1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
寄生蟲病豫防法案(政府提出)
明治四十年法律第十一號中改正法律案(癩豫防に關する件)(政府提出貴族院送付)
—————————————————————
會議
昭和六年二月二十六日(木曜日)午前十時三十五分開議
出席委員左の如し
委員長 中馬興丸君
理事 中崎俊秀君
理事 松山常次郎君
中島琢之君 永田良吉君
野方次郎君
出席政府委員左の如し
内務政務次官 齋藤隆夫君
内務省衞生局長 赤木朝治君
本日の會議に上りたる議案左の如し
寄生蟲病豫防法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=0
-
001・中馬興丸
○中馬委員長 ソレデハ只今カラ開會
致シマス、此委員會ハ寄生蟲病豫防法
案ト、モウ一ツハ癩豫防法中改正法律
案ト二ツデアリマスガ、先ヅ寄生蟲病
豫防法案カラ先ニ致シマス、之ニ付テ
政府委員ノ御說明ヲモウ一度此機會ニ
於テ願フコトニ致シマス、政府委員齋
藤隆夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=1
-
002・齋藤隆夫
○齋藤政府委員 大體ノ提案理由ハ先
達テ本會議場ニ於テ說明致シテ置キマ
シタガ、更ニ進ンデ少シク詳細ニ亙ッテ
一應說明ヲ附加ヘテ置キタイト存ジマ
ス、寄生蟲病ハ我ガ國民ノ間ニ於キマ
シテ、廣ク蔓延シテ居リマス、殊ニ蛔蟲
ノ如キハ農村民ノ七、八割ノ者ガ、之ニ
感染シテ居ルト云フ次第デアリマス
都會ノ住民ニモ尠カラズ之ヲ見ルノデ
アリマス、又十二指腸蟲ハ主トシテ農
村民ニ感染致シマスガ、之ニ依ル危害
ハ頗ル重大ナモノデアルノデアリマ
ス、次ニ日本住血吸蟲、肝臟「ヂストマㄴ
ハ地方病デゴザイマスガ、其流行地域
ニ於ケル慘害ハ顯著ナルモノガアルノ
デアリマス、卽チ寄生蟲病ハ我國國民
保健上ノ一大障碍デアルノデアリマ
ス、ソレ故ニ是マデ衞生事業調査及ビ
奬勵費中ヨリ道府縣其他公共團體ニ於
キマシテ、寄生蟲ノ調査竝ニ驅除ニ關
シテ支出セル經費ニ對シテ相當ノ補助
金ヲ支出シテ、是ガ調査驅除ノ奬勵ヲ
爲シ、又別ニ山梨縣下ノ一市六十三箇
町村ニ蔓延セル日本住血吸蟲病ニ對シ
マシテ、是ガ豫防撲滅ニ關シテ同費目
中ヨリ特別ノ補助金ヲ支出シ、以テ豫
防撲滅ヲ期シツヽアルノデアリマス
ガ、我國ノ如ク糞便ヲ肥料ニ使用シテ
裸手跣足ニテ農耕ニ從事シ、或ハ蔬菜
及ビ魚介ノ生食ヲ好ムノ風習アル所ニ
於キマシテハ、寄生蟲ノ撲滅ガ中々其
效ヲ奏シナイノデアリマス、殊ニ現在
ニ於キマシテハ本病豫防ニ關シテ法律
ガゴザイマセヌ爲ニ、本病豫防上遺憾
ノ點ガ多々アルノデアリマス、ソレ故
ニ寄生蟲豫防法ヲ新ニ制定シ、寄生蟲
豫防事業ニ法律上ノ根據ヲ與ヘ、以テ
本病蔓延ノ根幹ヲ絕チ、寄生蟲病豫防
ノ徹底ヲ期スル必要アリト認メマシ
テ、之ニ關スル法案ヲ今囘提出致シタ
次第デアルノデアリマス
ソコデ本案ノ要旨ヲ說明致シマス
ト、御覽下サイマス通リニ、第一條ニハ
本法ニ於テ豫防スベキ寄生蟲病ヲ蛔蟲
病、十二指腸蟲病、住血吸蟲病、及ビ肝
臓「ヂストマ」病ノ四ツニ限定致シタノ
デアリマス、此中デ蛔蟲病及ビ十二指
腸蟲病ハ本邦ニ於ケル寄生蟲病ノ主タ
ルモノデアリマシテ、兩者共ニ全國ニ
亙ッテ蔓延シ、國民ノ大部分ヲ侵シテ居
リマスガ故ニ、現ニ何レノ地方廳ニ於
キマシテモ、其豫防竝ニ治療ニ努力シ
テ居ルノデアリマス、又住血吸蟲病及
ビ肝臟「ヂストマ」病ハ所謂地方病ニ屬
シテ居ルノデアリマスガ、感染者ニ對
スル健康上ノ障害ハ頗ル激甚デアリマ
ス、且ツ其治療ハ殆ド不可能デアルノ
デアリマス、併ナガラ幸ニモ之ヲ豫防
スルコトハ困難デナイノデアリマスカ
ラ、其流行スル地方ニ於キマシテハ是
ガ豫防ニ苦心努力シテ居ル次第デアル
ノデアリマス、以上ノ理由ニ依リマシ
テ本法ニ依ッテ處置スベキ寄生蟲ヲ、原
則トシテハ只今申シマシタ四ツノモノ
ニ限定シテ、是レ以外ノ寄生蟲病ニシ
テ豫防スルノ必要ヲ生ズルコトガアリ
マシタ場合ニハ、主務大臣ノ規定ニ依
リマシテ本法ノ適用ヲ爲シ得ル途ヲ開
イテ置クノデアリマス、第二條ニハ地
方長官ガ必要ニ應ジテ健康診斷又ハ糞
便檢査ヲ行ヒ得ルヤウニ致シタノデア
リマス、本病ノ根源ハ人體內ノ寄生蟲
ニ存シマスルノデ、寄生蟲感染者ノ所
在ト其感染程度ヲ詳カニシナケレバ、
是ガ豫防ハ全キヲ期シ難イノデアリマ
スカラ、地方長官ニ於キマシテ必要ニ
應ジテ健康診斷又ハ糞便檢査ヲ爲シ得
ルヤウニシテ、其費用ヲ北海道地方費
又ハ府縣ノ負擔ト致シタノデアリマ
ス、第三條ニ於キマシテハ糞便其他ノ
物件ノ處置ニ關スル命令又ハ處分ノ規
定ヲ置イタノデアリマス、寄生蟲ヲ死
滅セシムルノハ本病ヲ豫防スル根幹デ
アリマスノデ、地方長官ハ糞便中ニ存
スル寄生蟲卵ヲ死滅セシムル爲ニ糞便
ノ處置ニ必要ナル命令ヲ發シ、又ハ處
分ヲ爲シ得ルコトヽ致シタノデアリマ
ス、糞便以外ノ物件デ本病傳播ノ媒介
トナルモノニ向ヒマシテモ亦之ニ適當
ナル處置ヲ加ヘ、寄生蟲若クハ其幼蟲
ノ人體ヘ侵入スルノヲ防止スルコトガ
必要デアリマスノデ、是等ノ處置ニ對
シマシテモ亦糞便ノ處置ト同樣ニ命令
處分ヲ爲シ得ルコトト致シタノデアリ
Ⅳマ、第四條ニハ市町村ヲシテ豫防設
備ヲ爲サシムルコトニ致シマシタ、卽
チ本病ノ豫防ハ一人ノ努力ニ依ッテ其
效果ヲ全ウスベキモノデハナク、一〓
一村ノ全員ガ協力一致シテ豫防驅除ニ
努メルコトニ依リマシテ、其豫防ノ徹
底ヲ期シ得ルモノデアリマスノデ、市
町村ハ地方長官ノ指示ニ從ヒ諸般ノ豫
防施設ヲ爲スベキ義務ヲ負フコトトシ
タノデアリマス、第五條ニハ市町村ニ
對スル道府縣ノ補助ノ規定ヲ置イタノ
デアリマス、卽チ北海道地方費又ハ府
縣ヲシテ前條ノ施設其他寄生蟲病豫防
ノ爲ニ費用ノ支出ヲ爲ス市町村ニ對シ
テ補助ヲ爲サシメントシ、其步合及ビ
手續ヲ命令ニ委任致シタノデアリマ
ス、第六條ニハ第三條ニ依ル地方長官
ノ命令又ハ處分ニ依ッテ豫防ニ關スル
處置ヲ爲シタル者ニ對シ、道府縣ガ補
助ヲ爲シ得ルノ規定ヲ置イタノデアリ
マス、豫防ニ關スル處置ハ相當ノ經費
ヲ要スルモノデアリマスルカラ、第三
條ノ地方長官ノ命令又ハ處分ニ依ッテ
之ヲ爲シマシタ場合ニハ、其費用ノ補
助ヲ爲シ得ルコトヲ明カニ致シマシ
タ、旣ニ道府縣ニ於キマシテハ以前ヨ
リ改良便所糞尿溜ヲ設置スル字組合又
ハ個人ニ對シ、其費用ノ一部ヲ補助シテ居
