1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月十二日(木曜日)
午後一時二十三分開議
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議事日程 第二十五號
昭和六年三月十二日
午後一時開議
第一 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 船舶積量測度法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 蠶絲業組合法案(政府提出) 第一讀會
第六 蠶絲法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 輸出組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 重要輸出品工業組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(末松偕一郎君外四名提出) 第一讀會
第十一 鑛業法中改正法律案(丹下茂十郎君外一名提出) 第一讀會
第十二 度量衡法中改正法律案(一松定吉君提出) 第一讀會
第十三 計量士法案(一松定吉君提出) 第一讀會
第十四 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(長尾半平君外二十四名提出) 第一讀會
第十五 恩給法中改正法律案(山下谷次君外一名提出) 第一讀會
第十六 刑事訴訟法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第十七 刑事訴訟法中改正法律案(長谷川陸郎君外二名提出) 第一讀會
第十八 利息制限法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第十九 利息制限法中改正法律案(原夫次郎君外三名提出) 第一讀會
第二十 民事訴訟法中改正法律案(村岡吾一君外三名提出) 第一讀會
第二十一 航空法中改正法律案(永田良吉君提出) 第一讀會
第二十二 河川法中改正法律案(山枡儀重君外五名提出) 第一讀會
第二十三 借地借家調停法中改正法律案(小久江美代吉君提出) 第一讀會
第二十四 借家法中改正法律案(小久江美代吉君外二名提出) 第一讀會
第二十五 六大都市に關する法律案(森田茂君外十八名提出) 第一讀會
第二十六 産業組合中央金庫法中改正法律案(由谷義治君外十四名提出) 第一讀會
第二十七 産業組合中央金庫法中改正法律案(岸田正記君外二名提出) 第一讀會
第二十八 癈兵優遇に關する法律案(一松定吉君外一名提出) 第一讀會
第二十九 司法代書人法中改正法律案(斯波貞吉君外一名提出) 第一讀會
第三十 農會法中改正法律案(牛場清次郎君外三名提出) 第一讀會
第三十一 農會法中改正法律案(末松偕一郎君外十二名提出) 第一讀會
第三十二 耕地整理法中改正法律案(牛場清次郎君外三名提出) 第一讀會
第三十三 酒造税法中改正法律案(古島義英君外一名提出) 第一讀會
第三十四 道路維持修繕費損傷者負擔法案(栗原彦三郎君提出) 第一讀會
第三十五 穀類搗精製粉取締法案(大竹貫一君外四名提出) 第一讀會
第三十六 私生子の名稱に關する法律案(一松定吉君外六名提出) 第一讀會
第三十七 負債整理組合法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第三十八 産業組合法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第三十九 農工銀行法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十 日本勸業銀行法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十一 北海道拓殖銀行法中改正法律案(土井權大君提出) 第一讀會
第四十二 米穀需給法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十三 米穀需給特別會計法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十四 計理士法中改正法律案(定塚門次郎君外二名提出) 第一讀會
第四十五 無盡業法中改正法律案(松田正一君外二名提出) 第一讀會
第四十六 古物商取締法中改正法律案(石原善三郎君外二名提出) 第一讀會
第四十七 身元保證に關する法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會
第四十八 辨理士法中改正法律案(名川侃市君外四名提出) 第一讀會
第四十九 大日本帝國國旗法案(石原善三郎君提出) 第一讀會
第五十 大正十五年法律第五十二號中改正法律案(土地區劃整理に伴ふ清算金等に關する件)(安藤正純君外三十八名提出) 第一讀會
第五十一 震災に因る土地區劃整理施行地區内の假建築著手期限變更に關する法律案(戸井嘉作君外三十八名提出) 第一讀會
第五十二 違警罪即决例中改正法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報〓ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
母子法案
提出者片山哲君
七尾氷見間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
戶部良祐君山田毅一君
織物消費稅法中麻織物ニ對スル免稅ニ關
スル建議案
提出者
戶部良祐君松本忠雄君
產金政策樹立ニ關スル建議案
提出者
木下成太郞君東〓實君
兒玉右二君
日本萬國博覽會開催ニ關スル建議案
提出者植原悅二郞君
原蠶種國營ニ關スル建議案
提出者
植原悅二郞君靑木精一君
警察費國庫補給金增額ニ關スル建議案
提出者
小池仁鄭君岡田春夫君
手代木隆吉君一柳仲次郞君
鐵道敷設法中改正ニ關スル建議案
提出者
小池仁郞君一柳仲次郞君
岡田春夫君手代木隆吉君
有珠岳洞爺湖登別羊蹄山定山溪及支笏湖
ヲ抱擁スル國立公園設定ニ關スル建議案
提出者
手代木隆吉君岡田春夫君
神部爲藏君
國立公園指定ニ關スル建議案
提出者
小池仁郞君岡田春夫君
手代木隆吉君
二俣佐久間間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
永田善三郞君服部英明君
(以上三月十日提出)
新湊吳羽間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者山田毅一君
氷見羽咋間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
山田毅一君戶部良祐君
城端美濃太田間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者山田毅一君
高岡市ニ鐵道局設置ニ關スル建議案
提出者山田毅一君
伏木港修築速成ニ關スル建議案
提出者
山田毅一君定塚門次郞君
新湊漁港修築ニ關スル建議案
提出者山田毅一君
氷見漁港第二期工事速成ニ關スル建議案
提出者山田毅一君
新湊商船學校移管ニ關スル建議案
提出者山田毅一君
福野農學校ヲ高等農林學校ニ昇格ニ關ス
ル建議案
提出者山田毅一君
(以上三月十一日提出)
無線電信ノ裝置ニ關スル建議案
提出者小池仁郞君
北海道舊土人保護ニ關スル建議案
提出者手代木隆吉君
室蘭區裁判所ニ地方裁判所支部設置ニ關
スル建議案
提出者手代木隆吉君
大川線竣成年度繰上ニ關スル建議案
提出者山本實彥君
出水宮之城間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者山本實彥君
阿久根驛ニ急行列車停車ニ關スル建議案
提出者山本實彥君
出水大口間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者山本實彥君
菱刈大口間ニ停車場設置ニ關スル建議案
提出者山本實彥君
牛ノ濱西方間ニ停車場設置ニ關スル建議
案
提出者山本實彥君
原蠶種國營ニ關スル建議案
提出者
百瀨渡君小山邦太郞君
北原阿智之助君高橋守平君
栗原彥三郞君牛場〓次郞君
(以上三月十二日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
東京市交通機關ノ整理統一ニ關スル再質
問主意書
提出者田川大吉郞君
航空ニ關スル再質問主意書
提出者永田良吉君
(以上三月十日提出)
軍馬補充部高鍋支部用地拂下ニ關スル質
問主意書
提出者三浦虎雄君
法令ノ解釋統一ニ關スル質問主意書
提出者
森田茂君本田恒之君
橫山金太郞君八並武治君
松定吉君
(以上三月十二日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去十日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第三部選出
豫算委員小山邦太郞君
一去十日理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
自動車交通事業法案(政府提出)委員
理事森峰一君(理事坂東幸太郞君
昨九日委員辭任ニ付其ノ補
關
一去十日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
シ
競馬法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
中馬興丸君木村小左衞門君
山内亮君高橋守平君
一柳仲次郞君大島要三君
春島東四郞君佐藤謙之輔君
長野綱良君西村金三郞君
高橋熊次郞君藤井達也君
川島正次郞君本田義成君
佐藤重遠君大石倫治君
難波〓人君堀部久太郞君
一去十日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
電氣事業法改正律案(政府提出)委員
辭任斯波貞吉君補國奧山龜藏君
重要產業ノ統制ニ關スル法律案(政府提
出)委員
辭任松村光三君補開牧野良三君
小作法案(政府提出)委員
辭任中野猛雄君補闘東〓實君
著作權法中改正法律案(政府提出、貴族院
送付)委員
辭任加藤知正君補関牧野良三君
一昨十一日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第三部選出
豫算委員鳩山一郞君(坂本一角君
補闕)
第三部選出
豫算委員百瀨渡君(小山邦太郞
君補闕)
第八部選出
豫算委員三土忠造君(深澤豐太郞
君補闕)
第九部選出
豫算委員藏園三四郞君(川口義久君
補闘)
一昨十一日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
シ
競馬法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
委員長中馬興丸君
理事
木村小左衞門君山内亮君
高橋守平君高橋熊次郞君
藤井達也君
一昨十一日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
辯護士法中改正法律案(北浦圭太郞君外
三名提出)外二件委員
辭任本田彌市郞君補闘百瀨渡君
辭任古島義英君補闘生方大吉君
辭任大西正幹君補闘小山邦太郞君
辭任小久江美代吉君補〓仲井間宗一君
辭任松井郡治君補〓深水〓君
競馬法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
辭任一柳仲次郞君補關前田卵之助君
辭任木村小左衞門君補闘藤田若水君
自動車交通事業法案(政府提出)委員
辭任木村小左衞門君補闕堀内良平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス--日程第一關稅定率法中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キマス-小川政務次官
第關稅定率法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
關稅定率法中改正法律案
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
己ノ四モミ屬(トドマツ等)、
ツ、スプルース等)、
ラマツ屬(落葉松等)
イ厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ
ロ其ノ他(丸太及割材ヲ含ム)
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=2
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003・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 只今議題トナ
リマシタ關稅定率法中改正法律案ノ說明ヲ
致シマス、本案ノ內容ハ人造絹及木材ノ關
稅率ヲ改正セントスルモノデアリマスガ、
政府ハ是等二ツノ品目ニ付テ、關稅率改正
ノ要否ヲ關稅調査委員會ニ付議シテ成案ヲ
得マシタノデ、玆ニ本改正案ヲ提出致シタ
次第デアリマス
先ヅ人造絹ニ關シマシテハ、近年我國ニ
於キマシテ此製造業ガ非常ニ進步シマシ
テ、今日デハ世界有數ノ人造絹ノ生產國タ
ル地位ヲ占メルニ至ッタノデアリマス、然ル
ニ一方輸出人造絹織物ノ製造業モ大ニ發達
シマシテ、內地人造絹生產高ノ大半ハ輸
出品原料トシテ使用セラレテ居ルト云フ狀
態デアリマス、共他保稅工場ニ於テ外國產
人造絹ヲ使用シテ居ル製造業者モアルノデ
アリマス、此輸出人造絹織物製造業ハ、又
洵ニ有望ナ產業デアリマスカラ、政府トシ
テハ其立場ヲ有利ナラシメル必要ガアルト
認メルノデアリマス、然ルニ人造絹ニ對ス
ル現行關稅率ハ大正十五年ノ改正後、絲
價ガ低落シマシタノデ、現在ニ於テハ相當
高率ニ當シテ居リマス關係モアリ、又保稅工
場ヲ利用スル者ト然ラザル者トノ間ノ權衡
ヲ考フル必要モアリマスノデ、差當リ現行
稅率ノ四割ヲ引下ゲルコトニ致シタノデア
第二百九十號中「一二五·〇〇」ヲ「七五·
〇〇」ニ改ム
第六百十二號第一項己ノ四ヲ左ノ如ク改
ム
タウヒ屬(エゾマ
マツ屬(紅松等)及カ
每立方メー
トル四·四五
每立方メー二·七〇
トル
リマス
次ニ木材ニ關シマシテハ、昭和四年ニ關
稅引上ガアリマシテ、相當輸入ノ調節ヲ見
タノデアリマスガ、其際所謂沿海州材等ハ、
各種ノ事情カラ其引上ヲ差控ヘマシタノ
デ、年々輸入ノ增加ヲ見テ居ルノデアリマ
ス、ソコデ樺太材等ニ對スル影響ヲモ考慮
シマシタ上、前囘ノ改正ノ後ヲ承ケテ稅率
ノ釣合ヲ取ル爲ニ、此沿海州材等ニ對シマ
シテ、新規課稅及ビ稅率引上ヲ行フコトニ
致シタノデアリマス、尙ホ詳細ナル點ニ付
キマシテハ、委員會ニ於テ御說明ヲ致ス考
デアリマス、何卒御審議ノ上速ニ御協贊ヲ
與ヘラレンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=3
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004・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許シマ
ス-岩本武助君
〔岩本社助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=4
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005・岩本武助
○岩本武助君 私ハ只今上程ニナリマシタ
關稅定率法中改正法律案ノ中デ、木材ニ關
スルコトニ付テ、二三政府當局ニ質問致シ
テ見タイト思フノデアリマス
只今提出者ノ說明スル所ニ依リマスト、
此說明ハ甚ダ簡單デアリマシテ、今囘沿海
州材ヲ主トスル稅金引上、及ビ新ニ之ニ稅
金ヲ課スルノ理由ハ、何處ニアルカヲ知ル
ニ苦シムノデアリマスガ、大體政府ノ見ル
所ハ、輸入及需給ノ狀況ニ鑑ミテ、現今ノ
實狀ニ適合スルノガ目的デアルヤウニ聞イ
タノデアリマス、併シ私ハ成程沿海州材ニ
對スル引上モ宜シウゴザイマセウガ、單エ
沿海州ダケノ木材ニ對シテノ稅金ノ引上、
及ビ新ニ之ニ課稅スルト云フコトデ、是ガ
徹底致スノデアラウカドウカ、又此關稅ヲ
引上ゲルニ付テハ成程生產需給ノ狀況モ
考ヘナケレバナリマセヌケレドモ、一 四五、
於テ我國ノ內地林業ニ如何ニ影響ヲ及ボス
カ、又一般木材ノ需要者ニ對シテモ如何ナ
ル影響ヲ來スカ、斯樣ナ點ニ於テモ相當ニ
考慮シナケレバナラヌト信ズルノデアリマ
ス(拍手)是ニ於テ先ヅ私ハ農林大臣ニ御伺
致シタイ、今囘ノ改正案ヲ見マスルト、關
稅定率法別表ニアリマスル「己ノ四」ヲ改正
シタノデアリマス、從來「己ノ四」ノ中ノ
「イ」ニ對シテ一圓十錢ヲ課稅セラレタモノ
ヲ四圓四十五錢トシ「ロ」ノ無稅デアッタモ
ノヲ二圓七十錢ノ稅金ヲ課ケルノデアリマ
ス、而シテ此種類ハ何カト申シマスルト、
卽チ「モミ屬」「タウヒ屬」「マツ屬」及「カラ
マツ屬」デアリマス、此「己ノ四」ヲ改正スル
ナラバ、何故「己ノ五」及癸ノ「イ」「ロ」ヲモ
改正シナイカ、ト申シマスルコトハ、現在
「己ノ五」ノ中ニ於キマシテモ、「ニノ一」ノ
中ニ「長十米ヲ超エ、末口ノ直徑三十センチ
メートルヲ超エサルモノ」「ニノ二」「其ノ
他」悉ク「ニノ一」ハ無稅デアリマシテ「ニノ
二」ハ一圓二十錢シカ稅金ヲ課シテ居ラヌ
ノデアリマス「癸ノイ」ニ至リマシテハ六
分ノ稅金ヲ課シマシテ「ロ」ニ至ッテハ無稅
デアリマス、政府ハ眞ニ外材ノ輸入ト內地
ノ需要、其他內地ノ林業ノ前途ヲ考ヘルナ
ラバドウシテモ此點ニ考ヲ及ボサナケレ
バナラヌ、今玆ニ二箇年ニ於ケル「己ノ四」
「己ノ五」「癸」ニ屬スル輸入量ヲ申上ゲテ見
マスルナラバ「己ノ四」ニ於キマシテハ「己
ノ四」ノ「イ」ノ部ニ於テ、昭和四年度ニ於
テハ四万九千石、昭和五年度ニ於テハ六万
五千石「己ノ四」「ロ」ニ於キマシテ、昭和四
年度ニ百五十九万一千石、昭和五年度ニ於
キマシテ二百二十五万九千石、此中ニハ尤
モ亞米利加ノ「ノーブル·フアー」モ含ン
デ居リマスルガ、昭和五年度ニ於キマシ
テ、此二百二十五万九千石ノ中ニ「ノーブ
ル·フアー」ガ五十六万一千石シカ含ンデ
居ラヌノデアリマス、又「己ノ五」ノ最近
二箇年ノ輸入量ヲ擧ゲテ見マスルナラバ
昭和四年度ニ於キマシテハ五百五十四万九
千石、昭和五年度ニ於キマシテハ四百一万
八千石、卽チ「共ノ他」ノモノト云フ表ニアリ
マスルノニ依リマスレバ、是ハ卽チ南洋材、
亞米利加材デアリマスルガ、昭和四年ニ於
キマシテハ三十四万五千石、昭和五年度ニ
於キマシテハ三十二万一千石、斯樣ナ風ニ
入ッテ居ルノデアリマスルカラ、此亞米利加
材、南洋材ノ入ッテ居リマスル量カラ考ヘ
テ見マシテモ、政府ハ今囘單ニ沿海州材ノ
ミニ稅金ヲ課ケルト云フコトハ、木材關稅
ノ上カラ言ッテ洵ニ徹底ヲ缺イテ居ルト信
ズルノデアリマス(拍手)故ニ此點ニ付テハ、
農林大臣ハ何故ニ沿海州材ノミニ課ケテ、
亞米利加材及ビ南洋材ニ課ケナイノデアル
カ、此理由ヲ御伺致シタイ、ノミナラズ單
ノ此沿海州材ニ課ケタノミデハ一面ニ於
テハ亞米利加材ノ卽チ「ニノ一」ノ如キ長材
ノ無稅ノ材木ガ、ドン〓〓入ッテ參リマス、
何故入ッテ參ルカト言ヒマスト、長材デ以テ
入レテ、之ヲ短ク切ッテ賣捌クノデアリマス、
沿海州材ヲ抑ヘルナラバ米材ガ膨レテ來
ルト云フ關係ヲ生ジテ來マス、又露西亞ニ
於キマシテハ露西亞ノアノ勞働組織ハ御
承知ノ通リデアリマスルカラ、假令今日今
迄課シタ稅金ノヤウニ、二圓ヤ二圓五十錢
殖ヤシテモ、或ハ無稅デアッタモノニ一圓
ヤ一圓五十錢殖ヤシマシテモ、內地ニドン
ドン持ッテ來テ、所謂「ダンピング」ヲヤル
ノ虞ガアルノデアリマス、此點ニ對シテ政
府當局ハ如何ニ考ヘテ居リマスルカ、此點
モ御伺致シタイ
次ニ御伺致シタイコトハ五十六議會卽チ
田中內閣ノ當時ニ、此木材關稅改正ノ案ヲ
出シタノデアリマスルガ、其當時今ノ與黨
卽チ民政黨ノ諸君ハ擧黨一致ヲ以テ反對
サレタノデアリマス、卽チ民政黨ノ諸君ガ反
對サレタ理由ハ何處ニアッタカ、私ハ私ノ
質問ヲ進メル上ニ於テ、當時ノ速記錄ノ一
部ノ朗讀ヲ御許シ願ヒタイノデアリマス
(拍手)
當時此討議ニ當リマシテ、民政黨ノ前田
房之助君ガ代表ヲサレテ反對ノ討論ヲサ
v、私ハ贊成ノ議論ヲ致シタノデアリマス、
故ニ參考ノ爲ニ前田君ノ速記ノ一部分ヲ
讀上ゲテ見タイト思フノデアリマスごぼく
ハ我國林業ノ現狀ヲ鑑ミマシテ、之ニ對シ
テ保護奬勵ヲ與フル必要ハ切ニ認メテ居ル
ノデアリマス、併ナガラ今囘ノ木材關稅改
正ノミニ依リマシテハ、啻ニ其目的ヲ達成
スルコトガ頗ル困難デアルバカリデハナク
財界不況ノ今日ニ於キマシテ、本材關稅ヲ
引上マスルコトハ、一方ニ於キマシテ消費
者デアリマスル全國民殊ニ庶民階級ノ負
擔ヲ過重スル虞ガアリマスルガ故ニ吾々
ハ斯樣ナ修正案ヲ提出致シタノデアリマ
ス」又「今日內地材ガ下落ヲ致シテ林業者ガ
困ッテ居リマスル原因ハ、米材ノ輸入ニアラ
ズシテ、政府ニ統一シタル所ノ林業政策ガ
ナイト云フコトガ、寧ロ大ナル原因デハナ
カラウカト思フノデアリマス、更ニ其上ニ
於キマシテ、財界ノ不況ト云フコトガ、
大原因ヲ作ッテ居リマス」又「木材ノ世界的
飢饉ト申シマスルモノハ、三四十年間ニ迫ッ
テ居ルノデアリマスカラ、我國ト致シマシ
テハ出來得ル限リ安價ノ木材ヲバ外國カ
ラ輸入致シマシテ、內地ノ山林ヲ伐採スル
コトヲ當分止メテ、之ヲ休養スル所ノ時デ
ハナカラウカト思フノデアリマス、殊ニ關
稅政策ト致シマシテハ、有ユル產業ニ對シ
テハ幼稚ノ時分ニハ國家ノ力ヲ以テ之ヲ
保護奬勵スルノガ當然デアリマシテ、是ガ一
人前ニ發達致シタ時ニ於テ、初メテ保護關
稅-他ノ產業竝ニ國民生活ニ影響シナイ
所ノ範圍ニ於テ、極メテ輕微ノ保護政策ヲヤ
ルト云フコトガ、關稅政策ノ根本方針デア
リマシテ、政府當局モ此主義ハ御認ニナッテ
居ルノデアリマス、然ルニ何等林業政策モ
確定シナイニ拘ラズ、玆ニ國民生活ノ上ニ
相當影響ヲ及ボスガ如キ、高率ナル所ノ保
護關稅ヲ課セラレルト云フコトハ洵ニ前
後〓倒致シタヤリ方ト申サナケレバ相成ラ
ヌノデアリマス」又「木材ノ關稅ノ引上ニ依ッ
テ、森林ガ濫代サレル所ノ弊ヲ助長サレル
虞ガアラウト思フノデアリマス」、是ハ前田
君ノ反對演說トシテ、反對サレル主要點ト
思フノデアリマス、卽チ前田君ノ反對ノ議
論ハ第一點ニ於テハ、木材關稅ノ引上ヲ
スルナラバ、庶民階級ノ負擔ハ重クナル、
卽チ家賃ガ上ルト云フヤウナコトヲ指サレ
タノデアラウト思フ、第二點ニ於テハ、政
府ニ於テ統一シタル林業政策ガナイ、故ニ
先ヅ林業政策ヲ確立シテ、サウシテ此關稅
ニ向フテ手ヲ加ヘル、又第三點ニ於テハ、外
材ノ輸入ニ依シテ當分內地材ノ休養ヲ行ハ
ナケレバナラヌ、第四點ニ於テハ、關稅ノ
引上ニ依ッテ內地ノ山林ガ濫伐サレル、此
四ツノ點ガ反對ノ理由ト思フノデアリマ
ス、然ラバ私ハ御伺ヲ致シタイ、現內閣ハ
五十六議會ニ於テ、斯樣ナ反對ヲ爲サレテ、
今日此沿海州材ニ對シテ關稅ヲ引上ゲ、又新
ニ之ヲ課スルト云フコトニナリマスルト
所謂木材ノ需要者ニ對シテ、如何ナル負擔
ニ變動ヲ來シマスルノデアリマスカドウカ
(拍手)
又第二點ニ於テハ、今日此關稅案ヲ御出
シニナル以上ハ、民政黨諸君ノ主張ト致シ
マシテハ、之ヲ出ス前ニ確乎タル林業政策
ヲ御立ニナラナケレバナラヌノデアル(拍
手)今日政府ガ如何樣ナル林業政策ヲ確立
ナサレタノデアルカドウカ(拍手)此點モ御
伺致シタイ、又關稅引上ヲ致スナラバ內
地ノ山林ハ濫伐サルヽト云フコトデアリマ
スルカラ、然ラバ之ニ對シテ如何樣ナル對
策ヲ御執リニナッタカ(拍手)殊ニ五十六議會
ニ於キマシテハ、財界ガ非常ニ惡イカラ、
斯樣ナ際ニ引上グルモノデナイト、斯樣ニ
論議サレタノデアリマスルガ、五十六議會
當時、卽チ昭和四年ノ一月ト今日ト、財界
ハ如何ナル變動ヲ來シテ居リマスルカ(拍
手)若モ民政黨諸君ノ議論ヲ以テ進メルナ
ラバ、今日ノ如キ財界ニ於テ、此關稅ノ引
土改正ヲ行フノ必要ハナイト云フ結論ニ相
成ルノデアリマス(拍手)又一面ニ於テハ
木材關稅ノ引上改正ニ付テハ、外國トノ關係、
卽外交關係モ考慮セナケレバナラヌノデ
アルガ併シナガラ今日五十六議會ニ、ア
レ程反對シタ此關稅案ヲ突如トシテ出サレ
ル以上ハ、相當ノ決心ヲ以テ御出シニナラ
ナケレバナラナイ(拍手)故ニ此點カラ申シ
マスルナラバ、寧ロ沿海州ノ一部ニ止メズ
シテ、亞米利加材ニ對シテモ、南洋材ニ對
シテモ、今囘ノ引上ト均衡ノ取レルダケ引
上ゲナケレバナラヌノデアル(拍手)然ルニ
今日單ニ沿海州ノミニ致シタト云フコト
ハ卽チ幣原外務大臣ノ軟弱外交ニ祟ラレ
テ、斯樣ナル徹底セザル案ヲ出シタモノデ
アルト私ハ斷定ヲ下スノデアル(拍手)又今
日特ニ私ガ御伺致シタイノハ五十六議會
ニ於テ同ジ案ニ向シテ絕對反對ヲ致シナガ
ラ、今日突如トシテ之ヲ御提案ニナッタコト
ハ現政府ハ木材關稅ノ政策ニ對シテ塗替
ヲ致シタノデアル、若クハ我ガ政友會ノ政
策ニ降伏サレタノデアルカ、此點モ明カニ
御伺致シタイ(拍手)苟モ一大政黨、時ノ政
府ハ斯樣ナ風ニ、昭和四年ニ於テハ反對ヲ
致シ、今日又是ト同樣ナ、而モ其當時ヨリ
モ徹底シナイ案ヲ出シタト云フコトハ、國
民ニ向テテ如何樣ヲ申譯ヲ致スカ是ハ私ハ
現政府卽チ民政黨ノ一大罪惡ト言ハナケレ
バナラヌ(拍手)現政府ハ總テノ政策ニ向ッ
テ國民ト公約致シナガラ、之ヲ實行セズ、
又反對ノ結果ヲ來スヤウナコトモ平氣デ致
シテ居ル(拍手)現ニ公債政策ノ如キモ、公
債募集ヲ一切セナイト、斯樣ニ國民ニ約束
シテ置キナガラ、今囘ノ豫算ヲ見マスルナ
ラバ、卽チ失業救濟ノ公債ノ如キ、或ハ鐵
道ノ公債ノ如キ、平氣デ斯樣ナコトヲヤッテ
居ル、併ナガラ是ハ常ニ出鱈目ヲ言フ井上
大藏大臣ニ私ハ御伺ヲシナイ、最モ眞面目
ナル町田農林大臣ハ、私ガ質問ヲ致シマシ
タ總テノ點、特ニ現政府ガ此木材關稅政策
ニ對シテ塗替ヲシタノカ、我ガ政友會ノ政策
ニ降伏シタノカ、此點ニ付テハ特ニ御答辯
ヲ願ヒタイト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣町田忠治君登壇]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=5
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006・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 岩本君ノ只今ノ
御尋ニ對シテ大要私カラ御答致シマス
問題ハ現内閣ノ林業ノ根本政策ニ關スル
御尋モ一ツアリマシタ、就中此度木材關稅
一部ノ改正ヲ致シタコトニ付キマシテノ御
尋ガ中心ノ御質問デアリマス、第一ニ私ガ
御答ヲ致シマス前ニ御諒解ヲ得テ置キタイ
ノハ、此度ノ木材關稅ノ改正ハ、關稅ヲ增加ス
ルト云フ趣意デハアリマセヌ、關稅政策ノ根
本ニ亙ッタ問題デハアリマセヌ、岩本君ノ御
話ノ如ク、主トシテ沿海州カラ入リマス輸
入木材ニ對スル關稅ヲ、現在ノ關稅ト同樣ノ
率ニ之ヲ引上ゲルト云フ意味ニ止リマス
沿海州ノ木材ニ對シテハ從來極メテ安イ
率ノ稅ヲ課シテ居ルカ、然ラザレバ無稅デ
アリマス、何故他ノ諸國カラ入ル同樣ノ木
材ニ向シテハ、相當ノ稅率ヲ課シテ居ルニ枸
ラズ沿海州カラ入ル木材ニ限シテ、特別ニ
低率或ハ無稅ニシテ居ッタカト云フ、其特別
ノ事情ハ私此席デ申上ゲズトモ、皆サンガ
御承知ノ通リデアリマス、沿海州ノ木材ニ
對シテ、殊更ニ低率若クハ無稅ニシテ居ッタ
原因ガ消滅シタ爲ニ、茲ニ一般定率法ト同
樣ノ均衡ヲ得セシムル爲ニ、之ヲ引上ゲタ
ト云フ意味デアッテ、關稅率ヲ引上ゲル意味
デハ斷ジテアリマセヌ(岩本武助君「然ラバ
何故ヤラヌカ」ト呼フ)此意味ニ於テ御諒解
下サレバ、大體私共ノ此度ノ提案ノ趣意ガ
分リマセウ
只今岩本君カラ、然ラバ何故南洋材ニ對
シテヤラヌカト云フ御批評モ承リマシタ、
是ハ一ツノ問題デアリマス、私共モ沿海州
ノ木材ニ對シテ、一般低率ノモノ同樣ノ率
ヲバ南洋材ニ對シテ課シ之ニ對シテ相當
ノ考究ヲ致シマシタガ、御承知ノ通リ數年
ハ次第々々ニ南洋材ノ輸入スル分量ガ減リ
ツヽアリマス、是ガ增加シテ參ッテ內地ノ木
材ニ壓迫ヲ加ヘルト云フ事情ガアレバ考慮
致シマスガ、漸次ニ南洋材ノ入ル分量ガ減ッ
テ居ルガ故ニ、今日直チニ之ヲ改正スル必
要ハ認メナイト云フ趣意ニ依ッテ、是ニハ手
ヲ觸レマセヌ、又亞米利加材等ニ對スル御
質問モアリマシタガ、御承知ノ通リ近年亞
米利加材ガ、內地ノ需要減退ノ關係、之ヲ主ナ
ル原因トシテ、相當ノ數量ガ減ジツヽアリマス
故ニ、沿海州ノ木材ニ向テテ、定率ヲ一般低キ
率カラ他ノ諸國カラ參リマスモノト同率ニ
シ、或ハ殊更ニ無稅ニシテ居リマシタモノヲ之
ヲ有稅ニスルト云フコトハ、一般木材關稅定
率ヲ根柢ヨリ改正シテ、消費者ノ生活ヲ脅ス
ナソト云フ虞ハ斷ジテアリマセヌ、林業政
策ノ根本ニ對シテハ申上ゲルマデモナク
一面ニハ民有林ノ促進ヲ圖ッテ居リマス、其
他內地ノ林業保護、林政ヲ確立スル爲ノ種
種ナル施設ヲ致シテ居リマスコトハ、此處
デ申上ゲ1必要ハナイト思ヒマス、唯數年
前ノ政友會內閣ノ際ニ、此關稅改正案ヲ提
出セラレタ時ニ、民政黨ハ擧ゲテ之ニ反對
シタ、民政黨ノ從來ノ立場竝ニ今日ノ立場
ヲハッキリ申上ゲテ置キマス、民政黨ハ國土
保安、水源涵養、竝ニ生活上ニ必要ナル木
材ノ供給ヲ內地ニ於テ得テ、出來得ルダケ
之ヲ海外ニ需メズトモ宜シイト云フ、大體
ノ林政ヲ立テヽ居ルノデアリマス、唯內地
ノ林業ヲ保護スルガ爲ニ、或程度ノ關稅ヲ
課ケルコトハ認メテ居リマス、從來ト雖モ
木材ニ對シテハ關稅ガアッタノデアリマス、
唯政友會ガ之ヲ提案サレタ當時ニ於テ、經
濟上ノ總テノ點ト、又林業ヲ促進スル點カ
ラ考ヘテ、一面內地ノ林業者ヲ保護スルト
同時ニ、多數國民ノ生活ヲ脅サヌ程度ノ關
稅ヲ課ケルコトニ於テ、民政黨ハ何等異論
ハナイノデアリマス、唯當時提出セラレマ
シタ其稅率等ニ付テ、民政黨ハ之ニ贊成シ
能ハザル理由ヲ申述べテ之ニ反對シタノ
デアリマシテ、根本ニ於テハ再ビ繰返シ
テ申シマス、內地ノ林業ヲ確立スル爲ニハ、
或程度ノ關稅ヲ當分必要デアルト云フコト
ヲ認ムルト同時ニ、一般國民ノ生活ヲ脅サ
ザル程度ニ於テ、消費者ト生產者ノ利害ヲ
調和スル見地ニ立ッテ、吾々ノ政策ヲ執ッテ
居ルノデアリマス(拍手)重ネテ申シマス
此度ノ改正ハ關稅率ヲ高ムル案デハアリマ
セヌ一般關稅率ニ均衡ヲ得セシムル爲
ニ、從來或ル事情ノ下ニ殊更ニ之ヲ低率ニ
シテ居リシモノヲ、現行關稅法ノ其率マデ
之ヲ引上ゲルト云フ意味ニ止ルノデアリマ
ス、尙ホ細カナコトノ數量等ニ付キマシテ
ハ此處ニ政府委員ガ居リマスカラ、政府
委員カラ說明サセマス
〔岩本武助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=6
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007・岩本武助
○岩本武助君 只今農林大臣ノ御答辯ニ依
リマスト、私ガ質問ヲ致シマシタ關稅政策
ニ對スル政府ノ所見ト云フモノハ一切伺ハ
レナイノデアリマスヽ私ノ質問ノ趣旨ハ
今囘ノ改正案ハ沿海州材ノミニ限ッテ、米材
ノ中デモ殊ニ無稅ノモノガアル、又南洋材
モ其通リデアル、斯樣ナモノニ稅金ヲ課セ
ナイト云フコトハ、關稅政策ノ上カラ言ッテ
徹底ヲ缺イテ居ルデナイカ、此質問ヲ致シ
タノデアル、然ルニ此御答辯ハ洵ニ小サ
イ沿海州材ノミヲ見タ御答辯デアリマシ
テ、政府ノ木材關稅ニ關スル全局ノ御答辯
ニハナッテ居リマセヌ、又私ハ何故米材ナリ
或ハ南洋材ノ無稅ノモノニ課稅シナイカト
云フコトヲ御伺致シマスルコトハ、現在米
材ノ輸入總額ノ約七割五分ハ、無稅ノモノ
ガ入ッテ居ルト云フ事實ガ、明カニ物語ッテ
居ルノデアル、又庶民階級ニ今囘ノ引上ハ
何等影響ハナイト仰シヤイマスガ、現ニ輸
出箱ヲ製造スル業者、隨テ之ニ從事スル職
人或ハ紙ノ原料「パルプ」、殊ニ此「パル
プ」ノ問題ニ付キマシテハ、新聞紙ノ關係上
非常ニ重大ナル因果關係ヲ持ッテ居ルノデ
アル、斯樣ナコトヲ考慮セズシテ、單ニ沿
海州材ヲ上ゲタコトハ、沿海州ノモノガ安
カッタノト、若クハ無稅ノモノガアッタカラ
デアル、斯樣ナ無責任ナ御答辯デハ私ハ承
服出來ナイノデアリマス又農林大臣ハ今
囘ノ木材關稅ノ引上、是ハ國土保安ノ上カ
ラ言ウテ、一面又內地ノ木材、外國ノ木材
トノ需要供給ヲ考ヘタノデアルト云フコト
ナラバ、五十六議會ニ於キマスル當時ト
今日トデハ成程其輸入量若クハ木材ノ
單價ト云フモノヽ下落ハアリマスルガ何
等變ヲタ現象ヲ來シテ居ラナイノデアリマ
ス又現內閣ハ或ル意味ニ於テハ、木材關
稅ノ引上ハ贊成ヲシテ居タノデアル斯
樣ニ仰シヤイマスガ、私ハ殊ニ疑問ニ思ヒ
マスルコトハ若シモ現內閣ガ左樣ナ風ニ
此木材關稅ニ付テ良イ考ヲ御持チニナッテ
居ルノナラバ、此改正案ハ何故一般豫算ノ
時ニ御出ニナラナカッタカ、今日此追加豫算
ニ當フテ突如トシテ御出シニナッタノデアル
カ、此裏面ヲ考ヘテ見マスルナラバ、卽チ
競馬法ヲ改正シテ、サウシテ此金ノ一部ト
又木材關稅、沿海州ノモノニ稅金ヲ課ケ
テ是等ノモノヲ一〓ニ致シテ、今日マデ
政府ガ惱ミニ惱ンデ來タ所ノ救護法ノ實施
ノ財源ニシヨウトシテ居ル魂膽ガアルデハ
アリマセヌカ(拍手)卽チ救護法實施ノ爲
ニ此木材關稅ヲ犠牲ニ供シタト云フ明カ
ナ事實ガアルノデアリマス、故ニ斯樣ナ點
ニ付テ農林大臣ニ御答辯ヲ願ヒタイノデア
リマス
〔國務大臣町田忠治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=7
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008・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 岩本君ノ只今ノ
