1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
地租法案(政府提出)
營業收益税法中改正法律案(政府提出)
砂糖消費税法中改正法律案(政府提出)
織物消費税法中改正法律案(政府提出)
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(地方税制限に關する件)(政府提出)
大正十五年法律第二十四號中改正法律案(地方税に關する件)(政府提出)
都市計畫法中改正法律案(政府提出)
耕地整理法中改正法律案(政府提出)
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會議
昭和六年二月二十八日(土曜日)午後四時二十七分開議
出席委員左の如し
委員長 本田恒之君
理事 西脇晉君
理事 永田善三郎君
理事 中村繼男君
理事 高橋熊次郎君
理事 清水銀藏君
海老澤爲次郎君 清水長郷君
櫛部荒熊君 本田彌市郎君
一松定吉君 石橋茂君
本多眞喜雄君 松本忠雄君
鏑木忠正君 前田房之助君
一柳仲次郎君 竹田儀一君
内田信也君 木暮武太夫君
武田徳三郎君 大口喜六君
秦豐助君 加藤鐐五郎君
岡田忠彦君 前田米藏君
松谷與二郎君
同日委員菊池良一君、松井文太郎君、辻本豐三郎君及八田宗吉君辭任に付其の補闕として櫛部荒熊君、本田彌市郎君、一松定吉君及秦豐助君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 井上準之助君
出席政府委員左の如し
内務省地方局長 次田大三郎君
内務書記官 岡田周造君
内務書記官 鈴木敬一君
大藏政務次官 小川郷太郎君
大藏參與官 勝正憲君
大藏省主税局長 青木得三君
大藏書記官 川越丈雄君
大藏書記官 野津高次郎君
大藏書記官 關原忠三君
本日の會議に上りたる議案左の如し
地租法案(政府提出)
營業收益税法中改正法律案(政府提出)
砂糖消費税法中改正法律案(政府提出)
織物消費税法中改正法律案(政府提出)
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(地方税制限に關する件)(政府提出)
大正十五年法律第二十四號中改正法律案(地方税に關する件)(政府提出)
都市計畫法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=0
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001・本田恒之
○本田委員長 開會致シマス、地租法
案外六件ヲ一括シテ議題ニ供シマス、
念ノ爲ニ申シマスガ、供託セラレマシ
タル耕地整理法中改正法律案ハ取殘シ
やす、是ヨリ討論ニ移リマス-大口
君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=1
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002・大口喜六
○大口委員 私ハ只今議題ト相成ッテ
居リマスル案ノ全部ヲ政府ニ返付致シ
マシテ、根本的ニ作成替ヲ爲サシムル
ノ趣意ニ於テ反對ヲ致スモノデアリマ
ス
固ヨリ減稅其モノニ對シマシテハ、
反對致ス譯デハナイノデアリマス、寧
ロ私共ハ此減稅額ノ餘リニ少キコトヲ
痛感シテ居ル所ノ者デアリマス、併ナ
ガラ減稅ハ申スマデモナク恆久的ノモ
ノデアリマス、隨テ其財源モ亦恆久的
デナクチヤナラナイト固ク信ジテ居リ
やく、ソコデ今囘ノ提案ニ付テ段々〓
究ヲ致シテ見スルノニ、其財源ト云フ
モノハ極メテ不確實デアルト考ヘマ
スルガ、寧ロ財源ナシト申シタ方ガ宜
イノデハナカラウカト私共ハ認メザル
ヲ得ヌノデアリマス、政府ノ說明スル
所ニ依リマスルト、今囘ノ減稅ニ對シ
マスル、財源ハ所謂海軍保留財源五億
八百萬圓デアルト云フコトニ相成ッテ
居リマスルガ、此五億八百萬圓ト云フ
モノガ、頗ル不確實ノモノデアルト考
ヘルノデアリマス、卽チ此五億八百萬
圓ト云フモノヽ因ッテ來ッタ所ヲ考ヘマ
スルノニ、是ハ昭和五年度ノ〓計表ニ
依リマシテ、昭和六年度カラ十一年度
マデノ間ノ財源ヲ積算致シタモノデア
リマスルガ、其昭和五年ノ〓計表ト云
フモノニ於キマシテハ、經常部臨時部
ヲ合セマシテ、每年度ノ歲入ト云フモ
ノガ約十五億七八千萬圓ト計上サレテ
居ルノデアリマス、其歳入ガ多ク見積
ラレテ居ル所ノ時代ニ出來マシタ、昭
和五年度ノ〓計表デアリマシテ、ソレ
ニ依ッテ歲出トシテ留保シテアッタ所ノ
昭和六年度以後十一年度ニ至ル所ノ海
軍保留財源ヲ合計致シマシテ、五億八
百萬圓ノ財源アリト稱スルノデアリマ
スガ、今日卽チ昭和六年度ノ現狀ニ於
テ之ヲ見マスト云フト、歲入ト云フモ
ノハ事實ノ上ニ於テ著シク激減致シテ
居リマシテ、政府ノ提出致サレマシタ
所ノ昭和六年度ノ〓計表デ見マスルト、
經常部臨時部ヲ合セマシテ、歲入ト云
フモノハ每年度約十四億二三千萬圓ニ
過ギナイノデアリマス、隨テ今日ノ現
狀ニ卽シマスト、此五億八百萬圓ト云
フ保留財源アリト稱スルコトガ、旣ニ
根本ヲ誤ッテ居ルモノデアリマシテ、事
實ニ於テ五億八百萬圓ト云フモノガ、
ソレダケモウナイト云フコトガ明カナ
ルモノデアラウト考ヘルノデアリマス、
而モ相變ラズ前ノ年ニ決メマシタ五億
八百萬圓ト云フモノヲ飽マデ認メテ、財
源トシヨウト致シマスル結果、他ノ歲
出ニ向ッテ著シキ減額ヲ來タサナケレ
バナラヌコトハ當然デアリマス
ソレガドウ云フ風ニ影響シテ參ッテ
居ルカト申シマスト、是ガ歲出ノ經常
部ノ方ニ節減サレテ參ヲテ居ルモノデ
アルナラバ、成程行政財政ノ整理ガ幾
分出來テ居ルト云フコトヲ認メ得ル點
モアリマセウケレドモガ、經常部ニ於
テハ洵ニ僅ナ金シカ減ゼラレテ居リマ
セヌデ、其大部分ト云フモノハ歲出臨
時部ノ方ニ於テ認メラレテ居リマスノ
ガ事實デアリマス、卽チ財政ノ根本的
整理ヲ行ッテ減額ヲ圖ッタ譯デナクテ、
政府事業ノ中止又ハ繰延ニ依ッテ此缺
陷ヲ補塡シテ居ルモノデアルト云フコ
トハ、數字ノ上ニ於テ明瞭ナル事實デ
アルト私ハ認メルノデアリマス、其結
果歲出臨時部ト云フモノヲ今點檢致シ
マスルト云フト、其中ニ於キマシテ規
定ノ繼續費ト云フモノガ定メラレテ居
リマス、此規定ノ繼續費ヲ差引キマス
ト云フト、其殘額ガ卽チ繼續費以外ノ
臨時費ニナルノデアリマスガ、是ガ昭
和六年度ニ於キマシテハ一億二千餘萬
圓認メ得ラレルノデアリマス、然ルニ
昭和七年度ニナリマスト八千九百餘萬
圓ニ減ジマスシ、昭和八年度ニ相成リ
マスルト七千八百餘萬圓ニ減ジマス、
更ニ昭和九年度ニ參リマスト七千萬圓
バカリニ減ジマシテ、ソレガ昭和十年
度ニ相成リマスト五千七百餘萬圓ニ減
ジ、昭和十一年度ニ相成リマスト僅ニ
五千萬圓內外ニ是ガ減ズルノデアリマ
ス、ソコデ此昭和六年度ニ於キマスル
億二千餘萬圓デアリマシテモ、我國ノ
財政ハ非常ニ困難デアリマシテ、多數
ノ有益ナ事業マデモ中止繰延ベラレテ
居ルヤウニ相成ッテ居ル、極メテ苦シイ
經濟ニ相成ッテ居ルノデアリマス、然ル
ニソレガ八千萬圓、七千萬圓、遂ニハ
五千萬圓シカ何等見テレテ居ラナイ狀
態デアリマス故ニ、到底我國ノ將來ノ
財政ヲ考ヘマシテ、是デ行ケル譯ハナ
イト云フコトハ常識ノ上カラモ認メ
ナクテハナラヌノデアリマス
現ニ昭和六年度ノ一億二千二百萬圓
ノ繼續費以外ノ臨時費ニ對シマシテ、
一應點檢致シテ見マシテモ、各省ノ補
助費ダケデモ六千八百萬圓ヲ有シテ居
リマスルシ、內務省ダケデ申シマシテ
モ二千七八百萬圓、農林省ダケデ申シ
マシテモ二千五百餘萬圓、商工省ダケ
ニ致シマシテモ六百餘萬圓ヲ計上シテ
居ルノデアリマスガ、更ニ其內容ヲ見
マスレバ、極メテ細カイモノガ澤山ニ
