1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年三月十九日(金曜日)午前十時十一分開議
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議事日程 第十九號
昭和十二年三月十九日
午前十時開議
第一 臨時租税増徴法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 法人資本税法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 外貨債特別税法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 揮發油税法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 有價證券移轉税法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 明治四十年法律第二十一號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 一般會計歳出の財源に充つる爲特別會計より爲す繰入金に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 對支文化事業特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 一般會計歳出の財源に充つる爲大藏省預金部特別會計より爲す繰入金に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=0
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001・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 報〓ヲ致サセマ
ス
號外昭和十二年三月二十日
〔瀨古書記官朗讀〕
昨十八日委員長ヨリ豫算委員芳澤謙吉君ヲ
第二分科擔當委員ニ選定シタル旨ノ報告書
ヲ提出セリ
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
軍事救護法中改正法律案可決報告書
救護法中改正法律案可決報告書
母子保護法案可決報告書
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲特別會計
ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律案可決報〓
書
對支文化事業特別會計法中改正法律案可
決報告書
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲大藏省預
金部特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法
律案可決報〓書
昭和十年度歲入歲出總決算、昭和十年度
各特別會計歲入歲出決算審査報〓書
昭和十年度國有財產增減總計算書審査報
〓書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
臨時租稅增徵法案
法人資本稅法案
外貨債特別稅法案
揮發油稅法案
有價證劵移轉稅法案
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
本日第八部ニ於テ豫算委員野村茂久馬君ノ
補關選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果高鳥順作君當
選セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=1
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002・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 雍仁親王、同妃
兩殿下、昨日東京驛御發車、御渡英ノ途ニ
上ラセラレマシタニ付テ、議長ハ議院ヲ代
表致シマシテ、東京驛ニ奉送ヲ致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=2
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003・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、臨時租稅增徵法
案、日程第二、法人資本稅法案、日程第三、外
貨債特別稅法案、日程第四、揮發油稅法案、
日程第五、有價證劵移轉稅法案、日程第六、
明治四十年法律第二十一號中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會、是等ノ
六案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=3
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004・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス、結城大藏大臣
〔左ノ送付文及法案ハ朗讀ヲ經サ
ルモ參照ノ爲メ玆ニ載錄ス以下之
ニ傚フ〕
臨時租稅增徵法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十二年三月十八日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字ハ衆議院ノ修正ナリ)
臨時租稅增徵法案
臨時租稅增徵法
第一條當分ノ內本法ニ依リ所得稅、法
人ノ營業收益稅、資本利子稅、相續稅、
鑛產稅、酒稅、砂糖消費稅、取引所稅
及臨時利得稅ヲ增徵シ金鑛及銀鑛ニ特
別鑛產稅ヲ課ス
第二條所得稅中法人ノ普通所得及〓算
所得ニ對スル所得稅ニ付テハ所得稅法
第二十一條ニ規定スル稅率百分ノ五ヲ
百分ノ十、百分ノ十ヲ百分ノ二十トシ
タル場合ノ差增額ニ相當スル稅額ヲ增
徵ス
第三條所得稅法第四條ノ規定ニ依リ法
人ノ普通所得ヲ計算スル場合ニ於テハ
國債ノ利子額中其ノ國債ヲ所有シタル
期間ノ利子額百分ノ七十ニ相當スル金額
ヲ申請ニ依リ其ノ普通所得ヨリ控除ス
前項ノ申請ハ所得稅法第二十四條ノ申
告ト同時ニ控除ニ關スル明細書ヲ添附
シテ之ヲ爲スベシ
前二項ノ規定ハ法人ノ〓算所得ノ計算
ニ付之ヲ準用ス
第四條所得稅中同族會社ノ普通所得ニ
對スル所得稅ニ加算スル稅額ニ付テハ
所得稅法第二十一條ノ二ノ規定ニ依リ
算出シタル稅額ノ百分ノ五十ニ相當ス
ル稅額ヲ增徵ス
前項ノ規定ニ依ル增徵稅額ハ普通所得
ノ百分ノ四十ニ相當スル金額ヨリ普通
所得及超過所得ニ對スル所得稅額所
得稅法第二十一條ノ二ノ規定ニ依リ普
通所得ニ對スル所得稅ニ加算スル稅額
ヲ含ム)ト第二條ノ規定ニ依ル增徵稅
額トノ合計金額ヲ控除シタル殘額ヲ超
ユルコトヲ得ズ
第五條所得稅中第二種ノ所得ニ對スル
所得稅ニ付テハ所得稅法第二十二條第
一項ノ規定ニ拘ラズ左ノ稅率ニ依リ之
ヲ賦課ス
甲國債ノ利子百分ノ二
國債以外ノ公債ノ
利子百分ノ六
其ノ他百分ノ七·五
乙百分ノ十
第六條所得稅中第三種ノ所得ニ對スル
所得稅ニ付テハ所得金額ノ階級ニ從ヒ
左ノ割合ノ稅額ヲ增徵ス
所得金額二千圓以
下ナル所得所得稅額ノ百分
ノ二十
同三千圓以下ナル
所得所得稅額ノ百分
ノ三十
同七千圓以下ナル
所得所得稅額ノ百分
ノ三十五
同一萬五千圓以下
ナル所得所得稅額ノ百分
ノ四十
同十萬圓以下ナル
所得所得稅額ノ百分
ノ四十五
同五十萬圓以下ナル
所得所得稅額ノ百分ノ
五十五
同百萬圓以下ナル
所得所得稅額ノ百分
ノ六十
同百萬圓ヲ超ユル
所得所得稅額ノ百分
ノ七十
所得金額ガ二千圓ヲ超エ三千圓以下ナ
ル所得ニ付テハ之ニ對スル所得稅額及
增徵稅額ノ合計金額ヨリ所得金額二千
圓ノ所得ニ對スル所得稅額及增徵稅額
ノ合計金額ヲ控除シタル殘額ガ所得金
額中二千圓ヲ超ユル金額ヲ超過スルト
キハ該超過額ニ相當スル金額ヲ其ノ增
徵稅額ヨリ控除ス
前項ノ規定ハ所得金額ガ三千圓ヲ超エ
七千圓以下ナル所得、同七千圓ヲ超エ
一萬五千圓以下ナル所得、同一萬五千
圓ヲ超エ十萬圓以下ナル所得、同十萬
〓五十萬圓以下ナル所得、同五十萬圓ヲ超エ
圓ヲ超エ。百萬圓以下ナル所得及同百萬
圓ヲ超ユル所得ノ各同樣ノ場合ニ付之
ヲ準用ス
山林ノ所得ト山林以外ノ所得トハ之ヲ
區分シ各別ニ前三項ノ規定ヲ適用ス
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算
シ其ノ總額ニ付前四項ノ規定ヲ適用ス
戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ
所得ニ付亦同ジ
第七條法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ
配當又ハ剩餘金ノ分配ニ付テハ所得稅
法第十四條第一項第四號ノ規定ニ拘ラ
ズ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄
ノ收入金額(無記名株式ノ配當ニ付テ
ハ支拂ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ十分
ノ二ヲ控除シタル金額ニ依リ第三種ノ
所得ヲ算出ス
第八條法人ノ營業收益稅ニ付テハ營業
收益稅法第十條ニ規定スル稅率百分ノ
三·四ヲ百分ノ四トシタル場合ノ差增
額ニ相當スル稅額ヲ增徵ス
第九條資本利子稅ニ付テハ資本利子稅
法第六條ニ規定スル稅率百分ノ二ヲ百
分ノ四トシタル場合ノ差增額ニ相當ス
ル稅額ヲ增徵ス但シ貯蓄銀行ノ所有ス
ル國債ノ利子ニ對スル資本利子稅ニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
第十條相續稅ニ付テハ課稅價格ノ階級
ニ從ヒ左ノ割合ノ稅額ヲ增徵ス
課稅價格一萬圓以
下ナルトキ相續稅額ノ百分
ノ二十
同三萬圓以下ナル
トキ相續稅額ノ百分
ノ三十
同五萬圓以下ナル
トキ相續稅額ノ百分
ノ五十
同十萬圓以下ナル
トキ相續稅額ノ百分
ノ八十
同十萬圓ヲ超ユル
トキ相續稅額ノ百分
ノ百
第六條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付
之ヲ準用ス
第十一條相續稅ヲ課スベキ相續財產ノ
價額中不動產及不動產ノ上ニ存スル權
利竝ニ信託財產タル不動產ノ元本ノ利益
ヲ受クベキ權利ノ價額ノ合計ガ相續財
產ノ價額ノ二分ノ一ヲ超ユルトキハ相續
稅法第十七條第一項但書ノ期間ハ之ヲ
十年內トス
第十二條鑛產稅ニ付テハ鑛業法第八十
五條ニ規定スル稅率千分ノ五ヲ千分ノ
六トシタル場合ノ差增額ニ相當スル稅
額ヲ增徵ス
第十三條金鑛及銀鑛ニハ鑛產物ノ價格
ノ千分ノ十三ノ稅率ニ依リ特別鑛產稅
可愛美
鑛業法中鑛產稅ニ關スル規定ハ第八十
八條ノ規定ヲ除クノ外前項ノ特別鑛產
稅ニ付之ヲ準用ス
第十四條酒稅中〓酒、白酒、味淋及燒
酎ノ造石稅ハ酒造稅法第四條ノ規定ニ
拘ラズ左ノ稅率ニ依ル
一酒精分二十三度以下ノ〓酒及白酒
竝ニ酒精分三十度以下ノ味淋及燒酎
一石ニ付四十五圓但シ
連續式蒸餾機
ニ依リ製造シ
タル燒酎ニ付
テハ一石ニ付
二圓ヲ加ヘタ
ル金額
二酒精分三十度ヲ超エ四十五度以下
ノ燒酎
一石ニ付四十五圓ニ酒
精分三十度ヲ
超ユル一度母
ニ一圓七十錢
ヲ加ヘタル金
額但シ連續式
39.10
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H〓分三十度ヲ超
ユル一度每ニ
一圓八十錢ヲ
加ヘタル金額
三酒精分二十三度ヲ超ユル〓酒及白
酒酒精分三十度ヲ超ユル味淋竝ニ
酒精分四十五度ヲ超ユル燒酎
一石ニ付酒精分一度每
ニ二圓十五錢
第十五條酒稅中麥酒稅ニ付テハ麥酒稅
法第三條ニ規定スル稅率一石ニ付二十
五圓ヲ三十五圓トシタル場合ノ差增額
ニ相當スル稅額ヲ增徵ス
第十六條酒稅中酒精及酒精ヲ含有スル
飮料ノ造石稅ニ付テハ酒精及酒精含有
飮料稅法第二條ニ規定スル稅率中一圓
八十錢ヲ二圓十五錢、四十二圓ヲ五十
圓トシタル場合ノ差增額ニ相當スル稅
額ヲ增徵ス
第十七條砂糖消費稅ハ砂糖消費稅法第
三條ノ規定ニ拘ラズ左ノ稅率ニ依ル
砂糖
第一種砂糖色相和蘭標本第十一號
未滿ノ砂糖
甲樽入黑糖及樽入白下糖但シ分
蜜シタルモノ、黑糖及白下糖以
外ノ砂糖ニ加エシテ製造シタル
モノ竝ニ全部又ハ一部ノ新式機
械ニ依リ製造シタルモノヲ除ク
百斤ニ付一圓
乙其ノ他
ノモノ百斤ニ付二圓七十
錢
第二種砂糖色相和蘭標本第二十二
號未滿ノ砂糖
百斤ニ付六圓五十
錢
第三種砂糖色相和蘭標本第二十二
號以上ノ砂糖
百斤ニ付八圓
第四種氷砂糖、角砂糖、棒砂糖其ノ
他類似ノモノ
百斤ニ付十圓
二鐘重
第一種氷砂糖ヲ製造スルトキニ生
ズル糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
重量全重量ノ百分ノ七十ヲ超エ
ザルモノ
百斤ニ付三圓五十
錢
乙其ノ他
ノモノ第三章
(20°C)
計算シタ
ル重量百
斤ニ付八圓
第二種其ノ他ノ糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
重量全重量ノ百分ノ六十ヲ超エ
ザルモノ
百斤ニ付四
乙其ノ他
ノモノ百斤ニ付二圓七十
錢
三糖水百斤ニ付六圓五十
錢
第十八條取引所稅ニ付テハ左ノ各號ニ
定ムル稅額ヲ增徵ス
一取引所營業稅ニ付テハ取引所稅法
第一條ニ規定スル稅率百分ノ十五ヲ
百分ノ十六·五トシタル場合ノ差增
額ニ相當スル稅額
二第二種有價證劵ノ賣買取引ニ對ス
ル取引稅ニ付テハ取引所稅法第五條
ニ規定スル稅率萬分ノ一·五ヲ萬分ノ
二·七、萬分ノ二·五ヲ萬分ノ四·五ト
シタル場合ノ差增額ニ相當スル稅額
第十九條臨時利得稅ニ付テハ臨時利得
稅法第十四條ニ規定スル稅率百分ノ十
ヲ百分ノ十五、百分ノ八ヲ百分ノ十ト
シタル場合ノ差增額ニ相當スル稅額ヲ
增徵ス
第二十條北海道、府縣、市町村其ノ他
ノ公共〓體ハ本法ニ依リ增徵スル稅額
(第七條及第二十二條ノ規定ニ依リ增
額ト爲ル部分ヲ含マズ)又ハ本法ニ依
リ課スル特別鑛產稅ニ付附加稅ヲ課ス
ルコトヲ得ズ
附則
第二十一條本法ハ昭和十二年四月一日
ヨリ之ヲ施行ス
第二十二條左ノ法律ハ之ヲ廢止ス
一明治三十八年法律第十九號
一明治四十二年法律第七號
第二十三條所得稅中第一種ノ所得稅ニ
付テハ普通所得ニ對スル所得稅ハ本法
施行後ニ終了スル事業年度分、〓算所