ルモノガアルノデアリマス、本法施行後ハ
市町村ノ施設ニ對スル補助ハ、前條ニ
於キマシテ之ヲ爲シ得ベキ組合又ハ個
人ノ爲シタル豫防ノ處置アルモノハ本
條ニ該當スルモノトシテ、之ニ補助ヲ
爲シ得ルモノトシタノデアリマス、第
七條ニハ國庫ノ道府縣ニ對スル補助ノ
規定ヲ置キマシテ、本病豫防ノ爲ニ道
府縣ノ費シマシタ支出額ノ六分ノ一ヲ
補助スルコトニ致シマシタ、是ハ他ノ
豫防法ニ傚フタノデアリマス、第八條ニ
ハ罰則規定ヲ置キマシテ、第三條ノ規
定ニ依ル地方長官ノ命令ニ違背シタ者
ニ對シテ、「トラホーム」豫防法ニ於ケ
ル罰則ト同ジク、五十圓以下ノ罰金又
ハ科料ニ處スルコトニ定メタノデアリ
じゃ、尙ホ附則ニ本法施行ノ期日ヲ各
條ニ依ッテ之ヲ定ムルコトニ致シマシ
タノハ、第七條ノ國庫補助ハ現時ノ國
家財政上ノ關係ハ、當分ノ中現在ノ豫
算ノ範圍ニ於テ補助ヲ爲スノ外ハナイ
ノデ、第七條ノ規定ノ施行ヲ適當ノ時
期ニ讓ッタカラデアリマス、以上ノ如ク
本邦國民ノ保健上緊急施行ノ要アル法
案デゴザイマスカラ、御審議ノ上ドウ
カ御賛成アランコトヲ切ニ御願致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=2
-
003・中馬興丸
○中馬委員長 質問ヲ許シマス、中島
琢之君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=3
-
004・中島琢之
○中島委員 御尋致シマス、第一條ニ
一般的ノ寄生蟲病トシテ蛔蟲病、十二
指腸蟲病ヲ限定シ、地方病トシテ住血
吸蟲病、肝臟「ヂストマ」病、是ハ宜イノ
デスガ、ナゼ蛔蟲病ト十二指腸蟲病ダ
ケヲ御規定ニナッタデアラウカ、ソレカ
ラ主務大臣ノ指定スル寄生蟲病ト云フ
ノデアリマスガ、ドウ云フ場合ニ主務
大臣ガ御指定ニナルカ、或地方ニ於テ
地方別ニ、此地方ニハ此寄生蟲ガアル
ト云フコトヲ指定シタ場合ト云フ御意
思デアルカ、ソレカラ第五條ノ補助ノ
規定デアリマスガ、第七條ニ國庫ノ補
助ハ六分ノ一ト規定シテ居リマスガ、
此第五條ニ於テハ補助ヲ爲スベシトア
ッテ、如何程ノ補助ヲスルカハ一向示シ
テナイ、是ハ何カ標準ガアルコトデア
ラウカドウカ、ソレカラ寄生蟲病ノ豫
防ニ關スル根本政策ニ付テ當局ノ御所
見ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=4
-
005・赤木朝治
○赤木政府委員 第一條ニ於キマシテ
本法ニ於テ寄生蟲病ト稱スルモノヽ定
義ヲ揭ゲマシテ、蛔蟲病、十二指腸蟲
病、住血吸蟲病、肝臟「チストマ」病ノ四
者ヲ限定致シマシタノハ、此四ツノモ
ノハ他ノ寄生蟲ニ比較致シマシテ、人
體ニ對スル危險ノ程度ガ特ニ多イノデ
アリマス、之ニ感染シテ居リマスルモ
ノモ其數ハ非常ニ多イ、而モ之ニ對ス
ル豫防方法ガ既ニ明カデアリマスルノ
デ、豫防スル上ニ於テモ容易デアル、斯
樣ナ理由ニ依リマシテ此四ツノモノヲ
指定シマシテ、此法ヲ施行致シタイト
云フ趣旨デアルノデアリマス、但シ此
四ツニ一應限定致シテ居リマスルケレ
ドモ、今後或ハ他ノ寄生蟲病ニシテ、之
ヲ法律ニ依ッテ豫防スルノ必要ガアル
モノガ、或ハ地方的ニ、或ハ種類ニ依リ
マシテ起リ得ルト存ジマスルノデ、左
樣ナ場合ニハ更ニ此法ヲ適用スルヤウ
ニ主務大臣ガ其寄生蟲病ヲ指定スル、
斯ウ云フ手續ヲ執リタイト存ジテ居ル
ノデアリマス、差當リ如何ナルモノヲ
指定スルカト云フト、現在ノ所ハ指定
スル必要モナイカト存ジテ居ルノデア
リマスルガ、或ハ將來例ヘバ一例ヲ申
シマスルナラバ肺臟「ヂストマ」ト云フ
ヤウナモノモ、之ヲ指定スルノ必要ガ
起ラウカト存ジテ居ルノデアリマス、
只今ノ所ソレ程ノ必要ガナイカト存ジ
テ居リマス
ソレカラ次ハ第五條ノ補助ノ率ニ付
テノコトデアリマスルガ、是ハ命令ノ
定ムル所ニ依リト云フコトニナッテ居
リマシテ、命令デ以テ此補助率ヲ規定
スル積リデアリマス、是ハ他ノ此種ノ
豫防法ニモ其實例ガアルノデアリマシ
テ、他ノ法律ノ例ニ依リマスルト、大抵
治療費ニ對スル補助ハ支出額ノ四分ノ
豫防ニ關スル費用ハ支出額ノ六分
ノ一ト云フコトニナッテ居リマスルノ
デ、大體其例ニ依リマシテ命令ヲ以テ
之ヲ定ムル積リデ居リマス
ソレカラ次ニ寄生蟲病ノ豫防ニ關ス
ル根本策ハドウデアルカト斯ウ云フ御
質問デゴザイマシタト存ジマスガ、寄生
蟲病ノ豫防ノ根幹ヲ爲スモノハ、何ト
申シマシテモ糞便ノ處置デアラウト存
ズルノデアリマス、糞便ノ處置ガ能ク
出來マスト云フコトハ、是ハ啻ニ寄生
蟲豫防バカリデナク、其他ノ所謂消化
器傳染病ノ豫防ニモナルコトデアルノ
デアリマスルガ故ニ、糞便ノ處置ト云
フコトガ一番中心トナルコトデアラウ
ト存ズルノデアリマス、デ此法ヲ實行
致シマシテ糞便ノ中ニアリマスル所ノ
寄生蟲卵ノ死滅ヲ圖ル、斯ウ云フコト
ガ一番大切カト存ジテ居ルノデアリマ
ス、ソレデ又寄生蟲卵ノ附著致シテ居
リマスル物件ニ對シテ十分注意致シマ
シテ、左樣ナ物件ニ依ッテ寄生蟲ノ傳播
スルト云フコトヲ防止スルト云フコト
モ是亦必要ナ問題デアルノデアリマ
ス、是モ種類ニ依リマシテ、例ヘバ肝臟
ㄱヂストマ」デアリマストカ、住血吸蟲
病デアリマストカ云フモノハ、糞便ノ
始末ニ依リマシテモ其根本ヲ防止スル
コトガ出來ルノデアリマスルガ、又
面中間宿主デアリマスル所ノ媒介物ヲ
根絕スルコトガ出來マスレバ、之ニ依
ツテモ豫防スルコトガ出來ルト存ジテ
居ルノデアリマス、根本ト致シマシテ
ハ或ハ下水ノ完成デアリマストカ、或
ハ便所ノ改良デアルトカ云フコトニ依
ッテ、糞便ノ始末ヲ完全ニスルト云フコ
トガ根本デアリマスルガ、之ニ相當多
額ノ經費ヲ要スル爲メ、今直チニ之ノ
實現ヲ期スルコトハ容易デナイト存ズ
ルノデアリマス、併シ漸次是ハ進メテ
行カナケレバナラヌト存ジテ居ルノデ
アリマス、差當リト致シテハ色々此病
氣ノ傳染ノ媒介トナルモノニ對シテ十
分注意ヲ致シ、之ヲ防止スルト共ニ、又
國民一般ノ寄生蟲ト云フコトニ對シマ
スル知識ト申シマスルカ、自覺ト申シ
マスルカ、ソレヲ十分涵養致シマシテ、
色々ナ施設バカリデハヤハリ十分效果
ヲ奏スルコトガ出來マセヌカラ、國民
自ラガ其危險ナコトヲ知リ、サウシテ
之ニ對シテニ戒ヲ加ヘルト云フコト
ガ、又一番大切ナコトデアラウカト存
ジテ居ルノデアリマス、ソレ等ノ點ニ
對シテモ十分努力致シタイト考ヘテ居
ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=5
