第51回帝国議会　衆議院　本会議　第32号　大正15年3月18日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十五年三月十八日（木曜日）午後一時十四分開議
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  　議事日程　第三十一號
  　　大正十五年三月十八日
  　　　午後一時開議
  　第一　製鐵業奬勵法改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　製鐵所特別會計法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第三　大正九年法律第五十三號中改正法律案（關税法等の朝鮮に於ける特例に關する件）（政府提出）　第一讀會
  　第四　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　土地賃貸價格調査法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　海軍軍備制限に關する條約の實施に伴ふ損害の補償に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第九　明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十　大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十一　衆議院議員の選擧權に關する法律案（政府提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　第十二　北海道會議員及府縣會議員の選擧權及被選擧權竝市町村會議員の公民權に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十三　土地收用法中郡長の職務を定むる規定の適用に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十四　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十五　暴力行爲等處罰に關する法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十七　大正九年に於ける尼港事變及「オコーツク」事變の爲損害を被りたる者の救恤に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十九　都市計畫法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二十　特別都市計畫法第五條の土地區劃整理に伴ふ清算金及補償金に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第二十一　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第二十二　出版物法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二十三　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第二十四　獸醫師法案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二十五　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第二十六　民事訴訟費用法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　第一讀會
  　第二十七　民事訴訟用印紙法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　第一讀會
  　第二十八　商事非訟事件印紙法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　第一讀會
  　第二十九　非訟事件手續法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　第一讀會
  　第三十　商事訴訟手續法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　第一讀會
  　第三十一　競賣法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　第一讀會
  　第三十二　民法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第三十三　破産法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　第一讀會
  　第三十四　明治三十二年法律第五十號中改正法律案（外國人の署名捺印及無資力證明に關する件）（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第三十五　刑事訴訟法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　第一讀會
  　第三十六　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三十七　産業組合法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　第一讀會
  　第三十八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三十九　大正十三年法律第十號中改正法律案（高等諸學校震災復舊諸費に屬する豫算の施行に關する件）（政府提出）　第一讀會
  　第四十　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第四十一　大正十三年度第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第四十一　大正十三年度特別會計第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第四十一　大正十四年度第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第四十一　大正十四年度豫備金外に於て豫算外支出の件（承諾を求むる件）
  　第四十一　大正十四年度特別會計第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第四十一　大正十四年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件（承諾を求むる件）
  　第四十一　臨時軍事費特別會計豫備費支出の件（承諾を求むる件）
  　第四十一　自大正六年二月二十六日至大正九年六月二十五日臨時軍事費特別會計豫備費外に於て豫算超過支出の件（承諾を求むる件）
  　第四十二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
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• 001・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　諸般ノ報告ヲセ
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  明治三十三年法律第七十三號衆議院議員
  選擧法中改正法律案
  大正十四年法律第四十七號衆議院議員選
  衆議院議員ノ選舉權ニ關スル法律案
  北海道會議員及府縣會議員ノ選舉催及被
  選舉權竝市町村會議員ノ公民權ニ關スル
  (以上三月十六日提出)
  議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  仙山鐵道ノ起工ニ關スル建議案
  石川長右衛門君齋藤
  (承諾
  ヲ求
  ムル
  件
  金吾君
  正米市場法、判定促進ニ闘スル建議案
  提出者
  作間耕逸君太田信治郞君
  佐藤實君
  警察費國庫下渡金增額ニ關スル建議案
  提出者
  戶井嘉作君平沼亮三君
  山宮藤吉君小野重行君
  平川松太郞君川口義久君
  若尾幾太郎君山口左一君
  上原好雄君
  佐賀住ノ江間臨港線敷設ニ關スル建議案
  提出者
  福田五郞君中野實君
  西英太郞君加藤十四郞君
  東京都制急施ニ關スル建議案
  提出者
  作間耕逸君關直彥君
  磯部尙君高木益太郞君
  中島守利君岡田忠彥君
  高木正年君瀨沼伊兵衞君
  中原德太郎君前田米藏君
  淺賀長兵衞君太田信治郞君
  斯波貞吉若矢野鉉吉君
  宮崎三之助君佐々木安五郞君
  土屋興君橫山勝太郞君
  小島證作君本田義成君
  林田龜太郞君鳩山一郞君
  近藤達兒君安藤正純君
  消防組經費國庫補助竝消防組員優遇ニ關
  スル建議案
  提出者
  倉元要一君望月圭介君
  三土忠造君東武君
  武藤金吉君吉植庄一郞君
  山本条太郞君小泉策太郞君
  渡邊祐策君菅原傳君
  高山長幸君山口義一君
  山口恒太郎君秋田寅之介君
  北海道ニ區裁判所竝地方裁判所支部設置
  ニ關スル建議案
  提出者
  束武君松實喜代太君
  岡田伊太郞君黑住成章君
  北海道甜菜糖業補助ニ關スル建議案
  提出者
  松實喜代太君岡田伊太郞君
  東武君黑住成章君
  正米市場設置ニ關スル建議案
  提出者
  福井甚三君原田佐之治君
  丹下茂十郞君
  帝國在〓車人會國庫補助ニ關スル建議案
  提出者池山泰〓君
  帝國在郷軍人會國庫補助ニ關スル建議案
  提出者松岡俊三君
  (以上三月十六日提出)
  東京驛東部乘降場設置速成ニ關スル建議
  案
  提出者井本常作君
  勞働銀行法制定ニ關スル建議案
  提出者井本常作君
  市町村ノ整理改善ニ關スル建議案
  提出者
  荒川五郞君紫安新九郞君
  (以上三月十八日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
  如シ
  明治神宮表參道鋪裝工事ニ對スル道路法
  ノ運用ニ關スル質問主意書
  提出者横山勝太郞君
  正米市場法制定ニ關スル質問主意書
  提出者
  作間耕逸君太田信治郞君
  佐藤實君
  〓酒釀造業官營ニ關スル質問主意書
  提出者神崎勳君
  京都府會決議無效ニ關スル再負問主意書
  提出者
  長田桃藏君木戶豐吉君
  (以上三月十六日提出)
  尾道開港場設置ニ關スル質問主意書
  提出者嶋居哲君
  (以上三月十七日提出)
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
  玆ニ揭載ス〕
  一本月十六日衆議院規則第十五條但書ニ依
  リ議長ニ於テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
  四藤澤萬九郞君
  一五八浦山助太郞君
  二一九羽田彥四郞君
  一本月十六日議員梅田寬一君ノ行動ニ關ス
  ル調査ノ件委員西方利馬君海原〓平君辭
  任ニ付其ノ補闕トシテ山本芳治君牧野良三
  君ヲ、民事訴訟法中改正法律案外一件委
  員戶澤民十郞君辭任ニ付其ノ補闕トシテ
  服部英明君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
  一本月十六日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ
  如ジ
  第九部選出
  豫算委員嶋居哲君(秋田寅之介君
  補闘)
  一昨十七日理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
  民半訴訟法中改正法律案(政府提出、貴
  族院送付)外一件委員
  理事服部英明君(理事戶澤氏十郞君
  昨十六目辭任ニ付其ノ補闕)
  昨十七日大正十四年法律第四十七號衆議
  院議員選擧法中改正法律案委員松本君平
  君岩崎幸治郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ
  靑木精一君砂田重政君ヲ、勞働爭議調停
  法案外一件委員加藤鯛一君谷原公君有馬
  賴寧君辭任ニ付其ノ補闕トシテ木檜三四
  郞君浦〓謙則君秦豐助君ヲ、議員梅田寛
  一君ノ行動ニ關スル調査ノ件委員田中万
  逸君辭任ニ付其ノ補關トシテ杉浦武雄君
  ヲ、勞働爭議調停法案外一件委員濱田國
  松君辭任ニ付其ノ補闕トシテ有馬賴寧君
  ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ

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• 002・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　是ヨリ會議ヲ開
  キマス諮問事項ガアリマス、第二部選出
  豫算委員千葉宮次郞君、第二部選出懲罰委
  員千葉宮次郞君、第三部選出豫算委員砂田
  重政君、右何レモ常任委員辭任ノ申出ガア
  リマス、許可スルニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ガナケレ
  バ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闘選
  擧ヲ行ヒ、屆出アランコトヲ希望シマス
  日程第一乃至第三ハ關聯セル議案デアリマ
  スカラ、一括シテ議題トナスニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 004・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナシト認
  メマス、仍テ日程第一、製鐵業奬勵法改正
  法律案、日程第二、製鐵所特別會計法案、
  日程第三、大正九年法律第五十三號中改正
  法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-片岡商工
  大臣
  第製鐵業奬勵法改正法律案(政府
  提出)第一讀會
  製鐵業奬勵法改正法律案
  製鐵業奬勵法
  第一條一ノ場所ニ於テ一年三萬五千瓲
  以上ノ製銑能力及一年三萬五千瓲以上
  ノ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ以テ營ム製
  鐵事業ハ土地收用法第一一條ノ土地ヲ收
  用又ハ使用スルコトヲ得ル事業トシ同
  法ヲ適用
  第二條主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期
  間内ニ前條ニ規定スル設備ヲ新設シタ
  ル製鐵事業者ニハ設備完成ノ年及其ノ
  翌年ヨリ十五年間其ノ設備ヲ以テ營ム
  製鐵事業ニ付營業稅、營業牧益稅及所
  得稅ヲ免除ス
  前項ノ製鐵事業者其ノ設備完成前其ノ
  設備ノ一部ヲ以テ製鐵事業ヲ營ム場合
  ニ於テモ其ノ事業ニ付營業稅、營業收
  益稅及所得稅ヲ免除ス但シ前項ノ規定
  ニ依ル期間內ニ設備ヲ完成セサルトキ
  ハ此ノ限ニ在ラス
  第三條第一條ノ規定ニ該當セサル設備ヲ
  以テ製鐵事業ヲ營ム者主務官廳ノ認可
  ヲ受ケ一定ノ期間内ニ第一條ノ規定ニ
  該當スルニ至ルヘキ設備ヲ增設シタル
  トキハ其ノ增設シタル設備ヲ以テ營ム
  製鐵事業ニ付前條ノ規定ヲ準用ス
  第一條ニ規定スル設備ヲ以テ製鐵事業
  ヲ營ム者作業上必要ナル場合ニ於テ主
  務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間内ニ其
  ノ場所ニ於テ製銑又ハ製鋼ノ設備ヲ增
  設シタルトキ亦前項ニ同シ
  第四條キ務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期
  間内ニ一ノ場所ニ於テ一年五千二百五
  -瓲以上ノ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ新
  設シタル鋼品又ハ貸鋼品製造事業者
  ニ付フハ第二條ノ規定ヲ準用ス
  主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間內ニ
  一ノ場所ニ於テ一年二千五百瓲以上ノ
  製銑能力又ハ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ
  新設シタル低燐銑鐵製造事業者、坩堝
  製鋼事業者及電氣製鐵事業者ニ付亦前
  項ニ同シ
  第五條第一條乃至前條ニ規定スル製鐵
  事業ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第六條製鐵ノ事業ヲ繼續スル者又ハ其
  ノ事業ヲ繼續スルモノト認ムヘキ事實
  アル者ハ前事業者カ本法ニ依ル營業稅、
  營業收益稅及所得稅免除期間內ニ在ル
  トキハ其ノ期間ヲ繼承ス
  第七條北海道、府縣及市町村其ノ他之
  ニ準スヘキモノハ本法ニ依リ營業稅、
  營業收益稅及所得稅ヲ免除セラレタル
  製鐵事業者ニ對シ其ノ免除セラレタル
  部分ニ相當スル資本金額、從業者、營
  業用ノ工作物若ハ物件、使用動力又バ
  收入ヲ標準トシテ課稅スルコトヲ得ス
  但シ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノニ
  シテ特別ノ事情ニ基キ主務官廳ノ認可
  ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
  第八條製鐵事業者左ノ各號ノ一ニ該當
  スル場合ニ於テハ政府ハ命合ノ定ムル
  所ニ依リ其ノ製鐵事業者ニ對シ奬勵金
  ヲ交付スルコトヲ得
  -第一條ニ規定スル設備ヲ以テ製鐵
  事業ヲ營ムトキ
  二主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間
  內ニ第一條ニ規定スル設備ヲ完成ス
  ルニ至ルヘキトキ
  三二以上ノ製鐵事業者ノ事業ニシテ
  主務官廳ニ於テ其ノ作業ノ狀況ニ依
  リ第一條ニ規定スル製鐡事業ニ準ス
  ヘキモノト認メタルトキ
  第九條帝國內ニ於テ製造シタル鋼材カ
  船舶ノ建咨又ハ修繕ニ使用セラレタル
  場合ニ於テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ
  依リ其ノ鋼材ノ製造者ニ對シ奬勵金ヲ
  交付スルコトヲ得
  第十條詐欺ノ行爲ヲ以テ前一一條ノ奬勵
  金ノ交付ヲ受ケタル者ニ對シテハ其ノ
  金額ヲ償還セシム
  第八條ノ獎勵金ノ交付ヲ受ケタル者本
  法本法ニ基キテ發スル命今又ハ交付
  ノ條件ニ違反シタルトキハ其ノ金額ヲ
  償遠セシムルコトヲ得
  前二項ノ規定ニ依ル債〓金ハ國稅滞納
  處分ノ例ニ依リ之ヲ徴收スルコトヲ得
  但シ生取ね權ノ順位ハ國稅ニ欠タモノ
  トス
  第十一條第條ニ規定スルコン城事業ノ
  爲必要ナル器具機狐其ノ楚ノ材右ヲ
  三務官船ノ認可ヲ受ケ輸大ズルトナハ
  本法施行ノ日ヨリ十五年間命令ス定ム
  ル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
  第十二條本法ニ依リ認可ヲ受ケタル事
  項ヲ變更セムトスルトキハ主務官廳ノ
  認可ヲ受クヘシ
  附則
  ±本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行ノ際現ニ土地收用法ノ適用ヲ受
  ヶ又輸入稅ノ免除ヲ受クルコトフ得へ
  キ製外事業ニシテ第一條ノ規定一該當セ
  サルモノニ付テハ本法施行後五年間仍從
  前ノ例ニ依ル
  本法施行ノ際現ニ營業稅及所得稅ノ免除
  ヲ受クルコトヲ得ヘキ製銀事業ニ付テハ
  仍從雨ノ例ニ依ル但シ從前ノ規定一於テ
  開業ノ年又ハ能力增加ノ年及其ノ翌年ヨ
  リ十年間ーアルハ之ヲ開業ノ年又ハ能力
  增加ノ年及其ノ翌年ヨリ十五年間トシ營
  業稅トアルハ營業稅及營業收益稅トス
  第二襲鐵所特別會計法案(政府提出)
  第一讀會
  製鐵所特別會計法案
  製鐵所特別會計法
  第一條製鐵所ノ事業ヲ經營スル爲從來
  ノ固定資本及据置連轉資本竝將來ノ製
  鐵所益金及本會計ノ負擔ニ屬スル公債
  又ハ借人金ヲ以テ資本ト爲シ其ノ歲入
  ヲ以テ其ノ蔵出ニ充テ特別會計ヲ設置
  ス
  第二條製鐵所ニ於テ固定財產ノ擴張及
  改良ニ要スル經費ヲ支辨スル爲必要ア
  ルトキハ公債ヲ發行シ又ハ借入ヲ爲ス
  コトヲ得但シ公債又ハ借人金ノ額ニ付
  テハ帝國議會ノ協賛ヲ經ヘシ
  製鐵所ニ於テ運轉資金ニ充ツル爲必要
  アルトキハ最高六千萬圓ヲ限度トシ公
  債ヲ發行シ又ハ借入ヲ爲スコトヲ得
  第三條左ニ掲クル國債ハ本會計ノ負擔
  トス
  製鐵所ノ創設及擴張ニ必要ナル經
  費ヲ支辨スル爲從來發行シタル公債
  及之カ借換ノ爲從來發行シタル公
  債
  二前條ノ規定ニ依ル公債又ハ借入金
  三前二號ニ規定スル國債ノ借換ノ爲
  起債シタル國債
  前項ニ規定スル國債ノ償遠金、利子、割引
  料竝發行及償〓ニ關スル經費ノ支出ニ
  必要ナル金額ハ每年度之ヲ國債整理基
  金特別會計ニ繰入ルヘシ
  第四條本會計ハ之ヲ資本勘定、用品勘定
  及作業勘定ニ區分ス
  第五條資本勘定ハ作業益金繰人金、固
  定財產减價償却繰入金、公債募集金、
  借入金、固定財產ノ賣拂代金其ノ他附
  屬雜收入ヲ以テ其ノ歲人トシ固定財產
  ノ擴張費改良費補充費、本勘定ニ於テ使
  用スル固定財產ノ維持修理費、國債償還
  金其ノ他附屬諸費ヲ以テ其ノ歳出ト
  ス
  第六條用品勘定ハ用品收人、工作收人
  其ノ他附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ
  用品費、工作費、本勘定ニ於テ使用ス
  ル固定財產ノ維持修理費減價償却金其
  ノ他附屬諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
  第七條作業勘定ハ作業上ノ諸收八、固
  定財產ノ貸付料、預金利子其ノ他附屬
  雜收人ヲ以テ其ノ歲人トシ作業上ノ諸
  費用、總係費、本勘定ニ於テ使用スル
  固定財產ノ維持修理費減價償却金、國
  債ノ利子割引料其ノ他附屬諸費ヲ以テ
  其ノ歳出トス
  第八條需要ノ增加ニ基ク生產又ハ販賣
  ノ增加ニ因リテ生シタル像算ノ不足ヲ
  補フ爲用品勘定及作業勘定ノ歳出ニ豫
  備費ヲ設クヘシ
  第九條用品勘定又ハ作業勘定ニ於テ使
  用スル固定財產ノ減價償却金ハ之ヲ資
  本勘定ニ繰入ルヘシ
  第十條用品勘定又ハ作業勘定ニ於テ決
  算上生シタル利益又ハ損失ハ之ヲ資本
  勘定ニ移シ整理スヘシ
  第十一條資本勘定ニ於テ決算上生ンタ
  ル利益ハ之ヲ製鐵所益金トシ資本ニ組
  入ルヘシ
  資本勘定ニ於テ決算上損失ヲ生シタル
  トキハ之ヲ製鐵所損金トシ資本ヲ減額
  スヘシ
  第十二條政府ハ每年本會計ノ歲入歳出
  豫算ヲ調製シ歲入歳出ノ總豫算ト共ニ
  之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
  第十三條本會計ニ於テ支拂上現金二不
  足アルトキハ本會計ノ負擔ニ於テ最高
  千万圓ヲ限度トシ一時借入ヲ爲シ又ハ
  融通證劵ヲ發行スルコトヲ得
  一時借入金及融通證劵ニ依ル資金ハ當
  該年度內ニ之ヲ返還スヘシ
  第十四條本會計ニ於テ支拂上現金ニ餘
  裕アルトキハ之ヲ大藏省預金部ニ預入
  ルヘシ
  第十五條本會計ノ收入支出及損益計算
  ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  附則
  第十六條本法ハ大正十六年度ヨリ之ヲ
  施行ス
  第十七條作業會計法第一條第一號乃至
  第六號ヲ左ノ如ク改メ同法第二條第三
  項ヲ削ル
  第印刷局
  第二海軍火藥廠
  第三海軍燃料廠
  第四專賣局
  第十八條明治三十八年法律第十七號第
  一條第一項中「及製鐵所」、「專賣局ニ
  在リテハ」及「製鐵所ニ在リテハ九千八
  百萬圓」ヲ削ル
  第十九條本法ニ依リ本會計ニ於テ借入
  ヲ爲シ又ハ一時借人ヲ爲ス必要アル場
  合ニ於テハ當分ノ内當該年度內ニ限リ
  國庫餘裕金ヲ繰林使用スルコトヲ得
  第二十條本法施行前ニ於ケル製鐵所特
  別會計(作業會計法ニ依ルモノ)ニ屬ス
  ル收入及支出ノ未濟額ハ之ヲ本會計ニ
  繰越スヘシ
  第二十一條一般會計ノ歳出豫算ニ於ケ
  ル製鐵所擴張費ハ大正十六年度以降本
  會計ノ所屬トス
  一般會計ノ歳出豫算ニ於ケル製鐵所擴
  張費及製鐵所設備補足費ニシテ大正十
  五年度ヨリ翌年度ニ繰越ヲ要スルモノ
  ハ之ヲ本會計ニ移シ使用スルコトヲ
  得
  前項ノ規定ニ依リ繰越ヲ爲シタル場合
  ニ於テハ一般會計ハ其ノ繰越額ニ相當
  スル金額ヲ本會計ニ繰入ルヘシ
  第三大正九年法律第五十三號中改正
  法律案(關稅法等ノ朝鮮ニ於ケル特
  例ニ關スル件)(政府提出)第一讀會
  大正九年法律第五十三號中改正法律案
  大正九年法律第五十三號中左ノ通改正
  ス
  第三條第一項ヲ左ノ如ク改メ同條第二項
  中「前項ノ設備ヲ爲ス者」ヲ「前項ノ設備
  ヲ以テ製鐵事業ヲ營ム者」ニ改ム
  一ノ場所ニ於テ一年三萬五千瓲以上ノ
  製鐵能力及一年三萬五千瓲以上ノ製鋼
  能力ヲ有スル設備ヲ以テ營ム製鐵事業
  ノ爲必要ナル器具機械其ノ他ノ材料
  ヲ朝鮮總督ノ認可ヲ受ケ朝鮮ニ輸入ス
  ルトキハ朝鮮總督ノ定ムル所ニ依リ輸
  入稅ヲ免除ス
  第八條中「國稅法」ノ下ニ「開殺定等法、」ヲ
  加フ
  別表輸入稅表中「礦油(關稅定率法別表輸
  入稅表第一一二號二ノ乙ニ該當スルモ
  ノ)」ヲ「礦油(關稅定率法別表輸入稅表第
  一一二號二ノ甲ニ該當スルモノノ内〇·七
  三〇ヲ超エ〇·八七五ヲ超エサルモノ)」
  ニ、「木材(關稅定率法別表輸入稅表第六
  一二號一ノ己及癸ニ該當スルモノ)」ヲ
  「木材(關稅定率法別表輸入稅表第六一二
  號一ノ己ノ二ノイ及ロ竝癸ノイニ該當ス
  ルモノ)」ニ改メ「綿羊(生活力ヲ有スルモ
  ノ)無稅」ヲ削ル
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三
  條ノ改正規定施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之
  ヲ定ム
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

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• 005・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今議題ト相成
  リマシタ製鐵業奬勵法案提出ノ理由ノ大要
  ヲ說明致シタイト存ジマス、製鐵業ハ造船
  機械其他各種ノ重要產業ノ基礎工業デア
  リマシテ、是ガ盛衰ハ一國產業ノ消長ニ及
  ボス所大ナルモノガアリマスルカラ、政府
  ハ大正六年製鐵業奬勵法ヲ制定致シマシテ、
  本邦製鐵業ノ發達ニ資スル所少クナカッタ
  ノデゴザイマスルガ、歐洲大戰後世界ノ經
  濟事情ガ變化致シマシテ各國競ウテ廉價ナ
  ル製品ノ供給ヲ爲シツヽアル時ニ當リマシ
  テハ本邦製鐵業モ亦之ニ對應スルノ基礎
  ヲ確立シナケレバナラヌノデアリマス、仍
  テ將來製鐵業奬勵法ノ適用ヲ受得ルモノ
  ハ其規模ノ相當ニ大ニシテ、且ツ銃鐵ノ
  製造ヨリ鋼材ニ至ル一貫的作業設備ヲ有
  シ、最モ經濟的ニ其作業ヲ爲シ得ルモノヲ
  以テ其基礎卜爲スト共ニ、斯ノ如キ製鐵事
  業ニ對シマシテハ、相當ノ奬勵金ヲ交付シテ
  其保護ヲ十分ニシ、以テ本邦製鐵業ノ健實
  ナル發達ヲ期セントスルノデゴザイマス、是
  レ本改正案ヲ提出致シマスル主ナル理由デ
  ゴザイマスガ、其他現行獎勵法ノ適用ヲ受
  ケツヽアルモノニ對シマシテモ、其現狀ニ
  鑑ミマシテ、土地收用法ノ適用竝ニ營業稅、
  所得稅、及輸入稅ノ免除等ノ現行獎勵法上
  附與セラレ居ル特點ハ、現行法ヨリモ更ニ
  五年間延長スルコトヽ致シタノデゴザイマ
  ス、尙ホ巨細ノ點ニ至リマシテハ委員會
  ニ於テ說明ヲ致スコトヽ致シマスカラ、何
  卒御審議ノ上、速ニ協賛ヲ與ヘラレンコト
  ヲ希望致シマス(拍手)引續イテ製鐵所特別
  會計法案ノ大要ヲ說明〓シマス、玆ニ議題
  トナリマシタ製鐵所特別會計法案ニ付キマ
  シテ、其提案ノ大體ヲ申上ゲルノデアリマ
  スルガ、製鐵所ノ事業ヲ最モ適切ニ經營致
  シマスルニハ、常ニ斯業ノ情勢ニ順應シテ、
  必要ニ應ジテ其擴張又ハ改良ヲ行ハナケレ
  バナラヌノデアリマス、然ルニ現在ノヤウ
  ナ作業會計ノ組織デゴザイマシテハ、資本
  ノ擴張改良ハ一般會計ノ負擔ニ於テ行フコ
  トヽナッテ居リマスカラ、一般財政計畫ノ影
  響ヲ蒙リマシテ、其施設ガ斯業ノ發達ニ順
  應シナイ憾ガアルノデアリマス、又其設備
  ノ擴張及改良ハ、製鐵所特別會計自身ノ負
  擔ニ於テ行フコトヽ致シマシテ、卽チ原則
  トシテハ擴張改良ノ資源ハ其益金ヲ以テ
  ソレニ充當スルコトヽ致シマシタ、サウシ
  テ是ガ目的ヲ達成致シマスニハ製鐵所ノ
  經理ヲ獨立會計ノ組織ト爲スコトガ最モ妥
  當デアルト認メタノデゴザイマス、製鐵所
  ノ事業ハ他ノ作業會計ニ於ケル政府ノ作業
  ト趣ヲ異ニ致シマシテ、民間當業者ト全ク
  同一地位ニ立ッテ、市場ニ其製品ヲ供給スル
  モノデゴザイマスルカラ、其會計方式ノ如
  キモ、民間事業會社ニ成ベク近似セシムルヨ
  トヽ致シマシテ、固定財產ニ付テハ明確ニ
  原價償却ヲ行ヒ、過去及將來借入資金ニ對
  シマシテハ、是ガ元利ノ償還ヲ負擔ヲ致シ
  マスルコト等ノ方法ニ依リマシテ、損益計
  算ヲ的確明瞭ニ致シマシタナラバ、事業者
  ヲシテ其精勵ノ效果ヲ白覺セシムルノ效果
  ガアルト存ジマス、延イテ其經理狀態ヲ良
  好ナラシムルコトガ出來ルト考ヘルノデア
  リマス、面シテ其益金ヲ以テ更ニ優良ナル
  設備ノ擴張改良ヲ遂行スルコトガ出來、又
  其事業成績ヲ彼此比較考慮ヲシヤウトスル
  民間當業者ノ要望ニモ應ズルコトガ出來ル
  ト考ヘルノデアリマス、併ナガラ一擧ニ民間
  會社ト全然同一ノ方式ニ依リ、純然タル獨
  立會計ノ制ヲ設クルコトハ、多少支障ガア
  ルノデゴザイマスルカラ、成ルベク其理想
  ニ近イ制度ト致シマシテ、大正十六年度ヨ
  リ之ヲ實施致シタキ考ヲ以チマシテ本案ヲ
  提出致シタノデゴザイマス、何卒御審議ノ
  上速ニ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シ
  マス(拍手)
  〔政府委員黑金泰義君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=5

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• 006・黒金泰義

  ○政府委員(黑金泰義君)　只今議題ニ供セ
  ラレマシタ、大正九年法律第五十三號中改
  正法律案ノ大要ヲ簡單ニ中上ゲマス此大
  正九年法律第五十三號ハ申上ゲル迄モナ
  ク關稅法竝ニ關稅定率法及製鐵獎勵法ヲ朝
  鮮ニ實施致シマスルニ付テノ特別規定ヲ設
  ケタル法律デゴザイマスル、今般關稅法竝
  ニ關稅定率法及製鐵獎勵法ガ改正セラレマ
  スルニ付テ、改正ノ結果之ニ伴ウテ朝鮮ノ
  事情ニ適合スベク改正ヲ求メルノデアリマ
  ス、随テ其第一ハ關稅定率法ニ於ケル所ノ
  品目表示ノ方法及關稅定率法ノ施行ニ關ス
  ル所ノ特例ヲ規定致シタノデアリマス、又
  第二ニ於キマシテハ製鐵奬勵法ノ改正ニ關
  聯致シマシテ、闇稅ノ方面ヨリ製鐵獎勵ニ
  關スル規定ヲ設ケタノデアリマス、以上ハ
  此改正案ヲ提出〓シマシタ大體ノ理由デゴ
  ザイマス、ドウゾ御協賛ヲ願ヒマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=6

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• 007・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテ質
  疑ノ通告ガアリマス、順次之ヲ許可致シマ
  ス-森恪君
  〔森恪君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=7

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• 008・森恪

  ○森恪君　本案ハ關稅定率法中改正法律案
  ノ委員會ニ於テ、商工大臣ヨリ內用セラレ
  マシタル所ノモノガ、具體化致シタモノデ
  アルト考ヘマス、委員會ニ於キマシテ我ガ
  政友會ハ固ヨリ、與黨タル憲政會竝ニ政友
  本黨ノ委員諸君ニ依リマシテ、隨分熱心ニ
  御論議ニ相成ッタノデアリマス、其討議ノ內
  容ハ尠カラズ政府ノ參考ニ相成ァタモノト
  私ハ信ズルノデアリマス、卽チ我黨ノ委員
  山本条太郞君ニ依ノテ述ベラレマシタル諭
  旨ノ如キハ、木案ノ第九條ニ、卽チ內地ニ
  於テ製造セラレタル鋼材ガ船舶ノ修理或ハ
  建造ノ目的ノ爲ニ使用セラレタル場合ニ
  ハ、之ニモ補助、助成ノ交付金ヲ交付スル
  ト云フコトヲ明示セラレタト云フガ如キハ
  其一端デアリマシテ、斯ル政府ノ態度
  ニ對シマシテハ、私ハ敬意ヲ表スル
  者デアリマス、併ナガラ靜ニ此案ノ內容ヲ
  調ベテ見マスルト云フト、如何ニモ信念ガ
  籠テ居ラナイ、不徹底ナル點ガ甚ダ多イ、
  是デハ此案ヲ支持シナケレバナラナイ立場
  ニ在ラルヽ恐ラクハ憲政會ノ諸君モ御滿足
  ハ出來ナイデアラウト私ハ考ヘルノデアリ
  マス(拍手)詳細ナル質問ハ委員會ニ讓ルト
  致シマシテモ、審議ニ當,テ必要ナリト考
  ヘテ居リマスル骨子ニ付テ、四五ノ質問ヲ
  致シタイト考ヘマス、第一、製鐵事業ノ如
  キ奬勵ヲ政府ガ企テマシタルコトハ今回
  ガ初メテヾハナイノデアリマス、卽チ大正
  六年ニ制定セラレマシタ製鐵業獎勵法ノ如
  キハ、此目的ノ爲ニ出來タノデアリマスガ、
  現行獎勵法モ今日議題トナリマシタル本案
  モ、等シク銑鐵ト鋼ヲ一貫作業ト致シタル
  點ニ其基調ヲ置イテ居ルノデアリマス、關
  稅ノ委員會ニ於キマシテ、商工大臣モ亦輓
  近歐米ニ於ケル製鐵事業ハ、鐵鋼一貫主義
  ニ其理想ヲ置イテ居ル、吾々モ亦此一貫土
  義ヲ目標ト致シテ本案ヲ組立テル考ヘデア
  ルト云フ意味ノ御說明ガアッタノデアリマ
  ス、併ナガラ一事業ノ奬勵ヲ爲スト云フガ
  如キ場合ニハ歐米其他ノ例ハ免ニ角ト致
  シテ、國情ノ實際ト云フコトヲ考察致シタ
  上デ立案致スペキデアル、卽チ國情ニ依ッ
  テ緩急輕重ヲ圖リ、國情ニ適シタル所ノ奬
  勵方法ニ非ズンバ、其效果ヲ齋スコトハ出
  來ナイノデアリマス、現行法ガ何故ニ失敗
  致シタカ、原因ハ種々ナル點ニ在ルデアリ
  マセウガ、吾々ヲ以テ之ヲ考へマシタナラ
  バ、此國情ヲ考察スルコトナク、漫然鐵鋼
  一貫主義ニ其基調ヲ置イタ結果ナリト私共
  ハ信ズル者デアリマス(拍手)今ヤ現行法ノ
  失敗ノ後ニ、現政府ガ再ゼ奬勵法ヲ御考究
  ニナルニ當シテ、現行法ノ失敗ヲ玆ニ又復
  繰返サレルト云フガ如キ傾向ノアル點ニ至
  リマシテハ、吾々ハ其意ノ在ル所ヲ了解ス
  ルニ苦ムノデアリマス(拍手)是ニ於テ私ハ
  政府ニ御尋致シタイノデアリマス、政府ハ
  現行法ガ何故ニ失敗致シタカ、其原因何レ
  ニ在リヤト御考デアリマセウカ、又其原因
  ニ對シマシテ、如何ナル工夫、如何ナル用
  意ヲ以テ本案ヲ御組立ニ相成シタノデアル
  カ、本案ノ長所トスル所ヲ具サニ御說明相
  成リタイノデアリマス、第二ニ製鐵事業ガ
  振ハナイト云フコトンレ自體ニ於テ種々ナ
  ル原因ガアリマス、併ナガラ各種ノ原因ノ
  中デ、最モ吾々ヲシテ重大ナリト考ヘシム
  ル所ノ木質的缺陷ハ、何レニ在ルヤト申シ
  マシタナラバ、ンレハ原料ノ不足ト云フコ
  トニ歸著致スモノト吾々ハ信ズルノデア
  ル、然ルニ此本案ノ內容ヲ見マスルト云フ
  1、本質的缺點デアリマスル原料ノ不足ト
  云フ點ニハ何等ノ意ガ注ガレテ居ラナイ
  ト云フコトヲ發見スルノデアリマス(拍手)
  我國ノ製鐵事業ニ關係ヲ致シテ居リマスル
  人とノ爲ス所ヲ見マスルト云フト、何故カ
  此原料ト云フ一點ニ向テ極メテ無頓著デ
  アリ、暢氣デアルト云フコトヲ考ヘシムル
  ノデアリマス、我國ノ數多カラザル製鐵所
  ノ中デ、比較的免ニモ角ニモ形式上此原料
  ト云フコトニ筋途ノ立シテ居リマスル所ノ
  製鐵所ハ、僅ニ八幡ノ製鐵所、釜石ノ製鐵
  所アルノミデアルデアリマス、我國事
  業界ノ權威デアリマスル、三菱ノ同族ノ計
  畫ニ成ル兼二清ノ製鐵所ノ如キモ、八千万
  圓ト云フ巨額ノ資本ヲ投ジテ計書致シタニ
  拘ラズ、此原料ト云フ點ニ意ヲ用キナカツ
  タ爲ニ、今日ハ全ク立枯レノ狀態ニナシテ
  居ルト云フ有樣デアルノデアリマス、又農
  商務省ガ吾々ニ發表致シテ居リマスル數字
  ニ依ッテ見マスルド云フト、我ガ日本內地鐵
  鑛石ノ可採量ハ僅ニ二千五百噸ニ過ギナイ
  ノデアリマス、朝鮮滿洲ニハ尠カラザル所
  ノ鐵鑛石ガアルノデアリマスルガ、殆ド總
  テガ所謂貧鑛デアル、其品質ガ極メテ惡イ
  「ジヨホール」デアルトカ、或ハ南洋ノ地方
  ニ參リマシタナラバ、相當品質ノ良イ所ノ
  鑛石ガアルノデアリマスルケレドモ、是尺、
  御承知ノ如ク二千五百浬、或ハ二千浬ト云
  フ遠隔ノ地ニ在リマスルガ故ニ、若シ運賃
  ガ上ボルト云フガ如キ場合ガアッタト致シ
  マシタナラバ、到底此地方ノ供給ヲ以テ、
  日本ノ原料ト致スコトハ出來ナイノデア
  ル、斯ク觀ジ來リマスルト云フト、我國製
  鐡事業ノ原料ヲ基礎的ニ依賴シ得ルモノ
  ハ獨リ對岸ノ揚子江沿岸ノ鑛石アルノミ
  デアルノデアリマス、面シテ此揚子江一帶
  ヲ支配致シテ居リマスル支那政府ガ、此鐵
  鑛石ニ向シテ如何ナル態度ヲ執ッテ居ルカト
  申シマスルト、彼等ハ所謂鐵國有主義ナル
  モノヲ樹立致シマシテ、殊ニ我ガ日本ニ對
  シマシテハ鐵鑛ノ輸出ヲ殆ド禁止的態度
  ヲ以テ臨ンデ居ルノデアリマス、實例ヲ申
  シテ見マシタナラバ、鐵鑛暫行辦法ト云フ
  ガ如キ禁止的法律ヲ制定致シマシテ、鑛石
  ヲ輸出致シマスル場合ニハ一噸當リ輸出
  稅ダケデモ一圓以上ノ重稅ヲ課シテ、鑛石
  ノ賣買ニ當リマシテハ數量ノ如何ヲ問ハ
  ズ、中央政府竝ニ地方官憲ノ其都及許可ヲ
  得ナケレバナラナイト云フ嚴密ナル拘束ヲ
  與ヘテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ狀態ニ
  在リマスルガ故ニ、吾々ガ基礎的ニ依賴セネ
  バナラヌ所ノ揚子江一帶ノ鑛石ト云フモノ
  ハ、我國ニ輸入サレル狀態ハ甚ダ不安ナル狀
  態ニ置カレテ居ルノデアル、而モ此不安ナ
  ル狀態が何ガ故ニ我カ政府ノ神經ヲ尖ラス
  コトガ出來ナイノデアルカ、我ガ政府殊ニ
  外務省ガ此誤ノ夕支那政府ノ爲シテ居ル事
  柄ヲ、何ガ故ニ傍観ヲ致シテ居ルノデアル
  カト云フコトハ吾々ハ常ニ不可解ト致シ
  テ居ル所デアルノデアリマス(拍手)又啻ニ
  鐵鑛石ノミデハアリマセヌ、他ノ重大ナル
  原料デアリマスル所ノ滿俺鑛石ノ如キニ至
  リマシテハ、果シテ何レノ地ニ此滿俺鑛石
  ノ供給ヲ我ガ日本ノ製鐵所ハ得ルノデアル
  カト云フコトニ對シマシテハ、全ク據ルベ
  キ所ガ無イノデアル、滿俺鎭石ノ如キハ其
  日暮シデアッテ、貯鑛ヲスラ持タナイノデア
  ル、作業上全ク不安ナル狀態ニ置カレテ居
  ルト云フ實際デアルノデアリマス(拍手)是
  ニ於テ私ハ政府ニ御尋致シタイ、政府ハ鐡
  事業ノ基本的缺陷デアリマスル此原料ノ供
  給ニ對シテ、如何ナル方針ヲ樹立致シテ居
  ラレルノデアルカ、殊ニ此獎勵法ヲ制定セ
  ラレントスル時ニ當ノテ、如何ナル御注意
  ヲ此一點ニ集メラレタカト云フコトヲ御說
  明ヲ仰ギタイノデアリマス、第三ハ本案ニ
  於ケル保護助成ノ内容如何ト云フ一點デア
  リマス、卽チ保設ノ骨子ト致シテ居リマス
  ル所ハ鑛石デアルカ銑鐵テアルカ、或ハ鋼
  デアルカ、何レデアルカト云フコトヲ御聞
  キ致シタイノデアリマス、一噸ニ對シテ幾
  許ノ金ヲ如何ナル手續方法ニ依ノテ保護ス
  ルト云フコトガ本案ノ內容デアルカ、此內
  容ガ示サレタル所ノ案文ニ依ッテハ捕捉ス
  ルコトガ出來ナイノデアル、吾々ハ之ヲ明
  確ニ知ル必要ガアルノデアリマス、政府ハ或
  ハ此點ハ勅令ニ依シテ明市致スト云フ御考
  デアルヤニ承知致シア居ルノデアリマス、
  併ナガラ此重要ナル數字、此重要ナル點ガ
  勅令ニ俟タザレバ之ヲ知ルコトガ出來ナイ
  ト云フガ如キ事柄ハ、本案ノ性質上斷ジテ
  吾々ニハ滿足スルコトハ出來ナイノデアリ
  マス、殊ニ上來指摘致シタル如キ數字ハ
  製鐵半業ノ生產費ノ如何ト云フコトヨリ胚
  胎ヲ致スノデアリマス、我國ノ製鐵事業ニ
  於テ生產費ヲ少クスルト云フコトハ極テ
  困難ナル狀態ニ在ルノデアリマス、政府
  ガ數十年ノ間一億四五千万圓ノ巨額ノ資
  金ヲ投ジテ居リマスル若松ノ製鐵所デス
  ラ、此大ナル資本ニ對スル元利ヲモ計算
  ニ入レズ、又一切ノ稅金ヲモ負擔スルコト
  ナク、而モ其營業ノ成績ヲ見マスルト云フ
  ト、僅カ收支ガ相債フト云フ程度デアリマ
  シテ、利益ヲ上ゲルコトハ殆ド出來ナイト
  云フ現狀ニ在ルノデアリマス、又數日前ニ
  我ガ鐵道省ガ三菱ノ手ヲ經由致シマシテ、亞
  米利加カラ「レール」ヲ輪入致シタノデアリ
  マスルガ、其「レール」ノ値段ハ八十五圓程
  度デアッタノニ拘ラズ、若松製鐵所ガ同樣
  ノ品物ニ對シテ出シテ居リマスル値段ハ
  百十圓ト云フガ如キ大ナル差ヲ持シテ居ル
  ノデアリマス、此一事、卽チ我ガ製鐵事業
  ニ於テ生產費算出ガ極メテ困難デアリ、其
  生產費ナルモノガ幾多ノ斧鉞ヲ加ヘル餘地
  ヲ持ッテ店ルモノデアルト云フコトヲ而シ
  テ居ルノテアリマス是ニ於テ吾々ガ製鐵
  事業ノ發達奬勵ヲナ、スニ當シテ如何ナル點
  ヲ基調トシテ、目標ト致サネバナラヌカト
  云ヒマシタナラバ、我ガ日本ニ於ケル製鐵
  事業ノ生產費ト、外國ニ於ケル製鐵事業ノ
  生產費トノ其差額ガ、吾々ガ奬勵シ助長ス
  ベキ所ノ目標デナケレバナラナイノデアル
  (拍手)故ニ私ハ本案ヲ審議スルニ當シテ、
  政府が此生産費ノ差額ニ對シテ、數理的ニ
  具證案ヲ吾々議員ニ御示シニナルコトハ
  當然ノ責任デアルト考ヘルノデアリマス、
  (拍手)私ハ之ヲ此場合明瞭ニ御示シアラン
  コトヲ御願致スノデアリマス(拍手)第四ニ
  歐米ノ製鐵國ハ、何レモ關稅政策ノ成功ニ
  依ッデ其目的ヲ達シテ居ルノデアリマス、
  或ハ奬勵助成金ノ交付ト云フガ如キ政策ヲ
  執リマシタ國ハ何レモ消費者ニ大ナル不
  便ヲ東へ、國民ニ迷惑ヲ與ヘテ失敗ノ跡ヲ
  貽ンテ居ルノデアリマス、然ルニ何ガ故ニ
  現政府ハ此外國ノ失敗ヲ致シタル、經驗ヲ
  村フテ居ル奬勵助成金交付ナル政策ヲ執ッテ
  外國ガ成功致シマシタル所ノ關稅政策ヲ執
  ラナカッタカト云フコトヲ私ハ疑フ者デアル
  (拍手)本案ガ上程セラレルニ至リマシタル
  輕路ヲ考ヘテ見マスルト云フト、當初商工
  大臣ハ吾々ト等シク關稅ノ引上ニ依ッテ此
  目的ヲ達セラレル御考デアッタニ相違ナイ
  ソデアリマス、然ルニ偶、印度ニ於ケル我
  ガ綿絲布貿易ノ關係カラ、若シ銑鐵ノ關稅
  ス引上ゲル時ニ於テハ、印度ニ於テモ我ガ
  綿絲布ニ對スル關稅ヲ引上ゲラレ、或ハ〓
  ニ忌ムペキ關稅戰爭ト云フガ如キ問題ヲ誘
  發スル虞ガアリハシナイカト云フ外務省ノ
  杞髪ニ基イテ、商工大臣ハ其素志ヲ飜サレ
  茲ニ關稅引上ニ代ハル所ノ奬勵金助成金ノ
  交付ナル本案ヲ組立テラレタモノト吾々ハ
  承知致シテ居ルノデアリマス、果シテ然リ
  ト致シマシタナラバ、是ハ重大ナル誤デア
  ルト私共ハ確信ヲ致ス者デアリマス(拍手)
  印度ニ於ケル綿絲布需要ノ大勢ヲ考ヘテ見
  マスト云フト、其總額ハ約十六億「ルビー」
  デアリマス、此中八億「ルビー」ハ印度內
  ニ於テ生產セテレ、他ノ八億「ルビー」ハ
  是ハ輸入ニ俟ノテ居ルノデアリマス、而シ
  テ我國ヨリ印度ニ輸入致シテ居リマス所ノ
  綿絲布ノ高ハ僅カ八千万「ルビー」ニ過ギナ
  イノデアリマス、語ヲ換ヘテ申シマシタナ
  ラバ、印度人ノ需要額ハ僅カ二十分ノ一ニ
  相當致スノデアリマス、又飜ッテ印度ヨリ
  我國ニ輸入致シテ居リマスル銑鐵ハ幾許
  程度デアルカト申シマシタナラバ、之ヲ金
  額ニ直シテ見マスルト云フト、僅ニ七白万
  圓ヲ過ギナイノデアリマス、是ニ於テ吾々
  ハ一ツノ觀察ヲ爲ス必要ガアル、若シ英古
  利ガ其國ノ基本的工業デアリマスル紡績業
  ヲ、國ノ力ヲ以テ國策トシテ、之ヲ關稅政
  策ニ依シテ擁護スルト云フ必要ニ遭遇〓シ
  マシタト假定ヲ致シタナラバ、此英吉利ノ
  國策樹立ノ前ニハ我國ノ區々タル七百万
  圓ノ銑鐵ノ輸入ニ小シテ關稅ヲ引上ゲルト
  カ、引上ゲナイトカ云フ小サナ問題ハ斷ジ
  テ英吉利人ノ國策ヲ左右スル原因ニハナラ
  ナイノデアリマス(拍手)又本案ハ先程申シ
  マス通リ、關稅ヲ引上ゲル代リニ爲サレタ
  ル所ノ奬勵案ナリト云フコトヲ事實ト致シ
  マシタナラバ、關稅引上ニ依ッテ英吉利人
  ノ感情ヲ唆ルナラバ本案ノ提案ニ依リマ
  シテモ英吉利人ノ感情ヲ唆ルト云フコトニ
  ナルノデアル、固ヨリ是等ノ內情ニ付キマ
  シテハ委員會ニ於テハ祕密會ヲ要求セラ
  レタノデアルガ、委員長ハ現ニ此壇上ニ於
  テ其一端ヲ漏サレテ居ルノデアル、ノミナ
  ラズ當時ノ日本ノ新聞ハ悉ク此内容ヲ書イ
  ヲ居リマス、英字新聞ハ之ヲ譯載奴シテ居
  ル、英吉利人デ我國ニ居リマスル人〓ノ手
  ヲ通シテ、是ガ英吉利本國、或ハ印度地方
  ニ通信セラレテ居ルト云フコトハ、容ニ
  想像スルコトガ出來ルノデアル、若シ斯ノ
  如キ姑息ナル手段デ英吉利人ヲ胡麻化シ得
  ントスルガ如キ考ヲ持ツモノナラバ、幼稚
  極マレルモノデアルト私ハ考ヘル者デアリ
  マス(拍手)卽チ此一點ヨリ考ヘ、更ニ又英
  吉利ノ關稅ノ關稅率ノ現狀ヲ見マスルト云
  フト-印度ノ關稅率ノ現狀ヲ見マスルト
  ムフト、印度ニ於キマシテハ、銑鐵ニ對シ
  テ從價一割ノ輪入稅ヲ課シテ居ルノデアリ
  マス、又鋼ニ致シマシテモ二十「ルヒー」、
  一三十五「ルビー」、或ハ四十「ルビ1」ノ重稅
  ヲ課シテ居ル我國ノ三十三四圓ニモナリ
  マセウカ、斯樣ナル重稅ヲ課シテ居ル、隨
  テ我國ガ少クモ此程度ニマデ我國ノ銑鐵ノ
  關稅ヲ月上ゲマシテモ、彼等英國人ハ之ニ
  向シテ異議ヲ挾ム餘地ハ一體ナイ筈デアル
  ノデアリマス、殊ニ世界ニ於ケル此製鐵事
  業ニ對ズル奬勵、振作下云フコトニ向フテ
  ハ何レノ國モ極メテ徹底致シタル所ノ關
  稅政策ヲ用ヰテ居ルノデアリマス、英國ノ
  如キデスラ、千八百二十三年マデハ輸入ヲ
  全然禁止致シテ居リマシク亞米利加ニ致
  シマシテモ千八百八十四年マデハ七割五
  分ト云フ禁止稅ヲ課シテ居ル、今日モ尙ホ
  二割ト云フ重稅ヲ課シテ居ル現狀デアルノ
  デアリマス、斯樣ナル點ヲ一々擧ゲマシテ
  考ヘテ見マスルト云フト、我國ガ製鐵事業
  ヲ國是ト致シテ奬歸シ、其發遠ヲ期待致シ
  マスル場合ニ當ノテ〓〓政策ヲ取ラズ、姑
  息ナル奬勵助成金ノ交付ヲ爲シテ其目的ヲ
  達セントスガ如キハ、一大錯誤ナリト私ハ
  信ズルノデアリマス、私ハ此見地ニ立チマ
  シテ、現政府ハ吾々ノ所見ヲ容レテ、近キ
  將來ニ於テ鐵ノ關稅ヲ引上ゲ、所謂關稅政
  策ニ依シテ奬勵ノ目的ヲ達スルト云フ御
  意思ガナイノデアラウカ、此點ヲ豫ス承知
  致シテ置キタイノデアリマス第五ニ製鐵
  事業ニ對スル獎勵助成金ノ交付ト云フコト
  ハ成程其初年ニ於キマシテハ其金額ハ極
  メテ少イノデアリマス、併ナガラ外國ノ實
  例ヲ見マスルト云フト、此助成金ハ逐次增
  加ヲ致シテ、遂ニハ其結果消費者ヲ煩ハシ、
  或ハ國氏全體ニ大ナル迷惑ヲ掛ケテ、而モ
  其結果ハ失敗ニ終。テ居ルノデアル、政府ガ
  吾々ニ示シタル計算ニ依ヲテ見マシテモ、近ク
  我國ハ鐵ノ需要、之ヲ銑鐵ニ直シマシタナラ
  バ四百万噸ト云ンコトデアルノデアリマス、
  吾々モ此數字ガ早ク實現致スコトヲ望ム一
  人デアリマスルガ、假ニ此四百万噸ト云フ數
  字ヲ舉ゲテ、此四百万噸ニ對ン一噸ニ付五
  圓ノ獎勵金ヲ交付攻スト致シマシタナラバ、
  其金額ハ二千万圓ニ相成ルノデアリママ
  デ政府ハ此二千万圓ト云フ數字ニ對シテ、
  如何ナル財財ヲ準備セラレテ居ルカト云フ
  コトガ吾々ノ問題デアリマス、卽チ此點ニ
  對シマスル政府ノ用意ノ在ル所、ソレヲ詳
  細ニ玆ニ御說明ニナランコトヲ希望〓スノ
  デアリマス、之ヲ要スルノニ本案ハ極メテ
  不徹底デアル、其内容ハ目的トスル所ニ副
  ハナイノデアル、前申シマスル通リ、斯ノ如
  キ不徹底ナル案ハ與黨夕ル憲政會ノ諸君モ
  到底御滿足ニナラナイト信ズルノデアリマ
  ス、所謂現內閣得意ノ羊頭狗肉ノ案デアル
  ト私ハ考ヘルノデアル、斯樣ナル考ヲ以チ
  マシテ、大體以上五點ニ付テ先ヅ政府ノ意
  ノ在ル所ヲ御說明アフンコトヲ希望致ス者
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=8

