1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和七年六月七日(火曜日)
午後一時十分開議
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議事日程 第四號
昭和七年六月七日
午後一時開議
第一 裁判所構成法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 民事訴訟法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第四 恩給の減額補給及停止に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第六 大正十二年法律第五十二號中改正法律案(司法官試補及辯護士の資格に關する件)(原惣兵衞君外七名提出) 第一讀會
第七 衆議院議員選擧法中改正法律案(清瀬一郎君提出) 第一讀會
第八 田島今市間鐵道速成に關する建議案(中野寅吉君提出)
第九 柳津小出間及只見檜枝岐間鐵道速成に關する建議案(中野寅吉君提出)
第十 敦賀驛清津驛間船車連帶運輸に關する建議案(中野寅吉君提出)
第十一 新潟驛清津驛雄基驛間船車連帶運輸開始に關する建議案(中野寅吉君提出)
第十二 岐阜市内貫通國有鐵道高架改築に關する建議案(大野伴睦君提出)
第十三 出水宮之城間鐵道敷設に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十四 宮之城加治木間鐵道敷設に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十五 出水大口間鐵道敷設に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十六 阿久根驛に急行列車停車に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十七 大川線竣成年度繰上に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十八 牛ノ濱西方間に停車場設置に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十九 菱刈大口間に停車場設置に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第二十 吉松八代間鐵道電化竝急行列車運行に關する建議案(崎山武夫君外四名提出)
第二十一 志布志古江間鐵道敷設速成に關する建議案(永田良吉君外四名提出)
第二十二 福島縣矢吹原國營開墾實施に關する建議案(中野寅吉君提出)
第二十三 禁獵區内に於ける鶴保護及農作物被害賠償に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第二十四 新潟築港に關する建議案(中野寅吉君提出)
第二十五 霧島山を中心とする國立公園指定に關する建議案(崎山武夫君外二名提出)
第二十六 肝屬川治水工事著手に關する建議案(永田良吉君外三名提出)
第二十七 雪國日本の根本對策に關する建議案(松岡俊三君外五十六名提出)
第二十八 航空省設置に關する建議案(永田良吉君外一名提出)
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〔閑院宮春仁王殿下台臨あらせられたるに付議長敬禮し著席、議員起立敬禮〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=0
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001・秋田清
○議長(秋田〓君) 諸般ノ報〓ヲ致サセマ
ス
〔書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
負債整理組合法案
提出者
鷲野米太郞君土井權大君
喜多孝治君森田福市君
助川啓四郞君田村實君
中央卸賣市場法中改正法律案
提出者土倉宗明君
(以上六月四日提出)
傷痍軍人及戰公傷病死者遺族等ノ鐵道船
舶等乘車船優遇ニ關スル法律案
提出者
江藤源九郞君中野種一郞君
(以上六月六日提出)
貴衆兩院議員航空輸送優遇ニ關スル建議
案
提出者永田良吉君
雪國日本ノ根本對策ニ關スル建議案
提出者
松岡俊三君山口義一君
久原房之助君靑木精一君
田邊七六君熊谷巖君
岡田伊太郞君田邊熊一君
濱田國松君〓水銀藏君
土井權大君河上哲太君
內野辰次郞君村田虎之助君
長島隆二君川口義久君
松實喜代太君工藤十三雄君
高見之通君倉元要一君
森田政義君原惣兵衞君
中谷貞賴君向井倭雄君
寺田市正君小高長三郞君
坂本一角君上野基三君
一瀨一二君林路一君
大石倫治君片野重脩君
土倉宗明君益谷秀次君
大野伴睦君小林錡君
世耕弘一君上田孝吉君
小林絹治君沖島鎌三君
小谷節夫君田村實君
崎山武夫君竹下文隆君
藤生安太郞君綾部健太郞君
國枝捨次郞君出井兵吉君
守屋榮夫君三井德寶君
有馬淺雄君瀨川嘉助君
芦田均君岸田正記君
窪井義道君佐藤重遠君
田尻生五君
三陸沿岸鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
小野寺章君廣瀬爲久君
八角三郞君熊谷巖君
星廉平君田子一民君
宮澤〓作君大石倫治君
藤井達也君菅原傳君
梅村大君
白石中村間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
佐々木家壽治君鈴木辰三郞君
菅原傳君佐藤庄太郞君
宮澤〓作君菅野善右衞門君
守屋榮夫君
(以上六月四日提出)
國分川北間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
崎山武夫君天辰正守君
寺田市正君津崎尙武君
永田良吉君金井正夫君
東北本線ヲ八戶下田經由變更ニ關スル建
議案
提出者藤井達也君
(以上六月六日提出)
雪國地帶ノ鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者八田宗吉君
野岩羽鐵道速成ニ關スル建議案
提出者八田宗吉君
柳津小出間及只見古町間鐵道速成ニ關ス
ル建議案
提出者八田宗吉君
柳津野澤間及坂下喜多方間鐵道敷設ニ關
スル建議案
提出者八田宗吉君
湖南鐵道建設ニ關スル建議案
提出者八田宗吉君
磐梯山猪苗代湖ヲ中心トスル國立公園指
定ニ關スル建議案
提出者八田宗吉君
(以上六月七日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去三日齋藤內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
北海道廳長官佐上信一、
第六十二囘帝國議會內務省所管事務政府
委員被仰付
又齋藤內閣總理大臣ヨリ秋田議長宛今四日
左ノ通發令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
內閣恩給局長樋貝詮三
第六十二囘帝國議會政府委員被仰付
大藏書記官賀屋興宣
營繕管財局理事太田嘉太郞
第六十二囘帝國議會大藏省所管事務政府
委員被仰付
一去四日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議
長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
一五八米田規矩馬君
二四六松村光三君
一四八岩本武助君
二二六小高長三郞君
二五八世弘耕一君
三四六田尻藤四郞君
三九七中井一夫君
四六二川島正次郞君
一去四日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲
事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行ニ關
スル件)(政府提出)外四件委員
岡田忠彥君川口義久君
本多貞次郞君小高長三郞君
內田信也君山崎猛君
鈴木辰三郞君高橋熊次郞君
壽原英太郞君山本莊一郞君
鈴木義隆君太田正孝君
伊坂秀五郞君上原平太郞君
小谷節夫君磯部〓吉君
天辰正守君野依秀市君
增田義一君野田文一郞君
西脇晉君中村〓男君
比佐昌平君〓水留三郞君
池田秀雄君池田敬八君
福田關次郞君
兌換銀行劵條例中改正法律案(政府提出)
外三件委員
山崎達之輔君津雲國利君
木暮武太夫君磯部尙君
鈴木隆君熊谷巖君
田子一民君田邊七六君
喜多孝治君中井一夫君
難波〓人君白城定一君
八田宗吉君加藤知正君
森田福市君堀川美哉君
金光庸夫君大山斐瑳麿君
鈴木富士彌君小川〓太郞君
勝正憲君前田房之助君
山田助作君中村三之丞君
駒井重次君田中貢君
鈴木正吾君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
東武君中島知久平君
小笠原三九郞君倉元要一君
若宮貞夫君守屋榮夫君
江藤源九郞君生田和平君
今井健彥君武田德三郞君
林路一君中野猛雄君
中島彌團次君櫻井兵五郞君
永田善三郞君手代木隆吉君
田島勝太郞君小池四郞君
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特
例ニ關スル法律案(政府提出)委員
中島守利君中野勇治郞君
三上英雄君牧野賤男君
坂本一角君安藤正純君
谷原公君山枡儀重君
中山福藏君
柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲公債
發行ニ關スル法律案(政府提出)委員
豐田收君佐保畢雄君
高倉寛君野田俊作君
山村豐次郞君小島智善君
高野喜六君山本厚三君
中川觀秀君
一昨六日齋藤內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
鐵道省運輸局長日淺寛
鐵道省建設局長池田嘉六
第六十二囘帝國議會鐵道省所管事務政府
委員被仰付
一昨六日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲
事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行ニ關
スル件)(政府提出)外四件委員
委員長岡田忠彥君
理事
山崎猛君鈴木義隆君
小谷節夫君西脇晉君
中村繼男君
兌換銀行劵條例中改正法律案(政府提出)
外三件委員
委員長山崎達之輔君
理事
木暮武太夫君喜多孝治君
加藤知正君駒井重次君
田中貢君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
委員長東武君
理事
守屋榮夫君今井健彥君
手代木隆吉君
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特
例ニ關スル法律案(政府提出)委員
委員長中島守利君
理事
坂本一角君谷原公君
柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲公債
發行ニ關スル法律案(政府提出)委員
委員長豐田收君
理事
佐保畢雄君高野喜六君
一昨六日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
第二部選出
豫算委員龜井貫一郞君(中野正剛君
補闕)
一昨六日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第二部選出豫算委員絶井貫一郞君
第二部選出豫算委員中野寅吉君
第四部選出豫算委員長島隆二君
第五部選出豫算委員平川松太郞君
第一部選出決算委員立川太郞君
第五部選出請願委員原吉郞君
一昨六日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外三
件委員
辭任中野猛雄君補闕津崎尙武君
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特
例ニ關スル法律案(政府提出)委員
辭任谷原公君補闘大神田軍治君
柳河軌道株式會社所属軌道補償ノ爲公債
發行ニ關スル法律案(政府提出)委員
辭任山本厚三君補闕原吉郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=1
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002・秋田清
○議長(秋田〓君)是ヨリ會議ヲ開キマス 日程第一及第二ハ關聯セル議案ナルニ依
リ一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=2
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003・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程第一、裁判所構成法中改正法律案、
日程第二、民事訴訟法中改正法律案、右兩
案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマス-司法
大臣小山松吉君
第一裁判所構成法中改正法律案政
府提出)第一讀會
第二民事訴訟法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
裁判所構成法中改正法律案
裁判所構成法中左ノ通改正ス
第十四條中「千圓」ヲ「千五百圓」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前裁判所ノ受理シタル訴訟ニ付
テハ管轄ニ關スル從前ノ規定ヲ適用ス但
シ本法ニ依リ其ノ裁判所ノ管轄ニ屬スル
モノハ此ノ限ニ在ラズ
民事訴訟法中改正法律案
民事訴訟法中左ノ通改正ス
第二十二條第二項中「千圓」ヲ「千五百圓」
三段人
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣小山松吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=3
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004・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今議題ニナリ
マシタ日程第一裁判所構成法中改正法律
案ニ付テ御說明ヲ致シマス、近來裁判事務
ハ逐年事件ノ增加ト共ニ繁忙ヲ加へ來リマ
シタニモ拘ラズ、國ノ財政上ノ理由ヨリ致
シマシテ、司法職員ノ增加ハ之ニ伴フコ
トノ出來ナイ狀態デアリマスルノミナラ
ズ却テ行政整理ニ伴ヒマシテ、今回定員
ノ減少ヲ行フノ已ムナキニ至ッタノデアリ
マス而シテ司法事務ハ、御承知ノ如ク他
ノ一般行政事務トハ趣ヲ異ニ致シマシテ、
一定ノ事務ニ對シマシテハ必ズ一定ノ員
數ノ職員ヲ必要トスルノデアリマシテ其
各員ノ負擔シ得ベキ分量モ、亦自ラ限度ガ
アルノデアリマス、ソレニモ拘ラズ只今
述べマシタ如ク、事件增加ノ爲ニ司法部職
員ノ負擔ハ既ニ甚ダ過重デアリマスサ
ナキダニ近年我國ノ訴訟ハ甚シク遲延シテ
居ルト云フ非難ノアル時デアリマスカラシ
テ、此儘ニシテ置キマシタナラバ益に、訴
訟ヲ澁滯セシムル結果ヲ生ゼントスル虞ガ
アルノデアリマス、故ニ此際職員ノ減少ヲ
已ムナクシナケレバナラヌト致シマスレ
バ何等カノ制度ノ改革ヲ施スノ外ニ方法
ハナイノデアリマス、政府ハ此目的ヲ達成
スルノニ最モ有效デアリ、且ツ妥當デアル
ト信ズル方法ノ一ツト致シマシテ、從來地
方裁判所ノ管轄ニ屬シテ居リマシタ金千圓
ヲ超過シ、千五百圓ヲ超過セザル民事訴訟
事件ヲ區裁判所ノ管轄ニ移シマシテ是マ
デ審理判決ニ三名ノ判事ヲ必要ト致シマシ
タ事件ヲ、一名ノ判事ニテ取扱ハシムルト
云フコトニ致シマシタ、之ニ依ァテ判事ノ負
擔輕減ヲ圖ルノヲ相當ト認ムルノデアリマ
ス、而シテ以上ノ改正ニ依リマシテ右ノ
千五百圓マデノ事件ハ區裁判所ノ管轄ニ
屬スルコトヽナリマスル爲ニ、從來ノ管轄
裁判所タル所ノ地方裁判所ニ比シマスレ
バ迅速ニ解決セラレル利益ガアルバカリ
デナク、當事者ガ是等ノ事件ニ付テ裁判所
ニ出頭スル爲ニ要シマスル費用、竝ニ時間
等ヲ節約シ得ルコトヽモナルノデアリマ
ス、而シテ右五百圓ヲ增額致シマスコトニ
依ッテ、區裁判所ノ事件ガ、數ニ於テドノク
ラヰ地方裁判所ノ事件ヨリ移ッッテ來テ、增加
ヲスルカト云フコトニ付キマシテハ何レ
委員會ニ於テ詳細御說明ヲスル機會ガアラ
ウト思フノデアリマス、以上ノ理由ニ依リ
マシテ、玆ニ裁判所構成法中改正法律案ヲ
提出スル次第デアリマス何卒愼重御審議
ノ上御協贊アランコトヲ希望致シマス(拍
手)
次ハ第二ノ日程、民事訴訟法中改正法律
案デアリマス、是ハ只今說明ヲ致シマシタ
裁判所構成法中改正法律案ニ極メテ密接
ナ關係ノアル改正デアリマシテ、從來民事
訴訟法第二十二條ノ第二項ニ依リマスル
ト訴訟ノ目的ノ價額ヲ算定スルコトノ出
來ナイ訴訟事件ハ其價額ハ千圓ヲ超過ス
ルモノト看做シマシテ、常ニ地方裁判所ノ
管轄ニ屬セシメテ居ッタノデアリマスグルム
ニ今囘裁判所構成法改正案ノ如ク改正セラ
レル結果トナリマスレバ此千五百圓ヲ超
過セザル訴訟事件ハ區裁判所ノ管轄ニ屬
スルコトヽナリマシテ、右價額算定不能ノ
事件ヲ、從前通リ地方裁判所ノ管轄ニ屬セ
シメタノデアリマスル爲ニ、勢ヒ其訴訟ノ目
的ノ價額ヲ千五百圓ヲ超過スルモノト看做
ス必要ガアルノデアリマス、隨テ民事訴訟
法第二十二條第二項ノ規定ヲ改正スル爲
ニ本案ヲ提出致シタ次第デアリマス是
亦愼重御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=4
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005・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ質疑ヲ許シマス、
中山福藏君
〔中山福藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=5
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006・中山福藏
○中山福藏君 私ハ只今上程サレマシタル
所ノ裁判所構成法中改正法律案、竝ニ民事
訴訟法中改正法律案ニ付キマシテ、政府ノ
意ノ在ル所ヲ、小山司法大臣ヨリ承リタイ
ト考ヘテ居ル者デアリマス、質問ノ要項
ハ之ヲ三項ニ分チマシテ、第一本案通過ノ
結果、國ノ負擔ヲ增加シ事務ノ繁多ト云フ
コトニナリハシナイカト云フコトヲ御尋ス
ルノデアリマス、第二ノ要旨ハ何故本案
提出ニ先立チマシテ、在野法曹ノ意見ヲ徵
セラレナカッタカ、第三ニハ少額ノ金額ナル
ガ故ニ民事訴訟法第五百三十九條ノ適用ヲ
受ケマスル所ノ本改正法律案ニ於テ、國民
大衆ノ生活權ヲ脅シツヽアル所ノ此社會思
潮ヲ、更ニ惡化セシムル所ノ虞レナキヤ否
ヤ、是ガ私ノ要旨デアリマス、是ヨリ右三
要旨ヲ述ベマス
第一ノ要項ハ只今本議場ニ這入リマスル
前ニ別室ニ於キマシテ司法政務次官、竝
ニ長島民事局長ヨリ承リマスル所ニ依リマ
スルト、是ハ行政整理ノ結果、豫算ヲ削減
セラレタノデ、判事二十五名、檢事三名、書
記九十六名、司法官試補五名ト云フモノヲ
減ジタノデアルカラシテ、到底今日ノ司法
官デハ澤山ノ事務ヲ取扱フコトガ出來ナイ
ト云フノガ、理由ノ一ツデアルト云フコト
ヲ述ベテ居ッタノデアリマスルガ、私ノ考ヘ
マスル所ニ依リマスルト云フト、今日各地
方ニ行ヲテ見マスルト云フト、刑事事件ノ如
キハ少シバカリ疑問ガアルト云フト、直チ
ニ拘留處分ニ付シテ、國家ノ負擔ニナッテ
居リマスル所ノ此食費ト云フモノニ付テ
ハ何等ノ考慮ガ拂ハレテ居ラナイノデア
リマス、故ニ斯ウ云フ所ノ支出ヲ儉約ナサ
ルナラバ二十五六万圓ト云フ爲ニ、斯ウ
云フ風ナ人員ヲ省クナドヽ云フコトハ根
據ガ洵ニ薄弱デアルト云フコトヲ考ヘマス
ルガ故ニ、私ハ敢テ司法省ノ御考へニナ〃
テ居ルヤウナコトニハ贊成ガ出來ナイノデ
アリマス、殊ニ私權保護ヲ業ト致シテ居リ
マスル所ノ私ト致シマシテハ、斷ジテ斯樣
ナル所ノ薄弱ナル根據ニ依ッテ、斯ノ如キ法
律案ノ通過ヲ望ムコトヲ得ナイノデアリマ
ス
御案內ノ如クニ本改正法律案ハ、裁判所
構成法第十四條中ノ千圓ヲ千五百圓ニ改ム
ル法律案デアリマシテ、若シ本案ガ我ガ帝
國議會ヲ通過スルト云フコトニナリマスト
云フト、單ナル訴訟價格ノ範圍ヲ擴張スル
數量的問題ニハ止ラナイノデアル、卽チ右ノ
如キ金額ハ現下ノ經濟狀態ニ於キマシテ
ハ國民ノ重大ナル財產ニ屬シテ居リマシ
テ、而モ其裁判ハ區裁判所ノ審理ヲ受ケル
ト云フコトニナリマスルカラ、御承知ノ通
リニ、單獨判事ノ裁キヲ受ケナケレバナラ
ヌト云フコトニ歸著スルノデアリマス、民
事訴訟法第三百五十九條ノ適用ヲ受ケマス
ル結果、其判決ニハ判決ノ理由ヲ省略スル
コトガ出來ルノデアル、裁判所ノ特質ヲ此
點ニ於テ既ニ失フノデアリマシテ、而モ昔
ノ徳川幕府ノ時代ナラバ率ザ知ラズ、理由
拔キノ普通警官ノヤリマスル所ノ行政處分
ト何等其性質ヲ異ニシナイト云フコトニ
ナルノデハナイカト思ハレルノデアリマ
ス、加之、是ガ爲ニ斯ル判決ニ對シマシテ
國民ノ承服ヲ缺キ、殆ド悉ク控訴ヲ爲シ、
隨テ此種上〓事件ノ輻湊ヲ伴フコトニナラ
ザルヲ得ナイノデアリマス、之ヲ畢竟致シ
マスルニ、司法省ガ世ノ有力ナル所ノ反對
ニ遭ヒ、提出ヲ中止シタル所ノ刑事裁判理
由省略ノ法律案ト、其質ヲ同ウスルモノデ
アリマシテ、實ニ帝國法權ノ威信ヲ害スル
モノト謂ハナケレバナラヌト私ハ考ヘテ居
ルノデアル、之ニ付キマシテ帝國辯護士會
ハ全國ノ辯護士會ニ對シテ其意見ヲ徵シ
タノデアリマスルガ、奈良及富山ノ辯護士
會ヲ除キマシテハ殆ド五十ノ辯護士會ハ
皆私ト同一ノ意見デアルト云フコトヲ囘答
シテ參リマシタ詳言致シマスレバ、私共
ガ判決ヲ得タ時ニ成程ト首肯ノ出來ル理由
ガナケレバ、裁判ニハ何等ノ價値ガナイト
私ハ思フノデアリマスルガ、今日國民〓育
ノ發達ト批判力ノ增進トハ、斷ジテ理由拔
キノ判決ヲ歡迎スルモノデハナイト思フノ
デアリマス、私ハ民事訴訟法第三百五十九條
ガ何故法律トシテ、其生命ヲ保ッテ居ルノ
デアルカト云フコトヲ疑テテリリスス、當時
ノ當議場ニ居ラレマシタル所ノ代議士ノ諸
君ハ、何故ニ斯ノ如キ法律ヲ阻止セラレナ
