1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月二十四日(火曜日)
午後一時二十分開議
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議事日程 第三十二號
昭和六年三月二十四日
午後一時開議
質 問
一 地方行政の監督に關する質問(菅原傳君外三名提出)
二 綱紀肅正に關する質問(木村清治君提出)
三 小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問(加藤知正君提出)
四 國際軍縮會議に關する質問(田川大吉郎君提出)
五 東京市交通機關の整理統一に關する再質問(田川大吉郎君提出)
六 雪國地帶の鐵道速成に關する質問(八田宗吉君提出)
七 區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問(遠藤千元君提出)
八 航空に關する再質問(永田良吉君提出)
九 航空公債發行に關する質問(永田良吉君外一名提出)
十 軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問(三浦虎雄君提出)
十一 法令の解釋統一に關する質問(森田茂君外四名提出)
十二 足尾銅山鑛煙毒に關する再質問(栗原彦三郎君提出)
十三 刑事事件檢擧に關する質問(工藤鐵男君提出)
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第一 地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出、貴族院囘付)
第二 寄生蟲病豫防法案(政府提出、貴族院囘付)
第三 町村有建物火災保險相互組合法案(三田村甚三郎君外十名提出) 第一讀會
第四 議院法中改正法律案(松本忠雄君外十二名提出) 第一讀會
第五 農會法中改正法律案(八田宗吉君外六名提出) 第一讀會
第六 明治神宮競技に關する建議案(信太儀右衞門君外一名提出)
第七 富山縣立商船學校移管に關する建議案(山田毅一君提出)
第八 福野農學校を高等農林學校に昇格に關する建議案(山田毅一君提出)
第九 國民精神作興に關する建議案(北原阿智之助君外二名提出)
第十 球磨川改修に關する建議案(深水清君外二名提出)
第十一 渡良瀬川上流河川改良促進に關する建議案(栗原彦三郎君提出)
第十二 鬼怒川堰堤に關する建議案(齋藤太兵衞君外一名提出)
第十三 五十鈴川上流清淨に關する建議案(池田敬八君外七名提出)
第十四 日向川改修に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第十五 小名濱港修築竝平小名濱間鐵道速成に關する建議案(木村清治君提出)
第十六 北海道廳警察專用電話擴張に關する建議案(小池仁郎君外一名提出)
第十七 警察費國庫補給金増額に關する建議案(小池仁郎君外三名提出)
第十八 有珠岳洞爺湖登別羊蹄山定山溪及支笏湖を抱擁する國立公園設定に關する建議案(手代木隆吉君外二名提出)
第十九 國立公園指定に關する建議案(小池仁郎君外二名提出)
第二十 磐梯山猪苗代湖を中心とする國立公園設定に關する建議案(八田宗吉君提出)
第二十一 伏木港修築速成に關する建議案(山田毅一君外一名提出)
第二十二 北海道舊土人保護に關する建議案(手代木隆吉君提出)
第二十三 結核患者收容力増加に關する建議案(大里廣次郎君外一名提出)
第二十四 全國町村吏員互助組合に關する建議案(松田喜三郎君外十名提出)
第二十五 差別言動取締に關する建議案(村岡吾一君外二名提出)
第二十六 七尾氷見間鐵道敷設に關する建議案(戸部良祐君外一名提出)
第二十七 二俣佐久間間鐵道速成に關する建議案(永田善三郎君外一名提出)
第二十八 新湊呉羽間鐵道速成に關する建議案(山田毅一君提出)
第二十九 氷見羽咋間鐵道速成に關する建議案(山田毅一君外一名提出)
第三十 城端美濃太田間鐵道敷設に關する建議案(山田毅一君提出)
第三十一 高岡市に鐵道局設置に關する建議案(山田毅一君提出)
第三十二 上山田後藤寺間鐵道敷設に關する建議案(大里廣次郎君提出)
第三十三 二瀬長尾間鐵道敷設に關する建議案(大里廣次郎君提出)
第三十四 大牟田驛三池港間臨港線速成に關する建議案(木村義雄君外一名提出)
第三十五 伊達紋鼈札幌間鐵道速成に關する建議案(手代木隆吉君提出)
第三十六 尻内大館間鐵道敷設に關する建議案(山内亮君外二名提出)
第三十七 江尻驛に急行列車停車に關する建議案(深澤豐太郎君提出)
第三十八 寒河江富澤間鐵道敷設に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第三十九 川崎神町間鐵道敷設速成に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第四十 羽越本線温海驛に急行列車停車に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第四十一 羽越本線鳥海驛新設に關する建議案(清水徳太郎君提出)
第四十二 常磐炭運賃輕減に關する建議案(木村清治君提出)
第四十三 湖南鐵道敷設に關する建議案(八田宗吉君提出)
第四十四 野岩羽鐵道速成に關する建議案(八田宗吉君提出)
第四十五 柳津小出間及只見古町間鐵道速成に關する建議案(八田宗吉君提出)
第四十六 織物消費税法中麻織物に對する免税に關する建議案(戸部良祐君外一名提出)
第四十七 鹿兒島縣に國立煙草試驗場設置に關する建議案(春島東四郎君外二名提出)
第四十八 協力高に對する公債證書給與法制定に關する建議案(寺田市正君外七名提出)
第四十九 戰時の財界混亂竝不當利得防止に關する建議案(服部教一君外三名提出)
第五十 産金政策樹立に關する建議案(木下成太郎君外二名提出)
第五十一 柑橘北米輸出に關する建議案(山道襄一君外十名提出)
第五十二 織物輸出奬勵の爲海外事情調査視察に關する建議案(多木久米次郎君提出)
第五十三 日本萬國博覽會開催に關する建議案(植原悦二郎君提出)
第五十四 貴衆兩院議長副議長及議員優遇に關する建議案(一松定吉君外二十一名提出)
第五十五 恩給法改正に關する建議案(松本忠雄君外十五名提出)
第五十六 原蠶種國營に關する建議案(植原悦二郎君外一名提出)
第五十七 原蠶種國營に關する建議案(百瀬渡君外五名提出)
第五十八 新湊漁港修築に關する建議案(山田毅一君提出)
第五十九 氷見漁港第二期工事速成に關する建議案(山田毅一君提出)
第六十 鰺ケ澤漁港修築に關する建議案(山内亮君外二名提出)
第六十一 米麥混砂搗精禁止に關する建議案(小池仁郎君外四名提出)
第六十二 鬼怒川水利に關する建議案(齋藤太兵衞君外一名提出)
第六十三 國立園藝試驗場設置に關する建議案(菊池良一君外二名提出)
第六十四 無線電信の裝置に關する建議案(小池仁郎君提出)
第六十五 那覇港鹿兒島港間竝那覇港大阪港間命令航路開始に關する建議案(崎山嗣朝君提出)
第六十六 八戸港鮫角に燈臺建設に關する建議案(山内亮君外二名提出)
第六十七 室蘭區裁判所に地方裁判所支部設置に關する建議案(手代木隆吉君提出)
第六十八 大牟田市に區裁判所設置に關する建議案(木村義雄君外一名提出)
第六十九 沖繩縣石垣町竝名護町に區裁判所設置に關する建議案(崎山嗣朝君提出)
第七十 帶廣區裁判所に地方裁判所支部設置に關する建議案(小池仁郎君提出)
第七十一 尼港事件殉難者遺族及被害者の損害賠償に關する建議案(平山岩彦君外六名提出)
第七十二 海外發展に關する建議案(服部教一君外三名提出)
第七十三 軍馬補充部高鍋支部開放に關する建議案(佐藤重遠君提出)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
東北本線川口町驛蕨驛間に電車停車驛設置に關する建議案
提出者
定塚門次郎君 野中徹也君
宇和島港第二種重要港灣指定に關する建議案
提出者
村松恒一郎君 本多眞喜雄君
治水計畫に關する建議案
提出者
八並武治君 岡崎久次郎君
永田善三郎君 堀内良平君
學術研究の振興に關する建議案
提出者
森田茂君 頼母木桂吉君
原脩次郎君 櫻内辰郎君
富田幸次郎君 山道襄一君
小矢部川改修に關する建議案
提出者
山田毅一君 定塚門次郎君
學術研究の振興に關する建議案
提出者
望月圭介君 東武君
鳩山一郎君 加藤久米四郎君
山口義一君 山崎達之輔君
(以上三月二十三日提出)
徴兵優遇に關する建議案
提出者
多木久米次郎君 土井權大君
決議案(議院建築速成の件)
提出者
森田茂君 望月圭介君
決議案(議院圖書館及事務室等建築速成の件)
提出者
森田茂君 望月圭介君
決議案(議院附屬新聞通信記者事務所完成の件)
提出者
森田茂君 望月圭介君
(以上三月二十四日提出)
一昨二十三日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
抵當證劵法案
不動産登記法中改正法律案
民事訴訟法中改正法律案
競賣法中改正法律案
民事訴訟用印紙法中改正法律案
日本勸業銀行法中改正法律案
農工銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中改正法律案
國税徴收法中改正法律案
貯蓄銀行法中改正法律案
輸出生絲檢査法中改正法律案
蠶絲業組合法案
蠶絲業法中改正法律案
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
南滿洲鐵道株式會社政府配當金見積に關する質問主意書
提出者 武藤山治君
(以上三月二十三日提出)
官權濫用に關する再質問主意書
提出者 多木久米次郎君
宮崎縣會の意見書議決取消に關する質問主意書
提出者 佐藤重遠君
(以上三月二十四日提出)
一政府より受領したる答辯書左の如し
衆議院議員菅原傳君提出地方行政の監督に關する質問に對する答辯書
衆議院議員木村清治君提出綱紀肅正に關する質問に對する答辯書
衆議院議員加藤知正君提出小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問に對する答辯書
衆議院議員田川大吉郎君提出國際軍縮會議に關する質問に對する答辯書
衆議院議員田川大吉郎君提出東京市交通機關の整理統一に關する再質問に對する答辯書
衆議院議員八田宗吉君提出雪國地帶の鐵道速成に關する質問に對する答辯書
衆議院議員遠藤千元君提出區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問に對する答辯書
衆議院議員永田良吉君提出航空に關する再質問に對する答辯書
衆議院議員永田良吉君提出航空公債發行に關する質問に對する答辯書
衆議院議員三浦虎雄君提出軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問に對する答辯書
衆議院議員森田茂君外四名提出法令の解釋統一に關する質問に對する答辯書
衆議院議員栗原彦三郎君提出足尾銅山鑛煙毒に關する再質問に對する答辯書
衆議院議員工藤鐵男君提出刑事事件檢擧に關する質問に對する答辯書
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(以上三月二十四日受領)
地方行政の監督に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年二月二十六日
提出者 菅原傳
外三名
地方行政の監督に關する質問主意書
第一 濱口内閣は非募債主義を嚴守し失業、災害防止及防疫施設の爲のみ起債を認可し其の他は之を認可せすとの方針の下に其の趣旨を府縣に通牒し置きなから此等の條件の孰れにも該當せさる宮城送電買收起債申請を昭和五年十二月二十七日に至り急遽認可したる事由如何
第二 宮城送電買收の起債は昭和四年三月十三日主務省に之か申請を爲したるものなり其の後經濟界に異常の變動を生したるに拘らす荏苒其の認可を保留し昭和五年年末迄未解決の儘に放置したる理由如何
第三 宮城送電買收の爲の起債を宮城縣會は昭和三年十二月二十日議決し昭和四年三月十二日主務省に認可申請を爲したるものにして其の後昭和四年及昭和五年の二箇年に亙り貨幤價値は昂騰し物價は激落し經濟界に於ける異常の激變ありしは周知の事實なるを以て主務省は此の事實に鑑み適當の起債額を減少する措置を講せしむへきに拘らす只僅に十三萬餘圓の更正を爲して之を認可したるは監督上頗る不忠實なりと思惟せらるるか如何
第四 「買收價格算定の基本單價は稍高きに失すと認む」とある中の基本單價は現在の電氣事業界に於ける状勢より判斷すへきものと思惟するか如何
「假契約書第九條の適用に付ては現今經濟界の状勢と縣電氣事業將來の收支状況とに鑑み愼重考慮の上成るへく起債額の減少を圖らるる樣」とある中の起債額の減少とは認可起債額より更に適正に減額せよとの意味なりと解すへきものと認むるか如何
「追而償還年次表更正議決の上報告相成度」の議決とは縣會の議決を要するの義なりと信するか如何
第五 左記各項に關する宮城縣知事の處置は頗る當を失するものと認む政府は監督上適當なる措置を講するの意思なきや
一 宮城送電買收に關し昭和三年十二月二十日電氣事業財産買受の件、昭和四年度電氣事業費歳入歳出追加更正豫算、電氣事業繼續年期及支出方法、電氣事業起債及償還方法の四議案を可決し其の起債及事業の認可許可の申請を爲したるも昭和四年度決算に於て「買收を了せさるに付不用額として控除す」との説明書を附して當該豫算を削除し全然之を昭和五年度豫算に計上せさりき然るに昭和五年十二月二十七日急遽主務省に於て起債認可ありたるを奇貨とし既定議決額に五分の更正を加へ執行權の範圍に屬すと稱して一度不用額として決算したる豫算を實行せむとし敢て縣會に付議せさる點
二 昭和五年十二月二十七日起債の認可ありたる以來同六年二月十三日迄何等適法の措置を講せす縣會議員より本件に關し縣會招集の要求ありたるに際し突如として急施案件なりとの名目の下に縣參事會に付議強行したる點
三 昭和六年二月十三日急施案件として宮城送電買收追加更正豫算を縣參事會に付議する以前同年二月三日縣會議員有志か府縣制第五十一條第二項但書に依り急施臨時縣會を招集され度き旨適法に要求し居るに拘らす意見の相違なりとして縣會招集に應せさる點
四 宮城送電買收問題は縣下に於て囂然たる輿論の沸騰を見つつあり本件は縣民の負擔に重大なる關係を有するものなるか故に出來得る丈け縣民の意思を尊重し公正に決定するを適當なりと認む然るに知事は言を左右に託して縣會の招集を肯せす縣民多數の利益に關する緊急重要なる問題に對し縣會の意見を聽取せす寧ろ之を排除せむとしつつある點
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員菅原傳君外三名提出地方行政の監督に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員菅原傳君外三名提出地方行政の監督に關する質問に對する答辯書
第一 政府は宮城縣電氣事業統一の方針を徹底し且縣電氣事業經營上の安定を期する爲め縣に於て宮城送電興業株式會社を買收することは緊急已むを得ざるものと認めたるに依る
第二 本件會社買收に關する起債申請は昭和四年三月十五日之を受理したるも審査を要する事項甚だ多數なる爲め政府は知事との間に屡照復を重ね愼重調査の結果昭和五年十二月二十七日に至り許可の指令を發するに至りたるものにして荏苒其の許可を保留し置きたるに非ず
第三 本會社買收に關する起債申請後經濟界に相當の變化ありたるは事實なるも會社買收價格決定の基礎たるべき電力料金の如きは必ずしも一般物價の下落に隨伴して低落するものに非ざるを以て政府は本件買收價格を縣と宮城送電會社との現實買電契約料金を基準として買收價格を算定するを妥當なるものと認め此の計算に依り起債額を減額更正許可したり
第四 買收價格算定の基本單價は現在の電氣事業界に於ける情勢より判斷し前項の如く現實の契約料金を基準とするを最も妥當なるものと認め從て縣申請額は稍稍高きに失するものと思考せり而して通牒文中に「成るべく起債額を減少云々」とあるは縣が買收の執行に當りては更に契約條項に基き會社と協定の上起債許可額より適當なる額を減少せしむるの意にして又「追而償還年次表更正議決の上云々」の「議決」とは府縣制上の相當なる議決機關の議決の義なり
第五 縣は昭和四年度に於ける當該買收費豫算を削除したる事實なく唯其の豫算は起債竝繼續費の許可なかりし爲め自然執行不能に了りたるに過ぎず從て「其の許可後更に之を設定するを適當と認め」昭和四年度決算に於ては「不用額を生したるは宮城送電興業株式會社買收を了せさる等に由る」と附記せり而して昭和五年十二月二十七日之が起債竝繼續費の許可ありたるを以て縣は昭和六年二月十三日縣參事會の議決を經て昭和五年度豫算に追加計上したるものなり又宮城送電興業株式會社の買收に付ては愼重調査を遂け本年二月漸く適當なる成案を得たる處本件は既に昭和三年通常縣會に於て愼重審議の上決定を見たる事件なるのみならず本件買收事務は年度内に於て急速完了するの要あるを以て縣會を招集することなく直に縣參事會に附議し其の議決を見るに至りしものなり尚本件買收に關する意見書の呈出に關しては二月二十三日議員より適法の請求書を提出せしを以て即日三月九日臨時縣會を招集する旨告示せるものなり以上本件に關する宮城縣知事の措置に付ては別に失當の點あるを認めず
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
内務大臣 安達謙藏
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綱紀肅正に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月六日
提出者 木村清治
綱紀肅正に關する質問主意書
福島縣知事か村長選擧に干渉壓迫を加へたる事實
福島縣石城郡大野村長の任期は昭和五年十二月十七日にて滿期と爲るへきものなるを以て當時の村長は十二月二日、三日の兩日村會を招集せしか選擧を執行するに至らすして散會せり之より先十一月三十日木田剛(後任村長に當選せし中野幸平の近親)は民政系村會議員及中立と認むへき議員を自宅に所謂鑵詰と爲し爾後十二月二十八日に至る迄殆と一箇月間時に或は各所に連行鑵詰と爲し此の間常に暴力團を以て包圍し全く議員の自由を束縛せり而して村長任期滿了後の十二月二十三日に開きたる村會は助役の招集したるものなるか此の招集は全然助役の意思に依り招集せられたるものに非すして木田剛及民政黨石城部會幹事長萩原某の兩人出縣の上知事と密謀して十二月二十日福島市より助役の名を藉りて村會招集の電報を發したるものなり右は同日午後十一時三十分著の電報に依り明瞭なりとす加ふるに被鑵詰議員に發せし招集は全部之を居住地に發せす木田剛方に發し被鑵詰議員亦同所に於て之を受領せるは實に奇怪なり然るに此の十二月二十三日も亦村長選擧を爲すに至らすして村會散會するや木田剛及縣會議員若松某は助役に辭職を強要し目的を達するや急遽出縣臨時代理村長の選任を知事に圖り知事をして之を實行せしめたるは翌二十四日午後八時頃同役場に到著したる電報に依り明瞭なる事實とす其の電報左の如し
きだたけし(四)りんぢだいりそんちように五せんす(二)
斯の如くにして木田剛は十二月二十五日直に代理村長に就任し十二月二十八日村會を招集し被鑵詰議員全部を自動車にて自宅より議場に出席せしめたり此の間暴力團をして包圍し自由を束縛せること鑵詰當時と異ならす當日村會開會するや縣會議員若松某の子分と定評ある數名の無頼漢を入場せしめ議員か發言するやぐづぐづ謂ふと小松幹夫(此の者は隣郡の者なりしか數日前刺殺されたり)の二の舞なり抔暴言を以て脅迫し議員の言動自由をも阻止し遂に木田剛は近親中野幸平をして村長に當選せしめたるなり
以上の事實の中心人物は木田剛なること一點疑ふの餘地なし然るに知事は殊更に渦中の中心人物をして臨時代理村長に選任したるは計畫的のものなること亦疑ふの餘地なきものとす殊に議場に無頼漢を入場せしめて議員の自由意思を奪ふか如きは計畫的策謀と見るを當然とすべく下級自治團體の自由を全く蹂躪したる不當不法の行爲なりとす國務大臣の一言一行以て天下の儀表たらさるへからすと共に地方長官の一擧一動亦縣民の儀表たらさるへからす然るに右の事實は妄に下級自治體に干渉壓迫を加へたる非違の行爲と認む之に對する政府の所見如何
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員木村清治君提出綱紀肅正に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員木村清治君提出綱紀肅正に關する質問に對する答辯書
福島縣石城郡大野村長選擧に關し質問書に謂へるが如き干渉壓迫を加へたる事實あるを認めず
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
内務大臣 安達謙藏
小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月七日
提出者 加藤知正
小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問主意書
昨年以來深刻なる財政不況の結果市町村の財政は著しく窮乏に陷り夫れが爲に市町村立小學校教員俸給の不拂又は支拂延期を爲すもの續出し文部省の調査に依るも既に八百六箇町村(昭和五年十二月現在二百十一箇町村)の多數に及んで居る殊に甚しきは寄附強要(教員俸給の一割乃至二割五分)の目的を以て支拂延期を爲しつつあるものが五府縣百七十餘箇町村に達して居るとのことである萬一斯の如き事態の繼續を見るに於ては國民教育上憂慮すべき影響を生ずる虞あるは勿論市町村義務教育費國庫負擔法制定の根本目的を破壞する由由しき文政上の大問題である
元來俸給は生活保證である而して之が不拂の際と雖民事訴訟、行政訴訟又は訴願に依つて之が救正を圖る途が拓けて居ない然るに今や全國一萬數千人の小學校教員は俸給の不拂又は支拂延期の爲に極度に生活の脅威を受けつつあるが之は謂ふ迄もなく社會問題として亦人道問題として等閑に付せらるべき問題ではない況んや俸給支拂延期の手段に依つて何等義務なき寄附行爲を強要するものさへありと聞た斯の如きは明に刑法第二十五章第百九十三條の涜職の罪に該當するに於てをや實に是れ刑法上の問題と謂はねばならぬ思ふに市町村義務教育費國庫負擔法は大正七年寺内内閣の時に始めて制定せられたのであるが當時此の法律の制定せられた趣旨は大正七年四月八日の文部省訓令に明に記されて居る即ち「我か小學教育施設の綱領は教育に關する 勅語の 聖旨を奉體して益益力を國民道徳の振興に致し牢乎拔くへからさる國家的精神を養ひ又克く時勢の進歩に順應して内は國運の發達に貢獻し外は國際競爭場裡に立ちて帝國の使命を完うするに足るへき國民を作るに在り小學校教員たるもの須く其の職責の重大なるを自覺し常に徳操の向上と學力の進歩とに努め拮据勵精其の天職を盡さんことを期せさるへからす」と掲げてあるが如く國民教育の重大なるに鑑みて一般小學校教員の待遇改善を圖ると共に將來益々其の振興を促し以て國家の根柢を鞏固にして國運を伸展せしめんが爲に制定せられたるものであることは明である而して市町村義務教育費國庫負擔法の制定せられたる當時は僅に一千萬圓に過ぎざりしが今日に於ては八千五百萬圓の巨額に上り町村平均六千圓市町村平均七千圓の交付金を受くるに至つた殊に特別町村の中には教員俸給費の九割八分に該當する交付金を受くるもの三十六箇町村に達して居る而して市町村平均五割以上に上つて居る從って市町村義務教育費國庫負擔金の交付方法を直接交付するか又は之を特別會計に改むれば尠くとも小學校教員の最低生活を脅威するが如きことはない然るに市町村をして交付金を他の費目に濫用せしめ以て教員俸給の支拂延期を敢てせしめつつあるは明に地方財政監督怠慢の責あるは勿論是れ畢竟交付方法に大なる缺陷を有するが爲である
我が國は今や思想國難に直面して居る殊に憂慮に堪えざるは最近我が國學生の思想惡化である而して更に恐るべきは小學校教員の思想惡化でなければならぬ萬一今日の如き俸給不拂の状態を繼續するに於ては誰人と雖小學校教員の思想惡化せずと斷言し得ないであらう政府は曩に官吏減俸案を提出し輿論の反對に周章狼狽して之を撤囘せるに拘らず獨り薄給なる小學校教員の減俸のみを默認しつつあるかの如き疑を抱かしむるは甚だ奇怪至極である何れにせよ教員俸給不拂又は支拂延期の國民教育に及ぼす影響は或は之が爲に國民教育の基礎を根柢より覆す恐れなしと斷じ得ない以上の趣意に依り左の條項を文部大臣に質問せんと欲するものである
一 小學校教員俸給不拂の市町村に國庫負擔金の交付を中止する意思なきや
二 小學校義務教育費國庫負擔法に依る交付金を他の市町村費に濫用し教員俸給の不拂又は支拂延期を爲しつつある市町村に對し如何なる處置を講じつつあるや
三 俸給不拂又は支拂延期に依る小學校教員の思想惡化に對する對策を問ふ
四 小學校義務教育費國庫負擔金の交付方法を市町村豫算を通さず國庫より直接に交付するか然らざれば之を特別會計とするの意思なきや
五 俸給不拂の手段に依って義務なき寄附行爲を強要するものありとすれば明に職權濫用の罪(刑法第二十五章第百九十二條涜職の罪)に該當す文部當局は斯る不法行爲ある場合は之に對し如何なる處置を執らんとするや
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員加藤知正君提出小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員加藤知正君提出小學校教員俸給不拂及寄附強要に關する質問に對する答辯書
近時町村中往々にして小學校教員に對し俸給の不拂若は支拂延期を爲し又或は寄附を需むるものあるを見るは甚だ遺憾とする所なり而して斯くの如き事態の發生は現下財界不況の影響を被り町村税滯納の激増其の他收入の減少に依り財政窮乏の餘儀なき事情に由るものなりと認めらるるも斯くの如き事態の繼續を見るに於ては小學校教員の生活の安定に脅威を來さしめ延いて國民教育上憂慮すべき影響を及ぼすことなきを保し難きものあるを以て昨年來地方長官會議に於て關係事項に關して訓示し尚特に府縣學務部長會議を兩度に及びて招集し地方の情況を聽取し之が匡濟方に付協議を重ね又屡次通牒を發する等府縣を督勵して事態の改善に力めしむると共に教育當事者をして其の本分を過らしめざる樣注意しつつあり
質問に係る各條項に付ては左の通り承知あり度し
一 小學校教員俸給不拂問題に付ては當局に於て絶へず府縣を督勵し其の改善に焦慮しつつあるところなるが由來斯の如き事柄は市町村當局者をして自省せしむるに努むべく之が爲國庫負擔金の交付を中止するが如きことは機宜を得たる措置にあらず
二 市町村義務教育費國庫負擔法に依る交付金を受けたるにも拘らず其の金額を教員俸給に充當せず他の費途に充當し教員俸給の不拂又は支拂延期等をなすが如きは明に負擔法の精神に反し國民教育上甚だ遺憾なる次第に付當局に於ては學務關係者の會議を開催して對策を協議し又數次之が取締に關する通牒を發する等諸種の方法を講じ嚴重に之を監督せしめつつあり
三 小學校教員の俸給の不拂又は支拂延期に關し教員の思想上に及ぼす影響如何に就ては深甚の注意を拂ふ所なるが俸給の不拂又は支拂延期は結局に於て概ね一、二箇月の延拂に止り且其の由て來る所多くは町村税滯納の激増其の他町村收入の減少に依り町村財政の窮乏に存するものなることは小學校教員に於ても親しく町村に在りて具に諒解する所なると其の教養の然らしむるとに依り其の思想の惡化を來すに至らざるものと認むるも斯くの如き事態の繼續は憂慮すべき影響を生ずるの虞ある次第なれば府縣を督勵して事態の改善に力を盡さしむると共に斯る時局に直面し教職員の教育精神の鼓舞作興に力め國民教育の進運を害せざらんことを期せり
四 市町村義務教育費國庫負擔金の交付方法を市町村豫算を通さず國庫より直接に交付するやう改正すること及び之を特別會計とすることに付ては何れも種々研究を要する點あるを以て攻究中に屬す
