1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年三月十九日(金曜日)
午後二時八分開議
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議事日程 第二十七號
昭和十二年三月十九日
午後一時開議
第一 船員法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 揮發油及アルコール混用法案(政府提出) 第一讀會
第三 貿易組合法案(政府提出) 第一讀會
第四 貿易調整法案(政府提出) 第一讀會
第五 工業組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 横莊鐵道株式會社所屬鐵道外三鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第七 製鐵事業法案(政府提出) 第一讀會
第八 大正九年法律第五十三號中改正法律案(關税法及關税定率法等の朝鮮に於ける特例に關する件)(政府提出) 第一讀會
第九 大正九年法律第五十六號中改正法律案(北海道拓殖鐵道補助に關する件)(政府提出) 第一讀會
第十 防空法案(政府提出) 第一讀會
第十一 海外移住組合聯合會に對する政府貸付金の出資等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 農村負債整理資金特別融通及損失補償法案(政府提出) 第一讀會
第十三 帝國燃料興業株式會社法案(政府提出) 第一讀會
第十四 人造石油製造事業法案(政府提出) 第一讀會
第十五 日本銀行金買入法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十六 昭和十二年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十七 神戸商業大學移轉改築費に充用したる金額の補填に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十八 肥料取締法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十九 酒造組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十 日本無線電信株式會社法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十一 特許法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十二 商標法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十三 不正競爭防止法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十四 裁判所構成法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十五 大正十年法律第百二號中改正法律案(定年に因る退職判事檢事の恩給に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十六 兵役法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十七 産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十八 産業組合自治監査法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十九 軍機保護法改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十 刑事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十一 外國裁判所の囑託に因る共助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十二 百貨店法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十三 辨理士法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十四 輸出補償法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十五 鐵道敷設法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十六 昭和十年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 昭和十年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 昭和十年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 昭和十年度滿洲事件第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 昭和十一年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 昭和十一年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十六 昭和十一年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
航空事業奬勵法案
提出者
末松偕一郎君 宮脇長吉君
決議案(選擧公營に關する件)
提出者
加藤鯛一君 小山谷藏君
一松定吉君 工藤鐵男君
濱野徹太郎君 作田高太郎君
牧野良三君 加藤久米四郎君
東郷實君 宮古啓三郎君
名川侃市君 青木雷三郎君
安部磯雄君 清瀬一郎君
三浦虎雄君 井阪豐光君
治山治水の根本策に關する決議案
提出者
木檜三四郎君 植原悦二郎君
助川啓四郎君 一宮房治郎君
工藤十三雄君 小林かなえ君
小山谷藏君 武田徳三郎君
高岡大輔君 永山忠則君
升田憲元君 小山邦太郎君
三浦虎雄君 川俣清音君
(以上三月十八日提出)
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
國有鐵道赤穗線敷設に關する質問主意書
提出者 江藤源九郎君
(以上三月十八日提出)
一昨十八日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第一部選出豫算委員 永山忠則君
一昨十八日委員長及理事互選の結果左の如し
商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 俵孫一君
理事
手代木隆吉君 池本甚四郎君
角源泉君 高橋泰雄君
松木弘君 益谷秀次君
一昨十八日に於ける特別委員の異動左の如し
商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任 由谷義治君 補闕 大石大君
樺太市制案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任 田中好君 補闕 片山秀太郎君
農地法案(政府提出)委員
辭任 木村武雄君 補闕 大石大君
衆議院議員選擧法中改正法律案(牧野賤男君外十一名提出)外一件委員
辭任 勝田永吉君 補闕 田村秀吉君
大正十二年法律第五十二號中改正法律案(司法官試補及辯護士の資格に關する件)(小林かなえ君外一名提出)外一件委員
辭任 立川太郎君 補闕 立川平君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=0
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001・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス、御諮リ致シマス、第一部選出豫算委員
江藤源九郞君、第五部選出懲罰委員永山忠
則君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマシタ、
之ヲ許可スルニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=1
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002・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ許可スルコトニ決シマシタ、其
部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行ヒ御屆アラン
コトヲ望ミマス
諸君、昨日討論終局ノ動議採決ノ際ニ於
キマスル前田幸作君及ビ龜井貫一郞君ノ行
動ハ、議場ノ秩序ヲ紊シ、議院ノ騒擾ヲ釀
シタルモノト認メマス(拍手「ノー〓〓」)仍
テ議長ハ議員前田幸作君、同龜井貫一郞君
ノ兩君ヲ懲罰委員ニ付スルコトニ致シマス
〔拍手起リ「反對々々」ト呼ヒ其他發言
スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=2
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003・中山福藏
○中山福藏君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第三十五ヲ繰
上ゲ上程シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=3
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004・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=4
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005・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第三十五、鐵道敷設法中改正法律案ノ
第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ
求メマス-委員長〓瀨規矩雄君
第三十五鐵道敷設法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十八日
委員長〓瀨規矩雄
衆議院議長富田幸次郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=5
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006・清瀬規矩雄
○〓瀨規矩雄君 簡單デアリマスカラ、當
席カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=6
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007・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 登壇ヲ願ヒマス
〔〓瀨規矩雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=7
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008・清瀬規矩雄
○〓瀨規矩雄君 只今上程ト相成リマシタ
鐵道敷設法中改正法律案ノ委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ極メテ
簡單ナル案デアリマシテ、省線櫻木町驛カ
ラ横須賀線ノ北鎌倉驛ニ連絡スル新線ヲ新
ニ設ケタイト云フノデアリマス、委員會ハ
愼重審議致シマシタ結果、本案ニ贊成スベ
キモノト決定致シマシタ、此段御報告申上
ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=8
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009・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=9
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010・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
や、、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=10
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011・中山福藏
○中山福藏君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=11
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012・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=12
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013・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
鐵道敷設法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=13
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014・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ
通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程第一、
船員法改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-遞信大臣兒玉秀雄君
第船員法改正法律案(政府提出)
第一讀會
船員法改正法律案
船員法
第一章總則
第一條本法ニ於テ船員トハ日本船舶ニ
シテ左ニ揭グル船舶以外ノモノニ乘組
ム船長及海員ヲ謂フ
-船舶法第二十條ニ規定スル船舶
二平水區域ヲ航行スル船舶
三總噸數三十噸未滿ノ漁船
前項ノ海員トハ左ニ揭グル者以外ノ乘
組員ヲ謂フ
船舶所有者以外ノ者ニ雇傭セラル
ル者
二何人ニモ雇傭セラレズシテ業務ヲ
營ム者
三其ノ他勅令ヲ以テ定ムル者
第二條船員、船員タラントスル者、船
舶所有者又ハ船長ハ船員又ハ船員タラ
ントスル者ノ戶籍ニ關シ戶籍事務ヲ管
掌スル者又ハ其ノ代理者ニ對シ無償ニ
テ證明ヲ求ムルコトヲ得
第三條未成年者ガ船員ト爲ルニハ其ノ
法定代理人ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ許可ヲ得タル者ハ雇入契約ニ關
シテハ成年者ト同一ノ能力ヲ有ス
第四條十五歲未滿ノ者ハ船員トシテ、
十八歲未滿ノ者ハ石炭夫又ハ火夫トシ
テ之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ勅令ヲ
以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五條十八歲未滿ノ者ハ勅令ヲ以テ定
ムル場合ヲ除クノ外船內勞働ニ適スル
コトヲ證明シ且署名シタル醫師ノ健康
證明書ヲ有スル場合ニ非ザレバ船員ト
シテ之ヲ使用スルコトヲ得ズ
第六條船員ハ船員手帳ヲ受有スルコト
フルガツ
船員手帳ノ交付、訂正、書換、保管及
返還ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第二章船長
第七條船長ハ海員ヲ指揮監督シ且船内
ニ在ル者ニ對シ其ノ職務ヲ行フニ必要
ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第八條船長ハ船舶ガ港ヲ出入スルトキ、
狭隘ナル水路ヲ通過スルトキ其ノ他船
舶ニ危險ノ虞アルトキハ甲板ニ在リテ
自ラ船舶ヲ指揮スルコトヲ要ス
第九條船舶ニ急迫ノ危險アルトキハ船
長ハ人命、船舶及積荷ノ救助ニ必要ナ
ル手段ヲ盡シ且旅客、海員其ノ他船內
ニ在ル者ヲ去ラシメタル後ニ非ザレバ
船舶ヲ去ルコトヲ得ズ
第十條船舶ガ衝突シタルトキハ船長ハ
互ニ人命及船舶ノ救助ニ必要ナル手段
ヲ盡シ且船舶ノ名稱、所有者、船籍港、
發航港及到達港ヲ〓グルコトヲ要ス但
シ自己ノ指揮スル船舶ニ急迫ノ危險ア
ルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十一條船長ハ他ノ船舶ノ遭難ヲ知リ
タルトキハ人命ノ救助ニ必要ナル手段
ヲ盡スコトヲ要ス但シ自己ノ指揮スル
船舶ニ急迫ノ危險アル場合及勅令ヲ以
テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二條船舶航行中船內ニ在ル者死亡
シタルトキハ船長ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ之ヲ水葬ニ付スルコトヲ得
第十三條船內ニ在ル者死亡又ハ行方不
明ト爲リタルトキハ法令ニ別段ノ定ア
ル場合ヲ除クノ外船長ハ船內ニ在ル遺
留品ヲ保管スルコトヲ要ス
第十四條外國ニ駐在スル帝國ノ外交
官領事官又ハ貿易事務官ガ法令ノ定
ムル所ニ依リ帝國臣民ノ送還ヲ命ジタ
ルトキハ船長ハ正當ノ事由アルニ非ザ
レバ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
送還費用ノ償還ニ關シ必要ナル事項ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合
ニ於テハ船長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
管海官廳ニ其ノ旨ヲ報〓スルコトヲ要
ス
一衝突、乘揚、滅失、沈沒、火災、
機關ノ損傷其ノ他ノ海難發生シタル
トキ
二人命若ハ船舶ノ救助ニ從事シ又ハ
航行中他ノ船舶ノ遭難ヲ知リタルト
キ
三船內ニ在ル者死亡シ又ハ行方不明
ト爲リタルトキ
四豫定ノ航路ヲ變更シタルトキ
五船舶ガ抑留又ハ捕獲セラレタルト
キ其ノ他船舶ニ關シ著シキ事故アリ
タルトキ
第十六條船長ガ死亡シタルトキ、船舶
ヲ去リタルトキ又ハ之ヲ指揮スルコト
能ハザル場合ニ於テ他人ヲ選任セザル
トキハ運航ニ從事スル海員ハ其ノ職掌
ノ順位ニ從ヒ船長ノ職務ヲ行フ
第十七條第二十一條、第二十三條、第
二十九條、第三十條及第三十二條ノ規
定ハ船長ニ之ヲ準用ス
第三章海員
第十八條海員ノ雇入契約ノ成立、終了、
更新又ハ變更アリタルトキハ船長及海
員ハ遲滯ナク管海官廳ニ出頭シテ其ノ
公認ヲ受クルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ船長ガ公認ヲ受クル
コト能ハザルトキハ船舶所有者之ヲ受
クルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ正當ノ事由アルト
キハ代理人ヲシテ公認ヲ受ケシムルコ
トヲ得
第十九條海員ハ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ
受ケタル爲職務ニ從事セザル期間ニ付
テモ給料ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ疾
病又ハ傷痍ニ付海員ニ過失アルトキハ
此ノ限ニ在ラズ
海員ハ其ノ職務ヲ行フニ因リテ疾病ニ
罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタル場合ニ於テハ
前項但書ノ規定ニ拘ラズ疾病又ハ傷痍
ニ付海員ニ故意又ハ重大ナル過失ナキ
限リ同項ニ規定スル給料ノ請求ヲ爲ス
コトヲ得
第二十條海員ノ給料及手當ノ支拂方法
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十一條船舶所有者ハ海員ノ乘船中
勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ〓料料支給
スルコトヲ要ス
第二十二條船舶所有者ハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ船舶ニ醫師ヲ乘組マシメ又ハ
醫療設備ヲ爲スコトヲ要ス
第二十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル場
合ニ於テハ海員ノ雇入契約ハ終了ス、
船舶ガ滅失又ハ沈沒シタルトキ
二船舶ガ全ク運航ニ堪ヘザルニ至リ
タルトキ
船舶ノ存否ガ一月間分明ナラザルトキ
ハ船舶ハ滅失シタルモノト推定ス
第一項ノ規定ニ依リ雇入契約終了シタ
ル場合ト雖モ海員ハ人命、船舶又ハ積
荷ノ應急救助ノ爲必要ナル勞務ニ服ス
ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ雇入契
約ハ仍存續スルモノト看做ス
第二十四條海員ガ左ノ各號ノ一ニ該當
スル場合ニ於テハ船長ハ之ヲ雇止ムル
コトヲ得
-著シク職務ニ不適任ナルトキ
二著シク職務ヲ怠リ又ハ職務ニ關シ
重大ナル過失アリタルトキ
三疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケ職務ニ
堪ヘザルトキ
四船長ノ指定スル時迄ニ船舶ニ乘込
マザルトキ
五其ノ他已ムコトヲ得ザル事由アル
トキ
第二十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル場
合ニ於テハ海員ハ雇止ヲ請求スルコト
ヲ得
-船舶ガ國籍ヲ喪失シタルトキ
二海員ガ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケ
職務ニ堪ヘザルトキ
三海員ガ船長ヨリ虐待ヲ受ケタルト
キ
前項ニ揭グル場合ノ外海員ハ船長ノ適
當ト認ムル後任者ヲ提供シテ雇止ヲ請
求スルコトヲ得
第二十六條期間ノ定ナキ海員ノ雇入契
約ハ船長又ハ海員ヨリ書面ヲ以テ二十
四時間ヲ下ラザル期間ヲ定メ豫〓ヲ爲
ストキハ該期間ガ滿了シタル時ニ於テ
終了ス
前項ノ期間ガ滿了シタル時ニ於テ船舶
ガ積荷ノ陸揚ヲ爲シ又ハ旅客ガ上陸ス
ベキ港ニ碇泊中ニシテ其ノ港ニ於ケル
積荷ノ陸揚及旅客ノ上陸ガ終ラザルト
キハ前項ノ規定ニ拘ラズ其ノ終リタル
時ニ於テ雇入契約ハ終了ス
第一項ノ期間ガ滿了シタル時ニ於テ船
舶ガ航行中ナルトキ又ハ前項ノ港以外
ノ港ニ碇泊中ナルトキハ第一項ノ規定
ニ拘ラズ船舶ガ積荷ノ陸揚ヲ爲シ又ハ
旅客ガ上陸スベキ次ノ港ニ到著シテ其
ノ港ニ於ケル積荷ノ陸揚及旅客ノ上陸
ガ終リタル時ニ於テ雇入契約ハ終了ス
前二項ノ規定ハ期間ノ定アル海員ノ雇
入契約ガ期間ノ滿了ニ因リ終了スル場
合ニ之ヲ準用ス
第三項ノ規定ハ第二十四條及前條第一
項ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了
スル場合ニ之ヲ準用ス
第二十七條前條第一項乃至第四項ノ規
定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ適當ナル海
員ヲ補充シ得ル港以外ノ港ニ於テ終了
スルトキハ船長ハ船舶ガ適當ナル海員
ヲ補充シ得ル港ニ到著シ積荷ノ陸揚及
旅客ノ上陸ガ終ル時迄雇入契約ヲ存續
セシムルコトヲ得
第二十八條相續其ノ他ノ包括承繼ノ場
合ヲ除クノ外船舶所有者ノ變更アリタ
ルトキハ海員ノ雇入契約ハ終了ス
前項ノ場合ニ於テハ雇入契約終了ノ時
ヨリ海員ト新所有者トノ間ニ從前ノ雇
入契約ト同一條件ノ雇入契約存スルモ
ノト看做ス此ノ場合ニ於テハ海員ハ第
二十六條第一項乃至第三項ノ規定ニ從
ヒ雇入契約ヲ終了セシムルコトヲ得
前條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル雇入契
約終了ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十九條船舶所有者ハ海員ガ疾病ニ
罹リ若ハ傷痍ヲ受ケタルトキ、雇入契
約終了シタルトキ又ハ死亡シタルトキ
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ扶助シ、
之ニ手當ヲ支給シ又ハ之ガ葬祭ノ費用
ヲ負擔スルコトヲ要ス
第三十條船舶所有者ハ雇入契約終了シ
タル海員ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ雇入
港又ハ其ノ希望スル地迄送還スルコト
al.
前項ノ場合ニ於テ海員ハ送還ニ代ヘテ
其ノ費用ヲ請求スルコトヲ得
第三十一條海員ハ船長ニ對シ其ノ勤務
ノ成績ニ關スル證明書ノ交付ヲ請求ス
ルコトヲ得
第三十二條海員ノ船舶所有者ニ對スル
債權ハ二年ヲ經過シタルトキハ時效ニ
因リテ消滅ス船舶所有者ニ對スル葬祭
ニ關スル債權亦同ジ
第三十三條第二十九條ノ規定ニ依リ海
員ガ扶助又ハ手當ヲ受クルノ權利ハ之
ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ葬祭
ノ費用ヲ受クルノ權利亦同ジ
第四章紀律
第三十四條海員ガ左ノ各號ノ一ニ該當
スル場合ニ於テハ船長ハ之ヲ懲戒スル
コトヲ得
上長ニ對シテ尊敬又ハ從順ノ道ヲ
失ヒタルトキ
二職務ヲ怠リ又ハ他ノ乘組員ノ職務
ヲ妨ゲタルトキ
三船長ノ指定スル時迄ニ船舶ニ乘込
マズ又ハ船長ノ許可ヲ得ズシテ之ヲ
去リタルトキ
四船長ノ許可ヲ得ズシテ點火若ハ焚
火シ又ハ端艇其ノ他ノ重要ナル屬具
ヲ使用シタルトキ
五食料又ハ淡水ヲ濫費シタルトキ
六喧爭シタルトキ、酩酊シテ事理ヲ
辨ゼザルトキ又ハ禁止セラレタル場
所ニ於テ喫煙シタルトキ
七其ノ他船內ノ秩序ニ反スル行爲ヲ
爲シタルトキ
第三十五條懲戒ハ左ノ四種トシ勅令ノ
定ムル所ニ依リ船長之ヲ行フ
一監禁三日以下トシ船內ノ一室ニ
拘置ス
二上陸禁止七日以下トシ此ノ期間
ニハ船舶ノ碇泊日數ノミヲ算入ス
三減給給料月額十分ノ一以下ヲ減
ズ但シ三月ヲ超ユルコトヲ得ズ
四譴責
前項第一號及第二號ノ期間ニハ初日ヲ
算入ス
第三十六條海員ガ兇器、爆發若ハ發火
シ易キ物、劇藥其ノ他ノ危險物又ハ酒
類ヲ所持スルトキハ船長ハ其ノ物ヲ保
管又ハ放棄スルコトヲ得
第三十七條海員ガ船內ニ在ル者ノ生命
若ハ身體又ハ船舶ニ危害ヲ及ボスベキ
行爲ヲ爲サントスルトキハ船長ハ必要
ノ期間其ノ者ノ身體ヲ拘束スルコトヲ
得
第三十八條船長ハ必要アルトキハ旅客
其ノ他船內ニ在ル者ニ對シテモ前二條
ニ規定スル處分ヲ爲スコトヲ得
第三十九條海員ガ雇入契約成立ノ公認
アリタル後船長ノ指定スル時迄ニ船舶
ニ乘込マズ又ハ船長ノ許可ヲ得ズシテ
之ヲ去リタルトキハ船長ハ之ヲ强制シ
テ船舶ニ乘込マシムルコトヲ得
海員ガ雇入契約終了ノ公認アリタル後
遲滯ナク船舶ヲ去ラザルトキハ船長ハ
之ヲ强制シテ船舶ヲ去ラシムルコトヲ得
第四十條船長ハ其ノ命令ニ服從セザル
者アル場合ニ於テ必要アリト認ムルト
キハ管海官廳、地方官廳又ハ海軍艦船
ニ援助ヲ求ムルコトヲ得
第五章雜則
第四十一條管海官廳ハ職權ヲ以テ又ハ
申請ニ依リ第三章ニ規定スル事項ニ關
シ船舶所有者、船長及海員ノ間ニ生ジ
タル事件ノ解決ニ付斡旋ヲ爲スコトヲ
得
第四十二條管海官廳ハ必要アリト認ム
ルトキハ船舶所有者又ハ乘組員ヲシテ
書類帳簿ヲ提出セシメ若ハ報〓ヲ爲サ
シメ、之ヲ呼出シテ質問ヲ爲シ又ハ當
該官吏ヲシテ船舶ニ臨檢セシムルコト
ヲ得此ノ場合ニ於テハ當該官吏ハ其ノ
身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ
管海官廳廳本本法又ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令ニ違反スル事實アリト認ムルト
キハ船舶所有者又ハ船長ニ對シ必要ナ
ル處分ヲ爲スコトヲ得
管海官廳ハ必要アリト認ムルトキハ旅
客其ノ他船內ニ在ル者ニ就キ質問ヲ爲
スコトヲ得
第四十三條本法及本法ニ基キテ發スル
命令中船舶所有者ニ關スル規定ハ船舶
共有ノ場合ニ在リテハ船舶管理人ニ、
船舶貸借ノ場合ニ在リテハ船舶借入人
ニ之ヲ適用ス
第四十四條本法ニ依リ管海官廳ノ行フ
ベキ事務ハ外國ニ在リテハ勅令ノ定ム
ル所ニ依リ帝國ノ領事官又ハ貿易事務
官之ヲ行フ
第四十五條本法ニ依リ管海官廳ノ行フ
ベキ事務ニ付テハ主務大臣ハ市町村
長、町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ
之ニ準ズル者ヲシテ之ヲ行ハシムルコ
トヲ得
第四十六條左ニ揭グル船舶ノ乘組員ニ
付テハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコト
ヲ得
國又ハ北海道、府縣、市町村其ノ
他ノ公共團體ノ所有ニ屬スル船舶
二其ノ他勅令ヲ以テ定ムル船舶
第四十七條本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ第一條第二項各號ニ揭グル者ニ之ヲ
準用ス
第四十八條地方長官ハ第一條第一項各
號ニ揭グル船舶ノ乘組員ノ監督ニ關シ
主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ナル規則ヲ
設クルコトヲ得
第六章罰則
第四十九條船舶所有者又ハ船長ガ第四
條ノ規定ニ違反シ十五歲未滿ノ者ヲ船
員トシテ、十八歲未滿ノ者ヲ石炭夫若
ハ火夫トシテ之ヲ使用シタルトキ又ハ
第五條ノ規定ニ違反シ健康證明書ヲ有
セザル者ヲ船員トシテ使用シタルトキ
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第五十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金
ご飯食人
-詐僞其ノ他ノ不正行爲ヲ以テ船員
手帳ノ交付、訂正又ハ書換ヲ受ケタ
ル者
二詐僞其ノ他ノ不正行爲ヲ以テ海員
ノ雇入契約ニ關スル公認ヲ受ケタル
者
三他人ノ船員手帳ヲ行使シタル者
第五十一條船長ガ船內ニ在ル者ニ對シ
其ノ職權ヲ濫用シ又ハ虐待ヲ爲シタル
トキハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
第五十二條船長ガ第九條ノ規定ニ違反
シ船舶ヲ去リタルトキハ五年以下ノ懲
役ニ處ス
第五十三條船長ガ第十條ノ規定ニ違反
シ人命及船舶ノ救助ニ必要ナル手段ヲ
盡サザルトキハ三年以下ノ懲役又ハ二
千圓以下ノ罰金ニ處ス
第五十四條船長ガ左ノ各號ノ一ニ該當
スル場合ニ於テハ二年以下ノ懲役又ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
-第十一條ノ規定ニ違反シ人命ノ救
助ニ必要ナル手段ヲ盡サザルトキ
二正當ノ事由ナクシテ船舶ヲ遺棄シ
タルトキ
三正當ノ事由ナクシテ外國ニ於テ海
員ヲ遺棄シタルトキ
第五十五條船長ガ左ノ各號ノ一ニ該當
スル場合ニ於テハ五百圓以下ノ罰金ニ
處ス
-第八條ノ規定ニ違反シ自ラ船舶ヲ
指揮セザルトキ
二第十條ノ規定ニ違反シ告知ヲ爲サ
ザルトキ
三第十四條第一項ノ規定ニ違反シ送
還命令ヲ拒ミタルトキ
四第十五條ノ規定ニ違反シ報〓ヲ爲
サズ又ハ虚僞ノ報〓ヲ爲シタルトキ
五第十八條ノ規定ニ違反シ公認ヲ受
ケザルトキ
六商法第五百六十一條ノ規定ニ違反
シ檢査ヲ爲サザルトキ
七商法第五百六十二條第一項ノ規定
ニ違反シ書類ヲ備置カズ又ハ同條同
項第二號乃至第五號ニ揭グル書類ニ
記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ虛僞
ノ記載ヲ爲シタルトキ
八商法第五百六十三條ノ規定ニ違反
シ船舶ヲ去リタルトキ
九商法第五百六十四條ノ規定ニ違反
シ豫定ノ航路ヲ變更シタルトキ
第五十六條船長ガ左ノ各號ノ一ニ該當
スル場合ニ於テハ二百圓以下ノ罰金ニ
處ス
第十二條ノ規定ニ基キテ發スル命