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• 009・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　片岡商工大臣
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=9

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• 010・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今森君ノ御質
  疑ニ相成リマシタ點ヲ御答ヲ申上ゲマス、
  森君ハ鐵ノ事業ニ對シテ御經驗ヲ有セラル
  ル方デアリマシテ、御質問モ洵ニ適切デア
  ルト存ジマス第一ノ御質問ハ現行ノ奬
  勵法ノ失敗ヲ致シタ所ノ原因ヲ政府ハ何ト
  見テ居ルカト云フコトガ、御尋ノ要點デアツ
  タト存ジマス、如何ニモ現奬勵法ナルモノ
  ガ完全無缺ノモノトハ言得ナイト存ジマス
  ルガ、サリナガラ失敗トハ認メテ居リマセ
  ヌ、其證據ハ是レアリシガ爲ニ免ニ角今日
  ノ鐵ノ出來高ヲ見ルノデアル、唯t當業者
  ソレ自身ガ戰爭ノ後ニ於テ如何ナル變化ヲ
  生ズルカト云フ用意ガ足ラズシテ、唯〓製
  鐵所ヲ拵ヘルコトニ急ニシテ、其設備ニ不
  完全ナル所ノモノガ多ク、爲ニ失敗ニ相成ッ
  テ居ルト見ルコトガ相當デアラウト存ジマ
  ス若シ此奬勸法ヲ作リマシタ當時ニ於
  テ、今回改正ヲ企ツル如キコトヲモ用意シ
  テ居リマシタナラバ、尙更宜カッタデアラ
  ウトハ言得ルノデアリマセウ、第二ノ御質
  問ハ原料ニ對スル問題デアリマス、是モ御
  述ニナリマシタ通リ、何事ヲ爲スニシテモ
  其原料ヲ無視シテ仕事ニ取掛ルト云フガ如
  キコトハ輕率ヲ免レナイ、單リ製鐵ノミニ
  ハ際ラヌト存ジマス、併ナガラ戰爭ノ爲ニ
  利テノ貿易ガ杜絕シテ、內地ニ必要ナルモ
  ジヲ滿サナケレバナラヌト云フコトニ迫ラ
  レテ、事業計畫ヲ進メタト一云フモノハ製
  鐵事業ノミデハナイト思ヒマス、而シテ現
  在各製鐵所ノ原料其モノガ豐富デナイト云
  フコトハ御述ベノ通リデアリマス、サリナ
  ガラ此原料ヲ買入レルコトヲ奬勵法ノ下ニ
  住組ムト云フコーハ、是ハ少々當ヲ得テ居
  ラヌト私ハ考ヘル、是ハ別ノ方法ニ依ルベ
  キモノト思ヒマス、固ヨリ何品ニ拘ラズ、
  需要ト供給ノ關係ニ於テ價格ニ變動ヲ生ズ
  ルモノデアル、ソレ故ニ原料ノ必要トスル
  コナニ於キマシテハ別ノ手段方法ヲ以
  テ我國ノ原料ニ缺テヲ來サナイヤウニス
  ルコトヲ努メルコトハ當然デゴザリマス、
  即チ當業者等ヲ集メ、鐡ノ事業ニ關シテ、
  從來ノ如ク目前ノ事ノミニ拘泥セズニ、協
  同一致シテ、以テ無益ノ競争ヲ避ケ、生產
  費ヲ安クセシムル方法ヲ執ラナケレバナラ
  又、是ガ爲ニハ原料買入ノ如キモノニ於
  テモ、各自手ヲ出シテ、以テ其原價ヲ高カ
  ラシムルト云フガ如キ拙策ヲ避ケテ、協同
  ノ下ニ於テ、之ヲ求ムルノ手段ヲ講ズルコ
  ドニシナケレバナラヌト云フ見地ノ下ニ於
  テ、相當〓究ヲ重ネ、當業者モ亦此意見ニ
  一致致シテ居ル所デゴザリマス、卽チ御話
  ノ如キ原料豐富ナル方面ニ於テ、相當ノ契
  約ヲ爲スト云フガ如キコトモ是ヨリ進ミ得
  ルト存ジマス、又内ニ於キマシテモ、彼ノ
  砂鐵ノ如キモノヲシテ、製鐵ノ用ニ爲サシ
  ムル爲ニハ、モウ少シ〓究ヲ要スルノデア
  リマシテ、豫算ノ上ニ於テ、相當ノ〓究費
  ヲ御協賛ヲ下サレテ居ルノデアリマス、又
  現在鐵ノ原料トナルベキモノニシテ、廢レ
  テ居ルモノガ澤山アルノデアリマス、其廢
  レテ居ルモノヲ蒐集シテ、以テ原料ニ供ス
  ルト云フガ如キコトモ、是モ進メテ行カナ
  ケレバナラヌノデアリマス、又今日マデ既
  ニ此鐵山ノモノハ役ニ立タヌト考ハテ居ン
  タモノニシテ、或ハ〓究ノ結果トシテ、確
  ニ有用ナルモノモアルノデアリマス、卽チ
  原料ニ供スルニ足ラズドシタモノガ、害白
  有用ナル品物ナリト認メラルヽモノモアル
  ノデアリマス、故ニ内ニ於テ原料ヲ得ル途
  ヲ攻究スルコトヲ怠ラズ、外ニ於テモ亦豐
  富ナル所ニ於テ相當ノ契約ヲ致シテ、此我
  國ノ鐵ノ國策ニ向シテ、故障ヲ生ジナイヤ
  ウニ致シタイト云フコトハ考ヘテ居ルノデ
  アリマス、唯、其事柄ヲ、此獎勵法ノ條章
  ノ中ニ含メルト云フコトヲ致サナイマデノコ
  トデアリマス、第三ノ保護ノ内容、卽チ獎
  勳金ヲ受ケルモノガ鐵材ノミニシテ、鋼ハ入ツ
  テ、ナナイカドウカ、是カ御尋ノ要點デアッタ
  ト存ジマスルガ、今囘ノ奬勵法ハ銑鐵ヨリ
  同じ 、鋼材マデ一貫シテ仕事ヲ進メルモ
  ノニ向ッテ奬勵ヲスルノデアリマスルカラ、
  卽チ銑鐵ヲ用ヰテ、鋼若クハ他ノ鐵材ヲ造
  ルト云フモノハ矢張獎勵金ハ得ラレルノデ
  アリマス、而シテ此點ヲ御述ニナル時ニ、
  鐵道省ニ於テ亞米利加ヨリ得タ「レール」ハ
  八十四圓デアッテ、製鐵所ガ納メルノハ百
  十一圓デアッテ、其差甚シキ狀態ニ在ル、
  此一點ヲ押ヘテ、鐵政策トシテハ外國ヨリ
  入ルモノト、內地ニ出來ルモノトノ其差ヲ
  押ヘテ、以テ關稅政策ヲ攻究シナケレバナ
  ラヌト仰セラレタノデアリマス、此事實ハ
  私ハ、鐵道省ニ於テ最近八十四圓デ買ウタ
  カドウカト云フガ如キコトハマダ承ッテ
  居リマセヌガ、是ガ爲ニ總テ關稅ヲ賦課ス
  ル所ノ標準ヲ而セト云フ御要求ニ對シテ
  ハ是ハ關稅ノ委員會ニ於テ當局者ヨリ說
  明ヲ致シマシタ通リ、相當ノ據リ所ヲ以テ
  現在ノ關稅ト云フモノハ算出ヲ致シタノデ
  アリマス、併ナガラ貿易ノ狀態ハ時ニニ變
  化スル、其變化スル一時ノ出來事ヲ押ヘ、
  ソレヲ將來ノ根據ニ致スト云フコトモ亦穩
  當ナリトハ言ヘマイト思ヒマス、非常ナ引
  下ヲ行シテ來ルト云フコトニ付テハ相當ノ
  理由ガアリマセウカラ、其理由ノ本ヲ尋ネ
  テ、不當ナルモノニ對シテハ所謂不當廉
  賣法ニ依シテ當業者ヲ保護シテ行クト云フ
  手段ヲ執ルノ外ハナイノデアル、斯ノ如キ
  手段ヲ執ッテモ尙ホ不十分ナリト云フガ如キ
  コトガゴザリマスレバ、是ハ常設調査委員會
  ノ手ニ於テ十分ノ調査ヲシテ、更ニ次ノ議會
  ニ於テ御協質ヲ求メル手段ニ出デル外ハナ
  イノデアリマス、唯〓此機會ニ一言シテ置
  キマスコトハ、我國ノ關稅其モノハ、近來
  コソ始メテ國定稅率ニ相成ッタノデアリマ
  スルガ、一ツノ英國ニ對スル條約ガゴザリ
  マシタ爲ニ、現在ノ關稅其モノハ比較的不
  當ナルモノガ多イノデアリマス、之ヲ今日正
  當ノモノニ引直スト云フ時ニ當ノテハ非
  常ニ高ク世間ニ映ルト云フコトガゴザリマ
  ス、又此英國トノ條約ノ改正ニ際シマシテ
  モ、一躍自己ノ都合バカリヲ圖ルモノヂナ
  イト云フガ如キコトヲ證明致シマシタコト
  ハ少クナイト思フノデアリマス、故ニ我國
  フ關稅ヲシテ眞ニ適當ニ、十分チル所ニマ
  デ落着ケマスルニハサウ掌ヲ反スヤウニ
  ハ參ラヌト思フノデマリマス、次ノ御質問
  ノ第四、歐米諸國ハ總テ關稅ヲ以テ事業其
  モノヲ保設致シテ尼ル、ソレガ又當然デア
  ル何故ニ歐米諸國ニ於テ失敗ノ事實ノア
  ル事ヲ日本ニ取ッテ之ヲ執リ行フカ、此攻
  擊的御質問ニ對シマシテハ他國ニ於テ失
  敗ノアノタモノガ日本ニ於テ必ズ失敗ヲス
  ルト定マッタモノデハナイノデアリマス、
  他國ノ失敗ノ仕方ヲ見テ以テ日本ハ失敗ニ
  陷ラヌヤウニスレバ宜シイノデアル、サウ
  人ガ負ケタカラ此方モ負ケナケレバナラヌ
  ト云フガ如キモノデモアリマセヌ、我國今
  日ノ製鐵業其モノヽ狀態ハ、第一ノ御質問
  ニ對シテ申上ゲマシタ如ク、戰爭ノ爲ニ輸
  入品ノ杜絕ノ時期ニ於テ、早ク物ヲ拵ヘタ
  イト云フ所ニアセッテ、設備ガ甚ダ不十分デ
  アリマス、其不十分ナルガ爲ニ、今日ニ於
  テハ非常ニ不經濟ナモノガアル、此不經濟
  ナルモノヲ經濟的ニスルニハ、今囘奬勵法
  ノ如ク銑鐵ヨリ始マッテ繼續的ニ鋼材ニマ
  デ續ケテ行クト云フコトハ、是ハ熱ノ經濟
  ノ上カラ申シマシテモ利益、ソレカフ工程
  ヲ別々ニ立テルトキニ考ヘマスレバ、勞銀
  ノ上ニ於テモ、雑費ノ上ニ於テモ、確ニ節
  約ノ出來ル筈デアリマス、郎チ現在ノ製鐵
  業者ヲシテ、斯ノ如ク經濟的ニ導イテ行ク
  ト云フコトニハ是ハ奬勵法ヲ以テ之ヲ導
  イテ行クコトガ適當ナリト思フノデアリマ
  ス、又御尋ノ中ニ印度ニ關スル事例ヲ御引
  ニナンテ、大分質問ノ御趣旨ヲ御述ニ相成
  リマシタガ、私ハ此場合ニ於テ印度關係ノ
  事ヲ申上グルコトヲ欲シナイノデアリマ
  ス、此關係ガ起リマシタ爲二、之ニ代ハル
  ニ奬勵法ヲ布イタナラバ、甚シキ失敗デア
  ラウト云フ仰セデアリマシタ、固ヨリ關稅
  ヲ引上ゲルコトヲ以テ製鐵ノ根本策ヲ樹テ
  ルコトモ一ツノ意見ニ相違ナイト思ヒマ
  スサリナガラ日本ノ今日ノ製鐵業者ノ狀
  態ニ對シマシテハ、寧ロ奬勵法ヲ行シテ、銑
  鐵ヨリ始マッテ鋼材マデ繼續的ニ爲サシム
  ルヤウニ之ヲ導キ、今マダ其設備ノ不十分
  ナル點ノモノニ對シテハ、之ヲ設備スルト
  云フ條件ノ下ニ奬勵ヲ加ヘテ行キサヘスレ
  バ、結局其自的ヲ達スルニ至ルデアラウ、
  斯ウ云フ所信ヲ以テ奬勵法ヲ御協賛ヲ求ム
  ルコトニ致シタノデアリマス、關稅ガ出來
  ナイカラヤラナクシテ、別ノ法ヲ取ッタト
  云フ意味デハナイノデアリマス、第五ノ御
  質問ハ、日本ノ需要額ハ約四百万噸ト云フ
  コトデアルガ、斯ノ如キ域ニ達スレバ二千
  万圓ノ金ヲ要スル、如何ニモ御尋ノ通リ、
  最初ハ少クシテ段々量ガ增スニ從シテ奬勸
  金ノ多額ニナルト云フコトハ、是ハ避クベ
  カラザルコトデアリマス、サリナガラ我國
  ノ現在ノ鐵ハ、官營ノ製鐵所ガ拵ヘマスル
  モノガ半分以上デアリマス、又一足飛ニ御
  懸念ノ如キ金ヲ、直ニ十六年度ニ要スルト
  云フガ如キコトニ發達ヲスルト云フコト
  ハ出來得ナイコトハ森君ト雖モ御承知
  ノ筈デアリマス、是ハ漸次其所ニ到ルペキ
  モノテアル、漸次其所ニ到ッテ鐵ノ自給自
  足ガ出來ルコトニナレバ、製鐵ノ國策其モ
  ノハ目的ヲ達スルコトヽシテ喜ンデ宜シイ
  コトデアラワト思ノテ居リマス(拍手)
  〔森恪君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=10

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• 011・森恪

  ○森恪君　只今商工大臣ヨリ詳シキ御答辯
  ガアッタノデアリマスルガ、私ハ其御答辯ノ
  內容ヲ拜聽致シテ居リマシタガ、要スルニ
  顯ミテ他ヲ申サレタノデアリマス、本員ノ
  質サント致シテ居リマシタ所ヲ御答ニ相
  成ッタノデハアリマセヌ、若シ時間ガ許ス
  ナラバ、私ハ此所ニ其一々ヲ捉ヘテ辯駁ヲ
  試ミタイノデアリマスルガ、會期ノ切迫致
  シテ居リマスル今日私ハ之ヲ愼ミマス、大
  要ハ委員會ニ於テ更ニ要點ヲ御質シヲ致シ
  タイ積リデアリマスルガ唯2一點此所ニ關
  〓問題ニ對スル商工大臣ノ御答〓實二
  吾々ヲシテ片岡國務大臣デモ斯樣ナ御各〓
  ヲ爲サルカト云フヤウナ感ジヲ致シタノデ
  アリマス(拍手)全ク是レ自己ノ良心ニ反シ
  タル所ノ御答辯デアルノデアリマス、併ナ
  ガラ此點モ亦此席上ニ於テ御答辯相成ルコ
  トヲ好マザルヤノ御樣子デアリマスルガ故
  ニ、私ハ追究ヲ致シマセヌ、唯〓一貫主
  義-銑鋼一貫主義ハ、熱ノ經濟其他ニ於
  テドウシテモ必要デアルト云フ御話デアリ
  マシタ、固ヨリ其迪リデアリマス、吾々モ
  銑鋼一貫主義ハ、今日ノ襲鐵事業界ノ最モ
  理想トスル所デアリ、我國モ其點ニ到達セ
  ネバナラヌト云フコトヲ私ハ考ヘルノデア
  ル、併ナガラ我國ノ製鐡事業ハ、政府自
  ラ獎勸案ヲ考ヘネバナラヌ程ノ幼稚ナル狀
  態ニ在ルノデアッテ、銑鋼一貫主義ガ未ダ實
  行サレテ居ラナイノデアリマス、若シ之ヲ
  實行セント致シマスルトキニ、嚴密ニ之ヲ
  申シマシタナラバ、我國現存ノ製鐵所ノ中
  デ、此一貫主義ヲ實行致シテ居ル製鐵所ハ
  果シテ幾ツアルカト云フ質問ヲ致シタノデ
  アル、理想ヲ捉ヘテ現實ヲ捉フルコトヲ忘
  レタ此一點ハ矛盾デアルト私ハ指抦致シ
  タノデアリマス(拍手)併ナガラ時間經濟ノ
  爲ニ、私ハ玆ニ遺憾ナガラ質疑ヲ此程度デ
  打切リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=11

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• 012・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　前田房之助君
  〔前田房之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=12

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• 013・前田房之助

  ○前田房之助君　私ハ數箇ノ質問ヲ致シタ
  イノデアリマスルガ、既ニ質問セントスル
  大部分ハ森君ニ依ノテ質問サレマシタカラ、
  成ベク市複ヲ致サナイヤウニ質問致シマ
  ス、唯〓併ン森君ノ質問ニ對シマシテ、片
  岡商工大臣ハ顧ミテ他ヲ言ハレタ點モ尠ク
  ナイノデアリマスルカラ、此學ダケハ重複
  ヲ厭ハズ質問ヲ致シタイト思フノデアリマ
  ス、第一政府ハ國力ノ充實ヲ圖リ、我ガ
  國家ノ健全ナル發達ヲ期スルガ爲ニ、我國
  產業ノ中デ特ニ工業ノ發展ニ力ヲ盡サレ
  テ製鐵業ノミナラズ、有ユル工業ニ對ス
  ル國策ヲ樹テヽ工業ヲ以テ我ガ產業ノ基
  調十致シテ、所謂工業立國ノ實ヲ舉グルト
  云フ御考ナキヤ、其點ヲ第一ニ御伺致シタ
  イノデアリマス、此產業政策ノ根本方針ガ
  確定致シテ居リマセヌガ爲ニ、曩ノ關稅定
  率改正法ニ對シマシテモ、又木案ニ對シマ
  シテモ、頗ル不徹底ナ嫌ガ起,テ居ルノデ
  アラウト思フノデアリマス、又近時我ガ朝
  野識者ノ輿論デアリマスル所ノ東洋樹策ナ
  ルモノモ、全ク之ニ由シテ我國ノ工業立國
  ナルモノヲ助成ヲ致シテ、サウシテ我國ノ
  生存權ヲバ永久ニ確保スルト云フ所ノ點カ
  ラ出發シテ居ルノデアラウト思フノデアリ
  マス併ナガラ固ヨリ農業、二四業、工業、
  其他有ユル產業ノ隆盛ナランコトヲ熱望
  シ、又出來得ル限リンレガ實現ニ努力スル
  者デアリマスケレドモ、國家ノ財政ニハ自
  ラ限度ガアルノデアリマス、又我國ノ產業
  狀態、經濟事情、國防關係、人口、土地、生
  產原料、其他内外諸般ノ國情ヲ考ヘマス時
  ニ於テ、私ハ工業ヲ以テ國ノ基礎トシテ、
  サウシテ產業ノ基調ト致スト云フコトガ最
  モ必要デアラウト思フノデアリマス、近時
  產業立國ノ聲モ盛デアリマス、洵ニ結格デ
  ハアリマスルガ、併ナガランレニ付キマシ
  テ何等具體的ノ立案ヲ今日マデ聞カナイト
  云フコトハ私共ノ甚ダ遺憾トスル所デア
  リマス、又農村ノ振興效済ノ如キモ、固ヨ
  リ必要デアリマス、私共ハ出來得ル限リノ
  努力ヲ致サナケレバナラヌト思フノデアリ
  マスケレドモ、併ナガラ此農村ノ振興救
  濟ト申スコトハ、全國人口ノ五割七步ヲ占
  メテ居ル所ノ農村ノ收人ガ少イ、面モ年々
  農村ノ負擔ガ增加致スニ伴レテ農村ガ疫弊
  困憊ニ陷ノテ居ル、斯ル意味ニ於テ詰リ社會
  政策的見地カラシテ此救濟振興ヲ圖シテ、リ
  ウシテ農村ヲ改善致シマスト共ニ、食糧問
  題ノ一部ノ解決ニ資スルト云フコトガ本義
  デアリマシテ、今日國家ノ大局カラ見マシ
  テ、我國ノ農業ノ現在竝ニ將來ヲ達觀致シ
  テ、農業ヲ以テ我國產業ノ基礎トスルト
  云フコトハ、恐ラクハ何人モ肯定シ得ナイ
  事實デアラウト思フノデアリマス、又海外
  ノ例ヲ見マスルニ、獨逸ヲ見マシテモ、英
  吉利ヲ見マシテモ、亞米利加ヲ見マシテモ、
  此工業ニ特ニ力ヲ八シタル國家ハ榮エテ、
  然ラザル國家ハ衰亡ノ傾ガアルト云フコト
  ハ近代經済史ノ明ニ證明致シテ居ル所デ
  アルト思フノデアリマス、私ハ此點ニ付キ
  マシテ、政府及率直ニ而モ大膽ニ、其所信
  ヲ技瀝サレンコトヲ希望スル者デアリマ
  ス或ハ政府當局ト致シマシテ、各種ノ產
  業ハ密切ナル關係ガアル、隨テ時勢ニ應ジ
  テ公正ニ各產業ノ發展ヲ圖ラナケレバナラ
  ヌト云フヤウナ御答ガアルカモ知レマセヌ
  ケレドモ、是ハ屬僚政治家ノ口ニスル所デ
  アッテ、苟モ國家ノ大所高所ヨリ見テ、我
  國ノ產業ノ振興ヲ圖ルニノ此產業ノ政策ノ
  根本方針ヲ御定メニナッテ、サウシテ根本力
  針ノ實現ヲ期セラレルト云フコトガ、是ハ
  政黨政治家、立憲政治家ノ責務テアラウト
  思ヒマスカラ、何卒亦裸々ニ其所信ヲ此席
  上ニ於テ述ベラレンコトヲ希望スル者デア
  リマス、第二ニ御尋申上ゲマスルコトハ
  本案ニ依ル所ノ保設癸勵ニ依リマシテ、果
  シテ製鐵事業ノ確立ヲ期シ得ルト云フ御自
  信アリヤ否ヤト云フ點デアリマス、又果シ
  テ斯ル御自信ガアリマスナラバ、何ヲ根據
  ト致シテ斯樣ナ御自信ヲ抱カレタカト云フ
  コトヲ御尋申上ゲタイト思フノデアリマ
  ス只今片岡商工大臣ハ森君ノ質問ニ對セ
  ラレテ、現行法ハ相當ニ效果アルモノデア
  ルト、斯樣ニ中サレタノデアリマスガ、併
  ナガラ現行法ノ寳施以來、今日ニ至ルマデ
  ノ製鐵事業ノ現狀ハ、明ニ此現行法ノ失敗
  シテ居ルコトヲ物語ッテ居ルモノデアラウ
  ト思フノデアリマス、試ニ其例ヲ申上ゲマ
  スト云フト、大正六年現行法實施以來、全
  國ニ於テ約八十ノ製鐵所ガ出來タノデアリ
  やく、然ルニ今日マデニ既ニ七十五ノ工場
  ハ其作業ヲ中止致シテ居ル、或ハ全然廢業
  ヲ致シテ居ル僅ニ殘シテ居ルモノハ五ツ
  シカナイノデアリマス、サウシテ殘ッテ居
  リマス所ノ釜石ノ製銀所、小H1画ノ製鐵
  所兼二請ノ製鐵所是等悉クガ相當ノ缺
  損ヲ致シテ居リマス、此事實ハ明ニ私ハ現
  行法ガ適當ナル制度デナカッタト云フコト
  ヲ如實ニ語ノテ居ルモノデアルト思ヒマス、
  無論大正九年ノ財界ノ急轉百下ノ不況ニ依
  リマシテ、非常ナ打撃ヲ受ケタコトハ事實
  デアリマス、併ナガラ若シ現行法ナルモノ
  ガ相當效果ガアリマシタナラバ、私ハ八十
  ノ中七十五マデ廢業スルヤウナ結果ニ陷。ン
  テ居ラヌト思ヒマス、此點ハ明ニ現行法ノ
  失敗ヲ物語ッテ居ル何ヨリノ活據アアルト
  思ヒマス其他海外ノ例ヲ森君ガ述ベラレ
  タニ對シテ、外國ハ外國デアル、我ガ日本
  ノ國ハ外國ニ見習フ必要ハナイト云フ御答
  デアッタノデアリマスガ、併ナガラ我國ガ
  英米、行っ!佛ニ比シテ、其原鑛ノ數量ヨ
  リ致シマシテモ、又石炭ノ質カラ致シマシ
  テモ遙ニ劣ッテ居ル、其劣ノテ居ル國家ガ海
  外ヨリヨリ尠イ所ノ保護奬勵ニ依ッテ、
  果シテ製鐵事業ノ確立ノ目的ガ逹セラレル
  ト云フ御考ヲ持ッテ居ラレマスカドウデア
  リマスカ、私ハ少シク例ヲ擧ゲテ申上ゲマ
  ス来國ニ於テハ御承知ノ如ク千八百十五
  年ニハ銑鐵一噸ニ付テ一弗ノ保護デアリマ
  シタガ、千八百七十年ニ於キマシテハ
  噸ニ付テ七弗ノ高率ヲ課シタノデアリマ
  スサウシテ千八百九十年ニ於キマシ
  テ、彼ノ有名ナル「マッキンレー」ノ保
  護政策ニ依ノテ、初メテ米國ノ製鐵事業ヲ
  完成改シタノデアリマス、又獨逸ノ如キモ
  千八百四十四年ニ於キマシテハ、銃鐵一噸
  ニ付テ二十馬克ノ關稅ヲ掛ケテ、サウシテ
  漸ク製鐵事業ハ確リシタノデアリマス、其
  後-製鐵事業ノ基礎ク確立致シマシタニ
  付テ、千九百十年ニハ十馬克ニ引下ゲタノ
  デアリマス、ケレドモ免ニ角保護關稅ヲ設
  ケタトキニハ二十馬克ヲ課シタノデアリマ
  ス、又英國ノ例ヲ取ノラ見マシテモ、英國
  ハ御永知ノ如ク十八世紀ノ末葉ニ於テ關稅
  政策ヲ行ッタノデアリマスガ、其當初ハ銑
  鐵一噸ニ付テ二磅十志十片ヲ課シテ居クタ
  ノデアリマス、其後峻烈ナル保護政策ヲ實
  行致シマシテ、千八百十九年ニ於テハ銑鐵
  一噸ニ付テ六磅十志ト云フ、殆ド輸入禁止
  稅ニ均シキ稅金ヲ課シテ居シタノデアリマ
  ス、當時英國ニ於ケル銑鐵ノ原價ハ〓
  ニ付テ十磅十志十片二分ノ一ト云フコトデ
  アッタノデアリマスカラ、丁度原價ノ六割
  ニ當ル程ノ高率ノ輸入稅ヲ課シタノデアリ
  マス、其結果漸クニシテ英國ノ製鐵事業ト
  云フモノハ確立シタノデアリマス、蓋シ石
  炭多ク鐘量多キ所ノ英吉利、獨逸、亞米利
  加ニシテ、尙且ツ斯ノ如キ高イ稅金ヲ課シ
  テ、サウシテ幾多ノ變遷ヲ經、長イ間ノ經
  驗ヲ積ミ、漸ク其事業ハ確立シタノデアリ
  マス、又森君ノ申サレタ如ク、保護奬勵ヲ
  行シタ國家ハ少シモ成功ヲ見テ居リマセヌ、
  其實例ハ時間ヲ省略スル爲ニ私ハ申シマセ
  ヌガ、加奈陀ニ致シマシテモ、濠洲ニ致シ
  マシテモ、伯剌西爾ニ致シマシテモ、獎勵
  金ヲ交付スル制度ヲ取クタ園ハ悉ク失敗ヲ
  致シテ居ル、斯樣ナ事實ニ後シマシテモ、
  私ハ一噸ニ付テ僅ニ六圓以內ノ奬勵金ヲ交
  付ナサレルコトニ依ッテ我ガ製鐵事業が確
  定スルモノトハ、ドウシテモ思ハレヌノデ
  アリマス、此點ニ付キマシテ今一度具體的
  ニ御自信ノ程ヲバ承リタイト思フノデアリ
  マイ、然ラバ何ヲ根據トシテ片岡商工大臣
  ハ此計畫ガ此方法ニ依ッテ確立スルト云フ
  御自信ヲ以テ御出シニナッタノデアリマス
  カ、或ハ鋼鐵ノ關稅ヲ一割五分カラ一割八
  分ニ引上ゲタ、サウシテ五圓程ノ引上ヲヤツ
  タカラ、銑鐵ニ對シテモ五圓程ノ奬働金ヲ
  交付スルト云フ御意見デアルノデアリマス
  カ、或ハ我國ノ價格ト外國ノ價格ガ五六圓
  開キガアルカラ、ソレダケノモノヲバ交付
  スルノデアルト云フ御考カラ出タノデアリ
  マスカドウカ、其根據ヲ一ツ數字的ニ御
  シヲ願ヒタイト思フノデアリマス、ソレカ
  ラ第三ト致シマシテハ、私ハ暫ク片岡國務
  大臣ノ御聲明ヲ信賴スルモノトシテ、本法
  案ニ依シテ製鐵事業ガ確立スルモノト看做
  シマシテ、然ラバ果シテ幾年ノ期間、今後
  幾年ノ期間ニ於テ我ガ製鐵事業ガ確立スル
  ト云フ御考デアルノデアリマスカ、此點ヲ
  御伺致シタイノデアリマス、又一箇年ニ幾
  許マデノ獎勵交付金ヲ御出シニナルト云フ
  御考デアルノカドウカ、此二ツノ事柄ハ我
  ガ國家ノ財政上、又國民負擔ノ上ニ重大ナ
  ル影響ヲ持ツモノデアリマスカラ、恐ラク
  ハ政府ト雖モ何等據ル所ナク、漫然ト此御計
  畫ヲ立テラレタモノトハ思ハヌノデアリマ
  ス、必ズ此計畫ヲ立テラレタニ付テハ、何
  カ據ルベキ根據ガアッタデアラウト思フノ
  デアリマス、此點ニ付キマシテ詳細ナル御說
  明ヲ仰ギタイト思ヒマス、其次ハ現在ノ當
  業者ハ御承知ノ如ク、大正六年ノ現行法ニ
  依リマシテ特別ノ保護ヲ受ケテ、其結果ト
  致シマシテ經營ガ頗ル放漫ニ流レ、サウシ
  テ其結果經營困難ノ狀態ニ陷シタノデアリ
  マス、隨テ本法ヲ適用ナサル前ニ當リマシ
  テハ、現當業者ノ事業ノ内容ヲ根本的ニ刷
  新ヲサレ、經營方針ヲ改メ、サウシテ生產
  費ヲ安カラシムルコトヲバ銳意御努力ヲナ
  サッテ、其上ニ本法ヲ適用ナサルト云フコ
  トガ總當デアラウト田心フノデアリマス、單ニ
  表面上ノ條件ノミガ一致ヲ致シタカラ、直ニ
  本法ヲ適用ナサルト云フヤウデハ、何等ノ
  效果ガナカラウト思フ、恐ラクハ奬勵法デ
  ナクシテ一種ノ救濟法デアルカモ知レヌ、
  奬勵金デナクシテ、現當業者ノ懇願ニ依ル
  所ノ一ノ義捐金ニナルデハナカラウカト思
  フノデアリマス、隨テ私ハ本法ヲ適用ナサ
  ル前ニ、現當業者ノ財政狀態ヲ能ク御調ベニ
  ナッテ、其整理ヲ政府自ラ爲サレルト云フ
  位ノ決心ヲ以テ斷行サレンコトヲ希望スル
  者デアリマス、之ニ對スル政府當局ノ御方
  針ハ如何デアリマスカ、之ヲ御尋申上ゲタ
  イノデアリマス、更ニ假令現行法ヲ適用ナ
  サリマシテモ、今後當業者ノ經營方針ニ付
  キマシテハ嚴重ナル監督監視ガ必要デア
  ラウト思フ、此當業者ノ嚴重ナル監督監視
  ヲバ政府ハ如何ナル方策ヲ以テ御遣リニナ
  ル御考デアリマスカ、此點ヲ御尋申上ゲタ
  イト思フノデアリマス、次ハ共同販賣ノコ
  トデアリマス、是ハマダ確定致シテ居ラヌ
  ヤウデアリマスガ、最近工業當業者ガ御集
  リニナッテ此生產ノ調和ヲ圖ル、調節ヲ圖
  ルト云フコトヲ御相談ニナッテ居ルヤウデ
  アリマスガ、是ハ誠ニ結構ノ事ト思フノデ
  アリマス、併ナガラ共同販賣ヲ爲サルコト
  ニ依ノテ市價ヲ釣上ゲテ、外國品ヨリモ高
  價デアッテ而モ劣等ナル製品テ、我ガ內地
  需要者ハ甘ンジナケレバナラヌト云フ結果
  ニ陷ルノデナカラウカト云フコトヲ私ハ憂
  フル者デアリマス、此點ニ付キマシテ政府
  ハ如何樣ナル御考ガアルノデアルカ、承ツ
  テ見タイノデアリマス、其次ハ滿蒙ニ於ケ
  ル製鐵業者ニ對スル保護奬勵デアリマス、
  我國ノ製鐵事業ノ基礎ヲ確立致シマスルノ
  ニ、內地當業者ニ對スル保護奬勵以上ニ、
  滿蒙ノ當業者ニ對シマシテ保護奬勵ヲ與ヘ
  ル必要ガアルト思フノデアリマスガ、政府
  ハ果シテ保護奬勵ヲ爲サル御意思ガアル
  カ、アルナラバ如何ナル方法ヲ以テ、又如
  何ナル金額ヲ御交付ニナル御考デアリマス
  カ、此點ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、
  以上ハ議案第一ニ依ッテノ質問デアリマス
  ガ、玆ニ議案第三ニ對シマスル質問ヲ簡單
  ニ致シタイト思フノデアリマス、御承知ノ
  如ク朝鮮ニ於キマシテハ、現在我ガ內地カ
  ラ朝鮮ニ移入致シマスル所ノ「アルコール」
  類竝ニ織物ニ對シテ移人稅ヲ課シテ居ルノ
  デアリマス、其金額ハ昨年度ニ於キマシテ
  二百八十二万五千九百七圓、斯樣ナコトニ
  ナッテ居ルノデアリマスガ、朝鮮ヲ合併ナ
  サッタ時ニ、朝鮮合併後十年ノ後ニ於テハ
  我ガ內地トノ關稅ヲバ敬廢スルト云フ御昼
  明ヲ爲サッテ居ルノデアリマス、然ルニ今
  日尙且ツ斯樣ナ移人稅ノ制度ヲ設ケラルヽ
  ト云フコトハ朝鮮合併當時ノ聲明ヲ裏切
  ルモノト私ハ思フノデアリマス、政府ハ今
  日我國内地ノ產業竝ニ朝鮮ノ產業ノ實際ニ
  顧ミマシテ、此移入稅ヲ撤廢ナサル御意思
  ガアルカドウカト云フコトヲ御伺致シタイ
  ノデアリマス、次ニ輸人稅ニ關スルコトデ
  アリマスガ、先般關稅定率法改正ニ依リマ
  シテ、栗ニ對シテ百石二十一圓二十五錢ノ
  輸人稅ヲ課セラレタノデアリマス、然ルニ
  粟ハ御承知ノ如ク主トシテ朝鮮ノ細民ガ食
  糧ニ供シテ居ルノデアッテ、內地ノ需要ニ
  供セラレルノハ極ク少イノデアリマス、然
  ルニ朝鮮ノ細民ノ唯一ノ食糧デアリマスル
  ニ對シテ、斯樣ナル稅率ヲ課セラレルト云
  フコトハ、朝鮮ニ於ケル社會政策ノ見地ニ
  反スルモノト思フノデアリマスガ、政府
  ハ此粟ニ對スル輸人稅ヲバ朝鮮ニ限ッテ除
  外例ヲ設ケラルヽ御考ガナイカ否ヤヲ御尋
  申上ゲタイノデアリマス、以上數點ニ亙リ
  マシテ國務大臣ノ御答ヲ得タイノデアリマ
  スガ、殊ニ第一點、工業立國ニ關スル問題
  ハ我國將來ノ進、連ニ重大ナル影響ガアリ
  マス爲ニ、内閣總理大臣ノ御谷辯ヲ煩ハス
  ベク本日御出席ヲ要求致シタノデアリマス
  ガ、御出席ガアリマセヌカラ、片岡商工大
  臣ガ御代リニナッテ、ソレニ對スル卒直ナ
  ル御答ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=13

