1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年二月二十三日(火曜日)
午後一時五十七分開議
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議事日程 第十二號
昭和十二年二月二十三日
午後一時開議
質問
一 河川の水利開發統制及淀川の水利開發に關する質問(中山福藏君提出)
二 尾去澤鑛山中の澤鑛滓沈殿池ダム決潰に關する質問(川俣清音君外一名提出)
三 戰役殊勳者待遇に關する質問(中村又一君提出)
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第一 軍事救護法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 北海道舊土人保護法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 郵便法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 絲價安定施設法案(政府提出) 第一讀會
第五 絲價安定施設特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第六 アルコール專賣法案(政府提出) 第一讀會
第七 一般會計歳出の財源に充つる爲特別會計より爲す繰入金に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 對支文化事業特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第九 一般會計歳出の財源に充つる爲大藏省預金部特別會計より爲す繰入金に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十 農地法案(政府提出) 第一讀會
第十一 鐵道敷設法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
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001・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員中山福藏君提出河川ノ水利開
發統制及淀川ノ水利開發ニ關スル質問ニ
對スル答辯書
衆議院議員川俣〓音君外一名提出尾去澤
鑛山中ノ澤鑛滓沈澱池ダム決潰ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
衆議院議員中村又一君提出戰役殊勳者待
遇ニ關スル質問ニ對スル答辯書
(以上二月二十三日受領)
河川ノ水利開發統制及淀川ノ水利開發
ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十一年十二月二十六日
提出者中山福藏
河川ノ水利開發統制及淀川ノ水利開
發ニ關スル質問主意書
一河川ノ水利ヲ開發シ其ノ利用ヲ統制
增進スルハ方今ノ我カ國情ニ鑑ミ幾多
重要問題ヲ解決スヘキ基本的國策ニシ
テ政府ハ速ニ之カ計畫ニ著手シ其ノ實
現ヲ期スルノ要アリ政府ノ之ニ關スル
所見如何
二淀川水系ノ利用開發ノ爲政府ニ於テ
琵琶湖ニ相當ノ施設ヲ爲スハ近畿地方
ニ對シ將來發展ノ原動力ヲ與フル所以
ニシテ眞ニ國家的重大問題ナリト認ム
政府ハ現ニ如何ナル施設ヲ爲スノ覺悟
ヲ有スルヤ
右及質問候也
昭和十二年二月二十三日
內閣總理大臣林銑十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員中山福藏君提出河川ノ水利開
發統制及淀川ノ水利開發ニ關スル質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員中山福藏君提出河川ノ水利
開發統制及淀川ノ水利開發ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
(一)河川ノ水利開發統制ニ關スル件
輓近人口ノ增加、產業ノ發達ニ伴ヒ水
ノ利用年次增加シ大都市及工業地域ニ
於テハ飮料水、工業用水、防火用水、
都市河川溝渠ノ淨化用水等ノ窮乏ヲ訴
ヘ又地方農村ニ在リテハ灌漑用水ノ不
足ヲ訴フルノ實情ニアリ從テ河水ノ利
用ヲ開發シ又ハ其ノ利用ヲ統制シ以テ
之等諸問題ノ解決ヲ圖ルハ喫緊ノ要務
ト認メ政府ハ昭和十二年度ヨリ右調査
費ヲ豫算ニ計上シ置キタル次第ナルヲ
以テ豫算成立ノ上ハ銳意基本的調査ヲ
施行スル見込ナリ
(二)淀川ノ水利開發ニ關スル件
京阪神地方ニ於ケル水道用水、工業用
水等ノ不足ヲ補フニ止マラス更ニ利用
水量ヲ豐富ナラシムルコトハ之亦緊要
ノコトナルモ之ニ對シ琵琶湖ノ利用ヲ
如何ニスルヤノ問題ニ付テハ其ノ利害
關係重大ナルヲ以テ愼重ニ考究スヘキ
モノト認ム
仍テ政府ハ前ニ述ヘタル豫算成立ノ上
ハ何等カ適當ノ具體案ヲ樹立スルノ目
途ヲ以テ之カ調査ヲ行ハントス
右及答辯候也
昭和十二年二月二十三日
內務大臣河原田稼吉
尾去澤鑛山中ノ澤鑛滓沈澱池ダム決潰
ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十一年十二月二十七日
提出者川俣〓音
外一名
尾去澤鑛山中ノ澤鑛滓沈澱池ダム決
潰ニ關スル質問主意書
我ガ國工場、鑛山ニ於ケル災害ニ因ル勞
働者ノ死傷數ハ近年頓ニ增加シテヰル而
シテ其ノ代表的災害トシテ尾去澤鑛山中
ノ澤「ダム」決潰ノ慘事ヲ持ツニ至ッタコ
トハ最モ遺憾トスル所デアル
内務省工場監督年報ハ昭和九年度ニ於ケ
ル工場勞働者災害死傷數ノ急增ヲ同年秋
ノ關西風水害ノ如キ自然的原因ニ歸シテ說
明シテヰルガ今囘ノ尾去澤鑛山ノ災害ハ
斯ノ如キ天災ノ結果發生シタモノニ非ザ
ル點ニ注目スベキモノヲ持ッテヰル其レ
故左記諸項ニ付テ政府ノ明確且具體的ナ
ル答辯ヲ要求スルモノデアル
-中ノ澤沈澱池決潰ノ原因ニ關スル件
金
瓦
昭和五年四〇、一六二
六年九五、一六九
七年二一六、五七六
八年一九三、五三八
九年二〇〇、七〇一
斯ル鑛產額ノ增加ハ當然鑛滓ノ增加ヲ
結果スルノデアルガ此ノ鑛滓ヲ貯有ス
ベキ沈澱池ノ增設ハ後記スルガ如ク急
造ニ次グ急造、科學的計畫ノ下ニ爲サ
レタモノト思量シ難ク愈〓急激ニ堆積
シテ行ク鑛滓ノ壓力ニ堪ヘ得ザル羸弱
サヲ持ツニ至ッタ又金銀銅價ノ急激ナ
ル騰貴ニ眩惑シタ鑛山經營者ハ更ニ
沈澱池中ノ鑛滓カラ月々數千噸ノ硫化
鑛ヲ採ラントスル計畫ヲ樹テ危險防止
ノ念ヲ忘却シ公益治安ヲ顧ル暇ナク獨
善的經營ニ沒頭スルニ至ッタノデアル斯
ル見地ニ立ッテ先ヅ第一ノ質問ヲ爲ス
モノデアル卽チ
(1)以上ノ見解ト相違スル資料アリト
セバ之ヲ明示サレタク尙政府ノ所見ヲ
明ニサレタシ
商工省ノ昭和六年度「本邦鑛業ノ趨勢〓
ヲ繙クニ其ノ一五一頁ニ尾去澤鑛山ニ
關シ「前年來繼續中ノ探鑛ハ本年度ニ
於テモ數條ノ鑛脈ニ出會セリ、探鑛能
率增進ノ爲擊岩機十二臺、ガソリン機
關車二臺、喞筒一臺ヲ增設シ又選鑛及
製鍊ニアリテハ設備ノ改廢ヲ行ヒ尙沈
澱池ノ增設ヲナセリ」ト記述シ此ノ探
鑛能率增進ノ爲同鑛山ノ鑛產額ハ左表
ノ如ク增進シタ
銀銅
瓦瓩
二、七三二、九五三四、九八三、八五七
三、三一五、八三一五、七一五、五七三
三、六七九、四二四五、八九〇、六七六
四、一六六、四六二五、四五一、六〇〇
五、一九八、二九九五、三五四、一九三
(「本邦鑛業ノ趨勢」ニ據ル)
鑛山ニ於ケル「ダム」決潰ノ事例ハ最近
秋田縣下ニ於ケルダケデモ
昭和八年吉野鑛山
昭和十一年八月尾去澤鑛山ノタ
ム」破損
ト鑛山ノ「ダム」ハ非常時ガ叫バレタ玆
數年間ニ相當ノ決潰事例ヲ起シテヰル
ソシテ非常時軍需景氣ト「ダム」決潰ト
ノ間ニ因果關係アルヤヲ思ハシメルモ
ノガアル
近代軍需ハ鑛業ニ俟ツモノ甚大デ鑛業ノ
擴張ナクシテハ近代軍備ヲ完ウシ得ナ
イノデアルソシテ軍事費-陸海軍省費
ハ最近急激ニ膨脹シ昭和六年(決算)ノ
四億五千四百萬圓ハ同十一年ニハ十億
六千一百萬圓(實行豫算)ニ增加シテヰ
ル然ルニ鑛業生產量指數ハ商工省ノ統
計ニ據レバ
昭
鐵
銅銑
鑛業平均
デ軍事費ノ膨脹力ニ及バナイノデアル
膨脹スル軍事需要ニ應ゼントスル鑛業ハ
是ニ勢ヒ生產力ヲ晝夜兼行デ動員シナケ
レバナラズ其レハ當然鑛產ニ懸命セシ
メツイ鑛產ニ伴ッテ生ズル排泄物處理
ニ萬全ノ注意ト警戒トヲ向ケ得ザルニ至
第二八期(自昭和六年十月)
至同七年三月
第三七期自昭和十一年四月大阪府大阪市
(一)
卽チ年配當率ハ三倍シ役員賞與ハ四倍
シタルモ災害防止〓究費ノ如キハ今囘
ノ尾去澤鑛山慘事後始メテ考課狀ニ現
レタ始末デアル
斯ノ如ク軍需景氣ノ伸暢ト一聯ノダ
ム」決潰事實トヲ照合スルト此ニ質問
ノ第二點ガ生レル卽チ
(2)鑛山災害ハ軍需景氣時代ニ於ケル
鑛山ノ資本家的經營ニ遠因ヲ持ツト
思惟スルガ政府ノ所見如何
二政府ノ監督ニ關スル件
鑛業法第七十一條竝第七十二條ニ依リ
廣汎ナル警察事務ハ商工大臣、鑛山監督
局長ニ委ネラレテヰル而シテ尾去澤中
ノ澤「ダム」ノ危險ハ夙ニ豫見サレタ所
デアル本員ノ如キハ昭和九年春以來度
度尾去澤鑛山從業員ヨリ危險豫感ノ報
告ヲ受ケ又ハ投書等ニ依リ之ヲ知リ自
ラ同鑛山ニ赴キ鑛山當局ニ對シ決潰防
止ノ注意ヲ喚起セントシタルモ見張所
和六年昭和十一年八月
八三·三一七〇·一
一〇四·七一〇七·三
九六·八一二七·六
ラシメル之ハ利潤獲得ヲ至上命令トス
ル資本主義經營ノ當然ノ歸結デ三菱鑛
業株式會社ガ最近ノ軍需景氣ヲ利シテ
其ノ資本家的經營ノ本能ヲ發揮セル例
ハ左記右會社考課狀ガ示唆シテヰル
各期利益金年配當率役員賞與
千圓%千圓
一、六八七四五〇
八、八六六三二〇〇
ニ於テ入山ヲ拒絕サレタノデアル又本
年八月決潰ノ豫兆現レタ際仙臺鑛山監
督局ハ二名ノ技手ヲ現地ニ派遺シタ由
デアルガ遂ニ決潰ヲ防ギ得ズ更ニ又十
一月二十日第一次大決潰後十二月二十
二日第二次決潰デ應急工事ノ二箇ノ
「ダム」モ突流サレルニ至ツタ鑛業法ニ
鑛山ノ警察事務ガ商工大臣、鑛山監督
局長ニ命ゼラレナガラ斯ル慘事ヲ惹起
シタノハ政府ノ監督不行屆ニ原因スル
モノト斷定セザルヲ得ナイ此ノ點政府
ノ所見果シテ如何
更ニ第一決潰ニ次グ第二次決潰マデ約
一箇月間政府ハ鑛業法第七十二條ニ基
ク如何ナル處置ヲ講ジタルヤ其ノ具體
的處置ヲ明示サレタシ
三責任者處分ニ關スル件
(1)會社側ニ付テ
中ノ澤「ダム」ノ築造ハ土木工學ノ
「イロハ」ヲサヘ無視シク工事デ其レ
ハ決潰ニ依テ天下周知ノコトトナッ
名田、
(イ)其ノ土堰堤ノ傾斜度ガ全然沈澱
池內容物ノ壓力ニ堪ヘザルモノナ
ルコト
(ロ)土堰堤ノ盛土ニ正規ノ羽金ヲ使
用セザリシコト
(ハ)土堰堤ノ增築ハ前二項ノ土木工
學無視ヲ擴大シタル工事ナルコト
ハ特筆大書サルベキ點デアル
斯ル工事ヲ平氣デ爲シタ三菱鑛業株
式會社ニ對シ、別ケテ其ノ責任者ニ
對シ
第一點責任者ハ當然鑛業權者タル
三菱鑛業株式會社代表社員タルベ
シト思料スルガ如何
第二點責任者ハ刑事上ノ責任ヲモ
負フベキモノト思料スルガ如何尙
「ダム」決潰ノ刑事上ノ責任ハ如何
ナル範圍ニ及ブベキモノナルヤ
第三點三菱鑛業株式會社代表社員
ニ對シ今日マデ行政上及司法上ノ
活動ヲ爲シヲラザル理由如何又爲
シヲルトセバ其ノ經過如何
(2)政府側ニ付テ
鑛業法上ニ監督權ヲ規定サレテヰル
商工大臣、鑛山監督局長ニ付テ見ル
ニ
第一點土木力學ヲ無視シタ工事ヲ
認可シタ過去竝現在ノ當局ニ對シ
行政上如何ナル程度ノ處分ヲ爲ス
ヤ
第二點唯單ニ行政上ノ處分ノミニ
止マラズ刑事上ノ訴追ヲ爲ス意思
アリヤ
四民事上ノ損害補償對策ニ關スル件
尾去澤鑛山中ノ澤「ダム」決潰ト其ノ鑛
滓流失トハ關係地區住民ニ多大ノ損害
ヲ與ヘツツアル
(1)鑛山從業勞働者ニ對シ
尾去澤鑛山從業勞働者數ハ前記「本
邦鑛業ノ趨勢」ニ每年報〓サレテヰ
ルモノノ外恰モ工場ニ於ケル臨時工
ノ如キ假使役ヲ相當ニ傭役シテヰル
斯ル就勞者ハ「ダム」決潰ニ因リ鑛山
ガ休業狀態ノ爲所得ニ激減ヲ來シ又
家事ノ都合ニ由リ轉業セントシテモ
資金ナク生活ノ不安ハ漸ク加重シツ
ツアル目下ハ僅ニ救恤金品ニ生命ヲ
保ツテヰル狀態デアルガ之トテ限度
ガアル斯ル狀態ニ對シ政府ハ
第一點勞働者ノ所得減少ニ對シ如
何ナル具體的對策ヲ樹テツツアル
ヤ
第二點勞働者ノ歸〓乃至轉業ノ爲
如何ナル具體的方策ヲ講ゼントス
ルヤ
第三點斯ル對策、方策ハ會社側ニ
一任シ政府ハ放任スル意思ナリヤ
否ヤ
(2)農漁民ニ對シ
有毒鑛滓ノ流失ハ附近農村ノ農耕ヲ
今後數十年ニ亙ツテ所謂「骨折リ損ノ
草臥レ儲ケ」タラシメツツアル又河
川沿岸ノ漁獲ニ絕滅的影響ヲ與ヘツ
ツアル斯ル狀態ニ對シ先ヅ政府調査
ノ損害程度卽チ關係農漁民數、耕地
面積、農耕漁撈復舊ニ要スル年限ノ
以上各別項ニ見タル損害金額〓數ヲ
公表サレタク更ニ次ノ點ニ付政府ノ
所見ヲ問フ
第一點損害賠償對策樹立ノ爲何等
カノ公共的調査機關ヲ設置セント
スル意思アリヤ否ヤ
第二點損害賠償ハ會社側ノ處置ニ
ノミ任セ只之ヲ監督スルダケデ積
極的ニ例ヘバ有ラユル團體ノ代表
者ヲ加ヘタ委員會ヲ設ケ以テ賠償
ノ公平ヲ期セントスルガ如キ意思
アリヤ否ヤ
五河川浚渫改修ニ關スル件
鑛滓流入停堆ノ爲米代川ノ河床ハ隆起
シ十一月二十日ノ大決潰ノ直後ノ如キ
河流ハ逆流ヲ見タ程デアル此ノ河床隆
起ヲ忽セニスレバ明春ノ解雪期ノ大洪
水ヲサヘ豫想サセルノデアル然レバ米
代川ノ浚渫ハ一日ヲ忽セニスルヲ得ザ
ルト同時ニ數萬立方坪ノ鑛毒泥ノ浚渫
ハ決シテ容易ナル業デハナイ政府ハ之
ニ關スル次ノ諸點ニ對シ如何ナル所見
ヲ持ツヤ
(1)米代川へ流入堆積シタ鑛毒泥ヲ最
短期間ニ處置スル爲如何ナル處置ヲ
具體的ニ講ジツツアリヤ
2)右浚渫作業ニ要スル經費ノ負擔ハ
(
如何ニシツツアリヤ凡テヲ三菱鑛業
株式會社ニ負擔セシメツツアリヤ
(3)大正五年四月十四日內務省訓令第
四號ニ依リ「洪水氾濫ノ虞アル地方
ニ於ケル水防施設方」ヲ通牒シテヰ
ルガ今囘ノ鑛滓流失ェ因ル「洪水氾
濫ノ虞」ニ對シテハ如何ナル對策ヲ
採ラントスルヤ
4)明春解雪期米代川ノ洪水ガ河床變
(
化ノ爲發生シタ場合其ノ民事上、刑
事上ノ責任ハ誰ガ負フベキモノト思
惟スルヤ
六將來ノ災害防止ニ關スル件
既述ノ內務省、商工省ノ報告書ハ工場、
鑛山ニ於ケル災害犠牲者ノ增加ヲ每年
警告シツツアル而シテ其ノ由ッテ來ル
所マタ決シテ偶然ト斷ジ得ザルモノガ
アル其レ故尾去澤鑛山「ダム」決潰ハ其
ノ胎生的萌芽ヲ全國ノ工場、鑛山ガ有
シテヰルト見ナケレバナラナイ之ガ拔
本塞源的對策ヲ講ズルハ喫緊事デアル
政府ハ此ノ點ニ付テ次ノ對策ヲ採ル意
思アリヤ卽チ
勞働者ハ自己ノ職場ノ災害ニ對スル
豫感ヲ最モ强ク感ズルモノデアル其
ノコトハ旣ニ本員ニ對スル尾去澤鑛
山從業勞働者ノ「ダム」決潰ノ豫感注
進ニ現レテヰル斯ル勞働者ノ災害豫
感ヲ組織的ニ生カス爲全國ノ工場、
鑛山ニ卽時勞働者、資本家兩者ノ代
表ヲ以テ組織スル災害防止勞資共同
委員會ヲ組織スル意思アリヤ
右及質問候也
本質問事項ハ目下社會ノ耳目ヲ聳動シツ
ツアル問題デアルコト故政府ハ卽時懇切
丁寧ニ各項目別ニ答辯サレンコトヲ望ム
昭和十二年二月二十三日
內閣總理大臣林銑十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員川俣〓音君外一名提出尾去澤
鑛山中ノ澤鑛滓沈澱池ダム決潰ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員川俣〓音君外一名提出尾去
澤鑛山中ノ澤鑛滓沈澱池ダム決潰ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
中ノ澤沈澱池決潰ノ原因ニ關スル件
近時鑛業ノ發達ニ伴ヒ鑛滓堆積場ノ設
置セラルルモノ漸增シ之ガ監督ニ關シ
テハ政府ニ於テモ萬全ヲ期シツツアル
處ナリ然ルニ過般尾去澤鑛山中澤堆積
場扞止堤防決潰シ多數ノ死傷者ヲ出シ
其ノ他多大ノ被害ヲ及ボシタルハ寔ニ
遺憾トスル處ナリ而シテ本件災害ノ原
因ハ中澤堆積場扞止堤防ガ夜間ニ決潰
シ大部分ヲ失ヒタル爲之ヲ明確ニスル
コトハ困難ナルモ各般ノ事情ヨリ判斷
スルニ決潰前數囘ノ漏水アリタルニ不
拘鑛山側ニ於テハ之ヲ重大視セズ其ノ
原因ノ究明不充分ニシテ瀰縫的ナル應
急處置ヲ講ジタルニ止リ而モ本鑛泥堆
積方法ノ本旨ニ悖リ送泥シタルコト等
ヲ大體ニ於テ主要ナル原因ト認ムベク
而シテ前記ノ漏水ヲ生ジタルハ堤防ノ
百尺地竝ノ部分ニ於テ弱點ヲ生ジ易キ
工事ヲ爲シタリト思ハルルコト築堤材
料ニ不均一ナル點アリタルコト及排水
管ニ故障ヲ生ジ堤防內ニ軟泥部分ヲ生
ジタリト思料セラルルコト等ノ事實ニ
因ルモノナルベク尙地震ノ影響モ有之
ニ非ズヤト認メラル卽チ此等ノ事實ガ
綜合シテ今囘ノ災害ヲ發生スルニ至リ
タルモノト認ム之ヲ要スルニ本件災害
ハ鑛業權者ニ於テ操業ニ對スル注意ノ
周到ヲ缺キタルニ因ルモノト謂フベシ
ニ、政府ノ監督ニ關スル件
中澤堆積場扞止堤防ニ付テハ其ノ設計
支障ナキモノトシテ仙臺鑛山監督局ニ
於テ認可シ爾後監督シ來リタルモノナ
リ而シテ第一囘決潰後仙臺鑛山監督局
長ハ鑛業法第七十二條第二項ノ規定ニ
基キ鑛業權者ニ對シ、屍屍體搜索作業ニ
(
關スル以外鑛滓ヲ下流ニ流下セシメザ
ル樣對策ヲ講ズルコト二堆積場內ノ殘
留鑛滓ノ流下ヲ防止スル爲假扞止堤防
ノ築造ヲ爲スコト三警報機關ヲ完備ス
ルコト四赤澤及靑木澤堆積場扞止堤防
工事ヲ當分中止スルコト五鑛業ノ操業
開始ノ際ハ鑛山監督局ニ豫メ申出ヅル
コト等ノ事項ヲ命ジ置キタリ因ニ商工
省ニ於テハ各鑛山監督局ニ對シ今囘ノ
災害ニ鑑ミテ現在ノ鑛滓堆積場其ノ他
ノ工作物ニ付再檢討ヲ爲サシメ且鑛山
監督局鑛業課長會議ヲ開催シ災害發生
防止對策ニ付審議ヲ盡シタルガ尙重ネ
テ關係方面ノ技術者ノ參集ヲ求メ扞止
堤防ノ築造方法其ノ他ニ關シ協議シタ
リ
三、責任者處分ニ關スル件
(1)本件ニ對スル司法處分ニ關シテハ
目下所轄檢事局ニ於テ銳意搜査中ナ
ルトコロ專門家ノ鑑定ヲ必要トスル
事項アリ未ダ捜査完了スルニ至ラズ
從テ刑事責任ノ有無、範圍等ハ未ダ
決定シ難シ
尙仙臺鑛山監督局ニ於テハ鑛業權者
及技術管理者ニ鑛業法規違反ノ廉有
之モノト認メ所轄檢事局ニ對シ告發
ヲ爲シタリ
(2)該鑛山ノ監督責任者タル仙臺鑛山
監督局長ニ對シテハ戒飭ヲ爲シ且將
來斯ノ種災害ノ發生セザル樣嚴ニ注
意シ置キタリ
四民事上ノ損害、補償對策ニ關スル件
(1)災害後鑛山ニ於ケル作業ハ一時中
止ト爲リタルモ大部分ノ勞働者ハ災
害後ノ應急措置ノ作業ニ使用シ之ニ
對スル賃金ハ標準報酬日額ニ依リ支
給シ特ニ屍體搜索、復舊工事、夜間
警備ニ從事スル者ニハ之ニ二割ヲ增
額支給シ能フル限リ賃金ノ減收ヲ來
サザル樣注意シ居リシガ既ニ今日ニ
於テハ浮游選鑛以外ノ鑛業ノ再開ヲ
許可シタルヲ以テ勞働者ノ賃金モ漸
次舊ニ復スル見込ナリ又勞働者ノ歸
〓又ハ轉業ヲ希望スルハ殆ド無之モ
希望者アリタル場合ニハ歸〓旅費ヲ
支給スベク、轉業ニ付テハ鑛業權者、
職樣紹介所協力シテ之ガ斡旋ヲ爲ス
見込ナリ而シテ此等勞働者保護ノ諸
對策ニ付テハ政府ニ於テモ充分留意
シテ其ノ監督ヲ行ハントス
(2)今囘ノ災害ニ因ル被害農家戶數ハ
六十三戶、被害耕地面積ハ花輪町及
尾去澤町ニ於テ田地約三十町七段
步、畑地約二段三畝、損害金額ハ被
害耕地復舊費トシテ約三萬四千圓ニ
