1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
銀行法案(政府提出)
貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出)
農工銀行法中改正法律案(政府提出)
北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出)
非訟事件手續法中改正法律案(政府提出)
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會議
昭和二年二月十八日(金曜日)午後一時二十六分開議
出席委員左の如し
委員長 小野義一君
理事 荒井建三君
理事 佐々木長治君
理事 清水長郷君
加藤政之助君 川崎安之助君
山本厚三君 宮崎松次郎君
菅原英伍君 山口嘉七君
若尾幾太郎君 山本愼平君
神崎勳君 宮崎三之助君
山口恒太郎君 平山爲之助君
木暮武太夫君 小川郷太郎君
金光庸夫君 原夫次郎君
中山貞雄君 山口左一君
出席政府委員左の如し
大藏省銀行局長 松本脩君
本日の會議に上りたる議案左の如し
銀行法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005210577X00219270218&spkNum=0
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001・小野義一
○小野委員長 是ヨリ銀行法案外四件
ノ委員會ヲ開會致シマス、開會ノ劈頭
ニ政府當局ヨリ詳シク說明ガアル筈デ
ゴザイマス、ソレヲ承ッテ後ニ質問ニ入
リタイト思ヒマスガ、御諮リヲ致シタ
イコトハ、質問ハ大體通告順ニ依テ行
フコトニ致シタイト思ヒマス、ソレデ
宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005210577X00219270218&spkNum=1
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002・小野義一
○小野委員長 ソレデハ先ヅ政府當局
ノ說明ヲ煩シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005210577X00219270218&spkNum=2
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003・松本脩
○松本政府委員 本法案ヲ提出スルニ
至リマシタ理由ハ、本會議ニ於テ大體
大藏大臣カラ申上ゲマシタ通リデゴザ
イマスガ、尙ホ少シク詳細ニ亙テ御說
明ヲ申上ゲタイト存ズルノデアリマス、
此法案ヲ立案致シマスル必要ハ、我國
ノ普通銀行ガ其經營ノ上ニ於キマシテ
甚ダ遺憾ナ點ガ多イ、殊ニ近年ニ於キ
マシテハ財界ノ反動、其他ノ事情ニ依
リマシテ破綻ヲ暴露スルモノモアリ、
而シテ又產業ノ開發ノ點ニ於テモ機能
ヲ十分發揮シテ居ラナイト云フ點ヲ見
