1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月二十三日(月曜日)午前十時二十三分開議
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議事日程 第三十七號
昭和六年三月二十三日
午前十時開議
第一 小作法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 抵當證劵法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 不動産登記法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 民事訴訟法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 競賣法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 農工銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 國税徴收法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 寄生蟲病豫防法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 輸出生絲檢査法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 蠶絲業組合法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 蠶絲業法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 關税定率法中改正法律案(衆第三號)(衆議院提出) 第一讀會
第十八 關税定率法中改正法律案(衆第四號)(衆議院提出) 第一讀會
第十九 農村に對する國策樹立に關する建議案(公爵一條實孝君外十六名發議) 會議
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家〓君) 是ヨリ書記官ヲ÷
シテ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
去ル二十日本院ニ於テ可決ツタル左ノ政府
提出案ハ卽日教可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
賠償金特別會計法廢止法律案
刑事補償法案
入營者職業保障法案
軍事救護法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
小作法案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
地方鐵道補助法中改正法律案修正報〓書
請願委員會特別報告第七號
昨二十二日委員會ニ於テ當選シタル正副委
員長ノ氏名左ノ如シ
競馬法中改正法律案特別委員會
委員長伯爵黑木三次君
副委員長岡田文次君
關稅定率法中改正法律案特別委員會
委員長男爵東〓安君
副委員長子爵綾小路護君
勞働者災害扶助法案特別委員會
委員長伯爵松木宗隆君
副委員長男爵佐藤達次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=2
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003・東園基光
○子爵東園基光君 本員ハ日程變更ノ動議
ヲ提出イタシマス、卽チ本日ノ日程第十九、
農村ニ對スル國策樹立ニ關スル建議案、本
建議案ヲ日程第一ノ前ニ繰上ゲマシテ直
ニ提出者ノ說明ヲ求メラレ審議ヲ盡サレ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=3
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004・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 東園子爵ノ議事
日程變更ノ動議ニ同意ノ講君ノ越立ヲ講ヒ
マス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵徳川家達着) 過半數ト議メマ
ス政府ノ同意ヲ求メマス··政府ヨリ同
意ヲ得マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第十丸農
村ニ對スル國策樹立ニ關スル建議案、会爵
一條實孝君外十六名發議、會議、湯塩幸平
君ノ登壇ヲ望ミマス
農林ニ對スル國策樹立ニ關スル建議案
右貴族院規則第六十九條ニ依リ提出候也
昭和六年三月二十日
發議者
公爵一條寶孝伯爵溝口直亮
子爵靑木信光子爵東園基光
男爵〓谷芳郞小松謙次郞
內田重成伊澤多喜男
男爵黑田長和阪本釤之助
藤田四郞湯地幸平
松村義佐藤信古
小林嘉平治絲原武太郎
顏川彌右衞門
贊成者
侯爵西〓從德侯爵松平康昌
伯爵松木宗隆伯爵小笠原長幹
伯爵酒井忠克伯爵二荒芳德
伯爵有馬賴寧伯爵酒井忠正
子爵梅小路定行子爵牧野忠篤
子爵大久保立子爵前田利定
子爵柳生俊久子爵池田政時
子爵西大路吉光子爵立花種患
子傳藪篤麿子爵秋月種英
子爵片桐貞央子爵大河内輝耕
子爵八條降正子傳保科正昭
子爵岡部長景子爵花房太郞
子爵三室戶敬光子爵西尾忠方
子爵渡邊七郞子爵裏松友光
子爵岩城隆德子爵毛利元恒
子僻米倉昌達子爵植村家治
子爵梅園篤彥子爵舟橋〓賢
子爵土岐章子爵綾小路護
石塚英藏水野錬太郞
男爵平野長祥男爵鍋島直明
男爵紀俊秀男爵小原詮吉
志水小一郞男爵神山郡昭
三井〓一郞予傳北大路實信
森賢吾男爵金子有道
男爵赤松範男爵岩倉道倶
劈爵髙本喜寛男爵井上〓總
男爵伊江朝助男爵關義壽
男爵大寺純藏男爵園田武彥
高橋琢也鍋島桂次郞
竹越與三郞南弘
倉知鐵吉山岡萬之助
富田光雄川上親晴
安達綱之中川小十郞
湯川寬吉田所美治
八田嘉明長岡隆一郞
大津淳一郞小久保喜七
服部金太郞木村〓四郞
大橋新太郞今井五介
稻畑勝太郞太田〓藏
中村圓一郞石川三郞
本山彥一澤山精八郞
林平四郞下出民義
坂田貞上郞〓助
田村新吉奥田榮之進
齋藤喜十郞小塩八郞右衞門
齋藤善八橋本萬右衞門
平田吉胤西本健次郞
高橋源次郞花井卓藏
山崎龜吉瀨谷勇次郞
吉田羊治郞根本祐太郞
松本勝太郞三木與吉郞
田中〓〓〓野村德七
小林暢山上岩二
鳴海周次郞本間千代吉
森田福市
貴族院議長公爵德川家達殿
農村ニ對スル國策樹立ニ關スル建
議
方今農村ノ疲弊其ノ極ニ達シ之ヲ現狀ニ
委セムカ前途洵ニ憂慮ニ堪ヘサルモノア
リ依テ政府ハ速ニ農村ニ對スル根本的國
策ヲ樹立シ其ノ頽廢ヲ防止シ以テ國礎ヲ
鞏固ナラシメムコトヲ望ム
右建議ス
〔湯地幸平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=7
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008・湯地幸平
○湯地幸平君 私ハ本建議案提出ノ理由ヲ
簡單ニ說明イタシタイト思ヒマス、農村ノ
困難否、衰頽ノ狀況ハ此壇上ニ於テ度ミ
論議セラレタコトデアリマスルカラ、重ネ
テ詳シク申上ゲマセヌ、併シ本案提出ニ
關係ノアル事ヲ簡單ニ申述ベヤウト思ヒマ
ス農村ヲ衰頽セシメツツアル原因ハ二三
ニシテ止マリマセヌ、就中農產物價格ノ下
落ヲ以テ主ナル原因ト思ヒマス、先ヅ之ヲ
米穀ニ見マスノニ、其價格ハ近年特ニ急激
ノ低落ヲ現ハシマシテ、殊ニ本年度、卽チ
昭和五年ハ極ク安値ト稱セラレタ所ノ昭和
四年ニ比較イタシマシテモ、約四割ノ暴落
デアリマス、昭和五年ハ御承知ノ如ク異常
ノ暴落ト稱シテ居リマスルケレドモ、尙ホ
全國ヲ通ジマシテ農家ノ收入ハ四億圓ノ減
少デアリマス又繭ノ値ハ昭和四年ノ、春
蠶ニ於テ一貫目ガ平均七圓六十錢强デアリ
マシタ夏秋蠶ニ於キマシテ六圓五十錢强
デアリマシタモノガ、昭和五年度ニ於キマ
シテハ春蠶ハ三圓七十錢、半分內外デア
ル、夏秋蠶ハ一圓八十錢內外ニ下落シテ居
リマス、之ヲ全國ニ見マスル時ニハ養蠶
家ノ減收ハ又三億五千万圓ニ達シテ居リマ
ス、其他蔬菜、果實、工藝用農產物等少ク
トモ三割、多キハ八割ノ下落デアリマシテ、
之ニ麥作ノ收穫高ノ減收等ヲ加ヘマスル
ト大約二億圓ノ收入減トナリマス、ソレ
ニ更ニ畜產其他ノ價格ノ下落ニ依ル收入減
ヲ總テ累計ヲ致シマスルト云フト、農家ノ
收入ハ之ヲ昭和四年度ヨリモ、更ニ十數億
圓ノ減少トナルノデアリマス、然ルニ他方
農家ノ購入スル必需品ノ價格ハ比較的低落
シテ居リマセヌ、農家經濟ノ逼迫ト云フモ
ノハ非常ナモノデアリマス、加フルニ農家
ノ負擔ハ租稅、諸公課ノ過重ナコトハ舊
態······舊ノ通リデアリマシテ、農家ハ昨今
ノ農作物ノ收入ヲ以テ、此高率ノ公課ヲ負
擔スル時ハ、諸經費支出ノ途ニモ困ッテ居
ル今ヤ農家ハ全國ヲ擧ゲテ其生活ヲ奪ハ
レツツアル慘狀デアリマス、以上ノ次第デ
アリマスルカラ、積年ニ互ル農家ノ負債ハ
近來益〓增大イタシマシテ、全農村ヲ通ジ、
五十億圓ノ巨額ニ達スト稱シテ居リマス、
現今ノ狀態ヲ以テシテハ到底之ガ整理ノ
途ナキノミナラズ、利子スラモ支拂フコト
ヲ得ザル窮狀デアリマス、御承知ノ通リ昔
カラ農村ガ衰頽シテ都市單リ繁榮ジタ例ハ
アリマセヌ、中小商工業ノ得意先モ畢竟農
村デアリマス、農村ニ餘裕ガアレバ中小商
工業モ亦潤フノデアリマス、是レ昔ヨリ農
ハ國ノ本ナリト云フ所以デアリマセウ政
府ハ以上述ベタル農村慘狀ノ實情ニ能ク鑑
ミラレ成ルベク速ニ農村ノ根本國策ヲ樹
立セラレテ、以テ農村救濟ノ實ヲ擧ゲラレ
ムコトヲ望ム次第デアリマス是レ本案ヲ
提出スル所以デアリマス、勿論政府ハ農村
ノコトニ付キマシテハ、種々御心配ニナッテ
居ルコトト存ジマス、殊ニ町田農林大臣ノ
如キハ深ク意ヲ此點ニ注ガレマシテ、低利
資金ノ融通等ニ付テ一方ナラヌ御努力ガ
アッタノデアリマス瘦〓ヘタ農民モ、嘸ゾ
喜ビノ色ヲ呈シタラウト思ヒマス、併シ是
ハ應絲策ノ幾分デアリマス、或ハ農林大臣
カラ言ヘバ此外ニ色ミ御考ガアッタニ違ヒ
ハアリマセヌガ、併シ是ハ到底一人ノ主務
大臣デ斯樣ナ金ノ掛カル仕事ヲ御考ノ通リ
ヤラレルト云フ事柄ハ是ハ困難ノコトデ
アリマセウ、殊ニ今度建議イタシマシタ農
村ノ根本方策ノ如キハ到底是ハ農林大臣
ガ一人デ幾ラ焦セラレテモ出來ル話デハナ
イノデアリマス、卽チ各大臣內閣諸公ガ一
致共同シテ、此農家ヲ救ハウト云フ御精神
ニナッテ戴カナケレバ、豫期スル效果ハ擧ラ
ヌノデアリマス、內閣ノ諸公ハ先ヅ以テ農
村ニ趣味ヲ持タレテ、サウシテ能ク農村ノ
コトヲ理解サレルト云フコトガ最モ必要ト
思ヒマス、然ルニ現內閣バカリデハアリマ
セヌガ、內閣ノ諸公ト云フモノハ平常ハ
商工業ノ雰圍氣中ニ生活セラレテ、偶〓地
方へ出張セラルル場合ガアリマシテモ、農
村ニ臨ンデ農民カラ親シク農村ノ實情ヲ聽
取ラルルト云フ事柄ハ殆ド皆無デハナイカ
ト思フ是デハ農村ノ理解モ、農村ノ趣味
モ持タレルコトハドウデアリマセウカ、是
等ニ付テハ特ニ御注意アラムコトヲ望ムノ
デアリマス、要スルニ農村ヲ理解シ、農業
ヲ重ンゼラルルト云フコトニ能ク意ヲ用ヒ
テ貰ヒタイト思フノデアリマス、前ニ述べ
タ通リ此建議案ハ單ニ農業ト言ハズ農村
ト特ニ言ッテ居ル、又單ニ國策ト言ハズ根本
ノ國策ト云フコトヲ言ッテ居ル、此根本ト農
村ト云フ所ニ重要ナ意味ガアルノデアリマ
ス、單ニ農事上ノ改良バカリデハナイノデ
ス、依ッテ行政上、經濟上、〓育上、各方面
カラ此農村ト云フモノヲ見テ貰ハナケレバ
ナラヌノデアリマス、勿論其方法ハ政府ノ
自山デアリマスルガ方策ハ······併シ我〓ガ
考ヘタ事柄ヲ御〓究ノ御參考トシテ二三申
上ゲタイト思ヒマス、現在ノ市町村、卽チ
自治體ノ單位ハ頗ル貧弱デアル、統計ニ依。フ
テ見ルト三百戶未滿ノ町村ガ四百三十五ア
リマス、三百戶未滿ト云フト人口ニシテ千
五百人デスガ、是デ學校ヲ持チ、役場ヲ維
持シ、土木費ヲ出シ衞生等ノ費用モ出ス
ト云フコトガ是デ出來マセウカ、ドウモ是
ハ無理ナヤウニ思ヒマス、少クトモ今日ノ
經濟上ノ狀況カラ行ケバ、私等ノ考ベテ居
ルノハ千戶以上デナクテハイカヌヤウニ思
ヒマス、然ルニ現在統計ニ依リマスルト
千戶未滿ノ町村數ガ九千六百五十四モアリ
WV 、何トカ政府ハ町村整理法案ナリ何カ
出シテ、何カ此町村ヲモウ少シ鞏固ナモノ
ニスルト云フコトニ付テ御一考ヲ願ヒタイ
ト思フ、〓員俸給ノ不拂ガ非常ニ多イノデ
アリマスルガ、斯カル三百戶未滿ノ町村、
二百戶位ノ町村モアリマスルガ、斯ウ云フ
町村ヲ獨立セシメテ、學校ヤ役場ヲ維持サ
セルト云フコトハドウモ是ハ無理ト私ハ
思ヒマスル、併シ此町村ガ斯樣ニ貧弱デ
獨立シテ居ルノハ、或ハ甲ノ町村トハ風俗
ヤ習慣ガ違フカラ一〓ニナレナイ、アノ町
村トハ氣ガ合ハヌカラ一〓ニナレヌト云フ
コトデ餘程是ハ困難ナコトデアリマスル
ガ、斯樣ナコトハ平常ノ時ニ言フ話デ、今
日ノ如ク農村ガ疲弊シ殆ド破滅ニ近ヅカ
ムトスル時ニハ、サウ云フ贅澤ナコトハ言ツ
テ居レナイコトト思フノデアリマス、其次
ニ政府ニ御考ヲ願ヒタイノハ、政府ハ時ミ
法律命令ヲ發布セラレルサウシテ自治體
ニ國家ノ事務ヲ委託サレル、而シテ金ハ一
文モ出サレナイ、ソレダケ町村ノ負擔ガ
重クナルノデアリせい、此點モ自治體ノ
單位ヲ鞏固ニセラレル御考ヘガアリマスル
ナラバ、法律命令ヲ發セラレル每ニ、町村
ノ負擔ノコトモ御考置キヲ願ヒタイ、又
農村ノ經濟ニ付テハ是ハ一番困難ナ問題デ
アリマセウガ、能ク金融ノ途ヲ講ゼラレテ、
例ヘバ五十億ノ負債ガアルナラバ五十年
間ノ期限ニソレヲ何トカシテ返ストカサ
ウシテ一年ニ一億圓ヅツ拂フトカ、色ミナ
方法ガアリマセウ、サウ云フ點モ御考究ヲ
願ヒマシテ、特ニ農村ノ無駄排除、無駄ナ
費用ヲ排除スルト云フコトニ付テ一層
御努力、御注意ヲ願ヒタイ、農村ニ付
テ細カニ〓究サレタナラバ、無駄ナ費用
モアリハシナイカト思ヒマス、サウシテ資
金ヲ融通セラルル場合ニモ、其金ハ有效適
切ニ使フヤウニ、此邊ノ御取締ニ付テ御注
意ヲ願ヒタイト思フ、殊ニ稅制ノ問題ニ付
テハ最モ愼重ナル御〓究ヲ願ヒタイ、大
藏省ノ調査ニ依リマスルト、農業者ノ負擔
ハ之ヲ商工業者ニ比スルニ、二倍餘ノ高
率ニナッテ居リマス、然ルニ農家ノ收入ハ隱
匿スルニ途ガナイノデスカラ、是ハ細カユ
調ベタナラバ、或ハ三倍位ノ負擔ガ重クナッ
テ居リハシナイカト思ヒマス、尙ホ道府縣
農會ノ最近ノ調査ニ依リマスルト云フト
田畑所得者ト、ソレカラシテ田畑所得者ノ
現在ノ負擔額ト、營業所得者ノ現在ノ負擔
額ト云フモノヲ比較シテ見マスルト云フト
千二百圓ノ收入デ農家ノ方ハ營業所得者ニ
比シマシテ二倍一割三分、二千圓ノ收入ニ
於キマシテ二倍三割、三千圓ノ收入ニ於キ
マシテ二倍四割、五千圓ノ收入ニ於キマシ
テ一倍九割九分、一万圓ノ收入ノ人ニ於キ
マシテ二倍一割七分、三万圓ノ收入デアリ
マスト一倍七割七分、十万圓ノ人デアリ
マスト一倍七割七分、平均二倍七分ト云
フモノガ、營業所得者ヨリモ農家ノ所得者
ノ方ガ稅ガ高クナッテ居リマス、山テ農家ノ
此稅制ト云フコトニ付キマシテハ、負擔ノ
均衡ヲ何トカシテ、是ノ減稅ノ方法ヲ御〓
究ニナルト云フ事柄ハ農村根本政策トシ
テ重大ナコトデアリマス其外米專賣ノ利
害得失、是モ大分農家デ聲ガアリマスルガ
果シテ米ノ專賣ガ出來ナイモノカ、出來ル
トスレバドレ位ノ費用ガ掛ルト云フコトノ
御調査ヤ、ソレカラ納稅ト云フモノニ米ヲ
以テ納稅ヲセシメタラドウデアルカ、米デ
モ金錢デモ農民ノ好ム所ニ依テ、納稅セシ
メルヤウナ制度ヲ布カレタラドウデアル
カ、ソレカラ自作農ト小作農ニ限リ、或ル
制限ノ下ニ、自家用料ヲ許サレタラドウデ
アルカ、是ハナルベク農家ヲシテ自給自足、
金ヲ使ハセナイ方法ヲ講ジテ農村ヲ振興
セシメルト云フコトニ付テノ御〓究モ願ヒ
タイ殊ニ農家ノ不況ニ付テ、私ハ農林大
臣ト商工大臣ニ御〓究ヲ願ヒタイ從來副
業ト言ヘバ大〓農業ダケニ限クテ居ッタ、勿
論農業ノ副業ト云フモノモ必要デハアリマ
スルガ更ニ此農家ノ餘剩餘剩勞力ト云
フモノヲ工業化スルト云フコトハ必要デナ
イカ、鐵工業トカ化學工業ノ如キ之ニ類
スル仕事ハ卽チ工業集中主義デアリマスケ
レドモ、簡易ナ工業ハ、卽チ工業分散主義
ト云フコトニ付テ、御〓究ニナッタラドウデ
アルカ、農家ニハ閑ナ農時、卽チ農業ノ閑
ノ時ガアリマス、遊ンデ居ル勞力ガアリマ
ス、サウシテ近頃ハ如何ナル所ニ行キマシテ
モ、「スヰッチ」ヲ一ツ捻レバ直チニ動力ガ出
テ來ル、殊ニ此動力ハ夜間ハ電燈デ大分
費ヘテ居リマスルガ、晝間ハ遊ンデ居ル動
力ガアラウト思ヒマス、此遊ンデ居ル動力
ト閑ナ農家ト云フモノノ働キヲ結付ケマシ
テサウシテ之ニ簡單ナル機械ヲ備へ付ケ
サセル、サウシテ農家ニ用フル所ノ絲トカ
「シヤツ」靴下、足袋、其他「メリヤス」等ノ
製品ヲ作ラセル併シ是等ノ仕事ハ是ハ例
ニ申シマスルガ、〓究シタナラバ簡單ナル
機械ト農閑ヲ利用シテ、色〓工業的ノ仕事
ガ出來ルデアラウト思ヒマスデ或ハ自己
ノ用ヲ便ジタリ或ハ之ヲ賣品トスル勿
論非常ニ精巧ナ物ハ出來マスマイガ、サウ
シテ各村ニハ組合ヲ設ケマシテ、政府ハ之
ニ奬勵補助ヲ與ヘル、サウシテ又主務省又
ハ府縣ニ於キマシテハ技師ヲ置キマシテ、
其組合ヲ〓ヘテ步ク、指導シテ步ク、出來
タ製品ハ至ッテ廉イモノデアラウト思ヒマ
ス、農家ハ勞銀ガ要ラナイ、要ルトシテモ
僅カナモノデアリマス、必ズ廉價ニナル、
サウシテ各組合デ出來タ製品ヲ相當ノ資格
ヲ、相當ノ方法ヲ以テ規格ヲ統一シ、此出
來タ品物ヲ一纒メニシテ南洋其他適當ナ所
ニ輸出サレタナラバ、是ハ私ハ十分ナ見込
ガアルコトト思ヒマス私ハ其點ニ付テ專
門ノ人ニ聞イテ見マシタガ、ソレハ非常ニ
見込ガアルト云フコトデアリマス、色ミ例
ヲ調ベテ見マスト、例ヘバ米國ノ「フオー
ド」ハ自動車ノ部分品ト云フモノヲ附近ノ
農村ノ過剩勞力ヲ利用イタシマシテ康ク之
ヲ作ラシメタ、サウシテ農民モ非常ニ潤ッ
タガ、同時ニ自分モ利得シタト云フ事柄ハ
是ハ御承知デアリマセウガ、アア云フヤウ
ナ雜誌ニモ載シテ居リマス、初ハ私ノ希望ス
ルノハ一府縣一万圓位宛ノ補助金ヲ出サ
レテ、總額四五十万出サレテ、試驗的ニ
其內デ適當ナモノヲ指定シテ試驗的ニヤラシ
テ見ル、サウシテ試驗的ニヤッテソレガ段々
良クナッテ來レバ、ソレヲ擴張サレルト云
フコトモ一ツノ方法デハアルマイカト思ヒ
マイ、此點ハ何卒商工大臣ト農林大臣ト共
ニ御〓究ヲ願ヒタイ、又蠶絲業ノ政策ニ付
キマシテハ生絲、原料繭ノ規格統一策ガ
最モ必要ナコトト思フノデアリマス、蓋シ
今後ノ養蠶業ト云フモノハ優良品ノ安價生
產ト云フコトヲ主眼トシテ進マナケレバナ
ラヌト思ヒマス、之ニハドウシテモ原蠶種
ノ國營ヲ斷行スル必要ガアルト思フ、サウ
シテ品質ノ向上、能率ノ增進ニ努メラレル
ト共ニ、產繭販賣ノ統制ヲ圖ラレマシテ、
サウシテ繭價ノ維持ニ努メラレルト云フコ
トガ、我ガ蠶絲業ノ安定ヲ期スルコトト思
ヒマス以上ハ御參考ノ一端トシテ述べタ
次第デアッテ、決シテ政府デ御調査ニナル事
柄ヲ制肘ヲシタ譯デハアリマセヌガ、ドウ
メ農村ガ危急存亡ノ時ニ際シマシテ、本建
議案ノ目的達成ニ內閣諸公ハ〓誠ト同情ト
ヲ以テ御盡力アラムコトヲ願フノデアリマ
ス若シ此建議案ガ此貴族院ヲ通過イタシ
マスレバ、來年ノ通常會ニ於テドノ位各大
臣ガ此建議案ノ趣意ヲ讀マレテ施設經營セ
ラレタカト云フ事柄ハ是ハ年々決議案或
ハ建議案或ハ質問トナッテ現ハレルコトト
思ヒマス、何卒十分此邊ノコトヲ御〓究ヲ
願ヒタイ、萬一不幸ニシテ內閣ガ更迭スル
ヤウナ場合ガアリマスレバ、ドウゾ次ノ內
閣ニ此貴族院ノ精神ノアル所ヲ御引繼アラ
ムコトヲ希望スル次第デアリマス、以上ヲ
以テ提案ノ趣意ト致シマス
〔內田重成君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=8
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009・内田重成
○內田重成君 私ハ只今議題ト相成ッテ居
リマスル建議案ニ對シテ贊意ヲ表スル者デ
ゴザイマス、先刻來湯地君ヨリ我ガ農村狀
況ニ付キマシテ詳シク御述ベニナッテ居リ
マスルノミナラズ、農村狀況ハ本議會中各
般ノ機會ニ於キマシテ屢、論述セラレテ居
リマスル、ノミナラズ新聞紙ノ報道、縣
郡町村農會ノ報告又ハ決議、町村長集會
ノ決議、其他實地踏査セラレタル方ミノ報
告等ニ依リマシテ、詳細ニ報道セラレテ居
リマシチ農村ガ如何ニ疲弊困憊イタシテ
居リマスルカト云フ狀況ハ餘リニ明瞭デア
リマシチ所謂周知、公知ノ事實デアリマ
ス、仍テ數字ヲ擧ゲマツタリ、又ハ事實ヲ
列擧イタシマシテ具體的エ申上ゲルコト
ハ時間ノ極メテ重要ナル時期ニ於キマシ
テ、私ハ遠慮スルコトヲ適當ト考ヘマス、
今日ノ農村ノ實情ヲ約言イタシマスルナラ
バ農村ノ文化ガ一般ノ文化ニ非常ニ遲レ
ヲ居ル、誠ニ荒寥落莫ノ有樣デアルト云フ
