1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二年二月二十四日(木曜日)午後一時十六分開議
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議事日程 第十六號
昭和二年二月二十四日
午後一時開議
第一 出版物法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 海外移住組合法案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 保險業法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 輸出絹織物取締法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 牧野法案(八田宗吉君提出) 第一讀會
第九 寺院現境内地無償下戻に關する法律案(高木益太郎君外一名提出) 第一讀會
第十 寺院現境内地無償下戻に關する法律案(安藤正純君外二名提出) 第一讀會
第十一 商法中改正法律案(三浦數平君提出) 第一讀會
第十二 恩給法中改正法律案(山口政二君外四名提出) 第一讀會
第十三 治安警察法中改正法律案(山枡儀重君外五名提出) 第一讀會
第十四 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(坂東幸太郎君外三名提出) 第一讀會
第十五 架空索道の抵當に關する法律案(清瀬一郎君提出) 第一讀會
第十六 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(林田龜太郎君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(東武君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(小池仁郎君外六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 義務教育年限延長に關する建議案(増田義一君提出)
第二十 郡山市に高等工業學校設置に關する建議案(栗山博君外六名提出)
第二十一 郡山市に高等師範學校設置に關する建議案(栗山博君外五名提出)
第二十二 奈良縣に藥學專門學校建設に關する建議案(福井甚三君外二名提出)
第二十三 國立蠶絲大學設置に關する建議案(篠原和市君外五名提出)
第二十四 福井縣小濱に高等水産學校設置に關する建議案(山口嘉七君外二名提出)
第二十五 福島市に高等蠶絲學校設置に關する建議案(大島要三君外六名提出)
第二十六 岡山市に綜合中國帝國大學設置に關する建議案(清水長郷君提出)
第二十七 金澤市に綜合大學設置に關する建議案(佐藤實君外四名提出)
第二十八 盛岡市に高等師範學校設置に關する建議案(柏田忠一君外四名提出)
第二十九 松江市に山陰帝國大學設置に關する建議案(原夫次郎君外二名提出)
第三十 仙臺市に高等師範學校設置に關する建議案(内ヶ崎作三郎君外三名提出)
第三十一 廣島市に女子專門學校設置に關する建議案(江藤榮吉君提出)
第三十二 廣島市に綜合大學設置に關する建議案(江藤榮吉君提出)
第三十三 西宮市に綜合大學設置に關する建議案(前田房之助君外四名提出)
第三十四 文政改革に關する建議案(篠原和市君外三名提出)
第三十五 國定教科書中略字採用及字音假名遣改正に關する建議案(増田義一君提出)
第三十六 書道振興に關する建議案(山宮藤吉君外二名提出)
第三十七 民族博物館設立に關する建議案(山枡儀重君提出)
第三十八 滋賀縣伊吹山高層氣象觀測所國營移管に關する建議案(井上敬之助君外二名提出)
第三十九 明治六年地租改正條例に依る土地丈量立替費用償還に關する建議案(土屋清三郎君提出)
第四十 國有雜種財産處分に關する建議案(大島要三君外七名提出)
第四十一 税務官の待遇改善に關する建議案(大島要三君外七名提出)
第四十二 國税徴收交付金増額に關する建議案(八田宗吉君提出)
第四十三 葉煙草賠償價格増額に關する建議案(中林友信君外四名提出)
第四十四 不良鹽田整理に關する建議案(山下谷次君提出)
第四十五 飛行事業擴張に關する建議案(長岡外史君提出)
第四十六 國防審議會設置に關する建議案(長岡外史君提出)
第四十七 國防會議設置に關する建議案(蟻川五郎作君提出)
第四十八 陸海軍現役兵及豫後備兵優遇竝在郷軍人會國庫補助に關する建議案(三善清之君外七名提出)
第四十九 海洋調査機關整備に關する建議案(小西和君外一名提出)
第五十 勞働省設置に關する建議案(清瀬一郎君提出)
第五十一 我か國國號の統一顯正に關する建議案(由谷義治君提出)
第五十二 恩給法改正に關する建議案(湯淺凡平君提出)
第五十三 恩給其の他の恩典に雇員在職年數通算に關する建議案(青木精一君提出)
第五十四 一時賜金癈兵に對する恩給支給法制定に關する建議案(山下谷次君外一名提出)
第五十五 軍人傷痍記章令中改正に關する建議案(山下谷次君外一名提出)
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一議員ノ異動左ノ如シ
福岡縣第七區選出議員野田卯太郞君薨去
セラレタリ
埼玉縣第三區選出議員山口政二君死去セ
ラレタリ
一政府ヨリ提出セラレダル議案左ノ如シ
花柳病豫防法案
兌換銀行券整理法案
家畜傳染病豫防法中改正法律案
(以上二月二十四日提出)
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
恩給法中改正法律案
提出者
一柳仲次郞君小池仁郞君
山本厚三君淺川浩君
神部爲藏君澤田利吉君
手代木隆吉君
借地法中改正法律案
提出者
作間耕逸君廣瀨德藏君
森田茂君
河川法中改正ニ關スル建議案
提出者加藤十四郞君
筑後川改修工事ニ關スル建議案
提出者加藤十四郞君
福井市ニ高等師範學校設置ニ關スル建議
案
提出者
谷口宇右衞門君土生彰君
山口嘉七君
福井市ニ遞信局設置ニ關スル建議案
提出者
土生彰君谷口宇右衞門君
山口嘉七君
米原〓庄間鐵道電化速成ニ關スル建議案
提出者
谷口宇右衞門君土生彰君
山口嘉七君
福井縣和田港ニ運河開鑿竝避難港築設ニ
關スル建議案
提出者
山口嘉七君谷口宇右衞門君
土生彰君
廣濱鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
河野曉君荒川五郞君
江藤榮吉君
木津川改修工事急施ニ關スル建議案
提出者
川崎安之助君村上國吉君
森林政策根本方針確立ニ關スル建議案
提出者
太田信治郞君村山喜一郞君
德佐廣瀨間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
藤田包助君永田新之允君
渡邊祐策君兒玉右二君
長岡外史君
大淀川河口築港ニ關スル建議案
提出者
長峰與一君陣軍吉君
佐藤重遠君吉松忠敬君
永井作次君
北海道漁港竝船入潤築設ニ關スル建議案
提出者
黑住成章君東武君
松實喜代太君岡田伊太郞君
煙毒防止水源涵養ニ關スル建議案
提出者
武藤金吉君飯塚春太郞君
靑木精一君折原巳一郞君
生方大吉君阿由葉勝作君
樺太ノ拓殖促進ニ關スル建議案
提出者
竹內友治郞君石坂豐一君
小池仁郞君山本厚三君
中村啓次郞君津崎尙武君
盛岡山田間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
柏田忠一君熊谷巖君
北海道鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者
岡田伊太郞君黑住成章君
東武君松實喜代太君
(以上二月二十二日提出)
府縣會議員優遇ニ關スル建議案
提出者
金光庸夫君三浦數平君
砂田重政君宮崎松次郞君
(以上二月二十三日提出)
阿蘇山ヲ中心トスル國立公園設定ニ關ス
ル建議案
提出者藤井敬愼君
林宮鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
陣軍吉君長峰與一君
永井作次君吉松忠敬君
佐藤重遠君
(以上二月二十四日提出)
決議案(議員近藤達兒君ノ言責ニ關スル
件
提出者
横山勝太郞君齋藤隆夫君
高木益太郞君
(以上二月二十二日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
國產獎勵ニ關スル質問主意書
提出者宮島幹之助君
(以上二月二十三日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去二十二日議長ニ於テ選定シタル委員左
ノ如シ
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關ス
ル法律案委員
淺川浩君深井功君
澤田利吉君安保庸三君
安藤正純君松實喜代太君
大城幸之一君中村四郞兵衞君
野原種次郞君
一去二十二日朝鮮事業公債法中改正法律案
外二件委員小野重行君辭任ニ付其ノ補闕
トシテ粟山博君ヲ銀行法案外四件委員田
中武雄君辭任ニ付其ノ補闕トシテ山田助
作君ヲ未成年者飮酒禁止法中改正法律案
委員竹原樸一君山口政二君辭任ニ付其ノ
補闕トシテ松岡俊三君土屋〓三郞君ヲ造
林助成法案委員中野猪之助君辭任ニ付其
ノ補闘トシテ關矢孫一君ヲ國債整理基金
特別會計法中改正法律案委員畔田明君辭
任ニ付其ノ補關トシテ馬場義興君ヲ公益
質屋法案委員栗延敬太郞君山口政二君辭
任ニ付其ノ補闕トシテ杉浦武雄君田崎信
藏君ヲ不良住宅地區改良法案委員有馬賴
寧君嶋居哲君辭任ニ付其ノ補闕トシテ矢
野鉉吉君古川〓君ヲ議院法中改正法律案
外一件委員林田龜太郞君辭任ニ付其ノ補
闕トシテ永田新之允君ヲ孰レモ議長ニ於
テ選定セリ
一昨二十三日委員長及理事互選ノ結果左ノ
如シ
御料地拂下地ノ地相及登錄稅免除ニ關ス
ル法律案(政府提出)委員
委員長淺川浩君
理事
安保庸三君大城幸之一君
一昨二十三日理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
不良住宅地區改良法案(政府提出)委員
理事古川〓君(理事有馬賴寧君
昨二十二日辭任ニ付其ノ補
闘
朝鮮事業公債法改正法律案(政府提出)外
二件委員
理事粟山博君(理事小野重行君
昨二十二日辭任ニ付其ノ補
闘
土地賃貸價格調査委員會法案(政府提出)
委員
理事藤田包助君(理事古林新治君
今二十三日辭任ニ付其ノ補
關
一昨二十三日請願委員第三分科所屬中林友
信君ハ第四分科兼務ト爲リタリ
一昨二十三日不良住宅地區改良法案委員山
口政二君辭任ニ付其ノ補闕トシテ土屋〓
三郞君ヲ水戶鐵道株式會社、越後鐵道株
式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便
鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所
屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
外一件委員金澤安之助君栗延敬太郞君辭
任ニ付其ノ補闕トシテ關矢孫一君深井功
君ヲ土地賃貸價格調査委員會法案委員古
林新治君辭任ニ付其ノ補闕トシテ藤田包
助君ヲ計理士法案委員山口政二君辭任ニ
付其ノ補闕トシテ馬場義興君ヲ孰レモ議
長ニ於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=1
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002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス只今御報道申上ゲマシタ通リ、議員野
田卯太郞君ハ昨二十三日薨去セラレマシ
タ、洵ニ哀悼痛惜ノ至リニ堪ヘマセヌ、此
際望月小太郞君ヨリ發言ヲ求メラレテ居リ
マス、之ヲ許シマス、望月小太郞君
〔望月小太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=2
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003・望月小太郎
○望月小太郞君 只今議長ヨリ御報告ニナ
リマシタ故衆議院議員野田卯太郞君ニ對
シ、院議ヲ以テ深甚ナル弔詞ヲ贈ルコトヽ
致シ、其起草ハ總テ議長ニ一任スルコトノ
動議ヲ玆ニ提出致シマスル、此際私ハ議員
一同ヲ代表致シマシテ、故野田君ノ爲ニ哀
悼ノ辭ヲ述べタイト存ジマス、野田君ハ明
治三十一年、本院議員ニ當選セラレ、爾來
引續キ議席ヲ保チ、曩ニ大正七年原内閣成
立ノ際、入ッテ遞信大臣ノ任ニ就キマシテ、
大正十年高橋内閣ニ留任致シ、大正十四年
加藤内閣ニ入ッテ商工大臣ノ任ニ就キマシ
テ、前後補弼ノ重責ニ膺ラレマシタノデア
リマス、顯ミテ故人ガ憲政ノ運用ニ盡瘁セ
ラレタコトハ、諸君御承知ノ通リデゴザイ
マス、殊ニ故人ノ人格ト識見トハ、吾々同
人ノ親シク推重セシ所デゴザイマス、然ル
ニ昨二十三日、俄ニ薨去セラレマシタコト
ハ洵ニ哀悼ノ至リニ堪ヘザル次第デゴザ
イマス、玆ニ謹ンデ此尊敬スベキ故人ニ對
シ哀悼ノ意ヲ表ス次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=3
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004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今望月君ニ依ッテ
提出セラレマシタ動議ニハ、御異議ハアリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=4
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005・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ諸君ノ御委任ニ依リマシテ、議長
ノ手許ニ於キマシテ、起草シマシタ弔詞ヲ
玆ニ朗讀致シマス
衆議院ハ多年憲政ノ爲ニ盡瘁シ屢、輔弼
ノ重任ニ膺ラレタル議員正三位勳一等野
田卯太郞君ノ薨去ヲ哀悼シ恭ク弔詞ヲ呈
ス
之ニ御異議ハアリマ七ヌカ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=5
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006・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ議長ヨリ此甲詞ヲ御贈リスルコト
ヲ取計ヒマス、尙ホ先刻報告中ニゴザイマ
シタ如ク、議員山口政二君ハ昨二十三日逝
去セラレマシタ、洵ニ哀悼痛惜ノ至リニ堪
ヘマセヌ、此際岩切重雄君ヨリ發言ヲ求メ
ラレテ居リマス、之ヲ許シマス、岩切重雄
君
〔岩切重雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=6
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007・岩切重雄
○岩切重雄君 只今議長ヨリ御報告ニナリ
マシタ、故衆議院議員山口政二君ニ對シマ
シテ、院議ヲ以テ弔詞ヲ贈ルコトヽ致シマ
シテ、其起草ハ議長ニ一任スルコトノ動議
ヲ玆ニ提出致シマス、此際私ハ皆樣ノ御許
ヲ得マシテ、議員ヲ代表致シマシテ、哀悼
ノ辭ヲ述ベタイト思フノデアリマス、幸ニ
御同意ヲ賜ハランコトヲ冀ヒマス次第デア
リマス(拍手)故山口政二君ハ極メテ若キ政
治家デアッタノデアリマス、大正十三年ニ
議員ニ當選致サレマシテ、本院ニ議席ヲ有
セラレタノデアリマスカラ、議員ト致シマ
シテノ生活ハ、極メテ短イ生活デアッタノ
デアリマス、併ナガラ山口君ハ社會ノ人ト
シテ立タレマシテ以來、常ニ政治ニ志シマ
シテ、社會ノ爲ニ、政治ノ爲ニ、不斷ノ努
力ヲ拂ッテ來ラレタノデアリマス、隨テ議員
トナラレマシテ以來ハ、最モ熱心ニ其職務
ニ就カレタノデゴザイマス、然ルニ此眞劔
味ノアル若キ政治家ニ對シマシテ、天ハ彼
レ山口君ヲ幸シナカッタノデアリ。マス、數年
來彼ハ政治ト戰フ一方ニ、病ト戰ハナケレ
バナラナイ身トナラレタノデアリマシテ、
偶、未成年者飮酒禁止法中改正法律案ノ上
程ヲ見マスルヤ、提案者トシテノ故ヲ以チ
マシテ、病軀ヲ押シテ其趣旨辯明又質疑ノ
應答ニ努メラレタノデアリマス、然ルニ其
眞面目ナル努力ハ、遂ニ山口君ノ病ヲシテ
亢進致サシメタノデアリマス、二十二日院
內ニ卒倒致サレ、遂ニ昨二十三日逝去致サ
レマシタコトハ、洵ニ痛嘆ノ至リニ堪ヘナ
イ次第デゴザイマス、君ト致シマシテハ、
憲政ノ爲ニ身ヲ殉ゼラレタノデアリマスカ
ラ洵ニ男子ノ本懷ト致サルヽ所デアリマ
スガ、併シ君ノ如キ若キ政治家ヲ失ヒマシ
タコトハ國家ノ爲ニ洵ニ痛惜ノ至リニ堪
ヘマセヌ、政界ノ前途ニハ尙ホ君ノ如キ理
想アリ、眞劔ナル政治家ヲ極メテ必要ト致
シタノデアリマスガ、今ヤ其戰ヲ前ニ控へ
テ、玆ニ斃レラレマシタコトハ洵ニ痛惜
ノ念ニ堪ヘマセヌ、玆ニ謹シデ山口君ニ對
シマシテ、哀悼ノ意ヲ表シタイト思フノデ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=7
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008・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ岩切君ノ動議
ニ御異議ハアリマセヌカ(拍手)御異議ナシ
ト認メマス、仍テ御一任ニ依リマシテ、議
長ノ手許ニ於テ起草致シマシタ弔詞ヲ茲ニ
朗讀致シマス
衆議院ハ議員正七位山口政二君ノ長逝ヲ
哀悼シ恭ク弔詞ヲ呈ス
之ニ御異議アリマセヌカ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=8
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009・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ議長ニ於テ贈呈方ヲ取計ラヒマ
ス、御諮リ致スコトガアサマス、原田佐之
治君病氣ニ付、二月二十四日ヨリ三月三日
マデ、中野實君病氣ニ付、二月二十四日ヨ
リ三月五日マデ、右請暇ノ申出ガアリマシ
ク、之ヲ許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=9
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010・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ許可スルコトニ決シマシタ、今會
期ハ旣ニ三分ノ二ヲ經過致シマシタカラ、
先例ニ依リマシテ、自今本會議ヲ火木土以
外ノ日ニ於テモ、隨時之ヲ開クコトニ致シ
マツ、法律案ノ上程ニハ成規ノ日時ヲ要セ
ズ、又本會開會中、委員會開會ノ許可ハ一
一院議ニ諮フコトナク、議長ニ於テ許可ス
ルコトニ致シマス、左樣御諒承ヲ願ヒマ
ス、議事進行ニ付テ發言ヲ求メラレテ居リ
マス-田中養達君
〔田中養達君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=10
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011・田中養達
○田中養達君 私ハ議院ノ體面ノ問題ニ付
キマシテ、ドウモ自分デ合點ガ行キマセヌ
ノデ、議長ニ御尋シタイト思フノデアリマ
ス、御承知ノ通リ私マダ議場ノコトハ頓ト
素人デアリマス、或ハ御尋スルコトガ廻リ
諄イカモ知レマセヌ、ドウカ結論ヲ聽イテ
カラ御〓市ニ預リタイト思フノデアリマ
ス、ソレハ衆議院ノ決議ナルモノ、效力ハ
果シテドンナモノデアルカ、議長ハ之ニ對
シテドウ云フ處置ヲ執ラルヽカ、之ヲ御尋
シタイノデアリマス、五十一議會ノ終リニ、
當時政友本黨所屬ノ議員梅田寛一君ガ除名
サレタ事實ガアリマス、而シテ其除名ノ理
由ハ、山梨大將ト共謀シ、金錢ヲ以テ同僚
ノ節ヲ賣ラセ、而シテ政友會ニ入黨セヌカ
ト云フヤウナコトデアッタラシカッタ、此事
ニ付キマシテハ當時ノ新聞筆ヲ揃ヘテ攻擊
シタ、苟モ身陸軍ノ要職ニ在ル者ガ、議員
ヲ買收シテ政界ヲ腐敗セシムルナドト云フ
コトハ怪シカラヌ事デアル、玆ニ至ッテ
衆議院ハ若シ本黨除名ノ理由ガ今傳ヘラレ
テ居ルヤウナコトガ事實デアルトスルナラ
バ是ハ怪シカラヌ問題デアル、宜シク此
事實ヲ調査スベシト云フコトデアッテ、査
問委員會ニ附シテ、此內容ヲ調査シタ事實
ガアルノデアリマス、而シテ其委員會ハ少
クトモ一身上ニ關スル重大問題デアルカラ
ト云フコトデ、非常ニ愼重審議サレタ模樣
デアリマス、殊ニ私共委員會ノ中デ特ニ注
意ヲ惹イタコトガアリマス、ソレハ全體山
梨大將ガ此種ノ買收ヲヤル金ハ何處カラ出
タノダラウ、此疑ヲ非常ニ深クシタノデア
リマス、玆ニ至ッテ私想ヒ到ルコトガアル、
矢張五十一議會ニ於テ例ノ田中ガ陸軍大將
ノ現職中ニ、兎ニ角幾百万圓ノ機密費ノ行
方ガオカシイ、或ハ西伯利カラ獲ッテ來タ
金塊ガドウノ斯ウノト云フ大問題ガ起ッテ
居ル、而シテ國民悉ク田中大將ニ對シテ非
常ナ疑惑ノ眼ヲ以テ見テ居ル事實ガアル、
而シテ山梨大將ハ其當時田中大將ガ陸軍大
臣ノ時ニ次官デアッタノデアル、此事ト私
思ヒ合セテ見マスルト、ドウモ此所ニ甚ダ
怪シカラヌ問題ガ伏在シテ居ルヤウニ思ヒ
マス往年「ロイドジヨージ」氏ニ丁度此種ノ
問題ガ起ッタサウデアリマス、ソレト同時
ニ自己ノ財產ヲ悉ク公表シタト云フコトヲ
聞イテ居リマス、何ガ故ニ私ハ斯ノ如キ疑
減ヲ受ケタ以上ハ、田中大將ノ財產ヲ天下
ニ、己ノ財產ハ此通リダト公表サレスノカ
ト思フノデアリマス、而シテ私ハ山梨大將
ガ一代食ハズニ溜メテ置イテモ知レタコ
ト、數万ノ金ヲ以テ議員ヲ買收スルニ至ッ
テハ、吾輩疑ハザラントシテモ疑ハザルヲ得
ヌノデアリマス、玆ニ至ッテ査問會ハ其理
由ナルモノガ事實デアッタト云フコトノ爲
ニ、委員會ハ此議場ニ報告シテ居リマス、
卽チ梅田寬一君ノ行爲ナルモノハ議院ノ體
面ヲ汚スモノナリト云フ報告ガアル、而シテ
議院ハ果シテ議院ノ體面ヲ汚スモノデアル
ト云フコトデアッテ、梅田君ニ宜シク處決
スベシト云フ絕對多數ノ決議ガ通過シテ居
ル事實ガアリマス、然ルニ何事ダ、未ダ曾
テ梅田君ハ實行シテ居ラヌコトハ目前其通
リデアリマス、先般同僚田淵豊吉君ガ絣ノ
羽織ヲ著テ居ッタ、或ハ紋ガ無カッタトカ云
フヤウナコトノ爲ニ、此貴重ナル言論ヲ抑
壓サレタ事實ガアリマス、斯ノ如キ時代錯
誤ノコトニ付テ私ハ相當ノ意見ヲ持シテ居
リマス、後日述べヤウト思ッテ居リマスガ、
少クトモ縞ノ羽織ガイカナイト云フ程議院
ノ體面ヲ云爲サレル所ノ議長ハ、此絕對多
數ヲ以テ通過シ、而モ議院ノ體面上怪シカ
ラヌト云フ、此決議ヲ何ト取計ハレルカ、
之ヲ御尋シタイノデアリマス、尙ホ其當時
決議サレタ議員諸君ニモ私御尋シテ見タ
ィ、苟モ議院ノ體面ヲ汚スモノナリト云。
テ決議サレタ幾百ノ代議士諸君ガ、其實行
ノ無イノニ、ケロリ閑トシテ居ラレルノハ
一體ドウ云フ譯デアルカ、マサカ諸君ハ御
忘ニナッタノデハアルマイト思ヒマス、若
シ斯ノ如キ決議ガ一片ノ空文ニ終ルト云フ
コトデアルナラバ、私怪シカラヌ問題ガ起
ルデアラウト思フ、衆議院ノ院議トシテ或
ハ出征軍人ノ慰問モシテ居リマス、時ニ賀
表ヲ呈シテ居ルコトモアリマス、時ニ弔詞
ヲ述ベテ居ルコトモアリマス、現ニ只今野
田君或ハ山口君ニ對シテ、院議ヲ以テ弔意
ヲ表シテ居リマス、若モ此衆議院ノ決議ナ
ルモノガ一片ノ空支デアルナラバ此敬禮
ヲ受ケラレタ方ハ非常ニ失望サルヽコトヽ
思ヒマス、將來モ亦折角ノ院議ナルモノガ
甚ダ效力ノ無キモノニ終ルコトヲ私非常ニ
恐レマスガ爲ニ、此事ニ付テ一言御尋致ス
次第デアリマス、議長ノ御答ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=11
-
012・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 田中君ニ····(此時
發言者多シ)靜肅ニ願ヒマス-田中君ニ
御答ヲ致シマス、前議會ニ於キマシテ梅田
寛一君ニ對スル諸君ノ御決議ニナリマシタ
事ハ其時ニ議長ヨリ直ニ梅田君ニハ御通
達ヲ致シテ置キマシタ、之ニ對シマシテ梅
田君ヨリハ、之ニ應ズルコトガ出來ナイト
云フ所ノ御囘答ガアリマシタ、時既ニ議會
ハ閉會ヲ告ゲマシタ時デゴザイマシテ、之
ヲ諸君ニ御報告スル暇ハナク、公報ヲ以テ
諸君ニハ御知ラセヲシテ置イタ次第デアリ
マス、尙ホ之ニ關シマシテ田中君ノ御述ニ
ナリマシタコトハ、大體田中君ノ御意見ト
存ジマス、若シ何等カ御意見ガゴザイマス
ルナラバ、相當ノ手續ヲ御執リヲ願ヒタイ
ト思フノデアリマス、尙ホ之ニ關シマシテ
服裝ノ事ハ一ツノ例トシテ御述ニナッタコ
トデアリマスカラ、彼此レ今申上ゲル必要
モナイト思ヒマスルガ、此服装ノ事ハ成程議
長ハ彼此レヤカマシク申スヤウデアリマス
ルや、是ハ法規先例ニ於テ決ァテ居リマス
事デアリマスカラ、左樣ニ御諒承ヲ請ヒマ
ス-是ヨリ日程ニ入リマス、日程第一、
出版物法案ノ第一讀會ヲ開キマス、安達內
務大臣代理
第出版物法案(政府提出)第一讀會
出版物法案
出版物法目次
第一章總則
第二章新聞紙及雜誌
第三章普通出版物
第四章出版物掲載事項ノ制限
第五章行政處分
第六章罰則
附則
出版物法
第一章總則
第一條本法ニ於テ出版物ト稱スルハ發
賣頒布ノ目的ヲ以テ機械的又ハ化學的
方法ニ依リ複製セラレタル文書圖畫ヲ
謂フ
第二條出版物ヲ分チテ左ノ三種トス
新聞紙一定ノ題號ヲ用ヒ七日以
內ノ期間ヲ隔テテ時期ヲ定メ又ハ定
メズ繼續シテ發行スルモノ
二雜誌一定ノ題號ヲ用ヒ三月以內
ノ期間ヲ隔テテ時期ヲ定メ又ハ定メ
ズ繼續シテ發行スルモノニシテ前號
ニ該當セザルモノ
三普通出版物前二號ニ該當セザル
モノ
新聞紙又ハ雜誌ト同一題號ヲ用ヒ臨時
發行スル出版物ハ其ノ新聞紙又ハ雜誌
ト看做ス
第三條本法ニ於テ發行者ト稱スルハ出
版物ノ發賣頒布ヲ管理スル者ヲ謂フ
第四條本法ニ於テ著作者ト稱スルハ文
書圖畫ヲ著述シ又ハ作製スル者ヲ謂フ
他人ノ演述ノ筆記ニ付テハ筆記者ニ於
テ之ヲ出版物ニ揭載シ又ハ揭載セシメ
タルトキハ筆記者ヲ以テ著作者ト看做
ス但シ演述者ニ於テ特ニ其ノ揭載ノ承
諾ヲ與ヘタル場合ニ於テハ演速者モ亦
著作者タルコトヲ失ハズ
著作物ノ編纂ニ付テハ編纂者ヲ以テ著
作者ト看做ス但シ原著作者ニ於テ特ニ
其ノ編纂ノ承諾ヲ與ヘタル場合ニ於テ
ハ原著作者モ亦著作者タルコトヲ失ハ
ズ
飜譯ニ付テハ飜譯者ヲ以テ著作者ト看
做ス
學校、會社、協會其ノ他ノ團體ヲ著作
者名義トスル普通出版物ニ付テハ其ノ
學校、會社、協會其ノ他ノ團體ヲ代表
スル者ヲ以テ著作者ト看做ス
第五條本法ニ於テ編輯者ト稱スルハ新
聞紙又ハ雜誌ノ編輯ヲ管理スル者ヲ謂
フ
第六條官廳ニ於テ發行スル出版物(第
二十四條ニ揭グルモノヲ除ク)ニ付テ
ハ發行ト同時ニ製本二部ヲ內務省ニ送
付スベシ
第二章新聞紙及雜誌
第七條新聞紙又ハ雜誌ヲ發行セントス
ル者ハ左ノ事項ヲ內務大臣ニ屆出ヅベ
シ
-題號
二時事ニ關スル事項ノ掲載ノ有無
三發行ノ時期
四第一回發行ノ年月日
五發行所及印刷所ノ名稱及所在地
六發行者及編輯者(新聞紙又ハ雜誌
ノ版ニ依リ其ノ編輯者ヲ異ニスルト
キハ其ノ版別編輯者)ノ住所、氏名
及生年月日
前項ノ屆出ハ文書ヲ以テシ第一囘發行
ノ日前七日目迄ニ發行所所在地所轄ノ
道府縣廳(東京府ニ在リテハ警視廳以
下之ニ同ジ)ニ之ヲ差出スベシ
第八條前條屆出事項ノ變更ニ付テハ發
行者ハ之ヲ豫知シ得ル場合ニ於テハ變
更前豫メ、之ヲ豫知シ得ザル場合ニ於
テハ變更後五日以內ニ前條第二項ノ例
ニ依リ之ヲ內務大臣ニ屆出ヅベシ
前項ノ規定ニ依ル發行者變更ノ屆出ハ
其ノ變更前ニ在リテハ新ニ發行者タラ
ントスル者ニ於テ發行者ト連署シテ之
ヲ爲シ其ノ變更後ニ在リテハ新ニ發行
者ト爲リタル者ニ於テ之ヲ爲スベシ
發行者又ハ編輯者所在不明ト爲リ又ハ
本法施行ノ地域外ニ旅行スルコト一月
ニ及ブトキハ發行者又ハ編輯者タルコ
トヲ罷メタルモノト看做ス
第九條左ニ揭グル者ハ新聞紙又ハ雜誌
ノ發行者又ハ編輯者タルコトヲ得ズ
一本法施行ノ地域內ニ住所ヲ有セザ
ル者
二陸海軍軍人ニシテ現役中ノ者未
ダ入營セザル者及歸休中ノ者ヲ除
ク)又戰時若ハ事變ニ際シ召集中ノ
者
三未成年者、禁治產者又ハ準禁治產
者
四禁錮以上ノ刑ノ執行中ノ者
第十條時事ニ關スル事項ヲ揭載スル新
聞紙又ハ雜誌ノ發行者ハ其ノ發行前保
證トシテ新聞紙ニ在リテハ左ノ金額、
雜誌ニ在リテハ其ノ半額ヲ發行所所在
地所轄ノ道府縣廳ニ納ムベシ
東京市、大阪市及其ノ市外三里以
內ノ地ニ於テハ二千圓
二人口七萬以上ノ市及其ノ市外一里
以内ノ地ニ於テハ千圓
三其ノ他ノ地方ニ於テハ五百圓
前項ノ保證金ハ命令ヲ以テ定マル種類
ノ有價證劵ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第十一條保證金ニ對スル權利義務ハ發
行者變更ノ場合ニ於テハ新發行者之ヲ
承繼ス
第十二條保證金ハ發行ヲ廢止シタルト
キニ非ザレバ其ノ還付ヲ請求シ又ハ其
ノ債權ヲ讓渡スルコトヲ得ズ但シ國稅
徵收法及之ヲ準用スル法令ヲ適用シ又
ハ新聞紙若ハ雜誌ニ揭載シタル事項ニ
基ク罪ニ因ル損害賠償ノ判決ヲ執行ス
ルコトヲ妨ゲズ
第十三條保證金ヲ納ムル新聞紙又ハ雜
誌ノ發行者又ハ編輯者ガ其ノ納付スベ
キ罰金、科料又ハ刑事訴訟費用ノ確定
ノ日ヨリ十日間以内ニ之ヲ完納セザル
トキハ檢事又ハ檢察官ハ保證金ヲ以テ
之ニ充ツルコトヲ得
第十四條保證金ニ關額ヲ生ジタルトキ
ハ地方長官(東京府ニ在リテハ警視總
監以下之ニ同ジ)ハ之ヲ其ノ新聞紙又
ハ雜誌ノ發行者ニ通知スベシ
發行者前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ其
ノ日ヨリ七日以内ニ保證金ノ闕額ヲ塡
補スベシ
第十五條新聞紙又ハ雜誌ノ發行ヲ廢止
シタルトキハ發行者ハ遲滯ナク第七條
第二項ノ例ニ依リ其ノ旨ヲ內務大臣ニ
屆出ヅベシ
新間紙又ハ雜誌ハ其ノ發行ノ期日ヲ經
過スルモ之ヲ發行セザルコト新聞紙ニ
在リテハ二月、雜誌ニ在リテハ四月ニ
及ブトキハ其ノ發行ヲ廢止シタルモノ
ト看做ス
第十六條新聞紙又ハ雜誌ノ印刷所ハ之
ヲ本法施行ノ地域外ニ設クルコトヲ得
ズ
第十七條新聞紙又ハ雜誌ニハ發行者及
編輯者ノ氏名、發行所及印刷所ノ名稱
及所在地竝ニ發行ノ年月日ヲ記載スベ
シ
第十八條新聞紙又ハ雜誌ノ發行者ハ新
聞紙ニ在リテハ發行ト同時ニ、雜誌ニ
在リテハ發行前日迄ニ内務省ニ二部、
發行所所在地所轄ノ道府縣廳、地方裁
判所檢事局及區栽判所檢事局ニ各一部
ヲ納ムベシ
同一號ノ新聞紙又ハ雜誌ニシテ其ノ內
容ヲ異ニスルモノニ付テハ其ノ發行ノ
部度前項ノ手續ヲ爲スベシ
第十九條新聞紙又ハ雜誌ニ揭載シタル
事項ニ付其ノ事項ニ關スル本人又ハ直接
關係者ヨリ正誤ノ請求又ハ正誤書若ハ
ハ辯駁書ノ揭載ノ請求アリタルトキハ其ノ
請求ヲ受ケタル後日刊ノ新聞紙ニ在リテ