集リマシテ此金額ヲ形造ッテ居ルノデ
アリマシテ、殊ニ內務省ナドデ見マス
レバ、道路其他種々ナル港灣色々ナモ
ノニ關係シテ、市町村ナドノ澤山ノ上
水下水ノ補助費ナドモ含ンデ居リマス
農林、商工ノ兩省ニ致シマスレバ、更
ニ多數ノ產業ニ關スル所ノ費用ガ集、ツ
テ居ルノデアリマス、是ガ本年ノ如キハ
窮屈ニナリ困難ニナッテ居リマ·シテ、尙
且ツ先刻申シマス通リ一億二千二百萬
圓ヲ擁シテ居ルノデアリマスカラシテ、
是ガ後年度ニ至リマシテ、先刻申シマ
ス通リ五千萬圓內外ニマデ減ジテ參ル
ト云フコトハ、非常ニ財政計畫ノ上ニ
於テ無理ガアルト云フコトヲ吾々ハ考
ヘネバナラヌノデアリマス、既ニ此減
稅ノ財源トシテ認メラレテ居ル五億八
百萬圓ニ對シテ、斯ノ如キ無理ガ行ハ
レテ居ルノデアリマス故ニ、此儘デ參
リマスレバ我國ノ財政計畫ト云フモノ
ハ頗ル危イモノデアルト云フコトヲ吾
吾ハ確信セゼルヲ得ナイノデアリマス
ソレノミナラズ此財政計畫ニ現レテ
居リマスモノ以外ニ於キマシテデス、
此頃頻ニ問題ト相成ッテ居リマス海軍
補充計畫ニ關シマシテ、少カラザル將
來ノ影響ヲ受ケルモノデアルト云フコ
トヲ信ゼザルヲ得ナイノデアリマス、
卽チ私ガ申ス迄モナク、今囘ノ海軍補
充計畫ト云フモノハ三億幾千萬圓デア
リマスガ、是ハ所謂海軍補充計畫ノ根
幹ヲ成スモノデアリマシテ、之ニ伴ヒ
マシテ更ニ所謂第二次補充計畫ト云フ
モノガ起ラネバナラヌ、是ハ總理大臣
代理、海軍大臣竝ニ大藏大臣ヲ認メテ
居ラレル通リデアリマス、所謂第二次
補充計畫ト云フモノハ海軍カラ申セバ
第一次、第二次ト分ケベキモノデナイ
ト考ヘマスガ、便宜上私共ハ分リ良ク
只今出テ居リマスノヲ第一次補充計畫
ト稱シ、更ニ頭ヲ出シマスモノヲ第二
次補充計畫ト名付ケテ此處デ說明致シ
テ見マスレバ、此第二次補充計畫トシ
テ將來現レベキモノハ、ドウシテモ總
額ニ於テ一億四五千萬圓ヲ下ルベキモ
ノデナイコトヲ吾々ハ確信致スノデア
リマス、此計畫ガ果シテ昭和十一年度
以後ニ於キマシテドレダケ現レテ來ル
カト云フコトハ、政府ニ於カレテモ言
明ヲ致サレナイ、其他又細カイ詳シイ
事ハ未定デアルト說明サレテ居リマス
ルガ、兎ニ角此ノ或ル部分ガ昭和十一
年度以前ニ於キマシテ明瞭ニ頭ヲ出シ
現シテ來ルモノデアル、又之ニ著手致
サナケレバ、我國ノ國防ト云フモノガ
完全デナイト云フ意味ハ、總理大臣代
理竝ニ海軍大臣ノ御言明ニ依リマシテ
モ、吾々疑ヲ要セザル點デアリマス
然ルニ此財源ト云フモノガドウナッテ
居ルカト云ヘバ大藏大臣御言明ノ如
ク昭和十一年度ニ於キマシテ一錢
厘モ保留シテナイノデアリマス、斯ノ
如ク明瞭ニ現レテ來ル所ノモノニ對シ
テ一錢一厘ノ玆ニ保留財源ガナイ、此
位不確實ナモノハアリマセヌガ是ハ
如何ニシテ此財源ヲ調達スル考デアル
カ。之ニ對シ總理大臣代理、海軍大臣
竝ニ大藏大臣ニ對シマシテ、昨日モ種
種質問致シ、應答モ受ケタノデアリマ
スガ、歸スル所ハ甚ダ漠然トシテ居リ
マシテ、大藏大臣ノ御答ニ依リマシテ
モ、マダ五年バカリ先ノ事デアルカラ、
其時ニナッタナラバドウカナルモノデ
アルト、斯ウ云フ御考ヲ持ヲテ居ラレル
ヤウデアリマスガ、玆ニ確實ナル財源
ヲ以テ吾々ヲ安心サセルダケノ御說明
ヲ受ケルコトハ出來ナイノデアリマ
ス、サウ云フ狀態デアリマスガ故ニ、
此第二補充計畫ト吾々ガ稱スル所ノモ
ノニ對シマシテ、昭和十一年以前ニ於
ケル財源ト云フモノハ極メテ不確實ナ
ルモノデアッテ、何處カラ是ガ生ミ出サ
レルカト云フコトハ捕捉スルコトガ到
底出來ヌ、普通ノ算盤常識カラ申シマ
スレバ、ドウシテモ其場合增稅デモ致
スヨリ外ニ仕方ガナイ道理ニナルノデ
アリマス
現ニ先刻申シマシタ海軍ノ第二補充
計畫ヲ除キマシテ、〓計表ノ上ダケ、
卽チ現在提供サレテ居ル財政計畫ノ上
ノミカラ見マシテモ、甚ダ將來覺束ナ
イ所ノ我國ノ財政計畫デアル、是ダケ
デモドウスルカト云フ私ノ質問ニ對シ
マシテ、大藏大臣ハ入ガナケレバ已ム
ヲ得ナイカラ、將來ヤハリ繼續費ヲ繰
延ベルヨリ仕方ガナイト云フコトヲ
力ヲ込メテ昨夜モ御說明ニ相成ッテ居
ラレルノデアリマス、勿論繰延ベテ宜
イモノハ繰延ベルコトニ吾々反對ハナ
イノデアルガ、今日カラ議會ニ提出サ
レテ、是ダケノ仕事ハ必要ナリトシテ
議決ヲサシテ居ルモノガ、マダ議決ガ
濟ムカ濟マナイ中カラ、繼續費マデモ
將來繰延ベナケレバナラナイト云フコ
トガ頭ノ中ニアリ、肚ノ中ノ計畫ニア
ルト致シマスナラバ、我國ノ繼續費ト
云フモノハ根柢ガ危イモノデアッテ、何
等之ヲ信用シ得ル所ノモノハナイト云
フコトニナルノデアリマス、ソレデア
リマスカラ、此位我國ノ財政計畫ノ危
イモノハナイ、信賴スベキ點ハナイ、
斯ウ云フコトニナル、況ヤ只今申シタ
通リ其財政計畫ニ一厘モナイモノニ對
シテ、新ニ茲ニ事業ノ起ルコトハ今日
カラ明瞭ニ認メラレテ居ルトスレバ、
此位我國ノ財政ニ於テ將來憂フベキモ
ノハナイト考ヘマス、斯樣ニ考ヘマス
レバ事實カラ言ヘバ第一減稅ト云フコ
トハ出來得ベキ事デハナイ、此減稅ニ
對スル確實ナ財源ガナイ、無イモノヲ
無理ニ茲ニ之ヲヤラウトスル結果ガ、
斯ノ如ク我國ノ財政ノ將來ニ向ッテ頗
ル不安ナ狀態、不條理ナ狀態ヲ現スモ
ノデアルト吾々ハ斷ゼザルヲ得ヌノデ
アリマス、吾々ハ質問ノ際ニモ申シマ
シタ通リ、決シテ軍國主義ヲ主張致ス
者デハナイノデアリマス、勿論軍縮ガ
出來レバ出來ルダケ國防ヲ縮メルコト
ハ結構デアリマス、又吾々ハ同ジ國防
ヲ致シマスニモ出來ルダケ經濟ニ參レ
バ之ニ贊成ヲ致シタイ、之ニ努メタイ
ノデアリマス、併ナガラ國家存立ノ上
ニ於テ、國防ハ一日モ忽セニスベカラ
ザルモノデアルト云フコトダケハ吾々
ハ堅ク信ジテ居ルノデアリマス、國防
ノ缺陷ト云フモノハ一日モアッテハナ
ラナイモノデアルコトハ、私共確信シ
テ疑ハナイノデアリマス、此見地カラ
申シマスト、今日ノ我國ノ財政計畫、
將來ヲ見通シタ狀態ニ於キマシテ、果
シテ此減稅ガ出來得ルカドウデアル
カ、洵ニ是ハ覺束ナイモノデアッテ、全
ク先刻申ス通リ財源ナキノニ此仕事ヲ
致サウト云フコトデアルト斷定セザル
ヲ得ヌノデアル、只今申シマシタ以外
ニ於キマシテモ、今日マデハ遞增費ト
稱シマシテ、財政計畫ノ上デ當然將來
增額セネバナラナイ所ノ海軍ノ艦艇ノ
維持費デアルトカ、或ハ恩給ノ增加ガ
アルトカ云フモノハ認メテアッテ、財源
ガ保留シテアッタノデアリマス、然ルニ
今囘此減稅ヲ爲サルニ付キマシテ、財
政計畫ノ變更ニ當ッテ、是等ノ保留財源
ハ之ヲ落シテシマッタ、隨テ斯ウ云フモ
ノハ廻リ廻ッテ議論ヲスレハ、結局財政
計畫ノ上ニ於テハ、減稅ニ對スル、對
減稅ノ上ノ辻褄ヲ合セル一ツノ材料ト
シテ之ヲ取除カレタモノデアルト見ル
コトモ出來ルノデアリマスガ、是ハ兩
方トモ當然每年增加スベキ傾向ヲ持ツ
テ居ルモノデアリマシテ、今日ノ儘デ
申セバ恩給ト云フモノハ每年三百萬圓
稍〓以上ハ遞增致シテ居ルノデアリマ
ス、又海軍ノ艦艇ノ維持費ニ致シマシ
テモ質問應答ニ依ッテ明カナル如ク、一
萬八千噸ト云フモノハ旣ニ一眼ノ前ニ
數量ガ殖エテ參ルノデアリマスカラ、
維持費亦增加セザルヲ得ナイコトハ明
瞭デアリマス、然ルニ之ニ對シテモ財
源ガ一厘モ見テナイ、今マデアッタ財源
マデモ之ヲ外シテシマッタノデアリマ
スガ、故ニ益〓吾々ハ此我國ノ財政ノ上
ニ於テ危イモノデアルト云フコトヲ考
ヘザルヲ得ヌノデアリマス
況ヤ政府ニ於カレマシテハ是デ歲入
ハ確實デアルト唱ヘラレテ居リマス
ガ、吾々カラ見マスレバ現在見テ居ル
所ノ政府ノ歲入見積額ト云フモノガ頗
ル過大デアリマスコトハ、先日豫算會
議ノ節ニ吾々申述ベタ通リデアリマ
ス、若シモ不幸ニシテ吾々ノ見ル所ガ
當リマシテ、此歲入ガ過大デアッタトス
レバ、此財政計畫ノ上ニハ更ニ一大打
擊ヲ受ケネバナラナイト云フコトハ申
