1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五年四月三十日(水曜日)
午後一時十三分開議
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議事日程 第五號
昭和五年四月三十日午後一時開議
一 國務大臣の演説に對する質疑 (前會の續)
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第一 市町村義務教育費國庫負擔法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 輸出補償法案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 賠償金特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 製鐵所特別會計に於て大藏省預金部又は日本銀行の横濱正金銀行又は株式會社日本興業銀行に對する債權の讓渡を受くることに關する法律案(政府提出) 第一讀會
第七 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第九 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十 北海道土功組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十一 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十二 汚物掃除法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十三 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=0
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001・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第二號)昭和五年度歲入歲出總豫算追加
案
(特第二號)昭和五年度各特別會計歲入歲
出豫算追加案
(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルベキ
契約ヲ爲スヲ要スル件
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
(以上四月三十日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
勞働組合法案
提出者片山哲君
恩給法中改正法律案
提出者
東武君木下成太郞君
松實喜代太君板谷順助君
佐々木平次郞君三井德寶君
東條貞君
未成年者飮酒禁止法中改正法律案
提出者
長尾半平君杉浦武雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○水 長〓君三浦虎雄君
栗原彥三郞君田崎武男君
山枡儀重君岡田春夫君
信太儀右衞門君坂東幸太郞君
古島宮次郞君田中養達君
谷原公君服部〓一君
工藤鐵男君星島二郞君
藤井達也君守屋榮夫君
志賀和多利君
溫泉ノ調査〓究機關設置ニ關スル建議案
提出者
加藤知正君木暮武太夫君
鈴木英雄君
米價恢復維持ニ關スル建議案
提出者
加藤知正君土井權大君
胎中楠右衞門君
北海道拓殖促進ニ關スル建議案
提出者
東武君木下成太郞君
松實喜代太君佐々木平次郞君
板谷順助君三井德寶君
東條貞君
(以上四月二十八日提出)
借家法借地法施行ニ關スル建議案
提出者長谷川陸郞君
廣島濱田間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
荒川五郞君藤田若水君
木原七郞君橫山金太郞君
佐藤喜八郞君
山陰鐵道本線電化速成ニ關スル建議案
提出者
原夫次郞君櫻內幸雄君
木村小左衞門君佐藤喜八郞君
三好榮次郞君由谷義治君
山枡儀重君
出雲國稻佐灣漁港修築ニ關スル建議案
提出者原夫次郞君
大船渡鐵道速成ニ關スル建議案
提出者志賀和多利君
大船渡港重要港灣指定ニ關スル建議案
提出者志賀和多利君
菊川改修工事速進ニ關スル建議案
提出者
小久江美代吉君永田善三郞君
平野光雄君櫛部荒態君
岸衞君海野數馬君
井上剛一君
(以上四月三十日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
農村救濟ニ關スル質問主意書
提出者八田宗吉君
(以上四月二十八日提出)
人造絹絲ノ輸入稅撤廢又ハ輕減ニ關スル
質問主意書
提出者栗原彥三郞君
(以上四月三十日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去二十八日衆議院規則第十五條但書ニ依
リ議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
二四四猪股謙二郞君
四二〇佐藤啓君
四二一一柳仲次郞君
四三二佐々木芳照君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=2
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003・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
やっ、一昨二十八日散會ノ際、本日特ニ本
會議ヲ開ク旨ヲ宣〓致シマセヌデシタガ、
其點ハ御諒承ヲ願ヒマス、又更ニ御諮リ致シ
タイコトガアリマス、豫算委員長ヨリ本日
午後本會議中豫算委員會ヲ開キタイトノ申
出ガアリマシタ、尙ホ今後本會議中ト雖モ同
委員會及分科會ノ開會ヲ致シタイトノ申出
ガアリマシタ、又他ノ常任委員長ヨリモ同樣
ノ申出ガアリマス、之ヲ許可スルニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」又ハ「異議アリ」ト呼フ者
アリ〕
議長(藤澤幾之輔君)御異議ナシト認メ
マス-議事ノ進行ニ關シ〓瀨一郞君外一
名カラ發言ノ申出ガアリマシタ、之ヲ許可
致シマス、先ヅ〓瀨一郞君カラ許可致シマ
ス-〓瀨一郞君
〔〓瀨一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=3
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004・清瀬一郎
○〓瀨一郎君 一昨日以來ノ議場ノ光景ニ
付キマシテ、私共第一控室ノ者ハ洵ニ遺憾
ニ考ヘルノデアリマス、畢竟之ニハ種
種ナル原因モアラウト思ヒマスルガ、兩大
政黨ノ諸君ニ於カレテ濫リニ交涉國體ノ制
ヲ定メラレ、議事ノ法則ヲ無視セラルヽカ
ラ起ッタコトデハアルマイカト私共考ヘテ
居リマス、玆ニ私ハ議長ニ向ッテ二、三御確
メ申シタイコトガアルノデアリマス
第一今期議會ニ於テハ去ル四月二十四日
ノ本會議ニ於テ、本會議日ハ火曜日、木曜
日、土曜日トスルコト、是ガ院議デ定ッテ
居ルノデアリマスル、本日ハ疑モナク水曜
日ナンデアル、如何ナル原因デ此會議ヲ御
開キニナッタカ(拍手)私ハ一昨日ノ議事錄
ヲ調ベテ見マスルニ、藤澤議長ハ「休憩前
ニ引續キ會議ヲ開キマス、壇上ニ登ラレタ
ル等議長ノ職務ヲ妨ゲラレマシテ議事ヲ進
行スルコトガ出來マセヌカラ、本日ハ是ニ
テ散會致シマス、次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ
御通知致シマス」ト云フノミデアリマス
來ル三十日水曜日ニ特ニ本會議ヲ開ク旨ノ
宣言ハアリマセヌ全體本日茲ニ本會議ヲ開
カルヽ權限ハ何處ニアルノデアリマセウカ、
只今何カ開會前ニ御宣告ニナッタヤウデア
リマスケレドモ、私ハ是ハ聽取レマセヌノ
デスガ、併ナガラ恐ラクハ、去ル二十八日
ニ此宣言ヲ脫シタト云フ風ナ釋明デアラウ
ト思フノデアリマスガ、ソレナラバ此會議
ヲ開ク前ニヤラナケレバナラヌ、其宣言ソ
レ自身ガ會場デナイ廣ッ。パデヤッタト同ジコ
トデアル、私ハ議長ニ如何ナル權限ニ依ッ
テ、本日會議ヲ開カルヽカヲ明瞭ニ御答ヲ
願ヒタイ
尙ホ私ハ只今此議席ニ這入ッテカラ感ジ
タコトデアリマスガ、何カ議長ハ委員會ノ
開會ニ付テ議場ニ御諮リニナッタ際、アノ位
明カニ吾々ガソレニ付テハ異議ノアル旨ノ
申立ヲ致シテ居ル、如何ナル聾デモ、片輪
デモ、必ズ聽エナケレバナラヌ程度ノ異議
ヲ申立テヽ居ルノニ、何故御採決ニ相成ラ
ナカッタカ、私ハ議長ハ是ガ聽ヘナカッタト
スルナラバ、議長ハ聾者、ツンボデアルト
考ヘルノ外ハナイ、聾者ヲ議長ニシテ置ク
ト云フコトハ我ガ帝國議會ニ於テハ出來
ナイコトデアリマス、私ハ先ヅ色々ト本日
ハ伺ハナケレバナラヌ點ガアリマスガ、先
ヅ第一ニ本日會議ヲ御開キニナル權限ガ、
一體何處カラ湧イテ來テ居ルカト云フコト
ト、及ビ吾々ノ異議アル申立ニ向シテ何故顧
ミルコトナク今彼レヲ承認シタト御認メ
ニナルノデアルカ、彼ノ御諮リハ不成立ト
御認メニナルノデアルカ、此二點ニ付テ先
ヅ第一ニ御明答ヲ煩ハシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=4
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005・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 〓瀨君ニ御答ヲ致
シマス、議長ガ本日··
〔〓瀨一郞君再ビ議事進行ニ付テ御尋
ヲ致シマス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=5
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006・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)イヤ御答致シマセ
ウ、御答シテカラ願ヒマス、本日議長ガ會
議ヲ開キマシタノハ、大體先例ニ依リマス、
大正十三年七月九日ニ水曜日ニ於テ特ニ開
ク旨ノ宣〓ナシニ開會致サレテ居リマス、又
其前大正九年七月九日(金曜日)ニモ同樣デ
アリマス、殊ニ只今御讀上ゲニナッタ先日ノ決
議ノ中ニ、右三件トモ必要ノ場合ハ此限ニ在
ラザルコト、斯ウ云フコトガ決議サレテ居
ルノデアリマスカラ、議長ハ一昨日ノ會議
ノ狀態カラ考ヘマシテ、議事ノ進行ヲ諮ル必
要ヲ認メマシテ、旁々本日本會議ヲ開イタ
次第デアリマス、併ナガラ本會議日デナイ日
ニ會議ヲ開ク時ニハ翌日會議ガ有ルカ、
無イカヲ知ラヌデ居ルヤウデハ不便デア
ル、公報ヲ見タ後ニ始メテ知ルト云フコトハ
不便デアル、故ニ明日會議ヲ開クト云フ時
二、特ニ會議ヲ開ク旨ノ〓知ヲスル方ガ
穩カデアル、斯ウ云フ意見モ尠クナイヤウ
デアリマスカラ、議長ハ先刻ノヤウナ聲明
ヲ致シタノデアリマス、(拍手)
表決ニ對スル異議ニ付テ只今御申述ガア
リマシタガ、私ハ其異議ノ聲ガ全ク耳ニ這
入ラヌト云フヤウナコトデアリマセヌ、ケ
レドモ異議ノ申立ハ御承知ノ通リ三十名
ヲ要スルノデアリマシテ、貴方ノ發議ニ對
スル異議ノ贊成者ハ三十名ナイト私ハ見タ
モノデアリマス右御答致シマス
〔〓瀨一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=6
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007・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 是ハ稍、重大ナル點デアリ
マスカラ、尙ホ御確メ致シテ置キマス、議
長ハ大正十三年此方ノ先例ヲ以テ御答ニナ
リマシタガ、サウスレバ今囘ノ事モ先例ト
ナサル御積リデアリマセウカ、ソレヲ御聞
キシタイ、是ガ今迄ノ例ハ區々ニナッテ居
リマス、ケレドモ大正十三年ニ斯ウ云フ例
ガアルカラト云ッテヤラレルナラバ、本件ハ
之ヲ以テ例トセラレルノデアルカドウカ
承ッテ置キタイ
ソレカラ第二ハ必要アル場合ト云フノハ
斯ノ如キ場合デナイ、議會ノ會期切迫デナ
イ場合デモ議長單獨ノ見込ヲ以テ必要ノ
有無ヲ決セラレテ宜イノデアルカ、私ガ諒
解致シテ居ル所デハ、會期切迫ノ場合ハ議
長ガ認メル先例デアリマスガ、會期ノ初メ
ニ斯ノ如キ先例アルコトハ私ハ承リ及ンデ
居リマセヌガ、此點ニ付テ更ニ御明答ヲ煩
ハシタク存ジマス
〔「答辯ノ必要ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=7
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008・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 只今重ネテノ御意
見ニ付キマシテハ先例ニ關スル點ハ前ニ
御答致シタ通リデアリマス、之ヲ先例ト爲
スカ否カト云フコトニ付キマシテハ其場
合ニ於テ意見ヲ決スル積リデアリマス-
モウ宜シウゴザイマセウ-多木久米次郞
君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=8
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009・清瀬一郎
○ 〓瀨一郞君先例ニスルト云フ意味デア
ルカ、シナイト云フ意味デアルカ、「イエス」
カ「ノー」カ、ハッキリ御答ヲ願ヒタイ、左樣
ナ胡魔化シデハ議事ハ進行致シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=9
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010・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) ソレハ其時ニ至ッ
テ決定スルト云フコトヲ申上ゲタノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=10
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011・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 ソレカラ聽エナイト云フノ
ハ、大聲デ呼ンデ居ルノニ聽エナイト云フ
ノハドウ云フ譯デスカ、サウ云フ胡魔化シ
デハ議事進行ハ出來マセヌ·····
〔「進行々々」「進行セイ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=11
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012・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 只今ノ多木君ノ、
議事進行ニ關スル發言ハ取消サレマシタ、
是ヨリ國務大臣ノ演說ニ對スル質疑ヲ繼續
致シマス、通告順ニ依ッテ發言ヲ許シマス、
山崎君ノ一昨日ノ質疑ノ終リニ國務大臣ニ
對スル答辯ノ要求ガアリマシタガ、モウア
レデ宜シウゴザイマスカ
山崎達之輔君宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=12
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013・山崎達之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 山口義一君
〔山口義一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=13
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014・藤澤幾之輔
○ 山口義一君私ノ質問ハ大體司法權ノ壓
迫ニ關スルコトデゴザイマスルガ、其質問
ノ前ニ樞密院ニ關スル事ト、減俸案ニ關ス
ル事ヲ極ク簡潔ニ承ッテ置キタイノデアリ
やく、政府ハ在野黨ノ當時、第五十三議會
ニ於キマシテ樞密院彈劾ノ決議案ヲ出シテ
居ラレマス、提出者ハ內務大臣安達謙藏君、
松田源治君、田中隆三君、齋藤隆夫君、小川発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=14
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015・山口義一
○太郞君、 中野正剛君等十八名、贊成者ニ
ハ鈴木富士彌君、町田忠治君、濱口總理大臣
モ入ッテ居ラレルノデアリマス、其說明ハ中
野正剛君ガシテ居ラレルノデアリスマルガ、
大體斯ウ云フヤウナコトニ相成ッテ居リマ
ス、樞密院ハ特權階級デアッテ、此特權階級
ガ越權專專ノ行爲ヲスルト云フコトハ怪シ
カラヌ、此特權階級ガ政治干渉ヲスルノハ
排除シナケレバ立憲政治ノ基礎ガ危イ、デ
アルカラシテ此彈効決議案ヲ出シタノデア
ル此決議案ハ憲政會トシテハ非常ナ熱心
ヲ以テ出シタノデアル、デアルカラシテ樞
密院ノ諸公ハ此彈効案ニ對シテ反省ヲシテ
居ナケレバナラヌ筈デアルガ、却テサウデ
ナイ、之ヲ密カニ嘲笑ッテ居ルト云フヤウ
ナ狀態デアル是ハ正シク人類ノ進步ヲ嘲
リ笑フ所ノ惡魔ノ冷笑デアルト、斯ウ言ッテ
極端ナル言葉ヲ用ヒテ、樞密院ノ彈劾ノ決
議案ノ說明ヲ致シテ居ラレルノデアリマス、
斯ウ云フ風ナ彈効決議案ヲ出サレタル手前、
何トカ濱口總理大臣ハ此樞密院改革ノ問
題ヲ考ヘテ居ラレナケレバナラナイ筈デア
ル(拍手)ドウ云フ改革ノ御考ヲ持ッテ居ル
ノデアルカ、樞密院官制ノ改革ニ止メテ置
クノデアルカ、更ニ進ンデ憲法改正マデ及
ブノデアルカト云フ御意見ヲ此場合承ッテ
置キタイノデアリマス(拍手)
ソレカラ次ハ減俸案ノ事ヲ極ク一ト言承ッ
テ置キタイト思フノデアリマス、政府ハ閣
議ニ於テ減俸案ヲ決定シテ、サウシテ之ヲ
總理大臣ノ名ニ於テ國民ニ發表致シテ居
ル其理由ハ新聞ニ出テ居リマスル所ヲ茲
ニ讀ミ上ゲマスルト、大體斯ウ云フ風ニナッ
テ居ル「固ヨリ官吏ノ俸給ヲ減額スルハ政府
ノ好マザル所ナリ、而カモ政府ガ敢テ之ヲ斷
行セントスルハ現下ノ國情實ニ已ムヲ得ザ
ルモノアレバナリ、是ニ於テ政府自ラ實踐
躬行、範ヲ國民ニ示シ、以テ經濟難局ノ打
開ニ資スル所アラント欲ス、國民モ亦宜シ
ク政府ノ意ノ存スル所ヲ諒トセラレ、官民
相率ヒテ整理緊縮ヲ行ヒ、消費節約ニ精進
シ以テ財界ノ安定、國民經濟ノ立直シニ努
力セラレンコトヲ切望ス」斯ウ云フノデアリ
いく、卽チ此官吏ノ減俸ヲ斷行シナケレバ
經濟國難ガ打開出來ナイト云フノデ、閣議
ニ於テ官吏ノ減俸ノ其割合カラ、其施行ノ
期日マデ決定シテ之ヲ國民ニ發表致シタ
所ガ國論ガ沸騰致シマシタカラシテ俄ニ之
ヲ引込メタ、サウシテ之ヲ撤囘致シマシタ
ル所ノ理由ト云フモノハドウデアルカト
云フト、曩ニ發表致シマシタ理山ハ頗ル堂
堂タルモノデゴザイマシタガ、今度撤囘ス
ル時ノ理由ハ甚ダ貧弱ナモノデアリマス、
今度世論ニ鑑ミ斷然之ヲ撤囘シテ輿論政治
ニ迎合スルモノデアル、斯ウ云フ理窟デ之
ヲ撤囘シテ居ラレル、其輿論政治ニ迎合ス
ルト云フノハ私共ニハ分ラナイ、輿論政治ト
云フモノハサウ云フモノデゴザイマセウカ、
輿論政治ト云フモノハ、輿論ノ趨向ヲ能ク
知ッテ居ルト云フコトガ條件デナクチヤナ
ラナイ(拍手)輿論ノ趨向ヲ知ッテ居ッテ、ソ
レニ當崁マル所ノ政治ヲヤッテ行クト云フ
ノガ輿論デゴザイマスルガ、一旦閣議デ決
メテ、ソレヲ國民ニ發表シテ、輿論ニブツ
ツカッテカラ後ニ引込メタト云フノハ、是
ハ輿論政治ヂヤナイ、(拍手)是ハ正シク興
論ニ盲目ナルモノガ、輿論ノ光ニ驚イテ腰
ヲ拔カシタト云フコトニナル、ソンナコト
ガ輿論政治ト言ヘマセウカ、私ハ斷ジテ左
樣ニハ考ヘナイノデアリマス
ソコデ御伺致シマスルノハ、元來此官吏
ノ俸給ヲ定メルト云フコトハ、憲法ニ依ッテ
大權事項デアルカラシテ、之ヲ決定致シマ
スニハ閣議ニ於テ決定シテ、國民ニ伺ッテ
發表スルノニハ上奏ヲシテ行カナケレバ
ナラナイ筈デアル、上奏ヲシテ而シテ國論
ノ反對ニ遇ッテ、俄ニ慌テヽ之ヲ徹囘シタト
云フコトデゴザイマスナラバ、是ハ卽チ畏
イコトデゴザイマスルガ上御一人ヲ蔑
ニシタト云フコトニナル(拍手)又上奏ヲシ
テ、否、上奏ヲセズシテ、之ヲ國民ニ向ッテ
直ニ發表致シタトスルナラバ是レ取リモ
直サズ大權干犯ト云フコトニナルデヤナイ
カ何レニ致シマシテモ、斯ノ如キ大權事
項ヲ俄ニ決メテ俄ニ發表シ、又慌テヽ之ヲ
取戾シテ撤囘スルト云フコトハ輕卒不謹
愼デアルト云フコトハ免レナイ(拍手)是ヲ
モ尙ホ總理大臣ハ輿論政治ト御考ニナルカ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=15
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016・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=16
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017・山口義一
○ 山口義一君(續)是デモ尙ホ總理大臣ハ
輿論政治ニ迎合スルモノデアルト御考ニナ
ルカドウカ、私ハ總理大臣ニ御伺致シタイ
ノデアリマス
次ニ司法權壓迫ノコトニ付テ御伺致シマ
スガ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=17
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018・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=18
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019・山口義一
○山口義一君(續) 政府ハ內閣ヲ組織致シ
マスルヤ、十大政綱ト云フモノヲ發表シタ、
第一ハ政治ノ公明、第二ニハ國民精神ノ作
興、第三ハ綱紀ノ肅正デアリマス、洵ニ立
派ナコトデス、更ニ又選擧ニ臨ムニ當フテ、
選擧對策ト致シマシテ標語ヲ出サレタ
其標語ハ强ク明ルク正シイ政治ト云フ、是
モ中ミ堂々タル標語デゴザイマスケレドモ
是等ハ悉ク表看板デゴザリマシテ裏ロデ
ヤッテ居ル事ハ又別デアル(拍手)所謂欺瞞
政策デヤッテ行カウト云フ、騙シテ世渡リヲ
シテ行カウト云フノデアルカラ、騙サレタ
國民ハ大變迷惑(拍手)先ヅ私ハ越後鐵道ノ
疑獄問題カラ御伺致シマスルガ、越後鐵道
ノ疑獄ハ先ヅ
〔發言スル者多ク「議長注意シナサイ」
ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=19
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020・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=20
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021・山口義一
○山口義一君(續) 先ヅ新潟カラ火ノ手ガ
擧"テ來タ、新潟ノ地方裁判所ノ檢事局ニ於
テ久須美東馬ト云フ者ガ取調ヲ受ケタノ キ
供述ヲ見ルト云フト、自分ガ社長ニナッテ居
リマスル越後鐵道ヲ、政府ニ買上ゲテ貰ヒ
マスルガ爲ニ、百五十三万圓ト云フ大金ヲ
バラ撒イタ、其大部分ハ加藤高明伯ト、早
速整爾氏ト、鈴置倉次郞氏ノ死ンダ三人ニ
贈ッタト云フコトヲ供述致シテ居ル、是ハ死
ンダ人ニ一切ノ罪ヲ塗付テ、此疑獄ノ火ノ手
ヲ揉消サウト致シタノデゴザリマスガ、加藤
伯爵ニ致シマシテモ、早速氏ニシテモ、鈴置
氏ニ致シマシテモ、正直ノ人デアッテ、左樣ナ
惡イ事ヲ致シサウニモナイ、殊ニ死ンダ人ニ
左樣ナ罪ヲ塗付ケヤウト云フノハ、如何ニモ
殘忍ナ冷酷ナル遺方デアルト私ハ考ヘル(拍
手)死ンデ居ノテモ罪人ハ罪人デアル、唯〓監こ
獄ニ行カナイト云フダケデアル、其死ンデ辯
解ノ出來ナイ人ニ罪ヲ塗付ケタナラバ、ソレ
等ノ遺族ハ何ト考ヘルデアリマセウカ、左
樣ナ故人ニ罪ヲ塗付ケテ、此疑獄ノ火ノ手
ヲ揉消サウト致シマシテモ、天ハ之ヲ許サ
ナカッタ、東京地方裁判所ノ檢事局ニ於テ再
ビ久須美氏ハ取調ヲ受ケナケレバナラヌト
云フコトニ相成リマシテ、今度ハ前ノ供述
ヲ悉ク翻シマシタ、其供述ニ依リマスルト
云フト、此越鐵疑獄ハ若槻内閣ヲ繞ル所
ノ醜事實デアルト云フコトガ暴露サレテ來
タ、ソコデ此久須美氏ヲ起訴スルカシナイ
カト云フコトハ現內閣ニ取ッテハ容易ナ
ラザルコトニ相成ッテ來タノデアリマス、ソ