ハ第三囘迄、其ノ他ノ新聞紙又ハ雜誌ニ
在リテハ第二回迄ノ發行ノ新聞紙又ハ雜
誌ニ於テ正誤ヲ爲シ又ハ正誤書若ハ辯駁
書ノ全文ヲ揭載スベシ但シ正誤若ハ辯駁
ノ趣旨法令ニ違反スルトキ、請求者ノ
住所及氏名ヲ明記セザルトキ又ハ原文
揭載ノ日ヨリ六月ヲ經過シタル後請求
アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
正誤又ハ正誤書若ハ辯駁書ノ掲載ハ原
文ノ揭載セラレタルト同樣ノ場所ニ於
テシ且原文ニ於テ主トシテ用ヒラレタ
ルト同大ノ活字ヲ用フベシ
正誤書又ハ辯駁書ノ字數原文ノ字數ヲ
超過シタルトキハ其ノ超過シタル字數
ニ付發行者ノ定メタル普通廣告料ト同
一ノ料金ヲ請求スルコトヲ得
第二十條官報、新聞紙又ハ雜誌ヨリ轉
載シ又ハ抄錄シタル事項ニシテ官報、
新聞紙又ハ雜誌ニ於テ正誤ヲ爲シ又ハ
正誤書若ハ辯駁書ヲ掲載シタルトキハ
前條第一項ノ請求ナシト雖モ其ト官報、
新聞紙又ハ雜誌ヲ得タル後前條ノ例ニ
依リ正誤ヲ爲シ又ハ正誤書若ハ辯駁書
ヲ揭載スベシ但シ前條第三項ノ規定ハ
之ヲ適用スルノ限ニ在ラズ
第三章普通出版物
第二十一條普通出版物ヲ發行セントス
ルトキハ發行者ハ到達ニ要スベキ日數
ヲ除キ發行ノ日前三日目迄ニ製本二部
ヲ添へ之ヲ內務大臣ニ屆出ヅベシ改訂
曾減シテ普通出版物ヲ發行セントスル
トキ亦同ジ
前項ノ屆出ハ著作者ノ連署シタル文書
ヲ以テ之ヲ爲スベシ但シ著作者ノ死亡
其ノ他ノ事由ニ因リ連署ヲ得ルコト能
ハザルトキハ其ノ旨ヲ記載スベシ
第二十二條普通出版物ハ著作權者ヲ除
クノ外其ノ販賣ヲ以テ營業ト爲ス者ニ
非ザレバ之ヲ發行スルコトヲ得ズ但シ
營利ヲ目的トセザルモノニ付テハ此ノ
限ニ在ラズ
第二十三條普通出版物ニハ其ノ末尾ニ
發行者ノ住所及氏名、發行所及印刷所
ノ名稱及所在地竝ニ發行ノ年月日ヲ記
載スベシ
第二十四條書簡、定款、會則、事業報
〓、目錄、引札、張札、番附、諸種ノ
用紙、證書ノ類及寫眞ニ付テハ前三條
ノ規定ヲ適用セズ
第四章出版物揭載事項ノ制限
第二十五條出版物ニハ左ノ事項ヲ掲載
スルコトヲ得ズ
-皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆スル事項
二國體ヲ變革セントスル事項
三憲法上ノ政治組織ノ大綱ヲ不法ニ
變革シ又ハ私有財產制度ヲ否認セン
トスル事項
四軍事又ハ外交ノ機密ニ關シ帝國ノ
利益ヲ害スル事項
五犯罪ヲ煽動シ若ハ曲庇シ、犯罪事
實ニ付犯罪人ヲ賞恤シ又ハ刑事被告
人若ハ被疑者ヲ賞恤シ若ハ陷害スル
事項
六社會ノ不安ヲ惹起シ治安維持上重
大ナル影響ヲ及ボスベキ虚僞又ハ誇
大ノ事項
七亂倫、猥褻、殘忍其ノ他善良ノ風
俗ヲ害スル事項
第二十六條出版物ニハ公判開廷前ニ於
テ刑事事件ノ訴訟ニ關スル書類ノ內容
ヲ揭載シ又ハ公開ヲ停メタル訴訟ノ辯
論ヲ揭載スルコトヲ得ズ
第二十七條戰時、事變其ノ他特ニ必要
アル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ軍事又ハ外交ニ關スル事項ヲ出版物
ニ揭載スルコトヲ禁止シ又ハ制限スル
コトヲ得
第二十八條內務大臣ハ治安維持上重大
ナル影響ヲ及ポスノ虞アル事件ニ關シ
特ニ事項ヲ指示シテ之ヲ新聞紙又ハ雜
誌ニ揭載スルコトヲ禁止シ又ハ制限ス
ルコトヲ得
第二十九條陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ軍
事上ノ祕密ニ關シ特ニ事項ヲ指示シテ
之ヲ新聞紙又ハ雜誌ニ揭載スルコトヲ
禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第三十條外務大臣ハ外交上ノ祕密ニ關
シ特ニ事項ヲ指示シテ之ヲ新聞紙又ハ
雜誌ニ揭載スルコトヲ禁止シ又ハ制限
スルコトヲ得
第三十一條檢事又ハ檢察官ハ捜査中又
ハ豫審中ノ事件ニ關シ特ニ事項ヲ指示
シテ之ヲ新聞紙又ハ雜誌ニ揭載スルコ
トヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第五章行政處分
第三十二條第七條若ハ第八條ノ屆出ヲ
爲サズ若ハ虚僞ノ屆出ヲ爲シ又ハ第
十條第一項若ハ第十四條第二項ノ規定
ニ違反シテ新聞紙又ハ雜誌ヲ發行シタ
ルトキハ正當ノ屆出ヲ爲シ又ハ保證金
ヲ納メ若ハ塡補スル迄地方長官ハ其ノ
發行ヲ差止ムルコトヲ得
第三十三條內務大臣ハ第二十五條ニ揭
グル事項又ハ第二十七條若ハ第二十八
條ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反ス
ル事項ヲ出版物ニ揭載シタリト認ムル
トキハ其ノ事項ヲ揭載シタル箇所ヲ指
摘シテ(但シ已ムヲ得ザル場合ニ於テ
ハ其ノ一部ヲ指摘シテ)其ノ出版物ノ
發賣頒布ヲ禁止シ必要アル場合ニ於テ
ハ之ヲ差押フルコトヲ得
内務大臣ハ前項ノ規定ニ依リ差押へタ
ル出版物ニ付發行者ノ請求アルトキハ
第二十五條ニ揭グル事項又ハ第二十七
條若ハ第二十八條ノ規定ニ依ル禁止若
ハ制限ニ違反スル事項ヲ掲載シタル箇
所ヲ除キ其ノ出版物ヲ還付スルコトヲ
得但シ之ガ爲必要ナル費用ハ發行者ノ
負擔トス
第三十四條本法施行ノ地域外ニ於テ發
行スル新聞紙又ハ雜誌ニ對シ一年以內
ニ二囘以上前條第一項ノ處分ヲ爲シタ
ルトキハ內務大臣ハ其ノ新聞紙又ハ雜
誌ヲ本法施行ノ地域内ニ輸入シ又ハ移
入スルコトヲ禁止ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ禁止セラレタル新聞
紙又ハ雜誌ヲ輸入シ又ハ移入シタルト
キハ地方長官ハ之ヲ差押フルコトヲ
得
第三十五條第五十六條第一項ノ規定ニ
依ル禁止ニ違反シテ新聞紙又ハ雜誌ヲ
發行シタルトキハ地方長官ハ之ヲ差押
フルルコトヲ得
第三十六條內務大臣ハ普通出版物ヲ差
押フル場合ニ於テ必要アルドキハ其ノ
原版ヲ差押フルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ差押へタル原版ニ付
テハ第三十三條第二項ノ規定ヲ準用ス
第三十七條本法ニ依リ差押ヘタル出版
物又ハ原版ニシテ一年以上其ノ差押ヲ
解除セラレザルモノハ差押ヲ執行シタ
ル官廳ニ於テ之ヲ處分スルコトヲ得
第六章罰則
第三十八條第七條ノ屆出ヲ爲サズシテ
新聞紙又ハ雜誌ヲ發行シタルトキハ發
行者ヲ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十九條第九條各號ノ一ニ該當スル
者新間紙又ハ雜誌ヲ發行シ又ハ編輯シ
タルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十條第十六條ノ規定ニ違反シタル
トキハ發行者ヲ五百圓以下ノ罰金ニ處
ス
第四十一條第十七條又ハ第二十三條ノ
規定ニ違反シテ記載ヲ爲サズ又ハ虛僞
ノ記載ヲ爲シタルトキハ發行者ヲ百圓
以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第四十二條第十八條ノ規定ニ違反シテ
新聞紙又ハ雜誌ノ納本ヲ爲サザルトキ
ハ發行者ヲ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十三條第十九條第一項又ハ第二項
ノ規定ニ違反シタルトキハ編輯者ヲ三
百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十條ノ規定ニ違反シタルトキハ編
輯者ヲ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處
ス
第四十四條第二十一條ノ屆出ヲ爲サズ
又ハ虚僞ノ屆出ヲ爲シテ普通出版物ヲ
發行シタルトキハ發行者ヲ五百圓以下
ノ罰金ニ處ス
第四十五條第二十二條ノ規定ニ違反シ
タル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十六條第二十五條第一號又ハ第二
號ニ該當スル事項ヲ出版物ニ揭載シタ
ルトキハ發行者編輯者及著作者ヲ三年
以下ノ禁錮ニ處ス
第四十七條第二十五條第三號ニ該當ス
ル事項ヲ出版物ニ揭載シタルトキハ發行
煮、編輯者及著作者ヲ二年以下ノ禁錮
二度六、
第四十八條第二十五條第四號ニ該當ス
ル事項ヲ出版物ニ揭載シタルトキハ發
行者、編輯者及著作者(新間紙又ハ雜誌
ニ在リテハ其ノ揭載事項ニ署名シタル
著者以下之ニ同ジ)ヲ一年以下ノ禁錮
又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十九條第二十五條第五號乃至第七
號ニ該當スル事項ヲ出版物ニ掲載シタル
トキ又ハ第二十六條ノ規定ニ違反シタ
ルトキハ發行者、編輯者及著作者ヲ六
月以下ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金
ニ處ス
第五十條第二十七條ノ規定ニ依ル禁止
又ハ制限ニ違反シタルトキハ發行者、
編輯者及著作者ヲ一年以下ノ禁錮又ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
第五十一條第二十八條乃至第三十一條
ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反シタ
ルトキハ發行者及編輯者ヲ六月以下ノ
禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第五十二條第三十二條ノ規定ニ依ル差
止命令ニ違反シテ新聞紙又ハ雜誌ヲ發·
行シタルドキハ發行者ヲ五百圓以下ノ
罰金ニ處ス
第五十三條第三十三條第一項ノ規定ニ
依ル禁止ニ違反シタルトキハ發行者ヲ
一年以下ノ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ
處ス情ヲ知リテ其ノ出版物ヲ販賣頒布
シタル者ハ六月以下ノ禁鋼又ハ五百圓
以下ノ罰金ニ處ス
第三十四條第一項ノ規定ニ依ル禁止ニ
違反シタル者及情ヲ知リテ其ノ出版物
ヲ輸入シ、移入シ又ハ販賣頒布シタル
者ハ前項ニ準ジ之ヲ處罰ス
第五十四條第三十三條第一項、第三十
四條第二項、第三十五條又ハ第三十六
條第一項ノ規定ニ依ル差押ノ執行ヲ妨
害シタル者ハ六月以下ノ禁錮又ハ五百
圓以下ノ罰金ニ處ス
第五十五條出版物ニ揭載シタル事項ニ
付名譽ニ對スル罪ノ公訴ノ提起アリタ
ル場合ニ於テ其ノ私行ニ渉ルモノヲ除
クノ外被告人ニ於テ其ノ事實ナルコト
及其ノ掲載ガ惡意ニ出デズ專ラ公益ノ
爲ニシタルモノナルコトヲ證明シ得タ
ルトキハ其ノ行爲ヲ罰セズ
出版物ニ揭載シタル事項ニ基ク名譽ニ
對スル不法行爲ニ因ル損害賠償ノ訴ニ
於テ其ノ私行ニ涉ルモノヲ除クノ外被
告ニ於テ前項ノ事項ヲ證明シ得タルト
キハ被告ハ損害賠償ノ義務ヲ免ル
第五十六條新聞紙又ハ雜誌ニ揭載シタ
ル事項ニ付第四十六條ノ規定ニ依リ處
罰スル場合ニ於テ裁判所ハ其ノ新聞紙
又ハ雜誌ノ發行ヲ禁止スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル禁止ニ違反シタルト
キハ發行者ヲ二年以下ノ禁錮又ハ二千
圓以下ノ罰金ニ處ス情ヲ知リテ其ノ新
間紙又ハ雜誌ヲ販賣頒布シタル者ハ六
月以下ノ禁鋼又ハ五百圓以下ノ罰金ニ
處ス
第五十七條本法ニ揭グル罪ニハ刑法併
合罪ノ規定ヲ適用セズ
第五十八條本法ニ揭グル罪ノ時效ハ一
年ヲ經過スルニ因リテ完成ス
第四十六條乃至第五十一條ノ罪ニ付テ
ハ時效期間ハ發行ノ日ヨリ之ヲ起算
ス
附則
第五十九條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第六十條出版法及新聞紙法ハ之ヲ廢止
ス
第六十一條本法施行後ニ於テ發行スル
出版物ニ付從前ノ規定ニ依リ爲シタル
屆出ハ之ヲ本法ニ依リ爲シタル屆出ト
看做ス
第六十二條本法施行ノ際現ニ新聞紙法
ニ依リ發行スル新聞紙ニシテ本法ノ新
聞紙又ハ雜誌ニ該當スルモノハ之ヲ第
七條ノ規定ニ依リ屆出ヲ爲シタル新聞
紙又ハ雜誌ト看做ス
第六十三條前二條ノ新聞紙又ハ雜誌ノ
發行者ハ本法施行ノ日ヨリ三十日以内
ニ第七條第一項第六號ノ事項ヲ屆出ヅ
ベシ
第六十四條本法施行ノ際現ニ出版法ニ
依リ發行スル雜誌ニシテ本法ノ新聞紙
又ハ雜誌ニ該當スルモノニ付テハ其ノ
發行者ハ本法施行ノ日ヨリ三十日以内
ニ第七條ノ例ニ依リ屆出ヲ爲スベシ但
シ第一回發行ノ年月日ヲ記載スルコト
ヲ要セズ
第六十五條本法施行前出版法又ハ新聞
紙法ニ依リ爲シタル處分ハ本法中之ニ
相當スル處分ニ關スル規定アル場合ニ
於テハ之ヲ本法ニ依リ爲シタル處分ト
看做ス
本法施行前新聞紙法ニ依リ爲シタル發
行ノ禁止ハ之ヲ本法ニ依リ爲シタル發
行ノ禁止ト看做ス
第六十六條本法施行ノ際新聞紙又ハ雜
誌ニ付新聞紙法ニ依リ納メタル保證金
アルトキハ之ヲ本法ニ依リ納メタル保
證金ト看做ス
第六十七條本法施行前ニ發行シタル出
版物ニ付テハ第十九條、第二十條及第
四十三條ノ規定ハ之ヲ適用セズ仍從前
ノ例ニ依ル
第六十八條本法施行前內務大臣ニ於テ
出版法又ハ新聞紙法ニ依リ差押ヘタル
出版物及原版ニ付テハ第三十三條第二
項及第三十六條第二項ノ規定ハ之ヲ適
用セズ
第六十九條他ノ法律中出版業ニシテ新
聞紙法ニ依ルモノニ適用スル規定ハ出
版業ニシテ本法第二章ノ規定ニ依ルモ
ノニ之ヲ適用ス
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=12
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013・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 現行ノ出版法及
新聞紙法ハ制定ヨリ此方前者ニ在リテハ
既ニ三十餘年、後者ニ在リテハ十數年ヲ經
過シテ居リマシテ、此間ニ於ケル社會ノ進
步文化ノ發達ニ伴ハナイヤウニナッタノデ
アリマス、仍テ政府ニ於キマシテハ時代ノ
要求ニ適合スルヤウ、右兩法改正ノ必要ヲ
感ジマシテ、年來調査〓究ヲ重ネテ居リマ
シタガ、其結果出版物法及新聞紙法ノ全體
ニ亙リマシテ改正ヲ行ヒ、兩者ヲ併合統一
シタル新法律ヲ制定スル事ノ適當ナルヲ認
メマシテ、昨年成案ヲ得テ前議會ニ提出致
シマシテ、其協賛ヲ求メタノデアリマス
ガ、遂ニ審議ヲ了スルニ至ラナカッタノデ
アリマス、併ナガラ出版法及新聞紙法ノ改
正ノコトハ、前述ノ理由ニ依リ極メテ必要
ナモノデゴザイマスカラ、再ビ玆ニ出版物
法案ヲ提出シテ御協賛ヲ希フコトニ致シタ
ノデアリマス(發言者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=13
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014・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=14
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015・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) (類)而シテ今回
提案致シマシタル法案ノ内容ハ、大體前議
會ニ提出シマシタモノト同樣デアリマス
ガ、其數箇條ニ付テハ、其後ニ於ケル調査〓
究ノ結果、多少內容ノ變更ヲ爲スヲ適當ト
認メタルノミナラズ、尙ホ規定中ノ辭句ニ
付テモ變改スル方ガ可ナルモノガアリマシ
タノデ、右ノ範圍ニ於テ昨年ノ法案ニ變更
ヲ加ヘマシタノデアリマス、就キマシテハ
茲ニ本案ノ要項ヲ述べ、立法趣旨ノ〓要ヲ
說明スルコトニ致シマス、第一ハ出版法及
新聞紙法ヲ合併シテ、單一ノ法律ニ統一規
定シタコトデアリマス、出版法及新聞紙法
ハ孰レモ出版物ノ取締ニ關スル法律ナルニ
拘ラズ、其制定ノ時ヲ異ニシテ居リマス結
果、罰則其他ノ點ニ於テ著シキ不權衡ノ規
定ガアリマス、而モ兩法律ガ併存スルコト
ハ、單ニ其沿革ニ基クニ過ギナイモノト認
ムルノ外、他ニ特別ノ事由ノ存スルモノア
ルヲ認ムルコトガ出來ナイノデアリマス、
仍テ此際兩法律ヲ統一規定シ、且ツ現時ノ
社會通念ニ基キマシテ、出版物ヲ分ッテ新
聞紙、雜誌及普通出版物ノ三種トナシ、其
二者乃至三者ニ同様ナル事項ニ付テハ、努
メテ共通ノ規定ヲ設ケマシテ、以テ上記ノ
缺點ヲ是正スルコトヽ致シマシタノデアリ
マス、第二ハ出版物ニ關スル責任者ノ範圍
ヲ發行者、編輯者及著作者ノ三者ニ限局致
シマシテ、現行法ニ於テ責任者ト定メラレ
タル者ノ中、出版物ノ印刷人竝ニ新聞紙、
雜誌ノ實際編輯擔當者等ヲ除外シ、尙ホ新
聞紙、雜誌ノ持主ニ關スル一切ノ規定ヲ削
除シタコトデアリマス、是ハ蓋シ從來ノ取
締ノ實績ニ徵シマシテ、新聞紙、雜誌及出
版界ノ實情ニ適シ、且ツ取締上ニ於テモ支
障ナシト認メタルニ依ルノデアリマス、第
三ハ普通出版物ノ發行ニ關スル出版業者ノ
保護規定ヲ修正シタコトデアリマス、出版
業者ノ保護規定ニ付キマシテハ、昨年衆議
院ノ委員會ニ於テモ種々ノ論難ガアリ、且
ツ實際上之ヲ强行スルトキハ現在各種ノ
團體等ニ於テ發行スル普通出版物ノ大部分
ハ殆ド總テ違法トナリマシテ、條理上不
穩當ノ結果ヲ招來スル場合ガ少クナイノデ
アリマスカラ、今度ノ法案ニ於キマシテ
ハ此規定ニ但書ヲ設ケマシテ、規定本來
ノ立法趣旨ヲ甚シク害セザル範圍ニ於テ、
團體等ノ出版制限ヲ緩和シテ、兩者ノ利害
ノ調和ヲ圖ッタノデアリマス、第四ハ出版
物ニ揭載スルコトヲ禁止シ、又ハ制限スル
事項ハ原則トシテ成ベク具體的、且ツ制
限的ニ列擧シタコトデアリマス、是ハ實ニ
本法制定ノ大眼目ノ一ツデアリマス、由來
此點ハ出版法及新聞紙法ノ改正要求中ニ於
テ、最モ重要ニシテ且ツ緊急ヲ要スル問題
トシテ、論議サレテ來タ所デアリマスカ
ラ、政府ニ於キマシテモ、深甚ノ考慮ヲ費
シテ、出版物ニ對スル揭載ノ禁止又ハ制限
事項ニ付テハ、現行法ノ安寧秩序ヲ紊シ、
風俗ヲ害スル事項ト云フガ如キ抽象的辭句
ハ之ヲ排シテ、成ベク具體的ニ、且ツ制限
的ニ、標準ヲ揭ゲテ以テ廣ク社會ニ對シ豫
メ其據ルベキ所ヲ明元スルト共ニ、取締ノ
公正適切ナランコトヲ期シタノデア。リマ
ス、第五ハ行政處分ヲ公明ニ行ヒ、且ツ差
押ニ依シテ受クル損害ヲ努メテ尠少ナラシ
ムルコトデアリマス、出版物ニ對スル發賣
頒布ノ禁止處分ヲ爲スニ當リマシテハ、常ニ
原則トシテ其處分ノ原因トナリタル事項ヲ
掲載シタル箇所ヲ指摘スルコトヽシタルノ
ミナラズ、一旦差押ヘタル出版物ト雖モ
其發賣頒布ニ妨ナキ部分ニ付テハ、發行者
ヨリノ請求アリタル時ハ、之ヲ原本ヨリ分
割シテ還付スルコトヲ得ルノ制度ヲ創設シ
タノデアリマス、第六ハ新聞紙及雜誌ニ關
スル正誤制度ヲ改善シタコトデアリマス、
現行新聞紙法ニ於ケル本制度ノ實效ナキコ
トニ付テハ、由來定評アル所デアリマスル
カラ、正誤文揭載ノ場所ニ關シテ新ニ規定
ヲ設ケタルト同時ニ、其揭載ノ期日其他ニ
付テハ、寧口現行法ヨリモ制限ヲ緩和シ
テ、尙ホ正誤ノ義務違反ノ罪ヲバ非親告罪ト
ナシ、以テ將來本制度ガ一層實效ヲ擧ゲン
コトヲ期シタノデアリマス、第七ハ出版
物ノ揭載事項ニ基ク名譽ニ對スル不法行爲
ニ因ル、損害賠償ニ關スル免責ノ場合ヲ擴
張シタコトデアリマス、現行法ハ此場合ニ
於ケル免責ヲ公訴ニ關聯スル時ニ限クテ居
リマス、併ナガラ同一ノ不法行爲ニ基ク損
害賠償ノ責任ヲ、附帶私訴ト獨立ノ民事訴
訟トニ依リ區別スルハ條理ニ合ヒマセヌカ
ラ、本法案ニ於キマジテハ此點ヲ改正シタ
ノデアリマス、第八ハ發行禁止ノ場合ヲ極
メテ狹ク限定シタコトデアリマス、發行禁
止ノ處分ハ新聞紙、雜誌ニ對スル最モ重大
ナル制裁デアルカラ、重大ナル原因ニ基ク
止ムヲ得ザル場合ニノミ行フベキモノト信
ジマシタカラ、本法案ハ此場合ヲ現行法ヨ
リモ著シク狹ク限定シテ、新聞紙、雜誌ガ皇
室ノ尊嚴ヲ冒瀆スル事項、又ハ國體ヲ變革
セントスル事項ヲ掲載シタルニ因リ、處罰
セラレタル場合ニ限リタルノデアリマス、
第九、罰則ニ付キマシテハ之ヲ現行法ニ比
シテ、罰金額ヲ一様ニ高メタルコトデアリ
やっ、是ハ蓋シ今日ニ於テハ現行法所定ノ
如キ罰金額ヲ以テシテハ、刑罰輕キニ失シ
テ科刑ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイト認
メタルニ依ルモノデアリマス、本法案ハ罰
金刑ニ付テハ一樣ニ右ノ如キ方針ヲ採用シ
マシタガ、ソレト同時ニ一面ニ於テハ新聞
紙雜誌ノ單純ナル手續違反ニ付テハ、現
行法ノ如ク原則トシテ直ニ處罰ヲ以テ臨ム
コトナク、一應ハ地方長官ノ差止命令ヲ以
テ之ヲ取締リ、尚ホ其差止命令ニ違反シタ
ル場合ニ限ッテ之ヲ處罰スルコトヽシテ、
不必要ニ過酷ナル處罰ヲ行ハナイヤウニ致
シタノデアリマス、第十ハ新聞紙ニ關スル
罪ニ對シテ、一年ノ短期時效ヲ設ケタコト
デアリマス、現行出版法ニハ出版ニ關スル
犯罪ニ付キ、一年ノ時效ヲ規定シテアリマ
スケレドモ、新聞法ニ於テハ全然其規定ガ
ナク、其間權衡ヲ失シテ居リマスガ故ニ、
本法案ニ於テハ總テノ出版物ニ對シ、一年
ノ短期時效ヲ設ケタノデアリマス、以上ガ
本法案ニ於テ現行法ノ規定ヲ改正セントス
ル主ナル事項デアリマス、何卒御審議ノ上
御協賛アランコトヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=15
-
016・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ數名
ノ質疑ノ通告ガアリマス、星島二郞君
〔星島二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=16
-
017・星島二郎
○星島二郞君 今回提案サレマシタル出版
物法案ハ、私共多年此改正ヲ望ンデ居ッタ者
デアリマシテ、殊ニ私個人ニ於キマシテハ
既ニ三度此演壇ニ立チマシテ此改正ノ提案
ヲ致シタ來歷ヲ持シテ居ル者ト致シマシテ、
提案其モノニ對シマシテハ私ハ喜ブ一人デ
アリマス、前議會ニ於キマシテ、是ガ折角出
マシタケレドモ、審議未了ニ終リマシテ、今
囘多少ノ修正ヲ加ヘラレテ茲ニ提案サレタ
コトハ、提案サレタト云アコトニ對シマシ
テハ私ハ先程申上ゲタヤウニ喜ブ次第デ
アリマス、蓋シ明治四十三年以來、此新聞紙
法竝ニ出版物法ガ度々、或ハ松田源治君、或
ハ故前川虎造君、其他ヨリ殆ド議會ノ度每
ニ新聞紙法ノ改正ヲ叫バレテ居ッタノデア
リマシテ、其意味ニ於キマシテ私ハ茲ニ出
版物法ノ改正サレルト云フコトハ意義ア
ルコトヽ思フノデアリマス、蓋シソレ等ノ
多クノ言論ヲ見テ見マスト云フト、現行法ヨ
リモ、ヨリ一層言論ノ自由ヲ尊重セシメタ
イ此前提ヲ以テ吾々ハ希望シテ行シタノ
デアリマス、然ルニ本案ヲ見マスト云フト
成程法文ノ體栽其他ニ付キマシテハ、當局
ノ苦心ハアリ〓〓ト見ヱルノデアリマス、
私自身モ一度之ヲ起草シテ見マシタ經驗カ
ラ、其實ニ苦心ノ存スル所ハ非常ニ私共ハ
御同情ヲ申スノデアリマスルガ、吾々ノ目
的ハ現行新聞紙法ヨリモ、モット自由ニセ
シメタイ、此前提ヲ以テ進メテ行ク考デア
リマスルガ、甚ダ遺憾ナ事ハ、今囘提出サ
レマシタル條文ヲ見マスト云フト、或點ニ
於キマシテハ寧口現行法ヨリモ却テ言論ノ
自由ヲ束縛スルヤウナ箇所ガ多々見ユルノ
デアリマス、ソレ等ノ點ニ付キマシテ極メ
テ重要ナル一二點ヲ此機會ニ於キマシテ質
問シテ見タイト思フノデアリマス、第一ハ
保證金ノ問題デアリマス、御互ヒ此立憲政
治ニ於キマシテ、最モ大切ナルノハ言論ノ
自由デアル、自由自在ニ文章モ書ケレバ演
說モシタイ、其所ニ所謂立憲政治ノ根本ガ
アルト思フノデアリマスガ、在來ノ新聞紙
法ニ於キマシテモ相當ノ保護金ヲ納メテ居
ル、今回ノ改正案ニ付キマシテモ一層ニ其
額ヲ土セテアルノデアリマス、一體此金ヲ
納メテ物ヲ言フト云フ此精神ガ、私ハ非常
ニ立憲ノ本義ト反シテ居ル、今日ノ各國ノ
立法例ヲ見マシテモ、多分一箇國トシテ金
ヲ納メテ物ヲ言フト云フ制度ハ無イダラウ
ト思フノデアリマス、但シ全然此保證金ヲ
取ルト云フト、所謂濫發ノ弊ニ陷ヲテ取締
ニ困ル、何カ政府ニ於キマシテハ金ヲ納メ
ナイデ、而モ此濫發ヲ防グヤウナ名案ハ御
考ハナカッタノデアラウカ、唯〓取締ニ困ル
カラ保證金ヲ納メサスト云フコトデハ、私
共ハ此改正ノ要點ニ甚ダ遺憾ヲ感ズルノデ
アリマシテ、殊ニ千圓ヲ二千圓ニ增シ、其
他地方ニ於キマシテモ增額サレテ居ルノデ
ゴザイマスルガ、唯〓面倒臭ヒ、取締ガ困
ルト云フ意味ナラバ一體立憲制、議會制、
其モノデモ卽チ面倒ナ事デアリマスカラ、
是ハ若シ如何ニ面倒デアッテモ、取締ニ困ッ
テモ、立憲ノ本義ニ依シテ寧ロ之ヲ撤廢ス
ルノガ本當デハナイカ、斯ウ云フヤウニ考
ヘルノデアリマスノデ、此點ニ付キマシテ
政府ノ御答辯ヲ煩シタイト思フノデアリマ
スソレカラ今囘ノ改正案ハ前議會ト同樣
ニ、揭載ノ禁止事項ガ列擧主義ニナッテ居
ルノガ一ツノ進步ト信ズルノデアリマスル
ガ、其中ノ第二十五條ノ第三項ニ、昨年提
案サレマシタルモノト、今回出サレタルモ
ノトノ間ニ、二字此字ガ少イノデアリマス、
私ハ初メ之ヲ見マシタトキニ、一寸是ハ「ミ
スプリント」デハナイカト思シテ調ベタ所
ガ、「ミスプリント」デハナイ、文章ガ變ッテ
居ル、卽チ「憲法上ノ政治組織ノ大綱ヲ不
法ニ變革シ又ハ私有財產制度ヲ否認セント
スル事項」、是ハ書イテハナラナイ、斯ウア
ルノデアリマス、昨年ノハ此「不法ニ」ト云
フコトガ、憲法上ノ政治組織ノ大網ト私有
財產制度、兩方ヲ不法ニ變改スルトキニハ
駄目ダト斯ウ書イテアルノデス、所ガ今回
ノ分ハ、私有財產制度ヲ否認セントスル事
項ハ簡單デアリマシテ、「不法」ト云フ字ガ
取ッテアル、是ハ私ハ餘程問題デハナイカ、
勿論現在ニ於キマシテ私有財產制度ヲ否認
セントスルコトハ治安維持法ニモ觸レマ
セウシ、色々ナ意味ニ於キマシテ是ハ重大
ナルモノト思七マスルケレドモ、今後單ニ
新聞紙ノミナラズ、一般ノ普通出版物ニ於
井マシテ、學問ノ〓究上此私有財產制度ヲ
否認セヌマデモ、之ニ制限ヲ加ヘントスル
研究ハ是ハ今日ノ所謂社會組織ノ進步ト
共ニ、非常ニ〓究サレナケレバナラヌ一ツ
ノ事項デナケレバナラナイ、現ニ今年度ニ
於キマシテモ、上院ノ多額議員ノ方達ガ、
土地國有ノ問題ヲ論議サレテ居ルデハアリ
マセヌカ、アレヲ若シ刊行物ニシテ出サレ
マシテ、之ヲ極端ニ取締ルナラバ、矢張之
ニ觸レルノデアリマス、ソコデ其私有財產
制度ヲ暴力若クハ不法ニ變改セントスル事
項是ハ勿論私共モイカヌコトヽ思フノデ
アリマスルケレドモ、學術的ニ〓究ヲシマシ
テ、或ハ學者ガ其〓究ヲ雜誌ニ之ヲ發表ス
ル、斯ウ云フコトサヘモ總テ極端ニ之ヲ嚴
罰スルト云フノハ、是ハ却テ殊ニ社會科學
研究ノ進步ヲ非常ニ止メルコトニナリハシ
ナイカ、此點ニ付キマシテ政府ハ昨年ノ
ハ「不法」ト云フ二字ガ附イテ居ッタガ、今
囘之ヲ取ラレタ根本ノ意思ハドウ云フ譯デ
アルノカ、此點ヲ御說明ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス、尙ホ第二十五條第六項ニ是
モ昨年ノ分ト少シバカリ文字ハ變シテ居リ
マスルガ、大體ニ於テ其精神ハ同ジ、卽チ
社會ノ不安ヲ惹起シ、治安維持上重大ナル
影響ヲ及ボスベキ虚僞又ハ誇大ノ事項、之
ヲ書イタラピシヤリトヤラレル、斯ウ云フ
コトニナッテ居ルノデアリマス、社會ノ不安
ヲ惹起シ、治安維持上重大ナル影響ヲ及ボ
スト云フコト、是ハ正ニ當局ノ認定如何ニ
依シテドンナ事デモ是ハ社會ノ不安ヲ惹起ス
ル、斯ウ考ヘレバヤラレテシマフノデアリ
マく、一警察官吏ニ斯ウ云フ茫漠タル文字
ヲ使ヒマシテ、サウシテ言論ノ自由ヲ壓ス
ルト云フコトハ、是ハ當局ノ手心如何ニ依ッ
テ-手加減如何ニ依ッテドンナ事デモ出
來ル譯デアリマスカラ、是ハ當然創除スベ
シト云フコトヲ、現ニ昨年ノ議會ニ於テモ
論ズル方ガアッタノデアリマス、尙ホ之ニ付
キマシテハ、第二十八條デ十分ニ取締ガ出
來ルト私ハ信ズルノデアリマスガ、社會ノ
不安、斯ウ云フ文字ハ一體ドウ云フ程度ノ
意味ヲ指サレテ政府ハ斯ウ云フ文字ヲ用ヒ
ラレタカ、又斯ウ云フ漠タル條文ニ依。シン
言論ヲ壓スルト云フコトハ、今日ノ現行新聞
紙法以上ニ政府ハ言論ノ自由ヲ束縛スルコ
トニナリハセヌカ、是等ニ付テ御辯明ヲ得
タイト思フノデアリマス、尙ホ私ハ此行政
處分ニ付キマシテ斯ウ云フ問題ガ-殊ニ
第六項ノ如キ、是ハ政府ノ手加減デ以テ社
會ノ不安ヲ起スト云フノデ、ピントヤラレテ
シマヒマスレバ今日ノ新聞雜誌ハ前トハ
違ヒマシテ、實ニ雜誌ニシマシテモ、モウ今
日ハ何十万ト云フ數字ガ出ルノデアリマシ
テ、僅ノ手加減ニ依リマシテ、之ヲ發行禁
止或ハ發賣頒布ヲ禁止サレルヤウニナリマ
スレバ、其經濟的損害ハ夥シイ、一旦止メ
ラレテ、後デ如何ニ悔ンデモ仕樣ガナイ、
ソコデ若シ此發行スル者ニ取リマシテ、不
當ニ取締ヲサレタ場合ニ於キマシテハ、行
政訴訟ヲ提起シマシテ、損害ヲ賠償スル
斯ウ云フ途ヲ開イタナラバ取締ノ方ニ於
キマシテモ十分注意ヲサルヽコトト思ヒマ
スカラ、私ハ行政處分ノ發賣頒布、禁止其
他ニ付キマシテ、行政訴訟ヲ起シ得ル途ヲ
何故開カレナカッタカ、此點ニ付キマシテ當
局ノ御辯明ヲ得タイト思フノデアリマス
大體此重要ナル點ニ付キマシテ御尋シ、尙
ホ微細ナル點ハ委員會ニ於テ十分御質疑ヲ
致シタイト思フノデアリマスガ、今一ツ去
年モ出マシタガ、多分議員側ヨリ發行權ニ
關スル改正法案ガ提出サルヽコトヽ思フノ
デアリマス、政府ハ出版權ト云ヒマスル
カ、今日ノ用語デハ發行權及著作權ガ隨分
入組ンダル改正ヲ要スベキ點ガ多イノデア
リマスガ、何カ今日既ニ用意ヲサレ、此改
正ニ著手ナサレテ居ルヤ否ヤ、是モ序ニ御
伺ヲシタイト思フノデアリマス、今一點、
今回ノ案ハ所謂出版物法案トナッテ居ルノ
デアリマシテ、在來ノ新聞紙法ト出版法ト
ヲ〓合シマシテ、一ツノ統一ヲ圖ラレタ、
是ハ私ハ體裁上誠ニ宜シイ、殊ニ法令ノ整
理カラシマシテ、大變結構ナ事ト自分ハ
思フノデアリマスガ、出版法案ト云フト、
出版權、發行權、著作權、斯ウ云フモノニ
直グ聯想ヲ起スノデアリマシテ、是ハ出版
物取締法案デハナイカト思フ、現在貴族院
ニ於キマシテ所謂宗〓法案ガ出テ居ル、宗
〓法案ト云フト何カ宗〓ノ根本ニ携シテ色
色ナ改正ガアルト思フノデアリマスガ、實
際ハ宗〓取締法、斯ウシタ方ガ私ハ適當卜
思フノデアリマスガ、是モ丁度其意味ニ於
キマシテ、出版物取締法ト斯ウ私ハ名ヲ變
ヘタ方ガ宜イト思フノデアリマスガ、ソレ
ハ偖措キマシテ、新聞紙法ト出版法トヲ一
緒ニシマシテ、一ツノ出版法トナッテ是ハ
大變結構ナ事デアル、ソコデ私ハ此樣ナ風
ニ近來財政整理、行政整理ハ先ヅ一段落付
イタガ、今日御互ニ各種ノ法令ガ非常ニ澤
山ニ分レテ居ッテ、實ニ六法全書、法令全書
ト云フ風ニナッテ居ッテ困ッテ居ル、政府ハ
此調子デ以テ現在重複シタル色〓ノ面倒臭
イ法令ノ整理ヲソロ〓〓ヤラレル意思ハナ
イカ、丁度今回斯ウ云フモノガ出來マシタ
カラ、將來ニ進ミマシテ、色ミナ、例ヘバ
警察法規ノ統一、斯ウ云フ法令ノ整理ニ付
テ思切ッタ何カ御考ヲ爲サッテハ居ナイカ、
爲スベキモノト思ヒマスガ御意見ハ如何、
斯ウ云フ點ニ付テ御答辯ヲ得タイト思フノ
デアリマス(拍手)
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=17
-
018・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 星島君ニ御答致
