1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
絲價安定施設法案（政府提出）
絲價安定施設特別會計法案（政府提出）
漁船保險法案（政府提出）
漁船再保險特別會計法案（政府提出）
森林火災國營保險法案（政府提出）
森林火災保險特別會計法案（政府提出）
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會議
昭和十二年三月十二日（金曜日）午前十時三十四分開議
出席委員左の如し
委員長 紫安新九郎君
理事 小山邦太郎君 理事 飯田助夫君
理事 横川重次君
百瀬渡君 最上政三君
篠原義政君 助川啓四郎君
森幸太郎君 生田和平君
平野力三君 青木精一君
山崎釼二君
三月十日委員小山倉之助君辭任に付其の補闕として日比野民平君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
農林大臣 山崎達之輔君
出席政府委員左の如し
農林省蠶絲局長 井野碩哉君
本日の會議に上りたる議案左の如し
絲價安定施設法案（政府提出）
絲價安定施設特別會計法案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=0
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001・紫安新九郎
○紫安委員長 開會致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=1
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002・小山邦太郎
○小山委員 此際御許ヲ願ッテ極メテ簡單
ナ質問ヲ一ツダケ致シタイト思フノデアリ
マス、既ニ先日委員長ノ宣告ニ依リマシ
テ、質疑ハ打切トナッテ居ルノデアリマス
ガ、特ニ御許ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=2
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003・紫安新九郎
○紫安委員長 宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=3
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004・小山邦太郎
○小山委員 絲價安定施設特別會計法ノ附
則ノ第二項ニ「本會計ハ當分ノ內豫算ノ定
ムル所ニ依リ一般會計ニ繰入金ヲ爲スコト
ヲ得」斯ウナッテ居ルノデアリマスガ、一般
會計ヘノ繰入金ハ凡ソ如何ナル程度ノ金額
デアリ、サウシテ其繰入ルベキ金額ハドウ
云フ方面ニ使ハレル見込ヲ持ッテ居ラレル
ノデアリマスカ、更ニ又其繰入ルベキ金額
ハ當分ノ內トナッテ居リマスガ、當分トハ凡
ソ何年間ヲ豫期セラレテ居ルノデアリマセ
ウカ、御答ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=4
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005・井野碩哉
○井野政府委員 只今御質問ニナリマシタ
點ハ、此特別會計ガ出來マス迄ニ、多少沿
革ヲ持ッテ居リマスル問題デゴザイマスル
ノデ、御承知ノ如ク近年蠶絲業ノ非常時ニ
臨ミマシテ、色々ノ對策ヲ致シテ參ッタノ
デアリマスガ、其施設ヲ行ヒマス經費ノ財
源ト致シマシテ、現在政府ガ持ッテ居リマス
ル生絲ノ賣却代金ヲ以テ之ニ充ツルコト
ニ、財務當局トノ間ニ話合ヲ付ケテ參ッタ
ノデアリマスガ、今囘特別會計ヲ作リマス
ニ付キマシテ、其生絲ヲ特別會計ニ全部無
償デ保管轉換ヲ致スコトニ相成リマシタノ
デ、隨テ從來カラ約束ニナッテ居リマスル
財源關係モ、特別會計カラ一般會計ヘ繰入
レマセヌト、從來ノ施設ノ財源ニ充テヽ居ッ
タ分ガ無クナル譯ニナリマスノデ、此規定
ガ出來タノデアリマス、隨テ此特別會計カ
ラ一般會計ニ繰入レマス金額ト云フモノ
ハ、主トシテ蠶絲業ノ種々ナル施設、例へ
バ產繭處理統制施設、養蠶實行組合指導員
助成費、〓絲試驗場設置費ト云フヤウナモ
ノニ充テヽ參ッタノデアリマスガ、其財務當
局トノ話合ハ、大體一千百又ハ二百萬圓程
度ヲ、三箇年間ニ繰入ルヽト云フコトニー