御尋ハ、前ニ私ガ御答シタコトニ依ッテ大要
盡キテ居ルト思ヒマスガ、再ビ皆サンニ申
上ゲマス、此度ハ關稅ノ增率デハアリマセ
又、建前ハ-若シ內地ノ木材業全般ヲ保
護スルガ爲ニ、木材ノ關稅ヲ高メルト云フ
ノデアリマスレバ主トシテ多ク入ル所ノ
亞米加利材全體其他ニ付キマシテ一部、
改正ヲ行フノガ當然デアリマス、併シ此度
ノ提案ハ左樣デアリマセヌ、特別ナル事情
ノ下ニ、沿海州ヨリ輸入スル木材ニ限ッテ殊
更ニ之ヲ安クシテ居ルカ、若クハ無稅ニシ
テ居リマシタモノニ對シテ、其特別ナル事
情ガ消滅シタルガ故ニ、之ヲ一般定率ト同
ジ率ニ引上ゲテ平均ヲ得セシメルト云フノ
デアリマス、之ニ依ッテ何故ニ內地ノ木材ヲ
保護セヌカト云フ今御批評ガアリマシタガ、
之ニ依ッテ間接ニ樺太竝ニ內地材ニ相當ナ
ル好影響ヲ及ボスコトハ勿論デアリマス
若シ岩本君ノ御趣意ニ依リマスト、吾々ガ
前々議會ニ於テ、之ニ反對シタ理由ヲ以テ
木材關稅ノ改正ヲ見レバ寧ロアノ時ニ高
メタモノヲ引下ゲルガ宜シイデハナイカト
云フ御議論ニ或ハナルノデアリマス、是モ
相當考ヘテ居リマス日本ノ材業ノ前途、
消費者ノ立場ヲ調和スル爲ニ、現在ノ稅率
ガ果シテ適當デアルヤ否ヤニ對シテハ考慮
致シテ居リマス、併シ經濟界全體ノ事情竝
ニ特別ナル理由ニ依ッテ、內地木材ガ就中低
落シテ居ル、此事情ニ依ッテ今直チニ之ヲ改
正スル必要ハナイト、斯樣ニ信ジテ居リマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=8
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009・岩本武助
○岩本武助君 簡單デアリマスカラ此席カ
ラ御許ヲ願ヒタイ、只今農林大臣ノ御答辯
ハ、私ノ質問致シマシタ趣意ト悉ク喰違シテ
居リマス、是レ以上質問致シマシテモ議論
ニナリマスカラ委員會ニ讓リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=9
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010・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 多木久米次郞君
〔多木久米次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=10
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011・多木久米次郎
○多木久米次郞君 本問題ニ付キマシテ一
言政府ニ御尋致シタイノデアリマス、只今
大藏省ノ政務次官、又農林大臣ノ御說明モ
承リマシタケレドモ、私ハ此山林保護ト云
フ精神ハ洵ニ結構ト思ヒマス、併シ果シテ
此目的ヲ達スルヤ、其效果ノ如何ニ付テ大
ナル疑問ヲ持クテ居ル一人デアリマス、何
トナレバ皆サン御承知ノヤウニ、沿海州
ノ木材ハ御承知ノ通リニ皆輸出燐寸ノ材料
トナリマス而モ輸出奬勵ノ政府ノ主義ト
致シマシテ、其材料ノ價ヲ高メルト云フコ
トガ、果シテ國益デアルカドウデアルカ、產
業奬勵ノ上ニ效果ヲ得ルカドウカト云フコ
トガ、大ナル疑問デアリマス、今ヤ人絹ノ
創成ノ場合デアリマシテ、同業者ハ苦心慘
憺漸ク之ニ萠芽ヲ現サントスル場合ニ、其
木材ノ關係ヲ是ヨリ高クスルト云フコト
ハ、果シテ產業奬勵ノ目的ニ合スルヤ否ヤ、
大ナル矛盾デナカラウカト、私ハ遺憾ニ考
ヘル次第デアリマス、更ニ燐寸ノミデハア
リマセズ、此輸出ノ材料ト致シマシテ、木
材ノ使用ノ多大デアルト云フコトハ申スマ
デモナイコトデアリマス、況ヤ今日日本
ノ山林ハ、濫伐荒廢ニ委セマシテ良材ヲ
得ルコトノ洵ニ困難ナ場合デアリマス、然
ルニ拘ラズ、如何ニ國際間ノ關係ガアルカ
ハ分リマセヌガ、國產ノ奬勵ヲ阻碍シテマ
デモ、斯ル矛盾ナル改正ヲスル必要ハ何處
ニアルカト云フコトヲ、吾々ハ疑ハザルヲ
得ナイノデアリマス、然ルニモ拘ラズ、政
府ガ此山林保護ノ政策ガ、如何ナル準備デ
計畫ヲ爲サルカト云フコトヲ、大ニ何ヒタ
イノデアリマス、政府ガ此緊縮政策ナルニ
モ拘ラズ、全國ニ亙ッテ高率ノ關稅ヲ課シ
テ、木材ヲ高價ニ導カントスルコトハ、見
セ金バカリ多クシタケレドモ、兎ニ角實際
行ハレヌトシテ、今ヤ法律ニ現レントスル
場合デアリマス、而モ又政府ハ外客ヲ引入
レテ日本ヲ紹介スルト言ハレル、一種ノ財
源ヲ得ントスル計畫ハ是ハ美ナリト言フ
ベキデアルサレバ私ハ此日本ノ風光ト云
フモノハ一局部ニ國立公園ト云フヤウナ
モノヲ置カズ小部分ヲ公園ニ爲スヨリ
モ、日本全體ヲ公園ニシテ、而モ瑞西ノ如
ク此天惠ヲ利用シテ、世界ノ旅客ヲ引入レ
ル所ノ計畫ガ必要デハナイカト考ヘルノア
リマス、サレバ此山林ノ經營ニ當ノテハ
風致ノ山林ト又材料ノ山林ト相竝行シテ行
ハレル所ノ、政府ニ意思アリヤ否ヤト云フ
コトヲ御尋致シタイノデアリマス、日本ノ
櫻ハ世界ニ誇ルベキ花デアル、合セテ又木
材ノ如キモ、實ニ此日本ノ最モ貴重ナル所
ノ材料デアル、サウシテ最モ大切ナ政策デア
ル一局部ノ國立公園ヲ希望スルヨリモ、
少クモ此鐵道若クハ電車ノ沿道ニハ櫻ノ
如キ又楓ノ如キ、是等ノ樹木ヲ殖エテ世
界ノ旅客ヲ引入レル爲ニ、文國民ヲシテ此
山林ノ美觀ニ依ヲテ思想ヲ善導シ、又地方ノ
改善ヲ圖ルト云フコトノ意思ガアルカドウ
カ、是ハ重大ナル事デアルト考ヘマス、御承
知ノヤウニ、瑞西ノヤウナ彈丸黑子ノ所デ
モ、風光ヲ利用シテ年々少クトモ七百万圓
以上ノ、而モ年々數十万人ノ旅客ヲ、此風光
ヲ利用シテ一種ノ富ヲ作ッテ居ルト云フコ
トハ皆サン御承知ノ通リノ次第デアリマ
ス、而モ日本ノ如キ斯ル財源ニ貧弱ナル國
家ト致シマシテハ總テノモノヲ生產的ニ
利用スルト云フコトガ必要デアル、洵ニ僅
僅タル費用ニ依ッテ國家百年ノ大計ヲ爲シ
得ル次第デアル、而モ又朝鮮ノ如キハ、丁
度日本デ
〔山崎達之助君「議長々々」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=11
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012・藤澤幾之輔
○議長(藤澤殘之輔君) 山崎君ニ申上ゲマ
スガ議長ハ多木君ニ藥品ノ携帶ヲ許可シ
テ居リマス、ドウゾ······(笑聲)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=12
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013・多木久米次郎
○多木久米次郞君(續) 御安心下サイマ
ヤニ餘リ妨害スルト懲罰ニ付シテ貰ヒタ
イモノデス···
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=13
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014・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=14
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015・多木久米次郎
○多木久米次郞君(續) 君ニ尋ネル譯デナ
イカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=15
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016・藤澤幾之輔
○議長 藤澤幾之輔君)私語ヲ禁ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=16
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017・多木久米次郎
○多木久米次郞君(續) 朝鮮ハ御承知ノ通
リニ、日本ヨリ一箇月バカリ氣候ガ晩イノ
デアリマス、丁度日本デ瀾漫タル櫻ヲ見テ、
更ニ朝鮮ノ櫻ヲ探勝スルコトガ出來ル、是
モ併セテ鐵道沿線ノ各方面ニ、櫻ノ如キ又
楓ノ如キ、其他之ニ適合シタル所ノ山林經
營ニ付テ、政府ハドレホド〓究シテ居ラレ
ルカ、今マデ準備ガナケレバ瑞西ノ經營
ノ方法ヲ〓究スルヤウニシテ、技師ヲ聘ス
ルコトモ大事ナ問題デアラウト考ヘル次第
デアリマス
第二ニ伺ヒタイノハ、關稅ノ政策ハ財源
ヲ得ルノガ目的デナクシテ、自國ノ產業ヲ
保護スルコトガ目的デアルト云フコトハ
申上ゲルマデモナイ次第デアリマス、サレ
バ今日此外產ノ壓迫ヲ受ケ、極メテ困難ヲ
感ジテ居ル所ノ者ニ對シテコソ、關稅ヲ以
テ保護スルコトガ、急務中ノ急務デアルト
云フコトハ、皆サン御同感ノ次第ト考ヘマ
ス、卽チ我國ノ人口ガ殖エルコトハ國家
ノ爲ニ慶賀ニ堪ヘヌガ、食糧政策ガ誤クテ居
ル爲ニ、食糧ノ缺乏シテ居ルコトハ皆サ
ン御承知ノヤウナ次第デアリマス、然ルニ今
ヤ世界的ノ小麥ノ豐饒デ、加奈陀ト云ハズ、
亞米利加ト云ハズ、一石五圓、七圓ノ小麥
ガ滔々トシテ入リツツアルノデアリマス、
而モ驚ク勿レ、輸入ガ年々一億圓以上ニ增
加シツツアル、而モ關稅ハ僅カ一圓五十錢
デアリマス、而モ此一圓五十錢ナルモノハ
金解禁ノ結果、是マデ百二十圓デ輸入シタ
モノガ、今ヤ硬貨ノ騰貴ニ依シテ、百圓デ輸
入スルト云フ結果ニナッテ居ル、サレバ一圓
五十錢ノ關稅モ、殆ド水ニ泡ノ狀態ニナッテ
居リマス、飜テ小麥ハ御承知ノ通リ三百万
町ノ畑地ヲ持チ-三百万町ノ水田中ニハ
百五十万町ノ良作ガ出來マスニモ拘ハリマ
をや、全ク政策ノ宜シキヲ得ヌガ爲ニ、僅
カ-五十万町歩カラ五百万石ノ收穫ヲ得
ラレナイ爲ニ、洵ニ美田ヲ持チナガラ草
ヲ生ヤシテ農家ハ農業ガ發達セズ生活ニ
困難シテ居ル、而モ貿易ノ不均衡ヲ見ナガ
ラ、之ヲ奬勵セヌト云フ、誤〓タル政策ヲ實
ニ遺憾ニ感ジテ居ル次第デアリマス、皆サ
ンモ恐ラク御同感ト信ズル次第デアリマス
(拍手)而シテ御承知ノ通リ外國デハ、加奈
陀ト云ハズ、濠太刺利、亞米利加ハ皆五
十馬力、七十馬力、百馬力ト云フヤウナ動
力デ、耕耘ト云ハズ、苅入ト云ハズ、種播
キト云ハズ、總テノ大ナル靈妙ナル機械ヲ
應用シテ、所謂石油ヤラ電氣ヲ以テカラニ
小麥ヲ生產シテ居ル次第デアリマス、ッ
ノ農場ニ於テ、此農場ハ五十万圓、アフ農
場ハ百万圓、此農場ハ二百万圓、三百万圓
ト云フ小麥ヲ生產シテ居ル、然ルニ日本ノ
小麥ハ如何デアリマスカ、マルッキリ盆栽的
デアル斯ノ如キ大仕掛デアル、而モ日本
ノ如キハ米ニ致シテモ一石ニ付キ七圓モ八
圓モニナッテ居ル、負擔ガ高イノミナラズ、
總テノモノニ於テ能率ガ擧ラヌ、又農林省
ガ機械ノ發明改良奬勵ヲシタト云フコト
ハ吾々ハ寡聞ニシテ聞カヌト云フ狀態デ
アリマス、何ヲ以テ生產費ヲ減ジテ、何ヲ
以テ對抗スベキデアリマセウカ、伊太利ノ
如キ二等國ト雖モ、政策宜シキヲ得マシタ
ガ爲ニ、米ノ如キハ四斗六升モ增シテ居ル、
獨逸ノ如キモ、日本ガ一石內外一段步カラ
取ルノニ、一石七斗カラ二石平均モ取ッテ居
ル、農林省ノ面目ハ何處ニアルカ、國家ノ
不利益是ヨリ大ナルモノハナイノデアリマ
ス、サレバ如何ニ人口ガ增加致シマシテモ、
二十年、三十年ノ間、日本ノ領土ニ於テ自
給自足デ食糧ヲ充タスコトハ易々タルモノ
デアルト思ヒマス、況ヤ朝鮮ニ於テ三百万
町步ノ畑ヲ持シテ居ル、併シ之ヲ奬勵シテ宜
シキヲ得ヌガ爲ニ、朝鮮デスラモ手間ハ安
ク仕事ハ無イ、而モ無盡藏ナル土地ヲ殆ド
遊バスガ如クニシテ、年々支那ヨリ數百万
石ノ栗スラ買フ、農業政策ハ果シテ何處ニ
アルカト考ヘル、而モ與黨ト云フモノハ
國家百年ノ經綸ヲ考ヘテ行カナケレバナラ
又、吾々ノ意見ヲ能ク聽イテ實行スルヤウ
ニ努メルコトハ與黨諸君ノ責任デアル、而
シテ斯ノ如クニシテカラニ買喰ヒヲスルコ
トヲ恥トモセズ、國力ノ衰退ヲ顧ミナイト
云フコトハ洵ニ遺憾デアリマス政府ハ此
困難ナル農家ノ狀態ヲ如何ニ見テ居ラレル
カ、小麥ノ關稅ヲ大ニ改正スベキ必要ヲ感
ジテ居ルカドウカト云フコトヲ伺ヒタイ、
殊ニ澱粉ノ如キモ、北海道ニ於テモ亦本州
各方面ニ於テモ、稍〓發展セントスル場合
ニ於キマシテ、而モ年々五百七十万圓ト云
フヤウナ輸入ヲ增加セントスル次第デア
ル、是等ヲ政府ハ如何ニシテ保護發達ヲ圖
ル積リデアルカ、關稅ニ付テドウ云フ
御考ヲ持ッテ居ルカ、菜種ノ如キモ年々三
四千万圓ノ大ナル輸入ガアリマスガ、
是ハ政府ハドウ云フ風ニ見テ居ルカ-
良心ガアルナラバ-僕ノ話ヲ謹聽スル人
間ガ賢イト思ヒマス、此菜種ト云フモノ
ハ、世界ノ旅客ヲ引ク上ニ於テ、或ル場
合ニ於テハ櫻以上ニ力ガアル、一方ニ於
テハ旅客ヲ引キ、又一方ニ於テハ非常ナ利
益ヲ持ッテ居ルニ拘ラズ、三千万圓、四千万
圓ト云フ輸入ノアルノヲ如何ニ考ヘテ居ル
カ、政府ハ無感覺ノ政策デハナイカ、是ハ
如何デアリマス國家ガ貧乏スルコトヲ諸
君等ハ喜ンデ居ルノカ、ドウカ、少シ愛國
心ガアルナラバ、僕ノ話ガ下手デモ、立派
ナ精神ノアル所ヲ能ク聽イテ玩味スルコト
ガ必要デアリマス而モ此米ノ如キモノ
モ、今日ノ如キ狀態デアルナラバ、此米ノ
產額ト云フモノハ段々減退スルヨリ仕樣ガ
ナイ、是ハ實ニ恐ルベキ結果ヲ來スヨリ外
ナイノデアリマス、而モ今日ニ於テ始メテ
數十年叫ンダ自給自足ガ出來ヤウカト云フ
場合ニ、アリモセヌノニアルヤウニ、餘リ
モセヌノニ餘ルヤウニ、無暗ニ宣傳シテ、
而モ御用新聞ガ尾鰭ヲ付ケテ米ヲ安クスル
コトニ努メ、將來ノ事ヲ少シモ考ヘナイ今
日デアルト考ヘマス、ソレガ爲ニ昨年ノ如キ
モ、現政府ハ產業合理化、國產愛用ト云フヤ
ウナコトヲ、專ラ宣傳努メラレテ居ルコトハ、
洵ニ感服ノ至リデアル、併ナガラ昨年農產
物ハ幾ラ入ッテ居ルカト云フト、驚ク勿レ、二
億三千万圓ト云フモノガ入ッテ居ル、農產物
ノ輸入ハ、是ハ國產愛用ノ精神ノ除外例デア
ルカ、治外法權デアルカ(「聽エナイト」呼フ者
アリ)聽エナイ筈ヂヤ、騷グノダカラ······現政
府ハ金解禁ヲ斷行シテモ金ハ外ニ出ヌト言
ウテ居ッタガ、四億モ五億モ出テ居ル、其爲
ニ內地デハ戰々兢々トシテ居ル、政府ハ外
米ヲ買フコトヲ屁トモ思テテララ、、小麥ノ
如キモ滔々ト入ッテ居ル、內地デハドレ程奬
勵シテ居ルカ、些トハ政府諸君ヲ鞭撻スル必
要ガアル、第一米ガアリモセヌノニアルヤ
ウナ、欺瞞的ナ報告ヲスルコトガ、是ガ農產物
ニ大ナル害ヲナシテ居ルト云フコトヲ諸君
ハ考ヘナケレバナラヌ、朝鮮ハ昨年ハ千九
百二十四万石モ取ッタト言フ、之ニ私ハ大ナ
ル疑問ヲ持ッテ居ル、何トナレバ百六十五万
町步ノ中十五万町步ハ一穗一粒モ取レヌ所
デアル、其他ノ百五十万町步ニ對シテ千九
百二十四万石ト云フト、一段ニ付テ一石五
六斗モ取ッタヤウナコトニナル、併シ其事實
ハ大ナル間違ダト云フコトハ疑フベカラザ
ル次第デアリマス、何トナレバ朝鮮ハ一段
步ニ付キ僅ニ六十五錢ノ肥料シカ入レテ居
ラナイ、棉ヲ買ッタ分シカ紡績絲ハ出來ヌト
云フノガ正則デアリマス、然ルニモ拘ラズ、
如何ニ農產物ヲ下ゲルガ爲トハ云ヘ、千九
百二十四万石モ取レルト云フ報〓ヲシ、合
セテマダ八百万石モ輸入スルガ如キ宣傳ヲ
サレテ居ル農林省亦之ヲ公然ト發表サレ
テ居ルガ、此八百万石ニハ大ナル疑問ガア
ルト云フコトハ言フマデモナイコトデア
ル、御承知ノ通リニ昨年ノ十月ヨリ十二月
迄ニデモ四百万石以上、又更ニ一月カラ今
日迄四百五十万石ノ米ヲ買ッテ居ル次第デ
アリマス、而シテ內地ハ現ニ外米ハ入ラズ、
又粟モ入ルコトガ百何十万石モ少ナサウナ
狀態デアル、米ノ置場ニモ困リ、棄場ニモ
困ルト云フヤウナ宣傳ヲシテ居ル、米ハ一
昨年ノ凶作ヨリモ、マダ輸入ガ餘リ殖エナ
イ狀態デアル今日ニ於テ三百万石內外來
テ居ル是モ一昨年ノ輸入ニ比ベルト僅
ニ十五万石內外ヨリ來テ居ナイデハナイ
カ、而モ後カラ澤山來ルヤウニ言ウテサ
ウシテ米ノ價格ヲ下ゲテ居ルト云フ次第デ
アリマス、是ハ實ニ大ナル罪惡ト吾々ハ信
ズル次第デアリマス、現政府ハ實ニ農民ノ
敵トモ云フベキ狀態デアリマス農民殺シ
ノ政策ト言フ外ナイト思フ、而モ一方ニハ
市場ノ價格ヲ上ゲテ消費者ノ負擔ヲ輕クシ
ナイ、米ハ下ゲヌ、百姓ハマルデ火責水責
デアリマス自分等ガ選擧ヲシタノニ吾
吾ノ演說ニ妨害スルヤウナ代議士ヲ出シタ
ト云フコトハ農家ヲシテ失望落膽セシム
ルノデナカラウカト思フ
ソレデ此日本ノ米モ亦保護ヲセナンダナラ
バ大ナル衰退ヲ來ス、何トナレバ諸君ガ御承知
ノ通リ、日本ノ米ハ一年ニ一度シカ穫レヌ、熱
帶國ニ於テハ、暹羅ト云ハズ、西貢ト云ハズ、一
年ニ六遍ツツ穫レルノデアル、每日植エテ
每日刈取ッテ居ルノデアリマス、六十日經テ
バ成熟スル米デアリマス、然ルニ日本ハ一
遍ヨリ穫レナイ、然ルニ日本ノ米ヲ保護セ
ズ、而モ稅金ハ高イト云フ今日デアル此
農家ノ泣聲ガ諸君ノ耳ニハ入ラヌカ知ラヌ
ガ、吾々ハ同情ニ堪ヘヌ次第デアリマス
而モ諸君御承知ノ通リニ、旣往ノ實驗ニ
依ッテ將來ヲ考入ルナラバ、今日六千五百万
ノ人間ハ、更ニ四五十年ヲ待タズシテ六千
五百万人ノ人間ガ殖エルト云フコトヲ知ラ
ネバナラヌ、內地ダケデハナイ、朝鮮臺
灣モ勿論ノコトデアル、隨テ又米ノ八千万
石内外、小麥ノ千万石ヤ二千万石更ニ要ス
ルト云フコトヲ知ラナケレバナラヌ、然ル
ニ今日アル事ヲ知ッテ明日ヲ考ヘテ居ラヌ
デハナイカ、唯農民ノミヲ犧牲トシテカラ
ニ、現ニ政府ガ小作條例ノ如キ、マルデ農
村ヲ攪亂スルヤウナ政策ヲ執ッテ、總テ國
家事務ヲ忘レテシマッテ、黨利黨略ノ外ナイ
デハナイカ、唯國民ニ熱湯ヲ呑マスコトヨ
リ外知ラヌ、國利民福ヲ知ラヌ、國際間ノ
狀態ハドウデアル、實ニ容易ナラヌ時デ
アル、國家ノ產業ヲ破壞シテシマッテ、
サウシテ恬然トシテ恥ヂナイト云フコト
ハ何ト云フ事デアル、吾々ハ何人ガ天
下ヲ取ッテモ宜シイ、國利民福ヲ增進スル
內閣ナラバ、何時デモ與スル次第デアル、
デアルカラ現内閣ノ此不人望ナル此罪惡
ヲ消滅スル上ニ於テモ、吾々ノ考ヲ聽イテ
實行スルコトニ努メルコトガ、現政府ノ生
命ヲ延長サス所ノ良策ト云フコトヲ知
ルガ宜シイ、而モ何レノ政府モ、農業
ヲ盛ンニスルト云フコトガ大事デアル然
ルニ農業ヲ滅ボスコトヨリ外考ヘテ居ナ
イ、現ニ三百万石ノ米ヲ買ウテ、而シテ
其價ハ七千万圓內外デアル、此現政府ガ買ウ
タ所ノモノガ灰ニナッテモ、只ヤッテシマッ
テモ、七千万圓內外ノ損デアル筈ナノニ
一億五千万圓モ損ヲシテ居ルト云フコト
ハ諸君ハ喜ンデ居ルカ、ドウ云フヤウニ
思フカ、若シ此米穀調節法デモ廢スルナラ
バ、現政府ノ如キ歲入ガ減テ苦ンデ居ル政
府ガ、此惡稅タル地租ヲ免ズルコトガ出來ズ、
是ガ爲ニ馬劵マデモ高クシテ、サウシテ賭
博ノ錢デ僞善ヲ行フト云フヤウナ陋劣ナル
政策ヲ行フ必要モナイ次第デアル諸君等
ガモウ少シ〓心ニ此國家ノ利益デアルト
カ、日本ノ國利民福ノ增進デアルトカ云フ
コトヲ考ヘルコトガ大切デアリマス、言フ
マデモナク實驗ニ依ッテ皆サンガ御承知ノ
通リニ、戰爭中露國へ世界的日本ノ豪商連
ガ七千万圓モ貸付ケタ、ソレガ如何デアル
カ、露國ノ戰敗及政變ニ依ッテ、其七千万圓
ハ拂フコトガ出來ナイ、ソレデ其損害ハ政
府ガ引受ケテ、國ノ損害トシタト云フコト
ハ、皆サン御承知ノ通リデアル
戰爭中ニ濡手ニ粟ヲ摑ンダガ如キ船成金
ガヽ一朝平和克復スルヤ、一噸三十圓モシ
ナイ船舶ニ百五十圓モ貸シテ損ヲシテ、總
額三千五百万圓ノモノニ對シテ、兩來十年
鐚一文モ入ラヌト云フ狀態デアル金持ガ
船ヲ動カセバ補助、金持ガ製鐵ヲスレバ補
助、金持ノ三人五人ノ爲ニ犧牲ヲ拂フコト
ダケガ、與黨タルノ責任デアルカノ如ク人
ガ誤解シ易イ狀態デハナイカ、而モ此米ガ
十圓下ルト云ヘバ、農家ハ六億五千万圓
農林省デ調ベテ見テモ旣ニ農產物ガ下落
ヲシテ十二億五千万圓ト云フ損ヲシテ居,
テ、負擔ハ輕クナイ、如何デアリマスカ、
年利五朱ト見積レバ、農家ハ二百五十億万
圓ト云フ大ナル貧乏ヲシテ居ル次第デアリ
マス、實ニ氣ノ每ナ狀態デハアル、是ハ全ク
政策ノ犠牲デアル悲中ノ悲、慘中ノ慘タ
ル東京ノ震災ノ損害ハ五十億万圓デアル
農家ノ損害ハ〓日ソレニ對スル五倍ノ損害
デゴザイマス、而モ東京ノ復興ハ農民ノ血
ヤ淚ニ依シテ完成サレタ、農村ノ泣聲ハ政府
當局ノ耳ニモ入ラヌデハナイカ
ソレデ此關稅モ政府ガ自給自足ヲ唱ヘテ、
サウシテ二圓ノモノヲ一圓ニシタト云フコ
トハ、マダ許スベキデアルガ、併ナガラ是
ハ十月限リデアル、而モ又此外米ハ認可制
ヲ以テ輸入スルニモ拘ラズ今滔々乎トシ
テ入リツヽアル一方ニ於テハ過大ナル收
穫アルガ如ク宣傳ヲシテ而シテ又裏面ニ
於テハ認可制ニアル外米ヲ輸入スルトハ何
事デアルカ、賢明ナル奇智變通ニ富ンダ所
ノ農林大臣ハ國產愛用ヲ唱ヘナガラ外米
ノ輸入ヲヤッテ居ル、是ガ國產獎勵ノ所以デ
アルカドウカ、農村ヲ滅ボシツヽアル然
ラバ此十月以後ニハ米ノ關稅ヲ如何ニスル
御考デアルカ、是ハ勅令デ以テ時々突發的
ニヤルモノデアッテ、國民ハ安心出來ヌカ
ラ、此際此困難ナル事情ニ鑑ミテ、國利民
福ヲ增進シテ、國家百年ノ大計ヲ考ヘテ、
賢明ナル農林大臣ハ、自分ノ職責トシテモ、
農民ノ救濟ノ上ニモ、又貿易ノ均衡ヲ保ツ
上ニモ、現政府ノ命ヲ保ツ上ニモ、此關稅
改正ノ誠意ガアルカ、御伺スル次第デアリ
マス
〔國務大臣町田忠治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=17
-
018・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 多木君ノ關稅ニ
關スル御質問ハ其前岩本君ニ御答辯申上
ゲタコトヽ大體一樣デアリマスルカラソ
レニ依ッテ御承知ヲ願ヒマス、其他農業政
策、有ユル重要問題ニ付テノ御尋ガアッタヤ
ウデアリマスガ、一寸私ニ聽取レヌ所モア
リマシタガ故ニ、篤ト速記錄ヲ拜見シタ上
ニ御答辯致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=18
-
019・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 鷲野米太郞君
野米太郞君登発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=19
-
020・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君 私ハ主トシテ人絹ノ關稅
改正ニ關聯シテ伺ヒタイト思ヒマス、此人
絹關稅ヲ百二十五圓カラ五十圓ヲ引下ゲマ
シテ、七十五圓トシタト云フコトハ四割ノ
引下ニナッテ、非常ニ大キナ引下ノヤウニ見
エルノデアリマスルケレドモ、事實ハサウ
デナイノデアリマス、私共ハ現在ノ人
絹會社ノ收益ノ狀態カラ見マシテモウ
少シ思切ッタ引下ヲスルノガ當然デアラウ
ト考ヘルノデアリマス、織物關係ノ業者
ガ人絹ノ關稅ノ引下ト云フコトヲ、非常ニ期
待致シテ居ノタノデアリマス、ソレハ此樣ナ
不徹底ナ引下デハナクテ、モウ一層進ンダ
引下ヲ希望致シテ居ッタノデアリマス、所ガ
此樣ナ不徹底ナ引下デアルバカリデハナク
テ、關稅引下ト交換條件ト致シマシテ、大キ
ナ、政府ハ織物業者ニ不利ナ約束ヲ人絹會社
ニ對シテシテ居ルヤウデアリマス、ソレハ
保稅工場ガ現在ニ於テハ私設ノモノ五ツヲ
許シテ居リマスルモノヲ、人絹織物業者ハ、
殊ニ輸出人絹織物業者ハ保稅工場ノ增設
ヲ政府ニ對シテ屢〓陳情シ申請ヲ致シテ居ッ
タノデアリマスルガ、人絹會社ガ不利益ニ
ナルト云フ所カラ之ヲ阻止シテ居ッタ、所ガ
今度人絹關稅ノ引下ニ當リマシテ、人絹製
造會社ハ關稅ノ引下ニ對シテ猛烈ナル反對
ノ運動ヲ試ミルト云フト、商工當局ガ爲サッ
タノカ、大藏當局ガ爲サッタノカ存ジマセヌ
ガ、政府ハ人絹製造會社ニ對シテ、關稅ノ
引下ハ四割ヲ斷行スル、ケレドモ其代リ反
對ノ代償トシテ、保稅工場ヲ現在ノ五ツ以
上ハ將來絕對ニ許サナイト云フ交換條件ヲ
提出サレテ、ヤット人絹製造會社ノ反對ヲ阻
止スルコトガ出來タト云フコトデアルノデ
アリマスルガ、果シテソレガ事實デアルカ
ドウカト云ブコトヲ伺ヒタイ是ハ事實ラ
シイノデアリマスルガ、是ガ事實ト致シマ
スルナラバ、實ニ私ハ由々シキコトデナイ
カト考ヘルノデアリマス、一ツニハ折角保
稅工場法ト云フモノガアッテ、或一定ノ條件
ヲ具備シタモノニ對シテハ保稅工場ノ設
置ヲ許スト云フコトガ法律デ定ッテ居ルノ
デアル、勿論是ハ申請ニ依。テ特許スルノデ
アルケレドモ、是レ以上許サヌト云フ條件
ヲ人絹製造會社ニ對シテ交換的ニ與ヘルト
云フコトハ政府ノ不見識デアルバカリデ
ナクテ、將來我國ノ人絹輸出織物業者ヲ保
護シ、之ヲ助長シテ行カナケレバナラヌト
云フコトハ是ハ我國ノ對外輸出貿易ノ促
進ノ上カラ考ヘテモ、然ルベキコトデアラ
ウト思フノデアリマス、現在我國ノ人絹織
物ハ駸々トシテ對外的ニ進出シテ、非常ナ
勢ヲ以テ今日ニ至ッタノデアリマスルケレ
ドモ、若シ斯ウ云フヤウナ方法ヲ執リマシ
テ、保稅工場ハ五箇以上ハ將來許サナイト
致シマスルナラバ、現在保稅工場ニ關係シ
テ居ル所ノ人絹織物輸出業者ト云フモノハ
有利デアリマスルケレドモ、然ラザルモノ
ハ非常ナ不利ナ立場ニ立タザルヲ得ナイ
ノデアリマスルガ、政府ハ之ニ對シテ如何
ナル御辯明ガアルカ、此點ヲ御伺致シタイ
ト存ズルノデゴザイマス、私ハ人絹關稅ハ
尙ホ二十五圓位引下ゲテ、百二十五圓ヲ七
十五圓削ッテ、五十圓ニスルノガ當然ト思ッ
テ居ルノデアリマス、將來ハ又進ンデ無稅
ニシナケレバナラヌモノト考ヘテ居ルノデ
アリマスルケレドモ、我國ノ人絹會社ノ技
術ノ餘リ進マナイ所ノ、外國ノ特許ヲ買ヴ
テ來テ、ソレヲ眞似シテヤッテ居ル所ノ、外
國ノ發明特許ヲ移入シテヤッテ居ル所ノ現
在ノ我國ニ於テハ、無稅ニスルト云フコト
ハ非常ニ人絹會社ニ對シテ脅威ヲ與ヘル
コトデアルノデアリマスルカラ、ソコマデ
ハ現在ニ於テハ出來ナイノデアリマスルケ
レドモ、五十圓位ニスルノハ當然デアラウ
ト考ヘルノデアリマス、現在此關稅ヲ引下
ゲラレテモ、織物業者ハ帶ニ短カシ襷ニ長
シト言ッテ、何等之ヲ喜ンデ居ラヌノデアリ
マスルガ將來尙進ンデ政府ハ或ハ五十圓
すり、或ハ四十圓ナリニ、之ヲ引下ゲル所
ノ意思ハナイカ、又我國ノ人造絹絲製造及
人絹織物業ト云フモノハ、我國ニ適當致シ
テ居ルノデアリマス、一體日本ノ人間ハ纎
維工業ニ適シテ居ルノデアル、人絹工業ハ
我ガ日本ニ適當シタ工業デアラウト考ヘル
ノデアリマスカラ、是ハ大ニ助長發達セシ
メナケレバナラヌノデアリマスケレドモ
現在ノ我國ノ人絹製造ノ技術、或ハ〓究ノ
程度ニ於テハ、ドウシテモ外國、卽チ獨逸ヾ
亞米利加、伊太利、佛蘭西アタリナドト競
爭スルコトハ出來ナイ、我國ハ紡績業ニ適
當シテ居ルト同時ニ、人絹絲ノ製造工業ニ
我國ハ適當シテ居ルノデアルガ、其根本ニ
遡ッテ行ッテ、人絹ノ製造ニ關スル〓究發明
ニ關シテ、根本ノ方針ヲ決メテナサッテ居ル
カドウカ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス、實ハ
私ハ大シタコトヲシテ居ナイト考ヘルノデ
アリマス、先般商工次官ノ御紹介ニ依リマシ
テ私ハ橫濱ノ國立絹業〓究所ヲ視察致シ
マシタ、他ノ目的モアッタノデアリマスケ
レドモ、人絹ニ對シテドウ云フ〓究ヲシ、
調査ヲシテ居ルカト云フコトヲモ調ベタイ
ト思ッテ行ッタノデアリマス、所ガ第一部ノ
角替技師ガ主任ニナリマシテ、非常ニ〓究
致シテ居ルノデアリマスケレドモ、亞米利
加デアルトカ、獨逸、伊太利トカ云フヤウ
十、先進國ノ壘ヲ摩スルヤウナ〓究ハナク
テ、唯外國ノ優秀ナル所ノ人絹ガ出テ來テ、
日本ノ生絲ニ對シテ一大脅威ヲ與ヘテ居ル
ト云フ關係ニナッテ居ルカラト云フコトヲ
非常ニ心配シテ、其絲ノ分柝トカ、色ミナ
モノヲ調ベテ居ッタノデアリマス、人絹ノ製
造〓究ヲ如何ニスルカ、獨逸ナリ伊太利、
佛蘭西等ニ對抗スルダケノ、人絹ノ根本ノ
〓究方針ト云フコトハ、執テテナイト私ハ
考ヘマスル、今日マデノ我國ノ人絹製造會
社ト云フモノハ、總テ獨逸ナリ其他ノ諸國
ノ特許ヲ買。(シテ來テ、日本ニ持ッテ來テ、工
場ヲ拵ヘテ、技師ヲ外國カラ雇ウテ來テ、
サウシテ之ヲ日本ノ技師ニ〓ヘテ、初メテ
外國ノ眞似ガ出來タナラバ、非常ニ成功ダ
ト云ッテ、手ノ舞ヒ足ノ踏ム所ヲ知ラナイト
云フヤウナ有樣デアリマスケレドモ、外國
デハ日本ガ目鼻ガ付イテ、ヤット技術ノソコ
マデ進步シタ時ニハ、更ニ外國ニハ非常ニ
進ンダ所ノ人絹ノ發明特許ガ出テ、日本
ハ更ニ外國カラ新シイ特許ヲ買ハナケレ
バ眞似ヲスルコトガ出來ナイト云フヤウ
ナ狀態デアルノデアリマス、私ハ多少化學
工業ニ付テ、或關係カラ色ミナコトヲ調べ
テ、非常ナ興味ヲ持ヲテ居ルノデ、日本ノ人
絹業ト云フモノハ非常ニ有望ナモノデアル
ケレドモ、今日資本家ガ單ニ百万トカ、二
百万トカノ金ヲ出シテ、外國ノ特許ノ分權
ヲシテ來テ、ソレデ得タリ賢シトスル如キ
態度ハ非常ニ國家ノ前途憂フベキモノト
考ヘルノデアリマスガ、政府ハ之ニ對シテ
如何ナル御方針ヲ持ッテ居ルノデアリマス
カ、或ハ工業〓究所ナリ其他ニ於テ、人絹
〓究、發明ニ關スル所ノ大キナ調査ヲシテ
居ルノデアルカ、アルナラバソレヲ御聽カ
セシテ〓キタイノデアリマス
ソレカラ又先日モ絹業〓究所ノ技師ナ
リ其他ノ方々ノ御話ニ依リマシテモ、決
シテ我國ノ生絲工業ト云フモノハ樂觀ヲ許
サナイ、此樣ナ「アセテート」式ノヤウナ優
秀ナ人絹、或ハ改良「銅アムモニヤ」式ノ新
シイ發明ト云フヤウナモノガ出來ル所ヲ見
マスルト、我國ノ生絲工業ト云フモノニ一
大脅威ヲ與ヘルモノデアルト、有力ナル技
術者ガサウ云フコトヲ私ニ話シタノデアリ
マスガ、之ニ付テ町田農林大臣ハ、生絲工業
ノ責任者ト申スコトハ出來マセヌガ、養蠶
ノ方面ノ當ノ責任者デアリマスカラ、我國
ノ生絲工業ノ前途ニ對シテ、人絹ノ脅威ト
云フコトニ付テ、ドウ云フ考ヲ持ッテ居ルノ
デアルカ、人絹ガ如何ニ進ンデモ、我國ノ
生絲工業ニ對シテハ何等ノ影響ガナイト云
フ御抱負デアルカ、其點ヲ明確ニ御答アラ
ンコトヲ御願致シマス、私ハ色〓伺ヒタイ
ノデアリマスケレドモ、餘リ長クナリマス
ルト御迷惑デアリマスカラ、今日ハ簡單ニ
致スノデゴザイマス
〔國務大臣町田忠治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=20
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021・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 私ニ對スル御尋
ハ最後デアリマシタガ、私ノ分カラ簡單ニ
御答致シテ置キマス、人絹ト生絲トノ關係
ニ付キマシテノ御尋デアリマス
人絹ガ我國ニ於テモ歐米各國ト同樣非常
ナル進步、隨テ需要ガ年々殖エテ參ッテ居ル
コトハ能ク承知致シテ居リマス、今後人絹
ニ對シテ更ニ一層ノ改良ガ加ヘラレ其生
產費ガ一層安クナリマスト、人絹ノ需要セ
ラルヽ領分ガ、一層擴張スルコトヽ存ジマ
ス、同時ニ天然絹絲ノ需要、殊ニ我國ニ於
キマシテハ外國貿易ノ大宗ト相成ッテ居
リ我ガ兌換制度ノ基礎ヲ成シテ居ルトマ
デ重視サレテ居ル所ノ、生絲ノ重要產業ノ
將來ニ付キマシテハ、私共モ常ニ色ミノ〓
究モ致シ、我國ノ最モ重大ナル產業トシ
テ、永ヘニ存在スルコトヲ期待シ、確信シ
テ居ルモノデアリマス、御承知ノ通リ人絹
ノ爲ニ生絲ノ需要ガ減タタカ否ヤト云フコ
トニ付キマシテハ、私共ハ斯樣ニ考ヘテ居
リマス、人絹ノ發達ニ依テテ生絲ノ需要ノ增
加スル分量ガ幾分カ減ゼラレタガ、生絲ノ
需要ガ之ガ爲ニ減ズルモノデハナイト事
實ノ上カラ左樣ニ信ジテ居リマス
第二ニハ我國ニ於キマシテ生絲、養蠶、
製絲ノ方面ニ向ッテ、色々ナル改良ヲ加フベ
キ點ガ多々アルノデアリマス、後刻御協賛
ヲ願フ爲ニ提出致シマシタ所ノ蠶絲業組合
法ノ如キモ、其一ツデアリマシテ、之ニ依ク
テ生絲ノ品質ヲ改良シ、生產費ヲ出來ルダ
ケ低廉ニ致シマスルコトニ依ッテ、將來恐ル
ベキ競爭者ト認メラレテ居ル支那ノ生絲ニ
對シテモ、十分對抗スルコトガ出來得ル確
信ヲ持ッテ居リマス、同時ニ昨年以來ノ實例
ニ依リマスト、一時生絲ノ値ガ高カッタガ爲
二、亞米利加ニ於テハ人絹ノ需要ガ著ウク
增加シタニ拘ラズ、昨年以來生絲ノ價格ガ
頗ル低落致シタガ爲ニ、一旦需要ガ人絹ニ
移リマシタモノガ、更ニ生絲ノ價ノ下落ト
共ニ、天然絹絲ノ需要ヲ增シツヽアル事情
ニ鑑ミマスト、今後我國ニ於キマシテ、蠶
業生產費ノ低減其他ノ養蠶、製絲ニ深甚ナ
ル改良ヲ加ヘマスルナラバ人絹ノ發達ト
共ニ天然絹絲モ一層ノ進步發達ガ出來ルコ
トヽ確信致シテ居リマス(拍手)
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=21
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022・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 只今鷲野君ノ
御質問ノ中ニ、人絹ノ關稅百二十五圓ヲ七
十五圓ニ下ゲタノハイケナイ、五十圓位ニ下
ゲナケレバナラヌト云フヤウナ御質問ガア
リマシタ政府ハ此人絹會社ノ發達ニ鑑ミ
尙ホ是ト競爭スル伊太利ノ人絹ノ輸入ト云
フコトニ考慮致シマシテ、四割位引下ゲル
ノガ適當デアルト考へタノデアリマス、尙
ホ人絹ノ發達ニ伴ヒマシテ、將來此關稅ヲ
引下ゲル機會ガナイトハ申シマセヌ、サウ
云フ機會ノアルコトヲ考ヘテ居リマスガ、
今日デハ此位ノ程度ヲ以テ適當ダト考ヘテ
居ルノデアリマス、更ニ保稅工場ノ問題ニ
付テ、何カ政府ガ當業者ト色ミ話合ヲタト云
フヤウナ御質問デアリマシタケレドモサ
ウ云フコトデハアリマセヌ併シ保稅工場
ノ新規特許ニ關スル事ニ付キマシテハ、玆
ニ一言ヲシテ置タ必要ガアルノデアリマ
ス、保稅工場制度ノ目的ハ、輸出品ノ原料
トナル輸入品ニ對シテ關稅ヲ徵シナイデ、
輸出貿易ノ振興ヲ圖ルト云フコトデアルノ
デアリマス、其趣旨ニ基キマシテ政府ガ
大正十二年以來人絹ハ保稅工場ヲ認メテ來
テ居リマスガ、最近ニ至ッテ之ヲ出願スル
者ガ續出シ、若シ之ヲ無制限ニ特許シテ居
