1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
大正十五年三月九日(火曜日)午後二時二十六分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第二十五號
大正十五年三月九日
午後一時開議
第一 (第一號)大正十四年度歳入歳出總豫算追加案
第二 (特第一號)大正十四年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
第三 日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 農工銀行法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 民事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第八 民事訴訟法中改正法律施行法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第九 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第十 出版物法案(政府提出) 第一讀會
第十一 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十二 大正十三年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第十二 大正十三年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第十二 大正十四年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第十二 大正十四年度豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第十二 大正十四年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第十二 大正十四年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第十二 臨時軍事費特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第十二 自大正六年二月二十六日至大正九年六月二十五日臨時軍事費特別會計豫備費外に於て豫算超過支出の件(承諾を求むる件)
第十三 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十四 對支文化事業特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 教育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 明治三十八年法律第十七號中改正法律案(專賣局据置運轉資本補足に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 議院法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 漁業法中改正法律案(谷原公君外二名提出) 第一讀會
第二十 民事訴訟法中改正法律案(谷原公君外一名提出) 第一讀會
第二十一 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(望月圭介君外二十二名提出) 第一讀會
第二十二 治安警察法中改正法律案(清瀬一郎君外一名提出) 第一讀會
第二十三 漁業財團抵當法中改正法律案(中村嘉壽君提出) 第一讀會
第二十四 治安警察法中改正法律案(安藤正純君外三名提出) 第一讀會
第二十五 寺院現境内地無償下戻に關する法律案(安藤正純君外四名提出) 第一讀會
第二十六 寺院現境内地無償下戻に關する法律案(福井甚三君外四名提出) 第一讀會
第二十七 古社寺保存法中改正法律案(田中萬逸君外四名提出) 第一讀會
第二十八 會計檢査院法中改正法律案(武藤山治君外一名提出) 第一讀會
第二十九 牧野法案(八田宗吉君提出) 第一讀會
第三十 造林助成法案(東武君外十名提出) 第一讀會
第三十一 違警罪即決例中改正法律案(横山勝太郎君提出) 第一讀會
第三十二 家禄引直處分法案(隅田豐吉君外五名提出) 第一讀會
第三十三 北海道拓殖銀行法中改正法律案(小池仁郎君外四名提出) 第一讀會
第三十四 日本勸業銀行法中改正法律案(小池仁郎君外四名提出) 第一讀會
第三十五 農工銀行法中改正法律案(小池仁郎君外四名提出) 第一讀會
第三十六 移住組合法案(樋口秀雄君外七名提出) 第一讀會
第三十七 煙草專賣法中改正法律案(森恪君外九名提出) 第一讀會
第三十八 大阪市に關する法律案(廣瀬徳藏君外十一名提出) 第一讀會
第三十九 神戸市に關する法律案(砂田重政君外三名提出) 第一讀會
第四十 名古屋市に關する法律案(田中善立君外二名提出) 第一讀會
第四十一 京都市に關する法律案(森田茂君外六名提出) 第一讀會
第四十二 著作權法中改正法律案(内ヶ崎作三郎君外三名提出) 第一讀會
第四十三 特別都市計畫法中改正法律案(關直彦君外八名提出) 第一讀會
第四十四 舊慣に依り永小作權者か地租額負擔を約したる田畑の地租免除に關する法律案(大石大君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十五 地租條例中改正法律案(床次竹二郎君外二十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十六 所得税法中改正法律案(床次竹二郎君外二十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十七 大正九年法律第十二號中改正法律案(所得税法の施行に關する件)(床次竹二郎君外二十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十八 明治四十二年法律第七號廢止法律案(國債の利子所得税免除に關する件)(床次竹二郎君外二十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=0
-
001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
出版物法案
(以上三月八日提出)
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
横濱市ニ關スル法律案
提出者
平沼亮三君若尾幾太郞君
戶井嘉作君
恩給法中改正法律案
提出者
丸山浪彌君臭野小四郞君
栗林五朔君
家祿賞典祿給與未濟ニ關スル法律案
提出者
福田五郞君中野實君
八田宗吉君加藤十四郞君
成田榮信君田口文次君
岩切重雄君熊谷五右衍門君
恩給法中改正法律案
提出者
松實喜代太君東武君
黑住成章君同田伊太郞君
(以上三月八日提出)
關稅定率法中改正法律案ニ對スル修正案
提出者
山本条太郞君堀切善兵衞君
星島二郞君松本眞平君
長田桃藏君吉津度君
山内範造君竹內友治郞君
來栖七郞君倉元要一君
(以上三月九日提出)
筑後川改修工事ニ伴フ犧牲的地域善後策
ニ關スル建議案
提出者加藤十四郞君
金澤市ニ高等師範學校設置ニ關スル建議
案
提出者佐藤實君
遠信鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
山本勝次君永田善三郞君
越中島線敷設速成ニ關スル建議案
提出者
太田信治郞君作間耕逸君
中原德太郞君
陸海軍大臣文官制採用ニ關スル建議案
提出者〓瀨一郞君
重要府縣道改良ニ關スル建議案
提出者
生方大吉君井本常作君
佐藤實君
小郡萩間鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者
渡邊祐策君古林新治君
藤田包助君秋田寅之介君
岸和田港修築費國庫補助ニ關スル建議案
提出者
井坂豐光君植場平君
中林友信君森田政義君
沼田嘉一郞君山口義一君
廣瀨德藏君
拓殖省設置ニ關スル建議案
提出者
〓水留三郞君津崎尙武君
坂東幸太郞君
福山、出雲今市間及來島木次問鐵道速成
ニ關スル建議案
提出者
嶋居哲君渡邊伍君
吉田眞策君古川〓君
那賀川改修ニ關スル建議案
提出者
谷原公君原田佐之治君
(以上三月六日提出)
延宇鐵道建設ニ關スル建議案
提出者
中山貞雄君佐藤重遠君
(以上三月八日提出)
一時賜金癈兵ニ對スル四給支給法制定ニ
關スル建議案
提出者山下谷次君
軍人傷痍記章令中改正ニ關スル建議案提
出者山下谷次君
(以上三月九日提出)
決議案(中野正剛君ニ反省處決ヲ促ス件)
提出者
望月圭介君山本悌二郞君
(以上三月八日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
軍部ノ公金取扱方法ニ關スル質問主意書
提出者〓瀨一郞君
(以上三月六日提出)
製鐵所ノ經營ニ關スル再質問主意書
提出者
岡田伊太郞君土井權大君
(以上三月八日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一議員ノ異動左ノ如シ
大分縣第三區選出議員木下謙次郞君退職
者トナリタリ
岡山縣第八區選出議員土居通憲君ノ補闘
トシテ難波〓人君當選セラレタリ
一本月六日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
議長ニ於テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
二四四村松龜一郞君
四〇七太田信治郞君
一昨八日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議
長ニ於テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
五多木久米次郞君
四〇吉良元夫君
四三難波〓人君
一二二西澤定古君
一三三松山常大郞君
一八六太田信治郞君
二一八米原於莵男君
二一九大分縣第三區
選出議員
三四二山谷德治郞君
三四三丸山浪彌君
三四四陣軍吉君
三四五沼田嘉一郞君
三七一宜保成晴君
三八一岩切重雄君
三八二福井甚三君
三九七高木第四郞君
四〇七八並武治君
四〇八高出耘平君
中野正剛君
二一〇九神谷彌平君
四四四四一一一〇
山宮藤吉君
鹽田團平君
四一三宮崎友太郞君
四五九池田龜治君
四六〇藏園三四郞君
一本月六日常任委員補闔選舉ノ結果左ノ如
シ
第四部選出
豫算委員丸山浪彌君(奧野小四郞
君補闘)
一本月六日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第三部選出豫算委員山本勝次君
第四部選出豫算委員建部遯吾君
第五部選出豫算委員森田茂君
第七部選出豫算委員由谷義治君
一昨八日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第三部選出
豫算委員中原德太郞君(山本勝次君
補闘)
第四部選出
豫算委員佐藤實君(建部遯吾君
補闘)
第五部選出
豫算委員杉浦武雄君(森田茂君補
關
第七部選出
豫算委員谷口源十郞君(由谷義治君
補關)
一本月六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
農業倉庫業法中改正法律案委員
由谷義治君山本厚三君
山田助作君谷口宇右衛門君
土井權大君岡田伊太郞君
瀨沼伊兵衞君禱苗代君
丹下茂十郞君
一本月六日大正十四年法律第四十七號衆議
院議員選擧法中改正法律案委員鳩山一郞
君辭任ニ付其ノ補闕トシテ山本芳治君
ヲ、輸出生絲検査法案委員村上紋四郞君
寺島權藏君辭任ニ付其ノ補刷トシテ平沼
亮三君近藤重三郞君ヲ、府縣制中改正法
律案外六件委員藤澤萬九郞君辭任ニ付其
ノ補闕トシテ高井商二君ヲ孰レモ議長ニ
於テ選定セリ
一昨八日理事補闘選擧ノ結果左ノ如シ
議員梅田寛一君ノ行動ニ關スル調査ノ
件(關直彥君提出)委員
理事板野友造君(理事山口義一君本
月五日辭任ニ付其ノ補關)
一昨八日理事一名追加互選ノ結果左ノ如シ
議員梅田寛一君ノ行動ニ關スル調査ノ
件(關直彥君提出)委員
理事武富濟君
一昨八日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
農業倉庫業法中改正法律案(政府提出)
委員
委員長由谷義治君
理事岡田伊太郞君壽視苗代君
一昨入日議員梅田寬一君ノ行動ニ關スル調
査ノ件委員靑木精一君田中万逸君辭任ニ
付其ノ補關トシテ板野友造君戶澤民十郞
君ヲ、郵便年金法案外一件委員平野光雄
君辭任ニ付其ノ補闕トシテ戶井嘉作君ヲ
孰レモ議長ニ於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=1
-
002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、本日ハ質問ノ豫定日デアリマスケレド
モ、議案ノ都合ニ依リマシテ之ヲ延期〓シ
マス、但シ今週若クハ次ノ週ニ於キマシテ、
特ニ質問ノ爲ニ會議ヲ開キタイト思フノデ
アリマス、此事ヲ豫メ御斷リヲ申上ゲテ置
キマス-御諮リヲ致スコトガアリマス、
第三部選出決算委員松山兼三郞君、第五部
選出決算委員富田愿之助君、右常任委員辭
任ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=2
-
003・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ
補闘選擧ヲ行ヒ屆出アランコトヲ望ミマ
ス、全院委員長多木久米次郞君ヨリ、全院
委員長辭任ノ申出ガアリマシタ、之ヲ許可
スルニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=3
-
004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=4
-
005・田淵豐吉
○田淵豊吉君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=5
-
006・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 一寸只今異議ナシト
申シマシタ宣告ハ取消シマス、田淵君ヨリ
發言ヲ求メラレテ居リマス、田淵君
〔田淵豐吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=6
-
007・田淵豐吉
○田淵豐吉君 諸君、多數國民ガ議會ノ議
員ヲ選ビ、サウシテ少數ノ中デ物事ヲヤル
ノテス、故ニ曖昧ノコトガ起リ易クテ仕樣
ガナイ、非常ニ疑惑ヲ招イテ居ル、故ニ議
會ノ議員及其議院ノ役員ハ嚴正ナモノデナ
ケレバナラヌ、私ハ國民ト共ニ之ヲヤリタ
イト思フ、故ニ之ヲ弄ンデハイカヌト思
フ、然ルニ私ト同ジク無所屬ニ居リマス所
ノ-私ハ無所屬デゴザイマスガ、無所屬
ノ多木久米次郞君ヲ全院委員長ニ選舉サレ
タ嚴正公明ニ選舉サレタノデゴザイマ
ス、而シテ多木久米次郞君ハ其後本黨ニ入ツ
タ、ドウ云フ譯カト云フコトハ當時私此處
デ言ッタコトガアル、サウシテ多木君ガ本黨
へ入シタトキニハ辭任ノ申出ガナカッタヤ
ウニ拜聞致シテ居ル、然ルニ今度ハ數日
前-大分前カラ辭任ヲ申出テ居ルト云フ
コトハ今日聽キマシタ、モウ既ニ辭職サレ
タト云フコトデアリマス、多木久米次郞君
ハ老齡デハゴザイマスケレドモ、今日ノ議
會ニ於ケル全院委員長ハサウ劇職デハナ
イ、殆ド開イタコトガナイ、名譽職ノヤウニ
感ズル、何故ニ此度多木久米次郞君ノ所屬
ガ無所屬ニ變ヲタカラト云ッテ、全院委員長
ヲ選擧シナケレバナラヌカト云フコトヲ私
ハ國民ト共ニ聞キタイ、此全院委員長ト云
フヤウナモノハ或ル意味ニ於テハ名譽職デ
アルガ、重大ナモノデアルト思ッテ居リマ
ス、他ノ委員ノ辭任トハ餘程趣ヲ異ニシテ
居リマスカラ、之ヲ選擧スルニ當ッテハ、嚴
正ナル國民ノ了解ノ下ニ諸君ハ投票シナケ
レバイケナイ、諸君ハ斯ウ云フコトヲ常ニ
瞬味模稜ノ裡ニ葬ッテ置クカラ結局公明デ
ナクナル、又選擧シテ又辭任スル、貴族院
議員ガ互ニ譲合ッテ出ルト云フヤウナ、此前
ノヤウナ例ガ起ッテハ、此議會ノ神聖ガ保
タレナイト思ヒマス、事後ニ査回〓ヲ開ク
トカ云フヤウナコトヲスルヨリモ、事前
ニ、事ノ起ラヌ前ニ嚴正ナル態度ヲ執シテ
置カナケレバナラヌ、今公明正大ニ投票ヲ
シナイト、其結果ハ不公明無責任ニナル
ト思フ、諸君ガ多木久米次郞君ヲ選擧サレ
タ當時ニ於テハ無所屬デアリマシタ、無所
屬ノ多木久米次郎君ガ全院委員長ニ選舉サ
レタ、其所屬ノ黨派ハ何等變テ居ナイ、然
ルニ再ビ選擧ヲスルト云フ、ソレハ宜クナ
イ、多木君モ必ズ私ノ反對スルコトハ御受
ケ下サルコトヽ思ヒマス、再ビ選舉スルニ
付テハ私ハ免モ角、少クトモ諸君ハ多木久
米次郎君ヲ選擧スル義務ヲ持ッテ居ルト思
フ、若シ無イト云フナラバ其理由ヲ明ニシ
テ選擧ニ臨ムノデナケレバ、私ハ公明正大
ナル政治ヲ行フコトガ出來ナイト思ヒマ
ス、私ハ一言此所デ私ノ意見ヲ述ベテ、多
木久米次郎君ノ辭任ヲ許可セマ方ガ適切ナ
ル言動ト思ヒマスカラ、一言申シタ次第デ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=7
-
008・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 唯〓田淵君ノ御述ニ
ナリマシタコトハ要スルニ全員委員長ノ
辭職ヲ許可シナイト云フ反對論デアリマ
ス、仍テ採決致シマス、此辭職ヲ許可スベ
シト云ラニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=8
-
009・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立大多數デアリマ
ス許可スルコトニ決シマシタ-此全院
委員長ノ職ハ、御承知ノ如ク議會構成ノ重
要ナル機關デアリマス、ソレ故ニ此補闕選
擧ハ直ニ之ヲ行ハナケレバナラヌト存ジマ
ス、仍テ玆ニ全院委員長ノ補闕選舉ヲ行ヒ
マス
全院委員長ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=9
-
010・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 選擧ニ先チマシテ一
言致シマス、此選擧ノ手續ハ總テ前例ニ依
リマス、投票ハ無記名投票デアリマス、諸君
ノ御手許ニ配付シテアリマス投票用紙ニ氏
名ヲ御書キニナリマシテ、木札ノ名刺ヲ添
ヘテ御持參アランコトヲ望ミマス、是ヨリ
點呼ヲ命ジマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=10
-
011・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票漏ハアリマセヌ
カ-投票漏ナシト認メマス-投票爾閉
鎖-開匣
〔書記官投票及名刺ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=11
-
012・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票總數ハ三百七十
八デアリマス、名刺ノ數ト符合致シテ居リ
ひと、其過半數ハ百九十デアリマス-
投票ノ點檢ヲ命ジマス
〔書記官投票ヲ讀上ク〕
〔高木益太郞君「只今ヨリ商事調停法ノ
委員會ヲ開キマス、委員諸君ノ御出席
ヲ願ヒマス」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=12
-
013・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票ノ結果ヲ書記官
長ヲシテ報告致サセマス
〔中村書記官長朗讀〕
全院委員長選擧ノ結果
二百三十七點熊谷五右衞門君
〔拍手起ル〕
百三十六點田中定吉君
二點菊池謙二郞君
一點町野武馬君
點山口嘉七君
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=13
-
014・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 衆議院規則第三十二
條ニ依リマシテ、熊谷五右衞門君ガ御當選
ニナリマシタ(拍手起ル)
〔參照〕
全院委員長投票者氏名左ノ如シ
石塚三郞君石黒大次郞君
飯塚春太郞君井本常作君
一柳仲次郞君橋本喜造君
原脩次郞君早速整爾君
濱口雄幸君西英太郞君
本田恒之君戶井嘉作君
戶田由美君戶澤民十郞君
富田幸次郞君中馬興丸君
太出信治郞君大津淳一郞君
大島要三君大里廣次郞君
小野重行君岡本實太郞君
奧村千藏君片岡直温君
川崎安之助君川崎克君
神谷彌平君神田正雄君
神部爲藏君加藤政之助君
加藤鯛一君加藤六藏君
加藤十四郞君河野曉君
河波荒次郞君金澤安之助君
金田平兵衞君横山勝太郞君
橫山一格君横山金太郞君
吉原義雄君吉田磯吉君
高木正年君高橋元四郞君
高田耘平君賴母木桂吉君
武富濟君田中万逸君
田中式雄君田中善立君
建部遜吾君谷口宇右衛門君
俵孫一君中原德太郞君
中村貞吉君中野正剛君
中野猪之助君永田善三郞君
村上國吉君村山喜一郞君
村松龜一郞君紫安新九郞君
室木彌次郞君生方大吉君
內ヶ崎作三郞君野村嘉六君
黒田重兵衞君工藤鐵男君
八並武治君山宮藤吉君
山田又司君山田助作君
山田道兄君山口嘉七君
山本勝次君山本厚三君
山枡儀重君松井郡治君
丸山五郞君町田忠治君
古屋慶隆君深井功君
降旗元太郞君藤澤幾之輔君
藤井敬慎君福田五郞君
小島證作君小寺謙吉君
小山松壽君小池仁郞君
木檜三四郞君近遠重三郞君
紺野九右衞門君寺島權藏君
淺賀長兵衞君淺川浩君
靑木知四郞君蟻川五郞作君
荒井建三君荒川五郞君
安達謙藏君作間耕逸君
佐竹庄七君佐藤球三郞君
齋藤降夫君齋藤太兵衞君
齋藤仁太郞君齋藤金吾君
柵瀨軍之佐君澤田利吉君
木村小左衞門君由谷義治君
三木武吉君三橋四郞次君
箕浦勝人君斯波貞吉君
〓水留三郞君信太儀右衞門君
鹽出團平君重松重治君
廣瀨德藏君平川松太郞君
平野光雄君平井光三郞君
樋口秀雄君比佐昌平君
森田茂君粟山博君
關矢孫一君關俊吉君
鈴置倉次郞君杉浦武雄君
菅原英伍君菅村太事君
磯部尙君磯部保次君
板野友造君岩崎幸治郞君
岩崎動君今里準太郞君
今井健彥君石井三郞君
石坂豐一君石原正太郞
飯村五郞君井上敬之助君
井上孝哉君井上虎治君
井口延次郞君大養毅君
生田和平君伊坂秀五郞君
濱口吉兵衞君濱田國松君
濱田精藏君八田宗吉君
鳩山一郞君原惣兵衞君
西澤定吉君西方利馬君
堀切善兵衞君星島二郞君
土井權大君長田佻藏君
大竹謙治君大口喜六君
小川平吉君小野義一君
岡田伊太郞君若尾幾太郞君
若尾璋八君若宮貞夫君
渡邊伍君渡邊祐策君
加藤知正君加藤久米四郞君
兼松寅太郞君笠原忠造君
河上哲太君川口義久君
海原〓平君吉津度君
吉植庄一郞君竹原樸一君
竹内友治郞君田邊七六君
高井商二君高木音藏君
高橋熊次郞君高草美代藏君
高山長幸君土屋興君
中島守利君中村巍君
中村〓造君內田信也君
內野辰次郞君浦山助太郞君
上埜安太郞君野田俊作君
來栖七郞君熊谷巖君
熊谷直太君黑住成章君
倉元要一君矢野鉉吉君
山本芳治君山本悌二郞君
山本条太郞君山口義一君
山口恒太郞君山下谷次君
山內範造君山崎達之輔君
前田米藏君松本眞平君
松本君平君松岡俊三君
松山常次郞君松實喜代太君
牧野良三君藤〓忠兵衞君
藤田胸太郞君藤田包助君
藤川〓助君二木洵君
古川〓君木暮武太夫君
小久保喜七君小橋藻三衞君
古林新治君兒玉右二君
神崎勳君近藤達兒君
安藤正純君安保庸三君
靑木精一君靑山憲三君
秋田寅之介君秋田〓君
赤間嘉之吉君有馬賴寧君
東武君齋藤珪次君
齋藤藤四郞君榊原經武君
佐々木春作君佐々木長治君
坂井大輔君木戶豐吉君
宮崎三之助君宮本逸三君
三善〓之君三土忠造君
篠原和市君志賀和多利君
嶋居哲君島本信二君
廣瀨爲久君廣岡宇一郞君
平山爲之助君森〓昶君
森恪君望月圭介君
瀨沼伊兵衞君砂田重政君
鈴木隆君菅原傳君
隅田豐吉君杉宜陳君
井坂豐光君池田泰親君
岩切重雄君禱苗代君
原田藤次郞君原田佐之治君
原田十衞君本多貞次郞君
星廉平君堀喜幸君
富田愿之助君床次竹二郞君
東〓實君千葉宮次郞君
陣軍吉君沼田嘉一郞君
折原巳一郞君小島善作君
小川〓太郞君小野寅吉君
大園榮三郞君大麻唯男君
大城幸之一君奥野小四郞君
川原茂輔君加藤鐐五郞君
柏田忠一君兼田秀雄君
神村吉郞君吉松忠敬君
高鳥順作君高見之通君
丹下茂十郞君田中隆三君
田口文次君谷原公君
津崎尙武君中林友信君
中村啓次郞君中村嘉壽君
中山貞雄君長峰與一君
永井作次君植場平君
上原好雄君浦野謙朗君
則元由席君野村治三郞君
熊令五右衞門君藏園三四郞君
栗林五州君八木逸郞君
山谷德治郞君前田房之助君
前田兼寶君牧山耕藏君
松田源治君丸山浪彌君
麓純義君小橋一太君
兒玉實良君寺田市正君
櫻內幸雄君佐藤重遠君
宣保成晴君三輪市太郞君
宮島幹之助君志波安一郞君
〓水長〓君平田民之助君
森田政義君森肇君
元田肇君川長右衞門君
林田龜太郞君坂東幸太郞君
馬場義興君岡田溫君
田崎信藏君堤〓六君
土屋〓二郞君永田新之允君
武藤嘉門君野原種次郞君
畔田明君山口左一君
增田義一君松山兼三郞君
小屋光雄君佐々木安五郞君
佐々木平次郞君佐藤潤象君
〓瀨一郞君湯淺凡平君
鷲野米太郞君河崎助太郞君
田中讓君武藤山治君
小林彌七君古林喜代太君
森田金藏君猪野毛利榮君
堀田義次郞君太宰孫九君
高島兵吉君成田榮信君
町野武馬君菊池謙二郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=14
-
015・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 議事進行ニ關シテ發
言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマ
ス-森田金藏君
〔森田金藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=15
-
016・森田金藏
○森田金藏君 私ハ議事進行ニ付テ一言申
上ゲタイト思フノデアリマスガ、數日來ノ
本議場ノ有樣ヲ見マシテ、洵ニ遺憾ニ堪ヘ
ナイ者デアリマス、四日議會ハ終日ヲ通シ
マシテ、日程ニハ一ツモ觸レマセヌデゴザ
イマシタ、又六日モ同ジク終日午後七時半
マデモ議事ハ續キマシタガ、日程ハ唯、
ツダケ最後ニ掛ッタヾケデ、後ハ種々ナル
緊急問題ガ起リマシテ、議場內ニアリマス
者ハ此緊急動議ニ依シテ議事ガ色ミニ
ナッテ參リマスル、其事情ヲ知リマスルカ
ラ左程混亂シタトモ思ヒマセネバ、已ム
ヲ得ナイ議場ノ有樣デアッタト考ヘルノ
デアリマス、併ナガラ全國民、議院外ニ於
テ此有樣ヲ見マスル時ニ、此議場ノ有樣ハ
如何ニ混亂シテ居ルカ、如何ナル事ヲ議シ
ツヽアルカ、國民カラ考ヘルナラバ、其能
率ノ增進シナイコトヲ非常ニ憂フルモノデ
アラウト思フノデアリマス、此意味ニ於キ
マシテ、固ヨリ此緊急動議モ大切ナ問題ガ
時々起リマスカラ、是モ已ムヲ得ナイ、議
場ノ空氣ニ依ッテ造ラレ、之ニ依ッテ議事
ヲ進行スルノデゴザイマスガ、最早殘ル所
ハ二十日モナイヤウナコトニナッテ居リマ
スルカラ、段々議事ヲ進メナケレバナラヌ
ト思フ、然ルニ議案ハ山ヲ成ス如ク澤山
ナモノガ重ッテ居リマス、今日ノ日程ヲ見マ
シテモ、實ニ五十ニ近イ所ノ日程ガ元サレ
テ居リマス、故ニ今後此議事進行ニ付キマ
シテハ全院ノ各位ノ御賛同ヲ得マスルナ
ラバ、ドウカ今後ノ議事日程ハ、總テ日程
ニ依シテ順次議事ヲ進行サセラレマシテ、
サウシテ皆樣ノ御同意ヲ得ルナラバ、緊急
動議ナドガ起ル場合ハ、成ベク午後五時カ
ラ之ヲ發表シテ戴キタイ(拍手)若シ午後五
時カラ全院ノ賛成ヲ得テ、其緊急動議ガ成
立チマシタナラバ、能率增進ノ爲ニ午後七
時ガ十時デモ、十二時デモ議事ヲ續ケテ進
行スルコトガ宜カラウト私共思フノデアリ
マス(拍手)此意味ニ於キマシテ、全會ノ御
賛成ヲ得テ、今後ハ已ムヲ得ヌ緊急問題ハ、
午後五時カラ御發表ニナルコトヲ願ヒタ
イ、サウシテ何所マデモ之ヲ進メテ、十時
デモ十二時デモ議事ヲ進メテ、サウシテ能
率ヲ增進スルコトガ必要デアルト思フノデ
アリマス(拍手)此意味ニ於キマシテ、私
議事進行ヲ皆樣ニ御諮リ申シ御賛成ヲ得
テ斯ノ如ク進行ヲシタイト思フノデアリマ
ス(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=16
-
017・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 更ニ議事進行ニ付テ
田淵君ヨリ發言ヲ求メラレマシタ
〔田淵豐吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=17
-
018・田淵豐吉
○田淵豊吉君 本員ハ直接關係ハアリマセ
ヌケレドモ、矢張間接或ハ直接的ニ關係ガ
ゴザイマスカラ、一言聽キタイノデアリマ
ス、ソレデ出來レバ委員長竝ニ政府、竝ニ
議長ニ聡キタイコトガアリマス、諸君梅
田氏ノ査問會ニ於キマシテ、山梨半造氏ノ
財產調查ヲ政府ニ託スルト云フ決議ヲシマ
シタカ、シタト云フコトヲ新聞紙ガ報ジテ居
ルソレカラ議長ハソレヲ政府ニ掛合ウタ
カ、又議長ハ之ヲ受ケタカドウカト云フコ
トヲ聽キタイ、又政府ハ如何ナル考ヲ之ニ
就テ持ッテ居ルカト云フコトラ併セテ聽キ
タイノデアル、私ハ此査問會ニ於テ、是ガ
善イトカ惡イトカ云フコトヲ通リ越シマシ
テ、査問會ニ掛ケテ居ルト云フコトデアリ
やっ、此查問會ニ付キマシテ、山梨半造氏
ノ財產調査ト云フコトヲシテ、ソレガ出來
ナケレバ議事ガ進行出來ナイソウデアリマ
ス、若シ是ガ出來ナイトスルナラバ、政府
ガ之ニ調査ヲ與ヘナケレバ、其梅田氏ノ審
問ヲバ中止スルカドウカト云フコトニナル
ノデアリマス、諸君ハ是等ノ委員會ヲ通過
シテ之ヲ調査セシメテ居ルト思フノデアリ
せっ、然ルニソレガ停滯シテ居シテハ諸君
ノ希望ガ達セラレナイト思フノデアリマ
ス、是ハ議會ノ權威ノ爲ニ吾々ノ尊ブベキ
所ノ問題デハナイカト思フノデアリマス、
一面カラ見レバ小問題デアリマスガ、一 四
カラ見レバ重大ナル問題ガ含ンデ居ルノデ
アリマス、吾々ハ憲法其他ノ法律、或ハ議院
法ノ關係ニ於テ、如何ナル條項ガアルカト
云フコトヲ自ラ顧ヽテ見ナケレバナラヌト
思フ、委員長ハ如何ナル感ヲ持シテ居ラレ
ルノデアルカト云フコトヲ聞キタイ、議長
ハソレヲ受理シタノデアルカ、正式ニ受理
シタノデアルカ、私ハ斯ノ如キノ考デアリ
マスカラ、能ク知リマセヌケレドモ、私ノ
思フニハ、委員會ト云フモノハ此議會カラ
賴マレタ委員會デアラウト思フ、然ラバ其
委員會ノ委員長ノ報告ガアッテカラ、私ガ之
ヲ言ウタラ宜イノデゴザイマスケレドモ、
委員會ガ此事ニ付テ若シ調査ガ無ケレバ、
此査問會ト云フモノガ出來ナイナラバ、早
速此處へ御通知ガナケレバナラヌト思フ、
其通知ヲ果シテ委員長ガスル積リデアル
カ、シナイ積リデアルカト云フコトヲ聞キ
タイ、若シソレガドウシテモ人ノ財產ヲ調
ベルト云フコトハ、今日ノ法令上イカヌト
云フナラバ、サウ云フコトヲバ委員會ニ於
テ、ソレハイケナイカラト云フノデ先ノ決
議ヲ取消シテ、新ニ審問ヲ進メラレルカ、
若クハ進メラレヌトスレバ解散スルヨリ致
方ガナイト云フコトヲ報告シテ貰ウトカ、
何トカ致サナケレバ停滯スルデハナイカト
云フコトマ吾々杞憂スルノデアリマス、而
シテ議長ハ此事ヲ正式ニ受取ッタカ、或ハ調
査書ヲ吳レト云フコトヲ委員會カラ政府ニ
古接ニ出來ルサウデアリマス、又議長ニ向ッ
テモ出來ルサウデゴザイマス、併シ斯ウ云
フヤウナ重大ナ問題ナラバ、之ヲ議場ニ御
諮リニナッテ、議場ガソレガ宜カラウト云
フナラバ、サウヤッテモ宜シイ、議場ガソン
ナコトハ出來ヌト云フナラバ、査問會ガサ
ウ云フコトヲ中止シテ議長ニ當リ、政府ニ
當ルー云フコトヲ止メテ貰ヒタイト思フ、
私ガ善イトカ惡イトカ云フノデナク、日本
國民ニ重大ナル關係ヲ持ッテ居ルカラ、私ハ
之ヲ聞クノデゴザイマス、政府ハ果シテ之
ニ就テドウ云フ御考ヲ持,テ居ラレルカ、是
ハ調査出來ナケレバ出來ナイト云フコト
ヲ、的確ニ委員會ニ御示シニナルト云フコ
トガ必要デハナカラウカト思ヒマス、又議
長モ大變仰困リデアラウト思フ、政府ニ出
シタガ政府ハ知ラヌト言ヒ、委員會ガ取
消シタラ名譽ニ關スルト云フ、然ラバ査同
會ヲ進メルコトハ出來ナイ、ドウシテ是デ
ハ杏問ガ出來マセウカ、是ハ此重大ナル
問題デナイガ如ク見エマスケレドモ、餘リ
出來ナイコトヲ決議シテヤルト云フコトハ
宜クナイカラ、若シ宜イナラバ色〓ノ法令
ヲ改正シテ、ソレヲヤルト云フコトヲ此全
員ニ御諮リニナルコトガ必要デハナイカト
思フ、私ハ今朝新聞デ見テ知ッタ次第デア
リマスガ、ドウカ諸君ハ諸君ノ一委員會ニ
屬スル小サイ問題デアルカラ何事モ出來ル
ト云フコトデナクシテ、憲法ノ上ニ、法律
ノ上ニ、正義ノ上ニ立ッテ、斷々乎トシテヤ
ラナケレバ査問會ノ手續ノ上ニ於テモ國
民ノ疑ヲ生ズルコトデアリマスカラ、一言
此點ヲ委員長竝ニ政府、竝ニ議長ニ御尋シ
タヤウナ次第デゴザイマス
〔横山金太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=18
-
019・横山金太郎
○横山金太郞君 田淵君ノ御尋ニ對シテ簡
單ニ御答致シマス、梅田寛一君ノ行動ニ關
スル調査ノ件外二件ハ、先ヅ梅出君ノ分ヨ
リ審議ニ入リマシテ、役員ノ選擧ヲ除キテ
二囘開イテ居リマス、會議ハ順調ニ進メラ
レテ居リマス、其會議ニ於テ、卽チ昨日ノ査
問委員會ニ於テ、決定セラレマシタ事項、此
決定セラレタ事項ヲ實行スルニ當シテ、果シ
テ合法的可能性ヲ有スルヤ否ヤト云フコト
ニ付キマシテハ委員長一己ノ意見ト致シ
テハ多少ノ疑問ヲ持シテ居ルノデゴザイマ
ス、サリナガラ事苟モ委員會ガ多數ヲ以テ
決議セラレマシタ以上ハ、委員長ハ職責上
之ヲ實行シナケレバナラヌ譯柄ニナッテ居
リマス、卽チ其責任ヲ執リマス意味ニ於キ
マシテ、其趣旨ヲ齎シテ議長ノ御手許ニ其
要求ガ致シテゴザリマス、此以上果シテ議
長ガ委員會デ既ニ決定ヲ致シタ事項ヲ、議
院ヲ代表ナサル資格ノアル議長ガ直ニ政府
ニ御取次ニナリマスルカ、更ニ院議ニ諮ウ
テ其措置ヲ御執リニナルカト云プコトハ
是ハ議長ノ權限內ニ存スルコトデゴザリマ
シテ、委員長ノ與リ知ル所デゴザリマセヌ、
但シ私ノ考ヲ以テ致シマスルト、此委員會
ナドデ常ニ討議ヲ重ネラレマスル場合ニ於
テ、是レ々々ノ計算書ガ要ル、是レ々々ノ
文書ガ必要デアルト云フノデ、委員會ノ決
議ニ依リ、若クハ委員一己ノ請求ニ依ッテ、
常ニ政府ハ任意的ニ其材料ヲ提供致シテ居
ル事例ハ間ミアルノデゴザリマス、故ニ其
手續ニ依ルカトモ考ヘマシタガ、是ハ政府
ガ任意ニ其要求ニ應ジマス際ニ於テ、滑カ
ニ行ハレル可能性ノアル場合ニ於テ始メテ
然ルノデアリマシテ、既ニ衆目環視ノ間ニ
立ッテ居リマスル查問會ナドニ於キマシテ
ハ、成ルベク形式ヲ具ヘテ合法的ニ出ヅル
ト云フコトガ、適當ノ態度ト考ヘマシタ爲
ニ、卽チ其非公式ノ慣例ニ依)テ行ハレテ
居リマスル途ニ出ヅル事ヲ避ケテ、文書ヲ
以テ議長ニ向シテ先刻中上ゲマシタ如ク之
ヲ要求シタノデアリマス、若シンレ議院法
七十四條ノ兩議院ノ決議ニ依リ云々ト云フ
コトガゴザリマスルガ、是ハ私ノ考ト致シ
マシテハ、委員會ハ卽チ議院ノ決議ニ依ヶ
テ付託セラレタ事項ヲ調査スルノデアリマ
シテ、謂ハヾ議院ノ延長セラレタモノ、
卽チ分身デアルトモ見テ宜シイト思ヒマス
ノデゴザリマスカラ、隨テ委員會ガ調査ヲ
進メマスルニ當フテ必要ナル資料ヲ要スル、
而シテ是ガ若シ政府ニ向テ要求スベキ必
要ノアル場合ニ屬シマシテ、委員會ガ決定
ヲサレマシタナラバ、其決定ハ軈テ委員ノ
意思ノ結晶デアリマスルカラ、委員會ガ決
定スルト云フコトハ政テ不合法ノモノトハ
信ジマセヌノデゴザリマス、是ダケヲ申上
ゲテ御答ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=19
-
020・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今田淵君ヨリ議長
ニ對シテノ御尋ニ御答致シマス、御尋ノ書
類ハ橫山委員長ヨリ御提出ニナリマシテ、
私ハ今朝登院ノ後ニ之ヲ拜見ヲ致シタノデ
アリマス、併ナガラ事新シキ事例ニ屬シマ
スルノデ、是ガ取扱方ニ付キマシテハ議
長ハ今考慮中デアリマス、是ダケノコトヲ
御答致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=20
-
021・田淵豐吉
○田淵豐吉君 今一言委員長ニ聞キタイノ
デスガ、私ハ法律ノ事ハ能ク存ジマセヌ
ガ···
〔「登壇々々」「無用々々」ト呼フ者アリ〕
〔田淵豐吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=21
-
022・田淵豐吉
○田淵豐吉君 委員長ニ聞キマスガ、私
ドウ斯ウ言フノデハゴザイマセヌガ、唯と
其事ヲ聞イテ置キタイ、ソレハ其手續ハ合
法的デゴザイマスルケレドモダ、若シ出來
ナイ事ヲ或ハ憲法、法律ノ許サナイコトヲ
委員會ガ決議シタ場合ニハ、憲法其他ノ
法律、議院法ト云フモノヲ議員ガ讀ンデナ
カンタ、知ラナカッタト云フ所ノ責ハ免レヌ
ト思ウテ居リマス、故ニ其點ニ付テ合法的
ノヤウニモ見エルケレドモ、一面カラ見レ
バ非合法的ノヤウニ見ヘマスカラシテ、委
員會ノ權威ニ關スル事ト思ヒマスカラ、若
シソレガ合法的デアルト云フナラバ、徹頭
徹尾院議ニ諮ウテ、出來ナイ事ナラバ出來
ヌデ行クガ宜シイ、若シ非ト認メルナラバ
ソレヲ〓囘ナサルガ宜シイト思ヒマスガ、
貴方ノ言フコトハ半分分ルガ半分ハ分ラヌ
カラ茲デ問フノデゴザイマス、御各辯ヲ願
ヒタイ
〔「政府ニ質問シロ」ト呼ヒ其他發言ス
ル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=22
-
023・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ-答辯ハア
リマセヌ-議事進行及日程變更ニ關シテ
發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマ
ス-砂田重政君
〔砂田重政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=23
-
024・砂田重政
○砂田重政君 私ハ議事ノ進行ニ關シテ議
長ニ御尋ヲ致スコトガアルノデアリマス、
同時ニ其質問ヲ終リマシタ後ニ於テ、議事
日程變更ニ關スル動議ヲ提出致シタイト思
フノデアリマス、只今實業同志會ノ森田君
ヨリ、議事ノ進行ヲ圓ル爲ニ緊急必要ナル
動議ハ每日午後ノ五時過ニシタラ宜カラ
ウト云フ進行ニ關スル御意兒ヲ伺ノタノデアリ
マスガ、吾々固ヨリ議事ノ進行ヲ-議事日
程ニ上リタルモノヲ速ニ審議ヲ進メルト云
フコトハ最モ希望スル所デアリマス、併
ナガラ緊急己ミ難キモノニ付テハ、日程ヲ
變更シテ之ヲ審議スルト云フコトハ過去
ノ例ニ徵シテ明瞭ナ所デアリマス、之ヲ毎
日午後ノ五時過ニ上程シロト云フ如キコト
ハ未ダ曾テ聞カザル所デアルト同時ニ、
之ヲ御發議ニナリマシタ實業同志會ノ諸君
ハ、大抵ノ場合午後ノ五時過ニハ議席ニオ
キデニナッタコトヲ見タコトガナイ(拍手)
成ベク議事ノ進行ヲ期スルト共ニ、御互ニ
議場ニハ如何ナル場合ニモ出席シテ居ルト
云フコトヲ、吾々ハ熱望致シテ居ルノデア
リマス、而シテ玆ニ私ノ議長ニ伺ハント欲
シマスル點ハ昨三月八日、望月圭介君外
一名ヨリ成規ノ賛成ヲ得テ、議員中野正剛
君ニ對スル處決ヲ促ス決議案ガ提案ヲサレ
テ居ルノデアリマス、今曰マデノ先例ニ依ッ
テ見マスレバ、決議案ハ多クノ場合ニ、議
院ノ內部ニ於ケル内的交涉ニ依シテ、出來得
ル限リ速ニ其諒解ノ下ニ日程ヲ變更シテ、
速ニ審議スルト云フコトガ多クノ場合ノ實
例ニ相成シテ居ルノデアリマス、併ナガラ
特ニ此提案サレマシタ中野正剛君ニ處決ヲ
促スト云フ決議案ハ、議員ノ身上ニ關スル重
大ナ問題デアリマス、而シテ此案ガ之ヲ形式
的ニ見マシテ、此案ノ決定如何ト云フコト
ハ、議員ノ進退ニ關スル問題デアリマス、
議員ノ進退ハ議院ノ構成ノ上ニ影響ノアル
問題デアリマス、卽チ斯ノ如キ問題ハ之ヲ
形式ノ上カラ見テモ、先ヅ議事ノ進行ニ先
ダティ先決動議トシテ之ヲ提案ヲサレル
ト云フコトハ當然ノ責任デナケレバナラ
ヌ(拍手)此事ハ曩ニ吾々ハ議事ノ進行ニ關
シテ、四十六議會ノ當時ニ於テ議長奥繁三
郞氏ニ對シテ、議事ノ進行ニ關スル先決動
議ト云フ趣旨ヲ以テ、議長ノ反省ヲ促ス決
議案ヲ提出致シマシタ當時ニ於アモ、是ノ
議事ノ進行ト議院ノ構成ノ上ニ影響ノアル
モノトシテ、日程ニ先ダッテ之ヲ決議シタ
先例モアルノデアリマス(拍手)是等ノ點ヨ
リ形式的ニ考ヘテモ、議長ハ先ヅ本日ノ日
程ノ〓頭ニ、此中野君ノ處決ヲ促ス決議案
ヲ提案ヲサレルコトガ順序ナリト信ズルノ
デアリマス、又殊ニ此決議案ノ內容ヲ精讀
致シマスト、是ハ實ニ重大ナル實質上ノ問
題ガアルノデアリマス、卽チ神聖ナル議場
ニ於テ荒唐無稽ノ言辭ヲ弄シ、國氏ノ疑惑ヲ
醸シ、且ツ帝國軍隊ノ紀律ヲ頽廢セシメ、
露國共產主義者ノ顰ニ微ヒ、國民ト軍隊トノ
間ヲ離間セント企テタモノデアルト云フコト
ガ、此決議案ノ內容ヲ成シテ居ルノデアリ
マス(拍手)固ヨリ内容ハ審議シタ後デナケ
レバ決マリマセス、併ナガラ斯ノ如キ事實
ガ議會ノ壇上ニ現ハレ、決議案トシテ既ニ提
案ヲサレタ以上ハ、一刻モ速ニ之ヲ審議シ
テ、其眞否ヲ決議スルニアラザレバ-若シ
斯ノ如キ事實アルモノトスルナラバ、吾々ハ
斯ノ如キ非國民ト共ニ席ヲ同ウスルコトヲ
欲シナイノデアリマス(拍手)又之ヲ憲政會
ノ諸君ニシテ考ヘテモ、斯ノ如キ事實ガア
ルモノデアレバ、固ヨリ諸君ハ是ト席ヲ同
ウスルコトハ最モ諸君ノ否マレル點デア
ラウト考ヘルノデアリマス、本黨ノ諸君ニ
於テモ固ヨリデアルト思フ(「荒唐無稽ダ」
ト呼フ者アリ)荒唐無稽ナルヤ否ヤト云フ
コトハ之ヲ議會ノ壇上デ審議シナケレバ
分ラナイデハナイカ、之ヲ徒ニ多數ノ力ヲ
以テ日程ニ上サナイデ、何時マデモ引張シテ
置イテ、彼等ト共ニ之ヲ胡麻化スト云フ如
キ態度ニ出ル者ガアルナラバ、彼等ト共ニ
赤化宣傳ヲ爲ス者ナリト云フ貴任ハ、憲政
會ノ諸君ガ之ヲ負ハナケレバナラヌモノデ
アル(拍手)吾々ハ斯ノ如キ實質ニ關スル問
題ニ付テハ、少クトモ議長ハ先ヅ之ヲ提案
ヲシ、議長ガ提案ヲシナクトモ、憲政會ノ
諸君ニシテモ、本黨ノ諸君ニシテモ、斯ノ
如キ事實ニ對スル審議ハ先ヅ一日モ、一則
モ速ニシテ、國民ノ前ニ、之ヲ明瞭ニスルコ
トガ、諸君ノ責任デナケレバナラヌト信ズ
ルノデアル(拍手)吾々ハ斯樣ニ重大ナル問
題ニ對シテ、若シ是ガ前例ナシト假定シテ
モ、議長ハ玆ニ前例ヲ開イテ、斯ノ如キ問
題ハ先決問題トシテ之ヲ議決スルノ意思無
キヤ否ヤト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマ
ス、而シテ本日ノ日程ノ中ニハ、此決議案
ガ載セテ無イノデアリマスカラ、先ヅ劈頭
ニ於テ總テノ此議會ノ諸君ガ、速ニ此問題ヲ
