第51回帝国議会　衆議院　製鉄業奨励法改正法律案（政府提出）外二件委員会　第1号　大正15年3月19日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　　委員會成立
  本委員は大正十五年三月十八日（木曜日）議長の指名を以て左の通り選定せられたり
  　　　加藤政之助君　　飯塚春太郎君
  　　　橋本喜造君　　　戸澤民十郎君
  　　　永田善三郎君　　奥村千藏君
  　　　大里廣次郎君　　森恪君
  　　　山本条太郎君　　小野義一君
  　　　廣瀬爲久君　　　中村巍君
  　　　坂梨哲君　　　　櫻内幸雄君
  　　　牧山耕藏君　　　金光庸夫君
  　　　岩切重雄君　　　佐々木平次郎君
  三月十九日（金曜日）午前十時三十九分委員長理事互選の爲委員參集す其の氏名左の如し
  　　　加藤政之助君　　飯塚春太郎君
  　　　橋本喜造君　　　戸澤民十郎君
  　　　永田善三郎君　　奥村千藏君
  　　　大里廣次郎君　　森恪君
  　　　山本条太郎君　　中村巍君
  　　　坂梨哲君　　　　櫻内幸雄君
  　　　牧山耕藏君　　　金光庸夫君
  　　　岩切重雄君　　　佐々木平次郎君
  年長者加藤政之助君投票管理者と爲る
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　　　會議
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　商工大臣　片岡直温君
  　出席政府委員左の如し
  　　朝鮮總督府事務官　山本犀藏君
  　　　　　大藏參與官　三木武吉君
  　　　　　商工參與官　野村嘉六君
  　　商工書記官　侯爵　木戸幸一君
  　　　　　　商工技師　野田鶴雄君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　　商工省鑛山局長　三井米松君
  　　　　　製鐵所長官　中井勵作君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　製鐵業奬勵法改正法律案（政府提出）
  　製鐵所特別會計法案（政府提出）
  　大正九年法律第五十三號中改正法律案（關税法等の朝鮮に於ける特例に關する件）（政府提出）

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• 001・加藤政之助

  ○加藤投票管理者　只今ヨリ製鐵業奬
  勵法改正法律案外二件ノ委員會ヲ開ク
  爲ニ、役員選擧ニ移ラウト思フノデス
  ガ、私ガ年長ノ故ヲ以テ投票管理ノ任
  ニ當リマス、選擧ノ方法ニ付テ御發議
  ヲ願ヒマス

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• 002・森恪

  ○森委員　此際加藤政之助君ニ委員長
  ニナッテ戴キマシテ、他ノ役員ハ委員長
  御指名ニシテ戴キタイ
  〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者ア
  〓

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• 003・加藤政之助

  ○加藤委員長　ソレデハ皆樣ノ御同意
  ニ依リマシテ、森君ノ御發議ノ如ク私
  ガ委員長ノ席ヲ汚シマス、就キマシテ
  ハ只今ノ御發議ノ通リ、理事三名ノ指
  名ヲ致シマス、森恪君、岩切重雄君、奧
  村千藏君、此三名ニ理事ヲ御願シタイ
  ト思ヒマス、ソレカラ此案ハ成ベク至
  急ニ審査シテ吳レト云フ政府ノ要求デ
  アリマスカラ、是ヨリ會議ヲ繼續シタ
  イト思ヒマス、御異存アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 004・加藤政之助

  ○加藤委員長　ソレデハ會議ヲ繼續致
  シマス

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• 005・野村嘉六

  ○野村政府委員　大體ニ於キマシテ製
  鐵業奬勵法案竝ニ製鐵所特別會計法案
  ノ理由ヲ述ベマシテ、尙ホ大臣ニ御質
  疑ノ點ハ、今大臣ガ急用デ他ニ居リマ
  スカラ、其點ハ大臣ノ出席アリ次第ニ
  御質問ヲ願フコトニ致シマシテ、內容
  ニ亙テ各條、各事項ノ御質問ハ、政府
  委員ガ居リマスカラ引續キ御願シタ
  イ、議事ノ進行上其順序ニ御運ビヲ願
  ヒタイノデゴザイマス、第一ニ製鐵業
  奬勵法改正ノ理由ハ、本邦製鐵業ハ歐
  洲大戰ニ際シマシテ頓ニ勃興シ、事業
  ノ新設、擴張セラルルモノガ相踵ギマ
  シテ、其生產額ニ於テモ、大戰前ニ較ベ
  マスルト三倍以上ニ達シテ居リマス、
  併ナガラ大戰ガ終了致シマシテカラ、
  極ク安イ外國品ノ再ビ輸入セラルル
  ヤ、本邦製鐵業ハ甚シキ打擊ヲ受ケマ
  シテ、其將來ノ發展ニ付キ非常ナル不
  安ヲ感ズルヤウニ至リマシタノデアリ
  マス、政府ハ是ガ對策ト致シマシテ關
  稅ノ引上、其他ノ方策ヲ講ジツツアリ
  マスガ、尙ホ諸般ノ狀況ヲ調査致シマ
  シタル結果、本邦製鐵業ヲ最モ經濟的
  ナル基礎ノ上ニ立タシメテ、以テ將來
  ノ發展ヲ期スル爲メ、製鐵業奬勵法ノ
  改正ヲ爲スヲ適當ト認ムルニ至ッタ次
  第デアリマス、今改正ノ主ナル點ニ付
  キマシテ其大體ヲ說明致シマスレバ、
  第一ニハ現行法ニ於キマシテハ、銑鐵
  ノ製造又ハ鋼鐵ノ製造ノ何レカ一方ノ
  ミヲ行フ製鐵業ニ對シマシテモ、奬勵
  法ヲ適用シツツアッタノデアリマス、併
  シ斯ノ如キ一方的設備ニ依ル作業ハ、
  熱經濟ノ點ニ於キマシテ非常ナル不利
  益ガアルノミナラズ、勞賃、雜費等ニ於
  キマシテモ、比較的多額ヲ要シマシテ、
  安イ外國品ニ對抗スルコトハ、洵ニ至
  難デアルノデアリマス、就キマシテハ
  今後ハ、銑鐵ノ製造ヨリ鋼材ノ製造ニ至
  ルマデ、一貫的作業ヲ以テ本邦製鐵業
  ノ基礎トスル必要ヲ感ジタノデアリマ
  ス、此ニ於キマシテ本改正法ニ於テハ、
  一貫設備ヲ奬勵スルコトトシタ次第デ
  アリマス、尙ホ是ガ保護ノ手段トシテ
  モ、從來ノ土地ノ收用及諸稅ノ免除ノ
  外ニ、今囘新ニ相當ノ奬勵金ヲ交付ス
  ルコトト致シタノデアリマス、第二ニ
  一、現行法ニ於テハ奬勵法ノ適用ヲ受
  クル能力ノ單位ハ、土地收用法ノ適用
  及輸入稅ノ免除ニ付キマシテハ一年
  三萬五千瓲以上デアルガ、營業稅及所
  得稅ノ免除ニ付テハ、原則トシテ一年
  五千二百五十瓲デアルノデアリマスケ
  レドモ、製鐵業ノ如ク大規模ノ經營ヲ
  有利トスル事業ニ付テハ、普通ノ場合
  ニ於テハ、少クトモ一年三萬五千瓲以
  上ノ能力アル設備ヲ以テスルコトヲ必
  要ト致シマシテ、之ヲ實際ノ事情ニ徵
  スルモ、特殊ノ場合ノ外ハ、現ニ作業ヲ
  營ミツツアルモノノ殆ド總テガ一年三
  萬五千瓲以上ノ能力ヲ以テ營ミツツア
  ルヲ以テ、營業稅及所得稅ノ免除ニ付
  テモ、土地ノ收用又ハ輸入稅ノ場合ト
  同樣、一年三萬五千瓲ノ設備ヲ有スル
  モノニ對シ奬勵ヲ適用スルコトニ改メ
  タ次第デアリマス、第三ニハ又從來事
  業濫設ノ弊ガナカッタデモナカッタノデ
  アリマス、之ヲ防ギ、斯業ノ健全ナル發
  達ヲ期スル爲メ、改正法ニ於テハ奬勵
  法ノ適用ヲ受ケントスル者ハ、原則ト
  シテ主管大臣ノ認可ヲ受ケルコトニ致
  シタノデアリマス、第四ニハ現行法ニ
  於テハ營業稅、所得稅及輸入稅等ノ免
  除期間ハ十年ナルモ、改正法ニ於テハ
  能力ノ單位ヲ增加シ、且ツ一貫設備ヲ
  有スルコトヲ原則ト致シマシタ等ノ點
  ヲ考慮致シマシテ、此免除期間ヲ五年
  延バシマシテ、十五箇年ト致シタ次第
  デアリマス、第五ニハ現行法ノ適用ヲ
  受クル者ニ對シテハ、現行法ニ依ル保
  護ヲ繼續スルコトハ勿論デアリマス
  ガ、輸入稅ノ免除ハ明年八月ヲ以テ滿
  了致シマス、又營業稅及所得稅ノ免除
  ニ付キマシテモ、大部分ノ製鐵所ニ在
  リマシテハ、二三年內ニ滿了セント致
  シテ居リマス、之ニ對シマシテ何等ノ
  措置ヲ講ジマセヌ時ニ於テハ、現ニ非
  常ナル苦境ヲ忍ンデ作業ヲ繼續シツツ
  アル製鐵事業者ガ、關稅ノ改正其他ノ
  方策ト相俟テ、正ニ事業ノ基礎ヲ確立
  セントシツツアル時ニ際シマシテ、到
  底堪へ得ザル所デアリマス、ソコデ是
  等ノ點ヲ考慮致シマシテ、免除期間ヲ
  尙ホ五箇年延長致シタ次第デアリマ
  ス、以上ハ改正案ノ重要ナ點デアリマ
  スガ、尙ホ詳細ニ亙リマシテハ、其都度
  說明致シマスカラ、ドウカ速ニ御協賛
  アランコトヲ希望致ス次第デアリマ
  ス、製鐵所特別會計法制定ノ理由ハ、是
  ハ製鐵所ノ作業ヲ最モ適切ニ經營セン
  ニハ常ニ斯業ノ狀勢ニ順應致シマシ
  テ、ソレニ應ジテ是ガ擴張改良ヲ行ハ
  ナケレバナリマセヌ、然ルニ現在ノ如
  キ作業會計ノ組織ニ於キマシテハ、其
  資本ノ擴張改良ハ一般會計ノ負擔ノ下
  ニ行ハレマスカラシテ、一般財政計畫
  ノ影響ヲ蒙ル爲ニ、是ガ施設ハ斯業ノ
  發達ニ順應セザルノ憾ヲ生ズルコトガ
  無イトハ言ヘナイノデアリマス、此ニ
  於キマシテ其資本ノ增加ハ製鐵所特別
  會計自身ノ負擔ニ於テ行ハシメマシ
  テ、原則トシテ其益金ヲ以テ擴張改良
  ノ資源ニ充當シマシテ、必要已ムヲ得
  ザル場合ニ於テ其元利ノ償還ヲ製鐵所
  自ラノ負擔ニ於テスル公債、又ハ借入
  金ニ依ラセタ時ニハ、適切機宜ノ施設
  ヲ行フニ利便ガ少クナイト信ジマス、
  是ガ目的ヲ達成スル爲ニハ、製鐵所ノ
  經理ヲ獨立會計組織ニ致スヲ以テ最モ
  妥當ダト認メマス、加之、製鐵所ノ事業
  ハ他ノ作業會計ニ於ケル作業ト其趣ヲ
  異ニシマシテ、法律上民間ノ當業者ト
  全ク同一ノ地位ニ立チマシテ、市場ニ
  其製品ヲ供給スルノ地位ニ立ツモノデ
  アリマスカラ、其會計方式ノ如キモ民
  間當業者ニ近カラシメ、隨テ固定資產
  ニ付テハ明確ニ減價償却ヲ行ヒマシ
  テ、過去及將來ノ借入資產ニ對シマシ
  テハ是ガ元利ノ償還ヲ負擔セシムル
  等ノ方法ニ依テ是ガ損益計算ヲ的確明
  瞭ナラシメマシテ、從業者ヲシテ其精
  勵ノ效果ヲ自覺セシムルノ結果ハ直
  ニ其緊張努力ヲ促シ、隨テ其經理狀態
  ヲ良好ナラシメ、由テ生ジタル益金ハ
  以テ更ニ有利ナル設備ノ擴張改良ヲ遂
  行スルコトヲ得セシムベク、又之ニ依
  テ製鐵所ノ損益計算ヲ明ニ致シマシ
  テ、其事業成績ヲ彼此比較セントスル
  民間ノ同業者ノ要望ニ應ズルコトガ出
  來ルダラウト思ヒマス、然レドモ一擧
  ニ民間同業者ト全然同一ノ方式ニ依ル
  純然タル獨立會計ノ制ヲ設クルハ、多
  少ノ支障アリト考ヘラレマス、仍テ成
  ベク其理想ニ近キ制度ト爲ス爲ニ、茲
  ニ大正十六年度ヨリ實行スル意味ニ於
  キマシテ、本案ヲ提出シタ次第デアリ
  マス

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• 006・加藤政之助

  ○加藤委員長　ソレデハ是カラ通告順
  ニ依テ質問ヲ許シマスガ、森君何カア
  リマスカ

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• 007・森恪

  ○森委員　會期ノ切迫致シテ居リマス
  ル折柄、今日議題トナッテ居リマスル案
  ニ付テ吾〓ノ滿足スル程度ノ質問ヲヤ
  ツタナラバ、餘程時間ヲ要スルト思フ
  ノデアリマス、殊ニ本會議デ吾ミガ質
  問致シマシタニ對シテ、主管國務大臣
  ノ御答辯ハ、非常ニ形式ハ御深切ナル
  御答辯デアッタノデアリマスガ、吾ミヲ
  以テ致シマスルト、ドウモ要領ヲ得ナ
  1、更ニ滿足スルヤウニ質問シテ行キ
  マシタナラバ、到底短時間デハ出來ナ
  イト思ヒマス、併ナガラ案自體ハ吾〓
  モ極メテ重大ナル案ダト思フノデアリ
  マス、ソレデ場合ニ依リマシテハ次善、
  三善、四善ノ案ニナルカモ知レマセヌ
  ガ、之ヲ成立サスニハ或ハ巳ムヲ得ナ
  イカト考ヘテ居ルノデアリマス、而シ
  テ凡ソドノ位ノ時間デ之ヲ議了スベキ
  カヲ豫メ御方針ヲ承ッテ置キマシテ、其
  中デ吾〓ハ緩急輕重ヲ圖ッテ質問致シ
  タイト思フノデアリマス、吾ミガ滿足
  スルヤウナ質問ヲスル時間ガアレバ、
  是ハ非常ニ吾ミノ幸福トスル所デアリ
  マスケレドモ、凡ソ委員長ニ於カレテ
  ノ見込ヲ、參考ノ爲ニ御示シヲ願ヒタ
  イト思ヒマス

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• 008・野村嘉六

  ○野村政府委員　今森君ノ御說ノ通リ
  ニ、此問題ハ重要デアリマシテ、十分ニ
  御審議ヲ爲サルニハ相當ノ日時ガ必要
  デアラウト思ヒマス、併シ一面森君ノ
  御話ノ通リニ此案ハ他ノ事ト相關聯シ
  テ居ル案デアリマシテ、卽チ關稅法律
  案ト關係ヲ持ッテ居ルノデアリマシテ、
  關稅法律案ハ既ニ衆議院ヲ通過シテ貴
  族院ニ送ラレテ今審議中デアリマス、
  日ナラズ決了スルコトデアラウト思ヒ
  マス、隨ヒマシテ此案ハソレ等ノ關係
  上、最モ急速ニ御審議ヲ願ヒタイノデ
  アリマス、就キマシテ政府ト致シマシ
  テハ、出來得ル限リ御精勵ヲ願ッテ、實
  ハ本日役員ノ御選擧ニ引續イテ御審議
  ヲ願ッテ、成ベクナラバドウカ時間ガ掛
  リマシテモ、今日午後中ニ此委員會ノ
  御決了ヲ願ヒタイ考デアリマス、若シ
  ソレガドウシテモ出來ナケレバ、明日
  ハ本會議デアリマスカラ、明日ノ午前
  カラ午後ニ引續イテ、本會議ノ議事中
  ニ此質問ヲ終了シテ、緊急上程ヲシテ
  明日中ニ本會議ヲ通過サシテ戴キタ
  イ、是ハ政府ノ希望デアリマス、併ナガ
  ラ私ガ斯ク申シタ所デ、決シテ御審議
  ノ御邪魔ヲスルト云フ意味デナイノデ
  アリマシテ、唯他ノ案ト違ヒマシテ、外
  ニ關係ヲ有シテ審議ヲ急グ必要ガアリ
  マスカラシテ、政府ノ希望ヲ玆ニ申上
  ゲテ置キマス

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• 009・加藤政之助

  ○加藤委員長　政府當局者ノ希望ガ右
  ノ通リデアリマスカラ、成ベク一ツ審
  議ノ早ク進ムヤウニ、諸君ニ御考ヲ願
  ヒタイト存ジマス、是ヨリ通〓順ニ依
  テ質問ヲ御許シ致シマス、永田君

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• 010・永田善三郎

  ○永田委員　私ハ商工大臣ノ御出席ノ
  上デ質問ヲ一ツシテ見テ見タイト思ヒ
  マス、他ノ方デモ宜シウゴザイマスガ、
  御話下サルコトガ或ハ出來マイト思ヒ
  マスカラ·····

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• 011・加藤政之助

  ○加藤委員長　ソレデハ山本君

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• 012・山本条太郎

  ○山本委員　私ノ御尋スルコトモ矢張
  大臣ノ御出席ヲ求メタイト思ヒマス
  ガ、兎ニ角參與官ノ御承知ノ事デアル
  ナラバ、伺ッテモ宜シウゴザイマス、又
  私ノ御尋スル中デ、大臣デナケレバ御
  答辯ノ出來ヌ事モアリマセウシ、或ハ
  當局ノ方デ御話ノ出來ルコトモアラウ
  ト思ヒマス、私ノ御尋シタイノハ、第一
  此案ニ依リマスト、ドウ云ウモノニ對
  シテドレダケノ保護ヲ與ヘヤウト云ウ
  コトガ此案ニハ明記シテ居ナイノデア
  リマス、此案ハ色〓商工大臣ノ御辯明
  モアリマシタケレドモ、事實ニ於テハ
  是ハ關稅ニ代ハル性質ノモノデアリマ
  ス、關稅ノ方ニ於テハ明確ニ百斤ニ付
  キ或ル種類ノモノハ何程デアル、若ク
  ハ從價ニ對シテ幾ラト云フコトガ明確
  ニ示サレテ居リマスカラ、吾々ハ之ヲ
  審議スルニ當ッテ、是ダケノ程度デアル
  ナラバ此仕事ガ完全ニ發達スルト云フ
  見込モ立チ、意見モ附スルコトガ出來
  ルノデアリマス、然ルニ此奬勵法ノ骨
  子ト認ムベキ奬勵保護ノ率ガ、茲ニハ
  明記サレテ居ナイノデアリマス、關稅
  ノ委員會デモ申述ベタ通リ、鐵ノ世界
  ニ於ケル大體ノ現狀ハ、實ニ革命的變
  化-大陸ノ鐵ガ英米ノ鐵ニ對シテ優
  勢ノ位置ニナリ、更ニ印度ノ製鐵ノ如
  キハ此數年間ニ現ハレタ新事實ナノデ
  アル、更ニ極ク最近ニ於ケル實例ハ、昨
  日本會議ニ於テ森君ガ述ベラレタ通
  リ、亞米利加カラ「レール」ヲ八十五圓
  デ賣ッテ來タノハ、蓋シ鐵ノ歷史始ッテ
  以來ノ新安値ト認メテ差支ナイ茲ニ現
  出シタル事實ガアルノデアリマス、左樣
  ナ混亂狀態、左樣ナ殆ド革命トモ云フベ
  キ鐵界ニ於ケル變動ノアル時期ニ際シ
  テ、製鐵ニ對スル日本ノ國策ノ一ツト
  シテ之ヲ保護シ、之ヲ發達セシメケレ
  バナラヌト云フ場合ニ、ドレダケノ補
  助ヲ與ヘレバ銑鐵ハ成立ツカヽドレダ
  ケノ補助ヲ與ヘレバ鋼鐵ガ獨立シ、自
  立シテ國ノ事業ガ發達スルト云フコト
  ノ御見込ガナケレバ-勿論當局ニ於
  テモ十分ニ御審査ニナッタノデアラウ
  ト思ヒマスガ、此案ヲ議スルニ當ッテ其
  率ノ御示シガナケレバナラヌト思フ、
  吾々ハ之ヲ唯〓一括シテ製鐵及銑鐵ヲ
  補助スルト云フダケノ案デアルト思ツ
  テ居ル、ドノ程度ノ補助ヲスルト云フ
  コトハ一ツモ明記シテ居ナイノデアリ
  マス、此業ヲ議スルニ先ダッテ、私ハ其
  骨子トナルベキ補助ノ率ヲ祕密會デモ
  宜シウゴザイマス、御意向デモ宜シウ
  ゴザイマス、斯ウ云フ場合ニハ是ダケ
  ノ補助ヲスル積リデアルト云フコトノ
  御示シヲ是非願ヒタイト、斯ウ思フノ
  デアリマス、先ヅ第一ニ此事ヲ御尋シ
  マス

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• 013・野村嘉六

  ○野村政府委員　只今ノ山本君ノ御質
  問ハ御尤デアリマシテ、此點ハ私カラ
  一ツ答辯致シマス、製鐵業奬勵法ノ案
  文ハ其點ニ觸レテ居リマセヌ、御說ノ
  通リニドノ割合ト云フコトハ記載シテ
  アリマセヌ、サウシテ此割合ニ關スル
  コトハ勅令ニ讓ル考デアリマス、卽チ
  玆ニ製鐵業奬勵法ノ第八條ニハ「政府
  ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製鐵事業
  者ニ對シ奬勵金ヲ交付スルコトヲ得」
  ト云フ、「政府ハ命令ノ定ムル所ニ依
  リ」ト云フノハ卽チ勅令ニ讓ルト云フ
  考カラ起ッタ譯デアリマス、偖サウ致シ
  マスト、此命令ノ內容ハドウ云フ組立
  ニスル政府ハ考デアルカ、是ハ本案ヲ
  審議スル上ニ於テ最モ必要ナル事項デ
  アリマス、其內容、卽チ追ッテ發表シマス
  勅令ニ對スル其具體的ノ內容ヲ茲ニ申
  上ゲル考デゴザイマス、本案ハ銑鋼一
  貫主義、卽チ銑鐵カラ鋼鐵ヲ一貫シテ
  製造スル者ニ對スル奬勵金ヲ下付スル
  考デアルト云フコトハ、本會議デ大臣
  ガ述ベラレタ通リ、又此案ノ條文ニソ
  レヲ明記シテアル次第デアリマス、ソ
  レデアリマスカラシテ、此意味合カラ
  出發致シマシテ、サウシテ大體ニ於キ
  マシテ銑鐵カラ鋼鐵ヲ一貫シテ作業
  シ、ソレヲ完了スル者ニ對シマシテハ
  一瓲ニ付テ六圓交付スル考デアリマ
  ス、尙ホ區別シテ申シマスト、最後ノ目
  的ハ銑鐵カラ鋼鐵ニ結末ヲ付ケマス
  ガ、併シ人ニ因リマシテ銑鐵ダケヲ造
  リ、或ハ鋼鐵ダケヲ造ッテ居ル所ノ製鐵
  業者モ居リマス、此場合ニ於キマシテ
  ハ銑鐵ダケノ目的デ鋼鐵ニソレヲ仕上
  グルト云フコトデナクテモ、假令事業
  者ガ違ッテ居リマシテモ、最後ノ目的ガ
  鋼鐵ニ仕上グルト云フコトニナリマス
  /.是等ニ對シテハ此意味ニ付キマ
  シテ奬勵金ヲ下付スル考デアリマス、
  今一ツハ鋼鐵ヲ造ル目的ニ非ズシテ、
  銑鐵ダケヲ造ッテ、サウシテ事業ノ需要
  ヲ充ス、例ヘテ見マシタラ鑄物ノヤウ
  ナ場合ニ於テハ、三圓ヲ交付スル考デ
  アルノデアリマス、是ハ追ッテ勅令ヲ發
  シマス時ノ其率ノ內容デアルノデアリ
  マス、序ニ申上ゲテ置キマスガ是ガ眼
  目デ、然ラバ何ガ故ニ大體サウ云フ率
  ノ定メ方ヲシタモノデアル、是ハ山本
  君ノヤウニ此方ニ最モ逹識ノ御方ハ十
  分御承知デ在ラセラレルデアリマセウ
  ケレドモ、私ハ政府ノ立場トシテ此點
  ヲ申上ゲテ置キマス、何ガ故ニ斯ク區
  分スル意味合ニ於キマシテ勅令ヲ作ル
  カト申シマスト、是ハ只今山本君モ鐵
  ニ付テハ殆ド革命的ノ進步ヲ見、又進
  步ヲシナケレバ日本ノ工業ノ發達ハ望
  メヌ、斯ウ云フ話デアリマシタ、ソレニ
  付キマシテハ銑鋼一貫主義ガ、最モ今
  日マデ各國ノ經過ニ徵スルト效果ヲ擧
  ゲテ居ルト云フ話デアリマス、此ニ於テ
  政府ニ於キマシテモ、銑鋼一貫主義、此
  主義ヲ以テ奬勵スル意味ニ於キマシ
  テ、此物ニ對シテハ今申ス如ク一瓲ニ
  六圓ト云フモノヲ補助交付スル考デア
  ルノデアリマス、然ラバ其六圓ト云フ
  モノノ一體目安ハ何處ニ在ルカ、斯ウ
  云フ御質問ガ次イデ起ルデアラウト思
  ヒマスガ、其點ニ付キマシテハ是ハ總
  テ關稅、ソレカラ外國ノ鐵ノ値段、內地
  ノ生產高、ソレ等ヲ總テ考慮致シマシ
  テ、サウシテ今日ノ場合ニ於キマシテ、
  先ヅ瓲ニ付キマシテ六圓ノ奬勵金ヲ下
  附シタナラバ妥當デアラウ、斯ウ信ジ
  タ結果六圓ト云フ金額ヲ見積ッタ次第
  デアリマス、ソレカラ五圓ト云フノハ
  ドウデアルカ、是モ次イデ起ル問題デ
  アルト思ヒマスカラ大體簡單ニ述ベマ
  スガ、只今申上ゲタ通リニ此奬勵法ハ
  銑鋼一貫主義、卽チ銑鐵カラ鋼鐵ニ仕
  上ゲルマデ、此一貫主義ヲ徹底セシム
  レバ此鐵ノ發達ニ甚ダ見ルベキモノガ
  アルデアラウ、各國ノ成績旣ニ然リ、此
  見地カラ成ダケ製鐵業者ヲ銑鋼一貫主
  義ニ趨カシメマシテ、サウシテ此方針
  ヲ徹底セシムルト云フ政府ノ方針デア
  リマス、隨テ今第二段ニ申上ゲタ銑ダ
  ケヲ作ル人、是ダケガ本業デ、是ダケニ
  限ッテ居ル人、斯ウ云フモノニ對シテハ
  五圓保護シタナラバ-將來銑鋼一貫
  主義ノ前提トシテ、銑鋼一貫主義ノ方
  ニ進ム道程ト致シマシテ、サウシテ是
  モ總テノ點ヲ考慮參酌致シテ定メタヤ
  ウナ次第デアリマス、ソレカラ三圓ト
  云フ口ニ致シマシテハ、是ハ鑄物ノヤ
  ウナモノデアリマシテ、此鑄物用モ亦
  必要ナモノデアリマスノデ、之ニ對シ
  テハ大體鋼鐵ヲ製造スルノデナクシ
  テ、銑鐵ダケニ止メテ、サウシテ鑄物用
  其他類似ノ物ニ使用スルモノニ三圓、
  斯ウ云フ風ナ定メ方ヲ致シタ次第デア
  リマス、併ナガラ此事例ハ單リ此奬勵
  法ニ於テ見ルベキノミナラズ、各國ニ
  於キマシテモ隨分此事例ニ類シタ鐵ノ
  保護政策ヲ執ッテ、サウシテソレガ實行
  サレツツアル國ガ多數アルヤウニ考ヘ
  ラレマス、大體是ダケ申上ゲマス

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• 014・山本条太郎

  ○山本委員　サウシマスト銑鋼一貫シ
  タル作業ニ對シテハ瓲六圓、銑鐵カラ
  鋼ニ分業シテ行クモノニ對シテハ五圓
  ト云フコトデアリマスガ、其銑鐵製造
  業者ガ其銑鐵ヲ製鋼業者ニ渡シタ場合
  ニ、卽チ其營業者ガ異ッタル營業者デ
  アッテモ、若クハ同一ナル營業者デアッ
  テモ、銑鐵ヲ鋼鐵ニ渡シタ場合ニ五圓、
  是ハ銑鐵業者ニ行クノデアリマスカー
  -保護サレルノデアリマスカ、若クハ
  製鋼業者ニ保護サレルノデアリマス
  カ、其點ヲ承リタイ、ソレカラ銑鋼一貫
  シタモノニ對シテ六圓ト云フコトハ、
  一ツノ工場ガ銑鐵ヲ造ル、ソレト同時
  ニ鋼ヲ造ル、卽チ鐵ヲ銑鐵ニスル爲ニ
  冷却シテ、熱ノ經濟ノ爲ニ其事業ヲ一
  貫シテ行クコトガアル、其物ニ對シテ
  經濟的施設デアルト云フ意味カラ一瓲
  六圓ト云フコトニ御決メニナッタヤウ
  ナ御話デアリマス、一方ニハ銑鐵ヲ造ク
  テ、其冷エタ、卽チ銑鐵ニ成立ッタモノ
  ガ、同一工場若クハ他人ノ經營シテ居
  ル場合、サウ云フ工場ノアッタ場合ハ五
  圓ヲ遣ル、斯ウ云フヤウニ承知シテ宜
  シウゴザイマスカ、此場合ニ此五圓ハ
  銑鐵業者ニ保護サレルノデアリマス
  カ、製鐵業者ニ保護サレルノデアリマ
  スカ

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• 015・野村嘉六

  ○野村政府委員　是ハ銑鐵業者ニ保護
  サレルノデアリマス、ソレハ申スマデ
  モアリマセヌ、此銑鋼一貫主義ノ下ニ
  於テ銑鐵業ニ保護シマシタナラバ、卽
  チ、其結果製鋼業者モ有利ナ立場ニナル
  シ、ソレカラ銑鐵業者ニ保護、シタ結果
  銑鋼一貫ノ最大理想ノ目的ニ到達スル
  モノデアルト斯ウ考ヘマス

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• 016・山本条太郎

  ○山本委員　此六圓、五圓、三圓ト云フ
  コトヲ決メラレタノハ、只今ノ御趣意
  デ分リマシタガ、銑鐵ニ對シテ三圓ト
  云フ此三ツノ比例、卽チ六圓、五圓、三
  圓ト云フ差ヲ御付ケニナッタノデアリ
  マスガ、銑鐵ハ是ハ委員會デ申上ゲマ
  シタ通リ、近來印度ノ競爭ヲ受ケ、日本
  ノ銑鐵業者ガ非常ナル因難ナ位置ニー
  -種々ナ事情カラデモアリマスケレト
  モ、主トシテ印度ノ激烈ナル競爭ノ爲
  ニ銑鐵業ガ萎靡シテ居ル、此銑鐵ニ對
  シテ單ニ銑鐵ダケデ鋼ヲ入レナイ、銑
  鐵ニ對シテ、瓲三圓ト云フ保護ハ、私共
  ガ承知シテ居ル點デハ、商工大臣ガ初
  メニ御考ニナッタ率ガ瓲七圓ト云フコ
  トニ承知シテ居ル、現在ノ率デハ百斤
  ニ付十錢、一順ニ付一圓六十八錢、ソレ
  ヲ七圓ト云フコトニ認メラレテ御提案
  ニナッタヤウニ承知シテ居ル、若シ其御
  趣旨ナレバ三圓ト云フ銑鐵ノ率ハ、現
  在ノ輸入稅ノ一圓六十八錢ヲ加ヘテ
  モ、僅ニ四圓六十八錢ニシカ過ギナイ、
  商工省デ初メニ御考ニナッタノトハ大
  變ニ率ガ下ッテ來タヤウニ考ヘル、輸入
  稅ト今度ノ三圓ト云フ率ヲ加ヘテモ七
  圓ト云フ原案ノ御趣旨デアッタノガ、此
  度ハ保護ト輸入稅トヲ加ヘテモ四圓六
  十八錢ニ過ギナイト云フ大キナ差ガア
  ルノデアリマス、是ハ特別ノ事情ノ爲
  ニ斯ウ云フ差ガ起ッタノデアリマスカ、
  七圓ト云フコトハ、誰シモ其途ノ人ハ承
  知シテ、心得テ居ッタノデアリマス、其
  後特殊ノ理由ノ爲ニ七圓ガ四圓六十八
  錢ニ減ジタト云フコトデアリマス、尙
  ホ其點ヲ御尋致シマス

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• 017・野村嘉六

  ○野村政府委員　御答ヲ致シマス、山
  本君ハ商工案ガ七圓デアッタト云フコ
  トヲ前提トシテ御質問ナサッタ、私ハ七
  圓デアッタト云フコトニ付キマシテハ、
  ドウモ政府ノ立場トシテハ七圓デアッ
  タモノヲ山本君ノ御說ノヤウニ肯定シ
  テ御答スルコトハ甚ダ困ル、大體申シ
  マスノハ、色〓協議スル上ニ於テ、其時
  ノ意見ハ或ハ五圓ト云ヒ、六圓七圓ト
  モ云フヤウナコトノ協議ガアッテ、或ハ
  八圓ト申スノモアッタラウト思ヒマス、
  最モ力强イ、其時ノ所謂確定議ニ至ラ
  ザル意見ハ七圓ト云フ意見ガ當時勢力
  ヲ有シテ居ッタカモ知レマセヌケレド
  モ、併ナガラ兎モ角モ今日六圓ト云フ
  コトニ確定致シマシテ、サウシテ玆ニ
  勅令ヲ發布スル時ニ、此程度ニ於テヤ
  ルト云フコトニ申上ゲマシタ以上ハ、
  先ヅ六圓ト云フモノハ確定シタモノト
  シテ、之ニ基イテ御答ヲシタ方ガ宜シ
  イノデゴザイマス、サウシテ其六圓或
  ハ五圓、三圓、此大體ノ說明ハ曩ニ申上
  ゲタ通リデアリマスガ、併シ尙ホ進ン
  デ細カイ事ニ至リマスト云フト、私モ
  十分ニハ分リマセヌノデ、幸ヒ製鐵所
  長官、ソレカラ此關係ノ技監ガ居リマ
  スカラシテ、政府委員デハアリマセヌ
  ガ、御同意ヲ得テサウシテ御質問ニ御
  答シタラ如何カ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ
  居リマス

