1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月二十四日(火曜日)
午後一時二十分開議
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議事日程 第三十二號
昭和六年三月二十四日
午後一時開議
質 問
一 地方行政の監督に關する質問(菅原傳君外三名提出)
二 綱紀肅正に關する質問(木村清治君提出)
三 小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問(加藤知正君提出)
四 國際軍縮會議に關する質問(田川大吉郎君提出)
五 東京市交通機關の整理統一に關する再質問(田川大吉郎君提出)
六 雪國地帶の鐵道速成に關する質問(八田宗吉君提出)
七 區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問(遠藤千元君提出)
八 航空に關する再質問(永田良吉君提出)
九 航空公債發行に關する質問(永田良吉君外一名提出)
十 軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問(三浦虎雄君提出)
十一 法令の解釋統一に關する質問(森田茂君外四名提出)
十二 足尾銅山鑛煙毒に關する再質問(栗原彦三郎君提出)
十三 刑事事件檢擧に關する質問(工藤鐵男君提出)
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第一 地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出、貴族院囘付)
第二 寄生蟲病豫防法案(政府提出、貴族院囘付)
第三 町村有建物火災保險相互組合法案(三田村甚三郎君外十名提出) 第一讀會
第四 議院法中改正法律案(松本忠雄君外十二名提出) 第一讀會
第五 農會法中改正法律案(八田宗吉君外六名提出) 第一讀會
第六 明治神宮競技に關する建議案(信太儀右衞門君外一名提出)
第七 富山縣立商船學校移管に關する建議案(山田毅一君提出)
第八 福野農學校を高等農林學校に昇格に關する建議案(山田毅一君提出)
第九 國民精神作興に關する建議案(北原阿智之助君外二名提出)
第十 球磨川改修に關する建議案(深水清君外二名提出)
第十一 渡良瀬川上流河川改良促進に關する建議案(栗原彦三郎君提出)
第十二 鬼怒川堰堤に關する建議案(齋藤太兵衞君外一名提出)
第十三 五十鈴川上流清淨に關する建議案(池田敬八君外七名提出)
第十四 日向川改修に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第十五 小名濱港修築竝平小名濱間鐵道速成に關する建議案(木村清治君提出)
第十六 北海道廳警察專用電話擴張に關する建議案(小池仁郎君外一名提出)
第十七 警察費國庫補給金増額に關する建議案(小池仁郎君外三名提出)
第十八 有珠岳洞爺湖登別羊蹄山定山溪及支笏湖を抱擁する國立公園設定に關する建議案(手代木隆吉君外二名提出)
第十九 國立公園指定に關する建議案(小池仁郎君外二名提出)
第二十 磐梯山猪苗代湖を中心とする國立公園設定に關する建議案(八田宗吉君提出)
第二十一 伏木港修築速成に關する建議案(山田毅一君外一名提出)
第二十二 北海道舊土人保護に關する建議案(手代木隆吉君提出)
第二十三 結核患者收容力増加に關する建議案(大里廣次郎君外一名提出)
第二十四 全國町村吏員互助組合に關する建議案(松田喜三郎君外十名提出)
第二十五 差別言動取締に關する建議案(村岡吾一君外二名提出)
第二十六 七尾氷見間鐵道敷設に關する建議案(戸部良祐君外一名提出)
第二十七 二俣佐久間間鐵道速成に關する建議案(永田善三郎君外一名提出)
第二十八 新湊呉羽間鐵道速成に關する建議案(山田毅一君提出)
第二十九 氷見羽咋間鐵道速成に關する建議案(山田毅一君外一名提出)
第三十 城端美濃太田間鐵道敷設に關する建議案(山田毅一君提出)
第三十一 高岡市に鐵道局設置に關する建議案(山田毅一君提出)
第三十二 上山田後藤寺間鐵道敷設に關する建議案(大里廣次郎君提出)
第三十三 二瀬長尾間鐵道敷設に關する建議案(大里廣次郎君提出)
第三十四 大牟田驛三池港間臨港線速成に關する建議案(木村義雄君外一名提出)
第三十五 伊達紋鼈札幌間鐵道速成に關する建議案(手代木隆吉君提出)
第三十六 尻内大館間鐵道敷設に關する建議案(山内亮君外二名提出)
第三十七 江尻驛に急行列車停車に關する建議案(深澤豐太郎君提出)
第三十八 寒河江富澤間鐵道敷設に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第三十九 川崎神町間鐵道敷設速成に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第四十 羽越本線温海驛に急行列車停車に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第四十一 羽越本線鳥海驛新設に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第四十二 常磐炭運賃輕減に關する建議案(木村清治君提出)
第四十三 湖南鐵道敷設に關する建議案(八田宗吉君提出)
第四十四 野岩羽鐵道速成に關する建議案(八田宗吉君提出)
第四十五 柳津小出間及只見古町間鐵道速成に關する建議案(八田宗吉君提出)
第四十六 織物消費税法中麻織物に對する免税に關する建議案(戸部良祐君外一名提出)
第四十七 鹿兒島縣に國立煙草試驗場設置に關する建議案(春島東四郎君外二名提出)
第四十八 協力高に對する公債證書給與法制定に關する建議案(寺田市正君外七名提出)
第四十九 戰時の財界混亂竝不當利得防止に關する建議案(服部教一君外三名提出)
第五十 産金政策樹立に關する建議案(木下成太郎君外二名提出)
第五十一 柑橘北米輸出に關する建議案(山道襄一君外十名提出)
第五十二 織物輸出奬勵の爲海外事情調査視察に關する建議案(多木久米次郎君提出)
第五十三 日本萬國博覽會開催に關する建議案(植原悦二郎君提出)
第五十四 貴衆兩院議長副議長及議員優遇に關する建議案(一松定吉君外二十一名提出)
第五十五 恩給法改正に關する建議案(松本忠雄君外十五名提出)
第五十六 原蠶種國營に關する建議案(植原悦二郎君外一名提出)
第五十七 原蠶種國營に關する建議案(百瀬渡君外五名提出)
第五十八 新湊漁港修築に關する建議案(山田毅一君提出)
第五十九 氷見漁港第二期工事速成に關する建議案(山田毅一君提出)
第六十 鰺ケ澤漁港修築に關する建議案(山内亮君外二名提出)
第六十一 米麥混砂搗精禁止に關する建議案(小池仁郎君外四名提出)
第六十二 鬼怒川水利に關する建議案(齋藤太兵衞君外一名提出)
第六十三 國立園藝試驗場設置に關する建議案(菊池良一君外二名提出)
第六十四 無線電信の裝置に關する建議案(小池仁郎君提出)
第六十五 那覇港鹿兒島港間竝那覇港大阪港間命令航路開始に關する建議案(崎山嗣朝君提出)
第六十六 八戸港鮫角に燈臺建設に關する建議案(山内亮君外二名提出)
第六十七 室蘭區裁判所に地方裁判所支部設置に關する建議案(手代木隆吉君提出)
第六十八 大牟田市に區裁判所設置に關する建議案(木村義雄君外一名提出)
第六十九 沖繩縣石垣町竝名護町に區裁判所設置に關する建議案(崎山嗣朝君提出)
第七十 帶廣區裁判所に地方裁判所支部設置に關する建議案(小池仁郎君提出)
第七十一 尼港事件殉難者遺族及被害者の損害賠償に關する建議案(平山岩彦君外六名提出)
第七十二 海外發展に關する建議案(服部教一君外三名提出)
第七十三 軍馬補充部高鍋支部開放に關する建議案(佐藤重遠君提出)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
東北本線川口町驛蕨驛間に電車停車驛設置に關する建議案
提出者
定塚門次郎君 野中徹也君
宇和島港第二種重要港灣指定に關する建議案
提出者
村松恒一郎君 本多眞喜雄君
治水計畫に關する建議案
提出者
八並武治君 岡崎久次郎君
永田善三郎君 堀内良平君
學術研究の振興に關する建議案
提出者
森田茂君 頼母木桂吉君
原脩次郎君 櫻内辰郎君
富田幸次郎君 山道襄一君
小矢部川改修に關する建議案
提出者
山田毅一君 定塚門次郎君
學術研究の振興に關する建議案
提出者
望月圭介君 東武君
鳩山一郎君 加藤久米四郎君
山口義一君 山崎達之輔君
(以上三月二十三日提出)
徴兵優遇に關する建議案
提出者
多木久米次郎君 土井權大君
決議案(議院建築速成の件)
提出者
森田茂君 望月圭介君
決議案(議院圖書館及事務室等建築速成の件)
提出者
森田茂君 望月圭介君
決議案(議院附屬新聞通信記者事務所完成の件)
提出者
森田茂君 望月圭介君
(以上三月二十四日提出)
一昨二十三日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
抵當證劵法案
不動産登記法中改正法律案
民事訴訟法中改正法律案
競賣法中改正法律案
民事訴訟用印紙法中改正法律案
日本勸業銀行法中改正法律案
農工銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中改正法律案
國税徴收法中改正法律案
貯蓄銀行法中改正法律案
輸出生絲檢査法中改正法律案
蠶絲業組合法案
蠶絲業法中改正法律案
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
南滿洲鐵道株式會社政府配當金見積に關する質問主意書
提出者 武藤山治君
(以上三月二十三日提出)
官權濫用に關する再質問主意書
提出者 多木久米次郎君
宮崎縣會の意見書議決取消に關する質問主意書
提出者 佐藤重遠君
(以上三月二十四日提出)
一政府より受領したる答辯書左の如し
衆議院議員菅原傳君提出地方行政の監督に關する質問に對する答辯書
衆議院議員木村清治君提出綱紀肅正に關する質問に對する答辯書
衆議院議員加藤知正君提出小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問に對する答辯書
衆議院議員田川大吉郎君提出國際軍縮會議に關する質問に對する答辯書
衆議院議員田川大吉郎君提出東京市交通機關の整理統一に關する再質問に對する答辯書
衆議院議員八田宗吉君提出雪國地帶の鐵道速成に關する質問に對する答辯書
衆議院議員遠藤千元君提出區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問に對する答辯書
衆議院議員永田良吉君提出航空に關する再質問に對する答辯書
衆議院議員永田良吉君提出航空公債發行に關する質問に對する答辯書
衆議院議員三浦虎雄君提出軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問に對する答辯書
衆議院議員森田茂君外四名提出法令の解釋統一に關する質問に對する答辯書
衆議院議員栗原彦三郎君提出足尾銅山鑛煙毒に關する再質問に對する答辯書
衆議院議員工藤鐵男君提出刑事事件檢擧に關する質問に對する答辯書
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(以上三月二十四日受領)
