1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月十六日(月曜日)午前十時二十五分開議
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議事日程 第三十三號
昭和六年三月十六日
午前十時開議
第一 無盡業法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 自動車交通事業法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 製鐵業奬勵法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 重要産業の統制に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 入營者職業保障法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 特別會計に於ける營繕費に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第七 特別會計の恩給負擔金を一般會計に繰入るることに關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第八 賠償金特別會計法廢止法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第九 昭和四年法律第二十六號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十 京都高等工藝學校移轉改築費に充用したる金額の補填に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十一 製鐵所特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十二 簡易生命保險特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十三 北洋漁業權益確保に關する決議案(侯爵佐佐木行忠君外十二名發議) 會議
第十四 一時金廢兵恩給法中改正の請願 會議
第十五 菊川改修の請願 會議
第十六 鍼灸醫師法制定の請願 會議
第十七 北海道色丹郡斜古丹村に無線電信施設の請願 會議
第十八 樺太元泊郡知取町に區裁判所設置の請願 會議
第十九 北海道落石燈臺に霧笛設置の請願 會議
第二十 水産物冷藏奬勵の請願 會議
第二十一 秋刀魚漁期制限の請願 會議
第二十二 漁村金融の改善に關する請願 會議
第二十三 郡市水産會技術員國庫補助の請願 會議
第二十四 水産物の鐵道運賃輕減の請願 會議
第二十五 軍人傷痍記章令中改正即行の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報告致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
去ル十三日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
昭和六年度歲入歳出總豫算案
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
同日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ囘付セリ
昭和六年度各特別會計歲入歲出豫算案
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第六號
一昨十四日衆議院ヨリ本院ノ囘付ニ係ル左
ノ政府提出案ハ同院ニ於テ本院ノ修正ニ
同意シ奏上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
昭和六年度各特別會計歲入歲出豫算案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
製鐵業奬勵法中改正法律案
重要產業ノ統制ニ關スル法律案
入營者職業保障法案
同日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
學衛〓究ノ奬勵助長ニ關スル建議案公
爵一條實孝君外十二名發議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=2
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003・東園基光
○子爵東圍基光君 本員ハ玆ニ日程變更ノ
動議ヲ提出イタシマス、卽チ日程第十三、
北洋漁業權益確保ニ關スル決議案、右ヲ日
程第一ノ前ニ繰上ゲマシテ、提出者ノ說明
ヲ求メラレ、其審議ヲ盡サレムコトヲ希望
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=3
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004・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東園子爵ノ議事
日程變更ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
マス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス、政府ノ同意ヲ得マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十三、北
洋漁業權益確保ニ關スル決議案、侯爵佐佐
木行忠君外十二名發議、會議、野村子爵ノ
登壇ヲ求メマス
北洋漁業權益確保ニ關スル決議案
右提出候也
昭和六年三月九日
發議者
侯爵佐佐木行忠伯爵溝口直亮
男爵大井成元子爵靑木信光
子爵野村益三男爵阪谷芳郞
小松謙次郞伊澤多喜男
阪本釤之助竹越與三郞
南弘倉知鐵吉
田村新吉
贊成者
公爵一條實孝侯爵峰須賀正韶
侯爵中御門經恭伯爵林博太郞
伯爵柳原義光伯爵松平賴壽
伯爵小笠原長幹伯爵酒井忠克
伯爵黑木三次伯爵二荒芳德
伯爵酒井忠正男爵木越安綱
子爵高倉永則子爵梅小路定行
子爵伊集院兼知子爵牧野忠篤
子爵前田利定子爵池田政時
子爵〓岡長言子爵今城定政
子爵吉田〓風子爵立花種忠
子爵藪篤麿子爵豐岡圭資
子爵片桐貞央子爵大河內輝耕
子爵岡部長景子爵會我祐邦
子爵井伊直方子爵花房太郞
子爵三室戶敬光子爵東園基光
子爵西尾忠方子爵裏松友光
子爵秋田重季子爵戶澤正己
子爵梅園篤彥子爵松平康春
子爵土岐章淺田德則
男爵北里柴三郞佐藤三吉
水上長次郞男爵坂本俊篤
眞野文二新渡戶稻造
石塚英藏男爵松井慶四郞
男爵平野長祥男爵鍋島直明
男爵紀俊秀男爵小原詮吉
松浦鎭次郞有吉忠
男爵神山郡昭男爵長松篤棐
若槻禮次郞內田嘉吉
三井〓一郞男爵上田兵吉
上山滿之進男爵北大路實信
男爵今枝直規坂西利八郞
川村竹治男爵千田嘉平
男爵斯波忠三郞男爵中島久萬吉
森賢吾男爵千秋季隆
男爵北河原公平男爵福原俊丸
男爵〓誠之助男爵金子有道
男爵赤松範男爵小畑大太郞
男爵有地藤三郞男爵黑田長和
男爵井田磐楠男爵岩倉道倶
男爵今園國貞男爵東〓安
男爵伊藤文吉男爵足立豊
男爵高木喜寛男爵松尾義夫
男爵松岡均平男爵寺島敏三
男爵井上〓純男爵高崎弓彥
男爵伊江朝助男爵中村謙
男爵周布兼道男爵近藤滋彌
男爵北島貴孝男爵沖貞男
男爵關義壽男爵三須精
男爵稻田昌植男爵肝付兼英
男爵佐藤達次郞男爵大寺純藏
男爵園田武彥男爵渡邊修二
男爵深尾隆太郞髙橋琢也
福永吉之助片岡直溫
石渡敏一藤田四郞
橋本圭三郞川上親晴
安立綱之中川小十郞
菅原通敬湯地幸平
田所美治永田秀次郞
赤池濃八田嘉明
馬場鍈一後藤文夫
加藤政之助大津淳一郞
小久保喜七樺山資英
松村義馬越恭平
服部金太郞木村〓四郞
今井五介稻畑勝太郞
尾崎元次郞村山龍平
本山彦關直彥
林平四郞坂田貞
齋藤喜十郞磯貝浩
齋藤善八橋本萬右衞門
田村駒治郞西本健次郞
名取忠愛土田萬助
山崎龜吉菅澤重雄
根本祐太郞八木春樹
佐藤信古松本勝太郞
長尾元太郞小林嘉平治
田中馬野村德七
風間八左衞門小林暢
絲原武太郞高廣次平
鳴海周次郞本間千代吉
森田福市瀨川彌右衞門
男爵渡邊汀男爵原田熊雄
貴族院議長公爵德川家達殿
北洋漁業權益確保ニ關スル決議
本院ハ前議會ニ於テ水產國策ノ樹立ヲ政府
ニ要望シ北洋漁業問題ノ忽諸ニ附ス可カ
ラサル事ヲ建議シタリ爾來ソヴイエット
聯邦政府トノ交涉容易ニ進展セス動モス
レハ我條約上ノ權益ヲ阻害セラレントス
政府ハ本院ノ建議ニ鑑ミ速ニ北洋漁業問
題ノ解決ヲ期ス可シ
右決議ス
〔子爵野村益三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=7
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008・野村益三
○子爵野村益三君 本日此決議案ヲ提出イ
タシマスルニ際シテ、御病體トハ言ヒナガ
ラ濱口首相ノ御出席ノナイコトハ深ク遺
憾ニ存ズル次第デアリマス、貴族院ハ曩ニ
水產國策樹立ニ關スル建議案ヲ議決イタシ
マシテ、政府ニ我國ノ國情ニ鑑ミ速ニ水產
ニ關スル國策ヲ樹立シ、人口食糧問題ノ解
決竝ニ國際貸借ノ改善ニ資スベキヲ求メ、及
ビ聲ヲ大ニシテ北洋漁業權益確保ヲ要望イ
タシタノデアリマス、今其因ッテ來リシ所以
ノモノヲ考ヘマスノニ、第一ニハ「ソ」國ノ國
營ガ漁區ヲ奪取シタル事實ガアッタカラデ
アリマス、所謂是ハ十八漁區ノ問題ニ歸著
スルノデアリマス、第二ニハ「ソ」國ノ國營
企業ガ個人ノ假面ヲ被リテ進出イタシタ所
ノ事實ガアッタカラデアリマス、第三ニハ
「ソ」國官憲ガ我ガ出漁者ニ加ヘシ所ノ不法
ノ行爲竝ニ壓迫的ノ所業ガアッタカラデア
リマス、第四ニハ過大ニシテ且ツ不當ナル關
稅ノ賦課ヲサレタカラデアリマス、第一ノ
國營ノ漁區奪取ト申スコトハ、條約ニ謂フ
所ノ協議ヲ盡サズシテ、我ガ國人ノ經營シ
又之ヲ繼續セムコトヲ希望シテ居リマシタ
所ノ三十箇所ノ優良漁區ヲ國營ノ手中ニ收
メムト致シ、其異議ニ會フヤ、內十二箇所
ト云フモノヲ競賣ニ付シマシタケレドモ、
殘リノ十八漁區ト云フモノヲ其手中ニ收
メ、依然トシテ今日ニ至ッテ其態度ヲ改メナ
イ事實ガアッタカラデアリマス、第二ノ事
實ハ昨日マデハ恆產ナカリシ幾多ノ「ソ」國
人ガ一朝ニシテ稀有ノ財產ヲ擁シ、其財力
ニ依リ其豪膽ナル行爲ニ依リ、以テ我ガ國
人ヲ相手ニ優良ナル、而モ數十ニ涉ル所ノ
優良ナル漁區ヲ競落シタヤウナ事實ガアル
ノデアリマス、是等ノコトハ名ハ個人トハ
申シナガラ、其實ニ於テハ國營ノ力ニ俟ツコ
ト、誠ニ歷然タルモノガアルノデアリマス、
若夫レ第三ノ不法ナル行爲竝ニ壓迫的ナ所
業ト申スコトニ至リマシテハ、先ヅ公海三
浬ノ主義ヲ否認イタシテ、之ガ爲ニ血腥キ
數十件ノ事件ヲ頻發イタシタコトデアリマ
ス、或ハ漁區ノ借區料卽チ最低價格ヲ引上
ダルコトガアリ、或ハ漁區貸下條件ノ甚シ
ク過酷ナルコトガアル、或ハ各漁區ニ定メ
ラレタル漁獲標準高ノ著シク平衡ヲ失シテ
居ル事實ガアリマス、或ハ漁具殊ニ漁網ニ
對スル取締ノ峻烈ヲ極ムル事實ガアリマス、
若シ是等ノ點ニ少シノ違例ガ見出サレルナ
ラバ、卽チ罰金卽チ處分、斯クシテ我ガ國
人ノ多數ハ或ハ財產ヲ沒收サレ、或ハ漁區
ノ指令ヲ取消サルルノ事實ガアルノデアリ
やっ、第四ノ不當關稅ニ付キマシテハ、本
來出漁ノ我ガ國人ハ原則トシテ出漁ニ關ス
ル必要用品ニ付テハ輸入稅ヲ免除サレテ居
ルコトハ條約ノ明カニ示シテアル所ナルニ
モ拘ハラズ、「ソ」國ハ獨自ニ無稅品目ヲ定メ
マシテ、之ニ該當セザル漁具食糧品等ニ對
シ甚シク苛酷又不當ナル關稅ヲ賦課セント
スルノデアリマス、現ニ本年二月十四日在
函館領事ヲ經テ昭和四五年度分トシテ從業
者ニ納付ヲ命ゼラレマシタ所ノ追徵金ハ實
ニ五十七万三千圓ノ多キニ達シマシテ、其
日露漁業ニ關スルモノデサヘモ、恰モ供託
保證金ノ四十倍ノ多キニ至ルヤウナ實情デ
アッタノデアリマス、勿論是等ハ圓貨ヲ以
テ、日本ノ貨幣ヲ以テ納入スベキ旨通達ヲ
受ケタノデアリマス、又鵜ノ目、鷹ノ目違
法ヲ漁リ、其上無智蒙昧ナル「ソ」國側ノ監視
官ノ爲ニ、思ヒモ寄ラヌ痛事ニ遭フタコト
ハ殆ド珍ラシクナイコトデアリマシテ、共
著シキ例ヲ申スナラバ「シトロン」一箱ニ對
シ驚ク勿レ百八十七圓、更ニ甚シキニ至ッテ
wハ草鞋一足ニ對シ大枚金三圓ノ關稅ヲ課セ
ラレムトシタルコトサヘモアルノデアリマ
ス、斯ノ如クニシテ過グル三箇年ノ間「ソ」人
ノ經營スル漁區ノ數ハ著シク增加ヲ致シ、
我ガ國人ノ經營イタシマスル漁區ノ平均漁
獲量ハ著シク減少ヲ致シ、之ニ反シテ其平
均借區料ハ著シク〓騰ヲ致シ、之ヲ三箇年
前ニ較ベマスルト殆ド四倍ノ巨額ニ達スル
ノ狀況ニ在ルノデアリマス、而シテ其後ノ
情勢ヲ考ヘテ見マスト、以上ノ事情ハ少シ
モ緩和セラレザルノミナラズシテ、其勢ハ
益〓甚シカラントスルノ勢ヲ呈シテ居ルノ
デアリマス、殊ニ昨年ノ八月ニ至リマシテ
ハ更ニ朝鮮銀行浦鹽支店ノ事件ガ新タニ起
リマシテ、本問題ニ尙ホ一層ノ紛糾ヲ加ヘ
タコトハ諸君ノ熟知セラルル所デアリマ
ス、卽チ昭和五年八月十一日臨檢ノコトガ
起リマシテカラ、延ヒテ十月ノ三日ニ及ビ、
其間九月十一日ニハ魯貨ノ自由賣買、竝ニ
國外送金爲替ヲ禁ゼラレ、又次デハ所謂國
定相場ナルモノヲ定メラレ、而シテ後突如
トシテ十二月十三日、帳簿檢査ノ調査書ヲ
發表セラレ、其十七日ニハ支店ノ閉鎖ヲ命
ゼラレ、翌十八日ニ至リテ營業ノ禁止ヲ命
ゼラレ、〓算人ヲ指定サレ、浦鹽市長ハ又
二百六十万留ノ追徴金納付ヲ命ジタノデア
リマス、而シテ是等ノ交渉ハ初メ東京ニ於
テ「トラヤノフスキー」大使、永井次官ノ間
ニ行ハレマシタガ、二月中何ニ至リテハ突
如トシテ莫斯科ニ移サレ、廣田大使、「カラ
ハン」次長トノ間ニ行ハルルコトトナッタノ
デアリマス、而モ北洋漁業權益確保ノ交涉
ハ玆ニ端ナク憐レムベキ留換算率問題ニ轉
化ヲ致シテ、月ニ亙リテ決セズ、年ヲ越エ
テ解ケズ、斯クシテ今日ニ至リシコトハ
是亦諸君ノ熟知セラルル所デアリマス實
ニ憐ムベキ此留換算率問題デアリマス一
方ハ三十錢ト申シ、他方ハ四十錢ヲ主張シ、
相共ニ執ッテ降ラズ、其差額十錢ノ爲ニ大使
ト大臣トガ啀ミ合ヒ、一國ト一國トガ交涉
ニ交涉ヲ重ネ、而モ交渉ノ經過中ニハ堂々
タル大官ガ屢〓言ヲ異ニシ、約束ヲ空シク
シテ、或人ノ之ヲ目シテ緣日商人ノ如シト
言ヘルハ、蓋シ評シ得テ妙ナリト謂ヒツベキ
デアリマス、而モ此交涉タル、月ヲ越エテ
成ラズ、年ヲ越エテ遂ゲズ、斯ノ如キ事實
ハ私ノ寡聞ナル、未ダ嘗テ見聞セザル所デ
アリマシテ、惟フニ世界ノ外交史上ニ於テ
モ、實ニ前代未聞ノ珍事ト言フベキデアラ
ウト思ヒマス、退イテ案ズルニ、此憐ムベ
キ留換算率問題ハ、彼ノ所謂闇黑相場ノ虛
吹ニ脅エテ、經濟上ノ通則ニダニ悖リ國
際相場ヲ飽クマデ主張把持セザリシ誤謬ニ
發スルノデアリマス、此關敗レテ我軍ノ振
ハザル、事理正ニ然ルベキ所デアッテ、流石
ニ寛仁大度ノ我當局者ト雖モ、今ニシテ之
ヲ思フタナラバ、半夜夢圓カナラザルモノ
ガアラウト思ハレルノデアリマス、唯茲ニ
我ミノ覺悟スベキコトハ獨リ此憐ムベキ
留換算率問題ノ解決ヲ以テシテ、能事終レ
リト爲スベカラザルコトデアリマス、外交
交涉終局セリト爲スベカラザルコトデアリ
マス、北洋漁業ノ權益確保サレタリト爲ス
ベカラザルコトデアリマス、卽チ此外ニ主
張スベク、要求スベキ案件ガ決シテ少シト
シナイノデアリマス、卽チ前ニ擧ゲタル種
種ノ事件ノ如キ又其然ルベキモノデアリマ
シテ、「ソ」國ノ國營企業ノ漁區取得方法ヲ
確定シ、擊爭漁區ノ問題ヲ解決スルコト、
漁區料ノ最低價格ノ決定方法ヲ正當ナラシ
ムルコト、漁獲標準高ノ制定方法ヲ合理
的ナラシメ之ガ調整ヲ期スルコト、漁區
貸下條件ヲ修正シ過酷ナル條項ヲ撤廢セ
シムルコト、我ガ國人罐詰工場設置漁
區ノ特別貸下ニ關スル要望ヲ解決スルコ
ト、漁業用具品目表ニ必需品ヲ追加セ
シメ不當ノ課稅ヲ賦課セシメザルコト、
以上ノ案件ハ皆必要ナル解決スベキ問題デ
アリマス、是等ハ實ニ從來ノ懸案デアリマ
シテ、是等ノ懸案ヲ解決セラレナケレバ、
所謂北洋漁業權益確保ト稱スルコト能ハザ
ルモノデアリマス、今是等ノ問題ニ付キマ
シテ、我ガ當局ガ如何ニ努力サレ、如何ニ
考慮サレテ居ルカト云フコトヲ考ヘテ見マ
スルト第一ノ所謂國營ノ漁區奪取ニ關シ
マシテハ、幣原外務大臣ハ「日本ノ主張スル
所デハ確ニ條約違反ト思フノデアリマス」、
斯樣ニ斷言サレテ居リマス、次ノ個人名義
ニ依ル國營企業ノ進出ニ關シマシテハ「日
本ノ權益ヲ擁護スルヤウナ處置ハ何時モ
執ッテ居ルノデアリマス」、「條約上ノ精神ニ
對シテ不自然ノ進出ヲスルト云フコトニ對
シテハ、我ミハ之ヲ默許スルコトハ出來マ
セヌカラ、サウ云フコトヲ認メタ場合ニハ、
露西亞ニ抗議ヲ致スト云フコトハ是ハ度
度致シテ居ル次第デアリマス」、又所謂留換
算率問題ニ付キマシテハ、幣原外務大臣ハ
「交涉ヲ破ル積リナラバ、コッチノ方針ヲ
スッカリ明カニスルノモ一ツノ方法デアリ
マセウ」、「併シナガラ我〓ハソレ程マデニ悲
觀イタシテ居ナイノデアリマス」、「何トカ
然ルベク話ガツクダラウト思シテ居ルノデ
アリマス」、「日本側トシテ主張スベキ所ハ
十分主張イタシテオリマス」「ソレハ御安心
ヲ願ヒタイノデアリマス」、當局者ノ言明
ハ以上ノ通リデアリマスルガ、更ニ我ミノ
心ヲ留ムベキコトハ最近ノ事實デアリマ
ス、「カラハン」廣田第一次ノ會見ニ於キマ
シテ、日本側ノ提案ニ對スル「ソ」國ノ新提
案ナルモノヲ考ヘテ見マスルト、內ニ二ツ
ノ主要ナル事項ガゴザリマス、其一ハ所謂
朝鮮銀行支店ハ自發的ニ卽時撤去スルコ
ト其二ハ新タニ國營漁區一一十八區ヲ設定
スルコト、以上ノ二ツノ事項ハ最モ重大ナ
ル條項デアリマシテ、從來ノ行掛リヨリ之
ヲ考ヘテ見マスルト、誰人ト雖モ矯慢兒、
度スベカラザルノ感ヲ深クスルノデアリマ
ス、殊ニ國營漁區ヲ更ニ新ニ二十八箇所モ
增加シタシトノ要望ニ至ッテハ、假令ソレガ
交換條件ノ形式ヲ執リシトハ言ヒナガラ、
殆ト其常識ノ存在ヲ疑ハシメ、尙且ツ故ラ
ニ事ヲ構ヘテ交涉ノ決裂ヲ求ムルニ非ザル