スマデモナイノデアリマス、ソレ等ヲ
考慮致シマスルト云フト、ドウシテモ
玆ニ減稅ヲシヨウト云フコトガ、財政
計畫ノ上カラ是ハ無理ナ仕事デアル、
財源ノ無イモノヲ、少シ極端ナ言葉ヲ
用ヒテ露骨ニ言ヘバ、有ルガ如クニ數
字ノ上、紙ノ上デ辻褄ヲ合セテヤラウ
ト云フノデアリマスガ故ニ、實質ヲ調
査致シマスレバ、結局是ハ不能ニ終ル
カ、然ラザレバ或ル時期-其時期モ
遠クナイ時期ニ於テ增稅ヲシナケレバ
辻褄ガ合ハナイ、昭和六年ダケハ或ハ
此豫算ガ通過シテ、歲入ニ於テ吾々ノ
見積ルヤウデナク、幸ヒ政府ノ見積ノ
如ク行クトスレバ辻褄ハ合ヒマセウ
ガ、昭和七年度ニ於テハ直チニ破綻ヲ
來サヾルヲ得ザル數字ニナッテ居ルコ
トハ明確デアルト私ハ確信スルノデア
リマス、是ガ財源ガ寔ニ不確實デアル、
寧ロ財源ナシト吾々ハ斷ゼザルヲ得ザ
ル理由ノ大要デアリマス
更ニ私共此編成替ヲ求メ、根本カラ
此改正ヲ致シタイト望ミマスル所以
ハ、本案ノ內容デアリマス、一言之ニ
モ觸レタイト考ヘマス、政府ニ於カレ
マシテハ今囘ノ減稅ニ當ッテ、約一億三
千四百萬圓ノ減稅ヲ致スト言ハレマス
ト、如何ニモ多額ノ減稅ガ行ハレルヤ
ウニ聞エマスケレドモ、ソレハ政府說
明ノ如ク六箇年間ヲ意味シタ計畫デア
リマスルガ故ニ、昭和六年度ニ於テハ
僅ニ九百萬圓、其他ノ五箇年ニ於キマ
シテモ所謂平年度ニ於テ一箇年ニ二千
五百萬圓ノ減稅ヨリ外出來ナイコトニ
ナルノデアル、卽チ昭和六年度ノ豫算
額ニ於キマシテハ租稅總額七億七千八
百萬圓ニ對シマシテ、僅ニ九百萬圓ニ
過ギザル減稅ト云フコトニナルノデア
リマス、少シ形容シテ申セバ所謂九牛
ノ一毛ニ過ギナイ
サウシテ其內容ハドウデアルカト言
>、地租、營業收益稅、砂糖稅竝ニ
織物消費稅ノ四種類ヲ減稅スルト云フ
ノデアリマスガ、地租ニ於キマシテ六
百七十餘萬圓、營業收益稅ニ於キマシ
テ百二十餘萬圓、而シテ消費稅ニ對シ
テハ、砂糖消費稅ニ對シテ僅ニ二十一
萬餘圓、織物消費稅ニ對シマシテ僅ニ
九十一萬圓ニ過ギナイノデアリマシテ
消費稅ト其他ノ稅トノ均衡ト云フモノ
モ頗ル失ハレテ居ルコトヲ吾々認メザ
ルヲ得ヌ、之ヲ少シ細カク算定ヲシテ
見マスレバ砂糖ニ對シテハ砂糖ヲ嘗メ
テ居ル人ナラバ一箇年一人當リ僅ニ
四錢ノ減稅デアル、餘程良イ砂糖バカリ
嘗メテ居ル人デモ一箇年一人當リ僅ニ
八錢ノ減稅ニ過ギナイト云フ狀況デア
リマス、織物消費稅ニ致シマシテモ、
銘仙一反ニ對シ僅ニ二錢當リニ過ギナ
イト私共ハ考ヘルノデアリマス、洵
微細ナルモノデアルコトヲ吾々ハ思ハ
ナクテハナラヌト考ヘマス
私共ハ減稅ト云フコトニ對シテハ稅
制根本ヲ整理致シマシテ、少クトモ年
額五千萬圓ノ減稅ヲ必要ト致スコトハ
豫ネテ天下ニ公表シテ居ル通リデアリ
やっ、隨テ私共ハ稅制ノ根本ヲ御改正
ニナリ、御整理ニナルト云フコトデア
レバ、其御趣旨ニハ贊成デアリマス、
現政府ニ於カレマシテモ今囘行政財政
ノ整理調査會ヲ置カレマシテ、昭和六
年度ニ於キマシテハ、稅制ノ根本的整
理ニ著手サレルト云フコトガ發表サレ
テ居ルノデアリマス、此事ヲ今日爲サ
レマスニ付テハ私多少ノ議論ガアリマ
スガ、ソレハ只今ハ申シマセヌ、兎ニ
角此事業ヲヤラレルト云フノデアルナ
ラバ、私共今囘ノ此四種類ノ稅法ノ改
正ト相關聯致シマシテ、果シテ其間ノ
關係ハ如何デアルカト云フコトヲ考ヘ
テ見タイノデアリマス、大藏大臣ハ今
囘御提案ニナッタ四種類ノ稅ハ、新ニ設
ケラレル稅制調査會ニ於ケル〓究ノ中
ニハ、先ヅ大體ニ於テ入レナイト云フ
御考デアルコトヲ明言サレテ居リマス
ガ、今囘ノ御提案ハ金額ニ限リガアリ
マシタ爲ニ、唯主ニ負擔力ニ對シテ減
稅ヲ見ラレタモノデアッテ、稍〓社會政策
ハ加ッテ居ルガ、產業政策ト云フヤウナ
コトハナイト明言サレテ居ルノデアリ
マス、勿論是ハ政府委員ガ申サレタコ
トデアッテ、大藏大臣ハ稍〓是モ這入ッテ
居ルト云フ意味ノ御答ニナッテ居リマ
スガ、兎ニ角殆ド產業政策ナルモノハ
之ニ加味サレテ居ラナイモノト見ナク
テハナラナイ、私共ハ稅法ヲ根本カラ
整理改革致シマスニハ勿論負擔ノ均
衡負擔力ノ如何、是ハ勿論ノコトデア
リマスガ、其他ニモ社會政策、產業政
策ヲ加味シテ所謂國民經濟ノ根本ニ卽
シタル稅ノ改正ヲ致スコトガ、時代ニ
適シタルモノデアルト考ヘルノデアリ
マリ、此點カラ申スト將來稅ノ整理ヲ
サレマス場合ニハ、今囘ノ四種類ノ稅
モ共々他ノ稅ト比較致シマシテ、根本
カラ之ヲ〓究シテ、總テノ上カラ國民
經濟ノ根柢ニ卽シタルモノニ致サナク
テハナラヌト考ヘルノデアリマス、共
點カラ申スト、今囘ノ減稅ト云フモノ
ハ事實カラ言ヘバ、或ハ昭和六年一年
ダケノ暫定的ノモノニ終ルノデハナカ
ラウカト考ヘザルヲ得ヌノデアリマ
ス、是ガ此案ニ對シテ根柢カラ〓究ヲ
シ直ス必要ガアルト私共ノ考ヘタ一ツ
ノ理由デアリマス
更ニ其內容不備ノ點ニ付テハ何レ本
會議ニ於テ同僚ヨリ詳シク申述ベヤウ
ト思ヒマスカラ、私ハ今日ハ極メテ簡
單ニ申述ベテ一例ヲ擧ゲルニ止メマス
ガ今囘提案サレマシタ地租ノ如キハ
賃貸價格ニ依ルコトニナルノデアリマ
スガ、此賃貸價格ハ御承知ノ如ク四年
バカリ以前ノ狀況ニ依ッテ調ベラレタ
モノデアリマスガ故ニ、今日ノ如ク經
濟界ニ激變ヲ見タル場合ニ於キマシテ
八、畑殊ニ山林ノ如キハ容易ナラザ
ル價格ノ下落ヲ見テ居ルノデアリマス、
隨テ此賃貸價格ノ上ニ於テモ餘程ノ變
化ガナクテハナラナイモノト考ヘマス
ガ、之ニ對シテ大藏大臣ノ御答辯ハ、
物價ガ下レバ總テノモノガ先ヅ同ジヤ
ウナ比例デ下ルモノト思フカラ、大ナ
ル不公平ハナカラウト信ズルト云フ御
答辯デアリマスガ、是ハ吾々ガ事實ノ
上カラ調査シテ、此大藏大臣ノ御答辯
ハ斷ジテ當ッテ居ナイコトヲ、吾々ハ信
ゼザルヲ得ナイノデアリマス、隨テ斯
ウ云フ點カラ申シマシテモ、此賃貸價
格ト云フモノガ今日ニ卽シテ、決シテ
公平ナルモノデハナイ、頗ル不公平ナル
狀態ニナッテ居ルト云フコトヲ吾々ハ
認メザルヲ得スノデアリマス、殊ニ此
地租ノ如キハ、先日來同僚ヨリ質問ガ
アリマシタ通リ、賃貸價格ヲ決メマシ
テ、ソレガ今マデノ地租ニ較ベテ三
倍八割マデノ增加ヲ認メテ、其處デ打
切リマシタ結果ハ三倍八割以上ニ賃
貸價格ノ殖エルベキ筈ノ租稅ハ誰カ負
擔スルカト云フト、是ハ一般ノ納稅者
ニ轉嫁サレ、分賦サレテ居ルコトハ政
府モ御認メノ通リデアリマス、ソレハ
地租額ヲ減ラサナイ程度ニ於テ定メラ
レタノデアリマシテ、政府ガ取ル金額
ガ定ッテ居ル結果トシテサウ云フコト
ニ相成ルノデアリマス、卽チ地價ガ非
常ニ殖エタ、理論カラ云ヘバ當然納ム
ベキ人ノ租稅ヲ、時ニ其人カラソレ
ダケ取ッテハ、餘リニ激變スルト云フノ
デ、其人ヲ庇護スル、緩和スル所ノ結果
トシテ大多數ノ納稅者ガソレヲ負擔ヲ
シテ行カネバナラナイト云フコトニ相
成ッテ居ル、是亦其處ニ不平公ガ起ルト
云フコトモ考ヘネバナリマセヌ、殊
此宅地ト田畑トノ間ニ尠カラザル異動
ヲ生ジマシタ結果ト致シマシテ、宅地
租稅ノ現行法ト今囘ノ改正案トヲ比較
シテ見マスト、地方附加稅マデ全部ヲ
入レテ納稅者ノ懷合カラ步合ヲ出シテ
見ルト、全國的ニハ二倍三割三分ノ增
加ニナリマス、六大都市ヲ平均致シマ
スト、二倍七割三分三厘ノ增加デアリ
マシテ、最モ多イモノヲ申セバ、五倍
割九分一厘ノ增加ニナルノデアリマ
ス、卽チ宅地租ト云フモノハ非常ニ
殖エルカラ、增稅サレマス結果、東京
市ノ如キハ四百六十餘萬圓ノ增加ヲ見
ナクテハナラナイ所ノ實況ニ相成ッテ
居ルノデアリマス、誠ニ急激ナル變化
デアリマス、此點ニニ對シマシテモ總
テノ政策ヲ加味致シマシテ尙ホ餘程是
ハ調査〓究ヲ致ス必要アリト私共ハ考
ヘルノデアリマス
更ニ是ガ地方稅ニ及ボシマス所ノ影
響ハ如何デアルカト言ヘバ、地方稅ヲ
殖シモセズ、減シモシナイ程度ニ於テ