審議セント欲シ、又事實ノ有無ヲ明瞭ナラ
シメント欲スル誠意ガアルナラバ願クハ
此機會ニ於テ先ヅ議事日程ヲ變更シテ、此
決議案ヲ上程シ、而シテ是ガ趣旨ノ說明ヲ
許シ、審議ヲ進メラレンコトヲ此機會ニ於テ
私ハ提案ヲ致ス次第デゴザイマス(拍手)何
卒諸君ノ御賛成ヲ得タイト思ヒマス、併ナ
ガラ强テ之ニ反對ヲシ、此明瞭ナル事實ヲ
何時マデモ糊塗シ、何時マデモ此儘ニ放置
シテ葬リ去ルト云フガ如キ態度ヲ執ル者ガ
アルナラバ、是等ハ倶ニ赤化運動ヲ爲ス者
ナリト國民カラ忖度サレテモ仕方ガナイト
思フノデアリマス
〔「懲罰々々」「取消ヲ命ズベシ」ト呼ヒ
其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=24
-
025・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス發
言スル者多シ)靜肅ニ願ヒマス、只今砂田
君ヨリ望月圭介君外一名御提出ノ決議案ニ
關シマシテ、議長ハ何故ニ之ヲ先決問題ト
シテ取扱ハナイカト云フ御尋デアリマス、
此決議案ヲ議長ガ受領致シマシタノハ、昨
日本日ノ日程ヲ決定致シタ後デアリマス、
其如何ニ拘ハリマセズ、其樣ナ重大ナル問
題卽チ人ノ進退ニ關シマスル問題ハ成
ベク之ヲ日程ニ揭ゲマシテ、之ヲ議シマス
ルコトガ相當ナリト考ヘタノデアリマス、
併ナガラ諸君ノ御決議ニ依リマシテ、日程
變更ニ依ッテ上程サレマスル場合ハ、固ヨ
リ格別デゴザイマスガ、議長ノ取扱ト致シ
マシテハ、斯ノ如クスルノガ相當ナリト考
ヘタノデアリマス、而シテ只今砂田君ノ最
後ニ御述ニナリマシタコトハ、卽チ日程
變更ノ緊急動議ト認メルノデアリマス、此
動議ニ對シマシテハ成規ノ賛成アリト認メ
マスカラ、直ニ玆ニ採決ヲ致シマス、砂田
君ノ日程變更ノ動議ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ
求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=25
-
026・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 少數デアリマス
〔「異諦アリ」「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=26
-
027・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ議長ノ宣告ニ
對シテ異議ガアリマス、其異議ノ申立ニモ
成規ノ賛成アリト訊メマス、仍テ記名投票
ヲ以テ之ヲ決シマス、卽チ砂田君ノ日程變
更ノ動議ニ賛成ノ諸君ハ白票デアリマス、
反對ノ諸君ハ靑票デアリマス、閉鎖-氏
名點呼ヲ命ジマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=27
-
028・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票漏ハアリマセヌ
カ-投票漏ナシト認メマス-投票兩閉
鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=28
-
029・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票ノ結果ヲ書記官
長ヨリ報告致サセマス
〔中村書記官長則讀〕
投票總數三百三十四
可トスル者白票百二十二
否トスル者靑票二百十二発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=29
-
030・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ投票ノ結果ニ
依リマシテ、砂田君ノ動議ハ否決セラレマ
シタ
〔參照〕
砂田君提出ノ動議ヲ可トスル議員ノ氏名
左ノ如シ
磯部尙君磯部保次君
板野友造君岩崎幸治郞君
岩崎動君今里準太郞君
今井健彥君石井三郞君
石坂豐一君石原正太郞君
飯村五郞君井上敬之助君
井上孝哉君井上虎治君
井口延次郞君伊坂秀五郞君
濱口吉兵衞君濱田國松君
濱田精藏君八田宗吉君
原惣兵衞君西澤定吉君
西方利馬君大竹謙治君
大口喜六君小川平吉君
小野義一君岡田伊太郞君
若尾幾太郞君若尾璋八君
若宮貞夫君渡邊伍君
渡邊祐策君加藤知正君
加藤久米四郞君兼松寅太郞君
笠原忠造君河上哲太君
川口義久君海原〓平君
吉田眞策君竹原樸一君
竹内友治郞君田邊七六君
高井商二君高木音藏君
高橋熊次郞君高草美代藏君
高山長幸君土屋興君
中島守利君中村巍君
中村〓造君內田信也君
內野辰次郞君浦山助太郞君
上埜安太郞君野田俊作君
熊谷巖君熊谷直太君
黑住成享君倉元要一君
矢野鉉吉君中本芳治君
山本悌二郞君山義一君
山口恒太郞君半谷次君
山崎達之輔君前田米藏君
松本君平君松岡俊三君
松山常次郞君松實喜代太君
牧野良三君藤井忠兵衞君
藤田包助君藤川〓助君
一六洵君古川〓君
木暮武太夫君小久保喜七君
小泉策太郞君古林新治君
神崎動君近藤達兒君
安藤正純君安保庸三君
靑木精一君靑山憲三君
秋田寅之介君秋田〓君
赤間嘉之吉君有馬賴寧君
東武君齋藤珪次君
佐々木春作君佐々木長治君
坂井大輔君坂梨哲君
木戶豐吉君宮崎三之助君
宮本逸三君三善〓之君
三土忠造君篠原和市君
志賀和多利君嶋居哲君
島本信二君廣瀨爲久君
平山爲之助君森〓昶君
森恪君望月圭介君
瀨沼伊兵衞君砂田重政君
菅原傳君隅田豐吉君
杉宜陳君猪野毛利榮君
田淵豊吉君太宰孫九君
砂田君提出ノ動議ヲ否トスル議員ノ氏名
左ノ如シ
石黑大次郞君井本常作君
一柳仲次郞君原脩次郞君
西英太郞君戶井嘉作君
戶田由美君戶澤民十郞君
中馬興丸君大津淳一郞君
大里廣次郞君小野重行君
岡本實太郞君神谷彌平君
神田正雄君加藤鯛一君
加藤六藏君加藤十四郞君
河野正義君河野曉君
河波荒次郞君金澤安之助君
金田平兵衞君横山勝太郞君
橫山一格君横山金太郞君
吉原義雄君吉田磯吉君
高木益太郞君高木正年君
高橋元四郞君賴母木桂吉君
武內作平君武富濟君
田中武雄君田中善立君
建部遯吾君谷口宇右衞門君
谷口源十郞君中原德太郞君
中村貞吉君中野寅吉君
中野猪之助君永井柳太郎君
村上國吉君村山喜一郞君
村松龜一郞君室木彌次郎君
生方大吉君內ケ崎作三郞君
黑田重兵衞君八並武治君
山宮藤吉君山田又司君
山田助作君山田道兄君
山口嘉七君山本勝次君
山本厚三君山桝儀重君
松井郡治君松本忠雄君
丸山五郞君町田忠治君
古屋慶隆君深井功君
降旗元太郞君藤澤幾之輔君
藤井敬愼君福田五郞君
小島證作君小島七郞君
小寺謙吉君小山松壽君
小池仁郞君木檜三四郞君
紺野九右衞門君寺島權藏君
手代木隆吉君淺賀長兵衞君
淺川浩君靑木知四郞君
蟻川五郞作君荒井建三君
荒川五郞君佐竹庄七君
佐藤實君佐藤球三郞君
齋藤隆夫君齋藤太兵衞君
齋藤仁太郞君齋藤金吾君
澤田利吉君由谷義治君
三橋四郞次君箕浦勝人君
清水留三郞君信太儀右衞門君
鹽田團平君重松重治君
廣瀨德藏君平川松太郞君
平野光雄君平井光三郞君
樋口秀雄君森田茂君
粟山博君關矢孫一君
開俊·吉君鈴置倉次郞君
杉浦武雄君菅原英伍君
菅村太事君井坂豐光君
井出繁三郞君池田泰親君
禱苗代君原夫次郞君
原田藤次郞君原田佐之治君
原田十衞君星廉平君
堀喜幸君富田愿之助君
床次竹二郞君東〓實君
千葉宮次郞君陣軍吉君
折原巳一郞君小島善作君
小川〓太郞君小野寅吉君
大園榮三郞君大麻唯男君
大城幸之一君奥野小四郞君
川原茂輔君加藤鐐五郞君
柏田忠一君兼田秀雄君
金光庸夫君神村吉郞君
吉松忠敬君高鳥順作君
高見之通君丹下茂十郞君
田口文次君谷原公君
津崎尙武君中林友信君
中村啓次郞君中村嘉壽君
中山貞雄君長峰與一君
永井作次君植場平君
上原好雄君浦野謙朗君
則元由席君野村治三郞君
熊谷五右衞門君藏園三四郞君
栗林五朔君八木逸郞君
山谷德治郞君前田房之助君
前田兼寶君牧山耕藏君
松清五兵衞君松田源治君
九山浪彌君麓純義君
小橋一太君兒玉實良君
寺田市正君櫻內幸雄君
佐藤重遠君宜保成晴君
三輪市太郞君宮島幹之助君
志波安一郞君志村〓右衞門君
平田民之助君森肇君
元田肇君石川長右衞門君
林田龜太郎君坂東幸太郞君
馬場義與君田崎信藏君
堤〓六君土屋〓三郞君
武藤嘉門君野原種次郞君
增田義一君松山兼三郞君
小屋光雄君佐藤潤象君
湯淺凡平君千葉三郞君
鷲野米太郞君河崎助太郞君
田中讓君小林彌七君
古林喜代太君森田金藏君
堀田義次郞君多木久米次郞君
高島兵吉君成田榮信君
町野武馬君菊池謙二郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=30
-
031・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ日程ニ入リマ
ス、日程第一、第二ハ豫算案デアリマスカ
ラ、一括議題トスルニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=31
-
032・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第一、第一號、大正十四年度
歳入歳出總豫算追加案、日程第二、特第一
號大正十四年度各特別會計歳入歳出豫算
追加案ヲ一括シテ議題ト致シマス、委員長
ノ報告ヲ求メマス-藤澤幾之輔君
第(第一號)大正十四年度歳人歳出總
豫算追加案
報告書
一(第一號)大正十四年度歲入歲出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月八日
豫算委員長藤澤幾之輔
衆議院議長粕谷義三殿
第二(特第一號)大正十四年度各特別會
計歲入歳出豫算追加案
報告書
一(特第一號)大正十四年度各特別會計歲
入歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月八日
豫算委員長藤澤幾之輔
衆議院議長粕谷義三殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=32
-
033・青木精一
○靑木精一君 大藏大臣ノ出席ヲ要求致シ
テ置キマシタガ、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=33
-
034・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今要求致シテ店リ
やく、其內ニ御出席ニナルコトヽ思ヒマス
〔藤澤幾之輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=34
-
035・藤澤幾之輔
○藤澤幾之輔君 只今上程セラレマシタル
第一號、大正十四年度歲入歳出總豫算追加
案、竝ニ特第一號、大正十四年度各特別會
計歲入歲出豫算追加案ノ、豫算委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ最モ簡單ニ御報告〓シマス、
本案ハ去ル三日ヲ以チマシテ、政府ヨリ提
出セラレタルモノデアリマシテ、其翌四日
ヨリ審査ヲ開始致シマシテ、昨八日其審査
ノ終了ヲ告ゲマシタモノデアリマスル
本案ハ總豫算ノ如クニ、本議場ニ紹介セラ
ルヽモノデナイノデアリマスルカラ、政府
ガ委員會ニ於テ說明ヲ致シマシタル本案提
出ノ理由ノ大要ヲ御紹介致シマスコトハ
必シモ無用デナイト考ヘルノデアリマス、
故ニ是ヨリ是モ至極簡單ニ其要ヲ摘ンデ御
報告〓スノデアリマスガ、大正十四年度總
豫算ノ追加トシテ計上セラレマシタル所ノ
金額ハ既ニ御承知ノ通リ、各、ミ金三千六十
四万七千二百二十四圓デアリマス、其歳入
ニ在リマシテハ刑務所收入ノ增加、金額ハ
總テ略シマス、帝國學士院獎勵費寄付金ノ
增加、前年度剩餘金繰入ノ增加、是ガ先ニ
中上ゲマシタ歳人ヲ爲スモノデアリマス、
又歳出ノ中其主ナルモノヲ此所ニ擇ンデ御
紹介致シマスレバ、爲替相場ノ變動ニ基ク
貨幣交換差金ノ金額ガ計上セラレテアリマ
ス次ニハ横濱市所在永代借地ヲ整理致シ
マスルガ爲ニ、橫濱市ニ於キマシテ之ヲ買牧
セント致シマスル計畫ヲ立テタノデアリマ
ス、是ハ洵ニ時百ニ適シタル計畫デアルノ
デアリマスガ、御承知ノ通リ横濱市ノ現狀
ハ、是等ノ資金ヲ充タスダケノ餘裕ガ無イ
ノデアリマスカラ、政府ニ於キマシテ此爲
ニ必要ナル所ノ金額ヲ貸付セントスル爲ニ
計上シタル金額ガアリマス、次ニハ都市ニ
於ケル失業者、卽チ日傭労働者ノ救濟ノ爲
ニ、六大市關係ノ地方公共團體ヲ致シマシ
テ、公益事業ヲ起サシメタノデアリマスカ
ラ、之ニ對シテ國庫ヨリ補助金ヲ支給セン
ケレバナラヌト云フコトデ計上セラレタル
所ノ金額ガアリマス、又次ニ朝鮮總督府特
別會計ニ於キマシテ、水害ノ爲ニ要スル復
}舊費等ヲ必要ト致シマスルガ、特別會計ヲ
以チマシテハ到底其財源ヲ得ルコトガ出來
マセヌカラ、一般會計ヨリ之ヲ補充スルノ
必要ガアルト云フノデ計上セラレタル所ノ
金額ガアリマス、右ノ外恩給ノ增加、警察
費連帶支辨金ノ增加、刑務所收容費ノ增加、
先ヅ大體是等ノモノデアリマス、之ヲ要ス
ルニ本追加豫昇ハ大體ニ於テ補充費途ニ屬
スルモノデアリマス、尙ホ普通費ノモノモ
二三アリマスケレドモ、ソレトテモ必要〓
ク可カラザル所ノモノデアルガ爲ニ、此追
加豫算ヲ提出シタル所以デアル、斯樣ニ說
明ヲ致シテ居ラレマス、委員會ハ數日ニ亙
リマシテ質問應答ヲ重ネテ、慎重ナル審議
ヲ遂ゲタモノデアリマス、其內容ハ速記錄
ニ載セテ明カデアリマスカラ、此所ニハ其
紹介ヲ省略致ス積リデアリマス、斯クシテ
委員會ハ討論ニ移リマシテ、各派ハ各〓其
代表者ヲシテ意見ヲ陳述セシメマシテ、結
局政府原案ニ贊成致シマシテ、滿場一致之
ヲ可決致シタモノデアリマス、此段御報告
ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=35
-
036・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス、倉元要一君-(「大藏
大臣ハドウシタ」ト呼フ者アリ)只今大藏大
臣ハ關稅定率法委員會ニ出席中デアルサウ
デアリマスガ、御質疑ニ對シテ大藏次官ノ
答辯デハ御滿足ニナリマセヌカ
〔倉元要一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=36
-
037・倉元要一
○倉元要一君 私ハ極メテ簡單ニ十四年度
追加豫算ニ付キマシテ質問ヲ試ミタイト思
ヒマス、先ヅ大藏大臣ニ對シテ、追加豫算
ノ事項ニ亙リマシテ御伺シタイト思ヒマ
ス、今囘ノ追加豫算ハ總額一般會計ニ於キ
マシテ三千六十四万七千二百二十四圓ト云
フ相當ノ金額ニ達シテ居ル追加デアリマス
ルガ、之ヲ十四年度ノ豫算金額ノ總額ニ比
較シマスルト云フト、丁度五分ノ一ニ當ル
ヤウニ私共ハ考ヘル、往々ニシテ此追加豫
算ノ審議ト云フモノガ輕ンゼラルヽヤウナ
傾ガアルコトヲ私共ハ最モ遺憾トスル、殊
ニ私共ガ常ニ遺憾ニ感ズル點ハ、此爲替差
損金ノ點デアリマスルガ、此三千六十四万
餘圓ノ追加ノ中デ、其三分ノ一ノ金額ヲ占
メテ居ルモノハ此爲替差損金デアル、卽チ
其金額千五十四万九千三百三十六圓ト云フ
金額ニ達シテ居ル、此追加ハ私共ノ希望ス
ル所ハ臨時部ニ於テ當初豫算御編成ノ時
ニ、豫見ノ出來ル金額デハナイカト私共ハ
信ズルノデアリマス、ソレヲ政府ハ之ヲ恒
例的ニ、何時モ追加ニ依シテ御提出ニナル
ト云フコトハ、財政ノ一般カラ見テ、國民ノ
負擔ノ大體ヲ吾々ガ議スル上ニ於キマシテ
モ、甚ダ不都合デハナイカト思フ、就キマ
シテハ、此十五年度モ多分御迫加ニナルコ
トヽ吾々ハ想像ヲ持ツノデアリマスルガ、
本期議會ニ十五年度ノ爲替差損金ト云フモ
ノヲ豫定セラレテ、御提出ニナリマスルカ
否ヤ、或ハ此十四年度ノ豫算ノ如ク、第五
十二議會ニ於テ之ヲ追加提出スルト云フ御
見込デアリマスルカ、其點ヲ私ハ確メテ置
キタイト思フ、次ニ御尋申上ゲタイコト
ハ、今回ノ追加豫算ノ中ニ、大藏省所管ノ
中ニ、中央諸官衙準備委員會ニ關スル費用
ノ計上ガアルヤウデアリマス、此中央諸官
衙ノ建築ト云フコトハ私共ハ一日モ早ク
此實現ヲ希望スル者デアリマス、是ハ國務
進行ノ上ニ、財政緊縮ノ御方針ヲ御持チニ
ナッテ居ル現內閣ト致シマシテハ、之ヲ一日
モ早ク御遂行ニナッテ、事務ノ簡提ヲ圖ラ
レ、民衆ノ利便ヲ圖ラレルト云フコトハ
最モ適切ナ事柄デアリマスルカラ、此事業
ニ付テノ準備委員會ニ對シテ、其費用ヲ御
追加ニナッタト云フコトハ强チ着用其モノ
ニハ吾」々ハ何等疑ヲ挾ム者デハアリマセ
ヌケレドモ、此費用ヲ吾々ガ認ムル上ニ付
テハ、中央諸官衙ノ建築準備ト云フモノ
ガ、今如何ナル程度ニ進行シテ店リマスル
カ、其進行ノ程度、此計畫ノ内容ニ付テ
御伺シタイト思フノデアリマス、次ニ御伺
シタイノハ、司法大臣ニ對シテヾアリマ
ス、今囘ノ追加豫算ノ中デ、各省所管ノ追
加中、司法省ハ相當多額ノ金額ヲ御計上ニ
ナッテ居ルヤウデアリマスガ、私ノ御尋セ
ントスルモノハ、第三款ノ刑務費ニ於テ、
百二万七千四百二十四圓ノ金額ヲ御計上ニ
ナッテ居リマスルガ、就中收容費ニ於テ、
私共ハ聊カ不審ヲ懷ク者デアリマス、其收
容費ノ中デモ、囚人ノ食糧品ト云フモノガ
大部分ヲ占メテ居ルヤウデアリマス卽
チ四十二万五千六百十八圓、御提出ノ理由
トシテハ米價ノ騰貴ニ因ルト一云フコトニ
盡キテ居ルヤウデアリマスルガ、當初豫算ノ
御編成當時ニ於ケル此米價ハ今日ノ米價
ト比較シテドレダケノ懸隔ガアリマスル
カ、又囚人ノ食糧トシテ御宛行ヒニナル所
'全國ヲ通ジテノ各州務所ニ要スル
米ノ數量、此總額ハ何程デアリマスル
カ、次ニ第三點ニハ、囚人ニ御宛行ヒニ
ナル所ノ食糧トシテノ、米ノ市場ニ於ケル
所ノ品質ハ、市場ノ何等来位ニ當ル米デアル
カ、之ヲ御確メ申上ゲル次第デアリマス、
凡ン此追加豫算ハ、會計法ノ規定ニ依リマ
シテ明カナル如ク、必要已ムヲ得ザルモノ
ニ付テ御要求ニナル譯デアリマセウシ、
又豫算編成當初ニ於テ、豫知スルコトガ出
來ナカッタ事件ノ發生ニ依ッテ、其事實ニ對
シテノ豫算デアルベキモノト思フノデアリ
さん、然ルニ斯ノ如ク米價ノ御見込ガ何
ニ依シテ斯樣ニ違フノデアルカ、此點ハ陸軍
省ガ委任經理ヲ取ッテ居リマスルヤウナ方
針ニ依ッテ、司法省ハ之ヲ委任經理ニ御付シ
ニナルヤウナ御考ハ御持チニナラナイカ、
其他被服費等ニ付キマシテモ、使用材料ノ
騰貴ニ因ルト云フ理由デアリマス、次ニ又
雜費ノ如キニ致シマシテモ、消耗品ニ於テ
十五万圓、斯ノ如キ大キナ金額ヲ御追加ニ
ナルト云フコトハ餘リニ物價ノ御見込ニ
對シテ御調査ガ輕卒デハナイカ、又大藏當
局ニ致シマシテモ、此豫算ヲ御審査ナサル
ニ付テハ當時ノ物價、將來ノ事ニ付キマシ
テモ相當御考ガアッタラウト思ヒマスルガ、
是ヲ相當ナリトシテ、其當時御査定ニナッ
テ居ッタカドウカ、斯ノ如キ御見込違ヒハ、
當初豫算ヲ議スル上ニ、將來ニ付キマシテ
モ甚ダ審議ノ上ニ信用ヲ置ケナイコトニ
ナルノデアリマス、其次ニ御伺シタイノハ、
留置人費ト云フモノデ、四万三千圓以上御
要求ニナッテ居リマスルガ、是ハ唯、留置被
告人ノ增加ノ爲ダト云フヤウナ理由ヲ御市
シニナッテ居リマスルケレドモ、斯ノ如キ數
字ハ何ヲ根據ニシテ一體御計上ニナルノデ
アルカ、或ハ前三箇年ノ留置人ノ平均數字
ニ依ッテ、ソレヲ基礎トシテ御計上ニナル
ノカ、殊ニ是ダケ人員ガ殖エタトスルナラ
バ其殖エタ人員ニ對スル犯罪ノ種別ハ
大凡ドウ云フ犯罪ノ者ガ斯樣ニ殖エテ來タ
ノデアルカト云フ、特殊ノ司法省トシテ御
覽ニナッテ居ル犯罪ガアルモノト私ハ想像
スルノデアリマス、ソレカラ次ニハ護送費
デアリマスルガ、此設送費ガ約三万三千圓
バカリ殖エテ居リマスルガ、是ハ移送ガ殖
モノ刑務所カラ次ノ刑務所ニ送ル、又、
刑務所カラ他ノ所管ノ刑務所へ移スト云フ
爲ニ是ガ增加スル是等モ今迄ノ統計ノ上
カラ、基準トナルベキ數字ガアッテ御計上
ニナッタモノト思ヒマスルガ、併シ餘リニ相
違ガ甚シイヤウニ私共感ズル、是デハ當初
ノ本豫算編成ノ時ノ御方針ト云フモノガ、
甚ダ不確實ナモノデアル、次ニ御尋申上グ
ルノハ農林省ノ所管ニ於キマシテ-商
工省モ同樣デアリマス、是ハ金額ノ點デ私
ハ御伺シタクナイノデアルガ、萬國農事協
會會議、國際森林會議ト云フヤウナ會議ガ
アルヤウデアリマスルガ、是等ノ會議ハ旣
ニ八囘ヲ重ネ、或ハ三回ヲ重ネテ居ル會議
デアルノデアリマスルカラ、當初豫算ノ御
編成ノ當時ニ、旣ニ是ハ豫知セラルヽ事デ
ハナカッタラウカ、今之ヲ追加豫算トシテ御
計上ニナルト云フコトハ甚ダ吾々ハ不審
ニ堪ヘナイ、本年始メテ開催スル所ノ會議
デアルナラバ、ソレハ追加ニ御要求ニナル
ト云フコトモ當然カノヤウニ考ヘルケレド
モ、既ニ屢。會議ヲ重ネテ、回數既ニ八回
ニ及ビ、三囘ニ及ンデ居ル、國ノ面目ノ上
カラモ、此會議ニハ列席センケレバナラヌ
ト云フコトデアルナラバ、サウ云フ方針ヲ
本ニシテ御計上ニナルモノデアルナラバ、
前カラ豫知ガ出來テ居ル筈デアル、最初ノ
本豫算ニ計上ガ出來ナケレバナラヌ、由來
此追加像算ト云フモノハ、先ヅ是ハ斯ウ云
フ或ハ問題ニナリサウナモノデアルナラバ
追加豫算ニ廻サウト云フコトガ有勝チノ
ツノ惡弊デアリマス、私ハ矢張サウ云フヤ
ウナ御考ニ依シテ之ヲ當初豫算ニ御計上ニ
ナラナクテ、追加豫算ニ御譲リニナッタノ
デナイカ、斯ウ云フ風ニ想像致シマス、此
司法省ノ前段申上ゲマシタ豫鼻ノ事實ニ徵
シマスルト云フト、現內閣ガ緊縮方針ヲ御
執リニナッテ、豫算ノ總金額ガ一厘デモ多額
ニ上ラザランコトヲ希望シテ居ラレルヤウ
デアリマス、現ニ此十五年度ノ總豫算ヲ見
テモ十五億九千八百万圓ト云フノデアリマ
スカラ、無理ニ努メテ十六億ノ數字ニ達スル
コトヲ御避ケニナッテ居ル嫌ガアルノデア
リマス、是等モ矢張此爲替差損金ト云ヒ、
此司法省ノ費用ガ當初御編成當時トハ御見
込ガ違フ數字ノ甚シイコトヲ思ヒマスト
態、豫算總金額ノ數字ヲ減サンガ爲ニ斯ウ
云フ御見込ヲセラレタカノヤウニ吾々ハ思
フノデアリマス(拍手)左樣ナ御考デアリマ
スカドウカ、此數字ニ付テ御伺致ス次第デ
アリマスガ、御答辯ニ依リマシテ再ビ御尋
シタイト思ヒマス(拍手)
〔国務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=37
-
038・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 倉元君ノ御質問
ニ御答致シマス、第一ハ十四年度ノ追加豫
算ノ中、最モ主ナルモノハ貨幣交換ノ差金
ノ追加要求デアル、其金額ハ一千五十八万
九千圓ノ多キニ達シテ居ル、如何ニモ其通
リデアリマス、抑、豫算ヲ編成シマスル時
ニ於テ、其年度ノ貨幣交換差金ト云フモノ
ヲ總豫算ニ計上致シマシテ、豫メ之ヲ見積
リマスト云フコトハ出來得ルナラバ吾々
モ之ヲ希望致シマスルケレドモ、御承知ノ
通リ貨幣交換差金ハ爲替相場ノ變動ニ依。フ
テ非常ナル所ノ異動ノアルモノデアリマ
ス、隨テ十四年度中ニ要スル所ノ貨幣ノ交
換ノ差金ガ幾ラデアラウカト云フコトヲ、
十四年度ノ豫算ヲ編成スル時ニ於キマシテ
遺憾ナガラ見積ルコトガ困難デアッタノデ
アリマス、随ヒマシテ十四年度ノ總豫算ニ
ハ之ヲ計上致シマセヌデ、其年度ノ進行ノ
狀況ニ依リマシテ、此機會ニ提案ヲ致シ、
追加豫算トシテ要求ヲ致シマシタ次第デア
リマス、随テ十五年度ニ於ケル所ノ貨幣ノ
交換差金モ、是亦十五年度ノ總豫算ニ見積
ランコトヲ希望致シマシテ、段々〓究ヲ致
シマシタケレドモ、御承知ノ通リ最近爲替
相場ノ變動ガ中々激甚デアリマシテ、容易
ニ之ヲ見積ルコトガ出來マセヌガ爲ニ、十
五年度ニ要スル所ノ貨幣ノ交換差金ハ之ヲ
次ノ議會ニ於テ提案ヲスル考デアリマス、
第二點ハ中央官衙ノ建築準備調査會ノ費用
ヲ要求シテアルガ、其建築ノ準備ノ進行ノ
程度ハ今日ドウナッテ居ルカト云フ御質問
デアッタノデアリマス、玆ニ要求ヲ致シテア
リマスノハ、是ハ調査會ノ費用デアリマス
建築ノ事業トハ關係ノナイ事柄デアリマス
ガ、建築ノ事業ノ進行ノ程度ハ第一ニ路
線ノ變更ヲ要スルモノガアリマス、其路線
ノ變更ヲ要スルモノニ付キマシテハ、特別
都市計畫委員會ノ議ニ附シマシテ、其決議
ヲ經ル必要ガアリマス、今日ノ所ニ於キマ
シテハ其手續ヲ履行致シマシテ、特別都
市計畫委員會ノ決議ヲ經タノデアリマス、
随テ其敷地ガ極マリマシタニ依ッテ、其敷地
ノ中ニ包容スベキ所ノ各官衙ノ敷地ノ配當
ニ付テ、只今〓究中ニ屬シテ居リマス、何
レ此議會ニ於キマシテ大正十五年度ノ追加
豫算ヲ要求致シマシテ、一部ノ建築事務ニ
付キ、路線ノ擴張事務ニ付キマシテ御協賛
ヲ仰グ債リデアリマス、尤モ其財源ハ普通
ノ財源デハアリマセヌノデ、國有財產ノ整
理ニ依ッテ生ジマス所ノ金ヲ財源ト致シテ
要求スル考デアリマス、其次ハ司法省ニ對
スル御質問デアリマシテ、其結論トシテ總
豫算ニ計上スベカリシモノヲ、特ニ追加豫
算ニ廻シテアルガ如キ形ガアル、政府ノ考
トシテハ總豫算ノ金額ヲ成ルベク十六億圓
ニ達シナイヤウニスルガ爲ニ總豫算ノ金額
ハ少ク致シ、サウシテ其足ラヌ所ハ之ヲ追
加豫算トシテ計上スルト云フ考ヲ以テヤッ
タノデハナイカト云フ意味ノ御疑ガアッタ
ノデアリマス、政府ト致シマシテハ決シテ
左樣ナ考ハ持ノテ居リマセマ、總像算ヲ編成
スル時ニ於キマシテハ、總豫算ニ計上スペ
キモノハ之ヲ計上致シ、サウシテ其金額ガ
偶〓十五億九千八百万圓トナッタニ過ギナ
イノデアリマス、此度追加豫算ニ要求致シ
マシタモノハ、總テ總豫算ノ編成ノ當時ニ
於キマシテハ、正確ニ見積ルコトノ出來ナ
カッタモノニ對シマシテ追加要求ヲ致シタ
次第デアリマス、豫メ之ヲ追加豫算ニ廻ス
ト云フ如キ考ヲ以テ、特ニ總豫算ノ金額ヲ
少ク致シテ置イタト云フヤウナ事ハナイノ
デアリマス、左樣御承知ヲ願ヒマス、
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=38
-
039・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 倉元君ヨリ刑務所
ノ收容費ノ事柄ニ付キマシテ二三點御尋ガ
ゴザイマシタ、御承知ノ如ク刑務所ノ收容
費ハ、所謂補充課目ニナルモノニナッテ居
ルノデゴザイマス、在監人ノ消長ニ依リマ
シテ、足ラナイ場合ニ於キマシテハ、第
豫備金ヨリ平常ノ場合ニ於キマシテモ之ヲ
補充ヲスル、斯ウ云フ性質ノ課目ニナッテ
居リマスルノデ、決シテ此課目ニ對シマシ
テ豫メ少ク見積ッテ置クトカ、餘計見積ッテ
置クトカ云フガ如キ手段ヲ用キマスト云フ
コトハ、斷ジテ無イノデゴザイマス、御尋
ノ點ハ米、麥等ノ單價ノ騰貴ノ問題ヲ御尋
ニナッタノデゴザイマスルガ、成程豫算ニ
積ッテアリマスル單價ヨリ、實際ニ於キマシ
テハ騰貴致シテ居ルノデアリマス、是ハ如
何ニモ一見致シマスルト不思議ナヤウニ見
エマスガ、御承知デモゴザイマセウガ、刑
務所ノ食糧ハ米ト麥各〓半々ニ用フルコト
ニナッテ居リマスガ、其米ハ全部外國米ヲ
用キテ居ルノデアリマス、此外國米ノ市價
ハ必シモ內地ノ市價ノ異動ノ如ク豫定ガ
立チ難イノデアリマシテ、豫算ヲ積リマス
時ニハ、既往ノ實績ニ徴シマシテ豫算ヲ積ッ
テ置キマスルガ、實際之ヲ行フニ當リマス
ト左樣ニハ參ラナイ、例ヘバ豫算ニ於キマ
シテハ十五圓ノ單價ニ致シマシタモノガ、
實際ニ於キマシテハ二十五圓ニナッタト云
フヤウナ結果ガ出マシテ、一面ニ於テハ斯
ノ如キ增加ノ要求ヲシナケレバナラヌ結果
ニナッタノデアリマス、ソレカラモウ一ツ
ハ不景氣ノ結果ト申シマセウカ、或ハ社會
ノ或種ノ異動ノ結果ト申シマセウカ、在監
人ガ相當ニ前年度ニ較ベマスト殖エタト云
フコトデアリマス、豫算ノ當時豫想致シマシ
タ時ヨリカ彼此レ二三千人モ殖エタト云フ
コトガ、又收容費ヲシテ不足ナラシムル所
以ノ一ツトナッテ居ルノデアリマス、留置人
ノ費用ガ增加シタガ是ハドウデアルカト云
フ御尋ガアリマシタガ、留置人ノミナラズ、
一般ニ在監者ガ前年度ニ較ベマスト殖エ
タ、隨ヒマシテ年度ヲ通ジマシテ延人員ニ
於キマシテ、在監人ノ收容費ガ餘計ニナッ
タ、斯ウ云フ結果ニナッテ店ルノデアリマ
ス、增加致シマシタ犯罪人ノ種類ハ如何ナ
ルモノデアルカト云フ點ニ付キマシテハ、
如何ナル罪質ノモノガ特ニ殖エタト云フコ
トヲ顯著ニ認ムベキモノガナイノデアリマ
スガ、大體ニ於キマシテ窃盜デアリマスト
カ、詐欺デアルトカ云フ種類ノモノガ殖エ
テ居ルヤウニ認メラレルノデアリマス、ソ
レカラ次ニハ監獄ノ經費ヲバ委任經理ノ方
法ニスル意思ハナイカ、此點ハ頗ル重要ナ
ル問題デアリマシテ、前々司法大臣ノ故橫
田君ナドモ深キ注意ヲ以テ攻究シテ居ラレ
タ所デアリマス、引續イテ司法部內ニ於キ
マシテモ攻究シテ居リマスガ、未ダ此制度
ヲ採用スルト云フ段取マデニハナッテ居ラ
ヌノデアリマス、モウ一點、護送費ガ大變
ニ殖エタヤウデアルガ、是等モ豫想出來ル
デハナイカト云フ意味ノ御尋モアッタヤウ
デアリマスガ、是ハ丁度大正十四年度中ニ
ハ刑務所ノ廢合ヲ餘計ニ行ヒマシテ、全ク
豫想シナイ所ノ廢合ヲ數十箇所ニ亙リマシ
テ、或ハ本所ヲ支所トナシ、或ハ支所ヲ出
張所トナスト云フガ如キ廢合ヲ行ヒマシタ
結果ト致シマシテ、囚人ノ護送ヲ多クシナ
ケレバナラヌ、彼此レノ理由ヲ以チマシテ、
補充課目トナッテ居リマス所ノ收容費ニ於
テ追加ヲ要スルヤウニナック次第デアリマ
ス、是ニテ御了承ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=39
-
040・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 此際新ニ議席ニ著カ
レタル議員ヲ御紹介致シマス(「マダ答辯ガ
アリマス」ト呼フ者アリ)其氏名ヲ讀上ゲマ
スカラ御起立ヲ願ヒマス、第四十三番、岡
山縣第三區選出議員難波〓人君
〔難波〓人君起立〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=40
-
041・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高田政府委員
〔政府安員高田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=41
-
042・高田耘平
○政府委員(高田耘平君) 只今倉元君ノ御
質問ニ御答致シマス、質問ノ要旨ハ萬國農
事協會會議ガ像見シ得ベキモノデアッタノ
ニ、何故ニ大正十四年度當初ノ豫算ニ計上
セザリシカト云フ、斯ウ云フ質問デアッタ
ト思ヒマス、併ナガラ萬國農事協會會議ハ
本年ノ五月ヨリ開カレルモノデアリマシ
テ、大正十四年度ノ豫算ヲ提出スル時期、
卽チ大正十三年度中ニハ到底其期日等ガ判
明致シマセヌノデアリマス、但シ五月ヨリ開
會スルモノデゴザイマスカシテ大正十五
年ノ四月ヨリノ豫算ハ、大正十五年度ノ豫
算トシテ既ニ要求シテ居リマシテ、今回卽
チ三月ヨリ派遣シナケレバナラナイモノデ
スカラ、玆ニ其費用ヲ十四年度ノ追加豫算
トシテ要求シタ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=42
-
043・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 倉元要一君
〔倉元要一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=43
-
044・倉元要一
○倉元要一君 私ハ先刻ノ大藏大臣ノ御答
辯ニ滿足スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス成程爲替ノ變動ハ之ヲ豫見シテ一年間
ノ差損ヲ見ルト云フコトハ甚ダ困難デアリ
マシテ、政府トシテハ之ヲ爲シ得レバ何所
マデモ之ヲ總豫算ノ中ニ計上シタイノデア
ルガ、ドウモ困難ナ事デアルト云フヤウナ
御答デアリマシタガ、大凡爲替ノ差額ハ大
抵前三箇年トカ云フヤウナ風ノ數字ノ見込
ガ立ツモノト私共ハ想像シ得ルノデアリマ
ス(ノウ〓〓)殊ニ大藏大臣ハロヲ極メテ國
民ノ勤儉力行、消費節約ヲ御奬勵ニナリ
又多大ナ效果ノアッタモノヽ如ク御吹聽ニ
ナルノデアリマス、果シテソレダケノ御自
信ガアルトスルナラバ今日ノ財界ノ狀況
ヲ御覽ニナッテ、爲替相場ト云フモノガ大
體十五年ニハ斯ウ云フ風ニ進ムベキモノデ
アルト云フ御確信モ、自カラ私ハアルベキ
モノト想像スルノデス、ソレナラバ何モノ
ンナニ御苦ミニナラナクテモ、大體內輪
ニ見積ッテ御計上ナサルコトハ、サウ困難
ナ事デハアルマイト私ハ思フ、是ハドウシ
テモ大藏大臣ハ、サウ云フ風ニ見ルコトガ
吾々トシテハ出來ヌト仰シヤルノデアル
カ、此點ヲモウ一應御伺致シタイト思ヒマ
ス、司法大臣ハ私ノ質問ニ大體御答辯ガア
リマシタケレドモ、私ハ全國ノ刑務所ヲ通
ジテ米ノ所要額ガ如何程ニ上ルノデアル
カ、之ヲ私ハ御尋シタケレドモ、一言モ御
答ニナラナイ、ソレカラ相場ノ差ガ外國米
ヲ使用スルガ故ニ、豫算ヲ編成スル當時ニ
比較シテ十五圓ノモノガ二十圓ニモ上ル、
斯ウ云フヤウナ差ヲ生ズルト云フコトヲ仰
シヤルノデアルガ、左樣ニ外國米ト云フモ
ノハ相場ノ變動ガ激シイモノデアリマスル
カ、一年間ニ十圓ノ隔リガアル、開キガア
ルト云フヤウナ相場ハ、十四年度中ノ如何ナ
ル時期ニサウ云フ時期ガアリマシタカ、ソ
レヲ一ツ御示シヲ願ヒタイト思フノデアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=44
-
045・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 濱口大藏大臣
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=45
-
046・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 爲替ノ差損ガ前
三年ノ平均ニ依ッテ分ルト云フヤウナ御考
ヲ持ッテ居ルト大變ナ間違デアリマス、最
近ノ爲替相場ノ變動ハ日々御互ニ目撃致シ
テ居ル通リ、前三年ノ平均デ分ルト云フヤ
ウナ、ソンナ簡單ナモノデハアリマセヌ(拍
手)又政府ハ爲替ノ調節ニ努力ヲ致シテ居
リマスケレドモ、十五年度ニ於ケル爲替ノ
變動ハドウナルカト云フ確信ヲ持ツコトハ
政府ハ出來マセヌ(拍手)
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=46
-
047・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 重ネテノ御質問
デ、米ノ所要額ガドノ位要ルカ、是ハ固ヨ
リ在監人ノ消長、增減ニ依リマシテ正確ナ
コトヲ豫メ申上ゲルコトモ出來マセヌノデ
アリマスガ、大體此像算ニ見積ッテ居リマ
スガ如ク四万千八十石、斯ンナモノナノデ
アリマス、而シテ此外米ノ相場ノ異動ト云フ
モノハ中〓豫想ガ付キ難イノデアリマス、
從來屢、前數年ノ平均ヲ取ッテヤッテ見マシ
テモ、左樣ニ行カナイノデアリマス、已ム
ヲ得ズ左樣ナ狂ヒガ出來テ來ルト云フ結果
ニナルノデアリマス、殊ニ在監人ノ增減ノ
如キニ、至リマシテハ、全ク豫想ガ附カナイ
ノデアリマス、大方御推測ニナリマシテモ
分リサウナコトデアルト思ヒマス(拍手)
〔政府委員野村嘉六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=47
-
048・野村嘉六
○政府委員(野村嘉六君) 只今倉元君カラ
國際工業品規格統一會議參列費ニ對シマシ
テ御尋ガアリマシタ、此會議ニ參列スルコ
トハ初メヨリ分ッテ居ルデハナイカ、然ラ
パ何ガ故ニ普通豫算ニ計上シナカッタト云
フ御質問デアリマシタ、併ナガラ此國際工
業品規格統一會議ハ既ニ二回迄モ開キマシ
タケレドモ、是ハ多ク幹事會デアリマシテ、
申スト云フト準備會ト云ウテモ宜シイノデ
アリマス、隨テ當時ハ日本ハ之ニ參加シテ
居リマセヌ、今回初メテ日本ガ此會議ニ參
加スルヤウニナッタノデアリマス、而モソレ
モ昨年早ク米國カラ此申込ガアリマスレ
バ、矢張倉元君ノ御說ノ通リ普通豫算ニ計
上シナケレバナラヌノデアリマス、所ガ向
フカラ申込ミマシタノハ昨年ノ十二月二十
二日デアリマシテ、而シテ其手紙ノ著キマ
シタノハ本年ノ一月デアリマス、既ニ豫算
ガ計上サレマシタノデ、已ムヲ得ズ今回追
加豫算トシテ提出致シタ次第デアリマス、
御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=48
-
049・倉元要一
○倉元要一君 此席カラ御許シヲ願ヒタ
イ-大藏大臣ノ御答ハ私ガ前三箇年ノ平
均ニ依ッテ御計上ナサッタラ如何デアルカ、
左樣ナサイト云フ要求ヲシタヤウニ仰シヤ
ルノデアリマスガ、ソレハ大變ナ御聽違ヒ
デアリマス、大抵前三箇年位ノ平均ヲ御覽
ニナレバ、時ノ經濟界ノ情勢ヲ御覽ニナツ
テ、大凡其差損金ノ見當ダケハ付クモノデア
ルト云フノデアリマスデ、見當ダケハ付ク
ノデアルカラ、殊ニ貴方ガ消費節約、勤儉
力行ヲ力說セラレテ、サウシテ爲替相場ハ
安定ニ近ヅイテ段々恢復シツヽアルト云フ
御確信ヲ御持チニナッテ居ル、ソレナラバ
將來ノ爲替ノ相場ト云フモノニ付テモ御確
信ガナケレバナラヌト思フ、ソレヲ恰モ私
ガ確定的ニサウ爲サイト言ッタヤウニ御答
辯ナサルノハ甚ダ狡イ、ソレカラ司法大臣
ハ今私ノ質問ハ十圓モ開キガアルト仰シ
ヤルガ、左樣ニ大キナ開キガアルノハ、十
四年度ニ於テ如何ナル時期ニ左樣ナ相場ノ
開キガアリマシタカト云フコトヲ御尋ヲ
シタ、ソレニ對ウテ有耶無耶ニ葬シテ、之
ヲ正確ニ御答辯ナサラナイ、モウ一應御答
辯ヲ願ヒマス(「無用々々」ト呼フ者アリ)ソ
ンナ無責任ナコトハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=49
-
050・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 答辯ハナイヤウデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=50
-
051・井本常作
○井本常作君 本案ニ對スル質疑ハ此程度
ニ於テ終局セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「反對」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=51
-
052・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ヨリ質疑打切
ノ動議ガ提出セラレマシタ、直ニ採決致シ
やっ、此動議ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=52
-
053・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立多數ト認メマス
〔「異議アリ」「異議アリ」「多數々々」ト
呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=53
-
054・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 議長ノ宣告ニ對シテ
異議ガアリマス、仍テ記名投票ヲ以テ採決
致シマス、井本君ノ質疑打切ノ動議ニ贊成
ノ諸君ハ白票デアリマス、反對ノ諸君ハ靑
票デアリマス、閉鎖-氏名點呼ヲ命ジマ
ス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=54
-
055・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票漏ハアリマセヌ
カ-投票漏ナシト認メマス-投票函閉
鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=55
-
056・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票ノ結果ヲ書記官
ヨリ報告致サセマス
〔田口書記官朗讀〕
投票總數二百四十五
可トスル者白票百五十七
否トスル者靑票八十八
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=56
-
057・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ結果ニ依リマ
シテ井本君ノ質疑打切ノ動議ハ確定致シマ
シタ、仍テ質疑打切ニ決定致シマシタ
〔參照〕
井本君提出質疑終局ノ動議ヲ可トスル議
員ノ氏名左ノ如シ
石黑大次郞君井本常作君
一柳仲次郞君原脩次郞君
西英太郞君本田恒之君
戶井嘉作君戶田由美君
戶澤民十郞君富田幸次郞君
大津淳一郞君大島要三君
大里廣次郞君小野重行君
川崎克君神田正雄君
加藤鯛一君加藤十四郞君
河野曉君河波荒次郞君
金澤安之助君金田平兵衞君
吉原義雄君吉田磯吉君
高木正年君高橋元四郞君
高田耘平君武內作平君
武富濟君田中武雄君
田中善立君建部遜吾君
谷口宇右衞門君谷口源十郞君
中原德太郞君中村貞吉君
中野寅吉君中野猪之助君
永井柳太郞君村上國吉君
村山喜一郞君村松龜一郞君
室木彌次郞君生方大吉君
野村嘉六君黑田重兵衞君
八並武治君山田又司君
山田助作君山田道兄君
山口嘉七君山本勝次君
山本厚三君山枡儀重君
松井郡治君町田忠治君
古屋慶隆君降旗元太郞君
藤澤幾之輔君藤井敬愼君
福田五郞君小島證作君
小寺謙吉君小山松壽君
小池仁郞君木檜三四郞君
近藤重三郞君紺野九右衞門君
手代木隆吉君淺賀長兵衛君
靑木知四郞君荒井建三君
荒川五郞君佐竹庄七君
佐藤球三郞君齋藤隆夫君
齋藤太兵衞君齋藤仁太郞君
齋藤金吾君澤田利吉君
由谷義治君三木武吉君
三橋四郞次君箕浦勝人君
〓水留三郞君信太儀右街門君
重松重治君廣瀨德藏君
平野光雄君平井光三郞君
望月小太郞君關矢孫一君
關俊吉君鈴置倉次郞君
鈴木富士彌君菅原英伍君
菅村太事君井坂豐光君
原夫次郞君星廉平君
堀喜幸君床次竹二郞君
東〓實君千葉宮次郞君
陣軍吉君折原巳一郞君
小島善作君小川〓太郞君
小野寅吉君大園榮三郞君
大城幸之一君加藤鏡五郞君
神村吉郞君高鳥順作君
丹下茂十郞君谷原公君
津崎尙武君中村啓次郞君
中村嘉壽君長峰與一君
永井作次君植場平君
浦野謙朗君則元由庸君
熊谷五右衞門君藏園三四郞君
前田房之助君前田兼實君
牧山耕藏君松田源治君
丸山浪彌君麓純義君
兒玉實良君寺田市正君
櫻内幸雄君宜保成晴君
三輪市太郞君志波安一郞君
志村〓右衞門君〓水市太郞君
森田政表君森肇君
石川長右衞門君坂東幸太郞君
田崎信藏君堤〓六君
土屋〓三郞君武藤嘉門君
野原種次郞君山口政二君
增田義一君佐藤潤象君
湯淺凡平君井上雅二君
堀田義次郞君太宰孫九君
町野武馬君
井本君提出質疑終局ノ動議ヲ否トスル議
員ノ氏名左ノ如シ
磯部尙君磯部保次君
板野友造君石坂豐一君
飯村五郞君井上敬之助君
井上虎治君井口延次郞君
生田和平若伊坂秀五郞君
濱田精藏君八田宗吉君
西方利馬君土井權大君
大竹謙治君大口喜六君
小野義一君岡田伊太郞君
若尾幾太郞君若尾璋八君
渡邊祐策君加藤知正君
加藤久米四郞君兼松寅太郞君
川口義久君吉田眞策君
吉植庄一郞君竹原樸一君
竹內友治郞君田邊七六君
高井商二君高木音藏君
高橋熊次郞君高草美代藏君
中島守利君中村〓造君
難波〓人君內野辰次郞君
上埜安太郞君熊谷巖君
熊谷直太君黑住成章君
倉元要一君矢野鉉吉君
山本芳治君山口義一君
山口恒太郞君山崎達之輔君
松岡俊三君松實喜代太君