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• 018・山本条太郎

  ○山本委員　此六圓、五圓、三圓、此率
  ヲ勅令ニ依テ御決メニナル御内意デア
  ルト云フガ、私共ガ根本トシテ承リタ
  イコトハ、是ダケノ奬勵ヲ與ヘレバ日
  本ノ製鐵業ガ假令十分ト行カザルマデ
  干、現狀ニ於テ外國ノ競爭ニ堪ヘテ事
  業ガ成立ッテ行ク、多額ノ輸入ニ對シ漸
  次之ヲ防グコトガ出來ルト云フ成案ノ
  下ニ、恐ラク此率ガ割出サレタト云フ
  コトハ、必ズ政府ニ於テモ御考デアラ
  ウト思フ、然ル以上ハ今囘御決メニナ
  ラウトスル此率、及ビ曩ニ衆議院ヲ通
  過シタ關稅ノ改正、此關稅ノ改正ニ付
  テ幾分カ鐵類ニ對スル輸入稅ガ現ハレ
  タ、ソレト此法案ト相俟テ、日本ニ於
  ケル銑鐵及製鋼ノ事業ガ確實ニ成立ッ
  テ行クト云フ御見込ガアッテ、ソレニ基
  イテ必ラズ此保護ノ率ガ決メラレタノ
  デアラウト信ズルノデアリマス、ソレ
  ヲ決メルノニハ申スマデモナク、所謂
  日本ニ現ニ最モ餘計這入ル所ノ國ノ生
  產費、及ビ我國ノ政府ノ營業デハナクシ
  テ、民間ノ普通ノ資金ニ依テ營業シテ
  居リマス所ノ製鐵業、此兩者ノ生產費
  ノ比較對照、是ガ基礎デアラネバナラ
  ヌト考ヘルノデアリマス、此兩者ノ比
  較ノ差ヲ關稅若クハ保護案ニ依テ保護
  セラレテ行クト云フノガ、此稅ヲ決メ
  ル根本ノ基礎デアラネバナラヌ、是ハ
  最モ重大ナ事デアリマスガ、關稅委員
  會ニ於テ政府委員ニ承ッタ所デハ、大抵
  此邊ナラバ日本ノ製鐵ガ成立ッテ行ク
  デアラウ、競爭國ノ生產費ヲ明確ニ調
  査シテ比較スルコトハ困難デアルケレ
  ドモ、或ル期限ヲ定メテ、其期間中ニ於
  ケル平均値段ヲ以テ比較シテ行クト云
  フコトデアリマシタ、而シテ其期間ハ
  大正十一年乃至十二年ト云フノガ基準
  ニナッテ居ルト云フ御話デアリマシタ、
  私ガ考ヘルノニ、先刻モ申上ゲタ通リ
  大正十一年以後ニ於ケル世界ノ製鐵界
  ノ形勢ハ、著シイ變化ヲ來シテ居ル、此
  十一年カラ十二年ノ間ヲ捉ヘテソレヲ
  基準トスルコトガ、餘程危險ナ事ノヤ
  ウニ思フ、又甚ダ不安定ノ事ノヤウニ
  思フ、私共ハ其折ニモ中上ゲタル通リ、
  歐洲大陸ノ鐵ガ英米ノ品物ニ變ッテ日
  本ニ著シク輸入スルコトハ、其最大原
  因ノ一トシテ、獨逸カラ賠償ノ代リニ
  石炭ヲ白耳義若クハ佛蘭西ガ多量ニ受
  取ッテ居ル、其石炭ガ製鐵所ニ殆ド普通
  ノ値段以外ノ安イ値段デ供給セラレテ
  居ル、或ハ佛蘭西ニ大戰中ニ行ッタ支那
  人ガ大部分殘ッテ、佛蘭西ノ製鐵工場ニ
  澤山使ハレテ居ル、ソレガ佛蘭西人ノ
  勞働工賃ヨリハ遙ニ安イ工賃デアル、
  斯樣ナ種々新シイ豫想シ得ザル大キナ
  出來事ガ起リ、而シテソレガ歐洲大陸
  ニ於ケル製鐵ノ値段ヲ、爲替相場ノ下
  落ト相俟テ動搖ヲ來サシメ、サウシテ
  ソレガ既ニ世界ノ製鐵市場ヲ動カシ
  テ、現ニ日本ナドニ入ッテ來ル鐵ガ大部
  分ソレデアルト云フ事情デアル、是ハ
  決シテ一時的ノ現象デハナイ、必ズ永
  續的ノモノデアル、左樣ナ狀況デアリ
  マスカラ、此際吾〓ガ日本ノ鐵ヲ奬勵
  シ、之ヲ擴張シテ行カウト云フニハ、ド
  ウシテモ是等ノ事情ヲ十分ニ參酌シ、
  サウシテ目標トシテ競爭シナケレバナ
  ラヌノハ、銑鐵トシテハ印度、鋼鐵トシ
  テハ歐州大陸、此品物ニ對シテ此位ノ
  率ヲ定メタナラバ、大抵ヤッテ行ケルト
  云フコトガ根本デナケレバナラヌ、政
  府ガ豫テ關稅委員會ガ御話ニナリマシ
  タル十一年十二年ノ標準ヲ捉ヘルト云
  フコトハ、私共ハ甚ダ其捉ヘル目標ニ
  過チガアルト云フ風ニ感ズルノデアリ
  マス、更ニ鐵ノ競爭ニ對シテハ曩ニ申
  上ゲタ通リ、製鐵所ノ生產費ガ實際何
  程ニ付クカ分リマセヌガ、ツヒ四五日
  前ニ鐵道省ノ買入レタ五干七八百噸ノ
  「レール」ハ八十五圓、私共ノ承知スル
  所デハ、八幡ノ製鐵所デハ百十圓內外
  掛カル、此八十五圓ナドモ未ダ曾テ無
  イ狀態デアル、吾〓ハ四五日前マデハ
  鐵ニ對シテハ歐洲大陸ト鬪ハナケレバ
  ナラヌト思ッテ、直接今ノ獨逸ノ「レバ
  リユーシヨン」石炭ナドヲ問題ニ考ヘ、
  「スナイドル」ノ工場ガ支那人ヲ使ッテ
  行クコトヲ考ヘテ、先ヅ此位ノ程度ナ
  ラバ鬪ヘル、此位ノ保護ヲ與ヘレバ宜
  イト思ッテ居ッタガ、先刻モ申上ゲル通
  リ、洵ニ混戰狀態デアル、今日デハ亞米
  利加ノ生產品ハ恐ルルニ足ラヌ、日本
  ニ於ケル鋼鐵若クハ銑鐵ノ値段ハ「ピ
  ツツバーク」ノ値段ト較ベテ餘リ違ハ
  ヌ、亞米利加、英國ニ對シテハ、大抵切
  詰メテ行ッタナラバ、日本ノ生產品ヲ以
  テ之ニ相對スルコトガ出來ルト考ヘテ
  居ッタノデアリマスガ、此四五日問ノ
  「ユーエス、スチール」ガ「レール」ヲ五
  千噸賣ッテ來タ値段ハ八十五圓デアル、
  ソコデ只今御話ニナッテ居ルヤウナ率
  ヲ取リ、先達テ衆議院ヲ通ッタ關稅ノ改
  正率ヲ基礎トシ、サウシテ今現ニ現レ
  テ來ル亞米利加ノ競爭、若クハ大陸ノ
  競爭ニ向ッテ、私共ハ此率デハドウシテ
  モ日本ノ製鐵ハ立行クコトガ出來ヌト
  云フ考ガアルノデアリマス、ソコデ政
  府ガ御答ニナッタヤウナ、果シテ大正十
  一年乃至十二年、此二年間ノ値段ヲ基
  礎トシテ此率ヲ御定メニナッタトスレ
  バ、ソレハ唯一片ノ形式デアッテ、經濟
  上變化極マリナキ實際ノ狀況ニ最モ適
  切ナル奬勵法デナイヤウニ思フ、若シ
  此奬勵ノ率ガ此邊ノ事ヲ能ク具サニ究
  メテ、現狀ニ鑑ミテ定メラレタモノデ
  アルトシタナラバ、私共ハ是ハ此率デ
  ハ到底競爭シ得ルコトハムヅカシイ、
  政府ガ理想ト爲サル所ノ折角此製鐵業
  ヲ奬勵サレルコトガ、恐ラクハ實現サ
  レルコトガ困難デアリハセヌカト云フ
  風ニ考ヘルノデアリマス、ソコデ是ガ卽
  チ奬勵法ノ骨子デアリ、根本デアルノ
  デアリマスカラ、私ハ政府ガ所謂吾〓
  ノ競爭國トシテ見ル所ノ大陸デモ宜シ
  ウゴザイマス、或ハ英米デモ宜シイ、先
  ヅ三箇國ニ對シテノ生產費ヲドノ基礎
  ノ下ニ御置キニナッタカト云フコトヲ
  御示シヲ願ヒタイ、又銑鐵ニ對シテ、是
  モ印度ガ主タル競爭國デアリマスカ
  ラ印度ニ於ケル生產費、之ニ對シテ我
  國ノ生產費ハ斯ウ云フ風ニナル、之ニ
  關稅ト今度ノ保護ヲ加ヘルト、此數字
  ノ上カラ明ニ競爭出來ルト云フコトデ
  アレバ、若シ出來レバ書類デ其內容ヲ
  御示シヲ願ヒタイト思フノデアル、吾
  吾ノ承知スル所ニ依リマスト、鐵ノ關
  稅ハ旣ニ衆議院ヲ通過シテ居ル、世間
  デハ之ヲ皆知ッテ居ル、而シテ製鐵所長
  官モ御出デニナッテ居ルヤウデアリマ
  スガ、然ラバアノ關稅ノ上ッタ爲ニ日本
  ノ鐵ノ相場ガ上ッタカ、是カラ六月先キ
  ニナリマスレバ、今日契約シタモノハ
  六月以後ニ入ッテ來マス、此六月カラ先
  キノ受渡シ、七月渡シ、八月渡シ、若ク
  ハ本年渡シト云フ鐵ノ契約ハ市中デハ
  澤山成立ッテ居リマス、最近ニ至ッテハ
  昨日モ一昨日モ、毎日ノヤウニ市中ノ
  商品デアリマスカラ、契約ガ出來テ居
  リマスガ、私共ノ承知スル所デハ、日本
  ノ關稅ニ依テ支那ト契約サレタ先物ノ
  相場ハ、少シモ變化サレテ居ラヌ、上ッ
  テ居ラヌ、關稅ノ上ッタノニ少シモ拘ラ
  ズ、關稅ノ改正サレナイ前ノ値段デズ
  ン〓〓契約ガ出來テ居ル、斯ウ云フヤ
  ウナ狀況デアル、吾〓ハ關稅ノ上ッタ爲
  ニ鐵ノ相場ガ上ッテ來ルダラウト思ッ
  タ、所ガ之ニ競爭シテ來ル各國ノ態度
  ハ左樣ナモノデハナイ、御調ベニナレ
  バ直グ分リマスケレドモ、此關稅問題
  ガ起ッタ一箇月若クハ二箇月-アノ
  問題ガ可決シタ後ノ一間週乃至二週間
  ノ市中ニ賣ッテ居ル相場、若クハ先物相
  場ガドレダケノ影響ヲ來シタカト云ヘ
  バ、何等影響ヲ來シテ居ラヌ、是ニ因ツ
  テ之ヲ觀ルト、此奬勵案ガ假令通過致
  シマシテモ、外國ノ競爭ガ私ハ此狀況
  ニ鑑ミテ見テ、是ダケノ保護デドレダ
  ケノ事ニナルカト云ヘバ、向フノ競爭
  スル態度ハ斯ンナモノニハ殆ド影響セ
  ヌヤウナモット强大ナル力、モット偉大
  ナル經濟力、生產力、生產費ガ安イ、過
  剩シタル生產品ヲ各國ニ向ッテ送ッテ來
  ル力ハ、到底此位ノ事デハ影響スルコ
  トハ出來ナイ、隨テ日本ノ製鐵、日本ノ
  銑鐵ノ發達ヲ圖ルト云フコトハ此率
  デハ到底ムヅカシイヤウニ考ヘマス、
  殊ニ先達テ承ッタ所ニ依リマシテハ、此
  外國カラ輸入スル鐵ニ對シテノ諸掛
  リ、政府ガ橫濱ナリ神戶沖着ノ値段、ソ
  レニ輸入稅ヲ加へ、陸揚賃ヲ加へ、艀賃
  ヲ加へ、河岸揚ト云フヤウナ人夫賃、若
  クハ保險料、是等ヲ計算サレテ市中ノ
  賣値、所謂輸入品ニ對スル市中ノ賣値
  ト、內地工場デ造ッタル製品ガ同一市場
  デ賣ルマデノ生產費ノ基礎ノ計算、此
  計算ヲ承ッテ見マシタ所ガ、私共ガ現實
  ニ取調ベマシタ所ト政府ノ御調ベニナ
  ツタル計算ノ基礎ニ大ナル相違ガアル
  ヤウニ考ヘル、政府ハ輸入ノ鐵ニ對シ
  テ橫濱沖着後市場ニ賣出スマデヲ噸八
  圓掛カル、斯ウ云フ數字ガ現レテ居ル、
  私共ハ之ヲ四圓以內ニ見積ッテ居ル、是
  ハ押ヘ所ダケノ話デアル、私共ノ調ベ
  ニ依レバ、大正十三年ノ一月ニハ橫濱
  カラ東京へ持ッテ來ル艀賃ハ一噸三圓
  二十錢、今日デハ一圓カラ一圓五錢、ソ
  レデアリマスカラ大正十三年ノ初メニ
  輸入シタ以後ノ鐵ニ對スル諸掛リヲ捉
  ヘテ、サウシテ輸入品ハ是ダケノ諸掛
  リヲ負ウテ市場ニ販賣セラレル、內地
  カラ持ッテ來ルナラバソレ程掛ラヌ、此
  差ガ卽チ關稅ニ依テ保護サレルモノ、若
  クハ奬勵法ニ依テ保護スベキモノデア
  ルト云フ計算ヲ基準ニ置イテ捉ヘテア
  リマスガ、若十三年一月ヲ御捉ヘニナッ
  テ私共ノ計算ト比較スルト、艀賃ノミ
  デスルモ二圓乃至二圓數十錢ノ差ガア
  ル、卽チ百圓ニ對シテ二分ノ差ガアル、
  銑鐵ノ如キ五十圓內外ノモノニ對シテ
  ハ五分以上ノ差ガアル、是ハ必ズ政府
  ガ此基礎ヲ御拵ヘニナル時ニ、或ル一
  定ノ期間ガアル、若クハ或ル一定ノ掛
  リニ對シテハ是ガ大抵繼續サレルモノ
  デアラウ、斯ウ云フ基礎ニ於テサレテ
  居ルノデアリマセウガ、私共カラ見ル
  所ニ依ルト、現在ノ有樣、而シテ其現在
  ノ有樣ガ假ニ歐米カラ輸入スル運賃ニ
  致シマシテモ、先達テノ商工大臣ノ御
  說明ニ依テモ、現在ニ於ケル運賃ハ値
  段ガ安イノデアル、常軌ヲ外レタル安
  イ値段デアルト云フ風ノ御假定デアリ
  マシタガ、私共ハ常軌ヲ外レテ居ルカ
  居ラヌカ分リマセヌガ、兎ニ角世界大
  戰ニ際シテ各國ガ使ヒ切レナイ程餘計
  ナ船ヲ造ッタ、今日デモ亞米利加ダケデ
  二千艘ダケノ船ガ繋イデアル英吉利
  デモ何百般ノ船ガ繋留サレテ居ル、此
  世界ニ於ケル六百萬噸、八百萬噸ノ船
  ガ消化サレルマデニハ十年掛カルカ、
  十五年掛カルカ分ラヌ、運賃ノ上ル見
  込ハナイト云フコトハ殆ド當業者ガ一
  致シテ認メテ居ル、又歐洲ニ於ケル鐵
  ノ生產品ノ如キモノモ、先刻申上ゲマ
  シタ通リ是ガ一時ニ出來タリ、運賃ノ
  暴落ガ一時ニ出來タリ、不當廉賣ニ依
  テ剰ッタル一物ヲ外ヘ投ゲルト云フヤウ
  ナ事デハナクシテ、確實ナル基礎ノ上
  ニ立ッテ全ク生產費ガ安イ、運賃ガ安
  イ、斯樣ナ爲ニ輸入サレヲ居ルノデア
  リマスカラ、之ヲ一時的ノ現象トハ云
  ハレナイ、溯ッテ何年カ前ノ唯平均値段
  ヲ形式的ニ捉ヘテ來テ、之ヲ以テ日本
  ノ生產費ハ之ニ對抗スルコトガ出來ル
  ト斷定スルコトハ、甚ダ早計デアリ、大
  ナル誤リデアラウト私共ハ考ヘルノデ
  アリマス、彼我生產者ノ大小、是ハ如何
  ニシテモ此問題ヲ議スルニ當ッテ根本
  ノ問題デアリマスルノデ、政府ガ之ヲ
  基調トシテ此率ヲ出シタト云フ其計算
  ノ明細ヲ、冀クハ書類ニ依テ戴クコト
  ガ出來レバ甚ダ仕合ダト思ッテ居リマ
  ス、更ニ此奬勵法ノ規則ノ中デ、條文ニ
  付テ二三點承ッテ見タイト思フ、第一條
  ノ「一ノ場所ニ於テ一年三萬五千瓲以
  上ノ製銑能力及一年三萬五千瓲以上ノ
  製鋼能力ヲ有スル設備」是ハ大正六年
  ニ御決メニナリマシタル現行奬勵法ニ
  基イテ御決メニナッタノダト考ヘマス
  ガ、此三萬五千瓲ト云フ數字ヲ動カシ
  テ之ヲ少クスルカ、若クハ制限ヲ無ク
  ナスカ、更ニ之ヲ多クスルカ、必ズ三萬
  五千瓲ト御規定ニナッタモノヲ支持シ
  ナケレバナラヌ、何カ理由ガ政府ニア
  ルカドウカ、之ヲ承リタイ

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• 019・三井米松

  ○三井鑛山局長　第一御質問ニ付キ
  マシテ御答致シマス、銑鐵ノ外國ニ
  於ケル生產費、ソレカラ本邦ニ於ケ
  ル生產費ノ差額ト云フコトニ付キマ
  シテハ、過般山本委員ガ關稅調査會
  ニ於キマシテ御述ニナリマシタヤウ
  ニ、吾〓ノ初メ調査致シマシタ時
  ハ一般ニハ基準期間ヲ、卽チ大正十一
  年ノ七月カラ大正十二年ノ六月ニ至ル
  基準期間ヲ取ルノヲ原則トシテ居ルノ
  デアリマスケレドモ、此銑鐵ニ付キマ
  シテハ、其後種々ノ變化ガアリ、寧口非
  常ナ變化ガアルヤウニ見受ケマシタノ
  デ、更ニ十三年度ノ全體ノ平均價格モ
  取ッテ見マシタ、ソレカラ尙ホ大正十四
  年ノ上半期ノ平均價格モ取リマシタ、
  ソレデ其結果ト致シマシテ、凡ソ七圓
  位ノ差ガ出テ來ルト云フコトヲ算出致
  シタノデアリマス、此點ニ付キマシテ
  ハ山本サンノ御意見モ、凡ソ銑鐵ニ付
  テハ七圓デ宜カラウト云フ御意見デア
  リマシテ、此御意見ハ吾〓ノ意見ト全
  ク一致シテ居ルモノト存ジマス、ソレ
  デ今囘ノ奬勵法ニ依リマシテ、鋼材ヲ
  造リマス銑鐵ニ對シテ噸當リ幾ラト云
  フ金高ヲ、略只今參與官ヨリ申上ゲマ
  シタ通リ決メテ居リマス、結局此銑鐵
  ノ關稅ニ相當スルモノヲ標準トシテ然
  ルベキモノト思ヒマス、唯其中ニ六圓、
  五圓、三圓ト云フ差ガ出テ居リマスル
  ノハ、三圓ハ今日ノ製鐵業ノ「プロセ
  ス」ト致シマシテ、ドウシテモ鑄物用ニ
  適スルモノガ自カラ出テ來ル、之ヲ現
  在市場デ賣ッテ居リマスルノハ、普通ノ
  銑鐵ヨリモ約二圓位高ク賣レテ居ルノ
  デアリマス、是ハ御承知ノコトト思ヒ
  マス、ソレデ之ニ就キマシテハ、凡ソ三
  圓ノ奬勵交付金ヲ與ヘルト約五圓ニ
  ナル、ソレカラ銑鐵ヲ拵ヘマシテ、更ニ
  鋼材ノ用ニ供スルト云フモノニ對シマ
  シテハ、五圓ト云フコトニ致シテ居リ
  マス、是ハ只今現在ノ關稅ヲ除キマシ
  テ、其差額ヲ大體五圓デ宜カラウト云
  フコトデヤッテ居ルノデアリマス、更ニ
  一貫主義ニ基キマスル鋼鐵ニ費シマス
  ル銑鐵ニ對シマシテハ、六圓ト致シマ
  シタノハ一貫主義ト云フモノヲ奬勵致
  シマス趣旨ニ基キマシテ、五圓ニ更ニ
  二割ト云フモノヲ加ヘテ奬勵シタ方ガ
  適當デアラウト云フ考へデ出テ居ルノ
  デアリマス、此銑鐵ノ現在ノ關稅ガ低
  イト云フコトカラシテ、色〓起ッテ來マ
  シタノデ、其差額ハ只今申上ゲマシタ
  ヤウニ、凡ソ現在ノ關稅ヲ加ヘマシテ
  七圓、現在ノ關稅ヲ除キマスルト五圓
  ト云フコトデ、是ハ山本委員モ能ク御
  了解下サルコトト思ヒマス、ソレカラ
  製鋼ノ事ニ付キマシテ-鋼材ノ事ニ
  付キマシテ只今御說ガゴザイマシタ
  ガ、此點ニ付キマシテモ、政府ハ唯以前
  ノ基準期間ヲ標準ト致シテ決メタバカ
  リデハナイノデアリマス、是ハ關稅定
  率法ノ委員會ニ於テモ御話申上ゲマシ
  タヤウナ譯デ、近頃非常ニ沖着ノ價格
  ニ變動ガゴザイマスルシ、爲替相場ノ
  變動モゴザイマスガ、吾〓ノ見ル所ヲ
  以テ致シマシテモ、最近ノ例ヘバ本年
  二月ト云フモノヲ取リマシテ、其二月
  ノ沖着或ハ爲替相場ヲ以テ、關稅ノ基
  礎ノ各標準トスルコトハ少シ早計デア
  ル、總テ一般ノ關稅ノ調査ヲ致シマス
  ル場合ニハ、相當ノ期間ノ平均ヲ取ル
  ト云フコトヲ標準ト致シテ居リマス、
  少クトモ本年ノ二月ニ復活致シマシテ
  モ、二月カラ遡リマシテ、先ヅ六箇月位
  ノ所ハ、平均ヲ取ッテ見ナケレバナラヌ
  ト思フノデゴザイマス、色〓御議論モ
  アリマシタガ、此點ニ付キマシテモ更
  ニ調査ヲ致シテ見マシタ、所ガ矢張沖
  着ノ價格ハ大正十四年ノ九月カラ大正
  十五年二月マデト致シマシテ、平均ガ
  六磅十八志一片、斯ウ云フコトニナル、
  爲替ノ換算率モ平均ハ一志九片·〇一
  二ト斯ウナル、之ヲ邦貨ニ換算致シテ
  モ約七十九圓ト云フコトニナルノデア
  リマス、是ナラバ現在ノ鋼材ト致シマ
  シテ、十八圓ソコ〓〓ノ關稅ヲ高メマ
  シタ所デ相當ナ利益ガ得ラレル、相當
  ナ保護ニナルモノト信ジテ居ルノデア
  リマス、此點ニ付キマシテ山本サンノ
  御說デハゴザイマスルガ、政府ノ調ベ
  テ居リマスル所ノ生產費、沖着輸入價
  格ト云フモノニ相當ノ差ガアル、自分
  等ノト山本サンノ御調査ニナッタ所ト
  ハ、ソレハ諸掛リニ於テ政府ハ八圓ト
  見テ居ルガ、山本サンハ是ハ高キニ失
  シテ居ルト云フ御話デアリマシタ、此
  諸掛リニ付キマシテハ、陸揚費トカ、或
  ハ保險料デゴザイマストカ、或ハ金利
  デコザイマトスカ、又艀賃デゴザイマ
  ストカ、手數料デゴザイマストカ、色〓
  アルノデゴザイマス、此事ヲ最近尙ホ
  確メテ見タノデゴザイマス、所ガ不幸
  ニシテ山本サンノ御說ハ矢張違ヒマシ
  テ、私共ノ調ベガソンナニ違ッテ居ナイ
  ト云フコトヲ承知致シタ、橫濱ノ陸揚
  ノ場合ニハ矢張殆ド八圓-七圓七八
  十錢掛ッタヤウデゴザイマス、ソレカラ
  更ニ東京ノ河岸マデ持ッテ參リマスル
  艀賃ヲ加ヘマスト八圓ヲ超エル、是ハ
  神戶モ橫濱モ殆ド同ジデゴザイマス、
  諸掛リハ當業者ノ言フ所ニ依リマス
  ト此艀賃ガ一時非常ニ高カッタモノ
  ガ、是ガ近頃安クナッテ居リマス、其點
  ニ付キマシテハ或ハ御調ベノ點ガ根據
  シテ居ルノデアラウト思フノデアリマ
  スルガ、陸揚ト致シマシテハ金利ト、ソ
  レカラ船內ノ人夫賃、保險料、ソレカラ
  艀賃、ソレカラ陸揚手數料、斯ウ云フモ
  ノヲ加ヘマシテ殆ド矢張八圓ニナッテ
  居リマス、私共ノ調ベタ所ニ大ナル誤
  リガナイト信ジテ居リマス、唯〓現在
  ノ狀況ニ於キマシテハ、只今御說ノ通
  リ非常ニ價格ガ變動致シテ居リマス、
  此變動ノ現在ノ狀態ヲ捉ヘマシテ、直
  ニソレヲ基準トスルコトハ甚ダ劍呑デ
  アリマス、將來關稅調査會ノ常設ノ調
  査會モ出來ルサウデゴザイマスカラ、
  常ニ是等ノ點ニ付テハ注意ヲ致スコト
  ニナリマシセウシ、若シ鋼材ニ關シマ
  スル關稅ガ現在ノ改正案デ以テ不足ス
  ルト云フ場合ニハ又之ヲ高メルコト
  モ出來ルシ、又上ゲルコトガ出來ル、又
  引下ゲルコトモ出來マセウシ、ソレハ
  將來ニ於テスルヨリ外ナイ、現在ノ所
  ニ於テハ政府提出ノ案ハ爾ク間違ッテ
  居ナイ積リデアリマス、其點ヲ一應御
  答ヲ致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=19

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• 020・山本条太郎

  ○山本委員　只今段々御話ガアリマシ
  タガ、其彼我ノ生產費ノ比較ト云フコ
  ニ對シテ只今ノ御話ヲ掻摘ンデ見マス
  ト、本年ノ二月カラ溯ッテ六箇月間、大
  陸カラ輸入スル鐵ノ沖着ガ六磅十六
  志、ソレヲ爲替相場一志十六分ノ十一
  ト云フノニ換算シテ沖着値段ハ七十九
  圓デアル、之ヲ基礎ニシテ計算スレバ、
  日本ノ製鋼所ハ今日ノ關稅ノ保護ニ依
  テ成立ツト云フ政府ノ御意向デアルト
  云フコトガ、彼我ノ生產費ノ對照ニ對
  スル結論ノヤウニ承リマシタ、爲替ノ
  コトハ是ハ洵ニムヅカシイ問題デ、今
  後如何ニ變リマスカ、國際貸借若クハ
  貿易ノ上カラ變動ガ參ルノデアリマス
  ルガ、先ヅ昨年以後ノ狀況ヲ以テ見マ
  スルト、政府ガ僅カヅツデモ金ノ現送
  ヲシテ行クト云フヤウナ狀況デ、最近
  ニハ少シク反響ガアリマシタガ、先ヅ
  大響ニ於テ恢復シテ來ル趨勢ヲ辿リツ
  ツアルト吾ミハ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、隨テ此事モ此鐵ノ問題ヲ議スル時
  ニ、重大ナル問題ノ一ツトシテ考慮ノ
  中ニ入レネバナラヌコトト思フノデア
  リマス、吾ミハ變動ハアリマスルガ此
  趨勢ニ鑑ミ、又日本政府ノ執ラレテ居
  ル所ノ態度其他總テノ點カラ考ヘテ、
  此一志十六分ノ十一ト云フノガ、之ヲ
  基礎ニセラレタト云フノデハアリマセ
  ヌケレドモ、此爲替ノ趨勢モ矢張考慮
  ノ中ニ加ヘンナラヌ、若シ此爲替ガ平
  價ニ復スルトセバ、直ニ一割ハ其原價
  ニ影響スルト云フコトニ相成ルカラ、
  最モ無論加へナケレバナラヌ、又七十
  九圓デ相當ニ利益ガアルト云フ-日
  本ノ製鋼所ガ相當ノ利益ガアルト云フ
  此計算モ、是モ製鋼所ノ利益ガアルト
  云フ點カラ考ヘマシテ餘程計算ノムヅ
  カシイ問題デアル、相當ノ金利モ認メ、
  相當ノ工場銷却モ認メ、稅金モ認メ、種
  種ナルコトヲ矢張計算ノ中ニ入レテセ
  ナケレバナラヌガ、私共ハ當業者カラ
  承ッタ所デハ、此値段デハ只今御話ニナ
  リマシタヤウナ相當ノ利益ガアルト云
  フ計算ニハ相成ラヌト、異口同音ノ答
  ヲ得テ居ルノデアリマス、隨テ只今御
  話ニナリマシタ政府ノ諸掛リノ基礎、
  是モ計算ノ仕方ニ依ルノデアリマシ
  テ、艀賃、船內人夫賃、陸揚賃ト云フヤ
  ウナモノハ勿論、金利ノ如キ、手數料ノ
  如キ、商賣人ダカラ是ダケノ手數料ハ
  取ッテ居ルダラウ、二分五厘ヤ五分ハ
  取ッテ居ルダラウ、金利モ六箇月ノ金利
  ハ見ハ、六箇月-此爲替手形ヲ引イ
  テ來ルノダカラ六箇月ハ見テ居ル、是
  ハ其基礎ニ依リマスルガ、私共ハ現實
  ニ自由競爭ニナッテ居ル場合ニハ、隨分
  ヒドイ薄イ口錢デ斯ンナモノハ取扱ッテ
  居リマス、金利ナドモ非常ニ切詰メラ
  レタル計算デヤッテ居リマスノデ、是等
  ノ見積方ニ依テハ、只今ノ御話ニナリ
  マシタノト、私共ガ眞實ニ鬪ニ臨ンデ
  競爭ヲシテ居リマス計算トハ、大分差
  ガ起ルト思ヒマスルガ、ソレハ假ニ仰
  セノ通リニ行クト致シマシテ、根本間
  題ハ彼我ノ生產費、卽チ沖着値段、只今
  御話ニナリマシタ値段ノ標準トシテ
  モ、如何ニシテモ日本ノ現在ノ工場ハ、相
  當ノ利益ヲ得ルト云フマデニ至ラヌト
  云フコトヲ申上ゲテ置キタイト思ヒマ
  ス、ソレカラ一體此奬勵案ガ出マシタ
  趣旨ニ付テ、色〓ノ御說明ガ大臣始メ
  各位カラアリマシタガ、銑鐵ノ-印
  度ニ對スル銑鐵ノ稅デ、關稅ノ國際
  的面倒ナ事ヲ起スト云フコトニ基イテ
  居ル、ソコデ私共ハソレナラバ此他ノ
  鋼デアレバ斯ウ、若クハ製鋼ナラバ斯
  ウ、銑鐵デアレバ斯ウデアルト云フコ
  トニセズニ、鋼ニ對シテハ關稅ニ依テ
  ハッキリト之ヲ保護シ、而シテ印度ノ事
  ヲ爾ク神經的ニ苦慮セラルルノデアレ
  バ、左樣ニ表面ノ御話ガ無イニ致シマ
  シテモ其意義ガ參酌サレテ居ルト云
  コトハ是ハ私共能ク認メテ居ル、政府
  ノ當局者モ認メラレテ居ルノデアル
  ガ、銑鐵一瓲ニ對シテ五圓ナリ六圓ナ
  リノ保護ト云フコトニ、ハッキリ爲サレ
  タ方ガ徹底的ノ奬勵法ニナリヤセヌカ
  ト云フコトノ見方ヲ致シテ居ルノデア
  リマス、成程大臣カラモ御說ガアッタ通
  リ、段々新シイ世界ノ經營ノ方法ハ、銑
  鐵カラ直ニ煉鐵ニ廻ハスト云フコト
  ハ、是ハ到ル所世界ノ中ニ行ハレテ居
  リマス、併シ若モ政府ガ之ヲ奬勵シ御
  面倒ヲ見ラレヌデモ、苟モ算盤ノ合ハ
  ヌコトデアルナラバ、商賣人ハ默ッテ
  居ッテモ此位ノ方法ハヤルノデアリマ
  ス、紡績ノ發達ニ鑑ミ其他ノ工業ノ發
  達ニ鑑ミテモ、保護法ノ上ニ於テ故ラニ
  銑鋼一貫ト云フヤウナコトヲ、事實ヲ
  變ヘテマデヤラヌデモ、苟モ算盤ニ合
  ハヌコトデアッタナラバ、吾ミモ經濟界
  ニ關係致シテ居ルケレドモ、ソコマデ
  オヤリニナラヌデモ、勿論算盤ノ趨ク
  所、利ノ趨ク所、商賣人ナドハ其機ヲ捉
  ヘルニ遺漏ハナイノデアリマスカラ、
  私ハ寧ロ是ハ此三樣ニ分ッテノ保護案
  ト云フヨリモ、ハッキリ銑鐵一瓲ニ對シ
  幾ラト云フヤウニ、單純ニ徹底シタ政
  策ニ出ラレル方ガ、此趣意ハ表向ニ發
  表セラレザルマデモ、此案ノ起ッタル趣
  旨ニ鑑ミマシテモ、ソレガ徹底シタル
  政策デアリヤセヌカト云フヤウニ考ヘ
  マスルガ、左樣ナコトニ付テ御考慮ヲ
  煩シタコトハナイノデアリマスカ、此
  點ヲ承ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=20