地方行政の監督に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年二月二十六日
提出者 菅原傳
外三名
地方行政の監督に關する質問主意書
第一 濱口内閣は非募債主義を嚴守し失業、災害防止及防疫施設の爲のみ起債を認可し其の他は之を認可せすとの方針の下に其の趣旨を府縣に通牒し置きなから此等の條件の孰れにも該當せさる宮城送電買收起債申請を昭和五年十二月二十七日に至り急遽認可したる事由如何
第二 宮城送電買收の起債は昭和四年三月十三日主務省に之か申請を爲したるものなり其の後經濟界に異常の變動を生したるに拘らす荏苒其の認可を保留し昭和五年年末迄未解決の儘に放置したる理由如何
第三 宮城送電買收の爲の起債を宮城縣會は昭和三年十二月二十日議決し昭和四年三月十二日主務省に認可申請を爲したるものにして其の後昭和四年及昭和五年の二箇年に亙り貨幤價値は昂騰し物價は激落し經濟界に於ける異常の激變ありしは周知の事實なるを以て主務省は此の事實に鑑み適當の起債額を減少する措置を講せしむへきに拘らす只僅に十三萬餘圓の更正を爲して之を認可したるは監督上頗る不忠實なりと思惟せらるるか如何
第四 「買收價格算定の基本單價は稍高きに失すと認む」とある中の基本單價は現在の電氣事業界に於ける状勢より判斷すへきものと思惟するか如何
「假契約書第九條の適用に付ては現今經濟界の状勢と縣電氣事業將來の收支状況とに鑑み愼重考慮の上成るへく起債額の減少を圖らるる樣」とある中の起債額の減少とは認可起債額より更に適正に減額せよとの意味なりと解すへきものと認むるか如何
「追而償還年次表更正議決の上報告相成度」の議決とは縣會の議決を要するの義なりと信するか如何
第五 左記各項に關する宮城縣知事の處置は頗る當を失するものと認む政府は監督上適當なる措置を講するの意思なきや
一 宮城送電買收に關し昭和三年十二月二十日電氣事業財産買受の件、昭和四年度電氣事業費歳入歳出追加更正豫算、電氣事業繼續年期及支出方法、電氣事業起債及償還方法の四議案を可決し其の起債及事業の認可許可の申請を爲したるも昭和四年度決算に於て「買收を了せさるに付不用額として控除す」との説明書を附して當該豫算を削除し全然之を昭和五年度豫算に計上せさりき然るに昭和五年十二月二十七日急遽主務省に於て起債認可ありたるを奇貨とし既定議決額に五分の更正を加へ執行權の範圍に屬すと稱して一度不用額として決算したる豫算を實行せむとし敢て縣會に付議せさる點
二 昭和五年十二月二十七日起債の認可ありたる以來同六年二月十三日迄何等適法の措置を講せす縣會議員より本件に關し縣會招集の要求ありたるに際し突如として急施案件なりとの名目の下に縣參事會に付議強行したる點
三 昭和六年二月十三日急施案件として宮城送電買收追加更正豫算を縣參事會に付議する以前同年二月三日縣會議員有志か府縣制第五十一條第二項但書に依り急施臨時縣會を招集され度き旨適法に要求し居るに拘らす意見の相違なりとして縣會招集に應せさる點
四 宮城送電買收問題は縣下に於て囂然たる輿論の沸騰を見つつあり本件は縣民の負擔に重大なる關係を有するものなるか故に出來得る丈け縣民の意思を尊重し公正に決定するを適當なりと認む然るに知事は言を左右に託して縣會の招集を肯せす縣民多數の利益に關する緊急重要なる問題に對し縣會の意見を聽取せす寧ろ之を排除せむとしつつある點
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員菅原傳君外三名提出地方行政の監督に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員菅原傳君外三名提出地方行政の監督に關する質問に對する答辯書
第一 政府は宮城縣電氣事業統一の方針を徹底し且縣電氣事業經營上の安定を期する爲め縣に於て宮城送電興業株式會社を買收することは緊急已むを得ざるものと認めたるに依る
第二 本件會社買收に關する起債申請は昭和四年三月十五日之を受理したるも審査を要する事項甚だ多數なる爲め政府は知事との間に屡照復を重ね愼重調査の結果昭和五年十二月二十七日に至り許可の指令を發するに至りたるものにして荏苒其の許可を保留し置きたるに非ず
第三 本會社買收に關する起債申請後經濟界に相當の變化ありたるは事實なるも會社買收價格決定の基礎たるべき電力料金の如きは必ずしも一般物價の下落に隨伴して低落するものに非ざるを以て政府は本件買收價格を縣と宮城送電會社との現實買電契約料金を基準として買收價格を算定するを妥當なるものと認め此の計算に依り起債額を減額更正許可したり
第四 買收價格算定の基本單價は現在の電氣事業界に於ける情勢より判斷し前項の如く現實の契約料金を基準とするを最も妥當なるものと認め從て縣申請額は稍稍高きに失するものと思考せり而して通牒文中に「成るべく起債額を減少云々」とあるは縣が買收の執行に當りては更に契約條項に基き會社と協定の上起債許可額より適當なる額を減少せしむるの意にして又「追而償還年次表更正議決の上云々」の「議決」とは府縣制上の相當なる議決機關の議決の義なり
第五 縣は昭和四年度に於ける當該買收費豫算を削除したる事實なく唯其の豫算は起債竝繼續費の許可なかりし爲め自然執行不能に了りたるに過ぎず從て「其の許可後更に之を設定するを適當と認め」昭和四年度決算に於ては「不用額を生したるは宮城送電興業株式會社買收を了せさる等に由る」と附記せり而して昭和五年十二月二十七日之が起債竝繼續費の許可ありたるを以て縣は昭和六年二月十三日縣參事會の議決を經て昭和五年度豫算に追加計上したるものなり又宮城送電興業株式會社の買收に付ては愼重調査を遂け本年二月漸く適當なる成案を得たる處本件は既に昭和三年通常縣會に於て愼重審議の上決定を見たる事件なるのみならず本件買收事務は年度内に於て急速完了するの要あるを以て縣會を招集することなく直に縣參事會に附議し其の議決を見るに至りしものなり尚本件買收に關する意見書の呈出に關しては二月二十三日議員より適法の請求書を提出せしを以て即日三月九日臨時縣會を招集する旨告示せるものなり以上本件に關する宮城縣知事の措置に付ては別に失當の點あるを認めず
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
内務大臣 安達謙藏
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綱紀肅正に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月六日
提出者 木村清治
綱紀肅正に關する質問主意書
福島縣知事か村長選擧に干渉壓迫を加へたる事實
福島縣石城郡大野村長の任期は昭和五年十二月十七日にて滿期と爲るへきものなるを以て當時の村長は十二月二日、三日の兩日村會を招集せしか選擧を執行するに至らすして散會せり之より先十一月三十日木田剛(後任村長に當選せし中野幸平の近親)は民政系村會議員及中立と認むへき議員を自宅に所謂鑵詰と爲し爾後十二月二十八日に至る迄殆と一箇月間時に或は各所に連行鑵詰と爲し此の間常に暴力團を以て包圍し全く議員の自由を束縛せり而して村長任期滿了後の十二月二十三日に開きたる村會は助役の招集したるものなるか此の招集は全然助役の意思に依り招集せられたるものに非すして木田剛及民政黨石城部會幹事長萩原某の兩人出縣の上知事と密謀して十二月二十日福島市より助役の名を藉りて村會招集の電報を發したるものなり右は同日午後十一時三十分著の電報に依り明瞭なりとす加ふるに被鑵詰議員に發せし招集は全部之を居住地に發せす木田剛方に發し被鑵詰議員亦同所に於て之を受領せるは實に奇怪なり然るに此の十二月二十三日も亦村長選擧を爲すに至らすして村會散會するや木田剛及縣會議員若松某は助役に辭職を強要し目的を達するや急遽出縣臨時代理村長の選任を知事に圖り知事をして之を實行せしめたるは翌二十四日午後八時頃同役場に到著したる電報に依り明瞭なる事實とす其の電報左の如し
きだたけし(四)りんぢだいりそんちように五せんす(二)
斯の如くにして木田剛は十二月二十五日直に代理村長に就任し十二月二十八日村會を招集し被鑵詰議員全部を自動車にて自宅より議場に出席せしめたり此の間暴力團をして包圍し自由を束縛せること鑵詰當時と異ならす當日村會開會するや縣會議員若松某の子分と定評ある數名の無頼漢を入場せしめ議員か發言するやぐづぐづ謂ふと小松幹夫(此の者は隣郡の者なりしか數日前刺殺されたり)の二の舞なり抔暴言を以て脅迫し議員の言動自由をも阻止し遂に木田剛は近親中野幸平をして村長に當選せしめたるなり
以上の事實の中心人物は木田剛なること一點疑ふの餘地なし然るに知事は殊更に渦中の中心人物をして臨時代理村長に選任したるは計畫的のものなること亦疑ふの餘地なきものとす殊に議場に無頼漢を入場せしめて議員の自由意思を奪ふか如きは計畫的策謀と見るを當然とすべく下級自治團體の自由を全く蹂躪したる不當不法の行爲なりとす國務大臣の一言一行以て天下の儀表たらさるへからすと共に地方長官の一擧一動亦縣民の儀表たらさるへからす然るに右の事實は妄に下級自治體に干渉壓迫を加へたる非違の行爲と認む之に對する政府の所見如何
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員木村清治君提出綱紀肅正に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員木村清治君提出綱紀肅正に關する質問に對する答辯書
福島縣石城郡大野村長選擧に關し質問書に謂へるが如き干渉壓迫を加へたる事實あるを認めず
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
内務大臣 安達謙藏
小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月七日
提出者 加藤知正
小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問主意書
昨年以來深刻なる財政不況の結果市町村の財政は著しく窮乏に陷り夫れが爲に市町村立小學校教員俸給の不拂又は支拂延期を爲すもの續出し文部省の調査に依るも既に八百六箇町村(昭和五年十二月現在二百十一箇町村)の多數に及んで居る殊に甚しきは寄附強要(教員俸給の一割乃至二割五分)の目的を以て支拂延期を爲しつつあるものが五府縣百七十餘箇町村に達して居るとのことである萬一斯の如き事態の繼續を見るに於ては國民教育上憂慮すべき影響を生ずる虞あるは勿論市町村義務教育費國庫負擔法制定の根本目的を破壞する由由しき文政上の大問題である