得ニ對スル所得稅ハ本法施行後ニ於ケ
ル解散又ハ合併ニ因ル分ヨリ、第三種
ノ所得稅ニ付テハ昭和十一一年分ヨリ本
法ヲ適用ス
第七條ノ規定ニ依リ第三種ノ所得ニ付
新ニ納稅義務ヲ有スルニ至リタル者ハ
昭和十二年四月十五日迄ニ其ノ所得金
額ヲ申〓スベシ
前項ノ場合ニ於テハ所得金額ノ申〓ト同
時ニ所得稅法第十六條又ハ第十六條ノ
三ノ規定ニ依ル控除ヲ申請スルコトヲ得
第二十四條法人ノ營業收益稅ニ付テハ
本法施行後ニ終了スル事業年度分ヨリ
本法ヲ適用ス
第二十五條資本利子稅中乙種ノ資本利
子稅ニ付テハ昭和十二年分ヨリ本法ヲ
適用ス
第二十三條第二項ノ規定ハ乙種ノ資本
利子稅ニ付之ヲ準用ス
第二十六條本法施行前ニ開始シタル相
續ニ付テハ本法ヲ適用セズ
第二十七條鑛產稅ニ付テハ昭和十二年
分ヨリ本法ヲ適用ス
第二十八條本法施行前ニ產出シタル金
鑛及銀鑛ニハ本法ヲ適用セズ
第二十九條沖繩縣ニ於テ製造シタル濁
酒以外ノ酒類ヲ帝國內ノ他ノ地方へ移
出スルトキハ大正十五年法律第十四號
附則第三項ノ規定ニ拘ラズ其ノ造石稅
ト第十四條ニ規定スル造石稅トノ差額
ノ稅率ニ依リ出港稅ヲ課ス
第三十條臨時利得稅ニ付テハ法人ノ臨
時利得稅ハ本法施行後ニ終了スル事業
年度分ヨリ、個人ノ臨時利得稅ハ昭和
十二年分ヨリ本法ヲ適用ス
第三十一條臨時利得稅法附則第二項中
「昭和十二年十二月三十一日」ヲ「昭和
十三年十二月三十一日」ニ、「昭和十二
年分」ヲ「昭和十三年分」ニ改ム
第三十二條大正九年法律第十二號第三
條ノ二乃至第六條中「臺灣」ノ下ニ
「、關東州」ヲ、第八條乃至第十條中「朝
鮮」ノ下ニ「、臺灣又ハ樺太」ヲ加フ
法人資本稅法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十二年三月十八日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
-ハ衆議院ノ修正ナリ)
法人資本稅法案
法人資本稅法
第一條本法施行地ニ本店又ハ主タル事
務所ヲ有スル法人ハ本法ニ依リ法人資
本稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條前條ノ規定ニ該當セザル法人本
法施行地ニ資本ヲ有スルトキハ其ノ資
本ニ付テノミ法人資本稅ヲ納ムル義務
アルモノトス
第三條法人資本稅ハ法人ノ資本ニ付之
ヲ賦課ス
第四條第一條ノ規定ニ該當スル法人ノ
資本ハ各事業年度ノ各月末ニ於ケル拂
込株式金額、出資金額又ハ基金及積立
金額ヨリ各月末ニ於ケル繰越〓損金額
ヲ控除シタル金額ノ月割平均額ニ當該
事業年度ノ月數ヲ乘ジタルモノヲ十二
分シテ計算シタル金額ニ依ル
第二條ノ規定ニ該當スル法人ノ本法施行
地ニ於ケル資本ハ前項ノ規定ニ準ジ命令
ノ定ムル所ニ依リ計算シタル金額ニ依ル
法人ガ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ
因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事
業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄
ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第五條本法ニ於テ積立金額トハ積立金
其ノ他名義ノ何タルヲ問ハズ所得稅法
第四條第一項ノ規定ニ依ル法人ノ普通
所得中其ノ留保シタル金額ヲ謂フ
第六條合併後存續スル法人又ハ合併ニ
因リテ設立シタル法人ハ合併ニ因リテ
消滅シタル法人ノ資本ニ付法人資本稅
ヲ納ムル義務アルモノトス
第七條營利ヲ目的トセザル法人ニシテ
所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課
セラレザル者ニハ法人資本稅ヲ課セズ
第八條法人資本稅ノ稅率ハ千分ノ一ト
ス
前項ノ規定ニ依リ算出シタル稅額ガ年
十圓ニ滿タザルトキハ年十圓トス
所得及漬立金額ナキ法人ノ法人資本稅
ハ之ヲ免除ス前二項ノ規定ニ依リ算出
シタル稅額ガ其ノ事業年度ノ所得金額
及其ノ事業年度末ニ於ケル漬立金額ヲ
超過スルトキハ其ノ超過額ニ相當スル
法人資本稅ニ付亦同ジ
所得稅法第四條ノ規定ハ前項ノ所得金
額ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第九條納稅義務者ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ資本額ヲ政府ニ申告スベシ
第十條資本額ハ前條ノ申〓ニ依リ、申
告ナキトキ又ハ申〓ヲ不相當ト認ムル
トキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之
ヲ決定ス
第十一條稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調
査上必要アルトキハ納稅義務者又ハ納
稅義務アリト認ムル者ニ質問ヲ爲シ又
ハ其ノ帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
第十二條第十條ノ規定ニ依リ資本額ヲ
決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務
者ニ通知スベシ
第十三條納稅義務者前條ノ規定ニ依リ
政府ノ通知シタル資本額ニ對シ異議ア
ルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日
內ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請
求ヲ爲スコトヲ得
前項ノ請求アリクル場合ト雖モ政府ハ
稅金ノ徵收ヲ猶豫セズ
第十四條前條第一項ノ請求アリタルト
キハ所得稅法ノ所得審査委員會ノ決議
ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得稅法第五十二條及第六十一條第二
項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十五條前條第一項ノ決定ニ對シ不服
アル者ハ訴願ヲ爲シ又ハ行政裁判法ニ
依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十六條法人資本稅ハ事業年度每ニ之
ヲ徵收ス
第十七條同族會社ノ行爲又ハ計算ニシ
テ法人資本稅逋脫ノ目的アリト認メラ
ルルモノアル場合ニ於テハ其ノ行爲又
ハ計算ニ拘ラズ政府ハ其ノ認ムル所ニ
依リ資本額ヲ計算スルコトヲ得
前項ニ於テ同族會社トハ所得稅法ニ規
定スル同族會社ヲ謂フ
第十八條詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ
法人資本稅ヲ連脫シタル者ハ其ノ通脫
シタル稅金ノ三倍ニ相當スル罰金又ハ
科料ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ
自首シタル者又ハ稅務署長ニ申出デタ
ル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
第十九條第十一條ノ規定ニ依ル帳簿物
件ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ
虛僞ノ記載ヲ爲シタル帳簿書類ヲ呈示
シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十條資本ノ調査又ハ審査ノ事務ニ
從事シ又ハ從事シタル者其ノ調査又ハ
審査ニ關シ知得タル祕密ヲ正當ノ事由
ナクシテ漏洩シタルトキハ五百圓以下
ノ罰金ニ處ス
第二十一條第十八條ノ罪ヲ犯シタル者
ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三
十九條第二項、第四十條、第四十一條、
第四十八條第二項、第六十三條及第六
十六條ノ規定ヲ適用セズ
第二十二條朝鮮、臺灣、關東州又ハ樺
太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法
人ノ本法施行地ニ於ケル資本ニ付テハ
法人資本稅ヲ課セズ
第二十三條第六條ノ規定ハ朝鮮、臺灣、
關東州又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務
所ヲ有スル法人ガ朝鮮、臺灣、關東州、
樺太又ハ本法施行地ニ本店又ハ主タル
事務所ヲ有スル法人ト合併ヲ爲シタル
場合ニ於テ合併後存續スル法人又ハ合
併ニ因リテ設立シタル法人ガ本法施行
地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル場
合ニ付之ヲ準用ス
第二十四條北海道、府縣、市町村其ノ
他ノ公共團體ハ法人資本稅ノ附加稅ヲ
課スルコトヲ得ズ
附則
本法ハ昭和十二年四月一日以後終了スル
事業年度分ヨリ之ヲ適用ス
外貨債特別稅法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十二年三月十八日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
外貨債特別稅法案
外貨債特別稅法
第一條本法施行地ニ住所ヲ有シ又ハ一年
以上居所ヲ有スル者ニシテ外貨債ヲ所有ス
ル者ニハ本法ニ依リ外貨債特別稅ヲ課ス
本法ニ於テ外貨債ト稱スルハ外國通貨
ヲ以テ表示スル國債及地方債竝ニ日本
法人ノ發行シタル社債ヲ謂フ
第二條外貨債特別稅ハ外貨債利子ニ付
之ヲ賦課ス
所得稅法第三條ノ二第一項(但書ヲ除
ク)及第二項ノ規定ハ信託財產タル外
貨債ノ利子ニ付之ヲ準用ス
第三條外貨債利子ハ一月一日コリ六月
三十日迄及七月一日ヨリ十二月三十一
日迄ノ各期間中ニ於テ收入シタル外貨
債ノ利子金額ニ依ル被相續人ノ收入シ
タル外貨債ノ利子金額ハ之ヲ相續人ノ
收入シタル外貨債ノ利子金額ト看做ス
外貨債ニ付元本ノ所有者ニ非ザル者ガ
利子ノ支拂ヲ受クルトキハ元本ノ所有
者ガ支拂ヲ受クルモノト看做ス但シ利
子ノ生ズル期間中ニ元本ノ所有者ニ異
動アリタルトキハ最後ノ所有者ヲ以テ
利子ノ支拂ヲ受クル者ト看做ス
第四條左ニ揭グル利子ニハ外貨債特別
稅ヲ課セズ
一所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ第二
種所得稅ヲ課セラレザル者ノ所有ニ
屬スル外貨債ノ利子
二證劵ガ本邦(關東州及南洋群島ヲ
含ム)內ニ在ラザル外貨債ノ利子
三利率年五分以下ノ外貨國債ノ利子
四利率年五分五厘以下ノ外貨國債以
外ノ外貨債ノ利子
五起債者ガ外貨債利子ニ對スル租稅
ヲ負擔スベキ旨ノ約款アル外貨債
ノ利子但シ其ノ約款ガ昭和十二年
一月一日前定メラレタルモノニ限
ル
第五條外貨債特別稅ハ外貨債利子金額
中外貨國債ニ在リテハ利率年五分、外
貨國債以外ノ外貨債ニ在リテハ利率年
五分五厘ニ相當スル金額ヲ超ユル金額
ニ十分ノ七ヲ乘ジタル金額ヲ以テ其ノ
稅額トス
第六條外貨債特別稅ニ付納稅義務アル
者ハ外貨債利子金額ヲ政府ニ申告スベシ
第七條外貨債利子金額ハ前條ノ申〓ニ
依リ、申告ナキトキ又ハ申〓ヲ不相當
ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府
ニ於テ之ヲ決定ス
第八條前條ノ規定ニ依リ外貨債利子金
額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅
義務者ニ通知スベシ
第九條外貨債特別稅ハ左ノ納期ニ於テ
之ヲ徵收ス
一月一日ヨリ六月
三十日迄ニ收入シ
タル利子ニ對スル
分其ノ年七月三十
一日限
七月一日ヨリ十二
月三十一日迄ニ收
入シタル利子ニ對
スル分翌年一月三十一
日限
納稅義務者納稅管理人ノ申〓ヲ爲サズ
シテ本法施行地外ニ住所若ハ居所ヲ移
ストキ又ハ法人解散シ〓算結了セント
スルトキハ前項ノ納期ニ拘ラズ直ニ其
ノ外貨債特別稅ヲ徵收スルコトヲ得
第十條收稅官吏ハ調査上必要アルトキ
ハ外貨債ノ利子ノ支拂ヲ受ケ若ハ支拂
ヲ爲スト認ムル者又ハ外貨債ノ利札ノ
賣却若ハ買入ヲ爲スト認ムル者ニ質問
ヲ爲シ又ハ其ノ帳簿物件ヲ檢査スルコ
トヲ得
第十一條前條ノ規定ニ依ル帳簿物件ノ
檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ虚僞
ノ記載ヲ爲シタル帳簿書類ヲ呈示シタ
ル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ
外貨債特別稅ヲ通脫シタル者ハ其ノ通
脫シタル稅金ノ三倍ニ相當スル罰金又
ハ科料ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徴收ス但
シ自首シタル者又ハ稅務署長ニ申出デ
タル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
第十三條外貨債特別稅ノ調査ノ事務ニ
從事シ又ハ從事シタル者其ノ調査ニ關
シ知得タル祕密ヲ正當ノ事由ナクシテ漏
洩シタルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條第十二條ノ罪ヲ犯シタル者ニ
ハ刑法第三十八條第三項但書、第三十
九條第二項、第四十條、第四十一條、
第四十八條第二項、第六十三條及第六
十六條ノ規定ヲ適用セズ
第十五條所得稅法第十二條、第七十二
條第一項及第七十三條ノ規定ハ外貨債
特別稅ニ付之ヲ準用ス
第十六條大正九年法律第十二號第三條
ノ規定ハ外貨債特別稅ニ付之ヲ準用ス
朝鮮、臺灣、關東州又ハ樺太ニ住所ヲ有
シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ニハ命令
ノ定ムル所ニ依リ外貨債特別稅ヲ課セズ
第十七條北海道、府縣、市町村其ノ他
ノ公共團體ハ外貨債特別稅ノ附加稅ヲ
課スルコトヲ得ズ
第十八條外貨債特別稅ヲ課セラルル外
貨債ノ利子ニ付所得稅(第一種所得稅ヲ
除ク)又ハ資本利子稅ヲ課スル場合ニ於
テハ其ノ利子金額ヨリ外貨債特別稅相
當額ヲ控除シタル殘額ヲ以テ其ノ利子
金額ト看做ス
附則
本法ハ支拂期ガ昭和十二年一月一日以後
ニ在ル外貨債ノ利子ニ付之ヲ適用ス
揮發油稅法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十二年三月十八日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
揮發油稅法案
揮發油稅法
第一條揮發油ニハ本法ニ依リ揮發油稅
ヲ課ス但シ石炭、亞炭、油母頁岩又ハ
天然瓦斯ヲ原料トシテ製造シタル揮發
油ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
維 証本法ニ於テ揮發油トハ攝氏十五
度ニ於ケル比重〇·八〇一七ヲ超エザ
ル礦油ヲ謂フ
第三條揮發油稅ノ稅率ハ一キロリット
ルニ付十三圓二十錢トス
第四條揮發油ヲ製造セントスル者ハ製
造場一個所每ニ政府ニ申告スベシ其ノ
製造ヲ廢止セントスルトキ亦同ジ
第五條揮發油ノ販賣業ヲ營マントスル
者ハ販賣場一個所每ニ政府ニ申〓スベシ
其ノ販賣業ヲ廢止セントスルトキ亦同ジ
第六條揮發油稅ハ製造場又ハ保稅地域
ヨリ揮發油ヲ引取ルトキ引取人ヨリ之
ヲ徵收ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ揮發
油稅額ニ相當スル擔保ヲ提供シタルトキ
ハ二月內其ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得
前項但書ノ規定ニ依リ擔保ヲ提供シタ
ル者期限內ニ稅金ヲ納付セザルトキハ
擔保ヲ以テ之ニ充ツ但シ金錢以外ノ擔
保ハ之ヲ公賣ニ付シ稅金及公賣ノ費用
ニ充テ不足金アルトキハ之ヲ追徵シ殘
金アルトキハ之ヲ還付ス
第七條政府ノ承認ヲ受ケ他ノ製造場又
ハ藏置場ニ移入スル目的ヲ以テ製造場
又ハ保稅地域ヨリ引取ル揮發油ニ付テ
ハ前條ノ規定ヲ適用セズ
前項ノ場合ニ於テハ引取先ヲ以テ製造場
ト看做シ引取人ヲ以テ製造者ト看做ス
第一項ノ揮發油ニシテ政府ノ指定シタ
ル期間內ニ引取先ニ移入セラレザルモ
ノニ付テハ引取人ヨリ直ニ其ノ揮發油稅
ヲ徴收ス但シ災害其ノ他已ムコトヲ得ザ
ル事由ニ因リ亡失シタルモノニ付政府ノ
承認ヲ受ケタルトキハ揮發油稅ヲ免除ス
第八條政府ノ承認ヲ受ケ輸出ノ目的ヲ
以テ製造場ヨリ引取ル揮發油ニ付テハ命
令ノ定ムル所ニ依リ揮發油稅ヲ免除ス
前項ノ揮發油ニシテ引取後六月內ニ輸
出セラレタルコトノ證明ナキモノニ付
テハ引取人ヨリ直ニ其ノ揮發油稅ヲ徵
收ス但シ災害其ノ他已ムコトヲ得ザル
事由ニ因リ亡失シタルモノニ付政府ノ
承認ヲ受ケタルトキハ揮發油稅ヲ免除ス
第九條前條第一項ノ揮發油ハ之ヲ本法
施行地ニ於テ消費シ又ハ本法施行地ニ
於テ消費スル目的ヲ以テ讓渡スコトヲ
得ズ但シ政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ
此ノ限ニ在ラズ
前項ノ承認ヲ受ケタル揮發油ニ付テハ
直ニ其ノ揮發油稅ヲ徵收ス
第十條政府ハ第七條第一項又ハ第八條
第一項ノ揮發油ニ付必要アリト認ムル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ引取人ヲ
シテ其ノ揮發油稅額ニ相當スル擔保ヲ
提供セシムルコトヲ得
第六條第二項ノ規定ハ前項ノ擔保ニ付
之ヲ準用ス
第十一條揮發油稅ヲ納付シ又ハ其ノ徵
收ノ猶豫ヲ受ケ製造場ヨリ引取リタル
揮發油ヲ同一製造場ニ戾入シタル場合
ニ於テ豫メ政府ノ承認ヲ受ケタルトキ
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ揮發油ヲ
製造場ヨリ引取ルモ更ニ揮發油稅ノ徵
收ヲ爲サズ
第十二條揮發油ハ第六條第一項但書、
第七條第一項、第八條第一項又ハ前條
ノ場合ヲ除クノ外揮發油稅納付前之ヲ製
造場又ハ保稅地域ヨリ引取ルコトヲ得ズ
第十三條揮發油ハ第六條第一項但書ノ
場合ヲ除クノ外揮發油稅納付前之ヲ消
費スルコトヲ得ズ
第十四條第六條第一項但書ノ場合ヲ除
クノ外揮發油稅納付前ニ於テ揮發油ニ
礦油以外ノ物ヲ混和シタルトキハ第二
條ノ規定ニ拘ラズ其ノ混和ニ因リ製成
シタル物ヲ以テ揮發油ト看做ス
前項ノ場合ニ於テ政府ノ指定スル物ヲ
混和シタルトキハ其ノ混和ニ因リ增量
シタル分ニ對スル揮發油稅ヲ免除ス
第十五條揮發油稅ヲ納付シ又ハ其ノ徵
收ノ猶豫ヲ受ケタル揮發油ニハ揮發油以
外ノ礦油ヲ混和スルコトヲ得ズ但シ混和
ニ依リ攝氏十五度ニ於ケル比重〇·八
○一七ヲ超ユル礦油ヲ製成スルハ此ノ
限ニ在ラズ
第十六條揮發油ノ製造者又ハ販賣業者
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ揮發油ノ製造、
貯藏又ハ販賣ニ關スル事實ヲ帳簿ニ記
載スベシ
第十七條收稅官吏ハ揮發油ノ製造者
若ハ販賣業者ニ對シテ質問ヲ爲シ又ハ
左ニ揭グル物件ニ付檢査ヲ爲シ若ハ監
督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一製造者又ハ販賣業者ノ所持スル揮
發油
二揮發油ノ製造、貯藏又ハ販賣ニ關
スル一切ノ帳簿書類
三揮發油ノ製造、貯藏又ハ販賣上必
要ナル建設物、機械、器具、容器、
原料其ノ他ノ物件
第十八條前二條ノ規定ハ揮發油以外ノ
礦油ノ製造者又ハ販賣業者ニ付之ヲ準
用ス
第十九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
揮發油稅五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直
ニ其ノ揮發油稅ヲ徵收ス但シ罰金額
ガ二十圓ニ滿タザルトキハ之ヲ二十圓
トス
政府ニ申告セズシテ第一條但書以
外ノ揮發油ヲ製造シタル者
二第九條第一項ノ規定ニ違反シ揮發
油ヲ消費シ又ハ消費ノ目的ヲ以テ讓
渡シタル者
三第十二條ノ規定ニ違反シ揮發油ヲ
引取リタル者
四第十三條ノ規定ニ違反シ揮發油ヲ
消費シタル者
五第十五條ノ規定ニ違反シ揮發油ニ
揮發油以外ノ礦油ヲ混和シタル者
六前各號ノ外詐僞其ノ他不正ノ行爲
ヲ以テ揮發油稅ヲ逋脫シ又ハ通脫セ
ントシタル者
前項第五號ニ該當スル者ニ付テハ其ノ
揮發油稅額ハ混和ニ因リ製成セラレタ
ル物ノ數量ニ依リ之ヲ計算ス
第二十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十六條ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ
怠リ若ハ詐リ又ハ帳簿ヲ隱匿シタル者
二政府ニ申〓セズシテ第一條但書ノ
揮發油ヲ製造シタル者
三第十七條ノ規定ニ依ル收稅官吏ノ
質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虚僞ノ
陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒
ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第二十一條第十九條ノ罪ヲ犯シタル
者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第
三十九條第二項、第四十條、第四十一
條、第四十八條第二項、第六十三條及
第六十六條ノ規定ヲ適用セズ
第二十二條揮發油ノ製造者又ハ販賣業
者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其
ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ヲ犯
シタルトキハ其ノ製造者又ハ販賣業者ヲ處
罰ス
第二十三條本法ニ於テ保稅地域ト稱スル
ハ關稅法ノ定ムル所ニ依ル
附則
本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
本法施行前ヨリ引續キ揮發油ヲ製造シ
又ハ其ノ販賣業ヲ營ム者本法施行後一月
內ニ其ノ旨ヲ政府ニ申告スルトキハ本法
施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申〓シタルモ
ノト看做ス
前項ノ揮發油製造者又ハ販賣業者ガ本法
施行ノ際製造場又ハ保稅地域以外ノ場所ニ
於テ十キロリットル以上ノ揮發油ヲ所持ス
ル場合ニ於テハ其ノ者ニ於テ本法施行ノ
日ニ之ヲ製造場ヨリ引取リタルモノト看
做シ昭和十二年五月三十一日限其ノ揮發
油稅ヲ徵收ス
前項ノ揮發油ニ付テハ其ノ數量及貯藏ノ
場所ヲ第二項ノ申告ト同時ニ政府ニ申〓
スパン
明治四十四年法律第四十五號第一條中
「砂糖消費稅法、」及「、石油消費稅法」ヲ削
リ同法第二條中「石油消費稅法」ラ「揮發油
稅法」ニ、同法第三條中「石油消費稅法」ヲ
「揮發油稅法」ニ、「石油」ヲ「揮發油」ニ改
ム
大正九年法律第五十一號中「織物製品、」
ノ下ニ「揮發油、」ヲ加フ
有價證劵移轉稅法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十二年三月十八日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正ナリ)
有價證劵移轉稅法案
有價證劵移轉稅法
第一條有價證劵ノ賣買、交換、贈與、
遺贈其ノ他ノ原因ニ因ル移轉アリタル
トキハ本法ニ依リ有價證劵移轉稅ヲ課ス
第二條本法ニ於テ有價證劵トハ國債證
劵、地方債證劵、社債劵、產業債劵、商工
債劵及株劵竝ニ外國又ハ外國法人ノ發
行スル此等ノ性質ヲ有スル證劵ヲ謂フ
第三條甲種國債登録簿ニ登錄シタル國
債ニ付テノ名儀變更及會社ノ社員ノ持分
ノ移轉ハ之ヲ有價證劵ノ移轉ト看做ス
第四條有價證劵移轉稅ハ有價證劵ノ取
得者之ヲ納ムベシ
第五條有價證劵移轉稅ハ左ノ區別ニ從
ヒ之ヲ納ムベシ
第一種有價證劵仲買人ヲ買受人トス
ル賣買取引ニ因ル移轉
國債證劵取得價
額萬分ノ
一
其ノ他ノ
有價證劵取得價
額萬分ノ
二
第二種第一種以外ノ移轉
甲取引所ノ實物市場ニ於ケル賣
買取引ニ因ル移轉
國債證劵取得價
額萬分ノ
二
其ノ他ノ
有價證劵取得價
額萬分ノ
四
乙其ノ他
國債證劵取得價
額萬分ノ
四
其ノ他ノ
有價證劵取得價
額萬分ノ
八
第六條前條ノ取得價額ハ賣買ニ因ル移
轉ニ付テハ賣買價額ニ依リ其ノ他ノ原
因ニ因ルモノニ付テハ移轉ノ時ノ價格
一氏氏
第七條有價證劵移轉稅ハ總テ一錢以上
トス一錢未滿ノ端數ハ一錢トシテ之ヲ
計算ス
營利ヲ目的トセザル法人ニシテ所得
第八條週、北海道、有縣市町村其ノ
稅法其ノ他ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課セラレ
他命令ヲ以テ指定スル公共團體ハ有
ザル者ハ有價證券移轉稅ヲ納ムルコトヲ要
買登劵多傳稅ヲ納ムルコトヲ要セ
セズ
ズ
第九條左ニ揭グル有價證劵ニ付テハ有
價證劵移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ
一一年內ノ期限ヲ以テ發行スル國債
證劵
二地方債證劵、勸業債劵及命令ヲ以
テ指定スル社債劵ニシテ額面金額二
十圓以下ノモノ
第十條左ノ各號ノ一ニ該當スル有價證
劵ノ移轉ニ付テハ有價證劵移轉稅ヲ納
ムルコトヲ要セズ
一相續、法人ノ合併又ハ保險業法第
十三條ノ五ノ規定ニ依ル保險契約ノ
全部ノ移轉ニ因ル有價證劵ノ移轉
二日本銀行ヲ賣買ノ當事者トスル國
債證劵ノ移轉
三信託ノ場合ニ於ケル委託者ヨリ受
託者ヘノ有價證劵ノ移轉
四信託終了ノ場合ニ於ケル受託者ヨ
リ委託者又ハ其ノ相續人ヘノ有價證
劵ノ移轉
五消費貸借及其ノ終了ノ場合ニ於ケ
ル無記名有價證劵ノ移轉
六短期〓算取引ニ於ケル受渡調節ノ
爲ノ賣買取引ヲ業トスル會員又ハ取
引員ノ代引ニ因ル有價證劵ノ移轉
七第一號及第三號ノ場合ノ外會社ガ
自己ノ株式ヲ取得スル場合ニ於ケル
有價證劵ノ移轉
八賣出ノ方法ニ依リ發行スル場合ノ
有價證劵ノ移轉
第十一條國債、地方債又ハ社債ノ總額
ヲ契約ニ依リ引受ケタル者又ハ募集ノ
委託ヲ受ケ自ラ其ノ一部ヲ引受ケタル
者ヨリノ引受ケタル有價證劵ノ移轉ニ
付テハ發行ノ日ヨリ一年內ニ限リ有價
證劵移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ下引
受ヲ爲シタル者ヨリノ下引受ヲ爲シタ
ル有價證劵ノ移轉ニ付亦同ジ
第十二條有價證劵移轉稅ハ有價證劵ノ
移轉每ニ移轉當事者ガ命令ノ定ムル所
ニ依リ作成スル有價證劵移轉書ニ印紙
ヲ貼用シテ之ヲ納ムベシ
有價證劵仲買人ノ取扱ニ依ル有價證劵
ノ移轉ニ付テハ前項ノ規定ニ依ラズ移
轉ノ際有價證劵仲買人其ノ稅金ヲ徵收
シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ有
價證劵仲買人ヲ移轉當事者トスル有價
證劵ノ移轉ニ付亦同ジ
第十三條前條第二項ノ規定ニ依リ徵收
スベキ有價證劵移轉稅ヲ徵收セザルト
キ又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セザ
ルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ有價
證劵仲買人ヨリ徵收ス
第十四條本法ニ於テ有價證劵仲買人ト
ハ有價證劵ノ賣買又ハ其ノ媒介ヲ爲ス
ヲ業トスル者ヲ謂フ
第十五條有價證劵仲買人ノ業ヲ營マン
トスル者ハ每營業所ニ付豫メ政府ニ申
告スベシ其ノ營業ヲ廢止セントスルト
キ亦同ジ
第十六條有價證劵仲買人ハ營業ニ關ス
ル帳簿ヲ備ヘ命令ノ定ムル事項ヲ之ニ
記載スベシ
第十七條納稅義務者ハ有價證劵移轉書
ニ印紙ヲ貼用スルトキハ移轉書ノ紙面
ト印紙ノ彩紋トニカケテ自己ノ印章又
ハ署名ヲ以テ判明ニ之ヲ消スベシ
第十八條第十二條第一項ニ規定スル有
價證劵移轉書ニ付テハ印紙稅法ニ依ル
印紙稅ヲ納ムルコトヲ要セズ
第十九條收稅官吏ハ有價證劵仲買人ニ
對シ有價證劵ノ移轉ニ關スル事項ニ付
質問シ又ハ其ノ帳簿書類ヲ檢査スルコ
トヲ得
第二十條有價證劵移轉書ニ有價證劵ノ
取得價額ニ應ズル相當印紙ヲ貼用セザ
ル者ハ其ノ脫稅高五倍ノ罰金又ハ科料
ニ處ス但シ科料額ガ三圓ニ滿タザルト
キハ之ヲ三圓トス
有價證劵移轉書ヲ作成セズ因テ有價證
劵移轉稅ヲ逋脫シタル者亦前項ニ同ジ
第二十一條詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ因
リ有價證券移轉稅ヲ逋脫シタル有價證
劵仲買人ハ其ノ脫稅高五倍ノ罰金ニ處
シ直ニ其ノ有價證劵移轉稅ヲ徴收ス但
シ罰金額ガ二十圓ニ滿タザルトキハ之
ヲ二十圓トス
第二十二條第十五條ノ規定ニ違反シ政
府ニ申告セズシテ有價證劵仲買人ノ業
ヲ營ミタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十三條第十七條ノ規定ニ違反シ有
價證劵移轉書ニ貼用シタル印紙ヲ消サ
ザル者ハ有價證劵移轉書每ニ消サザル
貼用印紙額ノ二倍ニ相當スル罰金又ハ
科料ニ處ス但シ科料額ガ一圓ニ滿タザ
ルトキハ之ヲ一圓トス
第二十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一第十六條ノ規定ニ違反シ帳簿ヲ備
ヘズ又ハ之ニ虚僞ノ記載ヲ爲シタル者
二第十九條ノ規定ニ依ル收稅官吏ノ
質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ
陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒
ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第二十五條第二十條又ハ第二十三條ノ
罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第
一項ノ規定ヲ適用セズ
第二十條、第二十一條又ハ第二十三條
ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第
三項但書、第三十九條第二項、第四十
條、第四十一條、第四十八條第二項、第
六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セ
ズ
第二十六條有價證劵ノ移轉當事者又ハ
有價證劵仲買人ノ代理人、戶主、家族、
同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ有價證
劵ノ移轉ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ
其ノ有價證劵ノ移轉當事者又ハ有價證
劵仲買人ヲ處罰ス
附則
本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
本法施行前ヨリ引續キ有價證劵ノ賣買又
ハ其ノ媒介ヲ爲スヲ業トスル者本法施行
後一月內ニ其ノ旨ヲ政府ニ申告スルトキ
ハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申〓シ
タルモノト看做ス
明治四十年法律第二十一號中改正法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十二年三月十八日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
明治四十年法律第二十一號中改正法律
案
明治四十年法律第二十一號中左ノ通改正
ス
第一條第一項ニ左ノ四號ヲ加フ
七相續稅
八資本利子稅
九外貨債特別稅
十法人資本稅
附則
本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
參照
明治四十年法律第二十一號ハ樺太ニ於
ケル租稅ニ關スル法律ナリ
〔國務大臣結城豊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=4
-
005・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 只今議題トナ
リマシタ臨時租稅增徵法案竝ニ法人資本稅
法案外三件ノ政府提出ノ法律案ニ付テ御說
明ヲ申上ゲマス、御承知ノ如ク前內閣ハ我
ガ國ノ財政ノ情況ニ照ラシマシテ增稅ノ必
要已ムベカラザルヲ信ジマツテ、增稅計畫
ヲ立テ、關係法律案ヲ本議會ニ提案致シタ
ノデアリマス、幾多重要ナル國策ヲ遂行ス
ルノ必要アル現下内外ノ情勢ヨリ致シマシ
テ、俄カニ歲出ノ減少ヲ期シ難キコトハ明
カデアリマスルカラ、增稅ニ依リ相當多額
ノ歲入ノ增加ヲ圖ルコトノ緊要デアルコト
ハ改メテ申述ブルノ要ハナイノデアリマス、
前內閣ニ於テ立案セラレマシタ增稅案ハ、
範圍極メテ廣汎ニ亙ッテ居リマシテ、現內閣
成立〓々ノ際、十分之ガ審議ヲ遂ゲルノ遑
ナク、從ッテ右增稅案ヲ其ノ儘本議會ニ提案
スルノ得難キ事情ニアルノデアリマス、併
シナガラ我ガ國財政ノ現況ニ照ラシマシテ、
增稅ノ必要已ムベカラザルコトハ申ス迄モ
ナイノコトデアリマスノデ、政府ハ差當リ
臨時應急ノ措置ト致シマシテ、大體ニ於テ
現行法ヲ基礎トスル臨時租稅增徵法案ヲ立
案スルト共ニ、前內閣ノ計畫致シマシタ新
稅中、此ノ際實施スルヲ適當ト認メマシタ
モノヲ取入レ、玆ニ增稅案ヲ作成致シタノ
デアリマス、玆ニ提案致シマシタ臨時租稅
增徵法案ハ、臨時應急ノ措置トシテ立案致
シクノデアリマスルカラ、增稅ヲ行フニ當
リマシテハ相當多額ノ收入ヲ得ルト共ニ、
又國民負擔ノ現狀ニ顧ミ、其ノ擔稅力ニ適
應ズルニ努メ、直接稅殊ニ所得稅ノ增徵ニ
重キヲ置キ、間接稅ノ增徵ハ成ルベク之ヲ
少カラシムルヤウ意ヲ用ヒタノデアリマス、
租稅ノ臨時增徵ニ當リマシテハ、所得稅ニ
付テハ比較的負擔力アリト認メマスル第一
種所得、卽チ法人ノ所得ニ對シ、其ノ普通
所得ノ稅率ヲ十割引上グルコトト致シマシ
テ、第三種所得、卽チ個人ノ所得ニ對シテ
ハ、所得金額ノ多少ニ應ジ增徴割合ヲ異ナ
ラシメ、二割乃至七割、平均五割程度ノ增
徵ヲ行フコトト致シマシタ、第二種所得ニ
付テハ右トノ權衡上、是亦五割ノ增徵ヲ爲
スコトト致シマシタ、尙國債利子ノミヲ課
稅外ニ置クコトハ適當デナイト認メマシテ、
百分ノ二ノ稅率ニ依リ新タニ課稅スルコト
ト致シマシタ、又配當所得ニ付キマシテハ、
個人所得ノ綜合ニ當ッテ四割控除ヲ二割控
除ニ改ムルコトト致シタノデアリマス、營
業收益稅ニ付テハ法人ニ對シテノミ若干其
ノ稅率ヲ引上グルコトト致シ、資本利子稅
ニ付テハ他ノ收益稅トノ權衡ヲ圖リ、十割
ノ增徵ヲ行フコトト致シタノデアリマス、
相續稅ニ付テモ、其ノ稅率ヲ相當引上グル
ノ餘地アルモノト認メマシテ、相續財產ノ
價格ニ應ジ、二割乃至十割程度ヲ增徵スル
コトト致シタノデアリマスガ、相續財產中
不動產ノ占ムル割合ノ多キモノニ對シマシ
テハ、年賦延納ノ期間ヲ延長致シマシテ、
納稅上ノ便宜ヲ圖ルコトニ致シテ居リマス
次第デアリマス、鑛業稅ニ付テハ、鑛產稅
ノ稅率ヲ二割引上ゲマスト共ニ、現下ノ經
濟情況ニ照ラシ、金鑛、銀鑛ニ對シテモ新
タニ右ト同樣ノ割合ヲ以テ特別鑛產稅ヲ課
スルコトト致シタノデアリマス、時局ノ影響
ヲ受クル產業ハ尙進展ノ傾向ニアルニ顧ミ
マシテ、臨時利得稅ヲ增徵スルコトト致シ、利
得金額ニ對シ、法人ノ稅率百分ノ十ヲ百分ノ
十五ニ、個人ノ稅率百分ノ八ヲ百分ノ十ニ
引上ゲ、尙同法ノ施行期間ヲ此ノ際一箇年
延長スルコトト致シタ次第デアリマス、次
ニ酒稅デアリマスルガ、酒造界ノ現狀竝ニ
酒類消費ノ趨勢ニ留意致シマシテ、酒造稅
ハ一割程度、麥酒稅ハ四割程度、酒精及酒
精含有飮料稅ハ二割程度、ソレ〓〓增徵ヲ
行フコトト致シタノデアリマス、砂糖消費
稅ニ付テハ各種砂糖ノ生產及消費ノ實狀ヲ
考慮致シマシテ、一割五分程度ノ增徵ヲ致
スコトト致シマシタ、取引所稅中取引所營
業稅ニ付キマシテハ一割ノ增徵ヲ行フコト
ト致シマシテ、取引稅ニ付テハ、物品ノ販
賣取引ニ對スル稅率ハ之ヲ据置キ、株式ノ
賣買取引ニ對スル稅率ハ之ヲ相當引上グル
ノ餘地アルモノト認メマシテ、八割ノ引上
ゲヲ行フコトト致シタノデアリマス、以上
ハ臨時租稅增徵法案ノ說明ノ〓要デアリマ
ス、次ニ法人資本稅法案外三件ニ付キ御說
明ヲ申上ゲマス、先ヅ法人資本稅ハ、法人
企業ノ發展ニ伴フ資本ノ集積ニ擔稅力アリ
ト認メマシテ、課稅スルコトト致シタ次第
デアリマシテ、法人ノ拂込資本金及積立金
ノ合計額ニ對シ、千分ノ一ノ比例稅ヲ課ス
ルノデアリマスルガ、所得及積立金ナキ法
人ニ對シテハ、本稅ヲ免除スルコトト致シ
テ居リマス、外貨債特別稅ヲ創設致シマシ
テ、內地ニ居住スル者ガ本邦內ニ於テ外貨
債ヲ所有スルトキニ、之ニ對シテ課稅スル
コトト致シマシタ、外貨債ノ所有者ニハ相
當ノ擔稅力アリト認メラレマスノデ、本稅
ヲ課スルコトヲ適當ト認メマシタ次第デア
リマス、而シテ本稅ノ稅率ハ外貨國債ニ付
テハ利率年五分ヲ超ユル金額ノ十分ノ七、
其ノ他ノ外貨債ニ付テハ年五分五厘ヲ超ユ
ル金額ノ十分ノ七ト定メテ居リマス、又燃
料政策ノ見地ヨリ致シマシテ、揮發油稅ヲ
創設致シマシタ、製造場又ハ保稅地域カラ
揮發油ヲ引取ル際、其ノ引取人ヨリ本稅ヲ
徵收スルコトト致シマシテ、其ノ稅率ハ一
「キロリットル」ニ付キ十三圓二十錢、卽チ
一「ガロン」ニ付キ五錢ト致シタノデアリマ
ス、而シテ石炭、油母頁岩等ヲ原料トシテ
製造セラルヽ所謂人造揮發油ニ付キマシテ
ハ、特ニ本稅ヲ賦課致シマセヌコトト致シ
マシテ、又揮發油ニ酒精等ヲ混用致シマシ
タ場合ニ於テ、其ノ增量分ニ付テモ本稅ヲ
免除スルコトト致シテ居ルノデアリマス、
有價證劵移轉稅ハ、國債證劵、地方債證劵、
社債劵、株劵等有價證劵ノ賣買、交換、贈
與等ニ依ル移轉ノ場合ニ課稅スルノデアリ
マシテ、有價證劵ノ取得者ヲ納稅義務者ト
致シマシテ、其ノ稅率ハ取得價額ノ萬分ノ
一乃至八ト定メテ居リマス、尙地方稅ニ付
テハ其ノ負擔過重ナルモノアル現狀ニ照ラ
シマシテ、此ノ際暫定措置トシテ、昭和十
二年度總豫算ニ於テ七千萬圓、同追加豫算
ニ於テ三千萬圓、合計一億圓ノ交付金ヲ支
出シ、地方稅中負擔特ニ過重ト認メラルヽ
地租附加稅、戶數割、雜種稅等ノ輕減ヲ圖
ルコトト致シタノデアリマス、以上ニ依リ
マシテ、所得稅ノ增加ハ一億六千三百十餘
萬圓、營業收益稅ノ增加ハ三百九十餘萬圓、
資本利子稅ノ增加ハ千三百七十餘萬圓、相
續稅ノ增加ハ百六十餘萬圓、鑛業稅ノ增加
ハ九十餘萬圓、臨時利得稅ノ增加ガ千五百
三十餘萬圓、酒稅ノ增加ガ千八百十餘萬圓、
砂糖消費稅ノ增加ハ七百四十萬餘圓、取引
所稅ノ增加ガ六百餘萬圓、法人資本稅ノ創
設ニ因ル增收ガ千五百四十餘萬圓、外貨債
特別稅ノ創設ニ因ル增收ガ二百七十餘萬
圓、揮發油稅ノ創設ニ因ル增收ハ千四百九
十餘萬圓、有價證劵移轉稅ノ創設ニ因ル增
收ガ六百餘萬圓ト相成リマスルノデ、結局
今囘提案致シマシタ增稅案ニ依リマスレ
バ、二億六千九百五十餘萬圓ノ增收トナ
ルノデアリマス、以上ハ今囘ノ增稅ニ關
スル政府提出ノ諸法案ノ〓略ノ說明デア
リマスルガ、衆議院ニ於キマシテハ之ニ
對シマシテ、次ニ述ブル諸點ニ付テ修正
ヲ加ヘタノデアリマス、衆議院ノ修正ノ
第一點ハ、臨時租稅增徵法案ニ關スル
モノデアリマシテ、第三種ノ所得ニ對スル
所得稅額ノ增徵ニ付キ「所得金額五十萬圓
以下ナル所得、所得金額ノ百分ノ五十五」
ナル一階級ヲ加ヘタノデアリマス、修正ノ
第二點ハ法人資本稅法案ニ關スルモノデア
リマシテ、所得及積立金額ナキ法人ニハ法
人資本稅ヲ免除スルコトニナッテ居リマシ
タノヲ、所得金額ナキ法人ニハ之ヲ免除ス
ルコトニ致シタノデアリマス、修正ノ第三
點ハ有價證劵移轉稅法案ニ關スルモノデア
リマシテ、「國、北海道、府縣、市町村其ノ
他命令ヲ以テ指定スル公共團體ハ有價證劵
移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ」トナッテ居リ
マシタノヲ「營利ヲ目的トセザル法人ニシテ
所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課セ
ラレザル者ハ有價證劵移轉稅ヲ納ムルコト
ヲ要セズ」ト致シタノデアリマス、以上諸
法案ニ付キ政府ノ原案竝ニ衆議院ニ於ケル
修正ニ關シマシテ、大體ノ御說明ヲ申上ゲ
マシタガ、尙詳細ノ點ニ付キマシテハ、適
當ノ機會ニ於テ御說明ヲ申上ゲタイト存ジ
マス、明治四十年法律第二十一號、樺太ニ
於ケル租稅ニ關スル法律中改正法律案ニ付
テ簡單ニ御說明ヲ申上ゲマス、今囘內地ニ
於ケル內國稅制ノ改正ニ伴ヒマシテ、樺太
ニ於テモ之ニ對應シテ必要ナル稅制ノ改正
整備ヲ行フ方針デアリマシテ、新タニ相續
稅資本利子稅、外貨債特別稅、法人資本
稅等ヲ設ケル豫定デアリマスルガ、稅率ヲ
內地ト異ニスル等ノ關係上、內地ノ稅法ヲ
其ノ儘樺太ニ施行シ難イ事情ガアリマスノ
デ、命令ヲ以テ樺太ニ對スル別段ノ規定ヲ
設ケマス爲メ是等諸稅ニ關スル規定ヲ明治
四十年法律第二十一號、樺太ニ於ケル租稅
ニ關スル法律中ニ追加セムトスル次第デア
リマス、尙去ル二月二十六日、本會議ニ於
テ可決セラレマシタ樺太市制案ニ關スル政
府ノ所見ト致シマシテハ、樺太ニ市制ヲ施
行スルコトニ依リマシテ、住民ノ負擔過重
ヲ來サザルヤウ十分ノ注意ヲ加ヘマスルト
共ニ、此ノ制度ヲ活用セシメ、益〓市民ノ福
利增進ニ資シ得ルヤウ指導致シタイト存ジ
マス次第デアリマシテ、本法施行ノ結果、
樺太ノ地方自治ハ更ニ向上シ、延イテハ同
島ノ開發ヲ一層促進シ得ルコトト確信致シ
マスノデ、今後トモ同島ガ北方發展ノ據點
タル實ヲ擧ゲ得ルヤウ、十分ノ努力ヲ拂ッテ
行ク考デアリマス、以上御說明申上ゲマシ
タル臨時租稅增徵法案、法人資本稅法案、
外貨債特別稅法案、揮發油稅法案、有價證
劵移轉稅法案等ニ付キマシテ、何卒御審議
ノ上御協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望シテ已
マザル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=5
-
006・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 質疑ノ通〓ガア
リマスカラ之ヲ許シマス、菅原通敬君
〔菅原通敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=6
-
007・菅原通敬
○菅原通敬君 諸君、有史以來未曾有ノ大
負擔ヲ國民ニ課セムトスル大增稅案ガ、會
期切迫ノ今日ニ於テ本院ニ上程セラルヽコ
トニナリマシタ其ノ事態ニ付テハ、本院ト
シテ甚ダ不都合ト感ズルノデゴザイマス、
ソレニ付キマシテモ本院ニ於キマシテハ會
期ノ如何ヲ問ハズ、盡シ得ラルヽダケノ審
議ヲ、十分之ヲ盡スト云フコトニナラナケ
レバナラヌト思フノデゴザイマス、私ハ是
ヨリ此ノ增稅案ヲ中心トシテ、政府ノ所見
ヲ質シタイト思フノデゴザイマス、結城藏
相ガ馬場財政ヲ修正セムトシテ第一著ニ目
指サレマシタノハ、厖大ナル豫算ヲ壓縮ス
ルコト、急激ナル增稅ヲ緩和スルコト赤
字公債ノ增發ヲ減少スルコト、其ノ三點デ
アッタト思ヒマス、此ノ著眼ハ確カニ時宜ニ
適スルモノデアリマシタカラ、財界ヨリハ
御承知ノ通リ大ナル好感ヲ以テ迎ヘラレタ
ノデアリマシタ、而シテ此ノ財政方針ハ藏
相ノ抱懷サレテ居ル所ノ物價政策ナリ、金
融政策ナリ、爲替政策ナリ、其ノ他ノ經濟
政策ト相俟ッテ、財界ニ向ッテ明朗性ヲ與ヘ
タノデアリマシタ、併シ此ノ明朗性ハ、馬
場財政ニ對スル反動的ノモノデアッタノデ
アリマスカラ、馬場財政ニ對スル修正ガ國
民ノ期待ニ副ハナイヤウナコトニナリマス
レバ、此ノ明朗性ハ段々霞ニ掩ハレ、世人
ハ却テ馬場財政ナルモノヲ振返ッテ見ルヤ
ウナコトニナルノデアリマス、ソレデ結城
藏相ハ如何ニ馬場財政ヲ修正サレタカト云
ヒマスト、藏相ガ非常ニ熱心ニ努力サレタ
ニ拘ラズ、歲出ニ於テハ一一億二千四百萬圓ヲ
減ジマシタケレドモ、地方交付金勘定ヲ差
引イテ見マスト云フト、僅カニ七千四千萬
圓ニ過ギナイ、又增稅ニ於テハ一億九千百
萬圓ニ減ジテ居リマスケレドモ、是モ地方
交付金勘定ヲ差引イテ見マスト云フト、四