-
006・中島琢之
○中島委員 寄生蟲卵ノ處置卽チ糞便
ヲ適當ニ處置スルト云フコトハ、最モ
大切ナコトデアリマスルガ、內務省ニ
於テハ此處ニ御列席ノ高野君ノ御發明
ニナッタ改良便所、斯ウ云フモノヲドノ
位ノ程度マデ各府縣ニオヤラセニナル
ト云フ御意思ガアルカ、又今局長ノ仰
セニナッタ如ク國民ノ衞生思想ヲ發達
セシメナケレバ到底豫防ガ出來ナイ、
殊ニ身體ニ侵入シテ來ルト云フコトヲ
防グ上ニ於テハ最モ大切デアル、支那
人ノ如キ便池ノ改良モナケレバ又殆
ド便池モナイト云フヤウナ所デモ、比
較的寄生蟲病ノ少イト云フコトハ何ニ
因ルカト云フト、生物ヲ食ベナイト云
フコトガ一ツノ原因デアル、アノ不潔
ナル支那人ニハ寄生蟲病ガ割合ニ少イ
ノデアリマス、サウ云フ風デアリマス
カラ、勿論國民ノ衞生思想ノ發達モ必
要デアリマスガ、政府トシテモ斯ウ云
フ點ニ色々ノ方法ニ依ッテ御注意ヲ願
ヒタイ、例ヘバ私ナドノ非常ニ感ジマ
スコトハ、生水療法ト云フヤウナモノ
ヲ曾テ唱ヘラレタコトガアリマス、又
可ナリ識者ノ中ニモ唱ヘラレテ居ル
ソレハ生水ガ善イ場合モアリマセウ
ガ、生水療法ト云フモノハ良イ水ヲ得
ルト云フ場合ニ於テノミ善イノヂアツ
テ、或ル地方ノ如ク肝臟「ヂストマ」ト
云フヤウナ病氣ノ多イ地方ニ於テハ、
生水ヲ飮ムト云フコトハ肝臟「ヂスト
マ」ニ罹ル最大原因ヲ爲シテ居ルコト
ハ爭ハレナイ事實デアル、生水ガ善イ
ト言ッテモ汚レタル田ノ生水ヤ、井戶
ノ穢イ不完全ナ生水ヲドン〓〓飮ムト
云フコトハ、餘程何カノ方法ヲ以テ御
注意ニナラヌト、寄生蟲病其ノ他ノ傳
染病ノ豫防ニ根本的ノ方策ヲ樹テ難イ
ト思フノデアリマス
殊ニ近來醫業類似ノ醫療行爲、卽チ
療術行爲トデモ申シマスカ、ソンナモ
ノガ非常ニ多イ、此處ニ御列席ノ高野
六郞博士ガ經濟往來ニ御書キニナッテ
居ル醫業類似行爲ト云フモノデモ次ノ
如キモノガアル、「テルモ」療法、心靈療
法、指壓療法、紫外光線療法、温熱療法、
電氣療法、血液循環療法、太陽光線療
法、若返法、氣合術、「ラヂウム」療法、手
ノヒラ療法、枇杷ノ葉療法、健體術、輕
治療法、指頭呪術、精神療法、西式强健
術、催眠術、酸素療法、斯ウ云フ風ナ色
色ナ治療法ガアル、私等ノ方デハ居合
術トカ、靈子術トカ、太靈道トカ云フモ
ノガ大變行ハレ、殊ニ血液循環療法ト
云フヤウナモノモ亦盛ニ行ハレテ居
ル、ソレハ精神慰安ノ上カラ言フト一
向差支ナイト思ヒマスガ、指壓療法、卽
チ指デ抑ヘテ療治ヲスルモノノ如キ
ハ、咯血ヲスル患者ガアッタヤウナ場合
ニ、指デ患部ヲ抑ヘル爲ニ、アチラヘ向
ケコチラヘ向ケシテ居ルモノデスカ
ラ、折角醫師ガ安靜ヲ命ジテ、サウシテ
氷囊ヲ付ケテ居ルモノガ是等ノ療術ヲ
受ケル爲メ安靜ヲ缺キ再ビ咯血ヲ起サ
シメテ、サウシテ死ニ至ラシメルト斯
ウ云フヤウナコトモアル、血液循環療
法ノ如キハ、或ル癌ノ患者ガアッテ、外
科醫者ニ見テ貰ッタ所ガ、今手術ヲスレ
バ根本的ナ手術ガ出來ルト云フコトヲ
言ッタ、所ガ血液循環療法ヲヤル人ガ來
テ、今血液循環療法ヲヤレバ此癌ハ散
ル、斯ウ言ヒマシタ、素人デアリマスカ
ラ、其方ニ氣ガ變ヲテ、二三箇月血液循
環療法ヲ受ケタノデアリマス、サウ致
シマスル中ニ病狀漸次惡ク相成リマシ
テ遂ニ手術ノ期ヲ失ヒ、倒レテシマッ
タ、ソレカラ太靈道トカ靈子術トカ云
フモノガアリマシテ、彼等ノ言フ所デ
ハ十二指腸ノ蟲デモ此法ニ依ッテ驅除
出來ルト申スノデアリマス、斯ウ云フ
工合デ其患者ガ施術ヲ受ケルト蟲ハ取
レタト申スノデアリマス、然シ實際ニ
寄生蟲ノ驅除ガ出來ル筈ハアリマセ
ヌ、次第ニ貧血ニ陷フテ、心臟ヲ傷メテ
取返シノ付カナイコトニナッタ、斯ウ云
フコトガ非常ニ多イ、斯ウ云フヤウナ
醫業類似ノ行爲ニ依リマシテ、國民ノ
保健衞生上ニ害ヲ及ボスコトガ非常ニ
多イノデアリマス、政府ハ斯ウ云フヤ
ウナ醫業類似ノ療者ニ對シテ徹底的ニ
御取締ニナル御意思ハナイカ、警視廳
ニ於テハ療術行爲ト云フヤウナコトヲ
稍〓認メタガ如キ取締令ヲ昨年出シテ
居リマスガ、實際ニ光ヲ用ヒ、或ハ熱ヲ
用ヒルト云フコトハ一種ノ醫療行爲デ
アリマス、光ヲ用ヒルト云フニハ色々
ナ醫學上ノ病理ガ分ラナケレバ用ユベ
カラザルモノガアル、サウ云フモノヲ
取締規則ニ依ッテ或ル程度マデ認メタ
カノ如キ警視廳ガ態度ヲ執ルト云フヤ
ウナコトハ、私ハドウカト思フノデア
リマス、政府ハ斯ウ云フ風ナ醫業類似
ノ行爲ニ對シテ、國民保健衞生ノ改良
發達ノ見地カラ致シマシテ、十分ニ徹
底的ニ御取締ニナル所ノ御意思ハオア
リニナラヌカドウカ、御伺ヲ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=6
-
007・赤木朝治
○赤木政府委員 改良便所ノコトニ付
キマシテハ是ハ成ベクソレノ普及ス
ルコトヲ希望致シテ居リマシテ、慫慂
ヲ加ヘツヽアルノデアリマス、理想ト
致シマシテハ全部ノ便所ガ左樣ニ改良
サレマシテ、黴菌ナリ若クハ寄生蟲卵
ガ死滅スルコトヲ非常ニ望ンデ居ルノ
デアリマスガ、之ニハ相當ノ經費ヲ要
シマスルノデ、先ヅ出來ルダケ之ノ普
及センコトヲ希望シテ奬勵ヲ致シテ居
ルト云フ程度ニ止メテ居ルノデアリマ
ス尤モ現在ニ於キマシテ各府縣ニ於
テ相當ニ是ハ行ハレツヽアルヤウデア
リマス、只今私共ノ手許ニアリマス材
料ニ依リマシテモ、全國デ既設ノ分及
ピ建設申ノモノヲ合セマシテ約五千三
百バカリノ改良便所ガ出來テ居リ、又
出來ツヽアルヤウデアリマス、ソレデ
段々普及シツヽアルヤウデアリマス
ガ、之ヲ全部ニ徹底セシムルト云フコ
トハ是ハ容易ナラヌコトデハナイカト
思フノデアリマス
ソレカラ醫業類似行爲ノ取締ヲドウ
スルカト云フ御質疑ニ對シマシテハ
是ハ當局ニ於テモ如何ニスベキカト云
フコトニ付テ、目下愼重〓究致シテ居
ルノデアリマス、警視廳及ビ神奈川縣
等ニ於テハ、差當リ取締令ヲ出シテ、弊
害ノアルモノニ付テノ取締ヲ致シテ居
ルヤウデアリマスガマダ其取締ハホ
ンノ始メタバカリデアリマシテ、其取
締方法等ニ付テハ十分〓究ノ餘地ガア
ラウト存ジテ居リマス、政府トシテ全
國的ニ如何ニ之ヲスルカト云フコト
ハ、目下〓究中デアリマス、只今ノ所デ
ハ之ヲ全部禁止シテシマフトカ、或ル
程度マデ認メルト云フヤウナコトニ付
テノ意見ハ決定シテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=7
-
008・中島琢之
○中島委員 醫業類似ノ行爲ノ取締ニ
