1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
製鐵業奬勵法中改正法律案
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委員氏名
委員長 伯爵 樺山愛輔君
副委員長 男爵 渡邊汀君
公爵 島津忠重君
侯爵 中御門經恭君
子爵 曾我祐邦君
子爵 岡部長景君
子爵 大岡忠綱君
男爵 赤松範一君
男爵 園田武彦君
田所美治君
小坂順造君
稻畑勝太郎君
根津嘉一郎君
上郎清助君
磯村豐太郎君
野村茂久馬君
久恒貞雄君
澁澤金藏君
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昭和十一年五月二十三日（土曜日）午前十時二十八分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=0
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001・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) ソレデハ委員
會ヲ開會致シマス、政府委員ノ說明ヲ御願
ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=1
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002・小川郷太郎
○國務大臣(小川郷太郞君) 製鐵業奬勵法
中改正法律案ノ大體ノ趣旨ハ本會議々場ニ
於テ申上ゲマシタガ、玆ニ本法案ノ內容ニ
關シマシテ大略ノ御說明ヲ申上ゲタイト存
ジマス、製鐵業奬勵法第二條乃至第四條ニ於
キマシテハ、主務官廳ノ認可ヲ受ケ法定能
力以上ノ製鐵設備ヲ新設又ハ增設致シマシ
タル製鐵事業者ニ對シマシテ、所得稅及營
業收益稅ヲ免除致シテ居ルノデアリマスル
ガ、本邦製鐵事業ノ相當發達シタル現況ニ
鑑ミマシテ、全然之ニ免除ノ特典ヲ受ケシ
ムルノハ過當ナル保護ニ失シマスルノデ、
其ノ事業收益ガ法人ニアリマシテハ各事業
年度、個人ニアリマシテハ各年ノ、資本金
額ノ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金
額ヲ超過致シマスル場合ハ、其ノ超過利益
ニ對スル所得稅營業收益稅ハ之ヲ免除セヌ
コトニ致シタノデアリマス、法人ノ場合ニ
其ノ資本金額ノ年一割相當額ヲ免稅點ト致
シマシタノハ、其ノ收益ガ資本金額ノ年一
割ヲ超ユルガ如キ場合ニ於キマシテハ、其
ノ一割ヲ超ユル收益ニ對シ課稅致シマシテ
モ、通常ノ利益配當ヲ行ヒマシタ上相當ノ
社內留保ヲ爲シ得ルモノト考ヘラレマスル
ノデ、之ガ保護ニ缺クル所ナシト認メマシ
タカラデアリマス、尙此ノ場合ニ於テ資本
金額ト申シマスルノハ、拂込資本金ノ
ミナラズ、諸積立金ヲモ含メマシタモ
ノトスル積リデ居リマス、個人ノ免稅點ニ
付キマシテモ法人ノ場合ニ準ジタノデゴザ
イマシテ、其ノ資本金額ハ當該製鐵事業ニ
屬スル固定資本及運轉資本ノ合計額ニ依ル
豫定デゴザイマス、次ニ現行奬勵法第七條
ニ於キマシテ、所得稅及營業收益稅ノ免除
ヲ受クル製鐵事業ニ對シテハ、地方稅ハ之
ヲ免除スルコトト相成ッテ居リマスルガ、今
囘ノ改正ニ依リ賦課セラルヽ所得稅及營業
收益稅ノ附加稅ニ付テノミ、之ヲ賦課シ得
ルコトトシ、其ノ他ノ地方稅ハ從前通リ賦
課シ得ザルヤウニ致シマシタ、次ニ今囘ノ
改正法ハ、其ノ改正ノ趣旨ニ鑑ミマシテ、
今後新ニ認可ヲ受クルモノノミナラズ、現
ニ免稅ヲ受ケツヽアル者ニ對シマシテモ、
矢張リ之ヲ適用致シマスルノヲ適當ナリト
認メタ次第デゴザイマス、尙朝鮮ノ制令ニ
モ製鐵業奬勵法ノ免稅規定ト同ジ規定ガゴ
ザイマシテ、今囘同樣ナル改正ヲ致シマス
ルニ付キマシテハ、內地ニ本店ヲ有シ朝鮮
ニ工場ヲ有スル製鐵事業者ニ對シ、兩地ノ
所得及資本金額ヲ通算シ、一括改正法ヲ適
用致シマスルヲ適當ト認メマシテ、附則ニ
所得稅法ノ施行ニ關スル大正九年法律第十
二號中改正法律案ヲ揭ゲタル次第デゴザイ
やく、製鐵業奬勵法中改正法律案ハ、上述
ノ趣旨ニ基キマシテ立案セラレタルモノデ
ゴザイマス、何卒十分御審議ノ上御協贊ア
ラムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=2
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003・曾我祐邦
○子爵會我祐邦君 私ハ此ノ審議ニ入リマ
スルニ先ダチマシテ、鐵ノ國策ノ根本義ニ
付テ御伺ヒ致シタイノデゴザイマス、實八
中島商工大臣ガ日鐵ヲ合同セラレルニ當リ
マシテ、私共ハナカ〓〓其ノ時ノ當局者ノ
言ハレルヤウナ結果ヲ生ミ出スモノデナイ
ト云フ虞ヲ持チマシテ、反對ノ意見ヲ表シ
タノデアリマス、然ルニ時ノ商工大臣或ハ
製鐵所長官等ガ、屢〓私共二三ノ者ニ會見
セラレマシテ、色々御力說ニナッタノデアリ
やく、併シナガラ私共ハドウモアノ時、我
我ハ議會ニ於テ或ハ御說明ニ於テ言ハレル
所ノモノハ、合併後必ズ違ッタ結果ヲ生出ス
モノデアルト云フコトヲ信ジマシタケレド
モ、何シロ時ノ政府及ビ總テノ御方々ガ之
ニ確信ヲ以テ言ハレルヤウニ見エマスルカ
ラ、漸ク之ヲ信ジテ、我々ハ終ヒニハ協贊
ヲ與ヘタ次第デゴザイマス、然ルニ其ノ後
ニ於キマシテ現レマシタモノニ付テハ、私
ハ違ック結果ヲ生出シテ居ルト信ジテ居ル、
私ハ專門家デゴザイマセヌカラ、私ノ觀察
ガ間違ッテ居ルカ知レマセヌガ、此ノコトニ
付キマシテ現在ノ商工大臣ハ、其ノ時ノ中
島商工大臣ノ節ニ行ハレマシタ日鐵ノ問題
ニ付テハ、果シテ其ノ時代ニ豫想セラレシ
如クニ今日ニ至ッテ居ルヤ否ヤト云フ根本
義ヲ一ツ御伺ヒ致シタイノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=3
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004・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 日本製鐵會社
ガ出來マス時分ニ、其ノ當時ノ商工當局ガ
考ヘテ居リマシタコトハ、勿論其ノ當時信
念ヲ持ッテ居ッタノデアラウト考ヘマスガ、
其ノ後財界ノ事情、又鐵鋼界ノ事情ガ、其
ノ當時當局者ノ豫期シテ居ッタヤウニハ參ラ
ナカッタヤウニ思フノデアリマス、日本製鐵
會社ハ出來マシタケレドモ、豫期シテ居ッタ
總テノ會社ヲ合同スルコトモ出來ナカッタ
ノデアリマス、又ソレヲ今後ニ於テ無理ニ
合同ヲ豫期ノ通リニヤルト云フコトモ當ヲ
得ナイトモ考ヘテ居リマス、デ更ニ其ノ後
ニ於キマシテ鐵鋼ノ需要ト云フモノモ激增
シテ參ッテ居リマスシ、鐵鑛界モ先ヅ好況ヲ
示シテ居ルヤウナ次第デ、其ノ事情ニ立脚
致シマシテ此ノ鐵國策ハ立テラレナケレバ
ナラヌト考ヘテ居ルノデアリマス、今日ニ
於キマシテハ、銑鐵自給自足ト云フ一ツノ
目標ハ、私ハ從前ニ於テモ間違ッテ居ナカツ
タト思フ、今日ニ於キマシテモサウ云フ目
標ヲ以テ鐵國策ハ行ハナケレバナラヌト考
ヘテ居リマス、銑鐵ノ不足ニ付キマシテハ、
色々ノ方便ヲ以テ此ノ缺陷ヲ補ッテ、理想
ノ目標ニ向ッテ進ムベキモノダト考ヘテ居
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=4
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005・曾我祐邦
○子爵會我祐邦君 只今ノ御說明ニ依リマ
シテ、私共ガ考ヘテ居リマスルコトト稍〓近
イ御考ヲ、不幸ニシテ現當局モ御持チニナツ
テ居ル、之ヲ言換ヘマスレバ、前ノ當局者
ハ如何ニモ先見ノ明ガナカッタ、又其ノ責任
ノ輕カラザルモノガアルト云フコトヲ、誠
ニ國家ノ爲ニ遺憾ニ思フノデアリマス、併
シナガラ飜ッテ時代ノ急激ナル變化ノ力ニ
依ッテ斯ウ云フ變化ガ起ッタト仰セラレマス
ケレドモ、私ハ將來ニ於テ此ノ鐵ノ國策ト
云フモノハ、正ニ前車ノ覆リシ所ノ弊害ガ
明カニ今日分ッテ居ルノデアリマスルカラ、
將來ハ之ニ對シテ十分ノ注意ヲ拂ッテ根本
ノ方針ヲ立テテ、或ハ景氣ノ好イ場合、景
氣ノ惡イ場合、如何ナル場合ニモ對策ヲ講
ズルコトニ、彈力性ヲ持ッタ政策ヲ御作リニ
ナルコトガ私ハ必要デアラウト思フノデア
リマス、ソレデ其ノ節ノ委員會ノ速記ヲ今
日持合セテ居リマセヌケレドモ、隨分アノ
時ノ委員會ニ於キマシテハ、或委員ノ如キ
ハ、是ハ財閥ノ玩具ニナルノデハナイカ、
製鐵ノ統制ト云フケレドモ財閥擁護······
擁護ト云フ用語ガ使ハレタカ使ハレナカッ
タカ存ジマセヌガ、サウ云フ意味ノ御質問
ヲナサレテ居ルノデアリマス、然ルニソレ
ハサウヂヤナイト云フ御說明ガアッタヤウ
ニ記憶シテ居ルノデアリマスガ、最近聞及
ンデ居ル所ニ依リマスト、全ク其ノオ方ノ
御質問ト同ジヤウナ結果ニ實際ガ動イテ居
ルト云フコトヲ聞イテ居リマスガ、政府ハ
其ノ點ヲ何ト御覽ニナッテ居リマスカ、其ノ
點ヲ政府委員カラデモ宜シウゴザイマス、
ドナタデモ差支ゴザイマセヌカラ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=5
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006・小島新一