今囘ノ附加稅率等ヲ御定メニナッタト
云フコトデアリマスカ、成程全國的ニ
見レバ左樣ナル結果ニ相成ラウト思ヒ
マっ、併ナガラ之ヲ細カニ〓究シテ見
マスト、例ヘバ都會ハ宅地ガ多イ處デ
アリマスガ故ニ、非常ニ稅ガ增シテ參ツ
テ、租稅ノ激增ヲ來シマス、其激增シ
タ租稅ヲ取ラズニ置イテ吳レヽハイケイ
ガ、今日ノ都會ノ自治財政ノ狀態カラ
見レバ、必ズヤ是ハ稅金ダケハ取ルニ
決ッタモノト先ヅ吾々ハ見ナクテハナ
リマセヌ、是ハ都會ニハ非常ナル增稅
ニナルコトハ明瞭デアリマス、然ラバ
村落ハ如何デアルカト云ヘバ、成程地
租總體カラ云ヘバ村落ハ減稅ニ多少ナ
リマス、隨テ地租ノ附加稅ガ減ッテ參リ
マスカ、減ッテ來レバドウナルカト云ヘ
バ今日市町村ノ自治體ハ仕事ガ出來
マセヌ、財源ガ減リマス仕事ガ出來マ
セヌ、ソレダケ仕事ヲ減ズレバ宜イガ
今日ノ市町村ノ狀態ニ於キマシテハ仕
事ヲ減ズルコトハ頗ル困難ナ事情ニア
リマス、隨テ其歲入ノ減フタダケハ何
處へ來ルカト云フト、結局家屋稅、又
ハ戶數割ニ是ガ轉化致サレマスルガ故
ニ、結局是ハ地方自治體、農村ト云フ
モノハ、戶數割家屋稅ト云フモノガ增
稅ニナッテ參ヲテ、全國的ニハ增稅ヲ促
ス結果ニナルト云フコトハ誠ニ私共ハ
明瞭ナル事實デアルト考ヘルノデアリ
やべ、卽チ私共ハ此地方ノ自治體ニ對
シマシテハ、昨日內務大臣ニ對シマシ
テ質問ノ際申述ベマシタ通リ、洵ニ今
日ノ財政狀態ニ對シテ、同情ヲシ、又
相當ナル方法ヲ講ジナケレバナラナイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス
御承知ノ通リ此地方ノ財政ハ、中央
ノ財政トハ殆ド其趣ヲ異ニ致シマシ
チ、府縣ト致シマシテハ主ニ土木費デ
アリマス、市町村ト致シマシテハ主
ニ義務〓育費デアリマス、此兩方ヲ除
キマスレバ、地方ノ費用ト云フモノハ
比較的少イモノデアル、ソレデアリマス
カラ、如何ニ地方ニ費用ヲ減セト政府
ガ御命令ニナリマシテモ、普通〓育ニ
關スル費用ヲ減ズルカ、士木工事ヲ廢
スヨリ外ニハ、地方自治體ノ經費ヲ大
ニ節減スル途ハ斷ジテナイノデアリマ
ス、是ハ餘程地方ノ困難ヲ感ズル點デ
アリマスガ故ニ、甚ダ地方財政ト云フ
モノハ、困難ナル事情ニ立入ッテ參ル
ノデアル、況ヤ一ツノ議會ガ濟ム每ニ、
市町村ニ國家ガ委任シ、或ハ干涉スル
所ノ仕事ト云フモノハ殖エルバカリデ
アリマシテ、之ニ對スル經費ハ國家ハ
支拂ハナイノデアリマスガ故ニ、地方
自治體ノ財政ハ益〓困難ニ陷ルコトハ
申スマデモナイノデアリマス、ソレデ
アルカラ吾々ハ常ニ考ヘマス、地方財
政ヲ鞏固ニシヨウト思ヘバ、一面ニ於
テ出來ルダケノ整理節約ヲセシメルコ
トハ是ハ尤デアリマスガ、中央デ思フ
程ニハ是ガ行カナイ、ソコデドウシテ
モ、地方ノ發達ヲ圖ラナケレバナラヌト
云フコトガ一面ニアル、シテ見レバ茲
ニ政府ニ於テ適當ノ財源ヲ地方ニ與ヘ
テ行カナケレバ、トウシテモ地方ノ發
達ヲ期スルコトハ出來ナイ、而シテ地
方ハドウデアルカト云ヘバ、少シ好イ
財源ハ國家ガ直接ニ取ッテシマッテ、地
方ニハ唯家屋稅、戶數割以外ニハ相當
ニ伸ビル所ノ途ガナイ、ソコデ家屋稅
戶數割ト云フモノニ對シテ重ク賦課ス
ルト云フコトニナル結果ガ今日ノ地方
ノ困惑ヲ來シテ居ル根源ニナッテ居ル、
ソレデ吾々ガ嘗テ地租營業稅ノ兩稅
ヲ地方ニ委讓スル、國ニ於テハ之ヲ全
廢シテ地方ニ確實ナ財源ヲ與ヘテ地方
ノ發達ヲ圖リ、地方稅ノ大整理ヲ行。ツ
テ、其結果家屋稅、戶數割ノ或ル部分
ヲ減稅シヨウト考ヘマシタノモ、其趣
意ハ實ニ玆ニアッタノデアリマス
結局吾々ハ國稅タルト、地方稅タル
トヲ問ハズ、今少シ根本ニ立入ッテ總テ
ノ釣合、總テノ事情コ卽シ、殊ニ現在
ノ狀況カラ我國ニ於ケル國民經濟ノ根
柢ニ卽シマシテ、此稅制ノ根本ノ改革
ヲ圖ッテ、之ヲ何處マデモヤラナケレバ
ナラナイト考ヘテ居ルノデアリマスガ
故ニ、此見地カラ見マスレバ今囘御提
案ノ此僅カバカリノ減稅ト云フモノ、
四種類ニ限ラレタ減稅、此方法ニ依ッテ
行ハレル減稅ト云フモノハ、洵ニ吾々
ノ趣意ニ適ハヌモノデアルト同時ニ、
斷ジテ國家永遠ノ策ニアラズト私ハ信
ズルモノデアリマス
此趣意ニ於キマシテ、私共ハ今囘ノ
案ニ對シテハ、先刻モ申シマス通リ、
減稅其モノニ反對デハナイ、反對ドコ
ロデハナイ、モット進ンデモ吾々ハ爲サ
ント欲スルモノデアルガ、此財源ガ不確
實デアッテ、寧ロ我國ノ財政ノ將來ヲ危
クシ、而シテ地方自治體ニ對シテモ、
納稅者ニ對シテモ、決シテ好イ影響ヲ
及ボサヾル、此粗漏ノ減稅案ニ對シテ
ハ之ヲ一應政府ニ御返シ申シマシテ、
大ナル財政行政ノ整理ト共ニ爲サレル
稅制整理ノ下ニ於テ、總テノ稅ト比較
〓究致シマシテ、適當ニ國民經濟ノ根
柢ニ卽シタル大改正ヲ要求スル所以デ
アリマス
是デ私ノ趣意ハ終リマシタガ、最後
ニ此場合一言申シテ置キタイノハ、昨
日マデノ質問應答ニ於キマシテ、昭和
六年度ニ於テ海軍ガ計畫致シテ居リマ
ス所ノ製艦費ノ繼續年度中ニ於キマシ
テ、驅逐艦、是ハ昭和六年度ニ於キマ
シテハ十二隻ノ中八隻ハ既定ノ計畫デ
アッテ、四隻ハ新シイ計畫デアルト云フ
コトヲ、最初海軍大臣ハ內田信也君ニ
對シテ御說明ニ相成リマシタガ、ソレ
デハ數ガ違フデハナイカト云フ反問ニ
對シマシテ、之ヲ改メラレマシテ、旣
定計畫ガ九隻デアッテ、新計畫ノ方ガ三
隻デアル、其既定計畫九隻ノ中ノ隻
ハ狭霧ト云フ驅逐艦デアルト云フコト
ヲ明言サレマシタ、此狭霧ハ殆ド竣工
シテ居ルモノデアルガ、之ニ積込ム所
ノ彈藥ノ如キモノ、或ハ其他多少マダ
不滿ノ點ガアルカラ、ソレガマダ昭和
六年度ニ延ビテ居ルカラ、九隻ト相成ツ
テ居ルト云フ御說明デアリマシタガ
私共ガ其後調ベテ見ル所ニ依ルト、此
狹霧ト云フ船ハ最早昭和五年ノ十二月
ニ第八驅逐隊ニ編入サレテ居ル事實ガ
アリマス、シテ見レバ最早昭和五年度ニ
於キマシテ是ハ完成シタモノト見ナク
チヤナラヌ、サウスルト此海軍大臣ノ
御訂正ニナッタコトモ頗ル玆ニ疑ガア
ルノデアリマスガ、既ニ是ハ質問應答
ノ濟ンダ後デ、今質問ヲ致シマスコト
ハ宜クアリマセヌカラ、私ハ玆ニ非常ナ
ル間違、過チガアッテ、海軍ノ計畫ト云
フモノニハ頗ル杜撰粗漏ナルモノガア
ルト云フ意見ヲ述ベテ置キタイノデア
リマス
又潛水艦五隻ノ中四隻ガ舊計畫デア
リマシテ、隻ハ新計畫デアルト云フ
コトヲ言ハレマシタ、然ルニ其前ニ新
計畫ハ三隻デアルト云フコトヲ言ハレ
タ、所ガ內田信也君カラ各目明細書ニ
依ッテ段々此事實ヲ押サレマシテ、舊計
畫ガ四隻デアルカラ新計畫ハ一隻デナ
クテハナラナイデハナイカト云フ問ニ
對シマシテ、海軍ノ方ニ於カレマシテ
ハ海軍大臣カラ先ノ御答ヲ取消サレ
マシテ、ヤハリ四隻ガ舊計畫デアッテ
新計畫ノ潛水艦ハ一隻デアル、他ノ二
隻ハ是ハ豫算ニハナイガ、其年度ノ中
ニ於テ前金ヲ拂ハナクテモ宜イ、外部
ニ契約ヲ致ス考デアルト云フコトヲ最
初言ハレタノデアリマス、是モ段々內
田君ヨリノ質問ニ依ッテ之ヲモ取消サ
レテ居リマシテ、結局昭和六年度ニ於
キマシテ潛水艦ノ新計畫ニ依ル建造ト
云フモノハ一隻以外ニハナイ、他ニ契
約ヲ致スコトハモウ取消シタト云フコ
トニ相成ッテ居ルノデアリマスルガ、ヽ
昨日私ガ政府委員ニ向ヒマシテ、此豫
算ニナイ軍艦ナドヲ豫メ前金ヲ拂ハズ
ニ、契約ダケニ於テ外部ニ註文スル場
合ニ、法令上如何ニ大藏當局ハ解釋シ
テ居ラルルカト承リマシタ時ニ、川越
政府委員カラ御說明ガアリマシテ、學
理上カラハ是ハ差支ナイモノデアル
併ナガラ實際ニ於テ、之ヲヤラレタ日
ニハ堪ラナイカラ、ソレハ成ベクヤラ
セナイ方針ヲ執フテ居ルト云フ御言明
デアリマシタ故ニ、此稅制案ノ討議ノ
場合ニ於キマシテ斯ル事デ學術上ノ意
見ラ茲ニ交換シテ居ヲテ、時間ヲ費シマ
スコトハ如何デアルト考ヘマシテ、學
術上ニ關シマスル意見ノ交換ハ實ハ私