其實情ニ付キマシテ申上ゲマスルコトハ
暫ク是ハ差控ヘテ置キマスル現在ノ焦眉
ノ急ト致シマシテハ、只今湯地君ヨリ詳細
統計ヲ擧ゲテ說明ヲセラレマシタル通リ
全ク農民ハ農產物ノ最近ニ於ケル價格ノ暴
落ニ依リマシテ、其收益ハ遙ニ生產費ニ及
バズ土地ノ所有者ノ收益ハ租稅其他ノ公
課ヲ差引キマシテ餘ス所幾何モナシ、或
特殊ノ人ヲ除キマシテハ毎年々々借金ニ
加ヲルニ借金、ソレデ是マデハ漸クニ過シ
テ參リマシタ、今ハ借金ヲ致シマスル能力
サヘモ全然失"テ居リマスル、絕對絕命、未
會有ノ難局ニ直面セリト云フノハ約言ヲ
數シマシタル要約デゴザイマスル是ガ爲
ニ生ジテ居リマス所ノ影響ハ甚ダ大ナルモ
ノガアリマシテ、國家中堅ノ一ツデアル所
ノ地方ノ中產階級中ニ多數ノ倒產者ヲ生ジ
テ居リマス、倒產ニ至ラザルマデモ殆ド風
前ノ燈大ノ如ク靑息吐息、氣息奄々ノ有樣
デアル者ガ全部デアルト申シテモ過言デハ
ナイト思ヒマス、或ハ國民〓育ノ上ニ於キ
マシテ第一ノ權威者デアル所ノ小學校ノ〓
員ニ對スル脅威、迫害、侮辱ト云フコトニ
相成ッテ居リマス、又ハ經濟的諸種ノ支拂
停止トナリ、或ハ租稅公課ノ滯納又ハ不納
トナリ、小作爭議トカ云フ風ニ、經濟上思
想上ニ及ポシマシタル影響ハ極メテ重大デ
アリマツテ、農村ノ將來ニ付キマシテハ眞
ニ寒心ニ堪ヘザルモノガアルノデゴザイマ
ス、農村デ失脚イタシマシタル者ガ都市ニ
流レ込ミマスルノハ、是ハ已ムヲ得ヌコト
デゴザイマスル農業生產ノ重要ナル所ノ
要素デアリマスル地方ノ靑年男女、愈2此
農村ノ將來ニ付キマツテ絕望的ノ意向ヲ
持ッテ居リマシテ、何レモ機會サヘ有スル
ナラバ、商工都市ニ走リツツアルノデ
アリマス、近頃ハ農村ノ靑年男女子ガ
雄辯大會等ニ於キマシテ、堂々ト農村
ニ於ケル農民收益ノ增加安定、竝ニ地
位向上ノ見込ノナイト云フコトヲ公言ヲ
致シテ居リマス而シテ優良ナル所ノ靑年
男女子ハ離村スルノデアリマス、是等ノ狀
況ニ卽シマシテ、農村將ニ崩壞セムトスト
悲觀スル人ガ少クナイノデアリマス、私ハ
元來農村ノ荒廢トカ崩壞トカ云フヤウナ悲
觀的ナ言葉ハ農村ニ對スル資本ノ投下ヲ妨
ゲ及ビ農村在住者ニ對シマシテ、農村絕
望ノ思念ヲ强メル譯ニナリマスカラ、餘程
愼マナケレバナラヌコトト思ヒマス、或ハ
已ムヲ得ズ左樣ナル悲觀的ナ言葉ヲ用ヰル
モノガ多イト云フコトノ事實ヲ申上ゲナケ
レバナラヌト云フコトヲ、頗ル遺憾ニ存ジ
やき、遺憾ナガラ農村將ニ崩壞セムトスル
悲觀說ハ現在ニ於キマシテハ强チ誇張ナ
ル言葉デハアリマセヌ、農村ノ眞相ヲ究メ
タル人ハ頗ル危惧ノ念ヲ懷イテ居ルヤウデ
ゴザイマス抑、國家社會ニ於キマシテ農
村ノ占ムル地位ハ、國ニ依リテ種々ノ相遠
アルノミナラズ、又時代ニ依ッテ變遷スルコ
トヲ免レマセヌ、我國ノ農村ハ其耕地面積
約六百餘万町步ニ過ギナイ然ルニ其上ニ
約三千餘万ノ人口ヲ包容シテ居リマス、我
國ノ農村ハ國民經濟ニ取リマシテ頗ル重要
ナル地位ヲ占メテ居ルノデゴザイマス、米
穀生絲、木材ヲ初メ、我國ノ重要物產ノ
大數ハ何レモ純然タル農產物、又ハ農產物
ニ多少ノ加工ヲシタモノデアルト云フコト
ヲ見マスルナラバ總體ニ於キマシテ全國
生產ノ大半ヲ占メテ居ルモノト察セラレマ
ス、其生產物ノ數量ノ多大デアル上ニ、之
ニ依ッテ衣食スルモノガ內地ダケヂ、約三千
万人ト云フ多數デアリマス、從ッテ其產業ノ
消長ハ全國ノ購買力ノ消長ノ大ナル原因ト
ナッテ、他ノ產業營業ノ上ニ重大ナル影響ヲ
及ボスモノデアルト云フコトハ極メテ明瞭
デアリマス只今モ建議案說明者ノ申サレ
マシタル如ク我國現時ノ商工業ノ大部分ガ
農家購買力ノ消長ニ依ッテ盛衰ヲ異ニスル
ト云フ事實ハ是亦周知ノコトデアラウト
考ヘマス健全ナル農村ガ諸種ノ方面ヨリ
國家ニ貢獻スルコトノ多大ニシテ、其健全
ナルト否トハ國家盛衰ノ鍵デアルト云フコ
トハ、今更私ガ申上ゲルマデモナイコトデ
ゴザイマス、單ニ經濟的ノ見地カラ見マシ
テモ農村ノ盛衰興亡ハ單リ農村ノ興亡ノ
原因ニ止マラズ又同時ニ商工業興亡ノ原
因ト相成リマスルカラ、此意味ニ於キマシ
テ我ガ農業ハ今日我ガ國民經濟ノ基礎デ
アッテ、農業ノ利害ハ農業關係者三千万人ノ
休戚ノ問題タルノミナラズ、全國民ノ經濟
政策ノ安危ニ重大ナル關係ヲ及ボスモノト
言ハネバナリマセヌ、我國ノ產業政策ニ付
キマシテハ、商業大イニ助長セザルベカラ
ズ工業大イニ振興セザルベカラズ併ナ
ガラ農業モ亦之ヲ維持シ促進シ改善セザル
ベカラザルモノデアルト考ヘマス、此產業
ノ並行鼎立ト云フ主義ハ產業政策ノ唯一
ノ方針デアルト思ハレマス、然ルニ現狀ハ
如何デアリマセウカ、果シテ此農業ガ商業
工業ト並行鼎立ノ態度ヲ以テ居リマスカド
ウカ、之ヲ直視イタシマスルナラバ、何人
ト雖之ヲ否定スルト云フコトニ付テ疑ヒマ
セヌ、デ農村問題ハ數年前カラ〓究セラレ
タル問題デアリマシテ、政府モ其解決策ヲ
主トシテ農村振興ノ方面ニ從來求メテ居ラ
レマス、ガ其方策トシテ今マデ施設セラレ
マシタ所ノ形ヲ見マスレバ、ドウモ顯著ナ
ル效果ガ現ハレテ居ルヤウニ考ヘラレマセ
ヌノデ、產業政策ノ大方針ヲ立テラレテ
其方針ノ下ニ施設セラレテ居ルモノトハ見
受ケ難イノデアリマス、私ハ獨リ現政府ト
ハ申シマセヌ、歷代政府ノ爲サルル所ガ
ドウモ此農村ニ對スル間題ニ付キマシテハ、
場當リ政策、人氣取リ政策、選擧第一政策
ニ堕シテ居ルト云フ批評ヲスル人ガアリマ
スルガ、强チソレヲ否定スルコトモ出來ヌ
コトデハナイカト思ハレルノデアリマス
現政府ニ於キマシテモ農村間題ノ對策ニ付
テ、農村ノ金融、絲價ノ補償、米穀買上ゲ
小作法案制定ト云フ風ニ、色ミ施設セラレヲ
アルヤウデアリマスガ、私共ハ其御施設ノ效
果ガ今日以後ニ於キマシテ、如何ナル程度
ニ現ハレテ來ルカト云フコトニ付テ、十二
分ノ疑ヲ有シテ居ルモノデアリマス、現內
閣ハ其十大政綱ノ最後、第十ト云フ申ニ於
キマシテ、其第十ハ第九マデノ所ニ於キ
マシテ重要ナル政策ヲ揭ゲラレ、十ニ於テ
掃溜メト申シマシテハ失禮デアリマスル
ガ色〓ノ其他ノ政策ト云フコトデ揭ゲラ
レテ居リマスル多數ノ寄セ集メノ意見ノ中
ニ、農村改善ト云フ僅カナ文字ガ現ハレテ
居リマス、昭和二年ノ民政黨政策ノ第二ニ
於キマシテハ、稍、詳密ニ農村問題ニ付
テ揭ゲテ居リマスルガ、不幸ニシテ現內閣
ノ十大政綱ニ於キマシテハ其第十ノ一番
終リノ方ニ僅カナル文字ガ現ハレテ居ルダ
ケニ止マルノデアリマス、而シテ過グル二
十日ニ於キマシテ、施政演說中ニモ此農村
問題ノ言及ガナイト云フコトニ付テ申サレ
タ方モアリマシタガ、左樣ナ方ニ餘リ御力
瘤ガ入ッテ居ラヌヤウニ考ヘマス、数年前ハ
農村疲弊ト申シマシテモ、都市ト農村ノ生
活ノ比較カラ相對的ニ農村ノ總テガ都會ニ
劣ッテ居ル關係上、農村ノ疲弊ヲ愬ヘタ形跡
ガアリマシタ時代ニハ、所謂農村振興策ノ
二三ヲ以テ一時ヲ過スコトガ出來マシタノ
デゴザイマセウガ、近頃ニ於キマスル此農
村ノ疲憊ト云フモノハ、餘リニ悲慘デアリ
マツテ、今ハ絕對的ノモノデゴザイマス
決シテ此農村ノ叫ビハ都市トノ生活ノ比較
ヨリ之ヲ言フノデハゴザイマセヌ、其事ハ
近頃ノ農家經濟ノ狀況ニ照シマシテ極メテ
明瞭デアリマシテ農村振興ヲ要望スル農
民ノ聲ハ眞劍デアリマス、決シテ此誇張ノ
言ヲ弄シマシテ都市生活者ノ生活態樣ヲ羨
ンデ生レタ所ノ欲求デハアリマセヌ、此秋
ニ當リマシテ政府ハ農村現在ノ窮境ヲ打開
スル爲ニ最善ノ努力ヲナスベキハ勿論、將
來ニ對シマシテ國家永遠ノ興隆繁榮ヲ期ス
水餃子速ニ此農政ノ大本ヲ樹立スル所ノ
責務ヲ有セラルルモ曠日彌久、春日遲々
トシテ暢氣ニ構ヘテ居ラレマシテハ、國民
經濟上ハ勿論社會的ニモ由々シキ結果ヲ生
ズル虞アルモノデアルト云フコトヲ私
確信ヲ以テ斷言スルモノデアリマス、其結
果ガ如何ナルモノデアルカト云フコトハ
只今空想的ニ之ヲ詳シク論ジマスル時間ヲ
持チマセヌカラ、此點ニ付キマシテハ御判
斷ニ任セマスル、政府當局ニ於テモ深ク山〃
テ來ルベキ所ノ結果ニ付テハ御考慮ニ相成
ルベキモノト考ヘマス、本建議案ハ先日當
院ニ於キマシテナサレタ所ノ產業救濟決議
ト姉妹篇ヲナスモノト言フテ宜カラウト思
ヒマス、殊ニ此建議案ヲ提出セラレマシタ
理由ハ、此建議ノ理由中ニモ亦說明書ヨリ
申サレテ居リマスル通リ、唯一時ノ此農村
ノ窮境ヲ救濟スベシト云フ單純ナモノデハ
アリマセヌ、此建議案ノ中ニ書イテアリマス
ル農村ニ對スル根本的國策ノ樹立、國礎ノ鞏
固國礎ト云フ文字ハ決シテ此建議案ノ文
字ニ付キマシテハ忽〓ニ付セラレマセズユ、
能ク此點ニ付キマシテハ御〓味アラムコト
ヲ私ハ望ンデ居ルノデアリマス、二千年ノ
背、農ハ國ノ大本ニシテ民ノ恃ンデ以テ生
クル所ナリト云フ聖旨アリテ以來、農ヲ以
テ國本、國礎ト申シテ居ル、其國礎ノ文字
ガ之ニハ使ッテゴザイマス、政府ハ速ニ本建
議ノ趣旨ヲ體セラレテ最善ノ努力ヲ致サレ、
國民ヲシテ農村ノ將來ニ付テ駘蕩タル春光
ヲ認メテ、太イニ安堵セシメラレ其成蹟
ハ前說明者モ申サレマシタル如ク、次ノ
議會劈頭ニ於テ現ハルルモノト期待ヲ致シ
テ居リマス此意味ニ於キマシテ私ハ本案
ニ贊放ノ意ヲ表スルモノデアリマス
〔小林嘉平治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=9
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010・小林嘉平治
○小林嘉平治君 先刻來提案者トジテ湯地
君ノ說明ヲ承ハリマシタ、又贊成者トシテ
懇切ナル贊成ノ理由ヲ御述べニナリマシ
タ私ハ玆ニ蛇足ヲ添ヘルノ必要ハナイノ
デアリマスガ、私一個ノ私見デハアルカ知
レマセヌガ、端的ニ此提案ニ對スル所ノ結
論ガ見出ダシタイノデアリマス、具體的ニ
直ニ我ミノ手ニ於テ實行ノ出來ル所ノ結論
ヲ見出シタイノデアリマス農村振興ノ根
本對策ト致シマシテハ、ドウシテモ〓育ノ
問題ニ觸レネバナリマセヌ、私ガ申上ゲル
マデモナク今日ノ不景氣ハ世界的デアリマ
ス亞米利加ハ世界ノ金貨ノ半バニ近イ數
量ヲ占メチ居ルト申シマスガ、尙ホ不景氣
ニ苦シミ、澤山ノ失業者ヲ出シテ居リマス、
唯其中ニ世界カラ羨マレテ居ル一ツノ國ガ
アリマス、ソレハ私ガ申上ゲルマデモナク
丁抹デアル、アノ丁抹ノ、アノ天惠ニ惠マ
レナイ丁抹、又五六十年ノ昔如何ナル憐レ
ナル狀態デアッタカト云フコトヲ承知シテ
居ル我〓ガ、今日ノ丁抹ノ生レ來ルコトヲ
誰ガ豫想スル者ガアリマシタカ、而モ是ハ
一老先生ガ農村ニ思ヒヲ致シテ國民教育、ト
農村ヲ本位トセル國民〓育ニ力ヲ盡シタ結
果ガ、今日ノ丁抹ヲ來シタノデアリマス
此〓育問題ニ觸レズシテ、農村問題ノ根本
的ノ對策ヲ講ズルト云フコトハ到底出來ナ
イノデアリマス、ドウシテモ日本ト致シマ
シテハ、農村ニ卽セル〓育ヲ施スト云フコ
トニ力ヲ盡サナケレバナラヌコトハ言フ迄
モアリマセヌ、併シ是ハ恆久ノ策デアリマ
ス、今直ニ結果ヲ持來スコトハ出來マセヌ、
今私ハ茲ニ我ミノ手ニ依ッテ直ニ農村ヲ救
ヒ得ル所ノ國策ヲ有フテ居ルノデアリマス、
ソレハ何カト申シマスルト今問題ニナッテ
居リマス地租法ノ改正ツノモノデアリマ
ス、先刻來湯地サンヲ始メ、此議會始マッテ
以來、議會始マッテ以來、私ハ農村問題ニ付
テ、此演壇デ以テ、此議會ホド論究サレタ
コトハ少ナイデアラウト思ヒマス、湯地サ
ンハ先刻詳シク農村ノ窮狀ニ付テ御話ニナ
リマシタ或ハ數字ヲ根據トシ或ハ事實
ニ基イテ、又此負擔ノ重イト云フコトニ付
テモ、統計上御示シニナッタノデアリマス、
卽チ農民ノ負擔ハ商工業者ニ比シテ二倍以
上デアル、此點ニ觸レマシテハ私ハ曩ニ
若機内閣ノ時ニ稅制整理案ノ行ハレタ時
ニ、所謂縱ノ均衡ハ出來タガ橫ノ均衡ハ出
來テ居ナイ、ソレハ何デアルカト云フト商
工業者ト農民ノ負擔ト云フコトニ付テハ少
シモ注意ガ拂ハレテ居ナイ、私ハ自分ノ調
査シタモノヲ根據トシ、或ハ帝國農會、或
ハ大藏省ノ調査ヲ根據ト致シマシテ只今
湯地サンノ仰セラレタヤウナ意味ヲ申上ゲ
デサウシテ他日此地租法ノ實行セラルル
時ニハ此點ニ付テ考慮セラレタイト云フコ
トノ御願ヲ申上ゲテ置イタノデアリマス
然ルニ果セルカナデス、私共ノ望ミハ玆ニ
叶ヘラレタノデアリマス、此地租法ハ全ク
負擔ノ公平ト云フコトガ根據ニナッテ居ル
ノデアリマス、近頃此地租法ノ改正ハ都市
ニ重クシテ農村ニ大變都合ノ好イ法案デア
ルト仰セラレタノデアリマスガ確カニ其
通リデアリマス、玆ニ於テカ初メテ負擔ノ
公平ト云フコトガ見出サレルノデアリマ
ス、租稅ノ公平ヲ缺イテ······公平ト云フ事
ノ大事ナコトハ私ガ更メテ說明スルマデモ
アリマセヌ、苟クモ租稅ノ公平ト云フコト
ガ一ツノ鐵則デアルト云フコトヲ知ル人
ハ私ハ、之ニ反對スル理由ヲ見出サヌノ
デアリマス、私ハ今ノ數字ニ付キマシテ此
法ノ行ハレル結果ガドウ云フ結果ヲ持來ス
カト云フコトヲ御示シシタイト思フノデア
リマス、此地租法ヲ以テ增稅ナリト言ハル
ル人ガアリマス以テノ外デアリマス、私
ハ數字ニ付テ之ヲ示シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 小林君、成ベク
本建議案ニ直接關係ノ事柄ダケヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=11
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012・小林嘉平治
○小林嘉平治君 私ハ是ハ直接關係ノア
ル端的ニ關係セル問題デアルト心得テ居
ルノデアリマス、今暫ク御〓聽ヲ煩ハシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 地租法案ハ目下
特別委員會デ審議中デゴザイマスカラ、地
租法案ニ關スルコトハ其委員長ノ報〓ノ際
ニ御述べニナラレルガ適當ト考ヘマス、御
注意イタシマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕
若シ御承知ガナケレバ議場ニ諮ル考ヘデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=13
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014・小林嘉平治
○小林嘉平治君 只今議長ノ御注意ヲ尊重
イタシマシテ、私ハ詳シイコトハソレデハ
此減稅案ノ提案サレタ時ニ述ベルコトニ致
シマス、要スルニ此法案ニ依テ農民ハ玆ニ
救イ出サレルノデアリマス、只今議長ニ御
注意ヲ戴イタ此法案ガ、此重要法案ガ、委
員長ノ手ニ在"テ二三日ノ間ニ解決サレル
ト云フ此時期ヲ實ハ選ミタカッタノデアリ
マスガ、只今ノ御注意ニ依リマシテ、私ハ
玆ニ此意味ノ演說ヲ續ケルコトヲ見合セマ
スルガ、之ヲ要スルニ地租法ノ可決サレル
事ニ依テ多數農民ハ玆ニ救ハレルコトガ
出來ルノデアリマス、農民ハ國民ノ多數ヲ
占メテ居リマス、併ナガラ寔ニ力ノ弱イモ
ノデアリマス、私玆ニ實例ヲ思ヒ浮ベルノ
デアリマス、此減稅案ニ付テ屢〓憂目ヲ見
テ居リマスガ、加藤友三郞內閣ノ時デアッタ
ト心得マスガ、アノ時營業稅ハ一千九百万
圓ノ減稅ヲサレマシタ其當時地租法ハ如
何ナル運命ヲ見マシタカ、憲政會ハ野黨ト
シテ二割減ヲ主張イタシテ居リマシタガ
當時地租委譲ナル一ツノ議論ガ行ハレマシ
タ爲ニ、農民ニ對スル減稅ト云フコトガ實
行サレマセヌデシタ、又我ミガ此議員トナツ
テ以來ノコトデアリマス若槻內閣當時ニ
地租一分減ガ提案サレマシタ、而モ其時ニ
ハ〓育費ノ國庫負擔ノ一千万圓ト其一分減
ト云フモノガ取替ラレマシタ、是ハ衆議院
ニ於テデアリマス、其當時一分減ヲ見ルコ
トハ出來ナカッタノデアリマス、義務〓育費
ノ國庫負擔ノ一千万圓ノ增ト云フモノハ單
ニ農民バカリノモノヂヤアリマセヌ、國民
全般ニ關シテノモノデアリマス、二囘斯カ
ル運命ヲ見テ居リマス、一面營業稅ノ負擔
ニ對シテハ其當時五百万圓ノ減稅ガ成立
イタシタノデアリマス、政府ハ其當時地租
ノ一分減ト營業稅ノ五百万圓ト云フモノヲ
釣合ヲ取ラウトシテ出シタ案ガ一方ガ倒レ
テ、一方五百万圓ダケ通ッテ居ル、最近ハ營
業稅ハ合セテ二千四百万圓減稅ニナッテ居
リマス、而モ二囘トモ農民ハ一度モ減稅ヲ
見ルコトナクシテ、矢張リ四分五厘ノ稅共
儘デ實行サレテ來タ今日デアルノデアリマ
ス、ドウカ各位ニ於カレマシテハ思ヒヲ玆
ニ致サレテ、此減稅案地租案ノ······私サウ
云フコトハナカラウト思ヒマス、思ヒマス
ルガ、私共此頃ノ新聞ノ樣子ヲ見マシテ甚
ダ憂慮ニ堪ヘナイモノガアルノデアリマ
ス、又此農村振興ニ對スル所ノ建議案ハ各
派ノ多數ノ御方ニ依テ提案サレ贊成ヲサレ
テ居リマス、必ズ私ハ大多數ヲ以テ可決サ
レルコトト思ヒマス、其結論ハドウシテモ
此地租法ヲ救ヒ出ス、サウシテ端的ニ我〓
ノ手ニ依テ農民ヲ救ヒ出スコトノ結論ニ達
セネバナラヌト信ズルノデアリマス、又貴
族院ニ於テハ、衆議院ニ於ケル所ノ減稅案
ヲ、貴族院ニ於テ握リ潰シタト云フ所ノ、
之ヲ否決シタト云フ所ノ先例ハ、餘リ見ナ
イノデアリマス、ドウカ此農村振興ニ關ス
ル所ノ建議案ノ結論トシテ端的ニ我ミノ執
リ得ル所ノ途ヲバ御執リアルヤウニ、切ニ
望ンデ已マナイモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ通告者ハ
終リマシタ、本建議案ニ同意ノ諸君ノ起立
ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=16
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017・清岡長言
○子爵〓岡長言君 日程變更ノ動議ヲ提出
イタシマス卽チ日程第二ヨリ第十六マデ
ノ各案ヲ、日程第一ノ前ニ致スノ動議ヲ提
出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=17
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018・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 〓岡子爵ノ議事
日程變更ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
マス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、地方
鐵道補助法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、委員
長侯爵德川賴貞君
地方鐵道補助法中改正法律案
右別册ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和六年三月二十日
委員長侯爵德川賴貞
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字及-ハ特別委員修正)
地方鐵道補助法中左ノ通改正ス
附川第二項ヲ左ノ如ク改ム
本法公布
本法ハ昭和六年一月一日以後ニ免許ヲ申
昭和
請シタル地方鐵道、同七年一月一日以後
ニ免許ヲ受ケタル地方鐵道及同十二年一
月一日以後ニ營業ヲ開始シタル地方鐵道
ニハ之ヲ適用セス
〔侯爵徳川賴貞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=21
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022・徳川頼貞
○侯爵德川賴貞君 地方鐵道補助法中改正
法律案ノ、委員會ノ審査報〓ヲ致シマス、
本案ハ去月二十七日、本案ノ審査ヲ
本委員ニ審査ヲ付セラレマシテ、委員長ニ
ハ、私、副委員長ニハ新庄子爵ガ當選セラ
レマシタ、其後本委員會ハ會議ヲ開キマス
コト五囘、政府當局ノ說明方ヲ求メマシタ、
本案ハ地方鐵道ノ補助期間ノ規定ヲ改正イ
タスモノデゴザイマシテ愼重審議ヲ致シ
マシタル結果、本案中、「昭和六年一月一日
以後ニ免許ヲ申請シタル地方鐵道」云々ト
ゴザイマスノヲ、是ハ公布前ニ遡及スル嫌
ヒガゴザイマシテ、聊カ酷ニ過グルガ故ニ、
委員會ニ於キマシテハ、此「昭和六年一月一
日」ノ文字ヲ「本法公布」ト修正イタシマシ
タ、次ニ「同七年一月一日以後」トゴザイマ
スノヲ、其「同」ノ字ハ前ノ「昭和六年」云々
ノ文字消滅ノ結果、「同」ノ字ヲ「昭和」ノ二字
ニ變へマシテ「昭和七年一月一日以後」ト致
シマシタ、是ガ本委員會ノ修正デゴザイマ
ス、尙ホ委員會ニ於キマシテハ、北海道及
東北地方ノ如キハ未ダ鐵道ノ普及全カラ
ザル故ヲ以チマシテ、政府ニ對シテ希望決
議ヲ致シマンタ、期讀イタシマス、「北海道
東北地方ノ如キハ未ダ鐵道ノ普及完カラザ
ルモノアリ、政府ハ宜シク國有鐵道ノ建設
竝ニ自動車運輸事業發達ノ情勢ニ鑑ミ尙本
法實施ノ成績ヲモ考慮シ更ニ必要ニ應シ地
方鐵道ノ普及助成ニ對シ適富ナル方策ヲ樹
立セラレンコトヲ希望ス」、以上ノ報告ニ對