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• 021・野田鶴雄

  ○野田政府委員　私カラ只今ノ御問ニ
  御答致シマス、前ニ御質疑ノアリマシ
  タ此第一條ノ三萬五千瓲ト云フコトニ
  シテ居リマス理由カラ申上ゲマス、ソ
  レデ宜シウゴザイマスカ-鋼ヲ拵ヘ
  テ居リマス工場ノ最小限度ト申シマセ
  ウカ、例ヘバ或ル「ローリングミル」ノ
  棒ヲ造ッテ居リマストカ、普通一般鋼材
  ヲ造ッテ居リマス、此「ローリングミル」
  ヲ一年ニ造リマス設備ト申スモノハ、
  約三萬五千瓲乃至四萬瓲程度ト見テ居
  ルノデアリマス、一方日本ノ如ク屑鋼
  「スクラツプ」ノアリマセヌ國デハ其
  銑鐵ヲ以テ材料トシナケレバナラヌノ
  デアリマスガ、獨逸ノ如キハ近頃非常
  ニ安イモノヲ送ッテ參リマスノハ、戰時
  中ニ色〓廢物ニナリマシタ「スクラツ
  プ」ガ非常ニアル爲ニ、先程山本サンガ
  仰シヤイマシタ以外ニ、マダ佛蘭西、白
  耳義、獨逸アタリデハ「スクラツプ」ノ
  利益ガアルト云フコトヲ見遁スコトハ
  出來ナイガ、不幸ニシテ日本デハソレ
  モナイノデアリマス、ソレデ銑鐵ヲ以
  テヤッテ行カナケレバナラヌ、丁度一日
  三萬五千瓲乃至四萬瓲ノ製品ヲ造ッテ
  參リマスノニ、銑鐵ヲ三萬五千瓲位持ッ
  テ行ケバ宜イ、サウシマスルト百瓲位
  ノ鎔鑛爐「フラストフアーネス」ヲ建テ
  マスト、丁度年三萬五千瓲位ヅツ出來
  テ參リマス、ソレガ此三萬五千瓲ニ最
  小限度ヲ決メタ理由デアリマス、其百
  瓲爐ハ、果シテソレデ宜イカト云フコ
  トニナリマスルト、ソレヨリモ小サナ
  爐ニ比較シマスルト、百瓲爐ヲ一基建
  テマスノト、五十瓲爐ヲ二基建テマス
  ノト殆ド五割、或物ニ依リマシテハ六
  七割高イ設備費ガ掛カルノデアリマ
  ス、又之ニ要シマスル骸炭ノ設備ニ致
  シマシテモ、丁度三萬五千瓲位年ニ造
  リマス、骸炭ノ設備ガ先ヅ最小限度ト見
  テ宜カラウト思ヒマス、製品モ年二百
  瓲位出シマス爐ノ方ガ、小サイ爐ヨリ
  モ製品ガ一定シテ居リマス、骸炭ヲ爐
  デ使用シマスニモ、丁度百瓲位ノ方ガ、
  小サイ爐ヨリハ燃料ガ少シヅツデ宜イ
  ノデアリマス、其他色ミナ附屬ノ設備
  ナドモ、或ハ勞力費ナドモ減ルノデ、大
  キケレバ大キイ程利益ナノデアリマ
  ス、ソレカラ又本邦ノ現狀ヲ見マシテ
  モ、現在本邦ニハ四十基ノ爐ガアリマ
  シテ、其中百瓲以上ノ爐ガ十七基デゴ
  ザイマス、其中現ニ十三基ハ今日此苦
  境ニ立ッテ働イテ居ルノデアリマス、他
  ノ百瓲未滿ノ二十三基ハ全部休ンデ居
  リマス、先ヅ百瓲程度ヲ以テ爐ノ最小
  限度ト致シマシテ、一年ニ三萬五千瓲
  ノ製銑設備トスルト云フコトニスルノ
  ガ至當ト政府ハ見テ居リマス、同時ニ
  之ヲ鋼ニ致シマス爐ニ付テモ、色〓攻
  究致シマシタ結果、一囘ノ製鋼カラ平
  爐ノ製鋼量ガ二十五瓲ト唱ヘル位ノモ
  ノガ、先ヅ日本ノ職工ノ體力カラ申シマ
  シテモ、ソレ位ヲ限度ニスルノガ適當
  カト思フノデアリマス、丁度二十五瓲
  爐二基ヲ以テ、約三萬五千瓲ノ鋼ヲ造
  ルコトガ出來ルノデアリマス、五十瓲
  爐一基デモ宜イノデアリマスガ、單位
  ハ先ヅ二十五噸トスルコトヲ、政府ハ
  奬勵シテ行キタイト思フノデゴザイマ
  ス、之ヲ外國ノ例ニ徵シマシテモ、獨逸
  デハ二百基アリマス中ニ、二十五瓲以
  下ノ爐ハ三十一基シカゴザイマセヌソ
  レモ「コンマーシヤルスチール」、銑銅
  材ヲ造ッテ居ルノデハアリマセヌデ、鑄
  物デアルトカ、鍛鋼物デアルトカ云フ
  モノヲ造ッテ居リマス、英國ハ二百三十
  基アリマス中、六基ダケガ二十五瓲以
  下デ、後ハ全部二十五瓲以上デアリマ
  ス、米國デハ三百八十四基ノ中、僅ニ八
  十基シカ二十五瓲以下ヲ持ッテ居リマ
  セヌ、本邦ハ七十三基ノ中、六十七基ハ
  二十五瓲デアリマス、丁度外國ノ二十
  五瓲爐ヲ最低ノ度ト致シマスト、普通
  鋼材ヲ造ッテ參リマス方ガ、先ヅ經濟的
  ニ外國ト相當ノ競爭ヲシテ行ケルモノ
  デハナイカト思ッテ居リマス、ソレガ三
  萬五千瓲ト決メマシタ理由デゴザイマ
  ス、ソレカラ只今奬勵法ノ交付致ス金
  額ヲ三段ニ分ケテ居)リマス理由ガ、甚
  ダ銑ト云フコトニ對シテ徹底シテ居ラ
  ヌヤウニ見受ケルト云フヤウナ御說ヲ
  伺ヒマシタガ、是ハ參與官ノ述ベラレ
  マシタコトヲ、モウ少シ技術的ニ申上
  ゲマスト、三萬五千瓲ノ設備ヲ持チマ
  シタ製鐵所デ、自分ノ鎔銑ヲ詰リ鎔鑛
  爐カラ出マシタ度ニ於テ、銑鐵ヲ製鋼
  平爐ニ入レマシテ、或ハ製鋼轉爐ニ入
  レマシテ、其處デ鋼ニ直シマス、サウシ
  マシタ場合ニ、其鋼ニ使ヒマシタ中ノ
  銑鐵ニ對シテ六圓ヅツ交付スルト云フ
  コトナンデス、鐵ハ二ツノ會社ガアリ
  マシテ、繼續的ニ約束ヲシマシテ、一方
  ノ鮫鑛ノミヲ持チマシタ會社カラ、鎔
  銑ヲ平爐或ハ轉爐ノミヲ造リマシタ會
  社ニ送ッテ、鋼ヲ造ッタ場合ニハ、兩方ノ
  會社ニ使ヒマシタ銑鐵ニ對シテ六圓ヅ
  ツ交付スルト云フコトニナッテ居リマ
  ス、ソレデ鎔鑛爐デ鎔銑ト致シマーセル
  ニ冷シテ固メテシマヒマス、サウシマ
  シタ場合ニハ-各製鋼所ガ買フテ使ヒ
  マシタ場合、其製鋼所ガ是ダケノモノ
  ヲ何處カラ買ッテ使ヒマシタト云フ證
  明ガアリマシタ場合ニハ、其銑鐵ヲ引
  去リマシテ、其製鋼所ニ出來上リマシ
  タ銑鐵總額ノ中カラ使ッタル錦銑ノ量
  ヲ引去リマシテ、更ニ冷銑トシテ製鋼
  所ニ賣ッタ銑鐵ノ量ヲ引去リマシテ、
  殘ッタモノハ如何ニナリマスカ、或ハ
  「ストツク」ニナルノデアリマス、此二
  ツノ會社ニ其銑鐵ニ對シテ三圓ヅツヲ
  交付スルト云フコトニナッテ居ルノデ
  アリマス、ソレデ政府ハ何處マデモ鋼
  ニ使フ銑鐵ヲ奬勵スルト云フコトニ
  ナッタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=21

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• 022・永田善三郎

  ○永田委員　大事ナコトデスカラハツ
  キリ第二ヲモウ一遍···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=22

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• 023・野田鶴雄

  ○野田政府委員　ソレデハモウ一遍申
  上ゲマス、甚ダ複雜シテ居リマスカラ
  政府ハ何處マガモ鋼ヲ造リマスノ
  デ、一遍鑛石ヲ鎔鑛爐デ鎔カシテ銑鐵
  ニシタ以上ハ、製品ニナル迄ソレヲ冷
  シタクナイ、是ガ最モ經濟的ダト考ヘ
  テ居リマス、ソレデ其鎔銑ヲ鎔ケタ儘
  平爐ニ入レタ場合ニハ、鎔ケタ銑鐵ノ
  目方ニ對シテ瓲當リ六圓ヅヽ交付ス
  ル、第二ノコトハ、ソレヲ一ノ會社デナ
  クテモ宜イノデアリマス、例ヘバ甲ノ
  會社ト乙ノ會社トアリマシテ、甲ノ會
  社ハ銑鐵バカリ造ッテ居ル、乙ノ會社ハ
  鋼ノ設備シカ持ッテ居ラヌ、サウ云フ場
  合ニ、ソレガ近イ所ノ工場デアレバ、互
  ニ繼續的ニ約束ヲシマシテ、甲ノ會社
  ノ銑鐵ヲ、鎔ケタ儘乙ノ會社ヘ持テ來
  テ使フト云フコトニナレバ、其資本ハ
  一ツデハアリマセヌケレドモ、政府ノ
  目的ハ達セラレマスカラ、ソレニハ矢
  張六圓ヲ與ヘル伊佐一方固マッテシ
  マッタモノ、遠イ所ヘ送ルモノ、或ハ近
  クテモ冷タイノヲ買ッテ使フ場合ニハ
  政府ノ目的トハ少シ外レテ居リマス
  ガ、ソレモ先ヅ印度アタリカラ入ッテ來
  マス所ノモノト競爭シテ賣ラナケレバ
  ナリマセヌカラ、ソレノ差額ガ七圓ト
  シ、其內一圓六十七錢ハ關稅デ課セラ
  レテ居リマスカラ、五圓ヲ銑鐵屋ノ方
  ニ與ヘルノデアリマス、殘リマシタノ
  ハ、是ハ本當ヲ申シマスレバ冷シテハ
  損デアリマス、冷シマスト或ル部分ハ
  既ニ鑄物ニ適當スルモノニナルノデア
  リマス、鑄物ニ適當スル銑鐵ハ普通ノ
  モノヨリ二三圓高ク賣レマス、併シ冷
  シタモノヲ鋼ニスルト云フコトハ國ト
  シテハ損デアリマス、デ英國デ申シマ
  スルト「アイアン、エンド、スチール」此
  兩方ヲ造ッテ居リマス大工場ナラバ、鎔
  鑛爐カラ出マス銑鐵ハ「ミキサー」、混
  銑爐ト申シテ居リマスガ、ソレニ入レ
  テ一定ノ品質ニシ、ソレヲ更ニ鋼ノ爐
  ニ流シ込ムノデアリマス、然ルニ不幸
  ニシテ本邦ニハ八幡製鐵所以外ニハサ
  ウ云フ設備ハアリマセヌ、ソレガ爲ニ
  冷ヤシテ使ハナケレバナラヌ場合モア
  ル、冷ヤシタモノハ自然一定ノモノデ
  ナクナル、鋼ニ適スルモノモアリ又適
  セヌモノモ出ル、卽チ鑄物ニ適スルモ
  ノモ出來ル、鋼カラ申セバソレハ副生
  物的ノモノデアリマス、其鑄物ニ適ス
  ル銑鐵ヲ無視シテハ矢張鋼ノ方モ進步
  シナイ、併シ其方ハ幾ラカ高ク賣レル
  ト云フコトモアリマスカラ、之ニハ三
  圓ダケ交付シヤウト云フコトニシタノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=23

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• 024・永田善三郎

  ○永田委員　今ノ第二ノ所、一ノ會社
  カラ他ノ會社ヘ鎔鐵ヲ送ル場合ニハ六
  圓與ヘルト云フコト、是ハ東洋製鐵會
  社ガ八幡ニ送ッテ居ル場合ガソレデア
  ルト思ヒマスガ、其他ニモ例ガアリマ
  スカ、ドウ云フ場合デスカ、會社ニ就テ
  適切ニ御說明ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=24

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• 025・野田鶴雄

  ○野田政府委員　只今デハ東洋製鐵ノ
  ハ八幡ニアリマス官立ノ製鐵所ガ使ッ
  テ居ルノデアリマスガ、實際ハ八幡製
  鐵所ノモノニナッテ居リマスカラ、本邦
  ニハ未ダサウ云フ例ハナイノデアリマ
  ス、アリマセヌガ實際ノ例デ申シマス
  ト、輪西ノ製鐵所ト室蘭ニアリマス日
  本製鋼所ハ、只今ハ一ノ資本ノ下ニ纏
  メラレマシタケレドモ、アレガ一ノ資
  本デナイ時ガアッタ、ソレデ今日ハ輪西
  カラ室蘭マデ二十分間バカリデ鎔銑ヲ
  運ブコトガ出來ル設備ニナッテ居リマ
  ス、又鶴見ニ出來マシタ淺野造船所ノ
  百五十瓲鎔鑛爐ハマダ火ハ入レテア
  リマセヌガ、近々火ヲ入レルコトニナ
  ルダラウト思ヒマス、此淺野造船所ハ
  自身ニマダ製鋼所ヲ持ッテ居ラナイノ
  デアリマス、サウ云フ場合ニ私共ガ技
  術的ニ考ヘマスルト、彼處ニ日本鋼管
  會社ト申シマシテ二十五瓲爐ヲ九臺位
  持ッテ居ル大キナ製鋼所ガアリマス、ソ
  レニ鎔銑ヲ送ルコトニ致シマスレバ、
  國家的ニハ非常ニ經濟デアルト思ヒマ
  ス、サウ云フ場合ヲ豫想シタノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=25

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• 026・加藤政之助

  ○加藤委員長　ソレデハ十二時デスカ
  ラ是デ休憩致シマシテ、午後一時カラ
  開會致シマス
  午後零時十七分休憩
  午後一時二十分開議

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• 027・加藤政之助

  ○加藤委員長　午前ニ引續イテ製鐵業
  奬勵法改正法律案ノ委員會ヲ開キマス
  森君

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• 028・森恪

  ○森委員　私ハ午前ニ同僚山本条太郞
  君ヨリ指摘セラレマシタ六圓、五圓、三
  圓ト云フ數字ノ由ッテ來ル基礎數字ヲ、
  此際ドウシテモ相成ベクハ書類デ明ニ
  御示シヲ願ッテ置イタ方ガ、鐵事業奬勵
  ト云フ根本目的ヲ達成スル上ニ於テ、
  極メテ必要デアルト考ヘルノデアリマ
  ス、ソレハ成程政府ノ今日ニ於ケル御
  說明ハ、政府ノ立場トセラレマシテハ
  一應御尤デアルカモ知リマセヌガ、吾
  吾ノ立場カラ實際問題ニ付テ算盤ヲ取
  ツテ見マスト、政府ノ御指定ニナッタヤ
  ウナ數字ニハ一致致サナイデアリマ
  ス、殊ニ山本条太郞君ヨリ縷々申述べ
  ラレマシタ通リ、此製鐵事業ノ世界的
  減少ト云フモノハ、非常ナ經濟的關係
  ニ於テ波瀾ガアルト思ヒマス、今日膠
  着シタル一ツノ數字ニ依ッテ發達ヲ期
  待致スト云フコトハ、困難ト思ヒマス、
  若シ玆ニ基礎數字ガ出來テ居リマシタ
  ナラバ、其基礙數字ガ時ノ事情デ非常
  ニ變化ガアルト云フコトガ發見サレタ
  場合ニ於テハ、玆ニ又再ビ奬勵ノ目的
  ヲ達スル機會ヲ作ルコトニナリマスカ
  ラ、私ハ今此基礎數字ヲ多少御不便ガ
  アラレマシテモ、大膽ニ一ツ吾〓ニ書
  面ヲ以テ御渡シ下サル方ガ、眞實此鐵
  事業ノ發達ノ爲ニ相成ルカト思ヒマス
  ガ故ニ、私ハ此基礎數字ノ當ッテ居ルト
  カ、當ッテ居ラナイト云フ點ハ、玆ニ餘
  リ追窮致シマセヌ、次ニ私ハ一ツノ疑
  ヲ持チマスノハ一體此法案ハ幾多ノ
  機會ニ述ベラレテ居リマス通リ、政府
  御自身モ餘リ理想案トハ御考ニナッテ
  居ラナイ、吾〓ハ固ヨリ左様ニ信ジマ
  セヌ、殊ニ御奬勵ニナリマス數字ガ、實
  際トノ間ニ極メテ「マージン」ガ薄イ、
  幅ガ極ク狹イノデアリマス、少シ事情
  ガ變ヲテ來ルト、奬勵ノ根本目的ヲ達ス
  ルコトガ出來ナイノデハナイカト云フ
  心配ガアルノデアリマス、此法案ノ眞
  ノ目的ヲ達スル其方法ハ、法案自體ニ
  依ラズシテ、殆ド行政官廳ノ自由手腕
  ニ依ッテ、如何ニ此法ヲ適用サレルカト
  云フコトニ依テ、其目的ガ達セラレル、
  卽チ行政官ノ手心ニ依ル幅ガ非常ニ大
  キイト考ヘテ居ル、卽チ私共ノ考デハ、
  我國ノ現在ノ製鐵所ノ中デ、此法案通
  リノ適用ヲ致シマシタナラバ、幾ツノ
  製鐵所ガ此法案ノ恩惠ニ浴スルカト考
  ヘテ見マスト、私ハ殆ド無カラウト思
  フ、殊ニ參考書類トシテ御渡シ下サイ
  マシタ銑鋼一貫主義ノ下ニ此恩惠ニ浴
  スル會社ハ、僅ニ三ツデアル、此三ツノ
  內容ヲ見マスト、極メテ貧弱ナモノデ
  アル、之ヲ成ベク廣ク恩惠ニ浴セシム
  ルト云フコトハ、一ニ行政官ノ手心ニ在
  ルト云フコトニナルノデアリマス、左
  樣ナ事ガ私ノ大體ノ觀察デアリマス、
  ソコデ問題トナルノハ、銑鋼一貫主義
  ト云フモノハ、日本ノ今日ノ事情ニ合
  ハナイ、成程各國ハ銑鋼一貫主義デ効
  果ヲ現ハシテ居ルガ、我國製鐵事業ノ
  現狀ハ、其現想ニハ遠イ、私共ハ一體銑
  鐵ニ重キヲ置ク、或ハモウ一步進ミマ
  スト鑛石ニ重キヲ置ク、原料ニ重キヲ
  置クト云フコトガ、實際製鐵事業發達
  ノ骨子デハナイカト云フ考ヲ持ッテ居
  ルノデアリマスカラ、以上ノ點ヲ申述
  ベタノデアリマス、時間ガ許シマシタ
  ナラバ、以上私ノ指摘致シマシタ點ニ
  付テ、詳細一ニ御答辯ヲ促シタイノデア
  リマスガ、斯樣ナ場合デアルカラ、一々
  御答辯ヲ願フコトヲ省略致シマス、併
  ナガラ其意思ハ玆ニ明ニ致シテ置クノ
  デアリマス、結論ト致シマシテハ、山本
  条太郞君ガ申述べマシタ通リ、鑛石ニ
  對シテハ幾ラヲ補助スル、銑鐵ニ對シ
  テハ幾ラヲ補助スル、鋼ニ對シテ幾ラ
  ヲ輔助スルト云フコトヲ、ハッキリ數字
  ヲ上ゲテ法律デ以テ御規定ニナルコト
  ガ、寧ロ事業關係者ニ取ッテハ便利デア
  ル、言葉ハ甚ダ宜シクナイカ知リマセ
  ヌガ、廻リ諄イ奬勵ノ仕方ハ、此目的ニ
  副ハナイ嫌ガアルノデナイカト思フノ
  デアリマス、併シ此點ニ付テハ既ニ政
  府ノ方カラ吾〓ノ期待スルヤウナ答デ
  ハアリマセヌケレドモ、御說明ガアリ
  マシタカラ、是モ意思表示ニ止メテ置
  キマス、次ニ質問ニ移リマスガ、本會議
  デモ商工大臣ニ私ハ御尋ヲ致シマシタ
  原料關係ニ付テ、政府ハドウ云フ御方
  針ヲ執ッテ居ラレルノデアルカ、私共ノ
  立場カラ言ヒマスト、原料關係ハ之ヲ
  實際問題ニ當嵌メテ見マスト、甚ダ不
  安ナル狀態ニアル、殊ニ其中デ鐵鑛石、
  滿俺、此二點ニ付テハ非常ニ不安ナル
  狀態ニ在ルト思フノデアリマス、此點
  ニ對シマシテ一應大體斯ウ云フ方針デ
  居ル、斯ウ云フ方面ニ斯ウ云フ數字ヲ
  持ッテ居ルト云フコトヲ御示シヲ願ヒ
  タイ、第二ニ既ニ日本ノ製鐵事業ノ現
  狀ハ、本案ヲ適用爲サル上ニ於テ餘リ
  ニ貧弱デアル、不完全デアル、之ヲ廣ク
  御適用ニナルトシマスト、現在幾多ノ
  製鐵所ガ是カラ非常ナ事業ノ擴張ヲシ
  ナケレバナラヌ、或ハ設備ヲ完成シナ
  ケレバナラヌ、サウシナケレバ十分ノ
  補助ヲ得ラレナイト云フ結論ニナル、
  又政府ハソレヲ狙ッテ居ル、然ルニ今
  日資金不足、金利極メテ高イ世ノ中ニ、
  而モ奬勵ノ幅ガ極メテ狹イ此奬勵法ノ
  下ニ、各製鐵事業家ガ政府ノ期待スル
  ヤウナ設備ヲ是カラドン〓〓殖ヤシテ
  行クトカ、或ハ立テ直シテ行クトカ云
  フコトニ付テハ、非常ナ困難ヲ感ジハ
  シナイカ、此程度ノ奬勵ノ範圍デハソ
  レダケノ勇氣ヲ持ツ事業家ガ果シテア
  ルデアラウカト云フコトヲ私ハ疑フノ
  デス、其目的ヲ達スル爲ニハ、此此際政
  府ハ進ンデ資金ヲ融通スル途ヲ講ゼラ
  レルトカ設備ヲスル上ニ於ケル資金
  關係ニ於テ、特殊ノ御注意ヲ拂ハレマ
  シテ、其目的ヲ達スルコトガ甚ダ困難
  テアラウト思フノデアリマス、所ガ此
  資金關係ニ付テハ、法案自體ニ於テモ、
  又御說明ノ中ニモ、餘リ用意ノ拂ハレ
  テ居ルヤウナ點ノ御說明ヲ承ルコトガ
  出來ナカッタノデ、此際之ヲ御伺致シタ
  イ、先ヅ此二點ニ付キマシテ御答辯ヲ
  受ケタ上デ、更ニ私ハ申上ゲタイト思
  ヒマス

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• 029・野村嘉六

  ○野村政府委員　只今森君カラ御意見
  ノ發表ト、其外ニ大體方針ニ對スル御
  質問ガアッタノデアリマス、卽チ鐵鑛ノ
  原料ニ對シテドウ云フ考ヲ持ッテ居ル
  カ、ソレカラ又製鐵ニ必要ナル滿俺ニ
  對シテ、是亦ドウ云フ考ヲ持ッテ居ル
  カ、斯ウ云フ御質間ガ第一ニ出マシタ、
  是ハ御尤ナル御質問デアリマシテ、製
  鐵ノ原料ガ豐富デナケレバ、隨テ製鐵
  事業ノ發達ハ中々ムヅカシイ、ソコデ
  我ガ內地ニ於テ此原料ガドウ云ウ關係
  ニナッテ居ルカト申シマスト、森君モ御
  承知ノ通リ、鐵鑛ノ原料ガ甚ダ乏シイ、
  又有リマシテモ「パーセンテージ」ノ極
  ク少イモノデアリマシテ、言ウテ見レ
  バ品質ガ餘リ良クナイ、滿俺ニ至リマ
  シテモ同樣甚ダ少イノデアリマス、之
  ニ對シテドウ云フ方法ヲ講ズルカト云
  フコトニ對シテハ、政府モ非常ニ注意
  致シテ居リマス、製鐵關係ニ於テ、原料
  調査ノ爲ニ色〓ノ考慮ヲ拂ヒマシテ、
  一面ニハ原料ノ探鑛ニ付テ〓究シ、又
  一面ニハ近時砂鐵ノ製法ガ發達致シマ
  シテ、果シテ是ガ普通ノ鐵ノ如ク效力
  ヲ發揮スルモノト致シマシタナラバ、
  此原料ハ御承知ノ通リ東北方面ニハ非
  常ニ多イノデアリマス是等ヲ攻究致
  シマシテ、果シテ普通ノ鐵ノ如キ效果
  ヲ擧ゲルト致シマシタナラバ、今迄ノ
  貧弱ナル鐵ノ立場ニ居ル我國モ、一
  シテ世界有數ナル鐵ノ原料產出國ニナ
  ルカモ知レマセヌ、是ハ一面ノ〓究アリ
  マスガ、森君御心配ノ通リニ、獨リ原料
  ニ對シテ探鑛シテ居ルノミナラズ、砂
  鐵ニ對シテモ、ドウシタナラバ良イ成
  績ヲ擧ゲルカト云フコトハ、是ハ豫算
  ニ計上シテ此試驗ヲシテ效績ヲ擧ゲル
  爲ニ、相當ナル豫算ノ協賛モ仰イダヤ
  ウナ次第デアリマス、窮スレバ通ズト
  カ、戰爭中ニ非常ニ鐵ノ髙カッタ時分ニ
  ハ是ハ、詰リ生產ノ關係カラデアリマ
  セウガ、諸所探鑛致シマシテ、大正七年
  ノ如キハ相當ナル原石ヲ得ラ居ルヤウ
  ナ成績モアルノテアリマス、併ナガラ
  アノ時ニハ、輸入スル分量ガ少ナイノ
  ト、當時非常ニ價格ガ髙カッタ關係上、
  生產的ニ探鑛シテ、原料ヲ得タヤウナ
  結果ヲ得タノデアラウト思ヒマス、併
  ナガラ此問題ハ大ニ考慮スベキ問題デ
  アリマスカラ、內地ニ於キマシテハ今
  申シ上ゲマス通リニ砂鐵ノ製法、ソレ
  カラ探鑛是等ニ對シテ政府ニ於キマシ
  テハ其〓究ヲ怠ラズヤッテ居ル次第デ
  アリマス、又外國ニ於キマシテハ、安イ
  豐富ナル原料ヲ得ル爲ニ、ソレ〓〓〓
  究シテ居リマス、是ハ森君モ昨日本會
  議デ述べラレマシタ通リニ、支那ノ楊
  子江方面ニ豐富ナル鑛石ガアルト云フ
  ヤウナ御話デアリマシタ、政府ニ於キ
  マシテモ、支那方面、南洋方面ニ對シテ
  成タケ鑛量ノ豐富ナル、サウシテ確實
  性ニ帶ビタル鑛石ヲ得ントシテ、ソレ
  〓〓〓究中デアルノデアリマス、第一
  問ニ對シマシテハ、大體今申上ゲマス
  通リデ、御質問ノ御趣旨ハ政府モソレ
  ニ對シテ非常ニ考慮シテ、種々心配シ
  ツツ其實行ヲ期セントスルニ在ルノデ
  アリマス、ソレカラ第二ノ適用ノ範圍
  ヲ擴張シタラ宜イデハナイカ、此奬勵
  法ヲ今現實ニ出來テ居ル會社-或ハ
  工業者ト申シママカ、製鐵業者ト申シ
  マスカ、此企業者ノヤッテ居ル仕事ニ
  適用シタナラバ、範圍ハ極ク僅カナモ
  ノデナイカ、是ハ御尤デアリマス、併シ
  此事ハ中〓困難ナ話デアリマシテ、既
  ニ算盤ガ取レナクテ止メテ居ル製鐵業
  者ヲシテ、ソレヲ起サシムルマデノ程
  度ニ奬勵スルト云フコトハ、是ハ中〓
  少シ位ノ金デハ容易ニ運ビハ付キマセ
  ヌ、然ラバソレヲ拔キニシテ、新シク製
  鐵業者ヲ起サセル爲ニ奬勵シタラ宜イ
  デハナイカト云フ御意見モアルデアラ
  ウト思ヒマスガ、御承知ノ通リ今日マ
  デ澤山ノ製鐵業者ハ在ッタノデアリマ
  ス、ソレガ段々〓微致シマシテ、遂ニ廢
  業ヲ致シ、約八十カラノ製鐵業者ガ僅
  ニ殘ッテ居ルモノハ四ツカ五ツニナッタ
  斯ウ云フ譯デ中ニハ跡形モ無イヤウナ
  モノモアルノデアリマス、ソレデ先ヅ
  今日ニ於キマシテハ、採算上損ハシテ
  モ、兎ニ角仕事ヲシテ居ル製鐵業者ニ
  保護ヲシテヤラセルト云フ程度ノ範圍
  ニ止メテ置カウト云フノデアリマス、
  希望ト致シマシテハモット〓〓廣ク保
  護奬勵シタイ意思ハ持ッテ居リマスケ
  レドモ、如何センソレニ伴フ奬勵金等
  ノ關係ニ於テ、餘儀ナイ次第ト御諒承
  ヲ願ヒマス、第三ノ資金融通ノ問題デ
  アリマス、一此點ニ對シテハ成程本會議
  デモ當委員會デモ觸レテ居リマセヌ、
  ト申シマスレバ、第二ノ御質問ノ延長
  ト見テ宜シイト思ヒマス、奬勵金或ハ
  其他ノソレ〓〓ノ資金融通-私ノ調
  ベタ所ニ依レバ、國ニ依テハ奬勵金、又
  ハ低利ノ資本ヲ渡シテ居ル國モアルサ
  ウデアリマスガ、今此御質問ニ對シマ
  シテハ、マダ〓究致シテ居リマセヌ、併
  シ御尤ナ御尋デアリマスカラ、政府ト
  致シマシテハ大ニ考慮スルコトニ致シ
  マス

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• 030・森恪

  ○森委員　私ノ質問ガ徹底シナカッタ
  ノデ、甚ダ遺憾デアリマスガ、原料關係
  ニ於テ率直ニ御尋致シマス、砂鐵ノ事
  ヲ御〓究ニナッテ居リ、其御〓究ガ完成
  シタ後ニハ、我國ガ非常ニ有利ナ立場
  ニナルト云フコトハ同感デアリマス
  ガ、是ハ兎ニ角將來ノモノデアリマス、
  私ノ聽カントスル所ハ、現在實際ニヤッ
  テ居ル製鐵事業ニ對シ、國家トシテ原
  料供給關係ヲ如何ヤウニ按排スルカ、
  政府ガ直接責任ノ衝ニ當ッテ居ル八幡
  製鐵所ノ如キ、又ハ委任經營ヲシテ居
  ラレマス東洋製鐵ノ如キ、其他ニ付テ、
  商工大臣ガ或ハ共同買入手段ニ依テ按
  排スルト云フヤウニ言ハレテ居リマス
  ガ、要スルニ是ハ唯買フト云フ手續ヲ
  比較的能率本位ニ組立テ直スト云フニ
  過ギナイ、根本タル問題、何所カラドレ
  ダケノ材料ヲ得テ、ドウ云フ計畫ノ下
  ニ今後數十年日本ノ製鐵業ノ基礎ヲ
  造ルカ、之ヲ數字的ニ大體御示シヲ願
  ヒタイ、今迄ノ政府ニ於テモ、或ハ民間
  ノ鐵關係事業家ニ於キマシテモ、此原
  料ニ付テハ比較的ニ無頓着デアル過
  去ニ於テハ確ニ之ヲ示シテ居ル、ソレ
  デ私ハ此御尋ヲ致スノデアリマス、
  例ヲ擧ゲテ見マスト、政府ガ殆ド唯一
  ノ原料鑛山トシテ居リマシタル支那ノ
  大冶鐵山ノ如キ、數年前迄ハ無盡藏ト
  唱ヘラレテ居ッタ、所ガ吾〓ガ之ヲ〓究
  シテ見ルト、多ク見積ッテモ三千萬噸カ
  四千萬噸位ノモノデナイカト思ッテ、數
  年前屢政府ニ進言シタ、勿論之ハ現政
  府ノ責任デハアリマセヌ、所ガ時ノ政
  府ハ總テ之ヲ否定シテ頭ニ置カナイノ
  ミナラズ、其大冶鐵山ヲ基礎ニシテ、日
  本カラ莫大ナル資金ヲ支那ニ貸シテ、
  サウシテ大キナ熔鑛爐ヲ築造シテ其
  熔鑛爐ガ出來タ時分ニ鐵山ヲ調ベテ見
  ルト、案外其量ガ少カッタノデ非常ニ慌
  テタト云フコトハ、是ハ僞ラザル事實
  デアリマス、コンナ狀態デハ、如何ニ工
  場ノ發達ヲ企圖サレマシテモ、原料鑛
  ガ不安デアッタナラバ、非常ニ危險ナモ
  ノデアル、是ハ或ル程度マデ私共ノ安
  心ノ行クヤウニ御說明ヲ願ヒタイノデ
  アリマス

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• 031・中井勵作

  ○中井製鐵所長官　只今ノ御尋ニ對シ
  テハ、私御滿足ナ御答ガ出來ナイカモ
  知レマセヌカ、御承知ノ通リ現在內地
  ノ鐵ノ三分ノ二ヲ私ノ管理シテ居ル製
  鐵所デヤッテ居リマスノデ、ソレニ對ス
  ル現在竝ニ將來ノ原料鑛石ノ需給關係
  ニ付テ申シマスレバ、現在ハ約鐵鑛石
  ニ致シマシテ百萬噸ノ每年ノ需要ガゴ
  ザイマシテ、其六割五分ハ支那ノ揚子
  江流域ニ於ケル鐵山ヨリ供給ヲ受ケテ
  居リ、二割五分ハ南洋ノ「ジヨホール」
  ヨリ供給ヲ受ケテ居リマス、殘リノ約
  一割ガ朝鮮ニ於ケル日本政府所有ノ鐵
  山、又ハ民間ノ鐵山ヨリ供給ヲ受ケテ
  居リマシテ、此數量ハ今後尙ホ數十年
  續キ得ルヤウナ長期ノ契約ニ基イテ居
  リマスデ、差當ッテノ現在ノ規模ノ有樣
  デ進メルニ付テハ、餘リ懸念ヲ持ッテ居
  ナイノデアリマス、但シ八幡ノ製鐵所
  ニ於キマシテモ、將來現在ノ規模ヲ擴
  張致シマスル希望ヲ持ッテ居リマス、ソ
  レカラ何日ドレダケニ增スカト云フコ
  トハ、只今希望ニ過ギナイノデ、的確ニ
  申上ゲルコトハ出來マセヌガ、其場合
  ニ之ニ要スル原料ハ如何ニナルカト云
  フコトガ、丁度御尋ノ事ニ觸レルト思
  ヒマスガ、先ヅ今日マデ最モ能ク分ッテ
  居リマスノハ、支那ノ楊子江流域ニ尙
  ホ相當ノ鑛量ガアルト存ジテ居リマ
  ス、尙ホ其外ニ御承知ノ通リ朝鮮ニモ
  マダ手ヲ着ケナイ鐵鑛ガ相當ニアリマ
  スガ、是ハ今直ニ之ヲ採掘シテ算盤ガ
  立ッカドウカト云フト、左樣ノ見据ガ付
  イテ居リマセヌ、尙ホ內地ニモ御承知
  ノ通リアリマスガ、是モ採算上楊子江
  流域ノモノト同ジ程度ニ採レルカドウ
  カト云フコトニ付テハ、尙ホ攻究ヲ要
  スルト思ヒマス、ソレカラ南洋方面ニ
  於キマシテハ、量及質ニ於テ却テ楊子
  江流域ノ鐵鑛ヨリモ良イモノガアルヤ
  ウニ承知致シテ居リマス、ソレデ現ニ
  只今ハ佛領印度ノ或ル場所ニ於テ、相
  當ナ鑛量ノモノガアルト云フコトデ、
  外務省ヨリ申シテ參ッテ居ルノガアリ
  マシテ、ソレニ付テハ當業者モ大變希
  望サレテ、近ク之ヲ調査ヲシヤウト云
  フヤウナコトニ聞及ンデ居ルヤウニ承
  知シテ居リマスガ、尙ホ其外ニ先刻參
  與官ガ述ベラレマシタヤウナ砂鐵ノ事
  モ、是モ餘リ私ハ遠キ將來デハナイノ
  デハナイカト云フ位ニ〓究ガ進ミアル
  ト承知シテ居リマス、其外尙ホ玆ニ硫
  化鐵鑛ヨリ硫酸肥料ヲ採リマシタ中、
  硫酸ノ滓ニハ五十「パーセント」乃至六
  十「パーセント」ノ鐵ヲ含ンデ居リマシ
  テ、是ハ私ノ方デ一昨年來試驗ヲ致シ
  マシタ結果ニ依リマスト、原料トシテ
  經濟的ニモ技術的ニ差支ナイガ、尤モ
  此方ハ只今ノ所デハ多ク望メマセヌ
  ガ、是モ將來ノ製鐵ノ原料トシテ見逃
  スベカラザル一ツノ事柄デアルト存ズ
  ルノデアリマス、要スルニ現在ニ於キ
  マシテハ、製鐵所ト致シマシテハ、支那
  ノ鑛石ニ最モ重キヲ置イテ居リマス、
  尙ホ南洋ノ鑛石ニモ重キヲ置イテ居ル
  ノデアリマスガ、將來擴張スル場合ニ
  ハ、只今申上ゲマシタ各方面ノ中ニ於
  テ、一時非常ニ多量ニ所要スルト云フ
  場合ニハ兎モ角モトシテ、徐々ニ進ン
  デ參リマスノニハ、甚シク困難ナ事ハ
  無イデハナイカト考ヘテ居リマス、之
  ニ直接關係ハアリマセヌガ、民間ノ方
  デモ只今ノ程度ノ銑鐵ノ製造ヲヤラレ
  ルノデ、徐々ニ擴張サレルト云フ場合
  ニハ、先ヅ以テ支那ノ方ハ楊子江筋ノ
  鐵鑛ノ方ニ向ケラレテ居リマスガ、ソ
  レト尙ホ進ンデ必要ナ場合ニハ、ドウ
  シテモ南洋ノ方面ノ鐵鑛モ今ヨリ考ヘ
  ル必要ガアルト思ヒマス、昨年來私共
  モ一〓ニナリマシテ、製鐵業者ト種々
  協議ヲ致シマシタガ、其中ニハ是ハ誰
  デモ考ヘルノデアリマスガ、將來ノ製
  鐵業ノ爲ニハ、安心シテ原料ヲ得ルト
  云フコトガ最モ主ナル問題デアルト云
  フコトハ、誰モ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、其事ニ付テハ、場合ニ依テハ共同購
  入ヲシヤウト云フヤウナコトデ、新シ
  ク仕事ヲ始メヤウト云フ場合ニハ少
  々ヅツ個々ノ人ガ原料ヲ得ルト云フコ
  トハ、甚ダ困難デアリマスカラ、之ヲ共
  同シテ纏メテ原料ノ補足ニ努メルト云
  フコトデアレバ出來易イト云フコト
  ヲ、頻リニ攻究致シテ居リマシタヤウ
  ナ次第デアリマスガ、只今精シイ數字
  ハ記憶致シマセヌケレドモ、之ヲ入レ
  ル方法等ニ付テハ、色〓考慮ヲ要スル
  ト思ヒマスガ、今後我國ノ製鐵業ヲ進
  メテ行キマスル上ニ於テ、漸次分量ヲ
  增スト云フコトニ付テハ、左程困難ヲ
  感スル事ハ無イデハナイカト考ヘテ居
  リマスカラ、其點モ御參考マデニ申シ
  テ置キマス、尙ホ滿俺ノ事ハ、是ハ實ハ
  鐵鑛石以上ニ現在ノ狀態ヲ申シマス
  ト、供給ヲ受ケルニ困難ヲ致シテ居リ
  やゞ、現在製鐵所デ每年五萬噸ヅツ滿
  俺鑛石ヲ需要致シテ居ルノデアリマス
  ガ、其大部分ハ矢張支那ノ楊子江流域
  ヨリシテ、ソレカラ一部ハ南洋ノ「トレ
  ガンヌ」ト云フ所カラ受ケテ居リマス
  ガ是ハ支那ニ於テモ餘リ豐富デナイ
  ノデアリマスカラ、樂觀ヲ許サナイノ
  デアリマス、併シ最近聞ク所ニ依ルト、
  從來私共ノ承知シナカッタ方面ニ、滿俺
  ノ鑛量ヲ發見シタト云フコトデ、其方
  ハ是ヨリ調査ヲ致サウト思ッテ居リマ
  ス、是ハ御承知ノ通リ內地デモ餘リ纏ッ
  テ居リマセヌガ、相當滿俺鑛石ガ在ル
  ノデアリマス、之ニ付テハ今ノ所デハ
  運賃トカ費用ノ關係デ、私共ノ方デ海
  外ヨリ得テ居ルヨリモ幾ラカ高ク付キ
  マスガ、是ハ海外ヨリ受ケルモノト同
  樣ニ取レルヤウニ、只今考慮致シテ居
  リマスカラ、此方カラ多少ノ分量ヲ得
  ルコトハ追々困難デナクナルヤウニ
  考ヘテ居リマス、有ルニハアリマスガ、
  何シロ纏ッテ居リマセヌノデ、割合ニ高
  ク付クコトヲ遺憾ト致シテ居リマス