-是ハ政府部內ノ約束デゴザイマスカラ、
別段議會ヲ拘束スルモノデモ何デモナイノ
デアリマスケレドモ、サウ云フ風ナ話合デ
色々ナ施設ガ出來上ッテ居リマスノデ、ソレ
ヲ目標ニ今後モ進ンデ參リタイ、斯ウ考ヘ
テ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=5
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006・小山邦太郎
○小山委員 御說明ニ依リマシテ大體諒承
致シマシタ、唯希ヒマス所ハ、絲價安定ノ
爲ニ用フベキ實力ハ、此特別會計法ノ定ム
ル所ニ依ッテ、現在政府ノ保有致シテ居リマ
ス生絲五萬俵、更ニ七千萬圓ノ證劵發行ノ
實力ノミデアリマシテ、之ヲ以テシテハ、
私共ハ寧ロ其力ノ足ラザルコトヲ遺憾ト致
シテ居ルヤウナ次第デアリマス、然ルニ只
今ノ御說明ニ依ッテ、一般會計ノ方ニ向フ三
箇年間ニ亙ッテー是モ蠶絲業助成ノ爲ニ
要スル費用ノ一部デアルカラ致シ方ハアリ
マセヌケレドモ、凡ソ一千百萬圓ヲ此生絲
ノ賣上代金ノ中カラ提供スルト云フコトニ
ナリマス、サウスレバソレダケ絲價安定ニ
對スル實力ヲ失フト云フコトニナルノデア
リマス、已ムヲ得ナイ事トハ存ジマスガ、
希クハソレヲ最大限度トシ、出來得ルナラ
バ更ニソレヲ減額シ、サウシテ又當分ノ內
ト云フコトヲ三箇年間ト御定メノヤウデア
リマスガ、出來得ルナラバ之ヲモット短縮
シテ、成ベク多クノ實力ヲ此特別會計ニ殘
ス爲ニ御努力アランコトヲ御願ヒ致シテ置
キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=6
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007・井野碩哉
○井野政府委員 御希望ノ點ハ能ク諒承致
シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=7
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008・紫安新九郎
○紫安委員長 休憩致シマス、午後一時カ
ラ開會致シマス
午前十時四十分休憩
午後一時三十二分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=8
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009・紫安新九郎
○紫安委員長 休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
マス、直チニ討論ニ入リマス-百瀨君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=9
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010・百瀬渡
○百瀨委員 近年繭絲價ノ異常ナル暴騰暴
落ノ結果、蠶絲業ノ不況ヲ來シマシテ、其
一起一伏ハ殆ド常ナラザル狀態ニ置カレテ
アルノデアリマシテ、一般ノ蠶絲業ヲ不安
ノ狀態ニ陷ラシメ、一面競爭纎維ノ進出ニ
依リテ、生絲消費量ノ減退ヲ來スト共ニ、
繭絲價ノ暴落、斯業ノ基礎ヲ危殆ニ瀕セシ
メ、延イテ國民經濟ニ多大ノ影響ヲ及ボス
次第デアリマスルカラ、繭絲價ノ激變ヲ防
止シテ絲價ノ安定國策ヲ樹立致シマスルコ
トハ、極メテ緊要ノコトデアリ、蠶絲界モ
亦齊シク翹望スル所デアリマス、昨年ノ產
繭處理法案通過ノ際ニモ、貴衆兩院共ニ全
會一致ヲ以テ本法案ノ提出ヲ政府ニ要望シ
タヤウナ次第デアリマシテ、又政府モ其必
要ヲ認メラレテ、今囘ノ提案ト相成ッタノ
デアリマス、而シテ本案ノ其內容ヲ檢討致
シマスルニ、大體ニ於テ異論ナキモノデア
リマスルガ、本法案ノ效果ヲ蠶絲業ノ全面
的ニ遺憾ナク之ヲ發揮スル爲ニハ、立法的
生產統制ノ必要ヲ生ズル場合ヲ豫想致シマ
スル時ニ、本法ノ第三十一條ニ規定シテア
リマスル蠶絲業團體ノ金融統制ヲ骨子トシ
テ居ル關係上其徹底ヲ缺クノ憂ガアリマス
カラ、產繭ノ生產統制ヲ實施セントスル場
合ニ、是ガ基本的施設トナリ、普通〓種ヲ原
〓種ニ附隨シマシテ、國家管理トシ、其過剩
生產ノ數量ヲ制限致シマシテ、濫造濫賣ノ
弊ヲ除キ、品質ノ改善ニ努力致シマスルト
共ニ、養蠶家ヲシテ思惑的ニ增掃ヲシ、若ク