上ル見込ニシテ之ガ復舊ハ昭和十二
月六月迄ニ竣功セシメ得ベシ但シ米
代川流入鑛滓ニ因ル灌漑時及氾濫時
ニ於ケル被害、第二次決潰ニ因ル被
害竝ニ農作物被害ハ目下不明ナリ又
漁業被害ニ付テハ目下調査中ナリ而
シテ前記損害ニ對スル賠償ノ公正ヲ
期スルハ極メテ肝要ナルヲ以テ充分
注意シ遺憾ナキヲ期シ居レリ
五、河川浚渫改修ニ關スル件
米代川ニ流出シタ鑛滓ハ河床ヲ上昇セ
シメタル爲對岸タル花輪町ノ耕地ニ氾
濫シタルヲ以テ米代川右岸寄河川敷內
ニ捷水路ヲ掘鑿スル一方右岸ノ河岸線
ニ土俵ヲ以テ假堤ヲ築キ河水氾濫ヲ防
止シ鑛滓ノ浚渫ヲ爲シ其ノ泥土ヲ以テ
假堤ノ裏ニ築堤シ殘土ハ流出ノ虞ナキ
箇所ニ堆積スル方針ヲ以テ所要經費約
二十萬圓ハ之ヲ三菱鑛業株式會社ニ負
擔セシメ現ニ工事施行中ナルガ右工事
ハ本年三月中ニハ竣功ノ見込ニシテ融
雪期ノ出水ニ際シ氾濫ノ虞ナキヲ期セ
ントス而シテ米代川ハ殆ド無堤ニシテ
沿岸ニハ未ダ特別ナル水防組織ヲ有セ
ズ鑛滓流出ニ因ル洪水被害ノ增大ヲ防
止スル爲現ニ前記工事ヲ施行セルモノ
ナルヲ以テ之以上水防ニ關シ特ニ對策
ヲ講ズルコトナキモ出水ニ對シテハ地
元ニ於テ充分ニ警戒ヲ爲サシムル方針
ナリ尙今春融雪期ニ於ケル米代川ノ洪
水ヲ豫想セル場合ノ民事上及刑事上ノ
責任者ニ付テハ現在ニ於テ之ヲ決定ス
ルコトハ困難ナリ
六、將來ノ災害防止ニ關スル件
工鑛業ニ於ケル災害ノ發生ヲ防止スルコト
ハ產業ノ發達ヲ圖ル上ニ於テ極メテ肝要
ナルヲ以テ政府ニ於テハ防止上有效ナル
各般ノ施設ヲ實施シ監督上遺憾ナキヲ
期シツツアリ而シテ災害發生防止ニ付
テハ勞働者ノ協力ニ俟ツ所大ナルコト
ハ言ヲ要セザルモノナル處各工場鑛山
ニ在リテハ安全委員會其ノ他ヲ組織シ
勞資相協調シテ災害防止ニ努メ相當ノ
成績ヲ擧ゲツツアリ政府ニ於テモ右ハ
極メテ有效適切ナルモノトシテ極力奬
勵シ居ル處ナルガ將來ニ於テモ一層奬
勵ニ努ムルコトト致度
右及答辯候也
昭和十二年二月二十三日
商工大臣伍堂卓雄
內務大臣河原田稼吉
司法大臣鹽野季彥
戰役殊勳者待遇ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十二年一月二十一日
提出者中村又、
戰役殊動者待遇ニ關スル質問主意
書
金鵄勳章ハ君國ノ爲身ヲ以テ戰場ニ
臨ミタル軍人中武功拔群ノ者ニ賜與セ
ラレ畏クモ忠勇ヲ奬勵セムトノ詔ニ基
キ更ニ國家ハ是等殊勳者ニ對シ一定ノ
年金ヲ給與シ國防精神ノ鼓舞作興ヲ期
シタルモノナリ然ルニ該金鵄勳章年金
ノ制度ハ明治二十七年創設セラレ當時
同ク勅令ヲ以テ給與セラレタル恩給ハ
其ノ後制定セラレタル一般恩給ト共ニ
法律ニ依リ給與セラレ四十餘年ノ間ニ
給與額ハ幾倍ニモ改正增加セラレタル
ニモ拘ラス金鵄勳章年金ノミ僅ニ昭和
二年一部ノ改正ヲ實施シタルニ過キス
政府ハ金鵄勳章年金御創定ノ趣旨ニ副
フモノト信スルヤ
二多年戰役殊動者ノ待遇改善ニ付テ衆
議院ハ幾度カ之カ建議案ヲ可決シ亦請
願ハ貴衆兩院ニ於テ採擇セラレタルニ
拘ラス遂ニ實施ニ至ラスシテ今日ニ及
ヘルハ甚タ遺憾トスル所ナリ政府ハ本
件ニ關シ其ノ後如何ナル〓究調査ヲ爲
シタルヤ
三大正元年十二月當時ト大正十二年十
二月當時及昭和五年十二月當時ト昭和
十一年十二月現在ノ恩給受給者人員及
同金額總計額竝同ク金鵄勳章年金ノ受
給者人員及同年金總計額ノ增減如何
四一定年限ノ功勞ニ對スル恩給ト一死
奉公ニ因ル金鵄動章年金ニ對シ均シク
一定ノ年金額ヲ給與シツツ前者ハ貨幣
價値ノ推移ニ從テ改正セラレ後者ハ放
任シテ何等顧ミサルカ如キハ政府ニ於
テ如何ナル理由ニ基クヤ
五國防ノ有形的設備ノ優劣ハ結局國家
ノ經濟力ノ優劣ト關聯シ不幸ニシテ英
米等ニ比シ遜色アル場合ト雖日本精神
ノ發揚ニ依リ卽チ精神的國防力ニ依テ
安全ヲ期シ得ルモノト信スルカ政府ハ
信賞必罰主義ニ則リ今日ノ場合殊勳者
待遇改善卽行ノ意思アリヤ如何
六庶政ノ一新カ要望セラレ殊ニ恩給ニ
對シテハ事實上ノ增額ニモ等シキ恩給
金庫法モ近ク制定セラレムトスル今日
本問題ノ如キハ之ヲ等閑ニ付スルヲ許
サス英國ニ於テハ年金ハ下士卒ノミニ
給與セラレ貧富ノ程度等ニ依リ百圓位
ヨリ一千圓程度迄ノ年金ヲ支給シヲル
由ニ聞キ及ヘルカ眞ニ精神的國防充實
ノ趣旨ニ鑑ミ金鵄動章年金ノ根本的改
正、戰役殊動者待遇改善ハ最緊要ノ事
項ナリト思惟ス政府ノ所見如何
右及質問候也
昭和十二年二月二十三日
內閣總理大臣林銑十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員中村又一君提出戰役殊動者待
遇ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員中村又一君提出戰役殊勳者
待遇ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一、金鵄勳章年金ハ榮譽ノ表彰タル金鵄
動章ニ加賜セラルル恩賞ニシテ生活費
給與ノ性質ヲ有スルモノニ非ズ、且ツ
昭和二年ニ改正モアリタルコトナレバ
目下現行規程改正ノ要ヲ認メズ
二、議會ニ於ケル建議等ニ對シテハ愼重
〓究シタル所此際殊動者ノミヲ優遇ス
ルコトハ他ニモ波及スル所大ナルベク
妥當ナラズト思惟ス
三、恩給受領人員ハ大正元年十二月末ニ
於テハ人員二十三萬九千八十四人、金
額二千二十九萬三千二百七圓、同十二
年十二月末ニ於テハ人員三十萬六千六
百四十五人、金額一億百九十四萬四千
六百九十三圓、昭和五年十二月末ニ於
テハ人員三十五萬五千六百八十六人、
金額一億三千四百七萬三千七百三十五
圓、同十一年十二月末ニ於テハ人員三
十九万三千九百五十二人、金額一億五
千七百七十八萬九千九百八十七圓ニシ
テ金鵄勳章年金受領人員ハ大正元年十
二月末ニ於テ六萬六千百三十九人、
金額八百五十五萬七百圓、同十二年十
二月末ニ於テハ人員六萬八千八百八十
七人、金額九百十萬三千三百圓、昭和
五年十二月末ニ於テハ人員六萬一千八
百五十六人、金額千百七萬三千七百圓、
同十一年十二月末ニ於テハ人員六萬九
百二十六人、金額千三十一萬二千三百
五十圓ナリ
四、金鵄勳章年金ハ第一項ニ述ベタル如
キ性質ヲ有スルモノニシテ貨幣價値ノ
推移ニ從ヒテ直チニ改正セラルベキモ
ノニアラズ
五、六、既ニ述ペタル所ニ依リ答辯ノ要
ナシト思料ス
右及答辯候也
昭和十二年二月二十三日
內閣總理大臣林銑十郞
陸軍大臣杉山元
海軍大臣米內光政
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲茲
ニ揭載ス〕
一昨二十二日政府ヨリ昭和十年度國有財產
增減總計算書及之ニ添附スヘキ各省ノ同
增減報〓書竝會計檢査院檢査報〓ヲ受領
セリ
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
司法書士法中改正法律案
提出者立川平君
協同組合活動促進ニ關スル建議案
提出者
三宅正一君永山忠則君
北勝太郞君
鶴群ノ保護竝觀賞施設ニ關スル建議案
提出者
岩元榮次郞君寺田市正君
東〓實君天辰正守君
協同組合活動促進ニ關スル建議案
提出者
喜多壯一郞君愛野時一郞君
高橋守平君佐藤謙之輔君
佐藤與一君
鼠ケ關漁港修築ニ關スル建議案
提出者
奥山龜藏君〓水德太郞君
田邊熊一君熊谷直太君
兵役者家族扶助ニ關スル建議案
提出者
堀內良平君添田敬一郞君
篠原陸朗君矢野庄太郞君
渡邊銕藏君植村嘉三郞君
計理士制度改正調査委員會設置ニ關スル
建議案
提出者
松田竹千代君小山倉之助君
內ケ崎作三郞君原夫次郞君
田島勝太郞君
岐阜市内貫通國有鐵道高架改築ニ關スル
建議案
提出者
〓寛君古屋慶隆君
日比野民平君伊藤東一郞君
岐阜地方裁判所竝同區裁判所改築ニ關ス
ル建議案
提出者
〓寛君古屋慶隆君
日比野民平君伊藤東一郞君
岐阜驛ヨリ美濃町若ハ美濃關ニ至ル鐵道
速成ニ關スル建議案
提出者
〓寛君古屋慶隆君
日比野民平君伊藤東一郞君
岐阜驛ニ地下道開鑿ニ關スル建議案
提出者
〓寛君古屋慶隆君
日比野民平君伊藤東一郞君
衞生省設置ニ關スル建議案
提出者大野伴睦君
狩獵法改正ニ關スル建議案
提出者
金井正夫君藏原敏捷君
(以上二月二十日提出)
龜岡茨木間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
田中好君上田孝吉君
(以上二月二十二日提出)
一去二十日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
第七部選出
決算委員鈴木正吾君(藏原敏捷君
補闘)
第七部選出
建議委員藏原敏捷君(鈴木正吾君
補闕)
第九部選出
請願委員大島寅吉君(深澤吉平君
補闕)
一去二十日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第九部選出決算委員西方利馬君
一去二十日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
シ
臨時租稅增徵法案(政府提出)外五件委員
會
委員長增田義一君
理事
高橋守平君服部英明君
宮澤裕君三善信房君
森肇君
一去二十日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外四
件委員
眞鍋勝君原淳一郞君
西村金三郞君紫安新九郞君
飯塚春太郞君渡邊玉三郞君
松本忠雄君一柳仲次郞君
片山一男君朝倉每人君
木村淺七君柏木〓治君
岩瀨亮君門田新松君
倉元要一君松山常次郞君
蔭山貞吉君末次虎太郞君
田尻生五君寺田市正君
玉置吉之亟君上田孝吉君
窪井義道君塚本重藏君
岡幸三郞君高岡大輔君
田中養達君
一去二十日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
臨時租稅增徵法案(政府提出)外五件委員
辭任河上丈太郞君補關塚本重藏君
一昨二十二日常任委員補關選擧ノ結果左ノ
如シ
第九部選出
決算委員西川貞一君(西方利馬君
補闕)
一昨二十二日常任委員理事補關選擧ノ結果
左ノ如シ
豫算委員
理事杉山元治郞君(理事龜井貫一郞
君昨二十二日理事辭任ニ付其
ノ補闕)
一昨二十二日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル
常任委員左ノ如シ
第七部選出豫算委員小山谷藏君
第三部選出決算委員橫川重次君
一昨二十二日委員長及理事互選ノ結果左ノ
如シ
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外
四件委員
委員長倉元要一君
理事
眞鍋勝君原淳一郞君
蔭山貞吉君田尻生吾君
一昨二十二日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
如シ
臨時租稅增徵法案(政府提出)外五件委員
辭任塚本重藏君補闕河野密君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=1
-
002・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス、此際新ニ議席ニ著カレマシタ議員ヲ
御紹介致シマス-第一一百十五番、高知縣
第一區選出議員長野長廣君
〔長野長廣君起立〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=2
-
003・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 此場合一言致シマ
ス、本日ヲ以テ會期三分ノ二ニ達シマシタ
カラ、明日ヨリハ先例ニ依リマシテ、本會
議ハ火曜日、木曜日、土曜日以外ニ於テモ
開キ得ルコト、本會議中委員會開會ノ件ハ、
院議ニ諮ルコトナク議長ニ於テ許可シ得ル
コト、又法律案ハ定規ノ日時ニ拘ラズ上程シ
得ルコトト致シマス-本日ノ日程ニ揭ゲ
マシタ質問ノ一乃至三ハ、孰レモ政府ヨリ
答辯書ヲ受領致シマシタ、仍テ日程ヨリ之
ヲ省キマス-是ヨリ法律案ノ日程ニ入リ
マス、日程第一及ビ第二ハ便宜上一括議題
ト爲スニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=3
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004・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ日程第一、軍事救護法中改正法
律案、日程第二、北海道舊土人保護法中改
正法律案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開
キマス-內務大臣河原田稼吉君
第軍事救護法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
第二北海道舊土人保護法中改正法律
案(政府提出)第一讀會
軍事救護法中改正法律案
軍事救護法中左ノ通改正ス
「軍事救護法」ヲ「軍事扶助法」ニ改ム
「下士兵卒」ヲ「下士官兵」ニ、「救護」ヲ「扶
助」ニ改ム
第二條第二號中「戰地ニ於テ」ヲ「現役中(
未入營期間及歸休期間ヲ除ク)又ハ應
召中ニ」ニ改ム
第三條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
三前二號ニ揭グル者ヲ除クノ外陸海
軍現役兵、應召中ノ陸海軍下士官兵
又ハ傷病兵ニ依リ扶養ヲ受クベキ者
ニシテ現役兵ノ入營シタル時、下士
官兵ノ應召シタル時又ハ傷病兵ノ兵
役ヲ免ゼラレタル時之ト同一ノ世帶
ニ在リ且引續キ其ノ世帶ニ在ルモノ
第四條ニ左ノ一號ヲ加フ
三前二號ニ揭グル者ヲ除クノ外戰死
シタル陸海軍下士官兵又ハ第二條各
號ノ傷痍若ハ疾病ノ爲死歿シタル陸
海軍下士官兵若ハ傷病兵ニ依リ扶養
ヲ受クベキ者ニシテ下士官兵ノ入營
若ハ應召シタル時又ハ傷病兵ノ兵役
ヲ免ゼラレタル時之ト同一ノ世帶ニ
在リ且引續キ其ノ世帶ニ在ルモノ
第五條中「生活スルコト能ハザル者」ヲ
「生活スルコト困難ナル者」ニ改ム
第十三條ノ二下士官兵ノ家族ニ對スル
扶助ハ必要アル場合ニ於テハ現役兵ノ
退營又ハ下士官兵ノ召集解除後仍二十
日以內之ヲ繼續スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
北海道舊土人保護法中改正法律案
北海道舊土人保護法中左ノ通改正ス
第二條第二項及第三項ヲ左ノ如ク改ム
第三條ノ規定ニ依ル沒收ヲ受クルコト
ナキニ至リタル土地ニ付テハ前項ノ規
定ハ之ヲ適用セズ此ノ場合ニ於テ讓渡
又ハ物權ノ設定行爲ハ北海道廳長官ノ
許可ヲ得ルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼ
ズ但シ相續以外ノ原因ニ因ル所有權ノ
移轉アリタル後ニ於テハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第二條ノ二第一條ノ規定ニ依リ下付セ
ラレタル土地ニハ其ノ下付ノ年ヨリ起
算シ三十年ヲ經過シタル後ニ非ザレバ
地租ヲ課セズ又地方稅ヲ課スルコトヲ
得ズ但シ相續以外ノ原因ニ因リ所有權
ノ移轉アリタル土地、登記シタル質權
ノ目的タル土地又ハ登記シタル百年ヨ
リ長キ存續期間ノ定アル地上權ノ目的
タル土地ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ期間內ハ下付ヲ受ケタル者又ハ
其ノ相續人ニ對シ下付ヲ受ケタル土地
ノ下付若ハ相續ニ因ル所有權ノ取得又
ハ遺產ノ分割ニ關スル登錄稅ヲ課セズ
第四條中「農具及種子」ヲ「生業ニ要スル
器具、資料又ハ資金」ニ改ム
第七條中「授業料」ヲ「必要ナル學資」ニ改
ム
第七條ノ二北海道舊土人ニシテ其ノ不
良ナル住宅ヲ改良セントスル者ニハ必
要ナル資金ヲ給スルコトヲ得
第七條ノ三北海道舊土人ノ保護ノ爲必
要アルトキハ之ニ關スル施設ヲ爲シ又
ハ施設ヲ爲ス者ニ對シ補助ヲ爲スコト
ヲ得
第八條中「第四條乃至第七條」ヲ「第四條
乃至前條」ニ改ム
第九條削除
第十條第二項中「内務大臣ノ認可ヲ經テ」
ヲ削ル
第十一條削除
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
從前ノ規定ニ依リ設ケタル小學校ハ其ノ
必要アルモノニ限リ當分ノ內國庫ノ費用
ヲ以テ之ヲ存置スルコトヲ得
旭川市舊土人保護地處分法第二條中「北
海道舊土人保護法第二條第一項」ヲ「北海
道舊土人保護法第二條」ニ改ム
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=4
-
005・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 只今議題ニ供
サレマシタ軍事救護法中改正法律案ニ付キ
マシテ、提案ノ理由ヲ御說明申上ゲタイト
思ヒマス、申ス迄モナク、本法ハ兵役ノ任
ニ服スル者ヲシテ後顯ノ憂ナク、安ンジテ
其責務ヲ完ウセシムルノ趣旨ヲ以テ、大正
六年ニ制定セラレ、翌年大正七年一月カラ
施行セラレタモノデアリマシテ、其後昭和
六年ニ至リ、被救護者ノ範圍等ニ付キマシ
テ、一部ノ改正ヲ見テ、現在ニ至ッテ居ルノ
デアリマス、而シテ今日ニ於キマシテハ
本法ハ旣ニ相當ノ普及ヲ見、救護ノ實績モ
年々增加ヲ示シテ來タノデアリマスガ、併
シ其實績ヲ仔細ニ檢討致シマスルト云フ
ト、今日ノ社會情勢ニ鑑ミマシテ、尙ホ不
十分ナ點ガ認メラレマスノデ、玆ニ本改正
法律案ヲ提出スルニ至ッタ次第デゴザイマ
ス、今改正ノ主ナル點ヲ申上ゲマスト、第
一ニ現行法ノ名稱ヲ「軍事扶助法」ト改メマ
スルト共ニ、傷病兵ノ適用範圍ヲ擴張致シ
マシテ、在營中ニ結核、胸膜炎等ニ罹リ、
除役セラレマシタ如キ者ニ對シマシテ扶助
シ得ルコトト致シタノデアリマス、第二ニ
ハ扶助ヲ受ケ得ル家族及ビ遺族ノ範圍ヲ擴
張致シマシテ、下士官兵等、戶籍ガ異ッテ居リ
マシテモ、同一世帶ニ居リマスル直系血族、
兄弟姉妹ニ對シマシテ、本法ヲ適用スルコ
トニ改メタノデアリマス(「擴聲器ヲ願ヒマ
ス」ト呼フ者アリ)第三ハ現行法ニ於キマシ
テハ、扶助ヲ受ケ得ル者ハ、現役兵ノ入營
ノ爲メ、生活スルコト能ハザル者ニ限ッテ居
ルノデアリマスガ、生活スルコト困難ナル
者ト云フコトニ改メマシテ、扶助ヲ受ケ得
ル者ノ資格要件ヲ緩和シ、其範圍ヲ擴大セ
ントスルモノデアリマス、右改正ニ伴ヒマ
シテ、必要ナル經費ニ關シマシテハ、別
豫算案ニ計上致シテ御審議ヲ願ッテ居ル次
第デアリマス、何卒御審議ノ上御協贊アラ
ンコトヲ御願致ス次第デゴザイマス
續イテ北海道舊土人保護法中改正法律案
ニ付キマシテ、提案ノ理由ヲ御說明申上ゲ
タイト思ヒマス、御承知ノ通リ本法ハ、北
海道ニ於キマスル舊土人ヲ保護シ、之ガ向
上ヲ圖ルノ目的ヲ以チマシテ、明治三十二
年ニ制定實施ニナリマシタモノデアリマシ
テ、其後大正八年救助ノ範圍ニ付テ一小部
分ノ改正ガアッタノデアリマスガ、舊土人ノ
生活狀態ハ、本法ノ制定當時ニ比較致シマ
スルト云フト、相當改善セラレマシタバカ
リデナク、一方拓殖事業ノ進捗ト共ニ、四圍
ノ情勢モ著シイ變遷ヲ見マシタ結果、本法
中舊土人ノ生活ノ實際ニ適應シナイモノガ
アルニ至リマシタノデ、今囘法律ノ改正ヲ
行ヒマシテ、舊土人保護ノ完璧ヲ期シタイ
ト存ズル次第デゴザイマス