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• 032・橋本喜造

  ○橋本委員　只今森君ノ原鑛種ノ御問
  ニ對シテノ長官ノ御辯明デアリマシタ
  ガ同時ニ鐵ニ使フ「コークス」ノ原料
  ニ付テハドウ云フ御考ヲ持ッテ居ルカ、
  長官ノ御說明ヲ簡單ニ伺ヒタイ

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• 033・中井勵作

  ○中井製鐵所長官　橋本サンノコーク
  ス用ノ石炭ノコトニ付テノ御尋デアリ
  マスガ、是ハ只今ノ所非常ニ餘力ガア
  ルトハ申上ゲ兼ネルノデアリマス、只
  今ノ現狀ヲ申上ゲルト、製鐵所デ每年
  使ヒマスル「コークス」用ノ炭ハ約百萬
  噸デアリマス、是ハ御承知ノ通リ原料
  炭ニ配合炭ヲ混ゼテ「コークス」ニ燒イ
  テ居ルノデアリマスガ、此原料炭ノ全
  體ノ七割ノモノハ、內地ノ炭デ十分間
  ニ合ッテ居リマシテ、此點ニ付テハ少シ
  モ心配ハゴザイマセヌ、配合致シマスル
  約三十萬ノ配合炭、是ハ今日ノ經過ヲ
  申シマスト、一番初メニハ長崎ノ高島
  ノ炭ヲ主ニ使ッテ居リマシタ所ガ、ドウ
  シテモ是ハ成分ノ關係ヨリ、固イ「コー
  クス」ガ出來ナイト云フコトデ困ッテ居
  リマス內ニ、支那ノ開平ノ炭ガ這入ル
  コトニナリマシテ、一時ハ兎ニ角開平
  ノ炭ヲ以テ充テ居リマシタ所ガ、是ダ
  ケデヤルト云フコトハ、種々ノ場合ニ
  故障ヲ生ジマスノデ、之ニ付テハドノ
  炭ヲ使ッタラ宜シイカト云フコトヲ絕
  ヱズ色〓ト〓究シテ居リマス、最近ニ
  ハ長崎縣ノ松浦郡ニ製鐵所ガ炭坑ヲ買
  ヒマシテ、其炭及其附近ノ民營ノ炭ヲ
  買ッテ居リマスガ、是ハ開平ノ炭ト殆ド
  變ラナイ效用ヲ爲シテ居リマス、尤モ
  是ハ餘リ多ク採掘ノ出來ル狀態ニナツ
  テ居ラナイノデ、只今製鐵所ノ鹿町ノ
  鑛區ノ採掘ニ依テ七萬噸ト民間カラ五
  萬噸バカリ買ッテ居リマス、其他只今
  使ッテ居ルノデ一番宜シイノハ、滿洲本
  溪湖ノ炭ガ一番宜シイ、是ハ數年前カ
  ラ少シヅツ買入レテ居リマス、其他ニ
  モ博山デアルトカ、大連方面カラモ買
  入レテ居リマスガ、尙ホ成ベク內地ノ
  炭モ「コークス」ニ使ヒタイト云フノ
  デ、御承知ノ通リ矢張高島ノ炭、三池ノ
  炭等ハ「コークス」ニナリマスノデ、之
  ヲ色ミニ配合致シマシテ、昨年アタリ
  開平ノ炭ノ供給ガ非常ニ困難デアリマ
  シタカラ、其場合ニ三種位交ゼテ、高島
  ノ出入三池ノ炭等ヲ使ッテ見マシタガ、
  是モドウニカ鎔鑛爐ニ使フノニ使ヘマ
  ス、尙ホ目下眼ニ着イテ居リマスノハ
  北樺太ノ炭ハ大分製鐵用トシテ「コー
  クス」ニ適スルヤウデアリマスガ、是ハ
  併シ十分ノ分拆ハ私共ノ方デハシテ居
  リマセヌガ、他ノ方デ分拆サレタノハ、
  皆適當ナ物ト私共ノ方ノ技術者ハ認メ
  テ居リマス、此方デ相當出炭ガアルヤ
  ウデアリマスカラ、是モ私ノ方ヘ供給
  ヲ受ケル一ツノモノデハナイカト考ヘ
  テ居リマス

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• 034・森恪

  ○森委員　只今ノ「コークス」ノ點モ色
  色御伺ヒ致シタイト思ッテ居ッタ點デア
  リマシテ、只今橋本君ノ御質問テ好都
  合デゴザイマシタ、大體只今長官ノ御
  說明ハ御尤ト考ヘマス、玆デ私ガ結論
  ニ入リマスノハ、兎ニ角八幡製鐵所ダ
  ケデモ、全鑛量ノ六割五分ト云フモノ
  ハ長江沿岸ニ於ケル原鑛ニ依賴シテ居
  ルノデアリマス、滿俺ノ如キハ餘程困
  難ナ狀態デ、是ハ決シテ看過スベカラ
  サル重大事件ト私ハ思ッテ居ルノデア
  リマス、所ガ支那カラ受ケル所ノ原料
  ガ、成程現在ハ無事ニ這入ッテ居リマス
  ルケレドモ、最近日露戰爭以後ニ於ケ
  ル日本ノ政府ガ支那ニ對スル注意ヲ
  怠ッテ居ッタ結果トシテ、先日本會議デ
  モ申シマシタ通リ、殆ド支那ガ國有主
  義ノ下ニ禁止的態度デ進ンデ來テ居ル
  ノデアリマス、其結果支那ノ鐵鑛山ノ
  開發ト云フコトガ、最モ不便ニナッテ來
  タノデアリマス、ソレカラ又日本ノ政
  府ニ於テハ、大冶鐵山ト關係ヲ結ビマ
  ス當時ハ、其當時日本デ勢力家ト見做
  サレテ居ッタ政治家伊藤博文公ノ如キ
  ハ、自ラ當時旅行困難デアッタ漢口マデ
  行キマシテ、サウシテ大冶鐵山トノ契
  約ヲ取決メラレタト云フ大キナ手數ヲ
  掛ケテ居ルノデアリマス、過去ニソレ
  ダケ重大ナ歷史ガアリマス、然ルニ最
  近政府ハ之ニ餘リ重キヲ置イテ居ラナ
  イ、隨テ支那ニ於ケル鑛山ノ如キハ、自
  國政府ノ制肘ヲ受ケ、資金供給ノ困難
  ト云フ點カラ、皆經營困難ニ陷ヲテ居
  ル、實際鑛石ノ需要者ハ日本ノ各製鐵
  業者デアリマスカラ、輸出ハ致シテ居
  リマスガ、其實全ク氣息奄々タルモノ
  デアル、之ヲ將來放任シテ置ケバ、無事
  ニ末永ク鑛石ガ來ルデアラウカト云フ
  點ニ付テハ安心ガ出來ナイ、ソレノ論
  ヨリ證據ハ大冶鑛山デアリマシテ、大
  冶鑛山ニ對シ、日本ハ巨額ノ資金ヲ投
  ジテ、大冶鑛山ノ銑鐵ヲ原料トシテ日
  本ハ使ッテ居リマスガ、其大冶ノ山ノ原
  料炭、萍〓炭ガ殆ド共產的ニ工夫ノ經
  營參加ト云フ變態狀態ヲ呈シテ居ル爲
  メ、殆ド「コークス」ガ出來テ來ナイ、其
  結果大冶鑛山關係ノ鎔鑛爐ハ、安イ日
  本トノ契約銑鐵ノ供給ガ契約通リ行カ
  ナイ、此形〓ガ軈テハ鑛石ノ積出困難
  ニ陷ルト云フ虞ガアル、斯ウ云フ形勢
  ハ總テノ他ノ山ニモ感染スルモノト思
  フ、之ニハ又正シイ理由ガアル、ソレデ
  之ヲ約言スレバ、政治的拘束ヲ受ケタ
  コトガ一ツ、ソレカラ此鐵山ニ重大ナ
  關係ヲ持ッテ居ル日本ノ政府或ハ當業
  者ガ、資金關係ニ於テ是ハ非常ナ援助
  ヲ與ヘヌコトニナリハシナイカ、此二
  ツノ困難カラ、經營困難ニ陷ッテ居ル有
  樣デアル、飜テ內地ヲ見レバ、矢張朝鮮
  銀行或ハ臺灣銀行、或ハ對支借款ノ興
  業銀行ニ對シ、五千萬圓、一億圓トドン
  ドン政府ガ補助ヲスル、然ルニ製鐵ノ
  如キ非常ニ困難ナモノニ補助ヲシナイ
  ト云フノハ緩急輕重ヲ誤ッテ居ルノデ
  アルソレデアリマスカラ、此二ツノ點
  ニ付テ私ハ機會アル每ニ政府御關係ノ
  方ノ注意ヲ促シテ居ルノデアリマス、
  ドウ云フモノカ外務省ニ於テモ、亦大
  藏當局ニ於テモ、餘リ之ニ重キヲ置カ
  レナイ、是ハ決シテ一黨一派ノ問題デ
  ハナイ、事務的ニ之ヲ考ヘテモ、日本國
  家ノ重大ナ問題デアリマスカラ、此機
  會ニ政府委員方ハ、外務省ナリ、或ハ大
  藏省ナリニ特別ノ注意ヲ喚起セラレマ
  シテ、國論トシテ支那ノ鐵山ノ經營、又
  支那ノ鑛石ヲ無事ニ日本ノ製鐵關係者
  ニ供給サレル途ヲ開ク爲ニ補助モシ、
  又資金關係ニ於テモ十分融通ノ途ヲ開
  カレルヤウニ、一ツ御盡力アランコト
  ヲ希望的ニ申シテ置キマス、ソレニ付
  テハ御答ヲ得テモ致方ナイノデアリマ
  ス、唯私ノ申上ゲタ所ハ動スベカラザ
  ルモノデアルト云フコトヲ申上ゲテ、
  私ノ質問ハ此程度ニ止メマス

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• 035・永田善三郎

  ○永田委員　大藏省ノ政府委員ト商工
  省ノ參與官ガ居ラレマスカラ、此際政
  府ノ御意嚮ヲ承リタイ、先般關稅委員
  會ニ於テ大體承ッタコトデアリマスガ、
  當時ハ懇談デアリ、又此案ガ出ナイ時
  デアリマシタカラ、公開デハ困ルト云
  フノデ、筆記ニモ留メルコトナシニ終ツ
  タノデアリマス、故ニ此際更ニ御言明
  ヲ得タイト思フノデアリマス、第一ハ、
  日本ノ製鐵自給策ヲ圖ルニハ、滿洲ニ
  在ル本溪湖〓鞍山製鐵所ヲ除外スルコ
  トハ出來ナイト思フガドウカト云フコ
  トヲ御尋ネシタ所ガ、之ニ對シテ、其通
  リデアル、本溪湖竝ニ鞍山ノ製鐵所ヲ
  除外シテハ、日本ノ鐵ノ自給策ハ立タ
  ナイ、政府ニ於テハ其點ヲ同一ニ見テ
  居ルト云フ御返答デアッタ、ソコデ第二
  ノ質問ト致シマシテハ、之ヲ全ク內地
  ト同一ニ見テ居ラレルナラバ、ソレニ
  對シテハドウ云フ方法ヲ御執リニナル
  御考カト申シマシタ所ガ、ソレハハッキ
  リ申上ゲル譯ニハ行カヌガ、大體ニ於
  テ內地ノ製鐵業者ガ立行クヤウニシタ
  以上ハ、矢張本溪湖竝ニ鞍山ノ製鐵所
  モ立行クヤウニシナケレバナラヌ、唯
  ソレニ付テ困難ナノハ、滿洲ノ事ハ法
  律關係ガ違フ、日本ノ法律ヲ適用スル
  コトハ出來ナイ、別ナ法律デヤル、併シ
  內容ニ於テハ製鐵自給策ノ範圍ニ入ル
  モノト思ウテ居ルカラ、ソレニ適當ス
  ル方法ヲ執ルト云フ御話デアッタノデ
  アリマス此點ニ付キマシテ野村參與
  官ノ御答辯ヲ承リタイ

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• 036・野村嘉六

  ○野村政府委員　永田君ノ御質問ニ對
  シテハ、先達關稅委員會ニ於テ大臣カ
  ラ答辯致シマシタ通リデアリマシテ、
  本溪湖、鞍山ノ銑鐵製造ニ關シマシテ、
  內地ト同樣ナル奬勵ニ浴セシムルト云
  フコトハ、其趣旨ニ於テハ同ジ事デア
  ル、併ナガラ兎モ角外國デアリマスカ
  ラ、法律ノ及ブ關係ニ於キマシテモ、內
  地ダケノ法律ノ關係トハ違ッタ關係ヲ
  持ツノデアリマス、例へテ申シマスト
  國外ノ滿洲ニ於ケル製鐵業者ニ奬勵ヲ
  シタ、其奬勵ノ方法ノ遣リ口ニ依テハ、
  他ノ外國ガ最惠國條款ノ恩典ニ浴スル
  ヤウナ場合モ想像サレヌデハナイノデ
  アリマス、又一面向フカラ來ル銑鐵ニ
  對シテ、現在ノ二圓以上ニ一噸ニ對シ
  テ六圓ナラ六圓ノ關稅ヲ加ヘルモノト
  致シマシタナラバ、ソレダケ高ク向フ
  カラ鐵ガ這入ルト云フコトニナルト、
  向フノ銑鐵業者ガソレダケ重イ負擔ヲ
  負ハナケレバナラヌト云フ採算上ノ結
  論ニ陷ルノデアリマスガ、銑鐵ニ對シ
  テハ關稅据置ト云フコトニナリマス爲
  ニ、ソレダケノ負擔ヲ免レ得ル、是モ一
  ツノ見方デアリマスガ、ソレナラバ奬
  勵ノ具體的方法ヲドウスルカト申シマ
  スト、何分事外國ニ關スル關係ガアリ
  マスカラ、決意ニ於キマシテハ、內地ト
  同一ナル奬勵ノ目的ヲ逹成セシメルト
  云フノデアリマスケレドモ、其方法ニ
  付キマシテハ、攻究中ニ屬シテ居ル次
  第デアリマス、ソレナラバ先達關稅委
  員會デ聽イタコトト同ジ事ニナルデハ
  ナイカト云フ御叱リヲ受ケルカ知レマ
  セヌガ、實ノ所ハ內地ト違ヒマシテ、外
  國ニ關スル事デスカラ、ドウカ政府ノ
  決意ノ點ニ於テ御了解ヲ下サイマシ
  テ其方法ニ付キマシテハ、事情サウ云
  フ次第デアリマスカラ、是レ以上申上
  ゲルト云フコトハ一寸困ル次第デア
  リマス、商工省トシテハ是ダケ申シテ
  置キマス

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• 037・永田善三郎

  ○永田委員　只今野村サンノ御話デ
  ハ、關稅ヲ增徵スレバ、ソレダケ滿洲ノ
  銑鐵ガ內地ニ這入ルノガ困難ニナル、
  然ルニ關稅ヲ掛ケナカッタラ、ソレダケ
  損ガ少イヂヤナイカ、謂ハバサウ云フ
  譯ダカラ、深ク突込ンデ助ケテヤラヌ
  デモ宜イヂヤナイカト云フヤウニ受取
  レル、是ハ大變ナ考違ヒヂヤナイカ、尤
  モサウ云フ御意思デハナイカモ知リマ
  セヌガ、私ニハサウ聞エル、關稅ヲ掛ケ
  タ場合ニハ、內地ノ鐵ガソレダケ高ク
  ナル故ニ向フカラ、持ッテ來テモ高ク賣
  レル、同ジ事デアル、然ルニ補助ヲスル
  コトニナリマスト、關稅ト反對ニ補助
  金額ダケハ製造ノ價格ハ下ルコトニナ
  ル、補助シタダケ下ルト云フノデハナ
  イガ、兎ニ角下ル、故ニ是ハ本溪湖竝ニ
  鞍山製鐵所カラ見レバ、關稅ヲ掛ケタ
  場合ニ於テモ、又補助金ヲ出シタ場合
  ニ於テモ、同ジ事ニナル、此點ハ能ク御
  了承ヲ御願シテ置キタイト思フ

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• 038・野村嘉六

  ○野村政府委員　ソレハ私ノ言ヒ方ガ
  惡カッタカ知レマセヌガ、初ニ前提トシ
  テ申上ゲマシタノハ、內地ノ銑鐵ト同
  ジ意味合ニ於テ奬勵シナケレバナラ
  ヌ、是ハモウ前提トシテ動カナイ、偖其
  方法ニ付テハ、然ラバドウ云フコトニ
  スルカ、奬勵金ヲ交付ヌルカ、或ハ外國
  デアルカラ、特別ノ條約ヲ結ブカト云
  フ問題ニナリマスト、ソコニ他國ノ關
  係モ生ジマスカラシテ、其最善ノ方法
  ニ付テ今〓究致シテ居ルノデアリマ
  ス、勿論內地ノ奬勵ト同ジ意味合ニ於
  テ奬勵ヲスルト云フコトダケハ御諒解
  ヲ願ヒタイノデアリマス、尙ホ關稅問
  題ノ事ヲ申シマシタガ、是ハ之ニ依テ
  差引勘定何モナシト云フ意味デハアリ
  マセヌ、誤解ノ無イヤウニ-決意ハ
  內地ト同ジヤウニ奬勵スルノデアリマ
  ス、此點ハ御諒解ヲ願ヒマス

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• 039・永田善三郎

  ○永田委員　諄イヤウブアリマスガ、
  只今商工省ノ御意見ハ、大藏省ノ三木
  サンモ同意ヲ表セラレテ居ルノデアリ
  マスカ

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• 040・三木武吉

  ○三木政府委員　今野村君ノ御話ノ通
  リ、今度ノ製鐵助成ノ結果、滿洲ニ對シ
  テ何等カノ方法ヲ講ジナケレバナラヌ
  ト云フコトダケハ、十分諒解シテリ居
  マス、其方法程度ハ未決デアリマス、左
  樣御承知ヲ願ヒマス

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• 041・永田善三郎

  ○永田委員　商工省、大藏省ノ當局カ
  ラ致シマシテ、鞍山站竝ニ本溪湖ノ製
  鐵ヲ內地ノ製鐵ト同程度ノ保護ヲヤ
  ル、其事ハ決定シテ居ルガ、方法ニ付テ
  ハ〓究中デアルト云フコトデアリマシ
  テ、大體ニ於テ私ハ滿足致ス者デアリ
  マスガ、併シ前提ニ於テ日本ノ鐵ノ自
  給自足ガ基礎條件ノ一ツトナッテ居リ
  マス以上ハ、一方內地ニ於ケルモノハ
  無論、先程野村政府委員ヨリ御話ノ通
  リ、命令ノ內容迄モ大體ニ於テ極ッテ居
  ル、第一段ハ六圓、第二段ハ五圓、銑鐵
  專門ノモノニハ二圓トハッキリ極ッテ
  居リマス、然ル以上ハ若シ其範圍ノ内
  ニ置カレテ居ル日本ニ特殊ノ關係ノア
  ル兩製鐵所ニ對スル助成策ガ、何等今
  日具體的ニナッテ居ラナイト云フコト
  ハ洵ニ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマス、
  先程森君カラ御話ノ如ク、漢冶萍大冶
  ニ對スル日本ノ色ミナ關係モ、隨分苦
  心慘憺ヲシテ得タ所ノ今日迄ノ經過ガ
  アルノデアリマス、本溪湖ノ如キモ大
  倉組ノ仕事デアルト一口ニ言ッテ居リ
  マスガ、決シテサウデナイ、是ハ支那ノ
  政府ト日本ノ政府トノ條約ノ下ニ出來
  タコトデ、個人ノ經營ヲ豫想シタノデ
  ナク、大倉組ニヤラセルノガ適當デア
  ラウト云フノデヤラシタノデ、矢張非
  常ニ苦心ノ結果得タモノデアル、滿鐵
  モ亦サウデアリマス、サウシテ一方ニ
  本溪湖ハ合辦デアル、鞍山站モ、サウ言
  ヘバ合辦デアル、鞍山站ノ鑛石ノ供給
  ト云フコトハ、日支合辦ノ會社ガ鑛石
  ヲ取ルト云フ名目ニナッテ居ル、故ニ本
  溪湖ニシテモ、鞍山站ニシテモ、支那側
  ニ供ヘタ金ハ營業稅見タヤウナモノ
  デ決シテ是ガ利益ノ配當デナク、資本
  的ノ合辦ト云フモノデハナイ、唯サウ
  云フ形ニシナケレバ世間體ガ惡イ、支
  那ガ言フコトヲ聽カナイカ、サウヤッテ
  居ルノデ、實際ニ於テハ、惡イ言葉デ言
  ヘバ、誑マクラカシテ置イテ、小遣錢ヲ
  ヤルト云フ程度ノモノデアル、斯樣ナ
  次第デ、全ク日本ノ鐵ノ自給策ヲ初メ
  カラ基調トシテ出發シテ居ルノデア
  ル、此二ツノ製鐵事業ニ對シテ、而モ其
  供給ノ能力ハ本年ニ於テモ、內地ニ寄
  越スモノハ二十萬噸モアリセマウト思
  ヒマスガ、來年再來年ハ三十萬噸以上
  ニモナリマセウ、其大キナ分量ヲ有ス
  ルモノニ對シテ、内地ハ大體極マッタガ
  向フノ方ハ是カラ〓究スルト云フコト
  デハ、片手落チノヤウニモ思フ、餘リ理
  窟ヲ申シテ皆サンニ御迷惑デアリマス
  ガ、海外發展ヲシナケレバナラヌトヤ
  カマシク言ッテ居ル際、モウ少シ眞劍ニ
  御考ヲ願ヒタイ、サウデナケレバ幾分
  交付金ヲヤッテモ仕方ガナイ、又一方カ
  ラ言ヘバ愚痴ノヤウデアリマスガ、滿
  鐵ハ大キナ金持デアルカラ、製鐵デ少
  シ計リ損ヲシテモ、他デ儲ケルカラ良
  イデハナイカト云フコトヲ言ッテ居ル、
  又大倉組モサウデアルト言フ、如何ニ
  モ損ヲシテモ、他デ補ハ附キマセウガ、
  サウハ往カナイ、儲ケルトカ儲ケナイ
  トカ云フコトデナイ、製鐵事業ヲシナ
  ケレバナラヌト云フコトカラ出發シテ
  居ルノデアリマスカラ、幾ラ儲ケヤウ
  トシテモ、儲ッタラオ前ノ會社ニハヤレ
  ナイト云フ譯ニハ往カナイ、此處ヲ御
  考ヘ下サルナラバ、私ハ此兩製鐵所ニ
  對スル具體的ノ案ヲ御決メナサッテ、吾
  吾ヲシテ安心セシメラルルヤウニ願ヒ
  タイ、而シテ更ニ進ミマシテ、此方法ハ
  ドウ云フ風ナ形式デヤル御考デアリマ
  スカ、內容ハ只今ハ分ラナイト致シマ
  シテモ、法律關係ニ於テヤル御考デア
  ルカ、或ハ又他ノ契約ト云フヤウナ方
  式デ、豫算外國庫ノ負擔ト云フヤウナ
  方法デ御ヤリニナルノデアリマスカ、
  其邊ニ付テ御〓究ガアリマスナラバ承
  リタイノデアリマス、私ヲシテ言ハシ
  メラレマスレバ一番良イ方法ハ、滿鐵
  トシテハ年々一千萬圓ニ近イ政府ニ對
  スル配當ヲシテ居リマス、其外ニ百何
  十萬圓カ英國公債ノ肩代リトシテ出シ
  テ居ル、本年度ノモノガ計算ヲシテ大
  藏省ノ收入ニナッテ居リマス、故ニ之ヲ
  差引ヲシテ戴ケバ、體裁良ク濟ムノデ
  アリマス、現ニ向フカラサウ云フ差引
  計算モヤッテ居ルノデアリマス、故ニ先
  般商工大臣ノ御話デハ、十五年度ハマ
  ダ決ラヌガ、十六年度カラハ確立シタ
  イ積リダト云フ御話デアリマシタガ
  其十五年度ノ分ヲ十六年度ニ貰ッテモ
  宜イト思フ、ドウセ十五年度ノ配當金
  ヲ十六年度ノ政府ノ收入ニ持ッテ來ル
  ノデアリマスカラ、其十六年度ニ這入
  ルモノヲ返シテ貰ヘバ、結局十五年度
  カラ補助サレタ形ニナル、政府ノ豫算
  ノ上ニハ、滿鐵ノ十五年度ノ收入ト云
  フモノハ豫算ニ這入ッテ居ラヌノデア
  リマスカラ、是ハ都合好ク行クダラウ
  ト思フ、故ニ是等ノ點ニ付キマシテ、速
  ニ一ツ適當ナル御處置ヲ執ッテ戴キタ
  イ、斯樣ニ切ニ希望スル次第デアリマ
  ス

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• 042・野村嘉六

  ○野村政府委員　只今永田君ノ御意見
  ニ對シマシテハ、深ク考慮致シマス、ソ
  レカラ森君ノ先程ノ原石ノ御話、大體
  ノ方針ニ對シテハ、政府ニ於キマシテ
  モ矢張是等ノ國策トシテ最モ重要ナル
  事ト信ジマスカラ、是亦深ク考慮致シ
  マス

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• 043・戸澤民十郎

  ○戶澤委員　永田君ノ滿洲製鐵業ニ對
  スル助成方法ニ關スル御尋ニ對シテ、
  政府委員ノ御說明ガ極メテ婉曲デ、吾
  吾ニ少シ分リ兼ヌル點ガアルノデ、斯
  ウ言ッテ承ッテ置キタイノデス、要スル
  ニ內地同樣ノ助成ヲシヤウト云フ決心
  ハ政府ニツイテ居ル、併シ其方法手段
  ニ付テハ、外國ト云フ關係モアルシ、隨
  テ內地ノ法律ヲ直接適用モ出來ナイ、
  又條約上ノ關係モアルカラ、適當ナ方
  法ヲ見出サナケレバナラヌト云フコト
  デアリマスガ、其最後ノ結論トシテハ、
  內地同樣ノ程度ニ於テ、大正十六年度
  カラ助成ニ關スル的確ナル方法ヲ立テ
  ヤウト云フ御決心ガアルト云フコトニ
  承ッテ宜シイノデスナ

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• 044・三木武吉

  ○三木政府委員　只今ノ戶澤君ノ御質
  問、寔ニ御尤デゴザイマスガ、内地同樣
  ノ程度ト云フコトハ、ドウ云フ意味デ
  言ハレタノカ知レマセヌガ、內地ノ鐵
  ノ助成ハ、野村君カ誰カ言ハレタ、所謂
  「ホットメタルシステム」ト云フヤツヲ
  基礎ニシテ、助成ノ方法ヲ立テテ居ル、
  滿洲ノ鐵工業ニ對スル何等カノ方法ヲ
  講ズルト云フコトハ、此基礎ノ上ニハ
  同ジヤウニヤル譯ニハ行キマスマイ、
  隨テ同一ナル程度ニ於テト云フ意味
  ガ、同ジヤウニ何トカ保護ヲシナケレ
  バナラヌト云フ意味ナラバ、其通リデ
  宜シウゴザイマスガ、同ジ程度ト言ウ
  テ、程度ヲキチット切ッテ、何等ノ差別ナ
  キ待遇ヲト云フ意味ナラバ、ソコニハ
  多少ノ差異ガアルヤウニ思ヒマス、隨
  テ其手段方法ハ目下考慮中デアルト云
  フコトヲ申上ゲテ置イタ、同時ニ程度
  モ內地ト一分一厘變ラナイ程度ト云フ
  ナラバ、程度ニ付テモ考慮中ト申上ゲ
  ルヨリ仕方ガナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=44

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• 045・戸澤民十郎

  ○戶澤委員　共通リデ宜シウゴザイマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=45

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• 046・永田善三郎

  ○永田委員　私三木サンノ今ノ御話
  ニ付テ一寸意外ニ思フ、ソレハ關稅委
  員會カラ此委員會ニ引續イテノ商工大
  臣ノ御說明モ、吾ミモ洵ニ婉曲ニ聽イ
  テ居ル、只今深ク突込ムコトハドウモ
  政府ノ御趣意デナイヤウダカラ、婉曲
  ニ聽イテ居ルノデアリマス、御列席ノ
  諸君モ皆サウデアリマスガ、三木サン
  ニハ「ホットメタルシステム」ヲ基調ト
  シテト堅ク仰シヤッテ居リマスガ、ソレ
  ハ委員會ノ空氣ト相容レヌヤウニナッ
  テ居ル、關稅委員會以來吾ミノ頭ニ映
  ジテ居ル空氣ハソレハ名前ダケデ、ソ
  レヲ基調トスル意味ハナイノデ、サウ
  云フ空氣ノ中ニ今日マデ來テ居ル、而
  シテ決シテ御咎メ申シタリキツイコト
  ヲ言フノデハナイガ、今迄ノ氣分ヲ一
  寸破ラレルヤウナ氣ガスル、單ニ「ホッ
  トメタルシステム」ヲ完成シヤウト云
  フコトト致シマスト、是ハ餘程皆ノ考
  トハ違ッテ來ル、ソレハ單ニ名前ヲ藉リ
  ルノデ、關稅ニ依ル政策ガ執レナイ、何
  カ外國トノ關係ノ良イ方法ハナイカト
  云フ結果、段々考ヘテ此處ニ至ッタノ
  ダ、ソレハ名前デ、實質ニ於テハ關稅ヲ
  掛ケタト同ジヤウナ成績ヲ擧ゲタイ、
  併シソレガ餘リ露骨ニナッテハ困ルカ
  ラ、成ベク物價ヲ下ゲヤウト云フ言葉
  ヲ以テ行クト云フヤウニ、吾〓ノ頭ニ
  這入ッテ居ル、今ノ鞍山、竝ニ本溪湖ノ
  如キモ、向フニハ製鋼設備ガ無イ、故ニ
  「ホットメタルシステム」ニ合ハナイカ
  ラ、サウ云フモノニ對スル考方ハ、今ノ
  內地ノ製鐵ニ對スル考トハ自ラ違ッテ
  來ルト云フコトニナリマスト大分吾
  吾ノ考ト違ッテ來ル、故ニ其點ニ付テ餘
  リハッキリデナクテ宜シウゴザイマス
  ガ、モウ一應簡單ニ御話ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=46

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• 047・三木武吉

  ○三木政府委員　私ノ申上ゲタノハ、
  內地ト一分一厘違ハヌト云フ助成ヲス
  ルト云フ意味ニ御取リニナルト、內地
  ノ助成ハ「ホットメタルシステム」ヲ基
  調ニシテ居ルノデアルカラ、其通リ適
  用シヤウトシテモ、恐ラクハ出來マス
  マイ、隨テ同ジヤウナ程度ト云フ意味
  ガ、一分一厘違ハヌヤウナ助成ヲスル
  意味ト了解シテ宜イカト言ハレタナラ
  バ、ソレハサウデハナイト云フノデ申
  上ゲタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=47

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• 048・永田善三郎

  ○永田委員　率ノ方ヲ問題ニシテデア
  リマスナ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=48

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• 049・森恪

  ○森委員　三木君ノ御言葉デハ吾〓
  了解ガ益困難ニナル、私共永田君ト
  恐ラクハ同一意味ダラウト思フノデス
  ガ、「ホットメタルシステム」ト云フノハ
  唯理想デアル、是ガ今日ノ所デハ、製鐵
  事業ノ發達ヲ期スルニハ一番良イダ
  ラウト云フコトヲ當局ガ考ヘラレテ、
  此點ニ成タケ進メタイト云フ希望デア
  ル嘗テ商工大臣ハ關稅委員會デ斯ウ
  云フコトヲ言ッテ居ラレル、法ノ形式カ
  ラ言ヘバ鋼ヲ奬勵スルノデアル、併ナ
  ガラ銑鐵ガ根柢ニナルノデアルカラ、
  結局銑鐵ヲ奬勵スルノデアルト言ッテ
  居ラレル、唯種々ナル關係ニ於テ、是ガ
  若シ關稅引上デ簡單ニヤレルナラバ、
  恐ラクハコンナ廻リ諄イ事ハ御ヤリニ
  ナラナカッタラウト思フ、併ナガラ種々
  ナ出來ナイ事情ガアッテ、斯ウ云フ方法
  ヲ御執リニナル、假ニ一步ヲ讓ッテ「ホッ
  トメタルシステム」ヲ理想トセラレテ
  モ、假ニ滿洲デ滿鐵ガ鞍山站ニ於テ製
  鋼事業マデモ完成サレレバ、矢張同一
  ノ補助ヲサレルノガ當リ前ト思フ、同
  樣ニ鋼ニ行カナイニシマシテモ、銑鐵
  ダケニシマシテモ、矢張內地同樣ノ補助
  ヲ御與ヘニナルコトハ、私ハ寧ロ當リ
  前デハナイカト思フ、是ガ所謂勅令ニ
  依テ六圓、五圓、三圓ト云フ數字ガ玆ニ
  明ニナッテ居レバ、其目的物ハ異ッテ居ツ
  テモ、其數字ニ等シイモノヲ、矢張滿洲
  ニ於テモ同樣ノ數字ノ金額ヲ助成スル
  ト云フコトガ、當然ノヤウニ私共ハ考
  ヘテ居リマス、恐ラク永田君ノ御意思
  モ斯樣デアラウト私ハ思ヒマス、此點
  ヲ一ツ確メテ置キタイ、是ハ非常ニ「デ
  リケート」ナ問題デ、後ニ關係ノアル問
  題デアリマスカラ、相願クバ一ツ主務
  大臣ノ御臨席ヲ願ッテ、御言明ヲ願ッテ
  置イタ方ガ宜カラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=49

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• 050・三木武吉

  ○三木政府委員　私ノ申上ゲタノハ、
  矢張所謂「ホットメタルシステイム」ト
  云フモノヲ基調ニシテ、製鐵業ノ助成
  案ト云フモノガ出來タノデ、其效果ガ
  銑鐵ノ助成ニナルカナラヌカト云フコ
  トニ付テ、私ハ申上ゲテ居ルノデハナ
  1、今ノ助成法ノ基礎ガ此處ニ置イテ
  居ルト云フノデアル、ソレカラ滿洲ノ
  銑鐵ヲ保護シナケレバナテヌト云フノ
  ハ、現在ノ狀態ニ於テハ、向フノ銑鐵ヲ
  此方ヘ持ッテ來テ、此方ノ製鐵業者ニ供
  給スルト云フヤウナ狀態ニナッテ居ル
  ノダカラ、此助成法ノ基調ヲ其儘滿洲
  ノ銑鐵業者ニ持ッテ行ッテ、適用シテヤ
  ラウト云フテモ、實際ハ無理デハナカ
  ラウカ、目的ハ滿洲ノ銑鐵業者ヲ保護
  スルヤウニ、何トカ方法ヲ講ズル必要
  ガアルノデハナカラウカト思ヒマス
  ソレニ付テノ方法ハ、目下政府デ攻究
  シテ居ルト申上ゲタノデ、是ハ私ノ言
  方ガ足リナイノカ、御聽違ガアルノカ
  知レマセヌガ、其邊ノ事ハドチラデモ
  宜イノデアリマス、サウ云フ風ニ御了
  解願ッタラ宜シウゴガイマス、ソレカラ
  此問題ニ付テ森君ガ主務大臣ニ出席ヲ
  シテ言明ヲ求メタイト云フノハ、私ハ
  洵ニ御尤ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=50

