1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
輸出補償法中改正法律案（政府提出）
—————————————————————
會議
昭和十二年三月十五日（月曜日）午後一時三十分開議
出席委員左の如し
委員長 田島勝太郎君
理事 川橋豊治郎君 理事 木下信君
理事 石坂養平君
岡崎久次郎君 飯塚春太郎君
松田喜三郎君 中亥歳男君
神保重吉君 宮本雄一郎君
船田中君 福井甚三君
高良宗七君 沖藏君
守屋榮夫君 岡崎憲君
福田耕君 石坂繁君
三月十三日委員馬場元治君辭任に付其の補闕として木村武雄君を議長に於て選定せり
出席政府委員左の如し
外務次官 堀内謙介君
外務省通商局長 松嶋鹿夫君
農林省農務局長 戸田保忠君
商工次官 村瀬直養君
商工省貿易局長 新倉利廣君
本日の會議に上りたる議案左の如し
輸出補償法中改正法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=0
-
001・田島勝太郎
○田島委員長 開會致シマス-木下信君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=1
-
002・木下信
○木下委員 貿易振興ニ關スルコトニ付キ
マシテ實ハ外務大臣ノ御出席ヲ求メテ置イ
タノデアリマスガ、御差支ガアッテ御出席
ガナイコトハ洵ニ遺憾ト思ヒマス、巳ムヲ
得マセヌカラ次囘ニ御伺致シタイト思ヒマ
ス、私ノ聽キタイト思ヒマスル範圍ハ南洋
方面ニ限ルノデアリマスガ、第一ニ佛領印
度支那ノ貿易ニ付テ御伺シタイト思ヒマス、
佛領印度支那ガ我國カラ距離ニ於テハ餘リ
遠クナイニ拘ラズ、而モ地積ニ於キマシテ
モ、日本ノ全領土ヨリモ約四千二三百方
里ノ大キナ廣袤ノ土地デモアリ、又人口モ
二千万位ノ人口ヲ包容シテ居ル土地デアル
ニモ拘ラズ、我國ノ輸出貿易ト云フモノハ
僅ニ三百万圓位ノモノニ過ギナイ、而モ彼
ノ地カラ日本ニ參ッテ居ルノハ約一千万圓
位ニ上リマセウ、斯ウ云フ樣ナ片貿易デア
リマスノハ、畢竟スルニ佛領印度支那ノ高
關稅ト云フ障壁ノタメデアルト思ヒマス、然
ルニ此高關稅ノ打破ニ付テ從來外務省ノ御
熱心ガ甚ダ薄イト思フノデアリマス、嘗テ
昭和六年デアリマシタカ、山縣伊三郞公爵
ガ經濟特使トシテ參ッテ、幾分カ好轉スルダ
ラウト云フコトヲ私共期待ヲシテ居ッタノ
デアリマスガ、實ハ餘リ好轉モセズニ今日
ニ至ッテ居ル、現ニ私ガ後ニ參リマスト、南
洋方面ハ殆ド自轉車ト申セバ日本カラ參ッ
タ自轉車デアルニ拘ラズ、最近「サイゴ
ン」邊リニハ殆ド日本ノ自轉車ガ見エナイ
ノデアリマス、伺ッテ見マスト關稅ダケガ二
十割近イ、隨テ一臺ノ自轉車ヲ買フノニ、
日本ノ品ニ於テハ三倍ノ金ガ掛カルト云フ
狀態デアリマシテ、洵ニ日本トノ貿易進展
ト云フモノハ、今日ノ狀態デハ到底期シ得
ナイト私ハ思フノデアリマス、之ニハモウ
少シ外務省方面ニ於キマシテモ、關稅ニ付
テ相當ノ御努力ヲ願ハナケレバ相成ラヌト
思フノデアリマスルガ、唯聞ク所ニ依リマ
スト佛蘭西ハ御承知ノ如ク、內閣ハ常ニ平均
四箇月、五箇月ト云フヤウナ狀態デ更迭シ
テ居ッテ、官僚ノ勢力ガ牢固トシテ拔ケナイ、
而モ佛蘭西外務省ノ官僚ト云フモノハ、割
合ニ實業方面ト提携シテ居ルガ爲ニ、關稅
ナドノ改正ニハ非常ニ困難デアルト云フコ
トヲ、私外交界ノ先輩ノ人カラ漏レ聞イタ
コトモアリマスルガ、併シ今日ハ幸ト申シ
マスルカ、社會主義的ナ「イデオロギー」
ノ下ニ結成シテ居ル「ブルム」內閣デアリ
マスルカラ、斯ウ云フ機會ニ於キマシテハ、
佛領印度支那ノ如キ植民地ニ對シテ、從來
ノ如キ搾取主義ト云フモノヲ、サウ主張ス
ルモノデモナイト思ヒマスルノデ、是等ノ
機會ヲ捉ヘテ佛領印度ノアノ高關稅ヲモウ
少シ安クスルヤウナ方針ヲ執レナイモノデ
アラウカ、此點ニ付テ外務省ノ方ノ御意見
ヲ承リタイト思ヒマス、尙ホ私ハ時間ノ關
係モアリマスルノデ、成ベク早クヤリタイト
思ヒマスカラ、一問々々ヲ伺ハズニ、ズット私
ノ申上ゲタイコトヲ續ケテ申シタイト思ヒ
マス
第二ハ「シャム」ノコトデアリマスルガ、
昨年安川經濟特使ガ「シャム」ニ參ッタノデ
アリマスルガ、アノ結果ハ私ハ全然失敗デ
アルト云フコトヲ斷言シテ憚ラナイノデア
リマス、私共ノ漏レ聞イテ居ル所ニ依リマ
スレバ、唯一ノ御土產デアリマスル所ノ砂
糖會社ノ日邏合辦ト云フヤウナ問題スラ
モ、結局好結果ヲ得ナイ、而モアチラカラ早
ク砂糖會社ヲ合辦ヲ以テ拵ヘタイカラ來テ
吳レト言ッテ、コチラカラハ日本製糖ノ金澤
常務アタリガ技術者ヲ連レテアチラヘ參ツ
テ、而モ一箇月ニ亙ル長イ間滯在ヲシテ
交涉ヲシテ居ッタニ拘ラズ、途中デ其創立委
員ヲ解散スルト云フヤウナ、實ニ慘澹タル
結果ヲ見テ居ル、殆ド日本ノサウ云フ關係
ガ馬鹿ニサレタヤウナ實情ヲ見ルノデアリ
マス、是ハ勿論種々國內的ノ事情モアリマ
セウケレドモ、畢竟スルニ是ハ英吉利ノ公
使ノ橫槍デ以テ、サウ云フヤウナ狀態ニナッ
タト云フコトハ、殆ド多クノ人ガ疑ハナイ
狀態デアリマス、結局今日英國ノ「シャム」
ニ於ケル所ノ勢力ト云フモノガ大キイノ
デ、是ハ長イ間ノ投資ノ關係及ビ政治上ノ
勢力扶植ノ關係デモアリマセウケレドモ、
最モ力ノ多イモノハ英吉利ノ公使ガ自由ニ
「シャム」ノ言葉ヲ話シ、「シャム」人ト能ク
接シ、而モ長ク彼處ニ在勤シテ居ルト云フ
結果カラ、常ニ「シャム」ノ要路ノ人ト接觸
シテ、自由ニ其手腕ヲ揮フト云フ狀態ガ大
キナ力デアルト私ハ信ジマス、斯樣ナ點カ
ラ見マシテ、日本ノアチラニ居リマスル所
ノ外交官ト云フモノガ「シャム」語モ知ラ
ズ、又アノ土地ノ人トノ接觸モ少ク、當日
米國ノ公使トカ或ハ佛蘭西公使アタリノ後
塵ヲ拜シテ居ッテ、自由ナル手腕ヲ揮ヘナイ