千百萬圓ニ過ギナイデアリマス、之ニ若シ
關稅其ノ他ノ增稅、增收等ヲ加ヘテ考ヘマ
スト云フト、私ノ計算ニ依リマスルト、却
テ馬場財政當時ノ增稅計畫ヨリモ、國民負
擔ニ屬スルモノガ多クナルト思フノデアリ
ママ、而シテ公債ニ於キマシテハ僅カニ三
千百萬圓ヲ減ジタニ止リ、而シテ藏相ガ信
條トシテ居ラレマシタル所ノ物價騰貴ノ抑
制ト云フモノハ、大シタ效果ガ現レテ居ラ
又、而モ其ノ結果ハ、此處マデ持ッテ來ラレ
ル迄ノ經過ヲ見マスト云フト、豫算ノ形式
ノ上ニ於テ憲法違反デアルトカ、或ハ會計
法違反デアルトカ云フヤウナ、重大問題ヲ
惹キ起シテ居リマスルシ、又稅制改革ノ問
題ハ之ヲ他日ニ殘サレテ、姑息的ノ臨時租
稅增徵法案ナルモノヲ施行シテ、國民ノ負
擔ノ安定ヲ其ノ間攪亂セシムルヤウナコト
ニナルノデアリマス、斯ウ云フコトデアリ
マスト云フト、國民ノ期待ニ副フ所以デハ
ナイノデハナイカト云フヤウナ疑ヲ、世人
ガ起シテ來ルト云フコトモ無理モナイノデ
アリマシテ、結城財政ノ爲ニ甚ダ取ラザル
所デアリマス、思フニ馬場財政ノ特徵ハ稅
制改革ト云フモノデアッタ、其ノ稅制改革ナ
ルモノハ豫算案ノ根幹ヲ成シテ居ルノデア
リマス、豫算案ト稅制改革案トハ兩者不可
分ノ關係ニアッタノデアリマスカラ、若シ豫
算案ヲ踏襲スルナラバ稅制改革案ヲモ踏襲
スベク、若シ稅制改革案ガ踏襲ガ出來ヌト
云フナラバ、豫算案モ踏襲セヌノガ當然デ
アルノデアリ、又ソレガ常識デアルノデア
リマス、然ルニ單ニ豫算案ノミヲ踏襲シテ、
稅制改革案ヲ踏襲サレナカッタガ爲ニ、ソコ
ニ色々ナ矛盾ガ起リ、無理ガ出テ參ッタノデ
アラウト思フノデアリマス、無論其ノ豫算
案ニ付テモ、稅制改革案ニ付テモ、各〓相
當ノ修正ヲ要スルモノガアッタノデアリマ
セウ、トコロガ豫算案ニ付テハ何等ノ修正
ヲ加ヘズ、何等ノ變更ヲモ爲サレズ、其ノ
儘提出サレテ、後ニ至ッテ修正案ヲ出サレテ
居ル、又稅制改革案ハ全部之ヲ廢棄サレテ、
別案ヲ提出セラレテ居ルト云フヤウナコト
ニナリマシタガ故ニ、色々ト問題ヲ繁クス
ルコトニナッタノデアリマス、デ私ハ是ヨリ
項ヲ分ッテ質問致サウト思フノデアリマス
ガ、之ニ對スル御答辯ハ、此ノ前ノ如キ綜合
的トカ云フヤウナコトニ依ッテ「カモフラー
ジュㄴサレルヤウナ答辯法ニ依ラズ、各項
ニ付テ一々御答ヲ願ヒタイト思フノデアリ
マス、就テハ甚ダ御面倒デゴザイマセウガ、
私ノ御尋シタイ事項ハ十項ニナッテ居リマ
ス、「メモ」ニデモ其ノ項目ヲ豫メ書イテ置イ
テ戴イタ方ガ都合好イト思ヒマス、第一ハ
馬場財政改革案ノ廢棄ニ付テ、第二ハ臨時
租稅ノ增徴ニ付テ、第三ハ公債ト租稅トノ
權衡ニ付テ、第四ハ國防公債ニ付テ、第五
ハ國債ノ民衆化ニ付テ、第六ハ將來ノ財源
ニ付テ、第七ハ直接國稅ノ體系ニ付テ、第
八ハ所得稅ニ付テ、其ノ一ハ源泉課稅、其
ノ二ハ綜合課稅、ソレカラ第九ハ法人資本
税第十ハ輸出統制稅、是ダケノコトニ付
テ御尋ネ申上ゲタイト思フノデアリマス、
而シテ最後ニ結論ヲ申上ゲタイト思ヒマス、
第一馬場財政改革案ノ廢棄ニ付テ、デ私ハ
馬場財政ヲ辯護スルモノデハナイノデアリ
やく、寧ロ私ハ馬場財政ニ對シテハ反對ノ
意思ヲ表示シテ居ッタノデアリマスガ、併シ
其ノ稅制改革案ハ所謂革新的精神ヲ取入レ
テ居ル所ノ、進步シタル理想案デアルト云フ
コトハ見ラレルノデアリマシテ、私ハ其ノ
中ヨリ採用スベキモノガ甚ダ少クナイト思
フノデアリマス、デ現内閣ハ全部之ヲ廢棄
サレタト云フコトハ誠ニ惜シムベキコトデ
アリマス、馬場稅制改革案ノ世間ヨリ非難
サレマシタノハ、大體ニ於テ理想ニ走リ過
ギテ實際ニ疎イ、部分的ニ見ル時ニハ技巧
ニ過ギテ居ッテ、全體的ニ見ル時分ニハ調和
ガ缺ケテ居ル、又稅制ノ組織ガ餘リニ複雜
多岐デアル、從ッテソコニ重複モ出テ來レ
バ矛盾モアル、小ナル均衡ヲ正サムトシテ
却テ大ナル不均衡ニ陷ッテ居ルト云フタヤ
ウナ、色々ナ點モアッタヤウデアリマス、併
シ特ニ人氣ノ惡カッタノハ何デアルカト云
フト、增稅ガ高度ニシテ餘リニ急激デアル、
又國情ニ適セザル財產稅デアルトカ、取引
稅デアルトカ、輸出稅デアルトカ云フモノ
ヲ創設スルコトガ宜クナイ、更ニ又地方ノ
自治權ヲ無視シテ、中央地方ノ財政統制ヲ
行フト云フコトガ宜クナイトカ云フヤウ
ナ、色々ナ非難モアッタノデアリマスガ、要
スルニ財界ニ急激ナル變動ヲ與ヘルト云フ
コトト、餘リ行キ過ギタ改革デアルト云フ
コトガ、反對ノ焦點デアッタヤウニ思フノ
デアリマス、ソレデアリマスカラ、若シ是
等ノ諸點ニ能ク注意シテ、其ノ行キ過ギタ
ル所ヲ矯メ、其ノ急激ナル所ヲ抑ヘテ、相
當ナ修正ヲ加ヘマシタナラバ、是ハ立派ナ
稅制ニ私ハナッタラウト思フノデアリマス、
デ政府ニ於テハ之ヲ檢討スル日時ガナカッタ
ト言ハレテ居リマスケレドモ、新タニ斯樣
ナ案ヲ編ミ出スト云フノニアラズシテ、旣
ニ是ダケノ原案ヲ持ッテ居ル、而モソレニハ
二億萬近クノ收入モ減ラシテ宜シイト云フ
餘裕ノ付イテ居ル案デアリマス、之ヲ修正
スルコトハ決シテ難事デハナイ、思ヒ切ッテ
削ルモノハ削ッテヤッテ行ッテモ、落著ク所
ニハ落著キ得ル案ニナッテ居ルノデア
ル、デアリマスカラ新タニ臨時增徵案
ヲ作ル日時ガアッタナラバ、馬場案ノ檢
討ヲ爲スコトハ決シテムツカシイコト
ヂヤナカッタ、若シソレデモ尙日時ガ足リ
ナカッタト云フナラバ、モット日時ヲ延バ
シテオヤリニナッテモ宜シイ、臨時租稅增徵
法案ガ提出サレテカラ後ニナッテ、而モ十一
日モ過ギタ後ニ於テ、豫算ノ修正案ガ出サ
レテ居ル、增徵法案ガ提案サレテカラ十一
日ヲ經ッタ後ニ於テ、豫算ノ修正案ガ出サレ
テ居ルト云フヤウナ經過カラ推シテ見マシ
テモ、此ノ稅制改革案ニ對スル檢討ノ日時
ガ無カッタトハドウモ見ラレヌノデアリマ
ス、或ハ出來ザルニアラズ、爲サザルナリ
ト云フノヂヤナイカト思ハレルノデアリマ
ス、ソコデ玆ニ御尋ネ致サナケレバナラヌ
ノハ、稅制改革案ヲ踏襲シナカッタ理由、又
ハソレヲ基礎トシテ修正案ヲ作ラナカッタ
理由ハドウ云フ譯デアッタノカ、稅制改革
案ニ對シテ根本的ニ方針ヲ異ニスルモノガ
アッタノデアルカ、或ハ部分的ニ意見ヲ異ニ
スルモノガアッタノカ、若シ根本的ニ其ノ方
針ヲ異ニスルモノガアッタト云フナラバ其
ノ理由ヲ伺ヒタイ、又部分的ニ意見ヲ異ニ
スルモノデアッタト云フナラバ、其ノ事項ヲ
伺ヒタイ、兎モ角、之ニ付テハ世間ニ多少ノ
誤解ヲ持ッテ居ル者ガアリマスカラ、其ノ誤
解ヲ御解キニナルコトモ、結城藏相ノ爲ニ
ハ必ズシモ不得策ヂヤナイト思フノデゴザ
イマス、第二ハ臨時租稅ノ增徵ニ付テデア
リマスガ、馬場稅制改革案ノコトハ今申シ
タ通リデアリマスガ、飜ッテ今度政府カラ提
出サレマシタ臨時租稅增徵法ニ付テ見マス
ト云フト、我ガ經濟界ノ實情ニ適セザルモ
ノトシテ、夙ニ整理改革ノ必要アリト認メ
ラレテ居ル現行稅制ノ上ニ二一七七千萬圓ト
云フ大增稅ヲ行ハレムトスルノデアリマス
カラ、負擔ノ不均衡ハ益、甚ダシクナルノデ
アリマス、假令一年度限リノ暫定的ノモノ
デアルト致シマシテモ、國民ノ忍ブ能ハザ
ル所ノモノデアルノデアリマス、稅制ノ改
革案ハ次ノ議會ニ提出スルト言明サレテ居
ラレマスガ、元來租稅法ト云フモノハ言フ
迄モナク恆久的ノモノデナケレバナラヌノ
デアリマス、一年度限リノ稅制ナント云フ
モノハ、租稅ノ本質ニ反スルノデアリマス、
一年度限リノ租稅ト云フモノハ租稅ヂヤア
リマセヌ、徵發ニ外ナラヌモノデアル、斯
樣ナ稅制ト云フモノガ世ニアッテハナラヌ
モノデアル、朝令幕改ニ依ッテ國民ノ負擔
ヲ變更スルト云フヤウナコトハ、大ナル禁
物デナケレバナラヌ、斯クノ如キ杜撰ナ增
稅ヲ斷行スルト云フコトハ、藏相ガ過日財
政演說ニ於テ租稅ノ增徵ニ關シ縷々述ベラ
レタ、アノ方針ニハ全ク相反スルモノデア
ルト思ヒマス、一年度限リノモノデアルカ
ラ我慢シロト云フノハ甚ダ無理デアル、是
ガ一年度限リデオ終ヒニナッテ、後ニ增稅ト
云フモノハ無クナルト云フコトデアルナラ
バマダシモデアリマセウガ、ソレガ後ニ稅
制改革ガ來ルゾ、其ノ時ニハ增稅ヲ續ケテ
行クゾト云フコトニナリマスト云フト、其
ノ間國民ヘ租稅負擔ノ不安定ノ境ニ彷ウテ
居ラナケレバナラヌ、何故ニ斯樣ナ暫定的
トカ、過渡的トカ云フヤウナ、臨時增徵ナ
ント云フモノヲヤラレタノデアルカ、私
ハ分ラヌノデアリマス、議會開會中ニ政變
ニ因ッテ更迭ナサレタ現内閣トサレテハ、豫
算案ニシテモ、增稅案ニシテモ、强ヒテ此
ノ會期ニ成立サセナケレバナラヌト云フ絕
對ノ理由モ必要モナカッタラウト思フ、現內
閣ノ爲ニ圖レバ、私ハ寧ロ此ノ場合ニ於テ、
前ノ馬場財政ト云フモノガ宜クナイト云フ
ナラバ馬場財政ノ打切ナリ、其ノ實現ヲ阻
止スルコトニ止メテ置イテ、結城財政ノ理
想ヲ豫算案ト稅制改革案トニ十分ニ盛込ン
デ、サウシテ稅制ノ整理ト云フコトト增稅ト
云フコトヲ同時ニ行フ、サウシテ一日モ早
ク國民負擔ノ安定ヲ圖ルト云フコトガ、國
家國民ノ爲ニ善政トナッタノデハナカラウ
カ、間ニ暫定的ナ、過渡的ナ挾ミモノヲ置
クガ爲ニ、玆ニ國民ニ對スル不安ト云フモ
ノガ增大サレルコトニナルノデアリマス、
而モ其ノ挾ミモノハ今申シタ通リ極メテ杜
撰ナモノデアル、ソレハ無理モナイコトデ
アリマス、一體言フト、事務的ニモ技術的
三、ヽ、私ナドハ人間業デハサウ云フコトガ
出來ナイト思フヤウナ、サウ云フヤウナ無
理ナコトヲシタモノデアリマスカラ、遂一
不完全ナル、不十分ナルモノヲ揑ッチ上ゲ
ナケレバナラヌト云フヤウナコトニナッタ
ノデアリマス、其ノ爲ニ却テ現內閣ノ爲ニ
善政ヲ施スコトガ出來ナイヤウナコト
ニ······此ノ場合デス、此ノ問題ニ限ッテデ
アリマス、アトノコトハ言ヒマセヌ··
ナリマシタコトハ、現內閣ノ爲ニ甚ダ惜シ
マザルヲ得ナイト思フノデアリマス、デ之
ニ付テハ特ニ總理大臣カラノ御所感ヲ伺ヒ
タイノデアリマス、第三、公債ト租稅トノ
衡權、是ハ釣合トデモ申シマスカ、政府ハ
馬場財政ヲ修正サレテ、前ニ申シタ通リ歲
出ニ於テ二億二千四百萬圓ヲ減ジ、同時ニ
歲入ニ於テ增稅收入一億九千百萬圓、公債
收入三千百萬圓ト云フモノヲ減ゼラレタ、
此ノ歲出減額ノ結果ヲ、租稅ノ收入ノ減ト
公債ノ收入ノ減トニ割振ラレタノハ何ヲ標
準トシテナサレタノデアルカ、租稅負擔力
ノ方カラ先ニ見ラレタノカ、公債消化力ノ
方カラ先ニ見ラレタノカ、或ハ兩方カラドッ
チコッチト見合ウテヤラレタノデアルカ、何
カ其處ニ目途ガナケレバナラヌト思フノデ
アリマスガ、ドウ云フ標準デ、ドウ云フ目
途デソレヲオヤリニナッタノデアルカ伺ッテ
見タイ、デ藏相ハ公債消化力ノコトニ付テ
ハ斯ウ言ハレテ居ル、相當程度發行スルモ
之ガ消化ニ懸念ナキモノト確信スルト、而
シテ其ノ相當程度ト云フ中ニハ十二億ト
カ十五億トカ云フモノモ含マレテ居ルヤウ
ニ述ベラレテ居ル、卽チ公債消化力ニ付テ
ハ相當樂觀的ナ見方ヲサレテ居ル、之ニ反
シテ租稅ノ負擔力ノコトニ付テハ、國民ト
シテハ何人モ其ノ分ニ應ジテ擧ッテ納稅ニ
依ッテ奉公ノ誠ヲ效サナケレバナラヌト云
フ御趣意ヲ述ベラレルト同時ニ、其ノ租稅
ノ增徵ト云フモノガ極メテ重大ナルコトデ
アルヽ而シテ其ノ影響ノ及ブ所極メテ甚大
ナルモノデアルト云フコトデ、增稅ノコト
ニ付テハ寧ロ悲觀的ナ見方ヲサレテ居ルヤ
ウニアルノデアリマス、ソコデ私ハ伺ヒタ
イノハ、藏相ハ一體我ガ國ノ租稅負擔力ヲド
ウ見テ居ラルヽカ、又公債消化力ト租稅負擔
力トノ「バランス」ハドノ邊ニアルト御覽ニ
ナッテ居ルノデアルカ、是等ノコトハ將來ノ
財政計畫ヲ立ツル上ニ於テ、極メテ重大ナル
コトデアリ、常ニ之ヲ觀測シテ置ク必要ガ
アルト思フノデアリマス、ソレ等ヲ觀測シ
テ居ラレル所ハドノ邊ニアルカ、其ノ邊ヲ
伺ヒタイノデアリマス、ソレカラ第四、國
防公債ニ付テ、公債ハ租稅ノ前拂方法ト見
ルコトガ出來マス、又租稅ハ公債ノ濟シ崩
シ方法デアルト見ルコトガ出來マス、何レ
モ國民ノ負擔ニ歸スルノハ同一デアルコト
ハ言フ迄モナイノデアリマスガ、此ノ公債
ノ消化力ニ限度ガアルガ如ク、國民ノ負擔力
ニモ自ラ限度ガアリマス、ソコデ國家緊急
ノ場合ニ、玆ニ國費ノ增加ヲ要スルト言ウ
タ時ニ、公債ヲ先ニスルカ、增稅ヲ先ニス
ルカ、新シク增加シタ國費ノ中ノドレダケ
ノ部分ヲ公債ニ求ムベキカ、ドレダケノ部
分ヲ增稅ニ求ムベキカト云フコトハ、是ハ
金額ノ多少、其ノ他內外ニ於ケル客觀的情
勢ニ依ッテ十分考慮シテ定メテ行カナケレ
バナラヌコトト思フノデアリマス、ナカナ
カムツカシイ問題デハアリマスガ、玆ニ私
ハ考ヘテ見テハドウカト思フノハ、此度ノ
國防充實費ノヤウナモノハ全ク所謂戰時ニ
準ズベキ國家非常ノ必要ニ基クモノデアリ
マスカラ、而シテ將來六年七年ニ亙ル繼續
費ヲ見マシタダケデモ、三十二億以上ニナツ
テ居ルト云フ巨額ヲ占メテ居ルノデアリマ
スカラ、之ヲ現代國民ノ負擔ニノミ歸スル
ヤウナコトデハ、非常ナ重荷トナリマシテ、
貯蓄ハ減退シ、產業ハ衰退シ、國力ハ疲弊
シ、財政ト經濟トノ調和ヲ缺キ、所謂國防
ノ充實ト國民經濟ノ充實トノ兩全ヲ得ザル
コトニナルノデアリマス、而シテ此ノ國防
充實費ノ如キハ後世子孫ニ負擔ヲ分ツベキ
相當ナ理由ノアルモノデアリマスカラ、其
ノ財源ハ先ヅ之ヲ國防公債ニ依ルコトトシ
テ、此ノ國防公債ニハ同時ニ國防增稅ヲ併
セ行ヒマス、國防公債ニ國防增稅ヲ伴ハシ
メテ其ノ利拂及償還計畫ヲ樹テテ、之ヲ別途
ニ整理スル方法ヲ考ヘルノデアリマス、此
ノ方法ハ往年行ハレマシタ海軍公債トハ全
ク性質ヲ異ニスルモノデアリマシテ、利拂
及償還計畫ガ之ニ伴ッテ居ルノデアリマス
カラ、其ノ整理ハ確實ニ行ハレマス、而シ
テソレニ依ッテ國防充實ノ安固モ期スルコ
トガ出來ル、而シテ又直接ニハ急激ナル增
稅ノ高壓ヲ除クコトモ出來ル、從ッテ又健
全ナル產業ノ發達ヲ期スルコトモ出來ル、
同時ニ又間接ニハ國防觀念ヲバ國民ニ注入
スルコトガ出來ルト云フヤウナ各種ノ利益
モ伴フヤウニナルノデアリマスカラ、
此ノ問題ハ〓究ノ價値アルモノデナイカト
云フヤウニ思ハレマスガ、結城藏相ハ之
ニ對シテドウ云フ御考ヲ御持チニナルカソ
レヲ伺ヒタイノデアリマス、第五ハ國債
ノ民衆化ニ付テデアリマス、此ノ問題ニ付
テハ過日、私ハ藏相ニ質問申シタノデアリ
マシタガ、ソレニ對ツテハ何等ノ御答辯ヲ
得ナカッタノデアリマス、然ルニ結城藏相ハ
過日衆議院ニ於テ、公債民衆化ノ一方法ト
シテ、郵便局ヲ通ジテ一般國民ニ公債ノ賣
出、買入ヲ行フ計畫ガアルト云フコトヲ言
明サレタト云フコトデアリマス、是ハ誠
ニ私ノ意ヲ得タ所デアリマスノデ、其ノ計
畫ニ付テ尙此處デ、詳細ト申シマシテハ餘
リニ過ギマスガ、其ノ大要ヲ伺フコトガ出
來タナラバ仕合セト思ヒマス、過日申シマ
シタ通リ、國債ノ民衆化ヲ計ルト云フコト
ハ、單ニ國債ノ消化力ト云フバカリデナシ
ニ、色々ナ意味ニ於テ良キ效果ガアラウト
思フノデアリマス、「フランス」人ノ愛國心ノ
强イノハ公債ガ「フランス」人ヲ國家ニ結ビ
付ケテ居ル紐ニナッテ居ルト云フコトサヘモ