ハ追掃等ヲスル其弊害ヲ除去シマシテ、
面繭ノ生產費ヲ低下スルト共ニ、一面ニハ
產繭ノ增產ヲ止ムルノ必要ガアリハシナイ
カ、故ニ普通蠶種ハ國家管理ニ當然スベキ
モノデアルト云フコトヲ提唱シタイノデア
リマス、又一面產繭制限ノ根本的基礎トナ
ルベキ桑園ノ調整ハ、是亦看遁スコトノ出
來ナイ緊要事ト致シマシテ、其方策ノ樹立
ヲ要望スル次第デアリマス、而シテ其桑園
ノ改植整理ノ如キモ、養蠶ノ主要府縣ト他
ノ府縣トハ氣候風土竝ニ生產勞力等ノ異ナ
ル關係ガアリマスカラ、異ナル各府縣ノ狀
態ニ卽スル調整モ是亦必要トスルモノデア
ルノデアリマス、而シテ又絲ノ價格ノ低落
ヨリ來ル所ノ損失ヲ一般養蠶家ニ轉嫁セシ
メザル爲ニ、絲價ノ安定ノ委員會ハ產繭處
理ニ伴フ繭價協定委員會ト連絡協調ヲ保チ
マシテ、本法ノ運用竝ニ產繭ノ處理ノ上ニ
遺憾ナキヲ期サナケレバナラナイト存ズル
ノデアリマス、更ニ特ニ附加スベキコトハ、
輸出生絲ノ品質ノ向上ニ努メマシテ、其販
路ヲ擴張スルコトハ勿論デアリマスルケレ
ドモ、國內ニ消費セラルベキ國用生絲ノ品
質ノ向上ガ稍〓閑却サレテ居ルカノヤウナ
只今ノ制度ハ洵ニ遺憾トスル所デアリマ
ス、私ハ國用生絲ガ漸次絹織物ト致シマシ
テ、一段ノ進步發達ヲ見ルベキ過程ニアリ
マスル狀態ハ、是ハ看遁スコトノ出來ナイ
コトデアリマシテ、否寧ロ益〓其發達助長ヲ
セシメナケレバナラナイト考ヘルモノデア
リマス、而シテ此國用絲ニ對シテ殆ド施設
ノ見ルベキモノヽナイ現狀ニ鑑ミマシテ、
輸出生絲同樣ニ國用絲ノ檢査所ヲ普及セシ
メテ、サウシテ之ヲ助長シマシテ、其發展
向上ニ資サナケレバナラナイト云フコトヲ
痛感スル者デアリマス、以上ノ蠶絲業ノ全
面的所見ニ基キマシテ、私ハ本法案竝ニ付
;
隨セル特別會計法案ニハ賛成デアリマスル
ケレドモ、サリナガラ只今申上ゲタ見地カ
ラ、附帶決議ヲシテ賛成ヲ致シテ置キタイ
ト存ズル者デアリマス、今其附帶決議ヲ朗
讀致シマス
附帶決議
絲價低落ヨリ來ルベキ損失ヲ養蠶家ノ
ミニ轉嫁セシメザル爲絲價安定委員會及
繭價協定委員會ノ運用竝產繭處理統制組
合ノ機能ヲ發揮セシムルニ遺憾ナキヲ期
スベシ
政府ハ速ニ普通蠶種ノ國家ノ國家管理
竝桑園ノ調整ニ關スル適切ナル方策ヲ樹
立スベシ
國用生絲需要增進ノ爲品位ノ向上ト取
引ノ公正ヲ期スルハ極メテ緊要ナリ仍テ
政府ハ國用生絲檢査所ノ普及ニ對シ助成
ノ途ヲ講ズベシ
此決議ヲ附帶致シマシテ本法案ニ賛成ノ
意思ヲ表明スル者デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=10
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011・紫安新九郎
○紫安委員長 横川君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=11
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012・横川重次
○橫川委員 私ハ政友會ヲ代表致シマシ
テ、本案ニ對スル賛成ノ意味ノ討論ヲ致シ
マス、絲價安定ニ關シマシテハ、朝野ヲ擧
ゲマシテノ長年ノ要望デアリマシテ、年々
ノ議會ニ於キマシテモ是ガ達成ノ聲ハ實ニ
熱心ナルモノガアッタノデアリマス、政友會
ニ於キマシテモ、率先是ガ達成ニ熱心ナル
努力ヲ續ケテ來タノデアリマスルガ、其第
一ト致シマシテ、原蠶種ノ國家管理案、續
キマシテ產繭處理統制法案、及ビ輸出生絲
販賣統制ニ關スル法案ノ實現ニ付キマシ
テ、努力ヲシテ參ッタノデアリマス、前二案
ニ付キマシテハ、旣ニ成立ヲ見タノデアリ
マスルガ、所謂絲價ノ安定ヲ目途ト致シマ
スル所ノ輸出生絲ノ販賣統制案ニ付キマシ
テハ、未ダ實現ノ運ビニ至ラナカッタノデ
アリマスルガ、此考ヘラレマシタル案ト同
樣ノ趣旨ニ則リマシタル絲價ノ安定ヲ主眼
ト致ス今囘ノ政府提出ノ絲價安定法案、是
ガ議題ト相成ッテ居ルノデアリマシテ、全ク
趣旨ト致シマシテハ、年來ノ我黨ニ於キマ
スル主張ト一致スルモノデアリマシテ、左
樣ナ見地カラ致シマシテ、此法案ニ賛成ヲ
致ス者デアリマス、討論ノ詳細ニ付キマシ
テハ軈テ本會議ニ於テ逐次申述ベル考デア
リマスルカラ、此際ハ大體ニ止メマシテ省
略ヲ致ス考デアリマスルガ、大體本案ノ成
敗ノ目安ハ、主トシテ其運用ノ如何ニ掛ッテ
居ルト思フノデアリマス、而モ其運用ノ根