ナキヤヲ覺エシムルモノデアリマス、但シ
國營漁區ハ兩國ノ商議ヲ經テ之ヲ增加シ、
又兩國ノ協議ニ依リテ之ヲ決定シ得ルコト
ハ、日露條約ノ明カニ示ス所デアリマシテ、
其正當ノ道順ヲ踏メバ行ハルベキコト勿論
ヂアリマスルケレドモ、併ナガラ方今ノ場
合、所謂十八漁區ヲ以テ「ソ」國ノ條約違反
トシ、此事ハ軈ガテ外交交涉ノ重要ナル要
件トナリツツアルノデアリマス、然ルニモ
拘ラズ、却ッテ斯ノ如キ要求ヲ提案スルノ
ハ、我等ヲシテ、「ソ」國有司ノ常識ノ存在
ヲ疑ヒ、國際信義ヲ害フモノトシ、將又故
ラ事ヲ構ヘテ交渉ノ決裂ヲ圖ルモノナルヤ
ヲ疑ハシムルノハ、決シテ偶然ニアラザル
ベキコトヲ信ズルノデアリマス、惟フニ流
石ノ幣原外相モ、之ニ接シテハ啞然トシ呆
然タルコト蓋シ想像ニ餘リアルノデアリマ
ス、一般ニ北洋ト稱シマスルノハ「オコック」
海、「ベーリング」海竝ニ北部日本海ノ一部
約百三十万方浬ヲ總稱スルモノデアリマス
ルガ、彼ノ西、樺太ヲ以テ限リ、東、「カムチ
ヤッカ」半島ヲ以テ境シ、北沿海州ノ影ヲ
浸シ、南、千島群島ノ眞砂ヲ洗フ所ノモノ
ハ所謂「オコック」海デアリマス、此「オコッ
ク」海ハ其廣キコト五十万方浬、內ニ十四万
方浬ノ漁場ト七千浬ニ互ル海岸線トヲ備
ヘ、所在ニ巨口細鱗ヲ棲マシ、到ル所ニ測
リ知ラレザルウロクヅヲ貯ヘテ居ルノデア
リマス殊ニ其一部ニハ我等ノ先人夙ニ足
跡ヲ印シ、已ニ業ニ所謂漁利ヲ拓キツツアッ
タメデアリマス、宜シク日出ヅル所ノ國人
ト日入ル國ノ國民トハ、相睦ビ相扶ケ、共
ニ輻利ヲ開發シ、共ニ幸慶ヲ領ツベキ所デ
アリマス、惟フニ條約ノ成リ或ハ協約ノ結
バルルト云フ如キモ、畢竟此目的ニ副ハム
ガ爲デアリマス、何事ゾ北洋波立チ騒グ
時ノミ多ク、濛氣ノ低ク兩國ノ空ニ蟠ルノ
日ノミ多キコトヤ、我ミノ痛歎シテ措ク能
ハザル所デアリマス、抑、「ソ」國ガ條約ニ背
キ不法ヲ敢行シ、隣國人ヲ壓迫シ、經濟上
ノ原則ヲナミシ、國際信義ニ違フノ行爲、
到底常識ヲ以テ律スベカラザルノ言行、小
兒ト雖モ尙且ツ之ヲ愧ヂ、未開人ト雖モ尙
且ツ之ヲ忍ビ得ザルノ行動ヲ敢テスルニ付
テハ、人或ハ「スラーブ」民族ノ特徴ト申シ
マヽ、併ナガラ私ハ「スラーブ」民族ヲ斯樣
ニ侮辱イタシタクハナイノデアリマス又
或ル人ハ之ヲ「ソヴィエート」國ノ制度ニ歸
シマス、併ナガラ我ミハ又斯ク「ソヴィエ
ート」國々制ヲ侮辱イタシタクハナイノデ
アリマス、或ル人ハ又端的ニ金ガ欲シキ爲
ト斷定ヲ致シマス、但シ著シク物資ノ缺乏
ニ苦シミ、不換紙幣ヲ濫發シ、其渦中ニ上
下ヲ擧ゲテ呻吟シツツアル國柄ト致シマシ
テハ或ハ是モ無理カラヌコトデナカラウ
カト思ハレマス、此評モ亦一應尤ノヤウニ
聞エルコトデアリマスルケレドモ、サリト
テハ餘リニサモシキ又餘リニ情ケナキ限リ
デハアリマセヌカ、私ハ又斯タマデ我ガ可
憐ナル隣人、親シムベキ日入ルノ國ノ國民
ヲ評スルニ忍ビザル者デアリマス、事ヲ解
スル者ハ彼ノ所謂產業五箇年計畫、「ソヴィ
エート」聯邦國營漁業ノ根本的建設ノ實現
ニ歸シマス、此計畫ガ近來ソンジヨソコラ
ニ於テ唱ヘラルル所ノ所謂根本建直シノ議
論トハ事カハリ、眞ニ「ソ」國ヲシテ更生ノ
巷ニ向ハシムルモノ、又之ガ實現ニハ人竝
外レノ覺梧ト異常ナル努力トヲ要スベキコ
トハ勿論デアリマス、卽チ「ソ」國最近三箇
年ノ行動ハ彼ノ計畫ヲ實現スル爲メノ豫定
ノ行動、謂ハバ計畫的行動ト考ヘ得ベタ、
卽チ此計畫ヲ實現セシガ爲メ、或ハ條約ノ
違反ヲモ空吹ク風ト聞キ流シ、海上、陸上、
隨時隨所ニ不法壓迫ヲモ恣ニシ、進ミテハ
經濟上ノ原則ヲモ顯ミズ、尙且ツ國際信義
ヲ無視スルモ亦己ムヲ得ザルモノデアリマ
セウカ、斯樣ニ相成リマシテハ借區料ノ値
上モ最早問題デハアリマセヌ、不當關稅モ
已ムヲ得ザルモノデアリマセウ、個人ノ假
面ヲ被レル國營企業ノ進出モ亦致シ方ナシ
ト云フベキデアリマス、斯クテ日出ヅル國
ノ國人ヲ追拂ヒ、其有セシ漁區ヲ召上ゲ、
其保チシ漁獲物、無慮六千万圓ニモ上ボル
ベキモノヲ悉ク其手中ニ收ム、斯ノ如クニ
シテ、彼ノ所謂「ソヴィエート」聯邦國營漁
業ノ根本的建設ハ卽チ成レリト謂ヒツベキ
デアリマス、併ナガラ、斯樣ナ事柄ガ果シ
テ許サルベキコトデアリマセウカ、苟タモ
世界ニ國ヲ立テ、苟クモ我ガ帝國ヲ「オコー
ツク」海ノ此方ニ有スル「ソヴィエート」聯
邦國ガ、果シテ斯ノ如キ暴擧ヲ敢行シ得ル
モノデアリマセウカ、將又我國ガ斯ノ如キ
暴擧ヲ容ス程寛大ニシテ且ツ無氣力ノモノ
デアリマセウカ、但シ產業計畫ヲ樹立スル
コトハ、ソレハ御勝手デアリマス、且又其
十箇年ナルト五箇年ナルト、將又三箇年タ
ルコトモ御自由デアリマス、且又其經濟上
ノ原則ニ超越サルルコトモ場合ニ依リテ
ハ斷行セラレルモ宜シクアリマセウ、
併ナガラ是等ノコトハ他國ノ權益ヲ犯
サズ、國際信義ノ軌道ヲ逸セザル範圍
ニ限定サルルコトヲ知ラナケレバナラ
ヌノデアリマス、若夫レ既締ノ條約ニ背
キ、不法ヲ敢テシ隣國人ヲ壓迫シ、國際
信義ニ違ヒツヽ尙且又之ヲ敢行セントス
ルガ如クンバ、神人共ニ容サザル所、斷
ジテ看過スルコトハ出來ヌノデアリマス、
事體此ニ至ッテハ權益ノ擁護ト云フコトハ
當リマセヌ、或ハ尙權益ノ確保ト云フコト
モ當リマセヌ、寧ロ不法ノ扞止ト謂ヒツベ
キデアリマス、我等ハ卽チ進ミテ不法扞止
ノ爲ニ立タザルヲ得ザル場合ガアリマセ
ウ、私ハ本問題ヨリ生ズル所、我國權益ノ
侵害ト云フコトノ外ニ尙ホ憂慮スベキ一事
アリト考ヘルノデアリマス、抑〓此北洋漁業
權ナルモノハ日露戰役ノ結果タル日露講和
條約ニ依リ、我國ガ彼ノ旅順、大連、南滿
鐵道竝ニ樺太ノ南半部ト共ニ獲得シタルモ
ノナルコトハ、內外共ニ齊シク認ムル所デ
アリマス、然ルガ故ニ私ハ幣原外相ノ我ミ
ハ此際ニ於テ何カ必ズ纏マルト斷言シタヤ
ウニ仰セラレマシタガ、私ハ出來ルダケノ
コトヲ努力シヤウト言フノデアリマス、出
來ナイ場合ハドウスルカ、纒マラナケレバド
ウスルノダ、左樣ナコトハ私トシテ明言出
來ナイコトハ是ハ能ク御諒解下サルコト
ト信ジテ居ルノデアリマス是等ノ問題ニ
付キマシテハ要スルニ我〓ハ十分ニ日本
ノ立場ヲ向ウヘ徹底スルヤウニ致シ、サウ
シテ交涉ノ結果ヲ安心シテ下サイト言ッタ
ノデハアリマセヌ、我ミハ十分ニ日本ノ立
場ヲ向ウヘ徹底スルヤウニ致シ、サウシテ
交涉ノ結果ヲ安心シテ下サイト言ッタノデ
ハアリマセヌ、日本ノ要求スベキ點ハ私ハ
十分向ウヘ要求スル、日本ノ立場トシテ拘
ウヘ諒解セシムベキ點ハ十分諒解セシムル
ヤウニ努メル、斯ウ云フコトヲ私ハ申シテ
居ルノデアリマス、此御言葉ニ滿足スル者
デハアリマセヌ、又安心ヲスル者デハアリ
マセヌ、啻ニ滿足シ得ザルノミナラズ、啻
ニ安心スル者ニアラザルノミナラズ斯ノ如
キ優柔不斷サル北方ノ外交經過ガ他ノ方面
ヲ外交交涉ニ反映スル所ナキヤヲ恐ルル者
デアリマス、更ニ恐ルベキハ此事ガ我ガ外
地ノ統治上ニ反映セムコトデアリマス、私
ハ是ガ旣ニ反映シタトハ申シマセヌ、將
反映セントスルコトヲ恐レルノデアリマス、
椎フニ是等ノ憂ハ私一人ノ憂ノミデナタシ
テ齊シタ有識者ノ憂フル所デアルト思フノ
デアリマス、内外ノ事情斯ノ如ク現在ノ狀
勢亦既ニ述ベタル所ノ如クデアリマス卽
チ我等ハ前議會ニ議決セシ建議案ノ趣旨ニ
鑑ミ、重ネテ一層政府ノ努力ヲ要望シ、斯
クテ速カニ本問題ヲ解決シタク思フノデア
リマス、是茲ニ此建議案ヲ提出シタル所以
デアリマス、私ハ玆ニ尙ホ一言ヲ附加スル
メ御許シヲ得タイト思ヒマス、其一ハ濱口
首相ノ壯烈ナル心事ニ關シテデアリマス、
首相ノ曾テ不慮ノ災難ニ遭遇セラルルヤ、
朝野愕然八千万同胞ノ心配ト同情トハ悉ク
大學病院ノ一室首相ノ枕頭ニ集中イタシタ
ノデアリマス、爾後一億六千万ノ眉ハ體溫
器一分ノ度盛リフ爲ニ或ハ開ケ或ハ曇リ、
將又一匙幾「グラム」ノ藥酒ノ爲ニ或ハ上リ
或ハ下ル、斯ノ如キコト幾百度、幾十日、是
實ニ首相ノ髙潔ナル人格誠實ナル人ト爲
リ、尙且ツ爲ス有ルノ實力ト國民ノ信賴ト
ニ是依ルモノデアリマシテ又實ニ我ガ國情
ノ麗シキ所デアリマス、而シテ玆ニ又大患
ノ後ヲ受ケ羸軀ヲ推シテ萬死ヲ期シ、再ビ
總理ノ大任ヲ拜セラル、其決意ヤ見ルベク
其心情ヤ悲ムベシデアリマス、男子生レテ
宰相ノ印綬ヲ帶ブ、一死君國ニ報ゼムコト
ハ固ヨリ其所デアルトハ申シナガラ、首相
ハ業ニ已ニ一死ヲ冒シタルノ人デアリマス、
而モ又奮然トシテ更ニ一死ヲ期ス、思ウテ
此ニ至レバ誰人ト雖モ爲ニ淚ヲ注ガヌ者ハ
ナイノデアリマス、次ニ又之ニ類スル我ガ
多數同胞ノ話ヲ御紹介申上ゲマセウ、卽チ
旣ニ水盃ヲ取交ハシ腕ヲ撫シツヽ門出ノ日
ヲ待チワブル二万三千ノ楫取舟子ノコトデ
アリマス、水盃ト申スノハ水ヲ盃ニ盛リ父
母兄弟妻子故舊ト飮ミ交ハス、古來我國ニ
存スル永久ノ別レヲ意味スル最モ悲壯ナル
一儀式デアリマス、卽チ彼等ハ一方曾テ自
己ノ嘗メタル經驗ト境遇トニ顧ミ、他方其
父兄先輩ガ會テ肉ヲ破リ血ヲ流シ、斯クシ
テ得タル權益ヲ確保セムガ爲ニ、慨然トシ
テ起タムトスルモノデアリマシテ、其壯烈
ナル決意將又大和民族ノ心情ヲ發露スルモ
ノデアリマス、次ニ我ガ國民ノ本問題ニ對
スル論議デアリマス、蓋ク其歸趨タル何レ
モ權益ノ確保、外交ノ刷新、而シテ「ソ」國ノ
非違ヲ憤ラザル者ハアリマセヌ、殊ニ本問
題ニ關スル新聞紙ノ論調ノ如キハ、旣ニ諸
君ノ知ラルル如ク、何レモ齊シタ初メハ
「ソ」國ノ反省ヲ求メ、中頃交渉ノ進捗セザ
ルコトヲ憂ヘ、今ハ卽チ齊シク、我ガ國權
益ノ確保ヲ叫ンデ居リマス、旣ニ此三事、
首相ノ壯烈ナル心事、出漁者ノ壯烈ナル決
意、而シテ尙ホ國論ノ此一致、想ウテ此ニ
至レバ一方ニ外交交渉、局面ノ展開ヲ圖リ
得テ權益確保ノ事成リ、他方「ソ」國ノ反省ヲ
求メ得テ國際信義ノ軌道ニ歸ルヲ得セシメ、
斯クシテ日出ヅル國ノ國人ト日入ル國ノ國
民トハ、再ビ舊ノ如ク北洋ヲ隔テテ臂ヲ取
リ手ヲ握リ、斯タテ互ニ其幸慶ヲ頒ツヲ得
ベキカ、我ミハ其然ラム日ノ一目モ速ク到
來セムコトヲ熱望スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=8
-
009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 坂本男爵
〔男爵坂本俊篤君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=9
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010・坂本俊篤
○男爵叛本俊篤君 本員ハ此決議案ニ贊成
スルモノデアリマス、由來北洋ノ開拓ガ我
邦入ノ先驅ニ待ツ所アリシコトハ今玆ニ高
田屋嘉兵衞、閻宮林造等先覺者ノ歷史ニ遡
ルマデモナタ、夫ノ明治八年千島樺太交換
ノ條約ニモ顯ハレマシタ如夕、其第六款第
二項ニハ斯樣ニ書カレテ居ルノデアリマス、
「日本國船及商人、通商航海ノタメニ「オコッ
ク」海及東「カムチヤツカ」ノ海航ニ來リ又
ハ其海岸ニ沿ノテ漁業ヲ營ミ總テ露西亞最
懇親國ノ國民同樣ナル權利及特典ヲ得ルコ
ト」之ニ依テ見マシテモ當時早ク旣ニ邦人ガ
彼地ニ渡リ、事實上漁業權ヲ獲得シ居リマ
シタコトハ明瞭デアルノデアリマス、降ッテ
明治二十六年ニハ彼ノ報効義會ノ會長郡司
大尉ガ、隅田川ニ一葉ノ短艇ヲ艤シ、東都百
萬群衆ヲ歎呼ノ聲ニ送ラレマシテ、幾多ノ
艱難ヲ經テ太平洋ノ波濤ヲ乘切リ、遂ニハ
露領「カムチヤツカ」ノ半島ト一衣帶水、呼ベ
バ應ヘムトスル我ガ極北ノ一孤島タル占守
ノ一角ニ、同志ト共ニ根據地ヲ占メ、刻苦
經營十有餘年、一ハ北門ノ守リヲ以テ自ラ
任ジ、一ハ北洋漁業ニ其身ヲ捧ゲ、遂ニ今
日北洋漁業ノ基礎ヲ創立スルニ至リマシタ
コトハゝ今尙ホ吾人ノ記憶ニ新タナル所ノ
モノデアリマス、郡司大尉ハ本員ノ同意竹
馬ノ友デアリマシテ、彼ハ前途有望ナル所
ノ海軍大尉ノ現役ヲ擲シテ、北洋漁業ノ開拓
ニ其身ヲ投ゼムトスルニ當リマシテ、彼ハ
我等同意ノ友人達ニ向ッテ曰ク、君等ハ今カ
ラ宜シク釣堀ニ絲ヲ垂レテ鮒ヤ鯉ヲ釣レ、
俺ハ是カラ去ッテ北溟ニ大鯨ヲ釣ッテ見セル
あ、呵々大笑シテ互ニ惜シキ手ヲ別チマシ
タ其時ノ彼ノ音容ハ今尙ホ髣髴トシテ本
員ノ眼底ニ殘ッテ居ルノデアリマス、此海國
男兒ニ恥デザル彼ノ意氣コツ、軈テ北洋漁
業今日ノ盛況ノ基ヲ開ケル先驅者トシテ、
彼ハ實ニ北洋漁業界ノ一大恩人デアルト同
時ニ、彼ハ國家ニ對シテ偉大ナル貢獻者ノ
一人デアルト思フノデアリマス、現行ノ日
露漁業條約ハ實ニ其源ヲ「ポーツマス」條約
ニ發スルモノデアリマシテ、其第十一條ニ
ハ「露西亞園ハ日本海「オコーツク」海及「べ
〓リング」海ニ瀕スル露西亞領地ノ沿岸ニ於
ケル漁業權ヲ日本國臣民ニ許與セムガ爲日
本園ト協定ヲナスベキコトヲ約ス、前項ノ
約束ハ前記方面ニ於テ既ニ露西亞國又ハ外
國ノ臣民ニ屬スル所ノ權利ニ影響ヲ及ホサ
サルコトニ双方同意ス」斯樣ニアルノデア
リマス、次デ明治四十年ノ七月二十五日、
露都ニ於ケル本野「イズヴオルスキー」協約
トナリ大正十四年一月二十日、北京ニ於
テ芳澤「カラハン」ノ基本的法則ニ關スル條
約トナリ、最後ニ昭和三年一月二十三日莫
斯科ニ於ケル田中「カラハン」調印ニ係ル現
行條約ナルモノガソレデアルノデアリマス、
卽チ之ニ依ッテ見マシテモ、此北洋漁業權ナ
ルモノハ、日露戰役、我將士十萬ノ碧血ニ
彩ラレタル戰捷記念塔トシテ我ガ子々孫々
ニ傳フベキ極メテ貴重ナル戰利品ナルコト
ヲ知ルト同時ニ、當年ノ講和大使小村全權
ガ、一時ノ賠償金ニハ目モ吳レズ、其代償
トシテ此國家百年ノ長計ノ基ヲ爲ス所ノ此
北洋漁業權ヲ獲得セル其卓見ニハ、今更敬
服セシメラレザルヲ得ナイノデアリマス、
此貴重ナル戰利品タル北洋漁業權ノ運命
ガ、將來我國民ノ生存上如何ニ偉大ナル效
果ヲ齎スベキカハ、明治四十年卽チ北京條
約締結當時ニ於テハ、年ニ二百万圓內外ノ
產額ニ過ギザリシモノガ、現在ニ於キマシ
テハ我國獨創ニ係ル所ノ公海漁撈蟹工船ノ
分ヲ合セマシテ、約六千万圓以上ノ產額ニ
達シ、而シテ其八割卽チ約四千八百万圓ハ
何レモ之ヲ海外ニ輸出シ、我ガ國際貸借ノ上
ニ極メテ重要ナル位置ヲ占メ、其國家經濟ニ
貢獻スル尠ナカラザルモノアルニ顧ミマシテ、
此露領沿岸竝ニ「オコーツク」海ニ於ケル邦人
漁業ノ經營ハ、單ニ一漁業家ノ私的企業ニ
アラズシテ、實ニ國家經濟ノ消長ニ關スル
所ノ國家的企業ト看做スモ敢テ過當デアラ
ザルコトヲ知ルモノデアリマス、然リ北洋
漁業ナルモノハ、斯ノ如キ特殊ノ歷史ト我
ガ國家經濟ノ繫ル所、斯ノ如ク重要ナルモ
ノアルニ拘ラズ、近來露國政府ノ爲ス所ヲ
見マスルニ、彼ハ漁業條約ヲ無視シ、或ハ
其裏ヲ潜リ、又ハ殊更ニ條文ヲ曲解シ、其
他種々ノ壓迫手段ヲ講ジテ我ガ北洋漁業ノ
權益ニ向ッテ、之ニ阻害ヲ試ミムトスルコト
ハ殆ド枚擧ニ遑ナイノデアリマス、今其目
立チタル所ノ重モナルモノニ付テ諸君ノ御
參考ニ供シタイト思フノデアリマス、先ヅ
其尤ナルモノノ一ツト致シマシテハ、彼ハ
其國營企業トシテ許サルベキ漁獲高ニハ自
ラ限度ノアルヲ以チマシテ、彼ハ個人名義
ノ假面ノ下ニ漁區ノ入札競賣場裡ニ進出
ヲ企テムトスルモノデアリマス、其結果
トシテ彼ノ漁業區域ハ日ニ月ニ其進出增加
ヲ見ルニ反比例イタシマシテ、我漁業區域
ガ日ニ月ニ侵蝕凋落ノ途ヲ迪ラムトシツツ
アルノデアリマス、卽チ昭和四年度昭和五
年度ノ二囘ノ競賣ニ於キマシテ、邦人旣得
經營漁區ハ四十三箇所、其他邦人ト密接ノ
利害關係ヲ有スル者ノ漁區四十三箇所ガ
彼ノ爲ニ獲得セラレタルガ如キハ卽チ其一
例デアリマス、尙ホ聞ク所ニ依リマスレバ
彼ハ今囘新ニ二十八箇所ノ國營漁區ヲ我ニ
要求シテ參ッタト云フコトデアリマス、其交
換條件ト致シマシテハ、豫テ問題ニナッテ
居リマス所ノ露貨ノ換算率等ニ付テ幾分ノ
讓步ヲ致スト申シテ居リマスガ、ソレモ我
ガ主張ノ三十錢ドコロデナク三十五錢アタ
リノ所ヲ以テ、ソレデ折合ハウト云フ、誠
ニ蟲ノ宜イコトヲ言ッテ居ルヤウニ見エテ
居ルノデアリマス、是等ノ行爲ハ全ク條約
ノ精神ヲ無視セル所ノ重大ナル違反行爲ト
言ハネバナラヌノデアリマス、若シ我ガ政
府ニシテ斯ノ如キ彼ノ行爲ヲ看過シ、荏苒
解決スル所ナキニ於キマシテハ、日露漁區
ノ對比ハ從來八ト二ノ割合デアリマシタモ
ノガ、今ハ僅ニ日露五分五分、否、ソレス
ラ之ヲ割ラムトスル現狀マデニ侵蝕サレマ
シタ、斯ノ如キハ久シカラズシテ往時ノ割
合ハ、日露其地位ヲ〓倒スルニ至ラムコト
ヲ虞ルルモノデアリマス、熟彼ノ國家經
濟組織カラ考ヘマスルト、個人ガ斯ノ如キ
多大ノ資本ヲ投ジテ、自ラ漁區ノ經營ニ當
ル如キハ固ヨリ有リ得ベカラザルコトデア
リ、且ツ裏面カラ是等ノ經營者ノ資產狀態
ヲ調査イタシマスルニ、其財產ノ如キハ殆
ド無一物者デアルニモ拘ラズ、斯カル企業
ニ從事スル者アルハ、是レ全ク政府ノ一傀
儡トシテ、其個人名義ノ下ニ國營事業ヲ行
ハムトスルモノナルコトハ、蓋シ思ヒ半バ
ニ過グルモノガアルノデアリマス、漁業條
約ノ第二條ニハ斯樣ニナ"テ居ルノデアリ
マい、前略ニ致シマシテ、「右漁區ノ貸附ニ
ハ競賣ニ依リテ之ヲ爲シ日本國民ト「ソヴィ
エート」社會主義共和國聯邦人民トノ間
ニ何等ノ差別ヲ設タルコトナカルベシ」卽
チ日露兩國人ハ平等ノ立場ニ於テ競賣ニ從
事スルニ當リ、彼ハ「ソヴィエート」政府ヲ
背景、否、政府其モノヲ向フニ〓シテ、我ガ
漁業者ガ如何程焦リマシテモ到底勝目ノナ
イコトハ、彼等ハ幾ラ高イ相場ニ於テモ競
リ落サウト致シマスレバ決シテ不可能デ
ハナイノニ反シマシテ、我ハ採算ヲ無視シ
テ之ヲ行フ能ハザルコトハ當然ノコトデア
リマスカラ、名義コソ競賣デアリマスガ、
結局此競賣ト云フコトハ無意義ト同意義ニ
ナルノデアリマス、果シテ斯ノ如クバ近キ
將來ニ於テ我ハ彼ノ個人名義ノ下ニ國營ヲ
行フ者ノ爲ニ北洋漁業場裡カラ擊退殲滅サ
レマシテ、其運命ハ豫メ知ルベキモノデア
ルト思フノデアリマス、斯ノ如キ歷史ヲ有
シ、斯ノ如キ國家經濟的ノ意義ヲ有シ、最
後ニ日露戰役將士十萬ノ碧血ヲ以テ彩ラレ
タル戰勝記念塔タル所ノ此漁業權ヲシテ、
斯ノ如キ運命ニ委スルコトハ、何トシテモ
我等ノ堪ヘル所デハナイノデアリマス、我
ガ政府モ亦此企業家ガ斯カル不利ナル立場
ニ置カレタルコトニ同情サレ、彼等ニ對抗
セムガ爲ニハ、何等カ援助ノ方法ヲ講ズル
所アルベシトノ意向サヘモ漏シテ居ルヤウ
デアリマスガ、援助ト申シテモソレニハ自
カラ制限ノアルコトヲ免レヌノデアリマス
カラ、限リアル援助ノ下ニ限リナキ彼ノ國
營「トラスト」ト戰フモ、到底勝目ノナキハ