令ニ違反シ水葬ニ付シタルトキ
二第十三條ノ規定ニ違反シ遺留品ノ
保管ヲ爲サザルトキ
第五十七條海員ガ左ノ各號ノ一ニ該當
スル場合ニ於テハ二年以下ノ懲役ニ處
ス
-船舶ニ急迫ノ危險アル場合ニ於テ
船長ノ許可ヲ得ズシテ之ヲ去リタル
トキ
二第九條乃至第十一條ニ規定スル場
合ニ於テ船長ガ人命、船舶又ハ積荷
ノ救助ニ必要ナル手段ヲ爲スニ當リ
上長ノ命令ニ服從セザルトキ
三第二十三條第三項ニ規定スル場合
ニ於テ人命、船舶又ハ積荷ノ應急救
助ノ爲必要ナル勞務ニ服セザルトキ
第五十八條海員ガ上長ニ對シ暴行又ハ
脅迫ヲ爲シタルトキハ二年以下ノ懲役
又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第五十九條海員ガ脫船シタルトキハ一
年以下ノ懲役ニ處ス
第六十條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合
ニ於テ船員ガ勞働爭議ニ關シ團結シテ
勞務ヲ中止シ又ハ作業ノ進行ヲ阻害シ
タルトキハ一年以下ノ懲役又ハ五百圓
以下ノ罰金ニ處ス
-船舶ガ外國ノ港ニ在ルトキ
二人命又ハ船舶ニ直接ノ危險ヲ及ボ
ス虞アルトキ
三船員又ハ其ノ代表者ガ相手方ニ對
シ爭議事項ニ關シ交涉ヲ開始シタル
後一週間ヲ經過シ且二十四時間前ニ
豫〓ヲ爲シタルニ非ザルトキ
第六十一條船舶所有者ガ第二十條乃至
第二十二條、第二十九條又ハ第三十條
ノ規定ニ基キテ發スル勅令ニ違反シタ
ルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第六十二條船舶所有者又ハ乘組員ガ左
ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ五
百圓以下ノ罰金ニ處ス
-管海官廳ノ命令ニ違反シ書類帳簿
ノ提出ヲ爲サズ又ハ報〓ヲ爲サズ若
ハ虚僞ノ報告ヲ爲シタルトキ
二管海官廳ノ呼出ニ應ゼズ又ハ管海
官廳若ハ當該官吏ノ質問ニ對シ答辯
ヲ爲サズ若ハ虚僞ノ陳述ヲ爲シタル
トキ
三當該官吏ノ臨檢ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ
忌避シタルトキ
四第四十二條第二項ニ規定スル管海
官廳ノ處分ニ違反シタルトキ
第六十三條本章中船長ニ適用スベキ規
定ハ船長ニ代リテ其ノ職務ヲ行フ者ア
ル場合ニ於テハ其ノ者ニ之ヲ適用ス
第六十四條船舶所有者ハ其ノ代理人、
雇人其ノ他ノ從業者ニ第二十條乃至第
二十二條、第二十九條又ハ第三十條ノ
規定ニ基キテ發スル勅令ニ違反スル所
爲アリタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザ
ルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ
得ズ
第六十五條船舶所有者ガ未成年者若ハ
禁治產者ナル場合又ハ法人ナル場合ニ
在リテハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ依リ其ノ者ニ適用スベキ罰則ハ
其ノ法定代理人又ハ法令ニ依リ法人ヲ
代表スル者ニ之ヲ適用ス
前項ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ處スル
コトヲ得ズ
第六十六條本法又ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令中船舶所有者ニ適用スベキ罰則
ハ國又ハ北海道、府縣、市町村其ノ他
ノ公共團體ニハ之ヲ適用セズ
附則
第六十七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第六十八條船員最低年齢法ハ之ヲ廢止
ス
船舶安全法第二十八條中「遭難者救
助、」ヲ削ル
商法第五百七十五條及第五編第二章第
二節ハ之ヲ削除ス但シ商法其ノ他ノ法
令ノ規定ノ適用上之ニ依ルベキ場合ニ
於テハ仍其ノ效力ヲ有ス
第六十九條本法施行前ニ生ジタル事項
ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル但シ刑法第
六條ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
第七十條本法施行ノ際現ニ船員トシテ
使用セラルル十四歲以上十五歲未滿ノ
者ヲ本法施行後引續キ使用スル場合ニ
於テハ第四條ノ規定ヲ適用セズ
第七十一條第一條第一項各號ニ揭グル
船舶ノ乘組員ノ監督ニ關シ地方長官ノ
設ケタル規則ニシテ本法施行ノ際現ニ
存スルモソハ本法ニ依リテ主務大臣ノ
認可ヲ受ケタルモノト看做ス
〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=14
-
015・兒玉秀雄
○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君) 只今上程セ
ラレマシタ船員法改正法律案ノ提出ノ理由
ヲ御說明申上ゲマス、近時我國海運ハ長足
ノ進步發達ヲ遂ゲマシテ、社會情勢モ亦著
シイ變遷推移ヲ見ツヽアルニモ拘リマセ
ズ、現在船員ノ保護監督ヲ規律致シマスル
船員法及ビ海商法ハ、何レモ制定以來三十
有餘年ノ歲月ヲ經過致シマシテ、現下ノ實
情ニ副ハザル點ガ尠クナイノデアリマス、
隨ヒマシテ船員法改正ノ要望ハ漸ク熾ト
ナッタノデアリマス、此情勢ニ鑑ミマシテ、
遞信省ニ於キマシテハ、先年臨時海事法令調
査會ヲ設ケマシテ、船主及ビ船員ノ團體ノ
代表者ヲ初メトシ、關係各方面ノ官民相會
シマシテ、法律改正ノ審議ヲ行ヒ、其結果
改正要綱ニ關スル決議ヲ得マシタノデ、今
囘此決議ヲ骨子ト致シマシテ、現行船員法
及ビ海商法中海員ニ關スル規定、竝ニ船員
最低年齡ヲ整理統一致シマシテ、之ニ適當
ナル改正ヲ加ヘ、他面海運ノ國際的性質ヲ
考慮致シマシテ
〔議長退席、副議長著席〕
曩ニ國際勞働總會ニ於テ採用セラレマシタル
四箇ノ條約案、卽チ船舶ノ滅失又ハ沈沒ノ場
合ニ於キマスル失業ノ補償ニ關スル條約案、
海員ノ雇入契約ニ關スル條約案、海員ノ送
還ニ關スル條約案、及ビ船員ノ最低年齡ニ
關スル條約案ノ趣旨ヲ採入レマシテ、是等
ヲ綜合致シマシタル單一ノ船員法ヲ制定致
シ、時代ノ要求ニ應ジテ海上勞働問題ヲ整
調シマスルト同時ニ、船員ノ生活ノ安定ヲ
圖リ、以テ海運界ノ平和ト、其健全ナル發
展トヲ圖リ度イト存ジマス、是レ本案ヲ提
出致シマシタ次第デアリマス、何卒御審議
ノ上、御協贊アランコトヲ希望致シマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=15
-
016・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 質疑ノ通〓ガアリ
やく、順次之ヲ許シマス-松田竹千代君
〔松田竹千代君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=16
-
017・松田竹千代
○松田竹千代君 私ハ船員法ニ付テ簡單ニ
二三ノ點ヲ御伺致シマス、先ヅ此種社會立
法ニ對スル政府ノ態度ニ付テ私ハ一言致シ
タイト思フノデアリマス、由來我國ノ社會
立法ハ其法ノ對象トスル側ノ熾烈ナル要求
ニ基イテ立案サレタト云フヨリハ政府ノ
「イニシヤチーブ」、政府ノ發案ニ基イテ立
案サレタモノガ多イ、言換ヘルト、遮二無
二勞働者ノ團結ノ力ニ依ッテ挽取ッタト云フ
ヤウナ形デナシニ、政府ノ方カラ進ンデ立
案シテ來タヤウナモノガ多イノデアリマシ
テ、縱シソレハ國際勞働會議アタリノ刺戟
ニ依ルモノデアルト致シマシテモ、是ハ我
國ノ特長トシテ、寧ロ多トスルニ足ルコト
ト私ハ考ヘルノデアリマス、併ナガラ其社會
立法タルヤ極メテ微溫的ナモノデアリマシ
テ(「ヒヤ〓〓」)洵ニ其社會立法タルノ名ヲ恥
カシムル體ノモノガ多イ感ジガ致スノデア
リマス、然ルニ近年相踵イデ發生致シマシ
タル未曾有ノ不祥事件ノ其動機ニモ、其、
部ニハ極メテ純眞ナル氣持カラ、社會正義
ニ立脚シテ、非常ニ强イ要求ノアッタト云フ
事實ハ是ハ見遁スコトハ私ハ出來ヌト思
フノデアル、然ルニ我國デハ遺憾ナガラ言
論ノ自由ト云フコトハ不十分デアル、隨テ
是等ノ要求ト云フモノハ、往々ニシテ陰慘
ナ形ヲ執ッテ來ルト云フコトニ對シテハ、是
ハ爲政者タル者ノ大ニ注意ヲ要スル所デアルト
思フノデアル、然ルニ我國ノ政府ノ爲ス所ヲ見マ
スルト云フト、所謂喉元過ギレバ熱サヲ忘
レテシマッテ、全ク晏如タルノ觀ノアリマス
ルコトハ、實ニ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマス、
現政府モ繰返シテ言ハルヽ如クニ、急激ナ
ル社會改革ト云フモノハ出來ルモノデハナ
イ、果シテ然ラバ、社會立法ト云フモノニ
對シテ、モット眞劍ニ本腰ヲ入レテ掛ラナケ
レバナラヌト思フノデアリマスルガ、內務
大臣ハ居リマセヌガ、政府ハ此點ニ對シテ
ドウ考ヘテ居ルノデアリマスカ
此船員法ノ如キモ實ハ幾年モ前ニ其改正
ヲ見テ居ラナケレバナラナイ筈ノモノデア
リマス、何トナレバ、過去三十有餘年間、
約四十年ノ久シキニ亙ッテ、船員ノ保護監督
ヲ規定スル所ノ法律ト云フモノハ改正サレ
テ居ラナイ、明治三十二年ニ出來テ以來ノ
コトデアル、一方一般陸上勞働者ニ對シマ
シテハ、工場法デアルトカ、或ハ勞働災害
扶助法デアルトカ、或ハ健康法デアルトカ、
又ソレ等ノ改正案ガ幾度モ議會ニ出テ來テ
居ルノデアリマスルニ拘ラズ、船員法ノ改
正ト云フコトハ殆ド行ハレテ來テ居ラナイ、
又一面ニ於テハ我國ノ海運界ガ近年飛躍的
ノ大發展ヲ遂ゲテ來タノデアリマシテ、而
モソレハ多ク政府ノ保護助成ニ俟ツモノガ、
極メテ大ナルモノガアルニモ拘リマセズ、
海上從業者ノ福社ハ常ニ後〓シニサレマシ
テ、國家ノ保護助成ノ恩惠ト云フモノハ、
常ニ大資本ノ船主側ニ、海運業者ノ方ニ傾
キ過ギルノデアルト云フコトハ、洵ニ遺憾
ナコトト考ヘテ居リマス、此點政府ハ何ト
考ヘテ居ルノデアリマスカ
尤モ此案ハ嘗テ人情大臣ノ聞エ高カッタ
小泉遞相時代ニ、臨時海事法令調査會ヲ設
ケテ、各方面ノ權威者ヲ網羅シテ〓究調査
シ得タル綱領ヲ基礎トシテ出來タモノデア
ル、又只今遞信大臣ガ御說明ニナリマシタ
ヤウニ、國際勞働會議ニ於テ、十數年前カ
ラ我國ガ贊成シテ採擇サレテ來テ居ル所ノ、
條約案ノ要綱ヲ取入レテ居ルノデアル、サウ
云フヤウナ點カラ考ヘマスルナラバ、本案
ハ棚晒シノモノデアルケレドモ、現行法ニ
比ベテ見ルナラバ、相當進步的ナ點モアル
ノデアリマシテ、先ヅ吾々ハ此點ニ好意ヲ
寄セルコトハ出來ルノデアル、併シソレハ
單ニ細カイ點デアル、例ヘバ船員ニ對スル
食料ノ標準ヲ設ケルトカ、或ハ醫療ニ關ス
ル規定ヲ設ケルトカ、或ハ給料ノ支拂方法
ヲ定メルトカ、或ハ船員ノ最低年齢ヲ十四
歲カラ十五歳マデ引上ゲルトカ云フヤウナ、
洵ニ細カイ改正デアリマスルノミナラズ、
大體是等ノ事柄ト云フモノハ、現在旣ニ行
ハレテ居ル所ノ事柄デアリマス、又勞働爭
議ニ關シテ取締規定ヲ設ケテ、爭議ニ對シ
テ一定ノ軌道ヲ與ヘルト云フコトモゴザイ
マスケレドモ、是ハ寧ロ船員側ニ取ッテハ、
非常ナ不利ナ結果ニ陷ルノデハナイカトサ
ヘ、考ヘラレルヤウナ事モアルノデアリマ
ス、要スルニ本案ハ現在ノ社會情勢及ビ我
國海運界ノ實情ニ照シテ之ヲ見マスル時ニ、
未ダ社會立法的精神ガ橫溢シテ居ル所ノ案
ナリト考ヘラレヌノデアリマス、ノミナラ
ズ玆ニ吾々ノ最モ遺憾ト致シマスルコトハ、
政府ハ此改正案ヲ提出スルニ當ッテ、長イ間
船員ノ間ニ於テ非常ナ熱誠ヲ以テ政府當局
ニ陳情シ、要望シ來ッタ所ノモノ、ソレハ卽
チ船員ニ對スル所ノ極メテ不合理ナル刑罰
問題、此刑罰問題ノ解決ニ向ッテ、一大英斷
ヲ示シ得ナカッタト云フ點ニアルノデアリ
マス、卽チ海難ニ基ク船員ノ業務上ノ過失
ニ關シ、刑法上ノ規定ニ對シテ除外例ヲ設
ケテ、心理上ノ負擔過重ニ惱ム所ノ船員ヲ
シテ、安ンジテ其職務ニ從事スルコトガ出
來ルヤウニ、本案ニ明確ナル規定ヲ設ケ得
ナカッタト云フコトハ、何トシテモ其認識ニ
於テ、政府當局ハ時代錯誤ノ甚シイモノデ
アルト謂ハネバナラヌト思フノデアリマス、
何トナレバ、明治三十二年ニ現行法ガ制定
セラレマシテカラ、明治四十一年刑法改正
ニ至ルマデ約十年間、現行船員法ノ第七十
三條ニ依リマシテ、卽チ「船員カ著シク其職
務ヲ怠リ因テ船舶ヲ毀損若クハ覆沒シ又ハ
人ヲ死傷ニ致シタルトキハ一月以上五年以
下ノ重禁錮ニ處シ又ハ十圓以上千圓以下ノ
罰金ニ處ス」トアル此規定ニ基イテ、重大ナ
ル船員ノ過失ニ對シテノミ處罰サレテ
來タ、然ルニ改正以來ハ輕微ナル過失ニ對
シテモ、此刑法ノ規定ヲ受ケテ處罰サレル
ヤウニナッテ來タノデアリマス、其結果ト致
シマシテ、船員ノ多クハ大體其海難ノ原因
ガ明白デナイ、明白デナイ所ノ海難事故ニ
對シテ、直チニ海員懲戒法ニ依ッテ、海
事審判所デ行政上ノ處分ヲ受ケル、免狀ノ
行使ノ停止ヲ受ケル、失業シタ其上ニ更ニ
刑法訴追ヲ加ヘラレテ〓圖ノ辱メヲ受ケル、
場合ニ依ッテハ其上ニ多額ノ損害賠償ヲ取
ラレルト云フヤウナ、謂ハヾ二重、三重、
四重ノ苦シミヲ受ケルト云フノデアリマシ
テ、是デハ餘リニモ不合理デハナイカ、餘
リニモ刑罰ガ過重デハナイカト云フノデア
リマス、政府ハ何ガ故ニ此船員多年ノ要望
ニ對シテ、少シモ耳ヲ傾ケラレナイノデア
リマスカ、聞ク所ニ依リマスレバ、遞信當
局ハ其主張ハ時代ニ卽シタモノデアルト致
シマシテ、大イニ其實現ニ努力サレタト云
フコトデアルケレドモ、獨リ司法當局ハ一
般ノ交通取締法規ト矛盾スルト云フノデ、
遂ニ其實現ガ出來ナカッタト云フコトデア
ル、要スルニ司法當局ハ、海上事故ノ發生、
其原因、及ビ其船員ノ實情ト云フモノニ對
シテ、正シイ認識ト理解ヲ持チ得ナイ結果
デアルト斷ゼザルヲ得ナイノデアリマス(拍
手)
船員ハ決シテ船員ニ對スル過失罪ノ規定
ヲ悉ク囘避セントスルモノデハナイノデア
リマス、唯海難ニ對シテ船員ノ過失ノ有ル
カ無イカト云フコトヲ決定スルト云フコト
ハ實ニ至難ナコトデアリマシテ、動モスレ
バ、不可抗力ノ場合、又ハ他人ノ行爲ニ對
シテ過失ノ認定ヲ受ケテ、全ク寃罪ヲ被ル
危險ガ極メテ多イノデアリマシテ、船員ニ
對スル特別法タル所ノ船員法ニ現在存スル
所ノ規定、卽チ七十三條ヲ刑法ニ優先的ニ
適用致シマシテ、明白ナル所ノ重過失ニ對
シテノミ刑罰ヲ科セラレタラ宜イデハナイ
カ、斯樣ニ主張スルノデアリマス、由來海
難ハ水路狀況、濃霧、暴風、潮流、暗礁、
航路標識ノ不備、其他未知未測ノ障碍等極
メテ多イノデアル、不可抗力的ノ原因ニ基
クモノガ甚ダ多イノデアリマス、殊ニ最近
ノ海上ノ情勢ト云フモノハ、益〓困難ナル實
情ヲ呈シテ來テ居ルノデアリマシテ、例へ
バ一例ヲ擧ゲマスルナラバ、瀨戶內海ト云
フヤウナ方面、アヽシタ海上ヲ航行スル時
ニ、彼ノ石炭ヲ運ブ船、運炭曳船ト云フモ
ノガ五艘、六艘、八艘ト云フヤウニ、或ル
場合ニハ其長サ三千米ニ及ブト云フノデア
ル、サウ云フ長イモノガ蜿蜒長蛇ノ如ク、
而モソレハ潮流ニ沿ウテ「エス」字型ニ進ン
デ行クノデアル、ソレバカリデハナイ、尙
ホサウ云フ時ニ最近出來テ來タ所ノ「スピ
ード」ノ速イ、所謂海上「トラック」ト云フモ
ノガ橫行シテ居ルノデアル、サウ云フ事情
ノ下ニ於テ縱シ事故ガ起ッタト致シマシテ
モ、ソレヲ直チニ舵ヲ持ツ船員ノ過失ト云
フコトニ歸スルト云フコトハ、餘リニモ無
理デアル、餘リニモ妥當ヲ缺クモノデアル
ト云フコトハ誰ニモ分ル、獨リ司法當局ガ
ソレヲ承知シナイ、陸ニ生レ陸ニ育チ、朝
カラ晩マデ法律ノ條文バカリヲ金科玉條ト
考ヘテ居ルヤウナ人達デモ、試ミニ咫尺ヲ
辨ジナイヤウナ濃霧ノ中ヲ運航シテ來テ、
港灣ニ差掛ッタ時ニ、斯ウ云フ人ヲアノ「ブ
リッヂ」ノ上ニ立タシメテ、サウシテ唯ア
ノ汽笛ト「ベル」ト自分ノ勘デ重大任務ヲ果
シテ行カナケレバナラヌ船長ノ立場ヲ考ヘ
タラ果シテドウデアル、ソレバカリデハナ
イ、試ミニ「コンパス」一ツヲ賴リニシテ暴
風怒濤ノ眞只中ヲ航進スル眞暗ナ暗夜ノ船
ヲ考ヘテ見タラドウダ、海洋ノ神祕ト自然
ノ猛威ト鬪フ船員ト云フモノハ、常ニ全力
ヲ盡シテ其業務ニ當ッテ居ル"ノデアル、ソレ
バカリデハナイ、神佛ニマデ賴ッテ其責任ヲ
果サントシテ居ルノガ實情デアリマス、然
ルニ其船員ノ輕過失ニ對シテサヘ、嚴罰ヲ
以テ臨ムト云フ結果ハドウデアルカト云フ
ニ、決シテソレハ海難事故ヲ減少セシメテ
居ル結果ニハナッテ居ラナイ、唯徒ラニ脅威
ヲ與ヘ、精神上ノ落著ヲナクシテ、其結果
未然ニ避クベキ方法モ講ズルコトガ出來ナ
イヤウニナリ、却テ海難ヲ發生セシメルト
云フヤウナ珍現象ヲ呈スルニ至ッテ居ルノ
デアリマス、而シテ此刑罰過重ノ事實ハ、
一方ニ於テハ有爲有能ノ船員、練達堪能、
技術優秀ナル船長、其他ノ船員ヲドシノ
陸上ニ追上ゲテ行ッテ居ルト云フヤウナ狀
態デアリマシテ、我國ノ海運策カラ考ヘテ
見テ、洵ニ是ハ憂慮スベキ實情デアルト考
ヘテ居ルノデアル
ソレ故ニ先進海運國ニ於キマシテハ、法
律ハ縱シ存シマシテモ、海難事故ニ對シテ
ハ刑法上ノ處罰ヲ課スルト云フコトハ殆ド
見ラレナイノデアル、海難事故ニ對シテ刑法
上ノ處罰ヲ科シテ見テモ、ソレハ海難防止
ニ何等ノ效果ノナイト云フコトヲ認メテ、
何レノ國モ刑罰ヲ科スルト云フコトハ差控
ヘテ居ル、事實上刑罰ヲ科シタ例ハ殆ドナ
イノデアル、而シテ此見解ニ對シマシテ
ハ、千九百三十三年ノ「オスロー」ノ萬國海
法會議、或ハ千九百二十九年ノ國際聯盟技
術會議等ニ於テモ、亦實ニ我國ノ帝國海軍
ニ於テモ、此點ニ付テハ裏書ヲ致シテ居ル
ノデアル、斯ノ如ク海難取締ニ對シテ、刑
罰ヲ以テ船員ヲ脅威スルト云フコトハ、海
上ノ安全ヲ圖ル效果的手段デナイト云フコ
トハ、今日デハ世界ノ輿論ニナッテ居リマ
ス、又同時ニ是ガ將來ノ立法ノ指導精神ト
ナッテ居ルノデアリマス、政府ハ此船員法改
正ニ際シマシテ、現行船員法第七十三條ノ
趣旨ヲ新法ニ移シテ、以テ本法ヲシテ社會
立法トシテノ精彩アラシメル御決心ガアリ
ヤ否ヤ、司法大臣ニモ御伺スル次第デアリ
マス
次ニ尙ホ一點ダケ御伺致シタイコトハ、
政府ハ海難豫防ニ對シテ如何ナル努力ヲ拂
ハレントスルノデアルカト云フコトデアリ
やっ、政府ハ明年度ノ豫算ニ於テ、或ハ優
秀船建造ノ補助、或ハ遠洋航海ノ補助、或
ハ船舶金融、又ハ船員ノ養成ト云フヤウナ
コトニ對シテ、非常ニ多額ノ金額ヲ豫算ニ
計上シテ來テ居ル、海運國策上洵ニ結構デ
アルト思ッテ、吾々ハ贊成シテ來テ居ルノデ
アリマス、併ナガラ海難豫防ノ方面ニ對シ
テ如何ナル施設ヲ御考ニナッテオ居デニナル
ノデアリマスカ、我國海難豫防施設ト云フ
モノハ極メテ不完全ナモノデアリマシテ
或ル人々ニ言ハシムルト、支那ノ狀態ヨリ
モマダ惡イト言ハレテ居ル、海運國ヲ誇ル
帝國トシテ、洵ニ恥カシイ程度ノモノデア
ルト言ハレテ居ルノデアル、政府ハ苟モ船
員ノ保護監督ノ規定ヲ設ケルト云フ時ニ
當ッテ、此海難ヲ豫防スルト云フ見地カラ、
此角度カラ十分ニ御考ニナラナケレバナラ
ヌト思フノデアリマスガ、遞信當局ハドウ
云フ御考ヲ持ッテ居ルノデアルカト云フコ
トヲ御伺致シマス
〔國務大臣鹽野季彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=17
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018・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 松田君ノ御質問
ニ御答ヲ致シマス、船舶ノ操縱ハ洵ニ困難
ナルモノデアルコトハ御說ノ通リト考ヘテ
居リマス、併ナガラ船舶操縱者ノ過失ニ付
キマシテ、刑事責任ヲ輕減致シマスルコト
ハ、他ノ交通機關ノ操縱者ノ刑事責任、卽
チ鐵道トカ、或ハ航空等ニ於キマスル操縱
者ノ刑事上ノ過失責任ト、均衡上之ヲ變
ヘルト云フ特殊ノ事情ガナイト存ジテ居ル
ノデアリマス、船舶ハ多數ノ人命、若クハ
巨額ノ財貨ヲ運搬スルモノデアリマスルカ
ラ、其當事者ノ責任ハ重大ナモノデアリマ
シテ、當事者ニ於キマシテ、自ラ其責任ハ
大ナルヲ感ズルト同時ニ、世間一般ノ人モ
船舶操縱者ノ責任ノ大ナルヲ考ヘテ居ルノ
デアリマスルカラ、其船舶操縱者ノ刑事責
任ヲ、他ノ交通機關操縱者ノ刑事責任ヨリ
モ輕カラシムルト云フコトハ、國民ノ感情
ニモ反スルコトデアリマシテ、刑罰法規ヲ
作ル上ニ於キマシテハ、餘程考フベキコト
ト考ヘルノデアリマス、ノミナラズ現行ノ
刑法ニ於キマスルト、船員デナイ通常ノ人
ガ、輕過失デアラウト、重過失デアラウト
苟モ過失ニ依リマシテ船舶ヲ〓覆、沈沒、
又ハ破壞致シマシタル際ニハヤハリ刑事
上ノ責任ヲ負ハセテ居リマス、サル爲ニ、御
說ノヤウニ現行海員法七十三條ヲ改正法ニ
持ッテ參リマシテ、尙ホ輕キ過失ヲ罰セズト
致シマスルコトハ、甚シキ不合理ヲ生ズル
ノデアリマス、船舶操縦者其モノガ責任ヲ
問ハレナイデ、サウシテ普通ノ人ガ刑事責
任ヲ負フト云フコトニナリマスルカラ、此
點ハ非常ナ不權衡ヲ生ズルノデアリマス、
左樣ナ次第デアリマスルカラ、刑罰法ト
致シマシテハ、刑法ノ改正トカ、若クハ
他ノ交通機關ノ操縱者ノ責任ニ關スル問題
ト相括メテ、サウシテ將來ニ於テ新シク立
法致シマスル際ニ、海員ノ責任ニ付テモ
考フベキモノト考ヘテ居ル次第デアリマス、
殊ニ今囘ノ海員法ニ於キマシテ、現行海員
法七十三條ヲ除イテアリマスルコトハ寧
ロ海員ノ爲ニ非常ナ利益ヲ來シテ居ルノデ
アリマス、現行ノ海員法七十三條ノ規定ニ
依リマスト、重キモノハ五年ノ體刑ニマデ
處セラレルノデアリマスルガ、是ガ今囘除
カレタル結果ハ、普通刑法ニ依リマシテ、
重キモノガ三年マデト云フコトニナルノデ
アリマス、詰リ刑罰ガ二年ダケ低下シタコ
トニナルノデモアリマス、左樣ナ次第デア
リマスカラ、司法當局ト致シマシテハ、御
說ノヤウニ特ニ七十三條ノ重キ過失ヲ罰シ
テ、輕キ過失ヲ罰セズト云フ御意見ニハ、
承服スルコトガ出來ナイヤウナ次第デアリ
マス、併ナガラ船舶ノ操縱ニ付キマシテハ
洵ニ御說ノ通リニ風波、濃霧又ハ潮流、暗
礁等、其他ノ事故ニ依リマシテ、自然ノ力
ニ左右セラルヽコトモ多々アルノデゴザイ
マスルカラ、其事情ハ篤ト斟酌ヲ致ス必要
ガアルノデゴザイマス、刑法ノ運用ヲ致シ
マスル際ニ當ッテハ、愼重ニ其點ヲ考慮ニ
置キマシテ、起訴ニ付キマシテハ、十分ナ
ル注意ヲ致サナケレバ相成ラヌト考ヘテ居
リマス、隨テ今後ニ於キマシテハ、檢事全
體ニ對シマシテ然ルベク訓示スル所アリマ
シテ、以テ萬遺憾ナキコトヲ期シヨウト
思ッテ居ル次第デゴザイマス
〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=18
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019・兒玉秀雄
○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君) 松田君ノ御
質問ニ御答申上ゲマス、社會立法ニ對シマ
スル政府ノ態度ニ付テノ御質問デアリマシ
タガ、社會立法ハ國民ノ各般ニ向ッテ重大ナ
ル關係ヲ有スルモノデアリマスルカラ、其
時ノ社會狀態竝ニ輿論ノ趨勢ヲ深ク察シマ
シテ、而シテ出來ルダケ知識ヲ集メテ之ヲ
立法スルノ必要ヲ痛切ニ感ジテ居ル次第デ
アリマス、而シテ只今問題ニナッテ居リマス
ル船員法ハ、松田君ノ御述ニナリマシタ通
リニ、前年臨時海事法令調査委員會ニ於キ
マシテ、船主側、船員團體、及ビ國際勞働會
議ニ於キマスル條約ノ骨子ヲ取入レマシテ、
此點ニ付テハ十分注意ヲシテ立法致シタル
モノデアルノデアリマス
次ニ船員ノ刑罰問題ニ付キマシテハ、只
今司法大臣ヨリ述ベラレマシタ通リニ、ド
ウモ法ノ性質上刑法ノ改正ヲ俟タナケレバ、
完全ヲ期シ難イト云フ立法上ノ事實ガゴザ
イマスノデ、遞信當局ト致シマシテハ船
長ノ重大ナル責任ヲ深ク尊重致シマシテ、
裁判所ニ於ケル取扱ニ於キマシテモ、亦將
來刑法其他ノ改正ノ機會ニ於テハ、船長ノ
特別ナル地位ニ付テ十分ナル同情ヲ致シタ
イモノト期待シテ居ル次第デアリマス
最後ニ海難防止ノ施設ニ付キマシテハ、
現在ニ於キマシテハ船舶安全法ニ依リ、又
ハ船舶職員法ニ依リマシテ、海難防止ノ方
法ヲ講ジマスルト同時ニ、本年度ニ於キマ
シテハ特ニ燈臺ノ增設ニ關スル經費ヲ倍
加致シマシテ、海難ノ防止ニ極力努メルコ
トニ致シテ居ルノデアリマスルガ、尙ホ今
後ニ於キマシテモ、十分御趣旨ニ副フヤウ
ナ風ニ努メタイト思ッテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=19
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020・松田竹千代
○松田竹千代君 簡單デアリマスカラ此席
デ發言ヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=20
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021・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御許シ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=21
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022・松田竹千代
○松田竹千代君 遞信大臣ノ御答辯ハ大體
諒承致シマシタガ、司法大臣ノ御答辯、卽
チ海員ハ非常ニ重大ナル生命財產ニ關係ス
ル責任ヲ持ッテ居ルノデアルカラ、飽マデモ
嚴罰主義デ進マナケレバナラヌト云フヤウ
ナ御言葉モゴザイマシタケレドモ、其點ニ
對シテハ洵ニ不滿ニ感ズル者デアリマス、
併ナガラ今日ハ陸上ノ一般交通ニ於キマシ
テモ、飛行機、自動車、其他非常ニ複雜ナ
ル狀況ニナッテ來テ居ルノデアリマスカラ
シテ、是等ノ海上、陸上ノ兩面ノ交通取締
ニ對シテ、必要ナル刑罰法ノ改正ヲ
至急ニヤラナケレバナラヌト云フコ
トダケハ、御認メニナッテ居ルヤウデアリマ
スカラ、少クトモ刑法ノ改正ヲヤカマシク
言ハレテ居ル今日ニ於テハ、本當ニ眞劍ニ
御力ヲ御入レニナッテ、此永イ間苦ンデ居ル
海員ノ實情ヲ十分理解サレテ、ソレニ副フ
ヤウナ立法ヲ速ニセラレンコトヲ望ンデ、
此場合ハ滿足致シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=22
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023・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 板谷顋助君
〔板谷順助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=23
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024・板谷順助
○板谷順助君 私ハ本案ニ對シマシテ〓括
的ニ四箇條ノ點ニ付テ質問致シマシテ、遞
信大臣ノ御答辯ヲ煩ハシタイノデアリマス、
先ヅ第一ニ本案ノ如キ勞資協調ニ重大ナル
所ノ關係ニアル法案ヲ、會期切迫、餘ス所
正味五日間、此間ニ於テ貴衆兩院ニ於テ審
査スルト云フコトハ困難デアリマスルカラ、
此際撤囘ヲシテ、更ニ次ノ議會ニ出ス意思
アリヤ否ヤ、第二ハ此法案ニ關聯致シマシ
テ、最モ重大ナル關係ニアリマスル我國ノ
海運國策ニ對スル所ノ所見如何、第三ハ多
年ノ問題トナッテ居リマスル所ノ、海事行政
ノ統一ニ付テ斷行スル意思アリヤ否ヤ、第
四ハ海事金融ニ對スル所ノ特設機關ヲ設置
スル意思アリヤ否ヤ、此四點ニ付キマシテ
簡單ニ其內容ヲ說明致シマシテ、遞信大臣
ノ明快ナル御答辯ヲ願ヒタイト思フノデア
リマス
本案ハ只今遞信大臣ノ述べラレマシタル
通リ、大體ニ於テ國際勞働會議ニ於ケル所
ノ成案ヲ基礎トシテ、勞働立法トシテ出來
上ックモノデアリマス、成程海事法令調査會
ニ之ヲ掛ケテ、或ハ船主又ハ船員ノ同意ヲ
得タト云フ御話ガアリマスケレドモ、只今
松田君ノ質問サレタ通リ、船員側ニ於キマ
シテモ修正スベキ箇所ガ相當ニアリ、又船
主ト致シマシテモ、之ヲ丸呑ミニスルコト
ハ出來ナイノデアリマス、併ナガラ勿論今
日海上勞働問題ヲ調整致シマシテ、船員ノ
生活ノ安定ヲ圖リ、以テ海運業ノ發展ヲ圖
ルト云フコトニ付キマシテハ、誰シモ異存
ガアル譯ハナイノデアリマス、併ナガラ此
問題ヲ取扱フニ付キマシテハ、最モ愼重ノ
態度ヲ要スルコトト私ハ感ズルノデアリマ
ス、何トナレバ、歷代ノ政府ガ社會立法或
ハ勞働立法ヲ立案サレルニ付キマシテ、机
上ノ論-甚ダ失禮ナ言葉デアルカモ知レ
ヌケレドモ、或ハ外國カブレヲ致シマシテ、
果シテ我國ノ今日ニ適應スルヤ否ヤ、此點
ニ付キマシテ或ハ政府ノヤリ方ガ割合ニ行
過ギテハ居ラナイカ、私ハ今日勞働問題ヲ
解決スルニ付キマシテハ、急激ナル所ノ勞
働條件ハ寧ロ產業ヲ萎靡セシメ、又一面ニ
於テ勞働者ニ於テモ失業苦ヲ嘗メナケレバ
ナラヌト云フ、結論ニナルノデハナイカト
云フコトヲ、私ハ非常ニ心配ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、例ヘバ外國ニ於キマシテハ
御承知ノ通リ個人單位デアル、デアルカラ
自分サヘ賃銀ガ高ケレバ宜イト云フヤウナ
ヤリ方デアル、併ナガラ我國ハサウヂヤナ
イ、所謂家族ガ單位デアッテ、假令賃銀ハ相
當ニ出シマシテモ、企業家ガ或ハ衞生ノ設
備或ハ娛樂ノ機關、有ユル機關ヲ設ケマ
シテ、卽チ共存共榮、共ニ働キ倶ニ樂シム
ト云フコトガ我國ノ美風デアリ、又我國ガ
今日健全ナル發達ヲシテ居ル所以デアルト、
私ハ信ジテ居ル者デアリマス、最近世界ニ
於ケル情勢ハ相當ニ變リツヽアリマス、現
ニ最近ニ於ケル所ノ獨逸ニ於キマシテハ
「マルクス」ノ對立的階級思想ハ絕對ニ排擊
ヲシテ、「ストライキ」ハ認メナイ、卽チ政府
資本家或ハ勞働者ガ一致團結ヲ致シマシテ、
協調會ナルモノヲ作ッテ、其會長ニ資本家ナ
ル者ガナッテ、出來ルダケ勞資ガ一致協力シ
テ、其國ノ發展ヲ圖ルコトヲ企圖シテ居ルノ
デアリマス、又其政策ノ方法ト致シマシテ、
賃銀ハ當分上ゲサセナイ、其代リニ物價ハ
抑制シテヤル、成程勞銀ガ或ル程度マデ高
クナッタナラバ、隨テ一般ノ生活費ガ高クナ
ルカラ何ニモナリハシナイ、賃銀ガ上レバ
物價ガ上ル、其結果トシテ外國貿易、卽チ對
外ノ關係ニ於テ、外國ニ壓迫サレルノミデ
アルト云フコトヲ言ッテ居ルノデアリマス、
今日我國ガ御承知ノ通リ世界的ニ海外貿易
ガ非常ニ發展シテ居ル、其原因ガ何處ニ在
ルカト云フコトニ思ヲ及ボシマシタナラバ、
此點ハ私ハ一面ノ眞理ガアルト信ズル者デ
アリマス(拍手)
又此法案ノ內容ヲ見マスルト、肝要ナル
箇所ハ勅令ノ定ムル所トナッテ居ルノデアリ
マー、更ニ又現在施行サレテ居リマスル所
ノ勞働組合法、或ハ勞働者災害扶助法、又
退職積立金法、其他現行法及ビ此度改正サ
レマスル所ノ商法、是等ニ比較〓究調査ス
ル必要ガアルノデアリマスカラ、此短時日
ニ於テ此問題ヲ解決スルト云フコトハ私ハ
困難ト考ヘル、寧ロ此際遞信大臣ニ勸〓ヲ
致シマシテ、此次ノ議會ニ、吾々船員或ハ
又船主ンミナラズ、此議員ニ對シテモ十分
ニ審査スルノ餘地ヲ御與ヘニナル御考ガ
アルヤ否ヤ、是ハ先ヅ第一ノ質問デアリ
マス
更ニ此問題ニ關聯ヲ致シマシテ重要ナル
問題、卽チ我國ノ海運國策ニ對スル根本方
針如何、我國ハ現在海運業ガ非常ニ發達致
シテ居リマシテ、世界ニ雄飛ヲ致シテ居リ
やく、卽チ貿易外ノ海運收入ニ於キマシテ
モ、昭和九年ニ於キマシテハ二億五千万圓、
又昭和十年ニ於キマシテハ三億三百万圓、
更ニ昨年ニ於キマシテハ未ダ大藏省ノ發
表ハアリマセヌケレドモ、恐ラクハ三億三
四千万圓ニ達シテ居ルト思フノデアリマス、
斯ノ如ク我國ノ國際貸借ノ改善ノ上ニ於テ、
非常ニ貢獻ヲ致シテ居ルト云フコトハ諸
君ノ御承知ノ通リデアリマス、又更ニ我國
ガ海外ニ輸出致シ、或ハ輸入ヲ致シマスル
所ノ貿易品ノ七割ハ、本邦ノ船舶ヲ以テ之
ヲ運行シテ居ルト云フコトモ、旣ニ諸君ノ
御承知ノ通リデアリマス、デアリマスカラ
吾々ハ我國ノ如キ四面環海、地域ガ狹ク、
資源ニ乏シイ國柄デアリマスカラ、將來海
運立國ヲ以テ國ヲ立テナケレバナラヌト云
フコトヲ、多年主張シテ居ッタノデアリマ
ス、所ガ幸ニシテ前廣田內閣當時ニ於ケル、
時ノ賴母木遞信大臣ガ非常ナル熱意ヲ以テ、
甚ダ不十分デハアリマスケレドモ、大ニ時
代ヲ認識ヲサレ、海運國策ニ對スル所ノ努
力ヲ拂ハレタノデアリマス、卽チ優秀船ノ
建造助成、或ハ遠洋航海ノ助成、海事金融
ノ施設、或ハ船舶試驗所ノ擴張、又ハ海員
ノ養成、是等ニ對シマシテ出來ルダケノ豫