五 公務員にして教員に對し俸給不拂の手段に依りて義務なき寄附行爲を強要するが如き不法行爲ありとせば之に對し嚴重なる取締方法を講ぜしむるに躊躇せざる所なるも小學校教員の俸給の寄附に關しては特に府縣に通牒を發して嚴重に監督せしめつつある次第も之れ有り質問の如き手段に依り寄附行爲を強要するが如きことは之れなきものと認む
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
文部大臣 田中隆三
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國際軍縮會議に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月七日
提出者 田川大吉郎
國際軍縮會議に關する質問主意書
國際聯盟が多年努力して來た列國の一般軍縮會議は愈々明年二月を以て開催せらるることになつた帝國は國際聯盟常任理事國の一として必らず同會議に參加せらるるだらうと推測せられる
一 帝國政府は明年の一般軍縮國際會議に參加せらるるであらうか
大正十年帝國政府が華府會議に參列した際には海軍力の比率に關する方針は熟議されて居なかったと見ゑ出先代表者の間に或は六割説を唱へた者があり或は七割説を唱へた者があつた明年の軍縮國際會議には再び此の如き憂ひなからしむべく其の一手段として準備調査會を開かるるであらうと思はれる
二 帝國政府は一般軍縮國際會議に對する方針決定の爲準備調査會を開かるるであらうか
昭和五年「ロンドン」會議に臨むに際しては政府は帝國の方針此に在りと三大原則を聲明せられた其の通り熟議して居られたものと見ゑる然しながらそれは專門家のみの凝議の結果であつたらしく其の後の國論沸騰の跡に徴すれば深く疑ひなきを得ない
三 帝國政府は右一般軍縮會議に對する方針決定の準備調査會には軍務當局者の外内政財務の當局者練達者其の他反對黨の首領等を網羅し情理を曲盡することを必要と思惟せられざるか
華府會議の後帝國政府は急に巡洋艦三億六千八百八十六万圓の建造計畫を立て其の影響として列國の競爭を馴致し其の後の海軍縮小會議の進行を困難ならしめたものがあつた現に華府會議の際米國は巡洋艦二十五万噸を要求したに對し「ロンドン」會議に於ては反つて三十二万噸を獲得するに至つた今年度に於ける我が三億七千四百万圓の計畫の結果如何其の將來も尚懸念に堪へないものがある明年の軍縮國際會議に對しては此の如き軍縮を求めて反つて軍擴となる如き前車の轍を履まぬ樣深く注意を加ふべきであるそれには政府に於て一層熱心誠實なる特別の調査決心を加へらるべきであると思ふ
四 帝國政府は明年の軍縮國際會議に對し既往の海軍縮小會議の經過結果等に鑑み一層熱心に盡力されつつあるであらうか果して然らば其の現に見るべくもの如何近く見らるべきもの如何
五 帝國政府は明年の軍縮國際會議が既往の海軍縮小會議よりも多く有效の成果を期待し得べき可能性ありと認めらるるか若し然りとせば其の根據如何若し然らずとせば其の根據如何
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員田川大吉郎君提出國際軍縮會議に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員田川大吉郎君提出國際軍縮會議に關する質問に對する答辯書
一 帝國政府は昭和七年二月開催せらるべき軍縮會議に欣然參加する意圖を有す
二 前記軍縮會議に於ける帝國政府の對策決定に當りては周到なる準備研究を要すべきに依り目下夫々關係當局に於て研究中なるも之が爲特別の機關を設置するや否やに付ては考慮中なり
三 前項を參照せられんことを望む
四 帝國政府は公正なる立場に於て帝國國防に支障を生せざる限り軍縮の實現に努力しつつあるものにして從來の軍縮會議に於ても此の主義を以て其の成功に協力し明年の軍縮會議に對しても亦右主義の下に誠意を以て之が目的達成に努力すべく目下鋭意準備中なり然れども其の内容に關しては未だ之を明示し得るの域に達し居らず
五 軍備制限問題の複雜にして各國の利害相錯綜せる等に鑑み同會議の實質的成果に關しては目下の處豫測し難きも帝國政府に於ては同會議が一層有效なる成果を齋すべきことを期待し居るのみならず各國に於ても同樣の期待を有し居り歐米諸國就中歐洲大陸に於ては目下各般の懸案殊に軍縮及安全保障に關する諸問題を速に解決し以て右會議の成功に資せんと努力しつつあるの現状なり
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
陸軍大臣 宇垣一成
外務大臣 男爵 幣原喜重郎
海軍大臣 男爵 安保清種
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東京市交通機關の整理統一に關する再質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十日
提出者 田川大吉郎
東京市交通機關の整理統一に關する再質問主意書
政府は本問題に關する本員の質問に對し曩に已に囘答せられたるも不滿の點少からず茲に再び質問を試むるの已むを得ざる次第である
東京市の交通機關の現状は何としても遺憾に堪へない之を改善し整備する方法の一として本員は機關の統一を掲げたのである故に本質問としては東京市の交通機關の不便不備混雜の現状が前提條件である敢て問ふ
一 政府は東京市の交通機關の現状を以て左まで不便ならず不備ならずと考へらるるか
二 若し現状を世評の如く不便不備なりと認めらるるに於ては之を改善するに何等の方法を以てすることを適切有效なるべしと思考せらるるか
政府は東京市をして諸機關を統一せしむるを理想と申さるる一方に市財政其の他一般經濟界の現状に於て之を強要すること能はざるの事情あるを認められたが東京市の財政は現に太だ窮乏せるのみならず實は其の賦與せられたる財政力が元元太だ薄弱なのである現に六大都市の市制改正運動の一端は此の財政力の問題に觸れて居る更に問ふ
三 政府は東京市の財政力を現制以上に擴張し得せしむるの意なきか
東京市は帝國の大都市としての施設に努むべきのみならず更に帝都としての經營措置に大に努めざるべからざる特別の責任を有す此の點に於て東京市が現に有する權限は海外諸國の例に較べ餘りに薄弱である更に問ふ
四 政府は東京市を帝國の首都として他の都市以上に特別の權能を與へ特別に擁護し其の施設を充實せしむるの意なきか
「ロンドン」政府として「ロンドン」の府市が現に有する權限はかなり廣汎であるそれに拘らず英國政府は「ロンドン」市の交通機關統一の爲現に特別の一局を創設するに至つた其のことは前質問主意書に於て本員の言及して置いた所である有力なる「ロンドン」政府のあるに拘らず尚此の新機關特設の必要がある其の權力に於ても財力に於ても數等微力なる東京市の現状に於て此の種の機關の必要なることは言を待たぬと思はるるのであるが更に問ふ
五 政府は東京市交通機關の整理統一の爲例へば「ロンドン」市のそれの如く有力なる特別の一機關を創設するを適當必要と思はれざるか
尚又東京市は從來の地下鐵道建設の方針を抛ち之を民間企業者に讓渡せんとするの説がある之は新聞紙の傳ふる所であるが政府の前答辯書に示された方針に照して考ふれば此の如きは政府の決して希望せられない所であらうと思はれる更に問ふ
六 政府は東京市が地下鐵道を自ら經營せんことを固く希望せらるるか
七 果して然らば政府は東京市に對し東京市が地下鐵道を經營するに必要なる財力を充し得ん爲何等かの指導若くば援助を與ふべく現に考慮中であらるるか
右及再質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員田川大吉郎君提出東京市交通機關の整理統一に關する再質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員田川大吉郎君提出東京市交通機關の整理統一に關する再質問に對する答辯書
一 政府は東京市の交通機關の現状を以て滿足するものに非ざるも甚だしく不便不備なりと思惟せず
二 一層合理的經營を爲すを可とすべし
三及四 東京市に對し他の都市以上に財政能力を擴張し其の他特別の權能を與ふることに付ては目下大都市制度調査會を設け他の大都市と併せて之か調査を爲しつつあり依て政府は其の調査の結果を待って考究すべし
五 政府は目下東京市交通機關の整理統一の爲特別の機關を創設するの必要を認めず
六 政府は東京市か財政其の他の關係上出來得れは自ら地下鐵道を經營することを希望す
七 政府は東京市に對し其の地下鐵道を經營する爲必要なる財力を充し得る樣機を得て勸奬すべし
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
鐵道大臣 江木翼
内務大臣 安達謙藏
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雪國地帶の鐵道速成に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月九日
提出者 八田宗吉
雪國地帶の鐵道速成に關する質問主意書
雪國地帶に於ける冬季の交通か甚た不便なるは想像の外にして貨物の運搬は勿論一般住民の交通をも杜絶すること十數日に及ふは敢て珍しからす又交通杜絶せさる間と雖物資の運搬は橇に依る外なく運搬力乏しきを以て物資の供給十分なる能はす從て文化の恩惠に浴すること少く産業の發展亦期すへからす此の故に本員等は毎議會毎に鐵道速成に關する建議を爲し其の普及を急務として熱望しつつある次第なり政府は鐵道の普及せさる地方に對し自動車を以て之に代ゆるの方針なるか雪國地帶に於ては冬季十一月より翌年四月に至る五箇月間は自動車の通行不可能にして自動車は冬季の交通機關たるに適せす即ち雪國地帶にありては冬季には鐵道に依る外適當なる交通機關なし然るに是等雪國地帶に於ける鐵道の豫定線は何れも建設遲延し殊に現内閣に至り福島縣會津地方の如き田中内閣に於て既に建設豫算を計上し而も議會の決議を經たる喜多方日中線を打切り西米澤八谷間の豫定線を削除し沿線民をして悲憤の涙に咽はしめ柳津小出間田島今市間未成線の如き未た著手せらるるに至らす野澤柳津間廣田白河間の湖南鐵道坂下喜多方間等多年會津地方民の熱心なる請願及建議の可決せられたる線路は一も其の顧みる所とならす此の地方の文明は現内閣出現の爲十年遲延せりと呪咀するものあるに至れり由來積雪多く交通不便なる南會津、大沼郡西部一帶所謂御藏入方部に屬する地方に於ては米穀の購入に當り市街地より小包郵便に依るは寧ろ其の運賃低廉なるの故を以て米一升の小包便各郵便局に堆積の情況なるは昭和の聖代に於て殆と信し能はさる悲慘の現状なり政府は建設財源に乏しと謂はむも假に通行税の如き之を復活して特別會計に移すを得は毎年一千三百万圓の財源を得へく若槻内閣の廢止せる通行税の復活は社會政策的見地より不可と爲さむも通行税の如き電車汽車汽船に乘用する都度納付する一錢二錢の金錢は個個の立場より見るときは極めて微細にして之に依て苦痛を感するもの殆と絶無なるへく況や交通機關完備し之を十分利用し得る地方の住民か雪國地帶に於ける多數住民の不利不便を想像せは微細なる通行税の如き之を復活するも交通機關の便なる地方に鐵道を普及するを至當と爲すへし
政府は是等雪國地帶に於ける未成鐵道の速成を期するの意なきか如何
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員八田宗吉君提出雪國地帶の鐵道速成に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員八田宗吉君提出雪國地帶の鐵道速成に關する質問に對する答辯書
鐵道の敷設は公衆の受くる交通上の利益、地方文化竝産業に及ぼす影響、鐵道の受くる輸送竝經濟上の便益、鐵道の系絡大成上よりの觀察、水陸聯絡及國防上の關係、工事の難易、鐵道分布の状況等を比較考量し且財政政策と相俟ちて其の緩急の順序を定め之を敷設せむとする方針にして雪國地帶の交通不便を救ふことも素より考慮するを要するも之のみを以て遲速を決し難し
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
鐵道大臣 江木翼
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區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月九日
提出者 遠藤千元
區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問主意書
東京市に於ける復興建設に因る小學校校舍の移轉補償金は左記各項の事情に依り區の收得すへきものと思料す
一 小學校校舍の移轉補償金は復興局及復興事業局より區長の申請に基き區か收得せるものなるを以て市か漫に沒收すへき何等の理由なし
二 然るに東京市長は東京市立小學校建設費補給規程第五條第十三條及第十六條に依りて市か取得すへきものなりとして自己の任命したる區長と通謀し當然協贊を要すへき區會の決議を經すして之を沒收したり
イ 第五條に於ける「校地の收得及校舍建築に關聯する收得金に補給すへき建設費中より控除す」とあれとも移轉補償金は校舍建設に關聯する收得金に非さることは論を俟たさる所なり
若移轉の跡に校舍建築を爲すか故に建築に關聯するものと速斷するか如きことあらは誤解謬見も亦甚しと謂はさるへからす
即ち移轉費と建設費とは自ら其の性質を異にし全然別途のものにして移轉補償金は建設費を含蓄せさる移轉費たることは極めて明白なるものなり斯の如くなるか故に校舍建設に關聯せさることは一點疑ふの餘地なきものなり
ロ 第十三條に於ける「土地建物處分に依る收得金は新に取得する校地校舍の建設費に充當すへし」とあれとも移轉は處分に非さることは頗る明瞭にして即ち移轉補償金は校舍校地の處分金に非さるを以て第十三條に依りて新に取得する校地校舍の建築費に充當すへきものに非す
ハ 第十六條に於ける「校舍の全部又は一部廢止の場合に於ては補給を受けたる割合に應し收得金を納入せしむ」とあれとも移轉補償金は決して同條の廢止に該當せさることは一點疑義の餘地なきものとす
以上の如く該補給規程に何等準據すへき理由なく漫に市か移轉補償金を區より沒收せるは明白なる違法行爲なり
三 區長の申請に因り區か收得したる區有財産たる移轉補償金に對し區會の協贊をも經すして區長と通謀し市か之を沒收したるは明に市制の條文を無視したる不法の行爲なりとす
四 殊に該移轉補償金中には區有財産たる幾多の動産及區の營造に係る建築物竝校具植木等に對する移轉補償金も共に含蓄せるものにして之をも建築費に對する補給金より控除せしは何等の理由なきのみならす不當も亦甚しきものとす
五 新築校舍の建設費は市の補給金と區費を合して建設したるものにして今假に百歩を讓りて移轉補償金は第十三條の處分なりと看做す場合と雖該補給規程には補給金より控除すとの條項なく新に取得する校地校舍の建設費に充當すへしとあり即ち建設費中に於ける區費支辨金に充當すへきものと解するを正當なるものと思料す
六 新築校舍の建設は總て區の經濟を以て之を爲せり勿論市より交付せられたる補給金を含蓄せるものなれとも市の補給規程に依り市か交付したる該補給金は區經濟中に歳入したるものなり而して該移轉補償金も亦當然區の取得すへきものとして之を區の歳入經濟に繰入れ以て毎年度の歳入歳出の豫算を作成し而して之に依る決算書を作り區會の審議協贊を經て監督者たる東京府知事竝東京市長に具申し被監督者たる義務を完全に果せり
若其の豫算決算面に於て違法の點ありとすれは監督者は其の監督權の出動行使に依りて注意反省を促し又は其の訂正を命し被監督者の非違を矯正せしむへく萬遺憾なきを期せらるる筈なるに拘らす大正十三年度より昭和五年度に至る永年間何等の注意等も之なかりしことは明に適法なる豫算決算として之を承認したる證左にして區か該移轉補償金を當然區の取得すへきものたる確信を強固ならしめ逐年區歳入に計上したるは蓋當然の措置なりとす
七 東京市は其の議決機關の議を經て「バラツク」建假校舍は全部無償にて區に之を交付し區は區費支辨に依り必要に應し之か修理改造を行ひたり
若夫れ法の不備條例規程の缺點に依る責任は當然監督者及東京市當局の負ふへきものにして被監督者たる區の負ふ義務の存せさることは勿論なる次第なりとす
以上の事由に依り小學校移轉補償金は區の取得すへきものと思料す最高監督者たる内務當局は本件に關し如何なる見解を有せらるるや
右及質問候也
本質問に對しては書面を以て答辯あらむことを望む
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員遠藤千元君提出區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員遠藤千元君提出區劃整理に際し東京市の小學校舍移轉補償金に對する不當處分に關する質問に對する答辯書
帝都復興事業たる土地區劃整理の施行に因り移轉を命ぜられたる東京市の小學校舍の移轉補償金は校舍の所有者たる區に之を交付したるも東京市が區に對し小學校舍建設費の補給を爲すに當りては區に於て交付を受けたる移轉補償金が移轉の爲支出したる費用より少きときは不足額を市より補給し交付を受けたる移轉補償金が移轉費を支辨して殘額あるとき及舊假校舍の賣却代の收入あるときは校地の取得及校舍建築に關聯する收得金として東京市立小學校建設費補給規程第五條の規定に依り本校舍建築費より控除して本校舍復興建築補給金を算定し各小學校毎に學務委員會に諮問して決定したるものにして右補給に當り執りたる處置に關しては小學校移轉補償金に對し不當なる處分ありたりと認めず
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
内務大臣 安達謙藏
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航空に關する再質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十日
提出者 永田良吉
航空に關する再質問主意書
一 去る三月八日代々木に於ける陸軍飛行演習椿事の原因及事件一切の顛末如何
二 日支定期飛行開始未解決の理由如何
三 福岡、鹿兒島、大島、沖縄、臺灣間定期飛行開始に關する政府の所見如何
四 航空院若は航空省設置に關する政府の所見如何
五 内閣直屬の航空審議會開設に關する政府の對策如何
六 飛行場増設に關する政府の對策如何
七 航空學校等航空研究機關設置に關する政府の所見如何
八 航空工業補助奬勵に關する政府の對策如何
九 國内航空輸送事業速成に關する政府の對策如何
十 國民一般航空思想涵養に關する政府の所見如何
十一 東亞に於ける制空權獲得に關する政府の對策如何
十二 歐亞航空連絡に關する政府の對策如何
十三 太平洋竝南洋航空に關する政府の對策如何
十四 我か國陸海空軍充備に關する政府の對策如何
十五 陸軍航空兵力裝備に關する缺陷及急務如何
十六 民間航空勢力は陸海空軍の豫備隊なり我か國民間航空勢力は貧弱なり國防上不安なきや如何
十七 大演習に於ける陸軍航空兵力の少き理由如何
十八 陸軍に水上飛行機を使用せさる理由如何
右及再質問候也
答辯は口頭を以てせられむことを望む
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員永田良吉君提出航空に關する再質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員永田良吉君提出航空に關する再質問に對する答辯書
一 三月八日代々木上空に於ける航空「ページエント」に方り航空本部主催航空演習實施中煙幕展張に際し降下せる煙幕劑の一部氣化不十分なりし爲之を蒙りし觀衆の顏面、皮膚に斑點を生し衣類其の他に燒痕を附するに至りしものなり本煙幕劑は鹽化「スルフオン」酸を主體とする液にして過去數囘の實驗に徴するに高度一五〇米以上を以てする時は氣化完全なるものなるも當日は觀衆竝天候の關係を顧慮し特に高度を三〇〇米に高め且展張位置方向等にも細心の注意を拂ひ實施せるに拘らず地上附近の風速は豫想外に氣化不良を招來し構成せられたる煙幕劑は完全に氣化するの暇なく噴霧状態の儘降下せるものとす
事件發生と共に軍部は直に被害の調査竝救護慰藉に力め三月十三日より十五日に亙り航空本部をして申出の被害者に對し慰藉又損害補償を爲さしめ何れも圓滿なる解決を遂げつつありて引續き善後處理に關し萬全を期しあり而して責任者の處分に就ては即日搜査處分を開始し目下尚調査中にして其の決定は未だ明示し得るに至らざるも本事態の發生に對しては軍部として遺憾の意を表する次第なり
二 日華定期飛行開始に付ては引續き國民政府當局との間に交渉進行中なるか未だ右交渉内容を發表し得べき時期に達せず
三 内地臺灣間航空路を設置し定期航空を實施するは内臺間交通の便益を増進する爲極めて緊要にして政府に於ても夙に考究中なるが之が爲には相當の經費の支出を要するを以て將來財政の許す限り可成速に其の實施を庶幾せむとす而して其の始點終點及寄航地に關しては調査中なり
四 航空行政機關の統一に關しては政府に於ても夙に研究中にして民間航空事業の奬勵指導等は既に遞信省に於て又基礎的學理の研究は文部省に於て統一せられあるも一般器材の製造及研究機關の統一は陸海軍民間各々其の用途に從ひ要求する所異るのみならず本邦の如く陸海軍航空技術の個々に發達せる状態に於ては其の實施に付幾多困難の事情あり從て航空院若は航空省設置に關しては猶愼重考究中なり
五 航空に關する調査審議機關を設置すること竝之を内閣直屬とすべきや等に關しては政府に於て夙に考究中に屬す
六 既に飛行場を設置し又は設備中なる東京、大阪、福岡の各都市以外の都市に飛行場を設置することに關しては航空路開設計畫等と關聯して研究調査中なり
七 民間航空機乘員の養成に關しては政府は夙に之が養成の制度を設け操縱士は之を陸海軍に又機關士は之を東京府立工藝學校に委託し教育しつつあり而して將來獨立の教育機關を設置するか否かに關しては考究中に屬す
八 政府は夙に奬勵金を交付して飛行機體及發動機の設計又は試作を行はしむる等其の發達を助長し居れり
九 政府は諸般の施設を完備して斯業の發達を促進する樣努力し居れり
十 政府は各般の手段を講じて極力航空思想の涵養に努め來りたるが航空の重要性に鑑み將來に於ても一層之が普及を圖らむとす
十一 政府は東亞に於ける帝國の地位に鑑み國防上竝經濟上重要なる關係を有する航空の發達に關し萬遺漏なきを期しつつあり
十二 歐亞間の航空連絡に關しては政府は關係列國と協調して其の開設に鋭意努力しつつあり
十三 太平洋竝南洋航空に關しては鋭意研究中なり
十四 國防上陸海軍に於ける航空の重要性は逐年増大しつつあるを以て之が充實に關しては鋭意努力し將來も國家財政の許す限り擴充する方針なり
十五 我陸軍航空に於ては其兵力裝備共に今尚所望の域に達せざる所あるも現時に於ける國家財政の景況に鑑み姑く新に必要なる資を國庫に要求することを控へ軍制調査會に於て之が内容の充實向上に關し研究中なり
十六 民間航空勢力は有事の際に於ける陸海航空威力の豫備的使命を有するを以て切に之が擴充を冀ひ關係各部と相提携して其の進展を期しつつあり
十七 幾許の航空兵力を配屬すべきやは演習の目的及内容に關する問題なるを以て一概に其の多寡に關して答辯するを得ず
十八 帝國の如き環海の國に於ては陸軍に於ても水陸兩用の飛行機を使用するの必要あるを認め既に之に適する飛行機を制定し一部に於て實地的に研究中なり
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
陸軍大臣 宇垣一成
外務大臣 男爵 幣原喜重郎
遞信大臣 小泉又次郎
海軍大臣 男爵 安保清種
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航空公債發行に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十七日
提出者 永田良吉
外一名
航空公債發行に關する質問主意書
歐米列國の極東に於ける航空勢力進出の現況に鑑み政府は我か民間事業の振興を期する爲航空公債を發行し我か國力の發展と國防の安固を圖る意思なきや如何
右及質問候也
本質問に對する答辯は口頭を以てせられしことを望む
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員永田良吉君外一名提出航空公債發行に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員永田良吉君外一名提出航空公債發行に關する質問に對する答辯書
民間航空事業の發達を促進するの急務なるは言を俟たざる所にして政府は財政の許す限り諸般の航空施設の進捗を期しつつありと雖も目下の處之が爲に航空公債を發行するの意圖を有せず
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
大藏大臣 井上準之助
遞信大臣 小泉又次郎
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軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十二日
提出者 三浦虎雄
軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問主意書
陸軍軍馬補充部高鍋支部茶臼原放牧場は日露戰役直後の國民軍事奉公心最高潮時に於て關係町村民の熱誠に愬へ其の有する甘藷、蕎麥、陸稻、秣耕地を含む原野三百十八町八反歩を僅に金五萬圓を以て宮崎縣兒湯郡妻町、木城村、上江村、新田村、上穗北村の五箇町村より買收設置せしものにして現在に於ては此の大原野に毎年五月より十月に至る六箇月間約百頭の軍馬を放牧するに過きす近く廢止に内定せるものと傳へらる
然るに本放牧地設置後二十五年を經過し經濟事情の推移は農村人口の増加と公課加重とに依り前記町村農民生活を窮迫に陷れ放牧地域に依る町村經濟交通の阻害と耕地原野獨占より蒙る耕地不足とは前記町村を益貧困ならしめ此の窮状を打開するは一に右放牧地の町村拂下に依る耕地取得の外他に途なく之を以て前記町村長は先年來屡當局に願意を具陳する所あるも今日に至る迄政府の眞意那邊に存するや知るを得す困惑せるものなり
仍て前記事情を考察し耕地不足に因る前記町村の窮状を救濟する爲
一 陸軍大臣は軍馬補充部高鍋支部を廢止若は縮小し放牧地の全部又は其の大部を關係町村に拂下くるの意なきや
二 大藏大臣は右不要放牧地の保管轉換を受けたる場合買收原價を以て關係町村自治體に拂下くるの意なきや
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員三浦虎雄君提出軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員三浦虎雄君提出軍馬補充部高鍋支部用地拂下に關する質問に對する答辯書
一 軍馬補充部高鍋支部は目下廢止若くは縮小の意なし從て本放牧地は適當なる代地及其の所要施設を得るにあらざれば開放し得ざる現況なり
二 假に右高鍋支部を廢止又は之を縮小する場合ありとするも其の拂下價格は時價を標準として之を定むべきものとす
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
陸軍大臣 宇垣一成
大藏大臣 井上準之助
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法令の解釋統一に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十二日
提出者 森田茂君
外四名
法令の解釋統一に關する質問主意書
競爭入札の方法に依り請負契約を締結するに際し我か大審院と朝鮮總督府法院とは全然反對の解釋を爲したり今其の兩判決を比較せむに
