1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月十一日(水曜日)午前十時二十四分開議
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議事日程 第三十號
昭和六年三月十一日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件(第二十三日)
第二 簡易生命保險法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 寄生蟲病豫防法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 輸出生絲檢査法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 耕地整理法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 國立公園法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 土地收用法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 取引所税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 未成年者飮酒禁止法の改正法制定に反對の請願 會議
第十 穀類搗精取締法制定に關する請願 會議
第十一 釋放者保護制度設定の請願 會議
第十二 名寄區裁判所出張所設置の請願 會議
第十三 福島縣田村郡要田村に無集配郵便局設置の請願 會議
第十四 北海道枝幸郡頓別村に漁業組合設置の請願 會議
第十五 北海道頓別川河口改修の請願 會議
第十六 岩手縣釜石港を開港に指定、税關官署設置の請願 會議
第十七 島根縣邑智郡長谷村に郵便局設置の請願 會議
第十八 島根縣那賀郡大内村に無集配郵便局設置の請願 會議
第十九 雪害に關し市町村義務教育費國庫負擔法の施行勅令改正の請願 會議
第二十 島根縣簸川郡遙堪村に無集配郵便局設置の請願 會議
第二十一 北海道石狩川架橋の請願 會議
第二十二 北海道江差、瀬棚間鐵道敷設の請願 會議
第二十三 軍人傷痍記章令中改正即行の請願 會議
第二十四 北洋漁業權益確立の請願 會議
第二十五 遠洋漁業奬勵の請願 會議
第二十六 沿岸漁業奬勵の請願 會議
第二十七 漁村共同施設奬勵の請願 會議
第二十八 海外出漁奬勵の請願 會議
第二十九 漁業組合の指導施設改善充實の請願 會議
第三十 機船底曳網漁業禁止區域取締の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
ツテ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨十日委員會ニ於テ當選シクル正副委員長
ノ氏名左ノ如シ
地租法案特別委員會
委員長伯爵柳澤保惠君
副委員長男爵阪谷芳郞君
米穀法中改正法律案特別委員會
委員長伯爵堀田正恒君
副委員長橋本圭三郞君
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
輸出生絲檢査法中改正法律案
耕地整理法中改正法律案
國立公園法案
土地牧用法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
昭和六年度歳入歳出總豫算案、豫算外國
庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル
件可決報告書
昭和六年度各特別會計歲入歲出豫算案修
正報告書
本日抵當證劵法案特別委員會ニ於テ當選シ
タル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長子爵伊東祐弘君
副委員長松本烝治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家遠君) 是ヨリ本目ノ會
議ヲ開キマスハ阪本彰之助君ヨリ發言ノ通
告ヲ得マシタガ、阪本彰之助君ハドウ云フ
コトヲ御述べニナリマスカ、伺ッテ見タウゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=2
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003・阪本さん之助
○阪本釤之助君 朝鮮總督府ノ忠〓南道廳
移轉ノ間題ニ付キマシテハ頗ル痛心ニ堪
ヘヌ情報ニモ接シテ居リマス、寸刻ヲ爭ッテ
政府ノ注意ヲ求メタイコトデアリマスカラ
シテ、御妨ゲヲ顧ミズ、緊急ノ質問ヲ致シ
タイト思フ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪本君ノハ緊急
質疑ノ動議ト議長ハ認メマス、就キマシテ
ハ贊成者ヲ要シマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 贊成者ガアッタ
ト認メマスカラ採決ヲ〓シマス、阪本彰之
助君ニ緊急質疑ヲ許スベシトスル諸君ノ起
立ヲ請ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 暫ク御著席ヲ請
セマシテ、反對ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔反對者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 贊成者ガ過半數
ト認メマス······阪本彰之助君ノ登壇ヲ望ミ
マス
〔阪本釤之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=7
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008・阪本さん之助
○飯本彰之助君 議事多端ノ折柄少シナリ
トモ時間ヲ塞ギマスルコトハ〓甚ダ心ナイ
次第ト存ジマスルガ、只今本員ガ政府ニ向
テ質問セムトスル所ハ此朝鮮ノ一部ニハ
屬シマスケレドモ由々敷結果ヲ齋スモノ
デアルト存ジマスガ故ニ暫時發言スルコ
トヲ御許ヲ願ヒタウゴザイマス朝鮮總督
府忠〓南道ノ廳舍ヲ公州ヨリ大田ニ移スト
云フコトハ卽チ昭和六年ノ豫算ニ編入サ
レテ居リマシテ、衆議院ハ之ニ削除スルコ
トニ決議サレテ本院へ廻サレマシタ、由來
豫算委員會ニ付サレマシテ、昨日豫算案ノ
審議結了ヲ〓ゲタ譯デアリマス、豫算委員
會ニ於キマシテハ衆議院ノ決議ニ反シテ政
府ノ原案ニ服スルト云フコトニ相成ッタノ
デアリマス此コトハ何レ豫算ガ上提サレ
マスルデアリマセウカラ、其時分ニ尙ホ本
員等モ意見ヲ申述ベテ見タイト存ジテ居リ
マスガ、之ニモ拘ラズ、先日來此問題ニ付
テハ朝鮮ハ非常ニ動搖致シテ居ルヤウニ思
ハレルノデアリマス、事ハ忠〓南道ノ一道
ニ止マリマスルケレドモ、此事延イテ朝鮮
全部ノ各道ニ於テ色ミノ決議ナドヲ致シテ、
我と一議員ニ對シテモ種々ノ電報書面ナド
モ參ッテ居リマスル、是ハ言ハバ少シク他人
ノ癌氣ヲ頭痛ニ病ンデ居ルヤウナ氣モ瑣シ
マスガ、公州ニ取リマシテハ是ハ實ニ由々
シキ問題デアリマシテ、內地デモ縣廳ヲ他
ヘ移スト言ヘバ非常ナ騷ギノ起ルコトハ當
然デアリマスガ、事情ヲ察シマスルト內地
ノ或地點カラ或地點へ移スト云フコトヨリ
モ、朝鮮ノ事情、殊ニ公州ト云フモノノ地
方ノ事情カラ申シマスト實ニ國ガ亡ビル
カノ如クニ思フテ居ルカノヤウニ想像セラ
レルノデアリマス、先日來公州地方ノ人ミ
ハ非常ニ痛心ヲ致シテ、又大田ノ方ノ人モ
ナカ〓〓運動ヲシテ居ルヤウデアリマスル
ガ、此コトハ只今申述ベル限リデアリマセ
ヌガ、之ニ對スル官憲ノ態度デアリマス
承ル所ニ依ルト、此問題ニ付テ公州ノ人民
ノ稍、過激トデモ······政府カラ申シマシタ
ラ過激トデモ申シマセウカ、サウ云フ人ミ
ガ既ニ百何十人ト云フノガ拘束サレテ居ル
カノヤウナ聞エモアリマス其他道會ト云
フモノガ移轉ヲ可トスルトカ不可トスルト
カ云フヤウナ決議ガ段々アッテ、私共モ電報
ナドヲ受ケテ居リマスルガ、此非移轉ト云
フ方ハ少イ、皆移轉可ナリト云フ方ガ多イ
ノデ、之ヲ取ッテ以テ朝鮮ノ輿論デアルナド
ト云フコトヲ仰ッシヤル方モアリマスガ、私
共ガ仄聞スル處ニ依ルト、此道會ノ決議ナ
ドト云フモノガ旣ニ或方面ノ操縦ニ出デテ
居ルモノデアルカノヤウニモ聞イテ居リマ
ス、斯ウ云フヤウナコトハ私共ガ想像シテ、
此議場デ彼レ是レ申述べルコトハ宜シクゴ
ザイマセヌカラ、差控ヘタ方ガ宜カラウト
存ジマスガ、是レ蓋シ餘リ齊東野人ノ語デ
モナカラウト思フノデアリマス、唯憂ヘマ
スルノハ昨日ノ豫算委員會ノ決定ガ愈〓朝鮮
公州人ノ耳ニ入リマスルナラバ、旣ニ其前
カラ非常ナ騒ギヲ致シテ居ルノガ、愈〓豫算
委員會ニ於テハ太田へ移ルコトニナッタト
言ヘバ最早貴族院ハソレニ決シテシマッ
ク、卽チ昭和六年ノ豫算ハ全ク成立シテシ
マッタモノカノ如クニ測量スルダラウト思
フ、マダ私共ノ耳ニハ入リマセヌガ、昨夜
來ノ公州地方ノ騷ギト云フモノハ恐ラク想
像ニ餘リアルモノデアラウト思フノデアリ
マス、是ガ普通ノコトナラバモウチット私共
ノ耳ニモ入リ、今朝ノ東京ノ新聞ナドニハ
色ミナコトガ書カレルデアラウト存ジマス
ルガ、是ガ又仄聞スル所デアリマスガ、總テ
ノコトガ······甚ダシキハ電報郵便迄モドウ
カスルト差押ヘナドヲセラレテ居ル、移轉
問題ニ不利益ナリト認メルコトハ之ヲ官憲
ガ妨害スル、其他有ユル方面ニ向ッテ壓迫ヲ
加ヘテ居ルト云フコトハ、是ハ或ハアヽ云
フ特殊ナ地方デアリマスルカラ、マンザラ
架空ノ話デハナカラウト云フコトヲ思フノ
デアリマス、最モ憂ヘマスルノハ、此卽チ
昨日ノ豫算委員會ノ決定ヲ聞キマシテ、非
常ニ地方民ガ激昂スル爲ニ、隨分昔デ云フ
百姓一揆ト云フヤウナモノモ起ルヂヤナイ
カト云フコトヲ思フ、サウ云フ眞ニ暴動ニ
出ヅル場合ハ致シ方ゴザイマセヌガ、之ヲ
色ミナ方面ニ藉口シテ片端カラ良民ヲ拘束
スルトカ、或ハ無辜ノ良民ヲ引捕ヘテ行ッテ
糺問ヲスルトカ云フヤウナコトガ、マダマ
ダ朝鮮邊リノ政治カラ申シタナラバ、有リ
得ルコトヂヤナイカト思フ此結果ハ折角
王化ニ浴セムトシ······浴シツヽアル朝鮮ノ
良民ガ、日本ノ政治誠ニ賴ムニ足ラヌト云
フコトヲ思ハシムルニハ餘程惡イ一ツノ歷
史ヲ殘シハモヌカト存ジマスルガ故ニ政
府ハ宜敷此點ニ向ッテ、眞ニ陛下ノ赤子デ
アル王化ニハ浴サセネバナラヌト云フコ
トヲ、體得シテヤッテ戴キタイモノデアルト
存ジマスルガ、ナカ〓〓是ハ難シイ御註文
ヂヤナイカト思フ、此邊ニ付テハ當局大臣
ハ出先官憲ニ向フテドノ程度マデ、訓戒ガ加
ヘテアルカ、尙ホ今日ニ於テ何等カ之ニ付
テハ徹底シタル態度ヲ御執リニナッテ居ル
カドウカ、阪本ノ杞憂ヲシテ𣏌憂タラシム
ルダケノ御行屆キニナッテ居ルカ、明日以後
ニ於テ、確カニ私ノ此質問ハソレ御覽ナ
サイト云フコトガ澤山出來テ來ルデアラウ
ト思フケレドモ、之ニ耳目ヲ塞イデシマッ
テ新聞ニモ出テ來ナケレバ、ヘタナコト
ヲ書クト郵便マデ差押ヘラレテ居ノテ、若シ
其郵便ヲ開ケテ見テ不都合ナコトガ書イテ
アレバ何等カノ方法ヲ以テ檢束シテシマフ
ト云フヤウナコトガアリ得ルコトノヤウニ
思フ、之等ヲ防止スルニハドウ云フ方法ヲ
御講ジニナルノデアルカ、是等ノ點ニ付テ
伺ヲテ見タイト存ジマス
〔國務大臣松田源治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=8
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009・松田源治
○國務大臣(松田源治君) 阪本サンノ緊急
質問ニ御答ヘ致シマス當局ニ於テハ公州
地方ノ治安ニ付テハ十分警戒ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、昨日ノ電報ニ依リマスト
斯ウ云フ電報ガ參ノテ居リマス、貴族院ノ六
科會ニ於テ復活ト云フコトヲ聞イテ公州ノ
商店ガ若干閉店シタルモノガアルト云フコ
トハ申シテ參ッテ居リマス、阪本君ノ御質問
ノ百何十人ヲ檢束シタトカ、郵便電報ヲ發
サセヌト云フヤウナコトハ當局ハ聞イテ居
リマセヌ、併シ此點ハ十分當局ニ於テ調査
イタシマス、而シテ公州地方ノ治安ガ十分
維持サレルヤウニ當局ニ於テハ注意ヲ致シ
テ居リマスカラ、此段御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=9
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010・阪本さん之助
○阪本釤之助君 其治安ヲ保持スルト云フ
言葉ガ非常ニコハイノデアリマス、保持ノ
手段トシテ片端カラ檢束スルコトハ卽チ治
安ヲ維持スルコトデアルト仰ッシヤレバソ
レ迄ニナッテ來ル、ドウ云フ所ガ治安ヲ害ス
ルノデアルカ、ソコニ一視同仁ノ取扱ヒガ
ナケレバナラヌト存ジマスルノデアリマス
ガ、幾ラ申シタトコロガ、只今ノ意味ト違
フコトヲ仰シヤル筈モゴザイマセヌカ
ラ······又承ルトコロニ依ルト、旣ニ石油倉
庫ニ火ヲ放ッタトカ、或ハ山林ニ火ヲ放ッタ
ト云フヤウナコトモ現ハレテ居ルヤウデア
リマスカラ、昨夜カラ今日、明日ニカケマ
シテ公州ニ於テハドンナコトガアルカモ分
ラヌ、チヨットデモ、一例ヲ擧ゲテ見マスル
ト、神社ニ集マッテ、ドウカ公州ノ道廳ガ
移ラヌヤウニシタイト云フコトヲ神ニ祈ッ
テ居ル、多數ノ者ガ集マッテ居ルト云フノデ、
直チニ其中ノ主モダフタ者ヲ檢東スルト云
フコトハ如何ニモアリソウナコトト思ヒ
マス、其ヤウナコトガ又是カラ引續イテ起〃
テ來マセウカラ、治安維持ト云フ名ノ下ニ
酷イコトヲ爲サレヌヤウニ御願ヒ致シテ置
キマス、是以上申上ゲタトコロデ要領ヲ得
ル御答辯ヲ得ル譯ハゴザイマセヌカラ、今
後ノ成行キニ依ッテ本員ノ質問ガ徒爾デナ
カッタト云フコトヲ證明スルヤウナ悲シミ
ニ會ハヌコトヲ冀ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際議事日程變
更ニ付キ御諮リヲ致シマス、本日モ議事ノ
都合上、日程第一ヲ日程第三十ノ後ニ〓ハ
シタイト考ヘマス、御異存ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二簡易生
命保險法中改正法律案政府提出、衆議院送
付第一讀會······昨日政府委員ノ高橋琢也
君ノ御質疑ニ對シ答辯ガゴザイマシテ、其
後デ髙橋琢也君ガ再質疑ヲ御求メニナル御
樣子デゴザイマシタガ、已ムヲ得ザル事情
ノ爲ニ延會イタシマシタカラ、高橋琢也君
ニ發言ヲ許シマス
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=13
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014・高橋琢也
○高橋琢也君 只今議題ニ上ボリマシタ簡
易生命保險法中ノ改正案ニ對シマシテ、-
昨日私ガ質問ヲ致シマシテ、政府委員ガ此
處ニ答辯ヲセラレマシタ、其節ハ
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
當局大臣モ御出デガナシ、爲ニ私ハ政府委
員ニ大臣ヘドウカ私ノ質問ヲ致シタコトハ
御申傳へ下サルヤウニ、ソレニ依ッテ尙十分
ナ御答辯ノゴザイマスヤウニト云フコトヲ
請求シテ置キマシタ、政府委員ハ誠ニ深切
ニ答辯ヲシテ吳レラレマシタ、其點ハ感謝イ
タシマス、唯此中ニ違ッタコトモアルヤウニ
考ヘマスルシ、又私ノ大體質問ヲ致シタ趣意
ハ此小兒保險ト云フモノヲ御出シニナツ
夕所以、ナゼ斯ウ云フモノヲ御出シニナリ
マシタノデアルカ、政府ノ現在主義政策ト
云フモノカラ割出シテ來テ斯ウ云フコトハ
政府ガ當リ前ニヤルベキコトデアル、今日
政府ガ採ッテ居ル所ノ主義政策ト云フモノ
ハ斯ク斯クデアル、斯ウ仰クシヤルコトヲ
承リタカッタノデアル、併シソレハ承ルコト
ガ出來得ナカッタ、何故ナレバ此法案ニ限リ
マセズ、近頃ノ法案ヲ見ルト云フト金ガ這
入レバ宜シ、這入ラナイ化事ハ民間ニ委シ
テ置イテモ宜イ、棄テ置イテモ宜シイ金
ノ取レルコトハ是ハ政府デヤル方ガ宜イ
ト斯ウ云フヤウニ伺ハレル、ソレ故ニ私
ハ是デハ民間ノ事業者ガ皆非常ニ迷惑ヲス
ルコトデアラウト考ヘマシテ、其主義ハド
ウ云フ所ニ立脚シテ居ルノデゴザイマスカ
ト云フコトヲ伺ッタ、ソレニ付テハ御答ハゴ
ザイマセナンダシ勿論政府委員ハ一局部
デアルカラ此御答ハ願フノガコチラガ無理
デアッタラウト存ジマスルガ、又此簡易保險
ニ付テ一昨日政府委員ノ御答辯ニナッタ點
デハ、少々違ッタコトガアルヤウニ考ヘマ
ス、ソレハ私ハ申上ゲナカッタンダガ、政府
委員ノ方カラ徵兵保險ノコトヲ御話ニナク
タ、其徴兵保險ナルモノハ確カ四會社程アル
ノデゴザイマシタカト存ジマスルガ、ソレニ
ハ會社ニ依ッテ色〓定款ノ立テ方モ違ノテ居リ
マセウカラ或ハ政府委員ノ御答ニナッタ
事實ガ本當デアル會社モアリマセウ、ガ併
シ私ノ聞ク所デハ最低ハ政府ノ仰ッシヤル
三百圓デナクシテ百圓デアルト、斯ウ聞イ
テ居ル、又最高ハ政府ノ仰ッシヤル三万圓
デナクシテ、二万圓デアル、斯ウ云フコト
ヲ聞イテ居ル、或ハ五十步百步デアルト仰ッ
シヤルカモ知レナイガ矢張リ斯ウ云フ事
柄ハ政府ハ間違ッタコト許リ言ハレテ迄
モ之ヲヤラレルト云フ妙ナ感ジヲ國民ニ與
ヘマスト存ジマスルカラ、私ノ取調ベタ點
ヲ申上ゲテ置クノデス、ソレカラ特別會計
ノ委員會デ私ガ質問ヲ致シマシタトキニ、
遞信省ノ政府委員ノ申サレタ此積立金ハ利
用セラレルノニ利益ノアル方ニ依ッテ運用
ヲシテ居ルト、斯ウ云フヤウナ御答辯デアッ
タト思ヒマス、サウスルト今日之ヲ政府ノ
主義殊ニ大藏大臣ノ御主義ノヤウニ金ノ這
入ル方、金ノ這入ル方ト云フ方ニ目ヲ付ケ
テ、サウシテ此金モ成ルダケ利潤ノ多イ方
ヲ採ル、斯ウ仰ッシヤルノデハナイカト思
ヒマス、總テガサウ云フ主義ニナリマスル
ト、單リ民間事業家ト競爭スル許リデハゴザ
イマセヌ、國家ノ經營スル所ノモノハ悉ク
利益ノアルモノヲ狙ヒ打ヲスルノデハナイ
カト斯ウ云フ民間ノ人ニ脅威ヲ與ヘルコ
トニナラウト思ヒマス、ソレハ甚タ好マシ
カラヌコトデアルノデス、ソレ故ニ政府ハ
サウ云フ御趣意デアルカ、或ハサウデハナ
イ是ハ民間ニ委シテ置イテモ民間デ餘リ
利益ガナイカラ進ンデハヤラナイソレ故
ニ政府デヤルノデアル、サウスレバ民間ノ
爲ニ利益ニナルノデアル、斯ウ云フ御趣意
デアルト云フコトナラ、其事ガ明カニナリ
マスルヤウナ御說明ヲ戴ケバ宜シイト存ジ
マスル、私ガ先ニ質問ヲ致シマシタ斯樣ナ
金ハ、既ニ一ケ年ニ一億五千万圓モ入ッテ
來ル簡易保險ノ收入デアル、今度小兒保險
ヲ重ネテヤレバ大變ニ又多クナルデハナイ
カ、此金ヲナゼ社會事業、而モ社會ノ救濟
事業ト云フヤウナコトニ、ソレカラ慈善事
業斯ウ云フ少クモ慈善事業ノ性質ノアルモ
ノソレカラ公益事業、斯ウ云フ方ヘノミ
主ニ之ヲ利用ナサルコトデアラウト、最初
ハ斯ウ信ジマシタノデ、其點ヲ伺シタ所ガ利
益ノ多イ方ニ運用スル、斯ウ言ハレル、ソ
レデハ政府ノ仕事ト見ラレナイソレ故ニ
私ハ政府ノ仕事トシテハ公益事業、社會事
業サウシテ殊ニ慈善事業ノ方へ用ヒラレ
タイト思ヒマシタノデ、殊ニソレヲ伺ッタ、
幸ニ當局ノ大臣モ御出ニナルヤウデス、是
ハドウ云フ御趣意カラ出發シテ居リマスル
カ、之ヲ一ツ伺ヒタイ、ソレカラ小兒保險
ノ如キハ殊ニ僅ナ金デアル、小サイ零碎ナ
モノヲ集メテ行クノデアル、斯ウ仰ッシヤル、
是ハ誠ニ結構、併シ生レルトカラ十二歲
マデヲナサルト云フノハ、其次ハ、次ノ簡
易保險ヘ移ッテ仕舞フ、段々收入モ多クナ
ル、政府ノ懷モ溫カニナル、從ッテ之ヲ飴ノ
ヤウニ延バシテズン〓〓上マデ行キマスト
云フト遂ニ民間ノ保險會社ト云フモノハ
皆失敗スルヤウナ結果ニナラウト思ヒマス
ガ保險會社ガ皆失敗シテ、折角日本ノ保
險ト云フモノハ初ハ非常ニ政府ガ之ヲ奬
勵シテ漸ク今日ニ至ッタモノデ、ソレヲ今更
又此保險事業ガ失敗スルヤウニナリマシタ
ナラバ是ハ少ナカラヌ···國家ノ直接ノ
經營ノ方デハゴザイマセヌヨ、一般ノ民間
ノ事業ニシテ······政府ハ既ニ一方ニ國家事
業トシテハ收入ノ多イモノヲ澤山持シテ御
出ニナルコトハ一昨日申上ゲタ、ガ併シ出
來ル限リハ民間ノ事業者ヲ保護ナサラナケ
レバナラヌ立場ニ居ル、ソレ故ニ今日ハ私
ハ俵商相ノ御都合ガ出來タナラバ御出席ヲ
願ヒタイト言ッテ居ッタノハソコデゴザイマ
ス、確カ政府ノ中デハ此簡易保險殊ニ此小
兒保險ト云フモノニマデ手ヲ掛ケルト云フ
コトハ、俵商相ノ方デハ餘リ御望ミニナラ
ナイ、就中之ニ付テハ當局同志デ多少意見
ノ異シタ點ヲ爭ハレタト云フコトニ承ッテ居
リマス、是ハアリサウナコトデアル一方
ニ產業統制ノ統一ノ法ガ出テ居ルト云フ位
デゴザイマスカラ、此ヤウナ勝手放題ナモ
ノガアッチニモ顏ヲ出シ、コッチニモ頭ヲ擡
ゲル雨ノ後ノ筍ミタヤウニ、斯ウチヨイ
チョイ出テ來タラ、政府モ其統一ヲ圖ルト
云フコトニハヒドク困難デアラウト思フ、
自然斯ウ云フ點モアラウト思フ、就テハ商
相ハドウ云フ御意見ヲ持ッテ御出ニナルカ、
是モ承リタイソレカラ小兒保險デ行キ
マスルト、例ヘバ山林ノ維持、苗木カラ仕
立テ、旣ニ苗木ノ時カラ之ニ保險ヲ付ケテ
居ル、是カラ取ッテ行ケバ總テノ保險ハ逃ル
モノハナイヤウニナッテシマウカラ、到頭終
ヒニハ總テノ保險ハ國營ト云フコトニナリ
ハ致シマセヌカ、ト存ジマスルガ、ソレ等
ノ懸念ガゴザイマセヌカ、若シ是ガアルトス
レバ是ハ民間ノ事業ヲ壓迫スルト言ッテ
モ最モ甚シイノデアルカラ是ハ危險デア
ルト私ハ思ヒマスル、本日ハ非常ニ色ミナ
法案モ澤山重ッテ居リマスル時デゴザイマ
スルカラ長イコトハ此演壇ニ私ハ立チマ
スルト云フコトハ何レニ對シテモ相濟マヌコ
トト思ヒマスルカラ、大體是ダケヲ一ツ伺っ
テ、是ガ分リマスレバソレデ私ハ滿足イタ
シマスル