リマス時ハ、輸出人絹織物ノ原料トシテ使
用スル內地人絹ハ、外國人絹ニ依ッテ置替ヘ
ラレルコトニナリマシテ、人絹製造業及內
地人絹ヲ使用スル輸出織物製造業者ニ多大
ノ影響ヲ與フベキニ依リ、此際一面只今申
シマシタ如ク、高率ナル關稅ヲ引下ゲマス
ガ、ソレト同時ニ人絹保稅工場ノ新設擴張
ニ關シテモ、愼重ナル態度ヲ以テ之ニ應ゼ
ント考ヘテ居ル次第デアリマス(拍手)
〔政府委員橫山勝太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=22
-
023・横山勝太郎
○政府委員(橫山勝太郞君) 人造絹絲ノ發
明〓究ニ特ニ何カ考慮致シテ居ルコトガア
ルカト云フ御尋デアリマスガ御承知ノ通
リ人絹ハ大正八年以來ノ產業ニ係ルモノデ
アリマス、今日ハ既ニ非常ナル發達ヲ遂ゲ
テ、西洋ノ有力ナル產業各國ニ對シテ對抗
出來ルコトノ狀態ニナッテ居ル、是ニ至リマ
シタト云フコトハ、當業者ノ努力奮勵ノ結
果デアルコトハ勿論、政府ハ之ニ對シテ相
當ノ助成保護ノ實ヲ加ヘタコトガヽ其原因
ニナッテ居ルノデアリマス、卽チ百斤百二十
五圓ノ稅金ヲ課シテ居ノタト云フ如キコト
モ、其一ツノ事例デアリマス、併ナガラ今
日ノ所、人造絹絲ニ關スル發明〓究ノ事項
ニ限ッテ、特ニ政府ガ斯ク〓〓ノ政策ヲ執ッ
テ居ルト云フコトハマダゴザイマセヌ、將
來ニ於テ其必要ニ接シマシタナラバ相當
ノ施設ヲ致ス筈デアリマス、簡單ニ御答致
シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=23
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024・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終リマシ
タ日程第二右議案ノ審査ヲ付託スベキ委
員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=24
-
025・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ議長指名十八名ノ
委目ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=25
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026・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニハ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=26
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027・藤澤幾之輔
○讀長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マヽ、仍テ勤議ノ如ク決シマシタ、日程第
三、船舶積量測度法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス-中村政務次官
第三船舶積量測度法中改正法律案
(政府、提出、貴族院送付)第一讀會
船舶債量測度法中改正法律案
船舶積量測ヲ法中左ノ通改正ス
第一條船舶ノ積量ハ船舶ノ內法容積ヲ
測度シ之ヲ定メ容積ノ單位ハ立方メー
トルトス
第二條乃至第四條、第六條及第七條中「量
噸甲板」ヲ「測度甲板」ニ、「噸數」ヲ「積量」
ニ、「總噸數」ヲ「總積量」ニ「登簿噸數」
ヲ「純積量」ニ改ム
第八條總積量又ハ純積量ヲ噸(三百五
十三分ノ千立方メートル)ヲ以テ表シ
タルモノノ夫夫總噸數又ハ純噸數トス
第九條ノ二主務大臣ハ長二十メートル
未滿ノ船舶ノ積量ノ測度ニ付第二條乃
至第七條ノ規定ニ拘ラス別段ノ規定ヲ
設クルコトヲ得
附則
第一條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之
マルチノ
第二條從前ノ規定ニ依リ測度シタル船
舶ノ總噸數又ハ登簿噸數ハ各之ヲ本法
ニ依リ測度シタル總噸數又ハ純噸數ト
看做ス
第三條從前ノ規定ニ依リ石數ヲ以テ積
量ヲ表示シタル船舶ノ積量測度ニ付テ
ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ積量
ヲ改測スル迄仍從前ノ規定ニ依ル
第四條他ノ法令中登簿噸數トアルハ之
ヲ純噸數トス
第五條船舶ガ本法施行ノ結果登記登錄
ノ變更又ハ抹消ヲ要スル船舶ト爲リタ
ル爲其ノ登記登錄ヲ爲ス場合ニ於テハ
登錄稅ヲ課セズ本法施行ノ際登記登錄
ヲ要セザル船舶ガ本法施行ノ結果新ニ
登記登錄ヲ要スル船舶ト爲リタル爲其
ノ登記登錄ヲ爲ス場合亦同ジ
第六條所有權及船舶管理人以外ノ事項
ニ付登記アル船舶カ本法施行ノ結果登
記スベカラザル船舶ト爲リタルトキト
雖モ仍其ノ事項ニ付登記ノ存スル間其
ノ事項ニ關スル登記及所有權ニ關スル
登記ヲ爲スベキモノトス
船舶ニ設定セラレタル質權ハ該船舶ガ
本法施行ノ結果登記スベキ船舶ト爲リ
タルトキト雖モ其ノ效力ヲ害セラルル
コトナシ
〔政府委員中村啓次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=27
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028・中村啓次郎
○政府委員(中村啓次郞君) 只今上程サレ
マシタル船舶神量測度法中改正法律案提案
ノ理由ヲ簡單ニ說明致シマス、現在船舶ノ
積量ハ百立方呎ヲ以テ一噸ト致シマシテ、
例外トシテ大和型石數船ニ限リマシテ、十
立方尺ヲ一石ト致シテ居ルノデアリマス
卽チ二ツノ單位ニ依フテ測度致シテ居ル譯
デアリマスガ、今般改正度量衡法ノ趣旨ニ
從ヒマシテ「メートル」法ニ依ッテ測度スル
コトニ改メ、依ッテ得タル總積量ハ、從來ノ
百立方呎ニ相當スル所ノ三百五十三分ノ千
立方「メートル」ヲ以テ換算致シマシテ、表
示スルコトニシヨウトスルノデアリマス
是ガ本改正案提出ノ主ナル理由デアリマス、
隨ヒマシテ本案ニ依リマシテ石數ニ依ル
積量ノ表示方法ハ今後存在セザルコトニ
ナリマスガ、本來石數船ハ過渡的ノ存在ニ
過ギナイモノデアリマシテ、今日ノ現況ト
致シマシテハ、此表示方法ヲ廢止致シマシ
ぞっ、何等差支ナイト考ヘマス、尙ホ小型
ノ船舶ニ付キマシテ、諸般ノ關係ニ於キマ
シテ、〓ネ大型ノ船舶ト區別シテ取扱ッ
テ居リマスノデ、積量測度ニ付テモ亦同樣
ニ致スコトガ、適當デアルト認メマシテ
長サ二十「メートル」未滿ノ船舶ニ限リマシ
テ、主務大臣ニ於テ別ニ簡易ナル方法ヲ定
メ得ルコトニ致シテ居リマス、其他ハ字句
ノ整理若クハ經過的規定ニ過ギナイノデア
リマス、何卒御審議ノ上速ニ可決セラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=28
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029・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハアリマセ
ヌ-日程第四、右議案ノ審査ヲ付託スベ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=29
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030・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ政府提出電氣事業
法改正法律案ノ委員ニ併セ付託セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=30
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031・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=31
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032・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
五及第六ハ同種關聯セル議案ナルニ依リ、
一括議題ニ供シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=32
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033・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第五蠶絲業組合法案、及ビ日
程第六蠶絲業法中改正法律案ノ雨案ヲ一括
シテ第一讀會ヲ開キマス-町田農林大臣
第五蠶絲業組合法案(政府提出)
第一讀會
蠶絲業組合法案
〓絲業組合法
第一章蠶絲業組合
第一節總則
第一條蠶絲業組合ハ左ノ六種トス
養蠶業組合
二蠶種業組合
三產業組合製絲組合
四製絲業組合
五生絲問屋業組合
六生絲輸出業組合
第二條蠶絲業組合ハ蠶絲業ノ改良發達
及統制ヲ圖ルヲ以テ日的トス
第三條蠶絲業組合ハ法人トス
第四條蠶絲業組合ハ營利事業ヲ爲スコ
トヲ得ズ
第五條蠶絲業組合ハ蠶絲業ニ關スル事
項ニ付行政廳ニ建議スルコトヲ得
蠶絲業組合ハ行政廳ノ諮問ニ對シ答申
ストン
第六條行政官廳ハ蠶絲業組合ニ對シ蠶
絲業ニ關スル報〓書ノ提出及蠶絲業ニ
關スル事項ノ調査ヲ命ズルコトヲ得
第七條蠶絲業組合ノ名稱中ニハ其ノ種
類ニ從ビ養蠶業組合、蠶種業組合、產業
組合、製絲組合、製絲業組合、生絲間
屋業組合又ハ生絲輸出業組合ナル文字
ヲ用フベシ
蠶絲業組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱中
ニ前項ニ揭グル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第八條蠶絲業組合ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ其ノ役員又ハ檢査員ヲシテ組合員
ノ事務所若ハ營業所ニ臨檢シ又ハ帳簿
物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該役員又ハ檢査
員ハ其ノ身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶
天ぷら
第九條蠶絲業組合ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ其ノ組合員ニ對シ經費ヲ分賦シ及
過怠金ヲ徴收スルコトヲ得
蠶絲業組合ノ經費又ハ過怠金ヲ滯納ス
ル者アル場合ニ於テ其ノ組合長ノ請求
アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依
リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ蠶絲業組
合ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村
ニ交付スベシ
前項ニ規定スル徵收金ノ先取特權ノ順
位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ
徵收金ニ次ギ其ノ追徵還付及時效ニ付
ヲハ市町村稅ノ例ニ依ル
第一項ニ規定スル徵收金ノ賦課徵收及
滯納處分ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ
依、リ異議ノ申立若ハ訴願ヲ爲シ又ハ行
政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十條蠶絲業組合ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ使用料及手數料ヲ徴收スルコトヲ
得
前項ノ使用料及手數料ノ徴收ニ關シテ
ハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十一條蠶絲業組合ノ組合員ハ其ノ營
業ニ關スル重要物產同業組合法ニ依ル
同業組合ニ加入セズ又ハ之ヨリ脫退ス
ルコトヲ得
第十二條行政官廳ハ蠶絲業組合ニ對シ
業務ニ關スル報〓ヲ爲サシメ、業務執
行又ハ財產ノ狀況ヲ檢查シ、定款、收
支豫算又ハ經費ノ分賦收入方法ノ變更
ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發
ジ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十三條行政官廳ハ蠶絲業組合ノ決議
又ハ役員ノ行爲ガ法令若ハ定款ニ違反
シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリ
ト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員ヲ
解任シ、組合ノ業務ヲ停止シ又ハ組合
ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
第十四條蠶絲業組合ノ解散及分合ニ關
スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條本章ニ於テ町村トアルハ町村
制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズ
ベキモソトシ郡トアルハ北海道ニ在リ
テハ北海道廳支廳長管轄區域トス
第二節養蠶業組合
第十六條養蠶業組合ハ其ノ目的ヲ達ス
ル爲左ノ事業ヲ行フ
-蠶品種ノ統一ニ關スル施設
二養蠶業ノ指導奬勵ニ關スル施設
三繭ノ檢査ニ關スル施設
四繭ノ取引方法ノ改善ニ關スル施設
五蠶病ノ豫防ニ關スル施設
六養蠶業ニ關スル〓究及調査
七養蠶業ニ關スル紛議ノ調停又ハ伸
裁
八前各號ニ揭グルモノノ外養蠶業ノ
改良發達及統制ヲ圖ルニ必要ナル施
設
第十七條養蠶業組合ノ地區ハ郡市ノ區
域ニ依ル但シ特別ノ事由アルトキハ此
ノ區域ニ依ラザルコトヲ得
前項ノ區域ニ增減アリタルトキハ其ノ
區域ヲ地區トスル養蠶業組合ノ地區モ
亦之ニ應ジテ增減アリタルモノトス
第十八條養蠶業組合ハ其ノ地區內ノ養
蠶實行組合ヲ以テ共ノ組合員トス
第十九條養蠶實行組合ハ一定ノ地區內
ノ養蠶者ヲ以テ之ヲ組織シ養蠶業ニ關
シ組合員ノ共同ノ利益增進ヲ圖ルヲ以
テ目的トス
養蠶買行組合ハ法人トス
養蠶實行組合ノ地區ハ市町村ノ區域ヲ
超ユルコトヲ得ズ
第二十條養蠶實行組合ハ其ノ名稱中ニ
養蠶實行組合ナル文字ヲ用フベシ
養蠶實行組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱
中ニ前項ニ揭グル文字ヲ用フルコトヲ
得ズ
第二十一條養蠶實行組合ヲ設立スルニ
ハ其ノ地區內ノ養蠶者七人以上設立者
ト爲リ規約ヲ作成スルコトヲ要ス
規約ニハ左ニ揭グル事項ヲ記載シ設立
者之ニ署名又ハ記名捺印スルコトヲ要
ス
一目的
二名稱
三地區
四事務所ノ所在地
五組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
六事業及其ノ執行ニ關スル規定
七役員ニ關スル規定
八組合費共ノ他會計及資產ニ關スル
規定
九損失分擔ニ關スル規定
十組合ガ公告ヲ爲ス方法
十一存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メ
タルトキハ其ノ時期又ハ事山
第二十二條養蠶實行組合ハ設立ノ日ヨ
リ二週間以內ニ規約、役員ノ氏名及住
所竝ニ設立ノ年月日ヲ具シ行政官廳ニ
之ヲ屆出ヅベシ
前項ノ規定ニ依リ屆出デタル事項ニ變
更アリタルトキハ其ノ變更ノ日ヨリ二
週間以内ニ之ヲ届出ヅベシ
第二十三條養蠶實行組合ハ其ノ設立ノ
日ヨリ二週間以內ニ主タル事務所ノ所
在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
第二十一條第二項第一號乃至第三
號第十號及第十一號ニ揭グル事項
二事務所
三設立ノ年月日
四理事ノ氏名及住所
前項ニ揭グル事項ニ變更アリタルトキ
ハ二週間以內ニ其ノ登記ヲ爲スベシ
第二十四條本法ニ依リ登記スベキ事項
ハ其ノ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三
者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第二十五條養蠶實行組合ガ本法ニ基キ
テ爲ス登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ
第二十六條民法第三十八條第一項、第
四十四條、第四十八條、第五十條乃至
第六十六條、第六十八條乃至第七十條
及第七十二條乃至第八十二條竝ニ非訟
事件手續法第三十五條、第三十六條、
第三十七條ノ二、第百十七條、第百十
九條乃至第百二十二條、第百三十六條
乃至第百三十八條、第百四十二條、第百
四十三條、第百四十七條乃至第百五十
候第百五十條ノ三乃至第百五十七條
及第百七十五條乃至第百七十七條ノ規
定ハ養蠶實行組合ニ之ヲ準用ス
第二十七條養蠶業組合ヲ設立セントス
ルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ地
區內ノ養蠶實行組合ノ三分ノ二以上ノ
同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款ヲ議定
シ役員ヲ選任シ收支豫算及經費ノ分賦
收入方法ヲ議決シ行政官廳ノ認可ヲ受
クベシ
第三十六條第一項ノ規定ハ前項ノ創立
總會ノ決議ニ之ヲ準用ス
第二十八條養蠶業組合ハ設立ノ認可ヲ
受ケタル時成立ス
第二十九條養蠶業組合成立シタルトキ
ハ其ノ地區內ノ組合員タル資格ヲ有ス
ルモノハ總テ其ノ組△員トス
第三十條養蠶業組合ノ地區內ニ於テ養
蠶業ニ關スル事業ヲ行フ農會、產業組
合又ハ產業組合聯合會ニシテ命令ヲ以
テ規定スルモノハ行政官廳ノ認可ヲ受
ケテ養蠶業組合ノ組合員ト爲ルコトヲ
得
前項ノ規定ニ依リ養蠶業組合ノ組合員
ト爲リタルモノハ行政官廳ノ認可ヲ受
クルニ非ザレバ其ノ組合ヲ脫退スルコ
トヲ得ズ
第三十一條主務大臣必要アリト認ムル
トキハ區域ヲ指定シ養蠶實行組合ニ對
シ養蠶組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル設立ニ關シ必要ナル
事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二條養蠶業組合ニ總會ヲ置ク
總會ハ總組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
第三十三條左ニ揭グル事項ハ總會ノ議
決ヲ經ベシ
收支豫算
二經費ノ分賦收入方法
三命令ヲ以テ規定スル統制ニ關スル
施設
四事業報告及收支決算
借入金
八七六五基本財產ノ造成、管理及處分
定款ノ變更
役員ノ選任及解任
九第六十五條ノ議員ノ選任及解任
十第六十三條第一項ノ同意
前項第一號乃至第三號、第五號、第七
號及第八號ニ揭グル事項ノ決議ハ行政
官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生セズ
第三十四條總會ハ組合長之ヲ招集ス
組合員ハ總組合員ノ三分ノ一以上ノ同
意ヲ得テ會議ノ目的タル事項及招集ノ
事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シ總會ノ
招集ヲ請求スルコトヲ得
組合長正當ノ事由ナクシテ前項ノ規定
ニ依ル請求アリタル後二週間以内ニ總
會ヲ招集セザルトキハ請求者ハ行政官
廳ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ
得
前三項ノ規定ニ依リ總會ヲ招集スルコト
能ハザルトキハ行政官廳ハ組合員ヲ指
定シテ總會ヲ招集セシムルコトヲ得
第三十五條總會ノ議事ハ本法ニ別段ノ
規定アル場合ヲ除クノ外出席者ノ過半
數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ
議長ノ決スル所ニ依ル
第三十六條第三十三條第一項第三號、
第七號及第八號ニ揭グル事項ハ總會ニ
於テ組合員ノ半數以上出席シ出席者ノ
三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決ス
定款ノ變更ガ地區ノ增減ニ關スルトキ
ハ前項ノ規定ニ依ル議決ノ外新ニ編入
セラレ又ハ削除セラルベキ區域内ノ養
蠶實行組合ノ三分ノ二以上ノ同意アル
コトヲ要ス
第三十七條總會ノ議決ヲ經ベキ事項ニ
シテ輕微ナルモノニ付テハ定款ノ定ム
ル所ニ依リ書面ヲ以テ組合員ノ意見ヲ
徵シ總會ノ議決ニ代フルコトヲ得
第三十八條養蠶業組合ニ組合長一人ヲ
置ク
養蠶業組合ハ前項ノ役員ノ外定款ノ定
ムル所ニ依リ他ノ役員ヲ置クコトヲ
得
前二項ノ役員ハ所屬ノ養蠶實行組合ノ
組合員中ヨリ之ヲ選任ス但シ特別ノ事
由アルトキハ其ノ他ノ者ヨリ之ヲ選任
スルコトヲ妨ゲズ
第三十九條組合長ハ養蠶業組合ヲ代表
シ組合ノ事務ヲ總理ス
第四十條總會ノ議決ヲ經ベキ事項ニシ
テ臨時急施ヲ要シ總會ヲ招集スルノ
暇ナシト認ムルモノハ組合長定款ノ定
ムル所ニ依リ之ヲ專決處分スルコトヲ
得
前項ノ場合ニ於テハ組合長ハ次ノ總會
ニ於テ其ノ承認ヲ求ムベシ
第四十一條養蠶實行組合ノ理事、監事
又ハ〓算人左ノ各號ノ一ニ該當スルト
キハ五圓以上二百圓以下ノ過料ニ處
ス
一本法ニ依ル屆出ヲ爲スコトヲ怠リ
タルトキ
二本法ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リ
タルトキ
三行政官廳又ハ總會ニ對シ不實ノ申
立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルト
キ
四本法ニ依ル總會ノ招集ヲ怠リタル
トキ
五組會ノ目的ニ非ザル事業ヲ爲シタ
ルトキ
六本法ニ依リ事務所ニ備へ置クベキ
書類ヲ備ヘズ、其ノ書類ニ記載スベ
キ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ
爲シ又ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ閱
覽ヲ拒ミタルトキ
七本法ニ違反シテ破產ノ宣告ヲ請求
セザルトキ
八本法ニ依ル公〓ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ公〓ヲ爲シタルトキ
九〓算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シテ
辨濟ヲ爲シ又ハ組合財產ノ分配ヲ爲
シタルトキ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第三節蠶種業組合
第四十二條蠶種業組合ハ其ノ目的ヲ達
スル爲左ノ事業ヲ行フ
一蠶品種ノ統一ニ關スル施設
二蠶種製造ノ指導奬勵ニ關スル施設
三〓種ノ檢査ニ關スル施設
四蠶病ノ豫防ニ關スル施設
五蠶種ニ關スル〓究及調査
六蠶種製造業ニ關スル紛議ノ調停又
ハ仲裁
七前各號ニ揭グルモノノ外蠶種製造
業ノ改良發達及統制ヲ圖ルニ必要ナ
ル施設
第四十三條蠶種業組合ノ地區ハ道府縣
ノ區域ニ依ル但シ特別ノ事由アルトキ
ハ此ノ區域ニ依ラザルコトヲ得
第十七條第二項ノ規定ハ前項ノ區域ニ
增減アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四十四條蠶種業組合ハ其ノ地區內ニ
於テ蠶種ノ製造ヲ業トスル者ヲ以テ其
ノ組合員トス
第四十五條第二十七條乃至第二十九條
及第三十一條乃至第四十條ノ規定ハ蠶
種業組合ニ之ヲ準用ス
第四節產業組合製絲組合及製
絲業組合
第四十六條產業組合製絲組合ハ其ノ目
的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フ
一原料繭及其ノ受入方法ノ統一ニ關
スル施設
二生絲ニ關スル規格ノ統一ニ關スル
施設
三產業組合製絲ノ指導奬勵ニ關スル
施設
四生絲ノ檢査ニ關スル施設
五產業組合製絲ニ關スル〓究及調査
六產業組合製絲ニ關スル紛議ノ調停
又ハ仲裁
七前各號ニ揭ルグモノノ外產業組合
製絲ノ改良發達及統制ヲ圖ルニ必要
ナル施設
第四十七條製絲業組合ハ其ノ目的ヲ達
スル爲左ノ事業ヲ行フ
生絲ニ關スル規格ノ統一ニ關スル
施設
二製絲業ノ指導奬勵ニ關スル施設
三生絲ノ檢査ニ關スル施設
四製絲業ニ從事スル者ノ福利增進ニ
關スル施設
五製絲業ニ關スル〓究及調查
六製絲業ニ關スル紛議ノ調停又ハ仲
裁
七前各號ニ揭グルモノノ外製絲業ノ
改良發達及統制ヲ圖ルニ必要ナル施
設
第四十八條產業組合製絲組合及製絲業
組合ノ地區ハ道府縣ノ區域ニ依ル但シ
特別ノ事由アルトキハ此ノ區域ニ依ラ
ザルコトヲ得
第十七條第二項ノ規定ハ前項ノ區域ニ
增減アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四十九條產業組合製絲組合ハ其ノ地
區內ニ於テ製絲ヲ爲シ又ハ製絲工場ヲ
有スル產業組合及產業組合聯合會ヲ以
テ其ノ組合員トス
第五十條製絲業組合ハ命令ヲ以テ規定
スル者ヲ除クノ外其ノ地區內ニ於テ生
絲ノ製造ヲ業トスル者ヲ以テ其ノ組合
員トス
第五十一條第二十七條乃至第二十九條
及第三十一條乃至第四十條ノ規定ハ產
業組合製絲組合及製絲業組合ニ之ヲ準
用ス
第五節生絲問屋業組合及生絲
輸出業組合
第五十二條生絲間屋業組合及生絲輸出
業組合ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業
フガン
一生絲ノ取引方法ノ改善及統一ニ關
スル施設
生絲取引ニ關スル〓究及調査
三生絲取引ニ關スル紛議ノ調停又ハ
仲裁
四前各號ニ揭グルモノノ外生絲取引
ノ改良發達及統嗣ニ關スル施設
第五十三條生絲問屋業組合ノ地區ハ郡
市ノ區域ニ依リ生絲輸出業組合ノ地區
ハ市ノ區域ニ依ル但シ特別ノ事由アル
トキハ此ノ區域ニ依ラザルコトヲ得
第十七條第二項ノ規定ハ前項ノ區域ニ
增減アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第五十四條生絲問屋業組合ハ其ノ地區
內ニ於テ生絲取引ノ伸立又ハ取次ヲ業
トスル者竝ニ生絲ノ販賣ヲ爲ス產業組
合及產業組合聯合會ヲ以テ其ノ組合員
トス
第五十五條生絲輸出業組合ハ其ノ地區
內ニ於テ生絲ノ輸出ヲ業トスル者竝ニ
生絲ノ輸出ヲ爲ス產業組合及產業組合
聯合會ヲ以テ其ノ組合員トス
第五十六條第二十七條乃至第二十九條
及第三十一條乃至第四十條ノ規定ハ生
絲問屋業組合及生絲輪出業組合ニ之ヲ
準用ス但シ第三十三條第一項第九號中
第六十五條トアルハ之ヲ第六十五條又
ハ第七十六條トシ第三十三條第一項第
十號中第六十三條第一項トアルハ之ヲ
第六十三條第一項又ハ第七十五條第一
項トス
第二章蠶絲業組合聯合會
第五十七條蠶絲業組合聯合會ハ左ノ七
種トス
一道府縣養蠶業組合聯合會
二全國養蠶業組合聯合會
三全國蠶種業組合聯合會
四全國產業組合製絲組合聯合會
五全國製絲業組合聯合會
六全國生絲問屋業組合聯合會
七全國生絲輸出業組合聯合會
第五十八條蠶絲業組合聯合會ハ蠶絲業
組合又ハ道府縣養蠶業組合聯合會ノ聯
絡ヲ圖リ其ノ共同ノ目的ヲ達成スルヲ
以テ目的トス
第五十九條蠶絲業組合聯合會ハ法人ト
ス
第六十條蠶絲業組合聯合會ノ地區ハ道
府縣養蠶業組合聯合會ニ在リテハ道府
縣ノ區域ニ依リ其ノ他ノモノニ在リテ
ハ全國ノ區域ニ依ル
第十七條第二項ノ規定ハ前項ノ道府縣
ノ區域ニ增減アリタル場合ニ之ヲ準用
ス
第六十一條蠶絲業組合聯合會ノ名稱中
ニハ其ノ種類ニ從ヒ道、府若ハ縣養蠶
業組合聯合會、全國養蠶業組合聯合會、
全國蠶種業組合聯合會、全國產業組合
製絲組合聯合會、全國製絲業組合聯合
會全國生絲問屋業組合聯合會又ハ全
國生絲輸出業組合聯合會ナル文字ヲ用
ンスン
蠶絲業組合聯合會ニ非ザルモノハ其ノ
名稱中ニ前項ニ揭グル文字ヲ用フルコ
トヲ得ズ
第六十二條道府縣養蠶業組合聯合會ハ
其ノ地區內ノ養蠶業組合ヲ以テ其ノ會
員トス
全國養蠶業組合聯合會ハ道府縣養蠶業
組合聯合會及道府縣ノ區域ヲ地區トス
ル養蠶業組合ヲ以テ其ノ會員トス
全國蠶種業組合聯合會ハ蠶種業組合ヲ
以テ全國產業組合製絲組合聯合會ハ
產業組合製絲組合ヲ以テ、全國製絲業
組合聯合會ハ製絲業組合ヲ以テ、全國
生絲問屋業組合聯合會ハ生絲問屋業組
合ヲ以テ、全國生絲輸出業組合聯合會
ハ生絲輸出業組合ヲ以テ其ノ會員ト
ス
第六十三條蠶絲業組合聯合會ヲ設立セ
ントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ
其ノ地區內ノ會員タル資格ヲ有スルモ
ノノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總
會ヲ開キ會則ヲ議定シ役員ヲ選任シ收
支豫算及經費ノ分賦收入方法ヲ議決シ
主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十六條第一項ノ規定ハ前項ノ創立
總會ノ決議ニ之ヲ準用ス
第六十四條蠶絲業組合聯合會成立シタ
ルトキハ其ノ地區內ノ會員タル資格ヲ
有スルモノハ總テ其ノ會員トス
第六十五條蠶絲業組合聯合會ニ總會ヲ
置ク
總會ハ會長、副會長及議員ヲ以テ之ヲ
組織ス
蠶絲業組合聯合會ノ議員ハ其ノ會員タ
ル蠶絲業組合又ハ道府縣養蠶業組合聯
合會ニ於テ之ヲ選任ス
前項ニ規定スルモノノ外議員ノ選任及
解任ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第六十六條蠶絲業組合聯合會ニ左ノ役
員ヲ置ク
會長一人
副會長一人又ハ二人
評議員數人
前項ノ役員ハ議員中ヨリ之ヲ選任ス但
シ會長及副會長ハ其ノ他ノ者ヨリ之ヲ
選任スルコトヲ妨ゲズ
第六十七條會長ハ蠶絲業組合聯合會ヲ
代表シ會務ヲ總理ス
副會長ハ會長ヲ補佐シ會長事故アルト
キ其ノ職務ヲ代理ス
副會長ハ會則ノ定ムル所ニ依リ會長ノ
職務ノ一部ヲ分掌スルコトヲ得
評議員ハ會長ノ諮問ニ應ジ竝ニ會務ノ
執行及財產ノ狀況ヲ監查ス
第六十八條第四條乃至第六條、第九條
第一項、第十條、第十二條乃至第十四
條、第二十八條、第三十一條、第三十
三條乃至第三十五條、第三十六條第一
項、第三十七條及第四十條ノ規定ハ蠶
絲業組合聯合會ニ之ヲ準用ス但シ第五
十七條第二號乃至第七號ノ蠶絲業組合
聯合會ニ付テハ第三十三條第一項第丸
號中第六十五條トアルハ之ヲ第七十六
條トシ第三十三條第一項第十號中第六
十三條第一項トアルハ之ヲ第七十五條
第一項トス
第三章日本中央蠶絲會
第六十九條日本中央蠶絲會ハ蠶絲業組
合聯合會及蠶絲業組合ノ聯絡竝ニ蠶絲
業ノ改良發達及統制ヲ圖ルヲ以テ目的
トス
第七十條日本中央蠶絲會ハ法人トス
第七十一條日本中央蠶絲會ハ其ノ目的
ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フ
一蠶絲業組合聯合會及蠶絲業組合ノ
聯絡及統制ニ關スル施設
二蠶絲業ニ關スル〓究及調査
三蠶絲類ノ販路擴張ニ關スル施設
四蠶絲業ニ關スル紛議ノ調停又ハ仲
裁
五前各號ニ揭グルモノノ外蠶絲業ノ
改良發達及統制ヲ圖ルニ必要ナル施
設
第七十二條日本中央〓絲會ノ地區ハ全
國ノ區域ニ依ル
第七十三條日本中央〓絲會ノ名稱ニハ
日本中央蠶絲會ナル文字ヲ用フベツ
日本中央〓絲會ニ非ザルモノハ其ノ名
稱中ニ前項ニ揭グル文字ヲ用フルコト
ヲ得ズ
第七十四條日本中央蠶絲會ハ第五十七
條第二號乃至第七號ノ蠶絲業組合聯合
會ヲ以テ其ノ會員トス
全國生絲問屋業組合聯合會又ハ全國生
絲輸出業組合聯合會ナキ場合ニ限リ前
項ニ規定スルモノノ外生絲問屋業組合
又ハ生絲輸出業組合ヲ以テ其ノ會員トス
第七十五條日本中央蠶絲會ヲ設立セン
トスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ會員タル資格ヲ有スルモノノ三分ノ
二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ會
則ヲ議定シ役員ヲ選任シ主務大臣ノ認
可ヲ受クベシ
第三十六條第一項ノ規定ハ前項ノ創立
總會ノ決議ニ之ヲ準用ス
前二項ノ場合ニ於テ會員タル資格ヲ有
スルモノノ員數ノ計算ニ付テハ前條第
二項ノ規定ニ依リ會員タル資格ヲ有ス
ル生絲問屋業組合又ハ生絲輸出業組合
二以上アル場合ニ於テハ之ヲ一箇ノ生
絲間屋業組合又ハ生絲輸出業組合ト看
做ス
第七十六條日本中央蠶絲會ニ總會ヲ置
ク
總會ハ會長、副會長、議員及特別議員
ヲ以テ之ヲ組織ス
日本中央蠶絲會ノ議員ハ其ノ會員タル
蠶絲業組合聯合會又ハ蠶絲業組合ニ於
テ之ヲ選任シ特別議員ハ主務大臣之ヲ
命ズ
特別議員ノ員數ハ議員定數ノ五分ノ一
以內トス
前二項ニ規定スルモノノ外議員ノ選任
及解任竝ニ特別議員ノ命免ニ關シ必要
ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十七條日本中央蠶絲會ニ左ノ役員
ヲ置ク
會長一人
副會長一人又ハ二人
評議員數人
前項ノ役員ハ議員及特別議員中ヨリ之
ヲ選任ス但シ會長及副會長ハ其ノ他ノ
者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ妨ゲズ
第七十八條日本中央蠶絲會ノ會員蠶絲
業ノ締制ニ關スル施設ヲ行ハントスル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ日本中央
蠶絲會ノ承認ヲ受クルコトヲ要ス
日本中央蠶絲會前項ノ承認ヲ爲スニハ
其ノ總會ノ議決ヲ經ルコトヲ要ス
第三十六條第一項ノ規定ハ前項ノ總會
ノ決議ニ之ヲ準用ス
