第58回帝国議会　貴族院　本会議　第14号　昭和5年5月13日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和五年五月十三日（火曜日）午前九時十七分開議
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  　議事日程　第十四號
  　　昭和五年五月十三日
  　　　午前九時開議
  　第一　國務大臣の演説に關する件（第十二日）
  　第二　請願委員長報告
  　第三　昭和五年度歳入歳出總豫算追加案（第一號）　會議（委員長報告）
  　第四　昭和五年度各特別會計歳入歳出豫算追加案（特第一號）　會議（委員長報告）
  　第五　豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件　會議（委員長報告）
  　第六　昭和五年度歳入歳出總豫算追加案（第二號）　會議（委員長報告）
  　第七　昭和五年度各特別會計歳入歳出豫算追加案（特第二號）　會議（委員長報告）
  　第八　豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件（追第一號）　會議（委員長報告）
  　第九　昭和三年度第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　第十　昭和三年度特別會計第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　第十一　昭和三年度特別會計豫備費支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　第十二　昭和四年度第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　第十三　昭和四年度豫備金外に於て豫算外支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　第十四　昭和四年度特別會計第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　第十五　昭和四年度特別會計豫備金外に於て豫算超過支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　第十六　昭和三年度歳入歳出總決算、昭和三年度各特別會計歳入歳出決算報告　會議（委員長報告）
  　第十七　昭和三年度國有財産増減總計算書報告　會議（委員長報告）
  　第十八　軍制改革上馬産の保護に關する請願　會議
  　第十九　牧野法制定に關する請願　會議
  　第二十　軍人傷痍記章令中改正即行の請願（文書表第十五號、第二十三號、第四十二號、第五十六號、第七十三號）　會議
  　第二十一　軍人傷痍記章令中改正即行の請願（文書表第十七號）　會議
  　第二十二　航空行政統一及施設擴張に關する請願　會議
  　第二十三　財團法人日本少年指導會に對し國庫助成金下附の請願　會議
  　第二十四　稚内港、利尻、禮文兩島間連絡航路開始の請願　會議
  　第二十五　苫前漁港修築の請願　會議
  　第二十六　羽幌、遠別間鐵道速成の請願　會議
  　第二十七　長崎縣に高等水産教育機關設置の請願　會議
  　第二十八　白馬嶽を中心とする國立公園設定の請願　會議
  　第二十九　東京帝國大學農學部附屬農業教員養成所獨立に關する請願　會議
  　第三十　北海道厚内漁港修築の請願　會議
  　第三十一　下大野郵便局に電信事務開始の請願　會議
  　第三十二　北洋漁業の根據地を北千島に設置の請願　會議
  　第三十三　蟹以外の工船の漁業竝漁場の調査指導の請願　會議
  　第三十四　鑛業法中改正の請願　會議
  　第三十五　結核豫防に關する請願　會議
  　第三十六　萩線鐵道速成の請願　會議
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• 001・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　是ヨリ本日ノ會
  議ヲ開キマス

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• 002・林博太郎

  ○　伯爵林博太郞君日程變更ノ動議ヲ出シ
  タイト思ヒマス、日程ヲ變更シテ日程第二
  ヨリ日程第七ニ至ルマデノ議案ヲ此際順次
  議事ニ上ボセラレムコトヲ希望イタシマ
  ス、ドウゾ諸君ノ贊成ヲ求メマス
  〔子爵西大路吉光君發言ノ許可ヲ求ム〕

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• 003・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　林伯爵ハ、日程
  ヲ變更セラレテ、第二第三第四······ト云フ
  ヤウニ述ベラレマシタガ、第十七マデハゴ
  ザイマセヌカ

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• 004・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　十六マデノ間違ヒデゴ
  ザイマシタ

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• 005・徳川家達

  ○　議長(公爵德川家達君)十七···

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• 006・林博太郎

  ○　伯爵林博太郞君此際日程ヲ變更イタシ
  マシテ、日程第二ト豫算委員長報〓全部、
  之ヲ先キニ議セラレムコトヲ望ミマス
  尙ホ念ノ爲ニ申上ゲマス、此際日程ヲ變更
  シテ日程第二ヨリ日程第十七マデヲ議題ニ
  供セラレムコトヲ望ミマス

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• 007・西大路吉光

  ○　子爵西大路吉光君贊成

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• 008・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　林伯爵ノ議事日
  程變更ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマ
  ス
  〔起立者多數〕

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• 009・徳川家達

  ○　議長(公爵德川家達君)過半數ト認メマ
  ス

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• 010・徳川家達

  ○　議長(公爵徳川家達君)日程第二、請願
  委員長報告
  〔子爵〓岡長言君演壇ニ登ル〕

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• 011・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　請願委員會ノ第二囘報
  〓、卽チ、昭和五年五月五日ヨリ同五月十
  二日ニ至ル迄ノ御報〓ヲ申上ゲマス、請願
  委員會ハ一囘卽チ五月九日ニ開會イタシマ
  シタ請願委員會各分科會ハ四囘、卽チ第
  一分科及第三分科ハ五月七日ニ、第二分科
  第四分科ハ五月ノ八日ニ開キマシタ、請願
  文書表報〓ハ一囘卽チ五月十日ニ、請願委
  員會特別報〓モ同樣一囘デ去ル五月九日ニ
  致シマシタ、請願書受領件數ハ、第一囘御
  報〓ノ後ニ八十六件八十六通、是ガ連署イ
  タシテ居リマスル人名數ハ一万五千百七名
  デゴザイマス、次ニ審査ノ經過及結果ヲ御
  報告イタシマス、第一囘委員長報告ノ際、
  文書表ニ未揭載ノ件數二十二件二十二通、
  第一囘委員長報告後受領イタシマシタル件
  數八十六件八十六通、合計百八件百八通、
  内請願文書表揭載件數八十八件八十八通、
  但シ是ハ文書表第三囘報告ノ分デゴザリマ
  ス、外ニ第一囘委員長報告ノ際文書表ニ
  記載シタルモノノ中、審査未了ニ屬スル七
  十四件七十四通、是等ヲ合計イクシマシテ
  百六十二件百六十二通デアリマス、此審査
  ノ結果院議ニ付スベシト議決イタシタルモ
  ノ二十三件二十三通、但シ是ハ特別報〓ニ
  記入イタシテアリマス、院議ニ付スルヲ要
  セズト議決イタシタルモノ七件七通、此號
  ヲ申述べマスルト第十九號、第三十三號
  第三十四號、第三十九號、第六十二號、第
  六十六號、第七十號ノ七件デゴザリマス、
  而シテ審査未了ニ屬スルモノ百三十二件百
  三十二通デゴザリマス、右ノ外文書表ニ未
  揭載ノモノ二十件二十通デゴザリマス、以
  上ハ昭和五年五月十二日午後四時締切迄ノ
  御報告デゴザリマス、次ニ審査ノ總報告ヲ
  バ申上ゲマス、請願委員會ノ開會ハ三囘、
  同分科會ノ開會ハ八囘、之ヲ內譯イタシマ
  スルト各分科共ニ二囘ヅツデゴザリマス
  請願文書表報〓ハ三囘、請願委員會特別報
  告ハ二囘、請願書受領件數ハ百八十五件百
  八十五通、之ニ連署イタシテ居リマスル人
  名數ハ七万五千九十七名、內請願文書表ニ
  揭載イタシマシタ件數ハ百六十五件百六十
  五通デ、是ガ審査ノ結果院議ニ付スベシト
  議決イタシマシタモノ二十六件二十六通、
  院議ニ付スルヲ要セズト議決イタシタルモ
  ノ七件七通、審査未了ニ屬スルモノ百三十
  二件百三十二通デゴザリマス、尙ホ請願文
  書表ニ未ダ揭載スルニ至ラザルモノ二十件
  二十通デゴザリマス、蓋シ以上ハ昭和五年
  五月十二日午後四時締切迄ノ御報告デアリ
  マス

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• 012・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第三ヨリ第
  八迄會議、委員長報告、豫算委員長林伯爵
  一昭和五年度歲入歲出總豫算追加案第
  號
  一昭和五年度各特別會計歲入歲出豫算追
  加案(特第一號)
  一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
  スヲ要スル件
  昭和五年度歲入歲出總豫算追加案第
  二號)
  一昭和五年度各特別會計歲入歲出豫算迫
  加案(特第二號)
  一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
  スヲ要スル件(追第一號)
  右衆議院ヨリ送付シタル各案ヲ審査シ總
  テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
  ト議決セリ依テ及報〓候也
  昭和五年五月十二日
  豫算委員長
  伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕

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• 013・林博太郎

  ○　伯爵林博太郞君只今日程ニ上ボリマシ
  タ昭和五年度歲入歲出總豫算追加案第一
  號昭和五年度各特別會計歲入歲出豫算追
  加案特第一號、豫算外國庫ノ負擔トナルベ
  キ契約ヲ爲スヲ要スル件、昭和五年度歲入
  歲出總豫算追加案、昭和五年度各特別會計
  歲入歲出豫算追加案特第二號、豫算外國庫
  ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件追
  第一號、先程第四番目ニ申シマシタ總豫
  算追加案ハ第二號デゴザイマス、右豫算委
  員會ノ經過ヲ御報告イタシマス、時期モ切
  迫イタシテ居リマスノデ極メテ、簡明ニ申上
  ゲタイト思ヒマス、昭和五年度當初實行豫
  算ハ十五億六千三百三十四万百九十圓、第
  一號追加豫算、政府ガ今囘帝國議會ノ協賛
  ヲ受ケントスル金額ハ三千八百九十一万九
  千五百五十五圓、右ニ伴フ實行豫算追加額、
  卽チ政府ガ議會ノ協賛ヲ受ケズシテ自由ニ
  支出セントスル前年度ノ豫算ヲ踏襲シタル
  本年度豫算面內ノ金額ハ四百四十五万六千
  四百七十九圓、合計十六億六百七十一万六
  千二百二十四圓ニ相成リマス、第二號追加
  豫算、政府ガ今囘帝國議會ノ協賛ヲ受クル
  金額百七十九万三千七百八十九圓、右ニ伴
  フ實行豫算追加額、卽チ政府ガ議會ノ協贊
  ヲ受ケズシテ自由ニ支出セントスル前年度
  豫算ヲ蹈襲シタル本年度豫算面內ノ金額十
  二万八千九百五十一圓、通計十六億八百六
  十三万八千九百六十四圓ニ相成ル次第デア
  リマス、本月二日ニ委員長副委員長ノ選擧
  ヲ行ヒマシテ、八日、九日、十日ノ三日間
  ニ於テ質問ヲ續行イタシマシタ次第デア
  リマスノデ、其質問ノ主ナルモノヲ簡單ニ
  申上ゲテ置キタイト思フノデアリマス、財
  政今日ノ財界ハ金解禁ヲ卽行シタル結果
  トシテ俄ニ不景氣ニナッテ來タ、從テ誠ニ財
  界ニ於テハ悲觀スベキモノガ累ナッテ來タ
  ヤウデアルガ、政府ノ之ニ對シテノ所見ハ
  ドウデアルカト云フヤウナ問題ガ種々ニ出
  マシタノデアリマス、政府ハ今日悲觀スベ
  キ材料ハナイトハ言ヘナイケレドモ、併シ
  是ハ一時的ノ現象デアリマシテ、順次良好
  ナル、健全ナル方面ニ向フベシト云フ豫想
  ニ於テ答ヘラレテ居リマス、金ノ解禁ニ付
  キマシテノ質問ハ可ナリ深イ所マデ行ッタ
  ノデアリマス、細カイ所ハドウゾ速記デ御
  覽ヲ願ヒマス、要スルニ金解禁ハ尙ホ準備
  ノ足ラザル中ニ卽行サレマシタ爲ニ、俄
  財界ニ變動ヲ來スヤウニナッタノデアル簡
  單ニ中セバ十分ニ我國ノ貨幣、此圓價ガ安
  定スル迄待ッテ居ッテヤッタナラバ、斯ノ如キ
  急激ナ變動ハナカッタラウト思フ、此點ハ
  延期ヲシナカッタト云フ點ガ誠ニ遺憾ナコ
  トデアルト云フ意味ニ於ケル質問ガ續イタ
  ノデアリマス、尙ホ其準備ヲスルト云フコ
  トニ付キマシテハ、從來ノ不景氣ガ段々甚
  ダシクナリツツアリ、資本ハ流動化サレズ、
  經濟界ハ未ダ合理化サレザル間ニ斯ノ如キ
  コトガ起ッタノデアッテ、此僅カ二箇月ノ間
  ニ餘リ準備ヲシナイデ之ヲ行ッタト云フコ
  トハ、誠ニ早過ギタノデアルト云フヤウナ意
  味ニ於キマシテ、財界ノ流動化ノ必要ヲ論
  ジテ質問ヲサレタ方ガアリマス、要スルニ
  尙早論ノ意味ニ於テ質問ガアリマシテ、政
  府ハ尙早デハナイ、一月十一日デモ尙ホ遲
  カッタ位デアルト云フ意味ニ於テ辯明ヲ致
  シテ居ルノデアリマス、而シテ此解禁後ノ
  財界ハ決シテ世人ノ見ル如キモノデハナク
  テ、寧ロ順調ニ向ッテ居ル、尙ホ金ノ買入ヲ
  シタノハ解禁後ニ於ケル變動防止ノ政策デ
  アッテ、是ハ要領ヲ得タモノデアルト思フノ
  デアル、今日解禁ヲシナケレバ、世界ノ大勢
  ニ鑑ミテ、我國ノ財界ハ容易ニ囘復ノ期ニ向
  ヒ難イノデアル、正貨準備モ段々無クナッテ
  居ルシ、明年一月ニハ二億三千万圓ノ借欵
  ヲシナケレバナラナイモノガアルノデアル
  カラシテ、最モ適切ナ時ニ行ッタノデアッテ、
  決シテ尙早デハナイト云フ辯解デアリマ
  ス、尙ホ金解禁ヲ行フニ際シテ、大藏省令
  ヲ以テ、一時的立法ノ例外ヲ定メタト云フ
  コトハ違憲デハナイカ、斯ノ如キ財界ノ變
  動ヲ來タスヤウナ重大ナル解禁ヲ、議會ニ
  諮ラズシテ、簡單ニ省令ヲ以テヤルト云フ
  コトハ甚ダ不都合ナコトデハナイカト云
  フ質問ガアリマシタ、併シ當局ニ於テハ是
  輸出禁止ガ大正六年ノ大藏省省令ニ於テ出
  サレテ居ルノデアルカラ、省令ヲ以テ輸出
  ガ禁止サレテ居ルノデアルカラ、省令ヲ以
  テ之ヲ解クト云フコトハ當ヲ得タモノデア
  ル、立法的ノモノデアルト云フ答辯デアリ
  マシタ、ソレカラ廣イ財政ノ意味デ申上ゲ
  ルノデアリマスガ、農林省所管ノ方面ニ付
  テ森林收入ノ見積ガ如何ニモ過大デアル、
  到底昭和五年度ニ於テハ豫算通リニ行カナ
  イ、森林收入トシテハ此四年度ニ六百万
  圓······一千万圓ノ減收ガアッタノデアルカ
  ラ、此不景氣ノ昭和五年度ニ於テ、五年度
  ダケガ殖エルト云フコトハ、實ニ考フベカ
  ラザルコトデアル、之ニ對シテハ政府ハ一
  千万圓ナドト云フヤウナ減收デナイ、寧ロ
  順調ニ向ッテ居ル、又郵便、電話收入等ニ付
  テモ過大ナル計算ガ出テ居ルガ、是ハ豫算ノ
  上ニ於テ誠ニ不都合ナ點デアルト云フヤウ
  ナ質問ガアリマシタニ對シマシテモ、政府
  ハ色ミ辯明ヲサレタノデアリマス、事頗ル
  小ナル問題ノ如クデアリマスルガ、是ハ義
  務〓育費負擔法中改正法律案ノ今囘出マシ
  タ一千万圓ノ財源トノ關係ガアルノデアリ
  マスルカラ、私ハ此ノ質問ガ出タコトト推
  察イタスノデアリマス、尙ホ失業問題ニ付
  テハ過般來本議場ニ於テモ說明ヲサレ又質
  問モアリマシタカラ、私ハ玆ニ縷々申上ゲ
  マセヌ、豫算委員會ニ於テモ此問題ヲ十分
  ニ論議サレタノデゴザイマス、尙ホ公債ヲ
  發行シナイト云フコトハ政府ノ常ニ言フ所
  デアル六十億デモウ澤山デアル、此上公
  債ヲ濫發スルコトハ甚ダイカヌト言ハレマ
  スケレドモ、失業問題ノ如キ重大ナルモノ
  ヲ解決スル際ニハ是ハ公債ヲ發行シテモ
  宜イヂヤナイカト云フヤウナ質問ガ出タノ
  デアリマス、政府ハ之ニ對シテ種々ノ方面
  カラ解決ヲイタシタイト云フ意味ニ於テ答
  辯ヲサレテ居リマス、尙ホ米穀法ノ運用ニ
  付テノ質問ガアリマシタ、從來政府ハ米ヲ
  買ヒ米ヲ賣ル、是等ニ付キマシテ、今日倉
  庫ニ充實シテ居ル所ノ米ハ大變ナモノデア
  リマスルガ、又ソレカラ起ッタ所ノ損害ガ八
  千万圓モアル、是ハ此際早ク一般會計ヘ入
  レテシマッテ解決ヲシタラドウデアルカト
  云フヤウナ質問ガ出タノデアリマス、之二
  對シマシテハ政府ハ此外米ノ四百万圓內
  外ノ輸入ト云フモノガ今日アル、而シテ內
  地ノ米ガ旣ニ朝鮮臺灣日本ニ於テ十分ニ是
  ハモウ出來テ居ルノデアル、御承知ノ如ク米
  價ハ下落シツツアル、此場合條約其他ノ關
  係デ、外米ガ輸入サレテ來ルト云フコトガ、
  防ゲナイノデアリマス、之ヲ先ヅ解決ヲシ、
  而シテ臺灣米、朝鮮米ノ移入ヲ調節シ
  テカカレバ、又更ニ良イ所ノ解決法ガ付
  クコトデアルト思フ、米穀調査會ニ於テ
  五箇條ノ答申ヲ致シテ居リマスル中デ、
  番ムツカシイノハ此米價ノ基準ト云フコト
  デアル、米價ノ基準ヲ定ムルト云フコトガ
  一番困難ナコトデアリマスルガ、是等ヲ定
  メタ後ニ新米穀法ト云フモノヲ作ッテ行ク
  コトニナレバ、政府ガ米ヲ買フトカ賣ルト
  カ云フコトナクシテ、臺灣米、朝鮮米、內
  地米ノ調節ノミニ依ッテ十分ニ解決シ得ル
  途ガ付クト考ヘル、前途ハ誠ニ此點ニ於テ
  樂觀スベキモノデアルト云フヤウナ答辯
  ガアリマシタ次ハ軍縮問題、統帥權
  問題デアリマス、是モ本議場ニ於テモ、豫算
  委員會ニ於テモ討議サレタコトデアリマシ
  テ、速記ニモ出テ居リマスルカラ成ルベク
  簡單ニ致シタイト思フノデアリマス、條約
  ニ於テ想定國ノ十ノ比率ニ對シマシテ、
  我國ハ六割九分七厘ノ比率ニナル、是デ滿
  足ガ出來ルノデアルカ、此質問ニ關聯シテ
  統帥權ノ問題ニモ言及サレテ質問ガアッタ
  ノデアリマス、是ハ最早諸君モ御承知ノ
  通リノコトデアリマスカラ、餘リ多クヲ論
  ズルニハ及ビマセヌガ、此條約ニ滿足シナ
  カッタナラバ、必ズ其結果ハドウデアルカト
  云フト、造艦競爭ガ起ルデアラウ、我國ノ
  財政ニ於テ造艦競爭ガ起ルト云フコトニナ
  レバ是ハ由々シキコトデアル又世界ノ
  平和ノ爲ニモ山々シキコトデアル、然ラバ
  サウ云フ風ニ此條約ガウマク行カナカッタ
  ナラバ、必ズ造艦競爭ト云フコトニナルト
  云フ理由ガアルカト云フ質問ガ出タノデア
  リマスルガ、必ズナルトハ言ヘナイガ、造
  艦競爭ガ起ラヌト言ヘナイ、起ルト云フ虞
  レガアルト云フ意味ニ於テ、政府ハ答ヘラ
  レタノデアリマス、尙ホ本議場ニ於テモアッ
  タト思ヒマスルガ、潜航艇ト云フモノガ七
  万八千五百噸カラ五万一一千噸ニ引カレタノ
  デアル、是ハ誠ニ兵力量ニ於テ心配ナコト
  デハナカラウカト云フ、質問ガアッタノデ
  アリマス、此潜航艇ノ量ガ多少減ッタケレド
  モ、是ハ他ノ軍事上ノ方面カラ數多補充ス
  ル方法ガアル、故ニ國防上ノ不安ヲ感ズル
  トハ思ヘナイノデアルト云フ答辯デアリマ
  シタ、要スルニ此兵力量ニ付キマシテハ
  軍部ノ專門的意見ハ十分ニ斟酌ヲシテ、軍
  部大臣ヲ包含セル內閣デ決定シタノデア
  ル、斯ウ云フ答辯ガ結局ノ所デアリマス
  若シ條約ガ永遠ノモノデアレバ、國防ニ對
  シテ多少ノ不安ガナイト云フコトハ言ヘナ
  イダラウ、千九百三十六年迄ノ是ハ條約デ
  アル、千九百三十五年ニハ更ニ會議ヲ開
  カレテ、少クトモ其時迄ハ國防ノ不安ハ感
  ジナイノデアル、ノミナラズ、千九百三十
  五年ノ會議ニ於テハ日本ハ自由ノ立場ニ
  於テ、兵力量ヲ論ズルト云フコトガ留保サ
  レテアルカラ、國防ノ上ニ於テ不安ハナイ
  ト云フ答辯デアッタノデアリマス、或委員ハ
  更ニ進ミマシテ、此條約ガ極リマスル迄ニ
  二週間モアッタ其間ニ、モウ一押シ押シテ見
  タナラバ、良イ收獲ガアッタデハナカラウ
  カ、其點ハドウデアルカト云フヤウナ質問
  ガ出タノデアリマスルガ、當局ハ此點ニ付
  テハ十分ニ色ミ論議モシタシ、考慮ヲシタ
  ノデアル、併ナガラ此點ニ付テ若シモ私ガ
  答辯スレバ······政府ガ答辯スレバ、我國ニ
  誠ニ不利ヲ來スヤウナコトガ起ルト思ヒマ
  スカラ、御質問ニ對シテハ十分ニ申上ゲタ
  イノダケレドモ此點ハ御諒察ヲ願ヒタイ、
  斯ウ云フコトニ於テ答辯ガアリマシタ、又
  憲法上、憲法第十一條、第十二條ノ國務大臣
  ノ輔弼ノ範圍ハドウ云フモノデアルカト云
  フ質問ニ對シマシテハ、學者、專門家ニ於
  テ意見ガ異ルノデアル、故ニ政府ハ明答スル
  コトガ出來ナイ、ト云フヤウナ意味ニ於テ
  答辯ガアッタノデアリマス、是ハ旣ニ本議
  場ニ居ラレタ方モ御承知ノコトデアラウト
  思ヒマスルシ、尙ホ又速記ヲ御讀ミニナッタ
  方モアラウト思ヒマスカラ此邊デ省略イ
  タシマス、選擧干涉、是ハ今日ノ政治上ノ
  問題トシテハ重大ナモノニナッテ居ル、選擧
  ノ干涉ニハ大體二ツアッテ、金力ノ干渉、第二
  ニハ權力ノ干渉、第三ニ言フベキコトハ無效
  犯罪投票ノ有效ト云フコトデアル、此三ツ
  ノモノガ選擧干涉ニ關シテ主ナ支障ヲナス
  モノデアル、之ニ付テノ政府ノ所見ハドウ
  デアル政府ハ無論公平ニサウ云フコト
  ハヤラナイノデ公平ニ選擧ヲ行ッタト云フコ
  トヲ言ハレルノデアリマス、元來總選擧ヲ行
  フ前ニ地方長官會議ト云フモノヲ招集スル
  ノガ何時モサウヤッテ居ル、現政府モソレヲ
  ヤッテ居ル、抑是ガ選擧干涉ノ噂ヲ生ム大
  ナル源泉デアルカラ之ヲ止メタラドウデ
  アルカト云フ質問ニ對シマシテハ、是ハ矢
  張リ地方長官會議ヲ集メテ政府ノ公正ナル
  意ノアル所ヲ示ス方ガ宜イト思フ、依テ是
  ハ開ク譯ニナッテ居ルノデアル、尙ホ其質問
  ニ付キマシテ斯ウ云フコトガアッタノデア
  リマス、警察部長トシテモ地方ノ知事トシ
  テモ、何レモ政治的ニ常識ノアル人こノミ
  デアル、之ヲ總選擧前ニ態、招集ヲシテ、
  サウシテ何ヲ言フカト言ヘバ政府ハ選學
  ニ付テハ公正ニ行ヘ、公平ニ行ヘト云フコ
  トデアル、此公平ニ行ヘト云フコトガ、政
  治上ニ於テ常識ガ十分ニアル知事諸君ニ對
  シテドウ云フ風ニ感ズルカ、公平ノ意味ガ
  言外ニ意味ヲ含メテ、一種ノ政治的心理狀
  態ヲ茲ニ起ス、是ハ惡イト云フノデアルト
  云フヤウナ質問ガ出タノデアリマス、併ナ
  ガラ當局ハ十分ニ公平ニヤルヤウニト云フ
  コトヲ何處マデ言フノデアル、誤解ガナイ
  ヤウニト云フコトニ於テ說明ヲスル必要ガ
  アルカラヤルノデアル、而シテ公平ニヤレ
  ト言フノデアルガ、ソレガ順次地方ノ官吏
  ニ傳ッテ行キマスルト云フト、親ノ心子知ラ
  ズト云フコトニナッテ、當局ハ良心的ニ命
  令ヲスルノデアルガ、動モスレバ心外ノ所
  ニ運ンデ行クト云フコトハ誠ニ遺憾ナコト
  デアルト云フ答辯デアリマス、ソレカラ此
  小橋奏薦ノ責任問題如何ト云フコトモ出マ
  シタ是モ旣ニ御承知ノコトデアリマス、
  奏薦ヲシタ時ニハ正シカッタト思フ、併シ結
  果カラ見ルト、誠ニ遺憾デアルト云フ、結
  局此答辯デアリマス、次ニハ司法官ノ身分
  保障、判事ノ身分ハ裁判所構成法デ絕對ニ
  保障サレテ居ルト云フコトニ付キマシテノ
  質問應答ガアリマシタ、又所謂減俸ニ付キ
  マシテノ運動ガアッタト云フヤウナ、其際ノ
  實情ヲ話シテ貰ヒタイト云フヤウナ話モア
  リマシタ、當局ハ是ハ圍體デ私ノ所ヘ來タ
  ノデハナイ、唯生活ノ狀況ガ斯ノ如キモノ
  デアルト云フ實情ヲ述べラレタニ止マッテ
  居ルノデアルト云フ辯明デアリマス、此問
  題ハ相當重大ナモノデアリマスカラ、司法
  省所管ノ分科會ニ於テ出タノデアリマシ
  タ、減俸問題ニ對シテ身分ノ保障ヲ有スル
  所ノ司法官ガ、他ノ官吏ニ先ダッテ政府ニ
  迫ッタカノ態度ヲ世間ニ感ゼシメタコトハ、
  甚ダ遺憾デアルト云フヤウナコトノ報告
  ニ、私ハ總會ニ於テ接シタノデアリマス、
  是ハ本會議ニ於テ話ヲシロト云フコトマデ
  ニハ行ッテ居リマセヌガ、分科會ニ於テモ問
  題ニナッタト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、
  尙ホ檢察事務ノ指揮ヲスルト云フコトノ弊
  害ニ付テノ質問ガアリマシタ、併シ當局ハ
  當局ダケガヤルノデナクテ、刑事局長モア
  レバ書記官モアルシ、次官モアルシ司法
  大臣ハ必ズ政黨的色彩ヲ有ッテ居リ、必ズシ
  モ政黨的偏頗心ヲ以テ檢察官ヲ指揮スルト
  云フ前提ガ確ナコトニナッテ居ルニアラザ
  レく、チットモ差支ナイト云フコトヲ答辯
  サレテ居ルノデアリマス、卽チ人ニ付テ此
  問題ハ解決ノ出來ルモノデアルト云フコト
  ニナル、尙ホ〓育ノ問題ニ於キマシテハ
  御承知ノ義務〓育費ノ一千万圓ノコトデア
  リマス、是ハ町村ノ負擔減ト云フケレドモ、
  動モスレバサウ行カナイコトモアル、ドウ
  カ是ハ何トカ良イ方法ニ於テヤッテ貰ヒタ
  イト云フヤウナ意見モ出タノデアリマス
  兎ニ角此義務〓育費ノ今囘ノ改正法律案
  ハ政黨ガ旗印ヲシテ國民ニ示シタモノデ
  アルカラ、ドウシテモ出サナクテハナラナ
  イト云フヤウナモノニナッテ、出シタノデハ
  ナイカト云フヤウナ意味ニ於テノ質問ガ
  アッタノデアリマスルガ、當局ハ是ハ今日地
  方ノ必要上已ムヲ得ズ出シタモノデアルト
  云フ答辯デアリマシタ、ソレカラ全額負擔
  ト云フコトヲ目的トシテ居ルカドウカト云
  フ問題ガ出タノデアリマス、是ハ併シ當局
  ニ於テハ最モ簡明ニ答辯ヲシテ居ルノデア
  リマス、全額ヲ負擔スルト云フコトニナル
  ト、改正法律案ヲ出サナケレバナラナイ、
  今囘ハ改正法律案ヲ出シテ居ラナイ、ソレ
  ダカラドウカ此理想、卽チ全額負擔ト云フ
  事カラ離レテ、單ニ一千万圓增額ノ案デア
  ルト云フ意味ニ於テ審議ヲシテ貰フノデア
  ルト云フ答辯デアリマシタ、其外色ミノ問
  題ニ付テ質問應答ガアリマシタガ、會期切
  迫ノ際デアリマスルカラ之ヲ省略ヲ致シマ
  ス、五月十一日分科會ニ豫算ヲ移シマシテ、
  五月十二日午後ニ總會ヲ開イテ、各主査ノ
  報告ヲ得タノデアリマス、サウシテ討論ノ
  後採決ヲ致シマシタル所、全會一致ヲ以テ
  豫算案全部ハ可決ニ相成リマシタ、而シテ
  第一分科ニ於キマシテ希望決議ガ出タノデ
  アリマス、之ヲ朗讀イタシマス
  第一分科希望決議
  政府ハ經濟界ノ現狀ニ鑑ミ昭和五年度ニ
  於ケル歲入ノ減收ヲ慮リ實行豫算ヲ編成
  セリ而カモ今後減收ノ虞ナシトセス政府
  ハ歲出豫算施行ニ當リ充分ノ注意アラン
  コトヲ望ム
  是ハ說明スルマデモナク只今讀上ゲマシ
  タ所デ御了解ノコトト存ジマス次第デアリ
  やっ、右豫算委員會ノ經過ヲ御報告イタシ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=13