今改正ノ主ナル點ヲ申上ゲテ見マスルト
云フト、先ヅ第一ニ現行法ハ下付致シマシ
タル土地ニ付キマシテハ讓渡又ハ物權ノ設
定ヲ禁ジテ居リマスガ、近來舊土人ノ生活
狀況ノ進步ニ伴ヒマシテ、此制限ヲ緩和スル
必要ガ認メラレマスノデ、下付地ニ付キマ
シテハ、北海道廳長官ノ許可ガアリマスレバ、
讓渡又ハ物權ノ設定行爲モ行ヒ得ルコトニ
改メタノデアリマス、第二ハ舊土人ノ住宅
中ニハ保健衞生ノ上カラ見マシテ、不良ナル
モノガ少クナイノデアリマスルノデ、是ガ改
良ニ要シマスル資金ヲ補給スルノ途ヲ開クコ
トニ致シタノデアリマス、第三ハ舊土人ニ
對シマスル經濟的保護ニ付キマシテモ從來ノ
勸農以外ニ漁業、商工業等ニ關シマスル經
濟保護施設ヲ講ズルコトニ改メタイト存ズ
ルノデアリマス、何卒御審議ノ上御協賛下
サランコトヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=5
-
006・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
マス、順次之ヲ許可致シマス-堀內良平
君
〔堀内良平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=6
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007・堀内良平
○堀內良平君 私ハ只今御提案ニナリマシ
タ軍事救護法中改正法律案ニ對シマシテ、內
務大臣ニ質問致シ、次ニ現役兵、應召兵ノ家
族扶助ニ關シマシテ、陸軍大臣、海軍大臣ニ
質問致シタイト考ヘマス、兵役者ノ家族扶助
ニ關スル件ハ、昨年六十九議會ニ於キマシテ、
吾々同志ノ者ヨリ兵役待遇ニ關スル建議ト
云フモノガ提出サレタノデアリマス、滿場
一致ノ決議ヲ以テ政府ニ要望スル所ガアッ
タノデアリマスルガ、其決議ノ趣意ハ兵役
ノ義務ニ服スル爲ニ、其家族ヲ生活難ニ陷
ラシムルト云フコトハ、皇軍ノ志氣ヲ沮喪
スルノ虞アルノミナラズ、國民ノ倶ニ忍ブ
能ハザル所デアリマスルカラ、政府ハ現下
ノ社會情勢ニ鑑ミテ、速ニ入營又ハ出征兵
士ニ對シテ、其家族ニ對スル生活補償トシ
テ、年額百八十圓ヲ限度トスル所ノ金額ヲ
國庫ヨリ支出シテ聯隊區司令官ヲシテ其事
務ヲ扱ハシメテ、家族ニ現金ヲ補償セヨ、
サウ云フ法律案ヲ此本議會ニ提出セラレン
コトヲ望ムト云フ建議案デアッタノデアリマ
ス、所ガ其決議ニ依ッテノ御提案ハナイノ
デアリマスルガ、玆ニ軍事救護法ト云フモ
ノガ改正サレテ御提案ニナリマシタノハ
或ハ其本院ノ決議ヲ尊重サレマシテ、サウ
云フ御提案ニナッタカノヤウニモ考ヘルノ
デアリマス、併シ第六十九議會ニ於キマシ
テノ趣旨ハ、兵役者ノ家族ノ生活補償ト云
フモノハ、洵ニ事重大デアリマシテ、是ハ內
務省ノ一般社會的施設ニ委スベキモノデハ
ナイ、內務省ノ一般社會的施設ニ委セルト
云フコトデアリマスナラバ、完全ナ事ハ出
來ナイデアラウ、是ハ宜シク陸海軍直接ニ
其任ニ當リマシテ、根本的ノ實行ヲ期セヨ
ト云フ希望デアッタノデアリマス、而シテ其
建議案審議ノ當時、軍事救護法ト云フモノガ
非難サレテ、到底軍事救護法デハ滿足ノ結
果ヲ奏シ得ナイト云フコトノ議論トシテ、
其當時論議サレマシタコトハ、第一ニ救護
法ト云フ名前ガ惡イ、一體內務省ノ社會局
デ扱ッテ居リマスル法律ノ中ニ、救護法ト云
フモノガ別ニアル、此救護法ハ、別ニ國家
ノ爲ニ義務ヲ盡シテ居ルト云フコトデナク、
貧困ノ人ヲ救フト云フコトデアルノデアリ
マスカラ、此國家ノ爲ニ兵役ノ義務ヲ盡シ
テ居ルト云フ者ニ向ッテ、救護ト云フ文字ヲ
使フコトハ甚ダ宜シクナイ、却テ兵士ヲ侮
辱スルモノデアル、斯ウ云フコトカラ一體
軍事救護法ト云フ名前ガ惡イト云フコトガ、
大分其當時論難サレタノデアリマス、又其
適用範圍ニ於キマシテモ、軍事救護法ノ第
五條ニ適用範圍ガ定メラレテ居ルノデアリ
マスルガ、之ニハ兵士ガ入營シマシタ爲ニ、
其家族ガ生活スルコト能ハザル者ニ限ルト、
斯ウ書イテアル、生活スルコト能ハザル者
ニ限ルト云フコトハ、解釋ノ仕樣ニ依リマ
シテハ、生キラレル內ハ扶助シナイト云フ
コトニナル、愈、生活ガ出來ナクテ、モウ瀬
死ノ狀態デアルト云フヤウナ所マデ行カナ
ケレバ、救助ヲ受ケルコトガ出來ナイト云
フヤウナ法律デアッタノデアリマス、洵ニ適
用ノ範圍モ狹ク、非常ニ窮屈千萬ノモノデ
アッタノデアリマス、左樣ナ法律デアリマシ
タカラ、若シ此救助ヲ受ケヨウト云フ人ハ、
中々町村役場ナドニ於キマシテ、其生活ノ
內容ニ立入ッテ、非常ニ微ニ入リ細ニ互ツ
テ內容ノ調査ヲスル、洵ニ忍ビラレヌヤ
ウナ調査ヲ致スノデアリマス、サウ云フ
ヤウナ次第デゴザリマスルカラ、幾
ラ困ッテモ此調査ヲ受ケテ救護ヲ受ケルト
云フコトハ、洵ニ恥辱デアルト云フヤウ
ニ考ヘテ、困ッテモソレヲ忍ンデ居ッテ、
ワザト救助ヲ申出ナカッタト云フ人ガ澤山
アッタノデアリマス、ソレカラモウ一ツ建議
ノ際ニ議論ニナッテ居リマシタノハ、是ハ救
護法ノ規定ニハ全然ナカッタコトデアリマス
ガ、年々十二三万人ヅヽハ新シク徵兵ニ召
サレルノデアリマスガ、其時入營スル時ニ
ハ洵ニ達者ナ、甲種合格トシテ通シテ居ッタ
體ガ、兵營ニ入リマシテ半年カソコラ經チ
マス內ニ、非常ニ病氣ニナル人ガ多イ、其
病氣ニナリマスル人ガ年々四千名モアル、
除隊者ハ總計デハ五千人位アルノデアリマ
スガ、其中公傷病ニ依ッテ除隊サレル人ハ僅
カデアリマシテ、大體四千ニ近イ人ガ、急
ニ病氣ガ發生致シマシテ除隊サレルコトニ
ナルノデアリマス、其病氣ノ種類ハ肺病ガ
一番多イ、肺結核ニナッテ除隊サレル人ガ一
番多イノデアリマシテ、陸軍トシテ、海軍
トシテ、ソレヲ救濟スル途ハ何モ今迄ナイ
ノデアリマス、斯ウ云フヤウナ事モ非常ニ
殘酷ナ仕打デハナイカト云フコトガ、其論
議ノ問題ニナッタノデアリマス、所ガ今度內
務省カラ改正案トシテ提出サレマシタ所ノ
軍事救護法ニハ、是等ノコトガ皆訂正サレ
テ、法律案トシテ出テ參ッタノデアリマス、
卽チ先刻内務大臣ガ御說明ニナリマシタヤ
ウニ、軍事救護法ト云フ名前ハ「軍事扶助法」
ト變ッタノデアリマス、ソレカラ此扶助ヲ受
ケル者ノ範圍ハ、生活スルコト能ハザル者
ニ限ルト云フノデアリマシタケレドモ、ソ
レヲ「生活スルコト困難ナル者」ト斯ウ變ッタ
ノデアリマス、ソレカラ又只今申上ゲマシ
タヤウナ、救護法ニ何等關係ガナカッタ所
ノ、兵役ニ從事シテ居ッテ急ニ病氣ニ罹ッタ
ト云フヤウナ者-丁度ソレハ昭和五年カ
ラ十年マデノ平均數ヲ見マスト、陸軍ガ二
千六百五十人、海軍ガ七百九十三人ト云フ
ノデアリマスルガ、合計三千四百四十三人
ト云フヤウナ、斯ウ云フ一厘モ呉レズニ除
隊ヲサセラレタト云フヤウナ人ニ療養スル
所ノ費用ヲ與ヘル、斯ウ云フコトニナッテ
參ッタノデアリマス、斯ウ云フコトニナリマ
シテ、大體昨年此救護法ノ不完全トシテ論
議サレタ點ハ、此規則ノ上ニ於テハ變更サ
レタノデアリマスルガ、偖テ此法律ガ變更
サレタニ付キマシテ、實行ニ伴フベキ施設
ガナイノデアリマスルカラ、其點ヲ內務大
臣ニ伺ッテ見タイト思フノデアリマスルガ、
今囘ノ救護法ノ改正ニ伴フ所ノ豫算ノ總額
ト云フモノハ、內務省ノ所管ニ於キマシテ
百四万三千圓シカナイノデアリマス、勿論
是ハ九箇月分ノ計算ダト云フコトデアリマ
スルカラ、之ヲ一年ニ換算シマスルト百三
十九万圓バカリニナルノデアリマス、所デ
只今申上ゲマシタ公傷病、戰死傷病ニ因ラ
ザル其他ノ傷病ニ基因スル所ノ除役者ト云
フモノガ、昭和五年カラ十年マデノ間ノ平
均數ヲ取ッテ見マスルト、三千四百四十三人
アル、此人ニ幾ラ位ヅヽ療養費ヲ與ヘルカ
ト云フコトヲ當局ノ方ニ伺ッテ見マスルト、
大體一日一圓五十錢ヲ給與スル積リダト、
斯ウ仰シヤル、一日一圓五十錢ヲ與ヘマシ
テ、一箇年此人達ニ療養費ヲ與ヘルトスレ
バ、百八十八万圓掛ルノデアリマス、肺病
ハ御承知ノ通リ中々急ニ治ラナイ、大體此
多數ハ肺病患者デアリマスルカラ、其人達
ニ一圓五十錢ヅヽノ療養費ヲ與ヘルトスレ
バ百八十八万圓ノ金額ヲ要スルノデアリ
マス、一人當リガ丁度五百四十四圓トナル
ノデアリマスガ、サウ致シマスルト此分ダ
ケデ既ニ百三十九万圓ヲ超過スルコト五十
万圓、五十万圓モ是ダケヲ救濟スルニシテ
モ金ガ足ラナイノデアリマス、ソコデ救護
法ニ依ッテ今日マデ救護サレテ居ッタ軍人ハ
幾ラアルカト言ヒマスト、丁度昭和九年ノ
統計デ見マスルト、三万二千戶デアリマス、
陸海軍ノ家族ハ丁度三十五万家族アルノデ
アリマスルガ、其中昭和九年度ニ軍事救護
法ニ依ッテ救護サレタ者ハ三万二千戶、之ニ
支拂ッタ所ノ金額ガ二百八十万九千圓デア
ルノデアリマス、丁度一戶當リ八十七圓八
十錢ニ當ルノデアリマスルガ、今囘豫算ニ
計上サレテ居リマスル費用百三十九万圓ト
云フモノデハ、此傷病除隊兵ニダケ與ヘル
分ニ於テ五十万圓ノ缺陷ガ生ジテ居ル、ソ
コデ此三万二千戶ト云フモノハ、丁度陸軍
二十五万戶、海軍七万戶、卽チ三十二万戶
ニ對スル所ノ僅ニ一割、十分ノ一ダケノ金
シカ拂ッテ居ラナカッタノデアリマスルカ
ラ、殘ッタ所ノ十分ノ九ト云フモノ、
卽チ二十八万八千戶ト云フ殘ッテ居ルモ
ノガ、今度ハ新シク扶助ヲ受ケルコトニ
ナルノデアリマス、併シ(發言スル者アリ)
聞エマセヌカ-此殘ッテ居ル所ノ二十八
万八千戶ト云フモノガ扶助ヲ受ケルコトニ
ナルノデアリマスルガ、如何ニモ金額ガ僅
ノ金額デアリマシテ、只今申上ゲマシタヤ
ウニ、此公傷病ニアラザル所ノ除隊兵士ヲ
救フ爲ニ、旣ニ五十万圓ノ不足ヲ生ジテ居
ル、サウ云フコトニナリマスレバ、今度三
万二千戶ヲ殖ヤシテ、此三十二万戶ノ中
殘ッタ所ノ二十八万八千戶ノ兵士ノ家族ト
云フモノノ困ル人ヲドウシテ救ヒ得ルカ、
斯ウ云フ點デアリマス、一體法律ヲ制定シ
テ國民ニ約束スルト云フ場合ニ、實行ガ出
來ナイト云フヤウナコトハ、非常ニ是ハ困
ルコトデアリマシテ、殊ニ此兵役ニ從事シ
テ居ル所ノ人達ニ向ッテ、其人ノ家族ノ困ル
人ヲ扶助シテヤルノダト云フコトヲ明ニ約
束ヲシテ、此法律ヲ改正スルノデアリマ
ス、而シテ其救濟ガ出來ナイト云フヤウナ
コトニナッテハ、甚ダドウモ申譯ナイコト
ニナルノデアリマス、私ノ考ト致シテハ、
此軍事救護法ノ改正ト云フモノハ、議會ノ
決議ヲ遵奉シテ御改正ニナッタト云フ點ハ
大ニ諒ト致シマスルガ、偖テ是ハ實行ノ伴
ハナイ所ノ、實行ノ出來ナイ所ノ斯樣ナ法
律ガ出來マシタ所ガ、是ハ却テ甚ダ迷惑ス
ルコトニナリマシテ、愈、、此法律ヲ實行スル
上ニ於テハ、非常ニ是ハ大混亂ノ場合ニ遭
遇シハセヌカト思フノデアリマス、假ニ私
共然ラバ幾ラ位ノ救濟費ヲ要スルカト云フ
點カラ考ヘテ見マスルト、此今ノ兵士ト云
フ者ハ、大〓中以下ノ家庭ノ人ガ多イノデ
アリマシテ、農漁山村ニ於キマシテモ、又
商工業者ノ側ニ於キマシテモ、各階級ヲ通
ジテ兵役ノ義務ニ服スル者ハ、中以下ノ者
ノ子弟ガ一番多イノデアリマス、デアリマ
スルカラ、今日三十二万人ノ此兵役者ノ家
族ノ中ニハ、私共ノ考カラ見ルト、大體七
割位ハ困難ノ者ガアルト思フノデアリマス、
困難デナイト云フヤウナ者ハ、僅カ三割位
シカ殘ッテ居ナイダラウ、少クトモ七割位
ハ困難ノ者ガアルノデアリマスルカラ、七
割ト申シマスト、二十二万四千戶、二十二
万四千戶ト云フモノニ、此建議ノ趣意ハ百
八十圓ト云フ金ヲ給與セイト云フコトデア
リマシタガ、今日マデ救護法ニ依ッテ與ヘ
ラレテ居ル所ノ金額カラ致シマシテモ、一
戶當リ八十七圓八十錢拂ッテ居ル、此八十
七圓八十錢ト云フ金ヲ拂ッテ居ッテ、今度ハ
其困難ノ者ヲ皆救フト云フコトニ範圍ヲ廣
メタノデアリマスカラ、其生活困難ノ者モ
救フト云フコトニナリマスレバ、ドウシテ
モ此增加スル分デモ千七百万圓位ニナルノ
デアリマス、ソレニ傷病兵ノ只今ノ給與ノ
百八十万圓ト云フモノヲ加ヘ、尙ホ演習等
ニ召集サレル所ノ者ノ分ヲ加ヘルト云フコ
トニナリマシタナラバ、ドウシテモ二千万
圓位ノ金ヲ玆ニ計上致シマセヌケレバ、軍
事扶助ノ途ハ完全ニ行ハレナイト思フノデ
アリマス、然ルニ只今モ內務大臣カラ御說
明モアリマシタガ、軍事救護法中改正法律
案ノ提出ノ理由書ト云フモノヲ見マスト、
今囘現下ノ社會情勢ニ鑑ミテ、其適用範圍
ノ擴張其他ニ付テ改正ヲ加ヘタ、サウシテ
軍事扶助ノ徹底充實ヲ期スルト、斯ウ云フ
コトガ書イテアルノデアリマス、軍事扶助
ノ徹底充實ヲ期スルト云フコトガ書イテア
ルノデアリマスルガ、果シテ軍事扶助ノ徹
底充實ヲ圖ルト云フコトニナリマスルナラ
バ、僅カ百三十五万圓ノ一箇年ノ經費ヲ增
額シタト云フダケデ、ドレダケノ仕事ガ出
來ルデアリマセウカ、私ノ考ト致シマシテ
ハ、今マデ通リニ僅カヅヽノ金ヲ一戶當リ
ニ吳レルトシテ、サウシテ大體其全數ニ對
スル七割ノ困難ノ人ヲ扶助スルト云フコト
ニナリマシテモ、大體二千万圓近イ金ヲ要
スルノデアリマス、ソレヲ百三十五万圓ト
云フ少額ノ金デ、ドウシテ此扶助ノ途ヲ完
ウスルコトガ出來ルデゴザイマセウカ、私
共ハ國防ノ第一線ニ立ッテ、サウシテ命ヲ
捨テヽ國ヲ護ルト云フ兵士ガ、假令待遇ガ
惡クモ、手當ガ惡クテモ、左樣ナコトニハ一
言モ何トモ言ハズニ、身ヲ以テ國ヲ護ルト
云フ心事ニ思ヒ至リマスルト、洵ニ氣ノ毒
ニ堪ヘヌノデアリマス、此兵士ノ後ロ姿ヲ
見レバ、掌ヲ合シテ拜ミタイヤウナ感ガス
ル、サウ云フヤウナ人達、卽チ兵役ニ從事
シテ居ル者ノ爲ニ、其困ッテ居ル家族ヲ救フ
ト云フコトハ、國家トシテドウシテモヤラ
ナケレバナラヌコトデアリマスルガ、其
救護ノ方法ガ不完全ナリト云フコトヲ政府
ハ既ニ御悟リニナッタ、現ニ昨年本院ノ建議
ニ於キマシテモ、相當ノ費用ヲ要求シテ、
之ニ善處シテ、サウシテ遺憾ノナイヤウニ
法案ヲ提出セヨト云フコトヲ、當議會カラ
モ請求致シテ居ル、サウ云フコトニ依リマ
シテ此救護法改正案ガ出テ來タモノト考ヘ
マスルナラバ、洵ニ斯樣ナル不完全極マル
法案ヲ以テ、サウシテ之ヲ發表スル、發表
シタ曉ニ愈〓之ヲ實行スルト云フ點ニ於
テ、ドウナルモノデアリマセウカ、隨分是
ハ其宣傳ガ大キイトデモ申シマセウカ、其
誇張スルコトガ大キイトデモ申シマセウ
カ、ソレハ賣藥ノ廣〓トハ違フノデアリマ
ス、洵ニ眞面目ナル所ノ兵士ノ生活扶助ト
云フコトニナルノデアリマスルカラ、極メ
テ眞面目ニ考ヘマシテ、苟モ此法案ヲ發表
致シマシタナラバ、ソレニ對シテ實行ガ出
來ル、サウシテ滿足ノ行クヤウニシテヤラ
ナケレバナラヌモノト思フノデアリマス、
私ハ其點ヲ內務大臣ニ伺ヒタイノデアリマ
ス、內務大臣ハ如何ニシテ此法案ガ實行サ
レタ曉ニ-今日ノ救護法カラ云ヒマスル
ト、生活スルコト能ハザル者ニ限リト云フ
ヤウナ規定ニナッテ居リマスルカラ、此條文ヲ
楯ニ取ッテ如何樣ナコトデモ言ヘルノデス、
又言ッテ居ルノデアリマスカラ、洵ニ三十二
万家族ニ對スル所ノ僅カ十分ノ一シカ扶
助ハシテ居ナイ、外ニ困ル人ガナイノカト
云フト、非常ニ困ル人ハ澤山アル、澤山ア
リマスルケレドモ、斯ウ云フ法文ノ規定ニ
依ッテ、之ヲ拒ンデ居ルノデアリマス、今度
ノ法文ノ規定ニ依リマスト、之ヲ改正シテ
「困難ナル者」ニ對シテ扶助スルト云フコト
デアリマスルカラ、困ル者ニハ皆ヤルト云
フ結果ニナル、サウシマスルト私共ノ考ト
シテハ、ドウシテモ全部ニ對スル七割位ノ
人ヲ助ケナケレバナラヌコトニナル、サウ
云フ多數ノ人ニナリマスルガ、多數困ッテ居
ル人ハ此法律ヲ見テ、皆今度ハ愈〓兵士ノ
家族ノ生活ノ安定ヲ得ルト云フヤウナコト
ニナッテ、喜ブデアラウ、喜ンデ偖テ此法律
ノ適用ヲ實際ニスルト云フコトニナリマス
ト、ドウシテモ僅カノ金デ行渡ルコトハ出
來ナイ、サウナリマスト一寸糠喜ビニ喜バ
セルダケデ、サウシテ其後ハ却テ以前ヨリ
怨ヲ增シテ、甚ダ兵士ニ對シテ侮辱ヲスル
ヤウナ結果ニ終ルノデハナイカト思フノデ
アリマス、此法律ヲ如何ニ適用シテ、如何
ニシテ扶助ヲ實行スベキカト云フコトニ付
キマシテ、内務大臣ノ御答辯ヲ伺ヒタイノ
デアリマス
次ニ陸軍大臣、海軍大臣ニ御尋シタイノ
デアリマスルガ、兵役ハ國民至高ノ義務デ
ゴザイマシテ、皆國民ガ勇躍之ニ服シマス
ルコトハ、洵ニ我國特有ノ美點デアリマ
ス、而シテ皇軍ノ士氣ガ世界ニ冠タルモノ
アルモ、固ヨリ其爲デアリマスルガ、最近
ノ逼迫セル社會情勢ハ、一般ヲ通ジテ生活
ノ安定ヲ缺ク者ガ簇出シテ居ルノデアリマ
ス、殊ニ徵兵ニ召集セラレテ居ル者ノ爲
ニ、非常ニ其家族ガ生活ノ安定ヲ缺クト云
フコトハ、只今申上ゲタ通リデアリマス、
而シテ其兵役ニ從事シテ居ル者ノ實際ノ狀
況ヲ見マスルト、何レモ中以下ノ家庭ノ者
ガ多イノデアリマシテ、中以上ノ家庭ノ者
ハ色々體格ノ缺點ガアリマシテ、兵隊ニ出
ル人ガ少イノデアリマス、其大部分ハ中以
下ノ者ノ家庭ニ育ッタ人ガ多イノデアリマ
ス、然ルニ此兵役ニ從事スル者ハ、色々家庭
ノ窮乏ヲ顧ミル遑モナク、唯自分ガ一身ヲ
挺シテ義勇奉公ノ念ニ燃エテ入營スルノデ
アリマスガ、其兵士ノ心情ニ對シテ、家族
ノ生活ガ不安定ヲ來スト云フコトニナリマ
スルト、洵ニ氣ノ毒ノ限リデアルノデアリ
マス、而シテ此兵隊ニ出テ居リマスル爲
ニ、其家族ニ幾ラノ生活ヲ脅カスダケノコ
トニナルカト云フコトヲ、數字ヲ擧ゲテ申
シマスルナラバ、ドノ階級デモ同ジデアリ
マスルガ、假ニ農村ニ於キマシテ働盛リノ
靑年ヲ一人兵役ニ取ラレルト云フコトニナ
リマスルト、ドウシテモ其人間ノ代ルベキ
人ヲ雇入レナケレバナラヌ、雇入レナケレ
バ農業ヲ營ムコトモ出來ズ、商賣ヲスルコ
トモ出來ナイノデアリマス、其代リヲ入レ
ルト云フコトニナリマスルト、ドウシテモ
一人給料百五十圓位ハ拂ハナケレバナラ
又、是ハ全國平均ノ計算デアリマスルガ、
百五十圓位ノ給料ヲ拂ハナケレバナラナ
イ、尙ホ入營シマスル時ニ色々ト御祝ナド
ヲサレマシテ、ソレニ酒ヲ一杯出ストカ、
赤飯ヲ作ルトカ云フヤウナコトカラ、ドウ
シテモ入營ノ費用、又退營スル時ノ費用ト
云フモノガ大體三十圓位掛ル、結局昨年ノ
建議ニ百八十圓ト云フ生活補償ヲ與ヘヨト
云フコトモ、ソレ等ノ點ヲ合セマスト丁度
百八十圓位、其處ニ缺陷ヲ生ズルコトニナ
ルノデアリマス
尙ホ兵士ニ對シテ、入營中ハ陸軍ノ方カ
ラモ、海軍ノ方カラモ、御給與ガアルノデ
アリマスガ、段々實際ノ事情ヲ調ベテ見マ
スト、中々此給與ノ金額ダケデハ足ラナイ
ノデアリマス、ソレデ極ク內證ニ皆ソレ
ゾレ金ヲ取ルノデアリマス、是ハ公然ノ事
實デゴザイマシテ、兵隊ニ出テ居ル者ハ皆
實家カラ、幾ラ家庭ガ、困ッテモ幾ラカ金ヲ
取ルコトニナル、サウ云フモノヲ大體〓算
シマスト、年額五十圓位ノ小遣ヲ取ルノデ
アリマス、併シソレハ陸軍ノ方カラモ、決
シテ小使錢ヲ家庭カラ取ルコトハナラヌゾ
ト云フヤウナコトニナッテ居ルサウデアリ
マスガ、忍ビラレズシテ取ルノデアリマス、
玆ニ一寸其實況ヲ一ツ申上ゲマスガ、實ハ
私ノ所ニ昨年暮マデ下女ガ居ッタノデア
リマスガ、其兄貴ガ兵隊ニ出テ居ル、所ガ
實家モ非常ニ貧乏デアリマシテ、其兄弟共
ガ二人モ餘所ニ奉公シテ居ルト云フヤウナ
者ニ、兵隊ニ出テ居ル所ノ兄貴カラ小遣ヲ
セビッテ來ル、併シ小遣ヲ持ッテ來イト云フ
コトハ言ヘナイカラ、面會ニ來テ吳レト云
フ手紙ガ參ッタノデアリマス、其面會ニ來イ
ト云フコトハ、ヤハリ小遣ヲ持ッテ來テ吳
し、斯ウ云フコトデアル、ソコデ其兄弟
共ハ僅ニ取ル給料ノ中カラ、三圓五圓ヲ出
シ合ッテ、サウシテ兄貴ノ小遣ニ持ッテ行ク
ト云フコトヲ、是ハ實際私共ハ目ノアタリ
ニ見テ居ルノデアリマス、澤山斯ウ云フ例
ハ世間ニモアルコトダラウト思フノデアリ