當然デアリマス、故ニ苟モ我ガ北洋漁業家
ヲシヲ將來立行クコトヲ得セシメヤウト致
シマスノニハ結局彼ヲシテ根本的ニ條約
違反ノ行爲ヲ改メシムルヨリ外ニ手段ヲ發
見スルコトガ出來ヌト思フノデアリマス、
我ミノ政府ニ期待スル所ノ骨子ハ實ニ此ニ
アルノデアリマス、惟フニ近來彼ノ北洋漁
業ニ對スル進出振リハ、實ニ目覺シキモノ
ガアルノデアリマス、ソレハ新條約ガ締結
サレマシテカラ玆ニ僅ニ二箇年、此間ニ彼
ハ其條約實施以前ニハ僅ニ四十箇所ニ過ギ
ザリシモノガ、今ヤ一躍シテ二百六十九箇
所ノ漁區ヲ獲得スル迄ニナリマシタコトハ、
抑ソレハ何ヲ語ルモノデアリマセウカ、
ソレハ露國ガ近來北洋漁業ノ頗ル有利ナル
企業ナルコトニ著目ヲ始メマシタル時モ時、
恰モ好シ、一方ニハ「スターリン」ノ國內產
業開發ノ國策ニ基キ、國家五箇年計畫ノ下
ニ有ユル農業、工業、漁業等著々其經營ノ
步武ヲ進メマシテ、昨年十月ヲ以テ、旣ニ
其二箇年ノ計畫ヲ終リ、其成績ハ又頗ル見
ルベキモノガアルト云フコトデアリマス、
卽チ北洋漁業ナルモノモ其一ツニ屬スルモ
ノデアリマシテ、其資金ハ、無慮二十六億
留ガソレニ割當テラレテ居ルト云フコトデ
アリマス、而シテ今年度ノ極東方面諸種ノ
事業ニ充ツル爲メ、執行委員カラ中央ニ向ッ
テ要求シマシタ所ノモノハ、十億留ト云フ
コトデアリマシタガ、經濟上其他政治上ノ
都合ニ依リマシテカラ、是ハ五億留ガ割當
テラレルコトニナッタト云フコトデアリマ
シテ、卽チ其中五千五百万留ガ北洋漁業資
金ニ割當テラレタト云フコトデアリマス、
元來此露國政府ノ利權政策ナルモノハ、千九
百二十年、時ノ執權「レニン」ハ革命以前カ
ラ久シク廢頽イタシテ居ル所ノ國內ノ產業
工業ノ開發ヲ圖リ、併セテ復興資金ノ吸收
ノ爲ニ、利權法ナル法律ヲ發布イタシマシ
テ、次イデ千九百二十三年ニハ利權委員會
ノ官制ヲモ公布シ、諸外國ニ對シテ熾ンニ
利權ヲ提供シマシタ所、大小各種ノ企業ヲ
出願セルモノハ其當時約二千ヲ數ヘ、內契
約ヲ締結イタシタモノハ其一割ニ及ンダノ
デアリマスガ、其條件ノ苛酷ナル等ノ故ヲ
以チマシテ、千九百二十六年ニハ其數ハ百
二件トナッタノデアリマス、然ルニ「レニン」
歿後、「スターリン」ガ政權ヲ把握スルニ及
ビマシテ、其政策ヲ一變イタシ、利權囘收
ノ方法ヲ定メテ、種々辭柄ヲ設ケテ利權企
業ニ壓迫ヲ試ミ、「スターリン」就職後三年
ノ後ニ於テ、卽チ千九百二十九年ニハ利權
ノ現存スルモノ僅ニ五十九件ヲ剩スノミニ
ナッタノデアリマス、卽チ我ガ北洋漁業ニ對
スル壓迫的行爲モ亦此「スターリン」利權囘
收ノ鋒芒ノ現ハレノ一ツデアリマシテ、我
ガ北洋漁業ノ權益モ亦此驅逐的笞ノ下ニ、
日ニ月ニ侵蝕サレツツアルコトハ、旣ニ前
ニ申述ベタ通リデアリマス、尙ホ諸君ノ御
了解ニ便ニスル爲ニ、更ニ北洋漁業問題ニ
絡ハル所ノ日露交渉案件ノ因ヲ爲ス所ノモ
ノ、ソレヲ短簡ニ其〓要ヲ列擧シテ見タイ
ト思フノデアリマス、卽チ個人名義ノ假面
ノ下ニ國營企業ヲ行ヒ、他ヲシテ漁區競賣
場裡カラ敗退ヲ餘儀ナクセシメ、合法的ニ
全漁區ヲ奪取セムトスルガ如キ潛行的條
約違反ヲ敢テセムトスルモノハ其一デア
リマス、勝手ニ條約上ノ文意ニ解釋ヲ施
シ、之ニ依ッテ他ノ優良ナル漁區ヲ奪取
シテ顧ミザル如キモノハ卽チ其二デアリ
マス、國際相場ノ通義ニ依ルコトナクシ
テ、不法ナル換算率ヲ露貨ノ上ニ設定シ、
之ニ依ッテ他ノ採算ヲ不可能ナラシメ、以テ
競賣場裡カラ敗退ヲ餘儀ナクセシメムトス
ルハ其三デアリマス、在浦鹽斯德ノ朝鮮銀
行支店ニ强制閉鎖ヲ命ジ露貨ヲ得ルノ途
ヲ閉ヂ他ヲシテ漁業ヲ續行スルコトヲ不可
能ナラシメルモノハ其四デアリマス、公海
ニ於テ屢、我ガ船舶ヲ砲擊又ハ拿捕スル等、
我國獨創ニ係ル所ノ蟹工船ノ漁業ニ阻害ヲ
加ヘタルモノハ卽チ其五デアリマス、濫リ
ニ漁區ノ最低價格ノ基礎ヲ變更シ、之ニ高
率ヲ課シ、計畫的ニ邦人ニ對シ經濟的ニ驅
逐ヲ試ミムトスルモノハ其六デアリマス、
漁業ノ必需品ニ不當ナ課稅ヲ行ヒ、經濟的ニ
壓迫ヲ加ヘムトスルモノハ其七デアリマ
ス、以上列擧セル中、第一及第二ハ國際道
義ノ觀念ヨリ見テ、確カニ日露漁業條約ノ
精神ヲ蹂躪スルモノナルコトハ疑ノ餘地ナ
キモノデアリマス、殊ニ昭和三年一月二十
三日、日露漁業條約締結ノ際ニ、故後藤子
爵ニ與ヘタル彼ノ紳士的聲明ナルモノハ斯
樣デアリマス、「「ソヴイエート」聯邦全權委
員ハ「ソヴイエート」聯邦政府ガ漁業條約圈
內ノ地方ニ於テ日本國臣民ノ從事スル漁業
ノ大ル經濟的意義ヲ認メ、前記條約ニ從
ビ、日本國臣民ノ正當ニシテ合法的ナル利
益カ侵害セラルルコトナカラシムルコトニ
付適當ノ考慮ヲ加フル用意アルコトヲ聲明
ス」、此聲明ニ對シテ今彼ノ爲ス所ヲ見マス
ニ、彼ノ國際信義ナルモノハ何處ニアルカ
ヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、今ニシ
テ翻然覺ル所ナキニ於テハ、或ハ日露國交
上甚ダ好マシカラザル暗雲ニ掩ハレルコト
ナキカヲ虞レルモノデアリマス、又最近最モ
信ズベキ所ノ通報ニ依リマスレバ、彼ハ日
本ノ漁夫、卽チ彼國ノ漁獲ニ從事スル所ノ
モノ約六千人アルト云フコトデアリマス
ガ、是等ニ對シテハ最モ深刻ナル赤化ノ運
動ヲ行ヒ、彼等ヲシテ赤化スルコトニ非常
ニ努メテ居ルト云フコトデアリマシテ、是
ガ再ビ日本ニ歸リマシタ時ハ、實ニ怖ルベ
キモノト思フノデス、此點ニ付テハ條約締
結ノ際ニ既ニ日本ニ於キマシテモ大ニ考慮ま
ヲ費シタモノデアリマス、果シテ斯ノ如ク
デアルト致シマスレバ、政府當局ニ於テモ、
大イニ此點ニ於テ考慮ヲ願ハナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス、由來北洋漁業ノ間
題ナルモノハ、近年日露兩國間ノ痼疾トナッ
タ如キ觀ヲ呈シテ居ルノデアリマス、其發
作ハ周期的ニ起ルモノデアリマシテ、渺茫
タル北洋ニ春立還リ、其海面ニ氷雪ガ消エ、
無數ノ鮭、鱒ガ露領沿海ノ河川ニ上ボル頃、
浦鹽斯德ノ漁業廳ニ漁區ノ競賣ノ行ハルル
時ニハ漁區ノ爭奪、競賣ノ紛糾ガ雜然ト
シテ起ルノデアリマス、斯ノ如キハ啻ニ日
本漁業家ノ一大打擊タルノミナラズ、國家
經濟ノ見地ヨリモ實ニ測ルベカラザル損失
ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、我ガ
貴族院ハ比年此問題ニ絡ハル日露兩國間ノ
糾紛ノ速ニ解決セムコトヲ希望スルガ爲
ニ、昨年五十八議會ニ於テ一ツノ建議案ヲ
提出シ、只管政府ノ善處ニ期待スル所アリマ
シタニ拘ラズ、荏苒今日ニ於テモ解決スル
所ナキノミナラズ、本問題ニ對スル一般ノ
物情ハ、露國ノ新產業政策ノ進展ト相俟ッ
テ、更ニ一段ノ難關ヲ加ヘムトスルノ觀ナ
キ能ハズ、其偶、突發セル所ノ鮮銀强制閉鎖
ハ、延イテ我國ノ漁業家ノ死活ニ關スル「ル
ーブル」問題ノ如キ、一層事態ヲ糾紛ニ導
キ殊ニ來月ノ出漁期ヲ前ニ控ヘナガラ、
何等懸案ノ上ニ進展ノ跡ヲ見ル能ハザルコ
トハ、吾人ノ最モ遺憾トスル所デアリマス、
然ラバ此問題ハ遂ニ解決ノ途ナキカト申シ
マスルニ、本員ハ必シモ然ラズト信ズル者
デアリマス、ソレハ外デモアリマセヌ、彼
等ヲシテ其正ニ還ラシムルコトデアリマ
ス、而シテ其正ニ還ラシムルノ重モナルモ
ノハ何カト申シマスルニ、其第一ハ個人名
義ノ假面ニ隱レ、國營ノ仕事ヲ行フト云フ
ヤウナ、條約ノ精神ニ違反スル如キ陰險ナ
ル手段ヲ放棄セシムルコトデアリマス、第
二ハ條約ノ文句ヲ曲解シテ、他ノ利害ヲ阻
害シテ顧ミザル、惡辣ナル措置ヲ再ビセザ
ラシムルコトデアリマス、此二ツノ問題コ
ツ、北洋漁業問題ニ絡ハル日露案件中、恐
ラク我ガ企業家ノ死命ヲ永遠ニ制スル所ノ
其尤ナルモノタルコトヲ信ズルノデアリマ
ス、若夫レ鮮銀閉鎖問題ノ如キ、或ハ留換
算率ノ問題ノ如キハ、前ノ條約中ノ根本ニ
觸レタル問題ニシテ解決スル所アルニ於キ
マシテハ、是等ハ寧ロ派生的問題トシテ之
ヲ事務的ニ解決スルニハ、自ラ其途ガアル
デアラウト信ズルノデアリマス、而シテ之
ヲ解決スルニハ宜シク我ハ正ヲ履ンデ恐レ
ザルノ意氣ト決心ヲ以テ、之ニ望ムベキデ
アルト思フノデアリマス、世ノ中ニ正程强
イモノハアリマセヌ、正ヨリ人ノ心ヲ捉へ、
又人ノ心ヲ動カス力アルモノハナイト信ズ
ルノデアリマス、古人曰ク、斷ジテ之ヲ行
ヘバ鬼神モ之ヲ避クト、況ヤ正ハ我ニ在ル
ニ於テオヤデアリマス、本決議案ノ言葉ハ
簡單デアリマスガ、意味ハ頗ル深長デアリ
マス、政府當局ノ眼光ハ必ズ其紙背ニ徹ス
ベキコトヲ信ズル者デアリマス、是レ此決
議案ノ提出ヲ見ル所以デアリマシテ、本
員ガ之ヲ贊成スル理由モ亦玆ニ存スルノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=10
-
011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本決議案ニ對シ
テ他ニ發言者モナイト認メマスカラ、採決
ヲ致シマス、本決議案ニ同意ノ諸君ノ起立
ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=12
-
013・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第一、無盡
業法改正法律案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、大藏政務次官小川〓太郞君
無盡業法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十二日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
無盡業法改正法律案
無盡業法
第一條本法ニ於テ無盡ト稱スルハ一定
ノ口數ト給付金額トヲ定メ定期ニ掛金
ヲ拂込マシメ一口每ニ抽籤、入札其ノ
他類似ノ方法ニ依リ掛金者ニ對シ金錢
ノ給付ヲ爲スヲ謂ブ無盡類似ノ方法ニ
依リ金錢又ハ有償證劵ノ給付ヲ爲スモ
ノ亦同ジ但シ〓博又ハ富籤ニ類似スル
モノハ此ノ限ニ在ラズ
第二條無盡ハ營業トシテ之ヲ爲ストキ
ハ之ヲ商行爲トス
第三條無盡業ハ主務大臣ノ免許ヲ受ク
ルニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
前項ノ免許ヲ受ケントスル者ハ申請書
ニ定款、事業方法ヲ記載シタル書面及
無盡契約約款ヲ添附ジ之ヲ主務大臣ニ
提出スベシ
策四條無盡業ハ資本金三萬圓以上ニツ
テ拂込金額一萬五千圓以上ノ株式會社
ニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
第五條無盡會社ハ其ノ商號中ニ無盡ナ
ル文字ヲ用フベシ
無盡會社ニ非ザルモノハ其ノ商號中ニ
無盡ヲ業トスル者タルコトヲ示スベキ
文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第六條無盡會社ハ他ノ業務ヲ營ムコト
ヲ級チ
第七條無盡會社ノ營業區域ハ道府縣ノ
區域内ニ於テ之ヲ定メ定款中ニ記載ス
ベシ
第八條無盡會社ハ左ノ場合ニ於テハ主
務大臣ノ認可ヲ受クベシ
-定款ヲ變更セントスルトキ
二事業方法又ハ無盡契約約款ヲ變更
セントスルトキ
三出張所又ハ代理店ヲ設置セントス
ルトキ
四本店其ノ他ノ營業所ノ位置ヲ變更
セントスルトキ
第九條無盡會社ハ代理店主ヲシテ其ノ
代理事務ニ關シ代理店ノ出張所其ノ他
ノ從タル營業所又ハ復代理店ヲ設ケシ
ムルコトヲ得ズ
無盡會社ノ代理店主ハ其ノ代理事務ニ
關シ代理店ノ出張所其ノ他ノ從タル營
業所又ハ復代理店ヲ設クルコトヲ得ズ
第十條無盡會社ハ左ノ方法ニ依ルノ外
其ノ營業上ノ資金ヲ運用スルコトヲ得
ズ
國債、地方債其ノ他特別ノ法令ニ
依リ設立シタル法人ノ債劵又ハ株式
ノ買入
二前號ノ有價證劵又ハ不動產ヲ擔保
トスル貸付
三掛金者ニ對シ旣ニ拂込ミタル金額
ヲ限度トスル貸付
四掛金者ニ對シ旣ニ拂込ミタル金額
ヲ超過シ契約給付金額ヲ限度トスル
貸付
五銀行ヘノ預ヶ金又ハ郵便貯金
前項第四號ノ規定ニ依ル貸付金總額ハ
拂込資本金及諸準備金ノ總額ヲ超ユル
コトヲ得ズ
第十一條無盡會社ガ會社財產ヲ以テ其
ノ債務ヲ完濟スルコト能ハザルニ至リ
タルトキハ無盡契約ニ基ク會社ノ債務
ニ付各取締役ハ連帶シテ其ノ辨償ノ責
二代之
前項ノ責任ハ取締役ノ退任登記前ノ債
務ニ付退任登記後二年間仍存續ス
第十二條無盡會社竝ニ其ノ取締役、監
査役、使用人及代理店主ハ何人ノ名義
ヲ以テスルヲ問ハズ自己ノ計算ニ於テ
其ノ會社ト無盡契約ヲ爲スコトヲ得ズ
第十三條無盡會社ハ無盡ノ缺口又ハ掛
金ノ拂込ヲ爲サザル者アル場合ト雖モ
第一囘ノ抽籤、入札其ノ他類似ノ方法
ヲ行ヒタル後ハ掛金者ノ不利益ニ給付
ヲ變更シ又ハ掛金額ヲ增加スルコトヲ
得ズ
第十四條無盡會社ハ資本ノ總額ニ達ス
ル迄ハ利益ヲ配當スル每ニ準備金トシ
テ其ノ利益ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベ
シ
第十五條無盡會社ノ營業年度ハ一月ヨ
リ六月迄及七月ヨリ十一一月迄トス
第十六條無盡會社ハ營業年度每ニ業務
報〓書ヲ作成シテ之ヲ主務大臣ニ提出
スベシ
第十七條無盡會社ハ營業年度每ニ主務
大臣ノ定ムル樣式ニ依リ貸借對照表ヲ
作成シ新聞紙ニ依リ之ヲ公告スベシ
第十八條無盡會社ノ監査役ハ無盡會社
ノ業務及財產ノ狀況ニ關スル調査ノ結
果ヲ記載シタル監査書ヲ每營業年度一
囘作成シテ之ヲ本店ニ備へ置クベシ
第十九條無盡會社ノ常務ニ從事スル取
締役又ハ支配人ガ他ノ會社ノ常務ニ從
事セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ
受クベシ
第二十條掛金者ハ無盡會社ニ對シ其ノ
加入シケル無盡ノ掛金者五分ノ一以上
ノ同意ヲ以テ其ノ加入シタル無盡ニ關
シ命令ノ定ムル事項ニ付說明書ノ交付
ヲ求ムルコトヲ得
第二十一條無盡會社ノ合併ハ主務大臣
ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ
生ゼズ
第二十二條主務大臣ハ何時ニテモ無盡
會社ヲシテ其ノ業務ニ關スル報〓ヲ爲
サシメ又ハ監査書其ノ他ノ書類帳簿ヲ
提出セシムルコトヲ得
第二十三條主務大臣ハ何時ニテモ無盡
會社ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査スルコ
トヲ得
第二十四條主務大臣ハ無盡會社ノ業務
又ハ財產ノ狀況ニ依リ必要ト認ムルト
キハ事業方法若ハ無盡契約約款ノ變
更業務ノ停止又ハ財產ノ供託ヲ命ジ
其ノ他必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十五條無盡會社ガ法令、定款若ハ
主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害
スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣
ハ業務ノ停止若ハ取締役、監査役ノ改
任ヲ命ジ又ハ營業ノ免許ヲ取清スコト
ヲ得
第二十六條主務大臣ハ業務ノ停止ヲ命
ゼラレタル無盡會社ニ對シ其ノ整理ノ
狀況ニ依リ必要ト認ムルトキハ營業ノ
免許ヲ取消スコトヲ得
第二十七條無盡業ノ廢止又ハ無盡會社
ノ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受タ
ルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十八條無盡會社ガ其ノ目的ヲ變更
シ他ノ業務ヲ營ム會社トシテ存續スル
場合ニ於テハ無盡會社ニ關スル事務ヲ
管理スル主務大臣ハ其ノ會社ガ掛金者
ニ對スル債務ヲ完濟スルニ至ル迄財產
ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ爲
スコトヲ得合併ニ因リ無盡會社ニ非ザ
ル會社ガ無盡會社ノ掛金者ニ對スル債
務ヲ承繼シタル場合亦同ジ
第二十二條及第二十三條ノ規定ハ前項
ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十九條無盡會社ガ營業ノ免許ヲ取
消サレタルトキハ之ニ因リテ解散ス
前項ノ場合ニ於テ〓算入ハ利害關係人
ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ裁判所之
ヲ選任ス其ノ〓算人ノ解任亦同ジ
第三十條前條ノ場合ヲ除クノ外裁判所
ハ利害關係人ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ
以テ〓算人ヲ解任スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ〓算人ヲ解任シタル
トキハ裁判所ハ〓算人ヲ選任スルコト
ヲ得
第三十一條裁判所ハ無盡會社ノ〓算事
務及財產ノ狀況ヲ檢査シ、財產ノ供託
ヲ命ジ其ノ他〓算ノ監督ニ必要ナル命
令ヲ爲スコトヲ得
第三十二條無盡會社ノ〓算、破產又ハ
强制和議ノ場合ニ於テ裁判所ハ無盡會
社ノ檢査監督ニ從事スル官吏ニ對シ意
見ヲ求メ又ハ檢查若ハ調査ヲ囑託スル
コトヲ得
第三十三條無盡會社ノ〓算、破產又ハ
强制和議ノ場合ニ於テ無盡會社ノ檢査
監督ニ從事スル官吏ハ裁判所ニ對シ意
見ヲ述ブルコトヲ得
第三十四條無盡管理會社ハ其ノ管理ス
ル無盡ノ掛金ノ拂込ナキ場合ニ於テ掛
金者ニ代リ掛金ノ拂込ヲ爲ス責ニ任
ズ
第三十五條無盡管理會社ハ其ノ管理ス
ル無盡ノ加入者ニ代リ掛金ノ拂込及給
付金ノ支拂ニ關シ一切ノ裁判上又ハ裁
判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有ス
掛金ノ拂込又ハ給付金ノ支拂ニ關スル
訴ニ於テハ無盡管理會社ハ原〓又ハ被
告ト爲ルコトヲ得
第三十六條主務大臣ノ免許ヲ受ケズシ
テ無盡業ヲ營ミタル者ハ三千圓以下ノ
罰金ニ處ス
第三十七條左ノ場合ニ於テハ取締役、監
査役、支配人又ハ〓算人ヲ一年以下ノ懲
役若ハ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
-業務報告書又ハ監査書ノ不實ノ記
載、虛僞ノ公〓其ノ他ノ方法ニ依リ
官廳又ハ公衆ヲ欺罔シタルトキ