第七十九條第四條乃至第六條、第九條
第一項、第十二條乃至第十四條、第二
十八條、第三十三條乃至第三十五條、
第三十六條第一項、第三十七條、第四
十條、第六十四條及第六十七條ノ規定
ハ日本中央〓絲會ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
重要物產同業組合法ニ依リ道府縣ヲ地區
トシ設置シタル〓絲業者ノ同業組合ニシ
テ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ命令ノ
定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケタ
ルトキハ之ヲ本法ニ依ル蠶絲業組合ト看
做ス
日本中央蠶絲會成立シタルトキハ其ノ成
立ノ日ヨリ一年以內ニ蠶絲業同業組合中
央會ハ解散ヲ爲スコトヲ要ス
第六蠶絲業法中改正法律案(政府提
出)第一讀會
蠶絲業法中改正法律案
蠶絲業法中左ノ通改正ス
第十一條ノ二第一項中「同業組合」、ヲ「蠶
種業組合、同業組合、」ニ改ム
第二十九條乃至第三十四條削除
第三十五條ノ二中「同業組合、」ヲ「蠶種業
組合、同業組合、」ニ改ム
第三十六條中「又ハ同業組合」ヲ「又ハ蠶
種業組合、同業組合、」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
〔國務大臣町田忠治登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=33
-
034・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 只今上程ニナッ
テ居ル二案ニ付キマシテ、提案ノ趣意ノ大
體ヲ御說明申上ゲマス、我國ノ重要產業タ
ル蠶絲業ニ從事スル常業者ノ團體ト致シマ
シテハ現在養蠶者ノ團體、重要物產同業
組合及ビ蠶絲業同業組合中央會等ガアリマ
スガ、是等ニ關スル法制完カラザルガ爲ニ、
其目的及ビ組織ガ徹底ヲ缺キ、隨テ團結力
モ微弱ナノデアリマス、各業者間ノ規律ア
ル行動モ期待シ難ク、斯業振興上遺憾ノ點
ガ少クナイノデアリマス、然ルニ蠶絲業ノ
現在及ビ將來ハ、速ニ新タナル團體制度ヲ
確立致シマシテ、當業者ノ利害ヲ公平ニ表
明スルコトヲ得セシメ、以テ斯業ノ改良發
達及ビ統制ヲ完カラシムルコトガ急務デア
リマス、當業者ニ於キマシテモ、數年來此
問題ヲ〓究シマシテ、稍、其意見ノ一致ヲ見
タ次第デアリマス蠶絲業組合法案ハ、右
ノ我國蠶絲業改善要望ニ應ジテ、ソレヲ基
トシテ作リマシタ、就キマシテ其骨子ヲ申
上ゲマスレバ、蠶絲業組合ハ蠶絲業ノ改良
發達及ビ統制ヲ圖ルヲ目的トスル法人ト致
スコトガ一ツデアリマス第二ハ蠶絲業組
合ヲ分ッテ、養蠶業、蠶種製造業、產業組合、
製絲、生絲製造業、生絲問屋業及ビ生絲輸
出業ニ分。シテ、各業ヲ別々ニ組織セシムル組
合デアリマス、〓絲業組合ハ當該蠶絲業ヲ
以テ組織致シマスルモノヽ、養蠶業組合ダケ
ハ現在全國ニ普及致シテ居リマスル養蠶組
合ヲ簡易ナル法人ト致シマシテ、之ヲ組織
セシムルコトニ致スノデアリマス、蠶絲業
組合ハ、養蠶業組合ノミニ付キマシテハ、
郡市區域ヲ原則ト致シマスルモノヽ其他
ノ組合ニ付キマシテハ總テ道府縣區域ヲ
原則トスルノデアリマス、又蠶絲業組合聯
合會ハ總テ業種別ニ之ヲ組織致シマスガ、
養蠶業組合聯合會ニ付キマシテハ、道府縣
區域及全國區域ノモノヲ認メ、共他ノ蠶絲
業組合等ノ聯合會ニ付キマシテハ、總テ全
國區域ヲ基トスルノデアリマス、全國蠶絲
業組合聯合會ヲ以テ日本中央蠶絲會ヲ組織
セシメ、現在ノ蠶絲業同業組合中央會ニ代
リマシテ蠶絲業者ノ最高機關ト致シテ、
所屬蠶絲業組合聯合會ノ聯絡統制ヲ圖リ
海外販路ノ擴張其他蠶絲業全般ニ關スル重
要事項ヲ、此最高機關ニ於テ司ルノデアリ
せっ、大體以上ノ趣意デゴザイマスルガ故
ニ、御審議ノ上何卒御協賛アランコトヲ望
ミマス
今一ツ上程サレテアリマスル蠶絲業法中
改正法律案ハ、前ニ說明致シマシタ組合法
ガ出來マスルト同時ニ、從來アリマスル蠶
絲業法中ニ改正ヲ要スル點ガ出來マシタ爲
ニ玆ニ提案致シタノデアリマス、其改正
ノ要旨ハ蠶絲業組合法ニ依ル〓絲業組合
モ、現在ノ蠶絲業者ノ同業組合ト同樣ニ蠶
絲ノ自治檢査ヲ成スヲ得ルコトヽ致シ、蠶
絲業同業組合中央會ニ關スル規定ハ、中央
會ガ解散致セバ、玆ニ必要ハ存在致シマセ
ヌガ故ニ、其時ニ之ヲ削除シ得ルコトノ點
ニ基イタノデアリマシテ前ニ提案致シマ
シタ法案ノ結果トシテ現ハレルノデアリマ
ス、併セテ御審議アランコトヲ望ミマス(拍
手発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=34
-
035・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許シマ
ス高橋熊次郞君
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=35
-
036・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 只今提案ニナッテ居リマ
スル所ノ蠶絲業法中改正法律案竝蠶絲業組
合法案、此兩案ノ大體ニ付キ御質問ヲ致シ
テ見タイト考ヘル次第デアリマス、詳細ハ
何レ委員會ニ於テ承ルコトヽ致シマシテ、
大體ニ於テ御伺ヲ致シテ見タイ、斯樣ニ考
ヘテ居ル次第デアリマス、此問題ハ非常ニ
重大ナル蠶業團體上ノ問題デアリマシテ、
私共ハ多年蠶絲業組合ノ法定化ヲ望ンデ
居ッタノデアリマスガ、漸クニシテ其目的ノ
一端ガ玆ニ貫徹スルニ至タノハ、衷心ヨリ
喜ビニ堪ヘヌノデアリマスケレドモ、併ナ
ガラ吾々ノ希望ノ全部ガ充タサレタ譯デハ
ナイヤウニ感ゼラレマスガ故ニ、私ハ漸次
是等ノ諸點ニ付テ質問ヲ致シタイト思フ次
第デアリマス、此蠶絲業組合法ヲ制定シ、
蠶絲業法ニ付テ改廢ヲ致サレタト云フコト
ハ實ニ我國ニ於ケル所ノ農業ニ關スル產
業國體法規ノ一大革命ト私共ハ叫バザルヲ
得ナイノデアリマス、隨テ其波及スル所ノ
影響ト云フモノハ、甚大デアルコトハ避ケ
得ラレナイノデアリマス、一方ニ於テハ
養蠶業者ノミニ取リマスレバ非常ニ有利
ナル立場ガアルトスルナラバ、反面ニ於テ、
是等ト共ニ事ヲ爲シテ居ッタ他農業團體
ニ對スル興廢ト云フヤウナコトノ問題ガ生
ジテ參ルコトデアラウト吾々ハ考ヘルノデ
アリマス是等ニ付テ幾多ノ疑義ガ生ズル
ノデアリマス、私共ハ此〓絲業組合法案ヲ
通ジテ見マスルニ、養蠶組合ノミデ、町村
以下ノ只今現存致シテ居リ、任意的ニ成立〃
テ居リマスル所ノ養蠶組合此モノヲ、養蠶
實行組合ト名付ケテ其儘御認メニナルコト
ニナッタト私共ハ思フノデアリマス、町村以
上ノ區域デアル所ノ養蠶實行組合ト云フモ
ノハ許サナイ方針デアルト、斯樣ニ此法規
ニ謳ッテアルノデアリマスカラ、町村ノ區域
以內ニ於ケル所ノ養蠶組合ト云フモノハ
悉ク養蠶實行組合トシテ取扱ハレルモノデ
アルト解釋シテモ差支ナカラウト思フ、其
上ニ養蠶業組合ト云フモノハ、郡市ヲ區域
トシテ出來、是ガ他ノ蠶絲業組合、卽チ或
ハ製絲業組合、或ハ產業組合ノ製絲業組合、
或ハ蠶絲業輸出組合、或ハ問屋組合ト云フ
ヤウナモノト桔抗スル形ニ相成ルモノト、
私共ハ此法案ヲ見テサウ云フ感ジヲ抱クノ
デアリマスガ、少シ私ノ言ヒ方ガ間違ッテ居
リマシタ、只今申上ゲタノハ郡市ニアラズ
シテ、養蠶業組合以外ノ他ノ諸團體ハ府縣ヲ
單位ト致シテ居ルヤウニ思ハレル、非常ニ
混雜ヲ致シマスルカラ、之ヲ鄭寧ニ申上ゲ
ナイト云フト、私ノ理解シテ居ルノガ眞ナ
リヤ否ヤト云フコトハ、一寸判別ニ苦シム
ノデアリマスカラ、諄イヤウデアリマスガ、
私ハ此事ヲ申上ゲテ置カナイト云フト、全
般ニ付テ多少ノ誤解ヲ生ズルト云フト、私
ノ質問ノ根柢ガグラ附クコトニ相成リマス
カラ、私ノ理解ガ正解デアルカ否カト云フ
コトヲ、先ヅ御吟味ヲ願ヒタイト思フノデ
アリマス
私ハ此養蠶組合ハ、只今中上ゲル通リニ
養蠶實行組合ト云フモノガ基礎デアル是
ハ町村以下ノ區域トシテ立ッテ居ルノデア
ル、其上ニ郡市ノ組合ガアル之ヲ養蠶何
ト言ヒマシタカ、名前ガ隨分混雜致シテ居
リマス、養蠶業組合ト云フモノガ郡市ヲ土
臺トシテ出來テ居ル、其上ニ道府縣ヲ土臺
トシテ出來上ッテ居ル組合ニ、道府縣養蠶業
組合聯合會ト云フモノガアル、只今申上ゲ
テ居ル所ハドウモヤヽコシイノデアリマ
シテ、此名稱ハ私ガ此法令ヲ一寸見テ居ル
間ニ、ドレガドウカ一寸分ラナクナッテシマッ
タノデアリマスガ、郡市ヲ土臺ニシテ居ル
養蠶業ノ組合、ソレカラ道府縣ヲ土臺トシ
テ居ル所ノ養蠶組合、其上ニ全國ヲ統一シ
タル所ノ養蠶組合ト云フモノガアル、斯樣
ニ考ヘルノデアリマス、サウスルト他ノ五
ツノ種類ノ蠶絲業組合トハ、其體系ニ於テ
多少異ナル所ガアリマス、他ノ組合ノ方デ
ハ道府縣ノ區域ヲ單位トシテ蠶絲業組合
ヲ形作ッテ居リ、其上ニ全國的ニ之ヲ統一シ
タル所ノ蠶絲業組合ノ聯合會ト云フモノガ
出來テ居ル、ソレデアリマスカラ、養蠶組
合ノ方ハ全國的ノ聯合會ト一道府縣限リノ
聯合會ト二通リアル、是ガ他ト異ナル所デ
アルト理解スルノデアリマス、モウ一度繰
返シテ見ルト、各府縣ニアル蠶絲業組合ト
云フモノハ、一面ニ於テハ養蠶業者ニ限ッテ
各府縣ニ於ケル養蠶業組合ノ聯合會ト云フ
モノガアル、卽チ養蠶實行組合、郡市養蠶業
組合ト云フモノヲ土臺トシテ居ル道府縣養
蠶組合聯合會ノ外ニアル五ツノ蠶絲業組合
ト云フモノハ、府縣ヲ單位トシテ形作ッテ居
ルノデアル斯ウ云フ工合ニ私共ハ理解シ
テ居ルノデアリマス、ソレノ上ニ日本中央
蠶絲會ト云フ一ツノ團體ガ出來上ルノデア
ル此日本中央蠶絲會ト云フ大キナル統制
團體ト云フモノハ、只今ノ蠶絲業同業組合中
央會ガヤッテ居ルヤウニ、一部ノ勢力ノ傀儡
ニナラズシテ是ハ公平ニ總テノ利害ヲ代
表スル所ノ機關ト相成リマシタ、卽チ養蠶
業組合ト他ノ蠶絲業者組合、殊ニ製絲業
組合トノ間ニ利害ノ衝突デモアレバ、之ヲ
調停ヲ致スト云フヤウナ役目ヲ專ラ執リ、
又各方面ニ於ケル所ノ養蠶或ハ生絲ノ上ニ
付テ、共通ナル問題ヲ取扱フヤウナ公平ノ
機關ニ致ス組立ト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、私ノ只今申上ゲタヤウナ此組立ヲ骨子
ト致シマシテ、私ハ之ヲ質問スルノデアリ
マスカラ、私ノ先ヅ根本ニ於ケル所ノ、此
土臺ガ若シ多少ノ間違ガアリ、誤解ガアル
ト致スナラバ之ヲ第一ニ御正シヲ願ッテ、
ソレカラ私ノ論旨ニ付テ御答辯ヲ承リタイ
ト思フノデアリマス
ソレデ私ハ第一ニ伺ヒマスルノハ、此組
合ノ中ニ、只今現存シテ居リマスル村別ニ
於ケル所ノ養蠶組合、又字別ニ於ケル所ノ
養蠶組合ト云フモノノ中ニハ製絲家ニ專
屬致ス所ノ所謂特約組合ト云フモノガアル
ノデアリマス、是ハ非常ナ大キナ數ニナッテ
居ルノデアリマス、製絲家ト特約ヲ致シテ、
其指導ニ俟チ、其金融ニ俟シテ養蠶業ヲ營
ンデ居リ、其代償ト致シテハ、自分ノ取上
ゲタル繭ノ全部ヲ專屬ノ製絲家ノ手評ニ賣
買ヲ致スト云フノガ、專屬組合所謂特約組
合ノ狀態デアリマスル、今後此特約組合ト
云フモノノ取扱方ヲドウスルノデアルカ、
此特約組合ト云フモノヲ、他ノ一般ノ養蠶
組合ト同ジヤウニ、養蠶實行組合トシテ、
新法ノ下ニ之ヲ取扱フコトニナルト云フ
ト、其特約組合ト云フモノハ一面カラ自
分ノ專屬シテ居ル所ノ製絲業者ノ爲ニ、監
督束縛ヲ受ケルノデアル、一面ニハ此法規
ニ依ッテ上級組合カラ監督ヲ受ケルト云
フ、二次ノ監督ト云フカ、二次ト云フト語
弊ガアリマセウガ二元的ノ監督ヲ受ケル
二ツノ頭カラ監督ヲ受ケルト云フコトニナ
ルト、餘程混雜ヲシテ參ルバカリデナク、
是ハ中々事ガ起ッタ場合ニハ、容易ニ裁定ガ
サレ得ナイ事態ガ生ズルノデハナイカト云
フ、私共ハ心配ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
之ニ對シテ政府ハドウ云フ考ヲ持ッテ居ラ
レルカト云フコト、ソレカラモウ一ツハ養
蠶實行組合、此一番最下ノ養蠶組合ニ於キ
マシテハ從來其村ニ在ル所ノ町村農會ト
云フモノガ、養蠶業ニ關係ヲ持ッテ居ルナ
ラバ、三十條ニ依ッテ、否養蠶業組合デアリ
マスカラ郡ヲ單位トシテ居ルノデアリマ
スル、卽チ町村ノ今マデノ農會ハ郡ヲ單
位トシタル養蠶業組合ノ中ニ加入スルコト
ガ出來ルト、斯ウ云フ規定ニナッテ居ルノデ
アリマス、今マデ監督指導ノ任ニ営四ッテ居ッ
タル所ノ農會ガ、今度ハ今マデ指導シタモ
ノヽ組合ノ中ニ、自分ガ捲込マレルト云フ
コトニ相成ルノデアリマス、唯農會ト玆ニ
謳シテアリマスカラ、町村農會モ郡農會モ含
ムコトダラウト思フノデス、町村農會ニ於
キマシテハ問題ハ小サクナルノデアリマス
ルガ、郡農會ガ若シ郡ヲ單位ト致シタル所
ノ養蠶業組合ニ加入ヲシナケレバナラヌト
云フ立場ニナッタナラバ、今マデトハ地位ガ
〓倒スルヤウナ形ニナルノデアリマス只
今マデハ郡農會ト云フモノガアッテ、ソレ
ガ今マデノ養蠶ニ關スル養蠶組合ト云フモ
ノヲ指導誘掖シテ居ッタ、之ヲ監督シテ居〃
タト云フヤウナ立場ニアッタノデアリマス
ガ、ソレガ今度ハ此養蠶組合ノ聯合會ト目
スベキ、郡ニ於ケル所ノ養蠶組合ノ中ニ郡
農會ガ這入ッテ行カナケレバナラナイ、一組
合員トシテ這入ラナケレバナラナイト云フ
コトニナリマスレバ、本末ガ〓倒スルコト
ニ相成ッテ、其處ニ幾多ノ疑義ガ生ジ、又仕
事ノ上ニ色々ナル障碍ガ生ジハセヌカト云
フコトガ私ノ疑問デアリマス、斯樣ナコト
ニナルバカリデハアリマセヌ、非常ニ複雜
スルヤウデアリマスカラ能ク御聽キ落シ
ニナラヌヤウニ願ヒマスルノハ、其場合ニ
ハ郡ヲ一圓ト致ス所ノ地域ヲ以テ、郡農
會ガ郡養蠶業組合ノ中ニ加入スルト云フ
コトニ相成リマスルト一ハ郡ヲ全部
地域トスル大キナ郡農會ト云フ團體、
一ハ自分ノ村ヲ最大區域トスルダケノ
小サナ養蠶實行組合、是ガ對等ノ地位ヲ
以テ養蠶業組合ノ中ニ加人ヲスルト云フコ
トニナレバ先ヅ第一ニ起ル問題ハ負擔
金ノ分賦ハドウ云フ工合ニスルノデアルカ
是ガ第一ノ問題、而シテ郡農會ノ中ニハ養
蠶バカリデハナイ、純農ノ方面所謂米ヤ麥
ヲ標準トスル農業ノ指導ニ關スル事業ガア
ルノデアリマス、其外ニ副業ニ關スル事業
ガアリ、販賣斡旋ニ關スル事業ヲ包含シテ居ル
ノデアリマス、養蠶關係以外ニソレガ大ナル
事業ヲ持ノテ居ルモノデアリマスルガ、全部
加入ヲスルト云フヤウナコトハ到底出來
得ナイノデアリマスガ、是等ニ關シテハドウ
云フ方法ヲ執ラレルカ、此三十條ニハ斯ウ云フ
コトガ書イテアリマス、「養蠶業組合ノ地區
内ニ於テ養蠶業ニ關スル事業ヲ行フ農會、
產業組合又ハ產業組合聯合會ニシテ命令ヲ
以テ規定スルモノハ行政官廳ノ認可ヲ受ケ
ア養蠶業組合ノ組合員トナルコトヲ得」ト斯
リ書イテアル、「命令ヲ以テ規定スルモノハ」
ト書イテアリマスガ、命令ヲ以テ規定スル
ト云フノハドウ云フモノデアルカ、ドウ
云フ種類ノ命令ヲ將來御發シニナル積リ
デアルカ、此命令ノ內容ヲ此場合承シテ置キ
タイト思フノデアリマス
ソレカラ此組合ノ內容ニ付テ見マスル
ト私共ノ理解ノ出來ヌノハ、色々關係法
文ヲ列記サレテアルノデアリマス、卽チ蠶
絲業組合法ノ第二十六條ニ民法第三十八條
第一項、第四十四條以下十バカリ揭ゲテア
ル其外非訟事件手續法第三十五條、第三
十六條、第三十七條ノ二以下十條バカリ揭
ゲテアルノデアリマスガ、是等ノ準用條文
ハ如何ナル趣旨ヲ包容シテアルカ其大要
ヲ先ヅ吾々ハ承ッテ置キマセヌト、此養蠶實
行組合ト云フ本質ガ分ラナクナル、又養蠶
實行組合ニ準ジテ他ノ上級ノ組合ガ出來テ
居ルノデアリマスカラ、ソレ等ノ法規ノ解
釋ト云フモノハ、全部不明ニナッテ居リマ
ス是ハ大切ナコトデアリマスカラ豫メ
御說明ヲ賜ランコトヲ御願スル次第デアリ
マス(「分ル」ト呼フ者アリ)中々分ラナイ、
ソレカラ此組合法ニ漏レテ居ル方面ノコト
ヲ私共ハ心配ヲ致シテ居ルノデアリマス
第一乾繭組合デアリマス、政府ハ多額ノ
國帑ト-近頃ニナッテ實行豫算ヲ御拵ヘ
ニナッテ、大分減ラサレタヤウニ記憶シマ
スガ、兎モ角數年ニ亙リマシテ極力奬勵ヲ
致シタ結果、三十前後ノ乾繭組合ガ出來テ
居ルト私共考ヘテ居ルノデアリマス、今日
ハモウ少シ殖エタカ知レマセヌガ、又之ニ
似寄ッタル繭市場又ハ繭市場協會ト云フモ
ノガ-內容ハ多少違フカ知レマセヌガ、
同ジヤウナル組合ガ出來テ居ルノデアリマ
スガ、是ハ如何ニ御取扱ニナルカ、或ハ養
蠶組合ノ中ニ之ヲ加入セシメル養蠶實行
組合或ハ郡ノ養蠶業組合ニ之ヲ加入セシメ
ルモノデアルカ、將來乾繭取引ヲ奬勵スル
ノデアルカラ、組合員全部ガ之ニ加入スル
コトヲ便利トスルト云フヤウナル御意見モ
アルカノ如ク思ッテ居ルノデアリマス、私共
ハ之ニ對シテハ滿腔ノ敬意ヲ捧ゲテ贊同ヲ
致シタイノデアリマスルガ、今迄ノ乾繭組
合ニ致シマシテモ、繭市場又ハ繭市場協會
ニ致シマシテモ、多額ノ負債ヲ持ッテ居ルノ
デアリマス、其負債ヲ脊負ッタ儘デ組合ニ加
入サルルコトハ、新シイ組合ノ頗ル困難ト
スル所ダラウト思フノデアリマス、併ナガ
ラ借金ハ元ノ乾繭組合ガ負擔スベシ、借金
ナシニ丸裸デ飛込メト言ハレテモ、從來ノ
乾繭組合、繭市場又ハ其協會ガ其擧ニ出
ルコトヲ躊躇サレルダラウト思ヒマス、苟
モ繭ノ取引ニ付テ生繭デナク之ヲ乾燥シ
乾繭ニ致シテ商品化ノ充實ヲ圖ラウト云
フ御趣旨ノ下ニ、國ノ方針ヲ御立ニナル以
上ハ乾繭組合等ヲ見殺ニサレル道理ハナ
カラウ、之ニ對シテ十分ナル御用意ガアル
コトト拜察スルノデアリマスカラ、ソレ等
ノ點ニ付テ內容ヲ承リタイト思フ次第デア
リマス、ソレカラ又從來蠶絲業法中ニ認メ
ラレテ居リマスル所ノ繭ノ取引ニ對シテ伸
介斡旋ヲスル仲買、卽チ繭ノ伸立業者ノ組
合ト云フモノヲドウスルカト云フコトヲ此
場合承リタイト思ヒマス、是ハ大切ナ問題
デアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=36
-
037・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=37
-
038・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 繭ノ仲買業者ガ養蠶
家ト製絲家トノ間ニ介在スルト云フコト
ハ一面ニ於テ弊害ヲ伴フ事例モ少クナイ
ノデアリマス、併ナガラ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=38
-
039・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス、
山崎君、靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=39
-
040・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 一面ニ於キマシテハ
小ナル製絲家ノ立場ヲ考慮致サナケレバナ
ラナイ大ナル製絲家ハソレノ〓繭ノ買入
機關ヲ持ッテ居リマスカラ、何等不自由ナク
繭ノ買入ガ出來得ルノデアリマスケレド
モ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=40
-
041・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=41
-
042・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 小ナル資本ヲ有スル
小製絲家ト云フモノハ、サウ云フ機關ヲ持ッ
テ居リマセヌ、左樣デアリマスカラ、養蠶
家ノ庭カラ直ニ繭ヲ買入レルト云フコトハ
困難ナノデアリマス、ソレデ玆ニ繭ノ仲立
業者、所謂俗ニ云フ仲買人ト云フモノガ必
要ニナッテ參ルノデアリマス、縣ニ依リマシ
テハ、是ノ數ハ夥シキ數ニ上ッテ居ルノデア
リマシテ、又其中ニハ不眞面目ナ者バカリデ
ナク、眞面目ニ其業ヲ營ンデ居リ、又相當
ノ資產ヲ有シテ、小製絲家ト養蠶家ノ間ニ
介在ヲ致シテ、圓滑ナル取引ヲ助ケテ居ル
者ガ少クナイノデアリマス、私共伺ヒマス
所ニ依リマスト云フト、日定等ノ仲立業者ハ全
國ヲ合スルト云フト、約三十三万人ニ達ス
ルト云フコトデアリマス三十三万人ト云
フモノハ少ナカラザル數デアリマス、其
中ニハ或ハ排斥スベキ性質ノモノモ含ンデ
居リマセウ、併ナガラ今日迄養蠶業ヲ是迄
發達セシムルニ付テハ是等ノ繭ノ仲立業
者ト云フ者ノ功勞ト云フモノハ十分之ヲ
認メテヤラナケレバナラナイダラウト思フ
ノデアリマス、今日他ノ蠶絲ニ關スル諸團
體ハ之ヲ法律ニ依ッテ認メラレテ、相當ノ
保護ヲ加ヘラレルニ當リマシテ、過去ノ大
ナル功績ヲ有シ、現在ニ於テモ小サナル資
本ヲ擁シテ居ル所ノ小製絲家ガ、大ナル資
本ヲ擁スル所ノ大製絲家ニ壓迫サレツヽア
ル、其間ニ介在シテ之ヲ保護シテ、其業ヲ
伸進セシメルコトヲ得ルト云フ機能ヲ有シ
テ居ル是等ノ繭ノ仲買業者ヲ此ノ法律ニ
包括シ能ハザラシムルヤウナル狀態ニ之ヲ
置クト云フコトハ、吾々ノ情ニ於テ忍ビザ
ルバカリデナク、蠶絲業ノ將來ニ對シテ好
結果ヲ與ヘナイノデハナイカト、斯樣ニ考
ヘテ居ル次第デアリマスガ、之ニ對シテ農
林當局ハ如何ナル御用意ガアルノデアルカ
ト云フコトヲ承リタイト思フ次第デアリマ
ス、尙ホ其外ニ現行蠶絲業法ニ認メラレテ
居リマスルモノハ、蠶種ノ販賣同業組合デ
アル、種紙ノ販賣斡旋ヲ業トスル所ノ組合
デアリマス、縣ニ依クテハ是等ノ組合ガナイ
所モアリマスケレドモ、東京府下ヲ中心ト
シテ、埼玉群馬等ニ於テ、多數ノ是等ノ組合
ガアリ又縣トシテモ聯合的ノ組合モアル
ヤウニ吾々ハ記憶ヲ致シテ居ルノデアリ
やく、是ハ小ナル蠶種製造家ハ此機關ヲ
通ジテ蠶種ノ配給ヲ致シテ居ルノデアリマ
シテ、是ハ蠶種製造業ニ伴ッテ重要ナル役目
ヲ致シテ居ルノデアリマス、是ガ今囘ノ組
合ニ省ケテ居ルト云フノハドウ云フモノデ
アルカ是ハ一面唯重要物產同業組合法ニ
依ッテ弊害矯正ノ意味ニ於テ、之ヲ取締ル
意味ニ於テ同業組合ヲ認メルコトデナク
是ハ必要ナル機關デアルトスルナラバ、之
ヲ相當保護ヲ加ヘルト云フ必要ガアルダラ
ウト私共ハ考ヘテ居ルノデアリマス、デ是
等ニ對シテ農林當局ハ如何ナル御考ヲ持
トヲ承リタイト思フ
テテファンストーシーン特ニ是等ノ蠶種ノ問題ニ付
チャッシュカー北京市公安局海淀分局重大ナル問題香港文明文化學學科技大學
置カナケレバナラヌノデアリマス
以上ノ問題ヲ承リマシタル後ニ、是等ノ
問題ニ付テ漸次承リタイト思ヒマスカラ
以上ノ私ノ質問ニ對シテ先ヅ御答辯ヲ賜ラ
ンコトヲ此場合御願ヲ致シテ一先ヅ演壇
ヲ降ル次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣町田忠治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=42
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043・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 大要私カラ御答
致シマス高橋君ガ初メ今度ノ組合ノ區
別系統ハ斯樣ニ解釋致シテ居ルガソ
レデ自分ノ解釋ハ提案者ト一致シテ居ルカ
否ヤト云フコトヲ先決問題トシテ、次ニ色
色ナ御質問ニナッタノデアリマス、御尋ノ通
リ組合ノ種類及ビ段階ハ高橋君ノ御述ニ
ナック通リデアリマス、卽チ斯樣ニ高橋君ガ
御諒解ニナッテ居ルコトヽ思ヒマス、養蠶業
ニ對シテハ實行組合ト云フ、私法人トシテ
ノ實行組合ガ町村部落ニ出來ルコトハ第一
ノ段階デアリマス、第二段ニ、郡ヲ單位ト
シテ組合ガ出來ル、更ニ府縣ヲ基トシタル
聯合會ガ出來ル、更ニ全國ノ聯合會ガ出來
テ、最後ニ中央最高機關ニ參ルノハ養蠶業
ニ對シテデアリマス、製絲業其他ニ對シテ
ハ府縣ヲ組合トシテ、全國ヲ聯合團體ト
シテ更ニ進ンデ中央機關ニ參ル養蠶業
ニ對シテハ五段ト相成ル其他ノ製絲業ニ
對シテハ三段目ニ於テ中央ニ參ルト云フコ
トハ、高橋君ノ御解釋ノ通リデ宜カラウト
思ヒマスソレカラ一番御心配ノ點ハ、
万四千モアル養蠶組合ノ中ニ或ハ製絲業
者ト關係ヲ持フテ居ルヤウナ種類モ相當ア
ルガ是ガ郡ニ參リ、縣ニ參ル間ニ、其勢
力ニ依ヶテ純然タル養蠶家ノ利害ヲ代表セ
ズニ寧ロ製絲家ノ利害ヲ代表スルヤウナ
弊害ガナイカト云フヤウナ意味合ノ御尋デ
アリマシタ、此點ハ私共モ之ヲ〓究致シマ
シテ現在ノ中央會ガ、動モスレバ製絲家
ノ利害ガ多ク代表セラレテ養蠶家ノ利害
ガ同樣ニ參ッテ居ラヌ所ニ現在ノ中央會ノ
弊ガアル、隨テ養蠶組合ガ中央ニ兩々相
對シテ、中央ニ於テ一致セヌ傾ガ今日マデ
アリマシタ、其弊害ヲ矯メル爲ニ、此度ノ
中央機關ヲ設ケテ製絲業者、養蠶業者、
蠶種ヲ造ル者、輸出業者、有ユル業態ヲ一
致セシムルト云フノガ此法案ノ理想デアリ
マシテ大體ニ於テ此趣意ニ御贊成下サッ
タコトハ、私ノ感謝致ス所デアリマス、一番
下ノ農會ト、此簡易實行組合トノ關係ニ於
テノ御心配、或ハ產業組合等ニ對スル關係
ノ錯雜シテ居ルガ爲ニ生ズル困難、之ニ付
テノ御質問ハ御尤デアリマス、此提案ヲ致
シマスル前ニ、產業組合、農會竝ニ新ニ法
人トシテ出來マスル此實行組合等ノ關係ヲ
愼重ニ考慮シマシテ御話ノ如ク町村農會
ノ養蠶業ヲ指導奬勵致シテ居ルヤウナモノ
ニ對シテハ、希望ニ依ッテ郡ニ於ケル組合ニ
這入ルコトニ致シテ調和致シテ居ルノデア
リマス、尙ホ其他或ハ養蠶業ニ對スル繭ノ
仲買組合トカ、色々ナ方面ニ對シテノ御尋
モアリマシタガ大體ニ於テハ此五ツノ
業態以外ノ組合ハ現今アリマスル所ノ同
業組合法ニ依ッテ相當存在シ、働クコトガ出
來ルコトヲ認メテアリマスルガ故ニ、其詳
細ノコトニ付キマシテハ、各條ノ關係等ハ
若シ此席デ說明致スコトノ御希望デアリ
マスレバ蠶絲局長ヨリ申上ゲ又各條ノ
關係ニ付キマシテハ委員會デ御答スルコ
トニ御同意下サレバ尙ホ結構ト思ヒマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=43
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044・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 高橋熊次郞君
[高橋熊次郞君登壇]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=44
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045・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 重大ナル問題デアリマス
カラ曹時御辛抱ヲ願ヒタイト思フノデア
リマス私自身ノ疑ヲ晴ラスニ付テハ委
員會ヲ通ジテ伺フ途モアリマスガ、全國何
百万、ソレノ家族ヲ合スルト云フト、何千万
人ト云フ養蠶家ヲ救濟スルト云フ案デアリ
マスルカラ、其人々ハ如何ナル心持ヲ以テ
此案ニ臨ンデ居ルカト云フ心持ヲ考ヘタナ
ラバ十分カ二十分ノ御辛抱ハ如何ニ民
政黨ノ人々ガ氣ガ短イト云フテモ、御辛抱
ガ出來ナイト云フコトハアルマイト私ハ考
ヘテ居リマス遺憾ナガラ委員會ニ於ケル
私ノ演說ハ全國民ニ通ジマセヌ、故ニ私ハ
本會議ニ於テ貴重ナル時間ヲ拜借致シテ居
ルノデアリマスカラ、其意ヲ諒トセラレン
コトヲ豫メ民政黨ノ各位ニ向ッテ御願ヲス
ル次第デアリマス
只今私ガ第一ニ御伺致シマシタル諸點ニ
付テ大體ノ御答辯ヲ承リマシタ而シテ
私ハ關係法文ノ一々ニ向ッテ如何ナルコト
ヲ御規定ニナッテ居ルカト云フコトヲ御尋
申上ゲタノデハナイノデアリマス一體是
ハ大體ニ於テドウ云フコトヲ規定シタノデ
アルカト云フ、大體ニ付テノコトヲ承ッタノ
デアリマスカラ、此點ニ付テ本會議ニ於テ
承ルコトガ出來レバ私ノ幸福ト致ス所デ
アリマス、特約組合ハ製絲家ヲ本位トシ
テ出來タ組合デアッテ、養蠶家保護ノ上ニ慊
ラザルコトガアルカラシテ今囘ノ立法ヲ
機トシテ、是等ノ組合ニ付テハ相當ノ所信
ヲ以テ向フ積リデアルト云フヤウナ大體ノ
御答辯ヲ承リマシタ今日特約組合ハ如何
ナル養蠶家トノ間ニ利害關係ヲ生ジテ居ル
カト云フコトハ天下周知ノ事實デアリマ
ス今囘ノ御提案ノミニ依ッテハ、私共ハ如
何ニ將來御取扱ニナルカト云フコトニ付テ
ハ了解スルニ困難ヲ感ズルト思フノデア
リマス殊ニ養蠶、先程モ申上ゲマシタル
通リ、特約組合ニ於キマシテハ他ノ特約
ヲナサザル所ノ一般實行組合トノ間ニ利
害ノ衝突ガ起キルコトガアルダラウ、例へ
バ一面ニ於テ乾繭ヲシテ品物ヲ統一ショウ
ト云フ一般ノ輿論ニ對シテ特約組合ハ生
繭ノ儘デ、製絲家ニ渡サウト云フコトガ問
題ニナルダラウト思フノデアリマス、或ル
モノハ出合相場デ其時ノ相場デ賣價ヲ定
メヤウト云フモノガアリ、特約組合ハ製絲
家トノ約定ニ依ッテ、正量取引デ行カウト云
フ玆ニ窮窟ナルコトニ屢出出フノデア
ル、サウ云フ場合ニ於テハ、他ノ一般組合
トハ同一ナル步調ヲ以テ進ムコトガ出來得
ナイト云フコトガアルダラウト思フノデア
リマス、此場合ニ、今日特約組合ガシテ居ル
ヤウナ又一方ニ製絲家カラ受ケテ居ルヤ
ウナ覊束ト申シマスカ、壓迫ト言ヒマスカ、
サウ云フモノヲ一切排除シテ進マセルト云
フ精神デアルカ、從來ノ慣行ハ弊害ヲ餘
リ認メナイト云ブコトナラバ此儀進ムカ
斯ウ云フコトニ論議ノ分レ目ガアルノデア
リマス、而シテ表面カラ見テ、弊害ガアル
カナイカナドヽ云フコトハ容易ニ行政官
廳ニハ分ルマイト私共ハ考ヘルノデアリマ
スカラ弊害ノアルカナイカデ以テ標準ヲ
立テルト云フコト是亦困難ナリト思フノ
デアリマス、左樣デアリマスカラ、現在行
ハレテ居ルヤウナ特約組合ト云フモノハ
一切之ヲ認メナイト云フコトニ相成ルカド
ウカト云フコトヲ私ハ承ルノデアリマス
今日特約組合ハ色々ナコトヲヤッテ居リ
マス、先ヅ前借ト云フコトヲ致シマスカラ、
其金ノ支拂ヲ了ラヌ內ハ自分ノ繭ハ他人
ニ賣渡シテハイカヌト云フ契約ヲ致スノデ
アリマス、自分ガ雜多ナル繭ヲ取入レテハ
不都合デアルカラ繭ノ品種ヲ統一スル爲
ニ蠶種ヲ自分自ラ配布スルト云フ手續ヲ
割つ 、契約致シテ居ルノデアリマス、自分
ガ自ラ買入レ、或ハ製絲家自ラ製造ヲ致シタ
所ノ蠶種ヲ養蠶家ニ配布ヲ致シ-無償配
付ノ所ハ少イ、相當ノ代金ヲ取ヶテ、之ヲ配
付スルノデアリマス、ソレカラ他ニ一切自
分ノ生產シタル繭ヲ賣,テハイケナイト云
フヤウナ禁止的契約ヲ致シテ居ルノデア
リマス、ソレガ爲ニ昨年ノヤウナ經濟界ノ
變革ノ起ッタ場合ニ於テハドウナッタカト
云フト、ドウシテモ專屬組合ニ從屬シテ居
ルモノハ其專屬先ノ製絲家ニ繭ヲ全部
持運バナケレバナラヌ製絲家ハ色々ナ甘
言ヲ以テソレヲ迎へ入レマスガイザ〓算
ト云フコトニナルト前借ノ元利ヲ繭代金
ノ中カラ引去ッテシマフノデアリマス、ソレ
ニ要シタル所ノ蠶種代、種紙代ト云フモノ
モ亦引去ル、養蠶〓師ト俗ニ言フ所ノ指導
技術者ガ其處ニ何回出張シタ、此旅費日
當又ハ報酬ト云フモノヲ含メテ是亦引去ル
ノデアリマス、斯ウ云フコトデアリマスカ
ラ、却テ借用證文ヲ置イテ繭ヲ全部渡シテ、
泣キノ淚デ歸ッテ來タト云フ養蠶家ハ少ク
ナイノデアリマスソレバカリデハナクシ
テ、一部ノ大製絲家ハ全國ニ是等ノ特約
組合ノ網ヲ張リマシテ、自分デ勝手ニ蠶種
ヲ製造致シテ此蠶種ヲ强制的ニ飼養セシ
メテ居ルノデアリマス、是ハ養蠶家ノ大間
題ニナッテ居ルト云フコトハ、夙ニ農林大臣
ノ御分リノコトダト思フノデアリマス、一
二年ハ其甘言ニ騙サレテ此專屬組合ニ加
入シ、其後ニ至リ壓制ニ已ムヲ得ズシテ之
ヲ脫退スルト云フコトガ今日ノ一ツノ流
行ノヤウナ工合ニ相成ッテ居ルノデアリマ
ス此種ノ取扱ニ係ッテ居ル所ノ蠶種ト云
フモノハ實ニ恐シイ、表面ト裏面トノ異
ナッタル性質ヲ保有シテ居ルノデアリマス、
例ヘバ名前ヲ中サナイト御理解ニナラヌト
思ヒマスガ全國一般トハ申シマセヌ、私
共ノ山形縣ニ於ケル郡是製絲株式會社ノ
ヤッテ居ルヤウナ一例ヲ以テ見マスルト云
フト、是ハ國ノ推奬品種デモ何デモナイ所
)、一種ノ郡是特有ノ品種ヲ以テ、之ヲ强
制的ニ吾々養蠶家ニ向ッテ飼育セシメテ居
ルノデアリマス卽チ春蠶ニ於テハ、支那
ト歐羅巴種ノ雜種デアル所ノー歐支雜種
デアル所ノ「エス」號、或ハ歐羅巴種ノ三號
ト云フヤウナ、原蠶種製造所デ造ッテ居ラレ
ル所ノ國產歐三號ト云フヤウナモノヲ掛
合シタト云フ雜種ヲ、吾々ハ春蠶用トシテ
强制セラレルノデアリマス、或ハ又秋蠶ニ
於テハ國產ノ靑熱ト稱スルモノト、支那
種ノ諸桂ト云フモノヽ日支交配種ト云フヤ
ウナモノヲ、郡是靑、郡是白ナドヽ云フテ、
吾々ニ强制セラレルノデアリマス、如何ニ
モ立派ナ繭ガ出來上リ、絲量モ非常ニ多イ
ノデアリマスガ、非常ニ違蠶ガ多イノデア
リマス、不作ガ多イノデアリマス、ソレデ
養蠶家ハ堪ラナイ、取ッタ繭ハ立派デアリ、
絲モ澤山取レテ製絲家ニハ喜バレルケレド
モ、非常ニ病氣ニ罹リ易イ或ハ蠁蛆ニ罹
リ、或ハ卒倒菌ヲ保有スルモノガ多イノデ
アリマス、ソレデアリマスカラ、非常ニ是
ハ不作ヲ伴フノデ、其弊害ニ堪ヘナイ、段
段調ベテ見ルト、製絲家ハソレガ爲ニ非常
ニ儲カルノデアリマス、何トナレバ病氣ニ
冐サレ易イノハ雄デナクシテ寧ロ雌デア
ルノデアリマス、雌ノ方ガ病氣ニ冐サレ易
イノデアッテ、雄ハ對抗力ガ强イノデアリマ
ス、不作ノ時、其大半ト云フモノハ雌ガ斃
レテ雄ガ殘ル、所ガ絲ニ取シテ見ルト、雌ヨ
リハ雄ノ方ガ非常ニ絲ガ餘計取レルノデア
リマス、生キ殘ッタ蠶ハ非常ニ絲目ガ餘計
出ルト云フコトニ相成ルノデアリマス卽
チ繭ノ巢ニ比シテ蛹ガ非常ニ小サイノデア
リマス此處デ製絲家ハ二重ノ儲ヲスルト
云フコトニナル、斯ウ云フコトヲヤッテ居ル
ノハ特約組合ノ中デモ最モ搾取ノ甚シイ
モノデアッテ、吾々眞面目ナ養蠶家ハ之ヲ
蛇蝎ノ如ク嫌ッテ居ルノデアリマス、斯ウ云
フ事ガ行ハレ居ルノデアリマスカラ之ヲ
如何ニシテ取締ルカト云フコトガ今日ノ間
題デアルソレデアルカラ、特約組合ヲ今
ノ儘デ養蠶實行組合ト云フモノニスルカ
或ハ特約ヲ解除シテ、サウシテ裸ノ儘デ組
合ヲ作ラシメルカト云フコトガ一ツノ大
キナ問題デアルト共ニサウ云フ場合ニ