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• 014・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　豫算案ニ付テ質
  疑ノ通〓ガゴザイマスカラ、通〓順ニ依リ
  マシテ發言ヲ許シマス、田中館君
  〔田中館愛橘君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=14

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• 015・田中館愛橘

  ○　田中館愛橘君此短期ノ議會ニ於キマシ
  テ成ルベク質疑ハ差控ヘル心得デ居リマシ
  タ皆樣ノ御質疑ト政府ノ御答辯ヲ注意イ
  タシテ伺ヒマシテ、尙ホ豫算委員會ノ總會
  ニ出來ル限リ傍聽イタシマシテ、其御樣子
  ヲ伺ヒマシタ、場合ニ依ヲテハ通〓ヲ取消サ
  ウカト思ッテ居マシタガ、未ダ私ノ伺ハウト
  思フ所ニ徹シタル御質疑モ、御答辯モ伺ヒ
  マセヌ、依テ簡單ナ質問デアリマスルカラ
  暫ク御聽取リヲ願ヒマシテ御答辯ヲ願ヒマ
  ス、此議場ニモ屢〓問題ニ出マシタ失業就
  職難、而シテ不景氣ニ對シテ產業ノ合理化
  ト云フコトガ論ゼラレマシタ、此合理化ノ
  理デアリマス、合理化ノ理ガ一定不變デ居
  ルモノナラバ安定ヲ致スコトハ極メテ易イ
  ダラウト思ヒマスガ、此理其モノガ段々變ッ
  テ參リマス、故ニ此合理化ヲスル爲ニハ理
  窟ヲ考ヘルコトヲ勸メナケレバナラナイ、
  ソレデ政府ノ豫算ヲ拜見イタシマスルニ、
  實行豫算ニ於テモ追加豫算ニ於テモ、此理
  ヲ究メル所ノ〓究機關ノ施設或ハ〓究ノ奬
  勵ト云フヤウナコトニハ力ノ入レ方ガ足ラ
  ヌヤウニ思ヒマス、デ之ヲ今一層御力ヲ御
  入レニナリマセヌカ、是ダケデアリマス
  甚ダ抽象的ニシテ廣汎ナル問題デアリマス
  ルカラ、少シノ實例ヲ述ベマシテ私ノ質疑
  ノ趣意ヲ明カニシタイト存ジマス、先ヅ順
  序ト致シマシテ此問題ノ起リノ不景氣ハド
  ウシテ起ッタカト申シマスト、其一部分ハ世
  界的ノ不景氣デアル、約メテ申セバ世界ノ
  全身病デアルカラ、我ミモ其一部分トシテ
  此病ニ罹カル、斯ウ云フヤウニ伺ヒマス、
  然ラバ此全身病ハ突發的ノモノデアルカ、
  或ハ將來トテモ繼續スベキモノデアル
  カ、之ヲ先ヅ考ヘナケレバナラヌノデアリ
  マリ、若シ突發的ノモノデアルナラバ暫
  シノ間如何樣ニモ我慢ヲシテ之ヲ凌グト云
  フコトモアリマス若シ又是ガ繼續的ノモ
  ノデアル、或ハ益〓激シクナルモノデアル
  ナラバ將來ニ對シテ今日ヨリ準備ヲシナケ
  レバナラヌモノデアリマス、私ノ見マス所
  デハ是ハ人類ノ發達ノ上デ免ルベカラザル
  所ノ現象デアル、廣ク申シマシタナラバ人
  間ノミニ限ッタコトハナイカモ知レマセヌ
  ガ、先ヅ人類ノ歷史ニ於テ免ルベカラザル
  現象デアル、是迄トテモ行ハレテアル、サ
  リナガラ、舊來ハ社會組織ガ比較的單純デ
  アルガ爲ニ、今日程痛烈ニ感ジナカッタノデ
  アル、今日ハ人間ノ知識、人間ノ欲望ガ昔
  ヨリハ遙カニ進ンデ居リマスガ故ニ、此病
  氣モ從フテ痛烈ニ感ズル譯デアリマス、一體
  人間ニハ競爭ヲ致シマス、卽チ優勝劣敗ノ
  競爭ヲ致シマスト同時ニ一面共存共榮ヲ致
  ス所ノ協力ガアリマス、此盾ノ兩面ガ御互
  ニ相俟ッテ社會ノ進步ヲシテ居リマス、是ア
  リマスガ故ニ、此失業問題等モ必ズ將來ト
  テモ起ルノデアリマス、產業ノ合理化ト申
  シマシテモ、其一部分ハ制度、組織或ハ節
  約ト云フヤウナ抽象的ノ問題、他ノ一部ニ
  於テハ物質的ノ材料、機械、其構造、是等
  ノ專ラ理學的ノモノデアリマス、私ハ自分
  ノ專門上、此第二ノ方ニ付テ專ラ伺フノデ
  アリマス、或ル社會改良家トカ、殊ニ宗〓
  家ハ、機械ト云フモノハ人間ノ勞力ヲ救フ
  爲ニ作ルモノデアル、之ニ依ッテ値段ヲ引キ
  下ゲテ爭ヒヲスル爲ニ作ルモノデハナイ、
  ト斯ウ申シマス、是ハ理想トシテハ尤ナコ
  トデアリマス、遠キ將來ニ於テ必ズソコ
  ニ落著クベキト思ヒマス、併ナガラ其處ニ
  達スル迄ノ間ニハ、何ト申シテモ、安イモノ
  ヲ造ヲテ、高イモノヲ造ルモノト競爭ヲスル
  コトハ免レマセヌ、此爲ニ失業ガ起ル、最
  モ見易イ例ヲ見マシテモ、只今發動機ガ發
  達イタシマシテ、發動機附ノ「ローラー」ガ
  アリマス、此「ローラー」ヲ以テ道ヲ均シマ
  スレバ、皆樣ガ御覽ノ通リ何十人何百人
  ト云フ土方ガ業ヲ奪ハレルノデアリマス
  失業ノ問題ノ一方ニハ甚ダ言葉ガ面白ク
  ナイカ知レマセヌガ、奪業、業ヲ奪フト云
  フ現象ガアリマスガ故ニ、失業ガ起ル、斯
  ウ云フコトハ單リ此土方ニ限ラズ、知識階
  級ニ於テモ總テ起ッテ居リマスノデ、一時活
  版業ニ於テ「モノタイプ」「リノタイプ」ノ出
  來タ時ニ、職工ノ失業ガ多クテ困ッタト云フ
  コトモ讀ンダコトガアリマス、國際聯盟カ
  ラ來マシタ報〓ヲ見マスト云フト、只今音
  樂師ト役者ガ歐羅巴ニ於テ失業ガ非常ニ多
  クテ、之ヲ如何ニ救濟スベキカト云フ議題
  ガ載"テ居リマス、勞働局ノ議題ノ中ニ載ツ
  テ居リマス、是ハ不景氣ノ爲ニ斯ウ云フコ
  トカト思ヒマシタラ、サウデハナイ、景氣
  ガ好イカラ斯ウナル、景氣ガ好イト云フノ
  ハ活動寫眞ガ發達ヲ致シマシテ、之ニ發聲
  活動·······「トーキー」ト云フモノガ此頃日本
  ヘモ來テ居リマスガ發聲活動寫眞ガ非常
  ナ勢ヲ以テ進ム、ソコデ役者音樂師ナドハ
  モウ中以下ノモノハ失業シテシマフ、斯ウ
  云フコトデアリマス、加フルニ若シ此上天
  然色發聲活勤ガ出マシタラ、尙更ダラウト
  思ヒマスガ、天然色活動ヲ初メテ私ノ見マ
  シタノハ、モウ十年バカリ前デアル是モ
  三ツ四ツノ方法ガアリマスガ、是モ必ズヤ其
  中商品ニ出ヤウカト思ヒマス、ソコデ其道
  ノ人ノ書キマシタモノニ、現代ノ經濟社會
  ノ一部分ニ於テ不安ヲ感ズル基本ハ經濟
  社會ノ問題ハ·······英語デ書イテアリマシタ
  カラ、其原語ヲ言ヒマスト、「インテンシイ
  ヴ·アップリケイション·オブ·サイエンス」、
  卽チ學理ノ盛ナル或ハ激シキ應用ニ依ッテ
  こ經濟界ノ變動ガ愈、激シクナルト云フコト
  ガ書イテアリマシタ、斯ウ云フコトハ一方
  ニ於テノ、卽チ救濟ノ途ハ今マデノ歷史ニ
  見マシテモ自然ニ付ク、活字職工デモ今日
  デハ無シ、我ニダクテ、昔ハ雲助ニ駕籠ヲ擔
  ガセタノニ、人力ガ出マスト云フト雲助ガ
  失業シタ、今度ハ自動車ガ來レバ人力挽ガ
  失業シタヤウナ事ハ幾ラモアリマシタガ、
  是ハドウニカ解決ガ付ク、段々世ガ進ミマ
  シテ、名醫アレバ難病アリト云フコトガア
  リマスガ、同ジヤウニ此社會ニ大進步大發
  明ガアレバ、ソレニ伴フ大困難ガ出來テ來
  ルノハ當リ前デアリマス、是等ハ當局ノ方
  ガドノ政府ガ御ヤリニナラウトモ、矢張リ
  相當ノ御調査ヲナサレテ救濟ヲサレルコト
  ハ私ハ信ジテ疑ヒマセヌ、之ヲ解決スルダ
  ケノ力ガ我ガ民族ニ無イトハ思ヒマセヌ、
  政府ノ御說明ヲ伺ヒマシテモ最善ノ御盡力
  ニナッテ居ルヤウデアリマスル、唯斯樣ニ申
  シマスト、非常ニ脅カシヲ言フヤウデアリ
  マスケレドモ、例ヘバ生絲デアリマス、是
  ハ我ガ輸出ノ盛ナルモノデアル、此生絲ニ於
  キマシテモ、人造絹絲ト云ッタヤウナモノ
  ガ出マシタナラバ天然絲ダケヲ當ニシテ
  置ク譯ニハ行カナイ相當ナル其道ノ科學
  者ニ話ヲ聽イテ見マシテモ、此見込ハ將來
  必ズ出テ來ル、今迄トテモ段々改良ヲサレ
  テ來テアルカラ、是ハ將來益〓人絹ガ改良サ
  レテ來ルデアラウ、斯ウ云フコトデアリマ
  ス僅ニ何割カノ値ガ下ガッタト云フノデ
  モ、隨分經濟界ニ響キマスカラ、天然絹絲
  以上ノ人絹ガ出マシタコトナラバ、生糸ハ
  全部無用ニナルダラウト思ヒマス、忘レモ
  致シマセヌガ、千八百九十八年ニ「サア·ウ
  イリヤムス·クルックス」······有名ナ科學者
  ガ早晩天然肥料ハ缺乏ニナル、ソレデ饑饉
  ヲ起スト云フコトヲ演說イタシマシタ、肥
  料ノ要リ高ト今現在アル天然肥料トヲ計算
  シテ見レバ、早晩、五十年ナラズシテ是ハ
  缺乏ヲ起ス、之ヲ救フモノハ多分科學實驗室
  ヨリ出ルデアラウ、ト斯ウ云フコトヲ申サ
  レマシタノヲ直接ニ私聽キマシテ、今思出
  シタノデアリマスガ、其後十五年ヲ經ッテ現
  代ノ窒素肥料ガ現ハレマシテ、立派ニ成功
  ヲ致シマシテ、今日ハ御覽ノ如キモノニナツ
  テ居リマス、是等ニ考ヘマシテモ、人絹モ
  決シテ是ハ學者ノ空想ト云フコトニハ相
  成リマセヌ、現在使ッテ居リマス此飛行
  機或ハ發動機······簡單ニチヨット申シテ置
  キタイデアリマスガ、是ハ所謂日進月步ニ
  改マッテ參リマス、發動機ノ如キハ「ガソリ
  ン」·······餘リ澤山ニナイ原料ノ「ガソリン」ヲ
  使"テ動力ヲ起シマス、何トカシテ重油ヲ以
  テ發動機ヲ動カサウト云フコトヲ數年前ヨ
  リ······古イ所ノモノハ今カラ十五年前ヨリ
  重油發動機ヲ以テ飛行機ヲ飛バスヤウニシ
  ヤウト云フ考ヲ起シマシテ、英、米、佛、獨何レ
  モ熱心ニ〓究イタシマシタ、英國ノ航空委員
  會ノ如キハ、此〓究用ノ發動機ヲ、航空〓究委
  員會······委員會ト云ヒマシテモ、豫算ヲ握ッテ
  居ル、我〓ノ委員會ノヤウニ唯豫算ナシノ
  顔合セヂヤナイ、豫算ヲ持ッテ、サウシテ發
  動機ヲ多數ニ作リマシテ、國內ニ於テ發動
  機〓究ヲシテ相當ノ成績ヲ擧ゲサウナ者ニ
  ハ之ヲ只呉レテヤル、サウ云フコトマデ
  シテ〓究ヲ續ケマシタ、今カラ五六年前ニ
  亞米利加ニ參リマシタ時ニモ、盛ニヤッテ居
  リマシタ、〓究所デ······是ハ來年マデ待ッテ
  吳レ、サウスレバ必ズ出來ル、ト云フコトデ
  アリマシタガ、昨年ニ至リマシテ、獨逸ノ
  「ユンカルス」ハ立派ニ成功イタシマシテ······
  構造ナドヲ玆デ講釋スル譯ニハ參リマセヌ
  ガ、兎ニ角立派ニ出來マシテ、之ヲ飛行機
  ニ著ケテ三千「メートル」ノ所ヲ飛行シタ、其
  寫眞ヲ貰ッテ持ッテ居リマス、是ガ出來マス
  しぐ、今使ツテ居ル所ノ發動機ノ······餘計
  ニ見テモ三分ノ一ノ値段デ飛ベル、油ノ價
  ガ三分ノ一ト云フコトニ下ガルノミナラズ
  「ガソリン」ノヤウナ火ニ對スル危險ガナク
  ナッテシマヒマス、サウシマスト云フト、自
  動車ト云ハズ、飛行機ト云ハズ革命的ノコ
  トニナル、發動機ハ政府ニ於テモ民間ニ於
  テモ製作權ヲ買取リマシテ、今方々デ作ッテ
  居リマス、ソレガマダ利益ヲ擧ゲル前ニサ
  ウ云フモノガ現ハレテ參リマスト、今アル
  發動機ハ皆廢品ニナッテシマヒマス、マア發
  動機ヲ作ル職工ハ他ノ業ニ更ルトシマシテ
  モ、兎ニ角此多クノ材料、在庫品ト云フモ
  ノハ無用ニ歸スルト云フコトニナリマス、
  デ斯樣ナコトカラ致シマシテ此元ヲヤリマ
  ス所ノ〓究機關、是ハ其日ニ作ッテ、其日ニ
  役ニ立ツモノデハナイ、是カラ五年先、十
  年先ニ經濟界ニ出テ働ク物ヲ作ル臺所デア
  ル、是カラ財源ヲ······卽チ無形ノ財源ヲ抑
  壓スルヤウナコトデハ、將來甚ダ心配デア
  ル、抑壓スルト云フノハ少シ强イカ知レマ
  セヌガ、現在ノ焦眉ノ急、財政緊縮ガ必要
  デアルカラ、平等ニ試驗費ヲ減ズルト云フ
  ヤウナコトハ、餘程考へ物ト思ヒマス、〓
  究機關ト申シマシテモ、ザット申シテ見マス
  ガ、私ハ方々ノ〓究所等ニ接觸シテ居リマ
  スノデ、色ミ聽イテ居リマスケレドモ、ソ
  レハ殊更ニ何處ハ金ヲ幾ラ減ジタト云フコ
  トハ、ソンナコトハ申シマセヌ、何ヲ請求
  シタモノヲハネラレタトカ、削ラレタトカ
  サウ云フコトハ一切申シマセヌ、唯大體ノ
  〓究ノ機關ノ樣子ヲザット申シマシテ政府ノ
  御意向ヲ伺ヒタイノデアリマス、〓究機
  關ノ大ナルモノハ矢張リ共同〓究······ソレ
  ト單獨〓究、所謂個人〓究デアリマスルガ、
  共同〓究ノ最大ナルモノハ國際〓究デアリ
  マツ、是ニハ競爭等ハアリマセヌ、國際〓
  究ノ主ナルモノハ天文、或ハ地球物理、氣
  象等ノ如キモノデアリマス、天文ヤ地球物
  理ナドハ實際實業界ニハ何等關係ノナイヤ
  ウナ問題ニナリマスルケレドモ、先年我ニ
  ガ此共同〓究デ西園寺公爵ガ文部大臣ノ時
  デアリマスカラ大分ノ前デアリマス、此地
  球ノ緯度ノ變化スルト云フ〓究ヲ世界共同
  デヤリ始メマシタ、是ハ世界共同デナケレ
  バ出來ナイ仕事デアリマス、此處ニ、御見
  エニナリマスル大島大將ガ委員長トナラレ
  マシテ、樺太境界ヲ議スル時ニ、露國ト緯
  度ノ測定ニ付テ議論ヲサレマシテ、我國カ
  ラハ今ノ平山〓授、當時ノ助〓授ガ參リマ
  シーン、我ミハ此緯度觀測ヲ國際的ニ變化等
  ヲ〓究シテ居リマシタ結果、露西亞側ノ天
  文學者ト此方ト議論ヲシマシテ、觀測錄ヲ
  取交ハシテ調査シタ結果、我ミハ八米程北
  ノ方へ推シ出スコトガ出來タ、其八米ノ地
  面ハ而モ樹林地デ立派ナ木ガ生エテ居ル
  所デ樺太ニ行ッテ見マスト、當時ノ代價デ
  確カ四十万圓ノ差ガアルト云フコトデアリ
  マス、緯度ノ觀測ノ〓究ニ使ッタ金ナドハ迚
  モソレノ十分ノ一モアリマセヌ、是ハマア
  唯チヨットシタ例デアリマスルガ、大陽〓究
  所ナドハ屢〓申出ルヤウデアリマスガ、大陽
  〓究ナドト云フモノハ農業ニ對シテ將來長
  期豫報等ニ對シマシテハ非常ナ大キイ問題
  ダラウト思ヒマス、各國相學ッテヤッテ居リ
  やく、其他無線電信、或ハ地震ノ波ノ擴ガ
  リ方、地震ト申シマシテモ此節ハ世界中地
  震ノ觀測ガ出來マスカラ、大抵ノモノハ
  之ヲ只今「ストラスブルグ」ニ中央局ヲ置イ
  テ、サウシテ其處デ各國ノモノヲ集メテ居リ
  やく、此國際〓究ニ對シマシテハ、日本ニ
  ハ學術〓究會議ナルモノガアリマシテ、此
  會議ガ其處カラ相當ノ代表ヲ選ンデ、ソレ
  ゾレノ專門ノ會議ニ參リマシテ議論ヲ交換
  イタシマス、是等モ隨分額ハ申シマセヌガ
  切詰ッテ困ッテ居ルヤウデアリマス、ソレカ
  ラ氣象觀測、是ハ最モ世界的ニヤリマセヌ
  ケレバ大氣ノ運動ヲ詳シク知ルコトハ出來
  マセヌ、天氣豫報ガ外レルト云ッテヨク氣
  象臺ハ攻擊ヲ受ケマスガ、此種ガ不十分デ
  アッテハ、何人ガヤリマシテモ是ハヨク出來
  ルモノデハアリマセヌ、ソレカラ團體ノ、モ
  ウ少シ碎ケタモノニナリマスト云フト、各
  國ガ〓究所ヲ有ッテ居リマシテ、所謂國立研
  究所ト云ッタヤウナモノハアリマス、我國デ
  ハ理化學〓究所、或ハ各省ニ於テ遞信省、
  陸海軍、農林省、ソレ〓〓〓究所ヲ持ッテ居
  リマスルガ、或ハ民間ノ會社ニ於テモ大會
  社ハ皆〓究ヲシテ居リマス、ソレハ存ジテ
  居リマス、サリナガラ是等ノ民間ノモノノ
  申シマスノデモ、兎角重役ハ此〓究ノ價値
  ヲ認メテ吳レナイノデ困ル、是ハモウ屢〓
  聞ク訴ヘデアリマス、又官廳ノ〓究所ト雖
  モ同樣デアリマス、是等ハ今日ノ財界ノ緊
  縮是ハ誠ニ已ムヲ得ナイコトトハ察シマ
  スガ、唯千篇一率ニ何割減ト云フヤウナコ
  トデ御ヤリニナッテモ、多少其間ニ手心ヲ加
  くり、奬勵、或ハソレヲ進メル御工夫ハナ
  イモノデアラウカト云フノガ、私ノ質問ノ
  趣意デアリマス、ソレカラ終リニ個人〓究
  ノコトヲ申シテ見タイノデアリマスガ、此
  節ハ大キイ〓究ハ大體團體〓究デアリマ
  スガ、團體〓究ヲスルト共ニ個人ノ〓究ヲ
  見棄テルト云フコトハ是ハ大缺點デアリマ
  ス、〓究家ナント云フ者ハナカ〓〓見當リ
  ニクイ、サウシテ〓究ノ能力ナドト云フモ
  ノハ外見ノ風采ヤ辯舌デ判斷ノ出來ルモノ
  デアリマセヌ、ソレ故ニ兎モスレバ辯舌風
  釆等ノ良イ者ノ方ガ先へ出テ此補助ナリ或
  ハ聲援ナリヲ受ケルト云フコトニ相成ル場
  合ガ、是ハ獨リ日本ニ限ラズドコデモ有ル
  コトデアリマス、ソレデ先年國際協同ノ學
  術〓究會議ヲヤッタ時ニ、殊ニ英國委員ハ力
  ヲ入レマシテ、個人ノ〓究ヲ怠ッテハナラヌ
  ト云フコトヲ申サレマシタ、之ヲ奬勵スル
  ニハ色ミノ方法ガアリマセウガ、先ヅ各財
  團トカ或ハ社團法人等ニ之等ヲ補助ヲサセ
  ル所ガ出テ居リマス、年年是ガ〓究者ガ增
  加シテ參リマスコトハ、窃カニ國家ノ爲ニ
  喜ンデ居ル所デアリマス、一例ヲ申シテ見
  マスレバ私ノ直接關係ヲ持ッテ居リマス學
  士院······帝國學士院デアリマスガ、其第二
  部卽チ理科ニ關係シタ所ノ〓究補助ヲ願
  ヒ出マシタ者ハ、今年ハ百二十件ト覺エテ
  居リマス、同僚ノ佐藤君ハ詳シク御承知デ
  アリマスガ確カ百二十件出タト覺エテ居
  リマス、其金額ハ申上ゲルモ恥カシイヤウ
  ナモノデ、僅カニ十二三一万圓ノ金ダト思ッテ
  居リマス、百二十件ノモノニ〓究費補助ヲ
  與ヘル、而シテソレニ對シテ學士院ノ持ツ
  テ居ル金ガ幾ラアルカト云フト僅ニ二三
  万圓、ソレデ或者ハ調査ノ上、淚ヲ揮ッテ切
  放シテヤラナケレバナラヌト云フヤウナ形
  勢デアリマス、是ハ勿論政府ノ豫算ニハ關
  係ノナイ、學士院ダケノ話デアリマス、學
  士院ダケノ內輪ノコトデアリマスカラ、政
  府ノ豫算ニハ關係ハナイケレドモ、斯ウ云
  フモノニ對スル〓究ヲモウ少シ生カシテ
  此無形ノ資本ヲ引立テルコトハ御考ヘニナ
  リマスマイカト云フコトガ私ノ質疑ノ趣意
  デゴザイマスカラ、ドウカ政府ノ御考ヲ伺
  ヒタイノデアリマス
  〔國務大臣俵孫一君演壇ニ登ル〕

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• 016・俵孫一

  ○國務大臣(俵孫一君)　只今田中館サンヨ
  リ產業合理化ノ根本問題ニ對スル〓究ニ關
  シテ御尋ガゴザイマシタ、極メテ有益ナル
  御意見ヲ拜聽スルコトガ出來タノデアリマ
  ス產業合理化ニ付キマシテハ、此度ノ豫
  算ニ要求ガシテアリマスルガ如ク、如何ニ
  モ此經費ハ極メテ僅カデアリマス、唯今日
  政府ガ產業合理運動ノ考ヘヲ致シテ居リマ
  スルコトハ主ニ現在ノ產業狀態······出來
  ルダケ、無統制ノ狀態ニアル、盲目的ナ競
  爭ヲ致シマスル其企業ノ統制ヲ付ケマスル
  コト、及ビ物質的方面ノ能率增進、斯ウ云
  フ方面ニ向ッテ、專ラ民間ノ企業ノ指導ヲス
  ルコトニ致シタイト云フコトガ、此度ノ政
  府ノ產業合理計畫ノ大體デアリマス、只今
  御話ノ如キ產業合理運動ノ其根柢ニ於テ十
  分ナル〓究ヲ遂ゲル、又御話ノ如ク學術ノ應
  用ノ結果ト致シマシテ、段々經濟狀態ガ變〃
  テ來ル、是ニ付テ十分ナル〓究ヲ遂ゲテ、
  合理的ノ指導ヲ完全ナラシムルト云フコト
  ニ付キマシテノ、段々ノ御話ハ最モ必要デ
  アルト考ヘテ居ルノデアリマス、併ナガラ
  今目下ハ其種ノ〓究機關ノ設備ハアリマセ
  ヌ、唯、今日私共ガ考ヘテ居リマスルコトハ、
  只今御話ノ如ク個人的〓究、又色ミ官廳ノ
  〓究、斯ウ云フ〓究機關ノ統一ヲ圖リマシ
  テ、其統一ノ結果ニ依ッテ、產業ノ合理的運
  動ニ十分ナ助ケヲシタイ、斯ウ云フ考ヲ持ク
  テ居リマス、併シ御說ノ如キ、今申上ゲマ
  スル產業合理的ノ根本ニ立入ッタ〓究機關
  ハ未ダ持ッテ居リマセヌ、誠ニ遺憾デアリマ
  ス、將來ニ於キマシテドウシテモソコ迄一
  ツ進ンデ、〓究機關ノ考ヲ付ケヌケレバイ
  カヌト考ヘテ居リマス、是ダケヲ御答ヘ申
  上ゲマス
  〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕

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• 017・井上準之助

  ○　國務大臣(井上準之助君)只今文部大臣
  ガ席ニ居ラレマセヌノデ、豫算ノ大體ニ付
  テノ御質間デアリマシタカラ、私カラ御答
  ヘ申上ゲマス、帝國大學及文部本省ノ費用
  ニ於キマシテモ、〓究費ハ餘程心シテ拵へ
  タ積デアリマス、整理緊縮ヲ圖リマスノデ、
  大局上巳ムヲ得ザル爲ニ、多少ヅツ事務費
  等デハ削減シタノモアリマスガ、兩科目ニ
  於テ餘程心シテ豫算ヲ拵ヘタ積リデアリマ
  ス、唯學術奬勵〓究費デ二十万圓以上削ヲタ
  ノヲ記憶シテ居リマスガ、是ハ學術紀要ヲ拵
  ヘマス大部分印刷費デアリマスガ、其原稿
  ガ是迄出來マセズ、段々不用額ガ是迄殘ッテ
  居リマシタ爲ニ、二十万以上削ッタノガ、
  番、目ニ立ツ削減デアリマシテ、只今田中館
  君ノ仰シヤルヤウニ、世界的〓究ヲシテ、
  人的財產ヲ段々殖ヤシテ行クト云フコトニ
  付テハ政府モ心シテ居ル積リデゴザイマ
  スカラ、サウ御承知ヲ願ッテ置キマス

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• 018・田中館愛橘

  ○　田中館愛橘君此席ヨリ申上ゲマス、只
  今商工大臣、大藏大臣ヨリ御答辯ガアリマ
  シタガ、私ハ先ニ申上ゲマシタ通リ、細カ
  ク立入ッタ個條ニ付テハ申上ゲマセヌ積リ
  デアリマス、只今大臣カラ御示シデゴザイ
  マシタガ、〓究會ニ······國際協同〓究ニ對
  スル費用ガ每年出テ居リマス、確カ五万圓
  バカリト思ッテ居リマス、色ミナ協同〓究ニ
  使フ金デアリマス、是ナドハ何時デモ通ッタ
  コトハナイ、此政府ト限ラズ前カラ通ッタ
  コトハアリマセヌ、私ハサウ云フ細カイコ
  トハ申シマセヌガ、大體ノ方針ニ於テ金高
  ノ多少ニ拘ラズ、總理大臣モ過日御述ベニ
  ナリマシタ如ク、金高ガ少クトモ效力ヲ擧
  ゲルモノハアルト云フコトデゴザイマシタ、
  ソレデ私ノ考ヘマスノハ、此〓究費ノ如キ
  ハ、金高ハ少クトモ、其效力ハ廣ク遠ク及
  ブモノデアラウト思ヒマスカラ、之ヲ成ル
  ベク國民ガ奮發ヲシテ〓究ヲスルヤウニ、
  獨逸ノ如キハ御承知ノ如ク戰後非常ナ經濟
  ノ變亂ヲ起シマシテ、困難ヲ致シマシタガ、
  要スルニ國民ガ學理ノ應用ト云フコトニ
  依ッテ恢復ヲシタヤウニ思ヒマス、又自分モ
  年々工場、〓究所等ヲ見マシテモ、實ニ〓
  究精神ノ旺盛ナルコトニ驚キマス、此精神
  ヲ我ミハ節約ハ幾ラデモシテモ、〓究ニ對
  シテハ〓ハズニモヤラウト云フヤウナ心ヲ
  起サセル爲ニハ、矢張リ政府ニ於テモ此方ニ
  向ッテ御奬勵ノアルコトヲ希望シテ巳ミマ
  セヌノデアリマス、ドウカ政府モサウ云フ
  御考ダラウトハ思ヒマスガ、尙ホ私ノ考へ
  タ所ヲ述ベマシテ、質問ヲ終リマス

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• 019・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　志水小一郞君
  〔志水小一郞君演壇ニ登ル〕