幹ヲ爲シマスルモノハ、所謂買入價格及ビ
賣渡價格ノ定メ方ニ依リマシテ非常ナル變
化ヲ來スモノト思フノデアリマス、此點ニ
付キマシテハ、本委員會ニ於キマシテモ、
本案ノ第十一條ニ關シマスル、所謂繭生產
費ニ關スル條項ニ付キマシテ種々論議ガ
アッタノデアリマシテ、吾々ノ考ヘマスル所
ニ依リマスルト、米穀統制案ニ於キマシテ
ハ、所謂米價指數ト云フモノガ算出ノ根柢
ニ參酌セラレテアルノデアリマスルガ、本
案ニ於キマシテハ、所謂現行ノ絲價、生絲
ノ値段ト云フモノガ、全然計算ノ基礎ニ入ツ
テ參ラナイノデアリマシテ、是ガ米穀統制
案ト本案トノ所謂制低制高ヲ算出シマスル
上ニ於キマシテ最モ大ナル違デアルト思フ
ノデアリマス、サウ云フ立場カラ考ヘテ見
マスルト、政府ガ現在非常ニ所謂恐レテ居
リマスル制低價格ヲ比較的高イ値頃ニ於テ
定メマスルト國庫ニ對シテ非常ナル負擔ヲ
掛ケマスルトカ、乃至ハ生產過剩ヲ招來ス
ルトカ、サウ云フヤウナ杞憂ヲ非常ニ政府
ニ於カレテハ懷カレテ居ルノデアリマスル
ガ、是ハ經濟界ノ全體ノ關係ヨリ來リマス
ル、所謂金ノ解禁トカ再禁止トカ、サウ云
フ方面ノ不可抗的ナ原因ニ依リマシテノ絲
價ノ低落ニ關スル過去ノ經驗ヲ餘リニ重大
ニ考ヘマシテ、現在直接ニ安定ヲ期シマス
ル本案ノ目的ニ於テ、多少其不可抗的原因
ヲ過重ニ考へ過ギテ居ルカノ感ガアルノデ
アリマシテ、運用ニ當リマシテハ、繭生產
費ノ大部分ヲ補償シ得ル如キ計算ノ基礎ヲ
立テラレンコトヲ私ハ希望スル者デアリマ
ス、尙ホ只今百瀨委員カラ附帶決議ノ御希
望ガアッタノデアリマスルガ、政友會ニ於キ
マシテモ、同樣ノ趣旨ノ附帶決議ヲ考ヘテ
居ルノデアリマス、附帶決議ハ三項デアリ
マスルガ、之ヲ朗讀致シマス
附帶決議
絲價低落ヨリ來ルベキ損失ヲ養蠶家ノ
ミニ轉嫁セシメザル爲絲價安定委員會及
繭價協定委員會ノ運用竝產繭處理統制組
合ノ機能ヲ發揮セシムルニ遺憾ナキヲ期
天ぷ)
ー、政府ハ速ニ普通蠶種ノ國家管理竝桑園
ノ調整ニ關スル適切ナル方策ヲ樹立スベ
一、國用生絲需要增進ノ爲品位ノ向上ト取
引ノ公正ヲ期スルハ極メテ緊要ナリ仍テ
政府ハ國用生絲檢査所ノ普及ニ對シ助成
ノ途ヲ講ズベシ
以上三項デアリマス、此附帶決議ヲ附シ
マシテ本案ニ賛成スルモノデアリマス、之
ヲ以テ討論ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=12
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013・平野力三
○平野委員 私ハ本案ニ對シマシテ、三ツ
ノ希望條項ヲ付シマシテ贊成ヲ致シマス、
詳細ニ亙リマシテハ本會議ニ於キマシテ申
述ベタイト思フノデアリマス、本日ハ三條
項ニ對スル極メテ簡單ナル說明ヲ致シタイ
ト思ヒマス、先ヅ最初ニ條項ヲ朗讀致シマ
シテ、ソレニ對スル說明ヲ致シタイト思ヒ
マス
希望條項
本法案運用ニ當リ、常ニ養蠶農民ノ
立場ヲ留意シ、繭ノ生產費ヲ補償スベシ
二、絲價安定委員會ニハ必ズ養蠶農民ノ
代表ヲ入レルベシ
三、政府ハ蠶絲業對策ヲ立ツルニ當リ養
蠶業ヲ以テ主タル產業トスル府縣ト、然
ラザル府縣トヲ劃一的ニ取扱フコトナク
前者ニ對シテハ特ニ考慮ヲ拂フベシ
以上デアリマス、此第一ノ繭ノ生產費ヲ補
償スベシト云フ希望條件ニ付キマシテハ、
農林大臣及ビ蠶絲局長ニ於カレマシテハ、
本法案ガ繭ノ生產費ヲ補償スベキ使命ヲ以
テ生レタモノデハナイト云フコトヲ屢〓述
ベラレタルニ拘ラズ、此條件ヲ附スルコト
ニ付キマシテハ、大臣或ハ蠶絲局長ニ於テ
御不滿ノ意思ヲ表セラルヽカモ知レナイト
思フノデアリマスルガ、併シ私ガ屢〓申上ゲ
マシタヤウニ、繭ノ生產費ト云フモノヲ補
償スルニアラザレバ、農民ノ立前カラ見マ
スルナラバ、本法案ト云フモノハ製絲業
者ノミノ補償ヲ致シマシテ、養蠶農民ヲ補
償スルモノデナイト云フ疑惑ガ附イテ廻ル
ノデアリマス、是ハ折角此法案ニ對シマシ
テ、農林當局ガ非常ナル熱意ヲ持チ、又我
國ノ蠶絲業對策ノ法律案ト致シマシテハ、
或ハ是ガ最後的ナモノデアルト云フヤウナ
見解ノ下ニ立案サレマシタ法律案ト致シマ
シテハ、ドウシテモ養蠶農民ノ希望ト云フ
點ヲ重點ニ考ヘマスルト、此法律案ノ運用
ニ當リマシテ、繭ノ生產費ヲ補償スベシト
云フコトハ、絕對ノ希望條件デアルノデア
リマス、而モ繭ノ生產費ニ付キマシテハ、
色々〓究其他ヲ致シマシタ結果ニ依リマス
ルト、例ヘバ繭ノ生產費トシテ一番主要ナ