ルノデアリマスガ、ドウシテモ此際金
融機關ノ整備、改善ヲ圖ルト云フコト
ガ急務デアルト考ヘタノデアリマス、
ソコデ金融制度全般ニ亙リマシテ、其
整備改善ヲ圖ルコトガ最モ必要デアル
ト思ヒマシテ、獨リ普通銀行ト云ハズ、
各特殊銀行、其他各特殊ノ金融ニ付キ
マシテ改善ノ途ヲ考究致シタイ、斯樣
ニ考ヘマシテ金融制度調査會ナルモノ
ヲ組織致シマシタノデゴザイマス、此
金融制度調査會ニ於キマシテ朝野ノ其
途ノ識者ヲ集メマシテ、サウシテ先ヅ
如何ナル事項ニ付テ調査ヲ進メテ行ク
カト云フ、其調査ノ事項及範圍ニ付キ
マシテ考究ヲ致シマシタ、ソレカラソ
レガ決定サレマシテ、サウシテ大體ノ
調査ノ方針ハ總テ金融機關ト云フモノ
ハ互ニ有機的ニ相關聯スルノデアリマ
スカラ、一ツヲ引離シテ其機能ノ完備
ヲ期スルコトハ出來マセヌカラ、全體
ニ付テ考究スベキモノデアリマセウ、
性質上サウ云フモノデアリマセウガ、
併シ斯ク致シテ居リマスナラバ、徒ニ
年月ヲ要スルノデアリマシテ、其實行ノ
時期ガ遷延致スコトヽナリマスカラ、
其中ヨリ引離シ得ルモノハ成ルベク引
離シテ、是ガ實行ニ著手シテ行カウト
云フコトデアリマシテ、此普通銀行ノ
改善ト云フコトガ先ヅ成案ヲ得マシタ
モノデアリマスカラ、調査會ニ付議サ
レマシテ、サウシテ調査會ニ於キマシ
テモ愼重ニ〓究ヲ致シマシタ、サウシ
テ其決議トナリマシタモノガ、丁度只
今御手許ニ配付致シマシタ普通銀行制
度ニ關スル調査、金融制度調査會決定
ト申シマスルモノデゴザイマス、デ是
ハ條項ガ揭ゲラレテアルノデアリマス
大體此趣旨ニ載ッテ居リマスガ、此中法
規ヲ以テ律スベキモノト思ヒマスモノ
ヲ蒐メテ法案ト致シマシタノガ、御手
許ニ只今提出サレテ居リマス銀行法案
デゴザイマス、此法律以外ニ於テ政府
ノ爲スベキ、又民間銀行ノ執ルベキ方
針等ノコトハ、又自ラ此法律ヲ以テ之
ガ改善ヲシヤウト云フ考デゴザイマス、
此普通銀行制度ニ關シマスル調査ヲ御
一覽下サイマスレバ明デアリマスガ、
其序文ニモ書イテアリ、又決議サレテ
居リマスガ、一般銀行制度ト云フモノ
ハ、徒ニ法規ヲ以テ律スベキモノデナ
イ、成ベク法規ハ避ケテ、實際ノ本業ノ
上ニ立ツベキモノデアルト云フ觀念ヲ
以チマシテ、此調査會デハ決定サレタ
ノデアリマス、其中ドウシテモ法規ニ
俟タザルヲ得ナイト云フモノノミヲ蒐
メマシテ、此銀行法ハ出來テ居ルノデ
アリマス、ソレデアリマスカラ此銀行
法ダケ御覽下サイマシテハ、或ハ徒ニ
監督トカ取締トカ云フ事ノミニ拘泥シ
テ、其他產業ノ助長ト云フコトニ付テハ
等閑ニ附シテ居リハシナイカト云フ御
疑モアルカモ知レマセヌ、サウ云フ次第
デアリマスノデ、ソレハ政府ノ行政ト相
俟テ此銀行法ノ運用ヲ期シタイト云フ
政府ノ趣旨デアリマス、其點ハ御諒承ヲ
願ヒタイト思ヒマス、ソレデ大體ニ付テ
申上ゲマスト、我國今日ノ普通銀行ノ
缺點、矯正スベキ點ヲ先ヅ大別致シマ
スト、銀行ノ資力ノ充實ヲ計ルト云フ
コトガ一ツノ點デアリマスガ、健實ナ
ル經營ヲ助長シテ行クト云フコトモ大
切ナ點、ソレカラ預金者ノ利益ヲ保護
スルコトモ大切、銀行ノ內部ノ監督ト