一 大審院判例(大正七年(れ)第二〇二九號濱村用太郎外七名詐欺被告事件大正八年二月二十七日判決)被告用太郎嘉重吉左衞門七助長作は各土木建築請負業者被告章三郎は同業父柳澤市兵衞の被告宇兵衞は同業長谷川精二郎の被告鯛次郎は關口戒三の各代理人として原審相被告川上八郎尾島多作田中久吉と共に大正五年八月七日長野縣小縣郡上田町役場に出頭し同町に於て競爭入札に付したる同町東部小學校新築請負工事の競爭入札を爲すに際し被告嘉重は右工事の請負を得んことを欲したるも右被告等中被告嘉重より低額の入札を爲すものあるを察知し談合の方法に因り該工事を落札せしめんと企て同日同役場に參集せる右被告等に對し自ら又は人を介して談合金三百圓を提供すへきに付き自己を最低入札者として右工事を自己に落札せしめられたき旨懇請したる爲め既に原審相被告尾島多作は一萬二千六百二圓に被告七助は一萬二千五百圓に夫々入札すへきことを決定し居りたるに拘はらす何れも其請を容れ其餘の被告等も等しく被告嘉重の右申出を諾し茲に被告用太郎等は被告嘉重と故らに同被告の入札額より高額の入札を爲し同人に落札せしめんことを通謀したる上何れも同日同役場に於て恰も各自連絡なく該入札の本旨に從ひ各獨立して決定せる價格にて競爭入札を爲すものの如く裝ひ被告嘉重は一萬二千六百八十三圓其他の被告は各右金額以上に豫定の如く入札し眞正なる競爭入札を爲したる如く同町長を欺罔し開札の上被告嘉重を最低額入札者として落札せしめ同月十二日同役場に於て同被告をして同人の前記入札額を以て同町と東部小學校の新築工事請負契約を締結せしめ同契約上の權利を不法に取得し以て上田町をして正當の競爭入札行はれたらんには當然得へかりし前記最小額との差額の利益を喪失せしめ財産上の損害を與へたるものに屬す按するに工事の請負を競爭入札に付し最低額入札者を落札者と決定し之と請負契約を締結する場合に注文者は工事の内容を知悉し豫定價格を附するを常とするを以て注文者か入札に依る價格を相當と認めて落札者を定むる以上は價格の點に何等の錯誤なきものと謂ふへく入札者の價格協定の有無は價格に關する錯誤と沒交渉なりとす競技の懸賞の場合の如きは優賞者に其優賞を原因とし特殊の利益を與ふるものなるを以て懸賞者と約して競技に從事する者に於て眞實の勝敗を決するにあらすして相互の申合に依り勝敗の結果を豫定し其結果を實現せしめて賞與を請求するときは詐欺罪を構成せしむることあるへしと雖も競爭入札の場合は之れと異なり請負契約に依り仕事の完成に對する報酬を與へることを外にして特殊の利益を與ふるものに非す蓋し注文者は自己の利益の爲め比較上最も有利なる條件を以て請負を爲す者を選擇するを趣旨とするは論なしと雖も之に對し入札者は隨意に入札價格を定むる自由を有し入札者の連合に依る協定入札は注文者に對し價格の量定を誤らしむる手段にあらすして入札者か自己に利益なる價格を主張する方法なりと解するを相當とすへく從て請負工事に關し協定入札を爲したることは詐欺罪に於ける欺罔手段の施用とならす入札者か談合金の授受を約せすして單に價格の協定を爲す場合と談合金の授受を約して其協定を爲す場合とは詐欺罪の成立に關し論斷を異にするものにあらす總入札者の價格の協定を爲す場合と入札者の一部か其協定を爲す場合若くは入札せんとする一人か他の者と協定して入札の棄權を爲さしむる場合とは亦之れに關する論斷を異にするものに非す故に入札者か入札價格に關し協定又は談合を爲したる一事は詐欺罪を構成する理由とならさるものとす原判決には該入札の本旨に從ひ各獨立して決定せる價格にて入札を爲すものの如く裝ひ(中略)眞正なる競爭入札を爲すものの如く欺罔し云々と説示し又被告七助か談合に先ち一萬二千五百圓にて入札すへきことを決定し居りたることを認めて之に基き被告等は上田町をして正當の競爭入札行はれたらんには當然得へかりし最少額との差額との利益を喪失せしめて財産上の損害を與へたるものなることを説示せるも前敍の事實に依れは上田町の財産權には侵害ありたるものと認むへからさるのみならす被告等は工事請負に關し談合入札を爲したるに止まり畢竟詐欺罪の構成に必要なる欺罔手段の闕如せるに拘はらす原判決に於て他に欺罔手段の施用を認むるにあらすして判示の理由に依り不正に請負契約上の權利を取得したる旨の事實を確定したるは違法にして論旨理由あり原判決は破毀を免れすと判決し
二 朝鮮大邱覆審法院(岡本小三郎外三十一名詐欺等被告事件昭和五年十月二十八日判決)は被告人岡本小三郎坂民次郎は昭和二年七月朝鮮總督府か大邱專賣支局工場新築其他の工事を指名競爭入札の方法に依り請負はしむるに當り被告人等及大倉土木株式會社外三名を入札者と指定し豫て同人等に示し置きたる工事請負入札人心得書の趣旨に從ひ特別の事由なき限り豫定價格の制限内に於て入札金額の最低のものを以て落札者と爲すへく期待し同月十一日を入札日と指定するや同月十日右會社の代理人被告人小川某外三名と共に京城府旭町朝鮮土木協會事務所に會合し前同樣の詐欺を爲さんことを謀議し豫定落札金額を二十二萬六千八百圓と協定し被告人小川某に於て最多額の談合金五萬一千八百圓を提供すへく申出てたるに依り右會社を落札者と豫定し右小川某をして同會社名義にて右二十二萬六千八百圓にて入札せしめ他の者は之より高額にて入札すへく申合せ「書取」の方法に依る談合を爲したる後右各被告人等は同月十一日朝鮮總督府内務局建築課に出頭し恰も眞正の競爭入札を爲すものの如く裝ひて右談合の如き入札を爲し係官をして眞正の競爭入札なりと誤信せしめたる上最低額の入札者たりし右會社を落札者と決定するに至らしめ被告人小川某は同月十五日同課に於て契約擔任者たりし當時の朝鮮總督府内務局長生田清三郎と右會社名義の下に金二十二萬六千八百圓にて同工事の請負契約を締結し以て不法に同契約上の權利を取得しと説示し刑法第二百四十六條を適用し詐欺罪なりと認定し高等法院亦曾て同趣旨の判決を爲し右覆審法院判決は高等法院判決に則りたるものなり
斯の如く内地に於ける大審院の判決と朝鮮に於ける判決とは一は無罪の判決なるも他は有罪の判決にして兩者全然相反する判決なりとす
明治四十年法律第四十五號を以て内地に實施せられたる刑法は明治四十四年法律第三十號同四十五年制令第十一號朝鮮刑事令に依り朝鮮にも實施せられ兩者其の内容に於て同一なりとす同一法律か同趣旨の事實に對し朝鮮に於て適用せらるるときは有罪となり内地に於て適用せらるるときは無罪となり朝鮮に於て判示の如き行爲を爲すときは刑罰を受くる違法行爲となり内地に於て之を行ふときは法の保護を受くる適法行爲となるか如きは明に法規解釋の不統一にして法の威信を害すること頗る大なりと謂はさるへからす
朝鮮に於ける判決は眞の競爭入札を爲ささるへからさるに拘らす之を爲さすして却て請負人相互間に於て價格の協定を爲し所謂談合入札を爲し恰も判決の所謂眞の競爭入札を爲すものの如く裝ひ請負權を獲得したるか爲之を詐欺罪なりと認定したるものの如し
詐欺罪は人を欺罔して財物を騙取し相手方に損害を生せしめたる場合に成立する犯罪なることは言を俟たす而して欺罔とは虚僞の事實を主張して相手方を錯誤に陷らしむることを要す覆審法院判決は請負人か入札を爲すに際し現に價格の協定を爲したるに拘らす斯る協定を爲さす眞に競爭入札を爲すものの如く裝ひ注文者を欺罔したるものの如く判示すと雖斯る主張は所謂欺罔の要素たる虚僞の主張に非す抑虚僞の主張は法規之を認めす慣習之を許ささる性質のものに限る眞に物品を買入るる意思なく代金支拂の意思なきに拘らす代金を支拂ひて品物を買入るるものの如く裝ひ或は眞に返濟の意思なきに拘らす借用名義を假用し金員を騙取するか如き場合に於て始て法の所謂虚僞の主張と謂ふへく商人か商品を賣却するに當り原價に相當の利益を加算し定價と爲せるに拘らす原價を以て賣却するものの如く申向くるか如き法の所謂虚僞の主張に非さるなり蓋前者は相手方の方面に財産權の侵害あると同時に法規之を禁し慣習之を認めさる虚僞の主張にして後者は買受人に何等財産權の侵害なきと同時に法規之を許容し慣習之を容認する虚僞の主張なれはなり
而して本事案に於て判決の所謂虚僞の主張とは請負人相互間に於て價格の協定を爲し談合入札を爲したるに拘らす價格の協定を爲さす所謂競爭入札を爲すものの如く假裝したるを指示するものの如しと雖相手方たる注文者に於ては熟練なる技術者に依り工事明細書又は設計書等工事に關する詳細なる説明書を作成し材料の選擇工事の精粗等之に要する費用の精密なる計算を遂け豫定價格を設け其の價格以内に於て工事の完成を告くるときは注文者に於て何等損失なきものと思惟し入札を命し入札者亦右豫定額以内に於て入札を爲し居れるか故に其の間何等財産權の侵害と認むへきもの存在せす假に入札者に於て相互價格を協定し何等協定せさるものの如く假裝したりとするも該假裝たるや法の禁する虚僞の主張に非さるなり何となれは之に依り相手方たる注文者に於て何等財産權の侵害存在せされはなり
敍上の如く虚僞の主張にして存在せさる以上は相手方に於て錯誤に陷るへき筈なきは明白疑を容れさる所なり殊に注文者は入札金額の正當なりや否やを審査する權限を有し其の自由意思を以て價格を決定するを得るか故に錯誤に陷るへき餘地を有せす入札者か談合に依りて入札を爲すと談合を爲さす各自入札價格を默祕して入札を爲すとの間注文者に於て何等利害を異にすへき道理なし殊に談合行爲を爲すことは注文者に對し價格の決定を誤らしむる手段とならさるに於てをや
而して大審院の判例は詐欺罪は財産罪なるか故に財産上の損害なからさるへからす損害の發生は詐欺罪の要件なりと主張せり本事案に於て果して損害の發生ありや若各請負業者にして其の入札價格を默祕し入札を爲したるときは或は談合の結果入札を爲す場合に比し多少安價に落札すへきことなきに非さるへし之に依り生すへき價格は即ち注文者の受くへき損害には非さるかの疑なきに非す併しなから斯の如きは即ち單なる希望に過きすして確的なる損害なりと認むへきものに非す而して詐欺罪の要件は單なる希望のみにては不十分にして確的現實なる損害ならさるへからす此の點より見るも詐欺罪を構成する限に在らす固より談合行爲にして不當の價格を糶上け又は糶下くる目的に出てたる場合の如きは會計規則第九十七條朝鮮總督府工事及物品供給請負人入札心得書第二條等の禁止する所にして斯る談合は固より不正行爲なりと雖本事案に於ける談合の如きは斯る目的に出てたるに非す極めて適正なる價格を以て入札を爲したるものなるか故に法の禁止せざる適法の談合にして無謀競爭入札より生する弊害を除き當業者の利益を保護する團體的防衞行爲なりと謂ふを得へし
社會は自由競爭に依り、より進歩し今日の發達を遂けたることは疑を容るる餘地を有せす併しなから自由競爭より生する弊害も亦尠しとせす競爭入札の場合に於て殊に然りとす不當なる安價乃至工事完成不能の價格を以て入札を爲し工事を請負ひ工事未た成就せさるに先ち逃走して其の居所を不明にし職人其の他に賃金を仕拂はすして多數人に迷惑を掛け或は不備不完全なる工事を完全なるものの如く裝ひて其の引渡を爲し或は當路者に贈賄して以て不正檢査を爲さしむるか如き假に自己の業務上の地位に鑑み世間の思惑を考慮し將來業務の防害とならむことを虞れ注文の趣旨に適ひたる完全なる工事を爲し之か引渡を了したりとするも之か爲に請負人は全財産を蕩盡し再ひ請負業者として起つ能はさる痛手を受くるに至るへし
是等競爭入札の弊害を除去せむか爲には不當に安價なる價格を以て入札することを避け工事相當の價格を以て入札を爲ささるへからす亦妥當價格を以て入札せむとせは無謀の競爭を避け價格の協定を爲し妥當價格を決定せさるへからす所謂談合を爲ささるへからす故に談合行爲は獨り請負業者を保護するのみならす亦以て注文者を保護するを得へし凡そ請負業は刑法第三十五條の正當業務行爲にして入札行爲は該業務を遂行する方法なりとす而して競爭入札を爲すに際し請負業者相互間に妥當なる價格の協定を爲し所謂談合行爲を爲すも該談合行爲にして違法ならさる限り右入札行爲か違法に歸するものに非す蓋競爭入札を爲すに際し相互價格を默祕するは各入札者の利益を保護する爲にして注文者の利害と沒交渉なるか故に請負業者にして右利益を抛棄し各自談合を爲すは其の自由行爲の範圍に屬するものなれはなり殊に亦競爭入札の要件としては各請負業者か其の入札價格を祕密に付せさるへからさるものに非す或は他の一人に入札價格を洩らし又は他の數人に其の價格を告くるも前敍の如き糶上糶下の目的以外に於ては法に何等禁止規定なきを以て競爭入札としては有效なりとす
或は落札したる請負業者より落札せさる請負業者に對し所謂談合金なるものを分與するを以て常例と爲すものなるか此の談合金は結局請負價格中より捻出するものなるを以て其の金額に相當する金員は工事完成に使用せられさるものに屬し其の部分丈け不完全なる工事を爲すことに歸著するか故に結局注文者の損失に歸すへしと論する者あるも是れ大なる誤なり右談合金は落札者か工事に依りて得たる利益の幾分に相當し落札者は其の得たる利益を分與するものなるか故に之か爲注文者に何等の損害を與ふるものに非す
飜て落札せさる請負業者の方面を顧みるときは斯る請負業者と雖一應材料の調査を爲し其の價格を算出し職人人夫の賃金等より工事費を計算して請負價格を算定する等に相當の努力と費用とを費し居れるのみならす保證金を調達するに付ても亦相當利息を支拂はさるへからす若自ら落札者とならさるときは是等の費用は遂に之か囘收を爲す途なきに至るへし所謂談合金を是等落札せさる請負業者に分配するは是等の人をして右損害を補償せしむる意味に於ても最有意義の行爲なりと謂はさるへからす故に談合金の分配は斯る談合行爲に違法性を付與したるものに非さるは勿論却て相互補助なる社會適應性を附加するに至るへし
自由競爭は一面に於て社會の進歩を促したる功蹟ありと雖亦他の一面に於ては敍上の如き弊害を釀成せるか故に今日に於ては之に合理的協調を加味する傾向を生するに至れり物價にして非合理的に下落する時代に於ては同業者間に於て價格を協定し其の下落を防き物品過剩なるか爲物價の下落するときに於ては操業短縮を爲して物品の過剩を豫防し以て物價の下落を豫防する等の行爲は其の協調状勢の一端を閃したるものに外ならす
價格の協調を爲せはとて其の業務行爲か不正業務に化するものに非す操業短縮を爲せはとて其の業務に違法性を付與するものに非さることは社會通念の認むる所なり請負業者にして請負價格の協調を爲したれはとて其の業務行爲たる入札行爲か違法性を具有するに至るものに非さると同時に其の行爲か不正業務の色彩を帶ふるものに非さるなり
要するに談合入札は注文者に何等損害を與ふることなく落札者竝非落札者を保護する相互保護制度にして正當業務行爲の適法なる内容を爲すものなりと謂ふへく何等違法性を具有するものに非す
然るに朝鮮總督府法院は之を不適法なる行爲と爲し刑法第二百四十六條の詐欺罪なりと判決せり不法の判決なりと謂はさるへからす
法規の解釋は全國的に統一せさるへからす内地に於ける法規の解釋と朝鮮に於ける法規の解釋とか其の結論を異にするか如きは法規の解釋不統一なりと謂はさるへからさるは勿論廣義に於ける國家政務の不統一なりと謂はさるへからす
而して法規解釋の統一は合理的合法的ならさるへからす以上縷縷陳辯するか如く朝鮮に於ける解釋非合法にして内地大審院の解釋正當なるときは須らく朝鮮總督府法院をして大審院に於ける解釋に合流せしめさるへからす約言すれは斯る行爲は詐欺に非す適法行爲として法の保護を與へさるへからすと思料す
右に付内閣總理大臣司法大臣及拓務大臣の所見如何
政府に法令の解釋を統一する機關を設くる意思なきや
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員森田茂君外四名提出法令の解釋統一に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員森田茂君外四名提出法令の解釋統一に關する質問に對する答辯書
本質問の要領は請負工事の競爭入札を爲すに際し入札者間に行はるる談合行爲に對する法律の適用に付大審院の判決と朝鮮大邱覆審法院の判決とが全然相反することを指摘論難し此の如き弊害を避くる爲政府は内地及朝鮮に於ける司法法規の解釋を統一する機關を新設するの意なきやと謂ふに在るものと認む蓋し司法法規の解釋は最高裁判所の判例に依りて之を統一することを得るものにして之を他の機關に委すべきものに非ず而して現時の統治組織に於て内地と朝鮮とは各自獨立の司法機關を有するが故に偶偶不幸にして二者の判例に一致を缺く所あるは甚だ遺憾とする所なりと雖も眞に已むを得ざる所にして他の機關を設けて之を匡正することを得ざるものとす由て政府に内地及朝鮮に於ける司法法規の解釋を統一する機關を設くるの意思なし
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
司法大臣 子爵 渡邊千冬
拓務大臣 松田源治
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足尾銅山鑛煙毒に關する再質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十三日
提出者 栗原彦三郎
足尾銅山鑛煙毒に關する再質問主意書
本員か昨年十二月二十六日付を以て提出したる足尾銅山鑛煙毒に關する質問主意書に對し政府は本年二月三日付を以て答辯書に依り答辯せられたるも本員は此の答辯に承服する能はす茲に已むを得す再質問書を提出す
本員か曩に提出したる質問の要旨は現内閣組織以來足尾銅山の鑛毒及煙毒の豫防施設に對し其の監督相當に宜しきを得つつあるを以て銅山營業者も鑛毒竝煙毒の豫防施設を漸次に改善し其の成績認むへきものあるも猶監督官不在の際に當り豫防作業に誠意を缺き故意に被害を多大ならしむる事實あるを以て常設監督官を置き監督する必要あり政府の所見如何と謂ふにあり然るに政府は足尾銅山に於ける除害設備に付ては屡屡監督官を派遣し其の運用に關し嚴重取締を勵行しつつあるを以て特に常設監督官を設くるの必要を認めすと答辯せり
惟ふに政府か斯の如き答辯を爲せるは政府當局は現在に於ける足尾銅山の鑛毒竝煙毒の被害か多大なるを知らさるの結果豫防除害の施設を輕視し斯の如き答辯を爲せるものの如し依て茲に鑛毒竝煙毒の現在の被害状況の大略を述へ再質問の旨意のある所を明にせむ
現在に於ける足尾銅山鑛毒の被害の重なるものは渡良瀬川に流下する毒水を灌漑する爲受くる水田の損害、渡良瀬川に毒水流下し魚族を斃死絶滅せしむる爲受くる漁業上の損害及渡良瀬川に流下する砒素、膽礬の其他の毒物の爲渡良瀬川沿岸及同川水系灌漑地帶内に住する二十餘萬住民の身體生命上に受くる保健衞生上の損害等なり
今鑛毒に依る現在の損害を精査すれは渡良瀬川の流水を灌漑する栃木縣足利郡及群馬縣新田、山田、邑樂三郡内の水田は大略二萬六千町歩にして之等の水田は古來十俵取れと稱せられ關東屈指の美田にして明治二十九年の大洪水に因る鑛毒流入以前に於ては當時の幼稚なる農業技術に於て而も肥料も僅少にして平均反當り八九俵の收穫ありしに今日は全國的農業技術長足の進歩を爲し肥料も亦從來に比して數倍の施肥を爲すか故に鑛毒の被害なき地方に於ては多大の收穫増加を爲せるに拘らす被害地に於ては其の收穫毫も増加せす却て年年減少の傾向あるは全く年年銅山より流下する鑛毒の爲に土壤變質し酸性肥料の使用に依り僅に稻の發育を爲さしめつつある結果にして其の損害は反當り平均年額一石を下らす即ち其の鑛毒被害に因る減收年年二十六萬石以上にして之を一石二十圓として換算すれば年年五百二十萬圓に相當する損害あり群馬栃木兩縣下の被害地の代表者か年年歳歳其の事實を指摘し議會及政府に請願陳情を爲すは全く此の甚大なる損害あるか爲に外ならす又渡良瀬川は古來魚族の豐富なると漁獲の多量なる點に於て天下に知られたる所にして漁業を以て生計を爲せる者數千人の多きを見たりしに今や全く魚族の繁殖を見す僅に季節的に僅少の魚類上り來ることあるも一度降雨あり流水濁れは直に死滅するの状態にして漁業上の損害は如何に僅少に見積るも其の損害年年百萬圓を下らさるものあり
殊に鑛毒の現在に於ける被害の最顯著なるものは人體に及ほす被害にして現に渡良瀬川の沿岸に位する山田郡足利郡安蘇郡下都賀郡猿島郡北埼玉郡等諸郡内に於ける舊鑛毒被害地方及渡良瀬川の流水を灌漑する範圍の山田郡新田郡邑樂郡足利郡地方の住民に胃膓及内臟失患の患者非常に多く從て死亡率も多きこと勿論にして流産の割合も亦非常に多き事實は此の地方の統計と他地方の統計と比較して最明瞭なるか被害地方住民は健康體の者も一般に血色惡しく今や兩毛地方の人人は其の血色を一見して直に被害地方住民なることを識別するの状態にあり之れ足尾銅山より流下する諸種の激毒自然に地下水に混入し井水中に侵透し來りて人體を害するものにして此の保健衞生上の損害は金錢を以て計算する能はさる一大損害たるのみならす人道上亦等閑に付する能はさる一大問題なり
更に足尾銅山煙毒の被害状況を見るに其の被害の重なるものは直接には利根川渡良瀬川大谷川等關東の大部分か灌漑用水とする各水源地に於て水源涵養の作用を爲す大切なる大自然密林の樹木を枯死せしむる爲此の密林地帶山嶽の土砂を洗ひ岩石露出し其の岩石を酸化して砂礫と爲し實に見るに忍ひさる荒廢の地たらしめ洪水毎に其の砂礫を流下し來りて河床を高め以て水害の因を作りつつあるものにして間接には其の水源地破壞の爲盛夏灌漑の時期に於て水量非常に減少し用水不足の爲旱害を受くるにあり曾て水量豐富にして足利佐野地方の一切の貨物を運搬する爲船舶を浮へし渡良瀬川は近時往往極端なる渇水を見て時に流を絶つことあり利根川の水量も亦年年減少し灌漑用水の不足を來すこと少からす若此の儘放任せむか利根、渡良瀬兩川の水量減少は帝國の心臟とも謂ふへき關東大部分の水田を枯死せしむるのみならす又關東一帶の地下水減少し井水を不足ならしめて關東數百萬住民の飮料水を脅威するは勿論地下水の減少は草木の繁茂を碍け遂に關東の大部分は耕作居住に適せさるの土地となるへきは學者の專ら唱導する所なり左に群馬縣山田新田邑樂三郡に亙る灌漑用水に關し地元水利組合代表者か最近政府當局及關係代議士に提示したる請願書を引用して煙毒被害の一部の状況を明にせむ
請願書
群馬縣下新田、山田、邑樂、桐生の一市三郡に散在する渡良瀬川流域下名四堰水利組合管理者は灌漑田面一萬町歩の耕作者と關東農民十五萬を代表し謹て奉請願候
足尾銅山製錬工場より噴出する煙毒の慘禍は渡良瀬川水源集水地五萬町の内約二萬八千町歩の山林を枯死荒廢せしめ猶逐年加速度を以て被害の範圍を擴大しつつあり之か爲山林特有の雨水貯藏の自然的作用を失ひ大雨には忽ち土砂を押流し旱天には忽ち溪谷の水脈枯渇し從て其の影響は忽ちに渡良瀬川流域に及ほし洪水には鑛毒の浸潤を受け耕土の變惡を來し渇水には灌漑用水の不足を告け挿秧不能となり或は稻作枯損し收穫の減滅を餘儀なからしむる等其の被害甚大にして關係農民の生業を脅威すること夥しく之に伴ひ用水爭奪又は小作爭議頻發し民心を惡化せしめ實に憂慮に堪へさるものあり
之か爲從來屡屡貴衆兩院に請願し其の都度速かに御採擇となるも未た政府に於て何等の施設もなく關係農民の困難筆舌に盡し難し冀くは實状篤と御調査の上煙害防止山林復舊水源涵養用水補充の計畫を實行相成候樣御配慮相仰度謹奉請願候 恐惶謹言
昭和六年三月五日
待矢場兩堰普通水利組合管理者
太田町長 武川六太郎
赤岩堰普通水利組合管理者
桐生市長 關口義慶二
田登普通水利組合管理者
相生村長 今泉染太郎
廣澤堰水利組合長 丹羽平助
政府の一部には折角常設監督官を置くも其の效能如何に付て疑を存するか如き論議を爲すものありと仄聞するも本員等は必す相當の效能あるを確信せさるを得す現に昭和四年の第五十六囘議會に於て政府は田中總理大臣中橋商工大臣山本農林大臣の名を以て足尾銅山鑛毒及煙毒の豫防設備完全にして毫も修築改築を要する箇所なしと答辯せるに拘らす同年七月現内閣組織せられ横山商工政務次官一度足尾銅山に登山し僅に數時間の視察を爲せるのみにて松木毒泥砂堆積所の七十五間に亙る大改築、原毒泥砂堆積所の大増築、全山毒水樋の改造、沈澱地の大修理等鑛毒豫防施設の面目を一新する程の大工事を即日命令し營業主も喜むて其の命令に服し早速以上の工事を完成し更に數箇月間は煙毒に付ても其の鎔鑛作業に當り風位の方向に注意する等監督上頗る效力ありしは足尾町在住者及被害地方人民の普く認むる所にして此の一事を以てするも常設監督官を設置せは相當效力あるへきを信して疑ふ能はす殊に被害民に對して多大の同情を有せらるる現政府にあらすむは此の被害民の切實なる願望は容易に容れらるるの日なからむことを憂ひ茲に重ねて明治三十年五月三十日政府か發せる足尾銅山鑛毒豫防命令の目的を達成し且被害地方人民をして安むして農業に從事せしむる爲常設監督官の設置を要望し政府の所見を問ふ
右及再質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員栗原彦三郎君提出足尾銅山鑛煙毒に關する再質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員栗原彦三郎君提出足尾銅山鑛煙毒に關する再質問に對する答辯書
足尾鑛山に於ける除害設備の操作運用に關しては排煙の分柝、收塵量、鑛水の性質其の他諸般の實績に付常に注意を怠らず隨時監督官を派して實地踏査を行ひ若し修築改善を要するものあらば直ちに適當の措置を命じつつありて大體に於て豫防命令の目的を達成しつつあるものと認めらるるも尚今後は監督官派遣囘數の増加等に依り除害設備の一層嚴重なる監督取締に付遺漏なきを期する見込なり
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
商工大臣 俵孫一
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刑事事件檢擧に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和六年三月十四日
提出者 工藤鐵男
刑事事件檢擧に關する質問主意書
愛知縣碧海郡安城警察署に於て左記の者共か左記の犯罪を爲したるものと認め之を檢擧し證據を具して昭和六年一月中一件書類と共に左記被疑者中石原市左衞門、岡田庄太郎、頼永鐵太郎、加藤實(主謀者と認むへき岡田菊次郎は逃走不在)四人の身柄を岡崎區裁判所檢事局に送致したるに同檢事局は之か取調を爲さす直に被疑者を釋放し今日に至る迄其の搜査を爲ささるは甚た不當なる事件の處理なりと認む其の理由如何
愛知縣碧海郡安城町
町會議員、縣會議員、町農會長、三河食品株式會社長 岡田菊次郎
町會議員、町農會幹事、同會社監査役 岡田庄太郎
町農會總代、同會社取締役 頼永鐵太郎
同會社取締役 尾崎五平治
同會社同 本田吉郎
同會社監査役 稻垣澤吉
同會社專務取締役 三浦圭介
同會社取締役 都築嘉右衞門
町農會書記 加藤實
町農會議員、町會議員 石原市左衞門
碧海郡農會幹事兼技手 加藤精一
犯罪事實
一 岡田菊次郎は昭和五年二月衆議院議員政友派候補者となり選擧運動中運動費に窮し自己か安城町農會長の職にあるを利用し部下たる農會幹事岡田庄太郎に命し同月十五日同人保管に係る碧海銀行預入農會の金員中一千圓を書記加藤實をして小切手を作製し銀行より引出さしめたる後菊次郎は其の妾宅に於て菊次郎弟勝次郎をして庄太郎より受領せしめ之を運動費に供したり
二 岡田菊次郎、岡田庄太郎は共謀の上其の任務に背き昭和四年十二月十二日及二十六日の二囘に亙り加藤實に小切手を發行せしめ同人保管中に係る町農會の金員一千圓宛合計二千圓を引出し之を岡田菊次郎か社長にして岡田庄太郎か監査役たる三河食品株式會社の取締役頼永鐵太郎に貸付けたるものなるか同會社は缺損續きにして囘收の見込絶對になく町農會に損害を與へたるものなり
三 岡田菊次郎は昭和五年八月十五日農會幹事岡田庄太郎、書記加藤實に命し兩人保管に係る農會の銀行預金百七十五圓を引出さしめ之を實弟岡田勝次郎の合同運送會社株劵未拂込金に充當費消したり勝次郎は放火詐欺事件にて目下收容中なり
四 岡田菊次郎は町農會幹事たる石原市左衞門と共謀し町農會の金員中二百五十圓を横領費消したり
五 岡田庄太郎は昭和四年十二月十二日三河食品株式會社か町農會より借入れたる金一千圓の内四百五十圓を自己の同會社に對する株式未拂込金に流用横領したり
六 頼永鐵太郎は前項岡田庄太郎横領行爲を幇助して自己か取締役たる右會社に損害を被らしめたり
七 岡田菊次郎、頼永鐵太郎等は三河食品株式會社の社長重役の地位にありなから定款の規定(取締役の報酬は年額千圓以内と定む)に違反して專務取締役三浦圭介に對し年額金一千二百圓宛の報酬を支拂ひ會社に損害を被らしめたり