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• 014・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今ノ前田君ノ
  御質問ニ御答ヲ申上ゲマス、第一ハ工業立
  國ノ意思ナキヤ否ヤ、此點ニハ極メテ熱心
  ニ其必要ヲ加味セラレ御質疑ニ相成ッタノ
  デアリマス、極メテ卒直ニ御各ヲシロト云
  フ御要求デゴザイマスルガ、我國ノ產業、
  所謂原始的產業、農業的產業、此兩方面ニ
  向ッテカヲ致スコトガ適當ナリト信ジテ居
  リマス、御意見ニ依リマスレバ農村振興ノ
  如キ、或ハ甚ダ重キヲ御置キニナラヌヤウ
  ニ伺ヒマシタガ、我國ノ國民多數ハ農業者
  デアリマス、其農業者ノ疲弊困憊ヲ無視ス
  ルコトノ出來得ナイノハ是ハ當然ノ事デ
  アリマス、所謂農村振興ノ聲ノ喧シキコト
  モ一通リ道理アルコトヽ存ジマス、故ニ之
  ヲ無視スベカラズト云フコトニ於キマシテ
  ハ政府ハ常ニ相當ノ考慮ヲ拂ッテ居リ、
  又相當ノ施設ヲ爲シツヽアルコトモ御水知
  ノ通リデアリマス、併ナガラ工業ヲ是ヨリ
  發展セシムル所ノ效果、農業ノ改良、所謂
  振興ト云フ所ノ效果ノ數量ヲ考ヘマスレ
  バソレハ工業ノ上ニ力ヲ致サナケレバナ
  ラヌト云フコトヽ其效果ノ多イコトヽハ
  御質問ノ通リデアルト思フ、此點ニ於キマ
  シテハ前田君ノ御考モ私ノ考モ甚シキ差
  ハナイノデアリマス、唯、前田君ハ工業立
  國ト云フコトニ全力ヲ盡シテ、他ノ方ノ半
  ヲ無視スル御意味テハナカッタト存ジマス
  ガ、稍〓輕視シタ御考ノヤウニ伺ヒマス、
  是ハ轉視スルコトハ農民多數ヲ占メテ居ル
  我カ國情下シテ許サナイコトデアルト存ジ
  マス(ヒヤ〓〓)工業ノ上カラ申シマスレ
  バ、今日ノ製鐵事業ニ對シテ獎勵法ノ協費
  ヲ求メマスルコトモ、又染料工業ニ對シテ、
  重キヲ置イテ居リマスルコトモ、是皆化學
  工業ノ土ニカヲ致サナケレバナラヌトームフ
  考ノアルコトヲ豆線立テルコトヽ思ッテ居
  ルノデアリマス、其他工業試驗所ニ於テ室
  素ノ〓究ノ如キ、今中間試驗ニ移ッテ居ル
  ノヂアリマスガ、是等モドウシテモ自給自
  足ニ致サナケレバナラズ、其自給自足ニ至
  ル曉ハ農民モ亦之ニ依シテ多クノ肥料ヲ
  得テ、而モ經濟的ニ得テ以テ利益スルト云
  フコトニモ相成ルノデアリマス、其他曹達
  灰ノ如キモノニ至リマシテハ、最早成功ス
  ルコトハ間違ヒガナイマデニ試驗ハ濟ンデ
  居ルノデアリマスガ、詰リ是等ニ要スル所
  ノ鹽其モノガ、我國ニ於ケル需給ノ關係ガ
  稍=平衡ヲ得テ居ルノデアリマス、是等工
  業ニ要スル所ノ鹽ニ致シテハ別段ノ考慮
  ヲ致サナケレバナラヌ、唯〓考慮スルノミデハ
  事足ラヌコトデ、是ハ方針ヲ確定シナケレ
  バ相成ラヌコトニナッテ居ルノデアリマス
  是等ノ點ニ於キマシテモ、速ニ其方針ヲ確
  定スルコトニ致シタイト考ヘテ居ルノデア
  リマス、卽チ工業立國ノ御趣旨ハ商工省
  トシテ懐イテ居リマス所ト差別ハナイ、斯
  ウ御水知下スッテ宜イノデアリマス次ニ現
  在ノ奬勵法ノ下ニ、製鐵事業ヲシテ愈。自
  給自足ノ域ニマデ確立セシムルコトガ出來
  ルカ否ヤ、此御質問デアルノデアリマス、
  是ハ至極御尤ノ御質問デアリマスガ、現在
  此製〓事業ヲシテ一日モ速ニ成功セシムル
  ニハ、關稅ヲ十分ニ引上ゲルト云フコトガ一
  番仕易イ事デアリマス、一番又效果ガ有ル
  モノデアリマセウ、サリナガラ我國ニ出來
  ル所ノ鐵ノ約半分ハ、今輸入ニ仰イデ居ル
  ノデアリマス此關稅ヲ一時ニ引上ゲタ爲
  ニ、其國民ノ多數ガ非常ニ高キ鐵ヲ使用シ
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  ナケレバナラマト云フコトニ陷ルノデアリ
  せっ、製鐵業者ダケカラ申セバ開放ヲ引上
  ゲルコトヲ欲スルノデアリマス、消費者ノ
  側カラ云ヘバ關稅ヲ成タケ安クシテ貰ハナ
  ケレバナラヌト云フコトヲ主張スルノデア
  リマス、是ハ利害相反スル事柄デアリマ
  ス、ンレ故ニ製鐵事業ヲシテ眞ニ白給自足
  ノ域ニ達セシムル爲ニハ、成ベク國民ヲシ
  テ苦痛ヲ甚シカラシメザル程度ニ於テ之ヲ
  力メナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  其點カラ申シマくルト、銑鐵ヨリ始マッテ
  鋼材マデニ一貫シテ行クト云フ此設備ノ整
  ヒマシタ曉ハ生產員ニ於テ、約七万圓餘
  ヲ減ズルト思フノデアリマス、ソレカラ今
  日奬勵金ヲ印ヘヘコトヲ先ヅ別ニ致シマシ
  テ、現在ノ奬勵法其モノニ依リマシテ之ヲ
  茲ニ延期ヲ〓ス最早期限ガ來テ居ルノデア
  リマス、之ヲ期限ヲ延ベマスル爲ニ、獎勵
  法ノ下ニ受クル奬勵金ノ外ニ、所謂所得稅
  トカ營業稅トカ云フモノヽ免稅ヨリ致シ
  テ、鋼材一噸ニ對シテ約一圓八十二錢ノ補
  助ヲ加ヘラレタト同ジ結果ニナッテ居リマ
  スサウスルト設備ノ改善ニ依シテ生產費
  ガ七万圓餘安クナリ、所得稅、營業稅ノ免
  除ニ依ノテ一圓八十二錢安クナリ、奬勵法ニ
  依ッテ受クル所ノ金ヲ合セラ相當ノ金額ニ
  ナルト思フノデアリマス、而ジテ何ニ依ッテ
  此奬勵法ノ根本ヲ定メタカト云フ御話デア
  リマス是ハ詳細ニ亙リマスルト委員會デ
  申上ゲル外ハアリマセヌガ、大體ニ於テ今
  日輸入シテ來ルモノニ對スル日本ノ製品ト
  ヲ比較シタモノデアルノデアリマス、而ジ
  テ果シテ確立スルヤ否ヤト云フ此根本ノ御
  尋ニ對ンテ、當業者ト監督者ト一致協力ノ
  結果確ニ成功スルト存ジマスルガ、當業者
  ガ今中シタ通リ利益ヲ得ルヤウニカメルコ
  トハ當業者ニ於テ爲サネバナラヌ、是等
  ガ果シテ爲スカ否ヤト云フコトハ、政府者
  ニアラズシテ當業者デアル、其當業者ト政
  府者トガ相兼ネテ居ルト云フコトナラバ
  何年掛ッタラ斯ウナルト云フコトヲ申上ゲ
  ルノデアリマスガ、現ニ枝光製鐵所ノ如キ
  ハ是デ十分ニ行クノデアリマス·故ニ〓營
  ノ方カラ申シマスレバ、無論行クノデアリ
  マスガ、此點カラ申シマスレバ、官営ニハ
  資本ニ對スル利子ヲ拂テテラスト云フガ
  如キ御論モ起リマセウガ、其利子ヲ控除致
  シマシテモ、算盤ハ出ルコトニナッテ居リ
  マス、サウシテ見ルト、此奬勵法ニ依ッテ
  當業者ガ玆ニ奮勵努力シテ以テ國策樹立ニ
  副フ、此所マデ努メルト云フコトニ依シテ
  效果ノ完成スルモノト申サナケレバ、此ニ
  何年ヲ期シテト云フガ如キコトハ責任ヲ以
  テ御谷ハ出來ル事柄デナイト思フノデアリ
  マス、ソレカラ外國ヨリ少キ補助云々ノコ
  トモゴザイマシタガ、是ハ前段ニ御說明ヲ
  申上ゲタコトニ依シテ、大略ヲ御承知下サク
  タト思フノデアリマス、ソレカラ外國ノ獎
  勵法ハ失敗デアッタ、之ヲ森君ノ述べラレタ
  點ニ對シテ重ネテ御述ニナリマシタガ、是
  ハ其國ノ事情ニモ依リマセウ、凡ン物ノ補
  助ト云フモノハ、補助金ガアルガ爲ニ補助
  金ニ依賴シテ以テ改良ヲシナイト斯ウニ云
  フコトニ流レ易イノデアリマス、今囘ノ奬
  勵法ハ、現在ノ設備ヲ斯樣ニ改良シテ此奬
  勵法ニ副フヤウニ致スト云フ方法ヲ先ヅ立
  テサセ、之ヲ何時マデノ間ニ實行スルト云
  フコトニ依ッテ、ソレヲ信ジテ助成金ヲ遣
  ルノデアリマス、若シ其決メタ事柄ヲ實行
  致サナカッタチラバ、獎勵金ハ取上ケルト
  云フコトニナッテ居リマス、サウ云フ風ニ
  定ムル積リテアリマス、ソレ故ニ唯製品
  ノ分量ニ應ジテ遣ルト云フモノテナイ以上
  ハ、相當ノ效果ハアルト信ジテ居リマス、
  此答ニ依テ、當業者ノ財政ヲ調べテ云々
  ト云フコトノ御質問ハ、御了解ガ出來夕だ
  ト存ジマス、ソレカラ監督ノ方法ヲ如何ニ
  スルカト云フコトデアリマス、是ハ素人デ
  ハ監督ハ出來ナイ、ソレ故ニ旣ニ製鐵所技
  監野田氏ヲ商工省ノ兼務ヲ命ジマシテ、サ
  ウシテ是ガ監督ニ當ラシメルヤウニシテア
  ルノデアリマス、何レ其監督ノ方法其他詳
  細ノ事ニ至リマシテハ、委員會ニ於テ野田
  政府委員ヨリ詳細ニ御各ガ出來ルト存ジマ
  ス、ソレガラ共同販賣ノ設備ノ結果惡イ
  品物ヲ高ク賣ルヤウニナリハセヌカー、斯
  ウ云フコトデアリマスガ、惡イ品物ヲ高ク
  賣ルヤウニナラウトハ存ジマセヌ、左樣ナ
  コトハ致サセマセヌガ、ソコマデ來レバ大
  變結構デアリマス、其弊ガ出來テ、之ヲ矯
  正スルコトニ相成ルマデニ、此共同販賣ノ
  實績ガ擧ガルヤウニナレバ、洵ニ結構デア
  リマス、若シンコマデ來マシタナラバ、其
  弊害ヲ見出セバ是ガ矯正ニ努メルト云フコ
  トハ當然ノ事デアッテ、此矯正ヲ致スコト
  ハ何モ困難ハナイト思ヒマス、次ハ滿蒙
  ニ對スル御尋デゴザイマシテ、至極御尤デ
  アリマノ、併ナガラ滿蒙ハ我國ノ領土デハ
  ナイ、此奬勵法ヲ滿蒙ニ適用スルト云フコ
  トハ出來得ナイノデアリマス、併ナガラ我
  國ノ勢力ニ於テ、滿蒙ノ仕事ガ今日進ンデ
  居リマスル以上、之ヲ無視シテ置クト云フ
  コトハ出來得ナイ、是ハ分リ切シテ居ルソ
  レ故ニ此滿蒙方面ニ對シテハ、此奬勵法ヲ
  御協賛ヲ得ルト同時ニ相當ノ考慮ヲ致シ
  テ、彼等ノ苦痛ノ無イヤウニ致サウト云フ
  事ヲ決メテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=14

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• 015・前田房之助

  ○前田房之助君　簡單デアリマスカラ當席
  カラ御許シヲ願ヒマス-只今片岡國務大
  臣ハ私ノ質問ニ對セラレマシテ、私が農村
  振興ヲバ輕視シタ嫌ガアルト云ン言葉ヲ用
  キタト仰シヤッタノデアリマスガ、私ハ斷シ
  テ斯樣ナ言葉ハ用キナカッタノデアリマス
  今日我ク國ノ農村ノ振興救濟ヲ圖ルト云フ
  所ノ根柢ハ、社會政策上ノ見地カラ出タト
  云フコトガ第一デアルト云フコトヲ申上ゲ
  タニ過ギナイノヂアリマスカラ、左樣ニ御
  諒解ヲ願ヒタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=15

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• 016・黒金泰義

  ○政府委員(黑金泰義君)　只今前田君ノ御
  質問デ、朝鮮ニ於ケル酒精竝ニ綿織物ノ輪
  入稅ヲ撤廢スル意思ガナイカト云フ御尋デ
  アリマシタガ、是ハ內地ノ制ノ改正ニ伴ヒ
  マシテ、各植民地ノ稅制モ其趣意ニ順應
  シテ改正ヲシタイト云フ積リデアリマシタ
  ケレドモ、各植民地何レニ異ナル事情ヲ持シ
  テ居リマシテ、今回直ニ之ヲ實行スルト云
  フ譯ニハ至リマセヌ、随テ十六年度マデニ
  於テハソレ〓〓調査ヲ遂ゲテ、內地ノ方
  針ニ順應シテ進ムト云フコトニナッテ再ル
  ノテゴサイマス、又朝鮮ノ朝鮮人ニ最モ必
  要ナル粟ニ對シテ、此輸入稅ヲ除外スルノ
  考ハナイカト云フ御尋デゴザイマシタガ、
  是ハ御承知ノ通リ今日ニ於キマシテハ栗
  ニ對シテハ一石五十錢カノ輸入稅ヲ掛ケテ
  居リマスガ、若シ凶作其他必要ノ場合ニ於
  テハ朝鮮總督府ニ於テ臨時ニ是ガ方法ヲ
  講ジテ、此稅金ヲ免除スルト云フ規則ニ今
  日ナッテ居ルノデアリマス、隨テ其必要アレ
  パ、是ハ其必要ニ應ジテ朝鮮總督府ガ免除
  スルト云フコトニ今日ナッテ居リマスガ故
  ニ、此點ニ付テハ其手段ニ依シテ進ムト云
  フ考デ居ルノデゴザイマス、以上御質問ノ
  要點ダケヲ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=16

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• 017・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞〓カ)　猪野毛利榮君
  〔猪野毛利榮君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=17

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• 018・猪野毛利榮

  ○猪野毛利榮君　極ク簡單ニ一二點御尋致
  シタイト思フノデアリマス、日本ノ鐵國策
  ト云フモノハ非常ニ重大ナル問題デアルト
  私ハ思フノニ、取扱方ガ如何ニモドウモ早
  足テ、而モ冷淡ノヤウニ考へラレルノデア
  リマス(「簡單」ト呼フ者アリ)中ミ是ハ急イ
  デサウヤリ得ラルベキ性質ノ問題デハナイ
  ト思フ、皆サンハ進行々々ト申サルヽケレ
  ドモ、實ハ日本ニ取ッテ重大ナ問題デス、免
  モ角片岡商工大臣ニ、一體日本ハ鐵ノ自給
  自足ニ達シ得ラルヽ見込ガ確然ト有ルカ無
  イカト云フコトヲ先ツ聞キタイ、眞先キニ
  コイツヲ聞カナクチヤ駄目ナンデス、何故ナ
  ラバデスネ、一體此案ガ出テ來夕歴史ヲ吾
  吾ガ考ヘテ見ルト、腑ニ落チヌ點ガ多イノ
  デス、高橋是〓君ガ農商務大臣ノ時デアッ
  タ、卽チ三派內閣ノ時ハ日本ニ於ケル所ノ
  三菱其他東洋製鐵ノ如キ、五六ノ製鐵會社
  ガ此大切ナル鐵事業ヲヤッテ居ルノデアル
  ケレドモ、ドウシテモ立行カヌカラ之ヲ救
  濟セナクテハナラヌト云フ議論ヲシテ、サ
  ウシテ枝光ノ製鐵所ヲ玆ニ拂下ゲテ、サウ
  シテ官民合同デヤルトカ何トカ云フ卽チ會
  社ノ救濟策ノヤウニ當時ノ輿論ハナッテ居ツ
  タヤウニ思フ、高橋君ハサウ云フ事ヲ此處
  テ明言セヌケレドモ、輿論ハ之ヲ認メテ居ッ
  々ノデアル、ソレガ今日ニ至シテハソレヲ
  ヤラズシテ、而リ鐵國策ト變更ンテ來タノ
  デアル、鐵會社救濟策ガ鐵國策ト變更シテ
  來タヤウニ吾々ハ考ヘラレル、斯ウ云フ薄
  弱ナル根據理由ノ下ニ鐵國策ガ現レテ來ル
  ヤウナコトデハイクヌ、先程ノ片岡サンノ
  御話ニ依レバ、最初此鐵ニ付テハ關稅主義
  ヲ執ッテ來タヤウデアルケレドモ、此關稅政
  策ヲ執ルコトハ出來ナイト云フコトニ付テ
  ハソキリ明言シ得ナイ、是ハ重大ナル事
  デアル、關稅主義デヤルカ、又保設金ヲ給
  付シテヤルカト云フコトハ重大ナル事デア
  ル、日本デハ餘リ原鑛石ハ澤山ナイト云フ
  コトハ皆分ッテ居ル、ソレヲ原鑛石ノ澤山ア
  ル外國デモ失敗シテ居ル此事柄ヲ、何等原
  鑛石ノ無イ日本ガ斯ウ云フ大膽ノコトヲ急
  イデヤル、實ニ私共ハ腑ニ落チナイデスネ、
  實ハ鐵ニ付テハ私共ハ素人デアルケレド
  モ、素人ガ間クコトハ中ミ眞理ヲ鑿ツコト
  ガアル、玄人バカリデハイカヌ、片岡君ナ
  ドモ鐵ニ付テハ素人デアルカラ、隨テ玄人以
  上ノ名案ガ出テ來ルト思テ特ニ興味ヲ持ッ
  テ居ル、偖製鐵事業ニ保護金ヲ充行フテ、事業
  ヲ奬砌シテ行クノハ宜イケレドモ、今日本
  デハ民間デモ製鐵事業ヲヤッテ居ル、政府デ
  モ枚光製鐵所ナドヲ持テ居ル、兎ニ角民間
  ニ補助ヲシテ旨ク段々ヤッテ行ケルヤウニ
  シテ、ソレカラ後ニ官營ニシテシマフ積リ
  テアルカ、之ヲ政府ガ買收シテ官營デヤラ
  スル方ガ色ニノ都合上統一ガ取レテ宜イト
  云フノデアルカ、又今鐵ノ保護ヲ各會社ニ
  ヤッテ、後デハ枝光製鐵所ナドヲ民間ニ拂下
  ゲルト云フヤウナ方針デアルカ、此點モシッ
  カリ聞イテ置カナケレバイかヌノデアル、
  枝光製鐵所ノ如キハモウ七八年モ經チマセ
  ウガ、非常ナル大疑獄ヲ起シテ、當時ノ押
  川長官ナドハ其爲ニ白殺ヲスル、其以後ニ
  於テモ世人ハ九州ノアノ一角ニハ多大ナル
  疑惑ヲ持シテ居ル、今日デモ實ニアノ製鐵所
  ノ内部ハ紊亂ヲシテ居ルト云フコトヲ、時
  時私等ハ聞イテ居ルノデアリマスガ故ニ、
  斯ツ云フ點ニ付テモハッキリシタコトヲ片
  岡サンガ仰シヤラナクテハ、吾々ガ通リ一
  遍ニ議會ヲ通シテモイカヌ、成程トシッカ
  リ腑ニ落チナケレバイカヌ、國氏モ此島ニ
  付テ疑惑ヲ持シテ居ルト私ハ考ヘテ居ルソ
  レカラ第二番目ニハ、内地ニ一體ドレ位ノ
  鐵ノ原鑛石ガアルカト云フコトヲ聞キタ
  イ、私共ハ國防上コンナ事ヲ申シテハ差支
  アルカモ知レヌケレドモ、日本ノ鐵ノ原鑛
  石ハ貧弱ナルモノデアルト云フコトハ、世
  界ノ定論ニナッテ居ルト思フ、一體一年ニド
  レ位ノ鐵鑛石ヲ掘ッテドレ位拵ヘテ、何年間
  此原鑛ヲ始末シテ行ケルカト云フコトノ大
  凡ノ見込ガ立タナケレバナラヌト思フフデ
  ス、又此鐵ヲ製造スルニ付テハ石炭ガ要ル、
  日本ノヤウナ質ノ惡イ石炭デハ本當ノ
  良イ鐵ガ出來ルカドウカト云フコトモ疑問
  デアル、諾威ニ於テハ非常ニ良イ鐵ガ出來
  ルノハ、鐵鑛石モ良イデアラウ、技術モ宜イ
  デアラウガ、其火力卽ヲ石炭ガ良イト云フ
  說ヲ爲シテ居ル者モアル、斯ウ云フコトニ
  付テモ吾々ハ知ッテ置ク必要ガアルト思フ、
  又內地ニ澤山ノ原鑛石ガ無イナラバ、之ヲ濫
  ニ今日掘盡シテ使ヒ切ルト云フコトハ國
  防ノ上カラ考ヘテ見テモイザト云フ時ニ非
  常ニ後カラ迷惑ガ來ハセヌカ、現ニ獨逸ソ
  如キハ自分ノ國ニハ相當ノ鐵鑛石ガアルケ
  レドモ、アノ「プルガン」ニ於テ製鐵所ヲヤッ
  テ居リマスガ、此處へ來ル所ノ原鑛石ナド
  ハ皆諾威ノ方カラ持ッテ來テ居ル、サウシテ
  石炭ハ英國カラ持ノテ來ルト云フヤウニシ
  テ、成ベク自分ノ國ノモノハ使ハヌヤウニ
  ヤンテ居ル、日本ノ如ク貧弱ナルモノガ濫
  ニ之ヲ奬勵シテ、內地ノモノヲ掘盡シテシ
  マフト將來ハ實ニ困リハセヌカト思フ、現
  ニ石炭ノ如キモノデモ、モウ五十年ダケシ
  カ日本ノ石炭ノ壽命ハナイト云フコトヲ片
  岡商工大臣ガ知ッテ居ラナケレバナラヌト
  思フ、モウ一ツ私ハ聞イテ置キタイ、日本
  ガ一體鐵國策ヲ確立スル上ニ於テハ支那
  ヲ措イテ日本ダケデ鐵國策ヲ確立スルコト
  ハ出來ヌ、何トシテモ日本ハ日支合辦トカ
  何トカ云フ途ニ依ラナクテハ出來ヌ、ソレ
  ニ斯ウ云フ點ニ付テハ一向說明ガナイノデ
  ス、今滿洲ノ鐵ノ話モアリマシタガ、滿洲
  バカリデハナイ、一體支那ト特別ノ何等カ
  ノ條約ヲ結ンヂヤルカ、或ハ支那ノ原鑛石
  ガ日本デ自由ニ取ルコトガ出來ル狀態ニ
  ナッテ居ルカ、又石炭モ日本ノ内地デハ足
  ラヌカラ漏洲カラ之ヲ持ッテ來ル、持ッテ來
  ルニ付テハ萬一太平洋ノ浪ガ荒レテ日米問
  題ガ起ノテモ、斯ウ云フ點ニ於テ差支ナイ
  カドウカ、斯ウ云フ所マデ私ハ考ヘナクチ
  ヤイカヌト思フ、モウ一ツ庁ニ聞イテ置キ
  タイ事ハ世間デハ此鐵奬勵保護案ナルモ
  ノハ五ツ六ツノ大會社ヲ徒ニ富マスノミデ
  アッテ、弱小會社ガ普遍的ニ此恩惠ニ浴ス
  ルコトガ出來ヌト云フ聲ガ大分アルガ、果
  シテ斯ウ云フ結果ニナルカナラヌカ、此點
  モ承リタイト思フノデアリマス
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

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• 019・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今ノ猪野毛君
  ノ御質疑ニ御答シマス、商工大臣ハ鐵ノ白
  給自足ヲ確立セシムルノ確信アリヤ否ヤ、
  サウシテ御言葉中ニハ片岡モ素人デアリ、
  自分モ素人デアルト斯ウ仰セラレタノデア
  リマスケレドモ、如何ニモ私ハ其道ニハサ
  ウ明ルイ者デハアリマセヌ、併シ猪野毛君
  ヨリモウ少シ〓究ハシタカト思ヒマス、併
  ナガラ私ノ所信ニ依シテ申上ゲルノデハナ
  ィ、之ニ對シテハ製鐵事業ノ將來ニ關スル
  調査委員會ナルモノヲ組織シマシテ、是ハ
  髙橋農商務大臣時代デアリマスケレドモ、
  其道ニ詳シイ人ヲ集メテ、十三回ニ至ル長
  キ時間ノ〓究ヲ致シ、ソレニハ我國ノ事ハ
  固ヨリ他國ニ於ケル製鐵ノ狀況、生產費、
  運賃、金利、色こナ調査ヲシ、餘程精密ナ
  ル調査ヲ致シ、是ト相比較シテ日本ノ製鐵
  事業ハ自給目足ガ出來得ル、斯ウ云フ論結
  ニ相成ッテ居ルノデアリマス、ソレデ私ガ
  確信スルノミナラズ、斯道ニ明ルキ者ガ確
  信ヲ致シテ居ルノデアリマス、サウシテ其
  時分ノ決議ハ民間當業者ヲ救濟スル爲ガ主
  デアッタト云フ御話デアリマスガ、サウデ
  ハアリマセヌ、唯〓其論結ガ民間當業者ト
  八幡製鐵所トノ資本ヲ合同致ス方ガ宜イ、
  半官、半民ニスルガ宜イト云フコトガ決議
  ノ意見ニハナッテ居リマス、此意見ニ對シ
  テ私ハ反對ヲ致ス者デハナイ、サリナガラ
  今日ノ場合ニ於テ枝光〓〓〓所ノ資本ガ假ニ
  一億圓デアルトシタ所ガ、其一億圓ト云フ
  モノヽ正體ガ世ノ中ニ分、テ居ルカト云フ
  ト、分ッテ居リマスマイ、ソレカラ戰後ニ
  於テ急造セラレタ製鐵所ガ投ジテ居ル資本
  カ、果シテ今日ヨリ見テ適當ノ資本ト云ヘ
  ルヤ否ヤ、是等ノモノヲ打ッテ一〓トスル
  ガ如キコトハ、早計ノ甚シキモノト思ッテ
  居リマス、ソレ故ニ先ヅ八幡製鐵所ノ會計
  法ヲ變へ、民間ノ會社ニ於ケルガ如キ決算
  ヲ明ニスルヤウニ致シ、サウシテ此奬勵法
  ノ下ニ、民間ノ製鐵業者ニ向ッテモ相當ノ
  監督ヲ進メテ行クノデアリマス、其結果ニ
  於テハ或ハ資本ノ合同、半官半民若クハ國
  有、斯ウ云フガ如キコトマデモ起ルカモ知
  レマセヌ、只今ノ所デハサウ云フコトニ到
  著スル場合ニ於テモ、何等差支ノナイヤウ
  ニ進メテ行クト云フコトガ適當ナリト信ジ
  テ居ルノデアリマス、ソレカラ八幡ノ製鐵
  所ハ內部ガ非常ニ紊レテ居ル、私ハ先日四
  日間バカリ朝カラ晩マデ通ジテ調ベマシタ
  ガ、併ナガラ四日間バカリデ果シテ正確ナ
  ルモノデアルヤ、否ヤト云フコトガ分ルモ
  ノデハゴザイマセヌガ、能ク整頓致シテ居
  ル、既ニ今日マデ長イ間損失モ可ナリ續ケ
  テ來マシタ、併ナガラ昨今ハ確ニ利益ヲ擧
  ゲラレ、自ラ自營自給ガ出來ルト云フコト
  ヲ信ジマシタカラ獨立會計法-獨立トマ
  デハ行キマセヌガ、獨立ニ近カラシムルモ
  ノヲ拵ヘテ今日協賛ヲ求メテ居ルノデアリ
  さく、今日マデ損ヲシタコトモゴザイマス
  ガ、好景氣ノ時代ニ於テハ、今日ノ資本金
  額ヨリハズット餘計ノモノヲ儲ケテ大藏省
  ヘ納メテアル、枝光製鐵所ヲ若シ從來ノ金
  利ノ計算ヲセズニ見夕時ニハアレハ只ニ
  ナッテ、更ニ千四五百万ノ金ヲ持ッテ居ルト
  云ッテモ宜イ、其所マデニハナッテ居リマス
  カラ、其點ハ御安心下サッテ宜イト存ジマ
  ス

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• 020・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郎君)　古林喜代太君
  〔古林喜代太君登壇〕

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• 021・古林喜代太

  ○古林喜代太君　諸君、時間ガ大變移リマ
  シタシ、諸君モ御退屈ノヤウニモ見受ケマ
  スシ、又第一法案ニ付キマシテハ先輩ノ
  諸君ヨリ私ノ問ハントスル所ハ殆ド總テ御
  質問ニナリマシテ、之ニ對スル當局者ノ御
  答辯モ承リマシタノデアリマスカラ、私ハ
  先輩諸君ノ御言及ニナラナカッタ第二ノ法
  案ニ付キマシテ、濱口大藏大臣ニ唯、2一
  御伺致シタイノデアリマス
  〔此時發言スル者アリ〕

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• 022・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　靜肅ニ願ヒマス

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• 023・古林喜代太

  ○古林喜代太君(續)　濱口大藏大臣ハ前内
  閣卽チ加藤內閣時代ニ於キマシテ行政、
  財政ノ整理ヲ爲サル際ニ、御聲明ヲ爲サレ
  タノデアリマスガ、其御聲明ハ此特別會計
  ナルモノハ成ベク之ヲ少ク致シタイノデア
  ル、斯ウ仰セラレテ居ルノデアリマス、尙
  又前議會ニ於キマシテ濱口大藏大臣ハ、二
  三ノ特別會計法ヲ廢止サレル所ノ法案ヲ御
  提出ニナリマシタ、其際ニモ將來トモ成べ
  ク特別會計ハ少クスル方針デアルト云フコ
  トヲ御述ニナッタコトヲ記憶致シテ居リマ
  ス、然ルニモ拘ハリマセズ、今回突如トシ
  テ此製鐵所特別會計法案ト云フモノヲ御提
  出ニナリマシタノハ、濱口大藏大臣ハ以前
  ノ御聲明ニ對シテ恥ヂル所ナキヤ否ヤ、片
  岡商工大臣ノ御提案ノ理由ハ先刻列リマシ
  タケレドモ、其御提案ノ理由ニハ濱口大
  藏大臣ハ全然御賛成デアルカ否ヤト云フ
  コトヲ私ハ伺ヒタイノデアリマス、殊ニ此
  特別會計法ハ一般會計トハ全然〓聯ノ無イ
  所ノ特別會計デアリマス、鐵道省ノ特別會
  計ト同樣ノモノデアリマスガ、道省ノ特
  別會計ニ付キマシテハ世圓色ミノ風評ヲ
  耳ニ致スノデアリマス、現鐵相仙石サンハ
  諸君御水知ノ通リ頗ル〓廉ナ方デアリマス
  カラ、現内閣時代ニハ餘リ多クノ風聞ヲ耳
  ニ致シマセヌケレドモ、以前ニハ隨分色〓
  ナ風評ヲ耳ニ致シマシタ、八幡ノ製鐵所ハ
  先刻猪野毛君ノ御言葉モアリマシタガ、先
  年世人ノ耳目ヲ驚カスヤウナ大疑獄事件ガ
  起リマシタ、私共ハ同縣ノコトデアリマス
  カラ、當時ノ事ハ他ノ人ニ較ベマスルト多
  少深ク記憶シテ居ルト思ヒマス、只今ハ片
  岡商工大臣ノ御言葉モアリマシタカラ、假
  ニ伏魔殿デハナイカトモ思ヒマスケレドモ、
  一般會計ト全然關聯ノ無イ所ノ特別會計ヲ
  設クルト云フコトハ、世人ヲシテ隨分疑ヲ
  挾マシムル所ノ懸念ガアルト思ヒマス、少
  クトモ先年ノ大疑獄事件ニ類シタヤウナコ
  トガ幾分起リ易カラウト云フ懸念ヲ致スノ
  デアリマス、是等ノ點ニ付キマシテ濱口大
  藏大臣ハ、十分ノ御確信ヲ持シテ御提案ニ
  ナリマシタノデアリマスカ、乃至ハ當初ノ
  御聲明ヲ抛タレタノデアリマスカ、明快ナ
  ル御答辯ヲ御願シタイノデアリマス(拍手)
  〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕

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• 024・濱口雄幸

  ○國務大臣(濱口雄幸君)　御答ヲ致シマス
  ガ、製鐵所ノ會計ハ御承知ノ通リ今日ニ於
  テモ特別會計デアルノデアリマス、此特別
  會計ノ爲ニ、現在ハ作業會計法ト云フモノ
  ガアリマシテ、其會計法ノ內ニ於テ數個ノ
  特別會計ヲ認メテ居ルノデアリマス、而シ
  テ豫算ノ表ニ於キマシテハ、御承知ノ通リ
  立派ナル所ノ特別會計デアリマス、此度ノ
  法律案ニ依リマシテ政府ガ設定ヲセントス
  ル所ノ製鐵所ノ特別會計ハ從來ノ特別會
  計ニ對シマシテ、其内容ヲ改善シタニ過ギ
  マセヌノデ、特別會計ノ數ニ於テハ少シモ
  增減スル所ハ無イノデアリマス、第二ニ此
  度ノ特別會計ノ法案ニ依リマスレバ、大體
  其模範ヲ現在ノ鐵道ノ特別會計ニ取ッテ居
  ルノデアリマス唯、鐵道特別會計ノ如ク
  ニ純然タル獨立ノ會計ニハナリマセヌケレ
  ドモ、稍、獨立會計ニ近イ所ノ特別會計デ
  アリマス、隨テ御說ノ通り、一般會計トノ
  聯鎖ハ從前ノ如クデハアリマセスケレド
  モ、一般會計トノ聯鎖ノ厚薄、若クハ有無
  ニ依ッテ其會計ノ整理ガ或ハ紊亂スルトカ、
  或ハ整頓スルトカ云フ如キ區別ノアルモノ
  デハナイト考ヘマス、其會計ガ能ク整理セ
  ラルヽカ、若クハ紊亂ヲスルカト云フコト
  ハ一ニソレヲ扱ッテ居ル所ノ其人ニ存ス
  ルノデアリマス、隨テ此度ノ會計ノ組織ノ
  改正ニ依リマシテ、是ガ爲ニ製鐵所ノ經營
  上、惡イ所ノ結果ヲ生ズルト云フコトハ
  毛頭考ヘテ居リマセヌノミナラズ、却テ此
  獨立會計ノ設定ニ依リマシテ、製鐵所ノ事
  業ヲシテ愈、合理的ナラシメ、經濟的ナラシ
  ムルコトノ利益ガアルモノト確信ヲ致シテ
  居リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=24

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• 025・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　之ヲ以テ質疑ハ
  終了致シマシタ-日程第四、右各案ノ審
  査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマ
  ス
  第四右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

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• 026・井本常作

  ○井本常作君　各案ヲ一括シテ議長指名十
  人名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=26

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• 027・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
  シマシタ-日程第五、土地賃貸價格調査
  法案ノ第一讀會ヲ開キマス-濱口大藏大
  臣
  第五土地賃貸價格調査法案(政府提
  也第一讀會
  土地賃貸價格調査法案
  土地賃貸價格調査法
  第一條政府ハ本法ニ依リ土地ノ賃貸價
  格ヲ調査ス
  第二條賃貸價格ノ調査ハ大正十五年四
  月一日現在ノ地租ヲ課スヘキ土地ニ付
  之ヲ行フ但シ地租條例其ノ他ノ法律ニ
  依ル各種ノ免租年期地ハ此ノ限ニ在ラ
  ス
  第三條土地ノ賃貸價格ハ各地目每ニ土
  地ノ情況類似スル區域内ニ於ケル標準
  賃貸價格ニ依ル
  標準賃貸價格トハ前項ノ區域內ニ於ケ
  ル標準ト爲ルヘキ土地ニ付貸主カ公
  課修繕費其ノ他土地ノ維持ニ必要
  ナル經費ヲ負擔スル條件ヲ以テ之ヲ賃
  貸スル場合ニ於テ貸主ノ收得スヘキ金
  額ヲ謂フ
  第四條前條ノ區域及標準賃貸價格ハ別
  ニ定ムル所ニ依リ賃貸價格調査委員會
  ノ議ニ付シ政府ニ於テ之ヲ定ム
  附則
  本法ハ大正十五年四月一日ヨリ之ヲ施行
  ス
  本法ハ地租條例ヲ施行セサル地ニハ之ヲ
  施行セス
  〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=27

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• 028・濱口雄幸

  ○國務大臣(濱口雄幸君)　只今議題トナリ
  マシタル土地賃貸價格調査法案ニ付テ、〓
  要ノ說明ヲ申上ゲヤウト存ジマス、本案ハ
  今回政府ノ計畫ニ係リマシタ所ノ、稅制整
  理ニ關聯シタル重要ナル事項ノ一デアリマ
  ス、巢ニ國稅整理ニ關スル諸法律案ノ說明
  ノ際ニ於テ、大體中述べテ置キマシタルガ如
  ク、現行地租ノ課稅標準夕ル地價ハ明治
  ノ初年ニ定メラレタルモノデアリマシテ、
  其後既ニ五十年ヲ經過致シテ居ルノデアリ
  さく、隨テ經濟上ノ變遷、交通機關ノ發
  達、農事ノ改良進步等、各般ノ關係ニ依リ
  マシテ、土地利用ノ狀況ハ著シク變動ヲ來
  シマシタルニモ拘ラズ、明治四十三年宅地
  ノ地價修正ヲ行ヒマシタル以外、其他ノ土
  地ニ付テハ局部ノ修正ヲ加ヘタコトガアル
  ノミデアリマシテ、大體ニ於テハ地價ノ修
  正ヲ致サズシテ今日ニ至ッタノデアリマス、
  故ニ現在ニ於ケル地租ノ負擔ト申シマスル
  モノハ地方ニ依リ又同一ノ地方ニ於テモ
  各地間ニ著シキ不公平ナル結果ヲ生ジテ居
  ルト云フコトハ、殆ド疑ノ無イ所デアルト
  信ズルノデアリマス、是ニ於テ地租負擔ノ
  公平ヲ圖ルガ爲ニハ、一般的地價修正ヲ行
  フノ必要ガアルノデアリマス、而シテ地價
  修正ノ實行ニ付テハ、種々ノ方法ヲ考へ得
  ルノデアリマスルガ、政府ニ於テ攻究シマ
  シタル結果、其調査ガ比較的容易デアリマ
  シテ、而モ最モ能ク負擔ノ公平ヲ期シ得ル
  方法トシテ、土地ノ賃貸價格ヲ以テ課稅標
  準トスルコトニ致シタノデアリマス、蓋シ賃
  貸價格ハ地主ガ其土地ヲ賃貸スル場合ニ
  於テ、普通ニ收得スル所ノ賃貸料ヲ標準ト
  スルモノデアリマスガ故ニ、地租ノ課稅標
  準ト致シマシテハ最モ適當デアルト信ズ
  ルノデアリマス、固ヨリ賃貸價格ノ調査モ
  相當困難ナ事業デハアリマスケレドモ、成
  ベク實行ノ簡易ナル方法ヲ擇ビ、各地目每
  ニ土地ノ狀況ガ類似シテ居リマスル所ノ區
  域内ニ於ケル標準賃貸價格ニ據ルコトヽ致
  シマシテ、二箇年內ニ此調査ヲ完了スベキ
  見込デアリマシテ其調査完了ノ暁ニ於テ、
  地租制度ノ根本的改正ヲ行ヒタイト云フ考
  デアリマス、以上ハ大體ノ說明ニ止マリマ
  スルガ、尙ホ詳細ノ事項ニ付キマシテハ、
  委員會ニ讓ルコトニ致シタイト考ヘマス、
  何卒御審議ノ上速ニ御協賛アランコトヲ希
  望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=28

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• 029・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテ質
  疑ノ通告ガアリマス-吉良元夫君
  〔吉良元大君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=29