シマスガ、尙ホ私ノ御答ノ足ラナイ所ハ、
他ノ政府委員カラ御答ヘスルコトガアルカ
モ知レマセヌ、保證金ノコトデ御尋デゴザ
イマスガ、保證金ヲ今度曾額シタカノ如キ
御質問ハ間違シテ居リハセヌカト思ヒマス、
今度曾シマシタノハ罰金ダケデ、保證金ノ
額ハ增シテ居リマセヌ、ソレカラ保證金ノ
制度ハ他ニサウ云フ例ガ無イト云フ御話デ
アリマスガ、我國ノ今日ノ國情デハ矢張是
ノ必要ヲ認メテ居ルノデアリマス、是ハ御
承知ノ通リ一面ニハ罰金又ハ科料ニ處セラ
レマシタ時ニ、此保證金カラ之ニ充當スル
ト云フコトニナッテ居リマス、又一面ニハ星
島君モ御同感ノヤウナ御言葉デアリマシ
タ、不堅實ナル所ノ新聞雜誌ガ簇出スル、
之ヲ防止スル方法トシテモ必要ヲ認メテ居
リマスガ、此事ニ付テハ他ニ何カ良案ガア
リハシナイカト云フ御尋デアリマスガ、內
務省トシテハ種々〓究致シマシタケレドモ
ガ、此保證金制度ヨリ外ニ他ニ良案ト云フ
モノハ發見致シテ居リマセヌ、ソレカラ大
體ニ於テ今度此出版物ト新聞紙法ト合併シ
タコトハ、御賛同ヲ得マシタガ、星島君ハ
合併シテサウシテ言論ノ自由ヲ尊重スルニ
反シテ、却テ壓迫スルヤウナ傾ガアルト云
フ御話ガアリマシタガ、是ハ全然サウデハ
ナイト考ヘマス、出來ルダケ言論ノ自由ヲ
尊重シタイト云フ考カラ此立法ハ成ッテ居
リマス、唯、或ル場合ニ今迄抽象的デアッ
タノヲ、卽チ二十五條ノ如ク、事項ヲ列擧
シテ行クト云フヤウナコトハ、矢張言論ノ
自由ヲ尊重シテ行ク趣旨ニ外ナラヌノデア
リマス、ソレカラ二十五條ハ御尋ノヤウニ
此第三ガ變ヶテ居リマスガ、此私有財產制
度ノ所ノ文字ヲ變更シマシタノハ、治安維
持法ニ於テ此度此所ニ改正シマシタヤウ
ニ、私有財產制度ヲ否認セントスル事項ト
ナッテ居リマスカラ、此治安維持法ノ其例
ニ傚ッテ改正シタノデアリマス、只今御質
問ノ中ニ在リマシタ通リ、土地國有論ナド
ノ學術的、〓究的ニスルモノヲモ之ニ含ム
カ、ソレハ私ハ含マナイモノト考ヘテ居リ
マス、ソレカラ、第六ノ社會ノ不安ヲ惹起
シ、治安維持上重大ナル影響ヲ及ボスベキ
コトヽ云フコトハ、宜シクナイト云フ御話
デアリマシタガ、是ハ現在ヨリモ、ヨリ以
上ニ取締ヲ深刻ニシタノデハナイ、現在ガ
此通リデヤッテ居ルノデアリマス、左樣御承
知ヲ願ッテ置キマス、ツレカラ行政訴訟ノ途
ヲ開キタイト云フコトノ御話デアリマシタ
ガ、是ハ出版警察ニ於ケル行政ノ上カラ考
ヘマシテ、星島君ノ御希望ノヤウニシマシ
タナラバ、此最高ノ認定權限ヲ行政法ハ失
フコトニナリマスカラ、是ハ宜シクナイト
考ヘマス、ソレデ御希望ニ副ハナイヤウニ
此法文ハナッテ居リマス、ソレカラ發行權
法ノ云々ト云フコトハ、是ハ御尤ナコトデ
アリマシテ、内務省デモ目下銳意調査致シ
テ居リマス、ソレカラ最後ノ御尋ノ法令ノ
整理ト云フコト、是モ大體ニ於テ御同感デ
ゴザイマスガ、是ハ各省又ハ內閣ニ於テ出
來得ルダケ御希望ノヤウナ意思ニ於テ、整
理シタイト云フ考ヲ持ッテ居ルト云フコト
ヲ申上ゲテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=18
-
019・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 加藤知正君
〔加藤知正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=19
-
020・加藤知正
○加藤知正君 只今御提案ニナリマシタ出
版物法案ニ付キマシテ一一三質問ヲ致シテ見
タイト存ジマス、第一ニ御伺致シタイト思
ヒマスルノハ、此出版物法案ノ大精神大眼
目トスル所ハ、何處ニ在リマスカト云フコ
トヲ御伺ヲ致シタイ
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
リ著席〕
此法律案ハ出版業者ヲ保護スル爲ニ制定セ
ラレタノデアルカ、或ハ之ヲ取締ル爲ニ制
定セラレタノデアルカ、乃至ハ保護ト取締
トノ兩方ヲ兼テ制定セラレタノデアルカ、
吾々共ガ此六章六十八條ニ亙ル所ノ全文ヲ
通覽致シマスルニ、出版業者ノ保護ト云フ
點ハ之ヲ見出スコトガ困難デアリマシテ
寧口全部ガ出版業者卽チ新聞紙、雜誌又
ハ普通一般ノ出版物ヲ發行スル所ノ出版業
者ヲ取締ル目的ノ下ニ、此法案ナルモノ
ハ制定セラレテアルヤウニ考ヘラレルノ
デアリマス、而モ本法ノ大精神トスル所、
大眼目トスル所ハ第二十五條ニ存スルノデ
ハナカラウカ、若シ吾々共ノ解釋スル所ニ
誤ガナイトシマスルナラバ私ハ此二十五
條ノ取締ヲ政府ハ如何樣ニシテ爲サルヽカ
ト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、只今
同僚ノ星島君カラ此第二十五條ノ第六項ニ
關スル所ノ質問ガアリマシタ、同君ハ實
ニ此規定ハ新聞記者或ハ雜誌、編輯者
等ニ取シテハ非常ニ迷惑厄介ノ規定デアル
カラシテ、寧ロ是ハ削除スル方ガ至當デハ
ナイカト云フ意見ヲ述ベラレタノデアリマ
スガ、其意見ヲ述ベラレマスルニ當リマシ
テ、此社會ノ不安ヲ惹起スルト云フコト
ハ一體ドノ程度ヲ言フノデアルカト云フ
コトヲ問ハレタノデアルガ、安達內務大臣
代理カラハ之ニ對シテ何等ノ御答辯ガ無
カッタノデアル、併シ吾々モ此點ニ於テ政
府當局ノ御意見ヲ切ニ御伺致シタイト考ヘ
ルノデアリマス、社會ノ不安ヲ惹起スル
日々ノ新聞紙ヲ吾々共ガ之ヲ見マスルト云
フト、殺人、强盜、放火ト云フヤウナ、實
ニ吾々ヲシテ不安ノ念ニ堪ヘザラシムル所
ノ記事ガ揭載セラレナイコトハ殆ドナイノ
デアリマス、所謂新聞ノ三面記事デアル、
殊ニ最近ニ於テ吾々國民ノ非常ナル不安ニ
堪ヘザル所ノ事柄ハ、諸君、御承知ノ通リ
彼ノ長野縣ニ於ケル所ノ警察暴動事件、或
ハ彼ノ千葉縣ニ於ケル所ノ鬼熊事件、如何
ニ是等ノ事件ガ吾々國民ニ不安ノ念ヲ與ヘ
タデアリマセウカ、社會ニ不安ノ念ヲ與へ
タデアリマセウカ、政府當局ハ是等ノ事件
ヲバ社會ニ何等ノ不安ヲ惹起セシメザル所
ノ事件デアルト御考デアリマセウカ、如何デ
アリマセウ、吾々ハ實ニアノ記事ノ掲載セ
ラルヽ度每ニ、非常ナル所ノ不安ノ念ニ襲
ハレタノデアリマス、警察賴ムニ足ラズ、
警官信賴スルニ足ラヌ、一鬼熊ノヤウナ者
ヲ捕ヘルコトデサヘモ、何千何百ト云フ人
ガ、每日々々山待ヲ致シテ居ル而モ其巡
査ガ殺サレタ、某々ナル者ガ傷ケラレタト
云フヤウナ事柄ガ頻々トシテ傳ヘラルヽ每
ニ、吾々ハ非常ナル所ノ不安ノ念ニ襲ハレ
タノデアリマスガ、政府當局ハ此等ノ事ニ
對シマシテモ、尙且ツ社會ノ不安ヲ惹起セ
シメテハ居ラヌト御認メデアルカドウデア
ルカ、私ハ此點ヲ御伺シタイノデアリマス、
又彼ノ朴烈文子ノ怪寫眞デアリマス、彼ノ事
ガ一月ノ二十一日ニ解禁セラルヽヤ、全國
ノ各新聞ニ之ガ揭載セラレタノデアリマス
當局ニハ何ノ見ル所アリマシテ各新聞ニ是
ガ揭載ヲ許容セラレタノデアリマセウカ、
此怪寫眞ヲ見タ者ハ如何ナル考ヲ起シタデ
アリマセウ、斯ウ云フヤウナ寫眞ガ新聞ニ
揭載セラルヽヤウデハ、娘子供ノ前デハ
新聞モ讀ムコトガ出來ナイト云フコトサヘ
モ吾々ハ屢〓之ヲ聞イタノデアリマス、是
等ハ卽チ明ニ第二十五條ノ亂倫、猥褻、殘
忍其他善良ノ風俗ヲ害スル事項ト云フ此點
カラ見マシテ如何デアリマセウカ、アヽ云
フヤウナ寫眞ヲ新聞紙ニ揭載セシムルト云
フコトハ、此善良ノ風俗ヲ害スルコトニナ
リハシマスマイカ、内務大臣ハ此點ニ付テ如
何ナル所ノ御考ガアッテ、此怪寫眞ナルモ
ノヲ各新聞ニ揭載スルコトヲ御許ニナッタ
デゴザマイセウ、私ハ之ヲ御伺致シタウ存
ジマス、又第二ノ點ニ於キマシテハ先刻
星島君モ質問ヲセラレマシタガ、彼ノ發行
權法ノコトデアリマス、發行權法又出版權
法トモ申シマセウカ、此發行權法ニ付テハ
昨年ノ五十一議會ニ於キマシテ私ハ質問シ
タノデアリマスガ、其當時此處ニオキデル
所ノ鈴木政府委員ノ御答ハ、只今調査中デ
アルト云フ御答デアッタノデアル、所ガ只
今星島君ノ質問ニ對シマシテモ亦、安達內
務大臣ハ目下調査中デアルト仰シヤル、昨
年モ目下調査中、只今モ目下調査中、私ガ
質問ヲ致シマシテカラ既ニ一年、此一年ノ
間如何ナルコトヲ爲シテゴザッタカ、調査
中ナラ調査中デ宜シウゴザイマスガ、併ナ
ガラ此一年中ニ於テ調査セラレタル所ノ成
績ハ如何ナル所ノ成績ヲ得ラレマシタカ、
之ヲ御伺申上ゲタイノデアリマス、又昨年
私ノ質問ニ對シテ鈴木政府委員ノ御答ハ
發行權法ナルモノハ成程其必要ヲ認ムル、
併ナガラ是ハ著作權法ヲ改正スル時ニ於テ
考慮スル方ガ宜カラウト思フト云フ御答辯
デアッタノデアリマス、今日政府當局ハ此
著作權法ナルモノヲ改正スルノ必要ヲ御認
ニナッテ居ルカドウカ、著作權法ナルモノ
ハ明治三十二年三月六日法律第三十九條ヲ
以テ公布セラレタ以來、二回程微溫的ノ改
正ハ行ハレテ居リマスルケレドモ、今日ニ
於テハ既ニ陳腐極マル所ノ箇條モアルヤウ
ニ批評致シテ居ル人モアルノデアリマス、
此點ニ於キマシテ其改正ヲスル必要ヲ御認
メナサラナイノカ、吾々ノ見ル所ヲ申シマ
スト、著作權法ノ改正如何ニ拘ラズ、著作
者ノ爲ニ著作權法ヲ制定セラレテ、著作物
ノ權利利益ト云フコトヲ保護セラルヽ以上
ニ於キマシテハ、出版業者ノ爲ニモ發行權
法ナルモノヲ制定セラルヽ必要ガアルト思
1、故ニ此度此出版物法案ヲ御提出サレル
ト同時ニ、發行權法ト著作權法此三ツノモ
ノハ鼎ノ三足ノ如ク揃ウテ始メテ完全ナル
法規トシテ吾々ハ此出版界ノ利益權利ヲ保
護スルコトガ出來ルト考ヘルノデアリマ
ス然レドモ、政府當局ハ尙且ツ此發行權
法ナルモノハ、著作權法ノ改正ヲスルマ
デ、其必要ヲ認メヌト云フ御考デアルカド
ウカ、此點ニ付テ今一應內務大臣ノ御懇切
ナル御議明ヲ伺ヒタイト思フノデアリマ
ス、第三ニ於キマシテハ、出版業者ニ對ス
ル營業收益稅ノコトヲ御伺申上ゲタイノデ
アリマス、此營業收益稅ナルモノハ、是ハ
諸君御承知ノ通リ、出版業者ハ今日之ヲ負
擔スルコトニナッテ居リマスケレドモ、併
ナガラ以前營業稅法ノ創定セラレマシタル
當時ニ於キマシテハ出版業者ハ之ヲ免除
セラレテアッタノデアリマス、其後明治四
十三年ニ此稅法ノ改正ニ當リマシテ之ヲ負
擔スルコトニナッタノデアリマス、併ナガ
ラ此間モ營業稅法改正法律案ノ提出者ガ辯
明セラレタル如ク、各國何レモ出版物ニ對
シマシテハ非常ナル保護ヲ與ヘテ居ルノデ
アリマス、故ニ海關稅等ハ之ヲ免除致シテ
居ル、又今日新聞紙-保證金ヲ納メテ居
ル所ノ新聞紙、或ハ雜誌ト云フヤウナモノ
ニ對シマシテハ營業收益稅ナルモノハ
免除サレテ居ルノニ、同ジ出版物法ノ中ニ
收メラル所ノ普通一般ノ出版物ニ對シマシ
テ、此營業收益稅ヲ課セラルヽト云フコト
ハ或ハ如何ナルモノデアリマセウカ、此
點ニ於キマシテハ、私ハ寧ロ此新聞紙或ハ
雜誌ト同樣ニ矢張普通一般ノ出版物ニ對シ
マシテモ、營業收益稅ヲ免除セラルヽト云
フコトガ、卽チ是レ善良ナル圖書ノ普及發
達ヲ圖ル所以デアルト考ヘルノデアリマス
ガ、此點ニ於キマシテハ是ハ寧ロ大藏大臣
ニ質問スベキガ相當ト思ヒマスケレドモ、
序ニ安達内務大臣ハ此點ニ付テ如何ナル所
ノ御考ヲ持ッテゴザルカト云フコトヲ念ノ
爲ニ御伺申上ゲタイノデアリマス、尙ホ細カ
イコトハ委員會ニ譲リ、私ノ質問ハ以上三
點ニ付テ御伺ヒ致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=20
-
021・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 安達内務大臣
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=21
-
022・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 加藤君ハ出版法
ノ大精神、大眼目ガ何處ニ在リヤト云フヤ
ウナ御尋デアリマスガ、簡單ニ御答致シテ
置キマス、此出版物法ハ取締ヲ眼目ト致シタ
ノデゴザイマス、而シテ〓囘改正ハ成ベク
出版ノ自由ヲ認メントシタモノデアルト云
フコトヲ御答致シテ置キマス、ソレカラ此
社會ノ不安ヲ惹起スル云々ト云フ條項ハ、
必要ハナイデバナイカト云フヤウナコト
ガ、曩ニ星島サンノ御尋ガアリマシタガ、
今度加藤サンモ御尋デアリマス、是ハ曩ニ
御答致シマシタ通リ、現在ハ此通リノコト
デ實行致シテ居リマスガ、一例ヲ申シマス
1、例ヘバ之ヲ彼ノ震災ノ時ノ鮮人ノ騒動
ノ如キ、アヽ云フ時ニ當リマシテ、此一項ノ
取締ノ必要ノアルコトヲ認メルノデアリマ
ス、ソレカラ朴烈ノ寫眞ノ事、長野事件ノ
事ナドノ御尋ガアリマシタガ、長野事件ハ
是ハ檢事ガ犯罪ノ捜査上一時新聞ニ記載ス
ルコトヲ止メテ居ッタノデアリマスガ、朴烈
ノ事ニ付キマシテ、彼ノ怪寫眞ヲ何故ニ新
聞ニ揭載スルコトヲ許シタカト云フ御尋デ
アリマスガ、是ハ最初安寧秩序ノ維持ノ上
カラ揭載ヲ差止メテアリマシタガ、御承知
ノ通リ議場ニ於キマシテ、此問題ニ付テハ
議員ト政府トノ間ニ質問應答ガ盛ニ行ハレ
マシテ、其質問ノ內容ハ、次第ニ既ニ禁止
シテ居ル範圍內ニ切込ミマシテ、サウシテ
此安寧秩序ノ爲ニ差止メテ居ル所ノ此範圍
ガ次第ニ無クナリ、其效能ガ薄クナリマシ
タ、ソレデ又世間ガ差止メテ居ル爲ニ、却
テ益、懷疑ノ念ニ驅ラレルヤウナコトガア
リマス、又此議場ノ光景ヲ社會ニ報道シナ
ケレバナラヌ新聞紙ノ方カラ考へマシテ
モ、ソレガ不必要ニナリマスカラ、ソレデ
此安寧秩序ノ爲ニ差止メテ居ッタ所ノモノ
ヲ、ソレヲ差許シタ次第デアリマス、ソレ
カラ其他ノ著作權及發行權ニ關スルコト
ハ、曩ニモ御話ヲ致シタ通リ、是ハ目下調
査中デアルト云フコトヲ申上ゲル外アリマ
セヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=22
-
023・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 原夫次郞君
〔原夫次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=23
-
024・原夫次郎
○原夫次郞君 先程來內務大臣ノ御答辯ハ
少シ聲ガ低イノデ、私共ノ席ヘハ徹底シナ
カッタノデアリマス、併シ輪廓ダケハ拜承
致シタノデアリマスガ、私ノ玆ニ問ハント
スル所ノ事柄ハ成ベク重複ヲ避ケテ質問
ノ箇條ヲ簡單ニ申述ベマスカラ、又緩クリ
述べマスカラ、ドウゾ再ビ此所ノ席ニ出ナ
イヤウニ箇條ダケヲドウゾ御書取ヲ願ァテ、
サウシテ明確ニ一ツ御答辯ヲ願ヒタイ、若
シ內務大臣ガムヅカシイコトニ一々御答
辯ガ出來ナイト云フコトデアリマスナラ、
其點ダケハ政府委員ニ御願シテモ宜シイノ
デアリマスガ、成ベクナラバ內務大臣ニ御
願ヲ致シタイ、先ヅ今日行ハレテ居ル出版
法ハ、古ク三十年前ニ制定セラレタル法律
デアリマス、又新聞紙法デモ十數年前ノ制
定ニ係ルモノデアリマシテ、今日提案セラ
レタル法律ガ、之ヲ統一的ニ編纂セントスル
所ノ其御企ハ、洵ニ結構デアルト思フノデ
アリマスケレドモ、此提案セラレタル法案
ヲ見ルト云フト、ドウモ取締ノ方面ニノミ
留意セラレテ、我國今日ノ文運ニ多大ナル
寄與ヲ爲シタル所ノ此出版物若ハ著作物等
ニ關シテハ、之ヲ助長シテ益〓我ガ文運ノ隆
盛ヲ期セナケレバナラヌト云フ御趣意ハ、
此法案デハ認ムルコトガ出來ナイヤウデア
リマス、先ヅ私ガ第一ニ御尋致シタイコト
ハ本法ノ第三條ニ於テハ「本法ニ於テ發行
者ト稱スルハ出版物ノ發賣頒布ヲ管理スル
者ヲ謂フ」斯ウ云フ定義ガ下サレテ居クテ、
發行者ト云フモノハ發賣頒布ヲ管理スル者
デアル、斯フ云フコトニ相成シテ居ル、又第
五條ニ於テ、「本法ニ於テ編輯者ト稱スル
ハ新聞紙又ハ雜誌ノ編輯ヲ管理スル者ヲ謂
フ」ト云フ定義ニナッテ居ルノデアリマス、
斯ノ如ク發行者ト編輯者ト云フモノヲ明ニ
規定シテアルヤウデアリマスガ、私共此條
文ダケヲ見テハ、如何ナル意味デ之ヲ規定
セラレタノデアルカ、之ヲ解スルコトガ出
來ナイノデアリマス、先ヅ發行者ノ側カラ
申シマスルナラバ、發行者卽チ管理者デア
ルノデアリマスガ、此管理スル者ト云フノ
事實上例ヘバ新聞社ノ持主ニ代ッテ管
理スル場合ガアルト假定致シマスルナラ
バ、其代理セシメタ所ノ持主ヲ謂フノデア
ルカ、或ハ持主ニ代ッテ代理者ヲシテ管理
セシムルト云フ場合ニ於テハ、其代理者ヲ
矢張管理者ト云フコトニ見ルベキカ、更ニ
又管理者ガ持主ニ代ッテ數人アル場合ニ於
テハ、其數人總テヲ此所ニ規定シテ居ル所
ノ管理者ト稱スベキモノデアルカドウカ、
是ガ第一點デアリマス、第二點ニ於キマシ
テ先程申上ゲマシタ編輯者デアル、卽チ「新
聞紙又ハ雜誌ノ編輯ヲ管理スル者」ト云フ
其編輯管理者デアリマス、此點ニ付テモ大
ニ疑ヲ存スベキ事柄ハ、其編輯ヲ管理スル
者ガ例ヘバ部門ヲ分チ、或ハ經濟デアルト
カ、或ハ政治部デアルトカ、社會部デアル
トカ云フヤウナ部門ヲ分ケテ、各自ガ分擔
管理スル下云フ場合ニ於キマシテハ、其分
擔管理者全部ガ矢張編輯者デアルト云フコ
トニ相成ルノカドウカ、此第五條デハ是等
ノ點ガ明ニ相成ッテ居ナイノデアリマス、又
第三點ト致シテ本法ノ第七條ノ規定ニ依ル
ト云フト、「新聞紙又ハ雜誌ヲ發行セントス
ル者ハ左ノ事項ヲ內務大臣ニ屆出ヅベシ」
斯ウ規定シテアッテ、其第六號ニハ發行者及
編輯者、殊ニ又其編輯ノ中デ註ガ施シテアッ
テ、版別編輯者ト云フモノヲ矢張屆出ナケ
レバナラヌト云フ規定ニ相成ッテ居ル、玆
ニ於テ私共ノ疑ハ、先ヅ新聞紙又ハ雜誌ヲ
發行セントスル者ト云フ、此未ダ發行セザ
ルニ先ダッテ發行セントスル者ト云フ此者
1、第六號ニ規定シテアル屆出ヅベキ此發
行者ト、同一ナル者デアルカドウカト云フ
コト、又編輯者、此編輯者ニ付テハ先程疑
ヲ提供致シテ置イタ、此第五條ノ其疑ガ更
ニ此所へ生レテ來ルノデアリマシテ、此屆
出ヲ致シマス場合ニ於テノ編輯者ハ、果シ
テドノ編輯者ヲ言フノデアルカト云フコ
1、殊ニ此新聞ヲ發行セントスル者ガ、編
輯者ニ版別編輯者ガアルト云フコトヲ豫想
シ得ル場合ニ於テ、此版別編輯者ト云フモ
ノマデモ屆出ヲ爲サナケレバナラヌト規定
致シテ居ルノハ、果シテ如何ナル理由ニ基ク
モノデアルカ、私共ノ見ル所ニ依リマスト
斯ンナ煩瑣ナ版別編輯者ト云フコトマデ
モ、屆出ヲシナケレバナラヌト命ズルノ
ハ實際ノ事情ニ疎ク、新聞發行ノ方面ノ
勞力ニ對スル能ク理解ガ無イカラ、斯ノ如
キコトニ相成リハシナイカト思フノデアリ
ママ、以上申述ベタル發行者、編輯者等ノ
此立法ノ本旨ガ明ニ相成ルコトニ依ッテ、次
デ此第八條、第九條ニ規定致シテアル所ノ
此色〓煩瑣ナル規定ガ、自ラ明瞭ニ相成ッ
テ來ルノデアリマスカラ、今此所ニ八條、
九條等ニ付テハ疑ヲ懷カナイコトニ致シマ
セウ、以上ヲ以テ大體此本法ノ發行編輯屆
出等ニ關スル質疑ノ大要ト致スノデアリマ
スガ、次ニハ此出版物ノ揭載事項ニ關シテ
ノ御尋ヲ致シタイノデアリマス、是ハ先程
來諸君ガ御尋ニナッタ點ヲ傾聽致シテ居ッタ
ノデアリマスガ、私ガ先ヅ第一番ニ問ハン
トスル所ハ、本法第二十七條ニ於テ「戰時、
事變其ノ他特ニ必要アル場合ニ於テハ勅令
ノ定ムル所ニ依リ軍事又ハ外交ニ關スル事
項ヲ出版物ニ揭載スルコトヲ禁止シ又ハ制
限スルコトヲ得」ト云フ規定デアリマス、
是ハ必要アル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所
ニ依リト斯ウアルノデアリマスガ、其必要
アル場合ニ於テ勅令ガ直グ出來ルモノデハ
ナイ、樞密院ノ議モ經ナケレバナラヌシ、
法制局ノ案モ作ラナケレバナラヌ、所デ戰
時事變其他特ニ必要アル場合ニ於テハ、此
勅令ノ定ムル所ニ依ルト云フノデアッテ、
其勅令ト云フモノハ本法ガ兩院ノ協賛ヲ經
タル場合ニ於テハ、直ニ此勅令案ト云フモ
ノヲ御制定ニナル御趣意デアルカ、或ハ戰
時又ハ事變ノアッタ其必要ノ時ニ急遽勅令
ヲ制定セラレル御趣意デアルカドウカ、若
シ前者デアルトスルナラバ、此勅令ノ內容
ニ付テ何カ案ガアルナラバ、ソレヲ大體ダ
ケデ宜シイカラ御示ヲ願ヒタイ、私ハ斯ル
規定ハ全然無用ナ規定デアルト信ズルガ故
ニ、斯ノ如キ問ヲ爲スノデアリマス、私ノ
必要デナイト申スノハ、先ヅ此立案ノ仕方ガ
第二十八條ニ於テハ內務大臣ニ對シテ非常
ナル特權ヲ與ヘテアル、卽チ「治安維持上重
大ナル影響ヲ及ボスノ虞アル事件ニ關シ特ニ
事項ヲ指示シテ之ヲ新聞紙又ハ雜誌ニ揭載
スルコトヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得」ト云
フ此特權デアリマス、又一一十九條ニハ陸軍大
臣、海軍大臣等ニ對シテモ、軍事上ノ祕密
ニ關シテ此禁止若クハ制限ヲ爲スコトガ出
來ルト云フ特權ヲ認メテ居ル、又次ニ外務
大臣ニ對シテハ、外交上ノ祕密ト云フコト
ニ依ッテ同一ナル特權ヲ與ヘテ居ルノデア
リマス、更ニ又檢事デアルトカ檢察官ニ對
シテモ同一ナル權限ヲ與ベテ居ル、加之第
二十五條ノ出版物揭載事項ノ根本義ヲ定メ
タル所ノ此條項ニ於キマシテハ其第二四號
ニ「軍事又ハ外交ノ機密ニ關シ帝國ノ利益
ヲ害スル事項」ト題シテ、是ハ絕對ニ出版
物ニハ何時デモ揭載スルコトガ出來ナイト
云フコトノ規定ニ相成ッテ居ルノデアリマ
ス、此四號ハ言フマデモナク皇室ノ尊嚴ヲ
冒瀆スル事項デアルトカ、國體ヲ變革セン
トスル所ノ事項デアルトカ云フノト同一
ニ、之ヲ規定致シテ居ルノデアルカラ、何
人モ此軍事又ハ外交ノ機密ニ關シテ帝國ノ
利益ヲ害スル事項ヲ揭ゲテハナラヌノデア
リマス、斯ル禁制ガアルノニモ拘ラズ、更
ニ又內務大臣、外務大臣、陸海軍大臣、司
法當局者ニ對シテ重大ナル禁止特權ガ與ヘ
テアルノニ拘ラズ、更ニ又第二十七條ニ於
テハ戰時事變ニ際シテハ、勅令デ定メテ置
イテ、ソレデ又禁止シヤウトスル、サウス
ルトマルデ本法ノ制定ノ遣方ハ或ハ鐵砲ヲ
備付ケ、或ハ槍ヲ備付ケ、或ハ塹壕ヲ築
キ、色ミナ方法ニ於テ言論ヲ壓迫セントス
ルヤウナ規定ノ仕方ガアル、餘リニ是ハ時
代後レノ規定ノ遣方デハナイカト云フコト
ヲ疑フノデアリマス、率直ニ申スト云フト
先程申上ゲマシタ如ク、二十七條ノ此規定
ハ全然無用ナ規定デハナイカト考ヘルノ
デアリマス、ソレカラ第二十五條ノ第五號
ニ「犯罪ヲ煽動シ若ハ曲庇シ、犯罪事實ニ
付犯罪人ヲ賞恤シ又ハ刑事被告人若ハ被疑
者ヲ賞恤シ若ハ陷害スル事項」、此事項ガア
ルノデアリマスガ、此長イ事項中私ガ疑ヲ
懷ク點ハ、最後ノ「被疑者ヲ賞恤シ若ハ陷
害スル事項」ト云フ此點デアリマス、體
被疑者ト云ヘバ刑事訴訟法上、マダ罪ヲ犯
シタカ犯サナイカ分ラナイ、本當ノ疑ヲ置
クニ足ル人間ヲ檢事ガ搜査ヲ致スノヲ被疑
者ト申スノデアリマスガ、其被疑事項ニ付
テ新聞社ガ新聞記事ヲ揭ゲル、是ガ何デ惡
イノデアルカ、又何デ之ヲ禁止致スノデア
ルカ、固ヨリ其人ノ名譽ハ尊重シナケレバ
ナラヌコトハ明デアル、併ナガラ一面ニ於
テ、何處其處デ例ヘバ紳士ガ惡イ事ヲシタ
トカ、或ハ如何ハシイ行爲ヲ爲シタトカ云
フヤウナコトヲ書クコトハ、一面ニ於テ社
會上ノ制裁ヲ加ヘルコトニモナルシ、之ヲ
新聞記事ニ揭ゲタカラト云ウテ、何時檢事
ガ其事件ヲ調ベテ居ルカ、新聞社ニハ分ラ
ナイ、檢事局デハ極ク秘密ノ裡ニ人ヲ搜
査、調査ヲ致スノデアルカラ、新聞社デハ
分ラナイガ、其或ル行爲ヲ揭ゲタ場合ニ於
テ、段〓聞イテ見ルト是ハ檢事局デモ調ベテ
居ルト云フコトガ分ル場合ニ於テ、其知ラ
ナイ前ニ於テモ、是ハ後ニ規定スル所ノ六
箇月以下ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處
セラルヽト云フヤウナ規定ノ仕方ニ相成ク
テ居ル、是ハ餘リニ壓迫シ過ギル規定デハ
ナイカ、此點デアリマス、次ニ又第六號ニ
ハ「社會ノ不安ヲ惹起シ治安維持上重大ナ
ル影響ヲ及ボスベキ虛僞又ハ誇大ノ事項」、
第七ニハ「亂倫、猥褻、殘忍其ノ他善良ノ
風俗ヲ害スル事項」斯ウ列ベテアルノデア
リマス(「委員會デ願ヒマス」ト呼フ者アリ)
是ハ一般的ノ法ノ立方ノ質問デアリマス、
此第六ノ規定デモ、少シ虛僞ニ涉ルトカ、
誇大ナ記事デアルトカ云フヤウナ場合ニ於
テハ、絕對ニ揭載スルコトガ出來ナイト規
定中ニ揭グテアルノデアルカラ、直ニ言論
ヲ威スコトニ相成ルノデアリマス、斯ウ云
フヤウナ規定ヲ設ケテ直ニ之ヲ制栽的規定
ニ依ッテ律セントスルノハ、餘リニ酷イ取締
ノ法デハナイカ、私ガ斯ク申スト云フト、
丁度斯ウ云フヤウナ猥褻トカ、或ハ風俗ヲ
害スルトカ云フヤウナ事項ハ、實ヲ言フト
刑法中ニ規定ガアルノデアリマスガ、其刑
法中ノ規定ハ僅ニ科料ニ過ギナイ、科料ニ
過ギナイ所ノ規定ヲ新聞紙法デ直ニ特別ナ
ル事項トシテ六箇月以下ノ禁錮ダトカ、五
百圓以下ノ罰金ニ處スルト云フ規定ヲ設ケ
ルト云フコトハ、餘リニ刑罰ヲ濫用スル嫌
ガアリハシナイカ、是ガ若シ內務省當局ニ
於テ、一々大臣ガ之ニ決裁ヲ與ヘルト云フ
コトナラバ、吾々ハ多大ノ信任ヲ拂フ、併
ナガラ今日ノ遣方ト云フモノハ內務省ノ警
保局ノ一課ニ於テ、下級ノ屬僚ガ自ラ認定
ヲシテ、發賣禁止若クハ告發等ヲ致スノデ
アルカラ、洵ニドウモ是等ノ點ニ付テハ吾
吾立法ニ參與スル所ノ者ハ、十分ナル警戒
ヲ加ヘナケレバナラナイト考ヘタノデアリ
マス、最後ニ私ハ今日マデ行ハレテ居ル言
論ノ取締方ヲ見ルト云フト、先程星島君モ
尋ネラレタヤウデアリマスガ、丸デ此發賣
禁止ヲ爲ス場合ニ於テハ、內務省ノ遣方ハ
殆ド切捨御免ノヤウナ遣方ヲヤッテ居ル、新
聞ヲ檢閱致シテ、ソレモ詳細ナル檢閱ヲ致
スナラバ宜シイノデアルケレドモ、唯、上ッ
面ヲ見テ直ニ之ニ對シテ發賣禁止ヲ行フ、
發賣禁止ヲ行ハレタ場合ニ於テハ、新聞社
ノ方デハ、全部是迄ヤッタ仕事ガ徒勞ニ歸
スル、而シテ其發賣禁止モ、例ヘバ惡イ記
事ガ揭ゲテアル所ノ其部分ダケヲ切ッテ、或
ハ消ストカシテ之ヲ發行スルコトガ出來ル
ト云フヤウナ緩和手段ナラバ宜シイノデア
ルケレドモ、發賣禁止ヲ爲スト云フヤウナ
場合ニ於テハ、全部是ガ差押ヲ爲スト云
フ、洵ニ酷ナル遣方デアル、之ニ對シテハ
今日我國ノ法制上デハ何等ノ救濟ノ途ガ無
イ、ソコデ星島君ハ之ニ對シテハ或ハ行政
訴訟ヲ起ス途ヲ講ジテハドウカト云フ議論
デアリマス、是ハ私共モ尤デアルト思フ
ガ、併シ何トシテモ差押ヲ受ケタカラト云シ
テ、一々行政訴訟ヲ起スト云フコトモ、是
ハ發賣禁止ヲヤラレタル人ニ取ッチハ煩瑣
ニ堪ヘナイコトデアルト思フノデアリマ
ス、ソコデ私ガ御尋致サントスルノハ、
體此出版物ニ對シテハ先程モ申上ゲマシタ
ル如ク、我ガ社會ノ文運ニ寄與スル所ハ極
メテ重大デアルカラ、極メテ重大ナル注意
ヲ拂ハナケレバナラヌ事柄デアリマスカ
ラ、現在ノ如ク文藝家、著作家、或ハ出版
物ヲヤル人達ガ常ニ驚カサレル所ノ、此發
賣禁止ト云フモノヲ亂暴ニヤラセナイ爲ニ
ハ、或ハ內務省ノ警保局內ニ於テ文藝調査
會トカ、或ハ何カノ名義デ諮問機關ヲ設ケ
テ、發賣禁止ヲ爲サントスルヤウナ場合ニ
於テハ一應之ニ諮問ヲ致シタ後ニアラズ
ンバ、此重大ナル權力ヲ揮ハスコトガ出來
ナイヤウニ、何カノ方法ヲ講ジテ貰フコト
ハ出來ナイカ、又若シ誤ッテ發賣禁止ヲ致
シマス場合ニ於テハ、ンレガ誤リデアッタト
云フ場合ニ於テハ、國家ハ之ニ對シテ賠償
ノ途ヲ與ヘルト云フコトガ、今日出版物關
係ノ人ニ對スル當然ナ國家ノ義務デハナイ
カト思フノデアリマス、以上ヲ以テ私ノ質
問ヲ終リマス(拍手)
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=24
-
025・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 只今ノ御質問ニ
對シマシテハ、大體此出版物ノ法案ナルモ
ノハ、取締ヲ目的ト致シテ居リマスカラ、
我ガ帝國ノ文運ノ發達助長ニ付テハ他ニ發
行權法-著作權法ノ事ニ付テ取調べ中デ
ゴザイマスカラ、曩ニ度ミ御答シタ次第デ
ゴザイマス、ソレデ只今ノ原君ノ御尋ハ逐
條ニ亙ッテ頗ル精密デアリマスカラ、其事
ニ付キマシテハ政府委員カラ御答ヲ致スコ
トニ致シマス
〔政府委員鈴木富士彌君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=25
-
026・鈴木富士彌
○政府委員(鈴木富士彌君) 原サンノ御尋
ニ御答ヲ致シマス、第一ハ第三條發行者ノ
意義デゴザイマスルガ、此法文ノ中ニハ「出
版物ノ發賣頒布ヲ管理スル者ヲ謂フ」トシ
テアリマスガ、此管理ト申シマスコトハ
主トシテ統轄スルト云フ意味デアリマスカ
ラ、若シ二人デヤッテ居ル場合ガアリマス
ナラバ、其主ナル者ヲ指スノデアリマス、
若シ代理人等ニヤラシテ居ル場合ハ云々ト
云フコトデアリマスガ、其場合ニ於キマシ
テハ、若シ一箇月以上旅行スルトカ、所在
ガ不明デアルト云フ時分ニハ、自ラ主トシ
テ現實ニ管理ヲシテ居ル人ヲ指スコトニナ
リマスカラ、此點ニ付キマシテハ出版物法
全體ニ亙リマシテ、一般ノ刑法理論ニ依ラ
ズシテ客觀標準ニ依ッテ居ルモノガ、再ビ
還元サレルコトハナイカト云フ原サンノ昨
年ノ特別委員會ニ於テノ御尋ガアリマシ
タ、此點ハ原サンノ洵ニ緻密ナル御質問ニ
ハ敬服致シタノデアリマスガ、是ハ如何ニ
モ一見サウ云フ風ニ見エルノデアリマス、
サウ云フ風ニ見エルノデアリマスケレド
モ、此點ハ別段現行法ヲ改メルト云フ趣旨
ハナイノデアリマシテ、主トシテ管理スル
者ヲ取締ルト云フコトニナリマシテ、而シ
テ斯樣ナ場合ニ於キマシテハ、一日モ早ク
實際ノ發行者ヲ作ッテ屆出ネバナラヌヤウ
ナ仕組ノ法案ニナッテ居リマスカラ、御心
配ノヤウナコトハ先ヅ以テナカラウト思フ
ノデアリマス、ソレカラ第五條ノ編輯者ト
云フ者ノ意義ハ、是亦之ニ書イテアリマス
ル通リ、新聞紙又ハ雜誌ノ編輯ヲ管理ス
ル者、管理ト云フノハ主トシテ統轄スルコ
トニ當リマスカラ、是ハ自ラ明瞭デアラウ
カト存ジマス、第三ノ御質問ハ版別編輯者
ノコト、竝ニ第七條ノ發行セントスル者ノ
意義ニ關聯スル御質問デアリマスガ、是ハ
原サンノ仰シヤッタ通リ、第七條ノ發行セ
ントスル者ハ、此七條ノ第一項第六號ノ發
行者ト同ジ意義デアリマス、而シテ版別編
輯者ハ今日事實ニ於テ新聞社ニハアルヤウ
ニ思ヒマス、ナケレバ屆出ニ及バナイノデ
アリマシテ、若シアッタナラバ屆出デロト云
フ主義デアリマス、而シテ編輯者ト云フ者
全體ニ亙リマシテ、是ハ實質的ノ編輯者ヲ
指ス意味デハナイノデアリマシテ、是ハ現行
法通リニ矢張編輯者トシテ屆出デマシタ者
ヲ指ス趣旨デアリマスカラ、此點ハ別段新
聞社方面ニ於キマシテモ、ヒドク心配スル
必要ハナカラウカト思フノデアリマス、
レカラ第四ノ御質問ハ、二十七條ノ戰時事
變ノ場合ニ於ケル、卽チ禁止制限ノ處分ニ
關スルコトデアリマシタ、是ハ御說ノ通リ
一見不必要ナ規定ノヤウニ見ヱルノデアリ
マス、見ヱルノデアリマスケレドモ、是一
第五條ノ第四項ニ比較シ、更ニ第二十八條
乃至三十條ノ規定ニ比較致シマシテ、各
其目的トスル所ガ違フノデアリマス、第二
十五條ノ四項ニ「軍事又ハ外交ノ機密ニ關
シ」トアリマシテ、機密ハ祕密ト云フ支字
ト區別シテ使シテアル積リデアリマス、此
機密ノ方ガ重要性ヲ帶ビテ居ルノデアリマ
スカラ、是ハ若シ此規定ニ違反致シマシタ
ナラバ、一面ニ處罰シマスルガ、又一面ニ
其出版物ヲ差押ヘルト云フ處分ヲ致スノデ
アリマス、而シテ二十八條ハ是亦御承知ノ
如ク、平時ノ場合ヲ規定シタルモノデアリ
てく、面シテ是ハ二十五條ノ第六號ト違ヒ
マシテ、誇大ノ事實デナクテ、事實ノ有リ
ノ儘デアッテモ、治安維持上重大ナル影響