八 頼永鐵太郎、本田吉郎、尾崎五平治は各三河食品株式會社の取締役なる所昭和四年十一月頃募集超過株式六十三株の拂込金三千八十圓を保管中に横領費消したり
九 岡田菊次郎、頼永鐵太郎、本田吉郎、三浦圭介、都築嘉右衞門、岡田庄太郎、稻垣澤吉は昭和五年九月十三日其の任務に背き商法の規定を無視し株主總會の決議を經すして三河食品株式會社の土地建物其の他の全財産を擔保に供し日本興業銀行名古屋支店より金二万圓を借入れ會社に損害を被らしめたり
十 加藤精一は郡農會幹事兼技手の地位にあるを利用して昭和三年六月以降名古屋市東區松山町岡田安次郎より各農家に販賣方を委託せられたる石炭硫黄合劑の賣上代金五百五十二圓六十錢中二百圓を横領したり
十一 加藤精一は右横領の穴埋を爲さむか爲昭和三年十月三十日郡農會の名義を詐稱して安城町農會會計係加藤實を欺き金二百圓を騙取したり
十二 加藤精一は昭和四月八月頃碧海郡依佐美村農會より碧海郡農會に拂込みたる藥品代金二百七十圓を郡農村技手石原一郎に代て受取り之を横領費消したり
仄聞する所に依れは安城警察署か本件檢擧に著手するや首謀者たる岡田菊次郎は逃亡して所在を晦まし知人たる名古屋市辯護士野々山藤重方鰺に濳伏し其の女婿たる水戸地方裁判所鰺勤務某檢事(稻垣彌四郎鰺)は名古屋に出動し同地檢事局に運動を爲し同檢事局は岡崎區裁判所檢事に對し一種の内命を傳へたるやの疑あり一面愛知縣選出某代議士は中央に於て狂奔最努め其の結果檢事局の活動頓に鈍り岡田菊次郎は意を安むして歸宅し共犯者と共に今日に至る迄事なきを得たりとの風聞高く地方民は檢事局か特に本件被疑者を庇護するものに非すやとして其の態度に疑を挾む者尠からすと謂ふ
右及質問候也
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昭和六年三月二十四日
内閣總理大臣 濱口雄幸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
衆議院議員工藤鐵男君提出刑事事件檢擧に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員工藤鐵男君提出刑事事件檢擧に關する質問に對する答辯書
岡崎區裁判所檢事局に於ては本年一月三十日安城警察署より岡田菊次郎外十名に對する横領背任等被疑事件の送致を受け即日取調を開始したるが當時菊次郎の所在不明なりしのみならず其の後引續き他の要急事件輻輳の爲未だ之を完了すること能はざりしも現に取調繼續中なり而して本件の處理に關し他に何等の事情伏在すること無し
右及答辯候也
昭和六年三月二十四日
司法大臣 子爵 渡邊千冬
内務大臣 安達謙藏
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一昨二十三日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第五部選出
決算委員 鷲野米太郎君(八木幸吉君補闕)
一昨二十三日議長に於て選定したる委員左の如し
航空法中改正法律案(永田良吉君提出)外四件委員
春島東四郎君 石橋茂君
菊池良一君 石原善三郎君
澤田利吉君 中島知久平君
永田良吉君 宮川一貫君
坂本一角君
六大都市に關する法律案(森田茂君外十八名提出)委員
小俣政一君 安田耕之助君
廣瀬徳藏君 石川久兵衞君
三宅磐君 本田義成君
上田孝吉君 加藤鐐五郎君
津雲國利君
河川法中改正法律案(山枡儀重君外五名提出)外十件委員
鵜澤宇八君 山枡儀重君
田崎武男君 岡田素臣君
田中祐四郎君 大島要三君
寺田市正君 土倉宗明君
庄晋太郎君
産業組合中央金庫法中改正法律案(由谷義治君外十四名提出)外十六件委員
由谷義治君 松田喜三郎君
牛場清次郎君 中崎俊秀君
西村丹治郎君 鈴木憲太郎君
土井權大君 丹下茂十郎君
助川啓四郎君
出水宮之城間鐵道敷設に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)外六十三件委員
清水徳太郎君 平野光雄君
青木亮貫君 赤塚五郎君
神部爲藏君 岡本實太郎君
高橋壽太郎君 山本實彦君
矢野庄太郎君 田中貢君
崎山武夫君 船田中君
坂井大輔君 樋口典常君
飯村五郎君 猪野毛利榮君
岸田正記君 森本一雄君
禁獵區内に於ける鶴保護及農作物被害賠償に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)外二十七件委員
山内亮君 下元鹿之助君
中島琢之君 加藤六藏君
原吉郎君 青木精一君
岩本武助君 淺石惠八君
東條貞君
大分港修築速成に關する建議案(長野綱良君外二名提出)外五十六件委員
今堀辰三郎君 後藤亮一君
高橋秀臣君 鏑木忠正君
戸部良祐君 本田彌市郎君
水上齊之助君 淺川浩君
池田敬八君 河波荒次郎君
山下谷次君 多木久米次郎君
木下成太郎君 川島正次郎君
守屋榮夫君 佐藤重遠君
久山知之君 清瀬一郎君
間島在住朝鮮人救濟に關する建議案(宮川一貫君提出)外十件委員
櫻内辰郎君 渡邊泰邦君
漢那憲和君 森達三君
服部英明君 辻本豐三郎君
宮川一貫君 砂田重政君
水島彦一郎君
旭川市に高等工業學校設置に關する建議案(淺川浩君提出)外十一件委員
服部教一君 斯波貞吉君
荒川五郎君 林平馬君
小村俊一君 多木久米次郎君
倉元要一君 河上哲太君
山下谷次君
一昨二十三日に於ける特別委員の異動左の如し
辯護士法中改正法律案(北浦圭太郎君外三名提出)外二件委員
辭任 深水清君 補闕 關口志行君
辭任 服部英明君 補闕 木原七郎君
中央卸賣市場法中改正法律案(藤田若水君外四名提出)委員
辭任 上田孝吉君 補闕 牧野良三君
公娼制度廢止に關する法律案(三宅磐君外十名提出)委員
辭任 青木亮貫君 補闕 北浦圭太郎君
辭任 大里廣次郎君 補闕 三浦虎雄君
關税定率法中改正法律案(政府提出)委員
辭任 櫛部荒熊君 補闕 小山令之君
辭任 小野耕一郎君 補闕 岡田素臣君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=0
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001・藤澤幾之輔
○議長(蔭澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス本日ノ日程ニ揭載ノ議員提出法律案
及ビ建議案ノ取扱モ、昨日ト同樣趣旨辯明
ハ省略スルコトヽ致シタイト思ヒマス御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス質問ハ一カラ十三マデ何レモ政府ヨ
リ答辯書ヲ受領致シマシタ、仍テ日程ヨリ
之ヲ省キマス答辯ニ對スル意見ノ陳述
ハ本日適當ノ機會ニ之ヲ許シマス
日程第一、地方鐵道補助法中改正法律案
ノ貴族院囘付案ヲ議題ト致シマス、此囘付
案卽チ貴族院ノ修正ニ同意スルヤ否ヤヲ御
諮リ致スノデアリマス-森田茂君
第地方鐵道補助法中改正法律案
(政府提出、貴族院囘付)
地方鐵道補助法中改正法律案
(小字及-ハ貴族院修正)
地方鐵道補助法中左ノ通改正ス
附則第二項ヲ左ノ如ク改ム
本法公布
本法ハ!?和六年一月一日以後ニ免許ヲ申
昭和
請シタル地方鐵道、同七年一月一日以後
ニ免許ヲ受ケタル地方鐵道及同十二年一
月一日以後ニ營業ヲ開始シタル地方鐵道
ニハ之ヲ適用セス
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=2
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003・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 登壇ヲ望ミマ
ス登壇ヲ望ミマス
〔森田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=3
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004・森田茂
○森田茂君 議題トナリマシタ地方鐵道補
助法中改正法律案ハ、貴族院ノ修正ニ同意
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=4
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005・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 採決致シマス、貴
族院ノ修正ニ同意ノ諸君ハ起立
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=5
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006・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 起立多數デアリマ
ス、仍テ貴族院ノ修正ニ同意スルコトニ決
シマシタ(拍手)
日程第二、寄生蟲病豫防法案、貴族院ノ
囘付案ヲ議題ト致シマス、此回付案卽チ貴
族院ノ修正ニ同意スルヤ否ヤヲ御諮リ致シ
マス
第二寄生蟲病豫防法案(政府提出、
貴族院囘付)
寄生蟲病豫防法案
(-ハ貴族院修正)
寄生蟲豫防法中貴族院囘付ノ箇所左ノ如
シ
附則
本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之
ヲルチ
〔森田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=6
-
007・森田茂
○森田茂君 本案ニ付キマシテハ、貴族院
ノ修正通リ同意致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=7
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008・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君)採決致シマス、 貴
族院ノ修正ニ同意ノ諸君ハ起立
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=8
-
009・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 起立多數デアリマ
ス、仍テ貴族院ノ修正ニ同意スルコトニ決
シマシタ(拍手)
日程第三、町村有建物火災保險相互組合
法案ノ第一讀會ヲ開キマス
第三町村有建物火災保險相互組合法
案(三田村甚三郞君外十名提出)
第一讀會
町村有建物火災保險相互組合法案
町村有建物火災保險相互組合法
第一條町村ハ其ノ所有ニ係ル建築物保
管ノ爲他ノ町村ト共同シテ保險業法第
二條ノ規定ニ依ラサル火災保險ノ相互
組合ヲ設置スルコトヲ得
第二條本法ニ依ル組合ニハ保險業法ノ
規定ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム
〔說明補足〕
町村有建物火災保險相互組合法案ノ趣旨
乃至其ノ目的ニ付キマシテ〓括的ニ申上
ゲマスルト、要スルニ現在全國約一万二千
ノ町村ガ、相寄リマシテ其ノ各〓所有ス
ル建物ノ管理保全ノ爲メニ特ニ相互火災
保險機關ヲ設ケントスルモノデアリマス
ガ、御承知ノ通リ我國保險事業ハ保險業
法第二條ニ依テ株式若ハ相互會社ニ非ザ
レバ之ヲ營ムコトガ出來ナイコトニ規定
セラレテアリマス關係上、本案ハ自ラ之
ニ牴觸致シマスノデ直ニ實行スルコトガ
出來ナイノデアリマス、故ニ此ノ保險業
法第二條ノ規定ニ依ラザル所ノ單行法ヲ
制定致シマシテ如上ノ目的ヲ達シタイト
考ヘテ居ルノデアリマス、卽チ本案ニ依
リマシテ常ニ町村ガ火災ノ爲ニ累セラレ
ツツアル所謂町村財政ノ動搖ヲ未然ニ防
グト共ニ相互ニ其ノ財產ノ安固ヲ圖ラン
トスルニアルモノニシテ殊ニ災害ノアリ
タル町村住民ヲシテ一時ニ急激ナル負擔
カラ免レシメタイトイフノガ本案ノ趣旨
トシテ重要ナ部分ヲ爲シテ居ルノデアリマ
ス、旣ニ御承知ノ通リ現在全國約一万二千
ノ町村ニ於ケル小學校舍トカ或ハ役場廳
舍トイフガ如キ町村有ニ屬スル建物ノ數
ハ約十五万一千五百棟アリマシテ其ノ見
積價格ハ實ニ五億四千百餘万圓ノ巨額ニ
達シテ居ルノデアリマス、ソコデ此ノ中
火災ニ罹ルノガ幾許アルカヲ既往十箇年
間ノ事實ニ徵シテ平均シテ見マスト
箇年間ニ約百八棟ガ火災ニ罹リ、約八十
二萬圓内外ノ損害ヲ蒙ルコトニナツテ居
ルノデアリマス今更申ス迄モナク殆ド
稅收入ノミヲ以テ支持シテ居リマス現今
ノ町村財政ハ國府縣ノ委任事務費ヲ初メ
ト致シマシテ毫モ節約ノ餘地ナキ必要費
ガ年々增嵩スル斗リデアルニモ拘ラズ之
ヲ負擔スル所ノ住民ノ擔稅力ハ殆ド皆無
ノ狀態ニ陷テ居ルノデアリマシテ、此點
ニ付テハ全ク外間ノ想像以上ノ悲慘ナ狀
態ニアルノデアリマス若シ夫レ斯ノ如キ
町村ニ於キマシテ今假リニ唯一ノ小學校
舍ヲ燒失スル樣ナコトガ有リマシタナレ
バ恐ラク其ノ復舊ハ到底望ムコトガ出
來ナイト申シテモ決シテ過言デハナイノ
デアリマス、斯樣ナ實情デアリマスカラ
町村ト致シマシテハ是非共平素何等カノ
對應策ヲ講ジテ置カネバナラナイノデア
リマスガ、御承知ノ通リ、災害準備金ト
シテ積立ヲ爲ス程ノ餘裕ヲ持タナイ今日
ノ町村財政ニ於キマシテハ、勢ヒ保險機
關ヲ利用スルノ外ハナイノデアリマス
然ルニ現在町村ニ於ケル保險機關ノ利用
狀況ヲ見マスルト、一萬二千町村ノ內僅
カニ三千八百二十六町村シカ保險ニ加入
シテ居ラズ又五億四千二百餘萬圓ノ建物
價格ニ對シマシテ僅カニ一億八千九百三
十七萬七千餘圓ガ契約サレテ居ルニ過ギ
ナイノデアリマス
ソコデ斯樣ニ保險機關ヲ利用スル町村ノ
極メテ少ナイノハ何故デアルカト申シマ
スレバ、其レハ決シテ町村當局者ガ無關
心デアルカラデハナクシテ先ヅ第一ニ
保險料トシテ年額四、五百圓ヲ豫算ニ計
上スルコトハ今日ノ町村財政上頗ル困難
デアルコト、第二ニ現在町村有建物ノ保
險料率ハ平均一千圓ニ付四圓八十錢强ト
ナツテ居リマスガ之ヲ町村有建物ノ保
險料トシテ其ノ實際ノ危險率ニ徵シテ見
マスルト甚シキ高率ナル保險料トナルノ
デアリマス、之ヲ町村理事者ノ立場カラ
考ヘマスト、住民ノ苦シキ租稅ニ依ル町
村費ノ一部ヲ每年一營利會社ニ歸屬セシ
メテ行クト言フコトハ如何ニ職務上ト
ハ言ヘ堪ヘ難キ苦痛ノ伴フハ當然デアリ
マシテ、之ガ軈テ大ナル障壁ヲ爲シテ居
ルコトモ爭ハレナイ事實デアリマス第
三ハ保險契約上ノ手續ノ煩瑣デアリマ
ス卽チ今日ニ於テハ如何ナル町村ニ於
テモ、保險會社ノ支店若ハ代理店ガ無數
ニアリマス爲メニ其間色々ナ因緣情實ガ
起リマシテ結局一ツノ會社ノミニ契約ス
ルコトハ出來ナイノデアリマス、例ヘバ
役場廳舍トカ或ハ學校等ヲ保險ニ附スル
場合ニ於キマシテ、僅カ一一、三萬圓ノ目的
ニ對シテモ之ヲ十數會社乃至二十會社ニ
モ分擔契約ヲ爲サネバナラヌト言フ樣ナ
關係ニアリマシテ、遂ニハ之ガ爲メ其手
續上ノ煩瑣ニ堪ヘ得ナイデ終ル場合モ決
シテ珍ラシクハナイノデアリマス、斯樣
ニ幾多ノ理由ガ直接間接ニ影響致シマシ
テ畢竟町村有建物ノ保險加入ヲ頗ル困難
ノモノト致シテ居ルノガ今日ノ實情デア
リ又現在加入町村ノ少ナキ所以ニ外ナラ
ナイノデアリマス
然ラバ本案ニ依テ町村相互ノ保險事業ヲ
營ムコトニナリマスレバ果シテ前述セ
ル幾多ノ缺陷ヲ補正スルコトガ出來ルカ
否ヤ乃至ハ如何ナル利益ガアルカト申シ
マスレバ先ヅ第一ニ保險料ノ低廉ナル
コトヲ指摘スルコトガ出來ルノデアリマ
ス、卽チ現在町村有建物ノ保險料ハ全國
平均千圓ニ付四圓八十錢ノ割ニナッテ居
リマスガ、本案ニ依リマスト、組合創立
初年度ニ於テスラ僅々二圓ヲ以テ充分ニ
事ガ足リルノデアリマシテ而カモ詳細
ナル調査ノ結果ニ依リマスト既ニ組合ハ
創立五年目ニ於テ其レ迄ニ積立テタル剩
餘金ノ一部ヲ拂戾スコトガ出來ル樣ニ
ナッテ居リマスガ故ニ、之ヲ差引キマスル
ト結局二圓以下ノ保險料トイフ破格ナモ
ノニナルノデアリマシテ只此ノ一事丈ケ
ニ依テモ既ニ町村自治體ノ財政上ニ齎ラ
ス利益トイフモノハ實ニ莫大ナモノガア
ルノデアリマス而シテ町村自體ガ組合
ヲ經營シテ居リマスガ故ニ契約上ニ關ス
ル信用ニ付テモ、從來會社ニ對スル樣ナ
懸念ハ毫モナクナリ、又從來ノ分擔保險
ノ頰雜ナル手數モ自ラナクナルノデアリ
やく、更ニ之ヲ保險其モノカラ申シマ
シテモ、同種ノ性質ヲ有スル危險ノミヲ
集合シテ保險スルノデアリマスカラ、其
ノ保險技術ハ頗ル容易トナルノデアリマ
シテ、其結果ハ個々ノ建物ノ實際ノ危險
ニ卽シマシタル妥當ナル保險ガ行ハレル
コトニナルノデアリマス、大體以上ノ樣
ナ理由ヲ有チマシテ本案ニ依ル相互組織
ノ保檢事業ヲ町村ガ營ムト言フコトニナ
リマスレバ現在及將來ニ於ケル町村自
治體ノ利益ト言フモノハ蓋シ莫大ナモノ
デアルコトヲ信ジテ疑ハヌノデアリマ
ス
申ス迄モナク今ヤ我國ニ於キマシテハ單
ニ地方自治體ノ健全ナル發達ヲ促ス意味
ニ於キマシテモ此所謂公營事業ト言フ
事ニ付キマシテハ一層ノ考慮ヲ致サネ
バナラナイト信ズルノデアリマス、殊
本案ノ如キハ町村有建物ノ管理上ニ屬ス
ル事柄デアリマスカラ、之ヲ飽迄モ町村
自治體ノ自治的手段ニ屬セシメテ行クト
イアコトガ寔ニ望マシキコトデアリマシ
テ、國家トシテモ之レニ對シテハ特別ナ
ル便宜ヲ與フベキデアルコトハ今更申ス
迄モナイコトト信ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=9
-
010・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ藤田若水君外四名
提出、中央卸賣市場法中改正法律案外八件
委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=10
-
011・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=11
-
012・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第四、議院法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス
第四議院法中改正法律案(松本忠雄
君外十二名提出)第一讀會
議院法中改正法律案
議院法中左ノ通改正ス
第十九條第一項中「七千五百圓」ヲ「六千
圓」ニ、「四千五百圓』ヲ「三千六百圓」ニ、
「三千圓」ヲ「二千四百圓」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年七月分ヨリ之ヲ適用ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=12
-
013・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ川島正次郞君外九
名提出ノ關稅定率法中改正法律案外十七件
委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=13
-
014・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=14
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015・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
p. 8.仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第五、農會法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス
第五農會法中改正法律案(八田宗吉
君外六名提出)第一讀會
農會法中改正法律案
農會法中左ノ通改正ス
第三十條第三項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ第
四項中「前項」ヲ「前二項」ニ改ム
市町村カ前項ノ請求ヲ受ケタル日ヨリ
三十日以内ニ其ノ處分ニ著手セス又ハ
九十日以內ニ之ヲ結了セサルトキバ會
長ハ地方長官ノ認可ヲ得テ之ヲ處分ス
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ町村制第
百十一條第一項及第四項ノ規定ヲ準用
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=15
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016・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ由谷義治君外十四
名提出、產業組合中央金庫法中改正法律案
外十六件委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=16
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017・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=17
-
018・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
ひくる仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=18
-
019・作田高太郎
○作田高太郞君 議事日程變更ノ動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際日程ヲ變更シテ、森
田茂君外五名提出、學術〓究ノ振興ニ關ス
ル建議案、及ビ望月圭介君外五名提出ノ學
術〓究ノ振興ニ關スル建議案ヲ議題トシ、
其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=19
-
020・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=20
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021・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ日程ハ變更セラレマシタ森田
茂君外五名提出、學術〓究ノ振興ニ關スル
建議案、望月圭介君外五名提出、學術〓究
ノ振興ニ關スル建議案ヲ一括シテ議題ト致
シマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-
提出者山道襄一君
學術〓究ノ振興ニ關スル建議案(森田
茂君外五名提出)
學術〓究ノ振興ニ關スル建議案
學術〓究ノ振興ニ關スル建議
政府ハ我カ國ノ現狀ト帝國ノ使命トニ鑑
ミ國運進展生活向上ノ根本對策トシテ速
ニ學術〓究ノ振興ニ關スル具體的方策ヲ
講セラレムコトヲ望ム
右建議ス
學術〓究ノ振興ニ關スル建議案理由書
學問ハ人類福社ト社會文化ノ源泉デアリ
國家隆興ト生活向上ノ根幹デアル凡ソ一
國ノ財政經濟交通國防行政等ハ一ニ學術
〓究ニ基礎ヲ置クニアラザレバ其ノ發達
充實ヲ期シ難イ例令バ現下ノ世界ノ政情
不安、財界不況、失業增大、思想險惡等
ノ如キ根本的解決ハ科學的〓究發明ニ俟
ツノ外ハナイ今我ガ國ノ狀態ヲ見ルニ〓
育及〓育上ノ施設ハ或ル程度ノ進步ヲ遂
ゲテ居ルニ反シ學術〓究發明發見等ニ關
スル機關ハ甚ダ少ナク官民ノ之ニ對スル
態度モ亦極メテ冷淡デアル元來學校ハ〓
究所ノ一部デアリ得ルケレドモ其ノ最良
ノモノデアリ得ナイ卽チ我ガ國〓育ガ普
及發達シテ居ルニ拘ラズ國家產業ト國民
生活ノ向上發達ニ寄與スル所甚ダ尠イコ
トニ徵シテモ判ル我ガ國ノ文明ハ久シク
輸入若クハ模倣デアツタソレガ現在ノ各
方面行詰リノ實狀ヲ生ジタノデアル輓近
漸ク其ノ非ヲ悟リ其ノ域ヲ脫シ獨創時代
ニ入リツツアル又一面我ガ國民ノ能力モ
其ノ負擔ニ堪エ得ルコトヲ實證シ來ツタ
故ニ此ノ際萬難ヲ排シ學術ノ〓究ヤ發明
發見等ヲ助長シ奬勸スルノ方策ヲ講ズル
コトガ我ガ行詰レル國狀ヲ打開シ建國ノ
使命ヲ全ウスル所以デアルト確信シ本案
ヲ提出スルノデアル
學術〓究ノ振興ニ關スル建議案(望月
圭介君外五名提出)
學術〓究ノ振興ニ關スル建議案
學術〓究ノ振興ニ關スル建議
政府ハ我カ國ノ現狀ト帝國ノ使命トニ鑑
ミ國運進展生活向上ノ根本對策トシテ速
ニ學術〓究ノ振興ニ關スル具體的方策ヲ
講セラレムコトヲ望ム
右建議ス
學術〓究ノ振興ニ關スル建議案理由書
學問ハ人類福社ト社會文化ノ泉源デアリ
國家隆興ト生活向上ノ根幹デアル凡ソ一
國ノ財政經濟交通國防行政等ハ一ニ學術
〓究ニ基礎ヲ置クニアラサレバ其ノ發達
充實ヲ期シ難イ例令バ現下ノ世界ノ政情
不安、財界不況、失業增大、思想險惡等
ノ如キ根本的解決ハ科學的〓究發明ニ俟
ツノ外ハナイ今我ガ國ノ狀態ヲ見ルニ〓
育及〓育上ノ施設ハ或ル程度ノ進步ヲ遂
ゲテ居ルニ反シ學術〓究發明發見等ニ關
スル機關ハ甚ダ少ナク官民ノ之ニ對スル
態度モ亦極メテ冷淡デアル元來學校ハ〓
究所ノ一部デアリ得ルケレドモ其ノ最良
ノモノデアリ得ナイ卽チ我ガ國〓育ガ普
及發達シテ居ルニ拘ラズ國家產業ト國民
生活ノ向上發達ニ寄與スル所甚ダ尠イコ
トニ徵シテモ判ル我ガ國ノ文明ハ久シク
輸入若クハ模倣デアツタソレガ現在ノ各
方面行詰リノ實狀ヲ生ジタノデアル輓近
漸ク其ノ非ヲ悟リ其ノ域ヲ脫シ獨創時代
ニ入リツツアル又一面我ガ國民ノ能力モ
其ノ負擔ニ堪エ得ルコトヲ實證シ來ツタ
故ニ此ノ際萬難ヲ排シ學術ノ〓究ヤ發明
發見等ガ助長シ奬勵スルノ方策ヲ講ズル
コトガ我ガ行詰レル國狀ヲ打開シ建國ノ
使命ヲ全ウスル所以デアルト確信シ本案
ヲ提出スルノデアル
〔山道襄一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=21
-
022・山道襄一
○山道襄一君 學術〓究ノ振興ニ關シマス
ル建議ニ付キマシテ、簡單ニ趣旨ノ辯明ヲ
致シマス、本案ハ「政府ハ我國ノ現狀ト帝國
ノ使命トニ鑑ミ國運進展生活向上ノ根本對
策トシテ速ニ學術〓究ノ振興ニ關スル具體
的方策ヲ講セラレムコトヲ望ム」ト云フノ
デアリマス、此理由ハ既ニ御手許ニ配付致
サレテアリマスノデ、玆ニ諄々シク申上ゲ
ル必要ハ認メマセヌ、唯簡單ニ一言ダケ中
述ベテ御諒解ヲ得タイト思ヒマス
吾々ガ御互ニ精進ヲ致シテ居リマス政治
ニ於キマシテモ、今日ハ旣ニ天才的ノ政治
デアルトカ或ハ力ノ政治デアルト云フ如
キモノニ依シテ、其目的ノ完成ヲセラレナイ
コトハ御承知ノ通リデアリマス、其政治ノ
目的ノ完成ヲ致シマスルノニハ、理論ニ根
據ヲ置カネバナラヌノデアリマス思想間
題ニ致シマシテモ、彈壓ヤ、或ハ單ナル情
誼ニ依ッテ是ガ完成ハ致サレマセヌ、卽チ學
術〓究ニ其基礎ヲ置キマシタル、理論ニ依ッ
テノ善導ノ方針デナケレバナラヌノデアリ
やく、又產業ノ如キモノハ人類御互ニ幸
福ヲ增進スベク努メル、其處ニ價値ガアル
ノデアリマスケレドモ、是亦學術ニ基礎ナ
クシテ之ヲ完成スルコトハ出來マセヌ、農
村ノ振興ノ如キモ、或ハ水產立國ト稱セラ
ルヽ如キモノモ或ハ人口問題モ、食糧間
題モ、悉クソレ等ノ根本的ノ解決ハ學術
的〓究ニ依"テ、產業ノ發達ヲ圖ルノ外ニハ
得ラレヌノデアリマス(拍手)近來盛ニ世界
ヲ風靡シテ居リマス不景氣ノ問題モ、或
失業問題モ其應急的ノ手段ト致シマシ
テハ、或ハ行政上ノ處置モアリマセウシ、
或ハ立法技術ニ依ル場合モアリマセウケレ
ドモ、併ナガラ其根本對策ハ學術的〓究
ニ根據ヲ置ク產業ノ振興ヲ圖ル以外ニハナ
イト私共考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)過
グル歐洲ノ大戰ノ際、獨逸ガ能ク世界ノ列
强ヲ相手トシテ、五箇年間之ニ耐ヘ得タト
云フコトモ、一ニ獨逸ガ學問ノ基礎ニ立ッ
タ卽チ學術〓究ノ出來テ居タ結果ガ、玆
ニ立至ラシメタモノデアルト信ジマス(拍
手)吾々ガ今後國防充實ヲ圖ルニ付キマシ
テモ殊ニ學術〓究ニ共基礎ヲ置カナケレ
バナリマセヌ
今日世界各國ノ大勢ハ、不景氣ノ風ニ襲
い へ失業ノ風ニ襲ハレテ居リマスケレド
モ、北部歐羅巴ノ小サナ諸國ハ何處ニ不