藤井忠兵衞君藤川〓助君
古川〓君木暮武太夫君
小橋藻三衞君古林新治君
神崎動君安保庸三君
靑木精一君靑山憲三君
秋田寅之介君赤間嘉之吉君
佐々木春作君佐々木長治君
坂井大輔君木戶豐吉君
宮本逸三君三土忠造君
志賀和多利君嶋居哲君
島本信二君廣瀨爲久君
平山爲之助君森〓昶君
瀨沼伊兵衛君砂田重政君
菅原傳君隅田豐吉君
杉宜陳君松山兼三郞君
鷲野米太郞君河崎助太郞君
田中譲君武藤山治君
小林彌七君古林喜代太君
森田金藏君猪野毛利榮君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=57
-
058・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ別ニ
註論ノ通告モアリマセヌカラ直ニ採決ヲ致
シマス、二案トモ委員長報告ニ贊成ノ諸君
ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=58
-
059・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 多數ト認メマス、仍
テ二案トモ委員長報告ノ通リ可決確定致シ
マシタ(拍手)日程第三、乃至第五ハ同種ノ
議案デアリマスカラ、一括議題ト爲スニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=59
-
060・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ日程第三、日本勸業銀行法中改正
法律案、日程第四、農工銀行法中改正法律
案日程第五、北海道拓殖銀行法中改正法
律案、右三案ノ第一讀會ヲ開キマス-武
內政府委員
第三日本勸業銀行法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)第一讀會
日本勸業銀行法中改正法律案
日本勸業銀行法中左ノ通改正ス
第十四條第三項中「輕便鐵道財團、」ヲ「鐵
道財團及」ニ改ム
第十四條ノ二中「建物ヲ抵當トスル貸付
金額」ヲ「建物ヲ抵當トスル貸付金額竝第
十五條第五項ノ貸付金額」ニ改ム
第十五條第一項中「郡」ヲ削リ同條第三項
中「產業組合」ヲ「產業組合、重要輸出品工
業組合」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
都市計畫法ニ依リ土地區劃整理ヲ施行
スル場合ニ於テ土地區割整理組合若ハ
其ノ聯合會ヨリ借用ヲ申出タルトキ又
ハ共同施行者カ連帶責任ヲ以テ借用ヲ
申出タルトキハ抵當ヲ徵セスシテ定期
償還貸付又ハ年賦償還貸付ヲ爲スコト
ヲ得
第十五條ノ二中「第十五條各項」ヲ「前條
第一項乃至第四項」ニ改ム
第二十八條中「郡」ヲ削ル
第三十二條第一項第三號中「產業組合」ヲ
「產業組合、重要輸出品工業組合、漁業組
合」ニ改ム
第三十二條ノ二中「郡」ヲ削ル
第四農工銀行法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
農工銀行法中改正法律案
農工銀行法中左ノ通改正ス
第五條中「郡」ヲ削ル
第六條第三號中「郡」ヲ削リ同條ニ左ノ一
號ヲ加フ
六都市計畫法ニ依リ土地區劃整理ヲ
施行スル場合ニ於テ土地區劃整理組
合若ハ其ノ聯合會ヨリ借用ヲ申出タ
ルトキ又ハ共同施行者カ連帶責任ヲ
以テ借用ヲ申出タルトキハ無抵當ニ
テ本條第一號第二號ノ貸付ヲ爲スコ
ト
第六條ノ二中「建物ヲ抵當トスル貸付金
額」ヲ「建物ヲ抵當トスル貸付金額竝前條
第六號ノ貸付金額」ニ改ム
第七條ノ三中「產業組合」ヲ「產業組合、重
要輸出品工業組合」ニ改ム
第二十條中「郡」ヲ削ル
第二十三條第三號中「產業組合」ヲ「産業
組合、重要輸出品工業組合、漁業組合」ニ
改ム
第二十四條第二項中「郡」ヲ削ル
第五北海道拓殖銀行法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)第一讀會
北海道拓殖銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中左ノ通改正ス
第七條ニ左ノ一項ヲ加フ
北海道拓殖銀行ハ五十箇年以內ニ於テ
年賦償還ノ方法ニ依リ又ハ五箇年以内ニ
於テ定期償還ノ方法ニ依リ北海道又ハ
樺太ニ於ケル鐵道財團又ハ軌道財團ヲ
抵當トスル貸付ヲ爲スコトヲ得
第八條第四項中「產業組合」ヲ「產業組合、
重要輸出品工業組合」ニ改メ同條ニ左ノ
一項ヲ加フ
都市計畫法ニ依リ土地區劃整理ヲ施行
スル場合ニ於テ土地區割整理組合若ハ
聯合會ヨリ借用ヲ中出タルトキ又ハ共
同施行者カ連帶責任ヲ以テ借用ヲ申出
タルトキハ年賦若ハ定期償還ノ方法ニ
依リ無抵當貸付ヲ爲スコトヲ得
第八條ノ三中「第七條第一項第一號第二
號」ヲ「第七條第一項第一號第二號、同條
第四項」ニ改ム
第十一條ノ二中「區」ヲ「市」ニ改ム
〔政府委員武内作平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=60
-
061・武内作平
○政府委員(武內作平君) 本案ハ日本勸業
銀行法、農工銀行法及北海道拓殖銀行法ノ
一部ヲ改正致シマシテ、土地區劃整理事業、
重要輸出品工業組合ノ事業、漁業組合ノ事
業及北海道ノ鐵道軌道財國ニ對シテ、金融
ノ途ヲ開カントスルモノデアリマス、土地
區割整理事業ハ都市計畫ノ助長促進上最モ
必異ナル公益事業デアリマス、而シテ本事
業ノ遂行ニ付テハ耕地整理法ヲ準用セラ
レ原則トシテ組合又ハ共国施行者ガ之ニ
當ル事トナシテ居リマス、此事業ニ對シマシ
テハ無牴當ニテ長期ノ資金ヲ融通スル途ガ
開カレテ居ナイノデアリマス、又輸出員易し
ノ改善助長ヲ圖ル爲メ制定セラレマシタ重
要輸出品工業組合法ニ依ル重要輸出品工業
組合ハ現在ノ產業組合中ノ販賣購買及利
用組合ト略、同一ノ性質ヲ有スル經濟〓體
デアリマスガ、之ニ對シマシテモ亦現行法
上無抵當ニテ長期資全ヲ融通スルノ途ガ無
イノデアリマス、前者ハ耕地整理事業、後
者ハ產業組合ニ對スルト同樣、日本勸業銀
行、農工銀行及北海道拓殖銀行ヲシテ、是ガ
金融ニ當ラシムルノ必要ガアルノデアリスマ、
又漁業組合ハ共同施設事業トシテ共同販賣、
共同購買又ハ組合員ニ對スル漁業資金ノ供
給等ノ事業ヲ行ヒ、重要輸出品工業組合員
ノ共同施設、製造、加工若クハ販賣、又ハ
組合員ノ營業ニ必要ナルモノヽ供給等ノ事
業ヲ行フガ故ニ、何レモ事業ノ遂行上、短
期資金ノ必要ガアリマスカラ、產業組合ニ
對スルト同樣、無擔保ニテ日本勸業銀行及
農工銀行ヲシテ、其預リ金及餘裕金ヲ以テ
スル手形ノ割引、又ハ當座預金貸越ヲ爲サ
シムルノ必要ヲ認メタノデアリマス、次ニ
北海道及樺太ニ於ケル拓殖間發上最モ急務
ナルハ交通連輪機關ノ整備デアリマスガ
故ニ、同地方ニ於ケル地方鐵道ノ軌道ニ對
シ、資金供給ノ圓滑ヲ圓ル爲メ、北海道拓
殖銀行ニ鐵道財團又ハ執迫財團ヲ抵當トス
ル貸付ノ途ヲ開クノ必要ガアリマス、尙ホ
郡制ノ廢止、北海道ニ於ケル市制ノ施行及
輕便鐵道法廢止ニ伴ヒマシテ、日本勸業銀
行法、農工銀行法及北海道拓殖銀行法中條
文ノ整理ヲ妥スルモノガアリマスカラ、玆ニ
日本勸業銀行法、農工銀行法及北海道拓殖
銀行法中改正法律案ヲ提出致シマシタ、愼重
御審議ノ上速ニ御協賀ヲ與ヘラレンコト
ヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=61
-
062・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑ノ發言ヲ許シマ
ス-高草美代藏君
〔高草美代藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=62
-
063・高草美代藏
○高草美代藏君 只今政府カラ提案ニナリ
マシタ農工銀行、北海、道拓殖銀行竝ニ日本勸
業銀行法ノ改正案付キニマシテ、私共ハ私ノ
同僚カラ詳細ナル質問ガマダ後ニアル筈デ
アリマスカラ、其同僚以外ノ質問ヲ一一三箇
所致サウト考ヘルノデアリマス、實ハ此案
ハ大體カラ申上ゲマスト、私共頗ル結構ナ
ル案ト存ジテ居リマス、併ナガラ政府ハ其
方法ニ付キマシテ、色ミナル〓究ヲ爲サツ
テ下サラヌト、其名美ニシテ其實ヲ擧ゲル
コトハ頻ル困難ナコトヽ存ジテ居ルノデア
リマス、ソレ故ニサウ云フ意味ニ於キマシ
テ、私ハ玆ニ質問ヲ致サウト考ヘルノデア
リマス、私ノ主トシテ質問致サウト考ヘマ
スル條項ハ、竝ニ漁業組合ト云フノガ新ニ這
入ッタノデアリマスガ、此漁業組合ニ關係シ
タコトヲ主トシテ御導致サウト考ヘルノデ
アリマス、御承知ノ通リニ世界ノ海洋史ヲ
繙イテ見マスト、海國ニシテ其海ヲ利用シ
タル國ハ必ズ榮エテ居リマス、之ニ反スル
國ハ必ズ衰へテ居リマス、現在衰ヘントシ
テ居ル國ガアリマス、日本ハ御承知ノ通リ
幸ニ致シマシテ束北、樺太、千島カラ、西
琉球、臺灣ニ至ルマデ、氣候カラ申シマシ
テモ、寒帶、暖帶、サウシテ熱帶ノ此三帶
ニ跨シテ居リマス、シレ故ニ魚介藻類ガ頗ル
多イト云フコトハ、是ハ皆樣御承知ノ通リ
デアリマス、ソレ故ニ金額カラ申上ゲマシ
テモ、一年ノ收獲殆ド四億圓ト唱ヘテ居リ
マスガ、實際ハ是レ以上ト考へマス、サウ
致シマスルト、日本ノ產業ノ上カラ申上ゲ
マシテモ、頗ル重大ナル位置ヲ占メテ居ル
ト云フコトガ分リマスルシ、又地形ノ上カ
ラ云ヒマシテモ、只今申上ゲマスヤウナ關
係デアリマスルカラ、免ニ角私共ハ陸ニ於
ケル米ノ解決ヲスルト同時ニ、海ニ於ケル
水產ノ解決ヲシナケレバナーラヌト始終思シ
テ居リマス、所ガ近時官氏共ニ餘程水產ト
云フコトガ分リ出シマシタケレドモ、未ダ
其進步ハ頗ル遲々タルモノガアルノデアリ
ずっ、私共ハ之ヲ進歩發達サスノニハド
ウシタラ宜イカト云フニ、成程其方法ハ色
色アルデアリマセウ、或ハ〓育ノ力ヲ藉リ
ナケレバナラヌモノモアリマセウ、或ハ又
技術ノ力ニ依シテ進歩サセナケレバナラヌ
モノモアリマセウ、或ハ又經濟ノ力ヲ以テ
進步サセナケレバナラヌモノモアリマセ
ウ、或ハ又法則ノ力ヲ藉ラナケレバナラヌ
モノモアラウト考へマス、又政治ノ力ニ依
ラザレバ進步ヒヌモノモアラウト存ジマ
ス、ソコデ私共今日提案ニナリマシタ所ノ
此改正案ハ、所謂法ノ力ヲ藉リ、法ヲ改正
ヲスルノデアリマシテ、所謂是ハ一方カラ
申上ゲマスト、法ノ力ヲ藉ヲテサウシテ同
時ニ經濟ノ力ニ依ッテ水產ヲ改良スル、進步
サス、斯ウ云フ意味デアリマスルカラ、私
共ハ大體ニ於テハ餘程良イ案ト存ジテ居リ
やく、併ナガラ私共玆ニ心配ニ堪ヘマセヌ
ノハ、折角法ヲ改正ヲ致シマシテモ、餘程
其實行方法ヲ考ヘマセヌト、其實ヲ擧ゲル
コトガ頗ル困難デハナイカト云フコトヲ憂
フルノデアリマス、現ニ農工銀行ニ致シマ
シテモ、目下勸業銀行ニ致シマシテモ、其
外是等類似ノ銀行ニ致シマシテモ、實ハ之
ニ類似ノ資金ヲ供給スルノ方法ハアルノデ
アリマス、併ナガラアリマシテモ、其方法
ノ惡イガ爲メ、今日金融ノ完全ニ融通ヲス
ルト云フコトガ頗ル困難ナル實情デアルノ
デアリマス、ソレ故ニ私ハ玆ニ第一ニ皆樣
ガ御承知ノ通リ、昨年出來マシタ所ノ漁業
財團抵當法ト云フモノガアリマスガ、此法
ノ實施以來今日ニ至リマスルマデ、此三銀
行ガ貸出シテ居リマス狀況如何、之ヲ第
一ニ御尋ヲ致シタイト思フノデアリマス、
ソレカラ今日茲ニ出テ居リマスル三銀行法
ノ改正後、資金供給ノ方法ヲ一體ドウ爲サ
ル御考デアルカ、或ハ長期貸出ト云フコト
ハオヤリニナラヌノデアリマスカ、或ハ相
當長期ノ貸付ハ爲サルノデアルカ、然ラザ
レバ或ハ唯〓、短期ダケノ貸付デアルカド
ウカ、斯ウ云フコトヲ御尋シタイト思フノ
デアリマス、ンレカラ一體私共從來斯ノ如
キ特殊銀行ガ資金ヲ供給ヲ致スニ付キマシ
テ、其手續ガ頗ル頰維ニ致シマシテ、或
ソレガ爲ニ此借入ノ時期ガ長引イテ、サウ
シテ漁業其他ノ時期ヲ失フト云フヤウナ遣
憾ガ多々アルノデアリマス、斯ノ如キ此煩
雜ナル手續ヲ改善ヲセラルヽト云フ意思ガ
果シテアルノカドウカ、ソレカラ第四ニ從
來漁業組合ニ對シテ、政府ガ低利資金ヲ供
給ヲシテ居ラレルノデアリマスガ、是ハ私
共一言ニシテ之ヲ言ヘバ、漁業組合ヲ目的
トスルニアラズシテ、殆ド個人ヲ目的ニシ
テ貸與ヘルト云フ實情デアリマス、何故私
ガ左樣ナコトヲ申スカト言ヒマスト、借人
レマスル漁業組合ハ漁業組合ヲ代表ヲ致シ
テ居リマスル所ノ役員ガ、無論保證ニ立ツ
ノデアリマス、併ナガラ政府ハ此役員ノ單
ニ保證ダケデハ迚モ承知ヲ致シマセヌデ、
其役員ノ中ノ最モ信用アリ、最モ資產ヲ持,
テ居ル人ニ對シテ、更ニ個人ノ保證ヲ致サ
ナケレバ貸サヌ、斯ウ云フコトガ今日マデ
隨分行ハレテアッタノデアリマス、斯ウ云云
コトハ餘程漁業組合ニ取リマシテハ資金
ノ供給ヲ仰グ上ニ付キマシテ遺憾千萬デア
ルノデアリマスガ、今後モ亦依然トシテ斯
ル手續ヲ爲サルノデアルカドウカト云フコ
トガ御尋シタイノデアリマス、ソレカラ第
五ト致シマシテハ、全體此優良組合ニ於キ
マシテハ基本金モアリマス、色ミナ積立金
モアルカラ、所謂優良組合デアルノデアリ
マスカラ、斯ノ如キ優良組合ハ却テ政府ノ
資金ヲ借入レルトカ、銀行カラ資金ヲ借人
レルト云フヤウナ必要ハ、絕對ニ無イトハ言
ヒマセヌガ、比較的ニ少イト存ズルノデア
リマスカラ、資金ノ供給ヲ仰ギ、資金ノ供
給ヲ望ンデ居ル所ハ、却テ優良ナル組合ニ
アラズシテ、不良ト言ッタラ語弊ガアルカモ
知レマセヌガ、免ニ角左樣十意味ノ餘リ成
績ノ良クナイ組合ガ、無論資金ノ供給ヲ希
望スルト云フコトガ今日ノ實情デアルノデ
アリマス、所ガ政府ノ貸シ方、或ハ銀行ノ
此貸サシ方ハ只今申上ゲマスヤウニ優良
ナル組合デナケレバ貸サナイ、不良ナル組
合ニ對シテハ貸スノヲ澁シテ、優良ナルモノ
デナケレバ貸サナイト云フヤウナ實情デア
リマスルカラ、矢張サウ云フコトニナリマ
スルト、今囘ノ改正案ガ依然トシテ左樣ナ
方針デヤルト云フコトニナレバ、其名ハ甚
ダ美麗デアルガ、其實ハ決シテ擧ラヌ、
斯ウ云フ實情ニナルノデアリマス、之ニ對
シテ政府ノ所見ハ改正ト同時ニドウ云フ
御所見デアルカ御尋シタイノデアリマス、
ソレカラ第六ト致シマシテ、漁村ノ發展ヲ
期セント欲スルニハドウ致シマシテモ漁
業組合ノ隆盛ヲ爲シ、漁業組合ノ發展ヲ圖
ルト云フコトガ、最モ必要ナル事デアリマ
ス、然ルニ現在ニ於ケル漁業組合ハ、御水
知ノ通リニ確カ明治四十三年ニ出來マシタ
ノチ、ソレデアリマスルカラ今日、餘程時
勢モ進步シテ居リマス、事情モ異シテ居リ
マス、ソレ故ニ政府ハ此漁業組合ノ改正ヲ
行ハレナケレバ、如何ニ斯ノ如ク漁業組合
ニ對スル銀行ノ改正ヲ爲サッテモ、漁業組合
ガ依然トシテ不都合デアル、不都合ナ箇條
ガ多イト云フコトニナリマスト、其實效ハ
迚モ擧ゲルコトハ出來ナイト斯ウ存ズルノ
デアリマス、例ヘバ今日ハ殆ド水產界ノ輿
論ニナッテ居リマスガ、御承知ノ通リニ現在
ニ於ケル漁業法ハ如何ナル有樣デアルカト
申シマスルト、單ニ專用漁業權ヲ持ツト云
フコトト、サウシテソレヲ自ラ漁業ヲ營ム
コトハ出來ヌノデアリマシテ、他人ニ之ヲ
貸與ヘルト云フコトト同時ニ、一方ニ於テ
漁業ノ共同施設ノミシカ出來ヌ、此二點シ
カ何モ働ハ出來ナイノデアリマス、ソレ故
ニドウシテモ今後ハ之ヲ改正致シマシテ
所謂產業組合ニ準ジタ、經濟的ニモット働
キ、サウシテ左樣ナ活動ヲスルト云フヤウ
ニ是ガ改止ヲ根本カラ致サナケレバ、如何
ニ銀行法ノ改正ガアリマシテモ、其實ハム
ヅカシイト思フノデアリマス(拍手)政府ハ
斯ノ如キ現在ノ漁業法ヲ根本ニ於テ改正ス
ルノ御意思ガアルヤ否ヤト云フコトヲ御尋
シタイノデアリマス、ソレカラ私共特ニ感
ズルノデアリマスガ、一體漁業ニ關係ノア
ル事業トカ、或ハ是等ニ關係ノアル組合ト
云ヒマスルモノハ陸上ニ於ケルソレ等ノ
モノトハ全然性質ヲ異ニ致シテ居リマスノ
デ、ソレ故ニ中〓素人デハ分ラナイノデア
リマス、故ニ私共ハ從來ノ經驗ニ依リマシ
テモ、先程申上ゲマシタ如ク、從來勸業銀
行ニ致シマシテモ、或ハ農工銀行ニ致シマ
シテモ、金融ノ途ヲ多少門戶ハ開イテアル
ノデアリマス、又財團抵當法ニ致シマシテ
モ立派ナ法ハアルノデアリマス、然ルニ其
法ハアッテモ今日金融ガ圓滑ニ行カナイ、
斯ウ云フ所以ハ何カト云ヒマスト、ソレヲ
取扱シテ居ル所ノ銀行ノ內部ノ人ガ所謂素
人デアルノデアリマシテ、其道ニ明カナル
者、此道ヲ理解シテ居ル者ガ實ハ居ナイノ
デアリマス、ソレ故ニ幾ラソコニ名劒ヲ與
ヘテアッテモ、所謂素人ガ之ヲ使フノデアリ
マスカラ、更ニ此名劍ヲ立派ニ使フト云フ
方法ガ出來ナイ、是ガ今日マデ此道ハ開ケ
テ居ッテモ本當ノ實效ガ擧ガラヌト云フ所
以ハ、私玆ニ在ルト思フノデアリマス(拍
手)ソレ故ニ政府ハ今回ノ三銀行ノ改正ヲ
爲サルト同時ニ、銀行ニ斯ノ如キ水產ニ理
解ノアル、漁業ニ理解ノアル人ヲ入レテ、
立派ニ之ガ運用ヲ圖ラルヽカドウカ、之ヲ
御尋シタイノデアリマス、ソレカラ第八ノ
質問ト致シマシテ、致府ガ目下色〓奬勵ヲ
致シテ居ラレマス所ノ漁業、若クハ漁船若
クハ養殖事業、或ハ定置漁業、是等ノモノ
ニ對シテ資金ヲ供給スルノ御意思ガアルカ
ドウカ、此事ヲ御尋シタイト思フノデアリ
さっ、以上八點ニ付キマシテ明確ナル御答
辯ヲ煩シタイト存ジマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=63
-
064・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 武內政府委員
〔政府委員武內作平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=64
-
065・武内作平
○政府委員(武內作平君) 高草君ガ豐富ナ
ル納蓄ヲ披瀝シテ、吾々素人ニモ能ク分ル
ヤウニ御話下サッタコトヲ感謝致シマス、
御質問ニ對シマシテ簡單ニ私ノ承知致シテ
居リマスル範圍ノ事ヲ御答ヲ致シタイト思
フノデアリマス、第一ノ漁業財團ニ對シ
テ、實施以來ドレ程ノ貸出ヲシタカト云フ
御尋デアリマシタガ、御承知ノ通リマダ實
施日尙ホ淺イノデアリマシテ、餘リ澤山ノ
支出ハ出來テ居リマセヌ、勸業銀行カラ貸
出シマシタ金ノ合計ガ今日マデハ僅ニ三十
万圓デアリマス、今後追〓此方面モ發展ス
ルコトヽ考ヘテ居ルノデアリマス、資金供
給ノ方法ニ付テ長期カ短期カ、或ハ長期ハ
止メル積リカト云フ意味ノ御話ガアリマシ
タガ、成程今囘ノ改正案ハ漁業組合ニ對シ
マシテハ、短期ノ貸出ヲ開始ヲ致シタノデ
アリマス、アリマスガ、從來ヤッテ居リ
マスル所ノ長期ノ貸出ハ、決シテ止メル積
リデハナイノデアリマス、短期モ長期モ兩々
相俟ノテ金融ノ潤澤ヲ期シタイト云フノ
ガ、改正ノ要旨デアリマス、第三ニ法律ヲ
改正ヲシテモ、供給ノ手續其モノガ宜シク
ナイト、圓滑ニ事ガ運バヌノデアルト云フ
御意見デアリマシタ、是モ至極御尤ノ御意
見ト考ヘルノデアリマス、從來金融問題ニ
付キマシテハ、御承知ノ通リ各方面ニ於テ
相當ニ銀行ノ設立モアルシ、資金ガ潤澤ニ
アッテモ、ドウモ旨ク行カナイノデアリマ
ス、是ハ殊ニ漁村等ニ於キマシテハ、サウ
云フ弊害ノ多イコトヽ信ズルノデアリマ
ス、政府ニ於キマシテハ、議會終了後直ニ
金融制度ノコトニ付テ徹底シタ考慮〓究ヲ
致シタイト云フ考ヲ持,テ居リマスルカラ、
其際ニ於キマシテ、只今高草君ノ御意見ニ
アリマシタヤウナ事ニ付キマシテモ、十分
〓究ヲ致シタイト考ヘマス、第四ノ低利資
金ヲ供給スルノニ役人ノ保證ヲ要スル、サウ
云フヤウナ遣方デハ面白クナイ、都合好ク
行カナイト云フコトヽ第五ノ優良組合ヘ
ハ金ノ貸付ヲスルケレドモ、不優良ノ組合
ヘハ十分金ガ行屆カナイト云フ、斯ウ云フ
御意見デアリマシテ、之ヲ都合好クスルニ
アラザレバ、漁村ノ金融ノ途ガ圓沿デナ
イ、是モ至極御尤ノ御意見ト思ヒマスガ、
併シ矢張金ヲ貸シマシテ、銀行業ノ方カラ
申シマスト、金ヲ貸シテンレガ返ッテ來ヌ
ト云フコトニナレバ、非常ニ困ルノデアリ
ママ、デアリマスカラシテ、一面ニ於キマ
シテハ部合好フ全融ヲスルト同時ニ、其金
ガ又都合好ク返シテ來ルト云フ方法ヲ講ゼ
ヌケレバナラヌノデアリマスカラシテ、此
問題ハ中ミムヅカシイト思フノデアリマ
ス、デアリマスカラシテ、サウ云フヤウナ
保證ヲシナイデ貸ス方法ヲ今後取ルカ、或ハ
此不優良ノ組合ニモドン〓〓貸セルヤウナ
考デアルカト言ハレマシテモ、直ニ其通リ
デアルト云フコトノ御答ヲスル譯ニハ參リ
マセヌケレドモ、成程サウ云フコトガアラ
ウト思ヒマスカラ、サウ云フ點ニ付キマシ
テモ、如何ニスレバ金融ガ能ク行屆キ、又
銀行ノ方カラ申シマスト、貸シテモソレガ
都合好ク返ッテ來ル、所謂信用ヲ受ケルト
云フ方法ハ如何ニスレバ宜シイカト云フコ
トニ付キマシテ、先キニ中上ゲマシタ通リ
ニ、銀行制度ノ調査ト同時ニ、十分考慮研
究ヲ致スコトニ致シタイト思ヒマス、次ニ
漁業組合ノ改正ヲ爲スノ意思アルヤ否ヤト
云フコトデアリマシタガ、是ハ農林省ノ政
府委員ガ御出ニナッテ居リマスカラ、其方
カラ御答ガアルト信ズルノデアリマス第
七ニ銀行ノ人ガ漁業組合ニ對シテ理解ガ無
イカラ、十分ナ資金ガアッテモソレガ都合好
ク運轉シナイノデアルト云フ御意見デアリ
マシタ、是モ至極御尤ナ御意見ト考ヘマ
ス、矢張銀行ニ於キマシテモ、漁業組合ノ
貸付ノ多イ所トカ、或ハ漁村ノ相當繁昌
スルヤウナ所ニハ、相當漁業ニ理解ノアル
人間ガ居ルト云フコトハ必要ナコトヽ考へ
マスカラ、斯ウ云フ點ニ付テモ十分考慮致
シタイト思フノデアリマス、第八ノ特殊ノ
漁業ニ對シテ貸付ヲスルカドウカト云フ御
意見デアリマスガ、提出案ノ中デハ法文ニ
依シテ御覽ニナッテ居リマス通リ、ソレガ漁
業ノ組合デアレバ貸付ヲスルコトガ出來マ
スガ、唯、單ニ特殊漁業ト云フダケデハ
法案其モノヽ關係カラハ貸付ヲスルコトニ
ナッテ居ナイノデアリマス、デアリマスケ
レドモ御指摘ニナッタヤウナ事實ハ、相當漁
業ノ中デモ重要ナモノト考ヘマスカラシ
テサウ云フモノニ對シマシテモ、十分金
融ノ途ガ圓滑ニ圖ラレルヤウニ、今後十分
考慮致シタイト考ヘマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=65
-
066・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高田政府委員
〔政府委員高田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=66
-
067・高田耘平
○政府委員(高田耘平君) 只今高草君ノ御
質問ノ第六ニ付テ御答致シマス、漁業法ノ
改正ニ付キマシテハ政府ハ年來種々調查
ヲ致シマシタガ、不幸ニシテ大正十二年ノ
大震火災ニ於テ、其材料ノ殆ド全部ヲ燒失
シタノデアリマス、故ニ政府ハ其後出來ル
ダケ材料ノ蒐集ニ努メテ居リマシテ、今調
査〓究中デアリマスカラシテ、成ベク早
ク成案ヲ得テ、漁業法ノ改正ヲ爲サントス
ル考デゴザイマス、而シテ只今高草君ノ御
意見ノ中ニ、漁業組合制度ヲ改善シテ產業
組合同樣ノ組織ニシテ、而シテ漁村ノ發達
ニ資シタイト云フ御意目デデザイマスガ、
其意味ニ付キマシテモ、成ベク現在ノ漁
業組合制度ニ付キマシテモ、經濟的活動ノ
出來ル意味ニ於テ改正セント目下努力中デ
アルト云フコトダケ御答シテ置ク次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=67
-
068・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 松實喜代太君-一
寸御待チ下サイ、高草美代藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=68
-
069・高草美代藏
○高草美代藏君 簡單デアリマスカラ此席
カラモウ一應御尋ヲシテ置キマスガ、武內
次官カラノ御答ハ殆ドドノ條項ニモ御同
意デマリマシテ、大ニ努力スルト云フコト
デアリマスカラ、私ハ是非ソレヲ御〓究ノ
上、實現ヲシテ下サルヤウニ御願致シタイ
ノデアリマス、私ハ農林省ノ所管ノ漁業組合
ノ事ニ付キマシテ、今一度御尋致シタイト思
フノデアリマス、材料ヲ震災デ燒イテシマッ
タト云フコトデアリマスガ、ドウ云フ材料
ガアッタカ知リマセヌガ、成程各條ニ付キ
マシテノ材料ハ御失ヒニナッタカモ知レマ
セヌガ、私ハ大體ニ付キマシテ、漁業組合
ヲ產業組合ニ準據シテ、是非共之ヲ改正シ
ナケレバナラヌト云フ理由ハ、簡單デアリ
マシタガ曩ニ申上ゲマシタル通リニ、漁業
組合自ラ漁業ヲ爲スコトガ出來マセヌノ
デ、唯、專用漁業權ト漁業ニ關スル共同施
設此二點シカ出來ナイト云フ洵ニ範圍ノ
狹イコトニナノテ居ルノデアリマス、ソレヲ大
ニ活動サセントスルニハ、ドウ致シマシテ
モ今申上ゲマシタヤウニ、產業組合法ニ準
據シタモノニ改正ヲシナケレバ、根本ニ於
テ私ハ活動ハムヅカシイト思ヒマス、此點
ニ付キマシテ御尋ヲシタイド考ヘマス、
漁業組合ニ關係スル事項ト致シマシテハ、
漁業組合ヲシテ自ラ漁業ヲ爲シ得ルノ途ヲ
開クト云フ御意思ガアルカ否カ、是ハ震災
ノ爲メ材料ガ燒ケテモ御分リニナルコトヽ
思ヒマス(拍手)ソレカラ第二ニ私共組合ニ
關スル事項ト致シマシテ、組合員ニ出資ヲ
爲サシメル制度ヲ御設ケニナルコトガ出來
ルヤ否ヤト云フ、此事ヲ御尋シタイノデア
リマス、第三ト致シマシテ、矢張產業組合
ニ準據致シマシテ、漁業組合ヲ改正ヲシ
テ、所謂漁業組合中央會ノ制度ヲ御設ケニ
ナル御意思ガアルカドウカ、此事ヲ御尋シ
タイノデアリマス、更ニ漁業權ニ關スル事
項トシテ御尋致シタイト存ジマス、漁業權
ノ處分竝ニ其權利ニ關スル處分ノ方針ヲ統
一スルト共ニ、其權利ノ安全ヲ保證スルコ
トガ、是ガ最モ必要ナノデアリマス、政府
ノ所見果シテ如何ナルモノデアリマセウ
カ、ソレカラ御水知ノ通リ、漁業權ノ存續
期間ト云フモノハ、今日マデ二十箇年以內
ト云フコトニナッテ居リマスガ、是デハ餘
リニ此期間ガ少イノデアリマス、ソレ故
ニ政府ニ於カレテハ二十箇年以内ヲ限度
ト致シ、或ハ物ニ依ルト三年五年シカ存續
期限ヲ御許可ニナラヌト云フコトガアルノ
デアリマス、斯ノ如キ短イ期間ニ於キマシ
テハ、斯ウ云フ期間ノ短イモノヲ持シテ居
テ、サウシテ銀行ニ金ヲ貸セトカ、或ハ特
殊銀行ニ金ヲ貸セト言ヒマシテモ、期間ガ
短イモノデアリマスカラ、相手ニシテ吳レ
又、ソレ故ニ前ニ私ガ申シマシタヤウニ、
ドウ致シマシテモ本當ノ金融ノ圓滑ヲ期セ
ントスルニハ、是非共少クトモ三十箇年位
ノ程度ニハ延長シナケレバイカヌト思フノ
デアリマス、政府ノ之ニ對スル御意思ハ如
何デアルカ、サウシテ又更新期間ヲ、矢張
前ト同ジヤウニ繼續免許トシテ、既得權ヲ
極メテ尊重スルト云フ實ヲ擧ゲテ貰ハナケ
レバナラヌト思フ、是デナケレバ迚モ漁村
ノ金融ノ圓滑ト云フコトハ得ラレヌノデア
リマス、此點ニ付キマシテ農林省ノ御所見
ハ如何デアリマセウカ、又第四ト致シマシ
テ、御承知ノ通リニ〓日マデ或ハ政府ノ御
都合ニ依リ、事業ノ性質ニ依リマシテ、折
角得テ居ル所ノ漁業權ノ一部ヲ制限スル
トカ、或ハ之ヲ停止スルトカ、或ハ物ニ依
ルト免許ヲ取消ス、斯ウ云フコトガアルノ
デアリマスルガ、斯ノ如キ場合ニハ御水
知ノ通リニ、陸ニ於ケル農家ハ田畑ヲ以テ
自分ノ財產ト爲シテ居ルト同一ニ、漁業家
ニ於テハ海ヲ以チ此漁業權ヲ以テ唯一ノ
財產ト致シテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ
斯ノ如ク自分ノ財產ト致シテ居ル所ノ漁業
權ヲ、政府ノ御都合デ制限停止、竝ニ免許ヲ
取消スト云フ場合ニ於テ、今日マデ餘リ之
ニ對シテ補償ト云フヤウナ事ガナイノデア
リマスガ、將來政府ニ於カレテハ、斯ノ如
キ場合ニ際シテハ相當ナル補償ノ制度ヲ設
ケラレル御意思ガアルカナイカ、之ヲ御尋
致シテ置キタイト存ジマス
〔政府委員高田転平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=69
-
070・高田耘平
○政府委員(高田耘平君) 只今高草君ノ御
質問ノ漁業法改正ニ付テ、具體的ニ政府ノ
意見ヲ質サレタノデゴザイマス、所ガ此改
正ニ付キマシテハ、目下調査中デゴザイマ
シテ、只今ノ漁業權取消ノ賠償ノ問題、或
ハ又漁業權ノ期間ノ延長ノ問題、其他總テ
ノ問題ハ極メテ漁政上重大ナル問題デゴザ
イマス、故ニ政府ハ現在是ガ爲ニ調査〓究
シツヽアル次第デゴザイマス、以上申上ゲ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=70
-
071・高草美代藏
○高草美代藏君 實ハ私共只今御聽キノ通
リ位十程度ノ御答辯ガアルト豫想致シテ居
リマシテ、餘リ此上多クハ期待致シテ居ナ
カッタノデアリマスガ、私ガ申上ゲマシタ此
事項ハ、何レモ漁業組合ニ取リマシテハ、
又漁村ニ取リマシテハ、又水產上ニ取リマ
シテハ、將來是非共改良ヲ要セナケレバナ
ラヌ重大ナル事項ト存ジマスルカラ、將來
此點ニ付キマシテハ、府政ハ宜シク私ノ意
見ヲ尊重サレテ、斯ノ如キ改正ヲ爲サラン
コトヲ希望致シマシテ、私ハ此質問ヲ打切
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=71
-
072・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ハ松實喜代太君
〔松實喜代太君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=72
-
073・松實喜代太
○松實喜代太君 諸君、私ハ只今御提案ニ
ナッテ居ル所ノ、北海道拓殖銀行法改正
法律案ノ事ノミニ付テ質疑ヲ致シタイト思
フノデアリマス、今般政府ノ提出サレタル
所ノ北海道拓殖銀行法ノ改正案ヲ見マスル
ト、改正ノ要點ハ三項ニナッテ居ルノデア
リマス、卽チ「年賦償還ノ方法ニ依リ又ハ
五箇年以內ニ於テ定期償還ノ方法ニ依リ北
海道又ハ樺太ニ於ケル鐵道財團又ハ軌道財
團ヲ抵當トスル貸付ヲ爲スコトヲ得」ト云
フノト、ソレカラ產業組合ニ貸スト云フノ
ニ加フルニ、重要輸出品工業組合ヲ加ヘテ、
サウシテ改正ヲスルト云フ事ト、其次ニハ
「都市計畫法ニ依リ土地區劃整理ヲ施行ス
ル場合ニ於テ土地區劃整理組合、若ハ其
ノ聯合會ヨリ借用ヲ申出タルトキ又ハ共
同施行者ガ連帶責任ヲ以テ借用ヲ申出タル
トキハ年賦若ハ定期償還ノ方法ニ依リ無
抵當貸付ヲ爲スコトヲ得」、斯ウ云フヤウニ
三項ノ點ニナッテ居ルノデアリマス、此三ツ
ノ改正案ハ、決シテ私ハ異議ヲ申ス者デハ
ナイ、併ナガラ玆ニ私ガ政府ニ向ッテ尋ネ
ナケレバナラヌ事ハ、今回御提案ノ勸業銀
行及農工銀行ニ對シテハ、漁業組合ニ貸付
ノ途ヲ開イタノデアリマスルケレドモ、獨
リ北海道拓殖銀行ニ付テハ其途ガ開カレ
テ居ラヌノデアリマス、是ハ何故デアル
カト云フコトヲ先ヅ御尋シタイノデアリマ
ス、昨年私共ハ同志ノ諸君ト北海道拓殖銀
行資金充實ニ關スル建議案ヲ提出シタノデ
アリマス、其事ハ此問題ニ觸レテ居リマス
カラ、御參考ノ爲ニ玆ニ朗讀致シタイト思
ヒマス、サウシテ私共ガ提案スルト同時ニ
委員會ニ付セラレ、サウシテ滿場一致本會
議ヲ通過シテ居ル案デアリマス、其建議案
ハ餘リ長クナイノデアリマスカラ、朗讀ヲ
許シテ戴キタイト思フノデアリマス、「北海
道拓殖銀行ハ北海道拓殖助成ノ機關トシテ
設立セラレタルモノナルニ拘ラズ其ノ機
能ノ運用ニ於テ動モスレハ本來ノ使命ニ副
ハサルノ博アルハ主トシテ資金吸收ノ途ニ
障礙アルニ由ラスンハアラス之カ打開ノ方
策ハ先ツ以テ日本勸業銀行同樣割增附債券
發行ノ特權ヲ與へ資金ヲ充實シテ」漁業財
團ト云フコトヲ入レタ「漁業財團與鐵道
財圈等各種產業財團ニ資金ヲ供給シ其ノ發
展ヲ圖ラシムルハ最モ切要ナリトス」云々、
斯ウ云フコトノ建議案デアリマス、然ルニ
只今申上ゲタヤウニ、政府ノ御提案ニナッ
テ居ル所ノ此勸業銀行及農工銀行ニハ此
漁業組合ト云フモノガ入レラレテ居リマス
ケレドモ、北海道拓殖銀行ニ對シテハソ
レガ除外サレテ居ルノデアル、是ハ何デア
ルカト云フコトヲ御尋致シタイノデアリマス、
私ガ申上ゲルマデモナク、北海道ハ沿海ノ
距離ハ千三百五十餘里ニ達シテ居ル、サウ
シテ幾ツモノ島嶼ガ其間ニ横クテ居ルノデ
アリマス、所謂世界ノ三大漁場ノ一トシテ
其名ヲ天下ニ稱ヘラレテ居ルノデアリマス
ガ、其今目ノ漁業ノ實際ヲ見ルト、ドウデ
アルカト申シマスルト、可ナリ盛デハアル、
可ナリ盛デ年々盛ニ赴キツヽアルノデアリ
マスガ、先ヅ大正十三年度ノ北海道ノ水產
高ヲ見マスルト、一億一千百七十九万九千
餘圓ノ額ニ達シテ居リマス、斯ノ如ク先程
高草君ノ御詰ニ日本デ水產ノ上リ高ハ四億
何ポアルト申シマシタガ、北海道ハ其三分
ノ一ヲ占メテ居ルノデアリマス、三分ノ一
ヲ占メテ居リマスケレドモ、マダ前途發達
ノ餘地ハ多々アルノデアリマス、併ナガラ
先程モ高草君ノ御話ノヤウニ、漁業ノ發達ヲ
期シ、水產ノ振興ヲ期スル上ニ於テハ種々
ノ方法モアリマセウガ、先ヅ資金ノ供給ノ
途ヲ開クト云フコトガ、最モ必要ナル事項
ノ一デアルト信ジテ居ルノデアリマス、果
シテ然ラバ、此場合ニ於テ、他ノ銀行ニ此
法律改正ニ依ッテ漁業財團ニ貸出ヲ許スノ
ニ拘ラス、北海道拓殖銀行ヲ除外シタノハ
ドウ云フ譯デアル是ハ甚ダ私共ノ合點ノ
參ラヌ點デアリマスカラ、宜シク政府ニ於
テハ詳細ナル御答辯ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、其次ニ私ガ御尋シタイト思フノハ只
今建議案ヲ朗讀致シマシタガ、其建議案ノ
中ニモアルヤウニ、貸出ノ範圍ヲ廣クスル
ト云フコトハ是ハ適當ナル仕事デアリマ
スケレドモ、其前ニ、其前提ト致シマシテ、
資金ヲ豐富ニスルト云フコトガ必要デア
ル、又貸出資金ノ利子ノ低下ヲ圖ルト云フ
コトガ第二ノ必要ナル點デアルノデアリマ
ス、斯樣ナ譯デアリマスカラ、貸出範圍ヲ
擴張スル前ニ、先ヅ以テ資金ヲ豐富ニスル
コト、金利ヲ低下スルト云フコトヲ圖ラナ
ケレバナラスノデアリマスガ、北海道ノ資
金關係ハドウ云フコトニナッテ居ルカト云
フコトヲ私ハ此場合申上ゲテ、政府ノ御參
考ニ供シタイト思フノデアリマス、勿論北
海道ニ於テ拓殖銀行以外ニ於テ資金ガ相當
ニ融通サレテ居ルト云フノナラバ、必シモ
伍殖銀行ノ資金ヲ豐富ニシナケレバナラヌ
ト云フ道理ハ無イノデアリマスルケレド
モ、北海道ニ於テノ金融ノ逼迫シテ居ルト
云フコトハ實ニ甚シイノデアワマス、ソ
レハドウ云フ譯デ北海道ガ金融ガ逼迫シテ
居ルカト云フコトハ勿論新開地トカ、或
ハ拓殖地ノ如キハ無論何時モ金ガ逼迫シ、
或ハ金利ガ高イノデアリマセウガ、北海道
ニハ特有ノ事情ガアルノデアリマス、ソレ
ヲ二三申上ゲテ諸君ノ御參考ニ供シタイノ
デアル、ソレハ先ツ第一ニ、北海道ニハ府
縣ニ在ル所ノ銀行ノ支店、代理店、出張所
ト云フモノガ百十幾ツアルノデアリマス、
サウシテ之ニ預金ヲ致シマスルト云フト、
直ニ其金ハ中央ニ吸收サレルノデアリマ
ス又郵便貯金ヲ致シマスルト、是モ亦直
グ中央ニ吸收サレルノデアリマス、其他國庫
債券ニ應募スル、簡易生命保險ニ掛金ヲス
ルトカ、或ハ其他ノ生命保險、火災保險ト云
フヤウナ保險ニ掛金ヲスル、ソレモ中央ニ
直ニ吸收サレルノデアリマス又其他小サ
イ話ニナリマスガ、赤十字社ノ醵金、或
愛國婦人會ノ醵金、又宗〓團體ニ對スル寄
附金、是等モ少クハナイノデアリマス、是
等ガ年々歲々中央若クハ府縣ノ方ニ金ガ吸
收サレテ居ルノデアリマス、諸君ガ御承知
ノ通リ、北海道ハ津輕海峡ニ依シテ殆ド外國
貿易ト同ジヤウナ關係ヲ持ッテ居ルノデア
リマス、金融モ其通リデアルシ、又物資ノ
移入移出モ外國關係ト同ジヤウナ關係ヲ
持ッテ居ルノデアリマス、今、只今申上ゲマ
シタ此銀行ニ對スル金融ノ一斑ヲ御話申上
ゲテ見タイト思ヒマスルガ、少シク古イ材
料デハアリマスガ、之ニ依ッテ其〓要ヲ知ル
コトガ出來ルト思ヒマス、北海道ニ於ケル
只今申シタ内地府縣ニ在ル銀行ノ出張店、
代理店、支店ト云フヤウナモノト、ソレカ
ラ北海道ニハ北海道ニ本店ヲ有スル銀行ガ
約十バカリアル、其總テノ銀行ニ對スル預
金ガ一億五千二百七十三万五千餘圓ト云フ
金ニナッテ居ルノデアリマス、サウシテ北
海道ニ總テノ銀行ガ貸出ヲシテ居ルノハド
レ位アルカト申シマスト、二億二千四百十
六万一千餘圓貸出ヲシテ居ルノデアリマ
ス、尤モ此貸金ノ中ニ於テ、只今私ガ質問
シツヽアル所ノ拓殖銀行ガ一億三百三十万
圓ト云フモノヲ府縣カラ募債シテ來テ居リ
マスルカラ、此金ヲ差引キマスルト云フト
一億二千八十六万一千餘圓ト云フモノガ、
卽チ先ニ申上ゲタ銀行カラ北海道ノ方ヘ融
通シテ居ル金デアルノデアリマス、サウ致
スト北海道ノ預金ガ一億五千餘万圓、貸出
金ガ一億二千万圓デアリマスルカラ、差引
三千一百八十七万四千一一百三十九圓ト云フ
モノハ、北海道カラ他ノ方へ移出サレ、流
出サレタ形ニナッテ居ルノデアリマス、ソ
レカラ次ニ郵便貯金ノコトモ申上ゲナケレ
バナリマセスガ、郵便貯金ハ、大正十三年
度未ノ郵便貯金ノ總額ハ北海道ニ於テ四千
七百五万七千餘圓ト云フ金額ニナッテ居ル
ノデアル、サウシテ其同年度、卽チ大正十
三年度ニ大藏省ノ預金部カラ所謂低利資金
トシテ貸出シデ居ル金ハ何程アルカト申シ
マスレバ、一千五百六十万七千五百二十五
圓ト云フノデアリマスカラ、差引三千百四
十四万九千六百二十九圓ト云フモノハ、大
藏省預金部ニ取上ゲラレテ居ル形ニナッテ
居ルノデアリマス、簡易生命保險ノ掛金ト
積立金ノ貸付金トハ調ベガ自分ノ手許ニ
無イカラ申上ゲルコトハ出來マセヌガ、是
モ餘程餘計ニ掛金ガナンテ居ルト云フコト
ハ他ノ例ヲ見テモ明白ナル事デアルノデ
アリマス、ンレカラ其他生命保險、火災保
險等ノ掛金ハ全ク北海道ニ於テハ會社ガ
祕密ニシテ居リマスカラ、調ベル方法ハ無
イノデアリマスルケレドモ、是モ蓋シ數千万
圓或ハ事ニ依ッタラ一億圓ヲ突破シテ居
ルノデハナイカト田心フノデアリマス、其他
先ニ申上ゲタヤウニ赤十字社、愛國婦人會
等ノ年醵金、國庫債劵ノ應募額、各宗〓ニ
對スル寄附金等ヲ計算スルナラバ、北海道
カラ中央若クハ府縣ニ持テ行カレル金額
ト云フモノハ、非常ノ額ニ達スルノデアリ
マス、是ニ於テ私ハ更ニ租稅關係ヲ見ナケ
レバナラヌト思フノデアリマス、國庫ガ北
海道カラ收入シテ居ル金ト、又北海道へ支
出シテ居ル金ハ、ドウナッテ居ルカト云フ
コトヲ卽チ見ナケレバナラヌト思フノデア
リマスガ、鐵道省ト陸軍省、文部省ノ關係ヲ
除キマス各省ノ收入ハ、大正十四年度-
是ハ尤モ豫算デアリマスルガ、大正十四年
度デハ四千七十七万八千四百六十五圓ト云
フ金額ニ達シテ居ルガ、ソレニ對シテ只今
申シマシタ所ノ各省ノ、北海道ノ拓殖費モ
含ンデドレダケ北海道ニ支出シテ居ルカト
申セバ、一千八百四十七万一千七百六十六
圓ト云フモノガ、是ハ拓殖費ニ支出シテ居
ル、大藏省デハ百十万一千七百六十六圓、
遞信省デハ九百三十四万百三十九圓農
林商工兩省ヲ合セマシテ九十万百九十五
圓此合計ガ二千九百七十四万三千三百九
十六圓デアリマスカラ、差引國庫へ納マッテ
居ル金ハ、大正十四年度ニ於テ一千百十万
四百九十九圓ト云フモノガ、國庫ニ差引納
マッテ居ルト云フ形ニナッテ居ルノデアリマ
ス、是ハ大正十四年度ノ豫算デアルガ、其
以前ノ事ヲ少シク御話シテ見ナケレバ分ラ
ヌト思フノデアリマス、北海道ニ開拓使ヲ
置イタノハ明治二年デアリマスガ、其明治
二年カラ大正十三年マデノ五十六年間ニ於
テ、北海道ヨリ國庫ガドレダケ金ヲ受取ァ
テ居ルカト申セバ、九億四千二百八十万百
九十八圓ト云フ額デアリマス、サウシテ國
庫カラ北海道ニ支出シテ居ル總額ハ何程ア
ルカト申シマスレバ、九億二千七百五十四
万四千三百八十一圓ト云フ額デアリマスル
カラ、差引千五百二十五万五千八百十七圓
ト云フモノガ、全ク國庫ノ純收益トナッテ
居ルノデアリマス、併シ此支出ノ中ノ九億二千
餘万圓デアリマス、其中ニハ無論開拓使
時代ニ於テ官金ヲ濫費シタトカ云フヤウナ
聲ガ囂々トシテアッタノデアリマスガ、ソ
レ等ノ費用モ含マレテ居ルノデアリマ
ス、之ヲ今日ニ當篏メテ議論スルト云フコ
トハ、少シク無理デアラウト思ヒマスカ
ラシテ、然ラバ近頃ハドウナッテ居ルカ
ト云フコトヲ見マスルト、大正元年ヨリ
大正十三年度ニ至ルマデノ、是ハ決算デ
アリマスガ、十三年間宮內省ト陸軍省ノ
關係ヲ除イタ各省ノ歳入ハ、七億五千七
百六十一万八千六十九圓ト云フ額ニナッ
テ居ルノデアリマス、同年度十三箇年間
ノ歳出ハドウデアリマスルカト云フト、
七億一千六百三十八万七千六百十五圓卽チ
差引四千百二十三万四百五十四圓ト云フモ
ノハ、全ク此年度問ニ於キマシテ國庫ノ純
收入トナッテ居ルノデアリマス、只今申シマ
シタノハ特別會計タル所ノ鐵道省ノ分モ含
ンデ居ルノデアリマスルガ、鐵道ノ建設ガ
目下ノ所ハ可ナリ多イノデアリマスル、之
ヲ計算ニ入レルト云フコトハ少シク無理デ
アラウト思フガ、此鐵道省ノ分ヲ計算カラ
除キマシテ見マスルト云フト、只今申シタ十
三年間ニハ七千八百四十九万三千百二十
六圓ト云フモノガ、全〃國庫ノ收入ニ歸シ
テ居ルノデアリマス、斯ノ如ク見マスルト
云フト、何カラ何マデ總テ北海道カラ中央
ニ絞上ゲラレテ居ルノデアリマス、ソレデ
アリマスルカラ北海道ニ資金ガ缺乏シテ
居ルト云フコトハ當然デアルト思フノデア
リマス、昨年私ハ政府ニ拓殖銀行ノコトニ
關係シテ質問ヲ致シマシタガ、政府ハ斯ウ
云フ答辯ヲ寄越サレタノデアリマス、「現在
北海道拓殖銀行ハ北海道及樺太ノ拓殖資金
ノ供給ヲ目的トシテ長期資金(不動產貸付)
及短期資金(普通銀行業)ノ融通ニ汎ク應シ
ツヽアリテ現行法上其機能ノ發揮ヲ努力セ
ル今日ニ於テハ此上法津ノ改正ヲ必要トセ
サルヘク」云々ト云フ答辯ガ來テ居ルノデ
アリマスガ、私ハ昨年之ニ就テ再質問ヲ致
シタイト思ヒマシタガ、遂ニ議會ガ終了致
シマシテ其機ヲ逸シタノデアリマスルガ、
之ニ依ノテ見マスルト云フト、政府ハ北海道
ノ資金殊ニ特殊銀行タル拓殖銀行ノ資金ハ
十分デアルト云フヤウナ意味ノ御答辯デア
リマスルガ、私ハ決シテ之ニハ承服スルコ
トハ出來ヌノデアリマス、斯樣ナ次第デア
リマスルカラ、北海道ニ於テ資金ノ缺亡ニ
惱ンデ、サウシテ年々歲々拓殖事業ニ對ス
ル資金ノ豐富ナランコトヲ望ミ、併セテ又
其金利ノ低下ヲ望ンデ居ルノハ、恰モ大旱
ニ雲霓ヲ望ンデ居ルヤウナ有樣デアルノデ
アリマス、故ニ民間ノ有志ハ勿論、各政黨、
政派ニ於キマシテモ、常ニ此事ハ政綱ニ揭
ゲテ、大會ノ決議等ニナテ居ルノデアリ
マイ、此點ニ付テハ北海道ノ選出諸君ハ何
人モ異議ノ無イコトデアラウト思フノデア
リマス、ンレカラ銀行ノ金ヲ必要トスル方
面カラ〓究致シテ見タイト思フノデアリマ
スガ、ソレニハ生產總額、移輸出入額、土
地ノ價格、會社ノ資本金等ガドウナッテ居
ルカト云フコトヲ調ベテ見ナケレバナラヌ
ノデアリマス、大正十三年ノ北海道ニ於ケ
ル生產總額ハ五億二千八百四十八万六千三
百五十七圓ニ達シテ居ルノデアリマス、ソ
レカラ同ジク大正十三年度ノ移輸出額ハ何
程デアルカト云フニ、三億四千四百万七百
二十三圓ト云フ額ニ達シテ居リマス、其年
ノ移輸入額ハ何程デアルカト申セバ、三億
一千六百四十九万八千二百四十六圓ト云フ
額ニ達シテ居ルノデアリマスカラ、移出移
人、又ハ輸出輸入ノ總額ヲ合セルト六億六
千四十九万八千九百六十九圓ト云フ巨額ニ
達シテ居ルノデアル、ソレカラ田畑宅地等
ノ總價額ハドウデアルカト申シマスト、是
ハ勸業銀行、拓殖銀行等ノ調査ヲ綜合シテ
考ヘテ見マスルト、矢張五六億ニ逹シテ居
ルト思ハルヽノデアリマス、明カナ數字ハ
アリマセヌガ、各種ノ調査ヲ綜合〓究シテ
見マスルト、其位ノ額ニハ達スルト思フノ
デアリマス、ソレカラ又十三年度末ニ於
テ、北海道ニ本店ヲ有スル會社ガ千八百十
五ノ多キニ達シテ居リマスルガ、其資本總