今マデ殘ッテ居シタ製絲家ニ對スル負債ハ
如何ニシテ整理セシメルカト云フコトガ、
殘ッタ大キナ問題トシテ現レナケレバナラ
ヌト私ハ考ヘルノデアリマス是ハ養蠶家
ト致シマシテハ、非常ニ大キナ問題デアリ
マス此事ニ付テ御意見ヲ拜聽致サナケレ
バナラヌト思フノデアリマスソレカラ今
日斯樣ナ色ミナ蠶種ニ付テ、種々雜多ナ手
前勝手ナ名稱ヲ付ケテ、或ル一面ニハ時
ハ此頃ハ餘リ流行ラナイヤウデアリマ
スケレドモ、二三年前ニハ伊太利白ト云フ
ヤウナ、譯ノ分ラヌ名前ヲ付ケテ頻ニ吾
吾ニ押賣ヲシ、隨分夏秋蠶ニ付テ違蠶ヲ生
ゼシメタノデアリマス、サウ云フヤウナコ
トヲ此場合ニ防ガンガ爲ニ、原蠶種卽チ種
紙ノ本ニナル蠶種ト云フモノハ全部國營
ニシタラドウダト云フヤウナ事ガ問題ニナ
リマシテ、過日モ全國ノ蠶種製造家ガ東京
ニ集ッテ、是等ノ決議ヲ致シテ御手許ニ陳
情ヲ致シタト云フコトヲ吾々ハ承知致シテ
居ルノデアリマス、デ是等ノ事ハ此蠶絲
業組合法案ヲ御制定ニナリ、蠶絲業法ヲ改
正ニナルト云フ場合ニ於テ共ニ行ハナケ
レバナラナイ、解決ヲシナケレバナラナイ
重大ナル問題ダラウト思フノデアリマス
先程モ申シマスル通リ、蠶絲業組合法案ト
云フモノガ出來テ少クモ養蠶組合ト云フ
モノガ法律デ認メラレ、他ノ產業組合、農
會等ト同一ノ行動ヲサセテ貰フト云フコト
ハ養蠶家ノ爲ニ非常ナル幸福ナリト吾々
ハ考ヘルノデアリマスガ、之ニ附帶スル派
生的ノ問題デハアリマセウケレドモ、幾多
ノ問題ガ殘サレテ居ルバカリデナク從來
存立致シテ居ノタ所ノ、他ノ農業上ノ產業諸
團體ガ之ガ爲ニ消長ヲ來スト云フコトニ
付テハ是亦農村ニ住居ヲ致シ、利害ヲ共ニ
致シテ居ル所ノ吾々農民トシテハ深ク考
ヘザルヲ得ナイノデアリマス是等ニ付テ
ハ相當ノ御考慮ガアルベキ筈ダト吾々ハ考
ヘルノデアリマノガ是等ニ付テ十分吾々
ノ理解ノ得ル如キ御親切ナル御答辯ヲ承リ
タイト思フ御答辯ニ依ッテハ他ノ質問
ハ委員會ニ讓リマスガ、又御答辯ニ依ッテハ
三タビ此演壇ヲ汚サナケレバナラヌト思ヒ
マスカラ、明瞭ナル御答辯ヲ得タイト思フ
次第デアリマス
〔國務大臣町田忠治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=45
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046・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 御意嚮モ左樣デ
アルト承リマシタカラ詳細ハ委員會ニ於
テ申上ゲルコトニ致シマス、併シ此議場ヲ
通シテ天下ニ理解セシムルト云フ御希望
デアリマシタカラ、其點ヲ申上ゲテ置キマ
ス
二万四千ノ今ノ實行組合見タヤウナモノ
ノ中ニ御話ノ特約組合ト云フモノハ相當
アリマス、是ハ製絲家ノ常ニ利用スル所ト
相成シテ、養蠶家ノ立場カラ見レバ、頗ル不
利益ヲ地位ニ在ルト云フコトモ御同感デア
リマス此度ノ法案ニ於キマシテハ簡易
ナル實行組合ヲ方針ト致シマシテ、ソレヲ
統一シテ、郡ニ組合ガ出來ルノデアリマス、
郡ノ組合ガ地方町村若クハ部落ニ於テ出來
テ居リマスル簡易ナ實行組合ヲ指導監督政
スノデアリマスガ故ニ御話ノ特約組合等
ノ從來ノ弊害ハ此郡ノ指導監督ノ地位ニ
在ル組合ニ依ッテ救ハレルコトヽ思ヒマス、
是ハ契約ニ依ッテヤッテ居リマスガ故ニ、法
律上直チニ禁止スルト云フコトハ如何デア
ラウカト思ヒマスガ、之ヲ指導監督スル郡
組合ガ、斯樣ヲ特約組合ヲ漸次消滅セシム
ル意味デ活動スルコトニ、農林當局トシテ
ハ大體監督指導スル積リデアリマス
ソレカラ大體ハ御承知ノ通リ、斯樣ナ意
味合ニ依ッテ、養蠶家ト製絲家ノ利害ガ從
來往々ニシテ相背馳シテ居ッテ養蠶家ノ利
害ガ製絲家ニ依ッテ常ニ支配サレテ居ッタ結
果、養蠶家ノ立場ガ不利益デアッタコトハ
事實デアリマス中央會ニ於テモ左樣ヲ現
レガ屢〓アルノデアリマス此度ハ中央マ
デ全國聯合會ガ來ラレマシテ、部落單位カ
ラ四段ノ段階ヲ經マシテ全國聯合會ト云
フモノハ養蠶組合ニモ出來マシテ是ガ鞏
固ナル團體トシテ、養蠶家ノ利害ヲ以テ中
央聯合會ノ中央ノ機關ニ參ルノデアリマス
ガ故ニ、御心配ノヤウナコトハ從來ト違
ヒマシテ、同等ノ勢力、同等ノ職權ヲ以テ
中央機關ニ養蠶家ガ參リマス、ソレ故ニ御
心配ノヤウナコトハ今後ハナイト思ヒマ
ス、私共監督ノ農林省ト致シマシテハ此
法案ガ幸ニ御協賛ヲ經テ法律ト相成シタ以
上ハ飽クマデモ養蠶家、製絲家ノ利害ヲ
均〓ニ調和スルコトニハ十分努力スル筈デ
アリマス、詳細ハ委員會デ申上ゲマス
高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=46
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047・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 特約組合ニ付キマシテ
ハ唯相象的ナ文句ヲ以テ御答辯ヲ承ッタ
次第デアリマス如何ナルコトヲオヤリニ
ナルカト云フ御方針ヲ玆ニ御闡明ニナラヌ
ノデアリマス、非常ニ長イ御鄭重ナル御言
葉ヲ賜ッタノデアリマスケレドモ、ソレヲ幾
ラ「コンデンス」シテ見マシテモ、幾ラ縮メ
テ考ヘテ見マシテモ私ガ御伺申上ゲテ居ル
所ノ骨子ニ觸レテ居ラヌノデアリマス私
ハ詳細ナル事ハ承ル必要ハナイノデアリマ
スノデソレハ委員會ニ於テ承リタイト思
ヒマスガ、其ノ大方針ニ付テ此處デ承リタ
イノデアリマス、之ヲ右ニスルカ、左ニス
ルカト云フコトノ、簡單ナル言葉デ以テ承
リタイ斯樣ニ言ッテ居ルノデアリマス、今
マデ弊害ノアルモノハ是ハ一切許サナイ
積リデアル、斯ウ云フノデアルカ今仰セ
ニナッタ通リニ、契約シタト云フコトデアル
ガ、契約ト云フモノハ一年限リデアル、
是ハ永久ニアナタニ專屬スルナドト云フ契
約ヲシテ居ルノデハアリマセヌ、養蠶家ト
製絲家ノ間ニ締結サレタ契約ト云フモノハ、
期間ガ切レバ後ハ左樣ナ契約ヲ爲サ
シメザル方針デアルカドウカヲ承ラナケレ
バナラヌ、先程第一問ノ場合ニ私ガ述ベマ
シタ如ク弊害ヲ認メザル場合ニハ從來
ノ慣行通リ之ヲ認メルト云フコトデアルナ
ラバ-サウ云フ御口吻モアルヤウニ私共
ハ聽イタノデアルガ、若モ左樣ナル御內容
ヲ有セラレルト云フコトデアルナラバ此
特約組合ニ隨伴致シテ居ル所ノ、正量取引
ニ對スル將來ノ御方針ハドウデアルカト云
フ點モ此場合全國的ニ御說明ヲ願ハナケ
レバナラヌ大問題デアリマス繭カラ絲ヲ
幾ラ挽キ得ルカト云フコトノ正量ヲ標準
トシテ、繭ノ値段ヲ定ムルト云フコトニ相
成ッテ居リマスナラバ、從來ノ如キ買取ル方
ノ製絲家ノ手ニ依ッテ、繭ノ絲量檢定ヲ致
スト云フコトハ非難ガ多イノデアリマス、
政府ハ之ヲ御認ニナルヤ否ヤ、若シ製絲家
ノ手ニ依ッテ、繭ノ檢定ヲヤルコトガ宜シク
ナイト云フナラバ民間ヨリ聲ノ擧ッテ居
リマス所ノ國立ノ檢定所ヲ設ケル又縣立
ノ檢定所ヲ設ケル所謂第三者ノ手ニ依。ツ
テ、此檢定ヲ行フト云フ御意思ガアリヤ否
ヤ、其御意思ガアルトスレバ何時頃カラ
全國均一ニ實行サレル積リデアルカト云フ
コトヲ、此場合吾々ハ承ラナケレバナラヌ
ノデアリマス
ソレカラ私共ハ常ニ考ヘテ居リマスガ、
養蠶家ノ負債ノ整理ト云フコトハ、是ハ第
一ノ問題デアル、旣ニ此立法ニ依ッテ養蠶
家ヲ保護サレルト云フナラバ現下ノ展開
サレタル養蠶家ノ窮狀ヲ根柢カラ御救ヒニ
ナラナケレバナラヌト吾々ハ考ヘテ居リマ
ス、農林大臣ハ今日ノ養蠶家ノ窮狀ガドノ
程度デアルカト云フコトハ御分リニナッテ
居ラヌトハ公ノ席デハ申サレマイト私共
ハ考ヘルノデアリマス今日ハ旣ニ再生產
ニ從事ヲ致シテ昭和六年度ニ於ケル養蠶
ノ目下準備中デアルノデアリマスガ是ノ
仕入金ヲ持ッテ居ル養蠶家ハ全國數千万ノ
中ニ何人アル、全國二百二十万戶ノ養蠶家
ノ家庭ニ於テ、此準備アル者果シテ幾何カ
ト私ハ絕叫セザルヲ得ナイノデアリマス、
アナタガ嘗テ養蠶家救濟ノ聲ヲ大ニ政
シ生絲ノ融資補償法ヲ出動サレルト同時
ニ養蠶家ハ別ノ方面デ救濟ヲスルト言ッ
タ四千万圓ノ養蠶家救濟應急資金ト云フ
モノヲ急速ニ御出シニナルト聲明サレタコ
トヲ御記憶デアリマセウ、今日承ッテ見ル
ト、其中漸ク二千七百万圓ヲ貸出サレタ、何
時貸シタノデアル、應急資金デアル、昨年
ノ四月ノ養蠶家ニ應急資金ヲ貸付ケテ春蠶
ヲヤラセヨウト云フ資金デアル、何時養蠶
家ハ借入レタノデアリマス、山形縣ハ漸ク
ニシテ九月ノ末、埼玉縣ノ如キハ十一月ノ
末ニ漸ク借リタデハアリマセヌカ、如何ニ
暖カナ地方ト雖モ、今日養蠶ヲヤッテ居ル處
ハ晩秋蠶ハ十月ノ中頃デ終リダラウ尤
モ九州中國ノ暖カイ處デハ十一月一杯
位ヤレマセウ、併ナガラ關東、東北ノ土地
ニ於テハ、十月ハ終ヒト思。テ宜イ、其後
寒冷ナ氣候ニ出遭フ所ノ繭ナドハヤッ
テモ引合ハナイト云フコトニ相成ル、
昨年ノ如キ、繭ノ値段ノ低落ヲ致シタ時ハ
尙更ノコトデアルト考ヘナケレバナラヌ
ソレヲ應急資金、直チニ貸スカラト言ッテ、
其人々ニ五六月カラ當ニサセ、七月ナドニ
人ヲ集メテ貸付ノ宣傳ヲヤッテ居ル、ソレデ
早イノガ九月遲イノハ十一月末ニナッテ、
四千万圓ノ內僅ニ二千七百万圓シカ貸出セ
ナイ、ソレモ今マデノ借ノアッタ者ハ全部差
引カレタ、吾々此二千七百万圓ノ大半ハ今
ノ勸業銀行等ニ前借ガアッタ前借ト云
フト語弊ガアリマスガ今マデ度々政府デ
低利資金ヲ出サレタ、其資金ノ返濟ニ滯リ
ノアッタ者、卽チ前ノ養蠶資金ノ二千万圓、
四五年前ニ出シタ、ソレガ丁度最後ノ第三
期ノ年賦金ヲ拂フ期日ガ七月ニナッテ居ル
ノデアル、ソレヲ大半差引カウトシタ而
モ七月マデニハ十分借入レラレルト思ッタ
カラ、多クノ者ハ延滯日步四錢ナドヽ云フ
高イ日步ヲ取ラレテ居ルノデアルナーニ七
月マデハ貸スト云フコトヲ言ハレテ居ルカ
ラ吾々ハ貸付金ノ配布額ガ決定サレテ居
ルカラ、直グニ借受ケラレルダラウホン
ノ四五日ナラ我慢シヨウ、四錢ト云フ高イ
延滯日步デ、期限ガ切レテモ我慢シテ居ル、
ソレガ十一月ニナッテ、ドウナッダ、四錢ノ延
滯日步マデ取ラレタ人々ハ、前借ヲ拂テ
更ニ借用證マデ取ラレタト云フコトニ過ギ
ナイノデアリマス(此時發言スル者アリ)農
村ヲ識ラザル者、農村ヲ忘ルル者アレバ國
亦亡ブト言ッテ居ルデハナイカ、斯ノ如キ實
際ノ狀況ヲ述ベテ居ルノニ彌次ルトハ何事
デアルカ、而モ與黨タル民政黨ノ一角カラ
此聲ガ起ルト云フコトハ國ノ前途危フシ
ト吾人ハ絕叫シナケレバナラヌノデアリマ
ス(拍手)殊ニ東北ハ今ヤ積雪丈餘ニモ及ン
デ居ル、而モ此場合ニ於テ、窮民ハ旣ニ倉庫ニ
何等ノ貯ヘガナイノデアル、餓ニ泣イテ居
ル其矢先ニ唯一ノ產業デアル所ノ此養蠶
ノ資金ニ缺乏シテ居ル狀態ヲ吾々ハ物語ノ
テ居ルノデアル歷史ハ繰返ス而モ五年
度ニ起ッタ事實ガ、六年度デ直チニ繰返サレ
ルダラウト思フ段鑑遠カラズ、其後ニ起ッ
夕所ノ七千万圓ノ農山漁村ノアノ失業救濟
ノ資金ハドウデアリマス、七月ニ之ヲ發表
サレ九月ニ各方面ニ通牒ヲ發セラレテ
直チニ從來ハ色ミナ手續モアッタケレドモ、
今囘ハ特別ニ簡易ナル手續デ貸付ケルト云
フ貸付カドウデス、今日配布ヲ仕始メタノ
ガ幾ラデアリマス、大藏省ニ懸案ニナッテ間
ヘテ居ル縣ハ十四縣、或ハ十三縣ト委員會
ニ於テ說明サレタデハアリマセヌカ、マダ
內務省ニ滯ッテ居ルモノガ三四縣アルト言。ツ
テ居ルデハアリマセヌカ、全國四十有餘縣
ノ內二十何縣ハ共儘ニナッテ居ルノデアル、
何時解決スルノデアリマスカ、冬ノ農閑期
ニ之ヲ貸付ケテ失業救濟ノ仕事ヲ起サシ
メル養蠶家ニ對シマシテハソレ〓〓二千
万圓前後ノ蠶桑改良ノ事業ヲ起サシムル、
或ハ山林ノ開發ニ向。ンテ五百二十九万圓、耕
地ノ改良ニ向ッテ二千三万圓、斯ウ云フヤウ
ナ金ヲ貸付ケテ、サウシテ農村ノ失業ノ救
濟ニスル斯樣ナコトヲ言ハレテ居ルノガ
マダ貸付モ終ラナイ、斯ウ云フ場合ニ當,
テ吾々ハ如何ニシテ窮迫セル農村ヲ救フ
カ殊ニ目前ニ迫ッテ居ル六年度ニ於ケル
養替ニニ手手スル資金ヲ如何ニシテ貸シ與ヘ
ラレルカ、或ハ求メ得ルカト云フコトヲ今
日吾々ハ絕叫セザルヲ得ナイ、而シテ多少
ノ貯ヘアル者モアッタデアリマセウ、併シ郵
便貯金ハ別問題デアルガ、地方銀行ノ狀態
ヲ考ヘタナラバドウデアリマスカ今ヤ二
百有餘ニ亙ッテ地方銀行ハ店ヲ閉メテ居ル
デナイカ、開ケテモ預金ノ拂出ヲ中止シテ
居ル、世ニ所謂開店休業ノ狀態デアルデハ
アリマセヌカ、而モ吾々ノ目ヲ驚カシ每
日々々倒產銀行ノ名ハ幾ラ政府ハ禁止シ
タカモ知ラヌケレドモ、新聞ノ一端ニ現ハ
レテ居ルデハアリマセヌカ、經濟雜誌ノ幾
頁ハ此種ノ記事デ物凄キ狀態ニ相成シテ居
ルデハアリマセヌカサウ云フコトヲ考ヘ
ル時ニ於テ、地方ノ產業資金ハ益一窮迫ヲ
致スト云フコトハ當然ノコトデアリマス
斯ノ如キ狀態ト相俟シテ、地方ノ餘ッタ金ハ
少シ神經過敏ナ者ハ地方銀行カラ引出シ
テ、之ヲ中央ノ大銀行ニ運フト云フノガ今
日ノ狀態デハアリマセヌカ、地方ノ農村ヲ
犠牲ニ致シテ無理ナ經濟政策、不合理ナ
財政政策ヲ糊塗シヤウナドト云フコトハ
餘リノ大膽否餘リノ無能不責任ノ企テナリ
ト絕叫セザルヲ得ナイノデアリマス、是等
ノ見地ニ基イテ私ハ養蠶家ノ前途ヲ憂フ
ル者デアリマス、養蠶家ヲ滅シタル我國ハ
國際貸借ノ結末ハドウナルカト考ヘル時ニ
於テ、養蠶家ヲ除イタル農村ハ如何ニ相成
ルコトカヲ考ヘ國家ノ前途ヲ憂フルガ故
ニ大聲疾呼シテ農林大臣ノ自覺ヲ促スト
共ニ、明快ナル、私ノ質間ニ對シテ答辯ヲ承
リタイ明快ト云フノハ答辯ヲ私ハ指シ
タルコトヲ明カニ中上ゲテ暢氣ナ顏ヲサ
レズニ私ノ質問ニ對シテ誠意ヲ以テ答ヘ
ラレンコトヲ、私ハ望ンデ此壇ヲ降ル次第
デアリマス(拍手)
〔國務大臣町田忠治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=47
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048・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 一番御心配ノ實
行組合ノコトニ付キマシテハ郡ノ組合ガ
之ヲ指導監督致シマシテ、從來ノヤウナ弊
害ハ之ヲ根柢ヨリ排除スル積リデアリマ
ス繭ノ檢定等ノコトニ付キマシテハ成
程從來ハ生絲家ガ自己ニ利益ノアルヤウナ
ヤリ方ヲシテ居ッタ弊ガアルヤウデアリマ
ス今般ハ之ヲ府縣ノ監督檢定ニ委カス方
針ヲ取シテ居リマスルガ故ニ、其點ハ御心配
ハナイヤウニ願ヒマス、ソレカラ本案ニ於
キマスル各條ノコトハ委員會デ願フコト
ト致シマシテ、農林行政殊ニ蠶絲業ノ目下
ノ窮狀ニ對シテ如何ナル救濟策ヲ持。ッテ居
ルカト云フコトニ出發シテ昨年ノ養蠶應
急資金四千万圓ヲ地方ニ分布セラレルコト
ノ遲カリシコトノ御非難、竝ニ七千万圓ノ
低利資金ガマダ行渡ラヌコトノ御非難ニ對
シマシテハ屢ニ委員會ニ於テ機會アル每
ニ其事情ヲ申上ゲテアリマス改メテ茲ニ
申ス必要ハナイト思ヒマスガ大體斯樣デ
アリマス是ハ如何ナル內閣デモイカスト
思ヒマスルノハ事務的ノ仕事ノ手續ノ進
行方ガ相當鈍クアリマス町村縣ヲ經テ
關係各省ニ參ッテ、ソレガハッキリ決ッテ其
金ガ地方ニ分布セラルヽ間ニハ相當ナ日
數ガ掛カルト思ヒマス、吾々ハ出來ルダケ
此目數ヲ減ラスコトニ努力致シテ居リマ
ス高橋君ハ七千万圓ノ應ニ資金ガ七月、
九月頃ニ地方長官ニ訓示若クハ命令ヲシテ
居ルカノ如キ御話ガアリマシタガ高橋君
ク如キ御非難ヲ避クルガ爲ニ.準備行爲ト
シテ私ガ七月九月ニ於テ將來預金部ノ委
員會ガ決定セラレ、地方府縣會ガ之ヲ決定
ツタ曉ニハ斯樣ナコトヲ致スカラシテ
從來ノ如キ事務的手續ノ爲ニ此實行ガ遲レ
テハイカヌノデアルガ故ニ、多分斯樣ニ參
ルト云フ推定ノ下ニ準備ヲセイト云フコト
ハ言フテアルノデス唯遺憾ナノハ如何
ナル事情デアルカ知リマセヌガ、大抵ハ府
縣ハ十一月十二月ニ於テ自ラ預金部カラ金
ヲ借リル債務者トナルコトヲ十二月ニキ
メタノデアリマス、府縣ガ借入レルコトニ
はテハ府縣會ノ決議ヲ經ナケレバイケマセ
又、其決議ヲ經タノハ多ク十二月デアリマ
シテ、ソレガ府縣カラ內務省、大藏省ニ對
シテ細カイ各町村ノ表ヲ以テ是ガ認可ヲシ
テ吳レイト云フ手續ヲスルノデアリマスカ
ラ、多少ノ時間ハ掛リマスルガ、三省協議ノ
上出來ルダケ之ヲ速ニスル考ヲ以テ最早
大部分ガ決定サレテ、旣ニ宮城縣其他數縣
ニ於テハ地方ニ之ヲ分布致シテ居リマス
高橋君ノ御承知ノ山形縣ナドモ濟ンデ居ル
ト私ハ想像シマス唯遺憾ナノハ如何ナ
ル理由デアリマスカ知リマセヌガ府縣會
ガ十二月中ニ之ヲ決定セズシテ一月ニ延
ビタ府縣ガ數縣アルノハ遺憾デアリマス
何故是ガ延ビタカト云フ理由ハ私ハ此處
デ申ス必要ガナイト思ヒマス唯是ハ歷代
內閣ノ遺憾トスル所デアリマシテ高橋君
ガ御承知ノ通リ先年養蠶應急資金五千万
圓米穀應急資金三千万圓ヲ出シタノヲ
是ガ完成スルニ二箇年ヲ要シタ事實アルコ
トハ御承知ノ通リデ是ハ御互ニ何レノ内
闇モ成タケ事務ヲ進捗セシメテ此目的ヲ達
スルヤウニ今後モ互ニ努ムルコトヲ必要
ト考ヘルト云フコトヲ附加ヘテ申シテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=48
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049・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終リマシ
タ日程第七右各案ノ審査ヲ付託スベキ
委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第七右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=49
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050・作田高太郎
○作田高太郞君 兩案ヲ一括シテ議長指名
十八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=50
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051・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=51
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052・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ日程第
八及第九ハ同一委員ニ付託シタル議案ナル
ヲ以テ、一括議題ト爲スニ御異議アリマセ
ヌカ
〔〔異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=52
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053・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第八輸出組合法中改正法律案
第九、重要輸出品工業組合法中改正法律案
ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員
長ノ報〓ヲ求メマス委員長井上剛一君
第八輸出組合法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一輸出組合法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十日
委員長井上剛
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第九重要輸出品工業組合法中改正法
律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一重要輸出品工業組合法中改正法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和六年三月十日
委員長井上醫
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔別紙〕
重要輸出品工業組合法中改正法律案中左
ノ通修正ス
第九條中「工業組合」ヲ「重要輸出品ニ關
スル工業組合」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ
加フ
前項ノ重要輸出品ハ主務大臣之ヲ指定
ス
〔井上剛一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=53
-
054・井上剛一
○井上剛一君 只今提案サレマシタ輸出組
合法中改正法律案重要輸出品工業組合法
中改正法律案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御
報告申上ゲマス御付託ニ依リマシテ、此
兩案ニ對シ先月二日先以テ委員長竝ニ理事
ノ互選ヲ行ヒマシタ結果、委員長ニ不肖私、
理事ニハ手代木隆吉君、岸田正記君ガ御當
選ニナリマシタ)翌三日五日、六日十
日,此四囘ニ亙リマシテ愼重審議ヲ重ネマ
シタガ、大體ニ於キマシテ其譯細ナル點ハ
何レモ速記錄ニ讓リマシテ唯此處ニハ簡
單ニ其要點ダケヲ申述べテ見タイト存ズル
ノデアリマス此委員會ニ於テ最モ焦點ト
サレマシタノハ此二案ノ中デ重要輸出
品工業組合法中改正法律案ニ對シマシテ
此改正案ト現行法ノ第九條トノ關係ガ其焦
點トナリマシテ、〓心ニ委員諸君ト政府ト
ノ間ニ於キマシテ質問應答ヲ繰返サレタノ
デアリマス、御承知ノ通リ此重要輸出品工
業組合法中改正法律案ハ工業組合法ト改
メマシテ、又其第一條中ノ「重要輸出品」ヲ
「重要工產品」ニ改メマシテ、單ニ輸出品ノ
ミニ限ラズ國內的一般工業品ニ對シマシ
テモ擴大適用スル而シテ當業者ノ統制ヲ
圖リ中小工業ノ組織整備ト合理的經營
ヲ促進スルト同時ニ金融ノ改善ヲ圖リ
工業組合ソレ自身ニ於テ金融ノ途ヲ付ケル
ガ爲ニ貯金ノ受入レ、資金ノ貸付ヲ致シ
マシテ、以テ中小工業其ノ金融機關トシテ、
經濟團體トシテ昼機能ヲ發揮セシムル
ト云フコトガ時勢ノ要求デアリマス、ソコ
デ之ニ對シマシテ質疑ノ要點ハ、此改正ノ
結果現行法第九條ニ規定シテアリマス所
ノ卽チ「工業組合又ハ其ノ組合員ハ其ノ營
業ニ關スル重要物產同業組合法ニ依ル同業
組合ニ加入セス又ハ之ヨリ脫退スルコトヲ
得」トノ此規定ガ殘存スル以上ハ、既ニ設ケ
ラレテアル所ノ重要物產同業組合法ニ依ラ
テ設立セラレタル同業組合ガ遂ニ此改正
案ガ通過シタ曉ニハ、爲ニ衰退ヲ來スト云
フコトガナイカドウカ斯ウ云フコトガ質
疑ノ要點デアリマス而シテ此改正立法ニ
對シテハ第九條ノ關係ニ於テ政府ハ大
ニ考慮ニ入レラレタカドウカ、斯ウ云フ點
デアリマシテ、之ニ對シマシテ十分ナル質
疑應答ヲ重ネタノデアリマス、ソコデ簡單
ニ政府ノ答辯ノ要旨ヲ申上ゲルト云フト
此現行法第九條トノ關係ニ於テ、此改正法
ノ立案ニ際シテハ固ヨリ考慮ニ入レラレ
タコトハ申スマデモナイ、殊ニ大正十四年
三月カラ施行セラレマシタ所ノ現行法モ
此改正法律案モ、共ニ其組織ハ少シモ變更
ハナイ卽チ兩案ノ本質ニ於テ更ニ相違ス
ル所ガナイ、唯現行法ト改正案トノ相違點
ヲ見出スナラバ現行法ニ於テハ輸出品ヲ
限定セラレテ居ッタノデアリマスガ、改正案
ニ依リマスレバ、重要工業品ガ、輸出品デ
ナクトモ、適用スルト云フコトダケガ相違
點デアル、隨テ此現行法モ改正法案モ、共
ニ公益團體ニアラズシテ、經濟團體デアル、
ソレデアルカラ重要物產同業組合法ノ如
ク、其加入脫退孰レモ强要ハ致サズ、任意
ニ委セテ居ル次第デアル殊ニ又現行法施
行後約七箇年ニ亙ッテ居リマスルガ、此間ノ
實績ニ徵スレバ更ニ相扞格スル所ナタシ
テ爲ニ既設ノ同業組合ニ對シテ更ニ脅威
ヲ與ヘザルノミナラズ益〓兩々相俟ッテ其
機能ヲ發揮セシメ、其使命ヲ果ス上ニ於テ
十分ナル成績ヲ擧ゲテ居ルモノト認メテ居
ルノデアリマスカラ、將來ニ於テモ此改正
法律案ノ爲ニ、此兩組合ガ互ニ相競フヤウ
ナコトニ依ッテ衰退ニ陷ルコトナキハ、自明
ノ理デアルノミナラズ、益是等ノ機能ヲ發
輝セシムルコトニ於テ十分努メル覺悟デア
ルト云フ答辯デアリマシタ、ソコデ此兩法
律改正案ニ對シマシテ、質疑ヲ打切リマシ
テ直チニ討論ニ入リマシタ、然ル所委員、
中亥歲男君カラ、政府提出ノ重要輸出工業
組合法中改正法律案ノ外ニ現行法第九條
中「工業組合」トアルヲ「重要輸出品ニ關ス
ル工業組合」ト改メ、尙ホ同條第二項トシテ
「前項ノ重要輸出品ハ主務大臣之ヲ指定ス」
トノ修正動議ヲ提出セラレマシタ又委員
瀨川嘉助君ヨリハ右第九條削除ノ動議ヲ
提出セラレマシテ、此兩動議ハ何レモ成規
ノ贊成ヲ得テ成立致シマシタ是ニ於テカ
委員手代木隆吉君ヨリ此動議ニ對シマシ
テ政府ノ所見ヲ伺ヒマシタ所ガ瀨川君提
出ノ第九條削除ノ修正意見ニハ反對デアル
ト云フ反對ノ意ヲ表示セラレマシタ而
シテ中君ノ修正動議ニ對シマシテハ斯樣
ナ答辯デアリマシタ、工業組合ノ設立ニ當。ツ
テハ旣存ノ同業組合トノ關係ヲ愼重ニ考
慮シ、又組合ノ圓滿ナル發展ヲ期スルニ努
メシムルコトハ屢、〓說明シタ通リデアリマ
ヌ而シテ今工業組合制度ヲ輸出品ニ限ラ
ズ廣ク內地向品ニ擴張スル結果、同業組
合ノ前途ニ對シ重大ナル影響ヲ及ボスベシ
トノ不安危惧ノ念ヲ抱ク者アルニ至リマシ
タノデ、政府ハ是等ニ關シ、工業組合制度
ノ本質ニ於テ內地向輸出向トフ間ニ差
異アリトハ認メマセヌガ、將來兩組合制度
ノ圓滿ナル發達ヲ期スル上ニ於テ、商工行
政ノ大局ヨリ見テ、第九條ノ適用ヲ重要輸
出品ニ關スル工業組合ニ限定シ、旣存ノ同
業組合ニ對スル關係ヲ大體現在通リニスル
コトニ付テハ之ニ同意シテ差支ナイトノ
意見デアリマシタヽソコデ採決ニ入リマシ
テ瀨川嘉助君提出ノ現行法第九條削除ハ
少數デ否決シマシタ此場合附加シテ申上
ゲテ置キマス、瀨川嘉助君ヨリ成規ノ贊成
ヲ得テ、少數ヲ以テ廢棄セラレタル意見ヲ、
議院ニ提出致スベキ旨ノ申出ガアリマシ
タ次ニ中亥歲男君ノ提出ニ係リマスル第
九條修正動議ハ多數ニテ可決サレマシタ
而シテ政府提出輸出組合法中改正法律案、
及ビ重要輸出品工業組合法中改正法律案
ヲ各別ニ採決ヲ致シマシタ所ガ、其他何レ
モ全會一致政府提出ノ原案通リ之ヲ可決セ
ラレマシタ就キマシテ本議場ニ於テモ委
員會決定通リ速カニ可決セラレシコトヲ
望ミマス、此段御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=54
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055・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 輸出組合法中改正
法律案ノ審議ニ入リマス本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=55
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056・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=56
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057・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開キ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=57
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058・藤澤幾之輔
○議長(籐澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
輸出組合法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=58
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059・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御異議ガアリ
マセヌカラ本案ハ委員長報告ノ通リ可決
確定致シマシタ-次ニ重要輸出品工業組
合法中改正法律案ノ審議ニ入リマス、本案
ニ對シテハ瀨川嘉助君外三名ヨリ少數意見
ガ提出サレテ居リマス、此意見ハ修正デア
リマスカラ第二讀會ニ於テ其報告ヲ許ス
コトニ致シマス、尙ホ討論ハ便宜上第二讀
會ニ於テ爲スコトニ致シタイト存ジマス
左樣御諒承ヲ願ヒマス本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=59
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060・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=60
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061・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=61
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062・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=62
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063・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 直チニ第二讀會ヲ
開クニ決シマシタ
重要輸出品工業組合法中改正法律案
第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=63
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064・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 此際本案ニ對スル
少數意見ノ報告ヲ求メマス-上田孝吉君
少數者意見書
一重要輸出品工業組合法中改正法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
昭和六年三月十日
委員少數意見者
瀨川嘉助
外三名
〔〓紙〕
重要輸出品工業組合法中改正法律案中左
ノ通修正ス
第九條削除
〔上田孝吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=64
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065・上田孝吉
○上田孝吉君 私ハ只今委員長ノ御報告ニ
對シマシテ重要輸出品工業組合法中改正
法律案ニ關シマシテハ今囘政府ノ致シマ
シタル改正條項ニハ贊成致シマスケレド
モ、本案ノ第九條ヲ削除スベシトノ修正意
見ヲ提出スル者デアリマス
其理由ヲ大別シテ申上ゲタイノデアリマ
スガ、先ヅ第一ニ政府ハ工業組合法ニ依リ
マスル工業組合ト重要物產同業組合法ニ
依ル同業組合トノ關係ニ於テ、兩組合ニ對シ
マシテ其法律ノ運用ニ於テ、其助成ニ於テ、
無定見、無方針デアルト云フコトヲ申上ゲ
タイノデアリマス
同業組合ハ明治三十三年ニ法律ガ施行
セラレマシテ以來今日ニ至リマスマデ
善良ナル發達ヲ遂ゲテ來テ居ルノデアリマ
ス、其數千五百有餘ニ達シテ居リマス、又
此同業組合ノ中工業ニ關シマスル組合モ
亦約六百餘ヲ越エテ發達ヲ遂ゲテ來テ居
ル次第デアリマス、隨テ業界ノ基礎ヲ一層
鞏固ト致シマシテ、營業上ノ弊害ヲ矯正シヽ
又其福社ヲ增進シテ來テ居ルモノデアリマ
ス仍テ其仕事ト致シマシテモヽ例ヘバ其
營業品ノ檢査ヲ爲シ其品格ヲ定メ或ハ
又當業者間ノ平和親密ヲ圖シテ居ル、又紛議
ヲ調停シテ居ル或ハ新加入者ヲ指導シ
從業員ノ指導ヲ行ッテ來テ居ル、更ニ又博覽
會展覽會、見本市等ノ擧行ヲ致シマシテ
業界ノ進步發達ニ資シテ居ルノデアリマ
ス隨テ此同業組合ハ公益團體トシテ取
扱ハレテ居リマシテ其組合モ亦强制組合
デアルコトハ論ヲ俟タナイ所デアリマス
然ルニ今囘御提案ニナッテ居リマス工業組
合ハ右公益的方面ノ外ニ、更ニ資金ノ貸
付或ハ貯金ノ受入ト云フヤウナ經濟的機能
ヲ加ヘテ居ルノデアリマス、而モ其範圍ハ
輸出向工業品ニ於キマシテモ亦內地向工
業品ニ對シマシテモ、一般重要工產品ニ付
キマシテハ等シク之ヲ適用スルコトニ相
成ッテ居ルノデアリマス、仍テ此同業組合ノ
機能ト今囘ノ工業組合ノ機能トヲ比較對
照致シマスルニ法律ノ條文ヨリ見マスル
時ニ於テハ同業組合ノ全部ヲ今囘ノ工業
組合ガ有シテ居ッテ、更ニ其上ニ經濟的機能
ヲ有シテ居ルカノ如キ形ヲ成シテ居ルノデ
アリマスケレドモ、之ヲ實際ノ利用方面ヨ
リ考ヘテ見マスル時ニ於テハ同業組合ハ
先程申上ゲタヤウナ諸種ノ點ニ於テ、專ラ
公益的方面ニ於テ其機能ヲ發揮スルノデア
リマス、而シテ又工業組合ハ今囘ノ此改正
案ニ依リマシテ、將來ニ於キマシテハ經濟
的方面ニ於テ其機能ヲ發揮致シマスル所
ノ一種ノ營利的團體デアルト申シテモ毫
モ過言デハナイト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、故ニ此二ツノモノハ相似テ居リマスル
ケレドモ其實際ノ機能ヲ働カス場合ニ於
キマシテ各〓特徴ヲ有シテ居リマシテ
玆ニ此兩組合ハ共存共榮ヲ致シマシテモ、
毫モ差支ナイノガ現在ノ狀態デアリマス
然ルニ拘ラズ政府ハ此同業組合ト工業組合
ノ兩方ニ對シマシテ、委員會ニ於キマシテ
其共存共榮共ニ存在スルコトノ必要ナ
ルコトヲ申シテ居ラレナガラ、而モ其兩組
こ合ハ各〓如何ナル點ニ於テ特徴ヲ發揮シ
如何ナル點ニ於テ此兩組合ニ對シマシテ特