シマシテ何卒御贊成アラムコトヲ祈リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴサイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=23
-
024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=24
-
025・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ第二讀會ヲ開
カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=25
-
026・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第二
讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 委員長報告通リ
デ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=30
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031・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=31
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032・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第三ヨリ第
十二、法律案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會ノ續、委員長報〓、伊東子爵
抵當證劵法案
右可決スヘキモノト議決セリ依テ及報〓
候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
不動産登記法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
民事訴訟法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵徳川家達殿
競賣法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
民事訴訟用印紙法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
日本勸業銀行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
農工銀行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
北海道拓殖銀行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
國稅徵收法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
貯蓄銀行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月十九日
委員長子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵伊東祐弘君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=37
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038・伊東祐弘
○子爵伊東祐弘君 只今議題ニ上ボリマシ
タ抵當證劵法外九件ノ特別委員會ノ御報〓
ヲ申上ゲマス、特別委員會ハ委員長副委員
長ノ五選後四囘開會イタシマシテ司法大
藏兩省ノ政府委員ト大體ニ亙リ又逐條ニ付
テ質疑應答ヲ重ネ、愼重審議ノ結果、各案
ヲ大多數ヲ以テ可決イタシタノデアリマ
ス、尙ホ抵當證劵法案ニ付テハ特別委員會ト
シテ希望決議ヲ付シタノデアリマス、希望
決議ニ付テハアトデ申上ゲルコトニ致シマ
ス抵當證劵法案ノ提出ノ理由ハ、上程ノ
際司法大臣ヨリ御說明ガアリマシタカラ玆
ニ省略イタシマシテ、本案規定ノ運用ニ付
テ極ク大要ヲ申上ゲマス、法案ニ依レバ土
地建物、又ハ地上權ヲ目的トスル抵當權ヲ
有スル者ハ債務者等ト特約又ハ同意ヲ得タ
場合ニハ特殊ノ抵當劵ノ交付ヲ申請スルコ
トガ出來ルノデアリマシテ、是ガ發行セラ
レマシタ場合ニハ證劵ニ記載シタル抵當權
ハ債權ト共ニ其裏書ニ依ッテ讓渡セラレル
ノデアリマス、從ッテ爾後一々讓渡ノ登記ヲ
必要トセズシテ轉々セラレテ行クコトニナ
ルノデアリマス、又抵當劵ニ裏書ヲ爲シダ
者ハ、抵當權ノ實行ニ依。テ債務ノ辨濟ヲ受
ケタ殘餘ノ不足額ニ付テ辨濟ノ責任ヲ負擔
スルモノデアリマスカラ、其裏書人ガ信用
アル場合ニハ一々擔保タル不動產ニ付テ
調査ヲ爲サズトモ、抵當劵ニ安ジテ投資ス
ルコトガ出來ル譯ニナルノデアリマス、證
劵ノ發行セラレマシタ後ハ、抵當權及債權
ノ處分ハ證劵ヲ以テシナケレバ之ヲ爲スコ
トガ出來ナイノデアリマス、又權利ノ行使
ニハ證劵ノ所持ヲ必要トスルノデアリマス
カラ、抵當證劵ハ一種ノ有價證劵デアリマ
シテ、其性質ガ手形ト類似シテ居ルノデア
リマス、故ニ手形ニ關スル多クノ規定ガ抵
當證劵ニ準用サレテ居ルノデアリマス、尙
ホ民法第百七十七條ニハ物權ノ得喪及變更
ハ登記ヲ爲スニ非ザレバ第三者ニ對抗スル
コトガ出來ナイノデアリマスガ、本證劵ニ
依ル抵當權ハ此原則ノ例外ヲナスモノデア
リマス要スルニ抵當證劵ハ不動產抵當附
債權ヲ手形ノ上ニ現ハシタヤウナ證劵ニナ
ルノデアリマス、尙ホ本法施行地域ハ本法
ガ是マデニナイ新シイ企テデアリマシテ、
登記官史ノ事務ノ習熟、又本法ニ對スル一
般ノ理解ヲ十分ナラシムル等ノ關係上、先
ヅ市制施行地、借地法施行地及浦和町ノ豫
定デアリマシテ、此際ハ市街地ノ土地、建
物ガ抵當證劵ノ目的トナル譯デアリマス、
次ニ不動產登記法、民事訴訟法、競賣法及
民事訴訟用印紙法中ノ改正ハ抵當證劵法ノ
制定ニ伴フ當然ノ改正デアリマシテ、是ガ
殆ド全部ヲ占メテ居ルト云ッテ宜シイノデ
アリマス、是ハ多ク手續ノ規定ニ屬シマス
ルカラ一々申上ゲルコトハ玆ニ省略イタシ
マス、次ニ日本勸業銀行法、農工銀行法及
北海道拓殖銀行法中ノ改正法律案ハ互ニ共
通ノ點ガアリマスカラ、總括シテ改正ノ點
ヲ申上ゲマス、一方ニ抵當證券法ヲ制定ス
ルト同時ニ、是等ノ三銀行ニ改善ヲ加ヘマ
シテ、是等ノ銀行ヲシテ抵當證劵ヲ賣買シ、
又ハ之ヲ質トシテ定期償還貸付ヲ爲スノ途
ヲ開キ、又抵當證劵トナッテ居ラナイ所ノ
不動產抵當債權ニ付テモ同樣ノ貸付ヲ認ム
ルヤウニ致シタノデアリマス、又此種類ノ
業務ヲ新タニ認ムルコトニ依リマシテ、定
期償還貸付限度、又ハ債劵發行限度ノ擴張
ヲナシテ、更ニ是等ノ銀行ハ從來モ農業者、
工業者、又ハ漁業者ニ對シマシテ、十人以
上ノ連帶ヲ以テ定期償還ノ方法ニ依リテ無
抵當ノ貸付ヲ認メテ居リマシタガ、今囘又
以上ノモノニ、新タニ又年賦償還ノ方法ニ
依ル無抵當貸付ヲ認メマシテ長期低利ノ
資金ノ利用ヲ容易ナラシメタノデアリマ
ス、又農工銀行及北海道拓殖銀行ニ於キマ
シテハ、今日相當資金モ充實シテ居リマス
カラ、道府縣ニ對スル無抵當貸付ヲ認メル
コトニ致シタノデアリマス、尙ホ又日本勸
業銀行ヲシテ、日本銀行ガ管理スル有價證
劵ノ中デ、勸業銀行發行ノ債劵ヲ、便宜日
本銀行ニ代。テ管理スルコトヲ許シ、又農工
銀行ガ農工債劵元利金支拂等ノ爲ニ、他ノ
農工銀行ノ代理店トナルコトヲ認メタノデ
アリマス、而シテ普通銀行ノ職能ニ付キマ
シテ不動產抵當貸付ニ關スル從來ノ方針
ハ、之マデト依然變ルコトナク、檢査及監
督ノ方面カラ十分ニ注意スルト云フコトデ
アリマス次ニ國稅徵收法中ノ改正ハ抵
當證劵法ノ制定ニ伴ヒマシテ、納稅者ノ財
產ノ上ニ抵當權ヲ設定シタルモノガ、證劵
ガ發行セラレタ爲ニ國稅ニ對スル先取權ヲ
行使スル機會ヲ失フ場合デアリマスカラ、
其行使ノ機會ヲ得セシメル爲ニ猶豫期間ヲ
與ヘタ改正ト、從來稅法ノ改廢ニ伴ヒマシ
テ改正スベキ點ヲ改正シタノデアリマス、
最後ニ貯蓄銀行法ノ改正ハ、現行法ハ大正
十一年カラ施行セラレマシテ、其制度ハ略、ミ
整備シテ參クタノデアリマスガ、其實施後ノ
實情ニ鑑ミマシテ、其業務トシテ營マシム
ルモ差支ナイト認メタ種目ヲ追加シ、又資
金運用ノ範圍ヲ擴メマシテ、殊ニ同銀行ガ
庶民階級ニ對シテ對人信用ニ依ル或程度ノ
資金ヲ供給スル途ヲ開イタノデアリマス、
次ニ質問應答ノ二三ヲ申上ゲマス、先ヅ司
法省所管ニ關聯シタ點ヲ申上ゲマス第
ハ登記ヲ省略スルト云フコトハ、流通ニハ
便利デアルト思フガ、債務者ニハ證劵ノ所
持人ガ分ラナイコトガアッテ不利益ナコト
ハナイカ、之ニ對シテハ抵當證劵ハ手形ノ
ヤウニハ左程轉々シナイモノト思フカラ、
債務者ニ於テ所持人ガ誰デアルカ大體ノ見
當ハ付クモノト思フ、殊ニ利息ハ所持人ノ
方カラ債務者ニ請求スルモノデアリ、又本
法ニ於テハ白地裏書ヲ禁止シテ居ルカラ、
裏書人ヲ辿ッテ見レバ大體ハ見當ハ付クト
考ヘル、第二ニハ本法ハ市街地ノミニ行ッテ
一般農民ニ施行シナイノハ主トシテ經費ノ
關係ニ因ルノカ、之ニ對シテハ經費ノ點モ
アリマス登記所ノ書記ガ此證劵事務ニ慣
レナイカラ先ヅ地方裁判所ノ所在地等ヲ
都會ニ施行シテ、慣ルヽニ隨テテ漸次田舍ノ
方ヘモ施行スル考デアルト云フコトデアリ
マス、第三ハ元本ノ一部又ハ利息ノ支拂
ヲナシタ時、所持人ガ證劵面ニ記載スルコ
トトナッテ居ルガ、ワルハ間違ナク行クデア
ラウカ、又手形ハ襄書ダケデ算イトシテモ、
證券ハ之ト同ジクシナケレバナラヌト云フ
コトハナイト思フ、一々登記ヲシタラ如何
デアルカ、之ニ對シテ本證劵ハ呈示證劵デ
アッテ、支佛フ時ニ同時ニ所特人ガ記入シナ
ケレバナラヌモノデアル債務者ハ證劵ヲ
呈示シナケレバ支拂ヲ拒ンデモ宜シイノデ
アルカラ、間違サク行クモノト考ヘル、又
證劵ニ若シ流通性ヲ持タス以上ハ、裏書ダ
ケヂ讓渡スルコトハ已ムヲ得ヌコトデアッ
テ、讓渡シニ登記ヲ要シナイト云フコトガ
卽チ抵當證劵ノ骨子トナ〃テ居ル次第デア
ル、次ニ又抵當證劵ガ發行セラレマシタ
抵當權ニハ、滌除ノ規定ガ適用サレナイ
コトニナッテ居ルガ、此規定ヲ置ク方ガ
便利デハナイカ、抵當權ノ滌除ハ現在ニ
ハ非常ニ少イカラ、之ヲ認メルトスレ
バ法律ノ規定ガ色ミノ方面ニ複雜シテ來
テ面倒ニナルカラ、之ヲ除イタノデア
ルト云フコトデアル、次ニ大藏省關係
ノ質問ノ主モナルモノヲ申上ゲマス、抵當
證劵法ノ實施後ニ於テハ、勸業銀行、農工
銀行及北海道拓殖銀行ニ於ケル擔保價格ニ
對スル割掛ノ緩和、又ハ利率ノ低下等ヲ爲
ス考ハナイカ、之ニ對シテハ割掛ニ付テ
ハ法律ニ嚴格ナル規定ガアル、之ヲ動カス
コトハ出來ナイト思フ、利率ニ付テハ是等
ノ銀行ハ現在ニ於テ相當低利デアルカラ、
今直ニ之ヲ變更スルコトハナイト考ヘル、
併シ普通銀行其他ノ不動產貸付ノ條件ハ、
本法實施後ニ於テハ漸次勤業銀行等ニ接近
シテ參ッテ、債務者ニハ從來ニ比シ利益ニ
オルコトト考ヘル、第一ハ抵當證劵法ノ範
行區域ハ主トシテ市衛地ニ限ラレテ、今日
最モ必要ヲ感ジテ居ル地方農村ノ金融ヲ流
通セシムル上ニ何等效果ノナイモノト思フ
ガ之ヲ全國ニ横張スル考ハナイカ、之ニ
對シテ本法ハ從來ナイ新規ノ制度ヲ設クル
法律デアリ利害關係人ニ影響スル所モ大
デアルカラ、登記官吏ノ事務ノ習熟殿
ノ本法ニ對スル理解ヲ十分ナラシムル等ノ
關係カラ、初メハ主トシテ市街地ニ之ヲ觀タ
タ譯デアルガ、城ルベク速ニ之ヲ全國ニ及
ポスコトハ當局ニ於テモ希望スル所デア
ル而シテ農村ニ於ケル不動產金融ノ疏通
ハ勸業銀行法等ノ改正ニ依ル抵當附積權
ノ質貸付ノ方法ニ紘。テ相當效果ヲ擧ゲ
得ル積リニ考ヘテ居ル、質問應答ハ此程度
ニ上メマシテ、次ニ質問ヲ終リ討論ニ移リ
マシテ、一委員カラ次ノ贊成ノ意見ヲ述べ
ラレタノデアリマス卽チ抵當證劵ハ政府
當局ノ說明ニ依レバ、恰モ抵當權附ノ手形
ノヤウナモノデ債權ト抵當權トガ一證劵
ニ併合セラレテ、裏書ニ依、ッテ轉々セラルル
モノデアルト云フコトデアル故ニ其特徵
ハ三ツノ點ガアルト思フ、第一ハ抵當權
ハ證劵ニ化體セラレテ證劵ニ依リ移轉セ
ラレテ登記ヲ要シナイコトハ抵當證劵ノ
骨子デアッテ、外國ノ抵當證劵ニ於テモ亦同
ジコトデアル、之ニ依ッテ抵當權ノ轉々ヲ
容易ニシ金融ヲ圓滑ニスルコトニナラウ
ト思フ、第二ハ證劵ノ發行前ニ異議ヲ黴
シテ其申出ナキカ、又ハ申出ノ理由ナキ場
合ニ限フテ證劵ヲ發行シ、其發行後ハ善意取
得者ニ對シ異議ノ抗辯ヲ提出シ得ナイコト
ハ外國ニ例ノナイコトデアルガ、我國ノ如
ク登記ニ公信力ナキ法制ク下ニ於テハ證
劵所持人ノ權利ヲ安固ナラシメ、安ンジテ
證劵ヲ取得シ得セシムル爲ニハ此制度ハ絕
對ニ必要デアルト思フ、之ニ依ッテ登記ニ公
信力ナキコトカラ生ズル缺點ハ補ヒ得ルコ
トト考ヘル、第三ハ裏書人ガ婚保責任ヲ
負ヒ、抵當權贊行後ノ本足額支拂メ責ニ任
ズルコトハ是亦外國法ニ例ガナイケルド
モ之ニ依ッテ證劵取得者ノ權利ヲ鞏固ニ
シ從ッテ證劵ノ流通ヲ助クルモノト思フ
信用アル銀行等ノ裏書ガアル證劵ニ付テハ、
所得者ハ抵當權ニ付イテ何等調査ヲ爲サズ
シテ安ンジテ之ヲ取得スルコトガ出來ル
ト思フ、斯ノ如クニシテ以上第二、第三
ノ特徵ニ依フテ、抵當證劵ハ取得ニ當テテ
等調査ヲ用ヰズシテ安ンジテ轉々セラレ
ル、從ッテ抵當權者ハ比較的低利デ不動產
ニ釀通スルコトガ出來ルカラ不動產金融
ノ利率ハ必ズヤ低下セラルルデアラウ、從ッ
テ不動產ノ融通力ヲ增加シ其價格ヲ騰貴
セシムルノ利益ガアルト思フ是レ本案ニ
贊成シ又成ルベク速ニ全國ニ施行セラレム
コトヲ望ム所以デアルト云フコトデアリマ
ス、之ニ對シテ一委員カラ左ノ意見ガアッ
タノデアリマス、不動產ニ對スル放資ノ固
定資本ヲ更ニ資本化シテ流通ヲ圖ルコト
ハ目下ノ急務デ何人モ爭ハナイ所デアル
ガ民法不動產ニ關スル大原則ニ撿外例ヲ
設ケテ所有者及ビ利害關係人ニ不安ト迷
惑ヲ與ヘ且ツ不動產ヲ一般商品化シテ轉
轉流通シ、生活ノ安定ヲ脅カスヤウナ制度
ハ避ケテ、勸業銀行法又ハ農工銀行法ノ改
正ノ趣旨ノヤウニ唯抵當附債權ノ質入ヲ
許シテ不動產ノ融通ノ便ヲ圖リ且ツ之ヲ
容易ナラシムルニ如カナイト思フ、依ッテ抵
當證劵法ニハ贊成シ難イノデアル、更ニ又
一委員ヨリ法案全部贊成スルガ、抵當證劵
法案ニ希望ヲ附シタイト云フ意見ガアッタ
ノデアリマス、其希望ヲ朗讀イタシマス、
附帶希望決議「一、現下不動產ニ對スル金融
ノ涸渇ニ若ムハ啻ニ本法第一次ノ施行豫
定地タル市、地方裁判所所在地及借地法施
行地ニ止マラス地方農村及小都會ニ於テ最
モ切費ナルモノアリ仍テ政府ニ於テハ成ル
ク速ニ本法ヲ施行ヲ全國ニ及ホユ
トヲ望ム」、「一、不動產ノ所有者ノ利益ヲ保
護スル爲ニハ其者ニ於テモ抵當證卷ノ交付
ヲ申請スルコトヲ得ルノ途ヲ講スルヲ適當
ナリト思考ス仍テ民法改正ノ際此點ニ留意
シ右ノ趣旨ニ適應スル立法ニ村考慮ヲ拂ハ
レムコトヲ望ム」、此希望力出クノデアリマ
ス、採決ノ結果ハ大多數ヲ以テ御報告ヲ申
上ゲマシタ各法案ハ可決ヲ致シタノデアリ
Vく、尙ホ一委員ヨリ述ベラレマシタ希望
ハ特別委員會ノ希望決議ト致シテ認メラ
レタ次第デアリマス大體以上御報告申土
ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=38
-
039・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今伊東特別委
員長ノ報告セラレマシタ各案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ヲ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=40
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041・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 〓ニ各案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=41
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042・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊賊発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=42
-
043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=43
-
044・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス
〔長尾元太郎君「簡單デスガ、此席カラ
御質問ヲ御許シヲ願ヒマス」千蓮フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議席デハ御起立
ヲ請ヒタイト存ジマスガ、長尾君ハドウニ
フコトデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=45
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046・長尾元太郎
○長尾元太鄙君 不動產ノ資金化ニ付テ簡
單ナル質問ヲ致シタイト想セマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 政府ニ對スル質
問デゴザイマスカ、只今西大絡子爵ノ··
各案ノ第二讀會ヲ開ク前ニ、長尾君ニ發言
ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=47
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048・長尾元太郎
○長尾元太郞君 簡單デゴザイマスカラ、
此席カラ御伺ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=49
-
050・長尾元太郎
○長尾元太郞君 只今委員長ヨリ御報告ニ
ナリマシタ抵當證劵法ハ、目下行詰ッテ居リ
マスル地方金融機關救濟上、最モ適切ナル法
案ト存ジマス併ナガラ是ガ適用ガ市街地
ダケニ限ラレマシテハ其效用ガ少クシテ
遺憾ニ存ジマスルカラ、之ヲ全國ノ郡村ニ
モ適用セラレタナラバ、不動產資金化ノ目
的ヲ達シマシテ、目下窮迫セル所ノ經濟界
ノ融和ノ上ニ益スルコトガ多大ナリト考
ヘルノデアリマスガ、只今委員長ノ御報告
ニナリマシタ中ニ、此理由モ御報〓ニナッテ
居リマスルガ、其以外ニ何カノ御都合ガア
リマシテ、之ヲ市街地ダケニ御制限ナサレ
タノデアリマスルカ、此點ヲ決議ノ前ニ政府
當局ニチヨット御伺ヒシタイノデアリマス
〔國務大臣子爵渡邊千冬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=50
-
051・渡邊千冬
○國務大臣(子爵渡邊千冬君) 御答ヲ致シ
マス抵當證劵法ヲ先ヅ市街地ニ當初施行
イタシマスコトニ致シマシタノハ只今委
員長カラ御報告ニナリマシタ通リ、其理由
ノ主タルモノハ登記事務ガ中ミ新シイ試
ミデアリマス爲ニ、煩雜デアリ、或一定ノ期
間習熟ヲ要スルト云フコトガ主タル理由デ
アルノデアリマス、尙ホ此登記事務等ガ登
記官吏ニ依リマシテ習熟セラレマシテ、其
結果ヲ見マシテ段々之ヲ農村ノ方ニ及ボス
ト云フコトニ付キマシテハ政府ハ少シモ
異存ハナイノデアリマス、外ノ特別銀行法
ノ改正ノ趣旨カラ御覽下サイマシテモ、抵
當權ノ質入ヲスルコトガ出來ルヤウニ致シ
マシタノモ、不動產ニ關スル農村ノ金融ヲ
圓滑ニ致シタイト云フ政府ノ趣旨ハソコニ
存スルノデアリマシテ、決シテ實體的ニ、
農村ニハ不動產金融ヲ圓滑ナラシメル必要
ガナイト云フヤウナ考デハナイノデアリマ
シテ、段々農村ノ方ニモ及ボシテ行キタイ、
斯ウ云フ考ヲ持クテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案トモ全部ヲ
問題ニ供シマス、原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=53
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054・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=54
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055・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=55