言ハレテ居ルノデアリマス、我ガ國ニ於テ
ハ國債ノ八割マデガ銀行其ノ他ノ金融機關
ガ持ッテ居ル、一般國民ト云フモノハ殆ド國
債ト云フモノヲ持ッテ居ラヌト云フヤウナ
現狀デアリマスカラ、此ノ民衆化ノ方法ヲ
積極的ニ講ズル必要ガ玆ニアラウト思フノ
デアリマス、就テハ單ニ郵便局ニ於テ國債
ノ賣出、買上ヲヤルト云フ生溫イヤウナコ
トデナシニ、過日モ申シマシタ通リ、先ヅ
預金部ヲ公債消化ノ第一線ニ立タシメテ、
郵便預金ヲ大イニ奬勵シテ、其ノ貯金ノ一
定額、例ヘバ五十圓トカ、百圓トカ云フモ
ノニ達シタモノニハ國債證劵ヲ以テ其ノ貯
金ニ振リ替ヘル途ヲ開イテ、同時ニ其ノ國
債證劵ハ何時ニテモ資金化スルコトガ出來
ルヤウニ便宜ナ方法ヲ考ヘテ、郵便局ヲシ
テ直チニソレヲ買ヒ取ラシメルヤウナコト
ニスルノガ一番便利デアルト思ヒマス、サ
ウ致シタナラバ、國民一般ガ玆ニ財政上ノ
理解ヲ持チ、同時ニ民衆ガ國債ヲ持ッテ居
ルト云フコトニ付テ、是ハ愛國心ノ發露デ
アルト云フ其ノ衿持心ヲ持タシメルコトニ
モナリ、非常ニ利益スル所ガ多カラウヤウ
ニ思ハレルノデアリマス、殊ニ一般民衆ハ
銀行等ノ金融機關トハ異ナッテ、利廻リ勘定
トカ云フヤウナコトニハ餘リ敏感デアリマ
セヌカラ、厘毛ノ利廻リ勘定ガ惡クナッタカ
ラト云ウテ、直チニ其ノ國債ヲ市場ニ賣リ
出シテ、サウシテ市價ヲ攪亂スルヤウナ虞
モナイノデアリマス、從ッテ浮動國債ト云
フモノヲ防止スル一ツノ助ケニモナラウト
思フノデアリマスカラ、一ツ大イニ御考ヲ願
ヒタイト思フノデアリマシテ、藏相ノ御意
見ヲ御尋スルノデアリマス、ソレカラ第六
ハ將來ノ財源ニ付テ、財政計畫ノナイ財政ト
云フモノニハ誠ニ困ッタモノデゴザイマス、
併シ藏相ニハ將來ノ見通シガ付カナイカラ
財政計畫ノ樹テヤウガナイ、斯ウ言ハレル
ノデ、此ノ以上申上ゲルコトモ出來マセヌ
ガ、唯此處デハ其ノ不滿足ノ意ヲ表シテ置
ク外致シ方ナイト思ヒマス、但シ是カラ增
稅案ノ審議ヲ進メルニ當リマシテハ、ドウ
シテモ伺ッテ置カナケレバナラヌコトガア
ルト云フノハ、將來ニ對スル增稅計畫ハド
ウナッテ居ルカ、一般ノ財政計畫ハ御樹テニ
ナルコトガムツカシイトシテモ、此ノ增稅
計畫ト云フモノニ付テハドウ云フ御考ヲ持ッ
テ居ルカト云フコトヲ伺ッテ居ラヌト見當ガ
付カヌト云フコトニナルノデアリマス、次ニ
行ハルベキ稅制改革ノ場合ニ於テハ、今囘
臨時增稅サレタモノ及ビアノ新稅トシテ創
設サレタモノ、合セテ約二億七千萬圓バカリ
ニナルヤウデアリマスガ、此ノ上ニ尙增稅ヲナ
サル目的デアルカ、或ハ減稅ヲナサル目的
デアルカ、或ハ又收入ノ增減ヲ來サザルコ
トヲ目標トシテヤル積リデアルカ、何カソ
コニ御見當ガアルダラウト思ヒマス、ソ
レカラ又馬場前藏相ハ、將來五六年ノ間
ハ增稅ノ必要無カルベシト云フコトヲ言
ハレテ居ッタガ、是ハ結城藏相モ同樣ニ御考
ニナッテ居ルノカドウカ、ソレモマダ分ラナ
イ、モウ少シ經ッテ見ヌトイカヌト斯ウ言ハ
レルカ、其ノ邊モ伺ッテ見タイ、次ニ將來ノ
財源ニ付テハ、單ニ增稅財源ト云フノミナ
ラズ、色々ナ方面モ考ヘテ行カナケレバナ
ラヌト思フ、先ヅ第一ニハ、歲出ヲ削減ス
ルト云フコト、是ハ最モ有力ナル一方法デ
アルト思ヒマスガ、藏相ハ旣ニ一部行ハレ
タノデアリマスガ、日時ノ關係上、既定經
費ニハ一切手ヲ御觸レニナラナカッタト云
フコトデアリマス、何レ是ハ後年度ニ於テ
實行セラルベキモノト信ズルノデアリマス
ガ、之ヲヤラレルニ付テ一體如何ナル方法
ヲ以テナサル御積リデアルカ、例ヘバ行政
機構ノ改革ト相俟ッテヤルトカ、或ハ調査會
ヲ設ケテ能ク調査〓究シテヤルトカ、何等
カソコニ考案ヲ持ッテ居ラルヽコトデアラ
ウト思ヒマスガ、如何デゴザイマスカ、ソ
カレラ又租稅ノ外ニ、例ヘバ國營又ハ官
營制度ノ擴充ニ依ッテ國庫ノ收入ヲ上グル
ト云フ方法モ考ヘラレナケレバナラヌ、煙
草ノ値上ハ旣ニ實行サレ、郵便料ノ引上モ
將ニ實行セラレムトシテ居リマスガ、他日
ニ備フル爲ニ有力ナ財源ヲ考ヘテ置クト云
フコトハ、是ハ非常ニ必要ナコトデアラウ
ト思フ、今日ニ於テ將來ヲ思フ時、何カ此
處ニ有力ナル財源ガナケレバナラヌト云フ
コトヲ覺悟シテ、ソレニ對スル用意ヲシ、
ソレニ對スル〓究調査ヲシテ、之ヲ保管シ
テ居ルト云フコトガ大事ナコトデアラウト
思ヒマス、ソコラニ付テハドウ云フヤウナ
御考ヲ御持チデアルカ伺ヒタイ、ソレカラ
第七ニハ、直接國稅ノ體系ニ關スルコト、
此ノ直接國稅ノ體系ハ御承知ノ通リ、所
得稅ヲ中樞トシテ國稅タル地租、營業收
益稅、資本利子稅ト、地方稅タル家屋稅
トヨリ成ル所ノ收益稅ヲ以テ之ヲ補完スル
コトニナッテ居リマス、然ルニ前内閣ノ稅制
改革案ニ於キマシテハ、地方稅タル家屋
稅ヲ國稅ニ引上ゲ、サウシテ直接國稅ノ
體系ヲ整ヘ、更ニ其ノ上ニ財產稅ヲ創設
シテ、第二次的ニ之ヲ補完セシムルコト
ニナッテ居ッタノデアリマス、私思フニ、
直接稅ノ體系ヲ整フル爲ニ、今マデ地方稅
デアッタ家屋稅ヲ國稅ニ移管シテ來ネバナ
ラヌト云フ理由ニハ甚ダ乏シイト思ヒマス、
從前ノヤウニ、地方ノ財政、中央ノ財政ト
云フモノガ全ク沒交涉ノ如キ狀態ノ時ハ格
別デアリマスガ、將來大イニ中央、地方ノ
稅制ヲ通ジテ之ヲ整理シテ、中央及地方ノ
間ノ緊密ナル協調ヲ保タシメムトシテ居ル
今日ニ於テ、家屋稅ヲ何モ今地方稅カラ國
稅ニ移管セヌケレバ、所得稅ニ對スル補完
ノ作用ヲ爲サシムルコトガ出來ナイト云フ
ヤウナモノデハナイト思フノデアリマス、
若シ家屋稅ガ地方稅ノ財源トシテ必要デア
ルト云フナラバ、ソレハ其ノ儘ニ差シ措イ
テ、以テ國稅タル地租及營業收益稅等相俟ッ
テ、所得稅ヲ補完セシムルニ於テ何等差支
ナイト思フノデアリマス又所得稅ヲ第二
次的ニ補完セシムル爲ニ財產稅ヲ創設スル
ト云フコトニ至ッテハ、全ク私ハ其ノ理由
ヲ解釋スルコトガ出來ナイノデアリマス、
所得稅ヲ補完スルニハ收益稅ガアレバソレ
デ澤山ダ、收益稅ヲ以テ補完セシメタ外ニ、
更ニ財產稅ヲ以テ第二次的ニ補完セシメル
ト云フヤウナコトハ、是ハ蛇足デアルバカ
リヂヤナイ、寧ロ弊害ガアル、サウ云フ例
ハドコヲ尋ネテモ、外國ニモ例ハアリマセ
又、元來收益稅ト云フモノハ所得稅ヲ補完
スルガ故ニ存在ノ意義ガアル、收益稅ハ何
デアルカ、所得稅ヲ補完スルコトガ目的デ
アル、若シ其ノ補完ノ作用ヲ爲サナイヤウナ
收益稅ガアッタナラバ、ソレハ其ノ機能ヲ發
揮セシムルコトガ出來ルヤウニ適當ナ改正ヲ
加フルガ宜イ、デアリマスカラ、玆ニ我ガ國情
ニ適セザル、而モ頗ル人氣ノ惡イ財產稅ヲ
所得稅補完ノ爲ナリト稱シテ、之ヲ新設ス
ルト云フヤウナコトハ甚ダ面白クナイコト
デアルト思フノデアリマス、此ノ問題ハ何
レ次ノ稅制改革ノ場合ニ於テモ考ヘナケレ
バナラヌ問題ト思ヒマスカラ、直接國稅體
系ニ付テノ自分ノ考ヲ申述ベルト同時ニ、
藏相ノ御考ヲモ伺ヒタイノデアリマス、第
八、所得稅ニ付テ、其ノ一ガ源泉課稅ノコ
トデアリマス、所得稅ハ直接稅ノ中樞デア
リマスカラ、何處マデモ一般所得稅主義デ
進ンデ行カナケレバナラヌト思ヒマス卽
チ綜合課稅ニスルコトガ原則デアッテ、源泉
課稅ト云フコトハ變則デアル、ソレデ玆ニ
課稅技術上カラ、或ハ其ノ他ノ理由カラ源
泉課稅ヲ爲ス場合ガアリト致シマシテモ、
綜合課稅ト、源泉課稅トノ重複ハドウシテ
モ是ハ避ケナケレバナラヌ、法人ト個人ト
ノ負擔均衡ト云フコトガ此ノ頃ヤカマシク
ナッテ居リマスガ、此ノ問題ヲ論ズルニ當ッ
テモ、此ノ考ノ基礎ハ持ッテ居ラナケレバナ
ラヌノデアリマス、本來第一種所得稅、卽
チ法人課稅ト云フノハ、法人ヲ個人ノ營利手
段トシテノ集合體ト見テ、法人カラ個人ノ
受クル配當ニ對スル源泉課稅ノ方法トシテ
制定サレタモノデアッタノデアリマス、然ル
ニ先年法人ヨリ個人ノ受クル配當ニ對シテ
綜合課稅ヲスルト云フコトニ改正サレマシ
タ時、法人課稅、卽チ第一種所得稅課稅ト
云フモノガ、其ノ儘形ヲ殘シテ居ッタト云
フ時ニ初メテ此ノ法人ト云フモノヲバ獨立
經濟ノ主體トシテ見ルト云フ主義ガ吹込マ
レタノデアリマス、從ッテ玆ニ獨立シタル法
人ノ課稅ト云フモノガ存在スルコトニナッタ
ノデアリマス、法人ノ實在說トカ、擬制說
トカ、色々ナ學說ハドウアリマシテモ、兎ニ
角モ實體カラ之ヲ見マスト云フト、個人ガ
出資シテ法人ヲ組織スルノデアリマスカ
ラ、出資者ノ財產ト法人ノ財產ト二ツノ財
產ガアル譯デハナイ、從ッテ財產ヨリ生ジタ
法人ノ所得ト云フモノハ、個人ニ配當スベ
キ所得デアッテ其ノ外ニハナイ、從ッテ個人
ニ配當スベキ所得デアルカラ、法人ニ於テ此
ノ資金ヲ活動サスル譯ニイカナイ、サウ云
フモノデアリマスカラ、其ノ配當ヲ受ケタ
ル所得ニ對シテ、個人ニ綜合課稅スル以上
ハ、法人ニ課稅スルト致シマシテモ、法人ガ
法人タルガ故ニ、詰リ法人タルノ機能ニ依ッ
テ、個人トシテヨリモ有利ナ條件ヲ以テ經
營スルコトガ出來ル、從ッテソコニ幾分ノ擔
稅力ヲ增スト云フ、其ノ觀點以上ニハ課稅
スル理由ハナイノデアリマス、法人ニハ擔
稅力アリト人ガ言ヒマス、ソレハ擔稅力ア
リト云フノハ私カラ言ヒマスト云フト、ソ
レハ正確ナ意味デハナイ、擔稅力アルノヂ
ヤナイ、徴稅力ガアル、其處ニ未ダ配當セ
ザル所得ガ殘ッテ居ルカラ取易イト云フノ
デ、擔稅力デハナイ、徴稅力ガアルト云フ
コトガ寧ロ正解デアルト思フノデアリマ
ス、人ノ言フ法人ハ擔稅力ヲ持ッテ居ルト云
フノガ、今申シタヤウニ個人ニ配當スル其
ノ所得ノアルノヲ目指シテ言ッテ居ルコト
ナンデス、ソレデアリマスカラ法人ニ對シ
テ餘リ重税ヲ課スルト云フコトニナリマス
ト云フト、重複課稅ノ弊ト云フモノガ甚ダ
大キクナルノデアリマス、ノミナラズ法人
事業ノ發達ヲ妨ゲ、產業ノ發達モ妨ゲラレ
ルト云フコトニナルノデアリマシテ、旣
其ノ徵候ガボツ〓〓見エテ來テ居ルノデア
リマス、又第二種所得稅ヲ綜合課稅ト致シマ
スコトハ、是ハ理想ニ向ッテ進ムモノデアル
トシテ私共大イニ喜ンデ居ッタノデアリマ
シタガ、遂ニ挫折致シマシタコトハ甚ダ殘
念デアリマス、殊ニ社債ニ輕ク課稅シ、株
式ニ重ク課稅スルト云フコトハ、法人ノ基
礎ヲ堅實ナラシムル所以ヂヤナイノデアリ
マス、是ハ藏相モ御承知カモ知レマセヌ
ガ、曾テ東京商工會議所ノ決議、更ニ進ン
デ日本商工會議所ノ決議トナッテ政府ニ建
議サレテ居ル筈デアリマス、其ノ二、綜合
課稅、第三種所得課稅ニ付テ考ヘナケレバ
ナラヌノハ、所得算出ノ方法デアリマス、
現行所得稅ノ體型ハ······形ハ、舊體依然特
別所得稅ノ集合體トナッテ居リマス、般
所得稅タルノ體型ニナッテ居リマセヌカラ、
其ノ體型ノ儘デ綜合課稅ヲ行フト云フコト
ニナリマスト云フト、而シテソレヲ强化
スルト云フコトニナリマスト云フト
種々ナル不合理ヲ生ジ、課稅ガ重クナレバ
重クナル程負擔ノ不均衡ヲ增大ナラシムル
コトニナルノデアリマス、卽チ現行法ニ於
テハ、各所得事項每ニ所得ヲ算出スルコト
ニナッテ居リマス、ソレデアリマスカラ甲ノ
所得事項ニ所得ガアリマスルト、乙ノ所得
事項ニドンナ損ガアッテモ、甲ノ所得事項ニ
所得アル以上ハ、乙ノ所得事項ニ損ガ多ク
アリマシテモ、其ノ損ノアルコトハ全ク見
マセヌデ、甲ノ方ノ所得アル其ノモノニ對
シテ課稅サレルト云フノガ現行法デアリマ
ス、ソレデアリマスカラ個人ノ全體計算カ
ラ見マスト云フト、全ク所得ノナイ者マデ
モ課稅サレルト云フコトニナッテ居ル、コン
ナ不合理ガ一體有リヤウノナイ筈デアリマ
ス、ソコデ綜合課稅ト云フモノヲ是カラ强
化スルコトガ必要デアリマスガ、ソレト同
時ニ此ノ所得ノ算出方法ト云フモノヲバ大
イニ改メテ、各種ノ所得事項ノ損モ得モソ
レヲ個人經濟ヲ單位トシテソコニ集メテ、
サウシテ其ノ上ニ利益ガアリ、所得ガアル
ト云フ場合ニ課稅シ、其ノ場合ニ損ガアル場
合ニハ課稅セヌト云フコトニナラナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス、從ッテ借金ヲシ
テ利息ヲ拂フモノガアリマシタナラバ、其
ノ原因如何ヲ問ハズ之ヲ所得カラ控除スル
ト云フコトニナラナケレバナラヌノデアリ
マス、私ハ先年所得稅法改正ノ際カラ此ノ
說ヲ唱ヘテ居リマスガ、未ダ採用ニハナッテ
居ラヌノデアリマス、其ノ政府ノ反對スル
理由ハ、課稅技術上困難デアル、或ハ租稅
ノ收入ヲ減ズルカラト云フコトデアリマス
ガ、課稅技術上困難デアルト申シマシテモ、
左程ノコトガアラウトハ考ヘマセヌ、是ガ
各所得事項每ニ所得ヲ計算スル場合ニ於テ、
或ハ借リタ金ヲ何ニ使ッタト云フヤウナコ
トノ區分ガムツカシイヤウナコトガアリマ
セウケレドモ、玆ニ個人經濟ヲ全體計算ト
シテ所得ヲ算出スルト云フヤウナコトニナ
リマシタナラバ、借リタ金ハ何ニ使ハウト
ソレハ構ハヌ、唯借リモセヌ金ヲ借リタト
云フコトガアリハシナイカト云フコトヲ心
配サレタデアラウト思ヒマスガ、借リテ利
息ヲ拂ヘバ一方ニハ貸シテ利息ヲ取ッタ者
ガアル、貸シテ利息ヲ取ッタ者ハ是ハ所得稅
ガ課セラレルコトニナリマスカラ、貸サヌ
モノヲ貸シタト云フコトヲ言フ者ハナイノ
デアリマス、自ラソコニ牽制サレテ調査ハ
ソレ程ムツカシイモノデアルトハ思ヒマセ
又、大藏省デハ現ニ借金ノ利息ハ、所得ヲ
得ルニ必要ナル經費トシテ之ヲ控除スルコ
トニナッテ居ルト言ハレテ居リマスケレド
モ、實際ハ決シテ行ハレテ居リマセヌ、凡
ソ負擔ノ均衡、不均衡ノ問題ガアルト致シ
マシタナラバ、左樣ニシテ損ノアルモノニ
課稅スルト云フヤウナモノハ、先ヅ第一ニ
改メテ行カナケレバナラヌト思フ、收入ガ
減ッテ困ルト云フヤウナコト、ソレハ一ツノ
財政上ノ理由デアリマスガ、今ヤ稅制ノ根
本的改革ヲ行フト云フ場合ニ於テ、斯樣ナ
コトヲ考ヘルコトハ、少シモ理由ヲ成サヌ
ト思フノデアリマス、此ノコトニ付テ藏相
ノ御考ヲ伺ッテ置イタナラバ、大變都合ガ宜
シイト思ヒマス、第九ニハ法人資本稅ニ付
テデアリマス、前內閣ノ稅制改革案ノ新稅
ノ中ニハ、我ガ國情ニ適シナイモノガ多カッ
タノデアリマス、其ノ中財產稅ト取引稅ト
輸出稅、是ハ私ハ略シテ二ツヲ含メテ申シ
テ置キマス、貿易統計稅ト輸出統制稅ト、
是ガ其ノ最タルモノデアリマス、現內閣ニ
於テハ取引稅ハ全然之ヲ廢棄サレタ、但シ
財產稅ニ付テハ、個人ニ對スルモノハ止メ
タガ、法人ニ對シテハ之ヲ行フ、ソレカラ
輸出稅ニ付テハ、統計稅ノ方ハ止メタガ、
統制稅ノ方ハ之ヲ行フ、斯ウ云フコトニナッ
テ、其ノ一部ヲ採用サレルコトニナル、私
ハ今一部ヲ······其ノ採用サレタ二ツノ稅ニ
付テ政府ノ御考ヲ聽キタイノデス、財產稅
ト云フモノノ我ガ國情ニ適セザル惡稅デア
ルト云フコトハ、殆ド定評ガアリマス、デ
財產稅ハ彈力性アリト申シマスケレドモ、
若シ其ノ稅率ガ輕微ナモノデアルナラバ、
稅制ニ彈力性ヲ與フル力ガアリマセヌ、若
シ稅制ニ彈力性ヲ與フル程度ニ高率ニ致シ
マシタナラバ、ソレハ直チニ資本ノ元本ヲ
侵蝕スルコトニナルノデアリマス、其ノ爲
ニ財產稅ハ官民ノ間ニ色々ナ紛擾ヲ釀シ、