マス、サウ云フヤウナ狀態デアリマスカラ、
ドウシテモ其方ノ金額モ五十圓位見ナケレ
バナラヌ、サウシマスト、一人ノ兵隊ガ出
テ居ル爲ニ、ヤハリ二百三十圓ト云フヤウ
ナ金ガ掛ルノデアリマシテ、若シ百姓ヲシ
テ居リマシテモ、其代リノ人ヲ賴マナクテ
其百姓ヲ廢メルトカ、商賣ヲ廢メルトカ云
フコトニナレバ、結局ソレダケノ產業資金
ガ缺損ヲ生ズルト云フヤウナ結果ニナルノ
デアリマシテ、二箇年ノ兵役中ニハ、ドウ
シテモ一人前ノ兵士ノ斯ウ云フ負擔ガ、四
百六十圓ト云フコトニナルノデアリマス、
此四百六十圓ト云フ金、一箇年ニ二百三十
圓二百三十圓ト云フ金ガ、兎ニ角兵役者
ガ出テ居ル爲ニ、是ガ農村及中小商工業者
ノ生產能率ニ、是ダケノ缺陷ヲ生ズルト云
フ結果ニナルノデアリマス、全體デ三十二
万人ノ現役兵ニ對シテ、年額丁度七千万圓
位ノ缺陷ヲ生ズルコトニナル、年々兵士ヲ
出ス爲ニ、日本全國ノ農漁山村商工業者ヲ
通ジテ、各階級ヲ通ジマシテ、七千万圓位
ノ缺陷ヲ生ズルコトニナルノデアリマス、
デアリマスカラ現今ノヤウニ農村モ疲弊
シ、中小商工業者モ非常ニ困憊シテ居ルノ
デアリマスガ、蓋シ其一ノ原因トシテハサ
ウ云フヤウナ經濟上ノ缺陷モ、亦大ニ其一
ツノ根本理由トナルノデハナカラウカト考
ヘテ居ルノデアリマス
要スルニ私共ノ考カラ致シマスレバ、ド
ウシテモ皇軍ノ士氣ヲ鼓舞スルト云フコト
三、後顧ノ憂ナカラシムルコトデアル、
是ハ先刻內務大臣モ仰シヤッタ、此法律ヲ改
正シテ、サウシテ十分ノ手當ヲ與ヘテ、後
顧ノ憂ノナイヤウニスルンダト、斯ウ仰シ
ヤッテ居ル、其後顧ノ憂ナカラシムルト云フ
コトハ、ヤハリ家族ノ生活ヲ安定スルト云
フコトデアルノデアリマス、此事ハドウシ
テモ陸海軍ニ於キマシテ、直接ニ御考ニナツ
テ、此廣義國防ノ上ニ於テ先ヅ第一ニ斯ウ
云フコトヲ充實徹底セシムルコトヲ、御攻
究ニナルベキコトヂヤナイカト思フノデア
リマス、然ルニ聞ク所ニ依リマスト、軍部ノ
一部ニハ、日本ハ全國皆兵主義デアッテ、徵
兵制度ガ布カレテ居ル、全國ノ國民ハ皆喜
ンデ兵役ニ從事シテ居ルノデアル、兵士ニ
金ヲヤリ、及ビ兵士ノ家族ヲ金ヲヤッテ扶助
スルト云フコトハ、傭兵ト同ジヤウナコト
ニナルノデアッテ、ソレハ日本ノ兵制ノ爲ニ
取ラナイ、却テサウ云フ事ヲスレバ皇軍ノ
意氣ヲ沮喪スル虞ガアルカト云フヤウナ意
見ヲ有セラレテ居ル方ガ、アルカノヤウニ
聞イテ居ルノデアリマス、果シテアルカナイ
カ分リマセヌガ、サウ云フヤウナコトデ、ソ
レガ爲ニ兵士ノ家族ノ扶助ト云フコトニ付
テ、陸海軍ガ直接ニ手ヲ御著ケニナラヌノ
ダ、斯ウ云フヤウナコトモ聞イテ居ルノデ
アリマスルガ、果シテサウ云フコトガオアリデ
ゴザイマセウカ、此點ハ非常ニ私共ト根本
ニ於テ考ヲ異ニスル點デアルノデアリマス、
全國皆兵主義ト致シマシテ、勿論兵役ノ義
務ニ從事スルト云フコトハ、之ニ對シテ國
民一人モ異議ヲ挾ム者ハナイノデアリマス、
又傭兵制度デモナイト云フコトモ能ク知ッ
テ居ル、知ッテ居リマスガ、兎ニ角全國皆
兵主義ト致シマシテモ、此兵役ニ從事スル
者ハ、大體年々總體ノ壯丁ノ中ノ半分以下
位出テ來ルノデアリマスガ、其人達ガ兵役
ニ從事スル爲ニ、家庭ノ生活ノ安定ヲ缺キ、
ソシテ非常ニ其家庭ノ者ガ窮乏ニ陷ル、斯
ウ云フヤウナ場合ニナリマシタナラバ、ド
ウシテモ國家トシテ是ハ見テ居ラレナイ事
デアリマス、現ニ色々例ヲ擧ゲレバ澤山ア
ルノデアリマスガ、或ル滿洲ニ行ッテ居ル所
ノ軍人ガ、滿洲ノ匪賊ト戰ヒ、寒氣ト戰フ
コトハ何デモナイガ、國ニ殘ッテ居ル所ノ
家族ノ生活ニ困ルト云フコトヲ聞クニ至ッ
テハ、夜モ寢テモ眠レナイ、僅カバカリノ
金ダケレドモ、給與ノ金ヲ貯蓄シタカラ、
僅カナ金デモ送ルナドト言ウテ、例ヘバ三
圓五圓ナドノ金ヲ家族ニ送ッテ來ルト云
フヤウナ話ヲヨク聞イテ居ルノデアリマス、
斯ウ云フヤウナ場合ニ、軍人ガ果シテ思フ
存分勇氣ヲ出セルモノデアリマセウカ、私
共ハ軍隊ニ居リマセヌカラ、能ク分ラヌノ
デアリマスガ、ヤハリ兵士ト雖モ人間ノ情
ハ同ジデアリマスカラ、サウ云フヤウナ後
顧ノ憂ヒガアッテハ、到底十分ナル勇氣ヲ出
シ得ナイト思フノデアリマス、尙ホ兵營ニ
於キマシテモ、兵營ニ居ル所ノ兵士ハ皆仲
好クシテ、オ互ニ兄弟同樣ニセヨト云フコ
トノ御訓示ガアルサウデアリマス、是ハ御
尤ノコトデアリマス、併シ其事情ヲ能ク聽
イテ見マスト、オ互ニ友達同志仲好クシテ
遊ブト云フコトニナリ、又付合ヒヲスルト
云フコトニナリマスト、ヤハリドウシテモ
小遣ガ餘分ニ要ルコトニナル、ソコデ家カ
ラ金ヲ送ッテ貰ヘル者同志ハ宜イケレドモ、
家庭カラ金ヲ送ッテ貫フコトノ出來ナイト
云フヤウナ者ハ、其仲間ニナッテ外ノ人ト一
緒ニ交際スルコトモ出來ナイ、例ヘバ外ノ人
ハ外出シテ散步出來ル時デモ、兵營ノ中ニ
引籠ッテ一人デ居ルト云フヤウナ人ガアル
ノダサウデアリマス、左樣ナコトヲ聞クノ
デアリマスガ、サウ云フヤウナ場合ニ洵ニ
其心事ハ淋シイモノデアリマシテ、勇氣ヲ
鼓舞シヨウト云フヤウナコトガ、果シテ出
來ルカ出來ヌカ、大ニ疑ヲ生ゼザルヲ得ヌ
ノデアリマス、ソレカラ又家庭カラ金ヲ送
ルト云フコトモ、裕福ナ家庭カラ月ニ五圓、
三圓ノ金ヲ送ルト云フコトハ、何デモナイ
デアリマセウガ、隨分困ッテ居ルヤウナ所カ
ラ金ヲ送ルト云フヤウナコトハ、困難デア
ルト云フコトヲ、十分考ヘナケレバナラヌ
コトト思フノデアリマス、左樣ナ次第デゴ
ザイマシテ、ドウシテモ此家庭ノ窮迫ヲ來
シテ居ル者ニ對シテ、國家ガ當然之ニ扶助
ヲ與ヘルコトニ付キマシテハ、是ハモウ傭
兵ノ講義ヲスルマデモナケレバ、又ソレガ
爲ニ皇軍ノ勇氣ヲ沮喪スルナント云フコト
ハ全然ナイ、却テ其反對ノ結果ヲ齎スコト
デハナイカト私共ハ思フノデアリマス
是ニ於テ陸軍大臣、海軍大臣ニ御尋シタ
イノデアリマスガ、斯樣ニ兵士ノ家族ガ窮
乏シ、又在營者モ困ッテ居ル、現ニ內務大臣
モ此救護法ノ不完全ナルコトヲ認メテ、玆
ニ改正法律案ヲ出サレ、又吾々議會カラモ
昨年滿場一致ノ決議ヲ以テ、此扶助ヲ徹底
的ニヤッテ吳レト云フコトノ建議モ出シテ
居ル、ソレヲドウシテ此兵士ノ家族扶助及
ビ兵士ノ待遇ノ事ニ付キマシテ、御手ヲ御
著ケニナラナイノデアリマセウカ、只今申
上ゲマシタヤウナ、何カ之ニ物質的ノ援助
ヲ與ヘルト云フコトハ、却テ皇軍ノ士氣ヲ
沮喪スルト云フヤウナ御考デモアルノデア
リマセウカ、左樣ナ事ハ只今申上ゲマシタ
通リ、非常ニ相違ノ點ガアルト思フノデア
リマスルガ、其點ニ付テ御伺ヒ致シタイノ
デアリマス(拍手)
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=7
-
008・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 應召中ノ兵士
又ハ其家族ニ對シマシテ、洵ニ御親切ナル
御言葉ガゴザイマシテ、私共其扶助ノ局ニ
當リマスル當局トシテ、洵ニ感謝ニ堪ヘマ
セヌ、只今御話ノヤウニ、昨年ノ滿場一致
ノ御決議ニ基イテ、今囘法案ノ改正ヲ提案
致シタノデアリマス、私ニ對スル御尋ハ結
局豫算ニ揭ゲラレテ居ル金デハ足リナイデ
ハナイカ、斯ウ云フコトニ諒解ヲ致シタノ
デアリマス、只今御話ノヤウニ、本年度ニ
於ケル既定額二百五十三万圓ニ對シマシテ、
十二年度ハ三百八十五万圓ニ致スコトニナツ
テ居ルノデアリマスガ、私共ノ見ル所ニ依
リマスト、大體此程度ニ於キマシテ、生活
困難ナル者ニ對スル扶助ハ、マア〓〓是デ
一通リハ屆クノデハナイカ、斯ウ云フ風ニ
思フノデアリマス、尙ホ此費目ハ御承知ノ
通リ補充費目デアリマシテ、若シ萬一足リ
マセヌヤウナ場合ニハ、ソレ〓〓支出ノ途
ガアル譯デアリマスガ、マア大體此程度デ
或ル程度マデハ行クヤウナ見込デアリマス
尙ホ此際附加ヘテ申上ゲテ置キマスガ、傷
病兵等ニ對シマスル扶助ノ一ツノ方法トシ
テ、單ニ金ヲ給與スルバカリデナク、別ノ
豫算ニ於キマシテ、昭和十二年度カラ十六
年度、卽チ五箇年間ニ、結核ノ國立ノ病床
ヲ二千五百作リマシテ、詰リ每年五百床ヅ
ツ作ッテ、應召兵士ノ結核等ニ罹リマシタ者
ヲ收容シテ、十分ナ療治ヲ致サセタイト思
フノデアリマス
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=8
-
009・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 只今ノ御質問ニ對
シマシテ御答申上ゲマス、只今ノ御質問ト
シテハ、兵役ニ服シテ居リマスル者ノ家族
二、一律ニ物質的保護援助ヲ與ヘヨト云フ
御話デゴザイマシタ、此點ニ付キマシテ
ハ、我軍ノ兵役義務ハ最モ崇高ナル犠牲奉
仕ノ觀念ニ出發ヲ致シテ居ルノデゴザイ
マシテ、斯ノ如キ觀念ニ於テ御奉公スルコ
トニ依ッテ、初メテ一般國民ノ感謝感激ニ依
リマシテ、期セズシテ是等ノ兵役義務者ニ
對スル所ノ御熱誠ナル御後援、御援助ヲ獲
得ルモノデアルト存ジテ居リマス、若シ之
ヲ兵役ニ服シテ居ル者ニ一律ニ物質的ノ補
助ヲ與ヘルト云フコトニナリマスルト、只
今御話ノアリマシタヤウニ、傭兵制度ノ形
ニナリハセヌカト云フ虞ガアルノデアリマ
ス、斯ノ如キ次第ニ依リマシテ、一律的ニ
保護ヲ致シマスルト云フコトニ付テハ、軍
部ハ目下ノ所同意ハ致シテ居リマセヌ、尙
ホ生活ニ困ッテ居ル者ニ關シマシテハ、既ニ
軍事救護法ニ依リマシテ救護セラレマシ
テ、此方法ハ曩ニ內務大臣カラ御說明申上
ゲマシタヤウニ、相當ニ最近ハ普及致シタ
ノデゴザイマス、尙ホ今囘ノ改正法律案ガ
成立致シマシタナラバ、扶助ノ範圍モ擴大
セラレマシテ、一層其成績ヲ擧ゲ得ルデア
ラウト存ジテ居リマス(拍手)
〔國務大臣米內光政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=9
-
010・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 先程ノ洵ニ御親
切ナル、御同情アル御質問ニ對シマシテ感
謝ヲ致シマス、吾々軍人ヲ預ッテ居リマス
者ニ取リマシテハ、特ニ其感ヲ深ウ致シタ
ノデアリマス、其他ノ事ニ付キマシテハ、
只今陸軍大臣カラ御答辯ニナリマシタコト
ト同樣ノ考ヲ持ッテ居リマス(拍手)
〔堀內良平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=10
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011・堀内良平
○堀内良平君 一寸簡單ニ申上ゲマス、只
今內務大臣ノ御答辯ニ依リマスト、マア〓〓
此邊デ行ケルデアラウ、マア〓〓ト云フ
御言葉ノ中ニハ、ドウ云フコトヲ含ンデ居
ルカ分リマセヌガ、尙ホ金ガ足リナケレバ、
增スノダト仰シヤル、私ハ是ト根本的ニ考
ヘガ違ッテ居ッタノデアリマシタガ、昨年ノ
院議ヲ尊重シテ、斯ウ云フ案ヲ出シタト仰
シヤル、昨年ノ建議案ノ趣旨ハ、先刻申シ
マシタ通リ、是ハ內務省ノ社會的施設ニ俟
ツベキモノデナイ、ソレデハ十分出來ヤウ
ガナイカラ、是ハヤハリ陸海軍直接ニ、此
重大ナル仕事ヲセナケレバナラヌト云フコ
トデアッタノデス、併シ病人ノ方ハ別ニ救濟
スル途モアリ、又病床ヲ增ス途モアル、マ
アマア何トカナルノデアラウト云フ點ハ、
是ハコチラカラ追究シテモソレマデデアリ
マスカラ、ドウカ徹底的ニ實行ヲ期スルヤ
ウニ御願シタイノデアリマスガ、只今陸軍
大臣ノ仰シヤイマシタ中ニ、國民ガ色々ト
感謝シテ後援ヲシテ呉レルト云フコトハ、
要スルニ現在澤山アリマスル所ノ軍人後援
會トカ、サウ云ッタヤウナモノガアッテ、是ガ
見テ居ッテ吳レルカラト云フヤウナ御話ノ
ヤウニモ考ヘマスルガ、此色々ノ團體ガ果
シテ國民全體ノ希望ニ副ヒ、又兵役者ノ家
族扶助ノ實ヲ擧ゲテ居ルカドウカト云フコ
トハ、餘リ此處デ私露骨ニ申上ゲルコトヲ
憚リマスルガ、ドウゾ其邊ノコトハ能ク徹
底スルヤウニ、出來ルナラ御願シタイ、而
シテ一般一律ニ皆金ヲヤルト云フコトハ、
傭兵ダト斯ウ仰シヤル、成程ソレハ一應御
尤デアル、私共ハ此百八十圓ト云フ金ヲ全
部渡スノデアルガ、此中デ困ラナイ人ハ
自發的ニ辭退スル、自發的ニ辭退サセ
ルト云フコトニナリマスレバ、困ラナ
クテ其金ヲ取ラウト云フ人ハナイト思
フ、日本國民ガ兵役ノ義務ニ服スル、兵役
ノ義務ト云フモノヲ非常ニ貴重ナルモノノ
如ク考ヘテ、寧ロ義務ト云フコトヨリモ、
兵役ニ服スルコトヲ名譽ノ權利ノヤウニ
心得テ、皆勇躍之ニ當ッテ居ルノデアリマス
カラ、一般的ニ物質的ノ扶助ヲ與ヘルト言
ウテモ、困ラナイ者ハ之ヲ辭退スル、又辭
退サセル除外例ヲ設ケタラ宜カラウ、サウ
シマスト、少クトモ全體ニ對スル七割ナラ
七割ノ人ハ其扶助ヲ受ケルケレドモ、外ノ
殘ック三割ノ者ハ扶助ハ受ケナイト云フヤ
ウナコトヲ自發的ニヤラシタナラバ、非常
ニ兵士ト云フモノノ義務ニ對シテ之ヲ尊重
シ、サウシテ滿足ノ結果ヲ奏スルヤウニナ
ルノデハナイカ、デアリマスカラ一律的ニ、
一般ニ、全部ノ人ニヤルト云フコトノ立前
ニシマシテモ、辭退スルト云フコトニ致シ
マシタナラバ、是ガ實行出來ルダラウト思
フ、サウ云フヤウナ御考ハアルカナイカト
云フコトヲ一寸発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=11
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012・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 答辯ガナイヤウデ
アリマス-伊東岩男君
〔伊東岩男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=12
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013・伊東岩男
○伊東岩男君 私ハ簡單ニ軍事救護法ノ改
正法律案ニ對シテ其大綱ニ付テ、本法ノ本
質的價値及ビ法律適用ノ範圍ノ根據竝ニ理
論デナクテ、實際上ノ觀點カラ二三ノ質疑
ヲ試ミタイト思フノデアリマス、ソレ〓
其質問事項ニ付テ、各所轄大臣カラ御答辯
アランコトヲ要求致シマス
今質問ノ趣旨ヲ要約致シマスルナラバ、
第一軍事救護法ノ緊要性ニ鑑ミテ、本法改
正ハ時代認識及ビ本法ノ本質的價値ヨリ法
律適用ノ範圍ヲ擴大シテ、積極的ニ內容强
化ヲ圖ルベシト主張スル者デアリマスルガ、
此不徹底的ナ改正要項デ十分ナリト考ヘテ
居ラレルカ、其所見如何、第二ハ本法ノ適
用範圍ヲ擴大强化スルコトハ農村救濟ノ見
地カラ致シマシテモ、社會政策的見地カラ
致シマシテモ、頗ル重要ナル役割ヲ有スルモ
ノデアルノデアリマス、然ルニ其要求サレ
タ豫算額ハ極メテ少額デアルガ、本案ノ如
キハ廣義國防ノ意味合ニ於キマシテ、最モ
有效適切ナル施設デアルノデ、積極的ニ徹
底セシムルコトガ、極メテ必要ダト思ヒマ
スルガ、其點ハドウカ、第三ニハ軍事扶助
ノ廣義的條件ハ、一面ニ於テハ兵役給與ノ
向上ヲ圖ッテ、待遇ヲ改善スルニアリト思フ
ノデアリマス、政府當局ハ在營兵士ニ現在
ノ儘デ十分ナリト考ヘテ居ラレルカ、今後
ノ御方針ニ付テ承リタイ、最後ニ軍事扶助
ノ對象ハ被徵募兵ニ對スル考察及ビ思想的
關心デアルノデアリマス、尙ホ一面ニハ負
擔均衡ノ立場カラ兵役稅ヲ創設シテ、本案
ノ目的ヲ擴大シ、全兵役家族ニ普及シテハ
ドウカ、當局ハ其意圖ハナイカ、又政府ハ
此點ニ付テ〓究シテ積極的對案ハナイカ、
併シ先程ノ答辯ニ依リマスルト、左樣ナコ
トハ傭兵主義ニ陷ルカラ反對デアル、斯ウ
云フ御議論モアルノデアリマス、大體以上
ノ要點ニ付テ、私ハ政府ノ所信ヲ質シタイ
ノデアリマス
現時負擔均衡論ガ洵ニ喧シク唱ヘラレテ
居ルノデアリマス、結城大藏大臣ハ地方農
村ノ最モ熱望シテ居リマスル所ノ戶數割ノ
廢止ヲ中止シタリ、或ハ地方財政調整交付
金ヲ減額シテ、今ヤ將ニ農村ノ思想ハ激化
ノ頂點ニ達シテ居ルノデアリマス、斯樣ナ
コトハ全ク農村無視ノ甚シキモノト思フノ
デアリマスガ、卽チ農村ハ從來都市ニ比シ
テ、約三倍以上ノ過重ノ負擔ヲ受ケテ居ル
ノデアリマス、貧乏人ハ稅金ヲ納メテ居ラ
ヌヤウニ考ヘテ居ル人ガ多イノデアリマス
ルガ、是ハ斷ジテサウデハナイノデアリマ
ス、是ハ大ナル誤リデアリマス、卽チ兵士
ノ大部分ハ農家ノ靑年デアリ、勞働者ノ子
弟デアルノデアリマス、而モ貧乏人ノ子弟
ハ、多クハ徵兵トシテ國家ノ義務ニ服スルコ
トハ事實ガ之ヲ證明致シテ居リマス、卽チ
此觀點カラ農村ハ特ニ大ナル犧牲ヲ拂ヒ、貧
乏人ガ多大ノ血稅ヲ納メテ居ルコトヲ考ヘ
ネバナラナイト思ヒマス、本案ハ國防上及
ビ社會政策ノ見地ヨリスルモ、最モ大切ナ
ル事案デアリマスルガ、更ニ農民及ビ勞働
者ノ救濟振興ニ直接ノ關係ヲ有スルノデ、私
ハ特ニ此立場ヨリ本案ノ擴大强化ヲ强調シテ
巳ミマセヌ、軍部ハ常ニ廣義國防ヲ主張セラ
レ、其重點ヲ農村問題ノ解決ニ置カレテ居リマ
スコトハ、吾々農民黨ノ特ニ敬意ヲ拂フ所デア
リマス、卽チ軍艦ヤ、飛行機ヲ造ルコトノミ
ガ國防デハアリマセヌ、左樣ナ物質的軍備
ノ充實モ、勿論必要デアリマスルト同時ニ、
人的國防ト申シマセウカ、忠勇ナル兵士ノ
充實、其家族ノ犠牲的奉仕ノ精神、大キク
ハ國民的熱烈ナル總動員ノ全面的支持ガ特
ニ必要ダト信ジマス、偖テ此忠勇ナル兵士
ノ大部分ハ農村ノ靑年デアリマス、平時ニ
モ其徵募兵ハ頗ル多イノデアリマスルガ、
況ヤ戰時動員ニ至レバ屈强ナル靑年、働キ
盛リノ壯年ノ大部分ハ召集サレテ戰地デ活
動セネバナリマセヌ、農村振興ノ要素ハ色
色アリマスルガ、又其政策施設モ蓋シ少ク
ハナイノデアリマス、就中農村ノ勞働力ヲ
合理的ニ能率的ニ活動應用スルコトガ農村
振興上何ヨリモ肝要デアリマス、而シテ徵
兵トシテ入營スル者ハ最モ能率的ナ靑年
デ、是等ノ人達ガ全ク家庭ヲ抛棄シテ、
意君國ノ爲ニ軍務ニ服サネバナリマセヌ、
其間其家族ハ家ノ大黑柱ヲ失ッタト同樣ニ、
多大ノ收入ガ減ゼラレ、非常ナ苦境ニ遭遇
シテ、家庭的ニハ全クノ悲劇ヲ生ミ、生活
上多大ノ壓迫ト脅威ヲ受ケルノデアリマシ
テ、國民生活ノ安定ガコンナコトデ何處ニ
求メルコトガ出來マセウ、從來私共ノ經驗
ニ徵スルノニ、徴募兵ノ大部分ハ貧乏人デ
アリマス、隨テ此赤貧家庭ノ犠牲的淚グマ
シイ事實及ビ悲劇的ナ現實ヲ各地ニ散見ス
ルバカリデハナクシテ、普通ノ農家デモ中
堅靑年ノ徴募ニ依ッテ其活動力ハ中止サレ
やく、斯ノ如キ意味合ニ於テ、農村ノ窮乏
ヲ招イタ大キナ原因ハ、此活動力中止ニ非
常ナル原因ガアルコトヲ又忘レテハナリマ
セヌ、此見地カラ入營家族ノ扶助、出征家
族ノ救濟援助ハ洵ニ急務中ノ急務デアルト
信ジマス、社會政策ノ立場ヨリモ是等ノ對
策ヲ確立シテ、兵士ヲシテ安ジテ入營セシ
メ、一旦緩急アレバ勇ンデ出征シ、義勇奉
公ノ誠ヲ捧ゲシムルニ付テハ、銃後ニ憂ナ
カラシムル方法ヲ講ズルガ何ヨリ大切デア
リマス、先程兵隊ヲ優遇スル、金ヲ與ヘル
コトハ傭兵主義ダカライケナイト云フ話ガ
アリマシタケレドモ、戰地ノ兵隊ヲシテ、
本當ニ後顧ノ念ナカラシムルコトハ、左樣
ナ施設ノ完璧ヲ圖ッテコソ、初メデ安心シテ
戰地ニ於テ十分兵隊ガ國家ノ爲ニ働イテ吳
レルト、私ハ信ジマス、今囘ノ改正ニ依リ
マシテ、此扶助ノ範圍ガ若干擴大サレタコ
トハ洵ニ結構ナルコトデアリマス、併シ具
サニ其內容ヲ檢討致シマスルト、此微溫的