〔國務大臣小泉又次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=14
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015・小泉又次郎
○國務大臣(小泉又次郞君) 只今ノ高橋サ
ンノ御質問ニ對シテ御答イタシマス、只今
御質問ノ要旨ヲ謹ンデ承テテリリシシガガ、
一昨日私ハ衆議院ノ方ニ電氣事業法ノ改正
法律案ノ委員會ガ此貴族院ト同時ニ開會セ
ラレテ居リマシタ爲ニ、其方ニ出席ヲ致シ
マシテ、本議場ニ出席スルコトガ出來ナカフ
タノデアリマスル、ソレ故ニ中村政務次官
ヲシテ出席イタサセタノデアリマス決シ
テ此法案ガ輕イ法案デアルガ故ニ大臣ガ出
席セナイト云フヤウナ點ハ毛頭ナイノデア
リマスルカラ、此點ハ特ニ御了承ヲ願ヒタ
イト思ヒマスル、而シテ只今申上ゲマシタ
一昨日ノ高橋サンノ御質問ニ對シテ中村政
務次官ノ答ヘマシタコトハ、此速記錄ニ於
テ是亦能ク拜見イタシマシタデアリマス
ガ、之ヲ要シマスルノニ、只今マデノ御質
問ハ大體ニ於テ一昨日ノ御質問ノ要旨ト、
サウ變ック點ハナイヤウニ考ヘテ居リマス
ルガ、唯徴兵保險會社ハ最低ハ三百圓ト中
村ハ言ッタガ、サウデハナイ、最低ハ百圓
デアル筈ダ、斯樣ナ御趣意ニ承リマシタガ、
最近ノ契約ハ確ニ最低ガ三百位ニ相成ヲテ
居リマスルカラ此段モ御了承ヲ願ヒタイト
思ヒマスル、次ニ民營ヲ壓迫スルノ虞レハ
ヲイカト云ヲ御趣意ニ承リマシタガ遞信
省デ多年ノ間〓究調査ヲ致シマシテ玆
成案ヲ得テ本案ヲ提出イタシマシタノデア
リマスルガ、其愼重ナル調査〓究ニ依リマ
スレバ、本案ヲ實行イタシタト致シマシテ
モ、民營ニハ影響ハナイト云フ確信ヲ以チ、
本案ヲ提出イタシタ次第デアリマス、而シ
テ然ラバ何故之ヲ民營ニヤラセヌカト云フ
所ノ御趣意モアッタヤウデアリマスガ、申ス
マデモナク此小兒保險ハ社會政策ヲ加味イ
タシマスルト同時ニ公共ノ利益ヲ目的ト致
シテ立テテアル案デアリマスルガ故ニ、ソ
レヲ民間ニ委ネタト致シマシテモ、民間ニ
於テ免レザル所ノモノハ、往々ニ今日マデ
其弊害ヲ生ジテ居リマス所ノ激甚ナル競
爭デアルノデアリマスル、此競爭ガ激甚ニ
ナリマスルト云フト、從ッテ其會社ノ基礎ヲ
危ウスルノ虞ナシトハ斷定ガ出來ナイノデ
アリマス、之ヲ國營デヤリマスル以上ハヽ
國家ノ基礎ハ申スマデモナク極メテ强固デ
アリマスルカラ、先ヅ基礎ニ於テ安固デア
ルト云フコトノ理由ガ一ツデアリマスル
ソレカラ又只今申上ゲマシタル通り、餘リ是
ガ競爭ガ激甚ニナリマシテ、會社ガ澤山出
來ルト致シマスルト云フト、加入者ガ甲
乙丙丁少クトモ數個所ノ會社ニ加入イタ
シマスル、其加入致シマスル數會社ニ依ッテ
デス、或ハ虞ル、危險ノ思想ガ起リハシナ
イカ斯樣ナコトモ憂慮ノ中ニ入レテ居ル
ノデアリマスル、是ガ第二點デアリマス、
又會社ハドウシテモ相當ナル利益ト云フモ
ノガナケレバ營業ガ出來ナイノデアリマス
ルガ、是ガ國家デ經營イタシマスレバ、營
利ヲ目的トスルニ非ズシテ、公共的、卽チ
社會政策的ヲ目的ト致シマスルカラ、所謂
非營利的デアルノデアリマス是ガ第三點
デアリマス、一ツハ都鄙ヲ通ジテ一般全國
的ニ之ヲ普及セシメタイ、又スル方法ニヲッ
テ居リマスル、ソレハ申上グルマデモナク、
全國ノ郵便局ニ於テ此事務ヲ取扱ハセマス
ルガ故ニ一會社デ致シマスルヨリモ之ヲ
國家デ經營イタシマスルナラバヨリ早ク
速カニ全國ニ是ガ普及シ得ラレル、斯樣ナ
點ガ第四點デアリマスソレヤ是ヤヲ考慮
イタシマシテ、今日ハ矢張リ簡易生命保險
ノ年齡延長ト致シテ、小兒保險モ簡易保險
トシテ國營デヤルノガ最モ時宜ニ適シテ居
ルト、斯樣ニ信ジテ、之ヲ民間ニ委ネナイ
ノデアリマス、次ニハ唯儲カルコトダケヤッ
チ、政府ハ慈善事業ニ其金ヲ使用スル氣ハ
ナイカト斯樣ナ御質問ノ御趣意ニ承ッテ
居ッタノデス、一應御尤モニ考ヘマスルガ、
慈善事業ニ使用イタシマスルコトハ、叉國
家ト致シテ自カラ他ニ方策ガアルト考ヘテ
居リマスル、此簡易保險ハ屢〓申上ゲマスル
通リ、公共ノ利益ノ爲ニ運用イタシテ居ル
ノデアリマスル、此點ハ昨日モ中村政務次
官カラ詳細ニ御答辯ヲ申上ゲタヤウニ速
記錄ニハ認メテ居リマスルカラ、此段ハ省
略イタシマスルガ、重ネテ申上ゲマスル、
簡易保險ハ決シテ營利的デアリマセヌノ
デ一般ニ之ヲ公共ク利益ノ爲ニ運用スル
ト云フコトノ目的ヲ立テヽ積立ヲ致シテ居
ルノデアリマスカラ、此段モ御諒承ヲ願ヒ
タイノデアリマス、大體ニ於テ只今ノ御質
問ニ對シテ此段御說明ヲ申上ゲマス
〔政府委員橫山勝太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=15
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016・横山勝太郎
○政府委員(横山勝太郞君) 只今商工太臣
ニ御質問ガゴザイマシタガ、他ノ委員會ニ
出席イタシテ居リマスカラ、私ヨリ代シテ御
答申上ゲマス、若シ御不滿デゴザイマシタ
ラバ、他ノ機會ニ於テ商工大臣ヨリ改メテ
御答イタシマス、商工省ガ本案ニ贊成イタ
シマシタ理由ハ極メテ明瞭デアリマス、卽
チ年齡ノ點ニ於テ、又保險金額ノ點ニ於テ、
保險料ノ點ニ於キマシテ、總テヲ考慮イタ
シマシタ結果ト致シマシテ民間ノ之ニ該
當スル保險業者ニ向。ッテ脅威ヲ與ヘルモノ
デハナイ、斯樣ニ考ヘマス、併ナガラ只今
遞信大臣カラモ御話ノ通リ、全然左樣ナ虞
ナシトハ斷言出來マセヌ、商工省ト致シマ
シテハ民間ノ事業會社ニ對シテ保護助長ノ
實ヲ擧ゲナケレバナラヌノデアリマスルカ
ラ、本案ニ依ッテ若シ旣存ノ保險會社ガ其業
務ノ上ニ多少ニテモ脅威ヲ受ケルト云フヤ
ウナコトガアルコトハ商工大臣トシテハ
之ヲ希望イタサナイノデアリマス從テ此
點ハ十分調査イタシマシタガ、調査ノ結果
ト致シマシテハ民業ヲ壓迫スルモノデハナ
イ、斯樣ナ結論ヲ得マシテ之ニ贊成ヲ致シ
マシタ·唯御話ノ通リ、只今產業統制ノ爲
ニ盡力ヲ致シテ居ル際ニ拘ラズ、更ニ政府
ヲシテ斯ノ如キ事業ヲ經營セシメルコトハ
產業統制ノ精神ニ反スルト斯樣ナ意味ノ
御質問デゴザイマシタガ、ソレハ決シテサ
ウデハナイノデアリマス、企業ノ統制、産
業ノ統制ハ只今ノ所、重用工業ノ全般ニ亙ツ
テ之ヲ統制セシムルノ必要ヲ認メテ、其法
制ヲ立案イタシマシテ、議會ニ提出ヲシ
又統制ノ法規ナシト雖モ、是マデ行政手段
ニ依テ出來ルダケノ努力ヲ致シマシテ產
業統制ノ實ヲ擧ゲント致シテ居ルノデアリ
マスヽ併ナガラ此小兒保險、或ハ簡易保險
ト申シマスル事柄ハ特殊ノ目的ヲ有ッテ居
ルノデアリマス、特殊ノ使命ヲ有ッテ居ルノ
デアリマス、內務省ニ於テ健康保險ヲ扱ヒ、
又遞信省ニ於テ簡易保險ヲ扱フト云フヤウ
ナ事柄ハ一般ノ保險事業カラ考ヘテ見マ
スレバ、是ハ特殊ノ目的ヲ以テ、特殊ノ使
命ヲ有シテ居ルノデアリマスルカラ、一般產
業統制ノ精神ト背馳スルト云フ意味デハゴ
ザイマセヌ、恐ラク特殊ノ目的ヲ有チマシ
タ保險事業ト云フモノハ今後ト雖モ出テ
來ルデアラウト思ヒマス、此意味ニ於テ產
業統制ノ精神ニハ背馳セヌト、斯樣ニ確信
ヲ致シテ居リマス、又若シサウ云フヤウニ
續々特殊ノ保險ヲ許スト云フヤウナコトデ
アルチラバ將來保險ハ擧ゲテ國營トナルノ
デハナイカ、斯樣ナ御質問デゴザイマツタ
ガ、只今申上ゲマス通リ、特殊ノ目的ヲ有。ツ
タ保險ガ將來ニ於テドソ程度マデ出來テ來
ルカハ存ジマセヌ、併ナガラ國營ニ行クト
云フヤウナ意味ニマデ澤山ナ特殊ノ保檢ガ
出ルトモ考ヘテ居リマセヌ、又今日ノ保險
業界ノ狀態ハ御承知デゴザイマスル通リ
ニハ可ナリ競爭激甚、其弊ニ堪ヘヌ點ガ澤
山アリマス、之ニ對シテハ十分監督ハ加ヘ
テ居ルノデアリマシテ、從ッテ新ナル保險事
業ノ申請ニ對シマシテハ、只今ノ狀態ヲ申
上ゲマスレバ、殆ド絕對ニ之ヲ許サヌト云
フ精神デヤッテ居リマス、併ナガラ絕對ニ許
サヌト云フコトハ無論出來ヌコトデアリマ
スルカラ、箇々ノ問題ガ起ッテ參リマスレ
バ、其場合ニ相當ノ調査ヲ致シマシテ、許
否ヲ決定スルト云フ方針デヤッテ居リマス
ガ實際ノ所、只今ニ於テハ大體ニ於テサ
ウ保險ヲ許スト云フヤウナコトハ致シマセ
ヌカラ、此法案ガ出マシタ爲ニ、又其他特
殊ノ保險ヲ許シマスル爲ニ、保險ガ國營ニ
ナルト云フヤウナコトハ、只今ノ所デハ想
像イタシテ居リマセヌ、之ヲ要スルニ商工
省ト致シテハ高橋サンノ御說ノ通リ、何處
迄モ之ヲ保護シ、何處迄モ之ヲ助長シテ參
リマシテ、事業會社ニ對シテ脅威ヲ與ヘル
ト云フコトハ、斷ジテ致サナイ積リデアリマ
ス、民間ノ事業ヲ壓迫イタシマシテ之ガ基
礎ニ動搖ヲ與ヘ、民ト利ヲ爭フト云フヤウナ
方針ハ斷ジテ採ラナイ考ヘデアリマスルカ
ラドウゾ左樣御諒承ヲ願ヒタウ存ジマス
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=16
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017・高橋琢也
○高橋琢也君 只今、遞信大臣ノ御答辯ハ、
初メハ餘リ御低聲デゴザイマシタカラ、チ
ヨット聽漏シマシタガ、是ハ左ノミ必要ハナ
イト思ヒマス
〔伯爵柳原義光君「高聲ニ願ヒマス、聞
エマセヌ」ト述フ〕
サウデゴザイマスカ、私ノ聲ハ大キウゴザ
イマス···
〔伯爵柳原義光君「私ハ地ノ利ガ惡イカ
モ知レマセヌガ御高聲ニ願ヒマス」ト
述フ〕
ハイ、遞信大臣ノ仰シヤッタ事柄ノ中ニ一ツ
私ガ了解ニ苦シムコトガアル、第一、思想
上ニ危險ヲ起スト云フ此御話、是ハ大變私
ハ緣ノ遠イ話ノヤウニ考ヘテ居リマシタ
ガ、實ハ私ノ愚鈍ナ頭ニ浮ビマセナンダ
ソコ迄思想上ニ迄是ガエライ危險ヲ及ボス
デアラウト云フコトハ實ハ想像イタシマセ
ナンダ、私ハ第五十八議會ニ思想國難ヲ初
メ五大國難ヲ述ベマシテ、既ニ政府ハソレ
ハ取止メテ貰ヒタイ、國難ト云フ字ハ困ル、
斯ウ云フヤウナ仰セデゴザイマシタガ不
幸ニシテ其事ハミンナ今日ハ實現シテ來テ
居ル就中思想上ニ付テハ國難ト申シテ差
支ガナイト私ハ思フ、今ハ國難ニナッテ居
ル其大キナ國難ガ此小サイ小兒保險ニド
ウ云フ關係ガアルカ、私能ク了解ヲスルニ
苦シミマス、是ハ一ツ能ク分リマスルヤウ
ナ御說明ヲ願ヒタイ、ソレカラ競爭ノ起ル
ヤウナコトハシナイ、競爭ノ起ルヤウナコ
トガアッテハナラナイ、ソレハ之ヲ民間ノ事
業トスレバ互ニ競爭ヲ起ス小兒保險ヲ民
間ニ委シタナレバ彼方デモ會社ガ起リ
此方デモ會社ガ起ル、ソレデ競爭ヲスル
政府ガヤレバ卽チ國營ニスレバ競爭ハ起
ラナイ斯ウ仰ッシヤル、サウデゴザイマセ
ウ、政府自身ガ之ヲヤルトシタナラバ、他
ニ之ヲ起サウト云フテモ起サレナイ、又政
府ト競爭ガ出來ナイ、此資本金ノ大キイ、
權力ノ大キイ、斯ウ云フモノヲ向フニ廻シ
テ、競爭ノシヤウノナイコトハ當然ナ話デ
アル併ナガラ若シ民間ノ事業ヲ總テ政府
ガヤラニヤ、皆競爭ガ起ルト云フコトヲ虞
レタラ、民間ノ會社事業ヲ初メ、總テノ事柄
ハ何ニモ手ヲ出スコトハ出來ナイト云フ結
果ニナルデアラウ、ソレハ大變ナコトナン
ダ、民間ノ事業家ハ苦心慘澹シテ成ルタケ
廉イ品物ヲ拵ヘテ、サウシテ薄利多賣デ、
自分モ繁昌スルヤウニ、又之ヲ供給スル場
合、此供給ヲ仰グモノモ成ルタケ廉ク買ヒ
得ラレテ、生活上デモ總テノ民間ノ人ガ
利益ヲ得ルヤウニスル、其ヤリ方ガ宜
イカ惡イカニ付テハ、政府ハ監督權ヲ
有シテ居ルカラ、是ハ政府ノ監督權ノ最モ發
動ヲスベキ所デアルンダカラ、萬能ノ權力
ヲ有シテ居ル政府ハソレヲシテ貰フ、若シ斯
ウ云フコトニナルト云フト、實ハ自治制ナ
ドモ實際ニヤリ得ラレルモノヂヤナイ、政
府ガ手ヲ掛ケルカラソレハイケナイ、監督
ダケデ、總テ指揮命令ハセヌヤウニシナケ
レバ、民間ノ事業ノ如キハ殊ニ弱イモノデ
アルカラ、之ヲ政府ガ自分デ引取。ッテマデス
ルト云フコトニナリマシタラ民間ノモノ
ハ皆口ニ鍵ヲ掛ケナケレバナラヌ結果ニ
ナッテシマウ、ソレハ大變ナコトニナルノデ
ス、デアルカラ競爭ハ正當ナ競爭ナラ如何
ニ競爭シテモ是ハ仕方ガナイ、又サウシナ
ケレバ民間デモ一ツノ是ガ專賣ノヤウナ
モノニナッテシマッタラ、ドウスルコトモ出
來ナイ、是ト同時ニ「トラスト」ニナッテ
「トラスト」デ以テ外ノ者ハ此事業ニ手ヲ染
メルコトハ出來ヌコトニナレバ、自然其製
品ハ高クナッテシマウ、斯ウ云フ結果ガアル
カラ、何處迄モ營業ノ自由ト云フコトハ
是ハモウ政府デ常ニ頭ニ置イテ仕事ヲシナ
ケレバナラヌ、其自由ヲ奪シテシマッテハ大
變ナ話、ソレカラ今商工省ノ政府委員ノ答
辯是ハ少シモ差支ヘハナイ、政府ガヤレ
バ何モ他ニ影響ハナイノデアルト仰シヤル
ヤウナ、卽チ民間ノ事業ニハ少シモ妨害ハ
シナイ、壓迫ハシナイ、斯ウ云フ意味デア
ル、ソレハドウデゴザイマセウ、政府ガン
ナイデ民間ノ人ガヤル、民間ノ人ハ採算ガ
取レナケレバヤリマセヌ、ソレハ特殊ノ保
險デアルカラト斯ウ云フ、特殊ノ保險ト云
フコトガ私ニハ分ラサイ、何故ナレバ先ニ
私ハ例ヲ擧ゲテ言フタ、山林ノ稚樹、卽チ
苗木其モノカラシテ既ニ自分ノ方ニ取ッテ
シマッテ、大キナ山林、千万町步ノ山林デモ
ミンナ稚樹カラ大キクナッテ來ル、稚樹ノ時
取レバ、是ガドンナ大木ニナッテモ、棟木ニナ
ルヤウナモノニナッテモ、矢張リ持ッテ居ラ
レル、殘ラズ自分ノ懷ロヘ浚ヒ込ンデシマッ
テ置イテ、民間ノ者ハ競爭出來ナイ、競爭
ガ出來ヤウ道理ガナイ、ソレガ特殊ノモノ
ダト云フガ、特殊ナモノヂヤナイ、全國ノ
人間ノ頭ダ、是ハ私ニハ分ラナイ、ソレカ
ラ特殊ノモノデナイト云フコトハ今ノデ
オ分リニナッタデアラウ、誰ガヤッテモ宜シ
1、ソレカラ昨日政府委員ノ答辯ノ中ニ確
カ小兒ノ方ナレバ死亡シタ場合ハ掛金ヲ還
シテヤル徵兵ノ方デハ徴兵保險ノ方デ
ハ還シテヤラナイト言ハレタヤウニ聞イ
タ或ハ私ノ聽キ損ヒカモ知レマセヌガ、
若シサウデアルトスレバ是ハ私ノ聞イテ居
ルノト反對デアル、徵兵保險ノ方デモ皆死
ンダ場合ハ返シテヤッテ居ル、斯ウ聞イテ居
リマス、是ハ私ガ會社ニ關係ガナイカラ實
際ノコトハ知リマセヌガ、唯御答辯ト私ノ
聞込ンデ居ル所ト異ッテ居ル、唯成程政府ノ
方デヤッテ吳レルノハ死ンダ場合ハ返シテ
吳レルガ、徵兵保險ノ方ハ返シテ吳レナイ
ヨト言ヘバ會社其モノガ常ニ妨害ヲ受ケ
テ一言デモ政府ガ斯ウ言ッタト云フコトニ
ナレバ、民間ノ事業ノ妨害ニナッテ來ルト云
フコトハ論ノナイ話デアル、ソレデ小サイ
事ノヤウデアッテ小サクナイト思フカラ問
フ、兎ニ角今承シタ大キナ思想ノ關係ト、事
業競爭ノ關係ガ、其御解釋ガドウモ私ニ能
ク分ラヌカラ、ドウカ是ガ分リマスヤウニ、
相濟ミマセヌガ今一度詳細ニ御答ヲ願ヒタ
イ
〔國務大臣小泉又次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=17
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018・小泉又次郎
○國務大臣(小泉又次郞君) 御答ヘ致シマ
ス、私ノ御說明申上ゲマシタルコトガ高橋
サンニ徹底セナカッタコトヲ遺憾ト致シマ
スル私ノ申上ゲヤウガ惡イセイデモアッ
タカト思ヒマスルノデ、再ビ此處デ明瞭ニ
御答辯ヲ申上ゲマス、私ガ民間會社ニ之ヲ
委ネルトスルト自然競爭ヲ惹起ス、其競爭
ガ激甚ニナルト云フト、其會社ノ基礎ヲ危
ウスルノ虞ナシトセナイ、又保險者モ甲乙
丙丁等ノ會社ガ殖エルニ從ッテ、全部ノ會社
ニ加入ヲ致シマスル、加入ヲシテドウスル
カト云フト、申ス迄モナク最近ニ貰ヒ子殺
シトカ、小兒殺シトカ云フヤウナコトガ頻
頻ト事實ニ現ハレテ居ルノデアリマス、誤ツ
タル考カラ甲乙丙丁ノ會社ニ加入イタシ
テ其子供ニ危險ヲ加ヘルナラバ一時ニ多
額ノ金ガ入ルト云フヤウナ、誤ッタル考ヲ起
サナイトモ限ラナイ、之ニ依ッテ一口ニ申シ
マスルト云フト道德的危險防止ヲ致シマ
スルノニモ、國家ガ之ヲヤッテ居レバ基礎ガ
鞏固デアッテ、サウ云フ弊害ハ生ジナイ、斯
樣ナ意味ヲ申上ゲタノデアリマスガ、徹底
イタサナカッタコトヲ遺憾ト致シマスルカ
ラ、此場合明瞭ニ申上ゲテ置キマス
〔議長公爵徳川家達君議長席ニ復ス〕
御承知ノ通リ簡易保險ハ法規上是ハ獨占的
ニナッテ居リマスノデ、今日ノ狀態ニ照シマ
シテハ何處マデモ矢張リ此簡易生命保險ハ
獨占的ニ、國營ガ時宜ニ適シタルモノデア
ル斯樣ニ信ジテ居ル次第デアリマス、民
營ノ自由ヲ奪ハナイカト云フヤウナ御質問
デアリマシタガ、決シテ簡易保險ヲ政府デ
行ヒマシテモ、民間ノ自由ヲ奪フト云フコ
トハ勿論、其事業ノ大影響トカ若クハ大壓
迫トカ云フコトハ、必シモ起ルヤウナコト
ハナイ、是亦前段ニ御答ヘ致シマシタ通リ
固ク信ジテ居ルノデアリマスル、一昨日中
村次官カラ御答辯中ニ、徵兵保險ハ死亡者
ニ對シテハ保險金ヲ支拂ハヌトカ、掛金ヲ
支拂ハヌトカ云フコトヲ言フタガ、ソレハ
間違ヒデハナイカト云フ仰セデアリマシタ
ガ、中村次官ハ左樣ナ答辯ハ致シテ居リマ
セヌノデアリマシテ、徵兵保險ハ死亡ノ際
ニ其保險者ノ掛金ダケヲ支拂フコトノ制度
ニ相成シテ居リマスル、而モソレハ別ニ相當
ナル利率モ附加ヘズ唯其被保險者ニ掛金
ノミヲ支拂フ制度ニナッテ居リマスル、之ニ
反シマシテ此簡易保險ハ簡易保險法ニモ認
メテ居リマスル通リ、死亡ノ際ハ保險金ヲ
支拂フコトニナッテ居リマスカラ、徵兵保險
ト簡易保險トハ大體ニ於テ餘程ノ相違ノア
ルト云フコトダケヲ申上ゲテ置キマス、但
シ若シモ中村次官ガ徵兵保險ハ死亡ノ時ニ
金ヲ返サヌデハナイカト云フコトガ御耳ニ
アリト致シマスルナラバ、中村ハ左樣ナコ
トヲ申上ゲテ居リマセヌノデアリマス、高
橋サン御聽キ誤リト信ジマスカラ、ドウカ
此點モ御誤解ノナイヤウニ御諒承ヲ願ヒタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=18
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019・高橋琢也
○高橋琢也君 簡單デゴザイマスカラ此席
デ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 再ビ質疑ヲ爲サ
ルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=20
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021・高橋琢也
○高橋琢也君 簡單デゴザイマスカラ
遞信大臣ハ先ニ危險思想ノコトニ御論ガ及
ビマシタカラ、ソレヲ私ハ伺ッタノデスガ、
其事ハ今何トモ御答辯ガナイ、ソレカラ先
刻ノ御話デ見ルト云フト、事業ノ競爭ガ起
ラヌカト云フノニ對シテ、是ハ特殊ノ保險
デアルカラト、是ハ商工省ノ政府委員ノ御
話デアッタ、私ハ特殊ノモノデナイト云フ
譯ハ小兒保險ハ斯ク斯クデアルト、稚樹、
ノ例ヲ擧ゲテ申シタノデスガ、之ニ對シテ
其方ノ御答モナカッタ、ソレカラ先刻慈善事
業ニ對スルコトヲチヨット申上ゲタ、サウシ
タナラバ慈善事業ニ金ヲ只出スコトニ御取
リニナッタヤウデアリマスガ、サウデハナ
イ、性質ガ慈善事業的ノモノヘ之ヲ運用爲
サル、卽チ矢張リ貸出スノデス、ソレヲ性
質上斯ウ云フ金デアルカラ慈善事業ノ意味
ヲ持ッタモノニ利用スルコトハ出來ナイカ、
斯ウ云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、其
點ドウカチヨット御答辯ヲ願ヒタイト思ヒ
マス
〔國務大臣小泉又次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=21
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022・小泉又次郎
○國務大臣(小泉又次郞君) 御答ヲ申上ゲ
マス私ノ申上ゲマシタノハ勿論思想上ニ
付テノ見解ヲ申上ゲタノデアリマセヌノデ、
前段申上ゲマシタル道德的危險防止ヲスル
ノニ、是ガ一番適當ヲ得テ居ルト、斯樣ニ
申上ゲタノデアリマス、思想上ニ亙ッテ自分
ノ意見ヲ申上ゲテ居リマセヌノデアリマス
カラ、此點モ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス、
其次ノハ高橋サン、チヨット聽キ漏シマシタ
ガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=22
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023・高橋琢也
○高橋琢也君 慈善事業発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=23
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024・小泉又次郎
○國務大臣(小泉又次郞君) 慈善事業ニ其
金ヲ運用シテハドウカト云フ仰セデアリマ
シタ、是ハ社會政策ノ事業ニ對シマシテハ
貸付ヲ致シテ居ルノデアリマス、御承知ノ
如ク朝野ノ權威ノ御集リデ、此保險金ノ運
用委員會ノ制度ガ設ケラレテアリマスガ
只今ノ御質問ノ御趣意ノヤウナコトハ今
次ノ委員會ニモ提案ヲ致シマシテ、委員會
等ノ御意見モ承ハッテ見ルコトニ致シタイ
ト思ッテ居リマスカラ、此段御諒承ヲ願ヒタ
イト思ヒマス
〔政府委員橫山勝太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=24
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025・横山勝太郎
○政府委員(橫山勝太郞君) 御答へ致シマ
ス特殊ノ保險ト申上ゲマシタ意味ニ付テ、
再度ノ御質問デゴザイマスルガ、一般保險
ノ目的其他事業ニ付テハ、私ヨリ御答ヲス
ル必要ハナイノデ、能ク御諒承ノ通リデア
リマス、本案ノ所謂小兒保險、簡易保險ナ
ルモノハ中產階級以下ノ小兒ヲ目的トシテ
事業ヲ營ム、卽チ防貧政策ノ一ツトシテ此
事業ヲ營ム、他ニモ色ミゴザイマスガ、一
般保險ニ比シテ此點ハ最モ大キナ特長デア
リ又特殊ノ目的デアルト考ヘルノデアリ
マス是等ノ意味カラ本案ニ依ル保險事業