元來俸給は生活保證である而して之が不拂の際と雖民事訴訟、行政訴訟又は訴願に依つて之が救正を圖る途が拓けて居ない然るに今や全國一萬數千人の小學校教員は俸給の不拂又は支拂延期の爲に極度に生活の脅威を受けつつあるが之は謂ふ迄もなく社會問題として亦人道問題として等閑に付せらるべき問題ではない況んや俸給支拂延期の手段に依つて何等義務なき寄附行爲を強要するものさへありと聞た斯の如きは明に刑法第二十五章第百九十三條の涜職の罪に該當するに於てをや實に是れ刑法上の問題と謂はねばならぬ思ふに市町村義務教育費國庫負擔法は大正七年寺内内閣の時に始めて制定せられたのであるが當時此の法律の制定せられた趣旨は大正七年四月八日の文部省訓令に明に記されて居る即ち「我か小學教育施設の綱領は教育に關する 勅語の 聖旨を奉體して益益力を國民道徳の振興に致し牢乎拔くへからさる國家的精神を養ひ又克く時勢の進歩に順應して内は國運の發達に貢獻し外は國際競爭場裡に立ちて帝國の使命を完うするに足るへき國民を作るに在り小學校教員たるもの須く其の職責の重大なるを自覺し常に徳操の向上と學力の進歩とに努め拮据勵精其の天職を盡さんことを期せさるへからす」と掲げてあるが如く國民教育の重大なるに鑑みて一般小學校教員の待遇改善を圖ると共に將來益々其の振興を促し以て國家の根柢を鞏固にして國運を伸展せしめんが爲に制定せられたるものであることは明である而して市町村義務教育費國庫負擔法の制定せられたる當時は僅に一千萬圓に過ぎざりしが今日に於ては八千五百萬圓の巨額に上り町村平均六千圓市町村平均七千圓の交付金を受くるに至つた殊に特別町村の中には教員俸給費の九割八分に該當する交付金を受くるもの三十六箇町村に達して居る而して市町村平均五割以上に上つて居る從って市町村義務教育費國庫負擔金の交付方法を直接交付するか又は之を特別會計に改むれば尠くとも小學校教員の最低生活を脅威するが如きことはない然るに市町村をして交付金を他の費目に濫用せしめ以て教員俸給の支拂延期を敢てせしめつつあるは明に地方財政監督怠慢の責あるは勿論是れ畢竟交付方法に大なる缺陷を有するが爲である
我が國は今や思想國難に直面して居る殊に憂慮に堪えざるは最近我が國學生の思想惡化である而して更に恐るべきは小學校教員の思想惡化でなければならぬ萬一今日の如き俸給不拂の状態を繼續するに於ては誰人と雖小學校教員の思想惡化せずと斷言し得ないであらう政府は曩に官吏減俸案を提出し輿論の反對に周章狼狽して之を撤囘せるに拘らず獨り薄給なる小學校教員の減俸のみを默認しつつあるかの如き疑を抱かしむるは甚だ奇怪至極である何れにせよ教員俸給不拂又は支拂延期の國民教育に及ぼす影響は或は之が爲に國民教育の基礎を根柢より覆す恐れなしと斷じ得ない以上の趣意に依り左の條項を文部大臣に質問せんと欲するものである
一 小學校教員俸給不拂の市町村に國庫負擔金の交付を中止する意思なきや
二 小學校義務教育費國庫負擔法に依る交付金を他の市町村費に濫用し教員俸給の不拂又は支拂延期を爲しつつある市町村に對し如何なる處置を講じつつあるや
三 俸給不拂又は支拂延期に依る小學校教員の思想惡化に對する對策を問ふ
四 小學校義務教育費國庫負擔金の交付方法を市町村豫算を通さず國庫より直接に交付するか然らざれば之を特別會計とするの意思なきや
五 俸給不拂の手段に依って義務なき寄附行爲を強要するものありとすれば明に職權濫用の罪(刑法第二十五章第百九十二條涜職の罪)に該當す文部當局は斯る不法行爲ある場合は之に對し如何なる處置を執らんとするや
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員加藤知正君提出小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員加藤知正君提出小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問に對する答辯書
近時町村中往々にして小學校教員に對し俸給の不拂若は支拂延期を爲し又或は寄附を需むるものあるを見るは甚だ遺憾とする所なり而して斯くの如き事態の發生は現下財界不況の影響を被り町村税滯納の激増其の他收入の減少に依り財政窮乏の餘儀なき事情に由るものなりと認めらるるも斯くの如き事態の繼續を見るに於ては小學校教員の生活の安定に脅威を來さしめ延いて國民教育上憂慮すべき影響を及ぼすことなきを保し難きものあるを以て昨年來地方長官會議に於て關係事項に關して訓示し尚特に府縣學務部長會議を兩度に及びて招集し地方の情況を聽取し之が匡濟方に付協議を重ね又屡次通牒を發する等府縣を督勵して事態の改善に力めしむると共に教育當事者をして其の本分を過らしめざる樣注意しつつあり
質問に係る各條項に付ては左の通り承知あり度し
一 小學校教員俸給不拂問題に付ては當局に於て絶へず府縣を督勵し其の改善に焦慮しつつあるところなるが由來斯の如き事柄は市町村當局者をして自省せしむるに努むべく之が爲國庫負擔金の交付を中止するが如きことは機宜を得たる措置にあらず
二 市町村義務教育費國庫負擔法に依る交付金を受けたるにも拘らず其の金額を教員俸給に充當せず他の費途に充當し教員俸給の不拂又は支拂延期等をなすが如きは明に負擔法の精神に反し國民教育上甚だ遺憾なる次第に付當局に於ては學務關係者の會議を開催して對策を協議し又數次之が取締に關する通牒を發する等諸種の方法を講じ嚴重に之を監督せしめつつあり
三 小學校教員の俸給の不拂又は支拂延期に關し教員の思想上に及ぼす影響如何に就ては深甚の注意を拂ふ所なるが俸給の不拂又は支拂延期は結局に於て概ね一、二箇月の延拂に止り且其の由て來る所多くは町村税滯納の激増其の他町村收入の減少に依り町村財政の窮乏に存するものなることは小學校教員に於ても親しく町村に在りて具に諒解する所なると其の教養の然らしむるとに依り其の思想の惡化を來すに至らざるものと認むるも斯くの如き事態の繼續は憂慮すべき影響を生ずるの虞ある次第なれば府縣を督勵して事態の改善に力を盡さしむると共に斯る時局に直面し教職員の教育精神の鼓舞作興に力め國民教育の進運を害せざらんことを期せり
四 市町村義務教育費國庫負擔金の交付方法を市町村豫算を通さず國庫より直接に交付するやう改正すること及び之を特別會計とすることに付ては何れも種々研究を要する點あるを以て攻究中に屬す
五 公務員にして教員に對し俸給不拂の手段に依りて義務なき寄附行爲を強要するが如き不法行爲ありとせば之に對し嚴重なる取締方法を講ぜしむるに躊躇せざる所なるも小學校教員の俸給の寄附に關しては特に府縣に通牒を發して嚴重に監督せしめつつある次第も之れ有り質問の如き手段に依り寄附行爲を強要するが如きことは之れなきものと認む
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
文部大臣 田中隆三
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國際軍縮會議に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月七日
提出者 田川大吉郎
國際軍縮會議に關する質問主意書
國際聯盟が多年努力して來た列國の一般軍縮會議は愈々明年二月を以て開催せらるることになつた帝國は國際聯盟常任理事國の一として必らず同會議に參加せらるるだらうと推測せられる
一 帝國政府は明年の一般軍縮國際會議に參加せらるるであらうか
大正十年帝國政府が華府會議に參列した際には海軍力の比率に關する方針は熟議されて居なかったと見ゑ出先代表者の間に或は六割説を唱へた者があり或は七割説を唱へた者があつた明年の軍縮國際會議には再び此の如き憂ひなからしむべく其の一手段として準備調査會を開かるるであらうと思はれる
二 帝國政府は一般軍縮國際會議に對する方針決定の爲準備調査會を開かるるであらうか
昭和五年「ロンドン」會議に臨むに際しては政府は帝國の方針此に在りと三大原則を聲明せられた其の通り熟議して居られたものと見ゑる然しながらそれは專門家のみの凝議の結果であつたらしく其の後の國論沸騰の跡に徴すれば深く疑ひなきを得ない
三 帝國政府は右一般軍縮會議に對する方針決定の準備調査會には軍務當局者の外内政財務の當局者練達者其の他反對黨の首領等を網羅し情理を曲盡することを必要と思惟せられざるか
華府會議の後帝國政府は急に巡洋艦三億六千八百八十六万圓の建造計畫を立て其の影響として列國の競爭を馴致し其の後の海軍縮小會議の進行を困難ならしめたものがあつた現に華府會議の際米國は巡洋艦二十五万噸を要求したに對し「ロンドン」會議に於ては反つて三十二万噸を獲得するに至つた今年度に於ける我が三億七千四百万圓の計畫の結果如何其の將來も尚懸念に堪へないものがある明年の軍縮國際會議に對しては此の如き軍縮を求めて反つて軍擴となる如き前車の轍を履まぬ樣深く注意を加ふべきであるそれには政府に於て一層熱心誠實なる特別の調査決心を加へらるべきであると思ふ
四 帝國政府は明年の軍縮國際會議に對し既往の海軍縮小會議の經過結果等に鑑み一層熱心に盡力されつつあるであらうか果して然らば其の現に見るべくもの如何近く見らるべきもの如何
五 帝國政府は明年の軍縮國際會議が既往の海軍縮小會議よりも多く有效の成果を期待し得べき可能性ありと認めらるるか若し然りとせば其の根據如何若し然らずとせば其の根據如何
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員田川大吉郎君提出國際軍縮會議に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員田川大吉郎君提出國際軍縮會議に關する質問に對する答辯書
一 帝國政府は昭和七年二月開催せらるべき軍縮會議に欣然參加する意圖を有す
二 前記軍縮會議に於ける帝國政府の對策決定に當りては周到なる準備研究を要すべきに依り目下夫々關係當局に於て研究中なるも之が爲特別の機關を設置するや否やに付ては考慮中なり
三 前項を參照せられんことを望む
四 帝國政府は公正なる立場に於て帝國國防に支障を生せざる限り軍縮の實現に努力しつつあるものにして從來の軍縮會議に於ても此の主義を以て其の成功に協力し明年の軍縮會議に對しても亦右主義の下に誠意を以て之が目的達成に努力すべく目下鋭意準備中なり然れども其の内容に關しては未だ之を明示し得るの域に達し居らず
五 軍備制限問題の複雜にして各國の利害相錯綜せる等に鑑み同會議の實質的成果に關しては目下の處豫測し難きも帝國政府に於ては同會議が一層有效なる成果を齋すべきことを期待し居るのみならず各國に於ても同樣の期待を有し居り歐米諸國就中歐洲大陸に於ては目下各般の懸案殊に軍縮及安全保障に關する諸問題を速に解決し以て右會議の成功に資せんと努力しつつあるの現状なり
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
陸軍大臣 宇垣一成
外務大臣 男爵 幣原喜重郎
海軍大臣 男爵 安保清種
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東京市交通機關の整理統一に關する再質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十日
提出者 田川大吉郎
東京市交通機關の整理統一に關する再質問主意書
政府は本問題に關する本員の質問に對し曩に已に囘答せられたるも不滿の點少からず茲に再び質問を試むるの已むを得ざる次第である
東京市の交通機關の現状は何としても遺憾に堪へない之を改善し整備する方法の一として本員は機關の統一を掲げたのである故に本質問としては東京市の交通機關の不便不備混雜の現状が前提條件である敢て問ふ
一 政府は東京市の交通機關の現状を以て左まで不便ならず不備ならずと考へらるるか
二 若し現状を世評の如く不便不備なりと認めらるるに於ては之を改善するに何等の方法を以てすることを適切有效なるべしと思考せらるるか