額ト云フモノガ二億三千八百九十九万五百
九十九圓ト云フ巨額ニ達シテ居ルノデアリ
やっ、斯ノ如ク資金ノ供給ヲ必要トスル方
而ハ巨額ニ達シテ居ルノニモ拘ラズ、北
海道ニ於ケル大正十三年度末ノ貸金ノ殘高
ハ僅ニ二億五千餘万圓デアリマス、是ハ總
テノ銀行ノ貸金ノ殘高デアリマス、拓殖銀、
行ノハ先刻申シタヤウニ、一億圓少シ超シ
テ居ルノデアリマスルガ、總テノ銀行ヲ合
シテモ二億五千餘万圓シカナイ、是ハ借リ
ル必要ガナイカラ借リヌト云フノデハナイ
ノチ、借リル資本ガナイカラソレデ借リ
ナイノデアル、資本ガ潤澤デアレバ從ッテ
事業ハ興ル、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデ
アリマスルガ、先程申上ゲマシタヤウニ、
拓殖銀行ノ今回ノ改正案ニ付テ範圍ヲ擴ダ
ルノハ宜シイガ、範圍ヲ擴ゲル前提トシ
テ、此資金ヲ豐富ニスルト云フコトノ御考
ガ無イカ有ルカト云フコト、先ヅ私ハ無イ
ト思フ前提ニ於テ御尋スルノデアルガ、無
イノデアルカト云フコトヲ御尋シタイノデア
ル、ソコニ於テ唯、左樣ナ抽象的ノ議論ヲ
致シマシテモ、之ニハ承服ノ出來ヌ御方ガ
アラウト思ヒマス、卽チ北海道ノ實情ヲ知
ラヌ御方ハソンナ事ハ無イト言フカモ知
レヌ、ンコデ私ハ北海道デハ斯ノ如ク拓殖
銀行ノ金ヲ要シ、又拓殖事業ノ資金ヲ要ス
ルノデアルト云フコトノ一二ノ例ヲ擧ゲテ
申シテ見タイト思フノデアリマス、拓殖銀
行ガ田畑、宅地等ノ土地ニ對シテ金ヲ貸ス
ノニハ貸付標準ト云フモノガアッテ、ソ
レニ依ルト鑑定價額ノ六割以内ト云フコト
ニナッテ居ル、サウシテ鑑定價額ハ實際ノ相
場卽チ賣買價額ノ七八割デアッテ、其又六
割以内ト云フノデアルカラ、拓殖銀行カラ實
際ニ金ヲ貸スト云フノハ、實際相場ノ土地
ノ價額ノ四五割ニ達シナイ、斯ウ云フノデ
アリマスガ、御承知ノ通リ北海道デハ目下
盛ニ水田事業ヲ起シテ居ルノデアリマス
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
リ著席〕
拓殖銀行ノ調査ニ依フテ見マスト云フト、大
正十四年四月末ノ現在デアリマスルガ、北
海道ニ於ケル所ノ工事中ノ灌漑段別ノ見込
ト云フモノハ十五万三千九百十二町步アル
ノデアリマス、之ニ要スル所ノ工事費ノ〓
算ハ何程デアルカト申セバ、五千百三十二
万六千八百八十圓ト云フ金ヲ要スルノデア
リマス、然ルニ之ニ對シテ所謂大藏省ノ預
金部カラ低利資金トシテ供給ヲ受ケタルモ
ノガ、僅ニ八百一万餘圓ニ過ギナイノデア
リマス、ソレカラ拓殖銀行ヨリ貸出シタル
モノガ一千四百三十二万七千百六十二圓、
合計二千二百三十四万五千四百二十圓ト云
フダケノ資金ノ供給ヲ受ケテ居ッテ、其殘リ
ノ二千八百九十八万千四百六十圓ト云フモ
ノハ、全ク資金ノ供給ヲ得ルコトヲ得ズシ
テ著手ヲシナイ、或ハ著手シテモ工事負
者ニ未拂額デアルト云フヤウナコトニナソ
テ居ルノデアリマス、數字ヲ申上ゲテ甚ダ
恐縮デアリマスガ、銀行ノ事デスカラ數字
ヲ申上ゲヌト能ク分リマスマイカラ、ドウ
ゾ御辛抱ヲ願ヒマス、諸君、私ガ喋々申上
ゲルマデモナク、水田造成ト云フコトハ最
モ我國ノ緊要ナル問題ノ一ツデアルノデア
リマス、卽チ食糧ノ充實ヲ期スルト云フ一
助ニナルノデアリマスガ、斯ル大切ナ工事
ニ對シテモ資金ノ供給ガ出來ナイト云フ有
樣デアルノデアリマス、卽チ如何ニ拓殖銀
行ノ資金ガ不足デアルカト云フコトハ之
ヲ以テ證スルコトガ十分出來ルト思フ、此
樣ナ事業ニ向シテ資金ヲ供給スルノハ、特殊銀
行タル拓殖銀行ノ當然ノ使命、職責デアル
ノデアル、然ルニ私ノ申上ゲタヤウニ、水
田事業ニ對シテ約三千万圓ト云フヤウナ大
キナ金-其資金ノ供給ヲ得ズシテ仕事ニ
著手セヌ、若クハ著手シテモ請負人ニ拂フ
金ガナイト云フヤウナ有樣ニ居ルノデアリ
やく、是ハ北海道ニ資金ノ缺乏シテ居ルト
云フ例證ヲ申上ゲタノデアリマスガ、其次
ニ金利ガ如何ニ高率デアルカト云フコトヲ
申上ゲナケレバナラヌ、何故ナレバ私ノ質
問セントスル所ハ、卽チ金利ノ低下ヲ要求
スルノデ、之ニ對スル政府ノ意見ハ如何デ
アルカト云フコトヲ御尋スルノデアルカ
ラ、卽チ北海道ニ於ケル金利ノ高イト云フ
證據ヲ申上ゲナケレバナラヌノデアリマ
ス、只今此水田造成ノ事ニ付テ御詰ヲ致シ
テ居リマシタカラ、其事ニ付テ實際ヲ申上
ゲテ御參考ニ供シタイト思フノデアリマ
ス、拓殖銀行カラ水田組合ガ借リタ-各
組合デアリマス、一ツノ組合デハアリマセ
ヌガ百幾ツカアル、此組合ガ拓殖銀行カラ
借リタ千四百三十二万七千餘圓ノ中デ、ド
ウ云云風ニナッテ居ルカト云フコトヲ申上
ゲレバ、成程北海道ハ金利ガ高イモノデア
ルト云フコトガ御分リニナルト思ヒマス、
其千四百三十餘万圓ノ中デ償還シタ金ガア
ルノデアリマスルカラ、殘シテ居ル金ガ千三百二
十八万二千四百五十八圓ト云フ金デアリマ
ス、之ニ對シテドウ云フ利率ニナッテ居ル
カト申セバ、利率八分五厘以下ノモノハ僅
ニ二十三万五千五百五十二圓ダケデアルノ
デアリマス、其他ハ皆利率ガ八分五厘以上
デアリマス、唯、左樣申シテモマダ分リマ
スマイト思ヒマスガ(「間エマセヌ」ト呼フ
者アリ)默シテ聽ケバ間エマス、斯ウ云フコ
トハ少シ眞面目ニ御聽キヲ願ヒタイ、只今
此金利ノ事ハ極メテ重要ナ事デアリマスルカ
ラ、極メテ御倦怠ヲ招ク處ガアリマスガ、
御謹聽ヲ願ヒタイノデアリマス(「妨害スル
勿レ」ト呼フ者アリ)北海道ノ拓殖銀行ノ土
功組合ニ貸シテ居ル金ガ、八分五厘以下ノ
モノガ二十七万圓某アッタト申シマシタガ、
其事ノ內譯ハ申上ゲマセヌガ、其以外ニ於
テ北海道ノ拓殖銀行デ貸シテ居ル百八十万
六千餘圓ニ對スル金利ガ年九朱ニナッテ居
ルノデアリマス-九分ニナッテ居ルノデ
アリマス、ソレカラ九分三厘ト云フ高イ利
子ガ九百七十一万九千五百四十九圓ト云フ
額ニ達シテ居リマス、ソレカラ九分五厘ト
云フ高イ金ガ七万八千五百六十圓、是ハ各
年賦償還デアリマスルガ、定期ノ額ニ於テ
又九分五厘ト云フモノガ二万圓、九分八厘
ト云フモノガ百四十一万八千餘圓、サウ云
フ風ニ非常ニ高イノデアリマス、ソレカラ
此銀行カラ借リテ居ル以外ニ、造田費等ニ
付テハ個人カラ借リテ居ル、サウ云フモノ
ハ一割五分モ、二割モ金利ヲ拂シテ居ルノ
デアリマス、農業ノ如キ收益ノ薄イ、寧台
收益ガ無イト云ッテ今日議論ガヤカマシク
ナッテ居ルノデアリマスガ、サウ云フヤウナ
農業ニ對スル企業費ガ、斯ノ如ク高利ナ資
金デハ到底其事業ヲ圓滿ニヤッテ行クコト
ガ出來ヌト云フコトハ當然ノ話デアルノデ
アリマス、ソコデ實ニ悲慘ナ例ガアル、ソ
レハドウ云フコトデアルカト云ヘバ、府縣
ニ於テ低利資金ノ借換ヲ大藏省-大藏省
ハ一寸聽イテ居ッテ下サイ、府縣ニ於テ低利
資金ノ借換ヲ許スノハ八分五厘以上ノモノ
ナラバ、府縣ノ方ニ於テハ低利資金ノ借換
ヲ許スノデアリマスガ、北海道ハ九分五厘
以上ノモノデナケレバ供損換許ヌヌト云フコ
トニナッテ居ル、何故ニ北海道ヲ特別ノ扱ヲ
スルカ、北海道ノ如キ新開地ニ於テ、サウ
シテ水田事業ヲ經營スル、從來百事匆々ノ
時分ニ於テ色ミノ事業資金ヲ費シテ、サウ
シテ今日ニ來ッタノデアリマスガ、若モ政府
ガ北海道ニ對スル同情ガアルナラバ、寧ロ
府縣ヨリハヨリ以下ニ安ク貸出ヲスルノガ
當然デアラウト思フ、サウアラネバナラヌ
ト思フノデアリマス、府縣デハ八朱五厘以
上ノ金ニ對シテ借換ヲ許ス、北海道ハ九朱
五厘以上ノ金デナケレバ低利資金ノ借換ヲ
許サヌ、ンコデ北海道ノ土功組合ガ百八十
五程アリマスガ、其中ノ約四十組合ト云フ
モノハ、年賦債還ヲ爲シ得ザルモノガ澤山金
ガ殘ッテ居ルノデアリマス、ソコデ年々歲
々-今日デモ此處ノ傍聽席ニ在ラレルダ
ラウト思ヒマスガ、年々歳々此北海道ノ土
功組合ノ救濟ヲ訴ヘテ諸君ノ御耳ニ達シテ
居ルダラウト思フノデアリマス、洵ニ熱淚
ヲ注イデ北海道ノ土功組合ノ救濟ヲ訴ヘテ
居ルヤウナ次第デアリマス、是ハ卽チ政府
ガ一面ニ於テ水田ノ造成、卽チ食糧充實ノ
爲ニ水田獎嘞ヲシテ居ル半面ニ於テ、其奬
勵ノ方法ガ甚ダ當ヲ得ナイノデアリマス、
ンコニ歸著シテ居ルノデアリマス、ドウ
云フ譯デアルカト申シマスルト、北海道ニ
ハ-序デアリマスカラ申上ゲマスガ、田
畑ノ開墾助成法ト云フモノガ無イ、府縣ニ
ハアルガ北海道ニハ無イノデアリマスガ、
此水田ニ對スル補助ト云フモノハ府縣ト北
海道ト非常ニ差ガアル、之ヲ能ク諸君ガ御
聽キヲ願ヒタイ、私ノ辯ハ甚ダ拙イケレド
モ、實際ニ於テ此事ハ北海道ノ大問題デア
ルカラ、能ク御聽キヲ願ヒタイノデアリマ
ス、今開墾助成法ニ依ル所ノ府縣ニ於ケル
田畑ノ指令面積ハ、是ハ大正十四年六月末
日ノ農林省ノ調査デアルガ、五万六千五百
六十五町步アルト云フコトデアルガ、之ニ
對シテ政府ガ許可シタ助成金ノ約束額ト
云フモノハ四千二百九十九万五千三百三
十九圓ト云フ額ニ達シテ居ル是ハ只今申
シマシタヤウニ、田畑ヲ分ケルコトガ出來
ヌガ、田畑ヲ突込ンデノ割デアリマスガ、
一段步當リノ補助金ハ約七十五圓ニナッテ
居ルノデアリマス、然ルニ北海道ハドウナッ
テ居ルカト申シマスト云フト、府縣デハ
水田ヲ墾開スルノニ、墾成スルノニ總テノ
費用ニ向ッテ補助ヲ與ヘテ居ルノデアリマ
スケレドモ、北海道ノハ唯、灌漑溝ノ幹線
ダケニ補助ヲ與ヘテ居ル、是モ灌漑溝ノ幹
線ノ工事費ノ四割ヲ補助ヲ與ヘル其幹線
以外ノ支線トカ、分派線、或ハ造田費ト云
フモノニ對シテハ、府縣ノハアルガ北海道
ニハ無イノデアルソコデ四割マデノ補助
デアリマスガ、補助スル總金額ガ尠イノ
ニ、出願者ガ澤山アル爲ニ、實際ニ補助シ
テ居ルノハ工事費ノ約二割强ニシカ過ギナ
イノデアル、大正九年ニ只今申シマシタ土
地開墾規程ト云フモノヲ發布シテ、ソレヲ
實施シテ居ルノデアリマスガ、大正九年以
來十二年マデニ補助ノ指令ヲ出シタモノガ
七万三千二百町步、其七万三千二百町步ニ
對シテ補助ノ總額ハ九百三十三万九千三百
圓デアルノデアリマスカラ、一段當リノ補
助ハ十二圓七十四錢ニ過ギナイノデアリマ
ス、府縣ノハ田畑ヲ突〓込ンデ七十五圓ノ
補助デアル北海道ハ水田ダケデアリマス
ガ、一段步ニ付テ十二圓七十四錢、卽チ府
縣ノ五分ノ一、五分ノ一ニモ達シナイ譯デ
アル、斯ウ云フヤウナコトガアル爲ニ、北
海道ノ水田事業ガ勃興スベクシテ勃興シナ
イ、又著手シテ居ッテモ悲慘ナル狀況ニ
陷ッテ、サウシテ救濟ヲ中央政府或ハ中央
ノ政治家ニ向ッテ哀訴歎願ヲシナケレバ
ナラヌト云フノモ、此ニ在ルノデアル、
面ニ於テハ保護奬勵ヲシテ置イテ、サウシ
テ保護ノ途ニ於テハ甚ダ薄イ、府縣ニ比シ
テカラニ五分ノ一、六分ノ一ニモ達シナイ
ト云フヤウナ補助ヲシテ居ルト云フコト
全ク是ハ政府ノ政策ニ缺陷ガアルト私
ハ信ジテ居ルノデアリマス、低利資金ノ供
給ガ十分デアルナラバ、拓殖銀行ノ問題ハ
餘リ痛切ニ感ジナイノデアリマスケレド
モ、拓殖事業ヲ進メル上ニ於テハ、ドウシ
テモ拓殖銀行ノ資金ヲ豐富ニシナケレバナ
ラヌト云フ必要ガ生ジテ來ルノデアリマス
ガ、拓殖銀行ノ利子ガ高イト云フコトヲ先
程申シマシタケレドモ、是ハ拓殖銀行ノ罪
デハナイ、ソレハ何デアルカト言ヘバ、募
債ニ對スル所ノ利子ガ高イカラデアル、政
府ガ若モ十分ニ此低利資金ヲ供給スルノナ
ラ、バ宜シイガ、其事ハ勿論不可能デアルト
云フノナラバ拓殖銀行ノ資金ヲ豐富ニスル
ト云フコトヲ御計畫ナサラナケレバナラ
ヌ、又同時ニ金利ノ低下ト云フコトヲ圖ラ
ナケレバナラヌノデアリマス、此事ニ付テ
私ハ昨年政府ニ質問シタノデアリマス、拓
殖銀行ニ對シテ割增附債劵ノ發行ヲ許ス意
思ハナイカト云フコトヲ質問致シマシタ所
ガ、先程申シマシタヤウニ、其必要ヲ認
メヌト云フコトデアリマス、ソレナラバ宜
シイ、ソレナラバ宜シイガ、如何ナル方法
ヲ以テ此銀行ノ資金ヲ豐富ニスルノデアル
カ、如何ナル方法ヲ以テ利子ノ低下ヲ圖ラ
レルノデアルカ、斯ウ云フコトヲ御尋シナ
ケレバナラヌノデアル、政府ハ臺灣開發ノ
爲ニ富籤ヲ許シ、又勸業銀行ニ對シテハ割
增債劵、復興公債ニ對シテハ割曾附債劵ヲ
許シテ居ル、又產馬奬勵ノ爲ニ馬劵發行ヲ
許シテ居ル、若モ斯ウ云フヤウニ此割增附
債劵ノ發行ヲ許サナイトカ、或ハ富籤ヲ許
サナイトカ、若クハ馬劵發行ヲ許サナイト
云フヤウデアルノナラバ、是ハ北海道ニ許
セト云フコトハ少シク無理ナ註文カ知リマ
セヌガ、既ニ斯ノ如キモノヲ許シテ居ル以
上ハ、何故ニ北海道ノ拓殖ヲ進ムル上ニ於
テ最モ必要ナル資金ノ豐富、金利ノ低下ト
云フコトニ向ッテ、割增附債劵ノ發行ヲ許
サナイカト云フコトヲ問ハナケレバナラヌ
ノデアリマス(此時發言スル者多シ)モウ段
段終リニナリマスカラモウ少シ御〓聽ヲ願
ヒマス(「急グ必要ナシ」「マダ〓〓大丈夫」
「マダ二時間ヤ三時間ハ大丈夫」ト呼フ者ア
リ)政府ハ大正十六年度カラ拓殖計畫ヲ更
新シテ、北海道ノ拓殖ヲ進メルト云フノデ
アリマスガ、併シ政府ダケガ如何ニ事業ヲ
ヤラウト致シマシテモ、民間ガ之ニ對應シ
テ資金ガ裕カニナリ、事業ガ興ラナケレバ
到底政府ノ目的ヲ達スルコトハ不可能デア
ルノデアリマス、左樣ナ次第デアリマスカ
ラ、先ヅ私ハ此問題ニ對シテ此範圍ヲ擴ゲ
ルノハ宜シイケレドモ、範圍ヲ擴ゲルト同
時ニ、何故ニ漁業財團ニ向ノテ貸出ノ方法
ヲ立テナカッタカ、又拓殖銀行ノ資金ヲ豐富ニ
スルコトノ計畫ヲ立テナイカ、又金利ヲ低
下スルコトノ方法ヲ立テナイカ、斯ウ云フ
コトヲ御尋シタイノデアリマス、此事ハ必
ズシモ大藏大臣デナクトモ宜シイ、大阪ノ
或ル地方ノ如ク武内次官ヲ忌避ハ致シマセ
ヌカラ、武内次官ノ御答辯ヲ仰イデモ宜シ
イ譯デアリマス、ソレカラ終リニ臨ンデ是
ハ大藏大臣ニ聞カナケレバナラヌコトガア
ル敢テ出席ハ要求シナイガ、政府委員力
ラシテドウカ後程デモ宜シイカラ大藏大臣
ニ御傳言ヲ願ヒタイ譯デアリマス、其大藏
大臣ニ御尋シタイコトハ、北海道ノ或ル新
聞ニ斯ウ云フコトガアル「大藏大臣ノ威ヲ
假リ拓殖銀行ヲ壓迫シ」拓殖銀行ニ關係シ
テ居ルコトヲ私ハ言フノデアリマスガ「大
藏大臣ノ威ヲ假リ拓殖銀行ヲ壓迫シ憲政會
代議士」玆ニ名前ハアリマスガ名前ハ申上
ゲヌ「憲政會代議士〇〇〇ト藏相ノ紹介狀
ヲ振廻ハス木村貸付課長靑クナル臭イ幾代
ノ密會」斯ウ云フ見出シデアリマスガ、是
ハ此新聞ヲ朗讀シテモ宜シイガ(「朗讀スベ
シ遠慮ハ要ラヌ」ト呼フ者アリ)御希望トア
レバ讀ムガ、其事柄ノ大體ダケヲ申上ゲマ
ス、其事柄ノ大體ハ恵政會ノ某代議士ガ、
北海道ノ劍淵ト云フ處デ、或ル旭川ノ-
是モ名前ガ戴クテ居リマスガ、〇〇〇〇カ
ラ三百二十町步ノ土地ヲ買受ケタ、サウシ
テ其買受價格ハ十三万圓デアルガ、十万圓
デマア登記ヲ履ンダ、其三万圓ハ普通賣買
ニモアル事ダカラ、ソレハ多ク議論ヲシナ
イガ、其土地デ十六万圓ノ金ヲ貸シテ吳レ
ト云フコトヲ銀行ニ申込ンダ、其紹介ガ〇〇発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=73
-
074・〇代議士ノ國方ノ大藏大臣-濱口大藏
○〇代議士ノ國方ノ大藏大臣-濱口大藏 大臣ノ肩書ハナカッタデセウガ、濱口大藏大
臣ガ紹介ヲシテ、サウシテ銀行ニ持込ンダ、
斯ウ云フ事柄デアルノデアリマス、所ガ先
程私ガ申シマシタヤウニ、拓殖銀行ニハ貸
付標準ト云フモノガアリマスカラ、ソレハ
約貸付鑑定價格ノ六割以內ト云フコトニ
ナッテ居ル、其上カラ申シマスルト、此十六
万圓ヲ借リルト云フコトニナリマスレバ、
其土地ガ少クトモ二十八万圓位ノ價格ヲ
持ノテ居ラナケレバナラヌ、然ルニ買受ケタ
價格ハ何程デアルカト云ヘバ、十三万圓デ
アルト云フコトデアリマス、サウ云フ大藏
大臣ガ紹介シテ、其事實ハ無論大藏大臣ハ知
ルマイカ知ラヌガ、此〇〇〇〇ニ紹介狀ヲ
ヤッタ、此拓殖銀行ニ紹介狀ヲ書イタカドウ
カト云フコトヲ先ヅ伺ヒタイ、事實ガナケ
レバ是ハ議論ニナラヌガ、若シ事實デアレ
バ所謂綱紀肅正ヲ標榜スル現內閣ノ大藏
大臣トシテ如何ナルモノデアラウカ、此點
ヲ明ニスル必要ガアラウト思フ(「新聞ヲ讀
ミ給へ」ト呼フ者アリ)ソレデハ新聞ヲ少シ
ヤリマスカナ(拍手)「玆ニ憲政會所屬代議
士ニ」(「新聞ノ名前ヲ言へ」ト呼ヒ其他發言
スル者多シ)能ク聽イテ下サイ(「新聞ノ名
前ヲ言ヘ」ト呼フ者アリ)名前ハ言ヒマセヌ
ガ-「代議士ニ〇〇〇○ト云フ男ガ居ル、
彼ハ高知縣ノ選出デアル筈、大藏大臣濱口
雄幸モ亦高知縣選出代議士ダ、彼等ハ單ニ
〓國ヲ同ジクスルト云フバカリデナク、大
藏大臣濱口雄幸ハ〇〇〇〇ノ先輩デアル、
〇〇ガ先輩ガ後輩ヲ推挽シ、後援スルト云
フコトハ世間有勝チナ事トシテ一笑ニ付
スレバソレデ足ルノデアルガ、事苟モ銀行
ノ規定ヲ破リ、私人ニ便スルノ行爲ニ至リテ
ハ斷ジテ其非違ヲ有耶無耶ノ中ニ葬リ去ル
譯ニ行カヌ、而モ一方ニ於テハ北海道拓殖
銀行ノ貸出ヲ見ルニ、多數農業家ニ向シテ
ハ、徒ニ規則ヲ墨守シテ寬假シナイニ至ッテ
ハ本紙ノ筆劍ハ勢ヒ銳利ナラザラントス
ルモ能ハズ、昨年ノ中頃ト聞ク、一介ノ代
議士〇〇〇〇ハ濱口大藏大臣ノ添書ヲ携ヘ
札幌ニ舞込ンダ云々」ンレカラ極ク必要デ
ナイ所ハ少シ省キマセウ「代議士ノ某ハ決
シテ怖クナイ、然レドモ蔭辨慶ノ濱口ガ怖
イノダ、イヤ、濱口雄幸ト云フ一私人ガ怖
イノデナク、大藏大臣ノ肩書ガ怖イノダ、
若シ濱口ガ平代議士ニ止マルナラバ、如何
ニ憲政會ノチヤキ〓〓デモ、彼ノ勢力ハ拓
殖銀行ヲ威壓シ能ハヌハ勿論デアル、唯こ
大藏大臣タルガ故ニ速效ガアルノダ」此所
ニ「猫イラズ」ト云フ言葉ガアリマスガ、是
ハ省キマス「濱口ノ肩書ノ威ニ打タレ、手
シビレテシマフ、所謂蛇ニ睨マレタ蛙デア
ル、猫ニ睨マレタ鼠デアル、固ヨリ紹介狀
ニハ大藏大臣ノ官職ハ利用シナカッタデア
ラウ、併シ紹介サレタ側ニナルト個人ノ濱
ロデモ大藏大臣-銀行監督ノ地位ニ在ル
大藏大臣濱口雄幸ヲ直覺スル、此直覺ヲ與
へ、恐怖ノ念ヲ抱カシムル所ガ巧妙ノ策戰
デアル」斯ウ云フノデアル「恐喝トハ相手方
ニ恐怖ノ念ヲ起サシムレパソレデ十分ダサ
ウダ、拓殖銀行ガ大藏大臣ノ肩書ヲ有スル
濱口雄幸ノ紹介狀ニ喜ンダカ恐レタカハ推
測ノ限リデナイ、若シ萬一恐怖ノ念ヲ起シ
タリトセバ、ソレハ卽チ世ニ所謂恐喝ニ當
箝マル譯ダ、想フニ拓殖銀行ハ待テテママ
シタト喜ンダデアラウ、喜バナケレバ將來ニ
於ケル身ノ運命ノ程ガ氣遣ハレルノダ、是
等ノ問題ハ棄措イテ、偖事ノ起リヲ敍述ス
ルナラバ、〇〇代議士ガ本件ヲ持出シタ節
ハ頭取加藤敬三郞ハ不在デ、行務ハ取締
役ガ處理サレタ時分ト聞及ブ、問題ノ種トモ
云フベキハ上川ハ劍淵ノ土地三百二十町步ニ
付テデアル、此土地ハ旭川市ノ」此所ニ名
前ガアリマスガ是ハ讀ミマセヌ(「朗讀スベ
シ」ト呼フ者アリ)「旭川市ノ○○○ノ所有
地デアッタガ、之ヲ十三万圓デ買受ケタガ、
之ヲ士別登記役場デ賣買登記ノ價額ハ確カ
十万圓デアル、サスレバ三万圓ノ登記料ヲ
胡魔化シタ譯ニナル、登記料ノ胡魔化シハ
普通賣買ニ行ハレル慣用手段ダ、敢テ珍シ
イ事實デナイ、登記料踏倒シ位ハ大目ニ見
テ置クトシテ、之ヲ擔保トシテ拓銀カラ十
六万圓借入ノ交涉ヲ開イタ、此交涉ノ進行
中○○代議士ト拓殖銀行貸付課長木村ト
ハ屢〓〓代ニ會飮シタ、密會ト云ヘバ語
弊ガアルヤウダカラ會飮ト訂正スル方ガ穩
當ダ、密會ダカラ迂散臭イ、會飮ダカラ一
寸ノ臭ヒモシナイトハ言ハレナイ、公明正
大ノ酒宴ナラバ何人デモ疑義ヲ挾ムニ至ラ
ナイ、相互ニ出シ合ノ馳走デアッテモ無ク
テモ、其處マデハ調査ノ步ヲ進メナクトモ
宜シイ」ソレカラ此所ヲ少シ略シマス「不正
行爲ガ紅燈影暗キ親展室ニ策戰サレルト云
フコトヲ常ニ心外ニ思テ居ルマデダ、免
モ角〇〇代議士ノ交涉ハ成功シタ、記者ハ
敢テ祕密運動ニ依リテ成功シタリトハ言ハ
又、註文通リニ十六万圓ハ借受ケラレタノ
デアル、ソレ相當ノ價値アルモノニ向ッテ
相當ノ貸出ヲ爲スハ、銀行トシテハ當然ノ
役目ヲ果シタノデアルカラ、外間ノ批評ハ
一切無用デアルガ、此貸出ハ果シテ拓殖銀
行ノ貸付規定ニ準據シテ居ルヤ否ヤヲ〓究
スルニ及ンデ、端ナクモ疑義ヲ挾マネバナ
ラナクナルノデアル」中ヲ略シテ成ベク進
行ヲ圖リマス「拓殖ノ不動產ニ對スル貸付
標凖ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=74
-
075・副議長(小泉又次郞君)
○副議長(小泉又次郞君) 松實君-注意
ヲシマスガ、質問ノ要點ヲ御通べナサイ(發
言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=75
-
076・松實喜代太
○松實喜代太君(續) モウ少シデス「拓殖
ノ不動產ニ對スル貸付標準ハ鑑定價格ノ六
掛ケト云フノデアル、恐ラク是ハ拓殖ノ傳
統的貸付標準十謂ッテ宜カラウ、一般ノ貸付
ハ凡テ此標準ニ依レルモノデ、一口ニ解シ
易ク言フト此規程ハ一種ノ鬼門除ケト觀ラ
レル、〓シ强者ニ向ッテハ鬼門除ケニチラ
ナイ」云々、ソレカラ此所ヲ少シ略シマス
「何入モ拓殖資金ノ用達會社トハ聞イテ呆
レザルヲ得マイ、若シ六掛以内ノ貸村標準ガ
眞ナリトセバ〇〇代議士ガ借リ出シタト云
フ十六万圓ハ、果シテ建テタ標準通リニナツ
テ居ルカ、卽チ一定ノ標準ナルモノガ勵行セ
ラレテ居ルカデアル、六掛ノ標準カラ推ス
ト、十六万圓ハ鑑定偵額ノ一一十六万七千圓
ト云フ物件ニナラネバナラヌ、然ルニ鑑定
價格ハ高ク積シテ十八万圓ト云フノダ、果シ
テ然ラバ規定ノ六掛ニ貸付スルモノトスレ
バ、十万八千圓ガ關ノ山デアル、然ルニ十六
万圓ノ貸付ヲ得タリトスレバ、拓銀ノ標準
ナルモノハ當ニシテ當ニナラヌコトニナ
ル」モウ少シデス「一定不動ノ標準ハ眞赤
ナ虛偽デ風ノ吹廻ハシ如何ニヨリテハ二
定ニモ三定ニモ動搖スル、想フニ十八万圓
ノ評價ハ鑑定ノ間違ヒデアラウ」斯ウ云フ
ノダ、マア是デ酪シマセウ、餘リ諸君ニ御
氣ヲ毒ダ(「合理的ニヤレ」ト呼フ者アリ)合
理的ニヤッテ居ル積リデスガ、脫線シテ居リ
マスカ、是ハ拓殖銀行ニ關スルコトデアル
カラ序ニ-濱口サンハヨモヤサウ云フコ
トハナイカト思ヒマス、併シ假令小サイ新
聞ニシロ、殊ニ北海道ニ於ケル此地元ノ新
聞ニ現レタ以上ハ、此事件ハ明ニシテ置イ
夕方ガ、所謂人格ノ高潔ナリト世間カラ目
サレテ居ル濱口大臣ニ向ッテ、却テ宜イダ
ラウト思フ、私ハ寧口深切ニ御尋シタト思
フ、決シテ憲政會ノ諸君ヲ罵倒シタリ、或
ハ大臣ヲ攻撃スル材料ニシタリスルノデハ
ナイ、此釋明ナリ或ハ辯解ノ餘地ヲ與ヘル
ト云フコトハ、諸君ナリ、大臣ナリ、吾輩
ニ向シテ感謝スル必要ガアルト思フ、餘リ長
クナルカラ是デ·
〔政府委員武內作平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=76
-
077・武内作平
○政府委員(武內作平君) 只今松實君ガ御
擧ゲニナリマシタル數字竝ニ比較、或ル事
實等ニ付キマシテハ相當御考違セモアルヤ
ウデアリマスガ、併シ大體ニ於キマシテ北
海道ノ金融ガ他ニ比シテ圓滿テナイ、資金
ノ需要ガ多イ、或ハ資金ガ內地ノ方ヘ移動
ヲスルコトガ多イト云フ風ナ事實ハ北海道
ニアルコトデアリマス、併ナガラ此所デ長
ク御違ニナリマシタヤウナ事納ヲ繰合シテ
中シマスト、北海道ノ拓殖大計畫ト申シマ
スカ、金融大策トモ申スベキヤウナコトデ
アリマシテ、此法案トハ直接ノ關係ガ無イ
ノデアリマスカラシテ、或ル適當ナル機會
ニ於キマシテ、又政府ノ所見ヲ中上ゲルコ
トニ致シタイト思フ、尙ホ必要ガアリマス
ルナラバ、委員會デ或ル部分ニ付キマシテ
ハ御答ヲ致シテモ宜シイト思フノデアリマ
ス唯一.此改正案ヲ提出スル前ニ-此改
正案ヲ提出スル前ニ、資金ヲ豐富ニスル必
要ガアルデハナイカ、斯ウ云フ御質問デア
リマシタガ、今回ノ改正ニ依ッテ要スルダ
ケノ資金ハ、現在ク拓殖銀行ニ於テ十分備)
テ居ルト思フメデアリマス、拓殖銀行債劵ニ
於キマシテモ、マダ之ヲ募集スルノ餘裕ガ
アルノデアリマスカラシテ、今回改正ヲシ
テ金融ノ途ヲ開イタカラト云シテ、ンレガ
爲ニ拓殖銀行ガ非當ニ資金ニ窮スルト云フ
ヤウナ狀態ニハナラナイノデアリマス、又
拓殖銀行ノ利子ヲ引下ゲシムルコトガ改正
ヨリモ先決問題デハナイカト云フ御話モ
アッタノデアリマスルケレドモ、金利ノ如
キモノハ政府ト雖モ其力ヲ以テ高クシタリ、
安クシタリスルト云フコトハ出來ナイノデ
アリマシテ、經濟上ノ色〓ノ原則ヤ、種
種ノ關係ニ依シテ決マルノデアリマスカラ
シテ是ハ金利ガ成ベク安クナルコドヲ希
望ハ致シマスルケレドモ、斯ウ云フ方法ヲ
以テ之ヲ安クシヤウト云フ方策ハ只今ニ
於テハ無イノデアリマス、最初ニ御尋ニナ
リマシタ漁業組合へ手形ノ割引、當座貸越
ヲ何故ンナイノデアルカ、是ハ此法案ニ最
モ適切ナル關係ノアル御質問デアリマスル
ガ、是ハ法案自體ヲ御賣ヲ願ヒマスナラバ、
直グニ明瞭〓スノデアリマス、勸業銀行、
農工銀行ニ於キマシテハ、當座貸越トカ、
手引割引トカト云フモノガ當然ノ業務トシ
テナイノデアリマスガ、北海追拓殖銀行ニ
於キマシテハ手形ノ割引、當座ノ貸越ト
云フコトハ當然出來ルノデアリマスルカ
ラ、態々法文デ之ヲ改正シナクトモ、拓殖
銀行ニ於テモ御命望ノ通リ手形ノ割引、當屋
ノ貸越ハ出來ルノデアリマス、左樣御承如
ヲ頗ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=77
-
078・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ニ對スル質疑ハ此程度
ニ於テ終局セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=78
-
079・小泉又次郎
○制議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
賛成ノ方ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=79
-
080・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郎君) 多數デアリマ
ス仍テ質疑ハ終局致シマシタ、日程第六、
右各案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議
題ト致シマス
〓
第六右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=80
-
081・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=81
-
082・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=82
-
083・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程
第七及第八ハ關聯セル議案ナルニ依リ、
括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=83
-
084・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ日程第七、民事訴訟法中改正
法律案、日程第八、民事訴訟法中改正法律
施行法案ノ第一讀會ヲ開キ、政府ノ趣旨辯
明ヲ許シマス、司法大臣江木翼君
第七民事訴訟法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
民事訴訟法中改正法律案
(小字及-ハ貴族院修正)
民事訴訟法中左ノ通改正ス
民事訴訟法目錄第一編乃至第五編ヲ左ノ
如ク改ム
第一編總則
第一章裁判所
第一節管轄
第二節裁判所職員ノ除斥、忌避
及回避
第二章當事者
第一節當事者能力及訴訟能力
第二節共同訴訟
第三節訴訟參加
第四節訴訟代理人及輔佐入
第三章訴訟費用
第一節訴訟費用ノ負擔
第二節訴訟費用ヲ擔保
第三節訴訟上ノ救助
第四章訴訟手續
第-節口頭辯論
第二節期日及期間
第三節送達
第四節裁判
第五節訴訟手續ノ中斷及中止
第二編第一審ノ訴訟手續
第一章地方裁判所ノ訴訟手續
第一節訴
第二節辯論ノ準備
第三節證據
第一款總則
第二款證人訊問
第三款鑑定
第四款書證
第五款檢證
第六款當事者訊問
第七款證據保全
第二章區裁判所ノ訴訟手續
第三編上訴
第一章控訴
第二章上告
第三章抗告
第四編再審
第五編督促手續
民事訴訟法第一編乃至第五編ヲ左ノ如ク
改ム
第一編總則
第一章裁判所
第一節管轄
第一條訴ハ被告ノ普通裁判籍所在地ノ
裁判所ノ管轄ニ屬ス
第二條人ノ普通裁判籍ハ住所ニ依リテ
定ル
日本ニ住所ナキトキ又ハ住所ノ知レサ
ルトキハ普通裁判籍ハ居所ニ依リ、居
所ナキトキ又ハ居所ノ知レサルトキハ
最後ノ住所ニ依リテ定ル
第三條大使、公使其ノ他外國ニ在リテ
治外法權ヲ享クル日本人カ前條ノ規定
ニ依リ普通裁判籍ヲ有セサルトキハ其
ノ者ノ普通栽判籍ハ東京市ニ在ルモノ
トス
第四條法人其ノ他ノ社〓又ハ財團ノ普
通栽判籍ハ其ノ主タル事務所又ハ營業
所ニ依リ、事務所又ハ營業所ナキトキ
ハ主タル業務擔當者ノ住所ニ依リテ定
ル
國ノ普通裁判籍ハ訴訟ニ付國ヲ代表ス
ル官廳ノ所在地ニ依リテ定ル
第一項ノ規定ハ外國ノ社團又ハ財團ノ
普通裁判籍ニ付テハ日本ニ於ケル事務
所營業所又ハ業務擔當者ニ之ヲ適用
ス
第五條財產權上ノ訴ハ義務履行地ノ裁
判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第六條寄留者ニ對スル財產權上ノ訴ハ
寄留地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ
得
第七條軍人、軍屬又ハ船員ニ對スル財
產權上ノ訴ハ軍事用ノ廳舍ノ所在地又
ハ艦船ノ本籍若ハ船籍ノ所在地ノ栽判
所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第八條日本ニ住所ナキ者又ハ住所ノ
知レサル者ニ對スル財產權上ノ訴ハ請
求若ハ其ノ擔保ノ目的又ハ差押フルコ
トヲ得ヘキ被告ノ財產ノ所在地ノ栽判
所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第九條事務所又ハ營業所ヲ有スル者ニ
對スル訴ハ其ノ事務所又ハ營業所ニ於
ケル業務ニ關スルモノニ限リ其ノ所在
地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十條船舶又ハ航海ニ關シ船舶所有者
其ノ他船舶ノ利用ヲ爲ス者ニ對スル訴
ハ船籍ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起ス
ルコトヲ得
第十一條船舶債權其ノ他船舶ヲ以テ擔
保スル債權ニ基ク訴ハ船舶ノ所在地ノ
裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十二條會社其ノ他ノ社團ヨリ社員ニ
對スル訴又ハ社員ヨリ社員ニ對スル訴
ハ社員タル資格ニ基クモノニ限リ會社
其ノ他ノ社團ノ普通恭判籍所在地ノ栽
判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ規定ハ社團又ハ財團ヨリ役員ニ
對スル訴及會社ヨリ發起人又ハ檢査役
ニ對スル訴ニ之ヲ準用ス
第十三條會社其ノ他ノ社團ノ債權者ヨ
リ社員ニ對スル訴ハ社員タル資格ニ基
クモノニ限リ前條ノ裁判所ニ之ヲ提起
スルコトヲ得
第十四條第十二條及前條ノ規定ハ社
圖、財團、社員又ハ社團ノ債權者ヨリ
社員、役員、發起人又ハ檢査役タリシ者
ニ對スル訴及社員タリシ者ヨリ社員ニ
對スル訴ニ之ヲ準用ス
第十五條不法行爲ニ關スル訴ハ其ノ行
爲アリタル地ノ栽判所ニ之ヲ提起スル
コトヲ得
○其ノ他海上ノ事故
船舶ノ衝突。ニ基ク損害賠償ノ訴ハ損害
ヲ受ケタル船舶カ最初ニ到達シタル地
ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十六條海難救助ニ關スル訴ハ救助ア
リタル地又ハ救助セラレタル船舶カ最
初ニ到達シタル地ノ栽判所ニ之ヲ提起
スルコトヲ得
第十七條不動產ニ關スル訴ハ不動產所
在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十八條登記又ハ登錄ニ關スル訴ハ登
記又ハ登錄ヲ爲スヘキ地ノ栽判所ニ之
ヲ提起スルコトヲ得
第十九條相續權ニ關スル訴又ハ遺留分若
ハ遺贈其ノ他死亡ニ因リテ效力ヲ生ス
ヘキ行爲ニ關スル訴ハ相續開始ノ時ニ
於ケル被相續人ノ普通裁判籍所在地ノ
裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第二十條相續債權其ノ他相續財產ノ負
擔ニ關スル訴ニシテ前條ノ規定ニ該當
セサルモノハ相續財產ノ全部又ハ部
カ前條ノ裁判所ノ管轄區域内ニ在ルト
キニ限リ其ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコ
トヲ得
第二十一條一ノ訴ヲ以テ數個ノ請求ヲ
爲ス場合ニ於テハ第一條乃至前條ノ規
定ニ依リ一ノ請求ニ付管轄權ヲ有スル
裁判所ニ其ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
第二十二條裁判所構成法ニ依リ管轄カ
訴訟ノ目的ノ價額ニ依リテ定ルトキハ
其ノ價額ハ訴ヲ以テ主張スル利益ニ依
リテ之ヲ算定ス
前項ノ價額ヲ算定スルコト能ハサルト
キハ其ノ價額ハ千圓ヲ超過スルモノト
看做ス
第二十三條一ノ訴ヲ以テ數個ノ請求ヲ
爲ストキハ其ノ價額ヲ合算ス
果實、損害賠償、違約金又ハ費用ノ請
求カ訴訟ノ附帶ノ目的ナルトキハ其ノ
價額ハ之ヲ訴訟ノ目的ノ價額ニ算入
セス
第二十四條左ノ場合ニ於テハ關係アル
裁判所ニ共通スル直近上級裁判所ハ申
立ニ因リ決定ヲ以テ管轄裁判所ヲ定ム
管轄栽判所及救判所構成法第十三
條第二項ノ規定ニ依リテ之ニ代ルヘ
キ裁判所カ法律上又ハ事實上裁判權
ヲ行フコト能ハサルトキ
二裁判所ノ管轄區域明確ナラサル爲
管轄栽判所カ定ラサルトキ
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツル
コトヲ得ス
第二十五條當事者ハ第一審ニ限リ合意
ニ依リ管轄裁判所ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ合意ハ一定ノ法律關係ニ基ク訴
ニ關シ且書面ヲ以テ之ヲ爲スニ非サレ
ハ其ノ效ナシ
第二十六條被告カ第一審救判所ニ於テ
管轄違ノ抗辯ヲ提出セスシテ本案ニ付
辯論ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ
爲シタルトキハ其ノ裁判所ハ管轄權ヲ
有ス
第二十七條第一條、第五條乃至第二十
候第二十五條及前條ノ規定ハ訴ニ
付專屬管轄ノ定アル場合ニハ之ヲ適用
セス
第二十八條栽判所ハ管轄ニ關スル事項
ニ付職權ヲ以テ證據調ヲ爲スコトヲ得
第二十九條裁判所ノ管轄ハ起訴ノ時ヲ
標準トシテ之ヲ定ム
第三十條裁判所ハ訴訟ノ全部又ハ一部
カ其ノ管轄ニ屬セスト認ムルトキハ決
定ヲ以テ之ヲ管轄裁判所ニ移送ス
第三十一條裁判所ハ其ノ管轄ニ屬スル
訴訟ニ付著キ損害又ハ遲滯ヲ避クル爲
必要アリト認ムルトキハ其ノ專屬管轄
ニ屬スルモノヲ除クノ外申立ニ因リ決
定ヲ以テ訴訟ノ全部又ハ一部ヲ他ノ管
轄裁判所ニ移送スルコトヲ得
第三十二條移送ノ裁判ハ移送ヲ受ケタ
ル裁判所ヲ覊東ス
移送ヲ受ケタル裁判所ハ更ニ事件ヲ他
ノ裁判所ニ移送スルコトヲ得ス
第三十三條移送ノ裁判ニ對シテハ卽時
抗告ヲ爲スコトヲ得
移送ノ中立ヲ却下シタル裁判ニ對シテ
ハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三十四條移送ノ裁判確定シタルトキ
ハ訴訟ハ初ヨリ移送ヲ受ケタル裁判所
ニ繫屬シタルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テハ移送ノ裁判ヲ爲シ
タル裁判所ノ書記ハ其ノ栽判ノ正本ヲ
訴訟記錄ニ添附シ移送ヲ受ケタル裁判
所ノ書記ニ之ヲ送付スルコトヲ要ス
第二節裁判所職員ノ除斥、
忌避及回避
第三十五條判事ハ左ノ場合ニ於テハ法
律上其ノ職務ノ執行ヨリ除斥セラル
ー判事又ハ其ノ妻若ハ妻タリシ者カ
事件ノ當事者ナルトキ又ハ事件ニ付
當事者ト共同權利者、共同義務者若
ハ償還義務者タル關係ヲ有スルトキ
二判事カ當事者ノ四親等內ノ血族若
ハ三親等內ノ姻族ナルトキ又ハナリ
シトキ
〇、後見監督人、
三判事力當事者ノ後見人○又ハ同居ノ
保佐人
戶主若ハ家族ナルトキ
四判事カ事件ニ付證人又ハ鑑定人ト
爲リタルトキ
五判事カ事件ニ付當事者ノ代理人又
ハ輔佐人ナルトキ又ハナリシトキ
六判事カ事件ニ付仲裁判斷ニ關與シ
又ハ不服ヲ中立テラレタル前審ノ裁
判ニ關與シタルトキ但シ他ノ裁判所
ノ囑託ニ因リ受託判事トシテ其ノ職
務ヲ行フコトヲ妨ケス
第三十六條除斤ノ原因アルトキハ裁判
所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ除斤ノ
裁判ヲ爲ス
第三十七條判事ニ付裁判ノ公正ヲ妨ク
ヘキ事情アルトキハ當事者ハ之ヲ忌避
スルコトヲ得
當事者カ判事ノ面前ニ於テ辯論ヲ爲シ
又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シタルト
キハ其ノ判事ヲ忌避スルコトヲ得ス但
シ忌避ノ原因カ其ノ後ニ生シ又ハ當事
者カ其ノ原因アルコトヲ知ラサリシト
キハ此ノ限ニ在ラス
第三十八條第三十六條又ハ前條ニ規定
スル申立ハ其ノ原因ヲ開示シテ判事所
屬ノ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
除斥又ハ忌避ノ原因ハ申立ヲ爲シタル
日ヨリ三日內ニ之ヲ疏明スルコトヲ要
ス前條第二項但書ノ事實亦同シ
第三十九條合議栽判所ノ判事ノ除斥又
ハ忌避ニ付テハ其ノ裁判所、區裁判所
ノ判事ノ除斥又ハ忌避ニ付テハ其ノ裁
判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所決
定ヲ以テ裁判ヲ爲ス
第四十條判事ハ其ノ除斥又ハ忌避ニ付
裁判ニ關與スルコトヲ得ス但シ意見ヲ
述フルコトヲ得
第四十一條除斥又ハ忌避ヲ理由アリト
スル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコト
ヲ得ス之ヲ理由ナシトスル決定ニ對シ
テハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四十二條除斥又ハ忌避ノ申立アリタ
ルトキハ其ノ申立ニ付テノ裁判ノ確定
ニ至ル迄訴訟手續ヲ停止スルコトヲ要
ス但シ急速ヲ要スル行爲ニ付テハ此ノ
限ニ在ラス
第四十三條第三十五條及第三十七條第
一項ノ場合ニ於テハ判事ハ監督權アル
判事ノ許可ヲ得テ回避スルコトヲ得
第四十四條本節ノ規定ハ裁判所書記ニ
之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ裁判ハ書
記所屬ノ裁判所之ヲ爲ス
第二章當事者
第一節當事者能力及訴訟能
カ
第四十五條當事者能力、訴訟能力及訴
訟無能力者ノ法定代理ハ本法ニ別段ノ
定アル場合ヲ除クノ外民法其ノ他ノ法
令ニ從フ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授
權亦同シ
第四十六條法人ニ非サル社團又ハ財團
ニシテ代表者又ハ管理人ノ定アルモノ
ハ其ノ名ニ於テ訴へ又ハ訴ヘラルルコ
トヲ得
第四十七條共同ノ利益ヲ有スル多數者
ニシテ前條ノ規定ニ該當セサルモノハ
其ノ中ヨリ總員ノ爲ニ原告若ハ被告ト
爲ルヘキ一人若ハ數人ヲ選定シ又ハ之
ヲ變更スルコトヲ得
訴訟ノ繫屬ノ後前項ノ規定ニ依リテ原
告又ハ被告ト爲ルヘキ者ヲ定メタルト
キハ他ノ當事者ハ當然訴訟ヨリ脫退ス
第四十八條前條ノ規定ニ依リテ選定セ
ラレタル當事者中死亡其ノ他ノ事由ニ
因リ其ノ資格ヲ喪失シタル者アルトキ
ハ他ノ當事者ニ於テ總員ノ爲ニ訴訟行
爲ヲ爲スコトヲ得
第四十九條未成年者及禁治產者ハ法定
代理人ニ依リテノミ訴訟行爲ヲ爲スコ
トヲ得但シ未成年者カ獨立シテ法律行
爲ヲ爲スコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在
ラス
第五十條準禁治產者、妻又ハ法定代理
人カ相手方ノ提起シタル訴又ハ上訴ニ
付訴訟行爲ヲ爲スニハ保佐人ノ同意、
夫ノ許可又ハ親族會ノ同意其ノ他ノ授
權ヲ要セス
準禁治產者、妻又ハ法定代理人カ訴、控
訴若ハ上告ノ取下、和解、請求ノ抛棄
若ハ認諾又ハ第七十二條ノ規定ニ依ル
脫退ヲ爲スニハ常ニ特別ノ授權アルコ
トヲ要ス
第五十一條外國人ハ其ノ本國法ニ依レ
ハ訴訟能力ヲ有セサルトキト雖日本ノ
法律ニ依レハ訴訟能力ヲ有スヘキトキ
ハ之ヲ訴訟能力者ト看做ス
第五十二條法定代理權又ハ訴訟行爲ヲ
爲スニ必要ナル授權ハ書面ヲ以テ之ヲ
證スルコトヲ要ス
第四十七條ノ規定ニ依ル當事者ノ選定
及變更亦同シ
前項ノ書面ハ訴訟記錄ニ之ヲ添附スル
コトヲ要ス
第五十三條訴訟能力、法定代理權又ハ
訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ノ欠缺
アルトキハ裁判所ハ期間ヲ定メテ其ノ
補正ヲ命シ若遲滯ノ爲損害ヲ生スル虞
アルトキハ一時訴訟行爲ヲ爲サシムル
コトヲ得
第五十四條訴訟能力、法定代理權又ハ
訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ノ欠缺
アル者カ爲シタル訴訟行爲ハ其ノ欠缺
ナキニ至リタル當事者又ハ法定代理人
ノ追認ニ因リ行爲ノ時ニ遡リテ其ノ效
力ヲ生ス
第五十五條第五十三條及前條ノ規定ハ
第四-七條ノ規定ニ依ル當事者カ訴訟
行爲ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第五十六條法定代理人ナキ場合又ハ法
定代理人カ代理催ヲ行フコト能ハサ
ル場合ニ於テ未成年者又ハ禁治產者ニ
對シ訴訟行爲ヲ爲サムトスル者ハ〓滯
ノ爲損害ヲ受クル虞アルコトヲ疏明シ
テ受訴裁判所ノ裁判長ニ特別代理人ノ
選任ヲ申請スルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ特別代理人ヲ改任
スルコトヲ得
特別代理人カ訴訟行爲ヲ爲スニハ後
見人ト同一ノ授權アルコトヲ要ス
特別代理人ノ選任及改任ノ命令ハ特別
代理人ニモ之ヲ送達スルコトヲ要ス
第五十七條法定代理權ノ消滅ハ本人又
ハ代理人ヨリ之ヲ相手方ニ通知スルニ
非サレハ其ノ效ナシ但シ相手方カ其ノ
事實ヲ知リタルドキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依ル
當事者ノ變更ニ之ヲ準用ス
第五十八條本法中法定代理及法定代理
人ニ關スル規定ハ法人ノ代表者及法人ニ
非スシテ其ノ名ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラ
ルルコトヲ得ル社團又ハ財團ノ代表者
又ハ管理人ニ之ヲ準用ス
第二節共同訴訟
第五十九條訴訟ノ目的タル權利又ハ義
務カ數人ニ付共通ナルトキ又ハ同一ノ
事實上及法律上ノ原因ニ基クトキハ其
ノ數人ハ共同訴訟人トシテ訴ヘ又ハ訴
ヘラルルコトヲ得訴訟ノ目的タル權利
又ハ義務カ同種ニシテ事實上及法律上
同種ノ原因ニ基クトキ亦同シ
第六十條他人間ノ訴訟ノ目的ノ全部又
ハ一部ヲ自己ノ爲ニ請求スル者ハ其ノ
訴訟ノ繫屬中當事者雙方ヲ共同被告ト
シ第一審ノ受訴裁判所ニ訴ヲ提起スル
コトヲ得
第六十一條共同訴訟人ノ一人ノ訴訟行
爲又ハ之ニ對スル相手方ノ訴訟行爲及
其ノ一人ニ付生シタル事項ハ他ノ共同
訴訟人ニ影〓ヲ及ホサス
第六十二條訴訟ノ目的カ共同訴訟人ノ
全員ニ付合一ニノミ確定スヘキ場合ニ