コデ久須美氏ヲ極力阻止シテ、不起訴ニシ
ヨウト致シタル所ニ司法權ノ壓迫ガアルト
思フノデアリマス、此事實ハ昨年ノ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=21
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022・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=22
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023・山口義一
○山口義一君(續) 十一月ノ二十日ノ報知
新聞ノ朝刊ヲ見ルト云フト、其司法權壓迫
ノ事實ガ明ニナッテ來ル、報知新聞ノ記事ヲ
御參考迄ニ一寸讀上ゲマスルガ「大進展ヲ
前ニシタ越後鐵道ノ疑獄ハ、十九日ニ至リ俄
然逆轉ノ形勢ニナッタ、ソレハ十八日水戶ニ
於ケル司法首腦部會議ノ結果、久須美氏微
罪釋放、佐竹三吾氏不拘留ト決シタ模樣デ
アルカラデアル、ソレヲ裏書スルモノニハ、
十九日午後水戶ノ鹽野檢事正カラ久須美ノ
起訴ヲ保留セヨトノ電命ガ東京檢事局ニ到
著シテ居ル、鹽野檢事正ハ午後六時歸京シ
テ、官舍ニ於テ約三時間ニ涉リ松阪次席檢
事、上京中ノ北條檢事ト打合セヲシタガ
肝腎ノ主任石〓岡檢事ハソレヲ待タズ、四
時半頃歸宅シテシマッタ、斯クテ二十日ニ
迫フタ久須美氏ノ起訴問題ヲ前ニ、司法當
局デハ意外ノ緊張トナリ、今マデ絕對神聖
ノ鬪ヒヲシテ來タ檢事連ノ硬化ハ極度ニ達
シテ、將來ガ注目サレルニ至ッタ」ト斯ウ書
イテアル、ソレカラ松阪次席檢事ノ談ト云
フモノガ此處ニ載ッテ居ル、ソレハ斯ウ云フ
コトデアル「搜査檢事ト云フモノハ可成リ
强イ信念ト確信ヲ以テ事件ニ携ハッテ居ル
ノデアル、故ニ萬一自分ノ確實ガ外部カラ
ノ事情ノ爲ニ撤囘サレタリ、忌避サレタリ
シタ場合ハ檢事トシテ職ヲ辭スルコトハ
當然歸スベキ結果ダト思フ」ト云フノガ松
阪次席檢事ノ談デアル、ソレカラ石〓岡檢
事ノ談ト云フノガ出テ居ル、此檢事ノ談ヲ
見ルト云フト壓迫サレタト云フコトガアリ
アリト分ッテ居ル、ソレハドウ云フコトカ
ト云フト「始メカラ心配シテ居タ」ト云フコ
トガ書イテアル、壓迫シサウダト云フコト
ガ始メカラ分ッテ居ッタ、始メカラ心配シテ
居ッタト書イテアル、「政府黨ダカラト云ッテ
變ナ處置ヲトルノハ怪シカラン、コンナ事
デハ司法權ノ威信ハ保テヌ」ト書イテアル
デハナイカ(拍手)「イヤシクモ事實ガアル
以上、政府黨ト雖モ斷然檢擧ヲスルノガ當
然デハナイカ、私ハ水戶カラノ電報ニ接シ
テ實ニ意外ニ思ッタ、今日檢事正ノ歸京前ニ
歸ッテシマッタカラ明日一日デスベテガ解
決スルダラウ、シカシ吾々ガ辭職スルコト
ハ却ッテ事ヲ大キクスルカラ、其邊深甚ノ
考慮ヲ要スルト思フ、何レニシテモ最初
カラ斯ウ云フコトニナリハシナイカト心配
シテ居タ·····民衆モ司法權ニ重大ナ疑惑ヲ
持ツニ至ルカラ、徹底的ニヤラナケレバ吾々
ノ生命ハナイ」ト斯ウ云フ風ニ石〓岡檢事
ガ言ッテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ風ニ檢
事ヲ壓迫シテ居ルト云フコトガアリノ
ト分ッテ居ル、是ハ久須美氏ヲ起訴ニスル
カシナイカト云フコトニ依ッテ、越後鐵道
ノ疑獄ガドレ位大キクナルカ分ラナイト云
フコトニ相成ッテ來タカラシテ、ソレヲ揉消
サウトシテ壓迫シタト云フコトハ誰ダツ
テ分ルデハアリマセヌカ(拍手)所ガ壓迫シ
ヨウト致シタケレドモ、硬骨ナル檢事ハ中ミ
肯カナカッタ、是レ以上極端ニ壓迫ヲ致シタ
ナラバ、檢事ハ總辭職スルト云フ勢ヲ示シ
テ來タカラシテ、司法省ハ遂ニ我ヲ折ッテ
起訴スルト云フコトニナッタ(拍手)請リ檢
事ヲ壓迫シヨウトシタケレドモ、力能ハズ
シテ遂ニ起訴ヲシタト云フコトニナルノデ
アルカラ、司法權ノ壓迫ハ無イト云フコト
ガドウシテ言ヘルノデアルカ(拍手「ソンナ
コトハナイ」「司法權ノ壓迫ヂヤナイ、監督
權ノ行使ダ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)
ソレカラ此越後鐵道ノ認可ト云フモノハ
若槻禮次郞氏ガ其鍵ヲ握ッテ居ッタ、其若槻
氏ガ此認可ノ鍵ヲ握ッテ居ッタト云フコト
ハ佐竹三吾氏ガ話シテ居ル所デ明ニ分,
テ居ル(「イツソンナ事ヲ言ッタ」ト呼フ者ア
リ)是ハ國民新聞ニ載フテ居ル、昨年十一月
二十日ノ國民新聞ヲ御覽ニナルトハッキリ
分ル、佐竹三吾氏ハ斯ウ云フ風ニ言ッテ居
ル「アノ越後鐵道ノ買收案ガ省議デ決定シ
タノハ大正十五年ノ暮デ、兩院ヲ通過シタ
ノハ昭和二年ノ三月、公布サレタノガ四月
デアル當時憲政會ガドウシテアノ案ヲキ
メタカニ就テハ玆ニハ言ヘヌガ、要スルニ
高等政策モ加味サレテ居リ(拍手)若槻總理
カラ井上鐵相ニ話ノアッタ事デ、久須美君ハ
此ノ間ノ事情ヲヨク知,テ居ル」ト云フコト
ヲ言ッテ居ルヂヤアリマセヌカ(拍手)大體
地方ノ一鐵道ヲ買上ゲルカ買上ゲナイカト云
フヤウナ地方問題ヲ、國ノ總理大臣ガソ
ンナニ力ヲ入レテ鐵道大臣ニ命令的ニ强制
スルト云フ所ニ臭イ所ガアルト謂ハナケレ
バナラヌ(拍手)此認可ノ事情ガ斯ウ云フ風
ニナッテ居ルカラ、若槻禮次郞氏ノ無心ノ手
紙ガ問題ニナッテ來ル(拍手)コンチ事ガナ
ケレバ無心ノ手紙モ鬪題ニナラヌケレド
モ、先ニ斯ウ云フ事ガアルカラシテ無心ノ
手紙モ玆ニ問題ニナッテ來ナケレバナラ
ヌコトニナル、十万圓吳レロト云フ無心ノ
手續ヲ出シタト云フコトハ、是ハ若槻君モ
チヤント認メテ居ル、「收容中ノ某ガ私ノ十
万圓無心ノ手紙ヲ持ッテ居ルト云フガ、ソレ
ハ持ッテ居ルカモ知レヌ、併シ私ノ金錢ノ無
心狀ガ一々ソンナ問題ニナルナラバ、他也
モマダ幾ラモアル」大分タント出シタヤウ
ニアル、是ハ若槻君ガ言ッタコトデ、十一月
二十四日ノ東京日日新聞ノ記事デアリマ
ス、斯ウ云フ風ニ此久須美ト云フ人間ハド
ウ云フ人間デアルカト云フト、其當時高利
貸ニ追〓サレテ居ッタト云フヤウナ狀態ニ
アル人、金ガ裕カニアルト云フ人ヂヤナイ、
其高利貸ニ追廻サレテ居ルト云フヤウナ、
金ノ融通ノ付キサウニモナイ人ニ對シテ、
十万圓ト云フ大金ノ無心ヲ吹掛ケルト云フ
ニハヨク〓〓向フデ出サナケレバナラヌ
ト云フ因緣情實ガアッタト云フコトガ想像
サレルノデアル、此無心ノ手紙ト、鐵道大
臣デモナイ所ノ總理大臣ノ若機君ガ力ヲ入
レテ無理ニ認可ヲシタト云フ此事實ト
照シ合セテ考ヘタナラバ、苟モ常識アル者
ハ若槻君ハ此疑獄ニ關係ガ無イト誰ガ思
フデアリマセウカ(拍手)之ヲ不起訴ニシタ
ト云フ所ニ司法權ノ壓迫ガナイカト云フコ
トヲ私ハ御伺ヒスルノデアリマス
ソレカラ此久須美君カラ俵商工大臣モ一
万圓貰ッテ居ル、是ハ十二月十九日ノ東京日
日新聞ノタ刊ニ、中々面白イ一問一答ノ形
デ載ッテ居リマスカラ、此處ニ讀上ゲテ見
マスガ「十八日正午俵商相ハ少シ憤慨ノ面
持デ語ル」ト斯ウ書イテアル東京日々新
聞ノ記者ガ行ッテ質問ヲシタ、記者ハ一丁目
イヨ疑獄ニアナタノ名前ガ出テ來マシタ、
一體ドンナ關係デスカ、率直ニ話シテクレ
マセンカ」斯ウ記者ガ尋ネテ居ル、ソコデ商
相ガ答ヘテ居ル「話スコトハ何デモナイサ、
元來俺ハソンナコトニ關係モ無シ、何ノ事
ヲ言"テ居ルノカ譯ガ分ラヌ」ソコデ又記者
ガ尋ネテ居ル「デハドウシテアナタノ名ナ
ンカ出テ來ルンデセウ」斯ウ言ッテ居ル「越
後鐵道カラ金ハ貰シテ居リマセヌカ」ソレニ
對シテ商相ハ「俺ガ金ナンゾヲ貰フモンカ」
ト斯ウ言ッテ居ル(「宜イヂヤナイカ」ト呼フ
者アリ)ソレカラ先ガ聽カナケレバナラ
ヌ-ソレニ對シテ「デハ收容中ノ久須美
氏トハ豫テ懇意デセウ、アノ人カラ金ヲ借
リタコトハアリマセンカ」ト斯ウ云フ事ヲ
記者ガ尋ネタ「此時商相態度ヲ改メ」ト書イ
テアル、サウシテ商相ハ何ト答ヘタカト云
フト「久須美トハ古クカラ懇意ダカラ、民政
黨員ダカラナ、俺ハ實ハ其久須美カラ金ヲ
貰ッタ」ト斯ウ言ッテ居ル、新聞記者「幾ラデ
スカ」商相ハ「一万圓ダ」ト斯ウ答ヘタ(「何
ンニモ問題ニナラヌヂヤナイカ」ト呼フ者
アリ)ソレガ問題ニナル-小橋前文部大
臣ガ越後鐵道ノ社長久須美氏カラ二万圓
貰フタ、小橋君ガ越後鐵道ノ社長カラ二万圓
貰"テ瀆職罪デ起訴サレテ居ルノニ、何ガ故
ニ商工大臣ガ同ジ久須美カラ一万圓貰ッテ
起訴ヲサレナイカト云フ所ニ疑ハアルノデ
アリマス、佐竹三吾氏ハチヤント言ッテ居
ル、小橋君ノ場合モ俵君ノ場合モ全ク同ジ
場合デアルト云フコトヲ言ッテ居ル(拍手)
佐竹三吾ハ明ニ言ッテ居ル、此小橋君ヲ起訴
シテ俵君ヲ起訴シナイ所ニ司法權ノ壓迫ガ
無イト言ハレルデアラウカ(拍手)若シモ小
橋君ト此俵君トハ事情ガ違フ、金ハ貰ッタケ
レドモ貰ッタ事情ガ違フト言フナラバ、其
事情ヲ明ニシナケレバナラヌ、俵君自身モ
自ラ取調ヲ要求シテ、チヤント取調ベテ貰ッ
テ、其記錄ヲ發表シテコソ一身ヲ潔ウスル
コトガ出來ルノデアリマス、其疑ヲ掛ケラ
レタ點ヲ明ニシテコソ、綱紀肅正ヲ看板ト
スル所ノ内閣ノ閣僚ノ一員トシテ其名ヲ耻
シメナイト云フコトニナル(拍手)疑ヲ掛ケ
ラレテ其儘ニシテ置イテ、ドウシテ國民精
神ガ作興出來ルト御考ニナリマスカ(拍手)
此點ニ付テ俵君ハ一囘モ召喚ヲサレテナ
イ、度モ取調ヲ受ケテ居ナイト云フ事ハ
何故デアルカト云フコトヲ、私ハ司法大臣
ニ御伺ヲシタイノデアリマス(拍手)
次ニ大宮電鐵ノ認可ノ問題、今度ハ大宮
電鐵ノ
〔發言スル者多シ〕
議長(藤澤幾之輔君)靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=23
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024・山口義一君(續)
○山口義一君(續) 認可ニ絡マル所ノ疑獄
デアリマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=24
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025・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ顧ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=25
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026・山口義一君(續)
○山口義一君(續) 野黨ノ事件デアリマス
ナラバ有ユル宣傳ト有ユル力ヲ以テ、計
キ立テヽアレダケ出タノデハナイカ、政府
黨ノ方ハ隱セルダケ隱シテ、サウシテアレ
ダケ出テ居ルノデスカラ、野黨ノ方ハ全部
出テ居ル(拍手)與黨ト政府ノ方ハ罪惡ノ
唯2一端ヨリ現レテ居ナイト云フコトニナ
ルデハアリマセヌカ
ソコデ今度ハ大宮電鐵ノ認可ニ絡マル所
ノ疑獄事件、是ハ大宮電鐵ノ認可ニ付キマ
シテ民政黨ノ代議士ノ降旗君ガ一万二千圓
ヲ貰ッテ居ル、降旗君ガ一万二千圓、金ヲ
貰ッテ居ルト云フ問題ダ(拍手)ソコデ昨年
ノ十二月ノ五日ノ午前八時ニ突然降旗君ガ
召喚ヲサレタ、サウシテ取調ノ結果、其夜
ノ深更ニ及ンデ遂ニ起訴前ノ强制處分トシ
テ市ケ谷刑務所ニ收容サレタノデアリマス
(拍手)ソレハ讀賣新聞ノ十二月七日ノ記事
ヲ讀ミマスト能ク分リマスガ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=26
-
027・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 一言致シマス、喧
騷致シテ居リマシテハ議事ガ進行致シマセ
ヌ、ドウカ互ニ隱忍セラレテ、言語ヲ愼ミ、
十分ニ申述ベラレルヤウニ致シタイト考ヘ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=27
-
028・〓〓〓〓
○ 山口義一君(續)痛イカラ騒グノデス、
騒ゲバ益〓痛イト云フコトガ皆ニ分ッテシマ
フ(拍手)ソコデ讀賣新聞ニ此大宮電鐵認可
ニ絡マル疑獄ノ記事ガ載ッテ居リマスガ、
ソレニ依リマスト降旗君ガ自白シタ內容ガ
チヤント分ッテ居ル、降旗氏ノ取調ノ結果、
同氏ガ鐵道政務次官當時、昭和元年中ト書
イテアル、大宮電氣鐵道ノ認可間題ノ請託
ヲ受ケ在官中便宜ヲ圖リ、更ニ海軍政務次
官トシテ轉任スルニ及ビ、後任ノ佐竹三吾
氏ニ對シ許可指令ノ暗默運動ヲ爲シ、斯ク
テ同鐵道ハ目下問題トナリツヽアル山ノ手
急行ト同時ニ、昭和二年四月十九日ノタ、
若槻内閣挂冠ノ夜、突然申請許可ノ指令ガ
發セラレタモノデ、降旗氏ハ其間一万二千
圓ヲ受取ッタコトヲ檢事ノ取調ニ對シ自白
ヲシテ居ルト、斯ウ書イテアル、之ヲ聞キ
マシテ與黨ト政府ハ極度ニ狼狽ヲ致シマシ
テ揉消運動ヲヤッタ渡邊司法大臣ノ如キ
ハ、其夜徹夜ヲ致シマシテ鹽野檢事正ニ泣付
イテ之ヲ釋放サセヤウトシタ(拍手)其證據
ニハ此五日ニ起訴前ノ强制處分トシテ市ケ
谷刑務所ニ收容サレタ降旗君ガ、其翌日ノ
六日ノ閣議ノ終了ノ後ニ於テ、司法大臣ハ
新聞記者ニ公言ヲシテ居ル、降旗氏ハ今日
中ニ釋放サレルデアラウト云フコトヲ公言
シテ居ル(拍手)司法大臣ハ何等ノ根據ニ依
テ斯ノ如キ斷案ヲ下スコトガ出來ルノデア
リマスカ、一日デ釋放サレルモノナラバ何
ガ故ニ强制處分ニシタカ、ソレハ人權蹂躪
ト云フコトニナルデ】ハナイカ(拍手)又疑
ノアル者ヲ釋放シタト云フコトニナルナラ
バ、是レ取リモ直サズ司法權ノ侵害ト云フ
コトニナルデハナイカ(拍手)何レニ致シマ
シテモ此降旗氏ヲ釋放シタト云フ所ニ、司
法權ノ壓迫ガアラウト思ハナケレバナラヌ
(拍手)果セル哉、一旦釋放サレタル所ノ降
旗氏ハ二度目ニ召喚サレテ訊問ヲ受ケタ時
ニハ曩ノ供述ヲスッカリ翻シテシマッタ
サウシテ之ガ揉消サレテシマッテ有耶無耶
ニ終ッテシマッタ併ナガラ此記錄ハチヤン
ト檢事局ニ殘ッテ居ルノデアルカラ、如何ニ
之ヲ隱シテモ、此內閣ノ間ハ隱シ通セルカ
モ知レヌケレドモ此內閣ガ更"テシマッタ
ナラバ後ノ內閣ニ依ッテ其事實ハ悉ク世ノ
中ニ發表サレル時ガ來ルカモ知レヌ、今ハ
隱セルケレドモ、內閣ガ更シタナラバ此事
實ハ隱スコトハ出來ナイ、デアルカラ司法
大臣ハ此點ニ付テハ嘘ヲ言ハズニハッキ
リト御答ヲ願ヒタイノデアリマス(拍手)嘘
ダト思フナラバ記錄ヲ此議會ニ提出サレタ
ラ宜シイノデアル、前ニ調ベタ所ト後ニ調
ベタ所ノ記錄ヲ此議會ニ發表サレタナラバ、
疑ヲ解クコトガ出來ル(拍手)今度ハ總理大
臣濱口總理大臣、江木鐵道大臣ハ伊勢
鐵道社長ノ熊澤一衞カラ五万圓ヲ貰ッタト
云フコトデアル、是ハ政友會ノ代議士牧野
賤男君カラ告發サレテ居ル、ソレハ大體斯ウ
云フコトニナッテ居ル、國民新聞ニ載ッテ居
リマス所ヲ見マスト云フト、告發ノ內容ハ
「被疑者江木翼氏ハ鐵相就任後其知人デア
ル目下收容中ノ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=28
-
029・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=29
-
030・山口義一君(續)
○山口義一君(續) 熊澤一衞氏ヲ自宅ニ招
キ、鐵道大臣ノ職務ヲ利用シ、鐵道大臣監
督ノ下ニ在ル熊澤氏經營ノ會社ニ對シテ
特殊ノ便利保護ヲ加フベキコトヲ告ゲ(拍
手、發言スル者多シ)之ガ爲ニ金五万圓ヲ出
金スベキコトヲ熊澤氏ニ諮リタル所、熊澤
氏ハ自己ノ社長タル地位ト、會社ガ江木氏
ノ監督下ニ在ルヲ顧慮シ、江木氏ノ指示ニ
從ヒ、金五万圓ヲ去ル七月江木氏自宅ニ持
參シ」ト書イテアル(拍手)「同氏ニ贈與シタ
リ」而シテ江木氏ハ卽刻熊澤氏ヲ伴ヒ、被疑
者濱口雄幸氏ニ面會シ、熊澤氏ハ濱口氏ニ
對シ、自己會社將來ノ事ヲ懇談シ、五万圓
ヲ江木氏ヨリ濱口氏ニ交付シタ外、熊澤氏
ハ重役會議ヲ經テ金一万圓ヲ民政黨ノ幹事
長富田幸次郞氏ニ(拍手)同一万圓ヲ內閣書
記官長鈴木富士彌氏ニ、金五千圓ヲ司法政
務次官川崎克氏ニ贈與シタト云フコトガ〓
發文ノ內容デアリマス(拍手、發言スル者多
シ)之ガ〓發狀ノ內容デアリマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=30
-
031・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=31
-
032・〓〓〓〓
○ 山口義一君(續)警察ノ-警察ノ署長
ガ待合カラ反物一反貰ッテモ瀆職罪ニナル
ノニ、鐵道大臣ガ會社カラ五万圓ヲ貰ッテ
モ瀆職罪ニナラヌト云フ所ニ、此所ニ證據
ガアッタ譯デアル(拍手、發言スル者多シ)貰ッ
タト言ッテ居ル、貰ッタト云フコトハ裁判所
ノ方デモ認メテ居ル「右ニ對シ東京地方裁
判所檢事局ノ審理ノ結果ハ、江木翼ニ於テ
一度之ヲ收受シタルモ···」(「ソレハ何ダ、
新聞カ」ト呼フ者アリ)是ハ抗告狀デス、是ハ
牧野賤男君ガ小山檢事總長ニ出シタ所ノ抗
告狀ノ內容デアル「一度之ヲ收受シタルモ、
五、六日ノ後ニ自己ノ之ヲ受クコトハ不穩
當ト考ヘ、武藤嘉門ナル者ヲシテ民政黨本
部ヘ持參スベク命ジタル所、武藤嘉門ハ熊
澤一衞ガ鐵道疑獄事件ニテ拘留セラレタル
後、熊澤ノ番頭某ニ返還シタリトノ辯解ヲ
採用セラレ」斯ウ書イテアル、詰リ此金ハ裁
判所ニ於テモ、一旦五万圓
〔拍手發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=32
-
033・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=33
-
034・〓〓〓〓
○ 山口義一君(續)受取ッタト云フコトダ
ケハ認メテ居ル(拍手)一旦受取ッタガ、後デ
問題ニナッタモノダカラシテ、週間モ經。ツ
テカラ返シニ行ッタト云フノデハ、是ハ何ト
シテモ疑ハザルヲ得ナイト云フコトニナツ
テ來ル、ソコデ是ハ濱口總理大臣ハ綱紀肅
正ノ本尊ノヤウナ顏ヲシテ居ルノデアルカ
ラシテ、此綱紀肅正ノ本尊ニ曇リガ懸ヲテ
來タナラバ、此曇リヲ解クダケノ手段方法
ヲ講ジナクチヤナラナイ、總理大臣ガ鐵道
大臣ト一緒ニナッテ、鐵道會社ノ社長カラ
金ヲ取ッテ、綱紀肅正ガドウシテ出來ルト
御考ニナルカ(拍手)此疑ヲ晴サナクシテ、
ドウシテ國民精神ガ作興出來ルト御考ニナ
リマスカ(拍手)
次ニ安達內務大臣ニ對シテ御尋ヲ致シマ
ス此間砂田君ヨリ選擧干涉ノコトニ付テ
御尋ヲ致シマシタ所、安達內務大臣ハソレ
ハ悉ク虛構ノ事實デアルト云フ御答デゴザ
イマシタ(「其通リ」ト呼フ者アリ)ソコデ私
ハ事實ヲ少シ詳シク申上ゲテ、サウシテ御
答辯ヲ願ヒタイト思フノデアリマスルガ、
此間砂田君ハ大阪ノ警察署長ガ與黨カラ金
ヲ貰。ヲテ、選擧干涉ヲヤッタト云フコトヲ申シ
マシタガ、ソレガ斯ウ云フコトニナッテ居
ル、是ハ三月ノ十二日ノ大阪朝日新聞ノ記
事デアリマスガ、之ニハ斯ウ云フ風ニ書イ
テアル「大阪府第五區民政派ノ選擧違反事
件ハ十日夜收容サレタ模範村長ノ名ガ高
カッタ今西勝次郞氏等既ニ五名ニ達シテ居
ルガ、十日深更ニ及ンデ突如大阪地方檢事
局デハ南河內郡柏原警察署長警部補坂東淺
之進ヲ召喚取調ノ上十一日午後二時遂ニ瀆
職罪トシテ起訴、大阪刑務所北區支所ニ收
容シタ」斯ウ書イテアル、ソレカラ矢張大
阪朝日新聞ノ今度ハ朝刊、ソレハ同ジ事デ
アル「前代未聞ノ瀆職嫌疑」ト書イテアル
「柏原警察署長坂東ガ收容サレタト云フ記
事デ與黨ニ好意ヲ持チ野黨ノ違反摘發ニ全
力ヲ注ギ盲滅法ナ取調ヲ爲シ、部下ニモ野
黨ハドシ〓〓ヤレ、與黨ハ檢擧スナト露骨
ナ命令ヲ下シタトサヘ傳ヘラレ、野黨ノ選
擧違反事件ヲ根コソギ糾彈シテ與黨ノ形勢
ヲ有利ニ導ク爲メノ選擧費用ヲ與黨カラ收
受シタ、前代未聞ノ瀆職嫌疑ト言ハレテ居
ル」ト斯ウ書イテアル、更ニ面白イ事ハ此柏
原警察署長ガ與黨ノ或ル候補者カラ金ヲ
五 クノー其金額ハ相當ノ額ニ上ッテ居ルラシ
ク、奇怪ナ事ニハ此警察署長ハ價格六千圓
內外ノ王島丸ト云フ百數十噸ノ船ニ持ッテ
居リ、而モ選擧ノ眞最中二月十八日ニ船ノ
所有權ヲ取得シ其手續ヲ了ッテ居ル、警察
署長ガ六千圓モ出シテ船ヲ買ヒ、其金ハ與
黨ノ或ル候補者カラ貰っタト云フノデ、是ガ
瀆職罪ニナッテ收容サレタ、野黨ハドンノ
檢擧シロ、與黨ノ方ハ檢擧スルナト言ッテ、
與黨カラ六千圓モ金ヲ貰テ、瀆職罪デ起訴
ヲサレタト云フ事實ガアルニモ拘ラズ、安
達內務大臣ハ選擧干涉ガナイト仰セニナリ
マスルカ
ソレカラ今度是ハ愛知縣ノ第四區ノ事ナ
ンデス、是ハ政友派ノミヲ根コソギ檢擧ヲ
シテ、サウシテ其調ガ極端ニ苛酷デアリ、
拷問ヲ致シマシタル結果、石川與曾次郞ト
云フ者ガ首ヲ縊ッテ死ンデシマッタ、ソレカ
ラ磯貝幸一ト云フ者ハ是ハ日本刀デ自殺ヲ
シタ、鈴木松次郎ト云フ人ハ是モ矢〓張リ
拷問ガ酷カッタト云フノデ縊死ヲ遂ゲタト
云フ、斯ウ云フヤウナ酷イ拷問ヲシテ二箇
月モ拘禁ヲシテ置イテ、唯ミ二囘ヨリ調ベ
ナイ、斯樣ナ干涉壓迫ガアリマスルガ、安
達內務大臣ハ何ト御考ニナルカ、其他一々
詳シイコトヲ事例ヲ以テ申上ゲマシタナラ
バ數限リガナイ、併ナガラ是ハ豫算委員會
ニ於テ御尋ヲ致シマスルト致シマシテ、私
ハ先程御尋ヲ致シマシタル點ニ付テ、ソレ
ゾレ總理大臣、司法大臣、又俵商工大臣、
安達內務大臣ヨリ率直ナル御答辯ヲ御願致
シマスル次第デアリマス(拍手)
〔片山哲君「議長、議長、議事進行ニ關
シテ發言ヲ求メマス」ト呼フ〕
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=34
-
035・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 山口君ニ御答ヲ
致シマス、第一ニ政府ハ樞密院ヲ改革スル
ノ意思ガアルカドウカ、此御質問ニ對シマ
シテハ政府トシテ今日ノ場合言明スベキ
限リデナイ是ダケ御答致シマス(拍手)
第二ニ減俸問題デアリマス、減俸案ヲ方
針ヲ決メテ發表致シマシタ其理由ハ只今
山口君ノ御述ニナッタ通リト記憶致シマス、
而シテ之ヲ取止メタル理由ハ、輿論ニ迎合
スル爲デアルカト云フ御質問デアル迎合
シタノデハアリマセヌ、迎合デハアリマセ
又、世論ノ趨向ニ顧ミテ公明正大ニ行ッタ
ノデアリマス(拍手)趣意極メテ明瞭デアリ
マス、而シテ此問題ニ付テ宮中ニ內奏ヲシ
タリヤ否ヤト云フコトガアリマシタ、是ハ
斯樣ナル席ニ於テ申スベキ事デハナイ、總
テハ政府ガ全責任ヲ負ウテヤッタコトデア
リマス、宮中ノ事ハ私ハ一切申シマセヌ(拍
手)是ハ內閣ノ全責任デアリマス
其次ニ種々ノ事件ニ付テ司法權ノ壓迫ト
云フコトヲ或ハ新聞ヲ讀上ゲ、或ハ其他ノ
書類ヲ讀上ゲテ御質問ガアリマシタガ、政
府ハ斷ジテ司法權ヲ壓迫シタ事ハアリマセ
ヌ、ソレカラ其他ノ事件ニ付テモ亦新聞ノ
記事ヲ讀上ゲ、或ハ世評ヲ引イテ種々ニ御
質問ガアリマシタケレドモ、斯ノ如キ質問
ニ對シテハ答辯ノ價値ハナイ(發言スル者
多シ、拍手)一切答辯シマセヌ
〔國務大臣子爵渡邊千冬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=35
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036・渡邊千冬
○國務大臣(子爵渡邊千冬君) 山口君ノ御
質問ニ御答辯ヲ致シマス私ノ御答辯トシ
テ申上ゲタイト存ジマシタコトハ只今總
理大臣カラ申シマシタ通リ司法權ノ壓迫ナ
シ、此一語ヲ以テ盡キテ居ルノデアリマス
(拍手)山口君ハ司法權ノ壓迫ト云フコトヲ
言ハレテ居リマスケレドモ、蓋シ檢察行政
ヲ不當ニ發動セシメタト云フコトヲ、司法權
ノ壓迫ト云フ言葉ヲ以テ言ッテ居ラレルノ
デアラウト思ヒマス、併ナガラ只今色ミ列
擧サレマシタ事實ハ、總理大臣カラ申サレ
マシタガ-新聞ノ記事、又ハ〓發狀ヲ朗
讀サレタノデアリマスケレドモ、新聞ノ記
事、告發狀ヨリモ、檢事局ニ於テ取調ベタ
コトノ方ガ一層正確デアルト信ジテ居リマ
ス(拍手)搜査中又ハ豫審中ノ事柄ハ、刑事
訴訟法ノ規定ニ依リマシテ是ハ申上ゲルコ
トハ出來マセヌ、之ヲ以テ御答辯ト致シマ
ス(拍手)
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=36
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037・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 只今新聞ノ記事
ヲ材料トシテ色ミ御尋デアリマシタガ、御
承知ノ通リ總選擧ノ場合、人心ガ〓張致シ
テ居リマス時ノ新聞記事ハ、往々事實ト誤ッ
テ居ルコトガアリマスノデアリマス(拍手)
「前代未聞ノ選擧干涉」トカ何トカト云フヤ
ウナ見出シデアリマスガ、サウ云フコトハ
決シテ事實デハナイ(拍手)野黨ヲ檢擧シテ
與黨ハ檢擧スルナ、サウ云フヤウナコトハ
絕對ニ申シタコトハナイノデアリマス拍
手)唯、此大阪ノ柏原ノ警部補ノ犯罪、是
事實デアルノデアリマス、併シ私此處ニ申上
ゲテ置キマスガ、此度々選擧後ニ起リマスル