ル部分ヲ占メマスル所ノ桑ト云フモノハ、
要スルニ肥料代金ト小作料ト云フモノガ、
其大部分ヲ占メテ居ルノデアリマスルカラ
シテ、農林大臣ガ此肥料問題、或ハ小作料
問題等ニ向ッテ、此法律案トハ別デアルケレ
ドモ、本案運用ノ途上ニ當リマシテ、是等ノ
點ニ付テ十分ノ留意ヲサルヽコトニ依ッテ、
農民ノ繭ノ生產費ト云フモノニ對シテ、之
ヲ補償サルヽト云フコトハ、常ニ此法案運
用ノ途上ニ於テ、御考慮ヲ煩ハスベキモノ
デアルト云フコトヲ申上グル者デアリマ
ス
尙ホ又特別會計法ニ於キマシテ七千萬
圓.及ビ滯貨生絲ノ問題ガアリマスルガ、
是ハ蠶絲局長ガ屢〓申サレタコトデアリマ
スルガ、大藏省ニ於テ此點ヲ容認シナイノ
デアル、是ダケノ金額ヲ取ラルヽコトニ付
テモ蠶絲局長、或ハ當時ニ於キマスル所ノ
農林當局ガ隨分苦心ガアッタラウト云フコ
トハ推測致シマスルケレドモ、蠶絲業對策
ト云フモノガ、必シモ現在ノ是ダケノ金額
ノミヲ以テ、滿足スベキモノデハナカラウ
ト思フノデアリマス、色々ナ產業ノ補助ノ
立場ニ於キマシテハ、時ニ政府ハ相當ノ金
ヲ出シテ援助ヲ致シマスルモノデアリマス
ルガ故ニ、日本ノ千五百萬人ノ農民ノ生活
ニ係リマスル所ノ、重大ナル養蠶業保護ト
云フモノニ當リマシテハ、必シモ是ダケノ
金ヨリ絕對出ナイト云フヤウナ、サウ云フ
退嬰的ナ考ヲ持タレズシテ、將來繭ノ生產
費ヲ補償スルコトガ出來ナイ場合ニ於テ
ハ、更ニ斯ウ云フヤウナ特別會計法ノ中ニ
於テ、大藏當局ニ談判ヲサレテ、相當ニ養
蠶業ヲ保護スルヤウナ意味ニ於テ考慮サレ
ルナラバ、又繭ノ生產費ヲ補償スルコト絕
對ニ不可能ニアラズト信ズルノデアリマ
ス、尙ホ又此法案運用ニ當リマシテ、國內
ニ於ケル生絲ノ消費、斯ウ云フコトガ相當
ニ考ヘラレテ居ルヤウデアリマスガ、此國
內消費ノ增大ト云フヤウナ點ニ付キマシテ
モ、更ニ一層奮勵努力ヲセラレルナラバ、
畢竟スルニ生絲ノ値段、繭ノ値段ト云フモ
ノヽ關係カラ申シマシテ、農民ノ繭ノ生產
費ヲ補償シテ行ケルヤウナ微妙ナル所ノ運
用ト云フコトモ、是亦相當ニ考慮出來ルト
私ハ存ズルノデゴザイマシテ、此法案ニ付
キマシテ農林大臣及蠶絲局長ハ、屢〓是ハ繭
ノ生產費ヲ擁護スル案デハナイト云フコト
ヲ繰返サレマシタケレドモ、私ハ本案ニ贊
成致シマス所ノ、私ノ切實ナル所ノ希望條
件ト致シマシテ、此法案運用ニ當ラレテハ、
ドウシテモ繭ノ生產費ト云フモノニ對シテ
ハ、之ヲ補償スルト云フ根本的ナ、農民ニ
對スル極メテ眞實ナル所ノ態度ヲ以テ運用
セラレンコトヲ希望スルノデゴザイマス
第二ノ絲價安定委員會ニ養蠶農民ノ代表
ヲ入レル、此點ニ付キマシテハ農林大臣ガ
本法案ノ質疑ノ際ニ於キマシテ、相當誠意
アル態度ヲ表明サレテ居ルノデアリマスカ
ラシテ、私ハ此點ニ關シマシテハ、農林大
臣ノ運用上ニ於ケル誠意ニ信賴致シマシ
テ、且ツ又吾々ノ質問ニ對シマス所ノ御答
辯ヲ極メテ善意ニ解釋ヲ致シマシテ、是ハ
大臣ノ今後ニ於キマス所ノ、吾々ノ信賴ヲ
裏切ラザルヤウニ運用サレルモノデアルト
云フコトヲ信ジマシテ、之ニ對スル說明ハ
省略致シマス
第三ノ蠶絲業對策ヲ立テラレルニ當ッテ、
養蠶ヲ以テ主タル產業トスル府縣ト、然ラ
ザル府縣ト云フモノヲ區別ヲサレタイ、是
ハ私ノミナラズ屢〓多數ノ委員諸君カラモ
提唱サレタコトデアリマスガ、要スルニ山
梨縣等ニ於キマシテハ、農民ト言ヘバ大體
米ヲ作ルヲ以テ本業トスルヤウニ考ヘテ居
リマスケレドモ、決シテサウデハナイノデ
アリマス、數箇町村ニ於キマシテハ、殆ド
米ヲ一粒モ作ラズシテ、見渡ス限リ桑園ヲ
以テ生キテ居ル、是等ノ農民ニ對シマシテ
ハ、政府ガ米穀統制法、米穀自治管理法ニ
依リマシテ、米價ヲ擁護サレテモソレハ迷
惑デアル、米ヲ買ッテ食フ所ノ農民、養蠶デ
金ヲ取ッテ、ソレデ米ヲ買ッテ食フ農民ノ立
場カラ見マシタナラバ、農民ニ對スル政策
上所謂高米價政策ヲ執ッテ居ラレテ、農民ノ
擁護ナリト考ヘテ居ルノハ、養蠶農民ニ對
シテ認識不足、不忠實ナル對策デアリマス
ルガ故ニ、山梨縣ニ於キマシテハ一年ニ六
十萬石ノ米ヲ消費シマスケレドモ、其生產
スル米ハ四十萬石デ、二十萬石ハ他府縣カ
ラ之ヲ買ハナケレバナラナイ、是ハ敢テ山
梨縣ノミナラズ、全國相當調ベテ見タナラ
バサウ云フ養蠶ヲ以テ其生命トシテ居ル
府縣ガアラウト思フ、斯ウ云フ府縣ニ對ス
ル考ヘ方ト、又色々統計ニ依ッテ調ベテ見ル
ト分ルヤウニ、繭ノ値段ガ相當引合ヒサウ
ダカラ、之ヲヤッテ見ヨウ、絲價安定法ニ