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056・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=56
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057・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
주 다発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案トモ第二讀
會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第十三、寄
生蟲病豫防法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會ノ續、委員長報告、大久保侯爵
寄生蟲病豫防法案
右別冊ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和六年三月二十日
委員長侯爵大久保利武
貴族院議長公爵德川家達殿
(特別委員ノ修正ニ係ル部分ノミ
ヲ印刷ニ付ス-ハ修正ナリ
附則
本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之
ヲルト
〔侯爵大久保利武君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=60
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061・大久保利武
○侯爵大久保利武君 是ヨリ御報告申上ゲ
マスルガ、本案ハ衞生組合法案特別委員會
ニ付託サレマシテ、委員會ニ於テソレ/。
本案ニ付キマシテ審議ヲ致シタノデアリマ
スルガ、本案ノ趣旨ハ旣ニ上程ノ際ニ詳細
說明ニナッテ居リマスカラシテ玆ニ省キマ
スルガ要スルニ我國民ノ殆ド七割以上ノ
健康ヲ······保健上ニハ甚ダ憂フベキ障害ヲ
與ヘル問題デアッテ、風ニ其豫防撲滅ノ必要
ハ認メテ居フタノデアリマスルガ、段々此豫
防撲滅ノ方法モ〓究サレ、且ツ其豫防撲滅
ノ機運ニナリマシタノデ愈〓此寄生蟲ノ豫
防撲滅ヲ法律ノ力、强制力ヲ以テ此豫防撲
滅ノ仕事ヲヤリタイ、ソレニ付テ地方廳竝
ニ市町村ノ、ソレ〓〓此豫防撲滅ニ付テノ
必要ナ方法ヲ定メマシテ、此費用ニ對シテ
地方費及國費ノ補助ヲ規定シタ案デアルノ
デアリマス、本案ニ付キマシテ政府ト質疑
應答ヲ重ネマシタガ、別ニ異議ノアル質問
ハ見エマセヌデゴザイマシタガ、唯此附則
ニ「本案ノ施行ハ各條ニ付勅令ヲ以テ定ム」
ルト云フコトガ附則ニアルノデアリマス、
此各條ニ付テ施行スルト······法律全文ヲ同
時ニ施行スルト云フコトニセズニ、各條ニ
付テ各〓期日ヲ定メテ之ヲ實施スルト云フ
コトニナッテ居ルト云フ事柄ガ、最モ質問ノ
要點トナリマシテ、政府ト質疑應答ヲ重ネ
タノデアリマス、此施行ノ期日ヲ各條ニ付
テ定メルト云フ其理由ハ政府ノ財源ノ關
係ヨリシテ規定サレテ居ルコトデアリマス
ノデ、第七條ニ國事ヨリシテ地方廳ニ此豫
防撲滅ノ費用ニ對スル補助トシテ、其補助
金額ノ六分ノ一ヲ國庫ヨリシテ補助ヲスル
ト云フコトガ、第七條ニ規定シテアルノデ
アリマス、然ルニ內務省ニ於テハ今日ノ所
十分ノ財源ヲ求ムルニ困難デアルデ現在
內務省ニ於テ國民保健ニ必要ナル調査費ト
云フモノガ四万六千圓餘リアルガ、當座是
レ以上ノ支出ハ財源上困難デアル、デアル
カラシテ此七條ノ如キハ當分除イテ、他ノ
各條ヲ施行シヤウト云フコトニナルノデア
ルト云フコトデアリマス、サウ致シマスト
云フト折角本案ノ如キ國民ノ保健上重大ニ
シテ且ツ必要ナル事業ガ十分ニ進メルコト
ガ出來ナイ、又之ヲ進メムトスルト地方費
ニ······此負擔ヲ地方費ノミニ依ッテ此負擔
ヲ課スル其負擔ヲ以テ此費用ヲ支辨スル
ト云フコトニ勢ヒナルノデアル、國庫ニ於
テハ四万六千圓以上ノ財源ヲ此處ニ捻出ス
ルコトガ出來ヌニ依フテ、此事業ヲバ積極的
ニ進メムトスルト云フト、地方ノ負擔ヲ增
スト云フ結果ニ外ナラヌノデアル、左ナキ
ダニ地方財源枯渴、財政甚ダ困難ナ際ニ
斯カル法案ハ甚ダ穩當ヲ缺クデハナイカ、
寧ロ國庫ニ於テ進ンデ十分ノ補助ヲ致シテ
此事業ヲ進メルト云フコトガ當然デアル
ガ國庫ノ方ハ一定ノ制限ニ止メテ、地方
費ニ於テ之ヲ支辨シテ行クト云フコトハ穩
當ヲ缺クト云フ意見ガ段々出マシテ、結局討
論ニ入リマシテ採決ノ結果、此附則ノ「各條
ニ付勅令ヲ以テ定ム」ノ「各條ニ付」ト云フ
此四ツノ文字ヲ除イテ本案ニ贊成ノ意ヲ表
シタイト云フ意見ガ出タノデアリマスサ
ウ致シマスト云フト其結果ハドウナルカト
云フト本案ノ實施期日ハ此法律制定ニ··
公布ニナリマスレバ政府財源ノ都合ヲ見
テ此法案ハ實施サレル、卽チ法案ハ議會ヲ
通過シテ成立イタスノデアリマスケレド
モ、此實施ハ政府財源ノ餘裕アルヲ待ヲテ、
十分國庫ガ此仕事ヲ積極的ニ進ムルニ準備
ノ出來タ所デ法律ハ實施スル、斯ウ云フコ
トニ結果ハナルノデアリマス、デ右ノ如ク
附則ノ「各條ニ付」ト云フ四ツノ文字ヲ削除
イタシマシテ、本案ニ贊成シタイト云フ意
見ガ滿場一致デ本案ハ可決イタシタ次第デ
アリマス、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=63
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064・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=64
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065・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君)西大路子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 全部ヲ問題ニ供
シマス委員會ノ修正ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=69
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070・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=70
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071・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=71
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072・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=73
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074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十四
ヨリ第十六法律案、政府提出、衆議院送
付、第一讀會ノ續、委員長報告、伊集院子
爵
輸出生絲檢査法中改正法律案
右可決スヘキモノチリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月十八日
副委員長子爵伊集院兼知
貴族院議長公爵德川家達殿
蠶絲業組合法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十九日
副委員長子爵伊集院兼知
貴族院議長公爵德川家達殿
蠶絲業法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月十九日
副委員長子爵伊集院兼知
貴族院議長公爵徳川家達殿
〔子爵伊集院兼知君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=76
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077・伊集院兼知
○子爵伊集院余知君 佐佐木侯爵ガ委員長
デアラセラルルノデアリマスガ、御都合デ御
出席ガアリマセヌノデ、私カラ御報告ヲ申
上ゲルコトニ致シマス、最初ニ申上ゲマス
ノハ輸出生絲檢査法中ノ改正案ニ付テ申
上ゲルノデゴザイマス、是ハ其法律中ノ第
一條第一項及第二條第一項ノ中ニ正量ト云
フ文字ガゴザイマス共下ニ「及品位」ト云
フ三字ヲ加フルノデゴザイマス、此改正後
ニハ品位ニ付テ生絲ノ格付ヲ致シマシテ、
其取引上ノ安定ヲ致サムトスルノデアリマ
ス、今マデノ法律デハ正量卽チ目方ニ付テ
ノミ重キヲ置イテ、檢査ヲヤッテ居タ爲ニ、
自然其絲ノ品質ガ一定セズ、絲其モノノ眞
ノ價ガ定マラナイト云フ結果、折角取引ガ
濟ンデ、買手ハ重モニ米國デアリマスガ、
先方ノ國ニ持クテ參フテカラ其絲ノ品質ノ一
定セザル爲メ不合格品ナルモノガ可ナリ多
數アルノデ、年々平均五六割モアルト云フ
コトデアリマス、故ニ生絲ハ見方ニ依シテハ
甚ダ不安定ナル商品ト云フコトガ出來ルノ
デアリマスガ其原因ハ豫メ其品質ニ付テ
確實ナル檢査ヲナシ正シイ格付ガ行ハレ
テ居ラヌコトガ左樣ナ不都合ヲ生ズルノデ
アリマス、今マデハ買ヒ方ハ自分ノ都合上
自分勝手ニ檢査イタシ、格付シテ賣買ガ行
ハレテ居タノデ、自然賣リ方ニ不利ノ點ガ
アリマシタノデアリマス、然ルニ此改正ガ
出來マスト、第三者タル國ガ確實ニ絲ノ品
位ヲ檢査シテ格付スルコトニナルノデアリ
マスカラ、今マデノヤウニ賣方、買方ガ互
ニ取引上ノ不安定ノ所ガ除去サレルヤウニ
ナルノデアリマス、委員會ニ於キマシテハ
審議ヲ重ネマシタ、種々ノ質問應答ハアリ
マシタガ、此案ニ付テ疑ヲ持シテ質問スル
者ハアリマセナンダ討論ニ入リ兩名ノ委
員カラ贊成ノ御意見ト、又輸出生絲ハ重要
ナル貿易商品デアルカラ、モット丁寧ニ取扱
ヒ品質檢査モ十分ニ致シ、取引上ノ安定
ヲ圖ヲテ貰ヒタイモノデアルト云フコトデ
アリマシタ、採決ノ結果全會一致ヲ以テ可
決ト相成リマシタ、次ニ蠶絲業組合法案ノ
審査ノ模樣ヲ申上ゲマス、本委員會ニ於テ
ハ政府當局ヨリ案ノ內容ニ付キ詳シク說明
ヲ承リマシテ、又委員トノ質問應答ガアリ
マシタ、之ニ付テ少シク申上ゲテ見ヤウト
思ヒマス、現在蠶絲業ニ關スル組合ハ色ミ
旣ニアルノデアリマス、而シテ下級ノ組合
ガ寄合シテ上級ノ組合ヲ作リ之ガ寄合ッテ
終ニ蠶絲業同業組合中央會ト云フ最高ノ機
關ガ出來テ居ステ是ガ蠶絲業全體ノ改良、
指導、統制ナドヲ掌ッテ居ルノデアルガ、
組織上不備ノ點ガアル爲ニ運用ガウマク行
カヌノデアリマス、爲ニ當業者ノ調和ガ出
來テ居ラズ困リ拔イテ居ッタ所、今度調停ガ
出來マシテ、當局ガ之ヲ容レテ其結果此法
案ガ出來タノデアリマス、蠶絲業ト申シマ
スレバ養蠶ハ固ヨリ、蠶種業、製絲家、生
絲問屋貿易業トソレ〓〓終始一貫シテ、
初メテ我國ノ最重要ナル物產ヲ造リ出スノ
デアリマス、然ルニ今迄屢、此樣ナ事ガアッ
タノデアリマス、卽チ製絲業者ガ養蠶業
者卽チ農民ヨリ成ルベク繭ヲ安ク買取ッ
テ、絲ヲ造ッテ儲ケヤウトシ、問屋業者ハ又
製絲業者ノ絲ノ價ヲ叩イテ儲ケヤウトシ
同ジク貿易業者モ其樣ナ考ヲ以テ外國ノ商
人ニ賣ラムトスルノデアリマス、然ルニ通
信機關ガ發達シテ居ル今日デアルノデ、外
國ノ商人ハ先ニ日本ノ繭ノ値段ヲチヤント
承知シテ居シテ、絲ノ價ハ左樣ニ高イモノデ
ハナイ、サウ申シマシテ遂ニ貿易商ガ負ケ
ルコトニナル、然ルニ之ガ又反響シテ參リ
マシテ、今度ハ日本ニ於テ各種ノ業者ヲ逆
ニ抑ヘテ行ァテ、最終ノ養蠶業者ガ壓迫ヲ蒙
ルコトニナルノデアリマス、爲ニ繭ノ値段
ハ暴落スルノデアリマス、此現象ハ昨年カ
ラ本年ニ掛ケテ最モ甚シイノデアリマス
其結果ト致シテ繭ノ値段ガ二圓前後、近頃
ハ少シ騰。ッテ三圓ソコ〓〓ニナッテ居ルト云
フコトデアリマス聞ク所ニ依レバ繭ノ値
段ガ四圓カラ五圓ノ間デアルナラバ樂ニ
外國ニ於テ人造絹絲ト競爭ガ出來ルト云フ
コトデアリマス、若シ左樣ナコトデアルナ
ラバ、繭ノ値段ガ只今ノ二圓ヨリ三圓ノ間
ニアルモノヲ四圓ニ引上ゲレバ玆ニ一圓
ノ開キガ出來ルコトニナルノデアリマス
而シテ昨年ノ產出ノ繭ハ一億百万貫以上出
テ居リマス一昨年ハソレ以上出テ居ルノ
デアリマスシテ見マスルト金額ニ換ヘ
テ見ルト實ニ一億百万圓以上ノ金ガ農村ニ
分配サレルコトニナル筈デアルノデアリマ
ス、實ニ驚クベキコトデハアリマセヌカ、
此法案卽チ蠶絲業組合法ガ實施サレ、各業
種ノ間ノ融和、發達、統制ヲ圖リ、以テ蠶
絲業全體ノ安定ガ出來マシタナラバ、今申
上ゲマシタヤウナコトハ出來ルノデアリマ
ス現在ノ養蠶業ハ部落ニ於テソレ〓〓任
意ノ養蠶組合ヲ作ッテ居ル、二万七千餘モア
ルノデアリマス、又ソレガ寄合ッテ上級ノ
組合モ出來テ居リマスガ、皆任意ノ組合デ
アルノデアリマス、今囘ハ此法律デ之ヲ法
人ト致スコトニナルノデアリマス、地方地
方ニ於テ寄合ハセテ段々上級ノ組合ヲ組織
セシムルコトト致シマシタ、又養蠶業者、
蠶種製造業者、產業組合製絲業者、製絲業
者、生絲問屋業者及ビ生絲輸出業者ノ、各、
各其業種別ニ依リ六種ノ組合ヲ作ラシメ、
其上ニ各、業種別ニ依リ聯合組合ヲ作リ、
其上ニ各、ノ代表議員ヲ出サシメテ、之ガ
集ヲテ日本中央蠶絲會ヲ作ルコトニナルノ
デアリマス、又其中ニ特別議員モ選出サル
ルノデ、是ハ官吏トカ學者等カラ選バレル
コトニナッテ居リマス、前ニ申シマシタ數ア
ル組合ノ全部ハ之ヲ法人ト致スノデアリマ
ス、之ヲ以テ蠶絲業ノ改良發達及ビ統制ヲ
圖ル目的デアリマス、而シテ是ハ營利事業
ハ爲スコトヲ得ザルモノトナッテ居リマス、
質問ニ付テ述べマスガ、詳細ハ速記錄ニ讓
ルコトニ致シマス、第一桑ニ關スル事業
ハ何ノ組合ニ入レルカ、又桑園ノミノ經營
者ハ如何ニ取扱フカ、第二、農村ニハ是迄
他ノ組合ガアル、而シテ特ニ養蠶組合ガ出
來ルコトニナルト、負擔ガ加重ニナリハセ
ヌカ、第三、蠶絲業組合ハ種々ノ事業ヲ行
フモノデ、相當ノ經費ガカカル、此經費ニ
對シテ政府ハ如何ニ考ヘテ居ルカ、第四、
製絲業組合ニ生絲ノ檢査ニ關スル施設ヲ
行ハシメルコトニナッテ居ルガ、今度輸出生
絲檢査法ガ改正サレルノデ、必要ガナイヤ
ウニ思フガドウカ、第五、日本中央蠶絲會
ノ議員及ビ特別議員ノ數竝ニ各團體ニ對ス
ル議員ノ配當如何ハ各業者ノ利害ニ大關
係ガアル其事ニ付テノ考ハ如何、斯樣ナ
コトデアリマスガ、ソレニ對シテ政府ハソ
レゾレ答辯ヲ致サレテ居ルノデアリマス、
討論ニ入リマシテ、三名ノ委員カラソレノ
贊成ノ御意見ヲ述ベラレマシタ、採決ニ當
リ農林當局ニ對シ、本案施行ノ上ハ蠶絲業
組合ヲ十分ニ監督指導シ、我國ノ蠶業ノ改
良發達及ビ統制上遺憾ナキコトヲ期セラレ
度キコト、及ビ衆議院ノ希望條件タル乾繭
業組合ノ取扱ニ付テ、其希望ニ副フヤウニ
考慮セラレタイトノ希望ヲ述ベラレマシ
ク、採決ノ結果、本案ハ全委員一致ヲ以テ
可決ト相成リマシタ、次ニ蠶絲業法中改正
法律案、是ハ只今報〓イタシマシタ組合法
ガ成立イタシタナラバ、自然ニ改正トナラ
ネバナラヌコトニ相成ル、法文中ノ文字ノ
改正デアリマシテ、是ハ可決ト相成リマシ
ク、是ニテ報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵徳川家違君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=79
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080・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第二讀會
ヲ聞カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=80
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081・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵徳川家違君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=83
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084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=85
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086・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=86
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087・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案トモ第二讀
會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、此際午後一時三十分マデ休憩イタ
シマス
午後零時三十一分休憩
午後一時五十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提
出案ハ直ニ之ヲ衆議院ニ囘付セリ
地方鐵道補助法中改正法律案
寄生蟲病豫防法案
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
國立公園法案可決報告書
土地收用法中改正法律案可決報告書
昭和四年度第一豫備金支出ノ件、昭和四
年度特別會計第一豫備金支出ノ件、昭和
四年度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外
支出ノ件追加、昭和四年度特別會計第二
豫備金支出ノ件、昭和四年度特別會計豫
備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件
追加、昭和五年度第二豫備金支出ノ件、
昭和五年度特別會計第二豫備金支出ノ
件、昭和五年度特別會計豫備金外ニ於テ
豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)可決報
告書
勞働者災害扶助法案可決報告書
勞働者災害扶助責任保險法案可決報告書
勞働者災害扶助責任保險特別會計法案可
決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=92
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093・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス井上大藏大臣
〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=93
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094・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 先日桑山氏ヨ
リ實行豫算ニ關スル法理上ノ見解ヲ御質疑
ニナリマシテ、其際一應幣原首相代理ヨリ
御答へ致シテ置キマシタノデアリマス、速
記錄ヲ通讀イタシマシテ後ニ再ビ答辯イタ
シマスト申上ゲテ置イタノデアリマシテ、
今日私ハ政府ノ所見ヲ申上ゲテ見タイト思
ヒマス、桑山氏ハ豫算ハ政府ガ國家ノ財務
ヲ執行スルニ當ノテ憲法上及ビ會計法上必
ズ準據セザルベカラザル國家ノ歲入歲出ノ
見積デアルカラシテ、議會ノ協贊ヲ經タ豫
算ノ定ムル經費ヲ支出シナイト云フコトハ
不法デハナイカト、斯ウ云フ前提ヲ以テ政
府ノ見解ニ關スル法律上ノ根據ヲ御質問ニ
ナッタト承知イタシテ居ルノデアリマス、
豫算ノ協賛ハ、歲出ニ關係イタシマシテハ、
經費ノ支出ニ付テ承認ヲ與ヘルト云フ意味
デアリマシテ、法律上其經費支出ノ義務ヲ
政府ニ負ハセル意味デハナイト考ヘテ居リ
やく、此事柄ハ豫算ニ關係イタシマスル憲
法、會計法ノ規定ノ全體ノ趣意カラ見マシ
テ明瞭ナコトト考ヘテ居ルノデアリマス、
豫算ハ會計上經費支出ノ目的及ビ共限度ヲ
定ムルモノデアリマシテ、政府ガ行政各般
ノ事務ヲ遂行スル義務ヲ定ムルコトトハ區
別シテ考フベキコトト思っテ居リマス政
府ハ憲法及法令ニ從ッテ行政各般ノ事務ヲ
行フ職責ヲ有シテ居リマシテ、豫算ハ其事
務ノ遂行ニ要スル經費ノ支出ノ限度ヲ定メ
ルモノデアリマス從ッテ豫算其モノニ依。
テ政府ガ一定ノ支出ヲ爲スベキ法律上ノ拘
束ヲ受クルモノトハ認メテ居リマセヌノデ
アリマス、憲法ノ第六十四條ヲ御覽下サレ