警官ノ犯罪ヲ、其徑路ヲ辿ッテ見マスルト、多
クハ地方ノ候補者カ、政黨員ノ有力家ニ個
人的ニ交際ノ深イ所カラ、斯ウ云フコトガ
往々アリマス、是ハ前內閣ノ頃、各地ニサ
ウ云フコトガアリマシテ、サウ云フコトノ
起ルコトガ甚ダ遺憾ト致シテ居リマス、ソレ
カラ愛知縣ノ第四區ニ於テ栲問自殺シタト
云フヤウナコトガアリマスガ、是モ此選擧
ノ爲ニ非常ニ人心ガ亢奮致シマシテ往々選
擧違反ノ爲ニ斯ウ云フコトガ起ルコトガア
ルノデアリマシテ、前內閣ノ頃モ選擧違反
ノ被疑者デ四人自殺ヲシテ居リマス、是ダ
ケ御答辯ヲ致シテ置キマス(拍手)
〔「答辯シロ」「答辯ノ要ナシ」ト呼フ者
アリ、其他發言スル者多シ〕
〔山口義一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=37
-
038・山口義一
○山口義一君 樞密院ノ事ニ付キマシテ、
總理大臣ハマダ改革ノ事ニ付テハ何事モ考
ヘテ居ナイ、斯ウ云フ御答辯デアリマシタ
ガ、在野ノ當時ニ於テアレダケノ强イ大言
ヲ吐イテ、樞密院ヲ改革シテ、政治干渉ヲ排
斥シナケレバ憲政ノ基礎ガ危ナイト迄斷言
シテ置キナガラ一朝政府責任ノ地位ニ立
チマスルヤ、マダ何モ考ヘテ居ナイト云フ
ヤウナコトデハ是ハ强イ政治トハ言ヘナ
イ(拍手)言明ヲ致ス時機ニナッテナイ、言明
スル時機デナイト云フコトヲ言ッテ居ル、野
黨ノ時ニハ强イ事ヲ言ッテ置キナガラ、責任
ノ地位ニ立ツト云フト、マルデ屁古垂レテシ
マウト云フヤウナコトデ、强イ政治ト云フ
標語ガドウ云フコトニナル(拍手)減俸案ヲ
引込マセタリ、軍縮デ屈從シタリシテ、强
イ明ルイ正シイ政治ト云フ、此標語ハ何ヲ
意味スルノカ吾々ハ了解ニ苦シム(拍手)
又減俸案ニ付テハ輿論ノ趨向ニ顧ミテ撤
囘シタト、斯ウ云フ風ニ言ッテ居ラレマスケ
レドモ、輿論ノ趨向ニ顧ミタノデハナイ、
輿論ノ趨向ニ顧ミタト云フコトハ此減俸
案ヲ決定シテ發表スル前ニソレヲ能ク察
知シテ、ソレニ當嵌マルヤウナ政治ヲスル
ナラバ、輿論ノ趨向ニ顧ミテト云フコトハ
言ヘマスルケレドモ、輿論ニ一遍打當ノテ、ソ
レニ屁古垂レタンデスカラ、是ハ輿論ノ趨
向ニ顧ミテト云フ譯ニハ行キマスマイ(拍
手
ソレカラ司法權ノ壓迫ト云フコトニ付テ
ハ是ハ司法大臣モ總理大臣モ同ジヤウナ
御答辯ヲシテ居ラレル、司法權ノ壓迫ノ事
實ハ無イ、司法權ノ壓迫ノ事實ガ無イト云
フ唯〓抽象的ノ結論ダケデ、私ノ只今中上ゲ
マシタル事實ニ付テ、一言モ言明シテ居ラ
レナイノデゴザイマスルカラシテ、吾々國
民ノ疑ハ斷ジテ解ケルモノデハゴザリマセ
ヌ、吾々ノ先程申上ゲマシタル事實ガ誤リ
デアルナラバ、何ガ故ニ檢事局ノ記錄ヲ此
處デ發表シテ、ソレハ誤リデアルト云フコ
トヲ仰セニナラナイカ(拍手)殊ニ濱口總理
大臣ハ自ラ疑ヲ懸ケラレテ居クテ、殊ニ伊
勢鐵道カラ五万圓貰シタト云フ疑ヲ懸ケラ
レ告發マデサレテ居リナガラ、ソレハ辯
明ノ限リデナイト云フノハ是ハ何事デアリマ
スカ(拍手)苟モ綱紀肅正ヲ看板ニシテ居ル
內閣ノ總理大臣、自ラ進ンデ辯明シテコソ
國民精神ノ作興モ出來ル、殊ニソレガ事實
デナイト言ハレルナラバ-濱口總理大臣
ハアレガ事實デナイト考ヘルナラバ何ガ
故ニ牧野賤男君外三名ヲ誣〓デ訴ヘナイノ
デアルカ(拍手)誣〓デ訴ヘテ、一身ヲ〓ク
シテコソ、國民ノ疑モ解ケル而シテ綱紀
肅正ノ名ニ恥ヂヌト云フコトニナル
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=38
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039・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=39
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040・山口義一
○ 山口義一君(續)明ルイ政治デアルトカ、
政治ノ公明デアルトカ言ッテモ、疑ヲ懸ケラ
レテ其儘ニシテ置イテハ國民精神ハ作興
出來ルモノヂヤゴザイマセヌ安達內務大
臣ハ大阪ノ警察官ノ瀆職事件ニ付テハ事
實デアルト云フコトヲ認メラレタ、內務大
臣ハ只今申上ゲタコトニ付テハ、ソレハ事
實デアルト云フコトヲ御認メニナッタ、唯
斯ウ云フコトハ今迄ニモ澤山アッタト云フ
コトヲ仰セニナッタケレドモ、與黨ノ代議士
カラ六千圓モ金ヲ貰ッテ、野黨ノ選擧干涉ヲ
ヤッタト云フヤウナ前例ハ、未ダ曾テ吾々ハ
之ヲ聞カナイ(拍手)殊ニ選擧干涉デ拷問ヲ
サレテ自殺ヲシタ人間ハ是モ矢張愛知縣
ニ三人アッタト云フコトヲ御認メニナッタ、
サウ云フコトハ前モアルコトダガ、前ノ內
閣ニモ四人程アッタト言ハレタ、今度ハ愛
知縣ダケデ三人モ自殺ヲシテ居ル、全國ヲ
探シタラ何十人アルカ分リハシナイ(拍手)
斯ノ如キ選擧干涉ヲ行,テ居ラレルノデア
リマスルガ、尙ホ詳シイ一々ノ實例ニ付テ
ハ、豫算委員會ニ於テ詳シク御尋ヲ致シタイ
ト思ヒマスルガ、濱口總理大臣ハ綱紀肅正
ノ名ニ恥ヂナイヤウニ、此機會ニ於テ一身
ヲ〓クスル所ノ御考ハナイカト云フコト
ヲ、玆ニ重ネテ御尋ヲ致スノデアリマス
(拍手)
〔「總理大臣ドウシタ」ト呼ヒ其他發言
スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=40
-
041・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 答辯ハアリマセ
ヌ議事進行ニ關シテ片山哲君カラ發言
ヲ求メテ居ラレマス、之ヲ許可致シマス-
片山哲君
〔片山哲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=41
-
042・片山哲
○ 片山哲君私ハ議事進行ニ關シテ二點ニ
分ッテ議長ノ辯明ヲ求メタイト思フノデア
リマス
第一ハ國務大臣ニ對スル質疑ハ通告順ニ
ナッテ居ルト云フコトヲ、吾々ハ明確ニ知。ツ
テ居ルノデアリマス、此通告順ニ依リマス
ルナラバ、山口義一君ノ後、直ニ私、片山
哲ニ質問ノ許サレル順序ニナッテ居ルノデ
アリマス所ガ先程發表サレマシタ發言表
ニ依リマスルナラバ山口義一君ノ次ガ植
原悅二郞君ニナッテ居ルノデアリマス、是ハ
明カニ決定サレテ居リマスル所ノ質問通〓
順ヲ、議長ガ勝手ニ變更シタノデアラウト
思フノデアリマス、私ハ極メテ重大ナル間
題ヲ捉ヘテ國務大臣ニ貝疑ヲ致シタイト云
フコトヲ考ヘテ居ッタノデアル、且又曩ニ吾
吾ノ中カラ大山郁夫君ガ此壇上ニ立ッテ質
問サレマシタ其條項ノ中ニ、斯ル問題ニ付
テハ後程片山哲君カラ質問サレルト云フコ
トデ、私ニ讓ラレテ居ル譯デアリマス、然
ルニモ拘ラズ此順位ヲ變更セラレマシテ
後ノ順位者デアリマス所ノ植原悅二郞君ニ
之ヲ讓ラレタル其理由如何ト云フコトヲ尋
ネタイノデアル、私ノ質疑ヲ致シタイ其內
容ハ極メテ重大ナル問題デアリマシテ
目下此機會ニ於テ質問シナケレバナラナイ
重大事項トナッテ居ルノデアリマス、ソレハ
何デアルカト申シマスナラバ、川口ニ於ケ
ル拔劍問題デアル、斯ウ云フ重大ナル問題
ニ付テ、私ハ極メテ愼重ナル態度ヲ以テ國
務大臣ニ質問致シタイト云フコトヲ考ヘテ
居ルノデアル、之ニ對シテ議長ノ明確ナル
說明ヲ私ハ求メタイノデアル
第二ハ大山郁夫君ノ質問ニ對シマシテ、
國務大臣ノ答辯ガ與ヘラレテ居ナイノデア
ル大山郁夫君ハ數項ニ分チマシテ、極メ
テ重大ナル問題ヲ質疑サレタノデアル、目
下無產階級ガ國務大臣ニ對シテ問ハントス
ル所ノ重要ナル數項ヲ揭ゲラレテ居ル、斯
ル重大ナル問題ニ付テ、大山君ハドウ云フ
點ヲ擧ゲテ居ルカト云フコトヲ速記錄ニ
依ッテ見マスナラバ、極メテ明快ニ其數點ヲ
指摘スルコトガ出來ルノデアル、第一ハ失
業問題ニ關スル質疑デアル、又第二ハ今日
ノ產業合理化ニ對スル所ノ質疑デアリマ
ス、又第三ハ何デアルカト申シマスナラバ
勞働爭議ニ對スル所ノ官憲ノ態度デアル、
第四ハ何デアルト云フナラバ、社會立法ニ
關スル所ノ政府ノ態度如何ト云フコトヲ尋
ネラレテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ重大
ナル問題ヲ大山郁夫君ガ當壇上カラ質問サ
レテ居ルニモ拘ラズ、濱口首相ハ極メテ簡
單ニ、呆氣ナク之ヲ答辯サレテ居ルダケデ
アッテ、少シモ其內容ニ關シテハ答辯ヲサ
レテ居ナイノデアリマス、私ハ之ヲ速記錄
ニ依ッテ見マス時ニ極メテ失望セザルヲ得
ナイ、又此重大ナル問題ニ對スル所ノ答辯
ハ國民全體ガ最モ期待シテ聽カント致シ
テ居ルノデアリマス、ソコデ速記錄ニ依。ツ
テ見マスルナラバ、明カニ此點ニ關スル政
府ノ意見ハ、如何ナルモノデアルカト云フ
コトヲ明確ニ揭ゲテ居ルノデアリマス、議
長ハ何故ニ國務大臣ニ對シ此答辯ヲ督促シ
ナイノデアルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=42
-
043・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 片山君、議事進行
ノ範圍ニ於テ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=43
-
044・片山哲
○ 片山哲君(續)議長ハ速記錄ニ依リマシ
テ大山郁夫君ノ皆疑ニ對スル所ノ答辯ヲ、
政府當局ニ督促スベキガ當然デアルト云フ
コトヲ私ハ考ヘルノデアリマス、最モ重要
ナル產業合理化ニ關スル意見ガ全然違ッテ
居ルノデアリマス、濱口首相ノ意見ニ依リマ
スナラバ、產業ノ合理化ハ極メテ簡單ニ、
而シテソレハ資本家階級本位ノ產業合理化
ヲ唱ヘラレテ居ルノデアル、然ルニモ拘ラ
ズ大山君ノ質問ノ要旨ハ、今日ノ產業合理
化ハ〓
〔議長片山君ニ何事カ注意ス〕
私ハ斯ウ云フ意味ニ於テ玆ニ議長ニ對シテ
其辯明ヲ求ムルノデアル、大山郁夫君ノ揭
ゲテ居リマスル質問ノ論點ニ付キマシテ
最モ明快ナル濱口首相其他各關係大臣ノ答
辯ヲ求ムベク、議長ガ直ニ其處置ヲ執ラレ
ンコトヲ玆ニ要求スル者デアル、此二點ヲ
揭ゲテ議長ノ辯明ヲ求メタイト考ヘマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=44
-
045・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)二ツノ御問デアリ
マスガ第ハ發言ノ順位ニ關シテヾアリ
マス、然ルニ植原君ハ政友會ノ當然ノ順位
ニ立ッテ質問演說ヲ爲サレタノデアリマス、
其前ニ民政黨側ノ順位ヲ山口君ニ御讓リシ
テ、サウシテ植原悅二郞君ガ其後デ致サレ
ルコトニナッテ居リマス、是ハ先例ニ依ッテ
許サレテ居ル所ノモノデアル、ソレカラ第
二ノ御尋ニ關シマシテハ、大山郁夫君ノ質
問ニ對スル政府ノ答辯ガ、要スルニ不十分
デアルト云フコトニ歸著致スノデアリマス
ガ、議長ト致シマシテハ成ルタケ十分ナラ
ンコトヲ希望スル者デアリマスケレドモ、
一々其答辯ガ十分デアルトカ、ナイトカ云
フコトニ付テ、干渉致ス限リデハアリマセ
ヌ-西尾末廣君
〔西尾末廣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=45
-
046・西尾末廣
○ 西尾末廣君私ハ議事進行ニ付キマシテ
議長ニ一應御尋致シタイノデアリマス
昨日ハ私ノ只今立ッテ居ル壇上マデ政友民
政ノ代議士諸君ガ登ラレマシテ··
〔「ノー〓〓」「民政黨カラハ一人モ出ナ
イ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=46
-
047・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 聽エマセヌカラ靜
肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=47
-
048・西尾末廣
○西尾末廣君(續) サウシテ吾々考ヘテ居
リマシタヤウニ、自ラ或ル場合ニハ民衆ニ
向ッテハ國家ノ選良デアルガ如キ面構ヘヲ
致シナガラ、アノ醜態ハ何デアッタカト吾
吾ハ憤慨ニ堪ヘナイノデアリマス、私共ハ
更ニ想ヒ起シマスルナラバ、前ノ第五十六
議會ニ於キマシテ時ノ遞信大臣久原房之助
氏ガ後ロノ「ドアー」ヲ排シテ大臣席ニ著席
致シマスルト、民政黨ノ諸君ハ一齊ニ立上ッ
テ、之ヲ指シテ泥棒々々ト聲ヲ五分間ニ亙ッ
テ何時モヤッテ居ッタノデアリマス、斯ウ云
フコトハ日本ノ國民生活ヲ如何ニ改善スベ
キカト云フ重大ナル問題ヲ審議スベキ此議
場ニ取ッテハ、極メテ穢ハシイ行爲デナクテ
ハナラヌノデアリマス、斯ウ云フ行爲ガ卽
チ議場ノ正當ナル議事ノ進行ヲ妨害スルヤ
ウナ、更ニ議院ヲ冒瀆スルヤウナ、斯樣ナ
行爲ニ對シマシテハ能ク議長ガ之ヲ是正
シナケレバナラヌ筈デアリマス、議長ハ形
式的ニ時ミ、例ヘバ一瀨君ガ扇ヲ使シタト
云フノデ形式的ニチヨイノ〓警〓ハシテ居
リマスケレドモ、其警告ニ依ッテ何等其人ハ
改メルコトナク、依然トシテ彌次ヲヤル人
人ハ同ジコトヲヤッテ居ルノデアリマス、更
ニ今日彌次ヲ多ク飛バシテ居ル者ハ民政黨
カ政友會ノ所屬議員デアリマシテ、是ハソ
レゾレ黨ニハ(「何ヲ言フノダ」「俺ヲダ
シニスルナ」ト呼フ者アリ)是等ノ議員ハ單
ニ個人ノ思フ儘ニ行動ヲスルバカリデナク、
ソレ〓〓政黨ト云フ黨派ヲ組織シ、其黨派
ニ於テハ其黨員ヲ統制スル所ノ幹部モアル
筈デアリマス、若シ議長ハ是等ノ黨派ノ幹
部ニアヽ云フコトヲヤラセナイヤウニシテ
ハドウカト云フ所ノ警〓ヲモ發スルコト
ガ出來ルノデアリマス、更ニ一昨日ノ議場
ノ混亂ハ身ヲ以テ議事ノ進行ヲ妨害スル
ヤウニ見エタノデアリマス(「ノー〓〓」)能
ク見テ居リマスルト、アレハ「ラグビー」ノ
「ゲーム」ノヤウニ、體ヲ以テ相手方ヲ妨害
シテ居ルカニ見エルノデアリマス斯ウ云
フコトガ餘リニ見兼ネタト見エマシテ
部ニハ之ヲ〓發スベシ、或ハ懲罰ニ附スベ
シト云フヤウナ意見モアルヤニ聞イテ居ル
ノデアリマス、私ハ民政黨ノ方〓、或ハ政
友會ノ方ミガ懲罰ニ附スルヤ否ヤヲ語ラウ
トシテ居ルノデハナイ、アヽ云フコトニ對
シテ議長ハ議長ノ職權ヲ以テ懲罰ニ附スベ
キデアルト思フノデアリマス、此點ニ關シマ
シテ一昨日行ハレタアノ議場ノ形勢カ
ラ見マシテモ、議長ハ尙ホ懲罰ニ附スル必
要ガナイト考ヘテ居ルヤ否ヤ、若シアヽ云
フヤウナ狀態ガ何等罰サレルコトナク、若
シ許サレルトスルナラバ、今後ニ於テアレ
ト同樣ナコトガ起ッタ場合ニハ議長ハ如
何ニシテ此議事ノ進行ヲ圖ルカト云フコト
ヲ伺ヒタイノデアリマス、要スルニ私ノ
質問ノ要點ハ、議長ガ此議院ガ始メラレ
テ以來、殊ニ一昨日ニ於キマシテ、アノ議
場ノ混亂ニ對シマシテ議長ノ執レル處置ハ
議事進行上極メテ不適正ナルモノデアルト
考ヘル、ソレ故ニアヽ云フ狀態ニ對シテ何
等ノ警告ヲモ發スル事ナク、今後ニ於テモ
尙ホ議事ガ圓滿ニ進行出來ルカドウカ、之
ニ對シテ議長ノ確信ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=48
-
049・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 西尾君ニ御答ヘシ
マス、議長ハ一昨日ノ狀態ニ付テハ同ジク遺
憾ヲ感ジマシタ、尙ホ今後ニ付キマシテハ、
議會ニ於ケル互ノ言論ヲ徹底セシムル上ニ
於テ、共ニ〓〓隱忍シテ自重セラレ議事
ヲ完全ニ遂行スルヤウニ御注意ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス-多木久米次郎君
〔「議長々々」「宣〓シタ宣告シタ」ト呼
フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=49
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050・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)多木久米次郞君ニ
許シマシタ多木久米次郞君質問ナサイマ
セヌカ、議事進行ニ付テ通〓ヲシテ居ラレ
マセウガ
〔多木久米次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=50
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051・多木久米次郎
○多木久米次郞君 私ハ議事ノ進行ニ付テ
一言伺ヒタイ次第デアリマス外デハアリ
マセヌガ二十五日私ノ國務大臣ニ對スル
質問ニ付キマシテ、濱口總理ガ議事ノ速記
錄ヲ見テ、而シテ必要ガアレバ答辯シマス、
又拓殖大臣ハ私ノ申シマシタコトガ分ラナ
イト云フコトデアリマスカラ、ドノ點ガ分
ラナイノデアリマスカ、分ラナイ點ガゴザ
イマスナレバ飽迄御分リニナルマデ私ハ
質問ヲ繼續サセテ戴キタイコトヲ希望スル
ノデアリマスカラ、ドノ點ガ御分リニナラ
ヌノデアルカ、又此私ノ質問ニ對シマシテ
適當ノ時機ニ適當ナル答辯ヲスルト云フ御
辯明ノヤウニ承リマシタガ、私ハ適當ノ時
機ガ來ナイノデアルカラ、私ノ質問ニ對シ
マシテ適富ナル御答辯ヲナサル必要ガアル
ノデアルカドウカ、其必要ナル御質問ノ(笑
聲起ル)御答辯ノ時機ト云フモノハ何日ニ
ナルノデアルカ伺フ次第デアリマス、簡
單デアルガ是ダケノコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=51
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052・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)國務大臣松田源治
君
〔國務大臣松田源治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=52
-
053・松田源治
○ 國務大臣(松田源治君)先達ノ多木君ノ
質問ガ議場ガ喧騒デアリマシタカラ私ニ能
ク分リマセヌ、仍テ速記錄ヲ調ベマシタカ
ラ-速記錄デ能ク拜承致シマシタ、三ツ
程重要ナ點ガアリマス
第一ハ朝鮮ノ地方制度、此事ニ付テ御質
問ナリマシタガ、政府ハ朝鮮ノ文化ノ發達
ニ鑑ミマシテ、地方自治制度ノ改正ヲ必要
トスルト認メマシタ、ソレハ今迄朝鮮ノ道、
府、指定面共ニ決議機關デアリマセヌデ、諮
問機關デアッタノヲ、之ヲ決議機關ニ變更
シテ、自治制度ノ擴張ヲ致シタノデアリマ
ス
第二ハ朝鮮ノ參政權ニ付テハドウ云フ考
ヲ持ッテ居ルカ、是ガ最モ重大ナル問題デア
リマス、今申シマシタル此地方自治制度ノ
改善ノ模樣ヲ見マシテ、篤ト是ハ考慮シタ
イト思ッテ居リマス、今此席ニ於テ朝鮮ノ參
政權ヲ如何ニスルカト云フコトニ付テ、具
體的ニ意見ヲ申上ゲル必要モナケレバ、又
此場合ニ申上ゲルコトハ宜クナイコトヽ私
ハ考ヘルノデアリマス
第三ハ朝鮮總督ヲ內閣官制ノ第十條ニ
依ッテ閣議ニ列セシメテハドウカト云フコ
トデアリマス、是ハ私ガ主管ノ拓務大臣ト
致シマシテ、朝鮮ノ利害ヲ代表シテ居リマ
スカラ、朝鮮總督ヲ閣議ニ列セシムル必要
ハナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=53
-
054・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)植原悅二郞君
〔植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=54
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055・植原悦二郎
○ 植原悅二郞君私ハ今囘非常ナル問題ニ
ナッテ居リマスル所ノ軍縮會議竝ニ其他外
交關係ニ付テ御尋スル積リデアリマス、外
務大臣ノ施政方針ニ御發表ナスッタ所ニ依
リマスレバ、外務大臣ハ今囘ノ軍縮ハ我國
ニ取ッテ頗ル成功デアルガ如クニ御主張ナサ
V、且ツ之ヲ宣傳ナスッテ居ルノデアリマ
ス、此問題ガ成功デアルカ、成功デアラザ
ルカニ付キマシテハ、先ヅ第一ニ倫敦會議
其モノガ如何ニシテ開催サレタカト云フコ
トヲ詮索致シテ見ナケレバナラナイノデア
リマス、倫敦會議ハ申ス迄モナク第.
ニ互ニ國家ノ國費ヲ節約スルコト、又互ニ
國家ノ安定ヲ圖ルコト、世界ノ平和竝ニ親
善ヲ圖ルコトヲ目的ト致シタルモノデアル
ト云フコトニ付テハ申ス迄モアリマセヌ、
佛ナガラ如何ナル所ノ國際會議ガ開催サレ
ルニ致シマシテモ、必ズヤ其背後ニ一國ノ
國策ノ存在シテ居ルコトヲ忘レテハナラナ
イノデアリマス、今度倫敦會議ガ開催サレ
ルエ至リマシタ所ノ徑路ヲ糺シテ見マスル
ト云フト、不戰條約ガ成立ヲ致シタ、而シ
テ此機會ニ於テ不戰條約ノ主義ヲ成ベク國
際上ニ具體化スル爲ニ軍縮ヲ計畫致シ、英
國ト米國ト豫備交涉ヲ致シマシテ、其結果
ガ倫敦會議ニ於テ、世界ノ五大海軍國ヲ招
請致シ、玆ニ倫敦會議ヲ開催スルコトニナツ
タノデアリマス、ソレ故ニ私ハ先ヅ第一ニ
外務大臣ニ御尋致シタイコトハ外務大臣
ハ倫敦會議ニ對スル所ノ英、米ノ此會議ヲ
開ク背後ニ有シテ居ッタ所ノ國策ヲ何ト解釋
スルカデアリマス、諸君御承知ノ如ク華
盛頓會議ニ於キマシテモ軍縮ガ企テラレマ
シタ、而シテ此華盛頓會議ハ諸君御承知ノ
如ク、歐洲戰爭中ニ於キマシテ、我國ノ國
力ガ非常ニ極東ニ於テ膨脹致シタ、此〓算
ヲ致サセナケレバナラナイ、日英同盟ヲ廢
棄サセナケレバナラナイ、石井「ランシン
グ」ノ協定ヲ消滅セシメナケレバナラナイ
ト、斯樣ナ問題ノ爲ニ英國ト米國トガ豫メ
ノ協議ヲ致シテ、華盛頓會議ヲ開クニ至ッタ
ノデアリマス、然ラバ私ハ玆ニ倫敦會議ヲ
開催スルニ至リマシタ所ノ米國ノ國策ハ
何ニ依ッテ生ジタノカ、之ヲ何ト外務大臣ハ
解釋シ、且ツ理解シテ居ルカ、先ヅ之ニ對
スル外務大臣ノ所見ヲ伺ッテ置キタイノデ
アリマス
次ニ私ガ外務大臣ニ御尋致シタイコト
ハ、倫敦會議ヲ開催スルニ先チマシテ、英
國ト米國トハ「フーバー」ト「マクドナルド」
ノ間ニ豫備交渉ヲ致シマシテ、「マクドナル
ド」ハ米國訪問ノ其歸途ニ於テ斯樣ナコト
ヲ聲明致シテ居ルノデアリマス、ソレハ「マ
クドナルド」氏ト「フーバー」氏トノ共同聲
明デアリマス、ソレニ依リマスト、向後英
米兩國ノ間ニハ戰爭ハナイ、又戰爭ヲ宣言
スルヤウナコトモナイ、將來英米ノ間ハ絕
對ニ平和デアルト云フコトヲ聲明致シテ居
ルノデアリマス、而シテ英米兩國ハ御承知
ノ如ク倫敦會議ニ臨ムニ當リマシテ、同
ノ海軍ノ比率ヲ承知シテ臨ンダノデアリマ
ス、旣ニ倫敦會議ニ臨ミマスル時ニハ、英
國モ米國モ補助艦ニ付キマシテハ御同樣
ニ均等ノ比率ヲ以テ當ルト云フコトヲ最初
カラ決定シテ掛ッタノデアリマス、此處ニ於
テ私ガ問題ト致シマスルコトハ、此補助艦
英米均等ノ主張ト云フモノハ、從來ノ英國
ノ海軍政策ニ變更ヲ加ヘテ居ルモノデアリ
マス此英國ノ海軍政策ニ變更ヲ加ヘルニ
至リマシタコトハ、倫敦會議ヲ開催シ、「フ
ーバー」ト「マクドナルド」兩氏ガ米國ニ於
テ、英米兩國間ノ間ニ於テ將來戰爭ハ無シ
ト共同聲明ヲ致シマシタコトニ起因シテ居
ルト思ヒマス、是ニハ必ズヤ太平洋ノ問題
ニ付キマシテ、英米兩國ノ間ニ默契ノ在ル
コトヽ思ハナケレバナラナイノデアリマス
(拍手)必ズヤ此英米均等ノ勢力ト云フコト
ハ其ノ由テ生ズル英米ノ國策ニ依ルモノト
考ヘマス英米兩國將來必ズ戰爭ヲ致サナ
イト云フガ如キ、一國ノ大統領ト一國ノ總
理大臣トガ共同聲明ヲ致スニ付キマシテ
ハ其ノ背後ニ潜ム所ノ國策ガナケレバナ
ラナイノデアリマス、左樣ナ事ハ外務大臣
ガ與リ知ル所デナイ、外國ノ政策ヲ問題ト
シテ彼此レ言フコトハ出來ナイト云フ御答
ヲナサルカモ知レマセヌ、併ナガラ諸君、
國防ノ問題ノ由テ起ル所ハ國策ニ依ッテ生
ズルノデアリマス、御同樣ニ今日世界ノ平
和ノ爲ニ海軍ヲ縮少シヨウ、制限シヨウト
申シマスノハ何レモ其國家ノ對外ノ國策
ヲ根據トシテ生ズルモノデナケレバナラナ
イノデアリマス、隨テ日本ガ此倫敦會議ニ
臨ムニ當リマシテハ英國バ如何ナル國策
ヲ持〓テ居ル、米國ハ如何ナル國策ヲ持ッテ
居ル、英米ノ間ノ豫備交涉ニ於テ補助艦一
切ニ付テ均等ノ比率ヲ承諾スルニ至ッタ所
以ハ如何カト云フコトニ對シテ、確乎タル
見解ガナケレバ國際交渉ニ當レルモノデハ
ナイノデアリマス(拍手)故ニ私ハ此倫敦會
議ニ於キマシテ英米均等ノ海軍力ヲ、最初
主張スルニ至リマス迄ノ間ノ經過、及此兩
國ガ均等ニ對シテ同意スルニ至リマシタル
所ノ、太平洋上ニ於ケル所ノ英國ノ國策ヲ
如何ニ見ルカ、而シテ英國ガ海軍政策ヲ變
更シタルハ何故デアルカ、又米國ノ此太平
洋ニ於キマシテ、否太西洋ト太平洋ニ於キ
マシテ大海軍ヲ主張スルハ何故デアルカ、
米國ハ元來御承知ノ如ク大陸國デアリマ
ス、此大陸國デアル國家ガ從來二箇國海軍
主義ヲ唱ヘテ居リマシタヤウナ英國ト、均
等ナル海軍力ヲ主張スルニ至リマシテタニ
付テハ、米國ニハ必ズヤ之ニ對スル背後ニ
國策ガナケレバナラナイト信ジテ居ルノデ
アリマス、此米國ノ國策ヲ何ト御考ニナッテ