ニ助成スルコトニ注意ヲスベキモノデアル
カト云フコトニ付キマシテハ、全ク無定見、
無方針デアルノニ吾々ハ驚イタノデアリマ
ス、今其委員會ニ於キマスル私等ト政府ト
ノ間ノ約四日間ニ互リマスル質問應答ヲ申
上ゲルコトノ煩瑣ヲ避ケルガ爲ニ玆ニ省
略致シマシテ其全部ヲ速記錄ニ私ハ讓ル
コトニ致シマス、併ナガラ其委員會ニ於ケ
ル政府ノ答辯ハ、例ヘバ同業組合ヲ目シマ
シテ恰モ繼子苛メヲスルガ如キ感アルコ
トヲ私ハ度々發見致シタノデアリマス而
シテ政府當局ノ中ニ於キマシテモ、政府委
員ト政務官トノ間ニ於テ答辯ガ常ニ矛盾ス
ルノデアリマス政府委員ノ說明ニ依リマ
スルナラバ、工業組合ガ玆ニ成立致シマシ
テサウシテアノ第九條ガ存在致シマスル
ガ爲ニ漸次同業組合ガ衰退シテ、工業組
合ノ方ガ盛ニナルコトハ又勢ノ趨ク所萬
止ムヲ得ザルモノアリト御答辯ニナルカト
思ヒマスルト云フト、或ハ又商工大臣ヤ政
務次官ハ此二ツノ組合ハ與ニ倶ニ我國
ノ此現在ノ狀態ニ於テ必要デアルカラシ
テ何處マデモ此二ツノモノヲ助成シ
保護スベキモノデアルト云フコトヲ申サ
レルノデアリマス而モ此立法ノ沿革
的說明ヲ承ル時ニ於テ、政府委員ハ此同
業組合ト云フモノニハ色々ト弊害ヲ認メ
ルカラ、此工業組合ヲ大正十四年ニ拵ヘ
更ニ今囘之ヲ改正致シマシテ、同業組合ト
云フモノヲ軈テハ漸次ナクスルヤウニシテ、
此工業組合ト云フモノニ全部ヲ包含スルト
云フヤウナコトヲ、政府ハ沿革的ニ考ヘテ
居ノタカノ如キ御說明ガアリマスト云フト、
又商工大臣ヤ政務次官ハ其次ノ委員會ニ
於テ之ヲ否定ナサルノデアリマス斯ノ如
ク政府委員ノ間ニ於キマシテ其答辯ガ常ニ
相前後シ、矛盾極マリナキ醜態ヲ此委員會
ニ於テ發揮シテ居ッタノデゴザイマス、私ハ
斯ノ如ク政府ガ此同業組合ト工業組合ノ關
係ニ對シテ何等定見ヲ持タズ、方針ヲ有
セズシテ而モ此立法ヲナスガ如キハ如
何ニ彼ガ無課デアリ如何ニ彼ガ大膽デア
リ無智デアルカト云フコトヲ憐ムノデア
リマス而モ斯ノ如クニ致シマシテ政府
ハ此工業組合ニ經濟的意味ヲ含マシメ更
ニ輸出品ト內地品トニ對シテ適用ヲスルコ
トニ致シマシタケレドモ、同業組合トノ關
係ヲ無視致シマシタガ爲ニ、業界ニ於キマ
シテ輿論ノ聲ガ囂々トシテ起ッタノデアリ
マス工業組合ノ第九條ヲ削除セヨ同業
組合ハ今日斯業者ノ間ニ於テ全然是ハ必要
ナモノデアル古キ歷史ヲ有シアノ親密
ナル狀態ニ於テ同業組合ヲ維持セシメヨ
然ラバ第九條ヲ削除セヨト云フ聲ハ喧シ
ク吾々ノ耳ニ入タノデゴザイマスガ故ニ、
遂ニ與黨諸君ニ於テモ之ヲ默視スルコトハ
出來ナカシタ、其輿論ノ聲ヲ其儘默過スルコ
トガ出來ナカッタ、遂ニ政府案ニ對シマシ
テ今委員長ガ報告致シマシタ通リニ與
黨ノ方モ之ヲ修正シナケレバナラヌ立場ニ
ナッタノデゴザイマス
ソコデ私ハ第二ニ中上ゲタイノデアリマ
ス、與黨ノ修正ハ正シイカ、或ハ少數意見
トシテ述べテ置キマシタ、吾々野黨ノ修正
意見ガ正シイカト云フコトノ御判斷ヲ願ハ
ネバナラヌノデアリマス以上ノ如ク工業
組合ヲ輸出向ニ考ヘテ居リマシタモノヲ
更ニ內地向ニモ一般的ニ重要工產品全部ニ
及ボスコトヽ致シマシタ而モ兩組合ノ特
徵ハ明確ニ吾々ハ意識スルコトガ出來ルノ
デアリマス此兩組合ノ特徵ヲ意識スル
コトナクシテ、兩組合ノ共存共榮、共ニ竝
立スル必要アリト云フコトハ出來ヌノデア
リマス隨テ兩組合ハ共ニ存在スルコトヲ
必要ナリト致シマスナラバ此組合法ノ第
九條工業組合ニ加入致シマスナラバ同
業組合ニ加入セズ或ハ脫退スルコトヲ得
ルト云フ此規定ハ餘程愼重ニ取扱ハネバ
ナラヌノデアリマス此規定ヲ此儘ニ過ス
時ニ於キマシテハ同一ノ地區內ニ於テ
同業組合モ三分ノ二ノ人員工業組合モ三
分ノニデゴザイマス隨テ其間ニ於テ食合
ヒヲ生ジマスコトハ是ハ明カナ事實デア
ル、此明カナ事實ガアリマスル以上ハ
ツノ地區内ニ於キマシテ、同業組合ト工業
組合ノ間ニ於テ非常ナル競爭ガ行ハレ、其
結果ハ同業組合ヲシテ衰亡ニ導クモノデア
リマスコトハ是ハ明カナ事實デアル與
黨ノ諸君モ亦之ヲ御認ニナッタ、之ヲ認メテ
而モ修正スル場合ニ於テ、與黨ノ諸君ノ如
〃、此九條ノ適用ハ輸出品ヲ取扱フ組合ノ
ミニ限リサウシテ其輸出品ハ主務大臣ガ
之ヲ指定スルコトニシテ宜イカ、或ハ吾々
ガ主張致シマス如クニ、第九條ヲ全然削除
スル方ガ宜イカト云フコトガ、委員會ニ於
ケル又此會議ニ於キマス所ノ重要ナル論
點デアリマス
ソコデ私ハ申上ゲタイノデアリマス
與黨ノ修正ノ如クニ致シマスト假定スルナ
ラバ、以下申上ゲマスヤウナ不都合ガ生ジ
テ來ルノデアリマス卽チ與黨ノ方ハ此
工業組合ノ關係ニ於テ輸出品ト內地向ト
ノ間ニ區別ヲ立テマシテ輸出重要工產品
ニ對シマシテハ是ハ從來通リノ規定ニス
ルカ、內地向ノ物ニ對シテハヤハリ此同
業組合ニ加人シテ居ケレバナラナイコトニ
スルト云フ修正案デアリマス、併ナガラ此
輸出向ノ品デアルカ、輸出向ノ物デナイカ
ト云フコトヲ、何ニ依ッテ區別スルノデアリ
マセウカ、現ニ輸出品トシテ取扱ハレテ居
リマス時計ニ致シマシテモ、莫大小ニ致シ
マシテモ、或ハ硝子製品ニ致シマシテモ、其
他數十種ノ是等ノ品物ニ付キマシテ、輸出品
ノヤウデアッテモ、亦之ヲ內地向ニ使用スル
場合ガ多々アルノデアリマス、輸出品ト內地
品トノ間ニ於テハ、茲ニ劃然タル區別差等ヲ
設ケルコトハ非常ニ困難デアリマス、或
與黨ノ諸君ハ曰クソレハ主務大臣ニ於テ
之ヲ指定スルノデアルカラシテ其處ニ劃
然タル區別ガ付クノデハナイカト言ハレル
カモ知レマセヌ、主務大臣ハ之ヲ莫大小デ
アル、硝子製品デアルトシテ指定致シマシ
テモ、其指定シテ居ル品物自體ノ中ニ於テ
是ガ內地向デアル場合モアリ輸出品向デ
アル場合モアル、其場合ニ於テハ之ヲ何ト
區別スルコトガ出來ルノデアリマセウカ、
其間ノ區別洵ニ困難デアリマスノミナラズ
之ヲ區別シテ、而モ其第九條ノ適用ヲスル
ト云フガ如キハノ實際ニ於テ今日行ハレ難
キ御主張デアルト私等ハ考ヘルノデゴザイ
マス(拍手)ノミナラズ之ヲ品物ニ限ラズ製
造シテ居リマスル所ノ其組合、其製造業者
自體ニ考ヘテ見マシテモ輸出品ノミヲ
製造スル製造業者デアリ又共組合デア
ルトノミ限定スル譯ニハ行カナイノデア
リマス、輸出品ヲ製造シテ居ル業者又
ハ其組合デアリマシテモ內地品モ亦
製造シ、又其組合ニ於テ內地品ヲ製造
販賣スルノデゴザイマス名古屋ノ時計
大阪ノ莫大小、悉クサウデハアリマセヌカ、
隨テ共製造業者自體ガ、此人ハ輸出品ノミ
ヲ扱フ者デアリ此組合ハ輸出品ノミノ組
合デアルト致シマシテモ、實際ノ場合ニ於
テハ之ヲ區別スルコトガ洵ニ至難デアリマ
ス又假ニ此區別ヲ爲シ得ルト致シマシテ
千、政府當局ニ於テハ旣ニ委員會ニ於テ
其意見ノ一部ヲ漏サレタ如クニ或ハ同業
組合ヲ繼子扱ニ致シマシテサウシテ工業
組合ノ方ニ全力ヲ注グ同業組合ノ衰亡ス
ルコトハ共時ノ勢ニ委セマシテ、何等其助
成ノ方法ニ付テ考慮ヲ囘シテ居ナイ、斯ノ
如キ政府ガ、斯ノ如キ主務大臣ガ、之ヲ輸
出品デアルカ否カト云フコトヲ指定スル場
合ニ於テ、其主務大臣ノ手加減ニ依リマシ
テ、輸出品デゴザイマス所ノ範圍ヲ擴ゲタ
場合ニ於テソレハ軈テ第九條ト云フモノ
ヲシテ、全然無意義ナラシムルコトニ結局
ナルノデアリマス(拍手)卽チ法ハ是レ死文
デアリマス、之ヲ活カスニ如何ナルモノヲ
以テスルカ、之ヲ運用スル人ガ何人デアル
カト云フコトニ依リマシテ、初メテ其法律
ト云フモノハ、社會ノ實際ニ於テ能ク運
用、適用セラレマスルコトハ敢テ私ガ言
フマデモナイ所デアリマス、旣ニ政府當局
ニ於テ、此同業組合ニ對シマシテ同情ナク、
之ヲ助成スル意思ナクシテ、而モ此輸出品
ノミニ九條ヲ限ルト致シマシテモ是ハ全
然空文ニ了リマスコトハ、明々白々ノ事實
ト私ハ考ヘルノデアリマス
次ニ政府ノ提案ニ對シマスル與黨ノ修正
ソレニ或ル意味ニ於テハ矛盾ガアルト云フ
コトヲ申上ゲテ差支ナイ卽チ大正十四年
ニ此工業組合ニ關シマスル法律ガ發布施行
セラレマシテ以來今日ニ於キマシテ之
ヲ改正致シマシテ、此議場ニ於テ提案
セラレテ居リマスル所以ノモノハ、從來ノ
輸出向デアリマシタモノヲ、今囘ハ內外品
ヲ間ハズ一般重要工產品ニ之ヲ適用スル
コトヽ致シタノデアリマス隨テ此改正法
律案ニ依リマスルナラバ、共趣旨ト致シマ
シテ、一貫シタル精神ハ其間ニ於テ輸出
品ト內地向トノ間ニ之ヲ區別スルコトナク
シテ一般重要工產品トシテ此法律ヲ適
用スルコトヲ立法ノ趣旨ト致シテ居ルモノ
デナクテハナラナイノデアリマス、然ルニ
拘ラズ與黨ノ諸君ハ此第九條ニ於テ、特
ニ輸出品ト內地向ノモノニ之ヲ區別致シマ
スルコトハ、政府ノ立案致シマシタ此法律
ノ精神ニ矛盾スル形トナルコトヲ何トスル
ノデアリマスカ、大體以上ノ理由ニ依リマ
シテ與黨諸君ノ工業組合法ノ第九條ニ對
シマスル修正ノ御意見ハ不徹底デアル之
ヲ修正スルナラバ同業組合ノ存立ヲ眞ニ
希望致シマスルナラバ、宜シク第九條ヲ削
除スベシト私等ハ考へルノデアリマスル
ガ、或ハ與黨ノ諸君ハ言ハン、然ラバ今日
ニ至リマスルマデノ現行法、此現行法ニ於
テ 既ニ此第九條ガ生キテ居ッタデハナ
イカ、現行法ニ於ケル第九條ノ生キルコト
ヲ認メナガラ、今囘ノ此改正案ニ依ッテ、輸
出品ト內地向ノ品トノ一般重要工產品ニ適
用セラレルコトヽナッタカラシテ、或ハ更ニ
其機能ヲ經濟的方面ニ及ボスコトヽナッタ
カラシテ之ヲ特ニ區別スル必要ガアリト
スルナラバ、從來ノ此現行法ニ對シテ異議
ガナカッタ以上ハ與黨諸君ノ今囘ノ修正
ハ第九條ニ對シテハ現行法ト同ジ趣旨デ
アルカラソレデ可ナリデハナイカト言ハ
レルカモ知レヌノデゴザイマスガ、併ナガラ
諸君、旣ニ大正十四年以來今日ニ至リマスル
マデ同業組合ニ致シマシテモ、亦工業組合
ニ付キマシテモ、色々ト變化シテ來テ居リ
Wく、時ノ遷リ變リガアルノデアリマス
ソレノミナラズ今囘ハ特ニ此工業組合法
ヲ輸出品ト內地向タルトヲ問ハズ、般
三軒、レルコトニナッタノデアリマスルカ
ラシテ其間ニ於キマシテハ從來ノ此工
業組合ノ規定ト、今囘ノ改正案トハ政府
當局ハ同ジ趣旨デアルト言ウテ居ラレマシ
テモ實際ニ於キマシテハ全然是ハ新法
デアルト申上ゲテモ差支ガナイノデゴザイ
マスソレノミナラズ既ニ先程來御說明ヲ
申上ゲマシタ如クニ、與黨諸君ノ修正ニ致
シマスルナラバ輸出品ト內地向トノ品ト
ノ區別ニ於テ、製造家自身ニ於キマシテ
モ之ヲ差別スルニ非常ナ困難ナ事情ガア
ル場合ニ於テハ政府與黨ノ此修正案ヲ以
テ現行法通リデアルト、吾々ハ認メルコト
ガ出來ナイノデゴザイマスソコデ私ハ第三
ニ政府ニ申上ゲタイ政府ハ既ニ此第九條
ノ修正ニ付キマシテ、與黨ノ意見ニ盲從致
シマシテ、サウシテ委員會ニ於テハ此第
九條ハ此儘ニ生キテ居ラナケレバナラナ
イ是ハ必要アリト言ヒナガラ、今日ニ於
テ此修正ニ應ジタノデアリマス、政府ニ於
テ斯ノ如ク致シマシテ、與黨ノ修正ニ應ジ
タノデアリマスルケレドモ、此與黨ノ修正
ノ不徹底デアリマスルコトハ先程來縷
申上ゲテ居ル通リデゴザイマス(拍手)吾々
野黨ノ修正ハ最モ徹底シテ居ル與黨ノ修
正不徹底ニ致シマシテ、野黨ノ修正最モ徹
底致シテ居リマスル場合ニ於テ政府ハ唯
與黨ナルガ故ニ其修正ニハ盲從シ、野黨ナ
ルガ故ニ其徹底セル修正ニ相從ハザルト云
フガ如キハ立法府ニ對シマスル政府ノ態
度ト致シマシテハ洵ニ不公明ナル態度ト
言ハナケレバナラナイノデアリマス(拍手)
諸君、知ラズシテ之ヲ改メザルハ過失デアリ
マス知ッテ以テ之ヲ改メザルハ罪惡デア
リマス(「ヒヤ〓〓」)其過レルコトヲ政府及
ビ與黨自身ハ知リナガラ、唯徒ニ政府ノ面
目ト行掛リニ囚ハレマシテ、サウシテ我黨
ノ徹底セル第九條削除ニ從ハザルコトハ
是レ立法府ノ權威ヲ堕スモノデアルト申シ
テ毫モ差支ナイノデアリマス
第四ニ私ハ以上ノ如シト致シマスルナラ
バ政府ハ寧ロ何故ニ同業組合法自體ヲ改
正ナサルコトニ御運ビニナラナカッタカ
ト云フコトヲ申上ゲタイノデアリマス元
來斯ノ如キ結果ヲ來シ、其修正ニ政府ハ旣
ニ甘ジテ居ル而モ其從來ノ政府ノ御主張
ヲ以テ致シマシテモ工業關係ノ法律ヲ整
備致シマシテ、其合理化ヲ圖リ、仕事ヲ簡
易化セシムルト云フコトガ必要デアルト致
シマスルナラバ何故ニ同業組合法自體ヲ
改正ナサラヌノデアルカ、眞ニ其法律關係
ノ整備ヲスルナラバサウシテ輸出品タル
ト內地向ノ品物タルトヲ區別セズシテ
般重要工產品ニ對シマシテ等シク本法ヲ
適用シヨウト致シマスルナラバ而モ同業
組合ノ公益的方面ハ今囘ノ工業組合法ニ
於テハ全部之ヲ受入レテ、更ニ玆ニ經濟的
方面ヲ附加ヘタユ過ギナイモノデアルト致
シマスルナラバ其法ノ整備ノ上ニ於キマ
シテハ同業組合法ヲ適當ニ改正スルコト
ガ、最モ當ヲ得タ處置デハアリマセヌカ
然ルニ拘ラズ政府ハロニ產業ノ合理化ヲ叫
ビ或ハ其統制ヲ强調致シナガラ、兆円)
所益〓煩雜ニ致シマシテ何等ノ連絡ト
何等ノ統制ト而モ整備ヲ見出サヌト云フ
コトハ私ハ國民ト共ニ之ヲ憂ヘザルヲ得
ナイノデアリマス、敢テ第九條削除ノ修正
意見ヲ玆ニ提出スル所以デゴザイマ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=65
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066・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 此少數意見ニハ正
規ノ贊成アリト認メマス、仍テ少數意見ハ
修正案トシテ成立致シマシタ、是ヨリ討論
ニ入リマス、通〓順ニ依クテ發言ヲ許シマ
ス中亥歲男君
〔中亥歲男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=66
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067・中亥歳男
○中亥歲男君 私ハ只今議題トナッテ居リ
マス重要輸出品工業組合ニ對スル委員長ノ
御報告ニ贊成ノ意ヲ表スルモノデアリマス
政友會ノ諸君ノ御主張ニナリマシタ第九
條ノ削除ト云フコトハ是ハ私ハ第九條ト
重要物產同業組合トノミノ關係ニ付テ考ヘ
マシタナレバ或ハ第九條ヲ全然削除致ス
ト云フコトガ當然デアルカトモ考ヘラレル
ノデアリマスルケレドモ、飜テ一方重要輸
出品工業組合ノ立場ニ付テ考ヘマシタナレ
レドウシテモ第九條ヲ全然削除致スコト
ハ出來ナイノデアリマス、御承知ノ通リ重
要輸出品工業組合法ハ大正十四年ニ旣ニ
制定サレタノデアリマス、爾來今日ニ至ル
マデ此法律ノ下ニ組織サレマシタ所ノ重
要輸出品工業組合ハ百餘ニ餘ッテアルノデ
アリマス、是等ノ組合員ハ卽チ此九條ニ依ツ
テ重要物產同業組合ニ加入脫退ノ自由ノ
權利ヲ認メラレテ居ルノデアリマスルカ
ラ、若シ今突如トシテ此九條ヲ削除致シマ
シタ曉ニハ是等ノ重要輸出品工業組合ノ
組合員ハ必ズヤ茲ニ動搖ヲ政シテ折角
發達致シツヽアル所ノ重要輸出品工業組合
ハ大ナル打撃ヲ受ケルト云フコトハ是
ハ火ヲ諸ルヨリモ明カナ事實デアルト私ハ
信ズルノデアル(拍手)斯樣ニ考ヘテ參リマ
スルト、唯此一點ニ於キマシテモ、遺憾ナ
ガラ政友會ノ御主張デアル所ノ、第九條ヲ
全然削除致スト云フコトニ私ハ贊成ヲ致
スコトガ出來ナイノデアリマス(拍手)
而シテ若シ第九條ヲ此儘存續致スト致シ
マシタナラバ是ハ先刻上田君ノ御話ニナ
リマシタ通リ、第一條ノ改正ニ依リマシテ、
今マデ重要輸出品ニ行ハレテ居リマシタ工
業組合ガ、今度ハ內地品ニ及ボシ卽チ全
工產品ノ工業組合ト相成ルノデアリマスカ
ラ此九條ノ影響ガ重要物產同業組合ニ
及ボス所ノ影響ノ範圍ガ非常ニ擴大サレマ
スル結果トシテ段々同業組合カラ脫退者
ヲ出シテサウシテ同業組合ノ發達ヲ阻害
スルト云フヤウナ憂ガ十分ニアルノデアリ
マス、此點ハ政友會ノ諸君ノ御主張ト私
共一致イタシテ居ルノデアル而シテ此九
條ヲ存續致セバ、重要物產同業組合ノ發達
ヲ阻害致ス削除致セバ重要輸出品工業組
合ノ發達ヲ阻害致ス、全ク如何トモスルコ
トノ出來ナイヤウナ破日ニ陷ッテ居ルノデ
アル、是ハ大正十四年ニ此法律ヲ制定スル
時ニ、此九條ヲ削除致シテ置キマシタナレ
バ、今日コンナ累ハナカッタデアラウトハ思
ヒマスルガ是ハ今更奈何トモスルコトガ
出來ナイノデアリマス斯ノ如キコトニ付
キマシテ、吾々ハ先刻委員長ノ御報〓ニナ
リマシタヤウニ、第九條ノ工業組合トアリ
マスモノヲ重要輸出品ニ關スル工業組合
ト改メマシテ此際同業組合ニモ亦工業
組合ニモ、急激ナル變化ヲ與ヘナイト云フ
コトニ致シ、而モ政府ノ今囘改正ノ目的ト
スル所ノモノニハ全然悖ル所ガナイノデ
アリマス、是レ吾々ガ最モ適當ナル修正案
ト信ズル所以デアリマス
只今上田君ノ御意見ニ依リマスルト重
要輸出品デアルト云フコトハ如何ニシテ
之ヲ區別スルカト云フヤウナ御意見モアツ
タノデアリマスルガ、私ハ輸出品デアルト
居フコトハ、委員會デモ申上ゲマシタヤウ
ニ、商工大臣ニ於キマシテ、或ル一ツノ工
場ニ於テ拵ヘタ所ノ製品ガ、殆ド大部分-
モウ少シ具體的ニ申シマスルナラバ八九
分マデ之ヲ輸出致シテ居リマスルナラバ、
此工場ノ製品ハ重要輸出品ト看做スト云フ
コトデ、私ハ洵ニ明カデアルト思フノデア
リマス卽チ其當時ノ商工大臣ガ御指定ニ
ナルノデアリマスルカラ若シソレヲ信ズ
ルコトガ出來ヌト云フコトデアレバ、是人
別問題デアリマスケレドモ私ハ信ゼラル
ベキモノデアルト、深ク信ジテ居ルノデア
リマス
ソレカヲ吾々ノ修正案ガ矛盾デアルト仰
セラレマシタガ、成程私共ガ考ヘマシテモ、
今日工業組合員デアッテ、而モ重要物產同業
組合ニ、脫退シ又ハ加入セザルヲ得ルト云フ
權利ヲ持ッテ居リマスル者ト、今後生レル所
ノ組合員ニハ其權利ヲ認メテ居ナイノデ
アリマスカラ、此點ニ於テ矛盾デアルト仰
セラレルナラバ、是ハ如何ニモ矛盾デアル
ト云フ議論ハ一應成立ツト思フノデアリマ
スヽ併ナガラ先刻申上ゲマシタヤウニ、削
除致セバ卽チ工業組合ヲ破滅ニ導キ存置
致セバ同業組合ヲ破滅ニ導クト云フノデア
リマスカラ吾々ハ何レガ重キヤト云フコ
トヲ考慮決定スルヨリ外ニ致方ハナイノデ
アリマス私共考ヘマスルナラバ御承知
ノ如ク重要物產同業組合ハ强制加入デアリ
マス若シ此現在與ヘラレテ居リマス所ノ
既得ノ權利ヲ奪ッテシマヒマシタナラバ、現
在ノ工業組合員ノ諸君ハ多クハ强制的ニ
同業組合ニ入ラナケレバナラヌノデアリマ
スケレドモ、今後拵ヘマス所ノ工業組合ハ
御承知ノ如ク任意ノ組合デアリマスルガ故
ニ工業組合ニ現在入ッテ居リマス者ハ是
ハ別派ノモノデアリマス、同業組合ハ同業
組合トシテノ同業組合員ノ受クル利益ガア
ルノデアリマス工業組合ハ經濟的ニ工業
組合員自身ガ其利益ヲ受クルト致シマシタ
場合、之ヲ組織シ又共組合ニ加入致スコト
ハ自由デアリマスルカラシテ議論ノ上カ
ラ一應ハ聊カ矛盾ト云フコトノ議論ガ成立
ツデモアリマセウケレドモ、事實上ニ付テ
考ヘマスルト云フト、決シテ私ハ其點ニ付
テ大シタ心配ハナイモノデアルト云フコト
ヲ深ク信ジテ居ルノデアリマス
之ヲ要スルニ私共ノ主張致シテ居リマス
ル所ノ修正意見ハ吾々ガ重要物產同業組
合モ、亦工業組合モ、相共ニ今後益、發達致
スト云フコトヲ希フ意味ニ於キマシテ、私
ハ最モ穩健中正ナル而モ實情ニ適シタ修
正案デアルト云フコトヲ深ク信ジテ疑ハヌ
ノデアリマス(拍手)是レ私ガ委員長ノ御報
告ニ贊成ヲ致シ、而シテ政友會ノ御主張ニ
ナル所ノ第九條削除ニ反對致ス所以デアリ
マス(拍手)
〔議長退席、副議長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=67
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068・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 岸田正記君
〔岸田正記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=68
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069・岸田正記
○岸田正記君 諸君、私ハ委員長報告ノ修
正案ニ對シマシテ反對ノ意見ヲ申述べ我
黨ノ上田君ノ動議ニ係ル本案ノ第九條ヲ削
除スベシト云フ修正案ニ對シテ、贊成ノ意
見ヲ述ベル次第デアリマス(拍手)
今囘ノ改正案ノ趣旨ガ、諸君モ御存ジノ
ヤウニ、中小工業者ヲ此工業組合ノ成立ニ
依シテ〓助助テテ行カウ、此點ニ其趣旨ガアル
ト云フコトハ私共ハ一應此法文ノ表面的
ノ文字ニ依ッテ肯クノデアリマス、併ナガラ
數囘重ネタル所ノ委員會ニ於キマシテ私
共ハ愼重ニ致シテ質疑應答ヲ重ネマ
シタ結果、此法案自體ニ於テ幾多ノ缺陷ヲ
有シテ居ルノミナラズ又此工業組合ヲ實
際ニ蓮用シテ行ク上ニ於テノ政府ノ實際ノ
用意ト云フモノハ全ク此法案ノ上ニ現レ
テ居ル所ノ法文ヲ空文ニ歸セシムルヤウ
ナモノガ幾多アルト云フコトヲ發見致シマ
シタコトハ洵ニ遺憾ニ存ジテ居ル次第デ
アリマス、併ナガラ今日諸君モ御存ジノヤ
ウニ、我國ノ中小工業者ノ疲弊困態ト云フ
モノハ其極ニ達シテ世俗ニモ溺ルル者ハ
藁ヲモ摑ムト申シマスケレドモ、此法案ニ
依ッテ出來土ル工業組合ノ實質的ノ效果ト
云フモノガ縱ンバ九牛ノ一毛ニ過ギナイ
ニ致シマシテモ、表面的ニ此法案ニ依ッテ現
レテ居リマス法文ノ文字ガ、中小工業者ヲ
救フト云フ趣旨ヲ列ネテ居リマス以上ハ
私共ハ喜ンデ此法案ニ大體ニ於テ贊意ヲ表
シテ居ル次第デアリマス、併ナガラ只今申
上ゲマスル意味ニ於テ此法案ヲ生命アル
モノニ致スニ付キマシテハ此法案ノ一大
毒素トモ云フベキ第九條ヲ絕對ニ削除スベ
シト云フコトヲ、私共ハ前提ニ置イテ居ル
ノデアリマス、卽チ此九條ニ於キマシテハ
先程委員長或ハ上田君ノ意見ニモアリマス
ル通リニ工業組合及ビ組合員ハ其營業ニ
關スル重要物產同業組合法ニ依ル同業組合
ニ對シテ、之ニ加入セズ或ハ之ヲ脫退シ得
ルト云フ任意規定ニ致シテ居ルノデアリマ
ス、併ナガラ此第九條ノ說明ト致シマシテ、
政府當局ハ是ハ中小工業者ニ對シテ、同業
組合及ビ工業組合ニ對シテ二重ノ加入ヲ避
ケシメテ、由自ニ其加入或ハ脫退ノ自由ノ
利便ヲ開イタモノデアルト云フヤウニ御說
明ニナッテ居ルノデアリマスガ、併ナガラ事
寳ハ此去就進退ノ自由トハナリマセズシテ、
却テ一方ニ偏シテ來ルト云フコトハ、事實ガ
明ニ之ヲ證明スルノデアリマス、卽チ此法
案ノ第九條ノ反射作用ニ依リ、又政府ノ手
加減ニ依リマシテ、同業組合ニ從來入ッテ
居タタノノ殆ド悉クガ工業組合ニ走ヶテ
了フト云フヤウナ結果ニナルコトハ是ハ
否定スベカラザル事實デアル此結果ト致
シマシテ自然ニ工業ニ關シマスル範圍ニ
於キマシテハ、同業組合ト工業組合ノ要素、
卽チ構成員ガ全然人的ニ關係ノナイ別個ノ
モノニナッテ、茲ニ二ツノ組合ガ相對立シタ
所ノ組合ニナッテ、其結果ハ經濟界ニ對シテ
幾多ノ非常ナル弊害ヲ釀スモノデアル、卽
チ第一ニ於キマシテハ今日マデ經濟界ニ
於キマシテ、深イ根柢ヲ養ッテ來テ居リマス
同業組合其モノノ、存立ノ基礎ヲ危クスル、
續イテハ此法案ニ依シテ生レ出ル所ノ工業
組合其モノガ幾多ノ缺陷ヲ持ッテ居ル結果
トシテ實際ノ機能、實力ニ於テ業者ヲ發
展セシムルノ實力ヲ持ッテ居ラナイニモ拘
ラズ、同業組合ヲ脫シテ工業組合ニ這入ッタ
場合ハ、其人達ハ之ヲ同業組合ノ機能ニ依。ヲ
テ受ケル恩典ヲ受ケルコトガ出來ナイナラ
バ這入ッテ行ッタ工業組合ニ於テモ何等殆
ド期待シタル恩典ヲ受ケルコトガ出來ナ
イ、斯ウ云フ風ニ二者共ニ得ベカラザル運
命ニ陥ノテ來ル、續イテ又製造者ナリ、販賣
業者ナリ、或ハ消費者、或ハ勞働者、是等ノ
間ニ於ケル連絡統制ト云フモノハ全然缺ク
ニ至ッテ、經濟界ニ於ケル圓滿ナル發展ヲ阻
碍シテ來ル、是等ノ幾多ノ缺陷ヲ私共ハ指
摘致シマシテ政府當局ヲ徹底的ニ追窮致
シマシタ所ガ、遂ニ政府當局及ビ與黨ノ諸
君モ、此經濟界ノ大所高所カラ割出シタ所
ノ吾々ノ議論ニ對シテ、少數ト雖モ此正義
ノ叫ビニ對シテハ之ニ反抗シ得ズシテ只
今委員長ヨリ報告ガアリマシタヤウナ微溫
的ナ、妥協的ナ修正案ヲ以テ、此間題ヲ糊
塗シヨウトナサッタノデアリマス、此委員長
ノ報告ハ政府原案ニアリマス所ノ第九條工
業組合及ビ其組合員ハ自由ニ同業組合ニ加
入セズ、或ハ脫退スルコトガ出來ル、此原案
ヲ改メマシテ、輸出品ニ關スル工業組合及
ビ其組合員ノミハ自由ニ去就ヲ決メルコト
ガ出來テ、內地一般ニ賣捌ク工業品ニ關ス
ル工業組合及ビ其組合員ハ自由ニ同業組
合ニ這入リ、或ハ脫退スルコトガ出來ナイ、
斯ウ云フヤウナ妥協案的ナ修正案デアリマ
スゲレドモ、併ナガラ此修正案ハ要スルニ
其結果ニ於キマシテハ政府原案ト殆ド異
ル所ノナイ結果ヲ示シテ居ル何故カト申
シマスト、卽チ此民政黨ノ修正案ニ依リマ
スト、只今上田君モ指摘サレマシタヤウニ、
實際ニ於テ重要輸出品タル工業デアルカ
或ハ內地向ニ造上ゲラレタ所ノ商品ノ工業
デアルカト云フコトハ、事實認定問題トシ
テ洵ニ困難デアル、卽チ或工場ニ於テ造ル品
物、是ハ或ハ其二三分方ハ外國ニ出ル品物ヲ
造ルカモ知レナイ七八分方ハ國內ニ賣捌
ク品物デアルカモ知レヌ斯ウ云フ場合ニ
於テ是等ノ造ル商品ヲ扱フ工業者、是ガ相
集ツテ作ル工業組合ヲ輸出品工業組合トシ
テ認定スベキカ或ハ國內向ノ工業組合ト
認定スベキデアルカ此識別ハ事實問題ト
シテ中々困難デ、只今中君ノ御意見ニ依リ
マスト八九分方外國ニ輸出スル工業者デ
アックラ輸出品ニ關スル工業者ト認メテ然
ルベキデアル、斯ウ云フ御意見デアリマシ
タガ、然ラバ八九分方ナラバ宜シイガ、七
八分方ハイケナイ、斯ウ云フコトニナッテ來
マスト實際ニ於テ識別ガ出來ナイ、或ハ
又外國ニ輸出スル所ノ工業品ヲ造リ上ゲル
工業者ガ、國內ダケニ賣捌ク生產品ヲ造ル
工業者、是等ノモノト相俟シテ工業組合ヲ
作ッタ場合ニ、此モノヲ輸出品ニ關スル工業
組合ト認定スベキカ、或ハ國內向ノ工業組
合ト認定スベキカ、是等ノ問題ニ付キマシ
テ、幾多ノ困難ナル事情ガ伴。ッテ來ルト私
ハ思フノデアリマス、斯ウ云フ意味ニ於テ、
又一面ニ於テ實際ニ此九條ノ影響ヲ避ケン
ト致シマシテ多クノ工業者ハ輸出向ノ工
業品ヲ造ルノデアル、斯ノ如キ非法的脫法
的ニ種々ノ手段ヲ盡シテ輸出品ニ關スル
工業組合デアルト表面粧フ場合ガ多ク生ジ
テ來ヤウト思ヒマスガ、サウ致シマスト實
際ニ於テ民政黨ノ出サレク修正案ト云フモ
ノガ全然意義ヲ爲サヌモノデアッテ、政府
提出ノ原案ト殆ド五十步百步ノモノデアリ
マス其弊害ノ及ブ範圍ニ於キマシテハ
撰ブ所ナキモノデハナカラウカト私ハ疑フ
ノデアリマス、唯是等ノ點ニ付キマシテハ
民政黨ノ諸君ハ十分ニ事情ガ分ッテオイデ
ニナル唯前ニモ申ス通リ妥協的微溫的ノ
修正案ヲ自ラ出サレタト云フコトハ、要ス
ルニ政府ノ無條件降服ト云フ此醜態ヲ助ケ
テ何等カ其處ニ面目ヲ繕ラッテヤラウト
云フ此偏シタ黨派心カラ出タ所ノ醜態デ
アルト私ハ叫ブ(拍手)
諸君、斯ノ如キ事情デアルト云フコトヲ
思ヒマスル時ニ、私共ハ此九條ハ全然削除
致シテ、次デ眞ニ此工業組合法ヲ作ラレタ
所ノ中小工業者救濟ト云フコトノ實ヲ擧ゲ
ルコトニ、態度ヲ議院內ニ於テ決定スルト
云フコトガ、眞ニ吾々ガ國民ニ忠ナル所以
デアルト信ジテ居ルノデアル卽チ此政府
原案ニ基キマスル九條及ビ民政黨諸君ノ修
正案ニ基キマスル九條、是等ヲ存置致シマ
スル結果ト致シテ、如何ナル弊害ガ生ジテ
來ルカ、私ハ是等ノ弊害ニ付キマシテ二三
ノ要點ダケヲ玆ニ列擧致シマシテ、諸君ノ
御反省ヲ促シタイト思フ
卽チ第一ニハ、此九條ヲ存置致シマスル
ト云フト言フマデモナク今日マデ日本ノ
經濟界ニ深イ根柢ヲ有シテ、國家ノ經濟ノ
發展ノ上ニ十分ナル力ヲ盡シテ來タ所ノ同
業組合其モノヽ存立ノ基礎ヲ危クスルト云
フ是ガ第一點、此點ハ私ハ今日マデ重要
輸出品ニ關スル工業組合、サウシテ重要物
產同業組合、此二ツノ組合ニ對シテ政府當
局ガ執シテ來タ所ノ態度、是カラ判斷致シマ
シテモ明カニ是ガ豫想シ得ルノデアル
卽チ從來政府ハ尠クトモ商工省ハ、工業ニ
關スル限リニ於キマシテハ徒ニ此工業組
合ト云フ方面ニバカリ力ヲ入レテ重要物
產同業組合ト云フモノハ之ニ對シテ冷眼視
致シ冷遇致シタト云フコトハ事實ガ明カ
ニ之ヲ證明シテ居ル、卽チ工業組合ニ對シ
マシテハ諸君モ御存ジデアリマセウ補
助金ヲ與ヘヽ或ハ低利資金ヲ融通シテ行ク
トカ、斯ウ云フヤウナ誇大的ナ、欺瞞的ナ
宣傳ヲ行ッテ、此方面ニ對シテ組合ヲ集中シ
之ニ力ヲ入レク、然ルニ一面ニ於テ同業組
合ニ對シマシテハ、少シノ問題デモ起セバ
直チニ之ニ解散ヲ勸告スルトカ、甚シキハ
之ニ對シテ命令ヲ下ス、或ハ新ニ同業組合
ヲ作ラント欲スルモノニ對シテハ全然之
ヲ許サヾル所ノ消極的ノ方針ヲ執ッテ來タ、
斯ウ云フヤウナ結果ハ統計ノ上ニ明カニ之
ヲ認メルコトガ出來ルノデアリマス、卽チ
昭和三年末ト昭和四年末、民政黨內閣ガ出
來上リマシタ後ノ比較ヲ致シテ見マスト
他ノ畜產或ハ農產、水產斯ウ云フヤウナ
方面ノ產業ニ關シテノ同業組合ニ於キマシ
テハ其數ガ十バカリモ殖エテ居ルニモ拘
ラズ此商工省ニ關スル所ノ範圍ニ於キマ
シテハ、同業組合ハ十九カラ數ガ減ッテ居ル
ト云フコトハ商工省ガ此九條ヲ利用致シ
テサウシテ手加減ヲ以テ同業組合ニ壓迫
ヲ加ヘタ事實ガ明カニ證明出來ルト私ハ信
ジテ居ルノデアル(拍手)斯ノ如キ次第デア
リマスルガ、此過去ノ事實ハ推シテ以テ
將來現ハレル所ノ工業組合ト、重要物產同業
組合トノ關係ニモ推及ボサレルモノデアル
ト私ハ想像スルノデアル、卽チ此點ニ村キ
マシテハ民政黨ノ諸君ハ修正案ニ唯輸出
品ニ關スル工業組合ノミニ同業組合ヲ脫退
シ或ハ加入スルノ自由ヲ與ヘタノデアル、
內地向ノ工業品ニ對シテハ此同業組合加入
或ハ脫退ノ自由ヲ與ヘテ居ラナイカラ、斯
ノ如キ弊害ヲ生ズルコトハナイ、斯ウ云フ
コトノ御主張ヲ爲サルカモ知レナイケレド
干、上田君ナリ又私ガ只今申上ゲタヤウナ
事情ニ依ッテ、實際ニ於テハ輸出品タル工業
組合ト、內地向ノ商品ヲ製造スル工業組合、
此區別ガ付カナイ以上ハヤハリ同ジヤウ
ナコトニナル今日商工省ノ所管ニ屬シテ
居ル同業組合ハ、御承知ノ通リ六百三十ア
ル、此中工業者ノミガ集。ッテ作ッテ居ル所ノ
同業組合ハ百四十カラアリマス此九條ガ
存置セラレル結果ト致シテハ工業者ノミ
ガ作ッテ居ル所ノ同業組合ハ、輸出品ニ關ス
ル工業組合ト云フ名目ヲ利用致シテ、逐次
解散ヲ致シ其數ガ減ッテ來ル、斯ウシタ結
果ハ殘リノ四百九十ト云フ同業組合ハ遂ニ
ハ軈テ工業品ヲ取扱ヒ、販賣スル業者ノミ
ノ同業組合ニ陷ヲテ來ルト云フコトヲ、私ハ
明カニ之ヲ想像スルノデアリマス、斯ウ致
シマスト云フト商工省所管ノ同業組合ナ
ルモノハ單ナル工業者ノミノ同業組合ト
工業品ヲ取扱ヒ販賣スル所ノ同業組合ト、
此人的要素ヲ異ニシタ聯絡統制ノナイ二
ツノ同業組合ガ對立スルコトニナリ、此弊
害ハ測リ知ルベカラザルモノガアルト私ハ
信ジテ居ルノデアリマス、斯ウ致シマシテ
遂ニ工業組合側ノ壓迫、サウシテ「カルテ
ル」的ノ立場ヲ利用致シテ之ヲ扱フ所ノ
同業組合ヲ壓迫スル斯ウ致シマスト、同
業組合ハ益〓其機能ヲ失墜シテ來ル斯ウ
致シテ數ハ減ル壓迫ハ受ケテ同業組合ハ
次第ニ其存立ノ基礎ヲ危クシテ來ルト云フ
コトハ免レ難イ運命デアルト私ハ之ヲ憂
ヘルノデアル、申上ゲルマデモナク同業組
合ト工業組合トハ其本質及ビ使命ニ於テ
全然立場ヲ異ニシテ居ル、此點ハ上田
君カラ申上ゲマシタカラ、私ハ省略致
シマス、卽チ工業組合ハ營利ヲ目的トス
ルサウシテ加入ガ任意デアル而モ其事業
ハ出資ニ依ッテ行ッテ居ル斯ウ云フヤウ
ナ立場デアルニ拘ラズ同業組合ハ消極
的ノ事業ヲ行ヒ當業者ノ間ニ於ケル弊害
ヲ除却シ、而シテ其事業ハ賦課金ニ依。ッテ行
フ而シテ加入ハ强制的デアル、斯ウ云フ
ヤウニ立場ヲ異ニシ本質使命ヲ異ニ致シ
テ居ルノデアリマスカラ、此二ツノ組合ト
云フモノハ各、特質的ノ機能ヲ有シテ居
ル故ニ此二ツノモノハ共ニ存在サセ、共
ニ其特殊的ノ機能ヲ發揮サシテ始メテ我
國ノ經濟界ノ發展モ期シ得ルノデアル、兩
者ハ其何レニ這入ッテモ其事業ノ發展ガ出
來ル、然ルニ之ニ對シテ一方ダケハ脫退シ
テ一方ニダケ加入サセルト云フヤウナコ
トヲ致シマスト、自然ニ一方的ノ恩惠シカ
受ケルコトガ出來ナイカラ業者ノ發展ハ
期シ得ラレナイ此點カラ考ヘテモ私ハド
ウシテモ九條ハ削除致シテ工業組合ニ這
入ルモノハ輸出品タルト內地向デアルト
ニ拘ラズ、工業組合ニ加入セントスルモノ
ハ、ヤハリ同業組合ニモ加入サシテ置クト
云フコトノ規定ヲ存シテ置クコトガ當然デ
アル、是ハ他ノ同業組合ニ於テモ-畜產
業ニ關スルモノデモ、或ハ水產業ニ關スル
モノデモ、或ハ柑橘ニ關スルモノデモ是
等ノ人ガ工業組合法ニ於ケル工業組合ト殆
ド同ジヤウナ性質、機能ヲ有シテ居ル產業
組合ニ這入ッテ居ルカラト云ッテ、其人々ノ
造ルモノガ輸出品デアルト否トニ拘ラズ
產業組合ニ這入ッテ居ルカラト言ウテ、其人
人ハ營業ニ關スル所ノ柑橘同業組合或ハ水
產同業組合、或ハ木炭同業組合、是等ノ同
業組合ニ加入シテモ、セヌデモ宜イト云フ
ヤウナ法制ハ他ニハ全然ナイ、故ニ是ハ同
業組合ノ特殊的機能ヲ十分ニ發揮サセナケ
レバナラヌト云フ原則ニ基キ、斯ウ云フヤ
ウニ法制ガ決ッテ居ル、然ルニ唯特ニ輸出品
ニ關スル工業者ニ限テンチ工業組合ニ這入ツ
タモノハ同業組合ニ加入ヲセヌデ宜イ脫
退シテモ宜イト云フヤウナ規定ヲ設ケルコ
トハ全然此限リニ於テハ同業組合存立ノ
基礎ヲ危ウ致シテ我國ノ經濟界發展ノ原
則ヲ破壞スルモノデアルト私ハ信ズルノデ
アリマス(拍手)其意味ニ於キマシテ私ハ先
ヅ第一ニ九條削除ト云フコトニ對シテ贊意
ヲ表スル一人デアリマス
續イテ第二ノ理由ハ此同業組合ト云フ
モノハ實質的機能ニ於キマシテ多クヲ期
待スルコトガ出來ナイモノデアル、此多ク
ヲ期待スルコトノ出來ナイ所ノ工業組合ニ
加入シタ者ガ、同業組合ヲ脫退シテシマフ
ト云フヤウナ結果ニナリマスルト同業組
合ノ恩惠ヲ受ケルコトモ出來ネバ工業組
合ノ發展モ現實暴露ノ悲哀ヲ嘗メテ、其恩惠
ヲ殆ド受ケルコトモ出來ナイ、斯ウ致シマ
スルト、組合ノ機能ノ得失、兩方トモ失フ
此兩方ヲ失フ結果、是等ノ人々ハ多大ノ迷
惑ヲ感ズル、之ヲ防グ斯ウ云フノガ私ノ
主張デアル此點ニ付キマシテハ先ヅ第
一ニ工業組合ガ十分ノ機能、實力ヲ有シテ
居ナイモノデアル薄弱ノ機能ヲ有シテ居