○政府委員(小島新一君) 私カラ御尋ニ對
シテ御答ヘ申上ゲマス、只今大臣カラ申上
ゲマシタ通リ、最近ニ於キマスル鐵鋼界ノ
非常ナル盛況、此ノ需要ノ增進ニ對シマシ
テ、日鐵ノミノ力ニ依リマシテハ、十分ニ
其ノ供給ヲ充タスコトガ參ラヌト云フヤウ
ナ事ニナッテ居リマス、併シナガラ日鐵會社
ニ於キマシテハ、當初ノ合同方針ニ基キ
マシテ、折角各種ノ改良擴張ニ努力致シテ
居リマシテ、當初ノ使命ノ如ク、低廉ナル
鐵鋼ヲ豐富ニ供給致スト云フ目途ニ向ッテ
進ンデ參ッテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、
只今御尋ノヤウニ特殊ノ會社救濟ノ意味ニ
於キマシテ、今日ノ日本製鐵會社ガ出來テ
居ルトハ、私共絕對ニ見テ居リマセヌ、日
本製鐵株式會社ニ於キマシテハ、當初ノ設
立ノ趣旨ニ向ッテ、現在ニ於テモ左樣デアリ
マスガ、將來モ一層進ンデ參ルベキモノト
考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=6
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007・曾我祐邦
○子爵會我祐邦君 モウ一ツ伺ヒタウゴザ
イマスガ、是ハ三ツ四ツノ問題ニ付テ一緒
ニ申上ゲマス、政府ハ、銑鐵需要ノ現狀ガ
圓滑ニ現在行ハレテ居ルヤ否ヤト云フコト
ガ一ツ、第二ハ、第六十二議會ニ於キマシ
テ輸入銑鐵防止ノ爲ニ設ケラレマシタ所ノ
關稅ヲ其ノ儘据置キ、外國銑鐵ヲ從前以上
ニ輸入シツヽアラレルト云フコトデアリマ
スガ、其ノ理由ハ如何デアリマセウカ、第
三ハ、岡田內閣ノ時ノ第六十八議會ニ提出
セラレマシタ所ノ銑鐵關稅引下案ヲ本特別
議會ニ提出サレナイ理由ハ那邊ニアルノデ
ゴザイマセウカ、第四、銑鐵不足ノ現狀ト、
將來益〓國防上及產業上ノ增加スベキ鐵鋼ノ
需要ニ對シテ、政府ハ如何ナル對策ヲ以テ
之ニ臨ミツヽアラレルデアリマセウカ、第
五、政府ハ現行鐵鋼國策ノ樹立ニ當ッテ、鐵
鋼關係ノ重要輸入品タル銑鐵、屑鐵竝ニ鐵
鑛石ノ輸入ニ付テ、何等カ國家統制ノ手段
ヲ用フル必要ヲ認メザルヤト云フヤウナ議
論是ハ方々デ議論サレテ居ル問題ヲ取集
メタモノデアリマスガ、私ハ大體大キナ問
題トシテ此ノ五ツノ問題ノ御說明ヲ得タイ
ト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=7
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008・小島新一
○政府委員(小島新一君) 御質問ニ對シマ
シテ私カラ御答ヘ申上ゲマス、第一ニ銑鐵
ノ需給狀況ニ付テ如何ニ見ルカト云フ御尋
デアリマスガ、誠ニ御尋ノヤウニ、最近非
常ナル銑鐵ノ需要ノ增加ニ對シマシテ、何
分ニモ其ノ生產設備ニハ相當ノ時日ヲ要シ
マスル關係上、今日ニ於キマシテハ相當多
量ノ銑鐵ヲ外國ヨリ輸入シマシテ、之ニ依ツ
テ其ノ供給ヲ補ハシメテ居ルト云フヤウナ
實情デゴザイマス、殊ニ最近屑鐵ノ値段ガ
非常ニ騰リマシタ爲ニ、其ノ屑鐵ノ輸入ヲ
差控ヘマシテ、一層多ク銑鐵ヲ使用シマシ
テ、製鋼事業ヲ行フ方法ニ急ニ向ヒマシタ
爲ニ、銑鐵供給ノ不足ト云フヤウナ狀態ニ
ナリマシタコトデゴザイマスガ、最近ニ於
キマシテハ、大體輸入銑鐵ノ手當モ十分ニ
付キマシテ、需給ニ於テハサシタル差支ハ
ナイヤウニ見テ居リマス、次ニ關稅ノ引下
法律案ヲ前々議會ニ提出シマシタルニ拘ラ
ズ、今囘ノ議會ニハ關稅引下法律案ヲ提出
シマセヌ理由ハドウカト云フ御尋デゴザイ
マスガ、御承知ノヤウニ、第六十七議會ニ
於キマシテ銑鐵竝ニ鋼材ノ關稅率ヲ半減シ
マスル法律案ヲ提出シマシタ當時ノ事情ニ
於キマシテハ、鋼材ハ非常ニ供給ノ不足ヲ
告ゲマシテ、其ノ値段ハ著シク騰貴致シマ
シタ、一方銑鐵ニ於キマシテモ需給ガ非常
ニ不圓滑トナリマシテ、廣ク歐洲方面迄モ
漁リマシテ、銑鐵ノ供給ヲ仰グト云フ狀態
デゴザイマシテ、將來非常ナル價格ノ暴騰
ヲスル虞モアリマシタヤウナ事情デゴザイ
マス、此ノ事情ニ卽シマシテ、應急的ノ措
置ト致シマシテ、二箇年ノ期限ヲ付シマシ
テ關稅引下ヲ考慮致シマシタヤウナ事情デ
ゴザイマス、其ノ後ニ於キマシテ、鐵及鋼
ノ生產竝ニ需要ノ狀況ヲ見マスルト、鋼材
ニ於キマシテハ、其ノ生產ハ非常ニ增加致
シマシテ、內地ノ需要ヲ充タスノミナラズ、
輸出入ヲ差引シマスルト、寧ロ十餘萬噸ノ
輸出超過ヲ致シマシタ事情デゴザイマス、
唯問題ハ只今御話アリマシタ銑鐵デゴザ
イマスガ、是ハ一方ニ於テ、明年度ニナリ
マスルナラバ、從來計畫シテ居リマシタ擴
張計畫モ漸次完成シテ參リマシテ、相當豐
富ナル供給ヲ致スコトガ出來ルヤウニ思ヒ
マス、サウ相成リマスルナラバ、輸入數量
モ可ナリ緩和致スコトガ出來ルヤウナ事情
ニアルモノト考ヘマス、ノミナラズ一方銑
鐵ノ不足ニ對シマシテ、殊ニ屑鐵ニ依存シ
テ居リマスル我ガ國ノ製鐵事業ヲ更ニ改善
シマスル爲ニ、折角銑鐵ノ供給ヲ豐富ナラ
シムル擴張計畫ヲ奬勵シテ居リマスル現在
ニ於キマシテハ、此ノ銑鐵關稅ヲ引下ゲルト
云フコトハ果シテ如何ナモノデアリマセウ
カ、是等ニ對シマスル影響等モ十分考慮致
スベキ必要ガアルト考へタノデアリマス、
何レニ致シマシテモ、銑鐵關稅ノ引下ト云
フコトハ、業界ニ非常ナル影響ガアリマス
ルノデ、尙今後ノ需給狀況、殊ニ軍部豫算
竝ニ產業貿易ノ將來ト云フコトニ付キマシ
テモ、相當ノ見通シヲ付ケマシテ、其ノ上
ニ於テ、一般鐵鋼國策ノ一部トシテ、其ノ
關稅ノ問題ニ付テモ更ニ考究致シタイト左
樣ニ考ヘテ居リマス、折角只今商工省ニ關
係各省部局長ヲ委員トシマシテ、協議會ヲ
設ケマシテ、是等ノ問題ニ付テモ一括シテ
折角協議ヲ致シテ居リマスヤウナ狀況デア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=8
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009・曾我祐邦
○子爵會我祐邦君 モウ一ツ伺ヒマスガ、
只今ノ御說明ノ中ニ、擴張計畫ト云フコト
ヲ仰セラレマシタガ、ドウ云フ意味ノ擴張
計畫デアリマセウカ、色々擴張計畫モゴザ
イマスルガ、是ハ銑鐵ニ對シテダケデゴザ
イマスカ、チヨット聞漏シマシタガ、銑鐵ノ
不足シテ居ルコトハ事實デアル、鋼鐵ノ方
ハ現ニ生產ガアルノミナラズ、輸出シテ居
ル、其ノ銑鐵ノ不足ヲ補フ爲ニハ擴張計畫
ヲスル、サウシテ現在ノ銑鐵ハ何萬瓲バカ
リ不足シテ居リマスカ、現狀デハ五十萬瓲
バカリ一年ニ不足シテ居リマセウ、其擴張
計畫ト云フノハドウ云フ意味デアルカ、方々
ニ增產ヲ許ストカ、何カ具體的ノ案ガ玆ニ
アルノヂヤアリマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=9
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010・小島新一
○政府委員(小島新一君) 只今私ノ申上ゲ
マシタ擴張計畫ト云フ意味ハ、銑鋼一貫作
業ヲ奬勵シテ居リマスル趣旨ニ於キマシテ、
主トシテ銑鐵ノ增產ト云フコトヲ考ヘテ居
リマスル次第デゴザイマス、ソレカラ只今
銑鐵ハドノ位不足シテ居ルカト云フ御尋デ
ゴザイマスガ、昭和十年ニ於キマシテハ、
五十八萬瓲ノ輸入ヲ「インド」「「ロシア」等ヨ
リ致シマシタ狀況デアリマス、尙先程御尋
ノアリマシタ、國策ノ樹立ニ付キマシテ、
銑鐵、屑鐵、鑛石ト云フモノノ輸入ニ付キ
マシテ、國家ニ於テ統制スル必要ハアリハ
シナイカト云フ御尋デゴザイマスガ、誠ニ
現在ノ輸入ノ實情ニ於キマシテハ、多少統
制ヲ缺クノ嫌アルヤウニモ考ヘテ居リマス、
全般的ニ是等ノ製品ニ付キマシテハ、出來
ル限リ輸入ニ付キマシテ統制ヲ圖リマシテ、
市場ニ於テ競爭ノ結果、日本國家トシテ損
失ヲ被ルヤウナコトノナイヤウニシタイト
考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=10
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011・曾我祐邦
○子爵曾我祐邦君 餘リ長クナリマスカラ、
一先ヅ私ノ質問ハ是デ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=11
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012・園田武彦
○男爵園田武彥君 本案ノ提出ノ理由竝ニ
其ノ御趣旨ニ付キマシテハ、只今大臣ヨリ
詳細ナル御說明ニ依リマシテ、略〓了承致シ
タノデアリマスルガ、昨日本會議ニ於キマ
シテ、水野君ノ御質疑ニナリマシタル本案
ニ對スル問題ニ付テハ、本案ノ根本ノ精神
ニ付テ、商工大臣トノ、御考ニ大變ナ開キ
ガアルヤウニ私ハ考ヘラレルノデアリマス、
水野君ノ不安トセラレテ居リマスル點ハ、
本案ノ重大性ニ鑑ミマシテ、又國策ノ上カ
ラ、本案ノ趣旨竝ニ其ノ將來性ニ付テノコ
トヲ問ハレテ居ルノデアリマスルガ、商工
大臣ハ、本案ハ利益ガアルモノカラ利益ヲ
取ルノデアルカラシテ、此ノ事業ノ將來ニ
付テハ何等ノ支障ヲ來スモノデハナイ、斯
ウ云フ風ニ御說明ニナッテ居リマスシ、又海
軍大臣モ、商工省トノ御協議ノ結果、斯樣
ナル結論ニ到著シタト云フヤウニ、簡單ニ