居ルカ、外務大臣ノ御答辯ヲ伺ヒタイノデ
アリマス
御承知ノ如ク米國ハ米國ノ海軍省ノ發表
シテ居ル所ノモノヲ見マスルト、斯樣ナ發
表ガ屢、出テ居ルノデアリマス、是ハ千九百
二十五年ノ一月華盛頓會議後、米國ノ海軍
省ガ任命シタ所ノ特別委員會ノ報告ニ斯樣
ナ事ガアルノデアリマス、米國ノ大海軍ヲ
必要トスル理由ハ對外國策遂行ヲ以テ目
的トスルモノデアル、其國策トハ「モンロ
ー」主義ノ維持ト、極東ニ於ケル所ノ門戶
解放主義ノ遂行ニ備フル爲デ、アルト述ベテ
居ルノデアリマス、又屢、米國ニ於テ發表
サレマスル所ノ米國ノ國論ニ徵シマシテ
モ、米國ガ大海軍ヲ主張スル所以ハニュン
ロー」主義ノ維持ト、極東ニ於ケル、言葉
ヲ換ヘテ申シマスレバ、支那ニ於ケル門戶
開放、領土保全ノ主義ニ依ルコトハ明デア
ルト思フノデアリマス、若シ米國ガ斯樣ナ
主張ヲ以テ進ミマシタモノデアルトシマシ
タナラバ、此支那ノ門戶開放、機會均等ニ
對シテハ、單リ米國ノミガ主張スル理由ハ
ナイノデアリマス、支那ノ門戶開放、領土
保全ニ付キマシテハ日本程之ニ對シテ利
害關係ノ多イ國ハアリマセヌ、又支那ノ門
戶開放、領土保全ニ付キマシテハ單リ日
本ガ之ニ對シテ特殊ノ利害關係ヲ有スルノ
ミナラズ、世界共通ノ問題デアリ、世界共
通ノ利益デアルノデアリマス、而シテ之ガ
世界共通ノ利益デアルバカリデナイ、華盛
頓會議ニ於テハ九箇國條約ニ依リマシテ支
那ノ門戶開放、領土保全ノ問題ハ、十分ニ
確保サレテ居ル筈デアルノデアリマス、之
ガ十分ニ確保サレテアルモノデアルト致シ
マスルナラバ、米國ガ倫敦會議ニ於キマシ
テ我國ニ對シテ海軍力七割以下ヲ强制シヨ
ウト致シタ理由ハ、何故デアリマセウカ、
外務大臣ニ伺ヒタイ、米國ガ補助艦一切ニ
就キ、日本ヲ七割以下ニ切下ゲ、英米均等
ノ勢力ヲ維持シヨウトスルコトハ、米國ノ
海軍ハ自衞的デハアリマセヌ、是ハ攻擊的
ノ海軍力ヲ備フルモノデアルト謂ハナケレ
バナリマセヌ(拍手)米國ハ御承知ノ如ク大
陸國デアルノミナラズ、其國內ニ於ケル所
ノ國富ハ極メテ豐富デアリマス、製艦能率
モ到底我國ノ比デハナイノデアリマス、若
シ米國ガ不戰條約ノ精神ニ依リマシテ、世
界ニ於ケル所ノ國際紛議ヲ平和ノ談判ニ
依ッテ、解決シヨウト云フ意思ヲ有スルモ
ノデアリマスルナラバ、米國ガ我國ノ自衞
ノ國防ニ對シテ、彼此レ言フベキ筈ハ絕對
ニナイト信ジテ居ルノデアリマス(拍手)如
何ナル見地カラ見マシテモ米國ガ英國而
モ英國ハ御承知ノ如ク世界到ル處ニ領土ヲ
有シ、太平洋ノミニ於テモ濠洲アリ「ニユ
ージランド」アリ、「ニユーギニア」アリ、印
度アルノデアリマス、之ニ反シテ米國ハ如
何カト申セバ大陸國デアリマスガ故ニ、
英國ト均等ナル所ノ海軍ノ必要ヲ何トシテ
モ自衞的ノ國防カラ必要デアルト認ムルコ
トハ斷ジテ出來ナイノデアリマス(拍手)
私ハ此米國ノ大海軍ノ間題ヲ米國ノ國策ノ
上カラ考ヘマシテ、幣原外務大臣ハ何ト考
ヘテ居ラレルノカ、米國ノ此海軍ヲ以テ
米國ハ攻擊的ノ海軍ヲ備フルモノニシテ、
自衞的ノ海軍ニアラザルモノト、御判斷ナ
サルカドウカ、之ヲ明瞭ニ御尋致シテ置キ
タイノデアリマス(拍手)
又倫敦會議ニ於キマシテ、我國ガ米國ノ
案ヲ承認スルニ至リマシタニ付キマシテ
ハ米國ハ我國ニ對シテ、千九百二十四年
ノ移民法ヲ千九百八十年ノ「クオーター」ニ
依ァテ移民ノ渡航ヲ許スコトヲ取極メル積
リデアルトノ口約ヲ與ヘタト云フヤウニ傳
ヘラレテ居リマスガ、是ハ果シテ如何デア
ルカ、果シテ米國ハ此倫敦會議ニ於テ、我
國ニ七割以下ノ比率ヲ强制スル爲ニ、移民
法ノ改正ヲ以テ交換條件トスルコトヲ提案
シタカ如何カ、之ヲ伺ヒタイノデアル(拍
手)若シソレガアッタトスルナラバ、如何ナ
ル所ノ經過ニ於テアッタノカ、若シナイトス
ルナラバ此移民ノ問題ニ對シテ、外務大
臣ハドウ御考ニナッテ居ルカ是モ伺シテ置
キタイノデアリマス、更ニ倫敦會議ニ於キ
マシテ我國ガ此米國ノ案ニ贊成シナケレバ
ナラヌヤウニ已ムヲ得ナクサレタノハ、米
國ガ日本ニ對シテ東洋ニ於ケル所ノー極
東ニ於ケル所ノ優越權ヲ承認スルコトヲ認
メタ爲デアルトモ傳へラレテ居ルノデアリ
マス、何故左樣ナコトノ疑念ガ起ルカト申
セバ、倫敦會議ノ開催中ニ於キマシテ我國
ニ駐割ノ米國大使「カツスル」氏ハ日米協會
ニ於テ、我國ニ對シテ極東ニ於ケル優越權
ヲ與ヘルト云フコトガ意味深長デアルガ如
クニ聲明サレタコトハ諸君御承知デアリ
マセウ又是ト同時ニ英國ニ於テ米國ノ代
表者ナル國務卿「スチムソン」モ殆ド同一ナ
ル所ノ聲明ヲ爲シテ居ルノデアリマス、此
聲明ガ倫敦會議ノ眞最中、而モ日米兩國間
ノ交涉ノ困難ナル際ニ於テ、日本ニ於テハ
「カツスル」氏、英國ニ於テハ國務卿「スチ
ムソン」氏ガ、恰モ時ヲ同ジウシテ、極東ニ
於テ米國ハ日本ニ對シテ優越權ヲ認ムル積
リデアルト云フコトヲ言ヒマシタノハ、何
等カノ意味ナシトハ推測スルコトハ出來ナ
イノデアリマス、倫敦會議ニ於テ果シテ米國ハ
我國ニ對シテ極東ニ於ケル所ノ優越權ヲ與
フルガ如キ默契ヲ與ヘタカ如何カ、此眞相
ニ付テモ伺ヒタイノデアリマス、更ニ或ル
方面ノ說ニ依リマスレバ、來ル六月我國ハ
償還致サナケレバナラナイ所ノ、二億五六
千万ノ外債ヲ持ッテ居ルノデアリマス、其二
億五六千万ノ借替ニ付キマシテ米國ハ若シ
我國ガ倫敦會議ニ於ケル所ノ米國案ニ同意
シナケレバ好意ヲ寄スルコトガ出來ナイト
威嚇シタト申セバ極端ナ言葉デアリマセウ
ケレドモ、此我國ノ外債借替ヲ外交上ノ手
段方法ニ利用シタ如クニ傳ヘラレテ居ルノ
デアリマスガ、此眞相モ併セテ伺ヒタイノ
デアリマス(拍手)又松平大使ト「リード」氏
トノ自由討議ニ依リマシテ成案セラレシ所
謂米國案ナルモノニ對シ、若槻全權ガ政府
ニ請訓セルニ付キ、若槻全權ハ之ヲ政府ニ
推薦セルニ非ズシテ、單ニ考慮ヲ求メシモ
ノナリト云フコトヲ、三月二十五日「セン
トゼームス」ノ宮殿ニ於テ三國ノ全權會議
ノ席上ニ於テ述ベラレテ居ルト云フコトデ
アリマスガ、是ハ果シテ事實デアルカ否ヤ、
之モ伺ッテ置キタイノデアリマス、又若槻
全權ハ此所謂米國案ナルモノハ修正ノ餘地
ナキモノニシテ、米國ノ最後案ナリト云フ
コトノ理由ヲ以テ、我國ニ請訓シタト傳へ
ラレテ居リマスガ、ソレガ果シテ事實デア
ルカ如何カ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス
尙ホ倫敦會議ノコトニ付キマシテ御尋致
シテ置キタイコトハ優秀船ノ問題デアリマ
ス、倫敦會議ニ於テモ優秀船ノ問題ハ問題
トナラナカッタヤウデアリマス、御承知ノ如
ク優秀船ニ六吋砲ヲ搭載シテ武裝ヲ致シテ
戰時ニ之ヲ使用スルコトニナリマスレバ、
假令補助艦ニ於テハ如何ナル比率ガアリマ
シテモ、戰時ニ於テ此優秀船ノ使用ヲ承認
スル場合ニ於テハ海軍力ニ重大ナル勢力
ノ相違ヲ招クコトハ明カナル事實デアルノ
デアリマス、ソレ故ニ華盛頓會議ニ於キマ
シテモ此優秀船ノ武裝ニ付キマシテハ可
ナリムヅカシイ問題ニナッタノデアリマス、
補助艦ノ問題ヲ討論致スニ付キマシテハ
何ト致シテモ優秀船ノ間題ニ對スル、戰時ノ
武裝ノ問題ニ付テ嚴重ナル所ノ協定ガ出來
テ居ラナケレバナラナイノデアリマス、然
ルニ私ノ承知致シテ居ル所ニ依レバ、倫敦
會議ニ於テ我國ハ此優秀船ノ武裝問題ニ付
キマシテハ、絕對ニ論議ヲ致シテ居ラナイ
ヤウデアリマス、御承知ノ如ク米國モ英國
モ多數ノ優秀船ヲ持,テ居リマス、我國ニ
於テハ殆ド優秀船ト云フモノヲ所有致シテ
居リマセヌ、故ニ若シ此優秀船ノ間題ガ此
儘ニ存在致シテ居リマスルト云フト、假令
倫敦會議ニ於キマシテ補助艦ノ協定ガ出來
マシテモ、此優秀船武裝カラ日英米三國ノ
海軍力ニ、非常ナル戰時ニ於テ相違ヲ生ズ
ルノデアリマス、ソレニ對スル所ノ外相ノ
見解ハ如何デアルカ、優秀船ノ問題ヲ倫敦
會議ニ於テ日本ヨリ提案シタコトガアルカ
ドウカ、ナイトスルナラバ提案セザリシ理
由ハ如何デアルカ、之ヲ伺ヒタイノデアリ
マス
更ニ倫敦會議ニ牽聯シテ伺ヒタイコトハ、
御承知ノ如ク米國ガ補助艦ニ於キマシテ、
英米對等ノ比率ヲ有スルニ付キマシテハ
疑モナク米國ノ極東政策ニ依ルコトハ論ヲ
俟タナイ所デアリマス、然ラバ倫敦會議ニ
於キマシテ、米國ノ案ニ我國ガ屈從致シタ
ト云フコトニ付キマシテハ將來極東全體ニ
於テ非常ナル影響ヲ及ボスモノト確信シテ
居ルノデアリマス、御承知ノ如ク支那ニ於
キマシテハ、其駐屯シテ居ル所ノ軍艦ノ大
キサニ依リマシテモ、支那國民ガ其代表ス
ル所ノ國家ニ對スル態度ヲ異ニスルト言ハ
レテ居ルノデアリマス、極東ノ問題ニ付テ
我國程重大ナル利益關係ヲ持。ッテ居ル國ハ
アリマセヌ、支那ノ存亡ハ直ニ延イテ我國
ノ存亡ニモ係ハルコトデアルノデアリマス
(拍手)英國ト云ヒ、米國ト云ヒ、支那ニ對
シテ直接間接利害關係ガナイトハ私ハ申シ
マセヌ、併ナガラ支那ノ榮枯盛〓ハ直ニ米
國英國ノ榮枯盛衰ニハナリマセヌ、然ルニ
支那ノ盛衰ハ直ニ日本ノ盛衰ニ影響スルコ
トデアリマスルガ故ニ、支那問題ニ付キマ
シテハ日本程利益關係ノ多イ國ハナイノデ
アリマス、然ルニ日本ハ此倫敦會議ニ於キ
マシテ米國ノ海軍案ニ屈從シタ、日本ハ米
國ニ讓歩シテ極東ノ防備ヲモ完全ニスルコ
トガ出來ナイト云フ狀態デアリマスレバ、
御承知ノ如ク支那ノ今日ハ支那自體ガ自國
ノ力ニ依ッテ自立シ能ハザル狀態デアルコ
トヲ知ラナケレバナリマセヌ(拍手)支那ノ
國內ノ平和統一ハ一ニ支那ノ外部ニ於ケル
所ノ周圍ノ環境ニ依ッテ定マルモノデアル
コトハ外相ト雖モ恐ラク之ヲ御承知ノコ
トデアリマセウ、若シ此事ヲ御承知デアル
トスルナラバ、米國案ニ對スル我國ノ屈從
ハ延イテ支那ノ治亂ノ間題ニ對シテモ、重
大ナル影響ノアルモソト思ハナケレバナリ
マセヌ、幣原外相ハ之ニ對シテ如何ナル見
解ヲ有サレテ居ルカヲ御尋致シタイノデア
リマス
次ニ御尋シタイコトハ、政府ハ昨年十二
月支那公使ニ小幡前土耳其大使ヲ任命サレ
マシテ、支那ノ南京領事ノ上村氏ヲシテ之
ニ對スル「アグレマン」ニ對シ、支那政府ニ
同意ヲ求メラレマシタ所ガ、支那政府ハ上
村領事ヲシテ、此「アグレマン」ヲ拒否ス
ルノ申出ヲ爲シタ事實ガアルト承知致シテ
居ルノデアリマス、是ガ果シテ事實デアル
カ如何カ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス、尙
又同月十日在日本駐剳ノ汪公使ハ南京政府
ノ訓令ノ下ニ我政府ヲ訪問致シマシテ、公
使ヲ大使ニ昇格スルコトヲ希望スル、又目
下問題トナッテ居リマスル所ノ日支通商條
約ヲ改正致シ、治外法權制度ヲ撤廢スルト云
フコトヲ、日本政府ガ責任ヲ以テ承諾スレ
バ汪公使ハ小幡大使ノ「アグレマン」ニ對
シテ同意ヲ爲スト、南京政府カラノ申出ヲ
傳達シタト云フコトデアリマスガ、是レ果
シテ事實デアルカ如何カヲ伺ヒタイノデア
リマス、孰レニセヨ、小幡公使ノ「アグレ
マン」ノ問題ガ、現在ニ於テ未決定デ居ル
コトハ事實デアリマス、之ニ對シテ幣原外
務大臣ハ過日關稅協定案ガ樞密院ニ於テ審
議サレテ居ル場合ニ於キマシテ、樞密院ノ
質問ニ答ヘ、幣原外務大臣ハ左樣ナ實例ハ
世界ニアルコトデアルカラ、敢テ甚シク苦
慮スルノ必要ハナイト云フヤウニ答ヘラレ
タト新聞ニ出テ居リマスガ、私ハ之ニ對シ
テ幣原外務大臣ノ言ハレル如ク世界ニ「ア
グレマン」ヲ拒否セラレタ所ノ事實ハアル
ハ確ニアルノデアリマス、千八百八十五年
ニ米國ガ墺國ヘ派遣セントシタ所ノ公使ノ
「アグレマン」ヲ拒否シタ事實ハアリマス
又英國ガ露國へ簡派セントセシ公使ニ對シ
テ「アグレマン」ヲ拒絕シタ事實ハアリマス、
又米國ガ千八百八十七年ニ支那ニ簡派セン
トセシ公使ニ對シテ支那ガ「アグレマン」ヲ
與ヘナカッタ先例ハアリマスガ、今度我國
ノ小幡公使ニ對シテ「アグレマン」ヲ拒否シ
タヤウナ事實ハ我國ノ外交史上未ダ曾テ是
レアラザル所デアルノデアリマス(拍手)此
小幡公使ノ「アグレマン」ノ拒否ノ理由ヲ
支那政府デ與ヘテ居ルカ與ヘテ居ラナイ
カ、如何ナル理由ニ依ッテ支那ハ我國ニ對シ
テ小幡公使ノ「アグレマン」ヲ與ヘナイノデ
アルカ、之ニ對シテ支那政府ガ何等カノ說
明ヲ與ヘテアルカ與ヘテナイカ、先ヅ第一
ニ之ヲ伺ヒタイノデアリマス(拍手)私共ノ
見ル所ニ依リマスレバ、日支兩國ノ關係ハ
特殊ナ關係デアリマス、而シテ御承知ノ如
ク小幡前土耳其大使ハ支那ト隨分密接ナ關
係ヲ持テ居ラレタ方デアリマス又外務省
ガ必ズ小幡公使ヲ支那ニ任命スルニ付テハ、
之ヲ適任ナリ、是ヨリ他ニ日支親善ヲ圖リ
得ルモノナシト御確信ヲ以テ任命サレタニ
疑ナイノデアリマス、ソレヲ支那ガ拒否ス
ルニ至リマシテハ是ヨリ外交上日本ニ與
ヘタル所ノ侮辱ハ未ダ曾テナイノデアリマ
ス(拍手)國辱デアリマス、侮辱デアリマス、
國威失墜デアリマス(拍手)之ヲ國威失墜デ
ナイ、我國ニ對シテ支那ガ斯樣ナ事ヲシテ
モ差支ナイト云フ日本國民ガアルナラバ
何ヲ以テ國家ノ外交ヲ論ズルコトガ出來ル
カ(拍手)左樣ナ事實アルニモ拘ラズ是ハ
明カニ支那ガ日本ニ與ヘタル所ノ一大侮辱
ニアラズ輕蔑ニアラズトスルナラバ左樣
ナ外務大臣ハ世界ニ其類例ヲ見ナイモノデ
アリマス(拍手)
次ニ私ガ御尋致シタイ事ハ、國際上支那
ハ屢〓我國ニ對シテ非禮ヲ敢テスルノミナ
ラズ南京政府ノ如キハ小幡公使ノ「アグ
レマン」ヲ拒否致シタガ爲ニ、國際禮讓ヲ
無視セル暴擧ナリト南京政府自ラモ考ヘマ
シタモノデアリマスカ、之ニ對シテハ內心
頗ル憂慮スル所ガアリ、南京政府ノ狀態ヲ
聞キマスレバ、之ニ對シテ日本ガ如何ナル
態度ヲ以テ望マレルカト云フノデ、戰々兢
兢タル狀態デアッタト承知致シテ居ルノデ
アリマス(拍手)南京政府自ラガ戰々兢々ト
シテ居リマスル此南京政府ノ亂暴狼藉ノ最
中ニ「アグレマン」ノ問題ヲモ片付ケズシ
5、突如トシテ我國ニ於テハ重光總領事ヲ
代理公使ニ任命致シマシテ、關稅條約ノ協
定ニ當ラシメタノデアリマス、若シ幣原
外務大臣ガ國際禮讓ノ如何カヲ知ッテ居リ、
日支共存共榮ノ如何ナルモノデアルカヲ承
知致シ、支那ノ此亂暴狼藉ノ態度ヲ承知致
シマスナラバ之ニ反省ヲ求メ、之ニ對シ
テ正式ニ「アグレマン」ヲ與ヘシメ、而シテ
後ニ關稅條約ヲ協定致シテモ決シテ時期遲
クハナイノデアリマス(拍手)然ルニ如何ナ
ル理由ガアリマシテ、如何ナル國家的利
益ノ見地カラ幣原外相ハ、斯樣ナ屈辱ノ狀
態侮辱ノ狀態、輕蔑ノ狀態ニ於テ、自ラ
進ンデ關稅協定ヲ爲スト云フガ如キコトヲ
敢テシナケレバナラナカッタカ、其理由ハ何
故デアリマスカ(拍手)而シテ是ダケノ屈辱
ヲ忍ビマシテ出來上ッタ所ノ關稅協定ナル
モノハ、果シテ我國ニ對シテ有利ナモノデ
アルカ、此細目ニ亙リマシテハ何レ豫算會
議ニ於テ詳シク御尋致シタイノデアリマス
ガ、此新シク出來マシタ所ノ日支協定ナル
モノハ、差等稅ノ協定ヲ致シマスル時ニ、
若シ我國ガ支那ノ關稅自主權ヲ認メテ互惠
條約ヲ作リマスナラバ其互惠條約ノ期限
ヲ五箇年要求シナケレバナラナイト云フノ
ガ、我國一般ノ對支貿易ニ關スル商工業者
ノ意見デアッタノデアリマス、此互惠條約ノ
期限ニ付キマシテモ、現內閣ハ五年ノ主張
ヲ三年ニ讓ッテ居ルノデアリマス、加之現內
閣ハ此互惠條約ヲ結ブニ付キマシテ、關稅
自主權ヲ認メテ居ルコトハ、之ヲ彼此レ申
スノデハアリマセヌガ、釐金ノ廢止ヲ支那
ニ於テ左樣ニ急激ニ實行出來ルト云フヤウ
ナコトヲ、如何ナル立場カラ幣原外相ハ御
考デアリマスカ、現在支那ニ於テ南京政府
ノ威力ノ行ハレテ居ル所ハドレダケノ範圍
デアリマスカ、此關稅條約ハ支那全土ニ適
用サルベキモノデアルノミナラズ、滿鮮ニ
於ケル所ノ陸境ノ關稅ニ對シテモ、ニケン
猶豫ヲ以テ之ヲ撤廢スルコトニ規定サレテ
居ルノデアリマス、加之此關稅條約協定中
支那ハ滿洲カラ粟ノ輸出ヲモ禁止シテ居ル
事實ガアルデハアリマスマイカ、ノミナラ
ズ綿絲ニ對シテハ特ニ消費稅ヲ許スヤウナ
內諾ヲ與ヘテ居ルノミナラズ、支那北京ニ
於キマスル所ノ關稅會議ノ際ニ於キマシテ、
互惠條約ヲ結ブニ付キマシテハ、日本ノ商工
業ヲ、日支兩國ノ貿易ノ上ニ於テ增進セシム
ルニ付テハ何トシテモ互惠條約ニ對スル所
ノ品目ヲ少クモ百品目デナケレバナラナイ
ト主張シタノデアリマス、然ルニモ拘ラズ
此互惠條約ニ於テハ百品目ノ中カラ六十品
目ノ互惠條約ヲ定メタノデアリマス、而シ
テ其他ノ全部ヲ讓步シテ居ルノデアリマ
ス、之ヲ見マシテモ幣原外相ハ、倫敦會議
ニ於テモ支那ノ交涉ニ見テモ、我國ノ權益
ヲ殆ド考慮スルコトナク、單ニ外交上ノ無
事ナルコトヲ希望シ、讓步ニ讓步シ、國威國
權ガ侵害サレテモ敢テ之ヲ考慮セザル狀態
デアルト謂ハナケレバナラヌ(拍手)
次ニ私ハ幣原外相ニ御尋シタイコトハ
目下日支兩國ノ間ニ於テ商議ヲ進メラレテ
居リマスル所ノ日支通商條約ニ付テノコト
デアリマス、政府ハ只今日支通商條約ノ改
訂ノ商議ヲ進メラレテ居リマスルニ付キマ
シテハ現行ノ日支條約ハ幣原外務大臣昨
年ノ議會ニ於テ自ラ質問セラレタ如ク、支
那ニ於テハ此條約ハ昭和三年七月期限滿了
ト共ニ消滅サレテ居ルモノト聲明致シテ居
ルノデアリマス、幣原外務大臣ハ此現行ノ
日支通商條約ハ我國ノ主張ノ如ク、二囘我
國ノ政府ガ抗議シタ如ク、有效ノモノト云
フ前提ノ下ニ、現在ノ通商條約ノ商議ヲ進
メラレテ居ルノカ、又ハ支那ノ聲明スルガ
如クニ、此條約ハ昭和三年七月其期間滿了
ト共ニ消滅シテ居ルモノト云フ諒解ノ下ニ、
商議ヲ進メラレテ居ルモノカ、其點ヲ明瞭
ニ致シテ置キタイノデアリマス啻ニ關稅
協定ノ問題バカリデハアリマセヌ、日支通
商條約ニ付キマシテハ、御承知ノ如ク支那
ハ昭和三年ノ一月ニ、上海ニ於ケル會審衙門
ヲ改組致シマシテ、臨時法院ヲ設置致シテ
居ルノデアリマス、而シテ支那ニ於キマシ
テハ、我國トノ通商條約ハ消滅セリト云フ
理由ノ下ニ於キマシテ、我ガ國民ト支那人
トノ繫爭問題ニ對シ、民事ニ關スル所ノ訴
訟ハ此臨時法院ニ於テ一切受付ケザル所
ノ狀態ニナッテ居リマスガ、之ニ對シテ幣原
外相ハ如何ナル手續ヲ執ラレタノデアル
カ、治外法權制度ヲ認メテ貰ヒタイト云フ
所ノ支那ガ、上海ニ於ケル所ノ臨時法院ニ
於テ、當然存在シテ居ル所ノ日支條約ヲ無
視シテ、我ガ國民ト支那人トノ間ニ於キマ
ス所ノ民事上ノ繫爭問題ヲ二箇年間、殆ド
一度モ其審理ヲ進メテ居ラナイノデアリマ
ス、之ニ對シテ幣原外務大臣ハ抗議セラレ
タトスレバ、如何ナル抗議ヲサレタカ、又
支那ハ之ニ對シテ如何ナル返答ヲサレタノ
デアルカ、若シ斯樣ノ狀態ガ繼續シテー
支那ハ隨分違法ノ行爲、無法ノ行爲ヲシツ
ツアル狀態デアルニ拘ラズ-尙ホ進ン
デ日支通商條約ノ改訂ノ商議ヲ進メテ行カ
レル積リデアルカ如何カ、其點ヲ明瞭ニ致
シテ置キタイノデアリマス(拍手)
次ニ私ノ御尋致シタイコトハ滿洲某重
大事件ニ關シテデアリマス、民政黨ノ中野
正剛君ノ如キハ昨年ノ議會ニ於テ、田中內
閣ハ何故ニ滿洲某重大事件ヲ發表シナイ
カ、此重大事件ヲ發表セザルコトハ、日支
兩國ノ國交ヲ阻害スルノミナラズ、我國ノ
國際信用ヲ失墜シ我國ガ世界各國ノ輿論
ニ袋叩キニ遭ッテ居ルガ如キ狀態デアルト
痛論致シタノデアリマス、又貴族院ニ於キ
マシテモ民政黨ノ議員ハ滿洲某重大事件
ヲ何故田中內閣ハ發表シナイカ、之ヲ發表
セザルコトニ依ッテ、我ガ國民ハ支那四億ノ
國民カラ反感ヲ受ケテ居ル是ヨリ日支兩
國ノ親善關係ヲ害スルモノハナイ、是ヨリ
我國ノ國際信用ヲ失墜スルモノハナイ、是
程我國ノ國際信義ニ悖ル行爲ハナイト言
ヲ極メ口ラ極メテ田中內閣ヲ糺彈致シタ
ノデアリマスソレナラバ滿洲某重大事件
ニ對スル關係書類調書ハ一切前內閣カラ
現內閣ニ昨年七月引繼ガレテ居ルノデアリ
マス、若シ民政黨ノ諸君ガ滿洲某重大事件
ヲ發表セザルコトニ依ッテ、我國ノ信用ヲ傷
ツケ日支兩國ノ關係ヲ阻害スルモノデア
ルト云フナラバ何故民政黨內閣ハ內閣ヲ
取ルト直ニ滿洲某重大事件ノ全部ノ眞相ヲ
發表サレナイノデアルカ(拍手)私ハ此問題
ハ總理大臣ニ伺ヒタイノデアリマス、總理
大臣ガ此處ニ居ラナイノハ何故デアリマス
カ、私ハ此問題ニ對シテハ總理大臣ニ御伺
ヒ致シタイノデアル、總理大臣ヲ御呼ビ下
サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=55
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056・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 總理大臣ハ今見エ
マスー直グ來ラレマス
〔「演說シナイナラ降リタラドウダ」ト
呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=56
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057・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 是ハ重大ナル事柄デ
アリマスカラ、總理大臣ノ答辯ヲ要求スル
ノデアリマス-滿洲某重大事件ノ調査ノ
發表如何ニ付キマシテハ、民政黨ノ諸君ガ
常ニ黨ヲ代表シテ議會ニ於テ主張サレ、又
院外ニ於テ屢、國民ニ向ッテ宣傳聲明サレタ
コトデアリマスガ故ニ、此問題ニ對シテハ
何ト致シマシテモ、總理大臣ノ御答辯ヲ煩
ハサナケレバナラナイノデアリマス(拍手)
昨年民政黨諸君ハ、御承知ノ如ク政府ガ滿
洲某重大事件ヲ發表セザルコトハ我國ノ
國威ヲ失墜スルコトデアル、日支親善ノ關
係ヲ害スルコトデアル、我國ハ世界ノ輿論
カラ袋叩キニナッテ居ルトマデ、民政黨ノ中
野君ノ如キハ黨ヲ代表シテ豫算委員會デ言
及サレタノデアリマス、之ニ付キマシテハ
御承知ノ如ク、昨年ノ七月現內閣成立ノ時
ニ全部此調書ガ現內閣ニ引繼ガレテ居ルノ
デアリマス、田中內閣ノ時ニ發表セズシテ
國威ヲ失墜スルモノナラバ、民政黨ノ內閣
ノ時ニモ發表セザレバ國威ヲ失墜セヌトハ
申サレマセヌ、田中內閣ノ時ニ發表セザル
ガ故ニ日支親善ヲ害スルモノナリト云フナ
ラバ民政黨內閣ニ於テモ之ヲ發表セザレ
バ日支親善ヲ害スルモノデアル、田中內閣
ノ時ニ此發表ヲセザル爲ニ我國ハ國際的ニ
袋叩キニ遇フモノナラバ、民政黨內閣ニ於
テモ同一ナル結論ヲ生ズルモノデアル(拍
手)然ルニ民政黨ガ內閣ヲ取リマシテ以來、
滿洲某重大事件ニ對シテハ一言モ言及セザ
ルノミナラズ、今日ニ於テモ之ヲ發表シヨ
ウトシナイノデアリマス(拍手)民政黨ハ朝
ニ在ルト野ニ在ルト言ヲ左右ニシテ國民ヲ
欺瞞スルノデアル(拍手)唯內閣ヲ倒ス爲メ
政略的ニ外交上ノ重大ナル滿洲某重大事件
ヲ利用サレタノデアル、民政黨ハ內閣ヲ倒
シサヘスレバ、政權ヲ取リサヘスレバ如
何ナル重大問題ヲ政略ノ爲ニ使用シテモ宜
シイト云フノカ、民政黨ガ之ヲ發表セザル
ナラバ、發表セザル理由ヲ明瞭ニセラレタ
1、又發表出來ナケレバ、出來ナイト云フ
理由ヲ明瞭ニセラレタイ、是等ノ點ヲ明瞭
ニ爲サナケレバ民政黨ハ倒閣ノ爲ニハ如何
ナル手段方法モ外交問題モ自由勝手ニ左
右シテ、國威ノ失墜モ、國權ノ濫用モ敢テ
スルモノデアルト言ハレテモ、辯明ノ言葉
ガナイト謂ハナケレバナラナイ、之ニ對ス
ル總理大臣ノ極メテ明瞭ナル、國民ヲ欺瞞
セザル國際信用ヲ囘復シ得ル、日支親善
ノ向上發展ヲ確保シ得ル御答辯ヲ伺ヒタイ
ノデアリマス
次ニ私ハ外務大臣ニ對シ東支鐵道ノ事變
ニ付キマシテ御尋致シタイコトガアルノデ
アリマス、御承知ノ如ク昨年七月東支鐵道
問題ガ露支兩國ノ間ニ起リマシタ時ニ、昨
年十一月米國政府ハ不戰條約ノ精神ニ依
リ不戰條約ノ締盟國ガ協調シテ露支兩國
ノ鐵道問題ノ紛議ニ對シテ容喙シヨウトシ
タ事實ガアル、此容喙シヨウトシタ事實ヲ
米國ニ於ケル出淵大使ハ、此米國ノ提案ニ
對シテ略〓同意ヲ與ヘラレタ如クニ傳ヘラ
レテ居ル、諸君、東支鐵道ノ問題ハ北滿ニ
於ケル一局部、露支兩國ノ問題ニ係ハルコ
トデアリマス
〔議長退席副議長著席〕
若シ東支鐵道ノ問題ガ紛糾致シマシテ、重
大ナル影響ヲ他ノ國ニ及ボストスルナラ
が、日本帝國ニ對スルヨリ重大ナル影響ヲ
及ボス國ハアリマセヌ、米國ハ御承知ノ如
ク此東支鐵道ノ問題ニ若シ强テ多少ノ利益
關係ガアルト云フナラバ歐羅巴ノ戰爭中
ニ聯合國ガ之ヲ管理シタ時ノ費用ヲ多少支
出シテ居ル位ノコト外關係ガアリマセヌ、
然ルニ極東ニ於ケル、而モ極東ニ於ケル此
遠隔ノ地ノ出來事ニ對シテ、不戰條約ニ名
ヲ藉リテ米國ガ容喙スルト云フヤウナコト
ヲ我國ノ外務當局ガ默視スル、座視スル
ト云フ様ナコトアルニ至ッテハ、驚カザル
ヲ得ナイ狀態デアリマス、此問題ニ對シ幣
原外務大臣ハ如何ナル方針ヲ執ラレタノデ
アルカ、斯樣ナコトヲ米國ガ極東ノ天地ニ
於テ致ス、米國ニ於テハ「モンロー」主義ヲ
唱ヘ歐羅巴ノ事ニハ干涉シナイ、然ルニ
極東ニ於ケル一局部ノ鐵道ノ問題ニ對シテ
スラ、不戰條約ニ名ヲ藉リテ之ニ容喙スル
ガ如キコトハ東洋ノ平和ニ對シテハ決シ
テ喜バシカラザル狀態デアルト謂ハナケレ
バナラヌノデアリマス、之ニ對スル外務大
臣ノ所見ヲ御伺シテ置キタイノデアリマス
モウ一ツ小サナ問題デアリマスルケレド
モ、滿洲問題ニ牽聯シテ、外務大臣ニ御尋
致シテ置カナケレバナラヌコトハ滿洲ノ
鐵道問題ハ張作霖ト日本政府トノ間ニ協定