云フコトモ大切、ソレカラ資金ノ放散
ヲ防止スルコトモ大切、又ソレカラ銀
行ノ整理ヲスルコト斯ウ云フ點ガ最
モ大切ナコトデアッテ、此點ニ關シテ十
分改善スベキモノデアルト云フ標準ヲ
立テヽ居ルノデアリマス、其標準ガド
ウ云フ風ニ銀行法案ニ現レテ居ルカト
云フコトヲ一寸申上ゲマスト、銀行資
力ノ充實ヲ圖ルト云フ點ニ付テハ、第
三條ニ於テ資本金ノ法定ト云フコトヲ
規定致シテ居ルノデアリマス、是ハ百
萬圓以上ト云フコトニ致シマシテ、サウ
シテ人口一萬未滿ノ都會ニアリマス
二十五萬圓未滿ノ銀行ニ付テハ、又特
ニ之ヲ考慮致シテ居ルノデアリマス、
卽チ百萬圓以上ニナルコトヲ要シマス
ノニ七年ノ猶豫期間ヲ與ヘテアリマ
ス、更ニ人口一萬未滿ノ都會ニアリマ
ス二十五萬圓未滿ノ銀行ニ付テハ、更
ニ三年ノ猶豫期間ヲ與ヘマシテ、都合
十年ノ猶豫期間ヲ與ヘテアルノデアリ
マス、詰リ七年乃至十年ノ間ニ於テ、日
本ノ銀行ヲ百萬圓以上ノ資本ヲ得セシ
メルト云フコトヲ定メタノデアリマ
ス、尤モ勅令ヲ以テ指定スル都會ニ本
店又ハ支店ヲ有スル銀行ノ資本金ハ、
二百萬圓ヲ下ルコトヲ得ズト云フコト
ガアリマス、是ハ勅令ヲ以テ指定スル
ト申シマスノハ、今日ノ所デ考ヘテ居
リマスノハ、東京、大阪位デアリマス、
斯ウ云フ大都會ニアリマス銀行ハ二百
萬圓ノ資本ニシタイ、斯ウ考ヘテ居ル
ノデアリマス、此七年乃至十年ノ猶豫
期間ヲ與ヘテ居リマスノハ、先ヅ我國
ノ今日ノ經濟狀況ニ鑑ミマシテ、今後
七年乃至十年ノ間ニ於テハ百萬圓位ノ
資本ヲ置カナイト、我國經濟上ノ發展
ニ順應シテ、機能ヲ發揮スルコトガ出
來ヌト考ヘタ次第デアリマス、之ヲ法
定致シマシタ所以ハ、大藏省ニ於テモ
行政ノ手段ヲ以テ資本ノ充實ト云フコ
トヲ奬勵致シテ居リマスケレドモ、實
際行ハレマセヌ、ソレデ未ダ日本ニハ
一萬圓未滿ノ銀行モアルノデアリマ
ス、此處ニ御手許ニアリマス資料ニ依
テモ御覽下サイマス通リ、小資本ノ
銀行ガ澤山アルノデアリマス、必シモ
小資本ノ銀行ハ惡イトハ申サヌノデア
リマスガ、今日ノ經濟界ノ狀況、殊ニ今
後十年間ニ於テ非常ナル發展ヲスルト
思ヒマスガ、サウ云フ場合ニ於テハ如
何ナル地方ニ於テモ、少クトモ百萬圓
以上ノ資本ヲ有セシメテ置ク方ガ、其
金融機關ノ機能ヲ發揮スル上ニ於テモ
宜シカラウト存ジタ次第デアリマス、
ソレカラ銀行ノ資力ヲ充實致シマス點
ニ於テ、此法規ノ上ニモウ一ツ現レテ
居リマスコトハ、第八條ノ法定準備金
ノ引上デアリマス、是ハ商法ノ所定ノ
率ヨリハ倍ニナッテ居リマス、是モ銀行
トシテハ當然ノコトデアラウト思フノ
デアリマシテ、旣ニ是ハ信託業法ニ付
キマシテモ此適用ガアルノデアリマ
ス、銀行ノ資力ノ充實ヲ圖ルト云フ點
カラ許リ見マシテ、先ヅ此法規ニ直接
現ハレテ居ルト云フ點デアリマスガ、
是ハ先程申シマス通リ、此法規以外ニ
於テ、或ハ銀行ノ整理ヲセシムルト云
フヤウナ方法ヲ取ッテ、資力ノ充實ヲ勿
論圖ルベキモノデアルト考ヘマス、
ソレカラ健實ナル經營ヲ實行スル
ト云フコト、第二ノ點ニ付キマシテ
ハ、法規ノ上ニ現ハレテ居リマスル
所ハ、第三條ノ株式會社ニ限定シテ