之ヲ取扱ハレテ居ラレルヤウデアリマシタ
ノデスガ、私モ水野君ト全ク御同感デアリ
マシテ、今日此ノ製鐵ノ事業ガ自給自足ノ
域ニ到著シテ居ラヌト云フコトハ、商工大
臣ハ昨日本會議デ以テ明瞭ニ御述ベ三ノシ
テ居ルノデアリマスルカラシテ、此ノ利益
金ヲ御取リニナリマシテ、唯歲入ノ一部ニ
之ヲ充テラレ、又歲入ノ上カラ之ヲ考ヘテ
居ラレルノデアリマセウカ、製鐵ノ現狀カ
ラ見マシテ、マダ幾多ノ〓究スベキ點モア
リ、又之ニ充當スベキ種々ナル根本對策ガ
アルト私ハ信ジテ居ルノデアリマスガ、斯
ウ云フ點ニ於テ萬一有事ノ場合ニ於テ、商
工大臣ハ現狀ニ於テ我ガ製鐵國策ト云フモ
ノニ付テ御安心ニナッテ居ルノデアリマセ
ウカ、此ノ點ヲ第一御伺ヒシタイノデアリ
マス、又此ノ問題ニ付テハ、出來マスナラ
バ、陸海軍大臣ノ御出席ヲ要求致シタイノ
デアリマスガ、御繁忙ノ折デアリマスカラ、
或ハ政府委員ノ御出席ヲ求メマシテ、此ノ
重大ナル製鐵業ノ根本ノ精神ニ付テ、御所
見ヲ伺ッテ置カナケレバナラヌト思フノデ
アリマス、此ノ製鐵業ハ申上ゲマス迄モナ
〃、我ガ國ノ總テノ鐵工業、殊ニ機械ノ發
達ノ上ニ於キマシテノ原動力ト相成ルモノ
デアリマシテ、延イテハ產業ノ上ニ重大ナ
ル關係ヲ及ボシテ參ルノデアリマシテ、例
ヘバ紡績機械ガ今日非常ニ發達ヲシタ、又
將來向ッテ行クベキ所ノ自動車工業ニ付テ
モ、斯ウ云フ根本ノ樹立ガ確保セラレナケ
レバナラヌト思フノデアリマスカラ、是ハ單
ニ目先ノ利益ノミヲ御考ヘニナリマシテ重
大ナル國策ヲ誤ルヤウナコトガアリマシテ
ハ、私ハ國家トシテ非常ニ憂フベキ結果ヲ
招來スルノデハナイカ、斯樣ニ考ヘマスノ
デ、此ノ根本精神ニ付キマシテ、昨日モ本
會議デ水野君ガ御述べニナッタノデ、此ノ
點ニ付テ商工大臣ノ御答ハ焦點ヲ外レテ居
ルヤウニ私ハ思フノデアリマスカラ、此ノ
點ニ付テ商工大臣ノ御所見ヲ一ツ伺ッテ置
キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=12
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013・小川郷太郎
○國務大臣(小川郷太郞君) 私昨日水野君
ノ御質問ニ對シテ御答ヘ申上ゲマシタコト
ガ、詳カデアリマセヌノデ、或ハ誤解ヲ受
ケタカトモ存ジマスガ、只今ノ御尋ニ付キ
マシテ御答ヘ申上ゲマス、此ノ製鐵業奬勵
法中改正法律案ヲ出シマシタニ付キマシ
テ、何カ製鐵國策ニ付テ動キガアルノデハ
ナイカ、斯ウ云フ法律ガ行ハレヽバ、有事
ノ際ニ安心ガ出來ナイデハナイカ、斯ウ云
フヤウナ御趣旨カラ御質問ガアッタヤウデ
アリマス、鐵ノ國策ト致シマシテハ、昨日
モチョット申上ゲテ置キマシタガ、銑鐵ニ付
テハ今日供給不足デゴザイマス、ドウシテ
モ自給自足ノ域ニ達セシメナケレバナラ
又、ソレガ有事ノ日ニ備ヘル所以デアルト
考ヘルノデアリマス、デ其ノ目標ハ何人ガ
其ノ局ニ當ッテモ違フベキモノデハナイト
思フノデアリマス、私昨日申上ゲマシタノ
ハ、更ニ進ンデモウ一步、ソレガ出來上リ
マシタノヲ、鋼材ナドハ今日モ多少輸出ガ
アルガ、矢張リ目標ハ輸出ト云フコトモ考
フベキコトデハナイカト云フ位マデニ思ッ
テ居ル次第デアリマス、實ハソレニモ關係
致シマシテ、其ノ目標ニ達スル爲ニハ色々
ノ問題ガアリマスノデ、實ハ此ノ各省協議
會モ開イテ旣ニ相談ヲシテ居ルヤウナ次第
デアリマシテ、或ハ一步進メテ、協議會ト
云フコトデナクシテ、此先、鐵國策ヲ實現
スル何カノ會議體或ハ調査會トデモ云フヤ
ウナモノヲ設ケル必要ガアルカ、ソコ迄ハ
決ッテ居リマセヌケレドモ、兎ニ角鐵國策ヲ
具體化スル爲ニ邁進シテ行キタイト考ヘル
ノデアリマス、サウ云フ方針ニ對シテ此ノ案
ガ相反シテ行クデハナイカト云フ大體ノ御
考ノヤウデアリマスガ、サウ考ヘテ居リマ
セヌデス、實ハ此ノ製鐵業奬勵法ト云フ精
神ハ此處ニモ能ク書イテアリマスガ、規定
ニモアリマス通リ、大體製鐵事業ヲ始メマ
シテ、幼稚ノ域ニ在ルモノヲ助ケテ、ソレ
ヲ保護助長シテ大成セシメヨウト、斯ウ云
フコトニ在ルト思フノデアリマス、非常ニ
發達シ切ッテ居ルモノニ迄ヤラウト云フ趣
旨ヂヤナイト思フノデス、ダカラ或ハ此ノ
十五年ナラ十五年ト云フ年限ヲ附ケテ居ル
ト云フヤウナモノハ、要スルニソレ位マデ
ニシタラバ一般サウナレルト云フ精神ニ私
ハ解釋シテ居ルノデアリマス、其ノ幼稚ナ
ルモノガ段々發達シテ力强クナッテ來レバ、
其ノ力强イ所ハ之ヲ强度ノ保護ヲシナクッ
テ宜イノダト、私ハ製鐵業奬勵法ト云フヤ
ウナモノハ、サウ云フ風ナモノデアラウト
思フノデス、從ッテ又過當ノ保護ヲスルト云
フ、普通以上ニ過ギタ保護ヲスルト云フ精
神デモナイト斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、
兎ニ角製鐵業ハ幼稚デアルカラ之ヲ助ケテ
ヤラウト、矢張リ日本ノ產業界ハ總テサウ
デアリマスガ、一本立ニナッテ自主的ニ發達
スル、保護ニ狎レ過ギテハイカヌト、保護
ノ上ニ眠ッテハイカヌト、是ハ私ハ日本ノ總
テノ產業界ニ於ケル精神ダト思フ、製鐵業
ニ於テモ變ッテ居ナイト思フ、ソレデアリマ
スカラ、現ニ何條デアリマシタカ、造船用
ノ鋼材奬勵金ト云フモノヲ與ヘルコトニシ
テアリマシタガ、ソレハ半減シタ、半減シ
タケレドモ、イケナイカト云ヘバサウデナ
イト思フ、段々發達スレバ、ソコデ保護ノ
程度ヲ減シテモ矢張シ少シモ差障リガナ
イ、ソレガ私ハ製鐵業奬勵法ノ精神ダト思
ヒマス、ダカラ之ヲ今ノ場合ニ適用シテ見
マスト云フト、資本金ニ對シテ一割以上儲
ケテ居ルモノガアル、是ハ相當ニ事業ガ根
强クナッテ居ルト見テ宜シイト思フノデア
リマス、過當ノ保護ヲスルト云フノハ製鐵
業奬勵ノ精神ヂヤナイト、其ノ一割以上ノ
モノニ稅ヲ課スル、一割以下ノモノニハ稅
ヲ課サナイノデスカラ、依然トシテ今日ノ
奬勵法ガ續イテ居ルノデアリマス、何カ鐵
ノ國策ニ反スルト云フ、斯ウ言ハレルオ方
ハ矢張リ全部免稅規定ヲ廢メルノデハナイ
カト云フ誤解ガアルノデハナイカト思ヒマ
ス、ソレダッタラ全然誤リデアリマス、私ハ
法ノ精神ニ少シモ變リガナイト思ヒマスガ、
更ニ一步ヲ進メマシテ、鐵ノ國策ニ反シテ居ル
ト云フコトヲ憂ヘラレル方ハ、之ニ依ッテ此
ノ設備ヲ增設スルト云フコトガ、旨ク行カヌ
ノヂヤナイカ、ソレガ妨ゲガアルノヂヤナ
イカト、是ガ一ツノ論點ダト思ヒマス、ソ
レハ昨日申上ゲマシタ通リ、其ノ方ハ妨ゲ
ガナイト思フ、一割位ノ利益ニ付テ······配
當トハ違ヒマスガ、一割以上ノ利益ガアル
ヤウナモノニ對シテ、多少ノ稅ヲ課シマシ
テモ、社內ニ留保ヲシテ居ルモノハ相當ニ
アルト思ヒマス、其ノ社內ノ留保ヲ以テ擴
張ニ當テルコトモ出來ルシ、又大キナ事業
ヲヤッテ居ルモノハ、必ズシモ自分ノ社內留
保金ノミヲ以テ擴張スルトモ限ラナイ、是
ハ事業ノ共通ノコトデアルト思フノデアリ
マス、外ノコトヲ言ヘバ相當大キナ稅ヲ拂ッ
テ居ル、ソレデモ工場ノ擴張ト云フコトハ
出來テ居ルノデアリマスカラ、其ノ點ハ製
鐵事業ト他ノ事業ト異ッテ居ルモノヂヤナ
イト思フ、更ニ實例ヲ申上ゲマスレバ、此
ノ稅ガ掛ッタト假ニ致シマシテモ、課セラレ
ルコトヲ承知シテ居リナガラ現ニ擴張計畫
ト云フモノハアル、日本製鐵ニ致シマシテ
モ、此ノ稅ガ掛ルト云フコトヲ豫想シテ居
ル、サウシテ最近ニ非常ナ擴張增設ヲヤル
計畫ヲ立テテ居ルノデアル、此ノ間、熔鑛
爐ヲ千噸爐トカ何トカヲ許シマシタガ、更
ニ今計畫ヲ立テテ居リマシテ、十年計畫デ
ヤラウト云フノガ五年計畫ニデモ進メテヤ
ラウト云フノデアリマス、ソレガ鐵ノ國策
ヲ行フモノデアルト思ヒマス、銑鐵ノ供給
ヲ十分滿タシテヤラウト云フノデアリマ
スカラ、此ノ稅ガ掛ッタカラト云ッテモ、設
備ノ增設ヲ妨ゲルモノト卽斷出來ナイト考
ヘテ居ルノデアリマス、故ニ鐵國策ニ支障
ハナイト申上ゲタ譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=13
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014・園田武彦
○男爵園田武彥君 只今商工大臣カラ縷々
御說明ヲ伺ッタノデアリマスガ、私ハ此ノ事
業其ノモノニ付キマシテ、政府ノ御指導ノ
精神ノ如何ニ依ッテハ、折角今日マデ利益ヲ
擧ゲテ居ッタモノガ、或ハ利益ヲ擧ゲ得ナイ
ヤウナ程度ニ之ヲ導ク虞モアリマスシ、又
最近ニ昭和製鋼ノ伍堂中將ガ「ドイツ」ニ御
出張ニナリマシテ、親シク「ドイツ」ノ製鐵
事業ヲオ調ベニナリマシテ、其ノ御報告ハ
政府ニ於テモ聽取セラレタコトト思フノデ
アリマスルガ、「ドイツ」ニ於キマシテモ、
此ノ國策ノ上カラシテ製鐵業ニ對シテハ非
常ナル關心ヲ持ッテ、自給自足ニ付テハ色々
ノ〓究ガ今日行ハレテ居ル由デアリマシ
テハ又損ヲシテモ國策ノ上カラ遂行シナケ
レバナラヌト云フ、色々製鐵ノ事業ノ上ニ
付テハ非常ニ重大ナル考ヲ以テ、政府ガ指
導ニ當ッテ居ルト云フコトヲ、先般伍堂中將
閣下ヨリオ伺ヒシタ次第デアリマスルカラ
シテ、私ハ此利益ト云フモノハ、更ニ强制
的ニ政府ガ配當ヲ制限セラレルトカ、或ハ
積立ヲサセラレルトカ、此ノ事業自體ノ目
的ニ其ノ利益金ヲ融通サレルト云フナラ
バ、其ノ精神ハ終始一貫シテ、鐵國策ニ付
テハ御指導精神ヲ明カニサレルコトガ分ル
ノデアリマスケレドモ、只今ノ此ノ法案ノ
提案ノ理由カラ見マスルト、利益ガアルカ