ヲ及ボス虞アル事件ニ關シマシテハ、豫メ
事項ヲ指摘スル、是レ々々ノ事ハ書イテハ
イケナイゾヨト云フ、豫メ禁止シ制限ヲ致
スノデアリマス、隨テ其範圍ト云フモノガ
異ッテ居ルノデアリマス、二十九條以下三
十條迄ノ祕密モ、是亦先程申シマシタ如
〃、所謂機密ニ屬セナイ所ノ、比較的輕イ
意味ノ祕密デゴザイマシテ、是ハ一般ノ各
種ノ法令ヲ綜合致シマシテ、サウ云フ趣旨
ニ解釋出來ルノデアリマスガ、是ハ申シテ
宜イコトデアルカドウカ知リマセヌケレド
モ、此二十九條ノ軍事上ノ祕密ト云フヤウ
ナコトハ、其當時ニ於テハ、祕密デアッテ
モ、後デハ祕密デナクナル、例ヘバ大演習
ヲスル時分ニ、新聞紙ガ之ニ先ダッテ、大
演習計畫ヲ書イテシマッタナラバ、殆ド演
習ト云フモノハ出來ナクナル、サウ云フ時
分ニ、之ニ依ッテ豫メ禁止スルノデアリマ
ス、又外交上ノ事デモ、外國使臣ノ行動ナ
ドハドウモ機密ト云フ種類ニハ屬シナイケ
1.レドモ、
矢張祕密ト云フ種類ニハ、屬シヤ
ウト思フ、是ハ矢張外務大臣ノ命ヲ以チマ
シテ、之ヲ禁止シ制限シテ、豫メ是ハヤル
ノデアリマス、而シテ第二十七條ノ、戰時
事變其他特ニ必要アル場合ニ於キマシテ
ハ、是ハ稍〓重要性ヲ帶ビテ居リマシテ、勅
令ノ定ムル所-是ハ今カラ勅令ヲ作ッテ
置クト云フ譯デハアリマセズシテ、戰時事
變其他特ニ必要ナル場合ハ、豫メ其氣配
ハ數日前カラ分ルノデアリマスカラ、其時
分ニハ豫メ數日前ニ作ルト云フコトニナラ
ウト存ジマス、而シテ此條項ハ、內務大臣
ダケノ關係デハナクシテ、關係大臣ト內務
大臣トノ連署ニ依シテ、此勅令ガ公布サレル
コトニナラウト思ヒマス、陸軍ノ事ハ內務
大臣ト陸軍大臣、海軍ノ事ハ內務大臣ト海軍
大臣、又外交ノ事ハ内務大臣ト外務大臣ト
ノ連署デヤルコトニナルコトヽ思ヒマス、
ソレカラ第二十五條ノ第五項デアリマス、
第五項ノ中ニ「被疑者ヲ賞恤シ若ハ陷害ス
ル事項」ト云フ文句ガアル、是ハ廢メタ方
ガ宜クハナイカト云フ御議論デ、是ハ昨年
モ承リマシタ、一應御尤ト思ハレル點モア
リマスケレドモ、御承知ノ通リ、被疑者ト
云フモノハ、總テガサウデハアリマセヌ
ガ、大部分ニ於キマシテ矢張刑事被告人ニ
ナルベキ徑路ヲ辿ル者デアリマシテ、特ニ
此事ニ付キマシテハ「犯罪事實ニ付」ト云フ
一ツノ制限ガ加ヘテアリマス、犯罪事實ニ付
キ賞恤シ、又ハ陷害シテハ相成ラヌト云フ
コトニナルノデアリマス、之ニ付テ賞恤陷
害致シマスルト云フト、警察ノ任ニ當ッテ
居ル者ガ、動モスレバ此出版物ノ記事ニ迷
ハサレテ-迷ハサレルト云フ人モ多分ナ
カラウトハ思ヒマスルガ、サウ云フ虞ガア
ル、而シテ其事實ノ眞相ヲ摑ムコトヲ誤ル
虞ガ無イトモ限リマセヌカラ、是ハ矢張入
レテ置イタ方ガ宜シイノデハナイカト、斯
様ニ考ヘル次第デゴザイマス、第七ニ虚僞
又ハ誇大ノ事項云々、是ダケヲイキナリ取
締ルノハ餘リ酷イデハナイカト云フ御言葉
デアリマシタケレドモ、虛僞又ハ誇大ノ事
項バカリデハ取締ヲ致サヌノデアリマス、
虚僞又ハ誇大ノ事項ニシテ、且ツ社會ノ不
安ヲ惹起スルト云フ條件ガ加ッタ場合ニ、
第二十五條ニ依ッテ處罰ヲスルト云フコト
ニナルノデアリマスカラ、此點ハ心配スル
程ノ虞ノアルモノトハ私共考ヘテ居ナイノ
デアリマス、而シテ二十五條第七項ノ善良
ノ風俗ヲ害スル事項ニ付キマシテハ、是、
御言葉アリマシタケレドモ、各國共此點ハ
可ナリ重要視致シテ居リマシテ、他ノ點ノ
取締ハ比較的寬大デアリマシテモ、此點ノ
ミハ特別ニ獨立ノ法制ヲ以テ取締シテ居ル
ト云フノガ、英國、米國ニ於ケル實狀デゴ
ザイマシテ、是ハ矢張斯ノ如ク規定スルコ
トガ、帝國ノ現狀ト致シマシテ適當デアラ
ウト考ヘタ次第デアリマス、第八ハ發賣禁
止ノ事デアリマスガ、發賣禁止ノ事ハ、現
行ノ出版法ヤ新聞紙法ニ較ブレバ、今回提
出シテ御協賛ヲ願ヒマス所ノ、此法案ノ方
ガ遙ニ緩和サレテ居ルノデアリマス、卽チ
第三十三條ノ關係ニ於キマシテ禁止致シマ
ス時分ニハ、先ヅ其事項ヲ掲載シタル個所
ヲ指摘スルコトニナッテ居リマス、若シ已
ムヲ得ズ其指摘ガ出來ヌ場合ニ於テハ、其
一部ヲ指摘シテ發賣頒布ヲ禁止致シ、又必
要ノアル場合ニ於テ差押ヲスルノデ、何デ
モ發賣禁止ト差押ヲ一緒ニスルノデハナ
イ、禁止ハシテモ差押ヲシナイ場合ガアル、
必要ノアル場合ニ於テノミ差押ヲ致スト云
フコトニナッテ居リマスノミナラズ、此禁
止シタ事項ニ關係ノ無イ個所ハ切取ッテ、
請求ニ依リ還付スルコトニナッテ居リマス
カラ、此點ガ餘程緩和サレテ居リマシテ、
當業者ト致シマシテ非常ナ便宜ノアルコト
ト存ジマス、第九ニ諮問會ノヤウナモノヲ
內務省内ニ設ケテ、之ヲ諮ッタナラバドウ
カト云フコトデアリマス、是ハ昨年知名ノ
文士菊池寛君其他ノ人とガ寄リマシテ、此
案ヲ內務省ニ提唱致サレタコトガアリマ
ス、是ハ私共ト致シマシテハ、傾聽スベキ
一ツノ議論デアラウト思ヒマスケレドモ、
之ヲ致スニ暇ノナイ出版物、例ヘバ新聞雜
誌ノ如キハ、ソンナコトヲシテ居ルコトノ
出來ナイヤウナ種類ノ物デアリマス、又出
來ル種類ノ出版物、單行本ナドハサウ云フ
手續ヲ執ル暇ガナイト云フコトモ言ヘナイ
ノデアリマスケレドモ、之ヲ愈〓實行スル
ニ付キマシテハ、多少困難モ伴ヒマスノデ、
マダ其運ビニハ至ラナイノデアリマス、而
シテ第十ニ最後ノ御尋ト致シマシテ、サウ
云フコトモアルカラ若シ內務當局ガ其處置
ヲ誤ッタナラバ、其損害ヲ賠償シタラ宜シ
イデハナイカト云フ御尋デアリマスガ、此
損害賠償ノ事ニナリマスト、一般ノ權力行
爲ノ發動ニ對シマシテ、損害賠償ヲ許スヤ
否ヤト云フコトハ、當局トシテハ非常ナ大
問題デアリマシテ、之ヲヤルコトニナリマ
スト、非常ナ混雜ヲ惹起スルコトニナリマ
スルノデ、一應御尤ノヤウナ御意見デアリ
マスガ、是ハ實行到底困難デアリマスカ
え左樣御諒承ヲ御願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=26
-
027・原夫次郎
○原夫次郞君 鈴木政府委員ノ御答辯ハ先
ヅ八十點位ノ價ガアル、後ノ二十點ハ委員
會デ何レ御尋致スコトニ致シ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=27
-
028・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 原惣兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=28
-
029・原惣兵衞
○原惣兵衞君 司法大臣ノ御出席ヲ願ヒタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=29
-
030・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 司法大臣ハ只今
貴族院ノ委員會ニ出席中デアリマス、本議場
ニハ政府委員ガ出席サレテ居リマス
〔原惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=30
-
031・原惣兵衞
○原惣兵衞君 先ヅ此出版法ニ付キマシテ
ハ我ガ同僚ノ星島議員カラ質問ヲ致シマ
シテ、之ニ對スル所ノ內務大臣ノ御各辯ガ
サッパリ吾々ニハ分ラナイ、ソレカラ先ヅ
內務大臣ガ恐ラクハ分ッテ居ラレナイト云
フコトハ、此前ニ朗讀ヲサレタノデアリマ
スカラ、內務大臣自身ガ分ラナイ、分ラナ
イ法案ヲ提案スルト云フコトハ、實ニ不見
識極マルモノト私ハ思フノデアリマス、而
モ此內務大臣ノ私ハ少クトモ委員會ニ御出
マシニナルマデニ、相當ノ見識ト相當ノ識
見トヲ以テ、十分ナル御調査ヲ先ヅシテ戴
キタイト云フコトヲ御注意申シテ置キマ
ス、御尋致シタイ事ハ、私ハ星島君ガ登ッ
テ最早ヤッタノデアルカラ、相當理解ヲス
レバ吾々モ登ルノデナイノデアリマスケレ
ドモ、殊ニ吾々憲法上ニ於テ一番ヤカマシ
イ言論ノ自由、斯ウ云フモノニ付テハ出版
取締法ガ上程サレテ、從來ノ出版法規ヨリ
モマダ重イ刑罰ヲ科スル、殊ニ第四十六條
ノ罰則ノ規定ヲ見マシテモ三年-二年以
下ノ體刑ノミヲ科シテ居ルト云フ狀態ニ
ナッテ居ル、斯ウ云フ重大ナル法規ヲ說明
スル時ニ當ッテ、司法大臣自身モ此ニ出テ
居ナイト云フコトハ、私ハ先ツ本當ニ此重
大ナル、憲法政治ノ上カラ見テモ大問題ヲ
上程シテ、全ク政府ハ本當ノ說明ノ任ニ當
ルト云フ御意思ハ無イモノト私ハ思シテ居
リマス、而モ今私ハ兩者ニ關係スル主ナル
點ヲ內務大臣ニ御說明ヲ願ヒタイ點ハ、第
二十五條ノ第三號ノ「憲法上ノ政治組織ノ
大綱ヲ不法ニ變革シ又ハ私有財產制度ヲ否
認セントスル事項」此事項ニ付テハ特ニ四
十六條デ、二年以下ノ體刑ヲ科シテ居ルノ
デアリマス、是ハ重大ナル問題デ、罰金刑
デナイ、而モ「憲法上ノ政治組織ノ大綱ヲ
不法ニ變革シ」トアッテ、其次ニ「私有財產
制度ヲ否認セントスル事項」トアリマス、
此二ツノ區劃ハ如何ナル意味デアルカ、「政
治組織ノ大綱ヲ不法ニ」私有財產制度ニハ
不法ト云フコトガ入レテアリマセヌ、唯
否認トアル、吾々私有財產ヲ否認スルト云
フ事ハ-是ハ憲法上ニ於ケル所ノ大綱、
吾々ノ社會組織ノ基礎ヲ成ス所ノモノデア
ルト思ウテ居ルノデアリマスガ、此私有財
產制度ヲ否認スルト云フコトヲ別ニ御書キ
ニナッタト云フコトハ如何ナル意味デアルカ、
而モ上ニ向ッテハ「大綱ヲ不法ニ變革シ」
トアリ、下ノ私有財產制度ニハ不法ニト
云ッテ居ナイ、單ニ「否認セントスル事項」
トアル、一方ハ私有財產制度ヲ否認スル事項
トアリマス、私ハ一例ヲ以テ御話致シマ
ス、現在アル土地-土地國有ト云フモノ
ハ私有財產制度デハ許サナイ、之ヲ國家ノ
制度ノ下ニ於ケル所ノ、國有財產制度ニシ
ヤウト云フヤウナコトヲ、若シ新聞ニ書現
シタ場合ニ、果シテ是ハ正當ナル議論ト思
フノデアリマスガ、斯ウ云フ場合ニ於テモ
尙ホ之ヲ二年以下ノ體刑ニ處セナケレバナ
ラヌト云フ程重大デアルカ、斯ウ云フ第三ノ
事項ニ付テノ體刑ヲ以テ科シ、而モ政治組
織ノ大綱ノ中ニ私有財產制度ヲ入レナイ
デ、二ツニ分ケタ理由、竝ニ「不法ニ」ト云
フコトヲ何故入レナイノデアルカ、是ハ重
大ナル問題デアリマスカラ、內務大臣ノハソ
キリシタ答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、今
一ツハ第六號ニ「社會ノ不安ヲ惹起シ」ト云
フコト、我ガ同僚加藤君ノ質問ニ對シテハ
內務大臣ハ、是ハ檢事ガ犯罪ノ搜査ヲスル
ニ必要ナルコトデアッテ、捜査上必要デア
ルカラ禁止ヲシタノデアルト云フ御說明デ
アリマシタガ、私ハソレハ寧ロ第五號二入
ルベキコトデアッテ「社會ノ不安ヲ惹起シ」
ト云フ此條項デナイト思フ、若モ貴方ノ御
說デアッタラ、第五ノ條項ト云フモノハ必
要ノ無イコトニナルト思ヒマスガ、此第五
ト第六トノ區別ハ如何ナルモノデアルカ、
ソレヲハッキリト御答辯ヲ願ヒタイノデア
リマス、殊ニ「社會ノ不安ヲ惹起シ」ト云
フ、此惹起スルト云フ程度ハ如何ナルモノ
デアルカ、之ヲ一般的ニ此所ニ定メテアル
ノミナラズ、又次ニ二十八條ニ於テモ、「治
安維持上重大ナル影響ヲ及ポスノ虞アル事
件ニ關シ特ニ事項ヲ指示シテ」トアリマス
カラ、一般的ニ定メタ程度、吾々茲デ御伺
シタイノハ事實ノ問題デナクシテ、法律上
ノ法律問題デアリマスルガ故ニ、其程度ハ
如何ナルモノデアルカト云フコトヲ明確ナ
ル御答辯ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、
而シテ第四十六條ニ於ケル所ノ此重大ナル
體刑ヲ科スト云フ-一一年以下ノ體刑ヲ科
ス、卽チ二十五條ノ第三號ノ「憲法上ノ政
治組織ノ大綱」ト云フ此規定、此爲ニ體刑
ヲ科シテ居ル此範圍ガ明確デナケレバ、私
ハ罰金刑デナイ體刑ヲ以テスルト云フコト
ハ重大ナルコトデアリマスカラ、司法大臣
ハ何故ニ之ニ體刑ヲ科スカ、內務大臣ハ此
二ツノ條項ハ如何ナル區別ガアルカ、斯樣
ナルガ故ニ之ニ體刑ヲ科サナケレバナラヌ
ト云フ點ニ付テ、内務大臣ノ御答辯ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=31
-
032・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 安達内務大臣
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=32
-
033・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 只今原君ノ御問
ノ第二十五條ノ第三ニ關スルコトハ、先一
星島君ニ御答致シタ積リデアリマス、憲法
上ノ政治組織ノ大綱ヲ不法ニ變革スル-
或ハ例ヲ申シマスルト、一院制度論ヲスル
トカ、ソレヲ實現セシメヤウト云フコト
ニナッテ初メテ玆ニ當嵌マルノデアリマ
ス、不法ニ變革スルト云フコトデアリマス、
ソレカラ私有財產ノコトハ先ニ申シマ
シタ通リ、治安維持法ニ斯ウ云フ風ニ當然
ノ解釋ニナッテ居リマスカラ、ソレデ土地
國有論ヲ唱ヘル、唱ヘルマデヽ直ニソレガ
此法律ニ當〓マルト云フノデハナイ、學術
的ニ〓究的ニスルト云フコトハ差支ナイト
思フ、ソレカラ社會ノ不安ヲ惹起シ云々ト
云フコトニ付テ、檢事ノ云々ト云フ御話ガ
アリマシタガ、アレハ長野事件ニ檢事ガ祕
密ノ漏洩ヲ恐レル爲ニ、此事件ヲ差止メテ
居ノダノト此事トハ違。テ居リマスルカラ、
左様御承知ヲ願ヲテ置キマス、是ハ曩ニ御
話致シマシタ震災ノ場合ニ朝鮮人ガ騒グト
云フヤウナコトハ、社會ノ不安ヲ確ニ惹起
スモノニ違ヒナイカラ、ソレデ治安維持
上カラサウ云フモノハイケナイ、斯ウ云フ
コトニスルノデアリマス、左様御承知ヲ願
ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=33
-
034・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本田政府委員
〔政府委員本田恒之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=34
-
035・本田恒之
○政府委員(本田恒之君) 司法大臣ガ貴族
院ニ出席中デアリマスカラ、私カラ御答致
シマス、原君ガ司法大臣ニ御質問ニナッタ
要旨ハ、現行法ニ於テ、出版法ニ於テ二年
ノ刑ニ處セラレテ居ル所ノ犯罪、卽チ朝憲
紊亂ノ犯罪デアルノニ拘ラズ、今度ハ之ヲ
三年トシテ重クシテ居ルノハ、如何ナル譯
デアルカト云フコトガ第一ノ御質問ノ要旨
デアッタヤウデアリマス、是ハ明文ニ明ニ
元シテアリマスル如ク、現行法ニ於キマシ
テハ、朝憲紊亂ト云フ廣イ言葉ヲ用ヒマシ
テ、而シテ禁錮二箇年、之ニ持シテ行ヲテ罰
金ヲ附シテ居ルノデアリマス、然ルニ此改
正法案ニ於キマシテハ、之ヲ明確ニ項ヲ分
チマシテ、皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆スル事項及國
體ヲ變革セントスル事項ト、之ヲ餘程此二
ツノ事項ヲ重ク視テ居リマシテ、之ニハ禁
錮三年ニ處スルト云フ規定ニ改メタノデア
リマス、是ハ朝憲紊亂ト云フヤウナ廣汎ナ
ル言葉ヲ避ケテ、事項ヲ明確ニ致シマシ
テ、而シテ重キ刑ヲ以テ之ニ臨ム必要ガア
ルト云フ考ニ基キマシテ、三年ニ改メタノ
デアリマス、而シテ罰金ヲ附加シテ居リマ
セヌ、其他憲法上ノ政治組織ノ大綱ヲ不法
ニ變革スル、或ハ私有財產制度ヲ否認セン
トスル事項ノ如キ記載ニ至リマシテハ、矢
張禁錮二箇年ト云フコトニナッテ居ルノデ
アリマス、此大體ヲ申シマスルト、此明文
ニ附記シテアリマスル通リニ、犯罪ノ種類
ニ依リマシテ刑ヲ細カク分ケタノデアリマ
ス、卽チ原君ガ一番重イ皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆
スル事項デアル、或ハ國體ヲ變革セントス
ル事項デアルト云フ一番重イ刑ヲ以テ、或
點ノミヲ御而シニナッテ、而シテ現行法ト
ノ比較上、一年重イノハ酷イヂヤナイカ、
ドウ云フ譯デアルカト云フ御質問ニナリマ
シタケレドモ、法條ノ排列ヲ細カク御觀察
下サイマスト、自ラ其間明瞭ナ權衡ヲ得テ
居ル積リデアリマス
〔原惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=35
-
036・原惣兵衞
○原惣兵衞君 先ヅ內務大臣ニ私ガ御尋シ
タノハ憲法上ノ政治組織ノ大綱ト云フコ
トヽ私有財產制度ヲ否認セント云フ、此
二ツニ分ケタ理由ハ如何ナルモノデアル、
其二ツニ分ケテ何所ガ違フノデアルカ、
私ハ私有財產制度ノ撤去、否認スルト云フ
コトハ、我ガ憲法上ノ所謂政治組織ノ大綱
ヲ爲スモノデアルト、私ハ斯ウ解釋致シテ
居ル者デアリマスカラ、其違フト云フ點ハ
如何ニ違フトカ、又之ヲ何故不法ニ否認セ
ントスル、不法ト云フ字ヲ入レナイノカ、
今安達內務大臣ハ曰ク、二院制度ヲ一院制
度ニスルモノダト仰セラレタガ、例ヘバ我
ガ政治上二院制度ヲ一院制度ニスルト云フ
法律上ノ解釋カラ之ヲ主張シテモ、私共ハ
勿論問題ニナラナイト思フノデアリマス、
ソレ故ニ私ハ不法ニ變革スルト云フコト
ヲ、其私有財產制度ニ於テ、不法ト云フ字
ガ無イノハ、如何ナル意味デアルカ、卽チ
此二ツノ區別ヲ明確ニシテ吳レト申シタノ
デアリマス、今一ツハ、第五ト第六ノ區別
ハ何所ニ在ルカ、何方ノ條項ニ當ルノカト
云フコトヲ御尋シタノデアル、之ニ對シテ
モ、チヨットモ何等明確ナル御答辯ヲ見出
シ得ナイノデアリマス、ソレカラ司法次官
ノ仰セニハ、法條ヲ折角見ロトノ仰セデアリ
マスガ、ソレヨリ貴方ガ御覽ニナッテ居ナ
イノデハアリマセヌカ、私ハ第三號ノ憲法
上ノ政治組織ノ大綱ヲ不法ニ變革シ、又、
私有財產制度ヲ不法ニ否認セントスル事項、
此事項ニ付テハ特ニ二年以下ノ體刑ニナッ
テ居リマス、此重大ナル今言ッタ私有財產制
度、土地國有論ト云フヤウナモノヲ出シタ
ト云フコトニ依シテ、所謂新聞紙全體ノ著作
人及其編輯人ガ、二年以下ノ體刑ニナルト
云フコトハドウ云フ意味カ、此第三號ノ區
別ヲ立テルト云フコトガ重大デアルト私ハ
思ッテ居ルノデアル、此條項ヲ貴方自身ガ見
ナイデ、私ニ見ロト云フコトハドウ云フコ
トデアルカ、特ニ司法次官ガ玆ニ說明ナサ
ルニ、自分自身能ク御覽ニナッテ居ナイ、第
三號ノ規定ハ重大デアリマスカラ、所謂司
法内務相提携シテ、明確ナル御答辯ヲ願ヒ
タイト思ヒマス(拍手、一答辯ノ必要ナシ」
「必要ナシト云フコトガアルカ」ト呼フ者ア
リ、發言者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=36
-
037・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=37
-
038・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 先ニ御話シタコ
トニ大體ハ盡キテ居ルト思フ、土地國有論
ヲ···
〔「分ルヤウニ言へ」「靜肅ニ」ト呼フ者
アリ發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=38
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039・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=39
-
040・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) (주)新聞紙デ、
唯ソレヲ唱ヘマシテ、直ニ是ガ此條項ニ
當嵌マルヤウナコトハ萬々ナイト思ヒマ
ス、原サンハ土地國有論ガ、直ニ是ガ罰セ
ラレタコトガアルト言フ、サウ云フコトハ
萬々ナイト思ヒマス、ンレデ私有財產制度
ヲ否認セントスルコトノ事項ハ御分リダ
ラウト思フ、治安維持法ニ於テ既ニ斯ウ云
フ條項ヲ認メテ居ルノデアリマス、ソレト
同一ノ意味デアルノデアリマス
〔政府委員本田恒之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=40
-
041・本田恒之
○政府委員(本田恒之君) 重ネテノ原君ノ
御尋ニ御答申上ゲマス、原君ノ御質問ノ要
旨ヲ、實ハ或ハ私承リ違シテ居ッタカモ知レ
マセヌケレドモ、只今ノ仰セニ依ッテ見マ
スレバ、二十五條ノ第三號、憲法上ノ政治
組織ノ大綱ヲ不法ニ變革シ云々トアル條項
ヲ、他ノ條項ヨリ殊ニ拔イテ、二年ノ重キ
ニ處シタノハドウ云フ意味カト云フ御要旨
ノヤウニ承リマシタ、ソレハ其意味デ御答
申上ゲマス、又違ッテ居リマシタラドウゾ
御問ヲ願ヒマス、何遍デモ申上ゲマス、是
ハ我國憲法國ト致シマシテ、政治組織ノ大
綱ヲ不法ニ變革シ、若クハ私有財產制度ヲ
否認スルヤウナ記事論說ヲ揭ゲルト云フコ
トハ、國家ノ爲ニ非常ナ重大ナル事柄デ
アルト云フコトハ、申上ゲル迄モアリマセ
ヌ、ソレデ特ニ此項ダケヲ拔イテ、二年ノ
重キ刑ニ處シタト云フノハ、其權衡ヲ失フ
ヤ否ヤト云フノハ御意見デアリマス、自カ
ラ是ハ玆ニ排列シテアル所ヲ能ク御覽ニナ
リマスレバ、吾々ハ其權衡宜シキヲ得テ居
ルト云フ考デアリマス、是ダケヲ申上ゲテ
置キマス
〔原惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=41
-
042・原惣兵衞
○原惣兵衞君 甚ダ三度本員ガ壇上ニ立タ
ネバナラヌノハ、實ニ遺憾トスル所デアリマ
ス、併ナガラ如何ニセン內務大臣ハ所謂私
ノ質問シタル論旨ニ、一モ觸レテ居ナイノ
デアリマス、貴方ノ今仰セニナルコトハ、
治安維持法ニモ書イテアルカラト云フ、斯
ウ云フ仰セデアリマスガ、私ノ言フノハ、
私有財產制度ト云フモノヽ意義ヲ聞イテ居
ルノデハナイノデアリマス、私有財產制度
ト云フモノハ、此憲法上ノ政治組織ノ大綱
ト云フ其中ニ入ラナイカ、ソレヲ別ニ書イ
タト云フコトハ、憲法上ノ政治組織ト云フ
此意味ノ基礎ヲ成ス私有財產制度デアル、
斯ウ云フ見解ヲ持ッテ居ルガ、特別ニ書ク
理由ガ何所ニ在ルカト云フコトガ一ツ、土
地國有論ヲ唱ヘルト云フコトハ、所謂私有
財產制度ヲ否認スルト云フコトニナルノデ
アルカ、之ヲハッキリ答辯ヲ願ヒタイ、是
ガ一ツデアッタ、モウ一ツハ第五號ト第六號
トノ區別ガ一ツモ付イテ居ナイカラ、之ヲ
ハッキリ付ケテ吳レト云フ、此二點デアリマ
ス、是ハ全體ノ法案ノ基礎トナリ、體刑モ
重クナッテ居リマシテ、罰金刑デモナイト
云フ、斯ウ云フ重大ナ基礎問題ダケハ明確
ニ御答辯ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
〔政府委員鈴木富士彌君登壇〕
〔原惣兵衞君「内務大臣ニ聞イテ居ル」、
參與官ニ聞イテ居ルノデハナイ」ト呼
フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=42
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043・鈴木富士彌
○政府委員(鈴木富士彌君) 無禮ナコトヲ
言フナ、私ハ政府委員ノ權能トシテ、發言
ヲ求メマス(發言者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=43
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044・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=44
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045・鈴木富士彌
○政府委員(鈴木富士彌君)(續) 答辯ヲ
-私ハ政府委員ノ權能ヲ以テヤリマス
〔發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=45
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046・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス
鈴木君-鈴木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=46
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047・鈴木富士彌
○政府委員(鈴木富士彌君) 申上ゲマス、
-ト言ヒマシタコトハ取消シマス、ソレ
デ原サンノ御質問ハ頗ル重大ナ事デアリマ
ス重大デアリマスルガ、原サンガ私有財
產制度ト云フコトハ、憲法上ノ政治組織ノ
大綱ノ中ニ入ッテ居ルデハナイカト云フ御言
葉デゴザイマシタ、其入ッテル居ルト云フ
根據ハ定メテ憲法第二十七條ヲ指サレルノ
デアラウト存ジマス、卽チ憲法第二十七條
ニ、「日本臣民ハ其ノ所有權ヲ侵サルルコト
ナシ」ト斯ウ書イテアルカラ、私有財產制
度ハ憲法上ノ政治組織ノ中ニ八シテ居ル、
斯ウ云フ御言葉デアラウト存ジマス、併ナ
ガラ私共ノ解釋スル所デハ、此條文ノ所有
權ハ國民個人ノ個々ノ所有權ノ保護ヲ指シ
タモノデアリマシテ、私共ノ謂フ私有財產
制度ト云フモノハ個々ノ所有權ヲ謂フノデ
ハナクシテ、綜合的國民共存ノ律則トシテ、
一纏メニナッタ私有財產ノ制度ヲ指スノデ
アリマス、個々ノ所有權ヲ對象トシテ言フ
ノデハナイノデアリマス、此意味ニ於キマ
シテ、是ハ入ッテ居ナイト云フ解釋デアリ
マシテ、昨年モ此樣ニ別々ニシテ出シタ次
第デアリマスカラ、此點ハ宜シク御諒承ヲ
願ヒタイト思フノデアリマス、ソレカラ第
五號ト第六號ハ、是ハ私判然區別ガアルヤ
ウニ思ヒマスルガ、先程內務大臣カラ、擧
ゲラレマシタ例ニ付テハ、五號ニ屬スルノ
デハナイカト云フヤウナ御話デアリマシタ
ガ、此實例ハ私先程一寸聽洩ラシマシタカ
ラ能ク分リマセヌガ、兎ニ角五號ト六號
トハ原サンノ透徹セル法律的御解釋ニ依レ
バ、極メテ明瞭ニ分ルト思フノデアリマス
カラ、何レ詳シイコトハ委員會ニ於キマ
シテ申上ゲルコトニ致シタイト思ヒマス、
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=47
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048・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 議事進行ニ關シ
テ發議ノ通告ガアリマス、此場合ニ之ヲ許
可致シマス、靑木精一君
〔靑木精一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=48
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049・青木精一
○靑木精一君 本案ノ審理上ニ付テ政府ノ
意思ヲ伺ヒタイ爲ニ、議事進行ノ爲ニ玆ニ
登壇ヲ許サレタ次第デアリマス、御承知ノ
如ク本案ハ頗ル重大ナル所ノ案件デゴザイ
マシテ、且ツ多年ノ懸案デアル、昨年ハ審
議未了ニ終リ、本案ニ對シテハ今期議會ノ劈
頭ニ、政府ハ當議會ニ提出サルベキガ當然
デアルト思ッテ、實ハ心私カニ提案ヲ待ッテ
居ッタノデアリマス、然ルニ本案ガ提出セ
ラレタノハ會期正ニ半バヲ過ギタル所ノ今
日デアル、其間ニ於キマシテ、政府ハ相當
ナル所ノ自信ト〓究トヲ遂ゲテオキデニ
ナッタコトヽ思ッタノデアリマス、然ルニ先
刻來本案ニ對スル所ノ議員ノ質問ニ對シ、
内務大臣ノ答辯ナルモノハ少シモ要領ヲ得
ナイノデアル、甚ダ私ハ遺憾トスルノデア
リマス、殊ニ第二十五條ノ指摘事項ノ如キ
ハ、是ハ新聞雜誌等ノ事業カラ見マスル
下、其事業ノ生命ニ關スル所ノ重大ナル事
項デアリマス、其指摘事項ノ第六項ニ於テ
「社會ノ不安ヲ惹起シ」云々、社會ノ不安ト
云フコトハ如何ナル事カト云フコトヲ內務
大臣ニ質問スレバ、内務大臣ノ答辯ナルモ
ノハ殆ド分ラナイ、唯、「社會ノ不安」ト云
ヘバ分ルヤウデアッテ、實際新聞ヲ編纂スル
人ニナルト、此「社會ノ不安」ト云フ程度ガ
ドノ程度ニ於テ取締ヲ受ケルノデアルカ、
是ガ分ラヌノデス、サウシテ又第三號ニ於
テ「憲法上ノ政治組織ノ大綱ヲ不法ニ變革
シ又ハ私有財產制度ヲ否認セントスル事
項」此質問ニ對シテソレハ治安維持法ニア
ルカラデアル、治安維持法ニアルコトハ吾
吾モ承知シテ居ル、併ナガラ政府ハ治安維
持法ニ其事項ガ記載セラレテアル以上ハ、
其治安維持法ト同ジ意味ダト云フナラバ、
內務大臣ノ口カラシテ此一定セル解釋ト云
フモノヲ、此壇上ニ於テ說明スベキ義務ガ
アル、然ルニ其點モ唯〓茫漠トシテ治安維
持法ニアルデハナイカト云フヤウナ答辯ヲ
ナサル、其他本案ニ付テ先程來ノ同僚諸君
ノ質問ニ對スル政府ノ應答ト云フモノハ、
全ク要領ヲ得ザルノミナラズ、誠意ヲ缺イ
テ居ルヤウニ私ハ感ズルノデアリマス、斯
ノ如キ重大ナル意義ヲ有スル所ノ法律案
ガ、十分徹底セル所ノ政府ノ解釋ヲ聽クコ
トヲ得ズシテ、委員會ニ付セラレルト云フ
ヤウナコトハ、吾々甚ダ遺憾ニ思フ、此場
合ニ於テ私ハ内務大臣ニ質問致スノデアル
ガ(「質問ハ許サヌ」ト呼フ者アリ)政府ハ案
ヲ十分ニ說明シ得ルヤウニ、政府ノ意見ヲ
統一シ〓究ヲ進メラレテ、再ビ提出スルト
シテモ、一時之ヲ撤囘スルノ御意思ガ無イ
カ、是ハ議事進行上ノ必要ヨリ起ッタ質問
デゴザイマスカラ、內務大臣ノ誠意アル御
答辯ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=49
-
050・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 安達内務大臣
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=50
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051・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 本案ノ提案ノ遲
レマシタノハ甚ダ遺憾ト思ヒマス、是ハ內
務省ニ於キマシテ種々調査〓究ノ爲ニ暇
取シタノハ甚ダ遺憾ト思ヒマス、併ナガラ
只今御尋ノ此際ニ於テ之ヲ撤囘スルト云フ
ヤウナ考ハ、毛頭持シテ居リマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=51
-
052・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ニテ質疑ハ終
了致シマシタ、日程第二、右議案ノ審査ヲ
付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第二右議案ノ審查ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=52
-
053・砂田重政
○砂田重政君 吾々ハ甚ダ此案ニ對シテ遺
憾ニ感ジマスルガ、議事ノ規定ニ依リマシ
テ特ニ十八名ノ委員トシ、議長ニ於テ之ヲ
指名セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フアリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=53