又不動產重課ノ弊ニ陷ル、旣ニ各國ノ例ニ
照シテ見テモ明カナコトデアリマス、然ル
ニ現內閣ガ個人ニ對スル財產稅ヲ認メナカッ
タニ拘ラズ、法人ニ對シテハ其ノ名ヲ變へ
テ、資本稅ト稱シテ其ノ實法人財產稅ヲ設
ケラレタ、玆ニ甚ダシキ矛盾ガアル、何處
ニ課稅物件ノ上ニ、又課稅原理ノ上ニ、違
フトコロガアルカ、結城案ノ第四條ト、馬
場案ノ第四條トヲ比ベテ見ルト云フト、何
處ニモ違ヒガナイ、政府委員ハ法人資本稅
ハ積立金ニ對スル課稅デアルカラ、財產稅
デハナイ資本稅デアルト說明サレタト云フ
コトガ新聞ニアリマシタガ、是ハドウ云フ
意味デアルカ分ラナイ、名前コソ財產稅ト
言ハナイデ、資本稅ト言ハレテ居ルケレ
ドモ、實際拂込資本金ト積立金トニ課稅ス
ルト云フ財產稅ニ外ナラヌノデアリマス、
何處ニ其ノ違ッタ所ガアルカ、一向分リマ
セヌ、要スルニ個人ニ對スル財產稅ヲ
廢棄シナガラ、法人ニ對スル財產稅ヲ
認メラレタト云フコトハ、ドウ云フコトデ
アルカト云フコトヲ御伺ヒ致シタイノデア
リマス、第十ハ輸出統制稅ニ付テデアリマ
ス、私ハ之ニ付テモ疑ガアルノデアリマス、
現內閣ハ貿易統計稅ヲ棄テテ輸出統制稅ヲ
採ラレタガ、一ツヲ採ッテ一ツヲ棄テラレ
タ其ノ理由ガ分ラナイ、輸出統制稅ノ方ハ、
現在輸出組合ガ徵收シテ居ル手數料ヲ租稅
化シタニ外ナラヌノダト云フコトモ言ハレ
テ居ルヤウデアリマスガ、政府ノ說明ニ依
レバ、本稅創設ノ理由ハ外國貿易ノ進展ヲ
圖ル爲ニ必要ナル經費ニ充ツル爲ニスルノ
ダト云フノデアッテ、本稅ハ所謂目的稅ト
稱スルモノデアリマス、抑〓外國貿易ノ進展
ヲ圖ル施設ニ要スル經費ノ如キハ、當然國
家ノ一般經費トシテ支出スベキモノデアッ
テ、輸出ノ統制ヲ圖ルト云フコトモ固ヨリ
國家貿易上ノ政策ニ外ナラヌノデアリマス
カラ、其ノ經費ニ充ツル目的ヲ以テ特別ノ租
稅ヲ設ケテ、其ノ收入ノ限度ニ於テ其ノ施
設ヲ行フトカ、或ハ其ノ收入ノ使途ヲ之ニ
限定スルト云フヤウナコトハ、租稅ノ原則
ニ反スルバカリデハナク、財政ノ本質ニモ
反シ、會計法ノ精神ニモ反スルモノト思ハ
レル、財政制度ノ備ッタ今日ニ於テ、斯樣ナ
時代後レノ目的稅ヲ創設スルト云フ其ノ精
神ガ分ラヌノデアリマス、又輸出品ニ對シ
テ課稅スルノハ如何ナル名義ヲ以テスルニ
拘ラズ、其ノ手數ノ上ニ、其ノ負擔ノ上ニ、
輸出貿易ヲ阻碍スルモノト思フノデアリマ
ス、政府ニ於テハ輸出品ニ對スル負擔ハ外
ニ於テ之ヲ轉嫁スルコトガ出來ル、ソレデ
アルカラ輸出者、或ハ其ノ製造者ノ負擔ニ
ハナラヌト言ハレテ居ルヤウデアリマスガ、
ソレハ時ト場所ニ依ッテ違フコトニナラウ
ト思フノデアリマシテ、內ニ向ッテソレガ轉
嫁スルコトノ多キコトヲモ思ハナケレバナ
ラヌノデアリマス、大藏大臣ハ輸出品ニ對シ
テ課稅スルノデハナクテ、統制ニ對シテ課
稅スルノダ、斯ウ說明サレタ、是モ新聞ニ
アリマス、統制ニ對シテ課稅スルノダト云
フコトニナルト、統制ヲ阻止スルコトニナ
リマスカラ、何カノ言葉ノ違ヒダラウト思
ヒマス、要スルニ輸出品ニ課稅シテ、其ノ
輸出ニ支障ナシトハドウシテモ信ズルコト
ハ出來ナイノデアリマス、物品ノ如何ヲ問
ふく、主義トシテ是ハ如何ナルモノデアラ
ウカト思フノデアリマス、貿易伸張ノ大方
針ニ背馳スルモノヂヤナイカト思フノデア
リマス、之ニ付テノ御考ヲ伺ヒマス、終リ
ニ臨ンデ一言致シマスノハ、臨時租稅增徵
法案ハ二月ノ十五日衆議院ニ提出サレマシ
ク、衆議院ニアルコト三十二日間デアリマ
ス、而シテ昨日漸ク其ノ決議ヲ經タト云フ
ノデ、本院ニ送付サレテ今日玆ニ上程サレ
ルコトニナッタ、衆議院ガ如何ニ本案ヲ重要
問題トシテ鄭重ニ取扱ハレタカハ之ニ依ッテ
分ルノデアリマス、本院ニ於テモ大イニ玆
ニ省ミル必要ガアラウト思ヒマス、又衆議
院ハ本案ニ對シテ三四點修正ノ意嚮デアッタ
ラシイノデアリマスガ、政府ガ之ニ反對ノ態
度ヲ執ラレタ、其ノ爲ニ其ノ折衝ニ日時ヲ
費シマシテ、數日間其ノ決議ガ遲レテ居ル
ト云フコトモ事實ノヤウデアリマス、而シ
テ其ノ政府ト衆議院トノ間ノ爭點ハ何處ニ
アッタカト申シマスト云フト、租稅理論トカ
云フヤウナムツカシイ問題デナクテ、唯收入
ノ減少ガ百五十萬圓アル、其ノ百五十萬圓
ガ減ッテハ困ルト云フ、其處ニ論點ガアッタ
ヤウデアリマス、私ハ實ハ衆議院ノ修正ナ
ルモノガモット大キナ目ボシイモノガアル
ダラウト思ウテ居ッタノデアリマシタガ、存
外根本ニ觸レタモノト云フモノハ殆ドナ
ク、極メテ微細ナ點ニ於テ修正サレテ居ル
ノデアリマスカラ、此ノ程度ノ修正デアッタ
ナラバ、殆ドアッテモナクテモ、ソンナニ政
府モ衆議院モ力瘤ヲ入レテ爭フ程ノモノヂ
ヤナイノヂヤナイカ、交付金ニ三千萬圓ヲ
抛ゲ出サレタ雅量ガアリ、ソレカラ考ヘテ
モ何デモナイ、而モ百五十萬圓ハ關稅ヲ合
セタ方ノ增稅額カラ推セバ、三億萬圓ニ對
スル僅カ百五十萬圓、三億萬圓ニ對スル百
五十萬圓、二千分ノ一、所謂九牛ノ一毛ト
ハ斯ウ云フコトヲ言フ、斯樣ナ問題ノ爲ニ
折衝ノ間ニ三四日モ費シテ、貴族院ニ送付
スルコトガ遲レタト云フノハドウモ何ト
モ言ヒヤウガナイ不手際ナコトヂヤナイカ
ト思フ、況シテ四千六百萬圓ノ使用見合セ
ト云フ財源ヲ持ッテ居ル此ノ財政······、三十
二日間モセッセト衆議院ニ於テ愼重審議シ
タ結果デアルナラバ、其ノ位ノモノヲ大イ
ニ尊重サレテ、アッサリト同意サレテモ宜
カッタノデハナイカ、是ガ所謂政治的解決ト
云フモノデアルダラウト思フ、ソレニ何ゾ
ヤ、政府側カラ修正ニ依ル收入減ヲ補塡ス
ル爲ニ、租稅ノ遡及力ヲ及スヤウナ問題ヲ
揭ゲテ、交換ニ出シタトカ、ソレデ刎ネラ
レタトカ餘リニミットモナイ話デアル、又政
府ハ衆議院ニ於テ修正ニ對スル贊否ノ態度
ヲ表明シナイデ、貴族院ニ於ケル善處ニ俟
ツ方針デアルトカ、傳ヘラレテ居ル、何ノ
コトデアルカ分ラヌノデアリマス、如何ニ
モ餘リニ小策ヲ弄スルヤウナヤリ方ニ見エ
ルノハ現内閣ノ爲ニ甚ダ取ラヌト思ヒマス、
此ノコトニ關シテ特ニ總理大臣ノ御答辯ヲ
煩シマス
〔國務大臣結城豊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=7
-
008・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 菅原君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、第一ハ前內
閣ノ稅制改革ヲ廢棄シタコトニ付テノ御尋
デアリマス、前內閣ノ稅制ニモ缺點ハアル
ガ、ソレヲ補修シテ行ケバ立派ナ財政ト思
フガ、ソレヲ廢棄スルト云フコトハドウ云
フ考デアルカト云フ御尋デアリマシタ、私
ハ廢棄ト云フノハ形ノ上ダラウト思フノデ
アリマス、一應ハ撤囘シマシテ、今度ハ
新シイ臨時增徵案ヲ提出致シマシタ次第
デアリマス、前內閣ニ於テモ此ノ國費ノ厖
大ニ連レマシテ、增稅ノ已ムヲ得ヌト云フ
コトカラ非常ニ〓究ヲ致シマシテ、理論的
ニ於テハ實ニ正シイ税制案ガ出來タト私ハ
思フノデアリマス、併シナガラ御說ニモア
リマシタヤウニ、ソレハ日本ノ經濟界ノ實
情ニ幾ラカ副ハヌ所ガアリマスノデ、從ッテ
前內閣ノ案ガ發表サレマシタ時ニ、世ノ中
ニ色々ナ議論モアリ、又不安モ起ッタノデア
リマス、ソレデ現內閣ト致シマシテハソレ
等ノ世論ニモ聽キ、成ルベク摩擦ノ無イコ
トヲ努メマシテ、今囘ノ案ニ於テ出來得ル
限リ其ノ邊ノコトヲ考慮ヲ拂ッタ積リデアリ
マス、決シテ前內閣ノ案ヲ何モ彼モ棄テテ、
新シクヤッタト云フノヂヤアリマセヌデ、非
常ニアレガ參考ニナッタト云フコトヲ申上ゲ
テ置キタイト思フノデアリマス、第二ハ臨
時租稅增徵ニ付キ、詰リ臨時ト云フヤウナ
コトデナシニ、出來得ルナラバ恆久的、根
本的ニ改革案ヲ出スベキデハナイカト云フ
御趣旨ト思ヒマスルガ、誠ニ御尤モデアリマ
ス、併シナガラ何分ニモ議會開會中ニ內閣
ノ更迭ガアリマシタノデ、全ク其ノ檢討ノ
遑ガ無カッタノデアリマス、一面ニハ財政ノ
現狀ハ增稅ヲ更ニ一箇年延バスト云フヤウ
ナコトヲ許シマセヌノデ、政府ハ短時日デ
ハアリマスルガ其ノ間ニ出來得ルダケノ努
力ヲ致シマシテ、此ノ案ヲ作成致シマシタ
ノデアリマス、暫定的ノモノデハアリマス
ルガ、事苟モ國民ノ負擔ニ關スルノデアリ
マスカラ、サウ杜撰ナモノヲ持出シタト云
フヤウナ積リハ毛頭ナイノデアリマス、第
三ニ公債ト租稅トノ權衡ニ付テ御尋ガアリ
マシタガ、如何ナル標準ニ依ッテ公債ト增稅
トノ割合ヲ決定シタカト云フ御尋デアリマ
シタガ、只今ノヤウナ歲出ヲ賄ッテ行キマス
ニハ出來ルダケ公債、卽チ借金ニ依ラヌデ
普通歲入ニ依ッテ賄ッテ行キタイノデアリマ
スガ、國民ノ負擔力ト云フコトヲ一面ニ考
ヘネバナリマセヌシ、又今度ニ致シマシテ
モ二億七千萬圓ト云フ增徵ハ非常ナ增徵デ
アリマシテ、其ノ邊カラ考ヘテ是レ以上ノ
コトハ租稅ノ增徵ニ俟ツコトハ無理デアル、
已ムヲ得マセヌノデアトノ不足ヲ公債ニ俟
ツコトニ致シマシタヤウナ次第デアリマシ
テ、ソレナラバ國民ノ租稅ノ負擔力ガドウ
云フ所ガ限度デアルカ、程度デアルカ、斯
ウ云フ御尋ニナリマスルト、國民經濟ノ發
展ヲ阻害シナイト云フ見極メノ付ク程度デ
アラウト思フノデアリマシテ、今度ノ租稅
增徵ハ其ノ程度ヲ眼目ト致シマシテ、アト
ノ不足ヲ公債ノ增發ニ俟ッタ次第デアリマ
ス、第四ニ國防公債ニ付テノ御尋デアリマ
シタガ、一朝事ガ有ッタ場合ニハ、是ハモウ
申スマデモアリマセヌガ、只今ノ情勢ハ誠
ニ多事デアルトハ申シナガラ、之ヲ準戰時デ
アルトカ云フヤウナコトヲ申シマシテ、餘リ
ニ非常時ヲ叫ブコトモドウカト考ヘラレマス
ノデ、今直チニ國防公債ト云フヤウナモノ
ヲ募リマシテ、ソレ等ニ依ッテ賄フト云フコ
トハ考ヘモノデアラウト思フノデアリマス、
國防費ニ付キマシテハ御意見モ誠ニ傾聽ス
ベキモノガアルト思フノデアリマスルガ、
矢張リ是ハ綜合的ニ考へタ方ガ宜イノヂヤ
ナイカト思フノデアリマス、第五ニ國債ノ
民衆化ニ付キマシテノ御尋デアリマス、是
ハ只今ノ我ガ國ノ情勢カラ申シマシテ、
面ニ於テハ國民ノ貯蓄力ト云フモノヲ增加
セシムルコトガ大切ナ政策デアリマスノデ、
又國債ノ民衆化ト云フコトカラ、御意見ノ
通リ國民ニ成ルベク國債ヲ持ッテ貰フ習慣
ヲ付ケマス意味ニ於テ、郵便局カラ賣出ス
コトニ致シマシタ次第デアリマス、第六ニ
將來ノ財源ニ付テ御尋デアリマシタガ、是
ハ主トシテ將來ノ增稅計畫ニ付テノ御尋ト
存ジマス、是ハ矢張リ稅ヲ負擔スル階級、
主トシテ產業界ノ芽ヲ摘ムトカ、或ハ根ヲ
枯ラスコトノナイヤウニ注意スルコトガ必
要デアラウト思フノデアリマス、稅制ノ整
理ニ付キマシテハ、嘗テ申上ゲマシタヤウ
ニ、此ノ中央地方ヲ通ジマシテ、稅制ノ整
理ヲ速カニ致シタイト存ジテ居ル次第デア
リマシテ、ソレニハ負擔ノ均衡、衡平ト云
フヤウナ點カラ整理ヲ致シマスルノデ、增
收ヲ目的トシテノ稅制ノ整理デハナイノデ
アリマス、同時ニ行政費ノ節約モヤル氣ガ
ナイカ、斯ウ云フ御話デアリマスルガ、是ハ
出來ルダケ努メタイト思ッテ居リマス、又國
營官營ノ業務ノ擴充或ハ整理等ニ付テモ〓
究スル所ナイカト云フ御尋デアリマスルガ、
是等ニ付キマシテハ十分ニ〓究スル必要ガ
アラウト思フノデアリマス、第七ニハ直接
國稅ノ體系ニ付テノ御話ガアリマシタ、所
得稅ヲ補完スル爲ニハ收益稅ヲ以テスレバ
足ルノデアッテ、財產稅ト云フヤウナモノハ
必要デナイ、此ノ點ニ付テハ私モ御同感デ
アリマス、體系ニ付テノ御意見ハ誠ニ參考
ニナルモノガ多イノデアリマスルノデ、十
分ニ其ノ邊ヲ考慮致シマシテ、中央地方ノ
財政ノ整理ヲ致シタイト考ヘテ居ル次第デ
アリマス第八ニハ所得稅ニ付テノ御意見
ガアリマシタガ、源泉課稅、又綜合課稅、
法人課稅、個人課稅ニ付テ種々御意見ノ點
ハ、誠ニ御尤ナルコトガ多イト思フノデア
リマシテ、十分ニ御意見ノ點ヲ參酌致シマ
シテ、稅制ノ整理ニ當リタイト存ジテ居リ
マス、第九ニハ法人資本稅ノコトニ付キ御
尋デアリマシタガ、個人ノ財產稅ハ御話ノ
通リ、我ガ國情ニ適シナイ、官民ノ摩擦ヲ
招ク、不動產稅ニ傾ク、斯ウ云フコトニ付
テハ私モ至極御同感デアリマス、サウ云フ
考カラ今囘見合セマシタヤウナ次第デアリ
マシテ、唯法人ノ資本稅ニ付キマシテハ、
是ハ御話ノ通リ積立金ニ對スル課稅デアリ
マシテ、只今ハ個人ノ財產稅ニ付テノ障碍
ヲ齎ラスヤウナコトハナイノデアリマス、
同時ニ徴稅ノ上ニ於テモ實行ガ甚ダ容易デ
アリマスノデ、是ハ設クルコトニ致シマシ
タ次第デアリマス、終リニ輸出統制稅ノコ
トニ付キマシテノ御尋デアリマスルガ、是
ハ法律案ニモ揭ゲテ置キマシタヤウニ、輸
出ニ對スル稅金、輸出ヲ阻碍スルヤウナ爲
ニ設ケタ稅金ト云フノデハ毛頭ナイノデア
リマシテ、寧ロ日本ノ輸出ヲ振興スル爲ニ
ハ、色々調節ヲシ、統制ヲシテ行カナケリ
ヤナラヌコトガ多イノデアリマス、ソレデ
比較的輸出力ノ旺盛ナル品目、只今ハ六品
目ヲ選擇ヲ致シマシタ次第デアリマスルガ、
ソレ等ノモノニ課稅致シマスルコトニナル
ト、是ハ海外ニ於テ轉嫁スルコトガ出來ル
ノデ、何モ輸出業者ノ負擔ニナル其ノ稅金
デ以テ、色々輸出ノ調節ヲスル用ニ立ツノデ
アリマスル爲ニ、此ノ稅ヲ設ケマシタヤウ
ナ次第デアリマシテ、輸出振興ノ一助ニモ
ナラウト、斯ウ云フ意味合カラ設ケマシク
次第デアリマス、御答申上ゲマス
〔國務大臣林銑十郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=8
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009・林銑十郎
○國務大臣(林銑十郞君) 只今菅原君カラ
私ニ御尋ニナリマシタ第一ノ箇條ハ、斯ク
ノ如キ一年限リノ租稅ノ如キハ所謂徵發ニ
外ナラヌモノデアル、斯カル暫定的ノ臨時
增徵法案ト云フヤウナモノハ適當デナイト
思フガ、大臣ノ所見ハドウカト云フ御質疑
デアリマス、大體稅法トシマシテ、一般原
則論トシマシテ、是ガ恆久的ノモノデナケ
レバナラヌト云フコトハ御說ノ通リト考ヘ
マス、併シ又臨時的ニ新シク稅ヲ設ケルト
カ、或ハ增稅ヲスルト云フコトモ亦已ムヲ
得ナイ場合ガアルト存ジマス、今回ハ組閣
勿々ノ際デ、國ナリ地方ヲ通ジマシテノ稅
制ヲ檢討ヲスルト云フ餘地ガ今回ハナカッタ
ノデアリマシテ、財政上ノ增收ヲ圖ル必要
上カラ、已ムヲ得ズ現行稅法ヲ基礎ト致シ
マシテ臨時的ニ增稅スルコトニ致シタノデ
アリマス、稅制ノ改正ヲ後ニ讓ッタヤウナ
次第デアリマシテ、已ムヲ得ナカッタコトト
存ジマス、次ニ御尋ニナリマシクコトハ此
ノ稅法ガ衆議院ニ提出セラレマシテ數十日
ヲ經タト云フコトニ付テ御尋ガアリマシタ
ガ、是ガ遲レマシタコトハ私モ甚ダ遺憾ニ
存ジテ居リマス、併シ其ノ審議ノ爲ニ政府
ガ何カ折衝ヲスル爲ニ數日間モ掛ッタト云
フヤウナコトモ御話デアッタヤウニ思ヒマ
スガ、サウ云フ點ハ多少ソコニ誤リガアル