お前の明日の時間其一ツニハ工業組合ニハ統制力ト云一
卽チ工業者、同ジヤウナ利
デアリマスカラシテ、自然少數ノ組合ニナツ
テ來ル同ジ金物或ハ綿絲布、斯ウ云フヤ
ウナ工業組合ノ中ニ於キマシテモ、數種ノ
工業組合ガ出來テ來ル、斯ウナリマスルト
自然ニ此組合ト組合トノ間ニ於テ圓滿ナル
協調ガ出來ナイ、斯ウナルト產業界全體ノ
統制ガ破レ、平和協調ヲ破ッテ行クヤウナ
結果ニナッテ來ルノデアリマス、ソレノミナ
ラズ此工業組合ニ於キマシテハ、營利ヲ目
的トスル團體デアリマスカラシテ公共ニ
基礎ヲ置カナイカラ、自然ニ產業界體ノ
統制ヲ期スルコトガ出來ナイ、斯ウ云フヤ
ウナ結果ト相俟チマシテ工業組合其モノ
ハ產業界ニ於ケル統制力ヲ缺クモノデアル
ト云フ、此一點ガ其機能、實力ガ薄弱デア
ルト云フコトガ、私ノ申ス所ノ理由デアル、
續テハ其工業組合ハ其製品ニ對シテノ檢査
ヲ行フト云フノデアルケレドモ此檢査ナ
ドト云フモノモ頗ル嚴正ヲ缺キ公正ヲ缺ク
モノデアル、少數工業者連ガ集"テ、自分達
ノ造ッタ物ヲ自分達ガ檢査ヲスルノデアル
カラ決シテ其檢査タルヤ公正ナルモノデ
ハナイ是等ノ點カラ考ヘテモ、此工業組
合ノ檢査ノ機能モ極メテ薄弱ナモノデアル
(拍手)
次ニ第三ノ問題ハ其資金ガ頗ル薄弱デ
アル此點デアル資金ノ薄弱ト云フコト
ニ付キマシテハ是ハ言フマデモナク微力
ナル所ノ、自己一人デ經營困難デアル所ノ、
中小工業ヲ集メル所ノ組合デアルカラ零
ハ幾ラ集"テモ零「マイナス」ハ幾ラ集フテモ
「マイナス」此點ニ於キマシテ中小工業者
ヲ集メタ工業組合ト云フモノハ資金薄弱
デアルト云フコトハ免レヌ運命デアル今
日中小工業者ガ斯ノ如ク疲弊困憊ニ陷。テ
居ル其原因ニ付キマシテハ私ハ申上ゲ
ル場合デハアリマセヌカラ、多クヲ申上ゲ
マセヌケレドモ、要スルニ民政黨內閣ノ財
政策、經濟政策ガ此結果ヲ來シテ居ルト云フ
コトガ、之ヲ明カニ證明シテ居ル(拍手)卽
チ誤クタル所ノ極端ナル緊縮政策、之ニ依。ツ
テ財政的ニ、或ハ經濟的ニ幾多ノ事業ノ
中止繰延ヲシタ、之ニ依ッテ中小工業者ガ發
展ノ手足ヲ椀レタト云フコトハ否定スル
コトノ出來ナイ事實デアル特ニ緊縮政策
ニ於テ需要ガ減退シテ來ル、斯ウ云フ方面
ニ於テモ中小工業者ハ甚シキ影響ヲ受ケ
ル殊ニ甚シイ原因ハ金解禁デアル金解
禁ノ結果ガ極端ナル中小工業者ノ製品ノ物
價ヲ低落サシタ、一割五分中小工業者ノ製
品ノ物價ヲ低落シタトシテモ、五十二億圓
カラノ中小工業者ノ製品ニ對シテ一割五分
低落スレバ卽チ七億八千万圓カラ現實
ニ日本ノ中小工業者ハ、此金解禁ニ依ッテ打
擊ヲ受ケテ居ルト云フコトハ否定スベカ
ラザル事實デアルト私ハ思ッテ居ルノデア
リマス、斯ウ云フヤウナ結果ガ今日ノ中
小工業者ヲ非常ニ疲弊サシテ居ル、而モ此
救フ所ノ現內閣ノ一ツノ政策トシテ出サレ
タノハ此工業組合法案デアリマスガ、然
ラバ此法案ニ依クテ中商工業者ヲ救フ所ノ
方面ニ於テノ助成方法ハ如何デアルカ補
助金ヲ出ストカ、或低利資金ヲ出スト
カ云ッテ、言葉ノ上デハ美シイケレドモ、
實際其內容ヲ私共委員會ニ於テ吟味致シ
マスト頗ル貧弱ナモノデアル先ヅ
補助金ニ付キマシテハ昭和六年度ノ
豫算ニ於キマシテ十三万五千圓、此工業
組合ニ對シテ出スト云フソデアル諸君、
此十三万五千圓ガ果シテ補助金トシテ、補
助作用ヲ十分ニ發揮スル金額デアルカドウ
カ、從來ノ重要輸出品ニ關スル工業組合時
代ニ於テモ極端ナル緊縮政策ニ依リマシ
テ民政黨內閣ハ昭和四年度ニ於テハ三十
万圓昭和五年度ニ於テハ二十五万圓ノ補
助金ヲ出シテ居ル、之ニ依ッテ中小工業者ヲ
救フト云フノデアルガ、是等ノ事ガ天下ノ
顰蹙ヲ買ウタコトハ諸君モ御存ジノ通リ
デアル、然ルニ重要輸出品工業組合時代ト
ハ違ヒマシテ、全內地ニ賣出ス所ノ工業品
ヲ造リ出ス所ノ工業者ヲ對象トスル所ノ此
工業組合ニ對シテ、タッタ十三万五千圓シカ
補助金ヲ出サヌ豫算ニナッテ居ル、此二ツノ
組合、卽チ重要輸出品工業組合時代ト、今日
現ハレル所ノ工業組合トヲ比較シテ見マス
ト、重要輸出品タル工業品ノ生產高ハ御存ジ
ノ通リニ約十三四億デアル然ルニ中小工
業者ガ內地ニモ賣捌ク所ノ工業品ヲ總計致
シマスト御存ジノヤウニ日本ノ工業生產
品ハ約七十四億ニ達シテ居ル其七割マデ
ガ中小工業者デアルト推算致シマスト五
十二億圓カラノ生產高ヲ持。シテ居ル、卽チ十
三四億圓ノ海外輸出品ノ輸出工業組合時代
ト違ッテ、五十二億ト云フ莫大ナル所ノ生
產品ヲ持タネバナラヌ、此中小工業者全體
ニ適用セラレル所ノ工業組合デアル以上
ハ其組合ノ對象ニ於テ四倍カラニ殖エテ
來テ居ル此多數ノ組合員ヲ對象トスル此
工業組合ニ對シテ從來三十万圓若クハ二
十五万圓補助金ヲ出シテ居ッタトスレバ、其
四倍ノ組合員ヲ持ツベキ運命ヲ持テテルル
工業組合ニ對シデハ四倍ノ補助金ヲ出シ
テ然ルベキデアル卽チ百万圓若クハ百二
十万圓ノ補助金ヲ出サネバナラヌ、然ルニ
事實ハ是ト反對ニ、從來ノ補助金ヨリモ半
額ニ落シ、二十五方圓デアッタモノヲ十三
万圓ニ蹴落スト云フコトハ何事デアル、十
三万五千圓、之ヲ今日ヨリ現レル工業組合
ノ組合員タル資格ヲ有スル全國ノ中小工業
者ニ割當テレバ幾ラニナル、今日中小工業
者ト目サルベキ者ハ家內工業者ノ百五十万
人五人以下ノ從業員ヲ持テ居居所所
工業者、是ガ百万人、之ヲ合計致シマスト
二百六十万人バカリニナルノデアリマスケ
レドモ二百六十万人ノ中小工業者ヲ救濟
スルノ補助金ト致シマシテ十三万五千圓
シカ出サナイト云フコトハ何事デアル卽
チ一人當リタッタ五錢五厘デアル、此五錢五
厘ト云フ「ラムネ」一本ニモ價セヌ金ヲ補助
金トシテ、中小工業者ヲ救濟スル策トシテ
工業組合法ヲ作ルト云フ、斯ノ如キ子供騙
シノヤウナ宣傳政策ヲ以テ數字ニ暗キ國
民ヲ瞞著セントスルガ如キハ、欺瞞政策ノ甚
シキモノデアルト絕叫スル(拍手)斯ノ如キ
次第デアリマシテ補助金ニ於テハ殆ド問
題ニナラナイ、然ラバ低利資金ニ於テ幾何
出スカ低利資金ニ於キマシテハ政府ノ
說明ヲ私共ハ委員會ニ於テ追窮シタ委員
會ニ於テ然ラバ低利資金ヲ工業組合ニ對シ
テドノ位出ス豫算デアルカト私共ガ追窮致
シマシタラバ之ニ對シテハ政府當局ハ言
ヲ左右ニ託シテ曖昧模糊ノ態度ヲ以テ此言
明ヲ避ケタ然ラバ過去ノ重要輸出品工業
組合時代ニ於ケル低利資金融通、此狀態ヲ
以テ將來ノ工業組合ニ對スル低利資金融通
ノ情勢ヲ推測スルヨリ外ニハ方法ハナイ
然ラバ民政黨內閣ノ時代ニ於キマシテ、重
要輸出品工業組合ニ對シテ如何ナル低利
資金ノ融通方法ヲ行シテ居ル、是ハ數字ガ明
カニ立證致シテ居ル、昭和三年度ニ於キマ
シテハ政友會內閣ノ時代ニ於キマシテ二
百万圓ノ工業組合ニ對スル低利資金ノ融通
ヲ割當發表致シテ居ル而シテ實際ニ於テ
貸出シタルモノハ百三十五万六千八百圓、卽
チ六割八分ニ該當スル所ノ實際ノ低利資金
ヲ出シテ居ルデハナイカ、然ルニ民政黨內
闇。昭和四年度ニ於ケル低利資金ノ融通ハ
ドウデアルカ二百万圓ノ融通ヲ發表サレ
タケレドモ、實際ニ貸出シタル低利資金ノ
融通額ト云フモノハ四十二万圓、二百万圓
ノ融通ヲ發表シテ置キナガラ四十二万圓シ
カ貸出サナイ、卽チ宣傳額ニ對シテタッタ二
割一分五厘ノ割合デアル、是ガ欺瞞政策ニ
非スシテ何ゾヤト言ヒタイノデアル而モ
實際ノ發表額ニ對シテ二割一分五厘シカ貸
出サナイト云フコトハ之ヲ逆算致シマス
ト、實際貸出ス所ノ額ニ對シテ、五倍カラ
ノ大キナ宣傳看板ヲ揭ゲテ國民ヲ瞞著シ
タモノデアルト私ハ斷定スル斯ノ如キ情
勢ヲ以テ將來ノ工業組合ニ對スル低利資
金融通ノ情勢ヲ推測リマス時ニ、私ハ洵ニ
心細イ次第デアルト感ゼザルヲ得ナイ之
ヲ私共ハ委員會ニ於テ俵大臣ニ追窮致シマ
シタ所ガ、俵大臣ハソレハ成程少ナカ戶
之ニ付テハ出來得ル限リ貸出條件ヲ緩和致
シテ、預金部資金ノ融通ノ利ク限リニ於テ
低利資金融通ノ額ヲ殖ヤサウト言ハレル
併ナガラ今日ノ預金部資金ニ是ダケノ餘裕
ガアルカドウカ之ヲ檢討スル必要ガア
ル預金部資金ニ於キマシテハ、諸君モ御
存ジノヤウニ今日頗ル貧弱ナル餘裕金シ
カ殘ッテ居ラヌ、御存ジノヤウニ郵便貯金或
ハ振替貯金等ニ於キマシテハ今日ノ極端
ナル不景氣ガ災ヒ致シマシテ、其增加額ト
云フモノハ次第ニ其率ガ減シテ來テ居ル、昨
年度ノ十四「パーセント」ニ較ベマスト、今
年度ハ僅カ十「パーセント」四パーセント」ダ
ケ低下致シテ居ル卽チ今年度一般ニ於
テ郵便貯金ノ增加スベキ豫定額ハ二億八
千六百万圓シカ期待出來ナイ、然ラバ他ニ
幾何ノ餘裕金ヲ見出シ得ルカ、國內預金ト
致シマシテ預金部ハ御存ジノ通リ一億一
千四百万圓バカリ國內預金ヲ持ッテ居ル、
海外預金トシテハ正金銀行ガ御存ジノ如
ク九千六百八十万圓程海外預金ヲ持ッテ居
ル、併シ正金銀行ノ預金ハ今後ノ國際貸借ノ
情勢、爲替取引關係カラ、之ヲ引出シテ流用
スル譯ニハ行カヌ、然ラバ殘ル餘裕金ト致
シマシテハ貯金ノ增加豫定額、國內預金
額此合計四億圓ガ預金部ノ餘裕金ト看做
スベキデアル然ルニ一面ニ於キマシテ
支出ノ方ニ於キマシテハ如何デアリマセウ
カ、支出ノ方ニ於キマシテハ諸君御存ジ
ノヤウニ、幾多ノ貸出契約ヲナサッテ居ル結
果ガ來年度ノ貸出シノ約束ノ負擔繰越ト
云フモノハ三億圓カラ殘ッテ居ル、ツレニ對
シテ公債引受ヲ約束決定致シテ居ルモノガ
一億七百万圓バカリ合計四億七百万圓バ
カリハ支出負擔ノ繰越ニナッテ居ル、四億圓
ノ餘裕金ニ對シテ四億七百万圓ノ支出負
擔ガアル以上ハ預金部ノ資金ニ於キマシ
テ來年度初ニ於キマシテハ七百万圓バ
カリ足ラヌト云フノガ實際ノ狀態デアル
斯ウ云フ狀態ノ所ヘ、俵大臣ハ無責任ニモ
預金部ニ餘裕ガアル以上ハ條件ヲ緩和シ
テデモ大イニ工業組合ニ對シテ低利資金ヲ
融通スルト言ハレルガ、事實ハ不可能デア
ル而モ預金部ノ資金ニ斯ノ如ク餘裕ナキ
ニ至ラシメタ者ハ誰デアルカ、言フマデモ
ナク郵便貯金ノ減ヲタト云フコトモ、是ハ民
政黨ノ今日マデノ經濟財政政策ノ惡カッタ
ト云フコトガ原因デ庶民階級ニ於テ貯金
ノ餘力ガナクナッタ、是ハ判明致シテ居ル
續イテ又公債引受額ガ殖ヱテ來テ居ル是
ハ何處ニ原因カアルカ言フマデモナク今
日ノ經濟界ノ極端ナル恐慌ニモ近キ不景
氣ノドン底ニアル此場合ニ公債釣上政策
ニ依ッテ財界安定ヲ期サウトシ、資本家階級
ヲ擁護セントシテ、此公債引受額一億七百
万圓バカリ殖ヤスコトニナッテ居ル、更ニ又
預金部ノ低利資金ノ貸出ガ殖ヱテ來テ居
ル是ハドウデアルカ是ハ言フマデモナ
ク今日ノ財界安定策トシテ、彌縫策トシテ、
民政黨內閣ニ於テ貸出ヲ殖ヤシタ、卽チア
ノ興業銀行ナドヲ通ジテノ民政黨內閣ノ放
漫ナル貸出狀態ハ如何デアリマスカ資本
家階級ヲ背景ニ持ツアノ東武鐵道、或ハ地下
鐵道、或ハアノ樺太工業ノ如キモノニ對シ
マシテハ、諸君御存ジノヤウニ興業銀行ノ
總裁ヲ更迭シテマデ放漫ナル貸出ヲヤッタ
デハナイカ(拍手)卽チ昨年ノ九月カラ昨年
末マデノ貸出ノ狀況ヲ見マシテモ、興業銀
行ヲ通ジマシテ七千百万圓カラノ放漫ナル
貸出ヲ致シテ居ル而モ其中ニ於キマシテ
千五百万圓ト云フ低利資金ヲ預金部カラ引
出シテ是等ノ資本家階級ヲ背景ニ持ヲ事業
會社ニ對シテ、之ヲ流用シテ居ルト云フコ
トハ天下公知ノ事實デハアリマセヌカ
斯ウ云フヤウナ事實ガ、今日預金部ノ資金
ニ餘裕ヲ少カラシメタ所ノ最大ナル原因デ
アル是ガ今後現ハルベキ工業組合ニ對シ
テノ融通額ヲ大キクスルコトノ出來ヌ最大
原因デアルト云フコトハ、天下公知ノ事實
デアルト思フ諸君、斯ノ如キ狀態デアリ
マシテ、樺太工業ヲ初メト致シマシテ、二
三ノ大ナル資本家階級ノ事業會社ニ對シテ
ハ千五百万圓カラノ低利資金ヲ融通致シ
テ居ルニモ拘ラズ、全國幾万ノ背景ヲ持ツ
中小工業者ノ〓體デアル百二カラノ重要輸
出品工業組合ニ對シテハ僅カニ四十二万
圓シカ低利資金ヲ出サナイト云フコトハ
取リモ直サズ是レ資本主義政治ノ權化デア
リ三菱內閣ノ本質ヲ遺憾ナク發揮セシメ
タモノデアルト私ハ信ズル(拍手)斯ノ如キ
狀態デアリマシテ補助金ノ問題ニ對シテ
モ、或ハ低利資金ノ問題ニ致シマシテモ
政府ハ工業組合ヲ補助スルト云フ實際ノ誠
意ハ毫モ將來ニ於テ之ヲ期待スルコトハ
出來ナイ、斯ウ云フヤウナ狀態デアリマシ
テ其工業組合檢査ノ點ニ於キマシテモ
組合內ノ統制或ハ産業界一般ニ對スル統
制力ニ於キマシテモ、亦政府助成ノ下ニ於
ケル實際ノ事業、及ビ資金融通ノ問題ニ於
キマシテモ全然多クノ期待ヲ掛ケルコト
ノ出來ナイ所ノ、唯徒ラナル宣傳政策ニ過
ギザルモノデアルト私ハ信ジテ居ル(拍手)
斯ノ如キ實質及ビ機能貧弱ナル工業組合ニ
對シテ政府ノ甘イ言葉、宣傳政策ニ迷ハ
サレテ、徒ニ同業組合ヲ脫シテ、此工業
組合ニ走ッテ行ッタ者ハドウナルカ、同業
組合ノ特質機能恩典ヲ受ケルコトハ失
ハレ工業組合ニ入ッテモ只今ノヤウナ
狀態デ、其恩惠ヲ受ケルコトガ出來ナ
イ、サウ致シマスト是等ノ人々ノ陷ル運
命ハ明カニ豫想出來ルノダ、之ヲ私ハ憂
ヘテ居ル、此點ニ鑑ミマシテ、ドウシテモ
九條ハ絕對ニ削除シテ輸出品工業組合タ
ルト、其他ノ工業組合タルトニ關セズ、組
合員ハ此同業組合ヲ自由ニ脫退シ加入スル
コトハ之ヲ避ケシメテ、工業組合ニ加入ス
ル者ハ輸出品ニ關スル者ト否トヲ問ハズ、
絕對ニ又同業組合ニ加入セシムルノ法制ヲ
保チ置クコトガ、我國ノ經濟界ノ圓滿ナル
發展ヲ期スル上ニ於テ最モ大切ナ事デア
ル、此點ヲ私ハ第二點ト致シマシテ第九條
削除ヲ叫ブ所以デアリマス(拍手)
更ニ又第九條ヲ存置政シマスル第三ノ弊害
ト致シマシテハ、重要輸出品タルト否トニ關セ
ズ、此工業組合ニ加入致シタ者ハ同業組合ニ
對シテ加入スルト否ト脫退スルト否トノ自由
ヲ認メル以上ハ玆ニ前申上ゲマシタ事情
ニ依リマシテ輸出品ノ工業組合ハ勿論ノ
コト、他ノ工業組合ト同業組合ト、其構成
員ヲ異ニ致シテ來ル、人的ノ聯絡統制ヲ失ツ
テ來ル、此結果ハ兩組合ガ別個ノ立場ニ於
テ對立スルコトニナッテ來ルノデアリマス、
斯ウ致シマスルト云フト此結果ハ自然ニ
利害相反シタ立場ノ組合トナッテ來マス關
係上工業組合ニ加入致シタ者ハ所
企業合同ニモ等シイ立場ヲ利用シ、「カルテ
ル」的ノ機能ヲ發揮致シマシテ、自然ト其製
品ノ賣捌ニ付テモ價格吊上ノ政策ヲ行フニ
至ルデアラウ、或ハ其他ノ條件ニ於キマシ
テモ販賣業者、消費階級ヲ壓迫スルヤウナ
條件ヲ提出スルニ至ルノデアル、斯ウ致シ
マスルト云フト洵ニ我國ノ經濟界ニ對ス
ル影響ハ多大デアル而モ之ニ對シテ販賣
業者取次業者ノ作ル所ノ同業組合ハ如何
ナル態度ヲ取ルカ自然是ノ對抗策ト致シ
マシテ工業組合ニ由ッテ來ス所ノ壓迫、之
ニ依ッテ生ズル所ノ損害ヲ消費階級ニ轉嫁
スルヤウナコトニナッテ來ル、ノミナラズ工
業組合ニ對抗スル政策ト致シマシテハ、自
然販賣取次ノ條件ニ於キマシテモ一種ノ
結束ヲ作ッテサウシテ不買同盟ヲヤル
或ハ又買入ノ條件ニ於テ工業者ノ不利ナル
所ノ條件ヲ付ケル、斯ウ致シテ益〓生產者
及ビ取次業者ノ間ニ於ケル利害ハ衝突シ、
感情ハ阻隔シテ來ルト云フコトハ免レ難キ
運命デアル而モ此結果ハ更ニ一般ノ消費
階級ニドウ云フ影響ヲ持ツカ斯ウシテ取
次業者ト工業者ノ立場ハ常ニ大ナル利害感
情ノ衝突ヲ見ルニ至リマシテ、是ニ於キマ
シテ一般ノ消費階級ニ於ケル需要量、或ハ
品質、銘柄、是等ノ實際ノ消費階級ノ事情
ヲ生產業者ニ圓滿ニ反映サシテ、玆ニ生產
業ト消費者トノ圓滿ナル所ノ協調ヲ保ッテ
行クト云フ機能ガ失ハレルカラ我國ノ經
濟界ノ圓滿ナル發展ニ多大ナル損害ヲ來ス
ト云フコトハ免レ難キ事デアル(拍手)斯ウ
致シマスルト云フト我國ノ生產業者、取
次販賣業者、消費階級、是等ノ間ニ於ケル
聯絡続制ト云フモノハ全然失ハレテ來ルノ
デアルノミナラズ勞働階級ノ立場ニドウ
云フ影響ヲ及ボスカ、言フマデモナク斯ウ
シテ工業者ガ一種ノ「カルテル」的ノ企業合
同ノ立場ニ立チサウシテ一種ノ企業給制
ノ彈壓ヲ行ヒマスル時自然ニ勞働階級ノ
者ハ其雇傭條件ニ於テ不利ナ立場ニ突キ落
サレル、若シ第九條ヲ削除致シマシテ、此間
同業組合ト工業組合トガ人的ノ聯絡ガ出來
テ來テ、工業組合ノ爲サントスル所ニ對シテ
同業組合ノ立場ニ於テ組合員ガ掣肘スルコト
ガ出來ルヤウナ機能ガ出來テ居ルト致シマ
スレバ、工業組合ノ徒ニ發揮シヨウトスル所
ノ無謀ナル勞働階級壓迫ノ態度ヲ緩和シ
掣肘スル機能ガ出來ルノデアリマスケレド
モ、第九條ヲ存置スル以上ハ是ハ出來ナイ、
斯ウ云フヤウナ點カラ考ヘマシテモ、生產
業者或ハ取次業者、消費階級、勞働者、是
等何レノ點カラ考ヘマシテモ第九條ハ絕對
ニ削除スベキモノデアルト私ハ信ジテ居ル
ノデアリマス(拍手)
諸君、以上幾多列擧致シマシタ所ノ事情
ニ依リマシテ私ハ此際民政黨諸君モ眞ニ
大所高所カラ此問題ヲ〓究サレ徒ニ政府
ノ區々タル面目論ヲ擁護スルガ如キ黨派心
ヲ一擲セラレテ(拍手)日本ノ各經濟關係ノ
階級ノ圓滿ナル協調統制ヲ保ツベク第九
條削除ト云フ我黨ノ修正ニ衷心ヨリ贊成ア
ランコトヲ玆ニ勸〓致シテ此壇ヲ降ル次
第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=69
-
070・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 討論ハ終局致シマ
シタ、是ヨリ採決ニ入リマス-先ヅ瀨川
嘉助君外三名提出ノ修正案ニ付キ採決致シ
やく、此修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メ
マス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=70
-
071・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ否
決セラレマシタ--次ニ委員長報告ニ付キ
採決致シマス、委員長報告ニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=71
-
072・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ委員長報告通リ可決致シマシタ
(拍手)之ニテ本案ノ第一一讀會ヲ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=72
-
073・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=73
-
074・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=74
-
075・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ直チニ第三讀會ヲ開キマス
重要輸出品工業組合法中改正法律案
第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=75
-
076・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリ
マセヌカラ第二讀會議決ノ通リ可決確定
致シマシタ、是ニテ兩案共議了致シマシタ
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=76
-
077・作田高太郎
○作田高太郞君 議事日程變更ノ動議ヲ提
出致シマス卽チ此際日程ヲ變更シテ、政
府提出ニ係ル無盡業法改正法律案及ビ自
動車交通事業法案ヲ順次議題ト爲シ、委員
長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=77
-
078・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=78
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079・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ日程ハ變更セラレマシタ無盡
業法改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマ
ス委員長ノ報〓ヲ求メマス、委員長荒川
五郞君
無盡業法改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一無盡業法改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十二日
委員長荒川五郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔荒川五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=79
-
080・荒川五郎
○荒川五郞君 無盡業ハ元ト賴母子講トテ
舊クカラ我國ニハ行ハレテ居ッタノデアリマ
ス、之ヲ改善助長致シテ、一般民衆ノ金融
機關トシテ發達セシメタイト云フノデ、大
正四年ニ法律ガ出來マシタ、爾來其實施ノ
成績ニ鑑ミマシテ此基礎ヲ鞏固ニスル爲
ニ營業ヲ商行爲ト致シ、株式會社ニ限定ス
ルコトニ致シ尙ホ資金運用ノ範圍ヲ擴メ
テ營業者竝ニ加入者ノ便利ヲ圖ル等其他
幾多重要ナル改正ヲ企テ、以テ之ガ發達進
步ヲ圖ラントスルモノデアリマス、本改正
案ニ付テハ委員會ハ勿論異議ハアリマセ
又、唯資本金ガ三万圓デ半額拂込デ營業
ガ出來ルト云フコトニ付テハ如何ニモ範
圍ガ小サクテ運用ニ差支ヘルカラ、此資本
ヲ十万圓ニ上セタイト云フ意見ガ、政友會
ヲ代表シテ板谷順助君ヨリ述ベラレマシ
タ併シ無盡會社ハ一般加入者カラ掛ケタ
掛金ヲ他ノ特定ノ人-加入者ニ融通スル
コトヲ本來ノ特長ト致シテ居リマス極メテ
限局的ノモノデアルカラ、今此際特ニ法律
ヲ以テ資本金ヲ引上ゲル必要ハ認メナイト
云フノデ民政黨ハ小峰滿男君ガ代表シテ
政府原案ニ贊成ノ趣意ヲ述ベラレマシタ
斯クテ採決ノ結果修正案贊成六名、原案贊
成八名デ原案ノ通リニ決シマシタ其他
爾餘ノ各條ハ滿場異議ナク可決致シマシタ、
但シ政友會カラハ少數意見ノ提出ガアリマ
ス此點御報〓致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=80
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081・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 本案ニ對シテハ板
谷順助君外五名ヨリ少數意見ガ提出サレテ
居リマス此意見ハ修正デアリマスカラ、
第二讀會ニ於テ其報〓ヲ許スコトニ致シマ
ス尙ホ討論ハ便宜上第二讀會ニ於テ爲ス
コトニ致シタイト思ヒマス、左樣御諒承ヲ
請ヒマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=81
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082・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=82
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083・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=83
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084・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=84
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085・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス-仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
無盡業法改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=85
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086・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 此際無盡業法改正
法律案ニ對スル少數意見ノ報告ヲ求メマ
ス-橫川重次君
少數者意見書
一無盡業法改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
昭和六年三月十二日
委員少數意見者
板谷順助
外五名
〔別紙〕
無盡業法改正法律案中左ノ通修正ス
第四條中、三万圓以上ニシテ拂込金額一
万五千圓」ヲ「十万圓」ニ改ム
〔橫川重次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=86
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087・横川重次
○橫川重次君 只今委員長ノ報〓中ニモア
リマシタ通リノ修正意見ヲ陳述致シタイト
存ジマス最モ簡單ニ申上ゲルコトヲ御約
束申上ゲマス
第一ニ事業ノ性質ヨリ申シマシテモ、又
本事業ノ過去ニ於キマスル實績ニ徵シマシ
テモ又將來本事業ノ健全ナル發達ヲ期ス
ル上カラ申シマシテモ吾々ノ主張致シマ
スル修正意見ハ最モ肯綮ニ當ルモノデアル
ト信ズル者デゴザイマス(拍手)卽チ第一ニ
無盡業ハ異常ナル發達ヲ遂ゲマシテ既
其契約ノ總額ハ十一億ヲ越エマシテ又其
年々ノ給付金額ハ二億ヲ超ユル所ノ現狀デ
アリマシテ現政府ガ各種ノ低利資金其他
ニ依リマシテ大ニ其中小產業者ノ金融ヲ契
約シテ居リマスル其方面ノ努力ハ、遠ク民
間無盡會社ノ成績ニ及バナイノデゴザイマ
ス、斯樣ニ發達ヲ遂ゲマシタル狀態ヨリ見
マシテモ、又一會社ガ千万圓以上ノ給付契
約ヲ有スル所ノ現狀ニ鑑ミマシテモ、洵
其庶民金融機關トシテノ役柄ハ重大ナモノ
デアルト思フノゴザイマス故ニ政府提出
案ノ如キ輕少ナ資金ヲ以テ之ヲ行フコト
ハ往々ニシテ其危險ヲ伴フモノデアルト
斷ゼザルヲ得ナイノデゴザイマス(拍手)
第二ニ金融ノ範圍ヨリ申シマスルナラ
キュート
バ、中小產業者ヲ相手トスル者ガ其中心ヲ
爲スモノデゴザイマスルガ故ニ、若シ基礎
ノ不確實ノ上ニ建設致サレマシタル事業經
營ト云フモノハ若シ萬一ノコトガアリマ
スルナラバ社會政策的ノ意味ヨリ致シマ
シテ洵ニ重大ナルモノガアルデアラウト
思フノデゴザイマス
又第三ニ於キマシテハ、從來不良不正ナ
ル營業者モ時ニナキニアラザルヲ保シ難
カッタノデアリマスルガ、是ハ資本金等ガ極
メテ少額デアリマシタル事柄ヨリ致シマシ
テ十分ナル確實ノ基礎ニ於テ建設致サレ
マセナカッタコトニ依リマシテ、往々ニシテ
其危險ガ多カッタノデアリマスルガ故ニ
此點ヨリ致シマシテモ資本金ノ增大ト云フ
コトハ此際急務デアラウト思フノデアリ
マス又本改正案ニ依リマスルト、業者ヲ
以テ株式會社ノミ許スト云フコトハ內外ノ
信用ヲ確立スルト云フ意味ニ於キマシテ
其改正ノ主眼點デアルノデアリマスルガ
要スルニ本修正ノ趣旨ハ本改正案ノ眼目
タル所ノ無盡ノ庶民金融機關トシテノ堅實
ナル發達ヲナサシメルト云フコトヽ全ク一
致スルモノデアルト思フノデアリマス
此點ニ付キマシテ修正案ノ動議ヲ提出致
シタ次第デゴザイマス、何卒御贊成アラン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=87
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088・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 此修正意見ニハ成
規ノ贊成ガアルト認メマス仍テ修正意見
ハ修正案トシテ成立致シマシタ是ヨリ討
論ニ入リマス、通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマ
ス-名川侃市君
〔名川侃市君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=88
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089・名川侃市
○名川侃市君 私ハ修正案ニ對シマシテ贊
成ノ意見ヲ述ブル者デアリマス無盡ハ我
國ニ於キマシテ特殊ノ發達ヲ致シテ居ルモ
ノデゴザイマシテ、庶民金融機關ト致シマ
シテ最モ效用ガアリ且ツ簡便ナモノデア
リマス而シテ貯蓄心ヲ養成シ、又細民ノ
資金預託ノ機關トシテ理想的ノモノデアル
ノデアリマス此極メテ簡便デアルト云フ
反面ニ於キマシテハ又色ミノ弊害ガ伴フ
モノデゴザイマシテ、是マデノ例ニ徵シマ
シテモ此無盡會社ヲ經營致シマスルモノ
ガ掛金ヲ橫領致シ、或ハ其無盡ガ滿口ニ達
セザルニモ拘ラズ、他人ノ名儀ヲ以テ經營
者ガ之ニ加入致シマス籤ヲ胡麻化ストカ
色々ナル糶ノ方法ニ依ッテ先ヅ其無盡金ヲ
自分ガ取ッテシマッテ而シテ其後ニ於テ其
掛金ヲ致シマセヌガ爲ニ其無盡ガ倒レル
ト云フ例ガ非常ニ多イノデアリマス
大正六、七年マデノ無盡會社ナドノ例ヲ
見マスルト、其約九割ト云フモノハ破綻ヲ
致シテ居ルノデアリマシテ多クノ掛金者
ハ其掛金ヲナシナガラ遂ニ其拂戾シヲ受
ケルコトヲ得ナイト云フヤウナ悲慘ナル結
果ヲ生ジテ居ルノデアリマス常ニ裁判所
ニハ無盡ノ詐欺トシテ浩瀚ナル記錄ガ澤山
積マレルト云フヤウナ狀況ニナッテ來テ居
ルノデアリマス、此狀況ト云フモノハ獨リ
無盡ノミニ止マラヌノデアリマシテ据置
貯金ノ目的ト致シテ居リマスル貯蓄銀行
或ハ有價證劵ノ割賦販賣ヲ致シテ居リマス
ル所ノ營業、是等ノ零細ナル資金ヲ月々ニ
集メル所ノ事業ト云フモノハ大抵皆是ハ
破綻致シ中產以下ノ國民ニ向ッテ多クノ
損害ヲ與ヘテ居ルノデアリマス小サイ資
本ノ保險會社又同一ノ弊害ガアッタノデア
リマス其爲ニ國民ノ貯蓄心ヲ著シク減退
サセマシテ其被害ト云フモノハ實ニ大キ
カッタノデアリマス、今日ハ次第ニ人智ガ發
達シ各〓信用ニ注意致シマシテ、又營業
者ノ自然ノ淘汰ニ依リマシテ大分內容ガ
改善セラレテ來、又當局ノ監督次第ニ宜シ
キヲ得テ來リマシタ爲ニ、今日ノ無盡會社
ノ內容ハ大ニ改良セラレタモノガアルノデ
アリマスルケレドモ、併シ事業其モノガ今
申シマスルガ如クニ、危險ノ伴フモノデア
リマス、而モ此事業ニ依ッテ害ヲ受ケルモノ
ハ中產以下ノ細民デアル、ソレガ零細ナル
資金ヲ掛ケタモノガ、其拂戾シヲ受ケルコ
トガ出來ヌト云フ悲慘ナル結果ヲ生ズルモ
ノデアッテ、延テハ國民ノ貯蓄心ヲ減退シ
國家經濟上カラ言ウテモ由々シキ重大ナル
影響ヲ及ボスモノデアリマス(拍手)
サウ云フ次第デアリマスルカラシテ、此
無盡ノ改善ト云フコトニ付キマシテハ第
一ニ無盡會社ノ信用ノ增進ト云フコトニ付
テ努力シナケレバナラヌコトハ勿論デアリ
マス
次ハ無盡ノ加入者ニ付テ十分ノ選擇ヲ致
シテ、必ズ其無盡ヲ取ッテモ掛戾シガ出來
ル人ヲ選擇スルコトガ必要デアル、其次ニ
ハ當局ノ監督ヲ何處マデモ厲行スルト云フ
コトガ必要ナノデアリマス、併シ此官廳ノ
監督ト申シマスルモノハ餘リニ現在ノ狀
況カラ言ヘバ徹底致サナイノデアリマシ
テ此監督ニノミ信賴スルト云フコトハ非
常ニ危險デアルノデアリマス隨テ此無盡
ヲ經營致シマスル會社ニ相當ノ資本ヲ充實
ヲサセマシテ確乎タル資產ヲ以テ其信用
維持ノ基礎トシナケレバナラヌト云フコト
ハ當然デアラウト思フノデアリマス、此種
ノ事業ハ銀行ニ致シマシテモ當局ハ昭
和二年ニ銀行法ヲ改正致シ、必ズ株式會社
デナケレバナラヌ資本金ハ百万圓以上デ
アル、土地ニ依ッテハ、二百万圓以上ノ資本
デナケレバナラヌト云フ制限ヲ設ケテ居ル
ノデアリマス、信託事業ニ付キマシテモ其
經營ハ株式會社ニ據ラナケレバナラヌ資
木金ハ百万圓以上デナケレバナラヌト云フ
コトニ決メテアルノデアリマス本法案モ
亦無盡會社ノ組織ハ株式會社デナケレバナ
ラヌト云フコトニナッテ居リマスルガ、唯其
資本金ニ付キマシテハ舊法卽チ現行ノ無
盡業法ノ三万圓、拂込資金一万五千圓、其
金額其儘踏襲シテ來テ居ルノデアリマス
私等ハ此政府提出ノ本案ト云フモノハ、此
無盡ノ取締ヲ嚴重ニシテ無盡取引ヲ信用
アル者ニスルト言ハレル所ノ其改正ノ趣旨
ガ毫モ徹底セズシテ改正ノ實ノ無イモノ
デアルト信ズルノデアリマス(拍手)
法律ガ其經營ヲ株式會社ニシロト云フテ、
其組織ヲ株式會社ト云フコトニ限ッタ所以
ノモノハ何デアルカト申シマスルナラバ
資本ヲ增加致シテサウシテ相當充實セル
資本ニ依ッテ經營サセルト云フコトガ唯一
ノ目的デアル其資本ヲ增加スルノニハ株
式會社ガ最モ適當デアルト云フノデ、株式
會社ノ組織ニ限ルト云フコトニシタ所以デ
アルノデアリマス、尙ホ株式會社ニ命ズル
理由ト致シマシテハ、株式會社ハ合資會社、
合名會社ニ比べマシテ其事業監督ノ機關
ト致シテ株主總會ト云フモノガアリ監査
役ト云フモノガアル、是等ノ監督ニ依ッテ事
業ヲ監視スルト云フ長所ガアルカラ、株式
會社ガ完全デアルトセラレテ居ルノデア
ル又合名會社、合資會社ハ其代表者ガ變
更スルコトハナイ常ニ無限責任社員ト云
フモノガキマッテ居ルノデゴザイマスガ、其
無限責任社員ガ代ラヌガ爲ニ自然ト專橫ガ
行ハレ其處ニ弊害ガ生ズルト云フノデゴ
ザイマシテ、株式會社ハ取締役ニ任期ガアッ
テ又株主總會ニ於テ之ヲ選擧スルモノデ
ゴザイマスガ故ニ、取締役ニ於テ不信ナル
コトガアリ又專橫ナコトガアリマスルナ
ラバ其取締役ハ更迭サレルト云フ所ニ於
テ會社ノ信用ヲ增スト云フノガ卽チ株式
會社ガ宜イト云フコトニナッテ居ルノデア
リマス併ナガラ是ニハ一長一短ガアルコ
トデアリマシテ、合名會社合資會社ノ代
表者デアリマスルト云フト其責任ガ無限
デアリマス、卽チ無限責任社員デアリヽ隨
テ是等ノ代表者ハ自然ト社務ニモ熱心デア
リ又忠實デアリマス殊ニ無盡ノ如ク其
營業區域ガ一地區ニ限ラレテ居リマスルモ
ノニ付テハ其經營者個人、アレハ何兵衞
ガヤッテ居ル無盡デアルカラ、アノ人ハ信用
ガアルカラ安全デアルト云フ經營者個人