カッタカト云フコトヲ、不思議ニ思フ位デ
アリマス、卽チ本改正法律案ガ通過致シマ
スレバ事實理由ノ省略デ、訴訟當事者ノ
滿足ヲ得ナイ所カラ、先程カラ申シマス
ヤウニ、控訴ハドシ〓〓殖ル、控訴スル
コトニ依ッテ事件理由ノ滿足ヲ發見シタ
イト云フコトニナルノデアリマシテ
區裁判所ニ對シテ第二審ノ役目ヲ講ジテ居
リマス所ノ各地方裁判所ノ事件ト云フモノ
ハ實ニ激增スルコトニナルノデゴザイマ
ス、又區裁判所ハ裁判所構成法第十一條第
一項ニ依リマシテ、單獨判事ガ其審理ノ衝
ニ當ルコトニナッテ居ルノデアリマスルカ
ラ、其取調ト云フモノガ、合議制ニ依リマ
スル所ノ裁判ニ比較致シマシテ、ドウシテ
モ粗略ニ陷ル憂ガアルノミナラズ、先程申
述ベマシタル事實理由ノ省略ト相俟ッテ、假
ニ粗略ノ判決ヲヤリマシタ所ガ、表面ニ理
由ガ現レテ居ラナイノデアリマスルカラ、
訴訟當事者ノ不安ト云フモノハ是ヨリ大
ナルハナイト謂ハナケレバナリマセヌ司
法省ハ現行裁判所構成法第十四條ノ規定ヲ
設ケタル際ニ、五百圓ノ訴額ヲ一千圓マデ
其管轄ニ屬セラレマシタ時ニ、學識經驗ア
ル練達ノ士ヲ其審理ノ衝ニ任ジテ萬選憾
ナカランコトヲ期スト云フコトヲ言ハレタ
ノデアリマシタケレドモ、ソレモホンノ東
ノ間デアリマシテ、卽チ都會秀才集中主義
ト云フヤウナコトニナリマシテ、勿論私ハ
之ニ依ッテ地方ニ居ラレル判事ノ方々ガ、都
會ニ居ラレル方ニ劣ッテ居ルト云フコトヲ
申上ゲルノデアリマセヌガ、在野法曹ハ政
府ノ斯ノ如キ言ニ信賴シテ、大イニ期待ス
ル所ガアッタノデアリマスルケレドモ、ソレ
ハ豫想ヲ裏切ラレテ居リマシテ、ドウシテ
モ都會地ニ秀才ガ御寄リニナル傾向ノアル
ト云フコトハ、否ムコトノ出來ナイ顯著ナ
ル事實デアルト私ハ考へテ居ルモノデアリ
やく、殊ニ判事自身ニ取リマシテモ、出來
ルダケ都會ニ居リタイ、又上級裁判所ノ判
事ノ方々ニ較ベマシテ、下級裁判所ニ參リ
マスト、ドウシテモ昇進ガ遲レハシナイカ
ト云フ危惧ノ念ヲ持ッテ居ラレルヤウニ私
ハ考ヘテ居ルモノデアル、故ニ若シ政府ガ
本案ヲ是非共通過セシメヨウト思ハレマス
ナラバ、民事訴訟法三百五十九條ト云フモ
ノヲ改正スルカ、或ハ下級判事ノ方々、詰
リ地方ニ居ラレル判事ノ方々、竝ニ區裁判
所ノ判事ノ方々ヲ勅任マデ昇セルヤウナ制
度ヲ附帶セシメルカ、何等カノ其處ニ途ヲ
講ジテ戴カナケレバ、司法省ノ仰セラレル
ヤウナ立派ナ判事ヲシテ、此區裁判所ノ審
理ニ當ラシメルト云フコトハ不可能ノ問
題デナカラウカト考へテ居ルノデアリマ
ス、斯ノ如ク控訴ガ殖エマスルト、事件ノ
繁多ト云フコトヲ來タスノデアリマスルカ
ラ、當然ノ人件費ト云フモノヲ增サナケレ
バナラヌ、判決ノ理由ヲ省略シ、單獨判事
ニ依ル所ノ理由拔キノ判決ヲセラレルノデ
アリマスカラ、控訴ニ於テドウシテモ完全
ナ判決ヲ受ケタイト云フノガ人情デアリマ
スカラ、ドシ〓〓控訴ヲスルト云フコトニ
ナリマスレバ、司法省ノ豫期セラレルヤウ
ナ、事件ガ簡單ニナッテ國民負擔ヲ減ズル
ト云フコトハ到底アリ得ナイト私ハ考ヘ
テ居ルノデアリマス、今時司法省ガ在野法
曹ノ猛烈ナ反對ニ鑑ミマシテ、三百圓以下
ノ上告制限案ヲ御撤囘ニナリマシタコトニ
依ッテ見マシテモ、如何ニ司法省ガ民權伸張
ニ對シテ不熱心、不眞面目デアルカト云フ
コトガ分ルデハゴザイマセヌカ、世間ニ本
改正法律案ヲ裁判官ノ怠業法律案ナリト稱
シテ居リマスノモ亦宜ナリト言ハナケレバ
ナラヌト私ハ思フノデアリマス、以上ノ理
由ニ依リマシテ政府ノ豫期スル所ハ、事實
ニ於テ全然裏切ラレル結論ニ到達セザルヲ
得ナイノデアリマス
更ニ現在果シテ事務ガ司法官ノ人々ニ堪
ヘ切レナイ程度ニ澤山アルカドウカ、之ヲ
私ハ檢討シテ見タイト思フノデアリマスガ
私ハ十數年來ノ實際ニ徵シマスルニ、東京、
大阪、京都ノ如キ大都市ヲ除イタ地方デハ、
決シテ只今ノ司法大臣ノ御言葉ノヤウナ現
象ハ現ハレテ居ナイノテゴザイマス、大
都市ニ於テスラ、法律學ヲ〓授シテ居リマ
ス所ノ、裁判官ト云フモノハ多數居ラレル
而モ一週間ニ三十五六時間ト云フモノヲ、
公務ノ外ニ受持クテ居ラレルト云フ裁判官
ガアルコトヲ司法大臣ハマサカ御存ジナ
イコトハアルマイト考ヘル、御脚下ニ一週
間ニ三十五六時間、裁判官ノ職ヲ執ラレル
傍ニ、明ニ私ハ學校ノ〓壇ニ立ッテ居ラレル
實例ヲ見テ居ルモノデアリマス、斯樣ナ意
味合ニ於キマシテ、只今司法大臣ガ述べラ
レマシタヤウニ裁判官ニ閑ガナク、事件ガ
多クテ人員ヲ殖サナケレバ、到底手ガ廻ラ
ナイト云フコトハ決シテナイノデアリマ
ス或ハ餘リニ燈臺下暗シト云フ言葉ノ通
リ、脚下ニサウ云フコトガアルカラ御存知
ナイカモ知レマセヌガ若シサウ云フ御疑
念ガナイトスルナラバ、今日御歸リノ後ニ
直チニ御調査ニナッタナラバ、其實例ト云フ
モノハ續々トシテ私ハ法相ノ御手許ニ集ル
ト云フコトヲ確信シテ疑ヒマセヌ、政府ハ
ヨモヤ現在ノ金五百圓ト云フ金ガ、普通時
ノ三千圓ノ値打ガアルト云フコトガ御分リ
ニナラヌ筈ハナイノデアリマス、私ハ眞ニ
政府ガ國民ノ立場ヲ理解シテ、十分ニ其權
利ヲ保護セント欲シマスナラバ、區裁判所
ノ事物ノ管轄ノ金額ヲ增スヨリモ、寧ロ反
對ニ元ノ五百圓ト云フ金額ニ還元セラレル
ノガ、至當デハナイカト考ヘマス、政府ハ
事務ノ簡捷ヲ圖ルト云フ美名ヲ濫用シテ、
僅少ナル司法官ノ勞苦ニノミ好意ヲ寄セ、
國民大衆ノ懷ニ直接關係致シマス所ノ本案
ヲ、飽迄通過セシメヨウト言ハレルノデゴ
ザイマセウカ、加之、斯ノ如キ少額ノ財產
ヲ輕ンジテ、不滿足ナル裁判ヲ可及的迅速
ニ理由拔キニ受ケサセヨウト云フノハ明
ニ帝國憲法第二十四條「日本臣民ハ法律ニ
定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ權ヲ奪ハ
ルルコトナシ」ト云フ大精神ニ悖ルモノナ
リト斷ゼザルヲ得ナイノデアル
以上ノ各理由ニ依リマシテ控訴ハ益〓多
クナル、事件ガ多クナレバ、當然人間ノ數
ヲ殖サナケレバナラヌ、人間ノ數ヲ殖
シマスレバ金ガ要ル、ソレデモ本改正
法律案ノ提出理由ニ所謂、事務ノ簡捷ト國
ノ負擔トガ輕クナルデアリマセウカドウデ
アリマセウカ、是ガ第一ノ質問デアリマス
第二ノ質問ノ要旨ハ本改正法律案ヲ當
議會ニ御提出ニナルニ方リマシテ、政府ハ
何故ニ在野法曹ニ其意嚮ヲ確ムルコトナ
〃、突如極メテ期間短キ所ノ本議會ニ提出
セラレタノデアリマスカ、從來如何ナル法
律案デモ、其法律案ト利害關係ヲ有シテ居
リマス所ノ在野法曹ニ對シテハ直チニ諮
問ヲシテ後始メテ議會ニ提出セラレルノヲ
例トシテ居シタノデアリマス、譬ヘテ中シマ
スナラバ、商法改正ニ付テハ各地ノ商業會
議所ニ意見ヲ徵シ、又農政ニ關スル法律案
ニ付テハ、各地ノ農會ニ諮問ヲスルト云フ
ノガ普通デアッタノデアリマス、斯ウ云フ態
度コソ此時勢ノ動キニ伴ヒマス所ノ、民衆
的政府ノ立場ヲ明ニスルモノト考ヘマス
ガ此度ハ一切是等ノ手續ヲ省略致シマシ
テ、何等ノ諮問ヲ爲シテ居ラレナイノデア
リマス、唯私ノ聞イタ所ニ依リマスト、議
會成立前ニ司法省ハ貴族院ノ或ル團體ニ對
シテ、極祕裡ニ改正案ヲ交付サレテ通過
運動ヲサレタト云フコトデアリマスガ、之
ニ鑑ミマシテモ如何ニ提案ノ理由ガ薄弱デ
アルカ、如何ニ公明正大ヲ缺クモノデアル
カト云フコトヲ感知スルコトガ出來ルト考
ヘテ居ル者デアリマス、是ガ第二ノ質問ノ
要旨デアリマス
第二ニハ私ハ國民大衆ノ僅ナ金デアル所
ノ五百圓ノ增額、斯ウ云フ小サナ金額ヲ輕
輕シク取扱フト云フコトハ現代ノ社會思
想ノ惡化ヲシテ、益〓甚シカラシムル所ノ結
果ニ陷リハシナイカト云フコトヲ、御尋ス
ルノデアリマス、今日國民八千万人ノ中ニ、
千五百圓ト云フ金ヲ持フテ居ル人ハ一體何
人アルデアリマセウカ、實ニ今日ノ千五百
圓ト云フモノハ單純ニ取扱ハルベキモノデ
ハ斷ジテナイト私ハ考ヘルノデアリマス
金額ハ少クトモ之ヲ所有スル人間ハ一個ノ
人格者デアリマス、私共ノ知リマス所ニ依
リマスト、百万圓ヲ持ッテ居ル所ノ人間デ
モ、其所有者ハ一個ノ人格者デアル、五百
圓持ッテ居ル人間デモ、持シテ居ル人ハ一個
ノ人間デアリマス、デアリマスカラシテ此
金額ヲ輕ク取扱フト云フ結果ハ、結局金ヲ
持タナイ人間ハ、粗末ニ取扱ッテモ宜イト
云フ結論ニナルノデアリマス、現行法律ハ
從來サウ云フコトデ少額ノ金ヲ簡單ニ取
扱シテ居リマシタケレドモ、是ハ歐羅巴ノ制
度ヲ眞似テ、斯ウ云フ風ニ人間ガ馴ラサレ
テ居ルカラ、何トモ考へテ居ナイノデアル、
今日ノ社會思想カラ考ヘレバ一字一句ト
雖モ私ハ忽セニスベカラザル所ノ大ナル意
義ヲ、此點ニ含ンデ居ルノデハナイカト思
フノデアリマス、ソコデ今日ノ金高ノ少ナ
イモノハ簡單ニ區裁判所ノ擔當判事ニ取
扱ハレテ、而モ理由ヲ拔イテ-負ケ勝チ
ノ、ドウ云フ理山ニ基イテ居ルカト云フコ
トハ、何モ說明シナイデモ宜イト云フ裁判
ノ制度、民事訴訟法第三百五十九條ノ規定
ノ適用ヲ受クル此改正法律案ニ於キマシ
テ、今少シ私ハ政府ハ十分ノ御注意ヲシテ
戴カナケレバナラヌノデハナイカト思フノ
デアリマス、極言致シマスレバ事務ノ簡
捷ト判事ノ手ヲ省クト云フコトハ、人間ヲ
粗略ニ取扱フト云フ結果ニ陷リハシナイ
カ、今日控訴ヲシマスニ當リマシテモ、控
訴費用ヲ持シテ居ル人スラ少ナイノヲ、私ハ
度々實見シテ居リマス、控訴費用ヲ持タナ
イヤウナ人デ、一生懸命ニ區裁判所ノ裁判
ニ出テ、自分カラ辯護士拔キデ訴訟ヲヤッテ
居ル人ヲ度々見受ケルノデアリマスガ、私
ハ斯ウ云フ時代ニ當リマシテハドウシテ
モ政府ト云フモノガモウ少シ本當ノ眞面目
ナ實際ノ個人々々ノ資產狀熊ヲ立派ニ御
調査ニナッテ、御深切ナル法律ノ御改正ガ必
要デハナイカト思フノデアリマス、今日貨
幣制度ニ依リマシテ金ヲ持ノテ居ル人ガ大
イニ尊バレル、是ハ貨幣制度ト云フモノガ
改正サレヽバ百万圓ノ金塊ト雖モ一厘ノ
値打モナクナルノデアル、併ナガラ人間ト
云フモノハ幾ラ法律ヲ改正シテモ、其處ニ
何等ノ私ハ價値ノ變リハ生ジナイト考ヘテ
居リマス、私ハ昨日モ東北ノ農民ノ人ガ此議
會ノ代議士ノ方々ニ御願ヒナサッテ、サウシ
テドウカ自分達ノ生活ヲ保障シテ吳レナイ
カト云フヤウナコトヲ言ッテ來ラレタ實例
ヲ見マスト、如何ニ東北竝ニ長野縣ノ人々
ガ、此生活スル所ノ保障ノ根源ヲ浚ハレ、
脅城セラレテ居ルカト云フコトヲ、ハッキリ
ト見得ルノデアリマス、五百圓ト云フ金ハ
少イケレドモ、之ヲ持ノテ居ル人間ヲ尊ブト
云フ此精神コソハ正ニ國民ヲ代表シテ居
リマス所ノ私共ノ、大イニ反省シナケレバ
ナラヌ所デハナイカト考ヘル次第デアリマ
ス、換言致シマスレバ少額ノ金ヲ粗略ニ
取扱フト云フコトハ貧乏人ヲ粗略ニ取扱
フト云フコトノ誤解ヲ受ケル虞レガアル、
斯樣ナ意味ニ於キマシテ私ハ是非トモ政府
ガ斯ウ云フ場合ニ斯ウ云フ改正法律案ヲ出
スト云フ、此精神ガ奈邊ニアルカト云フコ
トヲ御尋スルノデアリマス
是ガ私ノ第三ノ質問ニナッテ居ルノデア
リマスガ、要スルニ平常時ニ於ケル所ノ國
家生活、集團生活ノ秩序維持ヲ直接ノ目的
ト致シマス所ノ司法權ハ、非常時ニ於ケル
軍事行動ト相俟ヶテ國家ノ正義ガ確保シ、其
威信ヲ中外ニ發揚スル所ノ最モ重大ナル二
大要素デアリマシテ、私ハ敢テ此質問ヲ小
山司法大臣ニ對シテ爲シタル譯デアリマ
ス、ドウカ御懇切ナル御答辯ニ與リタイト
云フコトヲ御願シテ、此壇ヲ降ル次第デア
リマス(拍手)
〔國務大臣小山松吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=6
-
007・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今中山君ヨリ
極メテ御〓心ナル御尋ガゴザイマシタガ、
第一ノ御尋ハ法案ガ通過シタナラバ却テ上
訴ヲ增加シテ、判事ノ負擔ヲ增加スル結果
ニナリハシナイカト云フ御趣意ノヤウデア
リマス、是ハ多少意見ノ相違ニナルコトデ
アラウト思フノデアリマスルガ、私ノ考ヘ
マスル所デハ民事訴訟法ノ三百五十九條
ニ依リマシテ、區裁判所ノ判事ガ或場合ニ
判決ノ理由ヲ省略スルコトガ出來ルト云フ
規定ガアリマスルガ爲ニ、千五百圓マデノ
事件ヲ區裁判所ニ移シマシタ結果、控訴ガ
著シク增加スルトハ考ヘナイノデアリマ
ス、判事ノ判決ニ對シテノ控訴ヲ申立テマ
スル理由ハ色々ゴザイマスルケレドモ、多
クノ理由ハ共判事ノ裁判ノ仕方ガ親切叮寧
ナラザルガ爲ニ爲ス上訴ガ多イノデアリマ
ス、甚シイノニナリマスト、判決書ヲ讀マ
ナイデ上訴スル人ガアルノデアリマス雙
方ノ爭點ヲ能ク訊キマシテ、審理ヲ鄭重ニ
致シマスレバ、判決ノ理由ハドウデアリマ
シテモ、其判決ニ服スルト云フコトモアル
ノデアリマスルカラ、中山君ノ御意見ノヤ
ウニ、民事訴訟法ノ三百五十九條アルガ爲
ニ、イツデモ上訴ガ多クナルト云フコトハ
言ヘナイト思フノデアリマス、ノミナラズ
實際ニ於キマシテ新民事訴訟法施行後ニ於
テ判決ノ總數ト上訴ノ總數ヲ比較シテ見
マスルト、中山君ノ御話ノヤウニ上訴ハ殖
エテ居ナイノデアリマス
第一ノ御質問ニ付テ附加ヘテ申上ゲテ置
キマスノハ私モ區裁判所ノ判事ガ判決ヲ
書ク場合ニ於テ、必要ノナキ時ハ理由ヲ書
カヌデモ宜イト思ヒマスルガ、理由ハ成ル
ベク書クベキモノデアルト、斯ウ考ヘテ居
ルノデアリマス、此點ハ中山君ト御同感デ
アリマス
第二ニハ在野法曹ノ意見ヲ何故聽カナ
カッタカト云フ御尋デアリマスルガ、是ハ時
ノ當局者ノ考デアリマシテ、法律ニハ意見
ヲ聞カナケレバナラヌト云フコトハナイノ
デアリマス、併シ當局者ハ或ル機會ニ於テ
聞イテ居ルヤウデアリマス唯聞イタ機會
ガ餘程以前デナカッタカト思ヒマスルガ、司
法省內ニ於テ或ル機會ニハ聞イテ居ルノデ
アリマス
ソレカラ第三ノ御尋ハ千五百圓ヲ輕々シ
ク見ル、粗略ニ見ル結果、思想ノ惡化ヲ來
スヤウナコトハナイノデアルカト云フ御
尋デアリマスガ、是ハサウ云フコトハナイ
デアラウト信ズルノデアリマス、御意見ニ
依リマスト、千五百圓迄ノ事件ヲ區裁判所
ニ移シマシタコトガ、非常ニ輕々シク又
粗略ニ取扱フ趣旨ノ如ク御考デアリマスケ
レドモ、必シモサウデハナイノデアリマス
今日ノ狀態デハ御承知ノ通リ地方裁判所ノ
管轄ニ屬セシメテ審理ヲシテ居リマスル
ト、事件ハドウモ長クナルノデアリマス、
三名ノ判事ガ合議ノ上仕事ヲシテ居リマス
ルカラ、區裁判所ノ判事ノヤウニ速ニ審理
ヲ終結スルコトガ出來ナイ場合ガ多イノデ
アリマス、如何ニ鄭重ニ致シマシテモ訴
ヘマシタ事件ガ何時迄モ解決ヲシナイト云
フコトデアリマシテハソレハ餘リ好イ效
果ヲ齎ラサナイ譯デアリマス、千五百圓マ
デヲ區裁判所ニ移シマシテ、サウシテ比較
的速ニ解決スルコトガ出來マスレバ、此方
法ハ必シモ千五百圓マデノ事件ヲ輕々シク
見タトノミハ、批評ガ出來マイト思フノデ
アリマス、隨テ私ハ此管轄移轉ノ爲ニ思想
ノ惡化ヲ來スト云フヤウナコトハナイト
信ジテ居ル次第デアリマス、是ダケ御答致
シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=7
-
008・中山福藏
○中山福君 一寸議席カラ-尙ホ仔細
ノ點ニ至リマシテハ委員會ニ於テ更ニ御
尋シタイト考ヘテ居リマスルカラ、質問ハ
此程度デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=8
-
009・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ハ終了致シマシ
タ日程第三、右各案ノ審査ヲ付託スヘ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第三右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=9
-
010・上田孝吉
○上田孝吉君 兩案ヲ一括シテ議長指名十
八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=10
-
011・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=11
-
012・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシター日程第四、
恩給ノ減額補給及停止ニ關スル法律案ノ第
一讀會ヲ開キマス-政府委員法制局長官
堀切善次郞君
第四恩給ノ減額補給及停止ニ關スル
法律案(政府提出)第一讀會
恩給ノ減額補給及停止ニ關スル法律案
第一條昭和六年六月一日以降減俸ノ爲
改正シタル俸給ニ關スル規程ニ依リ俸
給ヲ給セラレ勅令ヲ以テ指定スル時期
迄ニ退職シ若ハ死亡シタル軍人以外ノ
公務員若ハ之ニ準ズベキ者又ハ其ノ遺
族ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ恩給
額ト改正前ノ俸給ニ關スル規程ニ依レ
バ受クベカリシ俸給ヲ基礎トスル恩給
額トノ差額ヲ年金タル恩給ニ在リテハ
退職又ハ死亡ノ翌月ヨリ增給シ一時金
タル恩給ニ在リテハ追給ス
前項ノ規定ハ昭和六年六月一日以降勅
令ヲ以テ指定スル時期迄ニ新ニ制定セ
ラルル俸給ニ關スル規程ニ依リ俸給ヲ
給セラレテ退職シ若ハ死亡シタル軍人
以外ノ公務員若ハ之ニ準ズベキ者又ハ
其ノ遺族ニ付之ヲ準用ス
第二條恩給法第九十九條第一項ノ規定
ニ依リ從前ノ例ニ依リ普通恩給ト其ノ
基礎ト爲リタル在職年ニ通算スルコト
ヲ得ル官職ニ就キ受クル俸給トノ合算
額ノ退職當時ノ俸給ヲ超過スル差額ダ
ケ普通恩給ヲ停止スル場合ニ於ケル其
ノ退職當時ノ俸給ハ本法施行後ニ在リ
テハ勅令ヲ以テ指定スル時期迄昭和六
年六月一日以降減俸ノ爲改正シタル俸
給ニ關スル規程ニ依ル其ノ俸給ニ相當
スル俸給トス
前項俸給額ノ算定ニ關シテハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員堀切善次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=12
-
013・堀切善次郎
○政府委員(堀切善次郞君) 昨年一般官公
吏ノ減俸ヲ行ヒマシタ結果、俸給ヲ基礎ト
シテ算出セラレテ居リマス恩給ハ恩給法
上定額ヲ給スルモノト違ヒマシテ、自然滅
額セラルヽコトヽナッタノデアリマス、此減
俸ハ臨時的措置デアリマスルカラ、其結果
ヲ恩給ニマデ及ボスノハ適當デアリマセ
又、仍テ減俸カラ生ジマス恩給ノ減額ヲ
補給スル途ヲ講ズルノ必要ガアルノデアリ
マス、又或種ノ公務員、卽チ〓育職員ニ於
キマシテハ恩給ノ受給者ガ再任致シマシ
タルトキニハ他ノ公務員ニ於ケルガ如ク、
恩給ノ全部ヲ停止致シマセヌデ、再度ノ俸
給額ガ前ノ俸給額ニ及バナイ部分ヲ、恩給
デ補足シテヤルコトノ制度トナッテ居リマ
ス、此種類ノ公務員ニ於キマシテハ昨年
ノ減俸ニ依リマシテ恩給ハ法規上自然的
ニ減俸額ダケ增給サレル結果トナリマシ
テ他ノ者トノ間ニ權衡ヲ失スルコトヽナ
ルノデアリマス、此故ニ此自然的ニ增給サ
レマス分ヲ、元ノ儘ニ止メテ置ク必要ガア
ルノデアリマス、此二ツノ事ヲ主ナル目的
ト致シマシテ、本法律案ヲ提出致シタ次第
デアリマス、何卒御審議ノ上協贊アランコ
トヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=13
-
014・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ニ對シテハ質疑ノ
通告ハアリマセヌ-日程第五、右議案ノ
審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シ
マス
第五右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=14
-
015・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ昭和七年法律第一號
中改正法律案外四件ノ委員ニ併セ託セラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=15
-
016・秋田清
○議長(秋田濟君) 上田君ノ動議ニ御異議
ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=16
-
017・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシター日程第
六、大正十二年法律第五十二號中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨辯
明ヲ許シマス-原惣兵衞君
〔大口喜六君「只今ヨリ豫算委員會ヲ開
キマス、委員ノ諸君ハ豫算委員室ヘ御
集リヲ願ヒマス」ト呼フ〕
第六大正十二年法律第五十二號中改
正法律案(司法官試補及辯護士ノ資
格ニ關スル件)(原惣兵衞君外七名提
비第一讀會
大正十二年法律第五十二號中改正法律
案
大正十二年法律第五十二號中左ノ通改正
ス
第一項中「昭和七年十二月三十一日迄」ヲ
「昭和十二年十二月三十一日迄」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=17
-
018・原惣兵衞
○原惣兵衞君 簡單デアリマスガ故ニ自席
カラ
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=18
-
019・秋田清
○議長(秋田〓君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=19
-
020・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案提出ノ理由ヲ簡單ニ私
ヨリ申述ベタイト存ジマス、大正十二年法
律第五十二號ニ依リマシテ、辯護士タラン
トシテ辯護士試驗ノ受驗ヲ志願スル所ノ人
人ガ、今尙ホ其數數千人ニ上ッテ居ルノデア
リマス、然ルニ其受驗者ノ資格ニ對スル有
效年限ハ、將ニ本年十二月ヲ以テ終リヲ〓
ゲントシテ居ルノデアリマス、不幸ニシテ
未ダ及第スルコトノ出來得ナイ此受驗者
ハ、將ニ其前途ガ永久ニ閉ザサレント致シ
テ居ルノデアリマス、仍テ玆ニ更ニ延期ヲ
致シマシテ昭和十二年ノ十二月三十一日
マン、之ヲ延期セラレンコトヲ望ムモノデ
アリマス、是等受驗生ヲ救濟スルコトハ
社會政策上ノ見地ヨリ緊急ナル案件ナリト
思料スルノデアリマス何卒滿場一致ヲ以
テ速ニ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ偏ニ希
フ次第デアリマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=20
