廢シ、又此勅令ニ於テ食糧其他建
  築土木等ノ必要ナル品ニ就テノ關稅ノ減免ヲ圖ラ
  レマシタコトハ其政策トシテ敢テ不當ナルヲ認
  メナイノデアリマス然レドモ其後ノ經過ヲ見ル
  二、四百十一號ニ附屬シテ出テ居リマスル勅令第
  四百十七號之ニ數多ノ品目ガ列記サレテ居リマ
  スルケレドモ、其中ニ於テ、就中食糧又其他ノ品
  物ニ付テ、最早今日ハ斯ノ如キ特別ナル政策ヲ維
  持スルノ必要アリト認メ難キモノガ相當ニアルト
  信ズルノデアル、殊ニ此勅令ノ作用デハアリマセ
  又は、同ジ政策ニ於テ米ノ關稅ノ撤廢サレテ居ル
  コトモ、震災善後ノ目的ニ於テハ今日ハ其必要ヲ
  多ク認メナイノデアリマス、又最モ此關稅撤廢ノ
  效用ノ無カツタト云フコトノ明カデアルモノハ
  卽チ米及ビ大麥、小麥、大豆是等ノ農產品ノ外ハ
  乳製品卽「コンデンスドミルク」或ハ「バター」此
  種ノ乳製品ニ付テ、最モ明白ニ其不必要ヲ認ムル
  ノデアリマス現ニ乳製品ノ如キハ此震災ノ後亞
  米利加ヨリ見舞品トシテ二万五千箱カラノ物ガ到
  來ヲシテ居ルニ拘ラズ、今日尙ホ其十分ノ八ハマ
  ダ配給セズニ其儘ニ停滯ヲシテ居ルト云フ有樣デ
  アル是ハ此配給ニ從フ人ノ不勉强ト云フ方面モ
  アルカモ知レナイ、併シ若シ是等ノ品物ガ關稅ノ
  撤廢マデモシテ急ニ應ジナケレバナラナイト云フ
  程ノ必要ナル狀況ニアレバ如何ニ其當該ノ人ガ
  怠慢ナレバトテ今日マデ其八割ヲ停滯サスト云
  フコトノアル譯ガナイ、斯ノ如キハ實際ニ餘リニ
  其必要ヲ認メナイト云フコトヲ明白ニ物語ツテ居
  ルノデアリマス、米ニ付キマシテハ質問應答ノ際
  二、政府ノ說明サレタル所ニ依ルト今年ノ米作ノ
  實收未タ確定シテ居ラヌ、又或ハ本年ハ五百万石
  許リモ其必要ナル需要ニ不足スル虞ガアル、若シ
  果シテ左樣ナル狀況デアルトスレバ、原內閣ノ時
  ニ於テ四百万石ノ不足ヲ補フベク關稅ヲ撤廢シタ
  先例モアル必要ナル狀況ニ到來スルカモ知レナ
  イソレ故ニ明年一月此實際收穫ノ尙ホ明白ニナ
  ル機會ヲ待ツテ、關稅ノ處置ヲ講ジタイト云フ意
  兒デアリマス、委員會ニ於テハ純眞ナル此米穀法
  ノ運用ニ於テ、左樣ナ關係カラ政府ノ考慮スルト
  云フコトヲ一〓ニ否定ハシナイ、併ナガラ今現ニ
  關稅テ撤廢サレテ居ルコトハ、卽チ震災ノ當時ニ
  於テ食糧品ノ供給ノ潤澤ナル、而モ迅速ナル需要
  ヲ充スト云フ爲デアツタデアラウガ、其目的カラ
  云ヘバ爾來ノ經過今日ノ狀態ニ於テ必要ヲ認メナ
  イカラ卽チ此勅令ヲ發シタル目的ノ上ニ考ヘテ
  米ハ必要ナシト、斯樣ニ認メルト云フ意見デゴザ
  イマシタ、夫レ是レノ質問審査ノ結果ニ於キマシ
  テ、本案卽チ勅令其モノハ承諾ヲ與ヘル斯樣ニ
  全會一致デ定メマシタガ、同時ニ一ツノ希望ヲ附
  帶的ニ決議致シマシテ、仍テ今其決議ノ主文トナ
  リマシタルモノヲ玆ニ御報告申上ゲマス米穀及
  本令ニ基ク勅令第四百十七號列記ノ品目中食糧品
  其他ニ付震災後ノ經過ニ鑑ミルニ猶ホ關稅滅免ヲ
  持續スル必要ヲ認メ難キモノ尠カラス仍テ政府ハ
  具ニ需給ノ實狀ヲ究メ其必要ノ顯著ナルモノヽ外
  ハ隨時關稅ヲ復舊センコトヲ望ム特ニ米麥大豆及
  「コンデンスドミルク」「バター」等ノ乳製品ニ付
  テハ農業ニ對スル甚大ノ脅威トナリ而モ震災善後
  ノ目的ニ於テ其必要ヲ認ムヘキモノナキヲ以テ政
  府ハ速ニ關稅ヲ復舊センコトヲ望ム」ト云フノデ
  アリマス茲ニ特ニ此決議ノ中ニ農業ニ對シテ
  甚大ナル脅威ヲ感ズルト云フコトヲ言ヒ現ハシ
  テ居リマスルコトハ今玆ニ詳シク私ガ申上ゲ
  ル迄モナク、全國農村一體ニ於テ此關稅撒廢ノ
  爲ニ農業經濟ノ上ニ脅威ヲ感ジタルコトハ極メ
  テ顯著ナル事實デアリマス、又乳製品ニ付テハ
  所謂煉乳製造ガ直ニ大打擊ヲ受ケマシタ、而シ
  テ又此煉乳製造ナルモノガ農家ノ畜產ト密接ノ關
  係ガアリマシテ、農業ノ上ニ各地ニ於テ年來政府
  若クハ地方ガ極力其發達ニ盡力ヲシテ居リマシタ
  ル畜產ノ空氣ニ向ツテ、非常ナル打擊ヲ與ヘルコ
  トニナリマス、此事實ガ極メテ重大ナル影響デア
  ルニ拘ラズ、半面震災善後ノ爲ニハ何等ノ效果ナ
  カツタト云フコトガ明カデアリマスカラ、斯ノ如
  キハ一日モ速ク其害ヲ除キ、一般ノ生產者ノ爲ニ
  政府ノ速ニ最善ノ途ヲ執ラレルコトヲ望ム、斯ウ
  云フ趣旨デアリマス、斯ノ如キ附帶決議ヲ全會一
  致ニ於テ可決ヲ致シマシタ、元來緊急勅令ノ承諾
  デアリマスカラ、卽チ單ニ承諾ヲ決スルノミデ、
  條件ヲ附スル譯ニ參リマセヌカラ、希望トシテ決
  議ヲ致シタノデアリマスガ、委員會ニ於ケル各員
  ノ氣分ハ殆ド條件同樣ノ强キ氣分ヲ以ツテ此希
  望ヲ致スノデアリマス幸ニ本會ニ於カレテモ全
  會一致ヲ以テ之ヲ御可決下サレマシテ、我ガ議院
  全體ノ意思トシテ最モ强キ意味ヲ以テ此希望ガ政
  府ニ反對スルコトヲ私ハ切望スル者デアリマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=109