依ッテ漸ク繭ガ幾ラカ高クナッテ來タカラ、
相當ニヤッテ見ヨウト云フヤウナ、ヤッテモ
ヤラナクテモドウデモ宜イヤウナ府縣ノ養
蠶ニ對シマス所ノ觀念ト、繭ガ幾ラ下ッテモ
ドウシテモ之ヲヤラナケレバ食ッテ行ケナ
イ、是以上ニハ他ノ產業ニ手ヲ出スコトガ
出來ナイト云フヤウナ、宿命的ナ釘付ケニ
ナッテ居ル所ノ養蠶農民トノ間ニ於ケル對
策ニ付キマシテハ、當然是ハ別箇ニ考ヘラ
レテ然ルベキモノデアルト私ハ信ズル、殊
ニ桑園整理等ニ當リマシテモ、養蠶ヲ以テ
主トスル縣ト、然ラザル縣ニ對スル對策ニ
關シマシテハ、固ヨリ當局モ十分御考デア
ラウト思ヒマスガ、特ニ絲價安定法案ヲ通
過致シマスル時ニ際シマシテ、私ハ此希望
條件ヲ附シマシテ、當局ニ固ク私ノ意思ヲ
申上ゲル次第デアリマス、是レ以上詳細ニ
亙リマス事ハ、本會議ニ於テ申述ベルコト
ニシマシテ、本日ハ私ハ是ダケノ希望條件
ヲ附シ、是ダケノ討論ニ依ッテ本案ニ贊成ノ
意思ヲ表明致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=13
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014・青木精一
○靑木委員 私ハ只今議題ニナッテ居リマ
スル絲價安定施設法案外一件ニ對シマシテ
ハ、民政、政友、昭和會三派ノ一致協定ニ
ナル所ノ三箇條ノ附帶決議ヲ附シテ、原案
ヲ可決スルト云フコトニ贊成ノ意ヲ表シマ
ス、其附帶決議ハ百瀨君、橫川君ノ讀上ゲ
タノト同文デゴザイマスカラシテ朗讀ヲ省
略致シマス、此贊成ノ理由ハ本會議ニ留保
致シマス、尙ホ委員長ニ希望致シテ置キマ
スルガ、此委員會ノ報告ヲ爲サル時ニ、各
附帶決議ガ三派ノ一致協定ノ下ニ成ルモノ
デアルト云フコトヲ、明瞭ニ本會議ニ御報
告願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=14
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015・山崎釼二
○山崎委員 私ハ只今討論ニ付サレテ居リ
マス絲價安定施設法案竝ニ外一件ニ對スル
意見ヲ申述べマス、端的ニ申上ゲマスレバ、
社會大衆黨ノ本案ニ對スル態度ハ反對デゴ
ザイマス、併ナガラ絲價安定其モノニ對シ
テハ反對デハナイノデアリマス、勿論去ル
特別議會ニ於キマスル產繭處理統制法案ノ
論議中ニ於キマシテモ、私達ハ極力其絲價
ノ安定ヲ唱ヘテ參リ、尙ホ輸出生絲販賣統
制法ヲ速ニ次ノ議會ニ出セト云フコトマデ
附帶決議トシテ贊成シ、是ガ可決ニ加ッタモ
ノデアリマスルカラ、其點ニ於キマシテハ十
分ニ吾々ノ意ノアル所ハ、分ッテ戴ケルト思
フノデアリマス、唯茲ニ盛ラレマシタル法
案ト云フモノガ、其中ニハ可ナリ當局ニ於
カレテモ努力ヲサレ、又聽クベキ方法ガ澤
山アルヤウニ思ハレルノデアリマス、又只今
民政、政友、昭和會ノ三派ノ共同提案ニナ
ル所ノ附帶決議ニモ、吾々ノ言ハント欲ス
ル所ヲ十分ニ述ベラレテ居ル部分モアルノ
デアリマス、敢テ其附帶決議ニ何處マデモ
反對ヲスルト云フ意思ハ持ッテ居リマセヌ
ケレドモ、遺憾ナガラ本法ニ對スル全體的
ナル反對ノ立場ニアリマスル以上、ソレニ
對シテ贊成出來ナイ結果ニ陷ッテ居ル譯デ
アリマス、甚ダ此點ハ吾々ト致シマシテモ
殘念ナ立場デアリマス、ソコデ左ノ四點ヲ
擧ゲマシテ我黨ノ本法案ニ對スル反對ノ理
由ヲ明カニシタイト思ヒマス
反對ノ理由ノ第一ハ、絲價ノ暴落ヲ抑ヘ
ントシテ手持生絲ノ賣出ヲ爲スハ、繭絲價
ノ安値維持政策トナリ、又最低價格ニ依ル
生絲ノ買上ニ當リテハ、繭生產費ヲ補償セ
ズ,斯クテハ全國二百萬戶一千萬人ノ養蠶
農民ヲ犠牲ニスルモノナリ、第二ノ反對ノ
點ハ更ニ斯ル生絲安値維持政策ハ生產費ノ
切下ヲ强行セシメル結果、〓結權ノ無キ三
十六萬人ノ製絲勞働者ノ賃銀ヲ低下セシ
メ、剩ヘ中小製絲業者ハ益〓大製絲ニ壓倒
サルヽ結果トナル、第三點ハ、絲價安定施
設組合ニ生絲輸出業者及ビ問屋ヲ自由加入
制トシタルハ、生絲ノ統制アル販賣調節ヲ
爲シ得ザル結果トナリ、絲價安定ハ期シ得
ラレズ、第四點ハ、人絹相場ノ三倍線ヲ標
準ニ絲價安定ヲ爲サントスルハ、蠶絲業ノ
特異性ヲ失ハシメ、且ツ發達極マリナキ人
絹工業ノ從屬物トスルモノニシテ、却テ將
來ノ蠶絲業ヲ危機ニ導クモノナリ
此四點ガ我黨ノ本案ニ全體的ニ於テ贊成
ヲ爲シ得ナイ理由デゴザイマス、細カイコ