政府は東京市をして諸機關を統一せしむるを理想と申さるる一方に市財政其の他一般經濟界の現状に於て之を強要すること能はざるの事情あるを認められたが東京市の財政は現に太だ窮乏せるのみならず實は其の賦與せられたる財政力が元元太だ薄弱なのである現に六大都市の市制改正運動の一端は此の財政力の問題に觸れて居る更に問ふ
三 政府は東京市の財政力を現制以上に擴張し得せしむるの意なきか
東京市は帝國の大都市としての施設に努むべきのみならず更に帝都としての經營措置に大に努めざるべからざる特別の責任を有す此の點に於て東京市が現に有する權限は海外諸國の例に較べ餘りに薄弱である更に問ふ
四 政府は東京市を帝國の首都として他の都市以上に特別の權能を與へ特別に擁護し其の施設を充實せしむるの意なきか
「ロンドン」政府として「ロンドン」の府市が現に有する權限はかなり廣汎であるそれに拘らず英國政府は「ロンドン」市の交通機關統一の爲現に特別の一局を創設するに至つた其のことは前質問主意書に於て本員の言及して置いた所である有力なる「ロンドン」政府のあるに拘らず尚此の新機關特設の必要がある其の權力に於ても財力に於ても數等微力なる東京市の現状に於て此の種の機關の必要なることは言を待たぬと思はるるのであるが更に問ふ
五 政府は東京市交通機關の整理統一の爲例へば「ロンドン」市のそれの如く有力なる特別の一機關を創設するを適當必要と思はれざるか
尚又東京市は從來の地下鐵道建設の方針を抛ち之を民間企業者に讓渡せんとするの説がある之は新聞紙の傳ふる所であるが政府の前答辯書に示された方針に照して考ふれば此の如きは政府の決して希望せられない所であらうと思はれる更に問ふ
六 政府は東京市が地下鐵道を自ら經營せんことを固く希望せらるるか
七 果して然らば政府は東京市に對し東京市が地下鐵道を經營するに必要なる財力を充し得ん爲何等かの指導若くば援助を與ふべく現に考慮中であらるるか
右及再質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員田川大吉郎君提出東京市交通機關の整理統一に關する再質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員田川大吉郎君提出東京市交通機關の整理統一に關する再質問に對する答辯書
一 政府は東京市の交通機關の現状を以て滿足するものに非ざるも甚だしく不便不備なりと思惟せず
二 一層合理的經營を爲すを可とすべし
三及四 東京市に對し他の都市以上に財政能力を擴張し其の他特別の權能を與ふることに付ては目下大都市制度調査會を設け他の大都市と併せて之か調査を爲しつつあり依て政府は其の調査の結果を待って考究すべし
五 政府は目下東京市交通機關の整理統一の爲特別の機關を創設するの必要を認めず
六 政府は東京市か財政其の他の關係上出來得れは自ら地下鐵道を經營することを希望す
七 政府は東京市に對し其の地下鐵道を經營する爲必要なる財力を充し得る樣機を得て勸奬すべし
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
鐵道大臣 江木翼
内務大臣 安達謙藏
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雪國地帶の鐵道速成に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月九日
提出者 八田宗吉
雪國地帶の鐵道速成に關する質問主意書
雪國地帶に於ける冬季の交通か甚た不便なるは想像の外にして貨物の運搬は勿論一般住民の交通をも杜絶すること十數日に及ふは敢て珍しからす又交通杜絶せさる間と雖物資の運搬は橇に依る外なく運搬力乏しきを以て物資の供給十分なる能はす從て文化の恩惠に浴すること少く産業の發展亦期すへからす此の故に本員等は毎議會毎に鐵道速成に關する建議を爲し其の普及を急務として熱望しつつある次第なり政府は鐵道の普及せさる地方に對し自動車を以て之に代ゆるの方針なるか雪國地帶に於ては冬季十一月より翌年四月に至る五箇月間は自動車の通行不可能にして自動車は冬季の交通機關たるに適せす即ち雪國地帶にありては冬季には鐵道に依る外適當なる交通機關なし然るに是等雪國地帶に於ける鐵道の豫定線は何れも建設遲延し殊に現内閣に至り福島縣會津地方の如き田中内閣に於て既に建設豫算を計上し而も議會の決議を經たる喜多方日中線を打切り西米澤八谷間の豫定線を削除し沿線民をして悲憤の涙に咽はしめ柳津小出間田島今市間未成線の如き未た著手せらるるに至らす野澤柳津間廣田白河間の湖南鐵道坂下喜多方間等多年會津地方民の熱心なる請願及建議の可決せられたる線路は一も其の顧みる所とならす此の地方の文明は現内閣出現の爲十年遲延せりと呪咀するものあるに至れり由來積雪多く交通不便なる南會津、大沼郡西部一帶所謂御藏入方部に屬する地方に於ては米穀の購入に當り市街地より小包郵便に依るは寧ろ其の運賃低廉なるの故を以て米一升の小包便各郵便局に堆積の情況なるは昭和の聖代に於て殆と信し能はさる悲慘の現状なり政府は建設財源に乏しと謂はむも假に通行税の如き之を復活して特別會計に移すを得は毎年一千三百万圓の財源を得へく若槻内閣の廢止せる通行税の復活は社會政策的見地より不可と爲さむも通行税の如き電車汽車汽船に乘用する都度納付する一錢二錢の金錢は個個の立場より見るときは極めて微細にして之に依て苦痛を感するもの殆と絶無なるへく況や交通機關完備し之を十分利用し得る地方の住民か雪國地帶に於ける多數住民の不利不便を想像せは微細なる通行税の如き之を復活するも交通機關の便なる地方に鐵道を普及するを至當と爲すへし
政府は是等雪國地帶に於ける未成鐵道の速成を期するの意なきか如何
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員八田宗吉君提出雪國地帶の鐵道速成に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員八田宗吉君提出雪國地帶の鐵道速成に關する質問に對する答辯書
鐵道の敷設は公衆の受くる交通上の利益、地方文化竝産業に及ぼす影響、鐵道の受くる輸送竝經濟上の便益、鐵道の系絡大成上よりの觀察、水陸聯絡及國防上の關係、工事の難易、鐵道分布の状況等を比較考量し且財政政策と相俟ちて其の緩急の順序を定め之を敷設せむとする方針にして雪國地帶の交通不便を救ふことも素より考慮するを要するも之のみを以て遲速を決し難し
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
鐵道大臣 江木翼
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區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月九日
提出者 遠藤千元
區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問主意書
東京市に於ける復興建設に因る小學校校舍の移轉補償金は左記各項の事情に依り區の收得すへきものと思料す
一 小學校校舍の移轉補償金は復興局及復興事業局より區長の申請に基き區か收得せるものなるを以て市か漫に沒收すへき何等の理由なし
二 然るに東京市長は東京市立小學校建設費補給規程第五條第十三條及第十六條に依りて市か取得すへきものなりとして自己の任命したる區長と通謀し當然協贊を要すへき區會の決議を經すして之を沒收したり
イ 第五條に於ける「校地の收得及校舍建築に關聯する收得金に補給すへき建設費中より控除す」とあれとも移轉補償金は校舍建設に關聯する收得金に非さることは論を俟たさる所なり
若移轉の跡に校舍建築を爲すか故に建築に關聯するものと速斷するか如きことあらは誤解謬見も亦甚しと謂はさるへからす
即ち移轉費と建設費とは自ら其の性質を異にし全然別途のものにして移轉補償金は建設費を含蓄せさる移轉費たることは極めて明白なるものなり斯の如くなるか故に校舍建設に關聯せさることは一點疑ふの餘地なきものなり
ロ 第十三條に於ける「土地建物處分に依る收得金は新に取得する校地校舍の建設費に充當すへし」とあれとも移轉は處分に非さることは頗る明瞭にして即ち移轉補償金は校舍校地の處分金に非さるを以て第十三條に依りて新に取得する校地校舍の建築費に充當すへきものに非す
ハ 第十六條に於ける「校舍の全部又は一部廢止の場合に於ては補給を受けたる割合に應し收得金を納入せしむ」とあれとも移轉補償金は決して同條の廢止に該當せさることは一點疑義の餘地なきものとす
以上の如く該補給規程に何等準據すへき理由なく漫に市か移轉補償金を區より沒收せるは明白なる違法行爲なり
三 區長の申請に因り區か收得したる區有財産たる移轉補償金に對し區會の協贊をも經すして區長と通謀し市か之を沒收したるは明に市制の條文を無視したる不法の行爲なりとす
四 殊に該移轉補償金中には區有財産たる幾多の動産及區の營造に係る建築物竝校具植木等に對する移轉補償金も共に含蓄せるものにして之をも建築費に對する補給金より控除せしは何等の理由なきのみならす不當も亦甚しきものとす
五 新築校舍の建設費は市の補給金と區費を合して建設したるものにして今假に百歩を讓りて移轉補償金は第十三條の處分なりと看做す場合と雖該補給規程には補給金より控除すとの條項なく新に取得する校地校舍の建設費に充當すへしとあり即ち建設費中に於ける區費支辨金に充當すへきものと解するを正當なるものと思料す
六 新築校舍の建設は總て區の經濟を以て之を爲せり勿論市より交付せられたる補給金を含蓄せるものなれとも市の補給規程に依り市か交付したる該補給金は區經濟中に歳入したるものなり而して該移轉補償金も亦當然區の取得すへきものとして之を區の歳入經濟に繰入れ以て毎年度の歳入歳出の豫算を作成し而して之に依る決算書を作り區會の審議協贊を經て監督者たる東京府知事竝東京市長に具申し被監督者たる義務を完全に果せり
若其の豫算決算面に於て違法の點ありとすれは監督者は其の監督權の出動行使に依りて注意反省を促し又は其の訂正を命し被監督者の非違を矯正せしむへく萬遺憾なきを期せらるる筈なるに拘らす大正十三年度より昭和五年度に至る永年間何等の注意等も之なかりしことは明に適法なる豫算決算として之を承認したる證左にして區か該移轉補償金を當然區の取得すへきものたる確信を強固ならしめ逐年區歳入に計上したるは蓋當然の措置なりとす
七 東京市は其の議決機關の議を經て「バラツク」建假校舍は全部無償にて區に之を交付し區は區費支辨に依り必要に應し之か修理改造を行ひたり
若夫れ法の不備條例規程の缺點に依る責任は當然監督者及東京市當局の負ふへきものにして被監督者たる區の負ふ義務の存せさることは勿論なる次第なりとす
以上の事由に依り小學校移轉補償金は區の取得すへきものと思料す最高監督者たる内務當局は本件に關し如何なる見解を有せらるるや
右及質問候也
本質問に對しては書面を以て答辯あらむことを望む
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員遠藤千元君提出區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員遠藤千元君提出區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問に對する答辯書