二本法ニ依ル檢査ニ際シ帳簿書類ノ
隱蔽、不實ノ申立其ノ他ノ方法ニ依
リ檢査ヲ妨ゲタルトキ
第三十八條左ノ場合ニ於テハ取締役、
監査役、支配人、代理店主(代理店主法
人ナルトキハ其ノ業務ヲ執行スル社
員、取締役其ノ他法人ノ代表者)叉ハ〓
算人ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
但シ其ノ行爲ニ付刑ヲ科スベキトキハ
此ノ限ニ在ラズ
一第六條、第八條、第九條、第十條、
第十三條、第十四條、第十七條又ハ
第十九條ノ規定ニ違反シタルトキ
二第七條ノ規定ニ依リ定メタル營業
區域外ニ於テ營業ヲ爲シタルトキ
三無盡會社ガ第十二條ノ規定ニ違反
シタルトキ
四正當ノ理由ナクシテ第二十條ノ說
明書ノ交付ヲ拒ミ又ハ之ニ虛僞ノ記
載ヲ爲シタルトキ
五本法ニ依リ無盡會社ニ備ヘ置クベ
キ書類ノ備附若ハ主務大臣ニ提出ス
ベキ書類ノ提出ヲ怠リ、之ニ記載ス
ベキ事項ヲ記載セズ又ハ之ニ不實ノ
記載ヲ爲シタルトキ
六第二十四條、第二十五條、第二十
八條又ハ第三十一條ノ規定ニ依リ主
務大臣又ハ裁判所ノ爲シタル命令ニ
違反シタルトキ
七本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シ
タルトキ
第三十九條第十二條ノ規定ニ違反シタ
ル取締役、監査役、使用人又ハ代理店主
(代理店主法人ナルトキハ其ノ業務ヲ執
行スル社員、取締役其ノ他法人ノ代表
者)ハ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
前項ノ場合ニ於テハ無盡會社ノ取締役
及監査役ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ
處ス
第四十條第五條第二項ノ規定ニ違反シ
タル者ハ十圓以上百圓以下ノ過料ニ處
ス
第四十一條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ本法ニ定メタ
ル過料ニ之ヲ準用ス
第四十二條本法中主務大臣ノ職權ニ屬
スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ地方
長官ヲシテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第四十三條本法中無盡會社竝ニ其ノ取
締役、監査役、支配人、使用人、〓算
人及代理店主ニ關スル規定ハ無盡管理
會社竝ニ其ノ取締役、監査役、支配人、
使用人、〓算人及代理店主ニ、無盡業
ニ關スル規定ハ無盡管理業ニ之ヲ準用
ス
附則
第四十四條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第四十五條從前ノ規定ニ依リテ免許ヲ
受ケタル株式會社以外ノ無盡業者ニシ
テ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ本法
施行後五年ヲ限リ仍其ノ營業ヲ繼續ス
ルコトヲ得
本法中無盡會社ニ關スル規定ハ前項ノ
無盡業者ニ之ヲ準用ス
第四十六條從前ノ規定ニ依リテ免許ヲ
受ケタル無盡業者ニシテ本法施行ノ際
現ニ存スルモノニ付テハ第四條ノ改正
規定ニ拘ラズ本法施行後五年ヲ限リ仍
從前ノ規定ニ依ル
第四十七條從前ノ規定ニ依リテ免許ヲ受
ケタル無盡業者ニシテ前條ノ期限迄ニ第
四條ノ改正規定ノ要件ヲ具備セザルモノ
ガ其ノ期限迄ニ爲シタル無盡契約ニ付
テハ之ガ完了ニ至ル迄其ノ契約ニ關ス
ル業務ニ限リ之ヲ繼續スルコトヲ得
前項ノ場。合ニ於テ無盡業者ガ前項ノ業
務以外ニ無盡業ヲ營ミタルトキハ三千
圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十八條從前ノ規定ニ依リテ免許ヲ
受ケタル無盡業者ノ本法施行ノ際現ニ
有スル本店及支店以外ノ營業所又ハ代
理店ハ本法施行後一年内ニ主務大臣ノ
認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ存續スル
コトヲ得ズ
前項ノ認可申請書ハ本法施行後三月內
ニ主務大臣ニ提出スベシ
第四十九條本法施行ノ際現ニ無盡會社
ノ常務ニ從事スル取締役又ハ支配人ニ
シテ他ノ會社ノ常務ニ從事スル者ハ本
法施行後一年ヲ限リ主務大臣ノ認可ヲ
受ケズシテ引續キ其ノ會社ノ常務ニ從
事スルコトヲ得
第五十條第四十五條第一項ノ無盡業者
ニシテ會社ニ非ザルモノノ業務廢止ニ
付テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十一條本法中取締役ニ關スル規定
ハ第四十五條第一項ノ無盡業者ニ付テ
ハ其ノ營業主(營業主法人ナルトキハ
其ノ業務ヲ執行スル社員)ニ之ヲ準用
ス
第五十二條從前ノ第三十一條第一項又
ハ第三十二條ノ無盡業者ニ付テハ仍從
前ノ例ニ依ル
第五十三條非訟事件手續法第百三十六
條、第百三十七條及第百三十八條ノ二
中「銀行」ヲ「銀行又バ無盡業若ハ無盡
管理業ヲ營ム會社」ニ改ム
〔政府委員小川〓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=13
-
014・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 只今議題トナ
リマシタ無盡業法改正法律案、提出ノ理由
ヲ簡單ニ說明イタシマス、無盡ハ最モ古キ
沿革ヲ有シマスル我國固有ノ金融方法デア
リマシテ、早クカラ津ミ浦ミニマデ普及シ
テ居ッタノデアリマス、現行ノ無盡業法ハ大
正四年ニ初メテ制定セラレタモノデアリマ
シテ、爾來無盡業者ノ適從スベキ基準トシ
テ、事業ノ發展ニ貢獻シテ參。ッタノデアリマ
ス、併ナガラ其後時勢ノ進運ト本法施行ノ
實蹟トニ鑑ミマシテ、此無盡業ヲシテ一層
庶民金融機關タルノ機能ヲ發揮セシメマス
爲メ、營業上ノ資金運用ノ範圍ヲ擴張スル
外、銀行法、貯蓄銀行法、及信託業法等ノ
規定ヲモ參酌イタシマシテ、或ハ其營業ノ
主體ヲ株式會社ニ制限シ、或ハ無盡會社ノ
監査役ヲシテ每營業年度一囘、監査書ヲ作
製スルノ義務ヲ負ハシムル等、種々ノ改正
ヲ加ヘルコトヲ至當ト認メマシタノデ、玆
ニ無盡業法改正法律案ヲ提出イタシマシタ
次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛ア
ラムコトヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=14
-
015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ抵當證劵
法案外九件ノ特別委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=15
-
016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、自動
車交通事業法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、鐵道大臣江木翼君
自動車交通事業法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十二日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
自動車交通事業法案
自動車交通事業法
第一章自動車運輸事業
第一條本法ニ於テ自動車運輸事業トハ
一般交通ノ用ニ供スル爲路線ヲ定メ定
期ニ自動車ヲ運行シテ旅客又ハ物品ヲ
運送スル事業ヲ謂フ
第二條自動車運輸事業ノ路線ハ一般ノ
道路。自動車道又ハ一般通行ノ用ニ供
スル通路ニ依ルベシ
第三條主務大臣ハ命令ヲ以テ自動車運
輸事業ニ付路線ニ應ジテ使用スベキ自
動車ノ輛數共ノ他事業ノ基準ヲ定ムル
コトヲ得
第四條自動車運輸事業ヲ經營セントス
ル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ運賃其ノ
他ニ關スル事業計畫ヲ定メ主務大臣ノ
免許ヲ受クベシ
主務大臣ハ前項ノ免許ヲ爲スニ當リ命
令ノ定ムル所ニ依リ其ノ有效期間ヲ指
定スルコトヲ得
第五條主務大臣ハ自動車運輸事業者ガ
免許ノ有效期間滿了後仍引續キ其ノ事
業ヲ經營センコトヲ申請シタルトキハ
當該路線ニ依ル自動車運輸事業ノ不必
要其ノ他特別ノ事山ナキ限リ期間更新
ノ免詐ヲ爲スベシ
第六條自動車運輸事業經營ノ免許ヲ受
ケタル者ハ主務大臣ノ指定スル期間內
ニ運輸開始ノ認可ヲ申請スベシ
第十七條第一項ノ專用自動車道ヲ開設
シテ自動車運輸事業ヲ經營スル場合ニ
在リテハ工事方法ヲ定メ前項ノ認可申
請前主務大臣ノ指定スル期間內ニ工事
施行ノ認可ヲ申請スベシ
天災其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ前
二項ノ期間內ニ認可ヲ申請スルコト能
ハザルトキハ申請ニ因リ主務大臣ハ期
間ヲ伸長スルコトヲ得
第七條自動車運輸事業者事業計畫又ハ
專用自動車道ノ工事方法ヲ變更セント
スルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベ
シ
第八條自動車運輸事業ノ自動車ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ登錄ヲ受クルコトヲ
要ス
第九條自動車運輸事業ノ運輸、設備及
會計ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第十條主務大臣ハ公益上必要アリト認
ムルトキハ自動車運輸事業者ニ對シ左
ニ揭グル事項ヲ命ズルコトヲ得
一運賃其ノ他ニ關スル事業計畫又ハ
專用自動車道ノ工事方法ヲ變更セシ
ムルコト
二路線ヲ延長又ハ變更セシムルコト
但シ專用自動車道ノ延長及變更ハ此
ノ限ニ在ラズ
三他ノ運送事業者ト連絡運輸ヲ爲サ
シムルコト
四全部又ハ一部ノ路線ヲ共通ニスル
數人ノ自動車運輸事業者アル場合ニ
共同經營ヲ爲サシムルコト
五旅客又ハ物品ノ運送ニ關スル損害
ニ付保險ニ付セシムルコト
六前各號ノ外事業ノ改善ヲ爲サシム
ルコト
前項第三號及第四號ノ場合ニ於テ其ノ
實施方法又ハ各事業者ノ收得シ若ハ負
擔スベキ金額ニ付協議調ハザルトキハ
申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第十一條免許、許可又ハ認可ニハ條件
ヲ附スルコトヲ得
前項ノ條件ハ公益上必要アルトキハ之
ヲ變更スルコトヲ得
前條第二項ノ規定ハ第一項ノ條件ニ於
テ他ノ運送事業者ヨリ事業ノ讓渡又ハ
共同經營、會社ノ合併等ヲ求メタルト
キハ之ニ應ズベキコトヲ命ジタル場合
ニ於ケル實施方法及收得又ハ負擔金額
ニ之ヲ準用ス
第十二條自動車運輸事業ハ主務大臣ノ
許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ事業ノ全
部又ハ一部ヲ休止シ又ハ廢止スルコト
ヲ政、
第十三條自動車運輸事業ノ讓渡ハ主務
大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
會社ノ合併ニ因ル自動車運輸事業ノ承
繼ニ付テハ合併前主務大臣ノ許可ヲ受
クベシ
自動車運輸事業者死亡シタルトキハ相
續人ハ其ノ事業ヲ承繼ス
自動車運輸事業ヲ營ム會社ノ解散ノ決
議又ハ總社員ノ同意ハ主務大臣ノ認可
ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十四條左ノ場合ニ於テハ主務大臣ハ
自動車運輸事業經營ノ免許ノ全部若ハ
一部ヲ取消シ又ハ事業ノ全部若ハ一部
ヲ停止セシムルコトヲ得
法令又ハ免許、許可若ハ認可ニ附
シタル條件ニ違反シタルトキ
二法令ニ基キテ爲シタル處分又ハ免
許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ
基キテ爲シタル處分ニ違反シタルト
キ
三許可又ハ認可ヲ受ケタル事項ヲ故
ナク實施セザルトキ
四事業ノ經營不確實又ハ資產狀態ノ
著シキ不良其ノ他ノ爲事業ヲ繼續ス
ルニ適セズト認メタルトキ
五公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキ
六道路、自動車道又ハ通路ノ狀況ガ
自動車ノ運行ニ適セザルニ至リタル
トキ
第十五條左ノ場合ニ於テハ自動車運輸
事業經營ノ免許ハ其ノ效力ヲ失フ
運輸開始ノ認可申請期間內ニ認可
ヲ申請セザルトキ
二運輸開始ノ認可ナキトキ
三事業經營ノ免許ヲ受ケタル者會社
ノ發起人ナルトキハ運輸開始ノ認可
申請期間內(路線ノ全部又ハ一部ニ
付專用自動車道ヲ開設スル場合ニ在
リテハ工事施行ノ認可申請期間內)
ニ會社設立ノ登記ヲ爲サザルトキ
四專用自動車道ニ付工事施行ノ認可
申請期間內ニ認可ヲ申請セザルトキ
五專用自動車道ニ付工事施行ノ認可
ナキトキ
六事業ノ廢止ノ許可ヲ受ケタルトキ
七事業ヲ營ム會社解散シタルトキ
第十六條自動車運輸事業以外ノ自動車
ニ依ル運送事業ニ關スル規定ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第二章自動車道及自動車道事業
第十七條本法ニ於テ自動車道トハ專ラ
自動車ノ一般交通ノ用ニ供スル道路
(一般自動車道)及自動車運輸事業者ガ
其ノ事業用自動車ノ専用ニ供スル通路
(專用、自動車道)ヲ謂フ
本法ニ於テ自動車道事業トハ一般自動
車道ヲ開設シ有償又ハ無償ニテ之ヲ專
ラ自動車ノ一般交通ノ用ニ供スル事業
フルクノ
第十八條自動車道事業ヲ經營セントス
ル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ使用料金
其ノ他ニ關スル事業計畫ヲ定メ主務大
臣ノ免許ヲ受クベシ
第十九條自動車道事業經營ノ免許ヲ受
ケタル者ハ工事方法ヲ定メ主務大臣ノ
指定スル期間內ニ工事施行ノ認可ヲ申
請スベシ
天災其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ前
項ノ期間內ニ認可ヲ申請スルコト能ハ
ザルトキハ申請ニ因リ主務大臣ハ期間
ヲ伸長スルコトヲ得
第二十條自動車道事業者工事施行ノ認
可ヲ受ケタルトキハ主務大臣ノ指定ス
ル期間內ニ一般自動車道ノ工事ニ著手
シ之ヲ竣功セシムベシ
前條第二項ノ規定ハ前項ノ期間ノ仲長
ニ之ヲ準用ス
第二十一條自勤車道事業者事業計畫又
ハ一般自動車道ノ工事方法ヲ變更セン
トスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベ
第二十二條自動車道ニ關スル工事ノ爲
必要アルトキハ自動車道事業者又ハ自
動車運輸事業者ハ地方長官ノ許可ヲ受
ケ沿道ノ土地ニ立入リ又ハ其ノ土地ヲ
一時材料置場トシテ使用スルコトヲ
得
前項ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ヲ爲サ
ントスルトキハ已ムヲ得ザル事山アル
場合ヲ除クノ外豫メ土地ノ占有者ニ其
ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
第一項ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ニ因
リテ生ジタル損害ハ立入又ハ使用ノ後
遲滯ナク事業者ニ於テ之ヲ補償スベ
前項ノ補償ニ付協議調ハザルトキハ地
方長官之ヲ裁定ス
前項ノ規定ニ依ル裁定中補償金額ニ不
服アル者ハ裁定ノ通知ヲ受ケタル日ヨ
リ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコト
ヲ得
第二十三條一般自動車道ハ主務大臣ノ
認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ供用ヲ開
始スルコトヲ得ズ
第二十四條一般自動車道ソ構造、維持、
修繕若ハ使用又ハ其ノ交通ノ保全ニ關
スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條主務大臣ハ公益上必要アリ
ト認ムルトキハ自動車道事業者ニ對シ
左ニ揭グル事項ヲ命ズルコトヲ得
-使用料金其ノ他ニ關スル事業計畫
又ハ一般自動車道ノ工事方法ヲ變更
セシムルコト
二一般自動車道又ハ其ノ附屬物件ノ
改善ヲ爲サシムルコト
第二十六條免許、許可又ハ認可ニハ條
件ヲ附スルコトヲ得
前項ノ條件ハ公益上必要アルトキハ之
ヲ變更スルコトヲ得
第二十七條自動車道事業者ハ主務大臣
ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ事業ニ
屬スル一般自動車道ノ全部又ハ一部ノ
供用ヲ休止シ又ハ廢止スルコトヲ得
ズ
第二十八條自動車道事業ノ讓渡ハ主務
大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
會社ノ合併ニ因ル自動車道事業ノ承繼
ニ付テハ合併前主務大臣ソ許可ヲ受ク
ベシ
自動車道事業者死亡シタルトキハ相續
人ハ其ノ事業ヲ承繼ス
自動車道事業ヲ營ム會社ノ解散ノ決議
又ハ總社員ノ同意ハ主務大臣ノ認可ヲ
受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十九條左ノ場合ニ於テハ主務大臣
ハ自動車道事業經營ノ免許ノ全部又ハ
一部ヲ取消シ又ハ事業ノ全部又ハ一部
ヲ停止セシムルコトヲ得
法令又ハ免許、許可若ハ認可ニ附
ジタル條件ニ違反シタルトキ
二法令ニ基キテ爲シタル處分又ハ免
許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ
基キテ爲シタル處分ニ違反シタルト
キ
三主務大臣ノ指定スル期間內ニ工事
ヲ竣功セズ其ノ他許可又ハ認可ヲ受
ケタル事項ヲ故ナク實施セザルト
キ
四事業ノ經營不確實又ハ資產狀態ノ
著シキ不良其ノ他ノ爲事業ヲ繼續ス
ルニ適セズト認メタルトキ
五公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキ
第三十條左ノ場合ニ於テハ自動車道事
業經營ノ免許ハ其ノ效力ヲ失フ
工事施行ノ認可申講期間內ニ認可
ヲ申請セザルトキ