於テハ其ノ一人ノ訴訟行爲ハ全員ノ利
益ニ於テノミ其ノ效力ヲ生ス
共同訴訟人ノ一人ニ對スル相手方ノ訴
訟行爲ハ全員ニ對シテ其ノ效力ヲ生ス
共同訴訟人ノ一人ニ付訴訟手續ノ中斷
又ハ中止ノ原因アルトキハ其ノ中斷又
ハ中止ハ全員ニ付其ノ效力ヲ生ス
第六十三條第五十條第一項ノ規定ハ前
條第一項ノ場合ニ於テ共同訴訟人ノ一
人カ提起シタル上訴ニ付他ノ共同訴訟
人ノ爲スヘキ訴訟行爲ニ之ヲ準用ス
第三節訴訟參加
第六十四條訴訟ノ結果ニ付利害關係ヲ
有スル第三者ハ其ノ訴訟ノ繫屬中當事
者ノ一方ヲ補助スル爲訴訟ニ參加スル
コトヲ得
第六十五條參加ノ申出ハ參加ノ趣旨及
理由ヲ具シ參加ニ依リテ訴訟行爲ヲ爲
スヘキ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
書面ニ依リテ參加ノ申出ヲ爲シタル場
合ニ於テハ其ノ書面ハ之ヲ當事者雙方
ニ送達スルコトヲ要ス
參加ノ申出ハ參加人トシテ爲シ得ル訴
訟行爲ト共ニ之ヲ爲スコトヲ得
第六十六條當事者カ參加ニ付異議ヲ述
ヘタルトキハ參加ノ理由ハ之ヲ疏明ス
ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ裁判所
ハ參加ノ許否ニ付決定ヲ以テ裁判ヲ爲
ス
前項ノ裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲ス
コトヲ得
第六十七條當事者カ參加ニ付異議ヲ述
ヘスシテ辯論ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於
テ申述ヲ爲シタルトキハ異議ヲ述フル
權利ヲ失フ
第六十八條參加人ハ參加ニ付異議アル
場合ニ於テモ參加ヲ許ササル裁判確定
セサル間ハ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得
參加人ノ訴訟行爲ハ當事者カ之ヲ援用
シタルトキハ參加ヲ許ササル裁判確定
シタル場合ニ於テモ其ノ效力ヲ有ス
第六十九條參加人ハ訴訟ニ付攻撃又ハ
防禦ノ方法ノ提出、異議ノ申立、上訴
ノ提起其ノ他一切ノ訴訟行爲ヲ爲スコ
トヲ得但シ參加ノ時ニ於ケル訴訟ノ程
度ニ從ヒ爲スコトヲ得サルモノハ此ノ
限ニ在ラス
參加人ノ訴訟行爲カ被參加人ノ訴訟行
爲ト牴觸スルトキハ其ノ效力ヲ有セス
第七十條前條ノ規定ニ依リテ參加人カ
訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得ス又ハ其ノ訴
訟行爲カ效力ヲ有セサリシ場合、被參
加人カ參加人ノ訴訟行爲ヲ妨ケタル場
合及被參加人カ參加人ノ爲スコト能ハ
サル訴訟行爲ヲ故意又ハ過失ニ因リテ
爲ササリシ場合ヲ除クノ外裁判ハ參加
人ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第七十一條訴訟ノ結果ニ因リテ權利ヲ
害セラルヘキコトヲ主張スル第三者又
ハ訴訟ノ目的ノ全部若ハ一部カ自己ノ
權利ナルコトヲ主張スル第三者ハ當事
者トシテ訴訟ニ參加スルコトヲ得此ノ
場合ニ於テハ第六十二條及第六十五條
ノ規定ヲ準用ス
第七十二條前條ノ規定ニ依リ自己ノ權
利ヲ主張スル爲訴訟ニ參加シタル者ア
ル場合ニ於テハ參加前ノ原告又ハ被告
ハ相手方ノ承諾ヲ得テ訴訟ヨリ脫退ス
ルコトヲ得但シ判決ハ脫退シタル當事
者ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第七十三條訴訟ノ繫屬中其ノ訴訟ノ目
的タル權利ノ全部又ハ一部ヲ讓受ケタ
ルコトヲ主張シ第七十一條ノ規定ニ依
リテ訴訟參加ヲ爲シタルトキハ其ノ參
加ハ訴訟ノ繫屬ノ初ニ遡リテ時效ノ中
斷又ハ法律上ノ期間遵守ノ效力ヲ生ス
第七十四條訴訟ノ繫屬中第三者カ其ノ
訴訟ノ目的タル債務ヲ承繼シタルトキ
ハ裁判所ハ當事者ノ申立ニ因リ其ノ第
三者ヲシテ訴訟ヲ引受ケシムルコトヲ
得
栽判所ハ前項ノ規定ニ依リテ決定ヲ爲
ス前當事者及第三者ヲ審訊スルコトヲ
要ス
第七十二條ノ規定中脫退及判決ノ效力
ニ關スルモノハ第一項ノ規定ニ依リテ
訴訟ノ引受アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第七十五條訴訟ノ目的カ當事者ノ一方
及第三者ニ付合一ニノミ確定スヘキ場
合ニ於テハ其ノ第三者ハ共同訴訟人ト
シテ訴訟ニ參加スルコトヲ得此ノ場合
ニ於テハ第六十五條ノ規定ヲ準用ス
第七十六條當事者ハ訴訟ノ繫屬中參加
ヲ爲スコトヲ得ル第三者ニ其ノ訴訟ノ
告知ヲ爲スコトヲ得
訴訟告知ヲ受ケタル者ハ更ニ訴訟告知
ヲ爲スコトヲ得
第七十七條訴訟告知ハ理由及訴訟ノ程
度ヲ記載シタル書面ヲ裁判所ニ提出シ
テ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ相手方ニモ之ヲ送達スル
コトヲ要ス
第七十八條訴訟告知ヲ受ケタル者カ參
加セサリシ場合ニ於テモ第七十條ノ規
定ノ適用ニ付テハ參加スルコトヲ得ヘ
カリシ時ニ參加シタルモノト看做ス
第四節訴訟代理人及輔佐人
第七十九條法令ニ依リテ裁判上ノ行爲
ヲ爲スコトヲ得ル代理人ノ外辯護士ニ
非サレハ訴訟代理人タルコトヲ得ス但
シ區裁判所ニ於テハ許可ヲ得テ辯護士
ニ非サル者ヲ訴訟代理人ト爲スコトヲ
得
前項ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコ
トヲ得
第八十條訴訟代理人ノ權限ハ書面ヲ以
テ之ヲ證スルコトヲ要ス
前項ノ書面カ私文書ナルトキハ裁判所
ハ當該吏員ノ認證ヲ受クヘキ旨ヲ訴訟
代理人ニ命スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ當事者カ口頭ヲ以テ訴
訟代理人ヲ選任シ裁判所書記カ調書ニ
其ノ陳述ヲ記載シタル場合ニハ之ヲ適
用セス
第八十一條訴訟代理人ハ委任ヲ受ケタ
ル事件ニ付反訴、參加、强制執行、假
差押及假處分ニ關スル訴訟行爲モ亦之
ヲ爲スコトヲ得
左ニ揭クル事項ニ付テハ特別ノ委任ヲ
受クルコトヲ要ス
-反訴ノ提起
二訴ノ取下、和解、請求ノ抛棄若ハ
認諾又ハ第七十二條ノ規定ニ依ル脫
退
三控訴、上告又ハ其ノ取下
四代理人ノ選任
訴訟代理權ハ之ヲ制限スルコトヲ得ス
但シ辯護士ニ非サル訴訟代理人ニ付テ
ハ此ノ限ニ在ラス
三
第八十二條數人ノ訴訟代理人アルトキ
ハ各自當事者ヲ代理ス
當事者カ前項ノ規定ニ異ル定ヲ爲スモ
其ノ效力ヲ生セス
二
第八十三條第八十一條及前條ノ規定
ハ法令ニ依リテ裁判上ノ行爲ヲ爲スコ
トヲ得ル代理人ノ權限ヲ妨ケス
第八十四條訴訟代理人ノ事實上ノ陳述
ハ當事者カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正シ
タルトキハ其ノ效力ヲ生セス
第八十五條訴訟代理權ハ當事者ノ死亡
若ハ訴訟能力ノ喪失、當事者タル法人
ノ合併ニ因ル消滅、當事者タル受託者
ノ信託ノ任務終了又ハ法定代理人ノ死
亡、訴訟能力ノ喪失若ハ代理權ノ消滅、
變更ニ因リテ消滅セス
第八十六條一定ノ資格ヲ有スル者ニシ
テ自己ノ名ヲ以テ他人ノ爲訴訟ノ當事
者タルモノノ訴訟代理人ノ代理權ハ當
事者ノ資格ノ喪失ニ因リテ消滅セス
前項ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依リ
テ選定セラレタル當事者カ其ノ資格ヲ
喪失シタル場合ニ之ヲ準用ス
第八十七條第五十二條第二項、第五十
三條、第五十四條及第五十七條ノ規定
ハ訴訟代理ニ之ヲ準用ス
第八十八條當事者又ハ訴訟代理人ハ栽
判所ノ許可ヲ得テ輔佐人ト共ニ出頭ス
ルコトヲ得此ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ
取消スコトヲ得
輔佐人ノ陳述ハ當事者又ハ訴訟代理人
カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサルトキ
ハ自ラ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第三章訴訟費用
第一節訴訟費用ノ負擔
第八十九條訴訟費用ハ敗訴ノ當事者ノ
負擔トス
第九十條裁判所ハ事情ニ從ヒ勝訴ノ當
事者ヲシテ其ノ権利ノ仲張若ハ防禦ニ
必要ナラサル行爲ニ因リテ生シタル訴
訟費用又ハ訴訟ノ程度ニ於テ相手方ノ
権利ノ仲張若ハ防禦ニ必要ナリシ行爲
ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ全部又ハ
一部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十一條當事者カ適當ノ時期ニ攻撃
若ハ防禦ノ方法ヲ提出セサル爲又ハ期
日若ハ期間ノ懈怠其ノ他當事者ノ責ニ
歸スヘキ事由ニ因リ訴訟ヲ運滞セシメ
タルトキハ裁判所ハ之ヲシテ其ノ勝訴
ノ場合ニ於テモ遲滯ニ因リテ生シタル
訴訟費用ノ全部又ハ一部ヲ負擔セシム
ルコトヲ得
第九十二條一部敗訴ノ場合ニ於テ各當
事者ノ負擔スヘキ訴訟費用ハ裁判所ノ
意見ヲ以テ之ヲ定ム但シ車情ニ從ヒ當
事者ノ一方ヲシテ訴訟費用ノ全部ヲ負
擔セシムルコトヲ得
第九十三條共同訴訟人ハ平等ノ割合ヲ
以テ訴訟費用ヲ負擔ス但シ裁判所ハ事
情ニ從ヒ共同訴訟人ヲシテ連帶シテ訴
訟費用ヲ負擔セシメ又ハ他ノ方法ニ依
リ之ヲ負擔セシムルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ拘ラス權利ノ伸
張又ハ防禦ニ必要ナラサル行爲ヲ爲シ
タル當事者ヲシテ其ノ行爲ニ因リテ生
シタル費用ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十四條第八十九條乃至前條ノ規定
ハ當事者カ參加ニ付異議ヲ述ヘタル場
合ニ於テハ其ノ異議ニ因リテ生シタル
訴訟費用ノ參加人ト〓(議ヲ述ヘタル當
事者トノ間ニ於ケル色擔ニ聞シ之ヲ準
用ス參加ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ
參加人ト相手方トノ間に於ケル負擔ニ
付亦同シ
第九十五條裁判所ハ事件ヲ完結スル裁
判ニ於テ職權ヲ以テ其ノ審級ニ於ケル
訴訟費用ノ全部ニ付栽判ヲ爲スコトヲ
要ス但シ事情ニ從ヒ事件ノ一部又ハ中
間ノ爭ニ關スル栽判ニ於テ其ノ費用ノ
裁判ヲ爲スコトヲ得
第九十六條上級裁判所カ本案ノ裁判ヲ
變更スル場合ニ於テハ訴訟ノ總費用ニ
付裁判ヲ爲スコトヲ要ス事件ノ差戾又
ハ移送ヲ受ケタル裁判所カ其ノ事件ヲ
完結スル裁判ヲ爲ス場合亦同シ
第九十七條當事者カ裁判所ニ於テ和解
ヲ爲シタル場合ニ於テ和解ノ費用及訴
訟費用ノ負擔ニ付別段ノ定ヲ爲ササル
トキハ其ノ費用ハ各自之ヲ負擔ス
第九十八條法定代理人、訴訟代理人、
裁判所書記又ハ執達吏カ故意又ハ重大
ナル過失ニ因リテ無益ナル費用ヲ生セ
シメタルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因
リ又ハ職權ヲ以テ此等ノ者ニ對シ其ノ
費用額ノ償還ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ハ法定代理人又ハ訴訟代理
人トシテ訴訟行爲ヲ爲シタル者カ其ノ
代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル
授權アルコトヲ證明スルコト能ハス又
ハ追認ヲ得サリシ場合ニ於テ其ノ訴訟
行爲ニ因リテ生シタル訴訟費用ニ之ヲ
準用ス
前二項ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲
スコトヲ得
第九十九條裁判所カ前條第二項ノ場合
ニ於テ訴ヲ却下シタルトキハ訴訟費用
ハ代理人トシテ訴訟行爲ヲ爲シタル者
ノ負擔トス
第百條裁判所カ訴訟費用ノ負擔ヲ定ム
ル栽判ニ於テ其ノ額ヲ定メサルトキハ
第一審ノ受訴裁判所ハ其ノ裁判カ執行
力ヲ生シタル後申立ニ因リ決定ヲ以テ
之ヲ定ム
訴訟費用額ノ確定ヲ求ムル申立ヲ爲ス
ニハ費用計算書及其ノ膽本竝費用額ノ立
疏明ニ必要ナル書面ヲ提出スルコトヲ
要ス
第一項ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲
スコトヲ得
第百一條裁判所ハ訴訟費用額ヲ定ムル
決定ヲ爲ス前相手方ニ費用計算書ノ謄
本ヲ交付シ陳述ヲ爲スヘキ旨並一定ノ
期間內ニ費用計算書及費用額ノ疏明ニ
必要ナル書面ヲ提出スヘ·キ旨ヲ催告ス
ルコトヲ要ス
相手方カ期間內ニ前項ノ書面ヲ提出セ
サルトキハ裁判所ハ申立人ノ費用ノミ
ニ付裁判ヲ爲スコトヲ得但シ相手方ノ
費用額ノ確定ヲ求ムル申立ヲ妨ケス
第百二條裁判所カ訴訟費用額ヲ定ムル
裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ前條第二項ノ
場合ヲ除クノ外各當事者ノ負擔スヘキ
費用ハ其ノ對當額ニ付相殺アリタルモ
ノト看做ス
第百三條第九十七條ノ場合ニ於テ當事
者カ訴訟費用ノ負擔ヲ定メ其ノ額ヲ定
メサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定
ヲ以テ其ノ額ヲ定ムルコトヲ要ス此ノ
場合ニ於テハ第百條第一一項第三項、第
百一條及前條ノ規定ヲ準用ス
第百四條前條ノ場合ヲ除クノ外訴訟カ
栽判ニ因ラスシテ完結シタルトキハ裁
判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ訴訟費用
ノ額ヲ定メ且其ノ負擔ヲ命スルコトヲ
要ス參加又ハ之ニ付テ異議ノ取下アリ
タルトキ亦同シ
第八十九條乃至第九十四條、第百條第
二項第三項、第百一條及第百二條ノ規
定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百五條裁判所ハ裁判所書記ヲシテ訴
訟費用額ノ計算ヲ爲サシムルコトヲ得
第百六條費用ヲ要スル行爲ニ付テハ裁
判所ハ當事者ヲシテ其ノ費用ヲ豫納セ
シムルコトヲ得
當事者カ裁判所ノ命ニ從ヒ費用ヲ豫納
セサルトキハ裁判所ハ前項ノ行爲ヲ爲
ササルコトヲ得
第二節訴訟費用ノ擔保
第百七條原告カ日本ニ住所、事務所及
營業所ヲ有セサルトキハ裁判所ハ被
告ノ申立ニ因リ訴訟費用ノ擔保ヲ供ス
ヘキコトヲ原告ニ命スルコトヲ要ス擔
保ニ不足ヲ生シタルトキ亦同シ
前項ノ規定ハ請求ノ一部ニ付爭ナキ場
合ニ於テ其ノ額カ擔保ニ十分ナルトキ
ハ之ヲ適用セス
第百八條擔保ヲ供スヘキ事由アル
コトヲ知リタル後被告カ本案ニ付〓論
ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シ
タルトキハ擔保ノ申立ヲ爲スコトヲ得
ス
第百九條擔保ノ申立ヲ爲シタル被告ハ
原告カ擔保ヲ供スル迄應訴ヲ拒ムコト
ヲ得
第百十條裁判所ハ擔保ヲ供スヘキコト
ヲ命スル決定ニ於テ擔保額及擔保ヲ供
スヘキ期間ヲ定ムルコトヲ要ス
擔保額ハ被告カ各審ニ於テ支出スヘキ
費用ノ總額ヲ標準トシテ之ヲ定ム
第百十一條擔保ノ申立ニ關スル裁判ニ
對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第百十二條擔保ヲ供スルニハ金錢又ハ
裁判所カ相當ト認ムル有價證劵ヲ供託
スルコトヲ要ス但シ當事者カ別段ノ契
約ヲ爲シタルトキハ其ノ契約ニ依ル
第百十三條被告ハ訴訟費用ニ付前條ノ
規定ニ依リテ供託シタル金錢又ハ有價
證劵ノ上ニ質權者ト同一ノ權利ヲ有ス
第百十四條原告カ擔保ヲ供スヘキ期間
內ニ之ヲ供セサルトキハ裁判所ハ口頭
辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下ス
ルコトヲ得但シ判決前擔保ヲ供シタル
トキハ此ノ限ニ在ラス
第百十五條擔保ヲ供シタル者カ擔保ノ
事由止ミタルコトヲ證明シタルトキハ
裁判所ハ申立ニ因リ擔保取消ノ決定ヲ
爲スコトヲ要ス
擔保ヲ供シタル者カ擔保取消ニ付擔保
權利者ノ同意ヲ得タルコトヲ證明シタ
ルトキ亦前項ニ同シ
訴訟ノ完結後裁判所カ擔保ヲ供シタル
者ノ申立ニ因リ擔保權利者ニ對シ一定
ノ期間內ニ其ノ權利ヲ行使スヘキ旨ヲ
催告シ擔保權利者カ其ノ行使ヲ爲ササ
ルトキハ擔保取消ニ付擔保權利者ノ同
意アリタルモノト看做ス
第一項及第二項ノ規定ニ依ル決定ニ對
シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第百十六條栽判所ハ擔保ヲ供シタル者
ノ申立ニ因リ決定ヲ以テ供託シタル擔
保物ノ變換ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ハ供託シタル擔保ヲ契約ニ
因リテ他ノ擔保ニ變換スルコトヲ妨ケ
ス
第百十七條第百九條、第百十條第一項
及第百十一條乃至前條ノ規定ハ他ノ法
令ニ依リテ訴ノ提起ニ付供スヘキ擔保
ニ之ヲ準用ス
第三節訴訟上ノ救助
第百十八條訴訟費用ヲ支拂フ資力ナキ
者ニ對シテハ裁判所ハ申立ニ因リ訴訟
上ノ救助ヲ與フルコトヲ得但シ勝訴ノ
見込ナキニ非サルトキニ限ル
第百十九條訴訟上ノ救助ハ各審ニ於テ
之ヲ與フ
救助ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百二十條訴訟上ノ救助ハ訴訟及强制
執行ニ付左ノ效力ヲ生ス
-裁判費用ノ支拂ノ猶豫
二執達吏及裁判所ニ於テ附添ヲ命シ
タル辯護士ノ報酬及立替金ノ支拂ノ
猶豫
三訴訟費用ノ擔保ノ免除
第百二十一條訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケ
タル者ノ爲ニノミ其ノ效力ヲ有ス
裁判所ハ訴訟ノ承繼人ニ對シ猶豫シタ
ル費用ノ支拂ヲ命ス
第百二十二條訴訟上ノ救助ヲ受ケタル
者カ訴訟費用ノ支拂ヲ爲ス資力ヲ有ス
ルコト判明シ又ハ之ヲ有スルニ至リタル
トキハ訴訟記錄ノ存スル栽判所ハ利害
關係人ノ中立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ何
時ニテモ救助ヲ取消シ猶豫シタル訴訟
費用ノ支拂ヲ命スルコトヲ得
第百二十三條訴訟上ノ救助ヲ受ケタル
者ニ支拂ヲ猶豫シタル費用ハ其ノ負擔
ヲ命セラレタル相手方ヨリ直接ニ之ヲ
取立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テ辯護
士又ハ執達吏ハ訴訟上ノ救助ヲ受ケタ
ル者ノ有スル債務名義ニ依リ報酬及立
替金ニ付費用額ヲ定ムル申立及强制執
行ヲ爲スコトヲ得
辯護士又ハ執達吏ハ報酬及立替金ニ付
當事者ニ代リ第百三條又ハ第百四條ノ
裁判ヲ求ムル申立ヲ爲スコトヲ得
第百二十四條本節ニ現定スル裁判ニ對
シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四章訴訟手續
一節口頭辯論
第百二十五條當事者ハ訴訟ニ付栽判所
ニ於テ口頭辯論ヲ爲スコトヲ要ス但シ
決定ヲ以テ完結スヘキ事件ニ付テハ裁
判所口頭辯論ヲ爲スへキカ否ヲ定ム
前項但書ノ規定ニ依リテロ頭辯論ヲ爲
ササル場合ニ於テハ裁判所ハ當事者ヲ
審訊スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ニ
ハ之ヲ適用セス
第百二十六條口頭辯論ハ裁判長之ヲ指
揮ス
裁判長ハ發言ヲ許シ又ハ其ノ命ニ從ハ
サル者ニ發言ヲ禁スルコトヲ得
第百二十七條裁判長ハ訴訟關係ヲ明瞭
ナラシムル爲事實上及法律上ノ事項ニ
關シ當事者ニ對シテ問ヲ發シ又ハ立證
ヲ促スコトヲ得
陪席判事ハ裁判長ニ告ケテ前項ニ規定
スル處置ヲ爲スコトヲ得
當事者ハ裁判長ニ對シ必要ナル發問ヲ
求ムルコトヲ得
第百二十八條裁判長ハ前條ノ規定ニ依
リテ當事者ヲシテ釋明セシムヘキ事項
ヲ指示シ口頭辯論期日前準備ヲ爲スヘ
キコトヲ命スルコトヲ得
第百二十九條當事者カ辯論ノ指揮ニ關
スル裁判長ノ命又ハ第百二十七條若ハ
前條ノ規定ニ依ル裁判長若ハ陪席判事
ノ處置ニ對シ異議ヲ述へタルトキハ裁
判所決定ヲ以テ其ノ異議ニ付裁判ヲ爲
ス
第百三十條受命判事ヲシテ其ノ職務ヲ
行ハシムヘキ場合ニ於テハ裁判長其ノ
判事ヲ指定ス
裁判所ノ爲ス囑託ハ別段ノ規定アル場
合ヲ除クノ外栽判長之ヲ爲ス
第百三十一條裁判所ハ訴訟關係ヲ明瞭
ナラシムル爲左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
當事者本人又ハ其ノ法定代理人ノ
出頭ヲ命スルコト
二訴訟書類又ハ訴訟ニ於テ引用シタ
ル支書其ノ他ノ物件ニシテ當事者ノ
所持スルモノヲ提出セシムルコト
三當事者又ハ第三者ノ提出シタル文
書其ノ他ノ物件ヲ裁判所ニ留置クコ
ト
四檢證ヲ爲シ又ハ鑑定ヲ命スルコト
五必要ナル調査ヲ囑託スルコト
前項ニ規定スル儉證、鑑定及調査ノ囑
託ニ付テハ證據調ニ關スル規定ヲ準用
ス
第百三十二條裁判所ハ口頭辯論ノ制
限分離若ハ併合ヲ命シ又ハ其ノ命ヲ
取消スコトヲ得
第百三十三條裁判所ハ終結シタル口頭
辯論ノ再開ヲ命スルコトヲ得
第百三十四條辯論ニ與ル者カ日本語ニ
通セサルトキ又ハ聾若ハ啞ナルトキハ
通事ヲ立會ハシム但シ聾者又ハ啞者ニ
ハ文字ヲ以テ問ヒ又ハ陳述ヲ爲サシム
ルコトヲ得
鑑定人ニ關スル規定ハ通事ニ之ヲ準用
ス
第百三十五條裁判所ハ訴訟關係ヲ明瞭
ナラシムル爲必要ナル陳述ヲ爲スコト
能ハサル當事者、代理人又ハ輔佐人ノ
陳述ヲ禁シ辯論續行ノ爲新期日ヲ定ム
ルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ陳述ヲ禁シタル場
合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ裁判
所ハ辯護士ノ附添ヲ命スルコトヲ得
訴訟代理人ノ陳述ヲ禁シ又ハ辯護士ノ
附添ヲ命シタルトキハ本人ニ其ノ旨ヲ
通知スルコトヲ要ス
第百三十六條裁判所ハ訴訟ノ如何ナル
程度ニ在ルヲ問ハス和解ヲ試ミ又ハ受
命判事若ハ受託判事ヲシテ之ヲ試ミシ
ムルコトヲ得
裁判所又ハ受命判事若ハ受託判事ハ和
解ノ爲當事者本人又ハ其ノ法定代理人
ノ出頭ヲ命スルコトヲ得
第百三十七條攻撃又ハ防禦ノ方法ハ別
段ノ規定アル場合ヲ除クノ外口頭辯論
ノ終結ニ至ル迄之ヲ提出スルコトヲ得
第百三十八條原告又ハ被告力最初ニ爲
スヘキ口頭辯論ノ期日ニ出頭セス又ハ
出頭スルモ本案ノ辯論ヲ爲ササルトキ
ハ其ノ者ノ提出シタル訴狀、答辯書其
ノ他ノ準備書面ニ記載シタル事項ハ之
ヲ陳述シタルモノト看做シ出頭シタル
相手方ニ辯論ヲ命スルコトヲ得
第百三十九條當事者カ故意又ハ重大ナ
ル過失ニ因リ時機ニ後レテ提出シタル
攻擊又ハ防禦ノ方法ハ之カ爲訴訟ノ完
結ヲ遲延セシムヘキモノト認メタルト
キハ裁判所ハ決定ヲ以テ之ヲ却下スル
コトヲ得
攻撃又ハ防禦ノ方法ニシテ其ノ趣旨明
瞭ナラサルモノニ付當事者カ必要ナル
釋明ヲ爲サス又ハ釋明ヲ爲スヘキ期日
ニ出頭セサルトキ亦前項ニ同シ
第百四十條當事者カ口頭辯論ニ於テ相
手方ノ主張シタル事實ヲ明ニ爭ハサル
トキハ其ノ事實ヲ自白シタルモノト看
做ス但シ辯論ノ全趣旨ニ依リ其ノ事實
ヲ爭ヒタルモノト認ムへキ場合ハ此ノ
限ニ在ラス
相手方ノ主張シタル事實ヲ知ラサル旨
ノ陳述ヲ爲シタル者ハ其ノ事實ヲ爭ヒ
タルモノト推定ス
第百四十一條當事者カ訴訟手續ニ關ス
ル規定ノ違背ヲ知リ又ハ之ヲ知ルコト
ヲ得ヘカリシ場合ニ於テ遲滯ナク異議
ヲ述ヘサルトキハ之ヲ述フル權利ヲ失
フ但シ抛棄スルコトヲ得サルモノハ此
ノ限ニ在ラス
第百四十二條口頭辯論ニ付テハ裁判所
書記期日每ニ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第百四十三條調書ニハ左ノ事項ヲ記載
シ裁判長及裁判所書記之ニ署名捺印シ
栽判長支障アルトキハ陪席判事其ノ席
次ニ從ヒ順次之ニ代リテ署名捺印シ且
其ノ事由ヲ記載スルコトヲ要ス但シ判
事皆支障アルトキハ吉記其ノ旨ヲ記載
スルヲ以テ足ル
-事件ノ表示
二判事及裁判所書記ノ氏名
三立會ヒタル檢事ノ氏名
四出頭シタル當事者、代理人、輔佐
人及通事竝閣席シタル當事者ノ氏名
五辯論ノ場所及年月日
六短論ヲ公開シタルコト又ハ公開セ
サル場合ニ於テハ具ノ埋由
第百四十四條調書ニハ〓論ノ要領ヲ記
載シ殊ニ左ノ事項ヲ明確ニスルコト
ヲ要ス
-和解、認諾、抛棄、取下及自白
二證人、鑑定人ノ宣誓及陳述
三檢證ノ結果
四書面ニ作ラサル裁判
五裁判ノ言渡
第百四十五條調書ニハ書面、寫眞其ノ
他裁判所ニ於テ適當ト認ムルモノヲ引
用シ訴訟記錄ニ添附シテ之ヲ調書ノ一
部ト爲スコトヲ得
第百四十六條調書ノ記載ハ申立ニ因リ
法廷ニ於テ關係人ニ之ヲ讀聞カセ又ハ
閱覽セシメ且調書ニ其ノ旨ヲ記載スル
コトヲ要ス
調書ノ記載ニ付關係人カ異議ヲ述ヘタ
ルトキハ調書ニ其ノ趣旨ヲ記載スルコ
トヲ要ス
第百四十七條口頭辯論ノ方式ニ關スル
規定ノ遵守ハ調書ニ依リテノミ之ヲ證
スルコトヲ得但シ調書カ滅失シタルト
キハ此ノ限ニ在ラス
第百四十八條裁判所必要アリト認ムル
トキハ速記者ヲシテロ頭辯論ニ於ケル
陳述ノ全部又ハ一部ヲ筆記セシムルコ
トヲ得
第百四十九條第百四十二條乃至前條ノ
○裁判所ノ容訊、
規定ハ〇受命判事又ハ受託判事ノ審問及
證據調ニ之ヲ準用ス
第百五十條申立其ノ他ノ申述ハ別段ノ
規定アル場合ヲ除クノ外書面又ハ口頭
ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ爲スニハ裁判所書記
ノ面前ニ於テ陳述ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ書記調書ヲ作リ之
ニ署名捺印スルコトヲ要ス
第百五十一條當事者ハ訴訟記錄ノ閱覽
若ハ謄寫又ハ其ノ正本、謄本、抄本若ハ
訴訟ニ關スル事項ノ證明書ノ交付ヲ裁
判所書記ニ請求スルコトヲ得利害關係
ヲ疏明シタル第三者亦同シ
訴訟記錄ノ正本、勝本又ハ抄本ニハ其
ノ正本、謄本又ハ抄本ナルコトヲ記載シ
書記之ニ署名捺印シ且栽判所ノ印ヲ押
捺スルコトヲ要ス
第二節期日及期間
第百五十二條期日ハ裁判長之ヲ定ム
受命制事又ハ受託判事ノ審問ノ期日ハ
其ノ判事之ヲ定ム
期日ノ指定ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以
テ之ヲ爲ス
第百五十三條期日ハ已ムコトヲ得サル
場合ニ限リ日曜日其ノ他ノ一般ノ休日
ニ之ヲ定ムルコトヲ得
第百五十四條期日ニ於ケル呼出ハ呼出
狀ヲ送達シテ之ヲ爲ス但シ當該事件ニ
付出頭シタル者ニ對シテハ期日ヲ告知
スルヲ以テ足ル
第百五十五條期日ハ事件ノ呼上ヲ以テ
之ヲ開始ス
第百五十六條期間ノ計算ハ民法ニ從フ
期間ノ末日カ日曜日其ノ他ノ一般ノ休
日ニ當ルトキハ期間ハ其ノ翌日ヲ以テ
滿了ス
第百五十七條期間ヲ定ムル栽判ニ於テ
始期ヲ定メサルトキハ其ノ期間ハ裁判
カ效力ヲ生シタル時ヨリ進行ヲ始ム
第百五十八條裁判所ハ法定期間又ハ其
ノ定メタル期間ヲ伸長シ又ハ之ヲ短縮
スルコトヲ得但シ不變期間ハ此ノ限ニ
在ラス
不變期間ニ付テハ裁判所ハ遠隔ノ地ニ
住所又ハ居所ヲ有スル者ノ爲附加期間
ヲ定ムルコトヲ得
裁判長、受命判事スハ受礼判事ハ其ノ
定メタル期間ヲ仲長シ又ハ之ヲ短縮ス
ルコトヲ得
第百五十九條當事者カ其ノ貴ニ歸スヘ
カラサル事由ニ因リ不變期間ヲ遵守ス
ルコト能ハサリシ場合ニ於テハ其ノ
事由ノ止ミタル後一週間内ニ限リ懈怠
シタル訴訟行爲ノ追完ヲ爲スコトヲ得
此ノ期間ニ付テハ前條ノ規定ヲ適用セ
ス
第三節送達
第百六十條送達ハ別段ノ規定アル場合
ヲ除クノ外職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第百六十一條送達ニ關スル事務ハ裁判
所書記之ヲ取扱フ
前項ノ事務ノ取扱ハ送達地ノ區栽判所
ノ書記ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第百六十二條送達ハ執達吏又ハ郵便ニ
依リ之ヲ爲ス
郵便ニ依ル送達ニ在リテハ郵便集配人
ヲ以テ送達ヲ爲ス吏員トス
第百六十三條當該事件ニ付出頭シタル
者ニ對シテハ裁判所書記自ラ送達ヲ爲
スコトヲ得
第百六十四條送達ハ別段ノ規定アル場
合ヲ除クノ外送達ヲ受クヘキ者ニ送達
スヘキ書類ノ謄本ヲ交付シテ之ヲ爲ス
送達スヘキ書類ノ提出ニ代ヘ調書ヲ作
リタルトキハ其ノ調書ノ謄本又ハ抄本
ヲ交付シテ送達ヲ爲ス
第百六十五條訴訟無能力者ニ對スル送
達ハ其ノ法定代理人ニ之ヲ爲ス
第百六十六條數人カ共同シテ代理權ヲ
行フヘキ場合ニ於テハ送達ハ其ノ一人
ニ之ヲ爲スヲ以テ足ル
第百六十七條軍事用ノ廳含又ハ艦船ニ
屬スル者ニ對スル送達ハ其ノ廳舎又ハ
艦船ノ長ニ之ヲ爲ス
第百六十八條在監者ニ對スル送達ハ監
獄ノ長ニ之ヲ爲ス
第百六十九條送達ハ之ヲ受クヘキ者ノ
住所、居所營業所又ハ事務所ニ於テ
之ヲ爲ス但シ法定代理人ニ對スル送達
ハ本人ノ營業所又ハ事務所ニ於テモ之
ヲ爲スコトヲ得
送達ヲ受クヘキ者カ日本ニ住所、居所、
營業所又ハ事務所ヲ有スルコト明ナラ
サルトキハ送達ハ其ノ者ニ出會ヒタル
場所ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得住所、居
所營業所又ハ事務所ヲ有スル者カ送
達ヲ受クルコトヲ拒マサルトキ亦同シ
第百七十條當事者、法定代理人又ハ訴
受訴裁判所ノ所在地ニ住所、居所、營業
所又ハ事務所ヲ有セサルトキハ其ノ
訟代理人ハ訴訟ノ繋屬スル裁判所ノ所
在地ニ於テ送達ヲ受クヘキ場所及送達
要ス
受取人ヲ定メ之ヲ屆出ツルコトヲ得
裁判所ノ所在地ニ住所、居所、營業所
又ハ事務所ヲ有スルコト明ナラサル場
合ニ於テ送達ヲ受クヘキ者カ前項ノ屆
出ヲ爲ササルトキハ其ノ者ニ對シテ送
達スヘキ書類ハ前條第一項ノ規定ニ依
リ送達スヘキ場所ニ宛テ郵便ニ付シテ
之ヲ發送スルコトヲ得
第一項ノ屆出ハ送達ヲ受クヘキ者カ受訴裁
判所ノ所在地ニ住所、居所、營業所又ハ事務
所ヲ有スル場合ニ於テモ亦之ヲ爲スコトヲ
得
第百七十一條送達ヲ爲スヘキ場所ニ於
テ送達ヲ受クヘキ者ニ出會ハサルトキ
ハ事務員、雇人又ハ同居者ニシテ事理
ヲ辨識スルニ足ルヘキ知能ヲ具フル者
ニ書類ヲ交付スルコトヲ得
前項ニ揭クル者其ノ他書類ノ交付ヲ受
クヘキ者カ正當ノ事由ナクシテ之ヲ受
クルコトヲ拒ミタルトキハ送達ヲ爲ス
ヘキ場所ニ書類ヲ差置クコトヲ得
第百七十二條前條ノ規定ニ依リテ送達
ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テハ裁判
所書記書類ヲ郵便ニ付シテ之ヲ發送ス
ルコトヲ得
第百七十三條第百七十條第二項又ハ前
條ノ規定ニ依リテ書類ヲ郵便ニ付シテ
發送シタル場合ニ於テハ其ノ發送ノ時
ニ於テ送達アリタルモノト看做ス
第百七十四條日曜日其ノ他ノ一般ノ休
日又ハ日出前日沒後ニ於テ執達吏ニ依
ル送達ヲ爲スニハ裁判長ノ許可アルコ
トヲ要ス
前項ノ許可アリタルトキハ裁判所書記
ハ送達スヘキ書類ニ其ノ旨ヲ附記スル
コトヲ要ス
前二項ノ規定ニ違背スル送達ハ書類ノ
交付ヲ受クヘキ者カ之ヲ受取リタル場
合ニ限リ其ノ效力ヲ有ス
第百七十五條外國ニ於テ爲スヘキ送達
ハ裁判長其ノ國ノ管轄官廳又ハ其ノ國
ニ駐在スル日本ノ大使、公使若ハ領事
ニ囑託シテ之ヲ爲ス
第百七十六條出陣ノ軍除若ハ外國駐在
ノ軍隊ニ屬スル者又ハ役務ニ服スル艦
船ノ乘組員ニ對スル送達ハ裁判長上班
司令官廳ニ囑託シテケヲヲス
前項ノ送達ニ付テハ第百六十七條ノ規
定ヲ準用ス
第百七十七條送達ヲ爲シタル吏員ハ書
面ヲ作リ送達ニ關スル事項ヲ記載シ之
ヲ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス
第百七十八條當事者ノ住所、居所其ノ
他送達ヲ爲スヘキ場所カ知レサル場合
又ハ外國ニ於テ爲スヘキ送達ニ付第百
七十五條ノ規定ニ依ルコト能ハス若ハ
之ニ依ルモ其ノ效ナシト認ムヘキ場合
ニ於テハ申立ニ因リ裁判長ノ許可ヲ得
テ公〓送達ヲ爲スコトヲ得
同一ノ當事者ニ對スル爾後ノ公而送達
ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第百七十九條公布送達ハ裁判所書記送
達スヘキ書類ヲ保管シ何時ニテモ送達
ヲ受クヘキ者ニ交付スヘキ旨ヲ裁判所
ノ掲示場ニ揭示シテ之ヲ爲ス但シ呼出
狀ノ送達ハ呼出狀ヲ掲示場ニ貼附シテ
之ヲ爲ス
裁判所ハ公市送達アリタルコトヲ官報
又ハ新聞紙ニ揭載スヘキコトヲ命スル
コトヲ得但シ外國ニ於テ爲スヘキ送達
ニ付テハ公示送達アリタルコトヲ郵便
ニ付シテ通知スルコトヲ得
第百八十條公示送達ハ前條第一項ノ規
定ニ依ル揭〓ヲ始メ又ハ貼附ヲ爲シタ
ル日ヨリ二週間ヲ經過スルニ因リテ其
ノ效力ヲ生ス但シ第百七十八條第二項
ノ公示送達ハ掲示ヲ始メ又ハ貼附ヲ爲
シタル日ノ翌日ニ於テ其ノ效力ヲ生ス
前項ノ期間ハ之ヲ短縮スルコトヲ得ス
第百八十一條送達ニ關スル裁判長ノ權
限ハ受命判事、受託判事及送達地ノ區
裁判所ノ判事亦之ヲ有ス
第四節裁判
第百八十二條訴訟カ裁判ヲ爲スニ熟ス
ルトキハ裁判所ハ終局判決ヲ爲ス
第百八十三條訴訟ノ一部カ裁判ヲ爲ス
ニ熟スルトキハ裁判所ハ其ノ一部ニ付
終局判決ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ口頭辯論ノ併合ヲ命シタ
ル數個ノ訴訟中其ノ一カ裁判ヲ爲スニ
熟スル場合及本訴又ハ反訴カ裁判ヲ爲
スニ熟スル場合ニ之ヲ準用ス
第百八十四條獨立シタル攻撃又ハ防禦
ノ方法其ノ他中間ノ爭ニ付裁判ヲ爲ス
ニ熟スルトキハ裁判所ハ中間判決ヲ爲
スコトヲ得請求ノ原因及數額ニ付爭ア
ル場合ニ於テ其ノ原因ニ付亦同シ
第百八十五條裁判所ハ判決ヲ爲スニ當
リ其ノ爲シタル口頭辯論ノ全趣旨及證
據調ノ結果ヲ斟酌シ自由ナル心證ニ依
リ事實上ノ主張ヲ眞實ト認ムヘキカ否
ヲ判斷ス
第百八十六條裁判所ハ當事者ノ申立テ
サル事項ニ付判決ヲ爲スコトヲ得ス
第百八十七條判決ハ其ノ基本タル口頭
辯論ニ〓與シタル判事之ヲ爲ス
判事ノ更迭アル場合ニ於テハ當事者ハ
從前ノ口頭辯論ノ結果ヲ陳述スルコト
ヲ要ス
第百八十八條判決ハ言渡ニ因リテ其ノ
效力ヲ生ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=84
-
085・判決原本
○判決原本 第百八十九條判決ノ言渡ハ〓栽判長主
ニ基キ
文ヲ朗讀シテ之ヲ爲ス
裁判長ハ相當ト認ムルトキハ判決ノ理
由ヲ朗讀シ又ハ口頭ヲ以テ其ノ要領ヲ
告クルコトヲ得
第百九十條判決ノ言渡ハ口頭辯論終結
二
ノ日ヨリ一週間內ニ之ヲ爲ス但シ事件
繁雜ナルトキ其ノ他特別ノ事情アルトキハ
此ノ限ニ在ラス
判決ノ言渡ハ當事者カ在廷セサル場合
ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得
第百九十一條判決ニハ左ノ事項ヲ記載
シ判決ヲ爲シタル判事之ニ署名捺印ス
ルコトヲ要ス
-主文
二事實及爭點
三理由
四當事者及法定代理人
五裁判所
事實及爭點ノ記載ハ口頭辯論ニ於ケル
當事者ノ陳述ニ基キ要領ヲ摘示シテ之
ヲ爲スコトヲ要ス
判事判決ニ署名捺印スルニ支障アルト
キハ他ノ判事判決ニ其ノ事由ヲ記載シ
テ署名捺印スルコトヲ要ス
後遲滯ナク
第百九十二條判決ハ言渡ノ日ヨリ一週
間内ニ之ヲ裁判所書記ニ交付シ書記ハ
言渡及交付ノ日ヲ附記シ之ニ捺印スル
コトヲ要ス
第百九十三條判決ハ當事者ニ之ヲ送達
スルコトヲ要ス
判決ノ送達ハ正本ヲ以テ之ヲ爲ス
第百九十四條判決ニ違算、書損其ノ他
之ニ類スル明白ナル誤謬アルトキハ裁
判所ハ何時ニテモ申立ニ因リ又ハ職權
ヲ以テ更正決定ヲ爲スコトヲ得但シ判
決ノ主文又ハ理由ニ影響ヲ及ホスヘキ
場合ニ限ル
更正決定ハ判決ノ原本及正本ニ之ヲ附
記スルコトヲ要ス但シ正本ニ附記スル
コト能ハサルトキハ決定ノ正本ヲ作リ
之ヲ當事者ニ送達スルコトヲ要ス
更正決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコ
トヲ得但シ判決ニ對シ適法ノ控訴アリ
タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百九十五條裁判所カ請求ノ一部ニ付
裁判ヲ脫漏シタルトキハ訴訟ハ其ノ請
求ノ部分ニ付仍裁判所ニ繫屬ス
訴訟費用ノ裁判ヲ脫漏シタル場合ニ於
テハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以
テ其ノ訴訟費用ニ付裁判ヲ爲ス此ノ場
合ニ於テハ第百四條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ規定ニ依ル訴訟費用ノ裁判ハ本
案判決ニ對シ適法ノ控訴アリタルトキ
ハ其ノ效力ヲ失フ此ノ場合ニ於テハ枠訴
裁判所ハ訴訟ノ總費用ニ付裁判ヲ爲ス
第百九十六條お財產權上ノ請求ニ關スル
判決ニ付テハ裁判所ハ必要アリト認ム
○申立ニ因リ又ハ
ルトキハ0職權ヲ以テ擔保ヲ供シ又ハ
供セスシテ假執行ヲ爲スコトヲ得ヘキ
コトヲ宣言スルコトヲ得
○申立ニ因リ又ハ
裁判所ハ。職權ヲ以テ擔保ヲ供シテ假執
行ヲ免ルルコトヲ得ヘキコトヲ宣言ス
ルコトヲ得
前二項ノ宣言ハ判決主文ニ之ヲ揭クル
コトヲ要ス
第百九十七條第百十二條、第百十三條、
第百十五條及第百十六條ノ規定ハ前條
ノ擔保ニ之ヲ準用ス
第百九十八條假執行ノ宣言ハ其ノ宣言
又ハ本案判決ヲ變更スル判決ノ言渡ニ
因リ變更ノ限度ニ於テ其ノ效力ヲ失フ
本案判決ヲ變更スル場合ニ於テハ裁判
所ハ被告ノ申立ニ因リ其ノ判決ニ於テ
假執行ノ宣言ニ基キ被告カ給付シタル
モノノ返還及假執行ニ因リ又ハ之ヲ免
ルル爲被告ノ受ケタル損害ノ賠償ヲ原
告ニ命スルコトヲ要ス
假執行ノ宣言ノミヲ變更シタルトキハ
後ニ本案判決ヲ變更スル判決ニ付前項
ノ規定ヲ適用ス
第百九十九條確定判決ハ主文ニ包含ス
ルモノニ限リ既判力ヲ有ス
相殺ノ爲主張シタル請求ノ成立又ハ不
成立ノ判斷ハ相殺ヲ以テ對抗シタル額
ニ付既判力ヲ有ス
第二百條外國裁判所ノ確定判決ハ左ノ
條件ヲ具備スル場合ニ限リ其ノ效力ヲ
有ス
法令又ハ條約ニ於テ外國裁判所ノ
裁判權ヲ否認セサルコト
二敗訴ノ被告ク日本人ナル場合ニ於
テ公〓送達ニ依ラスシテ訴訟ノ開始
ニ必要ナル呼出若ハ命令ノ送達ヲ受
ケタルコト又ハ之ヲ受ケサルモ應訴
シタルコト
三外國技判所ノ判決カ日本ニ於ケル
公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セサル
コト
四相互ノ保證アルコト
第二百一條確定判決ハ當事者、口頭辯
論終結後ノ承繼人又ハ其ノ者ノ爲請
求ノ目的物ヲ所持スル者ニ對シテ其ノ
效力ヲ有ス
他人ノ爲原告又ハ被告ト爲リタル者ニ
對スル確定判決ハ其ノ他人ニ對シテモ
效力ヲ有ス
前二項ノ規定ハ假執行ノ宣言ニ之ヲ準
用ス
第二百二條不適法ナル訴ニシテ其ノ欠
缺力補正スルコト能ハサルモノナル場
合ニ於テハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ
以テ之ヲ却下スルコトヲ得
第二百三條和解又ハ請求ノ抛棄若ハ認
諾ヲ調書ニ記載シタルトキハ其ノ記載
ハ確定判決ト同一ノ效力ヲ有ス
第二百四條決定及命令ハ相當ト認ムル
方法ヲ以テ之ヲ告知スルニ因リテ其ノ
效力ヲ生ス
裁判所書記ハ告知ノ方法場所及年月日ヲ裁
判ノ原本ニ附記シ之ニ捺印スルコトヲ要ス
第二百五條訴訟ノ指揮ニ關スル決定及
命令ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第二百六條裁判所書記ノ處分ニ對スル
異誠ニ付テハ其ノ書記所屬ノ栽判所決
定ヲ以テ裁判ヲ爲ス
第二百七條決定及命令ニハ其ノ性質ニ
反セサル限リ判決ニ關スル規定ヲ準用
ス
第五節訴訟手續ノ中断及中
止
第二百八條當事者カ死亡シタルトキハ
訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ相
續人、相續財產管理人其ノ他法令ニ依
リ訴訟ヲ續行スヘキ者ハ訴訟手續ヲ受
繼クコトヲ要ん
相續人ハ相續ノ抛棄ヲ爲スコトヲ得ル
間ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ得ス
第二百九條當事者タル法人力合併ニ因
リテ消滅シタルトキハ訴訟手續ハ中斷
ス此ノ場合ニ於テハ合併ニ因リテ設立
シタル法人又ハ合併後存續スル法人ハ
訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
前項ノ規定ハ合併ヲ以テ相手方ニ對抗
スルコトヲ得サル場合ニハ之ヲ適用セ
ス
第二百十條當事者カ訴訟能力ヲ失ヒタ
ルトキ又ハ其ノ法定代理人カ死亡シ若
ハ代理權ヲ失ヒタルトキハ訴訟手續ハ
中斷ス此ノ場合ニ於テハ法定代理人又
ハ訴訟能力ヲ有スルニ至リタル當事者
ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十一條受託者ノ信託ノ任務終了
シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場
合ニ於テハ新受託者訴訟手續ヲ受繼ケ
コトヲ要ス
第二百十二條一定ノ資格ヲ有スル者カ
自己ノ名ヲ以テ他人ノ爲訴訟ノ當事者
タル場合ニ於テ其ノ資格ヲ喪失シタル
トキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於
テハ同一ノ資格ヲ有スル者訴訟手續ヲ
受繼ケコトヲ要ス當事者ノ死亡ニ因リ
訴訟手續カ中斷シタル場合亦同シ
第四十七條ノ規定ニ依リテ原告又ハ被
告ト爲ルヘキ者ヲ選定シタル訴訟ニ於
テ其ノ選定セラレタル當事者ノ全員カ
其ノ資格ヲ喪失シタルトキハ訴訟手續ハ
中斷ス此ノ場合ニ於テハ選定ヲ爲シタ
ル者ノ總員又ハ新ニ原告若ハ被告トシ
テ選定セラレタル者ハ訴訟手續ヲ受繼
クコトヲ要ス
第二百十三條第二百八條第一項、第二
百九條第一項及第二百十條乃至前條ノ
規定ハ訴訟代理人アル盟ハ之ヲ適用
セス
第二百十四條當事者ガ破產ノ宣告ヲ受
ケタルトキハ破產財團ニ關スル訴訟手
續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テ破產法ニ依
ル受綱アル迄ニ破產手續ノ解止アリタ
ルトキハ破產者ハ當然訴訟手續ヲ受繼
ス
第二百十五條破產法ニ依リテ破產財團
ニ關スル訴訟手續ノ受繼アリタル後破
產手續ノ解止アリタルトキハ訴訟手續
ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ破產者ハ訴
訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十六條訴訟手續ノ受繼ハ相手方
ニ於テモ亦之ヲ爲スコトヲ得
第二百十七條訴訟手續受繼ノ申立アリ
タルトキハ裁判所ハ之ヲ相手方ニ通知
スルコトヲ要ス
第二百十八條訴訟手續受繼ノ申立ハ栽孟京
判所職權ヲ以テ之ヲ調査シ理由ナシト
認メタルトキハ決定ヲ以テ之ヲ却下ス
ルコトヲ要ス
裁判ノ送達後中斷シタル訴訟手續ノ受
繼ニ付テハ其ノ裁判ヲ爲シタル裁判所
裁判ヲ爲スコトヲ要ス
第二百十九條裁判所ハ當事者カ訴訟手
!!續ノ受モノ爲爲ササル場合ニ於テモ職權
ヲ以テ其ノ續行ヲ命スルコトヲ得
第二百二十條天災其ノ他ノ事故ニ因リ
テ裁判所カ職務ヲ行フコト能ハサルト
キハ訴訟手續ハ其ノ事故ノ止ム迄中止
ス
第二百二十一條當事者カ不定期間ノ故
障ニ因リ訴訟手續ヲ續行スルコト能ハ
サルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ其ノ中
止ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ決定ヲ取消スコトヲ得
第二百二十二條判決ノ言渡ハ訴訟手續
ノ中斷中ト雖之ヲ爲スコトヲ得
訴訟手續ノ中斷又ハ中止ハ期間ノ進行
ヲ止メ訴訟手續ノ受繼ノ通知又ハ續行2.