ラ、歲入ノ上ニ於テ是ガ年額何百萬デアリ
マスカラ取ラレルト云フ風ニノミ受取レル
ノデアリマスカラ、此ノ點ニ付テハ私ハ甚
ダ憂慮スベキ問題ヂヤナイカト云フコトヲ
今オ尋ネ致シタ次第デアリマス、別ニ此ノ
法案ニ付テ私ハ絕對ニ反對ヲ申スモノデハ
アリマセヌガ、其ノ精神ノ上ニ於テ、事業
家竝ニ此ノ國策ノ上ニ於テ、政府ノ所信ヲ
明カニシテ戴カナイト、將來利益ガアッテモ
是ハ何等製鐵事業ニ資スル所ガナイト云フ
ヤウナコトヲ考ヘラレマスル時ニハ、餘リ
熱心ニ之ガ發達ヲ遂ゲルコトガ出來ナイヤ
ウナ狀態ニナルノデハナイカト、斯樣ニ私
ハ考ヘマスルノデ、御伺ヒ致シタ次第ナノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=14
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015・岡部長景
○子爵岡部長景君 今ノ御說明デ此ノ改正
案ガ別ニ製鐵業奬勵ノ爲ニ差支ナイト云フ
御見解ハ、是ハ園田君其ノ他御懸念モアリ
マスルケレドモ、是ハ要スルニ意見ノ相違
ト云ヒマスカ、見方ノ相違ト云ヒマスカ、
政府當局ニ於テ心配ナイト云フ考デアレバ、
私ハ是以上此ノ點ニ付テハ伺フ必要ハナイ
ト思ヒマスルガ、寧口是ハ製鐵業ト云フ問
題ヲ離レテ、立法論トシテ少シ伺ヒタイト
思フノデアリマス、此ノ改正ハ全ク二百萬
圓バカリノ收入、歲入增加ノ目的デ改正ヲ
サレル譯デアリマスルガ、ソレ以外ニチヨツ
ト理由ハナイヤウニ伺フノデアリマスガ、
製鐵事業奬勵法ノ運用ヲ良クスル爲ニ此ノ
改正ヲサルヽモノトハチヨット考ヘラレナ
イノデアリマスガ、先ヅ其ノ點ヲ一應御伺
ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=15
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016・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 是ハ前內閣ガ
豫算編成ノ時ニ各省カラ色々歲入ノ增加ス
ルヤウニ、更ニ皆協力シテヤラウ、斯ウ云
フ建前デ豫算ノ編成ガ出來タヤウニ承ッテ
居リマス、各省協力ト云フコトガ一面製鐵
業ノ奬勵法中ノ改正トモナッテ現レタノデ
アリマス、是ハ一面ニ於テハサウ云フ風ニ
見マスト云フト、何カ收入ノ增加ヲ圖ッテ、
此ノ法律案ハソレノミガ目的ダト云フ風ニ
モ考ヘラレナイコトハナイノデアリマスガ、
併シ今ノ内閣ハ前內閣ノ豫算ヲ大體踏襲シ
テハ居リマスケレドモ、見方ハ必ズシモサ
ウ見ヌデモ宜イノデハナイカト考ヘルノデ
アリマス、豫算ガ出來マシタ時分ニハ、豫
算ハ總テ歲入ノ方ハ總テノ歲入ガ國庫ニ入
リ、總テノ歲出ガ國庫カラ出ルノデアリマ
シテ、豫算ノ編成時分ノ經緯ニコダハラナ
クテモ宜イノデナイカ、又コダハルベキモ
ノデハナイト考ヘテ居ルノデアリマス、
現政府ガ之ヲ出シマシタノハ、唯歲入ヲ得
ルト云フ目的デ之ヲ出シタ、サウ云フ趣旨
デハナイノデアリマス、マア此ノ思想界カ
ラ見マシテモ、矢張リ色々現在ノ經濟機構
ヲ呪フ者スラアッテ、ソレガ財界不安ヲ來シ
テ居ルヤウナコトデアリマスカラ、ソレニ
對シテハ國民生活ノ安定、社會ノ安定ト云
フモノヲ考ヘナケレバナラナイ、經濟機構
ヲ打壞スト云フコトハ、是ハ絕對ニ忌避シ
ナケレバナラヌコトデアリマス、現在ノ經
濟機構ノ上デ民心ノ安定ヲ得ルト云フコト
ハ、矢張リ資本主義トカ云フモノニ對シテ
非常ニ呪ッテ居リマスノハ、金ガ或所ニ集ッテ
シマッテ、サウシテ徒ラニソレガ集積シテ
ハン·他ノ方ノ者ハ因ッテ居ルト云フヤウ
ナコトニアルノデアリマスカラ、ソレヲ直
スノニハ、矢張リ租稅制度ト云フモノガ一
ツノ鍵デアッテ、社會正義カラ申シマスト云
フト、ウント儲カッテ居ル者ガウント國費ヲ
負擔スル、御奉公ヲスル、ソレガ人心ノ和
ヲ得ル所以デアル、私ハ今度ノ稅制改革ト
云フモノハ多分サウ云フ見地カラ行ハレル
モノダト思フノデアリマス、此ノ製鐵業奬
勵法中改正法律案ハ、要スルニ一割以上儲
ケテ居ル所ノモノニ稅ヲ出シテ貰ヒタイ、
斯ウ云フ要求ニ外ナラヌノデアリマス、唯
保護助長ヲスル、保護助長ヲシテ居ッテモ、
保護助長ニ狎レテ、過當ニ當リ前以上ニ保
護スルト云フコトハ、却テ宜クナイ、過ギ
タルハ及バザルガ如シト云フコトヲ申シマ
スガ、サウ云フ方面カラ考ヘマスルト、政
府ハ保護シテ居ッテモ、稅ハ稅デ出ス、普通
ノ稅ハ保護ノ爲ニ出サヌデモ宜シイ、正常
ノ利益以上ヲ儲ケテ居ルヤウナモノニハ、
一ツ稅ヲ出シテ貰フ、斯ウ云フ趣旨ニ外ナ
ラヌノデアリマス、ソレデハ稅制ノ改革ヲ
行フ時分ニ、其ノ時ニ總テヤレバ宜イヂヤ
ナイカ、斯ウ云フ議論モ起リマセウ、ソコ
ハ稅關定率法改正ノ法律案デモ申上ゲタノ
デアリマスガ、稅制ノ改革トカ稅制整理ト
カ云フ時ニ、總テノモノヲ一度ニヤルノモ
一案デアリマスケレドモ、取敢ズ調ベガ出
來又色々世間デ問題ニサレルヤウナコト
ガアルトスレバ、其ノ所ダケヲ直シテ行ク
ノモ差支ナイヂヤナイカト云フヤウナコト
デ、關稅デハ每年少シ宛ノ改正ヲシテ行ッ
テ居ルヤウナ譯デアリマス、ソレト同ジ趣
旨デアリマシテ、是モ其ノ大方針ノ上カラ
至當デアルト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=16
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017・岡部長景
○子爵岡部長景君 御意見ハ承知致シマシ
タガ、今ノ御話ノヤウナ趣意デ、過當ナル
利益ヲ得テ居ル者ニハソレダケ國費ノ負擔、
稅ノ負擔ヲサスベキデアルト云フ、其ノ御
趣意ハ全然御同感デアリマスガ、今御話ノ
通リ、ソレハ稅制整理全般ニ亙ッテ大イニヤ
ラナケレバナラヌ點デアラウト考ヘマスノ
デ、其ノ見地カラ見テ此ノ際之ヲ特別議會
ニ出サレルト云フノハ、理由ガ甚ダ薄弱デ
アルヤウニ思ヒマスケレドモ、今伺ッタヤウ
ニ、要スルニ財源ヲ、少クトモ此ノ豫算編成
ノ當時色々搔集メタ其ノ一ツトシテ之ヲ提
供シタノダト云フコトガ、主タル理由デア
ラウト想像致シマスガ、マアソレハ或ハ實
際問題トシテ已ムヲ得ナイコトデアッタカ
モ知レマセヌガ、苟モ、私ガ考ヘマスルノ
ニ、法律デ十五年間ハ免稅ヲスルト云フ保
障ヲ與ヘテ居ルノデアッテ、政府ガ民間ニ對
シテノ保障ト云フモノハ相當權威ノアルモ
ノデアリ、又信賴サルベキモノデナケレバ
バナラヌト思フノデアリマス、現ニ豫算外
國庫ノ負擔トナルベキ契約ニ關スル案ノ如
キハ、年度ガ次年度ニ亙ッテ政府ガ契約スル
場合ハ、議會ノ承認ヲ經ナケレバナラヌト
云フコトニナッテ居ル位ニ、鄭重ニサレテ居
ルノデアリマス、ソレト是トハ多少事情ハ
違ヒマスケレドモ、要スルニ法律案ナリ契
約案ニ依ッテ、議會デ協贊ヲ經テ政府ガ保障
ヲ與ヘルト云フコトガ出來レバ、民間ノ相
手方トシテハ安心シテ、ソレニ信賴シテ、
計畫ヲ立テテ、例ヘバ三年ナリ五年ニ亙ッテ
ノ事業······註文ヲスル場合ニハ、註文ヲ受
ケタ者ハ必ズ其ノ計畫ヲ立テテ、其ノ他ノ
準備ニ掛ル筈ノモノト思フノデアリマス、サ
ウシマスト、此ノ政府ノ與ヘル保障ト云フ
モノハ、絕對的ニ信賴シテ掛ラナケレバナ
ラヌ、ソレ程ノ權威ノアルモノデナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス、初カラ十年ナ
リ十五年、或ハアノ契約案ニシテモ、三年
ナリ五年ナリノ契約ヲシテ置キナガラ、政
府ノ御都合デ以テソレガ途中デ以テ勝手ニ
變ヘラレテシマフト云フコトニナッタナラ
バ、將來此ノ政府ノ保障ト云フモノニ對シ
テ、民間ガ信賴ガ出來ナイ、何時變ヘラレ
ルカ分ラナイカラ、マア御意ノ變ラナイ中
ニ出來ルダケ儲ケヨウト云フヤウナコトニ
ナッテ、モウ寧ロ此ノ十五年間ノ免除ト云フ、
法律ニ規定サレテ居ルノデアルナラバ、製
鐵業者ノ中デ眞面目ナ人間ハ、出來ルダケ
利益ヲ薄クシテ、十五年間ニ之ヲ囘收スレ
バ宜イト云フコトデ掛ッタ者モアリハシナ
イカト想像スルノデアリマス、要スルニ立
法論トシテ政府ガ法律ヲ以テ與ヘタ保障ヲ
途中デ以テ御都合デ以テ變ヘテシマフト云
フコトハ、是ハ將來政府ノ斯ウ云フ風ナコト
ニ對スル信賴ヲ裏切ルコトニナッテ、是カラ
モウ法律デ假令或ル期間ヲ以テ政府ガ或ル
保障ヲ與ヘラレテモ、ソレハ決シテ當テニ
ナルモノデナイ、何時變ルカ分ラナイト云
フ氣持ヲ國民ニ與ヘテシマフ、政府ノ威信
ニ關スルコトニナリハシナイカト云フ風ニ
私ハ考ヘル、ソレカラ若シモ此ノ法律ノ施
行ガ實際、國策ノ運用上有害デアル、差支
ガアルト云フヤウナ場合ガアルナラバ、ソ
レハ假令期限ガアッテモ其ノ途中ニ於テ變
更スルコトハ已ムヲ得ナイコトデアラウト
考ヘマスルケレドモ、唯主タル目的ハ財源
ヲ得ル爲メ全ク是ハ、政府ノ懷ロ勘定カラ、
前ニ出サレタ保障ヲ飜シテシマフト云フコ
トハ、是ハドウモ立法論トシテ甚ダ好マシ
カラザルコトデアリ、又將來國民ニ對シテ
政府ノ信賴ヲ失フ所以デナカラウカ、若シ
モ是ガ個人ノ間ノ話デ以テ、十年間或事ヲ
約束スル、途中デ以テモウアレハ自分ノ方
ガ都合ガ惡クナッタカラ罷メダト云フコト
ヲ言ッタラ、其ノ人間ガ忽チ信用ヲ失ッテシマ
フノデナカラウカト思フ、政府ガ權威ガアル
カラ勝手ナコトヲヤッテモ、國民ハ結局長イ
モノニ卷カレロト云フコトデ、結局泣寢入
ニナッテシマフト云フコトデハ、此ノ問題ト