  ---

• 110・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　兩案ヲ承諾スルヤ否ヤヲ御
  諮リ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=110

  ---

• 111・高見之通

  ○高見之通君　兩案ヲ一括シテ委員長報告通リ承
  諾ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=111

  ---

• 112・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイ
  ト認メマス、仍テ兩案共承諾ヲ與フルコトニ決シ
  マシタ、次ハ日程第七、大正十二年勅令第四百七十
  五號承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト致シマス
  第七大正十二年勅令第四百七十五號(承
  諾ヲ求ムル件)(法人ノ破產宣告ニ關
  スル件(貴族院送付)
  大正十二年勅令第四百七十五號
  朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ
  經テ帝國憲法第八條第一項ニ依リ法人ニ對スル
  破產宣告ニ關スル件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
  御名御里
  攝政名
  大正十二年十一月十日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  內務大臣子爵後藤新平
  文部大臣岡野敬次郞
  軍臣財部彪
  陸海軍
  臣男爵田中義
  商務男爵田健治郞
  法信大大大大大大大大犬養毅
  大鐵司遞農臣臣臣臣臣平沼騏一郞
  道山之內一次
  藏井上準之助
  外務臣男爵伊集院彥吉
  勅令第四百七十五號
  大正十二年九月一日以後ニ於テ法人ノ財產ヲ以
  テ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハサルニ至リタル
  法人ニ對シテハ大正十四年八月三十一日ニ至ル
  迄ノ間破產ノ宣告ヲ爲スコトヲ得ス但シ其ノ法
  人カ支拂ヲ爲スコト能ハサル場合ハ此ノ限ニ在
  ラス
  前項ノ法人ノ理事又ハ之ニ準スヘキ者ハ前項ノ
  期間其ノ法人ニ對シ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ要
  セス
  前二項ノ規定ハ〓算中ノ法人及大正十二年九月
  ン震災ノ影響ニ因ラスシテ債務ヲ完濟スルコト
  能ハサルニ至リタルコト明ナル法人ニ付テハ之
  ヲ適用セス
  附則
  本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=112