ガ出來テ居ルノデアリマス、此張作霖ノ政府時
代、我國ト締結致シマシタ此鐵道問題ニ付
テ、幣原外務大臣ハ如何ニ之ヲ取扱ハレテ
居ルカ、其後ノ經過ニ對シテ明瞭ニ伺ヒタ
イノデアリマス
更ニ外務大臣ニ御尋シタイノハ、印度ノ
關稅法案ニ對スルコトデアリマス、御承知ノ
如ク印度ト日本トノ間ニハ、ハッキリトシタ
所ノ日印條約ガアルノデアリマス、此條約
ニ依リマスレバ、斯樣ナ原文ガ嚴トシテ存
在致シテ居リマス「日本國皇帝陛下ノ版圖
內ノ生產或ハ製造ニ係ル物品ハ印度國へ輸
入スルニ際シ別國ノ生產ニ係ル同種ノ物品
ニ適用セラルル最低率ノ關稅ヲ賦課セラル
ヘシ」然ルニモ拘ラズ今囘印度政府ハ、印
度政府自ラノ發意デハアリマセヌ、英國ノ
「ランカシヤ」ニ於ケル所ノ紡績業者ヲ保護
セントスル爲ニ、英國ノ指金ニ依リマシテ、
新シイ關稅率ヲ定メ、英國品ト日本品トノ
間ニ關稅五分ノ相違ヲ來サシムルヤウナ、
英國ニ對シテ特惠關稅ノ法律ヲ定メシメタ
ノデアリマス、之ニ依ッテ我國ノ印度貿易
カラ受ケル所ノ打擊ハ實ニ多イト思フノデ
アリマス、斯樣ニ條約ニ對シテ正面衝突ヲ
致シテ居ルヤウナ關稅法ノ制定ニ付キマシ
テハ外務當局ガ此事ヲ未然ニ防ギ、此事
ヲ實行不可能ナルヤウニ爲シ得ザルト云フ
理由ハ絕對ニナイト私ハ信ジテ居ルノデア
リマス、之ニ對シテ幣原外相ハ如何ナル對
策ヲ執ラレタノデアルカ、其對策ニ依ヶテ有
效ナラザリシト云フナラバ如何ナル理由
デアリマスカ、ドノ方面ヲ見マシテモ、倫
敦會議ノ屈從バカリデハアリマセヌ、支那
ニ於ケル所ノ關稅條約ニ對シテモ、印度ニ
於ケル所ノ關稅法ノ制定ニ對シテモ、現在
ノ我ガ外務省ハ我國ノ國益ヲ何處デ保護シ
テ居ルノカ、私共ハ頗ル疑問トシテ居ルノ
デアリマス(拍手)外國ノ言フコトヲ聞イテ
追從シ、唯我國ノ權益ヲ犠牲ニシテ圓滿
ヲ圖ル外務省ナラバ、有フテモ無クテモ同ジ
コトデアルノデアリマス(拍手)
モウ一ツ外務大臣ニ御尋シテ置カナケレ
バナラナイコトガアルノデアリマス、ソレ
ハ日露ノ漁業ニ關スル問題デアリマス、諸
君、御承知ノ如ク我國ノ日本海ニ於ケル所
ノ漁業權ハ、日露戰爭ノ結果「ポーツマウ
ス」條約ニ依ヶテ之ヲ獲得致シ、更ニ日露兩
國ノ新漁業協定ニ依シテ其權利ヲ擁護サレ
テ居ルモノデアリマス、然ルニモ拘ラズ御
承知ノ如ク露國ハ極東漁業廳ノ名ニ依リマ
シテ、我國ノ條約ノ權威ニ依ッテ護ラレテ居
ル所ノ權益サヘ、殆ド侵害スルノデハナカラ
ウカト云フヤウナ規則ヲ定メマシテ、之三
我國ノ漁業者ヲ從ハセテ居ルバカリデハア
リマセヌ、現在ニ於テ蟹工船ノ如キハ漸次
其權益ヲ露國ニ侵害サレテ居ルコトハ少
クモ我國ノ海國トシテノ漁業上ノ問題ヲ御
承知ナサル方ナラバ民政黨ノ方デアラウ
トモ之ニ對シテ御異議ノアルベキ筈ハナ
イノデアル(拍手)ノミナラズ御承知ノ如ク
現在ニ於テ露國ハ露國ノ個人ニ對シ、或ハ
「コーペレーテイーブ」ニ對シ、露國國營ヲ
名トシテ、露國國營ガ其背後カラ露國ノ個
人ヲ援ケ、露國國營ノ名義ニ依ッテ我國ノ漁
區ヲ隨分不當ナルコトニ依ッテ獲得セント
計畫致シテ居ルコトハ事實デアルノデアリ
マス(拍手)之ニ對シテ外務大臣ハ如何ナル
對策ヲ執ラレテ居ルカ、斯樣ナル狀態ヲ以
テシテモ我國ノ漁業權ハ將來永久ニ確實ニ
確保サレルト信ジテ居ラレルノデアルカ、
之ヲヤル所ノ力ナクシテ之ヲ爲シ能ハザル
ノデアルカ、其何レデアルカヲ明瞭ニ伺ヒ
タイノデアリマス、以上述ベマシタ所ノ倫
敦會議、對支問題、印度ノ關稅法、露國漁
業法ニ付キマシテハ先ヅ第一ニ外務大臣
ニ御答辯ヲ煩シ、滿洲某重大事件ニ對シマ
シテハ總理大臣ノ御答辯ヲ煩シ、其御答辯
ニ依リマシテ尙ホ私共疑義ガアルナラバ
更ニ御尋致シタイト思ヒマス、先ヅ以上申
述ベタコトニ付テ明確ナル御答辯ヲ望ム次
第デアリマス
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=57
-
058・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 只今植原君ヨリ
滿洲某重大事件ニ關シテ御質問ガアリマシ
ク、私御答致シマス、此事件ニ付テハ內閣
更迭ノ際ニ前內閣カラ引繼ガアッタ如クニ
申サレマシタケレドモ、其引繼ハアリマセヌ
(拍手)而シテ此事件ハ事務的ニモ政治的
ニモ旣ニ處理ヲ了シテ居ルト存ジマスルニ
依ッテ(「ノウ〓〓」)ソレ以上詮議立テヲス
ル必要ヲ認メマセヌ(拍手)凡ソ或事件ヲ調
査シ、若ハ之ヲ發表スルニ當ステハ自ラ之
ヲ適當トスル時期ト、不適當ナル時期トガ
アリマス(拍手)本件ノ如キハ今日ハ之ヲ調
査シ、發表スベキ時期ニアラズト信ジマ
ス、之ヲ答辯ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=58
-
059・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 幣原外務大臣
〔國務大臣男爵盤原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=59
-
060・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵常原喜重郞君) 只今植原
君ヨリ外交問題ニ付テ種々ナル點ニ亙ッテ
御質問ガアッタノデアリマス、成ベク其順序
ヲ追ウテ御答辯申上ゲマス
第一ノ點ハ倫敦會議ガ開催サレタト云フ
コトニ付テ英米ノ國策如何、斯ウ云フコト
デアリマス、倫敦會議ノ開催セラルヽコト
ヲ希望シタノハ英米ダケデハアリマセヌ、
日本モ其希望ヲ致シタノデアリマス(拍手)
現ニ日本ガ之ニ參加スルコトハ前內閣ノ時
代ニ定ッテ居ッタ問題デアリマス、植原君ハ
或ハ之ニ關係シテノ御話デアリマセウガ、
會議ヲ開催スル前ニ英米ノ間ニ補助艦ニ關
シテ均勢ノ原則ヲ樹テタ、茲デ以テ英國ハ
從來ノ海軍政策ヲ變更シタ、何故ニ從來ノ
海軍政策ヲ變更シタノデアルカ、恐ラクハ
是ハ卽チ太平洋問題ニ關シテ兩國ノ間ニ默
契ガアッタノデアラウト云フ御意見デアツ
タヤウデアリマス、元來補助艦問題ニ關シ
テ英米ノ均等ト云フ主義方針ハ此倫敦會
議ガ開催サルヽ問題ガ起クテカラ初メテ起"
タ問題デハアリマセヌ、現ニ華盛頓會議ニ
於キマシテモ、此問題ニ付テハ兩國ノ間
ニ自ラ諒解ガアッタコトデアリマス、英國ガ
從來ノ海軍政策ヲ變更シタ、抛棄シタト云
フモノデハナカラウト私ハ了解致シテ居リ
マス(拍手)之ニ關シテ英米ノ間ニ默契ガア
リハシナイカ、太平洋問題ニ關シテ默契ガ
アリハシナイカト云フコトハ恐ラクハ植
原君ノ想像ダケデアラウト考ヘマス(拍手)
ソレカラ次ニ米國ガ海軍ヲ保有スル理由
ニ付テ、何故ニ大海軍ヲ持タナケレバナラ
ヌカ、其二ツノ理由ガアル、一ツハ「モン
ロー」主義ノ維持デアル、第二八支那ニ於ケル
門戶開放主義ノ維持デアル此二ツノ主義
ノ維持ノ爲ニ米國ハ大ナル海軍ノ兵力量ト
云フモノヲ保有シナケレバナラヌ、斯ウ云
フ意見ガ何カ米國ノ海軍ノ委員會ノ報告書
ニ出テ居スタトカ、海軍ノ士官ガ申シタト
カ云フコトデアリマス、併ナガラ是ハ米國
ノ國策トカ云フ風ニシテ、米國政府ハ此意
見ヲ定メタト云フコトハ、私ハ決シテ信ジ
マセヌ、第一此問題ノ實質カラ考ヘテ見テ
モ、支那ニ於ケル門戶開放主義ノ維持ト云
フモノハ誰ガ申出シタノデアルカ、第一日
英同盟ノ締結以來日本ハ此問題ニ付テハ絕
エズ日本ノ國策トシテ、此維持ノ爲ニハ日
本ハ常ニ苦心致シテ居ッタノデアル、此主義
ノ實行ノ爲ニ日米兩國ガ相爭フ、其爲ニ米
國ガ大キナ海軍ヲ持ツト云フヤウナコトハ
其問題ノ實質カラ言ッテ見テモ如何ニモ荒
唐無稽ナ考デアリマス
〔副議長退席議長復席〕
ソレ故ニ斯ノ如キ事ガ米國ノ國策デア
ル、此二ツノ主義ヲ維持センガ爲ニ大キナ
海軍力ヲ保有スルト云フコトガ米國ノ國策
デアルト言ハルヽナラバ、私ハ左樣ナ國策
ノアルコトハ承知致シマセヌ
ソレカラ今囘ノ軍縮倫敦會議ニ於キマシ
テ、日本ガ最後ノ態度ヲ決定スルニ付テハ
米國ヨリ何カ移民法ノ改正ヲシヨウトカ、
或ハ東洋ニ於ケル我ガ優越權ヲ認メヤウト
カヽ或ハ若シ日本ガ之ニ贊成ヲシナケレバ
公債ノ借換ニ付テ米國ハ同意ヲシナイ、其
爲ニ困難ヲ來スト云フヤウナコトヲ申出デ
タノデハナイカト云フヤウナ御趣意ノ御意
見ガアリマシタ是ハ絕對ニ左樣ナ事實ハ
アリマセヌ(拍手)今囘ノ倫敦會議ニ於キマ
シテハ斯ノ如キ政治問題ガ論議サレタコ
トハアリマセヌ、公債ノ借換-米國ガ之
ニ對シテ異議ヲ唱ヘルカラ、早ク日本ガ此
妥協案ニ同意スルガ宜シイト云フヤウナコ
トヲ云ッテ來タコトハ絕對ニナイト云フ
コトヲ私ハ申上ゲタノデアリマス(拍手)
ソレカラ其次ニ若槻全權ト政府トノ間ニ
何カ電報ノ往復ガアッタコトニ言及サレマ
シテ、若槻君ハ此妥協案ニ付テ最早修正ノ
餘地ガナイト云フヤウナコトヲ言ッテ來ラ
レタ、事實ナリヤ否ヤト云フヤウナコトデ
アリマスルガ、全權ト政府トノ間ニ交換サ
レタ電報ノ內容ニ關シテハ、何等御答スベ
キモノデナカラウト考ヘマス(拍手)ソレカ
ラ優秀船ト海軍力トノ關係ニ付テ御話ニナ
リマシタ御承知ノ如ク「ジユネーブ」會議
ニ於キマシテハ、商賣船ノ優秀船ノ問題ニ
付キマシテ、英米兩國ノ間ニ大ニ論爭ノ
アッタコトハ御承知ノ通リデアリマス、併ナ
ガラ倫敦會議ニ於テハ此問題ハ絕對ニ問題
ニナラナカッタノデアリマス
ソレカラ其次ニ、米國案ニ日本ガ屈從シ
タト云フコトヲ前提ニ置カレテ、之ニ依ッ
テ極東ニ於ケル日本ノ國際的地位ガ減ジハシ
ナイカ、斯ウ云フ御質問デアリマス、其御
質問ノ前提ガ誤ッテ居リマス、日本ハ何モ米
國案ナルモノニ屈從シタ覺エハ更ニアリマ
セヌ、御承知ノ如ク倫敦條約ト云フモノハ、
其他ノ多クノ國際條約ト同樣ニ關係列國ノ
交讓妥協ニ依ッテ成立ッタモノデアリマス
隨ヲテ其一々ノ條項ニ就テ見マスレバ、或ハ
我國ニ取シテ十分ニ滿足デナイ點モアリマ
セウ、單リ我國ノミナラズ英米ニ於キマシ
テモ、或ハ種々ノ不滿ノ點ガアルコトハ
旣ニ新聞ナドノ論調ニ現レテ居ルデアリマ
セウ(拍手)併シナガラ······(此時發言スル
者多シ)併ナガラ若シ他ノ一面ニ於キマシ
テ倫敦會議ガ決裂シ、サウシテ條約ナルモ
ノガ不成立ニナッタト云フ場合ニハ、如何ナ
ル結果ヲ來シタデアラウカト云フコトモ考
ヘテ見ナケレバナリマセヌ(拍手)私ハ過日
ノ演說中ニ申述ベマシタ如ク、若シ倫敦會
議ガ決裂ニ歸シタト云フ場合ニハ無論關
係列國ノ間ニ造艦競爭ト云フモノガ決シテ
起ラナイト云フコトヲ何人ガ保證シ得ラレ
マセウカ(拍手)若シ造艦競爭ト云フモノガ
起リマスルナラバ、私ガ過日モ申述ベマシ
タルガ如ク、其結果ハ極メテ重大デアル、
何レノ當事者ニ取リマシテモ、其國防上ニ
於テ何等ノ安心安固ノ念ヲ與ヘルモノデ
ハナイ、安全觀念ヲ與ヘザルノミナラズ、
益〓不安危惧ノ念ヲ深クスルノミデアリマ
ス(拍手)他ノ一面ニ於キマシテ今囘條約ガ
出來テ、會議ガ滿足ニ成立致シタト云フコ
トノ爲ニ、此列國ノ間ニ-關係列國ノ間
ニ、一ツノ新ラシイ平和親善ノ空氣ガ新ニ注
入サレテ居ルト云フコトハ世界列國ノ新
聞ノ-言論界ニ現レタル論調ニ徵シテモ
明瞭デアリマス(拍手)凡ソ國際問題ヲ解決
スルノニハ、此精神的背景ガ何ヨリモ肝要
デアリマス、私ハ次ノ會議、千九百三十五
年ノ會議ニ於キマシテモ、此精神的背景ガ
アリマスレバ、種々ノ殘〓テ居ル問題モ、必
ズ圓滿ナル解決ニ至ランコトヲ期待シテ居
ル次第デアリマス(拍手)
其次ニ小幡大使ノ在支公使ノ任命問
題ニ御言及ニナリマシタ、御承知ノ如ク一
國ガ大使又ハ公使ヲ任命致シマスル場合ニ
ハ豫メ先方ノ政府ニ之ヲ內〓シテ、サウ
シテ其同意ヲ求メルト云フコトガ國際慣例
ノ一ツデアリマス(「支那ニハナイ」ト呼フ
者アリ)支那ニハアリマス、旣ニ數年以來其
慣例ガ出來テ居リマス(拍手)而シテ其國際
慣例ニ依テ同意ヲ求メル、同意ヲ求メル其
成行ハ、何レノ國ニ於テモ機密ニ屬スルモ
ノデアリマシテ、公然論議セラルベキ性質
ノモノデハアリマセヌ、而シテ只今植原君
御自身モ仰セラレタル如ク、此問題ハ未ダ
解結致シテ居ル問題デハナイ、一ツノ懸案
デアル、斯ノ如キ性質ノ問題、機密ニ屬ス
ル性質ノ問題ヲ今日ノ程度ニ於テ-此交
涉ノ程度ニ於テ此成行ヲ此壇上ニ於テ論議
致シマスト云フコトハ我ガ國家ノ爲ニ如
何ニモ不利益デアル、有害デアルト云フコ
トハ能ク御諒解ヲ下サレタイト思ヒマス
(拍手)此問題ニ關聯シテ支那ヨリ何カ大使
ノ交換ヲ行ヒタイ、通商條約ノ問題ニ付
テ、例ヘバ治外法權ノヤウナ問題ヲ、此際
解決致シタイト云フヤウナ交換間題ヲ言ッ
テ來タト云フヤウナ御話デアリマシタガ、
ソレハ事實デハアリマセヌ、唯此機會ニ於
キマシテ一言附加へテ置キマス、小幡大使
ハ私ナドノ見ル所デハ支那問題ニ關スル一
ノ權威デアリマス、多年支那問題ヲ〓究セ
ラレテ居ラレ、古イ支那ノミナラズ、新シ
イ支那ニ付テモ深イ理解ヲ持ヲテ『居ラレル
ノデアリマス、其閱歷、人格、識見カラ見
テ、此際日支兩國ノ親善ノ任ニ當ラレルノ
ハ至極適任ト私ハ考ヘテ居リマス(拍手)
唯、支那ノ新聞紙ニ依リマスレバ-唯、支
那ノ新聞紙ニ散見スル所ニ依リマスレバ
小幡大使ガ大正四年ノ日支交涉ノ際ニ大使
館參事官トシテ會議ノ席ニ列セラレ、何カ
非常ニ壓迫的ノ態度ヲ示シタ、斯ル經歷ヲ
持ッテ居ル人ハ駐支大使トシテ適任者デハ
ナイト云フコトハ、新聞ニハ出テ居リマス、
併ナガラ斯ル事實ハ全然誤リデアリマス、
小幡大使ガ當時大使館參事官トシテ日支交
涉ノ會議ノ席ニ列セラレタト云フコトハ事
實デアリマスケレドモ、小幡君ガ討論ニ參
加シテ激論ヲ交ヘ、支那ノ委員ニ對シテ壓
迫的態度ヲ加ヘタナドヽ云フコトハ全ク
事實無根ノ話デアリマス(拍手)若シ是ガ眞
ニ支那ニ於テ小幡大使ノ任命ニ對シテ反對
スル理由デアリマスルナラバ、其誤解ハ必
ズ氷解セラルヽコトヽ私ハ期待致シテ居リ
マス(拍手)ソレカラ此小幡大使ノ問題ガ解
決スルマデハ關稅協定ヲ致シテハナラヌ
關稅協定ヲスルノハ時機ヲ誤ッテ居ルト云
フ御話デアリマス、此點ニ付キマシテハ私ハ
植原君ト意見ヲ異ニ致シテ居リマス、植原
君ノ仰セラレタ如ク小幡大使ノ問題ガ解決
スルト、シナイトヲ俟タズ、關稅協定ノ問
題ハ早ク解決致ス方ガ宜イト云フノガ私ノ
考デアリマス(拍手)
ソレカラ此日支協定ノ內容ニ立入ッテ何
カ釐金廢止ノ問題、其他種々ノ問題ヲ論議
セラレマシタガ此協定ハ御承知ノ如ク未
ダ調印ヲ了シタ問題デモアリマセズ、何レ是
ガ發表サレマスレバ追テ詳シク御說明ヲ申
上ゲル時機ガ來ルデアラウト考ヘマス、ソ
レカラ今囘通商條約改訂ノ交渉ヲ始メルニ
ハ、從來ノ通商條約ハ效力ヲ失ッタモノ、或
ハ有シタモノ、何レノ前提デ以テ交渉ヲ始
メヤウトスルノカト云フ御質問デアリマ
ス、固ヨリ吾々ハ現行日支通商條約ハ未ダ
效力ヲ有スルモノト云フ立場ヲ執ッテ居ル
コトハ御承知ノ通リデアラウト考ヘマス
ソレカラ其次ニ上海ノ臨時法院ノ問題ニ
御言及ニ相成リマシタ、確ニ此問題ハ日本
ノ關スル限リハ未ダ條約協定ノ調印ノ運
ビニハ至ッテ居リマセヌケレドモ、是ハ旣ニ
列國トノ間ニハ話ハ纏ヲテ居ルノデアリマ
ス、日本ニ關係致シマシテモ遠カラズ此問
題ハ解決セラルヽデアラウト云フコトヲ申
上ゲテ置キマス(拍手)
ソレカラ東支鐵道ノ問題ニ御言及ニ相成
リマシテ、米國ノ不戰條約ニ依ッテ支露兩
國ノ注意ヲ喚起スルト云フ提議、此提議ニ
對シテ出淵大使ガ贊成ヲ致シタト云フヤウ
ナ趣意ノ御質問デアッタヤウニ伺ヒマスガ、
是ハ何カノ御間違デアリマセウ、此問題ノ
成行ニ付キマシテハ私ハ前囘ノ議會ニ於
キマシテ成行ハ相當ニ詳シク申上ゲタノデ
アリマス、此米國ノ提議ニ付キマシテハ
私ハ主義トシテ反對デハナイケレドモ、日
本ノ特殊ノ立場カラ見テ、此提議ニハ殘念
ナガラ同意出來ヌト云フコトヲ囘答致シタ
ト云フコトハ此前ノ議會ニ於テ報告申上
ゲテアルノデアリマス、出淵大使ガ日本政
府ガ斯ル態度ヲ執ッテ居ルニ拘ラズ、出淵大
使ガ自分限リデ以テ此提案ニ贊成ヲシタト
云フヤウナコトヲ申シタコトハ何カノ間違
デアリマス、絕體ニ斯樣ナ事實ハアリマセ
ヌ
ソレカラ支那トノ滿洲ニ於ケル鐵道問題
ノコトヲ御述ニナリマシタ、是ハ今日斯樣
ナコトヲ申上ゲル方ガ善イカ、惡イカ、是
ハ植原君ガ能ク御考へ下サレバ御了解下サ
ルト思フ、斯樣ナ問題ヲ今日此處デ以テ論
議致スノハ極メテ時機宜シキヲ得ナイト
私ハ考ヘマス
ソレカラ其次ニ印度ノ綿布關稅ノコトニ
付テ御話ガアリマシタ、如何ニモ此問題ハ
日本ノ貿易ノ關係カラ見テ重大ナル問題デ
アリマス、ソレ故ニ吾々ハ英國政府ニ向ッテ
深甚ナル注意ヲ喚起致シタノデアル、交涉
ヲ始メテ居ルノデアリマス、然ルニソレニ
拘ラズ印度ノ議會ニ於テハ此問題ハ既ニ
通過致シタ、併ナガラ印度ノ議會ハ此問題
ヲ通過致シタトハ云ヘ、日英兩國間ノ交涉
ハマダ完結ニ至ッテ居リマセヌ、此問題ニ付
テハマダ交涉中デアルト云フコトヲ御承
知ヲ願ヒタイ(拍手)
ソレカラ最後ニ日露漁業ノ問題ニ付テ、
御話ガアリマシタ、日露漁業ノ問題ハ御承
知ノ通リ極メテ複雜ナル關係ヲ持ッテ居ル
問題デアリマス、楯ノ一面ノミヲ見テ、他
ノ一面ヲ見ナケレバ決シテ公平ナル觀察ト
云フモノハ爲シ得ラレル問題デハアリマセ
ヌ、之ニ付キマシテハ、或ハ植原君ハ御聞
及ビカモ知レマセヌガ、今日現ニ交涉中ノ
事項モアリマス、又追テ交涉ヲ開始セント
スル事項モアリマス、隨テ斯ル程度ニ於キ
マシテ、今日之ニ關スル政府ノ所見、所信
ト云フモノヲ申上ゲルノハ決シテ時機デ
ナイト思フ、日本ノ國家ノ前途ノ爲ニ甚ダ
有害デアルト信ジマスガ故ニ、是ハ是レ以
上ノコトハ御答辯申上ゲルコトハ出來マセ
ヌ(拍手)
〔植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=60
-
061・植原悦二郎
○植原悅二郞君 只今ノ總理大臣ノ御答辯
ニ付キマシテハ、私共頗ル了解ニ苦ムモノ
デアリマス、總理大臣ハ事件ニ付テハ前
内閣カラ現内閣ハ引繼ナシト言ハレタ、事
件其モノニ付テノ引繼ガナクモ、滿洲某重
大事件ニ關シマスル總テノ調書全體ハ政府
ノ手許ニ在ルモノデアリマス、引繼イダカ
ラ引繼ガナイカラト云フ問題デハアリマ
セヌ、政府デ此問題ニ對シテ取調ベマシタ
モノ、此事件ノ成行ノ記錄ハドノ政府ト云
ハズ、日本帝國ノ政府ノ手許ニ全部揃ッテ居
ルモノデアルノデアリマス、ソレヲ引繼イ
ダカラ、引繼ガナイカラト云フヤウナコト
ノ御答辯ハ洵ニ事務家ノ辯舌デアリマシ
テ、總理大臣トシテ甚ダ奇怪千萬ナル御答
辯ト申サナケレバナラヌ(拍手)而シテ尙ホ
總理大臣ハ斯樣ニ申サレテ居リマス、斯樣
ナ事件ヲ發表スルガ善イカ惡イカ、適當デ
アルカ適當デナイカト云フコトハ、政府ノ
判斷ニ依ッテスベキモノデアル、之ヲ適當ノ
時機ニ發表セザレバ、又不適當ナ時機ニ發
表スルヤウナコトガアレバ、國家ノ爲ニ非常
ニ損失デアルト御言ヒナサラナイバカリ
ノ御答辯デアルノデアリマス、ソレヲ私ハ
言フノデアリマス、此事件ハ重大ナル事件
デ、政府自ラ之ヲ發表シテ宜イカ、宜シクナ
イカヲ判斷シテ決スベキモノデアル、ソレ
故ニ田中內閣ニ於テハ是ハ發表スル時機ニ
非ズ、發表スル時機ニ到達セズト言フタニ
拘ラズ、民政黨ノ諸君ハ之ヲ只今發表セザ
ルコトハ、我國ノ國際信義ニ惇リ、日支共存
共榮ヲ阻害スル、我ガ國民ハ世界カラ袋叩
キニ遭フト言ッタデハナイカ、ソレ程ノ事件
デアル、內閣其者ガ斯ル事件ハ發表スベキ
カ、發表スベカラザルカ取定メナケレバナ
ラナイ程ノ重大事件デアルコトヲ承知シテ
居ラレル濱口總理大臣、當時ノ濱口總裁ガ
指揮シテ居ラレル所ノ民政黨ノ方ハ何ノ
爲ニ之ヲ致シタカ、唯、田中內閣ヲ倒セバ宜
イト云フノデアルカ、國家ノ利益ヲ犠牲ニ
シテモ宜イト云フノデアルカ、黨利黨略ノ
爲ニ民政黨ハ國際問題ヲ利用シ、如何ナル
國際上ノ重要ナル事項デモ之ヲ利用シテ倒
閣ノ爲ニ、黨略ノ爲ニ利用スルモノデアル
ト言ハレテモ仕方ガナイ(拍手)之ヲ如何デ
ゴザルト質問シタノデアル、ソレニ對シテ
事件ノ引繼ガナカッタカラ、若クハ其事件
ノコトヲ發表スルニ適當ナル時ト、不適當
ナル時ガアリマス、ソレハ政府デ判斷シナ
ケレバナラナイ、實ニ無責任極マル答辯デ
アル總理大臣トシテコンナ無責任ナル答
辯ヲスル者ガ何處ニアルカ、是デモ立憲國
ノ總理大臣、是デモ議會中心ノ總理大臣デ
アルカ、國民ヲ代表シ、天下ノ大多數ヲ指
揮スル政黨ノ總裁トシテ、能クモ左樣ナ言
ヲ吐ケルモノデアル、洵ニ無責任極マルモ
ノト謂ハナケレバナラヌ(拍手)更ニ外務大
臣ノ·
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=61
-
062・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=62
-
063・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 外務大臣ハ斯樣ナコ
トヲ申サレテ居ル、私ガ倫敦會議ヲ開催ス
ルニ付キマシテハ英米兩國ノ間ニハ可ナ
リ豫備交涉ヲ進メ相當ノ纏シタ意見ヲ持ッテ
出立致シテ居ル、シテ見ルト此倫敦會議ヲ
英國ガ主催者トナッテ五大海軍國ヲ招致ス
ルニ至リマシタニ付キマシテハ倫敦會議
ノ背後ニ必ズヤ何カ英米ノ間ニ國策ガナ
ケレバナラヌ、而シテ米國ハ御承知ノ通リ
富强世界ニ冠タル國デアリマス米國程物
資ヲ持ッテ居ル國ハアリマセヌ、米國程製艦
能率ノ强イ國ハアリマセヌ、其國ガ大海軍
ヲ主張スルノハ何ノ故デアルカト云フノニ
付キマシテ植原君ハ之ニ對シテ米國ガ斯
ル大海軍ヲ言フノハ「モンロー」主義維持ノ
爲デアリ、極東ニ於ケル門戶解放ノ爲デア
ルト言ハレルケレドモ、ソレハ米國ノ海軍
省ノ一部或ハ海軍將官ノ意見デアラウ、
私ハ左樣ナコトヲ毛頭知リマセヌ、米國ノ
國策ハ何デアルカヲ知ラナイト言ハンバカ
リノ御答辯デアッタノデアリマス(拍手)諸
君、外務大臣ガ事務官デアリマスルナラバ
ドウ云フ風ニ比率ヲシタラ宜シイドウ云
フ風ニ談判ヲ進メタラ宜シイト云フ事ヲ知ッ
テ居レバ宜シイデアリマセウガ、外務大
臣ハ事務官デハアリマセヌ、外務大臣ハ國
家ノ國策ヲ考ヘテ、一國ノ政策ニ依ッテ海
軍ノ比率ヲ定メナケレバナラヌ(拍手)其外
務大臣ガ米國ニ如何ナル國策ガアッタカ、米
國ガドウ云フコトヲ考ヘテ居ルノカ存ジマ
セヌトハ、寔ニ驚キ入ッタ答辯デアルノデア
リマス(拍手)私ハ幣原外務大臣ニ對シテハ
敬意ヲ表シテ居リマシタ、幣原外相ハ「スティ
ツマンシップ」ヲ持ッテ居ルト思ッテ居シタノデア
リマスガ、只今ノ答辯ヲ聽イテ見レバ幣原君
ハ全クノ事務官デアル(拍手)外交官ジヤナ
イ、外務省ヲ背負テ立ツコトハ出來ナイ、外
國ノ言フコトヲ唯、屈從隷屬スルダケノ外
務大臣デアルト言ハレテモ、何ノ辯解ノ辭
ハアリマスマイ(拍手)尙ホ幣原外務大臣ハ
支那ノ門戶開放、領土保全ニ對シテハ日本
ガ特ニ考慮ヲ拂ッテ居ル、是ハ當然ノコト
デアリマス、其考慮ヲ特ニ拂フナラバ米國
ノ如キ物資ノ豐富ナ、製艦力ノ多イ國ニ對
シテ我國ガ自衞ノ爲ニ主張スル所ノ我國ノ
國防ニ七割要ルカ、八割要ルカ六割要ル
カ、是ハ專間家デナケレバ、私ノ知ラナイ
コトデアリマスケレドモ、何レニセヨ我國
ノ海軍ハ自衞上ノモノデ攻メル爲デハナイ、
我國ヲ防禦スル爲デアルト云フモノデアリ
マスルナラバ、我國ノ防禦ニ對シテ最モ必
要ナル所ノ潜水艦ノ如キモノニ對シテ、米
國ニ讓步サセラレルト云フヤウナコトヲ屈
從ト言ハズシテ何ト之ヲ申スカ(拍手)若シ
幣原外務大臣ノ言フガ如ク我國ガ東洋ノ保
全ヲ期サナケレバナラナイ、我國ハ東洋ニ
於ケル所ノ唯一ノ海國デアリマス、此唯一
ノ海國ガ東洋ノ平和ヲ維持スル爲ニ米國ト
對等ノ海軍力ヲ要求シタッテ、攻擊的ノ軍國
主義ノ海軍デアルナドト非難サレル氣遣ハ
ナイノデアリマス(拍手)然ルニ米國ニ對シ
テ米國ノ要求ニ全部讓ヲテ居リナガラ、我國
ハ東洋ニ於テ支那ノ門戶開放、領土保全ニ
對シテ何處ノ國ヨリモ最モ利害關係ヲ有ス
ルモノナルガ故ニ、此防備ニ對シテハ十分
注意シテ居ルナドト、能クモ白ミシイ御言
葉ガ出タモノデゴザイマス(拍手)尙ホ倫敦
會議ニ付キマシテ若槻全權ノ請訓ノ問題ニ
付テ御尋ネ致シマシタ、然ルニ外務大臣ハ
之ニ對シテ斯樣ナコトハ答ヘラレナイト御
言ヒニナリマシタガ、ソレナラバ私ハ外務
大臣ニ反問致シタイノデアリマス、外務大
臣ハ昨年ノ貴族院ノ會議ニ於テ如何ナル質
問ヲ爲サレテ居ルカヲ御記憶デアリマセウ、
昨年ノ貴族院ニ於テ田中內閣ガ內田伯ヲ不
戰條約ノ調印ノ爲ニ歐羅巴ニ派遣致シマシ
タ時ニ、此內田伯ガ日英協調ノ問題ニ對シ
テ、田中內閣ガ內田伯ヲ通ジテ英國ニ交付
シタル公文ガアリハシナイカ、ソレガアル
ナラ發表セヨ、外國ノ政府ニ發表出來ルコ
トヲ何トテ日本ノ國民ニ發表出來ナイト云
フコトガアルカト、御追窮ナスッタコトヲ
御忘レデアリマスカ、御忘レデハアリマス
マイ、(拍手)日英協調ハ世界ニ關係スル問題
デアリマス、若槻全權ガ日本ニ請訓シテ來
タコトハ日本ノ國民ニ關係コソアレ、外交
關係ニ響クコトデハナイ、然ルニ內田伯ニ
對シテ若シ公文ヲ手渡シタコトガ、其事ハ
言ヘヌ、其內容ノ外國ニ云ハレルコトヲ日
本ニ云ヘナイコトハナイト言ウテ、御追窮
