1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年三月十九日(金曜日)午前十時十三分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=0
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001・委員長(男爵稻田昌植君)
○委員長(男爵稻田昌植君) 委員會ヲ開會
致シマス、松村委員ニ御伺致シマスガ、
昨日此ノ委員會デハ質疑ヲ終了致シマシタ
ノデアリマスガ、新シク松村委員補關デ御
入リニナリマシタノデ、松村委員ノ御質疑
ガ若シモ御アリニナリマスレバ、御發言ヲ
願ヒマシテモ各位ニ御異議ハナイコトト思
ヒマスノデゴザイマスガ、御質疑ハ如何デ
ゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=1
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002・松村眞一郞君
○松村眞一郞君 若シ御許ガ願ヒマスレバ
私少シ御尋ネシテ見タイト思フノデアリマ
スガ、御都合ニ依ッテドチラデモ結構デゴザ
イマス
委員長(男爵稻田昌植君)御質疑下サイ
マシテ結構ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=2
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003・松村眞一郞君
○松村眞一郞君 私ハ此ノ絲價安定ト云フ
コトヲ法律ヲ以テ力强ク御ヤリニナルト云
フコトニ付テハ大變結構ナコトト考ヘルノ
デアリマスガ、大體ノ此ノ法案ヲ拜見致シ
マスト、米ニ對スル施設ト云フコトガ餘程
參考ニナッテ居ルヤウナ意味ノヤウニ考ヘ
ラレル、最低價格ヲ定メ、最高價格ヲ定メ
ルト云フヤウナ點、サウシテ之ヲ定メルニ
付テ如何ナル項目ヲ參酌シテ〓究スベキカ
ト云フヤウナコトニ付テ色々相似タル規定
モアルヤウニ考ヘル、唯其ノ中デ特ニ餘程
問題ヲ將來生ジヤシナイカト思ヒ、且運用
上大切ナコトデナイカト思フノハ、繭ノ生
產費ニ關スル問題デアルト思フノデアリマ
ス、ソレハ第十一條ニ「繭生產費中ニ於ケル
現金支出額ニ自給費ノ一定割合ノ金額ヲ加
ヘタルモノ」、之ヲ一ツノ計算ノ項目ニシテ
居ラレル、是ハ或意味ニ於テ言ヒマスト、
含蓄ノアル書キ方ガシテアルノデアリマス
ルガ、運用ニ依ッテハドウニデモナルヤウナ
規定デモアリ、極メテムツカシイ問題ガ此
ノ中ニ包藏サレテ居ルヤウニ私ハ考ヘル、
率直ニ之ヲ眺メマシタナラバ、生產費全部
ヲ補償スルニ非ズシテ、生產費ノ一部ダケ
ヲ補償スルノデアルト云フヤウナ工合ニ見
エル、勿論米ノ場合ト雖モ生產費ヲ最低價
格ノ算出ノ規準ニハ致シテ居リマスルガ、
生產費ヲ敢テ補償スルノデハナイト云フコ
トデハアリマスケレドモ、ソレデアリマス
カラ繭ニ付テモ同ジコトデ生產費ト云フモ
ノト、生絲ノ製造販賣ニ要スル費用ト、サ
ウ云フモノヲ參酌スルト云フコトデ是ハ宜
クハナイカト思フノデアリマスガ、特ニソ
コニ現金支出ト云フコトヲ先ヅ揭ゲ、現金
支出ト云フモノハ必ズ生產費ノ中デ見ルノ
デアルト云フコトヲ此處ニ明カニシテ、サ
ウシテ自給費ノ一定割合ノ金額ヲ加ヘタル
モノ、斯ウナル、サウシマスト云フト、繭
ノ生產費ノ中ノ現金支出ダケハ全額ヲ標準
トシテ眺メル、敢テ全額ヲ補償スルト云フ
意味ヂヤナイ、全額ハ斯ウ云フ風ニ眺メル、
而シテ自給費ニ付テハ一定ノ割合ノ金額ト
云フモノデ見ルト云フコトニナリマスト云
フト、自給費ノ一定ノ割合ト云フモノハ本
當ノ自給費ヨリモ大キナモノデアルト云フ
コトハ普通ノ觀念トシテ想像シ得ナイノデ
アリマス、ソレハ規定ノ書方ハ自給費ノ
定ノ割合トアリマスカラ、自給費ノ一定ノ
割合デアリマスカラ、十五割モ一定ノ割合、
八割モ一定ノ割合ヂヤナイカト云フコトガ
言ヘマセウ、併シ常識デ見レバ自給費ノ
定ノ割合ト云ヘバ、先ヅ自給費ヨリモ自給
費ノ一部ト云フコトニナルノハ當然ダト思
ヒマス、是ハ文字ハ私ノ申シマシタ如ク包
容ガアリマスカラ、運用スルモノガ一定ノ
自給費、一定ノ割合デアルト云フヤウナコ
トヲ言フナラバ、是ハ殆ド意味ノナイコト
デアッテ、自給費ガ十トアルト、此ノ一定
ノ割合デアルカラト云ウテ百ト計算スルト
云フヤウナコトハ是ハ文字ハ許シマセウガ、
サウ云フコトハ法律ノ端的ナル解釋トシテ
許サナイコトデアリマスカラ、ドウシテモ
自給費ノ一定ノ割合ハ自給費ノ何「パーセン
ト」卽チ其ノ一部分デアルト云フコトニ讀ム
方ガ常識デアル、サウシテ現金支出ト云フ
モノモ矢張リ或意味ニ於テ一定金額ニナル、
農家ガ現金支出トシテ出シタカラト云ウテ
之ヲ直ニ見ルノヂヤナイ、ソレモ生產費ヲ
平均シテ出ストカ何トカ云フコトニナルノ
デアリマスカラ、何レニシテモ一定金額ニ
ナッテシマフ、併シ現金支出ニ付テハ一定金
額ヲ付ケズシテ自給費ノ一定割合ト付ケマ
ス以上ハ、常識的ニハサウ見ラレル虞ガア
ル、私ハ寧ロ法律トシテハ斯クノ如キ煩瑣
ナルコトヲ揭ゲズシテ繭ノ生產費及ビ生絲
ノ製造販賣ニ要スル費用ト云フ書キ方ノ方
ガ宜カッタノヂヤナイカト思フ、斯クノ如キ
コトハ勅令ノ方デ定メレバ宜イ、農家ガ現
金支出ダケハ是非補償シテ戴キタイト云フ
コトヲ言フト云フヤウナコトノ意味ヲ此處
ニ現シテ居ルト云フコトハ、衆議院ノ委員
會デ政府委員ガ答辯サレテ居ル、サウ云フ
讀方ヲサレルト云フコトハ深切デハアリマ
セウ、法律ニ書イテ置イタ方ガ深切デアリマ
セウ、併シ今申シタ如ク、却テ規定ト云フ
モノガ非常ニ曖昧ニナルト思フ、ソレデ運用
スル上ニ於テハ十分ニ御考慮ヲ煩シタイト
思フ、其ノ意味ハ元來絲價ノ安定施設ト云
フコトニ法律ノ名前ガナッテ居リ、第一條ヲ
見ルト生絲ノ價格ト云フコトヲ目標ニシテ
居ル、併シ此ノ提案ノ理由書ヲ見ルト、繭
絲價ノ異常ナル騰落ト云フコトニ書イテア
ル、サウシテ、速ニ繭絲價ノ激變ヲ防止ス
ルノ方策ヲ講ズルコトガ必要デアルト、斯
ウ云フコトヲ云ッテ居ル、法律ハ表面ハ絲價
安定ト云ッテ居リナガラ、理由書ニ繭絲價ト
云フコトヲ云ッテ居ル、繭價ト絲價ハ二ツニ
ナル、然ルニ法律ハ繭價ト絲價トガ綜合サ
レテ、一番終極ニ於テハ絲價ニナッテ現レ
ルカラト云フ意味デアラウト思ヒマスガ、
第一條ハサウ書イテアル、私ハ理由書ニ書
イテ居ルノガ本當ヂヤナイカト思フ、元來
蠶絲業ダケハ非常ニ徹底シタル行政ヲ從來
政府ハ執リ來ッテ居ル、卽チ種カラ、養蠶力
ラ、製絲カラ、而シテ販賣カラ、海外ノ輸
出ニ至ルトコロノ貿易カラ、之ヲ初メカラ
終ヒマデ、一團トシテ施設シテ居ルト云フ
所ニ蠶絲行政ノ非常ナ特殊性ガアリ、徹底
性ガアル譯デアリマスカラ、終極スルトコ
ロノ絲ノ價ニ於テ調節ヲスレバ、總テノ問
題ハ解決スルガ如ク思ハレルケレドモ、其
ノ實ハ內容ガ非常ニ多岐ニナッテ居ルガ故
ニ、横ニ矢張リ交叉スル必要ガアル、應
蠶種ニ於テ問題ヲ玆ニ解決シ、然ル後ニ養
蠶ニ於テ解決シ、然ル後ニ生絲ニ於テ解決
スルト云フコトニナッテイカナイト、本當ノ
行屆イタ深切ナ繭絲價ノ安定ト云フコトハ
私ハ出來ナイト思フ、ソレハドウ云フ意味
カト申シマスト、蠶絲業ノ愈〓貿易ノ點マ
デ入ッテ行ッテシマッタ後ニ於テノ、總テノ總
決算ヲ關係當局者ノ間ニ於テ能ク分配ヲシ
テ、各〓過不足ノナキヤウニ、公平ニ利益ガ
均霑サレルナラバ、非常ニ是ハ結構ナコト
デアリマス、デアルナラバ、絲ガ高イ時ハ
種モ、養蠶者モ、製絲家モ、貿易業者モ皆
等シク利益ヲ得ルト云フコトニナルナラバ、
非常ニ是ハ私ハ分配ガ宜ク行クダラウト思
フ、併シサウハイカナイ、段階ガアッテ、人
ガ違ッテ居ルノデアリマスカラ、殊ニ養蠶ニ
付テハ、養蠶カラ繭ニナッテ、繭カラ絲ヲ造
ル者ニ賣ルト云フコトハ、是ハ自然ノ經路
デアリマス、是ハ他ノ言葉デ申シマスト、
棉花ヲ作ッタカラト云ッテ、棉花業者ガ紡績
業ヲヤルト云フコトハ並通狀態デハナイ、
今日產業組合製絲ト云フコトヲ政府ニ於テ
ハ一面奬勵サレテ居ルノデアリマスカラ、
一面繭ヲ作リ、其ノ繭ヲ更ニ製絲スルマデ、
サウシテ貿易マデヤルト云フ所ニ產業組合
ガ今乘出シテ居ラレルヤウデアリマスガ、
是ハ餘程ムヅカシイ問題デアル、此ノ助長
ニ付テハ非常ナ私ハ難問モアルシ、大切ナ
コトガ澤山包含サレテ居ルト思ヒマスガ、
兎モ角大體ノ傾向ハ農家ハ繭デ以テ玆ニ一
應ノ段落ヲ付ケルト云フコトニナルノデア
リマスカラ、若シ最後ノ絲デ玆ニ決濟ヲシ
タ場合ニ、其ノ關係者ノ間ノ資力ノ矢張リ
消長ニ依ッテ、何レカ弱イ者ガヨリ少キ利
益ヲ受ケル、ヨリ少キ利益ナラバ、
宜イガ、ソレガ爲ニ、場合ニ依ッテハ弱
者ハ損失ヲ被ッテ、强者ハ利益ヲ得ルト
云フコトガ、蠶絲業ノ全體ニ於テ私ハ出テ
來ルト思フ、ソレデアリマスカラ、私ハド
ウシテモ、其ノ出發點デアルトコロノ、養
蠶ノ安定ト云フコトガ、私ハ第一ト思フ、
ソレデアルカラ、其ノ際ニ於テ生產費ト云
フモノニ付テノ一部分シカ補償シナイデア
ルガ如ク讀メルヤウナ規定ヲ玆ニ揚ゲルト
云フコトハ、宜クナイト思フ、何ガ故ニ、
生絲製造ノ費用ハ全額ト玆ニ書イテ······生
絲販賣ノ方ハ、生絲販賣ノ實用ハ一部トカ
一定額トカ書イテアルガ、生絲製造費、販
賣費ニ關スル限リ全般ヲ眺メレバ、サウス
レバ、生產費モ全般ヲ眺メテ宜イト思フ、
何ガ故ニ自給費ト現金支出ト分ケルカト云
フコトハ、農家ニ於テハ金肥ト云フモノガ
アリ、自給肥ト云フモノガアル、肥料ニ關
シテノ問題ガアリマスカラ、サウ云フコト
モ考ヘマセウ、果シテサウトスレバ、米。
於テコソ尙必要ナ問題デアル、米ニ於テモ
金肥ト自給肥トアル、併シナガラ政府ハサ
ウ云フコトヲ書イテ置カナイ、ソレデアリ
マスカラ、玆ニ書イテアル理由ハ、矢張リ
生產ヲ保障スルト云フ意味デナイゾト云フ
ヤウナ意味ガ、玆ニ想像サレルト云フ虞ノ
アル意味ニ於テ、私ハ餘程政府ニ運用上御
考慮ヲ煩シタイト思フ、尙元來此ノ繭ノ生
產費ヲ保障シテ行クト云フ方面、卽チ農家
ノ安定ト云フコトノ方ニ立脚シタトコロノ
蠶絲業ト云フコトガ非常ニ大切ナリト云フ
コトノ意味カラ、私ハ其ノコトヲ申上ゲマ
スガ、一方ニ於テ此ノ行政ノ運用上ニ非常
ニ御考ヲ煩サナケレバナラヌト思フ、ソレ
ハ今申シマシタ如ク、種カラ貿易マデ含ン
デ居ルノデアリマスカラ、內容ハ商工行政
ガ多分ニ入ッテ居ル、今日ハ生絲ハ輸出ノ方
ノ第一位ニハナッテ居ナイケレドモ、多年ノ
間生絲ハ第一位ニアッタ、サウスルト云フト、
貿易ノ大ナルコトヲ農林省ガヤッテ居ッテ、
殘リノ貿易ヲヤッテ居ルノハ商工省ノ貿易
局、貿易ト云フコトニ制限ハアルガ、ソ
レ程貿易ト云フモノノ大キナモノヲ農林省
デヤッテ居ルト云フコトデアリマスカラ、殊
ニ今度ノヤウナ工合ニ、競爭纖維ノ價格ヲ
參酌シテ、此ノ問題ヲ決メルト云フヤウナ
場合ニ於テモ、競爭纖維ト云フノハ結局人
造纖維、ソレハ商工省ノ所管ナンデス、農
林省ハ競爭纖維ナンカノ本質ヲ知ラナイ、
ソレガ如何ニ販賣セラレテ居ルカ、如何ナ
ル趨勢ヲ辿ルカト云フコトヲ農林省トシテ
ハ平素知ラナイコトデアルノデアリマス、
ソレガ矢張リ價格算定ノ場合ニ重大ナル要
素ニナルト云フコトハ、此ノ運用上、農林、
商工省間ニ於ケル密接ナル聯絡協調ト云フ
コトハ、外ノコトヨリ非常ニ大切ナルコト
ト思ヒマスカラ、此ノ點ハドウ云フヤウナ