  ---

• 113・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　平沼司法大臣
  〔國務大臣平沼騏一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=113

  ---

• 114・平沼騏一郎

  ○國務大臣(平沼騏一郞粘)　只今議題ト相成リマ
  シタ勅令第四百七十五號ハ法人ニ對スル破產宣告
  ニ關スル緊急勅令デゴザリマスル、今次ノ震災ニ
  依リマシテ、經濟界ニ一大變動ヲ生ジマシテ、有
  價證券其他ノ財產ノ價格ハ著シク減少致シタルモ
  ノガアリマスル爲ニ會社或ハ其他ノ法人ニ致シマ
  シテ、自己ノ財產ヲ以テ其債務ヲ完濟スルコト能
  ハザル狀態、換言セバ債務超過ノ狀態ニ陷リマシ
  タルモノハ少ナクゴザイマセヌ、而シテ民法商法
  其他法令ノ規定ニ依リマスレバ法人ハ債務超過
  ニ陷リマシタル時ニハ破產ノ宣告ヲ受クベキモ
  ノデアル又法人ノ理事取締役其他之ニ準スベキ
  者ハ向カラ進ンデ破產ノ申請ヲ爲スノ義務ヲ負ウ
  テ居リマス此義務ニ違背致シマシテ、破產ノ申
  立ヲ致シマセヌ時ニハ罰則ノ適用ヲ受ケンケレ
  バナラナイノデゴザイマス、右ノ次第デゴザイマ
  スルカラシテ、現行法令ノ規定ニ依リマスレバ
  多數ノ法人ハ震災ノ爲ニ俄ニ破產ノ危機ニ瀬シタ
  ルモノト申サナケレバナリマセヌ、此法令ヲ嚴格
  ニ適用致シマシタナラバ法人ノ破產者ハ續出致
  シマシテ、忽チ財界ノ混亂ヲ激成スベキ狀態ニ至
  ツタノデゴザイマス、然ルニ這般ノ債務超過ハ
  震災ノ影響ニ基因セル所ノ一時ノ現象デゴザイマ
  シテ、若シ假スニ相當ノ時日ヲ以テ致シマシタナ
  ラバ、多クハ自カラ回復ノ見込アルモノト認メテ
  宜イノデゴザリマス、ソレデゴザイマスルカラシ
  テ、是等ノ法人ニ對シマシテハ一定ノ期間破產
  ヲ停止スルノ特例ヲ設ケマスルコトガ經濟界ノ
  不定ヲ防止スル爲ニ極メテ必要ナル事デアリマ
  ス、之ニ依リマシテ、此緊急勅令ヲ發布スルニ至
  リマシタノデコザイトス而シテ本令ハ尙ホ將來
  其效力ヲ持續スルノ必而女ガゴザリマスルカラ憲
  法第八條第二項ニ依リマシテ承諾ヲ求ムル次第デ
  ゴザリマス宜シク御審議ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=114

  ---

• 115・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　日程第八右議案ノ審查ヲ
  付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=115

  ---

• 116・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ政府提出大正十二年勅令第
  四百二十四號承諾ヲ求ムル件、卽チ手形割引損失、
  補償ノ件、外一件ノ委員ニ併セテ付託セラレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=116