算-勿論不十分デハアリマスケレドモ、
時代ヲ認識ヲシテ計上サレタト云フコトニ
付キマシテハ、吾々ハ國民トシテ賴母木前
大臣ニ對シテ感謝セネバナラヌノデアリマ
ス
然ルニ內閣ハ迭リ林內閣トナリ、結城財
政ノ結果、此海運國策ニ對スルモノニ如何
ナル斧鐵ガ加ヘラレタカ、成程項目ハ竝ベ
テアル、項目ハ竝ベテアルガ、先ヅ第一ニ
優秀船ノ建造ノ如キハ年限ガ繰延ベラレ、
或ハ遠洋航海ノ助成ノ如キハ十五万圓ガ十
万圓トナリ、海事金融ニ對シマシテハ一億
圓ガ七千万圓トナッテ縮小サレタノデアル、
之ニ對シテ遞信大臣ハ何ト一體考ヘテ居ラ
レマスカ、申ス迄モナク今日我國ノ海外貿
易ノ發展ハ、海運ニ俟タナケレバナラヌト云
フコトハ當然デアリマス、又優秀船ノ建造ニ
對シマシテモ、陸海軍大臣ハ非常ニ要望シテ
居ル、一朝有事ノ際ニ於テ、用兵作戰上ドウ
シテモ缺クベカラザル所ノ優秀船デアル、
デアルカラ一日モ早ク之ヲ建造セネバナラ
ヌト云フ重大ナ秋ニ於テ、吾々ヲシテ言ハ
シメルナラバ、海軍ノ豫算ニ竝行シテ-
軍部ノ豫算ト竝行シテ、之ヲ出來ル限リ主
張ナサラナケレバナラヌノデアル、然ルニ
之ニ對シテ削減ヲ加ヘテ、或ハ大臣ハ遲ク
就任ヲサレタノデアリマスルカラ、其事情ガ
分ラヌト言ハレヽバソレ迄ノコトデアリマス
ケレドモ、此善後處置ニ對シ如何ナル御考ヲ
持ッテオ居デニナリマスカ、殊ニ又政府ノ誤
レル所ノ統制經濟ノ結果、鐵ノ飢饉ヲ來シ
テ、鐵材ガ暴騰シテ居ル、造船材料ノ如
キハ殆ド六割以上騰ッテ居ルノデアリマス、
デアルカラ優秀船ノ補助ニ對シテ、現在ノ
豫算ニ於テ如何ナル按排ヲナサル御考デア
ルカ、之ヲ承リタイ
第三點ト致シマシテ、海事行政ノ統一デ
アリマス、今日內地、外地ニ於テ何等變ル
事情ハアリマセヌ、此問題ハ多年ノ懸案デ
アリマシテ、當局者ノ方ハ十分御承知ノ筈
デアル、デアルカラシテ內地外地ヲ通ジタ
ル所ノ海事ノ行政、又今日日滿不可分ノ關
係ニ於テ、日滿ノ海運ノ協定、此問題ヲ解
決スルニ非ザレバ、決シテ海運業ノ發達ヲ
期スルコトハ出來ナイノデアリマス、船舶
統制法ノ如キモノヲ設ケラレタカラト云ッ
テモ、此問題ヲ解決セザル限リハ、決シテ
海運ノ發達ナド望ムコトハ出來ナイノデア
リマス、此點ニ對シテ現在ノ遞信大臣ハ、
前ニ拓務大臣トナッテ居ラレタノデ、アナタ
ハ能ク其事情ヲ御承知ノ筈デアリマス、デ
アルカラシテ-只今又御答辯ニ於テ、考
慮中デアルトカ、〓究中デアルト云フヤウ
ナコトハ、モウ既ニ聞キ飽キテ居リマス、
デアルカラシテ現內閣ニ於テ之ヲ斷行スル
意思アリヤ否ヤ、是ガ第三點デアリマス
第四點ト致シマシテ、今日我國ノ海事ニ
關スル所ノ金融施設デアリマス、先程御話
申シマシタ通リ、海事金融ト致シマシテ、
五箇年間七千万圓ノ金ヲ融通スルト云フコ
トニナッテ居リマスケレドモ、コンナ事ヂヤ
決シテ海運ノ發達ヲ企圖スルコトハ出來マ
セヌ、今日世界ニ於ケル所ノ海運國ニ於テ
ハ、皆相當ニ特別ノ施設ヲシテ居ル、デア
ルカラシテ、獨リ新造船バカリデナク、或
ハ從來ノ船舶ニ對シ、又運行資金ニ對シテ
モ融通ノ途ヲ開カナケレバナラヌト云フコ
トヲ、私共ハ痛切ニ感ジテ居ルノデアリマ
ス、大體私ハ自分ノ所論ト致シマシテ、今
日補助制度ト云フモノハ餘リ感心ヲシナ
イ、獨リ海運關係バカリデハアリマセヌ、
有ユル方面ニ於テ補助政策ガ行ハレテ居ル
ノデアリマスガ、是ハ一利一害デアル、例
ヘバ日本ノ船舶ニ對シテ政府ハ或ル程度ノ
補助ヲスル、必ズ相手ガアルノデアリマス
カラ、相手國ハ之ニ對シテヨリ以上ノ補
助ヲシタナラバ、何等效果ナドアリハシナ
イ、ソレヨリハ寧ロ-特殊ノ航路ハ別問
題デアリマスルガ、金融ノ便ヲ圖ッテ、出來
得ルダケ船舶ノ運用ヲ期スト云フコトガ、
最モ適切デアルト私ハ信ズル者デアリマ
ス、私ハ此補助問題ニ付テ、此場合諸君ニ
一例ヲ御話申上ゲタイ、私共ハ先年南洋航
路ニ對シテ命令航路ヲヤッテ居ッタノデアリ
マス、此航路ニ對スル補助金ガ、初メハ二
十二万圓デアッタモノガ、段々下ッテ十六万
圓トナッタ、所ガ世間ノ人々ハ補助ヲ貰ッテ
居ルノデアルカラ、餘程旨イコトデモシテ
居ルノダラウ、斯ウ想像サレテ居ルノデア
リマス、何ゾ圖ラン、此二十年ノ間ニ於テ
殆ド無配當デアッテ、吾々ハ國家ノ犠牲ト
ナッタノデアル、然ルニ諸君モ御承知ノ通
リ、先年日蘭海運會商ガ決裂ヲスルヤ、俄
ニ政府ガ郵船會社或ハ商船會社ノボロ船ヲ
集メテ新會社ヲ作リ、又之ヲ保護センガ爲
ニ、船舶統制法ナルモノヲ政府ノ權力ヲ以
テ設ケタノデアリマス、斯ル姑息ノ策ヲ以
テ海運界ノ發達ヲ圖ルナドトハ以テノ外デ
アル、デアリマスルカラシテ、將來ニ於テ、
只今申上ゲタル通リ、特殊ノ航路ニ對シテハ
已ムヲ得ザルコトデアルケレドモ、出來ル
ダケ自由航海ト致シマシテ、一面ニ於テ金
融ノ便ヲ圖リ、兩々相俟ッテ進ムト云フコト
ガ、最モ海運界ノ發達ニ策ノ得タルモノデ
アルト私ハ信ジマスルガ、遞信大臣ハ如何
ナル御考ヲ持ッテ居リマスカ、以上ノ點ニ對
シマシテ明快ナル御答辯ヲ求メマス(拍手)
〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=24
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025・兒玉秀雄
○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君) 御答申上ゲ
マス、船員法ハ先ニ申上ゲマシタ通リ、我
國ニ於キマスル海上勞働問題ノ解決、船員
ノ生活ノ安定、竝ニ海運界ノ發達ヲ來シ
マスル所謂社會立法デアリマス、而シ
テ此法案ハ既ニ委員會ニ於キマシテ、
各方面ノ權威者ヲ集メテ〓究ヲ致シマ
シタル結果、玆ニ提案スルニ至リマシ
タルモノデアリマスルノデ、一日モ早ク本
案ノ成立ヲ見テ、而シテ海運界ノ發達ニ資
シタイト考ヘテ居リマスルガ故ニ、政府ハ
之ヲ撤囘スルノ意思ハ毫モ持ッテ居リマセ
ヌ、次ニ海運國策ノコトニ付キマシテ御話
ガゴザイマシタガ、只今御話ノアリマシタ
通リニ、此海運國策ハ前遞相賴母木君ニ依ッ
テ樹立セラレタル所ノモノデアリマス、其
政策ヲ尊重致シマシテ、財政ノ許ス範圍ニ
於キマシテ、之ヲ遂行セント試ミツヽアル
所ノモノデアリマス、優秀船ノ建造ニ付キ
マシテ、鐵ノ値上リノ爲ニ之ニ支障ヲ生ジ
ナイカト云フ御尋デゴザイマスガ、此點ハ
大イニ考慮ヲ要シナケレバナラヌコトト考
ヘマスガ、造船業者ト船主トノ間ニ於キマ
スル協調ニ依リマシテ、成ベク便宜ノ方法
ニ依ッテ、低廉ナル鐵ノ買入ヲ期待シテ居ル
ト同時ニ、幸ニ海運界ノ今日ノ好況ニ臨ミ
マシテ、此造船ニ付キマシテハ、大シタル
支障ナキモノト考ヘテ居ル次第デアリマス、
次ニ海事行政ノ統制ノ問題デアリマス、此
問題ハ多年ノ懸案デアリマスルノデ、速ニ
之ヲ解決セント期シテ居ルノデアリマスル
ケレドモ、今日直チニ之ヲ實行スルノ困難
ナルノ事情ガアルノデアリマス、併ナガラ
此一定ノ地域ニ固著シタル所ノ問題ヲ除
キマシテ、共通ノ問題ニ付キマシテハ一
日モ早ク內地外地海事行政ノ統一ヲ期セン
ト欲スル者デアリマス、最後ニ海事金融ノ
コトニ付テノ御話ガゴザイマシタガ、此海
事金融銀行ノ設立ハ多年ノ問題デアリマス、
海運ノ進展ヲ圖ラントスルノニハ、滑カナ
ル金融機關ヲ要スルコトハ無論ノ話デアリ
マス、併ナガラ海事金融銀行ナルモノハ、果
シテ收支相償フベキヤ否ヤト云フコトニ付
テハ、經濟的ニ大ニ考慮スベキ點ガアルト思
フノデアリマスルガ、假令特殊ノ銀行ヲ設
立セズトモ、海事金融ニ對シテ、其圓滑ヲ
期スルコトノ必要ナルコトハ無論ノ話デア
リマス、御說ノ通リニ補助ハ決シテ其目的ヲ
十分達スル所ノ方法デハナイノデアリマス、
須ク海事業者ソレ自身ノ自力更生ニ依リ、
其足ラザル所ヲ補ッテ、以テ海事國策ノ遂
行ヲ期セネバナラヌト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=25
-
026・板谷順助
○板谷順助君 簡單デアリマスカラ此席カ
ラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=26
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027・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=27
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028・板谷順助
○板谷順助君 本案ヲ撤囘スル御意思ガナ
イト云フコトデアリマスルカラ、詳細ノコ
トハ委員會ニ於テ質問致シマス、又海事行
政ノ統一ニ付テ、困難ト云フ御話デアリマ
スルガ、私ハ困難ナル事情ハナイト思フノ
デアリマス、唯各省ノ事務官ノ權限爭ヒノ
結果、未ダニ此問題ガ解決ヲサレナイノデ
アリマス、デアルカラ大臣ハ思ヲ此處ニ及
ボサレテ、所謂政治的ノ解決トデモ申シマ
スルカ、此場合此問題ヲ解決スルニアラザ
レバ、先程申上ゲマシタヤウニ、如何ニ船
舶統制法ヲ御設ケニナッタカラト云ウテモ、
效果ハ薄イノデアリマス、此點ハ十分ニ
ツ御考慮ヲ重ネテ願ッテ置キマス、此程度デ
質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=28
-
029・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 平川松太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=29
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030・平川松太郎
○平川松太郞君 私ノ質問ハ頗ル多岐ニ亙ッ
テ居リマスルカラ、議事ノ進行上委員會ニ
讓リマス、仍テ本會議ニ於ケル質問ノ通〓
ヲ取消シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=30
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031・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 岡崎憲君
〔岡崎憲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=31
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032・岡崎憲
○岡崎憲君 本議案ハ吾々海員ガ多年要望
シテ來マシタ所ノモノデアリマシテ、昭和
七年、遞信大臣ガ述べラレマシタ通リ、臨
時海事法令調査會ト云フモノヲ設ケラレマ
シテ、勞働側ノ代表或ハ資本側ノ代表ヲ加
ヘラレテ審議ヲ遂ゲラレ、今日茲ニ上程サ
レタノデアリマス、私ハ寧ロ遞信當局ニ對
シマシテ、其勞ヲ多トスル者デアリマス、
ガ併シ吾々海員カラ見マスルナラバ、幾多
不滿ノ點ガアルノデアリマス、殊ニ前ノ松
田議員ガ述ベラレマシタ所ノ、船長ニ對ス
ル刑罰デアリマス、此點ヲ私ハ他ノ角度カ
ラ申上ゲテ見タイト思フノデアリマス
御承知ノ通リ、我ガ海運ハ海軍ト共ニ車
ノ兩輪ノ如クニ發達シテ來タモノデアリマ
ス、サウデアリマスルカラ、船長船員ヲ養
成スル爲ニハ、莫大ナル國家ノ費用ヲ投ジ
テ、練習船ヲ造リ、或ハ官立商船學校ヲ造
ル、サウシテ海軍ニ於ケル海軍兵學校ト同
ジヤウニ、船員ヲ養成シテ來タノデアリマ
ス、ソレデアリマスルカラ、私ハ海軍ニ特
別法ガアルト同ジヤウニ、吾々海員ニ取リ
マシテモ、特別法ニ依ッテ刑罰ト云フモノ
ヲ處分シテ戴キタイ、斯ウ思フノデアリマ
ス、是ハ從來吾々ノ船長ノ處罰ト云フモノ
ハ、船員法ニ依ッテ處罰サレテ來タノデア
リマスルガ、現行法タル新刑法ガ實施サレ
マシテカラ、其問題ハ刑法ニ移ッテ來タノ
デアリマス、デアリマスルカラ、私ハヤハ
リ是ハ昔ノ通リ船員法ニ依ッテ吾々ノ處罰
ヲ取扱ッテ戴キタイ、ソレハ重過失ダケヲ認
メテ貰ヒタイト云フノデアリマス、是ハ輕
過失ト云フモノハ、判定ニ付キマシテハ非
常ニ困難ナモノデアリマス、果シテ過失デ
アルカ否カト云フコトハ、決定スルニ困難
ナモノデアリマス、ソコデ私共ハ特別ニ、
所謂特別法ニ依ッテ特別ナ取扱ヲヤッテ貰ヒ
タイト云フ趣意デアリマス、是ハ英國ニ於
キマシテハ、ヤハリ輕過失ト云フモノハ處
罰シナイト云フコトニナッテ居リマス、英國
ハ海運ニ於キマシテ世界最大ノ國デアリマ
ス、ソコデ吾々ノ元ノ船員法ト云フモノハ、
英國ニ做ッテ作ッタモノデナイカト思フノデ
アリマスガ、英國ニ於キマシテモ同樣今日
マデ特別ニ扱ハレテ居ルノデアリマス、又
獨逸ニ於キマシテハ、我ガ新刑法ト同ジヤウ
ナ業務上ノ過失ヲ認メテ居リマス、ケレド
モ今ヨリ二十年以前ニ於キマシテ、汽船「ウ
メア」號ガ汽船「エレン」號ト「ビスケー」灣
デ衝突致シマシタ時ニ、「ハンブルグ」裁判
所ハ「ウメア」號船長ニ對シテ一箇月ノ禁錮
ヲ言渡シタノデアリマス、サウスルト獨逸
船員社會ハ非常ニ恐ルベキ法規ガアルト云
フコトヲ初メテ知リマシテ、一大猛運動ヲ
起シタノデアリマスガ、社會モ亦之ヲ支持
シマシテハ是ハ優秀ナル船長ヲ海上カラ驅
逐スルモノデアルト云フコトニナリマシテ、
サウシテ今日ハ此輕過失ニ對シマシテハ、
處罰シナイコトニナッテ來テ居ルノデアリ
やっ、サウ云フ風ニ、私ハ何モ外國ノ眞似
ヲセヨト言フノデハナイ、眞似ヲシテ吳レ
ト云フ意味デハアリマセヌガ、併シ吾々ハ
世界各國航海シテ步クノデアリマス、外國
ニ於キマシテハ處罰サレナイ所ノモノガ、
日本ニ歸ッテ來テ處罰サレルト云フヤウナ
狀態デアリマシテハ、吾々ハ安心シテ航海
ニ從事スルト云フコトハ出來ナイノデアリ
マス(拍手)
ソコデ私ハ如何ニ輕過失ノ判定スルニ困
難ナモノデアルカ、吾々海員ノ過失ト云フ
モノガ、如何ニ困難ナモノデアルカト云フ
コトヲ、簡單デアリマスルカラ一例ヲ取ッテ
申上ゲテ見タイト思ヒマス、最近新聞紙上
ヲ賑ハシマシタ所ノ漁船大隆丸、是ハ七十
六噸デアリマス、アレガ四十二日間漂流致
シタノデアリマスルガ、乘組員ハ最早死ノ
一步手前デ、ヤハリ漁船大成丸ニ救助サレ
タノデアリマス、其時ニ此問題ハ船長ガ油
ヲ不足シテ居ッタ、漁船ノ油、所謂燃料ガ不
足シタト云フコトヲ言ハレテ居ルノデアリ
やっ、最近新聞ヲ見マスルト云フト、此問
題ハ橫須賀裁判所ニ廻サレテ、或ハ起訴サ
レルデアラウト云フコトヲ言ハレテ居リマ
スガ、併シ此問題ヲ能ク考ヘテ見マスナラ
バ、賢明ナル檢事ハ之ヲ不起訴ニスルデア
ラウト思ヒマスガ、是ハ油ガ足ラナカッタ、
ソレハ足ラナカッタデアラウト思ヒマスガ、
併シ油バカリデ走ルノデハナクシテ、油ガ
足リナカッタ時ニハ帆ヲ以テ走ルトカ、色々
方法ガアル、ノミナラズ四十二日間モ保ツ
ダケノ食糧ハ持ッテ居ッタノデアリマス、サ
ウ云フコトカラ考ヘテ見マシテモ、單ニ油
ガ足ラナカッタカラト云ウテ之ヲ責メル譯
ニ行カナイ、併シ檢事ガオ前ハ油ガ足ラナ
イヂヤナイカト言ウタ時分ニ、成程足ラナ
イト言フデアリマセウガ、是ハ自分ハ船ヲ
失ヒ、乘組員ヲ死ノ一步前マデ押詰メテ居ッ
タノデアリマスカラ、自分ノ責任上サウ感
ズルト思フノデアリマス、若シモ之ヲ本當
ノ過失デアルカ否カト云フコトヲ見ルニ
ハ、重大ナル他ノ問題ガアルト思フノデ
ス、サウ云フ意味合ニ於キマシテ、是ハ先
程申シマシタ通リ、「マスト」或ハ帆ト云フ
モノガアリマシテモ、四十二日間漂流シテ
居ル間ニ、幾度カ暴風雨ニ遭ッテ不能ノ狀態
ニナッテ居ッタノデ、サウ云フコトヲ考ヘテ
行キマスルナラバ、是ハ果シテ眞ノ船長ノ
過失デアルカドウカト云フコトハ疑ヒ得ル
ノデアリマス、况ヤ此船長ノ名前ハ泉ト云
フノデ、泉船長デアリマシタガ、大成丸ニ救
ハレマシタ時ニハ、船長ハ船ト運命ヲ共ニス
ルト云フノデ、殘ラントシタノデアリマスガ、
其泉船長ノ弟ガ居リマシタノデ、他ノ乘組
員ト共ニ船長モ、此大成丸ニ乘ッテ歸ルヤ
ウニト言ウテ勸メタノデ、初メテ泉船長ハ
不本意ナガラ救助サレタノデアリマス、サ
ウ云フ狀態デアリマシテ、重過失ト云フヤ
ウナ場合ハ、船長ハモウ自ラ船ト共ニ沈沒
スルト云フ考ハ、獨リ泉船長バカリデナク、
總テノ船長ガ持ッテ居ル、ソレデアリマスカ
ラ、重過失ト云フモノヲ或ハ五年ノモノガ
三年ニサレタ所デ、是ハ何ノ意味ヲナサナ
イノデアリマス、サウ云フ考デ居リマスル
ノデ、私共ハ此輕過失ト云フモノノ判定ガ
非常ニ困難デアルカラ、ソレデ輕過失ト云
フモノハ處罰シテ戴キタクナイ、斯ウ云フ
コトヲ主張シテ居ルノデアリマス、此點重
ネテ司法大臣ニ御伺致シマス
次ニ此問題ト關聯致シマシテ、ヤハリ水
先人或ハ船長ト云フモノハ同ジデアリマス、
輕過失ニ依リマシテ一旦罪ガ決定サレマス
ト云フト、是ハ民事上ノ損害賠償ガ附イテ
來ルノデアリマス、デアリマスルカラ、吾
吾ハ日夜戰々兢々トシテ働イテ居ルト云フ
狀態デアリマシテ、此損害賠償ト云フモノ
ニ對シテモ、一ツノ限定ヲシテ貰ヒタイ、
是ハ英國ニ於キマシテハ限定シテ居ルノデ
アリマス、サウ云フ風ニ船長ト水先人ニ對
シマシテハ、損害賠償ヲ限定シテ貰ヒタイ、
今日ハ直接ニ船長、水先人ニ損害賠償ヲ要
求シテ來ルノデアリマス、此新刑法ガ行ハ
レマシテ以來サウナノデアリマス、ソコデ
私共ハ此水先法ニ對シテ改正シテ下サルカ
ドウカ、又サウ云フ御意思ガアルカドウカ
ト云フコトヲ遞信當局ニ御尋致シマス
次ニ此海員法ニ依リマシテ-船員法ニ
依リマシテ保護監督サレナイ所ノ船員ハド
ウスルカ、所謂二十噸未滿ノ船舶、平水航
路ヲ航行スル所ノ船舶、或ハ三十噸未滿ノ
漁船ト云フモノハ、ドウ云フモノニ依ッテ保
護監督サレルカ、御承知ノ通リ此小サイ所
ノ、所謂小型船乘組員ト云フモノハ、今日
マデ何等保護監督ト云フモノハ受ケテ居ナ
カッタ、ソレハ丁度朝ニ海ニ出テ、タニハ家
ニ歸ル、或ハ一夜ヲ海ニ送ッテ家ニ歸ル、サ
ウ云フ狀態デアリマス、又艀船、運送、所
謂囘漕業ニ從事スル所ノ艀船夫ト云フモノ
ハ、船諸共海上ニ出マシテ、サウシテタ方
ニハ陸岸ニ著クト云フ者ガアルノデアリマ
ス、サウ云フ人達ノ保護監督ト云フモノハ、
今日マデ何等ナイノデアリマス、此船夫ト
云フヤウナ人達ハ、丁度陸上ニ住居ヲシテ
居ルト同樣ナモノデアリマス、然ルニ今日
マデハ勞働者災害法トカ、或ハ健康保險ト
云フモノノ恩典ニハ浴シテ居ナイノデアリ
ママ、ソコデ謂ハヾ此人達ハ陸上ト海上
ノ中間、宙ブラリンデゴザイマシテ、數十
年間、今日マデ何等保護監督ト云フモノハ
受ケテ居ナイノデアリマス、ソコデ此人達
ノ爲ニハ如何ナル保護監督ヲヤルカ、又サ
ウ云フ保護ヲスル用意ガアルカドウカト云
フコトヲ遞信當局ニ御尋申上ゲマス
次ニ私ハ海員ニ對シマシテハ、養老年金
制度ヲ作ッテ戴キタイト云フコトヲ主張ス
ルノデアリマス、遞信當局ハドウ云フ考ヲ
持ッテ居ルカ、或ハ其用意ガアルカドウカト
云フコトヲ御伺申シマス、此海員ト云フモ
ノハ若イ時ダケガ使用サレル、謂ハヾ靑年
時代カラ壯年時代ニ掛ケテ勞働ヲ提供或ハ
搾取サレルノデアリマス、サウ云フ關係デ、
人間ハ四十年カラト云フノニ、最早海員ニ
於キマシテハ四十五ニナリマスルト癈人同
樣ニナルノデアリマス、勞働ニ堪ヘ兼ネテ
陸上ニ上ルト云フ狀態ナノデアリマス、又
之ヲ使用スル所ノ船主側カラ言ヒマシテモ
勞働ノ能率ガ擧ラヌト云フノデ馘ニシテ、
陸ニ上ゲテシマフノデアリマス、是程海員
ト云フモノハ勞働ガ激シクテ、サウシテ機
敏ヲ要スルモノデアリマス、デアリマスカ
ラ、私ハ一般船員法トカ云フヤウナモノデ
ナクシテ、是ニハ老後ノ保障ヲ與ヘル意味
ニ於キマシテ、養老年金ヲ與ヘルト云フコ
トニナラナケレバイカヌ、是ハ今申上ゲマ
シタ通リ、養老年金制度ヲ海員ノ爲ニ設ケ
テ戴キタイ、ソレハ海洋勞働ト云フモノハ
非常ニ若イ時ダケノモノデアリマス、所謂
若イ時ノ勞働デアリマスルガ、而モ數ト云
フモノハ少イ、海上生活ヲ二十年或ハ三十
年勤メ上ゲルト云フ人ハ極ク少數デアリマ
ス、ダカラ此少數ノ人ノ爲ニ海軍軍人ト同
樣ニ、恩給ト云フ、所謂養老年金ト云フモ
ノノ制度ヲ作ッテ吳レト言フノデアリマス、
此制度ハ彼ノ海運最大國デアル所ノ英國ニ
於キマシテ、古クカラ實施サレテ居ル所ノ
モノデアリマス、デアリマスカラ、政府ハ
此海員ノ若イ時ノ勞働ニ報ユルト云フ意味
ヲ以チマシテ、又海運國策ノ立前カラ、養
老年金制度ヲ施行シテ戴キタイ、斯ウ云フ
コトヲ吾々ハ主張シマシテ、遞信大臣ノ御
考ハドウデアルカト云フコトヲ御聽スル次
第デアリマス
以上四ツノ點ヲ以チマシテ、其他ハ委員
會ニ於テ御聽シタイト思フノデアリマス
ガ、之ヲ以テ私ノ質疑ヲ終リマス
〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=32
-
033・兒玉秀雄
○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君) 第一ノ船員
ノ刑罰問題ニ付キマシテ、先ニ司法大臣竝
ニ私ヨリ御答辯申上ゲマシタコトニ依リマ
シテ、御諒承ガ願ヘルコトト思ッテ居リマ
ス、次ニ小型船ノ乘組員ニ對スル保護問題
ニ付キマシテハ、御承知ノ通リニ其船ノ形
竝ニ其性質ノ上カラ致シマシテ、本船員法
ニ於キマシテハ、小型船舶ハ除外シテアル
ノデアリマス、引續キマシテ政府ト致シマ
シテハ、小型船舶ノ乘組員ノ方ニ關シテモ、
愼重ナル考慮ヲ致シタイト考ヘテ居リマス、
次ニ船員養老年金ノコトデゴザイマスルガ、
此問題モ大切ナ問題デアリマスルガ、我國
ニ於キマシテハ未ダ其制度ヲ見ルニ至ラナ
イノデアリマス、是モ最モ重要ナル一事項
ト致シマシテ〓究スルコトニ致シマス
〔國務大臣鹽野季彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=33
-
034・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 岡崎君ニ御答ヲ
致シマス、先刻松田君ニ御答ヲ致シマシタ
ト同樣ニ、一般普通ノ人々ガ過失ノ輕重如
何ヲ問ハズ處罰セラレテ居ルノデアリマシ
テ、之ヲ船員法ニ於キマシテ、海員ダケハ
重キ過失ハ罰セラレテ、輕キ過失ハ罰セラ
レナイト云フ規定ヲ設ケマスルコトハ洵
ニ不權衡ナコトニナリマスルノデ、是ハ追
テ法律改正等ノ場合ニ十分考慮シタラ宜カ
ラウカト考ヘテ居ル次第デアリマス、尙英
國法ノ御話ガゴザイマシタガ、私共ノ取調
ベテ居ル所ニ依リマスルト、英國商船法ハ條
文ガ澤山ゴザイマシテ、御說ノヤウニ船長
ガ重過失ニ依ッテ罰セラレル場合ハ、四百十
九條二項デアリマシテ、衝突規則ノ違反ノ
場合ニ限ルノデアリマス、一般的ニハ同法
ノ二百二十條ニ依リマシテ、船長、海員又
ハ見習員ハ故意過失又ハ泥醉ニ依リ左ノ各
號ヲ爲シタル者ハ之ヲ罰スルト云フ規定ガ
ゴザイマス、兎ニ角詳シイコトハ委員會ニ
於テ御說明モ致シマスルガ法制ノ上ニ於キ
マシテハ、海員法ニ於テ特ニ海員ノ刑事責
任ヲ輕減スルト云フコトハ、如何カト存ジ
テ居ル次第デアリマス、是ハ法ノ運用ノ上
ニ於キマシテ、先刻申上ゲマシタヤウニ、
十分ノ檢察當局ナリ、裁判當局ニ對シテ注
意ヲ與ヘテ、遺憾ノナイヤウニ致シタイト
存ジテ居ル次第デアリマス
〔岡崎憲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=34
-
035・岡崎憲
○岡崎憲君 是ハ私ノ考ヘマスルニハ、船
ガ陸上ト違フト云フコトデアリマス、司法
大臣ノ言ハレル所ニ依リマスルト、機關車
或ハ自動車ト船ト云フモノヲ一〓ニ見ナケ
レバナラヌ、私ハ其反對ニ船ト云フモノハ
別デアル、謂ハヾ是ハ海ト云フモノニ對ス
ル一ツノ認識ガ足ラナイカラデアルト私ハ
思フノデアリマス(拍手)モウ少シ海ト云フ
モノヲ認識スルナラバ是ハ自ラ理解シ得
ルモノデハナイカト思フノデアリマス、日
本ノ海運ト云フモノガ今日ノ隆盛ヲ見マシ
タコトハ、是ハ商船〓育ニ從事シテ居ル所
ノ人達、或ハ海運界ニ於キマスル所ノ、有
力ナル人達ノ非常ナ努力ノ結果、今日ノ基
礎ヲ作リ上ゲタノデアリマス私ハ斯ウ云
フ人達ニ對シマシテハ、國家モ社會的ノ地
位ヲ與ヘルトカ、或ハ色々ナ方法ヲ以テ此
人達ニ報イナケレバナラヌ、斯ウ考ヘテ居
ルノデアリマスルガ、是ハ獨リ斯ウ云フ人
バカリデナク、吾々海員ニ於キマシテハ、
何等社會的ノ地位ト云フモノモナケレバ、
或ハ國家的優遇ト云フモノモナイノデアリ
マく、是ハ外國ニ於キマシテハ、海軍士官
ト同樣非常ナル待遇ヲ受ケテ居ルノデアリ
マス、私共ハ單ニ海軍豫備員デアリマスル
ケレドモ、其待遇以外ニ何等一ツノ優遇
ト云フモノハナイノデアリマス、私ハ今
日マデ海運ノ爲ニ盡シテ來タ所ノ人達、或
ハ商船〓育ノ爲ニ盡シタル所ノ人達ニ對
シマシテ、之ヲ勅選議員ニ選任スルト
云フコトモ、一ツノ優遇方法デアラウト
思フノデアリマス、斯ウ云フ人ニ勅選議員
ノ一人モ無イト云フコトガ、如何ニ日本ノ
海國デアルト云フコトヲ、國民或ハ政府當
局ガ認識シテ居ナイカト云フコトヲ、物語ッ
テ居ルノデハナイカト思フノデアリマス(拍
手)デアリマスルカラ私ハ此點ニ於キマシ
テ、海ノ認識ヲ深メルコトニ依ッテ、此問題
ハ自ラ解決スルモノト思フノデアリマス(拍
手
〔「答辯ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=35
-
036・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 答辯ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=36
-
037・中山福藏
○中山福藏君 本案ニ對スル質疑ハ、此程
度ニテ終局セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成」「贊成」「反對」「マダ時間ガアル
ヂヤナイカ」其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=37
-
038・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 中山君ノ質疑終局
ノ動議ヲ採決致シマス、中山君ノ質疑終局
ノ動議ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕
〔「定足數ヲ缺イテ居ル」「憲法違反ダ」
其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=38
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039・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 起立多數、仍テ質
疑ハ終局ニ決シマシタ(拍手)
〔「異議アリ」「定足數ヲ缺イテ居ル」其
他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=39
-
040・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=40
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041・中山福藏
○中山福藏君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成」「贊成」「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=41
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042・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=42
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043・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス
(「異議アリ」「議長横暴」其他發言スル
者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=43
-
044・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 仍テ動議ノ如ク決
シマシタ-日程第二乃至第五ハ、便宜上
一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=44
-
045・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ日程第二、揮發油及アルコール
混用法案、日程第三、貿易組合法案、日程
第四、貿易調整法案、日程第五、工業組合
法中改正法律案、右四案ヲ一括シテ第一讀
會ヲ開キマス-商工大臣伍堂卓雄君
第二揮發油及アルコール混用法案
(政府提出)第一讀會
第三貿易組合法案(政府提出)
第一讀會
第四貿易調整法案(政府提出)
第一讀會
第五工業組合法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
揮發油及アルコール混用法案
揮發油及アルコール混用法
第一條揮發油ノ製造、輸入又ハ移入ヲ
業トスル者其ノ工場若ハ貯油所ヨリ揮
發油ヲ搬出セントスルトキ又ハ其ノ工
場若ハ貯油所ニ於テ揮發油ヲ使用シ若
ハ之ヲ他ノ者ニ引渡サントスルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ揮發油ニア
ルコールヲ混入スベシ但シ勅令ニ別段
ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
政府ハ前項ノ規定ニ依リ揮發油ニアル
コールヲ混入スベキ割合ヲ定メ之ヲ〓
示ス
第二條揮發油ノ製造、輸入又ハ移入ヲ
業トスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リア
ルコール混入計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ
受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同
ジ
政府必要アリト認ムルトキハアルコー
ル混入計畫ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第三條政府ハ揮發油ノ製造、輸入又ハ
移入ヲ業トスル者ニ對シアルコール混
入計畫ノ實施ノ狀況ニ關シ報〓ヲ爲サ
シメ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ
又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四條本法ニ依リアルコールヲ混入シ
タル揮發油ヨリアルコールヲ分離スル
コトヲ得ズ
第五條揮發油ノ製造、輸入又ハ移入ヲ
業トスル者第一條第一項但書ノ規定ニ
依リアルコールヲ混入セズシテ揮發油
ヲ搬出シ又ハ引渡サントスルトキハ命
令ノ定ムル所ニ依リ其ノ揮發油ニ付ア
ルコールヲ混入セザル揮發油ナルコト
ヲ識別シ得ベキ標章ヲ附スベシ
前項ノ規定ニ依リ附シタル標章ハ正當
ノ理由ナクシテ之ヲ抹消シ、除却シ又
ハ隱蔽スルコトヲ得ズ
第一項ノ規定ニ依リ標章ヲ附シタル揮
發油ハ之ヲ命令ヲ以テ定ムル用途以外
ノ用ニ供シ又ハ供スル目的ヲ以テ讓受
ケ若ハ供スルモノナルコトヲ知リテ讓
渡スコトヲ得ズ
第六條政府ハ揮發油ノ製造、輸入若ハ
移入ヲ業トスル者又ハ業務上揮發油ノ
使用、販賣其ノ他ノ取扱ヲ爲ス者ニ對
シ第一條第一項但書ノ規定ニ依リアル
コールヲ混入セザル揮發油ノ搬出、引
渡使用、販賣其ノ他ノ取扱ニ關シ取
締上必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第七條行政官廳取締上必要アリト認ム
ルトキハ當該官吏ヲシテ揮發油ノ製造、
輸入若ハ移入ヲ業トスル者又ハ業務上
揮發油ノ使用、販賣其ノ他ノ取扱ヲ爲
ス者ノ事務所、營業所、工場、貯油所
其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況又ハ
帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ
示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第八條揮發油ノ製造、輸入又ハ移入ヲ