ノ法律改正デハ、到底私ハ滿足スルコトハ
出來マセヌ、モット徹底的ニ兵士ノ家族ニ、
出來ルナラバ全面的ニ本法ノ適用ガ行ハレ
テ、其恩惠ニ廣ク浴セシムル方途ヲ講ズル
コトガ極メテ大切デアルノデアリマス、政
府ハ何故ニ此點ニ向ッテ徹底的ニ、積極的ニ
斷行セヌカ、其理由ヲ聽キタイノデアリマ
スルガ、併シ先程ノ御答辯デ左樣ナコトハ
イケナイト云フ御話デアリマス、併シ私ヲ
以テ言ハシムレバ、庶政一新ノ如キ、斯樣
ナ所ニアルト信ジマス、庶政一新ハ單ニ形
ノミデハ駄目デス、其效果ニ於テ、國民ノ
全面ニ、而モ直接ニ物質的ニモ精神的ニモ
有效デナクテハナリマセヌ、此非常時局ニ
對シテハ、此種ノ施設ガ特ニ必要デアルト
思ヒマスルガ、折角改正スルニ當ッテ、コン
ナ徴溫的ナ改正デドウシマス、政府コソ時
局認識ニ缺ケテ居ルト私ハ言ヒタイノデア
リマス、若シ政府ニ別ニ根本的ナ對策ガア
リマスルナラバ、私ハ此場合ニ其所見ヲ承
リタイ
更ニ本案ト直接ノ關係ハアリマセヌガ、
併シ不可分ノ因果關係ガアリマスルノデ、
此場合ニ伺ッテ置キマスルノハ、在營兵ニ對
スル待遇問題デアリマス、勿論愛國ノ熱情
ニ燃ユル靑年兵士ハ、一死報國ノ犠牲的奉
仕觀念以外ニハ何モノモナイデセウ、無論
誰モ待遇ノ向上ヲ要求スル者ノナイコトヲ
信ジテ居リマス、然ルニ前述ノ如ク農村子
弟ノ大部分ガ、貧乏人ノ靑年デアルコトヲ
思ヒ、是ガ給與ヲ十分ニシテ待遇ノ向上ヲ
圖ルコトハ、國民何人モ異議ノナイ所デア
リマス、此血稅階級ニ對シテ十分ナル考察
ヲ爲スベキデハナイカト思ヒマスルガ、此
點ニ付テ私ハ非常ナル關心ヲ持ッテ居リマ
ス、軍部當局ノ所信ヲ此場合ニ聞キタイト
思フノデアリマス
最後ニ私ハ軍事扶助、卽チ此法律ノ對象
物ハ何カ、之ヲ考ヘナケレバナラナイト思
フノデアリマス、其對象物ハ卽チ被徵募兵
ニ對スル考察ノ仕方デアリマス、尙ホ負擔
均衡ノ見地ヨリ徵兵稅ヲ創設スルコトヲ私
ハ主張スル者デアリマス、從來徵兵稅ノ創
設論ハ其可否半バ致シテ居リマス、卽チ先
程モ御話ガアリマスルヤウニ、國體觀念カ
ラ言ヒマスルナラバ、此種ノ稅ハ國民皆兵
ノ思想ヲ害スルモノデ、適正デナイト云フ
意味合ニ於テ、軍部ガ今日マデ之ヲ排擊シ
テ參ラレタコトハ、相當ノ理由アルコトヲ
承知致シテ居リマス、併シ實際論カラ申シ
マスルナラバ、徵募兵ノ多クハ、先程カラ
何遍モ繰返スヤウニ、貧乏人ノ靑年デアリ
マス、之ニ反シマシテ非徵募兵ノ多クハ、
資本家ノ靑年デアリ、或ハ金持ノ子供ガ多
イノデアリマス、負擔均衡ト云フ議論ハ唯
單ニ現金納付額ノ多少論デ決定スベキモノ
デハナイト私ハ思ヒマス、又社會連帶ノ觀
念ヨリ致シマシテモ、或ハ社會政策的觀點
カラスルモ、徵兵稅ハ決シテ不合理デアル
トハ私ハ信ジマセヌ、勿論其方法論ニ至ッテ
ハ、國民皆兵ノ趣旨ニ一致シテ、弊害ヲ生
ゼザル方策ニ出デナケレバナリマセヌ、此
美シイ國體觀念ヲ破壞スルガ如キハ斷ジテ
愼マナケレバナリマセヌ、私ハ以上ノ數點
ニ付テ各關係大臣ヨリ御答辯アランコトヲ
要求致シマス(拍手)
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=13
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014・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 大體先程私ガ
御答申上ゲマシタコトニ依ッテ御諒承願ヒ
タイト思ヒマス、應召セラレマシタ兵士ニ
シテ、其家族ノ生活困難デアルト否トヲ問
ぐく、總テ兵役ニ徴集セラレマシタモノニ
對シテ救濟ヲ致シマスト云フコトハ、先程
陸軍大臣ヨリ申述ベラレマシタヤウニ、是
ハ兵役ニ對スル根本精神ト重大ナル關係ヲ
持ッテ居リマスノデ、是ハ容易ニ御贊成ガ
出來ヌコトト思ヒマス、私ハ先程陸軍大臣
カラ述ベラレマシタ意見ト同樣デアリマス、
唯農村ニ對シマシテハ--我國ノ農村ト云
フモノハ、經濟的バカリデナク、政治的ニ
モ最モ重要ナル立場ニ立ツモノデアリマス
カラ、農村ニ對スル社會政策的ノ施設、或
ハ其負擔ノ問題等ニ付キマシテハ、是ハ別
個ノ方法ニ於テ十分ノ考慮ヲ致サナケレバ
ナラヌコトハ、只今伊東サンノ述ベラレタ
コトト同樣ト考ヘマス
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=14
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015・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 只今伊東君カラ軍
事扶助ヲ擴大强化スルコトニ付キマシテ、
極メテ熱誠ナル御質問、又御熱心ナル御同
情ガゴザイマシタ、洵ニ有難ク御禮ヲ申上
ゲマス、尙又其强化擴充ヲスルト云フ此御
趣旨ニ於キマシテモ、全然御同意デゴザイ
マス、隨テ今日マデ軍ト致シマシテハ、之
ニ向ッテ出來ルダケノ努力ヲ致シマシテ、既
ニ先年兵役義務者及ビ癈兵待遇審議會ヲ開
キマシテ、此審議會ニ於テ答申セラレマシ
タ事柄ヲ著々進行シ來ッテ居リマス、併ナガ
ラ今日ノ此程度ヲ以テ決シテ十全デアルト
ハ考ヘテ居リマセヌ、尙ホ今後ニ於キマシ
テモ十分ニ之ヲ擴充致シタイ、又ソレニ
向ッテ努力ヲ致シタイト存ジテ居リマス、
只今ノ狀況ニ於キマシテハ、國家ノ情勢ト
又幾多ノ爲スベキコトニ付キマシテノ輕重
ヲ考ヘマスト、先ヅ此程度デ滿足ヲスル外
ハアルマイカト存ジマシテ、此案ニ付キマ
シテ關係當局ト協定ヲ致シタ次第デゴザイ
マス(拍手)
〔國務大臣米内光政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=15
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016・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 御答致シマス、
軍備ト云フモノハ國民生活ノ安定ノ上ニ考
慮シナケレバナラヌト云フコトハ申ス迄モ
アリマセヌ、而シテ軍備ノ原動力デアリマ
ス所ノ兵員ノ生活安定ト申シマスコトハ、
後顧ノ憂ガナクシテ十分ニ御奉公シ得ルコ
トト、モウ一ツハ將來粒ノ良イ兵隊ヲ選
ル、此二ツノ點カラ考ヘマシテ、洵ニ必要
ナコトト考ヘルノデアリマス、只今第一ノ
御質問ノ內容强化ノ必要アリヤナシヤト云
フコトニ付キマシテハ、陸軍大臣ノ御答辯
ノ通リ其必要ヲ認メテ居リマス、第二ノ農
村救濟、社會政策ニ對シテ、ドウ云フ考ヲ
有ッテ居ルカト云フコトニ對シマシテハ、前
段申上ゲマシタコトニ依リマシテ御答辯ト
致シタイト思ヒマス、其他ハ內務大臣陸軍
大臣ノ御所見ト同樣デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=16
-
017・伊東岩男
○伊東岩男君 自席カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=17
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018・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=18
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019・伊東岩男
○伊東岩男君 尙ホ色々ト質疑シタイ事ガ
アリマスルケレドモ、是ハ委員會ニ讓ッテ、
私ノ質問ハ是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=19
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020・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 升田憲元君
〔升田憲元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=20
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021・升田憲元
○升田憲元君 軍事救護法ガ制定實施ヲ見
マシテカラ二十年ノ長キニ亙リマシタニ拘
ラズ、其間幾多ノ改正ヲ要スベキモノガアッ
タニモ拘ラズ、今日マデ其實現ヲ見ナカッタ
ノデアリマス、本員ハ昨年ノ特別議會ニ於
キマシテ、此改正ニ付テ法律案ヲ單獨ニ提
案ヲ致シマシタノデゴザイマスルガ、會期
ガ短クシテ、審議未了ノ儘會期終了ヲ〓ゲ
タノデ、甚ダ遺憾ニ思ッテ居リマシタ、所ガ
特別議會後、内務當局ハ陸海軍當局ト協力
致サレマシテ、本改正案ヲ得ラレテ、玆
帝國議會ニ御提案ニナリマシタコトニ付テ
ハ、深ク感謝ヲ致スモノデアリマス、取分
ケ本員ト致シマシテハ、此案ノ内容ガ多少
法文ノ體裁ヲ異ニシテ居リマスケレドモ、
其實質ニ付テハ大部分本員ノ改正意見ヲ御
參酌下サイマシタコトハ、深ク敬意ヲ表シ、
國民ト倶ニ厚ク感謝ヲ致ス次第デゴザイマ
ス、併ナガラ此案ノ內容ヲ檢討致シマスル
ト、重大ナル點ニ於テ、本法制定ノ趣旨ニ
副ハナイモノガアルノデアリマス、此點ハ
本員ハ甚ダ遺憾トスル者デアリマスルカラ、
之ヲ質問致スコトニ致シマスルガ、先ヅ內
務大臣カラ御伺ヲシテ、次デ陸海軍大臣及
ビ大藏大臣ニ御尋ヲ致シタイノデアリマス
先ヅ條文ノ順序トシテ、名稱ニ付テ御伺
シマスガ、政府ハ二十年來ノ懸案ヲ解決ス
ルニ當ッテ、從來此軍事救護法ニ付テ理解ヲ
有ッテ居ル者ノ間ニ、囂々非難ノ的トナッテ
居ック所ノ貧民救助主義ヲ廢シテ、遺家族保
護主義ヲ採ルベキデアッタニ拘ラズ、依然從
來ノ貧民救助主義ニ依ラレタノハ如何ナル
理由デアルカ、其證左ト致シマシテハ、此
軍事救護法ノ名稱ニ付テヾアリマス、又法
文ノ内容ヲ成ス所ノ救護ト云フ文字ニ付テ
デアリマスルガ、此軍事救護法ト云フコト
ニ付キマシテハ、本員ハ之ヲ保護法トセナ
ケレバナラヌト云フコトヲ本員ノ改正案ニ
出ダシ、且ツ其理由ヲ說明シテ置イタノデア
リマスガ、單ニ此救護法ト云フコトヲ扶助
法ト云フコトニ改正サレタ、トコロデ、此
扶助ト云フ言葉モ救護ト云フ言葉モ、是ハ
同一ノ意義デアッテ、結局オ助ケト云フコト
ニナル、救護若クハ扶助ト云フ文字ハ、軍
事救護法ニ凡ソ二十三箇所ニ連ネテアル、
尙ホ施行令ニ於テモ、殆ド之ニ近イ數ガ載
セラレテアルノデアリマス、此扶助ト云ヒ
救護ト云フ文字ガ禍ヒヲナシテ、救護ノ事
務ニ從事スル所ノ官吏公吏ガ、此救護法ヲ
以テヤハリ一般ノ貧民救護ト解シテ居ルノ
デアル、ソレガ爲ニ從來此救護法ノ實施ガ
圓滑ニ行カナイ、斯ウ云フコトハ第一此救
護ヲ受ケル方面ノ人々ガ、之ヲ以テ一ツノ
恥辱ト解シテ居ル、官公吏ガ其救護事務ノ
調査ニ參リマスト云フト、祕密ニ其調査ヲ
スベキモノデアルニ拘ラズ、其被救護者ノ
家ニ行ッテ調査ヲスルダケナラマダシモ、其
近所ノ家デ悉ク調査ヲシ、財產ノ有無ト云
フコトモ市町村長ノ答辯ダケデハ滿足シナ
イ、色々ノ材料ヲ徴シテ其調査ヲスルト云
フヤウナコトデアリマスノデ、結局其被救
護者自身モ、其體面上其救護ヲ斷ルト云フ
ヤウナ場合ガ往々アル、殊ニ在營ノ兵士モ
之ヲ出願セシメテ、此恩典ニ與カラウト云
フ考ヲ持タナクナル者ガ段々生ジテ來ル、
是ハ軍隊〓育ノ結果、武士ハ食ハネド高楊
子ト云フコトヲ〓ヘラレテ居ル、ソレデア
リマスカラ幾ラ貧乏ヲシテモ、自分ガ名譽
アル所ノ兵役ニ服シテ、サウシテ其家族ガ
救助ヲ受ケテ居ル、斯ウ云フヤウナコトデ
ハ自分トシテモ國家ニ對シ、又ハ同僚ニ對シ
テ相濟マヌト云フヤウナ考ヲ以テ、此救護ヲ
厭フ者ガ非常ニアル、ソレデ此保護主義ト私
ガ申シマスノハ、出願主義ヲ全然廢シテシマッ
テ、國家ノ官公吏ガ之ヲ調査シテ、サウシテ
官公吏ノ職務行爲トシテ、之ヲ慰問スル、或
ハ慰藉スルト云フヤウナ意味ニ於テ、此救
護ヲ全カラシメタナラバ、先程申述ベタヤ
ウナ憂ヲ除去スルコトガ出來テ、全ク國家
ノ溫情主義ヲ以テ此法律ノ實行ヲ爲シ得ル
ノデアリマス、今日ハサウデナクシテ、一般
救護法ト殆ド同樣ナ取扱デアル、殊ニ此救
護法ト云フモノヲ、軍事救護法ト同樣ナル
名前ニ統一シタト云フコトガ、旣ニ其根本
觀念ノ誤ッタモノガアッタカラ、サウ云フコ
トニシタノデアル、然ルニ今囘政府ハ救護
法ト云フノヲ態〓扶助法ニシテ、何處ニ
改正ノ意味ガ能ク現レテ居ルカ、救護モ救
助モ同ジコトデアル、此點ニ關シマシテ少シ
ク私ハ本法制定ノ沿革ニ遡ッテ申シマスル
ト云フト、此法律ガ初メテ議會ニ現ハレマ
シタノハ、第三十七議會及ビ第三十八議會
デアックノデアリマス、其時ニハ癈兵、戰病
死者遺族、軍人家族救護法案ト云フモノガ出
タノデアリマス、是ハ矢島八郞代議士外十
九名ノ提案ニナリマシタ所ノ、各黨共同ノ
提案デアッタノデアリマスルガ、其時ニ此名
稱ニ付テハ非常ニ議論ガ鬪ハサレテ居ッタ
ノデアル、或ハ扶助ト云ヒ、救助ト云ヒ、
或ハ又救護ト云ヒ、或ハ慰藉法ト云ヒ、慰問
法ト云ヒ、又保護法ト云フヤウナ、種々雜多
ナ意見ガ出タノデアリマス、所ガ保護法ト
云フコトニハ、軍機保護法ト混同シ易イカ
ラト云フヤウナ理由デ、是ガ成立シナカッタ
ノデアル、又扶助法、救助法ト云フヤウナ
コトハ、特ニ救護法ヨリカ一層扶助ト云フ
意味ガ强クナル、扶モ助ケ、助モ助ケルノ
デアル、共ニ助ケル法ト云フコトニナルカ
ラ、寧ロ救護法ト云フコトニシタラドウカ、
救護ト云フコトハ水難救護法等ニハ見エテ
居ルケレドモ、水難救護ト云フコトハ、決
シテ貧民ヲ救助スルノデハナイ、デアルカ
ラ此文字ガ適當デアラウト云フコトデ、遂
ニ此救護法ト云フコトニナッタ、所ガ第三十
九議會ニ於テ政府ノ提案ニナリマシタ時ニ
モ、同樣ヤハリ此名稱ニ付キマシテハ種々
ノ議論ガアリマシタ、本員モ其時內務省ニ
居リマシテ、此立法ニ參加ヲ致シタノデア
リマスルガ、結局是ハ今日ノ所デハ救護法
トスルノガ妥當デアラウト云フヤウナコト
デ、此救護法ニナッタノデアリマス、然ルニ昭
和四年從來ノ恤救規則其他ノ救濟規定ヲ統
一スルトキニ、軍事救護法ト云フモノガアル
カラト云フノデ、當時軍事救護ヲ全ク貧民
救護ト思ッテ居ルガ爲ニ、是ト同樣ニ救護法
ト改正シタノデアル、是ガ大ナル誤リナノ
デアル、何故ニ他ノ名稱ヲ其時ニ用ヒナカッ
タカ、軍事救護ト云フモノヲ貧民救護ト云
フヤウニ誤解ヲシテ居ルカラ、詰リ一般救
助ヲ救護法トシテ新ニ制定シタノデアル、
ソコデ救護法ト云フモノト軍事救護法ト云
フモノガ混同サレタカラ、一層先程私ノ述べ
タ通リニ、官吏ノ方デモ愈.、以テ軍事救護ト
云フモノハ、貧民救護デアルト云フヤウナ御
考ヲ有ッタノデアリマス、勿論救護法第十六
條ノ規定ニ依リマスルト云フト、「本法ニ依
ル救護ハ他ノ法令ノ適用ニ付テハ貧困ノ爲
ニスル公費ノ救助ニ非サルモノト看做ス」
ト云フ規定ガアル、是デアルカラ決シテ貧
民救助デハナイト云フヤウナ辯解モ付キマ
スルケレドモ、併シ是ハ又反對ニ解釋スル
者ガアル、貧民救護デアルガ故ニ斯ウ云フ
斷リヲスルノデアル、若シ是ガ貧民救護デ
ナカッタナラバ、斯ノ如キ條文ヲ設ケルノ必
要ハナイ、此條文ヲ設ケテ居ルト云フコト
ハ貧民救護デハアルガ、此公費ノ救助ヲ
受ケルト云フコトニナレバ、公權停止其他
ニ支障ヲ來スカラ此條文ヲ置イタノデアル、
仍テ軍事救護ハ純然タル貧民救護デアルト
云フヤウナコトヲ言ッテ居ル、現ニ官吏公吏
ノ中ニハ斯ク解釋シテ居ル者モアルノデア
リマス、デアリマスルカラ此第十六條ト云
フモノガ何ニモナラナイ、却テ害ニナッテ居
ル、然ラバ此救護ト云フモノガ、既ニ軍事
救護法ト一般救護法ト、二ツニ斯ウ云フ規
定ガ設ケラレタ以上ハ、過去ノ過失ト云フ
モノヲ此處デ除去スルニハドウシタラ宜イ
カト申シマスルト云フト、ヤハリ本員ガ特
別議會ニ提案シタ所ノ保護法ト云フコトニ
スルカ、若クハ慰藉法、慰問法ト云フガ如
キ名稱ヲ用ユベキモノデアッタ、然ルニ私ノ
提案ニ基イテ改正ガ提議サレタノカドウカ
分リマセヌケレドモ、ソレヲ殊更ニ扶助法
ト云フ名前ニナサレタハ何タル理由デア
ルカ、私ハ之ヲ知ルニ苦シムノデアル、
或ハマサカ本員ガサウ云フヤウナ提案
ヲシテ居ルカラ、ソレニ對シテ追隨ヲス
ルト云フコトハイカヌト云フヤウナコト
デ、態〓保護法ト云フコトヲ御止メニ
ナッタ譯デモアリマスマイガ、ソレトモ
所謂官僚ノ獨善主義、其獨善主義ヲ滿足、ス
ルガ爲ニ、其名稱ト變ッタ扶助法ト云フモ
ノヲ設ケラレタノデアルカ、或ハ說ヲ爲ス
者ハ、官吏遺族扶助法ニモ此扶助ト云フ文
字ガアルカラ、決シテ差支ナイデハナイカ
ト言フ者ガアルカモ知レマセヌ、現ニサウ
云フコトヲ實ハ御伺シタノデアリマスガ、
是ハ誤レルノ甚シイモノデアル、此扶助料
ト云フモノハ、法律ニチヤント明記シテア
リマシテ、法律ニ於テハ之ニ關スル要件ヲ
具備シタナラバ、權利行爲トシテ當然請求
シ得ルノデアッテ、特ニ權利ヲ有スト法律ニ
明記シテアル、併ナガラ此軍事救護法ニ
ハ、ソンナ權利ト云フヤウナコトハ何處ノ
場所ニモナイ、デアルカラ軍人遺族扶助法
デアルトカ、官吏遺族扶助法デアルトカト
云フヤウナモノハ、假ニ扶助法ト附ケタ所
ガ、何人ガ見テモ是ハ權利ト認メル、デア
リマスルカラ如何ナル名稱ヲ附ケルトモ、
之ニ對シテ誤解ヲ招クヤウナ虞ハナイ、所
ガ此軍事救護法ニハ、此名稱ニ依リ又ハ法文
ノ內容ニ於テ、種々ナル貧民救助ト混同シ
易イコトガアリマスルカラ、此名稱ヲ變ヘ
タラドウカ、斯ウ云フコトニ對シテ、態こ
一等下ッタ所ノ扶助法ト云フコトニナサル
ノハ、思ハザルノ甚シイモノデアルト私ハ
存ジテ居リマス、之ニ對スル內務大臣ノ御
答辯ヲ御伺シタイ
ソレカラ第二點ト致シマシテハ、只今ノ
質問ニ關聯ヲシテ居ルノデアリマスルガ、
此救護ト云フモノハ、簡單ニ且ツ迅速ニ實
行ヲセナケレバナラヌト云フ性質ノモノデ
アリマスルノニ、從來ノヤリ方ヲ見マスル
ト云フト、出願シテカラ非常ニ手間ガ取レ
ル、甚シイ場合ニハ六箇月モ八箇月モ經ッ
テ、漸ク其救護ヲ受ケルト云フヤウナ場合
ガアル、昭和六年乃至九年ノ事變ニ於テ、
此東京ニ於キマスル軍事救護ニ關シ、私
從來ノ行懸リカラ大分其家族ニ就テ調査ヲ
致シマシタノデアリマス、所ガ此軍事救護
法ノ手續ガ早ク簡單ニ行カナイト云フノ
デ、陸軍省ハ恤兵金ノ一部ヲ割イテ、各人
ニ二十圓ヅヽ前貸ノヤウナ意味デ之ヲ一
時的ニ給與ヲシタノデアリマスガ、所ガ又
此恤兵金モ中々難シイ手續ヲ執リマシテ、
或者ハ本籍ガドウトカ、寄留ガドウトカ云
フヤウナ種々雜多ナヤカマシイコトヲ言
ハレテ居ッタガ、其中第九師團管下ニ入ッタ
所ノ一兵士ノ如キハ、結局其者ガ上海事件
カラ歸ッテ來ル迄、其恤兵金ト云フモノハ到
頭貰ヘナカッタ、斯ウ云フ滑稽至極ナコトモ
アル、是ガ非常ニ手續ガ煩瑣デアルト云フ
コトノ證據デアリマスルガ、是ハ一ツハ、
決シテソレニ從事スル所ノ官公吏ガ惡イノ
ヂヤナイ、法其モノニ缺陷ガアル、官公吏
ノ方々ノ御話ヲ聞ケバ無理ノナイ所ガア
ル、チヤント嚴重ナル規則デ拘束シテ居ル
カラシテ、其規定ニ據レバドウシテモサウ
ナル、特ニ此資格ノ調査、就中其生活不能
ノ者、卽チ絕對ニ生活シ能ハザル者ニ對シ
テノミ之ヲ救護スルノデアリマスルカラ、
其絕對生活ヲ爲シ得ザル者ナルヤ否ヤノ調
査ト云フモノハ、容易ナコトデハナイ、結
局ソレダケ手間取ルト云フコトハ、寧ロ官