アル事デアリマス、是ハ申ス迄モナ
ク株式會社ハ近代ノ經濟社會ニ於ケル
一ノ形態デアリマシテ、其內部ノ經理
ニ關シマシテモ株式總會、監査役ノ機
關モ備ハリ、法制上玆ニ實際上極メテ
整頓シテ居ルノデアリマスカラ、銀行
ノ如キ多數ノ預金者ヲ有スル所ニ於キ
マシテハ、最モ適當ナルモノト考ヘテ
株式會社ニ限定シタノデアリマス、我
國ニ於キマシテハ御手許ノ參考書ニモ
アリマス通リ、株式會社ナラザル銀行
ガ可ナリ多イノデアリマス、此株式會
社ト云フモノハ旣ニ貯蓄銀行、信託會
社ニ於テ限定シテ居リマス、經濟界ノ
大勢ニ鑑ミテ當然ノ事デアラウト思ヒ
マツ、ソレカラ健實ナル經營ヲ助長致
シマスル點ニ於キマシテ、監査書ノ制
度ト云フモノヲ設ケマシタ、此制度ノ
趣旨ハ第十二條ニ記載シテゴザイマス、
是ハ銀行ノ監査役ハ銀行ノ業務、財產
ノ狀況ニ關スル調査ノ結果ヲ揭載シタ
ル監査書ヲ、每年營業年度二囘ニ作製
シテ本店ニ置クト云フコトニ致シテ居
リマス、サウシテ此監査書ニハ銀行ノ
資金ノ運用ノ制限ニ付キマシテ、弊害
ノアリマスル資金ノ運用方ヲ矯正スル
爲ニ、或ハ一人ニ片寄ッタリ、或ハ重役ノ
情弊ノ有無、其他不良貸付ト云フヤウ
ナコトヲ記載セシメマシテ、サウシテ
時〓大藏省ニ於テ之ヲ見マシテ、監督
シテ行キタイ、從來御承知ノ通リ此監
査役ト云フ者ハ有名無實デアリマス、
之ヲシテモウ少シ責任ヲ持ッテ銀行內
部ノ狀況ヲ知ラシメルコトニ致シマス
レバ、此重役ノ情弊ト云フガ如キ、其他
不良ノ貸付等ハ餘程矯正サレテ參ルデ
アラウト考ヘマシテ、此監査書ノ制度
ヲ開イタノデアリマス、ソレカラ營業
ノ報告書、是モ今度ハ十分ニ大藏省ニ
於キマシテ其內容ヲ示シテ、サウシテ
適切ナル報告書ヲ取リタイト思ッテ居
リマス、ソレカラ第十三條ニ於キマシ
テ「銀行ノ常務ニ從事スル取締役又ハ
支配人ガ他ノ會社ノ常務ニ從事セント
スルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘ
シ」ト云フコトニ致シテ居ルノデアリ
マス、此理由ハ從來銀行ノ常務ニ從事
シテ居リマスル支配人ガ、又他ノ會社
ノ常務ニ從事シテ居リマス爲ニ、其會
社ノ利便ヲ圖ル爲ニ、銀行ノ健實性ヲ
薄クスルト云フヤウナ場合ガ相當アリ
マス、ソレト又熱心ニ銀行ノ業務ニ專
一ニ從事シテ戴キタイト云フ考、此二
ツノ理由ニ依リマシテ一方ノ常務ニ在
ル人ガ、他ノ一方ノ常務ニ就ク場合ニ
ハ、主務大臣ノ認可ヲ受ケル、之ヲ禁ズ
ルノデハアリマセヌ、地方ハ人物モ少
イ事デアリマスカラ、情弊ノ無イ場合
ニハ是ハ許シテ宜カラウト思ヒマス、
併シ大藏大臣ノ方ニ於キマシテ一應之
ヲ知ッテ置キ、サウシテ認可ヲ與ヘルト
云フコトガ宜シカラウト存ジマシテ、
第十三條ヲ規定シタノデアリマス、ソ
レカラ銀行ノ出張所、代理店、サウ云フ
物ニ付キマシテモ、從來ハ自由デアリ
マシタ、是モ相當弊害ガ多ウゴザイマ
シテ、健實ナル經營ノ上カラ言ヒマシ
テ濫ニ出張所ヲ設ケ、又濫ニ代理店ヲ
設ケ、其經營ヲ放漫ナラシメ、又不當ノ
競爭ヲスル場合ガ多イノデアリマスカ
ラ、是モ認可ヲスルコトヽ致シマシタ、