景氣ノ風ガ吹イテ居ルカト云フ風ニ見エテ
居リマス、丁抹ガ斯樣ナル狀態ニナツテ居ル
コトハ單ニ丁抹ノ農業〓育ノ普及バカリ
デハアリマセヌ、丁抹ノ〓育ト竝ンデ、丁
抹ハ學術〓究ニ努メテ、農村ノ開發ノ基礎
ヲ造ルコトヲ圖テ居ルコトニ依ルノデア
リマス、又御水知ノ如ク和蘭ガ其植民政策
ニ成功シ、國家產業ニ成功シテ、今日不景
氣ニ襲ハレズ、失業ニ襲ハレズニ居ルコト
ハ悉ク和蘭國民ノ、殊ニ今日ノ靑年ノ多
數ガ政治家ニナラントセズ、外交家トナラ
ントセズ、軍人トナラントスルコトヲ廢メ
テ悉ク彼等ガ學問ニ精進ヲシテ、學者ト
シテ世界的人物ニナラントシテ居ルト云
フ、此國民的所謂學問立國ノ下ニ置カレテ
居ルト云フコトニアルト私ハ考ヘテ居リマ
ス(拍手)現ニ御承知ノ如ク「アムステルダ
ム」ノ金融市場ガ、紐育ノ市場、倫敦ノ市場
ト竝ビ稱セラレルト言ッテハ語弊ガアルカ
知レマセヌガ、世界ノ三大金融市場ニ算ヘ
ラレテ居ルニ立至ッタコトモ、全ク學問立國
ノ結果デアルト、私共ハ固ク信ズルノデア
リマス(拍手)
飜シテ日本ノ實狀ヲ見マスル時ニ、日本ノ
〓育へ世界ニ誇ルベキ程ノ普及發達ヲ遂
ゲ〓育機關モ中々完備シテ居リマス、併
ナガラ此誇ルベキ〓育ノ普及發達、更ニ〓
育機關ノ或ル程度ノ完成ヲ致シテ居ルニ拘
ラズ、總テノ方面ガ、我ガ日本帝國ハ行詰
リノ狀態ニ在ルト云フコトハ何カラ來テ
居ルカト言フナラバ、此學校〓育ト相伴フ
タル學問ノ〓究、發明、發見等ノ奬勵助長
ガ怠ッテアッタ結果デアルト私共ハ考ヘマス
(拍手)此意味ガラ申シマシテモ、亦我國ノ
如キ天然資源ノ缺乏致シテ居リマス國ハ
如何ニシテ此國ヲ將來仲バシテ行カントス
ルカトスルナラバ、一ニ學問ニ精進シ學問
〓究、發見、發明等ニ向シテノ施設等ニ付
キ、大ナル考慮ヲ拂ハナケレバナラヌ、是
ガ一番必要ナコトト思フノデアリマス
亞米利加ニ於キマシテハ、御承知ノ如ク
「カーネギー」、「ロックフエラー」ノ兩財團ヲ
初メトシテ、幾多ノ學間〓究所ガ設立セラ
レテアリ、露西亞ノ如キ國ニ於キマシテモ、
今日ハ應用醫學ニ於テハ世界ニ於テ獨逸
ニ次グベキ發達ヲ遂ゲテ居リマス、此他一
例ヲ擧ゲマスレバ昨年ノ如キ土壤〓究ノ
世界的大會ヲ開キマシテ、世界ノ學者ヲ招
集ヲ致シテ一大調査〓究ヲ遂ゲタ、之ニ彼
等ガ非常ナル力ヲ擧ゲタト云フコトハ露
西亞產業ノ將來ニハ一ノ囑目スベキ所ノ
モノガアルコトヲ認メネバナラヌノデアリ
せい、此他大學ト共ニ學術〓究ニ大ニ力ヲ
盡シテ居リマス、又獨逸ニ於キマシテモ、
英吉利ニ於キマシテモ、ソレ〓〓斯樣ナモ
ノガアリマス英國ノ如キハ〓究省ノ設立
モセラレマシタリ「イムペリアルトラスト」
ヤ「メヂカルレサーチ、カウンシル」ナゾガ
アリマシテ、學術〓究ニ努メテ居リマス、
又獨逸ノ如キハ御承知ノ通リ「カイゼルウ
イルヘルム、ゲゼルシヤフト」ガアリ、或ハ
「ノートゲマインシヤフト」ガアリマシテ、
國運ノ振興ニ資シテ居リマス、斯ノ如キコ
トニ依ッテ、世界ノ各國ハ爭ウテ之ヲ努メテ
居ルノデアリマス
願クバ吾々ハ、今日ノ日本ノ現狀ニ顧ミ
タイト思ヒマス、サウシテ我ガ國民ハ今
獨創的ニ學術〓究、發明、發見等ニ耐ヘ得
ル所ノ能力ヲ得テ居ルコトヲ實證致シテ居
ルノデアリマスカラ、ドウカ政府ニ於テ、
此方面ニ一段ノ力ヲ用ヒテ、具體的ノ方策
ヲ講ゼラレンコトヲ建議シタイト考ヘマ
ス、何卒御贊成下サランコトヲ御願致ス次
第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=22
-
023・藤澤幾之輔
○議長(藤澤機之輔君) 提出者山口義一君
〔山日義一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=23
-
024・山口義一
○山口義一君 學術〓究振興ニ關スル建議
案ノ理由ヲ御說明政シマス、學術ハ人間幸
福ノ源デアリ又國家興隆ノ源デアルノデ
アリマス、總テノ政治ノ根本的解決ハ、此
科學的知識ニ基礎ヲ置カナケレバナラナ
イ、例ヘバ今日ノ實際問題デアリマス此殺
人的不景氣ノ問題ニ致シマシテモ、思想惡
化ノ問題ニ致シマシテモ、是ガ根本的ノ解
決ヲ圖リマスノニハドウシテモ科學的〓
究ニ基礎ヲ置カナケレバナラナイノデアリ
マス、而シテ我國ノ〓育ノ實際ノ狀態ヲ見
マスト、〓有竝ニ〓育ノ施設ハ可ナリ發達
ヲ致シテ居ルノデアル、所ガ此學術ノ〓究
デアルトカ、發見デアルトカ、或ハ發明デ
アルトカ云フコトニナルト、官民共ニ甚シ
ク冷淡デアル、ソレガ今日ノ我國ノ總テノ
方面ニ於ケル行詰リノ原因ヲ爲シテ居ルノ
デハナイカト思フノデアリマス
我國ハ今日マデ、動モスレバ外國ノ模倣
文明、又ハ輸入文明ニ慣レテ居ッタノデア
ル共結果ガ總テノ思想問題ニ致シマシテ
モ、又經濟問題ニ致シマシテモ、行詰リヲ
來シタヤウナコトニ相成タノデアリマス、
所ガ最近漸ク其非ヲ悟ルヤウニ相成リマシ
テ、其非ヲ〓ルヤウニ相成リマシタニ從ッテ、
此獨創的ノ〓究ヲシナケレバナラヌト云フ
コトニ段々悟ルヤウニ相成ッタノデアリマ
ス、此時ニ於キマシテ、此學術〓究ノ振興
ニ關スル爲ニ、玆ニ此建議案ヲ提出致シタ
ヤウナ次第デアリマスカラ、ドウカ皆サン
ノ御贊成ヲ御願致ス次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=24
-
025・作田高太郎
○作田高太郞君 兩案ヲ併合シテ一案ト爲
シ、卽決可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=25
-
026・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=26
-
027・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 起立總員、滿場一
致兩案ハ動議ノ如ク可決確定致シマシタ
日程第六乃至第九ハ便宜上一括議題トナ
スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=27
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028・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第六乃至第九ヲ一括シテ議題ト
致シマス
第六明治神宮競技ニ關スル建議案
(信太儀右衞門君外一名提出)
第七富山縣立商船學校移管ニ關スル
建議案(山田毅一君提出)
第八福野農學校ヲ高等農林學校ニ昇
格ニ關スル建議案(山田毅一君提出)
第九國民精神作興ニ關スル建議案
(北原阿智之助君外二名提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=28
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029・作田高太郎
○作田高太郞君 四案ハ一括シテ淺川浩君
提出、旭川市ニ高等工業學校設置ニ關スル
建議案外十一件ノ委員ニ併セ付託セラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=29
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030・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=30
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031・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第十乃至第二十五ハ便宜上一括議
題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=31
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032・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
PV、日程第十乃至第二十五ヲ一括議題ト
致シマス
第十球磨川改修ニ關スル建議案深
水〓君外二名提出)
第十一渡良瀨川上流河川改良促進ニ
關スル建議案(栗原彥三郞君提出)
第十二鬼怒川堰堤ニ關スル建議案
(齋藤太兵衞君外一名提出)
第十三五十鈴川上流〓淨ニ關スル建
議案(池田敬八君外七名提出)
第十四日向川改修ニ關スル建議案
(〓水德太郞君提出)
第十五小名濱港修築竝平小名濱間鐵
道速成ニ關スル建議案(木村〓治君
提出)
第十六北海道廳警察專用電話擴張ニ
關スル建議案(小池仁郞君外一名提
〓
第十七警察費國庫補給金增額ニ關ス
ル建議案(小池仁郞君外三名提出)
第十八有珠岳洞爺湖登別羊蹄山定山
溪及支笏湖ヲ抱擁スル國立公園設定
ニ關スル建議案(手代木隆吉君外二
名提出)
第十九國立公園指定ニ關スル建議案
(小池仁郡君外二名提出)
第二十磐梯山猪苗代湖ヲ中心トスル
國立公園設定ニ關スル建議案(八田
宗吉君提出)
第二十一伏木港修築速成ニ關スル建
議案(山田毅一君外一名提出)
第二十二北海道舊土人保護ニ關スル
建議案(手代木隆吉君提出)
第二十三結核患者收容力增加ニ關ス
ル建議案(大里廣次郞君外一名提出)
第二十四全國町村吏員互助組合ニ關
スル建議案(松田喜三郞君外十名提
出)
第二十五差別言動取締ニ關スル建議
案(村岡吾一君外二名提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=32
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033・作田高太郎
○作田高太郞君 十六案ハ一括シテ長野綱
良君外二名提出、大分港修築速成ニ關スル
建議案外五十六件委員ニ併セ付託セラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=33
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034・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=34
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035・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マリ。仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第二十六乃至第四十五ハ便宜上一括
議題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=35
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036・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第二十六乃至第四十五ヲ一括シ
テ議題ト致シマス
第二十六七尾氷見間鐵道敷設ニ關ス
ル建議案(戶部良祐君外一名提出)
第二十七二俣佐久間間鐵道速成ニ關
スル建議案(永田善三郞君外一名提
〓
第二十八新湊吳羽間鐵道速成ニ關ス
ル建議案(山田毅一君提出)
第二十九氷見羽咋間鐵道速成ニ關ス
ル建議案(山川毅一君外一名提出)
第三十城端美濃太田間鐵道敷設ニ關
スル建議案(山田毅一君提出)
第三十一高岡市ニ鐵道局設置ニ關ス
ル建議案(山田毅一君提出)
第三十二上山田後藤寺間鐵道敷設ニ
關スル建議案(大里廣次郞君提出)
第三十三二瀨長尾間鐵道敷設ニ關ス
ル建議案(大里廣次郞君提出)
第三十四大牟田驛三池港間臨港線速
成ニ關スル建議案(木村義雄君外一
名提出)
第三十五伊達紋鼈札幌間鐵道速成ニ
關スル建議案(手代木隆吉君提出)
第三十六尻內大館間鐵道敷設ニ關ス
ル建議案(山内亮君外二名提出)
第三十七江尻驛ニ急行列車停車ニ關
スル建議案(深澤豐太郞君提出)
第三十八寒河江富澤間鐵道敷設ニ關
スル建議案(〓水德太郞君提出)
第三十九川崎神町間鐵道敷設速成ニ
關スル建議案(〓水德太郞君提出)
第四十羽越本線溫海驛ニ急行列車停
車ニ關スル建議案(〓水德太郞君提
出)
第四十一·羽越本線鳥海驛新設ニ關ス
ル建議案(〓水德太郞君提出)
第四十二常磐炭運賃輕減ニ關スル建
議案(木村〓治君提出)
第四十三湖南鐵道敷設ニ關スル建議
案(八田宗吉君提出)
第四十四野岩羽鐵道速成ニ關スル建
議案(八田宗吉君提出)
第四十五柳津小出間及只見古町間鐵
道速成ニ關スル建議案(八田宗吉君
提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=36
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037・作田高太郎
○作田高太郞君 二十案ハ一括シテ崎山武
夫君外二名提出、出水宮之城間鐵道敷設ニ
關スル建議案外六十三件委員ニ併セ付託セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=37
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038・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=38
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039・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
ママ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第四十六乃至第四十九ハ便宜上一括
議題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔『異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=39
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040・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第四十六乃至第四十九ヲ一括シ
テ議題ト致シマス
第四十六織物消費稅法中麻織物ニ對
スル免稅ニ關スル建議案(戶部良祐
君外一名提出)
第四十七鹿兒島縣ニ國立煙草試驗場
設置ニ關スル建議案(春島東四郞君
外二名提出)
第四十八協力高ニ對スル公債證書給
興法制定ニ關スル建議案(寺田市正
君外七名提出)
第四十九戰時ノ財界混亂竝不當利得
防止ニ關スル建議案(服部〓一君外
三名提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=40
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041・作田高太郎
○作田高太郞君 四案ハ一括川島正次郞君
外九名提出、關稅定率法中改正法律案外十
八件委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=41
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042・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=42
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043・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
目程第五十乃至第五十三ハ便宜上一括議
題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=43
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044・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程五十乃至第五十三ヲ一括議題ト
敢シマス
第五十產金政策樹立ニ關スル建議案
(木下成太郞君外二名提出)
第五十一柑橘北米輸出ニ關スル建議
案(山道襄一君外十名提出)
第五十二織物輸出奬勵ノ爲海外事情
調査ニ關スル建議案(多木久米次郞
君提出)
第五十三日本萬國博覽會開催ニ關ス
ル建議案(植原悅二郞君提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=44
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045・作田高太郎
○作田高太郞君 四案ハ一括シテ藤田若水
君外四名提出、中央卸賣市場法中改正法律
案外九件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=45
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046・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=46
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047・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マヽ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第五十四及第五十五ハ便宜上一括議
題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=47
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048・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やべる日程第五十四及第五十五ヲ一括シテ
議題ト致シマス
第五十四貴衆兩院議長副議長及議員
優遇ニ關スル建議案(一松定吉君外
二十一名提出)
第五十五恩給法改正ニ關スル建議案
(松本忠雄君外十五名提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=48
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049・作田高太郎
○作田高太郞君 兩案ヲ一括シテ山下谷次
君外一名提出、恩給法中改正法律案外十二
件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=49
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050・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=50
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051・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如タ決シマシタ
日程第五十六乃至第六十三ハ便宜上一括
議題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=51
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052・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、日程第五十六乃至第六十三ヲ一括シ
テ議題ト致シマス
第五十六原蠶種國營ニ關スル建議案
(植原悅二郎君外一名提出)
第五十七原蠶種國營ニ關スル建議案
(百瀨渡君外五名提出)
第五十八新湊漁港修築ニ關スル建議
案(山田毅一君提出)
第五十九氷見漁港第二期工事速成ニ
關スル建議案(山田毅一君提出)
第六十鰺ケ澤漁港修築ニ關スル建議
案(山内亮君外二名提出)
第六十一米麥混砂搗精禁止ニ關スル
建議案(小池仁郞君外四名提出)
第六十二鬼怒川水利ニ關スル建議案
(齋藤太兵衛君外一名提山巴)
第六十三國立園藝試驗場設置ニ關ス
ル建議案(菊池良一君)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=52
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053・作田高太郎
○作田高太郞君 八案ヲ一括シテ崎山武夫
君外二名提出、禁獵區内ニ於ケル鶴保護及
農作物被害賠償ニ關スル建議案外二十七件
ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=53
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054・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
里氏は&アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=54
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055・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マヽ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第六十四乃至六十六ハ便宜上一括議
題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=55
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056・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第六十四乃至第六十六ヲ一括シ
テ議題ト致シマス
第六十四無線電信ノ裝置ニ關スル建
議案(小池仁郞君提出)
第六十五那覇港鹿兒島港間竝那覇港
大阪港間命令航路開始ニ關スル建議
案(崎山銅蘭君提出)
第六十六八戶港鮫角ニ燈臺建設ニ關
スル建議案(山内亮君外一一名提出】
〔建議案及理由書ハ追テ別冊ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=56
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057・作田高太郎
○作田高太郞君 三案ヲ一括シテ永田良吉
君提出、航空法中改正法律案外四件ノ委員
ニ併セ村託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=57
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058・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=58
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059・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマツタ
日程第六十七乃至第七十ハ便宜上一括議
題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=59
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060・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第六十七乃至第七十ヲ一括シテ
議題ト致シマス
第六十七室蘭區裁判所ニ地方裁判所
支部設置ニ關スル建議案(手代木隆
吉君提出)
第六十八大牟田市ニ區裁判所設置ニ
關スル建議案(木村義雄君外一名提
〓
第六十九沖繩縣石垣町竝名護町ニ區
裁判所設置ニ關スル建議案(崎山嗣
朝君提出)
第七十帶廣區裁判所ニ地方裁剤所支
部設置ニ關スル建議案(小池仁郞君
提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=60
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061・作田高太郎
○作田高太郞君 四案ヲ一括シテ一松定吉
君外四名提出、刑事訴訟法中改正法律案外
十三件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=61
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062・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=62
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063・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
9°、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第七十一及第七十二ハ便宜上一括議
題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=63
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064・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、日程第七十一及ビ第七十二ヲ一括シ
テ議題ト致シマス
第七十一尼港事件殉難者遺族及被害
者ノ損害賠償ニ關スル建議案(平山
岩彥君外六名提出)
第七十二海外發展ニ關スル建議案
(服部〓一君外三名提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別册ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=64
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065・作田高太郎
○作田高太郞君 兩案ヲ一括シテ宮川一貫
君提出、間島在住朝鮮人救濟ニ關スル建議
案外十件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=65
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066・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=66
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067・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
ママ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=67
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068・作田高太郎
○作田高太郞君 日程第七十三ハ之ヲ後〓
シトナシ、此際質問ノ答辯ニ對スル意見陳
述ヲ許サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=68