公吏ノ怠慢デハナク、此法ノ不備ニ因ルノ
デアル、ソコデ本員ハ此軍事救護法施行令
第一條ニアル所ノ、地方長官ガ之ヲ行フト
云フコトニナッテ居リマスルノヲ法律ノ中
ニ規定ヲシテ、市町村長ガ之ヲ行フト云フ
コトニ改メタイト思フ、サウシテ其同ジク
施行令第一條ニアル所ノ此出願主義ヲ撤廢
シテ、其例外トシテ規定シテアル所ノ、出
願ナキ場合ニ於テモ、此救護ヲ行フコトヲ
得ルト云フノヲ、改メテ原則トシテ、サウシ
テ之ヲ法律ニ規定シタ方ガ宜イカト本員ハ
思フノデアリマス、殊ニソレヲ法律ニ規定
スルト云フコトハ、第七條ニ「救護ノ程度
及方法ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之
ヲ定ム」トアリマスルガ、地方長官之ヲ行
フト云フ此施行主體ヲ規定スルコトハ、此
救護ノ方法ト云フ中ニ入ルト解釋スルノ
ガ、果シテ妥當ト見ルヤ否ヤト云フコトニ
付テ、本員ハ法律上疑問ヲ有スル者デアリ
マス、デアリマスルカラ此疑問ヲ除ク上ニ
於テモ、法律ニ明記シテ市町村長ガ之ヲ行
フ、卽チ救護ハ積極的ニ市町村長ノ職務ト
シテ行フノデアルト云フコトヲ、法律ニ明
記スル必要ガアルト思フガ、其點ニ關スル
內務大臣ノ所見如何
更ニ第三ニ御伺シタイノハ、此軍事救護
法第二條ノ傷病兵ノ範圍ニ付テデアリマス
ルガ、此傷病兵ノ範圍ニ付キマシテハ、昭和
六年ニ「一種以上ノ兵役ヲ免ゼラレタル者」
ト云フコトニ改正ヲサレタ、是ハ戰地ニ於
テ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹ッテ兵役ヲ免除
セラレタル者ト書イテアッタノヲ、一種以
上ノ兵役免除ト云フコトニシテ、非常ニ
緩和ヲ致シタノデアリマス、然ルニ今囘ハ
戰地ニ於テ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リト云
フコトヲ全然取ッテシマッテ、現役中傷痍ヲ
受ケ又ハ疾病ニ罹リト云フコトニナル、是
ハ非常ナル範圍ノ擴大デアリマス、年々三
千五百人モ免役者ガアルノヲ、旣往何十年
モ元ニ遡及シテ之ヲ救護スル、而モ傷痍兵
ダケデナク、其傷病兵等ノ遺家族ヲモ盡ク
救助スルノデアリマスカラ、此人員ト云フ
モノハ莫大ナモノデアリマス、私ノ昨年特
別議會ニ提案致シマシタ所ノ案ニハ、此
項ノ改正ダケハナカッタノデアリマス、此一
項ダケガ此改正案ト私ノ案ト違フ所デアル、
何故之ヲ入レナカッタカ、特ニ此軍事救護法
ニ關心ヲ持ッテ居ル私ガ、故ラニ從來ヨリ此
範圍ノ擴張ヲ希望シテ居タ所ノモノヲ省略
致シタイト云フノハ、是ハ何デアルカト申
シマスルト云フト、財政上ノ問題デアル、
之ヲ實際此條文ノ通リ實行致シマスルト云
フト、今年新ニ御請求ニナッテ居ル所ノ百四
万圓ダケデモ、尙ホ不足ヲ生ズルモノト私
ハ見テ居ル(「結構デス」ト呼フ者アリ)結構
デハアルケレドモ、然ラバ是ガ爲ニ他ノ旣
存ノ救護ノ方ハドウスルカ、殊ニ第三條第
四條ノ擴張及ビ第五條ノ擴張デアリマス、
殊ニ第五條ノ擴張ト云フモノハ、實ニ當局
ノ大英斷デアリマス、是ハ雙手ヲ擧ゲテ內
務當局及ビ陸海軍當局ニ感謝スルモノデア
リマスガ、併ナガラアナタ方ハ如何ナル見
透シヲ付ケテオ居デニナルカ知レマセヌガ、
此第五條ノ「生活スルコト困難ナル者」ト云
フコトニ緩和サレタ此點デアリマスガ、是ハ
私ノ調査〓究ニ依リマスト云フト、從來ノ
出願者ノ三倍ニ達スルモノト考ヘマス、然
ルニ此第五條ダケデナク第三條第四條ノ擴
張ガアル、同時ニ只今ノ第二條ノ擴張ガアッ
テ、ドウシテ百四万圓ヤ百五万圓ノモノデ
賄ヒ得ルデアリマセウカ、私ハ之ニ關スル
所ノ細カイ數字ヲ擧ゲテ說明シマセウト思
ヒマシタガ、時間ヲ省略スル爲ニ私ハ此處
デ申シマセヌガ、私ノ調査〓究ニ依ッテ見マ
スルト云フト、實ニ此改正ノ結果ニ於テハ
一千三百万圓ト云フモノヲ要スルノデアリ
マス、決シテ先程堀内君ノ言ハレタヤウナ、
個人ニ對スル所ノ額ハ增額セナクトモ、旣
ニ一千三百万圓ト云フモノヲ要スルノデア
リマス、斯ル莫大ナル金額ヲ何等顧慮セズ
シテ、豫算ニ關係ナクシテ斯ウ云フ規定ヲ
サレタ、而モ先程堀内君ノ質問ニ對スル內
務大臣ノ御答辯ノ中ニハ、是ハ補充費目ニ
屬スルカラシテ、不足ヲスレバ貰ハレルト
云フコトヲ仰シヤイマスケレドモ、一千万
圓以上ノ金ハ、恐ラク大藏省トシテモ、此費
用ヲ出スト云フコトニ同意スル筈ハナイノ
デアリマス、然ラバ斯ウ云フモノヲ折角拵
ヘテモ、要スルニ羊頭ヲ懸ゲテ狗肉ヲ賣ル
ノデアルト云フコトニナル、或ハ言換ヘレ
バ此法律案ヲ良クスルガ爲ニ、所謂角ヲ矯
メテ牛ヲ殺スモノデアル、何故ナラバ是ガ
爲ニ此實際ノ救護ヲ實行スルニ當ッテハ、ド
ウシテモ金ガ足ラヌカラ、旣存ノ、今マデ
救護ヲ受ケテ居ッタ所ノ人々ノ費目ヲ減少
スルヨリ外ハナイ、一層今ノ給與額以下ニ
壓迫サレルト云フコトハ、火ヲ賭ルヨリモ
明カデアリマス、此點ニ關シテ內務大臣ハ
如何ナル見透シヲ以テ、斯ノ如ク範圍ヲ擴
張セラレタカ、斯ウ申シマスルト、私ガ此
範圍擴張ニ付テ反對デアルカノ如ク誤解サ
レルカモ知レマセヌガ、私ハ決シテサウヂ
ヤナイ、雙手ヲ擧ゲテ贊成スル、併ナガラ私
ハ之ヲ急激ニ行フコトニ付テ考慮シタノデ
アル、是ハ庶政一新ノ爲ニ此軍事救護法ヲ
改正サレタノデアリマセウガ、併ナガラ餘
リ急激ナル庶政一新ニハ、往々其實行ノ伴
ハナイモノガアル、此改正ノ如キハ其一ツ
ノ證左デアル、是ハ總花主義、或ハ追隨主
義ト私ハ言ハナケレバナラヌト思フ、實行
ノ出來ナイモノヲ、唯規定バカリ作ッテ何ノ
效果ガアルカ、寧ロ反對ニ是ガ爲ニ、色々
ノ障碍ヲ生ズルノデハナイカト思ヒマス、
之ニ對スル內務大臣ノ御答辯ヲ御伺シタイ
ノデアリマス
更ニ第四、改正案第二條、第三條、第四
修第五條等ノ改正ノ結果ト致シマシテ、
今後十年後ニ於テハ幾何ノ救護人員、幾何
ノ經費ヲ要スルト云フ見透シガ、付イテ居
ルノデアリマスルカ、ドウデアリマスルカ、
此法律改正ト云フモノガ、將來我國ノ財政
ノ一大部門ヲ成ス所ノ費目デアリマシテ、
此改正ヲ策スルニ付テハ、將來ノ財政トモ
調和ヲ執ルベク餘程ノ〓究ヲセナケレバナ
ラヌモノデアリマスルガ、ソレニ對スル所
ノ〓究調査ガアリマシタナラバ御伺シタイ
次ニ第五、政府ハ現在施行令ニ規定シテア
ル所ノ、救護ノ金額一人三十錢以內ト云フ規
定ヲ、今囘ノ改正ニ依リ、其額ヲ向上サレル
意味デアルカ、或ハ又現狀維持デアルカ、或
ハ先程申シタヤウナ關係カラ、却テ其平均
額ヲ低下セラレルヤウナ虞ハナイカ、之ニ
對スル御答辯ヲ願ヒタイ、以上五點ニ付テ
内務大臣ノ明確ナル御答辯ヲ御伺シタイノ
デアリマス
更ニ陸海軍大臣ニ御伺致シタイノハ、私
ハ此軍事救護法ニ付キマシテハ、先程伊東
君カラ御話モアリマシタノデアリマスルガ、
是ハ獨リ國防上ノ問題ノミナラズ、社會政
策上ノ大問題デアルト共ニ、農村救濟ノ大
問題デアリマスルガ、特ニ國防問題トシテ
ハ、私ハ寧ロ廣義國防ト謂ハンヨリハ、狭
義國防ニ屬スルモノデハナイカト思フノデ
アリマス、何トナレバ國防費ニハ物的要素
ト人的要素ヲ要スルコトハ、論ノナイコト
デアリマスルガ、就中此人的要素ニ付キマ
シテハ、最モ當局者ハ關心ヲ拂ハネバナラ
又、人ハ戰場ニ於ケル最良ノ武器ナリト云
フ格言ノアリマスルガ如ク、幾ラ物質上ノ
國防ダケ盛ニヤッテモ、肝腎ナル人的國防ノ
要素ヲ成ス所ノ、人ニ於テ精神的國防ガ缺ケ
タナラバ、決シテ國防ノ强化ト云フモノハ
期シ得ラレルモノデナイコトハ、言フマデ
モナイコトデアリマス、本法ノ如キ特ニ非
幹部ニ屬スル所ノ[兵士ノ家庭ヲ救フガ爲
ニ、完全ナル救護ノ實ヲ見ルコトナクシテ、
ソレガ爲ニ士氣ガ衰退スルヤウナコトガアッ
タナラバ、平時ニ於テモ其成績ニ影響スル
ノデアリマスルガ、一朝戰爭ガ開始サレタ
時ニハ、是ハ由々シキ大問題デアル、昔日
吾々ヤ、杉山陸軍大臣等ガ靑年將校トシテ、
少中尉カラ中隊長ニナッタ當時、詰リ日露戰
役前後ニ於ケル當時ノ兵士ノ考ト、今日ノ
兵士ノ考ト同一デアルカ否カ、是ハ能ク分
リマセヌガ、一般國民ノ考トシテハ非常ニ
當時ヨリハ物質的ニ堕シテ居ル、當時ハ社
會政策ノ問題ナドハ殆ド〓究サレテナカツ
タノデアリマスルガ、今日デハ社會事業ト云
フモノハ、一國ノ政治ノ殆ド中心ヲ成スニ
至ッタノデアリマス、而モ之ニ纏綿スルニ種々
ナル思想上ノ問題モ發生シテ居ルノデアリ
マスカラ、此點ニ付テハ軍當局トシテハ、
一層ノ注意檢討ヲ拂フ必要ガアルト思フノ
デアリマス、ソレ故私等ガ忌憚ナイコトヲ
申シマスルト、此精神的國防ニ付テハ何處
マデモ軍民一致、和衷協同シテ、此國防ノ
事ニ邁進セナケレバナラヌノデアリマスル
ガ、特ニ此軍事救護ト云フ社會問題及ビ
先程伊東君ガ申サレタヤウニ、今日兵役ニ
服スル者ノ大部分ト云フモノハ、農村ノ子
弟特ニ小農ノ子弟デアル、軍部ニ於テハ兵
農兩全ト云フコトヲ頻ニ御考慮ニ置カレテ
居ルコトハ、甚ダ喜バシイ狀態デアリマス
ルカラ、願クハ此兵農兩全主義ヲ貫徹セシ
ムル爲ニ、今日以上ニ此救護ノ事ニ付テ御
力ヲ御盡シ願ヒタイ、ソレガ爲ニハ甚ダ惡
口ヲ申スヤウデアリマスルガ、モウ少シ此
問題ニ付テハ、物質國防ノ軍備擴張ニ御熱
心ナルヨリ以上ニ、此事ニモ御熱心ニナッテ
戴キタイト思フ、何故斯ノ如キコトヲ申ス
カト云ヒマスト、此軍事救護法ト云フモノ
ガ過去二十年ノ間棄テヽアリ、是ガ棚曝シ
ニシテアッテ、此救護者ヲ乞食扱ヒニ今日マ
デシテ居ッタト云フコトハ抑、何人ノ罪デア
ルカ、是ハ必シモ內務當局ノ怠慢ト云フバ
カリデハナイ、軍部方面ニ付テモ之ニ對シ
テノ所謂推進力ト云フモノガ乏シカッタト
云フコトヲ言ハナケレバナラヌ、斯ウ私ハ
申上ゲタイノデアリマス、併ナガラ過去ヲ
問ハズ、願クハ將來之ニ付テ一層ノ御盡力
ヲ願ヒタイト思フガ、此點ニ對スル陸海軍
大臣ノ御所見ハ如何
ソレカラ先程堀内君ガ御質問ニナッテ御
答辯ガナカッタノデアリマスルガ、將來軍事
救護ニ關スル所ノ此行政機構ヲ軍部ノ共同
施設ニ依ル機關ニ改メ、之ニ依ッテ救護ヲ實
行セラルヽ所ノ意思アリヤ否ヤ、私ハ此點
ニ付キ必シモ贊成スルト言フノデハアリマ
セヌガ、先程堀內君ガ質問サレテ居ック重
要ナル要點ニ付テ御答辯ガナカッタカラ、
改メテ私ヨリ御伺ヒ致シタイト思ヒマス
ソレカラ更ニ大藏大臣ニ御伺シタイノデ
アリマスルガ、ソレハ大藏大臣トシテハ此
問題ニ付テハ、將來財政上十分ナル御〓究
ヲ願ハヌト云フト、約十年後ニハ、私ノ計
算ニ依レバ約三千万圓ノ費用ヲ要スルノデ
アリマスルカラ、之ヲ一言申上ゲテ置キマ
ス、是ハ答辯ハ要リマセヌ、以上ニ付キマ
シテ願クハ內務大臣及ビ軍部大臣ヨリ御懇
切ナル御答辯ヲ戴キタイノデアリマス
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=21
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022・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 御質問ノ第一
ハ此法案ノ名稱ノ問題デアリマスガ、救護
ト云フ言葉ハ一方ニ於テノ救護法ト混同サ
レマスシ、又軍事保護法ト云フ名前ガ宜ク
ハナイカト云フ御話デアリマシタガ、是ハ
御話ノヤウニ軍機保護法ト云フ法律ガアリ
マシテ、是ト又混同致スノデ、此言葉ハ避
ケル方ガ宜イト考ヘタノデアリマス、尙ホ
扶助ト云フ言葉ニ付キマシテハ、是ハ既ニ
軍事扶助統制委員會ト云フ公ノ會ガアリマ
スシ、又昨年ノ社會事業調査會ノ諮問ニ對
スル同會ノ答申ニ於キマシテモ、軍事扶助
法ト云フ名前ガ宜カラウト云フ答申デアツ
タノデアリマシテ、是ハ決シテ所謂官吏ノ
獨善デハゴザイマセヌノデ、左樣御諒承願
ヒマス
ソレカラ施行令ノ問題デアリマスガ、地
方長官ガ之ヲ行フト云フコトノ代リニ、市
町村長ニヤラセテ、而モ之ヲ明文ニ置イタ
方ガ宜クハナイカ、斯ウ云フ御意見ガアッタ
ヤウデアリマスガ、是ハ御承知ノ通リ國家
ノ事業デアリマシテ、ヤハリ地方長官ガ之
ヲ行フト云フコトニ致シテ置ク方ガ適當ト
考ヘルノデアリマス、唯此取扱ニ付キマシ
テハ、實際ニ卽シタ種々ナ御言葉ガアリマ
シテ、是ハ吾々局ニ當ル者ニ於キマシテ、
十分只今ノ御言葉ヲ諒承致シテ、出來ルダ
ケ迅速ニ且ツ簡便ニ其目的ヲ達スルヤウニ
努メタイト思ヒマス、唯方針ト致シマシテ
ハ地方長官ガ出願ニ依ッテ之ヲ行ヒ、又ハ
進ンデヤル場合ガアリマシテモ、兎モ角國
ノ官吏デアリマスル地方長官ノ所管ト云フ
コトニ致シテ置クコトガ適當ト考ヘルノデ
アリマス、ソレカラ第七條ノ問題デアリマ
シテ、斯ノ如ク範圍ヲ擴張致シマスルト云
フト、迚モ經費ノ負擔ニ堪ヘヌノデハナイ
カト、斯ウ云フ御言葉デアリマシタ、御示
シノヤウニ第二條第二項ノ問題デアリマス
ガ、之ニ依ッテ約七千人程ノ人ガ增加スルノ
デアリマス、大體先程私ガ申上ゲマシタヤ
ウニ、提出致シテ居リマスル豫算、卽チ四
百十六万圓バカリ、昭和十二年度ハ九箇月
分デゴザイマスルカラ、ソレヨリカ少シ減ッ
テ居リマスガ、其範圍內ニ於テ大體賄フコ
トガ出來ル見込デアリマス、之ニ付キマシ
テハ先程申上ゲマシタヤウニ、萬一足リナ
イ場合ニハ補充費目トシテ、更ニ經費ノ要
求支出ガ出來ルコトニ相成ッテ居ルノデア
リマス、ソレカラ將來增加ノ見込ハドウカ
ト、斯ウ云フ御尋デアリマシタガ、御承知
ノ通リ滿洲事變以來殆ド倍ニ上ッテ居リマ
ス、隨ヒマシテ十年後ニハ相當增加スルコ
トト考ヘマスガ、是ハ將來ノ-十年先ノ、
或ハ軍備ノ問題デアルトカ、色々ノ問題ト
可ナリ關聯致シマスルノデ、只今其數字的
ノ見込ヲ立テルコトガ出來マセヌ、併シ是
ハ必要缺クベカラザルコトデアリマスルカ
ラ、如何ニ金額ガ增加致シマシテモ是ハ支
出ヲシナケレバナラヌコトト思ヒマス、ソ
レカラ所管ノ問題デアリマスガ、是ハ私ガ
申スマデモナク、所謂社會政策的施設ノ一
ツデアリマスカラ、ヤハリ其事務ヲ管掌致
シマスル內務省ニ於テ所管スルノガ適當ト
考ヘルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=22
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023・升田憲元
○升田憲元君 內務大臣ノ御答辯中、官僚
ノ獨善主義デナクシテ社會事業調査會ノ意
見ヲ徵シテヤッタノダト云フコトデアリマ
ス、ソレハ御尤デ、決シテ社會局ノ方々ガ
惡イト云フ意味デハナカッタノデアリマス
ルガ、併ナガラ此社會事業調査會ノ意見モ
サルコトナガラ、之ニ列シタ所ノ委員諸君
ノ顏振レヲ見マスト云フト、甚ダ軍事救護
法ナドニ付テハ理解ノナイ人ガ多イ、實際
私ハ此調査會ト云フモノガ、若シ之ニ政府
ノ手當ト云フモノガ附イテ居ナカッタナラ
バ、私ハドン〓〓行ッテ此忠告モスルシ愚
見モ述ベルノデアリマシタケレドモ、何
シロアレニハ相當ノ手當ト云フモノガアル
カラ、ソンナコトヲ言ッテ內務省ニ屢〓出入ス
ルト、委員ニデモナリタイガ爲ニ、何カ運
動ヲシテ居ルヤウニ、誤解ヲ受ケテモイケ
ナイト思ッテ控ヘテ居ッタノデアリマスガ、
要ハ將來調査會ト云フモノニバカリ御賴リ
ニナラヌデ、自分ノ獨自ノ見解ニ依ッテ事ヲ
處スト云フコトヲ原則トシテ戴キタイト思
フ
ソレカラ軍事救護ノ決定ヲ地方長官ニヤ
ラセルト云フコトガ適當デアルト思フ、ソ
レハ國家ノ事務デアルガ故ニ市町村長ニヤ
ラセルコトハ如何カト考ヘル云々ト云フ御
話デアリマシタガ、國家ノ事務ニシテ市町
村長ガ行ッテ居ル所ノモノハ幾ツモアリマ
ス、決シテ國家ノ事務デアルガ故ニ、地方
長官ニ行ハセナケレバナラヌト云フコトハ
理由ニナラナイ、是ハ先程申シタ通リ迅速
簡便ニヤル爲ニハ、市町村長ニヤラセタ方
ガ一番宜イ、殊ニ費用ト云フモノヲ節約ス
ルコトガ出來ル、此調査ト云フコトヲナス
ガ爲ニ、實際ニ於テ此被救護者ノ口ニ入ル
ヨリモ、役人ノ調査ニ依ッテ費消サレル所
ノ金ガ莫大デアル、タッタ一名出願ガアリマ
スト云フト、遠イ處デモ態、御出張ニナツ
テ、サウシテ澤山ナ旅費ヲ使フ、其旅費ノ
方ガ却テ其被救護者ニ給與スルヨリモ額ガ
多イト云フコトハ、是ハ澤山ニ例ガアルノ
デアリマス、是モ御調査ヲ願ヒタイソレカ
ラ最後ニ尙ホ此所管ノコトデアリマスガ、
是ハ全ク大臣ト私ハ同感デアリマス、軍部
ガ實際狹義國防ニ付テ非常ニ忙シイ中ヲソ
ンナ事ニマデ手ヲ出スト云フコトハ、相當
考慮ヲ要スベキコトデアル、其點ニ付テハ
内務大臣ノ御意見ト私ハ同一意見デアルト
云フコトヲ申上ゲマシテ、是デ內務大臣ニ
對スル質問ハ打切リマスガ、軍部大臣ノ御
答辯ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=23
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024・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 政府ヨリハ答辯ガ
アリマセヌ-東條貞君
〔東條貞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=24
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025・東條貞
○東條貞君 只今上程サレテ居リマスル北
海道舊土人保護法中改正法律案、之ニ關シ
マシテ簡單ニ當局ノ御意見ヲ伺ッテ見タイ
ト思フノデアリマス、改正ニナリマスル內
容ニ付キマシテハ、寧ロ委員會ニ讓リマス
ルコトガ適當ト存ジマスルノデ、此場合ハ
御伺ヲ致シマセヌ、唯此舊土人保護ノ根本
ノ方針ニ關シマシテ、一言御質問ヲ致シテ
見タイノデアリマス
一體舊土人ヲ保護致シマスル根本ノ方針
ト致シマシテ、之ヲ同化スルト云フ方針ヲ
立テマスルカ、又是ト反對ニ、種族ハ種族
トシテ保存ヲスルト云フ方針デ保護ヲ致シ
マスルカ、之ニ依ッテ自ラ保護ニ關スル有ユ
ル施設ガ變ラネバナラヌノデアリマス、若
シ同化スルト云フコトガ必要デアルト致シ
マスルナラバ、此方針ヲ以テ進メマスルト
致シマスルナラバ、當面ノ、サウシテ暫定
的ナ適當ナル處置ヲ執ッテ行ケバ、ソレデ宜
シイノデアリマシテ、或ル時期ニハ、卽
チ同化ノ目的ヲ達シマシタ時ニハ、保護ノ必
要ガナクナッテシマフノデアリマス、併ナガ
ラ是ト反對ニ、保存ヲスルト·云フ方針ヲ立
テルト致シマスルナラバ、大變ニ考ヘ方ガ
違ハナケレバナラヌノデアリマス、人類學
的ノ見地カラ致シマシテモ、私共ハ種族ハ
種族トシテ保存ヲセネバナラヌ、斯樣ニ考
ヘル者デアリマスルガ、併シナガラ保存ヲ
スルト致シマシテモ、現狀ノ如キ文化ノ點
カラ致シテモ、生活ノ狀態カラ致シマシテ
モ、低イ狀態ノ儘ニ置キマスルコトハ、甚
ダ遺憾千萬デアリマシテ、ドウシテモ文化
ヲ進メ、生活ノ向上ヲサセマシテ、立派ナ
文化生活ノ上ニ於テノ、相當ナル生活ヲシ
得ラレマスルヤウニ、之ヲ保護ヲシテ參ラ
ナケレバナラヌノデアリマス、現在近文、
白老、平取等ニ相當ニ集團致シテ居リマス
ル部落ガアリ、斯樣ナ場所ニ於テハ、或ル
程度ノ保護施設ガ加ヘラレテ居リマス、此
外ニ散在致シテ居リマスル者モ相當ニアル
ノデアリマス、乏シイ費用ヲ以テ、各處ニ
分散致シテ居リマスル者ニ保護ノ施設ヲ加
ヘマスルノデアリマスルカラ、總テノ施設
ガ甚ダ不徹底デアリマス、寧ロ之ヲ北海道
ノ適當ナル地方ニ、全道ノ舊土人ヲ集團セ