工合ニ相談ヲサレテ居ルノデアルカト云フ
コトヲ私ハ承知シタイノデアリマス、斯ウ
云フヤウナ場合ニハ職員ガオ互ニ兼ネ合フ
トカ、片ッ方ガ兼務スルト云フヤウナ問題モ
必要ニ依ッテ起ッテ來ルカ知レナイガ、農林、
商工省ノ聯絡協調ノ密接ナルコトハ、生絲
ト云フコトニ付テハ非常ニ必要ト思フ、ソ
コデ問題ハ今ノ繭價ノ問題デス、一應ハ繭
價ニ於テ結末ヲ著ケルト云フ意思ヲ以テ眺
メナケレバナラヌノデアリマスガ、農林省
ハ繭ノ販賣値段ニ付テ如何ナル公定相場ガ
是カラ生レテ來ルヤウナ工合ニ助長スル積
リデアルカト云フコトヲ、私ハ御尋ネシタ
イ、ソレハ例ヘバ市場デスネ、實物市場ト
申シマスカ、或ハ取引所的市場ノ公定相場
ノ公平ナルモノガ現レテ來ルヤウナ意味ノ
市場ノ建設ガ繭ニ付テ私ハ必要ダト思フ、
ソレハ殊更ニドコデ區切ヲ付ケルト云フ意
味ヂヤナイ、併シ一應ハ繭ノ値ト云フモノ
ヲ眺メテカラ後ニ、製絲家ノ算盤勘定ト云
フコトヲ考ヘルコトガ私ハ當然ダラウト思
フ、組合製絲ノ場合ナラ宜シイ、產業組合
製絲ナラ宜シイ、併シナガラ茲ニ養蠶家ト
云フモノト、製絲家ト云フモノガ、個々ニ
離レテ居ル場合ニ、養蠶家ノ場合ハ繭ノ製
產費ハ必要デセウ、併シナガラ製絲家ハ繭
ノ生產費ハソレ程必要デナイノデス、自己
ノ買入値段ト生絲製造値段ト云フモノヲ見
テ、其ノ差益ニ依ッテ事業ガ安定スルカドウ
カノ問題ニナル、何レニシテモ繭價ノ公定
相場ニ對スル眺メ方ト云フコトハ、農林省
トシテ非常ニ必要ナコトト思フノデアリマ
スガ、ドンナコトヲ御考ヘニナッテ居ルカト
云フコトガ、私ノ御尋ネシタイ所デ、ソレニ
ハデスネ、取引所制度ト云フモノト非常ニ
關係ガアル、是ハ價格調節デアリマスカラ、
價格調節デアッテ、最モ投機的賣買ノ行
レルモノハ生絲デアリマス、生絲ニ於テコ
ソ安定ト云フコトガ非常ニ必要ナンデス、
非常ナ相場ノ開キガアルノデアリマスルカ
ラ、ソコデ取引所ニ於ケル掛繫ギト云フコ
トガ非常ニ大切ニナッテ來ル、私ハ有價證劵
ノ取引ニ付テ大藏省ガ共管ヲ叫ンダ、時ニ、
自分ノ管轄ニスルト云フ商工省トノ間ニ付
テノサウ云フ協商ガアッタノデアリマス、サ
ウ云フ問題ガアレバ、米價調節ヲヤッテ居ル
所ノ農林省ニ於テ米ノ取引ニ付テ共管ヲ叫
ビ、或ハ生絲ノ價格調節ヲヤッテ居ッテ、
貫シタ生絲ニ付テノ權限ヲ持ッテ居ル農林
省ガ生絲ノ取引所制度ニ付テ共ニ之ガ管轄
權ト云フモノヲ叫バナイト云フコトハ、世
間或ハ疑問ニ思フカモ知レヌ、併シ是ハ叫
バザルコトニ其ノ理由アリト思ヒマスカラ、
是ハ監督行政ノ關係カラ商工省ニ於テ一貫
スル方ガ或ハ宜イカモ知レマセヌ、併シナ
ガラソレ程價格ト取引所ト云フモノノ關係
ハ考慮ヲシナケレバナラヌト云フ問題デア
リマスルガ故ニ、殊ニ繭ノ問題ニ付テハ特
ニ御考慮ヲ私ハ煩シタイト思フノデアリマ
ス、サウシテ此ノ價格調節ニ付テ、今申シ
マシタヤウナ譯デ、大切ニ考ヘルベキコト
ハ繭ノ生產費ダト私ハ思フ、從ッテ本法ニ
依ッテ何處ニ重點ヲ置イテ運用スベキカト
云ヒマスト、其ノ最低價格ノ方、卽チ買入
價格ノ方ニ於テ政府ガ力ヲ注グト云フコト
ガ非常ニ必要ナコトヂヤナイカト思フ、デ、
其際ニ於テ眺メル所ハ生產費デアリマスカ
ラ、買入レル方ノ側ハ値段ガ低クナルコト
ヲ防止スルト云フ所ニ力ヲ入レルバキデア
ルト私ハ思フ、サウ云フコトヲ要點ニシマ
スト云フト、後デ賣ルコトノ出來ナイヤウ
ナ意味ノ拘束ヲ成ルベク受ケナイヤウニシ
ナイト云フト、此ノ法律ノ連用上ムツカシ
イ問題ガ私ハ生レテ來ルト思フ、元來特別
會計ノ方ニモ關係アルノデアリマスガ、此ノ
特別會計ヲ運用スルニ當ッテ、先ノ見込ハド
ウ云フヤウニ考ヘラレテ居ルノデアルカ、詰
リ必ズ利益ガアルト云フヤウナ工合ニ考ヘ
ラレテ居ルノデアルカ、損失ガ生ズルカモ
知レヌト云フコトヲ考ヘラレテ居ルノデア
ルカト云フコトガ、此ノ特別會計法ニ對ス
ル政府ノ眺メ方ニ付テノ質問ナンデアリマ
ス、ソレハ米ノ場合ニモ斯ウ云フ議論ハアッ
タノデアリマス、借金會計デヤッテ居ルノデ
アル、極メテ不安定デアル、私ハ今日モ不
安定デアルト思ヒマスガ、トコロガ、其ノ
場合デモ斯ウ云フコトヲ言ッタ人ガアッタ
ノデス、廉イ時ニ買ッテ高イ時ニ賣ルノダ
カラ、儲カルノダト云フヤウナコトヲ言ウ
タ人ガアル、ソレニ對シテ今度ノ生絲ノ方
ハ、米ノヤウナ工合ニ品質ノ低下ガナイ、
米デアレバ古米格ト云フモノガアッテ、直グ
ニ翌年ハ下ッテシマフケレドモ、其ノ品質ガ
惡クナラナイ······生絲ニ付テハ品質ガ惡ク
ナラナイ、畢竟古絲格ト云フモノガ賣値ニ
付ク程ノモノデモナイ、從ッテ損スベキ原因
ハ少イト云フコトノ意味ニ於テ特別會計ノ
安定性ガアルガ如クチョット想像サレル、併
シナガラ、ソレハ又非常ニ考ヘナケレバナ
ラヌコトデアッテ、ソレアルガ故ニ、政府ガ
抱キ込ンダモノハナカ〓〓放シ得ナイト云
フコトニナッテ來ル、ソレハ現ニ政府ガ今
持ッテ居ルトコロノ生絲ガ、或見方ヲスルト
云フト、政府ガ非常ニ多量ニ抱ヘ込ンデ居
ルトコロノ其ノ生絲ヲ、何トカ處分シタイ
ガ爲ニ、斯ウ云フ法律ヲ作ッタノダト言ヘナ
イコトモナイ、是ハ私ハ一ツノ見方ダト思
フ、持チアグンデシマッタ結果、茲ニ特別會
計法ト云フモノヲ作ッテ保管シテシマッテ、
又ソコヘ退却シヨウト云フヤウナ意味ノ案
デアルガ如ク想像シ得ルト私ハ思フ、ソ
レハ何故カト云フト、イツマデ經ッテモ處分
シ切レナイ、又ソレニ對シテハ斯ウ云フコ
トモ言ヘマセウ、ソレハ新用途ヲ發見シテ、
賣ルコトサヘ考ヘレバ宜イヂヤナイカ、サ
ウ簡單ニハ行カナイ、新シイ用途ト云ッタト
コロガ、用途ハ降ッテ來ルモノデハナイ、必
ズ何等カノ用途ヲ置換ヘルニ違ヒナイ、サ
ウスレバ、置換ヘラレタモノハ經濟上ノ非
常ニ打擊ヲ被ルト云フコトガアルノデアリ
マスカラ、全然天カラ降ッテ來タ新シイ用途
ヲ發見シタナラバ、新用途ト云フモノハ玆
ニ議論ガ出來マセウ、併シナガラ何等カノ
方面デ、是ハ代用品ニナッテ來ル、サウスレ
バ、代用サレタモノハ必ズ迷惑ヲ蒙ル、サ
ウ云フ譯デアリマスカラ、一旦絲ヲ背負込
ンデシマフト容易ニ離セナイ、米以上ニ
困難トナッテ來ル、米ナラバ、品質其ノモノ
ガ低下シテ來マスカラ、持ッテ居ル間ニ市價
ノ消費ガ行ハレテ來ル、生絲ハ品質ノ變化
ガナイ、詰リ市價消費ガ行ハレナイ、行六
レナイガ故ニ、益〓背負込ム、是ハ現在ノ事
實ナンデアリマス、サウ云フ譯デアリマス
ルカラ、或時期ニ職ヲ奉ゼラレタトコロノ
大臣ハ、速カニ是ハ處分シテ貰ハナケレバ
イカヌ、ドウシテモ斯ウ云フモノヲ持ッテ
居ルト云フコトガ、高値ノ頭ヲ押ヘル、米
ニ付テモサウ云フ問題ガアリマス、政府
ガ或數量背負込ンデ居ルト、高値ヲ却
テ押ヘテシマッテ、上ルベキモノヲ上ラ
セナイト云フコトヲ云フ、ソレハ生絲ニ於
テ尙ソレガヒドイ力ヲ持ッテ居ル、ナゼカト
云フト、品質ガ低下シナイカラデアル、サウ
云フヤウナモノヲ政府ガ背負込ンダ場合、
イツ迄モ政府ハ離シ切レナイ、私ハ其ノヤ
リ方ハ非常ニ宜シクナイト思ッテ居ル、私ハ
一定ノ時期ニ相場ノ如何ニ拘ラズ、政府ガ
持ッテ居ルモノヲ賣ルト云フヤウナ方針ヲ
一方ニ於テ確定スル必要ガアルト思フ、餘
計ノ絲ヲ背負込ンダ場合ノコトヲ私ハ申ス
ノデアル、斯ウ云フヤウナ案デ進行サレル
ト、其ノ持ッテ居ル絲ノ處分ニ困ル場合ガア
ルカラ、特別會計法ト云フコトヲ書イテア
ルト云フト、共同保管ヲシタ場合ニ絲ヲ渡
ス、是ハ非常ニヲカシナ觀念デアル、共同
保管ヲスル場合ハ安定組合ニ於テソレヲ背
負込ムコトハ甚ダ好マシクナイケレドモ、
已ムヲ得ズ背負込ム、其ノ意味ニ於テハ絲
ガ多過ギル、背負込ノ多過ギルトコロノ組
合へ又絲ヲ與ヘルト云フノダカラ、益〓滯貨
ヲ生ズル、是ハ非常ニ特別會計法中ノ矛盾
ダト思フ、金ヲ與ヘルノハ宜シイ、ソレハ
何故ニ提供スルノダカト云ヘバ、ソレハ倉
敷料ニ提供スル、倉敷料ニ提供スルト云フ
ノハ現金ヲ與ヘルノデス、特別會計ノ借入
金ヲ片ッ方ニヤッテ、現金ヲ與ヘレバ宜イ、
其ノ理由ハナゼカト云フト、前ニ申シマシ
タ政府ノ持越シテ居ル所ヘ、滯貨ヲ特別會
計ニ移管スルコトヲ行ハレルト云フコトハ、
旣ニ私ガ申シマシタ通リ、背負込ンダトコ
ロノ絲ノ始末ニ困ルト云フコトガ其處ニア
ルノヂヤナイカト想像サレルト云フコト
ガ私ハアルト思フ、サウ云フ譯デアリマスカ
ラ、之ヲ運用スルニ當ッテ餘程御注意ニナラ
ナイト云フト、今ノヤウニ政府ガ處分スルコ
トガ出來ナクナッテ來ル、サウシテ少シデモ
賣ルト云フト、値段ヲ崩スト云フノダカラ、
背負込ムバカリデ此ニットモ賣レナイ、新用途
ト云フコトヲ云フケレドモ、今申シタヤウ
ニ、他ノ用途ノ置換ヘラレタ方ガ迷惑ニナ
ル、神經過敏ニナレバ、益〓何トモ出來ナ
イ、何トモ出來ナクテモ自然消滅ニナレバ
結構デアルガ、ナカ〓〓消滅ニナラナイ、
政府ガ如何ニ是等ニ付テ從來御苦心ニナッ
テ居ルカト云フコトハ、世間周知ノ事柄デ
アル、サウデアリマスカラ、今申シマシタ
如ク、或時期ノ大臣ハ一擧ニシテ之ヲ處分
シテシマフト云フコトノ賢明ナル政策ヲ樹
テラレテ、是ハモウ綺麗サッパリヤッテ、又
新タニ出發スルト云フヤリ方ハ一ツノ方法
デハナイカト思フ、トコロガ斷行ナサラナ
イ、保管シテ濟シ崩シニ背負込ンデシマ
フ、サウシテイツ迄モ何トモシ切レナイ、
ソレハ結局其ノ際一應市價ヲ釣上ゲタケレ
ドモ、イツ迄モ持ッテ居ル爲ニ、永久市價ヲ
釣上ゲルコトニナル、ソレハ矢張リ處分サ
レナイ、處分シテシマッテ、又新タナモノニ
向ッテ行クト云フノガ當リ前デ、用途ノ分ラ
ナイモノヲ唯持ッテ居ル、唯持ッテ居ル間ニ
用途ヲ〓究シテ居ルト云フガ、是ハヲカシ
イ話、經濟上ノ議論カラ云ッテモ、ヲカシイ
話デアル、凡ソ需要ガアッテ、物ヲ造ッテ居
ル、需要ガナイノニ物ヲ造ルト云フコトハ
經濟ノ原則ニ逆行シテ居ルノデアルカラ、
サウ云フヤウナ此ノ安定絲價デ御ヤリニナ
ルト云フコトハ、是ハ非常ナ問題ヲ起ス、
是コソ對處スルコトノ出來ナイ癌ダラウト
思フ、米穀政策以上ノ是レハ癌ダト思フ、
ナゼカト云ヘバ、米ノ方ハ自然ニ腐ッテ行ク
ト云フモノデアリマスカラ、直グソレ自身
消エテ行ク、此ノ方ノ癌ハ若シ癌トシテ固
定シタナラバ、イツ迄モ膠著シテシマッテ除
レナイ、片ッ方ニ於テハ些ットモ遠慮ナク
人造纖維ト云フモノガ進出シテ來ルノデ
アリマスカラ、今申シタ如ク、餘程商工省
關係ト密接ナル關係ノ下ニ御考慮ニナルコ
トガ必要ダラウト思フ、例ヘバ共同保管ト
云フヤウナコトヲ言ッテ見テモ、ソレハ何
ヲ共同保管シテ居ルカト云フト、米ノ場合
ト違ッテ、生絲ト云フ商品ヲ保管シテ居ル
ノデアリマスカラ、此ノ點ニ於テモ商工省
ト餘程密接ナ關係ヲオ保チニナル必要ガア
ルト思フ、サウ云フヤウナコトニ付テハド
ンナヤウニ御考ヘニナッテ居リマスカ、
應承ッテ見タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=3
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004・井野碩哉
○政府委員(井野碩哉君) 只今松村委員ノ
御質問ニナリマシタ點ハ、大體拜承致シマ
スト、四ツノ點ニアルヤウデゴザイマス、
大體御意見ニ對シマシテ私共大イニ〓エラ
レル所ガアルノデゴザイマスガ、唯其ノ御
意見ノ中ニ多少私共トシテ御說明ヲ申上ゲ
テ置イタ方ガ宜イト思フ事柄ガゴザイマス
カラ、御答ヲ御許シヲ願ヒタイト思フノデ