業トスル者第一條ノ規定ニ違反シアル
コールヲ混入セズシテ揮發油ヲ搬出シ、
使用シ又ハ引渡シタルトキハ三千圓以
下ノ罰金ニ處ス
第九條揮發油ノ製造、輸入又ハ移入ヲ
業トスル者左ノ各號ノ一ニ該當スルト
キハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
-第二條第一項ノ規定ニ違反シ認可
ヲ受ケザルアルコール混入計畫ヲ實
施シタルトキ
二第二條第二項ノ規定ニ依ル命令ニ
違反シアルコール混入計畫ヲ變更セ
ズシテ之ヲ實施シタルトキ
三第五條第一項ノ規定ニ違反シ標章
ヲ附セズシテアルコールヲ混入セザ
ル揮發油ヲ搬出シ又ハ引渡シタルト
キ
第十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千
圓以下ノ罰金ニ處ス
-第四條ノ規定ニ違反シタル者
二第五條第二項又ハ第三項ノ規定ニ
違反シタル者
第十一條揮發油ノ製造、輸入若ハ移入
ヲ業トスル者又ハ業務上揮發油ノ使用、
販賣其ノ他ノ取扱ヲ爲ス者第六條ノ命
令ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ罰金
三四六、
第十二條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
五百圓以下ノ罰金ニ處ス
ー第三條ノ規定ニ依ル報告ヲ爲サズ
若ハ虚僞ノ報告ヲ爲シ又ハ監督上必
要ナル命令若ハ處分ニ違反シタル
者
二第七條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ臨
檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ
其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虚
僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第十三條揮發油ノ製造、輸入若ハ移入
ヲ業トスル者又ハ業務上揮發油ノ使
用、販賣其ノ他ノ取扱ヲ爲ス者ハ其ノ
代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從
業者ガ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ
基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス
處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ
出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルル
コトヲ得ズ
第十四條本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ
法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ
法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年
者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代
理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年
者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
揮發油ノ製造、輸入又ハ移入ヲ業トスル
者ハ本法施行ノ日ヨリ命令ヲ以テ定ムル
期間ヲ限リ第一條ノ規定ニ拘ラズ揮發油
ニアルコールヲ混入セザルコトヲ得
貿易組合法案
貿易組合法
第一章貿易組合
第一節總則
第一條貿易組合ハ輸出組合及輸入組合
ノ二種トス
第二條貿易組合ハ貿易ノ振興ヲ圖ル爲
共同ノ施設ヲ爲スヲ以テ目的トス
第三條貿易組合ハ法人トス
第四條貿易組合ハ其ノ名稱中ニ其ノ種
類ニ從ヒ輸出組合又ハ輸入組合ナル文
字ヲ用フベシ
貿易組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱中ニ
輸出組合、輸入組合又ハ貿易組合ナル
文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第五條主務大臣ハ本法ニ依ル職權ノ一
部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第六條本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登
記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ對抗
スルコトヲ得ズ
第七條本法ニ依リ登記スベキ事項ハ其
ノ事實ノ生ジタル後二週間以內ニ之ヲ
登記スベシ
登記スベキ事項ニシテ主務大臣ノ認可
ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタ
ル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第八條非訟事件手續法第百四十一條乃
至第百五十一條ノ六、第百五十四條乃
至第百五十八條及第百六十五條竝ニ產
業組合法第五條、第六條、第九十六條、
第九十七條及第百四條ノ規定ハ貿易組
合ニ之ヲ準用ス
第二節輸出組合
第九條同一種類ノ重要輸出品ノ輸出ヲ
業トスル者又ハ同一市場ヲ目的トシテ
商品ノ輸出ヲ業トスル者ハ輸出組合ヲ
設立スルコトヲ得但シ特別ノ事情アル
トキハ取扱商品ヲ異ニスル重要輸出品
ノ輸出ヲ業トスル者ヲ以テ之ヲ設立ス
ルコトヲ得
前項ノ重要輸出品ハ主務大臣之ヲ指定
ス
第十條同一又ハ重複スル地區ニ於テ二
箇以上ノ同種ノ輸出組合ヲ設立スルコ
トヲ得ズ但シ特別ノ事情アルトキハ此
ノ限ニ在ラズ
第十一條輸出組合ハ左ノ事業ヲ行フコ
トヲ得
-組合員ノ營業ニ關スル統制
二組合員ノ取扱商品ノ委託輸出、輸
出ノ斡旋、保管、選別、包裝、荷造
其ノ他組合員ノ營業ニ關スル共同施
設
三海外市場ノ調査、新販路ノ開拓其
ノ他組合ノ目的ヲ達スルニ必要ナル
施設
組合ハ前項ノ事業ノ外組合員ノ取扱商
品ノ買取輸出、組合員ニ對シ其ノ營業
ニ必要ナル資金ノ貸付、組合員ノ爲ニ
スル其ノ營業上ノ債務ノ保證又ハ組合
員ノ貯金ノ受入ヲ併セ行フコトヲ得
第一項ニ揭グル組合ノ施設ハ組合員ノ
利用ニ支障ナキ場合ニ限リ組合員ニ非
ザル者ヲシテ命令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ利用セシムルコトヲ得
第十二條營業上ノ弊害ヲ豫防シ若ハ矯
正スル爲又ハ貿易ノ振興上必要アリト
認ムルトキハ主務大臣ハ輸出組合ニ對
シ必要ナル施設ヲ命ズルコトヲ得
第十三條輸出組合ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ其ノ經費ヲ組合員ニ分賦スルコト
ヲ得
第十四條輸出組合ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ定款違反者ニ對シ過怠金ヲ課スル
コトヲ得
第十五條輸出組合定款ノ定ムル所ニ依
リ組合員ノ營業ニ關スル統制ヲ行フ場
合ニ於テハ總會ノ議決ヲ經テ之ニ關ス
ル規程ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベ
シ其ノ規程ヲ變更セントスル場合亦同
第十六條輸出組合第十一條第一項第一
號ノ事業ニ關スル定款ノ規定又ハ前條
ノ規程ヲ定メ又ハ變更セントスル場合
ニ於テ總會ノ可決セザリシトキト雖モ
貿易ノ振興上組合員ノ營業ノ統制ヲ圖
ル必要アルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受
ケ總會ヲ開キ總組合員ノ三分ノ一以上
ニシテ其ノ輸出高ガ總組合員ノ輸出高
ノ三分ノ二以上ヲ占ムル組合員ノ同意
ヲ以テ之ガ議決ヲ爲スコトヲ得但シ第
九條第一項但書ノ規定ニ依リ設立シタ
ル組合ニ在リテハ取扱商品每ニ各總組
合員ノ三分ノ一以上ニシテ其ノ輸出高
ガ總組合員ノ輸出高ノ三分ノ二以上ノ
同意アルコトヲ要ス
第十七條輸出組合第十五條ノ規程ニ基
キ組合又ハ組合員ノ輸出數量、輸出價
格其ノ他命令ノ定ムル事項ニ付決定ヲ
爲シタルトキハ遲滯ナク之ヲ主務大臣
ニ屆出ヅベシ
主務大臣必要アリト認ムルトキハ前項
ノ決定ノ變更又ハ取消ヲ爲スコトヲ得
第十八條營業上ノ弊害ヲ豫防シ若ハ矯
正スル爲又ハ貿易ノ振興上特ニ必要ア
リト認ムルトキハ主務大臣ハ輸出組合
ノ組合員、其ノ組合ノ組合員ニ非ズシ
テ其ノ組合ノ地區內ニ於テ組合員タル
資格ヲ有スル者又ハ其ノ組合ノ組合員
タル資格ヲ有セザル者ニシテ其ノ組合
ノ地區內ニ於テ其ノ組合ノ組合員ノ取
扱商品ト同種ノ商品ヲ販賣ノ目的ヲ以
テ輸出ヲ爲スモノ若ハ其ノ組合ノ組合員
ト同一市場ヲ目的トシテ商品ヲ販賣ノ目
的ヲ以テ輸出ヲ爲スモノニ對シ其ノ組合
ノ統制ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十九條前條ノ規定ニ依リ主務大臣輸
出組合ノ統制ニ從フベキコトヲ命ジタ
ル場合ニ於テ其ノ統制ニ從ヒ輸出スベ
キ商品ノ輸出ヲ爲サントスル者ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ其ノ商品ガ其ノ統制
ニ從ヒテ輸出セラルルモノナルコトニ
付行政官廳ノ檢閱ヲ受クベシ
第二十條主務大臣第十八條ノ規定ニ依
リ輸出組合ノ統制ニ從フベキコトヲ命
ジタル場合ニ於テ其ノ統制ニ從ヒ輸出
スベキ商品ノ輸出ニ關シ取締上必要ア
リト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ保稅
地域内ニ於テ又ハ店舗、倉庫、工場其
ノ他ノ場所ニ臨檢シ物品、帳簿其ノ他
ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ當該官吏ハ輸出組合
ノ檢査員ヲシテ必要ナル補助ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テ當該官吏第十八條
ノ規定ニ依ル命令又ハ前條ノ規定ニ違
反シテ商品ノ輸出ヲ爲シ又ハ輸出ヲ爲
サントシタル者アリト認ムルトキハ被
疑者若ハ參考人ヲ尋問シ又ハ犯罪ノ事
實ヲ證明スベキ物件ヲ搜索シ若ハ之ガ
差押ヲ爲スコトヲ得
臨檢、尋問、搜索及差押ニ關シテハ間
接國稅犯則者處分法ヲ準用ス
第二十一條同一種類ノ重要輸出品ノ輸
出ヲ業トスル者ヲ以テ設立セル輸出組
合又ハ其ノ組合員ハ其ノ營業ニ關スル
重要物產同業組合法ニ依ル同業組合ニ
加入セズ又ハ之ヨリ脫退スルコトヲ得
第二十二條輸出組合ヲ設立セントスル
トキハ豫メ地區ヲ定メ其ノ地區內ニ於
テ組合員タル資格ヲ有スル者ノ過半數
ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款其ノ
他必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ選任シ主
務大臣ノ認可ヲ受クベシ但シ第九條第
一項但書ノ場合ニ於テハ取扱商品每ニ
各組合員タル資格ヲ有スル者ノ過半數
ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ同意ヲ得ルコト能ハザルトキト
雖モ特別ノ事由アル場合ニ於テハ主務
大臣ノ認可ヲ受ケ創立總會ヲ招集スル
コトヲ得
第二十三條創立總會ニ於ケル議決及役
員ノ選任ハ設立同意者ノ三分ノ二以上
ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス但シ第九條第一
項但書ノ場合ニ於テハ取扱商品每ニ各
設立同意者ノ三分ノ二以上ノ同意アル
コトヲ要ス
第二十四條設立同意者ハ創立總會ニ於
テ代理人ヲ以テ其ノ議決權ヲ行フコト
ヲ得
前項ノ代理人ハ設立同意者タルコトヲ
要ス但シ法人タル設立同意者ハ其ノ業
務ヲ執行スル役員又ハ支配人ヲ代理人
ト爲スコトヲ得
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ差出ス
ベシ
第二十五條輸出組合ノ定款ニハ左ノ事
項ヲ記載スベシ但シ第二十八條ノ規定
ニ依ル輸出組合ニ在リテハ第七號乃
至第九號、第四十五條ノ規定ニ依
ル輸出組合ニ在リテハ第六號乃至
第九號及第十五號ニ揭グル事項ハ之ヲ
記載スルコトヲ要セズ
一目的
二名稱
三地區
四事務所ノ所在地
五組合員タル資格ニ關スル規定
六組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
七出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
八剩餘金ノ處分及損失分擔ニ關スル
規定
九準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
十組合員ノ權利義務ニ關スル規定
十一事業及其ノ執行ニ關スル規定
十二役員ニ關スル規定
十三會議ニ關スル規定
十四會計ニ關スル規定
十五存立ノ時期又ハ解散ノ事由ヲ定
メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
第二十六條輸出組合ハ設立ノ認可アリ
タル時又ハ第四十五條第二項ノ規定ニ
依リ定款ノ作成アリタル時成立ス
第二十七條組合員ハ出資一口以上ヲ有
スベシ
組合員ノ有スベキ出資口數ハ五十口ヲ
超ユルコトヲ得ズ但シ特別ノ事由アル
トキハ定款ノ定ムル所ニ依リ之ヲ增加
スルコトヲ得
第二十八條第十一條第一項第二號及第
二項ノ事業ヲ行ハザル輸出組合ニ在リ
テハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ヲシ
テ出資ヲ爲サシメザルモノト爲スコト
ヲ得
第二十九條組合員ノ責任ハ第十三條ノ
規定ニ依ル費用負擔ノ外其ノ出資額ヲ
限度ス
第三十條輸出組合ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟ス
ルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ全
員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額(保證金
額)ヲ限度トシテ責任ヲ負擔スルモノ
ト爲スコトヲ得
第三十一條輸出組合ハ出資ノ第一囘ノ
拂込アリタル後二週間以內ニ各事務所
ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
但シ第二十八條ノ規定ニ依ル輸出組合
又ハ第四十五條ノ規定ニ依ル輸出組合
ニ在リテハ其ノ成立後二週間以內ニ之
ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ但シ第二十八
條ノ規定ニ依ル輸出組合ニ在リテハ第
三號及第四號ニ揚グル事項竝ニ第二十
五條第七號ニ揚グル事項、第四十五條
ノ規定ニ依ル輸出組合ニ在リテハ第三
號及第四號ニ揭グル事項竝ニ第二十五
條第七號及第十五號ニ揚グル事項ハ之
ヲ登記スルコトヲ要セズ
-第二十五條第一號乃至第三號、第
七號及第十五號ニ揭グル事項
二事務所
三出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ
總額
四第三十條ノ規定ニ依ル輸出組合ニ
在リテハ各組合員ノ氏名又ハ名稱、
住所及保證金額
五成立ノ年月日
六理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭グル事項中ニ變更ヲ生ジタル
トキハ其ノ登記ヲ爲スベシ但シ前項第
三號ニ揭グル事項ニ付テハ每事業年度
末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後一月
以內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第三十二條組合員ハ總組合員ノ五分ノ
一以上ノ同意ヲ得テ會議ノ目的タル事
項及其ノ招集ノ理由ヲ記載シタル書面
ヲ理事ニ提出シテ總會ノ招集ヲ請求ス
ルコトヲ得
理事ガ正當ノ理由ナクシテ前項ノ規定
ニ依ル請求アリタル後二週間以內ニ總
會招集ノ手續ヲ爲サザルトキハ請求者
ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スル
コトヲ得
第三十三條輸出組合ニハ理事及監事ヲ
置クベシ
理事及監事ハ總會ニ於テ組合員又ハ組
合員タル法人ノ業務ヲ執行スル役員ノ
中ヨリ之ヲ選任ス但シ組合設立當時ノ
理事及監事ハ創立總會ニ於テ第二十二
條第一項ノ場合ニ在リテハ設立同意者
又ハ設立同意者タル法人ノ業務ヲ執行
スル役員ノ中ヨリ、第四十五條第一項
ノ場合ニ在リテハ組合員タル資格ヲ有
スル者又ハ組合員タル資格ヲ有スル法
人ノ業務ヲ執行スル役員ノ中ヨリ之ヲ
選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
前項ニ該當セザル者ヨリ之ヲ選任スル
コトヲ得此ノ場合ニ於ケル選任ハ主務
大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
第一項ノ規定ニ依ル役員ノ外定款ノ定
ムル所ニ依リ他ノ役員ヲ置クコトヲ得
第三十四條第十一條第一項第一號ノ事
業ヲ行フ輸出組合ニシテ全國ヲ地區ト
スルモノ若ハ第十八條ノ規定ニ依ル命
令アリタルモノ又ハ第四十五條ノ規定
ニ依ル輸出組合ノ理事ノ選任及解任ハ
主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其
ノ效力ヲ生ゼズ
組合ガ前項ノ規定ノ適用ヲ受クルニ至
リタル場合ニ於テ現ニ其ノ職ニ在ル理
事ハ其ノ選任ニ付前項ノ規定ニ依ル認
可ヲ受ケタルモノト看做ス
第一項ニ揭グル組合ノ理事ノ選任ニ付
テハ前條第三項ノ規定ニ依ル認可ヲ受
クルコトヲ要セズ
第三十五條組合員ハ總會ニ於テ各一箇
ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ
依リ一人ニ付議決權總數ノ十分ノ三ヲ
超エザル範圍內ニ於テ出資口數ニ應ジ
二箇以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ
得
第三十六條組合員ハ代理人ヲ以テ議決
權ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之
ヲ出席ト看做ス
前項ノ代理人ハ組合員タルコトヲ要ス
但シ法人タル組合員ハ其ノ業務ヲ執行
スル役員又ハ支配人ヲ代理人ト爲スコ
トヲ得
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ組合ニ
差出スベシ
第三十七條經費ヲ組合員ニ分賦スル輸
出組合ニ在リテハ其ノ經費ノ收支豫算
及分賦收入方法ハ總會ノ議決ヲ經ベシ
但シ組合設立當時ノ經費ノ收支豫算及
分賦收入方法ハ創立總會ニ於テ之ヲ議
決スベシ
前項ノ總會ノ議決ハ總組合員ノ半數以
上出席シ其ノ議決權ノ四分ノ三以上ヲ
以テ之ヲ爲スベシ但シ定款ニ別段ノ定
アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十八條組合員タル資格ヲ有スル者
輸出組合ニ加入セントスルトキハ組合
ハ正當ノ理由ナクシテ加入ニ困難ナル
條件ヲ附シ又ハ其ノ加入ヲ拒ムコトヲ
得ズ
第三十九條組合員ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ一定ノ期間前ニ豫〓ヲ爲シ輸出組
合ノ承諾ヲ得タル場合ニハ事業年度ノ
終ニ於テ脫退スルコトヲ得
組合ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ承諾
ヲ拒ムコトヲ得ズ
第四十條檢査ヲ行フ輸出組合ニ在リテ
ハ檢査員ヲ置クベシ
檢査員ノ選任及解任ハ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ
第四十一條輸出組合ハ檢査員ノ服務ニ
關スル規程ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受
クベシ
第四十二條主務大臣必要アリト認ムル
トキハ檢査員ノ選任又ハ解任ヲ爲スコ
トヲ得
第四十三條主務大臣必要アリト認ムル
トキハ輸出組合ニ對シ經費ノ收支豫
莫其ノ分賦收入方法、定款又ハ第十
五條ノ規程ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第四十四條輸出組合ノ事業若ハ財產ノ
狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難ナリ
ト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲ガ法令、
定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シタル
トキ若ハ公益ヲ害スル虞アルトキハ主
務大臣ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一總會ノ決議ノ取消
二役員ノ解任
三事業ノ停止
四解散
第四十五條主務大臣貿易ノ統制ヲ圖リ
國民經濟ノ健全ナル發達ヲ期スル爲特
ニ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ地區及組合員タル資格ヲ定
メ其ノ地區內ニ於テ組合員タル資格ヲ
有スル者ニ對シ輸出組合ノ設立ヲ命ズ
ルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル
者主務大臣ノ指定スル期限迄ニ設立ノ
認可ヲ申請セザルトキハ主務大臣ハ定
款ノ作成其ノ他設立ニ關シ必要ナル處
分ヲ爲スコトヲ得
第四十六條前條第一項ノ規定ニ依リ輸
出組合ノ設立ヲ命ゼラレタルトキハ創
立總會ヲ開キ定款其ノ他必要ナル事項
ヲ定メ役員ヲ選任シ設立ノ認可ヲ申請
天ぷ
前項ノ創立總會ニ於ケル議決及役員ノ
選任ハ出席者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ
以テ之ヲ爲ス
第四十七條主務大臣第四十五條第二項
ノ規定ニ依リ定款ヲ作成シタルトキハ
輸出組合ノ理事及監事ヲ命ズ
前項ノ理事ハ遲滯ナク總會ヲ招集スベ
シ
前項ノ總會ニ於テハ組合設立當時ノ經
費ノ收支豫算及分賦收入方法ヲ議決ス
ベシ
第三十七條第二項ノ規定ハ前項ノ議決
ニ之ヲ準用ス
第四十八條第四十五條ノ規定ニ依ル輸
出組合ハ第十一條第一項第二號及第二
項ノ事業ヲ行フコトヲ得ズ
第四十九條第四十五條ノ規定ニ依ル輸
出組合成立シタルトキハ其ノ組合ノ地
區內ニ於テ組合員タル資格ヲ有スル者
ハ其ノ組合ノ組合員トス
第五十條第四十五條ノ規定ニ依ル輸出
組合ハ其ノ組合員ヲシテ出資ヲ爲サシ
ムルコトヲ得ズ
第五十一條第四十五條ノ規定ニ依ル輸
出組合ハ合併ヲ爲スコトヲ得ズ
第五十二條設立ノ登記ハ理事及監事ノ
全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
申請書ニハ定款及創立總會又ハ總會ノ
決議錄ノ謄本、組合ノ設立アリタルコ
トヲ證スル書面、出資ノ總口數ヲ證ス
ル書面、出資ノ第一囘ノ拂込アリタル
コトヲ證スル書面竝ニ理事及監事ノ資
格ヲ證スル書面ヲ添附スベシ但シ第四
十五條ノ規定ニ依ル輸出組合ニシテ主
務大臣ノ處分ニ因リ成立シタルモノニ
在リテハ創立總會又ハ總會ノ決議錄、
出資ノ總口數ヲ證スル書面及出資ノ第
一囘ノ拂込アリタルコトヲ證スル書面、
第四十五條ノ規定ニ依ル輸出組合ニシ
テ主務大臣ノ處分ニ因ラズシテ成立シ
タルモノ又ハ第二十八條ノ規定ニ依ル
輸出組合ニ在リテハ出資ノ總口數ヲ證
スル書面及出資ノ第一囘ノ拂込アリタ
ルコトヲ證スル書面ハ之ヲ添附スルコ
トヲ要セズ
第五十三條事務所ノ新設、移轉其ノ他
登記事項ノ變更ノ登記ハ理事又ハ〓算
人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ但シ合
併又ハ出資一口ノ金額若ハ保證金額ノ
減少ニ因ル變更ノ登記ハ理事及監事ノ
全員ヨリ之ヲ爲スベシ
申請書ニハ申請人ノ資格ヲ證スル書面
及登記事項ノ變更ヲ證スル書面ヲ添附
スベシ但シ前ニ登記ノ申請ヲ爲シタル
申請人ガ同一登記所ニ前項ノ申請ヲ爲
ス場合ニ於テハ其ノ資格ヲ證スル書面
ヲ添附スルコトヲ要セズ
出資一口ノ金額又ハ保證金額ノ減少ノ
登記申請書ニハ前項ニ規定スル書面ノ
外本法ニ依リ催告ヲ爲シタルコト及異
議ヲ述ベタル債權者アル場合ニ於テハ
之ニ對シ辨濟ヲ爲シ又ハ擔保ヲ供シタ
ルコトヲ證スル書面ヲ添附スベシ
第五十四條解散ノ登記ハ合併ニ因ル解
散ノ場合ニ於テハ解散シタルトキノ理
事及監事ノ全員、其ノ他ノ場合ニ於テハ
〓算人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
申請書ニハ解散ノ事由ヲ證スル書面及
理事ガ〓算人タラザル場合ニ於テハ申
請人ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スベシ
前條第三項ノ規定ハ合併ニ因ル解散ノ
登記ノ申請ニ之ヲ準用ス
輸出組合ガ命令ニ因リテ解散シタルト
キハ登記所ハ主務大臣ノ囑託ニ因リテ
登記ヲ爲スベシ
第五十五條〓算結了ノ登記ハ〓算人ノ
申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
第五十六條民法第四十四條第一項、第
四十五條第二項第三項、第四十八條、
第五十條、第五十二條第二項、第五十
三條乃至第五十五條、第五十九條、第
六十條、第六十一條第一項、第六十二
條、第六十四條、第六十六條、第七十
條及第七十三條乃至第八十三條、非訟
事件手續法第三十五條第二項、第三十
六條、第三十七條ノ二、第百三十六條
乃至第百三十八條、第百三十八條ノ三、
第百七十五條、第百七十六條及第百七
十八條竝ニ產業組合法第十條、第十一
條第一項、第十二條、第十八條乃至第
二十二條、第二十四條、第二十六條乃
至第三十一條ノ二、第三十三條、第三
十四條ノ二第一項、第三十五條、第三
十六條、第三十八條ノ二乃至第四十六
條、第四十八條、第五十一條乃至第五
十八條、第六十條、第六十條ノ二、第
六十二條(第一項第四號ヲ除ク)、第六
十三條第一項、第六十三條ノ二乃至第
六十五條、第六十六條第一項、第六十
七條、第六十八條、第七十條乃至第七
十三條、第七十四條第一項、第七十四
條ノ二第一項、第七十七條第三項及第
七十八條ノ規定(第二十八條ノ規定ニ
依ル輸出組合ニ付テハ產業組合法第十
一條第一項、第十二條、第十八條乃至
第二十二條、第四十條乃至第四十三條、
第四十四條第二項、第四十五條、第四
十六條、第四十八條、第五十三條乃至
第五十八條、第六十二條第二項但書、
第六十八條及第七十七條第三項ノ規定
ヲ、第四十五條ノ規定ニ依ル輸出組合
ニ付テハ產業組合法第十條、第十一條
第一項、第十二條、第十八條乃至第二十
二條、第四十條乃至第四十三條、第四
十四條第二項、第四十五條、第四十六
條、第四十八條、第五十一條第三號乃
至第五號、第五十二條乃至第五十八條、
第六十二條第一項第一號第三號、第六
十三條ノ二、第六十四條、第六十六條
第一項、第六十七條、第六十八條及第七
十七條第三項ノ規定ヲ除ク)ハ輸出組
合ニ準用ス但シ民法第四十五條第三項
及第四十八條第一項中一週間トアルハ
二週間トシ產業組合法中地方長官又ハ
監督官廳トアルハ主務大臣トス
第三節輸入組合
第五十七條同一種類ノ重要輸入品ノ輸
入ヲ業トスル者又ハ同一市場ヨリノ商
品ノ輸入ヲ業トスル者ハ輸入組合ヲ設
立スルコトヲ得但シ特別ノ事情アルト
キハ取扱商品ヲ異ニスル重要輸入品ノ
輸入ヲ業トスル者ヲ以テ之ヲ設立スル
コトヲ得
前項ノ重要輸入品ハ主務大臣之ヲ指定
ス
第五十八條輸入組合ハ左ノ事業ヲ行フ
コトヲ得
組合員ノ營業ニ關スル統制
二組合員ノ取扱商品ノ委託輸入、輸
入ノ斡旋其ノ他組合員ノ營業ニ關ス
ル共同施設
三海外市場ノ調査其ノ他組合ノ目的
ヲ達スルニ必要ナル施設
組合ハ前項ノ事業ノ外組合員ニ賣渡ス
目的ヲ以テ爲ス其ノ取扱商品ノ輸入、
組合員ニ對シ其ノ營業ニ必要ナル資金
ノ貸付、組合員ノ爲ニスル其ノ營業上
ノ債務ノ保證又ハ組合員ノ貯金ノ受入
ヲ併セ行フコトヲ得
第一項ニ揭グル組合ノ施設ハ組合員ノ
利用ニ支障ナキ場合ニ限リ組合員ニ非
ザル者ヲシテ命令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ利用セシムルコトヲ得
第五十九條前條第一項第二號及第二項
ノ事業ヲ行ハザル輸入組合ニ在リテハ
定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ヲシテ出
資ヲ爲サシメザルモノト爲スコトヲ得
第六十條第六十二條ノ規定ニ依リ準用
シタル第四十五條ノ規定ニ依ル輸入組
合ハ第五十八條第一項第二號及第二項
ノ事業ヲ行フコトヲ得ズ
第六十一條第五十八條第一項第一號ノ
事業ヲ行フ輸入組合ニシテ全國ヲ地區
トスルモノ若ハ第六十二條ノ規定ニ依
リ準用シタル第十八條ノ規定ニ依ル命
令アリタルモノ又ハ第六十二條ノ規定
ニ依リ準用シタル第四十五條ノ規定ニ
依ル輸入組合ノ理事ノ選任及解任ハ主
務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ
效力ヲ生ゼズ
組合ガ前項ノ規定ノ適用ヲ受クルニ至
リタル場合ニ於テハ現ニ其ノ職ニ在ル
理事ハ其ノ選任ニ付前項ノ規定ニ依ル
認可ヲ受ケタルモノト看做ス
第一項ニ揭グル組合ノ理事ノ選任ニ付
テハ第六十二條ノ規定ニ依リ準用シタ
ル第三十三條第三項ノ規定ニ依ル認可
ヲ受クルコトヲ要セズ
第六十二條第二節ノ規定ハ輸入組合ニ
之ヲ準用ス
第二章貿易組合聯合會
第六十三條貿易組合聯合會ハ輸出組合
聯合會、輸入組合聯合會及輸出入組合
聯合會ノ三種トス
第六十四條貿易組合聯合會ハ所屬ノ貿
易組合及貿易組合聯合會ノ共同ノ目的
ヲ達成スルヲ以テ目的トス
第六十五條貿易組合聯合會ハ法人トス
第六十六條貿易組合聯合會ハ其ノ名稱
中ニ其ノ種類ニ從ヒ輸出組合聯合會、
輸入組合聯合會又ハ輸出入組合聯合會
ナル文字ヲ用フベシ
貿易組合聯合會ニ非ザルモノハ其ノ名
稱中ニ輸出組合聯合會、輸入組合聯合
會輸出入組合聯合會又ハ貿易組合聯
合會ナル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第六十七條輸出組合聯合會ハ輸出組合
又ハ輸出組合聯合會ヲ以テ之ヲ組織ス
輸入組合聯合會ハ輸入組合又ハ輸入組
合聯合會ヲ以テ之ヲ組織ス
輸出入組合聯合會ハ輸出組合又ハ輸出
組合聯合會及輸入組合又ハ輸入組合聯
合會ヲ以テ之ヲ組織ス
第六十八條貿易組合聯合會ヲ設立セン
トスルトキ又ハ第七十一條ノ規定ニ依
リ準用シタル第四十五條ノ規定ニ依リ
其ノ設立ヲ命ゼラレタルトキハ命令ノ
定ムル所ニ依リ所屬ノ各組合及聯合會
ニ於テ選任シタル創立委員ヲ以テ創立
委員會ヲ開キ定款其ノ他必要ナル事項
ヲ定メ役員ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ
受クベシ
第六十九條創立委員會ニ於ケル議決及
役員ノ選任ハ創立委員總數ノ三分ノ二
以上ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
第二十四條ノ規定ハ創立委員ニ之ヲ準
用ス
前二項ノ規定ハ第七十一條ノ規定ニ依
リ準用シタル第四十五條ノ規定ニ依ル
貿易組合聯合會ニ付テハ之ヲ適用セズ
第七十條貿易組合聯合會ノ理事及監事
ハ總會ニ於テ所屬ノ組合及聯合會ノ理
事又ハ監事ノ中ヨリ之ヲ選任ス但シ聯
合會設立當時ノ理事及監事ハ創立委員
會ニ於テ之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
前項ニ該當セザル者ヨリ之ヲ選任スル
コトヲ得此ノ場合ニ於ケル選任ハ主務
大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
第七十一條貿易組合ニ關スル規定ハ第
十六條及第五十六條ノ規定ニ依リ準用
シタル產業組合法第三十八條ノ二ノ規
定ヲ除クノ外貿易組合聯合會ニ之ヲ準
用ス但シ第十一條及第五十八條中組合