付テハ可ナリ長イ間ノ內務省ノ懸案デ
モアルト思ヒマスガ、成タケ至急ニ一
ツ醫業トハ如何ナルモノデアルカト云
フコトヲ卽チ醫業ノ徹定的ノ定義ヲ御
定メヲ願ヒタイ、今ヤッテ居ル醫業類似
行爲ト云フモノハ、殆ド醫者同樣ノ事ヲ
ヤッテ居ル場合ガ多イ、醫師法第十一條
ニモ「免許ヲ受ケズシテ醫業ヲ爲シタ
ル者、停止中醫業ヲ爲シタル者、又ハ第
五條、第六條、第七條若クハ第十三條第
三項ノ但書ニ違背シタル者ハ五百圓以
下ノ罰金又ハ十圓以上ノ科料ニ處ス」
斯ウアリマスガ、醫業ト云フモノヽ定
義ガハッキリ致シマセヌト、ドウモ之ヲ
罰スルト云フコトモ出來ヌト思ヒマ
ス、今ノ醫業類似行爲業者ノヤッテ居ル
コトハ、殆ド醫者ト同樣ナ事ヲヤッテ居
ルト思ヒマスカラ、ドウカ此點ニ付テ
十分ニ御〓究下サイマシテ、至急ニ斯
ウ云フモノヽ取締法ヲ御制定アランコ
トヲ希望致シテ置キマス
尙ホ特ニ齋藤政務次官ニ御尋致シマ
スガ、政府ハ明治三十九年法律第四十
七號、卽チ現行醫師法ヲ根本カラ御改
正ニ相成ル御意思ハナイノデアルカド
ウカ、現行醫師法ハ二十四年前ノ制定
ニ係リ、此間行政的醫事衞生ノ進步發
達ト云フモノハ洵ニ著シイモノガアル
ノデアリマス、隨テ取締上現行法ハ目
下ノ事情ニ卽シナイト云フコトハ明カ
ナ事實デアリマス、就中本法ノ規定ト
云フモノガ醫業ニ從事シテ居ル者全般
ニ及ンデ居マス、卽チ帝國大學ノ〓授
デアルトカ、或ハ官吏デアルトカ、公吏
デアルトカ、陸海軍ノ軍人デアルトカ
云フモノハ全ク除外サレテ居ル、斯ウ
云フ風デアルカラ醫業者ヲ取締ル上ニ
付テモ、又衞生行政ヲ統一スル上ニ於
テモ非常ニ缺陷ガアル、其爲ニ近來ニ
於キマシテハ此缺陷ニ乘ジテ業務上ノ
惑亂ヲ企テル者ガアル、從テ醫業者ノ
統一ガ付カナイト云フヤウナ事ガ漸次
ヒドクナッテ居ル、尙ホ國家ガ衞生上ノ
大キナ社會施設トシテヤッテ居ラル
所ノ健康保險醫療給付事業ノ如キモ、
今デハ統一ガ付キ難イヤウナ狀況ニナ
ッテ居リマス、日本醫師會ニ於テモ數年
來醫師法ノ根本的改正ヲ要望シテ居ル
譯デアリマスガ、此際政府ハ現行醫師
法ヲ根本ヨリ御改正ニナル御意思ハナ
イカドウカ、此點ヲ御伺致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=8
-
009・齋藤隆夫
○齋藤政府委員 御說ノ如ク醫師法ガ
制定セラレテカラ大分年月モ經テ居リ
マス、ノミナラズ、醫師方面カラモ此改
正ヲ要求シテ居ラレルコトハ能ク存ジ
テ居リマス、ソレ故ニ政府ニ於テモ醫
師法ノ改正ニ付テハ相當ニ〓究シテ居
ルノデアリマスガ、併シ今日俄ニ之ヲ
根本的ニ改正スルカセヌカト云フコト
ニ付テハ、マダ結論ニ達シテ居ラナイ
ノデアリマス、併シ十分ニ〓究ヲ致シ
テ居リマスノミナラズ、色々改正シマ
スルニ付キマシテハ問題ガアリマセ
ウ、ドウカ御〓究ノ結果、醫師法ノドウ
云フ點ニ付テ改正スル必要ガアルト云
フヤウナコトニ付テ、具體的ニ御〓究
ノ結果ヲ御〓へ下サイマシタナラバ、
非常ナ良イ參考ニナラウト思ヒマス、
要スルニ政府ノ方ニ於キマシテハ、此
點ニ付キマシテハ年來考ヘテ居リマス
ルカラ、或ハ近キ將來ニ於キマシテ改
正案ヲ出スコトガアルカモ知レマセヌ
ガマダ今日ニ於キマシテハ其處マデ
達シテ居リマセヌカラ、左樣ニ御承知
ヲ願ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=9
-
010・永田良吉
○永田委員 本案ノ趣旨ハ、勿論是ハ
國民保健ノ上ニ結構ナコトデアリマス
ルガ、之ヲ實施スル上ニ於キマシテハ
非常ナル困難ト、經費ガ伴フモノト思
フノデアリマス、私ハ此點ニ付キマシ
テ當局ノ御意思ヲ二三御尋シタイト思
フノデアリマス、第三條ノ寄生蟲ノ豫
防ヲ講ズル方法デアリマスガ、此點ニ
付キマシテ先刻當局ノ方カラ改良便所
ノ話モアリマシタ、是ハ最モ必要ナコ
トヽ思ヒマスケレドモ、偖テ之ヲ日本
全國ニ實施スルニ當リマシテハ、相當
多額ノ經費ヲ要スルモノト思フノデア
リマス、假ニ一戶平均少ク見テ十圓ト
見テモ、日本全國ニ取リマシテハ尠ク
トモ一億圓以上ノ多額ノ金ヲ要スルモ
ノト思ヒマス、尙ホ私ノ地方、鹿兒島縣
地方ナドニ於キマシテハ、蛔蟲ノ驅除
ニ當リマシテハ、俗ニ賣藥ノ「セメン
圓」ヲ使ッテ居ルノデアリマス、アレヲ子
供ヤ家族ガ一囘宛使ッテモ尠クトモ十
錢ヤ二十錢ハ要スル、先ヅ一年一囘ト
見テ、一囘ノ料金十錢トシテモ、尠クト
モ九百萬圓カラ一千萬圓近クノ經費ヲ
要スル、然ルニ之ヲ徹底的ニ驅除スル
ニハ一囘デハイケナイノデアリマス、
一年ニ數囘モ使ヒマスト、數千萬圓ノ
經費ガ伴フノデアリマス、以上ノ見地
カラ致シマシテ、此法案ヲ實施スル上ニ
於キマシテハ非常ナ經費ガ伴フコトハ
豫想セラレルノデアリマス、而シテ從
來政府ガヤッテ居ラレタ「トラホーム」
ノ豫防法ノ如キ、又昨年モ汚物ノ處分
法案ガ出マシタガ、之ニ付キマシテモ
隨分貴族院ノ方面デ議論モアッタヤウ
デアリマスガ、私ハ從來町村ニ於キマ
シテ體驗ノ上カラ、先刻議員ノ方モ御
話ガアリマシタガ、補助ノ點ニ付キマ
シテ、如何ニモ斯ウ云フ少額ナコトデ
ハ實際徹底的ノ效果ハ擧グルニ頗ル困
難ナモノト思ヒマス、此點カラ六分ノ
一ノ補助ガアルヤウニ此處ニ見エテ居
リマスケレドモ、尙又縣費ノ補助等ニ
付キマシテハ、參考書ニ三分ノ一トノ
例モ見エテ居リマスガ、縱令縣ガ三分
ノ一、國ガ六分ノ一位ノ經費ヲ御出シ
ニナルニシテモ、實際國民一般ノ方面
カラ之ヲ考ヘテ見マスト、餘程困リハ
セヌカト思フノデアリマス、御承知ノ
通リ今經費多端ノ際ニ、尙ホ國民生活
ノ上ニモ非常ナ疲弊困憊ヲ致シテ居ル
際ニ、本法ヲ實施スルニ當リマシテハ、
餘程國民一般困ルヤウナコトモ多々生
ジハセヌカト思ヒマス、斯ウ云フ點ニ
付キマシテ私共ハ從來ノ內務省ノ支出
ニナリマシタ六分ノ一等ノ少イ補助ノ例
ニ依ラズ、モット進ンデ補助ノ增額ノ必
要ガアリハセヌカ、此點ニ付テ特ニ當
局ノ御意見ヲ御尋シテ置カネバナラヌ
ト思フノデアリマス、「トラホーム」ノ
補助ニ付キマシテハ、町村ナドニ參リ
マスト政府ノ補助ハ極ク少イ、十圓カ
三十圓カノ金額ニナッテ居ルノデアリ
やく、ソレデ町村デハ之ヲ徹底的ニヤ
ラウトスルニハ、經費ノ爲ニ困ッテ居ル
處ガ全國到ル處ニアルノデアリマス、
此理由カラ便所ノ改良ヤ、其他諸設備
ニ於キマシテ非常ニ町村竝ニ個人トシ
テ困ル場合ガ多イ、之ニ對シテモット徹
底的ニ增額ヲスル必要ガアルト思フノ