シメマシテ、サウシテ〓育、救療、生活ノ
指導、有ユル方面ニ於テ保護ノ施設ヲ加ヘ
マスルナラバ、其費用ノ上ニ於キマシテ
モ、非常ニ集團的ニ、能率ガ擧ルノデアリ
マスルシ、且ツ精神的ノ方面カラ考ヘマシ
テモ、現在ノ狀態デハ視察者ニ依リマスル
所ノ種々ナル刺戟ヤ、或ハ內地人ト混住
シ、サウシテ生存競爭ヲ致シマスル上カ
ラ、其精神的ノ純眞サガ非常ニ惡化サレツ
ツアルコトヲ、遺憾ナガラ認メルノデアリ
マス、斯樣ナ點ヲ防ギマシテ、眞ニ種族ト
シテカラニ、純粹ニ保存ヲ致シマスル上カ
ラ言ヘバ、之ヲ一地方ニ集メマスコトガ最
モ適當デアルヤウニ考ヘルノデアリマス、
適切ナル保護ノ施設ハ、同化セシムルカ、
種族トシテカラニ保存ヲスルカ、是ガ確立
致シマシタ上ニ、各〓適當ナル計畫ヲ立ツベ
キデアリ、又適當ナル計畫ガ見出サレルノ
デアリマス、此點ニ關シマシテ當局ハ何レ
ノ途ヲ御採リニナルカ、現在マデノ狀態
ハ、遺憾ナガラ何レニモ付カナイ、所謂首
鼠兩端ト申シマスルカ、洵ニ不徹底ナ施設
ガ行ハレテ居ルノデアリマスルカラシテ、
此何レヲ目標トシテ御進ミニナルカト云フ
コトニ付キマシテノ、明確ナル御答ヲ得タ
イト存ズルノデアリマス(拍手)
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=25
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026・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 北海道ノ舊土
人ニ付キマシテ、同化主義ヲ採ルカドウ
カ、斯ウ云フ御尋デアリマシタガ、大體ニ
於キマシテハ、ヤハリ一視同仁ノ御叡旨ヲ
體シマシテ、大體ニ於テ同化ノ方針ヲ採ル
ノガ適當ト考ヘテ居ルノデアリマス、サリ
ナガラ種々ナル習慣、風俗其他ニ於キマシ
テ違フ所ガアリマスルノデ、是ハ急激ニサ
ウ進メル譯ニハ行カヌノデアリマスガ、方
針トシテハ右申シタヤウナ心持デ進マント
スルノデアリマス、隨ヒマシテ、今囘提案
致シマシタ改正法律案ニ於キマシテモ、或
ハ土地ノ讓渡ヲ從來禁ジラレテ居リマシタ
ノヲ之ヲ許ストカ、或ハ又衞生其他ノ施設
ニ於キマシテ、保護ノ、所謂文化ノ進ム奬
動ヲスル施設ヲ致シマスルカト云フ風ナコ
トニ致シマシテ、段々所謂內地ノ人ト同ジ
ヤウナ狀態ニ進マセヨウト思フノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=26
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027・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 坂東幸太郞君
〔坂東幸太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=27
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028・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 私モ北海道舊土人保護法
中改正法律案ニ關シマシテ、保護ノ根本義
ニ付テ三點ノ質問ヲスルノデアリマス
先ヅ第一ニハ、更ニ增加セザル舊土人ノ人
口狀態ニ付テ政府ハ如何ナル御考ヲ有スル
ヤト云フコトデアリマス、初メテ政府ガ
統計調査ヲ爲シタル明治五年ノ我國ノ人口
ハ三千三百十一万八百二十五人デアリマスル
ガ、昭和十年十月一日ノ第三囘國勢調査ニ
依リマスルト、ソレガ六千九百二十五万四
千百四十八人トナッテ居ルノデアリマス、卽
チ六十四年目ニシテ二倍强トナッテ居ルノデ
ゴザイマス、然ルニ、明治五年ニ於ケル北
海道舊土人ノ人口ハ一万五千二百七十人デ
アリマシテ、昭和十年六月一日ノ現在ハ
万六千三百二十四人デ、殆ド增加ノ見ルベ
キモノガナイノデアリマス、若シ大體一般
ト同樣ナ增加ヲ致シテ居リマスルナラバ、
方ニ三万人內外トナッテ居ルト云フコトハ
想像スルニ難クハナイノデアリマス、明治
維新以來舊土人ノ保護ニ付キマシテハ、政
府ハ相當ナル苦心ト施設ヲ加ヘテ來タコト
ハ事實デアリマスルケレドモ、其方法ガ稍〓、
形式ト理論ニ偏シタ傾キガアッタト云フ
コトハ遺憾千萬デアリマス、若シ政府ニシ
テ舊土人生活ノ實情ニ卽シタル、適切ナル
施設ヲシテ居リマシタナラバ、現在ノ人口
ハ今少シ增加シテ居ッタモノト想像スルコ
トガ出來ルノデアリマス、現在ノ舊土人ガ
假令文化ノ恩澤ニ浴シ、生活ノ向上ヲ來シ
テ居ルト致シマシテモ、彼等種族ノ繁殖數
フルニ足ラズトシタナラバ、眞ノ意味ニ於
テ保護ノ目的ヲ達成シタルモノト斷ズルコ
トハ出來ナイモノト言ハナケレバナリマセ
ヌ、何ヲ以テ此言ヲ爲スカト申シマスルト、
從來政府ノ保護ナルモノハ、第一生活保障ノ
點ニ於テ頗ル缺クル所ガアリ、第二、保健
衞生上ノ施設及ビ注意ノ點ニ於テ用意ノ周
ウ
到ヲ缺イテ居ッタノデアリマス、先祖以來慣
レナイ農業ヲ强要シテ、狩獵漁獲ヲ事實上
不可能ナラシメ、笹葺ノ掘立小屋ヲ廢シテ
粗造ノ木造家屋ニ住居セシメタノデアリマ
ス、一口ニ申セバ生活上ニ餘リニ急激ナル變
化ヲ與ヘ過ギタノデアリマス、而シテ北海
道ノ開拓ノ進ムニ從ヒ、山ニハ狩獵ノ獲物
乏クナリ、川ニハ漁獲禁斷ノ法網張ラレマ
シテ、彼等ノ永年慣レ來リタル生業ハ、人
文進化ノ潮ニ押流サレタヤウナ形トナッタ
ノデアリマス、而モ政府ガ强要スル農業ニ
ハ慣レナイガ爲メニ、其收穫モ少ク、又粗
造ノ木造家屋ハ防寒ノ點ニ於テハ彼等傳來
ノ掘立小屋ニ及バナイ爲ニ、形ノ上ニ於テ
文化生活ヲ與ヘタノデアルケレドモ、生活
ノ實體ニ於テハ彼等ノ生活ニモ健康ニモ適
シナカッタノデアリマス、是ニ於テ嬰兒、小
兒病人等其死亡數ヲ以前ヨリ減少サスコ
トガ殆ド出來ナカッタノデアリマシタ、是卽
チ今日人口ノ增加ヲ見ルコトノ出來ナイ根
本ノ原因デアリマス、御承知ノ如ク「アイヌ」
種族ハ我國ノ先住民族デアリマシテ、東海、
東山、關東、東北、北海道地方ニハ殆ド全
面的ニ棲息蟠踞シタルガ故ニ、之ヲ平定ス
ルコトガ朝廷ノ根本政策トナッテ居リマシ
テ、征夷大將軍ノ官職名モ是カラ起ッタ程デ
アリマス、サウ斯ウスル間ニ直接ニ進化シ、
又ハ混血シタリシタノデ、現ニ俵藤太秀〓
モ、安倍貞任モ「アイヌ」出身デアルト言ハ
レル位デスカラ、吾々ノ大部分、オ互ノ大
部分ハ實ハ「アイヌ」種族ノ進化及混血シタ
モノデアリマス、斯ノ如ク先祖トモ恩人ト
モ云フベキ舊土人諸君ニ對スル政府ノ施設
ガ不完全ナルコトハ、誠ニ不都合千萬デア
ルト言ハナケレバナリマセヌ、政府ハ深ク
思ヒヲ致シテ、彼等ノ增殖發展ノ途ヲ講ズ
ベキデアルト思ヒマスガ、此點ニ付テ御意
見ヲ御伺ヒ致シマス
第二ハ現在ノ舊土人ノ戶主子弟等ニ對シ
テ、未開地ヲ付與スルコトガ至當デハナイ
カト云フ點デアリマス、內地ヨリノ普通移
住民ニ對シテハ、從來一戶分五町步ヲ貸付
ケ、五年間ニ開墾スレバ之ヲ無償ニテ付與
シテ所有權ヲ與ヘ、更ニ五町步ヲ貸付ケタ
ノデアルニ拘ラズ、舊土人ニ對シテハ一戶
ニ付キ一町カ二町ヲ無年貢デ耕作セシメタ
ノニ過ギナイノデアル、而シテ以前ハ其所
有權スラモ與ヘナカッタノデアリマス、斯
ル狀態デアリマスカラ、舊土人ニ對スル政
府ノ土地分配ノ方法ハ、普通移住民ニ對ス
ルヨリハ非常ニ不利益デアッタノデアリマ
ス、現ニ北海道ニハ尙ホ四十餘万町步ノ未
開地ガ存在スルノデアリマスカラ、相當ナ
ル土地ヲ彼等ニ無償デ付與スルコトハ、單
リ舊土人保護ノ完璧ヲ期スル意味バカリデ
ハナク、北海道ノ土地政策ヲ公正ナラシメ、
調整スル上ニ於テモ至當ナリト信ズルノデ
アリマスガ、政府ハ此點ニ付テ如何ナル御
考ヲ有スルノデアリマスカ
第三ハ現在舊土人ノ共有地ハ之ヲ賣却シ
テ其代金ヲ公債ニ代ヘ、是ガ利息ヲ支給ス
ル方法ヲ採用スルコトガ、舊土人ノ生活上
有利ナラズヤト云フ點デアリマス、實例ヲ
申上ゲマスレバ、北海道旭川市内ニ舊土人
給與地トシテ保存セラレタル土地ハ百五十
町デアリマス、此土地中五十餘町步ハ舊土
人一戶一町步ヅヽ五十餘戶ニ與ヘ、殘リノ
百町步ヲ舊土人ノ共有地ノ形トシテ、北海
道廳ガ管理シテ、其徵收シタル小作料ヲ以
テ保護奬勵費、管理費等ニ使用シテ居ルノ
デアリマス、而モソレガ二三十万圓ノ價値
アル土地デアリマス、ソシテ現在五十餘戶
ノ舊土人ハ此土地ノ收入カラ直接ニ分配ヲ
受ケテ居ナイノデアリマス、若シ之ヲ賣却
シテ公債ヲ所有セシムル時ハ、一戶ニ付キ二
百圓內外ヲ得ルコトガ出來マスカラ、彼等ノ
生活ハ相當ニ樂ニナルノデアリマス、勿論
北海道各地ニ同一事情ノ下ニアルモノガ相
當ニアルモノト存ジマスガ、政府ハ此點ニ
付テ如何ナル御考ヲ有スルノデアリマス
カ、之ヲ要スルニ我等ノ先祖デアリ恩人デ
アル「アイヌ」種族ニ對シテ、徹底的ニ保護ノ
途ヲ講ズルコトハ、道義日本ノ當然ノ義務
デアルト存ジマスルガ故ニ、以上ノ諸點ヲ
御伺スル次第デアリマス、祭政一致ヲ强調
スル現政府タルモノハ、特ニ此問題ニ大關
心ヲ持タレ、的確ナル御答辯アランコトヲ
切望致シマス(拍手)
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=28
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029・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 第一ノ御質問
ハ舊土人ノ人口問題ニ關シテデアリマス
ガ、只今ノ御話ニ依リマスト、土人ノ人口
ハ一向增サナイ、斯ウ云フ御言葉デアリマ
シタガ、是ハ段々御承知ノヤウニ、或ハ內
地人ト結婚スルトカ、或ハ又内地ノ方へ出
稼ギヲスルトカ、或ハ又內地人ノ部落ニ一
〓ニナルト云フヤウナコトデアリマシテ、
從來ノ集團ノ部落ハ大シテ增サナイノデア
リマスガ、全體ニ於キマシテ、ヤハリ三四
百人位ヅヽハ年々增シテ居ルヤウナ狀況ニ
見受ケラルヽノデアリマス、尙ホ此舊土人ニ
付キマシテハ、只今私ガ申述べマシタヤウ
ニ、年額三万七千八百五十八圓程ノ豫算ヲ
支出シテ居リマスガ、今囘ノ改正法案ニ依
リマシテ、其中ノ學校ノ經費ナドハ、北海
道ノ一般ノ經費ノ中ニ組入レラルヽコトニ
相成タノデアリマスルカラ、從來學校維持
費トシテ使用セラレテ居リマシタ一万七
千五百五十三圓ト云フ金ハ、舊土人ノ或ハ
住宅、或ハ農業ノ施設等ニ用ユルコトガ出
來マスノデ、從來ヨリ更ニ舊土人ノ生活ニ
付テノ福利施設ガ爲シ得ルヤウニ思フノデ
アリマス
第二ニ土地ノ問題デゴザイマスルガ、北
海道ノ未開墾地ヲ土人ニ更ニ無償下付シテ
ハドウカ、斯ウ云フ御意見デアリマスガ、
只今御述ニナリマシタヤウニ、從來一戶當
リ五町步ノ土地ガ分與セラレテ居リマシテ、
更ニ又一般人ト同ジヤウニ、北海道國有未
開墾地處分法ニ依リマシテ、必要ニ應ジマ
シテ、土地ノ無償下付モ出來ルノデアリマス
カラ、先ヅ大體特ニ舊土人ニ對シテ特別ナ
法規ヲ作リ、若クハ特別ナ計ヒヲスルト云
フ必要ハ、今日ハナイノデハナイカト、斯
ウ云フ風ニ思フノデアリマス
第三ノ共有地ノ問題デアリマスガ、是一
御承知ノ通リ大體ニ於テ色々詐術ニ掛ッタ
リナンゾスルコトヲ防グ爲ニ、共有地トシ
テ之ヲ北海道長官ガ管理保護シテ居ッタノ
デアリマス、今日ニ於キマシテモ尙ホ其
必要ガアルヤウニ思フノデアリマスガ、法
律第十條ニ依リマシテ、若シ必要ガアリマス
ル場合ニハ、北海道長官ノ許可ヲ受ケテ、其
土地ノ處分ガ出來ルノデアリマスルカラ、
先ヅ〓〓今日ノ所デハ其程度デ宜イノデハ
ナイカト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=29
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030・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 簡單デゴザイマスカラ自
席デ御許ヲ願ヒマス、只今内務大臣ノ御答
辯ハ言葉ダケハ分ッテ居リマスルガ、殘念
ナガラマダ北海道ノ事情ニハ通ジテ居ラレ
ナイト思ヒマス、私ハ北海道ニ住ムコト四
十餘年デ能ク知ッテ居リマス、御答辯ノヤ
ウナソンナ簡單ナコトデハナイ、隨テ今少
シ同情ヲ持ッテ、彼等民族ヲ〓究サレマシ
テ、徹底シタル方針ヲ決メラレンコトヲ願
ヒマス、其他ノ點ニ付キマシテハ、他ノ機
會ニ於テ御伺致シタイト思ヒマス、之ヲ以
テ質問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=30
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031・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松本治一郞君
〔松本治一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=31
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032・松本治一郎
○松本治一郞君 私ハ只今上程ニナッテ居
リマス軍事救護法中改正法律案ニ對シテ質
疑ヲ致シマス、本案ハ適用ノ範圍ヲ擴張セ
ントスルノデスカラ、少々ノコトナラ直チ
ニ贊意ヲ表スル者デアリマスルガ、法案提
出ノ理由書ニ述ベテアル趣意ト改正案ノ內
容トノ間ニ、餘リニモ大キナ隔リガアルト
思フカラ質疑ヲ致ス者デアリマス(拍手)先
ヅ御尋致シタイ要點ダケヲ申シマスナラバ、
第一ニ軍事費ノ膨脹ト軍事救護費トノ不均
衡ヲ、所謂廣義國防ノ見地カラ軍部當局ハ
如何ニ考ヘテ居ルカ、第二ニハ本法改正案
ノ適用範圍擴張ニ依ル被救護者ノ增加ト、
僅少過ギル豫算トノ矛盾ヲドウスルカ、第
三ニハ兵士家族ノ生活保障ハ國家ガ爲スベ
キ當然ノ義務ナリト思フ、然ルニ本法ハ恩
惠的、慈善的救濟以外ノ何物デモナイト思
ハレルガ、當局ノ所見ハドウカ(拍手)最後
ニ斯ル立前カラ政府ハ兵士家族一戶當リニ、
少クトモ年額百八十圓ヲ國庫カラ支給スル、
兵士家族生活國家補償法ヲ制定スル意思ナ
キヤ、以上ノ四項目ニ亙ッテ質問スル者デア
リマス
諸君、私ハ軍事救護ト聞キマスト、直グ
彼ノ不幸ナ癈兵ガ思出サレルノデアリマス、
ソシテ其癈兵ト云フコトヲ聞ク時ニ、又私
ノ胸ヲ衝クモノガ浮ビ出ルノデアリマス、
ソレハ大正ノ初メ、第四師團下ノ工兵隊長
井島中佐ガ癈兵ノ境遇ニ同情シテ現役ヲ退
キ、私立癈兵院ノ院長トナルニ至ック動機ニ
付テノ話ヲ聞カサレタコトヲ、今ニ忘レル
コトガ出來ナイノデアリマス、其話ハ斯樣
デアリマス、或日中佐ハ所屬部隊ヲ率ヰテ
紀州橋本ニ渡河演習ヲヤッテ居タガ、架橋作
業モ終ッテ兵士達ガ休憩シテ居ルト、其處ニ
偶然ニ當時流行シタ藥賣ノ癈兵ガ三人ヤッ
テ來テ、其兵土達ニ向ッテ、我等ノ妻子ハ飢
エニ泣イテ居ルノデアル、モウ一圓賣ラナ
ケレバ今日ノ暮シハ立タナイ、助ケルト思ッ
テ買ッテ吳レト衷心カラ哀訴シテ已マナイ
ノデアル、同情シタ兵土達ハ申合セ、ナケ
ナシノ財布ヲハタイテ藥ヲ買ッテヤッタノデ
アリマス、スルト癈兵等ハ非常ニ喜ンデ、
是デ久シ振リニ妻子ノ喜ブ顏ヲ見ルコトガ
出來ルト言ヒナガラ、邊リヲ見〓シマシテ
聲ヲ潛メテ、此御禮ニ諸君ニ眞實注意シテ
置ク、演習ヤ勤務ナドハ大抵ニシテ、宜イ
加減ニ胡麻化シテ置クガ宜イ、俺達ノヤウ
ニ一旦手足ガナクナッテ、不具癈疾トナル
ト、初メノ中ハヤレ名譽ノ負傷ダ、譽レノ
軍人ダト煽テラレテ、今日此頃ハソレトハ反
對ニ其日々々ノ生活ニ苦シミ、道行ク人ヤ
路傍ノ子供達カラ癈兵ノ藥賣リ、藥賣リノ癈
兵ダト蔑スマレ、遂ニハ邪魔者扱ヒヲ受ケ、
村ノ入口ニハ癈兵ノ藥賣リ入ルベカラズト
立札ガ立テラレテ居ル、名譽ノ負傷者、譽
レノ軍人モ、今ハ公衆ノ前ニ生キ恥ヲ曝ス
ヤウニナッテ居ルノデアル、ダカラ君達モ大
抵ニシテ、戰爭乞食ノ仲間ニ入ラナイヤウ
ニ要領宜ク立〓ッテ、負傷ナドヲシナイヤウ
ニト諄々ト說イテ癈兵ハ立去ッタノデアリ
マス、後デ其話ヲ聞イタ隊長井島中佐ハ、
大變驚イテ、不自由ナ身體ヲ松葉杖ニ縋ッテ
足ヲ引摺リナガラ、其妻子ヲ喜バセヨウト
歸ッテ行ク癈兵ノ後ヲ追駈ケテ、其事情ヲ聞
イタ、其時癈兵達ハ隊長ヨ、若シ吾々ガ將
校デアッタナラバ、コンナ不具者トナルマデ
ノ傷ヲ負ハナクトモ、斯樣ナ慘メナ姿デ苦
シイ生活ヲシナクテモ宜カッタデアラウト
語ルノヲ聞イテ、井島中佐ハ癈兵等ノ手ヲ
取ッテ唯一言濟マナイト言ッテ、暫シ無言ノ淚
ニ暮レタノデアリマス、暫クシテ井島中佐
ハ今後ハ如何ナル事ガアッテモ、ソンナ話ハ
兵卒ニハ勿論、世人ニ對シテモシテ吳レル
ナ、其代リニ吾輩ハ君達ノ立チ行クヤウニ
何トカ盡力スル覺悟ヲ決メタト、約束ヲシ
テ、遂ニ現職ヲ抛ッテ其生涯ヲ不幸ナ癈兵
ノ爲ニ捧ゲタノデアリマス(拍手)其話ハ今
日モ尙ホ生々シイ現實トシテ受取ッテ宜イ
ト思フ
事實私自身ガ直接ニブッツカッタ、私ノ〓
里ニ於ケル悲慘ナ一ツノ實例ヲ御話致スノ
デアリマス、昭和ハ七年ノ六月一日佐世保
海兵團ニ現役トシテ入團シク堺某君ハ、現
役中肺結核ニ侵サレ、十年ノ三月第二種症
ニ依リ兵役免除ニナッタノデアリマス、其家
ハ貧シイ其日稼ギノ勞働者デハアルガ、親
子三人ノ勞働ニ依ッテ每月六十圓程度ノ收
入ガアルノデ、ドウヤラ其日ノ生活ヲ支ヘ
テ行クコトガ出來タノデアリマス、所ガ肺
結核デ兵役免除トナッタ病人ノ爲ニ、每日四
圓宛ノ醫療費ガ要ルコトニナッタノデ、忽チ
其一家ハ生活困難ニ陷リ、目モ當テラレ
ナイ悲慘ナ狀態ニナッタノデアリマス、六十
圓ノ月收ノ家庭ガ百二十圓ノ醫療費ニ堪ヘ
得ル筈ハナイ、二進モ三進モ行カナクナツ
テ、在〓軍人ヤ聯隊區司令部ヘ駈付ケテ哀
訴嘆願シタガ、働キ手ガ三人居ルト云フ爲
ニ、現行救護法ノ規定ニ依ル生活シ能ハザ
ル者ト認メラレナイト云フノデ、全然救護
ノ途ガ講ゼラレナカッタノデアリマス(拍手)
此六十近イ父親ハ瀬死ノ我子ニ對スル遣瀨
ナイ愛情ト、生活困苦ノ爲メノ憤懣カラ、
世ヲ呪ヒ軍隊ヲ呪フノ餘リ、日本ノ軍隊ガ
兵士ノ家族ニ對シテ如何ニモ冷酷デアルカ
ヲ知ラス爲ニ、自分ノ病メル其子ヲ殺シテ
死ナウト思ッタコトガ度々アルト言ッテ、私
ノ手ヲ握ッタ時ニ、私モ淚ナクシテ聞カレナ
カッタノデアリマス(拍手)私ハ二·二六事件
ヤ、五·一五事件ノヤウナモノガ束ネテ來
テモソレヲ恐レル何等ノ淚ハ一滴タリト
モ持合セハナイガ、此世ノ組立ガ惡イ爲ニ、
其害ヲ被ッテ生活ニ喘グ人ヲ見タ時ニハ、全
身ノ淚ヲ流スダケノ氣持ヲ持ッテ居ル者デ
アル(拍手)斯樣ナ生々シイ國民生活ニ根ザ
シタ現實ニコソ、軍部ガ今日最モ惧レル所
ノ反軍思想ナルモノハ胚胎スルノデアリマ
ス(拍手)政府當局ハ斯ル點ヲ十分ニ考慮ニ
入レテ本改正案ヲ提出サレタカドウカ、是
レ私ガ本案ニ對シテ質問ヲナサントスル根
本的態度デアリマス
本案ノ提出理由ニ依リマスレバ、軍事救
護法ハ現在ノ社會情勢ニ鑑ミ、其適用範圍
ノ擴張其他ノ點ニ改正ヲ加ヘテ軍事扶助ノ
徹底充實ヲ期スト云フノデアリマス、是非
共徹底充實ヲ期シテ戴キタイ、併シ徹底充
實ヲ期スルト云ッテ新ニ計上サレタ經費ハ
幾ラカト言ヘバ、提出豫算ノ上デハ僅ニ
百三十万七千圓デアル、合計三百八十四万
圓餘ニ過ギナイ、此經費ガ如何ニ少額デア
ルカト云フコトハ、軍部豫算ノ總額、是ト