ト云フコトガ非常ナル原因ダト思ヒマス、
隨テ外務省トシテハ將來歐米各國ハ別ト致
シマシテ、東洋トカ又ハ南洋トカ云フヤウ
ナ方面ニ公使ヤ領事ヲ派遺スル場合ニ於テ
ハ、徒ニ從來ノヤウナ學校ノ經歷ナドニ重
キヲ置カズ、モウ少シ眞劍ニ熱心ニ日本ノ
外交工作ヲ實行シ、殊ニ貿易振興ノ爲ニ努
力スル所ノ、熱ト力ノアル人ヲ派遣スルヤ
ウナコトニ付テノ御考ガアリマスカドウ
カ、ソレヲ第二ニ承ッテ置キタイト思ヒマス
第三ハ日蘭關係デアリマスルガ、曩ニ長
岡大使ガ日蘭會商ノ爲メ參ッタノデアリマ
シテ、其結果面白クナカッタト云フヤウナ
狀態デアリマス、殊ニ是カラ其國へ乘リ込
ンデ經濟貿易ノコトヲ交涉シヨウト云フ所
ノ大使ガ、上陸前ニ當ッテ殆ド其國ノ內政
干涉ト思ハレルヤウナ聲明ヲスルト云フコ
トハ、永ク外交界ニ居ッタ長岡大使トシテ
ハ、ドウ云フ手落デアッタカト云フコトヲ
私共ハ疑フノ狀態デアリマス、或ハ外務省
カラ指示シタモノトシタナラバ、外務省ト
シテ相當責任ヲ負フベキモノデアラウト思
フノデアリマス、結局長岡大使ノ交渉ト云
フモノハ大部分ハ失敗デアッタト私ハ信ジ
テ居リマス、兎ニ角是ハ濟ンダコトデアリ
マスカラ致シ方ガナイノデアリマスガ、其
後日蘭會商ハドウ云フ風ニナッテ居リマス
カ、又海運關係ノ方ノ交涉ハドウ云フ風ニ
ナッテ居リマスカ、之ニ付テ詳シク御伺ヲ致
シタイト思ヒマス、尙ホ御伺シタイ事モア
リマスガ、是ハ大臣デナイト御伺シテモ致
シ方ガナイト思ヒマスカラ、私ハ此三點ニ
付テ御伺スルニ止メタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=2
-
003・堀内謙介
○堀內政府委員 只今御尋ノ點ハ三點デゴ
ザイマシタガ、第一ノ佛領印度支那ト日本
トノ間ノ貿易關係ノ點ニ付テ現狀ハ甚ダ不
滿足デアルガ、之ニ付テ何カ政府ノ方デ改
善ノ方策ガアルカ、斯ウ云フ御尋ノヤウデ
アリマスガ、現在佛領印度支那ト日本トノ
間ノ貿易狀態ガ不滿足デアルト云フ點ニ付
テハ全然只今ノ御話ノ通リデアリマシテ、
私共モ此點ハ御同感デゴザイマスガ、實ハ
御承知ノ如ク昭和七年ニ日佛關稅協定ガ出
來マシタガ、其後我國カラ佛領印度支那ニ
輸出シマシタ商品ノ總額ハ幾分殖エテ參リ
マシテ、一昨年四百万圓位ニナッテ居リマ
ス、併ナガラ佛領印度支那ヨリ日本ニ輸入
シマス額ノ殖エ方ガ多クシテ、一昨年千五
百万圓位ニナッテ居ル譯デゴザイマシテ、日
本ニトッテハ一千万圓位ノ入超ニナッテ居ル
ノデアリマシテ、其點ハ餘リ我ガ方カラ見
レバ輸出入ノ均衡ト云フ點カラ申シマシテ
滿足シ得ナイ譯デアリマス、其點ニ付テ之
ヲ改善シナケレバナラヌト云フコトハ全然
御同感デアルノデアリマス、此點ニ付キマ
シテハ政府ト致シマシテモ、常ニ此事態ノ
改善ニハ從來ト雖モ努力致シテ參リマシ
テ、成ベク現在行ハレテ居リマス此中間稅
率ト云フモノノ適用ガ我國ノ商品ニ利益ニ
ナリマスルヤウニ、又ソレニ付テ更ニ改善
ヲ致シマシテ、我國ノ輸出ガ殖エマスヤウ
ニ努力ヲ致シタイト考へマシテ、此點ニ付
テ出來ルダケ適當ナル案ヲ以テ、更ニ交涉
ヲ致シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス
第二ノ「シャム」トノ關係デゴザイマス
ガ、砂糖ノ合辦會社ノ話ガ不成功ニ終ッタ
ト云フコトニ付テハ色々ノ事情モアッタヤ
ウデアリマスガ、其一ツトシテハ「シャム」
ノ方デ此計畫ニ關係致シテ居リマシタ人ガ
餘リ適當ナ人デナカッタト云フコトモ、一ツ
ノ大キナ事情デアッタヤウデアリマス、何分
我國ノ民間ノ同方面ニ對スル進出ハ極ク最
近ノコトデアリマシテ、サウ云フ企業方面
ノ色々ノ計畫ガサレタノハホンノ此一兩年
前ノコトデアリマス、隨テ「シャム」ノ國內
ノ事情ト云フモノニ付テモマダ十分之ヲ審
ニシナイト云フヤウナ所ガアリマスシ、又
彼ノ地ニ於ケル有力ナ「シャム」人トノ關係
緣故ヲ結ブコトガ相當困難デアッタ事情モ
アルノデアリマス、サウ云フ事情ノ爲ニ色
色ナ計畫モ思フ通リ行カナカッタ次第デア
リマス、併ナガラ今マデ外務省ノ方カラ參ッ
テ居リマス代表者、公使初メ館員等ハ實ハ
其手足モ非常ニ少イノデアリマスケレド
モ、最善ノ努力ヲシテ參リ、又其熱帶地ニ
於ケル設備モ豫算全體ノ關係カラ極メテ不
十分デアリマシテ、隨分氣ノ毒ナヤウナ狀
態ニアルニ拘ラズ隨分努力致シマシテ、前
任ノ矢田部公使ノ如キハ、在任中ニ「シャム」
ノ朝野ノ有力者ト相當親シイ關係ヲ結ビマ
シテ、其爲ニ貿易方面ニ於テ相當ノ進展ヲ
爲シ得タノミナラズ、其他ノ方面ニ於テモ、
例ヘバ企業方面ニ於テハ棉花ノ栽培ニ付テ
色々「シャム」ノ政府筋ニ我國ノ棉作ニ付テ
ノ第一ノ權威者ヲ派遣致シテ、色々具體的
ノ獻策ヲシタト云フヤウナコトノ結果、棉
花ノ栽培ガ非常ニ具體化シテ參ッタヤウナ譯
デアリマス、又我國ヘノ軍艦ノ註文ト云フ
モノモ、各國トノ間ノ非常ニ激シイ競爭ガ
アッタノデアリマスガ、是モ相當多數ノ軍艦
ヲ日本ニ於テ建造スルコトニ相成リマシタ
シ、又海軍將校ノ本邦留學ト云フヤウナコ
トモ實現シテ參リマシテ、現ニ我國ニ留學
致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、又最近
ニ於テ我國ニ留學致シテ居ル「シャム」學生
ノ數モ年々殖エマシタ、是ハ多クハ技術方
面ニ於テ留學致シテ居ルヤウナ譯デアリマ
シテ、是等ノ留學生ガ他日業ヲ了ヘテ歸國
ノ上、ソレ〓〓政府ナリ民間ノ重要ナ地位
ニ就クヤウナコトニ相成リマスレバ、自然
日本ノ「シャム」ニ於ケル經濟的或ハ其他ノ
文化活動等ニモ都合ガ好イヤウナ事態ガ
起ッテ來ルデアラウト思フノデアリマス、
現任ノ石射公使モマダ著任後日ガ淺イノデ
ゴザイマスルケレドモ、參リマス前ニ十分