デアリマスガ、之ニ對スル當局ノ御意
見ヲ御尋スル次第デアリマス、尙ホ私
ハ從來アリマシタ「トラホーム」ノ驅除
ヨリモ、此寄生蟲ノ驅除ハ一層困難デ
アルト信ズル者デアリマスカラ、此點
カラ考ヘテモ、補助金ノ增額ノ必要ガ
アルト私ハ思ッテ居リマス、又本法ハ一
面カラ考ヘマスト農家自身ノ自給肥料
ノ製造ノ點ニ付キマシテ、多少困ッタ點
ガ起リハセヌカト思フノデアリマス、
ソレハ御承知ノ通リ吾々農家ニ於キマ
シテハ、人糞尿ノ堆肥トカ色々ナモノ
ヲ混ヘテ、金肥以外ニ自給策ヲ講ジテ
居ルコトハ皆樣御承知ノ通リデアリマ
ス、是等ガムヅカシイ取締規則ノ爲ニ
或ハ罰金ヲ出サナケレバナラヌト云フ
ヤウナコトニナリマスト、其農家ノ肥
料ノ自給自足ノ方面カラ非常ニ困ルヤ
ウナ事ガ生ジハセヌカ、是等ニ付テ當
局ハ御考慮ヲ拂ッテ居ラレルカ、先ヅ以
上ノ點ニ付テ御尋シテ置キマス
其次ニ健康診斷ヤ糞便ノ檢査ヲ爲ナ
ルヽ場合ニ、之ヲ强制的ニ行ハレル場
合ニ、相當國民トシテハ暇モ潰サナケ
レバナラヌシ、色々ナル困難ナ事ガ生
ズルト思ッテ居リマス、斯ウ云フ點カラ
考ヘテ本案ノ實施ノ上ニハ多大ノ困難
ナル事情ガ伏在スルモノト思ッテ居リ
マスカラ、私ハ大體ノ結論トシテ、此法
案ノ效果ヲ擧ゲル上ニ於キマシテ一番
大事ナコトハ、ヤハリ經費ノ點ニ歸納
シテ行カネバナラヌモノト信ズルノデ
アリマス、此理由カラ私ハ第七條ノ六
分ノ一ノ補助ヲ、二分ノ一、若クハ尠ク
トモ三分ノ一ニ增額セラルヽノ意思ハ
ナイカドウカ、是ガ私ノ質問ノ結論ニ
ナッテ居リマス、以上簡單ニ御質問致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=10
-
011・赤木朝治
○赤木政府委員 順序ト致シマシテ農
家ノ肥料ニ關スルコトヲ先ニ御答致シ
マス、此法案ヲ實施スル上ニ於テ、農家
ノ肥料ヲ自給スルト云フコトヽ矛盾ヲ
致シ、實施上支障ガ起リハセヌカ、斯ウ
云フ御趣旨ノヤウニ承ッタノデアリマ
スガ、是ハ御說ノ如ク、若シ人糞ヲ肥料
ニ用ヒサセナイト云フヤウナコトニナ
リマスナラバ、甚ダ實際上困ルコトニ
ナラウト思フノデアリマス、唯此法案
ヲ實施スル上ニ於テ考ヘマスルコト
一、農家ガ人糞ヲ肥料ニ使用致シマス
ル上ニ於キマシテモ、所謂生肥ヲ成ベ
ク用ヒナイヤウニ致シマシテ、或ハ肥
料溜ニ相當ノ期間置イテ之ヲ腐敗セシ
メテ、サウシテ肥料ニ用ヒルト云フコ
トニナリマシタナラバ、人糞ヲ肥料ニ
スルト云フ目的ト、病源ヲ撲滅スルト
云フ目的ヲ同時ニ達スルコトガ出來、
而モ之ニ依ッテサシタル負擔ヲ伴ハナ
イデ出來ルノデハナカラウカ、斯樣ニ
存ジテ居ルノデアリマス
次ニ補助ノ問題デアリマスガ、之モ
御尤ナ御話デアルト存ズルノデアリマ
ス、何ヲ申シマシテモ此法案ヲ徹底的
ニ施行致シマシテ、又此病氣ヲ徹底的
ニ豫防致スニハ、相當多額ノ經費ヲ要
スルコトハ御話ノ通リト存ズルノデア
リマス、併ナガラ今日ノ現狀ニ於キマ
シテ理想ノ通リ之ヲ徹底的ニ實施スル
ト云フコトハ、是ハ容易ナコトデナイ
ト存ズルノデアリマス、國民ノ經濟力
ノ許ス限リニ於テ、財政ノ許ス範圍ニ
於テ漸次努メルト云フコトニスルヨリ
致方ガナイト存ズルノデアリマス、補
助ノ率ヲ增スト云フコトニナリマスル
ト、是ハ啻ニ寄生蟲等ノ豫防バカリデナ
〃、其他ノ總テノ疾病ノ豫防ニ付キマ
シテモ、ヤハリ同樣ナコトヽ存ズルノ
デアリマス、十分ニ國費ヲ投ジテ之ヲ
豫防スルコトニ努メルト云フコトハ、
是ハ望マシイ事デアリマスケレドモ、
今日ノ實情ニ於キマシテハ實現スルコ
トヲ困難ト存ジテ居リマスルノデ、此
率ヲ增額スルト云フコトハ到底出來ナ
イコトヽ存ジテ居ルノデアリマス、併
シ現在ニ於キマシテモ旣ニ地方費ナ
リ、町村費ナリデ相當ノ額ヲ支出致シ
テ此寄生蟲ノ豫防、殊ニ病毒ノ濃厚ナ
地方ニ於テハ相當ニ努メテ居ルノデア
リマス、隨テ其ノ經費豫算ノ範圍內ニ
於テ大體十分ニ、法ヲ活用スルコトニ
依リマシテモ相當ノ效果ヲ擧グルコト
ガ出來ルト存ジマスルシ、又此法ヲ制
定致シマシテ、寄生蟲病ト云フモノガ
如何ニ害毒ノ大ナルモノデアルカド
ウシテモ之ヲ驅除スルコトガ、國民ノ
健康、體位ノ向上ト云フコトニ付テ大
切ナルモノデアルト云フ事ヲ國民ニ十
分ニ知ラシメル上ニ於テモ、尠ナカラ
ザル效果ガアルト存ジテ居ルノデアリ
マス、率ヲ增加スルト云フコトハ、是ハ
現下ノ狀況ニ於キマシテ出來ナイコト
ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=11
-
012・永田良吉
○永田委員 私ハ此法案ノ精神ニハ、
先程カラ話ス通リニ、非常ニ贊成スル
ノデアリマスガ、ヤハリ何ト申上ゲマ
シテモ結論ハ多分ノ經費ヲ要シナガ
ラ、ソレニ向ッテ國庫カラ相當ノ補助ガ
ナイト、實際ニハ寄生蟲ノ驅除法ハ徹
底スルコトハ出來ナイト思フノデアリ
ざる、之ニ付キマシテヤハリ補助額ガ
從來ノ通リニ先例ノ六分ノ一位ト云フ
ヤウナ少ナイ金額デハ、是ハ決シテ徹
底ヲ見ルコトハ出來ナカラウト思フノ
デアリマス、ソレデ本案ヲ御提出ニナッ
タ以上ハ、其效果ヲ擧グル上ニ付テ、當
局ニ於テ最初カラ勇猛心ヲ發揮サレル
コトガ必要ト思フノデアリマス、次官
ノ今ノ御話ニ依ルト、補助ノ方ハドウ
モ微溫的デアル、ソレデハ一切町村ト
シテハ非常ナ困難ヲ生ズルコトガ多イ
ト云フコトヲ深ク信ジテ居リマスルカ
ラ、此際是非先例ヲ破ッテ戴キタイ、六
分ノ一ト云フヤウナ少ナイ補助ヲ與ヘ
ルト云フノハ、實際町村ニ於テ苦シイ
ト云フ例ガ多々アルノデアリマス、此
際左樣ナコトナク、モウ一段ノ御工夫
ヲ御願シタイノデアリマス、此點ニ對
シテ齋藤政務次官ノ御意向ハ如何デア
リマスカ、御尋シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=12
-
013・齋藤隆夫
○齋藤政府委員 只今衞生局長ヨリ御
答致シマシタヤウニ、苟モ政府ノ法律ヲ
制定致シマス以上ハ、此法律ガ萬遍ナ
ク徹底的ニ行ハレルコトヲバ切望致シ
テ居リマスルケレド、何分ニモ-此
法律ニハ限リマセヌガ、何レ近ク衞生
組合法ト云フモノモ衆議院ノ方ニ廻ツ
テ來ルダラウト思ヒマスガ總テ此衞生
ニ關スル法律ヲ實施スルニ付テハ相當
金ガ掛ルノデアリマス、所ガ國家ノ財政
狀態、民間ノ經濟狀態ガ御承知ノヤウ
ナ有樣デゴザイマスカラ、今俄ニ十分
ナ費用ヲ投ジテ此法律ノ效果ヲバ徹底
セシムルト云フコトハ至難ノ業デアラ
ウト思ヒマス、併ナガラ何ト云ッテモ衞