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069・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=69
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070・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マスヽ是ヨリ質問ノ答辯ニ對スル意見ノ陳
述ヲ許可致シマス、田川大吉郞君
〔「居ナイ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=70
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071・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 本田義成君
東京市對佛國訴訟事件ニ關スル質問ノ答
辯ニ對スル本田義成君ノ意見
〔本田義成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=71
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072・本田義成
○本田義成君 東京市ト佛蘭西トノ間ニ於
テ惹起セラレタル公債問題ニ對シ、政府ニ
答辯ヲ求メタノデゴザイマスガ、政府ハ此
重大ナル問題ニ對シテ、如何ナル理由デア
ルカ答辯ヲシナカッタノデゴザイマス、故ニ
玆ニ改メテ意見ノ陳述ヲスル次第デアリマ
ス
東京市ガ明治四十五年ノ二月電車電燈
〔議長退席、副議長著席〕
買收事業擴張費用ノ爲ニ、英米佛三箇國カラ
公債ヲ募集シタノデゴザイマス、英米二箇
國ニ於テ五百十七万五千磅ノ公債ヲ募集シ
タノデゴザイマス、佛蘭西ニ於テ佛貨法公債
一億八十八万法ヲ募集シタノデゴザイマス、
此募集當時ニハ東京市ハ內務省、大藏省
ノ許可ヲ得テ、大藏省ニ募集一切ノ事務ヲ
委任シテ、大藏省ノ財務官森賢吾君ガ東京
市ノ代表トナッテ、此募集ヲシタノデアリマ
ス、此公債ノ番號ハ三國共ニ同一ナ番號ニ
シテ公債ヲ募集シタノデアリマス、然ル
ニ佛蘭西ハ世界ノ大戰爭ノ結果、法ガ下落
シタト云フノデ、磅デ支拂ヘト云フコトヲ
要求シテ參ッタノデゴザイマス、此要求ヲサ
レタ結果、日本ガ四千八百万圓ノ損害ヲ生
ズルヤウナ狀態ニナックノデアリマス、佛蘭
西ハ自國ノ法ガ相當ノ價値アル時ニハ、法
デ支拂ヘト云フコトヲ要求シ、法デ契約シ
テ置イテ、公債ノ募集ニ應ジタノデゴザイ
マシタガ、自國ノ法ガ下落スルト云フト
今度ハ法デ契約シタノデハナイカラ、磅デ
支拂ヘト云フコトヲ日本ニ要求シテ、裁判
ヲ起シタノデアリマス
諸君、佛蘭西ハ自國ノ利益ノ時ニハ法デ
契約シテ置イテ、法ガ下落シタト言ッテ今度
日本ニ磅デ要求スルト云フ事柄ハ、私ハ國
際信義ヲ無視シク國ト思フノデアリマス、
ソコデ日本ノ政府ハ、此時ニ直チニ國際公
法ニ基イテ、此裁判ヲ引受ケナカッタラ宜
カッタノデアリマシタガ、遂ニ此裁判ニ應ジ
タノデアリマス、應ジタ結果、第一審ニ於
テ裁判ヲ爭ッタ時ニ、佛蘭西ノ「セーヌ」裁判
所ニ於テ、佛蘭西ノ檢事ガ此問題ニ對シテ
論告ヲシタノデアリマス、佛蘭西ノ裁判所
ノ檢事ガ、斯ノ如ク論告ヲシタコトヲ、私
ハ此處ニ一言是非申シテ置カンケレバナラ
ヌノデアリマスカラ申上ゲマス、佛蘭西ノ
檢事ガ此公債ノ裁判ニ付テ斯ノ如キ事ヲ申
シタノデアリマス「セーヌ」裁判所ノ「ガヂ
エ」檢事ガ、此日本ト佛蘭西ノ裁判ニ對シテ
斯ク論ジタノデアリマス、「ガヂエ」檢事曰
ク「日本ノ公債證劵面及ビ目論見書ニ、一億
八十八万法ハ英貨四百万磅ニ相當スル旨ヲ
附記シ、尙ホ募債認可ノ總額ガ九百十七万
五千磅ニシテ其用途及ビ償却基金ノ同一
ナルコトヲ以テ磅法兩公債ヲ同一視難
キコトヲ開陳シ、本件募債ニ關シ佛國大藏
省ニ照會セルニ、當時同省ハ佛國ニ於テ佛
★貨ヲ以テ募集スルコトヲ許可セルコト、公
債證劵面ニ元利共佛貨ヲ以テ佛國ニ於テ支
拂フベキ旨明記シアルコト、其他貨幣價格
等ヲ論究シ、佛國側ノ主張ハ之ヲ認メ難ク、
本件ハ當事者ガ佛國人タリト外國人タリト
ニ依リ區別スルハ司法官權ノ本義ニ反ス
ルモノナリ、仍テ正義ヲ以テ審査シテコソ、
我國ノ名譽光輝ト世界的地位、竝ニ世界的
權威、隨テ又佛國ノ信用ヲ一層堅固ナルモ
ノトスベキ絕對的公平無私ナル裁判デア
ル、假令佛國側ニ不利ナル判決ヲ下サレタ
トテモ、佛國ノ國家的利益ヲ損フモノニ非
ズ」ト主張シテ、日本ニ有利ノ論〓ヲシタ
ノデアリマス、其結果佛國裁判所ハ日本ニ
利益ナ裁判ヲ下シタノデアリマス、佛國ノ
裁判ノ檢事ガ斯ノ如ク論告シタコトハ)全
ク私ハ國際公法上當然ノコトヽ思フノデア
リマス、然ルニ此正義ナル判決ニ對シテ、
直グニ佛國側ハ巴里控訴院ニ上告シタノデ
アリマス、上〓致シマスト云フト、今度ハ
佛國側ハ國ヲ擧ゲテ反對致シタノデアリマ
ス、是ハ諸君、些細ナコトヂヤアリマセヌ、
日本ト佛國ノ大問題デアリマス、是ハ能ク
聽イテ戴カナケレバナラヌ又佛蘭西ニモ
能ク聽カセナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、ソコデ佛蘭西デ巴里控訴院ニ之ヲ上
告スルヤ否ヤ、大擧シテ大使館ヲ威嚇シタ
ノデアリマス、殊ニ新聞記者ヲ以テ-
部新聞記者ヲ以テ裁判所ヲ威嚇シテ、若シ
此裁判ヲ日本ニ勝タ七ルナラバ、佛國ハ財
政上、政治上恐ルベキ影響ガアルトシテ
國ヲ擧ゲテ反對シタノデアリマス、又若シ
之ヲ日本ニ勝タセルヤウナ裁判ヲ下スナラ
バ佛蘭西ノ公債所持人カラ權利ヲ剝奪ス
ルモノデアルト論ジタノデアリマス
右ノ如キ恐ルベキ言動ヲ爲シテ、遂ニ佛
蘭西裁判所ニ壓迫シテ、日本ニ敗訴ノ裁判
ヲ下シタノデアリマス、諸君、斯ノ如キ重
大ナル裁判ガ、若シ國際公法上敗訴ニ歸シ
タト云フコトデゴザリマシタナラバ、日本
ハ直チニ-東京市ハ四千八百万圓ノ損害
ガ生ズルノデアリマス此場合ニ於テ政府
ハ宜シク今マデノ軟弱外交ヲ棄テ直チニ
國際信義ニ基イテ、是非共國際裁判ニ付ス
ルカ或ハ世界ノ友邦ノ伸裁裁判ニ付スル
カシテ是非共日本ニ有利ニ導クヤウニ
政府ニ努力シテ戴カナケレバナラヌト云フ
コトヲ申上ゲルノデアリマス、今一ツ大藏
大臣ニ御願シテ置キマス、東京市ガ佛國ノ
公債訴訟ニ關シ、大藏省ハ殆ド對岸ノ火災
視スルガ如キ狀態デアルガ、何故サウ云フ
態度デ居ルカ、大藏大臣ハ進ンデ外務省ヲ
鞭撻シテ、一日モ速ニ解決ヲ付ケル責任ア
リト思フガ、其責任ハドウスルカ、東京市
ノ外債ノ募集當時、大藏省ハ之ヲ引受ケ、
財務官森賢吾氏ヲ責任擔當者トシテ派遣
シ、同氏ハ英、米佛三國ニ於テ前記ノ公
債ヲ募集セラレタノデアリマス、偶、其公債
證劵面中ノ文字ノ點ヨリ訴訟ヲ提起セラ
レ、今ヤ東京市ハ四千八百万圓ノ損害ヲ生
ズルガ如キ大問題ニ至ッタノデアリマス、大
藏省ガ東京市ノ此問題ニ對シ放任セラルヽ
ガ如キハ甚ダ其當ヲ得ナイ、故ニ大藏大
臣ノ明答ヲ望ム次第デアリマス、大藏大臣
ハ是非共外務大臣ヲ鞭撻シテ、此訴訟ノ解
決ヲ付ケルヤウニ努力セラレンコトヲ望ム
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=72
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073・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 丹下茂十郞君
愛知縣油ケ淵惡水路開鑿ニ關スル質問ノ
答辯ニ對スル丹下茂十郞君ノ意見
〔丹下茂十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=73
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074・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 諸君、私ハ曩ニ愛知縣碧
海郡ニ於キマシテ、河川改修當時ニ國費ノ
補助ニ依ッテ行ハレル用、惡水幹線補助エデア
リマス、此二ツノ事業ヲ併セ行フ計畫ガ成
立チマシテ、共第一期ノ計畫デアル油ヶ淵
ノ惡水路ノ開鑿問題ニ付キマシテ、昨年ノ
二月內務大臣ガ認可ヲ與ヘタノデアリマス
ガ、是ガ七月ニ至リマシテ、更ニ其反對ノ
方向ニ新シク一線惡水路ヲ開鑿スルト云フ
設計變更ノ認可ヲ與ヘタ問題デアリマス、
是ハ單ニ地方ノ問題ノヤウデアリマスル
ガ、此問題ハ實ニ重大ナル、卽チ現內閣ノ
地方行政ニ對スル彈壓ニ關スル問題デアリ
マス、故ニ之ニ對シテ質問書ヲ出シテ置キ
マシタ所ガ、極メテ簡單無責任ナル答辯ガ
參ッテ居リマス、其詳細ヲ再質問ヲ致サウト
思ヒマスルガ、何分會期モ御承知ノヤウナ
コトデ、其機會ガアリマセヌ、今日趣旨ノ
辯明ヲト云フコトデアリマスガ、之ヲ申上
ゲテ居リマスト非常ニ時間ヲ要シマスカ
ラ、私ハ時間ヲ省略スル意味ニ於テ、議長
ノ御許ヲ得テ、要領ヲ書イテアリマスカラ
之ヲ速記錄ニ留メテ、私ハ今日ハ是デ止メ
ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=74
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075・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 永田良吉君
航空ニ關スル質問ノ答辯ニ對スル永田良
吉君ノ意見
〔永田良吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=75
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076・永田良吉
○永田良吉君 航空ニ關スル質問ノ要旨ヲ
極ク簡單ニ辯明致シマス、第一、去ル三月
八日代々木ノ練兵場ニ於キマシテ、陸軍ノ航
空演習ガアッタノデアリマス、其時ノ椿事ニ
關スル原因等ヲ政府當局ニ質問シタノデア
リマスルガ、其答辯ガ至ッテ簡單デアリマス
ルカラシテ、其質問ノ要旨ヲ極ク簡單ニ辯
明致シマス
私ハ當日ノ飛行演習ハ成功デアッタト
思フノデアリマス、觀衆モ二十万モ見エマ
スシ、又飛行演習ノ技術等ニ於キマシテモ、
洵ニ立派ナル出來榮デアッタノデアリマス、
然ルニ最後丁度アノ煙幕劑ノ氣化ガ旨ク行
カズシテ、非常ニ失敗ヲ致シマシタケレド
モ、アレハ私ハ航空關係ノ失敗デハナクシ
テ、陸軍ノ化學〓究所ノ失敗デアルト思フ
ノデアリマス、此意味カラ將來決シテ陸軍
ハアノ位ノ小サイ失敗ヲ以テ氣ヲ屈スル
コトナク、益、航空ニ熱心ニ進展サレンコト
ヲ希望致ス次第デアリマス
次ニ第二ハ、日支ノ定期飛行ノ開始ニ付
キマシテ、昨年來度々質問ヲ致シテ居ルノ
デアリマスルガ、是等ノ御答辯ハ至ッテ簡潔
デアッテ、其要領ヲ得テ居リマセヌ、私ハ今
日日本ノ民間航空ノ發達上、支那ト日本ノ
間ニ定期航空ヲ開始スルコトガ、一番大切
ナ事項ト信ズルノデアリマス、然ルニ政府
ハ昨年、今將ニ開始スルヤウナ段取ニナッテ居
ルト云フコトヲ答辯サレテ居ラレナガラ、
過去一箇年ノ間、是ガ開始ヲ見ナイト云フ
コトハ、明カニ航空關係當局竝ニ外務省ノ
失敗デハナイカト信ズルノデアリマス、皆
樣御承知ノ通リ隣邦支那ニ於ケル列國ノ航
空進出ノ狀態ハ、第一米國ヲ初メ獨逸ノ如
キハ單獨ニ航空條約ヲ結ンデ、支那大陸
ニ進出セント致シテ居ルノデアリマス、然
ルニ我國ハ一衣帶水、丁度本家カラ、離レ
ノ便所ニ行クヤウナ、僅カ一千哩モナイヤウ
ナ、アノ小サイ僅カノ空間ノ間ニ、日支連絡
ノ定期飛行ガ出來ナイ、而モ獨逸ヤ米國ニ
先鞭ヲ打タレタ、尙ホ露西亞ニ於テモ、英
國、佛蘭西等モ、漸次支那大陸ニ進出シテ
居ル傾向デアル、此情勢ニ鑑ミテ、經濟的
方面ノミナラズ、我國ノ國力發展ノ爲ニ、
又國防ノ見地カラ致シマシテモ、今日支那
ト日本トノ間ニ航空事業ヲ開始スルコト
ハ、最モ急要ト思ヒマシテ本質問ヲ發シタ
ヤウナ譯デアリマス
第三ニハ內地ト臺灣間ノ航空關係デゴ
ザイマスルガ、是等ハ新植民地ト日本トノ
交通ヲ敏速ニスル關係、其他政治上、經濟
上ノ關係等カラ見マシテモ內地ト臺灣間
ノ航空ノ開始ハ最モ急務デアルト信スル
ノデアリマス、航空當局ハ若シ日支間ノ
定期航空ガ出來ナイナラバ我ガ國內ノ定
期航空ノ最モ急務ナル內地、臺灣間ノ航空
ヲ開始スルコトガ、最モ必要ト考ヘマシテ、
此質問ヲ發シタ譯デアリマス、當局ハ財政
ノ都合デ云々ト仰シヤイマスケレドモ、是
等ハ左樣ナ單純ナル理由ヲ以テ遷延スベキ
問題デハナイト信ジマシテ、本質問ヲ發シ
タ譯デアリマス
第四ニハ航空院若クハ航空省ノ設置ニ
關シマシテ政府ノ意見ヲ聞イタノデアリマ
ス、今日我國ノ民間航空ノ指導監督ノ府ハ、
遞信省ニ簡單ナル航空局ガアルダケデアリ
マスルガ、アノ局ノ力ヲ以テ、列國ニ對シ
マシテ頗ル遲レタ日本ノ航空業ノ伸展ヲ圖
ルニハアレヲモット昇格シマシテ、或ハ
航空院若クハ航空省ヲ設置シマシテ、我國
ノ民間航空ノ進步發達ヲ圖ル必要ガアルト
見マシテ、是ハ組織ノ上カラ斯ウ云フ質問
ヲシタ譯デアリマス
第五ニハ内閣ノ直屬ノ航空審議會ヲ開
イテ貰ヒタイ我國ノ此航空關係ニ付キマ
シテハ、マダ審議會ガ開カレテ居ラヌノデア
リマス、或ハ水產トカ其他ノ方面ニ於テ
ハ色々ナル審議會ガ設ケラレテ居リマス
ケレドモ、一番遲レテ居ル航空ノ方面ニ關
シマシテ、マダ審議會ガ開カレヌト云フコ
トハ、甚ダ遺憾ニ堪ヘマセヌ、此理由カラ、
内閣直屬ノ航空審議會ヲ開イテ貰イタイト
云フ質問ヲ發シタ譯デアリマス
第六ニハ飛行場ニ關スル質問ヲシタ譯
デアリマス、今日我國ノ民間飛行ガ發達シ
ナイト云フノハ、第一私ハ飛行場ガ少イト云
フコトガ、主ナル原因デアルト思ッテ居リマ
ス、此理由カラ日本全國ノ到ル處ニ飛行場
ヲ設ケナケレバナラヌ、之ニ對シテ政府ハ
補助ヲ發スルトカ、何等カノ方便ヲ以テ、
今日急速ニ飛行場ヲ造ルノ必要アルヲ認メ
マシテ、此質問ヲ發シタ譯デアリマス
第七ニハ航空學校竝ニ航空ノ〓究所ヲ
バ設置シテ貰ヒタイト云フ意味ノ質問ヲシ
タノデアリマスルガ、今日我國ト致シマシ
テハ陸海軍ノ方ニハ無論航空ノ學校モア
リマスケレドモ、民間航空ノ〓究ヲスル學
校ハ單ニ貧弱ナル私立ノ學校ガアルダケ
デ、技術方面ト云ヒ、或ハ工藝方面ト云ヒ、
此〓究ガ遲レテ居ルノデアリマス、是等ノ
國立ノ機關ニ依リ、若クハ國家ノ補助ニ依。ツ
テ、モット權威アル航空學校ヲ造ッテ戴キタ
イ、是等ニ對シテ政府當局ノ意見ヲ質シタ
譯デアリマス
第八ニ、航空工業ノ補助奬勵ニ關スル質
問ヲシタノデアリマスルガ、御承知ノ通リ
我國ノ航空工業ハ、之ヲ歐米ノ先進國ニ較
ベマスト、頗ル貧弱ナ狀態ニ在ルノデアリ
やく、今日多少ノ飛行機ノ製作工場ハアリ
マスケレドモ、是ハ主トシテ日本ノ陸海軍
ニ之ヲ納メテ居ル民間ニ對スル飛行機ノ
如キハ一年間ニ僅ニ三十臺カソコラノ貧
弱ナ飛行機シカ供給ガ出來ナイヤウナ狀態
デアルノデアリマス、是等ニ向ヒマシテ政
府ハ補助ヲシテ、日本ノ民間航空ノ發展ノ
爲ニ、航空工業ニ向ッテ補助ノ意思ハナイカ
ト云フコトヲ質問シタ次第デアリマス
第九ニハ、日本ノ國內ノ航空輸送ノ促進
ニ付キマシテ質問致シタ譯デアリマス、我
國ノ航空輸送事業ハ、只今東京ヲ中心ト致
シマシテ、大阪、福岡ニ至ル間ガアルダケ
デ、植民地ノ方ハ朝鮮カラ大連マデ延ビ
テ居リマスガ、マダ臺灣ノ方ニモ、北ハ北
海道、樺太、アヽ云フ方面ニモ延ビテ居ラ
ヌノデアリマス、是等ノ國內ノ航空輸送ヲ、
此際直チニ促進スルヤウナ方法ヲ執ルノ意
思ハナイカト云フコトヲ質問シタ次第デア
リマス
次ニハ國民一般ニ航空思想ノ源養ノ必要
ガアル、之ニ對スル政府ノ意見ヲ聽イタ譯
デアリマスルガ、一體我國ニ於テハ歐米各
國ノ如ク、アノ歐洲大戰亂ニ參加ヲシナカッ
ク、ソレカラ此空車ノ慘害ニ對シマシテ
體驗ト知識ガ乏シイ、斯ウ云フ理由カラ、
我國ニ於キマシテハ、政府當局ノ總理大臣
ヤ閣僚ノ方モ飛行機ニ乘ッタ人モ少イノデ、
其他一般ノ航空ニ關スル知識ガ、國民一般
トモ缺乏ヲ致シテ居ルノデアリマス、是等
ニ對シマシテ、上ハ政府當局ヨリ下ハ國民
ニ對シテ航空思想ノ涵養ガ必要ト思ヒマ
シテ、此質問ヲ發シタ譯デアリマス
次ニハ東亞ニ於ケル航空權ノ獲得ガ一番
大切デアルト云フコトヲ、政府ニ質問致シ
タ譯デアリマスルガ、御承知ノ通リ東亞ユ於
ケル所ノ航空權ハ、日本ノ國防上又經濟的ノ
發展ノ上ニ、最モ重要ナル案件ト信ズルノ
デアリマスルガ、前述ノ如ク歐洲各國ハ東
洋ニ向フテ駸々乎トシテ進出シテ參ルニ拘
ラズ、我國ハ未ダ支那ニ向ッテ一指モ染メラ
レナイト云フコトハ、洵ニ憤慨ニ堪ヘナイ
ノデアリマス、此理由カラ本質問ヲ發シタ
譯デアリマス
次ニハ歐洲ト日本トノ航空連絡ニ付キマ
シテ質問シタ譯デアリマスガ、歐洲カラ我
ガ日本ニ向ヒマシテハ東洋ニ向ヒマシテ
ハ、盛ニ航空ノ連絡ヲ圖〓ノテ居リマスガ進
ンデ我國カラ歐洲方面ニ突進シテ行ク勇氣
ガナイノヲ非常ニ悲ミマシテ、此質問ヲ發
シタ譯デアリマス
次ニ又太平洋ト南洋方面ニ向ヒマシテノ
航空ニ關スル質問ヲシタノデアリマスガ、
太平洋モ直チニ米國ノ航空方面カラ、布哇
若クハ比律賓ヲ經テ亞細亞トノ連絡モ近ク
出來ハシナイカト思ヒマス、又邦人ノ發展
上重要ナル南洋方面ニ向ッテノ航空路ヲ開
拓スルコトガ必要ト思ヒマスノデ、是等ノ
質問ヲシタノデアリマス
次ニハ我國ノ陸海軍ノ空軍ノ兵力ニ對シ
テ質問ヲシタノデアリマスガ、御承知ノ通
リ海軍ハ今年十四臺モ擴張セラレル案ガ出
タノデアリマスカラ、先以テ所望ノ幾分ガ
達セラレルノデアリマスガ、陸軍ト致シマ
シテハ、空軍ノ兵力ハ均勢ヲ失ッテ居ルト思
ヒマス、現在ノ陸軍ノ空軍ノ勢力デハ博多
露西亞一箇國ニスラ對抗スルコトガ出來ナ
イ現狀デアリマスカラ、此點ニ付テ日本ノ
陸軍ノ空軍ノ勢力ヲ擴張シナケレバナラヌ
必要ガアリマス、玆ニ空軍トシテ最モ必要
ナ爆擊隊ハ急速ニ擴張スル必要ガアリハ
シナイカト云フコトヲ質問シタ譯デアリマ
ス
次ニ民間航空ノコトハ、前ニ申シマシタ
ガ、是ハ一面カラ見マスト、民間航空勢力
ハ、陸海軍ノ空軍ノ豫備隊ノ役目ヲ爲ス重
大ナル責務ガアリマスカラ、日本ノ貧弱ナ
ル民間航空勢力デハ、迚モ列國ト對抗出來
ナイ、イザ鎌倉ト云フ場合ニ於キマシテ
斯ノ如キ貧弱ナル民間航空勢力デハ、確
國防ニ不安ガアリハシナイカト思ヒマス
吾々ハ國防ノ事ニ對シマシテハ、吾黨ヨリ
モ閣僚ニ色々質問ガアリマシタガ、其際政
府ハ何時モ國防ハ不安ナシ、安固デアルト
云フコトヲ仰シヤイマシタガ、今日ノ空軍
ヲ考ヘナイデ、國防不安ナシト云フコトハ、
洵ニ無責任極マル御答辯デアルト思フノデ
アリマス、此意味カラ私ハ將來ノ國防ハ、海
陸軍ノ力ダケデハイケナイ、卽チ空軍ノ力
ヲ充實シナケレバ不安デアルト云フ、深キ
信念ヲ持ノテ居リマスカラ、此質問ヲ發シタ
ノデアリマス
次ニ從來陸軍デオヤリニナッテ居ル特別
大演習ニ於キマシテ、我ガ陸軍ノ航空兵力
ハ頗ル貧弱ナルモノデアル一體大演習ニ
於キマシテ、僅カ十二三臺ノ飛行機ヲ使ヶ
テ陛下ノ天覽ニ供シテ居リマスガ、是レ
位心細イコトハアリマセヌ海軍ニ於キマ
シテハ、新兵器ガアル場合ニハ之ヲ陸
下ノ天覽ニ供シテ居リマス。陸軍ハ僅カ十
二三臺ノ飛行機ヲ使シテ居リマスガ、歐米ニ
於キマシテハ百機、二百機以上ノ優勢ナル
飛行機ヲ使クテヤッテ居リマス、此點ニ於キ
マシテ、日本ノ陸軍ノ飛行機ハ洵ニ御話ニ
ナラヌト云フノデ質問ヲシタノデアリマス
次ニ日本ノ陸軍ニ於キマシテ水上飛行
機ヲ使ッテ居ナイ、是ハ私ハ腑ニ落チヌノデ
アリマス、一體我國ハ四面環海デアル、又
將來豫想セラレル戰場ニ於テハ私ハ陸軍
ノ陸上機バカリデハイカナイ、假ニ南支ノ
揚子江沿岸、或ハ湖水ノ多イ方面、又陸軍
ガ海軍ノ力ヲ借ラズ、陸戰隊ノ用兵ヲナス
場合等ニ於キマシテハ確ニ水上機ノ必要
ガアルト信ズルノデアリマス、ソレニモ拘
ラズ陸軍ハ水上飛行機ノ利用ガ足リナイ、
之ニ就テノ當局ノ意見ヲ聽イタ譯デアリマ
ス
最後ニ私ガ質問致シタノハ、如何ニ日本
ノ民間航空ノ勢力ガ貧弱デアッテモ、之ヲ
振興スルニハ、第一ニ經濟上ノ問題ヲ考慮
センケレバナラヌノデアリマスガ、此問題
ニ付キマシテハ、色々ノ方策モアリマセウ
ケレドモ、私ハ日本ノ民間航空ヲ發達セシ
ムル一番良イ方法ハ、此際政府當局ガ大英
斷ヲ以テ、航空公債ヲ發行シテカラ、俄
我國ノ民間航空ヲ發展セシムル、是ガ最モ
捷徑デ、最モ適切ナ案デハナイカト考ヘマ
シテ質問致シタ譯デアリマス
以上私ハ二十項ニ亙リマシテ、我國ノ主
トシテ民間航空ノ發達ヲ圖ル必要ヲ感ジマ
シテ、以上ノ質問ヲ發シタ譯デアリマス、
長イ間御〓聽ヲ煩シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=76
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077・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 板谷順助君
北海道拓殖問題竝漁業問題ニ關スル質問
ノ答辯ニ對スル板谷順助君ノ意見
〔板谷頓助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=77
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078・板谷順助
○板谷順助君 私ハ北海道拓殖計畫ノ財源
ニ關シマシテ、極メテ簡單ニ意見ノ開陳ヲ
致シタイト思フノデアリマス、此計畫ハ我
國ノ人口、食糧問題ヲ解決センガ爲ニ、國策
トシテ樹立サレテ居ッタノデアリマシテ、其
財源ハ北海道ノ超過收入ヲ以テ、其費用ニ
充テルト云フ建前ニ出來テ居ルノデアリマ
ス、然ルニ昭和五年度ニ於ケル所ノ北海道
ノ前年度ノ超過收入ハ二千七百三万圓デア
ル、豫定計畫カラ中シマスレバ三千十三
万四千圓ナケレバ出來ナイノデアルガ、超過
收入卽チ二千七百三万圓ノ中カラ百八十八
万圓ト云フモノヲ奪取ッタノデアル、吾々ハ
此點ニ對シマシテ、政府當局ニ對シマシテ
再三質問ヲ致シタノデアリマスルガ、奪ッタ
ノヂヤナイト言ッテ詭辯ヲ弄シテ居ル、然ル
ニ先般ノ委員會ニ於キマシテ政府當局ハ
卽チ北海道ノ昭和五年度ノ二千七百三万圓
ト云フモノハ前年度ノ收入デアルト云プ
コトヲ自白シタノデアル、明カニ言明シタ
ノデアル、更ニ又本年度ノ豫算ハドウ云
フ關係ニナッテ居ルカト申シマスルナラバ、
豫定計畫ノ其費用ガ三千百八十五万圓ナク
テハ出來ナイ、、然ルニ北海道ノ基準ナルモ
ノハ二千五百十五万圓ト云フモノヲ建前
トシテ居ルニモ拘ラズ、其中デ更ニ百十一
万圓ト云フモノヲ減ジテ居ルソコデ吾々
ハ政府ニ對シテ甚ダ不都合ヂヤナイカ、苟
モ若槻内閣ノ當時ニ於テ決定シタル所ノ此
原則ヲ、濱口內閣ニ於テ破壞シテ居ル卽
チ吾々道民ノ多年ノ希望、吾々同志ノ多年
ノ努力モ、此內閣ニ依ッテ破壞サレテ居ル、
水泡ニ歸シテ居ル、デアルカラシテ此點
ニ付テ再三質問ヲ致シタノデアリマスケレ
ドモ、要領ヲ得ナイノデアリマス、卽チ若
槻內閣ノ樹ツタル此計畫ヲ、濱口內閣自身
ノ手ニ依ッテ破壞シテ居ノテ、而シテ此自給
自足主義ナルモノモ一片ノ空文ニ終ッタノ
デアリマス、空證文ニ終ヲタノデアリマス
(「一片トハ何ダ」ト呼フ者アリ)一片ノ空證
文ニ終ッタノデアル、ソコデ之ニ對スル所
ノ現政府ハ如何ナル責任ヲ執ル是ガ先ヅ
第一ノ質問ノ要點デアル更ニ又現在ノ拓
殖計畫ノ財源ナルモノハ極メテ不確實デ
アル根本ノ改訂ヲ加へナケレバ北海道ノ
此計畫ノ遂行ハ出來ナイト云フコトハ、政
友會モ民政黨モ一致シタ所ノ意見デアル、
此見地カラ田中內閣ノ當時ニ於キマシテ
拓殖調査會ナルモノガ出來タ然ルニ之ニ
對シテ民政黨內閣ガ出來ルヤ否ヤ之ヲ廢シ
タ、廢シタト云フコトニ付テハドウ云フ
理由ガアルカ、現在ノ北海道ノ拓殖計畫ニ
對シテ根本的ノ改革ヲ加ヘル必要ガナイ
ト認メタノデアルカ、或ハ反對黨ガ作。シタ案
デアルカラ、之ヲ破壞スルト云フ考デアル
カ、此點ニ付テ私ハ質問ヲシタノデアリマ
スケレドモ、一向要領ヲ得マセヌ、ソコデ
重ネテ現政府ニ對シテ責任アル答辯ヲ求メ
ルノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=78
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079・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 武知勇記君
河野通治增位奏請ニ關スル質問ノ答辯ニ
對スル武知勇記君ノ意見
武「勇記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=79
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080・武知勇記
○裁知勇記君 私ハ私ガ提出致シマシタ河
野通治贈位奏請ニ關スル質問ニ對シテ、政
府ノ答辯ニ甚ダ不滿足デアリマスルガ故
二、此際簡單ニ意見ノ陳述ヲ試ミタイト存
ジマス
朝野ヲ擧ゲテ最モ畏レ多イ事犯ノ發生ナ
リトシテ恐懼致シマシタ彼ノ賣勳事件ガ、
國民思想ニ甚大ナル惡影響ヲ與ヘタト云フ
コトハ萬人ノ認ムル所デアリマス、然ル
ニ其憎ムベキ行爲ノ本質ハ之ヲ異ニ致シ
マスルケレドモ、私共ハ今マザ〓〓ト眼前
ニ逆賊贈位ノ事實ヲ見セ付ケラレマシテ
之ガ思想界ニ及ボス結果恐ルベキモノガア
ルト信ズルノデアリマス、逆賊河野通治ニ
向ノテ贈位ヲ奏請セラレマシタコトハ、不問
ニ付スルコトハ斷ジテ出來ナイノデアリマ
ス
諸君、御承知デアリマセウガ、河野氏ハ
伊豫ノ豪族デアリマス隨テ伊豫ニ河野家
ニ關スル史料ガ現存致シマスコトハ固ヨ
リ當然ノコトデアリマス、私ハ今マデ是等
ノ史料ヲ精細ニ調査致シマシタケレドモ
政府ノ所謂河野通治ト云フ忠臣ノ氏名ハ絕
對ニ發見スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス、後醍醐天皇ノ當時、河野家ヨリ出マシ
タ忠臣ハ、申スマデモナク土居、得能ノ二
氏デアリマシテ、皇太子恒良親王ヲ奉ジテ
北國ニ赴ク途中、土居備中守通增ハ、荒地
中山ノ雪中デ戰死ヲ遂ゲ、得能備後守通綱
ハ金ケ崎城ニ於テ戰死ヲ遂ゲマシテ、明治
十七年既ニ正四位追贈ノ光榮ニ浴シテ居ル
ノデアリマスヽ然ルニ之ニ反シマシテ、河
野通治ハ足利氏ノ謀將トシテ、尊氏九州ヨリ
東征ノ際、音戶ノ迫門ヨリ從軍シ、官軍ヲ
破ッタノミナラズ、其部下大森彥七ト共ニ湊
川ニ楠木正成ヲ亡ボスナド、至ル所ニ惡逆
ヲ助ケテ、晩年ニハ伊豫國風早那河野〓、
卽チ現在ノ愛媛縣溫泉郡河野村ニ善應寺ヲ
營ミマシテ、其興黨ニ仰ガレ正平十七年
十一月十七日卒去シタ逆賊デアルコトハ
苟モ伊豫ニ生ヲ享ケタ者ノ等シク知ル史實
デアリマス
然ルニ諸君、此ハッキリシタ史實ヲ無視シ
テ、昭和三年十一月十日、畏レ多クモ聖上
御卽位ノ大典ヲ擧ゲサセ給フニ際シ、此河
野通治ハ從四位追贈ノ光榮ニ浴シタノデア
リマス、此意外ナ報ニ驚イタノハ、啻ニ歷
史專門家ノミデハアリマセヌ、彼ガ〓關ノ
地タル愛媛縣ニ於テハ、千古相傳フル〓土
史料ニ疑ヲ抱キ、容易ナラザル思想ノ動搖
ヲ見ルニ至ッタノデアリマス、私共モ亦斯ノ
如キ順逆其基本ヲ誤リ、忠奸其處ヲ一ニス
ルガ如キ奇怪ナル出來事ニ直面致シマシテ
ハ國家ノ信賞必備ノ標準果シテ何レニ在
リヤト疑ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍
手)天下ノ文豪デアリマスル德富蘇峰先生
ノ言葉ニ、〓土史料ヲ離レテ思想ノ善導ナ
シト申サレタ言葉ガアリマス、諸君、〓土
史料ヲ離レテ思想ノ善導ナシト天下ノ文豪
デアル德富蘇峰先生ハ申サレタノデアリマ
スガ、今ヤ思想問題ハ洵ニヤカマシク論議
サレテ居リマスル今日、政府ガ敢テ貴重ナ
ル〓土史料ヲ無視シテマデ、逆賊贈位ノ奏
請ノ擧ニ出デマシタ以上ハ、其處ニハ自ラ
世ノ疑惑ヲ一掃スルニ足ル所ノ史料ノ持合
セガナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ
私ノ質問ニ對スル答辯ニ依リマスト、現內
閣モ亦前內閣ノ答辯ヲヤハリ繼承セラレ
テ、神田孝平氏所藏ニ係ル古寫本太平記、
卽チ神田本太平記ニ原據シテ、次ノ如ク贈
位ハ至當ノモノト答ヘラレタノデアリマ
ス、次ノ文句トハ何カト申シマスト「河野通
治ハ伊豫ノ人ニシテ後醍翻天皇ノ御代備後
守ニ任ゼラレ延元元年十月其同族河野備中