ハ特殊ノ保險デアルト、斯樣ニ申上ゲタノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=25
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026・高橋琢也
○高橋琢也君 色ミ伺ヒタイコトモゴザイ
マスガ、餘リ今日ハ議會ノ會期モ迫ッテ居リ
マスカラ、モウ是デ質問ヲ打切リマス
〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=26
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027・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 本案ニ關シマシテ一二
質問ヲ申上ゲタイノデアリマス、只今橫山
君ガ申サレマシタ如ク、本案ノ趣旨ハ所謂
中產階級以下ノ者ヲ目的トシテ居ル、遞信
大臣ハ衆議院ニ於カレマシテ、庶民階級ヲ
主トシテ居ルト御述ニナリマシタ、何レモ
私ノ考ヘマス所デハ是ハ中流ノ者ヨリカ寧
ロ俗ニ申シマス無產階級ト云フモノヲ御考
ニナッテ居ルモノト存ジテ居リマス、實ハソ
レヲ先キニ伺ヒタイノデアリマスガ、先ヅ
左樣ナ御答辯アルコトト信ジマシテ質問ヲ
進メルノデアリマス、御承知ノ如クニ此中
產以下、殊ニ貧民階級或ハ細民階級ト申シ
テ宜シウゴザイマセウ、ソレニハ如何ナル
生產率アリヤ、如何ナル死亡率アリヤハ御
存知ノコトト思ヒマス、我國ニ於キマシテ
ハ特ニ生活狀態ヲ標準トシマシテノ人口
調査ハシテ居リマセヌ併ナガラ多產多死
ト云フコトハ各階級ヲ通ジテノ全體デハ眞
理デアリマス、事實デアリマス、マダ日本
デハ行ハレマセヌガ、餘程久シキ以前ニ歐
羅巴ノ大都會ニ於キマシテ、生活程度ニ比
ベマシテ其妊娠力······女ノ子ヲ產ム力、分
娩力ノ調査ヲシタ人ガゴザイマス、私ノ知ッ
テ居ル人デアリマス、此人ノ〓究ニ依リマ
スルト所謂中產階級ヲ標準トシテ居リマ
ス、ソレデ生活ノ最モ裕カナ者ノ階級ニ比
ベマシテ、生活ノ最モ惡イ者ガ分娩力ニ如
何ナル違ヒガアルカト申シマスト貧者程
分娩力ガ多イノデアリマス、先ヅ此人ノ推
定デハ富者ニ此シ三倍トシテ居リマスデ
我國ニ於キマシテハ左樣ナ〓究モ調査モゴ
ザイマセヌガ此事實ハ箇々ノ調査ニ依リ
マシテ見マシテモ、我國ニモ嵌マルノデハナ
イカト思ッテ居リマス、故ニ此中產階級以下、
殊ニ細民ニ至リマシテハ分娩力ノ多イコト
モ推斷セラレルノデアリマス、而シテ又同
時ニ我國ニ於ケル顯著ナル事實ハ多死デア
リマス、死亡率ノ多イコトデアリマス、ソ
レデ貧民、貧民階級ニ於キマシテハ多產デア
ルト同時ニ多死デアル、最モ疑ヒナイノデア
リマス、私ノ友人ノ佐伯君ノ〓究ニ依リマス
ルト、榮養ノ不良ナル者ホド分娩率ガ多イ
ト云フコトヲ申シテ居リマス、是ハ澤山ノ
事實ニ徵シタノデハゴザイマセヌガ代表
的ノ〓究ニ依リマシテ、佐伯博土ハ斷言シ
テ居リマス、營養ノ少ナイ物ヲ攝ル者ハ
是ハ矢張リ細民階級デアリマス、故ニ細民
階級ハ多產多死デアル、又營養物ヲ澤山攝
ラヌ者モ多產多死デアルト云フコトハ同
一ノ結果ニナルノデアリマス、ソコデ私ハ
伺ヒタイ、此前以テ申上ゲタコトハ多分
御否定ニナラヌ、御肯定ニナルモノト存ジ
テ伺フノデアリマスガ、兎ニ角掛金ガ月ニ五
十錢乃至一圓、是ハ一人デアリマスカラシ
テ、年ニ六圓乃至十二圓ニナリマス、多產
デアルト同時ニ多死デアル細民階級デハ
兒ガ產レルト共ニ相當費用ガ掛リマス、又
死ヌト費用ガ掛ル、所ガ御承知ノ如クニ、
乳兒ノ死亡······一歲以下ノ死亡率ヲ御覽ニ
ナリマスレバ、如何ニ其死亡率ガ多イカガ
分ルノデアリマス、政府ノ御提出ノ法律案
ノ改正デハ、滿十二歲未滿ト書イテアリマ
シテ、其以下ガ書イテナイノデアリマス
高橋君ナゾハ之ヲ或ハ零歲カラ入レルト云
フ御考ヘデアラウト思ヒマスガ、私モサウ
考ヘテ居ッタ所ガ政府委員ニ伺ヒマスト云
フト法律ニハナイガ、是ハ滿二歲以上滿
十二歲マデデアル、卽チ二歲以下ハ除外サ
レテ居ルノデアル、ソコデ私ハ伺ヒタイ、
政府ハ一向算盤勘定ガ合ハヌコトヲシテ居
ルト仰セラレマスガ私ハ合フヤウナコト
ヲナサッテ居ルノヂヤナイカト思ヒマス、何
故ナレバ若シ零歲ノ者ヲ入レ、一歲ノ者ヲ
入レマスルト、實際採算ガ出マセヌ、死亡
率ガ殊ニ多イ零歲ヲ除イテハ、一歲ガ少シ
ク減リマス、又二歲カラ少シク減リマス、
ソレデ政府ハ滿二歲カラトシテ居ル、一群
危險ナ所ノ年齡階級ヲ除外セラレマシテ、
ソレデ是ガ防貧ニナル、或ハ是ガ救貧ニナ
ルト云フノハ如何デアリマスカ、若シ防貧
救貧ガ本當ノ御目的デアルナラバ零歲カ
ラ入ラネバナラヌ、產ンダ時ニ金ガ要ル、
死ンダ時ニモ金ガ要ル、卽チ始メニ生產ト
死亡ガ出テ來ル、是ヲ細民ガ受ケルノデア
リマス、而モ細民ハ多產多死デアルコトヲ
申上ゲマシタカラ、是ガ家庭ニ依リマシテ
ハ二人乃至三人ノコトモゴザイマセウ、此
一番危險ナ零歲ヲ除外セラレテ居ラレルノ
デアリマス、歲モ除外セラレテ居ル、ソ
レデ是ガ防貧或ハ是ガ救貧ト云フコトニナ
リマセウカドウカ、私ハ結論トシテ伺ヒタ
イノハ矢張リ是ハ簡易生命保險ニ於ケル
ガ如クニ、寧ロ細民ニ當テタト云フモノガ
變轉イタシテ中產以上ノ者ノ保護ニナリハ
シナイカト云フコトヲ虞レル、此點ヲ伺ヒ
タイ
〔國務大臣小泉又次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=27
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028・小泉又次郎
○國務大臣(小泉又次郞君) 柳澤伯爵ニ御
答ベ致シマス、只今中產階級以下薄資者、
卽チ細民階級、貧民階級ガ却ッテ出產率ガ多
イト云フコトノ色ミノ例ヲ御引キニナッタ
御說ヲ承ハッタノデアリマス、私共モ別ニ統
計モ調ベテ居リマセヌガ、御說ノ如ク我國
ニ於キマシテモ、俗ニ貧乏子寶ト申シマス
ルカラ、只今柳澤伯爵ノ仰セノ通リ、細民
ホド出產率ガ多イト云フコトハ何人モ之ヲ
肯定スルコトト存ジテ居ルノデアリマス、
從ヒマシテ其細民階級ヲ救濟スルトスルナ
ラバ、何ガ故ニ零歲カラ之ヲ組立テナイカ、
斯樣ナ御質問ノ御趣旨ニ承ッタノデアリマ
スルガ、全ク私、理想ト致シマシテハ御同
感デアルノデアリマスル、我ガ遞信省ニ於
キマシテモ現行法制定以來、十數年經チマ
シテカラ、其實績ニ徵シマシテ色ミト調査
〓究イタシマシタ、或ハ零歲カラ、或ハ一
歲カラ、或ハ二歲カラ、種々ナル點ニ於テ、
又種々ナル方面ノ事情等モ調査〓究イタシ
マシタル其結果、零歲カラヤルコトガ最モ
理想的デアルノデアリマスルガ、只今御話
ニナリマシタル如ク、零歲カラ二歲迄ハ死
亡率ガ多イノデアリマシテ、此死亡率ノ多
イダケ、ソレダケ加入サセルコトガ理想デ
ハナイカト云フコトノ御議論ニハナリマス
ルケレドモ、餘リ死亡率ガ多クナリマスル
ト云フト、申ス迄モナク此保險ト雖モ相互
的ノ組立ニナッテ居リマスルカラ、生存者ニ
對シテ相當ノ利廻リノ還付金モ支拂フコト
デアリマスルカラ、成ベク死亡ノ多イノモ
防ギタイ、斯樣ナ考モ持っテ居ルノデアリマ
ス、モウ一ツハ屢、衆議院ニ於キマシテモ
御質問ガアリマシタ又本議場ニ於キマシ
テモ高橋サンカラモ御質問ニナリマシタル
如ク雲歲カラヤルトスルナラバ民營ヲ壓
迫シヤシナイカ、斯樣ナ御議論、御意見等
モアルノデアリマスル、議會ニ於テ其御議
論ノアルノミナラズ、本案ヲ制定イタシマ
スル迄ニ十分ソレヤコレヤヲ〓究イタシマ
シタ之ヲ要シマスルノニ、一ツハ餘リ死
亡率ガ多イト云フコトヲ考慮イタシマシテ、
又零歲カラ組立テマスルト云フト或ハ民
間ノ徴兵保險等ニ影響ヲ及ボスノ虞ハナイ
カ、斯樣ナ點モ考慮ノ中ニ入レマシテ、先
ヅ初メテノ試ミデアリマスルカラ十二歲カ
ラ三歲マデ、延長イタシマシテ、其實績ニ
依リマシテ、只今柳澤伯爵ノ御說ノ如ク、
或ハ零歲マデ引延バスト云フコトハ近キ
將來ニ出來得ルコトト、斯樣ニ考ヘマシテ、
先ヅ當分ノ中、時宜ニ適シタルコトハ三歲
ガ一番適當デハナイカト斯樣ニ信ジマシ
テ本案ヲ提出シタ次第デアルノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=28
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029・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 簡單デゴザイマスカラ
自席カラ申シマス、只今ノ御說明ヲ伺ヒマ
スト、詰リ細民ハ零歲カラ二歲迄ハ何等保
護ハ受ケナイコトニナル私ハ、死亡率モ多
シ出產率モ多イカラ、殊ニ社會政策トシテモ
此邊ノ御考慮ガアルベキモノト考ヘテ居リ
マシタガ、ソノ論ハ他日ニ讓リマス、併ナ
ガラ申上ゲテ置キマス、日本ノ多產多死ハ
近キ將來ニハ決シテ是ハ變ジマセヌ、私ハ、
少クトモ十二三箇年先ニナラナケレバ幾
ラカ多產ガ減リ多死ガ減ルト云フコトハナ
イト思ヒマス、私ハ經驗ニ於テモ理論ニ於
テモサウ思ヒマスカラシテ、先ヅ小泉君ノ
御退官ノ後カ何カデナケレバ是ハ減ラヌコ
トニナル寧ロ私ハ方針ヲ御變ヘニナリ
マシテ、速ニ零歲ヨリ二歲迄ニ付テノ御考
慮ニナリタイ、衆議院デハ零歲カラ二歲
迄ヲ入レルト云フコトハ道德的ノ危險ガ有
ルト云フコトヲ言ハレマシタガ、ソレハ成
程少シハ有ルカモ存ジマセヌ、ケレドモ是
ト社會政策トハ關係ガドンナモノデアリ
マセウカ道德的危險ト云フコトノミヲ御
考ヘニナッテ社會政策······防貧政策、救貧政
策ヲ御立テニナラヌト云フコトハ少シク
御趣旨ニ合ハヌト私ハ思ヒマスケレドモ
是ハ議論ニナルカラ止メマス尙ホ細カイ
點ニ付テモ伺ヒタウゴザイマスガ、私ハ御
遠慮申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 他ニ質疑ノ通〓
者モゴザイマセヌカラ、本案ノ特別委員ノ
氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
簡易生命保險法中改正法律案特別委員
公爵徳川〓順君子爵井上匡四郞君
子爵八條隆正君小松謙次郞君
男爵赤松範一君竹越與三郞君
田所美治君大津淳一郞君
今井五介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、寄生
蟲病豫防法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會、內務政務次官齋藤隆夫君
寄生蟲病豫防法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月七日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵徳川家達殿
寄生蟲病豫防法案
寄生蟲病豫防法
第一條本法ニ於テ寄生蟲病ト稱スルハ
蛔蟲病、十二指腸蟲病、住血吸蟲病、
肝臟「ヂストマ」病及主務大臣ノ指定ス
ル寄生蟲病ヲ謂フ
第二條地方長官ハ寄生蟲病ノ豫防上必
要ト認ムルトキハ健康診斷ヲ行ヒ又ハ
糞便檢査ヲ爲スコトヲ得
前項ノ健康診斷又ハ糞便檢査ノ費用ハ
北海道地方費又ハ府縣ノ負擔トス
第三條地方長官ハ糞便其ノ他寄生蟲病
傳播ノ媒介ト爲ルベキ物件ノ處置ニ付
寄生蟲病ノ豫防上必要ナル命令ヲ發シ
又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四條市町村(町村制ヲ施行セザル地
ニ在リテハ之ニ準ズベキモノトス以下
之ニ同ジ)ハ地方長官ノ指示ニ從ヒ寄
生蟲病ノ豫防及治療ニ關スル施設ヲ爲
スベシ
第五條北海道地方費又ハ府縣ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ寄生蟲病ノ豫防及治療
ノ爲費用ノ支出ヲ爲ス市町村ニ對シ其
ノ費用ノ補助ヲ爲スベシ
第六條北海道地方費又ハ府縣ハ第三條
ノ規定ニ依ル地方長官ノ命令又ハ處分
ニ依リ糞便其ノ他ノ物件ノ處置ヲ爲ス
者ニ對シ其ノ費用ノ全部又ハ一部ヲ補
助スルコトヲ得
第七條國庫ハ前二條ノ補助ノ爲其ノ他
寄生蟲病ノ豫防及治療ノ爲費用ノ支出
ヲ爲ス北海道地方費又ハ府縣ニ對シ其
ノ支出額ノ六分ノ一ヲ補助ス
第八條第三條ノ規定ニ依ル地方長官ノ
命令又ハ處分ニ違反シタル者ハ五十圓
以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之
可知人
〔政府委員齋藤隆夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=31
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032・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆夫君) 寄生蟲病豫防法
案右提案ノ理由ヲ大要說明イタシマス、
農村住民ノ間ニ廣ク蔓延シテ國民保健上ノ
一大障碍デアル人體寄生蟲ノ豫防撲滅ニ關
シテハ從來中央及地方ニ於テ各種ノ施設
ヲ致シテ居リマスルガ、我國ノ如ク糞便ヲ
其儘肥料ニ使用シ、裸手跣足ニテ農事ニ從
事シ、或ハ蔬菜及魚介類ノ生食ヲ好ムノ風
習アル所ニ於テハ寄生蟲ノ撲滅ハ困難ナ
ル事業デアリマス殊ニ現在ニ於テハ本病
豫防ニ關スル法律ガナイ爲メ、本病豫防上
遺憾ノ點ガ多々アルノデアリマス、ソレ故
ニ寄生蟲像防法ヲ制定シ、本病蔓延ノ根幹
ヲ絕チ、以テ寄生蟲豫防ノ徹底ヲ期スル必
要アリト認メマシテ、之ニ關スル法案ヲ提
出イタシタ次第デアリマス、本案ノ要旨ヲ
簡單ニ說明申シマスルト、第一ハ本法ノ對
象タルベキ寄生蟲病ノ種類ヲ、蛔蟲病、十
二指膓蟲病、住血吸蟲病、肝臟「ヂストマ」
病、此四ツノモノニ限。ックノデアリマス、之
ハ寄生蟲病ノ中ニ於テ豫防上ノ必要多大ニ
シテ而カモ豫防ノ可能ナルモノヲ先ヅ列擧
シテ、本法ニ依ッテ豫防セムトスルノデアリ
マス併シナガラ將來或ハ此外ニモ豫防ノ
必要ナル寄生蟲病ノ發生ヲ見ル場合モアリ
マセウカラ、其際ニ於テハ主務大臣ノ指定
ニ依ッテ本法ヲ適用シ得ルコトニ致シテ居
リマス、第二ニハ患者ノ所在ト其症狀ト
ヲ明ニスル爲ニ、地方長官ヲシテ健康診斷
ヲ行ヒ又ハ糞便檢査ヲ爲スコトヲ得セシ
ムルコトデアリマス、從來各地方ニ於テ糞
便檢査ヲ實行シテ居リマシタガ、之ヲ强制
シテ行フコトヲ得ナカッタノデ、不徹底ナル
檢查トヲリ易イ場合モアリマスルノデ、地
方長官ハ必要ニ應ジテ、糞便檢査又ハ健康
診斷ヲ爲シ得ルヤウニ定メタノデアリマ
ス、第三ハ地方長官ヲシテ糞便其他寄生蟲
病傳播ノ媒介トナルベキ物件ノ處置ニ付キ
必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得セシ
ムルコトデアリマス糞便ノ處置ハ寄生蟲
病解決ノ根幹トモ云フベキモノデゴザイマ
シテ、糞梗中ニ存スル寄生蟲病菌ヲ死滅セ
シムルコトヲ得マシタナラバ我國寄生蟲
病ノ大部分ハ之ヲ豫防スルコトガ出來マス
ルカラ、各地方ニ適當シタ糞便ノ處置ヲ命
令シ、或ハ處分ヲ爲シテ害毒ノ泉源ヲ杜絕
セムトスルノデアリマス、且又寄生蟲病中
三、糞便以外ノ物件ニ依リマシテ感染ス
ルモノモアリマスルカラ、物件ニシテ本病
傳播媒介トナリマスルモノハ、同樣ニ處置
スルコトヲ得セシムルヤウニ定メタノデア
リマス、第四ハ、市町村ヲシテ地方長官ノ
指示ニ從シテ寄生蟲病ノ豫防及治療ニ關ス
ル施設ヲ爲サシムルコトデアリマス、本病
ノ豫防ハ個人ノ力ヨリモ團體ノ力ニ俟ツベ
キモノガ多イノデアリマスルガ故ニ、市町
村ハ諸般ノ豫防設備ニ付テ地方長官ノ指示
ニ從ッテ適當ナ方法ヲ講ズル義務ヲ負フコ
トト定メタノデアリマス、第五ハ寄生蟲
病豫防ニ關スル費用ニ付キ補助ヲ爲スコト
トシマシテ寄生蟲病豫防ノ爲メ費用ノ支
出ヲ爲ス市町村ニ對シ道府縣ヨリ補助ヲ爲
シ、更ニ之ニ對シテ國庫補助ノ規定ヲ設ケ
タノデアリマス、目地方長官ノ命令又ハ處
分ニ從ヒ豫防ニ關スル處置ヲ爲シタルモノ
ニ對シテ、道府縣ガ其費用ヲ補助スルコトヲ
得ルヤウニ致シタノデアリマス、以上ノ外
罰則ノ規定ヲ設ケマシテ本法ノ腐行ヲ圖リ
マシタノデアリマス、何卒愼重御審議ノ上
御贊成アランコトヲバ切ニ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ衞生組合
法案外一件ノ特別委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、輸出
生絲檢査法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會、町田農林大臣
輸出生絲檢査法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵徳川家達殿
輸出生絲檢査法中改正法律案
輸出生絲檢査法中左ノ通改正ス
第一條第一項及第二條第一項中「正量」ノ
下ニ「及品位」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ノ賣買契約ニ因ル生絲ノ受渡
及其ノ生絲ノ輸出ニ付テハ命令ノ定ムル
所ニ依リ本法ヲ適用セザルコトヲ得輸出
ヲ業トスル者ガ本法施行前輸出ノ目的ヲ
以テ買入ヲ了シ又ハ輸出ノ委託ヲ受ケタ
ル生絲ノ輸出ニ付亦同ジ
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=34
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035・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 只今上程サレマ
シタ輸出生絲檢査法中改正法律案ヲ提出イ
タシマシク理由ノ大體ヲ御說明申上ゲマ
ス、我國輸出品ノ大宗デアリマスル生絲ノ
實買取引ニ於キマシテ、其重量及品位ガ公
平ナル第三者ニ依ッテ正確ニ決定セラルル
コトハ、單ニ取引ノ圓滿ヲ期スルノミナラ
ズ、又一面ニ於キマシテハ生絲ノ生產方面
ニ對シマシテモ改良發達ノ目標ヲ示スノデ
アリマシテ、之ガ爲ニ品質ノ向上ヲ齎シ、
畢竟我國生絲ノ聲價ヲ高メテ貿易ノ振興ヲ
促スベキハ論ヲ俟タナイト存ジマス、是ヲ
以テ政府ハ御承知ノ通リ、大正十五年三月
輸出生絲檢査法ヲ制定シマシテ、先ヅ正量
ニ付テ生絲檢査所ノ檢査ヲ受タルコトト致
シタノデアリマス、之ニ依ッテ相當生絲取
引ノ圓滿ヲ來シタノデアリマスルガ、爾來
品位ニ付キマシテモ同樣ノ法制ヲ設ケマシ
テ、所謂格付取引ヲ實施セシムル爲ニ品位
檢査ノ方法等其他ニ付キマシテ準備ヲ進メ
マシテ、今日ニ至ッタノデアリマスルガ、其
準備モ漸ク整ヒマシタルガ故ニ、茲ニ輸出
檢査法ヲ改正シテ、第一ニハ生絲檢査所ノ
品位檢査ヲ受ケタルモノニ非ザレバ一切輸出
ヲ爲スコトガ出來ナイト云フコトヲ第一ト
致シマス、又第二ニハ其品位檢査ヲ受ケタ
モノニ非ザレバ賣買ノ取引ヲ致スコトガ出
來ヌコトト致シテ、玆ニ格付取引ノ實施ヲ
期セントシタ次第デアリマス、之ガ實施ヲ
見ルニ至リマスレバ、國內、就中國際間ノ
生絲取引ノ改善ト圓滑ヲ齎シ、我國生絲ノ
聲價ヲ上ゲマスル上ニ於テ、至大ノ效果ア
ルコトト信ジテ居ルノデアリマス、願ハク
バ愼重御審議ノ上御協賛アラムコトヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員
ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔瀨古書記官期讀〕
輸出生絲檢査法中改正法律案特別委員
侯爵佐々木行忠君子爵伊集院兼知君
子爵牧野忠篤君子爵吉田〓風君
男爵平野長祥君原保太〓君
加藤政之助君三木與吉郞君
山上岩二君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、耕地
整理法中改正法律案、政府提出、衆議院送
付、第一讀會、町田農林大臣
耕地整理法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵徳川家達殿
耕地整理法中改正法律案
耕地整理法中左ノ通改正ス
第一條第四號中「府縣、郡」ヲ「道府縣」ニ
改ム
第二條ノ二第一項中「國有林野法若ハ官
有地取扱規則ニ依ル豫約開墾者」ヲ「國有
財產法第二十一條ノ規定ニ依ル豫約事業
者」ニ改ム
第二條ノ三第一項中「官有地取扱規則ニ
依リ埋立又ハ干拓ノ許可」ヲ「公有水面埋
立法ニ依リ埋立ノ免許」ニ、同條第二項中
「豫約開墾者」ヲ「豫約事業者」ニ改ム
第三條ノ二市ノ區域內ノ土地及主務大
臣ノ指定スル地域內ノ土地ハ之ヲ整理
施行地區ニ編入スルコトヲ得ス但シ市
ノ區域內ノ土地ニシテ主務大臣ノ指定
スル地域內ノモノニ付テハ此ノ限ニ在
ラス
第五條第二項中「國有林野法若ハ官有地
取扱規則」ヲ「國有財產法」ニ改ム
第七條第一項中「主務大臣地方長官又ハ
郡長」ヲ「主務大臣又ハ地方長官」ニ改ム
第十條第一項中「又ハ登錄」及同條第二項
アルコ
第十二條耕地整理ノ施行ニ依ル土地ノ
異動ニ關シテハ地租法第十五條、第十
七條第二項、第十九條、第二十條、第
二十二條、第二十四條、第二十六條第
一切、第二十九條乃至第三十三條、第
三十五條、第三十六條、第三十八條、
第四十條乃至第四十三條、第四十五條、
第四十六條、第四十八條及第五十條乃
至第五十三條ノ規定ヲ適用セス
第十三條耕地整理ヲ施行シタル土地ニ
付テハ稅務署長ハ一筆每ニ地番ヲ附シ
其ノ地目、地積及賃貸價格ヲ定ム
前項ノ賃貸價格ハ稅務署長ハ整理施行
者ノ申請ニ依リ其ノ耕地整理ノ施行ニ
依リ第十四條ノ四ノ有租地ト爲リタル
モノヲ除クノ外整理施行地區內ノ土
地ノ現賃貸價格ノ合計額ヲ每筆相當ニ
配賦シテ之ヲ定ム但シ第十一條第二項
ノ規定ニ依リ國有地ニ編入シタル土地
ノ地積カ同條第一項ノ規定ニ依リ交付
シタル土地ノ地積ヨリ多キ場合ニ於テ
ハ其ノ地積ノ差數ヲ整理施行地區內ノ
土地ノ現賃貸價格ノ平均額ニ乘シタル
額ヲ現賃貸價格ノ合計額ヨリ控除シタ
ル額ヲ以テ現賃貸價格ノ合計額トス