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• 020・志水小一郎

  ○志水小一郞君　本員ノ御尋ハ、卽チ政府
  ニ對スルノ御尋デアリマスガ、相成ルベクハ
  總理大臣ヨリ、御答辯アラムコトヲ希望ス
  ルノデアリマス、內容ハ重要ナル統帥權問
  題デアリマス、政府ハ此問題ニ付テ態度ヲ
  曖昧ニシテ、殊更ニ不得要領ノ答辯ヲ爲サ
  ルヽノ傾ガアルコトハ事實デアリマス、必
  要トセラルヽナラバ、本員ハ事實ヲ指摘シ
  テ、々說明ヲ致ス覺悟デアリマス、本間
  題ニ對スル政府ノ態度ハ徒ニ世論ヲ紛錯
  セシメ、且ツ之ヲ激昂セシムル所以デアリ
  マシテ、斷ジテ議事ノ進行ヲ致シテ問題ノ
  解決ヲ得ル所以デハナイノデアリマス同
  時ニ法律ガ我ミ議員ニ對シテ與ヘタル、政府
  ニ對スル質問權ヲ認メタル所以デモナイト
  信ズル者デアリマス、政府ハ特ニ反省セラ
  ルヽ必要ガアラウト思ヒマスルガ、政府ノ
  御考ハドウデアリマセウカ、本員ノ質問ノ
  要旨ハ是ダケデアルノデアリマス、然ルニ
  本員ノ御尋ハ餘リ抽象的ノ嫌ガアリマスカ
  ラ、政府ヲ非難イタシマシタ事項ニ付テ、
  聊カ事實ヲ指摘イタシマシテ、本員ノ言責
  ヲ重ンズルノデアリマス、主ナル事項ノミ
  ヲ指摘イタシマス、政府ガ所謂海軍囘訓案
  ヲ以テ囘訓ヲ爲サズシテ、所謂外務囘訓案
  ヲ以テ囘訓セラレマシタノハ、ドウ云フ次
  第デアリマセウカ、之ニ付テハ豫メ重要ナ
  ル軍令機關タル、軍令部ノ同意ヲ得ラレタ
  ノデアリマセウカ、ト云フコトヲ御尋ネ致
  シタノデアリマス、此質問ニ對シ、政府ハ
  同意ヲ得タト答ヘズ、又得ズトモ答ヘズ、
  唯軍事専攻家ノ意見ニハ常ニ重キヲ置イタ
  ト、斯ウ云フ答ヲサレタノデアリマス是
  ハ不得要領ニ非ズシテ何ンデアリマセウ、
  政府ノ答ハ皆此類デアルノデス、又政府ガ出
  先全權ニ、軍令部ノ意見主張ト、全然相容
  レザル囘訓ヲ爲シテ、以テ軍令部ノ意見ト、
  其主張トヲ無視シテ行ハレザルニ至ラシメ
  タルノデアリマスガ、是ハ卽チ軍令部ノ存
  在ヲ認メナイ所爲デアリマスガ、政府ニハ
  斯カル事ヲ敢テセラルヽノ權能ガアルノデ
  アリマセウカト云フコトヲ御尋ネシタノデ
  アリマス、所ガ政府ハ要スルニ言ヲ左右ニ
  託シテ、何トモ明答ガナカッタノデアリマス、
  又質問者ガ條約ノ內容ニ渉ッテ質問ヲシテ、
  政府ハ言葉窮スレバ、斯ウ云フコトヲ言ッテ
  答ヘラレテ居ル、政府ハ條約ノ內容ニ涉リ、
  穿鑿ニ過グルガ如キハ英米ニ對シテ戰意
  アルカノ如ク聞エテ、國交上好マシカラヌト
  云ハンガ如キコトヲ答ヘラレテ居ル、國交
  上果シテ好マシカラヌト云フナラバ、此議
  會ニハ祕密會議ト云フ方法モアルノデアリ
  マスカラ、祕密會議ヲ以テ御答ヘニナレバ
  宜イノデアリマス、今述ベタ如キ理由ヲ以
  テ答ヘヌトカ、答辯ノ限ニアラズト云フノ
  ハ譯ガ分ラヌノデアリマス、ソレカラ是
  ハ本員ガ現ニ御尋ネシテ居ルコトデゴザイ
  マスガ、政府ハ憲法第五十五條ノ規定ヲド
  ウ讀ンデオイデニナリマスカ、之ヲ有條件、
  且ツ制限的ノモノト解釋サレマスカ、又ハ
  無條件、無制限ノモノト解釋セラレマスカ、
  此解釋如何ニ依ッテ當面ノ問題ハ半バ解決
  ヲ得ルノデアリマスガ、ドウカト云フコト
  ヲ、御尋シタ、之ニ對シテ政府ハ何ト言ハ
  ルルカト思ヘバ、憲法ノ解釋ハ人ニ依ッテ異
  ナル、故ニ學究的解釋ヲ以テ答フルコト能
  ハズト云ハムガ如キコトヲ答ヘラレタ、斯
  ウ云フ辯ヲ以テ答囘ヲ避ケラレタノデアリ
  そく、御尋ヲスル者ノ意味ハ何モ其學究的
  答辯ヲ求ムル積リハ無イノデアリマス憲
  法政治ハ憲法ノ條章ニ依ッテ行ハヌケレバ
  ナラヌ、憲法條章ニ依ッテ行フ以上ハ憲法ノ
  何レノ條章ニ據リ、又如何ナル解釋ヲ以テ
  行ハレタルヤト云フ御尋ハ當然ノ御尋デア
  リマス、憲法ノ解釋ハ學者ニ依ッテ異ルカラ
  答フルコト能ハズト云フノハ如何ニモ失
  當ナル答辯デアリマス、又是ハ幾多此意味
  ノ御尋ガ貴族院デモアッタノデアリマスガ、
  質問者ノ尋ネノ意味ハ、軍事ニ素人デアル
  所ノ政府ガ、重要ノ軍事問題ヲ容易ニ取扱
  フ氣味ガアルガ、差支ナイカ、心配ハナイ
  カト、斯ウ云フ懸念カラ御尋ヲシテ居ル、
  所ガ政府ハ不適當ニモ條約ノ結果ハ國防ニ
  害無シ、斯ウ斷言シテ居ラルル、加フルニ
  若シ害ガアッタナラバ政府ハ其責ニ任ズル
  ト云フコトヲ答ヘテ居ラルルノデアリマス、
  斯ウ云フ政府ノ答辯ニ對シテ、何人ガ滿足
  ヲ致シマセウカ、恐ラク斯ウ云フ答辯ヲ聽
  イタナラバ、益〓問者ハ憂ヲ深ウスルニ留マ
  ルダラウト思フノデアリマス、其他質問ヲ
  爲ス人ハ何レモ眞劍、、眞面目ヲ以テ、殆ド
  血ヲ吐クノ思ヲナシテ御尋ヲシテ居ルノデ
  アリマス、之ニ反シ政府ハ何ト申シマセウ
  カ、權變詭譎トデモ申シマセウカ、殊更ニ
  不得要領ノ答辯ヲ以テ一時ヲ糊塗シ去ラレ
  ムトセラルルノモ亦事實デアリマス、斯ノ
  如キハ法律ガ我ミ議員ニ對シテ政府ニ對ス
  ル質問權ヲ認メタル所以デモアルマイト思
  フノデアリマス、以上述ベマスコトニ依ッテ
  政府ハ大キニ反省セラルルノ必要ガアルト
  思ヒマスガ、政府ハ尙ホ斯カル感ジハ起サ
  レヌノデアリマセウカ、ドウカ、簡單デア
  リマスケレドモ本員ノ御尋ノ趣意ハ以上述
  ブル通リデアリマス
  〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

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• 021・濱口雄幸

  ○　國務大臣(濱口雄幸君)志水君ノ御質問
  ハ是迄數囘ニ亙ッテ、本會議竝ニ豫算委員
  會等ニ於テ、政府ノ所見ヲ申述ベテ置イタ
  通リデアリマス、只今、志水君ハ、此問題
  ニ對シテ反省スル考ヘハナイカト云フ御質
  問デアリマス、大體政府ノ考ト致シマシテ
  ハ只今志水君ノ申サレマシタ通リ、憲法
  上ノ抽象論、殊ニ憲法第十一條ト第十二條
  トノ解釋ノ問題、其二箇條ノ相互關係ノ問
  題、斯ノ如キ問題ハ是ガ答辯ヲ差控ヘルコ
  トガ適當デアラウト、今ニ於テモ信ジテ居
  リマス、唯今囘ノ倫敦海軍會議ニ臨ムニ當ッ
  テ、政府ガ執リマシタ所ノ處置、竝ニ條約
  ニ調印シタル所ノ所信、之ニ付テハ飽ク迄
  モ政府ハ其考ヲ申述べナケレバナリマセ
  又、只今志水君ガ御擧ゲニナリマシタ政府
  ノ不當ト認ムル點、之ニ付テ私ハ箇條ヲ逐
  フテ申上ゲマスレバ、御諒解ヲ得ラルルコ
  トト存ジマス、第一ニ此度ノ海軍條約ニ調
  印ヲスルニ當ノテ、政府ハ海軍側ノ囘訓案ヲ
  採ラズシテ、外務側ノ囘訓案ヲ採ッタ、是ハ
  不都合デハナイカト云フ意味ノ御話ガアリ
  マシタ、政府ノ全權ニ對スル囘訓ニハ海
  軍側ノ囘訓、外務側ノ囘訓ト云フ如キ區別
  ハアリマセヌ、是ハ全體トシテ纒ヲタル政府
  ノ囘訓デアリマス、次ニ軍令部ヲ無視シタ
  ト云フ御話ガアリマシタガ、此御議論ハ屢〓
  承ハル所ノ御議論デアリマス、之ニ對シマシ
  テハ、其都度說明ヲ致シテ置キマシタ通リ、
  政府ハ決シテ軍令部ヲ初メトシ、其他軍部
  ノ專門的ノ意見ヲ無視シタ譯デハアリマセ
  又、卽チ軍令部ヲ含ム所ノ軍部全體ノ專門
  的意見ハ、十分ニ之ヲ斟酌イタシテ、然ル
  上ニ於テ之ヲ決定シタノデアリマス、次ヘ
  憲法五十五條ノ輔弼ノ責任ニ付テノ御話ガ
  アリマシタ、之ニ付テノ政府ノ說明ガ曖昧
  デアルカノ如キ御說ガアッタノデアリマス、
  是ハ申ス迄モナイコトデアリマスルガ、此
  度ノ倫敦條約ニ調印ヲ致シマシタ其責任
  ハ無論憲法五十五條ノ輔弼ノ責任ニ依ッ
  テ、之ヲ行ッタノデアリマス、其次ニ軍事上
  ニ素人デアル所ノ政府ガ濫リニ國防ノコト
  ヲ決定スルト云フコトハ頗ル危險デアル、
  斯ノ如キ狀態ニ於テハ國民ニ安心ヲ與フル
  コトガ出來ナイデハナイカト云フ、御趣意
  ノ御質問デアリマス、是ハ前ニモ申シマシ
  タ通リ、軍部ノ專門的意見ヲ十分ニ聽取イ
  タシ、之ヲ尊重シ、之ヲ十分ニ斟酌イタシ
  マシテ、而シテ海軍大臣、陸軍大臣、卽チ
  軍部大臣ヲ包含シタル政府ガ之ヲ決定シタ
  ノデアリマス、私ハ此點ニ於テ決シテ國民
  ニ向ッテ不安ヲ與フル理由ナシト考ヘテ居
  リマス、以上ノ如キ理由デアリマスニ依ツ
  テ、是マデ政府ノ本問題ニ對シ、答辯ヲ致
  シマシタ事柄ヲ變更スル必要ヲ考ヘテ居リ
  マセヌ、又其理由モナイト考へマス、約メ
  テ申シマスレバ、政府ハ此場合ニ於テ憲
  法上ノ抽象的ノ解釋ハ之ヲ避クル積リデア
  リマス、而シテ此度ノ倫敦條約ニ關シテ政
  府ノ執ッタ處置ニ付テハ、何處マデモ其責任
  ヲ取リマス而シテソレガ憲法ノ第何條ニ
  當ルカ、第何條ノ第何項ニ當ルカト云フ解
  釋ニ至ッテハ、是ハ各自ノ見解デアラウト存
  ジマス、一々之ヲ說明ハ致シマセヌ、唯憲
  法違反ト云フガ如キコトハ斷ジテナイト確
  信ヲ致シマス

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• 022・志水小一郎

  ○　志水小一郞君少シ簡單ニ反問申上ゲマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=22

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• 023・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　志水君
  〔志水小一郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=23

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• 024・志水小一郎

  ○　志水小一郞君先ヅ本員ガ御尋ヲシタ趣
  旨ヲ誤解ニナッテ居ルカ、或ハ能ク趣旨ガ徹
  底シテ居ナイデハナイカト思ハルル節ガア
  リマスカラ、其說明カラ致シマス、本員ノ
  聞ク所ニ依レバ、囘訓案ニハ二種アッタ、
  ツハ海軍案、一ツハ外務案、其海軍案ト云
  フモノハ當初ノ意見ヲ維持シ、主張ヲ飜サ
  ヌノガ卽チ海軍案、ソレカラ外務案ハ斯ウ
  ナッタ以上ハ强硬ニ我主張ヲ貫カムトスレ
  バ、談判ハ決裂ニ至ルニ違ヒナイ、決裂ニ
  至ラシメルノハ各方面カラ見テ甚ダ不利デ
  アルカラシテ、決裂ニ至ラナイヤウニセナ
  ケレバナラヌ、是ガ爲ニハ多少ノ讓步ハ免
  レナイ、サウシテ我ガ當初ノ意見主張ヲ飜
  シ六、サウシテ所謂我ガ出先全權ト米國ト
  ノ間ニ妥協シタ所ノモノヲ是認スルノ案ガ、
  卽チ外務案ト本員ハ心得テ居ッタノデアリ
  マスガ、ソレガ違フノデアリマセウカ本
  員ガ承ッテ居ルノガ事實ダト本員ハ信ズル
  カラ、外務案ト海軍案トヲ明ニ區別ヲシテ
  御尋ヲシタノデアリマス、外務案ニ從フナ
  レド。卽チ軍令部ノ主張意見ヲ無視スル形
  ニナルノデアリマス、サウ云フコトガアリ
  得ベキカ否カ、將タ政府ハサウ云フコトヲ
  敢テセラルルノ權能ヲ有シテ居ルカドウカ
  ト云フコトヲ御尋ネシタノデアリマス、ソ
  レカラ此御尋ネニ對シテハ、一ツモ要領ヲ
  得タ答辯ハ得ヌノデアリマス、本日モ此議
  場デ述ベラルル所ノ言ヲ聽キマスト、軍令
  部ノ承諾ヲ經タ經ナイト云フコトハ決シテ
  明言セラレナイ、サウシテ何ト言ハルルカ
  ト云フト、我ミハ專攻軍人ノ意見ニハ重キ
  ヲ置イタノデアッテ、決シテ之ヲ無視スル
  コトハシナカッタト言ハレルノデアル、我ミ
  ハサウ云フコトヲ御尋ネスルノデハナイ、
  軍令部ト云ッテ其處ニ嚴然タル軍令機關ガ
  アッテ、統帥權ノ發動ニ對シテハ其軍令部ガ
  翼賛機關デアル、軍令部ヲ無視スル譯ニハ
  行カナイト云フ前提ノ下ニ御尋ネスルノデ
  アル、ソレニ軍令部ノ意見ハ聽イタトモ聽
  カヌトモ決シテ明答セラレヌ、之ニ反シテ
  軍人ノ意見ハ重ンジタ、初メカラ軍人ノ意
  見ニハ重キヲ置イテ處置ヲシタト斯ウ云フ
  コトヲ言ハルルガ、本員ハ御尋ネシタイガ、
  甚ダ失禮デアリマスケレドモ、其軍人ノ意
  見ニハ重キヲ置イタト言ハルルコトハ、海軍
  省員卽チ海軍次官トカ其他ノ意見ヲ懇ロニ
  聽イタト云フ御趣意デアリマセヌカ、サウ
  スルナラ甚ダ失禮デアリマスケレドモ、總
  理大臣ハ極ク見易イ軍令、軍政ト云フ區別
  ガ御分リニナッテ居ナイノデアリマセヌカ、
  海軍省ハ軍政機關デアリマス、軍令部ハ軍
  令機關デアリマス、全ク性質ガ分シテ居ル、
  海軍大臣ト雖モ勅令ヲ以テ置カレタ所ノ軍
  令部ヲ無視シ、軍令部ノ存立ヲ認メナイト
  云フヤウナコトハ許サヌノデアリマス、ソ
  レヲ海軍省員ト懇ロニ相談ヲシテヤッタコ
  トデアルカラシテ、決シテ軍令機關ノ意見ヲ
  無視シタトカ云フヤウナコトハナイト、斯
  ウ仰シヤルノデアリマセヌカ、ツレナラ
  バ卽チ肝腎ナ軍令、軍政ノ區別モ御分リニ
  ナラヌノヂヤアリマセヌカ、失禮ナガラ斯
  ウ御尋ヲ致スノデアリマス、先ヅソレニ御
  明答ヲ得レバ、本員ノ御尋ネノ趣旨ハ貫タ
  ノデアリマスガ、何故軍令部ノ意見ハ聽イ
  タトカ聽カヌトカ云フコトヲ明答ガ出來ヌ
  ノデアリマセウカ、明答ガ出來ヌト云フノ
  ハ何カ御自身ニモ其點ニ弱點ヲ感ジテ居ラ
  レルカラデハアリマセヌカ、マダ御尋ネス
  ルコトハ澤山アルノデアリマスケレドモ、
  長クナルカラ先ヅ是ダケノコトニ反問ハ止
  メマス
  〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=24

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• 025・濱口雄幸

  ○　國務大臣(濱口雄幸君)囘訓ノ決定ニ至
  リマスマデノ手續ハ此席ニ於テ說明スル
  限リデナイト存ジマス、而シテ此決定イタ
  シマシタ囘訓ハ、卽チ政府ノ囘訓デアリマ
  ス、其政府ノ中ニハ、海軍モ外務モ包含ヲ
  シタル政府ノ囘訓デアリマス、軍令部ノ意
  見ヲ聽イタカ、聽カナイカ、明答セヨト云
  フコトデアリマス、是ハ屢〓申シマス通リ、
  十分ニ之ヲ聽取シ、十分ニ斟酌イタシマシ
  タ然ル上ニ於テ政府ハ決定イタシマシ
  タ、是デ御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=25

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• 026・志水小一郎

  ○　志水小一郞君一言述ベテ止メマスガ軍
  令部モ海軍ヲモ、ソコハ全ク無視シテ居
  ラヌ、軍令部ノ意見ガヨシヤドウ云フ意見
  ガアッテモ、之ヲ解決スルノハ海軍省ノ意
  見、卽チ時ノ政府ノ意見ナリ、斯ウ云フ前提
  ヲ置イテ居ラレルヤウデアリマスガ、サウ
  云フ御考ナラバ、我〓ハ全然違ッタ意見ヲ持。ツ
  テ居ル、政府ノ御意見ガ果シテ至當デアリ
  マスナラバ獨立ノ參謀本部モ廢メナケレ
  バナラヌ、軍令部モ廢メナケレバナラヌ、
  軍令部ヤ參謀本部ノ意見、天皇ニ直屬スル
  所ノ重要ナル軍令機關ノ意見ト云フモノハ
  獨立ナモノデハナイ、政府ト云フモノガ之
  ニ凌駕シテ、政府ガサウ云フ軍令部ニ對シ
  テノ優越ノ權ヲ有ッテ居ル、此政府ノ權能
  ニ何人モ反抗スルコトヲ得ヌト云フヤウナ
  御意見ノヤウデアリマスガ、サウ云フヤウ
  ナ御意見デアリマスナラバ、斯ウ云フ一言
  ヲ呈シテ置キタイ、サウ云フ御意見ナラバ
  丁度十八世紀ノ前半アタリニ、獨逸トカ英
  吉利トカ云フ所ノ憲法史ニ甚ダ忌ハシイ汚
  點ヲ印シタノガ、卽チ其問題デアリマス、
  何ノ必要ガアッテ、今日サウ云フ忌ハシイ問
  題ヲ繰返シテ演ズルヤウナ御必要ガアリマ
  セウカ、是ハ非常ニ重大ナ問題デアリマ
  ス、決シテ若干ノ日時ヲ以テ此問題ハ解決
  セヌノデアリマス、益〓紛雜シテ到底收マ
  リノ付カヌヤウナコトニナルダラウト、本
  員ハ只管懸念スルノデアリマス、此一言ヲ
  呈シテ私ノ質問ヲ止メマス

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• 027・徳川家達

  ○　議長(公爵德川家達君)石渡敏一君
  〔石渡敏一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=27

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• 028・石渡敏一

  ○　石渡敏一君私ノ質問セムトスル所ノモ
  ノモ、先ヅ志水君ノ言ハレタ所ト、大體ハ
  同ジナノデアリマスガ、其行キ道ガ少シ違ッ
  テ居ルノデアリマス、ソレデ私ハモウ一應
  御邪魔ヲシタイト斯ウ思テテルル、實ハ十一
  日ノ豫算分科會ニ於テ、成ルベク我ニノ持。ツ
  テ居ル意見ト、政府ノ持ッテ居ル意見ト折合
  ハシテ、サウシテ何トカ此處ハドウモ我こ
  ガ惡イト思フモノハ首肯シ、政府デ惡イト
  思フモノハソレヲ認メテ貰ヒタイ、斯ウ云
  フ相談ヲ開カウト實ハ致シタノデアリマ
  ス、ソレデ其際ニ問題トナリマシタモノ
  ハ所謂軍ノ編制、是ハ海軍ダケノ間題デ
  アリマスカラ、其オ積リデ御聽取ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス、陸軍ノ方ハ問題トナラナカツ
  タ編制ト云フコトハドウ云フコトカト云
  フコトニナリマスト、ソレハ憲法上ノ問題
  デアッテ、此處デ論ズル。ニハ餘リ大キ過ギ
  ル、且ツ總理大臣ハ此點ニ付テハ學究的ナ
  說明ヲセヌ、斯ウ言ハレテ居ル、說明ヲシ
  ナイト言フ、ソレハ憲法上ノコト、憲法問
  題トシテ雲ノ上ノ問題トスルコトハ少シハ
  避ケテモ宜カラウト思フ、併ナガラ此編制
  ト云フコトハ啻ニ憲法上ノ問題バカリデナ
  タ海軍官制ノ六條デゴザイマスカ···六
  條ニモアル又軍令部條例ノ第七條······箇
  條ノ六條トカ、七條ト云フノハ間違ガアル
  カモ知レマセヌガ、兎ニ角六條七條邊ニ其
  規定ガアル、ソレニ編制ト云フコトガアル
  ノデアル、此海軍官制ニアル編制、ソレカ
  ラ軍令部ノ條例ニアル編制トハ如何ナル
  違ガアルデアラウカ、是ハサウ雲ノ上ノ間
  題ヂヤナイ、此違ヒハ何處ニアルノカ、ソ
  レト憲法ニ謂フ所ノ編制、兵ノ編制ト云フ
  コト、此三ツノ關係ハドンナモノデアラウ
  カト云フト、ドウモ、大臣デナケレバ、答
  ヘラレヌト云フコトデアル、今一ツノ問題
  ハ、志水君カラ度ミ言ハレル所ノ問題デア
  リマス、元來軍令ノ上カラ言ッテ見レバ、國
  防用兵ハ軍令部ノ掌ル所トス、斯ウ云フ風
  ニ軍令ノ第七條ニアル、スルト玆ニ問題ガ
  一ツ二ツ紛糾シテ來マスガ、唯一ノ是ガ官
  衝ヂヤナイカ、時ノ政府ガ國防問題ヲ決ス
  ルト云フノハ、ソレハアルナラバアルデモ
  宜イガ、何處カモウ少シ確カナ官制上ナリ、
  理論上ナリノ據リ所ヲ示シテハドウカト斯
  ウ言ッタ、所ガ斯ウ云フ席デモ餘リ述ベラレ
  ナイコトデモアルシ、政府委員ハ答モシナ
  カッタ、出來ヌト云フコトニナリマシタ又
  倫敦會議ノ結果、所謂世間デ云フ同調案
  ナルモノハ第一ニ、第一ノ原案ヲ改正シタ
  ノヂヤナイカ是ハ第一ニ少シハ說ハ違ヒ
  ガアリマセウケレドモ、兎ニ角軍令部カラ
  出タ案ガ基ニナッテ居ルノヂヤナイカ、ソレ
  ハ形ガ變シテ、豫算ソレカラ技術上ノ點デ
  著物ハ著テ居ルモノニ違ヒナイガ、骨子ハ
  同一ナモノヂヤナイカヽサウスルト此案ヲ
  變ヘヤウトスルト、基ノ軍令部案ヲ變ヘヤ
  ウトスルコトニナルノデアルカラ、矢張リ
  軍令部ニ歸ッテ、是ハ一ツ何トカ考ヘ直シヲ
  シテ貰ハナケレバナラヌト云フ手續ニ行ク
  ノガ至當ヂヤナイカ、斯ウ云フ風ナノデアリ
  Vど、ソレガ私共ガ必ズシモ正當ナモノト
  思ッテ居ナイガ、政府ニ意見ガアレバソレニ
  從シテモ宜イト實ハ思ッタ、所ガ當時出席シ
  タル政府委員ハ御答スル譯ニハ行カヌ、
  是ハ大臣デナケレバ言ヘヌト云フコトデア
  ル、是ハ私ハ尤モダト其時ニ思ッタノデス、
  ソレデ此點ニ付テ今少シ政府ト御相談ヲシ
  合ッテ、其爭ヒノアル所ノ點、志水君バカリ
  デナタ其他ノ方ミカラ此點ニ付テ非常ニ疑
  ヲ抱カレテ居ル、ソレハ豫算分科會ニ於テ
  相談スルノカ至當ダト田心ッタノデアリマス、
  ソレデ其問題ハ私ナドモ出シテ居ッタ所
  ガ、政府委員ノ方ハ名前ヲ指シテモ差支
  ナイト思ヒマスガ、矢吹政務次官デス政
  務次官ハ御承知ノ如クニ法律上デ以テ軍機
  軍令ニ職務上携ハルコトノ出來ナイ人デア
  ル、答ガ出來ナイト云フコトヲ言ッタノハ
  私ハ當然ナ話ト思フ、ソレカラ其他ノ政府
  委員ハドウデアルカト思フト、是ハ局長
  デアッテ一部ニハ精通サレテ居ル方デアル
  ガ全體ニ付テサウ云フコトハ答ガ出來
  ヌ、是モ私ハ尤モダラウト思フ、ソレデ大
  臣ニ出席ヲシテ說明ヲ願ヒタイ、所ガ大臣
  ハ忙シクテ出ラレヌト云フ、是ガマア十二
  日ノ大體ノ景況デアリマス、私ハモウ少シ
  此政府トノ意見ヲ鬪シテ見テ、サウシテド
  チラガ宜イカ、何モ國政ノコトダカラシテ、
  我意ノミヲ通ス必要ハナイト私ハ初メカラ
  考ヘテ居ルノデ、ダカラ能ク、ソコハ御互
  ニ胸襟ヲ披イテ話シ合ノタラ宜カラウト思
  マヒシタガ、今日ノ場合卽チ議會トシテハモ
  ウ最終ノ日デ其暇ガナイデアルカラ、私ハ
  本問ニ付テハ最早此處デハ中止ヲシマシ
  テ、他日ノ問題トシテ一ツ又政府ト御話シ
  合ヲシタイト云フ考ヲ持ッテ居ル、併ナガラ
  一面ニ於テ豫算委員······豫算分科會ニ對ス
  ル政府ノ態度ガ餘リニ不深切ヂヤナイカト
  思フノデアリマスト云フノハ先程申ス通
  リ、列ンデ居ル政府委員ハ答ノ法律上出來
  ナイ人、若クハ一部分ニ自分ノ職掌ガ限ラ
  レテ居ル人、此人ヲ列ベテ置イテ、我〓ノ
  方ノ一人ヂヤナイ、數人カラ出ル所ノ問題
  ニ對シテ答ガ出來ナイト云フコトハ是ノ
  當然過ギル程當然ナ話ト思フ、若シ是ガ却
  テ答辯サレタラ我〓ノ方カラ突込マナケレ
  バナラヌト實ハ考ヘテ居,タ、其際ニ若シ大
  臣ガ出ラレヌナラ出ラレヌヤウニ相當ノ方
  法ヲ執ルノガ至當ヂヤナイカ、サウ云フ方
  法ヲ執ラズニ豫算分科會ハ最後マデ大臣ノ
  出席ヲ要求シテ置イテ、サウシテ此爲ニ豫
  算ノ不成立ヲ見ルトカ或ハ時間ガ後レテ皆
  サンニ御迷惑ヲ掛ケルノハト思ッテ質問ヲ
  シタ人ハ皆、豫算ダケハ是ハ贊成シヤウヂ
  ヤナイカト云フノデ贊成シテシマッタ、マダ
  豫算總會ガアルカラシテ豫算總會ニ於テ海
  軍大臣ニ御聽キシタイト云フ考ヲ持ッテ居〃
  タ、是モ昨日ノコトデ到頭出來ナクナッテ
  シマッタサウシテ今日ニ至ッタ譯ナノデア
  リマス、詰リドウモ相當テ時間ヲ以テ重大
  ナル問題ヲ〓究スルノ······政府ト議員トノ
  間ニ〓究スル時間ヲ與ヘナイノミナラズ、
  不適當ナル人ヲ以テ之ニ嵌メテ、サウシテ
  答辯ヲシナイト云フノハ、ドウモ私ノ考デハ、
  色ミ此處デ惡イ言葉ヲ用ヒタクナイノデゴ
  ザイマスケレドモ、不用意ニ出タ結果カ、
  或ハ故意ニ出タ結果カ、ドチラトモ考ヘラ
  ト と此點ニ付テ思ヒ出スノハ矢張リ花井
  君カラ陸軍大臣ノ出席ヲ度〓求メラレル
  ガ、大臣トシテモ玆ニ出席シテ答辯スル人
  ガナイ、私ノハ海軍大臣デナケレバナラヌ
  ノデアル、ト云フノハ軍令部ト政府卽チ時
  ノ內閣ト其間ニ立ッテ此調和ヲ圖ル所ノ海
  軍大臣デアル、其事務ヲ攝スル所ノ大臣ハ
  此度ハ總理大臣デアルノダカラ總理大臣ヨ
  リ外ニ此問題ニ答ヘラレル人ハナイノダト
  思フ、其總理大臣ガ出席サレズニ、今日マ
  デ至ラシメテ、我ミハ質問ノ機會ヲ失ッテ
  シマッタ、ドウモ豫算分科會ノ委員トシテ
  ハ、甚ダ不深切ナリト云フ言葉ハドウシテ
  モ用ヒナケレバナラヌ、其原因ニ至ッテハ或
  ハサウ云フ計畫デアッタカ、或ハ一時ノ不用
  意デアッタカ、ソコハ私ハ存ジマセヌガ、不
  深切ダト云フ言葉ハ我〓ハドウシテモ申サ
  ナケレバナラヌト思ッテ居ルノデアリマス、
  此點ニ付テ總理大臣ノ御考ヲ一應承ハッテ
  置キタイト思フ、將來ニ是ハ關係ヲ持ツコ
  トデアル、要スルニ私ハ主タル問題ハ時間
  切迫ノ爲ニ、是ハ延期シマス、併ナガラ豫
  算分科會ニ對スル政府ノ措置、卽チ答辯シ
  得ル人ヲ出サズニ自分モ出ズニ居ルト云フ
  コトハドウモ不深切ト云フコトヨリ外ニ
  私ハ仕方ガナカラウト思フ、此點ニ付テ海
  軍大臣ノ事務ヲ代理セラレル總理大臣ニ御
  伺ヒシタイト思ノデアリマス
  〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