ニ對スル信用ニ依ッテ加入スル者ガ多イノ
デアリマス株式會社デアリマスト多少デ
モ其會社ガ隆盛ニ赴キマスト資本ノ少イ
會社デアルト野心家ガ出テ來テ僅カノ金
代フテ株ヲ買收シテ、其株式會社ヲ乘取ル
コトガ出來ル、折角取締役ノ努力ニ依ッテ其
會社ガ信用ヲ得テ居ッタモノガ、忽チニシテ
ソレヲ乘取ラレルト云フコトニナッテ、重役
ノ更迭ニ依ッテ信用ガ失墜スルト云フ危險
モアルノデアリマス、又サウ云フ危險ノナ
イ卽チ或一部ノ者ガ絕對ニ株ヲ持ッテ、ソ
レガ重役ニナッテ居ルト云フ場合ニ於キマ
シテハヽ是ハ其株主ガ絕對ニ株ヲ持ッタノ
デアリマスカラ其株主デアル重役ハ更迭
スルコトハナイ、卽チ合名會社、合資會社
ト毫モ異ナル所ガナクシテ何時マデモ是
ガ取締役デアリ、其一味ノ者ガ監査役デア
ル、株主總會ニ於テモ絕對ノ株ヲ持ッテ居リ
マスカラ監査役、株主總會其モノガ其重
役ヲ監督スル所ノ實ハ擧ラナイノデアリマ
ス殊ニ又少額ノ資本デ出來ルト云フコト
ニナリマシタナラバ、其資本金ノ全部ヲ一
人ノ者ガ出シテ、唯名義上僅カノ株ヲ他人
ノ名義ニシテ、名ハ株式會社ト稱スルケレ
ド、事實ニ於テハ一人ニ依ッテ之ヲ經營スル
ト云フヤモウナ場合ガ出來ルノデアリマ
ス斯ウ云フコトニナリマシタナラバ卽チ
法律ガ株式會社ニ長所ガアリトシテ其組織
ヲ株式會社タルコトニ局限致シテ、必ズ無
盡會社ハ株式會社デナケレバナラヌトシタ
ト云フコトノ目的ヲ達スルコトガ出來ナク
ナルノデアリマス、而モ其重役ハ無限責任
ヲ有シテ居リマセヌガ故ニ、會社ニ對シテ
モ忠實デナイ、熱心デナイト云フコトニナ
ル又加入者ノ方ニ於テモ無限責任社員程
ニ重役ト云フモノニ付テ信賴致シマセヌガ
故ニ重役ニ對スル信賴ガ薄ク、隨テ加入
者ガ少イト云フヤウナコトカラシテ會社
ノ發展ガ思フヤウニ行カヌト云フヤウナコ
トニナルト云フ又弊害モアルノデアリマ
ス、サウ云フ次第デゴザイマスカラシテ
株式會社ト合資會社、合名會社ヲ較ベテ見
マスレバ一概ニ株式會社ガ良イトバカリ
ハ言ヘナイノデアリマス、卽チ一長一短ガ
アルソレヲ本案ハ必ズ無盡業ヲ營ムモノ
ハ株式會社デナケレバナラヌトシタ所以ノ
モノハ何處ニアルカト言ヘバ、ドウシテモ
資本ヲ充實サス資本ヲ增加サスト云フコ
トガ唯一ノ目的デアルト謂ハナケレバナラ
ヌ卽チ會社ノ資本ガ確固デアレバ信用ガ
增加致シマス、而シテ加入者ニ對スル選擇、
卽チ會社ガ確固ナレバ信用ノ無イ者ガ加入
シヨウトシテモソレハ斷ル、信用ノ有ルモ
ノデナケレバ加入サセヌト云フヤウニ選擇
ガ十分ニ行キマスガ故ニ、事業モ確實ニナ
リ、又大キナ會社デアルナラバ相當ノ人ガ
重役ニナル、資本ノ二万、三万ノ會社ノ重
役ニナルト云フコトハ恥カシイ、相當ノ資
力信用ノアル者ハ逃ゲルト云フヤウナ結果
ニナッテ來ルノデアリマスカラ、ドウシテモ
株式會社ニシテヤルト云フコトニ付テハ資
本ヲ增加サシテ、以テ會社其モノヽ基礎ヲ
鞏固ニ致シ掛金ノ囘收ヲ確實ニ致シテ加
入者ノ損失ヲ何處マデモ防イデ庶民金融
ノ實ヲ擧ゲルヤウニセンケレバナラト云フ
コトハ論ヲ俟タヌ所デアリマス若シ本法
案ノ如ク資本金ハ前通リデ宜シイ、小資本
テモ出來ルト云フコトエナリマスト、無盡
位金ノ儲カルモノハナイ、大變ニ利益ノア
ル商賣デアリマスガ故エ、小資本デ無盡ガ
出來ルト云フコトニナッテ居ッタナラバ世
ノ所謂彼此レ屋ガ多ク此株式會社ヲ作ッテ
無盡業ヲ始メル、隨テ會社モ破綻ヲスル
加入者ハ非常ニ損ヲ受ケル、爲ニ貯蓄心モ
衰ヘテ來ルト云フヤウナコトニ依ッテ、無盡
業ノ發達ニ多大ノ支障ヲ來スニ至ルモノデ
アラウト思フノデアリマス、サウ云フヤウ
ナ次第デアリマスガ故ニ、本法案ガ唯組織
ヲ株式會社ニ局限シタト云フダケデアテ、
資本ニ付テハ舊法其儘ヲ踏襲シタト云
フコトハ吾々ハ考ヘテドウシテモ其
理由ガ分ラヌノデアリマス、政府委員ノ
說明スル所ニ依レバ無盡ハ認可主義
デアル、信用ノ無イモノニ付テハ認可ヲ
セヌカラ、資本ハ少クテモ信用ノ無イ
者ガ之ヲ經營シテ他人ニ損害ヲ與ヘル
コトハナイト云フヤウナ御考ノ下ニ說明ガ
アリマシタケレドモ、是ハ誤ッテ居ル吾
吾ハ現今ノ社會デハ決シテ認可ト云フコト
ガ適法ニ行ハレルモノトハ思ハヌノデア
ル卽チ現今ハ宣傳ノ世デアル運動ノ世
デアル、又中々地方ニ於テハ黨弊ガ相當ニ
强イノデアル、民政黨ガ盛ナ所デアッテ時
ガ民政黨ノ天下デアレバ、民政黨ノ者ガ組
織シタモノデアレバ隨分危險ナモノデモ之
ニ無盡業ヲ許可スルト云フヤウナ弊少シト
セヌノデアルサウ云フヤウナ次第デアリ
マスガ故ニ、此認可ト云フ所ノ官僚ノ手心
ニ吾々ハ信賴スルト云フコトハ出來ヌト思
フノデアリマス、殊ニ現今ノ實業界ト云フモ
ノハ何處マデモ其經營者ノ資力信用ニ依ツ
テ發達シナケレバナラヌ、官僚ノ手心ニ依。ツ
テ其事業ガ許否ヲ決セラレ、其官僚ノ手心
ニ依ッテ事業ノ盛衰ガキマルト云フヤウナ
コトハ是ハ昔ノ話デアル、現今ノ實業界
ニ於テハサウ云フコトハ許サナイノデア
ルサウ云フ次第デアリマスガ故ニ、官ノ
認可ガアルカラ安全デアルト云フ如キコト
ハ非常ニ官僚其モノヲ賴リ過ギタ官僚万
能ノ弊ニ陷ヲタ議論デアリマシテ、眞ニ實業
界ヲ思フ者トシテハ到底耳ヲ藉スコトノ出
來ヌ議論デアリマス、又無盡業ト云フモノ
ハ大キナ資本ハ要ラヌ、他人ノ無盡ヲヤル
ニ付テ世話ヲスルノダカラ金ハサウ要ラ
ヌソレデアルカラ資本金ハ要ラヌト云フ
說明ヲ聽イタノデアリマスガ、是ハ誤クテ居
ル申スマデモナク、無盡會社ニ於テハ各
加入者ニ對シテ、其加入者ガ當籖又ハ落札
ヲシタ場合ニ於テハ會社ガソレニ對シテ當
籖金、落札金ヲ拂フ義務ヲ持ッテ居ルノデ
アリマス、他ノ加入者ガ拂フト拂ハザルト
ヲ問ハズ、會社ハ拂フ義務ヲ持。ッテ居ル隨
テ此無盡業ト云フモノハ相當ニ多クノ口數
ノ無盡ヲ集メルニアラザレバ利益ハ擧ラヌ
ノデアリマス、又其無盡業ト云フモノハ發
達セヌノデアリマス、多クノ口數ヲ集メマ
スナラバ、會社ノ責任ト云フモノハ益〓
增加スルノデアリマス、而シテ是等ノ口數ニ
對スル所ノ當籤金、落札金ヲ渡スダケノ會
社ニ於テ資產ガアリ信用ガアルニアラザ
レバ到底此無盡ノ完全ナル發達ヲスルコト
ガ出來ヌト云フコトハ論ヲ俟タヌ所デア
リマス現今ノ如ク財界ハ非常ニ不景氣デ
アル、掛金者ガ少ナイト云フヤウナ場合ニ
於キマシテハ一層其必要ヲ吾々ハ感ズル
次第デアリマス、政府ハ銀行ニ付テハ百万
圓以下ノ銀行ハ許サヌト云フコトニ付テ其
法律ヲ勵行致シテ、小銀行ノ合併ヲ强要シテ
居ル、又信託會社モ先程申シタ通リニ其營
業ノ認可ニ付テハ極メテ制限ヲ致シテ相當
大キナ會社ニアラザレバ其營業ヲ許サヌト
云フ今日ニ於テ、獨リ無盡業ニ限。ッテ、資本
ガ少ナクテモ宜イト言ハレル所ノ其理由ト
云フモノハ何處ニアルカト云フコトヲ吾々
ハ疑フ、吾々ハ此庶民金融機關ノ發達ヲ熱
望スルモノデアリマス、決シテ徒ニ資本金
ニ制限ヲ加ヘテ無盡會社其モノヽ設立ヲ防
遏セントスルモノデハアリマセヌ、成ベク
多クノ無盡會社ノ設立ヲ希望スルモノデゴ
ザイマス、而シテソレニ付テハ其地方ノ財
界ノ狀況、竝ニ是マデ設立セラレテ居ル所
ノ無盡會社ノ資產狀態、ソレ等ノモノヲ斟
酌致シマシテ資本金十万圓以上トスルト
云フコトガ最モ適當デアルサウスルコト
ニ依リマシテ其加入者ハ最モ安全ニソレ
ト契約スルコトガ出來、又最モ確實ニ無盡
業ノ發達ガ出來ルモノデアッテ、且ツ加入者
ノ損害ヲ防ギサウシテ、確實ニ無盡ノ遂
行ガ出來ルモノデアルト吾々ハ思フノデア
リマス保險業法ハ今日資本金ガ十万圓デ
ハナイカ、然ラバ無盡モ十万圓ニスル必要
ハナイト云フヤウナ議論ヲナサル御方ガア
ルカモ知レヌガ、今日ノ保險會社ハソンナ
小資本ノモノハ一ツモナイソンナ小サイ
モノデハ保險ニ入リ手ハナイ皆大會社、
資本金何千万圓ト云フ看板ヲ擔ギ出シテ保
險契約ヲ募集シテ居ルノデアリマス、又此
保險業法モ必ズ近ク之ヲ改正シナケレバナ
ラヌ機運ニ向イテ居ルノデアリマス、或ハ
證劵月賦販賣會社之ニ付テ資本ノ制限ガ
ナイヂヤナイカト云フヤウナ議論ガアルカ
モ知レマセヌガ、ソレニ付テ制限ガナイカ
ラ、有價證劵ノ月賦販賣會社ト云フモノハ
殆ド破綻致シテ居ル、皆一圓ヅツ三年掛ケ
レバ百圓ノ公債證書ヲ貰ヘルコトニナッテ
居ルトカ云ッテヤッテ居ルケレドモ皆倒レ
テ有價證劵ヲ貰ッタ人ハナイ、非常ニ之ニ
依ッテ社會ニ損害ヲ與ヘテ居ルノデアル、是
ハ何デアルカト云フト共會社ノ信用狀態
ト云フモノニ付テ、法律ガ嚴重ナル所ノ取
締監督ノ規定ガナイ結果デアルト云フコ
トハ論ヲ俟タヌノデアル斯ウ云フヤウナ
次第デアリマスカラ此無盡會社ノ資本ヲ
十万圓ニスルト云フコトニ、何處ニ反對ス
ル理由ガアル私ハ其理由ガ分ラナイ
體官僚ト云フモノハ一旦自分ノ言ウタコ
トヲ後ニ引クノヲ嫌フ、體面ト云フコトヲ
言ウテ何カ自分ノ言出シタコトヲソレ
ヲヤリ變ヘルト云フコトハ、非常ニ體面ヲ
汚スガ如クニ考ヘル、是ハ官僚トシテ非常
ニ惡イ癖デス斯ウ云フ癖ハ時代遲レデ、
サウ云フモノハ何處マデモ改メナケレバナ
ラヌ(拍手)又是等ノ官僚、其官僚ニ依ッテ立
案サレタモノヲ鵜呑ニシテ居ル、現內閣ノ
命唯是レ從ッテ居ル與黨、ソレ等ノ意氣地ナ
シサ加減ト云フモノハ憫情ニ堪ヘヌ所ガ
アルト吾々ハ思フノデアル此資本金ヲ十
万圓ニスルト云フコトニ付テハ、委員會ニ於
テ民政黨ノ委員諸君ニ於テモ反對ハナイ
現ニ其委員デアル一人ノ御方ハ是ハドウ
シテモ改正シナケレバナラヌ、名前ハ申シ
マスマイ、改正シナケレバ、近ク改正ヲシ
テドウシテモ此資本ヲ充實スルヤウニシ
テ吳レト云フ希望ガアッタ、近クナンテソン
ナシミッタレヲ言ハズニ、此度ノ改正ノ時
ニ何故完全ナル所ノ取締法規ヲ設ケナイ
(拍手)唯與黨トシテ時ノ政府ニ盲從スルト
云フ以外ニ、何モ方法ガナイヂヤナイカ
(拍手)吾々ハサウ云フヤウナ卑怯ナル所ノ
與黨ニ追隨セズニ何處マデモ無盡ノ健全
ナル發達ヲスル爲ニ、此無盡會社ノ資本ヲ
相當ノ額マデ上セテ其無盡會社ノ信用ヲ
確固ニシ其基礎ヲ確固ニ致シマシテ以
テ無盡其モノノ信用助長ヲセシメ、其圓滿
ナル發達ヲ希望スル者デアル、由來現內閣
メガリヲヲタルテルル徒ニ金融資本家ノ利益
、曩ニ提出セラレタル所
ノ抵當證劵法、是等ノ如キモ金融資本家ノ
利益ヲ圖ルコトニ是レ汲々ト致シテ債務
者ノ利益ト云フモノハ毫モ圖ヲテ居ナイ、本
案ノ如キ、內現閣及ビ與黨ニ於テ、我國ノ
中產階級以下ノ人間ノ利益ヲ顧慮スルト云
フ親切心ガアリマシタナラバ無盡會社ノ
資本金ヲ十万圓ニ增加スルト云フコトニ反
對スル理由ハ更ニナイト吾々ハ思フ(拍手)
然ルニ之ニ反對致シテ、ソンナ信用ノナイ
無盡會社デモ宜イト云フガ如キハ是レ卽
チ中產階級以下ノ庶民ノ便宜ヲ圖リ、其利
益ヲ圖ルト云フ所ノ親切心ガナイモノデア
ルト吾々ハ思フノデ吾々
第デアリマスカラ
圓ニ增加シテ、サウシテ信用ノアル確固タ
ル會社ニ無盡業ヲ營マセルト云フコトノ修
正案ニ贊成スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=89
-
090・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 是ヨリ採決ニ入リ
やく、先ヅ板谷順助君外五名提出ノ修正案
ニ付キ採決致シマス此修正案ニ贊成ノ諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=90
-
091・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 少數-仍テ修正
案ハ否決セラレマシタ、次ニ本案ノ委員長
報告ハ可決デアリマス、委員長報告通リ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=91
-
092・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ委員長報告通リ可決致シマシタ
是スチ本案ノ第二讀會ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=92
-
093・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=93
-
094・小山松壽
○翻議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=94
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095・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
せり、仍テ直チニ第三讀會ヲ開キマス
無盡業法改正法律案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=95
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096・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリ
マセヌカラ第二讀會議決ノ通リ可決確定致
シマシタ、自動車交通事業法案ノ第一讀會ノ
續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマス、委
員長古屋慶隆君
自動車交通事業法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一自動車交通事業法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和六年三月十二日
委員長古屋慶隆
衆議院議長藤澤幾之輔殿
希望條項
一現ニ營業中ノ自動車運輸事業アル路
線ニ於テ國カ自動車運輸事業ヲ開始シ
タル爲是等事業者カ其ノ事業ヲ繼續ス
ル能ハサルニ至リタルトキハ政府ハ其
ノ事業者ニ對シ適當ノ措置ヲ講スルコ
ト
二現ニ營業中ノ地方鐵道又ハ軌道ニ竝
行スル自動車運輸事業ニ付テハ原則ト
シテ當該鐵道業者又ハ軌道業者ニ優先
シテ免許ヲ爲スコト
〔古屋慶隆君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=96
-
097・古屋慶隆
○古屋慶隆君 自動車交通事業法案ノ委員
會ニ於ケル審議ノ經過竝ニ結果ヲ極ク簡單
エ御報告致シマス、委員會共通ノ意見ト致
ウマシテハ近時自動車事業ノ發達頗ル著
シキモノガアルノデアリマス殊ニ一般交
通ノ用ニ供スル爲ニ路線ヲ定メマシテ定
期ニ自動車ヲ運行スルガ如キコト又專用
自動車道路ヲ本案ニ依ッテ設定スルガ如キ
コトハ鐵道軌道ト相對シテ交通機關ノ上
ニ重要ナル地位ヲ占ムルニ至ッタノデアリ
マス是ガ爲ニ本案ニ於キマシテハ本事
業ヲ免許事業ト致シマシテ一面特別ニ監
督ヲ加ヘルト同時ニ、他ノ一面ニ於キマシ
テハ自動車事業ニ對スル財團抵當ノ制度
ヲ認メマシテ新タナル試ミヲシタト云フ
コトガ、本事業ノ一大特色デアッテ、交通政
策上一新紀元ヲ劃シタルモノト思フノデア
リマス委員會ノ內容等ニ付キマシテハ
色々ノ方面カラ種々ノ論議ヲ重ネラレ、討
議ヲ致サレタノデアリマスガ、其詳細ノコ
トハ委員會ノ速記錄ニ依ッテ御覽ヲ願ヒタ
イト思ヒマス討議ニ際シマシテハ川島君
カラ修正意見ガ提出致サレマシタガ此修
正意見ハ不幸ニシテ否決致サレマシタ、本
案ノ可否ヲ問ヒマシタ所ガ、多數ニ依ラテ本
案ハ可決ヲ致サレマシタ、最後ニ岡本君カ
ラ希望條項ノ申出ガアリマシテ、是亦多數
ニ依ッテ可決致サレマシタ、右樣ノ次第デア
リマスカラ、本法案ハ速ニ協賛ヲ與ヘラレ
ンコトヲ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=97
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098・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 本案ニ對シテハ川
島正次郞君外六名ヨリ少數意見ガ提出サレ
テ居リマス、此意見ハ修正デアリマスカラ、
第二讀會ニ於テ其報告ヲ許スコトニ致シマ
ス、尙ホ討論ハ便宜上第二讀會ニ於テ爲ス
コトニ致シタイト思ヒマス左樣御諒承ヲ
願ヒマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=98
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099・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=99
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100・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=100
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101・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=101
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102・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
自動車交通事業法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=102
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103・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 此際自動車交通事
業法案ニ對スル少數意見ノ報〓ヲ求メマ
ス-川島正次郞君
少數者意見書
一自動車交通事業法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
昭和六年三月十二日
委員少數意見者
川島正次郞
外六名
〔別紙〕
自動車交通事業法案中左ノ通修正ス
第三十三條ノ二政府又ハ公共團體ニ於
テ公益上ノ必要ニ因リ自動車運輸事業
若クハ自動車道事業ノ全部又ハ一部及
其ノ附屬物件ヲ買收セムトスルトキハ
當該事業者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
公共團體ニ於テ前條ノ規定ニ依ル買收
ヲ爲サムトスルトキハ主務大臣ノ認可
ヲ受クヘシ
公共團體ニ於テ第一項ノ規定ニ依ル買
收ヲ爲シタルトキハ免許ニ因リテ生ス
ル權利義務ヲ承繼ス
第三十三條ノ三地方鐵道法第三十一條
乃至第三十五條ノ規定ハ政府ニ於テ前
條第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲ス場合
ニ之ヲ準用ス
公共團體カ前條第一項ノ規定ニ依ル買
收ヲ爲ス場合ニ於テハ買收價格ハ協定
ニ依ル協議調ハサルトキハ申請ニ因リ
前項ノ規定ニ準シ算出シタル金額ヲ標
準トシテ主務大臣之ヲ裁定ス
第三十三條ノ四公共團體カ第三十三條
ノ二第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲ス場
合ニ於テ公益上ノ必要ニ因リ兼業ニ屬
スル資產及自動車運輸事業ニ必要ナル
貯藏物品ヲ買收セムトスルトキハ當該
事業者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
公共團體カ第三十三條ノ二第一項ノ規
定ニ依ル買收ヲ爲ス場合ニ於テハ當該
事業者ハ兼營ニ屬スル資產及自動車運
輸事業ニ必要ナル貯藏物品ノ買收ヲ求
ムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ買收價格ニ付協議
調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之
ヲ裁定ス
附則ニ左ノ一項ヲ加フ
延長十哩以下ノ自動車運輸事業ニアリ
テハ免許ニ限リ本法ハ之ヲ適用セス
〔川島正次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=103
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104・川島正次郎
○川島正次郞君 私ハ委員長ノ御報告ニ反
對ヲ致シマシテ、少數意見ノ陳述ヲ致シタ
イノデアリマス卽チ吾々ノ提出致シマシ
タル少數意見ノ內容ハ、第一ハ政府又ハ公
共團體ニ於テ公益上ノ必要ニ因リ自動車運
輸事業若クハ自動車道事業ヲ買收セントス
ルトキハ當該事業者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
ト云フ點デアリマスシ第二ハ延長十哩以
下ノ自動車運輸事業ニアリテハ其免許ヲ地
方長官ニ任スト云フ點デアリマス第一ノ
理由ハ公共的事業ノ性質ニ鑑ミテ極メ
テ必要ナル所ノ條項デアルト考ヘルノデア
リマス
第二點ハ、現在ノ行政組織ニ於テ最モ大
ナル弊害ハ中央集權ニ傾キ過ギテ居ルコト
デアリマシテ、此法案ノ改正ニ依ニマシテ、
從來地方廳限リ許可シテ居ッタモノヲ、悉ク
鐵道大臣ノ手ニ收メヤウト云フノデアリマ
ス、田中內閣ノ當時ニ於キマシテ、中央集
權打破、地方分權主義ニ則リマシテ吾々
ハ幾多ノ地方長官委任事項ヲ遂行シタノデ
アリマスソレガ爲メ事務ノ簡捷、民衆ノ
便益多大ナルモノガアッタノデアリマスガ
此法案ハ全ク地方分權主義ニ反シタル法案
デアリマシテ、官僚思想ニ立脚シタル立法ト
考ヘルノデアリマス吾々ハ此點ニ付キマ
シテ只今中上ゲマシタ第二ノ修正ヲ提出
致シタ次第デゴザイマス(拍手)詳細ハ討論
ニ讓リマシテ、簡單ナガラ以上說明スル次
第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=104
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105・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 少數意見ニ成規ノ
贊成アリト認メマス仍テ少數意見ハ修正
案トシテ成立致シマシタ、是ヨリ討論ニ入
リマス、通〓順ニ依リ發言ヲ許シマス-
川口義久君
〔川口義久君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=105
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106・川口義久
○川口義久君 私ハ委員長ノ報告ニ反對
シ、川島君ニ依ッテ述ベラレタル修正案ニ贊
成ノ意見ヲ述ブル者デアリマス、私ノ述べ
マスル順序ハ委員長報告ノ政府ノ原案竝
ニ民政黨ノ委員諸君ニ依ッテ附セラレタル
希望條項ニ對シテ批判ヲ下シ、次ニ吾々同
僚ニ依シテ主張サルヽ修正案ノ理由ヲ述ベ
ヤウト想フノデアリマス
先ヅ第一ニ政府ノ原案ニ對スル政治思想
土ノ批判ヨリ簡單ニ致シテ見タイト思フ
政府ノ提案ハ只今川島君ヨリ述ベタ如ク
中央集權ニ一貫シテ居ルノデアリマス今
マテ地方ノ長官ガ與ヘテ居ノタ免許或ハ認
可許可ノ條項ヲ悉ク主務大臣クル鐵道
大亜ニ集中セントスルモノデアリマス斯
人如キ中央集雛ニ依ル立法ハ正シク時代
錯誤ノ精神テアルト私共ハ信ジテ居ル(拍
手)官僚ノ好ンデ爲ス所ノ立法ノ形體ダト
私共ハ信ジデ居ル(「ノー〓〓」「ヒヤ〓〓と
此案ノ如キハ自動車交通事業ノ統制ト云フ
美名ノ下ニ極端ナル中央集權ヲ行ッテ、官
僚政治ヲ行ハウトスル葉デアルノデアル
經濟ニ於キマシテハ產業ノ統制、是ハ申ス
マデモナク能率ヲ增進シ結構ナコトデア
リマス併シ政治ニ於テハ中央ニ集權ス
ルト云フコトハ明カニ近代ノ政治思想ニ
反スルコトデアルト私共ハ信ジテ居ル(拍
手)事務簡捷ノ上カラ見テモ、吾々政友會ハ
多年中央集權ノ打破、地方分權ノ確立ヲ天
下ニ唱ヘテ居タ、、此主義ヨリ本案ヲ見マス
ル時ニハ明カニ吾々ノ主張ニ相反スル立
法ノ形體ヲ持ッテ居ルノデアル、此意味ニ於
テ私共ハ此案ヲ鵜呑ニスル譯ニハ參ラナ
イ、今日ニ於テハ申スマデモナク〓育ノ普
及、文化ノ發展、交通機關ノ完備、之ニ依ツ
テ嘗テ行ハレタ官僚政治ガ、常ニ牙城トシ
テ居ル中央集權ニ依ル必要ハナイノデアリ
マス成ベクハ地方ニ分權シテ、多數民衆
ノ便益ヲ圖ルト云フコトハ政治家トシテ
當然心掛ケナケレバナラヌ所ノモノデアル
ト私共ハ信ジテ居ル(拍手)現内閣ハ野ニ
在タ當時、民本政治ヲ高調サレタ或ハ議
會中心政治ヲ主張セラレタ、併シ其實體ハ
官僚内閣デアルト云フコトハ、天下ノ人ガ皆
認メテ居ル所デアリマス(拍手)成程現内閣
ノ如キ政府ニ於テ斯ウ云フ官僚萬能ノ中
央集權ノ法律ガ起案サレルト云フコトハ
私ハヤハリ理ノ當然デアルトハ信ジテ居
ル又現內閣ノ閣僚諸公ノ中デモ天下ニ定
評アル-御名前ヲ申上ゲテハ失禮デアリ
マスケレドモ、官〓ノ標本デアルト云フ風
ニ認メラレテ居ル江木鐵道大臣ノ下ニ於
テ斯ウ云フ官僚萬能ノ政治ノ行ハレルヤ
ウナ立法ノ試ミラレルト云フコトモ是亦
當然ノコトヽ私共ハ思ッテ居ル(拍手)私設
鐵道ニ對スル政府與黨諸君ノ附帶サレタ所
ノモノハ地方鐵道中ノ-現ニ營業中ノ
地方鐵道又ハ軌道ニ竝行スル自動車運輸事
業ニ付テハ原則トシテ當該鐵道業者又ハ
軌道業者ニ優先シテ免許ヲ與ヘテ吳レト云
フ御希望ナノデアル、斯ウ云フコトヲ認メ
ルト云フコトハ江木鐵道大臣ハ此委員
會ニ於テ斯ウ云フコトヲ述ベテ居ル我黨
ノ委員ノ質問ニ對シテ鐵相ハ斯ウ答ヘラ
レテ居ル「原則トシテハ認メタイト思ヒマ
スガ、必ズシモサウデハアリマセヌ、現ニ他
ニ許シテ居ル場合モアルノデアル」成程原
則トシテ江木鐵道大臣ハ認メタイト思フケ
レドモ其通リニハ參ラヌダカラ與黨ノ
諸君ハ希望トシテ斯ウ云フコトヲ述ベテ居
ラレル諸君、之ヲ强ヒテ主張セントスル
ナラバ何故此法案ノ中ニ入レナイカ又
其初メノ現ニ營業中ノ自動車運輸業云々ニ
對スル條項ニ付テモ、若シ眞ニ之ヲ希望ス
ルナラバナゼ與黨二百七十名ノ多數ヲ以
テ之ヲ法律ノ中ニ入レルコトヲ御考ニナラ
ナカッタカ、斯ノ如キハ私共カラ見レバ甚ダ
遺憾ノ點デアルノデアリマス
先ヅ希望條項ノ中ノ第一ヲ翻ッテ批判シ
テ見マスレバ私共ノ修正案ノ理由モ能ク
(34.5)主張モ明カニナルト信ズル
現ニ營業中ノ自動車運輸事業ア
ヲ田一郎、國ガ自動車運輸事業ヲ開始
シタ爲ニ云々-國ガ斯ウ云ック事業ヲ開
始スル場合ヲ御想像ニナルナラバ同ジ公
共團體ニ於テモサウ云フ場合ヲ想像シ得ル
ノデアリマス、ソレナラバ斯ウ云フヤウナ
希望條項ヲ附スルヨリモ、更ニ進ンデ私共
ガ今主張シテ居ル所ノ修正案ニ依ッテ以テ
完全ニ其主張ヲ遂ゲルコトガ出來ルノデア
リマス
又第二ニ於テ原則トシテ斯ウ云フコトヲ
認メルト云フコトヲ申サレルケレドモ、斯
ウ云フヤウナコトハ要スルニ既ニ權利ヲ得
テ居ル人々タル資本家ノ利益ヲ擁護スルノ
ニ過ギナイノデアッテ、私共カラ見レバ斯
ウ云フモノハ希望ナサラヌノガ宜イト思フ、
此優先權ヲ認メルコトハ今日ノ交通機關
ニ於キマシテハ申スマデモナク、自動車ノ
運輸事業ハ今マデノ軌道又ハ不完全ナル私
設鐵道ニ依ルヨリモ交通機關トシテ最モ
進步シタル優等ナモノデアルカラデアリマ
ス斯ウ云フヤウナコトハ劣等ナル機關ヲ
寧ロ擁護スル或ハ只今中上ゲタヤウナ資
本家階級ヲ擁護スルコトニナルノデアリマ
ス申スマデモナク諸君モ御承知ノ通リ
既設ノ鐵道或ハ軌道ガアッテ、ソレニ竝行シ
タ線路ヲ原則トシテ之ニ優先的ニ認メル
コトニナレバ、權利ハ得テ居ルケレドモ、敷
設シナイヤウナ事情ガ多々アルノデアル、
或ハ又權利ヲ得テ実際ニ運輸事業ヲ行フト
シテモ、其事業ヲ行フガ目的ニアラズシテ、
既ニ資本ヲ投ジテ居ル軌道ガ目的デアルカ
ラ、其軌道ノ運輸ノ機能ニ依ッテ収益ヲ得
ル為ニ、ニ新タニ得タ所ノ此自動車ニ依ル運
業ニハ力ヲ入レナイカラ一般公衆ハ
多大ノ不便ヲ感ズル例ハ天下ニ多々アルノ
デアリマス、故ニ斯ノ如キコトヲ原則トシ
テ認メルコトハ、私共ハ許スベカラザルコ
トデアルト信ジテ居ル
政府ノ今回議會ニ提出サレタル法案ハ極
メテ少イノデアリマス、在野當時企テタ所
ノ諸般ノ重要政策ハ皆政権ヲ維持スル為ニ
撤囘シタリ、或ハ時期ヲ遲ラシテ提出シ
テ、今重要ノ法案ハ諸君ノ申サレル「パン
ク」ノ状態ニナッテ居ルノデアル、唯種ニ此
自動車法案ガ比較的順調ニ進ンデ此處マデ
來タノデアル、私ハ斯ウ思フ、此內閣モサ
ウ永クハアルマイ、セメテ此內閣ノ壽命ノ
アル中ニ、折角此政府ガ重要法案トシテ提
出サレタル自動車ノ法案ダケハ通シテヤリ
タイト考ヘテ居ルノデアル併シソレニハ
モット完全ニスル必要ガアルカラ、私共只今
申シタヤウナ理由ニ依ッテ修正案ヲ提出シ
タ次第デアリマス
鐵道大臣ガ御見エニナッテ居リマスカラ、
他ノ事ニ付テ少シ御尋ヲ致シタイ、過日豫
算ノ第六分科會ニ於テ同僚倉元君カラ、本年
ノ一月二十日ニ行ハレタル福岡縣ノ直方市
ノ市會議員選擧ニ於テ、鐵道當局ガ選擧干
涉ヲ行タ點ニ付テノ質問ヲ爲シタル時ニ、
鐵道大臣ハ取調ノ上ニ今期議會中ニ必ズ答
辯スルト云フコトヲ申サレテ居ルノデアリ
マス倉元君ハ只今マデ鐵道大臣カラサウ
云ッタヤウナ答辯ヲ聽ク機會ガナカッタノデ
アリマスガ、幸ニ私ガ此ニ立チマシタカラ
此ニ對シテ御辯ヲ願ヒタイ、尤モ此點
二付テノサ チフ〓涉ナドノ事實ハナ
イト仰シヤルカモ知レマセヌガ倉元君ハ
市會議員ノノ事情ハ能クニナツ
テ居ルノデアリマスカラ臣ハ御座
ナリ的ナ御答辯ヲナサラナイデ正直ニ明
確ニ此點ニ對シテ御答辯下サルナラバ幸ヒ
デアルト存ズルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=106
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107・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 討論ハ終局致シマ
タ是ヨリ採決ニ入リマス先ヅ川島正
シマス、
メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=107
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108・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 少數、-仍テ修
正案ハ否決セラレマシタ次ニ本案ノ委員
長報告ハ可決デアリマス委員長報告ニ贊
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=108
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109・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 多數、是〓 99.1林秀雄版
報告ノ通リ可決致シマシタ
第二讀會ヲ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=109
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110・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=110
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111・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=111
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112・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ直チニ第三讀會ヲ開キマス
自動車交通事業法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=112
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113・小山松壽
○副議長 (小山松壽君)別ニ御發議モアリ
マゼ大阪 3第一會會議決ノ通リ可決確定
致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=113
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114・作田高太郎
○作田高太郞君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本
日ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=114
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115・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=115
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116・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次囘ノ
日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後七時八分散會
衆議院議事速記錄第二十五號中正誤
頁段行誤正
六六七三元外七名ヨリ外九名ヨリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02619310312&spkNum=116
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