マシテモ、豫算ノ款項ニ超過シタル支出又
ハ豫算外ノ支出ニ付キマシテ、後日帝國議
會ノ承認ヲ求ムルノ規定ガアリマス、併ナ
ガラ豫算ニ不用額ヲ生ジマシタ場合ニハ
議會ノ承諾ヲ求ムル規定ガナイコトハ豫
算ニ計上シタ金額ヲ使用スル義務ヲ負ハス
ルモノデハナイト云フコトヲ明カニ現ハシ
テ居ルモノト考ヘテ居ルノデアリマス、尙
ホ外國ノ例ニ付テノ御話ガアリマシタガ、
是ハ前議會ニ橋本圭三郞氏カラ外國ノ制度
及ビ事例ヲ調査シテ貰ヒタイト云フ請求ガ
アリマシタカラ、在外ノ職員ニ命ジテ調査
イタサシテ見マスト、英國、佛國、米國、
獨逸何レノ國ニモ、法理上大體同ジヤウナ
コトヲ採用シテ居リマシテ、又其實例モア
ルノデゴザイマス、尙ホ誠ニ愚念カト考ヘ
マスガ、只今申上ゲタコトニ關聯イタシマ
シテ自分達ガ考ヘ、又度ミ申シテ居ルコト
ヲ玆ニ附加ヘテ置キマスト、所謂實行豫算
ナルモノハ憲法上ノ意義ニ於ケル豫算デハ
ナイ、國ノ豫算ハ一アッテ二ハナイ、法律論
ト致シマシテハ、成立豫算ノ外ニ政府ガ自
由ニ豫算ヲ編成改定スルコトハ出來マセ
又、所謂實行豫算ナルモノハ、豫算ヲ實行
スルニ當リマシテ、政府部內ニ於テ定メマ
シタ計畫ニ過ギマセヌ、斯ウ我ミハ考ヘテ
居ルノデアリマス、斯ノ如キ計畫ヲ政府部
內ニ於テ立テマスコトハ、別ニ議論ヲ生ズ
ルコトトモ考ヘテ居ラヌノデアリマス、豫
算不成立ノ爲ニ前年度豫算ヲ施行スル場合
ハ勿論、ソレデナイ場合ニ於キマシテモ、
卽チ經費節約ト云フコトノ爲ニ所謂實行豫
算ヲ作リマシタコトハ、大正二年、大正十
二年、大正十三年度ニ其前例ガアル所デア
リマス、昭和四年ノ實行豫算ニ付テ、最モ
アノ場合ニ議論ノ多カッタ點ハ、豫算ノ款或
ハ項ノ金額全部ヲ支出セザルモノト定メタ
コトニアッタコトト考へテ居リマスガ、併
ナガラ是モ前例ニ依リマスト豫算ノ項ノ金
額全部ヲ支出セザルコトト······支出シナイ
コトト定メタモノガ大正一一年度ノ實行豫算
ニ於テハ四ツ、大正十二年度實行豫算ニ於
テハ十一件、大正十三年度實行豫算ニ於テ
ハ四ツアリマス、昭和四年度ニ於キマシテ
ハ二十四件アリマシテ、比較的多量ニ上ッテ
ハ居リマスケレドモ、數量ノ大小ニ依リマ
シテ別ニ議論ヲ異ニスルコトハナカラウト
考ヘテ居リマス之ヲ要シマスニ政府ガ豫
算ノ範圍內ニ於テ經費節約ノ趣意ヲ以テ實
行計畫ヲ立ツルコトハ法律論トシテハ何
等差支ナイト云フコトハ皆人ノ認メテ居ル
所ト考ヘテ又學者ノ意見ヲ調ベテ見マシ
テモ左樣ナコトヲ我ミハ思付カルノデア
リマス、又只今申シマスル如ク外國ノ例ニ
徵シマシテモ是モアリマス、又我國ノ先例
ニ於キマシテモ只今說明スルヤウナコトガ
アリマスノデ、我ミハ左樣ナ法理論、左樣
ナ先例ニ依シテ實行豫算ヲ拵ヘテ居ル次第
デアリマスカラ御承知ヲ願ヒマス
〔桑山鐵男君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=94
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095・桑山鐵男
○桑山鐵男君 先日私ガ御尋ネ申上ゲマシ
タ議會ノ豫算協賛權ノ意義ニ關スル政府ノ
御解釋ヲ正當ナリトスル理由ニ付テ其法律
上ノ根據ト云フコトニ付キマシテ、實ハ問
通ガ問題デアリマスルガ故ニ、總理大臣ノ
御答ヲ御願ヒ致シタノデアリマスルガ、濱
ロサンノ目下ノ御樣子ハ强ヒテ御答辯ヲ御
願ヒスルコトヲ差控ヘルノヲ適當ト考ヘマ
シタガ故ニ、ドナタ樣カラデモ宜シイ、政
府ノ御意見ヲ伺ハシテ戴キタイト云フコト
ヲ申上ゲマシタ、只今井上大藏大臣カラ御
答辯ヲ賜ハリマシテ、深ク感謝イタシマ
ス、御答辯ヲ戴キマシタコトニ付キマシテ
ハ感謝イタシマスルガ、御答辯ノ內容ハ
私ガ御願ヒ申上ゲマシタ政府ノ解釋ヲ正當
ナリトスル理由及ビ法律上ノ根據ト云フコ
トニ付キマシテハ遺憾ナガラ十分ニ御說明
ヲ戴クコトガ出來ナカッタノデアリマス、只
今ノ御答辯ハ要約イタシマスレバ、前囘ニ
幣原總理大臣代理、前議會ニ於キマシテ濱
口總理大臣ノ仰セラレタ其御言葉ト大體ニ
於テ一致イタシテ居ルカト考ヘルノデアリ
やく、殊ニ憲法六十四條第二項ノ款項ノ金
額ヲ超過シ又ハ豫算外ニ支出アリタルトキ
ハ云々ヲ援用イタサレマシテ、此制限ヲ受
ケル以外ハ政府ハ豫算ノ款項ノ金額ノ全額
ヲ削ッテモ宜イ、一部ヲ削ッテモ宜イ目的
ヲ達成不能ニスルコトモ政府ノ任意デアル4
ト云フ御言葉、竝ニ大正二年、十二年、十
三年ニ先例ガアッタ、斯樣ナ仰セ、何レモ皆
濱口總理大臣又ハ弊原總理大臣代理ノ仰セ
ノ通リデアリマシテ私ガ御願ヒ申上ゲマ
シタノハ款項ノ金額ヲ超過シ云々ノ六十
四條第二項ハ政府ノ解釋ノ如キ解釋ヲ結論
セシムルモノデハナイト云フコトヲ、御願
ヒ申上ゲマシタ、其以外ニ政府トシテ政府
ノ解釋ヲ正當トスル理由及ビ根據ヲ御示シ
戴キタイト云フコトヲ御願ヒ申上ゲタノデ
アリマス、勿論豫算ハ豫算デアリマス、只
今大藏大臣ハ不用額ヲ生ズルコトモアルヂ
ヤナイカト仰セデゴザイマス、其通リデア
リマス、豫算ハ豫算デアッテ見積リデアリ
マスルガ故ニ、之ヲ實際ニ行フニ當リマシ
テハ、ソコニ金額ノ不用ナモノガ生ジテ參
ノルハ是ハ當然デアリマス、或ハ豫算ニ計
上サレテ居リマスル目的ニシテ實際ニ之ヲ
行フニ當リマシテ實行不可能ナモノガア
ル、金額ニ不用額ヲ生ジテ參ル、又豫算ニ
揭ゲラレタ或ル目的ガ、愈〓實行スルニ當リ
マシテハ必要ノ消滅スルモノガアル、此處
ニモ不用額ガ生ジテ來ル、斯ノ如ク實行不
能例ヘバ或ル土地ヲ買フト云フコトガ豫
算ニ計上サレテアル目的デアルト致シマシ
テ如何ニ政府ト雖モ所有者ガ賣ラヌト云
フ土地ヲ公用徵收ノ場合ハ別デアリマス
ガ、私法上ノ手續ニ依リマシテ買收スルコ
トハ出來マセヌ出來ナケレバ實行不能ニ
ナル不能ニナレバ不用額ガ生ジテ來ル、
是ハ條理當然ノ結果デアリマス又必
要······豫算編成當時ニ於キマシテハ或ル事
項ヲ國家トシテ施設イタサナケシバナラヌ
ト考ヘテ豫算ヲ要求イダシ、成立イタシマ
シタ、其事項ガ實際之ヲ實行スルヲ必要トシ
ナイ場合卽チ必要ノ消滅スルニ至ッタ場合
モアリ得ル、一例ヲ申上ゲマスレバ或ル裁
判所ノ建物ヲ建テヤウ、豫算ヲ要求シテ成
立シタ、所ガ其〓判所ハ法令ノ改正ノ結果
廢止セラレタト云フコトユナリマスレバ
裁判所ノ廳舍ハ建築スル必要ハナクナッタ、
建築ノ必要ガナクナッタガ故ニ玆ニ豫算ニ
不用額ヲ生ジテ參ッタ、斯ノ如キコトハ條理
當然ノ結果デアル、是アルガ故ニ政府ハ豫
算ノ目的ヲ達成シナイデ宜イノデアル使
ハナイノハ自由デアルト云フ結果ハ生レナ
イカト考ヘルノデアリマス、又豫算ノ金額
ニ於キマシテハ或ル事項、豫算ニ計上サ
レテ居リマスル或ル目的ヲ達成イタシマス
ル爲ニ必要ナリト議會ノ認メタル金額デア
リマス、其金額ノ限度ニ於キマシテ目的ガ達
成出來マスルナラバ是ハ結構ナコトデアル、
剩スハ勿論ノコト望マシイコトデアラウカ
ト思フノデアリマス、斯樣ナ場合ニ又剩餘
金ガ生ジテ來ル、不用額ガ生ジテ來ル、是
モ當然、普通ニ豫算ノ範圍內トカ、或ハ定
額ノ範圍內トカ申シマスルノハ豫算ニ揭ゲ
ラレテアリマスル或ル目的ヲ達成スル其達
成ニ必要ナル金額ノ範圍內、此意味ニ於テ
普通ニハ範圍內ト云フ言葉ガ用ヰラレマス、
政府ノ仰セラレル範圍內トハ先般モ申上ゲ
マシタガ、總豫算ノ範圍內、十四億、十七
億ト云フ其豫算ノ範圍內ト云フ、斯ウ云
フ御解釋デアリマスルガ故ニ、私共ハ
左樣ナコトハ豫算ト云フモノガ議會ノ協賛
ヲ經マシテ成立シタモノデアル以上ハ憲
法六十四條ニ依リマシテ政府トシテハ目的
ヲ必ズ遂行シナケレバナラヌ義務ヲ有スル
モノデアルト考ヘルノデアリマス私ノ申
上ゲマスル意味ニ於キマシテ或ル事項或
ル施設ヲ達成イタシマスルガ爲ニ、其金額
ヲ最高限度ト致シマシテ其範圍內ニ於テ
政府ガ目的ヲ達成スルニ努メル是ハ結構
ナコトデアル、此範圍內ト云フノガ普通ニ
申シマスル豫算ノ範圍內ト申シマスルコト
デアリマシテ、政府ノ所謂總額ノ範圍内ト
云フ意味ニ於キマシテ、豫算ノ範圍内ト仰
セラレルノハ範圍內ト云フ言葉ヲ失禮
ナ申分デアリマスルガ、不當ニ擴充シテ御
用ヰニナッテ居ルカト私トシテハ考ヘルノ
デアリマス、其實行豫算ト云フコトヲ仰セ
ニナリマシタ、大藏大臣ノ仰セノ通リ實行
豫算ハ普通ノ場合ニ於キマシテハ豫算ガ不
成立ニナッテ、前年度ノ豫算ガ施行サレマシ
テ、其施行豫算ノ範圍內ニ於キマシテ、政
府ガ作リマスル實行豫算或ハ標準豫算、斯
樣ナモノヲ申スノガ普通ノ意味ニ於キマス
ル實行豫算ト云フコトデアラウカト考ヘル
ノデアリマスルガ或ハソレヲ成立豫算ノ
範圍ニ於キマシテ、豫算ノ目的ヲ達成スル
ガ爲ニ豫算使用ノ計畫、實行ノ計畫、之ヲ
モ實行豫算ト申スコトモアリ得ルト思ヒマ
ス、是ハ承認イタシマス、併シ政府ノ昭
和四年度ニ於テ爲サレマシタ實行豫算或ハ
五年度ニ於テモ作ラレタ其實行豫算、六年
度ニ於キマシテモ、歲入ガ減退イタシタナ
ラバ又ヤラウト仰セラレル其實行豫算
ハ斯ノ如キ意味ニ於ケル實行豫算デハナ
イノデアリマス、千百ノ目的ノ中デ或ルモ
ノハ之ヲ實行シ、或ルモノハ之ヲ不實行ニ
スル、斯ノ如キ豫算ノ實行計畫ト云フモノ
ハ無イヂヤナイカト私ハ考ヘテ居リマス、
カルガ故ニ政府ノ仰セラレル實行豫算ナル
モノハ現ニ政府部內ニ於テ、豫算使用ノ
計畫トシテ、成立豫算ノ範圍內ニ於テ作リ
マスル其モノデハナイ、成立豫算ノ範圍內
ニ於テ作リマス豫算使用計畫ハ、豫算ハ計
上サレテ居リマスル目的ヲ達成イタスト云
フコトガ條件ニナッテ居ル、其目的ヲ實行シ
ナイト云フ、云フヤウナ實行豫算ト云フモノ
ハ無イノヂヤナイカト思ヒマス、昭和四年
度ノ實行豫算ハ斯ノ如キ意味ニ於ケル實行
豫算デアルノデアリマスルガ故ニ、憲法違
反デアルト私ハ申上ゲルノデアリマス、叉
豫算ハ一ニシテ二ナシト只今モ仰セラレマ
シタ、前議會ニ於キマジテ濱口總理大臣モ
仰セラレマシタ、幣原總理大臣代理ハ豫算
ハ儼然トシテ存在スル、政府ハ豫算ニ對シ
テ改竄ヲ加ヘタ覺ハナイ、斯樣ニ仰セラレ
マツタ、豫算ハ先般モ申上ゲマシタ通リ、
或ル年度コ於テ國家ガ如何ナル事項ヲ實行
スベキヤ、如何ナル事項ヲ達成スベキヤ、
如何ナル施設ヲ爲スベキヤト云フコトヲ定
メマシタモノガ豫算デアリマス、其豫算ノ
中ニ或ルモノハ、之ヲ省キ、或ルモノハ之
ヲ實行スルト云フヤウナモノヲ別ニ御作リ
ニナッテ、ソレニ依ッテ國家ノ歲入歲出ヲ御
經理ニナッタト云フナラバ、是ハ卽チ豫算
ハ、一ニシテ二アルベカラザル豫算ヲ二ア
ラシメタコトニ相成ルノデハナイカ
〔副議長公爵近衞文廣君議長席ニ著ク〕
儼然トシテ存在スル豫算ヲ改竄イタシタモ
ノデアラウカト私トシテハ考ヘルノデアリ
マス、若シ是ガ改竄デナイ又變更デナイト
仰セラレルナラバ、豫算ト云フモノハ、目
的ト此金額ノ外ニハ無イ、其目的ヲ動カシ
金額ヲ動カシテ、サウシテ是ガ改竄デナイ、
變更デナイト仰セラレルナラバ政府ノ仰
セラレル改竄トカ變更トカト云フコトハド
ウ云フ意味デアルカト云フコトヲ御伺ヒシ
テ見タイト思フノデアリマス、斯ノ如ク政
府ノ仰セニナリマシタ所ハ豫算ハ一定ノ目
的ヲ定メテ、サウシテ限度ヲ定メマスモノ
デアル、其範圍內ニ於テハ政府ハ勝手ニ其
目的ヲ削ルコトモ自由デアル、斯樣ナ仰セ
デアリマスガ、立派ニ又明瞭ニ憲法第六十
四條ニ違反スルモノト斷定シテ差支ナイカ
ト考ヘルノデアリマス、憲法第六十四條ハ
先般モ申上ゲマシタ如ク、國家ノ歲入歳出·
ハ豫算ヲ以テ定メロ、又國家ノ歲入歲出ハ
議會ノ協賛ヲ經ロ、經タルモノナルヲ要ス、
斯樣ノコトヲ定メテ居リマス故ニ、其豫算
ナルモノハ千百ノ目的ニ付キマシテ、千百
ノ施設ニ付キマシテ、或ル年度ニ於テ國家
トシテ爲スベキ事項ヲ列擧サレタモノガ豫
算デアルノデアリマス、其中ノ或ルモノヲ
ヤリ或ルモノヲヤラナイト云フコトニナリ
マスレバ、憲法第六十四條ニ違反イタシタ
コトニ明瞭ニ相成ルカト考ヘマス、若シ政
府ノ斯ウ云フ一定ノ限度ト仰セラレル其意
義ガ、個々ノ目的、個々ノ施設ニ付テノ意
味デアルト考ヘラレマスナラバ、是ハ豫算
ト云フモノヲ本當ニ御了解ニナッテナイカ、
或ハ殊更ニ誤解ナサレタ解釋デナイカト考
ヘマス、豫算ハ個々ノ目的ト之ヲ達成スル
ニ必要ナ金額ヲ定メタモノバカリデハナ
イ、或ル年度ニ於テ國家トシテ爲スベキ事
項ノ全部ヲ定メタモノデアリマス、私ハ只
今ノ大藏大臣ノ御言葉ハマサカ個々ノ目的
竝ニ之ヲ達成スルニ必要ナ金額其限度ニ於
イテト、斯ウ云フ意味デ仰セラレタコトト
ハ考ヘマセヌガ、若シ左樣デアッタナラバ、
ソレハ豫算ト云フモノニ付テ御考へ違ヒノ
甚シイモノデハナイカト、私トシテハ考ヘ
ラレルノデアリマス、要スルニ私ノ考ト致
シマシテハ、憲法第六十四條ニ依リマシ
テ、豫算ハ政府ガ國家ノ政務ヲ執行スルニ
當リマシテ、必ズ之ニ準據シナケレバナラ
ヌモノデアル、政府ノ御解釋ハ豫算ハ政府
ガ之ヲ使用スル權能ヲバ與ヘラレルガ、使
用スル義務ヲ負擔スルモノデハナイ、斯樣
ナ仰セデアリマス、歲出豫算ノコトニ付キ
マシテハ、正面衝突ヲ致シマシテ、玆ニ二
ツノ解釋ガ殘ッテ參シタコトニ相成ル、私ハ
此際政府ニ御尋ネ申上ゲテ見タイト思ヒマ
ス、先般モ申上ゲマシタ如ク、我ガ帝國憲
法ハ明治天皇ガ國民ノ忠君愛國ノ國民性
ニ御信賴遊バサレテ他國ニ比類ナキ此光榮
アル光輝アル憲法ヲ賜ハッタノデアリマス、
此憲法ニ依リマシテ、玆ニ正面衝突シテ相
容レザル二ツノ解釋ガ殘リマシタコトハ、
憲法ノ尊嚴ヲ傷ケル虞ガアルカト考ヘルノ
デアリマス、殊ニ問題ハ議會ノ豫算協贊權
ノ意義、將來幾千萬年、天地ト共ニ窮リナ
キ我ガ帝國ノ議會ノ豫算ノ協賛權ノ意義ニ
付キマシテ正面衝突、調和ノ出來ナイ二ツ
ノ解釋ガ殘リマシタコトハ、私共國民トシ
テ容易ニ之ヲ其儘ニ放置スベキモノデハナ
カラウカト考ヘルノデアリマス、先般モ議
員諸公ノ特ニ此問題ニ付テノ御考慮ヲ御願
ヒ申上ゲマシタノハ、此故デゴザイマス、
私ハ此際政府ニ極メテ簡單ニ御尋ネ致シテ
見タイト思フノデアリマスガ、政府ノ御解
釋ハ豫算ハ政府ガ使用ノ權能ヲ與ヘラレ、
使用ノ義務ヲ負ハサレルモノデナイト云フ
政府ノ御解釋モ一ツノ解釋デアリマス、私
竝ニ他ノ方ミノ解釋ハ、豫算ハ政府ガ之ヲ
其通リ執行シナケレバナラヌ義務ガアルモ
ノデアルト云フ、此解釋モ一ツノ解釋デア
リマス、共ニ私ノ解釋デアリマス、公ケノ
有權的ノ解釋デハナイノデアリマス、此獨
斷ノ解釋、公ケニ何等權威ヲ有セマセヌ此
解釋ニ依ッテ、政府ガ豫算ノ目的ヲ削リ、款
項ヲ削除シ、豫算ノ改竄ヲ行ヒ、變更ヲ行
ハセラルルノハ、是權力ヲ以チマシテ暴ヲ
强行サレルモノデハナイカト考ヘルノデア
リマス、今日ノ法治國ニ於キマシテ、切
ノコト總テ皆合法性ヲ有シナケレハナラ
又、適法性ヲ有シナケレバナラヌ、其處ニ
何等ノ不法モ、或ハ違法モ、若クハ紛ラハ
シキ何モノモ存在ヲ許サナイノデアリマ
ス、殊ニ今日ノ世相ハ或ハ勞働爭議トカ、
或ハ小作爭議トカ、或ハ又甚シキハ學校騷
動ニ於テスラ、暴力行爲ノ行ハルルト云フ
此際ニ於キマシテ、正義ノ象徴デアリ、公
正其モノデアルベキ國家、其國家ノ國務ヲ
執行セラルル政府ガ獨斷的ノ此解釋ニ依リ
マシテ、公ケニ何等權威ヲ有セナイ解釋ニ
依リマシテ、議會ノ協賛權ヲ蹂躪シ、豫算
ノ目的達成ヲ不能ニ致サセル如キコトヲサ
レルノハ、權力ニ依リマシテ暴ヲ强行スル
モノデアルト、私ハ考ヘルノデアリマス、
幸ニ我帝國憲法ニハ樞密顧問ナルモノガア
リマス、又樞密院官制ニ於キマシテ憲法ノ
疑義ニ付キマシテ樞密院ニ於テ之ヲ決定ス
ルコトニナッテ居ル、政府ハ政府ガ自カラ正
當ナリト主張セラルヽ共御解釋ヲ、有權的
ニ正當ナルモノトシテ肯定セシムルヤウニ
必要ナル手續ヲ御取リニナル御考ヘハナイ
カ、是ガ私ノ御尋ネデアリマス
〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=95
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096・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 桑山君ノ再度
ノ御質問ニ對シテ御答ヘ致シマスガ、豫算
協賛權ノ法律上ノ根據ニ付キマシテハ、先
刻私ガ述ベマシタヤウニ憲法第六十四條、
其外會計法ノ全般ニ亙リマシテ見マスト、
所謂實行豫算ヲ作リマスコトハ何等法律
上差支ナイノミナラズ、數多ノ實例モアル
コトデアリマス、政府ハソレニ依ッテ此働キ
ヲ致シテ居リマスト御答ヘ申上ゲル外ナイ
ノデアリマス、尙ホ一ツ私ハ附加ヘタイノ
デアリマスガ、日本ノ會計法ハ、豫算ノ立
方ハ歲入ノ見積リヲ致シマス、ソレニ應ジ
テ歲出ノ見積リヲ致シマシテ豫算ガ出來マ
ス、昨年ノ如ク歲入ガ減リマス、其場合ニ如
何ニシテ其歲出ノ目的ヲ達スルカト申シマ
スト、外國ノ例、殊ニ英吉利ノ例ノ如キハ
歲出ガ減ル、決算ヲシテ歲人缺陷ガアレバ、
一時借入金ヲシ、サウシテ增稅ヲスルダケ
チヤント用意ガ出來テ居ルノデアリマス
ガ、日本ノ豫算ノ上ニ於キマシテハ、歲入
ノ見積リガハッキリ減ル、ソレニ依ッテ歲出
ヲ立テテ行ク、再ビ歲入ガ減ル、尙再ビソ
レニ應ジテ歲出ヲ減シテ行カナケレバナラ
ヌ、斯ウ云フヤウナ立テ方ニナッテ居リマシ
テ、決算ヲ致シマシテ不足ガ生ジテ借入金
ヲシ、又ソレヲ公債ニ依テ整理スルト云フ
ヤウナコトノ規定ノナイ所ヲ見マシテモ、
剩餘金ガナクシテ豫算ノ辻褄ヲ合ハシテ參
リマス場合ニハ是ハ日本ノ會計法上デハ
歲入ノ見積リガ減レバ、ソレニ應ジテ歲出
ヲ段ミ減シテ行ッテ、豫算ノ遂行ヲシテ行ク
ト云フコトガ已ムヲ得ナイ歸結デアル、是
モ一ツノ桑山氏ニ私ハ答ヘル一ツノ理由ト
考ヘテ居リマスカラ一ツ附加ヘテ御答ヘ致
シテ置キマス
〔桑山鐵男君濱壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=96
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097・桑山鐵男
○桑山鐵男君 私ハ只今憲法ノ解釋ニ付キ
マシテ、殊ニ此議會ノ豫算協贊權ノ解釋ニ
付キマシテ二ツノ相容レザル、根本的ニ相
容レザル二ツノ解釋ガアル、其一ツノ解釋
ソレガ政府デアル、權力者デアルガ故ニ私
ノ解釋ヨリモ何等重味ヲモ、又權威ヲモ有
スルモノデハナイ憲法ノ解釋ト致シマシテ
ハ獨斷ノ解釋デアリマシテ、其解釋ニ依リ
マシテ、サウシテ此議會ノ豫算協議權ヲ蹂
躪遊バサレルヤウナコトハ是ハ權力ニ依
ル暴行行爲デアル、左樣ナルコトヲサレナ
イデ、政府ガ自己ノ解釋ガ正當ナリト御主
張遊バサレルナラバ、其正當ナリト御主張
遊バサレル其解釋ハ有權的ニ憲法上正當ナ
リト肯定セシムルヤウナ方法ヲ御執リニナ
ル御考ガナイカドウカ、御尋ネヲ致シマシ
ク、ソレニ對シマシテハ大藏大臣ノ御答辯
ヲ戴キマスコトガ出來ナカッタデアリマス、
寧ロ歲入問題ニ付テノ御話ガアリマシタノ
デアリマス、私ト致シマシテハ歲入ノ點ニ
付キマシテハ實ハ時間ノ關係モアリマスノ
デ、主タル點ガ歲出ノ點デアリマシタガ故
ニ省略イタシタノデアリマス、大藏大臣ガ
歲入ノコトニ付テ仰セラレマシタノデ、私
モ簡單ニ之ニ觸レルコトヲ御許シ戴キタイ
ト思ヒマス、豫算ハ歲入ヲ見テ歲出ヲ決メ
ル、斯樣ナ仰セデアリマシタ、私ノ考ヘ方
ト致シマシテハ國ガ生存發達ヲ致シテ行
キマスル上ニ、何ガ其年ニ於テ必要デアル
カト云フコトガ先決間題デアル、國家トシ
テ此年度ニ如何ナルコトヲ爲スベキカト云
フコトガ先決問題デアル、卽チ歲出ガ先キ
ニ決マリ、其決ヲタ歲出ヲ「カバー」スル、支
辨スルニ足ル歲入ガアルカドウカト云フコ
トハ、第二ノ問題デアル若シ歲入ガ不足
デアルナラバ、憲法六十二條第三項ニ依ッテ
借入金ヲナサルモ宜シ、公債ヲ發行ナサル
モ宜シイ、如何樣ニモ國家トシテ必要ナル、
生存上必要ナル其歲出ヲ支辨スルニ足ル歲
入ヲ得ル途ハアルノデアリマス、歲入ガ減
退シテ參クタカラ歲出ヲ減スノハ、當然デア
ルカノ如ク仰セガアリマシタ、歲出ハ或年
度ニ於テ國家トシテナスベキ、ナスヲ必要
トスル事柄デアリマス、其事柄ガ主デアル
ノニ歲入、卽チ歲出ヲ達成スルニ必要ナル
手段トモ申スベキ歲入、其歲入ガ減退シタ
ガ故ニ、歲出ヲ節約スル、省クト云フコ
トハ、主客ヲ〓倒シ、本末ヲ誤タ御意見デ
アルト考ヘマスル、殊ニ又先程申上ゲマシ
タ通リ此歲出ナルモノハ、歲入豫算ト變リ
マシテ、歲入ニ付キマシテハ私カラ申上ゲ
ルマデモナク、法令ノ結果生ズルモノデア
リマス、豫算ガ歲入ニ對シテ拘束力ヲ及ボ
スモノデナイコトハ、特ニ申上ゲルマデモ
アリマセヌガ、歲出ニ付キマシテハ一切ノ
コト總テ、豫算ガ拘束ヲ致シテ居ルノデア
リマスル、其國家ノ目的デアル歲出ヲ、手段
デアル歲入ガ減退シテ參ッタカラト云フノ
デ、國家ノ生存ノ爲ニ必要ナルモノヲ打切
ルコトガ差支ヘナイト云フ結論ハ、私ト致
シマシテハ了解出來ナイコトデアリマスル、
併シ私ハ此點ニ付キマシテハ多クヲ觸レヤ
ウト思ヒマセヌ、大藏大臣ノ仰セガアリマシ
タガ故ニ、簡單ニ是ダケノコトヲ申上ゲマ
ス、私ガ第二ニ伺ヒマシタ、第二ノ質問デ
アリマスル政府ノ御解釋ヲ、正當ナリト御
主張相成リマスル共御解釋ヲ、有權的ニ正