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• 051・森恪

  ○森委員　主務大臣御臨席ノ場合ニ申
  上ゲル方ガ宜イカモ知レマセヌガ、三
  木君ノ只今ノ御答辯デ、又新シク吾〓
  ハ惑フノデアリマス、只今ノ御話デハ、
  滿洲ノ鐵ヲ奬勵スル其趣旨ハ、日本內
  地ニ銑鐵ヲ供給サスト云フ意味ニ於テ
  之ヲ奬勵スルノダト云フ風ニ御答辯ニ
  ナッタヤウニ思フ私共ハサウデハナイ
  單ニ滿洲ダケモ、製鐵事業ガ發達スル
  場合ハ之ヲ奬勵サレルト云フノガ政
  府ノ御方針デハナイカト思ヒマス、現
  ニ滿洲ニ於テハ、滿鐵ノ如キハ、製鋼所
  マデモ計畫シテ居ルノミナラズ、一步
  進ンデ色ミナ「メタル」マデモヤッテ居
  ル、例レバ「ガルバー、ナイズドアイヲ
  ン」ノ如キモ奬勵シテ居ル、現ニ著手ニ
  モナッテ居ルモノガアル、斯ウ云フモノ
  モ助成シ奬勵シテ行カレルト云フコト
  ガ必要デアル、唯場所ガ違フトカ、習慣
  ガ違フ爲ニ、現ハス法律ノ形式ナリ、手
  續ヲ異ニサレルト云フ違ヒダケト私共
  ハ了解シテ居ッタガ、只今三木參與官ノ
  御說明ニ依ルト、從來私共ノ承知シテ
  居ルコトト餘程違フ、是ハ私ガ誤リデ
  アルカ、或ハ三木參與官ガ誤デアルカ
  ハ存ジマセヌガ、要スルニ政府ハ何處
  へ狙ヒヲ付ケテ居ラレルカ、之ヲ明ニ
  シテ戴キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=51

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• 052・戸澤民十郎

  ○戶澤委員　此問題ニ付テハ、商工大
  臣ガ見エルヤウデアリマスカラ、其上
  デ意見ヲ交換シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=52

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• 053・金光庸夫

  ○金光委員　私ガ伺タイト思フ點ハ、
  丁度今問題ニナッテ居リマス所ニ多少
  觸レルカト思ヒマス、此問題ハ永田君
  其他ノ應答ヲ拜聽致シマスト、議員側
  ノ方デハ關稅ノ保護ガ足リナイカラ、
  此奬勵法ニ依テ保護奬勵シヤウト考ヘ
  テ居ルガ、政府ハ成ベクサウ云フ風ニ
  拵ヘタクナイト云フヤウナ事情ガアル
  ヤウニ窺ハレルノデアリマス、此奬勵
  法ノ內容ヲ見マスレバ、關稅ノ保護ノ
  不十分ナルガ故ニ此法ガ出來タノデア
  ル、斯ウ云フ趣旨ガ含マレテ居ルト云
  フコトハ爭ハレナイノデアリマス、或
  ハ此奬勵法ノ立案ノ趣旨ガ、全部ガサ
  ウデナクテモ、一部分含マレテ居ルト
  云フコトハ御認メニナラレマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=53

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• 054・野村嘉六

  ○野村政府委員　金光君ノ御質問ハ、
  此奬勵法ハ製鐵ヲ保護スルノデアル
  ガ、其中ニ關稅ニ依テ保護サルベキ點
  ヲモ包含サレタモノデアルカ、斯ウ云
  フ御質問ノヤウニ承リマシタ、是ハ先
  程申上ゲマシタ通リニ、此法案ハ銑鋼
  一貫主義デアル、卽チ各國ノ事績ニ鑑
  ミマスト云フト銑鐵ノ液體ヲ直ニ鋼鐵
  ニ仕上ゲル、サウスレバ生產費ヲ省イ
  テ、事業ニ於テハ便利デアル、發達ノ爲
  ニ非常ニ宜シイノデ、此主義ノ下ニ本
  案ガ出來マシタノデアリマス、サウシ
  テ繰返シテ申シマスガ、獨逸ノ如キハ
  全ク此主義ノ下ニ、遂ニ立派ナル鐵ノ
  製作ノ結果ヲ得タト云フコトデアリマ
  ス、是ガ主タル目的デアリマス、ソレデ
  其目的ヲ達シマスレバ、隨テ需要者ニ
  對シテ便利モ與ヘルデアリマセウ
  シ、又鐵ノ同一種類ノ品物トノ間ノ競
  爭ニ對シテモ利便ヲ與ヘルデアリマ
  セウシ、或ハ其結果トシテ自然關稅ノ
  調和ヲ得ルヤウナ結果ヲ得ルヤウナコ
  トガ、自然ノ結果トシテ、其利便モ得ル
  コトガアルダラウト思ヒマス、要スル
  ニ本案ハ銑鋼一貫主義ガ目的デアリマ
  シテ、其效果カラ申シマシタナラバ、關
  稅ニ對スル調和劑ニモナルダラウト思
  ヒマス、又需要者ニ對スル調和劑ニモ
  ナルダラウト思ヒマス、有ユル方面ニ
  對スル效果ガ發現サルベキモノダラ
  ウ、斯ウ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=54

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• 055・金光庸夫

  ○金光委員　私ハマダ新法ト舊法トノ
  比較對照モ十分ニ致シテ居リマセヌノ
  デ少シ御尋致シマスコトガ迂遠デアル
  カト考ヘマスガ、今囘ノ改正ハ銑鋼作
  業一貫ノ分ノミニ付テ御改正ニナッタ
  モノデアリマスカ、新シキ改正法律案
  ノ條文ヲ見マスレバ、銑鋼一貫主義以
  外ノ條文ハ隨分澤山アリマスガ、是ハ
  總テ舊法ニ屬スルモノノミデアリマス
  カ、之ヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=55

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• 056・野村嘉六

  ○野村政府委員　舊法ノ方カラ申上ゲ
  マス、舊法ノ方デハ、保護シテアリマス
  ノハ、大體此營業稅、所得稅、ソレカラ
  土地收用ニ關スル關係、是等ヲ此製鐵
  業者ニ對シテ免除シタノデアリマス、
  是ダケガ舊法ニ於ケル先ヅ大體其效果
  デアリマス、ソレカラ又此製鐵ヲ致シ
  マス諸機械-外國カラ輸入致シマス
  諸機械ニ對スル輸入稅ノ免除、是ダケ
  ガ舊法ノ奬勵法ノ範團デアリマス、サ
  ウシテ此恩典ヲ受クベキモノハドウデ
  アルカト申シマスト云フト、是ハ此法
  律ト同ジ事デ、年額三萬五千噸トカ、又
  種類ニ依テ五千二百萬噸トカ、又電氣
  製鐵ノ如キハ漸ク千二百萬噸トカ云
  フ、此製鐵ノ數額ニ依テソレヲ定メテ
  アル、斯ウ云フコトニナッテ居リマス
  ソレカラ、尙ホ序ニ申シテ置キマスガ、
  是レ以外ニ船ニ使フ所ノ鋼鐵ニ對シテ
  ハ、保護ヲ與ヘテ居リマス、是ハ全ク船
  舶ニ使フ所ノ鋼材ダケデアリマス今
  度ノハドウデアルカト申シマスト云フ
  ト、今申上ゲマシタ營業稅-今囘ノ
  改正ニナリマシタ營業收益稅、ソレカ
  ラ所得稅、ソレニ土地收用法、其外ニ新
  シク六圓、五圓、三圓ト云フ割合ヲ以
  テサウシテ今度ハ金ヲ交付シテ奬勵ス
  ル、今度ノト前ノト違フ所ハ、今度ノハ
  此前ニ加フルニ金ヲ以テ奬勵スル、是
  ダケガ前ノヨリ違フ眼目デアリマス、
  併ナガラ今申ス通リニ銑鋼一貫主義デ
  アルカラシテ、此前ノハ銑鐵ダケデモ
  ソレダケノ特典ガアリマシタケレド
  モ、今度ハ銑鋼一貫主義デアルカラシ
  テ、最後ノ目的ハ詰リ鋼塊、鋼材ニセナ
  ケレバ此奬勵金ハ交付セヌ、此點ガ違
  フ所ノ最モ主ナルモノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=56

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• 057・金光庸夫

  ○金光委員　サウ致シマスト殆ド今囘
  ノ改正ノ大部分ハ、銑鐵、鋼鐵ノ一貫作
  業ヲ奬勵スルト云フ此御趣旨ノミノヤ
  ウデアリマスガ、銑鐵ヲ直ニ鋼鐵ニ其
  工場デセズニ、ソレヲ冷シテ他ニ賣ッテ
  之ヲ鋼鐵ニスル場合ニハ、五圓ノ奬勵
  金ヲ支給スルト云フコトニ致シマスト
  云フト、其部分ノミニ付テハ銑鋼一貫
  主義-此除外例ニナルモノト見ラレ
  ルノデアリマスガ、左樣デゴザイマセ
  ウカ、又サウ云フモノガ大部分ヲ占メ
  タ場合、殆ド皆設備ダケハ銑鋼一貫ノ
  設備ヲシテ置キマシテ、何等カノ事情
  ノ爲ニ、總テ其銑鐵ハ之ヲ他ノ工場ニ
  持ッテ行ッテ賣却スルナリ致シマシテ、
  サウシテ五圓シカ補給金ガ出ナイト云フ
  ヤウナ場合ガ多カッタトキニハ、此改正
  案ノ御趣旨ニ副ハナイコトニナルト思
  ヒマスガ、此點ハ如何ナルモノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=57

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• 058・野村嘉六

  ○野村政府委員　今申上ゲマス通リ
  ニ、此銑鋼一貫主義デアリマスノデ、銑
  鐵ダケヲ拵ヘテソレヲ鋼鐵ニ仕上ゲ
  ヌ、此時ニハ五圓ハ當ラヌガ、詰リ其五
  圓ガ貰ヘル、一瓲ニ付テ五圓交付スル、
  矢張銑鐵カラ鋼鐵マデ仕上ゲルト云フ
  目安デナサレバ、貰フコトガ出來ナイ
  ノデアリマス、銑鐵ダーケ仕上ゲテハ五
  圓吳レヌノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=58

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• 059・金光庸夫

  ○金光委員　サウ致シマスト此規定ニ
  ハマラナイ所ノ、例ヘバ銑鐵ノミヲ三
  萬五千瓲以上製造スル工場モ段々ゴザ
  イマスヤウデスガ、サウ云フモノハ若
  シ此規定ナカリセバ、輸入品ニノミ對
  抗スル場合ニハ、或ハ工業ガ成立テ行
  クト云フヤウナ程度ニ囘復スル場合ガ
  アルカモ分ラヌ、其場合ニ於テモ此奬
  勵法アルガ爲ニ、其輸入品ト對抗スル
  ノミナラズ、內地品-此奬勵ヲ受ケ
  ル製鋼場ノ製品ト對抗シナケレバナラ
  ヌ、不利ノ地位ニ立ツ場合ガアルト思
  フノデアリマス、何故カト申シマスレ
  バ、此奬勵法ニ依テ政府ノ御考ニナッタ
  所ニ依レバ、輸入品ヨリモ幾ラカノ
  利益ヲ得フレル、輸入ノ價格以上ニ賣
  レル非常ナ利益ガアル、斯ウ云フ風ニ
  御考ニナッテ居ルノデアリマスルカラ、
  此奬勵法ノ適用ヲ受ケナイ所ノ、何等
  ノ保護ヲ受ケナイ製鐵業ガ、輸入品ダ
  ケナラバ成立ツ場合ガアッテモ、此奬勵
  法ノ保護ヲ受ケルモノデアルガ爲ニ、
  成立タナイ場合ガアルトスルト、此奬
  勵法ニ漏レタ者ニ對シテハ、氣ノ毒ナ
  感ジガ起ルノデアリマスガ、其點ハ如
  何御考ニナッテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=59

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• 060・野田鶴雄

  ○野田政府委員　只今質問ノ三萬五千
  瓲以上ノ製銑設備ヲ持ッテ居リマシテ、
  製銅設備ヲ持ッテ居ラナイ場合ハ、將來
  其會社ガ製銅設備ヲ造ルト云フコトヲ
  認可ヲ得テ居リマスレバ、具處ニモ矢
  張若シ其銑鐵ヲ-製銑ヲ他ノ工場ニ
  賣リマシテ、買ッタ工場ガ銅ニシマスレ
  バ、一瓲五圓宛貰フコトニナルノデゴ
  ザイマス、若シソレヲ鑄物ノ銑鐵デア
  リマストカ、或ハ其儘自分ノ所ニ溜メ
  テ置キマシタ場合ニハ、ソレニ對シテ
  〓三圓宛ヲ貰フコトニナッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=60

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• 061・金光庸夫

  ○金光委員　サウ致シマスト設備ハ一
  貫シタル作業ノ設備ヲ持ッテ居ナクテ
  モ、自分ノ工場デハ銑鐵ノ製造バカリ
  ノ設備ヲ持ッテ居ッテモ、其銑鐵ヲ他人
  ノ工場ニ持ッテ行ッテ銅鐵ニスルト云フ
  コトニナレバ、甲ノ製造場ト乙ノ製造
  場ヲ繼ギ足シテ考ヘテ、サウシテ五圓
  ノ支給ヲ受ケラレルノデアリマセウ
  カ、ソレナラバ救濟ニナリマスガ、自分
  ノ工場ニ同一ノ設備ガナイノナラバ、
  イケヌト云フコトニナレバ、矢張五圓
  ノ支給ヲ受ケルコトハ出來ヌコトニナ
  ルト思ヒマスガ、如何デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=61

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• 062・野田鶴雄

  ○野田政府委員　其銑鋼一貫ノ設備ヲ
  其工場ガ飽迄モシナイト云フヤウナ、
  何等カノ證明デモアリマスレバ、其工
  場ハ今度ノ奬勵法デ貰へナイコトニナ
  リマス、併シ三萬五千瓲以上ノ銑鐵ノ
  設備ヲ以テ、假ニ今玆ニ御話シニナッタ
  ヤウナ製鐵所ハ、將來政府ハソコデ鋼
  マデ拵ヘテ貰フコトヲ希望スルト云フ
  ノガ此法ノ精神デアリマス、ソレデ三
  萬五千瓲以上ノ銑鐵ヲ作ッテ居リマス
  會社ガ、將來三萬五千瓲以上ノ鋼ヲ拵
  ヘテ、一貫シタ作業ヲスルト云フコト
  ノ計畫ヲ立テテ、其主務官廳ノ認可ヲ
  得テ居リマスレバ、ソレハ矢張交付サ
  レルコトニナリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=62

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• 063・金光庸夫

  ○金光委員　サウ致シマスト三萬五千
  瓲以下ノモノハ、今日デハ總テ救助ニ
  ナッテ居ル所ガ多イヤウデアリマスガ、
  ソレ等ハ總テ犠牲ニサレルト云フ御考
  デアルカ、先程私ハ伺ヒマシタ趣旨カ
  ラ申シマスレバ、此奬勵法ノ爲ニ、ヨリ
  以上ニ壓迫ヲ受ケルト云フコトニナリ
  マスガ、三萬五千趣以下ハ總テ見殺シ
  ニナルト云フノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=63

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• 064・野田鶴雄

  ○野田政府委員　三萬五千瓲ト申シマ
  スト、先程申シマシタヤウニ、百瓲ノ熔
  鑛爐ヲ持ッテ居ル所デアリマス、ソレ以
  下ノ熔鑛爐デ獨立シテ居ル會社ハ、今
  日殆ド二三軒位ニ止ッテ居ルノデアリ
  マス、ソレモ殆ド最早外國ノ銑鐵ニ對
  シテモ、旣ニ競爭場裡ニ立テマセヌデ
  休ンデ居リマス、午前ニ申シマシタ通
  リノ百瓲爐デナケレバ、到底將來ノ經
  濟界ニ乘リ出シテイケナイト見テ居ル
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=64

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• 065・金光庸夫

  ○金光委員　今休ンデ居ルノハ引合ハ
  ヌカラデアリマスカ、此工場助成法ガ
  出來ルト致シマスレバ、製造ノ復活ガ
  出來ルト思ヒマスガ、ソレ等ニ付テ何
  等御考慮ガ無カッタコトハ甚ダ遺憾ニ
  思ヒマスガ、之ニ付テ何カ御救濟ノ御
  考デモアルベキ筈ノモノト思ヒマス
  ガ、銑鋼一貫主義ト云フコトハ、殆ド改
  正法ノ趣旨目的デアルヤウニ伺ヒマ
  ス、ソレナラバ現在銑鋼一貫作業ノ設
  備ヲ爲シテ居ル工場ハ、合計七ツ程ア
  ルヤウニ思ヒマス、然ルニ之ヲ三萬五
  千瓲ト御制限ニナッタ爲ニ、僅ニ-僅
  デモアリマセヌガ、量カラ言ヘバ多ク
  アリマスガ、會社ノ數カラ言ヘバ僅ニ
  釜石ト室蘭、兼二浦ノ三社ノガ之ニ該
  當スルノデアリマス、尙ホ將來此奬勵
  法ガ出來タ爲ニ、此規定ニ適應スルヤ
  ウナ設備ヲセントスル鶴見ノ淺野工場
  ガ一ツ、合計四箇所デアリマス、其他三
  箇所ニ、可ナリ有力ニ認メラレル銑鋼
  一貫ノモノガアリマス、ソレハ神戶鐵
  鋼所、是ガ一年間ニ製銑設備ガ一萬五
  百瓲、製鋼設備ガ十一萬瓲、ソレカラ日
  本鋼管會社川崎工場、是レノ製銑設備
  ガ約一萬四千瓲、此製鋼設備ガ約二十
  萬瓲、ソレカラ淺野ノ小倉製鋼所ニ於
  テハ、製銑ノ設備ガ約一萬四千瓲、製鋼
  設備ガ約七萬五千瓲、大體ニ於テ斯ウ
  云フ數字ヲ現ハシテ居リマス、是等ノ
  工場ハ、何レモ銅鐵ニ於テ十萬瓲以上
  ニナッテ居リマスシ、銑鐵ノ方デモ一萬
  四五千瓲ト云フ所デ、可ナリナ設備ニ
  ナッテ居リマス、是等ガ三萬五千瓲ト云
  フ制限ガアル爲ニ、何レモ奬勵法ノ恩
  典ニ浴シナイコトニナルノデアリマ
  ス、而カモ是等ハ何レモ政府ガ〓特ニ力
  ヲ御用イニナル所ノ銑銅一貫主義ニ合
  シテ居ヲ設備デアルノデアリマス、所
  ガ餘リ設備ガ小サイト、比較的建設費
  ガ多ク要ルト云フ御話デアリマスケレ
  ドモ、建設費ハ旣ニ掛ケテシマッテ居ル
  カラ、之ヲ此儘放任シテ、此奬勵法ノ範
  園外ニ置クコトニナリマスト、永久ト
  マデイカヌデモ、近キ將來ニ於テ到底
  復活サレル見込ハナイノデアリマス、
  然ルニ此奬勵法ヲ適用サレルコトニナ
  レバ、是等ハ相當有力ナ工場デ、經營者
  モ相當ナモノデアリマスカラ、必ズ是
  ハ復活シ得ルト思ヒマス、又一萬瓲ノ
  工場ヨリモ、三萬瓲ノ工場ノ方ハ建設
  費ガ割合ニ少ナクナルト云フコトハ
  爭ハレナイコトデアルケレドモ、既ニ
  出來テ居ルノデアル、ソレヲ利用シ得
  ザルコトニ依テ、其固定資本ヲゼロニ
  スルヨリモ、之ヲ活カシテ使フト云フ
  コトガ有益ナコトト思ヒマス、隨テ其
  設備ニ多少掛ッテモ、生產費ニ於テ相償
  フコトト信ジマスカラ、之ヲ復活スル
  コトハ政府ノ國策ノ上ニ必要ト思ヒマ
  ス、ソレカラ先程ノ御答デハ、五十瓲ノ
  鑛爐ヨリ百瓲ノ 鑛爐ノ方ガ「コー
  クス」ガ割合ニ少ナク、經濟的ニ出來ル
  ト云フ御話デアリマシタガ、私ノ承ツテ
  居ル所デハサウ云ラコトハナイ、小サ
  イ方ガ却テ精巧ニヤリ得ルト思フ、ソ
  レカラ大キナノ鑛爐ノ方ガ、小サイノ
  ヨリモ一定シテ宜イト云フ御說デアリ
  マシタガ是モサウデハナイ、寧ロ反對
  デアル、小サイ方ガ精巧ニ行ケルノデ
  アル、例ヘバ人ヲ多ク使フトカ、他ノ經
  濟的生產費ノ損失ハ別トシテ、私ハ其
  道ノ人カラ聞イタノデアリマスケレド
  モ、私ハ素人デ、製鐵所ノ方ハ經濟ノア
  ル方デアルカラ、其點ハ此所デ爭ヒマ
  セヌガ、兎モ角モ設備ノコトハ計算シ
  ナクテモ、私ハ復活スル途ガアレバ、復
  活サシタ方ガ宜イト思ヒマス、現ニ神
  戶ノ製鋼所ニ於ケル能力ノ如キモ、今
  申上ゲタヤウニ、一萬五百瓲、日本鋼管
  會社ガ約一萬四千瓲、小倉製鋼所ハ一
  萬四千瓲トスレバ、合計三萬八千五百
  瓲ニナルノデアリマス、此三ツノモノ
  ヲ寄セルト、丁度資格アル一ツノモノ
  位ニ該當スルノデアリマスカラ、强チ
  取ルニ足ラヌト云フ程ノモノデハナイ
  ト思ヒマス、假ニ三萬五千瓲ト云フ制
  限ヲ、一萬瓲ト云フコトニ低下スルト、
  此三ツノ工場ガ何レモ鋼鐵ヲ製造スル
  ノデアリマスカラ、其原料ノ銑鐵ノ幾
  分ノ自給ガ出來マス、サウシテ一方ニ
  於テ製鋼ノ生產費ヲ減ズルコトガ出來
  ルサウシテ経濟的作業ヲ圓滑ニ行フ
  コトガ出來ル、又他方ニ於テハソレガ
  爲ニ銑鐵ノ輸入ヲ防遏スルコトガ出來
  ル、其金額ガ約八十五萬圓ニ達スルノ
  デアリマシテ、大キナ數量ノ前ニ大シ
  タ數字デナイカ存ジマセヌガ、可ナリ
  相當ノ數字ニ上ルモノト思ハレル、又
  之ヲ段々擴張シテ行クモノモ出來マ
  ス、併ナガラ今直ニ之ヲ三萬五千瓲ノ
  設備ニシタト云ッテモ、今日ノ資本ノ程
  度デハ不可ナルコトヽ思フ、ソコデ全
  ク休ンデ居ル資本ヲ起シテ働カセルト
  云フコトハ、確ニ此製鐵奬勵策ノ目的
  ノ一ツデハナイカト思フノデアリマス、
  ソコデ政府ハ三萬五千瓲以上ノ製銑能
  力ト云フコトヲ、一萬瓲ト云フコトニ
  御低下ニナッテドウカ、サウシテ製鋼能
  力ハ三萬五千瓲デモ宜シイ、併シサウ
  スルト一方ハ一萬瓲、一方ハ三萬五千
  瓲ト云フコトナレバ、銑鋼一貫ト云フ
  作業ノ趣旨ニ合致シナイヂヤナイカ
  ト云フ疑モアリマセウガ、ソレナラ
  バ双方共一萬瓲以上トシテモ宜イノ
  デアリマス、併ナガラ只今ノ狀態カラ
  及マスレバ、銑鋼一貫ノ作業ヲ爲シ得
  ル設備ヲ有スル會社ハ、此規定ニ漏レ
  ル所ノモノハ三ツシカナイ、其三ツノ
  モノハ十萬瓲內外ノ力ヲ持ッテ居リマ
  スカラ、此制度ハ第一條ノ制限デ差支
  ナイ、唯〓其原料タル銑鐵ヲ製造スル
  ト云フ數量ヲ三萬五千瓲ヲ一萬瓲ニ低
  下シテモ、他ニ抵觸スルコトハナイ、失
  フ所少クシテ得ル所ハ多イト思ヒマ
  ス、之ニ對スル政府ノ御考ヲ伺ヒタ
  イ

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• 066・三井米松

  ○三井鑛山局長　御答致シマス、先刻
  三萬五千瓲ノ製銑能力ヲ持ッテ居ルコ
  トノミニ付テ御質問ガゴサイマシテ、
  他ノ政府委員ヨリ御答ガアリマシタ
  ガ、尙ホ私ヨリ一言補足致シテ置キマ
  ス、三萬五千瓲以上ノ製銑能力ノミヲ
  以テ將來製鐵事業ヲ營ミマスモノハ、
  現ニ現行法ノ規程ノ下ニヤッテ居リマ
  シタモノハ、尙ホ今後營業稅免除トカ、
  所得稅ノ免除トカ、或ハ土地收用法ト
  カ輸入稅等ノ點ニ於テ、尙ホ五年間ダ
  ケノ猶豫ガアルノデアリマス、併ナガ
  ラ若シモ此改正案ガ法律ニナリマシタ
  場合ニ、三萬五千瓲ノ製銑能力ノミデ、
  何等他ニ計畫スル所ハナイ、三萬五千
  瓲以上ノ製銑能力ハ全然持タナイト云
  フ場合ニハ、現在ノ法規ニ依テ五年間
  ノ恩典ニ浴シマス外ハ、改正法ニ於テ
  ハ奬勵金其他ノ恩典ヲ受クルコトハ出
  來ナイノデアリマス、ソレハ前カラ申
  シマシタヤウニ、銑鋼一貫主義ノ改正
  カラ自然起ッテ來ル結果デアリマス、只
  今御質問ニナリマシタ小倉、神戶等ニ
  一萬何千瓲ノ製銑能力ヲ持テ居ルモノ
  ガ現ニアルヂアナイカト云フ御尋デア
  リマス、日本鋼管、淺野鐵工等モゴザイ
  マスガ、是ハ現在デハ採算ガ取レナイ
  カラ、仕事ヲシテ居ラナイ、斯ウ云フモ
  ノハ、將來共當業者ガ自ラヤラウト云
  フ意思ガ無イト聽イテ居リマス、將來
  本當ニ製鐡業ト云フ商賣ノ出來ル設備
  ヲシヤウトスレバ、三萬五千瓲以上ノ
  設備ニ變ルコトヽナルト思ヒマス、ソ
  レデ特ニ斯樣ナモノニ對シマシテ、奬
  勵法ニ依テ奬勵シテ行クト云フ程ノ價
  値ノ無イモノト吾ミハ認メテ居ルノデ
  アリマス、唯〓ソレデモ現行法ニ何年
  カノ餘裕ガアリマスカラ、其間相當ニ
  恩典ニ浴スルノデアリマスガ、單ニ設
  備ハ同ジデアッテ、又現ニ事業ヲヤラナ
  イデ、又採算上經濟的ニ行カナイト云
  フコトヲ自覺シテ居ル狀態デアリマス
  カラ、將來ニ向ッテ此能力ノ單位ヲ何處
  マデカ引下ゲテ行クカト云フコトハ、
  是ハ我國ニ於ケル製鐵業ノ爲ニハ寧ロ
  面白クナイコトヽ思ッテ居リマス、矢張
  三萬五千瓲ト云フコトヲ至當ト吾ミハ
  認メテ居ルノデアリマス

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• 067・金光庸夫

  ○金光委員　今ノ御話ハ、實ハ私ハ意
  外ニ伺ヒマシタ、引合ハナイカラ廢メ
  テ居ル所ハサウデアリマセウ、併ナガ
  ラ引合ハナイカラ廢メテ居ル、廢メテ
  ハ此製鐵業ガ進步シナイカラ、ソレデ
  奬勵シテ進步サセヤウト云フ主義デ
  ハナイノデスカ、今相當固定資本ヲ
  入レテモ、引合ズ休ンデ居ル者、之ヲ呼
  ビ起シテヤラセルト云フコトハ、新タ
  ニ設備ヲスルヨリ遙ニ有望デアリマ
  ス、一萬瓲ナラバ絕對ニ經濟ガ取レヌカ
  ト云フト、サウデハナイ、唯一萬瓲ノ銑
  鐵ノミヲヤレバ經濟ガ取レヌカ知レマ
  セヌガ、政府ノ御趣旨ニ全然合致シタ
  ル銑鋼一貫ノ作業ノ設備ヲシテ居ルノ
  デアリマス、殊ニ鋼鐵ノ方ハ遙ニ大ナ
  ル設備ヲシテ居ルノデアリマスカラ、
  斯ウ云フ奬勵法ガ實施サレルコトニ依
  テ、是ハ囘復スルコトガ出來ルノデア
  リマス、又現ニソレヲ希望シテ居ルノ
  デアリマス、委員ノ方ノ御手許ヘ差上
  ゲタモノハ、希望シテ居ル者ガ書イタ
  モノデアリマス、此奬勵法ヲ一萬瓲ト
  云フコトニ低下シテ吳レレバ、今ノ設
  備ヲ復活シテモ宜シイト云フコトデア
  リマスカラ、明カニ政府ノ御考ガ違フ
  ト思ヒマス、全然無價値ニナッテ居ル設
  備ヲ活スコトデ、是ハ手取リ早イ蘇生
  方法デアリマス、之カラ新タニ製鐵事
  業ヲ起サウトシテモ、今日ノ經濟狀態
  デハ中〓手ヲ染メル者ハ無イト見ナケ
  レバナラヌ、然ルニ幸カ不幸カ茲ニ休
  ンデ居ル工場ガアルノデアリマス、之
  ヲ此奬勵法ト云フ氣付藥ニ依テ息ヲ吹
  キ返スコトガ出來ルナラバ、相當ノ金
  ヲ出シテモ宜イ、氣付藥ト云フノハ相
  當ノ國費ガ要ルノデアリマスガ、此法
  ニ依テ復活サセルコトガ出來ルナラ
  バ、之ヨリ都合ノ好イ事ハ無イト思ヒ
  マス、併シソレハ事業ヲシテナイ、休ン
  デ居ルノデアルカラ、サウ云フモノハ
  奬勵スル價値ガ無イト云フコトデ、
  言ノ下ニ吐キ棄テル態度ヲ執ルト云フ
  コトハ、甚ダ私ハ宜シカラザル御態度
  デアルト思フ、併シサウ云ウコトヲ申
  セバ、質問デナクナッテ意見ニナルノデ
  アリマスカラ、ソレハ他日ニ控ヘマス
  ガ、之ニ付テ更ニ考慮ノ餘地ハ無イカ、
  ソレトモ別段ニ斯ウ云フモノヲ一纒メ
  ニシテ御考ニナル餘地アリヤト云フコ
  トヲ伺ッテ置キタイ、是ハ大臣カラ伺ツ
  テモ、野村政府委員カラ伺ッテモ宜シ
  1、全然サウ云フモノヲ見殺シニナサ
  ル御考デアルカ、ソレトモ斯ウ云フ奬
  勵法ヲモウ一遍御考ニナッテ見ル御意
  思ハ無イカ、他ニ御考ニナッテ見ヤウト
  云フ御意思ガアルカ、此點ヲ伺ッテ置キ
  タイ

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• 068・野村嘉六

  ○野村政府委員　私ハ技術上ノ事ハ分
  リマセヌガ、兎モ角熔鑛爐ヲ拵ヘル金、
  人ヲ使フ費用、其他ノ設備ノ費用、ソレ
  カラ出來上ッタ品物ノ販賣、是等ノ點ニ
  付テ相當ナル歲月ノ間ヲ考慮シテ總
  テノ點ヲ常識的ニ判斷ヲシテ、之ニ技
  術的ノ考ヲ入レマシテ、三萬五千瓲以
  上デナケレバ算盤ガ採レヌト云フ立前
  ニナッテ居ルノデアリマス、サウ致シマ
  スト、三萬五千瓲以上デナケレバ算盤
  ガ採レヌト云フコトニナル以上ハ、ソ
  レヲ基ト致シマシテ、ソレニ對スル奬
  勵ノ方法ヲ講ズルト云フ立前ニナッテ
  居ルノデアリマス、併シ今金光君ノ御
  說ノ通リニ、ソレヨリ下ゲデ銑鋼一貫
  主義デ、一萬瓲ノ銑ト一萬瓲ノ鋼ヲヤ
  ツテ居ルナラバ、是ハ銑鋼一貫主義デ
  ハナイカ、唯瓲數ガ少イダケデアル、然
  ラバ其方モ奬勵ヲシテ差支ナイデハナ
  イカ、ソレガ却テ宜イデハナカト云フ
  御意見デアリマスガ、是モ御尤デアリ
  マスケレドモ、國家ノ大局カラ申シマ
  シタナラバ、先ヅ大體ニ於テ常識ニ於
  テ、又技術者ノ意見ニ於テ水準線ヲ設
  ケマシテ、ソレ以上ト云フ基調ノ上ニ
  立ッテ奬勵スル方ガ、確實デアッテ宜サ
  ウニ考ヘル、併ナガラ奬勵金デモ澤山
  アルトカ、幾ラデモ保護スル、多々益辯
  ズルト云フヤウナコトデアリマシタナ
  ラバ、御說ノ通リ百瓲ノ生產ヲスルモ
  ノデモ、銑鋼一貫スルモノナラバ補助
  シタ方ガ宜シイカ知レマセヌケレド
  モ、現在ニ於キマシテハ三萬五千瓲以
  下ノモノハ、實際ニ於テ廢メテシマッテ
  居ルト云フ御話デアリマス、其廢メタ
  原因ハ色〓アリマセウガ、先ヅ是デハ
  迚モ算盤ガ採レヌト云フコトデアラウ
  ト思フ、戰爭當時ノ如ク價格ガ今日ノ
  三四倍モシタ時ハ兎ニ角、アア云フ經
  濟狀態ト云フモノハ一時的デアル、常
  態ニ復シテ永久ノ事ヲ考ヘマシタナラ
  バ、アア云フ變態的ノ狀態ヲ以テ律ス
  ルコトモ出來ヌト思ヒマス、兎ニ角今
  日ニ於テ操業シテ居ラヌト云フノハ、
  引合ハヌト云フ證據デアルト思ヒマ
  ス、併ナガラソレニシテモ瓲ニ六圓ト
  カ、五圓トカ、三圓トカ云フモノヲ加味
  シタナラバ、引合フコトニナルト云フ
  御意見ガ出ルデアラウト思ヒマス、又
  當業者トシテハ一遍ヤッタノデアルカ
  ラ、何トカシテ其事業ヲ興シタイ、少シ
  デモ繫ガル草デモ木デモアレバ繋ガリ
  タイト云フノハ人情ノ然ラシムル所デ
  アル、又奬勵ノ思典ニ浴シタイト云フ
  ノハ、企業者トシテ製鐵業者トシテ尤
  ノ事デアル、併ナガラ大體ノ根本ニ於
  キマシテ、今ノ六圓トカ、五圓トカ、三
  圓トカ云フダケデハ、迚モ三萬五千瓲
  以下ノモノハ算盤ガ採レヌト云フ風ナ
  目安ノ下ニ出來上ッテ居ルノデアリマ
  スカラ、三萬五千瓲以下ノモノニ對シ
  テハ氣ノ毒デアリマスガ、今ノ所デハ
  三萬五瓲千以上ノモノニ向ッテ奬勵ス
  ルト云フノデアリマス、第二段トシテ
  之ニ考ヲ及ボサヌカト云フ御話デアリ
  マスガ、今金光君ノ御說ヲ聽キマシテ、
  又當業者ノ意見モ十分ニ徵シマシテ、
  相當ノ考慮ハ拂フ積リデ居リマス