シテハソレデ濟ミマスケレドモ、將來サウ
云フ問題ヲ貽スモノデハナイカト云フコト
ヲ私ハ考ヘルノデアリマス、若シ製鐵業者
ガ色々ナ利益ヲ得テ居ルコトヲ、今ノ御考
ノ通リ、國家財政窮乏ノ際ニ何トカシテソ
レヲ出シテ貰フト云フコトハ、是ハサウ云
フ風ナ見地カラ見レバ差支ナイコトデアリ
マスルケレドモ、一方ニ此ノ保障ヲ與ヘテ
置キナガラ、ソレヲ裏切ルト云フコトハ、
政府自ラ自分ノ言ヲ無視スルモノデアルト
云フ風ニ考ヘルノデアリマス、此ノ點ニ付
テハドウ云フ御說明ガアリマスカ存ジマセ
ヌガ、是ハ此ノ製鐵事業ノ問題デナク、
般ノ立法論トシテノ御考ヲ伺ヒタウゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=17
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018・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 只今ノ御意見
ハ極メテ御尤ト存ジマス、併シ私共ノ考ヘ
テ居リマスコトヲ一應御聽取ヲ願ヒタイト
思ヒマス、第一ニ此ノ製鐵業奬勵法ノ精神
デアリマスガ、ソレハ先刻申上ゲマシタヤ
ウニ、此ノ事業ノ幼稚ナルモノヲ······既設
ノ事業ノ幼稚ナルモノヲ助ケテ行カウト、
斯ウ云フ法ノ精神デアッテ、必ズシモ過當
ノ保護ヲスルト云フモノデハナイ、十五年
モ助ケナケレバ旨ク行カヌ、ソコヲ助ケテ
ヤルンダト云フ、其ノ好意デ出來テ居ルノ
ダト考ヘルノデアリマス、十五年間ト云フ
コトハ今御示シニナッタ通リデアリマス
ガ、併シ十五年間、所得稅、營業收益稅ヲ
免除スルト致シマシテモ、只今ノハ一割以
上儲ケタ其ノ超過額ノミニ稅ヲ掛ケルノデ
アリマス、其ノ以下ノモノハ免ゼラレテ居
ル譯ニナッテ居リマス、ダカラシテ全然政
府ガ今後十五年間免稅シテヤルト云フノヲ
止メテシマッタト云フノデハアリマセヌ、
唯ヒドク儲ケテ居ルノヲ、一割以上儲ケテ
居ル其ノ超過額ノミニ對シテ課稅スル、斯
ウナッテ居ルノデアリマスカラ、矢張リ或
ル一部ハ免稅サレテ居ルノデアリマス、
部ニ課稅ヲスルト云フダケニ止マッテ居ルノ
デアリマス、其ノ一部ハ課稅ト云フコトガ、
此ノ製鐵業奬勵法ノ精神ニ背イテ居ナイ、決
シテ約束シテ居ッタモノヲ、サウ云フコトヲマ
ア考ヘテ仕事ヲシテ居ッタ者ガ、「ペテン」ニ掛
ケラレタト云フヤウナモノヂヤナイ、法ノ
精神カラ申シマシテ、私ハ不都合ナイデア
ラウト考ヘルノデアリマス、ソレカラモウ
一ツハ新シイ······今一割以上モ儲ケテ居ル
カラシテ、新シク製鐵會社ガ起ルト致シマ
スト、ソレトノ權衡ヲ考へル、釣合ヲ考ヘテ
見マス時ニ、非常ニ澤山儲ケテ居ル、割
以上儲ケテ居ル、其ノ額ニ掛ケラレマシテ
モ、保護ヲスル上ニ於キマシテハ、新シイ
モノト、旣ニ相當伸ビテ來テ居ルモノト
ハ、國家ノ保護ト云フ上カラ申シマシテ、
其ノ非常ニ伸ビテ居ルモノニ稅ヲ掛ケマシ
タカラト云ッテモ、其ノ邊ハ却テ權衡ヲ得ル
ノデアルトモ考ヘラレルノデアリマス、マ
ア兎モ角モ改正法ハ奬勵法ノ精神ヲ崩シテ
居ルモノヂヤナイ、奬勵法ノ精神ニ反シテ
居ルモノヂヤナイ、或ハ旣得權ト、斯ウ云
フコトニ御考ヘガアルカトモ思ヒマスケレ
ドモ、其ノ旣得權ノ理論ハ、法ノ精神カラ
言ヒマスト云フコト、非常ニ「ベラボウ」ニ儲
ケテ居ル者ニ迄モ、ドコ迄モヤッテヤルト、
斯ウ解スベキモノヂヤナイカト思フノデア
リマス、而モ假ニ既得權ヲ害スルト云フヤ
ウナ御議論、考へ方ガアリマシテモ、法ハ
必要ニ依リマシテ、今日迄認メタ利益ヲ、
公益ノ上カラ取ルト云フコトモ出來ルノダ
ト思フノデアリマス、ソレハ早イ話ガ、恩
給ノ停止デゴザイマスネ、恩給ノ停止ノ如
キハ、モウ殆ド既得權デアルト、人モ我モ
思ッテ居ッタノデアリマスガ、恩給法ノ改正
ニ於テ、御承知ノ通リニ、或ル一定額以上
ノ恩給ヲ受クル者ハ停止サレルノデアル、
是ハ既得權ヲ害スルノ甚ダシキモノヂヤナ
イカト言ヘバ、サウモ言ハレルカモ知レマ
セヌケレドモ、サウ云フ風ニシタ方ガ、矢
張リ社會思想、今日ノ思想ニモ能ク合ヒ、
法ハサウ云フコトヲ決メテモ、決シテ憲法
ノ精神ニ背イテハ居ナイト、斯ウ見テ、彼
ノ恩給法ノ停止ト云フコトハ最近行レタ事
例デアリマスガ、ダカラ此ノ改正法ニ於キ
マシテ、初メテ斯ウ云フコトヲヤルノダト
云フノヂヤアリマセヌノデス、ソレガ今日
ノ社會ニ穩當デアルト、斯ウ考ヘテ此ノ立
法ヲシタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=18
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019・岡部長景
○子爵岡部長景君 御趣意ノアル所ハ了承
シマシタガ、今ノ恩給ノ例ト此ノ場合ト
ハ、多少考へ方ガ違フ點ガアリハシナイダ
ラウカ、是ハ要スルニ製鐵業奬勵ノ爲ナノ
デアッテ、政府ガ十五箇年間ハ免稅ヲシテヤ
ルノダト言ウテ、一ツノ保障ヲシテヤッタノ
デ、恩給モ一ツノ將來ニ對スル保障ニハ違
アリマセヌガ、是ハ恩給ヲ貰フカラ政府ノ
役人ニナルノデ、恩給ヲクレナイナラ政府
ノ役人ニハナラナイト云フ、サウ云フ考ノ
者モアリマセウガ、多少違ヒマスノデ、將
來斯ウ云フコトヲ屢〓政府ガヤラレルヤウデ
ハ、政府ニ對シテノ仕事ハ、ウッカリ相手ガ
出來ナイト考ヘラレルト云フコトハ、般
事業界ニ懸念ヲ與ヘハシナイカト云フコト
ヲ特ニ心配スルノデアリマス、勿論今御話
ノ通リ過當ノ利益ヲ得ルト云フモノヲ取
上ゲルト云フコトハ當然ノコトデアリマ
スガ、今度此ノ法律ヲ改正スルト云フコト
ハ、政府トシテ私ハ出來ナイコトヂヤナイト
思ヒマス、唯サウ云フコトヲ屢〓ヤラレル
ト、政府ノ威信ガナクナリ、國家ノ產業振
興ノ上ニ非常ニ不利益ナコトニナッテ來ハ
シナイカ、且斯ウ云フコトガアッテモ、十五
年ト云フナラ、十年位ノ中ニ何トカシテ置
カナイト危イ、安心出來ナイ、餘リ儲ケ過
ギテモイケナイゾト云フヤウナ懸念ヲ持ッ
テ、色々ナ產業界ニ不純ナ考ヲ起サセル因
ニナリハシナイカト云フコトデ、若シモ今
仰シヤッタヤウナ心持ガ起リ、過當ナ利益ハ
取上ゲルコトハ是ハ當然ノコトデアルト云
フ考ハ、私ハ無論サウ考ヘマスガ、ソレナ
ラバ法律ヲ作ル時ニ、サウ云フ風ナ意味デ
法律ヲ作ッテ置ケバ宜イモノヲ、例ヘバ免稅
期ハ十五年ヲ超過スルコトヲ得ズト云フ風
ニ決メテ置ケバ、十五年以內ニ變へテモ食
言ニハナラナイト思ヒマスガ、十五年免除
スルト云フコトヲハッキリ言ッテ置キマシテ
其ノ途中デ變ヘルノト、大分意味ガ違フト
思ヒマス、將來色々立法サレル場合、十五
年間ハ免除スルト云フ初メノ考デアッテモ、
若シ十五年間ニ非常ニ事業ガ都合好ク行ク
ヤウニナレバ、或ハ其ノ前ニモ其ノ特權ハ
取上ゲルカモ知レナイト云フコトハ、政府
ニ於テモ考ヘ、又事業家ニ於テモ其ノコト
ヲ覺悟シテ事業ニ掛ルト云フヤウナ立法ヲ
サレルコトガ宜クハナイデアラウカト云フ
風ニ考ヘルノデアリマス、此ノ問題ヲ離レ
テ將來ノ問題ニナリマスガ、サウ云フ考ヲ
持ッテ居ル譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=19
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020・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 岡部子爵ノ御
意見誠ニ御尤ト拜承イタシマス、唯前ニ申
上ゲマシタ通リ、奬勵法ハ製鐵事業ノ幼稚
ナル所ヲ保護シテ行カウト云フト云フコト
デアルノデアリマス、デ事實ハ始メル者モ
此ノ保護ヲ受ケナケレバ事業ガ立行カナイ
ダラウ、此ノ奬勵法ニソコハ期待シテ居ル
ノデアリマス、併シ非常ニ儲ケガ出來テ來
マシテ、世間ノ何人ガ見テモ普通ノ事業以
上ノ儲ケヲシテ居ルト見ラレル場合ニ、其
ノ人ガ、是ハマア製鐵奬勵法ダケデアリマ
セヌ、一般論トシテ尙國家ノ保護ニ依ッテ稅
モ拂ハズニ居ラウト總テノ者ハ考ヘテ居ル
トモ思ハヌノデアリマス、自分ガ立ッテ行ケ
ヌカラ親ニ縋ラウ、一本立ニナッテ、サウシ
テ普通ノ人間以上ニ腕ガ揮ヘルト云フナラ
バ、親ニ賴ラヌデモ宜イト云フコトガ自然
ノ途デハナイカト考ヘルノデアリマス、サ
ウ云フ意味ニ於テ過當ノ所ヲ國家ニ稅ヲ出
シテ貰ハウト云フコトハ、保護ノ精神ニモ
副ハヌ譯デ、日本ノ事業家ガ矢張リ自立的
ニ自分ノ腕ヲ揮ッテ行カウト考ヘタナラ
バ······其ノ氣分ガナクテハ日本ノ產業界ハ進
步シナイト思ッテ居リマス、其ノ考ヘ方ト相
俟ッテ、事業家ノ方モ喜ンデ此ノ租稅ヲ拂ッ
テ戴クト云フコトデ、此ノ世ノ中ガ、社會
主義ヤ何カガ色々ヤカマシク言ッテ居ルガ、
サウ云フ考ヘ方ガ間違ッテ居ル、矢張リ非常
ニ儲ケル者ハ國家ニ稅ヲ拂フノダ、仕事ハ
思切ッテヤルノダ、產業界ハ腕ノアル者ガ自
主的ニヤッテ行クノダ、サウ云フコトデ日本
ノ國運ガ進步スル、產業界ハ發達スルヂヤ
ナイカ、サウ云フ所ヲ實ハ期待致シマシテ、
斯ウ云フコトヲヤリマシタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=20
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021・岡部長景
○子爵岡部長景君 是以上質問ノ必要ナイ
ト思ヒマス、御趣旨ハ私全然御同感デアリ