ハ留保致シタ積リデアリマス、川越君
ノ御說ニ絕對ニ服從ハシナイ、川越君
ノ仰シヤルダケノコトハ私モ實ハ存ジ
テ居。ッタノデアルガ、議論ハソレ以上
アルガ、ソレハ今日ハ致サナイ、唯政府
ニ於テハ學術上ノ意見ハ左様デアルト
シテモ實際行政上ニ於テ是ハ成ベク
ヤラセナイ方針デアル、之ヲヤラセタ
ノデハ豫算竝ニ財政計畫ハ立タナイカ
ラト云フ御話デアッタカラ、其點ヲ諒ト
致シマシテ私ハ此質問ハ打切ッテアッタ
ノデアリマスルガ、或ハ是ガ誤リ傳ヘ
ラレマシテ、度取消サレタ海軍ノ一
隻ノ潜水艦モ又復學理上差支ガナイト
大藏當局ガ言ッタト云フノデ、新ニ御
註文御契約デモナサルト云フヤウナ事
ガアッテハ甚ダ私ハ宜シクナイト考ヘ
マス、是ハ海軍大臣ガ明カニヤラナイ
ト御明言ニナッテ御取消ニナッテ居ル事
デアリマスカラ、之ニ御間違ハアリマ
スマイト存ジマスガ、色々考ヘテ見マ
スト其間ニ問違ヲ生ジマスト將來ノ大
ナル問題ニナリ、我國ノ財政ノ運用上
由々シキ事ニナルト考ヘマスカラ、是
モ附加ヘマシテ此場合意見トシテ申述
ベマス、甚ダ長クナリマシテ皆樣ニ御
迷惑ヲ掛ケマシタガ、何レ詳シイ事ハ
本議場ニ於キマシテ同僚ヨリ詳細ニ論
ズルコトヽ考ヘマス故ニ、之ヲ以テ私
ガ之ニ反對ヲ致シマスル理由ノ大要ト
シテ申述ベタ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=2
-
003・本田恒之
○本田委員長 松谷君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=3
-
004・松谷與二郎
○松谷委員 私ハ今囘政府カラ御提案
ニナリマシタ減稅案ノ金額ト云フモノ
ハ餘リニモ少イ、マルデ胡麻鹽ヲ撒イ
タ位シカナイ、而モ其胡麻鹽ガ何人ニ
主ニ利益ヲ與ヘテ居ルカト言ヒマスナ
ラバ、是ハ殆ド全部九分九厘ト云フモ
ノハ所謂地主資本家ニ與ヘラレテ居ル
ノデアリマシテ、無產階級ニハ何等ノ
利益モ齎シテ居ラヌ、甚ダ私ハ此點ニ
遺憾ヲ感ズル、其意味ニ於キマシテ我
ガ無產黨カラハ今度ノ減稅案ニ對シマ
シテ一ツノ修正案ヲ提案スル、ソレハ
「今囘ノ倫敦海軍條約ニ基ク軍縮剩餘
金五億八百萬圓全額ヲ減稅ニ充當スベ
シ、卽チ昭和六年度ヨリ每年八千四百
六十萬圓宛ノ減稅ヲスルコト」稅種、稅
額制限其他ニ付テ順次述ベマス
先ヅ第ニ地租ニ付テハ金額二千萬
圓、稅額圓未滿ヲ免稅スルコト、營
業收益稅ニ付キマシテハ一千萬圓、個
人ノ純益二千圓以下ニ對シ免稅スルコ
ト、砂糖消費稅ハ四百六十六萬圓、次
ニ織物消費稅五百萬圓、人絹綿交織ニ
付テ免稅スル、ソレカラ煙草ノ値下
千五百萬圓、朝日「バット」以下ヲ値下ス
ルコト、酒稅ニ付キマシテハ三千萬圓、
無產大衆ノ飮用スル一般的酒類ニ對シ
免稅スルコト、以上稅率ニ付テハ政府
ニ於テ適宜御定メヲ願ヒタイ、ソレカ
ラ地價ヲ賃貸價格ニ改メタル結果、現
在ノ地租額ノ三倍八割ヲ超ユル土地ニ
付テハ三倍八割ニ制限セラレル此條項
ヲ削除スルコト、斯ウ云フ修正意見ヲ
提出スル次第デアリマス
簡單ニ理由ヲ申述ベマスガ、結局此
減稅ニ對シテハ或ル意味ニ於テ寧ロ全
然私共ハ反對意見ヲ持。テ居ル否認ス
ル意見ヲ持フテ居ル、少クトモ此減稅案
ニ對シテハ信用ガ置ケナイ、サウ云フ
大體ノ考ヲ持ッテ居ル、ガ私共ハ何等案
ヲ示サズシテ政府ニ要求スルノハ無理
デアルト考ヘテ、斯ウ云フ修正案ヲ提
出シタ次第デゴザイマス、現ニ政府ハ
再三再四倫敦條約ニ基ク軍縮剩餘金ハ
主トシテ國民ノ負擔輕減ニ充テラレル
ト云フコトハ再三ノ聲明デアッタノデ
アリマス、然ルニ愈〓蓋蓋開ケテ見ル
ト五億八百萬圓ノ中三億七千四百萬圓
ト云フモノハ海軍ノ補充計畫ニ廻サレ
タノデアリマス、サウシテ僅カ其三分
ノニ足ラヌ所ノ一億三千四百萬圓シ
カ今度減稅ニ充テラレナイ、實ニ是位
國民ヲ欺瞞シタモノハナイト言ッテ宜
シイノデアリマス、全ク政府ハ自己ノ
聲明ヲ裏切リ、國民ヲ欺瞞シタモノト
言ハザルヲ得ナイノデアリマス、何故
ニ斯ウ云フ風ニ國民ヲ欺瞞シ自己ノ聲
明ヲ裏切ッタカト云フニ、是ハ申ス迄モ
ナク倫敦會議ニ於ケル軍縮會議ノ比率
ニ付テ當時濱口總理大臣ハ加藤軍令部
長ノ同意ヲ得ラレナカッタ、サウシテ同
意ヲ得ズシテ若槻全權ニ向ッテ比率ニ
同意ノ囘訓ヲ與ヘラレタ、隨テ之ニ對
シテ加藤軍令部長カラシテ嚴重ナル抗
議ヲ申込マレ、遂ニハ統帥權干犯ノ問
題ヲ起シ、サウシテ加藤軍令部長ハ遂
ニ自己ノ責任ヲ感ジテ辭職シタ、續イ
軍事參議官會議ノ開催トナリ、結局倫
敦會議ノ比率デハ我ガ國防ノ安全ヲ
期シ難イト云フ決議ヲ突付ケラレマシ
テ、サウシテ內閣ノ運命モ旦夕ニ迫ッタ
ノデアリマス、ソコデ周章狼狽ノ極、遂
ニ此五億八百萬圓ノ中其三分ノ二强、
大部分ヲ結局補充計畫ニ廻シタノデア
リマス、斯ノ如ク內閣ハ全ク海軍ノ恫
愒ニ基イテ、其存立ガ危イト云フノデハ
自己ノ所謂黨派、自己ノ內閣ノ存立ノ
ミヲ念トシテ、何等國民大衆ノ利害ト
云フ事ヲ念頭ニ置カズシテ海軍ニ屈從
シタ、實ニ私ハ遺憾千萬デアル、是レ
程卑怯ナ內閣ハ恐ラクハナカラウト考
ヘテ居ル次第デゴザイマス
又之ヲ國民ノ側カラ見マスルナラ
バ、現ニ內閣ガ金解禁ヲ斷行シ、或ハ
緊縮政策ヲ行フテ、消費節約ダトカ色々
ノ政策ヲ行ハレタ結果、世ノ中ガ益〓不
景氣ニナッテ、物價ハ底知ラズドン〓〓
下落ヲスル、中產階級ハ破產、倒產、
夜逃ゲヲスル、小銀行ハドン〓〓閉出
シヲ喰ハス、サウシテ支拂停止ヲスル
工場ハ閉鎻スル、サウシテ稅金ノ滯納
者、不納者ハ續出致シマシテ、現ニ本
年度ノ歲入不足額ガ八千萬圓ニモ及ン
グ、是程不景氣ガドン底ニ於テコソ、
初メテ私ハ此五億八百萬ヲ減稅ニ廻シ
テ、サウシテ此危急ヲ救フベキヂヤナ
カッタカ、此意味ニ於キマシテ私ハ軍縮
剰餘金全部ヲ減稅ニ廻スベキモノデア
ルト云フ主張ヲナス所以デゴザイマ
ス
更ニ之ヲ海軍自體カラ見マシテモ、日
本ガ倫敦條約ノ制限外ダカラト云ッテ、
制限外艦艇ヲドシ〓〓造ル、或ハ空軍
ノ擴張ヲスルナラバ、各國モ亦是ト同
樣ニドン〓〓軍擴ヲヤリハシナイカ、現
ニ米國ノ如キハ昨年末ニ於テ空軍ノ大
擴張ノ發展ヲナシテ居ルト云フデハゴ
ザイマセヌカ、斯ノ如クニシテドンド
ン軍擴ヲヤルナラバ、延イテハシマヒ
ニハ其負擔力ニ果シテ日本ガ堪ヘルカ
ドウカト云フコトモ能ク考ヘナケレバ
ナラヌ、結局是ハ次ノ戰爭ノ準備ヲ爲
シツヽアルモノト言ハレテモ、言モ
辯解ノ辭ナシト私ハ考ヘテ居ル次第デ
アリマス、吾々ハ斯ノ如ク軍國主義、又
資本主義的帝國主義ニ對シテハ絕對ニ
反對スル立場カラモ、斯ウ云フ金ハ宜
シク減稅ニ廻スベキモノデアルト云フ
考ヲ持フテ居ル次第デアリマス
更ニ奇怪ナルハ今囘ノ昭和六年度ノ
減稅案ハ僅ニ九百萬圓、次年度カラハ
約二千五百萬圓ヲ充テヽ居ラレマスケ
レドモ、實ニ現在程不景氣ナ世ノ中ハ
ナイ、不景氣モ底ヲ突イテ段々景氣ガ
好クナルト云フ今日ニ於テ、何故ニ九
百萬圓トセラレタカ、是ハ私ハ全ク減
稅ノ順序ヲ誤ッタモノデアッテ、斯ノ如
キハ絕對ニ反對セザルヲ得ナイノデア
リマス
更ニ不法デアルノハ其減稅ノ種類及
ビ率デアリマス、ソレハ御承知デモア
リマセウガ、此案ニ依リマスト、地租
ガ昭和六年度ニ於テ六百七十七萬圓、
營業收益稅ニ於テ百二十一萬圓、卽チ
資本家地主ノ負擔タル所ノ稅額合計七
百九十八萬圓、之ニ反シマシテ、般
大衆ノ負擔スル所ノ稅ハドレダケデア
ルカト云ヘバ、砂糖消費稅ニ於テ二十
一萬圓、織物消費稅ニ於テ九十一萬圓、
合計百十二萬圓シカヤッテ居ラヌノデ
アリマス、其七百九十八萬圓ト百十
萬圓ヲ比率シテ見ルナラバ資本家地
主ノ稅金ニ於テ八割七分六厘減稅セラ
レテ、一般大衆ノ負擔ニ付テハ僅ニ百
十二萬圓、割二分四厘ニシカ當,テ居
ラヌ、是ハ明カニ此僅ナ胡麻鹽ヲ振撒
イタヤウナ稅金ノ中ニ於テモ、如何ニ