當ナリト憲法上ノ機關ニ依ッテ肯定セシム
ル思召ハナイカドウカ、此點ヲ御伺ヒ申上
ゲマス
〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=97
-
098・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 桑山君ニ御答
ヘ致シマスガ、政府ノ懷イテ居ル豫算協賛
權ニ對スル解釋ト桑山氏ノ解釋ト違フ、
政府ハ權力者デアル、從ッテ此解釋ノ相反シ
テ居ルコトヲ有權的ニ肯定セシメルダケノ
正當ノ手段、方法ヲ執ル考ハナイカ、斯ウ
云フ御尋デアリマスガ、先刻カラ度〓繰返
シテ申上ゲマス如ク、我々ハ今日マデ執リ
來ッタ法律上ノ解釋及先例ニ依リマシテ、是
ガ間違シテ居ナイ、正當デアルト斯ウ考ヘテ
居リマス爲ニ、只今御尋ノヤウナコトヲ今
日手續ヲ執ル考ヘハ持ッテ居リマセヌ、其點
ヲ御等へ致シテ置キマス
〔桑山鐵男君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=98
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099・桑山鐵男
○桑山鐵男君 只今大藏大臣ノ御答辯ニ依
リマシテ、政府ニハ政府ノ正當ナリト主張
セラレマスル其御解釋ガ、有權的ニ正當ナ
リト云フコトヲ肯定セシムヤウナ思召ハナ
イト云フ御答辯ヲ得マシテ、政府ノ思召ノ
程ハ了解イタシマシタ、私ハ政府ガ此私ノ
一微々タル一議員ノ云フコトデアルト云フ
コトヲ以チマシテ、左樣ニ簡單ニ此問題ヲ
葬リ遊バサレルト云フノハ、御考へ違ヒデ
ハナイカト思フノデアリマス、此問題ハ五
十七議會以來此議場ニ於テ度〓繰返サレマ
シタモノデ、法律的ニ、或ハ政治的ニ度ミ
論議サレマシタモノデ、單リ此議場ニ止マ
リマセズ、言論機關ニ於キマシテモヤカマ
シク論議イタシタ此問題デアリマス、殊ニ
況ヤ先刻モ申上ゲマシタ通リ、將來幾千万
年天壤ト共ニ窮リナキ我ガ日本帝國ノ、其
帝國議會ノ豫算協贊權ノ意義ノ確立ト云フ
コトニ付キマシテハ公明ナル政治ヲ御主
張遊バサルル濱口內閣トシテ、發言者ガ一
微々タル議員デアルト云フノデ、左樣ニ簡
單ニ御取扱ヒニナルベキモノデハナイ、問
題ノ重要性ニ付キマシテ、今少シク愼重ノ
御考慮アッテ然ルベキモノカト考ヘルノデ
アリマスガ、大藏大臣ガ左樣ナ考ハナイト
云フ、政府ヲ代表シテノ御答辯ガアッタ以上
ハ已ムヲ得マセヌ、政府トシテハ左樣ナ思
召ハナイモノト了解イタスヨリ外ハナイノ
デアリマス、只今序デアリマスカラ申上ゲ
マスルガ、先例ガアル、此事ニ付キマシテ
ハ前囘ニ既ニ申上ゲタ、再ビ繰返ス必要モ
ナイノデアリマスルガ、先例ト云フコト
ハ大正二年竝ニ十二年、此二囘ノ先例ガア
ル、併シ先例ト云フコトハ或違反行爲ヲシ
タコトト、ソレニ對スル制裁、之ヲ併セテ
御覽ニナルノハ間違デス、違反行爲ヲスル
ノハ政府デアル、其違反行爲ニ對シテ責任
ヲ問フノハ國民デアリマス、政府ハ被〓デ
アッテ國民ハ裁判官デアル、其違反行爲ヲナ
サル政府ガ、前ニ裁判官ガ罪トシナカッタ
ガ故ニ、又罪トナラヌノデアラウト云フ考
ヲ以テ、先例云々ト言ハレルノハ明ニ間違
ヒ、刑罰法規ノ關係ヲ御覽下サレバ簡單明
瞭ニ分ル、或男ガ殺傷行爲ヲシタ、或ハ年
齡トカ其他ノ點ニ於キマシテ無罪ニナル場
合モアリマセウ、或ハ盗犯防上法ニ依リマ
シテ無罪ニナル場合モアリマセウ、色ミノ
場合モアリマスルガ、ソレダカラト云ッテ外
ノ者ガ曾テ無罪デアッタカラト云フノデ、人
ニ殺傷行爲ヲ加ヘテ差支ナイト云フ結論ハ
斷ジテ許シ得ナイ結論デアラウカト考ヘル
ノデアリマス大正二年、十二年ニ於テ斯
樣ナ先例ガアッタ違反行爲ガアッタ、其違反
行爲ニ對シテ當時國民ガ不問ニ付シタト云
フ故ヲ以チマシテ、昭和四年ニ於キマシテ
豫算ノ款項ノ金額ヲ削リ、豫算ノ目的ヲ達
成不能ニシタト云フ其違反行爲ハ、決シテ
正當ナモノニモ適法ノモノニモ相成ラヌノ
デアリマス、況ヤ昭和四年度ノ實行豫算ニ
於キマシテ、前囘申シタ如ク國內各方面ニ
對シマシテ、政府ノ違憲ヲ責ムル聲ガ囂々
タルモノガアッタノデアリマス、先例云々ト
云フヤウナコトハ政府ガ之ニ口ヲ藉リテ
昭和四年度ニ於テ、或ハ五年度ニ於テ或ハ
六年度ニ於キマシテモ爲サラウカモ知レマ
セヌ、歲出ノ整理ト云フコトヲ適法ナルモ
ノノ如ク御說明遊バサレヤウト云フノハ
御考ヘ違ヒデハナイカト考ヘルノデアリマ
ス、何レニ致シマシテモ私ノ申上ゲマシタ
コトハ政府トシテハ御採用相成ラヌ、斯ノ
如キ重要ナルモノ、將來ノ爲ニ政府トシ
テ······政治ノ公明ヲ主張サレル政府ト致シ
マシテ、日本ノ將來ノ爲メ議會豫算協贊權
ノ將來ノ爲メ、幾千万年ノ後迄ノ爲ニ、此
際勢ヒ御決定ニ相成ルノガ適當デナイカト
考ヘマシタガ故ニ、御伺ヒ申上ゲタノデア
リマス、ソレニ對シマシテハ斯カル意思ハ
ナイ、斯ウ云フ御答辯デアリマス、誠ニ遺
憾ナガラ已ムヲ得ナイコトト思ヒマス此上
ハ前回ニモ申上ゲマシタ通リ、帝國議會ソ
レ自身ト致シマシテ、自ラ議會ノ豫算協贊
權ノ意義ノ確立ト云フコトニ努力イタス外
ハナイト考ヘマス、特ニ諸君ノ御考慮ヲ煩
ハシタイト考ヘマス、是デ私ノ質問ヲ終リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=99
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100・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 日程第一、小
作法案政府提出、衆議院送付、第一讀會、
町田農林大臣
小作法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月二十日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正ナリ)
小作法案
小作法
第一章總則
第一條本法ハ耕作ヲ目的トスル土地ノ
賃貸借及永小作ニ之ヲ適用ス
本法ニ於テ小作地ト稱スルハ前項ノ賃
貸借ノ目的タル土地ヲ謂ヒ永小作地ト
稱スルハ前項ノ永小作ノ目的タル土地
マックノ
第二條賃借人ガ小作地ニ附隨シテ宅地、
採草地、稻架樹、建物其ノ他ノ物ノ使用
又ハ收益ヲ爲ス權利ヲ有スル場合ニ於
テ其ノ權利ノ存續及消滅ハ小作地ノ賃
借權ノ存續及消滅ニ從フ但シ當事者ガ
別段ノ定ヲ爲シタルトキ又ハ小作地ノ
附隨物ニ關スル債務不履行ニ因リ契約
ヲ解除スルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三條第九條乃至第十一條、第十三條、
第十四條、第十七條前段、第十八條、
第十九條、第二十四條、第四十二條及
第七十四條ノ規定ニ異ル小作條件ニシ
テ賃借人又ハ永小作人ニ不利ナルモノ
ハ之ヲ定メザルモノト看做ス
第四條土地ノ耕作ヲ目的トスル請負其
ノ他ノ契約ハ之ヲ賃貸借ト看做ス但シ
本法ノ適用ヲ免ルル目的ニ出デザルモ
ノハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ賃貸借ノ條件ハ當事者ノ協議ニ
依リ之ヲ定ム協議調ハザルトキハ申立
ニ因リ裁判所ハ鑑定委員會ノ意見ヲ聽
キ當事者ノ締結シタル契約ノ條件其ノ
他一切ノ事情ヲ斟酌シテ之ヲ定ム
第二十八條乃至第三十一條ノ規定ハ前
項ノ申立アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第二章小作地賃貸借ノ效力
第五條小作地ノ賃貸借ハ其ノ登記ナキ
モ小作地ノ引渡アリタルトキハ爾後其
ノ小作地ニ村物權ヲ取得シタル者ニ對
シ其ノ效力ヲ生ズ
民法第五百六十六條第一項及第三項ノ
規定ハ登記セザル賃貸借ノ目的タル小
作地ガ賣買ノ目的物ナル場合ニ之ヲ準
用ス
民法第五百三十三條ノ規定ハ前項ノ場
合ニ之ヲ準用ス
第六條小作地ノ賃借權ハ賃貸人ノ承諾
アルニ非ザレバ之ヲ讓渡スコトヲ得ズ
小作地ニ付テハ
但シ別段ノ慣習アルトキハ其ノ慣習ニ
從フ
第七條賃貸人ガ其ノ小作地又ハ永小作
權ヲ賣却セントスルトキハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ賃借人ニ對シ期間ヲ定メ其
ノ期間內ニ買取ノ協議ノ申出アラバ之
ニ應ズル旨ヲ通知スルコトヲ要ス
第三十四條ノ法人又ハ團體ガ前項ノ通
知ヲ受ケタル場合ニ於テ買取ノ意思ナ
キトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ遲滯ナ
ク其ノ小作地ヲ耕作スル團體員又ハ住
民ニ對シ前項ノ通知ニ基キ賃貸人ト直
接買取ノ協議ヲ爲スベキ旨ノ通知ヲ爲
シ且其ノ旨ヲ賃貸人ニ通知スルコトヲ
要ス
賃貸人ハ前項ノ通知ヲ受ケクルトキハ
前項ノ團體員又ハ住民ノ買取ノ協議ノ
申出ニ應ズルコトヲ要ス
第八條前條第一項ノ期間內ニ買取ノ協
議ノ申出ナキトキ又ハ協議申出後一月
内ニ協議調ハザルトキハ賃貸人ハ其ノ小
作地又ハ永小作權ヲ他ニ賣却スルコト
ヲ得前條第一項ノ期間滿了前ト雖モ前
條ノ通知ヲ受ケタル者買取ノ意思ナキ
旨ヲ表示シタルトキ亦同ジ
第三章小作地賃貸借ノ終了
第九條當事者ガ小作地ノ賃貸借ノ期間
ヲ定メザリシトキハ當事者ハ民法第六
百十七條第二項ノ規定ニ拘ラズ何時ニ
テモ解約ノ申入ヲ爲スコトヲ得
小作地ノ賃貸借ハ前項ノ解約申入後一
年ヲ經過スルニ因リテ終了ス
第十條前條又ハ第十四條ノ規定ニ依ル
賃貸借終了ノ場合ニ於テ小作地ニ其ク
終了ノ日ヨリ一年內ニ收穫スベキ作物
(作物ニ付主從ノ別アルトキハ主タル
作物)ガ現ニ存スルトキハ收穫終了ス
ル迄賃貸借ハ仍存續スルモノト看做ス
但シ賃借入又ハ轉借人ガ信義ニ反シ賃
貸借ノ終了ヲ妨グル目的ヲ以テ艦ニ
作付ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第十一條前二條ノ規定ハ當事者ガ小作
地ノ賃貸借ノ期間ヲ定メタルモ其ノ一
方又ハ各自ガ其ノ期間內ニ解約ヲ爲ス
權利ヲ留保シタル場合ニ之ヲ準用ス
第十二條小作地ノ賃貸借ノ期間ヲ定ム
ルトキハ其ノ期間ハ五年ヲ下ルコトヲ
得ズ若シ之ヨリ短キ期間ヲ以テ賃貸借
ヲ爲シタルトキハ其ノ期間ハ之ヲ五年
トス
前項ノ規定ハ兵役、疾病其ノ他已ムコ
トヲ得ザル事由ニ因リテ自ラ耕作スル
コト能ハザル爲又ハ土地使用ノ目的ノ
變更其ノ他特別ノ事由ニ因リテ五年以
土賃貸スルコト能ハザル事情存スル爲
一時土地ヲ賃貸スル場合ニハ之ヲ適用
セズ
第十三條當事者ガ小作地ノ賃貸借ノ期
間ヲ定メタルトキハ前條第二項ニ規定
スル賃貸借ヲ除クノ外當事者ガ期間滿
了前六月乃至一年內ニ相手方ニ對シ更
新拒絕ノ通知又ハ條件ヲ變更スルニ非
ザレバ更新セザル旨ノ通知ヲ爲サザル
トキハ從前ノ賃貸借ト同一ノ條件ヲ以
テ更ニ賃貸借ヲ爲シクルモノト看做
ス
第十四條第九條又ハ第十一條ノ規定ニ
依ル解約ノ申入アリタル場合ニ於テ其
ノ申入後二月內ニ賃貸借ノ繼續ニ關シ
小作調停法ニ依ル調停ノ申立ノ受理ア
リタルトキハ調停終了スル迄賃貸借ハ
仍存續スルモノト看做ス但シ調停ノ申
立ノ却下アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前條ノ通知アリタル場合ニ於テ其ノ通
知後二月內ニ更新ニ關シ小作調停法ニ
依ル調停ノ申立ノ受理アリタルトキ亦
前項ニ同ジ
第十五條小作地ノ賃貸借ニ付期間ノ定
アリヤ否ヤ明ナラザルトキハ賃貸借ハ
期間ノ定ナキモノト推定ス
第十六條小作地ノ賃貸人ハ賃借人ニ背
信ノ行爲ナキ限リ不當ノ理由ニ因リ惡
意ヲ以テ解約ノ申入ヲ爲シ又ハ更新ヲ
拒ムコトヲ得ズ
第十七條小作地ノ賃借人ガ一年分ノ小
作料ノ一年以上ノ帶納其ノ他之ニ準ズ
ベキモノトシテ命令ノ定ムル滯納ヲ爲
二
シタル場合ニ於テ一月ヲ下ラザル期間
ヲ定メテ支拂ヲ爲スベキ旨ヲ催〓シ其
ノ期間內ニ支拂ナキトキハ賃貸人ハ賃
貸借ヲ解除スルコトヲ得賃借人ガ信義
ニ反シ賃貸人ヲ害スル目的ヲ以テ故意
ニ小作料ヲ滯納シクル場合亦同ジ
第十八條小作地ノ賃借人ガ小作料ノ一
部ノ支拂ヲ爲サントスル場合ニ於テハ
賃貸人ハ正當ノ事由アルニ非ザレバ其
ノ受領ヲ拒ムコトヲ得ズ
前項ノ場合ニ於テ賃貸人ハ一部ノ支拂
ヲ受領スルモ之ガ爲小作料ノ減額其ノ
他ノ申出ヲ承諾シタルモノト推定セラ
ルルコトナシ
第十九條小作地返還ノ場合ニ於テ小作
地ニ作物アルトキハ賃借人ハ賃貸人ニ
對シ時價ヲ以テ之ヲ買取ルベキコトヲ
請求スルコトヲ得但シ賃借人又ハ轉借
人ガ信義ニ反シ買取ラシムル目的ヲ以
テ濫ニ作付ヲ爲シタル作物ニ付テハ此
ノ限ニ在ラズ
第二十條小作地返還ノ場合ニ於テハ賃
借人ハ賃貸人ノ承諾ヲ得テ爲シタルト
キハ命令ノ定ムル所ニ依リ客土、灌漑
排水工事等小作地ノ改良ノ爲ニ支出シ
タル金額其ノ他ノ有益費ノ償還ヲ賃貸
人ニ請求スルコトヲ得
第二十一條第十九條ノ規定ニ依ル作物
ノ買取價額又ハ前條ノ規定ニ依ル有益
費ノ償還額ニ關シ當事者間ニ協議調ハ
ザルトキハ申立ニ因リ裁判所ハ鑑定委
員會ノ意見ヲ聽キ之ヲ定ム
第二十二條前條ノ場合ニ於テ賃貸人ガ
作物ノ代價ノ支拂又ハ有益費ノ償還ニ
充ツル爲裁判所ノ命ズル額ノ供託ヲ爲
シタルトキハ賃借人ハ小作地ノ返還ヲ
拒ムコトヲ得ズ
第二十三條鑑定委員會ノ組織、權限其
ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
小作官ハ鑑定委員會ニ出席シテ意見ヲ
述ブルコトヲ得
第二十四條小作地ノ賃貸人ガ賃貸借ノ
更新ヲ拒ミ又ハ第九條若ハ第十一條ノ
規定ニ依リ解約ノ申入ヲ爲シタル場合
ニ於テハ賃貸人ハ賃借人ニ對シ契約テ
以テ定メタル小作料ノ一年分ニ相當ス
ル額ノ範圍內ニ於テ作離料ヲ支拂フコ
トヲ要ス
第二十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル場
合ニ於テハ前條ノ規定ニ拘ラズ作離料
ヲ支拂フコトヲ要セズ
-賃借入ノ責ニ歸スベキ事由ニ因リ
賃貸人ガ賃貸借ヲ解除スルコトヲ得
ベキ事由アリタルトキ
二更新ノ慣習ナキ賃貸借ノ更新ヲ拒
ミタルトキ
三第十二條第二項ニ規定スル賃貸借
ナルトキ但シ期間ノ定ナキ賃貸借又
ハ更新ノ慣習アル賃貸借ヲ同項ニ規
定スル賃貸借ニ變更シタル場合ヲ除
ク
第二十六條作離料ノ額ニ關シ當事者闘
ニ協議調ハザルトキハ申立ニ因リ裁判
所ハ鑑定委員會ノ意見ヲ聽キ一切ノ事
情殊ニ左ノ各號ノ事項ヲ斟酌シテ之ヲ
定ム
一賃借人ノ通常受クベキ損失
二賃貸人ガ賃貸借ヲ終了セシムルニ
至リタル事情
三小作人ノ普通ノ收穫高
四小作人ノ額
五賃借人ガ小作地ヲ繼續シテ賃借シ
タル期間
第二十七條前條ノ場合ニ於テ賃貸人ガ
作離料ノ支拂ニ充ツル爲裁判所ノ命ズ
ル額ノ供託ヲ爲シタルトキハ賃借人ハ
小作地ノ返還ヲ拒ムコトヲ得ズ
第二十八條第二十一條、第二十二條、第
二十六條及前條ノ規定ニ依ル裁判ハ小
作地ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ於
テ非訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
第二十九條第二十一條及第二十六條ノ
規定ニ依ル裁判ニ對シテハ卽時抗〓ヲ
爲スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ二週間ト
ス
第二十二條及第二十七條ノ規定ニ依ル
裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ
得ズ
第三十條第二十一條及第二十六條ノ規
定ニ依ル申立ヲ受理シタルトキハ裁判
所ハ職權ヲ以テ事件ヲ小作調停法ニ依
ル調停ニ付スルコトヲ得此ノ場合ニ於
テ調停ニ付スル裁判ニ對シテハ不服ヲ
申立ツルコトヲ得ズ
第三十一條第二十一條、第二十二條、第
二十六條及第二十七條ノ規定ニ依ル裁
判ノ費用ニ付テハ民事訴訟費用法第十
六條及民事訴訟用印紙法第十六條ノ規
定ニ依ル
第四章小作地轉賛借ノ效力及終
了
第三十二條賃借人ハ賃賃人ノ承諾アル
トキト雖モ小作地ヲ轉貸スルコトヲ得
ズ但シ兵役、疾病其ノ他巴ムコトヲ得
ザル事由ニ因リテ自ラ耕作スルコト能
ハザル爲一時轉貸スル場合ハ此ノ限ニ
在ラズ
前項但書ノ場合ニ於テ賃貸人ハ正當ノ
事由アルニ非ザレバ轉貸ヲ拒ムコトヲ
得ズ
第一項但書ノ規定ニ依ル轉貸借ノ終了
ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム
第一項但書ノ規定ニ荻ル轉借人ハ更ニ
之ヲ轉貸シ又ハ其ノ權利ヲ讓渡スコト
2枚 2
第三十二條賃借入前條第一項ノ規定ニ
違反シ又ハ同條第三類ノ親定ニ依ル鈴
令ニ違反シ第三者ニ小作地ノ使用又ハ
收益ヲ爲サシメタルトキハ賃貸人ハ賃
貸借ノ解除ヲ爲スコトヲ得
轉借人前條第四項ノ規定ニ違反シ第三
者ニ小作地ノ使用又ハ收益ヲ爲サシメ
タルトキハ轉貸人又ハ賃貸人ハ轉貸借
ノ解除ヲ爲スコトヲ得
第三十〓條第三十二條ノ規定ハ產業組
合其ノ他營利ヲ目的トセザル法人又ハ
團體ガ賃借シタル小作地ヲ更ニ其ノ園
體員ニ耕作セシムル場合ニハ之ヲ適用
セズ市町村基ヲ他ノ公共團體ガ賃借シ
タル小作地ヲ更ニ其ノ住民ニ耕作セシ
ムル場合亦同ジ
前二條ノ規定ハ前項ノ團體員又ハ住民
万第三者ニ小作地ノ使用又ハ收益ヲ爲
サシムル場合ニ之ヲ準用ス
第三十五條第五條、第十條、第十八條
乃至第二十二條及第二十八條乃至第三
十一條ノ規定ハ第三十二條第一項但書
ノ規定ニ依ル轉貸借ニ之ヲ準用ス
第三十六條第五條ノ規定ハ第三十四條
ノ法人又ハ團體ガ賃借シタル小作地ヲ
其ノ團體員又ハ住民ニ耕作セシムル場
合ニ於テ其ノ小作地ニ村物權ヲ取得シ
クル者ト團體員又ハ住民トノ關係ニ之
ヲ準用ス
第三章ノ規定ハ第三十四條ノ法人又ハ
團體ガ賃借シタル小作地ヲ其ノ團體員
又ハ住民ニ耕作セシムル場合ニ於テ法
人又ハ團體ト其ノ團體員又ハ住民トヲ
關係ニ之ヲ準用ス
第三十七條小作地ノ轉貸借アル場合ニ
於テハ轉貸人ハ轉借人ニ對シ命令リ定
ムル所ニ依リ賃貸借終了ニ關スル通知
ヲ爲スコトヲ要ス
第五章永小作權ノ效力及終了
第三十八條第七條第八條、第十八條
乃至第二十二條及第二十八條乃至第三
十一條ノ觀定ハ泳小作地ノ断有者ト永
小作人トノ關係ニ之ヲ準用ス但シ第七
條及第八條ノ規定ハ永小作人ガ永小作
地ヲ耕作ノ目的ヲ以テ賃貸シタル場合
ニ於テハ第十二條第二項ニ規定スル賃
貸借ヲ除タノ外永小作地ノ所有者ト賃
借人トノ關係ニ之ヲ準用ス
第三十九條永年作物ノ栽培ヲ目的トシ
テ永小作權ヲ設定スル場合ニ於テハ其
ノ存續期間ハ二十年以土七十年以下ト
ス若シ七十年ヨリ長キ期間ヲ以チ永小
作權ヲ設定シタルトキハ其ノ期間ハ之
ヲ七十年ニ短縮ス
前項ノ永小作權ノ設定ハ之ヲ更新スル
コトヲ得但シ其ノ期間ハ更新ノ日ヨリ
七十年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第一項ノ永年作物ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
第四十條永小作權ノ期間滿了ノ後永小
作人ガ耕作ヲ繼續スル場合ニ於テ永小
作地ノ所有者ガ遲滯ナク異議ヲ述ベザ
ルトキハ從前ノ承小作ト同一ノ條件ヲ
以テ更ニ存續期間二十年ノ永小作權ノ
設定アリタルモノト推定ス
第四十一條第十六條ノ規定ハ永小作地
ヲ所有者ガ前條ク異議ヲ述ベタル後一
月內ニ永小作人ガ其ノ土地ニ付賃借ヲ
申出ヲ爲シタル場合ニ之ヲ準用ス
前項ノ申出ニ依リ成立スベキ賃貸借ノ
條件ハ當事者ノ協議ニ依リ之ヲ定ム協
議調ハザルトキハ申立ニ因リ裁判所ハ
鑑定委員會ノ意見ヲ聽キ從前ノ永小作
ク條件其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌シテ之一
弓唐山
第二十八條乃至第三十一條ノ規定ハ前
項ノ申立アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四十二條永小作人ガ破產ノ宣〓ヲ受
ケタル場合ヲ除クノ外民法第二百七十
六條ノ規定ニ依ル永小作權ノ消滅ヲ請
求ハ一月ヲ下ラザル期間ヲ定メテ小作
料ノ支拂ヲ爲スベキ旨ヲ催告シ其ノ期
間內ニ支拂ナキトキニ非ザレバ之ヲ爲
スコトヲ得ズ
第六章小作條件ノ變更
第四十三條不可拉力ニ基ク收穫高ク減
少ヲ理由トスル小作料ノ減額又ハ免除
ノ申出ハ遲クトモ牧穫著手ノ日ヨリ十
五日前ニ之ヲ爲スコトヲ要ス但シ當事
者ガ別段ノ定ヲ爲シタルトキ又ハ宥恕
スベキ事由アルトキハ此ノ限ニ在ラ
ズ
前項但書ノ場合ニ於テハ減額又ハ免除
ノ申出ハ當事者ガ申出ノ時期ヲ定メタ
ルトキハ其ノ時期ニ宥恕スベキ事由
アルトキハ相當ク時期ニ之ヲ爲スコト
ヲタル、
第四十四條前條ノ申出アリタル場合ニ
於テ當事者ノ一方ガ相手方ニ對シ檢見
ノ申出ヲ爲サントスルトキハ遲滯ナク
之ヲ爲スコトヲ要ス
檢見ノ申出ヲ爲ヌモ相手方之ニ應。ゼザ
ルトキハ小作官ク定ムル方法ニ依リ撿
見ヲ爲スコトヲ得
檢見ノ方法ニ付當事者ノ協議調ハザル
トキ亦同ジ
第四十五條前條第二項ノ規定ハ契約又
ハ慣習ニ依リ當事者ガ每年檢見ノ土小
作料ノ額ヲ定ムル場合ヲ檢見ニ之ヲ準