-
021・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ質疑ノ通〓モアリ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=21
-
022・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=22
-
023・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=23
-
024・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ動議ノ如ク決シマシター日程第
七、衆議院議員選擧法中改正法律案ノ第一
讀會ヲ開キマス提出者ノ趣旨辯明ヲ許シ
マス、提出者〓瀨一郞君
第七衆議院議員選擧法中改正法律案
(〓瀨一郞君提出)第一讀會
衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中左ノ通改正ス
第五條中「二十五年」ヲ「一一十年」ニ、「三十
年」ヲ「二十五年」ニ改ム
第六條第一項第五號及第六號ヲ削リ第七
號ヲ左ノ如ク改ム
五犯罪ニ依リ刑ニ處セラレ其ノ執行
ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ
至ル迄ノ者
第十八條總選擧ハ議員ノ任期終リタル
日以後ニ於ケル最近キ日曜日ニ之ヲ行
フヲ例トス
議會開會中又ハ議會閉會ノ日ヨリ二十
五日以內ニ議員ノ任期終ル場合ニ於テ
ハ總選擧ハ議會閉會ノ日ヨリ二十五日
以後ニ於ケル最近キ日曜日ニ之ヲ行
フ
衆議院解散ヲ命セラレタル場合ニ於テ
ハ總選擧ハ解散ノ日ヨリ二十五日以後
ニ於ケル最近キ日曜日ニ之ヲ行フ
總選擧ノ期日ハ勅命ヲ以テ之ヲ定メ少
クトモ二十五日前ニ之ヲ公布ス
第四十九條第二項中「投票區每ニ」ヲ削ル
第六十八條第一項中「二千圓」ヲ「五百圓」
ニッティ
第七十九條第五項中「二十日以內ニ」ヲ
「十五日以後ニ於ケル最近キ日曜日ニ」ニ
改ム
第八十四條第百三十六條ノ規定ニ依リ
當選ヲ無效ナリト認ムル選擧人又ハ議
員候補者ハ當選人ヲ被〓トシ第七十二
條第一項ノ告示ノ日ヨリ三十日以内ニ
大審院ニ出訴スルコトヲ得
第八十八條選擧ニ際シ候補者ノ政治上
ノ意見ノ發表ニ必要ナル演說會場ハ市
町村ニ於テ之ヲ設備スヘシ
市町村長ハ右演說會ノ期日ヲ市町村内
ニ告知シ同時ニ各候補者ニ通知スヘ
シ
第八十九條市町村長ハ議員候補者ノ履
歷竝政治上ノ意見ヲ市町村ノ揭示場ニ
揭示スヘシ揭示場ノ數及掲示ノ期間ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九十條議員候補者ノ政治上ノ意見ハ
政府ニ於テ之ヲ印刷シ通常郵便ヲ以テ
選擧人一人ニ付一通ヲ限リ無料ニテ配
布スヘシ意見書ノ字數及其ノ屆出竝配
布ノ時期ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第九十一條何人ト雖第八十八條乃至第
九十條ノ方法以外ノ方法ニ依リ選擧ノ
運動ヲ爲スコトヲ得ス
第九十二條削除
第九十三條削除
第九十四條削除
第九十五條削除
第九十六條創除
第九十七條削除
第九十八條削除
第九十九條削除
第百條削除
第十一章削除
第百一條削除
第百二條訓除
第百三條割除
第百四條削除
第百五條削除
第百六條削除
第百七條削除
第百八條削除
第百九條削除
第百十條削除
第百二十九條第九十一條ノ規定ニ遠反
シタル者ハ一年以下ノ禁錮又ハ五百圓
以下ノ罰金ニ處ス
第百三十條削除
第百三十一條削除
第百三十二條削除
第百三十三條削除
第百三十四條削除
第百三十五條削除
第百三十六條當選人其ノ選擧ニ關シ本
章ニ揭クル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル
トキハ其ノ當選ハ無效トス
第百三十七條中「五年間」ヲ「十五年間」ニ
改ム
第百三十七條ノ二議員候補者本章ニ揭
クル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタルトキハ
其ノ選擧區ニ於テハ其ノ裁判確定後永
久ニ、他ノ選擧區ニ於テハ七年間被選
擧權ヲ有セス
第百三十八條ノ二一ノ投票區ニ於テ一
囘ノ選擧ニ際シ本法第百十二條又ハ第
百十三條ニ依ル刑ニ處セラレタル者選
擧人名簿確定ノ日ニ於テ之ニ記載セラ
レタル者ノ總數ノ十分ノ五ニ達スルト
キハ其ノ投票區內ノ總テノ住民ハ該選
擧ノ日ヨリ五年間業議院議員ノ選擧權
ヲ行使スルコトヲ得ス
第百四十條削除
第百四十八條削除
〔〓瀨一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=24
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025・清瀬一郎
○清瀨一郎君 諸君、近時議會ヲ否認スル
ノ考ガ漸ク國民ノ間ニ瀰蔓セントスル兆候
ガアリマス、誠ニ私ハ憂フベキコトヽ考ヘ
ルノデアリマス、詳カニ何故ニ斯ノ如キ思
想ガ瀰蔓シ、又時ニ想ハザル事件ガ突發ス
ルニ至ッタカ、色々考ヘテ見マスルト、是ニ
ハ種々ナル原因モアリマセウケレドモ兎
ニ角モ此頃ノ選擧ガ旨ク行フテ居ラヌト云
フコトガ、餘程重大ナ原因デハアルマイ
カ斯樣ニ私ハ見ルノデアリマス、元來日
本國民ハ今カラ七八年前、普通選擧ヲ求メ
タ時分ニハ普選サヘ行ウタナラバ日本
ノ政治ハ改革セラルヽノデアラウ、一封クノ
政治ノ基調モ民衆的ニナルデアラウト云フ
ノデ、非常ニ普選ニハ望ヲ屬シタ、私共モ
左樣ニ考ヘテ熱心ニ普選ヲ唱道致シタノデ
アリマシタ、然ルニ最早三囘此普通選擧ナ
ルモノヲ行ッテ見マシタガ、其成績ハ遺憾ナ
ガラ甚ダ面白クナイ、先ヅ第一ニ選擧運動
ニハ非常ナ大金ヲ要スル尠クトモ二万圓
乃至三万圓位ノ選擧費ヲ要スルコトハ諸
君ノ御承知ノ通リデアリマス、全體斯ノ如
キ選擧運動費ガ必要デアルト云フコトナラ
バ此選擧運動費ヲ準備シ得ナイ者ハ、候
補ニ立ッテモ駄目デアル、候補ニ立フテモ駄
目デアルナラバ、候補ニ立タナイモ同ジコ
トデアル、候補ニ立ツコトガ出來ナイト云
フコトハ、被選擧權ガナイト云フノト殆ド
變リハナイ、觀念的ニハ變リハアッテモ、事
實今日多數ノ人々ハ普通選擧法ノ結果ハ
被選擧權ヲ奪ハレタト言テモ過言デハナ
イト存ジマス、此狀態ヲ改革シナケレバ
私ハ議會ニ對スル不平、政治ニ對スル不平
ヲ除クコトハ出來マイト思フ一方、失禮ナ
ガラ、政黨ニ關シテモ非常ナ不滿デアリマ
ス、或ハ政黨ノ不信任、或ハ政黨ノ腐敗ヲ
論ジ、又遺憾ナガラ昭和五大獄ト云フ言葉
ガ出來テ、昭和時代ニ至ッテカラ政黨ノ重要
ナル人々ガ法廷ニ立ツト云フ結果ヲ見タノ
デアリマスルガ、熟々是等ノ事件ノ內面ヲ
見ルト、矢張是ハ選擧運動費デアル、名前
ハ御遠慮申上ゲマス、中上ゲマスルガ、是
等ノ事件ヲズット見ルト、金ガ欲シウテ收賄
ヲシタ人デハナイ、金錢ニハドチラカト言
ハく、寧ロ恬淡ナヤウナ人デアッテモ、政黨
幹部ニナル以上ハ金ヲ集メナケレバ幹部ノ
役目ハ勤マラヌ、之ヲ集メルノニ過ガ生ジ
タノガ昭和ノ五大獄デアル、斯樣ニ見テ見
マスト、元ハ矢張選擧法ニアルノデアリマ
スルカラ、私ハ選擧法ノ改革ト云フコト
ハ今日ノ社會ノ不安ヲ除ク色々ナ方法、
議長ノ御提案ニナッタ議會ノ淨化モ其一ツ
デアリマセウ、今日吾々ガ相談致シテ居ル
農村ノ救濟モソレデアリマセウケレドモ、
是ト相竝ンデ、選擧ノ改革ト云フコトガ私
ハ重要ナ要務デアルト存ジマシテ、臨時議
會デアルニ拘ラズ、玆ニ提案ヲ致シ、諸君
ノ御贊成ヲ求ムル次第デアリマス、デ私ノ
提案致シマシタ案ニハ四ツノ事ヲ含ンデ居
ル、四箇條ノ事ヲ含ンデ居リマス、詳シク
ハ委員會ニ於テ說明ヲ致シマスガ、大體ノ
項目ヲ申上ゲナケレバナルマイト存ジマ
ス、四箇條ノ一ツハ選擧ノ公營デアリマ
ス、今日選擧ノ公營ノ言葉ハ最早餘程慣熟
サレマシタカラシテ、詳シクハ說明致シマ
セヌガ、選擧運動ニ必要ナルコトハ演說
會ト、文書ト、揭示、此三ツデアル、今デ
モ此三ツデアル、ソコデ演說會ノ會場ヲ設
ヶ、又演說會ガアルト云フ時ハ各町村ニ於
テ之ヲヤル町村ガ其學校ヲ利用シテ、電
燈ヲ點ケテ演說會場ヲ設ケル、代議士候補
者ヲ呼ンデ來テ、其處デ演說ヲサセルト云
フコトガ演說ノ公營デアル、ソレカラ文書
ノ公營ハ各候補者ヨリシテ適當字數ノ政見
書ヲ選擧長ヘ提出セシメテ、選擧長ハソレ
ヲ一ツノ紙ニ刷ル、一ツノ紙ニ刷ッテ各有
權者ニ配付スル、是ハ幾ラカ金ガ要リマス
ケレドモ、一ツノ有權者ノ所ニ配付スルモ
ノヲ十錢ト見マシテモ、一千三百万ノ有權
者ニ對シマシテハ、合計百三十万ノ金ガ要
ルダケデアル、大シタモノデハアリマセヌ、
是ガ文書ノ公營、ソレカラ「ポスター」第三ノ
揭示デアリマスガ、是ハ役場ノ揭示板、各
大字ノ揭示板等ニ公費ヲ以テ揭示スル、卽
チ演說ト、文書ト、揭示ト、此三ツノ事ヲ
公營ト致シマシテ、候補ニナラウト云フ者
ハ此手段ノミニ依ッテ運動スル、ソレ以外ニ
私設運動ハ禁ズル、斯ウ云フノデ機會均等、
金ノ有ル候補者モ金ノ無イ候補者モ、同ジ
道具デ競爭シ得ルト云フ仕組ニスルノガ、
是ガ選擧公營デアリマス
ソレカラシテ第二ニ私ハ簡單ニ長期ノ失
權--長イ期間ノ失權、權利ノ失ヒデアリ
やく、買收ヲシタ場合ニハ無暗ニ罪ヲ重ク
シテ牢ヘ打込ンデ、是デ私ハ選擧界ハ廓〓
シ得ナイト思ヒマス、能ク世間デハ嚴罰ニ
處スル、重イ罪サヘ科セバ人ガ恐レル斯
ウ思ウテ居リマスガ、サウデハナイ、罪ト
云フモノハ重ケレバ重イ程、功ヲ奏スルモ
ノデハナイ、サウデナクシテ選擧ノ當時買
收ヲ爲シ、又ハ買收ニ應ズル人ハ自分ノ選
擧權ヲ行使スルコトヲ知ラナイ人デアル、
サウ云フ人ニハ選擧權ヲ持タス必要ハナイ
ト云フノデ、外國ノ立法例ヲ見レバ白耳義
デハ二十年間ノ失權、佛蘭西デハ十五年間
ノ失權ヲ命ジテ居リマス、ドウ云フ譯カ日
本ノ法律デハタッタ五年ニナッタ、ソレヲ私
ハ十五年位ニ延ス方ガ宜イト存ジマス、無
暗ニ罰金ヲ科シタリ、或ハ禁錮刑ヲ科スル
ヨリモ、買收ニ應ズル者、買收ヲ爲シタ者
ハ、十五年間選擧界ヨリシテ退ク、又モウ
一ツデス、若シ候補者ニシテ買收ヲシタト
キハ不正ノ勢力ヲ其選擧區ヘ注込ンデ居
ルノデアリマスカラ、同一選擧區デハ最早
一生涯候補ニハ立テナイ、若シ選擧區ヲ變
ヘレバ七年後ニハ候補ニ立ツコトヲ許ス、
斯ウ云フ風ナ仕組デ罰金ノ重イコト、體刑
ノ重イコトニ依ラズシテ、選擧權ヲ長ク停
止スルト云フ合目的ノ方法ニ依ッテ選擧界
ヲ革正シヨウト云フノガ、是ガ第二點デゴ
ザイマス
第三點ハ世間デ連座法ト稱スルモノデ、
我國ノ選舉違反、殊ニ買收ヲ見マスルト
大抵ハ一地方全體ガ買收サレル、一ツノ字、
一ツノ大字、之ヲ買收スルノデアリマスル
カラ、若シモ一ツノ地區ニ於テ半分以上ノ
者ガ買收サレテ居ルト云フ證據ガアル、共
村全部ハ一定ノ期間選擧權ヲ行使スルコト
ガ出來ナイ、斯ウ云フ法ヲ立テル方ガ宜カ
ラウ、ソレヲヤリマスルト村ノ內ノ有志ハ、
是デハイケナイト云フノデ、期セズシテ自ラ
其村內ニ革新運動ガ起ルト云フコトニナリ
マスカラ、此方法ヲ矢張採用致シテ居ルノ
デアリマス、之ガ第三點
第四ハ一方ニ於テ成ベク投票ヲ容易ニ
スト、今迄ノ經驗ヲ見ルト、一村一箇所ノ
投票場デ、場合ニ依ッテハ山ヲ越ヱ河ヲ越ヱ
テ來ナケレバナラヌ、冬ナラバ雪ガ降ッテ
居ル、ソレヲ來ナケレバナラヌノデアルカ
ラ一日ノ生業ヲ休ムコトハ堪ラレナイ、
何カ日當デモ吳レヽバ投票ヲシヨウト云フ
心ガ多分ニ選擧界ニ動イテ居リマスルガ、
投票場ハ大キナ村ニ一箇所ニシナケレバナ
ラヌコトハナイ、各大字ニ之ヲ作ッテモ出來
ルノデアリマスカラシテ、極メテ容易ナ
コトデアル、各大字ニ投票場ヲ設ケ、又投
票スル日ハ勞働ノ日デナクテモ宜シイ、或
ハ日曜デモ、其他國民ノ慣習ニ依ル休日ニ
之ヲ設ケテ、投票ヲスルガ爲ニ生業ヲ休マ
ナケレバナラヌト云フ不便ヲ除キタイ、之
ガ第四點デアリマス
マダ其外ニモ附帶ノ事ガ規定シテアリマ
スガ、此私ノ作リマシタ法案ハ選擧ノ公營、
ソレカラ違反者ニ對シテハ長イ間ノ失權、
ソレカラ連座法及投票ヲ容易ニスル先ヅ
此方法ヲ急速ニ採用致シマシテ、選擧界ノ
革正ヲ圖ラウ、今時代ガ之ヲ必要ト致シテ
居リマスノミナラズ、兩大政黨ガ協力ヲシ
テ、國政ノ改革ヲヤラウト云フ決心ヲナサ
イマシタ今ノ時ニ於テ、御審議ヲ願フコト
ハ、洵ニ適切デハアルマイカ、吾々ハ別ニ官
吏ノ身分保障ト云フ提案ヲ致シテ居リマ
ス、選擧法ダケヲ改正致シマシテモ、日本
ノ行政組織ガ今ノ儘デ、行政官吏ガ身分ノ
保障ガアリマセヌト云フト、矢張上ニ迎合
致シマシテ、選擧干捗ガ行ハレル、此選擧
法ノ改正ト、行政官吏ノ身分保障及秋田議
長ノ御提案ニナッタ議會ノ淨化ト、諸君ノ熱
心ニ唱道セラルヽ所ノ農村救濟ノ政策、之
ヲ併セ實行致シマシテ、我國ノ不安ヲ除キ
タイ、斯ウ云フ精神カラ提案致シタノデア
リマス、何卒御贊成ヲ賜リタク存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=25
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026・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ニ付テハ、別ニ質
疑ノ通〓モアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=26
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027・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=27
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028・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=28
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029・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=29
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030・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第二十七、松
岡俊三君外五十六名提出、雪國日本ノ根本
對策ニ關スル建議案ヲ繰上ゲ上程シ、其審
議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=30
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031・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=31
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032・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-日程
第二十七、雪國日本ノ根本對策ニ關スル建
議案ヲ議題ト致シマス、提出者ノ趣旨辯明
ヲ許シマス-提出者松岡俊三君
第二十七雪國日本ノ根本對策ニ關スル
建議案(松岡俊三君外五十六名提出)
雪國日本ノ根本對策ニ關スル建議案
雪國日本ノ根本對策ニ關スル建議
政府ハ周期的凶作ニ遭フ雪國日本人ノ生
活現狀ニ鑑ミ直ニ根本的對策ヲ樹ツヘシ
右建議ス
〔松岡俊三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=32
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033・松岡俊三
○松岡俊三君 諸君、私ハ只今議題ニナリ
マシタ雪國日本ノ根本對策ニ關スル建議案
ニ付テ、提出ノ趣旨ヲ申上ゲマス、申上ゲ
ルニ先ツテ雪國千五百万人ガ如何ニ血ト
淚ニ依シテ、此案ヲ支持シテ居ルカト云フコ
トヲ申上ゲネバナラヌノデアリマス
只今私ノ手許ニハ北海道、東北六縣、北
陸四縣、竝長野縣、一道十一縣、千五百市
町村カラ提出シテ居リマス所ノ請願書ハ、
三十五万人ノ調印ヲ持テテルルノデアリマ
ス、會期短イガ爲ニ、是ハ來ルベて通常議
會ニ提出スルコトニナッテ居ルノデフリマ
スガ、我ガ日本ニ於ケル雪害問題ハ、文獻
ニ之ヲ散見スルコトハナイノデアル、未ダ
曾テ我ガ日本ニ雪ヲ政治的ニ解決セントス
ルト云フコトハ曾テナカッタノデアリマ
ス、初メテ昭和元年十二月ノ四日、之ヲ念
願シテ今日迄足掛七年、專心之ヲ努メタル
モノデアリマシテ、只今カラ申上ゲルノハ
悉ク體驗ニ出發シタルモノ、及內閣ノ統計
ニ據ッタルモノ、其他確實ナルモノノミヲ根
據トシタルモノデアッテ、一ツモ獨斷ガア
リマセヌカラシテ、此點ヲ豫メ御諒承ヲ
願ヒタイト思ヒマス、又本案ヲ提出シタ
ノハ政友會幹部諸公ガ建議案ナルニモ拘
ラズ、全部提出者ニナラレタコトデアリマ
ス、政友會ノ會テノ例トシテ、幹部全部ガ
提出者トナッテ建議案ヲ提出シタルコトハ、
私十數年ノ政治生活ニ於テ之ヲ見タコトノ
ナイ程ニ、重大ニ取扱ッテ下サレタコトヲ、
私ハ千五百万人ノ雪國ノ人々ヲ代表シテ、
謹ンデ政友會ノ幹部諸君ニ御禮ヲ申上ゲル
次第デアリマス民政黨ノ各位ニ於テモ亦
同樣デアリマセウ
諸君、私ハ先ヅ第一ニ申上ゲネバナラヌ
コトハ、雪國ノ人ガ如何ニ生活ニ苦ンデ居ル
カト云フコトデアリマス、卽チ雪國ノ全體
カラシテ同ジヤウナモノヲ七十九戶ダケヲ
選ンデ、其生活狀態ヲ調ベタノデアリマス
〔閑院宮春仁王殿下御退場アラセラレタ
ルニ付議長及總員起立敬禮〕
卽チ東北十二軒、關東十四軒、北陸六軒、中
部ガ十一軒、近畿ガ十軒、中國ガ五軒、四國
ガ八軒、九州十三軒、卽チ全國ニ涉ッテ殆ド男
ガ四人、女ガ五人、田ガ一町八段八畝、畠
ガ三段八畝、是ダケ持ッテ居ル所ノ自作農ガ
ドウ云フ生活ノ狀況ニアルカト云フコトヲ
平均シテ見マスルト云フト、先ヅ全國平均
ニ於テハ二千六百二十四圓六十六錢ノ收入
ヲ得テ居ルノデアリマス而シテ掛リ方ハ
二千五百二十七圓四十八錢、隨テ差引九十
七圓十八錢ダケハ郵便貯金ガ出來ルヤウニ
昭和四年ニ於テハナッテ居ルノデアリマス、
然ルニ雪國ノ方ハ收入ニ於テハ八十九圓十
二錢ダケ少クッテ、二千五百三十五圓五十四
錢ニナッテ居ル、然ルニ拘ラズドレダケ掛ル
カト申シマスルト云フト、二千六百七十六
圓九十九錢、卽チ百四十九圓五十一錢ダケ
多ク掛ルノデアリマス、取ル方ガ少クシテ
掛ル方ガ多イノデアリマスルカラシテ遂
ニ赤字ガ出テ一箇年ニ百四十一圓四十五錢
ダケノ收入不足ガ出來ルノデアリマス斯
ノ如ク赤字ガ出ル結果ハドウ云フ結果ニ
ナッテ居ルカト云フト警視廳管內ノ娼妓ノ
數ヲ調ベテ見マスルト、一番能ク分ル全
國カラシテ六千四百有餘人ノ者ガ警視廳管
內ノ娼妓トナッテ居リマスルガ、其內ノ五割
二分ダケハ情ケナイコトデハアリマスルガ、
殘念ナコトデハアリマスルガ、皆是レ悉ク
雪ノ方カラ出テ居ル所ノ娼妓デアリマス、
而シテ此內容ヲ調ベテ見マスルト云フト、
住居費ノ爲ニハ全國平均ハ四十一圓六十一
錢デアル、然ルニ雪國ノ方ハ七十圓九十錢
掛ッテ居ル二十九圓二十九錢ダケ多イ、食物
ノ方ハ全國平均デハ四百九十六圓五十七
錢掛ッテ居ル、然ルニ雪國ノ方ハ六百三十一
圓五十三錢、卽チ百三十五圓ダケ多ク掛ッテ
居ル、著物ハ申上ゲル迄モアリマセヌ、本
年四月八日ハ少ナカッタケレドモガ、昨年ノ
四月八日ノ如キハ最モ吹雪ガアッテ小學校
ニ生徒ガ通フコトガ出來ナイ有樣デアリマ
ス、斯樣ナ狀態デアリマスカラシテ、全國
平均デハ百二十二圓七十五錢掛ヲテ居ル
ノニ對シテ、雪國ノ方ハ百九十一圓三十四
錢掛ッテ居ッテ差引六十八圓五十九錢多ク
掛ル、諸君、雪ノ爲ニ衣〓住ニ於テ斯ノ如
ク多ク掛ルノデス、故ニ其合計ノ衣食住、
生活スル爲ノミニ掛ル所ノ全國平均ノ金ハ
七百六十四圓九十七錢デアッテ、雪國ノ方デ
ハ之ニ反シテ千十九圓十錢、實ニ二割五分
ノ二百五十四圓ダケ多ク掛ルノデアリマ
ス、斯ノ如ク生活スル爲ノミニ二割五分モ
多ク掛ルノデスカラシテ、何處カデ儉約セ
ナケレバナラヌ、其儉約ハ人間トシテノ向
上ヲ圖ル爲ノ〓育ノ資金其他ノモノヲ皆儉
約シナケレバナラヌノデアリマス、第一ニ
〓育費ニ於テ全國平均シテ五十二圓五十四
錢掛ケテ居ルニモ拘ラズ、雪國ノ岩手縣デ
ハ八圓三十四錢シカ掛ケルコトガ出來ナイ
ノデアリマス、卽チ四十四圓二十錢少ク掛
ケル結果トシテ、殘念ナガラ餘リニ吾々ノ
方カラ優秀ナ人物ガ現ハレナイノハ仕方ガ
ナイノデアリマス、然ラバ衞生ハドウカ、
衞生費ハ全國平均デハ六十二圓六十二錢
掛ッテ居ルノデアリマスガ、雪國ノ方ハ二十
八圓八十七錢シカ掛ケルコトガ出來ナイ、
斯ノ如ク二十三圓七十五錢少ク掛ッテ居ル
結果トシテ、十年間ノ死亡ノ統計率ヲ調べ
テ見マスト、靑森縣ハ二十一人七分デ、十
年間平均ニ於テ一番赤ン坊ノ死ヌノハ靑森
縣デアル、二番ガ大阪デー一十一人、三番ガ石
川縣デ、四番ガ秋田縣、五番ガ富山縣、六
番ガ福井縣、七番ガ山形縣、斯ノ如ク皆雪
國ノ子供ハベタリ〓〓ト死ヌノデアリマ
ス、之ニ反シテ鹿兒島、宮崎、熊本等ハ皆
悉ク多ク死ナナイ、鹿兒島縣十五人五分、
宮崎縣十一人五分、熊本縣十一人一分ト云
フ工合ニ、半數以下モ死ナナイト云フノハ
何ニ原因シテ居ルカ、是ハ卽チ衞生費ガ片
方ハ六十六圓六十二錢掛テ居ルニ拘ラズ、
二十八圓八十七錢掛ケナケレバナラヌ程、
ソレ程儉約スル結果デアルト云フコトハ、
數字ガ之ヲ物語ッテ明デアルト思フノデア
リマス、然ルニモ拘ラズ、交際費ガ全國平
均百一圓十錢掛ッテ居ル、然ルニ雪國ハ二百
十三圓二十七錢掛ッテ居ル、倍以上掛シテ居
ルノハ何ノ爲デアルカ、卽チ雪國方面ハ一
箇年中ニ百五十五日ハ雪ノ中ニ入レラレテ
居ルノデアリマス、十月ノ下旬カラシテ四
月ノ上句迄ノベツ幕ナシニ降ル所ノ雪ハ二
米乃至六米、七米ニ及ンデ居ルノデアリマ
ス、斯ノ如クニ雪ガ澤山降ノテ居リマスルガ
故ニ、一寸隣リニ行ッタ所デ直グニ歸ルコト
ガ出來ナイヤウナ結果ニナル、斯ウ云フ時
ニハ皆出シ合ヒシテ御互ニ飮ム、飮ム結果
ガ卽チ今ノヤウナ交際費ニナッテ、片方ハ全
國半均デハ百圓十錢モ掛ラナイニモ拘ラ
ズ二百十三圓二十三錢モ使ハナケレバナ
ラヌト云フコトハ是ハ悉ク雪ノ爲ニ閉サ
レテ居ルカラ、働カントシテ働キ得ザル所