守通綱ト共ニ皇太子恒良親王ヲ奉ジテ越前
金ケ崎城ニ入リ家臣三十餘人ト戰死ヲ遂ゲ
タ忠臣デアル」ト答ヘラレタノデアリマス
私ハ此答辯ニ依リマシテ、政府ノ見解ハ正
ニ其形式ハ逆賊河野通治ノ名ヲ用ヒ、內容
ハ河野備後守通綱ノ功績ヲ傳ヘテ、恰モ埃
及ノ「スフインクス」ノ如キ忠臣ヲ作リ上ゲ
タモノデアルト信ジテ居リマス、今時間サ
ヘアリマシタナラバ一々此杜撰ナル政府
ノ答辯ヲ反駁スルコトガ出來ルノデアリマ
スケレドモ、時間ガアリマセヌ、唯如何ニ
杜撰デアルカト云フ事ヲ立證スル爲ニ一言
申上ゲマスルガ河野家ニハ土居備中守ト
得能備後守ノ二人ノ忠臣ガ出テ居ルノミデ
アルニモ拘ラズ、政府ノ辯明ニ依ッテ見マ
スト、更ニ河野備後守ト河野備中守、都合
四人ノ忠臣ガ現レタノデアリマス、而モ河
野備後守通綱、卽チ得能通綱ハ、金ケ崎城
ニ於テ力戰奮鬪シタルモ力及バズ、家臣
三十餘人ト戰死ヲ遂ゲタ、其功績ニ依ッテ明
治十七年旣ニ正四位ヲ追贈セラレテ居ルノ
デアリマスルガ、「治」ト「綱」ト一字違フ所
ノ河野備後守通治ナルモノガ、所モ同ジ金
ケ崎城ニ於テ、人數モ同ジ三十餘人ト共ニ
戰死ヲ遂ゲ、而シテ「從」ト「正」トノ差異ハ
アリマスルガ、從四位ヲ贈ラレタト云フ歸
結ヲ見テ居ルノデアリマスカラ、常識ヲ以
テ判斷シテモ疑ハシイノデアリマス尙ホ
政府ノ言フ所ニ依リマスト、逆賊タル河野
通治ハ對馬守ニシテ、忠臣タル河野通治ハ
備後守デアルト申シテ居リマスガ敍位稱
號コソ異ニハ致シマスケレドモ、河野通治
ト云フ忠奸二將ガ同時ニ存在シテ居シタコ
トヲ認メナケレバナラヌノデアリマス、政
府ノ此所論ヲ正シイモノト見マスナラバ
先ヅ私ハ何ヒタイ、河野通治ト云フ逆賊ハ
實在シテ居ル人物デアルガ故ニ、九郞左衞
門ト云フ通稱ガアリマシタガ、忠臣河野通
治ハ實在セザル人物デアルガ故ニ、通稱ハ
絕對ニナイノデアリマス、世界中ノ史料
ヲ、鐵ノ草鞋ヲ穿イテ探シマシテモ、絕對
ニ通稱ノ見付カリヤウハナイノデアル
諸君、斯ノ如キ杜撰極マル政府ノ答辯ニ
對シテ、私ハ一々反駁スル時間ヲ持チマセ
ヌカラ、此程度ニ止メマシテ、議長ノ御許
シヲ得テ補足トシテ玆ニ持ッテ居ル原稿ヲ
速記錄ニ載セテ戴キタイト思フノデアリマ
ス、之ヲ要スルニ河野通治ハ逆賊ニ相違ナ
イガ、政府ハ此逆賊ニ贈位ヲ致シマシテ、
其非違ヲ悟ラズ、恬然トシテ思想惡化ノ因
子ヲ放置シテ居ル態度ヲ執ッテ居リマスノ
ハ、洵ニ國家ノ爲ニ慨嘆ニ堪ヘナイ次第デ
アリマス、願クハ政府ニ於カレマシテハ
速ニ贈位奏請ノ誤リヲ明カニシテ、國家ニ
累ヲ及ボサヾルヤウ、一入ノ御配慮アラン
コトヲ切望シマシテ、私ハ此壇ヲ降ル次第
デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=80
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081・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 鈴木梅四郞君
醫藥制度ノ大缺陷ニ關スル質問竝ニ健康
保險法ノ實施ニ關スル再質問ノ答辯ニ對
スル鈴木梅四郞君ノ意見
〔鈴木梅四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=81
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082・鈴木梅四郎
○鈴木梅四郞君 諸君、私ノ演說ノ趣意ハ
超黨派的ノ問題デアリマシテ、私ノ信ズル
所ニ依リマスレバ此問題ハ今日マデ此議
會ニ於テ閑却サレテ居リマシタケレドモ
近キ數年ノ間ニハ全國民ノ多數ヲ占メテ居
リマス所ノ庶民階級カラ囂々トシテ議論
ガ起リ、此議會ノ大問題トナルベキモノデ
アルト云フコトヲ申上ゲテ、簡單ニ其趣意
ヲ申述ベル次第デアリマス
少シ專門ニ亙リマスルケレドモ、我國ノ
醫藥制度ト申シマスルモノハ建國ノ初ヨ
リ國家的、社會的デゴザイマシテ、歐米ノ
如ク又日本ノ今日ノ如ク、個人的、營利
的デハナカッタノデアリマス
此歷史ニ付テ考ヘマスレバ、今ヨリ約干
三百年前、推古天皇ノ時分ニ、四天王寺ト
云フモノガ浪速ニ設ケラレタ、其四天王寺
ノ中ニ施、築院、療病院、悲田院ト云フモノ
ガ立派ニ出來テ居リマシタ、是ガ所謂貧富
ノ階級ヲ問ハズ、疾病負傷ノアル者ヲ治療
シタト云フノデ、日本ノ歷史ニ光彩ヲ放ッテ
居ルノデアリマス、是ハ確ニ今日ノ所謂社
會政策ノ最モ意義ノアルモノヲ實施シタノ
デアッテ、我國ノ歷史ノ上ニ於テ、外國ニ對
シテモ誇ルベキモノデアルト信ズルノデア
リマス、ナゼナレバ、「アングロサクソン」
ノ勢ハ、今日世界ヲ壓倒シテ居リマスケレ
ドモ、我國ニ此立派ナ社會政策ガ行ハレタ
時分ニハ「アングロサクソン」ノ如キハ
マダ北歐ノ森林カラ出タ野蠻時代ヲ遠ク離
レナイ時代デアル、尙ホ其後天武天皇ノ大
寶令ニ於キマシテハ醫學校ノ制度ガ定メ
ラレマシテ、各科專門ノモノガ十分ニ立ッテ
居リマス、又八代將軍ノ時ニ、是ハ有名
ナ話デアリマスガ、御典醫ノ古橘ト云フ人
ガ、街頭ノ土工、職工ノ脈ヲ取ッタコトニ
付テ問題ガ起リマシタ、所ガ此人ガ〓然ト
シテ其非難ニ答ヘルノニ、御典醫ト雖モ
何モ庶民ノ脈ヲ取ッテ惡イコトハナイデハ
ナイカト云フコトデ、所謂仁術ノ實ヲ發揮
シタ、其事ガ數日ヲ經テ將軍ノ耳ニ入ッタノ
デ、將軍ハ怒ルト思ヒノ外、其御典醫古橘
ニ對シテ非常ナ褒メ言葉ヲ與ヘタ斯樣ナ
コトガアリマス又維新前マデノ日本ノ醫
術ト云フモノハ確ニ仁術ヲ離レナイデ居
リマシタ、ト云フノハ貧富ノ階級ノ如何ニ
依ッテ藥價、診察料ヲ取ルト云フコトハシテ
居リマセヌ、盆暮ニ農民ハ、或ハ自ラ作リ
マシタ農產物ナドヲ先生ノ所ニ持ッテ行ッテ
御禮ヲシタリ、或ハ町家ノ人々ハ、貧富ニ
應ジテ、少々ヅヽノ禮ヲ持ッテ行ク、而モ其
中ノ感心ナル御醫者サンハ、此貧富ノ階級
ニ謝禮ノ厚薄ヲ明カニシテハイカヌト云フ
ノデ、或ル醫者ノ如キハ玄關前ニ盥ヲ置
キマシテ、盥ノ中ニ水ヲ入レ、禮ニ持ッテ來
タ其禮物ハ紙ニ包ンダ儘其水ノ中ニ投入レサ
シタノデアリマス、何人ガ何程ノ禮ヲ持ッテ
來タカト云フコトヲ知ラセナイヤウニシ
テ貧乏人モ金持モ、與ニ倶ニ安ンジテ醫
者ニ掛ルコトノ出來ルヤウナコトヲシタ御
醫者サンモアルノデアリマス
之ヲ要スルニ日本ノ醫藥制度ト云フモノ
ハ昔カラ歷史上カラ申ツマシテモ、實
際上カラ申シマシテモ、確ニ國家的、社會的
デアッテ、貧富ノ懸隔、階級ノ如何ニ依ッテ疾
病負傷ノ治療ト云フモノニ差別ヲシテ居ル
ト云フ事實ハナイノデアリマス然ルニ今
日ハ如何デアルカト云フト、我ガ帝國ノ此
昔カラノ立派ナル仁術ト云フモノガ全ク行
ハレナイヤウニナッタコトハ、私ガ此質問書
ニ書イタ通リデアリマス、此點ハドウシテ
モ我ガ建國ノ歷史ニ鑑ミマシテ、此醫藥制
度ト云フモノハ、根本ヨリ改メテ行カナクテ
ハナラヌト云フ主張ヲ私ハ持ヶテ居リマス
其第一ノ理由ト致シマシテ茲ニ申上ゲマ
ス日本ノ醫學、醫衛ト云フモノハ今日
非常ナル進步ヲ致シテ居リマス、之ヲ世界
ニ較ベマシテモ一二ヲ爭ヒ、我ガ日本帝國
ハ確ニ獨逸ノ次ニ居ルト言ハレテ居ルノデ
アリマス、斯ノ如ク非常ナル進步ヲ致シテ
居リマス爲ニ、昔ハドウシテモ助カラヌト
言ハレタ所ノ病人ガ、今日ハ確ニ助ッテ居
リマス、又昔ハドウシテモ不具ニナルベキ
人ガ、今日ハ確ニ元ノ通リニ怪我ヲ治スコ
トガ出來ル疾病者負傷者、共ニ今日ノ如
キ幸福ナル時代ニ際會シタルコトハ古來ナ
イト申シテモ宜イ程進步致シテ居リマス、
而シテ日本ノ醫學ガ漸ク進步發達シマシタ
原因ハ何處ニ在ルカト申シマスト三ツア
リマス、ソレハ何デアルカ、第一ハ建國以
來吾々ノ先人ガ醫學醫術ノ爲ニ奮闘努力シ
ク、其努力ノ累積シタル結果ト云フモノガ
段々先人カラ傳ハリ傳シテ、玆ニ日本ノ醫學
醫術ノ基礎ヲ築イタト云フコトデアル遠
ク朝鮮ヲ師トシ、支那ヲ師トシ、印度ヲ師
トシタ、アノ時代ノコトハ別ニシマシテ
近ク德川時代ニナリマシテ蘭學ヲ通ジテ醫
學醫術ヲ〓究致シマシタ歷史ヲ見マスレ
バ一身ノ名譽モ利害モ顧ミズシテ斯ノ
道ノ爲ニ全ク一身ヲ犠牲ニ供シテ、醫學醫
術ノ進步改良ヲ圖ッタ事實ガ歷々トシテア
リマス淚ナクシテ此醫學醫術ノ進步ノ歷
史ヲ見ルコトガ出來ナイ程ノ先人ノ努力デ
ゴザイマス、之ガ卽チ今日ノ日本醫學醫術
ガ共ニ世界ニ誇ルベキ所ノ進步ヲ致シマシ
タル第一ノ原因デアリマス
第二ハ何デアルカ、明治政府ガ初メテ國
ヲ開イテ世界萬國ト交涉ヲシテ行クニ付
テハ何ハ扨テ措イテモ國ヲ富マシ兵ヲ
强クスルニアラザレバイカヌト云フ其大主
義カラ、富國强兵ノ基ハ國民ノ働キノ能率
ヲ高メルソレニハドウスルカト言ヘバ
卽チ國民ノ健康ヲ立派ニ保タセナケレバイ
カヌ、國民ノ健康ヲ保タセル爲ニハ、ドウ
シテモ醫學醫衛ヲ奬勵シテ立派ナモノニシ
ナケレバナラヌト云フ見地カラ、財政窮乏
ノ際ニモ拘ラズ、明治政府ハ金ヲ惜マズシ
テ大學校ヲ拵ヘ、病院ヲ拵ヘ、此醫學醫
術ノ奬勵ヲ致シ、殊ニ學校カラ優秀ナ學生
ガ出來マスレバ直チニ之ヲ歐米ニ留學セ
シメマシテ、最新ノ醫學醫術ヲ〓究シ、之
ヲ繰返シ繰返シ今日ニ至ルマデ六十何年ノ
間之ヲ繰返シテヤッテ居リマス、此明治政府
ノ政治家ノ大見識ニ依フテ醫學醫術ノ奬勵
ヲシタト云フコトガ、第一一ノ原因ニナッテ居
リマス
第三ハ何デアルカト言ヒマスレバ、政府
ガ斯ノ如ク奬勵ヲ致シマシタ費用ハ何處
カラ出テ居ルカト申シマスト、御同樣國民
全體ノ租稅カラ出テ居ルノデアリマス、シ
テ見マスト云フト、此明治ノ初年ヨリ今日
ニ至ルマデ醫學醫術ノ爲ニ奬勵費ヲ使ヒマ
シタ高ハ數億圓ニ上ッテ居リマス、此數億
圓ノ金ハ國民ガ平等ニ負擔シテ居ルノデア
リマス、今日ハ稅目ハ直稅間稅ト分レテ居
リマシテ、或ルモノハ金持ガ納メ、或ルモ
ノハ庶民階級ガ納メテ居リマスガ兎ニ角
是ダケノ奬勵費ヲ使ッタト云フコトハ、國民
全體ガ負擔シテ居ルト謂フノデアリマス
主ナルモノヲ擧ゲマスレバ、此三箇ノ事情
ニ依シテ我國ノ醫學醫術ト云フモノハ今日
ノ如ク盛ニナッタモノデアリマス、シテ見マ
スルト云フト、此進步發達致シマシタル日
本ノ醫學醫術ノ恩惠ニ浴スルモノハ何人デ
アルカト申シマスレバ國民一切平等デナ
クテハ相成ラヌ譯デアリマス金持若クハ
貧民、其間ニ階級ヲ設ケテ、此醫學醫術ノ
恩惠ニ差別的待遇ヲスルト云フコトハ此
發達ノ歷史ニ考ヘ原因ニ考ヘテモ、間違。ツ
テ居ルノデアリマス、此最新ノ醫學醫術ノ
恩惠ニ浴シマスル所ハ、國民平等デナクテ
ハナラヌト云フコトハ、私ガ申スマデモナ
ク當然ノコトデアリマス、然ルニ如何デア
リマス、今日ノ醫藥制度ニ於キマツテハ
醫師社會ハ所謂私ノ醫藥「トラスト」ト云フ
モノヲ結ンデ居リマシテ藥價診察料ト云フ
モノヲ高ク決メテ、其診察料藥價ヲ拂ハナ
イ者ニ付テハ診療ヲ與ヘナイノデアリマ
ス、殊ニ貧民階級ニ至リマスト、現金ヲ持ノ
テ行カネバ診療ヲシテ吳レナイコトニナッ
テ居リマス是デドウウシテ國民ノ健康ヲ
保持シ、體力ヲ養シテ行クコトガ出來マス
カ、今日ノ醫藥制度ノ不完全ハ根本ノ原理
ニ於テ全ク間違ノテ居ルト思フノデアリマ
ス
ソコデ是カラ生ズル所ノ色々ノ弊ハ澤山
アリマスガ私ハ玆ニ一ツ尙ホ諸君ニ愬ヘ
テ置キタイノハ人命ノ大切デアルト云フ
コトハ富メル者モ、貧シキ者モ、階級ノ
區別ナシニ一切同樣デアルト云フコトハ今
日疑フ人ハナイ人命ハ如何ナル人デモ大
切デアル所デ日本ノ今日ノ醫藥制度ハド
ウデアルカト申シマスレバ、富メル人ノ命
ハ大切ニシテ富マザル人殊ニソレハ國民
ノ四分ノ三以上アル多數ノ人命ハ、洵ニ粗
末ニシテ居ルト云フ制度ニナッテ居ルノデ
アル、ソレハ前段申上ゲタ通リニ、藥價診
察料ヲチヤント決メテ、ソレヲ拂ハネバ病
氣モ負傷モ癒シテヤラヌト云フ、此醫藥「ト
ラスト」ノ爲デアリマス、デアリマスルカ
ラ此上カラ中シマシテモ、此現在ノ醫藥制
度ト云フモノハ、根本的ニ間違ヲテ居ルト云
フコトガ明カデアル、更ニ〓一例ヲ擧ゲマ
ス今日ハ日本ノ醫者ノ分布ト云フモノハ
非常ニ惡イ、都會地ニ於キマシテハ、人口
五百人ニ付テ一人ノ醫者ガアリマス、併シ
地方ニ參リマスルト云フト、人口一万人ニ付
テ四人若ハ五人ヨリ醫者ノナイ所ガアル
否ソレノミナラズ、全國一万二千ノ町村中、
醫者ノナイ町村ガ三千モアルノデアリマ
スソコデ是等ノ地方ニ於キマシテ、病氣
負傷ニ罹リマスルト云フト、確カニ助カル
ベキ命モ助カラズシテ、天命ヲ失フ所ノ人
ガ多イト云フコトハ自然ノ結果デアル、
所デコヽデ日本ノ法律ニ於テハ、死亡シタ
場合ニハドウシテモ醫者ノ診斷書ガナケレ
バ葬式ヲ出スコトガ出來ヌト云フ、所デ日
本ノ大多數ノ庶民階級ノ死亡者ト申シマス
モノハ死スル前ニ醫者ニ掛ル機會ノナイ
者ガ多數デアリマス、ケレドモ此法律アル
爲ニ、死ンデカラドウシテモ醫者ノ手ニ掛
ラナクテハナラヌ、此憐レナ、生キテ居ル
中ニ病氣ニ罹ッテモ、醫者ニ診テ貰フコ
トノ出來ナイ人ガ、死ンデ初テ此法律アル
爲ニ醫者ニ診テ貰フ、卽チ屍體ヲ檢案シテ、
サウシテ診斷書ヲ作ッテ貰フ、併ナガラ地方
ニ參リマスト只今中ス通リ、醫師ノ分布
ト云フモノガ非常ニ惡イモノデアリ、マスカ
ラ、遠方カラ醫者ヲ呼ンデ診斷書ヲ書イテ
貰フ、旅費カラ其他總テヾ一番安イモノデ
モ、診斷書ヲ書イテ貰フノニハ一人三圓
五十錢カラ五圓掛ルノデアル、中々掛ル所
ガ多イ、デアリマスカラ生キテ居ル間ニ醫
者ニ接スルコトノ出來ナイ貧民ハ死ンデ
カラ斯樣ナ高キ金ヲ拂フ、私ハ之ヲ死亡稅
ト云フ、貧民ハ死ンデカラ此高キ死亡稅ヲ
拂ハナクテハナラヌト云フ、實ニ不都合千
萬ナル制度ガ玆ニ出來テ居ルノデアリマス、
諸君ハ之ヲ何ト御考ヘニナリマスカ知レマ
セヌガ、斯ル不都合ナル制度ト云フモノハ
アルベキモノデハナイト思フノデアリマス、
是ガ私ガ申上ゲタイ主ナル事情デ、マダ外
ニ種々申上ゲタイコトハゴザイマスルガ
極メテ簡單ニ申上ゲル約東デゴザイマスカ
ラ、此邊デ止シマシテ、最後ニ一言中上ゲ
タイノハ今日此議會ニハ色々ノ問題ガ出
ルニモ拘ラズ、國民大多數ノ、一番大切ナ
生命ニ關スル問題ガ、斯ノ如ク閑却サレテ、
斯ノ如キ不都合ノ制度ガ依然トシテ存シテ
居ル原因ハ何處ニアルカト云フコトヲ、玆
ニ一言中上ゲタイ
是ハ私ハ政府ノ當局者ニモ度々昨年-
五十八議會カラ此議會マデモ續ケテ質問シ
テ居ル中ニモアリマスルガ、此主ナル原因
ハ何デアルカト申シマスレバ、此醫業ト云フ
モノニ誤クタル所ノ特權ヲ與ヘテ、サウシテ
醫業ト云フモノヲ全ク營利的ニシテ居ルト
云フ爲ニ起シテ居ルノデアリマス、所デ此不
都合ハ諸君モ私ノ說明ヲ要セズシテ御承知
デゴザイマセウガ、此不都合ノコトガ、今
日マデ持續シテ居ルノハ何デアルカ、今ヨ
リ數年前ノ普選ノ行ハレル迄ノ選擧法ト
云フモノハ所謂制限選擧、直接國稅十圓若
クハ十五圓、二遍ニ變化シマシタガ最後ハ
十圓デアッタ、十圓迄ノ直接國稅ヲ納メル者
ガ有權者デアッタ、ソレガ爲ニ醫師會ト云フ
モノガ大變ニ選擧ノ上ニ有利ナ位地ヲ占メ
タ、選擧ヲ爭フ人ハ醫師會ノ味方ヲ得ナケ
レバ不利益デアッタト云フコトガ元ニナリ
マシテ、總テ御醫者サンノ言フコトヲ、選
擧ヲ爭フ人々ハ聽カナクテハナラヌト云フ
ヤウナ風習デアッタノデアリマス、是ガ卽チ
今日ノ少數ノ醫者ヲ政治上ニ跋扈セシムル
元ニナッタ、諸君、御考ヲ願ヒタイ、此制限
選擧ノ時代ノ有權者ト云フモノハ、今日ノ
有權者ノ四分ノ一デアリマス、今日ハ普選
ニナリマシタカラシテ四分ノ三ノ有權者
ト云フモノハ所謂醫者ノ得意デナイ人々デ
アル昔ノ制限選擧時代ノ醫者ノ得意ト云
フモノハ有權者デアッタ、デアリマシタカラ
醫師ノ勢力ガ選擧ニ非常ナ力ガアック、併シ
普選ヲ實行シタ後ノ四分ノ三ノ有權者ト云
フモノハ醫師ノ方カラハ遠ザケラレ、疎
ンゼラレ、相手ニサレナイ所ノ階級ガ有權
者ニナッタ、隨テ此普通選擧後醫師會ノ勢力
ト云フモノハ最早選擧ニハ全クナイノデア
リマス、デアリマスガ、習慣ト云フモノハ
恐ルベキモノデアッテ、今日マダ其習慣ガ或
ル部分ニ殘ッテ居リマス、少數ノ人々ハー
初テ普選ニ依ッテ出タ人々ニハ左樣ナモノ
ハアリマセヌガ、昔カラ出テ居ッタ人ハ醫師
會ノ勢力ト云フモノヲ非常ニ恐レル人ガア
ルノデアリマス、ソコデ私ハ此根本問題ヲ
政府及ビ議會ニ於テ改メナイ限リハ、此醫
藥制度ハイカヌト思フ、併シソレニハ一言
致シマス、日本ノ醫師諸君ハ、開業醫諸君
ハ四万人ソコ〓〓デアリマス、國民ハ六千
五六百万人アリマス、此僅々四万人ニ足ラ
ヌ人ノ便宜ヲ圖ル爲ニ、六千五六百万ノ國
民ノ生命ニ大關係ノアル此問題ヲ閑却スル
ト云フコトハ最モ不當ノコトデアリマス
爲ニ、恐クハ私ガ最初ニ申シマシタ通リ、
三四年ノ後ニナリマシテハ最早四万何人カ
ノ醫者ノ便宜ヲ圖ルコトヲ主トシテ居ル政
治家ハ當選スルコトハ出來ナイダラウト
思ヒマス、ドウゾ此點ニ付テ諸君ハ能ク御
考ヘニナッテ、所謂四万人ノ醫者ト六千五百万
人ノ大多數ノ國民トヲドウスルカ、此比較
ヲ能ク御考へ下サイマシテ、醫藥制度ノ根
本ヲ改メルコトニ御努力ヲ願ヒタイ、此コ
トハ私ガ最初ニ申シマシタ通リ、確ニ近イ
中ニ議會ノ大問題トナルダラウト思フ
更ニ今日一言添ヘテ申上ゲテ置キマス
ガ、今日ノ醫師ノ生活ト云フモノハ甚ダ困
難デアル、四万人ノ醫者ガアリマスガ、生
活ノ安定ヲ得テ居ル御醫者サンハ四分ノ一
アルカドウカ分リマセヌ、大多數ハ今日生
活ニ困ッテ居ル爲ニ、私共ノ唱ヘテ居ル所ノ
醫業國營、卽チ醫師ト云フモノハ國家ノ官
吏トシテ、國家ノ責任トシテ病氣負傷ノ治
療ヲスル、卽チ貧富ノ階級ヲ撤廢シテ、日本
國民デアル以上ハ疾病負傷ノ場合直チニ醫
者ニ掛。フテ治療ノ出來ルヤウニスルト云フ
時世ガ、近ク到來スルコトト思ヒマスカラ、
ドウゾ諸君ニ於カレマシテモ、此大勢ヲ御
覽ニナリマシテ、此問題ヲ愼重ニ御〓究ア
ランコトヲ希望攻スノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=82
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083・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 村上紋四郞君
〔「今居リマセヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=83
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084・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御席ニ居ラレマセ
ヌカラ後〓シニ致シマス-山邊常重君
小學校〓科書價格引下ニ關スル質問竝小
運送業者ノ待遇改善ニ關スル質問ノ答辯
ニ對スル山邊常重君ノ意見
〔山邊常重君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=84
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085・山邊常重
○山邊常重君 私ノ意見ノ陳述ハ二ツアル
ノデアリマス、第一ハ小學校兒童用ノ〓科
書ノ價ガ他ノ物價ニ比較致シマシテ非常ニ
高イノデアル、ドウカ此子供ノ用ヒル〓科
書ノ値段ヲ政府トシテハ出來得ルダケ安ク
シテハドウカ、又千數百万人ノ兒童ガ用ヒ
ルノデアリマスルカラ、其生產ハ大量生產
デアリマス、デアリマスルカラ國家トシテ
ハ是等必要ノ〓科書ハ自ラ作リマシテ、之
ヲ各小學校ニ分配スル意思アリヤドウカト
云フコトヲ質問シタノデアリマスガ、政府
ハ之ニ對シマシテ唯十分ノ考慮ヲ拂フト云
フダケデアリマスカラ、私ハ更ニ一日モ早
ク此〓科書ノ値段ヲ改正致シマシテ、サウ
シテ國民ノ幾分ナリトモ負擔ノ輕減ヲシテ
貰ヒタイト云フノガ卽チ私ノ意見ノ大要デ
アリマス
第二ノ意見ノ陳述ハ小運送業者ニ對スル
意見ノ陳述デアリマス、御承知ノ通リ現在
ノ運送業者ハ合同非合同ニ分レテ居リマ
ス、又公認、非公認ニ分レテ居リマス、所
ガ此兩者ノ取扱ヲ見マスルト云フト、合同
運送及ビ公認ノ運送業者ニ對シマシテハ
政府ハ特殊ノ待遇ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス然ルニ合同業者ニアラザル、卽チ非合
同運送業者及ビ非公認ノ運送業者ニ對シマ
シテハ實ニ見ルニ忍ビザル所ノ虐待的待
遇ヲ致シテ居ルノデアリマス之ニ付キマ
シテハ永年本議場ニ於キマシテ度々政府ニ
質問致シマシタガ、未ダ曾テ此重要問題ノ
解決ヲ見ナイノデアリマス、願クハ政府ニ
於キマシテモ唯合同、非合同、公認非公認
ノ僅カナ係リ合ニ於テ非常ナ差別的待遇ヲ
スルト云フコトハ苟モ營業自由ノ原則ニ
反スルノデアルト私共ハ信ジテ疑ハナイノ
デアリマス此點ニ付キマシテ政府ハ更ニ
一層考慮ヲ拂ハレテ、一日モ早ク是等ノ差
別待遇ノ撤廢アランコトヲ望ミマシテ意見
ノ陳述ヲ終ル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=85
-
086・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 栗原彥三郞君
〔「撤囘テアリマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=86
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087・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 栗原君ハ御取消デ
アリス-一松定吉君
法令ノ解釋統一ニ關スル質問ノ答辯ニ對
スル一松定吉君ノ意見
〔一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=87
-
088・一松定吉
○一松定吉君 私ノ政府ニ對シマスル法令
ノ解釋統一ニ關スル質問趣意ニ對シ、提案
者ノ一人ト致シマシテ、私ヨリ意見ノ陳述
ヲ試ミタイノデアリマス
此質問ノ要旨ハ工事ノ請負競爭入札等
ニ於ケル所謂談合行爲、談合行爲ト申シマ
スモノハ御存ジノ方モ多數御在リノコト
ト思ヒマスケレドモ、入札スル人々ノ間ニ於
テ、其價額ノ協定ヲシテ、落札スル人ヲ取
極メ、其落札スル人以外ノ者ハ其入札金
額ヨリモ多クノ金目ヲ以テ入札ヲシテ、自
分等ニ落札ノシナイヤウニ取計ヒ、協定ヲ
シタ人ニ落札スルヤウニ取極メマシテ、其
落札シタ人ガ或金額ヲ他ノ落札シテ居ナイ
人ニ分配スルト云フヤリ方ヲヤルノデアリ
やく、此方法ヲ吾々專門家方面カラ名付ケ
マシテ談合行爲ト云フノデアリマスガ、此
行爲ニ對シマシテハ、我國ニ於キマシテモ、
數年前マデハ是ハ詐欺行爲ナリトシテ檢事
局ニ於テ起訴シ、裁判所モ詐欺罪ヲ構成ス
ルモノナリトシテ、之ヲ罰シテ居ッタノデア
リマスケレドモ、大正八年ニ我ガ大審院ハ、
此場合ハ詐欺罪ヲ構成シナイモノデアルト
明確ナル宣言ヲ下シタ以來、我ガ內地ハ勿
論朝鮮及ビ滿洲ニ於ケル各裁判所トモ
此談合行爲ヲ詐欺罪トシテ所罰セズ、檢
事局ニ於テモ犯罪トシテ起訴シナイコトニ
ナッタノデアリマス、然ルニ我ガ大審院ガ大
正八年ニ此裁判ヲ言渡サレル其以前デア
ル、大正五年ニ朝鮮ノ高等法院ガ、其談合
行爲ハ詐欺罪ヲ構成スルモノナリトノ宣言
ヲ致シマシタ爲メ、爾來朝鮮ノ各檢事局ハ
我ガ大審院ノ無罪ノ裁判アリタルニ拘ラ
ズ、高等法院ノ有罪ノ裁判アルコトヲ前提
トシテ、之ヲ詐欺罪ナリトシテ起訴シ、起
訴ヲ受ケタル裁判所ニ於キマシテハ同ジ
ク詐欺罪ナリトシテ有罪ノ判決ヲ下シテ居
ルノデアリマス、昨年ノ春ニモ朝鮮ノ大邱
地方法院ハ、此事實ニ對シマシテ同ジク詐
欺罪ヲ構成スルモノナリトシテ有罪ノ判決
ヲ爲シ、大邱覆審法院モ亦昨年八月同ジク
有罪ノ判決ヲ致シタノデアリマス
諸君、同ジ法律事實ニ對シマシテ、同ジ
刑法第二百四十六條ヲ解釋適用スルニ當リ
マシテ、我ガ內地竝ニ臺灣、關東州等ニ於
テハ此行爲ハ無罪ナリトシテ不間ニ附シ
テ居ルニ拘ラズ、單サ朝鮮ノミガ有罪ナリ
トシテ、之ニ詐欺罪ヲ以テ臨ムト云フガ如
キハ同ジク陛下ノ赤子デアル國民ノ中
デ、其住居スル所ノ場所ニ依ッテ、或者ハ刑
罰ノ制裁ヲ受ケルモノナリトシテ罰セラ
レ、或者ハ權利行爲ナリトシテ放任セラレ
ルト云フガ如キコトハ法ノ解釋不統一デ
アルト歎クバカリデハアリマセヌ、國民ハ
法ノ解釋、刑ノ適用ニ於テ、其居住シテ居
ル場所ノ如何ニ依ッテ、有罪、無罪ヲ決セラ
レルト云フガ如キ狀態ニテハ、安ジテ法的
生活ヲ爲スコトガ出來ナイノデアリマス、
故ニ私ハ斯ノ如キ場合ニ於テハ宜シク法
規ノ解釋ヲ統一シナケレバナラヌノデハナ
イカト云フコトヲ吾々同志數人ガ提案者
トシテ政府ニ質問致シタノデアリマスガ、
政府ノ答辯ハ左樣ノ事實アルコトハ洵
遺憾千万デアルケレドモ、我ガ內地ニ於ケ
ル大審院ト朝鮮ニ於ケル高等法院トハ各、
獨立シテ、互ニ相侵スコトノ出來ナイ現行
法ノ下ニ於テハ又如何トモスルコトガ出
來ナイノデアルト、斯樣ナ答辯デアリマス、
成程現行解釋ノ上カラ致シマスレバ又巳
ムヲ得ナイコトデアリマスガ、吾々ハ斯ノ
如キ矛盾撞著スル法ノ取扱ハ、是非之ヲ矯
正シナケレバナラナイ、之ヲ矯正スルニハ、
所謂朝鮮ニ於ケル裁判ヲ我ガ最高法衙デア
ル大審院ニ之ヲ統一セシメルカ、然ラザレ
バ大審院ノ判決ト朝鮮ノ高等法院ニ於ケル
裁判トガ万ニ矛盾牴觸スル場合ニ於テハ
此兩方ノ裁判ヲ統一セシムル爲ニ一ノ機關
ヲ設ケテ此不合理ヲ矯正スルカ、何レカノ
方法ヲ採リ、之ヲ矯正スルコトガ必要デア
ルト考ヘルノデアリマス、故ニ政府當局ニ
於カレマシテハ此點ニ對シテ十分深甚ノ
考慮ヲ拂ハレテ、一日モ速ニ斯ノ如キ不合
理ナル法令ノ解釋ノ矛盾ナキヤウ御努力ア
ランコトヲ希望致シマシテ、意見陳述ニ代
フル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=88
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089・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 三浦虎雄君
軍馬補充部高鍋支部用地拂下ニ關スル質
問ノ答辯ニ對スル三浦虎雄君ノ意見
〔三浦虎雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=89
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090・三浦虎雄
○三浦虎雄君 只今私ハ先般提出致シマシ
タ軍馬補充部高鍋支部用地拂下ニ關スル質
問書ニ對スル答辯ヲ受領致シマシタ、其答
辯ハ極メテ不親切デアリマシテ、且ツ又事
實ニ反スルモノデアリマス、而シテ由來此
答辯書ナルモノハ紋切型デアリマシタガ
故ニ、セメテ現內閣デハ今少シク親切ニ答
辯セラレルデアラウト豫期シタノデアリマ
スガ、相變ラズ不親切ナル答辯デアリマシ
テ、而モ其答辯ガ、此陸軍大臣ノ答辯カラ
見マスト依然トシテ軍部ハ民衆生活ノ外
ニ立ッテ、極メテ冷淡ニ民衆生活問題ヲ取扱
フト云フコトヲ見ルノデアリマス、此意味
ニ於テ私ハ此問題ニ對スル意見ヲ陳述致シ
タイト思ヒマス
此質問ノ要旨ハ、日露戰爭ノ直後ニ於ケ
ル軍事奉公心ノ旺盛ナル當時ニ當リマシ
テ宮崎縣ノ兒湯郡ニ於テ三百十八町步ト
云フ莫大ナル土地ヲ、軍馬補充部ノ用地ト
シテ、僅ニ金五万圓ヲ以テ妻町及ビ四箇村
カラ之ヲ買上ゲタノデアリマス、然ルニ其
後二十數箇年ヲ經過シタ今日ニ於テハ其
土地ヲ取ラレマシタガ爲ニ、其附近ノ農民
ハ多大ナル、農村ノ窮乏カラ來タ所ノ耕地
不足ニ惱ンデ居ルノデアリマス、而モ其軍
馬ヲ放牧シテ居リマス地域ハ一町四箇村
ノ中央ニ莫大ナル土地ヲ占有シテ居リマス
ガ故ニ、交通ハ遮斷サレマシテ、是等ノ町
村ノ經濟生活ト云フモノハヽ完全ナル發達
ヲ見ルコトガ出來ナイノデアリマス而モ
亦耕地不足ヲ嘆ズルノミナラズ一面ニ於
テ、此廣大ナル原野ニドノ位ノ軍馬ガ居ル
カト申シマスルト僅ニ百頭內外デアリマ
ス、卽チ軍馬一頭ハ三町有餘ノ肥沃ナル原
野ヲ有シテ農民ハ一町歩スラ自作農地ヲ
有シナイト云フヤウナ狀態デアリマシテ
馬ハ人ヨリモ貴イト云フヤウナ逆ナル現象
ヲ見ルノデアリマス、此意味ニ於キマシテ、
從來屢〓是等ノ一町四箇村ノ經濟的發展、
竝ニ農村ノ窮乏ヲ打開スルガ爲ニ、屢〓當局
ニ此用地ノ拂下ゲ竝ニ僅ニ百頭シカ居ナイ
所ノ軍馬ニ對シテ、此樣ナ莫大ナル土地ハ
不必要デアルカラ、廢止シナイトスルナラ
バ、此規模ヲ縮小シテ不要地ノ拂下ヲ願出