アリマス、先ヅ第一點ノ繭生產費ニ關シマ
スル第十一條ノ問題デゴザイマスガ、此ノ
條文ハ、松村委員ノ御述べノ如ク、非常ニ
我々モ苦心ヲ致シマシテ作リマシタ條文デ
ゴザイマシテ、或ハ見樣ニ依ッテハ、餘リ煩
瑣ナコトヲ書キ過ギタト云フ御叱リヲ受ケ
ル場合モアリハシナイカト云フコトヲ想像
シツヽ實ハ書イタノデアリマスガ、併シ斯
ノ如クハッキリ當局ノ方針ヲ條文ノ上ニ表
シマズコトガ最モ養蠶農民ニ深切デアル、
斯ウ云フ氣持カラ、實ハ此ノ條文ヲ斯ノ如
クニ書キマシタノデゴザイマス、ソレハ今
オ述べノ如ク、此ノ條文ニ依リマスレバ、
繭生產費ノ中ノ現金支出ト自給費ノ一定割
合ト云フノハ、無論是ハ讀ミ方ニ依リマシ
テ、自給費ノ十五割トカ十六割トカ云フコ
トモ或ハ言ヘルカモ知レマセヌ、併シソレ
ハ無論常識的ノ解釋デゴザイマセヌノデ、
矢張リ玆ニ書キマシタコトモ自給費ノ十割
以內ト云フ意味デ、一定割合ト書イタ譯デ
アリマスカラ、從ッテ現金支出額ハ先ヅ十
割自給費ハ十割以內ト云フコトニナリマ
スカラ、繭生產費トシテハ十割以內、卽チ
繭生產費全部ハ買入レ價格決定ノ基準ニナ
ラヌト云フコトヲハッキリ現シテ居ルノデ
アリマス、其ノ點ガ養蠶農民ニ取ッテ非常ニ
指導上不都合デハナイカト云フ御尋デゴザ
イマシタガ、我々トシマシテハ、米ノ法律
ヲ作リマスル沿革ヲ見テ居リマスト、當初
ハ米穀法ガ出來マシテ、其ノ時ニハ何等賣
渡買入ノ基準ガゴザイマセヌデシタモノ
ガ、段々ト時代ノ變遷ニ從ヒマシテ米穀統
制法ニナリ、今日ニ至ッテ居ルノデゴザイマ
スガ、其ノ沿革ヲ見テ居リマスト、米ノ生
產費ト云フ言葉ガ實ハ議會デ非常ニヤカマ
シクナリマシテ、或意味ニ於テ······無論法
律ニハ生產費保障ヲシテ居ルノデハゴザイ
マセヌガ、議會ノ要望ハ生產費ト云フモノ
ヲ或程度最低價格ノ基準ニシナケレバナラ
又、斯ウ云フコトカラ起リマシテ、現在ノ
條文ガ出來テ居ルノデアリマスカラ、從ッテ
十一條ニ於キマシテモ同ジク繭ノ生產費ト
云フコトヲ書キマシテ、勅令デ以テ細カイ
規定ヲ書クト致シマスト、議會デ御協贊ヲ
經マス際ニハ、矢張リ米ノ生產費自體ヲ價
格決定ノ基準ニ致シマシタト同ジヤウナ意
味デ、此ノ第十一條ガ繭ノ生產費全部ヲ基
準トシテ買入價格ガ決定サレルト云フ風ニ
解サレマシテハ困ル、斯ウ云フコトカラ實
ハ斯ノ如ク書キ分ケタノデアリマス、ナゼ
然ラバ繭ノ生產費全部ヲ買入價格決定ノ基
準ニシ得ナイカト申上ゲマスト、今日マダ
農林省デ繭生產費トシテ完全ナル調査ヲ致
シタコトハゴザイマセヌガ、養蠶農家ノ經
營調査ニ依リマスレバ、大體一貫目四圓四
五十錢ニナッテ居リマス、全國養蠶業組合聯
合會ノ調査ニ依リマスト、三圓八十錢位ニ
ナッテ居リマス、農會ノ調べニ依リマスト、
四圓二十錢位ニナッテ居ルノデアリマス、大
體ガ今日我々ノ方デモ新シク經費ヲ取リマ
シテ調査ヲスルコトニナルノデアリマス
ガ、四圓前後ノ生產費ガ出ルモノデハナイ
カト考ヘラレルノデアリマス、サウ致シマ
スト、ソレヲ基準ニシマシテ、ソレニ施肥、
加工費ヲ加ヘマシテ、今日ノ絲價ヲ出シテ
見マスト、六百圓以上ノ絲價ニナルノデア
リマス、サウナリマスト、今日競爭纖維ノ
關係カラ考ヘテ見マシテ、六百圓以下ニナレ
バ、此ノ組合ガ生絲ヲ買入レ、政府ガ更ニ
其ノ生絲ヲ買入レテ行クト云フコトニナリ
マスト、其ノ機會モ非常ニ多クナリマスシ、
又特別會計ノ上ニ於テモ相當ニ負擔力ヲ多
ク考ヘナケレバナラヌト云フコトガ一ツノ
理由デアリマスシ、又一ツニハ松村委員ノ
御話ノ如ク、生產費全部ヲ見マシテモ、ソ
レヲ保障スルト云フ意味デハアリマセヌガ、
併シソレデモ六百圓デ生絲ガイツデモ買ハ
レルト云フコトニナリマスト、養蠶家トシ
テハ四圓前後ト云フ繭ノ値段ト云フモノハ、
或程度保障ヲサレテ來ルコトニナル譯デア
リマス、從ッテ今日ノ養蠶事情カラ見マスル
下、繭一貫目ガ四圓デ或程度保障サレルト
云フコトニナリマスト、必ズ增產ノ結果ヲ
誘發致シマシテ、從ッテ今日生絲ノ消費ガド
ンドン殖エテ居ル時ナラ私共少シモ憂ヘル
コトハアリマセヌガ、然ラザル時ニ於キマ
シテ徒ニ增產ヲ誘發スルヤウナ政策ハハッキ
リ控ヘテ置イク方ガ宜イノデハナイカト云
フコトガ一ツ、モウ一ツハ矢張リ人造絹絲ト
云フモノヲ考慮ニ常ニ入レテ行カナケレバ
ナリマセヌカラ、其ノ爲ニハソレト競爭致
スベク、生產費ト云フモノヲ出來ルダケ下
ゲテ行カナケレバナラヌ、ソレニハ四圓前
後ト云フ價格ガ保障サレテハ、生產費低下
ノ努力ヲ非常ニ鈍クスルノデハナイカ、今
日繭ノ生產費ガ非常ニ下ッテ參リマシタコ
トモ、常ニ繭價ナリ、絲價ガ競爭纖維ノ爲
ニ脅威ヲ受ケテ居ルト云フコトガ大キナ原
因ニナッテ居ルノデアリマスガ、從ッテ價格
保障ト云フヤウナ事柄モ、餘リ高價ニ價格
保障ヲスルコトハ、却テ養蠶農民ノ爲ニ取
ラザル所デアル、斯ウ考ヘマシテ、實ハ十
一條ノ規定ヲ作リマシタノデゴザイマス、
デゴザイマスカラ、御說ノ如ク、少シク書
キ方ガ細カイ爲ニ、色々ノ誤解ト申シマス
カ、或ハ誤解デナク、ソレガ此ノ條文ノ讀
方ノ上ニ於テ正當カ知レマセヌガ、サウ云
フ御解釋ヲ生ジマスコトヲ非常ニ私共トシ
テハ遺憾ニ思ッタノデゴザイマスガ、衆議院
ニ於キマシテモ其ノ點ニ付テ色々御質問ガ
アリ、當局ノ意ノアル所ヲ御說明申上ゲマ
シテ、ヤット御諒解ヲ得タヤウナ譯デ、從ッテ
十一條ニ付キマシテ、今後ノ運用ノ上ニ於
テ、只今松村委員ノオ述ベニナリマシタヤ
ウナ點ヲ十分ニ考慮シテ參リマセヌト、指
導精神ト十一條ノ書方ノ上ニ於テ矛盾ヲ生
ズルヤウナコトガアリマシテハ、是ハ愼マ
ナケレバナリマセヌカラ、其ノ點ハ十分ニ
注意シテ參リタイト思ヒマスガ、十一條ヲ
立案致シマシタ當局者ノ精神トシテハ今申
上ゲマシタヤウナ次第デアルノデアリマス、
第二點ノ生絲ハ貿易品ノ中ノ主要ナモノデ
アルカラ、貿易行政ニ非常ナ大キナ影響ヲ
持ツモノデアル、從ッテ商工省トモ密接ナル關
係ヲ持ッテ行カナケレバナラヌ、殊ニ競爭纖
維ノ點ニ付テハ農林省ニ於テモ調査機關ナリ、
或ハ〓究機關ヲ缺イテ居ルノデアリマスカラ、
十分聯絡ヲ保タナケレバナラヌノデハナイ
カト云フ御說ニ對シマシテハ、是ハ全ク私
共モ同ジ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、唯蠶
絲行政ハ、御說ノ如ク種カラ貿易マデ一貫
シテ致シマセヌト、徹底シタル政策ガ執ラ
レマセヌ爲ニ、今日蠶絲局ト云フモノヲ設
ケ、農林省ノ中ニ置イテ居ルノデゴザイマ
マスカラ、從ッテ商工省ニ一部分ヲ移管ス
ルト云フコトハ出來マセヌカラ、結局ハ兩省
ノ連絡ニ依ッテ行クヨリ外今日ニ於テハ致
シ方ガナイ、斯ウ考ヘテ居リマスルカラ、
此ノ點ハ農林商工共ニ此ノ權限等ノ問題ニ
捉ハレルコトナク、常ニ協調致シマシテ、
色々審議ヲ進メテ參ッテ居ルノデアリマス、
現ニ此ノ案ニ付キマシテモ十分商工省トモ
連絡ヲ取リマシテ、サウシテ立案ヲ致シタ
ヤウナ次第デアリマス、第三點ノ繭ノ公定
相場ノ問題デアリマスルガ、生絲ノ公定相
場ハ、今日生絲取引所ニ依ッテ行ハレテ居リ
マスルガ、繭ノ公定相場ト云フモノハ今日
ハ殆ド生繭市場ニ於テ作ラレテ居ルヤウナ
譯デ、是ハ私共ハ非常ニ不自然デアルト思
フ、生繭市場ハ今日取引サレテ居リマスル
繭ノ相當ニ品質ノ惡イモノヲ多ク取引サレテ
居ルノデアリマス、ソレガ一ツノ相場トナッ
テ、或ハ特約取引ノ基準ニナリ、又ハ乾繭
取引ノ基準ニナッテ行クト云フコトデハ、眞
ノ繭ノ相場ト云フモノヲ幾分カ低メテ行ク
ヤウナ結果ニナリハセヌカト云フコトヲ憂
ヘテ居リマスルノト、又其ノ取引所每ニ於
キマシテモ極メテ原始的ナ方法デヤッテ居
リマスルノデ、眞ノ公定相場ヲ現ス機能ヲ
發揮シテナイ、ソレニ又生繭取引ト云フモ
ノニ種々ノ弊害ガアリマスルカラ、是ハ私
共ノ方針トシマシテハ出來ルダケ此ノ生繭
市場ト云フモノハ他ノ機構ニ變換セシメテ
行キタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマスノ
デ、從ッテ今後ノ公定相場ト云フ問題ニナリ
マスレバ、勢ヒ或ハ繭價協定委員會ト云フ
モノニ依ッテ決メテ參リマスルカ、又ハ乾繭
ノ取引所ト云フモノノ制度ヲ利用スルコト
ガ宜イノデハナイカト思ツテ居ルノデアリ
マス、之ニ關シテ矢張リ乾繭取引所ト云フ
モノニナリマスレバ、其ノ所管ガ商工省ニ
ナッテ居リマス、デ、取引所行政ヲ米ナリ、生
絲ニ付テ分ケテ農林省ニ持ッテ參リマスト、是
ハ一ツノ議論ト思ヒマスガ、私共ハ矢張リ取
引行政ハ取引行政トシテ商工省ガ一貫シテ
所管シテ行クコトガ現在デハ適當デハナイ
カ、ソレニ對シテ繭ナリ米ノ取引行政ニ付
テハ十分ニ兩省ニ於テ連絡ヲ保ッテ、其ノ運
用ヲ誤ラザルヤウニ致シテ行クコトガ適切
デアルト考ヘテ居ルノデアリマシテ、其ノ
爲ニ最近ニ於キマシテハ豐橋ニ乾繭取引所
ガ設立サレテ、旣ニ商工省ノ認可ヲ得タノ
デゴザイマスルガ、此ノ認可ニ當リマシテ
モ、當局トシテハ十分ニ〓究ヲ致サナケレ
バナリマセヌノデ、色々調査ヲ致シマシテ、
是ハ商工當局モ農林當局ガ同意シナケレバ
許可シナイト云フ方針ヲ取ッテ吳レマシタ、
其ノ點ハ兩省ノ間ニ十分ニ連絡ヲ取リマシ
テ、結局兩省ノ意見ノ一致ヲ見マシテ認可
ヲ致シマシタヤウナ沿革ヲ持ッテ居ルノデ
アリマスルカラ、御說ノ如ク、今後モ斯カ
ル問題ニ付キマシテハ兩省間ノ協調ハ十分
ニ取ッテ參リタイト、斯ウ考ヘテ居ルノデア
リマス、最後ノ特別會計ノ見込ニ付キマシ
テノ色々ノ御意見デアッタノデアリマスル
ガ、卽チ米ノ方ハ古米格ガ出來ルカラ、自
カラ自然商品ニナッテ其ノ危險ガナイガ、生
絲ノ方ハ古絲格ガ少イカラ、却テ色々ノ弊
害ヲ生ズルト云フ御話デアリマシタ、其ノ
一ツトシテハ、本制度ガ政府ガ相當ノ絲ヲ
持ッテ居ルカラ、此ノ制度ガ出來テ來タノデ
ハナイカ、其ノ處分ニ困ッテ此ノ制度ガ出來
テ來タノデハナイカト云フヤウナ、是ハ御疑
デアリマシタガ、此ノ點ハ決シテ私共ハサウ
考ヘテ居ラヌノデアリマス、ソレハ現在持ッ
テ居リマスル生絲モ、初メハ御承知ノ如ク
市場ニ絕對ニ放出サセナイト云フ所カラ、
新規用途、新規販路ニ限リマシテ、場合ニ
依ッテハ全部ヲ燒棄テヽモ宜イヂヤナイカ
ト云フヤウナ議論モアッタノデアリマスガ、
其ノ後處分ノ方法ヲ色々〓究シテ見マス
ト、市場ニ影響ヲ與ヘナイデ、或程度年々
相當ノ數量ガ捌キ得ルト云フ見込ガ付テ
參ッタノデアリマス、ソレハ矢張リ新規用
途新規販路デアリマシテ、新規用途ニ付
キマシテハ、今御說ノ如ク新ラシイモノニ
作リマスレバ、生絲トシテノ影響ハ、少ク
トモ木綿ナリ、毛絲ナリ、或ハ麻ニ影響ヲ
及シマスカラ、是ハ相當デアラウト思フ、
是等ノ纖維ニ對スル影響ハ、御承知ノ通リ
今日生絲ガ世界全體ノ消費カラ見マスレバ、
「パーセント」デアリマス、卽チ百分ノ
デアリマスカラ、極メテ僅デアル、他ノ纖維ノ
消費ト云フモノハ非常ナ大キナ部分ヲ占メテ
居リマスカラ、其ノ大キナ部分ニ多少喰込
ミマシテモ、サウ影響ハナク、生絲自體ト
シテハ新規用途ヲ〓究シテ行クコトガ適當
デナイカ、斯ウ考ヘテ居リマスノデ、又新
規販路ノ點ニ付キマシテハ、從來ノ販路以
外ノ印度デアリマストカ、南米方面ニ行ッテ
居リマス、此ノ方面ハドウ云フ影響ヲ及ス
カト申シマスト、從來カラ支那ノ絲ト
カ、「イタリー」ノ絲、「フランス」ノ絲等ガ
出テ居リマシタノデ、多少此ノ絲ガ出マシ
タ爲ニ、其ノ市場ヲ侵シテ居リマス、併シ