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• 030・吉良元夫

  ○吉良元夫君　只今大藏大臣ヨリ、此法案
  ニ對シテ御提出ノ大體ノ御說明ガアッタノ
  デゴザイマス、然ルニ政府ガ此節御提出ニ
  相成リマシタル所ノ此土地賃貸價格調査法
  ノ理由ニ依シテ拜見ヲ致シテ見マシテモ、
  明ニ分ッテ居ルノデアリマスルガ、政府ハ
  斯ノ如キ單簡ナル、法ヲ四章ニ約シタル所
  ノ土地賃貸價格調査法ナルモノヲ御提出ニ
  ナッテ居リマスルガ、只今御說明ニナッタ所
  ノ要旨ヨリ伺ヒマシテモ、極メテ簡單ニ此土
  地賃貸價格ト云フモノヽ調査決定ガ出來ル
  モノト御考ヘノヤウデアリマス、然ルニ吾々ハ
  隨分是ハ容易ナラヌ困難ナル事業デアルト確
  信スルノデアリマス、我國デハ明治初年ニ於
  テ王政維新ノ際、地價ト云フモノヲ御設定
  ニナリマシタガ、此地價ナルモノハ御承知
  ノ如ク、全國ニ於テ驚クベキ不均等不公平
  ナル事ガ出來テ居ッタノデアリマス、吾々ガ
  知リ得ル程度ニ於テモ、非常ナル地價ノ不
  公平ガ實際ニ於テ多々アルノデアリマス、
  ンレガ故ニ此地價修正ナルモノハ、是非根本
  的ニヤランケレバイケナイト云フコトデアリ
  マシテ、又政府當局ニ於テモ、是ハ御考ニ
  ナッタ歴史ガアルノデアル、然ルニ之ヲ根本
  的ニヤルトシタ時ニハ少クトモ三五年ノ
  歲月ヲ要スルノミナラズ、一億五千万圓乃
  至二億ノ巨費ヲ要スル、國費ヲ要スルト云
  フコトデ、先刻御話ニナリマシタヤウニ、
  此地價ヲ設定シテ、其後ニ於ケル現在ノ地
  價ニ於テハ驚クベキ高低ノ差ガ出來テ居
  ルニモ拘ラズ、今日マデ地價修正ト云フモ
  ノガ出來ヌデ居シタノデアル、然ルニ現政
  府ニ於カセラレマシテハ、玆ニ突如トシテ
  他年御提唱ニ相成シタ稅制整理ヲ御企テニ
  ナッタガ、私ハ此稅制整理ト云フモノハ
  實ニ驚クベキ稅制整理デアルト信ズルノデ
  アリマス、併ナガラドウ云フセノカ分リマ
  セヌ、此稅制整理ハ大體ニ於テ宜シイトシ
  テ、既ニ此議會ニ於テハ立派ニ御通過ニ相
  成ッテ居ル、然ルニ私ハ甚ダ疑ハザルヲ得
  ナイ事ガアルノデアリマス、先日通過サレ
  タ所ノ法案ニ依リマスト云フト、現在不公
  平ノアル地價二百圓未滿ノ自作農ト云フモ
  ノヲ、所謂自作農保護!意味ニ於テ之ヲ全
  部免稅トナッテ衆議院ハ通過シテ居ル、是
  ハ今日申スマデモナイ、農村ノ困憊、農村
  ノ窮狀、農村ノ振興ト云フ事ノ一日モ速ナ
  フンコトヲ欲シテ、斯ノ如キ大英斷ヲ爲サノ
  タノデアリマセウト思フケレドモ、何ゾ知
  ラン、斯ノ如キ人氣取リノ法案ガ、實際通
  過シテ居ル今日ニ於テ、邊僻ノ地ニ位シテ
  居ル農民ガ、決シテ有難ガッテハ居ラスノ
  デアリマス(拍千「酒屋サンニハ分ラヌヨ」
  ト呼フ者アリ)酒屋サンニ分ラスコトハナ
  イ、其位ノ事ハ能ク存ジテ居ル-所ガソ
  レハ致方ハナイトシテモ、先日ハ地價ニ於
  テ免稅點ヲ御作リニナッテ、二百圓未滿ノモ
  ノハ全部御免稅ニナッテ、サウシテ此度ハ地
  價修正ヲ爲スト云フコトニ付テハ、非常ニ困
  難デアルトシテ、賃貸價格ニ據ラント欲シ
  タノデアル、所ガ其售貸價格ナルモノハ此
  法案ニ依シテ見マスト云フト、第三條ニ「標
  準賃貸價格トハ前項ノ區域內ニ於ケル標準
  トナルヘキ土地ニ付貸主カ公課、修繕費其
  ノ他土地ノ維持ニ必要ナル經費ヲ負擔スル
  條件ヲ以テ之ヲ賃貸スル場合ニ於テ貸主ノ
  收得スヘキ全額ヲ謂フ」ト云フ定義ヲ下シ
  テ、各地目每ニ土地ノ情況類似スル區域内
  ニ於ケル標準負貸價格ト云フモノヲ御定ノ
  ニナルト云フコトニナッテ居ル、所ガ是ハ
  机上ノ空論デアル實際ニ於テ、或ル一地
  區ヲ御決定ニナッテ、其一地區內ノ標準價格
  ヲ定メテ、其標準價格ト云フモノニ類推シ
  テ御定メニナルノデアリマセウガ、何ゾ知
  ラン今日ニ於テ此賃貸價格ノ算定ハ容易ナ
  ラヌ困難ノアル事情ガ多イノデアリマス、
  是ハ單リ都市ノミデナイ、村落ニ於テモ近
  代運輸交通ノ使ガ發達變革ヲ致シタ爲ニ
  僅ニ一ツノ橋梁、一ツノ河ヲ挾ンデ非常ナ
  ル差異ヲ生ジテ居ル現代デアル、卽チ斯ノ
  如キ困難ガアル故ニ、今日マデ地價ノ修正
  ト云フモノガ出來ナカ。タノデアル、所ガ今
  度ハ地價ノ修正甚ダ困難ナルガ故ニ、先ヅ
  以テ標準ヲ決メテ、其標準ニ於テ斯ノ如キ
  賃貸價格ヲ御定メニナルト云フノデアリマ
  スルガ、其ヤウニ簡易ニ是ガ實際的效果ヲ
  奏シ得ルデアラウカト云フコトハ、私ハ甚
  ダ困難ナルモノデアルト云フコトヲ深ク信
  ジテ居ル者デアリマス、サウシテ第四條ノ
  規定ニ依リマスルト「前條ノ區域及標準賃
  貨償烙ハ別ニ定ムル所ニ依リ負貸償格調査
  委員會ノ議ニ付シ政府ニ於テ之ヲ定ム」ト
  アリマス、卽チ是ハ現在ノ稅制ノ上ニ於テ
  モ行ハレチ居リマスル所ノ彼ノ營業稅調査
  委員會、若クハ所得稅調査委員會ノヤウナ
  モノフ御作リニナッテ、其委員會デ之ヲ公
  定ベルノデアラウト思フ、其内部ノ事務的
  整理ハ是ハ私ノ想像スル所ニ依レバ各
  地方ノ稅務署ニ於テ、事務内ノ整理ヲ御ヤ
  ラセニナルモノデアラウト思フノデアル、
  所ガ現在ニ於テ行ハレテ居リマスル所ノ營
  業稅ノ調査委員會ノ決定、及所得稅ノ調査
  委員會ノ決定ノ如キニ至ッテモ、實際ハ其
  當ヲ得ザル事ガ非常ニ多イノデアルケレド
  モ、之ヲ終末マデ爭フニ於テハ其時間ト
  經費ノ堪へ得べカラザル事情アルガ故ニ、
  泣ク々々木人ハ默ッテ居ルノデアル、然ル
  ニ此度ノ此賃貸價格ノ算定ト云フコトニ
  於テハ、其公平ヲ總テ得マスレバ宜シウゴ
  ザイマスルガ、若シ得ナイ時ニハ默シテ
  此決定ニ服從スルコトガ出來ナイ場合ガ甚
  ダ多イ事ヲ私ハ信ズル者デアリマス、熱
  以上申上ゲマシタ事ハ、餘リ言葉ガ順序ヲ
  成シ得ナイヤウニ考へマスルカラ、之ヲ簡
  約致シマシテ、縮メテ御尋ヲ致シタイノデ
  アリマス、地價修正ノ事ハ容易ナラザル事
  業デアル、之ニ代フルニ此度ハ土地賃貸價
  格ト云フコトニ御改メニナリ、是ナラ出來
  易イト云フコトデ玆ニ單簡ナル僅ニ法ヲ四
  章ニ約シタ所ノ本法ヲ御出シニナッタノデ
  アリマスガ、斯ノ如キ簡單ナル法ニ於テ、
  只今ノ大藏大臣方印述ベニナッタヤウナ完
  全ナル調査ガ出來ル成算アリト云フ御確信
  ガアルヤ否ヤト云フコトヲ根本的ニ伺ヒタ
  イノデアリマス、第二ニハ此調査實行ノ爲
  ニハ約二年ニシテ片付クト云フ御話デア
  リマスルガ、ソレハ私ノ推察スル所ニ依レ
  パ、稅務署ヲ以テ此實務整理ヲヤラセルノ
  ダト思フノデアリマスガ、サウデアリマセ
  ヌナラバ、如何ナル機關ト如何ナル吏員メ
  御設ケニナッテ之ヲ御ヤリナルノデアルカ、
  サウシテ果シテ二年位ノ短日月ニ於テ、是
  ダケノ立派ナル效果方確實ニ擧ル御見込デ
  アルヤ否ヤヲ御尋ヲスルノデアリマス、第
  三ニハ私共ノ信ズル所ニ依レバ北賃貸價
  格ノ調査ト申シマスモノハ矢張其實質ト
  シテハ地價修正ト同樣以上ニ困難ナモノデ
  アルト信ジテ疑ハヌ者デアリマス、私ハ寧
  口地價修正ヨリカ困〓デハナイカト思フノ
  デアルベ所ガ果シテ當局ハ斯樣ニ單簡ニシ
  テ其實ヲ得ル御調査ガ出來ルト云フ御確信
  ガアルノデアルカ、此邊ハ深切ニ御答ヲ願
  ヒタイト思フノデアリマス其次ニハ此賃
  貸價格ノ調査決定ト云フヤウナ事ガ、洵ニ
  其當ヲ得タトキニハ結構デアリマスルガ、
  其當ヲ得ナクシテ、其所有地主ヨリ其決定
  ニ對シテ異議苦情等ヲ申立ツル場合ハ、如
  何ナル方法ニ依シテ之ヲ處置セラレルノデ
  アリマセウカ、是ハ所謂行政訴訟見タヤウ
  ナモノヲ起スノデアルカ、或ハ第四條ニ規
  定シテアル所ノ賃貸價格調査委員會ト云フ
  モノヲ御設定ニナル、此取扱規則ト云フモ
  ノヲ別ニ御作リニナッテ、其規則ノ範圍ニ於
  テ之ヲ御取扱ニナルノデアルカ、隨分今度
  ノ賃貸價格ノ算定ニ對シテハ私ハ容易ナ
  ラザル異議苦情ヲ申立ツル者ガ出來ルデア
  ラウト云フコトヲ豫想スルノデアリマス、
  ソレハ何故デアルカト申シマスルノニ、今
  日ノ收稅官吏若クハ此土地質貸價格調査委
  員ト云フ者ハ公選サレルモノデアリマ
  セウカ、其局ニ當ル人ガ、果シテ明德ヲ明
  ニシタ立派ナル政治家ノミナラズ宜シイケ
  レドモ、今日ニ於テハ地方ニ於ケル黨弊ナ
  ゾガ非常ニアルノデアル、我ガ大分縣ナゾ
  ハ殆ド松村知事ノ暴政ノ餘波ヲ受ケテ
  居シデ、今日ニ於テ吾々同志ノ者ヲバ壓迫ス
  ルノミナラズ、殆ド罪ナラザル者ニ罪ヲ著
  セルト云フヤウナ亂恭ナ政治ノミヲ致シテ
  居ルノガアル、(拍手)ソレデアルカラシテ
  當然此賃貸價格ノ如キノ算定ニ至ッテモ、憲
  政會ニ屬スル人ノ算定ハ比較的安クシテ、
  吾々同志ノ者ニハ比較的高クスル位ナコト
  ハ必ズヤルノデアル(拍手笑聲)ンレハ諸君
  ガ笑フケレドモガ、ソンナ實狀ヲ諸君ガ知
  ラヌカラデ、左樣ナ事ハ非常ニ多イノデア
  ル(拍手)今日ニ於テ實ハ政治家ノ明德ヲ明
  ニシテ居ラヌカラシテ、實ニ出來事ガ甚ダ
  面白カラヌ事ガ多イノデハアリマセヌカ、
  明德ヲ明ニスルト云フコトハ、外ノ事ヂヤ
  ナイノデアル、卽チ至誠ヲ以テスルノデア
  ル、是ハ少シ古イカハ知ラヌケレドモガ、
  〓ニ角明德新民止至善トカ云フヤウナ大學
  ニアル所ノ三綱領八條目ト云フヤウナコト
  ハ今日ノ立憲政體ニ於アモ、蓋シ是カラ
  出發點ヲヤラヌカラシテ、政治ト云フモノ
  ガ大體ニ於テ紊レテ居テ、拾收スベカラザ
  ル今日ノ狀態デアル(拍手)私ハ當局ガ斯ノ
  如キザットシタ案ヲ出シテ、之ヲ二年內ニヤ
  リ得ルト云フコトヲ御聲明ニナルカ知ラヌ
  ガ、私ハ少クトモ公平至誠ヲ以テヤリ得ナ
  イト云フコトヲ私ハ疑フ者デアル(拍手)故
  ニマダ御尋ネシタイコトハ山ノヤウニアリ
  マスルケレドモガ、先ヅソレダケヲ御尋ヲ
  シテ此壇ヲ降ルモノデアリマス
  〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=30

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• 031・濱口雄幸

  ○國務大臣(濱口雄幸君)　御答ヲ致シマ
  ス、只今吉良君ノ御述べニナリマシタ通リ、
  今日ノ法定地價ハ如何ニモ是ハ不公平デア
  リマス、ソレハ私ガ先刻說明ヲ致シマシタ
  如クニ、一般的ノ地租改止以來五十年ヲ經
  過シタル所ノ今日デアリマス、其間ニ於テ交
  通機關ハ固ヨリ諸般ノ事情ガ非常ニ變化ヲ
  致シテ參ッテ居リマスカラ、今日ニ於キマシ
  テハ大分不公平ノ地價トナッテ居リマス、是ハ
  爭フベカラザル事柄デアリマス、是ニ於テ
  此不公平ナル所ノ法定地價ヲ標準トシテ現
  在賦課シテ居リマスル所ノ地租ケ、其負擔
  ガ不公平デアルト云フコトハ是ハ當然ノ結
  果デアリマス、此不公平ヲ矯正センカ爲ニ、
  如何ナル方法ニ依シテ地償修正ヲ行フベキ
  ヤト云フコトガ、歷代內閣ニ於テ〓究ヲサ
  レマシタ所ノ宿題デアッタノデアリマス、大
  正七年、時ノ内閣ガ此問題ノ準備調査ヲ致
  シマスルガ爲ニ、三箇年ニ亙ンテ相當ノ經
  費ヲ要求ヲ致シテ地價修正ノ準備ノ調ヲシ
  タコトハ、吉良君モ御承知ノコトデアラウ
  ト存ジマス、卽チ其當時問題ニナリマシタ
  所ノ方法ハ第一ニ明治ノ初年ニ改正ヲ致
  シマシタ如キ、アレト同一ノ方法ニ依ノテ
  地價修正ヲ行フベキヤ、卽チ收穫本位ノ地
  價修正ヲ行フベキヤ、或ハ土地ノ賃貸價格
  ヲ調查ヲ致シ、其賃貸價格ヲ標準ト致シテ、
  地租ヲ賦課スルト云フ方法ニ改ムベキヤ、
  第三ニハ土地ノ賣買價格ニ依シテ地租ノ賦
  課ヲスルト云フ方法ヲ採ルベキカ、此三點
  ニ付テ十分ナル所ノ調査〓究ヲ遂ゲタノデ
  アリマス、其〓究ノ結果トシテ到達ヲ致シ
  マシタ結論、收穫主義ノ現在ノ如キ地價修
  正ハ甚ダ困難デアル、又土地ノ賣買價格ニ
  依シテ地租ヲ徴收スルト云フ方法モ、頗ル是
  ハ實行困難デアル、是ニ於テ第三ノ方法タ
  ル所ノ土地ノ賃貸價格ヲ調ベテ、ソレニ
  依シテ地租ヲ賦課スルト云フコトガ最モ實
  行的デアッテ、且ツ其施行ニ割合ニ多クノ
  年月ヲ要シナイ、斯ウ云フ結論ニ達シタノ
  デアリマス、其結論ニ基キマシテ、大藏省
  ニ於テハ全國ニ亙ッテ土地ノ賃貸價格ノ標
  準ノ調査ヲ致シタノデアリマス、卽チ全國
  ノ各稅務署ニ訓令ヲ發シマシテ、サウシテ
  土地ノ狀況ノ稍〓類似セリト認ムル所ノ地
  域ヲ限リマシテ、ソレヲ一ツノ區域ト致シ、
  其區域每ニ標準地ヲ撰ビマシテ、其標準地
  ノ賃貸價格ヲ調查ヲ致シ、其事業ガ大正七
  年カラ大正九年ニ至ル三年間ニ亙ノテ漸ク
  大體ノ結了ヲ告ゲタノデアリマス、其結了
  ヲ告ゲマシタ所ノ調査ノ書類ハ、今日全國
  ノ稅務署ニ於テ休管ヲ致シテ居ルノデアリ
  マス唯震災地ニ於キマシテハ不幸ニシテ
  燒失ヲ致シマシタケレドモ、其以外ノ土地
  ニ於キマシテハ全國ニ亙,テ、其時ノ調査ノ
  書類ハ現ニ存在ヲ〓シテ居ルノデアリマ
  ス、隨テ此度政府ガ稅制整理ヲ行フニ當リ
  マシテ、地租ノ根本的ノ改正ヲ爲サムトス
  ル計畫ヲ定メタ時ニ於テ、土地ノ賃貸價格
  ヲ標準トシテ、地相ヲ課スベシト云フコト
  ヲ突然トシテ思付イタ譯デハアリマセヌ、
  卽チ大正七年ノ調査以來沿革的ニ考ヘマシ
  テ、其時ニ調ペタモノヲ極準トシテ行ヒマ
  スレバ割合ニ多クノ年月ヲ要セズ、又比較
  的多額ナラザル所ノ經費ヲ以テシマシテ、
  此調查ヲ完了スルコトガ出來ルト云フ確信
  ヲ得タノデアリマス、固ヨリ賃貸價格ノ調
  ハ決シテ事容易ナリトハ申シマセヌ、相當
  困難ナル面倒ナル仕事デアルニハ相違アリ
  マセヌガ、併ナガラ從來ノ方法ニ依テ上
  地ノ收穫ヲ調べ、其收穫ニ石代ヲ乘ジテ、
  ソレカラ經費ヲ差引キマシテ、純益ヲ出シ
  テ、ソレヲ利子ノ高低步合ヲ以テ還元ヲ致
  シタモノヲ、之ヲ其土地ノ地價トスルト云
  フ如キ、其方法ヲ以テ地價修正ヲ行ヒマス
  ト云フコトハ非常ニ困難ナル仕事デアリ
  マスルガ、其仕事ニ比較ヲ致シマスレバ、
  土地ノ賃貸價格ト申シマスコトハ、外部ニ
  現ハレタル所ノ課税標準デアリマスルク故
  ニ、其調査ハ比較的ニ容易デアッテ、比較的
  ニ實行的ニ出來得ルト考ヘマス、是卽チ此
  度ノ稅制整理ニ關聯ヲ〓シマシテ地租ノ根
  本的改正ヲ企ツルニ當,テ、其課稅標準ヲ賃
  貸價格ニ選ンダ次第デアリマス、此調査ヲ
  スル所ノ機關ハ從前ノ如クニ、全國ニ散在
  シテ居ル所ノ稅務者ヲ以テスルカ、或ハ他
  ノ機關ヲ以テスルカト云フ御質問デアリマ
  スルガ、是ハ申ス迄モナク全國ニアリマス
  所ノ稅務監督局、又其下ニアリマス所ノ稅
  務署、卽チ大藏省ノ直系ノ機關ヲ以テ是ガ
  調査ニ當ラシムル積リデアリマス、固ヨリ
  其調査ニ當リマシテハ多大ノ手數ヲ要シマ
  スルガ故ニ、相當ニ人員ヲ增加致シ、又相當
  ノ經費ヲ要スルコトハ申スマデモアリマセ
  ヌガ、是ハ追加豫算ヲ以テ御協賛ヲ仰グ積
  リデアリマス朱シテ其調查カ二箇年間ニ
  完了スルヤ否ヤト云フ御質問デアリマス
  ガ、若シ此調ガ初メテノ調査デアリマスル
  ナラバ、私ハ二箇年間ニ完了スルト云フコ
  トヲ確信ヲ以テ申上ゲルコトハ出來マセヌ
  ガ、只今甲上ゲマスル通リ、前ニ三年間調
  ベタ其資料ガ殘ッテ居リマスルニ依シテ、其
  資料ヲ利用ヲ致シテ調査ヲスルコトガ出來
  マスルニ依シテ、二箇年間ニ此調査ヲ完了ス
  ルト云フ確信ヲ持ンテ居ル次第デアリマス、
  最後ニ調査委員會デ此調査ヲ致シマシテ、稅
  務署長ガ其調査ニ依ッテ之ヲ決定ヲ致シ、其
  決定ヲ致シマシタモノヲ、ソレニ對シテ土
  地ノ所有者ガ異議苦情ヲ申立テル場合ニ於
  ケル所ノ救濟ノ方法ハ如何ニスルカト云フ
  御質問デアリマスルガ、是ハ其當該稅務署
  ヲ經由致シ、又所轄ノ稅務監督局長ヲ經由
  致シマシテ、訴願、竝ニ行政訴訟ノ途ヲ開ク
  積リデアリマス、此度ノ法律案ニハ此事ハ
  明記致シテアリマセヌケレドモ、此法律案
  作、土地ノ賃貸價格ノ調査ニ關スル所ノ
  原則ヲ規定シタルニ止マリマシテ、其調査
  ヲ致シマスル所ノ調査委員會ノ組織、竝ニ
  權限、及之ニ對スル所ノ救濟ノ方法ニ付キ
  マシテハ、他日別ニ法律案ヲ提出致シマシ
  テ御協賛ヲ願フ積リデアリマス、最後ニ土
  地ノ政治上ノ狀況ト此問題トヲ結ビ附ケテ
  御心配ヲ以テノ御質問デアリマシタガ、此
  地租ノ課稅標準タル所ノ土地ノ賃貸價格ヲ
  調査スルト云フ如キ事柄ハ純然タル事務
  上ノ問題デアリマシテ、全ク政治上ノ問題
  デハナイノデアリマス、隨ヒマシテ此賃貸
  價格ノ調査ノ其範圍ニ政治上ノ爭ガ侵入ス
  ルト云フ如キ虞ハ萬々アルベカラザルモ
  ノト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=31

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• 032・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　日程第六、右議
  案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
  致シマス
  第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

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• 033・井本常作

  ○井本常作君　本案ハ議長指名十八名ノ委
  員ニ付託セラレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=33

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• 034・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
  シマス、日程第七、海軍軍備制限ニ關スル
  條約ノ實施ニ伴フ損害ノ補償ニ關スル法律
  案ノ第一讀會ヲ開キマス、財部海軍大臣
  第七海軍軍備制限ニ關スル條約ノ實
  施ニ伴フ損〓ノ補償ニ關スル法律案
  (政府提出)第一讀會
  海軍軍備制限ニ關スル條約ノ實施ニ伴
  フ損害ノ補償ニ關スル法律案
  第一條海軍車備補充計畫遂行ノ爲政府
  ノ爲シタル勸告ニ基キ軍艦、兵器又ハ
  其ノ材料ノ製造ニ必要ナル施設ヲ爲シ
  タル會社カ大正十二年條約第二號海軍
  軍備制限ニ關スル條約ノ實施ニ件フ軍
  艦及兵器製造計畫ノ變更ノ爲被リタル
  損害ニ對シテハ本法ニ依リ之ヲ補償ス
  ルコトヲ得
  第二條前條ニ規定スル補償金ノ總額ハ
  二千二百萬圓以内トス
  第三條補償金ハ主務大臣補償審査會ノ
  審査ヲ經テ之ヲ決定シ額而金額ニ依リ
  五分利付國債證劵ヲ以テ之ヲ交付ス
  補償審査會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ
  之ヲ定ム
  第四條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ニ
  必要ナル額ヲ限度トシ國債證劵ヲ發行
  スルコトヲ得
  第五條本法ニ依リ補償金ヲ交付スル場
  合ニ於テハ政府ハ相手方ニ對シ補償ノ
  目的タル設備ノ無償譲渡其ノ他必要ナ
  ル條件ヲ附スルコトヲ得
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣財部彪君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=34

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• 035・財部彪

  ○國務大臣(財部彪君)　只今上程セラレマ
  シタル海軍軍備制限ニ關スル條約ノ實施ニ伴
  フ損害ノ補償ニ關スル法律案ニ付キマシテ大
  要御說明申上ゲマス、數年前我ガ海軍々備充
  實ノ計畫ガ決定致シマシテ、漸次八々艦隊
  完成ノ實行ニ取掛リマスニ當リマシテ、當
  時ノ海軍當局者ハ其軍艦兵器、又ハ其材料
  ノ製造ヲ請負ハシメント思ヒマスル所ノ造
  船造兵等ノ當業者ニ對シマシテ、豫メ其
  計畫ノ大要ヲ内元致シマシテ、是ガ實施ニ
  差支ナキヤウ既設會社ノ製造能力ノ擴張ヲ
  促シマシテ、又或ハ新會社ノ設立ヲ勸告致
  シタ次第デアリマス、是ニ於テ是等當業者
  ハ此勸告慫慂ニ應ジマシテ、ソレーぐ巨額
  ノ資本ヲ投ジテ各般ノ設備ヲ致シマシタ、
  然ル所彼ノ華府會議ノ結果ト致シマシテ、
  大正十二年八月海軍軍備制限ニ關スル條約
  ガ實施セラレルコトニ相成リマシタ、ソレ
  ガ爲折角ノ是等設備ヲ致シマシタ所ノ者
  モ、之ヲ利用スルコトガ出來ズ、加フルニ
  職工モ亦多數不要トナリマシテ、ソレ等ノ
  職工ニハ少ナカラヌ手當金ヲ與ヘテ解傭ス
  ルノ已ムナキニ立至リマシタ、是ガ爲ニ諸
  會社ハ莫大ナル損害ヲ被リマシテ、其中ニ
  ハ極度ノ悲況ニ陷テ居ルモノガアルノデ
  ゴザイマス、政府ハ當時ノ海軍當局者ガ其
  會社ニ對シテ致シマシタ勸告慫慂ガ、豫約
  ト云フ如キ私法上ノ關係ヲ生ゼシメタルモ
  ノトハ認メマセヌ、隨テ此損害ニ對シマシ
  テ政府ニ當然賠償ノ義務ガアルモノトハ考
  ヘマセヌ、去リナガラ政府ノ勸告ニ基キマ
  シテ或ハ設備ヲ擴張致シ、或ハ會社ヲ新設
  致シ、而モ是ガ國際條約ノ實施ノ爲ニ莫大
  ノ損害ヲ被ノタモノニ對シマシテ、何等補
  償ノ途ヲ講ジナイト云フコトハ、德義上甚
  ダ失當ノ議リヲ免レナイモノト考フルノデ
  ゴサイマス、加之、是等ノ損害ニ對シマシ
  テ相當ノ補償ヲ與ヘマスコトハ、帝國政府
  ノ信用ヲ保持スル上ニ於キマシテ已ムヲ得
  ザル處置ナリト信ズル次第デゴザイマス、
  如上ノ趣旨ニ基イテ本案ヲ提出致シマシタ
  次第デゴザイマス、何卒御審議ノ上御協賛
  アラムコトヲ切ニ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=35

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• 036・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテ質
  疑ノ通告ガアリマス、順次ニ之ヲ許シマス、
  三善〓之君
  〔三善〓之君登壇〕
  〔發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=36

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• 037・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=37

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• 038・三善清之

  ○三善〓之君　只今政府提案ノ海軍々備制
  限條約ノ實施ニ關スル損害補償法案ニ對シ
  テ質問ヲ致シマス、此質問ニ先ダンテ財
  海相ニ一言致シタイ、吾々ハ愛國至誠ノ
  精神ヨリ、今期議會ノ劈頭ニ於テ海軍ノ缺
  陷ヲ憂慮シテ、廢艦補充計畫ノ確立ヲ絕叫
  シテ質問ヲ致シタノデアリマス、固ヨリ何
  等海相ニ對シテ私怨ノアル者デハアリマセ
  又、然ルニ海相ノ之ニ對スル答辯ハ甚ダ不
  深切、矛盾、不得要領ナル答辯ヲサレタコ
  トヲ本員今尙ホ遺憾ト致シテ居ルノデアリ
  マイ、其一節ニ海軍ノ艦艇ノ隻數噸數等
  ヲ以テ、海軍力ノ缺陷ヲ絕叫サレテハ困ル
  ト云フナウナ、詭辯ヲ弄セラレタノデアリ
  マス、本員共考ヘマスノニ、海軍ノ實力ヲ
  見ルノニハ矢張ず、隻數、噸數及戰艦ノ
  新舊等ヲ論ズルコトハ必要デアルト思フノ
  デアリマス、左樣ノ趣旨ニ於テ質問ヲ致シ
  タノデアリマス、最近ニ至リマシテ貴族院
  ニ於テ又此問題ガ喧シク質問ヲサレテ、結
  局政府ノ言質ヲ取ラレタヤウデアリマス、
  其結果遂ニ海相及首相ハ十六年度豫算ニ於
  テ、此補充計畫ヲ立テルト云フコトヲ言明
  サレタヤウデアリマス、勿論明カナル言明
  デハアリマセヌガ、十分ニ其意味ハ吾々ガ
  聽取ラレル、是ニ於テ吾々ノ主張ガ漸ク達
  成シ掛ケタト云フコトニ付テ稍〓安心ヲシ
  マシタ、併ナガラ海相ガ當初、此衆議院ノ
  議場ニ於テ爲サレタル答辯ト、貴族院ニ於
  テ爲サレタル答辯トハ全然其趣旨友違ノ
  テ居ルヤウニ思フ、吾々ニ對シテ左樣ニ答
  辯ヲ二三ニサレテハ甚ダ不滿ニ堪ヘラレ
  ナイ、斯樣ナ政府當局者カラ本日モ亦其答
  辯ヲ伺フコトハ甚ダ快シトシナイ、本日ノ質
  問ニ對シテハ、成ベク藏相或ハ首相ノ答辯
  ヲ煩シタイト思フノデアリマス、本日ノ提案
  ハ只今申シマシタ海軍ノ軍備制限條約ト云
  フノハ、華盛頓條約-而シテ華盛頓條約成
  立以後、今日マデ既ニ年所七八箇年ヲ經過
  シテ居ル、其間ニ於テ內閣ノ交迭ヲ見ルコ
  ト數次、卽チ加藤友三郞內閣、山本內閣、
  〓浦內閣、加藤高明内閣ノ四代ヲ經過シテ
  居ルノデアリマス、然ルニ其間ニ於テ斯ノ
  如キ法案ヲ提出サレナカッタ、然ルニ突如ト
  シテ現内閣ハ此法案ヲ提出サレタ譯デアリ
  やっ、固ヨリ金額ニ於テ二千一一百万圓ヲ限
  度トシテ居リマスルケレドモ、問題ガ問願
  デアリマスル故ニ、具背後ニ於テハ金棒圓
  ノ運動モアッタデアラウト思フ、請負者ノ
  運動ハ無論アッタデアラウト思フ、其邊ニ
  付テ聊カ疑ナキヲ得ナイノデアル、而シテ
  政府ハ是ガ爲ニ特ニ因債證劵ヲ發行サルヽ
  ノデアル、特ニ起債ヲシテ其辨償ノ貴ニ當
  ルト云フノデアリマス、諸君、此法案ノ第
  一條ニ依リマスレバ、民間ノ會社ガ海運當
  局者ノ勸告ニ應ジテ、卽チ會計法ニ依ル所
  ノ契約デハナイ、面シテ軍艦、兵器、材料
  等ノ施設ヲ爲シタル者ニ對シテ、其損害ヲ
  辨償スルト云フノ法案デアリマス、故ニ之
  ヲ民法上カラ見、又會計法上カラ見マシテ
  問題デアラウト考へマス、故ニ歷代ノ内閣
  ハ之ヲ取扱フコトヲシナカッタモノデナカ
  ラウカト云フ疑モアルノデアリマス、此點
  ニ付テ特ニ藏相ノ詳カナル答辯ヲ伺ヒタイ
  ノデアリマス、第二問ト致シマシテハ前
  年ノ議會ニ確カ此案ガ豫算委員會ニ於テ質
  問ヲサレタコトガアリマスヤウニ心得ル、
  其際ノ政府委員ハ井出海軍次官デアッタト
  思ビマスルガ、勸告ニ依ル所ノモノ、損害
  等ハ辨償ノ限リデナイ、補償解約ヲスルノデ
  アルト云フ答辯ヲサレタヤウニ本員ハ記憶
  ヲスル、併シ是ハ確ニ玆ニ明言ハ致シマセ
  ヌガ、左樣ニ記憶致シマスガ、此點ニ付テ
  政府デハ御調ベガアッタミラウト思ヒマス
  カラ伺ヒマス、第三ニ會計法ノ命ズル所ニ
  依リマシテ、軍艦、兵器、材料等ノ注文契
  約等ヲ致シマシタ場合ニハ、其註文契約ニ
  於テ必ズ其後事變ニ依,テ、變更、中止、又
  ハ解約ヲ致シマスル場合ハ、必ズ斯ク々々
  致ス、斯樣ナ損害ヲ持チ、斯樣ナ條件ニ依シテ
  契約ヲ解除スルト云フコトハ契約文面ニ
  確ニ具ッテ居ナケレバナラヌコトデアリマ
  ス、契約支面ニ若シ明文ガ無イ場合ニハ、
  無論辨償ノ貴ナシト斷言シテ憚ラナイト思
  ヒマス、又一方請負人カラ云ヒマシテ、卽
  チ會社側カラ申シマシテ其損害ノ補償ヲ受
  クベキ權利ガ法規ニ依ッテアリマスナラパ、
  今日マデ當然既ニ請求ヲサレテ居ル譯デア
  リマス、之ヲ要スルニ政府トシテ既定ノ法
  規ニ依ッテハ支拂ノ務ナシ、會社側ト致
  シマシテハ既定ノ法規ニ依シテハ請求スベ
  キ權利ナシト云フ問題デアリマス、第三問
  トシテ斯樣ナ問題デアリマスカラ、無論請
  負者側、會社側トシテハ、種々ノ運動、懇請
  ヲ致シタモノデアリマセウ、只今海相ノ言
  ハレル如ク、已ムヲ得ズ德義上ニ依ノテヤラ
  ナケレバナラヌト云フ事情モアルデアラウ
  ト思ヒマス、斯ノ如キ法案デアリマスカラ、
  吾々モ徒ニ反對ヲ致スノデハナイ、十分審
  議調査ヲ致ス考デアリマスガ、斯樣ナ案ハ
  調査ヲシナケレバナラヌト考ヘル、而シテ
  民間ノ會社ト云フノハ何會社々々々デアル
  カ、之ヲ明ニ伺ヒタイ、而シテ何會社ニ何
  百万圓、何會社ニ何千万圓ヲヤルト云フコ
  トモ伺ヒタイノデアリマス、併ナガラ其限
  度ニ於テハ二千二百万圓ヲ超エナイコトハ
  承知シテ居リマス、斯樣ニ伺ヒマスレバ政
  府ハソレハ答辯ハ出來ナイ、ソレガ爲ニ此
  法案第三條ニ於テ、補償審査會ト云フモノ
  ヲ設ケテ、審査ノ結果支拂ヲスルノデアル
  カラ、其答辯ハ出來ヌト言ハレルデアラウ
  ト思ヒマスガ、併シ旣ニ二千二百万圓ト云
  フ此金額ノ計算ノ出所ハ何處ニ在ルカ伺ヒ
  タイ、而シテ民間ノ會社ガ損害ヲシテ、德
  義上政府ガ辨償シナケレバナラヌト云フ其
  民間ノ實際ノ損害ガ幾ラデアルカ、斯ウ云
  フ事モ明確ニ伺ヒタイト思ヒマス、ソレデ
  第三條ノ法文ニ、今ノ所謂補償審査會ナル
  モノヲ組織サレルノデアリマスガ、政府ハ
  政府ノ政務官或ハ事務官、與黨ノ議員或ハ
  準與黨ノ議員等ヲ以テ此審査會ヲ組織サル
  ル場合、所謂自畫自賛ヂヤナイカ知ラヌ、
  ドウ云フ人間ヲ以テ組織サレルノカ、此點
  モ伺ヒタイノデアリマス、斯樣ニ申シマス
  ルト、政府ハ今日マデ打チヤッテ置イタノ
  デハナイ、震災復興等ノ爲ニ此辨償ヲスル
  遑ガナカッタノデアル、今ヤ震災ノ復興モ
  略〓見當ガ付イタノデアルカラ、茲ニ本案ヲ提
  出シタノデアルト言ハルヽカモ知レナイ、
  併ナガラ國家ガ民間ニ對シ、卽チ國民ニ
  對シテ支拂フベキ義務ガアルナラバ、今日
  マデ七八年ノ間打チヤッテ置イタノハドウ
  云フ譯デアルカ、甚ダ不條理千萬デアルト考
  ヘマス、斯樣ナ問題デアリマスカラ、歷代ノ
  政府ハ之ヲ打チヤッテ置イテ今日此案ガ此
  處ニ現レタ、會社側トシテハ當然現行法規
  ニ於テハ請求、催ハアリマセヌ、之ヲ要スル
  ニ木問題ハ權利義務ヲ全ク離レタル問題デ
  アリマス、然ルニ現内閣ハ玆ニ新ニ法律ヲ
  制定シテ、國家デ起債シ、債權者ノ位置ニ立
  チ、而シテ會社側ヲ新ニ債務者ト致シテ此
  辨償ヲ致スト云フ、此奇怪ナル理由ヲ明白ニ
  伺ヒタイノデアリマス、之ヲ要スルニ本案
  ハ現行法規的ニ見マシテ、甚ダ不純理デアソ
  テ、結局情實ノ問題デアリマスカラ、吾々
  ハ十二分ニ審議ヲ致シテ、而シテ贊否ヲ決
  シタイト思ヒマス、十分政府ノ明確ナル御
  答辯ヲ煩シマス(拍手)
  〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=38

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• 039・濱口雄幸

  ○國務大臣(濱口雄幸君)　私ヨリ大體ノ御
  答ヲ致サウト思ヒマス、私ノ御答致シマセ
  ナカッタ事項ニ付キマシテハ、適當ナル機會ニ
  於テ、海軍ノ當局ヨリ說明ヲ申上ゲルコト
  デアラウト思ヒマス、只今ノ御質問ノ要點
  ヲ伺シテ居リマスニ、數項ニ分レテ居リマシタ
  ケレドモ、大體ノ御趣意ハ、此度ノ造船會
  社ニ對スル補債ト云フコトハ法律上ノ義
  務デアル、法律上若クハ契約上會社ガ
  之ヲ請求スル權利ノ有ルモノデアルカ、或
  ハ無イモノデアルカ又政府ノ側カラ申シマ
  スレバ、法律上、契約上、支拂ヲスル義務
  ガ有ルベキモノデアルカ、或ハ無イモノデ
  アルカ、是ガ第一點デアッタヤウデアリマ
  ス三善君モ御質問ノ中ニ御述ニナリマシ
  タ通リ、是ハ現在ノ法律上又ハ契約上カラ
  申シマスレバ、政府ハ其支拂ノ義務ハ持ノテ
  居リマセヌ、又會社ト致シマシテモ、法律
  上之ヲ請求スル所ノ權利ヲ持ッテ居ナイコ
  トハ勿論デアリマス、唯、海軍大臣ガ最初
  ニ說明サレマシタ通リ、是等ノ會社ト云フ
  モノハ當時ノ政府當局ノ勸告ニ基イテ、
  ンレ〓〓設備ヲ致シタモノデアリマス、其
  設備ヲ致シマシタモノガ、軍備制限條約ノ
  結果トシテ不用ニ歸シタノデアリマス、若
  シ政府ノ勸告ト云フコトガナカッタナラバ
  法律上ハ勿論ノコト、道德上カラ申シマシ
  テモ何等ノ責任ハ無イノデアリマス、玆ニ
  問題トナリマスノハ政府ノ勸告ガアフタ
  ト云フ事柄デアリマス、既ニ政府ガ勸告ヲ
  致シテ、相當ノ設備ヲ爲サシメ、其設備ガ
  不用ニナリマシタ爲ニ、當該ノ會社ハ不測
  ノ損害ヲ被ムル、政府ト致シマシテハ無
  論法律上ノ責任ハナイ、契約上ノ義務ハア
  リマセヌガ、是ハ卽チ政治上、德義上ノ義
  務責任デアルト思ヒマス、其見地ニ基イテ
  提案ヲ致シマシタノガ、卽チ此度ノ法案デ
  アリマス、第二ノ御質問ノ御趣意ト致シマ
  シテハ、然ラバ此事件ガ起シテカラ今日ニ
  至ルマデ既ニ數年ヲ經過シ、其間內閣ノ更
  迭モ數回デアッタニ拘ラズ、此内閣ノ時ニ於
  テ始メテ此提案ヲ〓シタト云フノハ如何
  ナル理山デアルカト云フ御趣意デアッタト
  思ヒマス、歷代ノ內閣ニ於キマシテモ、私
  ノ承知シテ居ル所ニ依リマスレバ、此問題
  ノ解決ニ付テ種々調査攻究ヲ重ネラレテ
  居ッタト云フコトハ明瞭ナル事柄デアリマ
  ス、唯、從來内閣ノ更迭ガ頻繁デアリマシ
  タガ爲ニ、其調査〓究中ニ於テ其事ヲ果サズ
  シテ內閣ガ更迭ヲ致シ、又其問題ヲ後ノ內
  閣ニ引繼グト云フコトガアッタ爲ニ、今日ニ
  至ルマデ實行ノ機ヲ得ナカッタモノデアル
  ト私ハ思ヒマス、加之三善君モ御承知デア
  ラウト思ヒマスガ、此問題ヲ此内閣ニ於テ
  方針ヲ決シマシタノハ卽チ前議會ノ頃デ
  アッタノデアリマス、前議會ノ頃ニ於キマシ
  テ、其當時ノ所謂三派ノ内閣、其内閣ニ於
  キマシテ、此問題ヲ解決ヲシナケレバナラ
  ヌト云フコトヲ廟議ヲ決定致シマシテ、サ
  ウシテ議會ノ終リマスト同時ニ、從來ノ調
  査ニ基キマシテ、更ニ精密ナル調査攻究ヲ
  重ネテ漸ク成案ヲ得マシタノデ、此度提
  案ヲ致シテ御協賛ヲ仰グ次第デアリマス、
  ソレガラ此補償金ヲ受クル所ノ會社ノ社
  名、竝ニ金額ノ算出ノ基礎如何、斯ウ云フ
  コトデアリマスガ、是ハ海軍當局カラ御答
  致スコトデアラウト思ヒマシテ、私ハ說明
  ヲ省略致シテ置キマス、又氏間ノ實際ニ被フ
  タル所ノ損害ノ金額ニ付キマシテモ、適當
  ノ機會ニ於キマシテ、海軍當局ヨリ說明ヲ
  申上グルコトヽ思ヒマス(拍手)
  〔國務大臣財部彪君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=39

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• 040・財部彪

  ○國務大臣(財部彪君)　補償審査會ノ會員
  ハ如何ナル範圍ニ於テ之ヲ設クルカト云
  フ御尋ガアッタト思ヒマスガ、是ハ今ノ所デ
  ハ關係ノアリマスル他ノ各省ノ、其最モ圖
  係ノ近イ所ノ人ミヲ綱羅シテ委員會ヲ拵ヘ
  ル積リデゴザイマス、只今ノ所デハ民間マ
  デ之ヲ及ボス考ハゴザイマセヌ、ソレカラ
  補償ヲ爲サントスル會社ハ何處々々デアル
  カト云フ御話デアリマシタガ、ソレハ川崎
  造船所、三菱造船所、浦賀船渠、石川島造
  船所、横濱船渠、藤永田造船所、淺野造船
  所、日本製鋼所、住友仲銅所、大阪製鎖所、
  大倉工業、神戶製鋼所、帝國火藥、是ダケ
  十三社デゴザイマス、其金額ニ至リマシテ
  ハ、大體ノモノハゴザイマスケレドモ、煩瑣ニ
  亙リマスカラ、委員會ニ譲リタイト考ヘマ
  ス尙ホ其全額ハ無論此審査會ニ掛ケテ決
  定釵ス次第デゴザイマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=40

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• 041・三善清之

  ○三善〓之君　ドウモ只今ノ答辯ハ、甚ダ
  不十分デアリマス、何レ併シ委員會ニ於テ
  十分ニ質問ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=41

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• 042・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　武藤山治君
  〔武藤山治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=42