  ---

• 117・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ナ
  イト認メマス、仍ヲ動議ノ如ク決シマシタ、是一
  テ本日ノ日程ヲ終リマシタ、此場合一言致シタイ
  コトガアリマス去ヌル十五日永井柳太郞君ノ
  國務大臣ノ演說ニ對スル質疑ノ演說中ニ於テ、
  議長ハ穩カナラザル言葉ノアリマシタヤウニ
  聽取リマシタノデ、仍テ其當時議長ハ速記錄ヲ
  取調ベマシタ上、相當ノ取計ヒヲ爲スヘキ旨ヲ宣
  告致シテ置キマシタ、其後速記錄ニ依ツテ調ベテ
  見マスト云フト、永井君ノ御演說中ニハ過去數
  年間ニ亙ツテ我國ニ專制政石ガ行ハレテ居ツタト
  云フヤウナ言葉ガアルノデアリマス、右樣ノ事ガ
  アル筈ハナイノデアリマスカラ、將來斯樣ナ御言
  葉ハ御愼ミアランコトヲ茲ニ希望致スノデアリマ
  ス只今ハ永井君ハ御缺席デアリマスガ此議長
  ノ宣告ニ永井君ニ於テハ速記錄ニ依ツテ御承知ア
  ランコトヲ希ヒマス、尙ホ明日ハ會期ノ最終日デ
  アリマスカラ、先例ニ依リマシテ午前十時ヨリ開
  會致シマス日程ハ追テ八報ヲ以テ御通知ヲ申上
  ゲマス。本日ハ是ニテ散會
  午後七時十六分散會
  衆議院議事速記錄第二號中正誤
  頁段行誤正
  一下二七上程自モ上程ニモ
  衆議院議事速記錄第三號中正誤
  頁段行誤正
  六五中下三四製作專經費
  -租稅歲入
  衆議院議事速記錄第四號中正誤
  頁段行誤正
  八上六居ツタノデス遣リマスカラ
  中留意主意
  四三申出デラレ申サレ
  五脫會退去
  三之ヲ之ト
  二〇段
  九二タ行居手ル
  同同同九同同同八同同同同同八請ノ居處願ニツ置
  八ノ
  同同同上同下中上同同下同
  上奏
  請願上奏
  〇一一一二一二
  五四二一五ナケレバティチ
  請願上奏
  ケレドモ行
  二六此遂條此ハ逐條
  保險會社ノ人ガ保險ノ期限ガ切
  同下一八參リマシテ聞キレ之ヲ繼續シマ
  マストシタニ
  同同二〇デアルト云フニナリマシタ
  九上八迷惑不思議
  同中一九申ス所ノ申スト
  同下二御長舌廣長舌
  〔衆議院議事速記錄第五號百十七頁國務大臣ノ
  演說ニ對スル三輪市太郞君質疑演說ノ參照〕
  大正十一年調査
  農業ト營業トノ負擔比較表
  收益百圓當公課
  種別區分
  國稅地方稅計
  其ノ一三元五¥300二、モ
  農業ノ二ニ、、三二長三五一〇、三七
  其其ノ三三、三五七三二、四七
  其ノ-四
  Mandalians四七三四七九〇〇
  營業其ノ二
  製造.業ZH22NH3)六、八二
  農業者金十圓六十七錢
  收益百圓ニ對スル公課平均業者金八圓錢
  農業負擔額計算ノ基礎(其ノ一)
  反步當基礎公課
  收穫高米收穫差引反地方
  區別又ハ小經費部當地租稅計
  作料石當價格收益地價
  石圓
  (自作二、二八七三一、六三七二、三三二九、二二四三、一一一四、六四一、五五三、二九四、、八四
  田掟地一、〇一八三一、六三三二、一九-13.三〇、五九三四、六四一、五五三、二九國人 €
  平均三六、八五三四、六四一、五五三、二九四人道
  (白昨一、二九三三一、六三四〇、八九一六、五一二四、三八八、八三三元八、三1'm.
  畑掟地三四四三一、六三一〇、八八五四一〇、三四八、八三、三九、八三1N3
  平均一七、三六八、八三、三九、八三1114
  田畑平均二七、一〇二一、七三九七二、〇六三、〇三
  收益百圓當公課二、五七七、六〇一一、一七田
  備考
  收穫高又ハ小作料ハ明治四十四年乃至大正六年
  ノ事實ニ基キ大正七年以降三箇年間全國ニ互リ
  調査シタル田畑地價調査ノ資料ニ依ル
  二、米價ハ深川正米相場ノ大正十一年ニ於ケル平均
  ヨリ一割ヲ控除シタルモノトス
  三、經費ハ自作ニアリテハ前記田畑地價調査ノ際調