トハ本會議ニ於テモ十分ニ展開サレルト思
ヒマスルケレドモ、二三理由ヲ申上ゲテ見
マスレバ少クトモ、二百萬戶一千萬人ノ養
蠶農民ノ生產費ヲ補償シナイト云フ上ニ立ツ
テノ絲價安定政策ハ、農民ノ對策デナイ、
是ガ第一點デアリマス、此點ニ付キマシテ
ハ政府當局ガ屢〓繰返シテ、養蠶農民ノ生產
費ヲ補償スルコトハ、却テ增產ヲ誘致セシ
メ、競爭纎維ニ對スル對抗力ヲ失ハシメル
自殺行爲デアルト言ッテ居リマスガ、併ナガ
ラ農民ハ少シデモ手間ヲ省キ、費用ヲ省キ、
生產費ヲ少クシテ、其利益ヲ得ヨウトスル
コトニ、朝ナタナ非常ニ努力シテ居ルモノ
デアル、然ルニ政府ガ斯樣ナ暴落ノ際ニ買
入スル時ニ、生產費ヲ補償スルカラト云ツ
テ、ソレニ依ッテ增產ヲ誘致スルトカ、或ハ
生產費ノ切下ニ努力シナイト云フ風ナ上滑
リナ考ヘ方ハ、少クトモ今日養蠶農民ノ立
場トシテハ考ヘ得ラレナイ、全ク空想デア
ル、今日一錢デモ利益アル方ニ向ケテヤッテ
行カウトスル所ガ、農民ノ努力デアリマス、
其努力ニ對シテ、一面米價ノ生產ニ當ッテハ
之ヲ補償サレル、而モ米穀ハ國民ノ必需品
デアリマス、是ハ三井物產、三菱商事ノ貿
易デナイガ故ニ、是ガ生產費ヲ補償スルト
云フコトニナッテ來テ、生絲ハ少數ナル輸出
業者ヤ問屋業者ノ營利品デアルガ故ニ、其
生產ニ當ッテ居ル農民ノ生活ヲ保護スベク、
生產費ヲ補償シナイト云フコトハ、洵ニ吾
吾ハ農民對策トシテ缺クル所アリト云フ斷
定ヲ下サヾルヲ得ナイノデアリマス、是ガ
其理由デアリマス
第二點ト致シマシテハ勢ヒ養蠶過程ト、製
絲過程ニ於ケル生產「コスト」ヲ、强硬ニ引
下ゲルト云フヤウナ一ツノ壓力ガ加ハッテ
參ルト思ヒマス、サウナレバ製絲過程ニ於
ケル一番弱イ、團結力ヲ持タナイ勞働賃銀
ヲ壓縮サレルコトハ明デアリマス、此勞働
對策ヲ持タナイ日本ノ現在ノ狀態ニ於テ、
唯單ニ生產費切下ト云フコトヲ、今日マデ
ノ狀態ニ於テ强行サレルナラバ、弱イ農民
勞働者ガ其負擔ヲ負ハナケレバナラヌ、斯
ウ云フ結果ニナル、若シ之ヲ產業ノ合理化
ニ依ッテ、强ク進メテ行カウトスルナラバ、
今ノ營業製絲ト、組合製絲トノ狀態ヲ、モッ
ト改善シテ行カナケレバナラヌ筈デアリマ
ス、殊ニ大製絲家ガ多條製絲ノ有力ナル機
械ヲ獨占致シテ居リマシテ、ソレニ對抗スル
中小製絲ト云フモノハ、殆ドドノ部門ニ於
テモ生產費切下ノ餘地ヲ持タナイカラ、益〓
是ガ片倉、郡是ノ大製絲家ヲ中心トセル大
企業ノ制覇ニハ役立ツケレドモ、中小製絲
業者ハ全ク隷屬的ニ、壓倒サレル立場ニ追
ヒヤラレルト吾々ハ考ヘルノデアリマス、
此點ガ第二點ノ反對理由デアリマス
第三點ハ絲價安定施設組合ニ、何故ニ生
絲販賣ノ、而モ相場ノ一番關係セル部分デ
アリマスル所ノ問屋業者ト輸出業者ヲ入レ
ナカッタカ、殊ニ特別議會ニ於ケル附帶決議
ハ、輸出生絲販賣統制ヲ行フベシト云フコ
トノ附帶決議ニナッテ居ッタ譯デアリマス、
而モ此「ストック」政策ニ依ッテ、市場價格ヲ
操作サヘスレバ、ソレデ以テ販賣統制トナ
リ得ルト云フ政府ノ御見解ニ對シマシテ
ハ、今日消費國ニ於ケル物價ノ調節ノ力ヲ
吾々ハ持ッテ居リマセズ、同時ニ國內ニ於テ
モ物價ノ調節ノ力ヲ持チ得ナイ狀態ニ置カ
レ、而モ輸出量ニ對スル適正ナル調整ノ手
段ヲ持ッテ居リマセヌ、而モ三井物產、三菱
商事、旭「シルク」、原合名、或ハ片倉製絲
郡是「シルク·コーポレーシヨン」ノ如キ、
鐘紡ノ如キ有力ナル五本ノ指ニ數ヘラレル
大蠶業家ノ手ニ握ラレテ居ル輸出貿易ニ對
シ、何等カノ强制的ナ力ヲ加ヘナケレバ、
此絲價ノ安定ト云フコトハ期シ得ラレナ
イ、殊ニ短期波動ニ於ケル所ノ市場操作ニ
於テ、十分ナル力ヲ成シ得ナイ結果ハ、絲
價ノ安定ト云フコトハ決シテ期シ得ラレナ
イモノデアルト、吾々ハ左樣ニ解釋スルノ
デアリマス、其爲ニ第三點ハ反對スルノデ
アリマス
其次ニ最後ニ四點トシテ反對申上ゲルコ
トハ、人絹相場ノ三倍線ヲ標準ニ致シマシ
テ、之ヲ超セバ賣出シテ、市場操作ニ依ッテ
暴騰ヲ抑ヘルト言ヒマスケレドモ、今日他
ノ競爭纎維ノ相場ヲ標準ニコチラノ蠶業ヲ
統制スルト云フコトハ、一面理想デハアリ
マセウケレドモ、人絹ノ發達過程ト云フモ
ノハ極リナイモノデアル、此極リナイモノ
ニ對シテ、原始產業ニ等シイヤウナ製絲業、
養蠶業ガ其「コスト」ノ點ニ於テ競爭ヲナ
シ、或ハ市場ノ點ニ於テ競爭ヲナス、斯ウ
云フコトニナッテ來レバ、到底是ハ敵ヒ得ナ
イ點デアル、爲ニ私達ハ人絹ノ相場ヲ標準
ニシテ、絲價ノ安定ヲ爲サントスル其著目