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• 069・金光庸夫

  ○金光委員　御答辯ヲ承ッテ見マスト、
  引合フカ、引合ハヌカト云フ爭ニナル
  ヤウニ思ヒマス、所ガ私ガ考ヘルノニ、
  此奬勵法ナルモノハ新ニ拵ヘテモ引合
  フ程度ニ奬勵シタモノト考ヘルヨリ外
  ハナイ、新ニ相當ノ固定資本ヲ投ジテ
  引合フモノトスルナラバ、製造能力ガ
  少ナイ爲ニ、多少經濟的ニ不利益ノ地
  位ニ立ッテ居ルモノデモ、又一面ニハ固
  定資本ナルモノヲ全額-ー全額デナク
  テモ相當ニ計上シテ、之ニ對スル相當
  ノ利潤ヲ得ラレルト云フコトハ今日考
  ヘテ居ナイ、殆ド無價値同樣ニ考ヘテ
  居ルノデアリマスカラ、先ヅ固定資本
  ガ大部分要ラナイモノト見テ計算ヲ採
  ルコトガ出來ルノデアリマスカラ、今
  後新ニ興スコトカラ考ヘレバ、今アル
  モノヲ取壞シテモ殆ド價値ノ無イモノ
  ト思フ、然ルニ政府ノ御考ニ於テハ、全
  然見込ガ無イカラ抛ッテ居ルト云フ御
  話デアリマスガ、全然見込ガ無イモノ
  ナラバ抛ッテ置ク譯ハナイ、其設備ヲ取
  壤シテ、其土地ヲ有利ニ利用スルトカ、
  機械類ヲ潰シニシテ賣ルトカ、何トカ
  換價ノ方法ガアリサウナモノデアルノ
  ニ、之ヲ潰サズシテ其工場ヲ生カシテ
  置クト云フコトハ適當ノ時機ガ其タ
  ナラバ恢復スル途モ付カウト云フ一縷
  ノ望カラ、時機ニ望ヲ囑シテ居ルノデ
  アラウト思ヒマス、然ルニ千載一遇ノ
  斯ウ云フ奬勵方法ガ設ケラレルト云フ
  此機會ニ於テ復活シヤウト思フ矢先
  ニ、ソレモ除外サレルコトニナルト、未
  來永劫復活スル時機ハナイノデアリマ
  スカラ、是ハ取壞スコトニナリマセウ、
  サウスレバ全然無價値ノモノニナル、
  殆ド無價値同樣ノモノニナル、其無價
  値同樣ナモノニナルコトヲ考ヘマスレ
  バ、其資本ト云フモノハ餘程切下ゲテ
  計算シテモ宜イ譯デアリマス、サウス
  レバ今新シク玆ニ一千萬圓ノ資本ヲ投
  ジテヤル所ノ會社ハ一千萬圓ノ資本
  ニ對スル利子ヲ見ナケレバナラヌ一
  方ハ假ニ一千萬圓ノ固定資本ヲ掛ケテ
  アッテモ、之ヲ取壤スコトニ依テ、百萬圓
  トカ二百萬圓トカ云フモノニナッテシ
  マッタナラバ、取壞シタ値段同樣百萬
  圓、二百萬圓ト見テ宜シイノデアリマ
  スカラ、其所ニ固定資本ニ對シテ非常
  ナ相違ガ來ル、此固定資本ノ相違ト云
  フモノガ生產費ノ上ニ非常ナ力ヲ持ツ
  モノデアラウト思フ、其點ヲモ政府ハ十
  分ニ御調査下サッテ、是ハ到底引合ハヌ
  ト御考ニナッタノデアリマセウカ、其點
  ヲ調ベテナイト云フコトデアリマスナ
  ラバ、ドウカ今晩ニデモ御調べ下サツ
  テ、明日ノ委員會ニ御提出ニナッテ戴キ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=69

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• 070・野村嘉六

  ○野村政府委員　一ツ十分調査致シマ
  セウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=70

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• 071・森恪

  ○森委員　今ノ金光君ノ御質問ニ關聯
  シテ少シク兩方ノ質問應答ニ誤解ガア
  リハセヌカト思ヒマスカラ、念ノ爲ニ
  伺ヒマスガ、玆ニ百噸爐ガアル、其百噸
  爐カラ出ル百噸ノ中五十噸ヲ製鋼會社
  ニ供給シ、殘ル五十噸ハ「ピグ」トシテ
  使フ、サウスルト五十噸ノ方ハ奬勵法
  ニ依テ奬勵サレル、サウシテ一方ニ於
  テ五十噸爐ガアル、ソレハ製鋼會社ノ
  所屬デアル、其爐ハ「ピグ」デハ引合ナ
  イガ、會社ハ其爐ヲ潰スヨリハ生カシ
  テ置ク方ガ宜イ、生カシテ製鋼材料ニ
  使フト云フコトガアル、其時ニモ製鋼
  會社ハ、三萬五千噸以上ノ製鋼能力ヲ
  持ッテ居ルト云フノデアレバ、其五十噸
  爐カラ供給サレル五十噸ニ對シテハ奬
  勵金ヲ出スノガ當然デアルト思フ、何
  トナレバ他カラ供給サレル五十噸ニ對
  シテハ奬勵サレルノデアルカラ、自分
  ノ所ノ五十噸爐カラノ製產品ニモ奬勵
  ヲ受ケルト云フコトガ至當デアラウト
  思ヒマス、是ガ金光君ノ質問ノ要點ダ
  ト思ヒマスガ、ソレニ對スル御意見ハ
  如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=71

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• 072・三井米松

  ○三井鑛山局長　今ノ森サンノ御質問
  ニ御答致シマス、百噸爐ノ全設備ヲ持ッ
  テ居ルモノガ、五十噸ノ「ピグ」ヲ鋼材
  ニ用ヒ、他ノ五十噸ヲ其儘鑄物ニ使フ
  場合ハドウカト云フコトデアリマス、
  百噸爐ハ丁度三萬五千噸ノ製銑能力ヲ
  持ッテ居ルコトニナルノデアリマス、其
  三萬五千噸以上ノ製銑能力ヲ持ッテ居
  リマスモノガ、其中ノ五十噸ヲ製鋼ニ
  用ヰマシタ時ニハ、無論ソレニ對スル
  奬勵金ガ貰ヘル譯デアリマス、アノ五
  十噸ヲ他ノ方面ニ賣ッタト云フ場合ニ
  ハ、ソレハ矢張五圓若クハ三圓ノ奬勵
  金ヲ貰フコトニナルノデアリマス、其
  場合ニ若シ他ノ場合ヲ考ヘテ見マシ
  テ、一方ニ自分ハ五十噸ノ製銑能力ヲ
  持ッテ居ッテ、一方ニハ三萬五千噸以上
  ノ製鋼能力ヲ持クテ居ル、此場合ハドウ
  カト云フ御話デアリマスガ、ソレハ先
  刻カラ野田政府委員カラモ御話申上ゲ
  タヤウニ、五十噸ノ製銑能力ヲ持ッテ
  居ッテ、將來經濟的ニ銑鐵ヲ製造シテ行
  ケルカト云フト、今日ノ技術ノ程度ニ
  於テ見マスト、ソレハ經濟的ニ行カナ
  イ、偶〓自分ガ持ッテ居ルノヲ使フト云
  フノヲ妨ゲル譯デハアリマセヌガ、サ
  ウ云フ不經濟ノ製銑設備ヲ持ッテ居ル
  モノヲ補助スルコトニナルト、補助ノ
  アル間ハ事業ヲヤッテ行クコトガ出來
  マセウガ、補助ガ無クナルト引合ハナ
  イカラ止メルコトニナル、サウ云フ經
  濟的ニ成立タナイヤウナ設備ニ對シ
  テ、政府ハ奬勵シテ行クコトハ面白ク
  ナイ、少クトモ製銑能力三萬五千噸、百
  噸爐ヲ持ッテ居ラナケレバ將來製鐵事
  業界ニ立ッテ競爭シテ行カレナイ、今日
  ノ狀態ニ於テハ、製銑事業ヲ守立テル
  ノニハ相當ノ奬勵金ヲ與ヘナケレバナ
  ラヌ、サウシテ奬勵金ニ依テ發育シテ
  行ケバ、將來一本立ニナッテ行ケル、ソ
  レダケノ能力ナルモノヲ保護スルト云
  フノデアリマスカラ、ソレ以下ノ製銑
  能力デハ、補助ガ無クナルト直グニ事業
  ガ成立タヌト云フコトニナル、サウ云
  フモノニ對シテハ奬勵金ヲヤルコトハ
  ナカラウト云フノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=72

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• 073・森恪

  ○森委員　ドウモ私モ金光君ト同樣ニ
  今ノ政府委員ノ御答辯ニハ滿足スルコ
  トガ出來マセヌ、私ハモウ一歩進ンデ
  御尋致シマスガ、一體百噸爐ト云フモ
  ノハ何ヲ基準トシテ居ルノデアリマス
  カ、單ニ百噸爐ト申シマシテモ、ソレハ
  技術的ニハ意味ヲナサナイト思フ、現
  ニ鑛石ノ鹽梅其他ノ關係デ百五十噸爐
  ト稱スルモノデモ、百噸モ出ナイコト
  ガアル、所ガソレガ一寸シタ事カラ〓
  究ガ出來テ、百三十噸モ百七十噸モ出
  タト云フ實例ハ幾ラモアル、東洋製鋼
  ノ熔鑛爐ハソレデアル、然ルニ百噸爐
  ト云ッテ非常ニ數字ヲ嚴格ニ置カレル
  ト云フコトハ、實際上ニ意味ヲナサナ
  1、玆ニ三萬五千噸以上ノ製鋼能力ア
  ル工場ガ、偶〓自分ノ所ニ七八十噸或
  ハ九十噸ト云フ所謂百噸未滿ノ爐ガア
  ル、而モ自分ノ所デハソレヲ利用シテ
  銑鐵ヲ造リ、足ラナイダケヲ大キナ製
  銑工場カラ買フ、其分ニ對シテハ補助
  ガアルガ、自分ノ所ノ大部分ノモノニ
  ハ補助ガナイト云フ結果ヲ來スノデア
  ルドウシテモ此百噸爐ト云フコトニ
  共調ヲ置カレタコトガ意味ヲナサナイ
  ト思フ、其點ハ如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=73

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• 074・野田鶴雄

  ○野田政府委員　只今森サンノ御話ノ
  通リ、熔鑛爐ト申シマスモノハ鑛石ノ
  工合デアルトカ、燃料デアルトカ、「コ
  ークス」デアルトカ、其地方ノ空氣ノ濕
  度デアルトカ、色々ノ原因ニ依リマシ
  テ同一ノ大キサノモノデモ同ジ噸數ヲ
  出スト云フコトハアリマセヌ、ソレデ
  此度商工省卽チ主務官廳ガ認許スル設
  備ヲ豫メ調ベルト申シマスコトモ、ソ
  レ等ノ細カイコトヲ相當考慮致シマシ
  テ、一方デハ百噸爐ト云フモノデモ百
  噸出ナイカモ知レヌ、百噸爐以下ノモ
  ノデモ百噸以上出ルコトガアルカモ知
  レマセヌ、ソレハ一々寸法ナリ其他ノ
  方法デ調ベナケレバナラヌト思ヒマ
  ス、ソレデ何故百噸トシタカト申シマ
  スレバ、御承知ノ通リニ「コークス」ガ
  礦石一噸ニ一噸要ル、一例ヲ申シマス
  ト、製鐵所ノ二百十八噸出マス爐デ一
  年平均「コークス」ガ鑛石一爐ニ付テ
  〇、九八、約一噸要ルヤウニナッテ居リ
  マス、ソレガ二十噸爐ニ致シマスト「コ
  ークス」ガ一·八噸、殆ド倍要ルヤウニ
  ナッテ居リマス、ソレデ小サイ爐ハ損ダ
  ト云フコトガ直グニ分ルコトデアリマ
  ス、ソレデハ何故百噸爐ヲ本ニシタカ
  ト申シマスト、「コークス」ヲ一日ニ百
  噸以上使ッテ居ルト、「コークス」製造ノ
  設備上、ソレカラ副產物ヲ取ル、サウシ
  ナケレバ安クナリマセヌ、一例ヲ申シ
  マスト、副產物ヲ取ラナイト「コーク
  ス」一噸二十三、四圓ニナリマス、所ガ
  副產物ヲ取ルト十七八圓デ濟ム、サウ
  云フ設備モ、是ハ殆ド熔鑛爐自體ト關
  聯シタモノデハ「コークス」ノコトヲ論
  ゼズニ熔鑛爐ノ話ハ出來ナイ、先ヅ一
  日百瓲ノ銑鐵ヲ造ル爲ニ熔鑛爐モソレ
  位ナ程度トシ、ソレニ每日必要デアリ
  マス「コークス」ノ設備モソレ位ノ程度
  ノモノヲ最モ經濟的ノ最低單位位ニ當
  局ハ見タノデアリマス

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• 075・戸澤民十郎

  ○戶澤委員　今森君ノ御尋ガアリマシ
  タガ、私考ヘテ見ルト餘リ議論サレル
  必要ハナイト思フ、法律ノ規定ハ一箇
  年三萬五千瓲トアッテ、大體ノ目安ヲ百
  瓲爐ト云フモノニ置イタノデアルカ
  ラ、是ハ九十八瓲デアラウト百瓲デア
  ラウト、餘リ嚴密ニ追窮サレル必要ハ
  ナイト思フ、左様ニ御了解下サルト餘
  程議事ガ進行シテ宜イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=75

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• 076・森恪

  ○森委員　只今議事進行ヲ御發議ニナ
  リマシタガ、私ハ是ハ非常ナ誤リデア
  ルト思フ、若シサウシマスト爐ノ工合
  ト云フモノハ御天氣ノ都合デ非常ニ違
  フ、假ニ三萬五千瓲トナッテ居ルカラ宜
  イガ、一年ニ三萬五千瓲出ナカッタ場合
  ニハドウシマスカ、必ズ出ナイ場合ガ
  アリ得ル其場合ニ之ニ向ッテ補助金ヲ
  出シテ居ッタモノハドウスルカ、其責任
  ハ何處ニ歸著スル、私ノ考デハ百瓲爐
  一年三萬五千瓲デアルト云フ嚴密ナ數
  字ヲ茲ニ規定シテ、ソレヲ基準ニシテ
  補助金ヲ交付スル、シナイト云フノハ
  不備デアルト私共ハ思フ、殊ニ金光君
  ノ御述ニナッタコトハ、製鐵事業ノ能率
  ヲ發揮シテ損ヲシナイ點ニ於テ極メテ
  重要ナコトト思フ、更ニ此處デ申シマ
  スレバ、製鋼所ガ自分ノ所ノ熔鑛爐ヲ
  七八十瓲ト致シマスガ、其熔鑛爐カラ
  熱ヲ冷サズニ「ズク」ヲ使ヒ、又「ビッグ」
  ノ冷シタモノヲ買ッテ來ルト云フコト
  ニナレバ、其工場ハ私ハ非常ニ經濟上
  有利デアルト思フ、幸ニ此點ハ條項ノ
  中ニハッキリシテ居ラヌノデアルカ
  ラ、勅令ヲ以テ補助金額ヲ決メルノデ
  アリマスカラ、是ハ實情ニ照シテ一ツ
  御考慮ニナルコトガ正當ダト思フ、卽
  チ出來上ッテ居ル所ノ「ズク」工場デ、之
  ニ附隨シテ製鋼工場ニ利用シ得ルヤウ
  ナモノガアッタナラバ、假令ソレガ小規
  模デアリマシテモ、之ニ相當ノ助成金
  ヲ御出シニナルト云フコトハ國家經濟
  ノ上ニ於テ利益デアルト思フ、其點ヲ
  考ヘテ唯一年三萬五千瓲、或ハ百瓲爐
  デアルト云フ數字ヲ基調ニシテ御遣リ
  ニナッタナラバ、幾多ノ矛盾ガ起ルト思
  フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=76

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• 077・金光庸夫

  ○金光委員　先程私ノ申シマシタコト
  ヲ補ッテ置キマスガ、此奬勵法ニ依テ將
  來新タニ計畫ヲスル事業デアルナラ
  バ、新タナ固定資本ガ要ル、現在アル所
  ノ三會社ガ之ヲ廢メルコトニナル、價
  格ヲ固定資本ト見テモ差支ナイノデア
  リマスカラ、ソレヲ比較〓究シテ引合
  フカ、引合ハヌカト云フコトヲ御調ヲ
  願ヒタイト申シタノデアリマス、其材
  料ヲ御出シヲ願ヒタイ、ソレカラ將來
  三萬五千瓲ノモノナラバ引合フト云フ
  ガ現在ノ設備ナラバドノ程度カ存ジマ
  セヌガ、二萬瓲デアルカ、三萬五千瓲デ
  アルカ、三萬五千瓲ヨリモ少ナイ設備
  デモ其資本金ノ利子ガ違フカラ、其差
  ダケハ引合フト云フコトニナル、ソレ
  ヲ立案當時ハ考慮ニ入レテ居ナイコト
  ハ明デアル、ソレヲ考慮ニ入レルト云
  フコトニスレバドウスレバ宜イカト云
  フト、現ニ銑鋼一貫作業ノ設備ヲ有ス
  ルモノハ何萬瓲マデハ宜イ、斯ウ云フ
  除外例ヲ設ケテ宜イ、先ヅ素人ノ考デ
  ハ二萬瓲デ宜クハナイカト思フケレド
  モ、二萬瓲ニシテモ適用スルモノハナ
  イノデアル、ソレデ之ヲ銑鐵ニ限ッテ銑
  鐵一貫ノ作業ノ設備ヲ有スルモノハ一
  萬瓲トスト云フヤウニ、三萬五千瓲ノ
  所ニ除外例ヲ設ケタラ、一萬瓲位ノモ
  ノヲ奬勵スルコトニナルト困ルト云フ
  點ダケハ除キ得ルト思フ、サウ云フ除
  外例ヲ設ケルト云フコトハ如何ニ御考
  ニナリマスカ、モウ一應御調べ下サル
  餘地ガアルト思ヒマス

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• 078・野村嘉六

  ○野村政府委員　今ノ御說ニ對シテハ
  一ツ考究致シマス

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• 079・永田善三郎

  ○永田委員　金光君ノ御尋ハ結局斯ウ
  言フ點ニ歸著セヌカト思フ、詰リ製鋼
  モヤッテ居ル、其製鋼ハ十萬瓲出來ルガ
  銑鐵ハ一萬瓲シカ出來ナイ、其一萬瓲
  ハ「ホットメタル、シムテム」ニナルノダ
  ガ、是ガ「ホットメタル、システム」ニ適
  合シテモ第一號ト申シマスカ、此七圓
  ノ補助金ガ貰ヘナイ、サウシテ後九萬
  瓲ハ餘所カラ買ッテ來ル、一遍冷シタノ
  ヲ鋼鐵ニスル、之ニハ六圓補助スル、斯
  ウ云フコトニナル、餘所カラ來タノハ
  六圓ノ補助ヲ貰ヒ、自分ノ家デ造ッタモ
  ノハ一錢モ補助金ガ貰ヘナイ、サウナ
  ルト「ヅク」ダケ拵ヘテ之ヲ鑄物ニシタ
  モノモ三圓吳レルニ拘ラズ、全ク理想
  的ノ作業デ一萬瓲モヤッテ居ルノニ六
  圓ハ愚カ、五圓モ吳レナイ、三圓モ吳レ
  ナイ、何モ補助ガ無クナッテシマフ、斯
  ウナルト一萬瓲ノ製銑設備、「ホットメ
  タル、システム」ノ作業ヲシテ居ルニ拘
  ラズ、一錢ノ補助金ノ恩典ニ與ラヌト
  云フコトニナル、金光君ノ御意見ハ斯
  ウ云フコトニナルト思フ、政府ノ答辯
  ハ第一號、第二號、第三號ノ補助ニ當ル
  ガ一ツモ與ヘヌコトニナル、ソレデハ
  實際政府ノ理想トシテ居ル「ホットメタ
  ル、システム」ノ製造ガ無クナル、是ハ
  ドウモ金光君ノ御聞ニナルコトハ御尤
  デアッテ、大分オカシイコトニナリハセ
  ヌカ、何カ政府ハ十分ニ御調査ニナッタ
  ノデアリマスカ、銑鐵專門ノ三圓ニ當
  ルモノモ吳レナイ、他所カラ買ッテ來テ
  ヤルナラバ五圓貰ヘルガ、家デ拵ヘタ
  モノハ一錢モ貫ヘヌト云フノデハ問題
  ダラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=79

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• 080・野村嘉六

  ○野村政府委員　ソレハ先程カラモ大
  分申上ゲマシタ通リニ、兎ニ角技術上
  ノ關係カラ申スト大量生產デナケレバ
  引合ハナイサウデアリマス、ソレデ大
  量生產ノ標準ヲ何處ニ置イタカト云フ
  ト、是ハ技術上ノ問題デアリマシテ、ソ
  レニ付テハ野田技監カラ先程申述ベタ
  通リ、一日百瓲爐ガ基デ、此百瓲爐ニ依
  ルナラバ採算ガ取レル、換言スレバ大
  量生產ノ最低ガ日ニ百瓲、一年ニ三萬
  五千瓲デアル、此モノニ對シテノ奬勵
  金ヲ交付シテ、サウシテ其基礎ヲ確立
  セシメル、是ガ奬勵法ノ大眼目デアリ
  マス、併ナガラ今個別每ニ見マスレバ、
  一萬瓲ノ銑鋼一貫主義ノ施設者モアル
  ノデアリマス、或ハソレ以下ノモノモ
  アルカモ知レマセヌガ、ソレヲ抛ットク
  カ、斯ウ云フ問題デアリマス、併シ政府
  トシテハ大局カラ觀察ヲシテ、サウシ
  テ此點ナラバ將來基礎ニ確信ガアルト
  云フ意味合ニ於テ之ヲ得タノデアリマ
  ス、併ナガラ奬勵金ガウント出シ得ベ
  キコトデアリマシタナラバ、ソレハ小
  サイモノニモヤッタ方ガ宜シイデセウ
  ガ、奬勵金ノ方面カラ見マシタ所デ、中
  中サウハ參リマセズ、又實際ニ於テ三
  萬五千瓲以下ノモノハ除去シテ居ル、
  ソレハドウ云フ譯カト言ヘバ算盤ガ
  取レヌカラデアル、算盤ガ取レヌ結果
  ハ、詰リ損害ガ甚シイト云フコトニナ
  ルニ相違ナイ、少シデモ算盤ガ取レレ
  バ當業者ハ無理ヲシテデモヤルガ、無
  理ヲシテモヤルコトガ出來ナイノハ
  卽チ其損害タルヤ餘程甚シイモノデア
  ル、斯樣ニ一般的ニ見ルノガ當然デア
  ラウト思フ、併ナガラ先ノ御話ノ自分
  ノ所デ拵ヘタ五百瓲ノ銑鐵ヲ鋼鐵ニス
  ルト、銑鋼一貫主義ノ此銑鐵ニ對シテ
  ハ、補助ガ無クテ、ドウモ權衡ガ取レナ
  イデハナイカト云フ御話デアリマス
  ガ、賣ル方ノ銑鐵業者ノ銑鐵ハソレヲ
  鋼鐵ニスルト云フ前提ノ下ニ出來テ居
  ル銑鐵デアルノデアリマス、ソレデア
  リマスカラ其奬勵金ヲ受ケル者ハ所
  謂五百瓲ナラ五百瓲ヲ一貫シテ行ク所
  ノ製鐵業者ニ與ヘルノデナクシテ、銑
  鐵カラ鋼鐵ニ移ス、其意味ニ於テ作製
  セラレタ銑鐵業者ニ與へルノデアル、ソ
  レデアルカラソレガ塊ニナラウガ、何ニ
  ナラウガ、矢張銑鋼一貫主義ノ趣旨ヲ
  以テ奬勵ヲ與ヘルコトニナルノデアリ
  マス、私ハ其點ニ對シテハ少シモ矛盾
  ガナイト信ジマス、唯問題ニナルノハ、
  金光君、森君ノ仰シヤッタ範圍ヲ擴ゲテ
  ヤッタラドウカ、一貫主義ナラバ一貫主
  義デ徹底的ニヤッタラドウカ、一貫主義
  ナラバ瓲數ニ制限ヲ置カズニ總テ一貫
  主義デ、其瓲數ヲ目安ニセズニ、兎ニ角
  銑鋼一貫主義ヲ總テニヤッタ方ガ利益
  デハナイカト云フ御意見デアッタノデ
  アリマス、併ナガラ今申上ゲマスヤウ
  ナ工合デ-成程ソレモ宜イカモ知レ
  マセヌガ、先ヅ政府ト致シマシテハ大
  量生產デ、將來確實ニ基礎ガ定ルベキ
  モノヲ目安ニシテヤッタ譯デアリマス、
  其以外ニ於キマシテハ或ハ意見ノ相違
  ガ多少アルカモ知レマセヌケレドモ
  先ヅ政府ノ採リマシタ標準ハ今申上ゲ
  ルヤウナ次第デアリマス、ソレカラ百
  瓲爐ト云フコトニ付テ先程來色〓議論
  ガアリマシタガ、是ハ技術上ニ屬スル
  コトデアリマスガ、野田技監ノ申シタ
  通リデアルト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=80

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• 081・永田善三郎

  ○永田委員　此間關稅定率法ヲ通シマ
  ス時ニ、商工大臣ガ二囘程-一囘ハ
  祕密會、一囘ハ懇談會ヲ開イテ、大部旨
  ク出來テ居ルト思ッテ實ハ安心シタノ
  デアルガ、愈之ニ掛ッテ見ルトオカシイ
  ト思フ所ガ多イ、ドウモ只今政府委員
  ノ御說明ガアリマシタガ、元〓出方ガ
  少シオカシカッタカラ迷ッテ居ッタガ、今
  ノ點ナドモ十萬瓲ノ製鋼能力ガアッテ
  一萬瓲ハ自分ノ所デ「ホツトメタル、シ
  ステム」デヤル、サウシテ、ソレガ引合ッ
  テ居ルカラヤルガ-休ンデ居ル所ハ
  別トシテ、ヤッテ居ルモノモ二三箇所ア
  ル、サウシテ只今政府ノ御說明ニナッタ
  家デ拵ヘタモノニハ三圓ノ補助金モ出
  サヌト云フコトニナッテシマフト、今マ
  デハ引合ッテ切角一萬瓲ダケハ「ホット
  メタル、システム」デヤッテ居ルモノガ
  廢メテシマフ、今休ンデ居ル所ガ復活
  セヌノハ已ムヲ得ヌトシテモ、今ヤッテ
  居ルモノマデモ廢メテシマフノデアリ
  マス、片方デハ五圓モ安イ「ズク」ガ買
  ヘルカ、家ガ一貫作業デヤルガ、時ニハ
  一錢モ貰ヘナイノデヤリ切レナイソ
  レデ先程モ申ス通リ關稅ナラバ市價ガ
  高クナルガ、奬勵ナラバ安クナルノデ
  アル、「ホットメタル、システム」ヲヤッテ
  居ル分ダケハ餘計殖エルコトニナッテ
  來ルガ、今迄ヨリモ狀態ガ惡クナッテ、
  却テ作業ノ繼續ガ出來ナイコトニナラ
  ウト思フ、ドウモ是等ノ點ハ何等カ救
  濟ノ方法ヲ御考ヘニナラナケレバイカ
  ヌダラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=81

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• 082・野村嘉六

  ○野村政府委員　永田君ハ三萬五千瓲
  以下ノ銑鐵ヲ現在ヤッテ居ルガ、ソレ
  ヲドウモ奬勵セヌノハ不都合デアル、
  斯ウ云フ御說デアリマスケレドモ、實
  際ニ於テ三萬五千趣以上ノ銑鐵ヲヤッ
  テ居ルコトハ事實ニナイノデアリマス
  カラ、ソレニ奬勵金ヲ交付シナケレバ
  ナラヌ、斯ウ云フノハ金光君ハ奬勵金
  ヲ交付スレバ物ニナリハシナイカト云
  フ假定的議論ヲ挾マナケレバ、今ノ御
  議論ハ出テ來ナイノデアリマス、ドウ
  カ此點ヲ御了解ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=82

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• 083・森恪

  ○森委員　私ハ永田君ノ例ハ一萬瓲ト
  御取リニナッタカラ、今ノヤッテ居ル
  トカヤッテ居ラナイト云フ問題ガ起ル、
  大體此法案ハ三萬五千瓲百瓲爐トカ、
  規定スベカラザル數字ヲ規定セラレタ
  本案ガ抑不備デアルガ假ニ三萬五千瓲
  ノ設備ヲ有スル整鋼所ガ、三萬五千瓲
  ダケガ自分ノ所デ出來テ、ソレガ「ズ
  ク」湯トシテ冷サズニ使へル、ソレデ外
  ニ五千趣ト云フモノヲ他カラ冷エタ
  「ズク」ヲ買ッテ來ル、サウスルト五千〓
  ハ、補助ヲ貰フガ、自分ノ所ニ出來タ三
  萬五千瓲ハ補助ガ貰ヘヌト云フコトニ
  ナル、殊ニ礦石ノ步合ニ依テハ三十瓲
  爐デモ、若シ一貫作業主義ニ働イタナ
  ラバ確ニ經濟ニナル、今囘ノ補助ハ幅
  ガ狹イ、爲替ガ遠ッタトカ、雜費ガ一寸
  違ッテ來レバ直チニ引合フ引合ハナイ
  ト云フ問題ガ起ッテ來ル、サウ云フ場合
  ニ冷サズニ使ヘバ五十瓲爐デモ引合
  フト思フ、又特殊「ズク」ヲ使フモノモ
  アルノデアリマスカラ、ソレニ對シテ
  ハドウ云フ方針デ爲サレルカ、矢張三
  萬五千瓲ト云フ數字ヲ當嵌メラレルノ
  デアルカ、ドウモ吾ミニハ分ラナイ、大
  體大量生產ガ主ダト云フガ、大量生產
  ト云ヘバ普通ノ「ズク」ヲ三萬五千瓲ト
  云フヤウナ少サナ數字ニ制限サレルト
  云フコトハイケナイ、ソレヲ唯不完全
  ナル、據ル可カラザル數字ニ當嵌ッタカ
  ラト云ッテ其一部ヲ無駄ニシテシマセ
  ウト云フコトハ、國家ノ能率ノ上ニ於
  テ非常ニ損デアル、幸カ不幸カ此法案
  ノ中ニ補助ノ條件ト云フヤウナコトハ
  勅令ヲ以テ定メラレル餘地ガアルノデ
  アルカラ、其點ハ之ヲ有效ニ御使用ニ
  ナルコトニ御變更ニナルコトガ相當ト
  思フ、若シ政府デ以テ此點ヲ飽マデ固
  執サレルナラバ、吾〓ハ法ノ不備ト云
  フ點ニ付テ賛成スルコトガ或ハ出來ナ
  イカモ知レナイ、僅ニ三萬五千瓲トカ
  百瓲爐トカ、百五十瓲爐トカ言ハレタ
  コトハ間違デアル、技術上、實際上カラ
  間違デアル、サウシテ此數字ニ準據シ
  タ結果直グ問題ガ起ッテ來ル、是ハ私
  ハ、寧ロ質問デナイカ知ラヌガ、勅令ニ
  依ルト云フ條項ガアルノデ、幸ニ今金
  光君ガ指摘ニナッタヤウナ點ハ、政府ニ
  於テモ手加減ヲスル、サウシテ有效ニ
  旣設設備-新シク造ルノデハナイ、
  旣設ノモノヲ過渡期ノ間活カス、而モ
  是ハ永久的ノ法律デナイ、年限ヲ十五
  年ニ限ッテ居ルノデアリマスカラ、ソレ
  ヲ一ツ御考慮ニナッテ、之ヲ無駄ニシナ
  イ、利用シ得ルモノハ手加減ヲ以テ利
  用セラルルヤウニスルコトガ必要デナ
  イカト思フ

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• 084・野田鶴雄

  ○野田政府委員　今度ノ奬勵費デ三萬
  五千瓲ニシマシテ、其本ヲ百瓲爐ニ置
  キマシタコトガ甚ダ不當デアルヤウナ
  森サンノ御意見デアリマシタガ、ドウ
  モ自分ハサウ云フ風ニ考ヘテ居ラヌノ
  デアリマシテ、矢張今日ノ本邦ノ製鐵
  現狀ニ照シマシテ最低百瓲爐トシマシ
  テモ、必ズ一日ニ百瓲出來ルノデハナ
  イ、百瓲ノ計畫ヲ以テ立テタモノ、年三
  萬五千瓲ヲ造リ得ル計畫ヲ以テ立テタ
  爐ト云フコトニ致シタコトハ、正シイ
  ト思ッテ居リマス、ソレハ或ハ百五十瓲
  デモ宜カラウ、二百五十瓲デモ宜カラ
  ウト云フコトニナリマスケレドモ、ソ
  レハ何處ヘ一本線ヲ引クカト云フコト
  ハハッキリシマセヌノデ、詰リ三萬五千
  瓲ヲ年々造リ得ル計畫ニ依テ出來テ居
  ル爐ト云フコトニシタノデアリマス、
  一日二十瓲出來ル爐ヲ持ッテ居ルカラ、
  其爐モ働カシテ熔銑ヲ造ッタラドウカ
  ト云フ御說モ、銑鐵ノ價格ガ外國カラ
  來マスモノガ、大戰中ノ如ク非常ニ高
  イ時代ニハ出來マス鑛滓ガ非常ナ價デ
  賣レマシタ時代ハ宜カッタカモ知レマ
  セヌケレドモ、今日外國カラ優秀ナ安
  イモノガ段々這入ッテ來ル時ニ當ッテ、
  又一方印度ノ安イ銑鐵ガ這入ッテ來ル
  時ニ當ッテ、「コークス」ガ非常ニ澤山要
  リマス、其爲ニ又「コークス」ヲ買ハナ
  ケレバナラヌ、或ハソレダケノ爲ニ礦
  石モ集メナケレバナラヌ、運搬ニシマ
  シテモ何ニシマシテモ、總テノ點ニ於
  テ不便デアリマス、一日二十瓲三十瓲ト
  云フヤウナ爐ハ到底將來ノ競爭場裡ニ
  立ッテ行ケナイト當局ハ見テ居ルノデ
  アリマス、ソレガ爲ニ三萬五千瓲ト致
  シマシタノデ、ドウゾ其點ハ御諒承ヲ
  願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=84

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• 085・森恪

  ○森委員　私共ハ固執スルノデハアリ
  マセヌガ、政府ハ何故ニ此點ヲ固執サ
  レテ除外例ヲ御認メニナラナイカ、尙
  ホ政府ニ御尋シマスカ、假ニ三萬五千
  瓲ノ設備計畫ガアル、其計畫ハ政府ガ
  御認メニナッタトスル、其量ガ三萬五千
  瓲出ナイ場合ニモ、三萬五千瓲以下ノ
  計畫ナリト政府ハ御認メニナッテ、所謂
  奬勵補助カラ除外サレルカ、事實ハ是
  ハ三萬五千瓲或ハ四萬瓲モ一年二年續
  イテ出ルト云フ例ハ、極ク容易ニ想像
  ガ、出來ルサウ云フモノニ付テハ如何ナ
  ル御取計ヒニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=85

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• 086・野田鶴雄

  ○野田政府委員　ソレハ外國ノ例ニ依
  リマシテ、凡テ今日ノ本邦ノ熔鑛爐ハ
  計畫サレテ居リマスルガ、其結果二百
  瓲ノモノガ二百五十瓲位出來ル場合モ
  アリマスルシ、或ハ百瓲モノガ僅ニ八
  十五瓲位デ終ッタモノモアル從來ノ例
  デアリマス、ソレ等ノ經驗ト從來ノ知
  識ハ將來計畫ヲ審査シマス時ニ非常ナ
  ル經驗ニナッテ居リマスルノデ、ソレニ
  商工當局ノミナラズ、日本ノ製鐵所ノ
  各權威ノ色ミノ意見モ出テ居リマスル
  ノデ、ソレ等ヲ綜合シマシテ今日ノ知
  識ニ依テ百趣ト認メルヨリ外仕方ガナ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=86

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• 087・森恪

  ○森委員　成程今日ノ知識ヲ集メラレ
  テノ御判斷デアリマスカラ、間違ハナ
  イノデアリマセウ、吾〓ハ外國ノ例ハ
  知リマセヌガ、吾〓ノ能ク知ッテ居ルノ
  ハ日本ノ現在ノコトデ、金光君ノ言フ
  タノモ日本ノ國狀デアルト思ヒマス
  ガ、ソレニ副ハヌト云フノデアリマス、
  現ニ吾ミノ知ッテ居ルノハ東洋製鐵ノ
  爐ガ百五十噸デ、ソーガ數年間百噸位
  ニナッタノデアリマス、ソレカラ偶然ニ
  モ百八十噸出タガ、今日ハ百六十噸此
  爐カラ出テ居リマセウ、ソレカラ本溪
  湖ノ大倉組ノ鎔鑛爐ト記憶シテ居リマ
  ス、是ハ滿鐵ガ拵ヘタノデアリマス、此
  爐ハ確カ百噸以上ト思ヒマスガ、是ハ
  暫ク百噸ナイデ數年間困ッテ居ッタガ
  其後〓究ノ結果初メテ役ニ立ッタト云
  フ爐デアリマス、進步シタ外國ノモノ
  デアレバ左樣ナコトハナイカモ知レヌ
  ケレドモ、是ハ幼稚ナ日本ノ國狀ニ考
  ヘテ、金光委員ノ言ハルルヤウニ特別
  ノ場合ヲ考ヘテ、無駄ノナイヤウニ過
  渡期ノ間、除外的ニ援助ヲ與ヘルト云
  フコトガ至當ト思ヒマス、ソレヲ玆ニ
  固執スルト云フコトハ實際ニ當嵌ラヌ
  ヤウニ思ヒマス、何故ニ斯樣ニ固執セ
  ラレルノデアルカ、了解ニ苦ムノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=87