員トアルハ所屬ノ組合、聯合會及組合
員トシ、第十八條中其ノ組合ノ組合員
ニ非ズシテ其ノ組合ノ地區內ニ於テ組
合員タル資格ヲ有スル者又ハ其ノ組合
ノ組合員タル資格ヲ有セザル者ニシテ
其ノ地區內ニ於テ其ノ組合ノ組合員ノ
取扱商品ト同種ノ商品ヲ販賣ノ目的ヲ
以テ輸出ヲ爲スモノ若ハ其ノ組合ノ
組合員ト同一市場ヲ目的トシテ商品ヲ
販賣ノ目的ヲ以テ輸出ヲ爲スモノトアル
ハ所屬ノ組合又ハ聯合會ニ非ズシテ所屬
ノ組合又ハ聯合會タル資格ヲ有スル組
合又ハ聯合會トシ、第三十四條及第六
十一條中全國トアル道府縣ノ區域ヲ超
ユル區域トス
第三章貿易組合中央會
第七十二條貿易組合中央會ハ貿易組合
及貿易組合聯合會ノ普及、發達及聯絡
ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第七十三條貿易組合中央會ハ法人トス
第七十四條貿易組合中央會ハ其ノ名稱
中ニ貿易組合中央會ナル文字ヲ用フベシ
貿易組合中央會ニ非ザルモノハ其ノ名
稱中ニ貿易組合中央會ナル文字ヲ用フ
ルコトヲ得ズ
第七十五條貿易組合中央會ハ全國ヲ通
ジテ一箇トシ其ノ設立ハ主務大臣ノ認
可ヲ受クベシ
中央會ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十六條貿易組合中央會ハ貿易組合
又ハ貿易組合聯合會ヲ以テ之ヲ組織ス
第七十七條貿易組合中央會ノ定款ニハ
左ノ事項ヲ記載スベシ
一目的
二名稱
三事務所ノ所在地
會員ノ加入及脫退ニ關スル規定
會員ノ權利義務ニ關スル規定
八七六五四資產ニ關スル規定
事業及其ノ執行ニ關スル規定
役員ニ關スル規定
九會議ニ關スル規定
十存立ノ時期又ハ解散ノ事由ヲ定メ
タルトキハ其ノ時期又ハ事由
第七十八條貿易組合中央會設立ノ認可
アリタルトキハ其ノ事務所ノ所在地ニ
於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
-前條第一號、第二號及第十號ニ揭
グル事項
二事務所
三資產ノ總額
四成立ノ年月日
五理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭グル事項中ニ變更ヲ生ジタル
トキハ其ノ登記ヲ爲スベシ但シ前項第
三號ニ揭グル事項ニ付テハ每事業年度
末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後二月
以內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第七十九條貿易組合中央會ニハ理事及
監事ヲ置クベシ
第八十條貿易組合中央會ノ理事及監事
ハ總會ニ於テ會員タル貿易組合又ハ貿
易組合聯合會ノ理事又ハ監事ノ中ヨリ
之ヲ選任ス但シ中央會設立當時ノ理事
及監事ノ選任方法ハ勅令ノ定ムル所ニ
依ル
特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
前項ニ該當セザル者ヨリ之ヲ選任スル
コトヲ得此ノ場合ニ於ケル選任ハ主務
大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
第八十一條第六條乃至第八條、第二十
六條、第三十二條、第三十五條、第三
十八條、第四十三條、第四十四條及第
五十二條乃至第五十六條ノ規定ハ貿易
組合中央會ニ之ヲ準用ス但シ第八條ノ
規定ニ依リ準用シタル非訟事件手續法
第百四十一條竝ニ第五十六條ノ規定ニ
依リ準用シタル產業組合法第十一條第
一貫、第十二條、第十八條乃至第二十
二條、第四十條乃至第四十六條、第四
十八條、第五十一條乃至第五十八條、
第六十三條ノ二、第六十四條、第六十
六條第一項、第六十七條、第六十八
條、第七十七條第三項及第七十八條ノ
規定ヲ除ク
第四章罰則
第八十二條左ノ場合ニ於テハ貿易組合、
貿易組合聯合會又ハ貿易組合中央會ノ
理事、監事又ハ〓算人ヲ十圓以上五百
圓以下ノ過料ニ處ス
一本法ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ク
ベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザル
トキ
二本法ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
三本法ニ依ル屆出ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ屆出ヲ爲シタルトキ
四行政官廳又ハ總會若ハ總代會ニ對
シ不實ノ申立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽
シタルトキ
五本法ニ依リ行政官廳ノ徵スル報〓
ヲ差出サズ又ハ其ノ檢査ヲ拒ミ其ノ
他行政官廳ノ命令又ハ處分ニ從ハザ
ルトキ
六本法ニ依ル總會又ハ總代會ノ招集
ヲ怠リタルトキ
七本法ニ依リ事務所ニ備置クベキ書
類ヲ備ヘザルトキ、其ノ書類ニ記載
スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記
載ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ理由ナ
クシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
八本法ニ違反シテ組合員又ハ所属ノ
組合若ハ聯合會ノ持分ヲ拂戾シタル
トキ
九本法ニ違反シテ組合又ハ聯合會ガ
組合員若ハ所屬ノ組合又ハ聯合會ノ
持分ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ
之ヲ受ケタルトキ
十本法ニ違反シテ破產ノ宣告ヲ請求
セザルトキ
十一本法ニ違反シテ出資一口ノ金額
若ハ保證金額ヲ減少シ、脫退シタル
組合員若ハ所属ノ組合若ハ聯合會ノ
責任期間ノ短縮ヲ爲シ又ハ組合若ハ
聯合會ノ合併ヲ爲シタルトキ
十二本法ニ依ル公〓ヲ爲スコトヲ怠
リ又ハ不正ノ公〓ヲ爲シタルトキ
十三〓算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シ
テ辨濟ヲ爲シ又ハ財產ノ分配ヲ爲シ
タルトキ
十四法令又ハ定款ニ違反シテ剩餘金
ヲ處分シタルトキ
十五組合、聯合會又ハ中央會ノ目的
ニ非ザル營利事業ヲ爲シタルトキ
第八十三條第四條第二項、第六十六條
第二項又ハ第七十四條第二項ノ規定ニ
違反シタル者ハ十圓以上五百圓以下ノ
過料ニ處ス
第八十四條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料
ニ之ヲ準用ス
第八十五條第十八條ノ規定(第六十二
條又ハ第七十一條ノ規定ニ依リ準用ス
ル場合ヲ含ム)ニ依ル行政官廳ノ命令
ニ違反シタル者又ハ其ノ命令ニ違反シ
テ商品ノ輸出若ハ輸入ヲ爲サントシタ
ル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十九條ノ規定(第六十二條又ハ第七
十一條ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ含
ム)ニ違反シテ商品ノ輸出若ハ輸入ヲ
爲シ又ハ爲サントシタル者亦前項ニ同
ジ
前二項ノ場合ニ於テハ犯人ノ所有シ又
ハ所持スル商品ヲ沒收スルコトヲ得若
シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能
ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵スルコト
ヲ得
第八十六條輸出又ハ輸入ヲ業トスル者
ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、
雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ
前條ノ罪ヲ犯シタルトキハ自己ノ指揮
ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ル
ルコトヲ得ズ
第八十七條第八十五條ノ罰則ハ其ノ者
ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他
ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成
年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定
代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
第八十八條正當ノ理由ナクシテ第二十
條ノ規定(第六十二條又ハ第七十一條
ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ含ム)ニ
依ル當該官吏ノ臨檢、檢査、搜索又ハ
差押ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ
五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十九條貿易組合又ハ貿易組合聯合
會ノ證票若ハ檢査證ヲ不正ニ使用シタ
ル者、行使ノ目的ヲ以テ證票若ハ檢査
證ヲ僞造若ハ變造シタル者又ハ僞造若
ハ變造ノ證票若ハ檢査證ヲ使用シタル
者ハ三年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰
金ニ處ス
第九十條貿易組合又ハ貿易組合聯合會
ノ理事、監事若ハ〓算人又ハ檢査員其
ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要
求若ハ約束シタルトキハ一一年以下ノ懲
役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相
當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下ノ
懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若ハ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追
徵ス
第九十一條前條第一項ニ揭グル者ニ對
シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者
ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第九十二條第八十九條ニ掲グル罪ハ刑
法第三條ノ例ニ、第九十條ニ揭グル罪
ハ刑法第四條ノ例ニ從フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
輸出組合法ハ之ヲ廢止ス
舊法ニ依リ設立セラレタル輸出組合又ハ
輸出組合聯合會ニシテ本法施行ノ際現ニ
存スルモノハ本法ニ依ル輸出組合又ハ輸
出組合聯合會ト看做ス
本法施行ノ際貿易組合、貿易組合聯合會
又ハ貿易組合中央會ニ非ズシテ其ノ名稱
中ニ輸出組合、輸入組合、貿易組合、輸
出組合聯合會、輸入組合聯合會、輸出入
組合聯合會、貿易組合聯合會又ハ貿易組
合中央會ナル文字ヲ用フルモノハ本法施
行後六月以内ニ其ノ名稱ヲ變更スルコト
am 八
第八十三條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前
項ニ揭グルモノニ適用セズ
舊法ニ依リテ爲シタル認可、處分、手續
其ノ他ノ行爲ハ設立ノ認可ヲ除クノ外本
法中之ニ相當スル規定アル場合ニ於テハ
本法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第三十四條第一項(第七十一條ノ規定ニ
依リ準用スル場合ヲ含ム)ニ該當スル輸
出組合又ハ輸出組合聯合會ノ理事ニシテ
本法施行ノ際現ニ其ノ職ニ在ル者ハ其ノ
選任ニ付同條ニ依リ認可ヲ受ケタルモノ
ト看做ス
本法施行前舊法ノ罰則ヲ適用スベカリシ
行爲ニ付テハ仍舊法ニ依ル
登錄稅法第十九條第七號中「輸出組合、
輸出組合聯合會」ヲ「貿易組合、貿易組合
聯合會、貿易組合中央會」ニ、「輸出組合
法」ヲ「貿易組合法」ニ改ム
印紙稅法第四條第一項第十一號中「輸出
組合又ハ輸出組合聯合會」ヲ「貿易組合又
ハ貿易組合聯合會」三四人
商工組合中央金庫法中「輸出組合」ヲ「貿
易組合」ニ、「輸出組合聯合會」ヲ「貿易組
合聯合會」ニ改ム
貿易調整法案
貿易調整法
第一條政府ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル
場合ニ於テ特ニ必要アリト認ムルトキ
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ貿易審議會ノ
議ヲ經テ期間及物品ヲ指定シ輸出又ハ
輸入ノ制限又ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
貿易ニ關スル條約若ハ之ニ準ズベ
キモノニ依リ又ハ特定國トノ輸出及
輸入ノ均衡ヲ圖ル爲貿易ヲ調節セン
トスルトキ
二貿易業者ノ不當ナル競爭ニ因リ輸
出品又ハ輸入品ノ海外市場ニ於ケル
價格ノ著シキ低落又ハ騰貴其ノ他貿
易上ノ弊害ヲ生ジ又ハ生ズルノ虞ア
ル場合ニ於テ之ヲ矯正シ又ハ豫防セ
ントスルトキ
三產業上必要ナル重要輸入品ノ供給
ヲ適正ナラシメントスルトキ
第二條政府ハ前條各號ノ一ニ該當スル
場合ニ於テ輸出品若ハ輸入品ニ關スル
業ヲ營ム者又ハ輸出品若ハ輸入品ニ關
スル事業ヲ行フ組合ヲシテ輸出品又ハ
輸入品ニ付統制ヲ行ハシムル必要アリ
ト認ムルトキハ貿易審議會ノ議ヲ經テ
貿易統制委員會ヲシテ其ノ統制ニ關シ
必要ナル重要事項ヲ調査審議セシムル
コトヲ得
第三條政府ハ輸出品又ハ輸入品ニ關ス
ル統制ニ付輸出品若ハ輸入品ニ關スル
業ヲ營ム者又ハ輸出品若ハ輸入品ニ關
スル事業ヲ行フ組合ノ間ノ共同ノ利
害ヲ調整スル爲必要アリト認ムルトキ
ハ貿易審議會ノ議ヲ經テ貿易統制委員
會ヲシテ其ノ調整ニ關シ必要ナル重要
事項ヲ調査審議セシムルコトヲ得
第四條政府ハ前二條ノ場合ニ於テ貿易
ノ健全ナル發達ヲ圖ル爲特ニ必要アリ
ト認ムルトキハ輸出品若ハ輸入品ニ關
スル業ヲ營ム者又ハ輸出品若ハ輸入品
ニ關スル事業ヲ行フ組合ニ對シ貿易統
制委員會ノ議決シタル事項ニ從フベキ
コトヲ命ズルコトヲ得
第五條輸出品若ハ輸入品ニ關スル業ヲ
營ム者又ハ輸出品若ハ輸入品ニ關スル
事業ヲ行フ組合ノ範圍ハ命令ヲ以テ之
日本土
第六條本法ニ定ムルモノノ外貿易審議
會及貿易統制委員會ニ關シ必要ナル事
項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第
一條ノ規定ニ依リテ爲ス制限若ハ禁
止、第二條ノ統制又ハ第三條ノ利害調
整ニ關係アル事項ニ付報告ヲ徵シ又ハ
帳簿其ノ他ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第八條第一條ノ規定ニ依リテ爲ス制限
又ハ禁止ニ違反シテ輸出若ハ輸入ヲ爲
シ又ハ爲サントシタル者ハ一年以下ノ
懲役若ハ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ
處ス
前項ノ場合ニ於テハ輸出若ハ輸入ヲ爲
シ又ハ爲サントシタル物品ニシテ犯人
ノ所有シ又ハ所持スルモノヲ沒收スル
コトヲ得若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價格ヲ追
徴スルコトヲ得
第九條第四條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十條第七條ノ規定ニ基キテ發スル勅
令ニ依ル報告ヲ爲サズ、虛僞ノ報〓ヲ
爲シ又ハ帳簿其ノ他ノ檢査ヲ拒ミ、妨
ゲ若ハ忌避シタル者ハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス本法ニ基キテ發スル勅令ニ依
リ政府ニ提出スル許可ノ申請書其ノ他ノ
書類ニ虚僞ノ記載ヲ爲シタル者亦同ジ
第十一條輸出品若ハ輸入品ニ關スル業
ヲ營ム者又ハ輸出品若ハ輸入品ニ關ス
ル事業ヲ行フ組合ハ其ノ代理人、戶主、
家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務
ニ關シ前三條ノ罪ヲ犯シタルトキハ自
己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處
罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十二條本法ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナ
ルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ
業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ
禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ
之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同
一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此
ノ限ニ在ラズ
第十三條前二條ノ場合ニ於テハ懲役又
ハ禁錮ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第十四條本法ノ罰則ハ本法施行地ニ本
店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代
表者、代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ
本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ
之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル
人又ハ其ノ代理人、使用人其ノ他ノ從
業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行
爲ニ付亦同ジ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ施行後五年間ヲ限リ其ノ效力ヲ有
ス
前項ノ期間內ニ爲サレタル本法ニ依リ處
罰セラルル行爲ニ付テハ本法ノ罰則ハ前
項ノ期間經過後ト雖モ仍之ヲ適用ス
工業組合法中改正法律案
工業組合法中左ノ通改正ス
第一條工業者ハ其ノ工業ノ改良發達ヲ
圖ル爲共同ノ施設ヲ爲ス目的ヲ以テ工
業組合ヲ設立スルコトヲ得但シ特別ノ
事情アルトキハ二種以上ノ工業者ヲ以
テ之ヲ設立スルコトヲ得
第三條第二項中「資金ノ貸付」ノ下ニ「組
合員ノ爲ニスル其ノ營業上ノ債務ノ保
證」ヲ加フ
第四條工業組合ハ其ノ名稱中ニ工業組
合ナル文字ヲ用フベシ但シ第二十八條
ノ三ノ規定ニ依ル工業組合ハ統制工業
組合ナル文字ヲ用フベシ
工業組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱中ニ
工業組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第二十八條ノ三ノ規定ニ依ル工業組合
ニ非ザルモノハ其ノ名稱中ニ統制工業
組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第五條中「ノ一部」ヲ削ル
第六條工業組合ハ定款ノ定ムル所ニ依
リ定款違反者ニ對シ過怠金ヲ課シ又ハ
其ノ違反ニ係ル工產品ニシテ違反者ノ
所有スルモノニ付抑留其ノ他必要ナル
處分ヲ爲シ特ニ必要アルトキハ沒收ヲ
爲スコトヲ得
第六條ノ二中「行フ場合ニ於テハ」ノ下ニ
「總會ノ議決ヲ經テ」ヲ加フ
第六條ノ三工業組合前條ノ規程ニ基キ
製造又ハ加工ノ數量、販賣價格、加工
料金其ノ他命令ノ定ムル事項ニ付決定
ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク之ヲ行政官
廳ニ屆出ヅベシ
行政官廳必要アリト認ムルトキハ前項
ノ決定ノ變更又ハ取消ヲ爲スコトヲ得
第七條營業上ノ弊害ヲ豫防シ若ハ矯正
スル爲又ハ工業ノ健全ナル發達ヲ圖ル
爲必要アリト認ムルトキハ行政官廳ハ
工業組合ニ對シ必要ナル施設ヲ命ズル
コトヲ得
第八條中「又ハ矯正スル爲」ヲ「若ハ矯正
スル爲又ハ工業ノ健全ナル發達ヲ圖ル
爲」ニ改ム
第八條ノ二前條ノ規定ニ依ル命令アリ
タル場合ニ於テ行政官廳取締上必要ア
リト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ工場、
倉庫、店舗其ノ他ノ場所ニ臨檢シ物品、
帳簿其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコト
ヲ得
前項ノ場合ニ於テ當該官吏ハ工業組合
ノ檢査員ヲシテ必要ナル補助ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テ當該官吏前條ノ規
定ニ依ル命令ニ違反シタル者アリト認
ムルトキハ被疑者若ハ參考人ヲ尋問シ
又ハ犯罪ノ事實ヲ證明スベキ物件ヲ搜
索シ若ハ之ガ差押ヲ爲スコトヲ得
臨檢、尋問、搜索及差押ニ關シテハ間
接國稅犯則者處分法ヲ準用ス
第八條ノ三行政官廳第八條ノ規定ニ依
ル命令ヲ遵守セシムル爲特ニ必要アリ
ト認ムルトキハ其ノ命令ニ從フベキ者
ニ對シ其ノ製造又ハ加工ノ設備ノ使用
ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ行政官廳取締上必要
アリト認ムルトキハ製造又ハ加工ノ設
備ニ付封印ヲ施シ、其ノ要部ヲ取外シ
其ノ他必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第十四條第一項但書ヲ削リ同項ノ次ニ左
ノ一項ヲ加フ
前項ノ代理人ハ設立同意者タルコトヲ
要ス但シ法人タル設立同意者ハ其ノ業
務ヲ執行スル役員又ハ支配人ヲ代理人
ト爲スコトヲ得
第十五條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第二十八條ノ三ノ規定ニ依ル工業
組合ニ在リテハ第六號乃至第九號及第
十五號ニ揭ゲタル事項ハ之ヲ記載スル
コトヲ要セズ
第十五條ノ二工業組合ハ設立ノ認可ア
リタル時又ハ第二十八條ノ三第二項ノ
規定ニ依リ定款ノ作成アリタル時成立
ス
第十六條工業組合ハ出資ノ第一囘ノ拂
込アリタル後二週間以内ニ各事務所ノ
所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ但
シ第二十八條ノ三ノ規定ニ依ル工業組
合ニ在リテハ其ノ成立後二週間以内ニ
之ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ但シ第二十八
條ノ三ノ規定ニ依ル工業組合ニ在リテ
ハ第三號及第四號ニ揭ゲタル事項竝ニ
第十五條第七號及第十五號ニ揭ゲタル
事項ハ之ヲ登記スルコトヲ要セズ
一第十五條第一號乃至第三號、第七
號及第十五號ニ揭ゲタル事項
二事務所
三出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ
總額
四第十八條ノ二ノ規定ニ依ル工業組
合ニ在リテハ各組合員ノ氏名又ハ名
稱住所及保證金額
五成立ノ年月日
六理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭ゲタル事項中ニ變更ヲ生ジタ
ルトキハ其ノ登記ヲ爲スベシ但シ前項
第三號ニ揭ゲタル事項ニ付テハ每事業
年度末日ノ現在ニ依り事業年度終了後
一月以內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第二十條第二項及第三項ヲ左ノ如ク改ム
理事及監事ハ總會ニ於テ組合員又ハ組
合員タル法人ノ業務ヲ執行スル役員ノ
中ヨリ之ヲ選任ス但シ組合設立當時ノ
理事及監事ハ創立總會ニ於テ第十二條
第一項ノ場合ニ在リテハ設立同意者又
ハ設立同意者タル法人ノ業務ヲ執行ス
ル役員ノ中ヨリ、第二十八條ノ四第一
項ノ場合ニ在リテハ組合員タル資格ヲ
有スル者又ハ組合員タル資格ヲ有スル
法人ノ業務ヲ執行スル役員ノ中ヨリ之
ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
前項ニ該當セザル者ヨリ之ヲ選任スル
コトヲ得此ノ場合ニ於ケル選任ハ行政
官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
第二十條ノ二第三條第一項第一號ノ事
業ヲ行フ工業組合ニシテ全國ヲ地區ト
スルモノ若ハ第八條ノ規定ニ依ル命令
アリタルモノ又ハ第二十八條ノ三ノ規
定ニ依ル工業組合ノ理事ノ選任及解任
ハ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ
其ノ效力ヲ生ゼズ
組合ガ前項ノ規定ノ適用ヲ受クルニ至
リタル場合ニ於テ現ニ其ノ職ニ在ル理
事ハ其ノ選任ニ付前項ノ規定ニ依ル認
可ヲ受ケタルモノト看做ス
第一項ニ揭ゲタル組合ノ理事ノ選任ニ
付テハ前條第三項ノ規定ニ依ル認可ヲ
受クルコトヲ要セズ
第二十一條ノ二組合員ハ代理人ヲ以テ
議決權ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テ
ハ之ヲ出席ト看做ス
前項ノ代理人ハ組合員タルコトヲ要ス
但シ法人タル組合員ハ其ノ業務ヲ執行
スル役員又ハ支配人ヲ代理人ト爲スコ
トヲ得
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ組合ニ
差出スベシ
第二十二條第一項中「ノ一部」ヲ削ル
第二十八條中「又ハ定款」ヲ「、定款又ハ第
六條ノ二ノ規程」ニ改ム
第二十八條ノ三行政官廳當該工業ノ統
制ヲ圖リ國民經濟ノ健全ナル發達ヲ期
スル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ命
令ノ定ムル所ニ依リ地區及組合員タル
資格ヲ定メ其ノ地區內ニ於テ組合員タ
ル資格ヲ有スル者ニ對シ工業組合ノ設
立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル
者行政官廳ノ指定スル期限迄ニ設立ノ
認可ヲ申請セザルトキハ行政官廳ハ定
款ノ作成其ノ他設立ニ關シ必要ナル處
分ヲ爲スコトヲ得
第二十八條ノ四前條第一項ノ規定ニ依
リ工業組合ノ設立ヲ命ゼラレタルトキ
ハ創立總會ヲ開キ定款其ノ他必要ナル
事項ヲ定メ役員ヲ選任シ設立ノ認可ヲ
申請スベシ
前項ノ創立總會ニ於ケル議決及役員ノ
選任ハ出席者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ
以テ之ヲ爲ス
第二十八條ノ五行政官廳第二十八條ノ
三第二項ノ規定ニ依リ定款ヲ作成シタ
ルトキハ工業組合ノ理事及監事ヲ命ズ
前項ノ理事ハ遲滯ナク總會ヲ招集スベ
シ
前項ノ總會ニ於テハ組合設立當時ノ經
費ノ收支豫算及分賦收入方法ヲ議決ス
ベシ
第二十二條第二項ノ規定ハ前項ノ議決
ニ之ヲ準用ス
第二十八條ノ六第二十八條ノ三ノ規定
ニ依ル工業組合ハ第三條第一項第二號
及第二項ノ事業ヲ行フコトヲ得ズ
第二十八條ノ七第二十八條ノ三ノ規定
ニ依ル工業組合成立シタルトキハ其ノ
組合ノ地區內ニ於テ組合員タル資格ヲ
有スル者ハ其ノ組合ノ組合員トス
第二十八條ノ八第二十八條ノ三ノ規定
ニ依ル工業組合ハ其ノ組合員ヲシテ出
資ヲ爲サシムルコトヲ得ズ
第二十八條ノ九第二十八條ノ三ノ規定
ニ依ル工業組合ハ合併ヲ爲スコトヲ得
ズ
第三十條中「設立セムトスルトキ」ノ下ニ
「又ハ第三十三條ノ規定ニ依リ準用シタ
ル第二十八條ノ三ノ規定ニ依リ其ノ設立
ヲ命ゼラレタルトキ」ヲ加フ
第三十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
前二項ノ規定ハ第三十三條ノ規定ニ依
リ準用シタル第二十八條ノ三ノ規定ニ
依ル工業組合聯合會ニ付テハ之ヲ適用
セズ
第三十二條第一項中「又ハ所屬ノ工業者」
ノ下ニ「若ハ所屬ノ工業者タル法人ノ業
務ヲ執行スル役員」ヲ加ヘ同條第二項ヲ
左ノ如ク改ム
特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
前項ニ該當セザル者ヨリ之ヲ選任スル
コトヲ得此ノ場合ニ於ケル選任ハ行政
官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
第三十三條但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ第三條中組合員トアルハ所屬ノ組
合、聯合會、工業者及組合員トシ第一
十條ノ二中全國トアルハ道府縣ノ區域
ヲ超ユル區域トス
第三十四條第二項中「、總會又ハ創立委員
會ノ決議錄」ヲ「又ハ總會ノ決議錄ノ謄
本、組合ノ設立アリタルコトヲ證スル書
面」ニ改メ同項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第二十八條ノ三ノ規定ニ依ル工業
組合ニシテ行政官廳ノ處分ニ因リ成立
シタルモノニ在リテハ創立總會又ハ總
會ノ決議錄ノ謄本、出資ノ總口數ヲ證
スル書面及出資ノ第一囘ノ拂込アリタ
ルコトヲ證スル書面、其ノ他ノモノニ
在リテハ出資ノ總口數ヲ證スル書面及
出資ノ第一囘ノ拂込アリタルコトヲ證
スル書面ハ之ヲ添附スルコトヲ要セズ
第三十八條中「第三十五條乃至第三十七
條」ヲ「第三十五條、第三十六條」三菱八
「第百四條ノ規定」ノ下ニ「(第二十八條ノ
三ノ規定ニ依ル工業組合ニ付テハ產業組
合法第十條、第十一條第一項、第十二條、
第十八條乃至第二十二條、第四十條乃至
第四十三條、第四十四條第二項、第四十
五條、第四十六條、第四十八條、第五十
一條第三號乃至第五號、第五十二條乃至
第五十八條、第六十二條第一項第一號第
三號、第六十三條ノ二、第六十四條、第
六十六條第一項、第六十七條、第六十八
條及第七十七條第三項ノ規定ヲ除ク)」ヲ
加フ
第三十九條第三號ヲ第四號トシ以下順次
繰下ゲ同條第二號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
三本法ニ依ル屆出ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ屆出ヲ爲シタルトキ
第四十條中「第二項」ヲ「第二項(第三十三
條ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ含ム)又
ハ第三項(第三十三條ノ規定ニ依リ準用
スル場合ヲ含ム)」ニ改ム
第四十二條第八條ノ規定(第三十三條
ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ含ム)ニ
依ル行政官廳ノ命令ニ違反シタル者ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
販賣ノ目的ヲ以テ前項ノ犯罪ニ係ル工
產品ナルコトヲ知リテ其ノ交付ヲ受ケ
タル者亦前項ニ同ジ
前二項ノ場合ニ於テハ犯人ノ所有シ又
ハ所持スル工產品ヲ沒收スルコトヲ得
若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト
能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵スルコ
トヲ得
第四十二條ノ二工產品ニ關スル業ヲ爲
ス者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居
煮雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ
關シ前條ノ罪ヲ犯シタルトキハ自己ノ
指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ
免ルルコトヲ得ズ
第四十二條ノ三第四十二條ノ罰則ハ其
ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其
ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、