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054・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=54
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055・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程
第三、海外移住組合法案ノ第一讀會ヲ開キ
やっ、幣原外務大臣
第三海外移住組合法案(政府提出)
第一讀會
海外移住組合法案
海外移住組合法
第一條海外移住組合ハ組合員又ハ組合
員ト同一ノ家ニ在ル者ノ海外移住ヲ助
成スルヲ以テ目的トス
組合ハ法人トシ其ノ組織ハ有限責任ト
ス
第二條組合ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ
事業ヲ併セ行フ
組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在
ル者ノ海外移住ニ必要ナル資金ヲ組
合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者
ニ貸付スルコト
二組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在
ル者ノ海外移住ニ必要ナル貯金ノ便
宜ヲ組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ
在ル者ニ得セシムルコト
三組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在
ル者ノ海外移住ニ必要ナル土地、建
物其ノ他ノ物件ヲ取得シ又ハ借受ケ
之ヲ組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ
在ル者ニ讓渡シ又ハ利用セシムルコ
組合ハ前項ニ規定スルモノノ外學校、
病院、倉庫其ノ他組合員又ハ組合員ト
同一ノ家ニ在ル者ノ海外移住ニ必要ナ
ル事業ヲ行フコトヲ得
組合ハ第一項ノ規定ニ依リ取得シ又ハ
借受ケタル土地、建物其ノ他ノ物件ヲ
組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者
ニ讓渡シ又ハ利用セシムルニ至ル迄利
用スルコトヲ得
第三條組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組
合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者以
外ノ者ニシテ海外ニ在住スル者ニ對シ
前條第一項及第二項ノ事業ヲ行フコト
ヲ得
第四條組合ハ一區域一個ニ限リ之ヲ設
立スルコトヲ得
第五條組合員ハ組合ニ關スル一切ノ行
爲ヲ代理スベキ者ヲ定メ之ヲ組合ニ屆
出デタル後ニ非ザレバ海外ニ移住スル
コトヲ得ズ
組合員前項ニ規定スル代理人ヲ組合ニ
屆出デズシテ海外ニ移住シタルトキハ
組合ノ會議及組合ノ爲ス通知又ハ催告
ニ關スル一切ノ權利ヲ抛棄シタルモノト
看做ス
前二項ニ規定スル代理人ハ當該組合ノ
區域內ニ居住スル組合員タルコトヲ要
ス
第六條組合ノ理事及監事ハ地方長官ノ
許可ヲ受クルニ非ザレバ海外ニ移住ス
ルコトヲ得ズ
第七條海外移住組合ハ共同シテ其ノ目
的ヲ達スル爲海外移住組合聯合會ヲ設
クルコトヲ得
聯合會ハ法人トシ其ノ組織ハ有限責任
トス
第八條聯合會ハ其ノ目的ヲ達スル爲左
ノ事業ヲ併セ行フ
-海外移住組合ノ普及、發達及聯絡
ヲ圖ルコト
二所屬海外移住組合ニ必要ナル資金
ヲ貸付シ及貯金ノ便宜ヲ得セシムル
コト
三所屬海外移住組合ガ組合員又ハ組
合員ト同一ノ家ニ在ル者ニ讓渡シ又
ハ利用セシムベキ土地、建物其ノ他
ノ物件ヲ取得シ又ハ借受ケ之ヲ所屬
海外移住組合ニ讓渡シ又ハ利用セシ
ムルコト
第二條第二項、第三項及第三條ノ規定
ハ聯合會ニ之ヲ準用ス
第九條聯合會ハ全國ヲ通ジテ一個トシ
其ノ設立ハ主務大臣ノ許可ヲ受クベ
シ
第十條海外移住組合以外ノ者ト雖モ定
款ノ定ムル所ニ依リ聯合會ノ會員ト爲
ルコトヲ得
第十一條聯合會ノ理事及監事ハ會員タ
ル海外移住組合ノ理事及監事竝ニ前條
ノ規定ニ依リ會員ト爲リタル者ノ中ヨ
リ總會ニ於テ之ヲ選任スベシ但シ特別
ノ理由アルトキハ其ノ他ノ者ヨリ選任
スルコトヲ得
前項但書ノ規定ニ依ル選任ハ主務大臣
ノ認可ヲ受クベシ
第十二條聯合會ハ主務大臣之ヲ監督ス
第十三條第六條ノ規定ハ聯合會ノ理
事及監事ニ之ヲ準用ス但シ地方長官
トアルハ主務大臣トス
第十四條產業組合法第一條、第二條第
一頂、第四條第一項、第六條ノ二、第
九條第二項、第十六條ノ六第二項、第
四十二條、第四十六條ノ二、第四十六
條ノ三、第四十九條、第五十八條、第
六十八條、第七十六條乃至第七十七條
第七十九條、第八十條第一項、第八十
一條但書及第八十二條乃至第九十二條
ノ規定ヲ除クノ外產業組合法中產業組
合ニ關スル規定ハ海外移住組合ニ、同
法中產業組合聯合會ニ關スル規定ハ海
外移住組合聯合會ニ之ヲ準用ス但シ海
外移住組合聯合會ニ付テハ同法第八十
一條ノ規定ニ依リ準用スル產業組合ニ
關スル規定中地方長官トアルハ主務大
臣トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=55
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056・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今議題
トナリマシタル法律案ハ、本邦人ガ企業ノ
爲ニ海外ニ移住ヲ致シマスコトヲ便ナラシ
メントスルノ趣旨ニ出タルモノデアリマ
ス、御承知ノ通リ從來本邦人ノ海外移住
ハ、多クハ單純ナル勞働ヲ目的トセルモノ
デアリマシテ、企業ノ目的ヲ伴フ移住ハ比
較的ニ少カッタノデアリマス、固ヨリ外國
ニ於ケル勞働ノ需要ニ應ジマシテ、勞働移
民ノ移住致シマスコトニ付キマシテモ、ソ
レ〓〓適當ナル保護ヲ與フベキモノデアリ
マスガ、是ト同時ニ企業ノ目的ヲ有スル移
民ノ爲ニ、其希望ヲ達セシムルコトヲ得セ
シムルコトノ途ヲ講ズルコトハ、今日ノ急
務デアルト考ヘマス、近頃ノ傾向ニ見マス
ルノニ、小資本ヲ携ヘテ海外ニ趣キ、其地
ニ於キマシテ企業、殊ニ農業ヲ營マントス
ル者ガ漸次多クナッテ參ッタノデアリマス
ガ、此種ノ移住希望者ハ、〓ネ中流農家ニ
屬スルモノデアリマシテ、相當ノ〓育ヲ受
ケ、移住國ノ社會ニ比較的ニ早ク同化シ得
ル所ノ素質ヲ備ヘ、海外ニ於ケル本邦移民
ノ聲價ヲ自然ニ高メ得ル人〓デアリマス、
斯ノ如キ人ガ外國ニ移住致シマシテ、資本
ノ投下ト勞力ノ供給トヲ併セ行ヒマスルニ
於キマシテハ、移住國ノ經濟生活ニ對シマ
シテモ適切ナル貢献ヲ爲スト共ニ、其移民
ノ從事致シマスル企業ノ種類及方法ニ依リ
マシテハ、本邦工業材料ノ供給ニモ有利ナル
事態ヲ作リ得ルモノデアリマシテ、卽チ本
國竝ニ移住國ノ共存共榮ノ楔ドナルベキモ
ノデアリマス、ソレ故此種ノ移住者ノ增加
ト、其將來ノ健全ナル發達トハ、洵ニ望マ
シイコトデアリマス、併ナガラ是等ノ移住
希望者ハ、渡航先ノ言語及事情ニ通ゼザル
考ガ大多數ヲ占メテ居リマシテ、又其資力
ニモ自ラ限リガアリマスルガ爲ニ、希望者
個々ノ獨力ヲ以テ致シマシテハ、其希望ヲ
達スルノニ困難ナル狀態ニ在ルノアデリマ
ス、隨テ此際法人格ヲ有スル特別ノ組合ヲ
組織シテ、協同ノ力ヲ以テ共通ノ困難ニ打
克ツコトヲ得セシムルノ途ヲ開カネバナリ
マセヌ、又既ニ海外ニ移住セル勞働者ノ中
ニハ、其移住先ニ於キマシテ賃銀等ノ貯蓄
ニ依リマシテ、獨立セル農業者其他ノ企業
者ニ轉ゼントスルノ希望ヲ懷キナガラ、是
亦種々ノ事情ニ制セラレマシテ、其目的ヲ達
シ得ズニ居ル者ガ各地方ニ於テ少クハナイ
ノデアリマス、尙ホ今後移住致シマスル勞
働者ノ中ニモ、追〓同一ノ境遇ニ立ツ者ガ
生ズルデアラウト思ハレマス、斯ル勞働移
住者ノ獨立難ヲ救濟スルノ施設ヲ爲シマス
ルコトモ、亦移民ノ保護上必要ナルコトデ
アリマシテ、此法案ハ此種ノ勞働移住者ノ
福利曾進ノ目的ヲモ重ネ有スルモノデアリ
マス、海外移住組合ハ產業組合ト共通ノ性
質ヲ有スル事項ガ少クナイノデアリマスカ
ラ、斯ノ如キ事項ニ付キマシテハ、此法案
ニ於キマシテハ、產業組合法ノ規定ヲ其儘
移住組合ニ準用致スコトヽ致シテ居リマス
ルガ、其以外ニ於キマシテ、組合ノ目的ト
活動ノ範圍トニ至ッテハ、移住組合ハ一般
產業組合ト違ッタ所ガ可ナリニ多イノデア
リマスカラ、自然產業組合法ノ外ニ特別ノ
法規ヲ設クルノ必要ガ生ジテ參ッタノデア
リマス、而シテ本法案ハ主トシテ此種ノ特
別法規ヲ包含スルモノデアリマス、就キマ
シテハ諸君ニ於カレマシテモ、何卒本案御
審議ノ上、幸ニ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ
望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=56
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057・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シテ質
疑ノ通告ガアリマス、順次發言ヲ許可致シ
さく、植原悅二郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=57
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058・植原悦二郎
○植原悅二郞君 極ク簡單デアリマスカラ
自席カラ質問ノ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=58
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059・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=59
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060・植原悦二郎
○植原悅二郞君 第一ニ此案ニ付テ御尋致
シタイ事ハ、茲ニ海外移住組合法ノ中、海
外ト規定シテ居ルノハ我國ノ領土以外ノ土
地ヲ意味スルノカ如何カ、ソレヲ指定スル
意味ニ於テ此海外ト云フ文字ヲ御用ヒニ
ナッタカドウカ、之ヲ伺ッテ置キタイ、第二
ノ質問ト致シマシテハ、左樣ナ意味デゴザ
イマシタナラバ、此移住組合法ヲ利用サレル
所ノ我國ノ移民ヲ送リ得ル土地トシテ、只
今外務當局ガ略〓豫想致シテ居リマスル所
ノ國ミハ何處デアルカヲ御雨シ願フコトガ
出來マスルナラバ、之ヲ伺ッテ置キタイ、
次ニ御尋致シタイ事ハ、私共我國ノ人口問
題ヲ解決スル上ニ於テモ、我國ノ國力發展
ノ上カラ申シマシテモ、我ガ國民ガ出來得
ル限リ海外ニ發展スルコトヲ希望スル者デ
アリマス、併ナガラ動モスレバ折角出テ
行ッタ所ノ移民ガ海外ニ於テ排斥サレタ
リ、又ハ排斥問題ガ起リマスル時ニ於テ
ハ我ガ外務當局ハ屢、事無カレ主義ヲ執
リマシテ、折角强イ根據ヲ作リマシタ我國
ノ移民、而モ合衆國沿岸ニ於ケルガ如キ移
民ガ、動モスレバ棄民ノ取扱ヲサレルヤウ
ナ狀態ヲ過去ニ於テ現ハシテ居ルコトハ、
諸君御承知ノ通リデアリマス、ソコデ海外
移民ヲ奬勵スル意味ニ於テ、種々ナル方法
ヲ講ズルコトニ於テ異論ハゴザイマセヌ
ガ、若シ此組合ガ出來マシタ場合ニ於テ
ハ、政府ハ之ニ對シテ、補助金デモ交付ス
ル所ノコトヲ豫想シテ居ルカ如何カト云フ
コトガ、私ノ第三ノ質問デアリマス、第四
ノ質問ト致シマシテハ、之ニ牽聯致シマシ
テ、從來我國ノ移民ノ爲ニ移民奬勵デアル
ト云ッテ、政府カラ補助ヲ與ヘテ居リマス
ル所ノモノガ、動モスレバ海外ニ發展シヤ
ウトスル所ノ移住者其者ヲ利スルヨリハ、
寧口移民會社ヤ或ハ船會社ヲヨリ多ク利ス
ルガ如キ補助ノ結果ヲ來シテ居ルコトニ於
キマシテハ、過去ニ於テノ事ハ政府當局ニ
於テモ御異存ナイコトヽ存ジマス、若シ此
組合ニ對シテ補助ヲ與フルガ如キ場合ニ於
キマシテハ、此組合ノ理事者若クハ幹事ト
云フ者ヲ、ヨリ多ク利セシメルヤウナ虞
ノアルコトヲ十分豫防スルダケノ方策ガ
立ッテ居ルカドウカ、之ヲ伺ヒタイノデア
リマス、第五ノ質問トシテ伺ヒタイコト
ハ、何ト致シマシテモ我國ノ國土以外ノ土
地ニ、我ガ國民ガ移住シマスルニハ、其土地
ニ對シテ少クトモ永住的ノ觀念ヲ持タナケ
レバナリマセヌ、之ニ付テハ政府當局ニ於
テモ御異存ナイ事ト思フ、ソレ故ニ團體的
移民ハ過去ノ歴史ニ徵シマシテ、我國ノ領
土以外ノ所ニ於テハ、是ガ移民排斥若クハ
排日ノ因ヲ爲スコトガ屢〓デアリマス、此
法案ニ依リマスレバ、外國ニ我國ノ資本ヲ
投ズルコトニ於テ異議ガアルノデハアリマ
セヌ、質本ヲ投ジテ其處ニ送ル所ノ移民
ガ、而モ日本ニ於ケル所ノ組合ニ依シテ、其
財產ガ動モスレバ其將來ノ發展ヲモ左右サ
レル虞アルベキ所ノモノデアルコトヲ考ヘ
ナケレバナリマセヌ、左様ナ場合ニ於テ斯樣
ナ組合ヲ造リマシテ、政府ガ之ニ補助ヲ與
ヘルト云フヤウナコトガアリマシテ、移民奬
勵ヲ爲ス場合ニ於テハ一ハ資本家ヲ利スル
コトニナリ、一ハ折角ノ移民其者ノ海外ニ
於テノ發展ヲ希望シツヽソレヲ阻止スルコ
トニナル、移民ニ補助シヤウトシテ之ヲ補
助シ得ザルガ如キ結果ヲ生ズル虞アルコト
ヲ懸念スル者デアリマスガ、之ニ對スル政
府ノ御所見ヲ伺ヒタイ、次ニ伺ヒタイコト
ハ、第四條ノ組合ノ一區域トシテ居リマス所
ノ-一區域一個ニ限リ組合ヲ設立スルト
云フ規定ガアリマスガ、此一區域ノ範圍ハ
ドノ位ノコトヲ豫想シテ居ラレマスカ、其
點ヲ伺ヒタイ、之ニ對シテ明確ナル御答辯
ル煩シタイト思ヒマス
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=60
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061・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 植原君ノ
御質問ニ御答申シマス、第一點ハ海外移住
組合ト稱スル、海外ト云フノハ日本ノ領土
以外ノ意味デアルカト云フコトデアリマ
ス、御說ノ通リデアリマス、日本ノ領土以
外ト云フ意味デアリマス、第二ニ移住先ハ
ドウ云フヤウナ場所ヲ外務省ニ於テ適當ト
認メテ居ルカ、政府ニ於テ適當ト認メテ居
ルカト云フ御質問デアリマス、如何ナル場
所ニ移住スルカト云フコトハ、移住組合自
身デ決定スベキ問題ナノデアリマス、今日
ノ狀況ニ於キマシテ、斯ノ如キ移住ノ餘地
ト云フモノハ決シテ少クナイト考ヘテ居リ
マス、殊ニ南米地方ニ於キマシテハ、十分
其餘地ガアルコトヽ考ヘテ居リマスガ、如
何ナル方面ニ向ッテ移住スルカト云フコト
ハ移住組合自身ノ決定スベキコトヽ考ヘ
テ居リマス、第三ニ斯ノ如キ移住ガ海外へ
參リマシテ、其他ニ於テ排斥ヲ受ケルヤウ
ナ事ガナイカト云フコトデアッタト了解致
シマス、今日ニ於キマシテ左樣ナ心配ヲ私
ハ持シテ居リマセヌ、十分ナル用意ヲ整ヘマ
シテ、左樣ナ虞レガナイ、本國ノ爲ニモ移
住國ノ爲ニモ宜シイ、本國ノ移民ヲ手ヲ開
イテ歡迎ヲ致シテ居ル國ニ送リタイト云フ
積リナノデアリマス、先ヅ今日ノ所ニ於キ
マシテ、斯樣ナ組合ノ人〓ガガ住致シマシ
タ爲ニ、排斥熱ガ起ルト云フヤウナコトハ
豫想致シテ居リマセヌ、ソレカラ第四ニ何
カ此移住組合ニ補助金ヲ交付スルノ議ガア
ルカト云フコトデアリマス、此問題ニ付キ
マシテハ、追テ追加豫算ヲ以テ請求致シマ
シテ、皆サンノ御協賛ヲ仰ギタイト思ッテ
居ル點ガアルノデアリマス、補助金ト云フ
コトデハアリマセヌガ、此聯合會竝ニ移住
組合ト云フモノヽ爲ニ若干ノ金融ノ融通ヲ
付ケルト云フ制度ハ設ケタイト考ヘテ居リ
やっ、其利スル者ハ固ヨリ移民自身デアリ
マシテ、何等資本家ヲ利スル、他ノ取扱人
ト云フヤウナ者ガ橫ノ方カラヤッテ來テ其
利益ヲ占メルト云フヤウナコトハ、ソレハ
決シテサセヌ積リデアリマス、ソレカラ終
リニ一區域トアルー-第四條ニ「組合ハ一
區域一個ニ限リ之ヲ設立スルコトヲ得」ト
云フ、其一區域ト云フノハ大體如何ナル範
圍ヲ豫想シテ居ルノカト云フコトデアリマ
ス、是ハ大體一府縣ヲ一區域ニ致シタイト
云フ見當デアリマスケレドセ、大ナル府縣
ニ於キマシテハ、或ハ一ツノ府縣ノ中ニ二
ツノ區域ヲ認メル場合モアリマセウ、或ハ
二ツノ府縣ヲ一ツノ區域ト認メル場合モア
リマセウガ、ソレ等ノコトハ組合ヲ認可致
シマス際ニ於テ、十分〓究ヲ致シテ決定致
シタイト云フ積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=61
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062・植原悦二郎
○植原悅二郞君 私ノ第二ノ質問デアリマ
シタコトニ對シテ、政府當局ト致シマシテ
ハ一ツノ立法行爲ヲ致シマスル場合ニ於テ
ハ、其立法ハ如何ナル所ノ範圍ニ效力ヲ有
スルモノカ、如何ナルコトガ目前ニ横ハツ
テ居ルカヾ之ニ必要デアルカラ、此立法行
爲ヲシナケレバナラナイト云フ、豫メノ政
府トシテ豫想サレル考ガアルモノデナケレ
バナラナイト思ヒマス、ソレ故ニ私ハ海外
移住組合法ヲ現在ニ於テ制定適用シテ、之
ニ依シテ組合ガ出來テ、直ニ此法ガ利用出來
ル所ノ地方トシテ、外務當局デ豫メ豫想シ
テ居ル所ハ何處デアルカト云フ御尋ヲシタ
ノデアリマス、之ニ對シテソレハ組合デ決
メルコトデアルカラ、外務當局トシテ言フ
必要モナイ、南米モ其一ツデアラウト云フ
ヤウナ御答辯デアリマシタ、是ハ甚ダ政府
トシテ無責任ナル御答辯デアルト私ハ思ヒ
マス(ノウ〓〓)併シソレ以上ノコトヲ彼此
レ議論ヲ致スコトヲ私ハ避ケマス、唯、
點明瞭トナラナンダ點ガアリマスカラ、重
ネテ御尋シテ置カナケレバナラヌ、此組合
法ニ依リマシテ海外ニ移住スル場合ニ、多
クノ場合ニ海外ニ於ケル所ノ土地デモ建物
デモ、其管理ハ主トシテ本國ニ於ケル組合
ガ管理スルヤウナ場合ガ多クナルノデアリ
ママ、ソレ故ニ斯樣ナ規定ノ下ニ於キマシ
テ、政府デ何等カノ低利資金デモ融通シテ
補助スル場合ニ於キマシテハ、此組合自體
ガ移民直接ノ利用機關トナラズシテ、屢、
是ガ資本家ノ利用スル所トナリ、海外ニ移
住スル所ノ者ハ、本國ニ於テ組合ヲ左右ス
ル-資本家ニ依シテ動モスレバ左右サレ
ル所ノ虞ガアルコトハ、是ハ何人ト雖モ徒
手空拳若クハ如何ナル海外ノ艱難デモ圖シ
テ、勇往邁進海外ニ發展シヤウトスル者ノ
利福ヲ考ヘマスルナラバ、此點ヲ考慮致サ
ナケレバナリマセヌ、ソレニ對シテ十分左
樣ナ虞ノ無イコトノ爲ニハ、ドウ云フ方法
ヲ御講ジニナッテ居ルカ、若シサウ云フコト
ガアリマスレバ今日ハ兎ニ角、必ズ是ガ他
日ニ於テ排日ノ累ヲ釀スモノデアルト思ウ
テ居リマスガ、サウ云フコトハ無イト云フ
ナラ、斷言デナクテ、何故無イカ御示ガ出
來ルナラバ伺シテ置キタイモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=62
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063・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 幣原外務大臣
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=63
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064・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 組合ニ對
シテ資金ノ融通ヲ圖ルト云フコトヲ私ハ申
上ゲマシタガ、其點ニ付キマシテハ何レ近
日昭和二年度ノ追加豫算ト致シテ請求ヲ致
ス積リデアリマス、其節詳シク御說明申上
ゲマス、決シテ組合トカ或ハ資本家ガ、此
利益ヲ占メルコトガ無イヤウナ方法ハ付ケ
ル積リデアリマスガ、ソレハ追加豫算ヲ請
求致シマス時ニ詳シク說明スル積リデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=64
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065・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 津崎尙武君
〔津崎尙武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=65
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066・津崎尚武
○津崎尙武君 私ハ本案ニ付キマシテ數
項此場合ニ政府ニ質疑ヲシテ置キタイト
思ヒマス、先日吾々議員ノ提案トシテ移住
組合法ガ出テ居リマス、只今委員會ニ繫
屬致シテ居ルノデアリマス、吾々議員トシ
テ、既ニ數年前カラ之ヲ希望シテ今日ニ至ッ
テ居ルノデアリマスカラ、本案ガ政府案ト
シテ提出セラレタコトヲ非常ニ多トスルノ
デアリマス、隨テ本案ヲ成ベク早ク通過サ
セタイ、斯ウ云フ考カラ二三ノ事ヲ此場合
ニ御尋シテ置キタイノデアリマス、第一ハ
植原君ガ御尋ニナリマシタガ、ソレニ依ッ
テ海外移住組合法トシテ御出シニナッタ、
是ハ本來カラ云ヘバ產業組合法ヲ大部分準
用スルノデアリマスカラ、農林省デ大分關
係ノアル事柄デアル、所ガ行クベキ人ハ內
務省ノ所管ニ屬スル人ナンデス、此組合ヲ
地方ニ於テヤッテ行キマスト云フト、內務
省ノ所管ニナッテ來ルノデアリマス、ソコ
デ問題ハ、本案ハ外務大臣ト內務大臣ノ兩
方デ御出シニナッテ居リマスケレドモ、農
林省ニ關係ノアル事柄ノヤウニ感ゼラレマ
ス、ソレハ措キマシテモ、海外移住組合法
トシテ御出シニナッテ居ル、サウシテ我國
ノ植民地ハ之ニ包含シナイ、卽チ朝鮮、臺
灣、樺太、關東州ノ如キハ之ニ包含シナイ
ト云フ御詁デアル、吾々ノ提案致シマシタ
モノハ單ニ移住組合法トシテアリマス、移
住組合法ト致シマシテ海外ト云フコトヲ拔
キマスト、我ガ植氏地ニモ移住ガ出來、又
北海道其他ノ內地ニモ移住ガ出來ルコトニ
相成ルノデアリマスガ、是ハ實ニ內務省デ
御出シヲ願ッテモ宜イモノヲ、內務省デ一
向出サレヌ、或ハ農林省ニ於キマシテ產業
組合法ヲ改正シテヤッタラドウカト云フコ
トデアッテ、大分著手セラレタヤウニ聞ク
ケレドモ、是モ一向纏マラナイ、ソコデ外
務省ニ於テ御奮發ニナッテ、吾々ト同ジヤウ
ナ此法案ヲ御出シニナッタ、其事ヲ非常ニ
多トスルノデアリマスガ、其爲ニ海外移住
組合法トシテ出サレタノデアルカドウカ疑
フノデアリマスガ、是ハ矢張此移住組合法
トシテ、内地移住ニモ適用シ得ルヤウニシ
タラドウカト思フノデアリマスガ、之ニ付
キマシテ政府ハドウ云フ御考ヲ御持ニナッ
テ居ルカ、若シ内務省ニ於キマシテ內地移
住モ之ニ依シテ行ヒ得ル法案ニナレバ、其
方モ行ヒ得ルノデアリマスカラ、內務省ニ
於キマシテモ同樣ナ御考ヲ持ッテオヰデニ
ナラヌカドウカ、其事ヲ政府ニ御尋致スノ
デアリマス、ソレカラ第二ハ植原君モ御質
問ニナリマシテ、外務大臣ガ御答ニナリマ
シタガ、一區域一個ニ限ルトシテ府縣ヲ單
位トシテ居ラレル、是ハ大キナ府縣デアレ
バ二個三個ヤッテモ差支ナイト云フ今外務
大臣ノ御答デアリマス、吾々ノ法案ト致シ
マシテハ一府縣ヲ一區域トセズシテ、移
住組合ノ單位ハ郡トカ町村トカ云フ小サイ
所ニ置イテ、サウシテ府縣ヲ聯合會トシテ
統轄シテ、中央ニ於ケル所謂政府案ノ聯合
會ト云フモノハ、移住組合中央聯合會トシ
テ、今ノ產業組合ノヤウナ組織デヤリタイ、
是ガ實際ニ適應スルヤウナ感ジヲ持シテ居
ルノデス、ソレデ大キナ府縣デアレバ、是
ハ二ツ造ッテモ三ツ造ッテモ宜イト云フコト
デアリマスナラバ、實情ニ適スルヤウニ寧
口府縣ハ聯合會トシテ、其聯合會ノ下ニ農
村乃至サウ云フ處デ移住組合ヲ造クテ、中
央ニ於ケルモノハ中央聯合會トシテ行クヤ
ウニシタラバドウカト思フノデスガ、是ハ
外務省ノ御發案デアルカラ、日本ノ內地ノ
事ヲ餘リ考慮セラレヌデ御作リニナッタト
スルナラバ、ソレマデノ事デアリマスル
ガ、内務當局トシテハ內地ノ實情ニ應ジテ、
矢張吾々ノ法案ノ如ク施行シテ行カレル方
ガ、適當デアルト御考ニナラヌカドウカト
云フコトヲ、是モ政府ニ御尋スルノデアリ
マス、ソレカラ此主務大臣ト云フコトガア
リマシテ、監督權ノ所在ニ付キマシテ疑問
ガアル、卽チ組合ハ內地デ出來テ、サウシ
テ其組合員ガ移住シテ行クノハ主トシテ海
外デアル、主務大臣ト云フ文句ガ第九條、
及第十一條、第十二條等ニアリマスガ、此
主務大臣ト云フノハ何所ヲ指サレルノデア
ルカト云フコトヲ、御尋シテ置キタイノデ
アリマス、ソレカラ尙又植原君モ御尋ニナ
リマシタガ、組合法ヲ活用シテ移住ノ目
的ヲ到達シマス爲ニハ、ドウシテモ資金ノ
援助ヲ與ヘナケレバナラヌト思フノデス、
之ニハ此移住組合聯合會ニ或ル程度ノ資金
ヲ貸付ケル積リデ追加豫算ヲ出スト云フ御
言明デアリマスカラ、是ハ大變宜イ事ト思
ヒマスガ、尙ホソレト共ニ適當ナル方法ヲ
講ジテ、低利資金ノ融通ヲ致サナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、其程度等ハ追テ
追加豫算提出ノ時ニ御而ヲ願フコトヽ致シ
マシテ、此移住組合法ヲ活用シテ、其資金
ヲ融通シテ行クニ付キマシテモ、矢張先程
御話申上ゲマシタ通リニ、府縣ヲ單位トシ
テ、ソレヲ單ニ中央デ聯合シテ居ルヤウデ
ハ十分ナル活用ガ出來ヌヤウニ思フノデ
アリマスガ、此事ハ別ニ御尋致シマセヌ、
尙ホモウ一ツ最後ニ移住組合以外ノ聯合會
員デアリマス、第十條ニアリマス、是ハ如
何ナルモノヲ指シテ居ラレルノデアルカ、
例ヘバ產業組合ノ如キモノモ、尙ホ移住組
合ノ聯合會員ニナリ得ルノデアルカ、此移
住組合以外ノ者ト云フノハ、大體ドウ云フ
モノヲ御考ニナッテ居ルカト云フコヲト御
尋致シタイノデアリマス
〔國務大臣男爵幣原喜重郞登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=66
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067・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今ノ御
質問ノ第一點ハ、此法律案ハ海外移住組合
法案トナッテ居リマシテ、內地ノ移住ハ含
ンデ居ラヌト云フ御話デアリマス、其通リ
デアリマシテ、是ハ海外ニ參ル者ダケニ付
テノ法規ヲ定メタノデアリマス、內地ノ移
住ト海外ニ對スル移住トハ大ニ其性質ニ於
キマシテモ、活動ノ範圍ニ於キマシテモ、
異ナル所ガアリマスガ爲ニ、之ヲ一ツノ法
律案デ取纏メヤウト致シマスレバ、色こ複
雜ナル問題ヲ生ズルノデアリマスカラ、寧
口單簡ニ致ス爲ニ、唯〓海外ニ對シテ移住
スル者ダケニ適用シ得ル法律案ヲ玆ニ提出
致シタ次第デアリマス、第二ニ區域ト云フ
ノハ、之ニ依ルト云フト先ヅ大體一府縣ト
云フ積リデアルト云フコトデアルガ、モウ
少シ小サク致シテ郡トカ町村トカ云フモノ
ヲ單位ニ致シタラドウカト云フ御說デアリ
マスガ、御承知ノ如ク此法律案ニ於キマシ
テハ、第二條ニ於キマシテ、列記シテアル
事項ヲ併セ行フト云フコトニナッテ居リマ
ス、相當重要ナル事業ヲ取扱ヒマス者ガ餘
リ澤山出來ルト云フコトニ相成リマシテハ
と益〓事態ヲ複雜ナラシメル所以デアル、矢張
比較的少イ數デ有力ナルモノガ生ジ得ル方
ガ望マシイコトダト考ヘマシテ、區域ノ單
位ハ大體カラ申シマスレバ府縣ト云フコト
ニ致ス積リデアリマス、現在ニ於キマシテ
モ例ヘバ信濃ノ海外協會ト云フノハ矢張一
ツノ縣ヲ單位ト致シテ居ルヤウデアリマ
ス、是ガ先ヅ適當ナ所デアルト吾々ハ考ヘ
テ居ルノデアリマス、ソレカラ第十條ニ「海
外移住組合以外ノ者ト雖モ定款ノ定ムル所
ニ依リ聯合會ノ會員ト爲ルコトヲ得」トア
ルガ、以外ノ者ト云フノハドウ云フモノヲ
指スノデアルカト云フコトデアリマス、是
ハ主トシテ聯合會ノ定款ニ依タテ定メルコ
トニ致シテ置キタイ、斯樣ナ考デアルノデ
アリマス、今日之ヲ指摘シテ斯樣ナモノト
云ッテ特ニ頭ニ描イテ居ルモノハナイノデ
アリマス、併ナガラ海外移住組合以外ノモ
ノニ付キマシテハ、移住組合ト同一ノ權利
義務ヲ有スルノデハナイノデアリマス、隨
テ產業組合ノヤウナモノガ此中ニ入リマシ
テ、果シテドレダケノ利益ガアルカ、是ハ
餘程疑ハシイコトデハナイカト考ヘマス、
要スルニ是ハ聯合會ノ定款ニ委シテ置キタ
イト云フノデアリマス、主ト致シテ海外移
住問題ニ興味ヲ有シ、資金デアルトカ或ハ
知識經驗ト云フモノヲ供給致シテ、共ニ此
大キナ事業ヲ〓究致シタイト云フヤウナ人
ヲ聯合會ノ會員トシテ歡迎シ、其知識デア
ルトカ資力デアルトカ云フモノヲ利用シ得
ルノ途ヲ開クガ宜カラウト云フノデ第十條
ガアルノデアリマス、要スルニ此問題ハ聯
合會ノ定款ニ依ッテ決スベキ性質ノモノデ
アルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=67
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068・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 質疑ハ終了致シ
マシタ、日程第四、右議案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=68
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069・砂田重政
○砂田重政君 本案ハ津崎尙武君外九名提
出移住組合法案ニ併セ付託セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=69
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070・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=70
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071・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、此際議
事進行ニ付テ發言ノ通生ロガアリマス、之ヲ
許可致シマス、〓瀨一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=71
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072・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 簡單デアリマスカラ此席ヨ