是モ各國ノ貿易品ノ競爭上多少已ムヲ得ナ
イノデナイカト云フ見地カラ、實ハ其ノ方
面ニ色々努力シテ居リマス、最近デハ年ニ
二萬俵前後ノ生絲ヲ新規用途ナリ、新規販
路ニ處分シテ參リマスニハ餘リ努力ヲ要セ
ズシテ出來得ルヤウニナッテ參ッタ、從ッテ此
ノ解決トシマシテモ、生絲ヲ以チマシテモ
假ニ古絲格ガ付クコトガ、少クトモ其ノ處
分ニハサウ困ラナイデ、此ノ會計ガ維持出
來ル、斯ウ云フ見込ガ付イタノデアリマシ
テ、現在持ッテ居リマス五萬俵モ、是モ一二
年ノ內ニ處分シテシマハウト思ヘバ、サウ
市場ニ影響ヲ與ヘナイデ處分出來タノデア
リマスケレドモ、ソレヨリモ市價安定ト云
フ大キナ施設ノ爲ニ之ヲ利用スルコトガ適
當デアルト云フ見地カラ、實ハ此ノ施設ガ
出來テ參リマシタモノデ、處分ニ困ッテ此ノ
施設ガ出來テ來タト云フコトハ絕對ニナイ
ノデゴザイマス、又持ッテ居ッテ困ルカラ、
或滯貨ノ時代ニハ一括處分ヲシテシマッタ
ノデナイカト云フ御話デアリマシタガ、
是ハ政府ガ持チマス場合ト、民間ガ共同保
管シマス場合トハ十分ニ御區別ヲ願ヒタイ
ノデアリマシテ、アノ當時ハ銀行團ガ擔保
ニ致シ居リマシク生絲ガ市場ヲ壓迫シテ
居ッタ、是ハイツ市場へ出ルカ分ラヌト云フ
點カラ、非常ニ市價ニ影響ガアッタノデアリ
マスガ、一旦アレヲ政府ニ買ヒマシタ後ハ、
是ハ政府トシテハ一定價格ニナラナケレバ
賣ラヌ、斯ウ云フハツキリシタ目標ヲ市場
ニ與ヘテ居リマスカラ、市場モ滯貨ガアリ
マス爲ニ、市價ニ影響ヲ與ヘテ居ラナイノ
デアリマシテ、其ノ點ハ今後ノ此ノ制度ノ
運用ニ於キマシテモ、買入價格、或ハ賣渡
價格以外デハ、買換デアリマストカ、只今
申上ゲマシタ如ク新規用途、新規販賣以外
ニ絕對ニ賣ラナイト云フ方針ニナッテ參リ
マスカラ、サウ市場ニ影響ヲ與ヘルコトナ
ク此ノ制度ガ運用出來ルノデアル、斯ウ云
フ風ニ思フノデアリマス、殊ニ此ノ共同保
管等ニ於キマシテ此ノ規定ガゴザイマスヤ
ウニ、政府ガ命ジマシタ時ニ、十五條ノ二
項デ生絲ヲ組合ニ交付スルト云フコトハ、
決シテ其ノ持ッテ居リマスモノノ處分ニ
困ッテ此ノ規定ヲ置イタ譯デハナイノデゴ
ザイマシテ、是ハ矢張リ金利、倉敷ニ相當
スルモノヲ組合ニヤリマセヌト、保管ヲ命
ズルノデアリマスカラ、ドウシテモ是ハヤ
ラナケレバナラヌ、然ラバ現金デヤラナイ
デ、絲デヤルカト申シマスト、十五條デ命
ズルヤウナ場合ハ、大體ニ於テ買入價格ニ
達スル場合ニノミ之ヲ行ヒ得ルコトニナル
ダラウト思フノデアリマス、從ッテ資金等ニ
於テモ割合ニ餘裕ノ少イ時ニ業者ト協力シ
テ、市價ノ低落ヲ防ガウト云フ時ニ行ハレ
ルノデゴザイマスカラ、絲デ渡シマシテ、
サウシテ是ハ勿論僅ノ絲デゴザイマスカ
ラ、ソレニ對シテ金利、倉敷ヲ補償シテヤ
ラウ、斯ウ云フ趣旨デアリマス、從ッテ是ハ
決シテ滯貨絲ノ處分ニ困ッテ此ノ規定ヲ置
イタノデナイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、尙序ニ申上ゲマスガ、此ノ絲
ヲ交付シマシタ時ニ、イツゾヤ他ノ機會ニ
於テ松村委員カラノ御質問デ、一旦儲カッタ
時ニ之ヲドウスルカト云フコトガアリマシ
テ、其ノ當時私共トシテハ儲カッテモ戾シ
テ貫ハヌト云フコトヲ申シマシタガ、色々
其ノ後〓究致シテ見マスルト、相當値上リ
デ儲カリマシタ時ニ、矢張リ戾シテ貰ッタ方
ガ適當デアル、斯ウ考ヘマシタノデ、勅令
ニハサウ云フ規定ヲ置クコトニ致シテ參リ
マシタノデアリマス、是ハ序デアリマスカ
ラ、申上ゲテ置キマス、大體只今御述べニ
ナリマシタ御意見ニ對シマシテ、政府當局
トシテ考ヘテ居リマスル考ヲ御答ヘ申上ゲ
タ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=4
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005・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ今ノ御答ニ依リマシ
テ、或點ニ付テ尙モウ少シ御尋ネシタイ、
ソレハ先程モ申シマシタ如ク、此ノ蠶絲業
ニ付テノ關係者、色々ノ業者ガ之ニ入ッテ
居ル、其ノ際ニ於テノ利益均等、保護ノ適
當ナル公平······適當ニ之ヲ保護シテ之ヲ公
平ニスルト云フヤウナ見地カラ考ヘマスル
ト、今蠶絲局長ノ御話シニナッタ點ニ付テ
私ハモウ少シ農家ノ立場ニ對スル御考ヲ願
ヒタイト思フノデス、ソレハ繭ノ値段ガ四
圓前後ダカラ、ソレヲ補償スルト云フコト
ニナル、增產ヲ奬勵スルト云フ意味ノ御話ガ
アッタノデス、私ハ其ノ點ニ付テ少シ考ヘタ
イノハ、後デ調節スルト云フ制度ヲ玆ニ御
執リニナッタ以上ハ、繭ダケノ生產費ト云フ
コトニ限定サレルノハドウカト思フ、其ノ主
義ヲ御執リニナルナラバ、繭價ト絲價ト別
ニシテ調節セヌトイカヌ、玆ニ絲價調節ト
云フコトダケニ限定サレルナラバ、絲ガ生
レル其ノ全部ニ付テノ生產費ノ低下ト云フ
コトヲ私ハ考ヘタラ宜カラウ、ソレハドウ
云フコトカト云フト、工場ノ生產費ヲ少ク
スルト云フコトハ當然ノコトナンデス、製
絲工場ニ於ケル生產費ノ節約、是モ當然ノ
コトデアル、生絲トシテモ世間ニ賣ラレル
場合ニ於テハ、其ノ生產費ハ繭ノ生產費ダ
ケヂヤナイ、ソレカラ其ノ中間ノ商人ノ費
用等ノ節節ト云フコトモ、是ハ廣義ノ生產
費ニナル、市價ニ出マス絲價ヲ玆ニ調節サ
レルト云フノデアレバ、其ノ總テノ生產費
ニ著眼ヲシテ、尤モ弱者ノ方ノ生產費ニ付
テハ是以上切詰メルコトガ出來ナイト云フコ
トデアレバ、暫ク待ツヨリ仕方ガナイト思
フ、農家ハドウシテモ保護シナケレバナラ
ヌト云フコトニナルト、四圓デ買フモノト
見テ、經營サセテ宜イノヂヤナイカト思フ、
農家ノミガ總テ時代ノ進運ニ應ジテ生產費
ヲ切詰メナケレバナラヌ、四圓ノ中ノ生產
費ヲ切詰メルコトハ大キイト思フ、併シナ
ガラ大キナ中ノ消費ノ節約ト云フコトニナ
ルト、相當出來ルノヂヤナイカト思フ、生
產費ノ眺メ方ヲ、繭ノ方ノ生產費ト云フコ
トノ意味デナク、工場ノ方ノ生產費ノ節約
ト云フコトニ著眼セラレムコトヲ望ム、其
ノ意味ニ於テ私ハ其ノ生產費ト云フ思想ヲ
モウ少シ廣ク考ヘテ戴キタイ、今ノヤウナ
考デ行クト生產費ト云フモノハ始終過去ノ
生產費バカリヲ眺メテ居ルコトニナル、私ハ
將來ノ生產費ト云フモノガ非常ニ大切ヂヤ
ナイカト思フ、將來ノ生產費ヲ眺メテ、ソ
レヲ見タ時ニ於ケル調節ト云フコトデナイ
ト云フト、基準ガナイ、農家ガ勝手ニ出シ
タモノヲ直グニ正當生產費ナリト考ヘテ行
クト、ソレハ直グニ增產ニナッテシマフ、併
シナガラ、政府ハ玆ニ或考ヘ方ニ依ッテ出
來タトコロノ理想生產費ト云フモノガアル、
是ハ過去ヲ律スルト同時ニ寧ロ力强ク將來
ヲ律スルト云フコトニナリ、農家ハソレニ
向ッテ進ンデ行クダラウト思フ、是ハ矢張リ
政府デ奬勵シナケレバイカヌト思フ、農家
ニ生產ヲ奬勵スルト云フヤウナ工合ニスレ
バ、生產費ガ節減サレルト云フコトハ當然
デ、政府自身ガ〓究シテ〓へルト云フコト
ニナルト、結局將來ノ生產費ト云フコトニ
ナルノデアルカラ、其ノ點ニ付テ一段ノ御
考慮ヲ煩シタイ、詰リ過去ノ生產費ニ捉ハ
レズシテ、將來ノ生產費ト云フモノヲ考ヘ
ナケレバナラヌ、其ノ關係ニ於テ考慮シナ
ケレバナラナイ問題ハ、物價其ノ他ノ經濟
事情ヲ參酌シテ、其ノコトヲ玆ニ書イテ居
ラレル、サッキノ十一條デ物價其ノ他ノ經濟
事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム、是ハ米穀統制法
ノ字ト同ジデス、物價其ノ他ノ經濟事情ヲ
參酌シテ之ヲ定ム、ソレデアルガ故ニ、私
ハ餘程別狀ノ御考慮ヲ必要トスルノデアル
ガ、政府ハドウ云フヤウニ考ヘテ居ラレル
カ、ソレハ米ニ付テハイツモ物價指數論ガ
米價調節ニ付テハ非常ニ有力ニ唱ヘラレテ
居ル、其ノ意味ハ昔ハ米ト云フモノガ物價
ヲ指導シテ居ッタ、サウ云フ關係ニ於テ一
般物價ト云フモノト米價ト云フモノハ大體
ニ於テ伴フモノデアル、昔ハミンナサウデ
アル、米ガ經濟上ノ中心機關デアッタカラ、
ソレデ物價トノ關係ガ非常ニ大切デアル、
トコロガ、後ニ有價證劵ト云フモノガ發達
シテ來タ結果、米ガ物價ヲ「リード」スル、
指導スルト云フカガ大分ナクナッテ來タ、サ
ウシテ寧ロ一般物價ニ追從スルト云フ空氣
ガ明カニナッテ來タ、サウ云フ關係カラ率
勢米價ト云フモノヲ考ヘテ、物價トノ〓究
ヲスルト云フコトニナッテ來テ居ルノデア
リマスカラ、同ジ文字ヲ使ッテ、米穀統制
法ノ通リ引寫シタト云フヤウナ工合ナヤリ
方ヲシ、サウシテサウ云フヤウナ考デ以テ
運用スルト云フコトハ大變ナ間違ガ生ジテ
來ルト思フ、米ニ於ケル物價デアレバ、是ハ
內地ノ物價デ一向差支ナイト思フ、大體ニ
於テ米ト云フモノハ日本人ガ主トシテ食べ
ルモノデアッテ、日本獨特ノ米價ト云フモノ
ガ出テ來ル、ソレト物價ト云フモノト中味
ヲ合セルト云フコトハ、是ハ一ツノ方法デ
アリマセウケレドモ、生絲ハ是ハ世界的ノ
消費物ナノデスカラ、其ノ物價ト云フモノ
ハ內地ノ物價ダケ見テ居ッテモ仕方ガナイ、
內地ノ物價ヲ見ルトコロノ要點ハ、肥料ト云
フモノニ付テ要點ガアル譯デス、其ノ肥料モ
亦硫安ト云フヤウナ問題ニナッテ來ルト、世
界的事情ト云フ問題ガ生レテ來ル、併シ生
絲ニ於テハソレガ尙激シイ、世界ノ經濟事
情ヲ見ナケレバナラヌ、勿論米ニ付テモ世
界ノ經濟事情ヲ見ナケレバナラヌデアリマ
セウガ、併シナガラ其ノ見方ハ大變ニ違フ、
生絲ト云フコトニナルト、「アメリカ」ノ經濟
事情モ考ヘナケレバナラヌ、世界一般ノ經
濟事情モ考ヘナケレバナラヌト云フコトニ
ナリマスカラ、同ジヤウナ氣持デ同ジヤウ
ナ運用ヲサレルト云フヤウナコトハ大變ナ
間違ガ生ズルノデアリマスカラ、斯ウ云フ
ヤウナコトハナイダラウト思ヒマスケレド
モ、此ノ點モ廣ク世界全體ノ經濟事情ヲ知
ルト云フコトハ、是ハ矢張リ農林省ダケデ
生絲ダケヲ眺メテ居ッタノデハ迚モイカナ
イ、大體ニ於テ是ハ行政機構ノ問題ニモ關
係スルノデアリマスガ、餘程廣ク此ノ物價
ナリ、經濟事情ヲ參酌シテ、誤ナキヲ期ス
ルト云フコトガ私ハ大切デナイカト思フ、
此ノ點十分御考究ヲ願ヒタイ、ソレカラ
先程繭ノ取引所ノコトヲ仰シヤッタノデア
リマスガ、是ハ餘程初メニ於テ御考慮ニナ
ラヌト云フト、將來色々ナ問題ガ又玆ニ起ッ
テ來ルト思フ、米ノ取引所ガ到頭困ッテ來
タガ、取引所ハ、商工省トシテ、監督行政
トシテ一貫スルコトガ私ハ非常ニ宜イト思
フノデス、又サウ云フヤウニシナクチヤナ
ラヌト私ハ思ッテ居リマスガ、其ノ米取引所
ガ今度農林省ノ御世話ニ依ッテ、米穀會社ト
云フモノヲ造ルトカ何トカ云フヤウナ御話
ガアルヤウデス、ソレデ矢張リ繭ノ取引所
ト云フヤウナモノニ付テモ御考ヲナサレル
必要ガアル、實物ノ取引ト云フコトモ行ハ
レテ來ルダラウト思フ、殊ニ生絲ト云フ世
界的商品ヲ取扱フ上ニ於ケル生產資料デア
ルトコロノ繭ニ付テハ、唯一地方ノ豐橋ナ
ラ豐橋ダケノ取引所デ以テ全國的ニ之ヲ指
導シテ行クト云フコトニ付テノヤリ方トシ
テハドウ云フモノデアルカト云フコトモ考
ヘ、或ハ取引所ト云フモノガ必要デアルナ
ラバ、是ハ矢張リ繭ノ價ニ付テノ掛繫ギヲ
スル、價格ノ保證ヲスル、保險作用ヲスル
ト云フコトニナルノデアリマスカラ、是一
或ハ必要カモ存ジマセヌガ、ソレニ付テ或
程度新シキ時代ニ應ジタル新シキ施設ヲ爲