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• 029・濱口雄幸

  ○　國務大臣(濱口雄幸君)石渡君ニ御答ヘ
  致シマス、陸海軍ノ分科會ニ私ガ臨時海軍
  大臣事務管理トシテ出席ヲ致シ、親シク答
  辯ヲスベキ筈デアリマシタガ、他ノ會議ニ
  出席ヲシテ居ル爲ニ、遂ニ分科會ニ出ルコ
  トガ出來ナカッタコトハ、誠ニ遺憾デアリマ
  ス、而シテ分科會ニ出席ガ出來ナカッタ爲ニ
  總會ニ於テ御質問ガアルト云フコトヲ承知シ
  タニ依ッテ、昨日私ハ皇后陛下ニ扈從イタ
  シマシテ軍艦高雄ノ進水式ニ橫須賀ニ參リ
  マシテ、午後五時頃ニ東京驛ニ著シマシテ、
  宮中ニ御禮ニ出マシテ、ソレカラ直グニ此
  方へ參ッテ、豫算總會ニ出席ヲ致シ、御質問
  ニ答ヘル積リデ參シタノデアリマス、丁度參
  リマシタ時ハ、旣ニ總會ハ散會後デアリマ
  シタ、遂ニソレニ出席スルノ餘裕ヲ得サセ
  ヌデ、是亦深ク遺憾ト存ジマス、右樣ノ次
  第デアリマシテ、決シテ計畫的デモアリマ
  セヌシ、故意デモアリマセヌ、已ムヲ得ザ
  ル事情ノ爲ニ分科會ニハ出席ガ出來マセナ
  カッタコトハ、今ニ於テ深ク遺憾ト致シテ居
  リマス
  〔花井卓藏君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=29

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• 030・花井卓藏

  ○花井卓藏君　會期切迫ノ今日御尋ヲ致シ
  タイ點ハ尙ホ殘ッテ居リマスガ、總テ省キマ
  シテ唯一點、總理大臣ニ伺ヒタイ、濱口內
  閣成立ノ初メニ當リマシテ天下ニ聲明セラ
  レタル政綱ガ十箇條アリマス、其聲明書ノ
  初メニ「コヽニ內閣成立ノ始メニ方リ政府
  ガコレヨリ實行セムトスル當面ノ政綱ヲ聲
  明ス」實行セムトスル當面ノ政綱ヲ聲明ス
  「現內閣施政ノ方針ハ立憲民政黨ガ累次發
  表シタル綱領政策等ヲ綜合シタルモノナリ
  唯事ヲ行フ自ラ緩急アリ今コヽニソノモッ
  トモ緊急ヲ要スト認ムル諸點ヲ明カニシコ
  レガ實現ヲ期ス」、此聲明書ノ冐頭ノ文字ニ
  アル「實行セムトスル當面ノ政綱」、「モット
  モ緊急ヲ要スト認ムル諸點ヲ明ニシコレガ
  實現ヲ期ス」、斯ウ云フ冐頭ノ下ニ一乃至十
  ノ政綱政策ガ揭ゲラレテアルノデアリマ
  ス、其中ニ就テ第五トシテ「軍備縮小問題ニ
  至リテハ今ヤ列國共ニ斷乎タル決意ヲモッ
  テ國際協定ノ成立ヲ促進セザルベカラズ、
  ソノ目的トスル所ハ單ニ軍備ノ制限ニ止ラ
  ズ更ニ進ンデ其實質的縮小ヲ期スルニア
  リ」云々ト云フ一節ガアリマス、私ノ甚ダ贊
  成スル所デアリマス、此特別議會ノ豫算ニ
  此點ニ關スル片鱗ニテモ何カ見ルベキモノ
  ガアリハシナイカト云フコトニ、甚ダ注意
  ヲ致シテ居ッタノデアリマス、併ナガラ注意
  ハ致シテ居ッタモノノ、此特別議會ノ性質
  トシテ、豫算ノ上ニ、之ヲ假令片鱗ナリト
  雖モ示スコトノ困難デアルト云フコトハ
  諒ト致シテ居リマス、否寧ロ此特別議會ニ
  於テ之ヲ望ムコトノ酷デアルト云フコト
  モ、固ヨリ察シテ居リマス、此政綱第五ハ
  時代ノ要求ト致シマシテモ、而モ此時代ノ
  要求ハ日本ノ時代ノ要求デハナイ、國際一
  般ノ時代ノ要求ト認メヌケレバナラヌコト
  デアラウト思フノデアリマス、不戰條約ノ
  精神モ倫敦會議ノ精神モ、結論ニ於テ如何
  樣ニ相成シタニ致シマシテモ、軍備制限軍備
  縮小ト云フ精神ト云フモノハ忘レテハナ
  ラナイコトデアルノデアリマス、而シテ此
  軍備ナル文字ニハ陸軍ト海軍トニ區別ガア
  ルベキモノデナイト云フコトモ、論ハナイ
  コトデアラウト思フノデアリマス、斯ノ如
  クニシテ世界ノ平和ヲ保チ、斯ノ如クニシ
  テ國民ノ負擔ヲ減ズルト云フノハ全幅ノ精
  神デアラネバナラヌト思フノデアリマス、
  政府ハ緊急當面ノ問題トシテ實行ヲスル、
  實現ヲ期スルト言ハレテ居ルノデゴザイマ
  スルカラシテ、次ノ議會、通常議會ニ於テ
  此精神ヲ體シタル豫算ヲ編成セラレルト云
  フコトヲヽ議場ニ於テ御聲明ナサルコトガ
  出來ルデアラウト信ズルノデアリマス、私
  ハ此聲明ヲ得タイガ爲ニ質問ヲ致ス譯デア
  リマス、尙ホ此實現實行ニ依リテ國民ノ得
  ベキ幸福ノ大デアルト云フコトハ、固ヨリ
  言フ迄モナキコトデアルト云フコトヲ添へ
  テ置キマス
  〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=30

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• 031・濱口雄幸

  ○　國務大臣(濱口雄幸君)花井君ニ御答ヲ
  致シマス、只今御朗讀ニナリマシタ民政黨
  內閣ノ成立ノ當初發表イタシマシタ重要政
  綱ノ第五項、其通リデアリマス、其第五項
  ハ主トシテ只今御讀ミニナッタ所ハ、此度ノ
  海軍軍縮會議ニ關聯シタコトデアリマス
  英米兩國ハ勿論帝國ガ之ニ參加スル所以ノ
  モノモ單リ軍備ノ制限ニ止マラズ、雨ノ
  進ンデ其縮小ニマデ行キタイト云フノガ
  世界ノ大勢デアリ、且ツ帝國ノ方針デアル、
  卽チ事ハ海軍ノ軍備ニ關係シタコトデアリ
  マン、而シテ此度調印ヲ致シマシタ海軍條
  約ニ依リマスレバ、帝國ノ保有スベキ海軍
  ノ兵力量ハ昭和六年ニ保有シテ居ルベキ所
  謂現有勢力ヨリモ、約五万噸ノ縮小ニナル
  計算デアリマス、衆議院ノ豫算會ニ於キマ
  シテハ、或ハ五万噸デハナイト云フ說モ出
  マシタガ、ソレハ計算ノ仕樣デアリマスケ
  レドモ、帝國ノ海軍ト致シマシテハ、昭和
  六年ニ保有スベキ帝國ノ保有量ハ補助艦
  ニ於テ四十一万七千噸トナルベキ筈デアリ
  さい、之ヲ今囘ノ會議ノ結果トシテ、此條
  約ガ批准サレ、效力ヲ發生イタシ、實行サ
  レマスレバ、三十六万七千噸、卽チ五万噸
  ノ縮小ニナリマス、從テ今囘ノ條約ニ依ッテ
  海軍軍備ノ保有量ニ於テ縮小ガ出來ルノデ
  アリマス、是ハ能ク御了解ヲ得テ置キタイ
  ト存ジマス、而シテ其結果トシテ幾何ノ財
  政上ノ餘裕ガ生ズルデアラウカト云フコト
  ハ是ハ他ノ機會ニ於テモ屢。御質問ヲ受
  ケマシタケレドモ、遺憾ナガラ明答ニ苦シ
  ムノデアリマス、其理由ハ卽チ輕巡洋艦、
  驅逐艦、潜水艦ニ於テ代換建造ヲ繰上ゲノ
  權利ヲ留保イタシテアリマス、此權利ヲド
  ノ程度マデ帝國ガ行使スル必要ガアルカト
  云フコトハ實際ノ問題ト致シマシテ是
  ヨリ篤ト〓究ヲ致シ、然ル上ニ之ヲ決定イ
  タシマス、ソレ故ニ、軍縮ノ結果ニ依ッテ、
  財政上生ズベキ所ノ餘剩金ハ只今權利ノ
  行使程度ノ如何ニ依ッテ、自ラ變リマスニ
  佐々ノ今日之ヲ明言スル譯ニハ參リマセ
  ヌケレドモ、必ズ相當ノ餘剩金ヲ得ル見込
  デアリマス、元來、此度ノ海軍條約ニ參加
  イタシマス所以ノモノハ、世界ノ平和、人
  類ノ幸福ハ勿論、各國民ノ負擔ノ輕減ヲ圖
  ルト云フコトガ、目的ノ一ツデアッタ以上
  ハ軍縮條約ノ成立ニ依ッテ、其結果ヲ國民
  負擔ノ輕減ニ充テルベキデアリマス、相當
  ノ餘剩金ガ出マシタナラバ其餘剩金ハ主
  トシテ······是ハ全部トハ必シモ申シマセ
  又、主トシテ之ヲ負擔ノ輕減ニ充テル方針
  デアリマス、而シテ其方針ガ明年度豫算ノ
  編成ノ上ニ於テ現ハレルニ至ラムコトヲ、
  政府ハ期待イタシテ居リマス、併シ是ハ條
  約ノ效力ノ發生ノ時期ニ依ッテ自ラ變リマ
  スカラ、責任ヲ以テ、確ニ昭和六年度ノ豫
  算ニ現ハスト云フコトハ申シマセヌケレド
  モ、其希望ヲ有ッテ居ル、其期待ヲ有ッテ居
  ルト云フコトダケハ申上ゲテ置キマス、次
  ニハ花井君ノ御質問ハ獨リ海軍ニ限ラナ
  カッタ、陸軍ニモ關係シテ居リマスカラ申シ
  マスガ、是亦過日モ申シマシタ通リ、陸軍
  ニ付テハ曩ニ軍制調査會ヲ設ケマシテ、
  今ヤ愼重審議中デアリマス、而シテ其目的
  ハ世界ノ大戰後ニ於ケル列國ノ陸軍ノ狀況
  ノ變化竝ニ帝國ノ環境ノ狀態等ニ顧ミテ、
  如何ニ帝國ノ陸軍ヲ改ムベキヤト云フコト
  ガ一ツノ目的デアリマス、而シテ尙ホ一ツ
  ノ目的ハ國防ノ缺陷ヲ生ゼシメナイ範圍內
  ニ於テ、出來得ル限リ陸軍費ノ節約ヲ圖ル
  ト云フコトガ第二ノ目的デアリマス其目
  的ヲ以テ、只今折角調査進行中デアリマス、
  而シテ其調査ノ結果ガ、全部明年度ノ豫算
  ノ編成ノ上ニ於テ現ハルルニ至ラムコトヲ
  希望イタシテ居リマスケレドモ、是ハ調査
  ノ進行如何ニ依リマスカラ、今日責任ヲ以
  テ申上ゲル譯ニ行キマセヌケレドモ成ル
  ベク左樣ニ致シタイト希望イタシテ居リマ
  ス、ソレカラ只今御讀ミニナリマシタ現内
  閣ノ重要政綱ノ第五項ノ末段ニ於テハ國
  防ノ缺陷ヲ生ゼザル範圍內ニ於テ、軍事費
  ノ節約ヲ圖ルト云フコトニ致シテアッタ筈
  デアリマス、今日ニ於テモ當時ト同樣ノ方
  針ヲ以テ調査ヲ致シテ居リマス、是ダケヲ
  御答へ致シマス

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• 032・花井卓藏

  ○　花井卓藏君總理大臣ノ御答辯中前段、
  卽チ海軍ニ關スルコトニ付キマシテハ倫
  敦條約ノ成立ノ結果、財政······財政デハア
  リマセヌ、數字ノ減ズベキ極メテ部分的ノ
  コトヲ分科會ニ於テ承リマシタ、十分滿足
  スル程ノ御說明デハナカッタノデアリマス、
  此御答辯ト、只今總理ノ御答辯ト、參酌シ
  テ考ヘテ見マシタナラバ勿論、此條約成
  立ノ日トノ關係ハ參酌シナケレバナリマス
  マイケレドモ、次ノ議會ニ結論ヲ豫算ノ上
  ニ現ハスコトガ出來ヤウカト思ヒマス折
  角御努力ヲ願ヒタイト思ヒマス、後段卽チ
  陸軍ニ關スル點ニ付キマシテハ總理大臣
  ノ答辯ノ中ニアリマシタ軍制調査會、此軍
  制調査會ノコトニ付キマシテモ分科會ニ
  於テ質問ヲ致シマシタ然ルニ軍制調査會
  ノ調査シテ居ル事項ガ、總理大臣御答辯ノ
  前ノ方ニ屬シテ居ルモノノミニ限定セラレ
  テ居ルデハナイカト云フ感ヲ深クシタノデ
  アリマス、私ハ政綱ニ現ハレテ居ル所ノ軍
  備ノ整理、大整理、之ニ依ッテ國民負擔ノ輕
  減ヲ圖ラナケレバ、他ニ途ガ無イト云フコ
  トヲ、感ジテ居ルノデアリマスガ、願ハク
  バ國防ノ許ス限リニ於テト云フ言葉ノ外
  ニ更ニ財力ノ許ス限リニ於テト云フ文字
  ヲ、軍部當局ノ人ガ解セラレ、此限リニ······
  國防ノ許ス限リニ於テハ同時ニ財力ノ許ス
  限リニ於テト云フ觀念ヲ强ク印象セラレ
  テ、注意ヲ拂ハレマシタナラバヽ必ズ見ル
  ベキモノガアルデアラウト思フノデアリマ
  ス、此點モ次ノ通常議會ニ於テ現ハルルヤ
  ウニ御努力アラムコトヲ希望イタシマス、
  尙ホ總理大臣ハ第五項ニアル文字ノ中ニ、
  國防ノ許ス限リニ於テト云フコトガアル筈
  デアルト云フコトヲ申サレマシタガ、サウ
  云フ文字ハアリマセヌ、文字ハアリマセヌ
  ガ、ソレハナクッテモ當然ノコトデアリマス
  ルカラ、アルモノト考ヘテ宜シイノデアリ
  マスガ、唯國防ノ許ス限リニ於テト云フ聲
  ガ大變大キク響イテ、財力ノ許ス限リニ於
  テ、負擔力ノ許ス限リニ於テト云フ聲ガ
  如何ニモ小サイ、私ハ此聲ヲ大ニセムガ爲
  ニ重ネテ一言ヲ致シテ置キマス、尙ホ今期
  議會ニ於キマシテハ所謂倫敦條約ニ牽連
  シタル國防ニ關スル大問題ガ橫ハッテ居ル
  ノデ、或ハ此特別議會ノ重要ナル政治問題
  ト申シテ宜シイノデアリマス、濱口總理大
  臣ガ〓心ニ事ニ當ラレテ、殆ド答辯ニ付キ
  マシテモ、全精力ヲ御注ギニナッタト云フコ
  トハ多ト致シマスガ、事全ク此問題ニ關ス
  ルト云フト、不答辯主義ト云フ主義ノ實行
  ニ專念セラレタト云フコトヲ、深ク遺憾ト
  致シテ居リマス、併シ是ハ先ヅ別問題ト致
  シマシテ、國民ノ前ニ此議會ガ如何ニ反映
  スルデアラウカ、否國際上、此議會ガ如何
  ニ反映スルデアラウカト云フコトヲ、ッ
  考ヘナケレバナラヌ、內閣總理大臣ハ海軍
  大臣事務管理ヲセラレテ居ルト云フコト
  ハ形式的ニ於テハ事實デアルノデアル
  形式的ニ於テハ有效デアルノデアル、海軍
  大臣ノ議席ニ坐ハレルト云フコトハ、確カ
  ニ言ヒ得ラレルノデアル、ソレハ形式論デ
  アル、併シ事實ハ海軍大臣ハ此席ニ居ラレ
  ナイノデアル、而シテ一方陸軍大臣ハ病ノ
  故ヲ以テ此席ニ居ラレナイノデアリマス
  數分間本會ニ列セラレタリト雖モ、事實ニ
  於テハ居ラレナイト言ッテ宜シイノデアル、
  倫敦會議ニ於ケル國防上重大ナル政治問題
  ヲ決スベキ此議會ニ於テ、陸軍大臣海軍大
  臣ハ實質上居ラレナイト云フコトダケハ明
  カナノデアリマス、而シテ之ニ對スル所ノ
  憲法上ノ議論モ疑ノ儘ニ解決セラレズ國
  防上ノ問題モ理解アル程ニハ解決ヲセラレ
  テ居ナイ、否國防上ノ問題トシテノ疑問ハ
  疑問トシテ、依然トシテ依然タリト云フ此
  狀況デアリマス、斯ノ如クニシテ今期議會
  ハ今日ヲ以テ終ルノデアリマス、甚ダ之ヲ
  遺憾ト私ハ感ジテ居ルノデアリマス、濱口
  首相ノ人格モ私ハ信ジテ居リ、手腕モ信ジ
  テ居ル、唯併ナガラ此議會ニ於ケル全體ノ
  狀況ヲ見マシテ、更ニ一段ノ御考慮ヲ願ハ
  ヌケレバナラヌ或ル大キイモノガアルト云
  フコトヲ、御考ヘヲ願ヒタイト思フノデア
  リマス、而シテ此解決ヲナサルト云フ事柄
  ガ、何ヨリモ立憲內閣ノ責任デハアルマイ
  カド私ハ思フノデアリマス、繰返シテ申シ
  テ置キマス、國防ノ許ス限リニ於テノ語ハ、
  固ヨリ之ヲ諒トス、財力ノ許ス限リニ於テ
  ノ語モ、國民負擔ノ許ス限リニ於テノ語モ、
  之ヲ考ヘナケレバナラヌノデアル、海軍ノ
  整理、勿論爲サザルベカラズ、特ニ陸軍ノ
  整理、勿論大イニ爲サザルベカラズ、而シ
  テ統帥權編制權ノ區別ノ問題ハ空論ヲ此
  議場ニ於テ鬭ハサムト欲スルガ爲ニ、提起
  シタルモノデハナイノデアル、國務ヲ遂行
  セラルル上ニ於テ、豫算ヲ編成セラルル上
  ニ於テ、此問題ノ解決ハ、全ク政治的ニ或
  ル一ツノ生命ヲ與ヘルノデアル、私ハ御明
  白ニ御答ガ出來ルコトデアラウト思フノデ
  アル、倫敦會議ノ憲法上ノ作用ハ、憲法第
  十一條ノ統帥權ノ作用ニハ屬セザルモノデ
  アル、第十二條ノ編制權ノ作用ニ屬スルモ
  ノデアルト云フコトノ、政府ハチヤント腹
  ヲ御決メニナッテ居ルト云フコトハ、確カニ
  證據ガアルノデアル、ソレハ若槻禮次郞君
  ハ何ノ資格デ任命ニナッタカ、松平君ハ·如
  何、永井君ハ如何ト尋ネタナラバ明白ニ
  御答ハ出來テ居ルノデアル、御答ハ爲サッテ
  居ルト言ッテモ宜イノデアル、恐ラク閣議ニ
  於テモ十二條編制權論ハ力ヲ有シテ居ッタ
  コトデアラウト信ズルノデアル、私ハ統帥
  權ト編制權ノ區別ハ能ク辨ヘテ居ル、勿論
  統帥權ノ、大權ニ屬シ、至上至大ノモノデ
  アルト云フコトハ、能ク心得テ居ル、兎ノ
  角議論ハゴザリマシテモ日本ノ國法上ノ
  解釋ト致シマシテハ現在······現在ノ場合
  ニ於キマシテハ、ドウシテモ之ガ區別ヲシ
  ナケレバナラヌノデアル、併ナガラ若槻君、
  松平君、永井君、ソレカラ單ナル政務大臣
  トシテノ······國務大臣トシテノ財部君ヲ加
  ヘテモ宜シイノデアル、此全權ニ統帥權ノ
  作用ナドト云フコトハ決シテ言ヘナイ譯ノ
  モノデアル、ハッキリ致シテ居ルコトデアラ
  ウト思ヒマスルガ、所謂此間微妙ナル關係
  ヲ有スルヲ以テト云フ一語、是ハ憲法論ト
  シテ兩條ノ間ニハ微妙ナル關係ガアルヤウ
  デアリマスルガ、其憲法上ノ微妙ナル關係
  ハ宜シウゴザイマス、併ナガラ或ル別ノ微
  妙ナル關係ニ於テ、此御答ヲ御避ケニナル
  ト云フコトハ立憲內閣トシテハ寧ロ勇氣
  ノナイコトデアルト私ハ考ヘルノデアル、
  ドウゾ次ノ議會ニ十大政綱中ノ第五項·
  第五項ハ主トシテ倫敦會議ニ關係イタシテ
  居ルモノノヤウデゴザリマスルガ、勿論精
  神ハ陸軍ニモ及ボサナケレバナラヌ趣旨デ
  アルト考ヘマスルカラ、次ノ議會ニ於テ、
  此旨ヲ體シテ、而シテ成ベクハ實現ヲシタ
  イコトヲ希望スルト云フ總理大臣ノ力アル
  答辯ヲ歡迎イタシマシテ、次ノ通常總會ニ、
  此豫算ヲ見ルコトヲ樂ミニ致シテ私ハ待ッ
  テ居ルノデアリマス(拍手起ル)
  〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=32

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• 033・濱口雄幸

  ○國務大臣(濱口雄幸君)　只今ノ花井君ノ
  御發言ハ私ニ對スル御質問トハ存ジマセヌ
  ケレドモ、此場合一言ヲ申上グル必要ガア
  ルト存ジマス、陸海軍ノ整理ニ對スル花井
  君ノ御希望ハ十分ニ之ヲ承ッテ置キマス、此
  際花井君ノ只今ノ御發言中ニ申サレマシタ
  コトニ付テ一言申シテ置キタイコトガアル
  ト申スノハ、憲法第十一條ト第十二條トノ
  間ニハ微妙ナル關係ガアルト云フコトヲ私
  ガ申シタコトガアリマス是ハ憲法上ノ關
  係デアリマス、憲法上ノ其二箇條ヲ働カス
  上ニ於テ、微妙ナル關係ガアルト云フコト
  ヲ申シタ、決シテ其他ノ意味デハアリマセ
  又、是ハ明瞭ニ申シテ置キマス、ソレカラ
  只今色ミ統帥權ノ問題ニ對シ、政府ノ態度
  ガ如何ニモ曖昧デアッタカノ如キ御話ガゴ
  ザイマシタ、是ハ屢、申シテ置キマシタ通リ、
  私ハ此議會此場合ニ於テ······此議會トハ申
  シマセヌ、此場合ニ於テ、憲法上ノ解釋ヲ
  スルト云フコトハ、差控ヘルト云フコトヲ
  申シテ居リマス、唯、今度ノ倫敦海軍條約ノ
  調印ニ當ッテハ、能ク御了解ヲ得テ置キタイ
  ト思フコトハ、事、條約ノ締結上ノ問題デ
  アリマス、條約ノ締結ニ關スル間題デアリ
  マス、而シテ其條約ノ內容ヲ成ス所ノ海軍
  ノ兵力量ニ付キマシテハ、是ハ軍部ノ意見
  ヲ無論聽取スル必要ガアリマス、之ヲ聽取
  イタシ而シテ十分ニ之ヲ斟酌ヲ致シタト
  云フコトハ屢〓申シマシタガ、之ヲ聽取シ之
  ヲ斟酌シ、然ル上ニ於テ、政府ガ責任ヲ以
  テ之ヲ決定シタリト云フコトハ、具體的ノ
  問題トシテ明瞭ニ屢〓申シテ居リマス、此コ
  トハ只今ノ花井君ノ御發言ニ對シ特ニ繰返
  シテ明瞭ニ申シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=33

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• 034・花井卓藏

  ○　花井卓藏君一言ダケ申シテ置キマス、
  過日來此統帥權編制權ナドト云フ問題ガ現
  レマスト、必ズ憲法ノ解釋上ノ間題ニ關シ
  テハ、學者ニヨリ各、異リタル說ヲ持ッテ居ル
  ガ故ニ云々ト云フコトヲ、屢〓繰返サレテ居
  リマス、私ハ豫算總會ニ於テ明カニ申シテ居
  ル、私ハ少シモ憲法上ノ解釋ヲ政府ト討論
  セムトスルト云フ考ハ毛頭持ッテ居ナイ、政
  治ハ憲法ノ運用デアルノデアルカラ、如何
  ニ·····如何ニ運用セラルルノデアルカ、幾
  條ニ依ッテ運用セラルルノデアルカト云フ、
  憲法ノ運用ニ付テノ間ヲ致シテ居ルノデア
  リマスガ、答ハ常ニ解釋ト云フ意味ニ解サ
  レテ答ヘラレテ居ル、是ハ甚ダ遺憾トシテ
  居ル、併ナガラ解釋ノ問題、運用ト云ヘル
  文字ヲ解釋ト云フ文字ニ解シテ、御答辯ナ
  サル苦衷モ亦之ヲ諒ト致シマス、併ナガラ
  此苦衷ハドウゾ早ク御取除キニナルヤウニ
  併セテ希望ヲ致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=34

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• 035・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　通〓ニ依リマシ
  テ坂本男爵ノ發言ヲ許シマス
  〔男爵坂本俊篤君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=35