規約ヲ以テ整理施行地區ヲ數區ニ分チ
タル場合ニ於テハ其ノ各區ヲ以テ前項
ノ整理施行地區ト看做ス
第十三條ノ二前條第二項ノ規定ニ依リ
賃貸價格ノ配賦ヲ爲シタル土地ニ付テ
ハ其ノ配賦ヲ爲シクル年ノ翌年分ヨリ
配賦シタル賃貸價格ニ依リ地租ヲ徵收
ス
前項ノ規定ニ依リ地租ヲ徵收スル年ノ
前年分迄ハ整理施行地ノ地租ハ原地
(工事著手前ノ土地)相當ノ賃貸價格ニ
依リ之ヲ徴收ス
第十三條ノ三第十三條第二項ノ規定ニ
依リ賃貸價格ノ配賦ヲ爲シタル土地ハ工
事著手ノ年ノ翌年ヨリ起算シ七十年ノ
耕地整理減租年期ヲ有ス
地租法第九條第一項ノ規定ニ依リ一般
ニ賃貸價格ヲ改訂スル場合ニ於テハ耕
地整理減租年期地ノ賃貸價格ハ其ノ改
訂ニ依リ定メラルヘキ賃貸價格ニ相當
スル額ニ第三項ノ規定ニ依リ定メタル
假賃貸價格ノ合計額ヲ以テ第十三條第
二項ノ現賃貸價格ノ合計額ヲ除シテ得
タル比率ヲ乘シタル額ニ之ヲ改訂ス
第十三條第二項ノ規定ニ依リ賃貸價格
ノ配賦ヲ爲シタル土地ニ付テハ稅務署
長ハ整理施行者ノ申請ニ依リ地租法第
九條第三項ノ規定ニ準シ假賃貸價格ヲ
定ム
稅務署長ハ假賃貸價格ヲ定メタルトキ
ハ整理施行者ニ之ヲ通知スヘシ
第十三條ノ四耕地整理減租年期地ニ付
地目變換、地類變換又ハ開墾ヲ爲シタ
ルトキハ其ノ耕地整理減租年期ハ消滅
ス
第十三條ノ五地租法第五十九條第一項
ノ規定ハ耕地整理減租年期地ニ村荒地
免租年期ヲ許可シタル場合ニ之ヲ準用
ス
第十三條ノ六耕地整理減租年期地ニ付
テハ其ノ年期ノ滿了スル年ニ於テ地租
法第九錄第三項ノ規定ニ準シ其ノ賃貸
價格ヲ修正シ其ノ修正ヲ爲シタル年ノ
翌年分ヨリ修正賃貸價格ニ依リ地租ヲ
徵收ス
第十四條耕地整理ノ施行ニ依リ開墾又
ハ第一類地中ノ地目變換ヲ爲シタル土
地ノ地積カ整理施行地區內ノ有租地ノ
總地積ノ五分ノ一ヲ超ユル場合ニ於テ
ハ稅務署長ハ整理施行者ノ申請ニ依リ
工事完了ノトキ從前ノ地域ニ依リ地租
法第九條第三項ノ規定ニ準シ其ノ賃貸
價格ヲ修正シ修正賃貸價格ノ合計額ト
之ニ對スル從前ノ賃貸價格ノ合計額ト
ノ差額ノ平均額ニ開墾又ハ變換シタル
土地ノ總地積ト整理施行地區内ノ有租
地ノ總地積ノ五分ノ一ニ相當スル地積
トノ差數ヲ乘シタル額ヲ開墾又ハ變換
シタル土地ノ從前ノ賃貸價格ノ合計額
ニ加ヘタルモノヲ以テ其ノ土地ノ第十
三條第二項ノ現賃貸價格トス
前項ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ修正ヲ爲
シタル土地ニ付テハ稅務署長ハ整理施
行者ノ申請ニ依リ開墾シタルモノニ在
リテハ工事著手ノ年ノ翌年ヨリ起算シ
四十年(四十年ヲ經過スルモ尙地味成熟
スルニ至ラスト認ムルモノニ付テハ四
十年以上五十年以內)ノ耕地整理開墾
滅租年期ヲ、變換シタルモノニ在リテ
ハ工事完了ノ年及其ノ翌年ヨリ六年ノ
耕地整理地目變換減租年期ヲ許可ス
前二項ノ場合ニ於テ二十年以內ニ成功
シ能ハサル地目變換ハ之ヲ開墾ト看做
ス
第十四條ノ二無租地ヲ整理施行地區ニ
編入シ有租地ト爲シタルトキハ第十一
條第一項ノ規定ニ依リ交付シタル土地
ヲ除タノ外稅務署長ハ整理施行者ノ申
請ニ依リ工事完了ノトキ從前ノ地域ニ
依リ地租法第九條第三項ノ規定ニ準シ
其ノ賃貸價格ヲ設定シ設定賃貸價格ヲ
以テ其ノ土地ノ第十三條第二項ノ現賃
貸價格トス
第十四條ノ三第十四條第一項又ハ前條
ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ修正又ハ設定
ヲ爲シタル後賃貸價格配賦前ニ於テ地
租法第九條第一項ノ規定ニ依リ一般ニ
賃貸價格ヲ改訂スル場合ニ於テハ修正
賃貸價格又ハ設定賃貸價格ハ工事完了
ノトキノ現況ニ依リ之ヲ改訂ス
第十四條ノ四國有財產法第二十一條ノ
規定ニ依リ賣拂又ハ讓與ノ豫約ヲ爲シタ
ル土地ニシテ耕地整理ノ施行ニ依ル開
拓ノ事業成功ニ因リ賣拂又ハ讓與ヲ受
ケ有租地ト爲リタルモノニ付テハ稅務
署長ハ土地所有者ノ申請ニ依リ有租地
ト爲リタル年及其ノ翌年ヨリ二十年ノ
耕地整理開拓免租年期ヲ許可ス
國有財產法第二十一條ノ規定ニ依リ賣
拂若ハ讓與ノ豫約ヲ爲シタル土地ニシ
テ耕地整理ノ施行ニ依ル埋立(干拓ヲ
含ム)ノ事業成功ニ因リ賣拂若ハ讓與
ヲ受ケ有租地ト爲リタルモノ又ハ耕地
整理ヲ施行シ公有水面埋立法ニ依ル埋
立ヲ爲シ同法第二十四條若ハ第五十條
ノ規定ニ依リ埋立地ノ所有權ヲ取得シ
有租地ト爲リタルモノニ付テハ稅務署
長ハ土地所有者ノ申請ニ依リ有租地ト
爲リタル年及其ノ翌年ヨリ六十年ノ耕
地整理埋立免租年期ヲ許可ス
前二項ノ場合ニ於テ整理施行者ハ土地
所有者ニ代リテ其ノ申請ヲ爲スコトヲ
得
第一項又ハ第二項ノ年期滿了スルモ尙
地味成熟セサル土地ニ付テハ稅務署長
ハ土地所有者ノ申請ニ依リ更ニ十年以
內ノ年期延長ヲ許可スルコトヲ得
第十五條整理施行地區內ニ開墾減租年
期地目變換減租年期、開拓減租年期、
埋立免租年期、耕地整理減租年期、耕地
整理開拓免租年期又ハ耕地整理埋立免
租年期ヲ有スル土地アル場合ニ於テハ
稅務署長ハ整理施行者ノ申請ニ依リ工
事著手ノトキ地租法第九條第三項ノ規
定ニ準シ其ノ賃貸價格ヲ修正又ハ設定
シ修正賃貸價格又ハ設定賃貸價格ヲ以
テ其ノ土地ノ第十三條第二項ノ現賃貸
價格トス
前項ノ土地ニ第十四條第一項ノ規定ヲ
適用スル場合ニ於テハ前項ノ修正賃貸
價格又ハ設定賃貸價格ヲ以テ其ノ土地
ノ第十四條第一項ノ從前ノ賃貸價格
トス
整理施行地區內ニ工事完了ノトキニ於
テ荒地免租年期地(震災ニ因リ一定ノ
期間地租ノ免除ヲ受クル土地ヲ含ム)ア
ル場合ニ於テハ稅務署長ハ整理施行者
ノ申請ニ依リ工事完了ノトキ從前ノ地
域ニ依リ地租法第九條第三項ノ規定ニ
準シ其ノ賃貸價格ヲ設定シ設定賃貸價
格ヲ以テ其ノ土地ノ第十三條第二項ノ
現賃貸價格トス
第十五條ノ二前條第一項又ハ第三項ノ
規定ニ依リ賃賃價格ノ修正又ハ設定ヲ
爲シタル後賃貸價格配賦前ニ於テ地租
法第九條第一項ノ規定ニ依リ一般ニ賃
貸價格ヲ改訂スル場合ニ於テハ前條第
一項ノ修正賃貸價格又ハ設定賃貸價格
ハ工事著手ノトキノ現況ニ依リ、前條
第三項ノ設定賃貸價格ハ工事完了ノト
キノ現況ニ依リ之ヲ改訂ス
第十五條ノ三第十五條第一項又ハ第三
項ノ土地ニ付テハ其ノ年期カ賃貸價格
配賦前ニ滿了スル場合ニ於テハ其ノ滿
了スル年ノ翌年分ヨリ賃貸價格配賦ノ
年ノ分迄修正賃貸價格又ハ設定賃貸價
格ニ依リ地租ヲ徵收ス
第十六條整理施行地區內ニ賃貸價格配
賦ノトキニ於テ第十五條第一項若ハ第
三項ニ揭クル年期、耕地整理開墾減租
年期又ハ耕地整理地目變換減和年期ヲ
有スル土地アル場合ニ於テハ稅務署長
ハ整理施行者ノ申請ニ依リ左ノ各號ノ
金額ヲ整理施行地區內ノ全部又ハ一部
ノ土地ニ配當ス命令ヲ以テ定ムル期間
內ニ其ノ申請ナキトキハ稅務署長ハ職
權ヲ以テ其ノ配當ヲ行フ
一第十五條第一項ニ揭クル減租年期
地ノ同項ノ修正賃貸價格ヨリ之ニ對
スル從前ノ賃貸價格ヲ控除シタル金
額
二第十五條第一項又ハ第三項ニ揭ク
ル免租年期地ノ同條第一項又ハ第三
項ノ設定賃貸價格ニ相當スル金額
三耕地整理開墾減和年期又ハ耕地整
理地目變換滅和年期ヲ有スル土地ノ
第十四條第一項ノ現賃貸價格ヨリ之
ニ對スル從前ノ賃貸價格ヲ控除シタ
ル金額
第十六條ノ二地租法第九條第一項ノ規
定ニ依リ一般ニ賃貸價格ヲ改訂スル場
合ニ於テハ配當金額ハ整理施行地區內
ノ耕地整理減租年期地ニ付第十三條ノ
三第二項ノ規定ニ依リ改訂セラルヘキ
賃貸價格ノ合計額ヲ之ニ對スル改訂前
ノ賃貸價格(配當金額ヲ控除セサルモ
ノ)ノ合計額ヲ以テ除シテ得タル比率
ヲ改訂前ノ配當金額ニ乘シタル額ニ之
ヲ改訂ス
第十六條ノ三第十六條ノ規定ニ依リ配
當ヲ爲シタル土地ニ付テハ同條ノ年期
ノ殘年明間中第十三條第二項ノ規定ニ
依リ配賦ヲ爲シタル賃貸價格(第十三條
ノ三第二項ノ規定ニ依リ改訂シタル場
合ニ於テハ其ノ賃貸價格)ヨリ配當金
額ヲ控除シタル額ヲ以テ其ノ賃貸價格
トス
第十六條ノ四第十六條ノ規定ニ依リ配
當ヲ爲シタル土地ニ付同條ノ年期ノ殘
年期間中土地ノ異動ニ因リ賃貸價格ヲ
修正スル場合ニ於テハ修正賃貸價格ヨ
リ配當金額ヲ控除シタル額ヲ以テ其ノ
賃貸價格トス
第十六條ノ五前二條ノ規定ニ依リ賃貸
價格ヲ定メタル土地ニ付テハ賃貸價格
ヲ定メタル年ノ翌年分ヨリ其ノ賃貸價
格ニ依リ地租ヲ徵收ス
第十六條ノ六第十六條ノ規定ニ依リ配
當ヲ爲シタル土地ニ付テハ同條ノ年期
ノ殘年期間ノ滿了スル年ニ於テ地租法
第九條第三項ノ規定ニ準シ其ノ賃貸價
格ヲ修正シ其ノ修正ヲ爲シタル年ノ翌
年分ヨリ修正賃貸價格ニ依リ地租ヲ徵
收ス
第十六條ノ七地租法第五十九條第一項
ノ規定ハ第十六條ノ規定ニ依リ配當ヲ
爲シタル土地ニ付荒地免租年期ヲ許可
シクル場合ニ之ヲ準用ス但シ荒地免租
年期ノ殘年期間ニ付第十六條ノ規定ニ
依リ配當ヲ爲シタル土地ニ付テハ此ノ
限ニ在ラス
第十六條ノ八第十三條第三項ノ規定ハ
第十四條第一項、第十四條ノ二、第十
五條第一項、第三項、第十六條及第十
六條ノ二ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十條第一項中「面積」ヲ「地積」ニ改ム
第三十四條第二項中「面積又ハ地價」ヲ
「地積又ハ賃貸價格」ニ改ム
第三十八條第一項中「郡、」ヲ削ル
第三十九條削除
第四十條市制第六條ノ市ニ於テハ第三
十八條及第五十三條第一項第五號ノ市
ニ關スル規定ハ區ニモ之ヲ適用ス
市制第六條又ハ第八十二條第三項ノ市
ニ於テハ本法中市長ニ關スル規定ハ區
長ニモ、市役所ニ關スル規定ハ區役所
ニモ之ヲ適用ス
町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ本法中
町村ニ關スル規定ハ町村ニ準スヘキモ
ノニ、町村長ニ關スル規定ハ町村長ニ
準スヘキモノニ、町村役場ニ關スル規
定ハ町村役場ニ準スヘキモノニ之ヲ適
用ス
第四十三條第一項第三號中「府縣、郡」ヲ
「道府縣」ニ改ム
第五十條第一項中「總面積及總地價」ヲ
「總地積及總賃貸價格」ニ改ム
第五十三條第一項第五號中「郡、」ヲ削ル
第六十五條第二項中「總面積若ハ總地價」
ヲ「總地積若ハ總賃貸價格」ニ改ム
第八十二條耕地整理ハ第一次ニ地方長
官、第二次ニ主務大臣之ヲ監督ス
第八十六條ノ二第十三條ノ三第三項ノ
假賃賃價格ノ決定ニ對シ不服アル整理
施行者ハ同條第四項ノ通知ヲ受ケタル
日ヨリ六十日以内ニ訴願スルコトヲ得
第八十八條第一項中「豫約開墾者」ヲ「豫
約事業者」ニ改ム
附則
第一條本法ハ昭和六年四月一日ヨリ之
ヲ施行ス
第二條昭和九年三月三十一日迄第三十
四條第二項、第五十條第一項及第六十
五條第二項ノ改正規定ニ依リ難キ事項
ニ關シテハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲ス
コトヲ得
第三條大正十五年四月一日以後地價配
賦ヲ爲シタル整理施行地區內ノ土地ノ
賃貸價格ハ稅務署長ハ整理施行者ノ申
請ニ依リ其ノ地區內從前ノ土地ニ付土
地賃貸價格調査法ニ依リ調査シタル賃
貸價格(以下調査賃貸價格ト稱ス)ノ合
計額ヲ工事完了ノトキノ現況ニ依リ每
筆相當ニ配賦シテ之ヲ定ム
命令ノ定ムル期間內ニ前項ノ申請ナキ
トキハ第三項ノ規定ニ依リ定メタル賃
貸價格ヲ以テ前項ノ土地ノ賃貸價格ト
ス
第一項ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ配賦ヲ
爲ス迄ハ其ノ土地ノ賃貸價格ハ調査賃
貸價格ノ合計額ヲ從前ノ地價ニ依リ算
出シダル地租條例ノ地租額ニ按分シテ
之ヲ定ム
第一項及前項ノ場合ニ於テ調査賃貸價
格ニ百分ノ三·八ヲ乘シタル金額カ從
前ノ地價ニ依リ算出シタル地租條例ノ
地租額ノ三倍八割ヲ超ユル土地アルト
キハ地租條例ノ地租額ノ三倍八割ニ相
當スル金額ヲ百分ノ三·八ヲ以テ除シ
タル金額ヲ以テ其ノ土地ノ調査賃貸價
格トス
第十三條第二項但書ノ改正規定ハ第一
項及第三項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四條前條第一項又ハ第三項ノ規定ニ
依リ賃貸價格ノ配賦ヲ爲シ又ハ之ヲ定
メタル土地ハ耕地整理減租年期ヲ有ス
但シ地價配賦後地目變換、地類變換又
ハ開墾ヲ爲シタル土地ニ付テハ此ノ限
ニ在ラス
第十三條ノ三第二項、第三項及第八十
六條ノ二ノ改正規定ハ前條第一項又ハ
第三項ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ配賦ヲ
爲シ又ハ之ヲ定メタル土地ニ之ヲ準用
ス
第五條附則第三條第一項ノ規定ニ依リ
賃貸價格ノ配賦ヲ爲シタル土地ニ付テ
ハ其ノ配賦ヲ爲シタル年ノ翌年分ヨリ
配賦シタル賃貸價格ニ依リ、同條第三
項ノ規定ニ依リ賃貸價格ヲ定メタル土
地ニ付テハ昭和六年分ヨリ同條第一項
ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ配賦ヲ爲ス年
ノ分迄其ノ定メタル賃貸價格ニ依リ地
租ヲ徴收ス
附則第三條第一項ノ規定ニ依リ昭和六
年ニ賃貸價格ノ配賦ヲ爲シタル土地ノ
昭和六年分ノ地租ハ附則第三條第三項
ノ規定ニ準シ算出シタル賃貸價格ニ依
リ之ヲ徴收ス
第六條大正十五年三月三十一日迄ニ地
價配賦ヲ爲シタル整理施行地區內ノ土
地ノ賃貸價格ハ其ノ土地ノ屬スル郡又
ハ市ニ於ケル土地(大正十五年三月三
十一日迄ニ地價配賦ヲ爲シタル土地ヲ
除ク)ノ地目別ノ大正十五年四月一日
現在ノ地價ノ合計額ヲ以テ之ニ對スル
地租法第九十二條ノ規定ニ依ル賃貸價
格ノ合計額ヲ除シテ得タル比率ヲ地目
別ニ每筆ノ地價ニ乘シタル額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ土地ノ屬スル郡
又ハ市ニ於ケル當該地目ノ土地ノ大正
十五年四月一日現在ノ總地積ノ二分ノ
一以上カ其ノ前日迄ニ地價配賦ヲ爲シ
タルモノナルトキハ同項ノ郡又ハ市ハ
之ヲ府縣トス
第一項ノ場合ニ於テ附則第十六條第一
項但書ノ規定ニ依ル宅地ノ賃貸價格ハ
其ノ土地ノ屬スル府縣ニ於ケル宅地
(大正十五年三月三十一日迄ニ地價配
賦ヲ爲シタル宅地ヲ除ク)ノ大正十五
年四月一日現在ノ地價ノ合計額ヲ以テ
之ニ對スル地租法第九十二條ノ規定ニ
依ル賃貸價格ノ合計額ヲ除シテ得タル
比率ヲ其ノ每筆ノ地價ニ乘シタル額ト
ス
第一項又ハ第三項ノ規定ニ依ル賃貸價
格カ地租法第九十二條ノ規定ニ依ル賃
貸價格ヲ超ユル土地ニ付テハ同條ノ規
定ニ依ル賃貸價格ヲ以テ其ノ賃貸價格
トス
第七條前條ノ規定ハ地價配賦後地目變
換地類變換又ハ開墾ヲ爲シタル土地
ニ之ヲ適用セス
前條ノ規定ニ依リ賃貸價格ヲ定メタル
土地ニ付テハ昭和六年分ヨリ其ノ賃貸
價格ニ依リ地租ヲ徴收ス
前條ノ規定ニ依リ賃貸價格ヲ定メタル
土地ハ耕地整理減租年期ヲ有ス
第八條地租法第九條第一項ノ規定ニ依
リ一般ニ賃貸價格ヲ改訂スル場合ニ於
テハ前條第三項ノ年期ヲ有スル土地ノ
賃貸價格ハ其ノ改訂ニ依リ定メラル
ヘキ賃貸價格ニ相當スル額ニ附則第六
條ノ規定ニ依リ定メタル賃貸價格ノ合
計額ヲ之ニ對スル地租法第九十二條ノ
規定ニ依ル賃貸價格ニ相當スル額ノ合
計額ヲ以テ除シテ得タル比率ヲ乘シタ
ル額ニ之ヲ改訂ス
第九條第十四條及第十四條ノ一一ノ改正
規定ハ大正十五年四月一日以後地價配
賦ヲ爲シタル整理施行地區内ノ土地ニシ
テ從前ノ第十四條ノ規定ニ依リ地價ノ修
正又ハ設定ヲ爲シタルモノニ付附則第
三條ノ調査賃貸價格ヲ算定スル場合ニ
之ヲ準用ス但シ附則第三條第三項ニ規
定スル場合ニ於テハ整理施行者ノ申請
ヲ要セス
第十條第十四條及第十四條ノ二ノ改正
規定ハ本法施行ノ際未タ地價配賦ヲ爲
ササル整理施行地區內ノ土地ニシテ從
前ノ第十四條ノ規定ニ依リ地價ノ修正
又ハ設定ヲ爲シタルモノニ付現賃貸價
格ヲ算定スル場合ニ之ヲ準用ス
第十四條ノ三ノ改正規定ハ前項ノ土地
ニ付賃貸價格配賦前ニ於テ地租法第九
條第一項ノ規定ニ依リ一般ニ賃貸價格
ヲ改訂スル場合ニ之ヲ準用ス
第十一條本法施行前耕地整理地價据置
年期若ハ其ノ年期延長又ハ耕地整理新
開免租年期ノ許可ヲ受ケタル土地ニシ
テ本法施行ノ際未タ其ノ年期ノ滿了セ
サルモノハ左ノ區分ニ從ヒ本法ニ依リ
減租年期又ハ免租年期ヲ許可セラレタ
ルモノト看做ス
一耕地整理地價据置年期又ハ其ノ年
期延長ハ開墾シタル土地ニ付許可
セラレタルモノニ在リテハ耕地整
理開墾減租年期、地目變換ヲ爲シ
タル土地ニ付許可セラレタルモノ
ニ在リテハ耕地整理地目變換減租
年期トス
二耕地整理新開免租年期ハ埋立地又
ハ干拓地ニ付許可セラレタルモノ
ニ在リテハ耕地整理埋立免和年
期其ノ他ノ土地ニ付許可セラレ
タルモノニ在リテハ耕地整理開拓
免租年期トス
前項ノ年期ハ本法施行前許可セラレタ
ル年期ノ殘年期間ノ經過スル年ノ翌年
ニ於テ滿了ス
第十二條第十五條ノ改正規定ハ大正十
五年四月一日以後地價配賦ヲ爲シタル
整理施行地區內ノ土地ニシテ從前ノ第
十五條ノ規定ニ依リ地價ノ修正又ハ設
定ヲ爲シタルモノニ付附則第三條ノ調
査賃貸價格ヲ算定スル場合ニ之ヲ準用
ス但シ附則第三條第三項ニ規定スル場
合ニ於テハ整理施行者ノ申請ヲ要セス
第十三條第十五條ノ改正規定ハ本法施
行ノ際未タ地價配賦ヲ爲ササル整理施
行地區內ノ土地ニシテ從前ノ第十五條
ノ規定ニ依リ地價ノ修正又ハ設定ヲ爲
シタルモノニ付現賃貸價格ヲ定ムル場
合ニ之ヲ準用ス
第十三條ノ二ノ改正規定ハ前項ノ土地
ニ付賃貸價格配賦前ニ於テ地租法第九
條第一項ノ規定ニ依リ一般ニ賃貸價格
ヲ改訂スル場合ニ之ヲ準用ス
第十五條ノ三ノ改正規定ハ第一項ノ土
地ニ付其ノ年期カ賃貸價格配賦前ニ滿
了スル場合ニ之ヲ準用ス
第十四條第十六條乃至第十六條ノ七ノ
改正規定ハ附則第三條第一項又ハ第三
項ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ配賦ヲ爲シ
又ハ之ヲ定ムルトキニ於テ整理施行地
區內ニ從前ノ第十六條ノ規定ニ依ル利
益ヲ有スル土地アル場合ニ之ヲ準用ス
但シ附則第三條第三項ニ規定スル場合
ニ於テハ整理施行者ノ申請ヲ要セス
第十五條大正十五年三月三十一日迄ニ
地價配賦ヲ爲シタル整理施行地區內ノ
土地ニシテ從前ノ第十六條ノ規定ニ依
ル利益ヲ有スルモノニ付テハ同條ノ殘
年期間ノ經過スル年ノ翌年迄ハ附則第
六條ノ規定ニ依ル其ノ土地ノ賃貸價格
ヨリ第二項ノ規定ニ依リ算出スル額ヲ
控除シタル額ヲ以テ其ノ賃貸價格ト
ス
前項ノ規定ニ依リ控除スヘキ額ハ從前
ノ第十六條ノ規定ニ依ル利益ニ相當ス
ル地租條例ノ地租額ヲ地租條例第一條
ニ規定スル其ノ土地ノ稅率ヲ以テ除シ
タル額ニ其ノ土地ノ從前ノ地價ヲ以テ
附則第六條ノ規定ニ依ル賃貸價格ヲ除
シテ得タル比率ヲ乘シタル額トス
第十六條ノ二及第十六條ノ四乃至第十
六條ノ七ノ改正規定ハ第一項ノ場合ニ
之ヲ準用ス
第十六條附則第六條ノ規定ハ市ノ區域
內ノ宅地及主務大臣ノ指定スル地域内
ノ宅地ニハ之ヲ適用セス但シ市ノ區域
內ノ宅地ニシテ主務大臣ノ指定スル地
城內ノモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
大正十五年三月三十一日迄ニ地價配賦
ヲ爲ササリシ整理施行地區內ノ宅地ニ
シテ市ノ區域內又ハ主務大臣ノ指定ス
ル地域內ノモノ(市ノ區域內ノ宅地ニ
シテ主務大臣ノ指定スル地域内ノモノ
ヲ除ク)ハ耕地整理減租年期ヲ有セ
ス
第十七條第十二條乃至第十六條ノ七ノ
改正規定及前條ノ規定ハ第九十四條ノ
規定ニ拘ラス明治三十二年法律第八十
二號耕地整理法ニ依リ耕地整理ニ關シ
發起又ハ施行ノ認可ヲ得タル者ニシテ
第九十六條ノ規定ニ係リ耕地整理組合
ト爲ラス且未タ地價配賦ヲ爲ササルモ
ノニ之ヲ準用ス
附則第十二條乃至前條ノ規定ハ第九十
四條ノ規定ニ拘ラス明治三十二年法律
第八十二號耕地整理法ニ依リ耕地整理
ニ關シ發起又ハ施行ノ認可ヲ得タル者
ニシテ第九十六條ノ規定ニ依リ耕地整
理組合ト爲ラス且既ニ地價配賦ヲ爲シ
タルモノニ之ヲ準用ス
第十八條第十三條第三項ノ改正規定ハ
附則第三條第一項、第三項、第六條第
一貫、第九條、第十條、第十二條、第
十四條、第十五條及前條ノ場合ニ之ヲ
準用ス
第十九條附則第十七條ノ規定ハ第九十
二條第二項但書ニ規定スル者ニ之ヲ準
用ス
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=37
-
038・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 只今上程サレマ
シタ耕地整理法中改正法律案提出ノ理由ヲ
大體御說明申上ゲマス、此度現行地租條例
ニ代ルベキ地租法ガ提案セラレマシテ爾
來課稅ノ標準デアリマシタ地價ガ今般賃貸
價格ニ改メラレマシタ、尙ホ之ヲ十年每ニ
一般ニ改訂セラルヽ旨ノ規定ガアリマシ
テ其結果耕地整理法中地租ニ關スル規定
モ當然改正ヲ要スルニ至ッタ次第デアリマ
ス、卽チ耕地整理施行地ノ地價ノ配賦ニ關
スル規定ヲバ、賃貸價格ノ配賦ニ關スル規
定ニ改メタモノハ其一ツデアリマス、又賃
貸價格ガ十年每ニ一般ニ改訂セラルル場合
ニ於キマシテモ、耕地整理施行地ノ賃貸價
格ノ改訂方法ニ關シテハ特別ノ規定ヲ新
ニ設ケテ、耕地整理ニ關スル恩典ヲ從來ノ
如ク玆ニ設ケテアルノデアリマス、其他現
行法上ノ耕地整理ニ依ル地價其他ノ恩典ヲ
モ新地租法ノ下ニ於テ同樣ニ存置セシムル
ヤウ複雜ナル改正ヲ要スルコトトナッタ次
第デアリマス、是ガ本案改正ノ主ナル點デ
ゴザイマス、尙ホ本案改正ニ付キマシテ市
街地附近ニアリマスル耕地整理ニ付キマシ
テ、特別ノ規定ヲ設ケタノデアリマス卽
チ市街地附近ノ土地ハ原則ト致シマシテ
耕地整理地區ニ編入ヲ許サヌ趣意ノ規定ヲ
設ケタノデアリマス、是ハ耕地整理法第一
條ニ明ニ規定サレテ居リマスル通リ、耕地
整理ト申スノハ農業上ノ利用增進ノ爲ニ
行ハルベキモノデアルニ拘ラズ從來ヽ市
街地附近ノ耕地整理ハ、此精神ヲ幾分沒却
シ宅地造成ニ利用セラルヽ虞ガ尠クナイノ
デアリマス、將來ハ斯カル事ノナカラシム
ル爲ニ、右ノ規定ヲ設ケタ次第デアリマ
ス本改正案ハ以上ノ如ク、主トシテ地租
法ノ制定ニ伴フ改正デゴザイマスルガ故
二、當然地租法ノ施行ト同時ニ實施イタス
ベキ筈ノモノデアリマス、何卒御審議ノ上、