二工事施行ノ認可ナキトキ
三事業經營ノ免許ヲ受ケタル者會社
ノ發起人ナルトキハ工事施行ノ認可
申請期間內ニ會社設立ノ登記ヲ爲サ
ザルトキ
四一般自動車道ノ供用ノ廢止ノ許可
ヲ受ケタルトキ
五事業ヲ營ム會社解散シタルトキ
第三十一條政府又ハ政府ノ許可ヲ受ケ
タル者ガ自動車道ニ接續シ若ハ接近シ
又ハ之ヲ橫斷シテ一般ノ道路、自動車
道、橋梁、河川、運河、溝渠、鐵道、
輸道、索道等ヲ造設セントスルトキハ
自動車道事業者又ハ自動車運輸事業者
ハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
前項ノ塲合ニ於テ公益上必要アリト認
ムルトキハ主務大臣ハ自動事道事業者
又ハ自動車運輸事業者ニ對シ設備ノ共
用又ハ變更ヲ命ズルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ其ノ實施方法及費
用ノ負擔ニ付協議調ハザルトキハ申請
ニ因リ關係主務大臣之ヲ裁定ス自動車
道事業者又ハ自動車運輸事業者ノ受ケ
タル損害ノ補償ニ付亦同ジ
第二十二條第五項ノ規定ハ前項ノ補償
金額ニ之ヲ準用ス
第三十二條一般自動車道以外ノ自動車
ノ通行スル道路ヲ開設シテ使用料金ヲ
徵收スル場合ニ關スル規定ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三章共通規定
第三十三條同一ノ一般自動車道ニ依ル
自動車道事業及自動車運輸事業ノ兼營
ノ場合ニ於ケル免許、許可及認可ニ關
シテハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコト
ヲ得
第三十四條主務大臣又ハ地方長官(東
京府ニ在リテハ警視總監ヲ含ム、以下
同ジ)ハ必要アリト認ムルトキハ自動
車運輸事業者又ハ自動車道事業者ヲシ
テ事業上ノ報告ヲ爲サシメ、書類ヲ提
出セシメ又ハ監査員ヲ派遣シテ事業ノ
狀況ヲ監査セシムルコトヲ得
監査員ハ自動車運輸事業者若ハ自動車
道事業者又ハ其ノ代表者若ハ其ノ他ノ
從業者ニ說明ヲ求メ帳簿、書類及圖面
ヲ檢閱スルコトヲ得
第三十五條本法ニ規定スル主務大臣ノ
職權ノ一部ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第三十六條本法又ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令ニ規定シタル事項ニ付主務大臣
又ハ地方長官ノ爲シタル處分ニ不服ア
ル者ハ訴願ヲ爲スコトヲ得
第三十七條國ニ於テ經營スル自動車運
輸事業及自動車道事業ニ付テハ第一條
乃至第三條、第九條(會計ニ關スル規定
ヲ除ク)、第十七條、第二十二條、第二
十四條及第五十四條乃至第五十七條ノ
規定ニ限リ本法ヲ適用ス
國ニ於テ自動車運輸事業又ハ自動車道
事業ヲ經營セントスルトキハ當該官廳
ハ主務大臣ニ協議ヲ爲スベシ
第四章自動車交通事業抵當
第三十八條自動車運輸事業又ハ自動車
道事業ヲ營ム株式會社ハ抵當權ノ目的
ト爲ス爲自動車運輸事業又ハ自動車道
事業ノ全部又ハ一部ニ付自動車交通事
業財團ヲ設定スルコトヲ得
自動車運輸事業及自動車道事業ノ抵當
ニ關シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノ
ヲ除クノ外鐵道抵當法ヲ準用ス但シ同
法第一章及第三章中登錄トアルハ登
記第四十六條、第六十八條及第六十
九條中監督官廳トアルハ登記所、第八
十條乃至第八十二條、第八十八條及第
九十二條中監督官廳トアルハ裁判所ト
ス
第三十九條自動車交通事業財團ハ左ニ
揭グルモノニシテ同一自動車運輸事業
者又ハ同一自動車道事業者ニ屬シ且其
ノ事業ニ關スルモノヲ以テ之ヲ組成ス
一自動車道ノ敷地及其ノ上ニ存スル
工作物竝ニ之ニ屬スル器具機械
二發著場、駐車場其ノ他自動車運行
ノ爲必要ナル沿線土地及其ノ上ニ存
スル工作物竝ニ之ニ屬スル器具機械
三自動車庫、停留所、貨物庫、給油
所、附屬工場、事務所、事務員駐在
所其ノ他事業ノ爲必要ナル建物及其
ノ敷地竝ニ之ニ屬スル器具機械
四通信又ハ信號ニ要スル工作物及其
ノ敷地竝ニ之ニ屬スル器具機械
五前四號ニ揭グル工作物ヲ所有シ又
ハ使用スル爲他人ノ不動產ノ上ニ存
スル地上權及第三者ニ對抗シ得ベキ
賃借權竝ニ前四號ニ揭グル土地ノ爲
ニ存スル地役權
六自動車運輸事業ノ爲登録ヲ受ケタ
ル自動車及其ノ附屬品
七事業經營ノ爲必要ナル貯藏物品及
器具機械
第四十條前條第一號乃至第三號ニ揭グ
ル不動產ノ何レモガ存セザルトキハ自
動車運輸事業ノ爲ニ自動車交通事業財
團ヲ設定スルコトヲ得ズ
自動車交通事業財團ヲ目的トスル抵當
權ハ之ノミニ依リテ擔保セラルル債務
ノ額ガ三萬圓以上ナラザルトキハ之ヲ
設定スルコトヲ得ズ但シ第二以下ノ順
位ノ抵當權設定ノ場合ハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第四十一條自動車運輸事業又ハ自動車
道事業ノ一部ニ付自動車交通事業財團
ヲ設定スル場合ニ於テハ自動車運輸事
業ニ在リテハ獨立ノ路線ニ付、自動車
道事業ニ在リテハ獨立ノ一般自動車道
ニ付之ヲ爲スコトヲ要ス
第四十二條同一事業者ガ自動車運輸事
業ト自動車道事業トヲ兼營スル場合ニ
於テハ兩事業ニ關スルモノヲ合シテ一
個ノ自動車交通事業財團ヲ設定スルコ
トヲ得但シ自動車運輸事業又ハ自動車
道事業ノ何レカ一方ニ付自動車交通事
業財團ノ設定アリタル後ハ此ノ限ニ在
ラズ
前項ノ事業者ガ各事業ニ付各膊ニ自動
車交通事業財團ヲ設定スル塲合ニハ一
般自動車道ノ敷地其ノ他專ラ自動車通
事業ニ關スルモノハ自動車運輸事業ノ
爲ノ自動事交通事業財團ニ屬スルコト
ナシ
第四十三條自動車交通事業財團ノ設定
ハ自動車交通事業財團登記簿ニ所有權
保存ノ登記ヲ爲スニ依リテ之ヲ爲ス
自動車交通事業財團登記簿ニ所有權保
存ノ登記ヲ爲シタルトキハ第三十九條
ニ規定スルモノハ當然自動車交通事業
財團ニ屬ス但シ第三者ニ對抗シ得ベキ
他人ノ權利ノ目的タルモノ又ハ差押、
假差押若ハ假處分ノ目的タルモノニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
自動車交通事業財團ノ設定後新ニ其ノ
財團ノ所有者ニ屬シタルモノ亦前項ニ
同ジ
第四十四條自動車交通事業財團ハ之ヲ
讓渡シ又ハ所有權及抵當權以外ノ權利、
差押、假差押若ハ假處分ノ目的ト爲ス
コトヲ得ズ但シ抵當權者ノ同意ヲ得テ
之ヲ自動車運輸事業又ハ自動車道事業
ヲ營ム株式會社ニ讓渡スハ此ノ限ニ在
ラズ
自動車交通事業財團ニ屬スルモノハ之
ヲ讓渡シ又ハ所存權以外ノ權利、差押、
假差押若ハ假處分ノ目的ト爲スコトヲ
得ズ但シ抵當權者ノ同意ヲ得テ之ヲ讓
渡シ又ハ貸付クルハ此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ規定ニ依リ自動車交通事業
財團ニ屬ズルモノヲ譲渡シタルトキハ
抵當權ハ其ノモノニ付消滅ス
第四十五條自動車交通事業財團ヲ目的
トスル抵當權ノ設定又ハ變更ハ總株金
四分ノ一以上ノ拂込アリタル後定款變
更ト同一方法ノ株主總會ノ決議ヲ經ル
コトヲ要ス
第四十六條自動車交通事業財團ノ登記
ニ付テハ其ノ財團ノ所有者タル會社ノ
本店所在地ヲ管轄スル區裁判所又ハ其
ノ出張所ヲ以テ管轄登記所トス
自動車交通事業財團ノ所有者タル會社
ガ本店ヲ一登記所ノ管轄地ヨリ他ノ登
記所ノ管轄地ニ移シタル場合ニ於ケル
登記手續ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
左ノ場合ニ於テハ登記所ハ直ニ其ノ旨
ヲ主務大臣ニ通知スベシ
第一順位ノ抵當權ノ設定ヲ登記シ
ダルトキ
二自動車交通事業財團ノ用紙ヲ閉鎖
シタルトキ
第四十七條自動事交通事業財團ニ關シ
テハ工場抵當法第十條、第十二條、第
十八條乃至第二十條、第二十二條乃至
第四十四條、第四十七條及第四十八條
ノ規定ヲ準用ス
本法ニ規定スルモノヲ除クノ外自動車
交通事業財團ノ登記ニ關シテハ不動產
登記法ヲ準用ス
登記ノ申請書ニハ不動產登記法第三十
六條第三號乃至第八號ニ揭グル事項ノ
外左ノ事項ヲ記載スベシ
-自動車交通事業財團ノ設定セラル
ル事業ノ表示
二自動車運輸事業ノ爲ノ自動車交通
事業財團ニ在リテハ其ノ事業ノ行ハ
ルル路線ノ表示
三自動車道事業ノ爲ノ自動車交通事
業財國ニ在リデハ之ニ屬スル一般自
動車道ノ表示
四免許ニ有效期間ノ指定アルトキハ
其ノ期間
五免許ニ條件ガ附セラレタルトキハ
其ノ條件
第四十八條第四十二條第一項ノ規定ニ
依リテ自動車交通事業財團ヲ設定シタ
ル場合ニ於テ自動車運輸事業又ハ自動車
道事業ノ何レカニ付事業經營ノ免許ノ
失效又ハ取消アリタルトキハ抵當權者
ハ一事業ニ付自動車交通事業財團ノ設
定セラレタル場合ニ準ジ財團ノ全部ニ
對シ其ノ權利ヲ實行スルコトヲ得
第四十九條自動車交通事業財團ニ對ス
ル抵當構ノ强制執行ニ付テハ執行シ得
ベキ一定ノ債務名義ヲ要セズ
强制管理ノ開始ハ自動車運輸事業又ハ
自動車道事業ニ對スル主務大臣ノ監督
ヲ妨ゲズ
強制管理ノ管理人ノ任免ニ付テハ裁判
所ハ主務大臣ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
强制管理終了シダルトキハ裁判所ハ其
ノ旨ヲ主務大臣ニ通知スベシ
第五章罰則
第五十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
免許ヲ受ケズシテ自動車運輸事業
又ハ自動車道事業ヲ經營シタルトキ
二認可ヲ受ケズシテ一般自動車道ノ
供用ヲ開始シタルトキ
第五十一條免許ヲ受ケタル者ノ名義ヲ
利用シテ自動車運輸事業又ハ自動車道
事業ヲ經營シタル者ハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス名義ヲ利用セシメタル者亦同
ジ
第五十二條自動車運輸事業者又ハ自動
車道事業者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキ
ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-第五十條ニ規定スル場合ヲ除クノ
外本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リ許可又ハ認可ヲ受ケテ爲スベ
キ事項ヲ之ヲ受ケズシテ爲シタルト
キ
二免許、許可又ハ認可ニ附シタル條
件ニ違反シタルトキ
三本法ニ基キテ爲シタル處分又ハ免
許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ
基キテ爲シタル處分ニ違反シタルト
キ
四第八條ノ規定ニ依ル登錄ヲ受ケザ
ル自動車ヲ自動車運輸事業ノ用ニ供
シタルトキ又ハ自動車ニ付不實ノ事
項ノ登錄ヲ申請シタルトキ
五正當ノ事由ナクシテ一般自動車道
ノ使用ヲ拒ミダルトキ
六本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リテ屆出又ハ報〓ヲ爲スベキ事
項ニ付虛僞ノ屆出又ハ報〓ヲ爲シタ
ルトキ
七監査員ノ監査ヲ妨ゲタルトキ
第五十三條自動車運輸事業者又ハ自動
車道事業者ガ未成年者又ハ禁治產者ナ
ルトキハ本法ノ罸則ハ之ヲ法定代理人
ニ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一
ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ
限ニ在テズ
自動車運輸事業者又ハ自動車道事業者
ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他
ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反
シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ
故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
會社ノ代表者其ノ他ノ從業者會社ノ業
務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ其ノ
罰則ヲ會社ニ適用ス
第五十四條自動車道若ハ其ノ標識ヲ損
壞シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ自動車道
ニ於ケル自動車ノ往來ノ危險ヲ生ゼシ
メタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第五十五條人ノ現在スル自動車運輸事
業ノ自動車ヲ〓覆シ又ハ破壞シタル者
ハ十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ傷ニ致シタル
者ハ一年以上ノ有期懲役ニ處シ死ニ致
シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ
處ス
第一項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第五十六條第五十四條ノ罪ヲ犯シ因テ
自動車ノ〓覆又ハ破壞ヲ致シタル者亦
前條ノ例ニ同ジ
第五十七條過失ニ因リ第五十四條第一
項又ハ第五十五條第一項ノ罪ヲ犯シタ
ル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ業
務ニ從事スル者犯シタルトキハ一年以
下ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前自動車運輸事業又ハ自動車道
事業ニ該當スル事業ニ付地方長官ノ爲シ
タル事業經營ノ免許又ハ許可ハ之ヲ本法
ニ依ル自動車運輸事業又ハ自動車道事業
經營ノ免許ト看做ス
主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキ
ハ前項ノ自動車運輸事業ニ付新ニ免許ノ
有效期間、運輸開始ノ認可申請期間又ハ
事業ノ休止期間ヲ指定スルコトヲ得
登錄稅法第三條ノ六中「又ハ漁業財團登
記簿」ヲ「、漁業財團登記簿又ハ自動車交通
事業財團登記簿」ニ改ム
印紙稅法第四條第一項第一號中「軌道財
團」ノ下ニ「、自動車交通事業財團」ヲ加
フ
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=16
-
017・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 自動車ニ關シマス
ル運輸交通ハ近時非常ナル發達ヲ遂ゲマシ
テ、公衆ノ日常生活ト密接ナル關係ヲ生ズ
ルニ至ッタノデアリマス、就中路線ヲ定メ
マシテ定期ニ運行イタシマスル自動車ニ於
キマシテハ交通機關ト致シマシテ重要ナ
ル地步ヲ占ムルニ至ッタノデアリマス、又轉
ジテ我國現在ノ道路ヲ見マスルニ、自動車
ガ無カッタ時代ノモノガ其大部分ヲ占メテ
居ル次第デアリマスルカラ、自動車ノ發達
ニ伴ヒマシテ、自動車專用ノ道路ヲモ認ム
ルノ必要ヲ生ズルニ至ッタノデアリマス、然
ルニ是等ノ事業ノ準據法規ト致シマシテ
ハ自動車運輸事業ニ關シマシテハ僅ニ大
正八年ニ內務省カラ出シマシタ所ノ自動車
取締令中ニ數箇條ノ規定ガアルニ止マリ、
又自動車專用道路ニ關シマシテハ、明治四
年ニ制定イタサレマシタル太政官布告ノ規
定ガ存在シテ居ルニ過ギナイ有樣デアリマ
シテ、誠ニ時代ノ要求ニ適應シナイノデア
リマス、鐵道內務兩省ニ於キマシテハ現
時ノ必要ニ應ズル立法ヲ得タイ方針ヲ以チ
マシテ、種々〓究ヲ重ネマシタガ、就中、
自動車運輸事業ニ關シマシテハ第五十六
囘帝國議會ニ於キマシテ、貴衆兩院ニ於テ、
之ニ關スル請願モ採擇イタサレマシタ次第
デ、ソレ等ヲ斟酌イタシマシテ、本法案ヲ
提出スルニ至ッタ次第デアリマス、玆ニ提案
イタシマシタ自動車交通事業法案ハ、以上
申述べマシタ交通行政ノ見地カラ、自動車
運輸事業ニ關スル事項ヲ規定イタシマスル
ト共ニ、道路交通ノ補充的施設ト致シマシ
テ、自動車道ヲ開設スルコトノ途ヲ開ク爲
ニ、之ニ關スル、事項ヲモ併セテ規定イタ
シマシタ次第デアリマス、之ニ依ッテ自動
車交通ノ完全ナル發達ヲ圖ラムトスル趣旨
ニ外ナラナイノデアリマス、今本法案ニ關
シマスル要綱ヲ一二申上ゲテ見マスルト、
第一ニ本法ヲ適用イタシマスル自動車運輸
事業ト申シマスルノハ、一般交通ノ用ニ供
スル爲メ、一定ノ路線ヲ定メ、定期ニ自動
車ヲ運行イタシマシテ、旅客及貨物ヲ運送
スル事業ヲ申スノデアリマシテ、之ニ關ス
ル準據規定ヲ設ケタノデアリマス、是等ノ
事業者ハ現在、旅客及貨物ヲ合セ四千人ノ
多キニ達シ、其使用イタシテ居リマスル自
動車ノ數ハ一万數千輛ニ及ビ、其營業イタ
シテ居リマスル哩程ハ約九万哩ニ及ンデ居
ルノデアリマス、第二ニ本法案中ニ規定イ
タシマシタ自動車道ト申シマスルノハ、
般自動車道及專用自動車道ノ二種類ニ分
ケタノデアリマス一般自動車道ト申シマ
スノハ、專ラ自動車ノ一般交通ノ用ニ供ス
ル道路ヲ申スノデアリマシテ、專用自動車
道ト申シマスノハ、前ニ申述ベマシタ如ク、
自動車運輸事業者ガ其事業用ノ自動車ノ專
用ニ供スル所ノ通路ヲ申スノデアリマス、
右ノ內、一般自動車道ヲ開設スル者ハ、特
ニ自動車道事業者トシテ、一般自動車ノ通
行ニ付キ使用料金ノ徵收ヲ許ス方針ニナッ
テ居ルノデアリマス、現在、自動車道ト認
ムベキモノハ六箇所アルニ過ギマセヌガ、
其他ニ免許ヲ受ケテ居リマスル者ハ九箇所
ニ及ンデ居リマス、自動車交通ノ發達ニ伴
ヒマシテ、漸次增加スルノ機運ニ向ヒツツ
アルノデアリマス、第三ニ以上ノ自動車運
輸事業及自動車道事業ノ經營ニ付キマシテ
ハ、從來ハ地方長官ニ其免許ヲ委ネテ居,
タノデアリマスガ、本法施行ノ上ハ、原則
ト致シマシテハ主務大臣ニ於テ免許ヲ爲ス
ノ方針ヲ採ッタノデアリマス、是ハ本事業ノ
重要性ニ鑑ミマシテ、當然ノモノト認メタ
ノデアリマス、第四ニ本事業ニ共通ト致シ
テ居リマスル事項ト致シマシテハ、本法案
ノ特色ト致シテ居ル所デアリマシテ、自動
車交通事業抵當、所謂自動車交通事業財團
ヲ設ケマシテ、其事業財團ヲ抵當權ノ目的