サル必要ガアルト思フノハ、國家的機能ヲ
玆ニ加味シ、公共〓體ノ施設ヲ其處ニ加ヘ
ルトカ、或ハ公益法人ノ仕事、公益團體ガ
行フ單純ナル取引所ト云フ營利機關デナク、
取引所ノ會社、株式會社ト云フヤウナ營利
機關デナク、サウ云フヤウナ意味ニ於テノ
指導ヲセラレナイト云フト、後デ又買收ス
ルト云フヤウナ問題ガ起ッテ來ルコトハ、米
ニ於テノ例ガ直チニ繭ニ起ルトハ思ヒマセ
ヌケレドモ、ソンナヤウナ命令ハ矢張リ
愼重ニ計ラウ必要ガアルト思フ、或ハ乾繭
殺蛹ト云フヤウナコトニ對シテ、電氣ノ設
備ヲ以テスルトカ云フヤウナコトハ、學術上
ニ於テハ〓究サレテ居ルヤウナコトデアル
カラ、ソンナヤウナコトノ學術的ノ新シイ
施設ヲ伴ハシメテ、政府ガ玆ニ取引機關ニ
付テ一段ト踏入ック指導ヲスルコトガ、蠶絲
業界ノ上ニ於テハ私ハ必要ヂヤナイカト思
フノデアリマス、サウ云フヤウナ點ニ付テ
ドンナ工合ニ是カラ考ヘル積リデアルカ、
何カ從來計畫サレテ居ルコトガアリ、考慮
サレテ居ルコトガアレバ伺ッテ見タイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=5
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006・井野碩哉
○政府委員(井野碩哉君) 只今松村委員ノ
御述ニナリマシタ御意見ニ付キマシテハ、
大體運用ノ上ニ於テノ御深切ナル御注意デゴ
ザイマスカラ、私共モ考ヘテ居リマスルコ
トガ、略〓御考ト同ジヤウナ氣持デ運用致シ
テ參リタイト云フコトヲ申上ゲテ見タイト
思フノデアリマス、此ノ繭ト生絲ト云フモ
ノノ生產ニ付キマシテハ、是ハ我々ノ方モ
決シテ製絲家ダケ保護シテ、養蠶·家ノ方ハ
餘リ顧ミナイト云フ氣持デゴザイマセヌコ
トハ、是ハ松村委員モ能ク御諒承願ヘルト
思ヒマス、唯十一條ノ條文ノ書キ方ガ如何ニ
モサウ見エルト云フコトハ、是ハ衆議院等
ニ於テモ色々御議論ガアリマシテ、或ハサウ
云フ御解釋ヲ起ス餘地ガ此ノ條文ニアリマ
スコトヲ遺憾トシテ居ルノデアリマスガ、
結局十一條ハ計算上ノ問題デゴザイマスカ
ラ、直チニ斯ウ云フコトヲ書イテ居リマス
ガ、實際ニ於テハ繭ノ生產費モ下ゲレバ、又
製絲加工ノ生產費モ下ゲナケレバナラヌ、是
ハ御說ノ通リデアリマス、殊ニ生絲加工ノ生
產費低下ニ付キマシテハ、營業製絲、組合製
絲共々ニ今日ニ於テハ努力シテ居ルノミナラ
ズ、政府トシテモ昨年ノ議會デ製絲試驗場ノ
豫算ヲ御認メ願ヒマシテ、明年度カラハ約七
十萬圓位ノ規模ノ試驗場ガ出來ルノデゴザ
イマス、是等ニ依ッテ生產費低下ニ努力シテ
參リタイ、斯ウ考ヘテ居リマシテ、御說ノ
ヤウニ繭ダケノ生產費低下ニ付テ政府ハ考
慮シテ居ルノデハナイ、製絲ニ付テモ出來
ルダケ下ゲテ、結局生產費低下ト云フ問題
ハ、生絲トシテノ生產費低下ト云フコトニ
主眼點ヲ置カナケレバナラヌト云フコトハ、
是ハ私モ能ク諒承シテ居ルノデアリマス、
又物價指數ニ付テノ御說ニ付キマシテモ、無
論十一條ハ米穀統制法ヲ眞似シテ書イタト
云フ譯デハ無論ナイノデアリマシテ、矢張
リ生絲ニ付テハ生絲トシテ物價指數ヲ參酌
スル必要アリト云フ見地カラ、此ノ規定ヲ
入レタノデアリマシテ、御說ノヤウニ米ニ
ハ色々ノ沿革ニ依リマシテ、物價指數ト云
フモノヲ參酌致スノデアリマスガ、生絲ニ
モ生絲トシテノ價格ノ變動ガ、物價指數ト
相伴フテ變動シテ居リマスレバ考慮スル必
要ハナイノデアリマスガ、近年ニ於テハ競
爭纖維ノ影響ニ依リマシテ、一般物價指數
トノ違ッタ動キヲ生絲ノ價格ガ致シテ居リマ
ス、從ッテソレ等ノ影響ヲ所謂率勢絲價ニ依
リマシテ見ルコトガ適當デアル、斯ウ考ヘ
マシテ、物價指數ヲ參酌致シタノデアリマ
ス、而モ此ノ物價ヲ調査シマスノハ、御說
ノ如ク日本內地ノ物價ノミデハ不十分デゴ
ザイマスノデ、只今申シマシタ物價指數デ
率勢絲價ヲ出シマスニモ、矢張リ日米兩國
間ノ物價指數ヲ考慮ニ入レマシテ、一ツノ
算式ヲ作ラウト思ッテ居ルノデアリマス、又
繭取引所指導方針ニ付キマシテモ、私共ハ
モウ御說ノ如ク考ヘテ居ルノデアリマシテ、
是ハ非常ニ重要ナル問題デ、唯徒ニ取引所
ダケテ作ルト云フコトダケデハ不十分デアッ
テ、色々ナ點カラ繭價ノ公定相場ヲ出サナ
ケレバナラヌト云フ風ニ考ヘテ居リマスノ
デ、先般來申上ゲマシタヤウニ或ハ繭價協
定委員會ト云フモノヲ各縣ニ設ケマシテ、
是ハ縣ナリ或ハ其ノ他ノ公共團體ノ一ツノ
仕事トシテ、繭價ノ公定ヲ圖ッテ行キタイ、
斯ウ云フ風ニ大體考ヘテ居ルノデゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=6
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007・松村眞一郎
○松村眞一郞君 次ニ私ノ御尋ネシタイコ
トハ種ノ問題デス、元來此ノ農家ト云フモ
ノト、工業家、商業家ト云フモノニ對スル
政府ノ保護ノ程度ハ總テ同ジ考ヘデ、同ジ
ヤウナ工合ニ均シク保護助長シテ行カナケ
レバナラヌコトハ當然デアリマスケレドモ、
產業ノ事情ニ應ジタル關係土、應ジタル色
色ナ方法ヲ異ニシ、場合ニ依ッテハ前後、緩
急ヲ異ニスルト云フヤウナコトモ往々アル
ダラウト思フ、デ現在ノ經濟事情ニ於テハ、
農家ノ方ハ保護ヲ必要トスル狀態ニ私ハア
ルダラウト思フ、是ハ「アメリカ」ノ事例ヲ
此處ニ言ハナクテモ、何レノ國ニ於テモサ
ウ云フ事情ニアルダラウト思フ、日本ハ殊
ニサウデアラウト思フ、農ヲ以テ基本トシ
テ居ル關係モ從來アルノデアリマス、其ノ
場合ニ於キマシテノ眺メ方ハ、農業ニ付テハ
外ヨリモ保護ヲ裕カニスルト云フコトガ、場
合ニ依ッテハ私ハ必要トスルダラウト思フ、
ソコデ生產費モ或意味ニ於テモウ少シ裕カ
ニ保護スルト云フコトガアルト云フト、其ノ
保護ノ程度ノ濃厚ニナルニ從ッテ政府カラシ
テ干與スル、其ノ事業ニ干與スル、監督ス
ル、指揮スル、指導スルト云フヤウナ意味ノ
コトモ亦濃厚ニナッテモ宜イト思フノデア
リマスカラ、生產費ニ關スル調節、生產費
ノ調節ニ伴ッテ、生產其ノモノノ調節ト云フ
コトモ亦政府トシテハ考ヘテ、私ハ宜イン
ヂヤナイカト思フ、ソレデアリマスルカラ、
場合ニ依ッテハ〓種ノ方面カラ或程度ノ考
慮ヲ拂ッテ、行キ過ギナイ生產ニ行クコトニ
付テノ何等カノ工夫、考慮ヲ此處ニ加へ得
ル餘地ガ御有リダラウト思フシ、又必要デ
アラウト思フノデアリマス、先ヅ其ノ方面
ハ種ガ一番初メデアリマス、政府ノ舵ノ取
リ方ニ依ッテハ、蠶絲業ノ安定ト云フコト
ガ、サウ云フ所カラモ生レテ來ハシナイカ
ト思フノデアリマスガ、ドウ云フヤウニ御
考ニナッテ居ルノデアリマスカ、其ノ點ヲ承
リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=7
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008・井野碩哉
○政府委員(井野碩哉君) 本制度ニ伴ヒマ
シテ、一面生產統制ト云フ問題ガ極メテ重
要デアリマスコトハ御說ノ通リデゴザイマ
シテ、是ニハ先ヅ第一段ニ種カラ統制シテ
行クト云フコトノ必要モ相當ニ當局トシテ
ハ關係シテ居ルノデゴザイマスガ、唯數量
統制ノ方法ニ於テ、種ノミデ統制ヲ致シマ
スト、此處ニ養蠶家トシテ年々桑ヲ作ッテ
參リマス關係モアリ、又勞力其ノ他ノ關係
モアリマシテ、種ノ數量制限ダケ致シマス
ト、桑ヲ餘シテシマヒマシテ、非常ニ農家
トシテハ困ルト云フヤウナコトニナッテ參
リマス、又勞力モ餘ッテ非常ニ困ルト云フヤ
ウナコトニナッテ參リマスノデ、我々ノ方ト
シマシテハ、種ノ統制ニ付テハ、現在デモ
原蠶種ノ國家管理ト云フコトニ依ッテ、優良
品種ノ統制ト、相當ニ或程度ノ數量統制ハ
ナシ得ルヤウニナッテ居リマスケレドモ、今
御質問ノヤウナ完全ナル數量統制ト、原蠶
種國家管理デハ是ハ出來マセヌ、是ハ矢張
リ我々ノ考ヘトシテハ、業者ノ或程度ノ自
治ニ依ッテ統制ヲサシテ行クノガ一番、適當
ヂヤナイカ、卽チ國家命令ニ依ッテ本年ハ蠶
種ノ掃立ヲ是ダケニシロト命ジマシテモ、
恐ラク何等カノ保障ヲ伴ハナケレバ、養蠶
家トシテハソレニ應ジ難イト思フ、蠶種製
造業者ノ方ダケヲ制限シテモ、今申上ゲマ
シタヤウニ養蠶業者ガ桑ヲ餘シ、勞力ヲ餘
シマスカラ、ドウシテモ矢張リ其ノ養蠶業
煮蠶絲業者等ガ集リマシテ團體ヲ作ッテ
居リマス其ノ團體ニ於テ、蠶絲業ノ事情
カラ見テ本年ハドウシテモ設置シテアル部
分ヲ、數量制限シナケレバナラヌト云フ氣
運ヲ釀成サシテ參リマセヌケレバ、ナカナ
カ此ノ仕事ハ二百萬餘ノ養蠶家ト、蠶絲業
者ヲ相手ニシテハ、行ヒ難イト私ハ考ヘテ
居ルノデアリマス、從ッテ日本中央蠶絲會ニ
統制サレテ居リマス各種業者ノ團體ニ於テ
自治的ニ······無論是ハ指導ニ依リマスガ
自治的ニ色々ノ決議ヲサセマシテ、ソレヲ
國家ガ補强スルコトニ依ッテ目的ヲ達シテ
行クト云フコトガ、一番生產統制トシテハ
效果的デハナイカ、理論トシテハ色々ナ考
ヘ方モ出來マセウケレドモ、併シ工場生產
ト違ヒマシテ、斯カル農產物ニ對シマシテ
ハ、餘リ國家權力デ直接ノ統制ヨリハ、ド
ウシテモ矢張リ自治デ行カナイト、十分ノ效
果ガ擧ゲラレヌト我々モ考ヘテ居ルノデ
アリマス、ソレニ付テハ普通蠶種ノ國家管
理ト云フモノモ今日唱ヘラレテ居リマシテ、
ソレ等モ十分當局トシテハ今後〓究ヲ致シ
テ參ル積リデゴザイマスガ、併シ考ヘ方ハ
矢張リ今申上ゲマシタヤウニ、國家ノ力デ
普通蠶種ヲ管理スルト云フコトヨリハ、矢
張リ自治ヲ主眼ニシテ、ソレニ相當ノ國家
權力ガ補强シテ行クト云フコトデ、普通蠶
種ノ管理モ考ヘテ行カナケレバナラヌヂヤ
ナイカ、斯ウ云フ風ニ大體考ヘテ居ル次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=8
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009・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハモウ大體是デ結構デ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=9
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010・三浦新七
○三浦新七君 今ノ種ノコトニ付テチヨツ
ト御伺ヒシタイノデゴザイマスガ、近頃技
術等モ十分進ンデ居リマスノデ、段々少ク
ナッテ居ルノダラウト思ヒマスガ、全國的ニ
見マシタ近頃ノ違蠶ト云フ問題ノ統計表ハ
出來テ居リマスデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=10
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011・井野碩哉
○政府委員(井野碩哉君) 全國的ニ違作ノ
統計ト云フモノハゴザイマセヌガ、過去ニ
於キマシテ養蠶家ノ實態調査ト云フモノヲ
致シマシタ、相當ノ養蠶家ヲ選ビマシテ、
色々ノ經營調査ヲ致シタノデアリマスガ、
其ノ「パーセント」カラ見マスト、マア約百
分ノ二程度ガ違作ニナッテ居リマス、是等カ
ラ推シマシテ、マア二「パーセント」グラヰ
ガ全國的ニ見テ宜イ違作率デハナイカ、斯
ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=11
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012・三浦新七
○三浦新七君 ソレガ段々······私ハ餘リ詳
シイコトハ存ジマセヌデスガ、違作ノ方モ
少クナッテ居ルヤウニ聞イテ居リマス譯デ
アリマスガ、此ノ間ノ所謂農家恐慌ト申シ
マスカ、養蠶ノ恐慌ト申シマスカ、其ノ以
來此ノ種ノ改良ト云フコトハ大變進ンデ參
リマシテ、殊ニ何ト言ヒマスカ、特約製絲、
特約組合ノ場合ニ於テハ、製絲家カラシテ
種ヲ補給スルト云フヤウナコトガ盛ニナツ
テ參リマシタ、其ノ時ニドウモ蠶ノ種ガ餘リ
良過ギル、今マデ私共小サイ中ニハ、八匁ト
カ九匁トシカ出來ナカッタヤツガ、近頃ニナ
ルト十三匁、十四匁、モット出ルト云フヤ
ウナモノヲ配付スル、ソレガ試驗場等デ以テ
巧ク飼養スル時ニハ能ク行クノデアリマス、
私共ノ方ノヤウナ農家デヤル時ニハ、溫度
ノ調節ト云フヤウナコトモヤラウト思ッタッ
テ出來マセヌシ、隨分試ミテハ居ルノデア
リマスガ、實際ニ於テ出來ナイコトモアル
ノデアリマス、ソレカラ是ハマア御笑ヒ草
ナンデスガ、此ノ特約組合カラシテ種ヲ寄
越シテ、ソレニ指導員ヲ寄越ス、其ノ指導
員ト云フ者ハ矢張リ其ノ土地ノ事情ニ通ジ
ナイ所カラシテ、マダ桑ノ葉ガ生エナイ中
カラ行ッテ掃ケト云フヤウナコトヲ言出シ
テ見タリ、ソレカラ第一面白イ話ハ、關西
ノ方ノ指導員ガ來ルモノデ、私ノ方ノ東北
ノ方ニ來テ話ヲシテモサッパリ分ラヌ、アノ
先生ガドウ云フコトヲ命令シテ居ルノダカ、
ドウ云フヤウナ話ヲシテ居ルノダカ分ラヌ
ト云フヤウナコトヲ言ハレル、サウシテマア
意思ガ疏通シナイ、違蠶ヲ說明シテモ分ラ
ヌ、サウシテ一箇年ナンボカニ付テ一圓ヅツ
指導員ノ給料モ拂ハナケレバナラヌト云フ
ヤウナ現狀ニアルノデアリマス、大分サウ云
フヤウナ關係カラシテ、良イモノヲ作ルト
云フコトカラシテ、其ノ蠶ガ「デリケートL
ニナッテ、今マデノ農家ノ力デハ兎角違蠶ヲ
惹キ起スト云フヤウナ現象ガ見エテ居ルノ
デアリマス、ソレガマア一時的ノ過渡ノ現
象デアリマスナラバ、是ハ宜イデアリマ
セウガ、ドウモソレガ改良スレバスル程、
今マデノヤウナ危險ハ、現在ノ農家ノ狀態
トシテハ多クナルダラウト思フヤウナ氣ガ
致シマスガ、ソレデ是ハマア今ノ農業保險
ト云フヤウナモノハ、今日ノ狀態デドノ位
マデヤレルカ問題デゴザイマセウシ、ソレ
ガ起ッタ場合ニハ其ノ桑ノ葉ヲ······桑葉保
險ト云フヤウナモノヲ御考ノ中ニ御入ニナッ
テ居ルト云フヤウナコトヲ伺ッテ居ルノデ
アリマスガ、桑ノ方ハ損害ダトカ、何トカ云
フダケノ問題デ、是ハマア其ノ方デ行クダ
ラウト思ヒマスガ、今ノ所ノ違蠶ニ對スル
保險トカ、若シクハ此ノ組合製絲ノ場合ニ
ハ、サウ云フ種ノ加減デ以テ違蠶シタト云
フヤウナコトハ、是マアヨクアルノデゴザ
イマセウ、何處ノ會社ノ種ダケガ宜クナカッ
タト云フヤウナコトガアルノデアリマスガ、
ソレニ對シテ、特約組合カラオ印シダケノ
見舞金ヲ出シテ居ルト云フヤウナ狀態ナン
デス、ソレニ相當ニ何トカ危險ヲ平均スル
ト云フヤウナ方法ノ設備ニ付テ、御考ニナッ
テ居ルコトガゴザイマスマイカ、ソレヲ伺
ヒタイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=12
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013・井野碩哉
○政府委員(井野碩哉君) 只今三浦委員ノ
御述ニナリマシタヤウナ事實ハ、能ク私共
モ耳ニ致スノデアリマス、是ハ製絲業者ト
シマシテハ、自分デ作リマシタ種ヲ養蠶家
ニ配付シ、指導致シテ居リマスガ、兎角··
是ハ無論全部ノ製絲家デハアリマセヌ、或
者ニハ斯ウ云フ者ガアルコトヲ申上ゲルノ
デスガ、製絲家トシテハ〓ハ弱クテモ、出
ルダケ多クノ絲ヲ吐カシタ方ガ利益ニナル
ト云フヤウナ所カラ、サウ云フヤウナ種類
ノモノヲ配リ易イ、ソレガ違作ノ大キナ原
因ニナルト云フコトハ是ハ今御述べノ通リ
ノ事實ガアルヤウデアリマス、從ッテ養蠶
家トシテハ、ドッチカト云フト、サウ多量
ノ絲ヲ吐カナクテモ蟲質ノ丈夫ナモノヲ欲
スルト云フヤウナ所ニ、養蠶家ノ立場ト製
絲家ノ立場ト、立場上ノ違ヒガアリマシ
テ、我々トシテモ其ノ點ノ矛盾ヲ出來ル
ダケ避ケタイト實ハ年來考ヘテ居ッタノ
デアリマス、ソレニハ矢張リ原蠶種ノ
國家管理ガ一番適當デアルト、サウ云
フ風ニ考ヘマシテ、原々種ノ製造ヲ
全部國家自ラガ製造スルト云フコトニ致シ
マシタノガ、先般御協贊ヲ得マシタ原〓種
國家管理法デゴザイマス、之ニ依リマスレ
バ、卽チ國トシテ蟲質ノ丈夫ナ、而モ絲量
ノ相當ニアルモノニ限ッテ製造政シテ配付
致スノデアリマス、サウナリマスレバ、特
約關係ニ於テ、製絲家ガ特ニ自分ノ立場カ
ラノミ考ヘタ品種ヲ選ビ得ナイト云フ實情
ニナッテ參ルノデアリマス、是ハ昭和十三年
カラ全國一齊ニ其ノ制度ニナリマシテ、養
蠶家ノ手ニ入リマスノハ、十五年カラハサ
ウ云フ品種ニ限ッテ參リマス、今後ハ只今御
述ニナリマシタヤウナ問題ハ無論ナイコト
ト考ヘテ居リマス、併シ違作ノ問題ハ、是
ハ假ニ品種ハサウ云フロ種種ナナリマシテ
モ、或ハ飼育法其ノ他ニ於テサウ云フ問題
モ起ルコトガゴザイマスカラ、之ニ付テハ
保險制度ヲヤッタラドウダラウト云フ御說
モ尤モダト考ヘマスガ、是ハ農業保險トシ
テ考ヘルヨリハ、養蠶團體ヲ中心トシタ共
濟制度ガ一番適當ヂヤナイカ、斯ウ云フ風
ニ考ヘテ居リマス、實ハ明年度農業保險關
係ニ對シマシテハ、調査會ヲ設置シテ〓究
スル豫算ガ取レテ居リマスカラ、此ノ調査
會ニ於キマシテモ、今御述べノヤウナ點モ
十分考慮致シタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=13
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014・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 御諮リヲ致シ
マスガ、一昨日質疑終了ト致シテ置キマシ
タノデアリマスガ、松村委員ガ新シク御入
リデアリマスノデ、今日質疑ヲシテ戴キマ
シテ、ソレニ關聯シテ三浦委員カラモ御發
言ガアリマシタガ、是デ質疑ハ終了ニナリ
マシタモノト致シマシテ御異議ゴザイマス
マイカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=14
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015・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 御異議ナイモ
ノト認メマス、然ラバ續イテ討論ニ移リタ
イト思ヒマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=15
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016・織田信恒
○子爵織田信恒君 ドウデスカ、討論採決
ニ入ル前ニ、一遍御懇談願ッタラ如何デセ
ウ、中ニ色々御希望モアルヤウデゴザイマ
スカラ大體御懇談ヲ願ッテ纏ッタ所デ討論ニ
移リ、直チニ採決ニ入ッタ方ガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=16
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017・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 再ビ御諮リヲ
致シマス、只今織田子爵カラ御提議デアリ
マシテ、委員ノ間デ何カ決議ニ關シマシテ
御希望ガアルラシイノデ、討論ニ入ル前ニ
懇談會ヲ開イテハドウカト云フ御提案デア
リマス、御異議ガナケレバサウ致シタイト
思ヒマスガ、如何デゴザイマセウカ
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=17
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018・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 然ラバ懇談會
ヲ致シマス
午前十一時三十二分懇談會ニ移ル
午後零時十九分懇談會終ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=18
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019・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) ソレデハ休憩
前ニ引續キ會議ヲ開キマス、討論ニ入リタ
イト思ヒマス、此ノ絲價安定施設法案及絲
價安定施設特別會計法案、兩案ヲ一括シテ
議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=19
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020・長野忠次
○長野忠治君 先日來此ノ法案ノ委員會ニ
於キマシテ、各委員カラ極ク詳細ナル質問
ノ事項ニ亙リマシテ、又其ノ際ニ於キマシ
テ御意見ヲモ併セ伺フコトヲ得マシタノデ
アリマス、政府委員カラハ特ニ詳細ナル御
答辯ヲ得マシテ、我々ノ疑問モ大イニ氷解
致シマシタ次第デゴザイマス、私共ハ此ノ
法案ガ運用其ノ宜シキヲ得テ、本法ノ目的
ヲ十分ニ貫徹セラレルヤウニ、國家蠶絲業
ノ爲ニ希望シテ已マナイモノデアリマス、
然ルニ此ノ運用ニ際シマシテ、委員各位ノ
御意嚮ノアル所ヲ忖度致シマスルニ、特別
會計ノ運用ガ其ノ宜シキヲ誤リマシテ、或
ハ國家財政ニ過重ノ負擔ヲ招來スルヤウナ
コトハ極メテ避ケナケレバナラナイコトデ
アルカラシテ、此ノ點ニ付テハ十分ノ注意ヲ
要スルコトデアル、又賣渡價格、買入價格
ノ決定ト云フコトハ、此ノ需給ヲ調節シ、
絲價ノ安定ヲ圖ルガ爲ニ最モ大切ナル是ハ
實際問題デアリマスルカラ、買入價格ノ決
定竝ニ賣渡價格ノ決定ト云フコトニ付キマ
シテハ、最モ大切ナル考慮ヲ廻ラサレルヤ
ウニ希望スル次第デアリマス、ソレカラ此
ノ法案ノ實行ニ依リマシテ、絲價低落ノ場
合ニ、專ラ養蠶者ニ絲價低落ノ損失ノ結果
ヲ轉嫁スルヤウナコトガナイヤウニ、私共
ハ深甚ノ注意ヲ拂ハナケレバナラヌモノト
考ヘルノデアリマス、惟フニ政府當局ノ御
意嚮モ、私共以上ニ、國家養蠶者大衆
ノ爲ニ、此ノ點ニ付テハ非常ナル御留意
ヲ持ッテ居ラレルト信ズルノデアリマスル
ガ、尙養蠶大衆ノ不安ヲ除カムガ爲ニ、
且一般ノ輿論ヲ代表致シマシテ、此ノ
點ニ付キマシテハ、特ニ養蠶業者ニ損
失ヲ專ラ嫁轉シナイヤウニ注意スルコトガ
必要ナリト信ズルノデアリマス、次ニ此ノ
法案ノ第三十一條ニハ、絲價ガ異常ナル低
落ヲ生ズル場合ニ於テハ、蠶絲業各團體ヲ
シテ生產統制ヲ行フ場合ニ於キマシテ、其
ノ統制ニ服從セシムルヤウニ、蠶絲業各團體