ナスッテ居ルニモ拘ラズ、斯樣ナ問題ニ對シ
テ我國民ニ之ヲ發表出來ナイト云フノハ
ソレ以上私ハ之ヲ追窮スルノデハアリマセ
ヌケレドモ、政治家トシテ言質ヲ重ンゼザ
ルモ甚シキモノナリト申スノデアリマス
(拍手)
更ニ私ハ優秀船ノ問題ニ付キマシテ、優
秀船ノ問題ハ「ジュネーヴ」ノ會議ニ於テハ問
題トナッタ、併シ倫敦ノ會議ニ於テハ問題ニ
ナラナカッタ、私ハソレデアルカラ御尋ヲ致
シテ居ルノデアリマス、優秀船ハ幣原外務
大臣御承知ノ如ク、我國ニ於テハ新ニ郵船
會社ニ出來マシタ一隻位キリアリマセヌ、
然ルニ米國ニモ英國ニモ實ニ多數ノ優秀船
ヲ持フテ居ルノデアリマス、而シテ此優秀船
ハ一度ビ武裝ヲ致セバ補助艦同樣ノ效力ヲ
發スルモノデアルノデアリマス、補助艦ノ
問題ヲ倫敦ニ於テ協定致シテ居ルニ對シ、
直ニ戰時ニ於テ利用ノ出來ル所ノ此優秀船
ノ問題ニ付キマシテ、更ニ日本國ガ之ヲ問
題トシテ之ニ對シテ論及シナイ、問題ト爲
サラナカッタト云フニ至ッテハ、倫敦會議ニ
於ケル所ノ補助艦限定ノ全體ノ問題ヲ考慮
セザルモ甚シイモノデアルト謂ハナケレバ
ナリマセヌ(拍手)諸君、我國モ一等國デア
ルガ英米モ一等國デアリマス、ソレヲ我國
ガ米國ニ對シテ初カラ七割デアルト、若槻
全權ガ橫濱ヲ去ル時、米國ニ行ッタ時、英國
ニ行ッタ時、我國ハ七割デ宜シイナゾト諸
君餘リニ我國ヲ卑下シタ言葉デハアリマス
マイカ、對等國デアルナラバ是等ノ者ニ對
シテ同等ノ權利ヲ持ッテ宜シイ、絕對必要ノ
權利ヲ又モ屈從シテ居ル、私ハ我國ノ外交
ニ於テ緣日商人ノ如クナレト申スノデハア
リマセヌ併ナガラ國策無タシテ唯外交談
判ヲ纒メレバ宜シイト云フヤウナ、國家ノ
利益ヲ無視スル所ノ外交ニ至ッテハ實ニ驚
キ入ッタルモノト謂ハナケレバナラヌノデ
アリマス(拍手)
更ニ私ハ外務大臣ノ答辯ニ付テ奇怪ニ感
ズルコトハ斯樣ナコトデアリマス、若シ幣
原外務大臣ノ只今ノ御言葉ヲ私ガ間違〓テ
解釋シテ居ラナケレバ、斯ウ云フ御答デア
リマス、若シ倫敦會議ニ於テ我國ガ米國案
ニ屈從シナケレバ、倫敦會議ハ決裂ニナツ
タ、決裂ニナッタ場合ニ於テハ其結果ガ恐シ
イト云フ御答辯デアリマス(拍手)一國ノ外
務大臣ノ答辯トシテ、驚キ入ッタル答辯デ
アルノデアリマス、佛蘭西ハ御承知ノ如ク、
佛蘭西自國ノ自衞ノ海軍力ヲ主張致シ、之
ヲ維持シテ、五箇國ノ協定ニ加ハラナンデ
何ノ佛蘭西ニ差支ガアルノデアリマス、我
國ノ權益ヲ擁護シ、我國家ノ威信ヲ仲張ス
ルコトハ我國ノ主張ヲ何處迄モ徹底セシム
ルコトデ、之ニ屈從隷屬スルコトハ一時ノ平
和ヲ保ツコトガ出來テモ、永遠ノ平和ヲ保ツ
コトガ出來ナイコトハ申ス迄モナイ(拍手)
私ハ此問題ヲ外務大臣ニハ反問致シタクナ
イト思ヒマシタケレドモ、反問セザルヲ得
ナイカラ、此點ニ付テハ外務大臣ニ一言御
答ヲ得タイノデアリマス、外務大臣ハ斯樣
ニ申シタ、倫敦會議ガ決裂スレバ恐シイ製
艦競爭ガ起ル、ソレヲ恐レラレル、左樣ナ
實例ハアリマセヌ、「ジユネーブ」ニ於テ軍
縮會議ガ破レタ時ニ於テ何處ニ競爭ガ起ッ
タカ華盛頓會議ニ於テハ主力艦ノミノ協
定スラ出來ナイ-華盛頓會議ニ於テハ主
力艦ノミノ協定スラ出來ナイ、而シテ補助
艦ニ對シテハ決裂ノ形デアッタガ、華盛頓會
議ノ爲ニ補助艦ノ協定ガ纒マラナイト云フ
テ何處ニ際立ヲタ軍備擴張ガ起ヲタデアラウ
カ(拍手)諸君、左樣ナコトハ全ク幽靈ヲ畫
イテ置イテ、ソレヲ怖レラレルト同一デア
ルノデアリマス(拍手)倫敦ノ軍縮會議ガ破
レタナレバ、ドンナ製艦競爭ガ起ッテ日本
ガドンナ目ニ遭フカ知レナイトハ洵ニ驚
キ入ッタル外務大臣、幣原外務大臣ハ倫敦
會議ニ於テ日本ガ主張シ主張ヲ通スニ七
割ヲ主張スルコトヲ以テ倫敦會議ガ決裂ニ
ナッタナラバ、如何ナル世界ニ於テ結果ヲ生
ズルト御豫想ナスッテ居ッタカ、貴方ノ御話
ハ倫敦會議が決裂スレバ製艦競爭ガ起ル
恐シイ爲ニ之ヲ纒メタト仰シヤルガ若シ
決裂シタ場合ニドンナコトヲ豫想シテ斯樣
ナ屈從的談判ヲナサルコトニナッタノカ、此
點ヲ一應御突止メ申シテ置カナケレバナラ
ナイ立場ニナッタノデアルカラ、御尋スルノ
デアリマス、其他ノ細カイコトハ何レ改メ
テ豫算委員會ニ於テ御尋スルノデアリマス
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=63
-
064・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 極メテ重大ナル
問題デアリマスカラ、暫ク御〓聽ヲ希望シ
やく、某重大事件ニ付テ私ガ前內閣カラ引
繼ガナカッタト申シマスノハ、植原君ニ八月
頃ニ引繼ガアッタ筈ダト云フコトガアッタカ
ラサウデハナイカト云フコトヲ申シタノ
デアリマス、引繼ガナカッタニ依ッテ其事ヲ
考ヘナイト云フ意味デハアリマセヌ、其區
別ハ明瞭ニ願ヒマス、先刻申シタ通リ既ニ
前內閣ニ於テ事務的ニモ亦政治的ニモ處理
ノ濟ンデ居ルモノニ對シテ、今更議會ニ於
テ.
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=64
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065・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=65
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066・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君)(續) 今更議會ニ
於テ論議スルト云フコトハ是ハ全然有害
無益デアリマス(拍手)或事件ヲ發表スルコ
トガ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=66
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067・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君)· 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=67
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068・濱口雄幸
○ 國務大臣(濱口雄幸君)雑何レノ時機
ガ適當デアリヤ、又不適當デアルカト云フ
コトヲ決メルノハ無論政府ガ決メマス、植
原君ハ今日ヲ以テ斯ノ如キ事ヲ發表スベキ
時機ニ非ズト云フコトヲ政府ガ判斷シタノ
ハ無責任デアルト言ハレマシタガ政府
ハ責任ヲ重ンズルガ故ニ左樣ニ申シタノデ
アリマス(拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=68
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069・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今植原
君ノ再御質問ノ點ニ對シテ、二三點申上ゲマ
ス、第5ニ私ガ全權ト政府トノ間ニ往復セ
ル電報ト云フモノヲ、此處デ御說明ハ申上
ゲラレナイト云フコトヲ申シタノデアリマ
ス、昨年私ガ貴族院ニ於テ政府ニ質問ヲ致
シタノハ政府ト出先ノ人トノ電報ノ往復
ヲ公表スルト云フコトヲ私ハ申シタノデア
リマセヌ(拍手)其當時ニ全權ガ-内田伯
ガ倫敦ニ於テ何カノ協定ヲサレタト云フ話
ガ新聞ニ傳ハッテ居ル、併ナガラ私ハ其時ニ
サウ云フ風ナモノデハナイ、何デモ支那ニ
關スル協定ガ出來タヤウナコトガ出テ居〓
タケレドモ、私ハ左樣ナ協定ハ出來テ居ナ
イ、ソレ故倫敦ニ於テ若シ何カ內田伯ガ、
英國ノ當局者ト覺書ヲ取交シデモサレタモ
ノガアレバソレヲ發表サレヽバ世間ノ間
違ヘテ居ル報道ハ必ズ一掃サレルデアラウ
ト云フ意味デ申シタノデアリマス(拍手)ソ
レカラ優秀船ノ問題ニ付テ更ニ御質問ガア
リマシタ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=69
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070・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=70
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071・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵帯原喜重郞君) 織優秀
船ノ問題ニ付テ何故ニ日本ガ倫敦會議ニ於
テ此問題ヲ提出シナカッタト云フ御質問デ
アリマス、御承知ノ如ク優秀船商船ヲ
假裝巡洋艦ニスル其假裝巡洋艦ナルモノ
ノ勢力如何ト云フコトニ付テハ專門的ノ
問題トシテ議論ノアル點デアリマス、現
「ジユネーブ」會議ニ於キマシテハ亞米利
加ノ全權委員ノ方デハ此假裝巡洋艦ト云
フモノハ非常ニ勢力ガアルト云フコトヲ申
シテ、英吉利ノ方デハ左樣ナ勢力ノアルモ
ノデハナイト云フ議論デアッタノデアリマ
ス、是ハ專門技術的ノ問題トシテ色々利害
得失ノ議論ガアリマセウ、今日私ガ此壇上
ニ於テ其專門的問題ニ入ッテ得失利害ト云
フモノヲ此處デ論ズベキ必要ハナカラウト
私ハ思ヒマス、ソレカラ米國案ニ屈從シタ
カラ今度ノ會議ト云フモノハ成立シタノデ
ハナイカ、私ガサウ云フ風ニ言ッタヤウニ御
話ニナリマシタ、是ハ大變ナ御聽違ヒデア
リマス、屈從ト云フコトヽ交讓妥協ト云フ
コトヽハ全ク意味ガ違ヒマス(拍手)私ハ米
國案デモ英國案デモ屈從致シタナント云フ
ヤウナコトハ絕對ニナイト云フコトヲ申上
ゲタノデアリマス(拍手)ソレカラ造艦競爭
ノコトヲ御話ニナリマシタガ、私ハ此倫敦
會議ガ決裂ニ歸シタナラバ、造艦競爭ガ起
ラナイト云フコトヲ何人ガ保證シ得ラレル
カ、斯ウ言ッタノデアリマス、然ルニ植原君
ハ「ジユネーヴ」會議ノ後デモ何モ造艦競爭
ガ起ッテ居ナイヂヤナイカ-私ハ左樣ニ
思ヒマセヌ、旣ニモウ造艦競爭ノ端ヲ發シ
掛ケテ居ッタノデアル、吾々ハ今囘ノ會議ノ
成立ニ依ッテ初メテ造艦競爭ハ確ニ避ケラ
レタ、私ハ斯樣ニ信ジテ居ルノデアリマス
(拍手)
〔植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=71
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072・植原悦二郎
○植原悅二郞君 再三諸君ヲ煩シテ恐縮ニ
存ジマスガ、總理大臣ニ對スル滿洲某重大
事件ノコトハ極メテ重要ナル事項デアリマ
スカラシテ、モウ一應私ハ此點ヲ明瞭ニシ
テ置キタイト思フノデアリマス、總理大臣
ハ引繼ヲ受ケテ居ル居ラナイト云フコトニ
付テハ御訂正ナスッタヤウデアリマス、尙ホ
總理大臣ハ斯樣ニ仰シヤラレル、此問題
ハ一通リ處理サレテ居ル問題デアルガ故
二、今日之ヲ發表スルト云フコトハ有利ナ
ラズト考ヘルト、斯ウ云フコトデアリマス、
諸君、ソコニ問題ガアルノデアリマス(「有
害無益ト言ッタ」ト呼フ者アリ)此滿洲某重
大事件ノ處理サレテ居リマスルノハ、內政
的ニ處理サレテ居ルノデアリマス、民政黨
ノ諸君ガ問題トシタノハ、內政的ノ問題デ
ハナイノデアリマス(拍手)世界各國カラ
此問題ノ爲ニ我國ハ疑惑ヲ受ケテ居ル、ソ
レデアルカラ之ヲ發表シナケレバ我國ノ國
威ヲ失墜スル、國際信用ヲ墜スノデアル(拍
手)內國的、內政的ニハ處理サレテ居リマ
スニ相違アリマセヌ、併ナガラ民政黨諸君
ノ御主張ニナッタ海外ノ疑惑ヲ解ク爲ニ對
スル所ノ此問題ノ處理ハサレテ居ラナイノ
デアリマス、之ヲドウスルカト云フコトガ
私ノ質問デアリマス、之ヲ若シ發表スルコ
トガ我國ニ對シテ有害無益ナリト總理大臣
ガ仰シヤルナラバ民政黨ノ諸君ハ明ニ此
問題ヲ捉ヘテ倒閣運動(拍手)黨略ノ爲ニ
使ッタト云フコトヲ是認サレナケレバナラ
ナイノデアリマス(拍手)
次ニ外務大臣ニモウ一言申上ゲテ置キタ
イノデアリマス··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=72
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073・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=73
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074・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 倫敦會議ニ依リマシ
テ成程英·米·日ノ間ニハ大巡洋艦等ニ對ス
ル協定ハ出來マシタ、併ナガラ佛國ヤ伊國ニ
對シテハ協定ガ出來テ居リマセヌ、ソレデ
アルノニ拘ラズ、佛國モ伊國モ何モ世界カ
ラ反感ヲ受ケルコトモナシ、又之ガ爲ニ製
艦競爭ヲ誘致スル非難モ何モ受ケテ居ラナ
イノデアリマス、然ルニ何ガ故ニ日本ガ日本ノ
主張ヲ倫敦會議ニ於テ貫徹シヨウトスレバ、
其結果製艦競爭ヲ誘致スルト云フヤウナ御
斷定ヲナサルカ、私ハ其根據ヲ知ルニ苦シ
ム者デアリマス、是ハ恰モ自ラ幽靈ヲ畫イ
テ之ヲ恐怖シテ居ルト同一ナル狀態デアル
ト謂ハナケレバナラナイ(拍手)
先刻私ガ一言言ヒ落シタ事ガアリマスカ
ラ、此場合ニ之ヲ附加ヘテ申上ゲルコトヲ
御許シヲ願ヒタイノデアリマス、ソレハ小
幡公使ニ關スル事デアリマス、外務大臣ハ
洵ニ率直ニ明瞭ニ御言ヒニナッタ、小幡公使
ハ支那問題ニ對スル所ノ權威デアル、閱歷
人物ノ上ニ於テモ是レ以上ノ適任者ハナイ、
其適任者ヲ日本政府ガ推薦シテ、而モ支那
カラ之ニ「アグレマン」ヲ與フルコトヲ拒否
サレテ、旣ニ五箇月以上經過致シテ居ルノ
ハ何故デアルカ、是デモ日支親善ヲ圖ルノ
途デアルカ、外國ノ言葉デ申シマスルナラ
バ、是ハ「スラップ、フエース」ト申シマセウ、
橫面ヲ撲ラレタノデアル、我國ハ支那カラ
顏ニ唾サレタノデアル(「ヒヤ〓〓」拍手)ソ
レデモ忍ンデ居ルカト斯ウ言フノデアル
(拍手)而モデス、私ハ-此點ハ誤解シテ
下サッテハイケマセヌ、私ハ日支關稅協定ニ
反對スルトハ申シマセヌ、日支兩國ノ關係
ハ支那カラ我國ニ唾サレタヤウナ狀態ニ
輕蔑侮辱サレテ居ル狀態デアルノニ、何故ニ
代理公使ヲ作ノテ迅速ニ斯樣ナ讓歩的ノ關
稅協定ヲ作ル必要ガアルカト斯樣ニ言フ
ノデアル(拍手)幣原外務大臣ガ讓步シタ位
ナ讓步ヲスレバ支那ト關稅協定ヲ作ルノ
ハ何時デモ出來ル(拍手)何ヲ苦ンデ是ダケ
ノ讓步ヲシテ、斯樣ナモノヲ作ルコトヲ御
手柄功名トナサルノデアルカ、私ハ此協定
ヲ作ッタノヲドウ斯ウ言フノデハナイ、支那
ノ現狀ニ於テハ、外相御承知ノ如ク、南京
政府ノ威力ハ南方八省ニスラ及ンデ居リマ
ぜひ、東支鐵道ノ問題ノ關係モ南京政府デ
一部事ヲ起シテ、奉露協定デ定マッテ居リマ
ス、馮玉祥、閻錫山ノ北方ニ於ケル勢力ヲ
見、支那南京政府ノ威力ヲ見マスルトキニ、
支那全體ニ關スル所ノ關稅協定ハ時
刻ヲ爭ッテ協定シナケレバナラナイヤウ
ナ事情アリトハ思ハナイノデアリマス(拍
手小幡大使ガ外務大臣ガ稱揚ナサル
又其御言葉ハ的中シテ居ルト思ヒマスガ、
ソレダケノ最適任者デアルナラバ、何故之
ヲ支那ニ承諾セシメナイカ、五箇月モ六箇
月モ掛ッテマダ出來マセヌ、ソレノミナラズ
代理公使ヲ置イテ日支ノ關稅協定ヲ爲シ、
日支通商條約ノ商議ヲ進メサセテ居ルノデ
アリマス(拍手)斯樣ナ不面目ナ、國際信用
ヲ墜シ、是ダケノ國辱ヲ受ケタ外交ヲ、日
本ガ支那カラ未ダ曾テ受ケタコトハナイノ
デアリマス(拍手)是デモ宜シイカト申上ゲ
ルノデアリマス(拍手)
〔「答辯ハドウシタ」其他發言スル者多
ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=74
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075・岡本實太郎
○岡本實太郞君 國務大臣ニ對スル·····
(議場騒然聽取スル能ハス)日程ニ入リ、遂次
審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「外務大臣ハドウシタ」「答辯々々」其
他發言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=75
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076・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 只今ノ岡本君ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ--御異議ナ
イモノト認メマス·(發言者多ク聽取ス
ル能ハス)······此際······議事進行ニ付テ發
言ヲ求メラレテ居リマス-堀部久太郞君
〔堀部久太郞君登壇〕
〔「答辯々々」「外務大臣答辯セヨ」其他
發言者多シ〕
〔堀部久太郞君降壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=76
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077・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 一言致シマス、外
務大臣カラハ答辯ガアリマセヌ、ソコデ岡本
實太郞君ガ發言ヲ求メラレマシタカラー
岡本實太郞君カラ發言ヲ求メラレマシタカ
ラ、之ヲ許可致シマシタ、所ガ岡本君カラ
斯樣ナ動議ガ提出サレタノデアリマス、「國
務大臣ニ對スル質疑ハ後〓シトナシ日程ニ
入リ遂次其審議ヲ進ムヘシ」斯ウ云フノガ
岡本君ノ動議デアリマス、只今ノ岡本君ノ
動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=77
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078・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニハ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マシタ-此際堀部君カラ議事進行ニ付テ
發言ヲ求メラレテ居リマス、許可致シマ
ス-堀部久太郞君
〔堀部久太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=78
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079・堀部久太郎
○ 堀部久太郞君私ハ議事進行ニ付テ議長
ニ發言ヲ致シマス、申ス迄モナク今日ハ我
ガ國民ノ多數ガ眞劍ナル政治ヲ要求シテ居
ルノデアリマス、私共新參者モ定メテ本議
場ニ於キマシテハ皆樣ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=79
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080・森田茂
○森田茂君 是ヨリ豫算委員會ヲ開キマ
ス、委員諸君ハ御參集ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=80
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081・堀部久太郎
○ 堀部久太郞君(續)朝野兩黨トモ堂々ノ
陣ヲ張ラレテ、立派ニ御審議ニナルモノ
ト存ジマシテ、登院ヲ致シタノデアリマスル
ガ、或ハ黨ノ掛引ナドノ必要モアラッシヤ
ルカトモ存ジマスガ、過日來本會議ノ模樣
ヲ見テ居リマスルト議院規則ノ第百七十
九條ト云フモノハ、全ク無視サレ、蹂躪サ
レテ居ルヤウニ存ジマス、ソコデ私ハ議長
ニ御願ヲスル、之ヲ御制止ナサラウトシテ
モ、御制止ガ出來ナイノデアリマスルカラ、
寧ロ議長ハ、如何ナル格鬪ヲ生ジテモ、決
シテ御制止ヲナサラヌト云フコト、之ヲ御
願シタイ、サウシテ若モ此議場ニ於テ議員
諸君ガ血ヲ流サレマシタナラバ國民ハ決
シテソレヲ喜ビハシマイケレドモ、ソレダ
ケノ眞劍味ハアッテ欲シイ、ソレ迄放任サレ
テ宜シイ、此神聖ナル議場デソレ迄ノ眞劍
味ガアッテ欲シイト云フコトヲ議長ニ御願
ヲスル、此議院規則ガ旣ニ無視サレテ居リ
マス以上、五十步百步デアリマス、又此議
場ニ於キマシテ、守衞諸君ガ御警衞ニナッ
テ居ルコトガ旣ニ私ハ間違ッテ居ルト思フ、
外ハ立派ニ守ッテ居ルノデアル、ソレデ立派
ナ皆樣方ガオ在デニナル內部デ何モコンナ
警衞ヲナサル必要モ私ハナイト思フ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=81
-
082・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=82
-
083・堀部久太郎
○堀部久太郞君(續) デアリマスカラ私ハ
皆樣ニモ御願ヒ致シマス、ソレデコンナ格
鬪等ヲナサルヤウナコトデアルナラバ、頭
ニ五ツヤ六ツノ瘤位ハ出來ルカモ知レヌ
或ハ頭ノ一ツモ潰レル人ガアルカモ知レナ
イサウ云フ場合ニ苟モ國民ノ選良タル
者ガ、俺ノ瘤ハ誰ガ作。多、彼ガ作ッタ、或
ハ懲罰ナドヽ云フヤウナ卑怯ナコトハ
國ノ選良タル者ハ斷ジテ言ハヌト云フ決心
ヲ持クテ貰ヒタイ、私ハ其事ヲ御願ヒ致シマ
ス、ソレデ私ハ若シサウ云フ行動ヲ御執リ
ニナルナラバ私ノ如キ此新參者モ矢張國
民ノ代表者ノ一人デアリマス、其場合ニ於
キマシテ私ハ留メル役ヲスル(「オ前等ニ留
メラレルカ」「喧嘩ノ奬勵ヲスル奴ガアル
カ」ト呼フ者アリ)ソレナラ議院規則ハ苟
モ-皆樣ヲ拜見スレバ胡麻鹽ノ御方モア
ルシ、又失禮ナガラ禿頭ノ方モ澤山在ラッ
シヤル、御家へ御歸リニナレバ御祖父サン
ト言ハレル方ガ澤山アル、ソンナ人ガ人ニ
留メラレルヤウナ事ハシナイガ宜イ是
ハ皆樣ガ逆上セ過ギテ居ラレルノデアル、
皆樣ハ此事ヲ恰モ慣例カ或ハ年中行事ノヤ
ウニ考ヘラレルコトハ間違ッテ居ルト私ハ
思フ(「サウ云フ事ハ考ヘテ居ラナイ」ト
呼フ者アリ)私ハ今決シテサウ云フ爭鬪ヲ
玆ニ皆様ニ慫慂スル譯デハアリマセヌケレ
ドモ、五十步百步デアル、旣ニ御分リニナツ
タ皆樣ガ、此議院規則ヲ無視サレテ居ルノ
デアルカラ、私ハ議長ニ其事ヲ御願ヲ申シ
テ置ク次第デアリマス(「簡單」ト呼フ者ア
リ)サウ私ニ仰シヤル皆樣ニ申上ゲテ置ク、
今日ノ此政黨政治ハ、救ハレルモノハ政黨
デアル、救ハレヌモノハ國民ダ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=83
-
084・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 只今ノ堀部君ノ御
申述べニナリマシタ事ニ付キマシテハ議
長ハ承ノテ置キマス-日程第一、市町村義
務〓育費國庫負擔法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス、田中文部大臣
第.市町村義務〓育費國庫負擔法中
改正法律案(政府提出)第一讀會
市町村義務〓育費國庫負擔法中改正
法律案
市町村義務〓育費國庫負擔法中左ノ通改
正ス
第二條中「七千五百万圓」ヲ「八千五百万
圓」ニ改ム
附則
本法ハ昭和五年度分國庫支出金ヨリ之ヲ
適用ス
〔國務大臣田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=84
-
085・田中隆三
○國務大臣(田中隆三君) 市町村義務〓育
費國庫負擔法中改正法律案ノ要旨ヲ說明申
上ゲマス、市町村義務〓育費國庫負擔金ハ
是迄度々改正セラレマシテ、曩ニ第五十二
帝國議會ニ於テ協贊セラレマシタ七千五百
万圓ト云フノガ、御承知ノ通リ現行法デゴ
ザイマス、所ガ此御決議ニナリマシタ以後
ニ、市町村ノ〓員ノ俸給額ガ逐年增加致シ
マシテ、市町村ノ負擔甚ダ輕カラザルモノ
アリト認メマシテ此度更ニ一千万圓ヲ增
加致シマシテ併セテ八千五百万圓トシヨ
ウト云フノガ、此改正法律案デゴザイマス、
ドウゾ御審議ノ上御協賛下サランコトヲ御
顯中シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=85
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086・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質問ノ通〓ガアリ
マス、八木幸吉君
〔八木幸吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=86