マス、立法ノ方法トシテ今後御注意ヲ願ッタ
方ガ宜クナイカト云フ風ニ考ヘマス、マア
此ノ際ハ此ノ立法ヲ作ッタ時ノ考ヘ方ガサウ
云フ風ニ御考ヘニナラナクテ、十五年位ハ
ドウシテモヤラナケレバナラヌダラウト云フヤ
ウナ氣持デ、此ノ法案ハ出來タラウト思フノデ
アリマス、今後ハ十五年間ノ期限モ、其ノ
以前ニ今ノヤウニ非常ニ調子好クナッタ場
合ニハ、ドシ〓〓サウ云フ風ナ御精神デ、
矢張リ國家ノ爲ニ奉仕サセルト云フコトガ
出來ルヤウニ、豫メサウ云フコトヲ考ヘテ
立法サレルコトガ宜カラウト思ヒマス、私
ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=21
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022・園田武彦
○男爵園田武彥君 先刻陸海軍ノ政府委員
ノ御出席ヲ要求致シマシタ所、只今御見エ
ニナッタノデゴザイマスガ、簡單ニ先刻御尋
ネ致シマシタ點ニ付テ御尋ネシテ宜シウゴ
ザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=22
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023・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) ハイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=23
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024・園田武彦
○男爵園田武彥君 昨日海軍大臣ハ、本案
ニ付テ商工省ト折衝ヲシタ結果、本案ニ付
テノ贊成ノ意ヲ本會議ニ於テ表明セラレタ
ノデアリマスガ、陸軍トシテハ、本案ニ付
デ矢張リ商工省ト此ノ問題ニ付テ御折衝ニ
ナリマシタノデアリマセウカ、陸海軍ノ國
防ノ見地カラ現在ノ製鐵業ト云フモノニ付
テ、有事ノ場合ニ安心シテ可ナリト云フ御
考ヲ御持チニナッテ居リマセウカ、其ノ點ニ
付テ簡單デ宜シイノデスガ、御所見ヲ伺ッテ
置キタイト思ヒマス、本議會ニ於キマシテ
モ陸海軍ノ國防費、軍事費ト云フモノハ、
莫大ナル豫算ガ要求セラレテ居リマスノデ、
國防ノ上カラシテ此ノ製鐵國策ト云フコト
ニ付テハ、非常ニ重大ナ問題ト私ハ考ヘマ
スカラ、軍部トシテノ御考ヲ伺ヒタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=24
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025・磯谷廉介
○政府委員(磯谷廉介君) 陸軍ト致シマシ
テモ、製鐵國策ノ確立竝ニ之ガ執行ニ關シ
マシテハ、關係各廳ト能ク協調連絡ヲ致シ
マシテ、國防上ノ要求ニ付キマシテハ、十
分ニ考慮ヲ致シテ、差當リ之ニ支障ノナイ
ト云フコトヲ認メマシテ、此ノ改正案ニ付キ
マシテモ御同意ヲ表シテ居ル次第デゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=25
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026・豐田副武
○政府委員(豐田副武君) 本會議デ海軍大
臣カラ一應ノ說明ガアリマシタガ、大體要
領ハソレデ盡キテ居ルト思ヒマスガ、海軍
トシマシテハ、製鐵事業ノ振興ト云フコト
ハ、平時又戰時、共ニ海軍ガ大キナ消費者
デアルト云フコトカラ考ヘマシテ、重大ナ
關心ヲ持ッテ居ル所デアリマシテ、此ノ法律
ノ改正案ノ審議ノ時ニ於キマシテモ、製鐵
事業ノ根本ニ付テ全面的ナ檢討ヲスルト云
フコトガ非常ニ必要デアルト云フコトヲ考
ヘマシテ、商工當局トモ十分連絡シテ〓究
シタ次第デゴザイマス、財源ノ關係デ、色
色特殊ナ事情モゴザイマシタコトハ、先程
商工大臣カラ御說明ノアッタ通リデアリマ
ス、サウ云フ次第デ、此ノ程度ノ法律改正
ヲヤッテモ、今伸ビ掛ッテ居ル製鐵事業ノ進
展ニ、著シク大ナル障碍ヲ與ヘルモノデナ
イ、又本案改正ト同時ニ、成ルベク早ク製
鐵國策ト云フコトニ付キマシテ、全面的ナ
檢討又促進ヲヤルト云フヤウナ點ニ付キマ
シテ話合ガ出來マシタノデ、本案ニ贊成致
シマシタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=26
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027・田所美治
○田所美治君 私ハ此ノ製鐵事業ニ付テハ
素人デゴザイマスガ、一ツ二ツ伺ッテ見タイ
ト思ヒマス、斯ウ云フ結果ニナッテ來クノ
ハ、近來ノ軍需工業ノ發達ニ伴ッタ結果デア
リマセウ、唯製鐵ノ奬勵、從ッテ其ノ目的ハ
自給自足シナクチヤナラヌト思ヒマスガ、
又銑鐵ノ十年ノ輸入額ガ九十七萬瓲トナッ
テ居ル、約百萬瓲バカリノ銑鐵ノ輸入ガア
ル、今モ陸海軍ノ御說明モアリマシテ、軍
需工業ノ需要ハマダ益ス將來ト雖モ增加スル
ダラウト思ヒマスカラ、一面デハ幼稚ナル
製鐵業ヲ奬勵スルト斯ウ云フコトニ商工大
臣ハ方針ヲ採ッテ居ル、一面デハ來年以後ノ
增稅計畫ヲシテ、二百萬圓ト云フコトヲ伺ッ
テ居リマスガ、二百萬バカリノ收入ヲ圖ッテ
居ル、ソレハ今ノ製鐵奬勵ノ方ニハ大シタ
影響ハアルマイ、斯ウ云フコト、マアソレ
ニ付テハ岡部子爵カラノ御尋ガアッタノデ
アリマスガ、立法ノ計畫カラ見ルト、頗ル
御同感ニ私モ感ズルノデアリマス、十五箇
年間ト明示シテアル、ソレカラ其ノ中途デ
十一年デ打切ッテ、一部ノ課稅ヲヤッテ行ク、
製鐵奬勵法ハ別ニ政府ノ方カラ金ヲ供給シ
テ迄奬勵シテ居ルノヂヤナイノデ、殆ド唯
一ノ何カ免稅ト云フコトデヤッテ來ラレタ
ノデアリマスカラ、マア十五箇年ト約束シ
タ以上ハ、十五箇年迄ハ待ツト斯ウ云フコト
デ、卽チ幼稚ニ違ナイ、今日ノ製鋼業ハ、
此位ノ奬動デ今日迄來テ居ル、マダ〓〓百
萬瓲モ銑鐵ヲ輸入シナケレバナラヌ、來年
ニナッタラモット輸入額ヲ增加シナケレバナ
ラヌト、コンナ風ニ考ヘルノデアリマスガ、
ソコヲ思切ッテ一ツ法律ノ力デ、既得權ノ如
キモノモ侵害シテ行カウ、又奬勵モソレダ
ケノ部分ニ付テモ程度ヲ緩メテ行カウ、斯
ウ云フ譯デ矛盾ガアルノデアリマスガ、來
年度ノ收入關係カラ言ヘバ、果シテ此ノ
割以上ト云フモノデ、此ノ金利ノ安クナッタ
今日ニ於テハ、一割以上ノモノダケニ課稅
スルト云フコトデ、社會政策ノ御說明モアッ
タノデアリマスガ、ソレデ均衡ヲ得ルカ、
ドウモ不權衡ニナルノヂヤナイカト云フ
ヤウナ感ジモスルノデアリマス、是ハ議
論デアリマスガ、將來ノコトデアリマス
カラ、御分リニナリマセヌカモ知レマセ
ヌガ、今意見ヲ申上ゲマセヌガ、鐵鋼業
ノ幼稚ナモノヲ奬勵スルト云ウテ、マダ
輸入ヲ百萬瓲、來年ニハ多少殖エヤウ
カト云フ勢ノアル今日、一面デハ擴張計畫
モヤッテ行クト云フコトデアリマスガ、何時
頃カラ輸入ガ殆ド無シデ、所謂自給自足ト
云フモノガ出來ヤウカト云フ凡ソノ此ノ御
見込デモアリマセウカ、增加ニ伴フ供給ト
云フコトニ付テハ、是ハマア見込モ立チマ
スマイケレドモ、昭和六年カラ十年マデ五
箇年バカリノ間ニ殆ド倍額ホド生產ガ殖エ
テ居ル、私共素人ナガラニ滿洲邊リヲ視察
シマシテモ滿洲邊リノ製鐵事業或ハ北鮮ノ
製鐵ト云フヤウナコトモ段々殖エテ居ルヤ
ウデアリマスガ、凡ソ此ノ自給自足ノ大體
其ノ目標ニ達スルト云フ御見込デモ立ッテ
居リマセウカ、ソレガ一ツ、モウ一ツハ此
ノ課稅ヲセヌデ、製鐵業ノ奬勵ト云フ方ノ
側カラ見マスルト云フト、此ノ鐵ノ價ノ統
制値下ゲ、斯ウ云フ方ニ御調ベガアリ、或
ハ現ニ何カ行政上ヤッテオイデデアリマス
カ、製鐵ノ代價ニ付テノ統制ト云フヤウナ
コトハ、依ッテ以テ鐵鋼業ノ奬勵ヲスル、斯
ウ云フ方迄ハ及ンデ居リマセヌガ、何カ商
工大臣ノ御說明ヲ伺ヒマスト、先ヅ以テ私
ハ十五年間ハ是ハ泣寢入リデ、利益ハ幾ラ
擧ッテモソレハ設備ノ改善ニ充テルトカ、事
業ノ基礎ヲ固クスルトカ、斯ウ云フ方ノ側
ニ進メマシテ、サウシテ一面デハ鐵ノ價ノ
統制ヲ圖ッテ行クトカ云フヤウナ監督ヲス
ルト云フヤウナコトデ、奬勵ヲナサル、課
稅ノコトハ來年以後ニ於ケル一般ノ稅制整
理ト云フヤウナコトノ方デ、二百萬圓位ノ
コトハ待テルデハナイカ、コンナニモ考ヘ
ルノデアリマスガ、全ク素人デアリマスカ
ラ其ノ邊ヲ伺ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=27
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028・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 何カ此ノ改正
案ガ十五年ノ約束ヲシテ居ッテ、ソレガスッ
カリ十五年經タヌ間ニ變ッテシマッタノダト
云フ御趣旨ニ拜承シマスガ、サウ見テ戴キ
タクナイノデアリマス、若シ假ニ一割以上
ノ儲ケヲスルヤウナ風ニナッテ居ナイト假
ニ考ヘマスト、日本ノ鐵鋼界ガソレ程一割
以上ノ利益ヲ擧ゲルモノガナイトシマシタ
ナラバ、少シモ變ッテ居ナイ譯デアリマス、
唯一割以上儲ケルモノノ、其ノ一割以上ノ
所ダケ課スル、斯ウ云フノデアリマスカラ、
今マデ十五年ト約束シテ居ッテ違フヂヤナ
イカト云フコトニハナラヌト斯ウ思フノデ