ノ時ヨリ更ニ全期間ノ進行ヲ始ム
第二編第一審ノ訴訟手續
第一章地方裁判所ノ訴訟手續
第一節訴
第二百二十三條訴ノ提起ハ訴狀ヲ裁判
所ニ提出シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二百二十四條訴狀ニハ當事者、法定代
理人竝請求ノ趣旨及原因ヲ記載スルコ
トヲ要ス
準備書面ニ關スル規定ハ訴狀ニ之ヲ準
用ス
第二百二十五條確認ノ訴ハ法律關係ヲ
證スル書面ノ眞否ヲ確定スル爲ニモ之
ヲ提起スルコトヲ得
第二百二十六條將來ノ給付ヲ求ムル訴
ハ豫メ其ノ請求ヲ爲ス必要アル場合ニ
限リ之ヲ提起スルコトヲ得
第二百二十七條數個ノ請求ハ同種ノ訴
訟手續ニ依ル場合ニ限リ一ノ訴ヲ以テ
之ヲ爲スコトヲ得
第二百二十八條訴狀カ第二百二十四條
第一項ノ規定ニ違背スル場合ニ於テハ
裁判長ハ相當ノ期間ヲ定メ其ノ期間内
ニ欠缺ヲ補正スヘキコトヲ命スルコト
ヲ要ス法律ノ規定ニ從ヒ訴狀ニ印紙ヲ
貼用セサル場合亦同シ
歷告カ欠缺ノ補正ヲ爲ササルトキハ裁
判長ハ命令ヲ以テ訴狀ヲ却下スルコト
ヲ要ス
前項ノ命令ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲ス
コトヲ得
抗告狀ニハ却下セラレタル訴狀ヲ添附
スルコトヲ要ス
第二百二十九條訴狀ハ之ヲ被告ニ送達
スルコトヲ要ス
前條ノ規定ハ訴狀ノ送達ヲ爲スコト能
ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第二百三十條訴ノ提起アリタルトキハ
栽判長ハ口頭辯論ノ期日ヲ定メ當事者
ヲ呼出スコトヲ要ス
第二百三十一條裁判所ニ繫屬スル事件
ニ付テハ當事者ハ更ニ訴ヲ提起スルコ
トヲ得ス
第二百三十二條原〓ハ請求ノ基礎ニ變
更ナキ限リ口頭辯論ノ終結ニ至ル迄請
求又ハ請求ノ原因ヲ變更スルコトヲ得
但シ之ニ因リ著ク訴訟手續ヲ遲滯セシ
ムヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
請求ノ變更ハ書面ニ依リテ之ヲ爲スコ
トヲ要ス
前項ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコ
トヲ要ス
第二百三十三條裁判所カ請求又ハ請求
ノ原因ノ變更ヲ不當ナリト認ムルトキ
ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其ノ變更
ヲ許ササル旨ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
第二百三十四條裁判カ訴訟ノ進行中ニ
爭ト爲リタル法律關係ノ成立又ハ不成
立ニ繫ルトキハ當事者ハ請求ヲ擴張シ
テ其ノ法律關係ノ確認ノ判決ヲ求ムル
コトヲ得但シ其ノ確認ノ請求カ他ノ載
判所ノ管轄ニ専屬セサルトキニ限ル
前項ノ規定ニ依ル請求ノ擴張ハ書面ニ
依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコ
トヲ要ス
第二百二十五條時效ノ中斷又ハ法律上
ノ期間遵守ノ爲必要ナル裁判上ノ請求
ハ訴ヲ提起シタル時又ハ第二百三十二
條第二項若ハ前條第二項ノ規定ニ依リ
書面ヲ裁判所ニ提出シタル時ニ於テ其
ノ效力ヲ生ス
第二百三十六條訴ハ判決ノ確定ニ至ル
迄其ノ全部又ハ一部ヲ取下クルコトヲ
得但シ相手方カ本案ニ付準備書面ヲ提
出シ、準備手續ニ於テ申述ヲ爲シ又ハ
口頭辯論ヲ爲シタルトキハ訴ノ取下ニ
付其ノ同意アルコトヲ要ス
訴ノ取下ハ書面ニ依リテ之ヲ爲スコト
ヲ要ス但シ口頭辯論ニ於テ又ハ準備手
續中受命判事ノ面前ニ於テ口頭ヲ以テ
之ヲ爲スコトヲ妨ケス
訴狀送達ノ後ニ在リテハ取下ノ書面ハ
之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十七條訴訟ハ訴ノ取下アリタ
ル部分ニ付テハ初ヨリ繋屬ナカリシモ
ノト看做ス
本案ニ付終局判決アリタル後訴ヲ取下
ケタル者ハ同一ノ訴ヲ提起スルコトヲ
得ス
第二百三十八條當事者雙方カ口頭辯論
ノ期日ニ出頭セス又ハ辯論ヲ爲サスシ
三
テ退廷シタル場合ニ於テ六月內ニ期日1
指定ノ申立ヲ爲ササルトキハ訴ノ取下
アリタルモノト看做ス
第二百三十九條被告ハ口頭辯論ノ終結
ニ至ル迄太訴ノ擊屬スル裁判所ニ反訴
ヲ提起スルコトヲ得但シ其ノ目的タル
請求カ他ノ裁判所ノ管ニ專屬セサル軽
トキ及本訴ノ目的タル請求又ハ防禦ノ
方法ト牽連スルトキニ限ル
第二百四十條反訴ニ付テハ本訴ニ關ス
ル規定ニ依ル
第二百四十一條本訴ノ取下アリタルト
キハ被告ハ原告ノ同意ヲ得スシテ反訴
ヲ取下クルコトヲ得
第二節辯論ノ準備
第二百四十二條曰頭周論ハ書面ヲ以テ
之ヲ準備スルコトヲ要ス
第二百四十三條準備書面ハ之ニ記載シ
タル事項ニ付相手方カ準備ヲ爲スニ必
要ナル期間ヲ存シ之ヲ栽判所ニ提出シ
裁判所ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ
要ス
裁判長ハ準備書面ヲ提出スヘキ期間ヲ
定ムルコトヲ得
第二百四十四條準備書面ニハ左ノ事項
ヲ記載シ當事者又ハ代理入之ニ署名捺
印スルコトヲ要ス
-當事者ノ氏名、名稱又ハ商號、職
業及住所
二代理人ノ氏名、職業及住所
三事件ノ表示
四攻擊又ハ防禦ノ方法
五相手方ノ請求及攻撃又ハ防禦ノ方
法ニ對スル陳述
六附屬書類ノ表示
七年月日
八裁判所ノ表示
第二百四十五條當十者ノ所持スル文書
ニシラ準備書面ニ引用シタルモクハ準
備書面ノ各通ニ其ノ謄本ヲ添附スルコ
トヲ要ス
文書ノ一部ノミヲ必要トスルトキハ其
ノ抄本ヲ添附シ文書カ大部ナルトキハ
其ノ文書ヲ表示スルヲ以テ足ル
第二百四十六條前條ノ文書ハ相手方ノ
求ニ因リ其ノ原本ヲ聞覽セシムルコト
ヲ要ス
第二百四十七條準備書面ニ記載セサル
事實ハ相手方カ在廷セサルトキハ口頭
辯論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ス
第二百四十八條外國語ヲ以テ作リタル
文書ニハ其ノ譯文ヲ添附スルコトヲ要
ス
第二百四十九條訴訟ニ付テハ受命判事
ニ依リ口頭辯論ノ準備手續ヲ爲スコト
ヲ要ス但シ裁判所相當ト認ムルトキハ
直ニ辯論ヲ命シ又ハ訴訟ノ一部若ハ或
爭點ノミニ付準備手續ヲ命スルコトヲ
第二百五十條準備手續ニ於テハ調書ヲ
作リ當事者ノ棟述ニ基キ第二百四十四
條第四號及第五號ニ揭クル事項ヲ記載
シ殊ニ證據ニ付テハ其ノ申出ヲ明確ニ
スルコトヲ要ス
受命判事相當ト認ムルトキハ準備書面
ヲ以テ前項ノ悚述及調事日ニ代フルコト
ヲ得
第二百五十一條當事者ノ一方カ期日ニ
出頭セサルトキハ前條ノ調書ノ謄本ヲ
之ニ送達シ新期日ヲ定メ當事老雙方ヲ
呼出スコトヲ得
第二百五十二條受命判事ハ當事者ヲシ
テ準備面ヲ提出セシムルコトシ得此
ノ場合ニ於テハ第二百四十三條ノ規定
ヲ準制ス
第二百五十三條當事者の期日ニ出頭セ
ス又ハ前條ノ規定ニ依リ受命判事ノ定
メタル期間内ニ準備書面ヲ捏出セサル
トキハ受命判事ハ準備手續ヲ終結スル
コトヲ得ス
第二百五十四條當事者ハ口頭辯論ニ於
テ準備手續ノ結果ヲ陳述スルコトヲ要
ス
第二百五十五條調書又ハ之ニ代ルヘキ
準備書面ニ記載セサル事項ハ口頭辯論
ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其
ノ事項カ裁判所職權ヲ以テ調査スヘ
キモノナルトキ、著ク訴訟ヲ遲滯セシ
メサルトキ又ハ重大ナル過失ナクシテ
準備手續ニ於テ之ヲ提出スルコト能ハ
サリシコトヲ疏明シタルトキハ此ノ限
ニ在ラス
前項但書ノ規定ハ第二百四十七條ノ規
定ノ適用ヲ妨ケス
訴訟又ハ準備手續前ニ提出シタシ準備
書面ニ記載シタル事項ハ調書又ハ之ニ
代ルヘキ準備書面ニ記載セサルモノト
雖口頭辯論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ
妨ケス
第二百五十六條第百二十六條乃至第百
二十九條、第百三十一條、第百三十三
條乃至第百四十一條及第二百三十八條
ノ規定ハ準備手續ニ之ヲ準用ス
第三節證據
第一款總則
第二百五十七條裁判所ニ於テ當事者カ
自白シタル事實及顯著ナル事實ハ之ヲ
證スルコトヲ要セス
第二百五十八條證據ノ申出ハ證スヘキ
事實ヲ表示シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
證據ノ申出ハ期日前ニ於テモ之ヲ爲ス
コトヲ得
第二百五十九條當事者ノ申出テタル證
據ニシテ裁判所ニ於テ不必要ト認ムル
モノハ之ヲ取調フルコトヲ要セス
第二百六十條證據調ニ付不定期間ノ障
碍アルトキハ裁判所ハ證據調ヲ爲ササ
ルコトヲ得
第二百六十一條裁判所ハ當事者ノ申出
テタル證據ニ依リテ心證ヲ得ルコト能
ハサルトキ其ノ他ノ必要アリト認ムル
トキハ職權ヲ以テ證據調ヲ爲スコトヲ得
第二百六十二條裁判所ハ必要ナル調査
ヲ官廳若ハ公署、外國ノ官廳若ハ公署
又ハ法人ニ囑託スルコトヲ得
第二百六十三條證據調ハ當事者カ期日
ニ出頭セサル場合ニ於テモ之ヲ爲スコ
トヲ得
第二百六十四條外國ニ於テ爲スヘキ證
據調ハ其ノ國ノ管轄官廳又ハ其ノ國ニ
駐在スル日本ノ大使、公使若ハ領事ニ
之ヲ囑託シテ爲スコトヲ要ス
外國ニ於テ爲シタル證據調ハ其ノ國ノ
法律ニ違背スルモ本法ニ違背セサルト
キハ其ノ效力ヲ有ス
第二百六十五條裁判所ハ相當ト認ムル
トキハ裁判所外ニ於テ證據調ヲ爲スコ
トヲ得此ノ場合ニ於テハ部員ニ命シ又
ハ區裁判所ニ囑託シテ證據調ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
受託判事カ他ノ區裁判所ニ於テ證據調
ヲ爲スコトヲ相當ト認ムルトキハ更ニ
證據調ノ囑託ヲ爲スコトヲ得此ノ場合
ニ於テハ其ノ旨ヲ受訴裁判所及當事者
ニ通知スルコトヲ要ス
第二百六十六條受託判事ハ證據調ニ關
スル記錄ヲ受訴裁判所ニ送付スルコト
ヲ要ス
第二百六十七條疏明ハ卽時ニ取調フル
コトヲ得ヘキ證據ニ依リテ之ヲ爲スコ
トヲ要ス
裁判所ハ當事者若ハ法定代理人ヲシテ
保證金ヲ供託セシメ又ハ其ノ主張ノ眞
實ナルコトヲ宣誓セシメ之ヲ以テ疏明
ニ代フルコトヲ得
第二百八十六條乃至第一一百八十九條ノ
規定ハ前項ノ宣誓ニ之ヲ準用ス
第二百六十八條前條第二項ノ規定ニ依
リテ保證金ノ供託ヲ爲シタル當事者又
ハ法定代理人カ虛偽ノ申述ヲ爲シタル
トキハ裁判所決定ヲ以テ保證金ヲ沒取ス
第二百六十九條第二百六十七條第二項
ノ規定ニ依リテ宣誓ヲ爲シタル當事者
又ハ法定代理人カ虚偽ノ中述ヲ爲シタ
ルトキハ宣誓ヲ爲サシメタル裁判所決
五百
定ヲ以テ千圓以下ノ過料ニ處ス
第二百七十條第二百六十八條及前條ノ
決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ
得
第二款證人訊問
第二百七十一條栽判所ハ別段ノ規定ア
ル場合ヲ除クノ外何人ト雖證人トシテ
之ヲ訊問スルコトヲ得
第二百七十二條官吏又ハ官吏タリシ者
ヲ證人トシテ職務上ノ祕密ニ付訊問ス
ル場合ニ於テハ裁判所ハ當該監督官廳
ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ他ノ公務員ニ付之ヲ準用
ス
第二百七十三條國務大臣、宮內大臣、
內大臣、樞密院議長、樞密院副議長、
樞密顧問官、會計檢査院長、元帥、參
謀總長、海軍軍令部長、〓育總監若ハ
軍事參議官又ハ此等ノ職ニ在リタル者
ヲ證人トシテ職務上ノ祕密ニ付訊問ス
ル場合ニ於テハ裁判所ハ勅許ヲ得ルコ
トヲ要ス
第二百七十四條貴族院若ハ衆議院ノ議
員又ハ議員タリシ者ヲ證人トシテ職務
上ノ祕密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁
判所ハ其ノ院ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
第二百七十五條證人訊問ノ申出ハ證人
ヲ指定シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二百七十六條證人ノ呼出狀ニハ左ノ
事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一當事者ノ表示
二訊問事項ノ要領
三出頭セサル場合ニ於ケル法律上ノ
制裁
第二百七十七條證人カ正當ノ事由ナク
シテ出頭セサルトキハ裁判所ハ決定ヲ
以テ之ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ負
擔ヲ命シ且五百圓以下ノ過料ニ處ス此
ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコト
ヲ得
第二百七十八條裁判所ハ正當ノ事由ナ
クシテ出頭セサル證人ノ勾引ヲ命スル
コトヲ得
前項ノ勾引ニハ刑事訴訟法中勾引ニ關
スル規定ヲ準用ス
第二百七十九條左ノ場合ニ於テハ受命
判事又ハ受託判事ヲシテ證人ノ訊問ヲ
爲サシムルコトヲ得
-證人力受訴裁判所ニ出頭スル義務
ナキトキ又ハ正當ノ事由ニ因リ出頭
スルコト能ハサルトキ
二證人カ受訴栽判所ニ出頭スルニ付
不相當ノ費用又ハ時間ヲ要スルトキ
第二百八十條證言カ證人又ハ左ニ掲ク
ル者ノ刑事上ノ訴追又ハ處罰ヲ招ク虞
アル事項ニ關スルトキハ證人ハ證言ヲ
拒ムコトヲ得證言カ此等ノ者ノ恥辱ニ
歸スヘキ事項ニ關スルトキ亦同シ
證人ノ配偶者、四親等內ノ血族若
ハ三親等內ノ姻族又ハ證人ノ家ノ戶
主但シ親族ニ付テハ親族關係カ止ミ
タル後亦同シ
二證人ノ後見人又ハ證人ノ後見ヲ受
クル者
三證人カ主人トシテ仕フル者
第二百八十一條左ノ場合ニ於テハ證人
ハ證言ヲ拒ムコトヲ得
-第二百七十二條乃至第二百七十四
條ノ場合
二醫師、齒科醫師、藥劑師、藥種商、
產婆、辯護士、辨理士、辯護人、公
證人、宗〓又ハ禱祀ノ職ニ在ル者又
ハ此等ノ職ニ在リタル者カ職務上知
リタル事實ニシテ默祕スヘキモノニ
付訊問ヲ受クルトキ
三技術又ハ職業ノ祕密ニ關スル事項
ニ付訳問ヲ受クルトキ
前項ノ規定ハ證人カ默祕ノ義務ヲ免セ
ラレタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二百八十二條證言拒絶ノ理由ハ之ヲ
疏明スルコトヲ要ス
第二百八十三條第二百八十一條第一項
第一號ノ場合ヲ除クノ外證言拒絕ノ當
否ニ付テハ受訴裁判所當事者ヲ審訊シ
テ裁判ヲ爲ス
證言拒絕ニ關スル裁判ニ對シテハ當事
者及證人ハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二百八十四條證言拒絕ヲ理山ナシト
スル裁判確定シタル後證人カ故ナク誇
言ヲ拒ムトキハ第二百七十七條ノ規定
ヲ準用ス
第二百八十五條裁判長ハ證人ヲシテ訊
問前宣誓ヲ爲サシムルコトヲ要ス但シ
特別ノ事由アルトキハ訊問後之ヲ爲サ
シムルコトヲ得
第二百八十六條宣誓ハ起立シテ嚴〓ニ
之ヲ行フコトヲ要ス
第二百八十七條裁判長ハ宣誓前宣誓ノ
趣旨ヲ諭示シ且僞證ノ罰ヲ警告スルコ
トヲ要ス
第二百八十八條宣誓ハ證人ヲシテ宣誓
書ヲ朗讀セシメ且之ニ署名捺印セシメ
テ之ヲ爲ス證人宣誓書ヲ朗讀スルコト
能ハサルトキハ裁判長代リテ之ヲ朗讀
ス
宣誓書ニハ良心ニ從ヒ眞實ヲ述へ何事
ヲモ默祕セス又何事ヲモ附加セサルコ
トヲ誓フ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第二百八十九條左ニ掲クル者ヲ證人ト
シテ訊問スルニハ宣誓ヲ爲サシムルコ
トヲ得ス
-十六年未滿ノ者
二宣誓ノ趣旨ヲ理解スルコト能ハサ
ル者
第二百九十條第二百八十條ノ規定ニ該
當スル證人ニシテ證言拒絕ノ權利ヲ行
ハサル者ヲ訊問スルニハ宣誓ヲ爲サシ
メサルコトヲ得
第二百九十一條證人カ自己又ハ第二百
八十條ニ掲クル者ニ著キ利害關係アル
事項ニ付訳問ヲ受クルトキハ宣誓ヲ拒
ムコトヲ得
第二百九十二條宣誓ヲ爲サシメスシテ
證人ヲ訊問シタルトキハ其ノ旨及事由
ヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
第二百九十三條第二百七十七條、第
二百八十二條及第二百八十三條
ノ規定ハ證人カ宣誓ヲ拒ム場合ニ之ヲ
準用ス
第二百九十四條裁判長ハ必要アリト認
ムルトキハ證人相互ノ對質ヲ命スルコ
トヲ得
第二百九十五條裁判長ハ必要アリト認
ムルトキハ證人ヲシテ文字ノ手記其ノ
他必要ナル行爲ヲ爲サシムルコトヲ得
第二百九十六條裁判長ハ必要アリト
認ムルトキハ後ニ訊問スヘキ證人ニ
在廷ヲ許ス
一時退廷ヲ命スルコトヲ得
第二百九十七條證人ハ書類ニ依リテ陳
述ヲ爲スコトヲ得ス但シ裁判長ノ許可
ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二百九十八條陪席判事ハ裁判長ニ告
ケ讃人ニ對シテ問ヲ發スルコトヲ得
第二百九十九條當事者ハ裁判長ニ對シ
必要ナル發問ヲ求メ又ハ其ノ許可ヲ得
テ問ヲ發スルコトヲ得
當事者ハ發問ノ許否ニ付異議ヲ述フル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ裁判所異議
ニ付裁判ヲ爲ス
第三百條受命判事又ハ受託判事カ證人
訊問ヲ爲ス場合ニ於テハ裁判所及裁判長
ノ職務ハ其ノ判事之ヲ行フ但シ前條第
二項ノ規定ニ依ル異議ノ裁判ハ受訴裁
判所之ヲ爲ス
第三款鑑定
第三百一條鑑定ニハ別段ノ規定アル場
合ヲ除クノ外前項ノ規定ヲ準用ス
第三百二條鑑定ニ必要ナル學識經驗ア
ル者ハ鑑定ヲ爲ス義務ヲ負フ
第二百八十條又ハ第二百九十一條ノ規
定ニ依リテ證言又ハ官誓ヲ拒ミ得ル者
ト同一ノ地位ニ在ル者及第二百八十九
條ニ揭クル者ハ鑑定人タルコトヲ得ス
第三百三條鑑定人ハ之ヲ勾引スルコト
ヲルチノ
第三百四條鑑定人ハ受訴裁判所、受命
判事又ハ受託判事之ヲ指定ス
第三百五條鑑定人ニ付誠實ニ鑑定ヲ爲
スコトヲ妨クヘキ事情アルトキハ當事
者ハ其ノ鑑定人カ鑑定事項ニ付陳述ヲ
爲ス前之ヲ忌避スルコトヲ得陳述ヲ爲
シタルトキト雖其ノ後ニ忌避ノ原因ヲ
生シ又ハ當事者カ其ノ原因アルコトヲ
知リタルトキ亦同ン
第三百六條忌避ノ申立ハ受訴裁判所、
受命判事又ハ受託判事ニ之ヲ爲スコト
ヲ変更
忌避ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
忌避ヲ理由アリトスル決定ニ對シテハ
不服ヲ申立ツルコトヲ得ス之ヲ理由ナ
シトスル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲
スコトヲ得
第三百七條宣誓書ニハ良心ニ從ヒ誠實
ニ鑑定ヲ爲スコトヲ誓フ旨ヲ記載スル
コトヲ要ス
第三百八條裁判長ハ鎖定人ヲシテ書面
又ハ口頭ヲ以テ共同ニテ又ハ各別ニ意
見ヲ述ヘシムルコトヲ得
第三百九條特別ノ學識經驗ニ依リテ知
リ得タル事實ニ關スル訊問ニ付テハ證
人訳問ニ關スル規定ニ依ル
第三百十條裁判所必要アリト認ムルト
キハ官廳若ハ公署、外國ノ官廳若ハ公
署又ハ相當ノ設備アル法人ニ鑑定ヲ囑
託スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ宣誓
ニ關スル規定ヲ除クノ外本款ノ規定ヲ
準用ス
前項ノ場合ニ於テ裁判所必要アリト認
ムルトキハ官廳、公署又ハ法人ノ指定
シタル者ヲシテ鑑定書ノ說明ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
第四款書房證
第三百十一條書證ノ申出ハ文書ヲ提出
シ又ハ之ヲ所持スル者ニ其ノ提出ヲ命
セムコトヲ申立テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三百十二條左ノ場合ニ於テハ支書ノ
所持者ハ其ノ提出ヲ拒ムコトヲ得ス
當事者カ訴訟ニ於テ引用シタル文
書ヲ白ラ所持スルトキ
二擧證者カ文書ノ所持者ニ對シ其ノ
引渡又ハ閲覽ヲ求ムルコトヲ得ルトキ
三文書カ擧證者ノ利益ノ爲ニ作成セ
ラレ又ハ擧證者ト文書ノ所持老トノ
間ノ法律關係ニ付作成セラレタルト
キ
第三百十三條文書提出ノ申立ニハ左ノ
事項ヲ明ニスルコトヲ要ス
一文書ノ表示
二文書ノ趣旨
三文書ノ所持者
四證スヘキ事實
五文書提出ノ義務ノ原因
第三百十四條裁判所カ文書提出ノ申立
ヲ理由アリト認メタルトキハ決定ヲ以
テ文書ノ所持者ニ對シ其ノ提出ヲ命ス
第三者ニ對シ文書ノ提出ヲ命スル場合
ニ於テハ其ノ第三者ヲ審訊スルコトヲ
要ス
第三百十五條文書提出ノ申立ニ關スル
決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ
得
第三百十六條當事者カ文書提出ノ命ニ
從ハサルトキハ裁判所ハ文書ニ關スル
相手方ノ主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得
第三百十七條當事者カ相手方ノ使用ヲ
妨クル目的ヲ以テ提出ノ義務アル文書
ヲ毀滅シ其ノ他之ヲ使用スルコト能ハ
サルニ至ラシメタルトキハ裁判所ハ其
ノ文書ニ關スル相手方ノ主張ヲ眞實ト
認ムルコトヲ得
第三百十八條第三者カ文書提出ノ命二
從ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ五
百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シ
テハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百十九條書證ノ申出ハ第三百十一
條ノ規定ニ拘ラス文書ノ所持者ニ其ノ
文書ノ送付ヲ囑託セムコトヲ中立テ之
ヲ爲スコトヲ得但シ當事者カ法令ニ依
リテ文書ノ正本又ハ謄本ノ交付ヲ求ム
ルコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三百二十條裁判所ハ必要アリト認ム
ルトキハ提出又ハ送付ニ係ル文書ヲ留
置クコトヲ得
第三百二十一條第二百六十五條ノ規定
ニ依リテ受命判事又ハ受託判事ヲシテ
文書ニ付證據調ヲ爲サシムル場合ニ於
テハ裁判所ハ受命判事又ハ受託判事ノ
調書ニ記載スヘキ事項ヲ定ムルコトヲ
得
前項ノ調書ニハ文書ノ謄本又ハ抄本ヲ
添附スルコトヲ要ス
第三百二十二條文書ノ提出又ハ送付ハ
原本、正本又ハ認證アル謄本ヲ以テ之
ヲ爲スコトヲ要ス
裁判所ハ前項ノ規定ニ拘ラス原本ノ提
出ヲ命シ又ハ送付ヲ爲サシムルコトヲ
得
裁判所ハ當事者ヲシテ其ノ引用シタル
文書ノ謄本又ハ抄本ヲ提出セシムルコ
トヲ得
第三百二十三條文書ハ其ノ方式及趣旨
ニ依リ官吏其ノ他ノ公務員カ職務上作
成シタルモノト認ムヘキトキハ之ヲ眞
正ナル公文書ト推定ス
公文書ノ眞否ニ付疑アルトキハ裁判所
ハ職權ヲ以テ當該官廳又ハ公署ニ問合
ヲ爲スコトヲ得
第三百二十四條前條ノ規定ハ外國ノ官
廳又ハ公署ノ作成ニ係ルモノト認ムヘ
キ文書ニ之ヲ準用ス
第三百二十五條私文書ハ其ノ眞正ナル
コトヲ證スルコトヲ要ス
第三百二十六條私文書ハ本人又ハ其ノ
代理人ノ署名又ハ捺印アルトキハ之ヲ
眞正ナルモノト推定ス
第三百二十七條文書ノ眞否ハ筆跡又
ハ印影ノ對照ニ依リテモ之ヲ證スルコ
トヲ得
第三百二十八條第三百十一條、第三百
十四條乃至第三百十七條及第三百十九
條乃至第三百二十一條ノ規定ハ對照ノ
用ニ供スヘキ筆跡又ハ印影ヲ具フル文
書其ノ他ノ物件ノ提出又ハ送付ニ之ヲ
準用ス
第三者カ正當ノ事由ナクシテ前項ノ規
定ニ依ル提出ノ命ニ從ハサルトキハ裁
判所ハ決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ
處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲
スコトヲ得
第三百二十九條對照ニ適當ナル筆跡ナ
キトキハ裁判所ハ對照ノ用ニ供スヘキ
文字ノ手記ヲ相手方ニ命スルコトヲ得
相手方カ正當ノ事由ナクシテ前項ノ規
定ニ依ル裁判所ノ命ニ從ハサルトキハ
栽判所ハ文書ノ眞否ニ關スル擧證者ノ
主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得書樣ヲ變
シテ手記シタルトキ亦同シ
第三百三十條對照ノ用ニ供シタル書類
ノ原本、謄本又ハ抄本ハ之ヲ調書ニ添
附スルコトヲ要ス
第三百三十一條當事者又ハ其ノ代理人
カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リ眞實ニ
反シテ文書ノ眞正ヲ爭ヒタルトキハ裁
判所決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處
ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲ス
コトヲ得
前項ノ場合ニ於テ文書ノ眞正ヲ爭ヒタ
ル當事者又ハ代理人カ訴訟ノ繫屬中其
ノ眞正ナルコトヲ認メタルトキハ裁判
所ハ事情ニ依リ前項ノ決定ヲ取消スコ
トヲ得
第三百三十二條本款ノ規定ハ證徴ノ爲
作リタル物件ニシテ文書ニ非サルモノ
ニ之ヲ準用ス
第五款檢證
第三百三十三條檢證ノ申出ハ儉證ノ目
的ヲ表示シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三百三十四條受命判事又ハ受託判事
ハ檢證ヲ爲スニ當リ必要アリト認ムル
トキハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第三百三十五條第三百十一條、第三百
十四條乃至第三百十七條及第三百十九
條乃至第三百二十一條ノ規定ハ檢證ノ
目的ノ提示又ハ送付ニ之ヲ準用ス
第三者カ正當ノ事由ナクシテ前項ノ規
定ニ依ル提〓ノ命ニ從ハサルトキハ裁
判所ハ決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ
處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲
スコトヲ得
第六款當事者訊問
第三百三十六條栽判所カ證據調ニ依リ
テ心證ヲ得ルコト能ハサルトキ其ノ他
○申立ニ因リ又ハ
必要アリト認ムルトキハ○臘權ヲ以テ當
事者本人ヲ訊問スルコトヲ得此ノ場合
ニ於テハ當事者ヲシテ宣誓ヲ爲サシム
ルコトヲ得
第三百三十七條裁判長必要アリト認ム
ルトキハ當事者相互又ハ當事者ト證人
トノ對質ヲ命スルコトヲ得
第三百三十八條當事者カ正當ノ事由ナ
クシテ呼出ニ應セス又ハ宣誓若ハ陳述
ヲ拒ミタルトキハ裁判所ハ訊問事項ニ
關スル相手方ノ主張ヲ眞實ト認ムルコ
トヲ得
第三百三十九條宣誓シタル當事者カ虚
僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ裁判所決定
五百
ヲ以テ千圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定
ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百三十一條第二項ノ規定ハ前項ノ
決定ニ之ヲ準用ス
第三百四十條當事者ヲ訊問シタルトキ
ハ其ノ陳述及宣誓ヲ爲サシメ又ハ爲サ
シメサルコトヲ調書ニ記載スルコトヲ
要ス
第三百四十一條第三百三十六條乃至前
條ノ規定ハ訴訟ニ於テ當事者ヲ代表ス
ル法定代理人ニ之ヲ準用ス但シ當事者
本人ヲ訊問スルコトヲ妨ケス
第三百四十二條第二百七十六條、第二
百七十九條、第二百八十五條乃至第二
百八十九條第二百九十五條及第二百九
十七條乃至第三百條ノ規定ハ本款ノ訊
問ニ之ヲ準用ス
第七款證據保全
第三百四十三條裁判所ハ豫メ證據調ヲ
爲スニ非サレハ其ノ證據ヲ使用スルニ
困難ナル事情アリト認ムルトキハ申立
ニ因リ本節ノ規定ニ從ヒ證據調ヲ爲ス
コトヲ得
第三百四十四條證據保全ノ申立ハ訴訟
ノ繫屬中ニ在リテハ其ノ證據ヲ使用ス
ヘキ審級ノ裁判所ニ其ノ提起前ニ在リ
テハ訊問ヲ受クヘキ者若ハ文書ヲ所持
スル者ノ居所又ハ檢證物ノ所在地ヲ管
轄スル區裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
急迫ナル場合ニ於テハ訴ノ提起後ト雖
前項ノ區裁判所ニ證據保全ノ申立ヲ爲
スコトヲ得
第三百四十五條證據保全ノ申立ニハ左
ノ事項ヲ明ニスルコトヲ要ス
一相手方ノ表示
二證スヘキ事實
三證據
四證據保全ノ事由
證據保全ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ
要ス
第三百四十六條證據保全ノ申立ハ相手
方ヲ指定スルコト能ハサル場合ニ於テ
モ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ
裁判所ハ相手方ト爲ルヘキ者ノ爲ニ特
別代理人ヲ選任スルコトヲ得
第三百四十七條栽判所ハ必要アリト認
ムルトキハ訴訟ノ繫屬中職權ヲ以テ證
據保全ノ決定ヲ爲スコトヲ得
第三百四十八條證據保全ノ決定ニ對シ
テハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百四十九條證據調ノ期日ニハ申立
人及相手方ヲ呼出スコトヲ要ス但シ急
速ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三百五十條證據保全ニ關スル記錄ハ
本訴訟ノ記錄ノ存スル裁判所ニ之ヲ送
付スルコトヲ要ス
第三百五十一條證據保全ニ關スル費用
ハ訴訟費用ノ一部トス
第二章區裁判所ノ訴訟手續
第三百五十二條區裁判所ノ訴訟手續ニ
ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前章
ノ規定ヲ準用ス
第三百五十三條訴ハ口頭ヲ以テ之ヲ提
起スルコトヲ得
第三百五十四條當事者雙方ハ任意ニ裁
判所ニ出頭シ訴訟ニ付口頭辯論ヲ爲ス
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ訴ノ提起ハ
口頭ノ陳述ニ依リテ之ヲ爲ス
第三百五十五條被告カ反訴ヲ以テ地方
裁判所ノ管轄ニ屬スル請求ヲ爲シタル
場合ニ於テ相手方ノ申立アルトキハ區
栽判所ハ決定ヲ以テ本訴及反訴ヲ地方
裁判所ニ移送スルコトヲ要ス此ノ場合
ニ於テハ第三十二條及第三十四條ノ規
定ヲ準用ス
移送ノ決定ニ對シテハ不服ヲ中立ツル
コトヲ得ス
第三百五十六條民事上ノ爭ニ付テハ當
事者ハ請求ノ趣旨及原因竝爭ノ實情ヲ
表示シテ相手方ノ普通裁判籍所在地ノ
區裁判所ニ和解ノ申立ヲ爲スコトヲ
得
和解調ヒタルトキハ之ヲ調書ニ記載ス
ルコトヲ要ス
和解調ハサル場合ニ於テ裁判所ハ和解
ノ期日ニ出頭シタル當事者雙方ノ申立
アルトキハ直ニ訴訟ノ辯論ヲ命ス此ノ
場合ニ於テハ和解ノ申立ヲ爲シタル者
ハ其ノ申立ヲ爲シタル時ニ於テ訴ヲ提
起シタルモノト看做シ和解ノ費用ハ之
ヲ訴訟費用ノ一部トス
申立人又ハ相手方カ和解ノ期日ニ出頭
セサルトキハ裁判所ハ和解調ハサルモ
ノト看做スコトヲ得
第三百五十七條口頭辯論ハ書面ヲ以テ
之ヲ準備スルコトヲ要セス
相手方カ準備ヲ爲スニ非サレハ陳述ヲ
爲スコト能ハスト認ムヘキ事項ハ前項
ノ規定ニ拘ラス書面ヲ以テ之ヲ準備ス
ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ準備書
面ノ提出ニ代ヘ口頭辯論前直接ニ相手
方ニ其ノ事項ヲ通知スルコトヲ得
第二百四十七條ノ規定ハ前項ノ通知ヲ
爲ササル場合ニ之ヲ準用ス
第三百五十八條準備手續ニ關スル規定
ハ區裁判所ノ訴訟手續ニ之ヲ適用セス
第三百五十九條判決ニ事實及理由ヲ記
載スルニハ請求ノ趣旨及原因ノ要旨、
其ノ原因ノ有無竝請求ヲ排斥スル理由タ
ル抗辯ノ要旨ヲ表示スルヲ以テ足ル
第三編上訴
第一章控訴
第三百六十條控訴ハ第一審ノ終局判決
ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得但シ當事者
雙方共ニ控訴ヲ爲ササル旨ノ合意ヲ爲
シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ合意ハ上告ヲ爲ス權利ヲ留保シ
テ之ヲ爲スコトヲ得
第二十五條第二項ノ規定ハ第一項ノ合
意ニ之ヲ準用ス
第三百六十一條財產權上ノ請求ニ關ス
ル判決ニ對シテハ控訴ニ因リテ受クヘ
キ利益ノ價額カ三百圓ニ滿タサル場合
ニ於テハ再審ノ事由アルニ非サレハ控
訴ヲ爲スコトヲ得ス
二
前項ノ規定ハ訴訟ノ目的ノ價額カ三百
圓以上ナル事件ニニ栽判所カ訴訟ノ一
部ニ付爲シタル判決ニハ之ヲ適用セス
第一項ノ價額ハ控訴提起ノ時ヲ標準ト
シテ之ヲ定ム
控訴審ニ於テ擴張シタル請求ノ價額ハ
第一項ノ價額ニ之ヲ算入セス
第一項ノ價額ヲ算定スルコト能ハサル
二
トキハ其ノ價額ハ三百圓ト看做ス第二
十三條ノ規定ハ第一項ノ價額ノ算定ニ
之ヲ準用ス
第三百六十二條訴訟費用ノ裁判ニ對シ
テハ獨立シテ控訴ヲ爲スコトヲ得ス
第三百六十三條終局判決前ノ裁判ハ控
訴裁判所ノ判斷ヲ受ク但シ不服ヲ申立
ツルコトヲ得サル裁判及抗〓ヲ以テ不
服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ此ノ限
ニ在ラス
第三百六十四條控訴ハ控訴審ノ終局判
決アル迄之ヲ取下クルコトヲ得
第二百三十六條第一項但書第二項第三
項第二百三十七條第一項及第二百三
十八條ノ規定ハ控訴ノ取下ニ之ヲ準用ス
第三百六十五條控訴ヲ爲ス權利ハ之ヲ
抛棄スルコトヲ得
第三百六十六條控訴權ノ抛棄ハ控訴提
起前ニ在リテハ第一審裁判所、控訴提
起後ニ在リテハ控訴校判所ニ對スル申
述ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス
控訴提起後ノ控訴権ノ攪棄ハ控訴ノ取
下ト共ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
控訴權抛棄ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達
スルコトヲ要ス
第三百六十七條控訴ハ判決ノ送達アリ
タル曰ヨリ二週間內ニ之ヲ提起スルコ
トヲ要ス但シ其ノ期間前提起シタル控
訴ノ效力ヲ妨ケス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第三百六十八條控訴ノ提起ハ控訴狀ヲ
第一審裁判所又ハ控訴裁判所ニ提出シ
テ之ヲ爲スコトヲ要ス
控訴狀ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ
要ス
-當事者及法定代理人
二第一審判決ノ表示及其ノ判決ニ對
シ控訴ヲ爲ス旨
第三百六十九條準備書面ニ關スル規定
ハ控訴狀ニ之ヲ準用ス
第三百七十條第一審裁判所ニ控訴狀ノ
提出アリタルトキハ裁判所書記ハ訴訟記
錄ニ控訴狀ヲ添附シテ遲滯ナク之ヲ控
訴裁判所ノ書記ニ送付スルコトヲ要ス
控訴裁判所ニ控訴狀ノ提出アリタルト
キハ裁判所書記ハ遲滯ナク第一審裁判
所ノ書記ニ訴訟記錄ノ送付ヲ求ムルコ
トヲ要ス
第三百七十一條第二百二十八條ノ規定
ハ控訴狀カ第三百六十八條第二項ノ規
違背
定ニ反スル場合、法律ノ規定ニ從ヒ控
訴狀ニ印紙ヲ貼用セサル場合及控訴狀
ノ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ之ヲ
準用ス
第三百七十二條控訴狀ハ之ヲ被控訴人
ニ送達スルコトヲ要ス
第三百七十三條被控訴人ハ控訴權消滅
ノ後ト雖口頭辯論ノ終結ニ至ル迄附帶
控訴ヲ爲スコトヲ得附帶控訴ニ因リテ
二
受クヘキ利益ノ價額カ三百圓ニ滿タサ
ルトキ亦同シ
第三百七十四條附帶控訴ハ控訴ノ取下
アリタルトキ又ハ不通法トシテ控訴ノ
棄却アリタルトキハ其ノ效力ヲ失フ但
シ控訴ノ要件ヲ具備スルモノハ之ヲ獨
立ノ控訴ト看做ス
第三百七十五條附帶控訴ニ付テハ控訴
ニ關スル規定ニ依ル
第三百七十六條控訴裁判所ハ第一審ノ
判決ニ付不服ノ申立ナキ部分ニ限リ申
立ニ因リ決定ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲
スコトヲ得
第三百七十七條假執行ニ關スル控訴審
ノ裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコト
司政大
前條ノ申立ヲ却下スル決定ニ對シテハ
卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百七十八條口頭辯論ハ當事者カ第
一審ノ判決ノ變更ヲ求ムル限度ニ於テ
ノミ之ヲ爲ス
當事者ハ第一審ニ於ケル口頭辯論ノ結
果ヲ陳述スルコトヲ要ス
第三百七十九條前編第一章ノ規定ハ別
段ノ規定アル場合ヲ除クノ外控訴審ノ
訴訟手續ニ之ヲ準用ス
第三百八十條第一審ニ於テ爲シタル訴
訟行爲ハ控訴審ニ於テモ其ノ效力ヲ有
ス
第三百八十一條第一審ニ於テ爲シタル
準備手續ハ控訴審ニ於テモ其ノ效力ヲ
有ス
第三百八十二條控訴審ニ於テハ當事者
ハ第一審裁判所カ管轄權ヲ有セサルコ
トヲ主張スルコトヲ得ス但シ專屬管轄
ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第三百八十三條反訴ハ相手方ノ同意ア
ル場合ニ限リ之ヲ提起スルコトヲ得
相手方カ異議ヲ述ヘスシテ反訴ノ本案
ニ付辯論ヲ爲シタルトキハ反訴ノ提起
ニ同意シタルモノト看做ス
第三百八十四條不適法ナル控訴ニシテ
其ノ欠缺カ補正スルコト能ハサルモノ
ナル場合ニ於テハ口頭辯論ヲ經スシテ
判決ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
第三百八十五條控訴裁判所ハ第一審判
決ヲ相當トスルトキハ控訴ヲ棄却スル
コトヲ要ス
判決カ其ノ理由ニ依レハ不當ナル場合
ニ於テモ他ノ理由ニ依リテ正當ナルト
キハ控訴ヲ棄却スルコトヲ要ス
第三百八十六條第一審判決ノ變更ハ不
服申立ノ限度ニ於テノミ之ヲ爲スコト
ヲ得
第三百八十七條控訴裁判所ハ第一審判
決ヲ不當トスルトキハ之ヲ取消スコト
ヨハナ
第三百八十八條第一審ノ判決ノ手續カ
法律ニ違背シタルトキハ控訴裁判所ハ
判決ヲ取消スコトヲ要ス
第三百八十九條訴ヲ不通法トシテ却下
シタル第一審判決ヲ取消ス場合ニ於テハ
控訴裁判所ハ事件ヲ第一審裁判所ニ差
戾スコトヲ要ス
第三百九十條前條ノ場合ノ外控訴裁判
所カ第一審判決ヲ取消ス場合ニ於テ事
件ニ付尙辯論ヲ爲ス必要アルトキハ之
ヲ第一審裁判所ニ差戾スコトヲ得
第一審裁判所ニ於ケル訴訟手續カ法律
ニ違背シタルコトヲ理由トシテ事件ヲ
差戾ストキハ其ノ訴訟手續ハ之ニ因リ
テ取消サレタルモノト看做ス
第三百九十一條事件カ管轄違ナルコト
ヲ理由トシテ第一審判決ヲ取消ストキ
ハ控訴裁判所ハ判決ヲ以テ事件ヲ管轄
裁判所ニ移送スルコトヲ要ス
第三百九十二條判決ニ事實及理由ヲ記
載スルニハ第一審判決ヲ引用スルコト
ヲ得
第三百九十三條訴訟完結シタル後上訴
ノ提起ナクシテ上訴期間滿了シタルト
キハ裁判所書記ハ判決又ハ第三百七十
一條ノ規定ニ依ル命令ノ正本ヲ訴訟記
錄ニ添附シ之ヲ第一審裁判所ノ書記ニ
送付スルコトヲ要ス
第二章上告
第三百九十四條上告ハ控訴審ノ終局判
決ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得
第三百六十條第二項ノ場合ニ於テハ第
一審判決ニ對シ直ニ上告ヲ爲スコトヲ
得
第三百九十五條上告ハ判決カ法令ニ違
背シタルコトヲ理由トスルトキニ限リ
之ヲ爲スコトヲ得
第三百九十六條判決ハ左ノ場合ニ於テ
ハ常ニ法令ニ違背シタルモノトス
法律ニ從ヒテ判決裁判所ヲ構成セ
サリシトキ
二法律ニ依リ判決ニ關與スルコトヲ
得サル判事カ判決ニ關與シタルトキ
三專屬管轄ニ關スル規定ニ違背シタ
ルトキ
四法定代理權、訴訟代理權又ハ代理
人カ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授催
ノ欠缺アリタルトキ
五口頭辯論公開ノ規定ニ違背シタル
トキ
六判決ニ理由ヲ附セス又ハ理由ニ齟
齬アルトキ
前項第四號ノ規定ハ第五十四條又ハ第
八十七條ノ規定ニ依ル追認アリタル場
合ニハ之ヲ適用セス
第三百九十七條前章ノ規定ハ別段ノ規
定アル場合ヲ除クノ外上告及上告審ノ
訴訟手續ニ之ヲ準用ス
第三百九十八條上告狀ニ上告ノ理由ヲ
記載セサルトキハ遲クトモ上告期間滿
了ノ日ヨリ三十日內ニ上告理由書ヲ提
出スルコトヲ要ス
第三百九十九條上告人カ前條ノ規定ニ
違背シ上告理由書ヲ提出セサルトキハ
上告栽判所ハ口頭辯論ヲ經スシテ判決
ヲ以テ上告ヲ却下スルコトヲ得
第四百條裁判長ハ相當ノ期間ヲ定メ答
辯書ヲ提出スヘキコトヲ被上告人ニ命
スルコトヲ得
第四百一條上告栽判所カ上告狀、上告
理由書、答辯書其ノ他ノ書類ニ依リ上告
ヲ理由ナシト認ムルトキハ口頭辯論ヲ
經スシテ判決ヲ以テ上生ロヲ棄却スルコ
トヲ得
第四百二條上告栽判所ハ上告理由ニ基
キ不服ノ申立アリタル限度ニ於テノミ
調査ヲ爲ス
第四百三條原判決ニ於テ適法ニ確定シ
タル事實ハ上告栽判所ヲ覊束ス
第四百四條第三百九十四條第二項ノ規
定ニ依ル上告アリタル場合ニ於テハ上
告裁判所ハ原判決ニ於ケル事實ノ確定
カ法律ニ違背シタルコトヲ理由トシテ
其ノ判決ヲ破毀スルコトヲ得ス
第四百五條第四百二條乃至前條ノ規定
ハ裁判所カ職權ヲ以テ調査スヘキ事項
ニ之ヲ適用セス
第四百六條上告栽判所ハ原判決ニ付不
服ノ申立ナキ部分ニ限リ申立ニ因リ決
定ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第四百七條上告ヲ理由アリトスルトキ
ハ上告裁判所ハ原判決ヲ破毀シ事件ヲ
原栽判所ニ差戾シ又ハ同等ナル他ノ栽
判所ニ移送スルコトヲ要ス
差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ新口
頭辯論ニ基キ裁判ヲ爲スコトヲ要ヌ但
シ上告裁判所カ破毀ノ理由ト爲シタル
事實上及法律上ノ判斷ニ覇束セラル
原判決ニ關與シタル判事ハ前項ノ裁判
ニ關與スルコトヲ得ス
第四百八條左ノ場合ニ於テハ上告裁判
所ハ事件ニ付裁判ヲ爲スコトヲ要ス
-確定シタル事實ニ付法令ノ適用ヲ
誤リタルコトヲ理由トシテ判決ヲ破
毀スル場合ニ於テ事件カ其ノ事實ニ
基キ裁判ヲ爲スニ熟スルトキ
二事件カ通常栽判所ノ權限ニ屬セサ
ルコトヲ理由トシテ判決ヲ破毀スル
トキ
第四百九條差戾又ハ移送ノ判決アリタ
ルトキハ裁判所書記ハ其ノ判決ノ正本
ヲ訴訟記錄ニ添附シ差戾又ハ移送ヲ受
ケタル裁判所ノ書記ニ之ヲ送付スルコ
トヲ要ス
第三章抗告
第四百十條口頭辯論ヲ經スシテ訴訟手
續ニ關スル申立ヲ却下シタル決定又ハ
命令ニ對シテハ抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百十一條決定又ハ命令ヲ以テ裁判
ヲ爲スコトヲ得サル事項ニ付決定又ハ
命令ヲ爲シタルトキハ當事者ハ之ニ對
シテ抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百十二條受命判事又ハ受託判事ノ
裁判ニ對シ不服アル當事者ハ受訴裁判
所ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得但シ其
ノ裁判カ受訴裁判所ノ裁判ナル場合ニ
於テ之ニ對シ抗告ヲ爲シ得ルモノナル
トキニ限ル
抗告ハ異議ニ付テノ裁判ニ對シテ之ヲ
爲スコトヲ得
第一項ノ規定ハ大審院ニ繫屬スル事件
ニ付受命判事又ハ受託判事ノ爲シタル
裁判ニ之ヲ準用ス
第四百十三條抗告裁判所ノ決定ニ對シ
テハ其ノ決定カ法令ニ違背シタルコト
ヲ理由トスル場合ニ限リ更ニ抗告ヲ爲
スコトヲ得
第四百十四條抗告及抗〓裁判所ノ訴訟
手續ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ第一
章ノ規定ヲ準用ス但シ前條ノ抗告及之
ニ關スル訴訟手續ニハ前章ノ規定ヲ準
用ス
第四百十五條卽時抗告ハ裁判ノ告知ア
リタル日ヨリ一週間內ニ之ヲ爲スコト
ヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第四百十六條抗告ハ原裁判所又ハ抗告
栽判所ニ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲ス
コトヲ要ス
抗告裁判所カ抗告ヲ受ケタル場合ニ於
テ適當ト認ムルトキハ事件ヲ原栽判所
ニ送付スルコトヲ得
第四百十七條原裁判所ク抗告ヲ受ケ又
ハ前條第二項ノ規定ニ依リ事件ノ送付
ヲ受ケタル場合ニ於テ抗告ヲ理由アリ
ト認ムルトキハ其ノ裁判ヲ更正スルコ
トヲ要ス
抗告ヲ理由ナシト認ムルトキハ意見ヲ
附シ事件ヲ抗告裁判所ニ送付スルコト
ヲ要ス
第四百十八條抗告ハ卽時抗告ニ限リ執
行停止ノ效力ヲ有ス
抗告裁判所又ハ原裁判ヲ爲シタル裁判
所若ハ判事ハ抗告ニ付決定アル迄原裁
判ノ執行ヲ停止シ其ノ他必要ナル處分
ヲ命スルコトヲ得
第四百十九條抗告裁判所ハ抗告ニ付口
頭辯論ヲ命セサル場合ニ於テハ抗告人
其ノ他ノ利害關係人ヲ審訊スルコトヲ
得
第四編再審
第四百二十條左ノ場合ニ於テハ確定ノ
終局判決ニ對シ再審ノ訴ヲ以テ不服ヲ
申立ツルコトヲ得但シ當事者カ上訴ニ
依リ其ノ事由ヲ主張シタルトキ又ハ之
ヲ知リテ主張セサリシトキハ此ノ限ニ
在ラス
-法律ニ從ヒテ判決裁判所ヲ構成セ
サリシトキ
二法律ニ依リ裁判ニ關與スルコトヲ
得サル判事カ裁判ニ關與シタルトキ
三法定代理權、訴訟代理權又ハ代理
人カ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權
ノ欠缺アリタルトキ
四栽判ニ關與シタル判事カ事件ニ付
職務ニ關スル罪ヲ犯シタルトキ
五刑事上罰スヘキ他人ノ行爲ニ因リ
自白ヲ爲スニ至リタルトキ又ハ判決
ニ影響ヲ及ホスヘキ攻擊若ハ防禦ノ
方法ヲ提出スルコトヲ妨ケラレタル
トキ
六判決ノ證據ト爲リタル文書其ノ他
ノ物件カ僞造又ハ變造セラレタルモ
ノナリシトキ
七證人、鑑定人、通事又ハ宣誓シタ
ル當事者若ハ法定代理人ノ虛偽ノ陳
述カ判決ノ證據ト爲リタルトキ
八判決ノ基礎ト爲リタル民事若ハ刑
事ノ判決其ノ他ノ裁判又ハ行政處分
カ後ノ裁判又ハ行政處分ニ依リテ變
更セラレタルトキ
九判決ニ影響ヲ及ホスヘキ重要ナル
事項ニ付判斷ヲ遺脫シタルトキ
十不服ノ申立アル判決カ前ニ言渡サ
レタル確定判決ト牴觸スルトキ
前項第四號乃至第七號ノ場合ニ於テハ
罰スヘキ行爲ニ付有罪ノ判決若ハ過料
ノ裁判確定シタルトキ又ハ證據欠缺外
ノ理由ニ因リ有罪ノ確定判決若ハ過料
ノ確定裁判ヲ得ルコト能ハサルトキニ
限リ再審ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
控訴審ニ於テ事件ニ付本案判決ヲ爲シ
タルトキハ第一審ノ判決ニ對シ再審ノ
訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第四百二十一條判決ノ基本タル栽判ニ
付前條ニ定メタル事由アルトキハ其ノ
裁判ニ對シ獨立ノ不服ノ方法ヲ定メタ
ル場合ニ於テモ其ノ事由ヲ以テ判決ニ
對スル再審ノ理由ト爲スコトヲ得
第四百二十二條再審ハ不服ノ申立アル
判決ヲ爲シタル裁判所ノ專屬管轄トス
審級ヲ異ニスル裁判所カ同一事件ニ付
爲シタル判決ニ對スル再審ノ訴ハ上級
裁判所併セテ之ヲ管轄ス
第四百二十三條再審ノ訴訟手續ニハ其
ノ性質ニ反セサル限リ各審級ニ於ケル
訴訟手續ニ關スル規定ヲ準用ス
第四百二十四條再審ノ訴ハ當事者カ判
決確定後再審ノ事由ヲ知リタル曰ヨリ
三十日
二週間内ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
判決確定後五年ヲ經過シタルトキハ再