我國ノ關係官署及ビ民間ノ有力者ト懇談ヲ
遂ゲマシテ、非常ナ意氣込ヲ以テ向フニ著
任致シタヤウナ譯デアリマシテ、其後日尙
ホ淺キニ拘ラズ、著々ト色々ナ事業ノ推進
ニ努メ、又先方ノ經濟事情其他ノ報告ニモ
非常ニ努力致シテ居ルヤウナ譯デゴザイマ
スルノデ、今後政府ト致シマシテモ必要ニ
應ジテ段々ト公使館ノ館員モ充實シ、又色
色ナ仕事ヲ致シマスルニ必要ナル施設モ段
段殖ヤシテ行キタイト云フ考デ居ルノデゴ
ザイマス、何レニ致シマシテモ斯ウ云フ所
謂新市場ノ開拓、及ビ新シイ經濟的文化的
活動ノ分野ヲ段々ト開拓致シテ參リマスル
ニ付テハ、官民共ニ協力シテ初メテ其成績
ヲ擧ゲ得ルト云フコトハ勿論デゴザイマス
ルノデ、政府ニ於テ出來得ル限リ施設ヲ進
メマスルト共ニ、民間ノ「シャム」ニ對スル
發展ト云フコトニ對スル機運ヲ益〓助長シ
又民間ノ諸計畫ヲ十分助成致シタイ、斯ウ
云フ考デ居ルノデゴザイマス
第三ノ御尋ノ日蘭交涉ノ現狀ニ付キマシ
テハ、是ハ昨年此交渉ノ一ツノ大キナ難點
トナッテ居リマシタ海運ノ問題ニ付キマシ
テ、是ハ石澤「バタビヤ」駐在ノ總領事ガ蘭印
ノ官憲ト種々懇談致シマシテ、大體ノ地均
シヲシテ置キマシテ後ニ、南洋海運ノ代表
者ガ向フニ參リマシテ交涉致シマシタ結
果、幸ニ此海運ニ關スル妥協ガ付イタ譯デ
ゴザイマス、此海運協定成立ト云フコトガ
非常ニ空氣ヲ好ク致シマシテ、其後石澤總
領事ガ蘭印ノ經濟長官トノ間ニ頻ニ交涉ヲ
進メテ參リマシテ、一時其長官ガ病氣デ轉
地靜養致シタヤウナ爲ニ、暫ク人ガ迭ッタト
云フヤウナコトデ、交涉モ幾ラカ長引イテ
參リマシタケレドモ、併ナガラ其後段々雙方
ノ意思ガ疏通致シマシテ、本年ノ一月ニナッ
テ、先方カラ相當具體的ノ案ヲ出シテ參ッタ
ノデアリマス、併ナガラ其案ノ中デ砂糖ノ
問題ニ付キマシテハ、日本側デモ向フノ希
望ニ應ズルコトハ非常ニ困難ナ事情ガアッ
タノデ、色々〓究ヲ致シテ居リマスル中ニ、
最近ニ又向フノ方デハ餘程考慮ヲ加ヘマシ
テ、幾ラカ違ッタ案ニ付キマシテ雙方ノ意
見ガ餘程一致シテ參リマシタノデ、恐ラク
近イ將來ニ協定ガ纒ルノデハナイカ、斯ウ
云フ風ニ豫想致シテ居リマス、大體ノ御答
ハ右ノ通リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=3
-
004・木下信
○木下委員 問題ガ問題デスカラ突詰メタ
コトモ伺ハレナイノデアリマスガ、佛領印
度支那トノ關稅ノ問題ハ、私ハモウ少シヤ
ハリ我國ノ外交當局ニ於テモ努力ヲセンケ
レバイカヌト思フノデアリマスガ、殊ニ先
程申シタ通リニ現在ノ佛蘭西ノ内閣ト云フ
モノハ特殊ナ內閣デアリマスルカラ、斯ウ
云フヤウナ植民地ヲ搾取シテ居ルト云フヤ
ウナ一ツノ大キナコトガ原因トナッテ居ル
高關稅デアリマスカラシテ、斯ウ云フ內閣
ノ時コソ進ンデ高關稅ノ惡イ所ヲ打破スベ
キ好イ機會デアラウト思ヒマス、此點ニ付
テハ一層御努力ヲ願ヒタイト思ヒマス、第
二ノ「シォム」ノ砂糖合辦會社ノ問題ハ、是
モ大體ハ其當時會社ノコトニ付テ參ッタ金
澤常務カラアチラデ親シク聞イタコトデア
リマス、今政府委員ノ御話ノヤウナ事情モ承
知シテ居リマスガ、英吉利公使ノ活躍ト云
フヤウナコトハ、何トシテモ蔽ヒ得ザル事
實デアラウト思ヒマス、隨テヤハリ日本
ノ公使アタリモ斯ウ云フ場合ニ於テハ十分
ナ活躍ヲシテ、サウ云フ事ヲ爲ス前ニハ先
ヅ活躍シ得ル地均シヲシテ置クト云フヤウ
ナコトガ、外交官デアリマスケレドモヤハ
リ其方面ニ付テハ努力ヲ願ハナケレバナラ
ヌト思ヒマス、斯ウ云フ點ニ付テハドウモ
得テ缺ケテ居ルヤウニ思フノデアリマス、
此點ニ付テモ十分ナル御督勵ヲ願ヒタイト
存ジマス、私ハ之ヲ以テ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=4
-
005・田島勝太郎
○田島委員長 次ノ質疑ニ移リマス-石
坂君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=5
-
006・石坂繁
○石坂(繁)委員 去ル十二日ニ極メテ〓括
的ニ質疑ヲ申上ゲタノデアリマス、幸ヒ本
日又發言ノ御許ヲ得マシタノデ尙ホ少シバ
カリ御伺致シマス、私ハ對「ソビエト」貿
易ノ關係ニ付キマシテ外務省、商工省竝ニ
農林省ノ當局ニ御伺致シタイト思ヒマス、
先日ノ私ノ質疑ニ對スル當局ノ御答辯ハ何
シロ「ソビエト」聯邦ハ國營貿易ノ立前ヲ
取ッテ居ルノデアルカラ、ドウモ思フヤウニ
貿易ノ進展ガ出來ナイ、斯ウ云フ風ナ御趣
旨デアッタヤウニ伺ッタノデアリマス、御尤
ノコトダト思フノデアリマス、色々政治的
關係ト通商關係トガ交錯致シテ居リマス
「ソビエト」貿易ガ、極メテ複雜ナル事情
ニ置カレテアルト云フコトハ私共承知致シ
テ居リマス、御承知ノ通リニ大正十五年ノ
一月二十日ニ日「ソ」兩國ノ新國交ガ創設
セラレマシテカラ日「ソ」貿易ハ、其年ノ
總貿易額ハ千三百万圓位デアッタノデアリ
マスガ、其後遂年增加致シマシテ、昭和二
年ニハ千八百万圓、三年ニハ二千九百万圓
四年ニハ三千六百万圓、サウシテ昭和五年
ニ至リマシテ輸出入合計四千六百万圓、內
日本カラ「ソビエト」ニ對スル輸出ハ二千五
百万圓、斯ウ云フ風ニズット增加致シテ參ツ
テ居ルヤウデアリマスルガ、ソレガ昭和六
年ニ至リマシテ二千四百万圓ニ減ジ、昭和
七年ニ至ッテ千七百万圓ト云フヤウナ狀熊
ニ急激ナル下向線ヲ辿ッテ、昔日ノ繁榮ハ全
ク失ハレントシテ居ルヤウナ狀態ニナッテ居
ルノデアリマス、殊ニ日本カラ「ソビエト」
ノ方ニ對スル輸出ハ輸入ニ比較致シマシテ
一層慘メナ有樣ニナッテ參リマシテ、昭和八
年ノ如キハ昭和五年ノ最高二千五百万圓ニ
比較致シマシテ僅ニ五分ノ一程度、卽チ五
百万圓餘ニ減少致シタト云フヤウナ狀態ニ