-
087・八木幸吉
○八木幸吉君 只今議題トナッテ居リマス
ル所ノ義務〓育費國庫負擔金ノ增加ニ關ス
ル法律案ニ對シマシテ、極メテ簡單ニ二三
ノ質疑ヲ試ミタイト考ヘルノデアリマス
第一ハ金額ニ關スル問題デアリマス、詐
日ノ當議場ニ於キマシテ、山崎君ノ御質問
ニ對シテ濱口總理大臣ハ現內閣ハ義務〓
育費ノ全額國庫負擔ノ主義ヲ持ッテ居ルト、
斯ウ御答辯ニナッタノデアリマス、吾々ハ現
內閣ガ義務〓育費全額國庫負擔ノ主義ヲ御
持チニナッテ居ルニ拘ラズ、其中デ一千万
圓ト云フ金額ヲ限リマシテ、此特別議會ニ
追加豫算トシテ御出シニナリマシタ所ノ、
此一千万圓ト云フ金額ノ理論的根據ヲ承リ
タイト考ヘルノデアリマス
第二ニ御伺ヒ申上ゲタイノハ、先日ノ當
議場ニ於キマシテ濱口總理大臣ノ一般施政
方針ニ關スル御演說ニ於キマシテ、此度政
府ガ義務〓育費國庫負擔金ヲ一千万圓增加
スルト云フコトハ、之ニ依ッテ市町村ノ-
地方ノ財政ヲ緩和シ、其生ズル餘裕ヲ以テ
國民負擔ノ輕減ニ資スルト、斯ウ云フ御話
デアッタノデアリマス、單ニ一千万圓ト云ハ
ズ、義務〓育費全額國庫負擔ヲ御主張ニナル
ノハ矢張國民負擔ノ輕減ト云フ目的ヲ以
テナサレルノデアルカ、或ハ義務〓育費ヲ
國庫ニ負擔スルト云フコトハ此義務〓育
ト云フコトハ國家ノ仕事デアルカラシテ、
全額國家ガ負擔スルノガ當然デアル、斯ウ
云フ意味合デアルカ、何方ヲ主トサレルノ
デアルカト云フコトヲ承リタイノデアリマ
ス
第三ニ御伺ヒ申上ゲタイノハ、政府ハ若
モ義務〓育費ノ國庫負擔金增加ヲ國民負擔
輕減ノ爲ニ主張サレルトシマスナラバ吾
吾カラ見マスト、寧ロ消費稅例ヘバ織物消
費稅デアルトカ、砂糖ノ消費稅デアルトカ、
〓凉飮料稅デアルトカ云フヤウナ、消費稅
ノ輕減ヲ主トサレタ方ガ、ヨリ一般的デア
リ、ヨリ直接ノ效果ガアルト考ヘルノデアリ
マス、ニモ拘ラズ政府ガ是等減稅ヨリモ、寧
ロ義務〓育費國庫負擔金ヲ一千万圓增加ス
ル方ガ、國民負擔ノ輕減ニ資スル所以デア
ル、斯ウ御認メニナリマシタ所ノ理由ヲ承
リタイノデアリマス
第四ニ私ガ伺ヒタイノハ現內閣ハ社會
政策ノ實行ト云フコトヲ非常ニ高調サレテ
居ルノデアリマス、現在ノ如ク經濟界ガ非
常ニ惡クナッテ參リマシテ、食フニ食ナク住
ムニ家ノナイ人々ガ澤山ニ出テ居リマス、
此狀態ニ於テ最モ早ク行ハナケレバナラヌ
ノハ、御承知ノ救護法デアルト思フノデアリ
マス、彼ノ救護法ハ皆樣モ御承知ノ通リ、第
五十六議會ニ於キマシテ此昭和五年度カラ
實施サレタイト云フ附帶決議マデモ附セラ
レマシテ、之ガ通過ヲ見タノデアリマス、
吾々ハ此救護法ノ實施ガ最モ必要デアルト
思フ、金額ハ僅ニ四百万圓デアリマス、現
內閣ハ此特別議會ニ於キマシテ救護法ノ實
施ノ爲ニ必要トスル所ノ豫算ヲ提案セズシ
テ、此義務〓育費ノ負擔金一千万圓ノ增加
案ヲ先ニ御出シニナッタト云フ以上ハ、是等義
務〓育費ノ一千万圓國庫負擔金ノ增加ガ、救
護法ヨリモ尙ホ現在ノ我國情ニ照シテ、實
施ヲ必要トスルト云フ御確信ガアッテ御出
シニナッタト考ヘルノデアリマスガ、其理由
ヲ承リタイノデアリマス、以上四ツノ點ニ
付キマシテ政府ノ御所信ヲ、何卒濱口總理
大臣ヨリ御答辯ヲ求メタイノデアリマス
(拍手)
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=87
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088・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 御答致シマス、
第一ニハ金額ヲ一千万圓トシタ、其數字上
ノ理論的ノ根據如何、是ハ全ク財政上ノ都
合デアリマス政府ハ地方稅ノ負擔ガ極メ
テ過重ニシテ、之ガ輕減ハ焦眉ノ急デアル
コトヲ考ヘマシタ、財政ノ許ス限リ此計畫
ヲ樹テマシタガ何分財政困難ノ爲ニ一千
万圓ニ止メタノデアリマス、別ニ理論的ノ
根據ハアリマセヌ
ソレカラ全額負擔ノ意義如何、國民負擔
ノ輕減ノ爲デアルカ或ハ〓育改善ノ爲デ
アルカト云フコトデアリマス今日ハマダ
全額負擔ノ法律案ハ出テ居リマセヌ、千
万圓ニ關スル限リニ於テハ負擔輕減デアリ
マス、ソレガ間接ニ〓育ノ改善ニナルト云
フコトヲ政府ハ期待シテ居リマス
第三箇條ハ、何故ニ負擔輕減デアルナラ
バ直接ニ國稅ノ負擔ヲ輕減スルト云フ策ニ
出テナカッタカ、斯ウ云フ御質問デアリマ
ス、國稅ノ負擔モ決シテ輕イトハ考ヘマセ
ヌ、併ナガラソレヨリモ地方稅ノ負擔ノ方
ガ一層重イト云フコトヲ考ヘテ居リマス
ソレ故ニ地方稅負擔ノ輕減ヲ先ニスルガ爲
ニ、〓育費ノ負擔ヲ增加シタノデアリマス
第四ハ救護法ヲ何故實行シナイカ、此事
ニ付キマシテハ、明年度ノ財政計畫ヲ立テ
ル時ニ於テ十分ニ考慮スル積リデアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=88
-
089・岡本實太郎
○岡本實太郞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=89
-
090・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 何カ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=90
-
091・岡本實太郎
○岡本實太郞君 本案ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=91
-
092・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 一寸御待チ下サ
イ次ノ日程ニ移リマス、日程第二、右
議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題
ト致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=92
-
093・岡本實太郎
○岡本實太郞君 本案ハ議長指名二十七名
ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=93
-
094・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=94
-
095・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナイト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
三、輸出補償法案ノ第一讀會ヲ開キマス-
俵商工大臣
第三輸出補償法案(政府提出)
第一讀會
輸出補償法案
輸出補償法
第一條政府ハ本法施行地內ニ住所又ハ
營業所ヲ有スル者ガ內地、朝鮮、臺灣
又ハ樺太ニ於テ生產、製造又ハ加工セ
ラレタル商品ヲ本法施行地ヨリ主務大
臣ノ指定スル地域ニ輸出スル爲振出シ
タル荷爲替手形ヲ銀行ガ買取リ之ニ因
リテ損失ヲ受ケタル場合ニ於テ當該銀
行ニ對シ帝國議會ノ協賛ヲ經タル金額
ノ範圍內ニ於テ其ノ損失ノ百分ノ七十
ヲ限度トシ之ヲ補償スルノ契約ヲ爲ス
コトヲ得
第二條前條ノ契約ヲ爲シタル銀行ガ其
ノ契約ニ基キ荷爲替手形ヲ買取リタル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ補償料ヲ
政府ニ納付スベシ
第三條第一條ノ損失ハ銀行ガ荷爲替手
形ノ滿期日ニ支拂ヲ受クルコト能ハザ
リシ金額ヨリ左ノ各號ニ揭グル金額ヲ
控除シタルモノトス
荷爲替手形ニ付擔保アルトキハ其
ノ處分ニ依リテ得タル金額(第五條
ノ場合ニ於テハ其ソ手形ノ附屬荷物
ノミノ處分ニ依リテ得タル金額)ヨ
リ其ノ處分ノ爲支出シタル費用ヲ控
除シタル殘額
二滿期日ニ支拂ヲ受クルコト能ハザ
リシ金額ニ付補償前ニ全部又ハ一部
ノ償還又ハ支拂ヲ受ケタルトキハ其
ノ金額
第四條銀行ハ補償ヲ受ケタルトキハ其
ノ手形ニ付遲滯ナク償還請求權其ノ他
ノ手形上ノ權利ヲ行使スベシ但シ其ノ
權利ノ行使ニ要スル費用ガ其ノ行使ニ
依リテ得ベキ金額ヲ超ユルモノト認メ
ラルルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其
ノ權利ノ全部又ハ一部ヲ行使セザルコ
トヲ得
銀行ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ權
利ノ行使ニ依リテ得タル金額ヨリ滿期
日以後ノ利息及銀行ガ其ノ權利ノ行使
ノ爲支出シタル費用ヲ控除シタル殘額
ヲ政府ニ納付スベシ
第五條第一條ノ契約ニ於テ左ノ各號ニ
該當スル定ヲ爲シタルトキハ前條ノ規
定ハ之ヲ適用セズ
但シ償還請求權以外ノ手形上ノ權利ノ
行使及其ノ行使ニ依リテ得タル金額ノ
處分ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
荷爲替手形ノ振出人及支拂人ガ命
令ヲ以テ定ムル資格ヲ有シ其ノ手形
ガ注文ニ依リ商品ヲ輸出スル爲振出
サレタル場合ニ限リ損失補償ヲ爲ス
コト
二損失補償ノ割合ガ百分ノ六十ヲ超
エザルコト
三·銀行ガ損失補償金ニ相當スル金額
ニ付償還ノ請求ヲ爲サザルコト
第六條第一條ノ契約ヲ爲シタル銀行ガ
本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ
契約ニ違反シタルトキハ政府ハ契約ヲ
解除シ、損失ノ全部若ハ一部ニ付補償
ヲ爲サズ又ハ損失補償金ノ全部若ハ一
部ノ返還ヲ命ズルコトヲ得
第七條主務大臣必要アリト認ムルトキ
ハ政府ハ商品ヲ輸出シタル爲受取リタ
ル約束手形ヲ銀行ガ買取リ之ニ因リテ
損失ヲ受ケタル場合ニ於テ當該銀行ニ
對シ之ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ
得
前項ノ場合ニ於テハ第一條乃至前條ノ
規定ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=95
-
096・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 只今議題ニナリマ
シタ輸出補償法案提案ノ理由ヲ說明致シマ
ス、本邦經濟界ノ現狀ニ鑑ミ、我ガ輸出貿
易ヲ振興シ、以テ我ガ國際貸借ノ改善ヲ圖
ルト共ニ、一面ハ本邦產業ノ發達ヲ促進ス
ルト云フコトハ、目下極メテ急務ト考ヘマ
ス、而シテ輸出貿易ヲ振興スルノ方法ハ固
ヨリ少カラズト雖モ、輸出手形ニ對スル金
融ノ便ヲ講ジ、本邦商品ノ新販路ノ開拓ヲ
圖ルコトハ最モ有效ナリト考へルノデア
リマス、蓋シ本邦商品市場ノ未ダ開拓ヲセ
ラレザル地方、例ヘバ中部、南部亞米利加、
亞弗利加、「バルカン」等ニハ本邦ヨリノ輸
出ヲ增進スルノ見込ハ十分アリマスルガ、
是等地方輸入商ノ信用ノ狀態比較的ニ不明
デアリマスルノミナラズ、金融機關ノ完備
セザルガ爲メ、是等地方ニ對スル輸出手形
ニ付テノ金融ノ關係ガ圓滑ナラズ、取引上
大ニ障碍ガアリマス、而シテ此障碍ヲ除去
スルガ爲ニハ輸出補償制度ヲ實施シマ
シテ、是等地方ニ對スル輸出手形ヲ銀行ガ
買取リタル場合ニ於テ、其銀行ガ手形ノ支
拂ヲ受クル能ハズ、是ガ爲ニ蒙リタル損害
ガアリマスル時ニハ、政府ハ或ル條件ノ下
ニ補償スルコトヽ致シマシテ、斯クシテ銀
行ヲシテ安ンジテ是等地方ニ對スル輸出手
形ノ買收ヲ爲サシメ金融上ノ便宜ヲ與フ
ルコトガ輸出貿易增進上最モ適當ナル施設
デアルノデアリマス、仍テ右制度ヲ設クル
ニ必要ナル法律ヲ制定セントスル次第デア
リマス、願クバ十分御審議ノ上協贊ヲ與ヘ
ラレンコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=96
-
097・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ノ通〓ガアリ
マく、太田信治郞君
〔太田信治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=97
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098・太田信治郎
○太田信治郞君 極メテ簡單ニ一二御質問
ヲ致シタイト思ヒマス、第一ニ本案ノ輸出
地域ヲ主務大臣ヨリ指定スルト云フコトノ
內容ニ付テハ今略、伺ヒマシタガ、要スル
ニ新ニ開設スル販路ニ向〃テ、此輸出補償法
ヲ利用スルト云フコトニ結論ガ相成リマ
ス、何ガ故ニ此新ニ開設スル販路ニノミ限ッ
テ、從來ノ輸出仕向地ニ向ッテハ之ヲ除外
セラレタカト云フコトヲ伺ヒタイ、其所以ハ
從來ノ爲替ノ便法ノアリマスル、取引關係
ノアリマスル所デモ輸出ニ關スル金融ノ
便、卽チ爲替ノ便ハ頗ル圓滑ヲ缺イテ居ル
ト云フコトハ明カデアリマス、何故カナレ
バ所謂財閥關係ノ大商店、大會社ノ取引關
係ハ圓滑ニ行キマスルガ、中小商工業者ガ
新ニ新シク物品ノ輸出ヲ試ミントスル者ニ
對シテハ頗ル金融ノ、爲替ノ便法ヲ缺イテ
居ル、圓滑ヲ缺イテ居ル是ガ爲ニ已ムヲ
得ズシテ其從來ノ輸出業者ノ手ヲ經ナケレ
バ新シイ輸出ヲ試ミルコトガ出來ナイト云
フコトハ現在ノ輸出業者ニ於テハ大變ナ
不便ヲ感ジテ居ル、此點ニ付テ大藏大臣ノ
所謂爲替銀行ニ對スル此不便ニ關シテノ御
意見ヲ伺ヒタイ
ソレカラ第二ニハ金ノ輸出解禁ノ時期ガ
ドウデアルトカ、或ハ其可否云々ノコトハ
私ハ申上ゲマセヌ、兎ニ角今日金ノ輸出ノ
解禁ヲ斷行シタル以上ハ國民朝野共ニ協
力一致シテ此國際關係ノ、所謂貸借關係ノ
圓滑ヲ期シ、兌換劵ノ安全ヲ確保シテ海
外ニ信用ヲ高メルト云フコトニハ、私ハ朝野
共ニ協力一致スル必要ノ時機デハナイカト
思フノデアリマス、サウスルト此兌換劵ノ、
所謂信用ヲ高メ、國際貸借ノ關係ヲ圓滑ナラ
シムル上ニ於テハ先ヅ第一ニ輸出ノ奬勵
ト云フコトガ擧ゲラレナケレバナラナイ
此點ニ大藏大臣モ見ル所-政府モ見ル所
アッテ、其一方法トシテ此案ヲ提案セラレタ
ノデアラウトハ思ヒマスルガ、然ラバ此輸
出ノ奬勵、所謂產業ヲ奬勵シテ、輸出ヲ增
大セシムルト云フ方法ノ根本的解決案ト致
シマシテハ、是ハ第二義デハナイカ、先ヅ
第一義ニハ現在ノ如ク金融ノ硬塞シテ居
リ而モ金融ノ硬塞ト共ニ各種ノ不便ヲ中
小商工業者ガ感ジテ居ル時代ニハ先ヅ輸
出奬勵ノ爲ニ、輸出業者ニ向ッテ特別融通
ノ損失補償法ノ如キモノヲ設ケテ、金融ノ
便益ヲ與ヘテヤルト云フコトガ、先決問題
デハナイカト思フノデアリマス、例ヘバ生
產ノ合理化ト云フコトニナリマシテモ、要
スルニ生產ヲスルニハ機械ガ要ル、機械工
場ヲ造ルニハ資本ガ要ル、其資本ガ今日ノ
ヤウニ硬塞シテ居ル時代ニハ假令輸出保
護ノ奬勵ガアリマシテモ、此商工業者ガ之
ニ向ッテ手ヲ染メルニハ非常ニ不便ガアル、
此不便ヲ除去スルベキ方法ヲ政府ハ御講ジ
ニナラナイカ
モウ一ツハ、私ハ此場合ニ輸出業者ハ必
ズ大資本家バカリデハナイ、多數ノ中小工
業者ガ輸出品ノ物品ニ依ッテハ、分業的ニ生
產シテ、ソレカラ集ッテ集合的ニナッテ、初
メテ輸出サレルモノガ非常ニ多イノデアリ
そく、私ハ簡單ニ申上ゲタイカラ之ヲ一々
此處デ申シマスコトハ省キマスガ、例ヘバ
洋傘ヲ一ツ拵ヘテモ、二人三人ノ手ヲ經ナ
ケレバナラヌ、又手袋一ツ拵ヘテモ、分業
シテ二三ノ事業家ノ手ヲ經ナケレバナラナ
イコトニナルサウスレバ事業家ハ何レモ
小資本デアッテ、而モ今日ハ之ニ對スル金融
ノ便益ガ缺ケテ居ル、然ラバ低利資金デモ
之ニ供給ヲシ、輸出業者ニ限ッテ特ニ徹底
的ノ振興ヲセシムベク援助ヲ御與ヘニナル
御考ハアリマセヌカドウカ、尙ホ又輸入關
稅ニ於テハ戾稅ガアル、或ハ內地ノ國稅ニ
於テモ、減稅マデモシテ之ヲ奬勵スベキ時
機デハナイカト私ハ思フ、何ト申シマシテ
モ年々歲々人口ハ增加シテ行クノデアリマ
ス、六七十万人モ人ロガ增加シテ行クノニ、
單ニ內地ノ產業ノミ發達致シマシテモ、國
際關係ハ決シテ圓滑ニハ行カナイ、國際關
係ヲ圓滑ナラシムルニハドウシテモ輸出
ノ增進ト云フコトヲ第一ニシナケレバナラ
又、之ニ對スル手段ガ最モ私ハ必要デアル
ト思フガ、決シテ此輸出補償法ハ惡イモノ
デハナイ、結構デハアリマスケレドモ、之
ニ依ッテ利益ヲ得ル所ノ者ハ、先ヅ私ハ銀行
業者デアルト思フ、此銀行業者ヲ救濟スル
コトモ必要デアリマセウシ、間接ニハソレ
ハ商工業ニ影響ヲ及ボシマセウガ、現在ノ
不景氣、此不景氣ノ恐慌ノ時代ニ、中小工
業者ヲシテ安心シテ事業ニ從事セシムル方
法ヲ講ズルト云フコトガ、國產奬勵ノ上カ
ラ言ッテモ、國際貸借ノ上カラ言ッテモ、何
レカラ言ッテモ必要デハナイカト考ヘル、之
ニ付テ何カ當期議會ニ御提案ニナル御考ガ
アリマスカ、或ハ此議會ニ御提案ニナラズ
シテ、他ノ便法ヲ以テ之ニ相當ノ援助ヲ與
ヘル御考ガアルカ、モウ一ツハ輸出業ニ從
事シテ居ル所ノ勞働者デアリマス、此勞働
者ノ中ニハ農產物ノ勞働者モ含マレテ居
リマスガ、是等ノ者、總テ輸出業ニ從事シ
テ居ル者ハ、相當ノ經驗ト熟練ヲ要スル、
中ミ一朝一夕ニハ出來ナイノデアリマス、
今日ハ失業問題ト云フト、直ニ自由勞働者
ノヤウニ考ヘル人モアリマス、或ハ土木工
事ヲ興シ或ハ職業紹介所ヲ興シテ之ヲ救濟
スルト云フ御說モアリマスガ、輸出品ノ如
キ一ツノ工業ニ從事スル者ハ、兎ニ角數年
ノ經驗ト、多年ノ熟練トヲ要スルノデアル、
ソレガ一體其輸出仕向地ニ於テ、或ハ日貨
排斥トカ、或ハ銀ノ暴落トカ云フコトニナ
リマスト、其輸出ガ止マリマス、止マリマ
スト折角輸出業ニ從事シテ居ル者ガ、今度
ハ失業シナケレバナラナイ結果ニナル、ソ
レニ對スル失業ノ救濟モナケレバ何ノ施設
モナイ、ソレナラバコンナ危イ仕事ニ從事
スルヨリモ、モット安全ナ仕事ニ從事スル方
ガ宜イト云フコトニナレバ輸出ノ奬勵ガ
出來ナイコトニナリマス、輸出ノ奬勵ニハ
先ヅ其根柢タル所ノ、其事業ニ從事スル者
ニ對シテ安心ヲ與ヘテ、生活ノ安定ヲ得セ
シメテ、之ヲ奬勵スルト云フ方法ヲ御講ジ
ニナル御考ガアリマスカドウカ、或ハ農產
物ノ如キニ於テハ一年以上若クハ數年掛
ラナケレバ出來ナイ、林產物ニシテモ、果
實ノ如キ、或ハ林產物トシテ生ズルガ如キ
モノハ、少ナクトモ一年以上ノ間、金ヲ寢
カサナケレバ輸出品ニハナラナイ、斯ウ云
フ輸出品、農產物、林產物ヲ扱フ所謂中小
工業者ニ對シテ、何等カ便法ヲ以テ金融ヲ
與ヘル御考ガナイカ、輸出業ニ限ノテ私ハ廣
イ意味ニ於テ、全部トハ申シマセヌガ、此
場合ハ輸出業者ダケ申上ゲテ見タイト思
フ、例ヘバ一年以上山ノ中ニ林產物ヲ作ッ
テ置イテ其資金ヲ寢カスト云フコトハ、今
日ノ高イ金融狀態ニ於テハ頗ル困難デアル
ト思フ、之ニ低利資金ヲ供給スルト云フコ
トハ、卽チ農產林產ノ振興ヲ圖ル一ツノ方
法デアルト思フ、尙ホ其他御伺シタイコト
ガアルガ、ソレハ又他ノ機會ニ御尋致スト
シテ、大體ニ於テ政府ノ方針トシテハ、ド
ウ云フ風ニ御考ニナッテ居ルカ知ラヌガ、輸
出ノ奬勵ヲ致シ產業ノ振興ヲ圖ルト云フ
御考ガアルナラバ、ソレヲ徹底的ニ御遣リ
ニナルコトガ必要デハナイカ、徹底的ニ御
遣リニナルトスルナラバ、何等カ其御提案
ノ一端ヲ御示シ下サルコトガ出來レバ此
產業ニ從事スル勞働者及中小工業者ガ、安
心シテ此事業ニ著手スルコトガ出來、ソレ
ガ輸出ヲ奬勵スル根本ニナル、或ハ輸出ノ
貨物ノ製造ガ盛ニナッテ、始メテ此仕向地ニ
起ル所ノ爲替ノ便法ニ於テ、政府ガ補償ナ
サルト云フコトガ私ハ必要デハナイカト思
フ、爲替ノ方ヲ先ニシテ、品物ノ方ガ出來
ナクナレバ、是ハ甚ダ間違ッタモノデ、前後
撞著シテ居ルノデハナイカ、寧ロ內ノ產業
ノ充實ヲ圖ッテ、其上ッタ物ガ輸出サレルト
云フコトニナルノデハナイカト思フ、頁ノ
輸出ノミノ方ヲ考ヘテ申ス譯デハナイ
ガ-兩々相俟タナケレバナラナイガ定
メテ此失業救濟、若クハ不景氣對策トシテ
ハ、產業ノ合理化ト云フヤウナコトモ御〓
究ニナッテ居ルデアリマセウガ、當期議會ニ
何カ御出シニナルカ、或ハ議會ニ御提案ニ
ナラヌデモ、法律ノ許ス範圍ニ於テ何カ御
考ガアルノデアルカ、來期議會ヲ待ツマデ
ノ間、此現在ノ中小工業者及ビ勞働者ハ
失業狀態及ビ金融ノ梗塞ニ對シテ、到底忍
ブベカラザル次第デアルカラ、此際一日モ
速ニ是等ヲ救濟スル方法ノ一端トシテ、今
ノ爲替關係ノ、所謂國際貸借ノ改善ト相俟〃
テ、輸出ノ奬勵ガ最大急務ナリト信ジテ
此際大藏大臣ニ伺ヒタイト、斯樣ニ思フノ
デアリマス
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=98
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099・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 只今ノ御質問
ニ對シテ御答致シマス、大體金融ノ御質問
デゴザイマシタカラ、私カラ承知致シテ居
ル點ダケ御答致シマス、中小商工農業者ノ
金融ニ付キマシテハ、只今差當リノ所デ實
行致シマシテ、將來ニ於キマシテハ組合ヲ
改善シテ、ソレニ依ッテ主トシテ資金ヲ供
給スル積リデ居リマス、總テノ金融機關ニ
依ッテ中小商工農業者ノ金融ヲ圖シテ見ヨ
ウト思ッテ居リマス
ソレカラ直接輸出ニ關係致シマシテハ、
輸出品工業組合ニハ只今金融ガシテアリ
い 、併ナガラ輸出組合ニハ金融ガナイノ
デゴザイマス、ソコデ輸出品ノ工業組合同
樣輸出組合等ニモ金融ヲ與ヘテ、サウシ
テ製造輸出ト共ニ輸出ヲ盛ニスルト云フコ
トガ適當ナル方針ト考へテ居リマス、只今
輸出貿易ニ付テハ宜シイガ、其前ノ製造工
程ト云フ所ノ金融ト云フ御話デアリマシタ
カラ、サウ云フ風ニ御答ヘ致シマシタラバ
御諒解下サルコトヽ思ヒマス
又只今此議會ニ何カ提出スルカト云フ御
質問デゴザイマシタガ、金融ノ差當リノ中
小商工農業者ノ金融ハ、預金部カラ低利ノ
資金ヲ供給スルコトニシテアリマスカラ、只今
特別議會ニ、特ニ急イデ提案センケレバナ
ラヌモノハナイヤウニ考ヘテ居リマス、組
合ノ方ガ改善サレマシタナラバ段々〓究致
シマシテ、次ノ議會ニ提出スルコトニナル
デアラウト考ヘテ居ル次第デアリマス、御
答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=99
-
100・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)日程第四、右議案
ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致
シマス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=100
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101・岡本實太郎
○岡本實太郞君 本案ハ議長指名十八名ノ
委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=101
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102・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=102
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103・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
五及第六ハ便宜上一括議題トナスニ御異議
ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=103
-
104・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ日程第五、賠償金特別會計法中
改正法律案、日程第六、製鐵所特別會計ニ
於テ大藏省預金部又ハ日本銀行ノ橫濱正金
銀行又ハ株式會社日本興業銀行ニ對スル債
權ノ讓渡ヲ受クルコトニ關スル法律案ノ兩
案ヲ一括致シマシテ第一讀會ヲ開キマ
ス-大藏大臣
第五賠償金特別會計法中改正法律
案(政府提出)第一讀會
賠償金特別會計法中改正法律案
賠償金特別會計法中左ノ通改正ス
第三條中「法令ノ定ムル所ニ依リ支出スル
交付金、」ヲ削リ「第三條ノ二ノ規定ニ
依ル組入金、」ノ下ニ「第三條ノ三ノ規
定ニ依ル國債償還金、」ヲ加フ
第三條ノ三本會計ノ資金ニシテ獨逸國
等トノ平和條約賠償條項ニ基キ昭和四
年度以降受領スル賠償金及物件ノ賣拂
代金ノ受入額ニ相當スルモノハ豫算ノ
定ムル所ニ依リ國債整理基金特別會計
法第二條ノ規定ニ依ル繰入額ノ外一般
會計負擔ノ國債ノ元金償還ニ充ツル爲
之ヲ國債整理基金特別會計ニ繰入ルル
コトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第六製鐵所特別會計ニ於テ大藏省預
金部又ハ日本銀行ノ橫濱正金銀行又
ハ株式會社日本興業銀行ニ對スル債
權ノ讓渡ヲ受クルコトニ關スル法律