  査シタル收穫價格ニ對スル經費ノ割合(〇·四〇
  四)ニ依リ小作ニアリテハ牧穫價格百分ノ五ヲ
  見積リタルモノトス(經費中ニハ公課及自家勞
  銀ヲ含マス)
  四、地價ハ主稅局年報全國一反歩平均ニ依ル
  五、公課ハ左ノ方法ニ依リ計算セリ
  イ地租ハ地價ニ稅率ヲ乘ス
  口、地方稅ハ大正十一年度左記當初豫算ノ課率ヲ
  乘ス
  農業負擔額計算ノ基礎(其ノ二)
  反步當基礎公課
  收穫高米價收穫差引一反地方
  區別又ハ小石價格經費收益步價地租稅計
  作料當地當
  石圓圓
  (自作二、二八七三四、〇七七七、九一三一、四七四六、四四三四、六四一、五五三、二九四八四
  田掟地一、〇一八三四、〇七三四、六八一、十三三二、九五三四、六四コルボストロ四人 G
  平均-三九、六九三四、六四一、micros.國内町
  (自作一、二九三三四、〇七四四、〇五一七、七九二六、二六八人三、三九、八三
  畑堀越三四四三四、〇七一一、七二五八一一、一四八、八三三九全
  二四-一八、七〇八、八三三九全ー
  田畑平均1ー二九、一九二一、七三九七二、〇六三〇〇
  收益百圓當公課三、三三七、〇五一〇、三七
  備考
  前表(其ノ一)ニ於ケル大正十一年米價ヲ最近五年ノ
  米價ニ變更シタル外總テ前表ノ調査方法ニ同シ
  農業負擔額計算ノ基礎(其ノ三)
  反步當基礎公課
  收穫高米價差引反地方
  區別又ハ小一石收穫經費當地地租計
  價格收益價稅
  作料當
  石圓圓
  (白作二、一三二三六、八〇七八、四五三〇、五〇四七、九三三四、六四二五三六九四人街
  ヘ地地九二七三六、八〇三四、一一一六三二、九五コ四、六四一五三、二九同人員
  一平均四〇、四四三四、六四一、五五三、二八四人街
  「白酢一、〇一七三六、八〇三七、四二一五、五四二一、八八八、八三全一三
  畑人掟地、三八六三六、八〇一三、四六四八一二、九八八、八三三-ノ△一三
  (平均-一七、四三八、八三三九八二三
  田畑平均01ー二八、九三二一、七三、九七二、〇六三、〇三
  收益百圓當公課三、三五七、一二一〇、四七
  備考
  本表ハ所得稅調査上全國各稅務署ニ於テ調査シタ
  ル所得標準率ノ資料ニ依リ最近三年間卽チ大正八
  年乃至大正十年ニ於ケル三箇年平均ヲ調査シタル
  モノトス但シ地價及公課ノ調査方法ハ前二表ニ同シ
  (經費中ニハ公課及自家勞銀ヲ含マス)
  營業稅負擔額計算ノ基礎(其一)(物品販賣業)
  賣上百收益公課
  課稅標準圓當收金額計
  益步合營業稅地方稅
  圓圓圓圓
  甲四、五〇〇一0交三八〇1
  賣上卸賣乙六(0)四五〇二〇四六七二1
  金額小賣甲一、二〇〇並べつ六〇二〇〇1
  乙三、六〇〇一二、〇〇四三三、八〇1
  建物價格三11二、九七1
  賃貸
  從業者ニ11四、〇〇
  計1合言三九、、四八三七、三四六、八二
  收益百圓當公課四.四.2四四七たいこ
  備考
  本表卸小賣中用トアルハ營業稅法第十二條ノ規定ニ
  依リ輕キ稅率ヲ適用スルモノ乙トアルハ重キ稅率
  ヲ適用スルモノヲ云フ
  一、課稅標準額ハ全國物品販賣業者(個人)ノ平均額
  三代ノ
  二、賣上百圓當收入步合ハ所得調査ニ用ヒタル標準
  率ノ平均額(但シ公課ヲ控除セサルモノ)ニ依ル
  三、公課ハ左ノ方法ニ依リ計算セリ
  イ、營業稅ハ課稅標準額ニ稅率ヲ乘ス
  口、地方稅ハ大正十一年度左記當初豫算ノ課率ヲ
  乘ス
  府縣稅本稅一圓當〇、四二四
  市町村稅一圓當〇、五二二
  計〇、九四六
  營業者負擔額計算ノ基礎(其二)(製造業)
  收入百收益公課
  課稅標準圓當收金額營
  益步合業稅地方稅計
  圓圓圓
  收入金額(〓三、六〇〇)五五〇一八四八11
  資本金額一一、二〇〇|三三、六〇11
  建物賃貸價格二元-1二二、八九!|
  從業者二.人-|m3031
  從業者職工勞働者九四五〇