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• 036・坂本俊篤

  ○男爵坂本俊篤君　本員ハ本豫算ヲ贊成ス
  ル者デアリマス、併ナガラ決シテソレハ無
  條件デハアリマセヌ、倫敦會議ノ經緯ニ付
  キマシテハ議會ノ極メテ短期デアリマシタ
  ニモ拘ラズ反覆丁寧隔意ナク當局ト意見ヲ
  鬪ハスコトヲ得マシタコトハ本員ノ最モ
  本懷トスル所デアリマス、併ナガラ其國防
  上果シテ安全ナリヤ否ヤニ至リマシテハ
  不幸ニシテ當局ト其多クノ點ニ於キマシテ
  意見ヲ異ニスルニ至リマシタコトハ誠
  遺憾トスル所デアリマス、併ナガラ單リ潜
  水艦ノ保有量ノ一點ニ至リマシテハ當局
  モ亦其缺陷アルコトヲ認メマシテ、之ニ對
  シテ別ニ他ノ軍事施設ヲ以チマシテ、之一
  策應スルト云フコトデアリマス、併ナガラ
  本員ノ見ル所ヲ以テ致シマスト、是ハ頗ル
  困難ナコトデアリマス、如何トナレバ元來
  潜水艦ニ要求スル所ノモノハ卽チ其潜水艦
  ソレ自身ノ機能ニ待ツモノデアリマシテ、決
  シテ他ノモノヲ以テ、之ニ換フルコト能ハ
  ザルモノデアリマス、卽チ馬ノ場所ニ牛ヲ
  用ヰヤウト致シテモ、ソレハ不可能デアル
  ガ如ク、潜水艦ニ換フルニ他ノ軍事上ノ施
  設ヲ以テシヤウト致シマシテモ、是ハ到底
  不可能デアルト云フコトハ明カナコトデア
  リマス、然レバ本員ハ此當局ガ如何ナル手
  段ヲ以テ之ニ當ラレルカト云フコトハ是
  ハ他日ノ御手並ヲ拜見イタシタイト思ッテ
  居ルノデアリマス、之ヲ要シマスルニ國
  防上ノ安不安ノ問題ニ至リマシテハ、此際
  結局意見ノ相違ト云フコトニ歸スルモノデ
  アリマス、併ナガラ試ミニ思へ政府自カ
  ラ是レ國防上ノ最小限度ナリ、之ヲ缺クニ
  於テハ國防ノ安危ハ之ヲ期シ難シト高調シ
  來ッタ我ガ三大主張中、其主要ノ二ツノモノ
  ヲ條約上ニ於テ之ヲ貫徹スル能ハズト致シ
  マシタラ、論理ノ歸結ハ明ニ國防ノ不安ト
  云フコトガ、玆ニ殘サレルノデアリマス、
  論理ノ歸結ニ對シテハ何人モ之ヲ爭フコトノ
  出來ナイ筈ノモノデアリマス、勿論當局ト
  雖モ、今囘ノ倫敦條約ヲ以テ完全無缺ナモ
  ノト認メテ居ラヌコトハ了承イタシテ居ル
  ノデアリマス、唯大局ニ鑑ミテ、之ヲ承認
  スルコトヲ可トスト云フガ如キコトニ了承
  イタシテ居ルノデアリマス、然ラバ其大局
  ト云フモノノ要點ハ何デアルカ、顧ミマス
  しく、先ヅソレハ指ヲ國際協調ニ屈セザル
  ベカラズト爲スモノデアッタト考ヘルノデ
  アリマス、成程國際協調ハ吾人ノ最モ尊重
  セネバナラヌ所デアリマス、殊ニ國際會議
  ニ於テ一定ノ協定ニ達セムト致シマスルニ
  ハ、最モ重要ナル所ノ基調ノ一ツデアルニ
  相違ナイノデアリマス、併ナガラ協調ハ互
  ニ公正ナル所ノ基礎ノ上ニ立ツモノデナク
  テハナラナイ、他國ノ公正ナラザル主張ノ
  前ニ、之ヲ屈讓スルト云フガ如キハ、全然協
  調ノ精神ニ違フモノデアリマス、若シ斯ノ
  如キ一時ヲ糊塗スルガ如キ國際協調ハ、却テ
  永遠ニ兩國間ノ親交ヲ損フノ因ヲ爲スモノ
  デアリマス、卽チ一國ガ是ナクテハ國防ハ
  全ウスル能ハズト云フモノマデヲ讓ラセテ、
  其國民ニ向ッテ不安ヲ與へ、且ツ正當ナル憤リ
  乃至不滿ヲマデ買ッテ、ソレデ尙且ツ國際協
  調ト云フモノガ存在シ得ル筈ハアリマセヌ
  ノデアリマス、初メカラ三割ト云フ莫大ノ
  讓步ヲ爲シテ、其モノニ向ッテ尙且ツ其上ニ
  モ讓レト云フコトハ、是ハ恰モ肉マデモ割
  イテ與ヘタモノニ對シテ、尙且ツ骨マデモ削。ツ
  テ寄越セ、斯ウ云フコトニ等シキ慘酷ノモ
  ノデアリマス、若シ斯樣ナコトガ國際協調
  ト云フモノデアルナラバ、國際協調ト云フ
  モノハ誠ニ悲シムベキモノデアリマス次
  ニ政府ガ妥協案ヲ承認スル前提ト致シマシ
  テ考慮ノ重キヲ爲シタト言ハレマス所ノ
  財政上ノ問題デアリマス、此點ニ關シテ、
  或同僚ヨリ今囘ノ軍縮ニ依ッテ幾何ノ剩餘
  ヲ財政上ニ來タスノデアラウカト云フコト、
  其〓算ダケデモ知リタシト言ッテ質問ヲ致
  シマシタノニ、總理ハ之ニ答ヘテ日本政府
  ガ幾何ノ代換建造權ヲ行使スルカ、其程度
  ガ不明デアルガ爲ニ、其見積ヲツケルマデ
  ニハマダ參ラヌノデアルカラ、之ニ答ヘル
  コトガ出來ナイ、斯樣ニ仰セラレタノデア
  リマス、現ニ只今モ本席カラ左樣ナ答ヲ拜
  聽イタシタノデアリマス、若シ政府ガ其邊
  ノ見積リノ〓要ヲサヘ調査スルニ遑ナク、
  急遽囘訓案ヲ發シタリト致シタナラバ結
  局ハ粗笨妄斷ノ謗リハ之ヲ免カレルコトガ
  出來ナイノデハアリマスマイカ、卽チ財政
  上ニ對シテモ、又重キヲ置イタト言ハレタ
  所ノ其一ツト云フモノノ辯解ハ其理由ヲ
  失フニ至ッタモノト言ハナケレバナラヌノ
  デアリマス、併ナガラソレハ兎モ角ト致シ
  マシテ、一言玆ニ指摘イタサナケレバナラ
  ヌコトハ、一方軍縮ニ依ッテ財政ノ餘裕ヲ
  期待シナガラ、他方ニハ工業力ノ維持、其
  他ノ理由ニ依リマシテ、將來十万噸カラノ
  補助艦ヲ建造セネバナラヌコトニナッテ居
  ルノデアリマス、今日ノ補助艦ノ噸當リ平
  均ノ價格ト云フモノハ三千八百圓ト數ヘ
  ルノデアリマス、是ハ一番安イ巡洋艦ノ二
  千五百圓ヨリ一番高イ潜水艦ノ四千八百圓
  ノ之ヲ平均シタ所ノ、平均ノ噸當リデアリマ
  ス、サウ致シマスト玆ニ十万噸ニ對シテハ
  直チニ三億八千万圓ト云フモノハ消エテシ
  マフ譯デアリマス、加之千九百三十六年以
  後ニ於キマシテハ日本ハ七割ノ比率ヲ要求
  スルコトハ暗默ノ間、今日既ニ漏ラシテ居
  ルノデアリマス、故ニ皮肉ニモ其要求ガ通ッ
  タト致シマシタナラバ、一方潜水艦ノ自主
  的保有量ノ要求ト共ニ莫大ナル製艦費ノ要
  ルコトモ五箇年先ノ目ニ見エテ居ルノデア
  リマス、又主力艦ノ延期ヨリ生ズル所ノ剩
  餘問題ニ致シマシテモ、ソレハ唯之ヲ建造
  スル所ノ國費ガ五箇年先ニ繰延ベラレタト
  云フニ過ギナイ、直グ其先ニハ巨額ノ國費
  ガ之ニ向ッテ要求セラレルト云フコトガ明
  カニナッテ居ルノデアリマス、斯樣ナモノヲ
  引當ニ、將來ノ國民負擔ノ輕減ト言フガ如
  キハ、卽チ減稅ト言フガ如キコトハチヨット
  考へ得ラレヌモノデハアルマイカト存ズル
  ノデアリマス、斯樣ニ論ジテ參リマスルト、
  財政上ノ事柄モ亦考慮ノ主要ナル一ツト言
  ハレタコトモ、一應人聞キトシテハ、誠
  好イ響ヲ與ヘルノデアリマスガ、其內容ヲ
  檢討スルニ至リマシテハ、其豫期ノ餘裕ヲ
  生ズベキヤ否ヤト云フコトニ付テハ、玆シ
  一大疑問トサレネバナラヌノデアリマス
  以上檢討シ來リマシタ所ニ依リマスト、政
  府ハ多少國防ニ不滿アリトスルモ、尙ホ大
  局ニ鑑ミテ讓ル所ガアッタト言フ、此議論ノ
  根柢ト云フモノハ玆ニ動搖セザルヲ得ナイ
  ノデアリマス、尙ホ最後ニ本議會ノ謎ト致
  シマシテ殘サレタモノハ今囘ノ囘訓書ニ
  對スル、此機會ニ於テ政府ト軍部トノ間ニ
  何等カ蟠リヲ生ジタ如キ所謂疎隔問題デア
  リマス、此疎隔問題ハ感情ヨリ以上ノ何モ
  ノカノ深サガ玆ニ存在シテ居ルヤウニ考ヘ
  ルノデアリマス、我ミハ此謎ヲ解カムト欲
  シテ屢〓政府ニ質問ヲ致シマシタガ、遂
  ニ此謎ノ祕密ヲ解ク所ノ鍵ヲ與ヘテ下サラ
  ナイノデアリマシタ、是ハ誠ニ遺憾ノコト
  デアリマス、此問題ハ恐ラク倫敦條約ノ得
  失以上ノ重大性ヲ有スルモノデアリマス、
  是ハ卽チ我國民一般ノ士氣ノ上ニ重大ナル
  關係ヲ持來スコトナキヤヲ恐レルモノデア
  リマス、倫敦條約ノ得失ハ噸數ノ問題デア
  リマス、物質的ノ問題デアリマス、之ヲ一
  般士氣ノ問題ニ比シマスレバ、其輕重大小、
  固ヨリ日ヲ同ウシテ語ルベカラザル底ノモ
  ノデス、此點ニ付キマシテハ、旣ニ過日モ
  本員ヨリ申述ベタル如ク、切ニ濱口總理大
  臣ノ深甚ノ御考慮ヲ望ンデ止マナイモノデ
  アリマス、過ギシハ追フベカラズト致シマ
  スレバ、華府會議ノ後ヲ承ケタ我ガ海軍ハ
  愼重ナル軍事計畫ノ下ニ、海軍ノ立直シヲ
  策定セラレ今日ノ國防計畫ト云フモノガ
  成立ッテ居ルノデアリマス、故ニ此國防計畫
  ノ上ニ、苟モ變更ヲ來サムトスルガ如キ此
  倫敦條約ノ後ヲ承ケタル我ガ海軍ハ、此先
  例ヲ追ヒマシテ、國防更新ノ意味ノ下ニ立
  直シヲ策定サシテ、國防充實ヲ圖ラネバナ
  ラヌト信ズルノデアリマス、本員ハ以上述
  ベ來リマシタ所ノ此希望條件ノ下ニ、本豫
  算ヲ贊成セムト欲スルモノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=36

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• 037・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ガナケレ
  バ日程第三ヨリ第八マデノ豫算ヲ一括シテ
  議題トシ採決ヲ致シマス、豫算案ニ同意ノ
  諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  〔起立者多數〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=37

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• 038・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=38

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• 039・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　尙ホ諸君ニ御諮
  リヲ致スコトガゴザイマス、便宜上、日程
  第十六竝ニ十七ヲ此際、議シタイト存ジマ
  ス、御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=39

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• 040・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　日程第十六、昭
  和三年度歲入歲出總決算、昭和三年度各特
  別會計歲入歲出決算報告、第十七、昭和三
  年度國有財產增減總計算書報告、會議、委
  員長報告、二荒伯爵
  昭和三年度歲入歲出總決算竝昭和三年度
  各特別會計歲入歳出決算及既往年度檢查
  未確定金額ノ檢査確定シタルモノヲ審査
  シ
  第
  昭和三年度歲入歲出總決算歲入經常
  部第一款租稅第二項地租中那覇稅務
  署ニ於テ徵收ニ至ラサリシ件、第八
  項酒稅中板橋稅務署ニ於テ收入未濟
  ニ係ル件、第三款官業及官有財產收
  入第一項郵便電信及電話收入中東京
  外五遞信局ニ於テ收入ニ至ラサリシ
  件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出經常
  部内務省所管第十一款衞生試驗所第
  三項阿片費中大阪衞生試驗所ノ支出
  ニ係ル件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出經常
  部大藏省所管第十款諸拂戾及補塡金
  第一項諸拂戾及補塡金中大阪稅務監
  督局ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出經常
  部農林省所管第二款森林費第三項事
  業費中秋田營林局、高知營林局ノ支
  出ニ係ルモノ二件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出臨時
  部內務省所管第七款北海道拓殖費第
  四項土地改良費中北海道廳ノ支出ニ
  係ル件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出臨時
  部大藏省所管第十九款大禮施設費第
  一項大禮施設費中內閣ノ支出ニ係ル
  件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  大藏省所管朝鮮總督府歲出臨時部第
  十二款耕地改良及擴張費第三項助成
  費中朝鮮總督府ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  大藏省所管關東廳歲出臨時部第五款
  地方費補助第一項地方費補助中關東
  廳ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  鐵道省所管帝國鐵道資本勘定歲出第
  一款鐵道建設及改良費第二項改良費
  中鐵道省ノ支出ニ係ル件
  同上用品勘定歲出第一款鐵道用品及
  工作費第一項用品及工作費中鐵道省
  ノ支出ニ係ル件
  官金中預金部資金ノ運用ニ關スル件
  官有物中樺太廳ニ於ケル昭和三年度
  ノ立本年期賣拂契約ニ係ル件
  昭和二年度歲入歳出總決算歲出經常
  部大藏省所管第十款講拂戾及補塡金
  第一項諸拂戾及補塡金中大阪稅務監
  督局ノ支出ニ係ル件
  昭和二年度歲入歲出總決算歲出臨時
  部遞信省所管第二款電信電話營繕費
  第二項海底電信線修繕費中遞信省ノ
  支出ニ係ル件
  右ハ政府ノ措置穩當ヲ闕クモノト認ム
  第二
  昭和三年度歲入歲出總決算歲入經常
  部第一款租稅第一項所得稅中板橋外
  十稅務署水道橋稅務署橫濱稅務
  署、四谷稅務署、小倉稅務署、東稅
  務署、水道橋稅務署、四谷稅務署、
  淀橋稅務署ノ徵收不足ニ係ルモノ九
  件、上京稅務署ノ徵收過ニ係ル件、
  第三項營業收益稅中橫濱稅務署ノ徵
  收不足ニ係ル件、上京稅務署ノ徵收
  過ニ係ル件、第四項資本利子稅中小
  倉稅務署、東稅務署ノ徵收不足ニ係
  ルモノ二件、第五項相續稅中橫濱稅
  務署ノ徵收不能ニ係ル件、第三款官
  業及官有財產收入第十項刑務所收入
  中福岡刑務所ニ於テ收入ニ至ラサリ
  シ件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出經常
  部外務省所管第二款在外公館第二項
  館費中外務省ノ支出ニ係ル併、第三
  款國際聯盟常設機關諸費第二項國際
  聯盟常設帝國事務局費中外務省ノ支
  出ニ係ル件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出經常
  部陸軍省所管第二款軍事費第四項衣
  糧費中陸軍糧秣本廠ノ支出ニ係ル
  件
  昭和三年度歲入歳出總決算歲出經常
  部海軍省所管第二款軍事費第五項造
  船進兵及修理費中海軍省經理局、橫
  須賀、吳、佐世保海軍經理部及舞鶴要
  港部經理部竝廣海軍工廠ノ支出ニ係
  ル件、第九項艦營費中橫須賀、吳、及
  佐世保海軍經理部ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出經常
  部農林省所管第二款森林費第三項事
  業費中高知營林局ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度歲入歳出總決算歲出臨時
  部內務省所管第四款道路改良費第一
  項道路改修及助成費中秋田縣ノ支出
  ニ係ル件、第七款北海道拓殖費第一
  項殖民費中北海道廳ノ支出ニ係ル
  件、第三項產業費中北海道廳ノ支出
  ニ係ル件、第四項土地改良費中北海
  道廳ノ支出ニ係ル件、第五項道路橋
  梁費中北海道廳ノ支出ニ係ル件、第
  六項河川費中北海道廳ノ支出ニ係ル
  件、第七項治水費中北海道廳ノ支出
  ニ係ル件、第八項港灣費中北海道廳
  ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度歲入歳出總決算歲出臨時
  部大藏省所管第九款震災復舊及新營
  費第二項工事費中內閣印刷局ノ支出
  ニ係ル件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出臨時
  部海軍省所管第一款艦艇製造費第
  項補助艦艇製造費中海軍省經理局及
  橫須賀、呉、佐世保各海軍經理部ノ
  支出ニ係ル件
  昭和三年度歲入歳出總決算歲出臨時
  部司法省所管第二款營繕費第十一項
  陪審法廷及陪審員宿舎其他新營費中
  旭川地方裁判所ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出臨時
  部農林省所管第七款公有林野官行造
  林費第一項公有林野官行造林費中高
  知營林局ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度歲入歲出總決算歲出臨時
  部商工省所管第一款產業奬勵費第七
  項製鐵業奬勵費中商工省ノ支出ニ係
  ル件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  大藏省所管朝鮮總督府歲入經常部第
  一款租稅第十一項關稅中新義州稅關
  ニ於テ徵收ニ至ラサリシ件、歲出臨
  時部第五款營繕費第九項新營及設備
  費中朝鮮總督府專賣局ノ支出ニ係ル
  件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  大藏省所管臺灣總督府歲入經常部第
  一款租稅第四項酒精稅中臺中、臺南、
  高雄各州及花蓮港廳ニ於テ徵收ニ至
  ラサリシ件、第七項所得稅中高雄州、
  臺中州ノ徵收不足ニ係ルモノ二件、
  歲入臨時部第一款官有物拂下代第一
  項官有物拂下代中臺中州ノ徵收ニ係
  ル件中臺南州ノ徵收ニ係ル件、歲出
  經常部第十二款交通局第三項遞信事
  業費中臺灣總督府交通局遞信部ノ支
  出ニ係ル件、歲出臨時部第一款事業
  費第十一項無線電信施設費中臺灣總
  督府交通局遞信部ノ支出ニ係ル件、
  第二十四項電信電話建設費中臺灣總
  督府交通局遞信部ノ支出ニ係ル件、
  第二十五項電信電話改良費中臺灣總)
  督府交通局遞信部ノ支出ニ係ル件、
  第十款災害費第三項鐵道線路其他風
  水害應急及復舊費中臺灣總督府交通
  局遞信部ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  大藏省所管關東廳歲入臨時部第一款
  官有物拂下代第一項官有物拂下代中
  大連民政署ニ於テ收入未濟ニ係ル
  件、歲出臨時部第一款事業費第八項
  大連市街擴張費中關東廳內務局土木
  課出張所ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  大藏省所管樺太廳歲入經常部第一款
  租稅第二項所得稅中樺太廳大泊支廳
  ニ於テ徵收不足ニ係ル件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  海軍省所管海軍燃料廠歲出第一款海
  軍燃料廠作業費第二項事業費中海軍
  燃料廠平壤鑛業部ノ支出ニ係ル件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  文部省所管帝國大學歲入經常部第一
  款東京帝國大學第四項諸收入中東京
  帝國大學ニ於テ歲入ニ編入スヘキ
  件、歲出經常部第一款東京帝國大學
  第二項校費中東京帝國大學ノ支出ニ
  係ル件
  昭和三年度各特別會計歲入歲出決算
  鐵道省所管帝國鐵道資本勘定歲出第
  一款鐵道建設及改良費第一項建設費
  中鐵道省ノ支出ニ係ル件
  同上收益勘定歲出第一款鐵道作業費
  第一項事業費中鐵道省ノ支出ニ係ル
  モノ二件
  官有物中朝鮮總督府ニ於テ國有未墾
  地ノ貸付ニ係ルモノ五件、樺太廳ニ
  於テ大泊所在ノ官有地ヲ民有地ト交
  換ヲ爲セシ件
  大正九年度及十年度歲入歲出總決算
  歲入經常部第一款租稅第十五項關稅
  中橫濱稅關ノ徵收不足ニ係ル件
  大正十三年度歲入歲出總決算歲入經
  常部第一款租稅第二項所得稅中神田
  橋稅務署、橫濱稅務署ノ徵收ニ係ル
  モノ二件
  大正十四年度各特別會計歲入歲出決
  算大藏省所管樺太廳歲入經常部第一
  款租稅第二項所得稅中樺太廳大泊支
  廳ノ徴收過ニ係ル件
  大正十五年度歲入歲出總決算歲入經
  昭和元
  常部第一款租稅第一項所得稅中東稅
  務署、新宮稅務署ノ徵收不足ニ係ル
  モノ二件
  昭和二年度歲入歲出總決算歲入經常
  部第一款租稅第一項所得稅中淀橋稅
  務署、神田橋稅務署、幸橋稅務署、
  幸橋稅務署、四谷稅務署、西稅務署、
  淀橋稅務署、川越稅務署、水道橋稅
  務署、飯田橋稅務署、東稅務署、東
  稅務署、淀橋稅務署ノ徴收不足ニ係
  ルモノ十三件、四谷稅務署ノ徵收過
  ニ係ル件、第三項營業收益稅中神田
  橋稅務署、淀橋稅務署、川越稅務署
  ノ徵收不足ニ係ルモノ三件、橫濱稅
  務署ノ徵收過ニ係ル件
  昭和二年度各特別會計歲入歲出決算
  內務省所管健康保險歲入第一款健康
  保險收入第一項保險料收入中兵庫及
  靑森兩健康保險署ニ於テ收入濟額ニ
  編入セサリシ件
  昭和二年度各特別會計歲入歲出決算
  大藏省所管臺灣總督府歲入經常部第
  一款租稅第七項所得稅中臺中州、高
  雄州、臺南州ノ徴收不足ニ係ルモノ
  三件
  昭和二年度各特別會計歲入歲出決算
  海軍省所管海軍燃料廠歲出第一款海
  軍燃料廠作業費第二項事業費中海軍
  燃料廠平壤鑛業部ノ支出ニ係ル件
  右ハ政府ニ對シ將來ノ注意ヲ促スヘキモ
  ノト認ム
  第三
  其ノ他異議ナシ
  右之通議決セリ依テ及報〓候也
  昭和五年五月十日
  決算委員長
  伯爵二荒芳德
  貴族院議長公爵德川家達殿
  昭和三年度國有財產增減總計算書ヲ審査
  シ
  第5
  鐵道省ニ於テ京阪電鐵株式會社ノ請
  願ヲ容レ名ヲ國有財產ノ交換ニ藉リ
  城東線ニ豫算外ノ改良工事ヲ爲シタ
  ル件
  右ハ政府ノ措置穩當ヲ關クモノト認ム
  第二
  大藏省所管營繕管財局ニ於テ內閣印
  刷局抄紙部ノ敷地選定及工事ヲ爲シ
  タル件
  陸軍省所管第五師團經理部ニ於テ廣
  島市外似島所在土地ノ買收ヲ爲シタ
  ル件
  富山縣ニ於テ國有財產ノ無償讓與ヲ
  爲シタル件
  熊本營林局ニ於テ沖繩縣八重山興業
  合資會社ニ對シ國有林ヲ隨意契約ヲ
  以テ十箇年間貸付ヲ爲シタル件
  右ハ政府ニ對シ將來ノ注意ヲ促スヘキモ
  ノト認ム
  第三
  其ノ他異議ナシ
  右之通議決セリ依テ及報告候也
  昭和五年五月十日
  決算委員長
  伯爵二荒芳德
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵二荒芳德君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=40

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• 041・二荒芳徳

  ○　伯爵二荒芳德君只今ヨリ決算委員會ノ
  報告ヲ申上ゲマス、昭和三年度歲入歲出總
  決算ノ計上イタシマス所ハ經常部歲入額ハ
  十五億五百一万二千九百九十七圓六錢一
  厘、臨時部歲入額ハ五億六十七万八千百七
  圓九十九錢六厘、歲入合計二十億五百六十
  九万一千百五圓五錢七厘デゴザイマシテ
  之ニ對スル經常部歲出額ハ十一億八千四百
  二十四万一千五百九十二圓三錢二厘、臨時
  部歲山額ハ六億三千六十一万三千四百十九
  圓八十八錢一厘、歲出合計十八億一千四百
  八十五万五千十一圓九十一錢三厘デアリマ
  ス、而シテ歲入歲出差引一億九千八十三万
  六千九十三圓十四錢四厘ノ剩餘ヲ生ジテ居
  リマスノデ、此剩餘金ハ會計法第二十六條
  ニ依リマシテ昭和四年度ノ歲入ニ繰入レテ
  アルノデゴザイマス、此總決算ト外ニ昭和
  三年度各特別會計ノ歲入歲出決算、此二ツ
  ノ調査ニ付キマシテハ委員會ヲ四月二十
  八日ニ開キマシテ審査ノ方針ヲ決定イタシ
  マシタ、其審査期限ニ付キマシテハ、決算
  ノ審査期限ヲ五月十日マデニ、而シテ各分
  科ノ假決議ヲ七日、主査ノ打合會ヲ七日、
  各分科決議ヲ八日、委員會ヲ十日ニ開クト
  云フコトヲ決メマシテ、各分科ニ亙リマシ
  テ愼重ニ審議ヲ致シタノデアリマス、其
  結果、委員會ニ於キマシテ各分科カラ報告
  ガゴザイマシタ、各分科ヲ通ジマシテ、政
  府ノ措置穩當ヲ闕クモノ十七件、政府ニ對
  シマシテ將來ノ注意ヲ促スモノ九十八件、
  其外ハ總テ異議ナシト云フコトニ可決決定
  ヲ致シタノデアリマス、其間ニ第一分科ノ
  審査ト致シマシテ、主査カラ警告ヲ附シタイ
  ト云フ議ガ起ッタノデアリマス、其內容ヲ簡
  單ニ申上ゲマスト、昭和三年度ノ決算報告
  ニ依リマスト、政府ガ檢査院ノ報〓六十五
  件ノ中ニ違法不當ト指摘セル條項ヲ、認メ
  マスケレドモ、一般特別兩會計及國有財產
  ニ亙リマシテ······間違ヒマシタ······條項ヲ
  肯定スルモノガ一般特別兩會計及國有財產
  ニ亙リマシテ數十項ノ多キニ上ッテ居リマ
  ス、其外、政府ガ檢査院ノ批難ヲ否認シ辯
  明シタル條項中ニモ亦不當ト認ムベキモノ
  ガゴザイマスカラ、斯ノ如ク年々決算上ニ
  不法行爲ノ連發スルコトハ國家ノ損害上
  甚ダ面白クナイモノデアルカラ、政府ガ速
  ニ適當ナ方法ヲ講ジテ、將來斯ノ如キ違法不
  當ノナイヤウニ致シタイト云フコトヲ、警
  告セムトスルノ動議デゴザイマシタ、併シ
  之ニ付キマシテ各分科ノ委員各、說ヲ述べ
  ラレマシテ遂ニ此警告ハ發スルコトヲ取
  止メマシテ、委員會ト致シマシテハ委員
  長ガ斯ノ如キ事實アリシコトヲ、本議場
  ニ於テ御報告ヲスルコトニ止メルコトニ決
  定イタシタノデアリマス、左樣デゴザイマ
  スカラ、卽チ繰返シテ申シマスレバ、政府
  ノ措置穩當ヲ闕クモノ十七件、政府ニ對シ
  將來ノ注意ヲ促スモノ計九十八件其外ハ總
  テ異議ナシト決定ヲ致シタノデアリマス
  次ニ國有財產ノ增減ニ關シマシテハ、先例
  ニ從ヒマシテ小委員會ニ付託ヲ致シマシテ、
  其結果ト致シマシテ政府ノ措置穩當ヲ闕ク
  モノ一件、政府ニ對シマシテ將來ノ注意ヲ
  促スベキモノ五件、其外ハ總テ異議ナシト
  決定ヲ致シタノデアリマス、而シテ此小委員
  會ノ決議ヲ委員會總會ニ諮リマシテ、總テ其
  通リ可決決定ヲ致シマシタ、尙ホ細イコト
  ハ速記錄ニ依ッテ御承知ヲ願ヒタイト存ジ
  やっ、御報告終リト致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=41

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• 042・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案トモ決算委
  員長ノ報告ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 043・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=43

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• 044・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　書記官ヲシテ報
  告ヲ致サセマス
  〔瀨古書記官朗讀〕
  本日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
  中小產業者竝失業者ノ救濟ニ關スル建議
  案(發議者伯爵林博太郎君外十六名、贊
  成者伯爵松木宗隆君外百十五名)
  本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
  市町村義務〓育費國庫負擔法中改正法律
  案可決報〓書

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• 045・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　休憩ヲ致シマ
  ス、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタシマス
  午後零時十七分休憩
  午後一時三十七分開議

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• 046・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ午後ノ會
  議ヲ開キマス、日程第九、昭和三年度第一
  豫備金支出ノ件、第十、昭和三年度特別會
  計第一豫備金支出ノ件、第十一、昭和三年
  度特別會計豫備費支出ノ件、第十二、昭和
  四年度第二豫備金支出ノ件、第十三、昭和
  四年度豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件、第
  十四、昭和四年度特別會計第一一豫備金支出
  ノ件、第十五、昭和四年度特別會計豫備金
  外ニ於テ豫算超過支出ノ件、承諾ヲ求ムル
  件、衆議院送付、會議、委員長報告、竹越
  與三郞君
  昭和三年度第一豫備金支出ノ件、昭和
  三年度特別會計第一豫備金支出ノ件、
  昭和三年度特別會計豫備費支出ノ件、
  昭和四年度第二豫備金支出ノ件、昭和
  四年度豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件、
  昭和四年度特別會計第二豫備金支出ノ
  件、昭和四年度特別會計豫備金外ニ於
  テ豫算超過支出ノ件
  右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報〓候也
  昭和五年五月十二日
  委員長竹越與三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔竹越與三郞君演壇ニ登ル〕

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• 047・竹越與三郎

  ○竹越與三郞君　只今議題トナリマシタ七
  件ノ特別委員會ノ報〓ヲ申上ゲマス、委員
  會ハ昨日成立イタシマシテ、卽刻議事ニ這
  入リマシタ、委員ヨリ種々ノ質問ガアリマ
  シタガ、其中ニハ濟南出兵費ナドニ付テハ
  速記ヲ止メテノ質問モアリマシタ、質問應
  答ノ末、是ハ總テ餘儀ナキモノト見テ承認
  ヲスルト云フコトデ可決イタシマシタ、是
  ガ報告ノ全部デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=47

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• 048・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　只今委員長ノ報
  告セラレマシタ日程第九ヨリ第十五マデ、
  承諾ヲ求ムル件、一括シテ議題トシ採決ヲ
  致スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 049・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス、各案ニ承諾ヲ與フルコトニ御異存
  ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 050・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=50

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• 051・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　此際議事日程變
  更ニ付テ御諮リヲ致シマス、市町村義務〓
  育費國庫負擔法中改正法律案ノ第一讀會ヲ
  開キ、特別委員長ノ報告ヲ求ムルコトニ御
  異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=51

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• 052・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認
  メマス、柳澤伯爵ノ登壇ヲ望ミマス
  市町村義務〓育費國庫負擔法中改正法
  律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報告候也
  昭和五年五月十三日
  委員長伯爵柳澤保惠
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=52