御協賛アラムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=38
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039・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 簡單ニ質問ヲ致シタイ
ト思ヒマス農林大臣ニ伺ヒタイノデアリ
マスガ、只今ノ法案ト直接關係ハ有チマセ
ヌケレドモ、昭和四年ニ施行セラレマシタ
ル耕地調査ノ結果ハドノ邊マデ御利用ニナ
ルノデアリマスカ、伺ヒタイノデアリマス
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=39
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040・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 御答ヘ致シマ
ス、御尋ノ耕地調査ノ結果ハ大體出來テ居
リマス、或ハ相當各地ニ亙ッテ居ルコトデゴ
ザイマスルカラ、統計モアリマスルカラ、
書面ニ依ッテ御手許ニ御〓シシテモ宜カラ
ウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=40
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041・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 私ハ耕地調査ノ結果ヲ
伺ッタノデハナイノデアリマス、昭和四年ニ
實行セラレマシタル耕地調査ハドウ云フ風
ニ御利用ニナルノデアリマスカ、農林省ニ
於テハ餘程御存ジト思ヒマスガ、御利用ノ
方面ヲ伺ッタノデアリマス、書面デデモ宜シ
ウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ地租法
案、外六件ノ特別委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、國立
公園法案、第七、土地收用法中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、內
務政務次官齋藤君
國立公園法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
國立公園法案
國立公園法
第一條國立公園ハ國立公園委員會ノ意
見ヲ聽キ區域ヲ定メ主務大臣之ヲ指定
ス
第二條本法ニ於テ國立公園計畫ト稱ス
ルハ國立公園ノ保護又ハ利用ニ關スル統
制及施設ノ計畫ヲ謂ヒ國立公園事業ト
稱スルハ國立公園計畫ニ基キ執行スベ
キ事業ニシテ道路、廣場、苑地、運動
場、野營場、宿舍其ノ他命令ヲ以テ指定
スル施設ニ關スルモノヲ謂フ
第三條國立公園計畫及國立公園事業ハ
國立公園委員會ノ意見ヲ聽キ主務大臣
之ヲ決定ス
第四條國立公園事業ハ行政官廳之ヲ執
行ス
主務大臣特別ノ事由アリト認ムルトキ
ハ公共團體ヲシテ國立公園事業ノ一部
ヲ執行セシムルコトヲ得
行政官廳又ハ公共團體ニ非ザル者ハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ特許ヲ
受ケ國立公園事業ノ一部ヲ執行スルコ
トヲ得
第五條國立公園事業ノ執行ニ要スル費
用ハ行政官廳之ヲ執行スル場合ニ在リ
テハ國庫、公共國體ヲシテ之ヲ執行セ
シムル場合ニ在リテハ其ノ公共國體、
行政官廰又ハ公共團體ニ非ザル者之ヲ
執行スル場合ニ在リテハ其ノ者ノ負擔
トス
行政官廳國立公園事業ヲ執行スル場合
ニ於テ主務大臣特別ノ事由アリト認ム
ルトキハ其ノ執行ニ要スル費用ノ一部
ヲ公共〓體ヲシテ負擔セシムルコトヲ
得
行政官廳ニ非ザル者國立公園事業ヲ執
行スル場合ニ於テ國庫ハ其ノ費用ノ一
部ヲ補助スルコトヲ得
第六條國立公園事業ノ執行ニ依リ生ジ
タル施設ハ其ノ事業ヲ執行シタル者之
ヲ管理ス
主務大臣特別ノ事由アリト認ムルトキ
ハ公共團體ヲ指定シテ行政官廳ノ執行
スル國立公園事業ニ依リ生ジタル施設
ノ管理ヲ爲サシムルコトヲ得
前二項ノ規定ハ他ノ法律ニ依リ管理者
ヲ定メタル場合ニハ之ヲ適用セズ
第一項及第二項ノ規定ニ依ル管理ノ費
用ハ行政官廳之ヲ管理スル場合ニ在リ
テハ國庫、公共團體之ヲ管理スル場合
ニ在リテハ其ノ公共團體、行政官廳又
ハ公共團體ニ非ザル者之ヲ管理スル場
合ニ在リテハ其ノ者ノ負擔トス
第七條行政官廳又ハ公共團體ノ管理ス
ル國立公園ノ施設ニ付占用又ハ使用ヲ
許可スルトキハ其ノ管理者ハ占用料又
ハ使用料ヲ徵收スルコトヲ得但シ前條
第三項ノ規定ノ適用アル場合ヲ除ク
前項ノ規定ニ依ル行政官廳ノ徵收金ハ
國稅徵收法ノ例ニ依リ之ヲ徴收スルコ
トヲ得但シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次
グモノトス
第八條主務大臣ハ國立公園ノ風致維持
ノ爲國立公園計畫ニ基キ其ノ區域內ニ
特別地域ヲ指定スルコトヲ得
特別地域內ニ於テ左ノ各號ノ一ニ該當
スル行爲ヲ爲サントスル者ハ主務大臣
ノ許可ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ許可
ヲ要セズト規定シタルトキハ此ノ限ニ
在ラズ
一工作物ノ新築、改築又ハ增築
二水面ノ埋立又ハ干拓
三鑛物ノ試掘若ハ採掘、砂鑛ノ採取
又ハ土石ノ採掘
四木竹ノ伐採
五廣告物、看板其ノ他之ニ關スル物
件ノ設置
特別地域内ノ山林ニ對シテハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ地租其ノ他ノ公課ヲ免除
スルコトヲ得
第九條主務大臣ハ國立公園ノ保護又ハ
利用ノ爲必要アリト認ムルトキハ其ノ
區域內ニ於テ一定ノ行爲ヲ禁止若ハ制
限シ又ハ必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ
得
前項ノ規定ニ依リ一定ノ行爲ヲ禁止セ
ラレ又ハ措置ヲ命ゼラレタルガ爲損害
ヲ被リタル私人ニ對シテハ通常生ズベ
キ損害ニ限リ國庫之ヲ補償ス
勅令ノ定ムル所ニ依リ國庫ハ第一項ノ
規定ニ依リ一定ノ行爲ヲ著シク制限セ
ラレタル爲損害ヲ被リタル私人ニ對シ
其ノ損害ヲ補償スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル補償金額ハ主務大
臣之ヲ決定ス其ノ決定ニ對シテ不服ア
ル者ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月
以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ訴願シ又ハ行政裁判
所ニ出訴スルコトヲ得ズ
第十條主務大臣ハ第八條第二項ノ規
定、同條同項ノ許可ニ附シタル條件又
ハ前條第一項ノ命令若ハ處分ニ違反シ
タル者ニ對シ原狀囘復ヲ命ズルコトヲ
得
第十一條國立公園ニ關シ實地調査ノ爲
必要アルトキハ地方長官ノ許可ヲ得テ
他人ノ土地ニ立入リ、目標ヲ設置シ又
ハ障碍物ヲ除却スルコトヲ得但シ行政
官廳ニ於テハ地方長官ニ通知シテ之ヲ
行フコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ豫メ其ノ旨ヲ土地
ノ所有者及占有者ニ通知スベシ
第一項ノ場合ニ於テ通常生ズベキ損害
ハ同項但書ノ場合ヲ除クノ外其ノ行爲
ヲ爲シタル者之ヲ補償スベシ
前項ノ規定ニ依ル補償金額ニ付協議調
ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキ
ハ許可ヲ爲シタル地方長官之ヲ裁定ス
其ノ裁定ニ對シテ不服アル者ハ其ノ通
知ヲ受ケタル日ヨリ三月以內ニ通常裁
判所ニ出訴スルコトヲ得此ノ場合ニ於
テハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スル
コトヲ得ズ
第一項但書ノ場合ニ於テ通常生ズベキ
損害ハ國庫之ヲ補償ス
第九條第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之
ヲ準用ス
第十二條國立公園委員會ノ組織及權限
ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ規定シタル事項ニ付行政官廳ノ
爲シタル處分ニ不服アル者ハ訴願スル
コトヲ得
本法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコト
ヲ得ル場合ニ於テハ主務大臣ニ訴願ス
ルコトヲ得ズ
第十四條本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ規定シタル事項ニ付行政官廳ノ
爲シタル違法處分ニ因リ權利ヲ毀損セ
ラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴
スルコトヲ得
第十五條第八條第二項ノ規定、同條同
項ノ許可ニ附シタル條件又ハ第九條第
一項ノ命令若ハ處分ニ違反シタル者ハ
二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十六條主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ本法ニ規定シタル職權ノ一部ヲ地
方長官ニ委任スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
土地收用法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
土地收用法中改正法律案
土地收用法中左ノ通改正ス
第二條第四號中「索道」、ノ下ニ「專用自動
車道」、ヲ「下水、」ノ下ニ「國立公園、」ヲ加
フ
附則
本法中專用自動車道ニ關スル規定ハ自動
車交通事業法施行ノ日ヨリ、國立公園ニ
關スル規定ハ國立公園法施行ノ日ヨリ之
ヲ施行ス
〔政府委員齋藤隆夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=43
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044・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆夫君) 議題トナッテ居
リマスル國立公園法案提出ノ理由ヲ大要申
述ベマス國立公園ヲ設置シマスル目的ハ
優秀ナル自然ノ大風景地ヲ開發シテ一般世
人ヲシテ容易ニ之ニ親マシムルノ方途ヲ講
ジマシテ、國民ノ保健、休養乃至〓化ニ資
セムトスル爲デアリマス我國ニハ國立公
園トナルベキ天與ノ地域多ク、又一般國民
ノ之ヲ利用セムトスルノ風、年ト共ニ盛ン
ニナリツヽアルニ拘ラズ、未ダ斯ノ種ノ施
設ノ見ルベキモノナク、一般ノ利用上、遺
憾ガ少カラザル情況デアルノデアリマス
然ルニ國立公園ノ實現促進ニ關シマシテハ
帝國議會ニ提出セラレタル建議及請願ハ第
二十八議會以來今日マデニ實ニ百數十件ニ
上リマシテ、國民總意ノ、、ドノ邊ニアルカガ
略〓窺ヒ知ラレルノデアリマス、內務省ニ於
キマシテハ國立公園ノ本質ト國民ノ要望ト
ニ鑑ミマシテ、優秀ナル自然ノ素質、土地
ノ分布竝ニ所有關係等ヲ斟酌シテ全國ニ
亙リ十六箇所ノ候補地ヲ選定イタシマシ
テ、大正十年以降、逐次基礎的調査ヲ施行
シテ既ニ全部其完了ヲ告ゲタノデアリマ
ス、此調査ノ進行ニ伴ヒマシテ、數箇所ノ
候補地ニ於キマシテハ、政府ノ統制アル對
策ヲ待切レナイデ其地元ニ於テ漫然ト種
種ナル施設ノ經營ニ著手。スル者ガアリマ
ス、今ニシテ國家ガ根本政策ヲ確立シテ地
方ニ臨マナケレバ他日國立公園ノ計畫事
業ニ支障扞格ヲ招來スルノ虞ガアリマス
然ルニ一面ニ於キマシテハ經濟事業ノ發
達ニ伴ヒ、動モスレバ國立公園ノ生命タル
他ニ掛替ノナイ大勝景ノ核心ヲ破壞スルガ
如キ事例モ往々惹起スルニ至リマシタノ
デ、今日ニ於テ國土計畫ノ理想ニ基キ永遠
ニ天然ノ公園トシテ保護開發スベキ區域ヲ
劃シテ置クベキ必要ガアリマス、若夫レ國
立公園ヲ通ジテ我國ノ獨得ナル大風景ヲ廣
ク外國人ニ享用セシメマスルコトハ彼ノ觀
光施設ト相俟ッテ、我國ノ國情ヲ海外ニ紹介
シ、國際親善上寄與スル所多キハ固ヨリ
延イテハ國際貸借改善ニ資スル所必ズヤ至
大ナルモノアリト考ヘマス、政府ハ前述ノ
如ク內外ノ情勢ニ鑑ミ、之ヲ我國國情ニ照
シテ剴切ナル國立公園政策ノ大綱ヲ決定
シ官民ヲシテ依ル所ヲ知ラシムルノ必要
ヲ認メ、昨年一月內務省ニ國立公園調査會
ヲ設置シ、此會ノ權威及關係各廳ノ當局ヲ
煩シテ、銳意調査審議ヲ進メテ居リマス、
今囘提出イタシマシタ所ノ國立公園法案ハ
實ニ右調査會ノ答申ニ基キテ成案ヲ得ルニ
至ッタモノデアリマス、法案ノ骨子ハ第一ニ
國立公園ノ指定、國立公園計畫及國立公園
事業ノ決定ハ國立公園ニ關スル事項中、極
メテ重要ニシテ、且ツ其關係スル所頗ル廣
汎デアリマスルカラ、特ニ關係各廳ノ官吏
竝ニ學識經驗家ヨル成ル權威アル國立公園
委員會ノ意見ヲ聽キマシテ、主務大臣ガ之
ヲ爲スコトニ致シテ居リマス、第二ニ國立
公園事業ノ執行及其費用ノ負擔ハ原則トシ
テ國ガ之ニ當リマスルケレドモ、地方ノ利
益ト一致スルガ如キ特別ノ事由アリト認メ
ラルヽ事業ハ、公共團體ニ命ジテ、其負擔
ニ於テ之ヲ執行セシムルヲ得ルコト、又營
利事業トシテ成立チ得ルモノハ民間ニモ特
許スルコトガ出來ルヤウニ致シタノデア
リマス、第三ニ國立公園ノ管掌ハ主務大臣
之ヲ行フノハ當然デゴザイマスルガ、國立
公園事業ノ執行ニ依リマシテ生ジタル施設
ノ管理及其費用ノ負擔ハ原則トシテ其事業
ノ執行者ガ之ニ當ルコトニ定メタノデアリ
マス第四ニ國立公園ニ關スル公用制限ト
シテハ其風致維持ノ爲ニハ特別地域ヲ設ケ
マシテ、一定ノ行爲ニ付キ許可ヲ要スルコ
トト爲シ、又其保護利用ノ爲ニハ一定ノ行
爲ヲ禁止若クハ制限シ、又必要ナル處理ヲ
命ジ得ルコトトシ、尙ホ之ニ對シテハ相當
補償等ノ途ヲ開キ、民間ノ利益保護ヲスル
コトニ努メタノデアリマス以上ハ國立公
園法提案ノ理由ノ〓要デゴザイマス、尙ホ
本案ノ衆議院ニ於テハ滿場一致ヲ以テ可決
セラレマシタ、本院ニ於テモ何卒御審議ノ
上御協贊アランコトヲ切ニ御願ヒ致シマ
ス、次ニ土地收用法中改正法律案提出ノ理
由ヲ大要申述ベマス、近時自動車ノ發達著
シク自動車事業竝ニ自動車運輸事業ノ交通
上ニ於ケル地位重要ナルニ至リマシタカ
ラ、自動車交通事業法ヲ制定シ自動車運輸
事業ノ爲ニ、之ニ要スル專用自動車道ノ開設
ヲ認メ、其健全ナル發達ヲ圖ラントスルノ
デアリマス、又國立公園法ヲ制定シマシテ
我國ニ於ケル優秀ナル自然ノ大風景地ヲ保
護開發シ、以テ國民保健休養乃至〓化ニ資
セントスルノデアリマス、而シテ是等專用
自動車道及ビ國立公園ニ關スル事業ハ何
レモ公共ノ利益トナルベキ事業デアリマシ
テ、是ガ施設ニ要スル土地ハ土地收用法ニ
依ッテ收用又ハ使用シ得ルノ途ヲ開クノ必
要ガアリマス、仍シテ玆ニ土地收用法中改正
法律案ヲ提出イタシタ次第デアリマス是
亦御審議ノ上御協賛アラムコトヲバ御願ヒ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案ノ特別委員
ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
國立公園法案外一件特別委員
公爵鷹司信輔君侯爵蜂須賀正詔君
男爵木越安綱君子爵岡部長景君
鍋島桂次郞君中川小十郞君
根津嘉一郞君金杉英五郞君
小林嘉平治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家遠君) 午後一時三十分
マデ体憩イタシマス
午後零時十三分休憩
午後一時四十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス請暇ノ件ニ付キ御諮リヲ致
シマス、澤山精八郞君病氣ニ付キ十日間ノ
請暇ノ申出ガゴザイマシタ、ソレヲ許スコ
トニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 濱口內閣總理大
臣ハ其後御健康次第ニ囘復セラレ、昨十日
ヨリ登院セラルルニ至リマシタコトハ誠
ニ慶賀ノ至リニ存ジマス只今同君ヨリ發
言ヲ求メラレマシタカラ許可イタシマス
〔拍手起ル〕
〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=49
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050・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 諸君、私ノ遭難
ニ付キマシテ一月二十二日貴族院ノ決議
ヲ以テ鄭重ナル御慰問ヲ辱ウ致シマシタコ
トハ、誠ニ感謝ニ堪ヘマセヌ所デアリマス、
私遭難ノ爲メ時局多事ノ折柄、數箇月ノ間
國務ヲ離ルルノ已ムナキニ至リマシテ、今
日マデ諸君ト相見エテ共ニ國政ヲ議スルヲ
得マセナカッタコトハ、私ノ頗ル遺憾トスル
所デアリマス、爾來健康モ次第ニ囘復ヲ致
シマシテ、一昨日ヲ以テ幣原首相臨時代理
ノ任ヲ解カレ、同時ニ私自ラ總理大臣ノ職
務ニ當ルコトトナッタノデアリマス、玆ニ過
日ノ御慰問ニ對シ、謹ンデ謝意ヲ表スルト
共ニ、此段御報告ヲ申上ゲル次第デアリマ
ス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第八、取引
所稅法中改正法律案、政府提出、衆議院送付
第一讀會ノ續、委員長報告、特別委員長松
平侯爵ノ登壇ヲ望ミマス
取引稅所法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月七日
委員長侯爵松平康昌
貴族院議長公爵德川家達殿
〔公爵松平康昌君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=51
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052・松平康昌
○公爵松平康昌君 取引所稅法中改正法律
案ノ特別委員會ハ、委員長、副委員長互選
ヲ入レマシテ四囘會合ヲ重ネマシタ、不肖
私ガ委員長ヲ僣越ナガラ勤メマシタノデ、
只今特別委員會ノ經過ト其結果トヲ簡單ニ
御報告申上ゲマス、本案ノ提出理由及ビ其
大綱ハ本議場ニ於キマシテ政府委員ヨリ御
說明ガゴザイマシタカラ、大體ハ省略ヲ致シ
マス、案ノ趣旨ハ現物取引ト〓算取引トノ中
間ノ取引ヲ取引所內ニ許可シテ、其從來〓算
取引ニ課セラレタル稅率ヲ半減ト云フコト
ニ致シマシテ、取引ノ圓滑利用ニ供サムト
スルモノト考ヘマス、ソレニ付キマシテ委
員會ニ於キマシテ、協議及ビ質問ヲ致シマ
シタル所ノ主ナル點ヲ御報〓申上ゲマス
ガ、第一ハ投機者流ノ惡用ニ供セラレルコ
トガナキヤト云フコト、投機心ヲ煽ルヤウ
ナ結果ニナリハシナイカト云フコト、ソレ
カラ第二ハ此稅率ノ半減トソレカラ稅收入
トノ關係如何ト云フコト、ソレカラ第三ハ
代行會社ガ活動スルト云フ場合ニ於テ其弊
ガアルカ無イカト云フコト、大體主要ナル
點ハ其邊ニアッタト心得マス、次ニ是等ニ關
シマシテ其取締ガ十分ニ行ハレルカドウカ
ト云フ點ニ於キマシテモ、十分ニ質問協議
ヲ致シマシタ、政府當局ニ於キマシテモ、
本議場ニ於テ提案ノ「理由ヲ御說明ニナッタ
時ニ話サレタヤウニ、十分此點ニ對シテハ
取締ルト云フ御意思ノアルコトガ能ク分リ
マシタカラ大體委員會ハソレデ滿足イタ
シマシタ、尙ホ一員ヨリ、本案ハ今マデ
ノ法律案改正デハアルケレドモ、其結果ニ
於キマシテハ新ラシイ取引所ノ新設ト云フ
コトト、同ジヤウナ結果ニナルトモ考ヘラ
レルカラサウ云フ場合ニ起ル所ノ色ミノ
弊ヲ十分取締ルヤウニ政府デハ注意ヲシテ
貰ヒタイト云フ希望、ソレカラ尙ホ需要供
給ト云フコトニ關シマシテ、十分ニ圓滑ニ
是ガ行ハレルヤウニト云フヤウナ注意ガア
リマシテ、政府當局ニ於キマシテモ同ジ考
デアッテ、ソレニ努メルト云フヤウナコトガ
十分分リマシタノデ、委員會ハ全會一致ヲ
以テ之ヲ可決イタシマシタ、尙ホ足ラナイ
所ハドウゾ、速記錄ヲ御覽下サイマシテ補"ツ
テ戴キタイト思ヒマス、委員長ト致シマシ
テ甚ダ盡シマセヌケレドモ、委員會ノ御報
告ヲ申上ゲマス、御承認ヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ニ付テ他ニ
發言者モナイト認メマスカラ採決ヲ致シマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者ア〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=54
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055・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=55
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056・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=56
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057・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ直
ニ本案ノ第二讀會ヲ開クト云フ動議ニ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=60
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061・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=61