ナッテ居ルヤウデアリマス、ソコデ日本政府
ハ日本ニ駐在致シテ居リマスル「ソビエト」
ノ通商本部及ビ對「ソ」貿易關係ノ當業者
ノ熱烈ナル希望ヲ容レテ戴キマシテサウシ
テ、輸出補償額ヲ一擧ニ六百五十万圓程度
ニ增額サレマシテ、千百万圓マデノ輸出增
額ヲ圖ラレテ居ッタニモ拘ラズ、主要輸出品
デアル所ノ漁網、機械、船舶、食料品、空罐
或ハ化學藥品ト云フヤウナ斯ウ云フモノノ
輸出ハ非常ニ激減致シマシテ、輸出補償法
擴張前ヨリモ却テ不振ニ陷ッタヤウナ狀態
ニ私共承知致シテ居ルノデアリマス、ソレ
ハ一體ドウ云フコトガ原因ニナルデアラ
ウカ、其原因ヲ考ヘテ見マスルト云フト、
ソレニハ相當複雜ナ政治的及ビ經濟的ノ原
因ガアルデアラウト考へラレルノデアリマ
ス、卽チ滿洲事件後ノ日「ソ」關係ガ非常
ニ尖銳化シテ來マシテ、一時開戰說マデモ
傳ヘラレタヤウナ、サウ云フ政治的ノ不安
ト云フモノガ貿易關係ノ不振ニ大キナル影
響ヲ與ヘマシテ、此貿易狀態ヲ壓迫致シテ
居ルコトガ大キナル原因デアリマセウシ、
其他「ソビエト」ノ輸出ノ大宗デアル所ノ
木材ニ對スル我ガ國內ノ關稅ガ高率ニナッ
タト云フコト、或ハ「ソビエト」聯邦ノ對
日輸出減少ニ伴ヒマシテ其受取勘定ガ減少
シタ、斯ウ云フ風ナコトモ大キナ原因デア
ルデアラウト思フノデアリマス、ソコデ斯
ウ云フ風ニ原因ヲ探索シテ參リマスルト云
フト、補償ノ限度ヲ擴張致シマシタト云フダ
ケデハ是ハ駄目ダト思フノデアリマシテ、
ソコニ今列擧致シマシタヤウナ「ソビエト」
關係ノ原因、勿論是ハ「ソビエト」ノ國內
事情モアルダラウト思ヒマスガ、何ト致シ
マシテモ日「ソ」關係ノ政治的不安ヲ除去
シナケレバ貿易ノ進展ト云フコトハ、是八
ドウシテモ出來ナイト思ヒマス、ソレデ此
日「ソ」關係ノ政治的不安除去ニ付キマシ
テドウ云フ方策ヲ以テ現在臨マレテ居ルノ
デアルカ、是ガ私ノ御伺致シタイ第一點デ
アリマス、所デ前述ノヤウニ他ノ主要輸出
品ハ昭和六年以來ズット激減致シテ居リマ
スノニモ拘ラズ、綠茶ダケハ大分增加致シ
テ居リマス、サウシテ日本カラ輸出サレマ
ス所ノ茶ハ、其儘單獨ニ使用サレルカ、或
ハ他國產ノ綠茶ト混合シテ再製サレマシテ
中央亞細亞方面ニ於テ消費サレテ居ルコトハ
御承知ノ通リデアリマス、卽チ日本ノ輸出綠茶
ハ「キルギス」「サルト」「ウズベック」及ビ「ト
ルコマン」是等ノ人種ノ日常必要品デアリ
マシテ、非常ニ需要ハ多イ筈デアリマス、
ソコデ日本製綠茶ノ對「ソビエト」貿易關係
ニ於テノ重要性及ビ發展性ガ玆ニ看過シテ
ハナラナイコトダト私ハ考ヘマス、元來日
本茶ガ露西亞ノ方ニ輸出サレルヤウニナリ
マシタノハ、革命後ハ大正十四年デアリマ
シート。ソレカラ段々大量ノ輸出ガ開始サレ
マシテ、從來ハ主トシテ茶業組合ノ中央會
議所ガ仲介ニナリマシテ「ソビエト」聯邦ノ
駐日代表ト輸出業者トノ間ニ行ハレテ居ッ
タノデアリマス、昭和六年カラ其「ソビエ
ト」代表ノ茶輸入部ト云フモノガ靜岡市ニ
設ケラレマシテ、直接買付ケルヤウニナッタ
コトハ御承知ノ通リデアリマス、併シ大正
十四年ノ頃ハ三十九万斤位デアリマシタ
ガ、其後昭和六年度ニ至リマシテ三百六十
二万斤、大分增加致シテ居リマス、ソレデ
其昭和六年ニ至リマシテ大分增加致シマシ
タガ、最近昭和八年カラ十年マデノ三箇年
ノ輸出量ヲ平均致シテ見マスルト云フト、
輸出量ハ約七百万斤、其價額ハ二百万圓ニ
上ッテ居リマシテ、年ニ依ッテ多少ノ消長ハ
アリマスケレドモ、漸次增加ノ傾向ヲ迪ッテ
來テ居ルノデアリマス、殊ニ昭和十年ニ於
キマシテハ約一千万斤、其價額三百餘万圓
ニ達シテ居リマシテ、日本製茶ノ第一ノ得
意先デアル北米合衆國ノ六五%ニ次ギマシ
テ「ソビエト」ハ第二位ノ一一六%ヲ占メルト
云フヤウナ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、
併ナガラ是ハ北鐵讓渡ニ依ル所ノ-昭和
十年ノ三月二十三日デアリマスカ、正式ニ
調印サレマシタ北鐵讓渡ノ代償一億三千万
圓ノ三分ノ二ヲ三箇年ニ六期ニ分ッテ物資
ヲ以テ支拂フ、其結果綠茶ノ契約高八百七
万五千圓、先刻商工省ノ方カラ戴キマシタ
表ニ依リマスト、昭和十二年二月末日マデ
ノ契約高ハ私ノ今申上ゲタ數カラ少シ超シ
テ居リマス、八百四十一万八千六百二十九
圓、斯ウ云フ風デアリマスガ、要スルニ八
百万圓程度デアリマス、ソレガ其契約高ノ
中ニ私ノ調査致シマシタ所ニ依リマスル
ト、昭和十年度ニ既ニ賣渡シマシタノハ其
中ノ約二百四十五万圓、斯樣ニ承知致シテ
居リマス、ソレデ昭和十年度トナリマシテ著
シク增加致シマシタノハ、是ガ增加ノ主ナル
原因デハナイカト斯樣ニ考ヘテ居ルノデア
リマス、サウ致シマスルト、北鐵ノ代償ノ
綠茶契約高、私ノ調ベタ數字ニ依リマスト
八百七万三千圓カラ昭和十年度ノ賣渡シタ
分ヲ控除致シマスト殘額ハ五百五十万圓ニ
ナルノデアリマス、ソレヲ昭和十一年、十
二年ノ兩年度ニ折半致シテ賣渡スト云フコ
トニナリマスカラ、昭和十二年度マデハ相
當額「ソビエト」ノ方ニ入ッテ參リマスコト
ニナリマスケレドモ、其後ハ又元ノヤウニ
ズット激減シテ來ハシナイカト云フコトヲ憂
ヘテ居ルノデアリマス、一方日本ノ六五%
ノ得意先デアル北米合衆國或ハソレニ次イ
ダ加奈陀、斯ウ云フ方面ノ人ノ茶ニ對スル
嗜好ノ變遷及ビ印度「セイロン」「ジャワ」等
ノ生產ノ紅茶ニ依ッテ合衆國ニ於テ日本製
茶ガ壓迫サレテ居ルト云フヤウナ狀態デア
リマシテ、北米、加奈陀方面ニ於キマシテ
ハ漸次是ハズット減少致シテ來テ居ルヤウ
ナ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、ソコデ何
ト致シマシテモ「ソビエト」內ニ日本製茶、
殊ニ綠茶デアリマス、「ソビエト」ニハ綠茶
ダケデアリマス、此販路ノ擴張發展ヲ求メ