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• 053・柳澤保惠

  ○　伯爵柳澤保惠君市町村義務〓育費國庫
  負擔法中改正法律案、本案審議ノ經過竝ニ
  結果ヲ申上ゲマス、本案ノ特別委員會ハ四
  日間殆ド終日會議ヲ開キマシテ愼重審議イ
  タシマシタ、五日目ニ決定ヲ致シタノデア
  リマス、但シ一ツノ附帶決議ガ附イテ居リ
  マス、其附帶決議ハ次ノ通リデゴザイマス、
  「義務〓育費國庫負擔法ノ改正ハ同法ノ精
  神ニ基キ義務〓育ノ改善ヲ期スルト共ニ地
  方費ノ輕減ヲ圖ルニアルヲ以テ其使用方法
  及支出ニ付テハ特ニ嚴密ナル監督ヲナシ
  國庫負擔法ノ精神ヲ有效適切ニ實現セラレ
  ンコトヲ望ム」、之ニ對シマシテ贊成論ガ出
  マシタ、出マシタガ、其贊成ニハ多少輕重
  ノ區別ガゴザイマス、又此決議ニ對シテハ
  當局大臣ニ於カレマシテ其趣意ヲ十分尊重
  セムトノ言明ガゴザイマシタ、結局本案ハ委
  員會ニ於キマシテハ、異議者ノ發言ヲ見ル
  コトナクシテ可決シタ次第デゴザイマス、
  是ヨリ簡單ニ會議ノ經過ヲ申上ゲマス、第
  一ニ申上ゲタイノハ會議中ニ必要ナル參考
  資料ヲ澤山得タコトデアリマシタ、之ニ依
  リマシテ委員ハ非常ニ便益ヲ得タノデアリ
  Wく、是ヨリ重モナル質問ト答辯ヲソレゾ
  レ數箇條ニ纒メマシテ御報告申上ゲマス、
  第一ニ申上ゲタイノハ本法制定ノ精神ト
  本案トノ關係デゴザイマス、大正七年四月
  八日ノ文部省訓令第三號ヲ以テ地方廳ヘ達
  セラレマシタ公文ガゴザイマス、是ニハ明
  ニ「國費ヲ以テ義務〓育費ノ一部ヲ支辨ス」
  ト云フコトヲ云フテ居リマス、其理由ト致
  シマシテ、市町村ノ經費ノ增加ニ伴ヒマシ
  テ、其輕減ノ必要ヲ感ズルト云フコトガ一
  ツ、次ニハ義務〓育ノ改善振興、就中〓員
  優遇ニ重キヲ置クト云フコトガゴザイマ
  スソレ故ニ〓員ノ優遇及〓育改善ニ向ケ
  ルト共ニ、住民ノ負擔ノ輕減ニ充ツルト云
  フ精神ハ當初ヨリ明ニ出テ居ルノデアリ
  マス、卽チ戶數割附加稅、家屋稅附課稅ノ課
  稅ノ減少ニ留意シテ居ラレタコトガ分リマス、
  其後法律ニ改正ガゴザイマシタガ、其趣旨
  ハ地方廳ニ通牒シテ居ラレマスガ、イツモ
  同趣旨ノコトヲ云フテ居ラレルノデアリマ
  ス、而シテ此國庫支辨ヲ財源ト致シマシテ
  新事業ヲ計畫スルガ如キハ努メテ避ケロト
  云フコトモ訓示シテ居リマス、此本法案ノ
  一千万增加ト云フコトハ卽チ國庫負擔ヲ
  八千五百万圓ニスルコトデアリマス、而シ
  テ此增加ハ戶數割附加稅、家屋稅附加稅ノ
  輕減ニ充テルノデ、此輕減ハ飜ヲテ又義務〓
  育ノ改善ニ向フコトガ出來ルノデアリマス、
  之ニ依リマシテ納稅者ノ負擔ハ多少輕クナ
  リマスガ、併シ所謂無產階級ニ對シテハ、何
  等特典ハナイノデアリマス、左樣ニ思ハレ
  マス上ニ、今日失業者ハ續出スルヤウナ狀
  況デ、是ハ皆サンモ御承知ト存ジマス、此
  失業者救濟ニ充テルト云フ事業ハ、今日ニ
  於テモ、起債ヲ許スコトニナッテ居リマス、
  故ニ失業者ニ關シテハ決シテ無關心デハナ
  〃、政府モ此點ニ付テハ相當考慮シテ居
  ルト云フコトヲ、序ナガラ申上ゲテ置キマ
  ス、ソレカラ第二ニ申上ゲタイノハ、民政
  黨ノ主張ト今囘ノ改正案デアリマス、民政
  黨ハ主義ト致シマシテ、市町村義務〓育
  費ノ全部ヲ國庫ノ負擔トスルト云フ主張ヲ
  强ク聲明シテ居リマス、併シ此民政黨ノ主
  義ニ對シマシテハ民政黨政府ハ直ニ之ヲ
  徹底的ニ厲行スル意思ハナイト云フコトヲ
  言ハレテ居リマス、現在ニ於キマシテハ
  今囘ノ增額ヲ以チマシテ、此主義貫徹ノ途
  ニアルモノトハ認メテ居ラレナイ、卽チ法
  律當初ノ精神ノ如クニ、義務〓育費ノ一部
  支辨ト考ヘテ居ラレマシテ、現行法ノ規定
  ノ下ニ改正ヲ企テラレタノデアリマス、又
  此支辨ニ付キマシテハ、近來中央竝ニ地方
  各〓、半額程度ノ負擔ニナッテ居リマシテ、事
  實ニ徵シマスレバ、或貧弱町村ノ如キハ
  其交付金ニ非常ナ開キヲ見テ居ルノデアリ
  そく、併ナガラ中央ト地方ノ負擔ノ程度ハ
  大體右ノヤウナ割合デ、是ハ急ニ變更スル
  ヤウナコトハナイヤウニ考ヘラレルノデア
  リマス、第三ニ申上ゲタイノハ本法案急施
  ノ必要ト云フコトデアリマス、通常議會ニ
  提案シテモ宜イデハナイカ、何モ今囘ニ限ッ
  テ急ニ之ヲ施行スルト云フ必要ハナイヤウ
  ニ思フト云フ御主張ガアリマスガ政府ハ
  サウ見テ居ラヌノデアリマス、現今地方自
  治體ノ財政ノ窮乏ノ狀態、實ニ是ハ見ルニ
  忍ビナイノデアル、何卒一日モ早ク財政ノ
  整理ヲ致シタイ、加フルニ農村ノ疲弊ノ狀
  況又地方稅負擔ノ過重ト云フコトハ是
  ハ一刻モ早ク救濟セネバナラヌト思フノデ
  アル現政府ガ成立以來始終地方廳ヘ對シ
  テ政府ノ緊縮主義ヲ述ベラレ、同樣ノ措置
  ニ出デムコトヲ始終訓示シテ居ラレマス、
  而シテ歲出ノ緊縮ヲ爲サシメテ居ルノデア
  リマス、而モ國民ノ負擔ノ輕減ハ一刻モ早
  ク、少シデモ之ヲ輕減シタイト云フコトノ考
  ヘハアラレルノデアリマス、デ七千五百万
  圓ガ八千五百万圓トナリマスレバ、玆ニ本
  年度ニ於テ千万圓ノ收入增ガアルノデアリ
  マス是ガ地方ニ於ケル所ノ減稅ニ充テラ
  レルコトトナレバ、飜ノテ〓育費モ餘裕ガ出
  來ル、ユトリヲ見ルコトガ出來ルノデアリ
  やく、同時ニ〓育ノ內容ノ低下モ防グコト
  ガ出來ルデアラウ、元來御承知ノ如ク
  ニ地方廳ノ訓令ハデス、地方廳ノ訓令ハ
  市町村ニ對シマシテ絕對ノ拘束力ヲ有ッ
  テ居リマセヌガ、併シ斯カル交付金ハ從
  來カラ之ヲ他ノ方面ニ使フト云フコト
  ヲシナイヤウニナッテ居リマス、故ニ此法律
  ノ目的以外ニ之ヲ濫用スルコトハナイト思
  フノデアリマス、又此交付金ニ關シマシテ
  ハ一定ノ期間內ニ當該官廳ニ廻附スルコ
  トニナッテ居リマスカラ、此法案ガ可決ノ上
  ハ今年中······遲クモ本年中ニハ實效ヲ奏ス
  ル次第デアルト思フノデアリマス附加ヘ
  テ申シマスルガ、救護法ヲ實施ノ方ハ如何
  デアルカ、先ヅ救護法實施ヲ考ヘテハドウ
  デアラウカト云フ御論モアリマスルガ、成
  ル程是モ必要ヲ認メマス、併ナガラ何分財
  源ガサウ多クハナイノデアリマスカラ、是
  ハ考慮シテ、又相當問題モ複雜シテ居リマ
  スルカラ、是ハ此實施ハ他日ヲ期スルト云
  フ政府ノ意嚮デゴザイマス、デ財源ニ關シ
  テ申上ゲマス、數字ハ申上ゲマセヌ、此本
  年度ノ歲出節約額ト、其節約ニ伴フ歲入ノ
  減少額ト、公債募集豫定額ノ減少トヲ對比
  イタシマシテ、其差ガ本年度ニ於キマシテ
  二千有餘万圓出ルノデアリマス之ヲ財源
  トスルノデアル而シテ將來ニ關シテハ
  左程財源ニ窮乏ヲ感ジヌ、安心シロト云フ
  ヤウナ政府ノ意嚮デアリマス、次ニ支出ノ
  金額ニ付テ申上ゲマス、此法律第二條ノ國
  庫負擔ノ支出金額ハ是ハ唯七千五百万圓ヲ
  下ラザルモノトスト、斯ウアリマシテ、何
  ニモ法律ニ依ラヌデモ是ハ增額シテ宜イヤ
  ウニ思ハレルト云フ論モ出ルノデアリマス
  ガ、從來ハ此金額ノ增加每ニハ法律ヲ必ズ
  更ヘテ居リマス、嘗テ或政府ノ時ニ法律ヲ
  改メマセヌデ、金額ノミノ增加ヲ致シテ豫
  算ニ組ンダコトガゴザイマシタ、併シ其時
  ハ衆議院ヨリ法律案ヲ提出セラレマシタノ
  デ、結局、結果ニ於テハ法律ト豫算ノ伴フ
  コトニナッテ居リマス、唯此時ニ限ッテ豫算
  ダケ出タコトガアルト云フコトヲ申上ゲテ
  置キマス、又此金額ハ下ラザルモノトシテゴザ
  イマスルカラシテ、最少ノ限度ヲ示シテ居
  ルノデアリマス、故ニ法律ヲ改メマセヌデ
  モ金額ノ增加ハ爲シ得ナイコトハゴザイマ
  セヌガ是ハ政治道德ノ上デハ爲サヌ方ガ
  當然デアルト云フ考へデアリマス、ソレカ
  ラ此法案ト······本案ト豫算關係、法律案ト
  豫算トハ嘗テハ本院ニ於テ不可分論ガ喋々
  セラレマシタ、併シ近來ハ可分論ガ成立チ
  マシテ、本院ニ於テモ法律案ト豫算トハ可分
  デ宜イト云フコトニナッテ居リマス、ソレデ
  ハ此法案ガ否決ニナリ或ハ審議未了ノ場合
  ニハ豫算ヲドウ扱フカト云フコトガ問題
  ニナルノデアリマス、ガ法案ガ假ニ否決、
  或ハ審議未了ニナリ、豫算ガ通過スルト云
  フ場合ニハ此政府ニ於テハサウ云フ變
  態ガアレバ、豫算ハ實行シナイト云フ明言
  ガアッタノデアリマス、是ハ一方ニ於キマシ
  テハ、政治道德ノ上ヨリ、他ノ方ニ於テハ
  一箇年ダケノ協賛デハ明年度ノコトガ甚ダ不
  安デアルト云フ理由モアリマスノデ、豫算
  ガ成立イタシマシテ、本案ガ未了、或ハ否
  決ノ場合ニハ、豫算ヲ實行セヌト云フコト
  ヲ斷然申サレタノデアリマス、次ニ申上ゲ
  タイノハ、文政審議會ト本案トノ關係デア
  リマス、此度ノ增額ニ付テハ文政審議會ニ
  諮問サレナカッタノデアリマス、併ナガラ此
  千万圓ノ增加ハシマシテモ、地方費トノ割
  合ニ於テハ從來ト餘リ變ッテ居リマセヌ、僅
  カ三分カ四分ノ增シデアリマス、又從來モ
  文政審議會ニカケナイ例モゴザイマシタノ
  デ、今度モ旁〓カケナカッタノデアリマス
  是等ガ主ナル質問デアリマシテ其他ノコ
  トハ單ニ箇條ダケヲ申上ゲテ置キマス、私
  立學校補助ノ件、外國ノ例示ノ件、師範學
  校卒業生ノ過剩ノ事、校舍整理、就職者及
  退職者ノ件、ソレカラ負擔金ノ使途町村
  ニ對スル配當ノ割合ノ變動小學校長ノ俸
  給全部ヲ國庫支辨ニスルノ件、〓員ノ俸給
  不拂ト初任給料及俸給令ニ關スル件ト云フ
  ヤウナコトガ細イ點デ質問ヲセラレタノデ
  アリマス尙ホ附加ヘテ昨年ノ夏、地方
  官ニ對スル通牒ノ中デ地方財政整理ノ件
  ト豫算額一割五分減ノコトモ通達イタシ
  マシタソレニ對スル質問、又法令ノ條文
  ニ關スル質問等モ出タノデアリマス、是ハ
  省略イタシテ置キマス尙ホ委員ヨリ三四
  點御注意ノ點ガゴザイマシタ、ソレハ地方
  ノ小學校校舍ノ整理統一ノ件、例ヘバ町
  村一校主義ヲ採ルカドウカ、大都市ニ於テ
  ハ小學校ノ數ガ多イ、斯ウ云フ整理ノ必要
  モアラウ、又今マデモサウデアルヤウダガ、
  當局大臣ノ如キハ殊ニ小學校ヲ見ナイヤウ
  デアル大學校アタリハ巡覽サレルヤウダ
  ガ、小學校アタリハ一向御存知ナイ、ドウ
  モ文部省ノ高位高官ノ方モ大臣同樣ニ小學
  校ヲ見ナイヤウニ思フガ、是ハ氣ヲ付ケタ
  ラ宜カラウト云フ御小言ガアリマシタ尙
  ホ此法案ニ對シテ色ミ世評世論モアリ、新
  聞紙ノ論調モアルガ、是等モ考究シテ見タ
  ラ宜カラウ、ソレカラ尙ホ本法制定ノ精神
  ニ反シテ、他ノ方面ニ使フコトガ無論アル
  マイト思フガソレニ使ハセナイヤウニ何
  トカ監督方法ヲ設ケタラ宜カラウト云フヤ
  ウナ御注意モゴザイマシタ是等ハ御注
  意ノ點デゴザイマス大要申上ゲマシタヤ
  ウナ譯デ委員會ニ於キマシテハ前段ニ
  申上ゲタ附帶決議ト共ニ、本案ヲ可決シタ
  ヤウナ次第デアリマス、簡單ナガラ是デ報
  告ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=53

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• 054・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ第二讀會
  ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=54

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• 055・〓〓〓〓

  ○　議長(公爵德川家達君)御異議ナイト認
  メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=55

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• 056・〓〓〓〓

  ○　子爵〓岡長言君直ニ本案ノ第二讀會ヲ
  開カレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=56

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• 057・〓〓〓〓

  ○　子爵池田政時君贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=57

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• 058・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　〓岡子爵ノ御動
  議ニ御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=58

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• 059・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=59

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• 060・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　本案全部ヲ問題
  ニ供シマス原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=60

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• 061・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス
  子爵〓岡長言君直チニ本案ノ第三讀會
  ヲ開カレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=61

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• 062・〓〓〓〓

  ○　子爵池田〓時君贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=62

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• 063・議長(公爵徳川家達君)

  ○議長(公爵徳川家達君)　〓岡子爵ノ動議
  ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=63

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• 064・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=64

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• 065・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　第二讀會ノ決議
  通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 066・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=66

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• 067・〓〓〓〓

  ○　議長(公爵德川家達君)再ビ議事日程變
  更ノコトニ付テ御諮リ致シマス中小產業
  者竝失業者ノ救濟ニ關スル建議案ノ會議ヲ
  此際開キタイト考ヘマス、御異存ゴザイマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=67

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• 068・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス建議案ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサ
  セマス
  〔小林書記官朗讀〕
  中小產業者竝失業者ノ救濟ニ關スル建
  議案
  右貴族院規則第六十九條ニ依リ提出候也
  昭和五年五月十三日
  發議者
  伯爵林博太郞伯爵酒井忠
  子爵靑木信光子爵前田
  子爵立花種忠子爵西尾嘉忠利吉方定克
  小松謙次郞內田
  伊澤多喜男南弘
  倉知鐵吉菅原通敬
  田所美治大津淳一郞
  藤山雷太山崎龜吉
  絲原武太郞
  贊成者
  伯爵松木宗隆伯爵柳原義光
  伯爵松平賴壽伯爵小笠原長幹
  子爵稻垣太祥子爵高倉永則
  子爵梅小路定行子爵松平
  子爵冷泉爲勇平時伊藤健康佮俊金直筆直立
  子爵牧野忠篤子爵柳生
  子爵白川資長子爵池田政時
  子爵西大路吉光子爵〓岡長言
  子爵野村益三壬野上官
  子爵今城定政子爵吉田
  子爵本多忠鋒子爵藪
  子爵秋月政種賢英子子爵爵片桐隆貞
  子爵米津八條
  子爵曾我祐邦修己 免費 一方 正 規 定 請 問 印
  子爵花房太郞子子子爵 爵 爵秋大井元浦伊春兼直
  子爵牧野成
  子爵伊東二郞丸子爵裏松
  子爵森俊成子爵戶澤
  子爵岩城隆德子爵梅園
  子爵舟橋〓賢子爵土岐章
  子爵瀧脇宏光子爵綾小路護
  男爵北里柴三郞富谷鉎太郞
  佐藤三吉水上長次郞
  男爵西紳六郞眞野文一
  犬塚勝太郞志水小成郎
  受注 。內田重
  岡平平あ〓
  坂西利八郞川村
  男爵黑川幹太郞塚本長鐵清竹之康男治治進
  男爵北河原公平桑山
  男爵赤松範男爵池田
  原保太郞高橋琢也
  中村純九郞石渡敏
  竹越與三郞山之内一次
  山岡萬之助室田幸義平文
  安樂兼道湯地
  西野八田嘉明
  馬場馬越恭平
  內藤久寛
  今井渡邊千代三郞
  森平兵衞
  澤山精八郞
  林平ニュース 株式会社根津嘉一郞
  藤安辰次郞
  貞上郞〓助
  田村新吉奧田榮之進
  齋藤喜十郞磯貝浩
  金杉英五郞西本健次郞
  名取忠愛高橋源次郞
  花井卓藏菅澤重雄
  北村宗四郞森廣三郞
  八木春樹大城兼義
  津村重舍五十嵐甚藏
  橫山章濱口儀兵衞
  風間八左衞門小林暢
  濱平右衞門大谷尊由
  鳴海周次郞本間千代吉
  森田福市八馬兼介
  貴族院議長公爵德川家達殿
  中小產業者竝失業者ノ救濟ニ關スル建議
  近時經濟界ノ不況深刻ヲ加へ中小產業者
  ノ疲弊甚シク失業者亦激增シ誠ニ深憂ニ
  堪ヘサルモノアリ依テ政府ハ之カ救濟防
  止ニ關シ速ニ一層適切有效ナル對策ヲ講
  セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=68

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• 069・伯爵林博太郞君

  ○伯爵林博太郞君　只今上程セラレマシタ
  中小產業者竝ニ失業者ノ救濟ニ關スル建議、
  此建議案ノ說明ヲ簡單ニ致シマス、誠ニ此
  憂慮スベキ現象ニ直面イタシマシタノデ
  私共ハ此際最モ眞面目ニ且ツ愼重ニ本建議
  案ヲ提出イタシマシタ次第デゴザイマス
  近時、中小工業者竝ニ產業者ガ日ニ幾十ト
  門戶ヲ閉シ或ハ其職業ヲ失フト云フヤウナ
  狀況ニナッテ居ルコトハ、皆サンノ旣ニ御承
  知ノコトト存ジマス次第デアリマス、此二
  月中ニ於ケル全國ノ各職業紹介機關ヲ通ジ
  テノ統計ニ依リマスルト云フト三十五
  万三百七十二人ニナッテ居ルサウデアリマ
  ス、日傭勞働者ガ十三万人、給料生活者六
  万六千人、其外ノ勞働者ガ十五万人モアル
  ノデアリマス、其内東京市八万六千人、大
  阪ガ三万二千人、神奈川、福岡、北海道、
  兵庫縣、愛知縣等之ニ續イテ居ルノデアリ
  マス、實ニ昨年九月ノ統計、尤モ是ハ明ナ
  ルモノデハナイサウデアリマスガ、社會局
  カラノ發表ニ依リマスルト二十九万二千
  人モアルノデアリマスルガ、是ガ漸次增加イ
  タシマシテ、今日デハ三十五万人ト云フコ
  トニナッタヤウデアリマス、要スルニ本年
  一月ヨリ二月マデニ三万五千人モ增加シテ
  居ルト云フヤウナ狀況デ、誠ニ悲シムベキ
  コトデゴザイマス、警視廳ノ管下ニ於ケル
  四月ダケノ統計ヲ見マシテモ、是ハ工場ノ
  話デアリマスガ、小工場ガ九百四十五工場
  ガ閉鎖サレテ、失業シタル者二万人、之ヲ
  日割ニシマスルト每日三十工場カ閉鎖サレ
  テ、失業者ガ五百人ヅツ殖エテ行クト云フ
  コトニナッテ居ルノデアリマス、中ニハ工場
  主其人ガ夜逃ゲヲスルト云フヤウナ狀況
  デ失業者ハ必シモ勞働者ノミニ限ラナイ
  ノデアリマスルコトハ諸君ノ今日目前ニ
  御覽ニナッテ居ル所ノ現象デアリマス、ソコ
  デ東京市ニ於キマシテハ或ハ失業保險ヲ
  致スコトニ相成リ警視廳ニ於テハ失業相
  談部ト云フモノヲ作ルコトニ相成リ、尙又
  政府ニ於テモ種々此點ニ付テハ考慮シテ居
  ルト云フコトハ豫算委員會總會等ニ於テ
  承ハッタノデゴザイマスルガ、併ナガラ當局
  ガ之ニ費スト云フコトニナリマスノハ、僅
  ニ二千九百万圓ト云フコトデアリマシテ
  甚ダ誠ニ微々タルモノデアッテ、到底斯クノ
  如キ趨勢ヲ挽囘スルダケノ經費ハ不足デア
  ルト云フコトハ明瞭ナコトデゴザイマス
  所デ、今日不景氣ガ世界的デアルト云フコ
  トヲ當局モ言ハレテ居リマスガ、或ハサウ
  デゴザイマセウ世界大戰ノ結果トシテ是
  ハ自然ノ一時的現象デアルコトハ巳ムヲ得
  ナイコトデアリマス私ガ昨年歐米ヲ廻リ
  マシタ時ノコトヲ一言加ヘテ置キタイト思
  フノデアリマスルガ歐羅巴ハ此戰爭ニ於
  テ多數ノ靑年ヲ失ッテ居リマス、從テ人口ノ
  上ニ於テハ我國ト其調節ノ方法ガ餘程變"
  タ現象ヲ持ッテ居ルノハ明カデアリマス、併
  ナガラ矢張リ不景氣ガ襲來シテ居ルノデア
  リマスルガ、先ヅ英國ノ狀況ニ付テ簡單ニ
  申シテ見マスルト云フト英國モ百万人バ
  カリノ失業者ガアルヤウデアリマスデ私
  ガ現在聞キマシタ一ツノ現象ヲ申上ゲル
  ト、其中デ、職業ガ全ク無イ者ハ一日一志
  卽チ五十錢ノ金ヲ當局カラ貰ヘルノデアリ
  やく、是ガ爲ニ惡イ方カラ申シマスルト云
  フト、少シデモ仕事ヲスレバ其賃銀ガ貰へ
  ナイ、仕事ヲシナイ方ガ寧ロ貰ヘルト云フ
  ヤウナ風ガ起ッテ居ルヤウデアリマス、併ナ
  ガラ英國ノ誠ニ好都合デアルコトハ其土
  地ニ於キマシテハ殆ド全世界ニ亙ッテ居ル
  植民地ヲ持。シテ居リマス、英吉利ニハ夜ガナ
  イト云フ位ニ植民地ヲ持ッテ居ルノデアリ
  マス尙且ツ一箇年ニ入ル亞弗利加其他カ
  ラ來ル所ノ金ト云フモノガ六億ヲ算スルノ
  デアリマス米國ノ工業、獨逸ノ商工業ニ
  壓迫セラルル所アリト雖モ此大ナル金ノ
  輸入ノアルト云フコトハ非常ナ强味デア
  ルト思フノデアリマス、是ハ日本ノ失業ト
  云フコトトハ餘程考ヘル所ヲ違ヘテ考察シナ
  ケレバナラヌ現像デアルト思フ又獨逸ノ
  狀況ヲ見マスト云フト、御承知ノ如ク是ハ
  賠償金ノ爲ニ隨分苦メラレテ居ルノデアリ
  マス、併ナガラ獨逸ノ政府ニ於キマシテハ
  出來ルダケノ合理化ヲ產工業ニ致シテ居〃
  テ出來ルダケノ救濟ヲヤッテ居リマス、是
  ハ此戰爭以前ヨリシマシテ、筋肉勞働者ニ
  對シマシテハ特ニ此夜間ノ道路修繕其他
  ニ依ッテ職業ヲ與フルコトニ努メテ居〃
  タコトハ御承知ノ通デアリマスルガ、
  戰後ニ於テハ尙更努力ヲシテ居ルノデ
  アリマス、併ナガラ私ガ目撃シタ一ツノ
  現象ヲ申上ゲテ見レバ伯林市ノ東ノ
  方面ニ於キマシテハ、恰モ衆議院ノ傍聽
  人ガ通用門前ニ於ケルガ如ク、二列ニ
  ナッテ貧困者ガ市カラノ食糧ヲ得ムトシテ
  集マッテ居ル狀況ハ、實ニ悲慘ナモノデアツ
  タノデアリマス、是ガ決シテ一箇所ヤ二箇
  所デハアリマセヌ、斯ノ如ク合理化ヲサレ
  テ、サウシテ其標本的ニ商工業ガ好ク行ッテ
  居ルト云フ獨逸デスラ、斯ノ如キ狀況ヲ呈
  シテ居リマスルガ、併シ獨逸ハ矢張リ日本
  ト違ヒマシテ前ニ百年戰爭アリ、三十年戰
  爭アリ、今囘ノ歐洲戰爭ガアッテ、獨逸ノ歷
  史ハ勝フタ歷史ヨリハ敗北ノ歷史ヲ有ッテ進
  メラレテ居ル從テ忍耐、勤勉ト云フコト
  ニ於テハ歷史的ニ辛酸ヲ甞メテ居ルノデ
  アリマシテ、是等モ日本ノ狀況トハ違ヘテ
  見ナケレバナラナイダラウト思フノデアリ
  マく、デ、佛蘭西ニハ失業者ト云フモノハ
  先ヅ無イ、亞米利加ニモ先ヅ無イト言ッテ宜
  シイノデアリマス、尙且ツ亞米利加ニハ土
  地ガ廣漠デ、尙ホ五億人ノ人口ガ殖エテモ
  チットモ差支ナイダケノ廣イ土地ヲ有〃テ居
  ル、天然資源ヲ有ッテ居ルノデアリマス、斯
  ウ云フ狀況デアリマスルノデ、差當リ此問
  題ヲ解決スルニ際シマシテハ私ハ此勤勞
  主義ニ依リマシテ我國ノ產業界ヲ合理化シ
  テ行クト云フコト是ガ一ツノ重大ナル解
  決ノ方法デアラウト思フノデアリマスソ
  レニ依ッテ失業ヲ救濟シナケレバ、他ニ方法
  ハナイダラウト思フノデアリマスノミナラ
  ズ、英國ニ於テ今日行ッテ居ル如ク遊民ヲ救
  濟スルト云フヤウナコトハ我國ニ於テハ
  斷ジテ輸入ノ出來ナイコトデアラウト思フ、
  我國ニ於キマシテ、失業ノ救濟ト云フコト
  ハ何處マデモ勤勞主義ニ依テテ民民ヲ
  ズ、國民ガ適材適所ニ其職業ヲ遵守シテ、
  以テ國家ノ爲ニ有用ナル人物トシテ活動ス
  ルヤウニト云フ意味ニ於テ、失業ヲ救濟シ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス人
  動:モスレバ合理化ニ依ッテ此年々九十万
  人ヲ增加シツヽアル日本ニ於キマシテハ
  却テ失業ヲ增加スルノデハナイカト云フコ
  トヲ言フ人ガ往々ニシテアリマス、併ナガ
  ラ世界旣ニ合理化ニ依ッテ各國貿易ヲシテ
  居ルノデアル、日本ノミ合理化ヲシナイデ、
  人口ガ增加スルガ爲ニ之ヲ等閑ニ付スルト
  云フコトハ、却テ近キ將來ニ於テ大ナル弊
  害ヲ來スコトデアラウト私ハ思フノデアリ
  じい、ノミナラズ金ノ解禁ニ於ケル政府ノ
  說明ト同ジク、合理化ハ一時失業者ヲ或ハ
  殖スカモ知レマセヌガ長キ將來ニ亙リマ
  シテハ却テ失業者ヲ減ズル所ノ方法デアラ
  ウト思フノデアリマス、從テ物價ガ安クナ
  リマスカラシテ、其安イ所ノモノハ勞働者
  其人モ買フコトガ出來ル今日農業者ニ向
  ヒマシテ、ドウモ今日ノ農民ハ絹ヲ著ルカ
  ラ困ル、米飯ヲ食スルカラ困ルト云フヤウ
  ナコトヲ言フ人ガアリマスガ是ハ合理化
  ノ今日ニ於キマシテ當リ前ノコトデアリマ
  ス寧ロ是ハ喜ブベキ現象デアル、富ノ分
  配ガ至ル所圓滿ニ行ハレナガラ失業救濟
  ヲスルコトガ出來レバ是程宜イコトハナイ
  ト考ヘルノデアリマス、サウ云フ意味ニ於
  キマシテ私ハ多言ヲ憚リマスガ、合理化ハ
  却テ一方ニ於テ此職業ヲ失ヘル者ヲ救濟ス
  ルコトガ十分ニ能ク出來ルコトデアラウト
  思ヒマス之ニ加フルニ矢張リ勤勞主義ノ
  夜間中學夜間大學ト云フヤウナモノヲ造
  リ又中學ノ延長ト云フヤウナコトモ行ヒ
  或ハ英國ニ於テ數十年前ヨリ起クテ居ル所
  ノ「トインビーホール」其他社會〓育事業
  職業指導事業ト云フヤウナコトヲ之ニ加ヘ
  テ適材ヲ適所ニ配當シテ行クト云フヤウ
  ニ努メル事ガ必要デアリマセウシ、又〓育、
  特ニ職業〓育ノ中ニ、學校ノ中ニ於テ職業
  ノ指導ト云フヤウナコトヲ行フト云フコト
  モ私ハ必要デアリマセウ、ソレ等ノ事ハ我
  國民トシテ十分ニ努力シナケレバナラナ
  イ商工業者モ努力シナケレバナラナイ
  又政府モ之ニ向。ッテ努力シナケレバナラナ
  イト云フ意味ニ於テ我〓ハ此建議案ヲ出シ
  タ次第デアリマス我ミハ眞ニ此悲觀スベ
  キ現象ニ直面シテ居リマスル所カラシテ
  誠ニ是等ノ失業者ニ同情ヲシテ玆ニ建議案
  ヲ出シタ次第デアリマス、デ元來歐羅巴ニ
  於ケル此失業ノ系統ヲ見マスルト云フト
  是ハ長イ歷史ヲ有フテ居リマシテ、生活難ト
  云フコトト失業トガ今日デハ分離シテ居
  ルノデアリマス御承知ノ如ク職業ガアル
  ト云フコトハ必シモ生活シ得ルト云フコ
  トデナイノデ、此點ハ或ル意味カラ見タラ、
  或ハ進ンデ居ルトモ見エマセウ、或ル意味
  カラ見タラバ其處マデ分離サセタノハ
  爲政者ガ屆カナカッタト言ハレルカモ知レ
  マセヌ、然ルニ日本ノハ失業卽チ生活難ト
  云フコトト同一ノモノニナッテ居ル程度ニ
  在ルノデアリマス、ドウカ之ヲ生活難ト云
  フコトト分離シテ、二ツノ問題トシテ解決
  スルヤウナ時代ノナイヤウニ此際十分ニ
  徹底シテ將來ノ失業ヲ救濟シタイト思フノ
  デアリマス玆ニ申シマスル此失業ノ方面
  ノミカラ申シマスレバ、精神的勞働者ノ失
  業モ這入ッテ居ルノデアリマス、漁業者モ這
  入ッテ居リマス農業者モ這入ッテ居リマス、
  商人モ這入"テ居ル、有ユル方面ノ階級ニ於
  テノ失業ヲ論ジタ次第デアルノデアリマ
  ス、デ我國ノ此商工業ノ方面ハ旣ニ御承
  知ノコトデゴザイマス、漁業ノ方面ニ於キ
  マシテモ、殊ニ此方面ニ付テハ議會ニモ
  出タノデアリマスルガ、此北洋漁業、又日
  魯ノ漁業權問題等ニ於キマシテ、之ニ關聯
  シテ失業者ガアッタト云フコトハ、我〓耳ニ
  シテ居ルノデアリマス、單ニ日魯漁業バカ
  リデナク、日本ノ漁業全體ガ、色ミノ方面
  カラ迫害ヲ受ケテ失業者ガ起リツツアルト
  云フコトモ、大ナル問題デアラウト思フノデ
  アリマス、御承知ノ如ク漁業ニ從事シテ居
  ル所ノ者ハ多ク貧困者デアリマス、而シ
  テ是ガ魚ノ取レル時モアリ、取レナイ時モ
  アル又其結果ト致シマシテ、金融ト云フ
  コトトガ必要デアリマス、其金融ヲシテ吳
  レタ者ガ、近時段々社會ノ緊縮ノ爲メ、財
  界ノ緊縮ノ爲ニ、此方面ノ救濟ヲ受ケルコ
  トガ出來ナクナッテ來タコトト、一方ニハ魚
  ガ少ナクナッテ來タト云フコトモアリマス
  今日ハ大ナル資本ヲ下シテ、サウシテ「ト
  ロール」船トカ、或ハ石油發動機船デナケ
  レバ、鰯モ鰹モ遠クヘ行ッテ取レナクナッテ
  來テ居ルカラ、之ニ對シテモ餘程資金ヲ融
  通シテヤラナケレバナラヌノニ其方面ニ
  於テモ漸次失業ガ出テ來ルト云フコトハ
  誠ニ悲シムベキ現象デアリマス、農業ノ方
  面ニ於テモ、小作人對地主ニ付キマシテモ、
  深刻ナル事例ガアルノデアリマスカラ、是
  ハ說明スルニ及バナイ程御承知ノコトデア
  ルト思ヒマス、要スルニ種々ノ方面カラ之
  ヲ救濟シテ行カナケレバナラナイト思ヒマ
  ス、ソレカラ失業ト云フコトハ私ハ嚴シ
  ク定義ヲ與ヘナイ方ガ宜カラウト思フ失
  業ト言ヘバ今マデ職業ヲ有ッテ居クタ者ガ
  財界ノ變動其他ニ因ッテ俄ニ職ヲ失ッタノ
  ガ是ガ狹イ意味ノ失業デアリマス併ナ
  ガラ學校ヲ卒業シテモ、ドウシテモ職業ガ
  ナイト云フコトハ學生ハ入學スル前カラ
  卒業シタラバ職ニ就カムトスル意思ヲ持ツ
  テ這入"テ居ル、其意思ガ飜サレテ職業ガナ
  イト云フコトハ、矢張リ其業ガ失ハレタノ
  デアルカラ、是モ失業ノ延長トシテ私ハ差
  支ヘナイト思フ尙ホ現在ノ職ヲ失フト云
  フコトノ意味ヲ、尙ホ將來ニ及ボシマシテ、
  近キ將來ニ職業ヲ失ハムトスル者モ、矢張
  リ此問題ト關聯シテ〓究シナケレバナリマ
  セヌ、是モ矢張リ準失業トシテ〓究シナケ
  レバナラヌト思フ、サウ云フ意味ニ於キマ
  シテ、筋肉勞働ヨリ精神勞働ニ至ルマデ
  又中小工業者ガ職ヲ失ハヌマデモ、其疲弊
  ガ甚ダシキニ至ッタ以上ハ、之ヲ救濟スル
  斯ウ云フ意味ニ於キマシテ、當面ノ現實ノ
  問題ニ鑑ミマシテ、之ニ同情ヲシテ遊民ヲ
  作ラズ共存共榮、何處マデモ此私利ヲ博
  スルト云フヤウナコトカラ向上サセテサ
  ウシテ此自然ノ競爭カラ順次精神的ノ共存
  共榮ニ向ッテ進ムヤウニ、設備ヲシテ戴キタ
  イ、出來ルダケノ方法ヲ講ジテ戴キタイト
  云フコトヲ建議シタ次第デアリマスヽ先程
  モ申上ゲマシタ通リ、是ハ單ニ政府ノミニ
  望ムモノデナイ、我ミモ之ニ對シテ何處マ
  デモ出來ルダケノコトヲ致シマスカラ、政
  府ニ於カレマシテモ出來ルダケノコトヲシ
  テ戴キタイ、斯ウ云フ意味ニ於キマシテ本
  建議案ヲ提出シタ次第デゴザイマス、ドウ
  カ滿堂ノ御贊成ヲ願ヒタイト思フノデゴザ
  イマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=69