ノ結果デアルト私ハ申上ゲテ宜カラウト思
フノデアリマス、諸君、斯樣ナ工合ニ全國
平均シテ見マスト、向上ノ生活費ガ五百二
十六圓八十一錢掛ケテ居ルニモ拘ラズ、雪
國ノ方ハ四百七圓九十六錢シカ掛ケルコト
ハ出來ナイノデアリマス、人間ノ向上ノ爲
ニ使ハナケレバナラヌ所ノ金ヲ使ヒ得ルコ
トガ出來ナクシテ、生活費ノ爲ノミニ多ク
掛ケルト云フヤウナコトハ深ク諸君ノ御
諒察ヲ願ハンケレバナラヌコトデアラウト
思フノデアリマス、諸君、斯ノ如クアルニ
モ拘ラズ、然ラバ我ガ日本ノ法律ニ此雪害
ト云フモノハ如何ナル工合ニ現ハレテ居ル
デアリマセウカ、初メテ昭和四年二月ノ二
十一日、帝國議會ニ雪害ノ問題ガ現ハレタ
ノデアリマス、而シテ昭和五年ノ五月ノ一
日ニ其當時ノ文部大臣田中隆三君ガ衆議
院ノ委員會ニ於テ如何ナル答辯ヲセラレタ
デアリマセウカ、私ハ此答辯ヲ讀上ゲル
コトヲ御許シヲ願ヒタイト思フノデア
リマス、藤井達也君ノ質問ニ對シテ田中
國務大臣ハ「ソレハ先程御答致シマシタ
通リニ、最初ハ法令ヲ廣ク解釋シテ入
レラレヌコトデハナカッタノデアリマス
ケレドモ實際從來ノ取扱デハソレガ
這入ッテ居ラナカッタサウデアリマシテ
甚ダ手落ト思ヒマス」雪害ヲ手落チデアル
ト云フコトヲ文部大臣ガ帝國議會ノ壇上ニ
於テ陳辯セラレタト云フコト、赤裸々ニ申
サレタト云フコトハ私ハ實ニ嬉シク感ズ
ル者デアリマス、卽チ義務〓育費國庫負擔
法中ニハ、勅令施行ノ爲ニ勅令ガ出テ居ル、
其勅令ノ中ニ地震火事ノ害、風ノ害、水ノ
害、旱魃ノ害、霜ノ害ハ是ハ全國ノ義務
〓育費國庫負擔金ノ八千五百万圓ノ中、
割ダケハ二重分配ヲスル有力ナ理由トシテ
居ルノデアリマス、地震火事ノ害、風ノ害
早魃ノ害、水ノ害、霜ノ害ハアル何ガ故
ニ地震火事ノ害、風ノ害、水ノ害、早魃ノ
害、霜ノ害ヲ災害ト見テ之ヲ分配スルモノ
ノ中ニ入レテ置イテ、單リ雪害ヲ除イテ居
ルトハ何事デアルカト云フコトガ是ガ質
問ノ理由デアリマス、之ニ對シテ田中隆三
君ガ、斯ノ如ク陳辯セラレテ居リマスケレ
ドモ、其後甚ダ殘念ナガラ未ダ文部省ノ勅
令ノ改正ノ手續迄ニハ行テ居ラヌノデア
リマス、斯クノ如ク政治ノ甚シイ手落デアル、
苟モ國務大臣トシテ議政壇上ニ於テ甚シイ
手落デアルト云フコトマデモ申サレタト云フ
コトデアッタナラバ、直チニ是ガ勅令ノ改正
ニ手ヲ著ケラレルノガ當然ノコトヽ思フノ
デアリマス、然ルニ昨年三月三日ノ貴族院
ニハ餘リニ文部大臣ガ本問題ニ付テ責任
ヲ明ニシテ居リマセヌ爲ニ、請願ガ靑森縣
松岡後援會ヲ母體トシテ、一道十一縣カラ
約三万ノ請願ガ出タノデアリマス此雪害
ヲ入レルト云フコトノ勅令ヲ早ク改正シ
テ貰ヒタイト云フコトヲ言ウタニ對シテ、
貴族院デハ請願委員會ガ二時間半、一ツノ
問題ニ貴族院ノ請願委員會ガ二時間半モ
ブッ續ケテ論議シタト云フヤウナコトハ貴
族院始ヲテ以來ノコトデアリマス、斯樣ナ結
果遂ニ文部省ガ之ニ同意ヲシテ、勅令ヲ改
正シヨウト云フコトニナ〃テ居リマスルガ、
未ダ其程度ニ達シテ居ラヌノデアリマス、
斯樣ナ工合ニ實ニ此雪害ト云フモノハ一ツ
モ問題ニセラレテ居ラヌ、然ルニモ拘ラズ昨
年十一月靑森縣及北海道其他岩手秋田、
山形ニモアリマスルガ、凶作ガ一度起リマ
スト云フト、直チニ世ノ中ガ擧〓テ義捐金ノ
募集ト云フヤウナコトニナッタノデアリマ
ス
諸君、全體雪國方面デ凶作ガドノ位アリ
マスカト言ヒマスト云フト、記錄ノハッキリ
シタモノハアリマセヌカラシテ、明治維新
以後ノコトヲ申上ゲマスルト、明治二年ニ
東北ニ凶作ガアル、明治三十五年ニ東北ニ
凶作ガアル、三十八年ニモ亦東北ニアル、
明治三十五年ノハ東北及北陸デアリマス、
明治三十八年ハ東北デアリマス、大正二年
ニ亦東北デアリマス、サウシテ昨年昭和六
年ニ東北ニアリマス、我ガ日本帝國ニ於テ
明治維新後ニ凶作ト云フ文字ガ實際ニ現ハ
レタノハ何處デアルカ、我ガ日本中ニ凶作
ノ文字ハアリマスケレドモ、東北、北陸ヲ
除イタナラバ、未ダ我ガ日本ニハ凶作ノ實
質ガナイノデアリマス斯ノ如ク明治二年
明治三十五年、三十八年、大正二年、昭和
六年、斯ノ如ク連續的ニ周期的ニ現ハレル
凶作ハ抑、何ニ原因スルデアリマセウカ、
私ハ建白書ヲ後程議長ノ御許ヲ得テ速記錄
ニ載セテ戴キタイト思ヒマスルガ、其建白
書ノ中ニ斯樣ニ書イテ居リマス、「卽チ雪國
民人ノ〓育費ハ漸減シ、衞生費ハ極度ニ節
約サレ、爲ニ人材ハ虚器ヲ擁シテ空シク埋
レ、反對ニ乳幼兒成人共ニ死亡ノ高率ヲ示
シ、眼病、盲人ハ驚クベキ多數ニ達シ、其
生命ヲ繋グニノミ汲々平トシ、人生ノ向上
ニ奮闘スル能ハズシテ、唯死所ヲ急グニ似
タリ」悲シイコトデアリマスガ、私ハ實感
カラ言フト是ヨリ外ニハアリマセヌ、生ヲ
同一國內ニ亨ケ、雪國人タルガ故ニ斯ノ如
クナラナケレバナラヌノデアル、大正二年
東北六縣ニ凶作ガ襲〓テ、飢餓畜類ニ及ンデ
居ルト云フ工合ニナッテ居ル左樣ナ工合ニ
凶作ガ明治維新後全國中ニ唯東北、北陸ニ
ノミアル時ニ於テ、是ガ根本對策ト云フモ
ノハ一度モ考ヘラレテ居ラヌノデアリマス
私ノ見ル所ニ於テハ凡ソ政治ト云フモノハ
眞ニ淚アリ情アルモノデナケレバナラヌト
思フノデアリマス、災害ノ出ナイヤウニス
ルノガ政治デアル、凶作ノナイヤウニ、先
ニ方法ヲ講ズルコトガ政治ノ妙諦デアルト
思フノデアル、出來タ後ニ於テ之ニ施スト
云フヤウナコトハ是ハ萬已ムヲ得ナイ出
來事デアラウト思フノデアリマス、本當ニ
凶作ノ因ヲテ來ル原因、遙カノ原因ハ何處ニ
アルカ、如何ニ凶作ガ來ルト雖モ、十分ナ
ル貯ヘガアタナラバ、決シテ一遍位ノ凶作
ニ依フテ東北人ガ憐ミヲ天下ニ愬ヘルヤウ
ナコトハナイノデアリマス、貯蓄ナク、貯
ヘガナイカラシテ遂ニ此樣ニナルノデア
ル、卽チ年々歲々雪ノ爲ニドノ位ノ被害ヲ
受ケルカト言ヒマスト、生產額ヲ調べマス
ルト能ク分ル、靑森縣ハ一箇年ノ生產額ガ
一人當リ百二十圓デ、全國一番ニ働カナイ
ノデアリマス、働カナイノデハナイ、働カ
ントシテ働クコトガ出來ナイ、百五十五日
ノ間雪ノ中ニ埋レテ居ルノデアリマス、山
形縣ハ二番目デ百三十圓デアリマス、三番
目ガ宮城縣デ百三十四圓、福島縣ハ百四十
圓岩手縣ガ百四十一圓ト云フ工合ニ全
國ニ於テ一人當リノ生產額ヲ調ベテ見マス
ルト、實ニ低イノデアリマス、凡ソ稅金ヲ
課ケルニ付テハ所得稅ニ於テモ其他ノモ
ノニ於テモ、ハッキリシテ居ルガ如クニ、懷
ニ金ノ這入ッタ工合ニ依クテ、之ニ對スル課
稅ヲスルノハ當然デアリマス、然ルニ此生
產額ハ斯ノ如ク少イノニモ拘ラズ、ドレ程
マデニ稅金ガ課セラレテ居ルカト申シマス
ト靑森縣ハ國稅、縣稅、町村稅ヲ合體シ
テ十六圓三十一錢ニナッテ居ル山形縣ハ十
九圓三十一錢課ヲテ居ルノデアリマス、金ノ
高ニシマシタナラバ十三圓六十一錢、或ハ
十九圓三十一錢、洵ニ少イノデアリマス、
大阪府民ノ如キハ稅金ニシマスト三十七圓
五錢課ッテ居ルノデアリマス、金高ニ於ハ
倍以上ノ負擔デアリマスケレドモ併ナガ
ラ生產額ハ何ボカト申シマスト、昭和四年
ノ調査ニ於テハ四百八十四圓アル、大阪府
民ハ四百八十四圓ノ生產額ニ對シテ、三十
七圓五錢デアリマスカラ割合ハ僅ニ七分
七厘デアリマス、靑森縣ハ百二十圓ニ對シ
テ十六圓三十一錢、一割三分五厘山形
縣ハ百三十圓ニ對スル所ノ稅金ハ十九圓七
十六錢デアッテ、其割合ハ一割五分、日本
ニ於テ最高ノ稅金ハ東京府民ガ一割六分デ
千三、第二番目ハ山形縣ノ一割五分、三番
目ガ古森縣デ一割三分五厘、日本中デ
番安イ稅金ハ和歌山縣デアッテ、生產額ハ
二百七十七圓、稅金ハ十七圓五十九錢
デアリマスカラ、此割合ハ六分三厘デ
アリマス、同ジ日本ニ住ンデ居ナガラ一方
ハ一割五分ノ稅金、一割三分五厘ノ稅金、
而シテ一方ハ六分三厘或ハ七分七厘ノ稅金
ヲ以テ滿足シテ居ル、然ラバ其縣內ノ施設
ハ和歌山縣ハ稅金ガ安イカラ何等ノ施設ガ
ナイカト云フト、道路ハ坦々トシテ其家ハ
白壁デアリ、而シテ瓦屋根デアル、東北ノ
方面ハ是ト異〓テ稅金ハ高イ、生產額ハ少
イ、而シテ其家ハドウカト云フト實ニ詰ラ
ナイボロ家デ、唯徒ニ大キイノデアル何
ガ故ニ大キイカト云フト、收獲時ニナッテ悉
ク野外ニ何モ置クコトハ出來ナイカラ此
家ノ中ニ入レナケレバナラヌ、家ノ中ニ入
レナケレバナラヌカラ、大キクシナケレバ
ナラヌ、大キクスルニ付テハ、雪一丈五尺
モ降ノテ潰レルカラ、ドウシテモ太イ材木ヲ
使ハナケレバナラヌ、建設費ニ金ガ掛ル、
維持費ニ金ガ掛ル、而シテ稅金--尾尾稅
ガ多クナッテ來ルノデアリマス、炭ハ澤山焚
カナケレバナラヌ、實ニ慘澹タル狀況ニア
ルコトヲ、苟モ政府ノ存在ガアッタナラバ、內
務省ガアリ、或ハ地方局ガアッタナラバ、此
地方局ナルモノハ全國ヲ通覽シテ、何ガ故
ニ山形縣、靑森縣等ガ斯ノ如ク稅金ガ高ク、
斯ノ如ク生產額ガ少ク、和歌山縣或ハ其他
ノ方面ハ何ガ故ニ左程稅金ガ安クシテ、生
產額ガ多イカト云フコトヲ、政府タルモノ
ハ之ヲ監督スルノガ當然デアラウト思フ
(拍手)之ヲ本當ニ監督シタナラバ、初メテ
是ハ一箇年ニ雪ガ百五十五日モ降ノテ居ル
ト云フコトガ明確ニナルノデアル、生活費
ガ斯ノ如ク高クナルト云フコトモ分ルノノ
アル、働カントシテ働クコトノ出來ナイ狀
況モ分ルノデアル、是ハ卽チ人情ヲ持チ、
親切ヲ持チ、親ノ心ニナッテ國民ヲ見ルノガ
本當ノ政治デアルト私ハ思フノデアル(拍
手)
斯樣ナ工合ニシテ、内務省ノ此地方局ガ、
若シ本當ニ監督權ヲ行使シテ調査シタナラ
バ總テガ分ルノデアル、靑森縣ハ一冬ニ
オ天氣ハ何日アルカト云フト、タッタ十日シ
カナイ、サウシテ雪ハ何日降ルカト云フト、
百九日間降ルノデアル、山形縣ハ一冬ニ二
十二日シカオ天氣ガナクテ、九十六日雪ガ
降ルノデアリマス、和歌山縣ハ之ニ反シテ、
オ天氣ハ三十五日、雪ハ七囘シカ降ラナイ
ノニ、其七囘タルヤ、サラリト降ルノデアッ
テ、北ノ方ノ雪ノ降ルノハ三日四日、乃
至五日モ降リ續キニ降ルト云フコトハ一
度雪國ノ人デアッタナラバ、私ノ演說ガ本當
ニ誤ナイコトガハッキリスルダラウト思フ
ノデアリマス(拍手)斯ノ如クニオ天氣ガ少
ナク雪ガ多イ、故ニ生產額ガ少イ、而シテ
此雪解ケ、或ハ崩雪、斯ウ云フヤウナモノ
ノ爲ニ出ル所ノ損害ト云フモノハ頗ル多イ
カラ、隨テ稅金ガ自ラ高クナルト云フノ
ハ當リ前デアリマス、此當リ前デアルニモ
拘ラズ、普通ノ水害ヤ、其他震火災、風ノ
害デモ、早害デモ、霜ノ害マデモ災害トシ
テ居ルニ拘ラズ、雪ノ害ダケハ問題ニシテ
居リマセヌカラ、是ニ於テ卽チ吾々ハ斷然
トシテ雪ノ害ト云フモノヲ政治ノ中ニ反映
セシメナケレバナラヌ、千五百万人ノ雪國
ノ人々ハ、日本ノ今日ハ全國ノ農民ガ苦ンデ
居リマスケレドモ、其苦ンデ居ル上ニ「ハン
デキヤップ」ヲ持テ居ルノデアル澤庵ノ
石一ツガ二ツニナッテ居ルノニハ、是ハ政治
ト云フモノヲ考ヘナケレバナラヌ(拍手)斯
ノ如キコトガ政治ノ上ニ現レナケレバナラ
ヌニ拘ラズ、我ガ日本ノ政治ハ、明治維新
ニハ英吉利ヤ獨逸眞似ヲシタ、猿ノ物眞
似ヲシタ所ノ外國ノ模倣政治デアル、英吉
利ノ如キ、「イングランド」、「スコットラン
ド」、「アイルランド」ノ小ジンマリトシタ
國テ、我國ノヤウニヒヨロ長イ國デハナイ
カラ、自ラ北ト南ノ間ニ雪ノ甚シイ等差ハ
ナイ、獨逸ハ歐羅巴ノ眞中ニ位シテ居ルカ
ラ、全國悉ク雪ガ降ルカラ、自ラ日本トハ
違フノデアル斯樣ナ明治維新當時ニ、德
川幕府ヲ倒シ、錦旗ニ味方シタ所ノ薩長土
肥ノ人々ガ、明治維新當時ノ政治ノ中樞ニ
加ッテヤッタ所ノ政治、雪國ノ方面ノ人々ハ
德川ニ味方シタ爲ニ、政治ノ中樞ニ加ハル
コトガ出來ナカッタ、其政治、雪ニ經驗ノナ
イ所ノ者ガ中樞トナッテ改メタル所ノ明治
離新ノ政治デアル所ヘ以テ行ッテ、英吉利ヤ
獨逸ノ模倣政治ヲ爲シタノデアルカラ恰
モ吾々ノ身體ニ三尺ノ童子ノ著物ヲ著セル
ト同ジカ、或ハ力士ノ著物ヲ著セルト同樣
ノ工合ニ實ニ詰ラナイモノニナルノハ當
然デアラウト思フ、然ラバ雪ハドノ程度ニ
アルカト申シマスト、我ガ日本ノ天文學ノ
泰斗、氣象臺ノ藤原咲平博士ノ言フ所ニ依
リマスト、鳥海山北西カラ彎曲ヲシテ、石
川縣金澤方面ニ至ル降雪ノ狀況ト云フモノ
ハ世界中デノ一番雪ノ降ル所デアルト云
フノデ、世界ノ天文學者ガ非常ナ興味ヲ以
テ此處ヲ〓究地域トシテ居ルト云フコト
ヲ明言シテ居ルノデアル、斯樣ナ工合ニ世
界中デ一番ニ降ル雪國、南北ニヒヨロ長ク、
東西ニ狹ク、環ラスニ海ヲ以テシ、日本海
ノ彼方ニハ寒イ西伯利ガアル、其氣流ノ關
係カラシテ、中央山脈ニ落下シタル雪ハ
世界一番ニ降ル雪ダト云フコトハ學者一
般ニ明ニナッテ居ルニ拘ラズ、日本ノ政治ニ
雪ノ問題ガ一ツモ出テ來ナイ所ヲ見ルト、
學者ハナイノデアルカ、行政家ハナイノデ
アルカ雪國ノ人ノ爲ニ淚ヲ以テ見ル所ノ
政治家ハナイノデアルカ、學者、學問ニ忠
實ニシテ、唯〓究ノミヲ事トシテ居ル、行
政官ハ成ベクムヅカシイコトハ後廻シニス
ル斯樣ナ工合ニ獨リ放り出サレタル所ノ
雪國ノ人々ハ愬ヘルニ愬ヘル途ガナイ、
初メテ昭和四年ノ二月二十一日、帝國議會
ニ此問題ガ現レマスルト云フト、此議會ニ
於テハ同情セラレタル決議ヲサレテ居ルノ
デアリマス私ガ本年一月元日、元老及總
理大臣、其他宮中ノ重要ナル人々ニ出シマ
シタ所ノ雪害建白書ノ中ニハ斯ウ書イテア
ル「噫々東北ノ雪國人之ヲ愬ヘザルノ罪カ、
愬ヘザルガ故ニ爲政者之ヲ放置シテ顧ミザ
ルハ當然ナルカ、吾人甚ダ惑ナキ能ハザル
也、天爲ハ人力ノ以テ如何トモ爲シ能ハザ
ルモノナリトセバ、政府ハ震火災、風水害、
早害、霜害ヲ災害ト認メテ、法令ニ保護、
補助ヲ規定シ、且ツ進ンデ防止ノ〓究ニ學
術ヲ應用スルハ自己矛盾ナリ、天ノ同一作
爲タル雪害ヲ災害規定ノ圈外ニ置キ、國家
ノ法律命令ニ寸毫微塵モ保護補助ヲ加味ス
ルナク、且ツ帝國議會ハ三度決議シタルモ
未ダ對應〓究ノ手ヲ染メズ」ト申シテアリ
マス、雪國千五百万人ノ血ヲ絞"テ愬ヘン
トスル所ノモノハ是デアリマス(拍手)
諸君、千五百万人ノ中、假ニ一戶五人ノ
家族トシテ一人宛、卽チ三百万人ヲシテ本
當ニ仕事ヲ爲サシメルヤウナ工合ニシタラ
ドウデアリマセウカ、一年ノ中ニ、雪ノ爲
ニ虐ゲラレテ、サウシテ働カントシテ働ク
コトガ出來ナイ、ノミナラズ其間ハ悉ク居
喰ヒスルノデアル、其間ニハ惡イモノガ來
ルノデアル、誘惑ガ來ルノデアル、或ハ喧
嘩ヲシ、或ハ博奕其他ノ爲ニ實ニ容易ナラ
ザル所ノ犯罪行爲ガ、社會上ノ問題トシテ
起ルノハ卽チ雪國ノ方デハ此期間デアル
又冬中ニ於テ、餘リニ火ヲ弄ンデ居ルノデ
ハナイケレドモ、火ニ馴レ切ッテ居ル爲ニ、
全國ノ火災ノ統計ヲ取テ見見ニニ大火事ハ
皆雪國ノ方ノ春先ニアルト云フコトハ我
ガ統計ニ依シテ明ニサレル所デアリマス、此
樣ナ工合ニナッテ居ル雪害ニ向ッテ、ドウシ
テ政治ト云フモノハ左樣ニ冷酷デアリマセ
ウカ、何ガ故ニ人情ガナイノデアリマセウ
カ、私ハ斯樣ナ場合ニ於テ、唯起リ來ッタ所
ノ一面ノ一時的ノ凶作ノミヲ捉ヘテ、或ハ
事業ヲ起サセルト云フヤウナコトノ、目睫
ノ問題ノミニ捉ハレテ、根本的、卽チ澤庵
石ガ二ツニナッテ居ルト云フ、其一ツノ石ヲ
除イテ吳レルヤウナ、根本的ノ對策ト云フ
モノガ眞ニ政治ラシイ政治デアル、人情
ノ上ニ出發シタル所ノ政治ラシイ政治デア
ルト私ハ思ヒマスルガ故ニ、之ヲ卽チ建議
案トシテ出シタル所以デアリマス
又是ニ於テ申上ゲンケレバナラヌコトハ、
全國ノ國有林ノ狀態デアリマス、ドノ位
ニ國有林ガアルカト申シマスルト、先ツ收入
カラシテ調ベレバ分ルノデアリマス、全國ノ國
有林ノ、農林省トシテノ收入ハ、昭和五年度
ニ於テハ三千二百五十五万四千九百四十八
圓ノ收入ガアリマス、全國ノ收入ハ是デアツ
テ、支出ハ二千三百五十六万七千四十圓デ
アル差引純益トスルモノハ八百九十八万
七千九百八圓アルノデアリマス、全國ノ國
有林ノ收入トシテ八百九十八万何千圓ト云
フ中カラシテ、ドノ方面ガ一番ノ益ヲ擧ゲ
テ居ルカト申シマスト云フト、卽チ靑森營
林局、秋田營林局デアリマス、秋田營林局
ノ純益金ハ四百六十四万二千九百十一圓デ
アリマシテ、全國ノ中ノ五割一分ニ當ッテ居
ル靑森營林局ノ純益ハ百四十六万七千八
百七十圓デアッテ、之ヲ全國ニシマスルト云
フト一割六分デアル、全國々有林ノ總收入
高ノ中ニ於テ、六割七分ダケハ卽チ雪ノ靑
森營林局及秋田營林局デアリマス、斯様ナ
工合ニ營林局ガ收入ヲ擧ゲテ居ルガ、其收
入ハ雪國方面ニ還元シテ居ルカト云フト、
是ガ日本全國ニバラ撒カレテ、獨リ雪國方
面ニ還元セラレルト云フコトニハナッテ居
ナイノデアリマス
諸君、斯樣ナ工合ニナッテ居ルノミナラ
ズ驚クベキコトハ犯罪事項デアリマス、
實ニ國有林アルガ爲ニ、犯罪ガ夥シイモノ
ニナッテ居ル、直グ裏山ニ國有林ガアル爲
ニ、盜伐ノ罪ヲ犯シテ、罪人ニナラヌケレ
バナラヌト云フヤウナコトニナッタ抑〓ノ
根本ノ原因ハ何處ニアルカト云フト、私ハ
明治維新ノ當時ヲ囘顧シナケレバナラヌノ
デアル、明治維新ノ當時ニ於テ、蒙昧ナル、
無智ナル、馬鹿ト言ッテハ殘念デアリマス
ルケレドモ、其當時怜悧デナカッタ所ノ東北
方面ノ人々ハ、國有林ノ解放當時ニ於テ、直
グ裏ニアル所ノ山ハ、假令政府ノ物ニナッテ
居ッテモ、自分等ノ山ダカラシテ、稅金ヲ納
メナイヤウニスルダケ得ダト言ッテ、皆書
出シタノガ卽チ今日ノ國有林ニナッテ居ル、
此山ハ俺ノ物ダ、吾々ノ部落有デアルト云
フコトヲ、一箇年ヲ限シテ之ヲ申出デヌケレ
バ駄目ナヤウニナッタノデアル、其當時ニ於
テ關西ノ人々ハ、皆悉ク立派ナ役人ガ居リ、
先輩ノ間ニ於テハ皆是等ノ事情ヲ知ッテ居
リマスルガ故ニ、一ツトシテ國有林ヲ持タナ
イヤウニセシメテ居ル、ソレガ證據ニハ圖
ヲ見マスルト能ク分リマスルガ、諸君ニ配。ツ
タ中ニハ是ハアリマセヌ、雪國方面ニノ
ミハ、全國ノ國有林ノ約四割カ五割アリマ
シテ、民有林ハ殆ドナイノデアリマス、然
ルニ拘ラズ東北、北陸及長野縣ノ一部ヲ除
イタル所ノ雪ノナイ南ノ方ニハ、國有林ナ
クシテ私有林バカリ多イノデアリマス、此
樣ナ工合ニナッタノハ、皆明治維新當時ニ、
先輩ニ其人ヲ得ナカッタ所ノ東北方面ト、先
輩其宜シキヲ得タ所ノ結果ガ茲ニ現レテ居
ルノデアル、此結界ガ現レタ所ヲ、唯一箇
年間之ヲ申出ナカッタナラバ無效ニ歸スル
ト云フヤウナ工合ニシタルノミナラズ今
日ニ於テ全國國有林ノ總收入高ガ六割七分
ニモナッテ居ルニモ拘ラズ、情ナイ維新當時
ノ失敗カラシテ、此樣ナ結果ニナッテ居ッテ、
而シテ六割七分ヲ國庫ニ於テ收入ヲ擧ゲサ
セテ居ル、其金ガ還元シナイノデアル、雪
國ノ方ニ還元シナイノデアル、斯樣ナコト
ハ斷ジテ政治トシテ許スベカラザルモノデ
アルト私ハ思フ(拍手)情ナイコトデアル
吾々ハ此國有林ヲ財源トスルナラバ、雪害
問題ノ解決ハ立ロニ出來マス、今日千五百
万人ノ雪國ノ人々、是ガ三百万戶トシテ三
百万人ノ人々ガ働カントシテ働クコトノ出
來ナイ雪中ノ間ヲ、セメテ仕事ヲ與ヘルヤウ
ナ政治ニシタナラバ、自分デ費スヤツヲ
費サナイデ懷ニ入ル、行キト歸リノ駄賃
ヲ取ルト云フ結果ニナルノデアリマス、
行キト歸リノ駄賃ヲ取ル所ノ其政策ハ、
雪害ヲ確認シテ、政治ノ上ニ雪害ヲ反映セ
シメタル政府ノ施設ガ出來サヘスレバ是
ガ出來ルノデアリマス、私ハ斯樣ニ思ヒマ
ス、ドウシテモ雪國ノ人々ニ對スル所ノ
根本對策ハ、日本トシテ考ヘラレンケレバ
ナラヌノデアリマス、明治維新當時ニ誤〓
タル模倣政治カラ脫却シテ本當ニ日本ハ
日本ラシイ、日本ノ土地ニ相應ハシイ、南
北ニヒヨロ長イ、而シテ東西ノ狭ク、海ヲ
環ラシテ居ル所ノ我ガ日本、而シテ寒イ
西伯利ニ對シテ居ル所ノ我ガ日本、而シ
テ世界一番ニ降ル雪ノ中ニアリマス所
ノ我ガ日本トシテハ皆同ジ型ニシテ
鉋ヲ掛ケテ、平ノ板ニサヘスレバソレデ宜
イナドト云フコトハ、是ハ政治ノ妙諦ヲ知ラ
ナイ、當リ前ノ木偶ノ坊ノヤル事ダト思
フ、本當ノ政治ト云フモノハ恰モ山道ヲ切
リ開クヤウナ工合ニ、高イ所ハ削リ、低イ
所ハ然ルベキヤウニシ、老若男女悉ク笑ヒ
ナガラ、ダラ〓〓ノ坂道ヲ登ッテ來テ、何時
坂道ヲ登ヲテ來タカト笑,テ頂上ニ登クテ見
テ、偖テト云フヤウナ快感ヲ感ズルヤウナ
政治コソ、本當ノ政治デアルト思フノデア
ル、卽チ平等ガ本當ノ平等デナイ、平等卽
差別、惡平等ト善平等ガアル、佛〓デ謂フ
所ノ善平等ト惡平等ガアル、平等卽差別、
差別卽平等、此間ヲ本當ニ行クノガ政治ノ
妙デアル、妙ト云フノハ型ニ嵌シタモノデナ
イ、生キモノヲ取扱フ所ノモノガ此眞ノ政
治ノ妙諦デアルコトヲ考ヘタナラバ、雪國
ノ人々ノ狀況ヲ本當ニ考ヘテ、雪ノ日本人
ニ對スル所ノ根本政策ヲ根本對策ヲ考ヘ
ルト云フコトハ本當ニ爲サンケレバナラ
ヌ所デアラウト思フノデアリマス(拍手)
諸君、餘リニ長クナリマスルガ故ニ、今
一言バカリ申サセテ戴キマス(「謹聽」)ソ
レハ何デアルカト申シマスルト一昨年
大變民政黨ノ事ヲ申上ゲマスヤウデア
リマスケレドモ、御許シヲ願ヒタイ、當時
町田君ガ農林大臣在職中ニ於テ、全國ニ副
業奬勵ノ金ヲ分配セラレタ、ドンナニ分配
セラレタカト言フト、福岡縣ニハ全國ノ中
三分七厘五毛ダケノ補助金ヲ出シテ居リマ
ス、サウシテ靑森縣、秋田縣、山形縣、新潟
縣ノ四縣ニハ一分五厘シカ補助金ガアリマ
セヌ雪ノ降ラナイ春夏秋冬其宜シキヲ得
テ工業ノ最モ盛ナル、二毛作、三毛作、而
シテ著物ハ樂ニ著テ居ル所ノ福岡縣ニハ三
分七厘五毛ノ補助金ヲ出シテ、一年中三分
ノ一乃至百五十日間モ雪ノ中ニ漬ケラレテ
居ル所ノ雪國日本人ニ對シテ、セメテモガ
博奕ヲ打タナイヤウニ、セメテモガ酒ヲ飮
マナイヤウニ、セメテモガ仕事ヲサセルヤ
ウニナサントスルナラバ何故福岡縣ニ三
分七厘五毛ノ副業奬勵ノ補助金ヲ出シテ置
イテ、サウシテ雪ノ日本方面ニハ僅ニ一分
五厘ノ補助金シカ出サナカッタデセウカ、農
林省ニ依テ之ヲ調ベテ見マスト、地震ノ
害、火事ノ害、水ノ害、早ノ害、霜ノ害マ
デハ日本ノ災害規程ノ中ニ入ッテ居ルケ
レドモ、此雪ノ害ダケハ何ニモナイト云フ
コトデアル、法律ニナイ、規定ニナイ、ソ
レダカラ何モスルコトガ出來ナイ、又雪ノ
國ノ國民ハ、仕事ヲヤラセテモ、一ツノ仕
事ニ四年掛ッテモ尙ホ出來上ラナイヤウナ
工合ニ、鈍重サ加減ガ甚シイ、然ルニ九州
方面ノ人々ハ一ツノ仕事ヲシテモ、東北
方面ノ三分ノ一位デ出來上ル、ソレダカラ
國家能力ノ上カラ、之ニ補助金ヲヤッテ仕
事ヲサセルト云フコトハ一應御尤ノコト
ト思ヒマス、尤ノコトヽハ思ヒマスケレドモ、
凡ソ尋常小學校ニ入學ノ者ト、中學校卒業
ノ者トハドノ程度ニ親ト云フモノハ見ル
コトガ本當デアリマセウカ、中學校ヲ卒業
シタモノニハ既ニ自活ノ道ヲ與ヘルヤウナ
工合ニ、然ルベク指導スルト云フコトハ
是ハ親タルモノヽ義務デアリ、又當然ノコ
トデアルト思フノデアル、未ダ尋常六年マ
デニ來ナイヤウナモノニハ卽チ義務〓育
デ國家ガ之ニ特別ナル〓育ヲ施スヤウナ工
合ニ、我ガ日本ノ產業其他ノ各般カラ〓究
サシテ行クテ、今日一人ノ生產額ガ靑森縣ガ