ルト云フコトハ、是ハ極メテ必要ナコトデ
アルト考ヘルノデアリマス、「ソビエト」ニ
對スル現在各國カラノ茶ノ輸入數量ヲ調べ
テ見マスルト云フト、紅茶、綠茶其他ヲ含
ミマシテ約三千万斤程度デアルサウデアリ
マシテ、戰前ニ比較致シマシテマダ僅ニ三
分ノ一程度デアリマス、是ハ「ソビエト」ノ
現在ノ政府ガ一般ノ人民ニ對スル茶ノ配給
ト云フモノヲ著シク制限シテ居ルノデハナ
イカト思ヒマスルガ、併ナガラ人間ノ嗜好
ト云フモノハ容易ニ壓迫スルコトハ出來ナ
イノデアリマシテ、現在三分ノ一程度ノ茶
ノ輸入ヲ仰グニ過ギナイト云フ「ソビエト」
ノ現狀カラ致シマシテモ、「ソビエト」ノ茶
ノ需要ハモウ少シズット殖エナケレバナラ
ヌ、斯ウ云フ風ナ情勢ニアルト考ヘラレル
ノデアリマス、ソレデ斯ノ如クマダ十分ニ
茶ノ需要ノアル「ソビエト」ニ對シマシテ、
販路擴張ノ餘地ガアルト同時ニハ「ソビエ
ト」ノ人々ノ日本ノ製茶ニ對スル嗜好ト云
フモノガ漸次增シテ來テ居ル、斯ウ云フヤ
ウナ狀態デアルノデアリマス、ソコデドウ
云フ方面カラ「ソビエト」ニハ茶ガ入ッテ居
ルカト云フコトヲ、モウ一遍是ハ調ベテ見
マスルト云フト、英領ノ印度、「ジャワ」、
支那、斯ウ云フ方面カラ入ッテ居ルノデアリ
マス、其中ニ支那ガ最モ多クテ五〇%程度
入ッテ居リマスガ、日本ハ其仕出シ國別カラ
見マスルト云フト、マダ二〇%程度デアリ
マス、ソコデ英領印度デアルトカ「ジャワ」、
支那ト云フヤウナ是等ノ競爭國ヲ凌駕致シ
マシテ、是非共日本ノ茶ノ販路ヲ「ソビエ
ト」內ニ擴張進展致シタイト云フコトヲ私
共希望致シテ居ルノデアリマス、先刻外務
次官ノ木下サンニ對スル御答辯ノ中ニ南洋
方面ノ貿易ニ付テハ官民一致デ進ミタイト
云フコトデ、私共全ク贊成デアリマス、併
ナガラ何ヲ申シマシテモ、是ハ先ヅ政府ガ
相當努力ヲシテ戴カナケレバ出來ナイノデ
アリマシテ、若シ此儘放置致シテ置キマス
ルナラバ、ズット元ノヤウニ減少シヤシナイ
カト云フ、先程申上ゲタ通リノ心配ヲ持ッテ
居ルノデアリマス、唯「ソビエト」ガ國營貿
易デアルト云フヤウナコトデ其儘放置シテ
置ク譯ニハ參ラヌト思フノデアリマス、サ
ウアッテハイカヌノデアリマス、之ニ對スル
當局ノ方針如何、是ハ外務、商工、農林、
三省ノ謂ハバ私ハ連帶責任デアルト考ヘマ
スカラ、此點ニ關シテドウ云フ御方針デ居
ラレルノカ、御伺致シタイノデアリマス、
ソレガ私ノ御尋シテ居ル第二點デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=6
-
007・堀内謙介
○堀內政府委員 只今對「ソ」貿易ニ付テノ
御尋ガゴザイマシタガ、第一點ノ日「ソ」貿
易ノ消長ハ兩國ノ政治的不安關係ノ影響ヲ
受クルコトガ多イヤウデアルト云フ御意見
デアリマシタガ、ソレハ私モ全然御同感デ
ゴザイマス、殊ニ「ソビエト」政府ハ先刻御
話ノ如ク貿易國營方針ヲ執ッテ居リマスル
關係上、餘程此貿易上ノ駈引ヲ政治ノ目的
ノ爲ニ用ヒテ居ルノデアリマシテ、是ハ例
ヘバ數年前ニ亞米利加ガ「ソビエト」聯邦ヲ
承認スル前ニ於テハ一時八千萬弗ニ達シテ
居リマシタ對「ソ」輸出貿易ガ、段々「ソビ
エト」側ノ熊度ニ依リマシテ少クナリマシ
テ、一時ハ千數百萬弗ニ減少スルト云フヤ
ウナ事態デアリマシタ、亞米利加ガ「ソビ
エト」ヲ承認スレバ是ガ一躍シテ一億ニモ
二億ニモナルデアラウト云フヤウナコトヲ
盛ニ宣傳致シタノデアリマスルケレドモ、
愈〓承認シテ見レバ餘リ殖エナイ、幾ラカ殖
エテ參リマシタケレドモ、當時豫想サレタ
程殖エナイト云フヤウナコトデ、亞米利加
ノ方デモ輿論ガ頻リニ之ニ對スル不滿ヲ表
示シタヤウナコトモアル譯デアリマス、又
英「ソ」ノ貿易關係ヲ見マシテモ、外交關係
ガ惡化致シマスルト云フト、「ソビエト」ノ
對英註文額ヲウント引締メマシテ、隨テ英
吉利ヨリノ對「ソ」輸入額ガ著シク減少スル
ト云フヤウナコトハ、過去ニ於テ其他ニモ
頗ル例ガ多カッタコトデゴザイマシテ、今日
マデ不幸ニシテ日「ソ」兩國ノ政治關係ガ餘
リ正常デナイト云フコトニ依ッテ、此貿易進
展モ思ハシク行ッテナカッタト云フ事實ハ、
全然私モ御同感ニ思フノデアリマス、隨テ
其兩國ノ政治關係ヲ正常ニ復セシメルト云
フコトニ付テハ、此數年來政府ニ於キマシ
テモ常ニ努力致シテ參リマシテ、北鐵讓渡
交涉ニ非常ニ苦心ヲシテ其實現ヲ圖リ、而
モ其支拂方法ガ三分ノ二ヲ現物ニ求メルト
云フヤウナコトニ依ッテ-是ハ無論滿洲
國トノ間ノ協定デゴザイマスルケレドモ、
滿洲國カラノ物資ノ供給ト云フ點ニナリマ
スト云フト、日本品ガ自然ニ「ソビエト」ノ
方ニ入ッテ行クト云フヤウナ譯デ、對「ソ」輸
出ノ上ニモ間接ニ非常ニ好イ影響ヲ及ボシ
タ譯デアリマスガ、其他政治的ニ出來ルダ
ケ兩國ノ關係ヲ速ニ正常ニ復シタイト云フ
コトデ、色々努力シテ參ッタ譯デアリマスル
ケレドモ、何分御承知ノ如ク「ソビエト」ガ
此兩三年來極東ニ於ケル兵力ヲ急激ニ增加
致シマシテ、旣ニ其數ハ三十万ヲ超エ、又
飛行機其他ノ施設ニ於テモ隱然日本側ニ非
常ナ脅威ヲ與ヘテ居ルト云フヤウナ事態デ
ゴザイマスルノデ、兩國ノ政治關係モ自然
ニ其影響ヲ受ケテ、ヤハリ中々不安ナル、
不明朗ナル事態ガ續イテ居ルト云フヤウナ
譯デアルノデアリマス、之ヲ好ク致シマス
ル爲ニハ、色々ナ說モゴザイマスルケレド
モ、ヤハリ從來ノ懸案ヲ出來ルダケ早ク解
決スルヤウニスルノガ急務デアル、其爲ニ
ハ先ヅ以テ滿「ソ」間ノ國境ニ於ケル平和的
ノ關係ヲ維持スルト云フノガ、第一ニ爲ス
ベキコトデアルト云フノデ、我國ヨリ滿
「ソ」國境紛爭處理竝ニ滿「ソ」間ノ國境劃定
ノ爲ニ委員會ヲ作ラウト云フコトヲ申出マ
シテ、其構成竝ニ事業等ニ付テ交涉ヲ續ケ
テ參ッテ居ルヤウナ譯デアリマス、今日マデ