點ニ非常ナ誤ガアルノデハナイカ、斯ウ云
フヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、若シサ
ウ云フコトニ依ッテ人絹ガ假ニ暴落ヲ來タ
シ、或ハ人絹產業ノ高度化發達ニ依ッテ、生
產費ガ切下ゲラレ、其價格ガ下ッテ來レバ、
ソレニ從ッテ益〓切詰得ナイ製絲業ト養蠶業
ガ壓迫ヲ被ッテ其結果ハ退嬰ニ退嬰ヲ以テ
シナケレバナラヌト云フコトニナッテ、遂ニ
日本ノ蠶業ハ完全ニ人絹工業ニ征服サレ、
其結果ト致シマシテハ、農民ノ受クル所ノ
損害ト云フモノハ、甚大ニナッテ來ハセヌ
カ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、殊ニ人絹業ト
天然絹絲トノ特異性ヲ、之ニ依ッテ若シ失フ
ヤウナコトニナッタナラバ、是ハ天然絹絲ノ
致命的ナ打撃デアルト思フ、人絹工業ハ人
絹工業、天然絹絲ハ又天然絹絲的ノ特異ナ
ル桑園カラ、上簇カラ、製絲カラ販賣ニ至ル
マデ、或ハ其製品ニ至ルマデ特異性ヲ持ッテ
居ル、而モ其オ客サンニモ特異性ガアル、
其發展シテ行ク方面ニ對シマシテモ特異
性ガアル、此特異性ヲ何等考ヘズニ、人絹
ト競爭頡頑シヨウト云フコトハ、是ハ間違ッ
タ觀點ノ上ニ立ッタル考デハナイカ、斯樣ニ
考ヘテ居ルノデアリマス、勿論之ニ對スル
政府當局ノ御意見モ種々伺ヒマシタガ、結
論ニ於テ人絹工業ト正面的對立スルヤウナ
對策、竝ニ其價格トノ比例ヲ以テ、コチラ
ノ價格ヲ維持シヨウトスル政策ハ、ソレハ
全ク誤レル政策デハナイカ、斯樣ニ考ヘテ
居ルノデアリマス、是ガ我黨ノ四點ニ分類
致シマシタル本案ニ對スル反對ノ意向デア
リマス、此點ニ付キマシテハ部分的ニ於テハ
各派ノ諸君ニモ御首肯ガ願ヘル點ガアルト
思フ、併ナガラ總體的ニ於キマシテ、吾々ノ
反對意見ニ贊同セラレザルコトハ、是ハ致
方ナイ點デアリマス、社會大衆黨ト致シマ
シテハ、飽マデ養蠶農民ノ立場カラ、製絲
勞働者ノ立場カラ、全蠶絲業ノ獨自的ナ日
本ノ發達ノ將來ヲ考ヘマス時ニ、今日此程
度ノ絲價安定策ニ對シ不滿足デアリ、欠陷
ダラケデアル、之ヲ以テ止マルベカラザル
ト云フコトヲ、十分ニ考ヘマスルガ故ニ、
本案ニ對シテ遺憾ナガラ反對ノ意ヲ表明ス
ル者デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=15
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016・紫安新九郎
○紫安委員長 討論ハ終局致シマシタ、是
ヨリ採決致シマス、先ヅ絲價安定施設法案
ニ付テ採決致シマス、本案ニ贊成ノ諸君ハ
起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=16
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017・紫安新九郎
○紫安委員長 起立多數、本案ハ可決セラ
レマシタ-次ニ民政黨ノ百瀨君、政友會
ノ橫川君、昭和會ノ靑木君、此三君提案ノ
本案ニ附スベキ附帶決議ニ付キマシテハ、
同一デアリマスカラ一括シテ採決致シマ
ス、之ニ贊成ノ諸君ハ起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=17
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018・紫安新九郎
○紫安委員長 起立多數、此附帶決議ハ決
定致シマシタ-次ニ絲價安定施設特別會
計法案ニ付テ採決致シマス、本案ニ贊成ノ
諸君ハ起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=18
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019・紫安新九郎
○紫安委員長 起立多數、本案ハ可決セラ
レマシタ、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後二時十五分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00819370312&spkNum=19
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