アリマス、申上ゲマスナラバ、奬勵法ト云
フモノハ初メカラ二割モ三割モ五割モ儲ケ
ルモノガ、十五年前ニ二年ヤ三年デ出來ル
モノトハ思ッテ居ナカッタト私ハ思ヒマス、
デ幼稚ナルモノヲ保護助長シテヤラウト云
フ精神デ出來テ、假ニ十五年ト云フモノガ
茲ニ規定サレテ居ルノデアリマス、マア土
地收用法ノ適用ニ致シマシテモ初メ創業ノ
際ノコトニナルト思フノデアリマス、ソレ
カラ免稅ノコトデスカ、或ハ造船用鋼材奬
勵金ノ交付、輸入稅免除ノコト、斯ウ云フ
免除ト云フコトニアリマシテハ、皆此ノ奬
勵規定ト云フモノハ、謂ハヾ力ガ餘リアル
ト云フヤウナモノデナイ、弱々シイモノヲ
助ケテ行クト云フ精神カラ出來テ居ルノデ
アリマスカラ、日本ノ鐵工界ト云フモノハ
皆總テ腕ガ鳴ッテ居ルヤウナ風ニ行ッテ居ナ
イ、其ノ中ニ腕ノ鳴ッテ居ルト云フモノダケ
ニ付テ、而モ儲ケタ一割以上ノ額ノミニ付
テ課稅ヲスルト云フコトガ、必ズシモ此ノ
奬勵法ニ反シテ居ルトハ思ハヌ、サウ云フ
コトヲ實ハ申上ゲテ居ルノデアリマス、何
カ十五年ノ約束ヲシタモノヲ、直グ玆デスッ
カリ今迄ノ精神ニ反シタコトヲシテ居ルト
御了解戴クナラバ、ソレハ法ノ改正案ノ精
神ハサウデナイト申上ゲタイノデアリマス、
尙此ノ自給自足ハイツ頃出來ルカ、斯ウ云
フ御話デゴザイマスガ、是ハ何レ又數字ノ
コトハ政府委員カラ御答ヲサセテ戴キタイ
ト思ヒマスガ、例ヘバ日本製鐵ニ今度鎔鑛
爐ヲ許シタ、ソレハイツ〓〓出來上ル、或
ハ「アウトサイダー」デアル日本鋼管會社ヤ
淺野造船所等ニ此ノ鎔鑛爐ヲ許シマシタ、
是ガ出來上リマスト、ドノ位ノ銑鐵ガ出來
ルト云フコトモ考ヘラレル、更ニ日本製鐵
會社ハモウ一步進ンデ今鎔鑛爐ヲ增設スル
コトヲ計畫シテ居リマス、其ノ出來上リニ
付キマシテ、生產量ガ段々殖エテ來マス、
マア凡ソ生產量ノ方カラハ多少年限ガ豫想
出來マスカモ知レマセヌガ、此ノ需要ノ增
加ト云フモノハ意外ニ多イノデゴザイマシ
テ、殆ド日本製鐵會社ガ出來マシタ
時分ニ豫想セザリシ、マア需要ノ激增
ト云フコトニナッテ居リマス、其ノ方ノコト
モ併セテ考ヘナケレバ自給自足ガ何時出來
ルカト云フコトハ、マア申上ゲラレナイ譯
ナンデゴザイマス、併シサウ云フ事情デア
リマスカラ、日本製鐵會社ヲ促シマシテ、
十年計畫ノモノヲ五年計畫ニスルト云フヤ
ウニ、又「アウトサイダー」ニ對シテモ熔鑛
爐ヲ增設ヲ必要トスルモノガアレバ、銑鋼
一貫作業ヲシテ合理的ナモノニハ之ヲ許ス
ト云フヤウナ、從前ノ方針モ變ヘマシテヤッ
テ居ルヤウナ譯デアリマシテ、成ルベク早
ク自給自足ノ域ニ達シタイト考ヘテ居リマ
ス、時ヲ指示セト言ハレマスト、チヨット答
ヘ兼ネル所ガアルノデアリマス、ソレカラ
此ノ代價ノ統制デアリマスガ、是ハ銑鐵ガ
少イ時分ニハドウシテモ外國ノ輸入モセナ
ケレバナラナイノデアリマシテ、デ日本製
鐵會社ハ自分デ澤山拵へルト云フ計畫ヲ立ッ
テ居リマスカラ、其ノ間ニ合ヒマセヌ所ハ
矢張リ輸入ヲシマシテ、サウシテ日本ノ需
要ニ應ズルヤウニナリマス、ソレニハ實際
或ハ損ヲスルカモ知レマセヌ、輸入額ヨリ
ハ賣ルノヲ安クシテ居ルヤウナ事情モアリ
やく、ソレハ日本製鐵會社ハ何ト申シマシ
テモ政府ガ大株主デモアリマスシ、又之ヲ
相當「コントロール」致シマスデスカラ、銑
鐵ノコトニ付キマシテハ自然ニ統制サレテ
居ルヤウナ譯デアリマス、銑鐵共販會社ト
云フヤウナモノガアリマシテ、是ハ滿洲ノ
方デ出來テ居リマシテ、最初日本製鐵會社
ト一〓ニ共販會社ヲ統制スル積リデアリマ
シタケレドモ、其ノ時分ニ滿洲ノ方ノ要求
ト日本製鐵會社ノ考ヘテ居ルコトガピッタ
リ合ヒマセヌデ、遂ニ出來マセヌデシタガ、
併シ數量等ニ於キマシテハ、今日モ其ノ共
販會社ト日本製鐵會社ト只今協調ヲ保ッテ
ヤッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=28
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029・田所美治
○田所美治君 商工大臣ハ私ノ申上ゲタコ
トヲ少シ私ノ思ッタ通リニ御解釋ニナッテ居
ラヌト思ヒマス、私ハ幼稚ナモノヲ奬勵ス
ルト云フ御話ガアリマシタカラ、マア是ハ
モウ二三年ハ一ツ忍ンデ、其ノ奬勵法ヲ徹
底セシメル、少クモ此ノ法定ノ期間ダケハ
ヤッテ行ク位ニ御考ニナルベキモノデハナ
イカ、サウシテ基礎ノ充實ヲ圖リ設備ノ擴
張ヲ圖ル、斯ウ云フ風ニ御向ケニナル方ガ、
二百萬圓位ノ收入ノ爲ニ、昨日來議論ノ起ッ
テ居ルト云フコトヲ避ケラレヤシナカッタ
カ知ラヌト云フ意見ヲ申上ゲタノデアリマ
ス、私ハ立法デ出來ヌト云フコトハ無論申
サナイ、恩給法ノ話ガアリマシタケレドモ、
恩給法ニシタトコロガ法律デ解決シテ居ル
コトハ澤山アル、奬勵法デ幼稚ナモノハ奬
勵シテ從來澤山ヤッテ居ル、又是カラモヤッ
テ行クト云フノニ對シテ、岡部子爵ニ御同
感ガ浮ビマシタカラ申上ゲタノデアリマス、
此ノ事業ノ利益ト云フモノヲ拜見シマスト、
中ニハ十割以上十四割ト云フヤウナ所モ大
阪製鐵ナドハアルヤウデアリマス、ダカラ
之ニ對シテ一割以上ノ課稅ヲスルト云フコ
トハ當然ノ話ダラウト思フ、課稅ノ方カラ
云ヘバ頗ル容易ニ取レル稅ダラウト思フ、
二百萬圓デモ此ノ際課ケテ行カナケレバナ
ラヌ、斯ウ云フノデ、財政ノ方カラ意見ガ
アルダラウト思フ、其ノ方ノ基礎ヲ鞏固ニ
スルト云フ方ニ付テ、商工省ハ事業家ニ向ツ
テ、强イ可ナリ御監督ニナルモノト承知シ
テ宜イノデアリマスカ、其ノ方デモウ少シ
奬勵ヲシツヽ又擴張スルト云フ所ノ政策ヲ
御實行ナサル場合ヂヤナイダラウカト、コ
ンナニモ考ヘルノデスガ、製鐵事業ニ付テ
ハ、私ハ全ク素人デスカラ分リマセヌガ、
又滿洲邊リノ何ヲ見マシテモ、マダ〓〓ホ
ンノ幼稚デアッテ、ナカノ〓アスコノ金鑛ヲ
改良スルト云フ事業ハヤッテ居ルヤウデア
リマスケレドモ、所謂商工大臣ノ幼稚ノ區
域ト云フモノデアルノデアリマスカラ、ナ
カナカサウ云フモノニ付テモ、滿洲ニ限ラ
ズ各製鐵會社ニ付テ指導シテ行クト云フヤ
ウナコトノ餘地ガ殘ッテ居ルノヂヤナイカ
ト云フヤウニ思ッテ申上ゲタ譯デアリマス、
ソレハ意見ガ含ンデ居リマスカラソレデ宜
シイノデアリマス、生產高ニ付テモ先程伺ッ
タ際ニ、五年間ニ殆ド倍ノ生產高ヲ擧ゲテ
居ルカラ、此ノ勢ヒデ進メラレヽバ、所謂
自給自足モサウドウモ遠キデハナイダラウ
ト、コンナニモ考ヘラレルノデス、軍需工
業カラノ需要高モ殖エテ參リマセウ、又他
ノ工業カラモ殖エテ參リマセウ、生產高ガ
殆ド五年ニ倍ニナルト云フコトデ、五年ニ
ハ倍ニ近イモノガ擧ゲラレルト云フ豫想ノ
何カ御計算ガアレバソレヲ御伺ヒシタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=29
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030・小島新一
○政府委員(小島新一君) 我ガ國ニ於キマ
スル銑鐵ノ需要ハ、最近非常ニ增加致シマ
シテ、若シモ此ノ趨勢ヲ以テ將來參リマス
ルナラバ、更ニ非常ナル銑鐵ノ需要ヲ來シ
マシテ、之ガ供給ヲ圖ル爲メ非常ナ設備ノ
擴張ヲ要スルト云フコトハ御話ノ通リデゴ
ザイマス、實ハ商工省ト致シマシテハ、日
本製鐵株式會社法ノ出來マシタ以上、此ノ
日本製鐵株式會社ヲ根幹ト致シマシテ、日
本ノ製鐵事業ヲ確立スルト云フコトニ向フ
ベキモノト考ヘテ居ルノデゴザイマス、サ
ウ云フ意味ニ於キマシテ、日本製鐵株式會
社ヲシテ將來ノ擴張計畫ニ付テ、銳意考究
致サセマシタ、最近出來マシタ具體案ニ依
リマスト、昭和十六年ニ相成リマスルナラ
バ、大體日本ノ銑鐵ハ五百五十萬瓲程度ノ
需要ヲ充シ得ルヤウナコトニ相成ッテ居ル
ノデアリマス、左樣ニ致シマスルナラバ、
大體ニ於キマシテ、屑鐵ノ輸入ヲ出來得ル
限リ少クシテ、輸入ヲ最小限度ニ致シマシ
テ、日本ノ製鋼事業ニ必要ナル原料銑鐵ノ
供給ヲ致シ得ルヤウナ計畫ニナッテ居ルノ
デゴザイマス、併シナガラ是ハ更ニ將來ノ
需要等ニ付キマシテモ、一層檢討致シマシ
テ、ソレデ果シテ十分デアルカ、或ハ更ニ
他ニ擴張計畫ヲ必要トスルカト云フコトニ
付キマシテハ、能ク考究シマシテ、ソレニ
應ジテ更ニ施設ヲ致タサセタイト斯樣ニ考
ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=30
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031・曾我祐邦
○子爵曾我祐邦君 私ハ實ハ先程陸海軍ノ
政府委員ニ御伺ヒシタカッタノデアリマス
ガ、御出デニナリマセヌノデ、商工大臣ニ
鐵ノ國策ノコトニ付キマシテ伺ヒマシタノ
デアリマスガ、之ヲ繰返ス譯デモアリマセ
ヌガ、其ノ結論トシテ唯一言伺ヒマス、現
在ノ有樣ニ於テ陸海軍ガ要求セラレル所ノ
鐵或ハ鑛、其ノ他ノコトニ付テハ稍〓間
ニ合ッテ居ルノデアリマスカ、詰リ非常ニ十
分ニ感ジテ居ラレマスノデアリマスカ、チ
ヨット承リタイノデアリマス、將來ノ御計畫
ハ只今政府委員カラ御話ニナリマシタヤウ
二、昭和十六年デアリマスカニナルト、自
給自足ノ狀態ニアルダラウ、或ハモット良ク
ナル、原料ガ何處カラ來ルト云フ御說明ガ
ゴザイマセヌデシタケレドモ、足リナイト
云フコトガ分リマシタガ、陸海軍ノ客觀的
ナコトヲ簡單ニ承リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=31