幸ニシテ重要ナ諸點ニ付テノ意見ハ餘程一
致イタシマシタケレドモ、尙ホ一二兩國ノ
間ノ意見ガ一致シナイ所ガアル爲ニ、尙ホ
其委員ノ構成ガ出來ナイヤウナ事態ニナッ
テ居ルノデアリマスケレドモ、政府ト致シ
マシテハ出來得ル限リ速ニ此二種ノ委員ノ
成立竝ニ作業ヲ實現致シタイト云フ風ニ考
ヘテ居ル次第デアリマス、尙ホ其他昨年來
ノ問題トナッテ居リマスル北洋漁業ノ問題、
又其他ノ利權問題等ニ付キマシテモ、出來
得ル限リ兩者ノ間ノ話合ヲ纒メマシテ、兩
國ノ間ノ關係ヲ正常ニ服スルヤウニシタイ
ト云フ積リデ努力致シテ居ル次第デアリマ
ス
尙ホ第二ノ對「ソ」輸出品ノ中ノ重要ナル
一品目デゴザイマスル綠茶ノコトニ付テ、
是ガ輸出ノ奬勵ニ付テ政府ハドウ云フ方針
ヲ持ッテ居ルカト云フ御尋ガゴザイマシタ
ガ、此點ニ付キマシテハ無論「ソビエト」內
ニ於ケル綠茶ノ需要狀態竝ニ他ノ國ノ供給
致シテ居リマスル其狀態等ニ付テ、出來得
ル限リ調査ヲ致シマシテ、我國ノ當業者ニ
便益ヲ與ヘルト云フコトハ勿論必要デゴザ
イマスルガ、又モウ少シ大局的ニ見マスル
ト、ドウシテモ今日日「ソ」間ノ貿易ヲ促進
スル爲ニハ、今マデノヤウニ「ソビエト」ガ
閉鎖主義ヲ執ッテ居ルノデハ困ル、是ハド
ウシテモ我國ノ有力ナ實業家ガ「ソビエト」
ヘ參リマシテ彼ノ地ノ產業狀態、或ハ一般
ノ市場ノ〓究等モ自由ニ爲シ得ルト云フヤ
ウナ便益ヲ我國ニ開放スルニアラザレバ、
根本的ノ對「ソ」輸出ノ改善ト云フコトハ困
難デアルト云フコトヲ私共ハ考ヘテ居リマ
シテ、私モ日本ニ居リマスル「ソビエト」ノ
大使ニハサウ云フ點ニ付テ時々注意ヲ喚起
致シマシテ、此點ニ付テノ「ソビエト」ノ方
針ノ變更ヲ求メテ參ッテ居ルヤウナ次第デ
ゴザイマス、マダ不幸ニシテ今日マデ先方
ガ色々政治上ノ理由ヲ以チマシテ斯ウ云フ
點ニ付テ開放的ニ我ニ臨ムト云フ熊度ヲ
執ッテ居ナイコトハ甚ダ遣憾デゴザイマス
ルガ、ソレ等ノ點ニ付テハ外交上出來得ル
限リ努力ヲ致シタイト考ヘテ居ルノデアリ
マス、尙ホ之ニ對スル產業及ビ國內ニ於ケ
ル輸出ノ奬勵ニ關スル施設等ニ付テハ他ノ
關係省ノ方カラ御答辯ガアルカト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=7
-
008・戸田保忠
○戸田政府委員 「ソ」聯邦ニ輸出致シマス
茶ノ問題ニ付テ私カラ一寸簡單ニ申上ゲマ
ス「ソ」聯邦ニ於ケル日本茶ノ買付ニ付キ
マシテハ、石坂サンカラ詳シク御話ノアリ
マシタ通リデアリマシテ、實ハ私カラ更メ
テ申上ゲル迄モナク、是ハ詳細ニ御承知ノ
ヤウデアリマス、通商代表ガ煎茶輸入部ヲ
靜岡ニ駐在セシメマシテ、直接買付ヲ行ッテ
居リマスコトハ御承知ノ通リデアリマス、
買入レタ所ノ品種ハ玉綠茶ト稱スル綠茶ノ
一種デアリマス、サウシテ大部分ハ靜岡ニ
於テ生產サレルモノデアリマシテ、部
九州地方ニ生產サレルモノデアリマス、
「ソ」聯邦ニ於ケル茶ノ消費ノ〓樣ヲ申上ゲ
マスト、是モ詳細ニ御話ガアリマシタガ、
紅茶ガ約二千二百万斤、是ハ主トシテ白人
間ニ用ヒラレテ居ルヤウデアリマス、ソレ
カラ綠茶ガ約一千一百万斤、是ハ主トシテ
「コーカサス」地方ノ亞細亞系ノ人種ニ消費
サレテ居リマシテ、一部分ハ蒙古デアルト
カ西藏其他支那ニ再輸出サレルヤウデアリ
やく、我國カラ參リマス今ノ綠茶ハ大體此
今申上ゲマシタ紅茶ノ部分ニ屬スルモノノ
用途トシテ使ハレテ居ルヤウデアリマス、
ソレカラ是モ御話ノアリマシタ通リニ昭和
三年カラ昭和十年マデ、約十年間ノ輸出ノ
狀況ヲ見マシテモ、昭和三年ニ約百万斤デ
アリマシタノガ、昭和九年ニハ九百九十万
斤ニ達シテ居リマシテ、八九倍ニ達シテ居
リマス、其間數量ニ於キマシテハ昭和五年
ニ一度減ッタコトガアリマスガ、ソレ以來ハ
年々激增シテ居ルヤウナ狀況デアリマス、
併ナガラ一方先方ノ消費量ノ勘定ヲ見マス
ト、相當今日デハ或ル限度ニ近イ所マデ行ッ
テ居リマスカラ、此上非常ニ澤山從來ノヤ
ウニ輸出額ヲ增加シ得ルヤ否ヤト云フコト
ニナリマスト、今迄ノヤウニハ行カヌノデ
ハナイデハナイカト思ヒマス、併ナガラ大
略千二百万斤內外ノ消費量ハアリマスカ
ラ、其限度ニ於テノ輸出ハ將來ニ於テモ不
可能デハナイト考ヘテ居ル次第デアリマ
ス、ソレモ主トシテ日本茶ノ低廉ナ爲デア
ルト思ヒマス、又一方將來ニ於テハ紅茶ノ
輸出ニ付テモ考慮サレルノデハナイカト思
フノデアリマスガ、是モマダ將來ノ問題ニ
屬スルノデアリマシテ、主トシテ現狀デハ
玉茶ニ付テ考ヘル外ハナイ譯デアリマス、
之ニ對スル施設トシマシテハ今申上ゲルヤ
ウナ狀況デアリマスト共ニ、一方內地ニ於
キマシテモ昭和七年以來靜岡長崎兩縣ニ奬
勵金ヲ交付致シマシテ、各〓農事試驗場ニ於
キマシテ玉綠茶ノ品質ノ改良、製茶ノ機械
化ニ依ル生產費ノ節減等ノ〓究ヲ一九六
於テ行ヒツヽアルノデアリマシテ、他方ニ
於テ御話モアリ、又私モ申上ゲタヤウニ年
年輸出額ノ數量ガ增加シテ行ク關係ニナッ
テ居リマス、輸出ノ補償制度トノ關係ヲ申
上ゲマスト、從來ハ製茶ノ對「ソ」取引ハ御
承知ノヤウニ六箇月乃至一箇年ノ延取引デ
アリマシタ爲ニ、補償制度ハ相當利用サレ
タノデアリマスガ、昭和十年カラ北鐵讓渡
ノ代金ノ一部ヲ以テ現金取引トナリ、一時
利用シナカッタノデアリマスガ、昭和十三年
以後ニ於テハ再ビ從前ノ狀況ニ歸ルト思ハ
レルノデアリマスカラ、又補償制度ノ利用
ト云フコトガ必要トナルト思ハレルノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=8
-
009・石坂繁
○石坂(繁)委員 外務當局及ビ農林當局ノ
詳細ナル御答辯了承致シマシタ、尙ホ外務當
局ニ御伺致シテ見タイト思ヒマスノハ、此
日獨防共協定ノ對「ソ」貿易ニ及ボシタ所ノ
影響、先程ノ當局ノ御言葉ノ中ニモ、「ソビ