帝都復興事業たる土地區劃整理の施行に因り移轉を命ぜられたる東京市の小學校舍の移轉補償金は校舍の所有者たる區に之を交付したるも東京市が區に對し小學校舍建設費の補給を爲すに當りては區に於て交付を受けたる移轉補償金が移轉の爲支出したる費用より少きときは不足額を市より補給し交付を受けたる移轉補償金が移轉費を支辨して殘額あるとき及舊假校舍の賣却代の收入あるときは校地の取得及校舍建築に關聯する收得金として東京市立小學校建設費補給規程第五條の規定に依り本校舍建築費より控除して本校舍復興建築補給金を算定し各小學校毎に學務委員會に諮問して決定したるものにして右補給に當り執りたる處置に關しては小學校移轉補償金に對し不當なる處分ありたりと認めず
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
内務大臣 安達謙藏
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航空に關する再質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十日
提出者 永田良吉
航空に關する再質問主意書
一 去る三月八日代々木に於ける陸軍飛行演習椿事の原因及事件一切の顛末如何
二 日支定期飛行開始未解決の理由如何
三 福岡、鹿兒島、大島、沖縄、臺灣間定期飛行開始に關する政府の所見如何
四 航空院若は航空省設置に關する政府の所見如何
五 内閣直屬の航空審議會開設に關する政府の對策如何
六 飛行場増設に關する政府の對策如何
七 航空學校等航空研究機關設置に關する政府の所見如何
八 航空工業補助奬勵に關する政府の對策如何
九 國内航空輸送事業速成に關する政府の對策如何
十 國民一般航空思想涵養に關する政府の所見如何
十一 東亞に於ける制空權獲得に關する政府の對策如何
十二 歐亞航空連絡に關する政府の對策如何
十三 太平洋竝南洋航空に關する政府の對策如何
十四 我か國陸海空軍充備に關する政府の對策如何
十五 陸軍航空兵力裝備に關する缺陷及急務如何
十六 民間航空勢力は陸海空軍の豫備隊なり我か國民間航空勢力は貧弱なり國防上不安なきや如何
十七 大演習に於ける陸軍航空兵力の少き理由如何
十八 陸軍に水上飛行機を使用せさる理由如何
右及再質問候也
答辯は口頭を以てせられむことを望む
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員永田良吉君提出航空に關する再質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員永田良吉君提出航空に關する再質問に對する答辯書
一 三月八日代々木上空に於ける航空「ページエント」に方り航空本部主催航空演習實施中煙幕展張に際し降下せる煙幕劑の一部氣化不十分なりし爲之を蒙りし觀衆の顏面、皮膚に斑點を生し衣類其の他に燒痕を附するに至りしものなり本煙幕劑は鹽化「スルフオン」酸を主體とする液にして過去數囘の實驗に徴するに高度一五〇米以上を以てする時は氣化完全なるものなるも當日は觀衆竝天候の關係を顧慮し特に高度を三〇〇米に高め且展張位置方向等にも細心の注意を拂ひ實施せるに拘らず地上附近の風速は豫想外に氣化不良を招來し構成せられたる煙幕劑は完全に氣化するの暇なく噴霧状態の儘降下せるものとす
事件發生と共に軍部は直に被害の調査竝救護慰藉に力め三月十三日より十五日に亙り航空本部をして申出の被害者に對し慰藉又損害補償を爲さしめ何れも圓滿なる解決を遂げつつありて引續き善後處理に關し萬全を期しあり而して責任者の處分に就ては即日搜査處分を開始し目下尚調査中にして其の決定は未だ明示し得るに至らざるも本事態の發生に對しては軍部として遺憾の意を表する次第なり
二 日華定期飛行開始に付ては引續き國民政府當局との間に交渉進行中なるか未だ右交渉内容を發表し得べき時期に達せず
三 内地臺灣間航空路を設置し定期航空を實施するは内臺間交通の便益を増進する爲極めて緊要にして政府に於ても夙に考究中なるが之が爲には相當の經費の支出を要するを以て將來財政の許す限り可成速に其の實施を庶幾せむとす而して其の始點終點及寄航地に關しては調査中なり
四 航空行政機關の統一に關しては政府に於ても夙に研究中にして民間航空事業の奬勵指導等は既に遞信省に於て又基礎的學理の研究は文部省に於て統一せられあるも一般器材の製造及研究機關の統一は陸海軍民間各々其の用途に從ひ要求する所異るのみならず本邦の如く陸海軍航空技術の個々に發達せる状態に於ては其の實施に付幾多困難の事情あり從て航空院若は航空省設置に關しては猶愼重考究中なり
五 航空に關する調査審議機關を設置すること竝之を内閣直屬とすべきや等に關しては政府に於て夙に考究中に屬す
六 既に飛行場を設置し又は設備中なる東京、大阪、福岡の各都市以外の都市に飛行場を設置することに關しては航空路開設計畫等と關聯して研究調査中なり
七 民間航空機乘員の養成に關しては政府は夙に之が養成の制度を設け操縱士は之を陸海軍に又機關士は之を東京府立工藝學校に委託し教育しつつあり而して將來獨立の教育機關を設置するか否かに關しては考究中に屬す
八 政府は夙に奬勵金を交付して飛行機體及發動機の設計又は試作を行はしむる等其の發達を助長し居れり
九 政府は諸般の施設を完備して斯業の發達を促進する樣努力し居れり
十 政府は各般の手段を講じて極力航空思想の涵養に努め來りたるが航空の重要性に鑑み將來に於ても一層之が普及を圖らむとす
十一 政府は東亞に於ける帝國の地位に鑑み國防上竝經濟上重要なる關係を有する航空の發達に關し萬遺漏なきを期しつつあり
十二 歐亞間の航空連絡に關しては政府は關係列國と協調して其の開設に鋭意努力しつつあり
十三 太平洋竝南洋航空に關しては鋭意研究中なり
十四 國防上陸海軍に於ける航空の重要性は逐年増大しつつあるを以て之が充實に關しては鋭意努力し將來も國家財政の許す限り擴充する方針なり
十五 我陸軍航空に於ては其兵力裝備共に今尚所望の域に達せざる所あるも現時に於ける國家財政の景況に鑑み姑く新に必要なる資を國庫に要求することを控へ軍制調査會に於て之が内容の充實向上に關し研究中なり
十六 民間航空勢力は有事の際に於ける陸海航空威力の豫備的使命を有するを以て切に之が擴充を冀ひ關係各部と相提携して其の進展を期しつつあり
十七 幾許の航空兵力を配屬すべきやは演習の目的及内容に關する問題なるを以て一概に其の多寡に關して答辯するを得ず
十八 帝國の如き環海の國に於ては陸軍に於ても水陸兩用の飛行機を使用するの必要あるを認め既に之に適する飛行機を制定し一部に於て實地的に研究中なり
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
陸軍大臣 宇垣一成
外務大臣 男爵 幣原喜重郎
遞信大臣 小泉又次郎
海軍大臣 男爵 安保清種
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航空公債發行に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十七日
提出者 永田良吉
外一名
航空公債發行に關する質問主意書
歐米列國の極東に於ける航空勢力進出の現況に鑑み政府は我か民間事業の振興を期する爲航空公債を發行し我か國力の發展と國防の安固を圖る意思なきや如何
右及質問候也
本質問に對する答辯は口頭を以てせられしことを望む
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員永田良吉君外一名提出航空公債發行に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員永田良吉君外一名提出航空公債發行に關する質問に對する答辯書
民間航空事業の發達を促進するの急務なるは言を俟たざる所にして政府は財政の許す限り諸般の航空施設の進捗を期しつつありと雖も目下の處之が爲に航空公債を發行するの意圖を有せず
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
大藏大臣 井上準之助
遞信大臣 小泉又次郎
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軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十二日
提出者 三浦虎雄
軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問主意書
陸軍軍馬補充部高鍋支部茶臼原放牧場は日露戰役直後の國民軍事奉公心最高潮時に於て關係町村民の熱誠に愬へ其の有する甘藷、蕎麥、陸稻、秣耕地を含む原野三百十八町八反歩を僅に金五萬圓を以て宮崎縣兒湯郡妻町、木城村、上江村、新田村、上穗北村の五箇町村より買收設置せしものにして現在に於ては此の大原野に毎年五月より十月に至る六箇月間約百頭の軍馬を放牧するに過きす近く廢止に内定せるものと傳へらる
然るに本放牧地設置後二十五年を經過し經濟事情の推移は農村人口の増加と公課加重とに依り前記町村農民生活を窮迫に陷れ放牧地域に依る町村經濟交通の阻害と耕地原野獨占より蒙る耕地不足とは前記町村を益貧困ならしめ此の窮状を打開するは一に右放牧地の町村拂下に依る耕地取得の外他に途なく之を以て前記町村長は先年來屡當局に願意を具陳する所あるも今日に至る迄政府の眞意那邊に存するや知るを得す困惑せるものなり
仍て前記事情を考察し耕地不足に因る前記町村の窮状を救濟する爲
一 陸軍大臣は軍馬補充部高鍋支部を廢止若は縮小し放牧地の全部又は其の大部を關係町村に拂下くるの意なきや
二 大藏大臣は右不要放牧地の保管轉換を受けたる場合買收原價を以て關係町村自治體に拂下くるの意なきや
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員三浦虎雄君提出軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員三浦虎雄君提出軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問に對する答辯書
一 軍馬補充部高鍋支部は目下廢止若くは縮小の意なし從て本放牧地は適當なる代地及其の所要施設を得るにあらざれば開放し得ざる現況なり
二 假に右高鍋支部を廢止又は之を縮小する場合ありとするも其の拂下價格は時價を標準として之を定むべきものとす
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
陸軍大臣 宇垣一成
大藏大臣 井上準之助
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法令の解釋統一に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十二日
提出者 森田茂君
外四名
法令の解釋統一に關する質問主意書
競爭入札の方法に依り請負契約を締結するに際し我か大審院と朝鮮總督府法院とは全然反對の解釋を爲したり今其の兩判決を比較せむに