用ス
第四十六條前二條ノ規定ニ依リ檢見ヲ
爲ス者ハ土地ノ立入、耕作狀況ノ調査、
坪刈其ノ他檢見ノ爲必要ナル行爲ヲ爲
スコトヲ得
第四十七條當事者ハ合意ヲ以テ關係地
ノ所在スル區域ノ小作委員會ニ對シ小
作料其ノ他ノ小作條件ク改定ヲ請求ス
コトヲ得
第四十八條小作委員會ハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ一定ク區域内ヲ土地ノ賃貸人
及之ニ準ズル者竝ニ賃借人及之ニ準ズ
ル者ガ各別ニ又ハ共同シテ選定シタル
者ヲ以テ之ヲ組織ス
小作委員會ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第四十九條裁判所ハ當事者又ハ小作官
ノ申立ニ因リ小作委員會ノ決定著シク
不當ナリト認ムルトキハ鑑定委員會ノ
意見ヲ聽キ其ノ決定ヲ取消スコトヲ得
此ノ申立ハ決定ノ通知アリタル日ヨリ
二週間內ニ之ヲ爲スニ非ザレバ其ノ效
力ナシ
小作委員會ノ決定ヲ取消ス裁判ニ對シ
テハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ズ
申立却下ノ裁判ニ對シテハ卽時抗〓ヲ
爲スコトヲ得
第五十條小作委員會ノ決定ハ取消ノ申
立ナクシテ前條第一項ノ期間ヲ經過シ
又ハ申立却下ノ裁判確定シタル日ヨリ
當事者間ノ契約ノ內容ヲ成ス
第五十一條第二十八條及第三十一條ノ
規定ハ第四十九條ノ規定ニ依ル裁判ニ
之ヲ準用ス
第五十二條當事者ハ合意ヲ以テ小作條
件ノ改定ヲ爲サシムル爲一人又ハ數人
ノ仲裁者ヲ選定スルコトヲ得
前三條ノ規定ハ仲裁者ノ決定ニ之ヲ準
用ス
第七章小作料ノ供託
第五十三條小作料ノ支拂又ハ小作地ノ
返還ヲ命ズル判決ニ付假執行ノ宣言ア
リタル場合ニ於テ其ノ判決ヲ爲シタル
裁判所ハ上訴期間內ニ限リ債務者ノ申
立ニ因リ相當額ノ擔保ヲ供セシメ其ノ
執行ノ停止又ハ既ニ爲シタル執行處分
ノ取消ヲ命ズルコトヲ得
第五十四條小作料ニ關シ爭議ヲ生ズル
虞アル場合ニ於テ必要アリト認ムルト
キハ小作地ノ所在地ヲ管轄スル區裁判
所ハ當事者ノ申立ニ因リ債務者ヲシテ
相當額ノ擔保ヲ供セシメタル上小作料
債權ニ基ク假差押ヲ許サザル旨ノ決定
ヲ爲スコトヲ得
裁判所ハ爾後ノ事情ニ依リ決定ヲ以テ
前項ノ擔保額ノ變更ヲ命ズルコトヲ
得
前二項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツ
ルコトヲ得ズ
第五十五條小作料債權ニ基ク假差押ヲ
命ズル場合ニ於テ必要アリト認ムルト
キハ裁判所ハ民事訴訟法第七百四十三
條ニ規定スル金額ノ記載ニ代ヘ假差押
ノ執行ヲ停止シ又ハ旣ニ爲シタル假差
押ヲ取消スコトヲ得ル爲債務者ニ於テ
供スベキ相當ノ擔保額ヲ假差押命令ニ
記載スルコトヲ得
裁判所ハ爾後ノ事情ニ依リ決定ヲ以テ
前項ノ擔保額ノ變更ヲ命ズルコトヲ
得
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツル
コトヲ得ズ
第五十六條小作關係ノ爭議ニ付債務者
ニ對シ小作地ノ占有ヲ解ク假處分ヲ命
ズル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキ
ハ裁判所ハ執達吏ニ小作地ノ保管ヲ命
ズルト同時ニ債務者ガ小作地ノ現狀ノ
變更其ノ他判決ノ執行ヲ妨グベキ行爲
ヲ爲サザルコトノ誓約ヲ爲シ又ハ相當
額ノ擔保ヲ供スルコトヲ條件トシテ小
作地ノ使用又ハ收益ヲ債務者ニ許シ得
ベキコトヲ命ズルコトヲ得
債務者ガ判決ノ執行ヲ妨ゲ又ハ執行ヲ
妨グル虞アル行爲ヲ爲シタルトキハ裁
判所ハ前項ノ規定ニ依ル許可ノ裁判ヲ
取消スコトヲ得
第五十七條債務者ニ對シ小作地ノ占有
ヲ解ク假處分ヲ命ジタル場合ニ於テ爾
後ノ事情ニ依リ裁判所ハ旣ニ爲シタル
假處分ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第五十八條小作料債權ニ基ク假差押命
令ノ執行トシテ小作地ノ作物ノ差押ヲ
爲シタル場合ニ於テ必要アリト認ムル
トキハ執行裁判所ハ當事者ノ申立ニ因
リ債務者ヲシテ差押物ノ隱匿、毀損其
ノ他執行ヲ妨グベキ行爲ヲ爲サザル
コトノ誓約ヲ爲サシメ又ハ相當額ノ擔
保ヲ供セシメタル上執達吏占有ノ儘債
務者ヲシテ收穫ヲ爲サシメ其ノ他差押
物ニ付管理上必要ナル處置ヲ爲サシム
ルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル裁判ニハ收穫其ノ他
差押物ノ管理ニ必要ナル費用ノ最高額
ヲ定ムルコトヲ要ス
債務者ヲシテ差押物ノ保管ヲ爲サシム
ルトキハ執達吏ハ封印其ノ他ノ方法ヲ
以テ差押ヲ明白ニスルコトヲ要ス
第五十六條第二項ノ規定ハ第一項ノ規
定ニ依ル裁判ニ之ヲ準用ス
第五十九條前條ノ規定ハ小作料債權ニ
基ク强制執行トシテ小作地ノ作物ノ差
押ヲ爲シタル場合ニ之ヲ準用ス
前項ノ規定ハ收穫ノ後執行行爲ヲ續行
スルコトヲ妨ゲズ
第六十條民事訴訟法第百十二條、第百
十三條、第百十五條及第百十六條ノ規
定ハ本章ノ規定ニ依ル擔保ニ之ヲ準用
ス
前項ノ規定ニ依ル擔保ノ供與ハ小作料
トシテ支拂フベキ物ヲ供託シテ之ヲ爲
スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ著シク物ノ品質ヲ損
傷スル虞アルトキ又ハ其ノ貯藏ニ付不
相應ナル費用ヲ生ズベキトキハ裁判所
ハ申立ニ因リ其ノ物ヲ競賣シ賣得金ヲ
供託スベキ旨ヲ供託物ノ保管者又ハ執
達吏ニ命ズルコトヲ得
第六十一條第五十三條乃至第五十五
條第五十八條又ハ第五十九條ノ規定
ニ依リ債務者供託ヲ爲シタル場合ニ於
テ小作料債權確定シタルトキハ債權者
ハ其ノ債權ニ付テモ供託物ノ上ニ質權
者ト同一ノ權利ヲ有ス
第六十二條第六十條第二項第三項及前
條ノ規定ハ小作料ノ支拂又ハ小作地ノ
返還ヲ命ズル判決ノ假執行ヲ免ルル爲
債務者ノ供スル擔保ニ之ヲ準用ス
第六十三條本章ノ規定ハ永小作地ノ所
有者ト永小作人トノ關係ニ之ヲ準用ス
第八章罰則
第六十四條鑑定委員會ニ出席シタル者
故ナク會議ノ〓末、鑑定委員ノ意見若
ハ其ノ多少ノ數又ハ小作官ノ意見ヲ漏
泄シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處
ス
第六十五條第五十六條又ハ第五十八條
ノ規定ニ依リ誓約ヲ爲シタル者其ノ誓
約ニ違反シタルトキハ五百圓以下ノ過
料ニ處ス第五十九條又ハ第六十三條ノ
規定ニ依リ準用セラルル第五十六條又
ハ第五十八條ノ規定ニ依ル誓約ヲ爲シ
タル者ニ付亦同ジ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附則
第六十六條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第六十七條本法ハ本法施行ノ際現ニ存
スル小作地ノ賃貸借及永小作ニ之ヲ適
用ス本法施行ノ際現ニ存スル小作地ノ
轉貸借ニシテ第三十四條ノ規定ニ該當
スルモノニ付亦同ジ
第六十八條第三十七條及第四十三條乃
至第六十五條ノ規定ハ本法施行ノ際現
ニ存スル小作地ノ轉貸借ニシテ第三十
四條ノ規定ニ該當セザルモノニ之ヲ適
用ス
第五條乃至第十一條、第十五條乃至第
二十二條、第二十四條乃至第三十三條
及第三十八條但書ノ規定ハ前項ノ轉貸
借ニ之ヲ準用ス
第六十九條本法施行ノ際現ニ存スル小
作地ノ賃貸借ニシテ五年未滿ノ期間ヲ
定メタルモノハ其ノ期間ハ契約ノ日ヨ
リ五年トス但シ第十二條第二項ノ規定
ニ該當スル場合ニ於テ五年未滿ノ期間
ヲ定メタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第七十條第六十八條ノ轉貸借ニシテ期
間ノ定アルモノハ其ノ残期間、期間ノ
定ナキモノハ本法施行ノ日ヨリ二十年
ヲ超エザル範圍內ニ於テ其ノ效力ヲ有ス
第七十一條本法施行ノ際現ニ存スル小
作地ノ賃貸借又ハ轉貸借ニ付本法施行
前爲シタル解約ノ申入ハ之ヲ本法ニ依
リ爲シタルモノト看做ス
第七十二條本法施行ノ際現ニ存スル小
作地ノ賃貸借ニシテ本法施行後一年內
ニ其ノ期間滿了スベキモノニ付當事者
ガ其ノ滿了前一年內ニ相手方ニ對シテ
爲シタル更新拒絕ノ通知又ハ條件ヲ變
更スルニ非ザレバ更新セザル旨ノ通知
ハ第十三條ノ期間內ニ爲サザルモノト
雖モ之ヲ同條ノ期間內ニ爲シタルモノ
ト看做ス
第七十三條本法ハ本法施行前ニ賃借人、
轉借人又ハ永小作人ノ支出シタル小作
地又ハ永小作地ノ有益費ノ償還ニハ之
ヲ適用セズ
第七十四條本法施行ノ際現ニ作株(小
作權、上地代、甘土料、ザル代、鍬先
等ノ名稱ヲ以テ賣買セラルルモノヲ含
ム)又ハ永小作權ノ賣買ノ慣習アル地
方ニ於テ其ノ習慣ノ存續スル小作地又
ハ永小作地ヲ返還セシムル場合ニ於テ
ハ相當ノ償金ヲ支拂フコトヲ要ス
第二十一條、第二十二條及第二十八條
乃至第三十一條ノ規定ハ前項ノ償金ニ
之ヲ準用ス
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=100
-
101・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 小作法案提出ノ
理山ヲ說明申上ゲマス、我國ノ小作地ノ面
積及ビ小作、自己作等ノ農家ノ數ノ極メテ
多イコトヲ以テ見マシテモ、小作問題ガ農
村問題中ノ最モ重大ナル地位ニアルコト
ハ、之ニ依ッテモ認メラレマス、是ト農家ノ
農業經營ハ極メテ小規模デアリマス、他方
小作關係ニ立ツ地主モ亦其大部分ハ小地主
デアリマス、是ハ經濟上カラ豐カナラザル
地主小作、兩當事者ノ間ニ於テ薄利ナル農
業收益ヲ中心ト致シテ、小作爭議ガ釀成セ
ラレテ居ルノデアリマス、最近ニ於キマシ
テハ爭議ガ全國的ニ彌漫シ、爭議ノ件數ハ
相當多數ニ上ボッテ居リマス、殊ニ土地返還
爭義、未解決事件ノ增加等ハ、爭議ガ深刻
トナッタコトヲ示シテ居ルノデアリマス、小
作爭議ハ結局地主小作トモニ傷ケ、延イテ
農村生活ノ安定、農村ノ發達ニ一大障害ヲ
與ヘルコトハ明カデアリマス、此障害ヲ出
來ルダケ取リ除クコトハ緊要デアリマシ
テ、是ガ解決ハ當業者ノ交渉ノミニ放任シ
テ置ク譯ニ參リマセヌト存ジマス、國家ト
致シテモ當然適當ノ施設ガナケレバナラヌ
ト存ジマス、其方策トシテハ農家全般ニ亙
ル種々ノ施設ヲ致スト共ニ、自作農ノ創定
維持、小作調停法ノ施行等ニ依リマシテ、
從來相當效果ヲ收メテハ居リマスモノノ、
尙ホ小作爭議ガ現行法制ノ不備ニ基イタ所
モアリマス、又小作關係ハ從來ノ慣行ニ依ッ
テ維持セラレ來タノデアリマスモノノ、其
慣行中ニハ時代ノ變遷ト共ニ漸次過去ノモ
ノト相成ッタモノモアリマス、現行法制ノ
缺陷ガ痛感セラレルヤウニナッタノハ此譯
デアリマス、故ニ此際小作關係法制ヲ整備
シ、小作慣行中適當ナルモノハ飽ク迄之ヲ
維持イタスノデアリマス、小作慣行中ノ適
當ナルモノハ飽ク迄之ヲ維持イタシマシ
テ、以テ農村問題ノ解決ニ資スルガ爲ニ、
小作法ヲ制定スルノ必要ヲ認メタノデアリ
マス
〔議長公爵徳川家達君議長席ニ復ス〕
小作法案ノ立法ニ至リマス迄ニハ、相當ノ沿
革ヲ經テ居リマス、本法案ハ小作調査會ノ答
申ニ依ル小作法制ニ關スル要項、調査會デ
答申トナリマシタル其要項ヲ基礎トシテ居
ルノデアリマス、小作調査會ニ於キマシテ
ハ審議ニ當ノテ原案ヲ他ニ求ムルコトナ
ク、或ハ地主側、小作側、中立者等、關係
者等ノ意見ヲ直接聽取リ、又ハ小作關係ノ
實情ヲ調査シテ、而モ外國ノ立法令ニ捉ハ
レル所ハナク、現在ノ小作慣行、農村ノ特
殊ノ事情及ビ社會ノ推移等ヲ考へ、又理解
アル地主、農村ニ勤勉ナル小作農家ハ、小
作關係ニ於テ如何ナル立場ニアルカヲ考慮
イタシマシテ、主トシテ理解アル地主、勤
勉ナル小作人ヲ中心トシテ立案スルト同時
二、一面地主ノ所有權ヲ尊重シ、他面小作
農家ノ地位ヲ確保シ、我國農業ノ改良發達
ニ支障ナキコトニ努メマシテ、調査會自カ
ラ要項ヲ立案シタノデアリマス、農林省及
ビ司法省ニ於キマシテハ、此要項ニ基イテ
小作法草案ヲ起案イタシタノデアリマス
ガ、第五十二議會ニ提案ノ運ビニ至ラナカッ
タ故ニ、此間暫ク世間ニ問フ爲ニ、昭和二
年三月之ヲ公ニ致シマシテ、尙ホ〓究調査
ヲ續ケテ居ッタノデアリマス、其後昭和四年
社會政策審議會ニ對シマシテ、小作問題ノ
對案トシテ、速ニ實施ヲ要スト認ムル事項
如何ト云フ諮問ヲ致シマシタ所、同審議會
ニ於キマシテモ、小作調査會ノ答申シタ要
項ヲ妥當ナルモノトシテ、之ニ基イテ速ニ
小作法ヲ制定實施スルヤウニトノ答申ヲ致
シタノデアリマス、依ッテ更ニ小作調査會ヲ
開キマシテ、小作事情ノ變遷ニ付テ協議ヲ
重ネ、又各方面ノ意見ヲモ調査〓究イタ
シ、本法案ヲ立案ヲ致シタ次第デアリマ
ス、本法案ハ相當廣汎ニ亙ッテ居リマスガ、
土地ノ耕作關係ニ付キマシテ、契約ノ效力
期間及ビ繼續竝ニ契約終了ノ場合ノ處置、
小作條件ノ變更、其他ノ爭議ノ緩和方法ニ
付キマシテ、種々ナ事情ヲ考慮シテ規定ヲ
設ケテ居リマスガ、其詳細ナル說明ハ他ノ
機會ニ讓ルコトト致シマシテ、玆ニ本案提
出ノ理由ヲ大體申上ゲル次第デアリマス、
尙ホ衆議院ニ於キマシテハ第六條及ビ第十
七條ニ修正ヲ加ヘタノデアリマス、此修正
ヲ加ヘタノデアリマス、此修正ニ付キマシ
テハ貴族院ニ於カレテ御審議ノ結果ヲ俟チ
マシテ適當ニ考慮致ス次第デアリマス、何
卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ切望イタ
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=101
-
102・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ニ對シ質疑
ノ通〓ガゴザイマス、通〓順ニ依リ發言ヲ
許シマス、石川三郞君
〔石川三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=102
-
103・石川三郎
○石川三郞君 私ハ農民ノ立場上、極ク簡
單ニ三ツ質問ヲ致シタイト思フノデアリマ
ス、此法案ハ地主小作人ノ權利義務ヲ確保
イタシテ居ルノデアリマスルカラ、地主ト
小作人ハ此法案ニ依リマシテ確實ニ其權利
ヲ得ルコトニ相成ルノデアリマス、從ヒマ
シテ丁度憲法ガ國民ヲ作リマスルト同樣
ニ、此法案ハ我國將來ノ地主ト小作人ヲ作
ル重要ナル法案デアリマス、從ヒマシテ農
民カラ見マスルト決シテ犯スコトノ出來ナ
イ尊キ法案ト思ハナケレバナラヌ、然ルニ此
法案ガ提案イタサレマスルヤ、地主モ小作
人側モ大イニ歡迎シナケレバナラヌノニ
事實ハ全ク是ト反對イタシマシテ、全然之
ヲ厄介視シテ居ルト云フヤウナ遺憾千萬ナ
コトガ起ッテ居ルノデアリマス、申ス迄モナ
ク假令良イ法案デアリマシテモ、人心ガ不
安ノ念ニ驅ラレテ居リマスル時ニハ、疑ヒ
ノ眼ヲ以チマシテ誤解ヲ受ケルコトヲ免レ
ヌコトハ往々アルノデアリマス、今ヤ我農
民ハ全ク經濟上不安ノ念ニ陷フテシマッテ居
ル、目下ノ米價ハ約十七八圓デアリマシ
テ、是ハ丁度金解禁前ノ大正七年ノ米價デ
アリマス、其時ノ地方ノ負擔ヲ調ベテ見マ
スルト其當時ノ郡役所ノ歲入ノ決定ヲ合
セテ約五億丸千万圓ニ相成ッテ居リマス、其
後好況時代ニ移リマシテ地方費ガ非常ニ膨
脹イタシマシタガ、近來ハ段々減ヲテ居リ
WV.併ナガラ尙ホ昭和四年ニ於キマシテ
モ其額ハ十七億六千萬圓ニ相成"テ居ル、米
價ハ元ノ通リ十七圓ニ下リマシテモ、農民
ハ依然好況時代ノ負擔ヲ致シテ居ルノデア
リマス、是デハドウシテモ農民ガ立ツ道理
ガアリマセヌ、從ヒマシテ好況ノ時代ニ於
キマシテモ米價ガ三十圓時代ニ至リマスル
ト歷代ノ内閣ハ米ノ買上ゲヲ致シマシ
テ、維持シテ行ッタノデアリマス、是ハ三十
圓以下ハ米ノ値ガ下リ過ギタト云フノデナ
クシテ、ソレダケノ米價ヲ保ヲテ居ラナケ
レバ農民ガ其負擔ニ堪ヘナイカラデアリマ
ス、從ッテ今日米價ガ其半分ニ下落シテモ
尙ホ好況時代ノ負擔ヲスルト云フノハ到底
言ヘナイノデアリマスルカラ、現政府トシ
マシテハドウシテモ現在ノ米ヲ好況時代
ノ時分ニ吊リ上ゲルカ、ソレガ出來ナケレ
バ國民······農民ノ負擔ヲ元通リニ下ゲナ
クテハナラヌ、此事ハ今日急ニ分ッタ事柄
デナタシテ、既ニ金解禁ノ時ニ考ヘテ置カ
ナケレバナラヌ事柄デアルノデアリマス、
私如キガ申ス迄モナイコトデアリマスルケ
レドモ、金ノ輸出禁止ニ因リマシテ、吊リ
上ゲラレタル米價ハ、金ノ解禁ニ因ッテ元通
リニ下ルト云フコトハ是ハ當然ノ理窟デア
リマス、從ヒマシテ現政府ガ金解禁ヲ計畫
イタサルルニ當リマシテハ、必ズヤ金解禁
ヲ致シテモ米價ガ下ガラナイヤウニスルカ、
左モナケレバ負婚ヲ元通リニ返スト云フダ
ケ計畫ヲ立テテ、初メテ金ノ解禁ヲ爲スベ
キコトト思フノデアリマス、然ルニ現内閣
ハ此等ノ點ニチットモ考慮ヲスルコトナ
ク、唯自己ヲ本位ト致シマシテ、金ノ流出サ
ヘ防ゲバ宜ウイト云フ考へカラシテ、消費
節約、緊縮一點張リノ金ノ解禁ヲ致シタノ
デアリマスルカラ、米價ハ二重ニ下落ヲ致
シタノデアリマス、卽チ農民ハ現内閣ノ爲
ニ二重ノ損害ヲ受ケタ、卽チ蹴ラレタ上ニ
踏マレタト云フヤウナ目ニ遭ッテ居ルノデ
アリマス、從ッテ現內閣ハ當然此農民ヲ急
ニ救フベキ責任ト義務ガ當然アルト私ハ思
フガ、現內閣ハ動モ致シマスルト云フト
此責任ヲ自分ハ見ナイデ農民ニ歸シテ自ラ
其責任ヲ免レムトスル風ガ度〓見エテ居ル、
每度此議場デ聽クコトデアリマスルガ、大藏
大臣ハ屢、斯ウ云フコトヲ言ッテ居ラレル、米
價ガ下ッタ爲ニ農民ガ苦ンデ居ルト云フコト
ハ認メル、併ナガラ其責ハ又農民ニモアル、
好況時代ニ農民ガ奢リニ慣レテ借金ヲシタ
カラデアルト云フコトヲ言ハレルガ、是ハ實
ニ農民ヲ誣ユル所ノ暴言ト私ハ思フノデア
リマス、申ス迄モナク我國民ハサウ奢侈ニ流
レル國民トハ私ハ思ッテ居リマセヌ、勤檢力
行、自作自營ハ我農民ノ本性デアリマス、我
農民ハ古來不作若タハ不況ニ遭ヒマスルト
云フト、一年カ二年カノ間ハ鹽サヘ買ヘバ、
其外ノモノハ買ハナクテモ通スヤウニシナ
ケレバナラヌト云フノガ、我農民本來ノ本
能デアリマス、サウ云フ農民ガ假令此好況
時代ニ於テ外ノ國民ガ少々奢ルヤウニナリ
マシテモ、今日食フニ〓ハレナイヤウナ借
金ヲシタトハ私ハドウシテモ考ヘルコトガ
出來ナイ、卽チ好況時代ニ於テ殖エマシタ
ル所ノ借金ハ、此奢リノ爲ニ出來タ借金デ
ナクシテ、好況時代ニ蓄積シタル所ノ資本
ヲ元ト致シ、自作農樊働法ノ保護ト相俟チ
マシテ、自作田ヲ買フ爲ニ作ッタ所ノ蓄產的
ノ借金ト私ハ思フテ居ル、然ルニ責任アル政
府ハ此蓄產的借金ヲ捉ヘマシテ、奢侈的ノ借
金デアルト云フ風ニ言ハレマシテハ、私ハ
農民ニ對シテ冷淡ドコロカ、實ニ冷酷極マ
ル所ノ暴言ト、私ハ思フノデアリマス、從
ピマシテ現農民ガ現政府ニ對シテ怨嗟ノ念
ヲ持ッテ居ルト云フノハ掩フベカラザル事
實デアル、斯樣ナ時ニ於キマシテ、苟モ農
民ニ關係アル重要法案ヲ提出スルニ當リマ
シテハ、先ヅ農村ニ對スル此救濟ヲ行フカ、
若シ行フコトガ出來ナケレバ、ソレダケノ
聲明ヲ致シク後ニ行フノガ至當デハナイ
カ、提案ヲスルノガ至當デハナイカ、然ル
ニ何等是等ニ言及イタサズシテ、漠然トシ
テ此案ヲ出サレタノデアリマスガ故ニ、此
尊キ案ニ對シテ、斯ノ如キ「ケチ」ガ付イタコ
トト思フノデアリマス、此邊ニ付キマシテ
ハ當局ハドウ考ヘテ居ラレルノデアリマス
ルカ、御尋ヲ致スノデアリマス、其次ハ此
法案ニモ尙ホ依然トシテ曖昧ナル言葉ガア
ル、例ヘテ見マスルト云フト、賃〓人又ハ轉
借人ニ不利ナ者ハ之ヲ定メザルモノト看做
ス、或ハ習慣アルモノハ從來ノ習慣ニ從フ、
或ハ背信、惡意、不利ト云フガ如キ抽象的
ノ言葉ガ依然入ッテ居ル、是ハ法ノ嚴正ヲ傷
ケルノミナラズ、依然トシテ小作爭議竝ニ
「ブヨーカー」ヲ誘發スベキモノト思フノデ
アリマス、從ヒマシテ十分調査〓究ヲ致シ
マシタナラバ、創ルベキハ削リ、修正スベ
キハ修正イタシマシテ、具體的ノ事柄ニ直
スノガ至當デハナイカト思フ、其次ハ此法
案ヲ作ルニ當リマシテハ、今大臣カラ御說
明モアリマシタ通リ、從來ノ國情〓ニ習慣
ヲ十分考慮シテ······加味シテ作ラレテアル
コトハ認メルコトガ出來ルノデアリマス、
併ナガラ兎ニモ角ニモ從來ノ情誼主義ヲ捨
テマシテ、玆ニ法律的ニ變ック重大法案デア
リマスガ故ニ、之ヲ實地ニ運用スルニ當リ
マシテハ、ソレ相當ノ準備ト用意ガ要ルコ
トト思ヒマス、例ヘテ見マスルト今マデ
知ラナカッタ小作人モ此法案ヲ見マシテ、己
ノ得タル所ノ權利ヲ知ルヤウニナル、從ッテ
初メノ間ハ却シテ小作爭議ガ殖エルカモ知
レヌ、其場合ニ於キマシテ裁判ト致シマシ
テハ、從來ヨリモ、ヨリ深切ニ、ヨリ手際
ヨク裁判ヲシナケレバ、折角良イ法案ガ出來
マシテモ、ソレダケノ成果ヲ收メルコトガ
出來ナイ、却ッテ惡イ結果ニナリハセヌカト
思フ、此邊ニ對シマシテモ當局ハ十分ニ考
慮ヲセナケレバナラヌガ、ドウ云フ風ニ〓
究ヲサレテ、ドウ云、フ風ニ手筈ヲ決メテ居
ラレルカ伺ヒタイノデアリマス、兎ニ角大
臣ノ說明ガアリマシタ通リ、此法案ハ小作
爭議ノ爲ニ出來テ居ル、出來ル動機ハソレ