資本家地主ヲ擁護セラレテ、一般大衆、
就中無產階級ヲ無視セラレタカト云フ
コトハ極メテ明瞭デアリマス、隨テ斯
ウ云フ減稅案ニ對シテハ、無產黨トシ
テハ絕對ニ反對デアルト云フコトヲ表
明シテ置ク次第デゴザイマス、現ニ砂
糖ノ如キハドレダケ下ッタカト云フト、
一斤ニ付テ三厘カ五厘、年額使ッテ七錢
カ八錢シカ減稅ガ出來テ居ラヌ、サウ
云フヤウナ次第デアリマシテ、ドウシ
テモ私ハ斯ウ云フ偏頗ナル所ノ稅ノ減
稅方針ニ付テハ絕對ニ反對ヲスルモノ
デアリマス
又更ニ之ヲ地租ノ方カラ見マスル
ト、現在ノ地租ヲ納稅スル人員ハ約一
千萬人デアリマス、其中稅額カラ之ヲ
調ベテ見ルト、二十錢以下ノ納稅者、
ソレガ約二百四十萬人、一圓以下ノ納
稅者ハドレダケカト云ヘバ、二百六十
萬人、合計五百萬人、此一圓以下ノ納
稅者ト云フモノハ、地租ヲ納ムル者ノ
ザット半分デアリマス、斯ノ如キ小サイ
所ノ所謂小農ニ對シテ、然ラバ此減稅
ハドレダケノ率ニ當ッテ居ルカト云ヘ
バ二十錢以下ノ者ニ對シテハ一割五
分强デアリマスガ、二十錢以下ノ者ニ
對シテハ一年僅ニ三錢シカ減稅ニナッ
テ居リマセヌ、三錢五厘位ニシカ當ッテ
居ラス、又之ヲ一圓ヅヽヲ納メルモノ
ト假定致シマシテモ、僅ニ十五錢五厘
位シカ減稅ニナッテ居ラヌ、ソレデアツ
テ果シテ此減稅ガ政府ノ屢〓聲明セラ
レル如ク、農村ノ疲弊ヲ救濟スル爲ニ
地租ハ減稅スルノデアルト言ハレルナ
ラバ三錢ヤ十五錢一年ニ負ケテ貰フ
テソレデ農村ノ疲弊ガ救濟出來ルト
考ヘテ居ラレマスカ、實ニ私ハ無產大
衆就中農村ノ小農ニ對シテ何等ノ其
實ヲ擧ゲナイ減稅デアッテ、斯ノ如キ減
稅ハ全ク方策ヲ誤ッタモノト考ヘザル
ヲ得ナイ、隨テ私共ノ案ト致シマシテ
ハ一圓以下ノ稅金ヲ納メル者ニ對シ
テハ全部之ヲ免稅ヲ致シテ、サウシテ
之ヲ救濟スルコトガ最モ適當デアラウ
ト云フノデ、私共ハサウ云フ提案ヲス
ル次第デアリマス、營業收益稅ニ付テ
モ私ハ同樣ノ意見ノ下ニ於テ現在ノ免
稅點ヲ二千圓ニ引上ゲルト云フ提案ヲ
爲ス次第デゴザイマス、更ニ之ヲ織物
消費稅ニ付テ見マスルナラバ、織物消
費稅ノ綿ト麻トカ、或ハ綿ト毛ト半々
ニ交ゼタモノニ付テハ免稅ヲシテ居
ル、然ルニ人絹ト綿トノ交織物、半々
ノ交織物ニ對シテハ何等是ハ免稅ヲシ
テ居ラヌノデアリマス、是ハ岡田忠彥
氏ノ調査ニ依ルト、綿ノ八十番手百封
度ガ百三十五圓ダト云ハレル、人絹百
五十「デニール」デヤハリ百封度百十三
圓.サウスルト綿ヨリモ人絹ノ方ガ安
イ、安イカラシテ從ッテ私ハ人絹ト綿
トノ交織物ニ對シテ何故減稅ヲセラレ
ナイカ、政府デハ高イ〓〓ト計算ヲ澤
山セラレマシタケレドモ、私共ハソレ
ヲ信用スルコトガ出來ナイ、今一應十
分ニ御調査ニナッテ、村ノ娘ニ人絹ト綿
ノ交織物位ヲ著セテヤッテモ宜カラウ
ト云フ考デ、此點ハ私共カラシテ所謂
今囘ノ減稅ニ入レテヤラセタイト云フ
コトヲ一言申述ベテ置ク次第デアリマ
ス
最後ニ政府ハ今囘ノ地租課稅標準ヲ
改正セラレマシテ地價ヲ賃貸價格ニ改
メラレタ、私ハドウ云フ理由デ改メラ
レタカト云フコトニ付テ、政府ノ御說
明デハ納得ガ行カナカッタノデアリマ
スガ、併ナガラ是ハ色々學理上ノ議論
モアリマセウカラシテ、其點ハ姑ク措
クト致シマシテモ、結局地價ヲ貸借價
格ニ改メラレタト云フコトハ、小作爭
議ノ頻發スル時ニ當リマシテ、地主擁
護ノ爲ノ所謂改正デハナカラウカ、此
點ハ私ハ現ニ帝國農會アタリデ調ベタ
調査ニ依リマシテモ、小作爭議ノアッタ
處ハ地租ハ何時デモ三割五割ノ値下ニ
ナッテ居ル、之ヲ擁護スル爲ニ地價ヲ賃
貸價格ニ改メラレタトスルナラバ、此
處ニモ露骨ニ地主擁護、資本擁護ヲ現
シタモノデアッテ、斯ウ云フコトニ付テ
ハ反對ノ意ヲ表セザルヲ得ナイノデア
リマス、就中地價ヲ賃貸價格ニ改メル
際ニ於キマシテ、東京ノ三菱ケ原、是
ハ政府カラ材料ヲ御提出ニナリマシタ
カラシテ、特ニ三菱ケ原ニ付テ申上ゲ
マスガ、現在ニ於テ三菱ケ原ハ一坪ノ
地價ヲ十圓ト見テ居ラレルヤウデアリ
マスガ、アノ原ノ地價ヲ十圓ト見ラレ
ル人ハ何處ノ世界ニモナカラウ、恐ラ
ク千圓、二千圓デアラウト思フガ、ソ
レハ姑ク措キ、今度ソレヲ賃貸價格ニ
改メテ百圓トセラレタ、サウシテ是亦
賃料デハナイノデアリマス、賃貸價格
デアルカラシテ、是亦千圓二千圓ニ上
ルデアラウト考ヘテ居リマスケレド
モ、政府デハ僅ニ之ヲ百圓ニシカ認メ
テ居ラレナイ、假ニ百圓ト致シマシテ
モ、地價ガ十圓トシテ百圓ナラバ十倍
ノ値上ニナル、ソレヲ特ニ三倍八割ニ
制限セラレタノデアリマス、耕地整理、
區劃整理其他ノ所謂地租ノ變動ノアッ
タ場合、地目變換等フ場合ニ於テハド
シドシ當リ前ニ取ッテ居ラレナガラ、今
囘ノ地價ヲ賃貸價格ニ改メラレタ場合
ニ於テ三倍八割ニ制限セラレタト云フ
コトハ、取リモ直サズ、是亦資本家地
主ノ擁護デハナイカ、露骨ニ言フナラ
バ三菱ケ原ニ付テ言ヘバ、三菱擁護
ノ法律デハナカラウカト私ハ言ハザル
ヲ得ナイ、斯ノ如キハ甚ダ怪シカラヌ
譯デ、公平ノ觀念カラスルナラバ、百
倍ニ上ッタラ百倍、千倍ニ上ッタラ千倍
ニ增稅シナイカ、私ハ斯ノ如キ點ニ於
テ、課稅ニ公平ノ觀念ヲ無視セラレタ
ト云フコトニ付テ、甚ダ遺憾ノ意ヲ表
セザルヲ得ナイ次第デアリマス、隨テ
此規定ノ如キハ全然削除スルト云フコ
トヲ提案スル次第デアリマス
次ニ私共ガモウ少シ申述ベタイノ
ハ、現在ニ於テ先程モ申上ゲタ如ク八
千萬圓モ歲入ガ減額シテ居ル、斯ウ云
フドン底ニアル時コソ、私共ノ考カラ
言フナラバ、本當ニ取レヌモノハドン
ドン免稅シテヤッタラ宜イ、ソレカラ又
稅金ノ延納モ認メテヤッテ然ルベシト
思フノデアルガ、政府ハ苛斂誅求、實
ニ殘酷ナル稅ノ取方ヲセラレルト云フ
ノデ、吾々ニ頻々ト其不平ヲ愬ヘテ來
ル次第デアリマス、斯ノ如キ時ニ於テ
三)、初メテ私ハ減稅ヲシテ、此困ッテ
居ル者ヲ救フノコソ本當ノ政府ノヤル
ベキ途デアルト思フニ拘ラズ、此減稅
案ニ依ルト政府ハ徹頭徹尾資本家ノミ
ヲ擁護セラレ、僅ニ織物ガ少シ値下ゲ
ニナッタノト、ソレカラ又砂糖ガホンノ
少シシカ下ッテ居ラヌ、實ニ私ハ餘リ甘
過ギルヤリ方デアルト思フ、國民ヲサ
ウ甘ク見ナイデ、モウ少シ鹹ク見テ、
サウシテ稅金ノ方デウント甘クシテ
ヤッタラドンナモノカト考ヘル、是ガ私
共ノ本案修正ノ意見デアリマスガ、就
中私ハ酒煙草ニ於キマシテ、特ニ減稅
ヲシテ貰ヒタイ、織物デアルトカ或ハ
砂糖ノ如キハ、値下ヲスル場合ニハ、
皆「トラスト」ヲ起シテ、現實ノ値下ガ
大衆ニ及バナイ、是ハ能ク考慮ヲ願ヒ
タイ、値下ヲサセヨウト思ッテモ、實際
ニ於テ「トラスト」ヲ置イテ、値段ノ協
定ヲスルカラ、何等無產者ニハ利益ガ
ナイ、ソレヨリモ直接値下ニナル所ノ
煙草ナラバ、「バット」ナリ「朝日」以下ヲ
ドウゾ値下ヲシテ貰ヒタイ、就中酒稅
ニ於キマシテハ、一圓以下ノ酒稅-
「ウイスキー」ナリ「ブランデー」ナリ或
ハ燒酎ナリ、アヽ云フ勞働者ガ一日勞
働ヲシテ、サウシテ身體ガ綿ノ如ク疲
レテ居ル時ニ飮ム、アヽ云フ一杯五錢
ノモノニ對シテ、半分ノ二錢五厘位ニ
値下ヲスルト云フ親切ト同情トヲ無產
階級ニ對シテ持ッテ貰ヒタイト云フノ
ガ、私ノ意見ノ一ツデアリマス
尙ホ私ハ今囘政府ノヤラレタ事ニ付
テハ無產階級ハ非常ニ反感ト憎惡ノ念
ニ燃エツヽアルト云フコトヲ十分御考
ノ上デ然ルベク御贊成アランコトヲ特
ニ願ヲテ、修正理由ノ說明トスル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=4
-
005・中村繼男
○中村委員 只今松谷サンカラ修正動
議トシテノ御意見ガアリマシタガ、是
ハ一名モ贊成者ガナケレバ動議トシテ
成立シナイノデアリマスガ、今松谷君
ノ述ベラレマシタ事ニ付テハ、贊成者
ガアリマスカドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=5
-
006・本田恒之
○本田委員長 ソレハ採決ノ場合ニ確
メタイト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=6
-
007・中村繼男
○中村委員 イヤ、動議トシテ成立ス
ルヤ否ヤ其點ヲハッキリシテ貰ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=7
-
008・本田恒之
○本田委員長 今途中ニ、修正動議ノ
贊否ヲ採決シマスカ、私ハ採決ノ場合
ニ贊成ガナケレバ、是ハ一ツノ意見ト
シテ聽イテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=8
-
009・中村繼男
○中村委員 動議デハナイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=9
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010・本田恒之
○本田委員長 松谷君ノハ修正ノ動議
デスカ動議デナイカ、其點ヲ確メテ置
ク必要ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=10
-
011・松谷與二郎
○松谷委員 修正ノ意見ヲ述ベタ譯デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=11
-
012・本田恒之
○本田委員長 松谷君ガ修正動議デア
ルト言ハレルナラバ、サウシテ其修正
動議ガ成立致シマスレバ之ヲ論評スル
必要ガ起リマスカラ此點ハ······(「修正
ノ動議デハナイト言ッテ居ル」ト呼フ者
アリ)ケレドモ今ノハ修正ノ動議ダト
言ハレヽバ採決ヲシナケレバナラヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=12
-
013・松谷與二郎
○松谷委員 ドチラデモ委員長ニ於テ
然ルベク願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=13
-
014・本田恒之
○本田委員長 唯意見トシテ述ベラレ
タモノトスレバ別段採決ヲスル必要ハ
アリマセヌ、動議ノ御提出ヂヤナイノ
デスカ松谷君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=14
-
015・松谷與二郎
○松谷委員 動議デス、併シ御解釋ハ
自由デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=15
-
016・本田恒之
○本田委員長 ソレヂヤ是ハ先決問題
デアリマスカラ、松谷君ノ動議ニ付テ
採決致シマス、松谷君ノ修正動議ニ贊
成ガアリマスカ-贊成ガアリマセヌ
カラ動議トシテハ成立致シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=16
-
017・永田善三郎
○永田委員 只今政友會ヲ代表サレマ
シテ、先輩大口君カラ本案ニ對スル詳
シキ御意見ガアリマシタ、要約致シマ
スレバ減稅ニハ趣旨ニ於テ反對デハナ
イガ、本案ニハ其目的ヲ達スベキ恆久
性ガナイ、卽チ財源ノ持合セナクシテ
減稅ヲ圖ヲテ居ルモノデアル、唯、紙ノ
上デ辻褄ヲ合セタモノニ過ギナイ、斯
ウ云フ御話デアリマシテ、結局編成替
ヲ求メル意味ニ於テ本案ニ反對ダト云
フ御結論デアリマス
本委員會ハ實ニ未曾有ノ長時間ヲ費
シマシテ、二十數囘會議ヲ重ネ、又七
十時間餘討議ヲ續ケマシテ、政友會諸
君ノ御意見ヲ詳シク承ヲタノデアリマ
スガ、私共カラ見マスト、ドウモ其意
見ニハ贊成致シ兼ネルノデアリマス、
斯樣ナ御意見ノ發生スルニハ二ツノ
原因ガ此委員會ヲ通ジテ私ハアルト思
ヒマス、卽チ根本ニ於テ反對黨ノ諸君
ハ本年度ノ豫算竝ニ今後ノ豫算ガ總
テ歲入見積ガ過大デアル、昨年モサウ
デアッタガ、本年ノモ亦過大デアル、玆
ニモウ既ニ財源ト云フモノガ見積ラレ
テシマッテ、新ニ發見スルコトガ出來ナ
イ、況ヤ玆ニ提出サシテ居リマス此倫
敦條約ニ基ク減稅案ハ、本年旣ニ見積
リ過大ニナッテ居ル所ヘ、將來ニ之ヲ繼
續シテ行ク、其處ヘ持ッテ來テ、足ラヌ
所カラ又更ニ差引カウト云フノデア
ル、紙ノ上ダケニ殘サレテ居ル五億八
百萬圓ト云フモノヲ無理ニ搾出サウト
云フコトデアリマスカラ、益~其處ニ無
理ガ出來ル、斯ウ云フ御議論ガ中心ノ
ヤウユ思フテ居リマス
所ガ吾々ノ理解スル所ニ依レバ、倫
敦ノ海軍條約ニ依ッテ餘ッタト稱セラレ
ル五億八百萬圓ト云フモノハ固ヨリ紙
ノ上ノ財源デアリマス、豫算制度ト云
フモノガ、元々紙ノ上ニ現サレテ居ル
ニ過ギナイコトハ當然ナコトデアル、
是ガ紙ヲ除イテシマッテ何處ニ在ルカ
ト云ヘバ、少シモ發見スルコトハ出來
ナイ、政府ガ豫算ヲ編成シテ、サウシ
テ茲ニ辻褄ヲ合セテ本年ハ是ダケノ經
費ヲ使フ、來年ハ是ダケノ經費ヲ支出
スルト云フコトニ依ッテ辻褄ヲ合セル
外ニ辻褄ヲ合セヤウガナイノデアリマ
ス、唯御記憶ヲ願ヒタイコトハ、從來
ハ歲入ノ「バランスシート」ヲ取ッテ、
錢一厘モ違ハナイヤウナ、殆ド不可能
ナ豫算マデモ組ンデ居ッタノガ例デア
リマスガ、今年ノ總豫算ノ如キハ結局
ニ於テハ幾ラカ餘リガアルヤウナ實際
的ノモノモ作ッテアル、斯ウ云フ譯デ
アッテ、常ニ豫算ヲ紙ノ上ニ現ス上ニ於
テ形式ガ變化シテ居ル、斯ウ云フヤウ
ニナッテ居ルノデアリマシテ、斯樣ナ次
第デアリマスカラ、無論吾々ガ之ヲ豫
算トシテ討議スル上ニ於テモ、紙ノ上
ニ書イタモノニ依ッテ議論ヲ進メルヨ
リ外ニ方法ハナイノデアル、大口サン
ノ御議論ハ歲計十年表ヲ基礎ト爲サレ
テ、昭和十一年度ニナレバ僅ニ五千萬
圓シカ臨時費中ニ繼續費ノ財源ハナイ
ヂヤナイカ、斯ウ云フ御話、是モヤハ
リ十年計畫表ノ紙ノ上ノ御議論デア
ル總テガ紙ノ上ノ御議論デアル以上
ハ吾々ハ紙上デ以テ辻褄ヲ合セルト
云フコトハ一向差支ガナイ、此倫敦條
約ニ依リマス五億八百萬圓ガ、斯樣ナ
基礎ノ下ニ出發ヲ致シテ居ルモノトシ
テ、サウシテ吾々ハ此財源ヲ以テ當時
下外ニ聲明致シマシタ如ク、一方ニ於
テハ國防ノ充實ヲ圖ッテ、國家ヲ安泰ノ
地位ニ置クト共ニ、主トシテ其餘レル
所ノモノヲ以テ減稅ニ充テル、斯ウ云
フ趣旨ヲ一貫シテサウシテ玆ニ三億七
千四百萬圓ヲ以テ政友會ノ所謂第一項
補充計畫ヲ完成スル、サウシテ餘リノ
一億三千四百萬圓ヲ此間ノ減稅資源ト
スル、斯ウ云フ方針ヲ玆ニ確立シタノ
デアリマシテ、此海軍充實計畫ノ三億
七千四百萬圓ノ金額ガ足ル足ラナイト
云フ御議論ハ、是ハ私ハ本會議ニ讓リ
マス
種々ナル御意見ノ御陳述ガアリマシ
タガ、此以外ニ於キマスル新艦艇ノ維
持費ニ對スル御議論ハ、是ハ此際ニ於
キマシテ此新艦艇維持費ノ財源ニ付テ
ハ明カニシテ置カナケレバナラヌト思
フノデアリマス、再三此點ニ付キマシ
テハ質問ヲ重ネラレマシテ政府ニ於キ
マシテモ此艦艇維持費ガ要ラナイト
ハ申シテ居ラナイ、要ルノデアルガ、
從來ノ豫算ノ形式ニ於キマシテモ、新
艦艇維持費ハ何時モ新規事業トシテ要
求ヲ致シテ、サウシテ其都度之ヲ埋合
セヲシテ居ル、是ハ從來ノ形式デアリ
マシテ、勿論海軍ノ希望カラ申セバ、
此維持費ヲ財源トシテ取ヲテ置クコト
ガ勿論必要デアル、宜イ事デアルガ、
從來サウ云フヤウナ形式ヲ執ッタコト
ハナイノデアル、卽チ此五億八百萬圓
ノ所謂保留財源ニ付キマシテモ、此中
ニハ、新艦艇ノ維持費ト云フモノハ、
是ハ勿論初メヨリ含ンデ居ラナイ、艦
艇建造ノ費用トシテ是ハ殘サレタ費用
デアリマス、故ニ此中カラ新艦艇維持
費ヲ殘セト云フコトハ論理ガ〓盾ヲ致