未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ
法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關
シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年
者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第四十二條ノ四正當ノ理由ナクシテ第
八條ノ二ノ規定(第三十三條ノ規定ニ
依リ準用スル場合ヲ含ム)ニ依ル當該
官吏ノ臨檢、檢査、搜索又ハ差押ヲ拒
ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
第四十三條中「五百圓」ヲ「千圓」ニ改ム
第五十二條第三項中「一月」ヲ「二月」ニ改
ム
第五十五條中「第十九條」ノ下ニ「、第二十
一條」ヲ加へ但書中「第三十八條ノ二、」ヲ
削リ「及第七十七條第三項」ヲ「、第七十七
條第三項及第七十八條」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十條ノ二第一項(第三十三條ノ規定
ニ依リ準用スル場合ヲ含ム)ニ該當スル
工業組合又ハ工業組合聯合會ノ理事ニシ
テ本法施行ノ際現ニ其ノ職ニ在ル者ハ其
ノ選任ニ付同條ニ依リ認可ヲ受ケタルモ
ノト看做ス
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=45
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046・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 先以テ揮發油及
「アルコール」混用法案ノ提案ノ理由ヲ御說
明申上ゲマス、液體燃料ハ產業上竝ニ國防
上重要ナル資源デアリマシテ、是ガ供給確
保ヲ圖リマスルコトハ、最モ緊急ヲ要スル
所デアリマス、政府ニ於キマシテハ我國
内外ノ情勢ニ鑑ミマシテ、從來ノ諸施設ノ
外、新ニ人造石油工業ヲ確立シテ、液體燃料
ノ自給ヲ圖ルト共ニ、其合理的ナル消費節
約ヲ爲スコトガ、極メテ緊要デアルト考へ
ルノデアリマス、液體燃料中揮發油ハ、其
需要ガ頗ル多量デアルノミナラズ、逐年著
シク需要增加ノ趨勢ニアリマスノデ、此
際政府ニ於キマシテハ、國內ニ於テ生產ス
ル代用燃料デアリマス「アルコール」ノ使用
ヲ普及セシメテ、揮發油ノ消費料ヲ節約ス
ルト共ニ、液體燃料ノ自給ヲ促進スルノ目
的ヲ以テ、揮發油ニ「アルコール」ヲ混用セ
シムルノ制度ヲ創設セントスル次第デアリ
マス、而シテ「アルコール」ハ、農產物ヲ原
料ト致シマス關係上、本制度ノ實施ハ農村
ノ振興ニ資スル所モ、亦尠クナイト考ヘル
ノデゴザイマス、尙ホ「アルコール」ノ供給
ヲ確保スル爲メ、旣ニ「アルコール」專賣法
案ヲ本議會ニ提出致シマシタコトハ御承知
ノ通リデアリマス、以上申述ベマシタ理由
ニ依リマシテ、揮發油及「アルコール」混用
法案ヲ提出致シマシタ次第デゴザイマス、
何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望致
シマス
次ニ貿易組合法案及ビ貿易調整法案ノ提
案理由ヲ御說明申上ゲマス、貿易ノ伸張ヲ
圖リマスコトハ、我國財政經濟ノ現狀ニ鑑
ミ、最モ緊急ナル所デアルコトハ、玆ニ申
述ブル迄モアリマセヌ、然ルニ近時國際貿
易ノ實情ヲ見マスルニ、諸外國ハ相踵イデ、
自國產業ノ保護等ヲ理由トシテ、外國品ノ
輸入ヲ防遏セントシ、特ニ本邦商品ノ急激
ナル進出ニ對シテ其甚シキモノガアルノデ
アリマス、此情勢ニ對應シ、政府ハ從來諸
般ノ對策ト共ニ、輸出組合制度ノ運用ニ依
リ、輸出統制ヲ行ハシメ、以テ貿易ノ伸張
ヲ圖ッテ參ッタノデアリマス、併ナガラ諸外
國ガ或ル高率關稅ヲ設定シ、或ハ輸入ノ割
當ヲ行ヒ、或ハ求償主義ニ依リ自國物產ノ
買付ヲ要求スル等、極端ナル保護主義ヲ採
ルモノ益〓、多キヲ加フル現下ノ實情ニ對應
スル爲メ、輸出統制ヲ一層强化スルコトト
致シマシタ、同時ニ輸入品ノ買入先ヲ分散
シ、又ハ片貿易ヲ是正スル等ノ爲ニ、輸入
ノ統制ヲ爲サシムルノ必要ガアリマスノデ、
新ニ輸入組合ノ制度ヲ設ケ、輸入業者ヲ組
織化スルコトト致シマシタ、又求償貿易國
ニ對シ、輸出組合ト輸入組合ト相提携シテ、
其國ノ物產買付ヲ圖ラシムル等ノ必要ガア
リマスルノデ、是ガ爲メ兩組合ノ聯合會ヲ
設クル途ヲ開イタノデアリマス
以上ノ如ク貿易組合法ヲ制定シ、貿易業
者ノ組合制度ニ改善ヲ加フルコトト致シマ
シタガ、國際貿易ノ情勢ハ貿易ノ統制ヲ複
雜多岐ナラシメ、其影響スル所極メテ大ナ
ルモノアルニ至リ、單ニ貿易業者ノ組合制
度ノミヲ以テシテハ、尙ホ十分ナラザルモ
ノガアリマスノデ、貿易組合法案ト共ニ新
ニ貿易調整法案ヲ制定スルコトト致シタノ
デアリマス
卽チ貿易調整法案ニ依リマスレバ、內外
ノ情勢ニ依リ貿易ノ維持伸張ヲ圖ル爲メ、
特ニ緊要ナル特定ノ場合ニ於テ、貿易業者、
生產業者等ヲシテ統制ヲ行ハシメントスル
時、又ハ貿易品ニ關スル統制ニ付テノ貿易
部門ト、國內產業部門トノ間ノ利害ヲ調
整セントスル時ニハ、貿易統制委員會ヲ設
ケマシテ、貿易及ビ國內產業ヲ通ズル統
一的見地ヨリ、最モ適當ナル統制、又ハ利
害調整ノ方法ヲ調査審議セシメ、其審議決
定セラレタル所ニ基キ、關係業者ヲシテ自
治的ニ必要ナル貿易其他ノ統制ヲ實施スル
ノ途ヲ開キ、又特ニ必要ト認ムル場合ニハ
是等業者ニ對シ委員會ノ審議決定シタル事
項ノ實施ヲ命ジ得ルコトト致シタノデアリ
やく、是ト同時ニ、貿易ノ維持仲張ヲ圖ル
爲メ、特ニ緊要ナル特定ノ場合ニ於テ、以
上ノ如キ關係業者ノ統制ノミニ俟ツコトヲ
得ナイ事情アル場合ニハ政府ガ直接輸出
輸入ノ制限又ハ禁止ヲ爲スコトヲ得ル途ヲ
モ開クコトト致シタノデアリマス、尙ホ以
上ノ如キ貿易調整法ノ實施、其他貿易調整
ニ關スル重要ナル事項ヲ審議セシムル爲メ、
貿易審議會ヲ設ケ、特ニ愼重ヲ期スルコト
ト致シマシテ、而シテ本法案ハ現下ノ國際
情勢ニ對處スル臨時ノ措置デアリマスカラ、
其有效期間ヲ五箇年ト限定シタ次第デアリ
マス
次ニ工業組合法中改正法律案ノ提案理由
ヲ御說明致シマス、我國中小工業ノ現狀ヲ
見マスルト、其最大ノ缺陷ト致シマス所ハ、
業界ノ無秩序、無統制ニ起因スル濫造、
濫賣ニアルモノト考ヘラレルノデアリマシ
テ、此弊害ハ工業組合制度ノ發達ニ依ッテ、
漸次改善セラレツヽアルノデアリマスガ、
尙ホ統制確保ノ方法ニ付キ遺憾ノ點ガアリ
マシテ、是ガ整備ヲ圖ル必要ガアルノデア
リマス、殊ニ近時ノ國際貿易ノ情勢ニ依リ、
曩ニ申シマシタヤウニ、輸出及ビ輸入ノ統
制ノ確立ヲ急務トスルニ至リマシタガ、其
圓滑ナル實施ヲ圖リマスルガ爲ニハ、貿易
ノ統制ニ對應シテ、關係工業者方面ニ於キ
マシテモ、統制ヲ圖ル爲メ適當ナル組織ヲ
必要ト致スノデアリマス、仍テ此際工業組
合法中一部ノ改正ヲ行ヒ、工業組合ノ統制
機能ヲ擴充致シマスト共ニ、統制確保ノ方
法ヲ講ジ、同時ニ之ニ伴ッテ工業組合ニ對ス
ル監督規定ヲ補フ等、工業組合制度ヲ整備
シ、以テ產業ノ振興ト貿易ノ進展ニ資セン
トスル次第デアリマス、何卒御審議ノ上御
協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=46
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047・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 質疑ノ通〓ガアリ
マス、之ヲ許シマス-小林三郞君
〔小林三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=47
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048・小林三郎
○小林三郞君 私ハ只今上程サレテ居リマ
スル四法案中ノ工業組合法中改正法律案ニ
付キマシテ、一二質問ヲ致シテ見タイト思
フノデアリマス
先ヅ政府ガ本案ヲ提出スルニ至リマシタ
理由ヲ見マスルニ「我國中小工業ノ實狀ニ
鑑ミ工業組合ノ統制機能ノ强化ヲ圖ルト共
ニ工業組合ニ對スル監督ヲ更ニ徹底スル爲
工業組合法中改正ヲ要スルモノアリ」ト認
メタカラデアルトナッテ居ルノデアリマス、
ソコデ私ハ第一ニ御尋致シタイコトハ、我
國ノ中小工業ノ實情ニ付キマシテ、政府ハ如
何ナル觀察ヲ致シテ居ラレルカト云フコト
デアリマス、卽チ我國ノ中小工業ノ實情ガ、
工業組合ノ力ヲ藉リルニアラザレバ發達シ
ナイト云フコトハ、如何ナル點ヲ指シテ居
ラレルノデアリマスカ、私ノ見解ヲ以テ致
シマスレバ、現在商工省ノ執リツヽアル所
ノ統制主義、工業組合主義ハ、各種工業狀
態ニ於テ一樣ニハ申サレマセヌガ、〓シテ
中小工業ニ對シテハ、現行法規ノ示ス程度
ニ止ムベキデアッテ、是レ以上此統制主義ヲ
徹底强化スベキモノデハナイト思フノデア
リマス、是ハ寧ロ當業者ノ實情ニ應ジテ、
適當ニ取捨按排スベキデアルト思フノデア
リマス、然ルニ近時商工省ハ各種工業ノ業
態ヤ地方ノ實情如何ヲ顧ミズ、一樣ニ工業
組合ヲ設立シヨウトシテ、之ヲ勸奬シテ居ル
ノデアリマス、其結果ハドウデアルカト申
シマスルニ、私ノ知リ得タ範圍ニ於キマシ
テハ、其悉クトハ申シマセヌガ、多クハ失
敗ニ終ッテ居ルノデアリマス、卽チ從來重
要物產同業組合法ニ依リマシテ、同業組合
ガ出來テ以來、各種業者ハ同業組合ヲ組織
シテ、此公益團體タル同業組合ハ、多年當
業者間ノ調和統制ヲ圖ッテ、產業ノ奬勵ニ當
リマシタ結果、各種ノ事業ハ穩健ナル發達
ヲ致シテ來タノデアリマス、然ルニ此中
小工業者ニ向ッテ、政府ハ近頃頻リニ工業組
合ノ設立ヲ勸奬致シマシテ、甚シキハ業界
ノ實情ヲ無視シテ、當業者ニ强要シ壓迫致
シテ居ル事實ガアルノデアリマス、何ガ故
ニ斯ク致シテマデモ工業組合ヲ設立サセル
カト申シマスルニ、是レ全ク商工省ノ一部
官吏ガ、統制病ト云フ一種ノ流行病ニ冒サ
レテ居ル爲デアルト云フコトヲ思フノデア
リマス
一體統制ト云フコトハ、時ト場合ニ依リ
マシテハ、產業ノ保護又ハ其發達助成ノ
爲ニ必要ナコトデアリマス、政府ノ力ニ依ッ
テ業界ノ不當ナル競爭ヲ是正シ、生產ヲ調
節シ、品質ノ向上、價格ノ維持ヲ爲シマシ
テ、生產力ヲ旺盛ナラシメ、以テ產業ノ發
展ヲ期セネバナラヌコトガアルノデアリマ
スルガ、又反對ニ此統制强化ノ爲ニ、却テ
產業ノ發達ヲ阻碍スル場合モ亦少クナイノ
デアリマス、之ヲ例ヘテ申シマスナラバ、
米ノ如ク國民全體ノ食糧ニ供セラルベキモ
ノガ、其收穫ノ豐凶如何ニ依ッテ値段ノ高低
著シク、其結果生產者ト消費者ノ利害相反
シ、國民經濟上其影響スル所ガ甚大デアル、
或ハ又肥料デアルトカ、繭ノ如ク、米ト同
樣ニ多數國民ノ經濟ヲ支配スルモノ、又生
絲其他ノ重要輸出品ノ統制ノ如キハ、何レ
モ前者ニ屬スルモノデアリマシテ、是等ノ
モノハ强力ナル統制管理ニ依ッテ一定ノ價
格ヲ維持シ、價格高低ノ開キヲ減少スルノ
デアリマシテ、何レモ其影響スル所ガ普遍
的デアリ、一般的デアルノデアリマスカラ、
斯ル場合ハ政府ノ力ニ依ッテ、常ニ均勢ヲ保
タシメナケレバナラヌト思フノハ當然デア
リマスガ、單ニ一地方ニ限ラレテ產出スル
所ノ特殊工業品ニシテ、而モ外國貿易ヲ目
的トスルニアラズ、又其需要供給關係ト其範
圍トガ、全國民ノ日常生活ニ普遍的ニ影響
スルコトナキモノハ、ソレ〓〓其地方ノ
特有ノ事情よ、工業自體ノ發達過程ニ依リ
マシテ、其榮枯盛衰ノ歷史ニ顧ミ、又生產
物ノ需要供給關係等ニ鑑ミマシテ、多クハ
同業者ノ自治的處理ニ任ズル所ノ機關ノ、
自發的運營ニ俟タネバナラヌコトガ多イノ
デアリマス、斯ル見易キ事實ノ存在スルニ
拘ラズ、商工省ハ全國ノ工業者ニ對シマシ
テ劃一的ニ、一律一體ニ工業組合法ヲ適用
シテ、工業組合ヲ强行セントスルハ、全ク
統制病ニ冒サレテ居ルカラデアルト申サナ
ケレバナリマセヌ、殊ニ今ヤ從來ノ法文ヲ
以テ足レリトセズ、更ニ官憲ノ干涉ヲ一層
强化センガ爲ニ、本改正案ヲ提出シテ恬ト
シテ憚ル所ナキハ、餘リニ官僚獨善ノ思想
ニ囚ハレタルモノト斷言セザルヲ得ナイノ
デアリマス
是ニ於テ私ハ伍堂商工大臣ニ更ニ御尋致
シタイノハ、商工大臣ハ最近マデ實業界ニ
在ラレタノデアリマシテ、民間業界ノコト
ハ能ク知ッテ居ラレル筈デアリマス、玆ニ提
案サレタ改正法律案ニ依ル工業組合ノ統制
强化ニ依ッテ、果シテ我國中小商工業者ノ健
全ナル經濟的發達ヲ期シ得ルト御考ニナラ
レルカ、恐ラク商工大臣モ的確ニ斯ル斷定
ハ下シ得ヌト思フノデアリマス、若シ實情
ニ卽スル如ク本法ヲ適用スルト云フ御考デ
アックナラバ、其想定ハ大體如何ナル範圍ニ
於テ、如何ナル程度ニヤラレルノデアルカ
ヲ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス
序ニモウ一ツ商工大臣ニ御伺致シタイコ
トハ、私ノ知リ得ル範圍ニ於テハ、從來商
工省ノ御役人中ニ極端ナル統制主義者ガ居
ラレテ、此統制主義ノ方々ハ、其思想ニ囚
ハレ過ギテ、產業其モノノ實際的發達ト云
フコトヨリモ、其管掌スル有ユル範圍ノ事業
ニ對シテ、其主義ヲ徹底シタイノデアリマシ
テ、今囘ノ改正案ノ如キモノモ、全ク此主張
ニ發足シタモノニ外ナラヌト思ハレル節ガ
アルノデアリマス、一體產業省ノ官吏ガ、實
際ノ指導的立場ヲ離レマシテ、其思想ニ囚
ハレテ、產業界ノ實情ヲ無視シテ、總テノ
施設ヲ致スト云フコトハ、甚ダ宜シクナイ
ノデアリマス、斯ル考ヲ產業奬勵ノ仕事ニ
當ル人ガ持ッタ場合ニ、是ハ產業奬勵上、產
業上ニ甚ダ危險ヲ齎スノデアリマス、場合
ニ依ッテハ產業ノ基礎ヲ破壞スルコトニナ
ルノデアリマス、私ハ其生々シキ實例ヲ握ッ
テ居リマス
今玆ニ一々其例ヲ擧ゲル時間ヲ持チマセ
ヌガ、唯一ツダケ簡單ニ申上ゲテ見マスレ
バ、現在ノ事實ニ付テ申上ゲマシタナラバ、
アノ本場大島紬ノ產地デアル所ノ、鹿兒島
縣ノ大島郡ノ紬同業組合ト云フモノニ對ス
ル工業組合ノ織込ミ、工業組合ヲ紬同業組
合ニ代ラシムル爲ニ執ッタ所ノ商工當局ノ
態度デアリマス、アレガ爲ニ此大島紬ノ實
情ヲ無視致シマシテ、商工當局ガ工業組合
ヲ無理押付ケヲ致シマシタガ爲ニ、數年ノ間
ニ莫大ナ損害ヲ受ケテ居リマス、サウシテ
現ニ昭和十一年度ノ產額ニ於キマシテモ、
六万反、九十万圓ト云フ所ノ生產減ニナッテ
居ル、一郡ノ僅カ五六百万圓ニシカ滿タナ
イ所ノ產額ノ中カラ、百万圓近クノ莫大ナ
減產ヲ致スト云フコトハ、何ガ爲ニ起ッタ
カト申シマスト云フト、全ク此實情ニ卽サ
ナイモノヲ無理押ニ押付ケテシマッテ、同業
組合ヲ解散シテ工業組合ヲ設立セヨト云フ
所ノ强硬ナル當局ノ態度、卽チ强制、此强
制ノ爲ニ非常ナル贊成反對ノ論ガ起リマシ
テ、實質的ニ於キマシテモ、其數ニ於キマ
シテモ、多數ノ反對ガアッタニ拘ラズ、官憲
ノ强制ニ依ッテ工業組合ヲ設立シヨウトシ
タ所ノゴタ〓〓ノ爲ニ、此損害ヲ蒙ッテ居
ルノデアリマス、唯ソレバカリデハアリマ
セヌ、獨リ大島紬ノ例ニ依ラズトモ、各地
ニ於キマシテ斯ノ如キコトハアルノデアリ
マス、單ニ經濟上ノ損失ノミナラズ、人ノ
和合ヲ攪亂シ、同業者ガ互ニ相扶ケ合ッテ
サウシテ親睦ヲ圖ッテ、同業組合ノ指導ニ
從ッテ進ンデ居ルニ拘ラズ、之ヲ攪亂シ、將
來永遠ニ救フベカラザル所ノ禍根ヲ貽シタ
ト云フコトハ、全ク商工當局ノ無定見ノ結
果デアル、或ハ官僚獨善ノ爲デアル、斯ウ
申サナケレバナラヌノデアリマス、商工省
ノ御役人中ニ、斯ノ如ク統制ノ一點張リデ
行カウトスル所ノ、所謂工業組合萬能主義
ヨリ發足シテ、官憲ノ力ヲ濫用シテ、無理
ヲ通サウトスル所ノ人々ガアリマシタ時ニ
ハ、是ガ爲ニ澤山ノ經濟的犧牲ハ出ルノデ
アリマス、私ハ斯ル御役人ガ、假令一部ト
ハ申シマシテモ、產業省ニ蟠居シテ、常ニ
其獨善的思想ニ基イテ畫策サレル所ノ產
業施設ノ總テトハ申シマセヌガ、其多クハ
机上ノ遊〓デアッテ、實際的ニハ的外レノ鐵
砲トナリハセヌカト云フコトヲ疑フ者デア
リマス
要スルニ斯ル方々ハ、總テ統制第一主義
デ、重要工業ハ勿論、中小工業ヲ通ジマシ
テ、輸出工業或ハ國內工業ヲ問ハズ、悉ク
之ヲ統制シテ見タイトノ理想ヲ持ッテ居ラ
レルノデアリマス、而シテ其內容トスル所
ハ、第一ニ生產ノ調節デアリマス、第二
ニハ價格ノ協定デアリマス、第三ニハ
販賣方法ノ强制統一デアリマス、第四
ニハ取引方法ノ指定、更ニ進ンデハ原料材
料等ノ指定統一等、巨細ニ互ッテ一ツノ準則
ニ據ラシメテ、悉ク杓子定規ニ當嵌メヨウ
トスルノデアリマス、實業界ノ動向ハ微妙
デアッテ、日々ノ工程ト經濟的業績トヲ一致
セシムル爲ニ、當業者ハ言現ハスコトノ出
來ナイ苦心經營ヲ要スルノデアリマス、之
ニ對シテ官吏ガ一カラ十マデ規則ヅクメ
デ、事業內容ニ干涉スルト云フコトハ甚ダ
不當デアル、斯ルコトハ却テ產業ノ發達ヲ
阻碍スルモノデアッテ、必シモ常ニ當局ノ唱
ヘル所ノ、生產組織ノ綜合整理ニ依ル企業
ノ合理的經營ニ依ッテ、產業ノ發達助長ヲ期
スルトハ認メラレヌノデアリマス、之ニ對
スル商工大臣ノ御所見ヲ御伺シタイノデア
リマス第四ニハ、同業組合ト工業組合トノ
關係ニ付テ御伺シタイノデアリマスルガ、
明治三十三年重要物產同業組合法ガ制定セ
ラレマシテ、各種ノ產業ノ上ニ同業組合ガ
出來マシタ、其指導奬勵ニ依リマシテ、我
國ノ產業ハ著シキ發達ヲ遂ゲタノデアリマ
ス、所ガ大正十四年三月ニ重要輸出品工業
組合法ヲ制定セラレマシタ、此場合ニハ唯
重要輸出品ニ對スル工業組合ヲ作リマシテ、
サウシテ一般ニ及ンデ居ナカッタノデアリ
マス、同業組合トノ關係ガ餘リニ煩瑣デナ
カッタノデアリマスガ、同業組合ガ重要輸出
工業ニ關係致シテ居リマシテモ、唯重要輸
出品ニ對スルダケハ、工業組合ガ關係シテ
行クト云フノデアリマスカラ、其間ニ何等
複雜シタル問題ハ起ラナカッタ、然ルニ昭
和六年ノ四月一日ニ法律第六十二號ヲ以
テ、輸出品ト內地品タルトヲ問ハズ、廣ク
一般ニ工業組合法ヲ適用スルト云フコトニ
ナリ、其名モ工業組合法ト改メタノデアリ
そう、ソコデ段々ト工業組合ト云フモノガ
同業組合ノ領分ニ進ミ、從來同業組合ニ於
テ爲シ得ク所ノ大部分ノ仕事ヲ工業組合ガ
ヤル、斯ウ云フコトニナッテ居リマシテ、同
業組合ガ其本來ノ仕事ヲ工業ニ關スルモノ
ニ付テハ致サナクテモ宜イ、斯ウ云フコト
ニナッテ居ル、ソレデアリマシテ工業組合
ガ、全部ノ產業ノ中ノ工業ニ屬スルモノダ
ケハ、同業組合ヲ全然必要トシナイト云フ
積リデ奬勵ヲ致サレテ居ルノデアリマス、
若シサウト致シマシタナラバ、ハッキリソレ
ヲ規則ニ謳ッタ方ガ宜シイト思フノデアリ
マス
殊ニ同業組合ニ依ッテ非常ニ穩健ナル發
達ヲ致シテ來タ所ノ產業界ニ、此改正法律
案ノ第二十八條ノ三ヲ見テミマスト、實二
驚クベキコトヲ計畫シタ、全ク是ハ私共ガ
考ヘマスル時ニ、從來政府ノ執ッタ、商工當
局ノ執ラレタ所ノコトガ、アナタ方ノ理想
トハ全ク違フ、何デモカンデモ有難イト言
ウテ、或ハ此經濟團體ニ對スル金ヲ貸ス、
或ハ補助ヲスル、サウ云フ所ノ口車ニ乘ッ
テ、サウシテ總テ工業組合ニ易々トシテ入ッ
タナラバ、斯ノ如キ法案ハ出サズトモ、或
ハ宜カッタト云フコトニナルノデアリマセ
ウ、併ナガラ全國ノ中小商工業者ノ實情ヲ
見マスト、決シテ口車ニ乘ラナイ、喧々囂
囂トシテ到ル處ニ問題ヲ起シテ居ル、同業
組合ニ工業組合ヲ織込ミ、同業組合ヲ廢シ
テ工業組合ヲ設立セヨト云フコトハ、非常
ニ地方々々ニ問題ヲ起シテ居ル、ソレガ爲
ニアナタ方ハ實ニ手古摺ッタト云フ問題ガ
アルコトハ、玆ニ例ヲ申上ゲマセヌ、ハッキ
リ商工當局ハ知ッテ居ラレル、アナタ方自體
ニ於テサヘモ多大ノ犠牲ヲ拂ヒ、實ニ言フ
ニ忍ビナイ犠牲ヲ拂ッタ、最近ニ於テモアヽ
云フコトヲ致シテモ、アナタ方ノ思フヤウ
ナ、所謂獨善的ノコトハ出來ナイ、ソコデ
今度ハ法文化シテ、改正法ヲ出シテ二十八
條ノ三ヲ入レタト云フコトハ、實ニ陰險デ
アリ、其ノ手段ガ洵ニ陋劣デアル私ハ產
業ノ發達ヲ奬勵スベキ所ノ商工省ノ方々ガ
產業其モノノ實際トハ離レテシマッテ、此自
分達ノ頭ヲ持ッテ行ッテ地方々々ニ押賣ヲス
ル、實情ニ全ク卽シナイモノガ幾ラモアル、
ソレヲ法ヲ以テ强行スルト云フコトハ、私
ハ本當ノ伍堂商工大臣ノ御考ヂヤナイカト
思フ、當局ノ人々ガ之ヲ商工大臣ニ色々進
言シテ、サウシテ自分達ノ理想ヲ實現シヨ
ウト云フ狀態デアリマシタナラバ、私ハ產
業ヲ非常ニ壓迫スルモノデアル、斯ウ云フ
コトヲ思フノデアリマス、是等ノ點ニ付キ
マシテ商工大臣ノ御明答ヲ戴キタイ(拍手)
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=48
-
049・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 工業組合ヲ現狀
以上ニ擴張スル必要ガナイノデハナイカト
云フ御意見デアッタト思ヒマスガ、工業組合
ト同業組合トハ自ラ性質ヲ異ニシテ居リマ
シテ、同業組合ハ工業ト商業ガ一〓ニナッテ
居ル所モアリマス、ソレデ時世ノ進展ニ連
レマシテ、工業組合ト商業組合ガ分レマシ
テ、工業組合ハ特ニ共同施設等ヲ設ケテヤル
ヤウニナッタノデアリマス、自ラ性質ガ違ッ
テ居リマスカラ、政府ハ同業組合ト工業組
合ト、各〓其長所ヲ採ッテ發達サシテ行キ
タイト思フノデアリマス、ソレカラ今度ノ
改正ニ依ル適用ノ範圍ハドウデアルカト云
フ御質問デアリマシタガ、是マデノ指定制
度ヲ廢シマシテ、希望ニ依リマシテドノ工
業デモ組合ヲ作レルコトニナッタノデアリマ
スガ、決シテ强制スル譯デハナイノデアリ
マツ、先程一寸大島紬同業組合ノ御話ガゴ
ザイマシタガ、是トテモ工業組合ヲ決シテ
政府ガ强制シタノデハナイノデアリマシテ、
地方廳カラノ申請ニ依リマシテ認可ヲ與ヘ
タノデアリマス、ソレカラ同業組合ト工業
組合トノ關係ハ、只今申シマシタ通リデア
リマスガ、畢竟工業組合ニ依ル統制運用方
法ノ內容ハ、各產業ノ事情ニ卽シマシテ、自
治的ニ適當ナル統制ヲ爲サシムル方針デア
リマス、工業組合ノ設立ニ付キマシテハ、
決シテ官廳ガ强制スルコトノナイヤウニ、
地方ノ實情ヲ考慮致シマシテ、之ヲ認可ス
ル方針デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=49
-
050・小林三郎
○小林三郞君 簡單デアリマスカラ自席カ
ラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=50
-
051・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=51
-
052・小林三郎
○小林三郞君 只今商工大臣ノ御說明ニ付
キマシテ、實際ト大分離レタル所ガアルノ
デアリマス、併ナガラ細カニ申上ゲマスト
討論ニナリマスノデ、私ハ委員會ニ於キマ
シテ細カナ點ヲ申上ゲマシテ、其際ニ十分
ニ大臣及ビ主務官ノ御意見ヲ伺ッテ見タイ
ト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=52
-
053・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 中井一夫君
〔中井一夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=53
-
054・中井一夫
○中井一夫君 私ハ只今上程ニナッテ居リマ
ス貿易關係法案ニ付テ、六點ノ質疑ヲ致サ
ントスル者デアリマス、其第一ハ我國貿易
政策ノ根本問題デゴザイマシテ、其第二ハ
我國ト對外諸國トノ貿易關係ニ付テデアリ
やく、第三ハ我國ノ海運ニ關スル英國ノ壓
迫ニ付テデアリマシテ、第四ハ貿易行政機
構ノ整備强化、第五ニハ貿易法制ノ統一整理、
第六ニハ貿易調整法案ニ規定セラレテ居リ
マスル委員會ノ構成等ニ付テデアリマス
先ヅ第一ニ伺ヒタイト思ヒマスルコト
ハ、我國ノ貿易ノ現狀ト云フモノハ世界
各國ノ經濟「ブロック」ノ對立ノ間ニ伍シマ
シテ、今ヤ到ル處障壁ヲ設ケラレテ居ルノ
デアリマス、申ス迄モナク貿易ハ有無相通
ズルノ世界ノ大道デゴザイマスルカラ、吾
吾ハ飽マデ貿易自由ノ大旆ヲ揭ゲテ、世界
各國ニ當ラナケレバナラヌト信ズルノデア
リマス、然ルニ此問題ニ付キマシテ、從來
政府ノ執ラレマスル所ヲ見マスルニ、常
ニ相手方ノ出テ參リマスルコトニ對シテノ
ミ、臨機應變ノ處置ヲ執ッテ居ラレルト云
フニ過ギナイノデアリマシテ、我國ノ獨自
ノ確固タル主義主張ヲ以テ、相手方ニ臨ム
ト云フ態度ヲ見ルコトガ出來ナカッタコト
ハ、私ノ洵ニ遺憾トスル所デアリマス(拍
手)隨ヒマシテ玆ニ政府ハ此際對外貿易關
係ニ付テハ、互惠主義ヲ採ッテ行カウトスル
ノデアルカ、ソレトモ又求償主義ニ依ラン
トセラレルノデアルカ、之ヲ明ニ玆ニ言明
セラレタイノデアリマス、而モ諸外國ハ此
互惠主義ノ不利益ヨリ免レマス爲ニ、年來
條約廢棄ノ非常手段ニ出ヅル例ヲ間々見ル
ノデアリマスルガ、此條約廢棄ノ非常手段
ニ出デマスル諸外國ニ對シマシテハ、我國
ニ於テハ複關稅ノ方策ヲ採用致シマシテ、
是等ノ不都合ナル諸外國ニ對シテ、大イニ
期スル所ガナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、此點亦政府ノ所信ヲ伺ヒタイト存ズ
ルノデアリマス
次ニ我國ト對外諸國トノ貿易關係ニ付テ
デアリマスガ、先ヅ第一ニ御伺シタイノ
ハ對支問題デアリマス、我國ノ貿易ガ世
界到ル處ノ障碍ニ依リマシテ、昨年來其增
進ノ傾向ガ鈍化ヲ致シタト云フコトハ事實
デアリマス、殊ニ舊市場ニ於テ其障壁ノ偉
大ナルコトヲ見ルノデゴザイマスガ、是ガ
爲ニ政府モ民間モ一緒ニナリマシテ、所謂
新市場ノ開拓ト云フコトニ御努力ヲ拂ハレ
ルニ至ッテ居ルノデアリマス、併ナガラ、我
國ノ隣ニハ一衣帶水支那四億ノ國民ガアル
コトヲ考ヘテ見マスルナラバ、新市場ノ遠
クシテ不便デアッテ、而モ其事情ノ分ラナイ
モノニ、色々ナ努力ヲ拂フト云フコトヨリ
ハ、寧ロ此支那市場コソハ、之ヲ確保シ、
維持シ、更ニ大イニ日支間ノ貿易ヲ振興セ
シムルト云フコトガ、刻下ノ急務デアルト
思フノデアリマス、然ルニ從來政府ノ對支
貿易ニ對シテ執ッテ居ラレマシタ事柄ハ、殆
ド玆ニ言フヲ憚ル程ノ狀態デゴザイマシ
テ、其遺憾ナル點ハ吾々國民ノ齊シク長年
叫ンデ參リマシタ所デアリマス、幸ニ致シ
マシテ廣田內閣ガ倒レテ、玆ニ林內閣ガ成立
致シタノデゴザイマスルカラ、從來ノ險惡
ナル空氣ヲ一掃シテ、氣持ヲ新ニシテ、對
支貿易振興ノ途ニ邁進セラレルコトガ、今
日ヲ措イテ其機會ハ再ビ來ナイト信ズルノ
デアリマス、殊ニ數日前我國ノ經濟界ノ所
謂長老トモ申スベキ人々ガ、經濟使節トシテ
支那ニ參リマシテ、支那ノ要人ト會見致シ
マシタル結果、支那ノ經濟再建ニ付テ、日
本ノ積極的ノ援助ヲ彼等ガ待構ヘテ居ルト
云フ趣旨ノ意思ヲ、明ニ致シタイト傳ヘラ
レテ居ルノデアリマス、サウ致シマスルナ
ラバ此際、從來政府ガ支那ニ對シマシテ
ハ常ニ政治的ノ外交ヲ是レ事トセラレテ
居ッタノデアリマスルガ、之ヲ轉換ヲ致シ
テ、經濟外交ニ其主力ヲ注ガレルト云フコ
トガ、洵ニ望マシイコトデアルト信ズルノ
デアリマス、外務大臣ハ先般此壇上ニ於キ
マシテ、日支間ノ平等主義ヲ唱ヘラレタノ
デアリマスガ、吾々ハ百尺竿頭一步ヲ進メ
ラレテ、更ニ支那ノ經濟再建ニ對シテ積極
的ナル援助ヲ爲サルベキガ、此際最モ必要
ナコトト存ズルノデアリマス、政府ノ所信
如何デゴザイマスルカ、之ヲ承リタイト思
ヒマス
米國ノ問題ニ付テ御伺ヲ致シマスルガ、
承ル所ニ依リマスルト、數年前同國ガ求償
通商政策ヲ確立致シマシテカラ、中南米ハ
固ヨリ歐羅巴各國トノ間ニモ、隨時互惠協
定ヲ締結致シテ參ッタノデアリマス、而シテ
我國ニ對シマシテモ、近ク此互惠主義ニ依
ル所ノ協定ヲ申出ヅルヤノ說ヲ承ハルノデ
アリマスルガ、政府ハ之ニ對シテ如何ナル
用意ト態度ヲ以テ臨マレント致シテ居リマ
スルカ、此點ヲ承リタイト思ヒマス
又印度ノ關係ニ付テデゴザイマスルガ、
印度ト我國トノ通商協定ト云フモノハ本
月ノ三十一日ヲ以テ終了致ス筈デアリマ
ス、是ガ爲ニ昨年以來印度政廳トノ間ニ協
商ヲ重ネツヽアルト云フコトデゴザリマス
ルガ、或ハ前囘ノ協定ヨリハ一層讓步セラ
レルノデハナイカ、又ハ「ビルマ」ノ分離問題
ニ付キマシテ、行惱ミヲ致シツヽアルト云
フヤウナコトノミ聞エマシテ、トント其內
容ヲ明ニスルコトハ出來ナイノデアリマ
ス、政府ハ此際日印間ノ協定ガ如何ニ進ミ
ツヽアルカト云フコトニ付キマシテ、其實
情ヲ披瀝セラレンコトヲ願フノデアリマス
次ニ蘭領印度トノ關係デアリマスルガ、
之ニ付キマシテハ、桑島公使ハ和蘭本國へ赴
任ノ途中、蘭領印度ニ上陸致シマシテ、實
地ニ就テ各種ノ事情ヲ調査〓究セラレテ居
ルト云フコトデアリマス、私共ハ此用意アッ
テ初メデ日蘭間ノ貿易ノ協定ガ、圓滿ニ成功ヲ
致スモノデアルト信ズルノデアリマスルガ、
日蘭協定ニ關シマシテ政府ノ執ラレントス
ル態度ニ付キマシテ、此際御伺ヲ致シテ置
キタイノデアリマス、尙ホ此機會ニ於テ、
加奈陀、埃及、中南米諸國等ニ對スル通商
貿易上ノ紛議ト其解決方策、竝ニ將來ノ見
透シ等ニ付キマシテモ、政府ノ所信ヲ
承ルコトガ出來レバ幸ヒデゴザイマス
第三ニハ海運ノ問題デアリマスルガ、海
運ト貿易ト云フモノガ離レルコトノ出來
ナイト云フコトハ申上ゲル迄モゴザリマセ
又、而シテ我國ノ貿易ガ段々進展致シマス
ルニ連レマシテ、海運モ亦異常ナル勢デ
發逹ヲ致シマシタ、而シテ貿易ガ到ル處ニ
防遏ヲ喰ヒマスルト同樣ニ、海運モ亦世界
到ル處ニ於テ諸外國ノ海運ト摩擦ヲ始メツ
ツアルノデアリマス、而シテ最近最モヤカ
マシク言ハレマスルモノハ英國トノ關係デ
アリマシテ、殊ニ印度竝ニ濠洲航路ニ付キ
マシテハ今ヤ英國ハ海運委員會ト云フモ
ノヲ設定致シマシテ、サウシテ日本ニ致シ
マシテ重大ナル一ツノ行動ニ出デント計畫
シツヽアリト傳ヘラレテ居ルノデアリマス、
而シテ此問題ハ旣ニ外務省ニ於キマシテ
モ、政府ヨリ發行サレマスル所ノ週報ナ
ルモノニ、最近其一部ヲ御發表ニナッタノ
デアリマスガ、海運界ニ於キマシテハ、此
問題ハ最近ノ重大事トシテ非常ナル關心ヲ
持ッテ居ルノデアリマス、故ニ政府ハ此際此
問題ノ成行ト其對應策ニ付キマシテ、如何
ナル用意ヲ持タレルカト云フコトヲ伺ッテ
置キタイト思ヒマス
次ニハ貿易行政機構ノ整備强化デアリマ
スルガ、我國內外ニ於キマスル政府ノ貿易機
關ヲ整備統一スルト云フコトト、更ニ其機
能ヲ擴大强化致シマシテ、我國貿易發達ノ
情勢ニ適應セシメナケレバナラヌト云フコ
トハ、國民年來ノ希望デゴザイマス、然ル
ニ此度ノ議會ニ於テ政府ノ爲サントセラレ
マスル所ハ、唯一ツ貿易局ヲ擴張セラレル
ト云フコトノ外ニハ、何等ノ案ヲ持タレナ
イノデアリマシテ、私共ハ貿易ノ現勢ト其
將來ニ對シマシテ、洵ニ心細イ感ジガアル
ノデアリマス、寧ロ此際政府ハ我國ニ貿易
省トデモ申スベキ、貿易通商ニ關スル一切
ノ問題ヲ所管致シマスル一省ヲ置カレテ、
サウシテ日々夜々ニ增進發展致シマスル所
ノ、貿易ノ現勢ニ對應スルノ施設ヲ採ラレ
ルト云フコトガ、最モ急務デアルト信ズル
ノデアリマス、政府ノ所信ヲ伺ヒタイト存
ジマス
次ニハ貿易關係法規ノ整理統一ト云フコ
トデゴザイマスルガ、此度御提案ニナリマ
シタ所ノ貿易組合法案、貿易調整法案等ニ
依リマスルト云フト從來存シマシタ所ノ
輸出組合ト云フモノハ、之ニ依ッテ廢止セラ
レルト云フコトハ明カデアリマス、併ナガ
ラ貿易ノ統制ノ法規ニ付キマシテハ、或ハ
通商擁護法モゴザイマス、又重要產業統制
法ト云フモノモアリマス、又重要物產同業
組合法、工業組合法、產業組合法等、其他
在來ノ法令ニ關係致シマスル所ノモノガ、
隨分多數アルノデアリマス、隨テ是等法令
ノ規定ヲ其一々ノ場合ニ御適用ニナルト云
フコトデゴザイマスルナラバ、互ニ其規定
ノ錯綜混亂ヲ生ジマシテ、貿易ノ統制ガ出
來ル前ニ、先以テ法規ノ混亂ガ起ルノデハ
ナイカト思ハザルヲ得ヌノデアリマス、故ニ
此際貿易組合法案、貿易調整法案等ヲ設定
セラレルト云フコトデゴザイマスルナラ
バ、是等我國ニ存在致シマスル所ノ貿易關
係法規ノ總テヲ、整理統一セラレルコトガ
必要デアルト存ズルノデアリマス、政府ハ
之ニ對シテ如何ナル御考ヲ御持チニナッテ
居ラレマスルカ、御伺ヲ致シタイト存ジマ
ス
最後ニ此委員會ニ關スル問題デアリマ
ス、貿易·······(田淵豐吉君「議場ノ空氣ガ良
クナイ、議長ハ整理ヲスル方法ヲ知ッテ居
ルカ」ト呼ヒ「默レ」「靜ニシロ」ト呼フ者ア
リ貿易調整法案ヲ見マスルト、其第一條
以下多數ニ於キマシテハ
〔田淵豐吉君「議長、議場ノ空氣ガ妙ニ
私ハ感ズル議長」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=54
-