  圖
  計-一、八四八六四、九九六一、四八一二六四七
  收益百圓當公課三、五一三、三一六、八三
  備考
  本表ハ前表ノ例ニヨリ製造業(個人)ノ分ヲ調査シタ
  ルモノトス
  -稻作一反步收支計算(但自作)大正九年度
  收入之部支出之部
  品目數量替代金品目數量替一金額
  六俵二俵圓二 .圓
  上米斗一升十二七八、五一種籾三升付十六〇、四八〇
  七合圓錢
  次米九升一升二二、二三肥料
  七合十三錢一五、二二五
  小米五升ニティ六五牛耕
  三錢賃三、三〇〇
  男七人九圓
  秕一斗一六二美人夫一〇〇一三、五一〇
  八升付二錢賃人女分九十五分四厘二·〇一七、八八〇
  砂小五合升0.8農具其三、〇〇〇
  米八錢他損料
  藁五百十把把五、一〇俵裝六俵1200
  錢材料分
  籾殼三石一一七一、四五公課一〇、八〇〇
  付十五錢
  圓圓
  計八、(50)計六五、四五五
  差引純利益二一、八八五
  純小作一反歩收支計算大正九年度
  收入之部支出之部
  品目數量替え代金品目數量賛金額
  六二斗俵升
  上米俵升十二七八、五一〇種籾三升十六、四八〇
  七合圓錢
  次米九升テニ三(32)肥料一五、二二五
  七合十三錢
  小米五升〓六五〇牛耕
  十三錢賃二、三〇〇
  男七人九
  秕一斗升人夫分五厘一、七〇〇三、五一〇
  八升二錢3층 ~賃女十四人一、二〇〇一七、八八〇
  九分
  砂小五合升〇四〇農具其三、〇〇〇
  米八錢他損料
  藁五百把五二〇俵裝L(280
  十把錢材料
  籾殼三石一石00四五〇掟米一反歩俵三六、〇〇〇
  十五錢石二升十二圓
  計八七、三四〇計九〇、六五五
  差引缺損金額三圓三十一錢五厘
  一稻作一反步收支計算(但自作)大正十年度
  收入之部支出之部
  品目數量替え代金品目數量替人金額
  上米三俵二斗十六五八、〇〇〇種籾三升テニ0.六三〇
  弄圓士此
  次米年六升一升七、九八〇肥料一〇、〇一五
  六合三十錢
  小米四升升〇、六七〇牛耕麥田一三、〇〇〇
  二合十六錢賃回鋤キ
  男八人
  二分
  秕三斗〇、九四〇人夫二十人一、七〇〇一三、九四〇
  五升賃七分女十二一五、〇〇〇
  人五分
  一、二〇〇
  砂小七合升〇、〇七〇農具其三、〇〇〇
  米十錢他損料
  上藁四百四一也四、NO1俵裝四俵一、三〇〇
  十三把金戔材料分
  ウン四十一把二〇公課
  カ藁把三厘〇、一二、一五〇
  籾殼二石〇、四二〇
  計七二、〇〇〇計五九、〇七五
  圓
  差引純利益ニー、五五五
  稻作一反歩收支計算但小作)大正十年度
  收入之部支出之部
  品目數量賛一代金品目數量梵一金額
  上米三俵年十六五八、〇〇〇種籾三升テハニ
  弄圓十一錢〇、六三〇
  次米六六〓七、九八〇肥料一〇、〇五五
  二斗六合三十錢
  小米四升〓〇、六七〇牛耕
  二合十六錢費三、〇〇〇
  男八人二分
  三斗人夫二十人一、七〇〇一三、九四〇
  秕五升〇、九四〇賃七分女十二三css
  人五分
  一、090
  砂小七合一升〇、〇七〇農具其三、〇〇〇
  米十錢他損料
  上藁四月間一地四BAO俵裝四俵
  十二把錢材料分一、三〇〇
  ウン四十把O(alio掟米俵三斗二夫
  カ藁把三厘升五合圓二九、〇〇〇
  籾殼二石〇、四二〇
  計七二、六三〇計七五、九二五
  差引缺損金額三圓二十九錢五厘
  備考
  本表支出ノ部ノ掟米ニ於テ大正九年度ニ比シ著シキ
  減額ハ凶作ニヨルモノトス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004713242X00619231219&spkNum=117

4. 会議録のPDFを表示

この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。