リ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=72
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073・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=73
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074・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 先刻粕谷議長ヨリモ御宣告
ガアリマシタ通リ、本會期ハ旣ニ半バヲ過
ギテ居リマス、ソレ故ニ各種ノ委員會モ亦
議長ノ許可ヲ得テ隨時開會ヲ許サレテ居ル
次第デアリマス、然ルニ不思議ナルコトニモ、
常任委員會ノ一ツデアル決算委員會ハ未ダ
會テ開カレマセヌ、政府ヨリシテハ決算ハ
既ニ本月十八日ヲ以テ提出サレテ居リマ
ス、固ヨリ議會ノ決算權ハ吾々ノ行政監督
トシテ最モ重要ナル權能デアルコトハ言フ
ヲ俟チマセヌ、加之本年ハ他ノ議會ト違ヒ
マシテ、彼ノ臨時軍事費ノ決算ヲ調査スベ
キコトニ相成シテ居リマスル、此總額ハ實
ニ九億五十万圓デアリマシテ、前後十年ニ
亙ッテ使ハレテ居ルノデアリマス、而シテ
會計檢査院ノ報告ニ依リマシテモ、不當支
出ハ既ニ三千一百三十万圓、旣ニ三千万圓
ノ不當支出ノアル此決算ヲ、會期半バヲ過
ギテ未ダ曾テ開カレザルコトハ、吾々洵ニ
不本意ニ考ヘマス、ドウカ議長ヨリ委員長
ニ宛テ、速ニ決算委員會ヲ開カレルヤウニ
御取計ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=74
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075・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 只今ノ〓瀨君ノ
御發議ハ議長ニ於テ適當ニ取計ヒ致シマ
ス-日程第五、保險業法中改正法律案ノ
第一讀會ヲ開キマス藤澤商工大臣
第五保險業法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)第一讀會
保險業法中改正法律案
(小学ハ貴族院修正)
保險業法中左ノ通改正ス
第九條中「書類ノ規定」ヲ「書類ニ定メタ
ル事項」ニ改ム
第十一條主務官廳力保險會社ノ業務又
ハ會社財產ノ狀況ニ依リ保險契約者、
被保險者又ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者
ノ權利ヲ保護スル爲メ必要ト認ムルト
キハ財產ノ供託若クハ事業ノ停止ヲ命
シ又ハ期間ヲ定メテ業務執行ノ方法若
クハ計算ノ基礎ノ變更ヲ命シ其他必要
ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十二條保險會社カ本法、主務官廳ノ
命令又ハ第五條ニ揭ケタル書類ニ定メ
タル事項ニ違反シタルトキハ主務官廳
ハ取締役監査役ノ改選若クハ事業ノ停
止ヲ命シ又ハ免許ヲ取消スコトヲ得
第十三條ノ四保險會社ニ非サルモノハ
其商號又ハ名稱中ニ保險事業者タルコ
トヲ示スヘキ文字ヲ用フルコトヲ得ス
第二十條ヲ第十九條ノ二トス
第二十條會社カ資本減少ノ決議ヲ爲シ
タルトキハ之ニ關スル定款變更ノ認可
ノ日ヨリ二週間內ニ減少スヘキ金額、
減少ノ方法及ヒ貸借對照表ヲ公〓スル
コトヲ要ス
第二十條ノ三第二項、第三項、第二十
二條第三項及ヒ第二十五條ノ規定ハ資
本減少ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十條ノ三第三項中「保險契約ノ移轉
ヲ爲スコトヲ得ス」ノ下ニ「第二十條ノ
六ノ規定ニ依リ第七條第七號ノ事項ノ變
更ヲ定ムル場合ニ於テ異議ヲ述ヘタル保
險契約者ニシテ其保險契約ニ付キ同條同
號ノ事項ヲ變更セラルヘキ者カ同條同號
ノ事項ヲ變更セラルヘキ保險契約者總數
ノ十分ノ一ヲ超エ又ハ其保險金額カ同條
同號ノ事項ヲ變更セラルヘキ保險契約者
ノ保險金總額ノ十分ノ一ヲ超ユルトキ亦
同シ」ヲ加フ
第二十條ノ六中「將來ノ保險料ヲ減額ス
ヘキコト」ノ下ニ「又ハ其保險契約ニ付キ
定メタル第七條第七號ノ事項ヲ變更スヘ
キコト」ヲ加フ
第二十條ノ七第一項但書ヲ左ノ如ク改ム
但會社ノ維持ニ必要ナル費用ヲ支出ス
ル場合又ハ財產ノ保全其他特別ノ必要
ニ依リ主務官廳ノ認可ヲ得テ財產ヲ處
分スル場合ハ此限ニ在ラス
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前條ノ規定ニ依リ第七條第七號ノ事項
ノ變更ヲ定ムル場合ニ於テ其變更ヲ爲
サントスル會社亦第一項ニ同シ但保險
契約ニ因リテ生シタル債務ヲ辨濟スル
ハ此限ニ在ラス
第二十條ノ十二中「其者カ保險契約者總
數ノ十分ノ一以下ニシテ其保險金額カ保
險金總額ノ十分ノ一以下ナルコト」ヲ「其
數及ヒ其保險金額カ第二十條ノ三第三項
ニ規定シタル割合ヲ超エサルコト」ニ改
第二十二條ノ二生命保險ヲ目的トスル
會社カ合併ヲ爲ス場合ニ於テハ合併契
約ヲ以テ其保險契約ニ付キ定メタル第
七條第七號ノ事項ヲ變更スヘキコトヲ
定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ第七條第七號ノ事項
ノ變更ヲ定ムル場合ニ於テハ其變更ヲ
爲サントスル會社ニ第二十條ノ五及ヒ
第二十條ノ七第三項ノ規定ヲ準用ス
第二十三條中「、第七十四條」ヲ削ル
第二十五條中「其者カ保險契約者總數ノ
十分ノ一以下ニシテ其保險金額カ保險金
總額ノ十分ノ一以下ナルコト」ヲ「其數及
ヒ其保險金額カ第二十條ノ三第三項ニ規
定シタル割合ヲ超エサルコト」ニ改ム
第三十四條中「取締役ハ」ヲ「相互會社ハ」
三反ノ
第七十四條削除
第七十五條中「商法第七十六條及ヒ」ヲ
「第二十二條ノ二及ヒ商法第七十六條、」
三八人
第九十一條中「營業稅」ヲ「營業收益稅」ニ
改ム
第九十四條中「農商務大臣」ヲ「主務大臣」
三六人
第九十七條中「千圓以下」ヲ「五千圓以下」
ニ改ム
第九十七條ノ二第十三條ノ四ノ規定ニ
違反シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ過
料ニ處ス
第九十八條第九號中「第一一十二條」ノ下ニ
「又ハ第二十二條ノ二」ヲ加へ第七號ヲ第
八號トシ以下順次繰下ケ第六號ノ次ニ左
ノ一號ヲ加フ
七第二十條ノ規定ニ違反シテ資本滅
少ヲ爲シタルトキ
第百五條第一項中「主務官廳ノ命令」ヲ
「本法、主務官廳ノ命令又ハ第五條ニ揭
ケタル書類ニ定メタル事項」ニ改ム
第百八條中「、第七十三條第二項及ヒ第七
十四條」ヲ「及ヒ第七十三條第二項」ニ改
ム
第百十二條中「第二十條乃至第二十二條」
ヲ「第十九條ノ二乃至第一一十二條ノ二」ニ
改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際保險會社ニ非スシテ其商號又ハ
名稱中ニ保險事業者タルコトヲ元スヘキ文字
ヲ用フルモノハ本法施行後六个月內ニ其商號
又ハ名稱ヲ變更スルコトヲ要ス
第九十七條ノ二ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前
項ニ揭ケタルモノニ適用セス
〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=75
-
076・藤澤幾之輔
○國務大臣(藤澤幾之輔君) 保險業法中改
正法律案ノ提出ノ理由ヲ申上ゲマス、現行
保險法ハ明治三十三年ニ制定セラレタモノ
デアリマシテ、爾來二十有餘年ヲ經過致シ
テ居リマス、此間一度改正ヲ致サレタモノ
ガアルノデアリマスケレドモ、尙ホ未ダ時
勢ノ必要ニ應ズルコト能ハザル所ノモノガ
アルノデアリマス、卽チ其最モ急ヲ要シマ
スモノニ付テ今囘改正ヲ遂ゲント致シマシ
テ、本案ヲ提出致シタノデアリマス、本案
ノ主要ノ點ハ、保險會社ノ資本金ノ減少ニ
關スル手續、保險會社ノ合併ニ關スル手續
ヲ簡易ニ爲サント致スノデゴザイマス、貴
族院ニ於キマシテハ其附則ニ追加規定ヲ加
ヘマシタミケデアリマシテ、全部何等ノ異
議ナク協賛ヲ與ヘラレマシタ、ドウカ當院
ニ於テモ、御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレン
コトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=76
-
077・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第六、右議
案ノ審査ヲ付託スヘキ天員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=77
-
078・砂田重政
○砂田重政君 委員ノ數ヲ九名トシ、議長
ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=78
-
079・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=79
-
080・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマス日程第七、輸出絹織物取締法案ノ第
一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メ
さく、委員長吉村伊助君
第七輸出絹織物取締法案(政府提出)
第讀會ノ續(委員長報告口
報告書
一輸出絹織物取締法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年二月二十三日
委員長吉村伊助
衆議院議長粕谷義三殿
〔吉村伊助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=80
-
081・吉村伊助
○吉村伊助君 只今議題ニナッテ居リマス
輸出絹織物取締法案ノ禾資會ニ於ケル經過
竝ニ結果ヲ御報告致シマス、本委員會ハ囘
ヲ重ヌルコト五回、質疑應答、慎重審議ノ
結果全會一致ヲ以テ原案ヲ可決致シマシ
タ此段御報告申シマス(柏手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=81
-
082・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=82
-
083・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=83
-
084・砂田重政
○砂田重政君 直ニ第二讀會ヲ開キ、第三
讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ、可決確
定セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=84
-
085・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=85
-
086・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案
全部ヲ議題ト致シマス
輸出絹織物取締法案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=86
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087・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、委員長
報告通り可決確定致シマシタ、日程第八、
牧野法案ノ第一議會ヲ開キ、提出者ノ趣旨
辯明ヲ許シマス、提出者八田宗吉君
第八牧野法案(八田宗吉君提出)
第一讀會
牧野法案
牧野法
第一條本法ニ於テ牧野ト稱スルハ馬產
ニ供用スル放牧地又ハ採草地タル林野
ヲ謂フ
第二條市町村、馬ニ關スル畜產組合及
牧野組合ノ使用スル牧野ハ主務大臣ノ
認可ヲ經ルニ非サレハ其ノ用途ヲ變更
スルコトヲ得ス
第三條主務大臣ハ左ノ場合ニ於テハ市
町村、馬ニ關スル畜產組合又ハ牧野組
合ニ貸付料ヲ徴シ國有地ヲ牧野トシテ
貸付スルコトヲ得
-馬產ノ維持經營若ハ振興上必要ア
ルトキ
二牧野トシテ適當ナル國有地アルト
キ
第四條主務大臣ハ左ノ場合ニ於テハ既
ニ貸付セル國有地ノ還付ヲ命スルコト
ヲ得但シ天災其ノ他已ムヲ得サル事由
アルトキハ此ノ限ニ在ラス
一國有地ノ貸付ヲ受ケタル者之ヲ牧
野ノ目的以外ニ使用シタルトキ
二貸付ヲ受ケタル後之ヲ牧野トシテ
完全ニ使用セサルトキ又ハ全ク之ヲ
牧野トシテ使用セサルトキ
三貸付ヲ受ケタル者之ヲ他人ニ轉貸
シタルトキ
四貸付地ニ關シ主務大臣ノ命令ニ從
ハサルトキ
第五條牧野ニ關スル事項ヲ審議スル爲
地方ニ牧野委員會ヲ置ク
前項牧野委員會ニ關スル規程ハ勅合ヲ
以テ之ヲ定ム
第六條第二條ノ認可又ハ第三條及第四
條ノ處分ニ付テハ主務大臣ハ地方牧野
委員會ノ議ニ付スルヲ要ス
第七條牧野ノ貸借期間ハ契約ニ於テ別
ニ期間ヲ定メサリシトキハ十五箇年ト
ス
前項ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得
第八條主務大臣ハ牧野ノ保護管理及放
牧經營ニ關シ必要ナル命令ヲ發スルコ
トヲ得
前項ノ場合ニ於テ主務大臣ハ必要ナル
補助金ヲ交付スルコトヲ得
第九條牧野ノ共同使用ヲ爲ス者ハ其ノ
牧野ノ改良ヲ圖ル爲牧野組合ヲ設立ス
ルコトヲ得
第十條牧野組合ハ營利ヲ目的トセサル
社團法人トス
第十一條牧野組合ニ關スル規程ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條第二條ノ規定ニ違反シタル者
ハ百圓以下ノ過料ニ處ス
第十三條非訟事件手續法第二百六條乃
至第二百八條ノ規定ハ前條ノ過料ニ之
ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔八田宗吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=87
-
088・八田宗吉
○八田宗吉君 此法案ハ昨年提案致シマシ
テ、委員會ニ付議セラレマシタガ、會期切
迫審議未了ニ終タタ案デアリマシテ、專
ラ馬產ニ供用スル牧野ニ對スル法案デアリ
マシテ、昨年ハ會期ノ最終日デアリマシタ
ガ爲ニ、法案ノ說明等ヲモ殆ド省略致シマ
シタノデアリマスルガ、此法案タルヤ國防
上ニ對シ、又農業上ニ對シ、重要ナル法案
デアルト考ヘマスルカラシテ、一應說明致シ
タイト存ジマス(謹聽)私ハ馬產地ノ東北ヨ
リ出身致シマシテ、此議會ニ席ヲ汚シテ居
リマスルコト既ニ十年、常ニ馬ノ問題ニ付
キマシテハ注意ヲ拂ヒ、一面馬ノ生產ニ從
事シ、常ニ此馬ノ奬勵發展ノ爲ニ微力ヲ捧
ゲツヽアル者デアリマスガ、顧ミマシテ心
事蹉跎感慨ニ堪ヘザルモノアルノデアリマ
ス、吾々ハ曾テ馬ノ生產ノ上ニ於キマシテ
ドウシテモ此競馬法ノ制定ヲ要セザルベカ
ラザルコトヲ考ヘマシテ建議致シ、政府ニ
要望シテ是ガ制定ヲ見ルニ至ッタノデアリ
マスルケレドモ、其結果ニ於キマシテ、吾
吾ノ考ヘテ居リマシタ所ノ好結果ヲ來サズ
シテ、却テ馬ガ其數ヲ減ジ、生產者ガ厭フ
所ノ安イ價格ヲ示シ、今日ノ馬ノ價ト云フ
モノハ、非常ニ生產者ニ大打擊ヲ與ヘルコ
トニナッテ居リマスルガ爲ニ、吾々ガ當初
考ヘタコトヲ裏切ラレマシテ、實ニ遺憾事
トスル所デアルノデアリマス、今馬ノ數ノ
減退シツヽアル所ノ狀態ヲ、私ハ自分ノ福
島縣ヲ以テ試ニ引例致シテ申上ゲマス、去
ル大正十四年ノ馬ノ駒糶-必ズ馬產地ニ
於キマシテハ駒糶ナルモノニ掛ケナケレバ
ナラヌ、馬ノ駒羅ノ數ニ於キマシテ總數一
万八百九十九頭デアリマス、其價格ガ百二
十万四千七百十一圓、平均百十四圓デア
ル、然ルニ之ヲ前年ノ十三年ニ比較致シマ
スルト、驚クベシ、其頭數ガ一千九十頭ヲ
減ジテ居ルノデアリマス、價ニ於キマシテ
モ、平均一頭十圓十六錢安クナッテ居ル、更
ニ之ヲ前々年ノ十一年ニ比較シマスルト云
フト、頭數ニ於キマシテ一千百六十五頭
減ッテ居ル、價ガ又一頭平均三十三圓九十
四錢安クナッテ參ッタノデアリマス、斯樣ニ
馬產ハ年々減少シ、價モ漸次低落シツヽア
ル傾向ヲ示シテ居リマスルコトハ、獨リ福
島縣ノミナラズ、馬產地皆洛々然ラザルナ
ント云フ狀態デアリマス、一體馬ハ國防上
ニ於キマシテハ、昔ヨリ兵馬ト稱シマシ
テ、兵士ト馬トガ武力ノ主體デアル、故ニ
明治十五年一月四日軍人ニ賜ハリタル勅諭
ノ中ニ於キマシテ、兵馬ノ大權ハ朕カ統ブ
ル所ニシテト仰セラレテ居ル、卽チ人動モ
スレバ兵器ノ進步シタル今日、自動車デア
ル、飛行機デアル、斯樣ナ物ガ武器トシテ
加ッタ現在ノ戰鬪場裡ニ於テハ、馬ノ如キ
モノハ其必要ガ甚シク減ジタカノ如ク存ジ
マスルケレドモ、決シテサウヂヤナイ、益〓
馬匹ノ戰場ニ於テ缺クベカラザルコトヲ
示シツヽアルノデアリマス、デ之ヲ數字ヲ
以テ申シマスルト云フト、普佛戰爭ノ當時
ハ兵士百人ニ付馬十五、五デアル、日露戰
爭ニ至ッテ兵士百人ニ付馬十九、〇、然ルニ最
近ノ歐洲戰爭、有ユル武器、自動車飛行機、
「タンク」、斯樣ナ兵器ヲ用ヒタ戰爭場裡ニ
於キマシテ、馬ハ實ニ兵員百人ニ付三十、
五、斯樣ニ要スルヤウニナッタノデアリマス、
運送、運搬、ドウシテモ此馬ニ依ラザルベ
カラザルコトヲ數字ノ上ニ於テ立證シテ居
ルノデアリマス、兵士ノ數ノ三分ノ一ト云
フ馬ガナクテハナラナイ、戰ヒノ勝利ハ必
ズ此馬ト云フモノト相伴ッテ來ルコトヲ立
證シテ居ルト考ヘマスルト云フト、如何ニ
此國防上ニ於テ馬ガ必要デアッテ、此繁殖
ヲ圖ルト云フコトガ國家ノ急務デアルカ、
大問題デアルカト云フコトガ私ハ分ッテ來
ルト信ジマス、然ルニソレガ漸次ニ減リツ
ツアルトシタナラバ、是ガ增殖ニ向ッテ、國
家ノ政策ヲ傾ケナクテハナラヌト云フコト
ハ勿無デアルト考へマス、今試ニ馬ノ現在
數ガ全國ニ亙ッテ、ドウ云フ狀態ニナッテ居
ルカト云フコトヲ申シマスト云フト、馬ト
牧野ト云フモノハ相伴ッテ居ル、卽チ全國
ノ馬匹ノ總數ハ百五十七万頭アリマス、其
內北海道ガ二十万頭、東北六縣四十万頭、
關東ガ二十二万頭、九州三十八万頭、此僻
陬地ニ於テ以上百二十万頭、後ハ三十万頭
シカナイ、近畿ハ一万七千六百頭、中國ガ
四万四千二百頭、四國四万百頭シカナイ、
東海ガ三万三千頭、北陸ガ六万二千六百,
頭東山道九万六千五百頭、此六道二府二
十三縣デ漸ク三十万頭シカナイノデアリマ
ス、全國的ニ甚ダ不平均ニナッテ居ル、馬
ノ生產地ハドウシテモ牧野ノ在ル所、僻陬
地ニ限ラレテ居ルト云フコトハ、是ハ明カ
ナ事實、斯樣デアリマスカラ、一朝動員下
令トナルト云フト、馬ノ少イ地方ノ師團ハ
遠ク東北方面、九州方面カラ馬ヲ補充スル
外ナイノデアリマス、馬匹ノ徵募管區ナル
モノガアリマシテ、師團區域ト今日ハ一致
シテ居ラヌノデアリマス、現ニ我ガ福島縣
ノ如キニ於キマシテハ、皆師團區域ノ第二
師團ノ軍馬トナルノデハナイ、各師團ノ徵
募スル所トナッテ居リマス、吾々〓里ノ會
津地方ノコトヲ申シマスト云フト、悉ク遠
イ四國ノ丸龜ノ第十一師團、及北陸ノ金澤
ノ第九師團、斯樣ナ徵募管區ニナッテ居ル
ノデアリマス、我ガ日本ノ本土ナルモノハ
不思議ニ牛馬ト云フモノガ富土山ヲ境トシ
テ分レテ居ル、富士山ノ東ガ馬、富士山ノ
西ガ牛、斯樣ニ不思議ニ分レテ居ル、分布
ノ狀況ガ儼然ト分レテ居ル、故ニ吾々東北
ニ居リマスル所ノ馬產者ハ斯樣ニ考ヘテ居
ル、日〓、日露ノ戰爭ニ我ガ日本國ノ勝利
ヲ得タノハ、畢竟吾々東北ノ僻陬地ニ於ケ
ル所ノ農業者ノ體力强健ナル間ヨリ選バレ
タル所ノ兵士ト、東北、九州等ノ馬ヨリ成
ル所ノ兵馬ノ力ニ依ッテ勝利ヲ得タノデア
ル、我等ハ國家ニ對シテ大ナル誇ヲ持ッテ
居ル者デアル、斯樣ニ考ヘテ居ル、然ルニ
吾々東北方面ノ者ニ對スルニ、兎角侮辱ノ
言辭ヲ以テ臨ム者ガアル、或ハ一山百文ダ
トカ、或ハ東北方面ニ鐵道ヲ架ケルコトハ
甚ダ收支ガ償ハナイカラ架ケナイ、人口稀
薄デアッテ利益ガ無イカラ架ケルコトガ出來
ナイトカ云フコトハ、甚ダ怪シカラヌコト
デアル、一體國家ガ發展シテ隆盛ノ地位ヲ
占メタノハ誰ノ御蔭デアルカ、斯樣ナコト
ヲ言ウテモ差支ナイモノデアルト云フヤウ
ナコトヲ、吾々ハ馬產者トシテ此馬ノ生產
ニ從事スル所ノ農業者ニ對シテ奬勵ノ言葉
ヲ與ヘテ居ル者デアリマス、馬ノ國防上ニ
於ケル所ノ位置斯ノ如ク重且ツ大デアル、
又農業上ヨリ申シマシテモ耕耘、輸送、肥
料ノ基本タル所ノ廐肥等ハ馬ニ伴フモノデ
アリマス、今日ノ輿論タル農村振興問題ノ
上ヨリ申シマシテモ、洵ニ重要ナル問題デ
アリマス(ヒヤ〓〓)然ルニ此馬匹ガ漸次減
ジツヽアル所ノ狀況ハ洵ニ憂フベキコトデ
アリマシテ、東北方面ニ於キマシテ農業者
ハ體格ノ大キイ陸軍ノ要求スル馬ヲ生產セ
シメラレルガ爲ニ、農業者ハ却テ困シテ居
ル、小サナモノヲ欲シガッテ多ク朝鮮牛ニ
替ヘルト云フヤウナ狀況ニナッテ居ル、是ハ
洵ニ國家ノ爲ニ深憂ニ堪ヘザル一事デアル、
吾々ハ實況上ヨリ申スノデアリマス、此減
少ノ原因ニ付キマシテ、色ニノ事情ガアリ
マスケレドモ、牧野ガ漸次減少シツヽアル
ト云フコトガ最大原因デアル、卽チ開墾助
成法トカ色ミ穀物問題ニ付テ、國家ノ奬勵
上ニ於キマシテ、漸次牧野ノ減少シタト云
フ結果ガ此ニ至ッタノデアル、馬ヲ飼育シ
テモ間ニ合ハヌ、賣ッテ安イト云フノデハ
誰ガ之ヲ忍ンデ困難ナル馬匹ノ生產ニ從事
スル者アランヤ、宜シク國家ハ之ニ保護ヲ
加へ、牧野法ノ如キモノヲ制定シテ、馬ノ增
殖ヲ圖ルコト急務デアルト吾々ハ考ヘテ居
リマス、仍テ玆ニ歐洲各國ニ於テ現ニ實行シ
タル所ノ法令等ヲ參酌シマシテ、此法案ヲ
作成スルニ至ッタノデアリマス、本員ハ各
縣ノ產馬ノ聯合會ガ東京デ會合シマシテ、
出來上ッタル所ノ帝國馬匹協會ガ滿場一致
ノ決議ニ依リ、熱心ナル要望ヲ以テ本牧野法
案ノ實施ノ速カナランコトヲ期シツヽアル
誠意ヲ代表シテ、玆ニ提案シタ次第デアリ
マス、何卒御賛成アランコトヲ顯ヒマス(拍
手「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=88
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089・砂田重政
○砂田重政君 本案ハ議長指名、九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=89
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090・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
定シマス-此際議事進行ニ關シ發議ノ通
告ガアリマス、之ヲ許可スルコトニ致シマ
ス、磯部尙君
〔磯部尙君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=90
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091・磯部尚
○磯部尙君 先刻〓瀨一郞君ヨリ決算ノ書
類ハ廻ッタノデアルノニ、何故決 算委員會
ヲ開カヌト云フ厭味交リノ御演說ガアッタ
サウデアリマス(「厭味デナイ、當リ前ダ」ト
呼フ者アリ)十九日書類ハ送付セラレマシ
テ檢査報告ハ附イテ居リマスガ、政府ノ之
ニ對スル辯明書ガ添附セラレテ居リマセヌ、
今日迄各年度ニ於ケル決算委員會ニ於テハ
檢査院ノ檢査報告ト、之ニ對スル政府ノ辯
明ト兩々相對照シテ、審査ヲ進メマスルコ
トガ時間ヲ速カナラシムルコトガ出來マス
ルハ、又愼重ニ審査ガ出來ルト云フノデ、
ソレガ先例ニナッテ居ルノデアリマス、原
被兩造ノ書類ヲ送付サレテカラ審査ニ掛ル
ト云フコトガ先例ニナッテ居リマスノミナ
ラズ、ソレガ洵ニ條理ノ正シキヲ得タルモ
ノト信ジマスノデ、數日前ニ政府ニ對シテ
辯明書ヲ送付スベク嚴重ナル督促ヲ致シ、
一昨日大藏省カラシテ其書類ハ廻ッテ參ッタ
カラ、二三日中ニ印刷ヲ濟マシテ、速ニ提
出スルト云フコトノ言質ヲ得テ居ルノデア
リマス、何等此決算委員會ヲ開キマセヌコ
トニ付テ、意味モ何モ無イト云フコトヲ御
了承下サランコトヲ申上ゲテ置キマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=91
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092・清瀬一郎
○〓瀨一郎君 議事進行ニ付キマシテ發言
ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=92
-
093・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=93
-
094・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 磯部尙君ヨリ嚴重ニ政府ニ
督促シテ下サッタコトヲ謝シマス、唯〓此臨
事軍事費不當支出ニ係ル辯明ハ、私ノ手許
ニハ二十二日ニ廻ッテ居リマス、恐ラク委
員長ノ御手許ニモ廻ッタコトヽ思ヒマス、
而シテ今囘世間ガ疑ヲ持テ居ルモノハ何
デアルカト云ヘバ、臨時軍事費ノ支出デア
リマス、所謂機密費デアルトカ、金塊デア
ルトカ、世間ノ人ハ一日モ速ニ其眞相ヲ知
ランコトヲ欲シテ居ルノデアリマス、故ニ
何卒明日ニモ直ニ委員會ヲ開カレンコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=94
-
095・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第九及第十
ハ同種ノ議案ナルニ依リ、一括議題ニ供ス
ルコトニ御異議アリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=95
-
096・田崎信藏
○田崎信藏君 議事ノ進行ニ付テ發言ヲ求
メマス
〔此時發言者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=96
-
097・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 只今宣告中デア
リマス-議場ガ騒擾ニ涉ッテ宣告ガ不徹
底デアルト思ヒマスカラ更ニ申シマス-
日程第九及第十ハ同種ノ議案ナルニ依リ、
一括議題ニ供スルコトニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=97
-
098・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ日程第九、寺院現境內地無償
下戾ニ關スル法律案(高木益太郞君外一名
提出)、日程第十、寺院現境内地無償下戻ニ
關スル法律案、(安藤正純君外二名提出)、
此兩案ノ第一讀會ヲ開キ、各別ニ提出者ノ
趣旨辯明ヲ許シマス
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=98
-
099・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス、
提出者岡本實太郞君
第九、寺院現境內地無償下戾ニ關スル
法律案(高木益太郞君外一名提出)
第一讀會
寺院現境内地無償下戾ニ關スル法律
案
第一條寺院境內地ニシテ現ニ國有ニ屬
スル現境内地ハ申請ニ依リ之ヲ其ノ寺
院ニ下戾スヘシ
第二條本法ニ依ル下戾ノ申請ハ昭和四
年四月三十日迄ニ之ヲ主務大臣ニ差出
スヘシ
第三條此ノ申請ニ對スル處分ニ付不服
アル者ハ其ノ指令ヲ受ケタル日ヨリ三
箇月內ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ
得
第四條第一條ニ依リ下戾ヲ受ケタル者ハ
其ノ境內地及立木竹ノ所有權ヲ取得ス
前項ニ依リ所有權ヲ取得シタル者ハ其
ノ土地及立木竹ニ付第三者ノ現ニ有ス
ル權利ヲ害スルコトヲ得ス
第五條本法ニ依リ下戾ヲ受ケタル境内
地及立木竹ハ地方長官ノ許可ヲ受クル
ニ非サレハ之ヲ讓渡シ又ハ地上權抵當
權若ハ質權ノ目的ト爲スコトヲ得ス
第六條本法施行前行政處分又ハ裁判所
ノ判決ヲ受ケタル者ト雖本法ニ依リ下
戾ノ申請ヲ爲スコトヲ妨ケス
附則
本法ハ昭和二年五月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十寺院現境内地無償下戾ニ關スル
法律案(安藤正純君外二名提出)
第一讀會
寺院現境内地無償下戾ニ關スル法律
案得
第一條寺院境内地ニシテ現ニ國有ニ屬
スル現境内地ハ申請ニ依リ之ヲ其ノ寺
院ニ下戾スヘシ
第二條本法ニ依ル下戾ノ申請ハ昭和四
年四月三十日迄ニ之ヲ主務大臣ニ差出
スヘシ
第三條此ノ申請ニ對スル處分ニ付不服
アル者ハ其ノ指令ヲ受ケタル日ヨリ三
箇月內ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ
得
第四條第一條ニ依リ下戾ヲ受ケタル者
ハ其境内地及立木竹ノ所有權ヲ取得ス
前項ニ依リ所有權ヲ取得シタル者ハ其
ノ土地及立木竹ニ付第三者ノ現ニ有ス
ル權利ヲ害スルコトヲ得ス
第五條本法ニ依リ下戾ヲ受ケタル境内
地及立木竹ハ地方長官ノ許可ヲ受クル
ニ非サレハ之ヲ讓渡シ又ハ地上權抵當
權若ハ質權ノ目的ト爲スコトヲ得ス
第六條本法施行前行政處分又ハ裁判所
ノ判決ヲ受ケタル者ト雖本法ニ下戾ノ
申請ヲ爲スコトヲ妨ケス
附則
本法ハ昭和二年五月一日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=99
-
100・岡本實太郎
○岡本實太郞君 簡單デアリマスカラ議席
ヨリ說明致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=100
-
101・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=101
-
102・岡本實太郎
○岡本實太郎君 本案提出ハ寺院境內地ニ
シテ、現ニ國有ニ屬シテ居ル現境内地及立
木竹ハ之ヲ其寺院ニ下戾スコトヲ以テ適當
ナル處分ナリト信ズルノデアリマス、此故
ニ本案ヲ提出致シタノデアリマス、尙ホ其
詳細ハ本案ノ第一條乃至第六條ニ依ッテ盡
サレテ居リマスガ、委細ノコトハ委員會デ
說明スルコトニ致シマス、尙ホ本案ト同樣
ノモノガ、安藤正純君外二名ヨリ御提出ニ
ナッテ居リマス、安藤君ハ當テハ宗〓家タ
リシ御方、又現在寺院ニ御住居ニナッテ居
ルト云フコトデアリマシテ、安藤君ノ方カ
ラモ詳細ニ御說明ガアル筈デアリマスカ
ラ、私ハ是デ說明ヲ省略致シマス、何卒諸
君ノ御同意ヲ得テ、本案ガ法律トナッテ現
ハレンコトヲ希望致ス次第デアリマス拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=102
-
103・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第十、提出