審ノ訴ハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルト
キハ前項ノ期間ハ其ノ事由發生ノ日ヨ
リ之ヲ起算ス
第四百二十五條前條ノ規定ハ代理權ノ
欠缺及第四百二十條第一項第十號ニ揭
クル事項ヲ理由トスル再審ノ訴ニハ之
ヲ適用セス
第四百二十六條訴狀ニハ左ノ事項ヲ記
載スルコトヲ要ス
當事者及法定代理人
二不服ノ申立アル判決ノ表示及其ノ
判決ニ對シ再審ヲ求ムル旨
三不服ノ理由
第四百二十七條本案ノ辯論及裁判ハ不
服ノ範圍内ニ於テノミ之ヲ爲スコトヲ
得
不服ノ理由ハ之ヲ變更スルコトヲ得
第百二十八條再審ノ事由アル場合ニ於
テモ判決ヲ正當トスルトキハ裁判所ハ
再審ノ訴ヲ却下スルコトヲ要ス
第四百二十九條卽時抗告ヲ以テ不服ヲ
申立ツルコトヲ得ル決定又ハ命令カ確
定シタル場合ニ於テ第四百二十條第一
項ニ揭クル事由アルトキハ確定判決ニ
對スル第四百二十條乃至前條ノ規定ニ
準シ再審ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第五編督促手續
第四百三十條金銭其ノ他ノ代替物又ハ
有價證劵ノ一定ノ數量ノ給付ヲ目的ト
スル請求ニ付テハ裁判所ハ債權者ノ申
立ニ因リ支拂命令ヲ發スルコトヲ得但
シ日本ニ於テ公市送達ニ依ラスシテ其
ノ命令ノ送達ヲ爲スコトヲ得ヘキ場合
二郎丸
第四百三十一條督促手續ハ債務者ノ普
通栽判籍所在地ノ區裁判所又ハ第九條
ノ規定ニ依ル管轄區裁判所ノ專屬管轄
トス
第四百三十二條支拂命令ノ申立ニハ其
ノ性質ニ反セサル限リ訴ニ關スル規定
ヲ準用ス与
第四百三十三條支拂命令ノ申立カ第四
百三十條若ハ管轄ニ關スル規定ニ違背
スルトキ又ハ申立ノ趣旨ニ依リ請求ノ
理由ナキコト明ナルトキハ其ノ申立ハ
之ヲ却下スルコトヲ要ス請求ノ一部ニ
付支拂命令ヲ發スルコトヲ得サルトキ
其ノ一部ニ付亦同シ
申立却下ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立
ツルコトヲ得ス
第四百三十四條支拂命令ハ債務者ヲ審
訊セスシテ之ヲ發ス
債務者ハ支拂命令ニ對シ異議ノ申立ヲ
爲スコトヲ得
第四百三十五條支拂命令ニハ當事者、
法定代理人竝請求ノ趣旨及原因ヲ記載
シ且債務者カ支拂命令送達ノ日ヨリ二
週間內ニ異議ヲ申立テサルトキハ債權
者ノ申立ニ因リ假執行ノ宣言ヲ爲スヘ
キ旨ヲ附記スルコトヲ要ス
第四百三十六條支拂命令ハ之ヲ當事者
ニ送達スルコトヲ要ス
第四百三十七條債務者カ假執行ノ宣言
前異議ヲ申立テタルトキハ支拂命令ハ
其ノ異議ノ範圍內ニ於テ效力ヲ失フ
第四百三十八條債務者カ支拂命令送達
ノ日ヨリ二週間内ニ異議ヲ申立テサル
トキハ裁判所ハ債權者ノ申立ニ因リ支
拂命令ニ手續ノ費用額ヲ附記シ假執行
ノ宣言ヲ爲スコトヲ要ス但シ其ノ宣言
前異議ノ申立アリタルトキハ此ノ限ニ
在ラス
假執行ノ宣言ハ支拂命令ノ原本及正本
ニ之ヲ記載シ其ノ正本ヲ當事者ニ送達
スルコトヲ要ス
假執行ノ申立却下ノ決定ニ對シテハ即
時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百三十九條債權者カ假執行ノ申立
ヲ爲スコトヲ得ル時ヨリ三十日內ニ其
ノ申立ヲ爲ササルトキハ支拂命令ハ其
ノ效力ヲ失フ
第四百四十條假執行ノ宣言ヲ附シタル
支拂命令送達ノ日ヨリ二週間ヲ經過シ
タルトキハ債務者ハ其ノ支拂命令ニ對
シ異議ヲ申立ツルコトヲ得ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第四百四十一條區裁判所カ異議ヲ不適
法ト認ムルトキハ請求カ地方裁判所ノ
管轄ニ屬スル場合ニ於テモ決定ヲ以テ
其ノ異議ヲ却下スルコトヲ要ス此ノ決
定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百四十二條支拂命令ニ對シ適法ナ
ル異議ノ申立アリタルトキハ異議アル請
求ニ付テハ其ノ目的ノ價額ニ從ヒ支拂命
令ノ申立ノ時ニ於テ其ノ命令ヲ發シタ
ル區裁判所又ハ其ノ區裁判所ノ所在地
ヲ管轄スル地方裁判所ニ訴ノ提起アリ
タルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ督促
手續ノ費用ハ之ヲ訴訟費用ノ一部トス
前項ノ規定ニ依リテ地方裁判所ニ訴ノ
提起アリタルモノト看做サレタル場合
ニ於テハ裁判所書記ハ遲滯ナク訴訟記
錄ヲ地方裁判所ノ書記ニ送付スルコト
ヲ要ス
第四百四十三條假執行ノ宣言ヲ附シタ
ル支拂命令ニ對シ異議ノ申立ナキトキ
又ハ異議却下ノ決定確定シタルトキハ
支拂命令ハ確定判決ト同一ノ效力ヲ有ス
第四百四十四條乃至第四百九十六條削
除
第四百九十七條ノ二判決カ其判決ニ表
示シタル當事者以外ノ者ニ對シ效力ヲ
有ス可キトキハ其者ニ對シ又ハ其者ノ
爲メニモ之ヲ執行スルコトヲ得但第六
十四條ノ規定ニ依ル參加人ニ付テハ此
限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テ執行力アル正本ノ付
與ニ付テハ第五百十九條乃至第五百二
十一條ノ規定ヲ準用ス
第五百條中「原狀囘復又ハ」ヲ削ル
第五百一條乃至第五百十一條削除
第五百十二條中「故障ヲ申立又ハ上訴ヲ
起シタルトキ」ヲ「上訴ヲ提起シタルト
キ又ハ假執行ノ宣言ヲ付シタル支拂命
令ニ對シ異議ヲ申立テタルトキ」ニ改
ム
第五百十三條ニ左ノ一項ヲ加フ
第百十二條、第百十三條、第百十五條
及ヒ第百十六條ノ規定ハ第一項ノ規定
ニ依ル保證ニ付キ之ヲ準用ス
第五百十四條中「第十七條」ヲ「第八條」ニ
改ム
第五百十五條第二項中第二號ヲ左ノ如ク
改メ第三號乃至第五號ヲ削ル
第二外國判決カ第二百條ノ條件ヲ
具備セサルトキ
第五百四十一條中「第百三十九條、第百四
十條及ヒ第百四十五條乃至第百四十九
條」ヲ「第百六十七條、第百六十八條、第百
七十一條及ヒ第百七十一一條」ニ改ム
第五百四十五條第二項中「其原因ヲ生シ
且故障ヲ以テ之ヲ主張スルコトヲ得サル
トキ」ヲ「其原因ヲ生シタルトキ」ニ改ム
第五百四十八條第三項ヲ左ノ如ク改ム
右裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコト
ヲ得ス
第五百五十條第三號ヲ左ノ如ク改ム
第三執行ヲ免カルル爲メ擔保ヲ供
シタルコトヲ證スル書面
第五百五十九條中第三號及第四號ヲ削リ
第五號ヲ第三號トシ第二號ヲ左ノ如ク改
ム
第二假執行ノ宣言ヲ付シタル支拂
命令
第五百六十條中「債務名義」ヲ「債務名義
及ヒ訴訟上ノ和解竝ニ請求ノ抛棄又ハ認
諾」ニ改ム
第五百六十一條中「執行命令」ヲ「假執行
ノ宣言ヲ付シタル支拂命令」ニ改ム
第五百六十一條ノ二過料ノ裁判ハ檢事
ノ命令ヲ以テ之ヲ執行ス此命令ハ執行
力アル債務名義ト同一ノ效力ヲ有ス
第五百六十二條中「第十七條」ヲ「第八條」
三八人
第五百九十五條執行裁判所トシテハ債
務者ノ普通裁判籍ヲ有スル地ノ區裁判
所.此區裁判所ナキトキハ差押フヘキ
債權ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所管轄
權ヲ有ス
差押フヘキ債權ハ第三債務者ノ普通越
判籍ノ所在地ニ在ルモノトス但物ノ引
渡ヲ目的トスル債權及ヒ物上ノ擔保權
ヲ有スル債權ハ其物ノ所在地ニ在ルモ
ノトス
第六百七條中「第五百五條第二項ニ從ヒ
テ債務者ニ保證ヲ立テシメ又ハ供託ヲ爲
サシメテ」ヲ「第百九十六條第二項ニ從ヒ
テ債務者ニ擔保ヲ供セシメテ」ニ改ム
第六百三十七條中「看做ス旨ノ關席判決
ヲ爲ス可シ」ヲ「看做ス」ニ改ム
第六百三十八條第六百三十六條ノ判決
ノ確定シタルコト又ハ前條ノ規定ニ從
ヒ異議ヲ取下ケタルモノト看做サレタ
ルコトノ證明アルトキハ配當裁判所ハ
之ニ基キ支拂又ハ他ノ配當手續ヲ命ス
第六百四十一條中「第二十六條ノ規定ヲ
適用ス」ヲ「各區裁判所管轄權ヲ有ス此場占
合ニ於テ裁判所必要アリト認ムルトキハ
事件ヲ他ノ管轄區裁判所ニ移送スルコト
ヲ得」ニ改ム
第六百六十九條中「第百四十三條第三項」
ヲ「第百七十條第二項及ヒ第百七十三條」
ニ改ム
第六百七十七條中「第百二十九條乃至第
百三十二條及ヒ第百三十四條」ヲ「第百四
十二條乃至第百四十七條」ニ改ム
第六百八十一條中「取消ノ訴若クハ原狀
囘復ノ訴」ヲ「再審ノ訴」ニ改ム
第七百五十六條ノ二假處分ヲ取消ス判
決ハ財產權上ノ請求ニ關セサルモノニ
付テモ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第七百六十六條中「之ヲ爲シ其他法律ニ
別段ノ規定ヲ設ケサルトキハ第百五十七
條第三項ノ規定ニ從ヒテ」ヲ削リ同條ニ
左ノ一項ヲ加フ
裁判所相當ト認ムルトキハ新聞紙ニ公
告ス可キコトヲ命スルコトヲ得
第七百七十四條第二項第六號ヲ左ノ如ク
改ム
第六第四百二十條第四號乃至第八
號ノ場合ニ於テ再審ノ訴ヲ許
ス條件ノ存スルトキ
第七百七十六條中「第百二十條ノ條件ノ
存セサルトキト雖モ」ヲ削ル
第八百一條第一項第六號ヲ左ノ如ク改ム
第六第四百二十條第四號乃至第八
號ノ場合ニ於テ再審ノ訴ヲ許
ス條件ノ存スルトキ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八民事訴訟法中改正法律施行法案
(政府提出、貴族院送付)第一讀會
民事訴訟法中改正法律施行法案
(小字及-ハ貴族院修正)
民事訴訟法中改正法律施行法
第一條本法ニ於テ新法ト稱スルハ大正
十五年民事訴訟法中改正法律ニ依ル改
正規定ヲ謂ヒ舊法ト稱スルハ從前ノ規
定ヲ謂フ
第二條新法ハ新法施行前ニ生シタル事
モ
項ニ亦之ヲ適用ス但シ舊法ニ依リテ生
シタル效力ヲ妨ケス
第三條新法施行前ヨリ繋屬スル事件ニ
付新法ニ依リ管轄權アル裁判所ハ舊法
ニ依レハ管轄權ナキ場合ニ於テモ管轄
權ヲ有ス
前項ノ事件ニ付舊法ニ依リ管轄權アル
裁判所ハ新法ニ依レハ管轄權ナキ場合
ニ於テモ管轄權ヲ有ス
第四條新法ニ依リ新ニ期間ヲ定メタル
訴訟行爲ニシテ新法施行ノ際爲スヘキ
モノニ付テハ其ノ期間ハ新法施行ノ日
ヨリ之ヲ起算ス
第五條新法第八十五條ノ規定ハ新法施
行前同條ニ揭クル事由ヲ生シタル訴訟
代理ニシテ新法施行前委任消滅ノ通知
ヲ爲ササリシモノニモ之ヲ適用ス
第六條新法施行前ヨリ繋屬スル訴訟ニ
付テハ舊法ニ依リ訴訟費用ノ保證ヲ立
ツル義務ナキ者ハ新法ニ依リ擔保ヲ供
スルコトヲ要セス
第七條新法施行前ヨリ進行ヲ始メタル
法定期間及其ノ計算ハ舊法ニ依ル
新法施行前言渡シタル判決ニ對スル上
訴ノ期間カ新法施行後進行ヲ始メタル
場合亦前項ニ同シ
第八條新法施行前裁判所書記カ判決原
本ノ交付ヲ受ケタルトキハ其ノ判決ノ
送達ハ申立アルニ非サレハ之ヲ爲スコ
トヲ要セス
第九條新法施行前ヨリ繋屬スル訴訟ニ
付テハ特ニ裁判所ノ命シタル場合ニ限
リ新法ニ依リ準備手續ヲ爲ス
第十條新法施行前舊法ニ依リテ罰金又
ハ過料ニ處スヘキ行爲ヲ爲シタル者ニ
シテ新法施行ノ際未夕其ノ判決ヲ受ケ
サルモノハ新法ニ於テ過料ニ處スヘキ
場合ニ限リ新法ニ依リ處罰ス但シ過料
ノ額ハ舊法ノ罰金又ハ過料ノ額ヲ超ユ
ルコトヲ得ス
第十一條新法施行前ヨリ繋屬スル訴訟
ニ付言渡シタル判決ニ對シテハ上訴ニ
二
因リテ受クヘキ利益ノ價額三百圓ニ滿
タサル場合ニ於テモ上訴ヲ爲スコトヲ
得
第十二條新法施行前第一審裁判所又ハ
控訴裁判所力管轄違トシテ訴ヲ却下シ
タル場合ニ於テ上訴裁判所カ第一審裁
判所ニ其ノ管轄權ナシトスルトキハ判
決ヲ以テ事件ヲ第一審ノ管轄裁判所ニ
移送スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ上訴裁判所カ第一審
裁判所ニ管轄催アリトスルトキハ事件
ヲ其ノ裁判所ニ差戾スコトヲ要ス但シ
第一審裁判所カ管轄權アリト爲シタル
事件ニ付控訴裁判所力管轄違トシテ訴
ヲ却下シタル場合ニ於テハ上告裁判所
ハ事件ヲ控訴裁判所ニ差戾スコトヲ得
第十三條新法施行前抗告裁判所ノ爲シ
タル決定ニ對シテハ仍舊法ニ依リ更ニ
抗告ヲ爲スコトヲ得
第十四條關席判決ニ對シテハ仍舊法ニ
依リ故障ヲ申立ツルコトヲ得
執行命令ニ對シテハ舊法ニ依ル故障期
間內ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
第十五條新法施行前妨訴抗辯ヲ棄却シ
又ハ請求ノ原因ヲ正當ナリトシタル中
間判決ニ對シテハ仍舊法ニ依リ上訴ヲ
爲スコトヲ得
第十六條新法施行前ヨリ繫屬スル證書
訴訟及爲替訴訟ハ仍舊法ニ依リ之ヲ完
結ス但シ訴訟カ新法施行ノ際第一審ニ
繫屬スルトキハ新法施行ノ日ヨリ通常
ノ手續ニ於テ繫屬スルモノト看做ス
第十七條故障ヲ許ササル闘席判決ニ對
シテハ仍舊法ニ依リ上訴ヲ爲スコトヲ
得
第十八條新法施行前請求ノ抛棄又ハ認
諾ニ基キ判決ヲ求ムル申立アリタルト
キハ仍舊法ニ依リ裁判ス新法施行前闘
席判決ノ申立アリタルトキ亦同シ
第十九條新法施行前言渡シタル判決ニ
シテ舊法第四百二十二條ニ揭クルモノ
ニ對シ控訴ノ提起アリタル場合ニ於テ
ハ仍同條ノ規定ニ依ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=85
-
086・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 現行民事訴訟法ハ
明治二十三年ノ制定ニ係リマシテ、翌二十
四年實施セラレタモノデゴザイマス、爾來
三十有餘年ヲ經過シ、其間一二改正セラレ
夕所ハナイデモゴザイマセヌケレドモ、殆
ド制定ノ儘ト申シテ宜シウゴザイマシテ、
不備ノ點ガ甚ダ少クナイノデアリマス、本
法ノ改正ニ付キマシテハ、既ニ明治二十八
年ニ其必要ヲ認メラレマシテ、司法省ニ調
査委員會ヲ設ケラレ、是ガ調査ニ著手致シ
タノデゴザイマスガ、越エテ明治三十二年
其事業ハ法典調査會ニ引繼ガレ、法典調査
會ハ明治三十六年其草案ヲ脫稿致シマシ
テ、之ヲ廣ク世間ニ公表致シタノデゴザイ
やっ、其後明治四十四年ニ至リマシテ、法
律取調査委員會ニ於キマシテ、本法ノ改正
ニ著手致シ、前ニ公表セラレタル所ノ法典
調査會ノ草案ヲ基礎ト致シ、更ニ裁判所、
辯護士會、商業會議所、其他各方面ノ童見
ヲ徵シマシテ、審議ヲ進メマシタノデゴザ
イマス、其半バニ致シマシテ、大正八年法
律取調委員會ハ廢止セラレ、是ト同時ニ司
法省ニ民事訴訟法改正調査委員會ナルモノ
ヲ設ケマシテ、其委員ニ大體前ノ法典調査
會及法律取調委員會ノ委員タリシ人〓ニ依
囑致シマシテ、此事業ヲ繼續致シ、漸ク稿
ヲ脫シマシテ玆ニ上程セラレタル所ノ成案
ヲ得ルニ至ッタモノデゴザイマス、卽チ本案
ハ學者、老練ナル辯護士及其判官等、特別
ノ學識經驗アル委員ヲ以テ組織セラレタル
所ノ特別委員會ニ於キマシテ、多年ノ間各
方面ノ意見ヲ參考シ、慎重審議ヲ重ネ、起
草立案セラレタ所ノモノデゴザイマス而
シテ本案ハ現行法中第一編乃至第五編ノ改
正ヲ目的トシタモノデアリマシテ、第六編
以下ノ規定ニ付キマシテハ、其改正ヲ他日
ニ讓ルコトヽ致シ、唯〓第五編マデヲ改正
致シマシタル結果トシテ、當然改ムル必要
アル部分ニ付、整理的意味ニ於テ若干ノ改
正ヲ加ヘタニ過ギナイモノデゴザイマス、
本案ノ内容ハ現行法ノ第一編乃至第五編ニ
亙リ、殆ド其全部ヲ改メタモノデゴザイマ
シテ、要スルニ改正ノ眼目トスル所ハ多年
ノ經驗ニ基キ、現行法ノ弊ヲ改メタルモノ
デゴザイマシテ、畢竟訴訟ノ遲延ヲ防ギ、
其圓滑ナル進捗ヲ圖リ、且ツ訴訟ノ準備ヲ
周到ニシ、以テ審理ノ適正ヲ期セントスル
モノデゴザイマス、又民事訴訟法中改正法
律施行法案ハ、民事訴訟法改正ノ結果、改
正法施行ノ際ニ於ケル新舊二法ノ經過ヲ圓
滑ナラシムル爲メ、相當ノ規定ヲ設ケタル
モノデゴザイマス、右兩案中貴族院ニ於テ
修正セラレタル點ガ數箇所ゴザイマスガ、
政府ハ右修正ニ對シマシテハ同意ヲ表シタノ
デコザイマス、諸君ハ何卒愼重審議、協賛
ヲ與ヘラレンコトヲ切望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=86
-
087・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對スル質
疑ハ通告順ニ依リ、是ヨリ許可致シマス、
黑住成章君
〔黑住成章君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=87
-
088・黒住成章
○黑住成章君 只今議題ニナリマシタ民事
訴訟法改正案ニ對シテ、以下數點ノ質疑ヲ
試ミタイト存ジマス、民事訴訟法ハ私權救
濟ニ關スル唯一ノ法典デアリマス、之ヲ除
イテハ他ニ無イノデゴザイマス、故ニ此民
事訴訟法ノ改正ヲ致スコトニ付キマシテ
ハ此私權救済ノ精神ニ最モ適ヒ、國民生
活ニ全ク能ク適合スル所ノ法案ニセネバナ
ラヌコトハ言フマデモアリマセヌ、斯樣ナ
重大ナル使命ヲ持ノテ居リマス法典デアリ
マスカラ、是ガ根本的ニ改正ヲ爲サル今回
ノヤウナ場合ニ於キマシテハ、少クトモ相
當ナル期間之ヲ國民ニ公表セラレルト云フ
コトガ、極メテ妥當ナコトデアラウト考へ
ルノデアリマス、成程只今司法大臣ノ御說
明ノ如ク、本案ノ〓究ハ長キニ亙ノテ居リ
マスカラ、時々辯護士會ニ諮問シ、又ハ商
業會議所ニ之ヲ諮問セラレタコトモアリマ
スガ、併ナガラ今回出來上リマシタ所ノ此
法案ニ關シテハ、毫モ公表セラレヌノデア
リマス、是ハ一般國民ハ勿論ノコト、苟モ
司法運用ニ關與ヲ致シテ居リマスル所ノ司
法官、辯護士ニ對シマシテモ、此改正案ニ
付テハ實際上ノ利害關係ガ極メテ深イノデ
アリマシテ、其便否ニ付テハドウシテモ此
等ノ者ノ意見ヲ徴スル必要ガアルト本員ハ
考ヘルノデアリマス、改正案ハ御水知ノ如
ク大正十四年ノ十一月ニ成案ヲ致シマシタ
ガ、之ニ對シテドノ方面ニ對シテモ公表ヲ
セラレナイノデアル、直ニ議會ニ提出ヲセ
ラレマシテ通過ヲ圖ラントセラルヽノハ如
何ナル理由デアルカ、甚ダ其遣方ガ官僚的
デアルト私ハ考ヘル者デアリマス、又今一
ツ私ガ怪訝ニ堪ヘヌコトハ斯樣ナ重要ナ
ル法案ヲ御出シニナルニ付テ、他ノ立法立
案ノ例ニ做ハズ、之ヲ法制審議會ニ付議セ
ラレナカッタト云フノハ如何ナル理由デア
リマスカ、之ヲ一ツ御伺致シタイト思ヒマ
ス、斯ノ如キ國民ノ實生活ノ總テニ觸レタ
ル重大ナル問題ニ對シテ、司法大臣ハ如何
ニモ此法案ヲ輕視シタ形ガ見エルノデアリ
やっ、此法案ニ對シテ手續ガ深切デナイヤ
ウニ考ヘルノデアリマス、之ニ對シテ御所
見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、又此間
題ガ愈、御提案ニナッテ各方面ニ、相當ニ反
對ノ聲ガヤカマシイノデアル、現ニ東京ノ
兩辯護士會ノ如キ、極力反對ヲ致シテ居
ル、地方ノ辯護士會モ然リデアル、吾々ノ
耳ニハ又地方ノ商業會議所ニ於テモ相當ニ
反對ノ聲ヲ揭ゲテ居ルコトヲ聞クノデアリ
やっ、現ニ論ヨリ證據ハ此改正案ニ對シ
テ東京地方裁判所長今村判事ハ、個人ノ資
格デハアリマスルガ、劈頭第一ニ此改正案
ニ對シテ强烈ナル反對ノ意見ヲ發表セラレ
テ居ルノデアル、同所長ノ意見ハ同栽判所
ヲ代表スルモノデアルコトハ言フ迄モナ
イ、洵ニ一代ノ學者デアリ、人格ノ高イ、
殆ンド全國ノ司法官ノ師友トモナルベキ同
所長ノ反對ハ、獨リ同裁判所バカリデナ
ク、全國裁判所司法官ノ中ニモ共鳴スル者ガ
非常ニ多イデアラウ、私ハ斯樣ニ考ヘルノ
デアリマス、斯ノ如キ重大ナル法案ニ對シ
マシテ、考究ノ時間ヲ與ヘヨト私ガ述ベマ
スノハ、必シモ私ノ私見デハナイ、各万面
各地ニ於テ此論ノアルト云フコトニ對シ
テ、司法大臣ハ耳ヲ傾ケナカシタノハ如何
ナル理由デアルカヲ御何致シタイノデアル、
是ガ第一點デアリマスルガ、第二ニハ現行
民事訴訟法中改止ヲ要スル極メテ緊切ナル
部分ガアリト政シマシテモ、單行法ヲ以テ
其一部ノ改正ヲ爲スニ止メ、全部ノ改正ヲ
爲スノ必要ガナイト私ハ信ズルノデアリマ
スガ、之ニ對シテ政府ハ如何樣ナ御考ヲ御
持チニナッテ居ルカ、現行民事訴訟法ハ明
治二十四年施行以來、三十五年ノ間司法官
ハ勿論辯護士、總テ此運用ニ當ノテ居ル者
ハ能ク之ニ慣熟シテ居リマス、而シテ著シ
ク支障モナカッタノデゴザイマスノニ、此法
典ノ全部ノ改正ヲ爲サル、斯樣ナコトヲ企
テラレルノハ同法ノ運用上、卽チ司法官、
辯護士等ガ實際上訴訟上不便モ甚シイモノ
デアリマシテ、相當ニ混亂ヲ來ス虞アリト
私ハ思フノデアリマス、之ニ對シテハドウ
云フ御考ヲ御持チニナルノデアリマスカ、
立法技術上ノコトデハアルガ、極メテ遺憾
ヲ感ズル者デアリマス、之ニ關スル所見ヲ
伺ヒタイ、第三ハ本案ノ改正要項ハ數點ア
リマス、而シテ其主要ナル點ハ現行法中
訟訴遲延ノ原因ト認ムベキ訴訟上ノ規定ヲ
改メ、圓滿迅速ナル進捗ト審理ノ適正ヲ圖
ルコトニ主力ヲ注ガレテ居ルノデアリマ
ス、併ナガラ未ダ私ノ見ル所デハ、頗ル徹
底ヲ缺イテ居ル憾ガアルト考ヘルノデアリ
マイ、ソレデ爭點ノ極メテ簡單ナ事件ニ對
シテ之ヲ特別手續トシテ、而シテ迅速ニ終
局セシムル方策ヲ樹立スルコトガ、訴訟當
事者タラントスル者ノ最モ希望スル所デア
ルニ拘ラズ、之ヲ御認メニナラナカッタノ
ハ如何ナル理由デアルカ、此度御改正ニナッ
夕目的精神ニ副ハヌト私ハ考ヘルノデアリ
マスガ、此點ニ對シテ御答辯ヲ望ムノデア
リマス、第四點ハ訴訟上ノ救助ニ關シテ御
伺ヲ致シタイ、申スマデモナク近代世相ニ
於テハ無產者ニ對シテハ有ユル方法ニ於
テ、一般ノ考慮ヲ拂ッテ居ラルヽ卽チ政府ニ
於テモ經綸及立法ノ上ニ於テ社會政策的ノ
方策ヲ加味セザルハナキ位ニ常ニ努メラレ
テ居ル位デアル、然ルニモ拘ラズ、改正案
ニ於テハ無產者ノ權利仲張及應訴ニ關スル
訴訟上ノ救助ニ付テ、時代民心ニ順應スル
改正ノナイノハ如何ナル理由デアリマス
カ、現行法ハ訴訟上ノ救助ニ對シテ十二箇
條ノ規定ヲ存シテ居ルニ拘ラズ、改正案ハ
僅ニ七箇條ノ規定ヲ爲スニ止ッテ居ル、而モ
其內容ニ於テ救助ハ擴張セラレ、亦簡易且
便利ニナルダラウト認ムベキ改正點ガナイ
ノデアリマス、殊ニ現行法ノ第九十二條、
外國人ノ訴訟救助規定ヲ廢止セラレタノハ
如何ナル理由デアルカ、此點ヲ御伺致シマ
ス、更ニ第五、缺席判決ノ廢止ハ本員ハ改
惡デアルト考ヘルノデアリマス、缺席判決
ノ廢止ハ改正案ノ主要ナル條項ニナッテ居
リマスルガ、此點ハ尙ホ大ニ考慮ノ要ガア
ルト思フ、考慮ノ必要ガアルト私ハ考へ
ル、現行民事訴訟法中ノ缺席判決ニ關スル
條項ニ付テハ本員モ其改正ヲ要スル點ノ
アルコトハ認ムル者デアリマス、併ナガラ
原則トシテ此缺席判決ノ制度ヲ是認スルト
云フコトハ訴訟進行ト審理ノ終局ヲ速カ
ナラシムルコトヲ主眼トシタル改正案ノ根
本精神ニ私ハ副フモノデア、ルト思フ、先ヅ
此點ニ付テ全國地方裁判所ノ大正十一年度
ノ對席判決ノ其件數ヲ調ベテ見ルト、對席
判決ハ一万四千件デアリマシテ、缺席判決
ハ約一万件ニ相成シテ居ルッサウシテ此中デ
故障ノ申立ヲ致シテ居ル者ガ、約五千五百
件、四千五百件ハ缺席判決ガ確定致シテ居
ルノデアル、卽チ缺席判決ノ爲ニ迅速ニ落
著シタルモノヽ頗ル多キコトヲ統計ガ物
語ッテ居ルノデアリマス、故ニ尙ホ大ニ此
缺席判決ニ付テハ考慮ノ餘地アリト申ス所
以デアル然ルニ之ヲ廢止セラレタノハ輕擧
デハナイカト云フコトヲ考ヘル者デアリマ
ス、又改正ヲセラレタ根本精神ニ悖リハシ
ナイカト考ヘルノデアリマス、此點ニ對シ
テ御意見ヲ伺ヒタイ、第六點ハ證書訴訟及
爲替訴訟ノ廢止デアリマス、此廢止ハ政府
ノ說明ヲ聽キマスルト、改正案ハ多年ノ經
驗ニ照シ該手續ハ其實益ガ甚ダ少イ、訴訟
關係ヲ徒ニ複雜ナラシムル弊ガアルトシテ
改正ヲスル、斯樣ニ仰セニナッテ居リマスル
ガ、此手續ニ依ル訴訟ハ極メテ多數デアリ
マシテ、殊ニ頻繁ニ商取引ヲ爲ス者ノ間ニ
最モ歡迎セラルヽ所デアリマス、吾々ハ斯
如キ手續ハ商人間ノ實際取引ニ鑑ミマシテ、
寧口擴張致シタイ考ヲ持ッテ居ルノデアリ
マ ·此點ニ關シ全國地方裁判所ノ大正十
一年度ノ統計ヲ見テ見マスト云フト、普通訴
訟ハ四万五千二十九件、爲替訴訟ハ八千三
百五十八件、其割合ハ五分ノ一デアリマス、
又大正十三年度ニ於テハ、普通事件ハ五万
二千五百九十六件、爲替訴訟ハ八千六百八
十四件、約六分ノ一ニナッテ居リマス、而
シテ其中ノ留保權行使ヲ致シテ居リマス所
ノ判決ハ、爲替訴訟トシテ判決セラレタモ
ノニ對シテ其一割以內、七八分ノ割合デア
リマス、是ニ由フテ之ヲ觀マスレバ留保權
行使ノ普通手續ニ依リマスル所ノ件數ハ
極メテ僅少デアルコトヲ物語ッテ居ルノデ
アリマス、故ニ此制度廢止ノ理由トシテ手
續ノ重複ヲ除ク爲ナリト政府ノ言ハレルノ
ハ統計ニ徵シマシテ甚ダ薄弱デアルト思
フ、此理由ハ成シテナイト考ヘテ居ルノデ
アリマス、寧ロ此訴訟ヲ存續セシムルト云
フコトガ、大ニ利益ガアルト考ヘルノデア
リマス、其一二ノ點ヲ申上ゲテ見マスレバ、
先ヅ第一ニ手形效力ヲ確保致シマシテ、流
通ヲ便ニスル利益ガアル、第二ニ權利關係
ノ存否ヲ明確ニ致シテ、無益ノ紛爭ヲ防グ
コトガ出來ル、第三ハ取引上ノ債權ハ日ヲ
逐フテ手形化セントスル現今ノ經濟界ノ傾
向デアルノデアリマス、而モ此趨勢ハ漸次
擴大致サレマシテ世界的ニナラントスル今
日、益〓此種ノ訴訟手續ハ必要ナリト考ヘ
ルノデアリマス、以上ノ理由ガアルニ拘ラ
ズ、此手續ヲ廢止セントセラレルノハ、商
取引ノ實際ヲ顧ミズ、卽チ世運ニ逆行セン
トスル立法デアルト考へマスルガ、政府ノ御
所見ハ如何デゴザイマスカ、第七ニ上訴ノ
點デアリマス、此上訴ノ制限規定ガ改正案
ニ新ニ生レテ居ルノデアリマス、上訴ヲ訴
訟價額ニ依シテ制限シタノハ今回ガ始メデ
アル、改正案ハ利益ノ價額三百圓未滿ノ場
合ニ於テハ、再審ノ理由アルニ非ザレバ上
訴ヲスルコトヲ得ザル旨ノ規定ガサレテ居
リマス、斯ノ如ク金額ニ依ッテ上訴制限ヲ
爲サレルト云フコトハ、甚ダ了解ニ苦ム所
デアリマス、爭點ノ如何ニ依ッテ、卽チ訴
訟ノ性質ニ依リ區別制限ヲ爲スコトハ、迅
速終局主義トシテ之ヲ認ムルコトガ出來マ
スガ、金額ニ依ッテノミ當事者ノ利益ノ輕
重ヲ定メ難キ場合ハ澤山アルノデアル、改
正案ガ訴訟價格ニ依リ上訴ヲ制限シタノ
ハ所謂物質主義ノ餘弊デアリマシテ、三
百圓未滿ノ訴訟ノ最モ多イ我ガ國情ニ適セ
ヌ訴權蹂躪ノ制度デアルト考ヘルノデアリ
マスガ、之ニ對シマシテ政府ハドウ云フ御
考ヲ持シテ居ラレマスカ、私共ノ考デハ
此上訴ノ制限ノ如キモノヲ金額デ爲サルト
云フコトハ、所謂「ブルジヨア」保主義ノ
一ツノ立法デ時代錯誤ノ甚イモノデ、今日
ノ民心ニハ甚ダ遠ザカッタ遣方デアルト考
ヘルノデアル、第八ハ改正案ハ期日變更ノ
制限ヲ規定致シマシタ、民事訴訟法ハ冒頭
ニ中上ゲマス如ク私權保護デアリマス、私
權救濟デアリマス、元來當事者處分主義ニ
依ルベキモノデアルト云フコトハ論ヲ俟タ
ヌ、又サウデアラネバナラヌ、然ルニ改正
案ガ期日變更ノ自由ヲ當事者ヨリ奪ハレタ
ノハ甚ダ不合理デハアリマセヌカ、私權
ニ關スル爭デアリマスル故ニ、訴訟中ト雖
モ合意之ヲ處分スルコトヲ得セシムルト云
フコトハ當然デアル、隨テ辯論期日ノ如キ、
當事者ノ意ニ反シテ制限スベキモノデハナ
イト私ハ考ヘルノデアリマス、又實際ノ方
面カラ考ヘテ見マシテモ、訴訟中合意延期
スルト云フコトヲ無意義ニスルコトハナイ
ノデアル、合意延期ノ半面ニハ示談ノ交涉
ヲ進メルトカ、或ハ立證準備上已ムヲ得ヌ
トカ、將又本人又ハ代理人ノ一身上餘儀ナ
キ差支ノ生ジタル場合デアルトカ、全ク無
意義ニ延期スルコトハ實際ナイノデアル、
訴訟ノ利害ハ當事者又ハ代理人ヲ離レテ他
ニハ無イ、司法連用上訴訟ノ進行ヲ速ニス
ル趣意ハ私モ是認ヲ致スノデアリマスガ、
訴訟ノ實體ノ處分權アル者ヲ、其意ニ反シ
テ、其爭ヲ進ムル上ニ於テ立證ノ爲ニ、又其
爭ヲ進ムルコトヲ欲セザル事情アル場合ニ於
テ、國家ガ之ヲ制限スルト云フコトハ甚ダ
失當ト考ヘルノデアリマスガ、政府ノ御所
見ハ如何デアルカ、第九點ハ、改正案ハ所
謂不干涉主義ガ職權主義ニ改メラレタノデ
アリマス、又準備手續ヲ著シク擴張セラレ
マシタル結果、口頭辯論主義ガ書面審理主
義ニ改メテ居リマス、是ガ大ナル改正點デ
アリマス、大體ニ於テ私共モ改善トハ之ヲ
認メマスガ、併シ此運用ニ其人ヲ得ナイト
云フト、前者-卽チ職權主義ノ弊ハ時ニ
訴訟當事者ノ意ニ反シ、動モスレバ私權救
濟ノ精神ニ反スル結果ヲ惹起スルノデア
ル、又後者卽チ書面審理主義ハ、之ヲ徒ニ
擴張致シマスト云フト、攻撃、防禦、論難、
總テ紙上ノ論戰トナリマシテ、記錄ガ段々
ト浩瀚ニナリ、其要領ヲ捕捉スルコトガ極メ
テ困難ニ立至ルノデアリマス、斯樣ニナリ
マシタナラバ、遂ニ憲法ノ認メマシタル所
ノ審理公開ハ期シ難イコトニナリ、口頭辯
論ト云フコトハ一片ノ形式ニ終ルコトニナ
リハシナイカト云フコトヲ氣遣フノデアリ
やく、故ニ先ヅ運用ハ人デナケレバナラヌ
ノデ、此ニ司法運用ニ當ル人ヲ得ルト云フ
コトガ極メテ大切ナ事デアリマス、此改正
案ニ對應スル裁判官ノ能率增進ニ付テ、
政府ハ如何ナル御所信ヲ御持チデアリマス
カ、具體的ノ方針ヲ承リタイノデアリマス、
私ノ考ヘル所デハ改正案實施後ハ定メシ
訴訟ハ增加致スト考ヘテ居ルノデアル、之
ニ對シテ其人ヲ得ナケレバ、如何ニ制度ヲ
御改正ニナッテモ、其改正ノ目的ヲ達成ス
ルコトハ出來ナイト考ヘルノデアリマス、
又當事者ノ代理人デアリマス所ノ辯護士ニ
關シマシテハ、夙ニ其改正ノ要ヲ認メ、長イ
間調査〓究ヲ進メテ居ラレルノデアリマス
ガ、辯護士法改正法律案ハ今ニ御提案
ニナラヌ、私ノ考ヘル所デハ本案ト同時ニ
提案セラレルノガ、最モ其時宜ヲ得タルモ
ノト思フノデアリマスガ、此御提案ノ無イ
ノハ如何樣ナ御考デアリマスカ、此點ニ付
テ一ツ御伺致シタイト思フノデアル、第十、
最後ニ今一ツ司法大臣ニ御伺ヲ致シタイ、
刑事訴訟手續ニ非ズシテ卽チ民事、人事、
訴訟手續ニ檢事ノ立會ヲ要シテ居ル規定ガ
現行法ニハアルノデゴザイマスガ、私ノ考
デハ檢事ガ此種ノ訴訟ニ干與スルト云フコ
トハ弊アッテ益ガナイト考ヘルノデアリ
マス、將來之ヲ御改正ニナル御考ガアルカ
ナイカ、此點ヲ御伺致シマス、此際檢事ノ監
督權ニ付キ質疑ヲシタイ、卽チ司法大臣ノ檢
事指揮ニ關シテ御尋ヲ致シテ見タイ、江木
司法大臣ハ先達某氏ヨリ或ル事件デ告發ヲ
サレテ居ル、卽チ刑事訴訟法上被疑者トナラ
レテ居ルノデアリマスガ、被疑者タル司法
大臣ガ事件ノ搜查ヲ致ス檢事、及ビ檢事總
長ニ監督權ヲ御持チデゴザイマスガ、被疑
者タル身分ト監督權ト競合シタ場合ニ於テ
ハ如何ナル態度ヲ御執リニナッテ居リマス
カ、明快ナル御答辯ヲ得タイ(拍手)
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=88
-
089・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 只今黑住君ヨリ多
年ノ御經驗ニ基ク、極メテ傾聽スベキ御意
見ニ基ケル所ノ御質問ガアリマシタ、一々
耳ヲ傾ケタ次第デゴザイマス、主ナル點ヲ
私ヨリ御答ヲ致シ、而シテ法律ノ細カイ技
術ニ涉リマス點ハ、若シ御必要デゴザイマ
スレバ、政府委員ヨリ御答ヲサシタ方ガ、却
テ御了解ヲ得ルニ便利デアラウカト思フノ
デアリマス、第一ニ民事訴訟法ハ私權救濟
ノ法律デアル、私權其モノト離ルベカラザ
ル所ノ重大ナル關係ガアルガ故ニ、廣ク之
ヲ國民ニ公表シテ、國民ノ意見ヲ徵シ、之
ヲ法典ニ結晶セシメルノガ適當デハナイ
カ、洵ニ御尤千萬ナルコトデアルト思フノ
デアリマス、政府ハ其手續ヲ執ッタノデア
リマス、法典調査會、法律取調委員等デ得
マシタル所ノ成案ヲ、廣ク辯護士會、裁判
所、商業會議所、其他各方面ニ配布致シマ
シテ意見ヲ求メ、而シテ其求メマシタ意見
ハ非常ニ浩瀚ナル所ノ意兄書卜云フモノ
ガ集ッテ居ルノデアリマス、之ヲ參照致シ
マシテ、最後ノ法典編纂ヲ爲シタ、凡ソ法
典編纂ヲ爲シマスル順序ハ、編纂ノ初ニ廣
ク世間ノ意見ヲ徴シテ、而シテ後ニ法律案
文ヲ作製スルアリ、先ニ法律案文ヲ作製シ、
而シテ後之ヲ廣ク世間ニ公表シテ、世間ノ
批評ヲ求メルアリ、ソレ〓〓方法ハアリマ
スガ、此民事訴訟法ノ如キハ、前段、廣ク
諸方ノ意見ヲ徴シマシテ、而シテ後ニ編纂
ニ著手シタ、而モ本案ガ出來マシテ、昨年
民事訴訟法調査會ノ手ヲ離レマシタノガ十
一月デゴザイマスガ、十一月直ニ之ヲ辯護
士協會、帝國辯護士協會、日本辯護士協會、
各栽判所、檢事局等ニ配布致シマシテ、ソ
レ〓〓批許ヲ求メタト云フヤウナ次第デゴ
ザイマシタ、決シテ取調委員會デ起草致シ
マシタ所ノ案ヲ仕舞込ンデ置イテ、少シモ
天下ニ公表シナカッタト云フ譯デハ斷ジ
テナイノデアリマス、出來ルダケ多クノ意
見ト云フモノヲ集メルト云フ目的ヲ以チマ
シテ、公表シタコトハ黑住君モ定メシ御聞
及ビノコトデアラウト思フノデアリマス、
而モ辯護士協會ヨリ印刷シテ、之ヲ各地方
ニ配布セラレテ、各地ノ辯護士ハ、皆ソレ
〓〓案案ヲ御持參ニ。ナッテ居ルト思フノ
デアリマス、何故法制審議會ニ掛ケナカッタ
カ、是ハ黑住君モ能ク御承知デゴザイマセ
ウガ、抑、法制審議會ヲ創設致サレマシタ
人ハ、中スマデモナク故原氏デアリマシ
テ、元々民法ノ淳風美俗ニ關スル所ノ法案、
竝ニ行政裁判法ト云フガ如キモノヲ改正ス
ルト云フ趣旨ヲ以チマシテ、此法制審議會
ハ大體ニ出來タカノヤウニ私ハ聞及ンデ居
ルノデアリマヌ、其後其都度起リマシタ事
柄ニ付キマシテ、諮問ハ致サレマシタケレ
ドモ、大體其所ニ在フタト思フノデアリマ
ス、然ルニ此民事訴訟法ノ草案ハ、御承知
ノ如ク只今中シタヤウナ古イ來歷ヲ持ッ
テ居リマス、法典調査會、法律取調委員、
民事訴訟法取調委員ト云フ如キ沿革ヲ經
テ、ソレ〓〓專門家ガ調査ニ從事致シテ
居ッタノデゴザイマス、且ツデス、且ツ此
案ニ參與シテ居ラレマスル所ノ者ハ、專門
家ノ殆ド全部ヲ網羅シテ居ル、而シテ法典
審議會ニ之ヲ付議致シマシテモ、矢張略〓
同一ノ方々ガ御審査ニナリマスルモノト、
大シタル違ヒハナイ筈ノモソデアラウ、大
體ニ於キマシテ、別個ノ沿革ヲ經テ來テ居
ルモノデゴザイマスルガ故ニ、特別ノ手續
ヲ執ル必要ハナカラウト云フ趣旨デ以テ、
付サナカッタ次第デゴザイマス、辯護士諸君
ニ多少ノ御意見ガアルト云フコトモ承ソ
テ居リマスガ、果シテ此辯護士諸君ノ意見
ニシテ、御採リニナルベキモノガアリマス
ルナラバ、ドウカ委員會等ニ於テ十分御審
議ノ上デ採否ヲ御決定ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス、唯〓辯護士諸君ノ意見ナルモノモ、
昨年十一月本調査會ノ意見ヲバ-成案ヲ
バ公ニ致シマシテ、而シテンレ〓〓調査會
ガ出來マシテ、其案ガ出來タモノラシクア
リマシタ、是等ハ若シ必要デアリマスレバ
ソレコン特別委員會ニ於テ、御審究ニナッ
テ宜イモノデアラウト思フノデアリマス、
今村判事ノ意見ト云フコトモ御述ニナリマ
シタガ、是ハ固ヨリ今村君一己ノ意見デア
ラウト思ヒマス、是ガ決シテ東京地方裁判
所ノ意見、若クハ全國ノ裁判所ノ意見ト云
フモノデモナイ次第デアリマシテ、特ニ之
ニ對シテ私ガ辯明ヲ-疎明ヲスル必要モ
ナカラウト思フノデアリマス、要スルニ本案
ニ對シマシテハ、明治時代、大正ノ初メハ
固ヨリノコト、各方面ノ意見ヲバ徵シマシ
テ、面シテ編纂ニ當ッタ、出來ルダケ廣ク、
而シテ出來ルダケ愼重ニ審議ヲ致シマシ
テ、成案ヲ得タモノデアルト云フコトヲ申
上ゲテ置キタイト思フノデアリマス、第二
點ハ、是ハ立法技術上ノ問題ト思ヒマスル
ガ、一部ノ改正デ宜イデハナイカ、固ヨリ
此改正ノ條項ハ、旣ニ御配付中上ゲマシタ
如ク、非常ニ澤山ノ條項ニ亙テ居ルノデ
アリマス、而シテ其條項ヲ悉ク改正セント
セバ、殆ド第一編乃至第五編ニ至ル迄ノ各
條ニ觸レナイモノハナイト云フ狀態ニナリ
マスガ故ニ、是ハ寧口立法技術上全部改正
ヲ爲シタ方ガ適當デアル、斯ウ云フヤウナ
趣旨ヲ以チマシテ、全部改正ニ致シタ次第
デゴザイマス、ンレカラ訴訟上ノ救助ノ問
題ニ付テ彼此レ御述ニナッタヤウデゴザイ
マスガ、是ハ現行ノ規定ト大ナル違ヒハナ
イノデアリマス、殊ニ外國人ノ救助ノ如キ
ハ規定ガ無イト云フヤウナ御說明モアッタ
ヤウデアリマスルガ、全然サウデハナイヤ
ウデアリマス、是等ハ又委員會ニ於テ詳シ
ク申上ゲル機會ガアラウカト思ヒマス、ソ
レカラ期日ノ變更ニ付テ頗ル力ヲ入レテ御
論議ニナッタヤウニ御聽取ヲシタノデアリ
ママ、成程民事ノ訴訟ハ當事者ノ利益ノ爲
ニ起ルモノデアリ、所謂當事者ノ利益ヲ尊
重スル、當事者主義デナクテハナラヌト云
フ點ハ洵ニ御尤ニ思フノデアリマス、併ナ
ガラ同時ニ又此訴訟ヲ成ベク早ク簡便ニ仕
末ヲ付ケルト云フコトハ、是亦當事者ノ私
權ヲ擁護スル所以トナルト思フノデアリマ
ス、随ヒマシテ新案ニ於キマシテハ當事
者ノ主義ヲ全然無視スルト云フ譯デハアリ
マセヌガ、同時ニ又職權主義ト云フモノハ
多キニ用キタノデアリマス、合意延期ノ場
合ニハ全然延期ヲ許サマト斯ウ云フコトニ
御解釋デアリマスルト、ソレハ大變ニ違フ
ノデアリマシテ、固ヨリ餘儀ナキ理由ガアリ
マシテ合意延期ヲ必要ト認メマシタ場合ニ
ハソレハ固ヨリ許サナクテハナラヌト思
フノデアリマス、唯〓ンレハ裁判所ノ職權
ニ依シテ許ス、現行法ト違マシタ所ハ、現行
法ハ必ズ合議ガアッタ場合ニハ許サナケレ
バナラヌト云フ解釋ニナッテ居リマシタ點
ガ變フテ來タヾケノ事デアラウト思フノデア
リマス、ンレカラ職權主義及準備手續ノ擴
張ハ大ニ改善デアル、此點ヲ御認メ下スッタ
コトハ洵ニ多謝スルノデゴザイマス、多謝
致シマスルガ、ソレト同時ニ此口頭辯論主義
ヲ廢メタノデハナイカ、是ハ斷ジテサウデ
ハナイノデアリマス、所謂準備手續ハ受命
判事ガ原被兩告ヲ喚ビマシテ、サウシテ有
ユル攻撃防禦ノ方法ヲ提出セシメマシテ、
總テノ爭點ヲ整理シテ、サウシテ之ヲ公判
ニ移ス、公判ニ移スノハ無論口頭辯論主義
デアルコトハ中スマデモナイコトデアリマ
ス、是ハ只今ノ御話ハ少シ御理解ノ違シテ
居ル所ガアリハシナイカト思フノデアリマ
ス、最後ニ此司法ニ當リマスル所ノ人ノ御
話ガアリマシタガ、是ハ洵ニ御尤千萬ナ事
デアリマシテ、凡ン斯樣ナ大キナ法典ヲ行
ヒマスルニハ、其人ヲ得ナイ場合ニ於キマ
シテハ、唯〓法文ノミ存シマシテ、實際ハ
行ハレナイト云フ結果ガ起ルノデアリマ
ス、之ヲ以チマシテ本案ハ今議會ニ御制定
ヲ願シテ置キマシテ、サウシテコヽ一年若ク
ハ一年半ノ間、十分此改正ノ趣旨ヲ判檢事
其他ノ方而ニ徹底セシメ、サウシテ大正十
七年中ニ至リマシテ、始メテ本案ノ實行期
ニ入リタイ、其間ニ十分ノ準備ヲ救正ヘル、
斯ウ云フ豫定ヲ持シテ居ルノデアリマス、
而シテ豫算ニ於テ御協賃ヲ經マシタル所ノ
司法ノ〓究ニ關スル經費ノ如キモ、先ヅ第
一著手トシテ栽判官等ヲ養成スル、此法律
ノ改正ノ趣旨ヲ徹底スル方面ニ用キラレル
所ノ主ナル要目ニナルト思フノデゴザイマ
ス、ソレカラ辯護士法ノ提案ニ付テ御尋デ
ゴザイマシタガ、是ハ私ヨリカ却テ黑住君
ノ方ガ能ク御承知デアラウカト思フノデア
リマスガ、只今辯護士ノ諸君ヲ主トシテ委
員トシテ居リマスル所ノ委員會ニ於テハ、
非常ニ御勉强ニナッテ成案ヲ急ガレツヽア
ルノデアリマス、固ヨリ司法當局ニ於テ責
任ガゴザイマスルガ、出來得ベクンバ次ノ議
會ニハ提出ヲ致シタイト云フ考ヲ持ッテ居
ルノデアリマス、而シテソレノ實行ニハ
本案ハ大正十七年中ニ實行サレルコトヽ致
シマスト、無論ソレ迄ニ間ニ合フコトデア
ラウト思フノデアリマス、ソレカラ最後ニ
檢事ノ立會云々ノコトヲ御述ニナリマシタ
ガ、是ハ成程御說ノ通リニ相當害ガアルト
モ認メラレナイカ知レマセヌガ、甚ダ益ノ
少イト云フ點モアルノデアリマス、其點ニ
付テハ今度ノ訴訟法ノ改正ニ付テモ大ニ
考慮ヲ加ヘテ、將來非訟事件手續法其他ノ
改正ニ付テモ、御說ノ通リヲ參考スルト云
フコトニナッテ居リマス、ソレカラ最後ノ
司法大臣ハ御話ガアリマシタル如ク、儉事
局ヲ監督シ檢察事務ヲ指揮致シマスル、其
臟權ヲ持ノテ居ルコトハ間違ヒナイノデゴ
ザイマス、併ナガラ一年ニ何十万ニ上リマ
ス所ノ刑事事件ヲバ、一々司法大臣ガ指揮
致シマスルト云フコトハ、到底出來ルコト
デハナイノデアリマス、因リマシテ或ル特
殊ノ事項ニ付テハ各〓判所ノ檢事局ヨリ司
法大臣ノ指揮ヲ受ケシムベク、豫メ訓令ヲ
出シテアル次第デゴザイマス、而シテ全般
ノ事件ニ付キマシテ如何ニ取扱フカ、此事
件ノ事ヲ質問者ニ於テ既ニ徇述ニナリマシ
タ以上ハ、私ハ此事件ニ付テ今日マデ栽判
所ニ於テ如何ナル進行ヲ取ノタカト云フ點
ダケハ申上ゲル義務ガアラウト思フノデア
リマス、丁度好イ機會ヲ與ヘラレタト思ヒ
マスルガ故ニ、私ハ此機會ニ於キマシテ、
裁判所ノ進行ノ模樣ヲ申上ゲテ置イタ方
ガ、御理解ヲ得ル上ニ於テ便利デアラウト
思フノデアリマス、固ヨリ私一個人ガ被疑
者トナリマシタ事件ニ付キマシテ、司法大
臣ト致シマシテ私ガ事件檢察事務ヲバ指揮
致シマスルト云フコトハソレハ固ヨリ適
當デナイト思ヒマスルガ故ニ、彼ノ事件ノ
如キハ專ラ公明ナル檢事局ノ措置ニ委ネル
外ナイト考ヘテ居ルノデゴザイマス、併ナ
ガラ彼ノ事件ノ內容ニナッテ居リマスル事
柄ハ、是ハ先般砂田君デアリマシタカ、或
ハ板野君デアリマシタカ能ク記憶致シマセ
ヌガ、質問ガアリマシタガ故ニ、私ハ此機
會ニ於テ之ヲ申上ゲテ置キマシタ方ガ、御
理解ヲ得ル上ニ於テ便利デアラウカト思フ
ノデアリマス、抑、此事件ノ事ヲ申上ゲル
ニハ今回江木翼ニ對シマシテ起サレタ告
發事件ノ內容ニ亙ッテ、私ガ申上ゲルコトハ
甚ダ不當デアルト思フ、是ハ私ハ申上ゲル
ノハ必要ノナイ事ト思フノデアリマス、併
ナガラ先般砂田君、板野君等カラ御述ニナ
リマシタ趣旨ヲ伺ヒマスルト云フト、江木
翼ナル者ガ何某ト云フ者ヲ〓唆シテ或ハ誣
告ヲサシタ、或ハ內田良平氏ヲ陷擠セント
欲シタ(「其通リ」ト呼フ者アリ)ト云フガ如
キ御趣意ガアリマシタガ故ニ、其點ニ付キ
マシテハ既ニ加藤首相暗殺事件ナルモノハ
(「脫線々々」ト呼フ者アリ)四人ノ被告ノ中
デ三人マデハ服罪ヲ致シタノデアリマス、
事件ガ確定ヲ致シテ居ルノデアリマスガ故
ニ、其確定ヲ致シテ居ル所ノ裁判所ノ記錄
ニ依リマシテ、事件ノ內容ヲ申上ゲレバ、
或ハ明確ニナラウカト思フノデアリマス
(拍手)抑、加藤前總理大臣暗殺事件ノ發端
ト云フモノハ、被告ノ中ノ二三人ノ者ガ大
正十四年ノ三月中旬頃カラ、普選案ヲ阻止
スル目的ヲ以テ此議院ヲバ爆破シヤウト云
フ計畫ヲ立ッタニ始ッテ居ルノデアリマス、
始メハ暗殺デハナイノデアリマス、議院ヲ
爆破シヤウト云フノガ其目的デアッタノデ
アリマス、然ルニ三月二十八日ニ至リマシ
テ、普選案ニ對スル兩院協議會ノ協議ガ成
立致シマシタノヲ以テ、其計畫ヲ一變シテ、
三月二十九日朝-三月二十九日デスヨ、
上旬デハナイ、下旬、三月二十九日ノ朝ニ、
加藤總理大臣暗殺ノ計畫ヲ爲スニ至ッタノ
デアリマス、暗殺ノ計畫ガ始ッタノハ(「神田
銀行ハドウシタ」ト呼フ者アリ)三月二十九
日ナンデアリマス(「御前ガ三百圓ヤッタラ
ウ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=89
-
090・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜甫ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=90
-
091・江木翼
○國務大臣(江木翼君)(續) 而シテ此暗殺
事件ノ檢擧ノ發端ト云フモノハ四月七日
デアリマス、卽チ尾道鷹一、田中次郞吉、
此兩人ニ對シマシテ、警視廳ガ拘引ヲ始メ
マシタソニ事件ガ發端ヲシテ居ルノデアリ
マス、四月十日ニ至リマシテ兩人ハ拘引セ
ラレ、四月十七日、十八日ニ至リマシテ、
此尾道、田中雨人ノ外ニ佐藤計造ナル者ガ
共犯者デアルト云フコトノ供述ガアンタノ
デアリマス、ソコデサウ云フ供述ガ起リマ
シタモノデアリマスルカラ、四月十九日ニ
至リマシテ佐藤計造ト云フモノガ拘引セラ
ルヽコトヽナッタノデアリマス、佐藤ガ拘引
致サレマシテ、ソコデ始メテ此「ビストル」
ノ詮議ニ這入リマシタ所、佐藤ノ曰ク、此
「ピストル」ハ葛生能久ト云フ人カラ人手シ
タノデアル
〔「ソレハ御前ガ仕組ンダ仕事ダ」ト呼
ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=91
-
092・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郎君) 靜肅ニ頤ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=92
-
093・江木翼
○國務大臣(江木翼君)(續) 葛生能久ナル
人ガ拘引致サレマシテ、「ピストル」交付ノ
事實ヲ聽カレマシタ所、全ク其事實ナキ事
ガ明白ニナッタノデアリマス、玆ニ至リマシ
テ更ニ佐藤ヲ調ベマシタ所、佐藤ハ二十二
日ニ至リマシテ其供述ヲ變更シテ、池田弘
壽ナル者カラ其「ピストル」ヲ得タト云フコ
トノ供述ヲシタノデアリマス、此ニ至リマ
シテ二十三日ニ至ンテ池田弘壽ヲ取調ベタ
所、小幡虎太郞ナル者ノ求メニ依ッテ交付
シタノデアルト云フ、ソコデ二十四日ニ至
リマシテ小幡ヲ調べマシタ所、小幡ハ始メ
テ內田ノ命ニ依シテ佐藤ニ渡シタノデアル、
斯ウ云フコトニナッタノデアル、茲ガ大事
ナ所デアリマス、卽チズット裁判所ノ豫審
判事ノ手、檢事ノ手ニ於テ調査中ニ內田良
平君ガ此嫌疑者トナルト云フ順序ヲ經テ居
ル、何人ノ告發モ何人ノ告訴モナイノデア
リマス、而シテ二十五日ニ至リマシテ、內
田良平ニ對スル所ノ强制處分ナルモノガ請
求〓サレマシテ、二十六日ニ拘引ニナッタ、
大阪ヨリ拘引ニナッタ、此四月二十五日ニ若
シ司法大臣ガデス、小川君ガ此當時司法大
臣デ居ラレマシタケレドモ、若シ小川君ガ
此事件ヲ指揮致サレタト致シマスト、小川
君ハ必ズヤ此內田君ニ對スル所ノ强制處分
ノ要求竝ニ拘引ニ付テ加記憶ガアルベキ筈
ノ事デハナイカト思フノデアリマス、之ヲ
要シマスルニ内田良平氏ニ對スル所ノ事件
ハ、何人ノ告發ニモ依ラズ、告訴ニモ依ラ
ズ、檢事ノ手ニ依ッテ發見セラレタ所ノ事件
デアルト、斯樣ニ私ハ申上ゲテ置クノデア
リマス、之ヲ申上ゲレバ大〓此事件ノ內容
ハ御分リニナルコトト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=93
-
094・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 黑住成章君
〔黑住成章君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=94
-
095・黒住成章
○黑住成章君 私ハ曩ニ十點ノ箇條ヲ擧ゲ
テ質問ヲ致シタノデアリマスガ、僅ニ四點
ノ答辯ヲ得タノミデアリマス、甚ダ遺憾ニ
存ジマス、殊ニ此御答辯ノ順序體容ヲ考ヘ
テ見マスト云フト、司法大臣ノ懷カレテ居
ル思想ニ於テ甚ダ私ハ遺憾ナ點ヲ發見シ
メ、例ヘバ今日ノ實際取引ニ於テ又多々益〓
是ガ擴大サレントスル商人間ノ取引、是
等ノ實際ヲ御考慮ニナッテ居レバ、爲替訴
診證書訴訟ト云フ特別手續ヲ廢サレルト
云フコトハ甚ダ無理解千万ナ事デアル、段々
ト是ノ多クナランコトヲ-斯様ナ手續
ニ依ッテ裁判ヲ受ケントスル希望ガ商人間
ニ多イノデアル、又迅速ニ片付ケルト云フ
意味ニ於テモ、此等商人ノ熱望スル所デア
ル、又本案ノ御趣意ニモ副フノデアル、斯
樣ナ意味デ私ハ此廢サレタノガ如何ナル理
由ニ依ルカト云フコトヲ問ヒマシタノデス
カ、一言モ御觸レニナラヌ、之ニハ御答辯
ガナイ、或ハ政府委員ヲシテ答辯ヲセシム
ルト云フ御考デアルカモ知レナイガ、其考ガ
イケナイ、口ニ司法ノ民衆化ヲ說キ、近ク
ハ陪審制度ガ行ハレル、私ハ先年司法運用
ニ關スル質問ヲ致シマシタ際ニ、詳シク申
上ゲマシタ通リ、何トナク裁判所ト云フモ