案(政府提出)第一讀會
製鐵所特別會計ニ於テ大藏省預金部
又ハ日本銀行ノ橫濱正金銀行又ハ株
式會社日本興業銀行ニ對スル債權ノ
讓渡ヲ受クルコトニ關スル法律案
第一條製鐵所特別會計ハ大藏省豫金部
又ハ日本銀行ノ有スル左記債權ノ讓渡
ヲ受ケ其ノ債權額ニ相當スル金額及其
ノ利息ノ債務ヲ大藏省預金部又ハ日本
銀行ニ對シ負擔スルコトヲ得
大藏省預金部ガ中華民國漢冶萍煤
鐵廠鑛有限公司ニ對スル貸付資金ト
シテ橫濱正金銀行ニ貸付シタル三千
四百十萬千二百三十六圓九錢ニ關ス
ル債權
二大藏省預金部ガ中華民國漢冶萍煤
鐵廠鑛有限公司ニ對スル貸付資金ト
シテ株式會社日本興業銀行ニ貸付シ
タル二百五萬千五百五十一圓八十一
錢ニ關スル債權
三大藏省預金部ガ中華民國裕繁鐵鑛
股份有限公司ニ對スル貸付資金トシ
テ橫濱正金銀行ニ貸付シタル四百十
四萬六千七百四十七圓十八錢ニ關ス
ル債權
四大藏省預金部ガ石原產業海運合資
會社ニ對スル貸付資金トシテ橫濱正
金銀行ニ貸付シタル百四十二萬四千
五百二十八圓二十一錢ニ關スル債權
五日本銀行ガ中華民國漢治萍煤鐵廠
鑛有限公司ニ對スル貸付資金トシテ橫
濱正金銀行ニ貸付シタル二百九十二
萬四千七百五十六圓二十五錢ニ關ス
ル債權
第二條前條ノ規定ニ依リ製鐵所特別會
計ガ讓渡ヲ受ケタル債權ノ元本ノ償還
金ハ之ヲ資本勘定ノ歲入トシ其ノ利子
ハ之ヲ作業勘定ノ歲入トス
附則
本法ハ昭和五年六月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=104
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105・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 只今議題ニナ
リマシタ賠償金特別會計法中改正法律案ニ
付キマシテ提案ノ理由ヲ說明致シマス、本
改正案ノ趣旨ハ獨逸國等トノ平和條約ニ
基キマシテ、受領致シマスル賠償現金及物
件ノ賣拂代金ヲ、般會計ノ負擔ニ屬スル
國債償還ニ充ツル爲メ豫算ノ定ムル所ニ依
リ、國債整理基金特別會計ニ繰入ルヽ途ヲ
開クコトデアリマス、蓋シ賠償金ハ、其性
質上國債償還ニ使用スルノガ妥當デアリマ
スノミナラズ、我ガ財政ノ現狀ニ鑑ミマシ
テ、國債償還額ヲ出來得ル限リ增加スルコ
トガ最モ緊要ナリト考へルノデアリマス、
此計畫ニ基キマシテ、昭和五年度ニ於テハ
國債償還ニ充ツル爲ニ六百三十万餘圓ヲ賠
償金特別會計ヨリ、國債整理基金特別會計
ニ繰入ルヽコトヽ致シテ居ルノデアリマ
ス、尙ホ賠償金特別會計ノ歲出ノ中カラ、
法令ニ依リ交付金ヲ削除スルコトヽ致シマ
シタガ、是ハ歐洲戰爭ノ爲ニ損害ヲ受ケタ
ルモノニ對シマシテハ、大正十四年法律第
三十九號及昭和四年法律第三十六號ニ依リ
マシテ、二囘ニ瓦リ本特別會計ノ資金ノ中
ヨリ救恤金ヲ交付シ、既ニ其目的ヲ達シタ
カラデアリマス、以上何卒御家議ノ上御協
贊アランコトヲ希望致シマス(拍手)
尙ホ只今議題トナッテ居リマス製鐵所特
別會計ニ於テ大藏省預金部又ハ日本銀行ノ
橫濱正金銀行又ハ株式會社日本興業銀行ニ
對スル債權ノ讓渡ヲ受クルコトニ關スル法
律案ニ付、其提案ノ理由ヲ說明致シマス
政府ガ製鐵所ニ於ケル製鐵原料ノ供給ヲ確
保スル手段トシマシテ、大藏省預金部等ヨ
リ資金ノ融通ヲ致シマシタ金額ノ現在額
ハ、中華民國漢冶萍公司へ三千九百七万七
千餘圓、中華民國裕繁公司ヘ四百十四万六
千餘圓、石原產業海運合資會社ヘ百四十二
万四千餘圓、合計四千四百六十四万八千餘
圓トナッテ居リマス、右ノ中石原產業海運合
資會社へ融通ノ分ハ從來契約通リ元利金
ノ支拂ヲ致シテ居リマスガ、漢冶萍公司及
裕繁公司ヘ融通ノ分ニ付キマシテハ、戰後
鐵價ノ下落ト、數次ノ支那ノ戰亂ノ爲ニ、
事業ノ經營甚ダ困難トナリマシテ、大正十
五年以來漢冶萍公司ハ元利支拂トモ、裕繁
公司ハ元金ノ償還ガ不能ノ狀態ニ至リマシ
タ、元來斯ノ如キ資金ノ融通ヲ致シマシタ
ノハ本邦製鐵政策ノ遂行上、主トシテ支
那ニ於テ製鐵原料ヲ獲得スル爲メ必要デ
アッタノニ基クモノデアリマシテ、當時其
ノ資金ヲ大藏省預金部等ヨリ融通スルコト
トナッテ居シタノデアリマス、斯ノ如キ債權
ニ付キマシテ、將來長ク預金部ヲシテ其責
任ヲ負擔セシムルコトハ預金部ノ性質上
適當デアリマセヌ、ノミナラズ是等貸付金
ノ囘收ハ結局鑛石、銑鐵ノ購入代金ヲ以
テ致スノデアリマスカラ、其關係上其購入
者タル製鐵所ヲシテ鑛石、銑鐵代金ノ支拂
ト、貸付金ノ囘收トヲ一手ニ取扱ハシムル
コトガ極メテ妥當デアルト考ヘマス、仍テ
今囘右製鐵原料關係ノ債權ヲ一括致シマシ
テ製鐵所特別會計ニ承繼シ、且ツ之ニ伴
フ同會計ノ歲入歲出ノ關係ヲ規定スル爲ニ
本案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス尙
ホ預金部ヨリ製鐵所へ承繼ヲ實行スル條件
等ニ付キマシテハ預金部資金ノ性質上、
妥當ニシテ且ツ之ガ爲ニ製鐵所ノ經營ニ支
障ヲ來サヾルヤウ決定スル見込デアリマ
ス、何卒速ニ御協賛アランコトヲ希望致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=105
-
106・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 日程第七、右各案
ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致
シマス
第七右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧
參岡本實太郞君兩案ヲ一括、議長指名九
名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=106
-
107・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=107
-
108・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
八關係定率法中改正法律案ノ第一讀會ヲ
開キマス、井上大藏大臣
第八關稅定率法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
關稅定率法中改正法律案
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第十八號中「每百斤」ヲ削リ「〇·二五」ヲ
「無稅」ニ改ム
二七二ノ二特殊綿織絲
ヲ超エタルクレープヤーン等ヲ含ム)
二ミュールコップ絲(品早撚ノモノ)
三英式番手百番ヲ超エタルモノ
第四百三十二號中「〇·三○」ヲ「〇·一五」ニ改ム
第四百六十二號ノ二ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
四六二ノ三鐵ノ筒及管
外徑百六十七ミリメートルヲ超エ、
ント
二外徑百十ミリメートルヲ超エ、
其ノジョイント
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=108
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109・國務大臣(井上準之助君)
○國務大臣(井上準之助君) 只今議題ニ供
セラレマシタ關稅定率法中改正法律案ニ付
キマシテ大體ノ御說明ヲ申上ゲマス政府
ハ曩ニ我國現行關稅定率中、徒ニ過當ナル
保護ヲ持續シ、又ハ旣ニ其必要ヲ失ヒタル
ニモ拘ラズ、尙ホ之ヲ改訂セザルモノナキ
ヤヲ調査シ、之ヲ撤廢又ハ輕減スル方針ヲ
立テマシテ、適當ナル機關ニ諮問シ、愼重
〓究ヲ遂ゲマシタ結果、綿織絲外三品ニ付
キマシテ成案ヲ得タノデアリマス、之ニ基
キマシテ法律案ヲ作成シ、玆ニ提出致シマ
シタ次第デアリマス第一高粱デアリマ
ス、高粱ハ主トシテ養鷄飼料ニ用ヒラレ
居ル現狀ニ鑑ミマシテ、其關稅ヲ撤廢ス
ルコトヽシタノデアリマス、第二綿織絲
第二百七十二號中「綿織絲」ノ下ニ「(別號
ニ揭ケタル特殊綿織絲ヲ除ク)」ヲ加ヘ
「五·八〇」ヲ「三·七五」ニ、「六·四〇」ヲ
「四·一五」ニ、「九·五〇」ヲ「六·一五」ニ、
一·〇〇」ヲ「七·一五」ニ、「一一·三〇」
ヲ「七·三五」ニ改ム
第二百七十二號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
變撚絲(ヴォイルヤーン、英式番手四十二番
無無無稅稅稅
長五メ
ートルヲ超エタルケーシング及其ノジョイ
無稅
長五メート
ルヲ超エタルアップセットドリルパイプ及
無稅
ニ付キマシテハ我國ニ於テ製造セラレ
ザルモノ及ビ製造セラルヽモ其製造高
寡少ナルモノハ特殊綿織絲トシテ之ヲ
無稅トシ其他ノモノハ其需給狀況等ニ
鑑ミマシテ現行稅率ヨリ大體三割五分
ノ輕減ヲ致スコトヽ致シマシタ第三「セ
メント」ニ付キマシテハ、是亦需給狀況
等ヨリ考察シテ、現行稅率ヲ半減スルコト
トシ、最後ノ鐵ノ筒及管ハ主トシテ石油ノ
採掘ニ使用スルモノデアリマスガ、內地ニ
生產ノナイモノデアリマスカラ、石油事業
奬勵ノ爲メ、之ヲ無稅トスルコトヽ致シタ
次第デアリマス、尙ホ詳細ナル點ニ付キマ
シテハ委員會ニ於テ御說明申上ゲル積リデ
アリマス、何卒御審議ノ上速ニ御協賛アラ
ンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=109
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110・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 日程第九、右議案
ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致
シマス
第九右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=110
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111・岡本實太郎
○岡本實太郞君 本案ハ議長指名九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=111
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112・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=112
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113・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナイト認メ
いく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、-日
程第十、北海道土功組合法中改正法律案ノ
第一讀會ヲ開キマス-齋藤政府委員
第十北海道土功組合法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
北海道土功組合法中改正法律案
北海道土功組合法中左ノ通改正ス
第一條中「區町村又ハ區町村組合」ヲ「市
町村又ハ其ノ組合」ニ改ム
第五條中「組合員タルヘキ者」ノ下ニ「三分
ノ二以上ノ」ヲ加ヘ同條ニ左ノ一項ヲ
加フ
前項組合地區ニ編入セラルベキ土地ガ
組合事業ノ爲現ニ組合地區內ノ土地ト
同樣ノ利益ヲ受クル場合ニ於テハ組合
員タルベキ者ノ三分ノ二以上ノ同意ナ
キトキト雖モ北海道廳長官ニ於チ必要
アリト認ムルトキハ之ヲ其ノ地區ニ編
入スルコトヲ得
第六條組合ノ徴收金ノ督促及滯納處分
ニ關シテハ市町村稅ノ例ニ依ル
前項ノ滯納處分ニ關シ組合ノ請求アリ
タルトキハ市町村長ニ於テ之ヲ行フベ
組合ノ徵收金ハ市町村ノ徴收金ニ次デ
先取特權ヲ有シ其ノ追徵、還付及時效
ニ付テハ市町村稅ノ例ニ依ル
組合ノ徵收金ノ賦課徵收若ハ滯納處分
又ハ組合ノ夫役現品ノ賦課ニ關シテハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ異議ノ申立若ハ
訴願ヲ爲シ又ハ行政裁判所ニ出訴スル
コトヲ得
第八條本法ニ依リ北海道廳長官ノ爲シ
クル處分ニ對シ不服アル者ハ主務大臣
ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコ
トヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=113
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114・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆夫君) 北海道土功組合
法中改正法律案提出ノ理由ヲ大體御說明致
シマス、此法律ハ明治三十五年ニ制定セラ
レマシテ、其後四十三年ニ一部改正ヲ見タ
ノデアリマスガ、今日ノ實情ニ照シマシテ、
其規定ガ甚ダ適當ナラザルモノガアルノデ
アリマス、殊ニ組合徵收金ノ滯納處分、是
ハ市町村長ニ請求ヲシテ、其手ニ依ッテ行ハ
ルヽコトニナッテ居ルノデアリマスルガ、市
町村ニ於キマシテハ多クハソレ自體ノ徵
稅ノ整理ニ急ナルノ餘、土功組合ノ分ハ兎
角閑却セラレ勝デアリマシテ、實績ガ甚ダ
擧ラザル傾ガアルノデアリマス、仍テ改正
案ハ組合徵收金ノ滯納處分ハ、組合自ラ之
ヲ爲スコトヲ以テ本則トナシ、尙ホ市町村
長ニ委託シ得ルノ途ヲモ存スルコトヽ致シ
タノデアリマス、同時ニ是マデハ組合徴收
金ノ賦課徴收及滯納處分等ニ付キマシテ
ハ本法中ニ別ニ救濟ノ途ガ開カレテ居ラ
ナカッタノデアリマスルガ、此改正ニ依リマ
シテ訴願、訴訟ヲ爲シ得ルコトヽ致シタノ
デアリマス、又組合地區ノ新編入ニ付キマ
シテハ、現行法デハ其ノ全員ノ同意ヲ得ル
コトヲ要シテ居リマス關係上、一人ニテモ
不同意ノ者ガアリマスル場合ハ如何ニ必
要デアリマシテモ、之ヲ編入スルコトハ出
來ナカッタノデアリマス、併ナガラ初メテ組
合ヲ設置致シマス場合ハ、三分ノ二以上ノ
同意サヘアレバ之ヲ設置スルコトガ出來ル
ノデアリマスカラ、是ト同一ノ趣旨ニ基キ
マシテ、新ニ地區ヲ編入スル場合ニ於キマ
シテモ、三分ノ二以上ノ同意ガアレバ編入
ヲ爲シ得ルコトニ改メタノデアリマス、更
ニ組合地區外ノ土地デ、現ニ組合事業ノ爲
ニ組合內ノ土地ト同樣ノ利益ヲ受ケ居ル土
地ニ對シマシテハ、三分ノ二ノ同意ナクト
モ、必要アル場合ニハ北海道長官ニ於テ、
之ヲ組合地區ニ編入シ得ルコトヽ致シタノ
デアリマス、尙ホ從來ハ北海道長官ノ爲シ
タル處分ニ不服アル者ハ訴願ヲ爲シ得ル
コトニナッテ居リマスガ、更ニ行政裁判所ニ
出訴シ得ルコトヽシ、救濟ノ途ヲ廣ク致シ
タノデアリマス、以上カ今囘改正ノ主ナル點
デアリマス、現在北海道ノ土功組合ハ二
百二十一ニ及ンデ居リマス、又其經營ニ係
ル灌漑反別ハ十五万三千町步、水田ハ十一
万町步ヲ超エテ居リマス、之ヲ全道ノ水田
反別十六万町歩ニ比シマスレバ約七割ヲ
占メテ居リマス、故ニ組合ノ振否ハ實ニ北
海道開發ノ上ニ重大ナル關係ヲ有ッテ居ル
ノデアリマス、然ルニ組合ノ財政ハ〓シテ
窮乏ヲ極メ、經營難ニ苦ミツヽアル實情デ
アリマシテ、本改正ハ其點カラ見マシテモ
極メテ痛切ニ其必要ヲ感ジマスル次第デア
リマス、何卒御審議ノ上御協贊アランコト
ヲバ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=114
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115・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 日程第十一、右議
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第十一右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=115
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116・岡本實太郎
○ 岡本實太郞君本案ハ議長指名九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=116
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117・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=117
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118・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第十二、汚物掃除法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス、齋藤政府委員
第十二汚物掃除法中改正法律案政
府提出)第一讀會
汚物掃除法中改正法律案
汚物掃除法中左ノ通改正ス
第四條ノ二市ハ汚物處理ニ付命令ノ定
ムル所ニ依リ手數料又ハ使用料ヲ義務
者ヨリ徵收スルコトヲ得
第五條市ハ汚物掃除ノ施行及實況ヲ監
視セシムル爲必要ナル吏員ヲ置クベシ
〔政府委員齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=118
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119・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆夫君) 汚物掃除法中改
正法律案提出ノ理由ヲ大體說明致シマス、今
囘汚物掃除法中改正ヲ行ハント致シマスル
事ハ二ツノ事柄デアリマシテ、第一ハ市
ニ於キマシテ行ヒマスル所ノ汚物掃除ニ付
キマシテ、使用料及手數料徵收ノ規定ヲ創
設スルコトデアリマス、第二ハ掃除監視吏
員ニ關スル事柄デアリマス、先ヅ汚物掃除
ニ關スル使用料及手數料ニ關シマシテハ
汚物掃除法ノ所謂汚物、卽チ塵芥、汚泥、汚
水及屎尿ノ處分ハ市ノ義務トシテ居リマス
ニ拘ラズ、特ニ屎尿ノ處分ハ施行規則ニ依
リマシテ當分ノ間例外トシテ必ズシモ市
ノ義務ニ屬セザルコトヽナシテ居リマスカ
ラ之ガ處分ノ方法ハ衞生上遺憾ノ點ガ
多イノデアリマス、仍テ屎尿ノ處分ニ關シ
マシテハ一般汚物處分ト同樣ニ、原則ト
シテ市ヲシテ處分セシムルト共ニ、屎尿ノ
處理ニ關シマシテハ手數料ヲ徵收シ得ルノ
途ヲ開カントスルノデアリマス、又塵芥容
器ハ、現在ハ私人ニ於テ之ヲ設備シテ居リ
マスカラ、其容量又ハ形式ハ區々デアリマ
シテ、塵芥ノ搬出運搬ノ能率ニ影響スル所
ガ少クナイノデアリマス、故ニ市ニ於キマ
シテ、私人ニ代ッテ一定ノ容器ヲ設備シタ
之後,之ガ使用料ヲ徵收シ得ルコトヲ認
メントスル次第デアリマス、次ニ掃除監視
吏員ニ付キマシテハ、現行法ニ於キマシテ
ハ地方長官ガ市ニ之ヲ置カシムルコトヽ
ナッテ居リマスルガ、之ヲ改メテ市ノ一般
事務ニ於ケルト同樣ニ、市ヲシテ適宜必
要テ吏員ヲ置カシムルコトヲ妥當ト認メマ
シテ、之ガ改正ヲ爲サントスルノデアリマ
ス、以上ノ理由ハ本案提出ノ趣意デゴザイマ
シテ極メテ必要ト考ヘマスニ依ッテ、何卒
御審議ノ上御協賛アランコトヲバ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=119
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120・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)日程第十三、右議
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第十三右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=120
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121・岡本實太郎
○ 岡本實太郞君本案ハ議長指名九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=121
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122・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=122
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123・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
ひと、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=123
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124・岡本實太郎
○ 岡本實太郞君國務大臣ノ演說ニ對スル
殘餘ノ質疑ハ次囘ノ日程議了後之ヲ繼續
スルコトヽシ、本日ハ是ニテ散會セラレン
コトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=124
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125・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=125
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126・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ其通ニ決シマシター次囘ノ日
程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後六時三十一分散會
衆議院議事速記錄第三號中正誤
頁段行誤正
三三一一〇黨派デ胡魔黨爭ヲ事トシ
化シタリテ
三三一二九社會〓育社會ノ二字ヲ
削ル
三三二一四億二千万一億二千万円
円
Hill二二二六千万國民六千万石取ツ
ノ食糧ガテ居ル米ガ
(Mi)三一御同情御考慮
「五錢ナリ「加工賃ヲ取
(三)四三十錢ナリ」ツテ」ヲ加フ
ノ下
進歩シタ國進步性ノ國ニ
ニ於テハ動於テハ動搖シ
三三四二七搖シナイナイ所ハナ
日かわイ、日本モ古
來
居リマス居リマス、衣
三三四二九ガ最早衣食住
食住
三四一三四全力全ク
內閣ガ更ル每
知事ガ更ルニ知事ガ更
三四二一八每ニ、警察ル知事ガ更
ニ於ケル地ル每ニ警察官
方官ニ於ケガ更ル又事
ル務官ガ更ル
今ニナリマ今日ノヤウナ
三四二三スレバ狀態ニナリマ
スレバ
三四三一二農商務省農林省
三四三二〇出來タヤウ出來ル所ノ
ニ
手段ヲ御實手段ヲ講ゼズ
三四三I 111行ナスツテシテ外米ヲ買
居ルフコトノミヲ
事トシテ居ル
三四三二五百万石百三十万石
あんが明治39年今日旣ニ六斗
三四三二九例五升平均日本
本ヨリ殖エテノハノフ增收シ
テ居ル
而シテ米作而シテ日本ニ
三四三三二ノ生產ガ於テモ米作增
收ノ〓究ガ
三四三三四八石出來ル八石取ツタ例
モアル
三四四一「自給自足」「ハ十分出來
ノ下ル」ヲ加フ
日本ノ米ガ日本ノ小麥ハ
三四四二一石內外、反當リ一石內
外デ、
三四四三農商務省農林省
三四四四何トナレバ何トナレバ農
十分業ハ十分
依テ田畑租ハ
三四四二七無論全廢シ全廢シテ而シ
元ヨナテ小作料ニ制
限ヲ置イテ
三四四三五官員サン官員サンノ多
ハ1 與
三五一一月給ヲ減ス月給ヲ增シテ
其數ヲ減ス
朝鮮當局ハ朝鮮人士ハ之
三五一一七確信シテ居ニ大ナル感激
ルヲ持ツテ居ル
三五一八然ルニ朝鮮而シテ朝鮮人
人種ハ十六
三五一二二黨爭鬪爭
三五一一二二以上ノ、撲以上デ、族滅
滅
三五一二四朝鮮人種國民
三五一二四而シテ御而シテ内地ニ
於テハ御
三五一二九議員モ出ス議員ニモ朝鮮
人ヲ出ス
無頓着ナル無頓着ナル立
三五一三四爲フ〓場ニ置カレテ
アル爲ニ
朝鮮人種ト朝鮮人士トシ
三五二六シテ如何ナテ如何ニ
ル
三五二二六朝鮮人種朝鮮人士
衆議院議事速記錄第五號中訂正
頁段行
七五二九「賠償法案」トアルヲ「國
家賠償法案」ト訂正ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00619300430&spkNum=126
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