生ノ事ハ、段々ト思想ガ普及致シマシ
テ、國民自衞ノ爲ニ衞生設備ヲバ出來
得ル限リ完備シタイト云フ、此希望ハ
溢レテ居ルヤウデアリマスルカラ、出
來得ル限リ努力致シマス、併ナガラ何
ヲスルニモ國家ノ財政狀態ト相談セネ
バナラヌノデアリマスカラ、財政ガ良
クナレバ此方モ潤ッテ來ルデアリマセ
ウガ、財政ガ逼迫ノ場合ニハドウモ思
フヤウニ參ラヌ點モアリマスガ、其方
ノ事ハドウカ今日ノ財政經濟ノ實情ヲ
能ク御諒承下サイマシテ、先ヅ政府ハ
出來得ル限リ金ヲ出シテ努力スルト云
フ、此抽象的言葉デ御滿足下サレンコ
トヲバ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=13
-
014・永田良吉
○永田委員 私ノ質問ハ一應是デ打切
ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=14
-
015・中崎俊秀
○中崎委員 私ハ此寄生蟲豫防法ノ根
本問題ニ付テ齋藤政務次官ニ御質問ス
ル積リデアリマシタガ、只今ノ御質問
ニ依ッテ餘程盡キテ居ルヤウデアリマ
スガ、一體此法案ハ洵ニ結構ナ法案デ、
現在ノ日本ノ狀態カラ考ヘテモ、又對
外的ニ米國ニ渡航スルト云フヤウナ所
カラ考ヘテ見マシテモ、適切ナル法案
デアル、是ニハモウ何等異議ハナイノ
デアリマス、併ナガラ其適切ナル法案
ヲ眞ニ有效ナラシムルト云フコトニナ
ルト、今齋藤次官ノ言ハレタヤウナコ
トデハ到底私ハ效果ガ望メナイト思
フ、唯斯ウ云フ法案ヲ出シタト云フダ
ケニ止ッテ、何等結果ニ於テハ得ル所ガ
ナイト云フヤウナコトニナリハシナイ
カト云フ憂ヲ懷イテ居ルノデアリマ
ス、此內容カラ考ヘテ見マシテモ本
法ヲ實施スルニ付テハ、是ハ餘程ノ費
用ガ掛ルト私ハ思フ、現在ノヤウナ町
村ノ經濟狀態ニ於テ、而モ只今齋藤次
官ガ言ハレタ如ク、衞生組合法ト云フ
ヤウナモノモ出來、ソレニ加ヘテ此法
案ト云フヤウナコトデ、町村ニ其費用
ヲ負擔サセルト云フヤウナコトデアツ
タナラバ、本案ノ精神ガ行互ッテ徹底ス
ルダラウカドウダラウカト云フ事ヲ疑
フノデアリマス、只今ノ御說ノヤウニ
六分ノ一ノ國庫補助トカ、地方費ノ三
分ノ一ト云フヤウナモノノミニ依ッテ
ハ、到底町村ハ負擔ニ堪へラレナイト
私ハ考ヘル、此點ニ付キマシテハ、只
今ノ御質問ト重複スルヤウデアリマス
ガ、是ハ政府ハ餘程ノ覺悟ヲ以テ、口ニ
如何ニ衞生ト云フコトハ國民ノ大事ナ
問題デアルト云フコトヲ能ク誰シモガ
言フノデアリマス、併ナガラ實際ニ臨
ンデ見ルト今日委員長モ例證サレタヤ
ウナモノデ、斯ウ云フ法案ハ如何ニモ
輕視シサレル傾向ガアルノハ重大デア
ル費用モ出サナケレバナラヌト云フ
コトヲ能ク言ハレマスガ、偖テ飜テ考
ヘテ見ルト一向顧ミル者ガ少イト云フ
ノデ、ドウモ提燈ノ點ケ放シ、サウシテ
後ハ消エテシマフト云フヤウナコトニ
ナルコトヲ私ハ非常ニ恐レテ居ル、後
ノ細カナコトハ別ニ伺ヒマスガ、此問
題ニ付テ尙ホ重複デアリマスケレド
モ、齋藤次官ヲ通ジマシテ、私ハ徹底的
ニ之ヲシモ效力アラシムルモノデアル
カ否カヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマ
スガ、今一應費用ノ問題ニ付テ何トカ
捻出スル考ハナイノデアリマセウカ、
政務次官ニ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=15
-
016・齋藤隆夫
○齋藤政府委員 先程申シマシタヤウ
ニ、衞生ニ關スル法律ヲ實施スルニ付
キマシテハ、隨分多額ノ費用ヲ要シマ
ス、此寄生蟲豫防法モ、之ヲ效果アラシ
ムベク實施スルニ付キマシテハ、數字
ハマダ能ク分リマセヌガ、金ガ掛ルコ
トデアリマス、ソレカラ今此委員會ニ
付託サレテ居リマスル所ノ癩豫防法ニ
關スル法律ノ改正案モ、サウ大キナ金
デハアリマセヌガ、何レモ經費ノ伴フ
法律案ナノデアリマス、サウ云フ工合
デ近年國民ノ衞生思想ト云フモノガ漸
次ニ發達ヲ致シテ參リマスルシ、隨テ
政府モ此點ニ付キマシテハ非常ニ注意
ヲ致シマシテ、殊ニ今ノ內務大臣ハ衞
生大臣ト綽名サレテ居ル程デ隨分衞生
ニハ注意シテ居ラレルノデアリマス、
其結果斯ウ云フ法律ノ改正案ガ現レル
ニ至ッタノデアリマスガ、何ヲ申シマシ
テモ隨分金ガ掛リマス、サリトテ繰返
シテ申シマスルヤウニ、政府ノ財政狀
態ハ何方カト言ヘバ悲境デゴザイマシ
テ、有ユル方面ニ金ガ要ル、其金ヲ十分
ニ供給スルコトガ出來ナイノガ、今日
政府ノ惱ミトナッテ居ル次第デアリマ
スカラ、此法律ヲ成立サセマシテ十分
ナル效果ヲ擧ゲルコトハムヅカシイカ
ト思ヒマス、併ナガラ何事モ初カラ十
分ナ成績ヲ擧ゲルコトハ出來ズト雖
モ、十ノモノハ半分成績ヲ擧ゲテモ、亦
三割成績ヲ擧ゲマシテモ、成績ヲ擧ゲ
タダケソレダケ國家社會ノ利益ニナル
ノデアリマスカラ、先ヅ其考ヲ以テ進
ムヨリ外ニ致方ハナイノデアリマス、
今此法律ヲ作ッテモ何等ノ效果ハナイ
ト云フノナラバ仕方ガアリマセヌガ、
法律ヲ作リマシタノハ十全ノ效果ハ擧
ゲルコトガ出來ズト雖モ、或ル程度ノ
效果ハ擧ゲルコトガ出來ルノミナラ
ズ、又是ガ基ニナリマシテ漸次ニ法律
全體ノ目的ヲ達スルヤウニナルノデア
ラウト思ヒマスカラ、先ヅ其趣旨ヲ以
テ此法案ヲ御審議ノ上成立サシテ下サ
ルヤウニ御願ヲ致シマス、ドノ法律ノ
御審議ヲ仰グニ當リマシテモ、繰返シ
テ申シマスルガ、皆金ガ要リマスノデ、
其金ハ十分デハアリマセヌガ、サリト
テ一文モ金ナシニ之ヲヤルト云フノデ
ハアリマセヌ、中央ノ經濟モ地方自治
體ノ經濟モ悲境ニ陷フテ居リマスケレ
ドモ、併シ衞生思想ガ段々發達シテ參
リマスカラ、地方自治體ニ於テモ府縣
ニ於テモ、當局者ガ相當ノ考ヲ持ッテ此
法律ヲ運用スルニ付テ、或ル程度ノ成
績ヲ擧ゲ得ルコトヽ思ヒマス、左樣御
了解ノ上ニ御審議下サランコトヲ御願
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=16
-
017・中崎俊秀
○中崎委員 今ノ問題ニ付キマシテモ
ウ一應政務次官ノ御說明ヲ願ヒタイト
思ヒマス、一體此法律ヲ實施スルニ付
テ政府ハドレ位ノ支出ガ出來ル御見込
デアリマスカ、御差支ガナケレバ御示
ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=17
-
018・齋藤隆夫
○齋藤政府委員 御承知ノ如ク昭和六