一 大審院判例(大正七年(れ)第二〇二九號濱村用太郎外七名詐欺被告事件大正八年二月二十七日判決)被告用太郎嘉重吉左衞門七助長作は各土木建築請負業者被告章三郎は同業父柳澤市兵衞の被告宇兵衞は同業長谷川精二郎の被告鯛次郎は關口戒三の各代理人として原審相被告川上八郎尾島多作田中久吉と共に大正五年八月七日長野縣小縣郡上田町役場に出頭し同町に於て競爭入札に付したる同町東部小學校新築請負工事の競爭入札を爲すに際し被告嘉重は右工事の請負を得んことを欲したるも右被告等中被告嘉重より低額の入札を爲すものあるを察知し談合の方法に因り該工事を落札せしめんと企て同日同役場に參集せる右被告等に對し自ら又は人を介して談合金三百圓を提供すへきに付き自己を最低入札者として右工事を自己に落札せしめられたき旨懇請したる爲め既に原審相被告尾島多作は一萬二千六百二圓に被告七助は一萬二千五百圓に夫々入札すへきことを決定し居りたるに拘はらす何れも其請を容れ其餘の被告等も等しく被告嘉重の右申出を諾し茲に被告用太郎等は被告嘉重と故らに同被告の入札額より高額の入札を爲し同人に落札せしめんことを通謀したる上何れも同日同役場に於て恰も各自連絡なく該入札の本旨に從ひ各獨立して決定せる價格にて競爭入札を爲すものの如く裝ひ被告嘉重は一萬二千六百八十三圓其他の被告は各右金額以上に豫定の如く入札し眞正なる競爭入札を爲したる如く同町長を欺罔し開札の上被告嘉重を最低額入札者として落札せしめ同月十二日同役場に於て同被告をして同人の前記入札額を以て同町と東部小學校の新築工事請負契約を締結せしめ同契約上の權利を不法に取得し以て上田町をして正當の競爭入札行はれたらんには當然得へかりし前記最小額との差額の利益を喪失せしめ財産上の損害を與へたるものに屬す按するに工事の請負を競爭入札に付し最低額入札者を落札者と決定し之と請負契約を締結する場合に注文者は工事の内容を知悉し豫定價格を附するを常とするを以て注文者か入札に依る價格を相當と認めて落札者を定むる以上は價格の點に何等の錯誤なきものと謂ふへく入札者の價格協定の有無は價格に關する錯誤と沒交渉なりとす競技の懸賞の場合の如きは優賞者に其優賞を原因とし特殊の利益を與ふるものなるを以て懸賞者と約して競技に從事する者に於て眞實の勝敗を決するにあらすして相互の申合に依り勝敗の結果を豫定し其結果を實現せしめて賞與を請求するときは詐欺罪を構成せしむることあるへしと雖も競爭入札の場合は之れと異なり請負契約に依り仕事の完成に對する報酬を與へることを外にして特殊の利益を與ふるものに非す蓋し注文者は自己の利益の爲め比較上最も有利なる條件を以て請負を爲す者を選擇するを趣旨とするは論なしと雖も之に對し入札者は隨意に入札價格を定むる自由を有し入札者の連合に依る協定入札は注文者に對し價格の量定を誤らしむる手段にあらすして入札者か自己に利益なる價格を主張する方法なりと解するを相當とすへく從て請負工事に關し協定入札を爲したることは詐欺罪に於ける欺罔手段の施用とならす入札者か談合金の授受を約せすして單に價格の協定を爲す場合と談合金の授受を約して其協定を爲す場合とは詐欺罪の成立に關し論斷を異にするものにあらす總入札者の價格の協定を爲す場合と入札者の一部か其協定を爲す場合若くは入札せんとする一人か他の者と協定して入札の棄權を爲さしむる場合とは亦之れに關する論斷を異にするものに非す故に入札者か入札價格に關し協定又は談合を爲したる一事は詐欺罪を構成する理由とならさるものとす原判決には該入札の本旨に從ひ各獨立して決定せる價格にて入札を爲すものの如く裝ひ(中略)眞正なる競爭入札を爲すものの如く欺罔し云々と説示し又被告七助か談合に先ち一萬二千五百圓にて入札すへきことを決定し居りたることを認めて之に基き被告等は上田町をして正當の競爭入札行はれたらんには當然得へかりし最少額との差額との利益を喪失せしめて財産上の損害を與へたるものなることを説示せるも前敍の事實に依れは上田町の財産權には侵害ありたるものと認むへからさるのみならす被告等は工事請負に關し談合入札を爲したるに止まり畢竟詐欺罪の構成に必要なる欺罔手段の闕如せるに拘はらす原判決に於て他に欺罔手段の施用を認むるにあらすして判示の理由に依り不正に請負契約上の權利を取得したる旨の事實を確定したるは違法にして論旨理由あり原判決は破毀を免れすと判決し
二 朝鮮大邱覆審法院(岡本小三郎外三十一名詐欺等被告事件昭和五年十月二十八日判決)は被告人岡本小三郎坂民次郎は昭和二年七月朝鮮總督府か大邱專賣支局工場新築其他の工事を指名競爭入札の方法に依り請負はしむるに當り被告人等及大倉土木株式會社外三名を入札者と指定し豫て同人等に示し置きたる工事請負入札人心得書の趣旨に從ひ特別の事由なき限り豫定價格の制限内に於て入札金額の最低のものを以て落札者と爲すへく期待し同月十一日を入札日と指定するや同月十日右會社の代理人被告人小川某外三名と共に京城府旭町朝鮮土木協會事務所に會合し前同樣の詐欺を爲さんことを謀議し豫定落札金額を二十二萬六千八百圓と協定し被告人小川某に於て最多額の談合金五萬一千八百圓を提供すへく申出てたるに依り右會社を落札者と豫定し右小川某をして同會社名義にて右二十二萬六千八百圓にて入札せしめ他の者は之より高額にて入札すへく申合せ「書取」の方法に依る談合を爲したる後右各被告人等は同月十一日朝鮮總督府内務局建築課に出頭し恰も眞正の競爭入札を爲すものの如く裝ひて右談合の如き入札を爲し係官をして眞正の競爭入札なりと誤信せしめたる上最低額の入札者たりし右會社を落札者と決定するに至らしめ被告人小川某は同月十五日同課に於て契約擔任者たりし當時の朝鮮總督府内務局長生田清三郎と右會社名義の下に金二十二萬六千八百圓にて同工事の請負契約を締結し以て不法に同契約上の權利を取得しと説示し刑法第二百四十六條を適用し詐欺罪なりと認定し高等法院亦曾て同趣旨の判決を爲し右覆審法院判決は高等法院判決に則りたるものなり
斯の如く内地に於ける大審院の判決と朝鮮に於ける判決とは一は無罪の判決なるも他は有罪の判決にして兩者全然相反する判決なりとす
明治四十年法律第四十五號を以て内地に實施せられたる刑法は明治四十四年法律第三十號同四十五年制令第十一號朝鮮刑事令に依り朝鮮にも實施せられ兩者其の内容に於て同一なりとす同一法律か同趣旨の事實に對し朝鮮に於て適用せらるるときは有罪となり内地に於て適用せらるるときは無罪となり朝鮮に於て判示の如き行爲を爲すときは刑罰を受くる違法行爲となり内地に於て之を行ふときは法の保護を受くる適法行爲となるか如きは明に法規解釋の不統一にして法の威信を害すること頗る大なりと謂はさるへからす
朝鮮に於ける判決は眞の競爭入札を爲ささるへからさるに拘らす之を爲さすして却て請負人相互間に於て價格の協定を爲し所謂談合入札を爲し恰も判決の所謂眞の競爭入札を爲すものの如く裝ひ請負權を獲得したるか爲之を詐欺罪なりと認定したるものの如し
詐欺罪は人を欺罔して財物を騙取し相手方に損害を生せしめたる場合に成立する犯罪なることは言を俟たす而して欺罔とは虚僞の事實を主張して相手方を錯誤に陷らしむることを要す覆審法院判決は請負人か入札を爲すに際し現に價格の協定を爲したるに拘らす斯る協定を爲さす眞に競爭入札を爲すものの如く裝ひ注文者を欺罔したるものの如く判示すと雖斯る主張は所謂欺罔の要素たる虚僞の主張に非す抑虚僞の主張は法規之を認めす慣習之を許ささる性質のものに限る眞に物品を買入るる意思なく代金支拂の意思なきに拘らす代金を支拂ひて品物を買入るるものの如く裝ひ或は眞に返濟の意思なきに拘らす借用名義を假用し金員を騙取するか如き場合に於て始て法の所謂虚僞の主張と謂ふへく商人か商品を賣却するに當り原價に相當の利益を加算し定價と爲せるに拘らす原價を以て賣却するものの如く申向くるか如き法の所謂虚僞の主張に非さるなり蓋前者は相手方の方面に財産權の侵害あると同時に法規之を禁し慣習之を認めさる虚僞の主張にして後者は買受人に何等財産權の侵害なきと同時に法規之を許容し慣習之を容認する虚僞の主張なれはなり
而して本事案に於て判決の所謂虚僞の主張とは請負人相互間に於て價格の協定を爲し談合入札を爲したるに拘らす價格の協定を爲さす所謂競爭入札を爲すものの如く假裝したるを指示するものの如しと雖相手方たる注文者に於ては熟練なる技術者に依り工事明細書又は設計書等工事に關する詳細なる説明書を作成し材料の選擇工事の精粗等之に要する費用の精密なる計算を遂け豫定價格を設け其の價格以内に於て工事の完成を告くるときは注文者に於て何等損失なきものと思惟し入札を命し入札者亦右豫定額以内に於て入札を爲し居れるか故に其の間何等財産權の侵害と認むへきもの存在せす假に入札者に於て相互價格を協定し何等協定せさるものの如く假裝したりとするも該假裝たるや法の禁する虚僞の主張に非さるなり何となれは之に依り相手方たる注文者に於て何等財産權の侵害存在せされはなり
敍上の如く虚僞の主張にして存在せさる以上は相手方に於て錯誤に陷るへき筈なきは明白疑を容れさる所なり殊に注文者は入札金額の正當なりや否やを審査する權限を有し其の自由意思を以て價格を決定するを得るか故に錯誤に陷るへき餘地を有せす入札者か談合に依りて入札を爲すと談合を爲さす各自入札價格を默祕して入札を爲すとの間注文者に於て何等利害を異にすへき道理なし殊に談合行爲を爲すことは注文者に對し價格の決定を誤らしむる手段とならさるに於てをや
而して大審院の判例は詐欺罪は財産罪なるか故に財産上の損害なからさるへからす損害の發生は詐欺罪の要件なりと主張せり本事案に於て果して損害の發生ありや若各請負業者にして其の入札價格を默祕し入札を爲したるときは或は談合の結果入札を爲す場合に比し多少安價に落札すへきことなきに非さるへし之に依り生すへき價格は即ち注文者の受くへき損害には非さるかの疑なきに非す併しなから斯の如きは即ち單なる希望に過きすして確的なる損害なりと認むへきものに非す而して詐欺罪の要件は單なる希望のみにては不十分にして確的現實なる損害ならさるへからす此の點より見るも詐欺罪を構成する限に在らす固より談合行爲にして不當の價格を糶上け又は糶下くる目的に出てたる場合の如きは會計規則第九十七條朝鮮總督府工事及物品供給請負人入札心得書第二條等の禁止する所にして斯る談合は固より不正行爲なりと雖本事案に於ける談合の如きは斯る目的に出てたるに非す極めて適正なる價格を以て入札を爲したるものなるか故に法の禁止せざる適法の談合にして無謀競爭入札より生する弊害を除き當業者の利益を保護する團體的防衞行爲なりと謂ふを得へし
社會は自由競爭に依り、より進歩し今日の發達を遂けたることは疑を容るる餘地を有せす併しなから自由競爭より生する弊害も亦尠しとせす競爭入札の場合に於て殊に然りとす不當なる安價乃至工事完成不能の價格を以て入札を爲し工事を請負ひ工事未た成就せさるに先ち逃走して其の居所を不明にし職人其の他に賃金を仕拂はすして多數人に迷惑を掛け或は不備不完全なる工事を完全なるものの如く裝ひて其の引渡を爲し或は當路者に贈賄して以て不正檢査を爲さしむるか如き假に自己の業務上の地位に鑑み世間の思惑を考慮し將來業務の防害とならむことを虞れ注文の趣旨に適ひたる完全なる工事を爲し之か引渡を了したりとするも之か爲に請負人は全財産を蕩盡し再ひ請負業者として起つ能はさる痛手を受くるに至るへし