支店ノ認可ト共ニ出張所ノ認可モ要ス
ルコトニ致シマセヌト云フト、名ヲ出
張所ニ藉リテ支店ノ實ヲ擧ゲルモノガ
澤山出ルコトヲ虞レタノデアリマス、
ソレハ第六條ノ第三號、第四號ニ現レ
テ居ルノデアリマス、尙ホ第七條ニ
於キマシテモ代理店ヲ取締ッテ居リ
マス、從來代理店ノ出張所或ハ代理
店ニ附隨シテ居ル營業所、又ハ副代理
店ト云フヤウナ物ヲ設ケマシテ、サウ
シテ、非常ニ弊害ヲ醸シテ居ル場合ガ
澤山アルノデアリマスカラ、代理店ト
云フ物ニ付キマシテモ取締ヲ第七條ニ
定メテ居ルノデアリマス、ソレカラ第
五條ニ於キマシテ銀行ハ他ノ業務ヲ營
ムコトヲ得ナイコトニ致シテ居リマス、
擔保附社債、信託法ニ依ル擔保附社債、
信託業、ソレカラ附隨業務、是ハ例外デ
ゴザイマス、其他ハ他ノ業務ヲ營ムコ
トヲ禁ジテ居ルノデゴザイマス、是モ
健實ナル經營ヲ助長シタイト云フ精神
ニ出デヽ居ルノデゴザイマス、此外健
實ナル經營ヲ助長スル爲ニハ、不動產
ニ對スル貸出ニ付テ相當ノ考慮ヲスル
相當ノ注意ヲ與ヘルト云フコトモ
必要ト思ヒマス、ソレ等ニ付キマシテ
ハ之ヲ法規ヲ以テ律スベキモノデハナ
イト考ヘマシテ、行政上ノ手心ヲ致シ
テ行キタイト考ヘテ居リマス、ソレカ
ラ預金者ノ利益ヲ保護スル點ニ付キマ
シテ澤山ノ規定ガゴザイマス、ソレハ
先ヅ第一條ノ第二項ニ「營業トシテ預
金ノ受入ヲ爲ス者ハ之ヲ銀行ト看做
ス」是ハ取締上銀行トシテ取締ルト云
フコトデアリトス、是ハ銀行デアルト
認メテ之ヲ設ケタノデハアリマセヌ、
銀行ト看做シテ取締リタイト云フ考デ
ゴザイマス、詰リ營業トシマシテ一般
ノ人カラ預金ノ取入ヲシテ居ル、サウ
云フモノハドウシテモ銀行ト同ジニ取
締リマセヌト弊害ガ多イ、ソレカラ第
十一條ヲ御覽下サイ、十一條ハ「銀行ハ
營業年度每ニ主務大臣ノ定ムル樣式ニ
依リ貸借對照表ヲ作成シテ之ヲ公〓ス
ヘシ」ト云フコトニナッテ居リマス、是
ハ貸借對照表ニ依リマシテ何レ施行規
則ニ定メラレルノデアリマスガ、主務
大臣ハ預金者ノ保護ニナルヤウニ、其
銀行ノ預金支拂準備ノ相當明瞭ニナル
ヤウニ貸借對照表ノ改善ヲ圖リタイト
考ヘテ居リマス、ソレカラ第二十條ニ
於キマシテ「主務大臣ハ何時ニテモ銀
行ヲシテ其ノ業務ニ關スル報告ヲ爲サ
シメ又ハ監査書其ノ他ノ書類帳簿ヲ提
出セシムルコトヲ得」主務大臣ガ要求
致シマスル報告ニ於キマシテモ、銀行
ノ支拂準備ガ充實シテ居ルカドウカト
云フコトヲ常ニ眼中ニ置キマシテ、預
金者ノ保護ヲ圖リタイト思ウテ居リマ
ス、ソレカラ第二十五條ニ於キマシテ
「銀行業ノ廢止又ハ銀行ノ解散ノ決議
ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ
其ノ效力ヲ生セス」是ハ任意ニ銀行ガ
業ヲ廢シタリ、任意ニ銀行ノ財產ヲ押
ヘタリスルコトハ許サヌ、主務大臣ノ
必ズ認可ヲ要セシムル、是モ多數ノ預金
者ヲ持ッテ居ル銀行ト致シマシテハ此
規定ガナイト云フト、相當弊害ガアル
ト存ジテ居ルノデアリマス、ソレカラ
其次ニ第二十六條ニ於キマシテモ銀
行ガ其目的ヲ變更致シマシテ、他ノ業