ノ組合員ニ對シテ命令ヲ發シ得ルト規定シ
テ居リマスカラ、蠶業各團體ノ自覺竝ニ自治
的統制ニ依ッテ適當ナル統制ヲ行ヒ得ルヤウ
ニ、政府ニ於キマシテハ指導ヲナサレルコ
トト考ヘルノデアリマスルガ、更ニ進ンデ
其ノ目的ヲ達セムガ爲ニハ、蠶作ノ安定、
又品質ノ向上、更ニ進ンデ生產ノ統制ヲ完
全ニ行ヒ得ムガ爲ニハ、根本デアルトコレ
ノ普通蠶種ノ國家管理ヲ實行セラレマシテ、
此ノ優良强健ナル〓種ヲ養蠶者ニ提供シ、
又絲價低落ノ場合ニ於キマシテ、適當ナル
調節ヲ行ヒ得ルヤウ途ヲ開カレルヤウニ希
望シテ已マナイ次第デゴザイマス、是ト共
ニ當然桑園ノ調整ト云フコトニハ平素十分
ノ指導ヲシテ居ラレル譯デハアリマスルガ、
ドウシテモ農村ノ桑園ノ調整ト云フコトニ、
專ラ御留意ヲ願フコトガ必要ナリト信ズル
譯デアリマス、斯クノ如キ意味カラシマシ
テ、私共ハ本案ノ成立ニ向ッテ一日モ早ク之
ガ效果ヲ發揮スルヤウニ、速カナル決議ヲ
得タイト考ヘル次第デアリマスルガ、同時
ニ今申述ベマシタヤウナ項目ヲ希望決議ト
シテ附帶スルコトヲ望ム次第デゴザイマス、
御許シヲ得マスルナラバ其ノ希望決議ノ條
文ヲ此處ニ中述ベテ見タイト思ヒマス
希望決議
一、本法施行ニ際シ特別會計ノ運用ニ關
シ深甚ノ注意ヲ要スルト共ニ絲價低落
ニヨル損失ヲ專ラ養蠶者ニ轉嫁セシメ
ザル樣善處ス可シ
一、政府ハ速ニ普通蠶種ノ國家管理竝ニ
桑園調整ニ對シ適當ナル施設ヲ行ハレ
ンコトヲ望ム
是等ノ條項ヲ希望決議ト致シマシテ、玆ニ
贊成ノ意見ヲ申述ベマス譯デアリマス、此
ノ點ニ付キマシテ、本案ノ決議ニ滿場一致ノ
御同意ヲ得ルコトヲ、希望致シマスト共ニ、
併セテ此ノ希望決議ニ對シマシテ幸ニ御贊
成戴ケマスレバ、誠ニ仕合セト存ズル次第
デゴザイマス、玆ニ意見ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=20
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021・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 只今長野君カ
ラ、本案ニハ贊成スルガ、希望決議ヲ附
シタイト云フ御提議ガゴザイマシタ、他
ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=21
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022・山田仙之助
○山田仙之助君 本案ニ對シマシテ、此ノ
本案ノ骨子トナリマスル絲價ノ低落ヲ防止
シ、高値ヲ防止スルト云フコトハ、一般カ
ラ考ヘテ見マスルト、是ハ大變穩カナ案デ
アルト云フコトニナリマス、デアリマスル
ガ、是ハ米穀ノ如キトハ事變リマシテ、生
絲ナルモノハ大半ガ貿易ノ製品デアリマ
ス、デアリマスガ故ニ、低落ヲ防止スルト
云フコトハ日本ノ產業經濟上ニ大變有利デ
アリマスルガ、高値ヲ防止スルト云フコト
ハ高ク買ッテ呉レルモノヲソレヲ安ク賣
ルト云フコトハ、貿易ノ趣旨ニ於キマシテ
モ、日本ノ產業經濟ニ對シテモ、意味ヲ成
サナイノデナイカト考ヘルノデス、併シナガ
ラ是ニハ生絲ノ原料ノ養蠶家ガアリマスガ
爲ニ、養蠶家ニ對シ危險ヲ生ズルト云フコ
トニナリマスルト、ソレモ一面考ヘナケレ
バナリマセヌガ、生絲ノ織物ト云フモノハ
內地デモ外國デモ、御承知ノコトト信ジマ
スルガ、高級品、贅澤品ニ使用スルノデア
リマスガ爲ニ、高クナルノニハ高クナル原
因ガアルノデアリマス、ト申上ゲマスルノ
ハ、今日マデノ例ヲ見マスルト、此ノ生絲
デ作リマシタ織物ハ主ニ流行品ニ使用スル
ノデアリマス、假ニ例ヘテ申土ゲマスルノ
ニ、茲ニ婦人ノ傘ガ流行ル、之ガ絹物ガ斯
ウ云フモノニ使ッタノガ、非常ニ米國デ流
行セラレタト云フコトニナリマスルト、ソ
レハ絹絲デ原料ヲ作ッタノデアルト云フト、
今マデハ綿絲デ作ッタトカ、人絹デ作ッタト
カ云フヤウナモノデモ一時ニ流行ヲ致シマ
シテ、生絲ノ原料ガ多ク賣レルト云フコト
ガ內地デモアリマスルガ、別ケテモ米國ノ
如キ、先進國デアリマスガ爲ニ激シクナル
譯デアリマス、ソレ故ニ或場合ニハ人絹ト
カ綿絲トカ云フ、他ノ對等致シマスル物價
ニ比較シテ低落モ致シマスガ、暴騰モ致ス
ト云フ原因ガ、サウ云フ所ニ大分歸著シテ
居ルノデゴザイマス、ソレデ外國ニ今非常
ニ絲ガ入用ニナッテ、入用ニナリマスレ
バ高クナルコトハ當然デアリマス、其
ノ高ク買ウテ吳レル絲ヲ、ソレヲ少シ
高過ギルカラ安ク賣ッテヤルト云フヤウ
ナ慈悲ナコトヲセヌデモ、賣レル時期
ニハ高ク賣ッテモ差支ガナイモノト本員
ハ考ヘルノデゴザイマス、ソレヲ高ク
賣ルト販路ガ狹クナルト云フ御說デアリマ
シタガ、ソレハ一例ヲ考ヘマスルト、普通
ノ商品デアリマスレバ、ソレハ餘ノ品物ニ
比較シマシテ高イト云フコトニナリマスレ
バ買フ者ハ手ヲ控ヘル、餘ノ品物ニ變ルト
云フコトニナリマスルガ、此ノ生絲ナル品
物ニ對シマシテハ、サウ云フコトモ萬更ナ
イトハ申上ゲマセヌガ、大半此ノ織物竝ニ
生絲ノ年ニ一度或ハ二年ニ一度モ非常ニ高
イコトモアルト云フ狀態ヲ考ヘテ見マスル
ト、向フノ流行品ノ變ッタガ爲ニ高イト云フ
原因ガ生ジタノデス、ソレヲ一方假ニ高イ
モノヲ、アトニ危險ヲ生ズルカラ安クシテ
置カウト云フコトニ致シマシテモ、決シテ
販路ガ擴張ニナラヌノデアリマスト云フコ
トハ、是ハ譬ヘト致シマシテ申シマシテ甚
ダ何デアリマスルガ、玆ニ本年此ノ品物ガ
非常ニ賣レタ、安クスルト來年モ賣レルカ
ト云フト、決シテ流行品ト云フモノハ、高
イ時ニハ高イデ十分賣レマスルガ、來年、
再來年ニナリマシテモ矢張リ高ク賣レル譯
デナイノデアリマス、デハ安クスレバ賣レ
ルカト云フト、安クシテモ流行品ト云フモ
ノハ、丁度花ノ咲イタ時ノヤウナモノデ、
時期ガ過ギマスト賣レヌト云フコトニナル、
安クシテモ賣レヌト云フコトニナレバ、高
イ間ニ賣ッタダケノ日本ノ利益ニナルト云
フコトニ考ヘルノデゴザイマス、ソレハ假
ニ千圓ノ絲ヲ五百圓ガ公平ナ相場デアルカ
ラ、五百圓ニシテ置カウト云フタトコロ
デ、ソレハ米國ナリ輸出先ノ商人ノ金儲ケ
ニナッテシマッテ、日本ノ貿易ノ利益ニハナ
ラヌト云フコトニ本員ハ考ヘルノデゴザイ
マス、ソレデ我ガ國ノ貿易ノ根本カラ考ヘ
マスト、安値ニ賣ルト云フコトハ是ハ無論
日本ノ國家ト致シマシテモ損デアリマスデ、
當然是ハ大イニ考慮ヲ拂ハナケレバナラヌ
ガ、高値ヲ防止スルト云フコトハ、是ハ國
內ノコトナラバソレハ變リアリマセヌガ、
輸出ト云フコトニ付テハ、成ルタケ金ヲ高
ク取レルモノハ取ッテモ差支ナイ、ノミナラ
ズソレガ高ウ取ッタカラ必ズ販路ガ狹マル
ト云フコトニハ決シテナラナイト私ハ考ヘ
ルノデアリマス、今申上ゲマシタヤウナ理
由デアリマシテ、尙餘ノ纖維ノ人絹デアリ
マスルガ、此ノ人絹ニ致シマシテモ、今日
ハ非常ニ發達ヲ致シテ居リマスルガ、此ノ
發達致シマシタ人絹ニ對シテデモ、流行品
ハ必ズ人絹ダケデ宜イノカト申シマスト、
其ノ中ニ絹物ノ絲ノ······絹絲ノ交ッタモノガ
本年ハ流行シタト云フコトニナリマスト、
其ノ絹絲ノ交ッタ織物ガ非常ニ賣レ出ス、サ
ウ致シマスト、ソレハ來年モ賣レル筈ダ、
再來年モ賣レル筈ダト言ハナケレバナリマ
セヌガ、決シテ本年賣レタモノガ來年賣レ
ルカト云フコトニナルト賣レヌコトガ多々
アルト云フコトハ、人絹ニ對シテデモサウ
云フコトニナリマス、デアリマスデ私ハ高
値ヲ防止スルト云フコトハ、放任シテ置ケ
バ宜イト云フ考ヲ持ッテ居ル一人デアリマ
スルガ、併シナガラ是ハ色々政府ノ御當局
ノ御說明ト私ノ意見トハ違ヒマスノデ、是
ハ意見ノ相違デアリマスルノデ、論議ハ措キ
ト致シマシテモ、今私ガ高値ヲ防止スルコ
トヲ修正ノ提案ヲ致スト云フコトニナリマ
スルト、御贊成ガアルカ無イカハ別問題ト
シマシテ、本員ト致シマシテハ、蠶業ノ爲
ニ政府ガ提案ヲサレタモノヲ修正ヲスルト
云フコトモ甚ダ私モ本意デハアリマセヌ、
又衆議院デ通過致シマシテ貴族院ヘ廻ッタ
モノヲ修正スルト云フコトモ、考慮ヲ致シ
マスベキデアリマスルノデ、修正マデ致シマ
シテ私ガ固ヨリ玆ニ申上ゲルト云フコトヲ
控ヘマスルガ、私ハ絹物ノ織物、生絲ニ對
シマシテハ多少〓究ヲシテ居ル一人デアリ
マスカラ、理窟ト實地トハ多少異ッテ居リマ
ス、政府ノ御提案ハ成ルホド御〓究爲サレ
タヤウナ提案デアリマセウガ、私ノ考ヘデ
見マスルト、机上論ガ大イニ入ッテ居
ルモノト考ヘマス、併シナガラ是ハ
生絲ノミニハ又色々考へテ見マスルト、
蠶絲業、養蠶家ノ立場モ考ヘナケレバ
ナラヌ、餘リ相場ヲ高下サシマシテ危險ヲ
サスルト云フコトモ、是亦考慮ヲシナケレ
バナリマセヌ、併シナガラ年中利益ノナイ
モノヲスルヨリ、假ニ危險ハ生ズルガ、千
圓ココデ儲カッテ五百圓損ヲシテモ、差引キ
致シマスト、日本トシテ五百圓利益ガアル
ト云フコトニナレバ、國家トシテハ利益デ
アラウト考ヘルノデアリマス、デアリマスル
ケレドモ、玆ニ御提案ヲサレタノデアリマ
シテ、私ハ修正ヲ願ヒタイガ、修正ヲ是非
スルト云フ提案ハ、政府御當局ニ對シ遠慮
ヲ致シテ置キマス、デアリマスルガ、高値
ヲ御極メニナル時ニ、成ルタケ其ノ御心持
デ御極メ下サルコトヲ條件ト致シマシテ、
政府案ニ贊成ヲ致シテ置キマス、ソレカラ
滯貨生絲ニ付キマシテ一言意見ヲ申上ゲタ
イノデアリマス、政府ノ御說明ニ依リマス
ト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=22
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023・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 山田サンニチ
ヨット申上ゲマスガ、討論ノ時期デアリマス
ガ、贊否其ノモノニ關スル御意見ハ一向差
支ヘナイノデアリマスルガ、ソレニ多少觸
レマセヌ所ハ此ノ際ハ御遠慮願ッタ方ガ、討
論ノ時期トシテ適當カト心得マスカラ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=23
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024・山田仙之助
○山田仙之助君 承知致シマシタ、少シ論
議ガ橫道ニ入ルカモ知レマセヌガ、滯貨生
絲ノコトニ付キマシテ、是モ希望ヲ申シテ
置キマス、成ルタケ滯貨生絲ハ、政府ハ生
絲デ二萬梱出スト云フコトデアリマシタガ、
ソレヲ製絲家ヨリ直接輸出出來得ルモノハ
シテ戴クコトニ願ヒマシテ、滯貨生絲ナル
モノハ織物ニ全部シテ出スト云フコトニ
願ヒタイ、是ハ本員ノ希望デアリマス、斯
ウ云フコトニ御願ヲシタイト云フ希望ヲ以
テ贊成シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=24
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025・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ高値調節ノ問題ニ付
テ、政府ニ希望ヲ申述ベテ本案ニ贊成シタ
イト思ヒマス、元來高ク賣レルモノヲ無理
ニ安ク賣ルト云フヤウナ意味ニ考ヘテ居ラ