年度ノ豫算ハ旣ニ衆議院ヲ通過シテ、
貴族院ニ廻ッテ居ルヤウナ次第デ、本年
度中ニ之ニ關スル經費ヲ、追加豫算等
ノ手段ヲ以テ計上スルコトハ出來ナイ
コトニナッテ居リマス、併シ來年度ニ至
リマシタナラバ、財政ノ都合ニ依リマ
シテ或ル程度ノ經費ハ無論內務省トシ
テハ要求スル積リデゴザイマスガ、併
シ大藏省ニ於テドウ云フヤウナ工合ニ
之ヲ取扱ッテ吳レルカト云フコトハ、大
分先ノコトデアリマスカラ、今日確言
スルコトハ出來マセヌガ、兎ニ角內務
省トシテハ既ニ法律ヲ制定シテ實施致
シマスル以上ハ、之ニ要スル經費ハ相
當ニ計上致ス積リデアリマス、併シ本
年ハ遺憾ナガラ右申シマシタヤウナ次
第デ、之ニ關スル中央ノ政府ノ豫算ハ
ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=18
-
019・中崎俊秀
○中崎委員 サウスルト只今ノ御答ニ
依ッテ見マスト、本年度ハ經費ガ更ニナ
イト云フコトデアリマスガ、此附則ノ
「本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以
テ之ヲ定ム」ト云フコトニナリマスレ
バ、是ハ本年度ハ施行スル御意思ハナ
イノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=19
-
020・赤木朝治
○赤木政府委員 「本法施行ノ期日ハ
各條ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト規定
シテ居リマスノハ、國ノ補助ノ關係ニ
於キマシテ、第七條ノ事項ヲ暫ク國ノ
補助豫算ノ確定致シマスマデ見合セタ
イ斯ウ云フ趣旨ナノデアリマス、尤モ
此法律ニ依ッテ補助ト致シマシテハ、豫
算ハ持っテ居リマセヌガ、從來保健衞生
調査奬勵費ト云フモノヲ持ッテ居リマ
シテ、其中デ寄生蟲ノ豫防ニ對シテ一
定ノ奬勵金ヲ出シテ居リマス、隨テ法
律ニ基ク所ノ補助トシテ支出スルコト
ハ出來マセヌガ、奬勵金ト致シマシテ
現在持ヲテ居ル豫算ノ範圍內ニ於テ、是
マデノ如ク相當ノ金額ヲ支出スルコト
ガ出來ルト云フコトニナリマスノデ、
實際上ハ支障ナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=20
-
021・中崎俊秀
○中崎委員 大體ノ問題ニ付キマシテ
ハ只今ノ質問デ打切リマシテ、少シク
逐條ニ亙リマシテ御質疑ヲ致シタイト
思ヒマス、第一條ノ蛔蟲病、十二指腸蟲
病、住血吸蟲病、肝臟「ヂストマ」病ト四
種類ニ分類サレテ居リマスガ、私ノ地
方ナドデハ、寄生蟲デナイカモ知レマ
セヌガ、相當害毒ヲ流シテ居リマスル
「ワイルス」氏病ノヤウナモノモアルノ
デアリマス、之ヲ將來此寄生蟲豫防法
ノ中ニデモ入レルヤウナ御意思ハナイ
ノデアリマスカ、或ハ別ナ方法デモアツ
タノデアリマスカ、ソレヲ伺ッテ置キマ
ス、第二ニハ糞便ノ處置デアリマス、此
糞便ノ處置ヲ完全ニスルニハドウ云フ
方法ガアルカ、若シアリトスレバ、其費
用ハドレ位ヲ要スルノデアリマスカ、
之ヲ全國ニ施行スル場合ニ於テノ費用
ハドレ位掛ル御見込デアリマスカ、是
等ニ付テノ方法ヲ、最近學術的ニ完全
ナル方法ト考ヘラレタモノハドンナ
モノデアルカ、ソレモ承知シテ見タイ
ト思フノデアリマス、ソレカラ第三ニ
ハ先刻モ御質問ガアッタノデアリマスガ、
此糞便ノ處置ト云フコトヽ糞便ヲ
肥料トシテ使フト云フ問題ハ、中々是
ハ農村經濟ノ問題カラシテ餘程重大ナ
關係ガアルノデアリマス、私ノ地方ナ
ドニ於テハ、此糞便ヲ堆肥等ニ致シテ
之ヲ農家ガ使フコトハ、非常ニ今日ノ
肥料經濟ヲ補ッテ行クコトガ多イノデ
アリマス、是ト糞便ヲ消毒スルト云フ
ヤウナコトノ爲ニ、何等カ予盾ヲ來ス
ヤウナ虞ハナイダラウカト云フヤウナ
コトモ一ツ伺ッテ置キタイノデアリマ
ス
ソレカラ農村ガ地方長官ノ命令ヲ受
ケテ、各町村費デ以テ相當ナル施設ヲ
シテ、糞便ノ處置ヲスルト云フヤウナ
コトハ、是ハ安全ニ行ハレルト云フコ
トハ、私ハ困難ダト思フ、如何ニ地方長
官ガ之ニ對シテ命令ヲ致シマシテモ、
現在ノ町村ノヤウナ經濟ノ狀態カラス
ルト、到底糞便ノ處置ト云フコトガ完
全ニ行ハレルコトハ今日困難デアルト
私ハ思フ、是ヨリモモット〓〓生活ニ急
ヲ要スル問題ニ農村ハ餘程頭ヲ使ハン
ケレバナラヌ、經濟モヤハリ其通リデ
アルノデアリマス、斯ウ云フヤウナド
ウモ放ッテ置イテモ少シノ間ハ待ッテ居
ラレルト云フヤウナ緩慢ナ性質ノ問題
ニ付キマシテハ、ドウモ放ッテ置カレル
虞ガアリハセンカ、政府ガ心配サレテ
發布セラレマシテモ、地方長官ガ又其
處置ヲ町村長ニ命ジマシテモ、其實行
ノ困難ナコトハ餘程考ヘナケレバナラ
ヌノデアリマスガ、ソレ等ニ對シテノ
政府ノ御所見ハドウデアリマスカ、ソ
レニ付テ一寸伺ッテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=21
-
022・赤木朝治
○赤木政府委員 「ワイルス」氏病ノ如
キモノヲ本法ノ病氣トシテ豫防ヲスル
コトハ出來ナイカト云フヤウナ御質疑
ガ第一デアッタト思ヒマス、是ハ所謂寄
生蟲病ト云フコトニハ屬シナイカト存
ズルノデアリマス、例ヘバ「ワイルス」
氏病ニ致シマシテモ、亦「マラリヤ」ニ
致シマシテモ、若シ之ヲ法律ニ依ッテ豫
防スルコトノ必要ガアルト云フコトニ
ナリマスナラバ、此法ノ運用ニ依ラズ
シテ傳染病豫防法ニ於テ之ヲ指定致シ
テ豫防スル斯ウ云フコトニナルト思
フノデアリマス
ソレカラ糞便ノ處置ト云フコトニ付
キマシテハ、之ヲ完全ニスル爲ニハ非
常ニ多額ノ金ヲ要スルト云フコトハ御
話ノ通リデアルノデアリマス、理想ト
致シマシテハ、是ハ日本ノ各住宅ニ於
ケル便所ノ構造ガ變リマシテ、所謂改
良便所ト云フコトニナリマシテ、糞便
ガ便所ノ中ニ於キマシテ寄生蟲ナリ
若クハ細菌ナリガ死滅スルヤウナコト
ニナリマスレバ、是ハ一番理想デアリ
やく、併ナガラ之ニハ非常ニ多額ノ經
費ヲ要スルコトニナリマスノデ、先刻
永田委員カラモ御話ガアリマシタヤウ
ニ、假ニ一個十圓ト致シマシテモ相當
多額ノ經費ヲ要スルト云フコトニナル
ノデ、隨テ全部左樣ナ實現ヲ急速ニ期
スルト云フコトハ、是ハ容易ナコトデ
ナイト存ズルノデアリマス、併ナガラ
左樣ナコトガ普及致シマセヌデモ、又
非常ニ多額ノ經費ヲ要シマセヌデモ、
尙且ツ寄生蟲ナルモノヲ或程度ニ於テ
死滅セシメルコトガ出來ルノデハナイ
カト存ズルノデアリマス、而モソレニ