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• 088・野田鶴雄

  ○野田政府委員　爐ノ容積ト能力ト云
  フヤウナコトハ各使ヒマス鑛石、其地
  方ノ空氣ノ濕度、ソレカラ、使ヒマス
  「コークス」ノ品質等ニ依リ、只今ノ所
  デハ從來ノ經驗ニ依テ爐ノ容積カラ大
  略見當ヲ付ケルコトニ商工當局デハ考
  ヘテ居リマス、是ヨリモ小サイ爐ニ付
  キマシテハ現在ヤッテ居リマセヌノデ、
  又經濟上ヤレナクナッテ居リマスノデ、
  日本ノ現狀ニ於テハ矢張當局ノ只今申
  シマシタ百噸ヲ程度ニシタイト思ッテ
  居リマス

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• 089・森恪

  ○森委員　私其ハドウモ只今ノ政府當
  局ノ御答辯デハ滿足スルコトガ出來
  ズ、此御答辯デヤッテ行ッタナラバ金光
  委員ガ指摘サレタヤウナ事柄ガ非常ニ
  無駄ニナリマス、其無駄ニナルト云フ
  原因ハ當局ガサウ云フヤウナ一ツノ方
  針ヲ立テラレテ、ソレヲ固執サレルト
  云フコトニ依テ生ズル結果デアラウト
  思ヒマス、卽チ是ハ本法案ノ不備ト云
  フ結論ニナルノデアリマスカラ、私共
  ハ之ヲ甚ダ遺憾ニ思フノデアリマス、
  是ハ當業者カラ金光委員ガ聞カレタコ
  トニ依テモ、當業者ハ相當ニ見込ヲ立ッ
  テ居ルニ相違ナイ、ソコデ前段申スヤ
  ウニ、勅令デ數字其他ヲ命ズルト云フ
  ヤウニ政府ガ强制的御見解ニ依テ認定
  セラレルノデアリマスカラ、此間ニ相
  當餘地ヲ取ッテ、除外例ヲ或ル程度マデ
  御認メニナッテ、實情ヲ一ツ救助サレル
  ト云フコトニ御取計ヒアランコトヲ御
  勸メ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=89

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• 090・坂梨哲

  ○坂梨委員　私ハ本案ニ對シテノ質問
  ハ其途ニ知識ヲ有セラレル同僚先輩ガ
  質問サレマスノデ、私ハ質問ヲスル考
  ハ持チマセヌデアリマシタガ、先刻ノ
  商工省ノ參與官大藏省ノ參與官ノ御答
  辯ニハ、私ハ甚ダ驚キマシタ、殊ニ大藏
  省ノ參與官ノ御答辯ニ付キマシテハ、
  ドウモ私ナドニシテ見マスト、滿蒙ノ
  政策ノ此理想ノ上ニ大ナル影響ヲ來シ
  ハセヌカト云フ虞ヲ持チマスノデ、極
  ク簡單ニ一言御質問ヲ致シマス、此滿
  蒙政策ノ理想ノ實現ガ洵ニ遲々トシテ
  進ミマセヌコトヲ遺憾トシテ居リマス
  ルガ、外務省邊リニ付テ質シマスト如
  何ニモ歐米列强ノ爲ニ思フヤウニイカ
  ヌト云フコトガ、何時モ私共ノ質問ニ
  答ヘラレル言葉デゴザイマスガ、私ナ
  ドノ考デハサウモアリマセウガ、ソレ
  ヨリモ寧ロ此內ニ一致ヲ見ナイコトニ
  恐ラク原因シテ居ルノデアラウト思
  フ、或ハ前ノ內閣ト後ノ內閣ハ一向意
  見ガ一致ヲシナイ或ハ外務省ノ意見ト
  陸軍ノ意見ト一致ヲシナイト云フガ如
  キ、內ノ一致ヲ見ナイガ爲ニ滿蒙政策
  ノ理想ノ實現ガ後レテ居ルト云フコト
  ハ屢滿洲ニ參リマス私ト致シマシテ
  ハ、痛烈ニ之ヲ感ジテ居ル一人デゴザ
  イマス、此二十一箇條ノ條約ノ中ノ、殊
  ニ商租問題ハ、條約ガ大正四年ニ締結
  サレテ居リマスノニ、今日尙ホ其實現
  ヲ見ナイト云フガ如キコトハ、如何ニ
  モ私ナドハ奇怪千萬ニ思フノデアリマ
  ス、私ハ屢滿洲ニ參リマスガ、昨年モ二
  三箇月許リ哈爾賓カラアノ邊ヲ調ベテ
  來マシタガ、當時商租問題ノ解決ヲ望
  ンデ、之ヲ當テニ滿鐵ニ居ル者ガ多カッ
  タノデアリマスガ、是ガ實現ヲ見ナイ
  ガ爲ニ、今日デハ段々逆戾リノ姿ニナッ
  テ居リマス、哈爾賓ハ多イ時ニハ一萬
  五千人モ居ッタガ、今日デハ三千人位ト
  云フヤウナ、沿線各地ハサウ云フ狀況デ
  アルノヲ私ハ甚ダ遺憾ト致シテ居リマ
  ス、是ハ今申上ゲタヤウナ內ノ不一致
  ノ爲ニ是ガ實行ガ出來ナイ、是ハ歐米
  ノ列强ガ如何ニ言フタ所デ一致ヲ見
  テ、國運ヲ賭シテヤッタナラバ、既ニ條
  約ガ出來テ居リ、協定ガ出來テ居ル以
  上、實行ガ出來ナイト云フコトハナイ
  ト思ヒマス、私ナドハ豫テ滿洲ニ於ケ
  ル工業商業ハ總テ日本ノ延長デナケレ
  バナラヌ、寧ロ滿洲ニ於ケル工業ノ方
  ハ本家ヨリモ、例ヘバ工場ト致シマス
  レバ日本ノ工場ヨリモ良イ技師ヲ派遣
  シ、又將來內地ノ商人ヨリモ餘計ナ資
  本ヲ持ッテ居ル者ガ向フニ行クト云フ
  コトニ力ヲ入レテヤリサヘスレバ、是
  ガ一番良イコトト思ヒマス、先刻大藏
  參與官ノ御答辯ニ付テハ甚ダ私遺憾ヲ
  感ジマシタガ、永田君、森君ノ御質問ニ
  對シテ商工參與官ノ御答辯ハ稍私滿足
  ノ意ヲ表スルコトガ出來タノデアリマ
  スカラ、是以上質問ヲ申上ゲルコトハ
  ナイト思ッテ居リマシタガ、大藏參與官
  ノ御答辯ニ依リマスト、甚ダ不滿遺憾
  ノ點ガアルヤウニ心得ヘマス、此滿洲
  ニ於テハ工業ハ日本ノ工業ノ延長ト見
  テ御出デニナルノデゴザイマセウカ、
  マルデ別ナモノト見テ居ルカドウカ、
  之ヲ御尋致シマス、ソレカラ斯ウ云フ
  重大ナ事ニ關シテ、農林省當局ト大藏
  省當局トガ一致シタ意見ヲ御持チナラ
  ヌコトハ、不審ト思フノデアリマスガ、
  ドウ云フコトデサウ云フ一致ヲ見ナイ
  ヤウナ御答辯トナッタノデアリマスカ、
  此點ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=90

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• 091・片岡直温

  ○片岡國務大臣　私ハ先刻ノ問答ヲ直
  接伺ッテ居リマセヌノデ、一寸要點ガ分
  リ兼ネマスガ、問題ハ何デアッタノデセ
  ウ

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• 092・永田善三郎

  ○永田委員　先程斯ウ云フ問題ガ出來
  タノデアリマス、先般關稅委員會デ色
  色製鐵ニ關スル內容ノ御話ガアリマシ
  テ、其際ニ本溪湖竝ニ鞍山ノ兩製鐵所
  ハ、矢張日本ノ製鐵所豫算ノ範圍內ニ
  這入ッタモノト當局ハ認メル、併ナガラ
  ソレニ對スル補助、保護ノ方法ハ、法律
  關係モ異ッテ居ルノデアルカラ、同ジヤ
  ウニハ行カヌ、同ジヤウナ形式ニハ行
  カヌガ、其精神ハ同ジダト云フ御話ヲ
  承ッテ居ッタノデアリマス、其點ヲ商工
  參與官ニ御尋致シマシテ、ソレニ對ス
  ル明確ナル御答辯ガアッタ、續イテソレ
  ニ對シテ戶澤君カラ、既ニ本日出シタ
  案ノ中ニ、第一段ニハ六圓、第二段ハ五
  圓、第三段ハ三圓、斯ウ云フコトヲ勅令
  ヲ以テ定メルト政府ガ說明ヲサレタ
  ガサウ云フ風ニ率マデハッキリナッテ
  居ル以上ハ、此本溪湖竝ニ鞍山製鐵所
  ノ銑鐵ニ對スル補助ニ對シテモ、其率
  ガドコニアルカ、大體ソレハ等シイモ
  ノデアルカドウカ、斯ウ云フ事ヲ御尋
  シタ譯デアリマス、ソレニ對シテ大藏
  參與官ハ、趣旨ハ認メルガ、マダ一向其
  點ハ極ッテ居ラヌ、且ツ其率ヲ同ジニス
  ルト云フヤウナコトハ、全然考ヘテ居
  ラヌ、斯ウ云フ事ヲ申サレテ、且ツ此法
  案ハ關稅增率ノ點ヲ不明ニスル爲ノ案
  デアルカラ、單ナル滿洲ニ於ケル銑鐵
  ヲ專門トシテ居ル二ツノ製鐵所ニ關係
  シテ、此法律ガ十分ニ當嵌マルカドウ
  カト云フコトニモ、多少疑ガアルト云
  フヤウナ口吻ノ下ニ、此率ヲ今日定メ
  ル譯ニ行カヌ、斯ウ云フ御話デアッタノ
  デアリマス、其際ニ於キマシテ非常ニ
  强ク此法案ガ出タカラ、ソレニ適合シ
  ナイモノハ後トカラ考ヘルト云フ意味
  デアッテ、頗ル此兩製鐵所ニ對スル政府
  ノ御考ガ洵ニ輕イ意味ニ取扱ハレテ居
  ルヤウナ口吻デアッタノデアリマス、ソ
  レデ森君カラモ私カラモ更ニ御尋シタ
  ト云フ次第デアリマス、又野村參與官
  カラモ御話ガアリマシタガ、ドウモ野
  村參與官ハ餘程其點ハ御同情ヲ持ッテ
  居ルヤウデアルガ、大藏省ハ其方ハ冷
  淡デ、卽チソレニ當ラヌモノハ、成ベク
  人デモ減ラシテ見タイト云フヤウナ頭
  デ居ラレルト云フヤウニ受取レタ、其
  點デ遂ニ其問題ニ對スル質問應答ハ中
  止ヲセラレマシテ、更ニ商工大臣ノ御
  出席ヲ願ヲテ、是等ニ對シテ御明答ヲ煩
  ハシタ方ガ宜カラウト云フコトニナッ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=92

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• 093・片岡直温

  ○片岡國務大臣　御質問ノ要旨ハ、鐵
  ノ方ガ主デアラウト存ジマスガ、例ニ
  滿洲租借地ノ事ヲ御述ベニナッタノデ
  アリマス、是ハ御尋ノ主眼デハナイト
  存ジマスカラ、其點ニ向ッテハ敢テ答辯
  致シマセヌガ、併シ是ガ解決ガ付カナ
  イノハ、內ガ不一致デアルト云フコト
  ニ基イテ御述ニナリマシタガ、是ハ必
  シモサウデハナイノデアリマス、此問
  題ハ洵ニ長キ事デアリマシテ、左樣ニ
  思召スノモ必シモ無理デナイカモ知
  レマセヌガ、御承知ノ通リ支那ノ狀態
  ハ內亂打績キ、又時トシテ排外運動等
  ヲ繼續スルト云フヤウナコトデ、之ヲ
  徐ロニ解決スル所ノ相手サエ、確カナ
  相手トシテ掛ルベキモノスラ捉へ難イ
  ト云フガ如キ狀況ガ續イテ來テ居ルノ
  デアリマシテ、滿洲ノ將來ニ對シテノ
  發展ヲ期スルニハ、アア云フ問題ヲ解
  決シナケレバナラヌト云フガ如キコト
  ハ、商工省トシテモ頻〓憂慮致シテ居
  ルノデアリマスガ、是ハ畢竟相手方ノ
  國ノ狀態ガ鎭マラヌ所ヨリシテ、解決
  ヲ見ルニ至ラヌト云フコトガ主ナ原因
  デアッテ、内ガ一致シナイデ解決ガ出來
  ナイト云フコトデハナイノデアリマ
  ス、今御尋ニナリマシタ滿洲方面ノ鑛
  業ヲ日本ノ鑛業ノ延長ト見ナイカ、是
  ハ簡單ナ御尋デハアリマスガ、其通リト
  御答シタイヤウナ心持モシマスガ、サウ御
  答スル方ガ穩當カ不穩當カ、兎ニ角日本
  ノ勢力範圍デアッテ、日本人ガ日本ノ金
  ヲ以テ仕事ヲ致シテ居リマスカラ、之
  ヲ內地ニ與フルノ保護誘掖ト同ジ程度
  ニ、彼ノ地ニ及ボサナケレバナラヌカ
  ト云フコトハ、同一デアルト思ッテ居リ
  マス、隨テ個々ノ問題ニ至リマシテモ、
  滿洲ニハ御承知ノ通リ鞍山ニ於テ銑鐵
  ガ出來ルヤウニナッテ、今後一年ニ二十
  萬噸位ハ出來ルヤウニナラウ、斯ウ云
  フ見込ヲ立テテ居ルヤウナ次第デアリ
  マス、又本溪湖ニ於キマシテモ、今日マ
  デ銑鐵ハ御承知ノ通リ出來テ居ルノデ
  アリマス、今囘鐵ノ國策樹立ノ際ニ當ツ
  テ、是等ヲ度外視スルコトヲ許サナイ
  コトハ勿論デアリマス、サリナガラ滿
  洲ハ我ガ領士デナイ、其領土ニ施行ス
  ル法規ヲ彼ニ直ニ適用スルコトガ出來
  ナイノハ、是ハ當リ前ノ事デアル、ソレ
  カラ又旣ニ領土ヲ異ニスル國ニ於テ
  モ、日本ノ事業家ニ依テ銑鐵ガ出來テ
  居ル、之ニ對シテ相當ノ保助成金ヲ遣
  ルト云フ、斯ウ云フコトニスルト假定
  シタナラバ、ドウスルカト云フ問題ニナ
  ル、之ヲ放任スルハ怪シカラヌト云フ
  論モ起ル、是ハ理窟ヲ以テ行ク譯ニハ
  行キマセヌ、唯一言ヲ以テ申セバ、日本
  ノ製鐵事業其モノハ、滿州ヲ度外視ス
  ルコトヲ許サヌ、卽チ包含シテ考ヘネ
  バナラヌ、是ダケ申シテ宜シイ、而シテ
  其方法ハ是ハ別途ノ考慮ニ俟ツベキモ
  ノデアル、今ノ奬勵法ノ通リニ、卽チ金
  何圓トカ、何圓トカヲ請求スルト云フ
  コトハ露骨ニ言ヒ現ハスベキモノデ
  ナイ、而シテ之ヲ別途ニ考慮スルト云
  フコトニ付テハ、大藏大臣ト私ノ意見
  ノ相違ハ致シテ居リマセヌ、是ダケ申
  上ゲレバ御諒察下サルコトガ出來マセ
  ウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=93

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• 094・戸澤民十郎

  ○戶澤委員　御言葉尻ヲ捉ヘル譯デハ
  アリマセヌガ、私ハ商工大臣ノ御答辯
  ニハ實ニ驚イタノデアリマス、今日ノ
  滿洲ト日本內地トノ關係ハ、最初ノ御
  言葉ノ中デハ、商工省トシテハ內地同
  樣ノ取扱ヲ以テ臨ミタイ、同等ノ程度
  ヲ以テ臨ミタイト云フ御言葉デ、洵ニ
  御尤デアル、然ルニ其後段ニ至リマシ
  テハ、偖テ鐵ノ問題ニ關シテ滿洲ヲ內
  地同樣保護スルカト云フコトハ、滿洲
  ハ我ガ領土デナイ、ソン故內地ノ法規
  ヲ適用スルト云フコトハ無理デアル、
  是ハ尤デアル、併シ我カ內國ノ人ニシ
  テ印度ニ於テ鐵ノ製作業ヲ營ンデ居ル
  者ガアル、滿洲ヲ日本ト同樣程度ニ保
  護シタラ、印度ニ於ケル者ガ理窟ヲ云
  フ、此御言葉ハ吾〓商工大臣ト心ヲ同
  ジクスル者ガ聽ケバ、凡ソ其意味ノ間
  違ッテ居ルノデナイコトハ分リマスガ、
  緣ノ遠イ者ガ聽ケバ非常ニ間違ッテ聽
  ク、何故ニ日本ノ商工大臣ハ對滿洲ト
  對印度ト同ジ程度ニ取扱ハヌカ、是ハ
  言語同斷デアルト云フ誤解ヲ招ク虞ガ
  アリマス、私ハサウ云フ御言葉ノ意味
  デハナイト考ヘマスカラ、其點ニ付テ
  ハ只今ノ御答辯ニ關シテモウ一ツ明確
  ニ商工大臣ヨリ聲明サレタ方ガ宜カラ
  ウト云フ考デアリマス、是ガ私ノ意見
  デアリマス、鐵ニ關スル問題ハ、今日內
  地ニ斯ノ如キ法規ヲ適用シテモ、滿洲
  ハ無論我ガ日本ノ領土デハナイガ、日
  本ノ特殊ノ事業地トシテ、是ハ支那ニ
  對シテ、毫モ遠慮サレナイ特殊ノ事業
  地トシテ、內地同樣ノ方法程度ニ依テ
  事業ノ助成ヲシテ行キタイト云フコト
  ヲ責任アル御言明ヲ當局カラナサル
  コトガ、對外的ニモ差支ナイノミナラ
  ズ他ノ方面ノ內地人、又之ニ關係ノ吾
  吾ニ對シテモ、洵ニ今ノ點ヲ明ニシテ
  置イテ戴キタイ、今囘內地ニ此補助法
  案ガ出來マスガ、更ニ滿洲ノ事ヲ考慮
  サレルニ付テハ、其滿洲ニ於ケル事業
  ノ保護ノ程度ハ、內地ト同樣ノ程度ニ
  保護シヤウト云フ御意見デアルノカ、
  更ニ又其御意見ノ內容ハ、其方法手段
  ヲ如何ニスルカハ別問題トシテ、大正
  十六年度カラ實現サレヤウト云フ御意
  見ヲ持ッテ居ラレルノカ、其點ヲ明瞭ニ
  シテ戴クコトガ出來レバ非常ニ好都合
  デアルト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=94

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• 095・片岡直温

  ○片岡國務大臣　單純ナル理論上カラ
  言ヘバ、御尋ノヤウナコトモ御無理ト
  ハ思ヒマセヌ、併ナガラ是ハ冷靜ニ御
  考下サルト、私ノ申シタ意味ガ能ク分
  ルト存ジマス、要ハ滿洲方面ニ於ケル
  當業者ガ、是デ差支ナイト云フコトデ
  滿足スレバ先ヅ宜シイ、詰リ誤解ガ起
  ルトカ起ラヌト云フヤウナ程度ノ所
  ガ、甚ダ是ガ宜シキヲ得タ所デ、味ヒノ
  アル所デアリマス、大正十六年ヨリヤ
  ルカト云フ御尋ニ對シテハ、無論十六
  年度ヨリヤラナケレバ、本年度ハモウ
  間ニ合ハズ致方ガナイ、十六年度ニ於
  テ考慮スル積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=95

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• 096・森恪

  ○森委員　三木大藏參與官ノ御答ト、
  野村商工參與官ノ御答トノ間ニ相違シ
  テ居リマシタ點デ、只今永田君竝ニ戶
  澤君ノ御指摘ニナリマシタ點以外ニ尙
  ホ一點アルノデアリマス、ソレハ三木
  君ハ、滿洲ニ於ケル鐵事業ヲ內地同樣
  ニ發達奬勵サスト云フ意思ハ、持ッテ居
  ラレナイヤウデアル、卽チ內地ノ銑鋼
  一貫主義ノ下ニ發達サセルト云フ其目
  的ノ助成トシテ、滿洲カラ來ル銑鐵ニ
  ハ援助ハ吝マナイガ、滿洲其モノニ於
  テ銑鋼一貫主義ノ下ニ發達シタ製鐵事
  業ハ、內地ト同樣ニ取扱フ意思ハナイ
  ト云フ意味ノ御答デアッタノデアリマ
  ス、ソレデ問者、卽チ永田君、戶澤君ノ御
  意見ハ、滿洲ニ於ケル製鐵事業ハ銑鋼
  一貫主義デアルト否トヲ問ハズ、其發
  達ハ內地同樣望ム、斯ウ云フ御考デア
  ルト私ハ思フ、此點ニ付テ大藏當局ノ
  御答辯ト商工當局ノ御答辯ハ違フノデ
  アリマス、私ガ之ヲ三木君ニ指摘シテ
  問フタラ、是ハ一ツ商工大臣ノ出席ヲ
  求メテハッキリサセテ吳レタ方ガ都合
  ガ好イト云フ「サゼッシヨン」ガアッタカ
  ラ、ソレデ特ニ御質シ致シタ次第デア
  リマス、ソレデ此點ニ對シテ御答ヲ得
  タイノデアリマス、是ハ或ハ問題外デ、
  他ノ諸君ニハ御迷惑デアルカモ知レマ
  セヌガ、今ノ坂梨君ノ御言葉ニ對シテ
  商工大臣ノ御答ニナッテ居ル中デ、吾〓
  ガ甚ダ妙ニ感ジタ點ガアル、又將來ニ
  是ハ重大ナ關係ガアルト思ヒマスカ
  ラ、此際商工大臣ハ此點ヲ、若シ御便宜
  デアッタナラバ御取消ニナリ、御訂正下
  スッタ方ガ宜クハナイカト思ヒマス、滿
  洲ノ租借地ノ事件ガ片付カナイノハ、
  坂梨君ハ內ノ不統一ニ困ルノデアルト
  言ハレ、商工大臣ハ內ノ不統一デハナ
  イ、是ハ對手方ニ依ルノダ、支那政府ガ
  惡イカラソレデ極ラナイト云フ御答デ
  アッタ、所ガ外務省ハ満蒙ノ問題ニ對
  スル支那政府、卽チ對手方ハ確カデア
  ルト云ウテ居ル、現ニ其見地デ鐵道ノ
  問題トカ、關稅問題トカ、治外法權撤去
  問題トカ、色〓重大ナ國家問題ヲ吾〓
  ハ認メテ、不確デアルト云フ商工大臣
  ト同ジ意見ヲ以テ支那ヲ相手ニヤッテ
  居ル是ガ商工大臣ノ支那政府觀、外務
  大臣其他ノ國務大臣ノ支那政府觀ト非
  常ニ違フ點デアル、是ハ非常ニ大キナ
  處デアルト思フ、是ハ今直接關係アリ
  マセヌガ、偶〓此處ニ出マシタ問題デ
  アリマスカラ、尙ホ一ツ國務大臣トシ
  テ責任アル御辯明ヲ願ヒタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=96

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• 097・片岡直温

  ○片岡國務大臣　支那ノ條約ニ基ク解
  決ハ支那國ノ國內ニ於ケル騷擾ガ常ニ
  引續イテ、爲ニ解決ヲ促シテ行クト云
  フガ如キ事ノ運ビガ延引シテ居ル、此
  感想ハ私ダケハ違ウテ居リマセヌ、併
  ナガラ相手ガ弱イカラトカ何トカ云フ
  コトハ、言ヒ過ギタカモ知レマセヌガ
  是ハ一國ガ存シテ居ル以上ハ、左樣ナ
  コトニ互リマシタ言葉ガアリマシタナ
  ラバ、ソレハドウカ御取消ヲ願ヒタイ、
  兎モ角內爭打續キ、條約ノ根本ハ作ッテ
  居リマスガ、之ヲ實行スルマデノ相互
  ノ疏通ヲ進メテ行クト云フ時期ニ到達
  スルコトガ彼ノ國ノ內情ガ紛擾打續ク
  爲ニ斯ル問題ヲ常ニ持出シテ行クト云
  フ時期ガ自然ニ後レテ行クト云フコト
  ハ私ノ觀察デアリマス、國務大臣トシ
  テモ別ニ變リマセヌ、併ナガラ事柄ニ
  依テ、今關稅ノ改正等ノ話ヲシテ居ル
  ソレガ出來ルナラバ是ガ出來ルト云フ
  ガ如キ、理窟ヲ言ヘバ相當理窟ハ立チ
  マセウ、是ハ又人々ノ見ル所ニ任スヨ
  リ外ゴザイマセヌガ、私ハ左樣ニ考ヘ
  テ來テ居ルノデアリマス、ソレカラ三
  木參與官ガ御答ヲ致シタコトニ付テ、
  御疑念ヲ御懷キニナッタト云フコトハ
  是ハ承ッテ見ルト無理カラヌコトデア
  リマス、私ハ大藏大臣話合フコトハ、マ
  ダ三木君ノ所マデ徹底シテ居ラヌカモ
  知レマセヌト思ヒマス、大藏大臣ガ出
  席シテ居レバ、此處ヘ出席ヲ求メテ私
  ト意見ガ違ッテ居ルカドウカ御確メ下
  サレバ能ク分ルノデアリマスガ、生憎
  昨夜以來咽喉ヲ痛メテ寢テ居ラレルト
  云フコトデアリマス、是ハ商工省ガ此
  問題ノ當局者デアリマスカラ、御信任
  ハ出來惡イカモ知レマセヌガ、御信任
  下サルコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=97

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• 098・永田善三郎

  ○永田委員　商工大臣ノ本溪湖、鞍山
  製鐵所ニ對スル御辯明ヲ得マシテ、非
  常ニ信念ノアル强イ御意思ノ發表ガア
  リマシテ、私ハ深ク喜ビ、安心致シマシ
  タ、兎角大藏省ハ金ヲ出スコトヲ嫌フ
  ノデアリマス、仍テ商工省ニ餘程强ク
  御決心ヲ願ハヌト云フト、又ドウモ妙
  ナ風ニナリマスト甚ダ殘念デアリマス
  カラ、今日御決心ヲ承リマシテ、深ク安
  心致シマシタ、此際此問題ハ大抵濟ン
  ダヤウデゴザイマスカラ、此程度デ打
  止メテ置キマスガ、尙ホ附加ヘマシテ、
  ドウカ今日ノ御發表ノ意思ノ通リノ事
  ヲ御運ビ下サイマシテ、坂梨君ノ御心
  配シテ居ルヤウナコトモ、矢張滿洲ニ
  於ケル事業ガ一ツ々々旨ク行カヌ、蹉
  躓ヲスル斯ウ云フコトニナリマスレ
  バ全ク滿蒙ニ於ケル特殊ノ利權ハ口
  バカリト云フコトデ、實質ハ段々ニ無
  クナッテシマフノデアルカラ、ドウカサ
  ウ云フヤウニ御健闘アランコトヲ切ニ
  希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=98

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• 099・山本条太郎

  ○山本委員　只今商工大臣ガ御說明ニ
  ナリマシタ點ニ付テ、一二疑義ノ點ニ
  付キ質疑致シタイト思ヒマス、此奬勵
  案ノ趣旨ヲ伺ッテ居リマシタガ、此奬勵
  案ノ根本ニ付テ政府ガ銑鐵ト鋼鐵トニ
  對シテ、製鐵國策上カラ見ラレタル重
  要ナル程度、取扱ノ鄭重、卽チソレニ依
  テ此案ガ構成セラレタモノデアルト承
  知シテ居リマス、政府ハ先達テノ關稅
  改正案ニ於テ鋼鐵ニ對シテハ、從來一
  割五分ノ稅金ヲ一割八分、大體重要鐵
  材ニ對シテハ一割八分ノ改正ノ案ガ出
  マシタ、ソコデ此度玆ニ出マシタ案ガ
  今朝參與官ノ御內示ニ依リマスレバ、
  一貫シタル銑鋼ニ對シテハ六圓、各別
  ニ最後ニ連結スベキ鋼鐵ニ對シテハ
  〔加藤委員長委員長席ヲ退キ奧
  村理事代リ着席〕
  五圓、單ナル銑鐵ニ對シテハ三圓ト云
  フコトノ御內示デゴザイマシタ、之ヲ
  以テ只今私ガ申上ゲタ鋼鐵ニ對スル改
  正案ノ率ト比較シテ見マスト、銑鐵ニ
  對シテハ現行率ハ百斤ニ付テ十錢、卽
  チ一噸一圓六十八錢、今囘ノ銑鐵ニ對
  スル奬勵金ハ三圓、合計シテ四圓六十
  八錢、今日ノ銑鐵ノ市價ニ比較シテ、此
  二ツノモノヲ合セタル金額ハ約一割ニ
  當ルノデアリマス、ソコデ政府ハ國產
  ノ全般ニ互テノ生產ノ奬勵、特ニ其中
  ノ鐵ニ對シテ最モ重要視セラレテ、此
  法案ガ作製セラレタノデアリ下·さん
  カ、私共ハ理解スルコトガ出來ヌノハ
  何故ニ鋼鐵ニ對シテ一割八分ノ課稅ヲ
  爲シ、銑鐵ニ對シテハ一割ニ之ヲ止メ
  テ、左樣ニ大キナ懸隔ガ銑鐵ト鋼鐵ノ
  間ニ置カレマシタト云フコトハ、甚ダ
  理解ニ苦シムノデアリマス、私共ノ見
  地カラ致シマスルト、日本ニ於ケル鑄
  物用ダケデモ、銑鐵ダケノ需用四十萬
  噸是ハ鋼鐵ニハ關係ナイモノデアリ
  マス、更ニ銑鐵ヲ基礎トシナケレバ鋼
  鐵モ出來ヌト云フコトハ、是ハ明カデ
  アラウト思フ、唯政府ガ理想トシテ銑鐵
  ヲ奬勵スルト同時ニ、專ラ銑鋼ト連絡シ
  タ一貫作業ヲ奬勵スルト云フ一ツノ理
  想ノ下ニ、此度ノ奬勵案ニ對シテハ斯
  クナッテ居ルノデアルガ、併ナガラ銑鐵
  ト云フモノハ、只今申上ゲタ通リ、銑鐵
  其モノノ使命モ極メテ重要デアルガ、
  又鋼鐵ニシテモ銑鐵ナクシテ鋼鐵ノ出
  來ル理由ガナイ、若シ鋼鐵ニ對シテ一
  割八分ノ稅率ヲ課シ、銑鐵ニ對シテ輸
  入稅及此度付與セラルルト云フ奬勵金
  ヲ加ヘテモ、是ガ一割ニ過ギナイト云
  フノデアリマスナラバ、鋼鐵ハ國デ造
  ルコトヲ奬勵スルガ、銑鐵ハ之ヲ外國
  カラ買ッテモ宜イヂヤナイカ、關稅ノ數
  字ノ上カラ考ヘレバサウ見ラレナイコ
  トモナイノデアリマスガ、私共ハ銑鐵
  ト稱シ、鋼鐵ト稱シテ甲乙ヲ之ニ置ク
  ベキモノデナイト考ヘテ居ル、銑鐵ヲ
  國內デ造ルト云フコトハ鑛石ノ幾部分
  ガ國內ニ於テ產スルト云フ點モ、更ニ
  銑鐵ヲ內地ニ於テ造ルト云フコトハ、
  石炭ト勞働賃銀ハ悉ク內地ノモノヲ用
  ヒルカラ、銑鐵ヲ國內デ製造スルト云
  フ點ニ於テハ、鋼鐵ニ銑鐵ガ劣ルモノ
  デナイト固ク信ジテ居ルノデアリマ
  ス、斯樣ナ次第デアリマシテ、此度ノ奬
  勵案ノ點カラ見テ、何故ニ關稅改正ニ
  際シテ鋼鐵ノ方デハ一割八分ニシテ、銑
  鐵ニ對シテハ一割ニセラレタト云フ、
  大ナル二ツノ差ガ此所ニ現レマシタ御
  趣旨ガ、甚ダ不徹底ノヤウニ思ヒマス
  此點ニ付テ商工大臣ノ御意見ヲ伺ヒタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=99

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• 100・片岡直温

  ○片岡國務大臣　計數ニ亙ルコトデア
  リマスカラ政府委員ヨリ御答サセマス
  〔「此是奧村委員長代理退席加藤
  委員長復席〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=100

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• 101・野田鶴雄

  ○野田政府委員　只今ノ計數ノ問題ニ
  付テ御答シマスガ、商工省當局デハ約
  七圓ノ保護ガアリマスレバ、內地ノ銑鐵
  ハ成立ツト同時ニ、又鑄物ノ需用者ノ
  方ハ成タケ安イ銑鐵ヲ使ヒタイノデア
  リマシテ、其所ニ考慮シテ從來ノ一圓
  六十七錢ヲ法律案カラ引去リマシテ、
  五圓三十三錢トシ、ソレヲ奬勵法デ銑
  鐵カラ鋼ニ行クモノニ交付スルト云フ
  風ニ計算シタノデアリマス、尙ホ續イ
  テ申上ゲマス、鑄物ニ付テ三圓ト申シ
  マスノハ,今囘ノ奬勵法ハ鑄物銑鐵ニ
  ハ特ニ奬勵金トシテハ出シテ居ラヌノ
  デアリマス、大體銑鐵カラ鋼ニ行キマ
  ス爲ニ、造ッテ行キマス今日ノ日本ノ狀
  態デ冷銑ニナリマス鑄物ニ相當スルモ
  ノニモ、奬勵金ヲ鑄物「ストック」ニナリ
  マスモノニモ與ヘマセヌト、鋼ニナル
  銑鐵ノ奬勵ニナラヌト云フ見地カラ、
  其方ニモ三圓宛ヲ交付スルコトニナッ
  タンデアリマス、ソレデ鑄物ノ方ニハ
  銑鐵デ造ル場合ノモノニハ、今日ノ奬
  勵法ハ與ッテ居ラヌノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=101

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• 102・山本条太郎

  ○山本委員　只今ノ答辯ヲ承リマシテ
  私共ハ甚ダ迷フノデアリマス、私共ハ
  此法案ノ御趣意モ、國策トシテノ根本ノ
  方針ト云フモノヲ承ッテ居ッテモ、銑鐵
  竝ニ鋼鐵ニ對シテ國ガ國策トシテ共ニ
  相俟テ之ヲ奬勵シナケレバナラヌガ、
  唯奬勵ノ仕方ニ於テ斷片的部分的ニ言
  ヘバ、或ハ銑鋼ヲ一貫スル方ガ經濟的
  作業デアルカラ、成ベク獎勵ノ方法ヲ
  ソレニ導ク、斯ウ云フ事ハ之ニ依テ現
  ハレテ居リマスケレドモ、何故ニ鋼鐵
  ニ重クシテ銑鐵ヲ無視シタカト云フコ
  トノ理由ハ、只今ノ御說明デハ一向分
  リマセヌ、如何ナル素人、如何ナル者ガ
  見マシテモ、鋼鐵ト銑鐵トハ同一ニ保
  護ヲシナケレバナラヌガ、或ル意味ニ
  於テハ銑鐵ハ全ク勞働ノ固マリデア
  ル、鑛石ノ採掘ト云ヒ、若クハ國內ニ於
  ケル石炭ヲ使フコトト云ヒ、又ソレニ
  要スル勞働ノ賃銀ノ如キモ、皆國內ノ
  收益ニ歸スルト云フヤウナ重大ナモノ
  デアリマス、單ニ「ヅク」鐵ヲ輸入シテ
  ソレヲ鋼ニ加工スル工業ト異ナリ、國
  ニ於ケル原產物ヲ多量ニ使用スル、重
  要鑛業ノ一ツデアル、銑鐵ヲ輕クシテ
  鋼鐵ダケガ重クナッタト云フ御趣旨ハ
  鐵ノ國策ノ根本ニ於テ、左樣ナ事ハ有
  リ得ベカラザルコトデアルト云フコト
  ハ、何人ガ見テモ異論ノナイコトデア
  ル、銑鐵ト鋼鐵トヲ同一ニ奬勵シ、同一
  ニ發達ヲ圖ルコトガ國ノ經濟上最モ必
  要デアルコトハ私ガ論ズルマデモナ
  イ、恐ラク商工大臣ハ必ズ御同感デア
  ラウト信ズルノデアリマス、サウナケ
  レバナラヌ、然ルニ此法案ヲ見ルト、銑
  鐵ニ對シテハ奬勵金ト云フモノハ-
  特ニ輸入稅ニ觸レズシテ特ニ奬勵金ヲ
  付與セラレル、其金額ハ只今申上ゲマ
  シタ通リ、銑鐵ニ對シテ三圓、輸人關稅
  ニ於テ一圓六十八錢ト云ヘバ、四圓六
  十八錢ニシカ過ギナイ、今日ノ時價ニ
  シテ一割ニシカ過ギナイ、或ハソレ以
  下ニナルカ知ラヌガ、一方ニ於テハ卽
  チ條及管ノヤウナ一般的ノ商品ノ基礎
  材料タルモノニ對シテ、一割五分乃至
  一割八分ニ上ゲラレテ、其他ノモノハ
  二割乃至二割八分ニ及ンデ居ルサウ
  シテ鋼鐵ヲ重クシテ銑鐵ニ對スル保護
  ハ無視サレテ居ルガ、我國ノ鑛業カラ
  言ヘバ、鐵鑛石ノ埋藏シテ居ル量ハ率
  者ノ調査ニ依レバ二千五百萬噸乃至三
  千萬噸デ、石炭ハ少クトモ三十億噸ヲ
  埋藏シテ居ル、鐵一噸ニ對シテ四噸乃
  至五噸ノ石炭ヲ有スル石炭ノ有ル國ニ
  ハ製鐵事業ガ盛デアルト言ハレテ居リ
  マスカラ、此銑鐵ニ對シテハ寧ロ鋼鐵
  ヨリハ重要視セラルベキ、此國ノ經濟
  狀態デアルト私ハ考ヘテ居ル、只今政
  府委員ノ話モゴザイマシタガ、ソレデ
  ハ甚ダ不徹底デアル、私共ハ御尤ナル
  コトデアルトモ申上ゲ兼ルノデ、國ノ
  鐵ノ政策ヲ樹テル根本ノ出發點ニ於テ
  御方針ガアラネバナラナイカラ、是ハ
  大臣カラ斯ウ云フ譯デ此策ヲ樹テタノ
  デアルト云フ御說明ヲ承リタイノデア
  リマス