是等競爭入札の弊害を除去せむか爲には不當に安價なる價格を以て入札することを避け工事相當の價格を以て入札を爲ささるへからす亦妥當價格を以て入札せむとせは無謀の競爭を避け價格の協定を爲し妥當價格を決定せさるへからす所謂談合を爲ささるへからす故に談合行爲は獨り請負業者を保護するのみならす亦以て注文者を保護するを得へし凡そ請負業は刑法第三十五條の正當業務行爲にして入札行爲は該業務を遂行する方法なりとす而して競爭入札を爲すに際し請負業者相互間に妥當なる價格の協定を爲し所謂談合行爲を爲すも該談合行爲にして違法ならさる限り右入札行爲か違法に歸するものに非す蓋競爭入札を爲すに際し相互價格を默祕するは各入札者の利益を保護する爲にして注文者の利害と沒交渉なるか故に請負業者にして右利益を抛棄し各自談合を爲すは其の自由行爲の範圍に屬するものなれはなり殊に亦競爭入札の要件としては各請負業者か其の入札價格を祕密に付せさるへからさるものに非す或は他の一人に入札價格を洩らし又は他の數人に其の價格を告くるも前敍の如き糶上糶下の目的以外に於ては法に何等禁止規定なきを以て競爭入札としては有效なりとす
或は落札したる請負業者より落札せさる請負業者に對し所謂談合金なるものを分與するを以て常例と爲すものなるか此の談合金は結局請負價格中より捻出するものなるを以て其の金額に相當する金員は工事完成に使用せられさるものに屬し其の部分丈け不完全なる工事を爲すことに歸著するか故に結局注文者の損失に歸すへしと論する者あるも是れ大なる誤なり右談合金は落札者か工事に依りて得たる利益の幾分に相當し落札者は其の得たる利益を分與するものなるか故に之か爲注文者に何等の損害を與ふるものに非す
飜て落札せさる請負業者の方面を顧みるときは斯る請負業者と雖一應材料の調査を爲し其の價格を算出し職人人夫の賃金等より工事費を計算して請負價格を算定する等に相當の努力と費用とを費し居れるのみならす保證金を調達するに付ても亦相當利息を支拂はさるへからす若自ら落札者とならさるときは是等の費用は遂に之か囘收を爲す途なきに至るへし所謂談合金を是等落札せさる請負業者に分配するは是等の人をして右損害を補償せしむる意味に於ても最有意義の行爲なりと謂はさるへからす故に談合金の分配は斯る談合行爲に違法性を付與したるものに非さるは勿論却て相互補助なる社會適應性を附加するに至るへし
自由競爭は一面に於て社會の進歩を促したる功蹟ありと雖亦他の一面に於ては敍上の如き弊害を釀成せるか故に今日に於ては之に合理的協調を加味する傾向を生するに至れり物價にして非合理的に下落する時代に於ては同業者間に於て價格を協定し其の下落を防き物品過剩なるか爲物價の下落するときに於ては操業短縮を爲して物品の過剩を豫防し以て物價の下落を豫防する等の行爲は其の協調状勢の一端を閃したるものに外ならす
價格の協調を爲せはとて其の業務行爲か不正業務に化するものに非す操業短縮を爲せはとて其の業務に違法性を付與するものに非さることは社會通念の認むる所なり請負業者にして請負價格の協調を爲したれはとて其の業務行爲たる入札行爲か違法性を具有するに至るものに非さると同時に其の行爲か不正業務の色彩を帶ふるものに非さるなり
要するに談合入札は注文者に何等損害を與ふることなく落札者竝非落札者を保護する相互保護制度にして正當業務行爲の適法なる内容を爲すものなりと謂ふへく何等違法性を具有するものに非す
然るに朝鮮總督府法院は之を不適法なる行爲と爲し刑法第二百四十六條の詐欺罪なりと判決せり不法の判決なりと謂はさるへからす
法規の解釋は全國的に統一せさるへからす内地に於ける法規の解釋と朝鮮に於ける法規の解釋とか其の結論を異にするか如きは法規の解釋不統一なりと謂はさるへからさるは勿論廣義に於ける國家政務の不統一なりと謂はさるへからす
而して法規解釋の統一は合理的合法的ならさるへからす以上縷縷陳辯するか如く朝鮮に於ける解釋非合法にして内地大審院の解釋正當なるときは須らく朝鮮總督府法院をして大審院に於ける解釋に合流せしめさるへからす約言すれは斯る行爲は詐欺に非す適法行爲として法の保護を與へさるへからすと思料す
右に付内閣總理大臣司法大臣及拓務大臣の所見如何
政府に法令の解釋を統一する機關を設くる意思なきや
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員森田茂君外四名提出法令の解釋統一に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員森田茂君外四名提出法令の解釋統一に關する質問に對する答辯書
本質問の要領は請負工事の競爭入札を爲すに際し入札者間に行はるる談合行爲に對する法律の適用に付大審院の判決と朝鮮大邱覆審法院の判決とが全然相反することを指摘論難し此の如き弊害を避くる爲政府は内地及朝鮮に於ける司法法規の解釋を統一する機關を新設するの意なきやと謂ふに在るものと認む蓋し司法法規の解釋は最高裁判所の判例に依りて之を統一することを得るものにして之を他の機關に委すべきものに非ず而して現時の統治組織に於て内地と朝鮮とは各自獨立の司法機關を有するが故に偶偶不幸にして二者の判例に一致を缺く所あるは甚だ遺憾とする所なりと雖も眞に已むを得ざる所にして他の機關を設けて之を匡正することを得ざるものとす由て政府に内地及朝鮮に於ける司法法規の解釋を統一する機關を設くるの意思なし
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
司法大臣 子爵 渡邊千冬
拓務大臣 松田源治
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足尾銅山鑛煙毒に關する再質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十三日
提出者 栗原彦三郎
足尾銅山鑛煙毒に關する再質問主意書
本員か昨年十二月二十六日付を以て提出したる足尾銅山鑛煙毒に關する質問主意書に對し政府は本年二月三日付を以て答辯書に依り答辯せられたるも本員は此の答辯に承服する能はす茲に已むを得す再質問書を提出す
本員か曩に提出したる質問の要旨は現内閣組織以來足尾銅山の鑛毒及煙毒の豫防施設に對し其の監督相當に宜しきを得つつあるを以て銅山營業者も鑛毒竝煙毒の豫防施設を漸次に改善し其の成績認むへきものあるも猶監督官不在の際に當り豫防作業に誠意を缺き故意に被害を多大ならしむる事實あるを以て常設監督官を置き監督する必要あり政府の所見如何と謂ふにあり然るに政府は足尾銅山に於ける除害設備に付ては屡屡監督官を派遣し其の運用に關し嚴重取締を勵行しつつあるを以て特に常設監督官を設くるの必要を認めすと答辯せり
惟ふに政府か斯の如き答辯を爲せるは政府當局は現在に於ける足尾銅山の鑛毒竝煙毒の被害か多大なるを知らさるの結果豫防除害の施設を輕視し斯の如き答辯を爲せるものの如し依て茲に鑛毒竝煙毒の現在の被害状況の大略を述へ再質問の旨意のある所を明にせむ
現在に於ける足尾銅山鑛毒の被害の重なるものは渡良瀬川に流下する毒水を灌漑する爲受くる水田の損害、渡良瀬川に毒水流下し魚族を斃死絶滅せしむる爲受くる漁業上の損害及渡良瀬川に流下する砒素、膽礬の其他の毒物の爲渡良瀬川沿岸及同川水系灌漑地帶内に住する二十餘萬住民の身體生命上に受くる保健衞生上の損害等なり
今鑛毒に依る現在の損害を精査すれは渡良瀬川の流水を灌漑する栃木縣足利郡及群馬縣新田、山田、邑樂三郡内の水田は大略二萬六千町歩にして之等の水田は古來十俵取れと稱せられ關東屈指の美田にして明治二十九年の大洪水に因る鑛毒流入以前に於ては當時の幼稚なる農業技術に於て而も肥料も僅少にして平均反當り八九俵の收穫ありしに今日は全國的農業技術長足の進歩を爲し肥料も亦從來に比して數倍の施肥を爲すか故に鑛毒の被害なき地方に於ては多大の收穫増加を爲せるに拘らす被害地に於ては其の收穫毫も増加せす却て年年減少の傾向あるは全く年年銅山より流下する鑛毒の爲に土壤變質し酸性肥料の使用に依り僅に稻の發育を爲さしめつつある結果にして其の損害は反當り平均年額一石を下らす即ち其の鑛毒被害に因る減收年年二十六萬石以上にして之を一石二十圓として換算すれば年年五百二十萬圓に相當する損害あり群馬栃木兩縣下の被害地の代表者か年年歳歳其の事實を指摘し議會及政府に請願陳情を爲すは全く此の甚大なる損害あるか爲に外ならす又渡良瀬川は古來魚族の豐富なると漁獲の多量なる點に於て天下に知られたる所にして漁業を以て生計を爲せる者數千人の多きを見たりしに今や全く魚族の繁殖を見す僅に季節的に僅少の魚類上り來ることあるも一度降雨あり流水濁れは直に死滅するの状態にして漁業上の損害は如何に僅少に見積るも其の損害年年百萬圓を下らさるものあり
殊に鑛毒の現在に於ける被害の最顯著なるものは人體に及ほす被害にして現に渡良瀬川の沿岸に位する山田郡足利郡安蘇郡下都賀郡猿島郡北埼玉郡等諸郡内に於ける舊鑛毒被害地方及渡良瀬川の流水を灌漑する範圍の山田郡新田郡邑樂郡足利郡地方の住民に胃膓及内臟失患の患者非常に多く從て死亡率も多きこと勿論にして流産の割合も亦非常に多き事實は此の地方の統計と他地方の統計と比較して最明瞭なるか被害地方住民は健康體の者も一般に血色惡しく今や兩毛地方の人人は其の血色を一見して直に被害地方住民なることを識別するの状態にあり之れ足尾銅山より流下する諸種の激毒自然に地下水に混入し井水中に侵透し來りて人體を害するものにして此の保健衞生上の損害は金錢を以て計算する能はさる一大損害たるのみならす人道上亦等閑に付する能はさる一大問題なり
更に足尾銅山煙毒の被害状況を見るに其の被害の重なるものは直接には利根川渡良瀬川大谷川等關東の大部分か灌漑用水とする各水源地に於て水源涵養の作用を爲す大切なる大自然密林の樹木を枯死せしむる爲此の密林地帶山嶽の土砂を洗ひ岩石露出し其の岩石を酸化して砂礫と爲し實に見るに忍ひさる荒廢の地たらしめ洪水毎に其の砂礫を流下し來りて河床を高め以て水害の因を作りつつあるものにして間接には其の水源地破壞の爲盛夏灌漑の時期に於て水量非常に減少し用水不足の爲旱害を受くるにあり曾て水量豐富にして足利佐野地方の一切の貨物を運搬する爲船舶を浮へし渡良瀬川は近時往往極端なる渇水を見て時に流を絶つことあり利根川の水量も亦年年減少し灌漑用水の不足を來すこと少からす若此の儘放任せむか利根、渡良瀬兩川の水量減少は帝國の心臟とも謂ふへき關東大部分の水田を枯死せしむるのみならす又關東一帶の地下水減少し井水を不足ならしめて關東數百萬住民の飮料水を脅威するは勿論地下水の減少は草木の繁茂を碍け遂に關東の大部分は耕作居住に適せさるの土地となるへきは學者の專ら唱導する所なり左に群馬縣山田新田邑樂三郡に亙る灌漑用水に關し地元水利組合代表者か最近政府當局及關係代議士に提示したる請願書を引用して煙毒被害の一部の状況を明にせむ
請願書
群馬縣下新田、山田、邑樂、桐生の一市三郡に散在する渡良瀬川流域下名四堰水利組合管理者は灌漑田面一萬町歩の耕作者と關東農民十五萬を代表し謹て奉請願候
足尾銅山製錬工場より噴出する煙毒の慘禍は渡良瀬川水源集水地五萬町の内約二萬八千町歩の山林を枯死荒廢せしめ猶逐年加速度を以て被害の範圍を擴大しつつあり之か爲山林特有の雨水貯藏の自然的作用を失ひ大雨には忽ち土砂を押流し旱天には忽ち溪谷の水脈枯渇し從て其の影響は忽ちに渡良瀬川流域に及ほし洪水には鑛毒の浸潤を受け耕土の變惡を來し渇水には灌漑用水の不足を告け挿秧不能となり或は稻作枯損し收穫の減滅を餘儀なからしむる等其の被害甚大にして關係農民の生業を脅威すること夥しく之に伴ひ用水爭奪又は小作爭議頻發し民心を惡化せしめ實に憂慮に堪へさるものあり
之か爲從來屡屡貴衆兩院に請願し其の都度速かに御採擇となるも未た政府に於て何等の施設もなく關係農民の困難筆舌に盡し難し冀くは實状篤と御調査の上煙害防止山林復舊水源涵養用水補充の計畫を實行相成候樣御配慮相仰度謹奉請願候 恐惶謹言
昭和六年三月五日
待矢場兩堰普通水利組合管理者