依ッテ日本ノ農村ニ於テ現在行ハレテ
居リマス所ノ、肥料ニ糞便ヲ使用スル
ト云フコトヽ矛盾シナイデ出來ルコト
ト存ズルノデアリマス、ソレハ農村ニ
於テ糞便ヲ肥料ニ致シマスル際ニ、所
謂生肥ヲ用フルト云フコトガ一番危險
デアル、之ヲ肥料溜ニ貯溜致シマシテ、
相當ノ期間貯溜シタ後ニ之ヲ肥料トシ
テ使用スルト云フコトニ致シマスナラ
バ、別ニ藥品ヲ加ヘル譯デモ何デモア
リマセヌカラ、肥料トシテ效果ヲ損セ
ザルノミナラズ、肥料トシテノ效果ハ
十分ニ發揮シ、而モ豫防ノ目的ヲ達ス
ルコトガ出來ル、斯樣ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、現ニ內務省ノ實驗所ノ實
驗ニ依リマスレバ、所謂改良便所ニ於
キマシテ相當ノ期間貯溜致シマシタル
糞便ヲ肥料トシテ使用シタ結果ニ依リ
マスレバ、生肥ヲ用ヒタ時ヨリモ成績
ガ好イト云フヤウナ結果ヲ現ハシテ居
ルノデアリマス、隨テ農村ニ肥料ヲ使
用スルト云フコトヽ寄生蟲ノ卵ノ死
滅ヲ圖ルト云フコトヽ同時ニ目的ヲ
達スルヤウナコトガ、而モ多額ノ經費
ヲ要シナイデ出來ルデアラウ、斯樣ニ
考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=22
-
023・中崎俊秀
○中崎委員 サウスルト第一ニ伺ヒマ
シタ此「ワイルス」氏病デアリマスガ、
是ハ寄生蟲病ト云フ見出シノ下ニ御尤
ノコトデアリマスガ、將來「ワイルス」
氏病ニ對シマシテハ何等カヤハリ相當
ノ方法ヲ執ラレル意思ガアリマスカド
ウカ、ソレヲ一寸伺ヒタイト思ヒマス
ソレカラ第二ノ糞便ヲ糞壺ノ中ニ溜
メテ置イテ、サウシテ相當醱酵ヲサセ
テ使ヘバ宜イノデアリマスガ、是ハ實
際問題ト致シマスルト、政府ノ局長サ
ンアタリノ御考ニスルト、農家ハ斯ウ
云フ設備ガ出來得ルト云フコトニ御承
知ニナッテ居ルコトガ私ハ間違ッテ居ル
ト思フ、今日ノ農村ノ實際ヲ申スト完
全ナル壺ヲ買ッテ備付ケテ置クト云フ
ヤウナコトハ、數カラ考ヘテ見マスト
出來ナイ方ガ寧ロ多イ、サウ云フ壼ヲ
設備出來ルト云フヤウナ家ハ、農家ガ
例ヘバ十戶アルトスレバ、僅ニ其中ノ
一割若クハ多ク見テモ二三割位シカナ
イ、サウ云フ設備ガ出來テ居ル農家ハ
非常ニ少イ、其他ニ至リマシテハ全ク
不完全ナル腐朽シタ、モウ何十年前ニ
カ造ッタヤウナモノヲ其儘使ッテ居ルヤ
ウナ現狀テアルト私ハ思フ、是ハモウ
私ノ方ノ〓里バカリデナク、殆ド全體
ニ亙ッテサウ云フモノデハナイカト思
フサウ云フコトヽスレバ、只今ノ御
話ノヤウニ是ガ各戶ニ便壺ヲ設備シマ
シテ、ソレヲ溜メテ置イテ、サウシテ醱
酵スルマデ待ッテ居ルト云フヤウナ、政
府ノ御希望スルヤウナコトハ到底私ハ
行ハレ得ナイト思フ、若シ之ヲ强テ行
ハセルト云フコトニナレバ、結論ハヤ
ハリ費用ノ問題ニナッテ來ル、サウスレ
バ其費用ヲ例ヘバサウ云フ設備ヲスル
者ニ對シテ政府ハ何分ノ一カヲ補助デ
モシテヤル、或ハ奬勵費ヲ出シテヤル
ト云フヤウナコトニデモセヌケレバ、
只今ノ御說ノヤウナコトハ是ハヤハリ
言フテモ行フコトハ困難デアルト云フ
結論ニ達スルト思フ、サウ云フコトニ
付テ何カ將來奬勵費トカ、或ハ補助費
トカ云フヤウナモノヲ御出シニナル御
意思ガアルカ、又ソレ等ノ御用意ガア
ルカドウカ、ソレヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=23
-
024・赤木朝治
○赤木政府委員 「ワイルス」氏病ノ如
キ、或ハ「マラリヤ」等ニ對シマシテハ、
是ハ實ハ御承知ノ通リ地方的若クハ局
部的デゴザイマシテ、一般的デハナイ
ノデアリマス、例ヘバ「マラリヤ」ノ如
キハ或ル地方ニアッテハ是ハ傳染病豫
防法ニ依ッテ豫防方法ヲ講ズル必要ガ
アルカト思ヒマス、「ワイルス」氏病ニ
付キマシテハ、マダ蔓延ノ程度ガ今日
ノ所ソレ程マデニ達シテ居ルトハ存ジ
マセヌガ、是モ必要ニ應ジテハ指定致
サシメルコトニナラウト存スルノデア
リマス、今直チニ「ワイルス」氏病ヲ
傳染病豫防法ニ依ッテ指定スル考ハ持
テ居リマセヌ、ソレカラ農村ノ實情ニ
付テ色々御話ガゴザイマシタガ、便所
ノ改良等ニ對シテ補助ヲスルカ、ドウ
カ、是ハ現在各府縣ニ於キマシテモ、
所謂改良便所ニ對シテハ奬勵費若クハ
補助費ヲ相當ニ支出シテ居ルノデアリ
マス、ソレニ依ッテ漸次普及シツヽアル
ヤウニ存ジテ居リマスガ、此法律ノ建
前ト致シマシテハ、將來豫算ガ取レマ
スレバ左樣ナモノニ對シテハヤハリ國
庫ノ補助ヲ支出スル積リデ居ルノデア
リマス、是ハ豫算ノ取レタ上ノコトデ
アリマスガ、法律ノ建前ト致シテハ左
樣ナモノニ對シテモ補助ヲ出シテ之ヲ
奬勵致シタイト云フ考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=24
-
025・中崎俊秀
○中崎委員 大體ニ於テ分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=25
-
026・中馬興丸
○中馬委員長 御諮リ致シマス、今日
ハ此程度デ止メテ置キマシテ、次ハ如
何デセウ、糞便ヲ冬ハ幾日間貯溜スレ
バ宜イ、夏ハ幾日間貯溜スレバ宜イト
カ、其實驗ヲ各專門家デ〓究サレテ居
ル事ト思ヒマスガ、サウ云フ御〓究ガ
アッテ印刷物ニデモナッテ居ルモノガア
ッタラ、御提出ニナッタラ如何デセウ、ソ
レカラモウ一ツハ肥料ト糞便ノ消毒、
若クハ腐朽セシムルト云フコトノ關係、
是ハ肥料價値ガドレ位減ルカ、或ハ殖
エルカト云フコトニ付テ、內務省デハ
御〓究ニナッテ居ルデセウガ、農林省ト
ノ關係ガドウナッテ居ルカ、相當ノ〓究
ヲシテ居ラレルコトト思フノデアリマ
スカラ、誰カ農事技師ノ人デ御〓究ノ
方ガアッタラ御出席ヲ願ッタラ宜イト思
ヒマス、此事ヲ御計ヒヲ願ヒマス、尙ホ
是ハ我國デ-或ハ世界デ初メテ出來
ル法律デアラウト思ヒマスカラ、愼重
ニ〓究致シタイト思ヒマス、次ハ明日モ
ヤリタイト思ヒマスガ、速記ノ都合デ
明後日ニナルカモ知レマセヌ、ソレハ
公報デ御通知スルコトニ致シマス、今
日ハ此程度デ散會致シマス
午前十一時五十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005910434X00219310226&spkNum=26
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。