ニアル、併ナガラ出來上ッタ以上ハ我ガ國民
ヲ救フベキデアリマスカラ一種ノ小作爭議
用ノ法律トセズニ、農民ニ對スル一種ノ聖
典トシテ愼重ニ取扱ハレルヤウニ、私ハ農
民ノ立場トシテ希望ヲスルノデアリマス
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=103
-
104・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 石川君ノ只今ノ
御質問ハ大、體三點ニ分レテ居ルヤウデアリ
や、、第一點ハ小作法ヲ制定スルノ時機宜
シキヲ得テ居ラヌト云フヤウナ意味合ノ御
尋デアリマシタ、之ニ御答ヲ致シマスルニ
付キマシテ、農村今日ノ不況、農產物ノ暴
落等ニ對スル御意見ガアリマシタガ、只今
ノ其御意見ニ對シテハ、先般奧平伯爵ノ農
村問題ノ御質問ニ際シテ、私ヨリ數項ニ分フ
テ御答へ致シテアリマスカラ、玆デハ繰返
スコトハ致シマセヌ、唯仰セノ如ク農家ノ
莫大ナル負債ヲ如何ニ整理スルカト云フ問
題、或ハ農產物ノ暴落······米繭價ヲ始メ
トシテ農產物ノ暴落ニ對シテ、一面恆久的
ナ施設ハ斯樣ニ致ス、應急的ノ施設ハ斯樣
ニ致スト、別ヲテ御答ヲ致シテアリマスガ故
ニ是モ省キマス、大藏大臣ニ對スル金解禁
及ビ現內閣ノ財政政策ニ對シテノ御尋、又
御非難モアリマシタ、此點ニ於キマシテモ、
私ノ見ル所ハ世界不景氣ノ外ニ、農產物ノ
價格ノ暴落ノ原因ヲ一通リ奧平伯ニ御答へ
シテアリマスガ故ニ之ヲ略シマス、唯〓斯樣
ナ農村不安ノ時ニ斯樣ナ法律ヲ出スコトガ
時機ヲ得テ居ラヌト云フ御尋ニ對シマシテ
ハ、他ノ經濟上ノ施設ニ依っテ農村ノ困憊ヲ
救フコトハ暫ク大キナ間題トシテ他日ノ問
題ト致シマシテ、小作法制定ハ斯權ナ不安
ノ際之ヲ一日モ早ク實施スルコトハ、少タ
トモ其不安ノ一部ヲ救ヒ得ラレルト云フ考
デ出シタノデアリマス、而シテ先刻說明申
上ゲタ通リ、此要項ハ數年前カラ公ケニ致シ
マシテ、小作爭議ノアリマス地方ニ於テノ協
調會又ハ小作調停委員ナドガ、實際ニ於テ
モ此要項ニ依ッテ爭議ヲ調停シテ居ルノハ
事實デアリマス、先年ハ地主、小作人雙方
カラ此要項ニ對シテ少カラザル反對ヲ受ケ
マシタガ、併シ昨今ノ大體カラ見マスルト、
地主ノ方面ニ於キマシテハ、稍〓斯樣ナ要
項ノ如キモノガ、一日モ早ク實施セラレル
コトヲ希望シテ居ル傾向ガ著シク相成ッタ
ト云フコトヲ申述べテ置キマス、第二間ノ
賃貸借關係ノ條項ニ付キマシテハ、法文ニ
關係イタシマスガ故ニ、委員會等ニ於テ詳
シク申上ゲルコトト致シマシテ、第三問ノ
實行上ノコトハ御意見ノ通リデアリマス、
此法律ハ主トシテ從來ノ慣行ニ重キヲ置イ
タト申スモノノ、小作人ノ權利ヲ確保シタ
所モアリマス、民法以外ニ小作人ノ權利ヲ
玆ニ規定シタ箇條ガアリマシテ、相當國民
ニ諒解ヲ得ル爲ニ時間ト手數ガ掛カルコト
ハ申ス迄モアリマセヌ、旣ニ數年前是ハ公
ケニ致シテ居リマスモノノ、幸ヒ御審議ヲ
得マシタナラバ、之ヲ實施イタシマスル宣
傳等ノ豫算モ御請求イタシテ居リマス、更
ニ小作官ヲ增スコト、一般國民ヲ指導スル
經費竝ニ司法官ヲ增設シテ、其實施ニ於テ
萬違算ノナイヤウナ經費ヲ、農林省、、內務
省、司法省側ニ於テ、七年度豫算編成ノ時
ニ御協賛ヲ願フコトト、大體致シテ居リマ
スガ故ニ、只今ノ御懸念ハ御尤デアリマス
ガ、御懸念ノナイヤウニ、政府側トシテモ
相當ノ準備ヲ致ス考デアリマス故ニ、左樣
御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=104
-
105・石川三郎
○石川三郞君 私ハ是デ質問ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=105
-
106・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 小林嘉平治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=106
-
107・小林嘉平治
○小林嘉平治君 簡單デアリマスカラ自席
カラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=107
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108・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=108
-
109・小林嘉平治
○小林嘉平治君 此重要法案ガ此會期切迫
ノ折柄提案サレマシテ、愼重審議ヲスル程
ノ時間ノ少イコトヲ非常ニ遺憾ニ存ズル者
デアリマス、就キマシテハ此法案ハ或ハ完
全ニ審議セラルルコトガ如何デアラウカト
心配スルニ付キマシテハ、此演壇ヲ通ジマ
シテ、是非理非ヲ明カニシテ置カヌナラヌ
點ガアルノデアリマス、私共此法案ヲ受取
リマシテ第一ニ感ジマシタコトハ義務ヲ行
ハナイ者ヲ····義務ヲ履行シナイ者ヲ法律
デ以テ保護スルト云フコトニナッテ居リハ
シナイカ、卽チ第十七條ノ規定ガソレデア
ルノデアリマス、殆ド一年分ノ小作料ハ滯
納シテモ、恰モ權利デアル如ク誤解サルル
ヤウナ條文デアルノデアリマス、此點ニ付
キマシテハ幸ニ衆議院ニ於テ修正セラレマ
シタノデ私ハ滿足イタシタノデアリマス、
第二ノ點ハ何デアルカト申シマスト、自作
農創定ト云フコトハ所謂日本ノ國策デアリ
マス、是ハ政府ガ幾度更,テモ、是非國策ト
シテ實行シナケレバナラヌコトデアルノデ
アリマス、而モ今囘ノ法案ニ依リマスト云
フト、此土地ヲ持ッテ居ル者ガ自作ヲスル場
合、又新ニ自作地トシテ買入レル場合ニ、
此理想ヲ實現スルコトニ甚ダ困難ナヤウナ
感ジガ致スノデアリマス、唯第十六條ニ於
キマシテ、斯ウ云フ規定ガアリマス、「小作
地ノ賃貸人ハ賃借人ニ背信ノ行爲ナキ限リ
不當ノ理由ニ因リ惡意ヲ以テ解約ノ申入ヲ
爲シ又ハ更新ヲ拒ムコトヲ得ズ」トアリマ
ス、是ハ反面カラ解釋イタシマスルト、梱
當ノ理由ガアレバ、解約ノ申入ヲ爲シ、又
ハ更新ヲ拒ムコトガ出來ルト、解釋シテモ
宜イト思フノデアリマス、此所謂正當ノ理
由ト云フコトニハ、所謂自作農タラムトス
ル者ガ自分ノ土地ヲ自作セントスル場合、
此場合ニ適用セラルルノデアリマスカ、ド
ウデアリマスカ、此點ヲ明カニ致シテ置キ
タイノデアリマス、實ハ斯ウ云フ問題ヲ本
會議デ御尋ネスルノハ如何カ思ヒマスガ、
此法案ガ假令不成立ニ終リマシテモ、所謂
小作爭議ノ調停ヲスル場合、又裁判ニ於テ
示談ヲスル場合ニハ此法案ガ一ツノ御手
本トナルノデアリマス、今日マデ往々ニシ
デ斯カル事實ガアルノデアリマス、我〓農
村ニ於テハ實際問題トシテ最モ必要ナ點デ
アリマスカラシテ、此機會ニ於テ政府ノ御
辯答アラムコトヲ、切ニ御願申上ゲマス
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=109
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110・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 小林君ノ御尋ニ
簡單ニ御答ヘシマス、先刻申上ゲマシタ通
リ大體此法案ハ歐米ノ立法例ニ捉ハレテ居
ラズ、從來ノ我國ノ農村ノ醇風美俗ヲ中心
トシテ、慣行ヲ主トシテヤッタノデアリマシ
テ、唯之ヲ、權利義務ヲ法文化シタト云フ
ノミデアッテ、大體ハ從來ノ慣行ヲ主トシテ
居リマス、只今御尋ノ自作農ノ間題ハ御同
感デアリマス、故ニ第七條、第八條ニ於キ
マシテハ、地主ガ小作地ヲ賣却セント致シ
マシタ時ニハ先ヅ從來ノ小作人ニ買取ノ
通知ヲ與ヘルト云フヤウナコトモ、主トシ
テ自作農創定ノ趣意ヲ以テ斯樣ナ規定ヲ設
ケタコトガ、其一例デアリマス、又只今御
話ノ十六條ノコトデアリマスガ、從來小作
人ニ貸シテ居ル地面ヲ農家自ラ自作スル爲
ニ小作地ヲ引上ゲヤウト云フ場合ニハ普
通ノ場合デアリマシタナラバ、五箇年トカ
云フ大體ノ期限ガ濟ミマスルト、從來ノ小
作人ニ向ッテ契約ヲ更新スルコトヲ交渉ス
ルノハ、此法ノ立テ方デアリマスガ、矢張
リ自作ヲ主トスル爲ニ、農家ガ從來貸付ケ
テアリマス小作地ヲ自ラ自作スルト云フ場
合ニハ、左樣ナ契約ノ更新ヲ拒絕スルカ、
其他或ル條件ノ下ニ契約ノ解除ヲ申出ルト
云フヤウナ箇條ヲ設ケテアリマスノハ、只
今小林君ノ御尋ノ主トシテ農家ヲ次第々々
ニ自作農ニ變ラシムル趣意カラ出來テ居ル
ノデアリマスガ故ニ、只今ノヤウナ御懸念
ハナカラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ質疑ノ通
告者ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=111
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112・清岡長言
○子爵〓岡長言君 本案ハ重要ナル法案ト
思ヒマスカラ、特別委員ノ數ヲ二十七名ト
シ、其指名ヲ議長ニ一任スルコトノ動議ヲ
提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=112
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113・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=113
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114・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 〓岡子爵ノ本案
ノ特別委員ヲ二十七名トスルト云フ動議ニ
同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=114
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115・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス、委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サ
セマス
〔瀨古書記官朗讀〕
小作法案特別委員
公爵一條實孝君侯爵松平康昌君
伯爵奧平昌恭君子爵立花種忠君
子爵伊東祐弘君子爵片桐貞央君
子爵米津政賢君木場貞長君
新渡戶稻造君男爵平野長祥君
男爵紀俊秀君內田重成君
男爵高木喜寛君男爵松岡均平君
男爵稻田昌植君阪本釤之助君
渡邊千代三郞君坂田貞君
金杉英五郞君小塩八郎右衞門君
高橋源次郞君菅澤重雄君
森廣三郞君澤田喜彥君
小林嘉平治君本間千代吉君
瀨川彌右衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=115
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116・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 町田農林大臣ガ
發言ヲ求メラレマシタ
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=116
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117・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 先日私ガ他ノ委
員會ニ出席イタシマシタ際ニ、三室戶子爵
ヨリ農村問題ニ付キマシテ私ニ御尋ガアッ
タコトヲ速記錄ニ依ッテ拜見イタシマシタ、
御諒解ヲ得マスル爲ニ簡單ニ當時ノ事情ヲ
申上ゲテ置キマス、奧平伯爵ノ農村問題ニ
對スル御質問ガ種々アリマシテ、當時私ハ
農村疲弊ノ原因ヲ、奧平伯爵ノ御質問ノ通
リ農產物ノ價格ノ暴落ヲ以テ、共原因ノ
トスルコトニ同意ヲ致シタノデアリマス、
而シテ何故農產物ノ斯樣ナ暴落ヲ來シタカ
ト云フコトノ原因ヲ、私ハ奧平伯爵ニ御答
スル中ニ、世界的不景氣ノ外ニ農產物ノ生
產高ノ過剩ナルコトヲ一ツノ原因ト考ヘ、
金解禁ニ依リ、爲替相場ノ恢復ニ依ッテ、我
國ノ物價ガ多少其原因ニ依ッテ低落シタ部
分モ一ツノ原因ニ算ヘ、消費節約ガ多少農產
物ノ價格ノ下落ノ一ツノ原因トナルコトヲ
數ヘタノデアリマス、其當時私不用意ノ言
葉ヲ使ヒマシテ、農產物ノ豐穰ト云フ言葉
ヲ使ッタコトヲ速記錄ニ依ノテ見マシタノデ
アリマス、三室戶子爵ハ、我國ハ瑞穗國デ
アッテ五穀豐穰ハ最モ國家國民ノ爲ニ喜バ
シイコトデアルニ拘ラズ、私ノ奧平伯爵ニ
答ヘタ中ニ農產物ノ豐穰モ一ツノ原因ト相
成シテ居ルト云フコトヲ、御咎メノ意味ヲ以
テ御尋ガアリマシテ誠ニ恐縮イタシテ居リ
マス、私ノ言葉ノ、不用意デアリマシテ、
要スルニ農產物ノ需要供給ノ關係カラ、供
給高ノ過剩ダト云フコトヲ一ツノ原因ト致
シタノデアリマス、尙ホ此際御諒解ヲ得テ
置キマスルコトハ、米穀ノ豐穰ト云フコト
ハ誠ニ喜バシイコトデ、常ニ之ヲ祈ッテ居リ
マス、若シ不幸ニシテ斯カル世界的不景氣、
又特殊ノ理由ニ依ッテ日本ノ不景氣ガアリ
マスル此際ニ、萬一デモ米穀ガ不作デアリ
マシタト想像イタシマスルト、農村ノ疲弊
困態ハ今日ノ如キモノデナク、更ニ數層倍
ノ困憊ヲ極メ、之ガ爲ニ人心ノ不安、動搖
ヲ來スコトハ勿論デアリマス、此故ニ私ハ
五穀ノ豐穰ヲ祈リマス、同時ニ時ノ爲政者
ハ此需要供給ノ均衡ヲ得ナイコトニ依ッテ
生ズル農產物ノ暴落ニ對シテハ、他ノ方法
ニ依ッテ之ヲ救濟スル手段ヲ考ヘルコトハ
勿論デアリマス、私共モ應急策或ハ根本施
設等ニ對シマシテ種々考ヘテ居リ、又實行
シツツアル次第ハ、奧平伯爵ニ向ッテ先日御
答シタ通リデアリマス、今日ハ玆ニ私ノ不
用意ナ言葉ヲ使ヒマシタコトガ御質問ノ種
トナッタコトヲ呉、モ遺憾ト致シマシテ、私
ノ申シタ言葉ハ農產物全體ノ需要供給ノ關
係カラ生產ノ過剩ト云フ意味ヲ申シタ心持
デアリマシタコトヲ御諒承ヲ願ヒマス
〔子爵三室戸敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=117
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118・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 去ル十二日私ハ日本
國家ノ大本ヲ基礎ト致シマシテ幾多ノ質問
ヲ各大臣ニ致シタノデアリマス、今日十二
日目デアリマシタガ誠ニ立派ナル御答ヲ得
マシテ滿足ヲ致スノデアリマス、先頃遞信
大臣モ私ノ質問ニ答へラレマシタ、最初ハ
私ノ意ニ反シタ御答デアリマシタガ、日ヲ
置カレマシテ全ク私ノ考ヘ通リ是認サレタ
御答ヲ得マシタ、今日ハ亦誠ニ結構ナ御答
ヲ得タノデアリマスカラ、是ハ內閣ノ爲ニ
非常ニ喜ブノデアリマス、喜ブニ付キマシ
テ尙ホ此コトヲヨリ多ク强調イタシテ置キ
タイト思ヒマス、昨日一昨日頃ノ新聞ヲ見
マスルト、去ル十九日·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=118
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119・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三室戸子爵、再
度ノ御質疑デナケレバ、ドウモ發言ヲ許ス
ノハ前例ニ無クテ宜クナイコトト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=119
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120・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 ドウ云フ程度デアレ
バ宜シイカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=120
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121・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 質疑ノミニ願ヒ
マス質疑ヲ爲サルナラバ幾ラオ長クテモ
構ヒマセヌ、質疑デナケレバ發言ハ許サレ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=121
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122・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 畏マリマシタ、今申
上ゲマシタコトハ、議長ノ御注意デアリマ
スカラ是ハ打切リマシテ、農事ノ大切ナル
コトハ私共ガ申ス迄モナイノデアリマス
ガ、先頃ノ御說明デハ稍、私ガ疑ヒヲ懷クヤこ
ウナコトニナリマシタノデアリマスルガ故
ニ、私ハ甚ダ多クノ質問ヲ大臣諸公ニ致シテ
誠ニ失禮デアルト考ヘマシタノデアリマス
ガ、只今ノ御答辯ハ誠ニ結構デアル、誠ニ
結構デアリマスルガ故ニ尙ホ一層此コトヲ
强調シ、今日ハ農村ニ關スル國策ヲ樹立ス
ルノ建議案サヘ本議場ニ於テ可決セラレタ
ヤウナ譯デアリマスガ故ニ、只今ノ御答辯
ノ通リ、其方面ニ向ッテモ力ヲ盡サレルコト
ヲ確ク信ジマシテ、茲ニ喜ビノ餘リ此言ヲ
再度呈シテ置ク次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=122
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123・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今ノハ全然再
質疑デナイト議長ハ認メマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=123
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124・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十七、關
稅定率法中改正法律案、衆第三號、衆議院
提出、第十八、關稅定率法中改正法律案、
衆第四號、衆議院提出、第一讀會
關稅定率法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和六年三月二十日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第十八號ヲ左ノ如ク改ム
一八高梁每百斤〇·五〇
第十九號中「〇·三〇」ヲ「一·五〇」ニ改ム
第二十二號第四項甲中「一·八〇」ヲ「三·
六〇」ニ、乙中「三割」ヲ「六割」ニ改ム
關稅定率法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和六年三月二十日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第五十三號中「三六·九〇」ヲ「五五·〇〇」
三四八
第五十四號中「三九·三〇」ヲ「五五·〇〇」
ご依頼
第五十五號第一項中「一三·四〇」ヲ「五
五·〇〇」ニ、第二項中「八·三〇」ヲ「一一〇·
〇〇」ニ改ム
第二百十七號ヲ左ノ如ク改ム
二一七カゼイン每百斤二二·五〇発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=124
-
125・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 兩案トモ先ニ指
名イタシマシタ、政府提出關稅定率法中改
正法律案ノ特別委員ニ付託イタシマス、明
二十四日ハ午前十時ヨリ開會イタシマス、
議事日程ハ決定次第御通知ニ及ビマス、本
日ハ是ニテ散會イタシマス
午後三時三十一分散會
貴族院議事速記錄第二十六號正誤
頁段行誤正
三二九四二石渡君坂本男
同同三四答辯當面
貴族院議事速記錄第十四號正誤
頁段行誤正
五〇三三三二食物植物
貴族院議事速記錄第三十五號正誤
頁段行誤正
五四四四二-一二ノコトガヲスル
アル
同同一二或ハ思想或ハ思想ハ
ヲ思想ヲ
貴族院議事速記錄第三十六號正誤
頁段行誤正
五九六頁四段一五行ノ次ノ
ノ誤発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03719310323&spkNum=125
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