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062・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、未成
年者飮酒禁止法ノ改正法制定ニ反對ノ請
願會議
意見書案
未成年者飮酒禁止法ノ改正法制定ニ反對
ノ件
宮城縣仙臺市東一番丁平民澤晴夫外五
千五百四十八名呈出
秋田縣雄勝郡湯澤町工伊藤仁右衞門外
百六十九名呈出
靜岡縣濱松市肴町平民間淵榮一郞外二
百二十四名呈出
福島縣若松市上大和町酒造業新城猪之
吉外八百三十九名呈出
富山縣下新川郡魚津町商守谷仙作外五
千六百八十三名呈出
廣島縣吳市和庄通海軍職工松本軸實外
二千四百三十名呈出
廣島縣廣島市白島九軒町酒造業原九造
外千九百三十名呈出
和歌山縣和歌山市湊紺屋町會社員南方
常楠外千六十一名呈出
大分縣大分市酒造業高田保外二千六百
三十名呈出
福井縣今立郡上池田村酒商平井甚左ヱ
門外五千二百七十四名呈出
高知縣高知市細工町商竹村豐之助外三
千八百六十九名呈出
栃木縣芳賀郡茂木町商島崎泉治外一万
四千六百六十名呈出
滋賀縣甲賀郡貴生川村酒商倉田春吉外
九百名呈出
靑森縣八戶市橋本合名會社代表社員橋
本八右衞門外三名呈出
福島縣伊達郡桑折町酒造業半澤金兵衞
外三千十二名呈出
山口縣大島郡安下庄町商平井豐外千四
百二十名呈出
廣島縣廣島市鹽屋町酒商森野貞一外三
百四十一名呈出
鹿兒島縣鹿兒島市榮町工相良仲右衞門
外三百五十三名呈出
兵庫縣武廣郡魚崎町會社員山邑太左衞
門外三百四十六名呈出
大阪府堺市花田口町會社員佐川正之助
外四十六名呈出
長野縣下高井郡平穩村平民農佐藤喜惣
治外千二百二十一名呈出
山形縣南置賜郡窪田村農濱田五左衞門
外三千二十八名呈出
大阪市北區伊勢町酒商鹿島爲次郞外四
百七十九名呈出
愛媛縣北字和郡高光村酒造業赤松兵三
郞外三千三百五十三名呈出
奈良縣宇智郡五條町平民山本米三外五
十三名呈出
島根縣松江市石橋町商原田岩三郎外九
百四十七名呈出
北海道上川郡名寄町商名取忠重外六千
名呈出
群馬縣群馬郡總社町商山賀正夫外三千
七百八名呈出
兵庫縣神戶市平野矢部町雜貨商眞野源
八外二百九十四名呈出
福岡縣福岡市簀子町印刷業柴藤京太郞
外二万三千四百名呈出
京都府中郡新山村平民商矢谷朝一外百
五十八名呈出
岐阜縣岐阜市大宮町平民杉山半次郞外
二名呈出
埼玉縣北埼玉郡羽生町會社員入江治一
郞外八千九十三名呈出
大阪府堺市榮橋通材木商松谷兵藏外五
十八名呈出
岐阜縣本巢郡北方町酒造業柴田七郞外
千六十五名呈出
岡山縣赤磐郡高月村酒造業植田良友外
五千六百五十七名呈出
大阪市西淀川區傳法町會社員山中吉兵
衞外四十一名呈出
愛知縣知多郡龜崎町酒造業太田合資會
社代表社員太田彌太郞外三百九十四名
呈出
靑森縣三戶郡三戶町平民松尾市兵衞外
五名呈出
北海道札幌市南十條土木請負業松本敬
一郞外四百七十五名呈出
愛知縣寶飯郡國府町酒造業白井九一郞
外八百五十九名呈出
東京市麴町區丸ノ内酒造組合中央會會
長黃金井爲造呈出
右ノ請願ハ酒類ハ我國ニ於ケル天賦ノ嗜
好的飮料ニシテ古來儀禮、保健及ヒ慰安
上ノ必須品ナルニ拘ラス近頃外來ノ禁慾
思想ニ偏傾シ酒類ノ效果ヲ沒シ唯タ過飮
ノ弊ヲ標シ殊ニ二十歲以上二十五歲迄ノ
モノニ對シテモ飲酒取締ノ爲メ未成年者
〓酒禁止法ノ改正法律案ヲ提出セムトス
ルハ啻ニ其ノ取締ノ困難アルノミナラス
犯罪者ヲ續出セシムルノ虞アルニ依リ該
法案ハ之レヲ否決セラレタシトノ旨趣ニ
シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 請願委員長ノ報
告ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=69
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070・徳川家達
○讓長(公爵德川家達君) 日程第十ヨリ第
十九迄、請願、會議
意見書案
穀類搗精取締法制定ニ關スル件
長野縣埴科郡坂城町精米業兒玉勝助
呈出
右ノ請願ハ混砂精米麥ハ米麥ノ質量ヲ損
失スルコト莫大ナルノミナラス園民ノ保
健衞生上有害ナルコト專門學者ノ〓究竝
ニ實際家ノ經驗ニ依リ明白ナルニ拘ラス
今尙ホ舊習ニ囚ハレ無砂精米麥ニ更フルモ
ノ尠少ナルハ〓糧經濟上竝ニ國民保健上
甚タ遺憾ナルヲ以テ速ニ穀類搗精法ヲ制
定シ混砂搗精ヲ嚴禁スルト共ニ無砂精米
麥ノ普及ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊
及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
釋放者保護制度設定ノ件
大阪府堺市三國丘町平民杉野喜祐外
八百三十六名呈出
右ノ請願ハ釋放者保護事業ハ社會當面ノ
緊要事ナルニ拘ラス今尙ホ該事業ノ成績
不振ナルハ一面其ノ財源ノ窮乏ニ基クト
雖モ他面釋放者保護團體ニ何等ノ法的權
能ナキニ因ルコト亦多大ナルハ甚タ遺憾
ナルニ依リ速ニ釋放者保護ニ關スル制度
ヲ設定シ斯業ノ充實ヲ圖ラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別冊及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郎殿
意見書案
名寄區裁判所出張所設置ノ件
北海道中川郡中川村公吏川越武躬外
八百七十二名呈出
右ノ請願ハ北海道中川郡中川村ハ近時戶
口增殖シ產業モ亦發逹セルタメ登記事務
夥多ナルニ拘ラス管轄名寄區裁判所美深
出張所ヲ距ルコト遠ク村民ノ不利不便尠
カラサルハ地方開發上甚タ遺憾ナルヲ以
テ同村譽平ニ名寄區裁判所出張所ヲ設置
セラレタク建物及ヒ敷地ハ寄附又ハ有料
貸付ノ兩者孰レトモ指示ニ從フヘシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依り別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
福島縣田村郡要田村ニ無集配郵便局設
置ノ件
福島縣田村郡要田村長壁谷龜八呈出
右ノ請願ハ福島縣田村郡要田村ハ戶口多
ク近時產業ノ發達著シク交通頻繁ニシテ
通信事務激增シ且ツ貯蓄ヲ獎勵シ實行ス
ルノ機關必要ナルニ拘ラス郵便局ナキハ
甚タ遺憾ナルニ依リ速ニ同村地内ニ無集
配郵便局ヲ設置セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別冊及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
北海道枝幸郡頓別村ニ漁業組合設置ノ
件
北海道枝幸郡頓別村平民漁業村岡榮
太郞外二百名呈出
右ノ請願ハ北海道枝幸郡頓別村ハいか り
ツク」海ニ面スル有望ノ漁村ナルニ拘ラ
ス曩ニ枝幸村ヨリ分村シテ既ニ相當年月
ヲ經過スルモ今尙ホ枝幸漁業組合ノ區域
內トシテ同村地先水面ノ專用漁業權ハ同
組合ニ屬ス然ルニ組合員ノ多數ハ枝幸村
ノ漁業者ナルヲ以テ頓別村地先水面ハ其
ノ横暴ニ蹂躪セラレ同村漁民ノ不利甚シ
ク斯業發展上甚ク遺憾ナルニ依リ枝幸漁
業組合ヨリ頓別村一圓ヲ分離シテ新ニ漁
業組合ノ設置ヲ許可シ地先水面ニ對シ專
用漁業權ヲ免許セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
北海道頓別川河口改修ノ件
北海道枝幸郡頓別村平民商野村直政
外二百九十名呈出
右ノ請顯ハ北海道枝幸郡頗別村頓別川河
口ハ魚介豐富ナル「オコツク」海沿岸ニ於
ケル漁船唯一ノ碇泊地ナルノミナラス其
ノ流域地方ハ有望ナル農耕地ナルニ拘ラ
ス先年海嘯ノ爲メ著シキ河口ノ變動ヲ來
シ爾來風波每ニ閉塞シ河水逆流氾濫ノ爲
メ、漁業、農業竝ニ運輸交通上ノ損害數
少ナラサルハ本道拓殖上甚タ遺憾ナルニ
依リ速ニ工事容易ナル同川河口ヲ改修シ
テ之ヲ港灣トナシ尙ホ同工事完成迄河口
ヲ浚渫セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ顯意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
岩手縣釜石港ヲ開港ニ指定、稅關官署
設置ノ件
岩手縣紫波郡乙部村公吏福田亀吉外
千八百八十六名呈出
右ノ請願ハ岩手縣釜石港ハ三陸沿岸ノ中
央ニ位スル天然ノ良港ニシテ濠洲、支那、
西伯利亞等ヨリノ輸入年額三百万圓、米
國、支那等ニ對スル輸出年額モ亦二百万
圓ニ達セルニ拘ラス開港ニアラサル爲メ
他港ヲ經由セサルヘカラス斯タテハ時日
經費ノ徒消甚シキヲ以テ同港ヲ開港ニ指
定シ稅關官署ヲ設置セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別冊及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家逹
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
島根縣邑智郡長谷村ニ郵便局設置ノ件
島根縣邑智精長谷村平民農古川寛外
十二名呈出
右ノ請願ハ島根縣邑智郡長谷村ハ農產、
畜產ニ富ミ通信機關ノ所要切ナルニ拘ラ
ス最寄郵便局ヲ距ルコト遠ク且ツ急坂ニ
シテ住民ノ不便甚シキハ通信上竝ニ貯蓄
奬勵上遣憾ナルニ依リ同村ニ郵便局ヲ設
置セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候
也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
大阪府大阪市中央区本町原理事業服殿
意見書案
島根縣那賀郡大内村ニ無集配郵便局設
置ノ件
島根縣那賀郡大内村長岡本秀孝外一
名呈出
右ノ請願ハ島根縣那賀郡大内村ハ夙ニ農
産、林產ニ富ミ且ツ近時養蠶業亦發展シ
通信機關ノ設備ヲ望ムコト切ナルニ拘ラ
ス同村ニ郵便局ナク住民ノ不便甚シキハ
遺憾ナルニ依リ速ニ無集配郵便局ヲ設置
セラレ以テ同地方ノ發達ニ資セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
釋スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和六年月日
貴族総議長公爵德川家達
內閣〓理大臣臨時代理
外務大臣男鬪幣原喜重郞殿
意見書案
雪害ニ關シ市町村義務〓育費國庫負擔
法ノ施行勅令改正ノ件
靑森縣南津軽郡黑石町酒造業鳴海文
四郞外一万三千四百五名呈出
靑森縣南津輕郡山形村平民公吏熊澤
瞭靜外千二百二十四名呈出
北海道藥取郡藥取村商山本和外百九
十三名呈出
右ノ請願ハ雪國地方ノ住民ハ冬期間〓ネ
積雪ノ裡ニ生活シ衞生、保健、土木、交
通、產業等ニ甚大ナル損害ヲ受タルニ拘
ラス毫モ政治的ノ助力ト救濟ナク皇化普
遍ノ本義ニ稽フルモ降雪ナキ地方トノ權
衡上甚ク遺憾ナルニ依リ速ニ市町村義務
〓育費國庫負擔法ノ施行ニ關スル件勅
令第三百十五號)中第七條第二項ニ二号.
害」ヲ加へ雪害ヲ以テ隨時分擔金ヲ交付
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト講決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣総理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=70
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071・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是等ノ請願モ請
願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=71
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072・徳川家達
○護長(公爵德川家邊君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程、第二十ヨ
リ第三十迄、請願、會議
意見書案
島根縣簾川郡遙堪村ニ無集配郵便局設
置ノ件
島侯縣簸用郡遙堪村平民農高橋運右
衞門外十六名呈出
右ノ請新ハ島根縣簸川郡遙堪村ハ近時產
業竝ニ交通發達シ〓ニニ近近北山脈及ヒ砂
山一帶ノ景勝ニ遊覽スル者等漸次其ノ數
ヲ加へ從テ遞信事務夥多ナルニ拘ラス最
寄郵便局ヲ距ルコト遠ク通信上不利不便
尠カラサルハ甚タ遺憾ナルニ依リ同村ニ
無集配郵便局ヲ設置セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト讓決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
外物體驗學研究所此觀察聖殿
意見書案
北海道石狩川架橋ノ件
北海道上川郡江丹別村長武田源五郞
外一名呈出
右ノ請願ハ北海道上川郡江丹別村ヨリ石
狩川ヲ渡船シテ同縣神居村ニ通スル村道
ハ對岸相互竝ニ旭川市ニ至ル要路ニシテ
運輸交通及軍事上資スル所大ナルニ拘ラ
ス〓尙不安不便ナル渡船ニ賴レルモ之カ
架橋ハ貧弱ナル兩村ノ負擔ニ堪ヘサル所
ナルニ依リ國費ヲ以テ之ヲ施行セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵徳川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
北海道江差瀨欄間鐵道敷設ノ件
北海道檜山郡江差町長原田淺次呈出
右ノ請願ハ未成線鐵道江差線鐵道ノ終點
江差町ヨリ未成線鐵道瀬欄線鐵道ノ終點
瀨棚町ニ至ル鐵道ヲ敷設スルハ沿線地方
ニ於ケル豐富ナル農產、林產及ヒ〓產ノ
資源ヲ開發スルト共ニ魚族豐富ナル海岸
地方ニ於ケル海產物ノ輸送上重要ノ線路
ナルノミナラス日本海一帶ヲ連絡シ南下
關ヨリ北棒太ニ通スル幹線トシテ運輸交
通及ヒ國防上重要ナルニ依リ之ヲ鐵道施
設法別表ニ編入シ速ニ敷設セラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別冊及選傅候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
軍人傷痍記章令中改正卽行ノ件
和歌山縣和歌山市南体費町米穀商狩
谷彌太郞外五十八名呈出
滋賀縣神崎郡九幡村平民農德岡實次
郞外九十六名呈出
右ノ請願ハ軍人ニシテ傷痍ヲ受ケ兵役ヲ
免除セラレタル者ハ假令傷痍ノ輕重アリ
ト雖モ兵役義務ニ服シ國家ニ盡スゴト敢
テ軒輊ナキニ拘ラス軍人傷痍記章令ニハ
軍人傷痍記章受領者ヲ增加恩綸受給者ニ
限サタルハ甚タ遺憾ナルニヨリ該記章ヲ
一時恩給受給者竝ニ無給與傷痍者ニモ授
與セラルルヤウ速ニ同令ヲ改正セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
北洋漁業權益確立ノ件
東京市麴町區内山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ北洋ニ於ケル漁區漁業及ヒ工
船漁業ハ我國漁業上ノ一大勢力ニシテ又
我海外貿易上重要ナル地位ヲ占ムルニ拘
ラス近年露國ノ計畫的進出ニ伴ヒ諸種ノ
事態ヲ惹起シ動モスレハ條約上ノ既得地
位ヲモ蹂躪セラレムトスルハ我國斯業上
看過シ難キニ依リ從來ノ諸懸案ヲ解決ス
ルト共ニ其ノ根本對策ヲ確立セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
遠洋漁業奬勵ノ件
東京市麴町區內山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ遠洋漁業ノ奬勵ハ我國漁業政
策ノ基調ニシテ之カ爲メ夙ニ奬勵法ヲ制
定シ爾來其ノ成績大ニ見ルヘキモノアル
ニ拘ラス該法律ハ昭和八年三月ヲ以テ效
力ヲ失フカ如キモ今ヤ內外ノ情勢ニ鑑ミ
益々斯業ノ發達ヲ助成スルノ急務ナルニ
依リ該法律ヲ存續セシムルト共ニ其ノ內
容ヲ擴充セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
沿岸漁業奬勵ノ件
東京市麴町區內山下町帝國水產會會
長千爵野村益三呈出
右ノ請願ハ沿岸漁業ハ漁村經營ノ根底ヲ
爲スモノナルニ拘ラス近時漸ク漁獲減少少
シテ斯業ノ〓兆ヲ認メ爲ニ漁村荒殿ノ危
機ヲ招來セムトスルハ甚タ遺憾ナルニ依
リ之カ保護奬勵ニ關シ適當ノ施設ヲ講シ
以テ漁村維持ノ方法ヲ確立セラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家人
内閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
漁村共同施設奬勵ノ件
東京市麴町區內山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ漁村ノ疲弊ヲ匡救スル爲メ其
ノ生產、販賣竝ニ海外輸出ニ關スル共同施
設ノ普及ヲ圖ルハ當面ノ急務ナルニ拘ラ
ス政府支出ノ漁業共同施設助成費ハ其ノ金
額僅少ナルノミナラス奬勵範圍狭少ニ失
シ遺憾尠カラサルニ依リ奬勵施設ノ擴張
ヲ行フト共ニ之カ低利資金ノ供給ニ付テ
モ一層潤澤且ツ簡易ナラシメラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
海外出漁奬勵ノ件
東京市麴町區山內下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ我國民ノ漁業上卓逸セル技能
ヲ有スルコトハ旣住ノ實績ニ徵シ明ナル
モ從來移殖民ニ關スル施設ニシテ漁業ノ
經營開發ノ助成ヲ目的トスルモノ殆ト無
キハ我國現下ノ情勢ニ鑑ミ遺憾甚シキニ
依リ之カ奬勵助成ノ方法ヲ講シ以テ海外
出漁ノ發展ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ顧意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郎殿
意見書案
漁業組合ノ指導施設改善充實ノ件
東京市麴町區內山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ漁業組合ハ水產團體ノ根幹ニ
シテ漁村ノ改善發達ニ資スル唯一ノ機關
ナルコト尙ホ農村ニ於ケル產業組合ニ比
スヘキニ拘ラス其ノ指導奬勵ニ關シ產業
組合ニハ中央及ヒ地方ニ幾多ノ施設アル
ニ反シ漁業組合ニハ未タ斯ル施設ナキハ
漁村振興上甚タ遺憾ナルニ依リ各府縣ニ
國費支辨ノ指導者ヲ配置シ以テ之カ改善
充實ヲ期セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿
意見書案
機船底曳網漁業禁止區域取締ノ件
東京市麴町區内山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ大正十年農商務省令第三十一
號機船底曳網漁業取締規則ニ依ル禁止區
域ノ取締ハ遺憾ノ點多ク從テ種々ノ給爭
ヲ惹起シ逐日惡化ノ傾向アルハ遺憾ナル
ニ依リ監視船建造其ノ他適當ノ取締方法
ヲ講セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
囚テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付
候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=73
-
074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是等ノ請願モ請
願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ日程第一
ニ移リマス、國務大臣ノ演說ニ關スル件、
第二十三日、通〓順ニ依リマシテ奧平伯爵
ニ質疑ノ發言ヲ許シマス、奧平伯爵ノ登壇
ヲ望ミマス
〔伯爵奥平昌恭君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=76
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077・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 先般質疑ヲ致シマシテ
今日マデ日ヲ計算イタシマスト云フト、二
日カラ十一日ノ間約九日間ニ亙ッテ、私ハ質
問ヲ致ス機會ガゴザイマセヌデゴザリマシ
テ、其間前囘ノ質問ニ對シマシテ、恐ラク當
局大臣モ亦自分モ唯是ハ速記ニ依ッテノミ
暗記ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、當時ノ
語勢語氣、其他ニ付テノ記憶ト云フモノハ
全部私ノ頭ヲ去ヲテ居ル位デゴザイマスカ
ラシテ、恐ラク私ノ質問ヲ聽カレマシタル
各大臣モ、私ノ當時ノ語氣モ忘レラレ、意
ノアル所モ察シラレナイ狀態ニ陷クテ居ル
ノデアリヤシナイカト思フノデアリマス
就キマシテ只今質問ヲ致シタイト思ヒマス
ケレドモ、私ガ要求シテ居ル所ノ大臣ハ
一人モオ出デニナッテゴザイマセヌ、己ムヲ
得マセヌカラ、空谷ニ對シテ自ラハ聲ヲ發
シテ居ルヤウナ感カ致スノデアリマスガ、
何シロ會期切迫ノ折柄デアリマシテ、已ム
ヲ得ヌ事柄デゴザイマス、私ハ先般ノ質問
ニ對シマシテ大藏大臣ヨリ御答辯ヲ得テ居
ルノデゴザイマスケレドモ、其間ニ私ノマ
ダ了解ヲ致シテ居ナイ點ガ多々ゴザイマ
ス、ソレハ金ノ偏在ノ問題ニ關シマシテ
大藏大臣ハ決シテ我國デハ金ノ偏在ハシテ
居ラナイ斯樣ニ申シテ居ラレタノデゴザ
イマスケレドモ私ガ調査ヲ致シマシタ所
ニ依リマスト云フト一昨年六月現內閣成
立以來、昨年ノ十二月マデ約一ケ年半ノ間
ニ預金部ニ預入、振替貯金利子等デ入金
ヲ致シテ居リマス所ノ其金ト、之ニ貸付金