トスル制度ヲ設ケマシテ、其事業上ノ金融
ヲ滑カニ致シタ點デアリマス、事業ノ發達
ニ伴ヒマシテ且ツ將來ノ堅實ナ進步ニ資ス
ルガ爲ニ、事業財團ノ抵當制度ハ絕對ニ必
要ナルモノト信ズルノデアリマス、以上申
述ベタヤウナ理由ヲ以チマシテ、本法案ヲ
提出イタシタ次第デアリマス、本法案ニ付
キマシテハ、事業者ノ間ニ於キマシテモ、
相當熱望イタシテ居ル趣ニ見エルノデアリ
マスカラ、ドウカ是等ノ事情モ御諒承下サ
イマシテ、何卒御審議ノ上、速ニ御協贊ア
ラムコトヲ希望イタス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=17
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018・東園基光
○子爵東園基光君 只今議題ニ上リマシタ
自動車交通事業法案ハ重要ナル法案ト認メ
マスルニ依リマシテ、此特別委員ノ數ヲ十
五名トシ、其選擧ヲ議長ニ一任イタシタイ
ト存ジマス、御贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=18
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019・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 東園子爵ノ、本
案ノ委員ヲ十五名トスル動議ニ同意ノ諸君
ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ
致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
自動車交通事業法案特別委員
侯爵德川賴貞君伯爵樺山愛輔君
男爵大井成元君子爵東園基光君
子爵秋田重季君岡喜七郞君
男爵斯波忠三郞君男爵辻太郞君
倉知鐵吉君八田嘉明君
西本健次郞君土田萬助君
吉田羊治郞君松本勝太郞君
風間八左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第三、製鐵
業奬勵法中改正、法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會、俵商工大臣
製鐵業奬勵法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十四日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
製鐵業奬、法法中改正法律案
製鐵業奬勵法中左ノ通改正ス
附則第二項中「五年間」ヲ「十年間」ニ改ム
附則第三項中「十五年間」ノ下ニ「(其ノ十
五年ノ期間ガ昭和十年迄ニ滿了スルモノ
ニ在リテハ昭和十一年迄)」ヲ加フ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=22
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023・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 製鐵業奬勵法中改
正法律律提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、
製鐵業奬勵法ハ大正十五年ニ其全部ヲ改正
ヲ致シタノデアリマシテ、其際ニハ銑鋼一
貫作業奬勵ト云フコトヲ主眼ト致ジテ、之
ヲ保護スルコトトニナッテ居ッタノデアリマ
ス、而シテ舊法ノ保護ヲ受ケテ居リマシタ
設備ニ付キマシテモ、俄ニ其保護ヲ廢シマ
スルコトハ穩當ナラザル點ガアリマスルノ
ミナラズ、若干ノ期間、保護ヲ繼續イタシ
マシテ、其設備ノ改善擴張ヲ圖ラシメルコ
トガ適當ト認メマシタ故ニ、附則ヲ以テ保
護ノ期間ヲ五箇年間延長スルコトニ相成ッ
テ居ノタノデアリマス、然ルニ斯業界ノ狀況
ハ引續キ一般經濟界ノ不況ト深刻ナル國際
競爭ニ惱サレマシテ、甚シキ窮地ニ陷。テ
居リマスガ爲ニ設備ノ改善、擴張モ思ハ
シク捗リマセズ、然ルニ新法施行後既ニ五
箇年ヲ經過イタシテ居リマシテ、舊法ニ依
リマスルモノハ本年四月九日限リ一律ニ土
地收用法ノ適用ト輸入稅免除ノ特典ヲ失フ
コトニナリマスルシ、又營業收益稅及所得
稅免除ノ保護モ亦之ヲ受ケナイコトニ相成
リマスルガ爲ニ、明年以降段々其特典ヲ失
フモノガ增加スル狀況デアルノデアリマ
ス、今若シ此儘ニ何等ノ處置ヲ講ジマセヌ
ケレバ、此斯業界ハ尠カラザル打擊ヲ受ケ
マスルコトニ相成ルコトト思ヒマス、斯ノ
如キコトハ今日マデ折角經營ヲ重ネテ參リ
マシタ製鐵事業ノ上ニ多大ナル惡結果ヲ來
シマスカラ、今暫ク從來ノ保護ヲ繼續スル
コトニ致シタイト考ヘルノデアリマス、ソ
レ故ニ土地收用法ノ適用、輸入稅免除ノ保
護ハ五箇年間之ヲ延長イタシマスルト共ニ、
營業收益稅及所得稅ノ免除ニ付キマシテ
モ、少クトモ今後五箇年間ハ此保護ヲ失ハ
ヌヤウニ適當ナ改正ヲ致シタイト思フノデ
アリマス、何卒御協賛ヲ賜ラムコトヲ希望
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ鑛業法申
改正法律案ノ特別委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、重要
產業ソ統制ニ關スル法律案、政府提出、衆
議院送付、第一讀會、〓國務大臣
重要產業ノ統制ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十四日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
重要產業ノ統制ニ關スル法律案
第一條重要ナル產業ヲ營ム者生產又ハ
販賣ニ關シ命令ノ定ムル統制協定ヲ爲
シタル場合ニ於テ同業者二分ノ一以上
ノ加盟アルトキハ命令ノ定ムル期間內
ニ之ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ之ヲ變更
廢止シタルトキ亦同ジ
前項ノ產業ノ種類ハ統制委員會ノ議ヲ
經テ主務大臣之ヲ指定ス
前項ノ規定ニ依リ指定セラレタル產業
ヲ營ム者ハ命令ノ定ムル事項ヲ主務大
臣ニ屆出ヅベシ
第二條主務大臣前條ノ統制協定ノ加盟
者三分ノ二以上ノ申請アリタル場合ニ
於テ當該產業ノ公正ナル利益ヲ保護シ
國民經濟ノ健全ナル發達ヲ圖ル爲特ニ
必要アリト認ムルトキハ統制委員會ノ
議ヲ經テ當該統制協定ノ加盟者又ハ其
ノ協定ニ加盟セザル同業者ニ對シテ其
ノ協定ノ全部又ハ一部ニ依ルベキコト
ヲ命ズルコトヲ得
第三條主務大臣第一條ノ統制協定ガ公
益ニ反シ又ハ當該產業若ハ之ト密接ナ
ル關係ヲ有スル產業ノ公正ナル利益ヲ
害スト認ムルトキハ統制委員會ノ議ヲ
經テ其ノ變更又ハ取消ヲ命ズルコトヲ
得
第四條主務大臣第一條ノ統制協定ニ對
スル監督上必要アリト認ムルトキハ統
制協定ノ加盟者ニ對シ又ハ協定ニ加盟
セザル同業者ニシテ第二條ノ規定ニ從
ヒ協定ニ依ルベキコトヲ命セラレタル
者ニ對シ業務ニ關シ檢査ヲ爲シ又バ報
告ヲ爲サシムルコトヲ得
第五條本法ニ定ムルモノノ外統制委員
會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之
ヲガム
第六條第一條第一項ノ規定ニ違反シタ
ル者ハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
第一條第三項ノ規定ニ違反シタル者ハ
百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前二項ノ過料ニ付之ヲ準
用ス
第七條重要ナル產業ヲ營ム者左ノ各號
ノ一ニ該當スルトキハ千圓以下ノ罰金
三座又、
一第二條ノ規定ニ依ル主務大臣ノ命
令ニ違反シ當該統制協定ニ依ラザル
トキ
二第三條ノ規定ニ依ル主務大臣ノ命
令ニ從ハザルトキ
第八條第四條ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ
忌避シ又ハ同條ノ規定ニ依リ命ゼラレ
タル報〓ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報〓ヲ爲
シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第九條重要ナル產業ヲ營ム者ハ其ノ代
理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業
者ガ其ノ業務ニ關シ第七條ノ罪ヲ犯シ
タルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故
ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十條第七條ノ規定ニ依り重要ナル產
業ヲ營ム者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者
ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他
ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成
年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定
代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ施行後五年間ヲ限リ其ノ效力ヲ有
ス
前項ノ期間內ニ爲サレタル本法又ハ本法
ニ基キテ爲ス處分ニ違反スル行爲ニ付テ
ハ本法ノ罰則ハ前項ノ期間經過後ト雖モ
仍之ヲ適用ス
〔國務大臣俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=25
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026・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 只今議題ニ相成リ
マシタ產業統制ニ關スル法律案ヲ簡單ニ御
說明申上ゲマス、我國產業界ノ目下ノ不況
ヲ打開イタシ立直シヲ行ヒマスニ付キマシ
テハ、技術ノ點ニ於キマシテ將又經營ノ點
ニ付キマシテ合理化スベキ事柄ハ甚ダ多イ
ノデアリマス、就中根本的ノ缺陷ト致シマ
シテ、總テノ弊害ノ根源ニ相成ルカト思ヒ
マスモノハ企業ノ統制ヲ缺ク點ニアルト思
フノデアリマス、中小企業ト云ハズ大企業
ト云ハズ、多數ノ企業者ガ全ク無統制、無
節制ノ狀態ニ於キマシテ、無謀不當ナル競
爭ヲ敢テスルコトガ我ガ現下ノ經濟界ノ通
例ニナッテ居ルト思ハレルノデアリマス、其
結果ハ我ガ商品ノ海外販路ノ進出ヲ妨グル
ニ止マラズ、更ニ各企業家ハ共倒レノ狀態
ト相成リマシテ、我重要產業其モノノ存立
ヲ危殆ニ陷ラシムル如キ狀態デアルノデア
リマス、延イテ我國國民經濟ニ及ボス損害
ハ、極メテ大ナルモノガアルト存ズルノデ
アリマス、此故ニ此現狀ニ鑑ミマシテ、少
タトモ我ガ重要ナル產業ニ對シマシテ、規
律統制ヲ與へ、其安定ヲ圖ルコトガ最モ急
務デアルト思フノデアリマス、是本案ヲ提
出イタシマシタ所以デアルノデアリマス、
本案ノ細目ニ至リマシテハ、詳細委員會ニ
於テ說明ヲ申上ゲタイト存ジマス、會期切
迫ノ折柄デアリマスケレドモガ、極メテ重
要法案デアルト考ヘマス故ニ、愼重御審議
ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ニハ藤村男
爵ノ質疑ノ通告ガアリマス、男爵ニ發言ヲ
許シマス
〔男爵藤村義朗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=27
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028・藤村義朗
○男爵藤村義朗君 私ハ本案ニ付キマシテ
二三政府ニ御尋ヲ致シタイト思フノデアリ
やく、近頃此合理化トカ或ハ統制ト云フ言
葉ガ一種ノハヤリ言葉ニナリマシテ、色ミ
私其ノ思ヒモ寄ラヌヤウナ場合ニ合理化、
統制ト云フヤウナコトガ使ハレテ居ルノデ
アリマス、又統制或ハ合理化ト云フ意義ニ
付キマシテモ、飛ンデモナイ間違ッタ解釋
ヲ附シテ、平氣デ居ラルル向キモ多々アリ
マス、而シテ合理化ト言ヒ、或ハ統制ト云
ヒサヘスレバ、其事ハドンナ事デモ宜イコ
トノヤウニ考ヘラレテ居ルヤウニ思フノデ
アリマス、私ノ了解致シテ居リマス所ニ依
リマスレバ、此產業ノ合理化ト申スコトハ、
生產ヲ增進セシメテ、サウシテツレニ依ッテ
生產原價ノ低下ヲ圖ッテ、其結果ト致シテ物
價ヲ低落セシメテ、之ニ依テ國民生活ノ向
上安定ヲ期スル、卽チ低物價政策ト云フコ
トガ此合理化本來ノ目的使命デアルカノヤ
ウニ存ジテ居ルノデアリマス、此意味ニ於
キマシテ、產業ノ合理化ト申スコトハ經
濟政策ト致シマシテハ、極メテ重要ナル價
値ヲ持ッテ居ルモノト認メル次第デアリマ
ス、而シテ今囘政府ハ產業合理化ノ基準ト
シテ、先ヅ第一ニ產業上ノ自由競爭主義ヲ
改メマシテ、相當强イ程度ニ國家ノ權力ニ
依ル干涉ヲ認メルト云フコトヲ主眼トシテ
居ラレルヤウニ存ズルノデアリマス、卽チ
先達テ茲ニ上程サレマシタ輸出組合法及重
要輸出品工業組合法ノ改正案ニ致シマシテ
モ、又今日此重要產業ノ統制案ニ致シマシ
テモ、其趣旨ノ下ニ發案サレタモノト思フ
ノデアリマス、此コトハ我國ノ產業ノ根本
ニ對シマシテ將來ニ於テ尠カラヌ重大ノ影
響ヲ來スモノト認メラレルノデアリマス、
元來產業振興ノ根本義ハ、只今モ申シマシ
タ通リニ、生產ノ增進ト之ニ依ル生產原價
ノ低下ニアリマシテ、サウシテソレハ產業
企業ノ科學化及ビ機械化ニ依ッテ、最高度ニ
生產ノ工程ト能率トヲ發揮セシメテ、而モ
最モ合理的ニ又最モ經濟的ニ其目的ヲ達セ
シムルニハ、事業ノ計畫組織經營管理ノ如
キハ完全ナル自由ヲ與ヘマシテ、公正ナル
競爭ニ依ッテ、企業者自ラ努力向上效果ヲ擧
ゲシムルニアルト、私ハ考ヘルノデアリマ
ス、此產業經營ノ自由主義ト云フコトガ、
是コソ經濟自治ノ根本デアリ、又經濟生活
ノ基調ヲ爲スモノデ、今日ノ經濟組織ハ總
テ此基礎ノ上ニ樹立サレテアルノデアリマ
ス、サウシテ是ガ國民經濟ノ健全、堅實ナ
ル進步發展ヲ來ス所以デアルト思フノデア
リマス、此根本義ガ認メラレテコソ初メテ、
其處ニ種々ノ同業者間ニ於ケル協調ガ生
七、又自然ノ統制ガ起ッテ、而シテ更ニ優勝
劣敗、適者生存ノ自然ノ理法ガ其處ニ行ハ
レマシテ、本當ノ合理化ノ結果ガ實現セラ
レルト云フ風ニ、私ハ考ヘテ居ルノデアリ
やく、然ルニ政府ハ只今商工大臣ヨリ御說
明ノ如ク、我ガ產業界ノ根本的ノ弊害、缺陷
ハ企業ノ統制ヲ缺クノニアル、其爲ニ無規
律、無節制、無謀等ノ競爭ヲ敢テシテ、產
業ノ存在ヲ危殆ニ導ク、故ニ國家ノ力ニ依
ル規律統制ニ依ッテ、產業ノ安定ヲ圖ルコト
ガ急務デアル、此趣旨ニ依ッテ本案ヲ御提出
ニナッタノデアリマス、我國ノ產業界ノ現狀
及ビ我ガ企業者ノ實際ノ有樣ニ徵シマシ
テ、政府ノ憂ヘテ居ラレル所ハ或程度迄ハ
全然我ミモ御同感デアリマス、如何ニモ我
ガ產業界ハ歐米ノ先進國ニ比ベマスレバ、
組織モ整備シテ居リマセヌ、又經營管理ノ
方法モ比較的ニ御粗末デアリマス、又計畫
秩序ノ如キモ一向立ッテ居ラヌ、殊ニ事業
家企業家ノ心理ト云フモノハ、〓シテ自
分ノミヲ利益スル、所謂利我ノ一點張リデ
社會奉仕デアルトカ、或ハ共存共榮トカ、
或ハ共同協力トカ云フヤウナ觀念ハ、類ル
缺乏シテ居ルヤウニ存ジテ居リマス、是ハ
私モ平生甚ダ面白カラズ感ジテ、密カニ憂
ヘテ居ル所デアリマス、從ヒマシテ粗製濫
造或ハ投賣濫賣デアルトカ又ハ不正不當
ノ競爭ノ弊ヲ矯正スル必要ハ是ハ十分認メ
ラレルノデアリマスサウシテソレハ或程
度マデ法制ノ力ニ依ルコトハ、我ガ產業界
ノ現狀ニ於キマシテ已ムヲ得ナイカモ知レ
マセヌ、傑ナガラ太體ニ於キマシテハ、企
業者自身ノ覺醒努力モ待ツベキデアリマシ
チ、政府ガ行政手段デ以テ之ヲ强制シマシ
テモ、到底企業者自身ガ自覺スルニアラ
ズンバ、統制ノ如キハ出來ルモノデハナイ
ト、私ハ思ヒマス、私ハ國家ガ主義トシ
シテ、又原則トシマシテ、玆ニ今日迄
ノ產業ノ自由主義ヲ改變サレルト云フ
コトハ如何ナモノデアラウカ、餘程愼重
ニ考慮ヲ要スベキ問題デハナイカト思
フノデアリマス、此法案ハ申セバ少數企
業者ノ生產又ハ販賣ノ獨占ヲ認メテ、統
制ノ强制力ヲ其以外ノ同業者又ハ之ニ反對
スル同業者ニマデ及ボサムトスルモノデア
リマス、從ッチ營業ノ自由ヲ束縛シ、獨占ノ
弊ヲ助長シヤウト云フモノデ、多タノ場合
ニハ社會全體ノ利益、殊ニ消費者側ノ利益
ニハ反スル結果ヲ招キ易イ性質ノ法律デア
ルト思フノデアリマス、或ハ政府ニ於カレ
マシテハ、ソレハ此規定ニモアル通リ公平
ナ利益ヲ害スルト認メル場合ニハ、變更或
ハ取消ヲ命ズルコトガ出來ルト云フ風ニ御
考デアルカモ知レマセヌガ、其事ハ實際ニ
於キマシテハ非常ニ困難ナ問題デハナイカ
ト思フノデアリマス、政府ハ統制委員ニ諮
問シテ、更ニ之ヲ決スルト仰セラレマスル
ガ偖テ此委員會ナルモノハ從來ノ例ニ
徵シマスルト云フト、頗ル當テニナラヌモノ
デアリマス、多クノ場合政府ガ造ラレマス
ル委員會等ハ唯、唯々諸々政府ノ思召通リ
エナル、申セバ政府ノ意思ノ裏書ノ機關デ
アル、或ハ政府ノ責任囘避ノ機關デアルト
申シテ宜シイト私ハ思フ、國民メ重要產業
ヲ、極メテ少數ノ委員會ガ、事實ニ於テハ、
管理左右スルト云フ結果ニナリマスルノデ、
誠ニ實際問題トシテハ容易ナラヌ問題デア
ルト、私ハ思フノデアリマス、而シテ其發
案者タル、或ハ諮問者タル政府ハドウデア
ルカト云フト、御承知ノ通リニ今日ハ政黨内
閣デアリマス、是亦從來ノ經驗ニ徵シマスル
ノニ、頻ル色ミナ非難ガ此種ノコトニハ多イ
ノデゴザイマス、斯樣ニ考ヘマスルト、或
ハ產業ノ合理化ヲ欲シマスル結果、或ハ產
業ノ不合理化ヲ招クト云フヤウアコトハア
リマスマイカト云フコトヲ、私ハ心配シテ
居ルノデアリマス、現ニ政府ガ合理化專業
ノ殆ド唯一ノ收獲トシテ誇ッテ居ラレマス
ル所ノ、縞三綾トカ何トカ申ス產業ノ統制
ガ出來マシタ爲ニ、四十錢ノ工賃ガ一躍七
十錢ニ騰ノテシマッタ、サウシテ其當業者ハ從