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• 070・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　阪谷男爵
  〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=70

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• 071・阪谷芳郎

  ○　男爵阪谷芳郞君只今ノ建議案ニ付キマ
  シテハ實ハ誠ニ大切ナ建議案デゴザイマ
  シテ、此文面ダケヲ見マシテハ別ニ疑ヒモ
  ナイヤウデアリマスガ、私ハ此建議案ヲ受
  取リマシテカラ、マダ時間ガゴザイマセ
  ヌ、十分ニ發案者ニ交涉スル暇モナクモウ
  議ニ上ッテ居リマスノデ、止ムヲ得ズ當席カ
  ラ御質問ヲ致シテ置キタイノデアリマス
  實ハ此現在ノ不景氣ニ付キマシテハ誠ニ發
  案者ト同感デアリマス殊ニ私ハ······今度
  ガ二度目デアリマス、御承知ノ通リ明治十
  五年カラ二十二年ニ掛ケテノ兌換制度ヲ實
  施イタシマスルマデ卽チ不換紙幣ヲ兌換
  紙幣ニ直シマシタ時ガ非常ニ不景氣デアソ
  タ實ニ驚クベキ不景氣デアッタ、寧ロ表面
  ニ現レタ不景氣ハ現在ヨリモ甚シイ、日本
  橋通、銀座通ハ貸家、賣家ト云フ札ガズット
  殆ド一軒置キ位ニ出マシタ、又京都ノ寺町
  通大阪ノ心齋橋通ト云フヤウナ繁昌ノ所
  デモ、矢張リ貸家、賣家ト云フ貼札ガ殆ド
  一軒置キニ出タト云フ位ナ非常ナ不景氣デ
  アリマシタ、當時ソレヲモ忍ンデ兌換制度
  ヲ實施斷行シタ、九月一日カラ實施斷行シ
  テ、ソレカラ一兩年經ッテ景氣ガ囘復イタシ
  マシタ、今度ノ金輸出ヲ解クト云フコトハ
  是ハ其以來ノムヅカシイコトデアルノデ
  アル、之ヲ斷行セラレタ當局ニハ私ハ深ク
  同情ヲ表スルノデアリマス同時ニ誠ニ此
  困ッタ經濟上ノ結果ガ現レルデアラウト云
  フコトヲ豫想シテ居リマシタガ、果シテ現
  レテ來タノデアリマス是ハ金輸出解禁バ
  カリデハナイ、歷代ノ內閣ガ放漫政策ヲヤッ
  タ崇リモ加ハッテ居ルノデアリマスガ、兎ニ
  角不景氣デアル、ソレデ之ニ付テ建議ガ出
  テ政府ニ其救濟ノ途ヲ講ジロト云フコト
  ハ誠ニ御尤ナコトデアリマスガ、唯斯カル
  場合ニ注意ヲシナケレバナラヌノハ遊民
  惰民ヲ奬勵スルト云フコトデアリマス其
  事ヲ私ハ建議案ヲ見タ時ニハ大變心配イタ
  シタ、所ガ只今委員長カラノ御說明ニ依リ
  マスレバ······提案者カラノ御說明ニ依レ
  バ遊民惰民ハ是ハ深ク戒メナケレバナラ
  ヌト云フコトノ御言葉ガアリマシタノデ
  大イニ私ハ安心シタノデアリマスガ、畏多
  イコトデゴサイマスケレドモ、陛下ノ御詔
  勅デアルトカ云フヤウナコト又貴族院ノ
  決議ト云フヤウナコトニハ餘程此點ニ付
  テハ言葉ヲ愼マナケレバナラナイ、例ヘバ
  地震ノ······大地震ノ後デ精神作興ノ御詔勅
  ヲ拜シマシタルコトハ非常ニ國民ニ元氣
  ヲ與ヘタ、ソレデ只今貴族院ガ此決議ヲス
  ル場合ニハ此國民ノ元氣ト云フモノヲ失
  ハセヌヤウニ注意シナケレバナラヌ、前申
  シマシタ兌換紙幣ノ囘復ヲ圖リマス時ニモ、
  非常ナ緊縮政策、各省ノ豫算ヲ三箇年大藏
  省ガ押へ付ケテシマッタ三箇年据置キ
  ト云フ、今日カラ申セバ誠ニ妙ナコトヲヤッ
  タモノデアリマスガ、三箇年間定額据置
  ト云フヤウナコトヲ致シマシテ、又外國品
  ノ使用ヲ殆ド禁ズルトカ、實ニ非常ナル緊
  縮政策ヲ行ヒマシタ同時ニ一方ニハ國民
  ノ精神ヲ皷舞作興スル、何處マデモ此自主
  獨立、勇氣ヲ皷舞シテヤルト云フ意味ヲ、
  苟モ何カ一般ニ布告イタシマス場合ニハ
  極メテ注意ヲ致シタモノデアリマス、然ル
  ニ今日ノ此建議案ヲ見マスト、唯救濟々々
  ト云フ言葉ガアリマスノデ、是デハ政府ニ
  歎願スレバ何デモ救濟シテ貰ヘルモノカ
  ト、例ヘバ新聞ニモ能ク出マスヤウニ、東
  京市役所ノ市長ノ所ヘハドン〓〓押掛ケテ
  來テ職業ヲネダルト云フヤウナコトガ新聞
  ニ出テ居リマスガ、其人ニハ同情シマスケ
  レドモ、其志ハ大イニ戒メナケレバナラヌ、
  國民ガ皆他人ニ依賴スル、他人ノ救濟ヲ求
  メル、斯ウ云フ心ニナッタナラバ誰ガ產業ニ
  從事スルカ國家ノ精神ハ玆ニ頓挫シテシ
  マフノデアル、ソレ故ニ私ノ質問ハ此意味
  ノ言葉ヲナゼ此文面カラ落サレタノデアル
  カ、例ヘバ「誠ニ深憂ニ堪ヘサルモノアリ」
  ト云フ所ニ「是カ對策ハ各自ノ努力奮勵ニ
  俟ツハ勿論ナルモ」ト云フ一句ヲ御入レ下サ
  イマシタナラバ、貴族院トシテ誠ニ體ヲ得
  タ建議案ニナリハセヌカト思フノデアリマ
  スガ是デハ委員長ノ御說明ヲ聞イタ人
  ハ委員長デハアリマセヌ提案者デア
  リマス、提案者ノ說明ヲ聞イタ人ハ遊民····
  イヤ惰民ヲ戒メルト云フコトハ耳ニ殘リマ
  スガ之ヲ讀ム幾千萬人ノ人ハ何ト考ヘマ
  セウ、恐クハ誤解ヲ與ヘハシナイカ貴族
  院トシテ甚ダ遺憾ナ建議案デアルト私ハ思
  フノデアリマス前以テ此コトハ交渉ノ餘
  地ガアリマスト、御交渉申上ゲタカッタノデ
  アリマスガ、只今トナリマシテハ甚ダ修
  正案ヲ提出イタシマスノモ旣ニ議場ニ於
  テ混雜ヲ來スノ虞ガアリマスノデ、若シ提
  案者ノ方デ御修正下サッタナラバ、私ハ大變
  ニ仕合セニ思フノデアリマス、ソレハ唯希
  望デアリマスガ、何ガ故ニ此大事ナ文句ヲ
  脫落ナサッタカト云フコトヲ御質問申上ゲ
  テ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=71

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• 072・林博太郎

  ○　伯爵林博太郞君發案者ノ一人ト致シマ
  シテ一言申上ゲタイト思ヒマス、只今阪谷
  男爵ノ仰セラレマシタコトハ誠ニ御尤モデ
  ゴザイマス、併シ尙ホ其外ニ具體的ニ內容
  ヲ申上ゲレバ色ミ言ハナケレバナラヌコ
  トガ多々アルノデゴザイマス、失業ノ問題
  ハ人口增殖トモ關連スルシ、社會政策ノ中
  ニ於テ種々ノ問題ガアリマスノデゴザイマ
  スカラ、特ニ惰民ヲ戒メル云々ト云フコト
  ハ、此際却ッテ省イタ方ガ穩健デアラウ、其
  內容ハ賢明ナル諸君カ十分ニ御推察アルコ
  トト考ヘマシタ次第デアリマス、全部ドウ
  カ私ノ說明ニ於テ足レルモノデアルト云フ
  風ニ、御考ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=72

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• 073・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ通〓順ニ
  依リマシテ討論ニ移リマシテ發言ヲ許シマ
  ス、藤村男爵
  〔男爵藤村義朗君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=73

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• 074・藤村義朗

  ○　男爵藤村義朗君私ハ只今林伯爵ヨリ御
  提案ニナリマシタ本建議案ニ付キマシテ贊
  成ヲ表スルモノノ一人ト致シマシテ極メテ
  簡單ニ私ノ贊成ノ理由ヲ中上ゲクイト思ヒ
  やく、只今阪谷男爵ハ林伯爵ニ御質問ニナ
  リマシテ本建議案ガ些カ物足ラヌト云フ
  御意見デアリマシタ、私モ阪谷男爵同樣些
  カデハナイ頗ル此案ニハ物足ラヌノデア
  リマス併ナガラモウ此機會ヲ除キマシテ
  ハ昨今ノ時局ニ付テ申上ゲル機會ガモウ
  ナイノデアリマスルカラ此機會ヲ借リマ
  シテ、私ハ本建議案ノ趣旨ヲ斯樣ニ解釋シ
  テ贊成ヲ致シタイト思フノデアリマス、金
  解禁ノ斷行以後ニ於ケル我經濟界ハ益〓深
  刻ナル不況ヲ呈シマシテ、國民ノ經濟生活
  ハ極度ノ不安動搖ヲ感ジテ居ルノデアリマ
  ス、財界ノ前途ニハ一抹ノ光明ヲモ認ムル
  コトガ出來ナイノデアリマス實ニ未曾有
  ノ不況ニ沈淪シテ居ルノデアリマス、斯ノ
  如キ不況ノ深刻化ヲ來シマシタ所以ハツ
  ハ國際的不景氣ノ影響ニモ依ルコトデアリ
  マセウケレドモ、其主ナル原因ハ政府ガ金
  ノ解禁ヲ斷行セラルルニ當リマシテ、其時
  機ト解禁準備ノ對策トヲ誤ラレ、解禁ヨリ
  生ズル財界ノ動搖ヲ最小ノ範圍ニ限局スベ
  カリシモノヲ、却ッテ之ヲ增大セシメタコト
  ニ基イタモノガ多カラウト思フノデアリマ
  ス、而モ政府ハ此重大ナル時機ニ際シテ
  之ガ匡救策トシテハ殆ド何等言フニ足ルベ
  キ對策ガナイ、事ノ急施ヲ要スル案件ニ付
  キマシテモ、或ハ調査〓究愼重審議ニ藉口
  サレテ荏苒日ヲ曠ウスルト云フヤウナ有樣
  デアリマス、若シ斯樣ノ儘デ推移イタシマ
  シタナラバ、國民生活ハ益〓窮迫イタシ世
  相ハ愈、險惡トナリマシテ前途誠ニ憂慮ニ
  堪ヘナイ、故ニ政府ハドウカ深ク思ヒヲ茲
  ニ致サレマシテ速カニ適切有效ナル對策ヲ
  施行サレテ、濟世安民ノ實ヲ擧グルコトニ
  努力サレタイ、ト云フヤウニ、私ハ此建議
  案ヲ解釋シテ贊成イタスノデアリマス卽
  チ過去ノ政策ノ誤マレルコトヲ指摘シ現在
  ニ對スル無策無爲ヲ責メテ將來ヲ警告シ
  タルモノト認メテ私ハ此案ニ贊成スル者
  デアリマス、本建議案ハ一見實ニ平々凡々
  日向水ヲ飮ムヤウナモノデアリマス、何ノ
  奇モナク何ノ妙モナイ、當然ノ事ヲ當然ノ
  文句デ連ネテ言現ハシテ居ルニ過キナイノ
  デアリマス、若シ之ヲ文句通リニ解釋スル
  コトデアリマスレバ會期今ヤ盡キムトス
  ル今日只今、斯ノ如キ案ヲ提出シテ態ミ會
  議時間ヲ引延バス必要ハナイノデアリマ
  ス、而モ林伯爵ヲ始メ有力ナル同僚發議者
  諸君ガ多數ノ贊成者ヲ得ラレテ、此會期
  末ニ及ビ急遽本案ヲ提出セラレマシタ所以
  ノモノハ少クトモ今私ガ述ベタル如キ趣
  旨ヲ言外ニ含メテ、政府ノ失策無爲ヲ責メ
  今後ヲ戒飭セムトスルニ出デラレタデアラ
  ウト云フコトハ容易ニ看取セラルル所デア
  リマス、由來貴族院ニ於キマシテハ、其慣
  行トシテ決シテ激烈ナル言動ニ依ッテ、政府
  ニ波瀾ヲ捲起スト云フヤウナコトハ欲シナ
  イノデアリマス、時ニハ春雨ヲ歌ウテ、阿
  古屋ノ琴責メ式ノ間責ヲ御發揮ニナッタコ
  トモアリマス、或ハ又金魚ニ「ビスケット」ヲ
  與ヘルト云フヤウナコトヲ仰セラレテ政府
  ヲ戒筋セラレタコトモアリマス、是ハ一ツ
  ノ妙味デアラウト思ヒマスケレドモ、併ナ
  ガラ私ノ如キ野人トシマシテハ斯樣ナ意
  味深長ナ手段ハ頗ル齒痒ク手緩ルク感ズル
  ノデアリマス、寧ロ是ハ是、非ハ非ト卒直
  ニ言ッテノケタイト思フノデアリマス、而シ
  テ本案ヲ見マスレバ憂慮ニ堪ヘズ云々ト
  云フコトガアル、是ノ半面ニハ政府ノ失業
  無策ヲ責メラレタ意ガ含マレテ居ルトモ考
  ヘラレル、又一層適切有效ナル對策ヲ講ゼ
  ヨト云フ、此文句モ其裏面ニハ政府ハ今日
  マデ適切ナラザル有效ナラザル姑息的對
  策ヲヤッテ居ラレタ、是デハナラヌト云フヤ
  ウナ意味モ亦含マレテ居ルノデアリマス
  併ナガラ本建議案ヲ文句通リニ解釋シマス
  しく、何人ト雖モ之ニ反對スル理由ハ見出
  シ得ナイ、林伯爵ガ仰シヤリマシタ、御說
  明ニナリマシタ範圍ダケニ於キマシテ私ハ
  全然同感デアリマス、此建議案ハドウモ今
  日ノヤウナ有樣デハ誠ニ困ル、故ニ政府ハ
  何カ一ツ適切ノ方策ヲ講ジテ努力シナケレ
  バナラヌト云フダケノ建議デアリマシテ、
  反對スベキ理由ハ少シモアリマセヌ又林
  伯爵ノ只今ノ縷々ノ御說明ヲ伺ヒマシテ
  モ、極メテ小局面、卽チ失業問題ダケニ殆
  ド限局シテ居ラレルヤウデアリマス諸君
  ハ定メテ本案ノ字句、竝ニ只今林伯爵ノ御
  說明ニ依ッテ贊否ヲ御決シニナルコトデア
  リマセウガ、私ハソレデハドウモ滿足ガ出
  來ナイ、故ニ私ハ私ノ良心ノ命ズル所ニ從ッテ
  只今申上ゲマシタダケノコトヲ諸君ノ御耳
  ニ入レテ、私ハ斯ノ如ク解釋スルト云フコ
  トヲ申上ゲテ、此案ヲ贊成スル次第デアリ
  マス、恐ラク諸君方ノ中ニ於カレマシテモ、
  私ノ申上ゲタコトニ御同感ノ御方モゴザラ
  ウカト思ヒマス、今日マデノ政府ノ對策、
  或ハ準備行爲等ニ付キマシテハ先日質問
  ノ際ニ詳シク私ヨリ私見ヲ披瀝シテ政府ノ
  御所見ヲ伺ッタノデアリマス、其當時ニ於ケ
  ル總理大臣及大藏大臣ノ御答辯ハ甚ダ遺
  憾ナガラ私ヲ滿足セシムルニ足ラナイ故
  ニ今日ニ至ルマデ尙ホ前說ト同樣ニ私ハ考
  ヘテ居リマスノデ之ヲ申上ゲルコトハ今
  日ハ差控ヘマス新屋ノ兩面ハ必ズンテーム
  物ニハ消極、
  アル、一方ニ消費節約ガアレバ一方ニハ
  何等カ建設的ノ措置ガナケレバナラヌト云
  フコトヲ、ドウゾヨク御含ミ下サイマシテ、
  今日マデノ行掛リニ拘泥サレズ、虛心坦懷
  ヨク御省慮ヲ下サレテ、此建議案ノ趣旨ヲ
  御汲ミニチリマシテ、速ニ此難局ノ打開ニ
  精進セラレテ、國民ニ安堵ヲ與ヘラレムコト
  ヲ私ハ切望スルモノデアリマス極メテ簡
  單デアリマスガ、私ノ贊成ノ趣旨ヲ玆ニ申
  上ゲテ置キマス
  〔土方寧君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=74

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• 075・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　土方君ハドウ云
  フコトデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=75

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• 076・土方寧

  ○　土方寧君此建議案ニ付テ意見ヲ述ベタ
  イト思ヒマス、極ク簡單デゴザイマスガ此
  席デ御許シヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=76

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• 077・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　反對デゴザイマ
  スカ贊成デゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=77

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• 078・土方寧

  ○　土方寧君反對デゴザイマス、極ク簡單
  デゴザイマス
  〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=78

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• 079・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　登壇ト云フ御聲
  モ聞エマスカラ、登壇セラレタ方ガ宜カラ
  ウト考ヘマス
  〔土方寧君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=79

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• 080・土方寧

  ○土方寧君　此建議案ハ先刻發議者ノ御一
  人カラ御朗讀ニナリマシテ拜聽イタシマシ
  タガ、書付ケデ戴イテ居リマセヌカラ、文
  句ハ一々覺エテ居リマセヌ覺エテ居リマ
  セヌガ、ドウモ殆ド無意味ノヤウナモノデ、
  失業者ノ救濟スベキハ論ズルマデモナイコ
  トデアッテ、政府モヤルト仰シヤッテ居ル
  出來ルダケ······誠ニ結構ダカラオヤリナサ
  イト云フダケノ話デ、意味ヲ成サヌヂヤア
  リマセヌ何カ具體的ノ策、策ヲ指示シテ
  斯樣ニ爲サッタラ宜カラウト云フナラバ幾
  分意味ガアリマスガ、出來ルダケノコトヲ
  スルト仰シヤッテ居ルノヲ、爲サイト云フダ
  ケノコトソンナ無意味ノコトヲ貴族院ガ
  麗々ト決議シテ出スト云フコトハ誠ニ詰
  ラヌコトデアリマスカラ反對デアリマス
  〔竹越與三郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=80

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• 081・竹越與三郎

  ○　竹越與三郞君私ハ此建議案ニ贊成ヲス
  ル者デアリマス、貴族院ハ世間デハ政治的
  ノ遊戯ヲスル「グラウンド」デアルト云フヤ
  ウナコトヲ言フ人モアリマス、サウ云フ時
  ニ於テ、國民ノ生活ニ今アリ〓〓ト觸レル
  所ノ此重大ノ問題ヲ討論スルト云フコト
  ハヽ貴族院ヲシテ存在ノ意味アラシメルモ
  ノデアルト思フ只今土方博士ハ政府ガヤ
  ルト云フノデアルカラ、無用デアルト言ハ
  レルガ併シ此問題ハ議會開會以來屢、本
  會議ニ於テモ豫算會議ニ於テモ討論セラレ
  テ居ルガ、我ミガ見ル如ク政府ハ此經濟上、
  工業上ノ危機ヲ重大ニ田心ッテ居ラナイノデ
  アル思ッテ居ラナイガ故ニ、之ニ對スル政
  策ガ極メテ曖昧不十分ナモノデアル、我〓
  ハ此建議ニ依ッテ政府ノ眼ヲ開イテ事態ノ
  本體ヲ認メサセヤウトスルノデアル而シ
  テ旣ニ眼ヲ開イタ所デ、玆ニ於テ初メテ政
  策ガ講ゼラレルノデアルカラ政府ニ之ヲ
  建議スル必要ガ絕對ニアルノデアル、土方
  君トハ全ク私ハ所見ヲ異ニスルノデアル、
  今朝ノ新聞ニ、安達君ハ此處ニ居ラレヌデ
  甚ダ不本意デアルガ、內務大臣ノ言葉トシ
  テ議會ニ於テ失業及產業ノ危機ヲ救ヘト云
  フガ其對策ヲ示シテ吳レル人ガナイ自
  分モ色ミ考ヘテ居ルガ方法ガナイト云フ話
  ガアル苟モ一國ノ大事ヲ擔當セラレタ御
  方ハ此危局ニ對シテ政策ガナイト言ハレ
  ルコトハ甚ダ遺憾デアル無イガ故ニ議會
  ガ知ラシテ吳レタラ宜ササウナモノダト云
  フコトデアルガ、議會ハ之ヲ〓ヘルコトモ
  アリ、〓ヘナイコトモアル併シ求メル權
  利ハアルト思フ、昔中世紀時代ニ於テハ高
  イ所ニ居シテ門戶ヲ開イテ、天下ノ識者ヲ集
  メテ、自分ハ考ヘハナイガ謹ンデ〓ヘヲ聽
  クト云フヤウナコトヲ言フ、之ヲ名ヅケテ
  賢宰相ト云ッテ居ル、今日ハ賢宰相ノ時代デ
  ハナイ、政黨ノ首領トナッテ、天下ヲ救フト
  云フ旗ヲ樹テテ居ル、其偉力ニ依。ッテ、信用
  俵ッテ内閣ニ立ッタ者ガ時局ヲ救フニ策ガ
  ナイト言ハレルニ至ッテハ驚カザルヲ得ナ
  イノデアル恐ラクハ是ハ一時ノ失言デア
  ラウト思フ、若シ失言デナカッタナラバ政治
  家トシテ道德的ニ破產ヲセラレタモノデア
  ル私ハ百戰鍊磨ノ安達君ガ、マサカニ破
  產ヲセラレタノデハアルマイト思フカラ
  敢テ是ハ窮追シナイヽ是ハ中世紀ノ思想デ
  アル、斯ノ如キ政治家デアルガ故ニ、其產
  業及經濟上ノコトヲ見ルモ、自ラ中世紀デ
  アル中世紀時代ニ於テハ政治家ガ政府ニ
  立フテ居リ、自分ノ物差デ生活程度ヲ決メテ
  號令ヲ發シテ、人民ノ生活ヲ抑ヘテ、其尺
  度ニ合セヤウトスルノデアル併ナガラ近
  世生活ガ中世生活ト違フノハ此處デアル
  近世ノ政治ハ國民ガ或程度ノ生活ヲスルト
  云フコトヲ認メテ、其生活ニ副フダケノ政治
  ヲスルノガ近世生活デアル然ルニ政府ノ
  號令ニ依ッテ生活程度ヲ下ゲ、若クハ抑ヘヤ
  ウトスルノハ今日ノ緊縮政治デアル全ク
  中世紀ニ立戾ッテ居ルノデアル、此一家ニ於
  テ子弟ヲ育テル時ニハ著物ノ丈ヲ子供ノ
  成育ニ從シテ變ヘテ行クト云フコトガ普通
  ノコトデアル然ルニ國民ノ生活ニ添ウテ
  財政其他ノ政策ヲ講ズルト云フコトヲシナ
  イデ、政府ガ先ヅ標準ヲ立テテ、此標準ニ
  合フベク國民ノ生活ヲ改メヤウト云フノハ
  中世紀ト云ハズシテ何ゾヤデアル、今日ノ
  不景氣ト云フモノハ、政治家ガ金解禁ト云フ
  コトヲ爲サレルコトハ異論ハナイガ、ソレ
  ニ附ケ加ヘテ中世紀ノ田心想ヲ出シテ色ミナ
  コトヲセラレタノガ與カッテ力ガアルノデ
  アル速カニ時局ヲ正シク見ヨト云フコト
  ガ此建議案ノ趣意デアル、目ヲ開イテ此時
  局ヲ見タナラバ此時局ノ下ニハ危險ナル
  狀態ガ存シテ居ルカラ速カニ之ヲ救ヘト
  云フノデアル林伯爵ハ惰民ヲ養成スルコ
  トヲ戒メネバナラヌト言ハレル、阪谷男爵モ
  同ジク言ハレタガ至極同論デアル政府
  ノスル所ハ何デアルカト云フト、今救濟·
  或ル方法ニ依シテ社會ヲ授產場ニシヤウト
  云フノデアルカラ是ハ惰民ヲ拵ヘルノデ
  アル、我ミハソレデハイカヌ惰民タルコ
  トヲ欲セザル者ヲシテ働カシムル機會ヲ與
  ヘネバナラヌヽ今日ハ働カントシテモ働ク
  コトガ出來ナイノデアル、中小商工業者ニ
  金ヲ貸スト言ッテモ、其金デ物ヲ拵ヘテモ賣
  レナイノデアル、賣レル機會ヲ拵ヘヽ働ク
  機會ヲ拵ヘルト云フノガ、政府ノ政策デナ
  ケレバナラヌノデアル此惰民ヲ拵ヘルコ
  トガイカヌト云フコトハ至極同論デアル
  同時ニ惰民タルコトヲ欲セザルモノヲシテ
  働カシムルノ機會ヲ與ヘテヤラナケレバナ
  ラヌト思フノデアル位ノ高イ位置ニ居ル
  人ミハ、段々社會カラ遠ザカッテ來ルノデア
  ル今日理髮店ニ於テモ汽車ノ待合ニ於
  テモ、電車ノ中ニ於テモ、此不景氣ヲ話サ
  レル時ハ其結論トシテ頗ル恐ルベキ言葉
  ガ、思ハズ總テノ人ノ口カラ出ルノデアル
  之ヲ抛ノテ置ク結果ハ重大ナル危機ヲ招ク
  ト思フカラ、政府ハ速カニ對策ヲ講ジテ貰
  ヒタイノデアル一本ノ藁ノ流レニ依ッテ其
  水ノ方向ガ分ル今ヤ社會ガドウ動カント
  シテ居ルカト云フコトハ苟クモ眞ニ國ヲ
  憂ヘル者ガ見タラ分ラネバナラヌノデアル
  カラ、此危機ト云フコトヲ頭ニ置イテ、速カ
  ニ政府ハ策ヲ講ゼラレムコトヲ希フノデア
  リマス此意味ニ於テ私ハ政府ハ速カニ此
  建議ヲ容レテ、濟シ崩シデナク、大仕掛ニ
  根本カラ一黨ノ體面ナドト云フコトヲ考
  ヘナイデ、國家ノ危機ナリト云フコトヲ眼
  中ニ置イテ大腹中ヲ以テ、政策ヲ講ゼラ
  レムコトヲ希フノデアリマス
  〔菅原通敬君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=81