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• 043・武藤山治

  ○武藤山治君　本法律案ハ吾々國民ニ一一千
  二百万圓ト云フ大ナル負擔ヲ課スル所ノ法
  律案デアリマス、故ニ此法律案ニ對シマシ
  テハ委員會ニ於テモ亦更ニ本會議ニ於テ
  モ、十分ニ諸君ガ御審議遊バサレルコトヽ信
  ジマス、唯、茲ニ私ガ一二海軍大臣ニ御尋
  シテ置キタイト考へマスノハ此法律案ハ
  海軍補充計畫ニ基キマシテ、海軍主務大臣
  ヨリ御勸告ヲ遊バシタ、其御勸告ニ基イテ
  造船所又ハ兵器製造所ガ色ミノ施設ヲシ
  タ、其施設ヲ大正十二年ノ軍備縮小ノ條約ニ
  依シテ變更ヲシタ爲ニ、補償ヲスルト云フノ
  ガ本案ノ目的デアリマス、而シテ只今海軍
  大臣ノ御說明ノ中ニ、既設トハ單ニ或ハ兵
  器ヲ製造スル所ノ機械トカ、或ハ軍艦ヲ製
  造スル所ノ造船臺等ニ限ラズシテ、新ニ傭
  入レタ所謂技師トカ、或ハ、職工ヲモ含ム
  ト云フコトヲ仰セラレタノデアリマス、此
  點ニ付テ私ハ一層此點ヲ明ニ伺シテ置キタ
  イノデアリマス、普通吾々用フル所ノ用語
  カラ申シマスレバ、此法律案ニアル所ノ施
  設ナル言葉ハ物ニ對スル言葉デアッテ、決
  シテ人ニ對スル所ノ意味ヲ含ンデ居ラヌト
  私ハ信ズルノデアリマス、併ナガラ既ニ海
  軍大臣ガ此施設トハ單ニ物ノミニ非ズシ
  テ人ヲモ含ムモノデアル、卽チ造船臺トカ、
  或ハ新ニ買入レタ機械代ニ對スル補償ノミ
  ナラズ、新ニ備入レタ技師、或ハ職工ヲ解
  備シタ其場合ニ於ケル所ノ解備手常全ヲモ
  含ムモノデアル、斯ウ仲セラルヽ以上ハ、
  私ハ此點ヲ尙ホ一層主務大臣ニ御確メヲシ
  タイ、更ニ私ノ御確メヲシタイノハ、此二
  千二百万圓ト云フモノヲ補償ヲサレル其方
  法ハ詰リ補償審査委員ヲ設ケテ、其補償
  審査委員會ニ依ヶテ之ヲ決定サレルト云フ
  コトデアリマス、而シテ其審査委員ヲ定メ
  ラレルノハ、主務大臣ガ矢張御定メニナル
  ヤウニナッテ居リマス、勿論勅令ニ依ルト書
  イテアリマスカラ、如何ナル勅令ガ發布セ
  ラレルカ知リマセヌガ、若シ海軍大臣ノ仰
  セラレルヤウニ、此施設ノ中ニハ物ノミニ
  非ズ、人ニ對スル、補償ヲモ含ムト云フコ
  トデアリマスレバ、此補償審査委員會ノ委
  員ハ必ズ私ハ單ニ技師トカ其他工場ノ機
  械ニ關スル者ノミニアラズシテ、人ニ對ス
  ル相當ノ委員ヲ御選ビアランコトヲ望ミ、
  且ツ之ヲ言明ヲ望ムノデアリマス、卽チ若
  シ政府ニ於テ之ヲ求メラレルナラバ、或
  社會局長トカ、若シ之ヲ民間ニ求メラレル
  ナラバ、勞資協調會ノ理事モ此審査委員中
  ニ加へ置カレンコトヲ望ミ、且ツ此事ヲ明
  ニセラレンコトヲ私ハ冀フノデアリマス、
  何トナレバ此問題ハ今日起,夕問題デナク
  シテ、大正十二年度ニ於テ實際上起ッタ問
  題デアリマス、故ニ是等ノ造船所或ハ兵
  器製造所ハ造船臺ヤ機械ハ役ニ立タヌカ
  ラ其工場ガ持ッテ居リマセウガ、其備入レタ
  所ノ技師ヤ職工ハ旣ニ解傭シ終ッタノデア
  リマス、其當時是等ノ造船所、兵器製造所
  ガ、斯ノ如ク巨額ノ補償ヲ受ケルト云フコ
  トハ知ラナカッタ爲ニ、是等ノ解傭サレタ
  人々ノ手當ハ私ハ極メテ僅少デアッタデハ
  ナイカト思フノデアリマス、シテ見マスレ
  バ今日此二千二百万圓ト云フヤウナ巨額ノ
  金ヲ是等ノ造船所ヤ、是等ノ兵器製造所ニ
  向ッテ補償セラレルト云フコトナラバ盛
  解備セラレタ所ノ職工技術家等ニ對スル更
  ニ新タナ手當ヲ、ソレ等ニ向ッテ補償ヲセ
  ラレルノガ當然デナイカト思フ、シテ見マ
  スレバ此審査委員會ニ於ケル委員ナル者
  ハ、必ズ是等ノ八ミニ對スル所ノ考慮ヲ拂
  フ相當ナル人ヲ委員ニ御加へ下サルコトヲ
  私ハ願ヒ、且ツ此事ヲ海軍大臣ヨリ明ニ承
  ルコトヲ切ニ願フ者デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=43

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• 044・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　財部海軍大臣
  〔國務大臣財部彪君登商〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=44

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• 045・財部彪

  ○國務大臣(財部彪君)　武藤君ノ御尋ニ御
  答致シマス、今日ノ所デハ補償ヲ致シマス
  人ト云フ方ハ職エダケニ限シテ居ルノデゴ
  ザイマス、故ニ只今ノ所デハ其方ノ問題ハ
  比較的簡單デアルト考ヘテ居リマシタカ
  ラ武藤君ガ御述ニナリマシタ所ノ勞資協
  調會邊リノ人ヲ煩ハス考ハゴザイマセナン
  ダガ、併シ今御述ニナッタ御趣旨モアリマ
  スカラ、能ク〓究致シマシテ、遺憾無イヤ
  ウニ致シタイト考へマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=45

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• 046・井本常作

  ○井本常作君　本案ニ對スル質疑ハ此程度
  ニ於テ終局セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=46

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• 047・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=47

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• 048・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、仍テ
  質疑ハ終了致シマシタ、日程第八、右議案
  ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致
  シマス
  第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=48

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• 049・井本常作

  ○井本常作君　本案ハ議長指名十八名ノ委
  員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=49

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• 050・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郎君)　井本君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=50

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• 051・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシター日
  程第九乃至第十三ハ同種ノ議案ナルニ依
  リ、一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=51

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• 052・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ日程第九、明治三十三年法律
  第七十三號衆議院議員選擧法中改正法律
  案、日程第十、大正十四年法律第四十七號
  衆議院議員選舉法中改正法律案、日程第十
  衆議院議員ノ選擧權ニ關スル法律案、
  日程第十二、北海道會議員及府縣會議員ノ
  選舉權及被選擧權竝市町村會議員ノ公民權
  ニ關スル法律案、日程第十三、土地收用法
  中郡長ノ職務ヲ定ムル規定ノ適用ニ關スル
  法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-俵政府委
  員
  第九明治三十三年法律第七十三號衆
  議院議員選擧法中改正法律案(政府
  提出)第一讀會
  明治三十三年法律第七十三號衆議院議
  員選擧法中改正法律案
  明治三十三年法律第七十三號衆議院議員
  選擧法中左ノ通改正ス
  第六條左ニ揭クル者ヲ以テ選擧長トス
  一支廳管內又ハ一市一選擧區タル
  場合ニ於テハ其ノ支廳長又ハ市長
  二一選舉區數支廳管内、數市又ハ支
  廳管内及市ニ涉ル場合ニ於テハ關係
  支廳長又ハ市長ノ中ニ就キ地方長官
  ノ指定スル者
  三其ノ他ノ選擧區ニ於テハ官吏又ハ
  關係市長ノ中ニ就キ地方長官ノ指定
  スル者
  選擧長ハ選擧會ニ關スル事務ヲ擔任ス
  第十八條第一項及第二項ヲ削リ同條第三
  項中「市長」ヲ「市町村長」ニ、「市內」ヲ
  「市町村内」ニ改ム
  第二十條中「其ノ廳」ヲ「市役所、町村役
  場」ニ改メ「郡長、」ヲ削ル
  第二十一條中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改
  ム
  第二十四條第一項中「郡市長」ヲ「市町村
  長」ニ改メ同條第二項ヲ削ル
  第二十五條第一項中「郡市長」ヲ「市町村
  長」ニ改ム
  第二十六條削除
  第二十七條第二項中「郡市長」ヲ「市町村
  長」ニ改メ同條第三項ヲ削ル
  第三十二條第一項中「郡市長」ヲ「市町村
  長」ニ、「各投票區內」ヲ「其ノ投票區內」
  三九人
  第五十一條中「郡市役所」ヲ「支廳若ハ市
  役所」ニ改ム
  第五十九條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ第六條第一項第三號ノ規定ニ依リ
  地方長官ノ指定シタル官吏(支廳長ヲ
  除ク)選擧長タル場合ニ於テハ地方長
  官ニ於テ之ヲ保存スヘシ
  第六十條ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ前條第一項但書ノ規定ハ選擧錄及
  投票錄ノ保存ニ之ヲ準用ス
  第百五條ノ二本法中郡トアルハ從前郡
  長ノ管轄シタル區域ヲ謂フ
  前項ノ規定ハ島ニ之ヲ準用ス
  從前郡長又ハ島司ノ管轄シタル區域內
  ニ於テ市ノ設置アリタルトキ又ハ其ノ
  區域ノ境界ニ涉リテ市町村ノ境界ノ變
  更アリタルトキハ其ノ區域モ亦自ラ變
  更シタルモノト看做ス
  從前郡長又ハ島司ノ管轄シタル區域ノ
  境界ニ涉リテ町村ノ設置アリタル場合
  ニ於テハ本法ノ適用ニ付其ノ町村ノ屬
  スヘキ區城ハ內務大臣之ヲ定ム
  第百五條ノ三北海道廳支廳長ノ管轄區
  城ニ變更アルモ選擧區ニ關シテハ仍從
  前ノ管轄區域ニ依ル但シ市町村ノ境界
  ノ變更アリタル爲北海道廳支廳長ノ管
  轄區域ニ變更アリタルトキハ此ノ限ニ
  在ラス
  前項ノ規定ニ依ル選舉ニ關シ本法ノ規
  定ヲ適用シ難キ事項ニ付テハ勅令ヲ以
  テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
  第百六條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  第百五條ノ二ノ規定ヲ除クノ外本法中
  郡ニ關スル規定ハ支廳長ノ管轄區域ニ
  之ヲ適用ス
  附則
  本法ハ郡長及島司廢止ノ日ヨリ之ヲ施行
  ス
  大正十年法律第六十四號ハ之ヲ廢止ス
  第十大正十四年法律第四十七號衆議
  院議員選擧法中改正法律案(政府提
  也第一讀會
  大正十四年法律第四十七號衆議院議員
  選擧法中改正法律案
  大正十四年法律第四十七號衆議院議員選
  擧法中左ノ通改正ス
  第十二條第一項及第二項ヲ削リ同條第三
  項中「市長」ヲ「市町村長」ニ、「市内」ヲ「市
  町村内」ニ改メ同條第四項中「第一項又
  ハ」及同條第六項中「又ハ第三項」ヲ削ル
  第十三條中「郡市役所」ヲ「市役所」ニ改メ
  「郡長及」ヲ削ル
  第十四條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」
  ニ改ム
  第十五條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」
  ニ改メ同條第二項及第三項ヲ削ル
  第十六條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」
  ニ改ム
  第十七條第二項中「郡市長」ヲ「市町村長」
  ニ改メ同條第三項及第四項ヲ削ル
  第四十四條中「郡市長」ヲ「支廳長、市長又
  ハ地方長官ノ指定シタル官吏」三六人
  第四十五條中「郡市役所」ヲ「支廳、市役
  所」ニ改ム
  第五十三條ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ第四十四條ノ規定ニ依リ地方長官
  ノ指定シタル官吏開票管理者タル場合
  ニ於テハ地方長官ニ於テ之ヲ保存スヘ
  シ
  第五十四條ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ前條但書ノ規定ハ開票錄及投票錄
  ノ保存ニ之ヲ準用ス
  第五十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  左ニ揭クル者ヲ以テ選擧長トス
  -一縣又ハ一市一選舉區タル場合ニ
  於テハ其ノ地方長官又ハ市長
  二一選舉區數市又ハ支廳管內及市ニ
  涉ル場合ニ於テハ關係支廳長又ハ市
  長ノ中ニ就キ地方長官ノ指定スル者
  三其ノ他ノ選擧區ニ於テハ官吏又ハ
  關係市長ノ中ニ就キ地方長官ノ指定
  スル者
  第五十九條中「縣廳若ハ郡市役所」ヲ「縣
  廳支廳若ハ市役所」ニ改ム
  第六十四條ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ第五十八條第一項第三號ノ規定ニ
  依リ地方長官ノ指定シタル官吏(支廳
  長ヲ除ク)選擧長タル場合ニ於テハ地
  方長官ニ於テ選擧錄及第四十九條第三
  頃ノ報告ニ關スル書類ヲ保存スヘシ
  第百四十四條ノ二本法中郡又ハ島廳管
  内トアルハ從前郡長又ハ島司ノ管轄シ
  タル區域ヲ謂フ
  從前郡長又ハ島司ノ管轄シタル區域内
  ニ於テ市ノ設置アリタルトキ又ハ其ノ
  區域ノ境界ニ涉リテ市町村ノ境界ノ變
  更アリタルトキハ其ノ區域モ亦自ラ變
  更シタルモノト看做ス
  從前郡長又ハ島司ノ管轄シタル區域ノ
  境界ニ涉リテ町村ノ設置アリタル場合
  ニ於テハ本法ノ適用ニ付其ノ町村ノ屬
  スヘキ區域ハ内務大臣之ヲ定ム
  第百四十四條ノ三北海道廳支廳長ノ管
  轄區域ニ變更アルモ選舉區ニ關シテハ
  仍從前ノ管轄區域ニ依ル但シ市町村ノ
  境界ノ變更アリタル爲北海道廳支廳長
  ノ管轄區域ニ變更アリタルトキハ此ノ
  限ニ在ラス
  前項ノ規定ニ依ル選擧ニ關シ本法ノ規
  定ヲ適用シ難キ事項ニ付テハ勅令ヲ以
  テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
  第百四十五條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  第百四十四條ノ二ノ規定ヲ除クノ外本
  法中郡ニ關スル規定ハ支廳長ノ管轄區
  域ニ之ヲ適用ス
  附則
  本法ハ郡長及島司廢止ノ日ヨリ之ヲ施行
  ス
  第十一衆議院議員ノ選舉權ニ關スル
  法律案(政府提出)第一讀會
  衆議院議員ノ選擧權ニ關スル法律案
  本法公布前ノ調製期日ニ依リ調製セラレ
  タル最近ノ衆議院議員選擧人名簿ニ登錄
  セラレタル者ハ次ノ總選擧ニ至ル迄ノ間
  納稅要件ヲ關クニ至リタル場合ト雖之カ
  爲其ノ選擧權ヲ失フコトナシ本法公布後
  次ノ總選舉ニ至ル迄ノ間ニ調製セラルル
  選舉人名簿ニ登錄セラレクル者亦同シ
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第十二北海道會議員及府縣會議員ノ
  選擧權及被選擧權竝市町村會議員ノ
  公民權ニ關スル法律案(政府提出)
  第一讀會
  北海道會議員及府縣會議員ノ選舉權及
  被選擧權竝市町村會議員ノ公民權ニ關
  スル法律案
  本法公布前ノ調製期日ニ依リ調製セラレ
  クル最近ノ北海道會議員又ハ府縣會議員
  ノ選擧人名簿ニ登錄セラレタル者ハ次ノ
  總選舉ニ至ル迄ノ間納稅要件ヲ闕クニ至
  リタル場合ト雖之カ爲其ノ選擧權及被選
  擧權ヲ失フコトナシ本法公布後次ノ總選
  擧ニ至ル迄ノ間ニ調製セラルル選舉人名
  簿ニ登錄セラレタル者亦同シ
  本法公布ノ際現ニ北海道會議員、府縣會
  議員又ハ市町村會議員ノ職ニ在ル者ハ其
  ノ任期ヲ終ル迄ノ問被選擧權又ハ公民權
  ノ納稅要件ヲ闕クニ至リタルカ爲其ノ職
  ヲ失フコトナシ本法公布後次ノ總選擧ニ
  至ル迄ノ間ニ其ノ職ニ在ルニ至リタル者
  亦同シ
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第十三土地收用法中郡長ノ職務ヲ定
  ムル規定ノ適用ニ關スル法律案政
  府提出)第一讀會
  土地收用法中郡長ノ職務ヲ定ムル規定
  ノ適用ニ關スル法律案
  土地收用法中郡長ノ職務ヲ定ムル規定ハ
  町村長ニ之ヲ適用ス
  附則
  本法ハ郡長廢止ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員俵孫一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=52

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• 053・俵孫一

  ○政府委員(俵孫一君)　只今上程セラレマ
  シタ諸案ノ大要ヲ御說明申上ゲマス、第九、
  第十、第十一ハ何レモ衆議院議員選擧法ニ
  關スル事デアリマスガ、極メデ重要ナル法
  案デハアリマスルガ、其提案ノ趣意ハ極メ
  テ簡單デアリマス、先ヅ第九、第十ノ兩案
  ハ關係致シマスルカラ、併セテ御說明申上
  ゲマス、政府ハ大正十五年度ニ於キマシテ、
  行政財政ノ整理改善ヲ圖ルノ目的ヲ以チマ
  シテ、郡長ヲ廢止スルコトニ致シテ居ルノ
  デゴザイマス、隨テ衆議院議員選舉法中改
  正ヲ爲スノ必要ヲ生ジマシタ故ニ、郡長ノ
  廢止ニ關聯致シマシテ、必要已ムヲ得ザル
  限度ニ於テ、現行選擧法竝ニ改正選擧法ニ
  付選擧長、開票管理者、選擧人名簿、投票
  立會人等ニ關スル規定ニ改正ヲ加ヘントス
  ルノデアリマス、是ガ本案ノ改正ヲ提案シ
  タ理由デアリマス、次ニ第十一、第十二ハ
  關係致シマスカラ、併セテ御說明申上ゲマ
  ス、今囘ノ稅制整理ニ依レバ地租、所得稅
  及營業稅ニ關シ改廢ヲ加フル結果ト致シマ
  シテ、衆議院議員ノ選擧權竝ニ地方議會議
  員ノ選擧權、被選擧權及公民權中ノ納稅要
  件ヲ缺如スルニ至レルガ故ニ、相當多數ノ
  失格者ヲ生ズル見込デアリマス、而シテ稅
  制整理ノ結果遽ニ多數ノ失格者ヲ生ズル
  ハ健全ナル地方行政ノ運用上圓滿ヲ缺ク
  嫌ガアリマスカラ、隨テ、是ガ適當ナル對
  策ヲ講ズルノ必要ガアルノデアリマス、是
  レ此兩案ヲ提出致シマシタ理由デアリマ
  ス、最後ニ第十二ノ提案理由ヲ說明致シマ
  ス、現行法ニ依レバ天災地變ニ際シマシテ、
  急施ヲ要スル事業ノ爲メ土地ヲ使用スル場
  合ニアリマシテハ、郡市長ガ其事業ノ認定
  ヲ致シマシテ、其土地ヲ使用セシムル規定デ
  アリマスガ、然ルニ今囘郡長ヲ廢シマスル
  ガ爲ニ、是等ノ事務ハ町村長ヲシテ執行セ
  シムルコトガ必要デアルノデアリマス、是
  レ本案ヲ提出シタ理由デアリマス、何レモ
  今申シマスル通リニ極メテ簡單デゴザイマ
  スルカラ、願ハクハ御審議ノ上速ニ御協賛
  ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=53

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• 054・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテ質
  疑ノ通告ガアリマスー原夫次郎君
  〔原夫次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=54

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• 055・原夫次郎

  ○原夫次郞君　只今上程セラレマシタル法
  律案ハ何レモ憲法附屬ノ大典ノ改正案デ
  アリマシテ、就中昨年吾々ガ協賛ヲ與ヘタ
  ル所ノ衆議院議員選擧法、卽チ新選擧法ノ
  改正案ガ只今日程第十トシテ上程セラレタ
  ノデアリマス、私ハ先ヅ此改正法律案ニ付テ
  改正ノ內容ニ立入ッテ御質問ヲ致ス前ニ、先
  ヅ内務大臣其他ノ國務大臣カラデモ宜シイ
  ノデアリマスガ、現内閣ノ責任アル答辯ヲ
  得タイ事項ガアル、ソレハ申ス迄モナク此
  憲法附屬ノ大法典ノ改廢ニ際シマシテ、是
  ハ言フマデモナク樞密院ノ官制ニ依リマシ
  テ、先ヅ政府ハ我ガ議院ニ提案スル前ニ、
  樞密院ノ御諮詢ヲ相依ツコトニ相成ッテ居ル
  ノデアリマス、此改正法律案ハ、既ニ遠ク
  先々月デアリマシタカ、樞密院ニ御諮詢ニ
  相成々タノデアリマスガ、樞密院ニ於キマシ
  テハ、現內閣ノ施政ノ方針ト見解ヲ異ニス
  ルト云フ故ヲ以テ、卽チ現內閣ガ施政ノ大
  方針ト致シテ居ル郡長、郡役所、支廳長等
  ノ廢止ヲ企テタコトニ依ッテ、此改正案ヲ
  提出致シタノデアリマスガ、樞密院ハ根本
  ニ於テ郡役所廢止ニ付テハ反對デアルト云
  1、此現內閣ノ施政ノコトニ立入ッテ、根
  本ノ見解ヲ異ニスルガ爲ニ、樞密院ニ於テ
  ハ精査委員會ヲ既ニ六回モ開會致シ、而シ
  テ最後ニ去ル十六日ノ本會議ニ於テ、二ツ
  ノ希望條件ヲ附シテ之ガ諮詢ニ御答ヲ致シ
  タト云フコトデアリマス、其第一ト致シテ
  ハ樞密院ニ於テハ先程申ス如ク、郡長郡
  役所ノ廢止ハ絕對ニ反對デアル、反對デア
  ルケレドモ、旣ニ政府ハ此政策ヲ遂行セン
  トスル場合ニ當テハ、少クトモ此郡役所
  ニ代ルニ出張所ヲ設クルコトヲ希望條件ト
  致シ、第二ト致シテハ、郡長廢止ノ所謂地方
  官制ニ屬スル所ノ事項ヲ、將來樞密院ノ議
  ニ付スルト云フコトノ二ツノ條件ヲ附シ
  テ、此改正案ヲ通過セシメタト云フコトデ
  アリマス、現内閣ノ首班ノ若槻首相ハ、新
  聞紙ノ傳フル所ニ依レバ、此樞密院ノ誤レ
  ル希望條件ニ對シテ、之ニ承諾ヲ致シ、幸
  ニ其通過ヲ得テ此法律案ヲ本議場ニ提出致
  シタト云フコトデアリマスガ、果シテ斯ノ
  如キ弱音ヲ吐イタノデアルカ、ドウカ、第
  一ニ之ヲ御伺ヒシタイ、何トナレバ若槻首
  相ハ、吾々ノ此衆議院ニ於テハ、郡役所ヲ
  廢止スルト同時ニ、其出張所ハ之ヲ設ケナ
  イ、唯全國僅カニ在リ島嶼、卽チ島國ニ
  於テ五箇所カ六箇所設ケルニ過ギナイ、其
  他ハ全部之ヲ設ケナイト云フコトデ、吾々
  ハ此郡役所廢止ノ豫算ニ協賛ヲ與ヘテ、其
  豫算ハ今貴族院ノ議ニ付シテ居ルノデアリ
  さっ、然ルニ樞密院ノ官制ニ於テハ斷ジテ
  此施政ノ事ニ喙ヲ容ルヽコトハ官制上相成
  ラヌノデアリマス、是ハ私ガ申スマデモナ
  イ、然ルニ斯ノ如キ希望條件ヲ附シタト致
  シマスルナラバ、樞密院ナルモノハ自己ノ
  職貴ヲ顧ミナイデ、濫ニ施政ノ事ニ關與
  シ、而モ現在貴族院デ論議ノ的トナッテ居
  ル所ノ、此郡役所廢止問題ニ對シテ、大ナ
  ル間接射撃ヲ爲シ、以テ施政ノコトニ容味
  スルコトニナッテ居ル、斯ノ如キコトガ眞
  ニアッタリトスルナラバ、是ハ斷ジテ吾々
  ノ許容スベカラザルコトニ屬スルノミナラ
  ス、又現内閣ノ餘リニ弱腰ヲ嗤ハザルヲ得
  ナイノデアリマス、殊ニ此會期切迫ノ今
  日、此重大ナル三法律案ヲ提出致シタト云
  フコトハ是ハ全ク樞密院ノ斯ノ如キ越權
  ノ處置カラ、事茲ニ至ッタモノデアッテ、若
  シ本案カ吾々ノ手ニ依ッテ審議ヲ致シ、次
  ニ貴族院ニ於テ握潰シニ相成シタ場合ニ於
  テハ其責任ハ樞密院ガ負ハナケレバナラ
  ヌノデアル、此點ニ關シテ政府ハ如何ニ樞
  密院ニ對シテ責任ヲ負ハシムルト云フ考デ
  アルカト云フコトヲ御伺致シタイ、ソレカ
  ラ次ニハ法律案ノ内容ニ關スル點デアリマ
  スガ、卽チ新選擧法中ノ改正法律案、此法律
  案ノ百四十四條ニツノ項目ヲ新設致シタ
  コトデアリマス、一體先程俵政務次官ノ本
  案提出ノ理由ヲ聽キマシテモ、又此改正法
  律案ノ理由書ヲ拜見致シマシテモ、此改正
  法律案ナルモノハ、今般郡長及島司ノ廢止
  ニ伴シテ、新選擧法ヲ改正スルノ必要ガア
  ルカラ之ヲ出シタノデアル、斯ウ云フコト
  デアリマスルカラ、隨テ此改正ノ範圍ナル
  モノハ郡長及島司ノ廢止ニ伴ウテ、眞ニ
  必要已ムヲ得ズシテ此改正ヲ爲シタモノデ
  アルト云フコトニ吾々ハ拜水致スノデアリ
  マト、然ルニ拘ラズ只今申上ゲタ所ノ百四
  十四條ニ、新ニ二ツ設ケタ項目ハ如何ナル
  コトデアルカト申シマスナラバ、是ハ郡長
  及島司ノ廢止ニ伴フト否トニ拘ラズ、全然
  ソレトハ關係ナキ條項ヲ玆ニ揭ゲ來ッタコ
  トデアリマス、卽チ新選擧法ニ於キマシ
  テハ、昨年咄嗟ノ間ニ吾々ガ協賛ヲ與ヘタ
  法律デアリマスルガ爲ニ、彼ノ選擧法ノ別表
  ニ於テ、各府縣共ニ選擧區ト竝ニ選出議員
  ノ數ヲ限定致シテアルノデアリマス、而シ
  テ此別表ナルモノハ將來十年間ハ之ヲ改廢
  シナイト云フ特別ナル規定マデ設ケテア
  ル、然ルニ今度ノ改正法案ニ依ルト云フ
  1、郡役所ガ廢止ニナッタ結果、郡役所ノ
  從來管轄致シテ居ル所ノ其管轄區域ガ卽チ
  選擧區ニナルト云フコトハ、是ハ洵ニ尤モ
  ナ事デアルノデアリマスケレドモ、若シ各
  郡役所ト郡役所トノ間、或ハ北海道ニ於テ
  ハ支廳長ト支廳トノ間、若クハ各府縣ニ於
  テ此郡ト市トノ中間ニアル地域、或ハ北海
  道ニ於キマシテモ支廳ト市トノ中間ニ位ス
  ル地域ニ於テ、市町村ノ管轄ガ變更ヲ來シ
  タ場合ニ於テハ此別表ノ改正ハ是ハ勅令
  ヲ以テ改正スルコトガ出來ルト云フ、玆
  百四十四條ノ三項ニ於テ新ナル條項ヲ挿
  入致シタコトデアリマス、諸君、如何デア
  リマセウ、斯ノ如キ規定ナルモノハ、昨年協
  賛ヲ與ヘタル新選擧法中ニ是ハ規定セザリ
  シ缺陷デアッタ箇條デアルノデアリマス、
  然ルニ此度郡長及島司ノ廢止ニ伴フト云フ
  コトデ、多クノ條文ヲ改正致シ、其改正ハ
  主トシテ其廢止ダケノ問題ニ牽聯シテ、文
  字ノ修正ダケガ改正ニ相成ッテ居ルノデア
  リマス、然ルニ拘ラズ只今申上ゲタル所ノ
  百四十四條ノ第二項竝ニ三項ヲ附加ヘテ、
  郡長若クハ島司ノ廢止ニ何等ノ關係ノナイ
  新ナル斯ノ如キ別表改正ノコトハ勅令ヲ
  以テ之ヲ規定スルコトガ出來ルト云フヤウ
  十、咄嗟ノ間ニサウ云フ規定ヲ設ケテ之ヲ
  改正セントスル法案デアリマス吾々ハ斷
  ジテ斯ノ如キ憲法上法律ノ規定事項デアル
  モノヲ、咄髪ノ間ニ此條文ヲ設ケラレテ、
  是ガ後日勅令デ以テ自由ニ改廢セラレルト
  云フコトニナリマシタナラバ新選舉法ノ
  別表デアル所ノ選舉區制ノ問題、選出議員
  ノ數ノ問題ハ勅令デ以テ幾ラデモ改廢ガ
  出來ルコトニ相成ルノデアリマス、時ノ政
  府ノ都合ニ依ッテ、吾々ガ協賛ヲ與ヘナケレ
  バナラナイ事項ヲ、勅令ニ之ヲ讓ルト云フ
  コトハ一體何タル事デアリマセウカ、是ハ
  吾々議員ト致シテ斷ジテ斯ノ如キ改正ヲ企
  ツベキモノデハナイト信ズルノデアリマ
  ス殊ニ又斯ノ如キ郡ト郡トノ間ヘ挾マル
  所ノ市町村ノ境界ガ異ルト云フコトデ、郡
  ノ變動ガアルト云フ場合ニ於テハ其場合
  ニ於テ勅令ヲ以テ其境界ヲ定メル所ノ變更
  ノ勅令ガ出タル時ニ於テハ此選舉區ノ別
  表ハ其場合ニ於テ政府者ハ直ニ議會ニ提案
  ヲシテ、別表ノ改正ヲ爲セバ宜シイノデア
  リマス、然ルニ拘ラズ其事ヲ規定シテナク
  テ、直ニ勅令ヲ以テ斯ノ如キ重大ナル變更
  ヲ爲サントスルコトハ吾々此法案ヲ見テ
  立所ニ疑問ガ起ルノデアリマス、以上ノ點
  ニ於テ實ハ内務大臣ノ御辯明ヲ求メテ置イ
  タノデアリマスガ、只今總理大臣ガ御出ニ
  ナッタノデアリマスカラ、其點ニ於テ御答
  辯ヲ頰シタイノデアリマス(拍手)
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=55

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• 056・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　只今御質問
  火衆議院議員選擧法第百四十四條ニ關ス
  ル御質疑ハ政府委員ヨリ御答辯ヲ致スコ
  トニ致シマス、樞密院ノ議事ニ關スル御質
  問ニ對シテ私ヨリ御答ヲ致シマス、樞密院
  ノ議事ハ御承知ノ通リ祕密ニスルト云フコ
  トニナッテ居リマシテ、法規上私ハ議事ノ内
  容ヲ玆ニ申上ゲルコトガ出來ヌノデアリマ
  スソレ故ニ樞密院ノ議事ガ如何ナルモノ
  デアッタカト云フ御質問ニ對シテハ、私ハ答
  辯ガ出來マセヌト御答スルノ外ナイノデア
  リマス、唯〓世間ノ疑惑解解ガ爲ニ、新
  聞紙ニ書イテアルコトニ付テ私ハ申上ゲタ
  イノデアリマス、卽チ新聞紙ニ於テハ地方
  官々制中ノ重要ナル事柄ニ付テハ是ガ改
  正ノ場合ニハ樞密院ニ御諮詢ニ相成ルヤウ
  ニ政府ガ奏請シテ貰ヒタイト云フコトヲ、
  樞密顧問官カラ要求ヲセラレテ、私ガ之ニ
  同意ヲ表シタト云フコトガ書イテアリマ
  ス是ハ全然事實デナイノデアリマス、左
  樣ナ事ハ私ハ決シテ同意ヲ致シテ居リマセ
  ヌ、是ダケハ明瞭ニ申上ゲマス
  〔政府委員俵孫一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=56

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• 057・俵孫一

  ○政府委員(俵孫一君)　只今原君ノ百四十
  四條ノ二竝ニ三ノ規定ハ、此際之ヲ提案ス
  ルコトハ甚ダ不都合デハナイカト云フ御尋
  ニ對シマシテ御答致シマス、是ハ第九ノ明
  治三十三年法律第七十三號、衆議院議員選
  擧法中改正法律案、其中ニアリマスルガ、
  大正十年ノ法律第六十六號衆議院議員選擧
  區ニ關スル件ト云フ單行法ガアリマス、此
  單行法ヲ今回矢張第九ノ改正案ニ依ヶテ廢
  止致シマシタ、廢止致シマス結果ト致シ
  マシテ、此規定ニ關シテ島司竝ニ北海道支
  廳長ニ關スル問題ガ全ク消滅スルノデアリ
  やく、ソレ故ニ其善後法ト致シマシテ、第
  十ノ改正法ニ依シテ茲ニ百四十四條ノ二、竝
  ニ百四十四條ノ三、此二箇條ヲ追加致シマ
  シテ、一ツハ島司ニ關シ、一ツハ北海道支
  廳長ニ關スル規定ヲ設ケタダケデアリマ
  ス、極ク簡單ナ理由デアリマス
  〔原夫次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=57

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• 058・原夫次郎

  ○原夫次郞君　選擧法ノ改正案ノ內容ニ付テ
  ハ何レ委員會ニ讓ルコトヽ致シマス、又現
  内閣樞密院ノ問題ニ付キマシテ、先程若槻
  首相カラ御言明ヲ得テ大ニ安心シタノデア
  リマスルガ、序ニモウ一ツ御伺致シテ置キ
  タイト思フノハ、流石ハ若槻首相デアリマ
  ス、斯ル新聞ニ揭ゲテ居ルヤウナ言明ヲ致
  シタコトハナイ、斯ウ云フコトデアッテ、
  是ハ左モアルベキコトヽ思フノデアリマス
  ガ、然ル所第二ノ質問ト致シマシテ、私ノ
  御尋致シタ所ノ現内閣ハ郡役所廢止問題ニ
  付テ、當初豫算ヲ提案セラレ、斷平タル施
  設ノ方針トシテ述ベラレテ-御考ヘニナ,
  タモノデアルカラ、ソレニ伴ウテ此法律ガ
  改正ニナル場合ニ於テ、今日マデ樞密院ニ
  精査委員會ヲ、此簡單ナル問題デ五回モ六
  囘モ開カスト云フコトハ一體ドウ云フコ
  トデアリマスカ、今日此會期切迫ナ場合ニ
  於テ、本院ガ之ニ協賛ヲ與ヘテモ、貴族院
  ガ協賛ヲ與ヘナケレバイカヌノデアル、而
  シテ若シ貴族院ガ之ヲ握リ潰シニナッタナ
  ラバ、樞密院ハ大ナル責任ヲ持タナケレバ
  ナラヌ立場ニ在ルノデアリマス、所デ樞密
  院ハ隨分無責任ナ所デアリマシテ、陛下ノ
  御諮詢ニ奉答スルダケノ職責デアルガ故
  ニ、何共手ノ著ケヤウガナイト思フノデア
  リマス、一體此樞密院ノ官制ニ依ルト云フ
  ト、各國務大臣ハ樞密院ノ議ニ參加シテ、
  十分ニ表決ニ加ハルコトモ出來ルノデアリ
  ママ、然ルニ今日マデ此重大ナル法案ヲ樞
  密院ニ握ラセテ置イタト云フコトハ體
  ドウ云フコトデアリマスカ、又樞密院ニ對
  スル鞭撻方法ハ、今後ドウ云フ御政策ニ依
  ルデアリマセウカ、其點ヲ一應御伺シテ置
  キマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=58

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• 059・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　是ハ原君モ御
  承知ノ通リ、樞密院ハ憲法上一ノ獨立シタ
  ル機關デアリマス、政府ノ監督ノ下ニ居ラ
  ナイノデアリマスノデ、樞密院ニ於ケル事
  務ノ處理ノ仕方ニ付テハ政府ハ之ニ就テ
  責任ヲ負ヒマセヌト共ニ、又何トモ致方ガ
  ナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=59

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• 060・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　土屋〓三郞君
  〔土屋〓三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=60

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• 061・土屋清三郎

  ○土屋〓三郞君　私ハ此機會ニ新選擧法第
  三十三條、卽チ「選擧ノ當日自ラ投票所ニ
  到リ投票ヲ爲シ能ハサルヘキコトヲ證スル
  者ノ投票」所謂不在投票ニ關スル特別規定
  ニ付テ御尋ヲ致シタイノデアリマス、此三
  十三條ノ規定ニ基キマシテ政府ハ過般
  勅令ヲ以テ施行令ヲ御公布ニ相成ッタノデ
  アリマスルガ、如何ナル者ニ對シテ所謂不
  在者投票ヲ認ムルカト云フ事ニ付キマシテ
  ハ、同施行令ノ第二十六條ニ、船員又ハ船舶
  乘務ノ常況ニ在ル者、鐵道列車乘務中ノ者、
  演習又ハ〓育ノ爲メ召集中ノ陸海軍々人、
  海上勤務中ノ艦船乘員タル軍屬、是等ノ人
  ニ對シテ不在投票ヲ認メテ居ルノデアリマ
  スルガ、傳染病豫防法、又ハ海港檢疫法等
  ニ依シテ、自由ヲ拘束セラレテ居ル者ニ對
  シテ此規定ノ適用ガ無カクタコトト云フコ
  トハ如何ナル譯デアリマスカ、御承知ノ
  通り傳染病豫防法、又ハ海港檢疫法等ニ依クツ
  テ隔離ヲ致サレテ居ル人ミハ、私ノ用務デ
  ハアリマセヌ、又病ンデ意識ヲ失ッテ居ル
  者デモアリマセヌ、法律ニ依ッテ自由ヲ拘
  束セラレナイ以上ハ健康ニシテ自ラ投票
  所ニ到ヲテ投票スルコトノ出來ル人〓デア
  リマス、唯〓此法律ガアルガ爲ニ此法律ニ
  依ッテ自由ヲ拘束セラルヽガ爲ニ投票ガ出
  來ナイノデアリマス、況ヤ豫防法ノ規定ス
  ル所、消毒方法ヲ施行致シマスレバ、其投
  票ハ絕對ニ安全ニ行ハレルノデアリマス、
  而モ是等ノ法律ニ依シテ自由ヲ拘束セラル
  ル所ノ人ニハ例ヘバ虎列刺ノ如キ場合ニ
  於キマシテハ、一市郡ニ於テ一時ニ數千人
  又ハ數万人ノ人ガ隔離セラレルコトニ相成
  ルノデアリマス、是等ノ人〓ニ對シテ此三
  十三條ヲ適用セラレナカフタト云フコトハ、
  他ノ人とト比較ヲ致シマシテ甚ダ權衡ヲ失
  スルト考ヘルノデアリマス、是ハ或ハ當局
  ニ於テ、千慮ノ一失デアッタカモ知レマセ
  又、若シサウデナイトスルナラバ、如何ナ
  ル理由ニ依ッテ除外セラレタカト云フコト
  ヲ明白ニ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス
  〔政府委員俵孫一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=61

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• 062・俵孫一

  ○政府委員(俵孫一君)　此不在者ノ投票ニ
  付キマシテハ、如何ニ其範圍ヲ限定スルカ
  ト云フコトハ、是ハ極メテムヅカシキ問題
  デア。ッタノデアリマス、只今御話ノ傳染病
  豫防法竝ニ船舶檢疫法ニ依テ隔離シタ者ハ、
  如何ニモ御說ノ通リニ、是モ矢張不在投票
  者ノ中ニ算ヘテ宜イト云フ御議論モ、是一
  決シテ私ハ理由ナキコトヽハ考ヘマセヌ、
  併シ是ト同樣十者ハ他ニ幾ラモアルノデア
  リマス、ソレ故ニドノ程度ニ止メルカト云
  フコトが最モ困難デアリマシテ、御承知ノ
  通リニ不在投票ト云フコトハ今回ガ初メテ
  デアリマス、初メテノ試ミデアリマスカラ
  澤山アリマスル中ノ最モ緊切重要ナルモノ
  ヲ、先ヅ以テ此不在者投票ノ勅令ノ中ニ規
  定シタノデアリマス、其他ノ者ニ付キマシ
  テハ實地施行ノ曉ニ於キマシテ、更ニ必
  要ニ應ジテソレ〓〓是ガ救濟ヲ致ス積リデ
  アルノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=62

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• 063・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　是ニテ質疑ハ終
  了致シマシタ、日程第十四、右各案ノ審查
  ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第十四右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委
  員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=63

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• 064・井本常作

  ○井本常作君　各案ヲ一括シテ議長指名特
  ニ十八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=64

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• 065・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=65

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• 066・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日
  程第十五、暴力行爲等處罰ニ關スル法律案
  ノ一讀會ヲ開キマス-江木司法大臣
  第十五暴力行爲等處罰ニ關スル法律
  案(政府提出)第一讀會
  暴力行爲等處罰ニ關スル法律案
  第一條團體若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、團
  體若ハ多衆ヲ假装シテ威力ヲ示シ、兇
  器ヲ示シ又ハ數人共同シテ刑法第二百
  八條第一項、第二百二十二條又ハ第二
  百六十一條ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以
  下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  常習トシテ前項ニ揭クル刑法各條ノ罪
  ヲ犯シタル者ノ罰亦前項ニ同シ
  第二條財產上不正ノ利益ヲ得又ハ得シ
  ムル目的ヲ以テ前條第一項ノ方法ニ依
  リ面會ヲ强請シ又ハ强談威迫ノ行爲ヲ
  爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百圓
  以下ノ罰金ニ處ス
  常習トシテ故ナク面會ヲ强請シ又ハ强
  談威迫ノ行爲ヲ爲シタル者ノ罰亦前項
  ニ同シ
  第三條第一條第一項ノ方法ニ依リ刑法
  第百九十九條、第二百四條、第二百八
  條第一項、第二百二十二條、第二百二
  十三條、第二百三十四條、第二百六十
  條又ハ第二百六十一條ノ罪ヲ犯サシム
  ル目的ヲ以テ金品其ノ他ノ財產上ノ利
  益若ハ職務ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ
  約束ヲ爲シタル者及情ヲ知リテ供與ヲ
  受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束ヲ爲シタル
  者ハ六月以下ノ懲役又ハ五十圓以下ノ
  罰金ニ處ス
  第一條第一項ノ方法ニ依リ刑法第九十
  五條ノ罪ヲ犯サシムル目的ヲ以テ前項
  ノ行爲ヲ爲シタル者ハ六月以下ノ懲役
  若ハ禁錮又ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
  附則
  本法施行前刑法第二百八條第一項又ハ第
  二百六十一條ノ罪ヲ犯シタル者ニシテ本
  法ニ該當スルモノハ本法施行後ト雖〓訴
  アルニ非サレハ其ノ罪ヲ論セス
  〔國務大臣江木翼君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=66

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• 067・江木翼

  ○國務大臣(江木翼君)　近時〓體ノ威力等
  ヲ用ヰテ暴行、脅迫、器物ノ毀棄、又ハ面
  會强請、强談、威迫等ノ罪ヲ犯シ、或ハ兒
  器ヲ携へ、或ハ常習トシテ此種ノ犯行ヲ爲
  ス者ガアリマス、又不逞ノ徒輩ヲ利用シテ
  良民ニ迫害ヲ加フル者モ洵ニ少ナクナイノ
  デゴザイマス、面シテ彼等不逞ノ徒ハ現在
  ノ法律ノ刑ノ輕キニ慣レテ、法ヲ蔑視スル
  ノ風ガアルノミナラズ、被害者ハ時トシテ
  ハ後難ヲ恐レマシテ、告訴ヲシナイト云フ
  場合モアルノデアリマシテ、親告罪ナル暴
  行毀棄ノ罪ニ至ッテハ、訴追ヲ免レルノ例
  が甚ダ多イノデゴザイマス、又彼等ヲ利用
  スル者ニ對シマシテハ法ノ不備ナルガ爲ニ、
  之ヲ取締ルコト能ハザル場合モ又少ナクナ
  イノデアリマス、仍テ新ニ玆ニ法ヲ設ケマ
  シテ、是等ノ所爲ヲ嚴重ニ取締ルノ必要ヲ
  認メタノデゴザイマス、卽チ本案ヲ提出致
  シマシタ所以デゴザイマスルノデ、何卒御
  審議ノ上速ニ協賛ヲ與へラレンコトヲ希望
  致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=67

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• 068・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテ質
  疑ノ通告ガアリマス、是ヨリ順次之ヲ許可
  致シマス-山口政一一君
  〔山口政二君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=68