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032・豐田副武
○政府委員(豐田副武君) 海軍ハ重大ナル
消費者デハアリマスガ、國內全般ノ消費ニ
比ベマスト、海軍ハ一部分ニ過ギナイノデ
アリマス、海軍ダケデ鐵鑛業ガドウカト云
フコトハ申上ゲラレナイト思フノデアリマ
ス、併シ平時ニ於キマシテモ現ニ滿洲カラ
入ルモノヲ除イテ、屑鐵ガ百七十萬瓲、「ピッ
グ」ガ六十萬瓲、合計二百二一十萬瓲ト云フモ
ノガ昨年アタリ外カラ入ッテ來テ居ル譯デ
アリマス、是ガ入ラナケレバ平時ノ供給ス
ラ到底出來ナイノデアリマスカラ、况ヤ戰
時ト云フコトニナリマスト「スクラップ」ト
云フモノハ外カラ入ルモノハナイト思ハナ
クチヤナラヌト思ヒマス、况ヤ先程申シマ
シタ「ビッグ」ハ六十萬瓲以上モ「ロシア」カラ
入ッテ居ルノデアリマス、サウ云フ風ナ狀況
デゴザイマスカラ、戰時ニナリマスレバ勿
論今ノ熔鑛爐ノ容量デハ到底國內需要ノ一
斑モ賄フコトハ出來ナイト云フコトヲ私ハ
信ジテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=32
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033・磯谷廉介
○政府委員(磯谷廉介君) 陸軍ノ方モ全然
同感デゴザイマシテ、平時ノ自給自足スラ
今日マデ出來テ居ラヌノデアリマス、况ヤ
戰時ニ於キマシテハ到底自給自足ハ出來ナ
イト云フ考デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=33
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034・曾我祐邦
○子爵曾我祐邦君 ソコニ於キマシテ私ハ
又此ノ案ノ根本問題ニ觸レタイノデアリマス、
詰リ此ノ問題ハ先程カラ承ッテ居リマスト、
金ト致シマシテ二百萬圓、會社ノ一割以上
儲ケルト云フ所ニ課稅ヲスルト云フコトノ
問題デアリマス、見樣ニ依ッテ非常ニ小ナル
金額デゴザイマス、而シテ會社ノ一割以上
儲ケテイケナイト云フヤウナ意味ノ理窟ハ
何處ニアルカト云フコトハ實ニ疑ハシイノ
デアリマス、製鐵事業ハ過去ニ於キマシテ
八幡ノ製鐵所ガ出來マシテカラ今日ニ至リ
マス迄ノ間ノ何十年ト云フモノハ、此ノ製
鐵ハ經濟上カラ日本國家ノ癌ノヤウニ思ハ
レル時代モアリマシタ、時代ノ變遷、又製
鐵事業ノ科學ノ進步ト相俟ッテ、八幡ガ漸ク
近年ニ至ッテ獨立シテ立派ナ成績ヲ擧ゲテ
居リマス、况ヤ民間ノ製鐵會社ニ於キマシ
テハ一盛一衰、昭和九年ノ上半期マデ無配
當ノ會社モ殖エテ參ッタノデゴザイマス、玆
ニ於キマシテ一盛一衰ガアッテ成績ガ良ク
チック、會社ガ强クナッタ、デ少シ儲ケル、
儲ケル所カラ取ッテヤラウ、斯ウ云フ意味ニ
解釋サレルノデアリマス、デ、是ハ非常ニ
憂フベキコトデアル、詰リ會社ガ不當ニ儲
ケルト云フコトハイカヌ、先程田所委員モ
御觸レニナッタヤウデアリマスガ、會社ガ
儲ケタナラバ、配當ハ常識的ニ制限シテモ
宜シウゴザイマセウ、又儲ケタ金ヲ以
テ此ノ工場ヲ國家的見地カラ發展スル
所ノ基礎ニ之ヲ監督セシムルト云フコ
トヲ御考ヘニナルコトガ最モ有利ナ方
法デナイカト思フノデアリマス、過去
ニ於キマシテ「ドイツ」ノ「クルップ」ノ如
キ、「フランス」ノ「シユナイデール」「クル
ウゾウ」ノ如キ、「イギリス」ノ「アームスト
ロング」ノヤウナ世界一ノ製鐵所ノ如キモ
ノニ迄發展セシメルト云フコトニ依ッテ初
メテ其ノ一割以上儲ケタ金ヲ有利ニ、又將
來ノ國家ノ必要ノ見地ニ基礎ヲ固クセシメ
ルト云フコトニ留意セラルヽコトガ必要デ
アル、僅カニ二百萬圓位ノ租稅ヲ取ルト
カ、人ノ儲ケ過ギルノヲ變ニ思ッテヤキモ
チヲ燒イテ稅ヲ掛ケルト云フヤウナ小サイ
モノヲ棄テテ、モット根本義ニ觸レテ會社ノ
儲ケト云フモノヲ政府ガ正當ニ監督スル、
本當ノ工業上カラ見タ、或ハ科學上カラ見
タル所ノ工場ノ發展、卽チ國家ノ將來要求
スル所ノモノ、卽チ言ヒ換ヘレバ陸海軍ガ
滿足シテ居ラレナイノヲ滿足サセル程度マ
デ引延バスト云フ風ナコトニ監督ナサルコ
トガ私ハ必要ヂヤナイカト思フ、而シテ現
在商工大臣ハ斯カル高遠ナル抱負ニ向ッテ
ドウサウ云フコトヲ現在御考ニナッテ居ル
ヤ否ヤ、私ハ其ノ將來ノ御考ヲ承ッテ置キ
タイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=34
-
035・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 只今ノ大體製
鐵國策トシテノ御考ハ私ノ考ヘテ居ル所ト
少シモ違ハナイノデアリマス、ソレデ先ヅ
今ノ御話ニ御答ヘ申上ゲマス前ニチヨット
私ハ申上ゲテ置キタイコトガアリマス、ソ
レハ海軍ノ政府委員カラモ御話ヲシタヤウ
ニ製鐵國策ニ付キマシテ全面的ノ一ツ見直
シトデモ申シマスカ、製鐵國策全面ニ亙リ
マシテ一ツ檢討ヲシテ見ヨウ、斯ウ云フコ
トデ各關係省ノ協議會ヲ開イテヤッテ居リ
マス、後ノ問題ハ色々アリマスケレドモ、
一例ヲ申上ゲマスレバ、今問題ニナリマシ
タ屑鐵ニ依存シテ居ルヤウナ製鐵法ハ困ル
カラ、屑鐵ノ輸入ヲ少クシテ無論一本立ニ
シナケレバナラヌト云フヤウナ考カラ製鑛
方法ヲ改善シテ行キタイ、鑛石法デ······技術
ノコトハ私能ク分リマセヌガ、屑鐵法カラ
鑛石法ニ移ッテ行クト云フヤウナ大體方針
デアリマス、其ノ方針モ一ツノ問題デアリ
さく、ソレニ關聯シテ鎔鑛爐ヲ增設スルト
云フ問題、是ハ今マデ申上ゲマシタ「アウ
トサイダー」ニモ鎔鑛爐ヲ許シテ行クノハ
其ノ精神ヨリ出テ〓ルルノデアリマス、又
日本製鐵會社ハ鎔鑛爐ヲドシ〓〓增設ヲ
シテ行クコトガ最モ必要ダト思ッテ居リマ
ス、サウ云フコトモ一ツ考ヘテ居リマス、
ソレカラ原料ト致シマシテハ資源ノ開發ノ
件或ハ貧鑛、砂鐵等ノ利用促進ノ件、日
滿兩者ノ製鐵業統制ノ件、本邦鐵工材生產
販賣統制ノ件、海外輸出增進ノ件、製鐵奬
勵法改正ノ件、一例デゴザイマスガ、斯ウ
云フヤウナ問題モ議題ニ致シマシテ協議會
ヲヤッテ居リマシテ、全面的ノ檢討ヲ致シマ
シテ今日ノ時勢ノ要求シテ居ル製鐵ノ自給
自足ヲ圖ラウト熱心ニ考ヘテ居リマス、唯
課稅ヲ致シマスニ付テ御議論ガアリマシタ
ケレドモ、今マデ申上ゲマシタヤウナ趣旨
デ大本ハ御考ト異ッテ居リマセヌカラ、ドウ
ゾ御了承ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=35
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036・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) モウ質問アリ
マセヌカ······質問ガナケレバ、是デ質問ハ
打切リマシテ、時間モ切迫シテ居リマス
ガ、如何デゴザイマセウカ
〔「打切贊成」、「異議ナシ」ト呼フ者ア
リ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=36
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037・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) ソレデハ打切
ルコトニ致シマシテ、是カラ討論ニ入リマ
スガ、別ニ御意見ガナケレバ採決致シマス
〔「異議ナシ」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=37
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038・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 是デ決議ニ
ナッタコトト認メマス、散會致シマス
午後零時十二分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵樺山愛輔君
副委員長男爵渡邊汀君
委員
公爵島津忠重君
侯爵中御門經恭君
子爵曾我祐邦君
子爵岡部長景君
子爵大岡忠綱君
男爵赤松範一君
男爵園田武彥君
田所美治君
小坂順造君
根津嘉一郞君
上郞〓助君
磯村豐太郞君
野村茂久馬君
久恒貞雄君
澁澤金藏君
國務大臣
大藏大臣馬場鍈一君
商工大臣小川〓太郞君
政府委員
大藏書記官松隈秀雄君
陸軍少將磯谷廉介君
海軍中將豐田副武君
商工省鑛山局長小島新一君
商工書記官新倉利廣君
貴族院豫算委員第二分科會議
事速記錄第一號正誤
頁段行誤正
六四111奴徒
〃〃二四天皇、尊皇
○ ○一一九奴者
貴族院豫算委員第二分科會議
事速記錄第二號正誤
頁段行誤正
五一一九「ロシヤ」ノ武日本大使館書
官デアッタガ記官ガ
六三七外務省外交協會
〃四八自分ニ關係ガ自分ガ關係シ
一〇一今マデ數萬今マデ一箇年
ニ數萬発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006901931X00119360523&spkNum=38
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