百二十圓デ、大阪ハ四百八十四圓、九州ノ
方ニ行キマシテモ、皆此率ヲ以テ行クノデ
アリマスカラ、卽チ斯ウ云フ方面ニ於テハ
旣ニ中學ヲ卒業シタモノデアリマスカラ、
或ル程度マデハ國家ニ於テ之ニ相當ニ自活
ノ道ヲ講ズルヤウナ工合ニ指導スルノガ當
リ前デアッテ、未ダ纎弱イ尋常小學在學中ノ
東北、北陸方面ハ須ラク抱ヘテ以テ難義ノ
道ノ渡ラサセテヤルヤウナ工合ニシテコ
リ、是ガ政治ノ本質デアルト思フノデアル
拍手之ヲ同一ニ扱シテ、皆鉋ヲ掛ケテ平ラナ
板ニスルト云フヤウナコトハ、行政官トシ
テハ仕事ハ仕易イダラウ、責任ハ免レルダ
ラウ、併ナガラ迷惑スルノハ眞ニ國民デア
ルト云フコトヲ申上ゲテ宜カラウト思フノ
ディト
斯ウ云フ點カラ考ヘテ、我ガ日本ニハ相
應シイ所ノ本當ノ政治ガナケレバナラヌノ
デアリマス、殊ニ昨年ノ三月改正セラレタ
ル所ノ地租法ヲ見テモ亦其通リデアリマス、
勸業銀行ノ調査ニ依リマスト云フト、東北、
北陸方面ハ周期的ニ凶作ガ起ルノデアリ
マスカラ、假令其田地ガ百圓ノ値打ガアル
トシテモ、一割ハ割引シテ金ヲ貸スト云フ
ヤウナ工合ニ勸業銀行ハシテ居ル、然ルニ
政府ノ賃貸價格ヲ計算シタ所ヲ見マスト云
フト、勸業銀行ノ貸ス所ノ金、卽チ百圓ハ
百圓ト見テ計算シテ居ルノデアル然ルニ
關西方面ハドウカト云フト勸業銀行デハ
百圓貸シテモ宜シイト云フニモ拘ラズ、政
府ノ賃貸價格ヲ調ベタ所ノ割合カラ見マ
スト云フト、約三十三圓位ニシカ出來テ
居ラヌノデアル、私ハ決シテ僻ミ根性ヲ以
テ言フノデハナイ、關西九州ノ人々ニ向ツ
テ、斯樣ナコトハ申シタクナイノデアリマ
スケレドモ、明治維新當時ニ定メタ所ノ地
租、其儘ヲ唯改正シタノミデアッテ、日本ノ
本當ノ狀況ヲ詳カニシテ、賃貸價格ヲ定メ
タモノヂヤナイカラシテ、斯樣ナ工合ニ勸
業銀行ノ調査ト、東北方面ノ賃貸價格ハ同
ジヤウナ工合ニナッテ居ルニモ拘ラス、雪ノ
降ラナイ方面ハ、約三分ノ一ノ賃貸價格ニ
ナッテ居ルノデアル、斯樣ナコトハ當然來ル
ベキ十年後ニ改正セラルベキ地租法ニハ
雪害ヲ最モ强ク考察シテ本當ニ考ヘテ行カ
ナケレバナラヌ根本對策デアルト思フノデ
アリマス、ソレ等ノモノハ皆悉ク諸君ノ御
手許ニ差上ゲテアリマス、又小作爭議ノ
狀況ヲ見テモ分リマス、小作爭議ハ一種ノ
流行病ノヤウニナッテ居リマシタ、九州カラ
或ハ中國ニ、而シテ中部ニ、段々ト東北ニ
來タト云フ風ニ言ッテ居リマスガ、一〓ニ斯
樣ナ工具ニ觀ルト云ヲコトハ宜シクナイト
思フノデアリマス、私ノ統計ニ依リマスト、
實ニ驚クベキ狀況ハ-少シ言葉ガ過激デ
アリマスケレドモ、昨年ノ秋田縣ニ於ケル
小作爭議ノ如キハ、實ニ驚クベキ暴行ニ訴
ヘテ居ルト云フ有樣デアリマス、此樣ナ工
合ニナッテ居ルノハ何デアルカ、卽チ明治維
新當時ニ定メラレタル所ノ制度其モノガ間
違ッテ居ル、根本ノ土臺デアルト同時ニ、政
府ノ方ニ於テハ一ツモ雪國ノ雪害ト云フモ
ノヲ考慮サレテ居ラナイノデアル、而シテ
生活ノ狀態ハ前申上ゲタヤウナ工合ニ苦シ
イ、故ニ小作人モ苦シイ、地主モ苦シイ
而シテ其共ニ苦シイノハ何處ニ原内スル
カ、是ハ震火ノ害、風水ノ害、早ノ害、霜
ノ害ダケヲ災害ニ入レテ、雪害ヲ入レナイ
一大政治ノ缺陷カラ、斯ノ如ク地主及小作
人ヲ困ラセテ居ル(拍手)此困ッテ居ル結果、
遂ニ訴ヘル所ガナイカラシテ、此樣ナ工合
ニナル而モ是ハ悉ク、冬ノ間ニ各方面ノ
思想誘惑家、或ハ大衆運動家ト稱スル所ノ
者ガ指導シテ、此弱點ニ乘ズルヤウナモノ
デアリマスガ、此地主モ困ッテ居ル、小作人モ
困シテ居ル、共ニ困ッテ居ル、其原因ハ遡ッテ
雪害ニアルト云フコトヲ考ヘ、明治維新當
時ノ建設ノ方法ガ誤ッタル結果デアルト云
フコトヲ考ヘタナラバ、此時此際ニ雪國日
本ニ對スル根本對策ヲ立テヽ吳レルト云フ
コトハ、將ニ政府ノ執ルベキ當然ノコトデ
アラウト私ハ思フノデアリマス(拍手)
諸君、私ハ最後ニ驚クベキ所ノ衞生上ノ
缺陷ヲ申上ゲタイノデアル、全國ニ於テ盲
人ガ一番多イノハ何處デアルカ、千四百何
十人ト云フノガ靑森縣デ、日本一ノ盲人ガ
多イノデアリマス、山形縣ハ七百七十四人
デ、日本デ二番目ニ盲目ガ多イノデアリマ
ス日本デ壯丁檢査、徵兵檢査ノ際ニ「トラ
ホーム」患者ガ一番多イノハ何處カト云フ
ト、是亦靑森縣デアリマス、日本デ一番盲
人ガ多イノハ「トラホーム」患者ガ多イノ
ハ而シテ娼妓ノ多イノハ斯樣ナ工合ニ
皆窮迫ノ狀況カラ來テ居ル、ナゼ此樣ニナフ
テ居ルカト申シマスト、雪ガ八尺乃至一丈
モ降。シテ居ルノデアリマスカラ、家ノ中ガマ
ルデ雪漬ケニナッテ居ル、寒イカラシテ火ヲ
燃シテ藁仕事ヲシテ居ル、睡クナルカラ擦
ル、卽チ汚レタル手ヲ以テ眼ヲ擦ル、外
行ケバ雪ノ反射ニ依ケテ又眼ガ活動スルカ
ラ擦ルト云フヤウナ次第デ、皆「トラホー
ム」患者ニナリ、而シテ盲人ガ多イヤウニナ
ルノデアリマス(拍手)全國ヲ調ベテ見マス
ト、醫者ガ幾ラ居ルカ、靑森縣ハ五方里平
均ニ對シテ僅ニ二人八分シカ御醫者ガ居ラ
ナイ愛知縣ハ五方里ニ對シテ二十八人一
分ノ御醫者サンガ居ル一方ハ二十八人一
分ノ御醫者樣ガ居ル、一方ハ僅ニ二人八分
ノ御醫者樣シカ居ラナイト云フノハ何ノ
結果デアルカ、儲カラナイカラ醫者ガ居ル
コトガ出來ナイト同時ニ、雪ノ降テ居ル所
ハ、御醫者樣ヲ迎ヒニ行ッテモ、來ル間ニ身
體ガヘト〓〓ニナルカラ、醫者ハ居ルコト
ガ出來ナイノデアリマス、斯樣ナ工合デア
ルカラ、初メニハ買ヒ藥、其次ニハ漸ク御醫
者樣、御醫者樣ニ行カウトスルト、自轉車
ガ利カナイ、迎ヒニ行ッテモ醫者ノ來ル時ハ
橇ニ乘ッテ二人挽キデ來ルカラ金ガ澤山掛
ル、收入ハ少イ、故ニ醫者ニ掛カルコトハ
出來ナイ、醫者ハ立行カナイカラシテ、靑
森縣ニハ五方里ニ二人八分シカ居ラナイ、
居ラナイカラシテ日本全國ニ於テ赤ン坊ガ
一等死ヌト云フ結果ニナルノデアル、此樣
ナ工合ニナッテ居ルニモ拘ラズ、内務省カラ
衞生費トシテ分配シテ居ルノハドウ分配シ
テ居ルカ、唯頭割リ頭割リデアル、ソコニ
一ツノ人情ガナイ、凡ソ吾々ノ身體ト雖モ、
頭ノ頂邊カラ爪先迄ベットリ藥ヲ塗ルノハ
是ハ藪醫者ノ仕事デアラウト思フ、診察ヲ
シテ、是ハ胃ガ惡イ、是ハ心臟ガ惡イト云
フノデ、局部ニ向シテ十分ナル力ヲ盡シテコ
ツ、本當ノ名醫デアリ、而シテ經濟的ノ方
法デアリ、人命救助ノ所以デアラウト思フ
ノデアル、然ルニモ拘ラズ我ガ日本ノ今日
迄ノ政治ハ、斯樣ナ診察ヲ爲サズシテ、唯
全體ニ鉋ヲ掛ケテ平ラニサヘナレバ宜シイ
ト云フ惡平等ノ政治思想ニ囚ハレテ居ルヤ
ウナコトハ吾々ハ斷ジテ執ルベカラザル
事デアルト思フノデアリマス(拍手)
諸君、斯樣ニ考ヘタナラバ、內務省タル
モノハ地方局タルモノハ衞生局タルモ
ノハ、本當ニ政治ノ實際ヲ知ッタナラバ玆
ニ著眼シ、斯樣ナ工合ニセンケレバナラヌ
ト云フコトハ、分リ切ッテ居ルコトデアルニ
モ拘ラズ、昭和四年二月二十一日初メテ
雪害調査機關設置ニ關スル建議案カ滿場一
致ヲ以テ通過シタルニモ拘ラズ其後杏ト
シテ之ニ對スル施設ヲ聞カナイト云フコト
ハ餘リニ雪國ノ人々ガ大人シイカラデア
リマセウカ、モット本當ニ眞劍ニ東京ニ押出
セト云フノナラバ此松岡ノ號令一ツデ直
チニ何十万人モガ來ルノデアリマス(拍手)
吾々ハ雪國ノ人々ヲ來ルナ〓〓、暫ク俺ヲ
信賴シテ決シテ來ルナト言ッテ、私獨リ陣頭
ニ立ッテ居ッタ、今日ハ東北北陸選出ノ同僚
諸君ガ眞ニ一緒ニナッテ、之ヲ支持シテ下サ
ルノデアリマス、此熱ガ、此眞劒サガ初メ
テ貫徹シマシテ、政友會ノ幹部諸公ガ全部
抗出者ニナッテ、此建議案ヲ出シテ下サタ
ト云フコトハ、至誠天ニ通ズト私ハ喜ンデ
居ルノデアリマス(拍手)諸君、私共ハ「デ
モ」ヲスル氣ナラバ直チニ「デモ」ヲスル、或ハ
其他ノ方法ヲ以テ宣傳スルナラバ幾ラデモ
方法ハアル、併ナガラ私共ハ眞劍ニ考ヘテ
居ル、私ノ手許ニ最初ニ於テ申上ゲタ通リ、
北海道、東北六縣、北陸四縣、及長野縣、
卽チ一道十一縣、千五百市町村ノ調印ヲ蒐
メタルモノ三十五万人、諸君、此三十五万
人ガ如何ニ苦ンデ居ルカト云フコトヲ考ヘ
テ戴キタイ、過ル日貴族院ニ於テ、或ル重
要ナル人ガ演說ヲセラレタヤウデアリマ
ス、或ハ補助金万政治ノ間違ノ本デアルト
カ、或ハ凶作ハ政黨ガ云々トカ云フヤウナ
コトヲ申サレタ貴族院ノ貴公子ガ、アルヤ
ウデアリマスルガ、本當ニ苦勞ヲシタ者ダツ
タナラバ、何故是等ノ人々ハ素裸ニナッテ、
多クノ人々ノ苦ンデ居ル情況ヲ、自分カラ
體驗シナイノデアルカ、德川幕府ノ當時ニ
於テ自分等ガヤッテ居ッタ所ノ其光景ヲ考ヘ
タナラバ、素裸ニナッテ之ヲ贖フノガ、眞イ
今日彼等ノ爲スベキ當然ノコトデアラウト
私ハ思フノデアル(拍手)然ルニモ拘ラズ、
北海道ノ奧ノ方面ニ僅カバカリノ開墾地ガ
アルカラト云ッテ、其方面ノ些々タル事ヲ見
テ以テ、全局ヲ評スルト云フヤウナ小生意
氣ナ行動ハ吾々ハ取ラヌノデアル私ハ
三箇年間皆悉ク八尺乃至一丈六尺ノ積雪
ノ中ヲ行脚シテ調べ上ゲタノガ是デアリマ
ス、此體驗、此實驗カラシテコソ初メテ本
當ノ淚ガ出ルノデアリマス、本當ノ淚ガ出ル
カラシテ、斯樣ナコトヲ申上ゲルノデアリマ
ス、諸君、ドウゾ雪國ノ人々ヲ考ヘテ戴キタ
イ、明治維新カラ此ノ方、東北ノ人々ハ何
一ツトシテ我儘ヲ申上ゲタコトハアリマセ
ヌ、然ルニドウデアリマスカ、昨年十一月
滿洲事變ガ起リマシタ時ニ、何處カラ兵隊
ガ一番先ニ滿洲ノ地ニ行ッタカ、九州カラ
行ッタカ、中國カラ行ッタカ、或ハ關西、近
畿、若クハ東海道カラ行ッタカト申シマスト、
船ハ廣島ノ傍カラ出ルニモ拘ラズ、遙ニ東
北ノ端ノ弘前第八師團カラ行ッタデハアリ
マセヌカ(拍手)當時第八師團管下ハ卽チ明
治二年、明治三十五年、明治三十八年、大正
二年、昭和六年ト、凶作ニ次グ凶作ニ襲ハ
レテ、其恢復モ出來ナイ所ニ、周期的ニ來
ル所ノ凶作ニ惱ンデ居リマスル所ノ其第八
師團管下カラ、事モアラウニ滿洲ノ地ニ兵
隊ガ眞先ニ出征シテ、國家ノ一大任務ニ盡
シタト云フコトニ付テ、誰一人東北ノ者ガ
女々シイ事ヲ言ウタカ、喜ンデ行ケ、早ク
行ッテ死ンデ來イ、父クアン行ッテ死ンデ來
ルゾト、皆喜ビ勇ンデ戰線ニ就イタ、此第
八師團管下ハ卽チ凶作ノ爲ニ喘ギニ喘ギ
苦ミニ苦ミ抜イテ居ッタモノデアル、何ガ故
ニ是等ノ地方ノ者ヲ一番眞先ニ出サナケレ
バナラヌカト云フト、我ガ陸軍ノ給與令ヲ
見テモ、何處ニ兵隊ガ防寒設備ヲ常カラ持ク
テ居ル所ガアリマスカ平常カラ防寒具ノ
特別ナル給與ヲ受ケテ居ル者ガ何處ニアル
カ、第二師團、第八師團、第七師團シカ、
卽チ防寒設備ヲ持クテ居ルモノハナイノデ
アリマス、時恰モ十一月、滿洲ノ地ハ朔北
極寒ノ地トナルノデアリマスカラ、防寒ノ
設備ヲ持ッテ居ル者デナケレバ之ニ赴クコ
トハ出來ナイ、然ルニ第二師團ハ早ク既ニ
滿洲ノ防備ニ就イテ居ル第七師團ハ北海
道ノ離レ島デアリマスカラ、一旦事アル時
ニハ之ヲ離スコトガ出來ナイ、獨リ殘"テ居
ルノハ靑森縣弘前ノ第八師團、卽チ東北ノ
兵隊ガ入ッテ居ル所ノ第八師團ノミヲ動カ
サネバナラヌヤウニナッタト云フコトハ、是
レ卽チ何ヲ物語ルカ、陸軍ハ卽チ雪ヲ理解
シテ居ルノデアル、政府ハ雪ヲ理解シテ居
ルノデアル斯ノ如クニ雪ヲ理解シテ居ル
ニモ拘ラズ、然ラバ政治施設ハ如何ト申シ
マスルト云フト、地震、火事、風ノ害、水ノ
害、旱魃ノ害、霜ノ害マデハ日本ノ災害規
定ニ入レテ、單リ雪ノミヲ災害規定ニ入レ
ナイナドト云フヤウナコトハ、何タル間違
デアルカ(拍手)
眞ニ雪國ノ人々ハ泣イテモ泣イテモ泣キ
足ラナイノデアリマスガ、東京マデ押寄セ
テ來ルノハ本當ニ最後ノ時デアリマス、併
ナガラ最早ヤ望絶エタリトシテ松岡ノ此手
一度擧ゲタナラバ直チニ十万二十万ハ來
ルノデアリマスガ、私ハ之ヲ抑ヘテ居ルノ
デアル、何卒此處ヲ考ヘテ戴キタイ、此問
題ハ斯ノ如キ重要性ガアリマス、私ハ演說
シナガラニシテ淚ガ出ルノデアリマス自
分ガ足掛七年間、マルキリ之ニ掛ッテ今日マ
デ來タノデアリマス、幸せ明治大帝陛下
大正天皇陛下今上陛下ニ在ラセラレテ
ハ東北ノ凶作ノ際ニ御手許ノ御救恤金ヲ
下サレテ居リマス、全國中ニ於テ陛下ノ
御手許金ヲ凶作ノ爲ニ頂戴シテ居ルノハ唯
東北及北陸アルノミデアリマス、他ニ全國
ノ何處ニアリマスカ、アルト云フナラバ承
リタイ、全國ニ全ク凶作ト云フモノヽ爲ニ
東北、北陸ノミガ御手許金ヲ頂戴スルコト
四囘ニ及ンデ居リマス斯樣ナ譯デアリマス
ルカラ、私ハ一刻モ早ク、財政困難ダト云
フノナラバ財政困難ノ程度ニ於テ是ガ對
策ヲ講ズルコトガ出來マス、卽チ先程モ申
上ゲマシタ通リニ、千五百万ノ人々ガ安閑
トシテ冬季、雪ノ間仕事ヲ爲サナイデ居リ
マスル、此者ヲシテ仕事ニ就カシムルヤウ
ニスル、皆悉ク仕事ニ就カシメルコトハ出
來ナイカラ、セメテモ一家ノ戶主ヲシテ
働カントシテ働クコトノ出來ナイ者ヲ働カ
セルヤウニスルニハ、先ヅ手取リ早ク雪國
全體ニ通有スル所ノ國立副業〓究所ヲ造ッ
テ是等ノ人々ニ職ヲ與ヘルノ途ヲ講ズル
ト云フコトハ、取リモ直サズ只今直グニ是
ハ出來ルコトダラウト思フノデアリマス
國立副業〓究所ヲ造ルト云フコトハ是ハ
卽チ浪費ヲ止メサセテ、生產ニ移ラシムル
モノデアリマス、水產業其他ノ補助ヲ爲ス
コトハ結構デアリマスケレドモ、海ノ中ニ
ハ魚ハ居ル、獲レバ金ハ取レル、併ナガラ
時ニ海風ガ起フテ魚モ獲ルコトノ出來ナイ
ヤウニナッテ、國家ノ補助金ハ總テ空ニ終ル
ノデアリマス、之ニ反シテ雪國ノ千五百万
人ノ中ノ五分ノ一、卽チ三百万人ノ戶主ガ
本當ニ政府ガ雪害ヲ確認シ、之ニ對スル施
設ヲ考ヘテ、國立副業〓究所ヲ造フテ職ヲ與
ヘルヤウニシタナラバ、金ヲ使ハナイヤウ
ニシテ取ルヤウニナル、行掛ケノ駄賃ヲ取
ルヤウナコトハ唯政府ガ政策ノ其宜シキ
ヲ得ルト得ナイトニ依テ出來ルノデアリ
やく、斯樣ナコトハ直チニ應急的ニモ考ヘ
ナケレバナラヌニモ拘ラズ、未ダ農林省ニ
於テモ其事ノナイト云フコトハ洵ニ殘念
ノコトヽ思ヒマス、其他〓育上ニ於テモ
或ハ鐵道ニ於テモサウデアリマス、或ハ遞
信事業ニ於テモ其通リデアリマス、雪國ノ
遞信配達人ハ、雪國ノ郵便局ヲ調ベテ見マ
スルト云フト、實ニ廣イ配達區域ヲ持ッテ居
リマスガ故ニ、其配達夫ノ困難ト云フモノ
ハ名狀スベカラザルモノガアリマス、其名
狀スベカラザル所ノ配達夫ニ對シテ、國家
ハ何程ノ特別ナ施設ヲシテ居ルカト云フ
ト、他ノ所ト同ジデアル、又鐵道從業員ガ
雪ノ中ニ、雪ガ猛烈ニ降ノテ汽車ガ動カナイ
ヤウニナッテ居ルアノ雪ヲ片付ケテ、サウシ
テ人民ノ交通ヲシテ安全ナラシムル爲ニ、
其職務ニ從事シテ居ルニモ拘ラズ、唯辨當
ヲ食ベサセルダケデ置イテ、雪ノ中ニ風ヲ
引ク虞ノアル、卽チ傳染病患者ニ醫者ガ往
診ヲスルト云フヤウナ工合ニ、寒中寒イ所
デ雪ヲ片付ケル鐵道從業員ト云フモノハ
言フニ忍ビザル所ノ苦ミヲ受ケテ居ルノデ
アル、此受ケテ居ル者ニ對シテ國家ノ給與
ハ南ノ方ノ鐵道從業員ト同一ナルモノニ
置クト云フヤウナコトハ、何タル情ナイコ
トデアリマセウ斯ノ如ク總テ根本的ニ考
ヘテ戴カナケレバナラヌノデアリマス
要ハ先程申上ゲマシタル通リニ、明治維
新ト同時ニ歐米ノ、殊ニ英獨ノ政治ヲ模倣
シタル所ノ日本ノ政治ノ根本的建直シデア
ル、日本ノ建直リ、日本人ニ相應ハシイ、
日本ノ土地ニ相應ハシイ、日本人ラシイ所
ノ著物ヲ著セルヤウナ政治ニシテ、南ノ方
ノ人々ト、北ノ方ノ人々ヲシテ本當ニ其
宜シキヲ得ルヤウニシテ、感情ノ衝突ヲナ
カラシムルヤウニセンケレバナラヌノデア
リマス南ノ方ノ人ガ今日マデ政治施設ニ
於テ雪害ヲ閑却シテ居,タト云フコトハ雪
ヲ知ッテ而シテ殊更ニ雪害ヲ入レテ置カナ
カッタノデハナカラウト私ハ信ズルノデア
リマス、南ノ方ノ人ハ雪ノ實際ノ狀況ヲ知
ラナイ、又雪ノ方面ノ人モ餘リ長イ間雪ニ
圍マレテ、雪ニ生レ、雪ニ生立チ、雪ニ親
シンデ來タ結果、唯天ノ爲ス所トシテ、之
ヲ放置シテ居ッタ結果トシテ叫バナカッタノ
デアル、一方ハ叫バズ、一方ハ之ヲ知ラナ
イ、是レ卽チ今日迄雪害ガ閑却サレタル所
以デアラウト私ハ思ヒマス、殊ニ學者ガ〓
究ノ對象物タル日本ノ雪ハ、世界第一番目
ニ降ル雪ト云フコトヲ承知シテ居リナガラ、
此雪ニ對スル所ノ化學的又ハ科學的ニ〓究
モシナイ、卽チ、新潟縣或ハ靑森縣ノ一部
ニ降ル所ノ雪ノ如キハ、亞硫酸ヲ含ンデ居ツ
テ、ドノ位立木其他ノ農產物ニ害毒ヲ與ヘ
ルカ分ラナイ、驚クベキ所ノ亞硫酸ノ害毒
ガ入ッテ居ルノデアル、斯ウ云フ雪ノ化學的
〓究モシナイ、或ハ雪ト云フモノヲ政治的
ニ見ルコトモシナイ、皆悉ク根本ガ斯樣ナ
工合ニナッテ居リマスガ故ニ、何卒政府ニ於
カレマシテハ是等ノコトヲ十分ニ御〓究
ニナリ、昭和四年三月二十五日本議場ニ於
テ臨時雪害調査機關設置ニ關スル建議案
ガ、滿場一致超政黨的ニ考慮セラレテ通過
シタルニモ拘ラズ、未ダ何事モシナイ、又
貴族院ニ於テハ昨年三月三日ノ請願委員會
ニ於テ二時間半雪害問題ノ爲ニノミ論議
セラレテ、政府ハ之ニ同意シタルニモ拘ラ
ズ前々內閣ニ於テハ其儘何モ爲サナカッ
タ、又其後ノ內閣ニ於テモ其通リデアリマ
ス、殊ニ民政黨ノ前ノ文部大臣田中隆三君、
是ハ秋田ノ出身デアリ、時ノ農林大臣ノ町
田忠治君モ秋田ノ出身デアリマス、二人共秋
田ノ出身デアリマスルガ故ニ、雪ニハ最モ
理解ガアッタノデアリマセウケレドモ、是等
ノ人々ガ向ホ仕事ヲ爲シ得ナカッタト云フ
コトハ、餘程ヨク〓〓ノ事デアッタラウト
私ハ御同情申上ゲル次第デアリマス、併ナ
ガラ是ハ最早今日ニ於テハ之ヲ許サナイノ
デアル、今日ニ於テ若シドウシテモ雪國ノ
人々ガ斯樣ニマデ熾烈ナル考、僅ニ二年半
或ハ三年シカナラナイノニ拘ラズ、三十五
万人ノ調印、千五百町步ノ人々ガ調印シテ
請願シヨウトスルヤウナ熾烈ナル深刻ナ
ル運動ニナッテ居ルニモ拘ラズ、又本議場
ニ於テ政友會ノ幹部諸公ガ、自ラ提出者ト
ナッテ此建議案ヲ出サレテ居ルニモ拘ラズ、
政府當局ガ、內務當局ガ、若シ之ヲ等閑ニ附
スルヤウナコトガアッタナラバ、卽チ罪政府ニ
在リ、雪國ノ人々ノ間ニ如何ナル事ガアッ
テモ、最早我等ハ責任ヲ執ラヌト云フヤウ
ナ工合ニナラザルヲ得ナイコトヲ思フノデ
アリマス
諸君、何卒此點ヲ深ク御考慮下サレテ、
内務省ハ土木災害補助規程、或ハ道路法ノ
改正等、實際直接ノ問題ガアル、或ハ農林
省ニ於テハ二十數箇ノ雪害關係ノアル補助
規程モアル、特ニ內務省ニ於テハ道路法及
災害土木補助規程其他ノ問題ニ付テハ直
接間接ニ大ナル關係ガアル、殊ニ地方局長
トシテハ全國ヲ通覽シテ監督シナケレバナ
ラヌ義務ガアル、監督スレバソコニ調査ヲ
シナケレバナラヌ、調査モシナイ、監督モ
シナイ、隨テ救濟ノ途ヲ講ズルコトヲ爲サ
ナイ、斯樣ナ工合デアッタナラバ、政府ハ何
ノ爲ニ在ルカト云フ、雪國ノ人々ノ頭ニ
度政府ノ存在理由ガ分ラナイヤウナ工合ニ
ナッタナラバ、國家思想上ニ實ニ重大ナル關
係ガアルト私ハ申上ゲテ宜カラウト思フ
(拍手)深ク此點ヲ御考慮下サレテ、本問題
ハ不幸ニシテ民政黨ノ方ハ時間ガナカッタ
爲ニ、此樣ナ工合ニナッタノデアリマスガ、
民政黨ノ方モ之ニ同ジ意見ヲ持ッテ居ラレ
ルコトヲ私ハ深ク信ジテ居リマス、故ニ何
卒政府ニ於カレテハ速ニ-速デハナイ
直チニ此根本對策ヲ講ズルヤウナ工合ニ
セラレンコトヲ滿場ノ諸君ニ、千五百万人
ノ雪國ノ人々ニ代ッテ衷情ヲ愬ヘテ、切ニ御
同情ヲ仰ギ奉ル所以デアリマス(拍手)尙ホ
議長ノ御許ヲ得マシテ、私ガ本年一月元日
ニ總理大臣、內大臣、元老、其他ノ重要ナル
人々ニ出シタ雪害第二建白書ハ之ヲ讀上
ゲマス所ノ時間ヲ省キマシテ、議長ノ御許
シヲ得テ速記錄ニ御揭載下サランコトヲ御
願スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=33
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034・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ノ通〓ガアリマス、
之ヲ許可致シマス-內ケ崎作三郞君
〔內ケ崎作三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=34
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035・内ヶ崎作三郎
○內ケ崎作三郞君 只今御提案ニナリマシ
タ雪國日本ノ恨本對策ニ關スル問題ニ付キ
マシテハ民政黨ニ於キマシテモ至極同感
デゴザイマシテ私外三十五名ノ幹部ガ提
出者トナリマシテ、約百名ノ代議土ガ贊成
者トナッテ、此建議案ヲ提出致シテ居ルノデ
アリマスガ、不幸ニシテ、之ヲ印刷スル時
間ガナカッタ爲ニ、松岡君御提出ノ建議案ト共
同提案ヲ致スコトノ出來ナカッタコトヲ甚
ダ遺憾トスルノデアリマスカラシテ、此際
私ヨリ松岡君ノ御提案ニ滿腔ノ贊成ノ意味
ヲ表スルノデアリマス、旣ニ論旨ハ同君ノ
詳細ヲ極メタル、〓心ナル御演說ニ盡キテ
居ルコトデアリマスルカラシテ敢テ蛇足
ヲ加フル必要ハナイノデアリマス、幸ニシ
テ、現內閣ハ齋藤總理大臣、高橋大藏大臣、
岡田海軍大臣、南遞信大臣、永井拓務大臣
ノ五大臣ガ、雪國出身ノ御方デアリマスルカ
ラシテ特別ニ此建議案ヲ重要視セラレマ
シテ、速ニ對策ヲ講ゼラレンコトヲ偏ニ希
望スルノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=35
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036・中野寅吉
○中野寅吉君 私モ政友會民政黨ト同ジヤ
ウニ雪國ノ代議士デアリマシテモ、遺憾
ナガラ第一控室ニ居ルノデ、私ハ此中ニ名
前ヲ書ク機會ヲ逸シタノデアリマス雪國
ノ事ハ先ヅ松岡君ノ仰セラレル如ク、洵ニ
大事ナ問題デアリマスカラ、本員ニ於テモ
之ニ贊成致シマス、何ダカ拔カサレタヤウ
ナ形デ、氣持惡ク思ッテ居シタノデスケレド
モ、私モ仲間ニ混ゼテ戴キタイト思フ(拍
手ノ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=36
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037・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終局致シマシ
タ採決ヲ致シマス、本案ニ贊成ノ諸君ノ
起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=37
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038・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立多數、本案ハ可決
セラレマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=38
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039・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、市町村
義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特例ニ關ス
ル法律案ノ委員長ノ報〓ヲ求メ、其審議ヲ
進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=39
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040・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=40
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041・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程ハ變更セラレマシタ-市町村義
務〓育費國庫負擔法第三條ノ特例ニ關スル
法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長
ノ報〓ヲ求メマス-理事坂本一角君
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ
特例ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ
特例ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月七日
委員長中島守利
衆議院議長秋田〓殿
附帶決議
本法ノ規定ニ依リ市ニ交付セラルヘキ
國庫支出金ノ金額ニ基キ市町村義務〓育
費國庫負擔法第四條第二項ノ規定ニ依ル
增加交付金ノ金額カ更ニ增加スルカ如キ
コトナキ樣措置スヘシ
右決議ス
〔坂本一角君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=41
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042・坂本一角
○坂本一角君 市町村義務〓育費國庫負擔
法第三條ノ特例ニ關スル法律案ノ委員會ノ
經過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、本委員會
ハ昨日ト本日ト、二囘ニ亙ッテ質疑ヲ繼續
致シマシテ、愼重審議質疑應答ヲ重ネマシ
タ、其論旨ノ詳細ハ速記錄ニ就テ御覽ヲ願
ヒタイノデアリマス、本委員會ノ結果ハ滿
場一致ヲ以テ原案ヲ可決致シタノデアリマ
ス、而シテ之ニ付テノ附帶決議ヲ亦滿場一
致ヲ以テ決議ヲ致シタノデアリマス
附帶決議
本法ノ規程ニ依リ市ニ交付セラルベキ國
庫支出金ノ金額ニ基キ市町村義務〓育費
國庫負擔法第四條第二項ノ規定ニ依ル增
加交付金ノ金額ガ更ニ增加スルガ如キコ
トナキヤウ措置スベシ
右決議ス
此段御報告ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=42
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043・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ニ入リマス、山枡
儀重君
〔山枡儀重君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=43
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044・山枡儀重
○山枡儀重君 本案ハ此度東京市接續町村
ガ東京市ニ編入セラレマス結果、從來町村
ガ受ケテ居リマシタ義務〓育費國庫負擔金
ノ額ガ、市ニ配付セラレマスル標準ニ依ッ
テ交付セラレマスルガ爲ニ、東京市ガ將來
受クベキ金額ガ約百八万圓減額スルコトニ
ナリマスルガ爲ニ、此急激ナル負擔ノ增加
ヲ緩和スルガ爲ニ、本案ヲ提出セラレタノ
デアリマスガ、此義務〓育費國庫負擔法ノ
交付金ノ配村ノ趣旨ハ大體ニ於テ町村ニ
之ヲ重クシテ、市ニ輕クスルヤウニ相成ッテ
居ルノデアリマシテ、是ガ故ニ此交付金ガ
益〓增額セラレルコトヲ町村ハ常ニ熱望致
シテ居ル次第デアリマス、然ルニ此大東京
市實現ニ伴ヒマシテ、約百万圓ノ金額ハ當
然町村ニ分布サルベキコトニ相成ルノヲ、
本案ニ依ッテ矢張市ニ交付シヨウト云フコ
トニ相成ルノデアリマスルカラ、私共ハ十
分ナル注意ヲ以テ本案ノ審議ヲ致シタノデ
アリマス、本案審議ノ際ニ於テ政府當局ノ
言明セラレル所ニ依リマスルト云フト、此東
京市ニ交付スベキ增加金額ハ大體十箇年間
ニ限ル積リデアル而モ每年約一割ヅヽ遞
減シテ行ク積リデアル、斯樣ナ勅令ヲ公布
スル積リデアルト云フコトデアリマスルカ
ラ、吾々ハ此際東京市ノ負擔ガ急激ニ變化
スルコトヲ緩和スル爲ニハ、此程度ノ注意ガ
行ハレテ居リマスルナラバ之ニ贊成シテ
宜シカラウト考ヘタノデ、之ニ贊成スルコ
トニ致シタノデアリマス、唯茲ニ私共注意
ヲ致サナケレバナリマセヌコトハ義務〓
育費國庫負擔法ノ第四條ニ依リマスト云フ
ト、貧弱ナル、財政困難ナル市ニ對シテ特
別ノ交付金ヲ致スコトニ相成ッテ居リマス、
其交付金ノ金額ハ、全國ノ市ニ交付セラル
ベキ金額ノ總額ノ十五分ノ一ト云フコトニ
相成ッテ居ルノデアリマス、從來東京市ガ受
ケナカッタ以上ノ金額ヲ交付セラルヽコト
ニ相成リマシテ、ソレガ其起算ノ金額ニ相
成リマスルナラバ、東京市ニ交付セラルベ
キ金額ノ十五分ノ一ダケハ全國ノ他ノ市
ガ從來ヨリモヨリ多ク交付ヲ受ケルコトニ
ナノテソレダケハ町村ノ貧弱町村ニ配付
セラルベキ金額ハ削ラレルコトニ相成ルノ
デアリマスカラ、東京市ノ財政ノ緩和ヲ圖
ルノハ宜シイガ、ソレガ延イテ町村ノ貧弱
ナルモノニ與ヘラルベキ金ガ減額致スヤウ
ナ結果ヲ招キマスコトハ、吾々ハ十分警戒
致サナケレバナラヌト思ヒマスルガ故ニ、
斯樣ナコトノナイヤウニ、政府ニ於テ第四
條ノ金額ヲ計算致サレマス場合ニ、法律ノ
文面ハ十五分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ズトア
リマスカラ、ソレ以下ノ交付金ヲ定ムルコト
ハ少シモ差支ナイノデアリマスガ故ニ、以
下ニ定メテ町村ノ交付金ヲ減額致サナイヤ
ウニ爲スベシ、斯樣ナ意味ニ於テ、附帶決
議ヲ附ケテ本案ニ贊成ヲ致スコトニ致シタ
ノデアリマス玆ニ私共ガ本案ニ贊成致シ
マシタ趣旨ヲ申述ベタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=44
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045・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終局致シマシ
タ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ハアリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=45
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046・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=46
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047・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=47
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048・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=48
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049・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ
特例ニ關スル法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=49
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050・秋田清
○議長(秋田〓君) 第三讀會ヲ省略シテ、
委員長報告通リ可決確定シタルコトヲ宣告
シマス(拍手)-日程第八乃至第二十一ハ
便宜上一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=50
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051・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程第八、田島今市間鐵道速成ニ關ス
ル建議案、日程第九、柳津小出間及只見檜
枝岐間鐵道速成ニ關スル建議案、日程第十、
敦賀驛〓津驛間船車連帶運輸ニ關スル建議
案、日程第十一、新潟驛〓津驛雄基驛間船
車連帶運輸開始ニ關スル建議案、日程第十
二、岐阜市內貫通國有鐵道高架改築ニ關ス
ル建議案、日程第十三、出水宮之城間鐵道
敷設ニ關スル建議案、日程第十四、宮之城
加治木間鐵道敷設ニ關スル建議案、日程第
十五、出水大口間鐵道敷設ニ關スル建議案、
日程第十六、阿久根驛ニ急行列車停車ニ關
スル建議案、日程第十七、大川線竣成年度
繰上ニ關スル建議案、日程第十八、牛ノ濱
西方間ニ停車場設置ニ關スル建議案、日程
第十九、菱刈大口間ニ停車場設置ニ關スル
建議案、日程第二十、吉松八代間鐵道電化
竝急行列車運行ニ關スル建議案、日程第二
十一、志布志古江間鐵道敷設速成ニ關スル
建議案、右ヲ一括シテ議題ト爲シ、各別ニ
提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス
第八田島今市間鐵道速成ニ關スル建
議案(中野寅吉君提出)
第九柳津小出間及只見檜枝岐間鐵道
速成ニ關スル建議案(中野寅吉君提
〓
第十敦賀驛〓津驛間船車連帶運輸ニ
關スル建議案(中野寅吉君提出)
第十一新潟驛〓津驛雄基驛間船車連
帶運輸開始ニ關スル建議案(中野寅
吉君提出)
第十二岐阜市內貫通國有鐵道高架改
築ニ關スル建議案(大野伴睦君提出)
第十三出水宮之城間鐵道敷設ニ關ス
ル建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十四宮之城加治木間鐵道敷設ニ關
スル建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十五出水大口間鐵道敷設ニ關スル
建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十六阿久根驛ニ急行列車停車ニ關
スル建議案(崎山武夫君外二名提出)
第十七大川線竣成年度繰上ニ關スル
建議案(崎山武夫外二名提出)
第十八牛ノ濱西方間ニ停車場設置ニ
關スル建議案(崎山武夫君外二名提
出)
第十九菱刈大口間ニ停車場設置ニ關
スル建議案(崎山武夫君外二名是出)
第二十吉松八代間鐵道電化竝急行列
車運行ニ關スル建議案(崎山武夫君
外四名提出)
第二十一志布志古江間鐵道敷設速成
ニ關スル建議案(永田良吉君外四名
提出)
田島今市間鐵道速成ニ關スル建議案
田島今市間鐵道速成ニ關スル建議
政府ハ福島縣田島今市間ノ鐵道ヲ速ニ完
成セラレムコトヲ望ム
右建議ス
柳津小出間及只見檜枝岐間鐵道速成ニ
關スル建議案
柳津小出間及只檜枝岐間鐵道速成ニ
關スル建議
政府ハ福島縣柳津驛ヨリ新潟縣小出驛ニ
至ル鐵道及福島縣只見ヨリ館岩ヲ經テ檜
枝岐ニ至ル鐵道ヲ速ニ完成セラレムコト
ヨルエ
右建議ス
敦賀驛〓津驛間船車連帶運輸ニ關スル
建議案
敦賀驛〓津驛間船車連帶運輸ニ關ス
ル建議
政府ハ速ニ福井縣敦賀驛ト威鏡北道〓津
驛間ノ船車連帶運輸ヲ開始セラレムコト
ヲエム
右建議ス
新潟驛〓津驛雄基驛間船車連帶運輸開
始ニ關スル建議案
新潟驛〓津驛雄基驛間船車連帶運輸
開始ニ關スル建議
政府ハ速ニ新潟縣新潟驛ト咸鏡北道〓津
驛雄基驛間ノ船車連帶運輸ヲ開始シ鐵道
省經營ノ船舶ニ依リ彼我兩岸ノ連絡ヲ圖
リ以テ貨客運輸ノ便ヲ期セラレムコトヲ
望ム
右建議ス
岐阜市内貫通國有鐵道高架改築ニ關ス
ル建議案
岐阜市內貫通國有鐵道高架改築ニ關
スル建議
岐阜市內ヲ貫通スル國有鐵道東海道線ヲ
速ニ高架線ニ改築セラレムコトヲ望ム
右建議ス
出水宮之城間鐵道敷設ニ關スル建議案
出水宮之城間鐵道敷設ニ關スル建議
本鐵道ハ鹿兒島本線出水驛ヨリ大川線宮
之城驛ニ至ル出水郡薩摩郡ヲ縱斷スル最
重要ナル線路ニシテ產業交通軍事上ヨリ
見テ之カ敷設ノ最緊急ヲ要スルモノト信
ス依テ政府ハ速ニ鐵道ヲ敷設セラレムコ
トヲ望ム
右建議ス
宮之城加治木間鐵道敷設ニ關スル建議
案
宮之城加治木間鐵道敷設ニ關スル建
本線ハ大川線宮之城驛ヨリ肥薩線加治木
驛ニ至ル鐵道ニシテ薩摩郡及始良郡ヲ縱
斷シテ出水宮之城間敷設鐵道ニ連續スル
モノニシテ產業交通軍事上等ヨリ見テ最
重要ナル線路ナリ依テ之カ敷設ハ最緊急
ヲ要スルモノト信ス政府ハ速ニ本鐵道ヲ
敷設セラレムコトヲ望ム
右建議ス
出水大口間鐵道敷設ニ關スル建議案
出水大口間鐵道敷設ニ關スル建議
本線ハ鹿兒島本線出水驛ヨリ出水郡大川
內村ヲ經テ山野線薩摩大口驛ニ至ル南九
州橫斷ノ重要線路ニシテ產業交通竝軍事
上ヨリ見テ之カ敷設ハ最緊急ヲ要スルモ
ノト信ス仍テ政府ハ速ニ本鐵道ヲ敷設セ
ラレムコトヲ望ム
右建議ス
阿久根驛ニ急行列車停車ニ關スル建議
案
阿久根驛ニ急行列車停車ニ關スル建
議
鹿兒島縣出水郡阿久根町ハ鹿兒島本線ニ
沿ヒ西薩地方唯一ノ商港タリ而シテ同地
ハ海產物農產物林產物ノ集散地トシテ其
ノ取引範圍廣ク海陸交通上ノ要衝トシテ
又名勝地遊樂地溫泉地トシテ人士ノ往來
繁ク日郵便取扱地トシテ海上諸島トノ交
渉密接ナルカ故ニ阿久根驛ハ鹿兒島本線
中樞要ナル驛ナリ依テ阿久根驛ニ急行列
車ヲ停車セシメラレムコトヲ望ム
右建議ス
大川線竣成年度繰上ニ關スル建議案
大川線竣成年度繰上ニ關スル建議
本鐵道ハ沿線極メテ物資豐富ニシテ殊ニ農
產物林產物ノ夥多ナルコト稀ニ見ル地方ナル
モ此ノ資源ノ搬出ハ交通機關不備ノ爲頗
ル不利ノ狀況ニアリ又交通系統ヨリスル
モ伊佐、薩摩兩郡ヲ連絡スル最必要ナル
線路ニシテ此ノ線路ノ完成ハ實ニ此等ノ
要素ヲ完全ニシテ經濟交通文化ノ發展ヲ
招來スルコト勿論ナルノミナラス軍事上
ヨリ見ルモ緊急ナル線路ナリ然ルニ本鐵
道ハ豫算額二百三十萬五千圓其ノ完成年
度ヲ昭和八年度ト決定サレタルモノヲ昭
和十年度ニ繰延ヘラレタリ斯クテハ地方
富源ノ開發交通機關ノ完備文化ノ發達ヲ
阻害スルコト甚大ナルモノアリ依テ政府
ハ既定年度タル昭和八年度ニ竣成セラレ
ムコトヲ望ム
右建議ス
牛ノ濱西方間ニ停車場設置ニ關スル建
議案
牛ノ濱西方間ニ停車場設置ニ關スル
建議
鹿兒島本線牛ノ濱、西方兩驛間ハ七粁四
分ニシテ其ノ間停車場ノ設置ナキ爲沿線
地方ニ於ケル交通上竝物資集散上ノ不利
不便甚大ナリ依テ其ノ中間タル人口千三
百ノ一大部落タル阿久根町字大川附近ニ
停車場ヲ設置セラレムコトヲ望ム
右建議ス
菱刈大口間ニ停車場設置ニ關スル建議
案
菱刈大口間ニ停車場設置ニ關スル建
議
鹿兒島縣山野線菱刈、薩摩大口兩驛間ハ
七粁三分ニシテ其ノ間停車場ノ設置ナキタ
メ沿線地方ニ於ケル交通上竝物資集散上
ノ不利不便甚大ナリ依テ政府ハ速ニ兩驛
ノ中間菱刈村字下手田子附近ニ停車場ヲ
設置セラレムコトヲ望ム
右建議ス
吉松八代間鐵道電化竝急行列車運行ニ
關スル建議案
吉松八代間鐵道電化竝急行列車運行
ニ關スル建議
肥薩線八代吉松間ハ其ノ距離僅ニ八十六
粁八分ナルニ拘ラス其ノ間隧道四十三箇
所ノ多キニ達シ旅客ノ迷惑實ニ言語ニ絕
スルモノアリ依テ之ヲ電化シ旅客ノ困難
ヲ除去セラレムコトヲ望ム又肥薩海岸線
全通ノ結果鹿兒島本線之ニ變更サレ急行
列車ノ運行モ亦中止サレ此ノ沿線ノ旅客
貨物ニ關スル不便不利實ニ大ナルモノア
リ依テ少クトモ一列車ニテモ急行列車ノ
運行ヲ實施サレ此ノ地方沿線ノ發展ニ資
セラレムコトヲ望ム
右建議ス
志布志古江間鐵道敷設速成ニ關スル建
議案
志布志古江間鐵道敷設速成ニ關スル
建議
鹿兒島縣志布志古江間鐵道豫定線工事ハ
旣ニ第五十六囘議會ニ於テ豫算金額四百
七十萬四千圓ヲ以テ昭和四年度ヨリ著手同
十二年度迄ニ建設完了スヘキ決定ヲ爲シ
タルモ其ノ後四箇年繰延昭和八年度ヨリ
工事ニ著手スルコトニ變更セラレタリ該線
路ハ工事容易ニシテ私設大隅鐵道ノ連絡
經營維持上速ニ完成ヲ要スルノミナラス
該地方ハ現ニ笠野原飛行場竝鐘紡會社經
營ノ二千町步ノ大農場ノ設置セラレタル
等アリ本鐵道ノ敷設ハ國防上且產業開發
上最必要缺クヘカラサル事業ニ付政府ハ
著手年度ヲ繰上ケ昭和七年度ヨリ工事ヲ
開始セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=51
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052・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第八乃至第十一、
趣旨辯明者中野寅吉君
〔中野寅吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=52
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053・中野寅吉
○中野寅吉君 極ク簡單ニ申上ゲマス、田
島今市間鐵道ハ是ハ山羽線ノ一部デアリ
マシテ、野州ノ今市ヨリ岩代若松ノ平野ヲ
貫通シテソレカラ羽前ノ米澤ニ達スル鐵
道是ハ若松ヨリ南田島ノ方ニ向ヒマシテ
湯ノ上ト云フ處マデ今工事ヲ進メテ居ルノ
デス、所ガ是ガ今市マデ貫ケナイト云フト、
用ヲ爲サナイ鐵道デアリマシテ、詰リ煙管
ニ譬ヘテ見レバ吸口ト羅宇ガ出來タケレド
モマダ雁首ノ方ガ出來ナクテ困ル、ソレ
デ、今市ノ方向ヨリモ早クヤッテ貰ヒタイ、
斯ウ云フ譯デアリマス
ソレカラモウ一ツノ柳津小出間ト云フノ
ハ福島縣ノ柳津ト越後ノ魚沼郡ノ小出ニ
達スル鐵道、ソレカラ只見檜枝岐ト云フノ
ハ只見川ト云フ有名ナ大キナ川ガアル、
ソレニ合流スル伊南川ヲ沿ウテ群馬縣ノ界
ノ尾瀨沼、ソレカラ栃木縣ノ日光ノ裏ノ館
岩方面ノ富源開發ノ爲ニ造フテ戴キタイ鐵
道デアリマス
鐵道ハソレデ止メテ、ソレカラ敦賀〓津
ノコトデアリマス、是ハ滿洲問題解決ニ最
モ必要デアル、敦賀ハ今北日本ノ汽船ガ〓
津ニ通ッテ居リマスケレドモ、〇〇線ハ近イ
中ニ工事ヲ起シマシテ、來年ノ五月ノ末マデ
ニ出來ル、是ハ今第二師團ト第八師團ト
關東獨立師團ト羅南ノ師團ト、非常ナ骨折
デ以テ向フデ働イテ居ル結果斯ウナルノ
デアリマス、然ルニ其北鮮北滿ノ物資ノ呑
吐港ナル處ノ此敦賀港ハ、今船車ノ連絡ガ
出來テ居ナイ、ソレデアリマスカラ鐵道
ノ貨客ノ連絡ヲ此所デ付ケテ貰ハナイト困
ル、斯ウ云フノデアリマス、ソレカラ新潟
〓津間、雄基新潟間ノ船車連絡モ亦其通リ
デアリマス雄基ト云フト御承知ノ通リ
圖滿江ノロデアリマシテ、露領ノ境、ソレカ
ラ支那ノ境カラ來ル所ノ此物資ノ吐呑港ト
シテ、〓津デ處分シ切レナイ物資ヲ此方面
デ又處分シナクテハナラヌ、ソレモ同ジ運
命デアルカラ、先刻申上ゲタ敦賀ト同樣ニ、
鐵道省ガ連帶運輸ヲ早ク開始シテ、サウシ
テ貨客ノ便益ヲ圖フテ行キタイト云フ賴ミ
デアリマス、何卒愼重御審議ノ上御協賛ア
ランコトヲ御賴ミ申シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=53
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054・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第十二、趣旨辯明
大野伴膝君
〔大野伴睦君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=54
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055・大野伴睦
○大野伴睦君 本建議案ハ岐阜市內貫通國
有鐵道高架改築ニ關スル建議案デアリマス
ルガ、趣旨ノ辯明ハ省略致シマス、何トナ
レバ其理由書ニ依ッテ詳細ニ其理由ガ書連
ネテアリマスルカラ省略致シマス、尙ホ委
員會ニ於キマシテ十分御說明申上ゲマス、
是非トモ御贊成アランコトヲ切ニ御願致シ
テ已ミマセヌ、何卒宜シク······(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=55
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056・秋田清
○議長(秋田清君) 日程第十三乃至第二
+、趣旨辯明崎山武夫君
〔崎山武夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=56
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057・崎山武夫
○崎山武夫君 只今玆ニ提案サレマシタ議
案ハ何レモ必要ナモノデアリ、而モ緊急ヲ
要スルモノデアリマスルガ、此八案ハ特ニ
此際時間ノ關係上說明ヲ省略致シマシテ、
何レ委員會ノ席ニ於テ詳シク御說明申上ゲ
ル積リデアリマスルカラ、ドウゾ御諒承ノ
上特ニ愼重ニ御審議ノ上御贊成アランコト
ヲ切ニ御願申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=57
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058・秋田清
○議長(秋田済君) 日程第二十一、趣旨辯
明、永田良吉君
〔永田良吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=58