055・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 田淵君、靜ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=55
-
056・中井一夫
○中井一夫君(續) 貿易調整ノ目的ラ達スル
ノ機關ト致シマシテ、貿易審議會及ビ貿易
統制委員會ナルモノヲ置カレルト云フコト
ニナッテ居ルノデアリマス、併ナガラ是等ノ
兩委員會ノ構成組織等ニ付キマシテハ、一
切勅令ニ讓ラレテ居ルノデアリマシテ、此
法案ソレ自體ニ依リマシテハ、是等ノ委員
會ノ如何ナルモノデアルカト云フコトヲ知
ルコトガ出來ナイノデアリマス、此委員會
ハ隨テ内閣ノ中ニ置カレルノデアルカ、又
ハ商工省ノ中ニ置カレルノデゴザイマスル
カ、更ニ此委員會ノ委員ト云フモノハ、如
何ナル方面ヨリ選定ヲセラレルノデアリマ
スルカ、又此兩委員會ノ職能ト云フモノハ、
如何ナル差異ヲ持ッテ居ルノデアリマスル
カ、殊ニ委員會自ラガ發案權ヲ有シテ居リ
マスルカドウカ、是等ノ諸點ヲ承リタイト
思フノデアリマス、尙ホ私ハ此委員會ノ問
題ニ付キマシテハ、從來政府ノ部內ニ於キ
マスル所ノ委員會ガ、常ニ政府ノ諮問機關
ニ過ギナイノデアリマシテ、形式的デ、微
力デ、殆ド爲ス所ノナイコトヲ遺憾ニ存ジ
テ居リマス、如何ナル重要ナル問題ガ起リ
マシテモ、委員會自ラガ發案ヲシテ、政府
ニ迫ッテ之ヲヤラセルト云フコトハ出來ナ
イト云フ、實情デアルノデアリマス、隨ヒマ
シテ玆ニ言フガ如ク、此重要ナル貿易統制ト
云フガ如キ委員會ニ付キマシテハ、少クトモ
此委員會ニ發案權ヲ與ヘラレルト云フコトガ
必要デアルト思フノデアリマス、更ニ又此委
員會ハ、事苟モ貿易全體ノ統制ニ關係致シマ
スルカラシテ、單ニ商工省ダケノ所管デ止
マルベキモノデハゴザイマセヌ、或ハ外務
省ニ、或ハ大藏省ニ關係スルコトガ多々ア
ルベキ筈デアリマス、隨ヒマシテ此委員會
ハ商工省內ニ置カレルト云フコトデハ、其機
能ヲ發揮スルコトハ出來ナイノデアル、斯ノ
如キモノハ內閣ノ下ニ置カレテ、此委員會ニ於
テ貿易全體ノ問題ヲ統制セシメラレルト云
フコトガ、其最モ當ヲ得タルモノデアラウト
考ヘテ居ルノデアリマス、此點ニ付キマシテ
モ併セテ御答辯ヲ得タイト存ジマス(拍手)
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=56
-
057・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 中井君ノ御質問
ニ御答致シマス、第一ハ對外貿易ノ根本方
針ニ付テデゴザイマシタガ、我國ノ對外貿
易ノ根本方針ハ、申ス迄モナク從來通リ自
由通商主義デアリマシタ、唯今日ノ國際關
係カラ、相手國ノ要求ニ依ッテ、或ハ互惠ト
ナリ、又求償主義ヲ採ルヤウニナリツヽア
ルノデアリマス、ソレカラ對支貿易ニ付テ
ハ、洵ニ御同感スベキ御意見デアリマシタ、
從來非常ニ閑却サレテ居ルト云フ御話デゴ
ザイマスガ、決シテ閑却サレテ居ッタ譯デ
ナク、色々兩國間ノ政治的關係カラ、已ム
ヲ得ズ疎遠ニナリ勝ニナッテ居ルハノデアリ
マスルガ、今囘提案シマシタ輸出補償法ノ
改正ノ如キモ、從來ノ舊市場ヲ確保スル爲
メ、特ニ支那方面ニ向ッテ重點ヲ置イテ居
ルノデアリマス、尙ホ此對支貿易關係ニ付
キマシテハ、私ハ將來熱心ニ是ガ改善ヲ圖
リタイト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカ
ラ米國、日印、日蘭等ノ關係ニ付テハ、外
務省政府委員カラ御答スル方ガ至當デアル
ト考ヘマス、貿易局ヲ設ケルダケデ滿足ス
ルカ、貿易省ヲ設クル必要ハナイカト云フ
御意見デゴザイマス、御趣意ニ於テハ私モ
同感デアリマスルガ、是ハ將來問題トシテ
考究ノ必要ガアルト考ヘルノデアリマス、
ソレカラ貿易關係ノ法規ガ非常ニ多クテ、
相交錯シテ、其適用上困難デハナイカ、或
ハ不都合ヲ生ズルコトハナイカ、是等ヲ統
一スル考ガナイカト云フコトニ對シマシテ
ハ、大イニ攻究シテ見タイト考ヘルノデア
リマス、最後ニ貿易統制委員會、貿易審議
會ノ所屬等ニ付テデゴザイマスルガ、只今
ノ所デハ貿易統制委員會ハ省內ニ置クコト
ニ致シテ居リマスルガ、貿易審議會ヲ省內
ニ置クカ、或ハ省外ニ之ヲ設ケルカト云フ
コトニ付テハ、目下考慮中デアリマス、尙
ホ其後委員ノ選定ニ付キマシテハ、申ス迄
モナク非常ニ重大ナコトデアリマスルカラ、
普ク其道ノ權威者ヲ集メマシテ、委員ヲ御
願シタイ考デ居ルノデアリマス
〔政府委員松島鹿夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=57
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058・松嶋鹿夫
○政府委員(松島鹿夫君) 只今ノ御質問ノ
中ニ、米國トノ互惠條約ノ議ハアルカ、政
府ハ如何ニ考ヘテ居ルカト云フ御質問デア
リマシタガ、マダ米國政府カラハ何等ノ意
思表示ハアリマセヌ、アリマセヌガ、若シ
米國ヨリ此種提議ガアリマスル場合、政府
ハ愼重考慮致シタイト考ヘテ居リマス、又日
蘭會商ハ如何ナル程度ニ進捗シテ居ルカト
云フ御質問デアリマスルガ、御承知ノ通り日
蘭會商ハ隨分長ク掛ッテ居ルノデアリマス
ルガ、昨年六月以降餘程進捗シテ參リマシ
テ、最近ニ於キマシテ、遠カラズ妥協シ得
ル機運ニナッテ居ルノデアリマスルカラ、
左樣御承知ヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=58
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059・中井一夫
○中井一夫君 只今ノ御答辯ニ付キマシテ
ハ未ダ滿足セザル點多々ゴザイマスルケ
レドモ、詳細ナ問題ハ委員會ニ之ヲ讓リマ
シテ、私ノ質問ハ之ヲ以テ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=59
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060・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 渡邊玉三郞君
〔渡邊玉三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=60
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061・渡邊玉三郎
○渡邊玉三郞君 只今議題トナリマシタル
四法案中、貿易組合法案、貿易調整法案、
工業組合法中改正法律案ノ三案ニ付キマシ
テ質疑ヲ試ミタイト思ヒマス、此三案ガ貿
易ノ振興上、且又貿易ノ調整ノ上ニモ、我
國重要工產品ノ進展ノ爲ニモ、最モ重要デ
アルコトハ申ス迄モアリマセヌ、躍進產業
日本ノ根幹ヲ成スモノデアルノデアリマス、
隨テ此三法案ノ完璧ヲ期シ、其運行宜シキ
ヲ得ルナラバ、敢テアノ不合理ニシテ反對
ノ多イ輸出統制稅ノ如キモノヲ設ケル必要
ガナイ、此內容强化ニ依リ自治的ニ其目的
ヲ達スルコトガ適當デアルト信ズルモノデ
アリマス、政府ハ此三案ノ完璧ヲ期シ、經
濟生活ノ發達ニ伴ッテ統制、機能ノ强化ヲ圖
ルト共ニ、各業者間ノ調和ニ十分ノ善處ヲ
望ムモノデアリマス、此觀點カラ數項ノ質
疑ヲ試ミマス
第一、工業組合ハ自治的ニ製品檢査ヲ爲
スベキモノデアルノニ、政府自ラ此檢査ヲ
阻止スルガ如キ實例ガアルガ、是ハ如何ナ
ル理由デアルカ、第二ハ製品檢査手數料ト
云フモノハ檢査費以上ニ徵收スベカラズト
認ムルガ、工業組合ノ精神如何、第三ハ工
業組合ハ工業組合中央會ニ强制加入ノ必要
アリト認ムルガ、當局ノ所見如何、第四ハ
組合ノ事業範圍ヲ擴充シ、金融ノ十全ヲ期
スル必要アリ、是ガ政府ノ所見如何、第五、
毛織物輸出品ハ國家統一アル檢査ヲ爲スベ
シ、第六、輸入組合ト輸入原料ニ依ル中小
工業ノ關係、第七、輸出組合ト中小工業ノ
關係、以上七點ニ付テ質問ヲ致シマス
第一問、工業組合ノ製品檢査ニ付テハ、
大體工業組合ノ事業ハ、大別シテ消極的事
業ト積極的事業ガアルノデアリマス、消極
的事業トハ、檢査、取締、統制等ヲ指スモ
ノデアリ、又積極的事業ナルモノハ、原料、
材料ノ共同購入、或ハ共同設備、其他組合
員ノ指導、〓究調査等デアリマス、此工業
組合ガ自治的ニ其組合ノ製品檢査ヲ爲スコ
トハ最モ重要デアル、其檢査ニ依ッテ統制モ、
調整モ、品質ノ向上モアルノデアリマス、提
案サレタル改正法案中ニモ、其第八條ノ二
ニ於テハ「當該官吏ハ工業組合ノ檢査員ヲ
シテ必要ナル補助ヲ爲サシムルコトヲ得」、
所謂工業組合ニ檢査員ガアルコトハ當然必
要ナ譯デアル、然ルニ愛知縣ノ毛織物ハ縣
營檢査デ、工業組合ノ檢査ヲ阻止シテ居ル
ノデアル、是ガ縣營檢査ハ、明治四十三年
ノ五月十八日、農商務省令第六號、重要物
產檢査手數科ニ關スル件、之ニ依ッテ昭和六
年商工省ト農林省トガ相談シテ、此省令ニ
毛織物ヲ追加シテ、サウシテ愛知縣カラハ
此省令第三條ニ依ッテ檢査ヲ必要トスル事
由、及ビ檢査施行ニ對スル當業者ノ意向等ヲ
一札入レテ、商工省ハ之ヲ認可シテ居ルノ
デアル、其當業者ハ全部反對デアリマシテ、
其當業者ノ意向ハ認可ノ條件ニナッテ居ル
筈デアリマス、其當業者ハ旣ニ商工省ヘ向ッ
テ、全部ガ記名調印シテ反對ノ意見ヲ述べ
テ居ル、之ニ依ッテモ明カデアル、此工業組
合ハ重要工產品ノ製造ニ關スル工業者ヲ以
テ組織スルモノデアルコトハ勿論デアリマス、
然ルニ明治四十三年ノ此古イ而モ農商務省
令デアリマス、經濟生活ハ駸々トシテ發達シ
ツヽアルニモ拘ラズ、此明治四十三年ノ農
商務省令-是ハ商工當局ニ聽イテ見テモ
中々分ラナイ、農林省へ行クトヤット分ルヤ
ウナ省令デアル、此商工省ノ役人ニモ分ラ
ヌヤウナ古臭イ省令ヲ持出シテ之ヲ認可サ
レテ居ル、丁度自動車ノ運轉ヲスルニ人
力車夫ヲ連レテ來ルヤウナ、ソンナ規則ヲ
以テ此工業組合ノ檢査ヲ取扱ハウト云フノ
ハ、以ノ外デアルト思フノデアリマス、
是ハ商工省自ラ工業組合法ニ反逆シテ居ル
ト言フモ、私ハ敢テ過言デナイト思フ(拍手)
商工省ハ速ニ此工業組合法ノ精神ニ則ッテ
愛知縣ニ警告ヲ發シ、關係工業組合又ハ大
日本毛織物工業組合聯合會ニ組合員ノ製品
檢査ヲ行ハシメ、以テ本邦毛織物工業進展
ノ爲ニ適當ナル指導監督ヲ望ムモノデアリ
マス
第二問、檢査手數料ニ關スル件デアリマ
ス、檢査ノ事業ハ消極的事業デアル、勿論
之ニ依ッテ利益ヲ得ルコトハ有リ得ベカラ
ザルコトデアルニモ拘ラズ、愛知縣ニ於キ
マシテハ、縣營檢查デ其毛織物ヲ檢査スル
爲ニ、年々十万圓近クノ利益ヲ擧ゲテ居ル、
業者ガ此手數料ノ引下ヲ要望致シマシテモ
中々容易デハナイ、所謂官僚獨善ノ聲ハ斯
ウ云フ所カラ起ルノデアリマス、是ハ今申
上ゲマシタ農商務省令第六號ノ第三條ノ運
行ヲシテ居ルノデアリマス、其第三條ノ運
行ハ、卽チ明治四十三年五月一一十四日、農
商務省ノ次官通牒「重要物產ノ檢査ニ關ス
ル取扱方ノ件」デアル、斯ウ云フ古イモノ
ヲ引張リ出シテ、サウシテ是デ利益ヲ擧ゲ
テ居ル、コンナ不都合ナ得手勝手ノコトヲ
商工當局ガ默認スルト云フコトハ、實ニ遺
憾千萬デアルト思フノデアリマス、相手ガ
縣デアルカラ、商工當局ガ法ノ運行上臆病
デ今日ニ至ッタモノデアルト認ムルノデア
リマス、取締ハ官僚デモ民間デモ同樣ニ取
扱フベキモノデアルト思フガ、此點如何、
御答辯ヲ要求致シマス
第三問、工業組合ノ中央會ハ强制加入デ
ナケレバ、統制强化或ハ調整ノ萬全ヲ期ス
ルコトハ出來ナイト信ジマス、輸出貿易ノ
進展ヲ圖ルニハ工業者間ノ連絡緊密ヲ圖ル
必要ガアリマスルガ、之ヲ自由ニ委シテ置
キマシテハ、容易ノコトデハナイ、殊ニ中
小工業ノ現狀ニ鑑ミテ、企業ノ統制ノ徹底
ヲ期スル爲ニ、工業組合中央會ヲ法制上根
據アル團體トシ、工業組合ノ普及發達及ビ
連絡機關トシテ、企業ノ改善合理化及ビ其
統制ノ確立ニハ、各工業組合ハ中央會ニ强
制加入スルコトノ制度ヲ必要トスルノデア
リマス、現在我ガ工業組合ノ數ハ九百七十
組合アルト思ヒマス、其中デ工業組合中央
會へ加入シテ居ルモノガ六百五組合、所謂
加盟シテ居ル組合ノ五〇%ニ相當スル非加
盟ノ組合ガアル、斯ウ云フコトデ以テ、總テ
ノ統制調整及ビ連絡ヲ圖ルコトハ極メテ至
難デアル、故ニ私ハ御提案ニナッタ第五十條
ノ第一項ヲ左ノ如ク改メルノ政府ハ意思ア
リヤ否ヤ、卽チ工業組合及ビ工業組合聯合
會ハ工業組合中央會ニ加入スベシ、工業組
合法ハ御提案ヲ斯樣ニ訂正スベキデアル、當
局ノ御所見如何ヲ御尋スルノデアリマス
第四、組合ノ金融ノ點デアリマス、我國
ノ產業上······(「細カイコトハ委員會デヤ
レ」ト呼フ者アリ)我國ノ產業上中小工業
者ハ重要ナル地位ヲ占メテ居ルニ拘ラズ薄
資微力デアル、商工組合中央金庫ノ活動等
ヲ以テ金融ヲ圓滿ナラシメ、內ニアッテハ債
務ノ保證ヲ確立シ、手形割引ヲモ爲シ得ル
コトトシ、產業組合同樣家族貯金ヲモ出來
ルヤウニセラレタイト思フノデアリマス、
卽チ第三條第二項ヲ左ノ如ク改メルノ當局
ハ意思ナキヤ、組合ハ前項ノ事業ノ外組合
員ニ對シテ、其營業ニ付キ資金ノ貸付若ク
ハ手形ノ割引、組合員ノ爲ニスル其營業上
ノ債務ノ保證、又ハ組合員若クハ其家族、
從業者ノ貯金ノ受入ヲ併セテ行フコトトス
ルコトヲ得ルトスベキデアルト思フ、政府
ハ其意思アリヤナキヤ(「委員會デヤレ」「默
レ」「默ッテ居ラレルカ」ト呼ヒ其他發言ス
ル者多シ)君等ハ靜ニ能ク聽キナサイ
第五問、毛織物ハ國家統一アル檢査ヲス
ベシ、我國ノ毛織物產業ハ、羊毛ノ輸入過
去三箇年間平均約八十万俵デ、輸入ノ金額
モ二億万圓ニ及ンデ居ルノデアリマス、今
ヨリ僅ニ十年前ニハ、マダ殆ド毛織物ハ輸
入品デアッタ、然ルニ此近々十年間ニ輸入
ヲ防遏シテ、サウシテ輸出ハ、昨年ノ如
キハ五千万圓ノ多キニ達シテ居ルノデアリ
マス、今日デハ本邦毛織物生產ノ八割ハ、
愛知縣ノ數千ノ中小工業者ノ手ニ依ッテ生
產サレテ居ルノデアリマス、此飛躍的發展
ノ毛織物ハ、所謂愛知縣ノ業者ノ〓鑽努
力ノ賜物デアリマスルガ、此毛織物ハ
生活ノ必需品ナルノミナラズ、國民健康保
險ノ上ニ於キマシテモ、國防上ニモ重要デ
アル、平和產業デアリ、共ニ又一面軍需產
業デアリマス、毛織物ナクテハ戰爭モ出來
ヌ、又貿易上ニ於テモ近々數年間ニ、今マ
デハ輸入國デアッタモノガ輸出國トナッタ、
國民ノ中ニハ、舶來萬能ノ夢ガ未ダ覺メズ
ニ、國產品ノ洋服ヲ著テ居リナガラ、俺ハ
舶來物ヲ著テ居ルト、斯ウ云フヤウナコト
ヲ言ッテ居ル人ガ多イ、實ニ笑フベキデアル
ト思ヒマス(拍手)我國ノ毛織物ノ大飛躍ハ
英國ノ脅威デアル、由テ以テ日濠問題ノ如
キモ惹起シタト思フノデアリマス、此重要
ナル毛織物ニ對シテ國家ガ統制アル檢査ヲ、
國家ノ十分ナル監督ノ下ニ統一アル檢査ヲ
望ム者デアリマス
第六問、輸入組合ト輸入品ヲ原料トスル
中小工業者トノ關係ニ付テデアリマス、其
原料ノ賣買ガ圓滿ナ運ビガ付テ、中小工業
ノ操業ノ出來ルコトヲ、ドンナ風ニ御心配
下サレテ居ルノデアルカ、例ヲ羊毛ノ小紡
績紡毛工場ニ付テ申シマスルト、現ニ輸入
協會ハ商工省ノ斡旋デ昨年出來タト記憶シ
テ居リマス、此羊毛輸入協會ハ、有力ナル
大資本ヲ持ッテ居ル羊毛ノ輸入業者ノ團體
デアル、同時ニ羊毛紡績工場ノ經營者デア
ル、國策ノ上カラ買付分散スルノデアルガ、
其「アウト·サイダー」ノ紡績工場ハ、原料
ノ割當ガ不當デ、殆ド經營ガ不能ノモノモ
アルト聞イテ居リマス、貿易組合法ガ出來
テ、一層經營困難トナルノデアルト心配ス
ル者ガ有ルノデアル、英國ノ「ブラッドフオー
ドレノ毛織物ガ世界中ニ信用ヲ博シテ居
ルノモ、毛織物ハ中小工業ニ適シテ居ルト
云フコトガ如實ニ現レテ居ルト思ヒマス、
我國ノ纖維工業中毛織物ダケガ英國ニ及バ
ナイ筈ガナイノデアリマス、其紡毛工業ノ
如キハ、小規模デ優良ナル特殊ノ紡毛ヲ造
ルノデアリマスカラ、其小工場ハ羊毛工業
ノ進展ノ上ニモ重要ナル存在デアル、國策
ノ上カラモ原料ノ買付分散ガ行ハレテ居ル
コトハ、種々ナル情勢ヨリ見テ決シテ反對
スルモノデハナイ、併シ其結果ハ、一番困ッ
テ居ルノハ小紡績工場デ、原料割當ガ少ク、
買入ガ困難デアリ、又値段ヲ高ク買ハナケ
レバナラヌ、卽チ小工場ハ、高イ原料ヲ而
モ買入レ困難デ經營不能ニナッテ困ッテ居
ル、斯ウ云フコトヲ聞イテ居ルガ、其事實
ニ對シテ當局ハ如何ニ善處セントスルノデ
アルカ
第七問、輸出組合ト中小工業ノ關係デア
リマス、先ニモ御話ガアリマシタカラ、唯
簡單ニ申シマス、日印、日蘭、或ハ日濠ノ
如ク、割當制度ヲ以テ我國商品ノ輸入ヲ制
限シテ居ル、此割當ハ輸出組合、卽チ有力
ナル貿易商ガ、中小工業者ニ競爭的ニ其商
品ノ見積リヲ出サセ、其輸出商ハ必ズ利益
ヲ得ルノデアルガ、中小工業者ハ遂ニ互ニ
競爭シテ安ク引受ケル、玆ニ良品廉價デ中
小工業經營困難ノ聲ガ生レルノデアリマス、
割當ヲ得タ輸出商ハ利益ガナケレバ、割當
ノ權利ヲ他ヘ權利金ヲ以テ讓渡スル、是デ
ハ中小工業者ハ何時マデ經ッテモ頭ノ上ル
時ガナイ、故ニ工業組合ニモ割當ノ時相談
ヲスル必要ガアルト思フ、輸出貿易ニ於テ
ハ、輸出商ト製造業者トノ連絡緊密ヲ圖ッ
テ、共存共榮ノ下ニ進ムベキデアルト思フ
ノデアリマス、本日御提案ニナッテ居リマス
ル貿易調整法ニ依リマシテ、貿易審議會、
或ハ統制委員會ヲ設ケラレル筈デアリマス
ガ、斯ウ云フコトデ此弊害ヲ本當ニ除去ス
ルコトガ出來ルカ、其委員ノ顏觸レガ大頭
デ、實情ノ認識ガ少イト思フ、私ハ工業組
合等ガ其協議ニ與ラナケレバ、實際ノ圓滿
ナル運行ハ出來ヌノデアリマス、以上七點
ニ付テ商工大臣ノ親切明快ナル御答辯ヲ要
求スル者デアリマス、御答辯ニ依リマシテ
ハ更ニ質疑ヲ繼續スルコトニ致シマス(拍
手)
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=61
-
062・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 渡邊君ノ御質問
ニ御答致シマス、第一ハ工業組合ハ自治的
ニ製品檢査ヲシタラ宜イノニ、政府ガ自ラ
其ノ檢査ヲスルノハドウカト云フ御質問デ
アリマスルガ、是ハ一般的ニハ組合ヲシテ
自治的ニ行ハシメル方ガ宜イト思ヒマス
ガ、特殊ノ場合ニハ檢査ノ統一ヲ圖ル爲
ニ、組合以外ノ機關ヲ以テスルコトガ必要
デアルト思フノデアリマス、第二ハ、製品
ノ檢査手數料ハ檢査費以上ニ徵收シテハイ
ケナイト思フガ、ドウカト云フ御質問デア
リマスガ、御說ノ通リデアリマス、檢査ニ
必要ナ經費ヲ標準トシテ定ムベキモノデア
ルト思ヒマスガ、若シ實情之ニ副ハナイモ
ノガアリト致シマスレバ、之ニ對シテハ善
處シナケレバナラヌト思ヒマス、第三ハ、中
央會ニ强制加入ノ必要ガアルト認メルガ、
ドウカト云フ御意見デアリマスガ、只今デ
ハ中央會ハ組合又ハ組合聯合會ノ普及、發
達連絡等ノ爲ニ出來テ居ルノデアリマシ
テ、多數ノ組合及ビ組合聯合會ガ、先刻御
話ニナッテ居リマシタ通リニ、九百餘ニ對シ
テ六百幾ラ入ッテ居ル、之ヲ强制加入スル方
ガ宜イカドウカト云フコトハ愼重ニ考慮
スル必要ガアルト思フノデアリマス、ソレ
カラ次ハ組合金融ノコトデアリマスガ、此
點ニ付キマシテハ其必要ヲ認メマシテ、今
囘ノ改正ニモ新ニ組合ノ債務ノ保證ヲ爲シ
得ルヤウニ致シタノデアリマス、次ハ毛織
物ノ檢査ヲ國營ニシロト云フ御話デアリマ
スガ、是ハ御意見洵ニ御同感デアリマシ
テ、檢査ノ統一、製品ノ向上ヲ圖ル爲ニハ、
愼重ニ考慮シテ見タイト思フノデアリマ
ス、ソレカラ其次ノ輸入組合對工業組合、
又輸出組合對輸入組合、或ハ中小工業デア
リマシタカ、工業組合デアリマシタカ、其
點甚ダ恐縮デスガハッキリシマセヌデシタ
ガ、私ハ之ヲ輸入組合ト中小工業、輸出組
合ト中小工業ト云フ風ナ御質問ト解釋致シ
マシテ、之ニ對シマシテハ輸入組合、輸出
組合ニ於キマシテ、貿易ノ統制ヲ實施スル
場合ニ、生產者ト緊密ナ連絡ヲ取ルコトハ
最モ必要デアリマシテ、殊ニ中小工業者ニ
付テハ工業組合ヲシテ之ニ對應サセマシ
テ、生產統制ヲ實施サセマシテ、統制ノ點
ヲ擧ゲタイト思フノデアリマス、是レ以上
具體的ノ色々御話ガアリマシタガ、是ハ私
資料ヲ持チマセヌカラ、委員會ニ於テ御答
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=62
-
063・渡邊玉三郎
○渡邊玉三郞君 簡單デアリマスカラ自席
ヨリ發言ノ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=63
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064・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=64
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065・渡邊玉三郎
○渡邊玉三郞君 只今商工大臣ノ御答辯
ハ、滿足ノ出來ナイ點モアッタノデアリマス
ケレドモ、總テハ委員會ニ於テ十分承ルコ
トニ致シマシテ、私ノ質疑ハ是デ打切リマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=65
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066・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 田中彌助君
〔田中彌助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=66
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067・田中彌助
○田中彌助君 私ハ本日上程ノ日程中、工
業組合法中改正案ニ關聯シテ商工大臣ニ御
伺ヲ致シタイト存ジマス、改正法律中ノ各
般ニ亙リマシテハ、先刻小林君竝ニ渡邊君
ニ依ッテ質問セラレタノデアリマシテ、私ハ
其重複スル點ヲ全部避ケマシテ、他ノ機會
ニ質問ヲ申上ゲルト致シマシテ、只今ハ極
メテ簡潔ニ唯二點ダケノ質問ニ止メタイト
存ジマス
其第一ハ、工業組合又ハ商業組合ノ設置
認可權ヲ商工大臣ノ直轄カラ離シテ、地方
長官ニ委任スルノ御考ガアルヤ否ヤ、其
第二ハ、工業組合ト商業組合トノ分岐點ガ、
從來ハ明瞭ヲ缺ク場合ガアッタノデアリマ
ス、其限界ヲモット明確ニスルコトガ必要ト
思フノデアリマスガ、此點ニ對スル御考ハ
ドウデアルカ、先ヅ此二點ニ付テ質問ヲ申
上ゲタイノデアリマス
而シテ其第一ニ付テノ質問理由ハ、工業
組合ニセヨ、商業組合ニセヨ、其認可申請
ヲシタル場合ニ於テハ、當然行政官廳ハ敏
速ニ調査詮議スベキデアリマス、若シ遲延
スルガ如キコトガアリマスレバ、當初ノ計
畫ニ齟齬ヲ來シ、折角組合設立ノ熟シタル
機運ヲ失ヒ、事業執行ノ順調ヲ期スルコト
ヲ得ナイ結果ニナルコトハ今更申ス迄モナ
イノデアリマス、然ルニ是マデノ實情ヲ檢
討致シマスルニ、半年モ一年モ掛ル實情デ
アル、又書式等マデモ既ニ完備シタモノデ
モ、早キモ三箇月以上ヲ要スルノミナラ
ズ、其間尙ホ商工省ニ御百度詣リヲスルノ
實情デアリマス、言フ迄モナク、法律バカ
リ出來マシテモ、其運用ニ當ヲ得ナケレ
バ龍ヲ畫イテ目玉ノナイヤウナモノデア
リマス、工業ノ地方分散化ハ國防上、產業
上、將又工業原動力利用上等々ノ觀點カラ
致シマシテ、一般大衆ノ熱望スル聲デアル
コトハ、是亦今更申ス迄モナイノデアリマ
ス、又國策ノ見地カラ當然斯クアラネバナ
ラヌト信ズルノデアリマス、而シテ工業ノ地方
分散化ハ、中央ノ大工業ノ地方分散ノ方法
ト地方自體ニ工業ヲ發達振興セシムルモ
ノト、此二樣ニ見ルコトガ出來ルノデアリ
マス、爾カ致シマシテ、後者ノ目的ニ於テ
工業組合ヲ行ハントスル場合、地方事情ニ
暗キ中央政廳ガ許可ノ主體タルハ、實情ニ
副ハザルコトガ多イト考ヘザルヲ得ナイノ
デアリマス、又事務主體ガ中央政廳ナル故、
自然工業組合ニ關心ヲ有スル者ハ、唯中央
政廳ノ官吏ノミデアリマシテ、地方官吏ハ
僅ニ一二ノ係員ヲ除イテハ、現在デハ關心
ヲ持ツ者ガ皆無ト云フ有樣デアリマスルカ
ラ、地方分散化ハ殆ド期待シ得ラレナイ結
果トナルノデアリマス、私共ガ常ニ考ヘサ
セラレルモノノ一ツト致シマシテハ經濟
方面ニセヨ、〓育方面ニセヨ、其他各方面
ニ亙ッテ、漸次中央集權ノ傾向ガ其度ヲ深
メツヽアリマスルコトガ、國家將來ニ思ヒ
ヲ致ス時、又國運ノ發展ノ上カラ致シマシ
テモ、ドウ云フモノデアルカ、爲政家ノ考
慮ヲ要スル重大ナル點デハナイカト思フノ
デアリマス、此觀點カラ致シマシテモ、工
業ノ地方分散化ヲ期圖トセナケレバナラヌ
ト考ヘルノデアリマス、尙又組合ノ指導ハ
地方長官ガ地方事情ニ明ルキ地方自治團體、
或ハ商工會議所等々ニ關聯ヲ取リマシテ、
地方政廳ガ主體トナッテ直接之ヲ行フコトガ
最良ノ方法ナル故、隨テ組合認可權モ亦
地方長官ニ委任スベキガ、一番自然ノ歸趨
デアルコトヲ信ズル者デアリマスガ、此點
ニ對スル御所見ヲ伺ヒタイノデゴザイマス
次ニ第二ノ質問理由ハ、其業種ニ依リマ
シテ商業組合ヲ組織スベキモノナリヤ、將
又工業組合ヲ組織スベキモノナリヤ、此疑
問ガ生ズル場合ガ過去ニ於テ折々繰返サレ
タル實情デアルノデゴザイマス、卽チ商業
組合設立ヲ目的トスル場合ハ、工業組合ニ
關スル事業部分ヲ現ハサナイ、又工業組合
設置ヲ目的トスル場合ハ、工業組合ニ關ス
ル事業部分ノミヲ强調致シマシテ、其申請
書ヲ提出スルガ故ニ、書類ノミニ就テハ業
者ノ實情ヲ明ニスルコトヲ得ナイ次第デア
リマス、從來組合ヲ組織スル側カラ致シマ
シテモ、商工何レガ適切ナリヤト云フコト
ガ、自分自體ガ不明デ、可ナリ迷ハサレテ
居ッタヤウニ思フノデアリマスルガ、之ヲ明
ニ致シマシテ指導スルコトガ、主務省トシ
テハ當然爲スベキ緊要ナ事柄デアルト信ズ
ルノデアリマス、時間ガアリマセヌカラ、極
メテ簡單ナル實例ヲ申上ゲマスルナラバ、我
ガ長野縣ニ於キマシテ洋服商ガ洋服商業組
合ヲ作ッタ、所ガソレガ商業組合ト云フ名ハ
冠シマシテモ、其仕事ガ、或ハ洋服ノ仕立、
或ハ裁縫ト云フヤウナ仕事ガ屬スルガ爲ニ、
是ハ寧ロ工業組合デアルト、斯樣ナ見解ヲ
持チ、又松本市ノ菓子卸商組合ノ如キハ、
ヤハリ商業組合ト稱シマシテモ、工場デ菓
子ヲ製造シテ居ルカラ、其當時可ナリ迷ハ
サレタノデアリマスルガ、商工省ノ中デモ、
亦商務局ハ商業組合ナリト主張スル、工務
局デハ工業組合ガ當然デアルト云フ見解ヲ
爲ス、一貫セル方針、指導標準ガ今マデナ
カッタノデアリマス、工業組合法ノ第八條ノ
統制命令發動ニ關シマシテハ、及ブベキダケ
簡易迅速ニ之ヲ行ハナケレバナラヌモノデ
アリマスノニ、前述ノ如キ見解等デ徒ニ時
日ノ遷延ヲ致シ、機會ヲ失フノミナラズ、
工業組合ノ普及發達竝ニ地方分散化ノ實績
ヲ擧ゲ得ザル點ヲ遺憾ニ思フノデアリマス、
之ヲ要スルニ、統制ノ確立ハ我國工業界ノ
急務デアッテ、是ガ目的ノ達成ノ爲ニハ、機
ニ臨ンデ行政官廳ノ敏速活潑ナル統制命令
ノ發動ヲ必要トスルガ故ニ、地方長官ニ發
動權ヲ委任シ、時機ヲ失スルコトノナキヤ
ウニスルト共ニ、工業組合ニ對スル監督ヲ
更ニ徹底スルニハ、組織ノ認可、指導監督、
法律運用竝ニ事務等、總テ直接主體ヲ地方
廳ニ置カザレバ、其目的ヲ完全ニ達成スル
コトガ得ナイト考ヘテ居ルノデアリマスル
ガ、此點ニ對シマシテ當局ノ御答辯ヲ得タ
イノデアリマス
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=67
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068・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 田中君ノ御質問
ニ御答致シマス、商業組合、工業組合ノ設
立認可權ヲ、地方長官ニ委讓スル考ハナイカ
ト云フ御質問デゴザイマスガ、是ハ洵ニ御
尤ナ御意見デアリマシテ、私ハ委讓シテ差支
ナイト思フノデアリマス、サウ云フ御趣意ニ副
フヤウニ考究シテ見タイト思ヒマスガ、是ハ私
ダケノ考デゴザイマスカラ、篤ト〓究シテ見タ
イト思ヒマス、ソレカラ工業組合ト商業組合ノ
分界ガハッキリ分ラヌ、是ハ其或モノニナリ
マスト、ドッチヘ入レテ宜イモノカ分ラヌ
モノガ實際アルト思フノデアリマス、併シ
工業組合ハ工業者ヲ以テ成立チ、商業組合
ハ商業者ヲ以テ成立ツコトニ、無論ナッテ
居ルノデアリマシテ、實際ノ個々ノ場合ニ
付テ之ヲ判斷シテ行ッテ居ルノデアリマス、
但シドッチニ取ッテ宜イカ分ラヌモノガアル
コトハ勿論デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=68
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069・田中彌助
○田中彌助君 只今ノ御答辯ニ對シマシテ
ハ不徹底ナ點モゴザイマスルガ、何レ他ノ
機會ニ發言ヲ要求致シマス、本員ノ質問ハ
是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=69
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070・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 岡幸三郞君
〔岡幸三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=70
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071・岡幸三郎
○岡幸三郞君 本員ハ只今上程致シテ居リ
マスル所ノ工業組合法中改正法律案ニ付
テ、商工大臣ニ質問ヲ試ミタイト存ジマ
ス、工業組合ノ現在ノ數ハ九百七組合ノ多
キニ達シテ居リマシテ、其一年間ノ生產力
ハ二十六億圓ノ巨額ニ達シテ居ルノデアリ
やく、而シテ此九百七組合、二十六億圓ノ
生產ヲ有シテ居リマスル所ノ此工業組合ノ
指導精神ニ付キマシテハ商工當局ヨリ是
非トモ承ッテ置カナケレバナリマセヌ、從來
此工業組合ニ對スル「カルテル」ノ如キハ
自主的「カルテル」ヲ以テ臨ンデ居ラレマシ
タケレドモ、最近ニ於キマシテハ著シク國
家「カルテル」ニ變ッテ居ルヤウニ考ヘテ居
ルノデアリマスルガ、只今上程シテ居ラレ
マス所ノ此工業組合法中改正法律案ノ如
キ、多分ニ此官憲ノ干涉ト云フモノガ含マ
レテ居ルノデアリマス、此統制ノ方針、卽チ
國家「カルテル」ト云フコトナラバ私ハ何モ
申シマセヌ、併シナガラ「カルテル」ノ方針
ガ自主的ニ委セルト云フコトデアリマスル
ナラバ、之ニハ相當ノ異論ヲ挾ム者デアリ
マス、先ヅ此「カルテル」ノ方針ニ付キマシテ
商工大臣ノ御答辯ヲ煩シタイト存ジマス
次ニハ先日來同僚ヨリ御尋ニナリマシタ
所ノ、アノ工業組合中央會ノ問題デアリマ
ス、現在ニ於キマシテハ道府縣ヲ通ジマシ
テ、工業組合中央會ノ支部ガ二十四アルノ
デアリマス、而シテ其他ノ組合ニハ、此工
業組合中央會ト關係ヲ有タナイ組合ガ澤山
アルノデアリマス、是ハ要スルニ其工業組
合中央會ニ對スル加入ハ、任意ト云フコト
デアリマスルカラ、經費ノ關係上加入シナ
イモノガ澤山アル、果シテサウデアリマス
ルナラバ、我ガ工業組合ヲ此工業組合中央
會デ全部指導シテ行クト云フコトニ對シテ
ハ、甚ダ遺憾ガアルノデアリマス、農村ニ
於ケル農會ノ如キハ、農村業務ニ對シマ
シテ系統農會アリテ、相當ナル事業上ノ
實績ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、又產業
組合ガアリマシテ、農村經濟ノ爲ニ多大ナ
ル寄與貢獻ヲ致シテ居ルノデアリマス、果
シテサウデアリマスルナラバ、我ガ工業界
ノ爲ニモ、系統的機關ヲ設ケテ、一貫シタ
ル筋ノ通ッタ所ノ統制ノ必要ガ、大イニアル
ト私ハ考ヘル次第デアリマス、然ルニ工業
組合中央會ノ如キハ統制ノ保障ノ下ニ出來
テ居リマスルガ、工業組合トシテハ任意加
入ト云フ形式ヲ採ッテ居ルノデアリマスル
カラ一貫シタル統制ノ上ニ非常ニ不便不利
ガアルト存ズル次第デアリマス、同僚ノ質
問ニ對シマシテハ商工大臣ハ左樣ナ必要
ハナイカノ如クニ御答辯ニナリマシタガ、
是ハ要スルニ工業組合中央會ヲ御認メニ
ナッタ時ニ、旣ニ全體ノ工業組合ヲ統制スルト
云フ目的ノ爲ニ、此中央會ト云フモノハ御
認可ニナッタノデハナイ、果シテ左樣デア
リマスルナラバ、工業組合中央會ニ對シマ
シテハ、佛作ッテ魂ヲ入レナイヤウナ結論