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• 082・菅原通敬

  ○　菅原通敬君私ハ本建議案ニ對シテ簡單
  ニ贊成ノ理由ヲ中述べヤウト思フノデアリ
  マス其贊成ノ理由ヲ申述べルニ先ダチマ
  シテ、私ハ本建議案ノ發議者ノ一人トシテ、
  本建議案ノ趣旨ニ付テ一言申添ヘテ置キ
  タイト思フノデアリマス、先刻發案ノ趣旨
  ニ付テハ、林伯爵ヨリ詳細ニ御說明ニナッタ
  ノデアリマスカラ、之ニ對シテ私ハ何等加
  フルモノハ無イト思ッテ居ッタノデゴザイマ
  ス御覽ノ通リ本建議案ハ極メテ簡單明瞭
  デゴザイマス、所謂讀ンデ字ノ如ク、其文
  字以外ニハ何等ノ暗示モ諷刺モナク、又固
  ヨリ問責、責問等ノ意味モ含マレテ居ナイ
  ノデゴザイマス、サレバ理由書ニモ理由ハ
  本文デ明瞭ナルヲ以テ敢テ說明ヲ加ヘズト
  言ウテアル程デアリマス、此處ニ書イテア
  リマス文字以外ニハ何等ノ含蓄ハナイノデ
  ゴザイマス、然ルニ只今藤村男爵ガ本建議
  案ヲ自由ニ御勝手ニ解釋セレマシテ、恰モ問
  責案デアルガ如ク、或ハ警〓案デアルガ如
  キ意味ト解釋セラレテ、其意味ニ於テ本案
  ニ贊成スルト云フコトヲ申サレタ、而シテ
  當院ニハ其意味ニ於テ之ヲ解釋シテ居ル者
  モアルデアラウト云フコトマデ自分ニ引
  寄セラレテノ御話デアッタノデアリマス、是
  ハ甚ダシク本案ノ趣旨ヲ誤解セシムルコト
  ニナルト思フノデアリマスカラ、私ハ本案
  ノ趣旨ニハ只今申シタ通リ極メテ明瞭簡單
  ニシテ、何等サウ云フヤウナ意味ノナイト
  云フコトヲ先以テ明カニ致シテ置キタイト
  思フノデアリマスドウ云フ理由ヲ以テ藤
  村男爵ハ斯樣ナ解釋ヲ本案ニ對シテサレタ
  ノデアルカ私ハ甚ダ其心情ヲ疑フノデゴ
  ザイマス馬ヲ指シテ鹿ト云フヨリモ尙甚
  ダシキ曲解デアルト思フノデアリマス、此
  意味ヲ私ハ明カニ致シテ置キタイト思フノ
  デアリマス偖、近時經濟界ノ狀況ハ益"
  不況ニナリマシテ此中小產業者ノ疲弊、
  殊ニ失業者ノ激增ニ付テハ頗ル深憂ニ堪ヘ
  ナイノデアリマス一部ノ論者ハ今日ノ不
  景氣ハ金解禁ノ結果デアル金解禁ガ行ハ
  レザリシナラバ今日ノヤウナ不景氣ガナ
  カッタデアラウト云フコトニ說カレマシテ、
  恰モ今日ノ不景氣ヲ以テ現內閣ノ責任デア
  ルガ如キ言說ヲセラルヽ人ガアルノデアリ
  マス先刻藤村男ノ述ベラレタ中ニモ其意
  味ガアッタヤウデアリマスガ、是ハ若シ爲ニ
  スル者ノ言說デアルト致シマシタナラバ宜
  シウゴサイマスケレドモ、紳士ノ言說トシ
  テ私ハ甚ダ思ハザルノ甚シキモノデアルト
  考ヘザルヲ得ナイノデアリマス私ハ斯樣
  ノーディアンスーパーシテ問ウテ見タイト思
  若シ金解禁ト云フモノガ
  ナカッタナラバ今日ノ不景氣ガナカタモノ
  ダケノ勇氣ヲ持ッテ居ラ
  2017年7月20日私ハ金解禁ノ實行イタサレマ
  今日ノ不景氣ニモ堪ヘ得ル
  所ノ實力ヲ持ッテ居ルモノデアルト言ヒタ
  今日ハ御承知ノ通リ世界
  レギュラーシェルマ神に識しか經濟界ハ圍マ
  若シ常軌ヲ外ヅシ
  テ居ル所ノ我ガ經濟界ガ、其儘此不景氣ノ
  零園氣ノ中ニ包マレテ居ルト云フヤウナコ
  トデアッタナラバ將來ハ如何ニナッタノデ
  アラウカ、前途一層ノ暗澹ナル心配ヲ持タ
  ナケレバナラヌコトニナルダラウト思フノ
  デアリマス、故ニ私ハ寧ロ金解禁ヲヤッタ
  カラコソ、此不景氣ノ雰圍氣ノ間ニアッテ、
  堅實ナル景氣囘復ノ足場ヲ作リ得テ居ルモ
  ノデアルト申シタイノデアリマス、只今申
  シタ通リ、今日ノ財界ノ不況ト云フモノハ
  殆ド全部世界的ノモノデアルト申シテモ宜
  シイノデアリマシテ、其由ッテ來タル所ノ原
  因ト云フモノハ、頗ル廣ク且ツ深イノデア
  リマスデアリマスカラ、我ガ經濟界ノ不
  況ヲ囘復セムト致シマシテモ)我國ノ獨力
  ヲ以テ如何トモシ難イ所ノモノガ多イコト
  ハ申スマデモナイノデアリマス、今日ノ不
  景氣ノ原因ニ付テ、之ヲ國內關係ニ付テ探
  ガシテ見マシタナラバ、私ハ其一ツハ、大正
  六年ニ於ケル金輸出禁止デアルト思フノデ
  アリマス、又一ツハ、大正十二年ニ於ケル關
  東大震災デアルト思フノデアリマスヽ或ハ
  世間ノ人ハ之ニ加フルニ、大正九年ニ於ケ
  ル財界ノ大恐慌、更ニ又昭和二年ニ於ケル
  財界ノ大恐慌ト云フモノヲ數ヘテ居ルヤウ
  デアリマスケレドモ此大正九年ノ財界ノ
  大反動ト云フヤウナモノハ是ハ全ク金輸
  出禁止ノ結果ニ外ナラヌノデアリマス又
  昭和二年度ニ於ケル財界ノ大恐慌ト云フモ
  ノモ、若シ金ノ輸出禁止ト云フコトガナク、
  又關東ノ大震災ト云フモノガナカッタナラ
  バ、是ハ起リ得ナカッタモノデアルノデアリ
  マスカラ要スルニ財界不況ノ原因ト云フ
  モノハ金輸出禁止ト云フコトト、關東
  震災デアル斯ウ云フコトニ斷ジニ滿樣ナトシノ
  ト思フノデアリマス何故ハノマヲイ大
  申スカト云フトコ今タコ宜
  シタガ爲ニ種々ナル弊害ヲ生ジ一ト日シ
  不景氣ノ原因ヲ作ル三重サラト云
  諸君
  ハ既ニ御承知ノ事デアルト思フノ(昭和三年四月)日月日
  スガ
  
  ヽ
  又、
  來ルコトガ無カッタデアラウト云フコト
  私ハ斷ズルノデアリマス、
  輸出ヲ禁止シテアリマセヌヤウナコ
  川ノラテアル、財界ハ
  輸出ヲ禁止イタシマシタガ爲ニ
  增發シ金融ハ膨脹シ物價ハ騰貴シ而
  シテ放漫政策ニ陷ルヤウナ原因ヲ爲スコト
  ニナッタノデアリマスカラ、若シ金ノ輸出禁
  止ト云フモノガナカッタナラバ、斯樣ナ財界
  ノ不況ト云フモノハ免ルルコトヲ得タモノ
  デアルト私ハ信ジテ居ルノデアリマス、
  ルニ金解禁ヲシタガ爲ニ
  因ヲ爲シタルモノデアル、大、熱、大、
  ル者ガアルト云フコトハ
  得ナイノデアリマス
  年ニ於テ、金ノ輸出ヲ林止シタモノデア36.30ツ
  カト云フコトニ付テハヽ
  ニ付テ甚ダ遺憾ニ感ジテ居ッタノデアリマ
  スガ今此處ニ論述スルコトハ止メヤウト思
  フノデアリマス要スルニ本案ハ全ク此處
  ノ文字ニ現ハレテ居ルダケノ意味ニ外ナラ
  政府ニ於テハ旣ニ
  小中產業者ノ救濟ト云フコトニ
  各〓ソレゾレ施設セラルル所モアリ、
  ところ乗りあり
  WHENESHAPPEN
  フヤウナコトニ付テハ註文ヲ致サヌノデ
  アリマス、又斯樣ナ註文ヲ致スト云フコト
  ハ、本建議案ノ趣旨デモナイノデアリマス、
  何卒一層適切有效ナル所ノ對策ヲ講ゼラレ
  テ日モ速カニ景氣囘復ノ時期ノ招來ヲ
  期セラルルヤウニ御努力アラムコトヲ冀フ
  ノデアリマス其趣意ニ於キマシテ本建
  議案ニ贊成イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=82

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• 083・徳川家達

  ○　議長(公爵德川家達君)是ニテ通〓者ハ
  終リマシタ另ニ他ニ發言者モナイト認メ
  マスカラ、本建議案ニ付テ採決イタシマス、
  本建議案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  〔起立者多數〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=83

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• 084・徳川家達

  ○　議長(公爵德川家達君)過半數ト認メマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=84

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• 085・徳川家達

  ○　議長(公爵德川家達君)此際御諮リヲ致
  シタイコトハ日程第十八ヨリ第三十六マ
  デ此際議シタイト考ヘマス、御異存ゴザイ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=85

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• 086・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス日程第十八ヨリ第二十四マデノ請
  願會議
  意見書案
  軍制改革上馬產ノ保護ニ關スル件
  東京市麴町區内山下町社團法人帝國
  馬匹協會會頭理事伯爵松平賴壽呈出
  右ノ請願ハ馬匹ノ保護改良ニ對シ曩ニ當
  局ノ計畫ニ依リ近時漸ク血種ノ向上竝形
  質ノ改良等見ルヘキモノアルニ拘ラス頃者
  軍制ノ改革ニ伴ヒ軍馬制ノ改廢ト共ニ二
  33.10
  決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
  及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  牧野法制定ニ關スル件
  有效果蔬菜上海青浦青房物业管理有限公司
  國防竝產業ノ消長ニ關シ之カ振興ヲ計
  地方面ノ差がナルニドラス別所取扱いた途
  放牧及採草地ノ縮減又ハ荒廢等ニ由來
  ルモノニシテ洵ニ遺憾ナルニ依リ速二牧ス
  野法ヲ制定シ牧野ノ安定ヲ圖ラレタント
  ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
  スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
  五條ニ依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  軍人傷痍記章令中改正卽行ノ件
  廣島市中島新町平民楠原仙太郞外六
  十七名呈出
  島根縣邑智郡高原村農伊藤健市郞呈
  出
  群馬縣邑樂郡西谷田村平民野邊文藏
  外百三十九名呈出
  福島縣雙葉郡大堀村農坂本文八外十
  八名呈出
  秋田縣秋田市上米町平民藤原富藏呈
  出
  右ノ請願ハ軍人ニシテ傷痍ヲ受ケ兵役ヲ
  免除セラレタル者ハ假令傷痍ノ輕重アリ
  ト雖兵役義務ニ服シ國家ニ盡スコト敢テ
  おおきに まつまルルハ甚遺憾ナルニ依リ該記章ヲ"text "〓〓一時
  セラルルヤウ速ニ同令ヲ改正セラ
  擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
  十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  軍人傷痍記章令中改正卽行ノ件
  群馬縣邑樂郡西谷田村平民野邊文藏
  外六十七名呈出
  右ノ請願ハ軍人ニシテ傷痍ヲ受ケ兵役ヲ
  免除セラレタル者ハ假令傷痍ノ輕重アリ
  ト雖兵役義務ニ服シ國家ニ盡スコト敢テ
  軒輊ナキニ拘ラス軍人傷痍記章令ニハ軍
  人傷痍記章受領者ヲ增加恩給受給者ニ限
  ラルルハ甚遺憾ナルニ依リ該記章ヲ一時
  恩給受給者ニモ授與セラルルヤウ速ニ同
  令ヲ改正セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
  院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
  致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
  送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  航空行政統一及施設擴張ニ關スル件
  東京府豐多摩郡千駄ケ谷町士族長岡
  外史呈出
  右ノ請願ハ航空事業ニ對シテハ列强競ツ
  テノ進步ヲ圖ルニ拘ラス我邦ニ於ケル
  北京市公安局西城分局上海通用汽油配件有限公司インタイプランチノールアルシ
  航空路ノ擴張
  竝完備國際空輸ノ開始、空軍ノ擴張
  航空產業化ノ奬勵助成輕飛行クラブ設
  立ノ奬勵等適當ナル措置ヲヲセラレタシ
  トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
  擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
  十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  財團法人日本少年指導會ニ對シ國庫助
  成金下附ノ件
  東京府豐多摩郡和田堀町無職橋本勝
  太郞外二十一名呈出
  牛肉炒飯物一おおきに プラインティ
  ニ依リ同會助成金トシテ年額五萬圓宛
  ヲル國服裝ヨリ繼續下附セラレタントノ旨趣
  ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
  モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
  依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  稚內港、利尻、禮文兩島間連絡航路開
  始ノ件
  北海道宗谷郡稚内町長池野寅次郞呈
  出
  右ノ請願ハ北海道利尻、禮文ノ兩島ハ實
  ニ同道ニ於ケル寶庫ト稱セラルル水產豐
  饒ノ地ナルニ拘ラス從來運輸交通ノ不便
  西園大泊間及稚內11/19
  モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
  依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=86

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• 087・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是等ノ請願ハ請
  願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=87

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• 088・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認
  メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=88

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• 089・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　次ハ日程第二十
  五ヨリ第三十六マテノ請願會議
  意見書案
  苫前漁港修築ノ件
  北海道苫前郡苦前村商佐々木和藏外
  七名呈出
  ノ請願ハ北海道苫前郡苫前港ハ天鹽沿
  ノ良港ニシテ其ノ西端ニ突出セル暗礁
  利用シ之ヲ漁港ニ修築スルハ日本海ニ
  ニ
  36.2017
  議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  羽幌遠別間鐵道速成ノ件
  北海道苫前郡初山別村商榊原利七外
  三百七十七名呈出
  水產
  157有望ノ線路九大ニバスライス Ho座 New Can
  十五條ニ依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  長崎縣ニ高等水產〓育機關設置ノ件
  長崎縣長崎市東中町平民蜂須賀善亮
  外五名呈出
  右ノ請願ハ四面環海ノ我國ニ於テ水產業
  ノ振興ヲ圖ルハ緊要ノ急務ナルニ拘ラス
  其ノ高等〓育機關ノ尠キハ甚遺憾ナルニ
  依リ斯業ノ中樞トシテ恰當ノ地ナル長崎
  縣下ニ之カ機關ヲ速ニ設置シ以テ其ノ發
  展ニ資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
  ハ頼意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
  候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
  付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  白馬獄ヲ中心トスル國立公園設定ノ件
  長野縣長野市長丸山辨三郞外二十六
  名呈出
  右ノ請願ハ信越國境ニ在ル白馬獄ヲ中心
  トシ之ニ連ル立山、戶隱山妙高山等
  一帶ノ山脈ハ其ノ間ニ幾多ノ景勝舊蹟ヲ
  CHANGEN
  願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
  因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付
  候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  東京帝國大學農學部附屬農業〓員養成
  所獨立ニ關スル件
  長野縣更級郡中津村平民矢田鶴之助
  外二百九十名呈出
  右ノ請願ハ東京帝國大學農學部附屬農業
  〓員養成所ヲ獨立セシメ其ノ整備充實ヲ
  圖ルハ優良ナル農業〓員ヲ養成シ以テ將
  來益增加セムトスル該〓員ノ需要ニ應セ
  シムルモノナルニ依リ速ニ之ヲ實現シ農
  業〓育ノ普及ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシ
  テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
  ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
  別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  北海道厚內漁港修築ノ件
  北海道十勝郡大津村平民川淵勝太郞
  外百一名呈出
  右ノ請願ハ北海道十勝郡大津村ハ其ノ位
  置太平洋ニ面シ住民ハ從來漁業ヲ以テ主
  要產業トナスニ拘ラス沿岸ノ地形屈曲ニ
  乏シク未一個ノ漁港ヲモ有セサル爲漁撈從
  業ヲ波浪ニ阻メラルルコト多ク加之朝
  天變ニ際會セムカ被害甚大ニシテ斯業ノ
  益萎靡スルハ同道拓殖上遺憾ナルニ依リ
  速ニ同村內厚內ニ漁港ヲ修築セラレタシ
  トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
  擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
  十五條ニ依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  下大野郵便局ニ電信事務開始ノ件
  徳島縣那賀郡大野村長稻井慶吉呈出
  ハ
  電信事務ヲ取扱ハサル爲住民ノ不便不
  尠一"title "〓〓Sandaringangers,
  五條ニ依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  北洋漁業ノ根據地ヲ北千島ニ設置ノ件
  東京市麴町區丸ノ內二丁目工船蟹漁
  業水產組合組長男爵岩倉道倶呈出
  右ノ請願ハ北洋漁業ハ我國ニ於ケル重要
  事業ナルニ拘ラス今ヤ露國ノタメ其ノ權
  益ヲ侵害サレムトスルハ甚遺憾ナルニ依
  リ速ニ之レカ根據地トシテ北千島ニ貯油
  槽倉庫病院及無線電信所ノ建設充實
  竝港灣ノ築設等適當ナル施設ヲ講セラレ
  タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
  ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
  第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  蟹以外ノ工船ノ漁業竝漁場ノ調査指導
  ノ件
  東京市麴町區丸ノ内二丁目工船蟹漁
  業水產組合組長男爵岩倉道倶呈
  右ノ請願ハ北洋ニ於ケル我蟹漁業ハ曩ニ
  當局ノ保護政策ニ依リ將來有望ナリシニ
  拘ラス近時露國ノ急激ナル進出ハ我蕃殖
  政策ヲ無視シ其ノ結果寒心スヘキモノア
  ルハ斯業經營上甚遺憾ナルニ依リ政府ニ
  於テ蟹以外ノ工船適種漁業竝漁場ニ就キ
  緊急調査セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
  院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
  致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
  送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  鑛業法中改正ノ件
  福岡縣田川郡伊田町公吏林田春次郞
  外十六名呈出
  右ノ請願ハ市町村ニ於ケル採鑛事業ノ開
  ハ擔稅力ニ乏シク爲ニ地元市町村ハ唯
  口ノ增加ト就學兒童ノ激增スルノミ
  
  "text "〓〓
  キハ甚遺憾ナルニ依リ鑛業法ヲ改正シ
  鑛產稅全額ヲ昭和六年度ヨリ地元市町
  村ニ交付スルヤウ今期議會ニ提案セラレ
  ーヘルトール上記載金免除法大分
  第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣濱口雄幸殿
  意見書案
  結核豫防ニ關スル件
  東京市麴町區大手町財團法人日本結
  核豫防協會會頭子傳澁澤榮一呈出
  右
  結
  FASHIONSHOPEN OF
  大都市ニ療養所ノ設置ヲ命スルト共ニ旣
  設療養所ノ擴張ヲ爲サシメ又ハ民間ノ經
  營セルモノニハ補助ヲ與フル等其ノ對策
  ヲ講セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
  願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
  因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付
  候也
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣濱口雅幸殿
  〓
  メマ
  ○
  
  モ
  族ニナ分上通右
  第十二日
  
  院之キ工至ハ
  ス
  ニ戾リマス
  チェス
  其
  33.2017.10.2017
  意見書案
  萩線鐵道速成ノ件
  山口縣阿武郡三見村長山中貞七外六
  名呈出
  ノ請願ハ未成線鐵道萩線鐵道ハ其ノ開
  アイスミルク一
  "text "〓〓＼
  ハヲヤ事工セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
  願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
  大学院法院院議院議員法第六十五條ニ依リ別冊
  昭和五年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣濱口雄幸殿
  議長(公爵德川家達君)是等ノ請願モ請
  願委員長ノ報〓通リデ御異存ゴザイマセヌガ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=89

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• 090・譲長(公爵德川家達君)

  ○譲長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=90

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• 091・讓長(公爵徳川家達君)

  ○讓長(公爵徳川家達君)　是ヨリ日程第一
  國務大臣ノ演說ニ關スル件、
  池田男爵
  男爵池田長康君本員ハ先日陸軍大臣ニ
  答辯ヲ要求イタシテ居ルノデアリマス
  件ニ付キマシテ一言申上ゲタイト思フ
  點ニ付キマシテPRODUCTS御答辯ガア142.5±,
  ナイ又否定モシナイトノフ辯ノコト
  ニナッタノデアリマス、又憲法ツ解ノ釋
  斯ウ云フコトヲ仰セニナタ
  ス然ルニ本員ハ此御言葉ガアリ
  御所ヲヲルSHANGHAI SHE HISTORICAナルト信ジ得ラレルノデアイスコーヒーウェブシー50
  ン一覽證據書テ此兩者ノ關係ハ極メテ北京市公安局西城分局
  セラレタコトト違ハナイノデアリマス此
  コトトヲ私ハ發見イタシマシタガ故ニ陸
  軍大臣ニ御答辯ヲ要求イタシマシタケレド
  其要求ハ取消シテ差支ゴザイマセヌ
  尙ホ事實問題ニ付キマシテハ是ハ御答辯ガ
  無イノデアリマスルカラ、私ト致シマシテ、
  批判ノ致シ樣モゴザイマセヌ、唯先刻軍令
  、意ヲ必要トスル
  ス
  答
  ラ
  何し受
  ス九カフ
  ウ致シマシテ
  求ヲ取消シマス
  ○

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=91

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• 092・〓〓〓〓

  ○　花井卓藏君
  愛媛チノフ
  マ御座
  ヽ
  關務ノ
  ス結コラ物理ノ存能ニ國共ステアア
  ズ
  論トザトデミズハ
  コテ
  alson
  ヲ希望イタシマス
  フコトデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=92

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• 093・花井卓藏君

  ○花井卓藏君　○
  マス、
  バジナリー
  老化小学生物理解
  ニ至
  部分的ニ
  日本フラックス
  是ハ事實問題デアリマス
  得リツ其點ニ付キマスル
  議長(公爵德川家達君)
  ハ、
  一ツノ開題

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=93

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• 094・議長(公爵德川家達君)

  ○議長(公爵德川家達君)　國務大臣(濱口雄幸君)
  一、一番搾り
  
  質問中ニ私ハ中座ヲ致シマシタ
  部ノ專門家ノ意見ヲ徵スル必要アリ、
  席デアリマセヌ
  甚ダ立憲政
  二、一滴、インタ
  全部ヲ承ルコトガ出來ナカッタノデ
  先ヅ御演說ノ最初ニ於テツ
  26,500
  3月分
  此經過ニ依
  與ヘタト
  マルコノーン
  〔花井卓藏君發言ノ許可ヲ求ム〕
  後カラ速記錄ヲ拜見イタシ
  ガラ參酌シテ居ル、斯ウ云フ點デアリマス、
  ト欲シテ通告ヲ致シタノ
  ッタト云フコトヲ
  ニ對シテ
  ヌト云フコトノ義務ヲ御負ヒニナラムコト
  〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕
  上海ライオン
  方法式焗
  答辯ハ求メマセヌ
  大要御答へ申上ゲマス
  1921,ヽ
  グリーン
  大阪府左京市
  192,584
  只今御席ニハ居ラレ
  テ、非常ニ悲觀的
  マダ
  22.7727
  お前の下さい
  當然出席セラルベ
  伊豆小炒肉炒飯炒飯炒飯
  ガソップ高等部門
  而シテ政
  デアリマス、固ヨリ經
  
  花井君ハドウ云
  特別純米酒釀
  私ハ承認又ハ同
  ヽ
  4256
  
  マ
  府題了
  御質問
  ENTERTAINS
  併ナ
  ヒ併
  ノ御意
  ス
  ヒ
  ヽ
  、
  ミ
  チ、
  ニテ前フリ付德シス
  ノ
  思想問題
  海鮮蝦酒糖飲食物
  杉デア
  如ハト金ノデ
  キ頽
  左
  イ
  モ
  現
  言へ
  
  
  セヌ
  テ如何ナル答
  
  濟界ノ不景氣ト云ヒ、
  リッ
  君ノ世
  存ジマス
  V、
  精緻小学生
  御質問ト云フ
  ス
  ハアリマセヌ
  十分ノ注意ヲ拂
  處スベキコトハ固ヨ
  piece
  御述べニナッタ事柄ハ
  コンビー
  精萃大學
  一般的ノ御批評デアリ
  {"title "小笠原
  世道人心ノ上ニ宜シク
  地獄リンクリー、
  是ハサウデモアリマセヌ
  辯ヲシテ宜
  ニンクソースの
  然ルニ是ハ人情ノ弱點デアリマセウ
  モスレバ政爭ガ極端ニ陷リマシテ、
  バ醜陋デアリマスケレド
  ヲ以テ終始シテ居ルト私ハ考ヘテ
  其爭ヒヤ君子ノ爭ヒデアッテ、
  ハレタル所ノ社會ノ諸現象ッ
  頗ル判斷ニ苦シムノデアリマス
  其醜陋ナル政爭ガ行ハルル結果トシテ
  御承知ノ通リ今日ノ
  其他新聞紙上ニ我ミガ每日見マスル所
  我國ノ政界ノ將
  ヨリモ御所
  於テ、
  テ
  、段々御意見ヲ拜聽イタシマスルニ
  ッタヤウニ存ジマス、從テドノ點ニ對
  人間世界ガ動物ノ世界トナッ
  キモノデハ
  、總テノ點ニ向ッテ容易ナラザル惡
  恰モ道義ガ地ニ墮チ人
  左
  又總テノ問題
  
  誠ニ不愉快ナコトガ多
  
  御言葉ガア。
  失業問題ノ發生ト云
  上海通由汽油安全
  、今日ノ政治上第
  33.7672
  モ
  30分钟点
  2)は、350
  感ノ御陳述ガ
  シイカト云フコ
  ナッテ居リマ
  
  マス、私ハ社
  醜陋ナ
  ツ
  黨
  マテ
  カ、
  ア기
  〓
  辯ハ
  質シハ
  シテ
  者デ
  ●
  ス、
  思ニシ
  ノテスハタ思綱
  私
  通
  ハ、
  とうがつくみ
  
  
  フ
  正記ヲ變調味道
  頁
  三
  ○
  ○
  金杉英五郞君
  ア거
  タト考ヘマス、
  段
  一
  二
  三
  三
  -
  居リマス
  亂ノコトヲ
  滿足イタシマシタ
  ス
  マシテハ是デ散會イタシマス
  爭ヒニ墮落シナイヤウニ統制ヲシ、
  63
  トデ
  御互ニ誠ニ遺憾ニ存ジ
  誠ニ他意アルニアラズシテドリンクチーム
  程ニ揭載シテアル事件ハ終リマシタ
  午後三時二十七分散會
  五四頁四段一八行ノ次ヘ
  須賀正詔君議長席ニ著ク〕五五頁一段二四ー二五行ノ
  蜂須賀正韶君議長席ニ著ク
  行
  二五
  11415719991
  二〇
  二二
  八
  三
  スルト云フコトハ、固ヨリ必要デアリマス、
  今日ノ政黨ノ言動ガ
  テ居ルト考ヘテ居リマス
  時ニ或ハ綱紀ヲ紊亂シ
  是デ私ハ
  川家達君)
  貴族院議事速記錄第六號正誤
  貴族院議事速記錄第十二號正誤
  現實
  又共產黨ノ如キ事件ハ別問題ト致シ
  金杉君ハ過
  、スタジオパーリング
  ヘ
  36
  バ重ネテ御質疑ヲ願ヒタイ
  此辯明ヲ天下ニ知ラシメムガ爲メ
  私ノ最モ尊敬スル濱口閣下ガ
  聲明ナサレタルコトヲ私ハ深ク喜ブ
  誤
  佐々木
  禁ノ措置
  義務アル
  十七歲
  イカト
  九居ル處失業居ル處ノ失業
  政治
  
  小学生命
  私ノ質問シタ理
  ヲ挿入
  佐佐木
  現在
  義務
  十四歲
  イト
  是ニテ全部、
  〔副議長侯爵蜂
  〔副議長侯爵
  ヲ削除
  正
  禁後ノ措置
  決シテナ
  一
  アヲリ是
  之
  北京市公安局海濱口總理
  北京市公安局海淀分局
  注意ヲ
  以マハ
  天下
  日
  就キ
  ヲコサ國
  綱

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005803242X01419300513&spkNum=94

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