ノ囘收ヲ加ヘタモノヨリ、貸付トシテ以前
ヨリ豫定セラレマシタ低利資金ノ貸付、預
金ノ引出、利子拂等ヲ差引イテ、其外ニ融
通未濟額ヲ貸出スト致ウマシテモ、尙ホ預
金部ニハ約三億圓位ハ手許ニアルト思ハレ
ルノデゴザイマス其外ニ更ニ日銀ノ當座
預金ヲ引出シマシテ約一億圓バカリ政府
ノ御手許ニアル譯デアリマシテ、合計此四
億圓ニ對シマシテ、如何ナルコトヲナサレ
タカト申シマスレバ、外國證劵ノ買入ガ約
一億圓······一億五千万圓バカリノモノガゴ
ザイマシテ、其外ニ大藏證劵ニ對シマシテ
ハ一億圓バカリゴザイマス、ソレカラ國債
ノ買入レニ付キマシテモ約二億餘圓バカリ
アリマシテ、製鐵所其他政府部內ノ貸付金
ニ約五万圓バカリゴザイマス、以上ノモノ
ヲ差引キマシテモ、私ハマダ政府ノ御手許
ニハ相當ノ預金部ニハ相當ノ金額ガ私ハ
アルト思フノデアリマスガ、偖テ斯ノ如ク
シテ金ノ偏在ハナイト申シマスケレドモ、
一昨年ヨリ昨年ニ掛ケマシテハ此預金部ニ
入リマシタ金ト云フモノハ、恐ラク地方
ノ方ニハ出テ行ノテ居ナイ、斯樣ニ考ヘマス
ト云フト、私ハ大藏大臣ノ御答辯ハ一時ヲ
糊塗スル御答辯デアッテ、眞ニ地方ノ、殊ニ
農村ニ對シマシテノ還元ノ途ハ、ソレハ七
千万圓或ハ二千五百万圓等ヲ御出シニナッ
テ居リマスルガ、ソレヲ御出シニナリマシ
テモ尙且ツマダ私ハ預金部ニ對シテ相當ノ
金ガアル現內閣組閣以來相當ノ金ガアリ
マシテ、之ニ對シマシテモ如何ナル方法ヲ
以テ地方ニ還元サレルノデアルカ、其點ハ
私ハ分ラナイ、又當局ノ說明モゴザイマセヌ
カラ分リマセヌカラシテ、金ノ偏在ガナイ
ト云フナラバ此點ニ付テ十分ニ御說明ガ
ナケレバナラヌモノト思フノデアリマス、
又日本銀行ノ兌換劵ノ狀況ヲ見マスルニ、
昨年十月頃ヨリ增發サレテ居リマシテ十
二月二十七八日頃ガ最モ最高ニ達シテ居ノ
テ、當時ハ、十五億圓ヲ突破シテ居ッタノデ
アリマス、成程年末ニナリマスレバ相當多
額ニ是ハ達スルモノデアリマスルケレドモ、
一昨年モ十億圓ニ達シテ居ル、而シテ一昨
年ノ此當時ハ正貨準備ノ關係カラ申シマス
ト、卽チ正貨準備ハ十一億圓ニ近カッタノデ
アリマスガ、昨年末ハ僅カ八億圓ニ過ギナ
イ、卽チ制限外發行ガ非常ニ多カッタノデア
ラウト思フノデアリマス、斯樣ナ事柄ガ明
カデアリマシテ、又每年ノ例ニ依リマスル
ト年末ニ增發セラレタル所ノ此兌換劵ト云
フモノハ翌年ノ二月頃マデニハ相當ニ收縮
セラレルモノデアルケレドモ、本年ハ一月
二月ハ是ハ十億圓臺ニ復リマシタケレド
モ、此頃ニ至リマシテハ約十億四千万圓デ、
尙ホ一億圓バカリノ制限外發行ト云フモノ
ヲ致シテ居ルノデアリマス此收縮ノ狀況
ガ甚ダ少イノデアリマスルガ、其主モナル
原因ト申シマスルト云フト、私ガ玆ニ申上
ゲル迄モナク、昨年年末ニ行ハレタル所ノ
此「インフレーション」ノ關係カラ致シマシ
テ、斯樣ナ狀況ヲ示シテ居ハシナイカ、又
一面ニハ單名手形ハ一月二月頃ニハ偏在セ
ラレルモノデアリマスケレドモ、是モ書換
ニナッテ居ルモノガ相當ニ多イヤウニ思ハ
レルノデアリマス、其結果ハ所謂是モ「イン
フレーシヨン」トナッテ、中央ハ一時息ヲツ
キマシタケレドモ、地方ノ景氣ト云フモノ
ハ依然タルノミナラズ、事實ニ於キマシテ
ハ經濟界ヲ惡化セシメテ、不況ハ愈、深刻ニ
ナッテ參ッタノデアル、斯樣ニ私ハ思フノデ
アリマス、就キマシテ此現象ニ付テ政府
ハサウデナイ、ソンナコトハ無イ、斯樣ニ
仰セラレルノデアルカ否ヤヲ承リタイノデ
ゴザイマス、又過日私ガ質問ヲ致シマシタ
地方銀行ノ問題ニ付キマシテ質問ヲ致シマ
シタ中ニ、單名手形ト云フモノハ地方銀行
ニモ有ル、地方銀行ハ適當ナ放資物ガ無イ
ノデ都會ノ銀行或ハ金融業者等カラソレ
ヲ割引シテ居ルノデアルト云フヤウニ申サ
レタノデアリマスガ私ハ我國デ此不景氣
ガ世界的ノ影響ヲ受ケテ居ッテ、昨年ノ五月
頃ヨリ益、深刻ニナッテ來テ居ルヤウナ狀態
デズット參リマシタガ、偖此狀態ヲ持續シテ
參クタ結果如何ナルコトニナッタカト云フコ
トハ私ガ申上ゲマセヌデモ皆樣御承知ノ
通リデアリマスガ偖先日モ申上ゲマタシ
ル通リニ此單名手形ハ政府ハ現内閣ガ
組閣セラレルト云フト一昨年ノ八月頃ニ
之ヲ囘收スベシ、危險ナリ單名手形デア
ルカラ危險ナリ、囘收スベシト云フコトヲ
申サレタノデアリマスガ偖當時ハ先日モ
申上ゲマシタル通リ金解禁ノ發表ガゴザ
イマシテマダ間モナク、正貨ノ流出ハ左程
ニ急激ニ流出ヲシテ居ラナイ時節デアリマ
シテ銀行業者モ御承知ノ通リ此單名手形
ノ囘收ヲスル必要ヲ認メナカッタ時ニ於
テ現內閣ハ此單名手形ヲ至急囘收スベシ
ト云フコトヲ申サレマシテ、當業者モ現內
閣ノ御指圖デアリマスカラシテ、ソレニ從ッ
テポツ〓〓囘收シテ參ッタノデアリマスケ
レドモ、何シロ金解禁ノ結果、當時ハ
現內閣ノ大藏大臣ヲ始メ皆サンガ決シテ
金解禁ニ依ッテ金ノ流出ハナイト云フコト
ヲ申サレテ居リマスケレドモ、事實ニ於テ
ハ昨年中ニ於テ約三億圓ノ正貨ガ流出イタ
シタヤウナ次第デアリマシテ、段々正貨ガ
流出シテ、兌換劵ニ關係ガアリマスノデ、
各銀行ノ手許ガ自然ニ不如意ニナッテ參リ
マシテ、其爲ニ政府ノ御指圖ニ從ハナクテ
モ、銀行ハ已ムヲ得ズ此單名手形ヲ囘收シ
ナケレバナラヌト云フ、斯樣ナ狀態ニナリ
マシテ一時金融界ノ狀態ト云フモノハ此
爲ニ非常ニ惡化セラレタノデアリマス、ソ
レニ付キマシテ現內閣デハ組閣以來直ニ之
ヲ回收スベシト、其內命ヲ下サレテ、而シ
テ尙ホ昨年ノ八月ニナッテ、マア之ニ手心ヲ
加ヘル斯樣ナ御發表ニ相成シタノデゴザイ
マスルガ其間如何ナル經濟上ノ事情狀態
ニ付テ變化ガゴザイマシタラウカ、之ニ對
シテ手心ヲ加ヘナケレバ金融機關ハ破綻ヲ
スル斯樣ナ狀態デゴザイマシタノデゴザ
イマセウカ、之ヲ承リタイノデゴザイマス、
就キマシテ斯樣ナ狀態デゴザイマスルカラ
シテ、地方ノ銀行ハ此煽リヲ喰ノテ金融難
ニ陷ルト云フコトハ當然デアル、ソレノミ
ナラズ中央ニ於キマシテモ事業會社ハ共
事業會社ノ事業ハ不振デアッテ、製造シタモ
ノガ賣レナイ、又採算ガ立タナイ、借入金ハ
出來ナイ、社債ノ募集ハ勿論出來ナイ、斯
樣ナ狀態デアリマシテ、昨年ノ八九月頃事
業會社ト云フモノハ非常ナ困難ナ破目ニ
陷ッタノデゴザイマス、デアリマスルカラシ
テ此點カラ見マシテモ私ハ決シテ昨年ノ十
月以來我國ノ經濟界ガ安定シタノデハナ
イ、却ッテ單名手形ノ囘收其他總テ緊縮政
策、有ラユルコトニ依ッテ、其外ニマダ世界ノ
狀態ニ於キマシテモ決シテ安定ハシテ居ナ
イ、居ナイト云フ此事情ガアルノデアリマ
ス、就キマシテ私ガ御尋ネシタイノハ、眞
ニ十月以來稍、安定シタノデアルガ、「イン
フレーシヨン」ノ結果、ソレハ二三金融業
者ノ方ハ安定シタカモ知レヌケレドモ此
「インフレーシヨン」ノ結果ト云フモノハ果
シテ地方ニ好影響ヲ與ヘテ居ルカ、私ハ頗
ル疑問ニ思フ者デゴザイマス、就キマシテ
尙ホ巾上ゲテイノハ斯樣ナ次第デゴザイ
マス先日此議場ニ於キマシテ前田子爵
ガ我國ノ人心ガ安定シテ居ルト云フコトニ
付キマシテ政府ノ施政方針ノ演說ノ中ニ
ゴザイマシタノデ、前田君ガ其點縷々御質
問申サレマシタ所、總理大臣臨時代理ハ何
ト申サレマシタ昨年ノ五月頃ヨリシテ
我國ニハ諸外國ノ經濟上ノ悲報ガ頻々トシ
テ遣入ッテ參ッタノデアルケレドモ、ソレモ
十月カラ參ラヌヤウニナッタト云フコトノ
御答辯デアリマシタガ、偖私ハ取調ベマシ
タル所ニ依リマスルト云フト決シテ此悲
觀材料ハ無イヂヤナイヽ大イニ有ル、諸外
國ノ〓況ヲ調ベテ見マストゴザイマスチ
ヨット申上ゲマスレバ斯樣ナ狀態デゴザイ
マス、例ヲ物價ニ取シテ見マスルガ、是ハ恐
ラクハ現內閣ト致シマシテハ、大藏大臣ガ
御採用ニナッテ居ルノガ「エコノミスト」ノ
數字デゴザイマセウケレドモ其「エコノミ
スト」ノ數字ヲ取シテ見マスルト、斯樣ナコ
トニ相成ッテ居ル、昨年ノ十月ヨリ今年ノ一
月迄ノ間ニ世界ノ物價ガ如何ニ下落シタ
カ、日本ハ昨年ノ十月ハ一三〇·九デアッタ
ガ、今年ニチリマスルト云フト一月ガ一二
六其下リ方ハ四·九デアリマス、英國ハド
ウデアルト云フト一〇九·三、今年ノ一月ガ
一〇〇·一卽チ其下リ方ハ九·二下ッテ居
ル米國ハドウデアルト言ヘバ、十月ガ一
一五·五デアッタモノガ、今年ノ一月ハ一〇
五·九デアッテ、其下リ方ハ九·六デアリマ
ス獨逸ハ昨年ノ一年間ニ於テハドウ云フ
下リ方ヲシテ居ルカト言ヘバ一割一分ノ
下リ方ヲシテ居ッテ、今申シマシタル物價指
數ニ依ッテノ此下リ方ヲ申シマスレバドウ
デアルト言ヘバ、マダ〓〓日本ノ物價指數
ト云フモノハ、戰前ニ比シマシテ二割六分
マダ高イノデアリマス、斯樣ナ狀態デアリ
マシテ諸外國デハドシ〓〓ト物價ガ下ッテ
參ッチ居ル、物價ガ下ルト云フコトハ決シテ
好景氣ノ現象デハアリマセヌ、又經濟界ガ
安定シタ所ノ現象デハアリマセヌ、斯樣ニ
考ヘマスト云フト此物價指數ヲ考ヘマシ
テモ、マダ海外ニハ相當ニ私ハ悲觀材料ハ
アルモノト思フ、ソレカラ之ヲ除キマシテ
モ、昨年ノ十月以降ニ世界ニ於ケル所ノ貿
易ハ、ドウ云フ趨勢ヲ取ッタカト申シマスト
云フト英國ハ輸出入平均ヲ致シマシテ
二割二三分ノ減少ヲシテ居ル、米國ハ三
割ノ減少ヲシテ居ル、獨逸ハ一割ノ減少
デアリマス、却ッテ此現象ニ妙ナコトガア
ル金解禁ヲシナイ所ノ瑞典ダトカ、諾威
ト云フモノハ輸入ガ減ジテ輸出ガ增シテ
居ルノデアリマス、斯ノ如キヲ見マスト云
フト、マダ〓〓ドウモ世界ノ强國ノ英米ヲ
考ヘマシテモ······富裕國ノ英米ヲ考ヘマシ
テモ矢張リ貿易ガ段々減ッテ來テ居ル、斯
樣ナ現象ガ現ハレテ居ルノデアリマシ
テ且ツ又失業者ニ致シマシテモ、斯ノ如
キ事情デアリマス、英國ノ一月ノ統計ヲ見
マヌト云フト、二百六十万人アッテ、獨逸ハ一
月十二日ノ日本ニ於ケル所ノ「ラヂオ」ノ放
送ニ依ルト云フト、失業者ガ四百七十万人
アルノデアリマス、米國ハ五百万人アルト
云フコトデアリマス佛國ハ少イノデアリ
マス二万人アッタモノガ、是ハ一万人殖エ
タ是ハ恐ラク問題ニナリマスマイガ、兎
モ角モ英、米、獨此國ノ夫業者ノ狀態ヲ
見マシテモ私ハ海外ニハ十分ノ悲觀材料
ガアル是ガ日本ニ來テ居ナイ譯ハナイ、
斯樣ニ考ヘルノデアリマス、ソコデ申上ゲ
タイノハ經濟界ノ安定ニハドウシテモ關
稅競爭ト云フモノヲ排除シナケレバナラ
又、然ルニ世界各國ニ於テハマダ此關稅競
爭ト云フモノヲ止メテハ居ナイ、閉塞サレ
テハナイ、協定ハ佛蘭西ノ「ブリアン」氏ガ
頻リニ骨ヲ折ッテ居ルノデアルケレドモ、マダ
此關稅協定ノ成立ト云フモノハ困難チ狀態
デアル、是モ亦悲觀材料デアルト言ハナケレ
バナラヌ、ソコデ今一ツ申上ゲタイノハ
佛蘭西ニハ昨年ノ十一月ニ銀行ノ恐慌ガゴ
ザイマシテ、其結果內閣ノ更迭ヲシタ當時
ニ於テ、其銀行ノ重役ガ議會ニ引張リ出サ
レテ色とノ質問ヲ受ケテ居ルノデゴザイマ
ス、尙ホ英、米、獨ノ新聞雜誌等ニ付キマ
シテ色ミ話モ聞キ、自分モ多少ハ讀ンデ見
マシタ所、世界ノ景氣ノ安定ト云フモノハ
中ミ困難デアル、近キ將來ニ於テハマダマ
ダ危險デアルト云フコトヲ此英、米、獨ノ
雜誌ハ皆書イテ居ル、然ルニ日本バカリガ
稍、安定シタト云フ仰セデゴザイマスルガ、
何ヲ捉へテ稍〓安定シタトサレルノデアル
カ我國ノ不景氣ハ世界ノ大不景氣ノ餘波
デアルト云フコトヲ屢〓此壇上ニ於テ說明
サレテ居ルノデゴザイマスガ、若シ其通リ
デアルナラバ今日斯ノ如ク私ガ申シマシ
テモマダ尙且ツ我國ハ他ノ種類ノ材料
ニ依ッテ安定ヲシタノデアルトカ、「インフ
レーション」以外ニ、他ニ何カノ政策ニ
依ッテ安定ヲシタノデアルカト云フコトヲ
承ハリタイノデゴザイマス、ソコデ伺ヒタイ
ノハ種々ゴザイマスルガ、私ハ國内ノ事情ニ
至リマシテモマグ安心ヲスルコトハ出來ナ
イノヂヤナイカ、例ヘバ主要產業デアル所
ノモノノ生產ノ制限ノ狀態ヲ見マシテモ、
例ヘバ「セメント」ノ如キモ五割硫安ノ如
キモ五割······全部ヲ通ジマシタナラバ斯
ノ如キ數字ハ出マスマイケレドモ兎モ角
モ世界ノ此生產制限ニ比較イタシマスト云
フト、日本ノ生產制限ト云フモノハ非常ニ
數字ニ於テ巨額ニ上ボッテ居ル、割合ガ巨額
ニ上ボッテ居ルノデゴザイマス、獨逸ハ千九
百二十八年カラ千九百三十年ト比シマシテ、
此十月ニハ一割二分ノ減退ヲ致シテ居ルノ
デゴザイマス、米國モ僅ニ一割近クノモノ
デゴザイマス、佛國、瑞典ハ却ッテ是ハ生產
制限ニ非ズシテ增加ヲシテ居ルノデアル
日本ト致シマシテハ全體ノ數字ヲ私ハ今手
許ニ持〓テ居リマセヌケレドモ、私ガ申上ゲ
マシク所ノ「セメント」モ五割三分二厘バカ
リノ制限デアッテ、紡績モ三割四分バカリノ
生產制限デゴザイマス、絹絲紡績ニ致シマ
シテモ三割五分バカリノ生產制限デゴザイ
マス、只今申シマシタ通リニ過燐酸肥料ニ
致ウマシテモ、是モ五割ノ生產制限ヲ致シ
テ居ルヤウナ時節デゴザイマシテ、斯ノ如
キ狀態ガ、是ガ雲散霧消シナイ限リハ私
ハ我國ノ財界ノ安定ト云フコトヲ標榜····
說明ヲナサルニ村キマシテハ、甚ダ其御說
明ニ付テノ論據ガ薄弱デハナイカト私ハ思
フノデゴザイマス、成程織物ニ付テ大藏大
臣ハ我國ノ織物ハ······織物地帶ハナカナ
カ昨年ノ暮アタリハ忙ガシカッタ、職工等モ
失業者ガナカッタ、勞働者等モ失業者ガナ
カッタト云フコトヲ仰セラレマスケレドモ、
私ガ調ベマシタ所ニ依リマスト云フト織
物地帶ハ三月ニハ三週間モ、マダ全體休業
ヲ致シテ居ルヤウナ次第デゴザイマス砂
糖ニ致シマシテモ「カルテル」ノ結果、市價
ヲ維持シタノデゴザイマスケレドモ、是モ
私ハ昨今ハ矢張リ下落ノ途ヲ辿クテ居ル斯
樣ニ思フノデゴザイマシテ、我國ノ表面ニ
現ハレタ所ノ經濟上ノ現象ヲ見マシテモ、
マダ〓〓御安心ニナッテ此議政壇土デ稍、と
昨年ノ十月カラ安定ヲシタナドト仰セラレ
ルノハ少シク御早クハナイノデアルカ、
殊ニ金融機關ノ狀態ヲ見マスト云フト是
亦頗ル憂慮ニ堪ヘナイモノガアルノデゴザ
イマス大藏大臣ハ援助ヲシタ、努力ヲシ
タノデアルケレドモ、斯ノ如ク二十數行モ
閉店ヲ致シテシマッタ、斯樣ニ仰セラレルノ
デゴザイマスケレドモ、私ハ之ニ對シテ大
藏大臣ハ如何ナル援助ヲシ、御努力ヲナスソ
タノデアルカ分ラヌ、ソレニ付テノ御說明
ガチカッタ、故ニ私ハ之ニ付キマシテ內部ノ
事情ヲ申上ゲルコトハ避ケマスケレドモ、
世間ニ現レテ居ルヨリモ此開店休業銀行、
全タノ休業銀行ノ數ニ付キマシテモ申上ゲ
ルコトハ差控ヘマスルガ、其縣ダケヲ申上
ゲマシテモ相當ノ府縣ニ亙ッテ居ルノデゴ
ザイマス、二府十四縣ニ亙ッテ休業銀行ガ續
續ト勃發シテ參ッタノデゴザイマシテ、今年
ニナリマシテモ一月以來二月マデノ間ニ起ッ
タ所ノ休業銀行ノ數字ハ七ツバカリアルノ
デゴザイマシテ、斯ノ如キ狀態ヲ以テ考ヘ
マシテモ私ハ何ヲ捉ヘテ昭和二年以來ノ
金融梗塞ニ依ル所ノ整理ヲナサッテ、銀行ガ
安定シタト云フコトガ言ハレルノヂアル
カ成程、中央ノ銀行ハ今ノ所ハ危險ハナ
イカモ知レヌケレドモ、地方ニ例ヲ取シテ考
ヘマスルト云フト、甚ダ不安全千萬デアル、
斯ク考ヘマスルト云フト私ハ過日此壇上
ユ於テ述べラレマシタ、昨年十月以來我國
ノ財界ハ稍〓安定シタト云フコトニ付キマ
シテノ御說明ト云フモノハ意義ラナサナ
イモノデアルト思フノデアリマス農村ノ
問題ニ付キマシテモ過日私ノ實間ニ對シテ
農林大藏兩大臣ヨリ、ソレゾレ御答播
ヲ得マシタガ尙ホ未ダ了解ニ苦シム所ガ
アルノデアリマス、更ニ御質〓ヲ數サウト
思フデゴザイマスルガ、第一ニ町田農林大
臣ノ御答辯ニ依リマスレバ、農村ノ現狀ユ
付テハ日夜憂慮シテ居ルガ、其對策ニ付テ
ハ苦心セラレテ居ル、此事柄ニ付キマシテ
ハ私ハ十分ニ諒承ヲ致シマスルガ、旣ニ行
ハレテ居ル所ノ此應急對策ニ致ツマシテモヽ
私ハ全部成功トハ申シニタイ文失禮ナ言
ヒ分デアリマスケレドモ、或ハ失敗ノ列擧
トデモ申スベキモノデハアルマイカト思フ
ノデゴザイマス、御苦勞ノ段ハ何等ノ效果
モ擧ゲテ居ナイヤウエ私ハ考ヘルモノデゴ
ザイマス、扨テ農村ノ收入ノコトニ付キマ
シテ私ガ申シマシタルコトニ付テハ、成程、
生活費ヲ引カナケレバイカヌ、斯樣ニ申サ
レルノデアリマスルガ、農村ノ生活費ノ大
部分ト云フモノハ所謂自給自足デアル、其
自給自足ニ依ル所ノ結果ニ依リマシテ、結
果ヲ差引キマシテモ尙且ツ市場ニ賣出
シタモノニ付テノ減少額ガ十二億圓バカリ
アルト云フコトヲ申上ゲタノデゴザイマシ
テ之ニ付キマシテハ私ハ百步ヲ讓リマシ
テモ此數字ニ付テハ餘リ閣違ヒナイモノデ
ハナイカ斯樣ニ考ヘテ居ルモノデゴザイ
マスソレカラ此農村ノ慘狀カラ致シマシ
テ此點カラ見テモ私ハ人心ノ安定ハ得テ
居ナイ得テハ居ナイヂヤナイカト云フコ
トヲ申スモノデアリマス、實ハ此點ニ付キ
マシテ私ハ申スノヲ差控ヘテ居タノデゴ
ザイマスルケレドモ過日町田農相ノ御言
葉ニ依リマスルト農村ノ疲弊困應イタシマ
シタ結果、思想問題ニモ及ビハシナイ
カト云フコトヲ憂慮シテ根本策ヲ講
ジタト申サレルノデゴザイマスルケレ
ドモ扨テ或縣ニ付キマシテ私ガ實地調査
イタシマシタル所ニ依リマスルト云フト
小作地二十四町歩ヲ持ヶテ居ノタ、此人ハ餘
リニ小作爭議ガ激シイノデ、其小作地ヲ遂
ニ自分ノ住ンデ居ル所ノ字ニ寄附セムト云
プコトヲ申出シタ位デゴザイマス、又小作
爭議ノ宣傳「ビラ」等ガ此處ニ澤山ゴザイマ
スルガ、之ニ付テ申上ゲマスルト云フト
恐ラク是ハ祕密會ニナリマスルカラ
是ハ止メマシテ、私ガ例ヲ取シテ申シマ
シテモ東都程遠カラザル所ノ、コレカ
ラコチラニ當ル所ノ縣ニ於キマシテ
毛、殆ド此小作爭議ト云フモノハ經濟
鬪爭ニ非ズシテ惡化セル所ノ思想ガソレ
ニ侵入シテ居ル、水ガ蟻穴ヨリ千里ノ長堤
ヲ壞ス底ノ宣傳ヲ致シテ居ルノデゴザイマ
シテ、其結果、或地主ノ家ハ彼等ニ依タテ暴
力ヲ以テ占領セラレタ、占領シタ所ノ其家
ノ中デハ何ヲシテ居ルカト云ヘバ、豚屋ヲ
開イテ、其中ニハ醜業婦ガ居テ小作爭議ニ
關係シタ者ノミニ對シテ歡迎ヲ致シテ居ル
ト云フヤウナ狀態デアル、又其縣ニ於テハ
彼等ノ持。ツテ居ル總テノ鍋釜ノ類、農具其他
總テ一切ノ物ハ法人組織ニシテシマッテ差
押ヘガ來テモソレニ對シテ差押へヲシテ
モ效果ノ無イヤウニシテ居ルヤウナ狀態デ
アリマス、斯ノ如キ狀態デアリマシテ今ヤ
農村ノ大地主ト云ヒ、中地主ト云ヒ、小地
主ト云ヒ、是等ガ激烈ナル所ノ此小作爭議、
此襲擊ヲ受ケナイト云フコトハナクナッテ
居ル是モ農相ガ言ハレル所ノ、及ビハシ
ナイカト云フノデナイ、既ニ及ンデ、激烈
ナル所ノ狀態ヲ示シテ居ル所モ茲ニ澤山ア
ルノデゴザイマスガソレハ申シマセヌ
故ニ農相ノ申サレル、及ビハシナイカヂヤ
ナイ、及ンデシマッタ所ノ後ノ結末ヲ如何ニ
シテ御付ケニナルカ、之ニ對シテ承リタイ
ノデゴサイマス又一ツハ過日此議場ニ於
キマシテ湯地君カラ御尋ネニナッテ居ル所
ノ此應急對策ト云フモノガ果シテ適當デア
リヤ否ヤ、且又其應意對策ガ昨年ノ特別議
會ニ於テ濱口總理大臣ガ申サレマシタル所
謂積極政策モヤラヌコトモナイ、場合ニ依。フ
テハヤラヌコトモナイ、其所謂積極政策ノ
中ニ這入ルノデアルカ、又根本政策ノ問題
ト致シマシテハドウモヽ私ハ速記デ承リマ
シタガ、其中ニハ減稅ト云フコトガ這入ッテ
居ルノデゴザイマス減稅ト云フコトニ付
キマシテハ是ハ軍縮條約ニ依ル所ノ其妹
源ヲ以テノミシテ尙目ツ足レリトスルノデ
アリマスルカ、其點ヲ承リタイノデゴザイ
V やろ就キマシテ一言附加ヘタイノハ、斯
樣ナ次第デゴザイマス先月十九日ニ恐レ
多クモ陛下ノ御召ニ依リマシテ農林大臣
ハ參內サレタノデゴザイマスルガ、其參内
ニ對シマシテ如何ナル勅答ヲサレタカ、其
事ニ付キマシテハ私ハ申上ゲルノデハゴ
ザイマセヌケレドモ、恐レ多クモ御下間遊
バサレマシタト云フ此御恩情ニ對シテ、此議
政壇上デ私ニ對シテ御答辯ニナリマシタア
レダケノ林料デ、輔弼ノ責任ノ上ニ於キマ
シテ完全スル所ガアルカ、少シモ是以上ニ
何等ノ施設ヲシナクテモ宜シイノデアル
カ、斯樣ノ點ニ付キマシテドウゾ私ノ得
心ノ行タヤウニ御說明、御答辯アラムコト
ヲ切エ希望スル次第デゴザイマス、此以上
質問ヲ致シマスルト云フト餘リ長クナリマ
スルカラ、私ハ只今ノ御答辯ヲ承リマシテ、
其答辯ガ滿足デアルカ、アルナシニ拘ラズ
餘リ長ク此壇上ヲ占領スルコトニ付テハ恐
縮デゴザイマスルカラ、私ハ一應ノ御答辯
ヲ得マシテカラ質問ヲ致サナイ積リデゴザ
イマス、ドウゾ私ノ質問ニ對シマシテモ了
解ノ行クヤウニ江木鐵道大臣ヨリドウ
ゾ御傳達アラムコトヲ切ニ希望スル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 八田嘉明君ノ登
壇ヲ望ミマス
〔八田嘉明君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=78
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079・八田嘉明
○八田嘉明君 私ハ國務大臣ノ御演說ニ對
シマシテ種々御尋ネヲ申上ゲタイ點ガアッ
タノデアリマスルケレドモ、既ニ私ノ順番
ガ段々遲レマシテ、漸ク今日ニ相成リマシ
テ旣ニ會期モ非常ニ切迫イタシテ居リマ
スルノデ、又他ノ委員會ニ於キマシテ幸ヒ
エ御尋ネスル機會モアッタノデアリマスル
カラ、極メテ少イ點ニ付キマシテ··
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
國務大臣ノ御答辯ヲ得タイト考ヘルノデア
リマス、私ハ只今奥平伯爵ヨリモ御述べニ
ナリマシタル通リ、此金解禁後ノ對策、殊
ニ財界ニ對スル應急對策トデモ申シマスル
コトニ付キマシテ、井上大藏大臣ニ御尋ネ申
上ゲタイト考ヘテ居リマシタガ、本日ハ玆
ニ御出席ガアリマセヌノデ、私ハ其對策ノ
中ノ一ツト致シマシテ鐵道大臣ニ御伺ヒ致
シタイノデアリマス、質問ノ要點ハ第
ニハ昨年ノ金解禁斷行ニ當ッテ當然打擊ヲ
豫想セラルベキ筈デアッタ所ノ我ガ產業界
ニ對シテ鐵道政策ニ關スル限リニ於キマ
シテ鐵道大臣ハ金解禁ノ事前ニ於テ如何
ナル準備ヲ爲サレマシタカ、又事後ニ如何
ナル貢獻ヲ爲サレタカト云フコトガ一ツノ
御尋ネデアリマス、第二ノ御尋ネハ現在此
眼ノ前ニ展開イタシテ居サマスル所ノ、我
ガ國ノ財界未曾有ノ不況ニ對シマシテ、鐵
道大臣ハ是ガ救濟ノ爲ニ如何ナル應急對策
ヲ御持チニナッテ居ラルルカ、此二ツヲ御伺