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059・永田良吉
○永田良吉君 志布志古江間鐵道敷設速成
ニ關スル建議案ノ趣旨ヲ極ク簡單ニ說明致
シマス、本鐵道ハ鹿兒島縣ノ大隅半鳥ニ敷
設スル所ノ鐵道デアリマシテ、曩ニ第五十
六議會ニ於キマシテ議會ノ協贊ヲ經タノデ
アリマス、其當時約三十哩ニ對シマシテ工
事費ノ豫算金額ハ四百七十万四千圓、是ガ
昭和四年度カラ著手ニナリマシテ、同十二
年度ニハ完了ノ豫定デアリマシタガ、不幸
ニシテ去ル五十九議會ニ於キマシテ、工事
著手ノ年度ガ昭和八年度迄、而モ四箇年間
延期ノ厄ニ遭フタフデアリマス、今ヤ同地方
ノ民衆ハ非常ニ失望ヲ致シテ居ルト云フヤ
ウナ狀態デアリマス、而シテ此沿線ノ面積
ハ約百十方里ニ達スルノデアリマス、人口ニ
於キマシテモ二十餘万ニ達シテ居ルノデア
リマスルガ、一體從來ノ政府ノヤリ口ヲ見
マスルト云フト先程寒國ノ雪害ノコトガ
アリマシタガ、北ノ方ニモ政治ノ缺陷ガア
ルト致シマスレバ私ハ南ノ方ニモサウ云
フ缺陷ガアルト思フノデアリマス、卽チ吾
吾ノ大隅半島方面カラ熊毛、大島、沖繩ニ
至ル所ノ總面積ハ、約三百數十方里アルノ
デアリマス人口ノ合計ニ於テモ百二十万
以上ヲ突破致シテ居ルノデアリマス、然ル
ニ其間國鐵ハ一哩モアリマセヌ、全國百二
十二ノ選擧區ガアリマスケレドモ、其選擧
區ノ中ニ國鐵ガ一寸モナイ所ハ私共ノ地方
バカリデアルノデアリマス、此點カラ考ヘ
マシテ私ハ歷代政府ガ吾々南九州ノ地方民
ニ對シテハ如何ニモ冷淡デアッタト云フコ
トヲ深ク遺憾ニ存ズル次第デアリマス、此
點カラ私ハ地方ノ產業ノ開發ノ爲ニ、又地
方ノ交通ノ利便ヲ圖ッテ戴キタイト云フ爲
ニ政府ノ方カラ-而モ今度ハ擧國一致
內閣デアッテ、從來ノ如キ黨弊ノナイ內閣デ
アリマスカラシテ、公平ナル見地ニ基イテ、
熟慮斷行サレンコトヲバ切ニ御願スル次第
デアリマス、尙ホ又此地方ニハ神代ノ御陵
モアルノデアリマス、或ハ數千年ニ達スル
古墳モアリマスシ、尙ホ國有地モ數万町步
ノ大森林ガアリマス、是等ノ地方カラハ年
年數千万圓ノ生產モ生ジテ居ルノデアリマ
スルガ、特ニ近來ハ此地方ニ鐘紡會社ガ二
千町步ノ大農場ヲ建設シマシテ、尙ホ飛行
場モ十二万坪設置サレテ居ルノデアリマス、
是等ノ爲ニ鹿兒島縣ニ於キマシテ、只
今人口ガ一番增加スルノハ卽チ大隅半島ノ
鹿ノ屋ヲ中心トシタルアノ附近デアルノデ
アリマス、然ルニ政府ハ何事デアルカ、從
來此地方ニ對シテ鐵道ノ施設ヲ怠ッテ居ル
是ハ甚ダ皮肉ナ申シ方デアリマスケレド
モ、五十九議會ニ於キマシテ、志布志カラ
私共ノ大隅半島ニハ來ズシテ、日向ノ方ノ
油津方面ニ鐵道ガ方向ヲ變ヘテシマッタノ
デアリマス、而モ吾々ノ地方ハ昭和四年カ
ラ著手スルノガ、昭和八年迄、卽チ四箇年
延期ヲ喰ッタノデアリマス斯ノ如キ四箇
年間延期シタト云フヤウナ無慈悲ナ仕事ハ、
餘リ苛酷ナ處置デアルト思フノデアリマ
ス、而モ此志布志ヲ中心トシテ油津方面ニ
至ル鐵道ノ延長ハ約三十哩、私ノ今御願シ
テ居ル所ノ志布志古江間モ三十哩デアリマ
ス而シテ志布志、油津間ハ三十哩ニ對シ
テ九百七十万圓ノ豫算デアリマスガ、私共
ノ線路ハ三十哩ニ對シテ僅ニ四百七十万圓
ノ豫算ニナッテ居リマス、是カラ申上ゲマス
ト云フト、吾々ノ地方ガ工事ハ至ッテ容易ニ
ナッテ居リマス、然ルニ工事ガ容易デアッテ
而モ沿線ノ物資ハ私共ノ方ガ多イ、人口ニ
於テモ多イノデアリマス、然ルニ反對ニ工
事ノ困難ナル方ニ鐵道ガ敷設セラレルト云フ
ノハ、吾々ハ其政府ノ處置ニ對シテ、甚ダ不
公平ナル處置デアルト云フコトヲ憤慨スル
一人デアリマス、私ハ此理由カラ、志布志
ヲ中心トシテ、吾々ノ地方ニ速ニ鐵道ノ敷
設ヲ見ルヤウニ切ニ御願スル次第デアリマ
ス、先程北ノ方ニハ雪ノ害デ泣ク國民ガア
ルト云フコトヲ仰シヤラレマシタガ、日本
ノ南ノ方ニモ矢張交通ノ不便ノ爲ニ泣イテ
居ル民衆ガアルト云フコトヲ政府當局ハ御
承知ニナリマシテ、是非此地方ノ民衆ノ福
利ト交通ノ便ヲ圖ラレル爲ニ、鐵道ノ敷設
ヲセラレンコトヲ御願スル次第デアリマス、
何卒皆樣方ノ御協贊ヲ經マシテ、此案ヲ通
過セシメラレンコトヲ御願スル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=59
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060・上田孝吉
○上田孝吉君 日程第八乃至第二十一ノ
十四案ハ一括シテ政府提出柳河軌道株式會
社所屬軌道補償ノ爲公債發行ニ關スル法律
案ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=60
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061・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=61
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062・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシター次ニ日程第
二十二及第二十三、是ハ便宜上一括議題ト
爲スニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=62
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063・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程第二十二、福島縣矢吹原國營開墾
實施ニ關スル建議案、日程第二十三、禁獵
區內ニ於ケル鶴保護及農作物被害賠償ニ關
スル建議案、右ヲ一括シテ議題ト爲シ、提
出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-日程第二十
二、趣旨辯明、中野寅吉君
第二十二福島縣矢吹原國營開墾實施
ニ關スル建議案(中野寅吉君提出)
第二十三禁獵區內ニ於ケル鶴保護及
農作物被害賠償ニ關スル建議案崎
山武夫君外二名提出)
福島縣矢吹原國營開墾實施ニ關スル建
議案
福島縣矢吹原國營開墾實施ニ關スル
建議
政府ハ福島縣矢吹原ノ國營開墾ヲ急速ニ
開始シ以テ食料充實ノ國策ヲ完ウセラレ
ムコトヲ望ム
右建議ス
禁獵區內ニ於ケル鶴保護及農作物被害
賠償ニ關スル建議案
禁獵區內ニ於ケル鶴保護及農作物被
害賠償ニ關スル建議
一鹿兒島縣出水郡三笠村字荒崎及阿久
根町字波留禁獵區內ニ群遊スル鶴ニ對
シ積極的保護ヲ加フルト共ニ之カ〓究
竝觀賞ニ便ナラシムル爲相當設備ヲ執
ラレタキコト
二鶴渡來地禁獵區制度ノ爲群鶴竝害鳥
ヨリ受クル農作物ノ被害ニ對シ之カ賠
償ノ方法ヲ講セラレタキコト
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=63
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064・中野寅吉
○中野實吉君 簡單デスカラ此席デ御許シ
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=64
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065・秋田清
○議長(秋田〓君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=65
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066・中野寅吉
○中野寅吉君 是ハ福島縣ノ南會津、西白
河兩郡ニ跨ガル布引山大溪谷ノ北端鶴沼川
ノ最上流ヲ堰キ止メテ一大貯水池ヲ造リ、
之ヲ灌漑用ニシテ、矢吹原ニ三千七百町步
ノ開墾ヲヤルト云フコトハ農林省ニ於テ既
ニ話ガ始ッテ居ルノデアリマス、然ルニ話バ
カリデ、一向マダ著手サレナイカラ、之ヲ
早クヤッテ貰ヒタイト云フ御賴ミデアリマ
ス、上野ヲ發車シタ汽車ハ僅カ四時間デ行ッ
テシマフ、ソコデ三千七百町步ト云フ良圃
美田ガ出來ルト云フコトハ北海道ヤ樺太
ニ移民ヲヤルヨリモ、モット得ダラウト思ヒ
マスカラ、ドウゾ皆サンニ於テモ御審議ノ
上、此建議案ガ通過スルヤウニ御贊成ヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=66
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067・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第二十三、趣旨辯
明、崎山武夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=67
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068・崎山武夫
○崎山武夫君 此處デ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=68
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069・秋田清
○議長(秋田〓君) 許可シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=69
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070・崎山武夫
○崎山武夫君 禁獵區內ニ於ケル鶴ノ保護
竝ニ農產物ノ損害賠償ノ問題デアリマス
ガ、是ハ旣ニ此理由書ノ中ニ委細認メテア
リマスルカラ省略致シマシテ、諸君ノ御贊
成ヲ得テ一日モ早ク此案ノ通過スルコトヲ
御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=70
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071・上田孝吉
○上田孝吉君 日程第二十二及第二十三ノ
兩案ヲ一括シテ、議長指名九名ノ委員ニ付
託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=71
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072・秋田清
○議長(秋田浩君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=72
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073・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第二十
四乃至第二十六ハ便宜上一括議題ト爲スニ
御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=73
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074・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程第二十四、新潟築港ニ關スル建議
案、日程第二十五、霧島山ヲ中心トスル國
立公園指定ニ關スル建議案、日程第二十六、
肝屬川治水工事著手ニ關スル建議案、右ヲ
一括シテ議題ト爲シ、各別ニ提出者ノ趣旨
辯明ヲ許シマス
第二十四新潟築港ニ關スル建議案
(中野寅吉君提出)
第二十五霧島山ヲ中心トスル國立公
園指定ニ關スル建議案(崎山武夫君
外二名提出)
第二十六肝屬川治水工事著手ニ關ス
ル建議案(永田良吉君外三名提出)
新潟築港ニ關スル建議案
新潟築港ニ關スル建議
政府ハ新潟縣新潟港ヲ七千噸級船舶一隻
五千噸級船舶二隻三千噸級船舶一隻ヲ碇
泊セシムルニ足ルヘキ程度ニ修築ヲ施シ
以テ對岸ノ〓津雄基城津元山諸港トノ連
絡ヲ保チ將ニ成ラムトスル吉會線ニ依ル
國際的交通路ノ機能ヲ完カラシメラレム
コトヲ望ム
右建議ス
霧島山ヲ中心トスル國立公園指定ニ關
スル建議案
霧島山ヲ中心トスル國立公園指定ニ
關スル建議
霧島山ヲ中心トセル一帶ノ地ヲ國立公園
ニ指定セラレムコトヲ望ム
右建議ス·
肝屬川治水工事著手ニ關スル建議案
肝屬川治水工事著手ニ關スル建議
肝屬川治水工事ノ速成ハ該地方民救濟竝
產業開發上最急務ナリト認ム政府ハ速ニ
其ノ工事ヲ昭和七年度ヨリ著手セラレム
コトヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=74
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075・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第二十四、趣旨辯
明中野寅吉君
(「簡單々々」ト呼フ者アリ〕
〔中野寅吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=75
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076・中野寅吉
○中野寅吉君 是ハ簡單ト仰シヤルカラ、
モウ極ク簡單ニ致シマセウ、東京上野ヲ發
シマシタ汽車ハ(笑聲起ル)笑フコトヂヤア
リマセヌ私ハ簡單ニヤッテシマフ、本當
ニ-東京ノ上野ヲ發シマシタ汽車ハ七時
間デ新潟ニ著キマス、新潟ヲ出發シタ船ハ
三十時間ニシテ成鏡北道ノ〓津ニ著キマ
ス、〓津ノ驛ヲ發シタ汽車ハ、會寧線完成
ノ曉ニ於テ、滿洲國ノ新首都長春ニ十四時
間デ著キマス、卽チ上野ヨリ滿洲國ノ新首
都デアル所ノ長春ニハ五十一時間デ著イテ
シマフノデアリマス、先刻申上ゲマシタ通
リ會寧線ノ完成ハ、來年五月末ニ出來テシ
マフ、其處ニ國際列車ガ通フ、然ルニ對岸
ノ〓津港ハ二百二十万噸ノ呑吐力アルニ拘
ラズ、其對岸ノ對等港ナル新潟ハ僅ニ九十
万噸ノ呑吐力ヨリシカナイノデアリマス、
仍テ此北鮮北滿ノ大貨物ヲ消化スルニハ敦
賀港ダケデモ足リナイ、伏木港デモ足リナ
イ、ドウシテモ此北鮮北滿ノ大物資ノ呑吐
港ノ中心ト云フモノハ新潟港ニ置キマシ
テ、東北六縣、北信八州、北海道、關東一
圓ノ經濟力ヲ此處ニ伸ス必要ガアルガ故
ニ、私ハ更ニ此新潟港ヲ先ヅ五百万噸位ノ
收容力アルヤウニ改築シテ、以テ北鮮、北
滿ノ大物資ノ呑吐港トシタイト思フ、是ガ
爲ニ決シテ敦賀港ヲ閑却スルニ非ズ、伏木
港ヲ閑却スルニ非ズ、伏木ニハ伏木ノ任務
アリ、敦賀ニハ敦賀トシテノ任務ガ自ラア
リマスカラ澤山ダ、併シ帝都ノ近道デアル
所ノ新潟港ハ、ドウシテモ是ハ大ナル働キ
ヲシテ貰ハナケレバナラヌカラ、此建議ヲ
出シタ次第デアリマス、モウ遠イコトデハ
ナイデスヨ、五月ノ末ニ會寧線ガ軍隊援護
ノ下ニ出來上ッテ、サウシテモウ其處ニ國際
列車ガ通フデス、向岸ノ列車ヲ眺メテ居〓
テ、此方ハ其荷物ヲ受ケルコトガ出來ナイ
ト言ノタナラバ、是ハ內地人ノ恥デアリマ
ス、何卒御審議ノ上御協贊アランコトヲ御
賴ミ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=76
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077・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第二十五、趣旨辯
明、崎山武天君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=77
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078・崎山武夫
○崎山武夫君 本案モ此席カラ御許シヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=78
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079・秋田清
○議長(秋田〓君) 許可シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=79
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080・崎山武夫
○崎山武夫君 本案ノ理由ハ既ニ此議案ニ
附イテ居リマス理由書ニ於テ明デアリマス
カラ之ヲ省略致シマシテ、何レ其內容ハ委
員會ニ於テ御說明ヲ致シタイト思ヒマス
何卒諸君ノ愼重ナル御審議ニ依リマシテ、
本案ノ通過ニ御贊成アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=80
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081・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第二十六、趣旨辯
明、永田良吉君
〔永田良吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=81
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082・永田良吉
○永田良吉君 肝屬川治水工事ノ建議案ニ
對シマシテ極ク簡單ニ說明申上ゲマス、肝
屬川ハ鹿兒島縣ノ大隅半島ニアル川デア
ルノデアリマス、是ハ去ル大正三年ニ櫻島ガ
大噴火ヲ致シタ際ニ慘害ヲ被ッタ河川デア
ルノデアリマス、其後每年雨ノ降ル度每ニ、
上流ノ方カラ噴火ノ降灰ヤ土砂ヲ本流ノ方
ニ押流シマシテ、今デハ流域百箇町村ノ良
田ガ、殆ド一万町步モ浸水ノ爲ニ非常ナル
慘害ヲ被シテ居ルノデアリマス、是ガ爲ニ年
年收獲ハ非常ナル減少ヲ致シマシテ、其被
害ガ年額百万圓ニ達シテ居リマス、而シテ
今ヤ其流域地方ノ農民ハ是迄ノ間、十數年
ノ間、或ハ耕地整理組合ヲ組織スルトカ、
或ハ町村組合ヲ組織シマシテ、先ヅ地方ノ
町村費ヤ縣費ノ補助ヲ仰ギ、農民モ自ラ費
用ヲ負擔シマシテ第一起債ヲ致シタノデア
リマス、其起債額ガ合計シテ見マスト、百
六十餘万圓ニ達シテ居リマス、サウ云フ莫
大ナ起債ヲ起シマシテ、此工事ノ復舊ニ當ッ
タノデアリマスガ、一度工事ヲ始メマスト、
度々是ガ工事半バニシテ破壞ヲセラレタノ
デアリマス、而シテ今ヤ此地方ノ農民ハ一
般ノ經濟界ノ疲弊ト共ニ、尙ホ從來ノ卽チ
此起債ノ利息ノ拂込ノ爲ニ非常ナル苦痛ヲ
感ジテ居ルノデアリマス、何卒此地方農民
ノ苦痛ヲ救濟セラレル意味ヲ以チマシテ、
私ハ同河川ガ速ニ工事著手ニ相成ルヤウニ
此建議案ヲ出シタ譯デアリマス、何卒皆樣
方ノ御贊成アランコトヲ希望スル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=82
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083・上田孝吉
○上田孝吉君 日程第二十四乃至第二十六
ノ三案ハ一括シテ〓瀨一郎君提出、衆議院
議員選擧法中改正法律案ノ委員ニ併セ付託
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=83
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084・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=84
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085・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=85
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086・上田孝吉
○上田孝吉君 此際暫時休憩セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=86
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087・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=87
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088・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ暫時休憩致シマス
午後四時十分休憩
午後四時四十五分開議
〔閑院宮春仁王殿下台臨アラセラレタル
一日、議長及總員起立敬禮〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=88
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089・秋田清
○議長(秋田〓君) 休憩前ニ引續キ會議ヲ
開キマス、日程第二十八、航空省設置ニ關
スル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者ノ趣
旨辯明ヲ許シマス-提出者永田良吉君
第二十八航空省設置ニ關スル建議案
(永田良吉君外一名提出)
航空省設置ニ關スル建議案
航空省設置ニ關スル建議
政府ハ我カ帝國民間航空ノ發展ヲ圖ル爲
速ニ航空省ヲ開設セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔永田良吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=89
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090・永田良吉
○永田良吉君 航空省設置ニ關スル建業
ノ說明ヲ致シマス、我國ノ國防上今日最モ
急務ヲ要スルコトハ、私ハ空軍ノ充備デア
ルト思フノデアリマス、而シテ此我國ノ空
軍ノ現有勢力ハ、確ニ列國ニ比シテ貧弱デ
アルト思フノデアリマス、特ニ私ハ我國ノ