シテ居ル、此點ニ付キマシテハ十分ナ
ル御理解ヲ得ナケレバ私共ハナラヌト
思ッテ居ル、其次ニ昭和十一年以前ニ於
キマシテハ首ヲ出スベキ新艦艇建造費、
是ハ勿論海軍工廠建造能力ヲ維持スル
上ニ於キマシテハ必要デアル、斯ウ云
フコトハ政府ニ於テモ無論聲明ヲ致サ
レテ居ルノデアリマス、コヽヲ以チマ
シテ、ソレナラバ其費用ガ何處ニ在ル
カ、新シク〓計表ニ上ッテ居ルカ、ソレ
ハ上ッテ居ラナイ、然ラバ五億八百萬圓
カラ何故ソレヲ取ッテナイカト云フ御
議論デアリマスガ、是ハ海軍當局ニ於
キマシテモ再三御聲明ニアル如ク、未
ダ其內容スラ殆ド未確定デアル、海軍
ハ相對的ノモノデアリマシテ、我國ガ
自主獨立デ立ツベキモノハ、此今囘ノ
新規計畫ニ依ッテ根幹ガ成立ッテ居ル、
故ニ之ヲ以テ自主的ニ海軍ハ事足リテ
居ルノデアル、國防ニハ何等不安モ感
ジナイ、唯內外ノ情勢ガ政友會諸君ノ
所謂第二次補充計畫ニ入ラナケレバナ
ラヌト云フ情勢ニ進ムヤ否ヤト云フコ
トハ、千九百三十五年ノ第二次倫敦會
議ト申シマスカ、軍縮會議ノ情勢ヲ見
テ、其處ニ海軍工廠ノ能力ヲ維持スル
コトヽ是等ノ情勢トヲ加味シテ、サ
ウシテ玆ニ新シク案ヲ立テヨウ、斯ウ
云フノデアリマスカラ、四五年先ニナツ
テ居ルコトニ對シテ、今日其案ヲ茲ニ
具備スルコトノ出來ナイコトハ當然デ
アル、是ガ殘サレテ居ルカラト云ウテ、
財政計畫ガ前途ニ於テ極メテ不安デア
ル、是デハ減稅ノ財源ト云フモノハ全
ク胡麻化シデアル、斯ウ云フ御議論ニ
ハ吾々ハ贊成ヲ致シ兼ネルノデアリマ
ス、卽チ一億三千四百萬圓ノ減稅財源
ノ大要ニ付キマシテハ、吾々ハ斯樣ナ
立場カラ致シマシテ、極メテ安全ナモ
ノト信ジテ居リマス
勿論現下ノ經濟狀況ガ極メテ萎微沈
滯ヲ致シテ居リマシテ、國ノ賄ヒヲ致
シマスノニ餘程困難ヲ感ジテ居ルコト
ハ、是ハ御互ニ遺憾トスル所デアリマ
スガ、政府ニ於キマシテハ之ニ依リマ
スル國家歲入ノ減少ニハ十分ナル覺悟
ヲ以テ、サウシテ一大決心ヲ披瀝シテ、
玆ニ來年度ニ於テ行政財政ノ整理ヲ致
ス、之ニ對シテハ大藏大臣ガ昨日モ此
席上ニ於テ、誇リガマシイ顏ヲスル譯デ
ハナイガ、旣ニ御叱ヲ被ッテ居ル如ク、
二度モ實行豫算ノ編成替モシテ見タ、
又今年度ニ於テ一億二千餘萬圓ノ節約
中止繰延ヲシテ居ルヤウナ譯デアル、
〓ニ自分ハ來年度、昭和六年度ニ於キ
マス行政財政整理ニ對シテハ、十分ナ
ル覺悟ヲ以テ、必ズヤ玆ニ一大成績ヲ
擧ゲテ、サウシテ此歲入ノ減少竝ニ從
來ノ既定事業ノ繼續スルニ差支ナイ所
ノ方法ヲ講ジテ見ル積リデアル、斯ウ
云フ堅キ決心ヲ示サレルノデアリマ
ス、又先ニ申シマシタ紙ノ上ニ於テハ
サウナクトモ實行ガ出來ルノデアリマ
ス、紙ノ外ニ於テ此決心ヲ持ッテ居リ、
紙ノ上ニ旣ニ計數ガ成立ヲテ居ル以上
ハ何等玆ニ吾々ハ不安ヲ感ジナイノ
デアリマス、國民ハ擧ゲテ此倫敦海軍
條約ノ結果、其剩餘財源ガ減稅トシテ一下スル方面トモ、
振向ケラレル、現下ノ不況ニ對シテ
何等カ政府ガ策ヲ施シテ吳レルデアラ
ウト思ッテ凝視シテ居ルノデアリマス、
實際ニ當ッテ此減稅ヲ行フ、而シテ先ヅ
最モ不況ニ沈淪ヲ致シテ居リマス地主
階級、農民階級、此人々ノ痛苦ヲ少シ
デモ減ズルガ爲ニ玆ニ主トシテ地租改
正ヲ行ヒ、サウシテ從來不公平デアリ
マシタ所ノ地價ヲ修正シテ、之ヲ現實
ニ近イ所ノ賃貸價格ニ持ッテ來ル、此賃
貸價格ガ四年前ノデアルカヲ現狀ニ合
ハヌトカ合フトカ云フ議論モアリマス
ガ、是ハ稅ニ增減ナカラシムルト云フ
立場カラ行ケバ同ジデアリマス、之ヲ
賃貸價格ニ求メテ不公平ナカラシムル
ト云フコトヽサウシテ減稅、此二ツ
ヲ合セテ行ヒマスナラバ、之ニ依ッテ地
方ノ地主階級ハ非常ニ助カルノデアリ
やっ、然ラバ方都會ノ地主ハ非常ナ
ル壓迫ヲ受ケテ居ルカト云ヘバサウデ
ナイ、三倍八割ノ制限ヲ設ケテソレ以
上ニ急激ナル增加ヲ致サナイ、斯ウ云
フ法案ヲ立テヽ居ルノデアリマス、是ハ
勿論四十二年ノ宅地價修正ノ時ナドニ
モ行ッテ居ルノデアリマス、此事ニ付キ
マシテ松谷君ノ御考ナドハ多少ドウモ
腑ニ落チナイノデアリマス、三倍八割
ノ增加ヲスル、又或ハ地方ニ於キマシ
テ三割、四割下ル、增加スル方面、低
急減ヲ避ケル爲ニ三
倍八割ニ增加スル場合ニ於キマシテモ
直ニ增加スルノデハナイ、增加率ヲ遞
增シテ行ク、低下スル時分ニモ漸次低
下シテ行クト云フヤウナ極メテ親切ナ
ル取扱ヲシテ居ルコトニ御留意ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス
要スルニ若シモ此倫敦軍縮條約ガ成
立タズシテ編成セラレタル豫算ヲ協賛
セントスルナラバ、到底今日見ルガ如
キ吾々ハ豫算ニ臨ムコトス出來ナイ、
此五億八百萬圓ノ保留財源位ヲ以テ世
界ノ海軍競爭場裡ニ我國ハ立ヲ譯ニ行
カナイ、是位ノ金額デ到底吾々ハ晏如
トシテ世界ノ海軍國ニ伍シテ行ク譯ニ
行カナイ、然ラバ倫敦會議ガ決裂ヲ致
シタナラバ、非常ナル多額ノ負擔ヲ吾
々ハ强ヒラレナケレバナラナイ一艘ノ
戰艦ヲ造ルノモ八千萬圓モ九千萬圓モ
掛ル、旣ニ華盛頓會議其儘ヲ行フト致
シマシテ是ダケ要ル、其處ニ競爭ガ起ッ
タナラバヨリ以上ノ負擔ヲ吾々ハセナ
ケレバナラナイ、然ルニ幸ヒニシテ此
會議ガ成立チ、旣定ノ經費カラシテ一
億三千萬圓ヲ削ッテ、サウシテ之ヲ減稅
ニ向ケルコトガ出來、將來又國防ニ對
シテ不安ガナイ、若シモ千九百三十五
年ノ會議以前ニ於テ、世界ニ海軍競爭
ノ徵候デモ現レルナラバ、直チニ之ニ
對シテ手當ノ出來ルヤウナ確實ナル財
政計畫ヲ玆ニ立テ得タト云フコトハ、
現內閣ノ一大功績ナリトシテ、私共ハ
之ヲ天下ニ公表スルニ憚ラナイノデア
リマス
要スルニ斯樣ナ次第ヲ以チマシテ、
吾々ハ本案ヲ通過セシムルコトハ、世
界ノ海軍國ヲ安心セシムル所以デアリ
內ニ於キマシテハ國民ヲシテ悅ンデ現
內閣ヲ謳歌シテ行ク所ノ大政策デア
ル、一兩日來ノ新聞ヲ見マシテモ、此
倫敦海軍條約ガ如何ニ有力デアルカト
云フコトハ諸君ノ御承知ノコトデアラ
ウト思フ、卽チ當時ニ於キマシテハ佛
蘭西竝ニ伊太利ノ如キハ此協定ニ這入
ラナイ、單ニ海軍國トシテ三國ノミノ
協定ニ終ッタノデアルカ、今ヤ之ニ加
入ラセントシデ居ル、是等ノ空氣ヲ見
マシテモ、世界ノ海軍國ガ如何ニ平和
ニ趨キッヽアルカト云フコトヲ觀取シ
得ルノデアリマス、此程度ヲ以テ吾々
ハ極メテ滿足ナルモノト思フノデアリ
やく、斯樣ナ意味ニ於キマシテ政府提
出原案ヲ支持スルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=17
-
018・本田恒之
○本田委員長 討論ハ終局シタルモノ
ト認メマス、採決ヲ致シマス、大口君
ノ原案返付ト云フ意見ニ御同意ノ諸君
ノ起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=18
-
019・本田恒之
○本田委員長 少數デアリマス、含)
爲ニ原案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ願ヒマ
ス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=19
-
020・本田恒之
○本田委員長 多數デアリマス、原案
ノ通リ決定致シマシタ(拍手)之ヲ以テ
本日ノ委員會ヲ終リマス、次ニ更ニ申
上ゲル事ガアリマス、併託ニナッテ居リ
マスル耕地整理法中改正法律案ヲ審議
致シマスル爲ニ、三月三日午前十時ニ
開會致シマス
午後六時散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02219310228&spkNum=20
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