レルコトハ、私ハマサカナイト思フ、日本
ノ國民トシテ何人ト雖モ、政府ニ於テ職ヲ
奉ジテ居ルト、民間ニ居ルトヲ問ハズ、高
ク賣レルナラバ高ク賣ッテ、出來ルダケ國ノ
富ヲ滿タシタイト云フコトハ、私ハ全然同
一デアラウト思フ、唯ヨク此ノ法律制定ノ
際ニ、高値調節ノ趣旨ニ付テ徹底シタ理解
ヲ以テ進マナイト云フト、非常ナ所謂机上
ノ施設ガ玆ニ行ハレルコトニナル、恰モ慈
善行爲ヲ經濟運用ノ間ニ於テ行ッテ居ルガ
如キ誤解ヲ玆ニ生ズル虞ガアルダラウト私
ハ思ヒマスカラ、高値調節ニ付テハ特ニ深
甚ナル注意ヲ拂ハレルコトヲ必要ト私ハ思
フ、其ノ意味ハ、無理ナクシテ高ク賣レル
マデハ出來ルダケ高ク賣ルト云フコトハス
ルノデアルト云フコトハ、政府ニ於テ御考
ニナラナケレバイカヌト思フ、賣レルノニ
賣ラナイト云フ意味ノ高値調節デハ決シテ
ナイ、賣レルダケハ出來ルダケ高ク賣ル、
モウ頂點マデ高ク賣ルト云フノガ政府ノ考
デアルト云フコトヲ先ヅ頭ニ御入レニナル
コトガ必要デアルト思フ、ソコデ高値調節
ノ必要ナコトハ賣惜ミガイケナイ、ソレカ
ラ先キマダ賣レルモノト思ッテ、モウ「マキシ
マム」ニ達シテ居ルニモ拘ラズ、マダ高ク賣
レルト云フ慾ヲ深ク持ッテ賣ラナイト云フ
コトニナルト云フト、ソコデ其ノ生絲ノ値
段ガ頂上ニアル所、卽チ競爭纖維ノ喰入ル
要點ニナッテ居ル、競爭纖維ガ入ラムトス
ル所ノ境界線マデ進ンデ居ル際ニ、境界線
ノ所デ賣ラナイト云フコトハイカヌ、之
ヲ餘程御注意ニナラヌトイカヌ、高値調節
ノ趣旨ハ、ソレヨリ更ニ一步進ンデ賣レサ
ウダカラト言ッテ賣ルト云フコトハイカヌ
ト云フノデアル、ソシヲ「マキシマム」以上
ニ賣ルト云フコトハ利益ナ行爲デハ決シテ
ナイ、「マキシマム」以上ニ行クト云フコト
ハ、ソコニ競爭纖維ガ直グニ喰入ッテ來ル
ト云フコトデアリマスカラ、其ノ趣旨ニ於
テ高値調節ヲ爲サラヌトイカヌ、是ハ其ノ
意味ニ於テ御運用ニナルト思ヒマス、恐ラ
ク立法ノ趣旨モソレダト思ヒマス、賣レル
ダケ賣ッテ居ルト其處ニ油斷ガ出來テ、不
必要ナ賣惜ミヲスル、其處デ偶〓賣惜ミノ
爲ニ其ノ「マキシマム」以上ニ賣レルコトガ
アルガ、賣レタダケ得ヂヤナイカト云フト、
ソレハ得ヂヤナイ、其ノ「マキシマム」以上ニ
賣レル場合ニハ、直グ其ノ〓ニ競爭纖維ガ
入ッテ來ルト云フ〓ガ開ケテ居ルト云フコ
トニナリマスカラ、頂點マデ賣ルト云フ、
卽チ其處デ賢明ナル裁斷ガ必要デアル、是
ガ頂點デアルト云フ裁斷ガ必要デアル、是
ハ非常ニムツカシイコトデアッテ、統制經濟
ト自由經濟ノ岐レ目ノ非常ニ大切ナ所デア
リマスカラ、ソレハ深甚ナル御注意ニナッテ
運用セラレル必要ガアルト思フ、ソコデ高
値調節ノ必要ナシト云フ議論ハ、其ノ頂點
マデ行ク前ニ政府ガ慈善的ニ賣ルカモ知レ
ナイ、老婆心デ、此ノ邊デ賣ッテ置カナイ
ト直グ競爭纖維ガ入ッテ來ルカラ賣ッテ置カ
ナケレバナラヌト云フコトヲ、餘リ商賣ノ
御經驗モナイ素人ノ御方々ガ机ノ上デ判斷
シテ、此ノ邊デ宜カラウト云フコトデ高値調
節ヲ判斷サレルト、飛ンデモナイ間違ガ起リ
やく、ソレハ玄人ノ方ノ方ガ能ク知ッテ居
ル、餘程御考ニナラヌト非常ナ.問題ヲ起ス、
机上ノ議論ヲヤル政府ノ役人ニ、ソンナム
ツカシイ「マキシマム」ノ點ノ見極メガ付キ
得ルカドウカト云フコトニ要點ガアル、政
府ハ見極メガ付キ得ナイダラウト云フ所カ
ラ、ソンナ寶刀ヲ政府ニ許スト云フコトハ
ドウカ知ラント云フコトニ、修正意見ト云
フヤウナ意味ノ心配ガ付イテ來ル譯デ、ソ
レハミンナ老婆心カラ出テ居ル、其ノ點ハ
十分御考ニナッテ戴キタイ、特別會計ノ運
用上注意シナケレバナラヌト云フコトハ其
ノ邊カラ來ル、不必要ニ抱キ込ンデシマ
フ、ソレガ結局特別會計ニ累ヲ及スト云フ
コトニナルカラ、特別會計ヲ眺メルニハ、
サウ云フヤウナコトヲ深甚ナ心配ヲシテ、
政府ノ運用上最モムツカシイ問題デアルゾ
ト云フコトヲ頭ニ置イテ、愼重ノ上ニモ愼
重ニ運用セラレムコトヲ希望スルト云フ意
味ニ於テ、其ノ希望ヲ附ケテ本案ニ贊成シ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=25
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026・稻田昌植
○員員長(男爵稻田昌植君) 外ニ御發議ハ
ゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=26
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027・武井覺太郎
○武井覺太郞君 只今山田君、松村君ノ御
說モゴザイマシタガ、私ハ年來當業ニ從事
シテ居リマスル上カラシテ、米國ノ實際ノ
コトヲ申上ゲテ置キタイト思ッテ居リマス、
只今山田君ガ高イ値ノ方ハ流行ニ依ッテ取
レルノダカラシテ、幾ラナリトモ取ッタ方
ガ宜イノデハナイカト云フ御說デゴザイマ
シタガ、實際ニ於キマシテハ過去十一年間
ノ經過ニ徵シテ見マシテモ、人造絹絲ノ發
達以來、大正十五年ニ於キマシテハ米國ノ
消費高ガ生絲ノ方ガ多少多クアッタモノガ、
昨年ノ消費高ハ人造絹絲ノ方ガ五倍ニナッテ
居ル譯デアリマス、ソレデ是ハ何ガ爲ニ斯
クノ如ク生絲ノ方ハ、其ノ間ニ多少ノ增減
ハアリマシタケレドモ、十年前ト今日ト格
別消費ハ變ラナイニ拘ラズ、人造絹絲ノ方
ハ五倍ニ達シタカト云フト、今日ノ所デハ主
ニ生絲ト云フモノハ婦人ノ絹靴下ニ其ノ六
割五分ヲ使ハレテ居リマシテ、此ノ方ハ現
在ノ所デハ生絲デナケレバ彈力ガナクテ、
人絹デハ婦人ノ靴下ハ作レナイノデゴザイ
マシテ、生絲專用ニナッテ居リマスルカ
ラ、是ダケノ消費量ガアル譯デゴザイマス
ガ、其ノ他廣幅物ト云フヤウナモノ、其ノ他
ノモノデ漸ク三割五分デゴザイマシテ、此
ノ方ナドハ生絲ノ値段ガ高クナレバ全然變
リナクナルノデゴザイマスルガ、旣往ニ於
ケル生絲ハ非常ニ暴騰暴落ガアリマスル性
質ヲ有ッテ居リマスル爲ニ、投機師ガ上ゲマ
スル時ニハ、投機師ガ生產市場ナドヲ弄ン
デ、ソレガ爲ニ暴騰スルノデゴザイマシ
テ、現ニ今日斯クノ如ク暴騰シテ居リマス
ルガ、實物市場ト云フモノハ極メテ商ヒハ
少ナク、寧ロ據ロナイモノガ買フト云フヤ
ウナ狀態デアッテ、主ニ投機師ガヤッテ居ル
相場ナンデシテ、自然暴騰ガアリマスレ
バ、モウ後ハ暴落スルニ限ッテ居ル、モウ
既往ノ數十年ノ經驗ニ徵シテモサウ云フモ
ノデゴザイマスルカラ、從ッテ本案ノ必要
ガ生レテ、御提案ニナッタ譯デゴザイマス
ルデ、一言申上ゲテ本案ノ必要ナルコトヲ
認メテ贊成スルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=27
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028・織田信恒
○子爵織田信恒君 大體討論終結シタヤウ
ニ存ゼラレマスガ、本案竝ニ希望決議ノ採
決ニ入ッテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=28
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029・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 討論終結ト致
シマシテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=29
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030・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 御異議ナシト
認メマス、ソレデハ希望決議ヲ申出デラレ
タ方モアリマスガ、先ヅ兩案雙方ニ付キマ
シテ贊否ノ決ヲ採リ、ソレガ終リマシタ後
デ希望決議ニ關スルコトヲ極メタイト思ヒ
マス、左樣致ス積リデ居リマス、御異議ガ
ナケレバ兩案一括シテ決ヲ採リタイト思ヒ
やく、兩案ニ御贊成ノ方ノ擧手ヲ御願ヒ致
シマス
〔總員擧手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=30
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031・稻田昌植
○員員長(男爵稻田昌植君) 滿場一致ト認
メマス、兩案ハ可決セラレマシタ、次デ長
野委員カラ御開陳ニナリマシタ希望決議ニ
付テ決ヲ採ラウト思ヒマス、先程同君ノ讀
マレマシタ希望決議ヲ附シマスコトニ御異
議ゴザイマセヌデセウカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=31
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032・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 御異議ナシト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=32
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033・山崎達之輔
○國務大臣(山崎達之輔君) 當委員會ニ於
テ愼重御審議ヲ煩シマシテ、本案ノ御決定
ヲ得マシタコトハ當局トシテ深ク感謝致シ
やく、尙只今御決定ニナリマシタ御希望ノ
決議ニ對シマシテ、政府トシマシテ十分之
ヲ尊重致ス所存デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=33
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034・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 是デ本委員會
ハ終了致シマシタ、終リニ臨ミマシテ委員
各位ノ御熱心ナル御討議ヲ感謝致シマス、
特ニ本日ハ審議ノ都合上、時間ヲ延長シテ
御審議下サイマシテ、此ノ點委員長トシテ
モ厚ク御禮ヲ申上ゲマス、尙只今此ノ委員
會デ可決ニナリマシタ兩案ハ、多分明日ノ
本會議ニ掛ケルコトト存ジマスガ、委員長
カラ審議ノ模様ヲ大體不十分トハ思ヒマス
ルガ致シマスルガ、重要法案ニ付キマシテ
ハ、能ク第二讀會ニ入リマシテモ質疑ガア
リマスノデ、副委員長初メ成ルベク本會議
ニ御出席ヲ願ッテ置キマス、是デ散會ヲ致シ
マス
午後零時五十八分散會
出席者左ノ如シ
委員長男爵稻田昌植君
副委員長木場貞長君
委員
公爵島津忠重君
伯爵山田英夫君
子爵織田信恒君
子爵舟橋〓賢君
松村眞一郞君
男爵三須精一君
男爵山根健男君
三浦新七君
武井覺太郞君
長野忠次君
山田仙之助君
澁澤金藏君
國務大臣
農林大臣山崎達之輔君
政府委員
農林省蠶絲局長井野碩哉君
農林書記官周東英雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001332X00319370319&spkNum=34
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