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• 069・山口政二

  ○山口政二君　只今議題トナッテ居リマス
  ル暴力行爲等處罰ニ開スル法律案ニ付キマ
  シテ、極メテ簡單ナル質疑ヲ致シマス、第
  一ハ本案ニ謂フ所ノ威力ヲ示ス團體意義竝
  ニ其範圍ヲ御伺致シタイノデアリマス、威力
  ヲ示ス團體ト申シマスルノハ、威力ヲ示ス
  コトヲ表面若クハ裏面ノ目的ト致シタル團
  體ノ意義デアルカ、又ハ威力ヲ示スコトヲ
  目的遂行ノ手段ト致ス團體ノ意義デアリマ
  スカ、ソレトモ亦目的手段共ニ正當デハアル
  ガ、或ハ外部ヨリ挑發セラレルトカ、或
  生活上ノ最小限度ノ要求ヲ貫徹致シマスル
  ガ爲ニ、已ムヲ得ズ威力ヲ行フヤウナ團體
  ヲモ本案ニ所謂威力ヲ元ス團體ト御認メニ
  ナルカ否カ、此威力ヲ示ス團體ト云フ言葉
  ノ意義竝ニ範圍ヲ明ニ致シマスルト云フコ
  トハ此法案ノ運用上極メテ必要ナル事デ
  アルト考ヘマスガ故ニ、先ヅ此點ヲ御尋致
  スノデゴザイマス、尙ホ之ニ關聯致シマシ
  テ、政府ハ此提案ヲ致スニ方ッテ、勞働運
  動トカ、小作運動、水平運動ト云フヤウナ
  正シイ目的ヲ持シタ所ノ多衆運動ヲモ、此
  法案ニ依ッテ取締ラントスル意思ヲ以テ致
  サレタルモノデアルカ否カト云フコトヲモ
  併セテ御伺致シタイノデアリマス、第二ハ
  提案ノ趣旨デゴザイマス、只今ノ御說明ニ
  依リマスルト、我國現在ノ事情ニ鑑ミテ、
  是等不逞ノ徒ハ相當重キ處罰ヲスル必要ガ
  アルト云フコトデゴザイマシタ、ンコデ私
  ガ御伺致シマスルノハ、今日ノ事情ニ於キ
  マシテ政府ノ所謂不逞ノ徒、此言葉ハ私ハ
  感服致サヌト思ヒマスガ、ソレハ別問題ト
  致シテ、所謂威力ヲ元ス團體ノ跋扈跳菜ノ
  現狀ヲ大體御伺致シタイ、又是等ノ者ニ對
  シテ現行ノ處罰法令ヲ以テ致シテハ、何故
  ニ之ヲ取締ルコトガ出來ナイノデアルカト
  云フコトモ御尋致シタイノデアリマス、尙
  ホ政府ハ相當重ク處罰スル必要ガアルト云
  フコトデアリマスガ、之ヲ此法案ニ依ッテ
  重ク處罰ヲ致サルヽナラバ、是等ノ團體ヲ
  勤減スルト云フ信念ヲ御持チニナッテ居ル
  カ否カ、又ハ勦滅スル覺悟ヲ以テ此法案ヲ
  御出シニナッテ居ルカ否カノ政府ノ信念ヲ
  御伺致シタイノデアリマス、第三ト致シマ
  シテ、此法案ニ謂フ威力ヲ元ス團體ノ發生
  原因ニ付テ御尋ヲ致シタイ、神聖ナル我ガ
  議會ノ議場ニ於キマシテモ、動モスレバ暴
  力ノ行ハレント致シマスル我國ノ現狀ニ於
  テ、是等ノ法案ヲ提出スルニ方リマシテハ
  暴力ノ行ハレル原因ヲ十分ニ政府ハ考察セ
  ラレテ居ルト考ヘルノデアリマスガ、果シ
  テ能ク御考ノ上デ提案サレタルカ否カヲ御
  尋致シタイノデアリマス、例ヘバ我國ノ〓
  育ノ現狀、〓育ノ內容ト其制度ガ果シテ是
  等暴力ノ横行ト關係ガアルカナイカドウカ、
  或ハ又今日ノ思想ノ惡化、殊ニ現代社會ノ
  病根デアリマスル生活難ノ問題ト、是等暴
  力行爲トガ無關係デアルカドウカヲ十分ニ
  政府ハ考察セラレテ居ラレルカドウカ、若
  シ是等ノ原因ヲ十分ニ考察サレテ居ラレマ
  スルナラバ、其原因ヲ除去スルコトニ付テ、
  如何ナル用意ヲ爲シテ居ラレマスルカ、若
  クハ將來如何ナル對策ヲ此法案ト併セテ講
  ゼラレルノデアリマスルカ、其點ヲモ併セ
  テ御伺致シタイノデアリマス、以上三點ニ
  亙リマシテ政府ノ御答辯ヲ求ムル次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=69

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• 070・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　江木司法大臣
  〔國務大臣江木翼君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=70

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• 071・江木翼

  ○國務大臣(江木翼君)　山口君ノ御質問ニ
  對シテ御答ヲ致シマスルガ、第一ニ威力ヲ
  示ス團體ノ意義竝ニ範圍如何、此威力ヲ示
  ス目的ヲ以テ、而シテ其目的タルヤ、暴力
  的威力ヲ施ス目的ヲ以テ生レテ居ル團體ト
  云フモノガ現存シテ居ルコトハナカラウト
  思フノデアリマス、玆ニ團體ト申シマスルノ
  多衆ガ協同シテ一ツノ集合體ヲ爲シテ
  居リマスル以上ハ、是ハ總テ〓體ト見ザル
  ヲ得ヌノデアリマス、而シテ其團體ガ其團
  體ノカヲ示シテ、サウシテ玆ニ握ゲテアル
  ヤウナ刑法ノ犯罪行爲ヲ爲スコトニ於テ、
  始メテ所謂威力團體ノ暴行行爲ナルモノガ
  成立ヲスルノデゴザイマス、隨ヒマシテ如
  何ナル團體ガ此法律ノ範圍ニ入リマスルカ
  ト云フコトヲ豫メ豫斷ヲスルト云フコトハ、
  一寸ムヅカシイト思フノデアリマス、併ナ
  ガラ今日現ニ存シテ居リマスル團體ノ中
  ニ、斯ノ如キ常習ノアル團體ト云フモノガ、
  多少見ラレナイデハナイノデアリマス
  常ニ其團體的背景ヲバ、自分ノ暴行其他曾
  迫等ノ用ニ供シテ、團體的背景ヲ以テ暴行
  脅迫ヲ爲スコトヲ、其團員ガ常習トシテ居
  ルガ如キ團體ガ、都下若クハ京都府、大阪
  府等ニ相當アリマスルコトハ、見出サレ得ル
  ト思フノデアリマス、其數ガドノ位ニナル
  カト云フガ如キコトハ又委員會等ニ於キ
  マシテ詳シク申上ゲタイト思フノデアリマ
  ス、ソレカラ勞働ナリ、小作ナリ、其他水
  平運動ナドヲ、此法律ニ依シテ取締ル意思
  ガアルカドウカ、是ハ全クサウ云フ意思ヲ
  持ノテ居ラヌノデアリマス此法律ハ御覽
  ノ通リニ威力ヲ示シテ、刑法二百八條、卽
  チ暴行或ハ器物毀棄デアルトカ、或ハ公務
  ノ執行妨害デアルトカ云フガ如キ行爲ヲ爲
  ス者ヲ取締リ、或ハ財產上不正ノ利益ヲ得、
  若クハ得シムル目的ヲ以テ是等ノ行爲ヲ爲
  シ、面會ヲ强要スル、强談威迫ヲ爲スト云
  フガ如キ行爲ヲ取締ラントスルモノデアリ
  マスルガ故ニ、此法律ノ目的トシテ、勞働
  運動テアルトカ、或ハ小作運動デアルトカ
  若クハ水平運動デアルトカ云フガ如キモノ
  ヲ取締ルト云フ目的ハ、毛頭持ッテ居ラヌ
  ノデアリマス、ソレカラ提案ノ趣旨トシテ、
  如何ナル現狀ニ在ルカト云フ點ハ、只今ザツ
  ト申上ゲマシタガ、尙ホ詳シキ事ハ、各府
  縣ニ亙リマスル統計等ガ出來テ居リマスカ
  ラ、相成ベクハ委員會ニ於テ說明スルコト
  ニ御許シヲ得タイト思フノデアリマス、唯こ
  此法律ガアルナラバ、直ニ之ヲ以テ絕滅
  ヲ期シ得ルト思フカトー云フヤウナ御趣意ガ
  アッタノデアリマスルガ、現在暴行ニ致シ
  マシテモ、其程度ガ傷害ニ至ラザルモノ、
  或ハ器物ノ毀棄ト云フガ如キモノハ、親告
  罪ニナッテ居ルノデアリマス、暴行ニシテ
  負傷-殺傷ニ及プモノハ、固ヨリ是ハ親
  告ヲ須ヰマセヌノデアリマスケレドモ、程
  度ノ輕キモノニ依リマシテハ親告罪ニナッ
  テ居ル、器物毀棄亦然リ、斯ノ如キ場合ニ
  於キマシテ、親告ト云フコトガ〓シテ少ナ
  イノデアリマス、又此少ナイノヲ好機ト致
  シマシテ、隨分犯罪ノ行ハレマスル事情ト
  云フモノハ、必ズヤ山口君ニ於テモ御認メ
  下サルコトヽ思フノデアリマス、卽チ刑法
  ノ觀〓罪ニシテ居ル部分、及此刑法ノ刑ハ
  輕キニ失スルト云フ點ト云フガ如キモノニ
  對シマシテハ、相富ノ此情狀ノ重キモノニ對
  シテハ、卽チ其手段トシテ威力ヲ示ス、兇
  器ヲ示ス、或ハ數人協同シテヤルト云フガ
  如キ性質ノモノニ對シマシテハ、刑法ノ罪
  ヨリモ刑ヲ重クスルト云フ手段ヲ以テ之ヲ
  律スルト云フコトガ、此行爲ヲ稍〓少ナクニ
  スルコトニ於テ大ニ效果ガアルモノト認ム
  ルノデアリマス、固ヨリ之ヲ施行シテ見マ
  セヌケレバ、是ガ絕滅サルヽモノデアルカド
  ウカト云フコトハ、今ヨリ豫斷ハ出來マセヌ
  ノデアリマスルガ、此簡單ナル法條デハゴ
  ザイマスルガ、是ガ出來マスルニ於キマシ
  テハ非常ニ效果ガアルモノデアラウト認
  ムルノデアリマス、ソレカラ第三ニ、發生
  ノ原因、此發生ノ原因モ、只今申上ゲマシ
  タ如ク、或ハ現行刑法ノ罪ノ輕キ點、親告
  罪デナイ點、其他各種ノ理由ニ依リマシテ、
  斯ノ如キ犯罪ガ頻發スルト云フコトモ一ツ
  ノ原因デゴザイマセウガ、同時ニ御述ベノ
  如ク所謂生活ノ脅威ト云フモノモ、固ヨリ
  一般的原因ヲ爲シテ居ルモノデアラウカト
  認ムルノデアリマス、之ニ對シマシテハ
  全體ニ所謂社會政策ト云フモノヲ徹底的ニ
  行フト云フコトガ、最モ總テノ犯罪ニ對シ
  マシテ之ヲ尠ナカラシムル所デアラウト思
  フノデアリマスルガ、是ハ此會期中屢〓各
  方面ヨリモ說明サレテ居ルノデゴザイマシ
  テ、大體山口君ニ於テモ仰想像デモアリマ
  スルシ、御諒解ニモナッテ居ルコトヽ思フ
  ノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=71

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• 072・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　篠原和市君
  〔篠原和市君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=72

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• 073・篠原和市

  ○篠原和市君　只今司法大臣江木君ノ御答
  辯ヲ伺ヒマシタガ、徹底シナイ點ガアリマ
  スカラ、一二伺ヒタイノデアル、先ヅ第一
  ニ、此本法ニ定メタル暴刀行爲ト云フコト
  ハドウ云フコトヲ暴力行爲ト定メテ居ル
  ノデアルカ、此意義ト性質、範圍內容、ド
  レダケノ高サト、ドレダケノ深サノモノガ
  暴力行爲デアルカ、此點ヲ先ヅ以テ明確ニ
  シテ置カナケレバナラナイ、其次ニハ小
  作爭議及水平社ノ問題ニ付テハ本法ニハ
  觸レナイ、斯ウ云フ江木君ノ御答辯デアリ
  マスル、シテ見マスルト、大體ニ於テ暴力
  ヲ振ハレル者ハ吾々人類社會ノ生活ニ於
  テ、最モ個人主義ノ人間カ、或ハ手取早ク
  申シマスト、手癖ノ惡イ人間カ、此共存共
  榮ノ社會生活ヲ害スル、斯ウ云フヤウナ者
  ガ偶〓、暴力ニ觸レルヤウニ思シテ居ル、シテ
  見マスト、暴力モ場合ニ依ッテハ正義ノ一
  部ノ發露デアルト思ヒマスルカラ、奬勵ヲ
  スル譯デハアリマセヌガ、必シモ暴力ヲ全
  然阻止スル必要ハ無カラウト思ヒマス、ト
  申シマスルノハ、法律的ニ言フノデアリマ
  シテ、現ニ刑法ニ於テ澤山デアル、本法ノ
  規定ニ依リマスルト、刑法ノ二百八條、二
  百二十二條、二百六十一條、是等ヲ綜合シ
  夕其上ヘ持ッテ行ッテ、三箇年ニシヨウト云
  フノデアルガ、一箇年モ牢へ打込メバ澤山
  デアル、此點ニ關シテ政府ハ何故ニ三箇年
  ニシタカ、此點ヲ伺ヒタイノデアル、モウ
  一ツハ暴力ハ現刑法ニ依リマスルト云フ
  ト此暴行ヲ受ケマシテモ親告罪デアル、
  早イ話ガ一ツ毆ラレテモ默シテ引込ンデ居
  ル、隨テ此件數ハ極メテ少イ、斯ウ云フ大
  臣ノ答辯デアリマスルガ、毆ラレテ引込ン
  デ居ル位ノ奴ハ、結局自己ノ良心ニ反省シ
  テ惡カッタト斯ウ云フ風ニ思ッテ居ルノデ
  ハナイカ、是等ノ點ヲ特ニ伺ヒタイノデア
  リマスル、先ヅ此點ヲ伺ノテ、ソレカラ順
  ニ伺ヒマス(拍手)
  〔國務大臣江木翼君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=73

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• 074・江木翼

  ○國務大臣(江木翼君)　篠原君ノ御尋デゴ
  ザイマスル暴力行爲トハ何ゾヤ、此法律ノ
  案文ハ御覽ニナンタコトヽ思ヒマスガ、第
  一條カラ第三條マデノ中ニ、暴力行爲ト云
  フ文字ハ使シテ居ラヌノデアリマス、暴力
  行爲ト此處二標題ニ掲ゲマシタノハ、威力
  ヲ示シ、兇器ヲ示シ、數人共同シテ、サウ
  シテ二百八條ノ暴行デアリマスルトカ、或
  ハ器物ヲ毀棄スルト云フガ如キ行爲ヲ爲ス
  ノヲ稱シテ暴力行爲ト申シタ譯ナノデアリ
  マスカラ、左樣ニ御承知ヲ願ヒタイノデア
  リマス、ソレカラ第二、暴力ハ時トシテハ
  獎勵ヲシテモ宜イデハナイカト云フヤウナ
  意味合ノ御言葉デアリマシタガ、司法當局
  ニ於キマシテハ如何ナル場合ニ於キマシ
  テモ、暴力行爲ハ斷ジテ獎勵スベキモノデ
  ナイト認メルノデアリマス、唯〓本案ニ示
  シタルガ如キ、多數ヲ恃ンデヤル或ハ團
  體ノ威力ニ依ノテヤル、或ハ兒器ヲ示シテヤ
  ルガ如キ暴行的行爲ナルモノハ、目的ガ達
  シ易ク、且ツ其暴行ノ效果モ擧リ易イモノ
  デアリマスルガ故ニ、隨ヒマシテ普通刑法
  ニ定メテ居リマスル刑デハ、其懲罰的若ク
  ハ豫防的ノ效果ヲ達シナイト認メマシテ、
  刑ヲ高クシタ所以ナノデアリマス、ソレデ
  御諒承ヲ願ヒマス
  〔篠原和市君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=74

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• 075・篠原和市

  ○篠原和市君　本員ハ暴力獎勵トハ申シマ
  セヌ、其意味ハ法律的ニ、現刑法デアリマ
  スレバ、一箇年デ宜シイモノヲ、之ヲ三年
  ニスル必要ガ何所ニアルカ、斯ウ言ッタノ
  デアリマスカラ、大臣ハ御聽違ヒニナッタノ
  ダラウト思フ、元來此制裁法デモサウデア
  リマスルガ、三段論法ノ法律一點張デ社會
  ノ事ガ總テ解決スルト云フ考ヲ政府ハ持ノ
  テ居ルカ、持ノテ居ナイカ、先ヅ此點ヲ伺
  ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=75

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• 076・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　質疑ハ是ニテ終
  了致シマシタ(「答辯シナイカ」ト呼フ者
  アリ)日程第十六、右議案ノ審査ヲ付託ス
  ベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第十六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
  員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=76

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• 077・井本常作

  ○井本常作君　本案ハ政府提出勞働爭議調
  停法案外二件ノ委員ト同一委員ニ併セテ付
  託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賃成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=77

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• 078・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議ハアリマセヌカ
  〔「異識ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=78

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• 079・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日
  程第十七、大正九年ニ於ケル尼港事變及「オ
  コーツク」事變ノ爲損害ヲ被リタル者ノ救価
  ニ關スル法律案ノ第一語會ヲ開キマス-
  矢吹政府委員
  第十七大正九年ニ於ケル尼港事變及
  「オコーツク」事變ノ爲損害ヲ被リタ
  ル者ノ枚恤ニ關スル汰律案(政府提
  出第一讀會
  大正九年ニ於ケル尾港事變及「オコー
  ツク」事變ノ爲損害ヲ被リタル者ノ救
  恤ニ關スル法律案
  第一條大正十一年法律第三十九號第一
  條ノ規定ニ該當シタル帝國中民ニシテ
  大正九年ニ於ケル尼港事變及「オコー
  ツク」半變ノ爲損害ヲ被リタル者ニ對
  シテハ本法ニ依リ更ニ救恤金ヲ交付
  ス
  第二條前條救恤金ノ總額ハ百万圓以內
  トス
  第三條救恤金ハ額面金額ニ依リ五分利
  付國債證券ヲ以テ之ヲ交付ス但シ二十
  五圓未滿ノ金額ハ現金ヲ以テ之ヲ交付
  ス
  第四條政府ハ前條ノ規定ニ依ル交付ニ
  必要ナル額ヲ限度トシ國債證劵ヲ發行
  スルコトヲ得
  第五條救恤金ノ交付ハ之ヲ受ケムトス
  ル者ノ申請ニ依リ救恤審査會ノ審査ヲ
  經テ主務大臣之ヲ決定ス
  技恤審査會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ
  ヲ定ム
  第六條前條第一項ノ申請ハ大正十五年
  七月三十一日迄ニ之ヲ爲スヘシ
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員男爵矢吹省三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=79

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• 080・矢吹省三

  ○政府委員(男爵矢吹省三君)　御承知ノ通
  リ大正九年ノ尼港事變ハ本邦官民ガ多數
  虐殺サレマシタ未曾有ノ悲慘事デアリマ
  ス、尙ホ其後引續キマシテ「オコーツク」方
  面ニ於ケル本邦人ノ漁場モ亦燒拂ハレ、慘
  澹タル光景ヲ呈シタノデアリマス、本件ノ
  解決ニ付キマシテハ、露國政府トノ間ニ交
  涉ヲ致シマシテ、昨年一月北京ニ於テ協定
  セラレタモノガアルノデアリマス、併ナガ
  ラ其以上ニ右被害者ノ爲ニ賠償ヲ得ルコト
  ハ列國トノ關係上、差當リ不可能ノ事ト
  認メタノデアリマス(發言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=80

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• 081・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=81

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• 082・矢吹省三

  ○政府委員(男爵矢吹省三君)(續)　然ル所
  是等被害者ハ先ニ大正十一年法律第三十
  九號ニ依リ、既ニ一度政府ヨリ救恤ヲ受ケ
  マシタガ、其窮狀ハ今尙ホ甚シイモノガア
  ルノデアリマス、而シテ政府ニ對シテ何等
  カノ方法ニ依シテ救濟ヲ得タキ旨ヲ請願シ
  來ル者ガ多數アル狀況デアリマス、他方本
  院ニ於キマシテモ、本件被害者ニ對シテ
  ハ政府ニ於テ更ニ救濟ノ方法ヲ講ゼンコ
  トノ希望ガ屢。表明セラレタノデアリマ
  ス、仍テ政府ニ於キマシテハ、本件事變ノ
  特殊ノ性質ニ鑑ミ、今囘限リ特例ト致シマ
  シテ、本件被害者ニ對シテハ大正十一年
  度ニ於ケル救恤ノ外ニ更ニ救恤ヲ爲シ、其
  窮狀ヲ幾分ナリトモ緩和救濟スルコトニ決
  シタ次第デアリマシテ、而シテ救恤金ノ總
  額ハ、財政上其他諸般ノ事情ニ依リ、百万
  圓以内ト致シマシタ、救恤審査會ヲ設ケ、
  詳細嚴密ナル調査ヲ遂ゲ、各個ノ場合ニ付
  救恤スベキ程度ヲ定ムル筈デアリマス、以
  上ノ趣旨ニ依リ本法律案ヲ提出致シマシタ
  ニ付テハ御審議ノ上、御協賛ヲ與ヘラレ
  ンコトヲ希望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=82

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• 083・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　質疑ノ通告ガア
  リマス、中村嘉壽君
  〔中村嘉壽君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=83

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• 084・中村嘉壽

  ○中村嘉壽君　只今政府ガ御提出ニナリマ
  シタ大正九年ニ於ケル尼港事變及「オコーツ
  ク」事變ノ爲損害ヲ被リタル者ノ救恤ニ關ス
  ル法律案デゴザイマスルガ、便宜ノ爲メ
  私ハ先ヅ此「オコーツク」事件ニ關シマシテ
  政府ニ質問ヲ試ミタイト思フノデゴザイマ
  ス、此事件ハ大正十年ノ議會ニ於キマシテ
  モ、政府ト議員トノ間ニ屢質質應答ガ重と
  ネラレマシテ、「オコーツク」事變ハ正ニ我
  ガ日本ノ漁業家ノ失態ニアラズシテ、非、
  露國ニ在リト云フコトガ極メテ明瞭ニナツ
  テ居ルノデゴザイマス、此事ハ既ニ政府當
  局者モ其當時ノ議會ニ於キマシテ言明サレ
  タコトデゴザイマスルガ、其後政府ハ此二
  ツノ事件ヲ連ネテ西伯利ニ於ケル事變ノ爲
  ニト云フノデ、百五十万圓ノ救恤金ヲ御出
  シニナッテ居ルノデゴザイマスルケレドモ、
  其後民間ノ被害者ハ此金デ以テ滿足スルコ
  トガ出來ズ致シマシテ、屢〓政府ニ陳情請
  願ヲ致シタヤウナ次第デゴザイマス、是ガ
  今日迄ニマダ不問ニ付セラレテ居リマシタ
  コトハ私共極メテ遺憾ニ存ジテ居ッタ次
  第デゴザイマスルガ、此際是ガ提案サレマシ
  タコトハ、少クトモ國民ガ聊カ滿足ヲ表スル
  所デゴザイマスルガ、私共此問題ニ付テ尠
  カラザル關係ヲ持ッテ居リマスル者ハマ
  ダ之ニ滿足ヲスルコトガ出來ナイコトヲ先
  ヅ此所ニ申上ゲテ見タイト思フノデゴザイ
  やっ、只今政府委員ノ御說明ニ依リマスル
  ト、之ヲ以テ恰モ御打切ニナルカノ如キ御口
  吻デゴザイマシタガ、果シテ之ヲ御打切ニ
  ナル積リデアルカト云フコトヲ、先ツ御伺
  シテ置キタイノデゴザイマス、之ヲ以テ御
  打切ニナルト云フコトニナリマスルト、國
  民ハ尠カラズ失望ヲ致スノデゴザイマス、
  ソレカラ此事件ハ御永知ノ通リ大正九年七
  月五日ニ我ガ日本ノ軍艦疾風カラ報告ガゴ
  ザイマシテ、日露漁業會社ト云フノガ漁區
  十四區、之ニ對シテ約四百十七万圓ノ損害
  ヲ受ケテ居リマス、ソレカラ其外ニ十名ノ
  個人漁業者ガ、十二箇所ノ漁區ヲ持シテ居
  リマシテ、之ヲ燒拂ハレタガ爲ニ、約三百
  十五万圓ノ損害ヲ受ケテ居ルノデアリマ
  ス、ソレニ對シマシテ政府ガ之ニ救恤ヲ與
  ヘタ所ノモノハ尼港事件ト合セマシテ百
  五十万圓ノ内ノ極メテ微々タル少額ニ過ギ
  ナイノデゴザイマス、其爲ニ之ニ關係シテ
  居リマシタ所ノ實業家十名ノ內、二人ハ既
  ニ失業致シマシテ人ノ雇人ニナリ、三名ハ
  全ク権利ヲ失シテシマヒ、五名ハ辛ウジテ漁
  業ヲ繼續シテ居ルヤウナ次第デゴザイマス
  ルガ、斯ウ云フウヤナ事ヲ今日マデ不問ニ
  致シテアッタノデゴザイマスルカラ、何卒十
  分ノ御〓究ヲ御願ヒ致シタイト思フノデゴ
  ザイマス、此事件ニ對シマシテ其當時此浦
  潮日露共同査定委員會ニ於キマシテモ、浦
  潮ノ政府ハ甚ダ遺憾デアッタ意味ヲバ表明
  シテ居リマスルシ、我國ニ於キマシテハ之
  ニ對シテ七百万圓ノ損害賠償ヲ要求シテ
  居シタノデゴザイマスル、ソレニ對シマシテ
  露國ノ政府ハ二百万圓マデハ損害ヲ受ケタ
  ノデアラウト云フコトヲ認メテ居ッタノデ
  ゴザイマスルガ、其事件ガ暫ク其儘ニ放任
  サレテ居ッタノデゴザイマス、シレデ私ハ此
  事ニ關シマシテ、露國ノ政府ハ全ク是ハ內
  政ノ關係カラ起ッテ來タ所ノ問題デアルト
  云フコトヲ、我國ノ軍艦千早ニ報告ヲシテ
  居リマス、ソレカラ又九月二十六日、閣議
  ノ決定ニ基キマシテ、大正十年ノ春ニ露國
  ニ對シマシテ、只今申上ゲマシタ七百万圓
  ヲ要求シテ、露國ハ之ヲバ二百万圓デアル
  ト主張シテ居ノタ事實ガアリ、見又租借料ヲ
  バ免除スル期間ヲバ設ケルト云フコトヲ申
  出テ居ッタノデゴザイマスルガ、此事實ハ果
  シテアッタノデアルカ、若シ是ガアッタモノ
  デアルトスルナラバ、今日迄不問ニ付スル
  コトナクシテ、今少シ立派ナ交涉ガ出來タ
  ノデハナイカト云フコトヲ私ハ感ジテ居ル
  ノデゴザイマス、ソレカラ同時ニ此事件ニ
  關シマシテ、借區料約百六十万圓ト云フ金ガ
  當時日本ノ政府ニ依ッテ特殊ノ銀行ニ供託
  ヲシテアッタノデゴザイマス、此百六十万圓
  ノ金ハ是ガ損害ヲ被ッタ所ノ人達ニ補償ス
  ル意味フモ含ンデ供託シテアッタノニモ拘ラ
  ズ、大正十三年四月マダ日露ノ間ノ國交ガ
  開ケナイ以前ニ當リマシテ、政府ハ之ヲ無
  條件ニ返シタ事實ガアルノデゴザイマス、此
  率實ニ對シマシテ尠カラズ實業家ハ失望ヲ
  シテ居ルノデゴザイマスルガ、之ヲ返シタ
  理由ハ果シテ那邊ニ在ルノカ、政府ノ御辯
  明ガ欲シイノデゴザイマス、ソレカラ此事
  件ハ全ク「ポーツマウス」條約ノ利權關係ト
  別デアリ、又尼港事件トモ全ク別種ノ問題
  デアルト云フコトハ、內外ノ人共ニ之ヲ認
  メル所デアルニモ拘ラズ、相對的ニ對露關
  係ヲバ解決ヲスルト云フ爲ニ、此百六十万
  圓ヲバ犧牲ニシタ、詰リ漁業家ヲ犧牲ニシ
  タト云フコトハ、甚ダ遺憾ニ存ズルノデゴ
  ザイマスルガ、是ハ果シテ何ノ爲ニ斯ノ如
  ク漁業家ヲバ相對的ノ犧牲ニ爲シタノデア
  ルカト云フコトヲ御伺シタイノデゴザイマ
  ス、當時此事變ニ依リマシテ百五十万
  圓ノ金ヲバ交付シタノデゴザイマスルガ、
  先程申上ゲマシタヤウニ、漁業家ニ分配シ
  タ所ノ金ガ極メテ不公平デアルヤウニ吾々
  ハ思ッテ居ルノデゴザイマス、又其當時某會
  社ニ對シマシテハ、朝鮮銀行ヲ經マシテ約
  千三百万圓ノ融通ヲ致シマシタニモ拘ラ
  ズ、十人ノ漁業家デ、而モ某會社ト殆ド同
  額ノ損失ヲ受ケタ、是等憐レナル個人ニ對シ
  マシテハ殆ド比較ニナラナイ程度ノ融通
  シカ與ヘテ居ラナイ、僅ニ此百六十万圓ノ
  金ヲバ見返リニ致シマシテ、日露漁業會社
  ヲ經テ十万圓ノ融通ヲ計ッタニ過ギナイノ
  デゴザイマス、斯ウ云フヤウナ不公平ガアツ
  タト云フコトヲ吾々ハ考ヘテ居リマスル
  ガ、果シテ斯ノ如キ不公平ハ何ガ爲ニ爲サ
  レタノデアルカト云フコトヲ伺ヒタイト思
  フノデゴザイマス、ソレカラ前ニモ申上ゲ
  マシタガ、尼港事件ト此「オコーツク」事件
  トハ全然別途ノ性質ノモノデアルニモ拘
  ラズ、之ヲ一緒クタニシテアルト云フコト
  ガ甚ダ吾々ハ感ハザルヲ得ナイノデゴザイ
  マスルガ、何ガ爲ニ一緒クタニ爲シタノデ
  アルカト云フコトヲ御伺シタイ、更ニ此問
  題ニ付キマシテハ政府ハ今後何等御交涉
  ヲ爲サル御考ハナイノカ、只今莫斯科ニ於
  キマシテ漁業條約ノ交涉中デゴザイマスル
  ガ、此會議ニ於テハ何等ノ御交涉モナイノ
  デゴザイマスカドウカト云フコトヲ御伺シ
  タイ、是ダケガ此「オコーツク」問題ニ付テ
  ノ私ノ質問デゴザイマスルガ、其次ニハ尼
  港事件ニ付テ御伺致シタイノデゴザイマ
  ス、大正九年ノ七月三日ニ現外務大臣幣原
  氏ハ、當時華盛頓ニ於キマシテ各國ニ聲明
  シテ、斯ノ如キ不祥事件ガ起ッタコトハ
  殆ド前後ニ例ヲ見ルコトガ出來ナイヤウナ
  事件デアル、極メテ殘唐ナル事件デアル、
  此爲ニ日本帝國ハ相當ナルカヲ盡サナケレ
  バナラズ、又此問題ノ解決ヲスル爲ニ、北薩
  哈連ヲ占領スルト云フコトヲ言ハレタノデ
  アリマス、而シテ長イ間此北薩哈連ノ占領
  ヲシテ居ラレマシタガ、其後色ミナ交涉ガ
  ゴザイマシテ、遂ニ日露間ノ問題モ解決ガ
  出來ルコトニナリマシテ、陸軍ハ撤兵ヲシ、
  利權會議ガゴザイマシテ利權ノ獲得ヲシタ
  ノデゴザイマスルガ、其當時露國ハ日本ニ
  對シテ色ミナ難題ヲ持チ掛ケ、何等補償ノ
  途ヲ講ズベキ義務ガナイ、相互ノ戰爭行爲
  デアッタノデアルカラ、之ニ對シテ謝罪ヲス
  ル必要モナイト云フヤウナ譯デアッタノデ
  アリマスガ、此間ノ日露交涉ニ依リマシテ
  獲得シタ所ノ利權ト云フモノハ、是ハ果シ
  テ日本ノ政府ハ賠償ノ意味デ獲得セラレタ
  ノデアルカ、ドウカト云フコトヲ御伺致シタ
  イト思フノデゴザイマス、此事件ニ必ズ因
  果關係ガアッタモノト思ヒマスガ、此因果關
  係ガアルトスルナラバ、果シテ日本政府ガ得
  マシタ所ノ利權ハ之ヲ價格ニ見積リマシテ如
  何程ノモノデアルカ、此價格ノ大小ニ依リ
  マシテ、其當時危害ヲ被シタ所ノ我ガ日本
  帝國ノ臣民ニ對シテハ、今後尙ホ何等カノ
  慰安ヲ爲サルコトガアルカドウカト云フコ
  トヲ御伺ヒ致シタイト思ヒマス、當時加藤
  子爵ハ第四十六議會ニ於キマシテ、北薩哈
  連ヲ占領シテ居ルコトハ甚ダ非デアルト云
  フヤウナ御說デゴザイマシタガ、此說ノ可
  否ハ別ト致シマシテ、加藤子爵デスラモ當
  時我日本ノ國民ガ斯ノ如キ危害ヲ受ケタニ
  付テハ道義上ノ補償竝ニ遺族ニ對スル精
  神的或ハ物質的ノ補償ヲ得ルト云フコトハ
  認メテ居ラレタカノ如ク思フノデゴザイマ
  ス、隨テ現內閣ノ諸氏ハ加藤子ノ政策ヲバ
  承繼イデ居ラレルノデゴザイマスカラ、之
  ニ補償ヲスルト云フ御考ハ十分ニ持ッテ居
  ラレルデアラウト思フノデゴザイマス、然
  ルニ只今ノ此二ツノ案ニ依リマシテ-前
  ノ補償ト今度ノ補償ニ依リマシテモ、其一
  人當リノ分配ハ極メテ少イモノデアリマ
  ス、前ノ救恤法ニ依リマシテ、一人當リ僅
  ニ一千圓宛デアル、今度ノ金ハ尙ホソレヨ
  リモ少ク、僅ニ百万圓ヲ是ダケノ人間ニ分
  配スルノデゴザイマスカラ、卽チ被害者ガ
  七百二十人ゴザイマシテ、此中軍人三百七
  十人、ソレカラ在留民ガ三百七十名、行方
  不明七八十名、斯ウ云フヤウナ人達ニ對シ
  テ、命チ一ツヲ拾テヽ僅ニ千圓宛ノ補償デ
  アル、今度合セテ五六百万圓カ幾ラカノ救恤
  金シカ出來ナイヤウナ始未デゴザイマス
  カ、之ヲ以テ此澤山ノ遺族ヲ養フノニ、勿
  論何等ノ助ケニモナラナイヤウニモ思ハレ
  ルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ僅カノ金
  ヲ以テ、其儘拾置カレルト云フコトハ吾々
  國民ニ對シテ少カラザル失望ヲ感ゼシムル
  モノデゴザイマスカラ、是ハ其儘、御打切
  ニナルノデアルカ、ドウカト云フコトヲ、
  私ハ玆ニ御伺ヲシテ、若シ御打切ニナラナ
  イノデアルナラバ、ソレハ結構デゴザイマ
  スガ、是ハ決シテ輕々ニ附セラレテハナラ
  ナイコトデアル、之ヲ輕々ニ附セラレルト
  云フコトニナルト、其累ノ及プ所極メテ大
  ナルモノガアリハシナイカト考ヘテ居ルノ
  デアリマス何レ又委員會ニ於キマシテ細
  カイ事ハ質問ヲ致ス機會ガゴザイマセウ
  ガ、十分ニ此點ヲ御辯明下サレンコトヲ御
  願ヒ致シマス(拍手)
  〔政府委員男爵矢吹省三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=84

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• 085・矢吹省三

  ○政府委員(男爵矢吹省三君)　中村君ノ御
  質問ノ第一點ノ「オコーツク」方面ノ被害地
  ニ對スル救恤モ、之ヲ以テ打切トスル考デ
  アルカドウカト云フコトデアリマシタガ、
  實ハ今回提出致シテ居リマス救恤ノ百万圓
  ト云フモノハ、全ク尼港事件竝ニ「オコー
  ツク」ニ於ケル被害事件ノ特殊ナル事情ニ
  鑑ミマシテ、考慮シタノデアリマシテ、他
  ニ之ヲ以テ例ト致スベキモノト思ハナイノ
  デアリマス、全ク特殊ノ性質ノ事件ト是ハ
  見マシテ、更ニ今囘今一度救恤ヲ致サウト云
  フ考ニナッタノデアリマス、隨テ斯ル事ヲ
  再三繰返ス考ハナイノデアリマシテ、之ヲ
  以テ打切ト致ス考デアリマス、次ニ御質問
  ノ第二點ノ過去ニ於テ露國ノ官憲ト日本ト
  ノ間ニ「オコーツク」方面ニ於ケル被害約七
  百万圓ノモノニ對シテ、露西亞ノ方デハ二
  百万圓位ナラバ、ト云フヤウナコトヲ言ッタ
  ト思フガ、左樣ナコトガアッタカドウカ、
  ト云フ御質問デアリマシタ、此事ハ地方的
  ニハサウ云フ話ガアッタカモ知レマセヌ、
  併シ露國ノ政府ト日本ノ政府トノ間ニ、斯
  ル交涉ヲ致シタコトハ勿論ナイノデアリマ
  シテ、昨年基本協約ヲスル際ニモ、金錢上
  ノ賠償ノ如キハ雙方共後日ニ讓ルトシテ決
  定致シマセヌデアリマシタ、隨テ公式ノ會
  議等ニ於テ、斯ル事ヲ露國ノ方カラ申シタ
  コトハナイノデアリマス、ソレ故ニ假ニ中
  村君ノ御耳ニ左樣ナ事ガ達シテ居クタト致シ
  マシテモ、露國ノ政府ノ言明トシテ御取上
  ゲ下サル價値ノアルモノトハ思ヒマセヌ、
  ソレカラ御質問ノ第三點ト心得マスガ、自
  由出漁者ガ任意ニ漁區ノ使用料トシテ供託
  シタ金ヲ、其儘露西亞ニ納レテ、而シテ其
  際ニ於テハ「オコーツク」方面ノ被害者ニ對
  スルコトヲ、其百六十万圓ノ內ニ於テ何等
  カノ處置ヲ執ルト云フ最初カラノ諒解デ
  アッタニモ拘ラズ、政府ハソレヲ其儘路西
  亞ノ方ニ返シタノハ何故デアルカト云フ御
  質問デアリマシタガ、實ハ百六十万圓ノ金
  ハ任意ニ日本ノ漁業者ガ露西亞ノ漁場ニ
  參リマシテ、漁業ヲ致シマシタトキニ、後
  日露西亞ノ方ニ借區料、漁場ノ使用料ヲ拂
  ハナケレバナラヌ時ガ來ルト云フコトヲ豫
  想致シマシテ、其時ノ準備ノ爲ニ積立テヽ
  アッタノデアリマス、而シテ其後露西亞ト
  ノ間ノ交涉ニ於テ、漁場ヲ使用スルコトノ
  交涉ヲ致シマシタトキニ、此從來溜メテア
  リマシタ百六十万圓ノ使用料ヲ拂ハナケレ
  バ、其後出漁スルコトニ付テノ交涉ガ困難
  デアッタノデアリマス、ソレ故ニ其預カシ
  保管シテ居リマシタ金ヲ、其儘自由出漁當
  時ノ漁區使用料トシテ露西亞ニ渡シタノデ
  アリマシテ、全ク已ムヲ得ザルニ出デタノ
  デアリマス、ソレカラ次ノ御質問ハ尼港事
  件ト此「オコーツク」方面ノ漁場ノ被害事件
  ト、イツモ一緒ニ見ラルヽノハ何故デアル
  カト云フ御質問デアリマシタガ、此兩者ハ
  時期モ似テ居リマス、殆ド同時デアリマ
  ス、又原因モ「バルチザン」ノ連中ガヤッタ
  コトデアリマシテ、又其被害ノ悲慘ナコト
  カラ申シマシテモ、類似致シテ居ルノデア
  リマス、隨テ從來カラ此兩者ヲ同樣ニ見テ
  取扱シテ參ッタノデアリマシテ、他ニ何等理
  由ガアル譯デハナイノデアリマス、ソレカ
  ラ次ノ御質問ハ、今度ノ日露漁業會議ニ於
  テ、斯ル被害民ノ損害等ヲ露西亞ニ交渉シ
  テ解決スルノ機會ガアルカドウカト云フ御
  質問デアリマシタ、是ハ今度ノ日露漁業會
  議ハ、全ク漁業ニ關スル會議デアリマシ
  テ、ノレ以外ノ事ヲ此會議ニ於テ議スル考
  ハ露西亞ニ於テモ日本ニ於テモナイノデ
  アリマス、隨ヒマシテ此度ノ漁業會議ニ於
  テ此問題ヲ決スルコトハ豫想サレナイノデ
  アリマス、ンレカラ石油或ハ石炭ノ利權ヲ
  樺太ニ於テ得タノハ、此尼港事件ノ代償ト
  シテ得タノデハナイカト云フ御質問デアリ
  マシタ、是ハ全ク左樣デハナイノデアリマ
  ス、樺太ニ於テ石油或ハ石炭ノ利權ヲ得マ
  シタコトハ、昨年結バレマシタ日露基本協
  約ノ第六條ト記憶致シマスガ、御覽ニナッタ
  ラ分リマス通リ、全ク日露ノ間ノ經濟的提
  携視善ト云フヤウナ理想抱負カラ出タコ
  トデアリマシテ、露西亞ニ於テハ尼港事
  件アルガ爲ニ斯カル利權ヲ日本ニ與ヘタト
  云フ精神デハナイノデアリマス、而シテ尼
  港事件ニ對シテハ、當時遺憾ノ意ヲ表シタ
  ト云フコトハアッタノデアリマスガ、金錢
  上ノ問題ハ同條約ノ附屬ノ議定書ニ於キマ
  シテ、將來南國政府ノ間ノ交涉ニ依シテ決
  スルト云フコトニ相成シテ居リマス、隨ヒマ
  シテ尼港事件ノ事柄ト、利權ヲ獲得ヲ致シ
  マスコトヽハ、何等因果關係ガナイト云フ
  コトヲ御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス、次ニ
  此度百万圓救恤スルコトニナルガ、ソレニ
  シロ一人當リノ貰フ金ハ大變少イト云フ仰
  セデアリマシタ、是ハ中村サンニ於テ多少
  ノ誤解ガアルカト思フノデアリマスガ、此
  度ノ救恤ハ陸海軍ノ當時悲慘事ニ遭ヒ、虐
  殺サレマシタ人ミノ遺族ニ對スル部分ハ
  入シテ居ラヌノデアリマス、全ク民間ノ人、
  先ヅ是ハ領事竝ニ領事ノ家族ト云フガ如
  キ、軍人以外ノ人ニ對スル分デアリマス、
  ソレ故ニ御考ヨリハ救恤ヲ受ケル人ノ數ガ
  少イノデアリマス、隨ヒマシテ豫想サレル
  ヨリ一人當リノ金額ハ餘計ニナルノデア
  リマス、併シ勿論十分トハ申セマイト思ヒ
  やっ、只今ノ所平均額カラ申シマスト千六
  百圓パカリニ相成ノテ居リマス、左樣側承知
  ヲ願ヒマス、大體左樣ノ御質問テアソタカ
  ト思ヒマスガ、尙ホ漏レテ居リマシタラ仰
  シヤッテ戴キタウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=85

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• 086・中村嘉壽

  ○中村嘉善君　尙ホ一點伺ヒタイト思ヒマ
  ス、簡單デゴザイマスカラ自席デ申シマ
  ス、此百万圓ノ金ノ分配ノ方法ハ「オコー
  ツク」事件ト、尼港事件トハ、ドウ云フヤ
  ウナ割合ニナッテ居ルノデゴザイマスカ、若
  シ只今定マッテ居リマセヌケレバ、審査機
  關ニ依シテ御決定ニナル御積リテゴザイマ
  スカ、其點ヲ一寸御伺致シタイ
  〔政府委員男爵矢吹省三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=86

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• 087・矢吹省三

  ○政府委員(男爵矢吹省三君)　割合ハ只今
  ノ所別ニ定マッテハ居リマセヌ、併ナガラ之
  ヲ決定致シマスノハ、救恤審査會ニ於テ決
  定致サレルノデアリマシテ、吾々只今豫想
  ハ出來マセヌデスガ、大體先例ヲ追フコト
  ニナリハセヌカト思ッテ居リマス、明言シ
  テ幾ラト云フコトヲ只今申上ゲ兼ルノデゴ
  ザイマス
  〔前田房之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=87