ニ到達シハセヌカ、此點ニ對シマシテハ、
渡邊君ノ御答辯ニ對シテ餘リニモ私ハ不滿
足デアリマスルカラ、更ニ引續キ御尋スル
次第デアリマス
ソレカラ此組合認可ヲ地方長官ニ委任
スルコトデアリマスルガ、是ハ商工大臣
トシテ是ハ認可シテモ差支ナイヤウナ御
話ガアリマシタガ、現ニ地方長官ノ委任事
項ノ中ニハ、組合ニ最モ必要ナル定款ノ
變更スラ委任事項ニナッテ居ルノデアリマス
カラ、是非トモ是ハ設立認可ニ對シマシテ
モ、地方長官ノ委任事項ニ加ヘテ貰ヒタイ、
要スルニ此組合ガ創立總會ヲ致シマシテ、
是ノ認可ヲ取リマスルマデニハ少クトモ
一年內外位ノ日子ヲ要スルノデアリマスガ、
其間ニ於ケル此創立者ノ立場ト云フモノ
ハ法人ノ人格ヲ得ナイ爲ニドノ位苦痛ヲ
感ジテ居ルカト云フコトハ、商工當局ハ御
存ジアルマイト思フノデアリマス、此點ニ
付キマシテモ、相當ナル御考慮ヲ煩ハシタ
イト存ズル次第デアリマス、此工業組合ノ
統制ト云フコトニ付キマシテ、重要輸出品
ニ付キマシテハ、相當ナ法律ノ下ニ統制ガ
取レテ居ルノデアリマス、或ハ販路、或ハ
保管、或ハ生產、或ハ共同販賣等、各種ノ統
制ガ取レテ居リマスルケレドモ、輸出品デ
ナイモノニ對シマシテハ、完全ナル統制ノ
取レテ居ナイモノガ澤山アルノデアリマス、
其統制ノ必要ノアルモノ亦澤山アルノデア
リマス、斯樣ナ次第デアリマスカラ、此年
產額二十六億圓ヲ生產スル所ノ此工業組合
ニ對スル認識ヲ、今少シク御深メニ相成リ
マシテ、我國工業ノ爲ニ十分實績ヲ擧ゲラ
レタイト云フコトヲ、私ハ希望シテ居リマ
スルガ、此希望ノ下ニ只今御提案ニナッテ
居リマスル所ノ此統制方針ガ、國家統制デ
アルカ、自主的統制デアルカト云フコトヲ
承ルコトハ、只今上程ニナッテ居リマスル
所ノ本案ノ贊否ノ上ニ、非常ニ參考ニナル
ノデアリマスルカラ、明確ナル御答辯ヲ承
リタイト存ジマス(拍手)
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=71
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072・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 岡君ノ御質問ニ
御答致シマス、第一ハ「カルテル」ハ自主的
デアルカ、或ハ國家的デアルカト云フ御質
問デアリマスガ、屢次申上ゲマシタ通リ
ニ、政府ノ統制方針ハ自主的ヲ本トシテ、
內外ノ情勢ニ應ジテ、適當ナ統制ヲ加ヘヨ
ウトスルノデアリマス、第二ノ中央會ヘノ
强制加入ニ關シマシテハ渡邊君ニ御答申
シマシタ私ノ言葉ガ足ラナカッタノカモ知
レマセヌガ、私ハ愼重ニ考慮シテ見タイト
申上ゲタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=72
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073・岡幸三郎
○岡幸三郞君 只今ノ答辯ノ中デ、此工業
組合認可ニ對スル地方長官委任事項ノコト
ニ付テ、モウ一ツ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=73
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074・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 商工大臣、何力落
チテ居ルト云フコトデスガ、アナタノ御答
辯ハ······岡君、何ガ落チテ居ルト云フノデ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=74
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075・岡幸三郎
○岡幸三郞君 地方長官ニ工業組合設立ノ
認可ノ委任事項
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=75
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076・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) ソレハ先程渡邊
君ニ御答申シマシタカラ、私ハ宜イト思ッテ
申サナカッタノデゴザイマスガ···
〔岡幸三郞君「違ヒマス」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=76
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077・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君)(續) 全ク同樣デ
ゴザイマシテ、地方長官ニ委讓シテ差支ナ
イト私ハ考ヘテ居リマスガ、尙ホ法規等ヲ
〓究致シマシテ、善處シタイト思ヒマス
〔岡幸三郞君「個人ノ資格デスカ、商工
大臣ノ資格デスカ」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=77
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078・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君)(續) 商工大臣ノ
資格デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=78
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079・岡幸三郎
○岡幸三郞君 私ノ質問ハ是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=79
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080・中山福藏
○中山福藏君 澤田利吉君及ビ原玉重君
ハ、時間ノ都合上議事ノ進行ヲ迅速ナラシ
メル爲ニ、質問撤囘ノ申出ガアリマシタ、
仍テ質問通告順位カラ之ヲ省カレンコトヲ
望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=80
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081・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 然ラバ是ニテ質疑
ハ終リマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委
員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=81
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082・中山福藏
○中山福藏君 日程第二ハ政府提出、アル
コール專賣法案委員ニ併セ付託シ、日程第
三乃至第五ノ三案ハ、一括シテ政府提出、
輸出補償法中改正法律案ノ委員ニ併セ付託
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=82
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083・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=83
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084・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=84
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085・中山福藏
○中山福藏君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第三十四ヲ繰
上ゲ上程シ、委員長ノ報告ヲ求メ、其審議
ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=85
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086・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=86
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087・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第三十四、輸出補償法中改正法律案ノ
第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ
求メマス-理事川橋豐治郞君
第三十四輸出補償法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一輸出補償法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十五日
委員長田島勝太郞
衆議院議長富田幸次郞殿
〔川橋豐治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=87
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088・川橋豊治郎
○川橋豐治郞君 只今議題ト相成リマシタ
輸出補償法中改正法律案ニ關シマシテ、田
島委員長ニ代リマシテ、簡單ニ委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本委員會
ハ本月四日第一回委員會ヲ開會致シマシテ、
田島勝太郞君ガ委員長ニ互選サレマシタ、
爾來本月十五日マデ五囘ニ亙リマシテ、各
委員ヨリ熱心ニ質問サレタノデアリマス、
本案ハ輸出業者ノ損害補償ノ率ヲ高メ、以
テ輸出振興ヲ圖ル趣意ニ依ル提案デアリマ
シテ、既ニ第六十四議會竝ニ第六十五議會
ニ於テ建議案ガ通過シテ居リマス、更ニ第
六十七議會ニ於キマシテハ、議員提出法律
案ト致シマシテ提案サレマシタガ、遂ニ審
議未了ト相成ッタノデアリマス、斯ル經緯ニ
依リマシテ本議會ニ提出サレマシタノデア
リマシテ、隨テ委員會ニ於キマシテハ別段
ノ異論ガナカッタノデアリマス、唯本案ニ關
聯致シマシテ、宮本委員ヨリ本法案ノ運用
地域、對滿貿易、各國關稅問題等ニ付テ、
又岡崎君ヨリハ對「ソ」聯邦貿易ニ付キマシ
テ、木下君ヨリ日印會商等ニ付キマシテ、
石坂君ヨリ綠茶輸出等ニ付キマシテ、政府
當局トノ間ニ質問應答ガアックノデアリマ
ス、斯クテ十五日ニ至リマシテ質問ヲ打切
リ、直チニ討論ニ入リマシタガ、岡崎君ガ
本案ニ對シマシテ贊否ノ態度ヲ保留サレマ
シタ外、大多數ノ贊成ノ下ニ原案通リ可決
決定致シマシタ、以上御報告申上ゲマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=88
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089・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 討論ノ通〓ハアリ
マセヌ、本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
諮リ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ贊
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=89
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090・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 起立多數、仍テ本
案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=90
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091・中山福藏
○中山福藏君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=91
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092・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=92
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093・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ議
案全部ヲ議題ト致シマス
輸出補償法中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=93
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094・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリ
マセヌカラ委員長報告通リ決シマシタ(拍
手)是ニテ本案ノ第二讀會ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=94
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095・中山福藏
○中山福藏君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=95
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096・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=96
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097・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
輸出補償法中改正法律案第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=97
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098・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリ
マセヌカラ、第二讀會決議ノ通リ可決確定
致シマシタ(拍手)日程第六、橫莊鐵道株式
會社所屬鐵道外三鐵道買收ノ爲公債發行ニ
關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-鐵
道大臣伍堂卓雄君
第六橫莊鐵道株式會社所屬鐵道外三
鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律
案(政府提出)第一讀會
橫莊鐵道株式會社所屬鐵道外三鐵道買
收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
政府ハ左ノ鐵道買收ノ爲之ニ必要ナル額
ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
-橫莊鐵道株式會社所屬鐵道中前〓
羽後本莊間
一信濃鐵道株式會社所屬鐵道
藝備鐵道株式會社所屬鐵道
一北九州鐵道株式會社所屬鐵道
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法ニ依リ公債ヲ發行スル場合ニ於テ地
方鐵道法第三十六條ノ五ノ規定及昭和九
年法律第二十二號ニ依リ大藏大臣ノ定ム
ル五分利附國債證劵ノ時價ハ昭和十二年
四月一日前六月間ノ平均相場ニ依リテ大
藏大臣ノ定ムル價格ヲ以テ之ニ代フルコ
トヲ得
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=98
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099・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 只今上程セラレ
マシタ法律案ノ提案理由ヲ簡單ニ申上ゲマ
ス、今囘提案致シマシタル法律案ハ、地方
鐵道ノ買收ノ爲ニスル公債發行ニ關スルモ
ノデゴザイマス、買收セントスル鐵道ハ信
濃藝備及ビ北九州ノ三鐵道ト橫莊鐵道ノ
一部トデアリマス、是等ハ何レモ國有鐵道
ノ新線開業ニ伴ヒ、若クハ產業上、軍事上
ノ必要ニ依リ之ヲ買收シマシテ、運輸ノ系
絡ヲ圖リ、地方產業ノ開發ニ資セントスル
ノデアリマス、何卒御協賛アランコトヲ希
望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=99
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100・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=100
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101・中山福藏
○中山福藏君 本案ハ政府提出鐵道敷設法
中改正法律案委員ニ併セ付託セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=101
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102・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=102
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103・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=103
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104・中山福藏
○中山福藏君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、漁船保
險法案、漁船再保險特別會計法案、森林火
災國營保險法案、及ビ森林火災保險特別會
計法案ノ四案ヲ一括シ議題ト爲シ、委員長
ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=104
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105・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=105
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106・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ日程ハ變更セラレマシタ、漁船保
險法案、漁船再保險特別會計法案、森林火災
國營保險法案、森林火災保險特別會計法案、
右四案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員長紫安新
九郞君
漁船保險法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
漁船再保險特別會計法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
森林火災國營保險法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
森林火災保險特別會計法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一漁船保險法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十九日
委員長紫安新九郞
衆議院議長富田幸次郞殿
附帶決議
一海難防止竝漁業從事者及其ノ遭難遺
族救護ニ關スル施設ヲ講スヘシ
-漁業組合中央金庫ヲ速ニ設置スヘシ
-水產資源開發ノ爲沿岸魚介類ノ繁殖
保護竝遠洋漁業ノ振興ヲ計ルヘシ
報〓書
一漁船再保險特別會計法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十二年三月十九日
委員長紫安新九郞
衆議院議長富田幸次郞殿
附帶決議
-本法制定ノ趣旨ヲ徹底セシムル爲保
險金額算定標準ヲ引上クルト共ニ保險
料金ヲ引下クヘシ
-漁船再保險特別會計ニ剩餘金ヲ生シ
タルトキハ保險料金引下ノ資ニ充當ス
ヘシ
一漁村ノ現狀ニ鑑ミ本法運用ニ當リテ
ハ中小漁船ニ對シテ特ニ意ヲ用フヘシ
報〓書
一森林火災國營保險法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十二年三月十九日
委員長紫安新九郞
衆議院議長富田幸次郞殿
附帶決議
一本法適用ノ範圍ヲ壯齡林ニモ擴大ス
ルノ方途ヲ講スヘシ
ー人工植栽困難ニシテ天然ノ稚樹ヲ育
成セル森林ニ付テモ保險ニ付スルノ方
法ヲ開クヘシ
報〓書
一森林火災保險特別會計法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十九日
委員長紫安新九郞
衆議院議長富田幸次郞殿
附帶決議
一本法制定ノ趣旨ヲ徹底セシムル爲保
險料金ノ引下ニ努ムヘシ
〔紫安新九郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=106
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107・紫安新九郎
○紫安新九郞君 諸君、只今上程セラレマ
シタ漁船保險法案、漁船再保險特別會計法
案森林火災國營保險法案、森林火災特別
會計法案、此四案ノ委員會ニ於ケル經過竝
ニ結果ヲ一括御報〓致シマス
漁船保險ハ、漁船ノ所有者ヲシテ漁船保
險組合ニ依リ相互保險ヲ行ハシメ、政府ハ
其再保險ヲ管理シ、以テ漁業經營ノ安全ヲ
圖リ、延テハ漁業ノ改良發達ヲ促進セント
スルノデアリマス、委員會ニ於キマシテハ、
此保險ニ依ル損害ノ補塡モ勿論必要デアル
ガ、海難ノ防止、沿岸漁業ノ振興策ニ付テ
モ、速ニ充實ノ方策ヲ確立セラレタイ、又
漁業ニ從事スル者ノ遭難救濟ニ於テモ、適切
ナル方策ヲ速ニ樹立セラレタイトノ御議論
モアリマシタ、之ニ對シテ政府ハ是等ノ點
ニ付テ、其必要ヲ認メ考慮スル旨ノ答辯ガ
アリマシタ、社會大衆黨ノ山崎君ハ、漁船
保險ニ付キマシテハ、政府ハ漁業組合ノ全
國的統一ヲ强メ、是ガ協同事業ノ發達ヲ助
成シ、漁民經濟ノ自主的更生ニ資セラレタ
イ、次ニハ政府ハ漁業勞働者ニ對シ、政府
竝ニ漁業主ノ全額負擔ニ依ル災害保險法ノ
實現ニ努メラレタシトノ希望ヲ陳述セラレ
マシタ、尙ホ保險ノ目的タル漁船ノ範圍ニ
付テハ、小漁船ヲ主トセラレタイトノ御議
論ニ對シテハ、政府ハ百噸未滿ノ小漁船ヲ
原則トシ、例外ノ場合ト雖モ、一千噸ヲ超
エナイコトニスル方針デアルトノ答辯ガア
リマシタ、其他保險金額、保險料率等ニ付テ
モ、ソレ〓〓質問應答ヲ重ネ、尙ホ此漁船保
險制度ニ關聯シテ、一般水產振興ニ關スル施
設ニ付テモ、政府ノ意圖ヲ質問致シマシタ
次ニ森林火災國營保險法案、森林火災保
險特別會計法案ニ對スル委員會ノ經過竝ニ
結果ヲ一括御報告申上ゲマス、森林火災保
險ハ、火災ノ被害最モ激甚ナル幼齡人工造
林ニ付キ、國營火災保險ノ制度ヲ立テ、其
損害ヲ補塡シテ、再造林ヲ容易ナラシメ、
森林資源ノ存續ヲ圖リ、以テ山村經濟ノ振
興ヲ企圖シタモノデアリマス、委員會ニ於
テハ森林保險ノ外ニ、農作物ニ對スル保險
ノ必要ガ强調セラレマシタ、之ニ對シテ政
府ハ更ニ〓究ノ上成ベク次ノ議會ニハ提出
致スト云フ考ヲ以テ、十分努力致シタキ旨
ノ答辯ガアリマシタ、次ニ森林火災保險ニ
付テハ、火災保險ニ依ッテ損害ヲ補塡スルハ
勿論必要デアルガ、火災防止等ノ對策ニ付
キ、更ニ努力セラレタイトノ御議論モア
リ、又保險金額ノ標準ニ付テノ質問ニ對シ
テ、政府ハ再造林ノ實費ヲ目安トシタモノ
デアルトノ答辯ガアリマシタ、次ニ本法ハ
私法デアル、國家ト人民ト對等ノ地位ニ立
ツモノデアル、然ルニ本法ニハ「申告ヲ怠
リタルトキハ」云々「通知ヲ怠リタルトキハ」
云々等ノ規定ガアッテ、一方ニ强イ權利ヲ與
ヘ、一方ハ弱キ立場ニ在ルヤウナ感ガアル
デハナイカトノ意味ノ質問ニ對シマシテ、
政府ハ林業者ノ利益ヲ保護シ、保險ヲ繼續
セシムルノ趣旨ヲ以テ、此保險ヲ運用スル
コトトシ、出來得ル限リ契約解除等ノ起ラ
ナイヤウニ、林業家又ハ山村ノ實情ニ卽
シ、親心ヲ以テ實行スル旨ノ答辯ガアリマ
シタ、社會大衆黨ノ山崎君ヨリ、本案ニ對
スル希望ト致シマシテ、政府ハ此營林地帶
ニモ森林火災豫防ノ爲メ、官立ノ氣象觀測
ト監視機關ヲ擴大シ、以テ森林被害ノ絕滅
ニ努メラレタイ、又政府ハ次期議會ニ重要
農作物保險法案ヲ必ズ提出セラレタイトノ
陳述ガアリマシタ、又山村ノ經濟振興ニ付
キ適當ナル指導者ノ養成ニ關スル御希望モ
アリマシタ、其他保險料、保險審査會ノ構
成、無事戾等ニ付テ質問應答ガ重ネラレマ
シタ
而シテ本案ヲ採決スルニ當リマシテ、民
政黨ノ多田君、政友會ノ登坂君、昭和會ノ
今給黎君ヨリ、斯樣ナル附帶決議ヲ提出セ
ラレマシタ
海難防止竝漁業從事者及其ノ遭難遺
族救護ニ關スル施設ヲ講スヘシ
漁業組合中央金庫ヲ速ニ設置スヘシ
水產資源開發ノ爲沿岸魚介類ノ繁殖
保護竝遠洋漁業ノ振興ヲ計ルヘシ
本法制定ノ趣旨ヲ徹底セシムル爲保
險金額算定標準ヲ引上クルト共ニ保險
料金ヲ引下クヘシ
漁船再保險特別會計ニ剩餘金ヲ生シ
タルトキハ保險料金引下ノ資ニ充當ス
ヘシ
-漁村ノ現狀ニ鑑ミ本法運用ニ當リテ
ハ中小漁船ニ對シテ特ニ意ヲ用フヘシ
ト云フノデアリマス
次ニ森林保險ニ對シマシテ斯樣ナル附帶
決議ガ提出セラレマシタ
-本法適用ノ範圍ヲ壯齡林ニモ擴大ス
ルノ方途ヲ講スヘシ
本法制度ノ趣旨ヲ徹底セシムル爲保
險料金ノ引下ニ努ムヘシ
-人工植栽困難ニシテ天然ノ稚樹ヲ育
成セル森林ニ付テモ保險ニ付スルノ方
法ヲ開クヘシ
ト云フノデアリマス、而シテ本法及ビ附帶
決議トモニ全會一致ヲ以テ可決セラレマシ
ク、何卒委員會決定通リ御贊成アランコト
ヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=107
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108・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 四案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=108
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109・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ四案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=109
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110・中山福藏
○中山福藏君 直チニ四案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=110
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111・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=111
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112・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ直チニ四案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
漁船保險法案第二讀會(確定議)
漁船再保險特別會計法案
第二讀會(確定議)
森林火災國營保險法案
第二讀會(確定議)
森林火災保險特別會計法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=112
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113・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリ
マセヌヤウデアリマス、第三讀會ヲ省略シ
テ、四案トモ委員長報告通リ可決確定致シ
マシク(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=113
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114・中山福藏
○中山福藏君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=114
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115・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=115
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116・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後五時五十一分散會
衆議院議事速記錄第八號中誤植正誤
去月十九日衆議院議事速記錄第八號一四八頁揭
載法人資本稅法案中四段三行ノ次ニ左ノ第二十
二條以下ヲ脫ス
第二十二條朝鮮、臺灣、關東州又ハ樺太ニ本
店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ本法施
行地ニ於ケル資本ニ付テハ法人資本稅ヲ課
セズ
第二十三條第六條ノ規定ハ朝鮮、臺灣、關東
州又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有ス
ル法人ガ朝鮮、臺灣、關東州、樺太又ハ本法施
行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人
ト合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併後存續ス
ル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ガ
本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有ス
ル場合ニ付之ヲ準用ス
第二十四條北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公
共團體ハ法人資本稅ノ附加稅ヲ課スルコト
石崎町
附則
本法ハ昭和十二年四月一日以後終了スル事業
年度分ヨリ之ヲ適用ス
去月十九日衆議院議事速記錄第八號一四六頁揭
載臨時租稅增徵法案第一條中「砂糖稅、消費稅」ハ
「砂糖消費稅」ノ誤発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02619370319&spkNum=116
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