來此品物ガ髙イカラ賣レヌノデハナイ、市
場ガ不安ノ爲ニ取引ガ無イノダト云フヤウ
ナコトヲ呼號イタシテ居ルノデアリマス、
此縞三綾ハ全部輸出品デアリマスルノデ、
內地ノ消費者ニハ差向ノ交涉ハナイヤウデ
アリマスルケレドモ、斯樣ナコトデ生產費
ノ引下ゲニ依フテ、力强イ消費需要ヲ喚起シ
ヤウト云フ政府ノ努力ハ或ハ水泡ニ歸シテ、
政府ノ根本方針トハ全ク反對ノ結果ニ陷リ
ハシナイカト云フコトヲ私ハ心配イタシテ
居リマスドウモ政府ノ合理化政策ト云フ
コトハ、遂ニハ市價ノ帛上ゲエナッテ來ハ
シマスマイカ、今日迄ノ有樣ヲ見テ見マス
ルト、政府ノ方策ハ販賣價格ノ人爲的協定
維持ト云フコトニ、重キヲ置イテ居ラレマ
スルヤウデアリマスルケレドモ、左樣デア
ルトシマスレバ、ソレハ經營ノ合理化ヲ沒
却シマシテ、合理化ノ精神デアル低物價政
策ニハ根柢的ニ反シテ居ルモノデアルト思
フノデアリマス、或ハ又政府ノ統制ノ當面
ノ目的ハ、需給ノ調節ノ如キ······需給ノ調
節ニ依ッテ市價ノ安定ヲ圖ルコトガ本旨デ
アルト云フコトヲ言ッテ居ラレルヤウデア
リマス、果シテ左樣デアリマスレバ、大分
話ガムヅカシクナッテ來ルノデアリマス、政
府ハ消費節約ト云フコトハ、是ハ政府ノ重
要ナル經濟政策デアルト云ッテ、强硬ニ今日
今以テ主張シテ居ラレマスルガ、若シ此消
費節約ト云フ政策ノ利キ目ガ十分ニ現ハレ
テ參リマスレバ、結局ハ生產ハ段々減テ來
ルノミデアリマス、需給ノ調節ガ合理化統
制ノ目的ナラバ、消費ノ減少ニ從シテ、生產
ヲモ減少シナケレバナラヌト云フヤウナ結
果ニ陷リハシマスマイカ、サウスレバ政府
ノ合理化事業ハ低物價政策デハナクテ、低
生產政策ト云フコトニナルヤウニモ見ラレ
得ルノデアリマス、玆ニ政府ノ重要ナル此
二ツノ經濟政策ニ大キナ矛盾撞著ガ起メテ
來ルヤウニモ思ハレル、斯樣ニ私ハ心配シ
テ居ルノデアリマスケレドモ、無論是等ノ
事柄ハ委員會會篤ト審議サレル事項ト思ヒ
マスノデ、此上ハ申シマセヌ、唯先ヅ第一
ニ政府ニ伺ヒタイノハ、政時ハ此法律ニ依ツ
テ個人ノ企業、營業ノ自由ヲ束縛サレテ、
活潑ナル經濟活動ヲ阻止シテ迄モ統制ヲ必
要ト認メラルルヤ否ヤ、我ガ產業ノ根本ニ
對スル政府ノ主義方針ハ自由主義デアルカ、
或ハ只今申シタ統制ニ依ル束縛主義デアル
カト云フコトヲ明カニ伺ッテ置キタイノデ
アリマス、ソレカラ第二ニハ產業ノ公正ナ
ル利益ト云フコトハ一體是ハドウ云フコト
デアリマスカ、此法律ガ、此公正ナル利益
ヲ支持シ擁護スル上ニ於テ、政府ハ、何等
ノ遺憾モナイト云フ保證ヲ、責任ヲ以テ國
民ニ御與ヘニナルコトガ出來ルカドウカ、
卽チ此規定デ統制ニ關スル運用ガ滿足ニ合
理的ニ爲サレ得ルト云フ確信ガ御有リニナ
ルカドウカト云フコトヲ第二ニ伺ヒタイノ
デアリマス、ソレカラ更ニ第三ニ政府ニ御
確メヲ致シテ置キタイコトハ此企業ノ統制
ヲ國家ノ干渉ニ依ッテ圖ルト云フコトハ、其
結果ハ「カルテル」トカ或ハ「トラスト」トカ
云フモノヲ國家ガ管理スルト云フヤウナ形
ニナリマス、卽チ勞農露國政府ノ「ネップ」新
經濟政策ト同ジヤウナ道行ニ進ミツツアル
ヤウニモ見ラレル、少クトモ政府ノ頭ニハ
意識的カ或ハ無意識的カ知リマセヌケレド
モ、「ソヴィエート」ノ統制經濟ノ思想ト云
フモノガ滲ミ込ンデ來テ居ルノデハアルマ
イカト云フ疑問モ起リ得ルノデアリマス、
又サウデナクテモ政府ノ思想ハ或ル意味ニ
於テハ國家社會主義ニ進ム是ガ道程デアル
トモ見ラレ得ルヤウニモ考ヘラレルノデア
リマス、是ハ大事ナコトデアリマスルカラ、
ドウソ政府ノ御意思ノアル所ヲ明確ニ伺ク
テ置キタイデアリマス、其次ニハ只今商
工大臣ノ仰セラレマシタ無謀、不規律、不
正ノ競爭ヲスルト云フ此弊害ハ、大企業ヨ
リハ寧ロ中小ノ企業ニ多イヤウニ私ハ思フ
ノデアリマス、大企業ハ其生產ノ工程ニ於
キマシテモ、或ハ又經理······經營、管理ノ
方法ニ於キマシテモ、比較的整ウテ居リマ
ス、又經營者モ其從業者モ相當ノ人ガ多イ
ノデ合理化ノコトモ、統制ノコトモ大分モ
ウ分ッテ居ル連中デアリマス、是等ノ大企業
ニ向フテ特ニ此法律ヲ以テ統制ヲ圖ルト云
フ、實際ソレ程ノ必要ガアルカドウカト云
フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、世間デハ
或ハ此法律ハ統制ト云フ美名ノ下ニ、是等
ノ大企業ニ向ッテ聯盟デアルトカ或ハ合同
デアルトカ云フコトヲ容易ナラシメテ、彼
等ノ現在陷ヲテ居ル所ノ經營ノ困難ヲ人爲
的ニ救濟セントスル一種ノ救濟政策デアル
ト云フ風ノ考ヲ持クテ居ル者モアルサウデ
アリマス、マサカソンナコトハ無イト思
ヒマスケレドモ、之ニ付キマシテモ一應政
府ノ御意思ヲ伺フテ置キタイノデアリマス、
尙ホ產業ノ合理化ト云フコトニ關聯シマシ
テ、此際序デナガラ伺ッテ置キタイ、今日我
ガ事業界ニハ色ミノ弊筈、缺陷ガ澤山アル
ノデアリマス、或ハ會社ガ虛僞ノ計算表ヲ
作製シテ株主ヤ公衆ヲ欺イタリ、當然爲ス
ベキ減價ヤ減損ノ銷却ヲ等閑ニナシタリ、
或ハ虛僞ノ利益ヲ發表シテ所謂蛸配ナドヲ
ヤッタリ、或ハ會社ノ巨額ノ金ヲ使ッテ利權
獲得ノ不都合千萬ナル醜惡ナル運動ヲヤッ
テ見タリ、官憲ニ請託シテ不義ノ利益ヲ擧
ゲテ見タリ、或ハ政黨ヤ政黨員ニ向ッテ現在
又ハ將來ノ利益ノ爲ニ會社ノ資產ニ屬スル
巨額ノ金ヲ冥加金トシテ提供シタリ、色ミ
樣ミナ惡イコトヲシテ居ル、是等ハ皆是等
ノ經營者ガ、經營者ヲ信賴シテ居リマスル
所ノ罪ノナイ株主、出資者ニ非常ナ損害ヲ
與ヘルモノデアリマス、而シテ延イテ社會
ノ公益ヲモ害スルモノデアリマス、是等ノ
經濟界ニ於ケル弊害ハ政府ニ於カレマシテ
モ能ク私ハ御認メニナッテ御出デニナルコ
トト思フノデアリマス、產業合理化ノ一部
ト致シマシテモ、斯ノ如キ弊害ハ徹底的ニ
矯正ヲ計ル必要ガアルト思フ、寧ロ此產業
統制ナドト云フコトヨリハ、斯ウ云フ方ノ
實際惡イ弊害ヲ矯正スルノ方法ヲ御講ジニ
ナッタ方ガ、ドレ程實際ノ利益ガアルカ知レ
ヌト私ハ思フ位デアリマス、此コトニ付テ
政府ハドウ云フ御考デ居ラレルカ、若シ事
實ヲ御認メニナリマスルナラバ、此際必要
ガアルナラバ、商法其他法律ノ改正等ニ依ッ
テ、斯ノ如キ弊害ヲ根絕スル御意思ガアル
カドウカト云フコトヲ序デナガラ伺ッテ置
キマス、此產業合理化ト云フコトニ關スル
政府ノ運動ハ、既ニ臨時產業審議會及臨時
產業合理局ガ設立サレマシテ以來相當ノ日
ガ旣ニ經〃テ居ルノデアリマス、併ナガラ實
蹟トシテ世間ニ現ハレテ居リマスルモノハ、
先程申シマシタ何トカ申スモノノ統制ノミ
デアリマス、時局ニ鑑ミマシテ最モ急務ト
政府モ國民モ認メテ居リマスル此重要政策
ニ對スル產業合理化事業ト致シマシテハ、
誠ニ何ダカ物足ラヌ感ジガ致スノデアリマ
ス、先年亞米利加ノ「フーヴアー」氏ガ僅ニ
數箇月ノ間ニ米國ノ全產業ノ立直シヲ實行
シマシタ手際ニ比較イタシマスト云フト、
今日政府ノナサレ方ハ人力車ト飛行機ノ差
ガアル位ニ、私ハ考ヘテ居ル、ドウモ今日
ノ「スピード」時代ニハ不似合千萬ナル緩漫
振リト思フノデアリマス、勿論政府當局モ
或ハ多數ノ委員ノ方ミノ精勵努力ハ十分認
メル次第デハアリマスルケレドモ、唯徒ラ
ニ組織ノ形式トカ、或ハ膳立ノ審議ヲサレ
ルトカ、或ハ又抽象的ノ議論乃至外國ノ翻
譯書ノ本讀ミナドニノミ沒頭サレテ居リマ
シテ、テキパキト實行的ニ是ガ解決シテ行
カヌト云フコトハ、何ダカ遺憾ニ私ハ考ヘ
ルノデアリマス、殊ニ中小ノ商工業者ノ如
キハ殆ド全部沒落ノ悲運ニ際會シテ居ルニ
モ拘リマセズ、其合理化ト云ヒ、或ハ金融
ノ改善ト云ヒ、是等ノ適當ナル解決ハ急務
中ノ急務デアルニ拘ラズ一向ニ捗クテ居ラ
又、私ハ間違ヲタ合理化ハ眞,平ラ御免ヲ蒙
リタイノデアリマス、ケレドモ本當ノ合理
化ナラバドシ〓〓ヤッテ戴キタイ、政府ノ勇
斷ト決心次第デ直ニ解決ノ出來ル問題ハ澤
山アラウト思フノデアリマス、勿論當業者
ノ自發的自覺的努力ト云フコトハ、是ガ最
モ必要デアルノデアリマス、ケレドモ併ナ
ガラ政府ノ指導誘披ト云フコトヲ主ニシ
テ、今日ノ時局ニ善處サレルト云フコトガ、
政府トシテハ一ツノ重要ナル方策デハナイ
カト思フノデアリマス、唯此經濟ノ改善ト
云フコトニ一ツ一ツ法律ヲ改正ヲスルト
カ、或ハ新シイ法律ヲ作リ出スト云フヤウ
ナコトノミヲ致シテ居リマシテハ、到底何
事モ成功シ得ラレヌト云フ風ナコトニ陷リ
マスル爲ニ、私ハ甚ダ失禮デハアリマシタ
ガ、率直ナコトヲ申上ゲテ、政府ノ御考慮
ヲ煩シタイト云フ趣意デ、此三四ノ質問ヲ
致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際午後一時三
十分マデ休憩イタシマス
午後零時三十一分休憩
午後一時四十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=29
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030・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 書記官ヲシテ
報〓イタサセマス
〔瀬古書記官朗讀〕
本日輸出組合法中改正法律案特別委員會ニ
於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長侯爵大久保利武君
副委員長男爵中島久萬吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=30
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031・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ會議ヲ
開キマス、俵商工大臣
〔國務大臣俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=31
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032・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 午前ノ藤村男爵ノ
御質問ニ對シマシテ御答ヲ致シマス、第
ノ御質問ハ本案ハ產業合理化ノ精神ニ矛盾
ハナイカト云フ意味ノ御尋ネデゴザイマシ
ク、藤村男爵ハ產業合理化ノ意義、世間ニ
往々似テ非ナルモノガアルガ、產業合理化
ニ於テハ其精神ハ良品廉價ト云フコトガ根
抵デアル、生產費ヲ低下セシムルト云フコ
トガ根本デアル、ソレハ產業ノ自由競爭ト
云フ所ニ其根柢ガアルヤウニ思フ、斯ウ云
フヤウナ意味ノ御話ヲ前提ニ置イテ爲サレ
マシタ、私ハ藤村男爵ノ此御說ニ對シマシ
テハ全然同感デアリマス、政府ガ產業合理
局ヲ設ケ、產業ノ合理化ヲ徹底セシメタイ
ト云フコトハ藤村男爵ノ御話ノ通リデアリ
やく、唯斯ウ云フ立場ノ下ニ於キマシテ何
故ニ然ラバ此法案ヲ出スカ、先刻モ說明申
上ゲタガ如ク、目下ノ產業界ノ狀態ガ無謀
ノ競爭ヲ致シマシテ、自分ノ生產原價ヲ切ッ
テマデ競爭ノ結果共倒レニ相成ル狀態デア
ルノデアリマス、殊ニ私共ノ產業界ノ前途
ノ爲ニ悲シミマスコトハ、輸出貿易ニ於キ
マシテ殆ド外國消費者ガ要求セザル以下ニ
自己ノ賣リ値段ヲ崩シマシテ、自カラガ一
人損失ヲ被ルダケデハナイ、却ッテ價格ノ不
安定ノ爲ニ其輸出ヲ阻害スルガ如キ狀態ニ
アルノデアリマス、畢竟スルノニ、是レ餘
リ同業者間ノ統制ノ無キ爲ニ徒ラナ、不當
ノ競爭ヲスルト云フコトニ原因スルノデア
リマス、此法案ハサウ云フ產業狀態ニ對シ
マシテ、玆ニ同業者間ノ統制ヲ付ケテ、無
謀ノ競爭ヲ抑制シ、價格ノ不安定ヲ安定セ
シメルト云フノガ趣旨デアリマス、合理化
ノ仕事ガ出來得ルダケ生產費ヲ低下スル、
無駄ヲ省キ、能力ノ增進シテ、出來得ルダ
ケ生產費ヲ低下スル、是ハ合理化運動ノ最
モ骨子デアリマスケレドモ、併ナガラ不當
ニ生產費ヲ切ッテ損失ヲシテマデ自ラガ倒
レ、從ッテ此產業ヲ傷ツケルヤウナ現今ノ無
謀狀態ノ競爭ガ決シテ合理化ニ適ッタモノ
デナイト思フノデアリマス、ソレ故ニ統制
ヲ付ケルト云フコトハ、決シテ合理化ノ趣
旨ニ反對シナイモノデアル、矛盾シナイモ
ノデアル、我〓共ハ競爭ハ其產業ノ發達ノ
根柢デハアリマスケレドモガ、男爵モ仰セ
デアッタガ如ク、我ミハ自由競爭ノ下ニ公正
ナル競爭ヲ希望シテ居ルノデアル、無謀ノ
競爭ハ我〓ハ何處マデモ排斥シタイ、無謀
ノ競爭ヲ去ラシムルコトガ軈テ國民經濟ノ
發達ニ······健全ナル發達ニ一致スルノデゴ
ザイマス、此法案ガ或ハ物價ヲ釣リ上ゲル、
價格釣リ上ゲノ結果ヲ來シハセヌカト云フ
コトデアリマスケレドモ、ソレニ對シマシ
テハ私共ハ第三條卽チ男爵ノ御引用ニナッ
タ如ク、第三條ハ世ニ所謂「カルテル」ニ對
スル所ノ强制規定デアリマス、價格釣上ゲ
ノヤウナ協定ヲスルヤウナ場合ニ於テハ
第三條ニ依ッテ十分ニ之ヲ强制シ得ルモノ
デアル、斯ウ考ヘマス、第二ノ御尋ハ此法
案ヲ以テ第三條ガアルトハ申シテ居ルガ、
果シテ國民消費者ノ利益ヲ確保スルダケノ
確信ガアルカ、私共ハ只今申上ゲマシタ如
ク世界的一般ノ經濟的趨勢ハ當業者自
身ノ利益ヲ共同ニ保護ヲシマス爲ニ「カルテ
ル」ヲ造リ、或ハ「トラスト」ヲ造ル、此弊害
ニ國民一般ハ各〓惱マサレテ居ル、我國ニ於
キマシテハ寧ロ只今申上ゲマス如ク、當業
者ノ無謀ノ競爭ニ禍ヲサレテ居ル、ソレ故
ニ本案ノ第一條、第二條ト申シマスモノハ、
其統制ヲ付ケルト云フ點ニ於テ、大イニ其
理由ヲ存シテ居ルノデアリマスルガ、併シ
J
其「カルテル」ニ禍サレテ居ルト云フ世界ノ
產業國ノ實蹟ニ鑑ミマシテ、我〓共ハ第三
條ヲ置イテ特ニ「カルテル」ノ弊害ヲ矯正ス
ルト云フ考デアルノデアリマス、公正ノ利
益ニ反スル、公益ニ反スルト云フ第三條
ハ······私共ハ此第三條ノ公益ニ反スルト云
フ規定ノ運用ノ結果ト致シマシテ、大變ニ
漠トシタル文字デアリ、或ハ權限ノ廣イ文
字デアリマセウケレドモガ、此公益ニ反スル
ト云フコトノ規定ニ依ッテ、其、カルテル」ノ
弊害ヲ除去シ得テ、以テ一般國民消費者ノ
利益ヲ確保シ得ルモノト信ズルモノデアリ
そく、勿論是ハ運用ニ於テ單リ主務大臣ガ
之ニ當ルノミナラズ、之ニ對シマシテハ權
威アル統制委員會ノ議ニ依ッテ之ヲ行フノ
デアリマス、第三ニハ統制ト云フ、國家ノ
統制ノ思想ト云フモノガ、或ハサウデモナ
イカモ知ラヌケレドモガ、「ソヴィエート」
ノ國家統制思想ト云フコトニ或ハ似通ッテ
居ハセヌカ、又國家社會主義ト云フコトニ、
此統制ト云フ案ガ基イテ居ルノデハナイ
カ、私共ハサウ云フ御心配ノヤウナ考デハ
勿論アリマセヌ、唯自由競爭ノ弊害ガアリ
マスル時ニ於テ、此自由競爭ニ付テ國家ガ
禍サレ、國家ノ產業ガ禍サレル時ニ於キマ
シテ、之ニ對スル必要ナル制限ヲ加ヘルト
云フコトハ、蓋シ國家ノ當然ノ任務デアル
ト考ヘルノデアリマス、而シテ世間デハ此
統制案ガ如何ニモ劃時代的デアルト申シテ
居ルノデアリマスガ、是モ藤村男爵ハ御承
知デアラルヽト考ヘマスルガ、現ニ今囘改
正ヲ致シマシタガ、重要輸出品工業組合法
ノ第十條デシタカ、九條デシタカ、條文ハ
今確カニ記憶シマセヌデアリマスガ·······六
條デシタカ、其組合ニ於テ組合ノ弊害ヲ除
去スル爲ニ必要ナル場合ニ於テハ、主務大
臣ノ認可ヲ得テ、所謂「アウト·サイド」、第三
者ニ向テテ、此組合ノ制限ヲ申合セノ協定ヲ
强制シ得ルト云フ規定ガアリマス、本案ノ
第二條ノ精神ト同樣デアリマス、蓋シ是ハ
工業組合ノ組合員ノ相談ノ結果ト致シマシ
テ、同業者間ノ弊害ヲ取去ル爲ニハ、工業
組合ハ任意デアリマスルカラ、從ッテ其組合
員ニ加入シナイ者ガアル、其第三者ニ對シ
マシテハ、其組合デ以テ決メマシタ或制限
ヲ組合外ノ第三者ニ及ボスコトガ出來ルト
云フ規定ガアサマス、卽チ第二條ノ加盟セ
ザル所ノ者ニ對シテ統制協定ヲ强制スルト
云フ規定ト精神ニ於テハ同樣デアリマス、
蓋シ是ノ規定ハ何レモ今申シマスル通リ
ニ、產業ノ發達ノ上ニ於キマシテ、國家ノ
必要ノ統制力ヲ此產業ニ及ボシ、以テ產業
ノ發達ヲ圖ルト云フ精神ニ外ナラヌノデア
リマス、第四ニハ無統制ノ狀態ハ中小工業
ニ於テ專ラ有ルノデアル、大企業ハ彼自身
ガ自ラ統制スルノデアル、然ルニ大企業ニ
對シテモ此本法ヲ適用スルコトハ、蓋シ統
制ノ各ノ下ニ於テ大企業ヲ保護スル譯デハ
ナイカト云フ意味ノ御疑デアッタノデアリ
マイカ今日ノ產業狀態ノ無謀ノ競爭ハ御話
ノ通リニ、中小企業ノ間ニモ行ハレマスル
ガ、併ナガラ全體ノ大ト云ハズ中ト云ハズ
小ト云ハズ、總テ各規模ノ工業ニ······企業
ニ競爭ガ行ハルルノデアリマス、普通ニ考
ヘマスシバ、弱肉强食ト申シテ、强イ力ノ者
ガ中小工業ヲイヂメルトカ云ッタヤウナ傾ガ
アルト想像ガ出來マスケレドモ、今日ハ或
ル企業ニ依リマスルト、却ァテ中小ノ企業家
ガ、非常ナル無謀ノ價格ヲ以テ賣出シマシ
テ、爲ニ大企業家ヲ禍セシメテ居ルト云ッタ
狀態モアルノデアリマス、大ト云ハズ中ト
云ハズ小ト云ハズ、總テノ同業者ヲ通ジテ
之ニ統制ヲ與ヘテ、以テ彼等自ラガ競爭ヲ
避ケテ、此金業ノ安定ヲセシムルト云フコ
トニ致シマセヌケレバ、其產業ハ共潰レニ
ナルト云フ如キ狀態ニ在ルト云フコトヲ考
ヘマシテ、本案ノ必要ヲ感ジテ居ルノデア
リマス、決シテ之ニ依ッテ殊更ニ大企業家ヲ
保護スルトカ、援ケルト云フ如キ意味ハ當
局ニ於テ有シテ居リマセヌ、第五ニハ旣往
ノ產業會社ニ於テ、或ハ重役ノ不正、或ハ
不當、是等ノ行爲ノ爲ニ會社其モノノ運命
ガ怪シクナリマスルシ、產業其モノノ發達
ヲ害スルガ如キ行動ガアル、之ヲ當局ハ認
メルカ、如何ニモ遺憾ナガラ此點ニ於テハ
藤村男爵ノ御意見ト同樣ナ考ヲ持ノテ居リ
マス、之ニ對シテ或ハ立法ニ依ッテ之ヲ矯正
シ、之ヲ阻止スル方法ヲ考へテ居ナイカ、
是ハ、御承知ノ通リ、之ニ對シマシテハ商
法ノ規定存スルアリ、刑法ノ規定存スルア
リ、相當ニ是等會社重役ノ行動ノ不都合ニ
對スル制裁ハ備ハッテ居リマスルト思ヒマ
スルガ、實際ノ行セニ於キマシテハ確ニ指
摘サレク如キ往々事實ガアルノデアリマ
ス、之ニ對シマシテハ一面ニ於テハ現行規
定ヲ厲行スルト云フコトト、或場合ニ於キ
マシテハ尙ホ一層是等ノ行爲ニ對シテ制裁
ヲ厚クスル······嚴ニスルト云ッタ如キコト
モ亦考ヘラレヌデモアリマセヌ、之ニ付キ
マシテハ當局ニ於キマシテハ、相當〓究ヲ