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• 088・前田房之助

  ○前田房之助君　私ハ只今上程サレマシタ
  ル議案ニ關聯致シマシテ、簡單ニ一箇ノ質問
  ヲ致シタイト思フノデアリマス、私ノ質問
  ハ極メテ簡單デハアリマスガ、頗ル重要ナ
  ル意義ヲ含ンデ居ルモノト解シテ居ルノデ
  アリマス、曩ニ日露兩國間ニ於ア協定サレ
  マシタル所ノ利權協約ナルモノハ只今外
  務ノ政務次官ハ、尼港事變ノ賠償ノ意味ハ
  毫モ包含サレナイト云フ御答デアッタノデ
  アリマス、併ナガラ當時莫斯科ニ於キマス
  ル所ノ利權會議ノ內容ヲ知ル者ハ、只今ノ
  政務次官ノ御答辯ハ詭辯デアラウト思フノ
  デアリマス、當時我ガ代表ガ飽迄モ尼港事
  件ノ賠償デアルト云フコトヲ主張致シタニ
  對シテ、露國ノ代表ハ答ヘテ曰ク「ヨツフェ」
  ガ東京へ行ノタトキニ、日本ノ政府ハ樺
  太ヲ二億圓デタテ吳レナイカト云フコト
  ヲ言ウタヂヤナイカ、二價圓デ買ハウト云
  フ意思ヲ表明シタデハナイカ、旣ニ日本ノ
  政府ガ樺太ヲ買フト云フ意思ヲ表明シタ以
  上ハ、賠償ノ意味ハ毫モ包含サレテ居ラナ
  イ、斯ウ云フ詰問ニ會ッタ結果、非常ニ我
  ガ代表ノ立場ハ不利益ニナッテ、已ムナク
  賠償上云フ意味ヲバ撤囘シタト云フコトヲ
  私ハ確ニ聞イテ居ルノデアリマス、此意味
  カラ致シマシテ、此日露協定ニハ賠償ノ意
  味ハ包含サレテ居ラヌガ、性質上カラ申シ
  テ、我ガ日本ノ立場カラ中シマスト云フ
  1、確ニ賠償ノ意味ガ含マレテ居ルモノト
  私ハ解釋シテ宜カラウト思フノデアリマ
  ス、其問題ハ別ト致シマスルモ、免モ角モ
  日露雨國ガ、國家間ノ條約ニテ取極メラレ
  タル此利權ノ處置ニ對シマシテハ吾々國
  民ハ深キ注意ヲ以テ刮目ヲ致シテ居ルダラ
  ウト思ヒマス、然ルニ其利權ノ大部分デア
  リマス所ノ石油會社ノ創立ニ關シマシテ、
  其內容ヲ仄聞致シマスルノニ、甚ダ不可思
  議ノ點ガアラウト思フノデアリマス、第
  ニ此北樺太石油會社ノ創立ニ關シマシテ
  ハ、今申上ゲマシタ如ク國家間ノ關係ガア
  ルニ拘ラズ、政府ハ毫モ出資ヲナサラヌト
  云フ御意思ノヤウニ承テ居ルノデアリマ
  ス、其出資ヲナサラヌト云フ理由ヲ聞キマ
  スノニ、日露協定ノ第何條デアリマシタカ
  忘レマシタガ、當業者間ニ請負ハシムルト
  云フ箇條ガアル、其箇條ニ依フテ政府ハ躊
  躇ナサッテ居ルヂヤナイカト云フ說ガアリ
  マス、併ナガラ法人ニ政府ガ出資ヲスルト
  云フコトモ毫モ差支ガナイ、此莫斯科ニ於
  ケル利權會議ノ途中ニ於テ、中里代表ノ質
  問ニ對シテ、「ヨツフェ」ハ答ヘテ曰ク、當
  業者ニ引受ケシムルヨリハ、日本政府ガ引
  受ケテ吳レル方ガ、露國ノ政府トシテハン
  レ以上ノ安心ハナイカラ、一ツ政府ガ引受
  ケテヤッテ貰ヒタイ、斯樣ナ事ヲ申述ベタト
  云フコトヲ、私ハ中里代表ヨリ直接ニ間イ
  テ居ルノデアリマス、然ラバ日露協定ニ、
  當業者ニ引受ケシムルト云フ箇條ガアリマ
  シテモ、政府ガ此法人ニ出資ヲナサルト云
  フコトハ、何等相反シテ居ラヌト思フノデ
  アリマス、私ハ此點ニ付テ先ツ以テ何ガ故
  ニ此北祥太ニ於ケル石油會社ニ對シテ出資
  ヲナサラヌノデアルカト云フコトヲ承リタ
  イノデアリマス、第二ハ承ル所ニ依リマス
  ルト、總株二十万株ノ中デ、十万株ハ北辰
  會ガ引受ケ、五万株ハ發起人ガ引受ケ、他
  ノ五万株ヲ一般ニ公募スル、斯樣ニ聞イテ
  居ルノデアリマス、果シテソレガ事實デア
  ルトスルナラバ、此國家ニ關係ヲ持ツ所ノ
  利權會社ニ對シ、悉ク民間カラ出資ヲ致シ
  テ、而モ一部ノ資本家ガ過半數ノ株ヲ持ツ
  ト云フコトニ依シテ會社ノ將來ノ經營ニ非
  常ニ弊害ガ起ルト云フヤウナ御心配ガナイ
  カドウカ、此點ヲ伺ヒタイノデアリマス、
  私ハ斯樣ニ一部ノ人達ガ過半數ヲ持タレル
  ト云フコトハ結局ハ非常ナ橫暴ヲ極メ、
  或ハ極端ニ營利ニ趨リマシテ、石油ノ國策
  ニ反スルヤウナ結果ヲ招來スルノデハナカ
  ラウカト云フコトヲ憂フルモノデアリマ
  ス、是ガ質問ノ第二點デアリマス、第三點
  ハ本年ノ三月ノ五日ニ勅令第九號ヲ以テ、
  此利權會社ニ關スル所ノ規定ガ制定サレタ
  ノデアリマスガ、其中デ第十一條ニ「每營
  業年度ニ於テ配當シ得へキ利益金額カ拂込
  資金額ニ對シ一年百分ノ十五ノ割合ヲ超過
  スルトキハ會社ハ該超過額ノ二分ノ一ヲ政
  府ニ納付スヘシ一斯樣ナ箇條ト、第七條ニ
  於キマシテ「會社ノ採取シタル石油ニ付テ
  ハ政府ハ時價ヲ標準トシ優先シテ之ヲ購入
  スルコトヲ得」斯樣ナ規定ガアルノデアリ
  マイ、斯樣ナ規定カラ判斷致シマスト、此
  石油會社ハ已ムヲ得ズ極端ナ營利政策ヲ執
  ルニ至ルデアラウト思フノデアリマス、斯
  樣一勅令ノ精神ハ、石油ノ國策ニ反スルモ
  ノト私ハ思フノデアリマス、斯ル石油國策
  ニ反スル所ノ勅令ヲ制定ナスッタト云フ意
  味ハ、私ハ政府ガ御出資ヲナサラヌカラ、
  何トカシテ國民ニ對スル手前上、政府ガ利
  益ヲ得テ置ク必要ガアルト云フ意味デ、斯
  樣ナ勅令ヲ御制定ナサッタモノト思フノデ
  アリマスガ、其結果ト致シマシテ、海軍ガ
  年來御主張ニナノテ居ル石油ノ國來ニ非常
  ニ反ンタ結果ヲ招クト思フノデアリマス、
  此點ニ付キマシテハ海市政務次官カラ、此
  勅令第九九ガ石油ノ國策ニ反スルヤウナ結
  果ヲ招來スルヤ否ヤト云フコトニ付ケ、明
  確ニ御合ヲ得タイノデアリマス、此問題ハ
  實ニ我ガ同胞ノ血ト肉トニ依シテ得メ所ノ
  代償デアサマスカラ、願クバ此議場ニ於キ
  マシテ、此石油會社ノ創立竝ニ今後ノ方針
  ニ付テ、詳細ニ御報告アランコトヲ希望ス
  ル者デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=88

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• 089・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　片岡商工大臣
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=89

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• 090・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今ノ御質問ニ
  御答ヲ申上ゲマス、今囘日露條約ノ出來マ
  シタ其結果トシテ拵ヘマスル石油會社ニ、
  政府ガ何故ニ出資シナイカ、是ガ第一問デ
  アッタト思ヒマス、是ハ御承知ノ通り條約
  ノ結果デアリマス、此日露條約、卽チ北京
  條約ニ於テ石油石炭等ニ關スル利権ハ民間
  當事者ニ讓ル、斯ウ云フコトニナンテ居ッテ、
  日本ノ政府ニ讓ルト云フコトニ約束ハナ
  テ居ラヌノデアル、是ニ於テ其條約ニ基ク
  最高ノ契約ヲ致シマスル際ニ、日本政府民
  間當業者ヨリ代表スベキ人間ヲ選ビマシテ、
  サウシテ此條約ニ當ラシメ、其結果トシテ
  當業者ト露國トノ間ニ於テ利権ノ條約ガ調
  ウテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ次第デ政
  府ガ利權ヲ引受ケテ、サウシテ會社ヲ造ル
  モノト成立ノ根本ガ違フノデアリマス、斯
  樣ナ次第デアリマスカラ、政府ガ之ニ出資
  ヲスルコトハ許サナイノデアリマス、ソレ
  カラ第二ノ御質問ハ二十萬株ノ內十萬株
  ハ一方ニ引受ケシメ、尚ホ其殘ノ十萬株ノ
  中五萬株ハ發企人ガ引受ケ、五萬林ヲ公募
  スル事ニナッテ居ルヤウデアルガ、ソレニ相違
  ナイカト云フ御尋デアリマス、是ハマダ確
  定致シテ居ルノデハゴザリマセメガ、此石油
  ノ權利ヲ今度出來マスル會社ガ買得以スノ
  デアリマス、此買得致ス爲ニ十禹株ハ從
  來ノ關係者ニ遣ルノデアル、而シテ其殘ノ
  十萬株ノ内五萬株ヲ、代表者ト今度ナッテ約
  束ヲ結ビマシタ者ガ得タイト云ン希望ヲ持
  テ居ルノデアリマスルガ、是ハ如何ニ尼港
  事件ニ直接ノ關係ハ無イニ致シマシテモ、
  彼ノ事件ガアルガ爲ニ此約束が出來ルヤウ
  ニナノタ國係ハアルト思ヒマス、ソシ故ニ
  此株式募集ニ對シマシテハ、成ベク公募株
  ヲ多カラシメント力メテ居ルノデアリマく
  ルガ、サリナガラ十萬株ハ曩ニ石油ニ關係
  ヲシテ居リマシタ者カラ買取ラナケレバ十
  リマセヌ、ソレノ代金ヲ遣ラナケレバナリ
  マセス、其代金ニ對シテ此十萬侏ヲ興ヘル
  ト云フコトデアリマスカラ、其殘ノ十萬株
  ヲ全部公募スルト云フ事ニナレバ、今回條
  約ヲ取結ンダ其代表トナッタ者ノ得ルモノ
  ガ無クナル、斯ウ云フ事ニナリマスカラ、
  彼等ノ要求ガ甚ダイ心田デハナイト思ヒマス
  ガ、成ベク此内ノ部分ヲ割イテ公募株
  ヲ多カラシムルト云フ考ヲ持ノテ居リマス、
  少クモ六万五千株位ハ民間ヨリ募集スル結
  果ニ相成ラウカト考へテ居リマス、ソレカ
  ラ第三ノ質問ハ、國策ニ對スル海軍省ニ向シ
  テノ御求メデアッタトm心ヒマスカラ、是、
  私ヨリ御答スルコトハ差控エマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=90

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• 091・前田房之助

  ○前田房之助君　極ク簡單デスカラ自席ヨ
  リ申上ゲタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=91

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• 092・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　前田房之助君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=92

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• 093・前田房之助

  ○前田房之助君　只今ノ答辯ハ私ハ滿足ガ
  出来ヌンデアリマスガ、法人ニ對シテ政府
  ガ出資ヲスルト云フコトハ何等日露條約
  ノ規定ニハ反シナイト思フノデアリマス、
  次ニ北辰會ニ從來ノ權利料トシテ約二百八
  十万圓程會社カラ出スト云フ事ニナッテ居
  リマスガ、此權利ヲ買フト云フ事柄ト株ヲ
  持タスト云フ事柄ハ、全然別個ノモノト思
  フノデアリマス、隨テ先刻申シタ如ク、
  ツノ系統ノ團體ニ過半ノ株ヲ持タシムルト
  云フコトハ、餘程今後經營上困難ナ事ガ起
  ラウト思ヒマスカラ、政府ニ於テモ然ルベ
  ク考慮セラレンコトヲ希望致シマシテ、其
  他ノ質問ハ他ノ機會ニ讓リマシテ、私ノ質
  問ハ是デ打切リマス

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• 094・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　是ニテ質問ハ終
  了致シマシタ-日程第十八、右議案ノ審
  査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ニ致シマ
  ス
  第十八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
  員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=94

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• 095・井本常作

  ○井本常作君　本案ハ議長指名九名ノ委員
  ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=95

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• 096・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=96

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• 097・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナシト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシター日
  程第十九、第二十ハ關聯セル議案ナルニ依
  リ、一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ラ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=97

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• 098・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ日程第十九、都市計畫法中改
  正法律案、日程第二十、特別都市計畫法第
  五條ノ主地區劃整理ニ伴フ〓算金及補償金
  ニ關スル法律案ノ第一語會ヲ開キマス-
  俵政府委員
  第十九都市計畫法中改正法律案政
  府提出)第一讀會
  都市計畫法中改正法律案
  都市計畫法中左ノ通改正ス
  第八條第一項中「國稅營業稅割」ヲ「營業
  收益稅割」ニ、「國稅營業稅」ヲ「營業收益
  稅」ニ改メ第四號ヲ第五號トシ第三號ノ
  次ニ左ノ一號ヲ加フ
  四特別地稅北海道及其ノ市町村ニ
  在リテハ地價千分ノ四以內、府縣
  及其ノ市町村ニ在リテハ地價千分
  五以內
  第八條第一項ノ次ニ左ノ二項ヲ加フ
  營業收益稅割ノ賦課ニ付テハ營業收益
  稅法第十條第二項ノ規定ニ依ル資本利
  子稅額ノ控除ヲ爲ササルモノヲ以テ營
  業收益稅額ト看做ス
  特別地稅ノ賦課率ハ當該年度ノ豫算ニ
  於テ定メタル田畑ニ對スル地租割ノ賦
  課率ヲ以テ算定シタル地租割額ノ當該
  田畑ノ地價ニ對スル比率ヲ超ユルコト
  ヲチナ
  附則
  本法ハ大正十五年度分ヨリ之ヲ適用ス但
  シ營業收益稅割ニ關スル改正規定ハ大正
  十六年度分ヨリ之ヲ適用ス
  營業稅法廢止法律ニ依リテ免除セラルル
  營業稅額ハ大正十五年度分國稅營業稅割
  ノ賦課ニ付テハ免除セラレサルモノト看
  做ス
  第二十特別都市計畫法第五條ノ土地
  區〓整理ニ伴フ〓算金及補償金ニ關
  スル法律案(政府提出)第一讀會
  特別都市計畫法第五條ノ土地區劃整理
  ニ伴フ〓算金及補償金ニ關スル法律案
  第一條本法ニ於テ〓算金ト稱スルハ特
  別都市計畫法第五條ノ土地區劃整理ヲ
  施行スル場合ニ於テ書地整理法第三十
  條ノ規定ニ依リ徵收シ又ハ交付スヘキ
  金錢ヲ謂フ
  第二條〓算金ヲ納付スヘキ義務アル者
  ニ對シ同一土地區劃整理施行地區內ニ
  於ケル土地ニ關スル権利ニ付特別都市
  計畫法第八條ノ補償金ノ交付スヘキ場
  合ニ於テハ整理施行者ハ徵收スヘキ〓
  算金ニ之ヲ充ツルコトヲ得但シ其ノ補
  償金カ耕地整理法第二十五條ノ規定ニ
  依リ供託スヘキモノナルトキハ其ノ補
  償金ヲ交付スヘキ土地ニ關スル權利ニ
  付徵收スヘキ〓算金ニノミ之ヲ充ツル
  コトヲ得
  第三條整理施行者ハ主務大臣ノ定ムル
  所ニ依リ徴收スヘキ〓算金ニ付利子ヲ
  附シ三年ヲ超エサル期間ニ於テ分納ス
  ルコトヲ認ムルコトヲ得
  前項ノ利子ハ之ヲ〓算金ト看做ス
  第四條整理施行者ハ〓算金交付ノ爲必
  要アルトキハ耕地整理法第三十條ノ規
  定ニ拘ラス他ノ土地區劃整理施行地區
  ニ於テ徴收シクル〓算金ヲ以テ繰替支
  辨シ又整理施行者カ行政宮廳ナルトキ
  八酒、公共團體ヲ統轄スル行故廳又ハ
  公共團體ナルトキハ其ノ公共團體ノ五
  替金ヲ以テ支辨スルコトヲ得
  整理施行者前項ノ規定ニ依リ繰替又ハ
  立替支辨シタルトキハ徵收シタル清算
  金ヲ戾人シ又ハ返還スヘシ
  第五條〓算金ニ剰餘ヲ生シタルトキハ
  其ノ剩餘金ハ整理施行者カ行政官廳ヲ
  ルトキハ國、公共團體ヲ統帖スル行政
  廳又ハ公共團體ナルトキハ其ノ公共團
  體ニ歸屬ス
  第六條土地ニ關スル權利ニ付清算金ヲ
  徵收セラレヌハ交付セラルヘキ場合ニ
  於テ其ノ權利ヲ譲渡シタルトキハ當事
  者雙方連署ヲ以テ涯滯ナク整理施行者
  ニ其ノ旨ヲ屆出ツヘシ
  前項屆出ヲ爲ササル場合ニ於テハ〓
  算金ノ徴收又ハ交付ニ關シテハ其ノ讓
  渡ハ之ヲ以テ整理施行者ニ對抗スルコ
  トヲ得ス
  土地ニ關スル椿利ニ付〓算金ヲ徵收セ
  ラレ又ハ交付セラルヘキ場合ニ於テ具
  ノ権利ノ分割譲渡ニ付第一項ノ屆出ア
  リタルトキハ警理施行者ハ遲滯ナク各
  當事者ヨリ微收スヘキ〓算金額又ハ各
  當事者ニ交付スヘキ〓算金額ヲ通知ス
  ヘシ
  第七條前條ノ規定ハ土地ニ關スル權利
  ニ付〓算金ヲ徵收セラレ又ハ交付セラ
  ルヘキ場合ニ於テ其ノ權利ノ消滅シタ
  ル場合ニ之ヲ準用ス
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員俵孫一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=98

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• 099・俵孫一

  ○政府委員(俵孫一君)　只今上程ニ相成リ
  マシタ第十九、第二十ノ兩案ニ付テ御說明
  申上ゲマス、都市計畫法中改正法律案ノ提
  案ノ理由ハ、營業稅法廢止法律及營業收益
  稅法ノ制定ニ伴ヒマシテ、都市計畫特別稅タ
  ル國稅、營業稅割ニ關スル規定ノ改正ヲ爲
  スノ必要ガアリマス、又地租條例ノ改正ニ
  依リマシテ、地價二白圓以下ノ田畑ヲ有ス
  ル自作農ヲ免稅スルノ結果、都市計畫特別
  稅ノ地租割ニ減收ヲ見マスルガ爲ニ、特別
  地稅ヲ設定スル必要ガアルノデアリマス、
  ソレ故ニ本案ヲ提出致シマシタ譯デアリマ
  ス、第二十ノ法案ニ付キマシテ、御說明申
  上ゲマス、東京及橫濱ノ復興計畫ニ於ケル
  上地區劃整理ノ施行ニ當ッテハ、所謂換地
  ハ從來ノ土地ヲ標準トシテ、之ヲ交付シマ
  シテ、換地ヲ以テ相殺ヲ爲スコト能ハザル
  場合ニ、初メテ全錢ヲ以テ〓算シナケレバ
  ナラヌコトニ相成シテ居ルノデアリマス、
  而シテ金錢ヲ以テ〓算スル、其〓算ニ付キ
  マシテハ、今次ノ區割整理ニ於テハ努メテ
  之ヲ少カラシメル方針デアリマスルケレド
  モガ、實施上ハ尙ホ已ムヲ得ズシテ換地處
  分ニ伴ヒ、〓算金ノ徵收又ハ交付ヲ要スバ
  キモノガ相當ニ上リマス見込デアリマス、
  而シテ〓算金ノ交付ハ、卽時ニ爲スノ豫定
  デアリマスルケレドモガ、其徵收ニ付キマ
  シテハ、金額如何ニ依リテハ、大震火災ノ
  創痍尙ホ癒エザル開係者ヨリ、一時ニ之ヲ
  徵收スルコトハ頗ル困難ナル事情ガアルノ
  デアリマスガ故ニ、市民ノ經濟ヲ考慮シ、
  玆ニ特別ノ立法ヲ致シマシテ、〓算金ノ徵
  收ニ付キ、整理施行者ヲシテ一定期間ノ猶
  豫ヲ求ムルヲ得セシメ、以テ市民ノ困難ヲ
  緩和スルコトヲ期スルト共ニ、其交付ニ付
  キ必要ガアル時ニハ、第一特別都市計畫法
  第八條ニ依ノテ交付スベキ補償金ヲ以テ、
  徴收スベキ〓鼻金ニ當テルノ途ヲ開キマス
  シ、第二ニハ國又ハ公共團體ノ經費ヲ以テ
  立替支辨スルノ方法ヲ設ケテ、以テ區劃整
  理ノ圓滑ナル施行ヲ圖ラント致シマスルノ
  デアリマス、是ガ本案ヲ提出スル所以デ
  アリマシテ、尙ホ本法ノ施行ニ必要ナル經
  費ハ、別途追加豫算ヲ以テ之ヲ提出致シマ
  ス次第デアリマス、就キマシテハ速ニ御審
  査ノ上デ御協賛アランコトヲ希望致シマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=99

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• 100・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ付テ質疑
  ノ通告ガアリマス-近藤達兒君
  〔近藤達兒君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=100

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• 101・近藤達兒

  ○近藤達兒君　此帝都復興ノ問題ハ、申ス
  迄モナク東京横濱ノ問題デハアリマスル
  ガ、國力ヲ擧ゲテ國民ハ一日モ早ク其達成
  ヲ望ンデ居ルノデアリマス、然ルニ今日マ
  デ遲々トシテ其事業ノ進行セザルコトハ、
  市民ハ勿論國民全般ノ遺憾ト致シテ居ル所
  デアリマス、現總理大臣兼内務大臣タル若
  視氏ハ熱心ナル此速成論者デアリ、又當局
  ノ方々モ熱心ニ其事業ニ從事致シテ居リマ
  スルガ、少シモ其成績ノ見ルベキモノガナ
  イノハ、洵ニ遺憾至極デアルノデアリマス
  (拍手)此成績ノ舉ラザルコトハ果シテ何ニ
  由ルカ、何等カ其所ニ原因ノ存スルモノガ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス、事ノ
  困難ナル事業デアルト云フコトハ、當初ヨ
  リ明白ナル事實デアリマス、然ラバ或ハ法
  制ノ上ニ於テ缺陷ガアルノデハナイカ、若
  クハ復興局職制ノ上ニ於テ不都合ガアルノ
  デハナイカ、或ハ又之ニ要スル所ノ資金ノ
  不足ニ基クノデハナイカト云フヤウナ方面
  カラ考ヘテ見マスルガ、要スルニ此問題ハ、
  一ハ當局ノ怠慢デアルト云フコトヲ申シテ
  差支ナカラウト思フノデアリマス(拍手)過
  去二年半ノ實績ニ徴シマシテモ、當局ノ聲
  明シタル事柄ハ屢〓、切ラレマシテ、東京
  市民竝ニ横濱市民ノ苦痛困憊ハ益、增大シ
  テ參ッテ居ルノデアリマス、一例ヲ擧ゲテ申
  シマスレバ、當局ニ於キマシテ、例ヘバ何
  年何月マデニ此地區ノ換地、移轉命令ヲ完
  了スルト云フヤウナコトヲ言明致シマスカ
  ラ、市民ハ之ニ一種ノ期待ヲ以テ、或ハ建
  築ヲ差控ヘ、或ハ營業ヲ差控ヘルト云フヤ
  ウナ事ヲ致シテ居ルノデアリマス、然ルニ
  其事柄ガ、一年乃至ハ三年遲ルヽト云フヤ
  ウナコトニ相成リマシテ、市民ハ尠カラザ
  ル損害ヲ被シテ居ルノデアリマス、東京市民
  ハ此國家的ノ大事業ニ對シマシテハ、或ハ
  農村振興、若クハ產業ノ發展等ニ費スベキ
  所ノ國費ヲ擧ゲテ、東京橫濱ノ爲ニ投ジ下
  サルト云フコトヲ、深ク感謝シテ居ルモノ
  デアリマス、ソレ故ニ此問題ニ對シテハ
  相當ノ理解ヲ持ノテ居ルノデアリマスガ、當
  局ノ仕事ガ遲ルヽガ爲ニ、或ハ此仕事ガ達
  成シナイノデハナイカ、若クハ中止サレル
  ノデハナイカト云フヤウナ疑ヲ起ス市民モ
  段々出テ參ノタノデアリマス、然ルニ又斯ル
  時ニ乘ジマシテ、虛僞ノ事實二立脚致シマ
  シテ、或ハ公開演說ヲ爲シ、或ハ印刷物ヲ
  配布シ、區劃整理ノ反對ヲ叫ビ、甚シキニ
  至ッテハ此問題ヲ選擧ノ具ニ供スル不德漢
  ヲ生ズルニ至ッテ居ルノデアリマス(「ノウ
  ノウ」拍手)ソレ故ニ此事業ガ長引ケバ長引
  ク程、斯ノ如キ障碍ガ·生ジテ參ル、又昨今
  ハ區割整理委員會ナルモノガ設ケラレマシ
  テ、此委員會ノ議長ナル者ガ、故ラニ委員
  會ヲ開會セズシテ、此事業ノ進捗ヲ妨グル
  ト云フヤウナ傾向ガ、實際ニ見得ラレルヤ
  ウニナッテ居ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」
  「ノウ〓〓」)斯ノ如キ有樣デアリマスカラ、
  此事業ガ遲ルレバ遲ルヽダケ市民ノ損害モ
  多ク、又事業ノ障碍モ從シテ多ク出テ參ル
  ノデアリマス(ヒヤ〓〓)ソレ故ニ當局ニ於
  カレマシテハ、是等ノ事ニ留意セラレ、斯
  ノ如キ虛構ノ事實ニ立脚シ、或ハ演說ニ、
  或ハ印刷物ニ、若クハ整理委員會ガ故ラニ
  開會セズシテ長引クト云フヤウナ事實ニ對
  シマシテハ、如何ナル方法ヲ執ラルヽ御考
  デアリマスカ、其邊ヲ伺ヒタイト思フノデ
  アリマス、又此區劃整理ノ事業ガ前申シタ
  如ク年々遲レテ參クテ居リマスガ故ニ、豫算
  ト仕事トハ一〓ニ參ラヌト云フヤウナ形ニ
  ナッテ居ルノデアリマスルガ、本年度ハ既ニ
  年度末ニ近付イテ居ルノデアリマスカラ、
  事業ノ大體及豫算ノ金額ガ何程使用サレテ
  居ルカ、其送ノ點ヲ御伺致シタイト思フノ
  デアリマス、ソレカラ只今ノ〓算金ノ問題
  デアリマスガ、此問題ハ區劃整理ヲ行フニ
  付キマシテハ、市民ノ特ニ知ラント欲スル
  所ノ問題デアリマス、私ノ聞ク所ニ依リマ
  スレバ、〓算金ノ算定ハ豫メ路線價ナルモ
  ノヲ算定致シテ置キマシテ、之ニ依フテ計算
  ヲ致スト云フコトニ承知致シテ居リマスル
  ガ、其路線價ナルモノヽ算出ノ方法ハ東京
  市、東京府、東京府農工銀行、或ハ勸業銀
  行、若クハ興業銀行等ノ算定ヲ基礎ト致シ
  マシテ、而モ震災後ニ於ケル土地ノ價格ノ
  最モ暴落シタル時ヲ根據トシテ路線價ナル
  モノヲ算出致シテ居ルヤウニ記憶致シテ居
  リマス、而シテ又一方區劃整理後ノ〓算金
  ハ區劃整理後土地ノ價格ガ增大スルモノ
  ト看做シマシテ、高イ數字ヲ見積リマシテ
  〓算スルト云フコトニナッテ居リマスカラ、
  〓算金ヲ取ラレル場合ニ當リマシテハ、高
  イ根據ニ基ク所ノ算出方法ニ依テ〓算金
  ヲ牧受セラレ、補償金ヲ貰フ場合ニハ少イ
  所ノ路線價ニ依ッテ算出セラレタル少額ナ
  ル補償金ヲ貰フヤウナ關係ニナリハセヌカ
  ト云フコトヲ、頗ル憂ヘテ居ルノデアリマ
  ス(拍手)ソレ故ニ是等ノ點ニ對シマシテモ、
  昨今市民ノ間ニ頗ル疑惑ヲ懷ク人ガ多ク
  ナッタノデアリマスカラ、是等ノ點ニ付キマ
  シテハ、明白ナル御答辯ヲ願ヒタイト思フ
  ノデアリマス(拍手)只今又内務次官ノ御說
  明ニ依リマスレバ、〓算金ノ支拂方法ハ、
  震災後大ナル打擊ヲ被シテ居ル東京、横濱市
  民デアルガ故ニ、三年間ノ猶豫ヲ致スノデ
  アルト云フコトヲ申サレマシタガ、東京市
  民竝ニ横濱市民ノ震災後ニ於ケル經濟狀態
  ハ、恐ラクハ政府當局ノ豫想シ能ハザル程
  疲弊シテ居ルノデアリマス、然ルニ僅ニ三
  年間ノ期限ヲ以テ之ヲ完納セシムルト云フ
  コトハ、頗ル慘刻ナル致方デアルト私ハ考
  ヘルノデアリマス、加之、之ニ對シテ利子
  ヲ附スルニ至リマシテハ、恰モ高利貸ト同
  一ナル方法ヲ御執リニナルヤウニ私ハ考ヘ
  ラレルノデアリマス、東京市ニ於ケル道路
  ノ利益負擔金、若クハ下水ノ利益負擔金ノ
  如キハ、十箇年ノ年賦ニナッテ居ルノデア
  リマスルカラ、政府ニ於キマシテモ是等ノ
  點ニ鑑ミテ、之ヲ十箇年ノ年賦金ニスルト
  云フ御考ハナイモノデアリマセウカ、其邊
  ヲ御伺致シタイト思フノデアリマス(拍手)
  モウ一ツ御伺致シタイノハ、第五條デアリ
  マスガ、第五條ニハ〓算金ニ剩餘ヲ生ジタ
  ル場合ヲ規定シテアルノデアリマス、此〓
  算金ニ剩餘ヲ生ジタル場合ハ行政廳又ハ公
  共團體ナルトキハ公共團體ニ歸屬ス、斯樣
  ナコトニ規定致シテ居リマスガ、今日マデ
  政府當局ノ言明スル所ニ依リマスレバ、區
  劃整理ヲ行フベキ一地區內ニ於ケル〓算金
  其地區内ニ於ケル所ノ補償金ト補償ヲ
  受クベキ人ニ之ヲ支拂ヲスルノデアルカ
  ラ、國庫ノ收入若クハ公共團體ノ收入トナ
  ルベキ所ノ〓算金ハナイト云フコトヲ言明
  シテ居シタト私ハ記憶シテ居ルノデアリマ
  ス、然ルニ之ニ依シテ見マスレバ、國家若ク
  ハ公共〓體、卽チ區劃整理ノ執行者ガ剩餘
  金ヲ收得スル規定ヲ設ケテアルノデアリマ
  スカラ、所謂今日マデ政府ガ區劃整理ヲヤッ
  テ儲ケルノデアルト云フヤウナ說ガ盛ニ行
  ハレテ居ッタノガ、玆ニ宮貝現サレルノデハナ
  イカト云フヤウナ疑ヲ懷クノデアリマス
  (拍手)是等ノ點ハ先刻申上ゲマシタ、卽チ
  補償金ノ場合ニ於テハ、震災直後ニ於ケル
  最モ下落シタ當時ノ地價ヲ根柢トシテ計算
  シ、又〓算金ノ場合ニ於テハ、區劃整理後
  ノ昂上シタル市價ヲ以テ換算シテ、多額ヲ
  市民ヨリ徵牧シ、以テ此間ノ差額ヲ益スル
  ノデハナイカト云フヤウナ疑ハ當然ニ起ル
  所デアリマス、是等ノ點ニ付キマシテ願ク
  バ明確ナル御囘答ヲ得タイト思フノデアリ
  マス(拍手)
  〔政府委員清野長太郎右登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=101

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• 102・清野長太郎

  ○政府委員(〓野長太郞君)　近藤君ノ御尋
  ニ對シテ御答ヲ申シマス、私昨年九月ニ復
  興局長官ヲ拜命致シマシタガ、只今近藤君
  ヨリ此復興事業ノ遲々トシテ居ルノハ、當
  局ノ怠慢デアルト云フ御話ガアリマシタ
  ガ、是ハ私就任ヲ致シマシテカラ昨年マデ
  ノ調査ヲ〓究シテ見マスト云フト、御承知
  ノ通リニ此換地ノ設計ヲ致シマスルニ、又其設
  計ガ-一口ニ設計ト申シマスケレドモ、所
  謂此大都會ノ土地ノ所有者以外、借地權者、
  殊ニ震災後ニ於テハ此借地權者ノ登記ノナ
  イモノガ多イ爲ニ、其申告ヲ取リマスダケ
  デモ十万以上ニモ數ガ上ノテ居リマス、前長
  官ノ時ニ其苦心ヲ致シマシタ跡ハ、一々之
  ヲ申上ゲルコトハ此處デ憚リマスガ、決シ
  テ怠慢ト云フコトデハナカッタト思フノデ
  アリマス、但シ豫定年度ヨリ申シマスレ
  バ、事業ノ遲レテ居ルト云フコトハ遺憾ナ
  ガラ事實デアリマス、併ナガラ從來ノ苦心
  ヲ致シマシタコトモ、稍と報ヒラレマシテ、
  現在ニ於キマシテハ假ニ東京ヲ例ニ取ッテ
  申上ゲマスレバ、六十六區ノ地區ニ分ケテ
  區割整理ヲ致シテ居リマスガ、位置ノ決リ
  マシタモノガ六十、既ニ面積ノ決定ヲ致シ
  マシテ、移轉命令ヲ出シ得ル迄ノ準備ノ出
  來マシタ數ガ三十九ニ上ノテ居リマスヤウ
  ナ譯デアリマス、又昨年ノ九月頃カラ此移
  轉命令ヲ法律ニ依シテ出シテ居リマス數ガ、
  月々ニ非常ニ增加ヲ致シマシテ、現在東京
  デハ約一万五千ノ移轉命令ガ出テ居リマス
  ヤウナ次第デ、從來此年度ニ關係ヲシテ申
  シマスレバ、遲レテ居ルト云フ事柄ハ遺憾
  ナガラ事實デアリマスガ、昨今ハ餘程順調
  ニ進ンデ居リマスト云フコトダケハ、御諒
  承ヲ願ヒタイト存ジマス、尙ホ此區割整理
  委員ノコトニ付キマシテハ段々御話ガア
  リマシタガ、只今ノ所デハ此區劃整理委員
  ノ方々ハ、固ヨリ千四百人ト云フ多數ノ人
  間ガ東京ニハ整理委員ニナッテ居リマスノ
  デ、一二ノ例外ガナイト云フコトハ中上ゲ
  兼ネマスガ、故意ニ此整理委員ガ區副整理
  ノ進行ヲ阻碍ヲスル、或ハ私ヲスルト云フ
  ウナ事實ハ、復興局ハ認メマセヌ、又萬
  一ニ或ハ此委員會ノ議長等ガ、故意ニ整理
  ノ仕事ニ妨害ヲ加ヘルト云フ事實ガアリマ
  スレバ、是ハ勅令ニ依リマシテ相當ナ途モ
  アリマスガ、右ノ如キ事實ハ現在毫末モナ
  イト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、ソレカ
  ラ此〓算ノコトニ關シマシテ、路線價ノ御
  質問ガアリマシタガ、是ハ詳細ニ申上ゲマ
  スルト、數字ニモ關係シテ餘程時間モ取リ
  マス故ニ、唯、簡單ニ近藤君ノ御尋ニ對シ
  テ御答ヲ申上ゲテ置キマスガ、補償ヲ致シ
  マスノハ整理前ノ平均ノ地價デ補償ヲスベ
  シト云フコトハ、御承知ノ通リ勅令ノ規定
  ニ在リマスノデ、卽チ震災前ノ平均地價ヲ
  一定ノ數額ノ上カラ割出シマシテ、サウ致
  シテ此整理前ノ地價ト云フモノヲ決メテ居
  リマス、又此整理後ノ地價ヲ殊更ニ或ハ幹
  線補助線等ガ出來ルノデ、漫リニ上ゲテ
  居ルコトハナイカト云フ御話デアリマス
  カ、決シテサウデハアリマセヌ、〓算ヲ致
  シマスノハ、理想ト致シテハ寧ロ此整理前
  ノ地價ヲ代表致シマスル此土地ノ價ヲ指數
  デ現ハシテ居リマスガ、此指數ニ最モ近付
  ケルコトガ理想デアリマス、併ナガラ色こ
  技術ノ上デサウハ參リ兼ネマス、固ヨリ此
  整理前ノ地價ト、整理後ノ地價トハ違ノテ
  居リマス、併ナガラ御話ノヤウナ事實ハ決
  シテナイノデアリマスガ、是等ハ何レ此委
  員會デ詳細ニ其事ヲ御諒水ヲ願フ積リデア
  リマスカラ、此席デハ計シク申上ゲマセヌ
  次第デアリマス、尙ホ此〓算金ノコトニ付
  キマシテ、三年ト云フコトガ酷デハナイ
  カ、斯ウ云フ御話デアリマスガ、一應至極
  御尤ノ御話デ、東京市ノ此ノ下水ハ十年ト
  云フコトニナッテ居リマスガ、ソレニ較ベ
  テ三年ハ短カ過ギル、如何ニモ下水ニ較ベ
  テハ短カ過ギルト云フコトハ事實デアリマ
  スガ、但シ申スマデモナク、所謂〓算金ハ
  政府デ徴收致シ、政府デ交付スルト云フ仕
  事ノ事務ダケハ致シマスガ、本來ノ性質ハ
  矢張此耕地整理デ〓算ヲ致シマスト同樣
  ニ、當事者ノ間ニ〓算勘定ヲ致ス筋合デ、
  之ヲ政府ニ於キマシテ特ニ此震災後ノ東京
  横濱ニ對シテ立替ヲ致シマスト云フ爲ニ之
  ヲ延シマスノデ、〓算ノ性質カラ申シマス
  レバ、下水ノ受益者ノ負擔ト云フヤウナモ
  ノトハ、性質ガ全然違ヒマス、殊ニ此三年
  ト云フコトニ致シマシタノハ、大藏省ノ財
  政計畫ノ都合モアリマスノデ、三年ト云フ
  コトニ致シマシタ次第デアリマス、尙ホ此
  利子ヲ取ル、是ハ酷デナイカト云フ御話デ
  アリマスガ、御承知ノ通リ此區劃整理ハ六
  十六ノ中デ五十一マデハ東京市ガ行ノテ居
  リマスノデ、東京市ハ矢張市債ヲ起シマシ
  テ、此立替金ニ充ツルヨリ外ハナイノデ、
  市ノ市債ノ利廻ハ矢張八分近イモノニ事實
  ナッテ居リマスノデ、是ハ已ムヲ得ズ東京
  市或ハ橫濱市ノ關係モアリマスノデ、利子
  ヲ取リマス關係ニナッテ居ル次第デアリマ
  ス、尙ホ詳細ハ委員會ノ節ニ申述ベマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=102

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• 103・近藤達兒

  ○近藤達見君　簡單デアリマスカラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=103

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• 104・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=104

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• 105・近藤達兒

  ○近藤達兒右　尙ホ一ツ御伺致シマスガ、
  此區割整理ノ問題ニ對シマシテ、最モ市民
  ノ苦痛ニ考ヘルノハ移轉料ノ問題デアリマ
  ス、其移轉料ガ近來頗ル少イト云フコト
  デ、各方面ヨリ怨嗟ノ聲ヲ聞クノデアリマ
  ス、市民ノ最モ困態シテ居ル今日、少キ移
  轉料ヲ與ヘテ之ヲ强制スルガ如キハ、市民
  ノ苦痛甚シイモノガアルト存ズルノデアリ
  マス(拍手)ソレ故ニ政府ニ於カレマシテ
  ハ、何等カ豫算ノ流用ニ依シテ移轉料ヲ增
  大スルコトノ御考ハナイデアリマセウカ、
  此點ヲ御伺致シマス
  〔政府委員〓野長太郞君登壇〕

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• 106・清野長太郎

  ○政府委員(〓野長太郞君)　御答申上ゲマ
  スガ、御水知ノ通リ移轉料ガ若シ誤ッテ少
  イト云フコトガアリマスレバ、法律ニ依リ
  マシテ司法裁判所へ訴へ得ル途ヲ法律ハ開
  イテ居リマス、ソレデ裁判所ノ方ヘ出マス
  ル關係者ガアリマス、殊ニ法律ニ依リマシテ
  通常受クベキ損害ト云フ文字ヲ法律ハ書イ
  テアリマスキリデ、私ノ方デハンレム〓皆
  關係ノ者ガ一戶々々ニ付キマシテ、サウシテ
  其家ヲ移轉スルノニ付テハ、御承知ノ通リ或
  ハ全部一時解體ヲシテ改築ヲスルノモアリ
  マスルシ、或ハ簡單ニ引ケルモノモアリマ
  ス、或ハ一部除却スルモノハ一々其見取圖
  ヲスッカリ拵ヘマシテ、新築ノ單價ヲ調べ
  テ居リマス、只今近藤君ノ御話ハ、或ハ移
  轉料ノ中デモ營業ノ補償ト云フコトデナイ
  カト云フ想像ヲ致シマスガ、是モ亦各種ノ
  業體ニ付キマシテ、各、其業體ノ如何ニ依
  リマシテ損害ヲ皆拂フコトニ致シテ居リマ
  ス、尙ホ雜作ノ移轉料、或ハ此動產ヲ運搬
  致シマス移轉料モ拂テ居リマス、只今補
  債審査會ニ懸ケテ居リマスノハ、御承知ノ
  通リ唯〓役所デ決メルト云フコトデナシ
  ニ、審査會デ一戶々々ニ付テ果シテ補償ガ
  不十分デアルカ、十分デアルカト云フコト
  ヲ審査致シテ居リマスノデ、今日迄此補償
  額ニ付キマシテ幸ニ栽判所へ出訴ノアリマ
  シタモノハ、昨今一ツアリマシタキリデ、
  サウ仰セノヤウニ不都合ナ事ハ斷ジテ致シ
  テ居テヌ積リデアリマスガ、尙ホ將來其事
  ニ付テハ一層ノ注意ヲ無論拂フ積リデアリ
  マス

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• 107・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　日程第二十一、
  右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉ヲ議
  題ト致シマス
  第二十一右各案ノ審査ヲ付託スヘキ
  委員ノ選舉

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• 108・井本常作

  ○井本常作君　本案ハ議長指名九名ノ委員
  ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=108

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• 109・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=109

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• 110・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、此場
  合暫時休憩ヲ致シマス
  午後六時三十八分休憩
  午後八時開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=110

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• 111・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　休憩前ニ引續イテ會
  議ヲ開キマス、休憩前ニ日程第二十一ノ委
  員數ヲ九名ト述ベラレタサウデアリマス
  ガ、是ハ十八名ノ誤リデアルト云フコトデ
  アリマスカラ、之ヲ訂正スルニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=111