ヒ致シタイノデアリマス、此事ニ付キマシ
テ私ハ此御尋ネノ趣旨ヲ極ク簡單ニ中上ゲ
タイト考ヘルノデアリマス政府ハ昨年金
解禁ヲ斷行セラルニ當リマシテ、是ニ先
チマシテ金解禁ノ時期ハ到來イタシタ、
而シテ國民ニ向ッテ之ヲ聲明セラレ、又其準
備ガ諸般ノ用意ガ總テ成レリト致サレマ
シテ、之ヲ昨年ノ一月ニ斷行セラレタノデ
アリマス當時世間ノ識者ノ間ニハ、或ハ
時期尙ホ到ラズ、又準備ガ未ダ全カラズシ
テ、是ニ危惧ノ念ヲ抱イタ人モ相當ニアッタ
ノデアリマシタガ、併ナガラ國民ノ大多數
ハ此政府ノ聲明ニ信賴ヲ致シマシテ、全ク
時期ハ到來イタシタルモノナリ、又總テノ
準備ハ悉ク整ッタモノト信ジマシテ、政府ノ
爲ス所ニ信賴ヲ致シマシテ、之ニ贊成ヲ致
シタル者ガ頗ル多カッタコトモ亦申ス迄モ
ナイノデアリマス、然ルニ結果ハ如何デア
リマシタデセウカ、今日其結果カラ見マス
ルト云フト、我國ハ未曾有ノ經濟難ニ逢著
イタシマシテ、政府御自身モ殆ド其歲入難
ニ苦シマレ、財政上非常ニ苦シキ御立場ニ
アルノデアリマス、又國民モ殆ド言葉ヲ
强メテ申シマスレバ萬民生色ナシトデモ
申スヤウナ有樣トモ考へラレルノデアリマ
ス、此儘推移イタシマシタナラバ或ハ思
想上ニ於キマシテモ、如何ナルコトニ相成
リマスルカト云フコトヲ豫メ斷言スルコト
ノ出來ナイヤウナ次第デアルト、私ハ考ヘ
マスルト云フト、果シテ其時期ガ宜カッタデ
アリマセウカ、或ハ又其準備ガ總テノ方面
ニ於テ整ヲテ居ラレタデアリマセウカヲ疑
ハザルヲ得ナイノデアリマス、其時期ガ少
ク共結果カラ見テ適當デナカッタデハナイ
是ハ先頃來井上大藏大臣1
カト云フコトハ
ガ此議場ニ於カレテ、他ノ諸君ヨリノ御尋
ネニ對シマシテ、世界ノ不況ガ斯クマデ深
刻ニ相成ラウトハ當時豫期シナカッタ、不明
ト言ヘバ或ハ不明カモ知レヌト云フヤウナ
意味ノ御答ガアリマシタコトニ考ヘマスル
ト、或ハ結果カラ見テ其時期ガ適當デナカッ
タデハナイカト考ヘルノデアリマス、又其
準備ガ總テ整ッテ居ノタデアリマセウカ、此
コトニ付キマシテハ、色ミノ御意見モアル
ト考ヘマスケレドモ、少ク共事前ニ於テハ
其準備ガ全クナカッタデハナカラウカ、卽
チ金解禁ニ對シマスル直接ノ準備デアリマ
ス所ノ爲替關係其他ニ於キマシテハ政府
ハ相當ノ準備ヲセラレタト考ヘマスケレ
ドモ金解禁後ニ於テ當然受クベキ所ノ我
國ノ產業界ニ對シマスル所ノ準備ヲ、果
シテ十分ニナサレテアッタデアリマセウ
カ、昨年ノ四月ノ特別議會ノ劈頭ニ於キマ
シテ、濱口首相ハ其施政方針ノ御演說ノ中
ニ「金解禁後ニ於ケル財界善後ノ對策ト
致シマシテハ、先ヅ產業合理化運動ヲ、
一層徹底セシムルノ必要ヲ認メマシテ、商
工省內ニ之ガ實行機關ヲ設クルノ計畫ヲ立
テ次ニ貿易外ノ受取勘定ノ增加ヲ圖ル一
助トシテ、海外ノ觀光客ヲ日本ニ誘致スル
爲メ、鐵道省内ニ之ガ實行機關ヲ置クコト
ト致シ尙ホ國產品愛用ノ氣風ヲ皷吹シ
以テ國內產業ノ振興ヲ圖ル爲メ、竝ニ輸出
補償制度ヲ設ケテ我國商品ノ海外進出ヲ容
易ナラシムル爲メ、ソレ〓〓相當ノ追加豫
算ヲ要求イタシテアリマス」、斯ウ云フ風ニ
御述ベニナッテ居ルノデアリマス、卽チ是ガ
所謂昨年ノ金解禁後ニ於ケル所ノ政府ノ
所謂金解禁後ノ對策デアリマス、是等ノ對
策ヲ拜見イタシマスルト、勿論是ハ結構ナ
ル對策デアルノデアリマス併ナガラ是ガ
事前ニ於テノコトデアリマスレバ其效果
ハ私ハ相當顯著ナルモノガアッタカト考へ
ルノデアリマスルガ、如何ニセン金解禁ヲ
聲明セラレテ後半年、而モ現内閣ガ成立セ
ラレマシテカラ一年有餘ノ後ニ於カレマシ
テ、帝國議會ニ此準備ノ而モ其經費ヲ御要
求ニナルト云フコトデハ、私ハ是ハ少シク
緩漫デハナイノデアラウカト考ヘルノデア
リマス、此コトニ付キマシテハ當時御承知
ノ通リ特別ニ議會ヲ開カレテ而シテ是ハ國
民ノ意思ニ問ウテ而シテ有ラユル對策ヲ講
ゼラレルコトガ至當デハナイカト云フ議論
ガ其當時アッタノデアリマスガ、是ノ議論ハ
別ト致シマシテ、私ハ少クトモ解禁前ニ於
テハ財界ニ對スル卽チ產業界ニ對スル準備
ハ缺イテ居ラレタヤウニ考ヘルノデアリマ
ス、而シテ若シ其時期ガ適當デナク又其準
備ガ十分デナカッタト致シマシタナラバ
或ハ今日ノ我國ノ財界不況ノ一ツノ可ナリ
大キナ原因ハ此事ニアルノデハナイダラウ
カト云フ疑ヲ持ツノデアリマス、之ニ對シ
マシテ先般來、井上大藏大臣ハ是ハサウ云
フコトモアルデアラウ、併シ主トシテ今日
ノ不況ハ世界ノ不況デアル、不況ノ影響デ
アルト仰セラレテ居ルノデアリマス私モ
ソレハ世界ノ不況ガ相當影響イタシテ居ル
ト云フコトヲ考ヘルノデアリマスルガ
方ニ於キマシテハ只今申上ゲマシタルヤウ
ナ次第デアリマスルカラ、又此方面ノ影響
モ相當ニアルノデハナカラウカト考ヘルノ
デアリマス、而シテ假ニ此問題ハ別ト致シ
マシテモ、諸般ノ準備ノモノノ中ニ見逃ス
コトノ出來マセヌノハ鐵道政策デアリマ
ス、申ス迄モナク鐵道、一國ノ鐵道ハ其國
ノ產業ノ盛衰ノ上ニ重大ナル關係ヲ持ッテ
居ルコトハ明カデアリマスルノデアリマス
ルカラ、我ガ帝國ノ鐵道卽チ今日デハ約九
千哩ノ鐵道ヲ以テ三十三億圓ノ資本ヲ以
テ全國ニ交通網ヲ張ッテ居リマスル所ノ此
鐵道ヲ主宰サレル所ノ鐵道大臣ニ於カレマ
シテハ此金解禁ノ前ニ於テ又其後ニ於テ
相當他日ヲ豫想セラルベキ所ノ我國ノ財界
ニ對シマシテ相當ノ御準備ガアッタ筈デア
ルト考ヘルノデアリマス、又其影響ガ不
況ノ原因ガ世界不況ノ爲デアルト致シマ
シテモ、今日國民ハ非常ナ經濟難ニ遭遇イ
タシテ居リマスルカラ、此目前ノ財界ノ困
難ヲ救フガ爲ニ應急ノ對策ヲ鐵道ノ政策ニ
於テ御考ヘニナッテ居ルト考ヘルノデアリ
マス、私ハ此意味ニ於キマシテ、鐵道大臣ニ
今ノ御尋ヲ致スノデアリマス、鐵道大臣ニ
於カレマシテハ昨年ノ四月所謂鐵道貨物運
賃ノ割引ヲ致シタト仰セラレルカモ知レマ
セヌ、是ハ勿論結構ナコトデアルノデアリ
マヽ、併ナガラ此昨年四月ノ鐵道貨物ノ運
賃割引ト云フコトハ大正十四五年ノ頃カ
ラノ問題デアリマシテ、卽チ大正九年頃ノ
マダ我國ノ物價勞銀ノ安定イタシマセヌ其
時ノ、ソレ迄ノ貨物運賃ノ制度ヲ改革シナ
ケレバナラヌト云フノデ、大正十四年十五
年アタリカラ〓究イタシテ參クテ昨年ノ四
月ニ至ッテ是ガ發表セラレタモノデアリマ
シテ、是ハ結構ナル計畫デアリマスケレドモ、
金解禁ノ所謂善後策トハ關係ガナイノデ
アリマス又其場合ニ當リマシテ一箇年
約六百五十万圓ノ割引ヲ行ックト仰セラレ
ルカモ知レマセヌガ、是ハ成程肥料ノ運賃
割引ヲ約百二十万圓ナサッタ、或ハ石炭、或
ハ石灰、其他ノ貨物ノ運賃ヲ產業振興上ノ
見地カラシテ百何万圓カ割引スルコトニ致
シタ、或ハ又社會政策上ノ見地カラ日常ノ
生活品ヲ百万圓割引イタ、或ハ又輸出品ニ
對シマスル運賃割戾ノ制ヲ設ケテ其割合ヲ
增加イタシテ百万圓近クヲ割引イタスコト
ニ致シタ斯ウ云フコトヲ仰セラレルカモ
知レヌノデアリマスルガ、是ハ今日ノ不況、
財界ノ此狀況ニ照シマシテハ如何カト考ヘ
ルノデアリマス、勿論無キニ優ルコト萬々
デアリマスルケレドモ、旣ニ今日井上大藏大
臣ガ御述ベニナッテ居リマスル通リ物價ハ
二割七分下ッテ居ル、又鐵道大臣モ過般仰セ
ラレマシタケレドモ、鐵道ノ營業費ニ於テ
一箇年千五百万圓ノ物件費ヲ下ゲルコトガ
出來タト仰セラレテ居リマスル、例ヘバ石
炭ニ致シマシテモ一箇年三百五十万噸ノ石
炭ヲ使フト致シマシテ、是ガ一圓五十錢下
レバ五百五十万圓營業費ニ於テ節約ガ出來
ル筈デアリマス、又枕木ニ致シマシテモ假
ニ之ヲ三百万挺ト致シマシテモ三十錢一挺
デ下リマシテモ是カ百万圓ニナル、斯樣ナ
モノヲ集メマスルト云フト中ミ······千五百
方圓位ナ營業費ノ節約ガ出來ルト考ヘルノ
デアリマス、斯樣ニ考ヘマスルト云フト一
箇年六百五十万圓ノ割引ト云フモノハ平生
ナラバ是ハ結構ナルコトデアルト考ヘマス
ルケレドモ、今日ノ此財界不況國民非常ナ
ル困難ナル立場ニ於キマシテハ何等カ是以
上ノ或ルモノヲ國民ハモット效驗ノアル效
果ノアル所ノ適切有效ナル對策ヲ求メテ已
マヌカノヤウニ私ハ考へルノデアリマス
而シテ昨年ノ四月以前ニ於キマシテモ我國
ニ於テハ一箇年約千三百万圓ノ特定割引ヲ
致シテ居ッタノデアリマス、卽チ社會政策的
見地若クハ產業振興ノ上カラ普通ノ表ニ揭
ゲテ居リマスル所ノ其運賃以下ニ、千三百
万圓ニ達スル所ノ割引ヲ行ウテ居ノタノデ
アリマスルカラ、之ニ對シマシテ今日此不
況ノ場合ニ於テハ六百五十万圓ノ假令割引
ヲ致シマシテモ是ガ幾何ノ輸出ノ上ニ於テ
效果ガアリマセウ又幾何ノ生活難ヲ救フ
コトガ出來マセウ、幾何ノ我國ノ產業ノ動
モスレバ傾カントシテ居ル所ノ其角度ヲ緩
和スルコトガ出來ルデアリマセウカ私ハ
此意味ニ於キマシテ、鐵道大臣ハ十分金解
禁ノ前後ニ於テ相當ノ御考ガアリ、又今後
ニ向シテ相當ノ抱負ヲ御持チニナッテ居ルト
信ズルノデアリマスルカラ幸ニ只今御尋
ネ申上ゲマシタ二ツノ點ニ對シマシテ何等
カ國民ニ向ッテ御考ノアル所ヲ御示シ下サ
レバ、誠ニ仕合セニ存ズル次第デアリマス、
私ハ一應此問題ニ付キマシテ大臣ノ御答ヲ
得マシタ後ニ、他ノ問題ニ付キマシテ引續
キ御尋申上ゲタイト考ヘマス
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=79
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080・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 只今八田君ヨリノ
御尋ニ對シマシテ簡單ニ御答ヲ致シタイト
思フノデアリマス、金解禁ト申シマスルコ
トハ私ガ申上ゲマスル迄モナク日本ノ經
濟ニ取リマシテハ非常ニ重大ナル事項デア
リマスルコトハ言フ迄モナカッタノデアリ
やべ、從ヒマシテ政府ニ於キマシテハ之
ヲ實行セムトスルニ當リマシテハ、非常ナ
ル準備ヲ致シタト申シテ宜シイト思フノデ
アリマス、卽チ何ト致シテモ此金解禁ヲ實行
スルニ當リマシテ一番先ニ實行イタサナケ
レバナラヌコトハ國家ノ財政ニ對シテ相
當ノ緊縮ヲ加へ、又國民各自ノ經濟ニ於キ
マシテモ相當ノ節約緊縮ヲ加ヘテサウシ
テ貿易ガ相當逆調ニナッテ居リマシタ狀態
ヲバ返シテ、之ヲ順調ニ導キ、以テ爲替相
場ヲシテ平準ナラシムルト云フ所ニ持〓テ
行クニ非ザレバ到底金解禁ヲ實行スルト
云フコトハ川來ナイコトデアッタト思フノ
デアリマス言フ迄モナク日本ノ金解禁ト
申シマスルコトハ諸外國ノ金解禁ト違ヒ
マシテ、他ノ國ノ多クニ於キマシテハ兌
換制度ノ停止迄モヤリ所謂貨幣制度ト云
フモノガ一時法律ノ力ニ依ノテ變史ヲ受ケ
テ居ッタノデアリマス、然ルニ日本ノ金解禁
ト云フ問題ハ、左樣ナ法律上ノ問題ガナカッ
タノデアリマス言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、內
ニ兌換ハ停止サレテ居ルト云フ譯デハナイ、
唯金ガ外國ニ輸出サルルノガ一時禁止イタ
サレテ居ノタト云フ狀態デアッタノデアリマ
ス、併ナガラ其狀態ト致シマシテモ此禁
ヲ解キマスルト云フコトハ諸外國ノ金解
禁トムヅカシサニ於テ違ヒハアルベキ筈
ガナカッタノデアリマス、而シテ斯樣ナ狀態
デ法律的ニ見マシテモアリマスルシ又日
本ノ爲替ノ狀態ト云フモノガ、必シモ諸外
國ノ如ク非常ナル變動ガアッタ譯デハナイ
ノデアル、而シテ斯樣ナ狀態ニ於キマシテ、
所謂平價解禁、舊平價ノ解禁ヲ實行イタシ
マスルト云フコトハ當時ニ於キマシテモ
蓋シ當然ニ考ヘナケレバナラヌコトデアッ
タト思フノデアリマス其當時ニ於キマシ
テ、若シ幣制ヲ改革イタシマシテ新平價ヲ
以テスルト云フコトハ今日デコソ考ヘラ
レマスルガ、其當時ニ於テハ當然私ハ考ヘ
ラレナカッタコトト思フノデアリマス、多少
一部ニ於テハ左樣ナ議論ガアッタニ致シマ
シテモ、一般ハ左樣ナコトハ考ヘテ居ナカツ
タト思フノデアリマス、而シテ左樣ナ狀態
デ、一昨年ノ十二月ニ至リマスル頃ニハ段
段爲替ハ恢復イタシマシテ、サウシテ當時
ノ平價ニ近ヅイテ參ツタノデアリマス所
謂四十九弗内外迄參ッタノデアリマス、是ハ
私ハ何ト言"テモ政府自ラ財政ノ緊縮ヲ爲
シ又國民ニ向ヒマシテモ經濟ノ緊縮ヲ慫
慂イタシサウシテ貿易ノ關係ヲ改善シ
所謂正貨ノ關係ニ於キマシテ相當改善サレ
マシタガ故ニコソ爲替ト云フモノガ相當
ニ順調ニナッテ參フタモノト斯樣ニ見ナケ
レバナラヌト思フノデアリマス私ハ斯樣
ナ事柄ニ付キマシテ詳シク述ブル必要ハナ
イト思ヒマスルガ、是ハ八田君モ當時ノ事
情ヲ能ク御囘想ニナッテ御承知ノコトト思
フノデアリマス、鐵道ニ於キマシテモ大體
斯樣ナ政府ノ一般方略ニ準ジマシテ、鐵道
ノ經濟ヲ成ベク縮メルト云フコトニ努力ヲ
致スト云フ趣旨ヲ以チマシテ、內閣ガ出來
マスルヤ直チニ建設費ニ於キマシテモ成ベ
ク之ヲ節約スル繰延ヲスル、當時豫算ニ
於キマシテハ八千万圓デアリマシタ所ノ建
設費ヲモ出來ルダケ低クスルト云フ意味ヲ
以チマシテ、六千万圓カラ七千万圓ノ間、
約六千九百万圓內外ノ程度ニ之ヲ止ドメル
ト云フコトニ致シタノデアリマス又事業
費ニ於キマシテモ出來ルダケ節約ヲ加フル
目的ヲ以チマシテ、相當ニ節約節減ト云フ
方法ヲ執ッタノデアリマス、是等ノ詳細ハ旣
ニ數字等ニ於キマシテ、豫算委員會其他ニ
於キマシテ、八田君等ニモ御目ニ掛ケタコ
トト思フノデアリマシテ、私ハ諄々シク申
上ゲマセヌガ、當時鐵道ガ建設竝ニ事業費
方面ニ於キマシテ節約繰延ヲヤッテ居リマ
スルコトハ、御承知ニナッテ居ル通リデアル
ト思フノデアリマス、ソレカラ是ハ必シモ
鐵道ニ限ッタコトデハナイノデアリマスル
ガ、一面ニ於テ、政府モ國民モ節約ヲ致ス
ト云フコトニナレバ、產業ハ自カラ萎縮ス
ルト云フ結果ガ多少ニテモ來ラザルヲ得ヌ
ノデアル、此場合ニ於テ日本デ生產シ得ル
モノガ、假リニモ外國カラ輸入サレルト云
フコトデアッタナラバ、ソレダケ矢張リ正貨
ハ流出シテ、國際貸借ノ關係ニ於キマシテ
ハ依然トシテ面白カラザル結果ヲ惹キ起
スベキモノデアルト云フ考ヲ起シマシタガ
故ニ、內閣ガ出來マスルヤ否ヤ、私ハ率先
シテ政府自ラ此國產ヲ使用スルノ途ヲ講ジ
ナケレバナラヌト云フ考ヲ起シマシタ鐵
道ニ於テモ相當國產ヲ使用シ得ル部分モア
ルデアラウト云フコトヲ考ヘマシタガ故
ニ、調ヲ致シテ見マスルト隨分アッタノデア
リマス、當時調ベマシタノデハ約六百六十
種類ノ外國品ト云フモノガ、鐵道省ノミニ
於テ輸入ヲシテ、ソレヲ使用シテ居ッタト云
フ狀態ガアッタノデアリマス、而シテ其金額
ハ軈テ千······普通ノ年ニ於キマシテ千万以
上、千二三百万ニ上ッテ居ルト云フヤウナ狀
態ニアッタト云フコトヲ考ヘマシテ、若シ假
リニ此千二三百万圓ニ上テテルルノ外國
品ト云フモノヲ、或ハ千万圓デモ八九百万
圓デモ之ヲ內地品ヲ使用スルト云フコトニ
ナレバ、ソレダケ內地ノ工場ハ餘計ニ生產
ヲスルト云フコトニナル、內地ノ工場ガソ
レダケ生產スルト云フコトニナレバ其幾
分ト云フモノハ內地ノ勞働者ノ手ニ這入ル
ト云フコトデアリマスルガ故ニ、何トシテ
モ此國產愛用ト云フコトヲ鐵道ガ率先シテ
ヤルノハ最モ必要ナコトデアル若シ鐵道
ガ自カラ之ヲヤルト云フコトニナレバ自
然外ノ省ニ於テモ、將又民間ニ於テモ、之ニ
倣フモノモ出來テ來ルデアラウト云フコト
ヲ考ヘマシタガ故ニ、隨分努力イタシマシ
テ、此六百六十種類ノ外國品ト云フモノニ代
ヘルニ、内地ノ優良ナルモノヲ以テスルト云
フ方針ヲ厲行イタシタノデアリマス、其
属行イタシマシタ結果ト致シマシテ、今日
デハ六百六十種類ノ中デ、僅カニ六十二三一
種類ヲ除クノ外ノ、約六百種類ニ近イ所メ
外國品ト云フモノハ全部内地品ヲ以テ代
ヘルニ至ッタノデアリマス、而シテ其金額モ
八九百万圓カラ、千万圓近クニ上ルコトト
思ッテ居ルノデアリマス、ソレカラ只今負擔
運賃引下ノコトニ付テ、私ガ斯ク答ヘルデ
アラウト云フコトヲ豫想サレマシテ、ソレ
ゾレ御辯明ガアッタヤウデアリマスルガ、運
賃ノ改訂ヲ申シマスルコトハ、成ル程八田
君ノ御述べニナリマシタ如ク
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
大正十四五年以來鐵道省ニ於テ、計畫ヲ致
シテ居ッタト云フコトハ事實デアリマス
是ハ鐵道ニ於テ、「メートル」制ヲ採用イタ
シマシテサウシテ豫テ考ヘテ居ッタ所ノ、
運賃率ノ改訂ト云フコトヲ考ヘテ居リマシ
タト云フコトハ事實デアリマス、其改訂ヲ
致シマスル方針ハ、八田君御承知ノ如ク、一
錢一厘モ增減ヲシナイ、成ルベク從來ノ運
賃ノ總額ト云フモノヲ變更シナイデ、サウ
シテ運賃率ノ改訂ヲヤラウト云フノガ方針
デアッタノデアリマス、然ルニ私ハ一昨年
ノ十一月デゴザイマシタガ、金解禁ヲ實行
セント致シマスル前ニ大阪ニ參リマシテ
大阪ニ於テ發表イタシタノデアリマスル
ガ、金解禁ヲ實行スルニ於テハ相當經濟
上ノ變動ガ起ルト云フコトヲ豫期シナケレ
バナラヌ、又起ルト云フコトヲ國民モ多少
恐レテ怖エルト云フ神經的ノ作用モアル
ト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ、斯樣ナ
場合ニ於テ最モ努メナケレバナラヌ點ハ
國民ノ負擔ヲ輕クスルト云フコトガ一番
一般的方略トシテハ必要ナコトデアル、ワ
コデ政府ハ先ヅ以テ國民ノ負擔輕減ヲ圖ル
ト云フ趣旨ヲ以テ、小學校〓員俸給國庫負
擔增額ノコトモヤラウト考ヘテ居ル、又鐵
道ニ於テモ何トカシテ、國民ノ負擔ガ多少
デモ輕クナレカシト考ヘテ居ルノデアル
ソコデ運賃ト云フモノヲ引下ゲルコトニナ
レバ運賃ハ自カラ荷主ノ負糖カ輕クナル
ト云フ童味ニ非ズシテ多クハ消費者ガ其
運賃ノ負擔ノ利益ヲ受ケル譯デアルカラ
出來得ベキナラバ運賃ノ引下ゲト云フモノ
ヲ少シデモヤリタイト思フ併ナガラ鐵道
ノ取ッテ居ル所ノ運賃約一億八九千万圓、二
億近クノモノヲ平均シテ、例ヘバ五分デ
アルトカ、或ハ一割デアルトカ云フヤウナ
コトヲ實行スルト云フコトハ容易デナイ
玆ニ於テ或ル種ノ品目ニ限ッテ卽チ社會政
策的ノ運賃負擔ノ輕減ト云フヤウナ意味ヲ
以テ、或ル種ノ炭デアルトカ、薪デアルト
カ、或ハ下級ノ鮮魚デアルトカ、味噌デア
ルトカ醤油デアルトカ云フモノニ付テ
第一ニ下ゲタイト思フ、或ハ第二ニハ產業
政策ノ意味ヲ以テ、運賃負擔ノ輕減ヲヤッテ
見タイト思フノデアル卽チ骸炭デアルト
カ、石炭デアルトカ鑛石デアルトカ、石
材デアルトカ、木材デアルトカ、原棉デア
ルトカ云フモノニ對シテ、引キ下ゲヲヤッテ
見タイト思フノデアル第三ニハ農村ノ爲
メニスル所ノ運賃負擔ノ輕減ヲシタイト思
フノデアル、或ハ石灰デアルトカ、肥料デ
アルトカ、云フヤウナモノニ實行シテ見タ
イト思フノデアルト云フコトヲ發表イタシ
マシテ而ウシテ是ヲ實行イタシマシタノ
ガ昨年ノ四月一日カラ此率ノ引キ下ゲト
云フモノヲ實行イタシタノデアル固ヨリ
僅カノ金額デアリマスルケレドモ、是ヲ引
キ下ゲマスルト云フコトガ、私ハ相當當時
ニ於キマシテハ一般ニ對シテ刺戟ヲ與ヘ
ル、能ク話ガ出ルノデアリマスルガ、二千
五百万圓ノ租稅輕減ヲヤッテ見タ所ガ一人
當リ二十五錢カ三十錢ニシカナラヌデハナ
イカ、ソンナコトヲヤッテ見タ所ガ、ソレハ
何等ノ國民ノ肩ノ上カラ云ヘバ意味ヲナサ
ヌモノデアルト云フ議論ガアリマスルガ、
一體此負擔ノ輕減ト申シマスルコトハ、相
當今日ノ狀態ニ於キマシテハ多クノ金ヲ
出シマスルト云フコトハ容易ナラヌコトデ
アルト思フノデアリマス、出來得ベキダケ
ノ程度ニ於テ、國家ハ是ヲ實行スルト云フ
外ニ宜イ途ハナイト思フノデアリマス斯
樣ナ意味合セヲ以チマシテ、鐵道ノ經濟ノ
苦シイ中カラ、兎ニ角出來得ベキダゲ相當
ナコトヲヤッタト云フコトハ、私當時ニ於テ
モ相當了解ヲ致サレテ居ッタモノト思フノ
デアリマス、其外ニ輸出物ニ對スル所ノ運
賃割戾シノコトモ、只今八田君モ御述べユ
ナッタノデアリマスガ、是亦當時ニ於キマシ
テハ金額ハ僅カ百万カ八九十万ノコトデ
アリマスルガ是亦相當ノ刺戟ヲ與ヘタモ
ノト申シテ宜カラウト思フノデアリマス
暫ク經〃テ見マスルト云フト、何ラノ意味ハ
ナイヤウニ見ヘマスケレドモ、兎ニ角是等ノ
コトハ、金解禁ガ實行セラルルナラバ相
當經濟的ノ刺戟ヲ國民ガ受ケルデアラウ、
其場合ニハ色ミノ方法ヲ以テ政府モ出來ル
ダケノコトヲ盡ス、國民モ亦此大波ニ對抗ス
ルダケノコトハヤラナケレバイカヌト云フ意
味合ヒヲ以チマシテ、私共鐵道省ヲ受ケ持ノ
テ居リマスル上ニ於キマシテ出來得ベキ
ダケノコトヲ致シタノデアリマス、今後ニ
於キマシテ、今日ノ經濟界ノ不況ニ處シマ
シテ爲スペキコトハ多々アルノデゴザイマ
七つり、鐵道自身ト致シマシテハ是ト申シ
テ取リ立ッテ御報告申上ゲル程ノコトモナ
イノデアリマスガ、或ハ今日失業者ガ相當
多クナルト、政府ノ方針ト致シマシテ、相
當是ニ對シテ救濟ノ途ヲ講ズルト云フニ付
キマシテハ鐵道ト致シマシテモ、亦是ニ
對應スルダケノ策ヲ取ラナケレバナラス
斯樣ナ意味合ヒヲ以テ、當然鐵道デ實行イ
タスベキ、又鐵道ト致シテ最モ必要ト感ジ
テ居リマスル緊急ナ事業デアリマスルガ、
其事業ヲ一面ニ於テハ又失業救濟ノ意味ヲ
以チマシテ、實行スルト云フヤウナ案モ立ッ
テ、旣ニ豫算總會ニ於テ決定ヲ經テ居ルヤ
ウナ次第ナンデアリマス、彼是今日マデ實
行イタシマシタ事、又私共ガ金解禁ニ對シ
マシテ豫テ考ヘテ居フタ事等ノ一部ヲ、御
間ヒニ對シテ御答ヲ致シテ置キクイト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 議事ノ都合上諸
君ニ於テ御異議ガナケレバ、本日ハ是デ延
會イタシタイト考ヘマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 明日ノ議事日程
ハ決定次第調通知ニ及ビマス、本日ハ是ニ
テ散會イタシマス
午後三時十二分散會
貴族院議事速記錄第二十九號正誤
三八二頁四段三七行ノ次ニ左ノ一行ヲ脫ス
午後零時五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03019310311&spkNum=82
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