ト存ジマス、之ヲ以テ御答ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=9
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010・菅原通敬
○菅原通敬君 只今總理大臣竝ニ大藏大臣
ヨリソレ〓〓御答辯ヲ伺ヒマシタガ、固ヨ
リ滿足ナル御答辯ヲ得タトハ考ヘマセヌ、
不滿足ノ點モ多少アルノデアリマスケレド
モ、此ノ際彼此申上ゲルコトヲ止メマシ
テ、此ノ場合、私ノ質問ヲ打切ルコトニ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=10
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011・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題トナリマシタ
臨時租稅增徵法案外五件ハ極メテ重大ナル
法案デゴザイマスガ故ニ、其ノ特別委員ノ
數ヲ二十五名トシ、其ノ指名ヲ議長ニ一任
スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=11
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012・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=12
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013・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 池田子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=13
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014・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔角倉書記官朗讀〕
臨時租稅增徵法案外五件特別委員
公爵一條實孝君侯爵中御門經恭君
侯爵池田宣政君伯爵有馬賴寧君
子爵靑本信光君子爵渡邊千冬君
子爵大河内輝耕君子爵岡部長景君
子爵松平康春君男爵〓誠之助君
男爵松尾義夫君男爵松岡均平君
男爵伊江朝助君男爵松平外與麿君
三浦新七君菅原通敬君
西野元君森平兵衛君
根津嘉一郞君下出民義君
野村德七君絲原武太郞君
水野甚次郞君大和田健三郞君
深井英五君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=14
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015・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第七、般
會計歲出ノ財源ニ充ツル爲特別會計ヨリ爲
ス繰入金ニ關スル法律案、日程第八、對支
文化事業特別會計法中改正法律案、日程第
九、一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲大藏省
預金部特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法
律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ
續委員長報告、是等ノ三案ヲ一括シテ議
題ト爲スコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=15
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016・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス、委員長西〓公爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ做フ〕
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲特別會
計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十二年三月十八日
委員長侯爵西〓從德
貴族院議長公爵近衞文麿殿
對支文化事業特別會計法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十二年三月十八日
委員長侯爵西〓從德
貴族院議長公爵近衞文麿殿
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲大藏省
預金部特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關ス
ル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十二年三月十八日
委員長侯爵西〓從德
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔侯爵西〓從德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=16
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017・西郷從徳
○侯爵西〓從德君 一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル
法律案、特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報
〓致シマス、十七日ノ午前ニ正副委員長ノ
互選ヲ行ヒ、引續キ委員會ヲ開會致シマシ
テ、付託議案卽チ一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法
律案、第二、對支文化事業特別會計法中改
正法律案、第三、一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲大藏省預金部特別會計ヨリ爲ス繰入
金ニ關スル法律案、右三案ヲ一括致シマシ
テ質疑應答ヲ行ヒ、翌十八日午前重ネテ之
ヲ行ヒマシタ、委細ハ速記錄ニ讓リマシテ、
極メテ簡單ニ案ノ〓要ヲ申上ゲタイト存ジ
やく、第一案ハ無利子、無擔保又期限モナ
ク特別會計ヨリ資金ノ繰入ヲ爲ス法案デア
リマシテ、一見甚ダ不合理ノヤウデアリマ
スガ、時局ノ關係上一般財政ノ最大負擔ハ
御承知ノ通リ軍事費デアリマシテ、特別會
計ニ於テハ是等ノ負擔ガアリマセヌ、從ッテ
比較的餘裕ガアリマスノデ、之ヲ實施スル
コトガ出來ル次第デゴザイマス、デ特別會
計ヲ壞サズ、維持シツヽ事情ノ許ス限リニ
於テ繰入ヲ爲スト云フ次第デアリマシテ、
今日ノ財政情況竝ニ特別會計ノ實情等ニ顧
ミマシテ、一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲
メ、當分ノ内每年度豫算ノ定ムル所ニ依リ
マシテ、通信事業、帝國鐵道、關東局、朝
鮮總督府、樺太廳及ビ南洋廳ノ各特別會計
ヨリ一般會計ヘ繰入金ヲ爲サシムルコトト
致シマシタノデゴザイマス、第二案ハ、對
支文化事業ハ基本金ノ利子ヲ以テ行フ事業
デアリマシテ、低金利ノ爲メ事業困難ヲ來
シマスノデ、此ノ際肩替リヲ行フト云フ案
デアリマシテ、山東懸案解決ニ關スル條約
竝ニ山東懸案鐵道細目協定ニ依リマシテ、
支那國政府ヨリ受領致シマシタ膠濟鐵道國
庫證劵ハ、總額四千萬圓デアリマシテ、是
ハ現在一般會計ニ於テ二千五百五十萬圓、
對支文化事業特別會計ニ於テ一千四百五十
萬圓ヲソレ〓〓保有致シテ居リマスルガ、
此ノ際其ノ全部ヲ對支文化事業特別會計ニ
一括保有セシムルコトヲ適當ト認メマスノ
デ、現ニ一般會計ニ於テ保有シテ居リマス
モノヲ、此ノ特別會計ニ歸屬セシムルコト
ト致シテ、其ノ代リニ特別會計ノ資金カラ
其ノ證劵ノ額面全額及ビ經過利子ニ相當ス
ル金額ヲ一般會計ニ繰入ルヽコトト致スノ
デアリマス、此ノ基金ヲ經濟開發的ニ使用
致シマシテ、間接ニ文化ニ益スルト云フ意
味モ含ミハ致シマセウガ、特ニ對支投資ニ
乘出スト云フ譯デハゴザイマセヌ、第三案
ハ、一般會計ノ財源特ニ社會的事業方面ニ
充ツル爲メ、郵便貯金ノ利下リニ依ッテ大藏
省預金部特別會計ニ於テ利益スベキ約八百
萬圓中六百萬圓程度ノ繰入金ヲ爲スト云フ
案デアリマシテ、御承知ノ如ク三年前ニ通
信特別會計ガ成立致シマシテ、事業ノ改良
竝ニ從業員ノ優遇ニ努メテ居リ、且右大藏
省特別會計ヨリ每年度他ノ法律ニ依ッテ繰
入ヲ爲スモノノ外ニ、更ニ六百萬圓ヲ限ッテ
一般會計ニ繰入ヲ爲スニ付テハ、法律ノ制
定ヲ必要トスルコトハ勿論デアリマスガ、
此ノ程度ナラバ先キニ申上ゲマシタ改良ト
優遇ニ左程支障ヲ生ゼザルガ故ニ、繰入ヲ
爲スト云フ案デアリマス、此ノ質疑應答中
ニ特ニ斯ウ云フコトガゴザイマシタカラ、
此ノ機會ニ申上ゲテ置キマスガ、多數ノ現
業員ヲ有スル鐵道省及ビ遞信省ニ於テ、此
ノ繰入ヲ爲ス爲ニ、現業員等ノ間接ニ受ク
ル利害ヲ考ヘナケレバナラナイカラ、宜シ
ク此ノ點ニ鑑ミテ、他日返濟スベキ金額ニ
付テ十分ノ政府ノ御顧慮ヲ願ヒタイト云フ
意味ノ質疑ガゴザイマシタカラ、此ノ際申
上ゲテ置キマス、終リニ討論ニ移リマシテ、
何等ノ意見モナク、採決ニ入リマシテハ全
會異議ナク原案ヲ可決致シマシタ、右御報
〓ヲ致シマス、終リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=17
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018・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 以上三案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=18
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019・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=19
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020・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=20
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021・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=21
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022・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=22
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023・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=23
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024・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 三案全部、委員
長報告通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=24
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025・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=25
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026・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=26
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027・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=27
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028・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=28
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029・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=29
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030・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 三案全部、第二
讀會ノ決議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=30
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031・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=31
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032・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ニテ日程ヲ全
部終了致シマシタ、次會ノ日程ハ決定次第、
彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニ
テ散會致シマス
午後零時二十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007003242X01819370319&spkNum=32
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