者、安藤正純君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=103
-
104・安藤正純
○安藤正純君 簡單デスカラ此席カラ說明
ヲ致シタイト思ヒマスガ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=104
-
105・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=105
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106・安藤正純
○安藤正純君 宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=106
-
107・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=107
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108・安藤正純
○安藤正純君 只今岡本君ガ御說明ニナリ
マシタ案ト私ノ案ハ同一デアリマス、私ハ
寺院ニ關係ガアルカラ特ニ此案ヲ出シタ譯
デハナイ、サウシテ又餘計ナコトデアリマ
スガ、私ハ寺院ニ只今住居ハシテ居リマセ
又、只今岡本君ノ說明デ既ニ分ッテ居ルヤ
ウニ、似テ居リマスケレドモ、併ナガラア
レダケノ說明デハ、實ハ此案ハ分リマセヌ
カラ、私ハ簡單ニ補足ヲ致シマス、全國ノ
寺院七万、其內大ナルモノニハ古カラ領地
ト境內地トガアルノデアリマス、其領地ナ
ルモノハ明治ノ初年ノ上地令ニ依リマシテ
國家ニ還付ヲ致シタノデアリマス、是ハ恰
モ大名ノ領地ヲ還付ヲシタノト同ジ譯デ
アッテ、適切ノ處分ト思フノデアリマス、而
シテ殘ッテ居リマスル境内地、此境內地ト云
フモノハ可ナリ廣イノデアリマスガ、是ハ
境內地ナルモノハ領地トハ性質ノ違フモノ
デアリマシテ、寺院ニ所有權ガ依然トシテ
殘ッテ居ルモノデアル、然ルニ其境内地ニ
明治八年頃デアリマシタカ、不必要ノ部分
ト必要ノ部分トノ二ツヲ區劃ヲ致シマシタ
ノデアリマス、然ルニ其必要部分迄モ之ヲ取
上ゲテシマッタノガ、本法律案ノ起ル所
以デアリマシテ、境內地ヲ二ツニ分ケテ、
不必要部分ヲ取上ゲタコトニ付テハ是ハ致
シ方ガナイ、議論ハアルガ、ソレデ宜シイ
ト思シテ居ルノデアリマスガ、必要ナル部分
ノ境內地ヲ取上ゲテ、之ヲ國有境內地ト致
シマスコトハ是ハ宜シクナイ、卽チ寺院ガ
布〓傳道ヲ行ヒ、人心感化ヲ行ヒ、若クハ
法養ヲ執行スル上ニ於テ必要ナル所ノモノ
デアリマスカラ、之ヲ還付スルノガ當然デ
アルノデアリマス、最近數年間ニ於キマシ
テハ、此事ガ法律上ノ懸案トナリマシテ、
行政裁判所ニ出願ヲ致シマシタコトハ、悉
ク出訴者ノ方ノ寺院側ノ勝利トナッテ居ル
コトハ、提出者タル岡本君モ既ニ御承知デ
アラウト思フ、而シテ此問題ハ十數年來ノ
問題トナッテ居リマシテ、現ニ此衆議院ニ
於キマシテモ、請願トナリ、建議案トナ
リ、法律案トナッテ皆是ガ通過シテ居ルノ
デアリマスガ、法律案ノ如キ七囘續ケテ本
院ヲ通過致マシテ居ルノデアリマス、唯
每年貴族院ニ於テノミ是ガ反對ヲ受ケテ、
今日マデ通ラナイ所ノ其貴族院ノ反對ノ理
由ハ、根本的ニ反對デハナイ、卽チ財產管
理法ガ無イ、寺院ニソレダケノ國有地ニナッ
テ居ル土地ヲ還付スルコトハ宜イガ、還付
シテシマッテモ、クダラナイ坊サン達ガ勝
手ナ事ヲシ、或ハ惡イ壇徒ト共謀シテ、其
貴重ナル財產ヲ散逸シテシマッテハイケナ
イカラ、財產管理法ト云フモノガ出來レ
バ、ソレト共ニ還付シテモ宜シイト云フノ
ガ貴族院ノ反對ノ唯一ノ理由デアル、而シ
テソレガ每年々々ノ事デアリマシタカラ、
大正十二年ニ於テハ、貴族院ノ委員長ガ政
府ト懇談ヲ致シマシテ、此次ノ議會ニハ政
府ガ自ラ案ヲ作ッテ政府案トシテ提出ヲス
ルト云フコトニマデナッテ居ッタノデアリマ
ス、ソレガ大震火災ト云フコトニナッテ、
玆ニ必要ノ書類等ガ一時無クナッタリ何カ
致シタ爲ニ、マダ是ガ解決致シテ居ラナイ
ノデアリマス、ソレデアリマスカラ、本員
ト致シマシテハ、旣ニ此歷史ノアル七回モ
通過シタ法律案デアルカラ、玆ニ更ニ提出
シテ其通過ヲ望ム所以デアリマス、唯
言茲ニ申上ゲテ置カナケレバナラヌコト
ハ本年ハ政府ガ豫算ニ亞グ所ノ重大法案
トシテ提出ヲセラレテ居ル宗〓法ガ、今貴
族院ニ於テ盛ニ論議中デアリマス、此宗〓
法附則ノ第百二十五條、第百二十六條ナル
モノハ、卽チ茲ニ私共ガ提出ヲ致シマシタ
國有寺院境內地ノ處分ヲ-解決ヲ致シタ
ノガ宗〓法ノ附則デアリマス、所ガ一體此
國有寺院境內地ト云フモノハ、是ハ今臨時
ニ其處分ヲ決スベキモノデアッテ、宗〓法
ハ永久法デアル、一時ノ處分法ヲ永久法タ
ル宗〓法ノ終ヒニ入レテ、是デ旨イモノヲ
興ヘテ釣ッテ宗〓法ヲ成立セシメヤウト云
フヤウナ遣方ハ甚ダ宜シクナイノデアリマ
シテ、此國有境內地問題ノ如キハ、斷然是
ハ單行法トシテ解決致スベキモノト思フノ
デアリマス、而モ其宗〓法ナルモノハ、此
間モ私ガ他ノ機會ニ於テ申述べマシタ通
リ、現文部大臣ノ監督思想ノ現ハレガ餘リ
ニ甚ダシイ爲ニ、今日貴族院ニ於キマシテ
モ議論紛々、其運命サヘ氣遣ハレテ居ル場
合デアリマスカラ、私ハ恐ラク此宗〓法ガ
衆議院ニ廻ッテ來ル時分、及廻ッテ參リマシ
テモ如何ナル運命ニ遭遇スルカ分ラナイノ
デアルカラシテ、是等ノ理由ヲ以チマシ
テ、此國有寺院境內地無償還付法律案ヲ玆ニ
提出シ、諸君ノ愼重ナル御審議ヲ經テ可決
セラレンコトヲ希望スル次第デアリマス、
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=108
-
109・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シテ質
疑ノ通告ガアリマス、此場合之ヲ許可致シ
マイ、平田民之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=109
-
110・平田民之助
○平田民之助君 簡單デアリマスカラ此席
カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=110
-
111・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=111
-
112・平田民之助
○平田民之助君 本法案ハ特ニ此方面ニ造
詣ノ深イ先輩ノ御提案ニナッタモノデアリ
マスガ、併シ此法案ニ就テー
〔「聞エナイ」「登壇」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=112
-
113・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 平田君登壇ヲ願
ヒマス
〔平田民之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=113
-
114・平田民之助
○平田民之助君 本案ニ就テ私ノ分リマセ
ヌ所ガアリマスノデ、一一三御伺ヲ致シマス、
只今私ノ主ニ伺ヒマセウト思ヒマシタコト
ハ、目下貴族院ニ於テ審議中ノ宗〓法案ト
ノ關係ニ付テデアリマシタガ、只今提案者
ガ居ラレマスル安藤君カラノ御說明ニ依ッ
テ、其方ハ稍、分リマシタノデアリマスル
ガ、此宗〓法案ガ目下貴族院ニ於テ審議中
デアリマスノニ、特ニ之ヲ單行法律トシテ
出サレル理由ト云フモノガ分リマセヌノデ
アリマシタガ、ソレハ只今ノ御說明デ凡ン
分ッタノデアリマス、只今安藤君ノ御話デ
ハ、貴族院デ目下審議中ノ法案ガ本院ニ廻フ
テモ、ソレガ果シテ通過スルカドウカト云
フコトモ分ラナイシ、ト云フ御話デアリマ
シタガ、ソレハサウ云フコトニナレバ格別
デアリマスルガ、貴族院ガ若シ大ナル修正
モナサズ、殆ド原案ノ儘デ決議サレテ當院
ニ廻付サレタト云フヤウナ場合ニ於キマシ
テハ、妙ナ關係ヲ生ズルデハナイカト思ウ
テ思リマス(ヒヤ〓〓)宗〓法案ガマダコチ
ラヘ廻リマセヌ其先ニ於テ、而モ目下審議
中ノモノヲ、特ニ本院ニ於テソレヲ修正ス
ルト云フ形ニナルノデハナイカト思ウテ居
リマスガ、其邊ハドウ云フモノデアリマス
ルカ、又殊ニ議員ノ提案ヲ以テ政府案ヲ拘
束スルガ如キ前例ハアルモノデアリマスル
カト云フコトモ私氣遣ウテ居ルノデアリマ
ス此法案ノ大體ニ付テハ私ハ賛成ヲ致ス
者デアリマシテ、明治ノ初年ニ當シテ政府
ガ從來自由ニ支配ヲシテ居クタ寺院ノ領地
ト云フモノヲ、沒收ヲ致シマシタコトハ、
隨分不當ナコトデアルト考ヘマスルガ、明
治維新ノ際ニ於キマシテハ、政府トシテハ
ソレハ已ムヲ得ヌ策デアッタカモ分リマセ
ヌ、私ナドモ寺院境內ノ土地ニ付テハ關係
ヲ致シタコトモアリマシテ、其當時政府ニ
於テ爲サレタ措置ハ頗ル不當ナコトデアル
ト云フコトヲ感ジテ居ルノデアリマス、隨
分亂暴ナ取扱ニナッテ居リマス、隨テ私共
隨分損害ヲ受ケタコトモアリマス、デアリ
マスルカラ大體ニ於テハ私ハ賛成ヲ致スノ
デアリマスルガ、宗〓法案ナルモノヽ目的
ハ色ミ重大ノ目的ヲ持フテ居ルコトト考ヘ
ルノデアリマスガ、通讀ヲシテ見マスルノニ、
其大半ハ財產ニ對スル規定ガ主ナルモノデ
アルヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ
デアリマスルカラ從來ハ宗〓法案ノ出ルコ
トヲ豫想ヲ致シテ居リマセヌノデ、屢〓本院
ニ於テモ只今御話ノ如ク、請願トナリ、法律案
トナッテ通過ヲ致シテ居ルノデアリマスル
ガ、ソレハマダ此宗〓法案ノ出ルト云フコ
トモ分リマセヌ前デアリマシタガ、今日ハ
旣ニ出テ居ルノデアリマスカラ、之ヲ特ニ單行法
律トシテヤラネバナラヌト云フ必要ガ餘リ
薄イデハナイカト私考ヘテ居ルノデアリマ
ス、ソレデアリマスカラ此處デ宗〓法案ト牴
觸スルコトヲ特ニ決メナケレバナラヌト云
フコトハ、餘程此宗〓法案ニモ影響ノアル
コトデアラウト考ヘテ居リマスガ、其邊ニ
付テハドウ云フ御考デアリマスカ、又此法
文ノ中デ私一寸伺ヒタイト思ヒマスルノ
ハ宗〓法案ニ於テ寺院ノ定義ハ、寺院ト
ハ本堂、庫裡及本尊ヲ具ヘテ居ルモノト云フ
ヤウニ定義ヲシテ居ルノデアリマスガ、本
法案ニ謂フ寺院ト申シマスノハ、佛堂ヤ說
〓所ト云フヤウナモノモ、包含ヲ致シテ居
ルノデアリマス、全國ニハ處々ニ寺院以上
ノ由緒ノアル佛堂ナドモアリマシテ、目下
無償ノ貸付ト云フ名義デ廣イ境内地ノモノ
ガ澤山アルヤウニ聞イテ居ルノデアリマス
ガ、勿論是等モ本法案ニ依ッテ均霑セシム
ルト云フ御考デアリマスルカ、若シサウ云
フコトデアリマスレバ、此宗〓法案ガ成立
シマシタ曉ニ、寺院ト云フ意義ガ二樣ニナ
ルコトニナリハシナイカ、卽チ廣イ意味ノ
寺院ト云フモノト、狹イ意味ノ寺院ト云
フ、所謂廣狹二樣ノ意味ニナリハシナイカ
ト思ウテ居ルノデアリマスガ、サウ云フ關
係ハ如何デアリマセウカ、ソレカラ此場合ニ
於テ政府ニ對シテ質問ヲシタイノデアリマ
スガ、ドナタモ政府ノ方ハ御出ガアリマセ
ヌカラ其分ハ廢シマスガ、只今申上ゲタ如
"卽チ寺院ノ範圍トソレカラ宗〓法案ト
ノ關係、是ダケヲ一ツ御尋シテ置キマ
ス-幸ヒ政府委員ガ見エマシタカラ、序ニ
政府委員ニ御伺ヒ致シタイノデアリマス
ガ、寺院境內地ノ無償還付ニ關シマシテ
ハ、明治ノ初年以來太政官ノ布告ダトカ、
內務省ノ布告ダトカ、布達ダトカ云フ色ミ
ノ名稱ヲ以テ、無償還付ニ關スル規則ガ出
テ居ルノデアリマスガ、是等ノ法規ノ中
デ、今日尙ホ效力ヲ有シテ居ルモノハ、主
ニドウ云フモノデアリマスルカ、調ベレバ
分ルノデアリマセウガ、色と宗〓〓體カラ
貰シタ物モアリマスルガ、サウ云フ物デド
ウモ分リ兼ルモノモアリマスノデ、只今ト
ハ申シマセヌガ、ドウゾ御調ノ上デ主ナル
殘ノテ居ルモノヲ御知ラセヲ願ヒタイト思
ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=114
-
115・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ノ提出者岡
本君、安藤君ノ兩君ノ中、御答辯ニナリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=115
-
116・岡本實太郎
○岡本實太郞君 簡單デアリマスカラ自席
カラ御許ヲ願ヒタイ、只今ノ御質問ハ、御
低聲ノ爲カ十分ニ聽取レナカッタノデアリ
マスガ、私ガ承リマシタ要領ト思フコトニ
付テ申上ゲマス、寺院トハ本堂ヲ備ヘテ居
ルモノヽミデアルカ、或ハ本堂ト云フガ如
キモノカラ、說〓所トカ佛堂トカ一云フモノ
ヲモ含ムカ、廣イ意義カ、狹イ意義カト云フ
御尋ガ第一ニアッタヤウデアリマスガ、是
ハ信仰トシテ差支ナイ卽チ說〓所、或ハ佛
堂ノ如キモノモ、宗〓上立派ニ取扱ハレル
モノナラバ包含セシメタイ、卽チ廣イ意義
ニ扱ヒタイト思フノデアリマス、其次ニ境
內地ノ廣イモノハ、寺院ノ維持等ニ必要ノ
ナイモノモ大分含マレテ居ルヤウデアル、
是マデ入レルノカ、矢張廣イ意義カ、狹イ
意義カト云フ御尋デアッタヤウデアリマス、
左樣致シマシタナラバ、寺院トシテ維持或
ハ保存ニ必要ナ程度ニ止メル、不必要ナ所
マデモ廣ク進メル趣旨デナイ、是ハ卽チ狹
イ意義ニ解釋致シタイ、斯ウ云フ趣旨デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=116
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117・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 安藤正純君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=117
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118・安藤正純
○安藤正純君 一寸私提出者デスカラ答ヘ
マスガ、此席デ許シテ貰ヒタイ-今平田
君デスカノ御質問ニ對スル岡本君ノ答辯
ハ私ノ答ヘル所トハ違ヒマス、全然違ヒ
マッ、サウ云フ趣旨デハナイ、寺院ト佛堂
ト說〓所トハ是ハ違ノテ居リマス、違シテ取
扱アテ居ル、ソレカラ本案ノ趣旨ハ境内地
ノ不必要ナ部分ハ還付ヲシテ貰フト云フ意
思ハナイ、狹イ意義ダト岡本君ガ仰シヤッ
タガ、私ノ提出ノ趣意ハサウデハナイ、ソ
レナラバ宗〓法ニ規定ヲサレテアルノデア
リマス、宗〓法ノ附則第百二十五條、第百
二十六條ニアルノダカラ、ソレナラバ、宗
〓法ヲ待ッテト云フ平田君ノ-質問者ノ
疑惑ガソコニ起ル、ソレデハ此法律案ヲ年
年ヤッテ居ル、本院ヲ七回モ通過シタ趣意
ト違フノデアリマス、ソレデアリマスカラ
縦シンバ待フテ宗〓法ガ成立シテモ、ソレ
デ滿足ガ出來ナイト云フ意味デアル、結局
今日境内地トナッテ居ルモノヲ無償還付ト
スベキガ當然デアル、是ガ法律上カラ論ジ
テモ歷史上カラ論ジテモ寧ロ當然デアル、
現ニ行政裁判所ニ近年出訴スル每ニ、寺院
側ノ勝訴ニナッテ居ルト云フコトハ御承知
デアラウト思フ、サウ云フ譯デアルカラ、
此法律案ハ趣旨ハ結局廣イ意義デアリマシ
テ、岡本君ガ左様ニ御解釋ニナッテ居ルノ
ハ、何處ニ根據ヲ置イテ居ラレルカト云フ
コトヲ私ニハ諒解ガ出來ナイ、私ハ其意味
ヲ以テ質問者ニ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=118
-
119・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 質疑ハ終了致シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=119
-
120・砂田重政
○砂田重政君 日程第九、第十ハ政府提出
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關スル
法律案ノ委員ニ併託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=120
-
121・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=121
-
122・砂田重政
○砂田重政君 日程變更ノ動議ヲ提出致シ
マス、卽チ日程第十六、第十七、第十八、
衆議院議員選擧法中改正法律案ノ三案ノ第
一讀會ノ續キヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メ
テ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=122
-
123・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=123
-
124・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、日程第
十六乃至第十八ハ同一ノ委員ニ付託シテア
リマスル議案デアリマスカラ、一括議題ト
ナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=124
-
125・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ日程第十六、第十七、第十八
ヲ一括シテ其第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長
ノ報告ヲ求メマス、委員長荒川五郞君
第十六大正十四年法律第四十七號衆
議院議員選擧法中改正法律案(林田
龜太郞君外一名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十七大正十四年法律第四十七號衆
議院議員選擧法中改正法律案(東武
君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十八大正十四年法律第四十七號衆
議院議員選擧法中改正法律案(小池
仁郞君外六名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一大正四年法律第四十七號衆議院議員選
擧法中改正法律案(林田龜太郞君外一
名提出)
一大正十四年法律第四十七號衆議院議員
選舉法中改正法律案(東武君外二名提
出)
一大正十四年法律第四十七號衆議院議員
選擧法中改正法律案(小池仁郞君外六
名提出)
右ハ本院ニ於テ三案ヲ併合シテ一案ト爲
シ表題ヲ「樺太ニ衆議院議員選擧法施行
ニ關スル法律案」ニ改メ別紙ノ通修正ス
ヘキモノト議決致候此段及報告候也
昭和二年二月二十一日
委員長荒川五郞
衆議院議長粕谷義三殿
I
大正十四年法律第四十七號衆議院議員選
舉法ハ之ヲ樺太ニ施行ス
選擧區及選擧スヘキ議員ノ數ハ左ノ如シ
選舉區議員數
樺太二人
附則
本法施行ニ關スル規定竝期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
〔荒川五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=125
-
126・荒川五郎
○荒川五郞君 只今議題ニナリマシタ衆議
院議員選擧法中改正法律案ノ委員會ノ經過
竝ニ結果ヲ簡單ニ報告イタシマス、此案ハ
林田君提出ノ新政倶樂部案、東君外二名提
出ノ政友會案、竝ニ小池君外六名提出ノ憲政
會案デ、其内容ハ何レモ樺太ニ選擧權ヲ認メ
テ、樺太ヲ一選擧區トシテ二名ノ定員ヲ出
スコトニシヤウト云フノデアリマス、委員
會ハ之ヲ一括シテ會議ニ付シテ、內務、樺
太長官ヤ若槻總理大臣ノ出席モ求メテ、種
種質疑應答ヲ重ネマシタガ、政府ハ樺太ニ
モ追々選擧權ヲ認メル必要ヲ思シテ居リマ
スガ、先ヅ自治制ヲ布イテ、自治ニ慣レシ
メテカラ然ル後ニスルノガ適當デアルト認
メルガ故ニ、今デハ時期ガ早イト云フノデ
アリマス、然ルニ委員會ハ樺太ニハ既ニ內
地人ガ二十餘万モ居リマシテ、刑法ヤ、民
法ヤ、其他ノ重大法典モ完全ニ行ハレテ居
リマスシ、租稅ハ勿論、兵役ノ義務ニモ服シ
テ居リマス、文化ノ程度モ內地ト大差ガナ
クシテ、其他實質上ニ於テ、選擧權ヲ與フ
ルニハモウ熟シテ居ルト認メルカラト云フ
ノデ、委員會ハ審議ノ末ニ此三案ヲ一括シ
テ、合併整理スル爲ニ小委員會ニ付シマシ
クサウシテ其成案ヲ得テ更ニ審議ヲ致シ
マシタ、シレハ原案ハ選擧法ノ改正案デア
リマスガ、選擧法ニハ選擧區ハ十箇年間改
メヌト云フ箇條モアリマスシ、旁、之ヲ單
行法ト致シテ、母法ニ關係ナク、樺太ニ衆
議院議員選擧法施行ニ關スル法律案トシ
テ、此審議ヲ致シマシタ結果、滿場一致可
決致シマシタ、其案ハ報告書ト致シテ差出
シテ置キマシタカラ、既ニ皆サンニハ御諒
知下スッタコトヽ思ヒマス、此段御報告申
上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=126
-
127・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 三案ノ二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=127
-
128・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=128
-
129・砂田重政
○砂田重政君 直ニ第二讀會ヲ開キ三讀會
ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定セ
ヲレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=129
-
130・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ三案共第
二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
大正十四年法律第四十七號衆議院議員
選舉法中改正法律案(林田龜太郞君外
一名提出)第二讀會(確定議)
大正十四年法律第四十七號衆議院議員
選擧法中改正法律案(東武君外二名提
出第二讀會(確定議)
大正十四年法律第四十七號衆議院議員
選擧法中改正法律案(小池仁郞君外六
名提出)第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=130
-
131・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 此三案ノ委員長
報告ハ、併合シテ一案トナシ修正議決シタ
モノデアリマス卽チ委員長報告通リ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=131
-
132・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ三案共委
員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=132
-
133・砂田重政
○砂田重政君 更ニ日程變更ノ動議ヲ提出
致シマス、正規ノ賛成ヲ得テ提出サレマシ
タ横山勝太郞君提出、特別都市計畫一部廢
止ニ關スル緊急質問、畔田明君提出、米國
提議海軍縮小問題ニ對シ、帝國政府ノ囘
答ニ關スル緊急質問ノ二ツヲ、別々ニ議
題ト爲シ其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマ
ス
〔「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=133
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134・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
御異議ナシト認メマス、仍テ日程ハ變更セ
ラレマシタ、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマ
ス、-特別都市計畫一部廢止ニ關スル緊
急質問趣旨辯明者橫内勝太郞君
特別都市計畫一部廢止ニ關スル緊急質問
(横山勝太郞君提出)
〔横山勝太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=134
-
135・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 御承知ノ通リ、帝都ノ復
興事業中、區劃整理ハ帝都ノ住民ノ利害ニ
關スルコト、最モ重大ナルモノデアリマ
ス、震火災後、直ニ此問題ノ解決ニ著手致
シマシテ、當局者モ非常ナ努力ヲナシテ居
ルコトハ、吾々モ之ヲ認メテ居リマス、又帝
都ノ住民中ニハ、此重大ナル問題ニ關シ、
賛否各、こ意見ヲ異ニ致シテ居ル者モアリマ
ス、併ナガラ吾々ハ、特別都市計畫法ナル
法律ガ現存スル以上ハ、此法律ニ依シテ事
業ノ計畫ヲ進捗セシムルノ外ハナイ、唯
住民ノ現狀ト云フモノヲ無視シテ、妄ニ卽
決卽行スルガ如キコトハ、當局ニ於テ深キ
考慮ヲ拂ハンコトヲ希望シ、又一面ニ於キ
マシテハ、屢〓特別都市計畫法ニ關スル改
正法律案ヲ提出致シマシテ、立法ノ方面カ
ラモ、此事業ヲ圓滿ニ完成セシメンコトヲ
希望シ、且ツ努力ヲ致シテ居ッタモノデアリ
マイ、故ニ東京市民、横濱市民ヲ始メト致
シマシテ、帝都ノ區劃整理ナルモノガ、如何
ナル結果ヲ見ルデアラウカト云フコトニ付
テハ、非常ナル不安ヲ感ジ、之ガ爲ニ帝都
ノ住民ハ全ク住居ノ問題ニ關シテハ、安定
ヲ失ッテ居ルト云フ現狀デアリマス(拍手)
故ニ吾々ハ、卽行スベキモノハ卽行シ、猶
豫スベキモノハ猶豫シ、改正スベキモノハ
改正ヲシテ、政府當局ガ、帝都住民ノ希望
ノ在ル所ヲ十分了解ヲ致シテ、圓滿ニ此事
業ノ完成センコトヲ希望致シテ居ル者デア
リマスルガ、當局ハ常ニ住民ノ意嚮ノ在ル
所ヲ了解スルノニ甚ダ寬大ナラザルモノア
リ(ヒヤ〓〓)一ニ法律ニ依ノテ之ヲ解決セ
ントスルノ傾向ガアッタト云フコトハ吾
吾ハ大ニ遺憾ニ存ジテ居ル所デアリマス
(同感)今囘承ル所ニ依リマスレバ、復興局
長官ハ特別都市計畫委員會ニ臨マレマシ
テ、區劃整理ノ問題ニ關シ、第二十七地區
卽チ赤坂溜池方面、及ビ六十地區ノ一部、
及ビ公園ノ一箇所ヲ廢止スルト云フ事柄ヲ
提案セラレタト云フコトヲ承クテ居リマ
ス、此問題ガ何レニ決定スルカト云フコト
ハ、今日之ヲ豫測スルコトハ出來マセヌ
ガ、併ナガラ復興局長官ガ既ニ慶止ノ必要
ヲ認メテ提案ヲセラレマシタ以上ハ、特別
都市計畫委員會ハ通過スルモノト私ハ信ズ
ルノデアリマス、左樣ニ相成リマスルナラ
バ、假令一部ト雖モ、東京市民ノ意嚮ノ在
ル所ヲ容認セラレテ、民意ニ基イテ一部ノ
區劃整理ヲ廢止セラレタト云フ點ニ付テハ
吾々至大ノ敬意ヲ拂ハントスル者デアリマ
ス、併ナガラ承ル所ニ依レバ、其理由ハ他
ニ存在スルヤニ承リマス、之ニ關シテ政府
ガ多年實行シ來タッタ所ノ計畫法ノ一部ニ
動搖ヲ與ヘルガ如キ、一部ノ區劃整理ニ廢
止ヲセネバナラヌト云フコトニナッタ理由
ハ、抑モ何レニアルカト云フ事柄ヲ、極メ
テ詳細ニ承リタイノデアリマス、第二ハ、
斯ノ如ク從來ノ政府ハ、何處マデモ都市計
畫法ノ實行ヲ期スルガ爲ニ、多年努力シ
來ッタニモ拘ラズ、今回突如トシテ一部廢
止ヲ斷行スルト云フ事柄ハ、政府ハ從來ノ
方針ヲ變更スル考デアルカ、又從來ノ方針
ヲ變更シタルコトニナルト考ヘルガ、左樣
ニ了解シテ差支ナイカドウカト云フコトヲ
承リタイノデアリマス、第三ハ、既ニ都市
計畫法ノ一部ノ動搖ヲ來スガ如キ、ニット
計畫ノ廢止ヲ斷行致シマスル以上ハ、ヤガ
テ是ハ特別都市計畫法ノ改正ヲ惹起スベキ
原因トナルト私ハ思量致シマスルガ、政府
ハ如何ナル程度ニ於テ此法律ヲ改正セント
スルカ、卽チ吾々議員ハ、議員ノ權能ニ依ッ
テ此點ニ關スル改正法律案ヲ出シテ居ル
ノデアリマヌガ、是トノ關係ハドノヤウニ
相成ルノデアリマスカ、是レ又詳細ニ承リ
タイノデアリマス、最後ニ承ラントスル所
ハ、既ニ政府ハ理由ノ那邊ニ在ルヲ問ハ
ズ、一部ノ區劃整理ヲ抛棄致シマスル以上
其抛棄セラレタル地區ト同樣ノ狀態ヲ
持ッテ居ル地區ノ區劃整理廢止ヲ許スカド
ウカ、若クハ區劃整理ヲ廢セントスル地區
ニ、密接ナル關係ノアル地區ノ區劃整理ノ
中止ヲ爲スノ考ガアルカドウカ、是ガ今日
最モ重要ナル實際問題デアルノデアリマス、
例ヘテ申シマスレバ、二十七地區ノ赤坂溜
池方面ノ、アノ厖大ナル區劃整理ヲ廢止ス
ルト云フコトニナリマスレバ、新橋方面カ
ラ虎ノ門ヲ經由シテ參リマス所ノ、アノ道
路ノ改正ヲドウスルカ、目的地ハ既ニ區劃
整理ヲ廢止シテ、其目的地ニ至ル道程タル
中間ノ道路ノ區劃整理ヲ斷行スルト云フガ
如キハ、全ク其理由ガナイト私ハ信ズル者
デアリマス、斯ノ如キ重要ナル實際問題ニ
關シテ、政府ハ如何ナル御考慮ヲ持シテ居
ルノデアリマスルカ、此點ヲ承リタイノデ
アリマス、冒頭ニ一言致シマシタ通リニ、
此區劃整理ガ如何ナル解決ヲ見ルカト云フ
事柄ハ、吾々罹災民タル東京市民、横濱市
民ノ非常ナル苦痛ヲ感ズル所デアリマス
(ヒヤ〓〓)然ルニ從來有ラユル機會ト、有
ラユル形式ニ於テ、屢、復興局當局ニ陳情
ヲ致シタニモ拘ラズ、一モ之ヲ採用スルコ
トナクシテ、今回突如トシテ計畫ノ一部ヲ
廢止スルト云フ事柄ハ、當局者ハ吾々東京
市民ノ民意ニ屈シタルモノデアルカドウ
カ既ニ一部ニ關シテ民意ヲ容レルト云フ
以上ハ、他ノ地方ノ地區ノ區劃整理ニ關シ
テモ民意ヲ容レル必要ガアルト云フ事柄
ヲ、私ハ固ク信ズルモノデアリマス、ドウ
ゾ此意味ニ於キマシテ、政府ハ帝都數百万
ノ人間ガ日夜不安ニ感ジテ居リマスル所
ノ、住宅問題ニ密接ノ關係アル所ノ區劃整
理ニ關シ、政府ノ今後執ラントスル方針ニ
關シ、丁寧深切ナル說明ヲ爲シテ、帝都住
民ノ不安ヲ除カレンコトヲ切ニ希望スルモ
ノデアリマス、極メテ簡單デアリマスガ、
是ダケ質問シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=135
-
136・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 堀切政府委員
〔政府委員堀切善次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=136
-
137・堀切善次郎
○政府委員(堀切善次郞君) 復興事業、殊
ニ區劃整理事業ノ圓滿ナル完成ヲ御希望ニ
相成リマシテ、只今色〓御質疑ノ點ニ付キ
マシテハ能ク諒承致シマシタ、復興計畫ノ
圓滿ナル遂行ヲ期シタイコトニ付キマシテ
ハ全然御同感デアリマシテ、從來ニ於キ
マシテモ官民相當一致致シテ、此方面ニ向ッ
テ進ンデ來タノデアリマスガ、昨日ノ特別
都市計畫委員會ニ於テ、其一部ノ廢止案ヲ
提出セナケレバナラナイ事情ニ立至リマシ
タコトハ、甚ダ遺憾トスル所デアリマス
ガ、其原因ガ何處ニアルカト云フコトニ付
キマシテ申述ベタイト思ヒマス、前ニ豫算
委員會ニ於キマシテモ一通リ申上ゲマシタ。
ヤウニ、復興豫算ハ相當ノ不足ヲ生ジテ來