ノヲ國民ガ避ケタガリ、忌嫌フ一ツノ思想
ガアル、何ガ故カ、是ハ色〓理由ハ澤山デ
ゴザイマセウ、併ナガラ政府當局ノ人ハ努
メテ此思想ヲ寛和シ、而シテ國民ニ信賴セシ
メ、尊信セシメテ、初メテ裁判ニ威嚴アル
ベキモノデアル、此司法ト云フモノヲ國民
ニ能ク理解スルヤウニ、徹底スルヤウニ努
メナケレバナラヌト云フコトヲ、先年私ハ
司法運用ニ關スル質問デ申シタコトガアル
ノデアリマス又幾多ノ施設ニ於テ左樣ニ
段々民衆化スル一ツノ傾向ニナッテ居ルト
私ハ考ヘテ居リマシタ、所ガ只今ノ司法大
臣ノ御答辯ノ全體ヲ伺ヒマスルト云フト、
有ユルモノガ官僚的デ、斯樣ナ實際ノ商取
引ト云フモノニ考慮ヲ拂シテ、國民ノ要望ガ
何處ニアルカト云フヤウナコトヲ御注意ニ
ナッテ居シタナラバ、第一番ニ此點ヲ答ヘナ
ケシバナラヌノデアリマス、然ルニ此答辯
ヲ御避ケニナシテ居ルト云フコトハ、頗ル官
僚式デ、甚ダ殘念ニ思フノデアル、又ソレ
カラ私ガ成案ヲ國民ニ御〓シニナラヌ、國
民ノ私權保護、私權救濟ノ爲ニ出來テ居ル
民事訴訟法ノ成案ヲ何故御而シニナラヌ
カ、成程永イ懸案デゴザイマスカラ、其途
中デ辯護士會ニ諮問サレタトカ、商業會議
所ノ意見ヲ問フタコトモアリマセウ、併シ
成案ニ付テハ國民ニ公表サレテ居ナイ、是
ハ或ル栽判所デ御ヤリニナッタカ知ラヌガ、
寧口裁判所ヨリハ、國民卽チ此保護ヲ受ク
ベキ私權關係ノ取引ノ頻繁ナル商人團體、
卽チ商業會議所等ニハ少クモ意見ヲ徵サナ
ケレバナラヌ、成程先ニサウ云フ方法ヲ
採ッタデハナイカト云フガ、成案ヲ示サン
デ、ソレガ何ニナリマスカ、意見ヲ聽イテ
之ヲモ參酌シテ、國民ノ實際生活ニ副フ立
法ヲシテコソ初メテ、立憲的デアルデハナ
イカ、甚ダ私ハ其點ヲ殘念ニ思フ唯、と一局
部ニ其出來夕案ヲ持シテ行シタダケデ宜イト
云フノデハナイ、色〓取引ヤ、實際生活カ
ラ見テ不便ノ所ガアル、其意見ヲ徴シテ、
サウシテ之ニ依シテ立テラレネバナラヌデ
ハナイカ、現ニ論ヨリ證據、衷京ニ二ツノ
護辯士會ガアル、其護辯士會全體ガ反對致
シテ居ルデハナイカ、貴方ノ管轄下ニ於ケ
ル所ノ今村地方裁判所長モ反對ノ意見ヲ出
シテ居ル、アレハ個人ノ意見デ裁判所ノ意
見デハナイト仰シヤルガ、私共今村所長ハ
實ニ崇拜スベキ、我國ノ偉キ司法官デアル
ト思フ、東京地力裁判所ハ勿論ノコト、全
國ノ司法官タル者ハ、同判事ヲ師表ト致シ
テ居ルト思フ、貴方ノ脚下カラ、此立派ナ
ル人ガ反對致シテ居ルデハナイカ、民間ニ
反對ガアリ、司法ノ運用ニ年中參與致シテ
居ル辯設士會ガ反對ヲ致シ、部下ガ反對致
シテ居ルト云フコトガ、貴方ノ御耳ニ這入
ラヌノデアリマスカ、而カモ一二ノ辯護士
ガ反對スルヤウナモノデハアリマセヌ、調
査姿員會ヲ拵ヘテ辯護士會ガ反對ノ意見ヲ
發衣致シタデハナイカ、之ニ對シテ徹底シ
タル御答辯ガナイコトヲ甚ダ殘念ニ思フ、
又法制審議會ニ何故御掛ケニナラナンダ、
イヤ、他ノ方デヤッテ居ル人間ト一ツデア
ルカラ、ソレデ宜イト云フ御詰ガアリマシ
タガ、私ハ法制審議會ノ出來マシタ趣意ハ
非常ニ尊重シ、吾々ハ敬意ヲ拂ッテ居ルノ
デアリマス、是ハ御承知ノ通リ日本ニ初メテ出
來夕所ノ陪審法ヲ審査スベク出來タモノデ
アルガ、色々ナモノヲ其後打込ンデ、重要
ナモノハ附議サレテ居ルデアリマセヌカ、
然ルニ此言際國民生活ニ離ルベカラザル重
大ナル大法案、之ヲ付議サレヌト云フコト
ガ甚ダイカヌ、官僚式デアルト私ガ謂フ所
以デアル、斯樣ナ點ハ私ハ强テ再質問スルノ
デハナイ、一々御答辯ガ無クテモ、何レ又
詳細ナ點ハ一問一答デ貴方ニ御質問スル時
ガアルト思ヒマスカラ、今日ハ時間ヲ節約
シテ問ヒマセヌ、職權主義ガドウデアル、
或ハ書面審理主義ガドウデアルト云フヤウ
ナコトハ一々後ニ詳細ニ質問スルコトニ
致シマシテ、一ツ最後ノ答辯ガ私ハ甚ダ氣
ニ喰ハヌノデアル、私ノ論旨ヲ御取違ヘニ
ナンテ居ル、私ハアノ事件ノ內容ヲ喋舌ッテ
貰ハウト云フノデハナイ、一日半時モ司法
大臣ノ職能ト云フモノハ停止ナイノデア
ル、上御一人ニ對シテハ輔弼ノ責任ガア
リ、部下ニ對シテハ監督ノ權ガアル、其監
督權、檢事全體ノ監督權ヲ御持チニナッテ
居ル人ガ被疑者ニナラレタ時ニ、此檢事ニ
對スル監督權ノ作用ト云フモノハドウ云フ
狀態ニナッテ居ッタノデアリマスカ、之ヲ聽
クノデアル、此自己ノ職責ニ忠ナラザルベ
カラサル監督權ハ自ラ被疑者タル時ハドウ
ナルデアリマセウ、被疑者ニナッテ刑事訴
訟法ニ規定シテ居ル所ノ謹愼ヲ表セント欲
セバ、己レノ監督權ガ行ハレヌデハアリマ
セヌカ、此競合ヲ如何ニスルカト云フコト
ヲ伺ノタノデアル、此事件ノ橫町ノ貴方ノ答
辯ヲ聞クベク質問シタノデハナイ、其純ナ
ル一ツノ法律問題、純ナル責任問題ダケニ
限局シテ其點ダケ明確ニ御答辯ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=95
-
096・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 江木司法大臣
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=96
-
097・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 檢事局ガ法ヲ執リ
マス前ニハ、固ヨリ官ノ上下ガ無ク、政黨
政派ノ區別ガアルベキ筈ハアリマセヌ、檢
事局ハ獨立ノ職権ニ於テ指揮ヲ受ケナイ場
合ニ於テハ、其權利トシテ取調べルダケノ
コトハ當然ニ出來ルノデアリマス、私ノ關
係致シマシタル事件ニ付キマシテハ、私ガ
自ラ指揮ヲシナイ場合ニ於テハ、自ラ法ノ
命ズル所ニ依シテ愼重ナル所ノ調査ガ遂ゲ
ラレル、私ハ專ラ此愼重ナル調査ニ信賴ス
ルヨリ外ナイト思フ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=97
-
098・作間耕逸
○作間耕逸君 議事輻輳ノ際ニ付キ、爾餘
ノ質疑ハ委員會ニ讓リ、此程度ニ於テ本案
ノ質疑ヲ終局セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」又「反對」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=98
-
099・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
賛成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
賛成者起立発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=99
-
100・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 起立多數ト認メ
マス
〔「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=100
-
101・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 異議ノ申立ニ付
テハ成規ノ賛成ガアルト認メマス、仍テ記
名投票ヲ行ヒマス、質疑終了ノ動議ニ賛成
ノ諸君ハ白票、反對ノ諸君ハ靑票ヲ御持參
アランコトヲ望ミマス-閉鎖-氏名點
呼ヲ命ジマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=101
-
102・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 投票漏ハアリマ
セヌカ-投票漏ハナイト認メマス、投票
兩閉鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=102
-
103・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 投票ノ結果ヲ書
記官長ヨリ報告致サセマス
〔中村書記官長朗讀〕
投票總數二百三十一
可トスル者白票百五十二
否トスル者靑票七十九
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=103
-
104・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 投票ノ結果ニ依
リ作間君ノ動議ノ如ク質疑ハ終局致シマシ
タ
〔參照〕
作間君提出質疑終局ノ動議ヲ可トスル議
員ノ氏名左ノ如シ
石黑大次郞君飯塚春太郞君
井本常作君一柳仲次郞君
原脩次郞君本田恒之君
戶田由美君戶澤民十郞君
富田幸次郞君中馬興丸君
太田信治郞君大津淳一郞君
奧村千藏君神谷彌平君
神田正雄君神部爲藏君
加藤政之助君加藤鯛一君
加藤六藏君加藤十四郞君
河野曉君河波荒次郞君
金澤安之助君金田平兵衞君
橫山金太郞君吉原義雄君
吉田磯吉君高木益太郞君
高木正年君高橋元四郞君
高田耘平君賴母木桂吉君
武富濟君田中武雄君
田中善立君建部淋吾君
谷口宇右衞門君谷口源十郞君
中村貞吉君中野寅吉君
中野猪之助君村上國吉君
村山喜一郞君村松龜一郞君
紫安新九郞君室木彌次郞君
生方大吉君黑田重兵衛君
工藤鐵男君八並武治君
山宮藤吉君山出又司君
山田助作君山田道兄君
山口嘉七君山本勝次君
山枡儀重君町田忠治君
古屋慶隆君深井功君
藤澤幾之輔君藤井敬慎君
福田五郞君小島證作君
小寺謙吉君小池仁郞君
近藤重三郞君紺野九右衞門君
寺島權藏君手代木條吉君
淺賀長兵衞君蟻川五郞作君
荒井建三君荒川五郞君
作間耕逸君佐藤富十郎君
佐藤球三郞君齊藤隆夫君
齋藤太兵衞君齋藤仁太郞君
齋藤金吾君棚瀨軍之佐君
澤田利吉君三木武吉君
三好榮次郞君箕浦勝人君
斯波貞吉君〓水留三郞君
信太儀右衛門君醫護國平君
重松重治君廣瀨德藏君
平川松太郞君平野光雄君
平井光三郞君森田茂君
粟山博君關俊吉君
鈴木富士彌君杉浦武雄君
菅原英伍君菅村太事君
岩切重雄君禱苗代君
原田佐之治君星廉平君
堀喜幸君床次竹二郞君
東〓實君千葉宮次郞君
俥軍吉君小島善作君
小川〓太郞君小野寅吉君
大園榮三郞君大麻唯男君
大城幸之一君神村吉郞君
丹下茂十郞君谷原公君
津崎尙武君中村嘉壽君
中山貞雄君長峰與一君
植場平君上原好雄君
藏園三四郞君栗林五朔君
前田兼實君牧山耕藏君
松田源治君麓純義君
兒玉實良君寺田市正君
櫻内幸雄君佐藤重遠君
宜保成晴君三輪市太郞君
志波安一郞君〓水市太郞君
〓水長〓君森肇君
林田龜太郞君坂東幸太郞君
堤〓六君土屋〓三郞君
武藤喜門君野原種次郞君
松山兼三郞君佐藤潤象君
鷲野米太郞君高島兵吉君
作間君提出質疑終局ノ動議ヲ否トスル議
員ノ氏名左ノ如シ
磯部尙君磯部保次君
板野友造君石井三郞君
石坂豐一君石原正太郞君
飯村五郞君井上孝哉君
濱田精藏君八田宗吉君
原惣兵衞君西澤定吉君
本田義成君堀切善兵衞君
土井權大君大竹謙治君
大口喜六君小川平吉君
岡田伊太郞君若尾幾太郞君
若尾璋八君渡邊伍君
加藤知正君兼松寅太郞君
川口義久君吉津度君
竹原樸一君竹内友治郞君
田邊七六君高木音藏君
高草美代藏君中島守利君
內田信也君內野辰次郞君
上埜安太郞君野田俊作君
熊谷巖君熊谷直太君
黒住成章君矢野鉉吉君
山本悌二郞君山下谷大君
山内範造君松岡俊三君
松實喜代太君藤田包助君
藤川〓助君二木洵君
古川〓君木暮武太夫君
小久保喜七君小橋藻三衛君
古林新治君神崎勳君
近藤達兒君安藤正純君
靑木精一君靑山憲三君
秋田寅之介君秋田〓君
東武君齋藤珪次君
齋藤藤四郞君佐々木長治君
坂井大輔君坂梨哲君
木戶豐吉君三善〓之君
志賀和多利君嶋居哲君
島本信二君廣瀨爲久君
森〓昶君望月圭介君
瀨沼伊兵衞君砂田重政君
菅原傳君隅田豊吉君
杉宜陳君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=104
-
105・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 原惣兵衞君ヨリ
議事進行ニ關シ發言ノ通告ガアリマス-
原惣兵衞君
〔原惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=105
-
106・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本員ハ此度上程サレマシタ
ル所ノ民事訴訟法ノ改正ハ、正ニ六百何條
ニ亙ル大法典ノ改正ニ關スル所ノ上程ニ對
シマシテ、僅カ一人ノ質疑ニ依シテ數名ノ
質疑ヲ打切ラレルト云フコトハ、果シテ立法
府ノ議會ト致シマシテ、此大法典ノ通過ニ對シ
テ立法ノ權威ヲ疑フ者デアリマス(拍手)吾々
ハ立憲政治ノ要諦ハ此立法府ニ於ケル所ノ
此立法府ノ權威ヲ高メル爲ニ、自ラ侮辱シ
テ居ルノデハナイカト吾々ハ思フノデアリ
マス(拍手)此大法典ニ先ダチマシテ、此政府
ハ一體何時頃提案シタノカ、吾々ハ驚カザ
ルヲ得ナイノハ、此司法大臣ハ今頃ニナッテ
之ヲ上程致シマシテ、殊ニ貴族院ト云フ
部ノ特權階級ノ立籠レルモノヲ先ニシテ、
サウシテ今頃ニ民衆ノ衆議院ニ持テ來夕、
而モ此衆議院ノ日程ハ餘ス所何日アルカ、
此數日ノ間ニ於テ(「日程カ」ト呼フ者アリ)
-日程デアリマス、吾々ハ日程ヲ論ジテ
居ルノデアリマス、其數日間ニ於ケル所ノ
民事訴訟法ト云フモノガ果シテ是ガ立派ニ
立法府ノ權威トシテ、通過出來得ルモノト
信ジテ居ルヤ否ヤ、實ニ驚キ入ッタ司法大
臣デアル、與黨デアルト吾々ハ思フノデア
リマス(拍手)凡ン斯樣ナル大法典ハ獨逸ニ
於キマシテハ、少クトモ數年間其草案ニ於
テ起草シマシテ、其草案ヲバ民間及學者、
有ユル實際家ガ之ヲ講評シマシテ、サウシ
テ其批判ヲ纏メテ、其結果議會ニ提出スル
コトニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ我
ガ日本ノ民事訴訟法ハ一體何ヲシテ居ルノ
デアルカ、昨年僅カ祕密的ニ成立ッタ所ノ
此法案ヲ、コンノート一裁判所ノ所長ニ見
七三、サウシテ貴族院ノ全ク頭ノ古イ、頭
ノ少シ良イ人ニ見セタノナラ宜イケレド
モ、頭ノ最モ惡イ所ニコン〓〓ト見セテ、
サウシテ其法案ヲ此數日間餘ス所ノ日時ニ
於テ上程スルニ至ッテハ、私等ハ全ク無定
見ナル所ノ政府デアルト謂ハナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス(拍手)殊ニ此法案ニ
付キマシテハ、辯護士會ニ一體何囘掛ケタ
ノデアルカ、殆ド何モ掛ケテ居ナイ、全體
ニ於ケル日本ノ辯設士會ニ於テハ非常ナル
非難ノ聲ガアル、ソレニ對シテ一ツノ批判
的判斷ヲ與ヘシメナイデ、之ヲ此末期ニ及
ンデカラ上程シテ、サウシテ吾々ニ質疑應
答ノ時間モ與ヘズ、此怠慢セル議會ハ與黨
ガ白ラ作シタモノデハナイカ(拍手)有ユル
腐敗墮落ヲ自ラ自己ノ頭ニ貫クコトヲ知ラ
ス、現在ノ態ハ何事デアル(拍手)吾々ハ斯
樣ニ議事進行ヲ自ラ妨ゲテ、此立法ノ議會
ノ權威タル所ノ民事訴訟法ノ上程ニ對シ
テ、少シモ之ニ慎重審議ヲセズシテ之ヲ葬ッ
テ、何ヲ以テ此議會ノ能率ガ擧ルノデアル
カ、自ラ議會ノ立法ノ權威ヲ妨ゲテ居ルノ
デアルト謂ハナケレバナラヌノデアリマス、
(拍手)凡ン斯樣ナル大ナル法典ニ付キマシ
テハ、先ヅ民事訴訟法ノ此運用ニ付テモ、
何等此政府ハ考ヘテ居ラナイ、此法律ト云
フ一ツノ形式ノ上カラ見テ、裁判ガ完成シ、
其手續ガ立派ニ行クモノデアルナドト、此
政府ハ考ヘテ居ルノデアリマス、吾々ハ斯
樣ナル法案ヲ上程ヲスル前ニ、先ヅ司法省
ト云フモノハ何ヲ考へナケレバナラナイカ
ト云フ點デアリマス、吾々ハ司法ノ豫算ノ
點ニ於テ、少クトモ根本ノ此裁判所ノ構成
ト云フコトヲ考ベナケレバナラスノデアリ
マス(「ヒヤ〓〓」拍手)卽チ吾々ハ一形式ナ
ル法律ノ改善ニ依ノテ、決シテ我ガ裁判上ノ
實際ノ裁判事實ト云フモノハ捗ルモノデハ
ナイ、ソレヨリモ此司法豫ガデナケレバ裁
判所ノ此頻繁ナル都會ノ裁判事務ト、田舍
ノ裁判事務ト、此二ツノ關係ヲ十分ニ見テ、
サウシテ田舍ノ裁判所ニ付テノ事件ノ少イ
所ニ於テハ、之ヲ都會ノ方ニ多クノ裁判所
ノ構成ヲ見テ、サウシテ事件ノ運用ヲ圖ル
ト云フヤウナコトヲ一寸モ此政府ハ考ヘテ
居ナイノデアル、サウシテ斯ンナ大キナル
法典ヲシテ、我ガ內閣ニ於テ民事訴訟法ノ
改正ヲ致シマシタナドト言ッテ居ル(拍手
「ソレガ議事進行カ」ト呼フ者アリ)若モ
-重大ナル此司法立法ニ對シテ、斯樣ナ
ルコトヲ述ベテ行クト云フコトハ、吾々之
ヲ述ベルコトハ又議事進行デアッテ、當然
ノ事デアルト思フノデアル(「ヒヤ〓〓」拍
手)若モ左樣ナル豫算ガナイト云フコトニ
ナルナラバ、英國ノ裁判所ノ如クニ、何故
此司法事務ノ對立ノ爲ニ、少クトモ英國ノ
判事ハ巡廻裁判所ト云フモノヲ設ケテ居
ル、田舍ニ於テ事務ガ十分ニ出來得ナケレ
バ、ソレヲ固メテ置イテ都會ノ判事ガ巡廻
シテ、一度ニ裁判ヲヤッタラ是デモ十分足
リルノデアル、然ルニ簡單ニ込速ヲ取シテ、
サウシテ民事訴訟法ヲ簡易ニヤノテ、吾々
ノ司法權ノ當事者主義カラ來テ居ル所ノ口
頭辯論主義ヲ根本カラ破壞シテ、大キナル
改正ヲ形式ニ試ミヤウナドトハ大ナル間違
デアルト吾々ハ思フノデアリマス(「ヒヤヒ
ヤ」拍手)一體我ガ民事訴訟法ニ於テ何ノ改
正ノ必要ガ根本的ニアルノデアルカト私ハ
思フノデアリマス、一體此日本人ハ常ニ功
名心ニ馳セル點ガ多イノデアリマス、隨テ
此內閣ナドモ根本的ニ改止ヲスル、吾々ハ
此改正ニ付テ驚カザルヲ得ナイノデアリマ
ス、現ニ此改正ニ付テ帝國大學〓授ノ加藤
正義君ノ如キハ、何モ是ハ條支ヲ羅列的ニ
大キク改正ヲシテ見タヾケデアッテ、何等
根本的改正ノ意味ヲ成シテ居ナイト言ウテ
居ルノデハナイカ、サウシテ徒ニ廣ク是ガ
改正ヲ試ミヤウ、斯様ナ事ヲシテカラニ、
而モ民事訴訟法ノ改正ガ出來テ居ルナド思
ウテ居ルノハ大ナル間違デアリマス、サウ
シテカラニ一ツノ法文全體カラ云ンテ、簡
單ナル理論カラ爲替訴訟ノ規定ナドト云フ
モノヲ省イテ行カウトシテ居ルノデアリマ
ス、吾々ハ此爲替訴訟ノ改正規定、之ニ就
キマシテハ簡單ニ通常訴訟ニ引直スコトガ
出來ルカラ、結局通常訴訟ニ外ナラナイノ
デアル、隨テ通常訴訟ニ引直スノデアルナ
ラバ、モウ民事訴訟ノ特別訴訟手續ヲ置ク
必要ハナイ、ソレダカラモウ爲替訴訟ト云
フモノヲ廢メテシマヘ、斯樣ナル論理カラ
來タモノデアルト思フノデアリマス、然ル
ニ此大審院ノ判例ニ於キマシテハ、爲替訴
訟ニ於テハ簡單ナル形式的對質ノミナラ
ズ、此頃ノ判例ニ於テハ立派ニ其檢眞ヲ實
際的手續上認メテ、檢眞ノ一ノ鑑定ニ求メ
ルマデニハ行シテ居リマセヌケレドモ、檢
眞手續ヲ實際上裁判所ハ執ッテ居ルノデア
リマス、吾々ハ斯樣ナル點ニ於キマシテハ、
爲替訴訟ノ一體此特別法規ヲ、何ノ必要ガ
アッテ除カレタノカト吾々ハ思フノデアリ
やっ、斯樣ナコトヲ好ンデ多ク條文ヲ出シ
テ、サウシテ之ヲ以テヤラウナドト云フコ
トハ全ク根本ヲ知ラナイモノト言ハナケレ
バナラヌノデアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=106
-
107・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=107
-
108・原惣兵衞
○原惣兵衞君(續) 吾々ハ諸君與黨ノ橫暴
ニ依ッテ、此大法典ガ無視セラレタルトキ
ニ於テ、吾々ハ議事進行ニ於テ之ヲ言フノ
外ナイノデアリマス(拍手)一體斯ウ云フヤ
ウナ法制ハ部分的法制デ十分足リルノデア
リマス、殊ニ實體法ニ於テモ、佛蘭西民法
ノ如キハ、百年間ノ昔、其實體法ヲ其儘現
在運用シテ居ルノデアリマス、殊ニ其手續
上ニ於ケル所ノ斯ウ云フ慣レテ居ルト云フ
ヤウナ關係ニアル民事訴訟手續ヲ二十何年
間實際上運用シテ居ルノニ、根本的改正ヲ
スル必要ガ一體ドコニアルカ、吾々ハ一體
此政府ガ餘リニ功名ニ走リ過ギテ居ルト思
フノデアリマス、獨逸ノ民事訴訟法ハ、其改
正ニ於テハ一體ドウ云フ工合ニ改正サレテ
居ルカト申シマシタナラバ、千八百七十七
年ニ初メテ民事訴訟法ガ適用サレタノデアリ
ママ、ソレカラ千八百八十八年ニ第二ノ改
正ガ行ハレタノデアル、ソレカラ千九百五
年ニ又小部分ノ改正ヲンテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=108
-
109・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 原君ニ注意シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=109
-
110・原惣兵衞
○原惣兵衞君(續) 千九百十年ニ又少シノ
改正ガサレタノデアリマス、ソレカラ千九百
二十四年ニ又部分的改正ガ行ハレタノデア
リマス、サウ致シマスルト根本的改正ヲ行,
タルコトハ各國ニ於テモ民事訴訟法ニ何ニ
モ其例ヲ見ナイ、我ガ日本ダケデアル、實
ニ斯樣ナ改正ヲシテ何ノ益モナイト思フノ
デアリマス、サウシテ例ヘバ、若モ此部分
的改正ヲナスナラバ、本當ノ其小部分ノ改
正ヲヤッタラ十分デアリマス、何ヲ好ンデ斯
ウ云フコトヲスルカ、其例ヲ若モ見テ見
マスルナラバ、唯〓當事者ガ合意ノ期日變
更ヲ制限スル位ノコト、ソレカラ計算事件
ノ準備手續ハ複雜ナル訴訟ノ準備手續ニ準
用スルコト、缺席判決ノ送達ヲナスコト、
ソレカラ控訴期間ノ判決言渡ヨリ進行スル
コト、ソレカラ訴訟手續中止ヲ制限スルコ
ト、ソレカラ里程猶豫ノ改正ヲスルコト、
此位ナ簡單ナ改正デ十分足リルノデアリマ
ス、然ルニ拘ラズ斯樣ナル大キナル改正ヲ
爲シテ、國民ハ裁判上ニ折角國民ナリ訴訟
當事者ハ慣レテ居ルノデアル、ソレニ拘ラ
ズ斯樣ナル大キナル改正ヲ行フト云フヤウ
ナコトハ、一體何人モ之ニ賛成シテ居ナイ
ノデアリマス、隨テ吾々ハ斯樣ナル民事訴
訟法ノ根本的改正ニ反對スル者デアリマス
(「何ガ議事進行ダ」ト呼ヒ其他發言スル者
アリ)マダドッサリアルモウ少シ我慢セイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=110
-
111・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 原君ニ注意シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=111
-
112・原惣兵衞
○原惣真衞君(續) 又民事訴訟法ハ簡易迅
速ヲ目的トスル必要ガアルカ、ソンナニ迅
速デナケレバナラヌコトハナイト思フノデ
アリマス、先ヅ此民事訴訟法ハ刑事訴訟法
ノ如キト違ヒマシテ、全ク此當事者ヲ緩和
スルニアルノデアリマス、當事者ノ緩和ニ
アルノデアリマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=112
-
113・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜〓ニ願ヒマス
〔發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=113
-
114・原惣兵衞
○原惣兵衞君(續) 當事者ノ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=114
-
115・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 原君三タビ注意
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=115
-
116・原惣兵衞
○原〓兵衞君(續) 當事者ノ緩和ニアッタ
ナラバ、サウシテ又是ガ眞實發見主義·
(發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=116
-
117・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 静肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=117
-
118・原惣兵衞
○原惣兵衞君(續) 竝ニ職權主義ニ吾々ハ
反スルト思フノデアリマス、準備十續ヲ簡
單ニ規定スルモ、必ズシモンレハ眞意ニ觸
レナイノデアリマス、墺地利ノ此民事訴訟
法改正ニ照シマシテ、吾々ハ是ハ大ニ考へ
ナケレバナラヌ點ガ澤山アルノデアリマス、
先ヅ墺地利ノ民事訴訟法改正ノ例ヲ視テ見
マスト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=118
-
119・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 原君ハ議長ノ命
令ヲ聽キマセヌ、原君ノ發言ヲ禁止致シマ
ス
〔議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=119
-
120・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郎君) 降壇ヲ命ジマス
-原君ノ降壇ヲ望ミマス-小橋藻三衞
君、小橋藻三衞君-小橋君ハ御著席ガナ
イト認メマス、仍テ發言權ヲ抛棄シタモノ
ト認メマス-砂田重政君
〔砂田重政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=120
-
121・砂田重政
○砂田重政君 諸君私共ハ玆ニ議事ノ進行
ニ關シテ發言ヲ求メタノデアリマス、過日
來此議場ノ光景ヲ見マスルト、徒ニ數ノ力
ニ依シテ餘リニ横暴ヲ極メ、殊ニ憲政會ノ諸
君ト本黨ノ諸君ニ依リマシテ、吾々ガ幾度
カ議場ノ審議ヲ圓滑ナラシムル爲ニ辭ヲ低
ウシテ折衝ヲ致シ、又出來得ル限リハ協調
ヲ保タンコトヲ希望シテ來タノデアリマ
ス、然ルニ諸君ハ事每ニ戰ヒヲ挑ンデ、殊
ニ過日ノ如キハ濱田國松君ノ休憩ノ動議ニ
對シ本黨ノ幹部ノ諸君ハ之ニ賛成ヲセラ
レ、其他ノ諸君ハ反對ヲセラレ、而シテ愈。
採決トナルヤ俄カニ豹變ヲシテ、而シテ
多數ヲ以テ此動議ヲ葬リ去ルガ如キ、而モ
明瞭ニ多數デアルト云フコトガ分ッテ居ル
ニ拘ラズ、憲政會ノ諸君ハ異議ヲ稱ヘテ議
事ノ進行ヲ妨害サレタノデアリマス、斯ノ
如キコトハ與黨ノ諸君ガ先ヅ議事ノ進行ノ
妨害ヲ爲シテ居ルモノト云フコトハ明瞭デ
アル、斯樣ニ與黨ノ諸君ガ既ニ議事ヲ進行
セシムルノ意思ナキ以上、吾々野黨ノ者ガ
之ニ對シテ適當ナル手段ヲ執ルト云フコト
ハ當然ノコトヽ言ハナケレバナラヌノデア
ル諸君ガ本日此會議ノ劈頭ニ於テ、吾々
ガ提案致シマシタ議事日程ノ變更ニ對シテ
モ、諸君ハ一ツニナノテ之ヲ葬リ去ル、斯
ノ如キハ諸君自體ガ吾々野黨ニ向シテ一致
シテ議事ノ進行ヲ遲延セシムル爲ニ、努力
サレテ居ルモノト言ハナケレバナラヌノデ
アリマス、此興黨ノ諸君及與黨ニ準ズベキ
諸君ガ、斯樣ナ行動ヲ執ラレル以上ハ、吾
吾野黨トシテ之ニ對シテ戰ヒヲ挑ムハ當然
ノコトデアル、殊ニ只今此議場ニ於ケル議
題トナリマシタ民事訴訟法ノ如キハ、我國
ノ國民私權ノ仲張ヲ圖ルベキ最モ重大ナル
法律案デアリマス、此法律案ノ完否ハ忽ニ
我國民ノ權利伸張ノ上ニ重大ナル關係ノア
ル法律案デアリマス、此重大ナ法律案、殊
ニ此法案ハ第一篇ヨリ第九篇ニ至ル非常ナ
浩瀚ナルモノデアリマス、而モ此法條ハ第
一條ヨリ七百幾條ニ亙ル重大ナ法律案デア
リマス、而モ此民事訴訟法ノ法律案ニ更ニ
訴訟法ノ施行法案ヲ附加ヘタ非常ナ重大ナ
ル案デアル以上ハ、斯ノ如キモノコソ本當
ニ眞而目ニ質疑應答ヲ重ネテ憤重ナル審議
ヲ爲サシムルコトガ當然デナケレバナラ
ヌ、(拍手)然ルニ先程作間君ハ何ト言ハレ
タ、案自體ハ重大ナル法律業デアルガ、日
程ガ多數堆積シテ居ル際デアルカラ、是一
質問ヲ打切シテ直ニ之ヲ質問打切ニシタイ
ト云フ動議ヲ出サレタノデアル、過日來議
場ニ現ハレマシタ法律案ノ中ニ於テ、此法
律案程重大ナモノハナイノデアル、殊ニ此
動議ヲ出サレタル作間君ノ如キハ、最モ此
點ニ付テハ御〓究ニ相成シテ居ル筈ノモノ
デアルト考ヘルノデアリマス、斯樣ナ重大
ナル案ニ對シテ、唯、漫ニ唯〓一人ノ質問ヲ
許シタルノミニシテ、直ニ之ヲ質問ヲ打切
ルト云フガ如キハ
〔小泉副議長、議長席ヲ退キ粕谷議長復
席〕
如何ニ與黨ノ諸君及之ニ準ズベキ諸君ガ横
暴ヲ極メ、議事ノ愼重ナル審議ヲ妨害スル
目的ヲ以テヤッタモノトヨリ認メルコトガ
出來ナイノデアリマス、吾々ハ斯ノ如クマ
デ〓テ何ガ故ニ審議ヲ疎略ニ扱ハントスル
カト云フ諸君ノ意思ガ分ラナイノデアル、
而シテ左樣ニ急ガレル理由ハ、吾々ハ諸君
ガ先刻ヨリ質問ヲ打切シテ本日ノ日程ハ之
ヲ以テ終ラルヽノカト思フト、サウデハナ
イ、本黨ノ諸君ニ承ルト今晩ハ十二時マデ
デモヤルノダト、ソレマデニ御勉强ヲナサ
ル諸君ナレバ、何故ニ一人ヲ以テ質問ヲ打
切ルト云フガ如キ亂参狼籍ヲ極メラレルノ
デアルカ(拍手)如何ニ考ヘテ見テモ、吾々
ハ此與靈及之ニ準ズベキ諸君ノ腹ノ底ヲ知
ルコトガ出來ナイノデアリマス(拍手)而シ
テ之ニ對シ、斯ノ如キ横暴ナル亂暴ナル行
動ヲスルコトニ對シテ、吾々ノ同志原君ヨ
リ議事ノ進行ニ關ンテ、其陳述ヲシテ居ル
ト副議長ハ俄ニ此說明ニ對シテ注意ヲ與
、、更ニ進ンデ、之ニ對シテ發言ノ禁止ヲ
命ズルト云フガ如キ行動ハ吾々ハ如何ニ
考ヘテモ、公平ナルベキ議長ノ取ルベキ態
度ニアラズト信ズルノデアリマス(拍手)吾々
ハ過日來副議長ガ、此議場ニ於テ出來得
ル限リ公平ニ扱ヒタイト云フ御趣旨デアラ
ウト考ヘルノデアリマスルガ、與黨ノ諸君ガ
幾度カ騒擾ヲ極メ、甚ダシキハ見ルニ餘ル
ヤウナ行動ノアル場合デモ、眼ヲ瞑ッテ殆ト
知ラザル眞似ヲシテゴザッタノデアル、斯ノ
如キ行動ヲサルヽ、斯樣ニ出來得ル限リ干涉
ヲシナイト云フ方針ヲ以テ臨マレテ居ル副
議長ガ、今日野黨ノ原君ノ言論ノ一部分ヲ
捉ヘテ、直ニ發言ヲ中止スルト云フガ如キ
ハ如何ニシテモ副議長ノ熊度ヲ解スルコ
トガ出來ナイノデアリマス(拍手)議場ハ出
來得ル限リハ、吾々ハ最モ冷靜ニ、眞面目
ニ、議案ノ審議ヲ進メテ行クト云フコトガ
必要ナルト共ニ、此議場ノ秩序ヲ維持スル
責任ノアル議長ハ、殊ニ此點ニ於テ公平デ
ナケレバナラヌト信ズルノデアリマス拍
手)然ルニ其態度ハ毫モ公平ナル態度ニ出
デズシテ、徒ニ吾々ノ同僚ニ對シテ、干涉
ガマシキ行動ヲ取ラルヽガ如キハ、ドウシ
テモ此副議長ガ曩ニ黨籍ヲ離脫スルト云フ
マデノ大決心ヲ持タレタ此副議長ニシテ、
吾々ノ解スル能ハザル所デアリマス(拍手)
之ニ對シテハ副議長ハ、最モ明瞭ニ吾々ノ
此疑ノ點ニ對シテ、明カナル御答辯ヲ求メ
ナケレバナラヌト信ズルノデアリマス(拍
手)殊ニ與黨ノ諸君ガ、眞ニ議場ノ議事ヲ
徹底的ニ進行セシメヤウト欲スル場合ニ於
テ、出來得ル限リハ野黨ト與黨ノ間ニ、滑
カニ議事ヲ進行セシムルト云フ、主張ト政
策ヲ御取リニナルコトガ、與黨ノ責任デナ
ケレバナラヌ(拍手)然ルニ過日來ノ新間紙
ノ報ズル所ハ如何デゴザイマス、與黨諸君
ノ宣傳ニナル所ニ依ルト、近時野黨ノ入ミ
ガ議事ヲ妨害スルヤウナ態度ガアルカラ、
此際左樣ナ行動ヲ取ルナラバ、與黨ニ於テ
ハ決スル所ガアリ、政府ニ於テモ、亦大ニ決
スル所ガアルト云フヤウナ、恰モ解散風ヲ
以テ脅スガ如キ態度ヲ取ラルヽト云フニ
至ッテハ如何ニ考ヘテモ(拍手)此行動ハ吾々
ノ解スルコトノ出來ナイ點デアル、吾々
ハ解散何モノデアルカ、吾々ハ與黨ノ諸君
ガ恐レラルヽ如クニ-與黨ノ諸君ガ恐レ
ラルヽガ如クニ、解散ヲ怖ガッテ居ルモノ
デハナイノデアル(拍手)又政友本黨ノ諸君
ガ怖ガル程、解散ヲ怖ガッテ居ルモノデハ
アリマセヌ(拍手)若シ吾々ノ行動ニシテ、
若シ是ガ議會ノ議事ヲ眞ニ進行セシメル意
思ナキモノト思フナラバ、直ニ解散スルガ
實シイ、併ナガラ吾々ガ故意ニ議事ノ進行
ヲ妨グルモノデハナイ、能ク政府自ラガ斯
ノ如キ宣傳ヲ爲シテ、吾々野黨ニ戰ヲ挑ミ
與黨ノ諸君ハ是ト相呼應シテ、威壓的ニ
野黨ノ人ミニ對シテ壓迫ヲ加ヘントスルガ
如キ態度ヲ執ル以上ハ、何處ニ至ルマデモ
吾々ハ之ト戰フト云フコトハ當然ノ責任
デアル(拍手)吾々ハ是カラマダ本日ノ日程
ノ中ニモ、非常ニ澤山ノ重要ナル法律案ガ
アル、又其他ノ幾多ノ日程ノ中ニハ、重要
ナルモノガアル、此重要ナル問題ノ堆積ヲシ
テ居ル際ニ當シテ、總テノ問題ハ、唯ミ議事ノ進
行ヲ圖ルト云フ名ヲ藉リテ、其名ノ下ニ質
問ヲ爲サシメズ、質問ヲ打切ッテ、總テノモ
ノヲ悉ク委員會ニ付託シテシマッテ、此議
場ニ於ケル審議ヲ盡サシメナイト云フガ如
キ行動ヲ諸君ガ執ラルヽ以上ハ、絕對ニ之
ニ應ズルコトハ出來ナイノデアル、斯樣ナ
ル卑怯ナル行動ヲ諸君ガ執ラルヽ間ハ、是
ト戰フト云フコトハ當然ノ事デアル(拍手)
其間ニ故意ニ議事ヲ進行セシメナイト云フ
考ガアルノデモ何デモナイ、唯〓諸君ノヤ
リ方ガ、徒ニ吾々ニ向シテ戰ヲ挑ミ、議事ノ
圓滑ナル進行ヲ圖ル謀ヲ執ラレヌト云フ責
任ニ在ルト思フノデアリマス、願クバ此點
ニ對シテ、與黨ノ諸君ニ於テモ、本黨ノ諸
君ニ於テモ、眞面目ニ御考ニナリ、今少シ
徹底的ニ考ヲ立直サレンコトヲ、吾々ハ希
望スルノデアリマス、此意味ニ於テ、私
此民事訴訟法ノ法律案ニ對シテ打切リタル
コトヲ、第一ノ根本問題トシテ、今後ニ處
スル諸君ノ反省ヲ促ス爲ニ、玆ニ議事ノ進
行ノ爲ニ一言ヲ費シタ次第デゴザイマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=121
-
122・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) マダ議事進行ニ關ス
ル通告モ數名アリマスガ、此際休憩ヲ致シ
タラドウカト思ヒマス
〔「ノウ〓〓」「反對」ト呼フ者アリ、拍
手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=122
-
123・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 尙ホ暫ク議事ヲ繼續
致シマス-小橋藻ニ衞君-暫ク議事ヲ
繼續致シマス-議事ヲ繼續致シマス、小
橋藻三衞君
〔小橋藻三衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=123
-
124・小橋藻三衞
○小橋藻三衞君 此民事訴訟法ト云フガ如
キ大法典ノ改正ニ對シテ、僅カナル質疑ヲ
進行致シテ居ルトキニ、忽チ之ヲ打切ルガ
如キ態度ヲ執ラレルト云フコトハ、政府與
黨タル憲政會ノ態度ト致シテハ甚ダ不都合
千萬デアルト吾々ハ考ルヘノデアリマス
(拍手)苟モ國民ノ利害ニ卽スル所ノ、極メ
テ重大ナル關係ノアルモノニ對シテ、慎重
ナル審議ヲ許サズシテ、徒ニ之ヲ遮ルト云
フコトハ何事デアルカ、常ニ國民ノ利害ヲ
代表シテ、國民ノ幸福ヲ增進スルト云フコ
トヲ旗印ニサレテ居ル所ノ此與黨ノ諸君
カ、何ガ故ニ斯ノ如ク此大法典ノ審議ヲセ
ズシテ、徒ニ之ヲ急グト云フノハ是ハ一體
何事デアルカ(拍手)殊ニ怪ムベキハ、此議
事進行ノ甚ダ不合理ナル點ニ付テ意見ヲ述
ベテ居ル我ガ熊ノ原君ノ演說ヲ中止スルト
云フガ如キハ、是モ亦怪シカラヌ事枘デア
ル(拍手)議長ハ宜シク公平ニ議員ノ意見ヲ
披瀝セシムベキモノデアル、之ニ降壇ヲ命
ゼラルヽト云フガ如キコトハ甚ダ怪シカラ
ヌコトデアル(拍手)一體吾々ニ此處ニ登壇
ヲセシメテ、議事進行ニ付テノ意見ヲ述べ
サスヤウナコトノ態度ハ、何者ガ之ヲ迫リ
出シタノデアルカ、政府與黨デアルナラバ、
宜シク議事ノ速ニ進行スベキ態度ヲ執ルノ
ガ當然デアル、然ルニ逆ニ此議事進行ヲ妨
ゲルコトニ導カレルヤウナ事態ヲ自ラ造リ
出サレルト云フコトハ、甚ダ不都合千萬デ
アル、元來政府與黨タルモノハ、宜シク此
議事ノ進行ヲ圖ルベク努力サレルト云フコ
トガ當然デハナイカ、何故ニ議事ノ進行ヲ
妨害サレルノデアルカ(「君ガ妨害シテ居ル
ヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)決シテ吾々ハ妨
害シテ居ルノデハナイ(拍手)吾々ハ議平ノ
促進ヲ希望スルガ故ニ、其疑ハシキ點ニ付
テハ十分ナル質疑ヲ致シテ、徹底スルマデ
是ガ說明ヲ求メテ、而シテ贊成スベキモノ
ハ賛成ヲ致シ、反對スベキモノハ反對ヲ致
シ、其審議ノ材料ヲ得ルガ爲ニ、疑ハシキ
コトヲ質疑ヲ致シテ居ルノデアル、然ルニ
之ヲ徒ラニ遮シテハ而シテ不審ナル點ニ付
テノ說明ヲ與ヘラレザルヤウニ致サレルト
云フ所謂與黨諸君ノ考ト云フモノハ、博
何事デアル、甚ダ不都合千萬ナ事柄デア
ル、一體何レノ國ニ致シマシテモ、其國民
ノ利害幸福ニ直接關係スル所ノ大法典ト云
フモノハ、何レモ慎重ナル調査ヲ遂ゲ、
決シテ之ヲ短時日ノ間ニ決定ヲ致スモノデ
ハアリマセヌ、幾多ノ列國ノ事例ニ顧ミテ
モ、之ヲ起案スルニ付テハ多大ノ年月ヲ費
シ、面シテ各方面ノ識者ヲ集メテ慎重ナル
〓究ノ上ニ草案ト云フモノヲ作シテ、而シ
テ之ヲ國民ニ明ニ示シテ、其國民ノ大體ノ
意嚮ト云フモノヲ窺ハナケレバナラナイノ
デアル、何レノ國ニ於テモ政治ト云フモノ
ガ、國民ノ生活ヲ安定シ、國民ノ幸福ヲ保
障致シテ、而シテ其國ノ國利民福ヲ附進ヲ
致シ、更ニ進ンデ世界ノ平和ト人類ノ幸福
ヲ曾進スルト云フコトガ政治ノ生命デアル
以上ハ、政治ハ卽チ最大ナル道德デアリ、
最高ナル道德デアル、然ラバ法律ヲ制定ス
ルト云フニ當ッテハ、愼重ナル態度ヲ執ルト
云フコトハ當然ノ事柄デアル、然ルニ斯ノ
如ク元來制定其モノガ既ニ慎重ヲ缺イテ居
リ、面シテ又取扱ノ方法ガ極メテ祕密ニセ
ラレテ、僅ニ國民ノ一部ニ之ヲ示シタニ過
ギナイ、決シテ此法典ハ國民ノ全般ノ意〓
ヲ窺フベキ機關ヲ經タモノデハナイト云フ
コトハ明瞭ナル事柄デアル(拍手)而シテ啻
ニ國民ノ全體ニ之ヲ元シテ其意嚮ヲ徵セザ
ルノミナラズ、之ヲ僅ニ貴族院ノ決議ヲ經
テ、而シテ日子ノ切迫セル今日ニ之ヲ衆議
院ニ提案スル、衆議院ガ此大法典ヲ審査ス
ルト云フコトハ決シテ短時日ニ是ハ爲シ得
ベキコトデハナイノデアリマス、既ニ其制
定ノ上ニ於テ、尙ホ其取扱ノ上ニ於テ、愼
重ガ缺ケテ居ルト致スナラバ、セメテ之ヲ
立法府ニ於テ審議スルト云フニハ相當ナル
時間ヲ與ヘテ、而シテ愼重ナル審議ヲ致サ
ナケレバ相成ラヌノデアル(拍手)然ルニ其
制定ガ倉卒ノ間ニ致サレテ、ソレヲ取扱フ
ト云フコトガ僅カナ局部的ノ人ニ示シタニ
過ギナイノデアリ、最モ愼重ニ審議スベキ
此衆議院ニ時間ヲ與ヘズ、提案スルトキハ
既ニ時間ヲ與ヘザルノミナラズ、其疑シキ
條章ニ付テ之ヲ當局ニ質疑ヲ致シテ、其疑點
ヲ分明ニセントスルコトヲ遮ルト云フニ
至ッテハ、洵ニ當局ノ態度トシテハ不都合
至極デアルト云フノ外ハナイノデゴザイマ
ス(拍手)是迄極メテ輕キ議案-此案ニ比
較スレバ極メテ輕キ議案デアッテモ、相當ナ
ル質疑應答ニ時間ヲ與ヘテ、而シテ長キ時
間ノ間質問應答ヲ致シ夕末、之ヲ委員付託
ニ致シタト云フコトハ、今期議會ニ於テモ
其例ハ決シテ尠カラザルモノデアリマス
(拍手)然ルニ何故ニ此大ナル法典ヲ、最早
閉會間際ニナリ、幾許ノ時日モナキ今日ニ
提案ヲ致シテ、而シテ其質疑スベキ事柄ニ
於テスラ此質疑ヲ遮リ、立法府ニ於テ不審
ノ裡ニ之ヲ議決シナケレバナラナイト云フ
ガ如キ態度ヲ執ルト云フコトハ、當局ノ態
度トシテアルベカラザルコトデアルノミナ
ラズ、與黨ノ態度トシテモ洵ニ不都合千萬
ノ態度デアル(拍手)此國民ノ利害ニ卽スベ
キ大法典ニ於テ、審議ヲ限リ鄭重ヲ缺イタ
ル爲ニ、國民ノ利害ノ上ニ於テ非常ナル不
都合ガ出來致シタト云フトキニ於テ、現內
閣及與黨ハ何ノ辭ヲ以テ國民ニ謝セントスル
ノデアルク(拍手)苟クモ國民ノ信任ヲ負ヒ、
國民ヲ代表シテ居ル所ノ立法府トシテ、
斯ノ如キ事柄ヲ輕々ニ決議ヲ遮リ、サウシ
テ其審議ヲ妨グルト云フニ至ッテハ、立法府
ノ威信ノ爲ニ、立法府ノ權威ノ爲ニ、立憲
政治ノ發達ノ爲ニ、吾々ハ何處迄モ此與黨
ト現內閣ヲ責メナケレバナラナイノデアル
(拍手、「議事妨害」ト呼フ者アリ)議事妨害
ニアラズ、吾々ヲシテ斯ノ如ク議事進行ニ
付テ發言ヲ求メザルヲ得ザル立場ニ置イタ
ト云フ貴任ハ、何者ガ負ハナケレバナラヌ
ノデアルカ、吾々ヲ以テ徒ニ議事妨害ナリ
ト號シ、吾々ガ故ラニ此議事ノ妨害ヲ爲ス
モノヽ如ク論ズル人達ハ、少シク省ミテ政
府與黨ノ執ッタル態度、及現内閣ノ執ッタル
熊度ガ如何ニ非立憲ニシテ、國民ノ利害ヲ
如何ニ蹂躙シテ居ルカト云フコトヲ考慮シ
テ御覽ナサイ、徒ニ反對黨ノ言論ヲ以テ議
事ノ妨害ト心得、惡罵ヲ逞シクシ、批評ヲ
妄リニスルト云フコトハ、自己ヲ省ミザル
與黨ノ卽チ是コン眞ノ議事妨害ト言ハナケ
レバナラナイノデアル(拍手)若シ政府ノ執
リタル此處置及與黨ノ執リタル處置ガ合理
的デアリ、立憲的デアルナラバ、吾々ハ之
ヲ攻メルコトヲスル必要ハナイノデアル、斯
ノ如キ不合理的ナ事ヲ致シテ、而シテ徒ニ
吾々ノ此審議セントスルコトヲ妨ゲルガ
爲ニ、吾々ハ議事進行ニ付テノ意見ヲ述
ベナケレバナラナイノデアリマス(發言ス
ル者多シ)靜ニ御聽キナサイ、諸君ガ騒グダ
ケ吾々ノ演說ハ長クナルノデアル、宜シク
靜ニシテ御聽キナサイ(「議事妨害デハナイ
カ」ト呼フ者アリ)議事ノ妨害ヲスル者ハ足
下達ガ妨害ヲスルノデハアリマセヌカ(拍
手)靜ニシテ吾々ノ演說ヲ御聽キニナレバ
吾々ノ演說ハ早ク濟ム、徒ニ之ニ彌次ヲ飛
ハハ、徒ニ妨害的ノ批評ヲサレルダケ吾々
ノ演說ハ延長サレルノデアル(拍手)故ニ此
議事ノ進行ニ時間ヲ要スルト云フ事ノ責任
ハ、妨害ヲサレル與黨各位ガ之ヲ負ハナケ
レバナラヌノデアル、吾々ハ民事訴訟法ト
云フモノガ世運ノ進展ニ伴ッテ改正サレナ
ケレバナラマト云フコトニ吾々ガ何モ異議
ヲ唱ヘテ居ルノデハナイ、唯〓其内容ニ於テ
甚ダ實際ノ問題ト相觸レザルモノガアルカ
ラ、此點ニ付テハ疑問ヲ質シテ居ッタ譯デ
アリマス、一體此法典ノ改正ヲスルト云フ
事柄ハ、何故ニ先ヅ此司法官或ハ辯護士、
斯ノ如キ専門ノ人達ハ無論ノコトデアル
ガ、之ヲ國氏ノ前ニ公開ヲ致シテ、而シテ
此法典ノ草案ニ對スル與論ノ趨向ト云フモ
ノヲ見ナケレバナラナイノデアル、然ルニ
何故ニ此手續ヲ執ラズシテ之ヲ祕密ノ上ニ
祕密ヲ重ネテ、更ニ之ヲ何人ニモ示サズ、
國民ノ意嚮ヲ求メナカタト云フコトハ何
故デアル(拍手)何モ是ガ惡事ヲシタト云フ
譯デハナイ、苟モ國民ノ此生活ニ卽スル法
典デアル以上ハ、何故ニ是ダケノ手續ヲ執
ラナカッタノデアルカ、而シテ其審査ノ間ヲ
祕密ニ致シテ、而シテ其草案ガ僅ニ成ル
ヤ、更ニ所謂國民ノ意衢ノ趨向ヲ究メズシ
テ、直ニ之ヲ卽チ議議ニ提案ヲ致シタト
云フコトハ、洵ニ是ハ怪シカラヌコトデア
ル、固ヨリ我國ノ立法ト云フモノハ、之ヲ
起案スルニ當ンテ、一種ノ卽チ特別ナル専門
家ノ手ニ於テ起草スベキコトハ是ハ當然デ
アル、而シテ此法律ガ現實ニ世間ニ是ガ現
レテ、國民ノ上ニ直ニ其影響ガ現レテ來ル
ト云フ其瞬間ニ當ッテハ、十分ニ〓究調査
ヲ致シテ、而シテ其立法ガ社會ノ寶際ノ現
象ニ伴ハサルモノガアルトキハ、議會ニ於
テハ愼重ニ審議シテ、是ガ卽チ修正加除ヲ
致サナケレバナラナイノデアリマス(拍手)
然ルニ現在ノ此訴訟法ト云フガ如キモノハ、
現代ノ此訴訟上ニ於ケル趨勢ニ鑑ミテ、之
ニ伴ハザル幾多ノ缺點ガアル(拍手)此點ニ
付テハ是ガ改正ヲスルト云フコトハ當然デ
アルガ、併ナガラ其改正セラレタルモノガ
現在ノ此世態ニ合致セザルモノガアルト云
フ上カラ、之ニ對シテハ相當ナル質疑應答ヲ
致シ、而シテ之ヲ審議シナケレバナラナイ
ノデアル、此民事訴訟法ト云フモノハ殆ド
三十年以上四十箇年ニモ亙ル間之ヲ打拾ラ
レテ置イテ、サウシテ只今ニナッテ急遽慌
テヽ之ヲヤルト云フガ如キ態度ヲ執ラレル
ト云フコトハ、洵ニ是ハ不都合千萬ナ事柄
デアル、ソレデ政府ハ斯ノ如クスルト云フ
コトハ、近時ノ民事訴訟ト云フモノガ非常
ニ件數ガ多ク複雜デアッテ、而モ其審理ガ極
メテ緩慢デアルト云フコトハ、世態ニ合致
セズト云フガ爲ニ之ガ改正ヲ急ギセラレタ
モノデアリマス、然ルニ此改メマシタ訴訟
ノ進行ヲ期セラレルト云フコトヲ、其立法
上ノ價値ガ果シテ其目的ニ合致スルヤ否ヤ
ト云フト、遺憾ナガラ此點ニ付テハ多大ノ
疑ヒガ其間ニ存シテ居ルノデアリマス、而
モ其訴訟ノ進行ヲ促進スル目的ニ合致セザ
ル幾多ノ點ニ付テハ、非常ニ玆ニ大ナル問
題ガ存在致シテ居ルノデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=124
-
125・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 小橋君ノ御演說ハマ
ダ大分時間ヲ要スルト云フコトデアリマス
ガ、既ニ八時ヲ過ギマシテ、マダ食事ヲナ
サラヌ諸君モ多數アルト思ヒマスカラ暫ク
休憩致シマス
午後八時十五分休憩
午後十時二十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=125
-
126・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 休憩前ニ引續イテ會
議ヲ開キマス、小橋君ノ議事進行ノ發言
ハ体憩前ノ程度ニ於テ止メラレルト云フ
申出ガアリマシタ、又其他ノ方ノ議事進行
ノ發言ノ申出モ、何レモ取消ノ申出ガアリ
マシタ、就テハ日程第九、右各案ノ審査ヲ
付託スヘキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第九右各案ノ審查ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=126
-
127・作間耕逸
○作問耕逸君 兩案ヲ一括シ、議長指名特
ニ二十七名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ希
望致シマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=127
-
128・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=128
-
129・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=129
-
130・作間耕逸
○作間耕逸君 殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ
動議ヲ提出致シマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=130
-
131・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ本日ハ是ニテ散會致シマス-次
回ノ日程ハ公報ヲ以テ報告致シマス
午後十時二十六分散會
衆議院議事速記錄第二十五號中正誤
頁段行誤正
六六〇三四幾人モ幾人
六七一二四二十九箇所十五箇所
同三一五ヤツタカヤツテ宜イカ
同同二二試驗上試驗場
同四三四二百万二分方
六七二~四五二十三年四十三年
同二三四熊デハナ熊ノミデハ
イナイ
同同三八飼料食料
同三三六アリマシアリマシタ
タラウ
同同三九今日將來
同四一七事務簡捷事務管掌
六七三二三四向ツテ向ツテ適應
用スルスル
六七四一三七病菌病牛
六七五三三〇農村ノ身體農民ノ身體発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02619260309&spkNum=131
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。