太田町長 武川六太郎
赤岩堰普通水利組合管理者
桐生市長 關口義慶二
田登普通水利組合管理者
相生村長 今泉染太郎
廣澤堰水利組合長 丹羽平助
政府の一部には折角常設監督官を置くも其の效能如何に付て疑を存するか如き論議を爲すものありと仄聞するも本員等は必す相當の效能あるを確信せさるを得す現に昭和四年の第五十六囘議會に於て政府は田中總理大臣中橋商工大臣山本農林大臣の名を以て足尾銅山鑛毒及煙毒の豫防設備完全にして毫も修築改築を要する箇所なしと答辯せるに拘らす同年七月現内閣組織せられ横山商工政務次官一度足尾銅山に登山し僅に數時間の視察を爲せるのみにて松木毒泥砂堆積所の七十五間に亙る大改築、原毒泥砂堆積所の大増築、全山毒水樋の改造、沈澱地の大修理等鑛毒豫防施設の面目を一新する程の大工事を即日命令し營業主も喜むて其の命令に服し早速以上の工事を完成し更に數箇月間は煙毒に付ても其の鎔鑛作業に當り風位の方向に注意する等監督上頗る效力ありしは足尾町在住者及被害地方人民の普く認むる所にして此の一事を以てするも常設監督官を設置せは相當效力あるへきを信して疑ふ能はす殊に被害民に對して多大の同情を有せらるる現政府にあらすむは此の被害民の切實なる願望は容易に容れらるるの日なからむことを憂ひ茲に重ねて明治三十年五月三十日政府か發せる足尾銅山鑛毒豫防命令の目的を達成し且被害地方人民をして安むして農業に從事せしむる爲常設監督官の設置を要望し政府の所見を問ふ
右及再質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員栗原彦三郎君提出足尾銅山鑛煙毒に關する再質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員栗原彦三郎君提出足尾銅山鑛煙毒に關する再質問に對する答辯書
足尾鑛山に於ける除害設備の操作運用に關しては排煙の分柝、收塵量、鑛水の性質其の他諸般の實績に付常に注意を怠らず隨時監督官を派して實地踏査を行ひ若し修築改善を要するものあらば直ちに適當の措置を命じつつありて大體に於て豫防命令の目的を達成しつつあるものと認めらるるも尚今後は監督官派遣囘數の増加等に依り除害設備の一層嚴重なる監督取締に付遺漏なきを期する見込なり
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
商工大臣 俵孫一
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刑事事件檢擧に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十四日
提出者 工藤鐵男
刑事事件檢擧に關する質問主意書
愛知縣碧海郡安城警察署に於て左記の者共か左記の犯罪を爲したるものと認め之を檢擧し證據を具して昭和六年一月中一件書類と共に左記被疑者中石原市左衞門、岡田庄太郎、頼永鐵太郎、加藤實(主謀者と認むへき岡田菊次郎は逃走不在)四人の身柄を岡崎區裁判所檢事局に送致したるに同檢事局は之か取調を爲さす直に被疑者を釋放し今日に至る迄其の搜査を爲ささるは甚た不當なる事件の處理なりと認む其の理由如何
愛知縣碧海郡安城町
町會議員、縣會議員、町農會長、三河食品株式會社長 岡田菊次郎
町會議員、町農會幹事、同會社監査役 岡田庄太郎
町農會總代、同會社取締役 頼永鐵太郎
同會社取締役 尾崎五平治
同會社同 本田吉郎
同會社監査役 稻垣澤吉
同會社專務取締役 三浦圭介
同會社取締役 都築嘉右衞門
町農會書記 加藤實
町農會議員、町會議員 石原市左衞門
碧海郡農會幹事兼技手 加藤精一
犯罪事實
一 岡田菊次郎は昭和五年二月衆議院議員政友派候補者となり選擧運動中運動費に窮し自己か安城町農會長の職にあるを利用し部下たる農會幹事岡田庄太郎に命し同月十五日同人保管に係る碧海銀行預入農會の金員中一千圓を書記加藤實をして小切手を作製し銀行より引出さしめたる後菊次郎は其の妾宅に於て菊次郎弟勝次郎をして庄太郎より受領せしめ之を運動費に供したり
二 岡田菊次郎、岡田庄太郎は共謀の上其の任務に背き昭和四年十二月十二日及二十六日の二囘に亙り加藤實に小切手を發行せしめ同人保管中に係る町農會の金員一千圓宛合計二千圓を引出し之を岡田菊次郎か社長にして岡田庄太郎か監査役たる三河食品株式會社の取締役頼永鐵太郎に貸付けたるものなるか同會社は缺損續きにして囘收の見込絶對になく町農會に損害を與へたるものなり
三 岡田菊次郎は昭和五年八月十五日農會幹事岡田庄太郎、書記加藤實に命し兩人保管に係る農會の銀行預金百七十五圓を引出さしめ之を實弟岡田勝次郎の合同運送會社株劵未拂込金に充當費消したり勝次郎は放火詐欺事件にて目下收容中なり
四 岡田菊次郎は町農會幹事たる石原市左衞門と共謀し町農會の金員中二百五十圓を横領費消したり
五 岡田庄太郎は昭和四年十二月十二日三河食品株式會社か町農會より借入れたる金一千圓の内四百五十圓を自己の同會社に對する株式未拂込金に流用横領したり
六 頼永鐵太郎は前項岡田庄太郎横領行爲を幇助して自己か取締役たる右會社に損害を被らしめたり
七 岡田菊次郎、頼永鐵太郎等は三河食品株式會社の社長重役の地位にありなから定款の規定(取締役の報酬は年額千圓以内と定む)に違反して專務取締役三浦圭介に對し年額金一千二百圓宛の報酬を支拂ひ會社に損害を被らしめたり
八 頼永鐵太郎、本田吉郎、尾崎五平治は各三河食品株式會社の取締役なる所昭和四年十一月頃募集超過株式六十三株の拂込金三千八十圓を保管中に横領費消したり
九 岡田菊次郎、頼永鐵太郎、本田吉郎、三浦圭介、都築嘉右衞門、岡田庄太郎、稻垣澤吉は昭和五年九月十三日其の任務に背き商法の規定を無視し株主總會の決議を經すして三河食品株式會社の土地建物其の他の全財産を擔保に供し日本興業銀行名古屋支店より金二万圓を借入れ會社に損害を被らしめたり
十 加藤精一は郡農會幹事兼技手の地位にあるを利用して昭和三年六月以降名古屋市東區松山町岡田安次郎より各農家に販賣方を委託せられたる石炭硫黄合劑の賣上代金五百五十二圓六十錢中二百圓を横領したり
十一 加藤精一は右横領の穴埋を爲さむか爲昭和三年十月三十日郡農會の名義を詐稱して安城町農會會計係加藤實を欺き金二百圓を騙取したり
十二 加藤精一は昭和四月八月頃碧海郡依佐美村農會より碧海郡農會に拂込みたる藥品代金二百七十圓を郡農村技手石原一郎に代て受取り之を横領費消したり
仄聞する所に依れは安城警察署か本件檢擧に著手するや首謀者たる岡田菊次郎は逃亡して所在を晦まし知人たる名古屋市辯護士野々山藤重方鰺に濳伏し其の女婿たる水戸地方裁判所鰺勤務某檢事(稻垣彌四郎鰺)は名古屋に出動し同地檢事局に運動を爲し同檢事局は岡崎區裁判所檢事に對し一種の内命を傳へたるやの疑あり一面愛知縣選出某代議士は中央に於て狂奔最努め其の結果檢事局の活動頓に鈍り岡田菊次郎は意を安むして歸宅し共犯者と共に今日に至る迄事なきを得たりとの風聞高く地方民は檢事局か特に本件被疑者を庇護するものに非すやとして其の態度に疑を挾む者尠からすと謂ふ
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員工藤鐵男君提出刑事事件檢擧に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員工藤鐵男君提出刑事事件檢擧に關する質問に對する答辯書
岡崎區裁判所檢事局に於ては本年一月三十日安城警察署より岡田菊次郎外十名に對する横領背任等被疑事件の送致を受け即日取調を開始したるが當時菊次郎の所在不明なりしのみならず其の後引續き他の要急事件輻輳の爲未だ之を完了すること能はざりしも現に取調繼續中なり而して本件の處理に關し他に何等の事情伏在すること無し
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
司法大臣 子爵 渡邊千冬
内務大臣 安達謙藏
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一昨二十三日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第五部選出
決算委員 鷲野米太郎君(八木幸吉君補闕)
一昨二十三日議長に於て選定したる委員左の如し
航空法中改正法律案(永田良吉君提出)外四件委員
春島東四郎君 石橋茂君
菊池良一君 石原善三郎君
澤田利吉君 中島知久平君
永田良吉君 宮川一貫君
坂本一角君
六大都市に關する法律案(森田茂君外十八名提出)委員
小俣政一君 安田耕之助君
廣瀬徳藏君 石川久兵衞君
三宅磐君 本田義成君
上田孝吉君 加藤鐐五郎君
津雲國利君
河川法中改正法律案(山枡儀重君外五名提出)外十件委員
鵜澤宇八君 山枡儀重君
田崎武男君 岡田素臣君
田中祐四郎君 大島要三君
寺田市正君 土倉宗明君
庄晋太郎君
産業組合中央金庫法中改正法律案(由谷義治君外十四名提出)外十六件委員
由谷義治君 松田喜三郎君
牛場清次郎君 中崎俊秀君
西村丹治郎君 鈴木憲太郎君
土井權大君 丹下茂十郎君
助川啓四郎君
出水宮之城間鐵道敷設に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)外六十三件委員
清水徳太郎君 平野光雄君
青木亮貫君 赤塚五郎君
神部爲藏君 岡本實太郎君
高橋壽太郎君 山本實彦君
矢野庄太郎君 田中貢君
崎山武夫君 船田中君
坂井大輔君 樋口典常君
飯村五郎君 猪野毛利榮君
岸田正記君 森本一雄君
禁獵區内に於ける鶴保護及農作物被害賠償に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)外二十七件委員
山内亮君 下元鹿之助君
中島琢之君 加藤六藏君
原吉郎君 青木精一君
岩本武助君 淺石惠八君
東條貞君
大分港修築速成に關する建議案(長野綱良君外二名提出)外五十六件委員
今堀辰三郎君 後藤亮一君
高橋秀臣君 鏑木忠正君
戸部良祐君 本田彌市郎君
水上齊之助君 淺川浩君
池田敬八君 河波荒次郎君
山下谷次君 多木久米次郎君
木下成太郎君 川島正次郎君
守屋榮夫君 佐藤重遠君
久山知之君 清瀬一郎君
間島在住朝鮮人救濟に關する建議案(宮川一貫君提出)外十件委員
櫻内辰郎君 渡邊泰邦君
漢那憲和君 森達三君
服部英明君 辻本豐三郎君
宮川一貫君 砂田重政君
水島彦一郎君
旭川市に高等工業學校設置に關する建議案(淺川浩君提出)外十一件委員
服部教一君 斯波貞吉君
荒川五郎君 林平馬君
小村俊一君 多木久米次郎君
倉元要一君 河上哲太君
山下谷次君
一昨二十三日に於ける特別委員の異動左の如し
辯護士法中改正法律案(北浦圭太郎君外三名提出)外二件委員
辭任 深水清君 補闕 關口志行君
辭任 服部英明君 補闕 木原七郎君
中央卸賣市場法中改正法律案(藤田若水君外四名提出)委員
辭任 上田孝吉君 補闕 牧野良三君
公娼制度廢止に關する法律案(三宅磐君外十名提出)委員
辭任 青木亮貫君 補闕 北浦圭太郎君
辭任 大里廣次郎君 補闕 三浦虎雄君
關税定率法中改正法律案(政府提出)委員
辭任 櫛部荒熊君 補闕 小山令之君
辭任 小野耕一郎君 補闕 岡田素臣君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=0
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