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• 103・片岡直温

  ○片岡國務大臣　我國ノ銑鐵業者ガ設
  備不十分デアルト云フコトハ、旣ニ山
  本君ノ御認ニナッテ居ルコトデアラウ
  ト思ヒマス、ソレカラ銑鐵ハ銑鐵ノミ
  ヲ造リ、鋼鐵ハ鋼鐵ダケヲ造ルト云フ
  如キ、別々ニ作業ヲスレバ不經濟ニナ
  ルト云フコトモ考ヘラレルダラウト思
  ヒマス、又ソレカラ世界ノ大勢ガ終始
  一貫的ニ進ンデ來テ居ル、ソレニ依テ
  生產品モ安クナリ、經濟的ニ鐵ガ出來
  ルト云フコトモ是ハ御異論ナイト思ヒ
  マス、サウシテ見ルト日本ノ鐵製造業
  者ヲ銑鐵ヨリ鋼材ニ至ル迄一貫シテヤ
  ルト云フコトニ付テハ、先刻御述ニナ
  リマシタ通リ、御異議ナイヤウデアリ
  マスガ、併シ是ハ餘程熟考ノ上ニ督勵
  ヲ加ヘナケレバ、今日本ノ鐵業者ガ、是
  ハ極ク早ク申シマスト若干ノ膳立ヲシ
  テ、其膳立通リニ履行スルモノト見テ、
  此補助法ヲ行フヨリ外ニ仕方ガナイ、
  其膳立ヲ果シテ實行スルカ否ヤニ依
  テ、或ハ一遍渡シタ金ヲ沒收スルカモ
  知レナイ、斯ウ云フコトニシテ初メテ
  奬勵ノ實ガ擧ル、卽チ計畫ノ通リニ實
  行サレルト思フ、此事ガ段々行ハレテ
  來テ、獨立シテ行ケレバ膳立ハ其處デ
  打切ル、斯ウ云フヤウニシテ進メテ行
  クコトガ一番希望スル所デアル、今自
  分デ拵ヘル銑鐵ヲ、自分ノ所デ鋼材ニ
  拵ヘテシマフト云フ設備サヘモ缺イテ
  居ル、此時ニ當ッテ銑鐵ハ銑鐵デ尙ホ別
  々ニ立行クモノデアルト云フ風ノ奬勵
  ヲ致スコトハ、一貫シタル仕事ヲ進メ
  ルニハ當ヲ得タモノデナイ、或ハ他日
  山本君ノ言ハレルガ如キコトノ必要ナ
  時機モ來マセウ、其時ニ當ッテハ關稅デ
  行クカ、奬勵法デ行クカト云フコトモ
  起ルデアリマセウ、關稅デ行クト云フ
  コトデアレバ、繼續的ノ調査機關ニ依
  テ其不備ヲ補ッテ行クト云フ手段ニ出
  ルヨリ仕方ハアリマスマイ、差當ッテノ
  所ハ、此程度ガ我國ノ鐵工業ヲシテ改善
  ノ途ヲ進メテ行クニ適當ナルモノト信
  ジテ居ルニ外ナラヌ、凡ソ物ト云フモ
  ノハ數年ヲ經ッタナラバ、多少ノ變化ヲ
  見ルコトハ無論アリマセウ、變化ガア
  レバ其變化ニ對シテハ、又ソレニ應ズ
  ル手段ヲ執ラナケレバナリマセヌガ、
  只今ノ場合ニ於テハ、銑鐵ハ銑鐵デ別
  ニ拵ヘテモ構ハヌト云フヤウナ奬勵法
  ハ當ヲ得テ居ラヌ、是ガ眼目ニナッテ
  居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=103

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• 104・山本条太郎

  ○山本委員　只今商工大臣ノ御述ニナ
  リマシタコトハ度々承ッテ居ル、是ハ世
  界ノ製鐵業ノ進步ガ、銑鋼一貫シタ事
  業ニナッテ來テ居ル、ソレガ故ニ我國ニ
  於テモ銑鋼一貫主義ニ向ッテ奬勵スル
  ノデアル、而シテ鋼鐵ヲ造ルニハ、銑鐵
  ト鋼鐵ト一貫主義デアルト云フナラバ、
  是ハ尤デアル、併シソレヲ以テ鋼鐵ダ
  ケニ對スル御議論ト承ルコトハ出來ナ
  イ、只今御述ニナリマシタ所ニ依ルト
  銑鐵ハサウ一遍ニ出來ルモノデナイ、
  先ヅ鋼鐵ヲ造ルニハ、ドウシテモ銑鐵
  カラ造ラナケレバナラヌ、而シテ奬勵
  ヲスルニハ銑鋼一貫デアルト云フコノ
  當局ノ御議論ニ歸結シタノデアリマス
  ガ、我國ノ總テノ狀態ハ、銑鐵ハ銑鐵其
  モノトシテ進マナケレバナラヌ、日本
  ハ鋼バカリ要ル國デハナイ、昨今ニ於
  ケル日本ノ鐵工業ノ進展ノ狀況ニ付テ
  見マスレバ、或ハ鑄物工業ニ使フ鐵ガ、
  他ノ機械工業ヨリ多クノ鐵ヲ要スル狀
  況デアル、鑄物工業トハ何カト云フト、
  銑鐵ヲ基本ニスル工業デアル鍋釜等
  ノ日用品、其他社會生活ニ最モ必要ナ
  ル生產ノ工業デアル、而シテ銑鐵ハ今
  日四十萬噸ヲ使ッテ居ル、是ダケノ銑鐵
  ハ國內ニ於テ必要トシテ居ル、而モ鑄
  物工業ガ銑鐵ヲ要スルコトハ、他ノ鍊
  鐵ヨリハ多イト云フノガ實際ノ狀況デ
  アル、此狀況ハ尙ホ年ト共ニ進ムコト
  ハ明デアル、此場合ニ於テ鐵ニ對スル
  奬勵案ヲ出ス、若クハ之ニ對シテ關稅
  ヲ課スルト云フ場合ニハ、只今御話ノ
  ヤウニ製鐵ヲ奬勵スルニハ銑鋼一貫、
  ソレガ世界ノ大勢デアルト云フ、私モ
  サウデアラウト考ヘマスガ、此國ノ產
  業保護、此國ノ鐵政策ヲ考慮シテ見ル
  時ニハ、銑鐵其モノヲ極メテ重大ナル
  問題トシテ吾〓ハ考ヘナケレバナラヌ
  ト思フ、其重要ナル銑鐵ヲ造ルニハ何
  ガ要ル國內ニハ鐵ノ原料ハ無イカト
  言ヘバ、先刻モ申シマシタ通リニ澤山
  アル、石炭モ相當豐富デアリマス、又國
  外デ得ル途モアリマス、更ニ百萬噸內
  外ノ製鐵ノ設備モアル、ソレガ今日ハ
  僅ニ六十萬噸位動イテ居ッテ、四十萬噸
  バカリノ熔鑛爐ハ遊ンデ居ル、一九五
  於テハ此不況ニ沈ンデ居ル熔鑛事業、
  一方ニハ國內ニ於テ銑鐵其ノモノガ斯
  ウ必要デアル、此時ニ於テ鋼鐵ダケヲ
  主眼ニシテ此奬勵案ガ出來タト云フコ
  トハ、私ニハ了解ガ出來マセヌ、只今御
  說明ヲ承リマシタケレドモ、私ハ只今
  ノ御話ノコトヲ離レ、銑鐵ト云フモノ
  ハ鋼鐵ト等シク、若クハソレ以上ニ保
  護スル必要ガアルト思フ、此點ニ付テ
  此案ヲ御更正ニナル御意思ハナイカ、
  重ネテ今一應極メテ重大ナコトデアリ
  マスカラ伺ヒマス

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• 105・片岡直温

  ○片岡國務大臣　山本君ノ御意見ハ、
  一種ノ御意見デアリマス、私ノ意見ハ
  山本君程ニ切離シテ銑鐵ヲ餘計拵ヘル
  コトヲ奬勵スルニ傾カナイ方ガ宜イト
  思フ、卽チ銑鐵ハ無論必要デアルガ、其
  銑鐵ト同時ニ一貫シタル膳立ヲシテ、
  製鋼ヲ導クコトガ今日ハ急デアル、然
  ラバ銑鐵ヲ全ク無視スルカト云フト
  是ハ奬勵法ニ於テ受クル利益モアリマ
  スシ、ソレカラ更ニ三圓ノ奬勵金ガ得
  ラレルト云フコトデゴザイマスレバ、
  現在ノ關稅ト相竝ンデ是ガ全滅ニ歸ス
  ルモノトハ思ハヌ、相當進ンデ參ルモ
  ノト思ッテ居リマス、唯〓違フ點ハ鋼鐵
  ト同ジ程度ニ何故シナイカト云フノデ
  アルガ、ソレハ今直ニソレヲヤレバ、銑
  鐵ハ銑鐵デ別々ニ出來テ行クコトニナ
  ツテ、一貫シタ奬勵ノ目的ヲ達スルニ
  缺クル所ヲ生ズル、其點ニ於テ意見ニ
  或ル程度ノ相違ヲ生ズルニ過ギナイト
  思フ、御議論トシテハ確ニ承ルノデア
  リマスガ、政府トシテハ只今ノ案ガ我
  ガ國情ニ適スルモノト信ジテ居リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=105

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• 106・山本条太郎

  ○山本委員　只今ノ御話ヲ承リマスル
  ト、銑鐵ニ對シテハ今度ノ三圓ト云フ
  奬勵金ガ得ラレ、關稅ニ於テ一圓六十
  八錢ヲ取ルカラ、銑鐵其モノニ對スル
  保護ハ足レリト云フ御意見デアリマ
  ス、是ハ甚ダ不徹底デアル、鐵ニ對スル
  問題ハ唯鋼バカリデハナイ、銑鐵モ極
  メテ必要デアル、御話ノ通リ銑鋼一貫
  シテ行ケバソレガ理想デアル、然ルニ
  銑鐵ハ別個ノ問題デアル、一方ハ一割
  八分デアル、一方ノ方ハ奬勵金ヲ加ヘ
  テ一割ニ過ギナイモノデアッテモ宜シ
  イト云フ御意見デアルナラバ、ソレハ
  ソレマデデアリマスガ、鐵ノ問題ヲ論
  ズルニ當ッテ、只今ノヤウナ御話デハ如
  何ニモ不徹底デアル、一貫シタル主義
  ノ下ニ鐵ノ政策ヲ行ハウト云フノニ、
  俗ノ言葉デ言ヘバソレデ銑鐵ヲ繼子扱
  ニスルノデアル、サウシテ鋼ノ方ハ奬
  勵ヲシテ金モ餘計ニ遣ル、關稅モ上ゲ
  テヤル、銑鐵ノ方ハ是ハ餘リ急グコト
  ハナイ、オ前ハ此邊デ我慢シテ置ケト
  云フヤウナ御話ニナルノデアリマスケ
  レドモ、國内ニ於テ熔鑛爐ノ遊ンデ居
  ル、所モアリ國內ニ鑛石モアル、如何ニ
  モ是ガ繼子扱サレテ居ルト云フコトハ
  甚ダ遺憾デアリ、且ツ私共ガ承ッタ所デ
  モ嘗テ商工大臣ノ御意見トシテ果シ
  テ定價マデ具體的ニ御提案ニナッタカ
  ドウカ知リマセヌガ、銑鐵ノ輸入稅ヲ
  七圓ニマデ上ゲルト云フ御意見ガアツ
  タヤウニ承ッテ居ル、私共ハ尙ホ以上保
  護シナケレバ日本ノ銑鐵ハ振興セヌト
  云フヤウニ考ヘマシタガ、セメテ七圓
  デモ是ガ關稅改正ニ依リ上ッタナラバ、
  此仕事モ大ニ進ミハセンカト考ヘテ居
  ツタノガ、此度ノ奬勵案ノ三圓ト云フ
  コトヲ拜見致シマシテ、何故銑鐵ヲ左
  様ニ嫌ッテ繼子扱ニスルカ、此國ノ需要
  ガ殘ラズ鋼鐵デ濟ムナラバ宜イガ、銑
  鐵ガ非常ニ要ル、其必要ノ程度ハ鋼鐵
  ト較ベテ違ハヌト云フコトハ何人モ認
  メテ居ル、然ルニ一方ハ厚キ保護ヲ受
  ケテ其趣旨ヲ一貫シテ居ルノニ、一方
  ニ對シテハ極メテ冷酷ナル扱ヲ受ケル
  ト云フコトハ、政策ノ上カラ見、國ノ產
  業ノ大策ノ上カラ見テ、甚ダ不徹底ノ
  ヤウナ感ジガ致シタノデアリマス、併
  シ是レ以上ハ只今御述べノ通リ私共ノ
  見ルヤウニサウ必要ヂヤナイ、鋼鐵ダ
  ケ銑鋼一貫主義デ行ケバ、日本ノ鐵ノ
  國策足レリト云フ御意見デアレバ、是
  レ以上申上ゲマシテモ仕樣ガアリマセ
  ヌカラ、私ノ其點ニ關スル質問ハ是デ
  打切ッテ置キマス、更ニ是ハ技術ノコト
  デアリマシテ、私共不明ニシテ分ラヌ
  所ガアルカラ、一、二條文ニ就テ承ッテ
  見タイト思ヒマス、第四條ニ「一定ノ期
  間內ニ一ノ場所ニ於テ一年五千二百五
  十瓲以上ノ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ新
  設シタル鍛鋼品又ハ鑄鋼品又ハ鑄鋼品
  製造事業者ニ付テハ第二條ノ規定ヲ準
  用ス」ト云フコトガ書イテアリマス、此
  五千二百五十瓲以上ノ製鋼能力ヲ有ス
  ル鋼鍛品ト云フノハ、「ステイールフヲ
  ージング」ノコトト思フ、下ガ「ステイ
  ールカスチング」ノコトト思ヒマスガ、
  ドウ云フ御趣旨カラ一年五千二百五十
  瓲以上ト云フコトニ御決メニナッタノ
  デアリマスカ、ソレニ關聯シテ其次ノ
  「主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間內
  ニ一ノ場所ニ於テ一年二千五百瓲以上
  ノ製銑能力又ハ製鋼能力ヲ有スル設備
  ヲ新設シタル低燐銑鐵製造事業者、坩
  堝製鋼事業者及電氣製鐵事業者ニ付亦
  前項ニ同シ」ト云フノハ、一年二千五百
  瓲以上ト云フコトニドウシテ御限定ニ
  ナッタノデアリマスカ、是等ノ鋼鐵ハ皆
  特殊鋼ニ屬シテ居ルモノト承知シテ居
  ル、先達テ御提出ニナリマシタル關稅
  改正案ノ中ノ四百六十二ノ一ノ乙「ス
  ピーゲルアイゼン、フエロマンガニー
  ス、其ノ他ノ不可鍛性鐵合金」ト云フヤ
  ウナ種類ノモノ、其他ノ特殊鋼ガ大方
  第四條ニ揭ゲラレマシタ種類ノモノヲ
  指シタモノト考ヘマス、是等ノ鐵ハ私
  共素人ノ考カラ見マシテモ、小サイ電
  氣爐デアル、若クハ小サイ木炭熔鑛爐、
  左樣ナ設備ニ依ッテ特殊ノ鋼ガ出來テ
  居ルノダラウト思フ、隨テ是等ノ能率
  ハ極メテ小サイノデ、一瓲爐デモ、二瓲
  爐デモ、三瓲爐デモ電氣爐ナドハ行ク
  ヤウニ承知シテ居ル、之ヲ前ノ三萬五
  千瓲問題ト等シク矢張瓲數ヲ御決メニ
  ナッタト云フコトハ、必ス何カノ御趣旨
  ニ依テ出デタト思ヒマスガ、此瓲數ヲ御
  決メニナッタ御趣旨ニ付テ御伺シテ置
  キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=106

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• 107・野田鶴雄

  ○野田政府委員　是ハ現行法ノ通リヲ
  踏襲シタノデゴザイマシテ、現行法ハ
  此前旣ニ皆樣ノ御協賛ニ依テ出來タモ
  ノデ其儘ヲ踏襲シタノデ、別ニ今囘新
  シクシタノデハアリマセヌ

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• 108・山本条太郎

  ○山本委員　サウスルト只今ノ御說ニ
  依ルト、現行法ノ瓲數卽チ前ノ奬勵法
  ヲ其儘繼承サレタト云フ御話デアリマ
  スガ、ソレハ改正スル必要ヲ御認メニ
  ナラナカッタト云フ意味ニナルノデア
  リマスガ、私共ハ只今申上ゲタ通リ此
  特殊ノ所謂「ツールスチイール」トカ
  「フヲージリー」」ククシブル」ト云フヤ
  ウナ種類ノモノハ極メテ小サイ熔鑛爐
  デ出來テ行クモノデアリマスカラ、此
  瓲數ハ一年ニ五千二百瓲ト云ヘバ約十
  五瓲爐トカ何トカ云フ意味ニナリマセ
  ウ、ソレカラ一方モ八瓲內外ノモノニ
  ナリマセウガ、是ハ今少シク二千五百
  瓲ト云フヤウナモノヲ千瓲以上トカ、
  片方ノ五千二百五十瓲ト云フノヲ二千
  五百瓲以上ト云フヤウナコトニ御改正
  ニナルコトガ、日本ノ工業ノ實際ノ狀
  況カラ見マシテ、我國ノ是等特殊ノ工
  業ヲ奬勵スル意味ニ適シテ居ルト云フ
  御考ハアリマセヌカ、之ヲ承ッテ置キマ
  ス

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• 109・野田鶴雄

  ○野田政府委員　是モ現在旣ニ動イテ
  居リマス、或ハ現在仕事ヲシテ居リマ
  スノヲ大略標準ニ取リマシタノデ、之
  ニハ別ニ爐ノ單位モ決メテ居リマセ
  ヌ、此低燐銑、坩堝、電氣爐ナドハ丁度
  二千五百瓲程度ガ宜カラウト云フノデ
  現行法其儘ニ取ッタノデ、餘リ小サナモ
  ノデ永久的ノモノガ出來マシテモ、ソ
  レハ矢張經濟的ニ引合ヒマセヌコトハ
  戰時中ニ其例ガ幾ラモアリマスノデ、
  是位ガ適當ト認メテ居ルノデアリマ
  ス

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• 110・山本条太郎

  ○山本委員　更ニ第五條ニ「第一條乃
  至前條ニ規定スル製鐵事業ノ範圍ハ勅
  令ヲ以テ之ヲ定ム」トアリマスガ、一寸
  私共ニ製鐵事業ノ範圍ト云フコトガ不
  明瞭ノ感ジガ致シマスガ、簡單ニ御說
  明ヲ願ヒマス

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• 111・野村嘉六

  ○野村政府委員　只今ノ製鐵事業ノ範
  圍ト云フノハ大體ドウ云フコトヲ言フ
  ノデアルカト云フ御尋デアリマスガ、
  是ハ現行ノ製鐵業奬勵法ニモ矢張同一
  ノ規定ガアルノデアリマシテ、マダ勅
  令ヲ以テ其範圍ヲ定メテハ居リマセヌ
  ケレドモ、大體ニ於キマシテ矢張現行
  ノ製鐵業奬勵法施行令ノ第一條ト同ジ
  趣旨ニ於テ範圍ヲ定ムル積リデアリマ
  ス、而シテ現行ノ法令ハ「製鐵業奬勵法
  ニ依リ他人ノ土地ヲ收用又ハ使用シ得
  ベキ製鐵事業ハ銑鐵、鋼鐵、壓延鋼材、
  鍛鋼製品若ハ鑄鋼製品ノ素材又ハ農商
  務大臣ノ指定シタル副生物ノ製造ニ關
  スル事業トス營業稅及所得稅ノ免除ヲ
  受クヘキ製鐵事業亦同シ」斯ノ如ク大
  體ノ範圍ヲ定メテアリマス、尤モ今度
  ハ幾ラカ違ッテ居リマスカラ、其違ッタ
  點モ加味致シマシテ、大體ニ於キマシ
  テハ、現行奬勵法施行令ノ定義ト同一
  ノモノニ勅令ヲ致シタイ考デ居リマ
  ス

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• 112・山本条太郎

  ○山本委員　只今ノ御話ハ一寸私ニハ
  ツキリ致シマセヌガ、製鐵事業ノ範圍
  ト云フモノハ、此ニ第一條カラ第四條
  マデノ間ニ列記シテアリマス、此外ニ
  色〓ノモノニ擴張サレルト云フ意味デ、
  其擴張ノ範圍ヲ更ニ勅令デ定メルト云
  フ意味デアリマスカ

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• 113・三井米松

  ○三井鑛山局長　只今ノ製鐵事業ノ範
  圍ハ、大體ハ本法ニ定マッテ居リマヌケ
  レドモ、色〓ナ副生物ガゴザイマスノ
  デ、ソレ等ノモノハ此製鐵事業ノ範圍
  ニ入ルカ入ラヌカト云フ疑ガゴザイマ
  ス、從來勅令ヲ以テ定メテ居リマスノ
  デ、矢張今囘モ其儘ニ定メル積リデア
  リマス、例ヘバ製鋼設備トカ、製銑設備
  ト云フヤウナ事ハ、本法ニ現ハレテ居
  リマスレドモ、今度ソレガ壓延鋼材等
  ヲ造リマスノニ、ドノ邊マデ行クカト
  云フコトハ、本法ニ謳ッテアリマセヌ、
  壓延鋼材等ハドノ程度迄ヲ製鐵事業ノ
  範圍トスルカト云フコトハ、今日マデ勅
  令或ハ勅令ノ委任ニ依ル省令ヲ以テ定
  メタノデアリマス、ソレハ從來カラヤッ
  テ居リマス

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• 114・山本条太郎

  ○山本委員　サウスルト製鐵事業ノ範
  圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ムト云フコト
  ハ、勅令ニ依テハ或ハ「プリキ」板デアル
  トカ、或ハ鐵ノ他ノ-玆ニ列記シテ
  ナイ種類ノ範圍ニ擴張サレルコトガア
  ル、其擴張サレタモノハ本法ノ中ニ包
  含セラレルト云フコトガ、勅令デ定メ
  レバ出來ルト解釋シテ宜シイノデス
  カ-ソレハ只今デナクテモ、若シ前
  例デモアリマシタラ御取調ヲ願ッテ、明
  日デモ宜シウゴザイマス-次ニ第八
  條ノ三デアリマス、「二以上ノ製鐵事業
  者ノ事業ニシテ作業ノ狀況ニ依リ第一
  條ニ規定スル製鐵事業ニ準スヘキモ
  ノ」ト云フノハ、實例ヲ以テ云ヒマスト
  ドウ云フ事ヲ意味スルノデアリマセウ
  カ

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• 115・野田鶴雄

  ○野田政府委員　是ハ午前中ニ申上ゲ
  マシタ繼續的ニ鎔銑ヲ送ッテヤルト云
  フ其仕事ノ事ヲ申スノデアリマス

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• 116・山本条太郎

  ○山本委員　サウスルト「二以上ノ製
  鐵事業者ノ事業」ト云フコトハ、ハッキ
  リシテ居リマスガ、一其作業ノ狀況ニ依
  リ第一條ニ規定スル製鐵事業ニ準スベ
  キモノト云フノハ、其單ナル意味デア
  リマスカ、二ツノ異ナッタル事業者ガ同
  一ノ事業ヲ扱ッタトキハ、第一條ノ通リ
  之ヲ認メルト云フ意味ニナッテ居リマ
  スカ

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• 117・野田鶴雄

  ○野田政府委員　丁度三萬五千趣ノ一
  貫作業ヲ持ッテ居ルモノト、實體ガ同ジ
  ニナルモノト云フ意味デアリマス

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• 118・山本条太郎

  ○山本委員　今一ツ第九條デアリマス、
  是迄ハ外國カラ輸入スル船舶用ノ材料
  ハ輸入稅ヲ戾スト云フコトニナッテ居
  ル、今囘此第九條ヲ挿入セラレマシタ
  コトハ、內地ニ於テ出來ル所ノ鋼材ガ、
  輸入稅ヲ引上ゲタコトニ依リ、若クハ
  奬勵金ヲ與フルコトニ依テ、市價ニ變
  動ヲ起ス、從來ノ戾稅カラ言ヘバ、造船
  材料ハ成ベク外國ノ物ヲ買ヘト云フコ
  トニナッテ居ッタガ、ソレハ一體根本ノ
  主義トシテ甚ダ面白クナイ、不適當ノ
  事デアル、故ニ今囘ハ帝國內ニ於テ製
  造シタル鋼材ヲ造船材料ニ使ッタ場合
  ニハ、命令ノ定ムル所ニ依テ其鋼材ノ
  製造者ニ對シテ奬勵金ヲ交付スルコト
  ヲ得トアリマスガ、鋼材ノ製造者ニ對
  シテハ奬勵金ハ旣ニ出テ居ル、第八條
  ニ明ニ規定セラレテ、所謂三圓、五圓、
  六圓ト云フ保護ヲ與ヘルコトガ規定サ
  レテ居ル、更ニ第九條ニ於テ造船材料
  ニ用ヒラレル鋼材ノ製造者ニ奬勵金ヲ
  交付スルコトヲ得ルト云フノハ、第八
  條ニ規定サレタ以外ニ、更ニ之ヲ離レ
  テ船舶ノ原料ニスル鋼材ニ對シテハ、
  奬勵金ヲ交付スルト云フ意味ニ解釋シ
  テ宜シイノデスカ

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• 119・三井米松

  ○三井鑛山局長　第八條以外ニ、從前
  カラノ造船用ノ鋼材ノ保護ハ、其儘ニ
  ヤッテ行ク積リデアリマス、從來造船用
  ノ材料ハ輸入稅免除ニナッテ居リマス、
  其物ニ對シマシテソレヲ造船材料ニ使
  ヒマス場合ニハ、其輸入稅ダケヲ補助
  スル、ソレハ矢張今後モ續ケテ行ク積
  リデアリマス

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• 120・山本条太郎

  ○山本委員　只今御話ヲ承ルト少シオ
  カシイト思ヒマスルガ、關稅ノ規則ヲ
  拜見スルト、法文第十條ハ、アレハ活キ
  テ居リマス、今度ノ關稅改正ニ對シテ
  モ繼續サレテ居リマスガ、ソレニ依ル
  ト只今ノ御話ノヤウニ、船舶ノ建造ノ
  爲ニ外國カラ材料ヲ輸入シタトキハ
  戾稅ト云フカ、アレハ活キテ居リマス、
  此奬勵金ト云フ意味ト、只御話ノ輸入
  稅ヲ戾スト云フ意味トハ別個ノ問題ト
  思ヒマスアレハ明ニ法文デ輸入稅ヲ
  戾スト云フコトガ活キテ居リマス、更
  ニ今度第九條ニ帝國內ニ於テ製造シタ
  ル鋼材ト云フコトニナッテ居リマスガ、
  アノ輸入稅ニ付テハ、第九條ハ關係ガ
  別ノモノデアリマス、若シ外國カラ輪
  入シタモノヲ船舶ノ製造ニ使フ場合
  ニ、戾稅ハ活キテ居ル、今度國內デ
  帝國內デ製造シタル鋼材ガ船舶ノ鋼材
  ニ使ハレタ場合ニハ、政府ノ命令ノ定
  スル所ノ製造者ニ奬勵金ヲヤルト云フ
  ノデアリマスカラ、是ハ輸入品ニ關係
  ガナイ、國內ニ於テ製造スル鋼材デア
  リマス、之ヲ與ヘルトスレバ、ドウ云フ
  意味デドウ云フヤウナ程度デ與ヘラレ
  ルト云フ意味ニナリマセウカ、ソレヲ
  承ッテ置キタイノデアリマス

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• 121・三井米松

  ○三井鑛山局長　船舶用鋼材ハ、主ト
  シテ外國カラ輸入シテ居リマシテ、其
  外國輸入ノ鋼材ヲ以テ船舶ヲ造ッタ場
  合ニハ、其鋼材ノ輸入稅ハ話リ御承知
  ノ通リ免除ニナルノデアリマヌ、サウ
  致シマスト內地デ同ジ鋼材ヲ拵ヘマシ
  テ、ソレヲ造船所ガ使ヒマシテモ、內地
  ノ鋼材ハ輸入稅ノ掛ッタ價格ヲ以テ、矢
  張ソレハ賣ラレナクテハナラヌ、或ハ
  ソレヲ使用シナクテハナラヌ、デアリ
  マスカラ、輸入稅ノ免除ヲ致シマスト
  共ニ、內地ノ鋼材ヲ船艦ニ使ヒマシタ
  場合ニハ、ソレニ對シテハ輸入稅ダケ
  ノ奬勵金ヲ與ヘルト云フコトニナッテ
  居リマスノデ、ソレヲ矢張其儘襲踏致
  シテ居リマス

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• 122・山本条太郎

  ○山本委員　只今ノ御話ハ外國品ヲ
  使ッタトキニハ戾稅ヲヤル、內地ノ鋼材
  ヲ使ッタ場合ニハ戾稅ト同額ノ補助ヲ
  ヤルト解釋シテ宜シウゴザイマスカ

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• 123・三井米松

  ○三井鑛山局長　戾稅デナイ、輸入稅
  免除デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=123

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• 124・戸澤民十郎

  ○戶澤委員　例ヘバ今日ノ輸入稅ガ一
  噸ニ付テ二十圓、之ヲ造船所ガ使ッタ場
  合ニ二十圓ハ戾稅ヲ造船所ニ與ヘラレ
  テ居ル、若クハ戾稅ヲ免除サレタト同
  ジデアリマス、卽チ二十圓ダケ安イモ
  ノデアリマス、此第九條ハ、內地ニ於テ
  製造シタル鋼板ヲ、造船業者ガ建設材
  料ニ使ッタ場合ニ奬勵金ヲ與ヘル、鋼板
  ノ製造者ニ對シテ奬勵金ヲ與ヘルト云
  フコトハ輸入稅ニ全ク關係ガナイ、此
  奬勵金ノ額ハ輸入稅ト同一ノ額ヲ鋼板
  ノ製造業者ニ奬勵金トシテ與ヘルト云
  フ御趣旨デアリマスカ、之ヲ私ハ御尋
  スルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=124

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• 125・三井米松

  ○三井鑛山局長　其通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=125

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• 126・戸澤民十郎

  ○戶澤委員　サウスルト第九條ノ、政
  府ハ命令ノ定ムル所ト云フ命令ト、第
  八條ノ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依ルト
  云フノトハ、命令ノ內容ガ違フ、命令ガ
  別個ニ出來ルノデアリマスカ、私ガチ
  ヨット讀ンデ感ジタコトハ、本法ノ補助
  ヲ受ケル者ハ年額三萬五千瓲以上ノ者
  ハ補助サレルノデアッテ、ソレ以下ノ小
  サナ者ハ保護ヲ受ケナイコトニナッテ
  居リマスカラ、船舶ノ材料ニ用フルモ
  ノハ、其大小工業ニ拘ラズ、第九條デ保
  護ヲ受ケルト云フ意味カト思ッテ居リ
  マシタ、所ガ只今ノ御說明ニ依ルトサ
  ウデナイ、船舶ノ建造修繕ニ使用セラ
  レル場合ニ於テハ、第八條ノ一般ノ補
  助ヲ受ケルモノトハ全然違フ金額ノ補
  助ヲ受ケルト云フヤウニ聞エマス、サ
  ウスルト非常ニ妙ニ聞エマスガ······

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• 127・野村嘉六

  ○野村政府委員　私モ初メハ此其疑ヲ
  持ッタノデアリマスガ、段々〓究スルト
  造船材料ノ爲ノ鋼材ハ戾稅ヲスルカ免
  稅スルカ、隨テソレニ相當スルダケハ
  大正十年ノ改正ノ法律ニ依テ補助ヲ受
  ケテ居ル、船舶ヲ造ル鋼材ニ對シテ、是
  ハ現ニ今日ト雖モ船舶ヲ造ル所ノ關係
  ニ於テハ現ニ受ケテ居ル、ソレハ其儘
  活カシテ居リマス、其儘活キテ居ル所
  ニ、今囘更ニ三萬五千瓲以上ヲ銑鋼一
  貫主義デ造ッタトキニハ、サウ致シマス
  レバ、更ニ其點ニ奬勵金ヲ受ケル、是ハ
  チヨット見マスルト、二重ニナルヤウデ
  アリマスガ、內容ハ二重ニナラナイ、何
  故カト云フト、前ニ船舶製造ノ鋼材ニ
  對シテハ、ソレダケノ特點ヲ與へテ居
  リマスカラ、丁度元〓ニナルノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=127

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• 128・森恪

  ○森委員　モウ一ツ伺ヒマス、先程モ
  御質問ガアッテ、如何ニモ要點ニ觸レテ
  居ルト思ヒマスガ、今第八條ノ第三項、
  卽チ「認メタルトキ」ト云フ字ガアル、
  例ヘバ神戶製鋼所ノ場合ヲ考ヘルト、
  其處ノ鎔鋼爐ハ三十噸デ、サウシテ足
  リナイ物ハ外カラ買フ、此二ツノ行爲
  ヲ一貫作業ト御認メニナルト云フコト
  ハ想像ガ出來ナイノデアリマセウカ、
  殊ニ製鋼所ノ造ッタ品物ガ、造船材料ニ
  使用サレタ場合ニ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=128

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• 129・野田鶴雄

  ○野田政府委員　八條ノ三項ニ矢張第
  一條ニ準ズルト云フコトヲ、政府ハ國
  ノ製鐵事業發達ノ爲ニ必要ナコトト考
  ヘテ居リマス、矢張クドイヤウデアリ
  マスガ、三萬五千噸設備ノモノデナケ
  レバ到底引合ハナイ、又ソレヲ奬勵シ
  テモ、ドウモ姑息ニ陷ルト云フコトヲ
  考ヘテ居ルノデアリマシテ、ドウゾ其
  點ニ於テ御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=129

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• 130・加藤政之助

  ○加藤委員長　奬勵法ニ付テノ御質問
  ハ大抵盡キタヤウデアリマスガ······

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=130

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• 131・森恪

  ○森委員　マダ外務大臣其他ニ對シテ
  保留サレテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=131

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• 132・加藤政之助

  ○加藤委員長　ソレハ明日ニスルヨリ
  仕方ガナイ、其他ノ特別會計法、大正九
  年ノ法律五十三號中改正法律案、之ニ
  付テ御質問ガアレバ成ベク終了シテ置
  キタイト思ヒマス、ナケレバソレデ宜
  シウゴザイマス

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• 133・森恪

  ○森委員　第三ニハ吾〓ノ方ニハアリ
  マセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=133

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• 134・加藤政之助

  ○加藤委員長　第二モアリマスマイナ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=134

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• 136・加藤政之助

  ○加藤委員長　アレバ、今イケマセヌ
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=136

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• 137・加藤政之助

  ○加藤委員長　ソレデハ斯樣ニ致シタ
  イト思ヒマス、明日午前十時カラ開會
  致シマシテ、サウシテ午前中ニ質問ヲ
  終了シテ、午後一時ニ再ビ委員總會ヲ
  開ク、斯ウ云フコトニシテ置キマス、ソ
  レデハ今日ハ是デ散會致シマス
  午後五時四十二分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005111930X00119260319&spkNum=137

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