エ 十ハ貿易關係ニモ頗ル政治的ノ駈引ヲ
用ヒル、斯ウ云フ御言葉ガアッタノデアリ
マスガ、私共モ全ク左樣ナ狀況ノヤウニ承
知致シテ居ルノデアリマス、北洋漁業ノ問
題ガ此防共協定ノ成立ニ關聯シテ不調印ニ
了ッタト云フヤウナ、是ガ世間ノ風說タル
コトハ周知ノ事實デアリマシテ、此點ニ付
テハ餘リ多ク申上ゲマセヌガ、他ノ關係ニ
於テ、例ヘバ千九百三十三年ニ松方幸次郞
氏ニ依ッテ調印サレマシタアノ石油ノ契約、
是ハ慥カソレカラ五箇年ト云フコトデアッ
テ、來年ノ三月ニハ期間滿了ニナリマス、
隨テ其一年前ニ再交涉ヲシナケレバナラヌ
ト云フコトニナッテ居ルサウデアリマスガ、
サウ云フコトニ對シテ日獨防共協定ト云フ
ノガ實際影響ヲ及ボシテ來ル、卽チ今日向
フノ狀態デハ石油或ハ銑鐵、材木ト云フヤ
ウナモノヲ、日本ニ不賣ノ態度ヲ執ッテ居
ルノデハナイカト云フコトヲ私共聞クノデ
アリマス、サウ云フコトガアルカナイカト
云フコト、更ニ最近ノ問題ト致シマシテ、日
本ノ「ソビエト」側ニ對スル所ノ商品ノ支拂
ガ非常ニ延ビルト云フコトデ、重光大使ニ
「モスコー」ニ於テ抗議ヲ申込ンデ居ルト云
フコトヲ私共聞イテ居ルノデアリマスガ、
サウ云フコトモヤハリ此防共協定ノ結果ガ
直チニ政治的ノ問題トシテ利用サレタノデ
ハナイカト思フノデアリマス、サウ云フ事
實ガアルカナイカ、アレバドウ云フ風ニ處
置サレルカ、其點ヲ重ネテ御伺致シタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=9
-
010・堀内謙介
○堀內政府委員 只今御尋ノ日獨防共協定
ガ我ガ對「ソ」貿易ニ影響ガアッタカドウ
カ、アッタトスレバ如何ナル影響ガアッタカ
ト云フ御尋デゴザイマス、日獨防共協定ニ
付テ「ソビエト」ノ方ニ種々誤解ガアッタ
コトハ事實デアリマシテ、其點ニ付テハ政
府ト致シマシテ之ヲ解クノニ最善ノ努力ヲ
致シタ次弟デアリマス、併シ此協定ガ出來
タ爲ニ對「ソ」貿易ノ上ニ何カ具體的ノ影
響ガアッタカト云フコトニ付テハ、私共ハサ
ウ云フ事實ヲ今日マデ承知致シテ居リマセ
又、石油所謂「ソ」油ノ供給契約ニ付テモ
影響ガアッタト云フコトヲ承知致シテ居リ
マセヌガ、先程ノ日本ノ「ソビエト」ノ品
物ニ對スル支拂ガ非常ニ遲レルト云フコト
ニ付テ重光大使ノ方ニ苦情ノ申出ガアッタ
ト云フコトハ事實デアリマスガ、ソレハ御
承知ノ如ク昨年ノ暮ニ爲替管理令ガ改正ニ
ナリマシタ結果、從來ノ取扱振リニ對シテ
相當手續上面倒ニナリ、殊ニ許可ガ相當手
續上手間取ルト云フヤウナコトモ一時アッ
タヤウデアリマスノデ、サウ云フコトノ爲
ニ起ッタ所ノ影響デアリマシテ、之ニ付テハ
早速大藏省方面ニモ之ヲ傳ヘマシテ、其點
ニ付テハ旣ニソレ〓〓改善サレタコトト承
知致シテ居リマス、又銑鐵ノコトニ付テハ
最近「ソビエト」ノ銑鐵ノ供給ガ相當難シ
クナリマシタケレドモ、併シ是ハ主トシテ
英吉利ニ對スル「ソビエト」カラノ輸出ガ
「クレヂット」問題ノ關係カラ致シマシテ非
常ニ殖エテ來タ、其爲ニ日本ニ對スル供給
ガ幾ラカ影響ヲ受ケタト云フ事實ハアル譯
デアリマシテ、防共協定ノ影響トシテハ私
共ハ承知シテ居ラナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=10
-
011・石坂繁
○石坂(繁)委員 「ソビエト」關係ノコト
ハ單ニ貿易上ノ問題バカリデナク、或ル意
味ニ於キマシテハ日本ノ國策ノ最モ大キナ
ルモノデアルト申上ゲテモ差支ナイト思フ
ノデアリマス、當局ニ於カセラレマシテハ
何卒一層ノ御努力ヲ以テ御善處アランコト
ヲ希望致シマス、外務當局ニ對シテハ是ダ
ケデアリマス、農林省ノ方ニ······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=11
-
012・岡崎憲
○岡崎(憲)委員 一寸外務省ニ關聯シテ伺
ヒタイノデアリマスガ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=12
-
013・田島勝太郎
○田島委員長 關聯事項ナラ御許シ致シマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=13
-
014・岡崎憲
○岡崎(憲)委員 新聞紙上デ見タノデス
ガ、浦鹽ニ於ケル商船ノ支店ノ撤廢トカ云
フヤウナコトガ言ハレテ居リマス、定期航
路ガ不能ニナルノヂヤナイカト云フコトヲ
傳ヘラレテ居リマスガ、其後ドウ云フ風ニ
ナッタノデアリマセウカ、御伺致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=14
-
015・堀内謙介
○堀內政府委員 只今ノ點ニ付テ御答申上
ゲマス、本年初以來浦鹽ニ於ケル我ガ商船
組ノ定期船ニ對シマシテ「ソビエト」ノ方デ
嚴重ナ檢査ヲ致シタコトハ事實デアリマ
ス、是ハ先方ノ言フ所ニ依リマスルト國防
上ノ機密保持ノ點ト、又金製品輸入ノ嫌疑
ト云フヤウナ所ニ口實ヲ設ケテ居ルノデア
リマス、其點ニ付キマシテハ、我ガ出先官
憲ニ於テ先方ノ處置ノ極メテ不都合デアル
コトヲ指摘致シマシテ、此船ノ檢査竝ニ船
員ニ對スル訊問等ヲ取止メルヤウニ交涉致
シマシテ、其後是等ノ檢査モ餘程緩ンデ參ッ
タノデアリマス、尙ホ此商船組ノ從來「ソ
ビエト」側カラ借リテ居リマシタ事務所竝
ニ埠頭ノ契約期限ガ參リマシテ、其契約ヲ
更改スルニ付テ、今マデニ較ベテ不便ナ場
所ニ向フガ許スト云フヤウナ處置ヲ執リマ
シタノデ、是モ「ソビエト」ノ方ノ注意ヲ喚
起致シマシテ其不當ナルコトヲ指摘シ、此
定期船ハ單リ日本ノミナラズ、是ハ「ソビエ
ト」ノ官民ニ取ッテモ非常ニ便利ヲ與ヘテ
居ル譯デアリマスカラ、商船組ノ營業繼續