務ヲ營ム唯ノ會社トシテ存續スル場合
ニ於キマシテ、大藏大臣ハ其會社ノ預
金債務ヲ濟マセルマデハ監督ヲシテ行
ク、斯ウ云フ規定ヲ設ケテ居リマス、ソ
レカラ又銀行ノ整理事務ノ促進ノ爲ニ
ハ第三十條ノ規定、三十一條ノ規定ガア
ルノデアリマス、是ハ銀行ノ〓算、破產
又ハ强制和議ノ場合ニ於キマシテ、裁
判所ハ銀行ノ檢査監督ニ從事スル官吏
ニ對シテ-主トシテ大藏省ノ檢査官
デアリマスガ、其意見ヲ求メル、又ハ檢
査ヲ囑託スル、或ハ調査ヲ囑託スル、檢
査ハ全體的ノ調査デアリマシテ、調査
ハ一部的ノ檢査ト認メマス、サウ云フ
コトモ囑託スル詰リ銀行ノ〓算、破產
强制和議ノ場合ニ於キマシテモ裁判所
ニ委セズ、從來ヨリ銀行ヲ監督シテ居
リマシタ檢査官ガ協議シテ其〓算事務
ヲ進メ、整理事務ヲ促進セシムルト云フ
趣旨デゴザイマス、ソレカラ二十八條、二
十九條、ソレカラ今ノ三十條、三十一條、
何レモ皆〓算ノ監督デアリマス、此〓算
ノ監督ニ付キマシテ裁判所ハ利害關係人
ノ請求ニ因リ、又ハ職權ヲ以テ〓算人
ヲ解任スルコトヲ得ル、解任シタ時ハ
裁判所ハ〓算人ヲ選任スルコトヲ得
ル、是ハ從來ノ商法ノ規定ニ依リマシ
テハ、此途ガナカッタノデアリマスガ、
此民法ニ於キマスル公益法人ノ〓算ニ
準ジマシテ、嚴格ナル監督ヲスルコト
ニ規定ヲ置イタノデアリマス、ト申シ
マスノハ商法ニ於キマスル〓算ハ債
務ヲ濟マセルベキ殘餘財產ノ存在スル
コトヲ豫定致シマシテ、之ヲ株主ニ分
配セントスル目的デアリマスカラ、自
治主義ヲ以テ規定ガ設ケテアルノデア
リマス、詰リ放任主義ニナッテ居リマ
ス、然ルニ我國ノ實況ニ依リマシテハ、
破產ノ手續ヲ行フベキ場合ナルニ拘ラ
ズ、之ヲ爲サズシテ〓算ノ形ヲ採ルモ
ノガ少クナイノデアリマス、デアリマ
スルカラ、株主ノ自治作用ノミニ之ヲ
放任致シマスコトハ、銀行ノ如キ多數
ノ債權者アル場合ニ於キマシテハ、特
ニ其弊害ガ多イト認メマシテ、民法ニ
於キマスル公益法人ノ〓算ノ規定ニ準
ジテ二十八條ヲ設ケテアルノデアリマ
ス、二十九條ニ於キマシテ裁判所ハ銀
行ノ〓算事務及財產ノ狀況ヲ檢査シ、
財產ノ供託ヲ命ジ、是ハ法律上ノ供託
事務ニナルノデアリマス、財產ノ供託
ヲ命ジ、又〓算監督ニ必要ナル命令ヲ
出スト云フ規定モ新ニ設ケラレタノデ
アリマス、ソレカラ三十條ト三十一條
ニ於キマシテ、是ハ大體小作調停法ノ
例ニ倣ッタノデゴザイマス、卽チ府縣ニ
小作官ナルモノガアリマシテ、小作爭
議ニ關シマシテ裁判所ト協力シテ、調
停ニ努メルト云フ制度ガアル、デ本案
ニ於キマシテハ小作官ニ代フルニ銀行
ノ檢査官ヲ以テ致シマシテ、裁判所ト
協力ヲシテ檢査官ガ其〓算事務ニ參與
スルト云フコトニ致シタノデアリマ
ス、是ハ最モ其實際ニ通ジテ居ル、其銀
行ノ歷史ヲ知ッテ居ル檢査官ヲシテ、〓
算ニ參與セシムルト云フコトガ最モ善
イト思ッテ、此新シキ方法ヲ採ッタノデ
アリマスソレカラ銀行ノ監督デアリ
マスガ、此監督ノ周到ヲ期スルト云フ
點ニ於キマシテハ、ドウ致シマシテモ
大藏省ノ檢査バカリデハイケマセヌ、
內部ノ檢査ガ最モ大切デアルト存ジマ
ス、ソレデ先刻モ申シマシタ此監査役