タノデアリマスガ、言ヲ左右ニ託ジテ今日
迄解決シナイノデアリマス、而シテ陸軍大
臣ハ之ニ對シテ、目下廢止、若クハ縮小ノ
意ナシト答ヘラレテ居リマス、此目下ト云
フ極メテ曖昧ナル言辭ニ隱レテ、將來ニ亙
ル所ノ意見ヲ、何等答辯シテ居ラナイノデ
アリマス故ニ私ハ此目下ト云フ事柄ガ如
何ナル時期ヲ指スノデアルカ、今考ヘテ居
ラヌトスレバ、將來ニ向ッテドウ考ヘテ居ル
カ、卽チ農村ニ於ケル窮乏ヲ打開スル爲ニ
ハ僅ニ軍馬百頭ガ占有シテ居ル所ノ三百
十八町步全部ヲ開放スルカ、或ハ又縮小シ
テ其大部分ヲ耕地不足ニ對シテ拂下ゲル
カ、其事柄ヲ私ハ聽イテ居ルノデアリマス、
而シテ答辯ガ虛僞デアルト云フ事柄ハ、此
問題ノ所管經理部デアル所ノ第十二師團ノ
經理部ニ屢〓願出デマシテ、サウシテ軍馬補
充部ノ此土地ハ或ハ不要デアラウ、或ハ過
大デアラウト云フ意味ノ御答ヲ受ケテ居リ
やく、要スルニ農村ノ要求ト云フモノハ
或ル程度肯定セラレテ居ッタノデアリマス、
ニモ拘ラズ廢止若クハ縮小ノ意ナシト答ヘ
テ居リマス、是レ私ガ極メテ不親切ナリト
申ス所以デアリマス、而シテ又「代地及其ノ
:所要ノ施設ヲ得ルニアラザレバ開放シ得ザ
ル現況ナリ」ト云フ答デアリマスケレドモ、
僅ニ百頭內外ノ軍馬ヲ收容スル事柄ハ他
ニ代地ヲ得ズトモ、他ノ軍馬補充部ニ之ヲ
合併シ得ルコトモ出來マセウ他ニ方法ア
ルニ拘ラズ、代地ヲ得ザルガ故ニ如何ニ
農村ガ窮乏シテモ、此莫大ナ土地ヲ拂下ゲ
得ズト云フ所ノ答辯ハ極メテ不親切ナリ
ト考ヘルノデアリマス
以上ノ如キ次第デアリマスカラ、陸軍大
臣ハ此農村ノ窮乏、人ガ貧シクテ馬ガヨリ
以上ノ土地ヲ占有シテ居ル、此逆ナ現象ヲ
速ニ詳細ニ調査セラレマシテ近キ將來ニ
於テ此土地ヲ開放シテ、關係町村ノ耕地不
足竝經濟發展ヲ妨害シテ居ル所ノ其事實ヲ
除却シテ、農村ノ窮乏ヲ救濟セラレンコト
ヲ希望スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=90
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091・小山松壽
○謝議長(小山松壽君) 暫時休憩致シマ
ス
午後三時十三分休憩
午後三時四十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=91
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092・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 休憩前ニ引續キ會
議ヲ開キマス日程第七十三、軍馬補充部
高鍋支部開放ニ關スル建議案ヲ議題ト致シ
マス
第七十三軍馬補充部高鍋支部開放ニ
關スル建議案(佐藤重遠君提出)
〔建議案及理由書ハ追テ別冊ニ揭載ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=92
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093・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ山下谷次君外一名
提出、恩給法中改正法律案外十四件委員ニ
併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=93
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094・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03319310324&spkNum=94
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095・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ、是ニテ
日程ハ全部議了致シマシタ、明二十五日ハ
先例ニ依リ午前十時ヨリ會議ヲ開キマス
日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ
之ニテ散會致シマス
午後三時五十分散會
〔丹下茂十郞君質問參照〕
本員曩ニ愛知縣碧海郡油ケ淵惡水路開修
問題ニ付イテ、安達內務大臣及ビ町田農林
大臣ニ質問主意書ヲ提出シテ置イタノデ
アル、本質問ノ内容極メテ複雜ナルガ故
ニ書面ニ充分之ヲ盡シ難ク、依ッテ本議
場ニ於テ口頭ヲ以テ陳述スルガ故ニ、兩
大臣ハ其質問ヲ聞イテ後、詳細口頭ヲ以
テ答辯セラレンコトヲ希望シテ置イタノ
デアリマス、然ルニ何時モ答辯ハ極メテ
冷淡、極メテ不親切、極メテ要領ヲ得ズ、
寧ロ顧ミテ他ヲ答フルガ如キ態度ヲ取ル
ニモ拘ラズ、本件ニ付テハ本件ノ質問ノ
要旨ガ那邊ニ在ルヤモ知レザルニ早速
謄寫版ニシタ答辯書ヲ發セラレタノデア
ル何ト云フ不眞面目ナ態度デアルカ
本議場ニ於テ質問ヲ受クルコトガ何故左
樣ニ避ケネバナラヌカ、其眞意ヲ窺フニ
苦シム處デアル、依ッテ更ニ詳細ニ之レヲ
述ベテ再質問ヲ試ミ兩大臣ノ責任アル
誠意アル答辯ヲ要求スル次第デアリマ
ス
愛知縣碧海郡ノ西南端ニ、古來有名ナ
ル油ケ淵ト稱スル周圍一一里餘、七十餘町
步ノ廣袤ヲ有スル池ガアル此油ケ淵ノ
周圍ハ約三千町步ノ耕地ヲ以テ圍マレ、
內約七百二十町步ハ低地デアッテ常ニ惡
水ニ惱マサレテ居ル、彼ノ明治五年ヨリ
同十五年ニ掛ケテ完成ヲ見タ處ノ、天下
ニ有名ナル明治用水ノ灌漑區域一万町步
ノ約六割ヨリ排出スル處ノ悪水ガ、常
高取川、隅田川、長田川、朝鮮川ノ四川
ヲ經テ此油ケ淵ニ流入シテ來ルノデア
ル、油ケ淵ニ集マッタ水ハ元祿十五年ニ
開鑿シタ處ノ、新川惡水路ニ依リ衣ケ浦
灣ニ排出シテ居ルノデアル、彼ノ明治用
水ガ完成シタ以來段々開拓ガ增加シタ爲
メ、此惡水ノ水量ガ年々增加シテ、低地七
百二十餘町步ハ屢〓水害ニ苦メラレ、其結
果明治十五年頃ヨリ之レガ擴張ノ議ガ起
リ、屢〓計畫ヲ進メタガ何時モ頓挫シテ
仕舞シテ居ル、卽チ其ノ第一囘ハ明治十五
年、第二囘ハ明治四十年、第三囘ハ大正
十年、第四囘ハ昭和三年ニ計畫シテ只今
ニ及ビ、又モ紛糾シテ居ルコトハ兩大臣
モ能ク承知シテ居ラレルデアラウ、今囘
ノ計畫ハ前述ノ四ツノ河川改修ト共ニ新
川惡水路ノ擴張ヲ行ヒ、繼續事業トシテ
之ヲ行フコトヽナリ、其ノ第一期工事ト
シテ先以テ惡水路ノ改修ヲ行フコトヽ
成ッタ次第デアル、昭和三四年四度目ノ改
修問題ガ起ッタノデ、農林省ハ技術官ヲ派
遣シテ實地ノ測量調査ヲ行ハシメタル結
果前述ノ通リ五箇年計畫ヲ以テ縣ノ事
業トシテ之ヲ行ヒ、政府ハ用惡水路幹線
補助工事トシテ半額ノ工事費ヲ補助シ、
縣及ビ水利組合ガ各四分ノ一ヅツノ負擔
ヲ爲シテ施工スルコトニ相成リ、農林省
ノ指令ヲ受ケ、縣會ノ決議モ經テ、昭和
四年五月內務省ニ向ッテ認可ノ禀申ヲシ
タノデアル、內務省ハ越ヘテ昭和五年二
月二十日、故意カ偶意カ恰カモ總選擧ノ
當日之レニ認可ノ指令ヲ與ヘタノデア
ル、抑モ本件ガ多年屢、マ計畫セラレテモ
何時モ挫折シテ實行スルニ至ラズ、約五
十年ノ久シキ不安ノ裡ニ懸案トシテ殘サ
レテ居ルノハ能ク其ノ實情ヲ詳カニセネ
バナラヌ、地元新川町卽チ低七百一一十餘
町步ノ地方民ハ、現在ノ新川惡水路ヲ擴
張改修シテ多年ノ不安ヲ除カントシ、特
ニ往年樋門ノ改築ヲ行ッタ際ノ如キモ將
來川幅ヲ擴張スル豫定ノ下ニ設計ヲ致シ
テ居ル位デアルガ、何時モ一部ノ策士ガ
爲ニセントスル盲動ノ爲ニ、不合理極マ
ル高濱線ノ新設ヲ目論ミ、或ル目的ヲ遂
ゲントスル政治的策動ガ擡頭シテ來ルガ
故ニ、何時モ之ニ邪魔サレテ成就セヌ所
以デアッテ、今囘モ亦之レガ爲ニ地方ニ於
テ大問題ヲ惹起シ紛糾ヲ重ネテ居ル、内
務農林大臣ハ徒ラニ目前ノ黨利黨略ニ
捉ハレズ、能ク其ノ內面的省察ヲ爲シテ
誤ラザランコトヲ忠言スルモノデアル
前ニ述ベタル通リ昨年ノ一一月安達內務大
臣ニ依ッテ認可セラレタノハ、卽チ新川惡
水路舊線ヲ擴擴改修セントスル案デアッ
テ、技術的ニ見テモ、經濟的ニ見テモ、
安達內務大臣ノ認可ハ實ニ當然過ギル
程當然ナ措置デアル、然ルニ此當然過ギ
ル程當然ナ改修案ガ、瞬ク內ニ手ノ裏ヲ
返スガ如キ不可解ナル處置ニ出デラレタ
ノガ本質問ノ主意デアッテ、其ノ亂暴極マ
ル處置ニ唯々呆然啞然タラザルヲ得ヌノ
デアル、卽チ四月四日ニ至ッテ岡愛知縣知
事ハ突如トシテ內務、農林兩省ノ許可ヲ
排シ、現在ノ排水口ヨリ約一里モ上流デ、
ソウシテ地勢上ヨリ見テモ低地ヨリ高地
ニ向ッテ排水セシムルヨウナ、又對岸トハ
僅ニ二百五十間ヲ離ルヽバカリノ、而カ
モ他ノ諸川ヨリ惡水流出最モ輻輳シテ來
ル海面ヲ目掛ケテ放流セネバナラヌヤウ
ナ、言ヲ換ヘレバ排水不可能ナ高濱線新
設ノ案ニ變更決定スルニ至タノデアル、
爲ニ地方ハ鼎ノ沸騰スルガ如キ紛糾ヲ見
ルニ至ッタノデアル、此設計變更ガ技術的
ニ見テモ、經濟的ニ見テモ、一顧ノ價値
ナキモノデアルニモ拘ラズ、之レヲ强行
セントスル處ニ多分ノ政治的策動ガ含マ
レテ居ルコトハ否定スル譯ニハ行カヌ、
一部策士ガ野望ヲ充サントシテ、非理、
不法、不可解ナル運動ノ爲ニ、低地七百二
十餘町步ノ耕地ノ荒廢ト、千四百有餘戶ノ
農民ノ死活問題トヲ犠牲ニ供スル結果ト
ナリ、非常ナル紛議ヲ生ジ、曩ニハ町自治
體ノ機能ヲ破壞シ、官憲ノ壓迫ニ依リ、辭
職セザル町會議員ヲ辭職セリトナシテ總
選擧ヲ行ヒタル結果、訴願問題トナリ
重大ナル結果ヲ招來シテ居ル、本計畫ノ
變更ニ伴ヒ約二十万圓ノ金ト工費ノ約一
割卽チ五万圓ノ金トガ、或ハ民政黨ノ黨
費ニ充當ノ計畫ナリトカ、或ハ內務大臣
ニ一部ヲ提供スル計畫ダトカ、或ハ武富
參與官ヲ初メ本件ニ盡力シタル策士ガ分
配スルダトカ種々疑惑ニ掩ハレタル風
說ノ盛ンニ行ハレテ居ルコトハ我々ノ最
モ遺憾トスル處デアル殊ニ本事件ノ運
動ノ爲ニ、明カニ一万五六千ノ金ガ消費セ
ラレテ某政務官ガ疑惑ノ中心ト成シテ居
ル、斯カル忌ハシキ風說ハ單ナル風說ト
シテ我々ハ可成信ジタクナイガ本問題
ノ中心ヲ爲シテ居ル高濱町ノ某ナルモノ
ガ之ヲ高言シテ居ルト云フコトデアル
ノミナラズ昨年十二月二十一日安達內務
大臣ガ名古屋市ニ微行セラレテ密ニ同愛
知縣知事ト會見シ、暮夜何事カヲ密議セラ
レタト傳ヘラレテ居ル、內相ノ微行ハ
黨務カ、政務カ、マサカ行政視察ト云フ
ヨウナ形跡モナカッタラシイ、安達內相ガ
岡知事ト密議セラレテ以來大部周章狼
狽縣ヨリ密使ガ高濱ニ派遣セラレテ、
頻々トシテ寄附金ノ催促ガ行ハレタト云
フコトデアル
農林大臣ハ昭和三年技術官ヲ派遣シテ
精細ナル調査ヲ遂ゲ、新川舊線擴張改修
ヲ以テ適當ナリト認メラレ、縣ハ之レニ
基イテ計畫ヲ建テタノデアル、農林大臣
ハ此計畫ニ對シテ補助金ノ交付ノ指令ヲ
シタモノデアルガ突如トシテ岡知事ガ
恣ニ此ノ計畫ヲ覆シ、誤魔化シノ經濟關
係ヲ作リ如何ニモ高濱線ガ經費ガ少額デ
濟ムヨウニデッチ上ゲテ橫車ヲ押切ラン
トスルモノニ對シ一モ二モナク同意スル
コトハ何事デアルカ之ニ對シ如何ナル調
査ヲ爲シ如何ナル根據ノ上ニ立ッテ變更
ヲ認メタノデアルカ、曩キノ答辯書ニ依
レバ殘土處分上經費ガ少クナルカラ高濱
線ヲ認メテ變更ヲ認可シタトノ意味ノ答
辯デアルガ變更計畫ノ收支計算ハ全ク
不確實デアル、卽チ二十一万圓ノ廢土運
搬費ヲ地元ニ於テ寄付シ其ノ廢土ニ依ッ
テ埋立地ヲ作ル、其理立地ノ過大ナル見積
リデ辻褄ヲ合セ、依ッテ以テ新川線ヨリ經
費ガ少額ナリトノ論據ヲ造ツタモノデアル
ガ、斯カル不確實ナル計畫ヲ鵜香ミニス
ル農林大臣モ農林大臣ダガ、農林省ニハ
今少シク事理ノ判ル事務官モ技術官モ居
ル筈デハナイカ、去ル大正十年ノトキモ
矢張リ高濱線ハ埋立地ノ利用ヲ以ッテ財
源トシタル計畫デアッタガ、農林省ハ埋立
地ヲ收入ニ見積ルガ如キ不確實ナル財源
ヲ以テシテハ許可スルコト能ハズトシ
テ、之レヲ却下シタデハナイカ、今回之
レヲ可ナリト認ムル理由ト正確ナル根據
ヲ示サレタイ、又一旦決定シタル新川線
ヲ高濱線ニ奪取スル代償トシテ岡知事ハ
新川ニ經費六万圓ノ豫算デ漁港ヲ築造シ
テヤルト提唱シタト云フコトデアルガ
農林大臣ハ左樣ナ代償案ヲ認メタノデア
ルカ、但シ新川町ニハ漁船ハ一艘モナイ
ノニ漁港ヲ築造シテヤルナゾトハ餘リニ
地方民ヲ馬鹿ニスルモノダト寧ロ嗤ッテ
居ルノデアル農相果シテ如何、內務大臣
ハ責任上一旦許可シタモノヲ之ヲ變更ス
ルコトハ行政上重大ナル問題デアル餘程
確カリシタ根據ト首肯セシムルダケノ理
由ガナケレバナラヌ、如何ナル調査ニ依
リ斯樣ナ事態ヲ惹起スルヨウナ變更ヲ認
メタカ、選擧第一主義、黨略本位デ地方產
業ヲ荒廢セシメ、農民ノ死活問題ヲ生ゼ
シメ、治水上ノ不利ヲ敢テシ、自治體ヲ
紊ルガ如キ結果ヲ招來スルガ如キ措置ヲ
敢テシ、輕々ニ取扱ッタ責任ヲ如何ニスル
カ、又此變更ハ地元高濱町ニ於ケル二十
一万圓寄附問題ニ根柢ヲ置クモノデアル
ガ、果シテ此ノ寄附ガ出來ルト思フノデ
アルカ、岡知事ハ縣會ニ於テ寄附金ガ出
來ネバ斷ジテヤラヌト云フコトヲ昨年ノ
縣會デ言明シテ居ル、本員ノ初メ質問書
ヲ提出スルヤ、政府ハ急遽トシテ愛知縣
廳ニ命ジ、縣會ノ速記錄ヲ提出セシメ、
慌テヽ各種ノ答辯材料ヲ蒐集シタト云フ
コトデアルカラ、定メテ知事ノ言明ヲ認
メルカ、若シ知事ノ言明ヲ認ムル以上、
寄附金ノ出來ヌトキハ、斷行シナイト云
フコトヲ言明スルカ、更ニ本員ハ兩大臣
ノ答辯書ニ記載シタル經費ノ問題ニ對
シ、新川線ト高濱線トノ比較ヲ述べ、尙
技術上ノ問題ニ對シテハ兩線ノ效用ヲ比
較シ、之ニ對シ詳細明確ナル答辯ヲ要求
セントスルモノデアル
(技術上ノ比較)
一高濱線ノ缺點
第惡水吐口ノ海面狭隘デアル剩ヘ上
流逢妻川、境川其ノ他ノ諸川ヨリ夥シ
キ土砂ヲ流出スル、且ツ田度川、洲鼻
ノ堆積ニ依リ對岸トノ距離二百五十間
ニ過ギズ、海潮干滿少キガ故ニ常ニ吐
口ヲ壓迫スル、隨テ豫定ノ排水困難デ
アル
第二樋門ノ設置セラレル場所ハ海面ヨ
リ二百餘間ノ近距離デアル、隨テ開扉
時間ハ遲ク閉扉時間ハ早イ、爲ニ惡水
排出時間少キ爲其水量少イ
第三高濱ノ海面ハ田面ヨリモ高イ、北
方ニ至ルニ從テ特ニ甚ダシイ、川底ノ
埋堆ト共ニ降雨多キ時ハ堤防缺潰ノ虞
レガアル
第四高濱線ニ稗田川ヲ約五百間逆流サ
セテ之ヲ合流セシメルノデ、合流點ヲ
何處ニ定メ如何ニシテ合流セシメルカ
ガ未ダ極マッテ居ラヌ、之ヲ定メ得タリ
トスルモ稗田川ヨリ土砂流出忽チニシ
テ排水路ヲ埋堆セシムル虞ガアル
第五諸川ノ流水ガ油ケ淵ニ注グ如ク地
勢ガ高濱町方面ハ一般ニ高イ、低キヨ
リ高キニ水ヲ流スコトニ成ル
第六五箇年計畫デアルカラ五箇年後ノ
工事完了ヲ待タネバ效果ヲ擧ゲ得ヌ
第七假リニ高濱線ガ出來テモ稗田川一
川ノ惡水ノミデ他ノ三川ハ依然新川線
ニ依ッテ排出セシメネバナラヌ
第八高濱線ハ五十尺ノ高臺ヲ掘鑿スル
ガ故ニ土砂ノ崩壞多シ隨テ川底ヲ埋堆
ス
二新川線ノ利點
第一新川ハ元祿十五年ノ開鑿ニシテ當
時ハ川幅四間デアッタガ今ヤ十五間ト
成ッテ居ル、諸川ヨリ流入スル土砂ハ油
ケ淵ニ沈下シテ惡水路ヲ埋堆サセナイ、
尤モ新川口ヨリ土砂ヲ流出スルモ對岸
トハ一里餘アリテ常ニ沖ニ持チ去ラレ
川口川筋ヲ埋沒スルコトガ絕體ニ無
イ本水路開鑿以來未ダ會テ土砂ノ埋
堆シタルコトヲ聞カヌ
第二油ケ淵ハ【底知レヌ淵デアッテ四川
ヨリ流入スル土砂ハ沈下スル、又油ケ
淵水面ハ海面ヨリ四尺高キ爲メ惡水ノ
流勢ハ頗ル迅速デアル
第三新川ノ樋門ハ海ヲ去ルコト千二百
餘間デ高濱ニ比シ約五倍ノ距離ガア
ル一晝夜二時間以上長ク開扉シ得ル
ガ故ニ排水量ノ多キコトハ云フ迄モナ
イ
第四新川線擴張ハ同樣五年計畫デアル
ガ工事ガ一寸進メバソレ丈ヶ早ク效果
ヲ擧ゲ得ル高濱ノ完成後ノ效果トハ比
較ニナラヌ
第五新川ハ既ニ五十年來ノ計畫デアル
カラ沿岸地主ハ皆買收ニ應ズル契約ガ
成立シテ居ル、高濱ハ大部分新川ノ地
內ヲ通ルカラ地主ハ反對ノ爲ニ絕體ニ
之ニ應ゼヌ
以上極メテ重要ナル數點ニ止ルガ、新川
線ノ改修ハ其改修擴張ノ幅員丈ケノ潰地
デアルガ、新川線ハ全部新ニ潰地ニナリ
併モ其排水量ニ於テ何等ノ利益ナク國家
經濟ノ上ニ不利益ナルノミナラズ、地主
ハ將來永久ニ二重ノ負擔ヲセネバナラヌ
損害アリ
新川舊川ノ改修ト、高濱新線ノ開鑿ト
ノ工事費比較(昭和五年四月二十三日
縣耕地課作製)
甲新川線總工費
六拾六万壹千六百四拾五圓
乙高濱線總工費
八拾四万九千三百拾六圓
比較差引
拾八万七千六百七拾壹圓
新川線低廉
二兩線工事ニ伴フ副收入ノ比較
甲新川線埋立地
三万五千八百七拾八圓
粘土三千五百七拾六圓
計三万九千四百五拾四圓
乙高濱線埋立地
貳拾壹万五百八拾六圓
粘土三万貳百七拾貳圓
計二十四万八百五十八圓
三兩線收入差引純經費ノ比較
甲新川線六十二万二千百九十一圓
乙高濱線六十万八千四百五十八圓
比較差引一万三千七百三十三圓
新川線高價
外ニ高濱天引額二万一千圓
合計三万七百三十三圓
高濱線低價
此ノ比較表ハ初メ新川線ノ調査ヲ徵シ、
之ニ對シテ高濱線ノ見積ヲ爲シタモノ
デ、唯僅カデモ高濱線ガ安價デアルト云
フコトヲ證センガ爲メ揑造シタモノデ信
ヲ措クニ足ラヌ
問題ハ埋立地ノ見積價格ニ在ル、高濱線
ハ開鑿シタ餘剩土ヲ以テ海面ヲ埋立テル
爲其運搬費二十一万圓ヲ寄付スルト云フ
處ニ頗ル疑問ガアル
-高濱ノ埋立地二万七千坪
新川ノ埋立地一万八千坪
高濱ハ埋立地付近ノ現在地價坪五圓ナル
ニ埋立地ヲ坪八圓、十一圓、十六圓五十
錢ト見積リ平均十二圓五十錢、新川ハ坪
二圓五十錢ノ計算デアル斯カル不確實ナ
ル計算ニ出發シタ收支計算ガ三万餘圓ノ
差ガアルカラトテ、高濱線ヲ採用スルコ
トガ果シテ公正デアルカ
一若シ萬一高濱線ノ計畫通リ出來タト
スルモ此經費豫算ノ外ニ三河鐵道ノ架
橋費ガ拔ケテ居ル、又重要町村道五間
ノ立派ナ道路ニ架橋ガ必ル、其架橋費
ハ少クトモ十五万圓ヲ要スルガ其經費
ハ一體何處カラ撿出スルカ、此問題ハ
未ダ何等ノ計畫モ立ッテ居ラヌ、之デモ
高濱線ガ安イトイヘヨウカ
ー併モ知事ハ地元寄付金二十一万圓ガ
出來ネバ斷ジテヤラヌト聲明シテヰル、
而シテ高濱町デハ寄付金ハ出來ヌコト
ニ成ツタ、縣ハ頗ル焦慮シテ縣事業トセ
ズ之ヲ町事業トシテ町ニ受負ハシテ施
行セントシテ居ル、益、訝シタ成ッテク
ル
斯カル事柄ヲ地方行政ヲ監督スル內
相ハ果シテ如何ニ考ヘラレルカ
縣ハ最初地元寄附二十一万圓ヲ確實
ナル收入ト認メテ縣營デヤル方針デ進
ンダガ、豫想ノ如ク地元寄附ハ出來ナ
イ、大體寄附ニ依ル收入ハ必ズ町會ノ
決議ヲ經テ申請スベキデアルガ、ソレ
ガナイ、耕地課ノ方ハドシ〓〓進メテ
行クニ昨年九月地方課デハ不確實ナル
財源トシテ附箋却下シ居ル
地元ノ寄附ガ出來ヌト見ルヤ吏員ヲ
派シ百方苦策ヲ弄シ遂ニ町營ニ移シテ
タラセルコトニシタ、地元ノ寄附ガ出
來ネバ斷ジテヤラヌト聲明シタ知事ノ
言責ハドウスル
三町營ニ受負ハスト云フコトニ成ルヤ
本件ノ策源タル高濱町第一區長伴幸之
助ハ京都府船井郡增田組代表矢野彌太
郞トノ間ニ工事受負假契約ヲ締結シテ
居ル、其ノ條件中受負者ノ受クル金額
一高濱町ガ縣ヨリ受領スベキ工事金
ノ內四十万圓
二埋立地(第三號地)ヲ金十万圓ニテ
引受受負者ニ交付スルコト
三埋立地(第一、第二號地)(價格二
十万圓ヲ無償受負者ニ交付スル
四地方ニ於テ總工事費五十万圓ニテ引
受施行スルト云フモノガアルニ何ヲ苦
シンデ四十万圓ト埋立地代十万圓計五
十万圓ヲ支拂ヒ尙且埋立地二箇所二十
万圓ヲ無償交付スル必要ガアルカ之
ガ卽二十万圓ノ行衞ニ就テ大ナル疑惑
ノ目ヲ以テ見ラレテ居ル所以デアル
五更ニ高濱線ノ現在像定線ニ定マル迄
ハ三囘線路ヲ變更シテ居ル、其都度醜
惡ナル運動ガ行ハレタト云フコトデア
ル現ニ豫定線ノ吐口一面カラ見レバ
所謂運河ノ河口トナル處ニ立派ナ料理
店ガ建築サレテ淋シク事業ノ完成ヲ待ッ
テ居ルモノモ甚ダ珍妙ナ現象デアル一
万五六千圓ノ運動費ガ消ヘテ居ルト云
フコトモ强チ風說ト計リ見ルコトハ出
來ヌ
(內務、農林兩大臣ノ責任)
一本件ハ地方ノ小問デナイ、私モ敢テ之
ヲ難詰スルノミヲ以テ快トスルモノデ
ナイ、明治十五年以來ノ懸案デ之レガ
計畫ニ著手シタルコト四囘ニ及ビ共都
度一部ノ策謀ニ災サレテ實現ヲ見ナイ
問題デアル殊ニ今囘ノ橫車ヲ押切ル
ニ於テハ沿岸低地七百二十町步千四百
ノ農家ガ浮沈曠廢ノ大問題トシテ泣イ
テ天ニ訴ヘテ居ル、本件ノ爲ニ地方民代
表者ガ知事ニ面會ヲ需メテ訴ヘヲスル
コト十餘度岡知事ハ一囘モ面接ヲ許サ
ナイ淳朴ナル地元民ノ切ナル哀情ヲ聞
カントセズ徒ニ政黨ノ走狗ト成シテ居
ル、何レノ點ヨリスルモ斯カル非違ヲ
遂行セントスルコトハ斷ジテ許スベカ
ラサルコトデアル、少クトモ明ルイ政
治、正シイ政治ヲ標榜スル安達內相ハ
眞劍ニ愼重ニ、本問題ヲ檢討シテ其
眞相ヲ促ヘ、公正ナル態度ヲ持シ地方
黨員ノ橫暴ト官憲ノ非違ヲ糺シ、昭和
聖代奇怪事ヲ取除キ、多數農民ノ愁眉
ヲ開カシムル爲誠意ヲ以テ之レガ始
末ヲ付ケル意志ハナイカ、又農林大臣
ハ本事業ハ所管上ノ大本山デアル、徒
ラニ黨略ノ傀儡トナッテ、斯カル見安キ
技術上ニモ經濟上ニモ、爭フ餘地ノナ
イ程明瞭ナル事柄ヲ黑キヲ白シト强辯
スルガ如キコトハ責任上斷ジテ許スベ
カラザルコトデアル、斯カル無謀ナル
非行ニ對シ國庫補助ヲ爲スガ如キハ斷
ジテ反對スルモノデアル頭腦明晰ナ
ル石黑局長モ居ル、耕地改良ノ權威者
タル有働君モ居ル、之レ等ノ諸員モ正
シキ道ニ大臣ヲ導イテヤリナサイ篤ト
黨略的立場ヲ離レテ能ク技術官ニ對シ
再調査ヲ命ジ、愼重ニ處理スベキ責任ヲ
負フベキモノト思フ、尙昭和三年技術
官ヲ派シ實地調査ヲ行フ場合新川町ハ
其調査費ヲ寄付シタガ、高濱町ハ負擔
シナカッタト云フコトデアル、其調査ニ
派遣シタル技術官ノ經費ノ〓末ヲ追ッ
テ書面ヲ以テ囘答サレタイム尙再調査
ヲシタ場合ニ於ケル經費支出ノ〓末ト
ヲ併セ要求スル次第デアル
農林大臣ニ詰間
一農林省カ實地調査ノ結果舊川改修ヲ以
テ適當ト認メ、縣ハ其指揮ニ從ッテ擴張
改修計畫ヲ建テヽ出願シタモノデアル。
之ニ對シ農林大臣ハ國庫補助ノ許可指
令ヲ交附シタノハ技術的立場竝ニ經濟
的比較ノ上ニ於テ之ヲ適當ト認メテ許
シタモノデアラウ、然ルニ縣知事ガ不
確實ナル寄付金二十一万圓ヲ收入ニ見
込ンデ約三万餘圓安イカラトテ手ノ裏
返スガ如ク變更シタコトハ農林省ハ矢
張リ寄付金ノ收入ヲ加算シテ經濟的ニ
比較的安イカラト云フ意味ニ於テ變更
ヲ認メタノガ、果シテ然ラバ大正十年
ニ同様ノ申請ヲ爲シタトキ農林省ハ
「埋立地ヲ豫算ノ收入ニ見積リタル不
確實ナル財源ヲ以テ行フベキモノデナ
イ」トテ却下シタノヲ今囘ハ之ヲ許シ
タ理由ハ何故デアルカ
併モ新川町代表者ガ農林省ニ出頭シテ
之ヲ糺シ陳情シタルトキ、武富代議士
ガ非常ニ心配シテ居ラレルカラトテ多
クヲ語ラナカッタト云フコトデアルガ
農林省ハ武富君ノ策動ニ動カサレテ餘
儀ナク方針ヲ抂ゲタモノカ、技術的權
威ヲドウスルカ之レヲ要スルニ本件ハ
現內閣ノ黨略的立場ヨリ地方行政ニ對
スル彈壓デアル、安達內務大臣ノ指揮
下ニ在ル行政上ノ重大失政デアル、
大失態デアル、又現內閣綱紀紊亂ノ大
問題デアル、明ルイ政治、正シイ政治
ヲ標榜スル安達內務大臣ノ薰督ノ下ニ
於テ行ハレタル、昭和聖代ニアルマジ
キ不祥事デアル、此暗黑政治ハ何事
デアルカ、油ケ淵沿岸七百數十町步ノ
荒廢ト、區域內農民千四百有餘戶ノ死活
ノ大問題デアル、一部策士ノ野望ヲ充
タサントスル此暴政ハ何事デアルカ、
强イ政治ヲ標榜スル所以ノモノハ、斯
カル非違ヲ强行セントスル意味デハア
ルマイ、少シク反省シテ見ルガヨイ、
併カモ本件變更認可ヲ與ヘタルハ昨年
七月デハナイカ、爾來進行ノ狀況ハド
ウカ、九箇月ヲ經過シタル今日、何等
ノ進展ヲ見ザル所以モノハ政府當局
ノ深ク省察スル處アルベキデアル、敢
テ安達內務大臣及町田農林大臣ノ猛省
ヲ需メ、速ニ其ノ非違ヲ改メ、初メ認
可ヲ與ヘタル新川線ニ復活センコトヲ
希望スルト同時ニ、敢テ之レヲ勸〓ス
ルモノデアル
〔武知勇記君質問參照〕
故河野通治ニ贈位ヲ奏請シタノハ田中
內閣デアツタガ、濱口內閣ニ於テモ前內
閣ノ辯明ヲ肯定シ今猶贈位ハ至當ノモノ
ト認ムトノ答辯デアル政府辯明ノ骨子ハ
神田本太平記ニ原據シテイルコト爭フ
ベカラズ、私ハ兩度ノ質問書ニ於テ政府
ノ答辯ノ杜撰ナルコトヲ詳細ニ指適シテ
イルノデアルガ明治十七年官報ヲ以テ發
表サレタ土居得能名稱考ヲ一覽スレバ政
府ハ自ラ辯明當ヲ得ザルヲ悟ラナケレバ
ナラナイ筈デアル、私ハ議論ノ立前上一
切政府ノ云フ通リ神田本太平記ヲ唯一無
二ノ貴重ナ史料トシテ河野備後守通治ト
云フ忠臣ノ存在スル事ヲ肯定シテ考ヘテ
ル爲夫レデモ左プ三ツノ大イナル疑問ヲ
起サザルヲ得ナイ
第得能備後守通綱ハ後醍醐天皇ヨリ
河野家ノ總領職ヲ命ゼラレタノデ得
能備後守ト稱セズ河野備後守通綱ト
シテ世ニ知ラレタノデアルガ、河野備
中守通綱トシテ存在シタ事ハ絕對ニナ
イノデアル、政府ハ河野(得能)通綱ヲ備
中守ニシテ北國下向ノ事實ヲ認メテ居
ルガ備中守ハ土居通增デアル事ハ史上
一點疑問ノ餘地ヲ有シナイノデアル、
然ルニ神田本太平記ニ「河野備後守
通治、河野備中守通綱皇太子恒良親王
ヲ奉ジテ北國ニ赴ク」トアル一條ニ論
據ヲオイテ政府ハ河野備後守通治ト云
フ忠臣ヲ作リダシタノデアルカラ政府
ノ云フ事ヲ是認スルト二人シカナイ筈
ノ河野家ノ忠臣ハ河野備後守通治ト得
能(河野)備後守通綱ト河野備中守通綱
ト土居(河野)備中守通增ト合計四人ニ
ナッタ譯デアル、私ハ河野家ノ忠臣ハ土
居得能ノ兩氏デアッテ此ノ二人ガ皇太子
恒良親王ニ供奉シテ北國ニ赴イタト信
ジテヰタガ政府ノ辯明ニヨッテ急ニ二
人增加シタコトヲ寧口滑稽ニ想フ、其
處デ私ガ疑問ニ考ヘルノハ土居備中守
通增得能備後守通綱ハ北國下向ノ忠臣
トシテ明治十七年旣ニ正四位ヲ追贈サ
レタガ、今亦河野備後守通治ト云フ忠
臣ニ從四位ヲ追贈サレタ以上政府自ラ
忠臣ト認メル河野備中守通綱ニハ何故
贈位ノ奏請ヲ爲サヾルヤト云フ點デア
ル
第二得能(河野)備後守通綱ハ皇太子恒
良親王ヲ奉ジテ越前金崎城ニ入リ奮戰
シタルモ力及バズ家人三十餘人ト難ニ
殉ジタ功績ヲ認メラレテ明治十七年正
四位ヲ追贈サレタノデアルガ、政所ノ所
謂忠臣河野備後守通治モ又皇太子恒良
親王ヲ奉ジテ越前金崎城ニ入リ奮戰シタ
ルモ力及バズ家人三十餘人ト難ニ殉ジタ
功績ヲ認メラレテ昭和三年從四位ヲ追
贈サレタノデアル、從フテ「治」ト「綱」ト
一字丈ケハ違フガ河野備後守ト云フ同
名ノ忠臣ガ同時ニ存在シ而モ處モ同ジ
金崎城ニ於テ人數モ同ジ三十餘人ト共
ニ戰死シタ功ニ依リ「正」ト「從」ト一字
丈ケノ遠ヒハアルガ「四位」ヲ追贈サレ
タト云フコトニナルノデアルガ常識上
果シテ斯クノ如キ事實ヲ認ムルコトガ
出來ルカドウカ
第三政府ノ辯明ニヨルト逆賊タル河野
通治ハ對馬守ニシテ忠臣タル河野通治
ハ備後守ナリト云ッテヰルガ、然ラバ敍
位稱號コソ異ナレ河野通治ト云フ同名
異人ノ忠奸二將ガ同時ニ存在シテ居タ
事ニナル、若シ政府ノ辯明ヲ正シイモ
ノト認ムレバ忠臣河野通治ニハ何ト云
フ通稱ガアッタカ、逆賊河野通治ニハ
九郞左衞門ト云フ通稱ガアッタ以上果
シテ忠臣河野通治ナルモノガ實在シテ
ヰタトスレバ何處カニソノ差異ヲ示ス
ベキ史料ガアリソウナモノダ、河野通
治ト云フ逆臣コソ實在シタルモ忠臣ハ
實在セザルユヘニ錢ノ草靴ヲハイテ世
界中ノ史料ヲ漁クテモソノ通稱ヲ發見
スル事ノ出來ル道理ガナイ
以上三ツノ疑問デスラ忠臣河野備後守
通治ハ相當怪ンイ存在デアル事ガ判ラネ
バナラヌノデアルガ夫ヨリモ政府ノ辯明
書起草ニ關係シタト云ハレル帝國史料編
纂官和田英松博士ノ良心ニ糺イタラ忠奸
ノ別ハ直チニ明カニナル筈デアル、伊豫
歷史ノ權威者景浦正孝氏ガ大阪每日新
聞及愛媛新報ヘ二月二十二、三日ト揭載
シタ本問題ノ論文モ參照シテ政府ハ一日
モ速カニ反省セラレタイ
衆議院議事速記錄第二十三號中正誤
頁段行誤正
五八〇三一六運用ノ例ヲ運用ノ是非
ヲ
同同二八八囘七囘
四千四百七四千百七十
同四二七十四万八千四万八千圓
圓
五八二三一九互ヲ五二
衆議院議事速記錄第二十九號中正誤
頁段行
「田島新藤原間自動車交通
八一九三-路線速成ニ關スル建議案」
トアルヲ
「田島新藤原間或營自動車
渾輸開始ニ關スル建議案」
占久
衆議院議事速記錄第三十號中正誤
頁段行
「天草縱貫國有自動車道路
八三六一八開鑿ニ關スル建議案」トア
ルヲ
「天草縱貴國營自動車運輸
開始ニ關スル建議案」ト改
ム
衆議院議事速記錄第三十一號中正誤
頁段行誤正
八六六二三使嗾乃至相示唆乃至相
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