タノデアリマス、之ヲ解決スル方法ハ極メ
テ簡單デアリマシテ、三ツノ方法ガアルト
思ヒマス、不足ノ豫算ヲ全部追加スルカ、
或ハ全部ノ仕事ヲ打切シテ、既定ノ豫算ノ
範圍內ニ於テヤルカ、或ハ其兩者ヲ併セ用
ヒルカト云フ三ツノ方法ニ外ナラナイト思
ヒマスガ、政府ハ此問題ニ付キマシテ愼重
ナル考慮ヲ費シマシテ、其到達致シマシタ
點ハ、第三ノ方法、卽チ帝都復興計畫ノ根
幹ニ關シマシテハ-計畫ノ根本ニ付キマ
シテハ飽迄是ガ貫徹ヲ圖ル積リデアリマ
ス、復興計畫ノ根本ニ支障ヲ來サナイ範圍
ニ於キマシテハ、其一部ヲ變更スル、或ハ
一部ノ工事方法ヲ變更スルト云フコトモ、
已ムヲ得ナイコトヽ考ヘマシテ、其樣ニ調
ベヲ致シタノデアリマス、昨日提案ヲ致シ
マシタ赤坂溜池附近ノ第二十七地區及深用
平久町鹽濱町ノ六十地區ノ一部、是等ハ何
レモ土地ノ關係ガ、外ノ區劃整理ノ地區ト
ハ隔絕シテ居ルノデアリマシテ、從來街衢
ノ關係モ比較的整ッテ居リマシテ、區劃整
理ヲ廢メマシテモ、復興計畫ノ根幹ニ影響
ヲ及ボス-復興計畫ノ根幹ニ支障ヲ來ス
ト云フ虞ハナイモノデアリマス、此理由ヲ
以チマシテ昨日此二ツノ區劃整理ノ地區ノ
一部ノ解除及其他ノ小サナ案ヲ提案ヲ致シ
マシタ次第デアリマシテ、左様ナ方針ニ基
キマシテ此度ノ豫算ノ關係上、之ヲ整理ス
ルコトニ考ヲ付ケマシタ次第デアリマス、
一部ノ變更、一部ノ廢止ノ結果ハ、將來ノ
方針ヲ全然變更スルモノデアルカドウカト
云フ第二ノ御質疑ニ付キマシテハ、只今申
述ベマシタ點ヲ以テ明カデアルト思ヒマ
ス、從來ノ方針ヲ變更スル考ハ持クテ居リ
マセヌ、從來ノ方針ニ依シテ進ム積リデア
リマスガ、根幹ハ何處マデモ之ヲ尊重致シ
マシテ、何處迄モ其貫徹ヲ期スル積リデア
リマス、第三ノ御質問ト致シマシテ、先般
御提案ニナリマシタ改正法トノ關係ガドウ
ナッテ居ルカト云フ問題ニ付キマシデハ、
前ニ此席ニ於キマシテ申上ゲマシタ事柄
ハ、今日ニ於キマシテモ全然考ヲ變ヘテ居
リマセヌ、只今御提案ニナッテ居リマスル
案ニハ、全然反對デアリマシテ、既定ノ現
行法ヲ以チマシテ此貫徹ヲ期スル積リデア
リマス、第四番目ノ御質問ト致シマシテ、
廢止ノ提案ヲ致シマシタ地區ト同樣ノ地區
ガアルナラバ、ソレノ地區ノ廢止ヲ認メル
ヤ否ヤ、是卜密接ノ關係アル地區ニ付テハド
ウ考ヘルカト云フ御質疑ニ付キマシテハ、
此度廢止ヲ提案致シマシタ二箇所ノヤウナ是
ト同樣ノ事情ニ在ル場所ハ、最早存在シテ
居ナイノデアリマス、隨テ是ト同様ノ地區
ハドウデアルカト云フコトニ付テハ、之ガ
廢止ヲ許ストカ、或ハ廢止ヲ提案スル考
ハ、全然持シテ居リマセヌ、其外ノ地區ニ
於キマシテハ、此二箇所ノ場所ト事情ヲ全
ク異ニ致シマシテ、皆ソレ〓〓重要ナル幹
線道路其他ガ相交錯致シテ居リマシテ、直
ニ他ノ地區ニ接續ヲ致シテ居リマスルシ、
交通關係其他ノ關係ガ、隣ノ方ニ關聯スル
コトガ非常ニ多イノデアリマシテ、其一部
分ヲ或ハ廢メルト云フコトニナリマスレ
道路ガ或ハ途中デ切レ、或ハ道幅ガ一
箇所ニ行キマシテ遽ニ狹クナルト云フヤウ
ナ結果ヲ來シマシテ、結局復興計畫ノ根幹
ヲ破壊スルコトニナリマスルカラ、是以外
ノ土地ニ付キマシテハ、既定ノ方針ニ依リ
マシテ、之ガ貫徹ヲ期シマシテ、廢止ノ地
區ト同ジ事情ニ在ルトハ考ヘテ居リマセ
又、虎ノ門ノ方ヨリ新橋ノ方ニ行ク道路ハ
ドウカト云フ御話モゴザイマシタガ、此道
路ハ既定ノ計畫ニ依シテ遂行スル積リデア
リマス、都會ノ中心地ニナッテ居リマスル
重要ナ地點デアリマスルカラ、相當ノ廣サ
ヲ以テ其改築ヲスルト云フコトハ、極メテ
必要ナ事ト考ヘマスルノデ、今日其計畫ノ
變更ヲスルト云フ考ハ持ノテ居リマセヌ、
最後ニ是ハ市民ノ意思ニ屈シタルモノデア
ルカドウカト云フコトデアリマシタガ、私
ハ左樣ニ考ヘマセヌ、此度ノ帝都ノ復與ノ
計畫ハ申上ゲルマデモナク帝都トシテノ
計畫デアリマス、國都トシマシテ政治竝經
濟ノ我國ノ中心トシマシテノ帝都ノ計畫デ
アリマスルノデ、或ハ場合ニ依リマシテ、
一部市民ノ意思ニ合致シナイコトガナイト
モ限リマセヌケレドモ、是ガ帝都ノ計畫デ
アリマスル關係上、已ムヲ得ナイ事情ニナッ
テ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=137
-
138・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 橫山勝太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=138
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139・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 此席カラ-大體了承致
シマシタガ、第一點ノ質問ニ係リマスル點
ニ對シテ、再應御答辯ヲ願ヒタイ、ソレハ
經費ガ足ラナイカラ、已ムヲ得ズ此計畫ヲ
廢スルノデアルト、斯樣ナ意味ニ拜承致シ
マシタ、サウ致シマスルト、此二十七地區
全體ノ區劃整理ヲ廢スルコトニ依ッテ、如
何程ノ經費ヲ節約スルコトガ出來ルノデア
リマスカ、又全體カラ申シマシテ、如何程
ノ經費ガ不足スルノデアリマスカ、此點ヲ
承リタイ、モウ一ツハ、只今長官ノ御話デ
ハ區劃整理ノ根幹ニ影響無キ方面ハ、計
畫ヲ廢シテモ宜シイノデアル、二十七地區
ノ如キ、六十地區ノ一部ノ如キ、某公園ノ
如キ、計畫ノ根幹ニハ關係ガ無イカラ廢止
ヲスルノデアルト、斯樣ナ御答辯デアリマ
スガ、例ヘテ見レバ各所ニ造ラレル所ノ公
園ノ如キハ、是ハドノ公園ヲ廢シマシテモ、
復興事業、區劃整理ノ根幹ニ影響ガナイト
云フコトハ、火ヲ賭ルヨリモ明カデアリマ
ス、此外ニ-只今廢止ヲ計畫致シテ居ル外
ニ廢スベキモノガ無イト云フノハ、餘リノ妄
斷デハナイカト私ハ考ヘマスルガ、其點ニ
付テ今少シク具體的ニ御答ヲ願ヒタイト、
斯樣ニ思ヒマス
〔政府委員堀切善次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=139
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140・堀切善次郎
○政府委員(堀切善次郞君) 節約ノ金額ハ
六十地區竝二十七地區ニ付キマシテ、約二
百五十万圓デアリマス、豫算不足ノ金額ト
云フ問題ニ付キマシテハ、從來ヤッテ參リ
マシタ儘ノ方針ヲ以テ、進ミマスレバ、約
一億三千万圓ノ不足ニナリマス、是ハ從來
斯ウ云フ打切整理等ヲ考ヘマセヌデ、從來
ヤッテ參リマシタ儘ノ色ニナ方法ニ依シテ進
行スルト假定致シマシテノ話デアリマス、
ソレカラ小公園ニ付キマシテ、先刻ハ申上
ゲマセヌデゴザイマシタガ、曩ニ提案致シ
マシタ小公園ハ、神田ノ十地區ニ於キマシ
テ、幹線道路ガ非常ニ錯綜致シマシテ、宅
地ノ滅賦率ヲ非常ニ甚ダシク減ズル場所デ
アリマシテ、宅地ノ換地ノ設計ノ方法ニ苦
シミマシテ、其點モアリマシテ、而モ一方
ニハ、其附近ニ小公園ガ二ツモ設ケラレルコ
トニナッテ居リマスルノデ、ソレ等ノ點モ
考ヘマシテ、根幹ニハ關係ナシト判斷ヲ致
シマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=140
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141・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 次ハ米國提議海
軍縮小問題ニ對シ帝國政府ノ囘答ニ關スル
緊急質問、提出者畔田明君
米國提議海軍縮小問題ニ對シ帝國政府ノ
囘答ニ關スル緊急質問(畔田明君提出)
〔畔田明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=141
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142・畔田明
○畔田明君 私ハ米國政府ノ軍縮提議ニ對
シ、帝國政府ノ回答ニ關シマシテ、總理大
百、外務大臣、海軍大臣ニ質問ヲ致シタイ
ノデアリマス、去ル一月二十九日豫算委員
會ニ於キマシテ、私ハ日本政府ガ主唱者ト
ナッテ、軍縮會議ヲ開カレテハドウカト云
フコトヲ政府ニ提言致シタノデアリマス、
當時幣原外相ハ私ノ質問ニ答ヘテ、國際聯
盟ニ於ケル軍縮問題ノ經過竝ニ其進捗セル
コトヲ述ベテ、近ク軍備縮小委員會ガ開カ
レルコトニナッテ居ル、愈〓此會議ガ開カレ
ルコトニナッタナラバ、帝國政府ハ出來ルダ
ダケ努力スル積リデアル、ドウデモ宜イト
云フ態度デナク、出來ルダケノ努力ヲスルト
云フコトヲ私ニ答ヘラレタノデアル、所ガ
偶然ニモ二月十日ニナリマシテ、米國政府
ヨリ我國ハ提議ヲ受ケタノデアリマス、
而シテ之ニ對シマシテ、我ガ政府ハ去ル十
九日駐米松平大使ヲシテ、米國政府ニ參加
ノ覺書ヲ交付セラレ、一方東京ニ於キマシ
テモ、幣原外相ヨリ米國大使ニ對シ、其覺
書ヲ手交セラレタノデアリマス、扨此覺
書ヲ見マスルニ、其骨子ト致シマスル所ガ
二ツアル、一ツハ覺書ノ第二項ニアル點デ
アリマス、「帝國政府ハ製艦競争防遏ニ關
スル華府會議ノ事業ノ完成ヲ期スル爲協定
ヲ遂グルノ望マシキコトニツイテハ米國政
府ガ該覺書ニ於テ開陳シタル所ト全然ソノ
所見ヲ同ジウシ右目的ノタメ五國間ニ商議
ヲ行ハムトスル米國政府ノ發議ヲ東心歡迎
スルモノナリ」、是ガ要點ノ一デアル、卽
チ此要點カラ見マスレバ、華府條約竝ニ華
府會議ノ精神ヲ連續シテ我ガ政府ガ尊重ス
ルト云フ意味ヲ十分ニ現ハシタルモノト思
フノデアリマス、覺書ノ第四項ニアリマス
ル、卽チ米國ヨリ五五三ノ比率デハドウデ
アルカト云フコトニ對シテ「米國政府ハ華
府條約ニ包含セラレザル艦種ニ付諸國ノ維
持スベキ海軍力ノ比率ニ關シ此ノ際一定不
動ノ提案ヲナスノ意圖ヲ有セザルコトヲ知
ルハマタ帝國政府ノ欣幸トスル所ナリ」蜿
曲ニ五、五、三ノ比率ニ對シテ反對ノ意思
ヲ表示シタモノト解セラレルノデアリマ
ス卽チ此覺書ハ條件付ノ囘答デアル、卽
チ五、五、三ノ比率ニ對シテハ、帝國政府
ノ意見ハ留保致シテアリマスルガ、ソレ以
外ノ華府條約ノ精神ニ付テハ、全然米國政
府ト所見ヲ同ジウスルコトヲ示シテ居ルノ
デアリマス、此所デ起リマスル私ノ疑問
ハ華府會議ノ其土臺トナッテ居リマス所
ノ原則、卽チ「ヒユーズ」氏ガ九月二十一日
ノ華府會議ニ於テ、演說ヲシタル所ノ四ツ
ノ原則ニ對シテ、一ハ留保セラレテアリマ
スルケレドモ、後トノ三ツノ原則ニ付テ
ハ、我ガ政府ハ之ニ贊同スルノデアルカド
ウデアルカ、御承知ノ通リ四ツノ原則ト
ハ、第一ハ實行中若クハ既定ノ主力艦建造
計畫ハ全部之ヲ抛棄スベキコト、第二ハ老
齢艦ノ或ルモノヲ廢棄スルコトニヨリ、更
ニ縮小ヲ行フコト、第三ハ一般ニ關係列强
ノ現在海軍力ニ考慮ヲ加フベキコト、第四
ハ主力艦ノ噸數ヲ以テ、海軍力、測定ノ基
準トナシ、又一定ノ補助艦ノ勢カヲ、之ニ
比例シテ割當ツベキコト、卽チ政府ハ此
「ヒユーズ」氏ノ市サレタル所ノ原則ノ第四
ヲ除イテ、他ノ三ツノ原則ノ適用ヲ承認セ
ラレルカドウカ、是ガ私ノ質問ノ第一點デ
アリマス、第二ハ五五三ノ比率ヲ補助艦ノ
制限ニ及ボサントスルコトハ、只今申ス如
クニ吾政府ハ反對セラレテ居ル、私ノ考デ
ハ是ハ欣ンデ應ジテ宜イモノデハナイカト
思フノデアリマス、豫算カラ考ヘマシテモ、
我國ハ十七億圓臺ノ豫算デアル、米國ハ七
十五億圓、英國ハ八十億圓デアル、此日、
米、英ノ總歳出カラ較べテ五、五、三ノ比
率ハ非常ニ割合ノ好イ比率ニナッテ居リマ
ス、華府會議ニ於テ當テ制限致シタ爲ニ、
我ガ日本ハ總歲出一割四分ノ經費ヲ以テ英
米ノ六割ニ當ル所ノ海軍力ヲ維持シテ居
ル、私ハ此比率ハ結構ダト思フノデアリマ
ス、政府ハ何故ニ米國政府ノ提議セル五、
五、三ノ比率ヲ適用スルニ賛同スルヲ得ナ
イノデアルカ、是ガ質問ノ第二點デアリマ
ス、第三ハ財部海相ハ現在ノ海軍力ハ國防
上最小限度ナリト云フコトヲ頻ニ言ハレテ
居ルノデアリマス、是ハ豫算委員會ニ於テ
モ御話ガアッタ如クニ、海防ハ相對的ノモノ
デアル、隨テ相手國ノ曾滅ニ依シテ曾滅ス
ベキモノト考ヘラレルノデアリマスガ、隨
テ最小限度ト云フガ如キコトハ言ハレル事
デハナイ、併シ財部海相ハ繰返シ此衆議院
ニ於キマシテモ貴族院ニ於キマシテモ同樣
ニ此言葉ヲ繰返サレテ居ルノデアル、私ガ
疑間ニ思フノハ、財部海相ノ言7日本ノ稱
スル最小限度ノ國防ト云フモノヲ、列國ハ
果シテ認メルモノデアルカドウカ、且又此
最小限度デアルト斷言スルコトハ、軍備縮
小會議ト兩立スベカラザル性質ノモノヽヤ
ウニ思フノデアリマス、此點ニ付キマシテ
明快ナル御答辯ヲ願ヒタイ、第四ニハ軍縮
會議ニ對スル所ノ政府ノ決心デアリマス、
今ノ海相ノ言葉ヲ繰返シマシテモ、其決心
ガドノ程度カト云フコトヲ疑問ニ思ハレ
ル、又此米國ニ對スル覺書ノ第一項ニ、米
國政府ノ提議ニ對シテ、我ガ政府ハ愼重ニ
考慮シタト云フ、慎重ノ考慮以上ニ是ハ進
ンデ能クヤッテ吳レタト云フ意思ヲ市サナ
ケレバナラヌ、所ガ愼重ニ考慮-近頃考
慮ト云フ言葉ハ色ミナコトニ流行致シテ居
リマス、此考慮ト云フ言葉以上ニドウシテ
示サレナカッタカ、此意味ヲ解シテモ餘リ
進ンダ態度ガ見エナイ、又若槻首相ガ去十
五日此議場ニ於キマシテ、私ノ質問ニ答ヘ
タ其言葉ニモ「公正ニシテ且ツ實際的ナル
軍備制限ノ方法ガアルナラバ之ヲ發見スル
爲ニ會議ヲ開イテ意目九ノ交換ヲスルト云フ
コトハ不同意デナイ」洵ニドウモ圓滑過ギ
テ、日本ガ進ンデ飽マデ此提議ニ對シテ其
目的ヲ貫徹スルニ努力スルト云フ所ノ態度
ガ見エナイ、決心ガ見エナイノデアリマ
ス、仍テ私ハ政府當局ニ軍縮會議ニ對スル
決心ヲ承リタイノデアリマス、第五ハ政府
ハ現在計畫中ノ補助艦計畫ト云フモノヲ中
止致シマシテ、列國ニ軍備縮小ノ範ヲ示
シ、軍縮會議ノ目的ヲ飽マデ貫徹スル意思
アルヤ否ヤ、今日列强海軍ノ補助艦建造ヲ
惹起サセマシダノハ、華盛頓會議ニ於テ巡
洋艦ヲ一万噸ト限リ、其備砲ヲ八吋ト限ッタ
其爲ニ、列强ハ皆一万噸級八吋備砲ノ巡洋
艦ヲ造ルコトニ競争シテ來タノデアリマ
ス、我ガ海軍ニ於キマシテモ、此主力艦ノ
比率五、五、三ニ對シテ、其劣勢ニアル缺陷
ヲ補フガ爲ニ補助艦ノ數正備ニ努メタ、海軍
當局ハ補充ト云フコトヲ繰返スケレドモ、
其精神ハ五、五、三ノ比率ノ缺陷ニ對スル
其補充ニ於テ努力シタモノト解セラルヽノ
デアリマス、米國人ノ叫ビニ依リマス
ルト、餘程日本ハ有力ナル補助艦ヲ持シ
テ居ルヤウニ申シテ居ルノデアリマス、
第六ニ伺ヒタイノハ佛蘭西竝ニ伊太利ノ態
度デアリマス、新聞紙上ニ依リマスルト、
佛蘭西竝ニ伊太利ハ國防力ノ減少デアルガ
故ニ、是ハ贊成ガ出來ナイト一云フ趣旨ノ回
答ヲ致シタラシイ、是ハ國防力ノ減少デナ
イ、御互ニ列强ガ減ラスト云フコトハ決シ
テ減少ニナラナイ、將來ノ擴張ト云フコト
ニナリマシタラ、是ハ一ツノ議論ガアリマ
セウ、併ナガラ佛蘭西、伊太利ノ如何ト云
フコトハ、我ガ日本ニハ大シタ關係ハナ
イ、隨テ軍縮會議ニ於テ佛蘭西、伊太利ノ
態度ハ別ト致シマシテ、假ニ佛伊南國ガ反對
ヲ致シマシテモ、日英米ニ於テ飽マデ此協
定ヲ致スベキモノト考ヘルノデアリマスル
ガ、政府ニ於テモ同樣ニ其御考ガアルカド
ウカ、此點ニ付キマシテハ、豫算委員會ニ
於テ、私ハ日英米ニ於テ協定セヨト云フコ
トヲ特ニ進言致シタ積リデアリマス、第七
ハ特エ是ハ財部海相ニ伺ヒタイ、大正十年
華盛頓會議ノ軍備縮小ガ、我國ニ於テドノ
位ノ節約ニナッタカドウカ、本年ノ海軍省
ノ豫算ハ二億五千万圓デアル、是ガ若シ大
正十年ノ華盛頓會議ニ於テ制限ガナカッタ
ナラバ、ドノ位ノ額ニ達シテ居ルデアラウ
カ、其點ニ付キマシテ御市ヲ願ヒタイノデ
アリマス(拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=142
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143・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今畔田
君ノ御質問ノ第一點竝ニ第二點ハ、今回ノ
日本政府ノ囘答ノ中ニ、造艦ノ競爭ヲ避ケ
ンガ爲ニ華盛頓會議ノ事業ヲ完成センガ爲
ニ、協定ヲナスコトノ望マシキコトニ付テ
ハ、米國政府ト意見ヲ一ニスルト云フコト
ヲ申述べタノデアリマスガ、果シテ然ラバ
華盛頓條約ニ規定致シテアル標準又主義ト
云フモノモ、今回適用サレルモノデアルカ
ドウカト云フコトデアリマス、卽チ華盛頓
會議ノ時ニ「ヒユーズ」君ガ申述べマシタ四
ツノ原則、此原則ヲ其儘〓囘モ適用スルモ
ノナリヤ否ヤ、又華盛頓會議ニ於テ主力艦
竝ニ航空母艦ニ付テ定メラレタル日英米間
ノ五、五、三ト云フ比率ハ、是モ今囘ノ補
助艦艇ニ付テ適用サレルモノナリヤ否ヤト
云フコトデアリマス、回答ヲ御覽下サレバ
分リマスルガ、要スルニ申スマデモナク華
盛頓會議ノ條約デ決ッテ居リマスコトハ、
主力艦ト航空母艦トニ付テノ噸數ノ制限デ
アリマシテ、補助艦ニ付キマシテハ何等ノ
規定ガナイ、ソレ故ニ造艦ノ競爭ヲ避ケン
ガ爲ニ、補助艦ニ付テモ何等カノ協定ニ達
スルコトハ望マシイト云フコトダケニ付テ
ハ、無論亞米利加ト日本ハ意見ヲ一ニスル
ノデアリマス、併ナガラ此補助艦ニ付テノ
制限ノ原則トカ、比率トカ云フモノニ付キ
マシテハ、是ハ篤ト〓究ヲ重ネマシテ、政
治上ヨリモ亦專門ノ見地ヨリモ、十分〓究
ヲ遂ゲマシテ、サウシテ日本ノ意見ヲ決メ
マシテ、會議ニ臨ミタイト考へテ居ルノデ
アリマスカラ、今日ノ所ニ於キマシテ、ド
ウ云フ原則ニ依シテヤルモノデアル、ドウ
云フ比率ニ依ッテヤルモノデアルト云フコト
ヲ豫メ申上ゲルコトハ出來マセヌ、ソレカ
ラ第三點ハ恐ラクハ海軍大臣ニ御聞キニ
ナッタノデアラウト考ヘマス、第四點ハ日
本ノ決心如何ト云フコトデアリマス、日本
ノ決心如何ト云フコトガ囘答ノ中ニ少シモ
含マレテ居ラヌト云フコトデアリマス、日
本ハ斯ウ云フヤウナ會議ガ開カレテ、造艦
競爭ヲ避ケンガ爲ニ、何等カノ協定ガ出來
レバ洵ニ望マシイコトデアルト云フコトニ
付キマシテ、腹藏ナキ意見ハ申述ベマシ
タ、之ニ對シテハ欣然同意ヲスルト云フコ
トヲ申シテ居ルノデアリマス、吾々ハ決シ
テ好イ加減ナ御世辭ヲ申シタノデハナイノ
デアリマス、吾々ハ眞面目ニ熱心ニ斯ノ如
キ交涉ノ成功ヲ望ンデ居ルト云フコトハ、
囘答文全文ヲ御覽下サイマスレバ御諒承下
サルコトヽ考ヘマス、ソレカラ第五點モ是
ハ海軍大臣ニ御當テニナッタ御質問デアラ
ウト考ヘマス、第六點ハ佛蘭西、伊太利ハ
今囘米國政府ノ提議ニ對シテ贊成シナイ趣
旨ノ囘答ヲ致シテ居ル、若シ佛蘭西ト伊太
利ト二國ガドウシテモ米國ノ提議ニ同意シ
ナイト云フコトデアルナラバ、日、英、米、
三國ノ間ニ協定ヲスルト云フコトハ、自分
ハ望マシイコトデアルト畔田君ハ御話ニナ
リマシテ、之ニ對スル政府ノ意見ヲ御聞キ
ニナッタノデアリマスガ、米國政府ノ提議
ハ申スマデモナク五箇國ノ會議ト云フコト
デアリマシタ、未ダ日英米三國ノ會議ト云
フコトハ何國ヨリモ提議ハナイノデアリマ
ス、隨テ是ハ全ク架空ノ問題デアリマスカ
ラ、今日斯ウ云フヤウナ提議ガ來タナラ
バ、日本政府ハドウスルカト云フヤウナコ
トヲ明言致サナイ方ガ宜シカラウト考ヘテ
居リマス(拍手)
〔國務大臣財部彪君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=143
-
144・財部彪
○國務大臣(財部彪君) 畔田君ノ御尋ノ中
デ、私カラ御答スベキ點ニ付テ御答申上ゲ
テ見タイト思ヒマス、海軍大臣ハ我國ノ海
軍ノ現有勢力ハ、目下ノ狀勢ニ於テ我ガ國
防上ノ最小限度ノモノデアルト云フコトヲ
言フガ、ソレハ一體意味ハ無イデハナイ
カ、如何ニシテモ軍備ハ比較的ノモノデア
ル、列國ノ狀勢ニ應ジテ是ハ違ッテ行カナ
ケレバナラヌ、然ルニ海軍大臣ハ一定不變
ノソコニ最小限度ナルモノガアルト云フコ
トハ違フデハナイカト云フ點ガ第一ノ御質
疑デアッタト思ヒマスガ、私ハ勿論此軍備
ト云フモノハ列國トノ對象物デアルト考ヘ
マス、ソレ故ニ目下ノ狀勢ニ於テハ我國
ガ目下現有シテ居ル所ノ海軍勢力ハ最小程
度ノモノデアルト云フコトヲ申上ゲルノデ
アリマシテ、是ガ世界ノ形勢ガ大ニ違ヒマ
シタナラバ、是ハソレニ應ジテ改正致サナ
クチヤナラヌダラウト思ヒマス、成程世界
ノ形勢ハ時々刻々變ルト申シマスレバ左樣
ニモ申セマセウ、ケレドモ大體ノ國防上ト
云フコトカラ申シマシタナラバ、サウ半年
ヤ一年デ變ルベキモノデハナカラウト思ヒ
マス、勿論曩ノ華盛頓會議ノ如キ、列國ノ
國際會議デモアリマシテ、國際協定ニデモ
到達致シマシタ場合ニハ、是ハ大ナル變化
ヲ瞬間ノ中ニ來シマセウケレドモ、其他ノ
普通ノ場合ニハ斯ノ如クアルベキモノデハ
ナカラウカト思ヒマス、故ニ先ヅ此近キ數
年若ハ十年ノ所ヲ眺メマシテ、是ダケノモ
ノガアレバ國防ノ任務ヲ完ウスルコトガ出
來ル、其最小限度ノモノデアルト云フ事實
ヲ意味スルモノデアリマスカラ、左樣御承
知ヲ願ヒマス、ソレカラ是ハ御質問デナカッ
タカ知レマセヌガ、一言申上ゲテ置イタ方
ガ宜カラウト思ヒマスガ、比率ハ一體五、五、
三トカ何トカ言フコトヲ大變嫌フヤウデア
ルガ、結構デハナイカ、五、五、三デ宜イ
デハナイカ、五、五、三デモ我國ハ餘ルデ
ハナイカト云フヤウナ御說デアッタト思ヒ
マスガ、是ハ私ナドハ軍備ノ比率トカ何ト
カ云フコトハ、サウ簡單ニ考ヘテ居リマセ
又、現ニ亞米利加邊ノ新聞紙ハ····我國ノ
囘答ガ參リマシタ後ノ亞米利加ノ諸新聞ニ
現ハレテ居リマス所ノ代表的輿論トモ云フ
ベキモノヲ見マシテモ、此補助艦ト云フモ
ノハ、サウ簡單ニ唯、一國ノ歳出ガ幾ラデ
アルカラ幾ラデ宜シイト云フモノデハナ
イ、一國ノ生存上ノ狀態、資源ノ關係、諸
種ノ事ヲ考ヘテ見ルベキモノデアル、ソレ
デアルカラ是ハ五、五、五デモ或ハ宜イカ
モ知レヌ、或ハ五、五、四デモ宜イヂヤナ
イカト云フヤウナ議論モアルヤウデアリマ
ス、デアリマスカラサウ簡單ニ貧乏デアル
カラ我ハ三ニ甘ンズベキモノデアルヤ否
ヤ、私ハ我國ノ如キマダ將來ノ發展ヲ期シ
テ居ル所ノ國民ニ於テハ、サウ自ラ小サイ
型ノ中ヘ入ルベキモノデアルヤ否ヤ、是ハ
大ニ考フベキ問題デアルト思ヒマス(拍手)
サラバ五、五、三デハドウシテモ行カヌノ
デアル、ソレ以上ヲ要スルモノデアルカト
云ヘバ決シテサウデハアリマセヌ、是、
五、五、三ト申シテモ、此三ト云フノハ幾
ラヲ三ト云フノカ、其處モ分ッテ居ラヌノデ
アリマス、何レノ國ノ現有勢力ヲ押ヘテ、
ソレニ合セテ來ルカ分ラナイノデアリマ
ス、ンレデ列國會議ノ如キハ、是ハ無論虛
心坦懷公平ナル考ヲ以テ臨マナケレバナリ
マセヌケレドモ、一國ノ國防計畫ヲ致シマ
スニハ、列國ノ協議ハ協議、一國ノ國防ハ
國防、我ガ最小限ノモノヲ何時デモ間違ヒ
ナイモノニシテ置クト云フコトハ是ハ必要
ナイト考ヘマス、ソレデ會議ニ出マシタ
後、如何ナル所ニ會議ガ結著スルカト云フ
コトハ、折角〓究致シテ居ルノデアリマシ
テ、今直ニ此處デ幾ラナラ宜シイト云フコ
トハ申上ゲラレヌノデアリマスカラ、其邊
ハドウゾ御了承ヲ願ヒタイノデアリマス、
最後ノ御尋ハ曩ニ華盛頓會議ノアノ條約ノ
結果、我國ノ豫算ノ上ニ於テドレ程ノ節約
ヲ爲シ得タカト云フ御尋デゴザイマシタ
ガ、是ハ頗ル複雜ナ問題デゴザイマシテ、
且ツ數字ニ涉ッテ居リマスカラ、明快ナ調
査ハ頗ル困難デアラウト思ヒマスガ、御必
要ナラバ出來ルダケ調査ヲシマシテ、然ル
後御報告致シタイト思ヒマス、但シ其爲少
カラヌ經費ヲ節約シテ居ルト云フコトダケ
ハ疑ヒアリマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=144
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145・畔田明
○畔田明君 議長
〔「モウ、止セ〓〓」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=145
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146・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 畔田君ニ再質問
ヲ許シマシタ
〔「モウ宜イ」「登壇スルノカ」ト呼ヒ其
他發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=146
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147・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス
〔畔田明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=147
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148・畔田明
○畔田明君 極メテ簡單ニ申上ゲタイト思
ヒマス、併ナガラ此問題ハ我國ニ取ッテ嘗
テナイ大問題デアリマス、隨テ此大問題ニ
付キマシテハ飽マデ徹底シタル所ノ審議ヲ
爲スノハ吾々議員ノ責任デアリマス、私
何ガ故ニ今ノ如キ質問ヲ政府當局ニ致シタ
カト云フコトハ、是ハ此機會ニ於テ我國ハ
飽マデ此軍縮會議ノ目的ヲ達シナケレバナ
ラヌト云フコトガ一點ト、從來我ガ國防ト
云フモノガ單ニ軍部ノ技師的屬僚ニ依シテ
計畫セラレ、ソレヲ國民ニ强制セラレタ弊
ヲ此機會ニ於テ一掃致シタイト思フノデア
リマス、若槻首相ハ去ル十五日私ニ對スル
所ノ答辯、卽チ「公正ニシテ且ツ實際的ナ
ル方法ガアルナラバ」ト云フコトハ、如何
ニモ是ハ首相ノ御意見デアリマセウ、併ナ
ガラ斯ノ如キ言葉ハ去ル一一月十三日海相官
邸ニ於キマシテ、集タ夕所ノ海軍首腦部會
議ノ相談シタ結論ノ第一點デアリマス、サ
ウシテ其若槻首相ノ言葉ト同樣ノコトヲ決
定スルト同時ニ首腦部會議ハ國際聯盟小準
備委員會ニ於テ學究的ニ〓鑽セラレタル軍
縮ノ根本原則ヲ一段ト確立セシムベキコト
ヲ決シマシタ、此二ツヲ原則トシテ此軍縮
會議ニ對サウ、是ガ海軍首腦部會議ニ於テ
決メタ原則デアリマス、隨テ此原則デ一貫
シテ行カウト云フナラバ、此軍縮會議ニ對
スル日本ノ態度ハ徹底スルカドウカ、〓
頗ル疑問ニ堪ヘナイノデアリマス、如何ニ
モ御承如ノ如クニ科學的ノ〓究ハ結構ノコ
トデアル、併ナガラ國際聯盟ニ於テ〓究致
シタル所ノ其科學的ノ方法トシマシテハ、
今日ノ如キ時機ニ於キマシテハ複雜且ツ廣
汎ニ過ギマシテ、實際問題ノ解決トシテハ遲
延致シテシマフノデアリマス、此會議ノ結
果ト云フコトハ、唯〓要スルニ各國ノ専門
家技術家、其紛糾セル所ノ意見ヲ集メル
ノミデアッテ、何等解決ニ向ッテハ進マナイ
ノデアリマス、卽チ只今申上ゲマシタ通
リ、斯ノ如ク軍部ノ意見ヲ我ガ若槻首相竝
ニ其政府ニ於キマシテ取ッテ、此軍縮會議
ニ臨マントスル傾ガ見エマスガ、故ニ、私ハ
只今立ッテ質疑ヲ致シタ次第デアリマス、而
シテ之ニ對スル所ノ政府ノ御答辯ト云フモ
ノハ甚ダ不十分デアル、華盛頓會議ノ制限
ニ依シテドノ位ノ金ヲ節約シ得タカ、責任
アル財部海相トシテハ當然分ッテ居ル筈デ
アル、如何ニモ複雜致シテ居リマス、併ナガ
ラ其複雜シテ居ル所ノ金額モ其責任ノ衝ニ
アレバ當然分ッテ居ラネバナラヌ、嘗テ海
相ハ新聞記者ニ對シテハ是ハ二億五千万圓
カラノ節約ダト云フコトヲ言ハレテ居ル、
サウ言ハレテ居リマス、併ナガラ私ノ手許
ニ於テ計算シマスルト、是ハ六億圓以上ニ
達シテ居ルノデアリマス、第一ニ華盛頓會
議ノ制限ノ結果、ソレダケノ金ヲ儉約シテ
居ル、日本ハ非常ニ此爲ニ助ケラレタ、併
ナガラ海軍ノ費用ヲ見ルニソレ程-其節
約サレタ程今日實際ニ於テ效果ハ現ハレテ
居ラヌ、此會議ノ結果亞米利加ハ多額ノ公
債ヲ返シタ、又減稅ノ方法モ執ッタ、英國
ニ於テモアレダケノ財政困難ニ在ルニモ拘
ラズ、其國債ヲ返シタノデアリマス、併ナ
ガラ日本ニ於キマシテハ何等國民負擔減少
ノ效果ヲ現ハシテ居ラヌ、ソレニモ拘ラズ
海軍當局ハ擴張デアルベキ案ヲ出シマシ
テ、是レ海軍力ノ補充デアルト言ッテ吾々
國民ニ强制セント致シテ居ルノデアリマ
ス、是ハ諸君ガ協賛ヲセラレタ(「何デ贊成
シタ」ト呼フ者アリ)私ハ反對致シタノデア
リマス、喜ンデ贊成、サレタノハ與黨ノ諸君
デアル、當局大臣ハ曰ク之ハ補充デアル、
此計畫ノ中心デアリマスル巡洋艦ノ建造四
隻、是ハ廢棄シタル所ノ巡洋艦四隻ノ補充
デアルト云フ、何ゾ圖ラン此巡洋艦ト一ムフ
モノハ噸數ニ於テ二倍ニナッテ居ルノデア
リマス、二万噸ガ四万噸、全體ニ於テハ噸
數ガ少イト財部海相ハ辯明シテ居ル、是ハ
國民ヲ欺クモノデアル、故ニ此機會ニ於テ
吾々ハ正シイ筋道ニ依ッテ吾々ノ國防ヲ立
テルト同時ニ、其正シキ立場ヲ世界ニ向ッ
テ展開致サナケレバナラナイノデアリマ
ス、併ナガラ此政府ニ於キマシテハソレ等
ニ付テ考慮致サレテ居ラヌ、曾テモ申上ゲ
タ如ク、國民負擔ノ減少ヲ叫ンダ、併ナガ
ラ何等ノ負擔ヲ減少致サナイ、綱紀肅正ヲ
叫ンダ、併シ何等綱紀肅正ヲ致サナイ、若
槻內閣ノ存在ノ價値ト云フモノハ今日一ツ
モナイノデアリマス、併ナガラ若シ若槻内
閣ニシテ今回ノ軍縮提議ニ對シ、此軍縮會
議ヲ徹底セラルヽ所ノ手段ヲ執ッタナラバ、
今マデニナイ若槻内閣ノ手柄ハ茲ニ現ハレ
テ來ルノデアリマス、曾テ失ッタ所ノ若槻
內閣ノ功ヲ-其失ッタ所ヲ此機會ニ於テ
恢復セラルヽヤウニ-十分效果ヲ現ハサ
レルヤウニ私ハ當局ニ切望致シマシテ、私
ノ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=148
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149・砂田重政
○砂田重政君 殘餘ノ日程ニ對シテ延期セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=149
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150・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 砂田君ノ動議ニ
ハ御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク
決シマス、次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知
致シマス、本日ハ散會致シマス
午後六時九分散會
衆議院議事速記錄第七號中正誤
頁段行誤正
七九三二三藤田胸太郞削ル
君
衆議院議事速記錄第十三號中正誤
頁段行誤正
二四一四三戰鬪艦潜水艦
衆議院議事速記錄第十五號中正誤
頁段行誤正
二七二二七山口政二君削ル
衆議院議事速記錄第十六號中正誤
頁段行誤正
三〇四四七考案公案
三一一二二九採擇採決
三三一一九武裝無雙
三七三〇土屋君三輪君
同同一三六餘ヒ願ヒ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X01719270224&spkNum=150
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