民間航空ハ、戰時ノ場合ニ於テ空軍ノ豫備
隊トシテ、任務ガ頗ル重要デアルト思フノ
デアリマス、然ルニ此民間航空ノ勢力ハ甚
ダ貧弱デアルノデアリマス、是ガ國防上、
交通上ニ取リマシテ、私ハ洵ニ寒心ニ堪ヘ
ザル程、貧弱デアルト云フコトヲ信ズルノ
デアリマス、以上ノ見地ニ於キマシテモ、
我國ノ空軍ノ充備ト民間航空ノ發展ハ、頗
ル重要デアルト信ジママスガ故ニ、速ニ此航
空省ヲ新設シテ貰ヒタイト思フノデアリマス
尙ホ又一面私ハ航空行政ノ上カラ、我國
ノ現狀ハ甚ダ統一ヲ缺イテ居ルモノト信ジ
やっ、第一、陸軍ハ陸軍デヤッテ居ルシ、海
軍ハ海軍デヤッテ居ル、尙ホ〓究ノ如キハ
文部省デモヤッテ居レバ、遞信省ノ方デモ
ヤッテ居ル、卽チ四省ニ分レテ居テ、何等聯
絡モ統一モ取レテ居ラナイ、殊ニ〓究ノ如キ
ハ、或ハ陸海軍、民間等ニ於テ、各、〓究
スベキ條項モアリマスケレドモ、或ル場合
ニ於テハ之ヲ統一シテヤ,タ方ガ效果モ擧
ルシ、經費モ省ケルノデアリマス、然ルニ
是等ガ統制ヲ缺イテ居ル結果、尙ホ航空省
ガナイ爲ニ、餘計ナル經費ト無駄ナ時間ヲ費
シテ、其能率ガ擧シテ居ナイ所ノ實例ガア
ルノデアリマス、私ハ斯ウ云フ點カラ考へ
マシテモ、確ニ航空省ハ早ク設置シタ方ガ、
有利デアルト思フノデアリマス、從來斯ル
傾向ガアリ、歐洲ノ列國ニ於テモアッタノデ
アリマスケレドモ、先年英國ヲ初メ、佛蘭西
モ伊太利モ空軍省ヲ設置シマシテ、是ガ統一
ヲ圖ッテヤッテ居ルノデアリマス、又オ隣リノ
米國ノ如キモ、マダ航空省ハ設置シテ居リ
マセヌケレドモ、矢張次官ノ局ヲ置イテカ
ラ、是ガ〓究ヲ圖リ、尙又近ク航空省ノ設
置ヲ進メンガ爲ニ、非常ニ輿、論ノ喚起ガ盛
デアルト云フコトヲ聞イテ居リマス
以上ノ見地カラシテ私ハ、我國ノ航空省ノ
設置ハ、洵ニ急務中ノ急務デアルト信ズル
ノデアリマス、此故ヲ以テ私ハ早ク航空省
ノ設置ニ依リ、民間航空ノ進展ト、竝ニ陸
海軍防空ノ充備ノ爲ニ、速ニ航空省ノ設置
ヲ望ンデ已マヌ次第デアリマス、以上デゴ
ザイマスガ、是本案ヲ提出シタ理由デアリ
マスカラシテ、何卒贊成アランコトヲ希望
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=90
-
091・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ政府提出昭和七年法
律第一號中改正法律案外五件ノ委員ニ併セ
付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=91
-
092・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=92
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093・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=93
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094・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ議事日程ヲ追加シ、政
府提出絲價安定融資擔保生絲買收法案、及
絲價安定融〓損失善後處理法案ヲ上桂シ、
其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=94
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095・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=95
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096・秋田清
○議長、秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程ハ追加セラレマシタ、絲價安定融
資擔保生絲買收法案、絲價安定融資損失善
後處理法案、右兩案ヲ一括シテ其第一讀會
ヲ開キマス-農林大臣後藤文夫君
絲價安定融資擔保生絲買收法案(政府
提出)第一讀會
絲價安定融資損失善後處理法案(政府
提出)第一讀會
絲價安定融資擔保生絲買收法案
絲價安定融資擔保生絲買收法
第一條政府ハ生絲ノ價格ノ安定ヲ圖ル
爲左ニ揭グル生絲ヲ一括シテ買入ルル
コトヲ得
-銀行ガ絲價安定融資補償法第一條
ノ規定ニ依リ本法施行前ニ政府ト爲
シタル損失補償ノ契約ニ基キ生絲ノ
製造又ハ加工ヲ爲ス者ニ對シテ爲シ
タル資金融通ノ擔保タル生絲七千四
百四十一荷口
二銀行ガ帝國蠶絲株式會社ニ對シ同
社ガ絲價安定ノ爲昭和四年十一月ヨ
リ昭和五年六月迄ノ間ニ於テ行ヒタ
ル生絲共同保管事業ノ資金トシテ爲
シタル資金融通ノ擔保タル生絲二千
三百九十荷口
第二條生絲ノ買入代價ハ一荷口四千五
百二十二圓二十五錢トス
政府ノ買入レタル生絲中檢査ノ結果品
質著シク不良ナリト認ムルモノアルト
キハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ買入
代價ノ一部ヲ返還セシム
第三條政府ハ其ノ買入レタル生絲ヲ命
令ノ定ムル所ニ依リ第一條ノ銀行ヲシ
テ保管セシムルコトヲ得
前項ノ保管ニ要スル經費ハ銀行ノ負擔
トス
第四條生絲ノ買入代價ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ其ノ買入ノ日ヨリ五年間ニ之
ヲ分割シテ支拂フコトヲ得
第二條第二項ノ返還金ハ前項ノ支拂金
額ヨリ之ヲ控除スルコトヲ得
第五條生絲ノ買入代價ハ五分利附國債
證劵ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第六條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
ル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行
スルコトヲ得
第七條本法ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ時價ヲ參酌シテ主務大臣之
可以太
第八條政府ノ買入レタル生絲ノ處分ハ
命令ノ定ムル所ニ依リ新規ノ用途又ハ
販路ニ向ケラルベキ場合ニ限リ之ヲ爲
スコトヲ得
第九條前條ノ規定ニ依ル生絲ノ處分ニ
依ル收入金ニ相當スル金額ハ國債整理
基金特別會計法第二條ノ規定ニ依ル繰
入ノ外國債ノ元金償還ニ充ツル爲之ヲ
一般會計ヨリ國債整理基金特別會計ニ
繰入ルベシ但シ本法ニ依リ發行シタル
公債ノ前年度首ニ於ケル未償還額ノ万
分ノ百十六ニ相當スル金額ニ付テハ此
ノ限ニ在ラズ
第十條本法ノ適用ニ付テハ產業組合中
央金庫ハ之ヲ銀行ト看做ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第九條但書ノ規定ニ依リ繰入ヲ要セザル
金額ハ當分ノ内本法ニ依リ發行シタル公
債ノ前年度首ニ於ケル未償還額ノ万分ノ
百十六ニ相當スル金額ノ三分ノ一トス
絲價安定融資損失善後處理法案
絲價安定融資損失善後處理法
第一條政府ハ銀行ニ對シ左ノ各號ノ一
ニ該當スル銀行ノ損失ニ付千五百八十
七万圓ヲ限リ之ヲ補塡スルノ契約ヲ爲
スコトヲ得
一銀行ガ絲價安定融資補償法第一條
ノ規定ニ依リ本法施行前ニ政府ト爲
シタル損失補償ノ契約ニ基キ損失ノ
補償ヲ受ケタル場合ニ於テ尙補償ヲ
受ケザル損失アルトキハ其ノ損失
二銀行ガ帝國蠶絲株式會社ニ對シ同
社ガ絲價安定ノ爲昭和四年十一月ヨ
リ昭和五年六月迄ノ間ニ於テ行ヒタ
ル生絲共同保管事業ノ資金トシテ生
絲ヲ擔保トシテ爲シタル資金ノ融通
ニ付受ケタル損失
前項第二號ノ損失ハ銀行ガ擔保トシテ
受取リタル生絲ニ付債權ノ辨濟ヲ受ケ
尙不足アルトキ其ノ不足分トス
第二條政府ノ補塡スベキ額ハ損失補塡
ノ契約ニ定ムル條件ニ從ヒ絲價安定融
資補償法ニ依ル絲價安定融資補償審査
會之ヲ決定ス
第三條政府ガ銀行ニ對シテ交付スベキ
損失補塡金ハ五分利附國債證劵ヲ以テ
之ヲ交付スルコトヲ得
第四條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
ル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行
スルコトヲ得
第五條本法ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ時價ヲ參酌シテ主務大臣之
マルチノ
第六條絲價安定融資補償法第九條ノ規
定ハ同法第一條ノ規定ニ依リ本法施行
前銀行ガ政府ト爲シタル損失補償ノ契
約ニ付テハ之ヲ適用セズ
第七條損失ノ補塡ヲ受クルノ契約ヲ爲
シタル銀行ガ本法ニ基キテ發スル命令
又ハ損失補塡ノ契約ニ違反シタルトキ
ハ政府ハ契約ヲ解除シ、損失ノ全部若
ハ一部ニ付補塡ヲ爲サズ又ハ損失補塡
金ノ全部若ハ一部ノ償還ヲ命ズルコト
ヲ得
第八條本法ノ適用ニ付テハ產業組合中
央金庫ハ之ヲ銀行ト看做ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=96
-
097・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 絲價安定融資擔
保生絲買收法案ノ提案理由カラ御說明ヲ申
上ゲマス、昭和四年及五年ニ於キマシテ、
絲價ノ安定ヲ圖ル爲ニ、本邦生絲ノ市場ニ
出來テ參リマシタ、所謂滯貨生絲ナルモノ
ノ處理ニ付キマシテハ從來政府へ愼重ニ
考究ヲ重ネテ參フタノデアリマスガ、本年四
月此滯貨ヲ一掃シテ、所謂蠶絲業ノ癌ヲ除
ク趣旨ヲ以チマシテ、一括賣却ヲ斷行スル
ニ至ッタノデアリマス、然ルニ其後諸般ノ事
情ノ變化ノ爲ニ、右一括賣買ハ其契約ノ
本旨ニ從フテ完全ナ履行ヲスルコトガ困難
ナ狀況トナリマシテ、賣買兩當事者合意ノ
上右賣買契約ヲ解約スルコトヽナッテ、政
府ニ其認可ヲ申請致シテ參ノタノデアリマ
ス、政府ハ繭絲價ノ狀況其他ニ付キマシテ、
深甚ノ考慮ヲ拂ヒマシタ結果、絲價委員會
ノ議ヲ經テ、右申請ニ對シテハ認可ヲ致シ
マシタ、然ル所目下春繭ノ出廻期ニ際シテ
居ルノデアリマス、繭ノ價、絲ノ價低落ノ趨
勢ハ極メテ著シクアリマス蠶絲業全般ガ
重大ナル危機ニ當面シテ居ル實情ニ鑑ミマ
シテ、右解約後滯貨絲ヲ再ビ從前ノ狀態ニ
復歸シタ儘ニ推移シマス時ハ斯業ノ基礎ヲ
動搖セシメ延イテハ疲弊セル農村經濟ニ
對シテ一大打擊ヲ與フルノ虞レガアリマス
カラ、事態洵ニ捨置キ難イモノガアルノデ
アリマス、是ニ於キマシテ殘存帶貨生絲ニ
對シ、根本的ナ處理方策ヲ講ジ、徹底的ニ
其壓迫ヲ排除致シマシテ、蠶絲業ノ不安ヲ
一掃スルノヲ以テ、國家焦眉ノ急務ト考へ
タ次第デアリマス、是カ爲ニハ現下ノ實情
ニ於テハ、政府ハ之ヲ一括シテ買收ヲ致シ
マシタ上、從來ノ消費領域ヲ侵スコトナク、
新規用途ノ開拓等ニ努メマシテ、適當ニ消
化スル〓トヽスルノ外ハナイノデゴザイマ
ス、本法律案ハ只今迄述べマシタヤウナ趣
旨デ出來テ居リマシテ、本邦重要產業タル
蠶絲業ノ維持發展、農村經濟ノ打開等ノ爲
メ緊急已ムヲ得ザル事情ニ卽シテ提出ヲ
致シタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上、
速ニ御協贊アランコトヲ望ミマス(拍手)
尙ホ引續キマシテ絲價安定融資損失善後
處理法案提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、
絲價安定ノ爲ニ生ジマシタ所謂滯貨生絲ノ
處理ニ付キマシテハ、其殘存滯貨ヲ政府ニ
於テ買收スル爲ニ、法律案ノ御協贊ヲ只今
御願ヒ申上ゲタ譯デアリマスルガ、此滯貨
生絲ハ銀行ガ之ヲ擔保トシテ金融ヲ致シマ
シタ當時ニ比シテ、絲ノ價ガ著シク低落シ
テ居リマスルコトヽ保管期間ガ長期ニ亙フ
タ關係上、擔保生絲ノ賣却代金ヲ以テ致シ
マシテハ、製絲家ノ債務ヲ返濟シ得ル額ハ
割合ニ少額デアリマシテ銀行ニ對シテ尙
ホ巨額ノ債務ヲ殘スコトニナルノデアリマ
ス、然ルニ製絲家ノ現狀ハ連年ノ不景氣ニ
禍セラレマシテ、此巨額ノ債務ノ全部ヲ負
擔スルコトハ殆ド不可能ノ狀態デアリマ
ス、隨テ銀行ガ其殘債權ヲ其儘行使致シマ
スニ於テハ債務者ニ致命傷ヲ與ヘ延イ
テハ本邦ノ重要產業デアル蠶絲業全般ノ基
礎ヲ破壞スルノ虞レガアリマスルノデ、製
絲家ニハ其負擔能力ニ應ジテ負擔セシムル
ハ勿論デアリマス、又銀行ニ於テモ相當ノ
犠牲ヲ拂ヲノモ勿論デアリマスガ、尙ホ殘
存スル製絲家ノ債務ハ、政府ニ於テ之ヲ負
擔致シマシテ、蠶絲業ノ危機ヲ救助スルコ
トハ矢張已ムヲ得ナイ事情デアルノデアリ
マイ、斯ノ如ク國家ニ對シテ負擔ヲ餘儀ナ
クセシムルニ至リマシタコトハ、寔ニ遺憾
ニ堪ヘナイ次第デアリマス、將來ニ再ビ斯
ノ如キ負擔ヲ國家國民ニ掛ケマセヌヤウニ
スルコトハ當業者ハ勿論、政府ニ於テモ
固ヨリ必要ナコトデアリマシテ、當業者ニ
對シマシテ其覺悟ヲ促シマスト共ニ、政府
ニ於キマシテモ、速ニ斯業ノ根本的安定策
ノ樹立實行ヲ期シテ居リマシテ、成案ヲ得
ルモノニ付キマシテハ次ノ議會ニ提出シ
テ、御協賛ヲ願ヒタイト存ジテ居ル次第デ
アリマス、本法律案ハ上述ノ如ク、本邦重
要產業タル蠶絲業ノ維持更生ノ爲メ已ムヲ
得ザル事情ニ依シテ提出致シタ次第デアリ
マス、何卒十分ニ御審議ノ上、速ニ御協賛
アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=97
-
098・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ノ通〓ハアリマセ
又、右議案ノ審査ヲ附託スヘキ委員ノ選擧
ヲ議題ト致シマス
右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=98
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099・上田孝吉
○上田孝吉君 兩案ヲ一括シテ議長指名二
十七名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=99
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100・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=100
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101・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ、是ニテ日程ハ
全部議了致シマシタ、次囘ノ日程ハ公報ヲ
以テ御通知致シマス、本日ハ是ニテ散會致
シマス
〔閑院宮春仁王殿下御退席ニ付議長及總
員起立敬禮〕
午後四時五十八分散會
松岡俊三君演說參照
雪害第二建白書
謹ンデ雪國日本人ノ心情ヲ再ビ錄シテ
閣下ノ御〓鑒ヲ仰ギ候。
夫レ天ノ作爲ハ人智ノ進步ヲ以テ果
シテ對抗シ得ザルモノナルカ。天、之ヲ
降ラシ民ノ生活ヲ脅威ニ導ク積雪ハ、人
力ノ以テ如何トモ爲シ能ハザルモノナル
カ。吾人甚ダ之ニ惑フ。
天、豪雨ヲ降ラシテ橋梁堤防ヲ破壞ス
ルヤ、國家ハ行政ノ偉力ヲ以テ直チニ之
ヲ修補シ倍舊ノ觀ヲ呈サシム、爲メニ住
民益々政治ヲ德トス天、大風ヲ送リテ
破壞橫行到ラザルナシト雖、熄ムニ從ッテ
舊態ヲ更メ、眞ニ大風一過、跟跡ヲ止ム
ルナシ。又天地鳴動、震撼災禍、數次之
ヲ襲フモ住民他ニ轉ズルヲ欲セズ、政治
ノ妙力玆ニ發揮スルガ故ニ然ル也。更に
旱害ノ慘アラバ直チニ公租公課ノ減免ヲ
以テ之ヲ償ヒ、降霜、耕地ヲ害スルヲ見
レバ、巨額ノ補助ヲナスニ止マラズ、講
學探究以テ未然防止ノ術ヲ作ルニ努ム。
更ニ火ヲ弄ビ、火ヲ失シ、以テ擴大スル
ヲ報ズルヤ、之ヲ慰ムルニ其足ラザルヲ
恐ルヽニ似タリ。
夫レ斯ノ如ク震火災、風水害、旱害、
霜害ハ所謂災害ト目シテ、政府ハ法律勅
令ニ、補助、保護ノ名實ヲ規定シ、社會
人ノ心理亦之ニ隨フヲ見ル。而シテ獨リ
天ノ作爲スル降雪積雪ハ、政府ノ律令百
般ニ災害ト見做サズ、補助、保護ヲ與フ
ル所絕無ナリ。
抑々滿天矇々、滿地ヲ淨化セズンバ止
マザル降雪積雪ハ美的ナルガ故ニ天災
ニハ非ラザル哉。之ヲ震火災、風水害、
早害、霜害ノ災害トハ相區別シテ帝國法
令ノ災害規定外ニ置クベキ性質、果シテ
如何ナル理由ニヨリテ然ルカ。
少シク雪害ノ一端ヲ舒スレバ、靑森縣
一人ノ生產額ハ百二十圓ニシテ日本最下
位山形縣民ハ百三十圓ニシテ帝國第二
ノ低劣生產額ナリ。又靑森縣一箇年ノ降
雪日數ハ百六日ニシテ終年ヲ通ジ快晴
ノ日僅カニ十日アルノミ、山形縣ハ同九
十六日ノ降雪アリテ二十二日ノ快晴ヲ見
ル之ニ反シ和歌山縣ハ降雪五日、快晴七
十六日ニシテ生產額二百七十七圓ナリ。
若シ夫レ國、縣市町村稅ノ諸負擔一
人當リヲ生產額ニ對シ比較檢討セバ靑
森縣民ハ十六圓三十一錢ニシテ割三分
五厘(國內第三位ノ高率)、山形縣民ハ十
九圓七十一錢トナリ一割五分(國内第二
位ノ高率)、和歌山縣民ハ十七圓五十九錢
ニシテ六分三厘(國中最低稅金)トナリ、
〓ネ積雪地帶ノ住民ハ生產甚ダ少ナキニ
反シ稅負擔却ツテ高ク且生活ニ苦シミ、
暖國同胞ノ稅負擔ハ大イニ低キニ反シ生
產額特ニ高クシテ生活ニ餘裕アルハ、內閣
統計ノ歷然タル數字之ヲ語リテ明證ス。
負擔能力ノ所有者ニ之ヲ課スルハ固ヨ
リソノ所ナルモ、實力之ニ伴ハズシテ苛
重負擔ノ責ニ任ゼンカ、結論的窮迫ハ名
狀スベカラザルモノトナルノミ
卽チ雪國民人ノ〓育費ハ漸減シ、衞生
費ハ極度ニ節約サレ、爲メニ人材ハ虛器
ヲ擁シテ空シク埋レ、反對ニ乳幼兒成人
共ニ死亡ノ高率ヲ示シ眼病、盲人ハ驚ク
ベキ多數ニ達シ、其ノ生命ヲ繋グニノミ
汲々乎トシ、人生ノ向上ニ奮鬪スル能ハ
ズシテ只死所ヲ急グニ似タリ。生ヲ同一
國內ニ享ケ、雪國人タルガ故ニ斯ノ如ク
ナラザルヲ得ザルベシトスレバ、一片烈
烈ノ淚ナクシテ正觀ヲ許スモノナランヤ。
明治三十五年東北六縣ニ凶作アリ、大
正二年東北六縣ニ凶作再來シテ飢餓畜類
ニ及ブ。而シテ本年三度、凶作東北ノ天
地ヲ襲ヒ餓孚將ニ途ニ橫ハラントス。
聖上畏クモ大御心ヲ國中ノ凶作ニ痛メ
サセ給フ事、維新後三度、皆悉ク東北六縣
ニノミ存シ、他府縣ニ未ダ其ノ事絕無ナ
リ。我等、聖恩ニ感泣シ日夜之ヲ拜シテ、
尊皇奉國ノ誠ヲ抽ンデト相語リ、相傳フ。
故ニ凶作一家ヲ破ルモ、國策國難ニ臨ン
デハ酷寒滿蒙ノ最先出征ニ從ヒ、父兄ハ
喜ンデ之ヲ送リ健兒ハ勇ンデ死地ニ就
ク、焉クンゾ忠良斯ノ如クナルモノアリヤ。
從順、純朴、嬉々トシテ完全ニ國家ノ
義務ヲ果スハ吾等雪國日本人ナリト、敢
テ閣下ニ告白スルヲ躊躇セザルモノナ
リ然ルニ顧ミテ、墓〓ノ山河、割期的
ニ凶作相次イデ來ル。降雪、積雪連年夥
シク、百五十五日間ヲ雪中穴居ニ等シカ
ラシムルノ結果ハ、生產ニ腐心シテ生產
ヲ不可能ナラシメ、融雪頽雪ハ災害ヲ屢、
作リ、道路橋梁ノ破壞腐朽カ頗ル甚シク、
其ノ他ノ各般之ガ爲メニ阻碍セラレ、支
出自ラ激增シ、負擔ノ苛重前述ノ如ク國
內一、二ノ高位ヲ占ム。然リ而シテ國家ハ
低劣ナル生產ト高率ナル稅負擔ノ原因ト
ヲ、監督、調査、育成ノ途ヲ講ズル事ヲ
敢ヘテ爲サズシテ、各縣ソノ爲スガ儘ニ
放置ス、恰カモ弱肉强食、群雄割據、封
建ノ幕政ニモ似タルガ如ク、統一日本政
治ノ實何レニアリヤヲ疑ハシメントシ
テ、爲政者平然タリ。吁、危イ哉。
東北ノ雪國民、稚心ニシテ愛スベク、
鈍重ニシテ掬スベク、無知ニシテ憐ムベ
ク、未ダ憲政本義ノ權利ヲ善解セズ、進
ンデ暢達ノ途ヲモ求メズ。
又連年雪害ニヨル經濟彈力ノ微弱ハ、
一度凶作ニ逢フヤ遂ニ草根木皮ヲ食スル
ニ至リ、雪害亦恢復ヲ阻ミテ容易ニ立直
ルヲ得ザルニ、再ビ三度、凶作ハ周期的
定石法ノ如ク猛襲ス。然ルニ政府ハ降
雪、積雪ヲ災害ト認メズ、凶作ノ遠因隋
力ハ雪害ニアルベキヲ努メテ知ラザラン
トスルニ近シ。
而シテ一時的表現ノ凶作ヲ捉ヘテ、義
損救濟ヲ叫ブトハ何ゾヤ、夫レ政府ハ
爲スベキノ責務ヲ怠リ、其ノ此處ニ到ラ
ザルヲ得セシメテ、却ッテ天爲ニ轉嫁シ、
恩ヲ雪國民ニ賣リ、彼等ヲ驅ヲテ叩頭哀願
ノ卑屈心ヲ培養セントスルモノヽ如シ。
誤レルノ甚シキ天下未ダ斯ノ如キモノア
ルヲ見ズ。政府ハ只速カニ正常ノ事ヲ正
シク爲セバ可也。
噫々、東北ノ雪國人之ヲ愬へザルノ罪
カ、愬ヘザルガ故ニ爲政者之ヲ放置シテ
顧ミザルハ當然ナルカ、吾人甚ダ惑ナキ
能ハザル也、天爲ハ人力ノ以テ如何トモ
爲シ能ハザルモノナリトセバ、政府ハ震
火災、風水害、旱害、霜害ヲ災害ト認メ
テ、法令ニ保護、補助ヲ規定シ、且ツ進
ンデ防止ノ〓究ニ學術ヲ應用スルハ自己
矛盾ナリ。
天ノ同一作爲タル雪害ヲ災害規定ノ圈
外ニ置キ、國家ノ法律命令ニ寸毫微塵モ
保護、補助ヲ加味スルナク、且ツ帝國議
會ハ三度決議シタルモ未ダ對應〓究ノ手
ヲ染メズ。
況ンヤ海中漁獲ノ水產モ、地中採鑛ノ
鑛業モ、以テ國家ノ產業發展ニ資スルト
コロ大ナリトシテ補助保護ニ努メテ周到
到ラザルナキニ拘ハラズ、國內人口ノ三
分ノ一ヲ占ムル雪國千五百万民ガ、一年
百五十日間ノ雪中穴居ノ浪費ヲ絕滅セシ
メテ生產ニ移ラシメ、陰慘ノ精神ヲ快濶
ナラシメ、活潑剛健ノ體質ナラシムル等、
一石三鳥ノ效果的雪害對策ノ工夫ヲナサ
ザルハ、果シテ國家ニ忠ナル爲政者ト謂
フヲ得ベキカ。
顧ミテ、雪害問題ト雪國日本人ノ生活
實情トハ、思想的觀察價値ナシト誰カ斷
ズルゾ
陛下ノ同一赤子タル雪國日本人ハ、國家
ノ義務ヲ完全ニ果シテ權利ヲ未ダ主張セ
ザル者ナルヲ、爲政者ハ牢記セザルベカ
ラザル也。
思想的觀察價値ノ最モ必要ナルモノナ
リト判斷シタル吾人ハ憂國ノ〓情、拱
手默念ヲ許サズ、敢テ雪害第二建白書ヲ
奉ル所以也。
希クハ何卒御深憂ヲ賜ハリ國家百年ノ
悔ヲ絕タレンコトヲ懇望仕候謹白
昭和七年一月一日
東京市外千駄ヶ谷町大字原宿百七十番地
雪害問題提唱者衆議院議員
松岡俊三
附言昭和元年末ヨリ前後六箇年、微
力ナルモ單身雪害ヲ〓究調査シ、對
案小策ヲ有ス。
衆議院議事速記錄第四號中正誤
頁段行誤正
三二二七ナリマスカナリマスガ
三三一二理事ハシテ理事ヲシテ
三三一八私ガ私
四八三三二「市町村義務〓育費」ノ八字
ヲ削除ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00519320607&spkNum=101
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