比較シテ見レバ最モ直截ニ分ルノデアル、
今囘ノ陸海軍豫算十四億ニ較ベルト、實ニ
其僅カ千分ノ三ニ足ラヌト云フ少額ニ過ギ
ナイノデハナイカ、斯樣ナ少額ナ豫算ヲ以
テ、果シテ所謂軍事扶助ノ徹底充實ガ期シ
得ラレルカドウカ、大イニ疑問トセザルヲ
得ナイノデアリマス(拍手)今假ニ百步ヲ
讓ツテ軍事救護ノ事業其モノガ、斯ル少額ノ
豫算デモ相當ノ成績ヲ擧ゲテ居レバ敢テ差
支ハナイガ、軍事救護ノ最近ノ實際ハソレ
ヲ完全ニ裏切ッテ居ルノデアル、大正六年
本法ガ實施セラレテカラ現在マデニ二十年
ニ近イノデアルガ、當初ノ一三年ヲ除イテ大
正十年此ノ方ノ實情ヲ見ルニ、救護ヲ受ケ
タ人員ハ段々增加シテ居ルガ、支出サレタ
金額ハソレニ應ジテ增加シテ居ラナイ、隨
テ一人當リノ救護ノ金額ハ却テ減少シテ來
テ居ルノデアル、殊ニ滿洲事件ノ昭和六年
以來此傾向ガ頓ニ著シイノデアル、例ヘバ
救護ヲ受ケタ人員ハ昭和五年ニ約五万人デ
アルガ、昭和九年ニハ實ニ二倍ニ達シ、十
万人ヲ超エテ居ル、而モ一人當リ救助サレ
タ金額ハ、昭和五年マデハ一年一人當リ三十
圓ヲ超エテ居タ、此金額ト雖モ決シテ十分
トハ言ヘナイ、滿洲事件ノ昭和六年以來曾
テ三十圓ニ達シタコトガナイ、二十四圓カ
ラ二十六七圓ノ程度以上ニ上ッテ居ナイノ
デアル、是ハ何ヨリモ第一ニ滿洲、上海事
件以來、所謂大陸政策遂行ノ爲メノ軍事的
行動ノ結果デアル、其爲ニ傷病兵ガ激增シ
テ來タノデアル、ソレト同時ニ國內ニ於ケ
ル資本主義經濟機構ノ齎ス必然ノ弊害トシ
テ、國民大衆生活ノ低下、殊ニ働キ手ヲ奪
ハレタ兵士家族ノ生活窮乏カラ來ル被害、
被救護者ノ激增ノ結果デアル、現行施行
令ノ規定ニ依レバ、生活扶助ノ金額ハ一
日僅カ三十錢以內デ、タッタ三箇月ヲ限
度トシテソレヲ支給スルダケデアル、生活
スルコト能ハザル者ニ對シテ之ヲ給與スル
ト云フノニ、タッタ三箇月限リ、一日三十錢
以內ヲ吳レテヤルト云フノデアル、是位ノ
端金デ人間ラシイ生活ガ出來ルト思ハレル
カ、是コソ本法ノ精神ガ貧民ニ惠ンデヤル
ト云フヤウナ恩惠的ナモノデアルコトノ證
據デアル
斯樣ニ扶助金ガ少ナ過ギルト云フコトト
共ニ、更ニ重大ナル問題ハ生活困難ノ爲ニ
當然救護ヲ受ケネバナラヌ狀態ニアル人々
ニ、而モソレヲ受ケテ居ナイ人々ガ非常ナ
多數ニ上ッテ居ルト云フコトハ事實デアリ
マス、昭和九年度ノ實情ニ依ルト救護ノ人
員ハ約十万人、是ハ外ニ戰爭行爲ガナク、
內ニ農村ノ窮乏ガ今日程甚シクナイ好景氣
ノ昭和元年頃ニ較ベテ三倍ニ達シナイ狀態
デアル、生活ノ困難モズット加重シ、傷病兵
モズット殖エテ居ル現在トシテ見レバ、此救
護ヲ受ケタ人員ハ少ナ過ギルノデアル、實際
ニ救護ヲ必要トスル人員、戶數ハモットノ
增大シテ居ナケレバナラヌ筈デアル、而
モソレガ此十年間ニ僅カ三倍ノ增加デ喰止
メラレテ居ルノハ、實際ニ救護ヲ受ケル
者ガ其程度以上ニ殖エナイノデハナク、經
費不足ノ爲ニ地方長官ハ窮屈ナ施行令ノ規
定ヲ楯トシテ、當然救護スベキ者ヲ捨テ
顧ミナイガ爲メデアル(「ヒヤ〓〓」拍手)而
モ本改正案ニ依ッテ適用範圍ガ擴張サレル
トスレバ、激增スル被救護人員ト、其貧弱
ナ豫算トノ開キハ益〓大キクナッテ、當然救
護ヲ受クベキ者ガ受ケラレナイト云フ結果
ヲ擴大シハシナイカ(拍手)
現行ノ軍事救護法ハ大正六年ニ制定サレ
タノデアルガ、當時此〓護法ノ制定ニ非常
ニ努力奔走サレタ、或ル意味デハ其生ミノ
親トモ言フベキ人ハ、今ハ亡キ人鐘紡ノ武
藤山治氏デアルガ、其武藤氏ガ救護法ヲ制
定スル爲ニ奔走シテ居タ時、當時ノ陸軍當
局ハ此武藤氏ニ社會主義デハナイカトノ疑
ヲ掛ケ、一時ハ其運動ヲ妨害シタト云フ話
ガアル、サウ云フ社會ニ對シテ認識ノ全ク
ナカッタ時代ニ制定サレタ本法ガ、其後根本
的ニハ少シモ改正サレル所ナク今日ニ及ン
デ居ルノデアル、其時代ト今日トハ社會
情勢モ非常ニ相違ガアリ、國民生活ノ程度
ニモ非常ナ違ヒガ出來テ居ルノデアル、其
今日二十年前ト同樣ナ法律ノ精神ト施行令
ノ面倒ナ規定ヲ其儘押通サウトシテ居ルノ
デアル、軍部ハ現在ノ國際情勢ノ認識ヲ强
調サレテ居ル、ソレニハ厖大ナ軍備ノ計畫
ガ必要デアルト言ッテ、現ニ厖大ナル軍事費
ヲ以テ著々ト計晝ヲ進メテ居ル、サウシテ
馬場前大藏大臣ハ、現在ノ日本ノ情勢ヲ準
戰時經濟體制ト言ッテ居ル、國ヲ擧ゲテ戰時
的ニ現制度ヲ更正シ、編成替ヲシナケレバ
ナラヌト言ッテ居ル、是ハ鐘紡ノ社長ガ社會
主義者ト誤ラレタ時代カラ見ルト隔世ノ觀
ガアル、全ク時代ハ違ッテ居ル、サウシテ今
日ノ時代ハ非常ニ軍事的デアリ、戰時的デ
アリ、軍部自身ガ今益〓多數ノ國民ヲ其目
的ノ爲ニ動員シヨウトシテ居ル、ソレダノ
ニ陸海軍ノ根幹ヲ成シテ居ル下士官兵ノ家
族ノ生活ニ付テ、昔ナガラノ認識デアル、
一身ヲ國家ニ捧ゲ、自分バカリカ、父母妻
子ノ生活マデ犠牲ニスル、兵士家族ノ生活
ヲ捨テヽ置イテ構ハヌト思ハレルカ、ソレ
デモ軍ニ對スル怨嗟ノ聲ガ起ラナイト保證
サレルカ、ソレデモ廣義國防ハ安全ダト言
ハレルカ、此點ニ付テ軍部當局ノ認識ヲ承
リタイ(拍手)更ニ本改正案ニ依ル適用範圍
ノ擴張ト僅少過ギル豫算トノ矛盾ヲ如何ニ
解決スルカ、此點ニ付テ首相ノ御答辯ヲ求
ムルノデアリマス
次ニ御尋致シタイノハ本法ノ精神デアリ
ママ、改正法律案ニ依リマスルト、軍事救
護法ガ軍事扶助法トナッテ居リマスガ、是ハ
ドウ云フ理由ニ因ルモノデアリマスカ、新
聞等ノ報ズル所ニ依リマスレバ、救護ト云
フ言葉ハドウモ恩惠的、慈善的ナ響ヲ有ツ
カラ、サウ云フ意味ヲ除ク爲ニ扶助ニ變ヘ
ルト云フコトデアルガ、私ノ考デハ、救護
ヲ扶助ト變へテ見タ所デ、受ケル方ニ
取ッテ屈辱的ナ感ジヲ持ツ點ニ於テ何等違
フモノデハナク、本法ノ恩惠的、慈善的
本質其モノハ、何等變ラナイト思フノデア
リマス、政府當局ガサウシタ恩惠的ナ
名稱ヲ變ヘヨウトスル意圖ハ察知出來
ルノデアリマスガ、問題ハ名稱ニアルノ
デハナク、法其モノノ實體ニアルノデアリ
マス、若シ本法ノ恩惠的性質ヲ取除カウト
云フナラバ、法律ノ名前デナク、其內容ノ
改正デナケレバナラナイ、工場及ビ鑛山勞
働者ガ、其業務上ノ負傷疾病ニ對シテ、權
利トシテ傭主カラ受ケル扶助デサヘモ、名
譽アル軍人ガ受ケル軍事扶助ヨリモ遙ニ合
理的デアル、昭和十年ノ鑛山勞働者ノ扶助
ハ一件當リ平均百五十圓デアリ、工場ニ於
ケル扶助ハ昭和九年八十二圓デアル、而モ
ソレハ勞働者ノ生活ガ困難デアルカ否カニ
關係ガナイ、一日三十錢ノ國家扶助デハ、
如何ニ法ノ名義ヲ變更シテモ、其扶助ノ實
際カラシテ恩惠的以外ノ何物デモナイ、兵
役義務ヲ遂行スルコトヲ直接ノ原因トシテ
發生スル、本人或ハ家族ノ生活困難デアル
カラ、ソレハ國家ノ名ニ於テ當然爲スベキ
義務デアリ、且又被救助者ガ當然ノ權利ト
シテ受ケ得ルモノデナクテハナラヌ、單上
名義ダケヲ變更シテモ、其實質的內容ガ之
ニ伴ハナケレバ、法ノ精神ハ少シモ改正サ
レハシナイノデアル、況ヤ社會政策極メテ
貧弱ニシテ、財政支出ノ中ニ社會政策費ノ
少イコト、列國中第一等ニ位スル我國ニ於
テ、國家ガ國家ノ義務ニ從事スルコトカラ
生ズル生活ノ犠牲ニ對シテ、安全ナル補償
ノ義務ヲ負ハヌト云フナラバ、是ハ洵ニ重
大ナル問題デアルト言ハネバナラナイ、斯
ウシタ意味ニ於テ、本法ハ彼ノ貧民ヲ救濟
スル爲メノ救貧法トハ全然其精神ヲ異ニス
ルモノデアッテ、生活無能力者ニ對シテ、慈
善團體ガ一箇ノ握飯ヲ與ヘ、一本ノ手拭ヲ
與ヘテ有難ガラセルモノトハ、全然其意味
ガ違フノデアル、國家ニ血稅ノ義務ヲ拂フ
者ノ權利トシテ、要求ヲ認メルコトニ依ッ
テ、初メテ本法ノ精神ハ徹底スルノデアル、
限ラレタ範圍ニシロ、國民生活ノ安定ト云
フ意味ヲ幾分デモ持ツコトトナルノデアリ
マス、若シ斯ル權利ヲ認メズニ、一般救護
法並ミノ救濟ヲ行ハントスルナラバ、ソレ
ハ「ブルジョア」ガ殘飯ヲ乞食ニ投與ヘルノ
ト何等變リハナイノデアリマス、斯樣ナコ
トコソ名譽アル軍人ニ對スル大ナル侮辱デ
アルト言ハナケレバナラナイノデアル(拍
手)コンナ場合ニコソ陸軍ハシッカリ腰ヲ据
ヱテ、軍ノ總意トカ、中堅層ノ意見ダトカ
言ッテ立腹ナサルガ宜イト思フ、斯樣ナ立前
カラ、吾々ハ政府ニ對シ、入營又ハ出征シ
タ兵士ノ家族ニ、一戶當リ年額少クトモ百
八十圓ヲ國庫ヨリ支出シ、兵士家族生活保
障金トシテ交付スル法律ヲ速ニ制定スベシ
ト要求シテ居ルノデアル、國防ノ第一線ニ
立ツ兵士ハ、或ハ兵營ニ於テ、或ハ戰場ニ
於テ、〓里ノ家族ノ窮迫セル生活ヲ思ヒ、
苦慮スルト云フ實情ハ、洵ニ國防上カラ言
フモ寒心ニ堪ヘナイモノガアル、非常時ノ
呼聲ヤカマシイ今日ニ於テコソ、入營兵士、
出征兵士ノ家族生活ヲ國家ガ保障シテ、所
謂銃後ノ守リヲ固クスルコトガ、軍部ノ謂
フ廣義國防ノ本義デハナイカ(拍手)然ルニ
政府ハ從來現行軍事救護法ノ如キ慈善的屈
辱的施設ヲ以テ、其場ヲ胡麻化シテ來タノ
デアル、政府ハ本改正法律案ガ單ニ名義ダ
ケノ變更デナク、法ノ恩惠的本質其モノヲ
變更サレタト言ハレルカ、若シ本改正案ガ
何等法其モノノ性質ヲ變更シテ居ナイト云
フコトヲ認メラレルナラバ、此際斷然本案
ヲ撤囘シテ、更メテ吾々ガ主張シ要求スル
ヤウナ、兵士家族生活國家保障法ヲ制定ス
ル御意思ハナイカ(拍手)此點ニ付テ內務大
臣ノ御答辯ヲ煩ハシタイ、以上ヲ以テ私ノ
質疑ヲ終リマスルガ、此私ノ質問ハ國民ノ
聲デアリマスルカラ、之ニ對スル御答辯ハ、
國民大衆ガ納得スルヤウナ誠實サヲ以テ御
答ヲ願フ者デアリマス(拍手)
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=32
-
033・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 只今松本君カラ兵
役義務者ニ對スル救護ニ付キマシテ、洵ニ
御熱心ナル御同情ヲ戴キ、殊ニ顯著ナル例
ヲ御示シニナッテ、此必要ナル所以ヲ高調サ
レタノデアリマス、私モ此軍事救護ヲ擴大
致シマスルコトニ付テハ全然御同意デゴザ
イマス(拍手)尙ホ今後ニ於キマシテモ此義
務者ニ對シマシテ、其待遇ヲ改善向上スル
コトニ付テ、十分ニ努力ヲ拂ヒタイト存ジ
テ居ルノデアリマス、只今御尋ニナリマシ
ク、今日要求シテ居リマスル所ノ厖大ナル
軍事費、此一部ヲ割イテ軍事救護ノ費用ヲ
增スト云フコトガ出來ヌカドウカト云フ御
尋デゴザリマシタガ、此點ニ付キマシテハ
今日ノ狀況ヲヨク御承知ヲ願ヒタイノデゴ
ザイマス、軍ト致シマシテハ戰ニ勝ツコト
ヲ主トシテ今考ヘテ居ルノデアリマス、此
戰ニ勝チマスル爲ニモ、屢、申上ゲル如ク豫
算ヲ節約シテ、最小限度ニ限定ヲシテ、尙
ホ是デモ忍ビ得ヌ所マデモ我慢ヲシテ、軍
事費ヲ編成致シテ居ルト云フヤウナ狀態デ
アリマシテ、此豫算ヲ更ニ減スト云フコト
ニナリマスルト、第一線ニ軍トシテ立タナ
ケレバナラヌ力ヲ非常ニ減スト云フコトニ
ナリマシテ、是ハドウモ軍トシテ目下ノ狀
況ニ於テ、御要求ニナッテ居ル事柄ヲ直チ
ニ御聽容レヲスルト云フコトハ、甚ダ難シ
イコトデゴザイマス
〔「鐵砲ヨリモ魂ガ大事ダゾ」「國民生
活ノ安定ト兩方ガ出來ナケレバ駄目
ダ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=33
-
034・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=34
-
035・杉山元
○國務大臣(杉山元君)(續) 私ハ第一線ヲ
勝タセル爲ニハ吾々內地ニ留マッテ居ル
者ハ、如何ナル困難ガアッテモ、粥ヲ啜ッテ
モ、第一線ヲ勝タセルヤウニ致スベキデア
ルデハナイカト私ハ存ジテ居リマス
〔「合理化サレナケレバ駄目ダ」「財閥ダ
ケガ我儘デハ駄目ヂヤナイカ」ト呼フ
者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=35
-
036・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=36
-
037・杉山元
○國務大臣(杉山元君)(續) サウ云フ考ノ
下ニ今日ノ軍事費ヲ要求致シテ居ルノデ
アリマシテ、此邊ヲドウゾ能ク諒察下サイ
マシテ、先ヅ此度ノ豫算ニ於テ提出致シテ
居リマスル所ノ救護ノ範圍擴張ヲ以テ、御
諒承ヲ願ヒタイト存ジマス(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=37
-
038・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 靜肅ニ
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=38
-
039・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 只今松本サン
カラノ熱誠ナル御演說ヲ承リマシテ、私共
モ深ク敬意ヲ表スルノデアリマス、其費用
ニ付キマシテハ、先程來私ガ此席カラ申上
ゲマシタヤウニ、固ヨリ十分トハ申シ兼ネ
マスガ、先ヅ〓〓今日ノ所デハ此程度デ實行
スルモ已ムヲ得ナイシ、又此程度デ取敢へ
ズ實行シテ見タイ、斯ウ云フ風ナ積リデア
リマス、尙ホ度々申シマスルヤウニ將來ド
ウシテモ足リナイト云フ場合ニハ、更ニ補
充費目トシテ要求ノ途ガアル、斯ウ云フコ
トヲ申上ゲテ置キマス、ソレカラ出征兵士
ノ家族等ニ對シマシテ、生活困難デアルト
否トヲ問ハズ、總テノ者ニ年額百八十圓位
ノ金ヲ支出スル、所謂保障金法ト云フヤウナ
モノヲ提出スル意思アリヤ否ヤ、斯ウ云フ御
尋デアリマスガ、此點ニ付キマシテハ一方
ニ於テ財政的ノ見地カラ、又所謂兵役義務
ノ根本精神トノ關聯カラ只今ハ之ヲ提出ス
ルヤウナ意思ニ至ッテ居リマセヌ、ドウゾ御
諒承ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=39
-
040・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松本君宜シイデス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=40
-
041・松本治一郎
○松本治一郞君 自席カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=41
-
042・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=42
-
043・松本治一郎
○松本治一郞君 大體ノ御答辯ハ滿足スル
モノデハアリマセヌ、重ネテ軍部大臣ニ御
尋シタイノデアリマス、先刻堀内良平氏ノ
質問ニ對シテ、軍部大臣ハ兵士家族生活保
障ハ傭兵ト云フ意味ヲ持ツカライケナイト
ノコトデアリマシタガ、此處デアリマス、
傭兵トハ生活ヲ保障スルトカ給料ヲヤルト
カ云フコトヲ條件トシテ兵ニ傭ハレルコト
デアル、犠牲的精神ノ發露ヲ本トシテ徴兵
サレタ兵士タル者ノ生活ヲ保障スルコトト
ハ根本的ニ違フ(拍手)傭兵ハ給料ヲ貰フ爲
ニ兵ニナルノデアッテ、兵士家族生活保障ハ
義務ニ對スル補償デアル、此點ニ付テ陸海
軍ノ御意見ヲ問ヒタイノデアリマス(拍手)
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=43
-
044・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 御尋ニ付キマシテ
ハ、先ニ第一、第二ノ御質問者ニ對シテ御
答シタ所ト變ッタ所ハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=44
-
045・松本治一郎
○松本治一郞君 只今質問致シマシタモノ
ニ對シテ答辯ヲ願ヒマス、所謂傭兵ト義務
兵トノ別レナンデス國民ノ義務トシテ···
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔松本治一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=45
-
046・松本治一郎
○松本治一郞君 私ガ再質問致シマシタノ
ハ斯ウ云フ意味デアリマス、傭兵トハ生活
ヲ保障スルトカ、給料ヲヤルトカ云フコト
ヲ條件トシテ兵ニ傭ハレルコトデアル、斯
ウ私ハ思フ、犠牲的精神ノ發露ヲ本トシテ
徵兵サレタ兵士家族ノ生活ヲ保障スルコト
トハ根本的ニ違フ、傭兵ハ給料ヲ貰フ爲ニ兵
ニナルノデアッテ、兵士家族生活保障ハ義務
ニ對スル補償デアルト私ハ言フノデアル、
其見解ニ付テ軍部大臣ノ御答辯ヲ求メタ譯
デアリマス、所謂傭兵ト云フコトハ給料ヲ
欲スル、給料ニ依ッテ軍務ニ服スル者ハ、將
校ト雖モ其中ニ含マレルカドウカト云フコ
トデアル
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=46
-
047・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 將校モ下士官兵モ
等シク含ンデ居リマス
(「徵兵ト傭兵トハ違フノデセウ」ト呼
フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=47
-
048・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=48
-
049・松永東
○松永東君 日程第一及ビ第二ノ兩案ヲ一
括シテ議長指名十八名ノ委員ニ付託セラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=49
-
050・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=50
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051・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=51
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052・松永東
○松永東君 殘餘ノ日程ヲ延期シ本日ハ是
ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=52
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053・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=53
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054・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後五時七分散會
衆議院議事速記錄第十號中正誤
頁段行誤正
二〇四一二二ノデスゴザノデゴザイ
イマスマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01119370223&spkNum=54
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