ヲ妨害スルヤウナコトハ非常ニ不都合デア
ルト云フコトヲ頻ニ主張致シツヽアルノデ
アリマス、「ソビエト」ノ方ハ自分ノ方デハ
決シテ此商船組ノ營業ヲ差止メヨウトカ、
或ハ妨害スル意思ハナイ、唯契約ノ更新ニ
當ッテ「ソビエト」ノ方ノ都合ニ依ッテ、從來
ノ場所ヲ提供スルコトガ出來ナイ譯デア
ル、斯ウ云フコトヲ申シテ居ルノデアリマ
ス、併シナガラ此商船組ニ對スル色々ノ不
便ヲ與ヘルコトニ付テハ、極力之ヲ除去ス
ルヤウニ出先官憲ニ於テ交涉ヲ致シテ居ル
次第デアリマシテ、其後商船組ノ定期船ガ
從前通リ航海ニ從事致シテ居ル次第デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=15
-
016・石坂繁
○石坂(繁)委員 農林當局ニモウ一囘御尋
致シマス、只今ノ綠茶ノ關係デアリマスガ、
私共ハ何トカシテモウ少シク「ソビエト」
ノ方ニ輸出ガ出來ルヤウニ致シタイモノダ
ト云フ希望ヲ持ッテ居ルノデアリマス、其點
ニ付キマシテハ尙ホ一層適當ナル御配慮ヲ
御願致シタイノデアリマス、然ルニ只今答
辯中ニアリマシタ如クニ、現在昭和七年カ
ラ靜岡、長崎ニ玉綠茶ノ〓究ヲ委託サレテ居
ル、斯ウ云フコトヲ承ッタノデアリマス、熊
本縣ノ如キモ、長崎ノ御承知ノ靑柳茶ニ似
タヤウナ矢部茶ト云フモノガ昔カラアリマ
シテ、是ガ茶業地トシテハ九州ノ先進地デ
アリマス、現在ハ遺憾ナガラ鹿兒島、宮崎
ニ其製茶ノ數量ナドニ於キマシテハ遲レテ
居リマスガ、是ハ何ト申シマシテモ九州ニ
於ケル先進地デアリマス、今申スヤウニ玉
綠茶ノ〓究ナドニハ最モ適當ナル場所ダト
考ヘマス、私ノ方デハ釜熬茶ナドト云フモ
ノヲヤッテ居リマス、尙ホ露西亞ニ對スル茶
業ノ貿易ハ隨分私共ノ方デハ日露戰爭前カ
ラノ先輩ガ居ラレルノデアリマシテ、現存
シテ居ル人モマダ居リマス、左樣ナ關係デ
私ノ方ノ熊本縣ノ如キ處ニモ現在茶業〓究
所ガ相當廣イ面積ガ出來テ居リマス、當局
ト致シマシテハ熊本縣ニ對シマシテモ、玉
綠茶ノ〓究ヲ委託サレルヤウナコトニ付テ
何カ御配慮ヲ賜ハル譯ニ行キマセヌデセウ
カ、此點ヲ承リタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=16
-
017・戸田保忠
○戸田政府委員 生產ノアリマス各府縣ノ
試驗場等ニ委託スル程ノ必要モナイノデハ
ナイカト考ヘマスガ、色々各試驗場ニ於ケ
ル〓究等ノ結果ニ依リマシテハ、各〓其長短
等モアル譯デアリマスカラ、今何處ノ縣ニ
ノミ委託シ、將來ハ何處ト云フ風ニ必ズシ
モ決メテ居ル譯デハナイノデアリマス、事
情ニ依ッテ考ヘル場合モアルカモ知レマセ
ヌガ、大體ヲ申セバサウ非常ニ澤山ノ府縣
ニ委託事業ヲ擴張シテ行クト云フ程ノ必要
ハナイノヂヤナイカト云フ風ニ考ヘテ居リ
マス、或ル箇所デ〓究出來レバ、大體九州
地方ナラ九州地方デ〓究出來レバ、ソレヲ
範トシテ行クコトガ出來ルト先ヅ考ヘテ居
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=17
-
018・石坂繁
○石坂(繁)委員 事情御尤ノヤウデアリマ
スガ、熊本縣ノ茶業地トシテ特別ノ地位ニ
在ルト云フコトハ、何卒御含ミ置キヲ願ヒ
タイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=18
-
019・田島勝太郎
○田島委員長 ソレデハ質疑ハ終局致シマ
シタ、是ヨリ討論ニ入リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=19
-
020・宮本雄一郎
○宮本委員 其理由ハ申上ゲマセヌガ、本
案ハ贊成デアリマスカラ、是非各位トモ御
贊成ヲ御願致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=20
-
021・川橋豊治郎
○川橋委員 私モ本案ニ對シテハ贊成デア
リマス、理由ハ申上ゲマセヌガ、速ニ決定
サレンコトヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=21
-
022・岡崎憲
○岡崎(憲)委員 私ノ方ハマダ決定シマセ
ヌカラ、本會議マデ保留ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=22
-
023・石坂繁
○石坂(繁)委員 私ハ本案ニ贊成致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=23
-
024・守屋榮夫
○守屋委員 本員モ本案ニ贊成シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=24
-
025・高良宗七
○高良委員 本員モ原案ニ贊成スル者デア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=25
-
026・田島勝太郎
○田島委員長 ソレデハ別ニ御異議モナイ
ヤウデアリマスガ本案ハ原案ノ通リ可決確
定シテ差支ヘゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=26
-
027・田島勝太郎
○田島委員長 ソレデハ可決確定致シタモ
ノト致シマス(拍手)御苦勞デゴザイマシ
タ、是デ散會致シマス
午後二時四十四分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013496X00519370315&spkNum=27
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。