シテ、或ハ制裁ヲモウ一層嚴ニシテ、是等
ノ行動ヲ十分ニ匡救スルト云フコトヲ調査
イタシテ居ル次第デアリマス、併ナガラ商
工省ト致シマシテ、法律以外立法以外ニ何
等考ヘテ居ナイカ、大ニ考ヘテ居ルノデア
リマス、元來會社ノ不正若クハ不當ノ行爲
ガ何ニ依々テ生レルカト云フコトノ原因ヲ
尋ネテ見マスルト、種々ノ原因モゴザイマ
セウケレドモガ、畢竟イタシマスルノニ株
主ソノ者ノ監督、監視ガ十分ニアラザルト
云フコトモ亦大ナル原因ヲナシテ居ハセヌ
カト思フノデアリマス、心得違ヒノ株主ハ
徒ラニ會社ノ利益、株主配當ヲノミ貪リマ
シテ、會社ノ重役ソノ者ノ經營ニ付テノ監
視監督ガ等閑ニ付スルガ如キ行動ガナキニ
シモアラズデアリマス、是以テ株主ノ自覺、
一般國民ノ監視、竝ニ自覺ヲ我〓共ハ促サ
ザルヲ得ナイノデアリマスケレドモ、玆
大ナル缺陷ト我〓共ガ、思ハルベキ點ハ、
從來ノ會社ノ會計ガ誠ニ分リ惡イノデアリ
やく、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、貸借對
照表ガ誠ニ分リ惡イノデアリマス、此貸借
對照表ヲ一般ニ極クヨク分リ易イヤウニ致
シマシテ、以テ株主ノ監視、國民ノ監督、
監視ノ眼ヲ審ニスルト云フコトガ、是亦一
面ニ於テハ會社ソノモノノ不正······重役ノ
不正、不當ナル行爲ヲ豫防スルト云フ働キ
ヲ爲スモノト思フノデアリマス、合理局ニ
於キマシテハ、特ニ財務管理委員會ヲ設ケ
マシテ、是等會社ノ會計ヲ、平タク申シマ
スナラバ、素人ニ極ク分リ易イヤウナ方式
ニ之ヲ改メタイト云フ趣旨ヲ以チマシテ、
財務管理委員會ニ於キマシテ、貸借對照表
ノ極ク素人ガ分リ易イ方式ヲ決定ヲ致シマ
シテ、之ヲ世上ニ尋テ居ルノデアリマス······
世人ノ之ニ對スル批評ヲ求メテ居ルノデア
リマス、私共ガ今中土ゲル如タ、會社ノ不
正、若クハ不當ノ重役ノ行動ハ是ハ何ト
シテモ取締ルベキモノデアッテ、之ニ對シテ
ハ立法ノ方法モアルノデアリマスガ、更に
進ンデハ會社ノ會計ヲ極ク簡易ニシ、會社
ノ會計ヲ極クハッキリト明確ニ致シマシテ、
株主ノ十分ナル監督、監視ノ眼ヲ密ニスル
ト云フ事柄ガ必要デアルト云フ、斯ウ云フ
見地ノ下ニ於キマシテ、今申上ゲマシタ貸
借對照表ト云フモノヲ極クハッキリ、明確ニ
ナルベキ方式ヲ以テ決定ヲ致シマシテ、之
ヲ世上ニ批評ヲ求メテ居ルノデアリマス
斯ノ如キモノニ於キマシテ、望ムラクハ藤
村男爵ノ言ハレル如ク、會社ノ重役ノ不正
不當ノコトガ多少ナリトモ匡正スルコトガ
出來レバ、誠ニ仕合セト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=32
-
033・藤村義朗
○男爵藤村菱朗君 自席カラ發言ノ御許シ
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=33
-
034・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=34
-
035・藤村義朗
○男爵藤村義朗君 只今私ノ質問ニ對シマ
シテ、商工大臣ノ明細ナル御答辯ヲ得マシ
テ感謝ヲ致シマス、御說明ノ中ニ、多少御
說ノ可否ニ付キマシテハ、尙ホ議論〓究ノ
餘地ガアルダラウト思ヒマスガ、大體ニ於
キマシテ明瞭ナル御說明ヲ得マシテ、私
非常ニ滿足ヲ致シマス、此上ノ質疑ハ重ネ
マセヌ、何レ委員會ニ於キマシテ相當御考
究モアラウト思ヒマス、私ハ是デ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=35
-
036・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 本案ハ輸出組
合法中改正法律案外一件ノ特別委員ニ付託
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=36
-
037・近衞文麿
○副議長(公爵近衛文麿君) 日程第五、入
營者職業保障法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、宇垣陸軍大臣
入營者職業保障法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十四自
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正ナリ)
入營者職業保障法案
入營者職業保障法
第一條何人ト雖モ被傭者ヲ求メ又ハ求
職者ノ採否ヲ決スル場合ニ於テ入營
(應召ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ヲ命
ゼラレタル者又ハ入營ヲ命ゼラルルコ
トアルベキ者ニ對シ其ノ故ヲ以テ不利
益ナル取扱ヲ爲スベカラズ
第二條雇傭者ハ入營ヲ命ゼラレタル被
傭者ヲ解雇シタルトキ又ハ被傭者ノ入
營中雇傭期間ノ滿了シタルトキハ其ノ
者ガ退營(入營ノ際行フ身體檢查ノ結
果歸〓ヲ命ゼラレタル場合ヲ含ム)シ
タル日ヨリ三月以內ニ更ニ之ヲ雇傭ス
ルコトヲ要ス但シ左ノ各號ニ揭グル事
由ノ一ニ該當シタルニ因リ解雇シ又ハ
現ニ左ノ各號ニ揭グル事由ノ一ニ該當
スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一被傭者ガ入營ノ日ヨリ陸軍ニ在リ
テハ二年、海軍ニ在リテハ三年ヲ超
ユル期間服役ヲ志願シ採用セラレタ
ルトキ
二被備者ガ第二項ニ規定スル通知ヲ
爲サズ又ハ雇傭者ヨリ同項ニ規定ス
ル通知ニ於テ勞務ニ就クベキ旨ヲ指
定セラレタル日ヨリ故ナク二十日以
內ニ勞務ニ就カザルトキ
三被傭者ガ疾病又ハ傷痍ニ因リ勞務
ニ堪ヘザルトキ
四被傭者ガ著シタ其ノ職務ヲ怠リタ
ルトキ
五被傭者ニ著シキ不良行爲アリタル
トキ
六雇傭ノ目的タル事業ノ廢止、終了
又ハ著シキ整理縮少其ノ他之ニ準ズ
ル事由アルトキ
雇傭者及被傭者ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ前項ニ規定スル雇傭ニ關シ必要ナル
事項ヲ相互ニ通知スルコトヲ要ス
雇傭者ハ第一項各號ニ揭グル場合ヲ除
クノ外同項ノ規定ニ依リ雇傭シタル被
傭者ヲ其ノ雇傭ノ日ヨリ三月以內ニ於
テ民法第六百二十七條又ハ第六百二十
八條ノ規定ニ依リ解雇スルコトヲ得
ズ
第三條前條第一項ノ規定ニ依リ退營者
ヲ雇傭スル場合ニ於テ之ニ與フベキ勞
務及給與ハ其ノ者ノ入營直前ノ勞務及
給與ト同等ノモノナルコトヲ要ス但シ
被傭者ガ疾病又ハ傷痍ニ因リ入營直前
ノ勞務ニ堪ヘザルトキ其ノ他已ムヲ得
ザル事由アルトキハ之ト異ル勞務及給
與ヲ與フルコトヲ妨ゲズ
第四條前二條ノ規定ハ入營ヲ命ゼラレ
タル被傭者ガ解雇セラレザル場合ニ於
ケル退營後ノ復職及取扱ニ付之ヲ準用
ス
第五條前三條ノ規定ハ雇傭者ガ常時五
十人以上ノ被傭者ヲ使用スル場合ニ之
ヲ適用ス
第六條當該官吏又ハ公吏ハ前四條ノ規
定ノ施行ニ關シ必要アリト認ムルトキ
ハ當事者ニ對シ勸解ヲ爲スコトヲ得
前項ノ當該官吏又八公吏ノ範圍ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第七條本法ノ適用ニ付テハ國、道府縣、
〇ノ被備者
市町村其ノ他之ニ準ズルモノ○ガ雇傭者
ニシテ官吏又ハ公吏ニ準ジ取扱フコトヲ要
タル場合ニハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲
スル者ニ付
スコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大區宇垣一成君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=37
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038・宇垣一成
○國務大臣(宇垣一成君) 只今議題ニナリ
マシタ入營者職業保障法案、之ニ付キマシ
テ提案ノ理由ヲ說明申上ゲマス、抑兵役
ニ服シ、入營スル者ハ一身一家ノ利害ヲ顧
ミッキ·國民ノ代表トシテヨク困苦缺乏ニ堪
へ、專心軍務ニ盡瘁イタシ、護國ノ重任ニ
服シテ居ル者デアリマス、此點ニ想ヒヲ致
シマシタナラバ、之ヲ後援シ之ヲ支持シテ、
後顧ノ憂ナク、一意奉公ノ誠ヲ致サシムル
コトハ、國民當然ノ責務デアリマス、又國
民ニ斯ノ如キ自覺ガアッテコソ、始メテ國民
皆兵ノ實モ擧ガリ、建國ノ基礎ガ愈、鞏固ヲ
加へ得ルト思フノデアリマス、然ルニ現在
是等兵役義務者ニ對スル國民ノ後援ハ、必
ズシモ我ミノ豫期スル程度ニハ達シテ居リ
マセヌ、殊ニ就職關係ニ付テ見マスルト
入營スル者ニ對シテハ却テ是ガ採用ヲ嫌
ヒ、又ハ入營スル機會ニ於テ解雇セラレ、退
營後失業スル者ノ少カラザル實狀ニアルノ
デアリマス、勿論雇傭者ノ中ニハ、在營中
ニ十分ニ心身ヲ鍛鍊セラレタル除隊者ノ眞
價ヲ認メマシテ、進ンデ是ガ雇傭ヲ歡迎ス
ル向モ今日ニ於テハ相當アリマスケレド
モ、未ダソレガ廣ク且ツ普ク斯ノ如キ傾向
ニアルトハ申兼ネルノデアリマス、卽チ入
營スル者ハ奉公ノ義務ヲ果シナガラ、而モ
失業ヲ以テ報ヒラレルト云フヤウナ、頗ル
不如意ノ狀態ニ置カレテ居ル者ガアルコト
ハ、誠ニ氣ノ毒ニ堪ヘナイ次第デアリマス、
玆ニ於テ一日モ速カニ適當ナル方策ヲ講
ジ、一ハ以テ入營スル者ヲ安ンジテ兵役ニ
服セシメ、他ハ依クテ以テ廣ク國民ノ兵役ニ
對スル義務觀念ヲ助長スルコトノ必要ヲ認
ムルノミナラズ、殊ニ現時ノ世態ニ鑑ミマ
ス時ハ、更ニ一層其緊切ナルヲ痛感スルノ
デアリマス、此見地ニ於キマシテ兵役義務
者竝癈兵待遇審議會ニ於テモ、此種職業保
障法ノ制定ニ關シテ答申ヲ提出セラレタ次
第デアリマス、而シテ本法案ノ趣旨ハ、從
來動モスレバ被傭者ヲ求メ、又ハ求職者ノ
採否ヲ決スル場合ニ於テ、兵役關係者ヲ嫌
フノ傾向ガアリマスノデ、之ヲ防止イタシ、
マスルト共ニ、雇傭者ノ負擔ヲ加重ナラシ
メザル程度ニ於テ、被傭者ノ退營後ニ於ケ
ル就職竝ニ復職ヲ保障セムトスルモノデア
リマス、衆議院ニ於キマシテモ、本案ヲ以テ
極メテ時宜ニ適シタル妥當ナル案トシテ、
滿場一致可決セラレタノデアリマス、唯政
府提出案ノ第七條ニ對シマシテ若干ノ修正
ヲ加ヘラレタノデアリマスガ、該修正ハ原
案ノ趣旨ヲ變更セラレタモノデハナク、寧
ロ其趣旨ヲ法文ノ上ニ明確ニ表現セラレタ
モノデアリマスノデ、政府ニ於キマシテモ
之ニ同意ヲ表シタ次第デアリマス、何卒以
上說明申上ゲマシタ所ヲ御諒承下サイマシ
テ、速カニ御審議ノ上協贊アラムコトヲ切
望イタス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=38
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039・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 本案ヲ付託ス
ベキ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イ
タサセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
入營者職業保障法案特別委員
侯爵山內豐景君伯爵小笠原長幹君
子爵白川資長君子爵渡邊七郞君
嘉納治五郞君男爵井田磐楠君
林平四郞君金子元三郞君
大城兼義君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=39
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040・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 只今、小泉遞
信大臣ヨリ發言ヲ求メラレマシタカラ許可
イタシマス
〔國務大臣小泉又次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=40
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041・小泉又次郎
○國務大臣(小泉又次郞君) 去ル十二日ノ
本議場ニ於キマシテ三室戶子爵ヨリ郵便切
手、郵便葉書ノ大日本帝國郵便トアリシヲ
日本郵便ト最近ニ改メタコトハドウ云フ譯
デアルカ、此御質問ニ對シマシテハ御答ヲ
致シテ置イタノデアリマス、私、衆議院ノ
方ノ委員會ニ出席スル爲ニ當議場ヲ退席ヲ
致シマシテカラ、重ネテノ同子爵カラ御質
問ガアッタノデアリマスル、ソレハ他ノ大臣
カラモ承リマシタ、又速記錄デ詳細ニ拜誦
イタシマシタ、其速記錄ノ示ス所ニ依リマ
スルト云フト、三室戶子爵ノ御質問ノ要旨
ハ、大日本帝國郵便トアリシヲ日本郵便ト
改メテハ、思想上カラ考ヘテ、帝國ト云フ
コトガ記載サレテアル方ガ宜シイカ、無イ
方ガ宜シイカ、此處ヲ一ツ宜シク御〓究ヲ
願ッテ、將來印刷サレル場合ニハ帝國ト云フ
文字ヲ私ハ入レテ戴キタイノデアルト、斯
樣ノ御希望ノ意思モ明カニナッテ居ルノデ
アリマスル、之ニ付テ一言申上ゲサシテ戴
キタイノデアリマスル、先般モ御說明申上
ゲマシタル通リ、大日本帝國郵便トアリマ
シタノヲ最近ニ於テ悉ク日本郵便ト改メタ
ユアラズ致シマシテ、現ニ昨年十二月、七
年ノ切手ヲ發行イタシマシタ、其切手ニハ
矢張リ從來ノ如ク大日本帝國郵便ト云フ文
字ガ認メテアルノデアリマスル、ソレハ先
般モ申上ゲマシタル通リ、決シテ國體上ヲ
輕ク見ル、或ハ思想上ヲ慮ラズニト云フヤ
ウナ輕々ノ取扱ハ決シテ致シテアルノデハ
ナイノデアリマスル、要シマスルノニ、圖
案ノ上カラ參リマシテ誠ニ是ガ適當デアル
ト考ヘマシテ、雙方トモ圖案ニ從フテ記載ヲ
致シテアルノデアリマスル、併ナガラ此御質
問ノ御要旨ヲ承リマシテ、私共モ大イニ悟
ル所ガ無イノデハナイノデアリマス、將來
發行イタシマスル殊ニ重大ナル意義ヲ含ン
デ居リマスル記念切手、其他ノ切手葉書等
ニ於キマシテハ、御趣旨ノ在ル所ヲ能ク〓
究イタシマシテ、國體上カラモ思想上カラ
モ、少シモ誤リノナイ疑ノナイト云フヤウ
ニ御取計ヒタイト存ジマス、此段御答ヘ致
シテ置キマス
〔子爵三室戶敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=41
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042・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 過日、私ガ本議場ニ
於キマシテ遞信大臣ニ質問ヲ致シマシタ趣
旨ハ皆サンモ御諒承下サレタコトト思ヒマ
ス、國務多端ナ折柄、遞信大臣ハ態、私ノ
質問ニ對シマシテ再度御答辯ヲ下サレタノ
ハ誠ニ感謝ニ堪ヘナイ次第デアリマス、又
御答辯ノ全體ヲ伺ヒマシテモ、私ノ考ニ大
體ハ副ッテ居ルノデアリマスカラ、再ビ質問
ヲスル必要ハナイノデアリマスガ、少シク
玆ニ希望ヲ兼ネテ御尋ヲ申シタイノデアリ
マス、只今、遞信大臣ノ申サレマスル如ク、
其後、新タニ出來マシタ所ノ印紙ニハ大日
本帝國郵便トアル、昨今ハ總テノ事柄ヲ統
一サレル、合理化スルト云フ聲ガ旣ニ午前
ニモ高カカッタノデアリマス、近頃出來ル所
ノ多クノ葉書又ハ印紙ニハ帝國ト云フ字ガ
無イ、大日本ノ大ノ字ガ無イト云フコトヲ
私ハ申上ゲタ、所ガマダ一部ハ矢張リ大日
本帝國トアル、斯ウ云フモノハドウ致シマ
シテモ統一ヲサレナケレバナラヌノデアリ
Vく、統一ヲスルコトガ出來ナイ程、異常
ナ困難ガ何處ニアラウカト、私ハ非常ニ疑
ヲ有ツノデアリマス、日本ユハ今日ハ圖案
等モ非常ニ發達シテ居ル時代デアリマスカ
ラ、其位ナ事ハ何ンデモナイコトデアリマ
ス、容易ナ事デナケレバナラヌノデアリマ
ス、又私ガ印紙ヲ拜見イタシマシテモ、前
日、遞信大臣ガ述ベラレマシタ上ニ於キマシ
テモ、菊ノ御紋章ヲ上ニ置イタカラ······斯
ウ云フコトガ一ツノ理由ニナッテ居リマス、
併ナガラ菊ノ御紋ト云フモノハ容易ニ附ケ
ベキモノデハナイノデアリマス、附ケタ以
上ハ是ハ非常ニ神聖ナルモノデナケレバナ
ラヌノデアリマス、謂ハバ大ナル禮裝ヲシ
タモノトモ言ヒ得ルダラウト思ヒマス、其
ノ所ニ日本帝國ト云フヤウナ大切ナ帝國ト
云フ字ヲ脫カシタト云フコトハ、菊ノ御紋
章ヲ御附ケニナッタコトト非常ニソコニ御
考ガ齟齬シテ居ルヂヤラウト思フノデアリ
マス、併ナガラ大體ニ於キマシテハ將來ハ
考慮ヲスルト仰セラレタノデアリマスルカ
ラ、徒ラニ私ハ追究イタスコトヲ好ム者デ
ハアリマセヌ、ドウソ前刻ノ御答辯ヲ實行
ニ移サレマシテ、今後出來マスル所ノ印紙、
葉書等ニ於キマシテハ今申上ゲタ趣旨ヲ十
分御採入レアラムコトヲ願ヒタイノデアリ
ぜ、、是ダケヲ申上ゲマシテ私ノ質問ハ終
リマス、尙ホ此機會ニ申上ゲマスガ、農林大
臣ニモ質問ガ申上ゲテアルノデアリマスカ
ラ、是亦御出席ノ閣僚カラ宜シイ機會ニ御
答辯ヲ願フコトヲ御傳へ願ヒタイノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=42
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043・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 本日ハ本院規
則第六十條ニ依リマシテ已ムヲ得ズ是ニテ
延會ト致シマス、次ノ議事日程ハ決定次第
彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニ
テ散會イタシマス
午後二時三十一分散會
貴族院議事速記錄第三十二號正誤
四四五頁四段豫算委員長末尾「說明」以下三行
アル
貴族院議事速記錄第三十二號正誤
頁段行誤正
四五三二二六相當同等
事由、其事由理由、其理由
同三五モ隱レタルモ隱レタル
事由理由
同三一二事由理由
同三一五イカヌ遺憾発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03319310316&spkNum=43
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