ノ監査書ト云フ制度ニ依リマシテ、内
部ノ監督ヲ圖リタイト考ヘテ居リマ
ス、此外ニ無論大藏省シ檢査機關ヲ充實
スル點ニ於キマシテ、豫算ヲ提出シテ
御協賛ヲ仰イダ次第デアリマスガ、ソ
レニ依リマシテ檢査官ヲ殖シ、從來ノ
檢査方針ヲ少シ改メマシテ-ソレハ
從來ハ兎角檢査ト云フモノハ、啻ニ法
規ニ背イテ居ルカ、定款ニ背イテ居ル
カト云フコトノミヲ檢査スル傾ガアッ
タノデアリマス、無論ソレバカリガ檢
査ノ目的デハアリマセヌガ、今後ハ檢
査ノ規定ヲ改正致シマシテ、其銀行ガ
其地方ニ於テノ金融機關タル職責、卽
チ產業助長ノ爲ノ資金供給ノ點ニ於テ
遺憾無キヤ否ヤト云フコトニ重キヲ置
キマシテ、其方ノ監督モ十分致サセル
積リデゴザイマス、尙又日本銀行及其
取引銀行ノ承諾ヲ得テ、其內部ノ調査
ヲ致サシムル方針デ居リマス、是ハ日
本銀行ハ其銀行ノ非違ヲ擧ゲルト云フ
點ヨリハ寧ロ其銀行ヲ助ケルト云フ
點ニ力ヲ注グデアリマセウカラシテ、
大ニ銀行ノ發展ニ效力ガアルト思ヒマ
ス、其日本銀行ノ檢査ト大藏省ノ檢査
ト是ハ常ニ步調ヲ取リマシテ互ニ連絡
ヲ保チ、サウシテ完全ヲ期シタイ、左樣
ニ思ウテ居リマス、其事ハ金融制度調
査會ニ於テモ既ニ決議トナリマシテ、
日本銀行ニ於テモ之ヲ承諾シテ居ルノ
デアリマス、ソレカラ不當ノ競爭ヲ防
止スルト云フコトガ我國銀行界ニ於テ
最モ大切ナコトヽ思ヒマス、是ハ言フ
マデモナク出張所、代理店認可ノ制度ノ
如キハ其趣旨カラ來テ居ルノデアリマ
ス、銀行ノ整理ノ進捗ヲ圖ル規定ガ悉
ク其目的ヲ包含シテ居ルノデアリマ
ス、其外法規ノ性質上雜件モゴザイマ
ス、或ハ外國銀行支店ノ取締トカ、罰則
ノ規定トカ云フヤウナ雜件モアリマ
ス、ソレカラ此銀行法ニ附屬シマシテ
二三ノ銀行法ノ改正サレテ居ル點ハ
是ハ當然銀行法ノ改正ノ結果、サウ云
フコトニ相成ルノデアリマス、大體サ
ウ云フ趣旨ニ依テ斯ノ如キ規定ヲ設ケ
タノデゴザイマス、是ノ施行期日ハ今
ノ所デハ昭和三年ノ一月一日カラ施行
致シタイト云フ積リデ居リマス、ソレ
マデニ其準備ガ要リマスカラ、政府ニ
於テ準備ヲ急ギマシテ、昭和三年一月
一日カラ之ヲ施行スルノ運ビニ至リタ
イト云フ積リデ居リマス、大體此法案
ノ通款ハサウ云フヤウナモノデゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005210577X00219270218&spkNum=3
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004・小野義一
○小野委員長 ソレデハ明日ハ大分色
色ナ關係デ差支ノ方ガ多イサウデスカ
ラ、月曜日ノ午前十時ヨリ第二囘ヲ開
會致シマス、今日ハ此程度デ散會致シ
マス
午後二時六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005210577X00219270218&spkNum=4
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