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• 112・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイモノト認
  メマス、仍テ委員數ヲ訂正致シマス、日程
  第二十二、出版物法案ノ第一讀會ヲ開キマ
  ス、俵政府委員
  第二十二出版物法案(政府提出)
  第一讀會
  出版物法案
  出版物法目次
  第一章總則
  第二章新間紙及雜誌
  第三章普通出版物
  第四章出版物揭載事項ノ制限
  第五章行政處分
  第六章罰則
  附則
  出版物法
  第一章總則
  第一條本法ニ於テ出版物ト稱スルハ發
  賣頒布ノ目的ヲ以テ機械的又ハ化學的
  方法ニ依リ複製セラレタル文書圖畫ヲ
  謂フ
  第二條出版物ヲ分チテ左ノ三種トス
  一新聞紙一定ノ題號ヲ用ヒ七日以
  内ノ期間ヲ隔テテ時期ヲ定メ又ハ定
  メス繼續シテ發行スルモノ
  二雜誌一定ノ顕號ヲ用ヒ三月以內
  ノ期間ヲ隔テテ時期ヲ定メ又ハ定メ
  ス繼續シテ發行スルモノニシテ前號
  ニ該當セサルモノ
  三普通出版物前二號ニ該當セサル
  モノ
  新聞紙又ハ雜誌ト同一題號ヲ用ヒ臨時
  發行スル出版物ハ其ノ新間紙又ハ雜誌
  ト看做ス
  第三條本法ニ於テ發行者ト稱スルハ出
  版物ノ發賣頒布ヲ管理スル者ヲ謂フ
  第四條本法ニ於テ著作者ト稱スルハ文
  書圖畫ヲ著述シ又ハ作製スル者ヲ謂フ
  他人ノ演述ノ筆記ニ付テハ筆記者ニ於
  テ之ヲ出版物ニ掲載う又ハ揭載セシメ
  タルトキハ筆記者ヲ以テ著作者ト看做
  ス但シ演逋者ニ於テ特ニ其ノ揭載ノ承
  諾ヲ與ヘタル場合ニ於テハ演述者モ亦
  著作者タルコトヲ失ハス
  著作物ノ編纂ニ付テハ編纂者ヲ以テ著
  作者ト看做ス但シ原著作者ニ於テ特ニ
  其ノ編纂ノ承諾ヲ與ヘタル場合ニ於テ
  ハ原著作者モ亦著作者タルコトヲ失ハ
  ス
  飜譯ニ付テハ鐵譯者ヲ以テ著作者ト看
  做ス
  學校、會社、協會其ノ他ノ團體ヲ著作
  者名義トズル普通出版物ニ付テハ其ノ
  學校、會社、協會其ノ他ノ團體ヲ代表
  スル者ヲ以テ著作者ト看做ス
  第五條本法ニ於テ編輯者ト稱スルハ新
  聞紙又ハ雜誌ノ編輯ヲ管理スル者ヲ謂
  フ
  第六條官廳ニ於テ發行スル出版物第
  二十四條ニ揭クルモノヲ除ク)ニ付テ
  ハ發行ト同時ニ製本二部ヲ內務省ニ送
  付スヘシ
  第二章新聞紙及雜誌
  第七條新聞紙又ハ雜誌ヲ發行セムトス
  ルトキハ發行者ハ左ノ事項ヲ內務大臣
  ニ屆出ツヘシ
  -題號
  二時事ニ關スル事項ノ掲載ノ有無
  三發行ノ時期
  四第一回發行ノ年月日
  五發行所及印刷所ノ名稱及所在地
  六發行者及編輯者(新間紙又ハ雜誌
  ノ版ニ依リ其ノ編輯者ヲ異ニスルト
  キハ其ノ版別編輯者)ノ住所、氏名
  及年月日
  前項ノ屆出ハ文書ヲ以テシ第一回發行
  ノ日前七日目迄ニ發行所所在地ノ北海
  道廳又ハ府縣廳(東京府ニ在リテハ警
  視廳以下之ニ同シ)ニ之ヲ差出スヘシ
  第八條前條届出事項ノ變更ニ付テハ發
  行者ハ之ヲ豫知シ得ル場合ニ於テハ變
  更前豫メ、之ヲ豫知シ得サル場合ニ於テ
  ハ變更後五日以內ニ前條第二項ノ例ニ
  依リ之ヲ内務大臣ニ屆出ツヘシ
  前項ノ規定ニ依ル發行者變更ノ屆出ハ
  新ニ發行者タラムトスル者ニ於テ之ヲ
  爲シ其ノ變更前ノ屆出ニハ從前ノ發行
  者ノ連署アルコトヲ要ス
  發行者又ハ編輯者所在不明ト爲リ又ハ
  本法施行ノ地域外ニ旅行スルコト一月
  ニ及フトキハ發行者又ハ編輯者ハ變更
  セラレタルモノト看做ス
  第九條左ニ揭クル者ハ新聞紙又ハ雜誌
  ノ發行者又ハ編輯者タルコトヲ得ス
  本法施行ノ地域內ニ住所ヲ有セサ
  ル者
  二陸海軍人ニシテ現役中ノ者(未タ
  入營セサル者及歸休中ノ者ヲ除ク)
  又ハ戰時若バ事變ニ際シ召集中ノ者
  三未成年者、禁治產者又ハ準禁治產
  者
  四禁錮以上ノ刑ノ執行中ノ者
  第十條時事ニ關スル事項ヲ掲載スル新
  間紙又ハ雜誌ノ發行者ハ其ノ發行前保
  證トシテ新聞紙ニ在リテハ左ノ金額、
  雜誌ニ在リテハ其ノ半額ヲ發行所所在
  地ノ北海道廳又ハ府縣廳ニ納ムヘシ
  東京市大阪市及其ノ市外三里以
  內ノ地ニ於ナハ二千圖
  二人口七萬以上ノ市及其ノ市外一里
  以内ノ地ニ於テハ千圓
  三其ノ他ノ地方ニ於テハ五百圓
  前項ノ保證金ハ命令ヲ以テ定ムル種類
  ノ有價證劵ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
  第十一條保證金ニ對スル權利義務ハ發
  行者變更ノ場合ニ於テハ新發行者之ヲ
  承繼ス
  第十二條保證金ハ發行ヲ廢止シタルト
  キニ非サレハ其ノ還付ヲ請求シ又ハ其
  ノ債權ヲ讓渡スルコトヲ得ス但シ國稅
  徴收法及之ヲ準用スル法令ヲ通用シ又
  ハ新聞紙若ハ雜誌ニ揭載シタル事項ニ
  基ク罪ニ因ル損害賠償ノ判決ヲ執行ス
  ルコトヲ妨ケス
  第十三條保證金ヲ納ムル新聞紙又ハ雜
  誌ノ發行者又ハ編輯者カ其ノ納付スヘ
  キ罰金、科料又ハ刑事訴訟費用ノ確定
  ノ日ヨリ十日以内ニ之ヲ完納セサルト
  キハ檢事又ハ檢察官ハ保證金ヲ以テ之
  ニ充ツルコトヲ得
  第十四條保證金ニ關額ヲ生シタルトキ
  ハ地方長官(東京府ニ在リテハ警視總
  監以下之ニ同シ)ハ之ヲ其ノ新間紙又
  ハ雜誌ノ發行者ニ通知スヘシ
  發行者前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ其
  ノ日ヨリ七日以內ニ保證金ノ闕額ヲ塡
  補スヘシ
  第十五條新聞紙又ハ雜誌ノ發行ヲ廢止
  シタルトキハ發行者ハ遲滯ナク第七條
  第二項ノ例ニ依リ其ノ旨ヲ内務大臣ニ
  屆出ツヘシ
  新聞紙又ハ錐誌ハ其ノ発行ノ期日ヲ經
  過スルモ之ヲ發行セサルコト新聞紙ニ
  在リテハ二月、雜誌ニ在リテハ四月ニ
  及フトキハ其ノ發行ヲ廢止シタルモノ
  ト看做ス
  第十六條新聞紙又ハ雜誌ノ印刷所ハ之
  ヲ本法施行ノ地域外ニ設クルコトヲ得
  ス
  第十七條新聞紙又ハ雜誌ニハ發行者及
  編輯者ノ氏名、發行所及印刷所ノ名稱
  及所在地竝發行ノ年月日ヲ記載スヘシ
  第十八條新間紙又ハ雜誌ノ發行者ハ新
  聞紙ニ在リテハ發行ト同時ニ、雜誌ニ
  在リテハ發行前日迄ニ内務省ニ二部、
  發行所所在地ノ北海道廳又ハ府縣應、
  地方裁判所儉事局及區裁判所檢事局ニ
  各一部ヲ納ムヘシ
  同一號ノ新間紙又ハ雜誌ニシテ其ノ内
  容ヲ異ニスルモノニ付テハ其ノ發行ノ
  都度前項ノ手續ヲ爲スヘシ
  第十九條新聞紙又ハ雜誌ニ揭載シタル
  事項ニ付其ノ事項ニ關スル本人又ハ直
  接關係者ヨリ正誤ノ請求又ハ正誤書若
  ハ辯駁書ノ掲載ノ請求アリタルトキハ
  其ノ請求ヲ受ケタル後日刊ノ新聞紙ニ
  在リテハ第三回迄、其ノ他ノ新聞紙又
  ハ雅誌ニ在リテハ第二囘迄ノ發行ノ新
  聞紙又ハ雜誌ニ於テ正誤ヲ爲シ又ハ正誤
  書若ハ辯駁書ノ全文ヲ掲載スヘシ但シ
  正誤若ハ辯駁ノ趣旨法令ニ違反スルト
  キ、請求者ノ住所及氏名ヲ明記セサルト
  キ又ハ原文掲載ノ日ヨリ六月ヲ經過シタ
  ル後請求アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
  正誤又ハ正誤書若ハ辯駁書ノ掲載ハ原
  文ノ掲載セラレタルト同樣ノ場所ニ於
  テシ且原文ニ於テ主トシテ用ヒラレタ
  ルト同大ノ活字ヲ用フヘシ
  正誤書又ハ辯駁書ノ字數原文ノ宇數ヲ
  超過シタルトキハ其ノ超過シタル字數
  ニ付發行者ノ定メタル普通廣告料ト同
  一ノ料金ヲ請求スルコトヲ得
  第二十條官報、新聞紙又ハ雜誌ヨリ轉
  載シ又ハ抄錄シタル事項ニシテ官報、
  新聞紙又ハ雜誌ニ於テ正誤ヲ爲シ又ハ
  正誤書若ハ辯駁書ヲ掲載シタルトキハ
  前條第一項ノ請求ナシト雖モ其ノ官報、
  新紙聞又ハ雑誌ヲ得タル後前條ノ例ニ
  依リ正誤ヲ爲シ又ハ正誤書若ハ辯駁書
  ヲ掲載スヘシ但シ前條第三項ノ規定ハ
  之ヲ適用スルノ限ニ在ラス
  第三章普通出版物
  第二十一條普通出版物ヲ發行セムトス
  ルトキハ發行者ハ到達ニ要スヘキ日數
  ヲ除キ發行ノ日前三日目迄ニ製本二部
  ヲ添へ之ヲ內務大臣ニ屆出ツヘシ改訂
  增減シテ普通出版物ヲ發行セムトスル
  トキ亦同シ
  前項ノ屆出ハ著作者ノ連署シタル文書
  ヲ以テ之ヲ爲スヘシ但シ著作者死亡其
  ノ他ノ事由ニ因リ連署スルコト能ハサ
  ルトキ又ハ著作者カ其ノ著作權ヲ譲渡
  シタルトキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
  第二十二條普通出版物ハ著作權者ヲ除
  クノ外其ノ販賣ヲ以テ營業ト爲ス者ニ
  非サレハ之ヲ發行スルコトヲ得ス
  第二十三條普通出版物ニハ其ノ末尾ニ
  發行者ノ住所及氏名、發行所及印刷所
  ノ名稱及所在地竝發行ノ年月日ヲ記載
  スヘシ
  第二十四條書簡、定款、會則、事業報
  〓、目錄、引札、張札、番附、諸種ノ
  用紙、證書ノ類及寫眞ニ付テハ前三條
  ノ規定ヲ適用セス
  第四章出版物掲載事項ノ制限
  第二十五條出版物ニハ左ノ事項ヲ掲載
  スルコトヲ得ス
  -皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆スル事項
  二國體ヲ變革セムトスル事項
  三憲法上ノ政治組織ノ大網又ハ私有
  財產制度ヲ不法ニ變革セムトスル事
  項
  四軍事又ハ外交ノ機密ニ關シ帝國ノ
  利益ヲ害スル事項
  五犯罪ヲ煽動シ若ハ曲庇シ又ハ刑事
  被告人若ハ被疑者ヲ賞恤シ若ハ陷害
  スル事項
  六虚僞又ハ誇大ノ事項ニシテ社會ノ
  不安ヲ惹起スヘキモノ
  七亂倫、猥褻、殘忍其ノ他善良ノ風
  俗ヲ害スル事項
  第二十六條出版物ニハ公判開廷前ニ於
  テ刑事事件ノ訴訟ニ關スル書類ノ內容
  ヲ揭載シ又ハ公開ノ停メタル訴訟ノ辯
  論ヲ掲載スルコトヲ得ス
  第二十七條戰時、事變其ノ他特ニ必要
  アル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依
  リ軍事又ハ外交ニ關スル事項ヲ出版物
  ニ揭載スルコトヲ禁止シ又ハ制限スル
  コトヲ得
  第二十八條內務大臣ハ治安維持上重大
  ナル影響ヲ及ホスノ虞アル事件ニ關シ
  特ニ事項ヲ指示シテ之ヲ新聞紙又ハ雜
  誌ニ揭載スルコトヲ禁止シ又ハ制限ス
  ルコトヲ得
  第二十九條陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ軍
  事上ノ秘密ニ關シ特ニ事項ヲ指〓シテ
  之ヲ新聞紙又ハ雜誌ニ掲載スルコトヲ
  禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
  第三十條外務大臣ハ外交上ノ祕密ニ關
  シ特ニ事項ヲ指而シテ之ヲ新間紙又ハ
  雜誌ニ揭載スルコトヲ禁止シ又ハ制限
  スルコトヲ得
  第三十一條檢事又ハ檢察官ハ捜査中又
  ハ豫審中ノ事件ニ關シ特ニ事項ヲ指而
  シテ之ヲ新聞紙又ハ雜誌ニ揭載スルコ
  トヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
  第五章行政處分
  第三十二條第七條若ハ第八條ノ屆出ヲ
  爲サス若ハ虛僞ノ屆出ヲ爲シ又ハ第十
  條第一項若ハ第十四條第二項ノ規定ニ
  違反シテ新聞紙又ハ雜誌ヲ發行シタル
  トキハ正當ノ屆出ヲ爲シ又ハ保證金ヲ
  納メ若ハ塡補スル迄地方長官ハ其ノ發
  行ヲ差止ムルコトヲ得
  第三十三條内務大臣ハ第二十五條ニ揭
  クル事項又ハ第二十七條若ハ第二十八
  條ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反ス
  ル事項ヲ出版物ニ揭載シタリト認ムル
  トキハ其ノ事項ヲ揭載シタル部分ヲ指
  摘シテ(但シ已ムヲ得サル場合ニ於テ
  ハ指摘セサルコトヲ得)其ノ出版物ノ
  發賣頒布ヲ禁止シ必要アル場合ニ於テ
  ハ之ヲ差押フルコトヲ得
  内務大臣ハ前項ノ規定ニ依リ差押ヘタ
  ル出版物ニ付發行者ノ請永アルトキハ
  前項ノ事項ヲ揭載シタル部分ヲ除キ其
  ノ差押ヲ解除シテ之ヲ還付スルコトヲ
  得但シ之カ爲必要ナル費用ハ發行者ノ
  員擔トス
  第三十四條本法施行ノ地域外ニ於テ發
  行スル新聞紙又ハ雜誌ニ對シ一年以內
  ニ二回以上前條第一項ノ處分ヲ爲シタ
  ルトキハ內務大臣ハ其ノ新聞紙又ハ雜
  誌ヲ本法施行ノ地域內ニ輸入シ又ハ移
  人スルコトヲ禁止スルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ禁止セラレタル新聞
  紙又ハ雜誌ヲ輸入シ又ハ移入シタルト
  キハ地方長官ハ之ヲ差押フルコトヲ得
  第三十五條第五十五條第一項ノ規定ニ
  依ル禁止ニ違反シテ新聞紙又ハ雜誌ヲ
  發行シタルトキハ地方長官ハ之ヲ差押
  フルコトヲ得
  第三十六條内務大臣ハ普通出版物ヲ差
  押フル場合ニ於テ必要アルトキハ其ノ
  原版ヲ差押フルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ差押へタル原版ニ付
  テハ第三十三條第二項ノ規定ヲ準用ス
  第三十七條本法ニ依リ差押ヘタル出版
  物又ハ原版ニシテ一年以上其ノ差押ヲ
  解除セラレサルトキハ差押ヲ執行シタ
  ル官廳ニ於テ之ヲ處分スルコトヲ得
  第六章罰則
  第三十八條第七條ノ屆出ヲ爲サスシテ
  新聞紙又ハ雜誌ヲ發行シタルトキハ發
  行者ヲ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  第三十九條第九條各號ノ一ニ該當スル
  者新聞紙又ハ雜誌ヲ發行シ又ハ編輯シ
  タルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  第四十條第十六條ノ規定ニ違反シタル
  トキハ發行者ヲ五百圓以下ノ罰金ニ處
  ス
  第四十一條第十七條又ハ第二十三條ノ
  規定ニ違反シテ記載ヲ爲サス又ハ虛偽
  ノ記載ヲ爲シタルトキハ發行者ヲ百圓
  以下ノ罰金又ハ科斜ニ處ス
  第四十二條第十八條又ハ第二十一條ノ
  規定ニ違反シテ出版物ノ納本ヲ爲サス
  又ハ之ヲ怠リタルトキハ發行者ヲ三百
  圓以下ノ罰金ニ處ス
  第四十三條第十九條第一項又ハ第二項
  ノ規定ニ違反シタルトキハ編輯者ヲ三
  百圓以下ノ罰金ニ處ス
  第二十條ノ規定ニ違反シタルトキハ編
  輯者ヲ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
  第四十四條第二十一條ノ屆出ヲ爲サス
  又ハ虛僞ノ屆出ヲ爲シテ普通出版物ヲ
  發行シタルトキハ發行者ヲ五百圓以下
  ノ罰金ニ處ス
  第四十五條第二十二條ノ規定ニ違反シ
  タル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
  第四十六條第二十五條第一號又ハ第二
  號ニ該當スル事項ヲ出版物ニ揭載シタ
  ルトキハ發行者、編輯者及著作者ヲ三
  年以下ノ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ
  處ス
  第四十七條第二十五條第三號又ハ第四
  號ニ該當スル事項ヲ出版物ニ掲載シタ
  ルトキハ發行者、編輯者及著作者新
  聞紙又ハ雜誌ニ在リテハ其ノ揭載事項
  ニ署名シタル著作者以下之ニ同シ)ヲ
  一年以下ノ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ
  處ス
  第四十八條第二十五條第五號乃至第七
  號ニ該當スル事項ヲ出版物ニ掲載シタ
  ルトキ又ハ第二十六條ノ規定ニ違反シ
  タルトキハ發行者、編輯者及著作者ヲ
  六月以下ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金
  ニ處ス
  第四十九條第二十七條ノ規定ニ依ル禁
  止又ハ制限ニ違反シタルトキハ發行
  者、編輯者及著作者ヲ年以下ノ禁錮
  又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
  第五十條第二十八條乃至第三十一條ノ
  規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反シタル
  トキハ發行者及編輯者ヲ六月以下ノ禁
  錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  第五十一條第三十二條ノ規定ニ依ル差
  止命令ニ違反シテ新聞紙又ハ雜誌ヲ發
  行シタルトキハ發行者ヲ五百圓以下ノ
  罰金ニ處ス
  第五十二條第三十三條第一項ノ規定ニ
  依ル禁止ニ違反シタルトキハ發行者ヲ
  一年以下ノ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ
  處ス情ヲ知リテ其ノ出版物ヲ發賣頒布
  シタル者ハ六月以下ノ禁錮又ハ五百圓
  以下ノ罰金ニ處ス
  第三十四條第一項ノ規定ニ依ル禁止ニ
  違反シタル者及情ヲ知リテ其ノ出版物
  ヲ輸入シ、移人シ又ハ發賣頒布シタル
  者ハ前項ニ準シ之ヲ處罰ス
  第五十三條第三十三條第一項、第三十
  四條第二項、第三十五藤又ハ第三十六
  條第一項ノ規定ニ依ル差押ノ執行ヲ妨
  害シタル者ハ六月以下ノ禁錮又ハ五百
  圓以下ノ罰金ニ處ス
  第五十四條出版物ニ揭載シタル事項ニ
  付名譽ニ對スル罪ノ公訴ノ提起アリタ
  ル場合ニ於テ其ノ私行ニ沙ルモノヲ除
  ウノ外被告人ニ於テ其ノ事實ナルコト
  及其ノ掲載カ惡意ニ出テス専ラ公益ノ
  爲ニシタルモノナルコトヲ證明シ得タ
  ルトキハ其ノ行爲ヲ罰セス公訴ニ關聯
  スル損害賠償ノ訴ニ對シテハ其ノ義務
  ヲ免ル
  第五十五條新聞紙又ハ雜誌ニ揭〓シタ
  ル事項ニ付第四十六條ノ規定ニ依リ處
  罰スル場合ニ於テ裁判所ハ其ノ新間紙
  又ハ雜誌ノ發行ヲ禁止スルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依ル禁止ニ違反シタルト
  キハ發行者ヲ二年以下ノ禁錮又ハ二千
  圓以下ノ罰金ニ處ス情ヲ知リテ其ノ新
  間紙又ハ雜誌ヲ發賣頒布シタル者ハ六
  月以下ノ禁鋼又ハ五百圓以下ノ罰金ニ
  處ス
  第五十六條本法ニ揭クル罰ニハ刑法併
  合罪ノ規定ヲ適用セス
  第五十七條本法ニ掲クル罪ノ時效ハ一
  年ヲ經過スルニ因リテ完成ス
  第四十六條乃至第五十條ノ罪ニ付テハ
  時效期間ハ發行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  附則
  第五十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  第五十九條出版法及新聞紙法ハ之ヲ廢
  止ス
  第六十條本法施行後ニ於テ發行スル出
  版物ニ付後前ノ規定ニ依リ爲シタル屆
  出ハ之ヲ本法ニ依リ爲シタル屆出ト看
  做ス
  第六十一條本法施行ノ際現ニ新聞紙法
  ニ依リ發行スル新聞紙ニシテ本法ノ新
  聞紙又ハ雜誌ニ該當スルモノハ之ヲ第
  七條ノ規定ニ依リ屆出ヲ爲シタル新聞
  紙又ハ雜誌ト看做ス
  第六十二條前二條ノ新聞紙又ハ雜誌ノ
  發行者ハ本法施行ノ日ヨリ三十日以內
  ニ第七條第一項第六號ノ事項ヲ屆出ツ
  ヘ)
  第六十三條本法施行ノ際現ニ出版法ニ
  依リ發行スル雑誌ニシテ本法ノ新紙圓
  又ハ雜誌ニ該當スルモノニ付テハ其ノ
  發行者ハ本法施行ノ日ヨリ三十日以内
  ニ第七條ノ例ニ依リ屆出ヲ爲スヘシ但
  シ第一回發行ノ年月日ヲ記載スルコト
  ヲ要セス
  第六十四條本法施行前出版法又ハ新聞
  紙法ニ依リ爲シタル處分ハ本法中之ニ
  相當スル處分ニ關スル規定アル場合ニ
  於テハ之ヲ本法ニ依リ爲シタル處分ト
  看做ス
  本法施行前新聞紙法ニ依リ爲シタル發
  行ノ禁止ハ之ヲ本法ニ依リ爲シタル發
  行ノ禁止ト看做ス
  第六十五條本法施行ノ際新聞紙又ハ維
  誌ニ付新間紙法ニ依リ納メタル保證金
  アルトキハ之ヲ本法ニ依リ納メタル保
  證金ト看做ス
  第六十六條本法施行前ニ發行シタル出
  版物ニ付テハ第十九條、第二十條及第
  四十三條ノ規定ハ之ヲ適用セス仍從前
  ノ例ニ依ル
  第六十七條本法施行前内務大臣ニ於テ
  出版法又ハ新聞紙法ニ依リ差押ヘタル
  由版物及原版ニ付テハ第三十三條第二
  項及第三十六條第二項ノ規定ハ之ヲ適
  用セス
  第六十八條他ノ法律中出版業ニシテ新
  聞紙法ニ依ルモノニ適用スル規定ハ出
  版業ニシテ本法第二章ノ規定ニ依ルモ
  ノニ之ヲ適用ス
  〔政府委員俵孫一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=112

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• 113・俵孫一

  ○政府委員(俵孫一君)　只今上程致サレマ
  シタ出版法案ハ極メテ重要ナル法案デアリ
  マスルガ爲ニ、内務大臣ガ直接御說明爲サ
  ル筈デアリマスガ、御差支ガアリマスノデ
  私ガ代ヲテ說明申上ゲマス(「怪シカラヌ」ト
  呼フ者アリ)現行出版法ハ遠ク明治二十六
  年ノ制定ニ係リマスシ、新聞紙法ハ同四十
  二年ニ於テ制定セラレタモノデアリマス、
  漸ク時勢ノ進運ニ件ハザルモノガアリマ
  スル、其改正ノ要求ハ近年益、切實ナルモ
  ノガアルヲ見ルニ至ッテ居リマス、仍テ政
  府ニ於テモ調査〓究ノ結果、此際内外ノ狀
  〓ニ鑑ミマシテ、從來ニ於ケル出版物取締
  ノ實績ニ徵シ、現行出版法及新聞紙法ノ
  全體ニ亙リ改正ヲ爲スコトヲ以テ適當ナリ
  ト認メタノデアリマス、仍テ茲ニ兩法律ニ
  代ルベキ統一シタル出版法ノ制定ヲセント
  スル次第デアリマス、以下其要項ヲ說述改
  シマス、第一ニ出版法及新聞紙法ヲ合併シ
  テ、單一ノ法律ニ統一規定致シタノデアリ
  やっ、蓋シ現在兩法律ガ竝存スル所以ハ、
  單ニ其沿革的理由-沿革的理由ニ基クベ
  キモノデアリマシテ、其以外ニハ特別ノ事
  由ヲ認メ得ザルノミナラズ、兩法律ガ其制
  定ノ時ヲ異ニ致シテ居ル結果ト致シマシ
  テ、罰則其他ノ點ニ於テ著シク不權衡ノ規
  定ガアリマス、仍テ茲ニ兩法律ヲ統一規定
  致シマシテ、且ツ現時ノ社會通念ニ基イテ、
  出版法ヲ分,テ新聞紙、雜誌及普通出版物ノ
  三種ト致シマシタ、其二者乃至三者ニ同樣
  ナル事項ニ付テ、力メテ共通ノ規定ヲ設ケ、
  以ア上記ノ缺點ヲ是正スルコトニ意ヲ用ヰ
  タノデアリマス、第二ハ出版物ニ關スル責
  任者ノ範圍ヲ發行者、編輯者及著作者ニ限
  局致シマシテ、現行法ニ於テ責任者ト爲セ
  ル印刷人竝ニ新聞紙、雜誌ノ實際編輯擔當
  者、假發行人及假編輯人ヲ除外致シマシテ、
  尙ホ新聞紙雜誌ノ持主ニ關スル一切ノ規定
  ヲ削除致シマシタ、蓋シ從來ノ取締ノ實績
  ニ徵シマシテ出版ノ實情ニ適シ、且ツ取締
  上ニ於キマシテ支障ナシト認メタカラデア
  ルノデアリマス、第三、出版物ニ揭載ヲ禁
  止スル事項ヲ列記致シマシタ、是レ實ニ今
  回改正ノ大眼目ノ一ツデアリマス、由來此
  點ハ出版法及新聞紙法改正ノ要求中ニ於キ
  マシテ、最モ重要ニシテ且ツ最モ困難ナル
  問題トシテ論議セラレタル所デアリマスル
  ガ爲二、政府ト致シマシテハ、此點ニ深甚
  ノ考慮ヲ費シマシタ結果ト致シマシテ、現
  行法ノ安寧秩序ヲ紊シ、風俗ヲ害スルト云
  フ事項ノ如キ抽象的字句ヲ排シマシテ、具
  體的ニ之ヲ七項目ニ分類列擧シテ、以テ廣
  ク社會ニ對シテ豫メ其據ルベキ所ヲ明元ス
  ルト共ニ、取締ノ適切ヲ期シマシタ次第デ
  アリマス、第四ニハ行政處分ヲ公明ニ致シ
  且ツ差押ニ依シテ受クル所ノ損害ヲ出來ル
  ダケ少クナラシムルコトヽ致シマシタノデ
  アリマス、出版物ニ對スル發賣頒布又ハ禁
  止處分ヲ爲スニ當リマシテ、常ニ原則ト致
  シマシテハ、其處分ノ原因トナリマスル事
  項ヲ指摘セザルノミナラズ、一度差押へタ
  ル出版物ト雖モ其發賣頒布ニ妨ゲナキ部分
  ニ於キマシテハ、發行者ヨリノ請求アルト
  キハ之ヲ分割シテ差押ヲ解除シ、還付スル
  ノ制度ヲ設ケタノデアリマス、第五ニハ、
  新間紙雜誌ニ關スル正誤制度ヲ改善致シタ
  ノデアリマス、現行新間紙法ニ於ケル本制
  度ノ實效ナキコトハ、由來定許ノ存スル所
  ニ顧ミマシテ、正誤支揭載ノ場合等ニ關シ
  適當ナル改正ヲ加ヘ、且ツ正誤義務違反ノ
  罪ヲ非親告罪ト致シ、以テ將來本制度ノ實
  效ヲ擧グルコトヲ期シ夕次第デアリマス、
  第六ニハ、發行禁止ノ場合ヲ局限致シマシ
  タ新間紙雜誌ニ對シマシテ最モ重大ナル
  制裁タル發行禁止ニ處セラルベキ原因ハ
  之ヲ現行法ニ比シテ著シク局限致シダノデア
  リマス、其情狀最モ重シト認ムベキ所ノ場
  合タル新聞紙雜誌ガ、事皇室ノ尊嚴ヲ目瀆
  スルノ事項、又ハ國體ヲ變革セントスル事
  項ヲ揭載シタルモノニ依ッテ處罰セラルベ
  キ二ツノ場合ノミニ限夕次第デアリマス、
  第七八罰則ニ付テ之ヲ現行法ニ比シ、其罰
  金額ヲ一樣ニ增加致シタノデアリマス、
  蓋シ今日ニ於テ現行法所定ノ如キ罰金額
  ヲ以テシマシテハ、刑罰輕キニ失シ、科
  刑ノ目的ヲ達スル能ハザルト認メタカラデ
  アルノデアリマス、然リト雖モ一面ニ於テ
  ハ新聞紙雜誌ニ關スル單純ナル手續違反ニ
  對シマシテノ現行法ノ如ク原則トシテ直
  ニ處罰ヲ以テ臨ムコトハナク、一應ハ地方
  長官ノ差止合令ヲ以テ致シマシテ、尙ホ之ニ
  違反シタル場合ニ限ノテ處罰スルコトニ致
  シタノデアリマス、以テ苛酷ニ失スルコト
  ナカランコトヲ期シタノデアリマス、尙ホ
  公訴權ノ時效ニ付キマシテハ、等シク公然
  性ヲ有スル新聞紙雑誌及普通出版物ノ三者
  ヲ通ジマシテ、一年ナル短期時效ヲ認メタ
  次第デアリマス
  〔發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=113

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• 114・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=114

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• 115・俵孫一

  ○政府委員(俵採一君)(續)　以上ハ現行法
  ニ對照シマシテ本法案ヲ··
  〔發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=115

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• 116・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=116

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• 117・俵孫一

  ○政府委員(俵孫一君)(續)　改正致シマシ
  タ理由デアリマスノデアリマス、願クハ愼
  重御審議ノ上〓御協賛アランコトヲ切ニ希
  望致シマス次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=117

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• 118・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ヨリ質疑ノ發言ヲ
  許シマス-靑木精一君
  〔靑木精一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=118

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• 119・青木精一

  ○靑木精一君　只今上程セラレマシタ出版
  法案ノ如キハ、頗ル重大ナル所ノ法律案デ
  ゴザイマシテ、殊ニ新間紙法ノ改正モ此中
  ニ含マッテ居ル所ノ案デゴザイマス、此重
  大ナル所ノ法案ノ審議ニ方リマシテ、數名
  ノ質問者ノ通告ヲシテアルノデアリマス、
  而シテ總理大臣、內務大臣ノ出席ハ數日前
  日程ニ上ノタトキヨリシテ、通告ヲ致シテ居
  ル、要求ヲ致シテ居ル、然ルニモ拘ラズ本
  日時間ヲ延長シテ、本案ヲ審議スルト云フ
  ノニ(「事故ナラバ仕方アリマセヌ」ト呼フ
  者アリ)國務大臣ガ如何ナル事故ニ依シテ出
  席ガ出來ナイノデアルカ、凡ソ國務大臣ト
  シテ議會開會中ニ於テ、議會ノ公務ガ最モ
  重大ナル所ノ公務デナクテハナラヌ筈デア
  ル(「ヒヤ〓〓」拍手)然ルニ如何ナル公務ガ
  アッテ出席ヲ妨ゲラレテ居ルノデアルカ、此
  出版法ノ如キハ最モ立憲政治ノ進捗ノ上
  ニ、重大ナル所ノ關係ヲ有スル所ノ法律デ
  アル(「ヒヤ〓〓」拍手)之ニ對シテ内務大
  百、總理大臣ガ出席ヲシテ、質問ニ應答ス
  ルト云フコトハ當然ノ事デナクテハナラナ
  ィ、ソレヲ與黨ノ諸君ガ大臣ガ出ナイカラ
  トテッテ、サモ出ナイノガ當然ノヤウニ應酬
  スルトハ何事デアルカ(「差支アレバ出ラレ
  ヌヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)差支ガアッテ
  出ラレナイト云フナラバ、如何ナル差支ガ
  アルノデアルカ(「不熱心ナル結果ダ」ト呼
  フ者アリ)其他引續イテ上程セラレテ居ル
  所ノ議案ニハ、民事、刑事ニ關係スル所ノ
  重要法案アリ(ヒヤ〓〓)產業組合法ノ如キ
  アリ、其他豫備金支出ノ問題ノ如キアリ、
  頗ル重要ナル所ノ問題ガ累積シテ居ルデハ
  ナイカ、然ルニ大臣席ヲ見レバ、一人モ大
  臣ガ出テ居ラナイトハ何事デアルカ(「ヒヤ
  〓〓」拍手)斯ノ如クシテ吾々議員ニバカリ
  議事ノ進行ヲ强ルト雖モ、是ハ議事ノ進行
  ハ出來ナイノデアル(「ヒヤし〓」相手)午後
  一時カラ午後十時頃マデ此誠席ニ著イテ、
  審議スルト云ノコトハ隨分(「苦シイカ」ト
  呼フ者アリ)苦シイ(笑督)困難ナル所ノ仕
  事デアル、然ルニ國務大臣ハ勝手ニ院外ニ
  出テシマフ、大臣達ハ勝手ニ事故ナルガ故
  ニ、此場所ニ出席ヲシナイ、サウシテ議員
  ニダケハ時間ヲ何時マデモ延長ヲシテ、此
  重要法案ヲ審議シナケレバナラヌト云フヤ
  ウナ、左樣ナコトデドウシテ議會政治ニ於
  テ、圓滑ナル所ノ議事ノ進行ガ出來ルカ、
  (拍手「議員自ラ時間ヲ延バシテヤッテ居ル
  ヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)何ヲ言フカ、議
  會ノ權威ノ問題デアル、政府ト議會ノ關係
  ノ問題デアル、與黨ナドト云フ些々タル關
  係ヲ離レテ、此重大ナル所ノ大事ナ問題ニ
  付テハ、冷靜ナル所ノ態度ヲ取ラナケレバ
  ナラヌ(「ヒヤ〓〓」「ヤレ〓〓」ト呼フ者アリ
  拍手)ニ私ハ此場合議長ニ對シテ、今
  應關係國務大臣ノ出席ヲ要求セラレンコト
  ヲ玆ニ希望致シテ、議事ノ進行ヲ圖ラレタ
  イト希望〓ス次第デアリマス
  〔篠原和市君「議長、議事ノ進行ニ關シ
  テ」ト呼フ〕

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• 120・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　只今靑木君ノ御述ニ
  ナリマシタ大臣ノ出席ノ事ニ付キマシテ
  ハ、夕刻ヨリ只今マデ交涉中デアリマス、
  併ナガラ其出席ノ如何ハ、今直ニ御確答ヲ
  申上ゲルコトハ出來ナイノデアリマス、紫
  安新九郞君ヨリ議事ノ進行ニ關シテ、發言
  ヲ求メラレテ居リマス、紫安新九郞君

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• 121・紫安新九郎

  ○紫安新九郞君　簡單デアリマスカラ是ヨ
  リ發言ノ御許シヲ願ヒタイ、只今議題ト
  ナッテ居リマスル、出版物法案ノ重大ナル
  案件デアルト云フコトハ、私共モ靑木君ト同
  ジ意見ヲ持ノテ居リマス(「ヒヤ〓〓」拍手)
  併ナガラ會期ハ餘程切迫致シテ居リマスシ
  又是ハ申スマデモナク委員會ニ付託セラレ
  テ、十分ニ審議セラルヽモノデアリマスル
  カラシテ、何モ大臣ガ出席ナクトモ(ノウ
  ノウ)政委員ガ出席シテ居ルノデアルカラ
  シテ、此儘議事ヲ進メラレンコトヲ希望シ
  マス

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• 122・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　議事ノ進行ニ關シテ
  篠原和市君ヨリ發言ヲ求メラレマシタ、篠
  原君
  〔篠原和市君登壇〕

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• 123・篠原和市

  ○篠原和市君　本員ハ議事ノ進行ニ關シマ
  シテ、一言ヲ述ブルモノデアル、出版物法
  案ノ國家、社會、殊ニ帝國ニ最モ必要重大
  ナル法案デアルコトハ、本期議會ニ於テ最
  モ重大トシタル所ノ豫算案稅制整理案、關
  稅定率案及出版物法案トハ、是ハ四大法案デ
  アルト吾々ハ左樣ニ確信シテ居ル者デアリ
  マス(「ヒヤ〓〓」拍手)隨テ本案ヲ本議場ニ
  上程スルニ付キマシテハ、本案ニ對スル質
  問通告ト致シマシテ、加藤君、安藤君、寺
  田君、倉元君、原夫次郞君、篠原和市笑
  聲此通告ガアルノデアリマス(拍手)殊ニ
  先刻祕書課ヨリ此法案ノ上程ニ付キマシテ
  ハ國務大臣ハ誰方ト誰方ガ出席セラレヽ
  バ宜シイノデアルカ、御希望ノ申出ヲ願ヒ
  タイ、斯樣ニ祕書課ヨリ本員ニ對シテ相談
  ガアッタノデアリマス、仍テ本員ハ内閣總
  理大臣、内務大臣若槻君ト、司法大臣ノ江
  木君ト、遞信大臣安達君、此三大臣ニハ是
  非御出席ヲ顧ハナケレバナラナイクラ、サ
  ウ云フヤウニ政府ヘ通達ヲシテ戴キタイ、
  承知鉃シマシタト云ッテ祕書課ノ人ハ歸シタ、
  然ルニ此休憩ヲシテ、此重要法案ガ議題ニ
  ナッタルニ拘ラズ、見渡セバ國務大臣一人
  モ居ラナイヂヤナイカ、斯樣ナ不熱心ナコ
  トデ(「其通リ」ト呼フ者アリ)國務ノ遂行ガ
  出來マスカ、與黨、本黨諸君少シク此點ニ
  關シテ考ヘ給へ(「本黨トハ何ダ」ト呼フ者ア
  リ)先刻諸君ハ憲政會ト共鳴シテ居ルヂヤ
  ナイカ、若シ諸君ガ共鳴シナイナラバ其點
  ハ取消シマス、憲政會諸君-而シテ本日
  ノ各派交涉會ニ於テハ政府提出重要案ガア
  ルカラ、今晩ハ休憩ヲ致シテ互ニ夕食ヲ致
  シテ、午後十時マデハ議事ノ進行ヲ圖ラウ
  ヂヤナイカト、斯樣ニ各派協調シテ居ルヂ
  ヤナイカ、(「其通リ」ト呼フ者アリ)然ルニ
  國務大臣一人ノ出席ナシ、此點ニ關シテハ
  實ニ非立憲モ亦甚シイ(「ヒヤ〓〓」拍手)此
  憲政會內閣、非立憲モ甚シイヂヤナイカ、
  吾々議員ノ權能ニ於テ此重大ナル法案ヲ審
  議スルニ方シテ、〓國務大臣ノ出席ガナケレ
  バ議事ガ出來ナイ、仍テ此場合五分間、時
  間ノ魯豫ヲ與ヘマスルカラ(拍手、笑聲起
  ル)議長ヨリ國務大臣ニ直ニ出席ヲ求メテ
  戴キタイ、五分間ノ猶豫ヲ與ヘル、若シ國
  務大臣ガ出席シナイ場合ニハ、吾々又改メ
  テ考慮スル考デアル、卽チ議事ノ進行ニ關
  シテ一言述ブル所以デアル

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• 124・秋田清

  ○秋田〓君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=124

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• 125・粕谷義三

  ○議長(粕八義三君)　秋田〓君

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• 126・秋田清

  ○秋田〓君　本員ハ本案審議ニ付キマシ
  テ、內務大臣、司法大臣及文部大臣ガ當席
  ニ出席アルコトハ當然ノ作法デアルト考へ
  テ居ル、然ルニ是等關係各國務大臣ノ一人
  モ此議席ニ見ルコトヲ得ナイト云フコト
  ハ、本案ニ對シテ政府ガ如何ニモ不深切ナ
  リト云フ其擧動ニ對シテ洵ニ遺憾禁ズルコ
  トガ出來ナイノデアリマス、仍テ是カラ國
  務大臣ノ出席ヲ見ルマデ、本日程ノ延期ノ
  動議ヲ提出致シマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼ヒ拍手起ル〕

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• 127・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　秋田君ニ御尋致シマ
  スガ、秋田君ノハ大臣ノ出席マデ(發言ス
  ル者アリ)靜肅ニ願ヒマス-大臣ノ出席
  セラルヽマデ此議事ヲ延期スルト云フ意義
  デアリマスカ
  〔「動議デス」ト呼フ者アリ〕

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• 128・横山金太郎

  ○橫山金太郞君　都合ニ依リ暫ク休憩アラ
  ンコトヲ望ミマス
  〔「動議ヲドウスル」ト呼フ者アリ〕

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• 129・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　尙ホ一應秋田君ニ御
  尋シマスガ、秋田君ノハ休憩シヤウト云フ
  御意見デスカ

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• 130・秋田清

  ○秋田〓君　モウ一度····

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• 131・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　秋田君ノ只今御述ニ
  ナリマシタ事ハ、大臣ノ出席マデ休憩スル
  ト云フ御意見デアリマスカ

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• 132・秋田清

  ○秋田〓君　日程延期ノ動議デアリマ
  ス-休憩ニ贊成ヲ致シテモ宜シイノデア
  リマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 133・粕谷義三

  ○議長(粕谷義ニ君)　ソレデハ大臣ノ出席
  セラルヽマデ暫時休憩ヲ致シマス(拍手)
  午後八時二十二分休憩
  午後八時三十八分開議

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• 134・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　休想前ニ引縮イテ會
  議ヲ開キマス、通告順ニ依テ質疑ヲ計シ
  マス-安藤正純君
  〔安藤正純君登壇〕

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• 135・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　文部大臣モ司法大臣
  モ早速出席セラルヽヤウデアリマスカラ、
  暫ク御辛抱ヲ願ヒマス
  〔「休憩」「降レ」ト呼ヒ其他發言スル者
  多ク議場騷然〕

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• 136・安藤正純

  ○安藤正純君　私ハ議長ノ許可ヲ得テ此處
  ニ居ル

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• 137・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜〓ニ願ヒマス
  〔「總理大臣、內務大臣ニ質問シタラ宜
  イヂヤナイカ」ト呼フ者アリ〕

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• 138・安藤正純

  ○安藤正純君　質問スル人ガ居ナイ
  〔「總理大臣ガ居ルヂヤナイカ」ト呼フ
  者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=138

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• 139・安藤正純

  ○安藤正純君　質問ノ相手ガナケレバ質
  問ハ出來ナイヂヤナイカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=139

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• 140・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　只今安藤君ニ發言ヲ
  許シタノデアリマスケレドモ、安藤君ノ
  御質疑ハ更ニ內務大臣ノミナラズ、司法
  大臣、文部大臣等ノ出席ヲ必要トセラルヽ
  サウデアリマス、就キマシテハ此日程ヲ後
  廻ハシニ致シマシテ、次ノ日程ニ移ルト云
  フコトニ付テハ如何デセウ
  〔「異議ナシ」「異議アリ」「ドウ云フ譯
  デ」ト呼ヒ議場騒然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=140

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• 141・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　ソレデハ已ムヲ得ズ
  暫時休憩致シマス
  午後八時五十一分休憩
  午後九時五分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03219260318&spkNum=141

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• 142・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　休憩前ニ引續イテ開
  會致シマス、只今定足數ヲ缺イタト認メマ
  スカラ、本日ハ是ニテ散會致シマス
  午後九時六分散會
  衆議院議事速記錄第三十一號中正誤
  頁段行誤正
  八二三二一五出席ハ出席マデ

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