第70回帝国議会　衆議院　臨時租税増徴法案外五件委員会　第7号　昭和12年3月4日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  付託議案
  　臨時租税増徴法案（政府提出）
  　法人資本税法案（政府提出）
  　外貨債特別税法案（政府提出）
  　揮發油税法案（政府提出）
  　有價證券移轉税法案（政府提出）
  　明治四十年法律第二十一號中改正法律案（樺太に於ける租税に關する件）（政府提出）
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  　　　會議
  昭和十二年三月四日（木曜日）午前十時三十八分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　増田義一君
  　　　理事　三善信房君　理事　高橋守平君
  　　　理事　森肇君　理事　服部英明君
  　　　理事　宮澤裕君
  　　　　　　太田信治郎君　松田喜三郎君
  　　　　　　川崎末五郎君　升田憲元君
  　　　　　　仲井間宗一君　小山倉之助君
  　　　　　　内藤正剛君　松村謙三君
  　　　　　　堀内良平君　松尾四郎君
  　　　　　　池本甚四郎君　矢野庄太郎君
  　　　　　　篠原陸朗君　立川太郎君
  　　　　　　木暮武太夫君　紅露昭君
  　　　　　　太田正孝君　古河和一郎君
  　　　　　　片山秀太郎君　石坂豐一君
  　　　　　　岸田正記君　水谷長三郎君
  　　　　　　河野密君　加藤勘十君
  　　　　　　伊禮肇君　渡邊泰邦君
  同日委員松尾四郎君辭任に付其の補闕として作田高太郎君を議長に於て選定せり
  　出席國務大臣左の如し
  　　　大藏大臣兼拓務大臣　結城豊太郎君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　大藏省主税局長　石渡莊太郎君
  　　　　　　　大藏書記官　松隈秀雄君
  　　　　　　　專賣局長官　荒井誠一郎君
  　　　　　　　　商工次官　村瀬直養君
  　　　　　商工省商務局長　東榮二君
  　　　　　商工省工務局長　小島新一君
  　　　　　商工省鑛山局長　大貝晴彦君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　臨時租税増徴法案（政府提出）
  　法人資本税法案（政府提出）
  　揮發油税法案（政府提出）

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• 001・増田義一

  ○增田委員長　是ヨリ臨時租稅增徵法案外
  五件ノ委員會ヲ開キマス--大藏大臣ガ出
  席サレマシタノデ、豫テ質問ヲ保留シテア
  ル太田信治郞君ノ發言ヲ許シマス

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• 002・太田信治郎

  ○太田(信)委員　私ハ實ハ數時間ノ御質疑
  ヲ致シタイト思ッテ材料ヲ用意シテ參リマ
  シタ、併ナガラマダ他ニ質疑ヲ申込ンデ居
  ラレル諸君ガ多數アルノデアリマスカラ、
  成ベク時間ヲ節約致シマシテ、大臣ニ大體
  ノ御方針ダケ伺ッテ、細カイ所ハ、他ノ機會
  ニ於テ局長ニ御伺致シタイ、斯ウ思フノデ
  アリマス、デアリマスカラ私ノ質問ハドウ
  カ大臣ヘノ質疑ガ終リマシタラ、アトハ保
  留シテ置イテ戴イテ、サウシテ他ノ同僚諸
  君ニ御讓リ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマ
  ス
  昨日大臣ヨリ今後ノ稅制整理ノ方針ニ付
  テノ〓要ノ御意見ヲ拜聽致シマシテ諒解致
  シマシタ、當時モウ一ツ大臣ニ申上ゲテ置
  キマシタガ、此社會政策ヲ含ム點ガ、今囘
  ノ稅制ノ上ニ認メラレナイ、今後更ニ稅制
  整理ニ御著手ニナル御方針ヲ伺ヒマシタニ
  付テハ、尙更一ツ茲ニ大臣ノ御意見ヲ伺ッテ
  置キタイト思フ、其一ツハ消費稅ト物價騰
  貴ノ問題デアリマス、是ハ昨日來他ノ委員
  カラ、局長トノ間ニ數時間ニ互リ質疑應答
  ガアリマシタガ、私ハ斯樣ニ考ヘテ居ル、消
  費稅ノ增加ガ物價ノ騰貴ニ影響ヲ及ボス場
  合モ必ズアルト思フ、又比較的影響ヲ及ボ
  サナイ場合モアルノデアリマス、今囘ハ何
  ト申シマスカ、マア簡單ニ言ヘバ馬場財政
  -前內閣ノ財政政策ト云フモノヲ只今此
  處デ繰返シテ攻擊ヲ致ス必要モアリマセヌ
  ガ、今ノ物價騰貴ノ趨勢ハ、先ヅ第一ニハ
  世界的物價騰貴ノ影響ヲ受ケテ居ルコトモ
  確ニ一ツダラウト思フノデアリマス、ソレ
  カラモウ一ツハ政府ノ豫算ノ大膨脹、之h
  伴フ大增稅、此政府ノ政策ノ宣傳ニ依ッテ物
  價ノ騰貴ヲ促シタコトガ多大デアルダラウ
  ト私ハ思フ、更ニ增稅ト云フモノモ拍車ヲ
  掛ケテ、此三ツノ原因ニ依ッテ物價ノ騰貴ヲ
  促シタ、此物價ノ騰貴ノ結果消費者ノ負擔
  モ當然增加ニ相成ッテ居ル、消費者ノ負擔ニ
  ナラナイ場合モアル、ソレガ製造販賣業者
  ノ負擔ニナル場合モアリマスガ、サウ云フ
  場合ハ多ク不景氣ノ場合デアル、若クハ非
  常ニ物質ガ豐富デアル場合トカ云フヤウナ
  場合ニハ、販賣業者若クハ製造業者ガ此負
  擔ヲスル場合モアリマスルガ、今囘ノヤウ
  ナ大豫算ノ膨脹ガアリ、更ニ大增稅ノ拍車
  ヲ掛ケ、モウ一ツ世界的ノ物價騰貴ト云フ
  モノノ餘波ヲ受ケテ居ルトスレバ、當然物
  價ニ影響ヲ及ボシテ來ルコトガ甚シイ、其
  結果ハ消費者ノ負擔ヲ增加スル、此消費者ノ
  負擔ノ增加スルト云フコトモ、是モ亦一面
  カラ言ヘバ已ムヲ得ナイト云フヤウナコト
  ニモ取レマスケレドモ、此物價騰貴ノ影響
  ヲ一番受ケルモノハ何デアルカ、斯ウ申シ
  マスルト、私ハ一番此物價騰貴ノ影響ヲ受
  ケル所ノ消費者ハ、勞働階級及ビ無產階級
  デアルト思フ、勿論此物價騰貴ノ結果、賃
  銀ノ騰貴ト云フコトガ必然行ハレテ參リマ
  セウ、併シ賃銀ガ騰貴シ、報酬ガ增シテ來
  タ結果、後カラ物價騰貴ガクッ付イテ行クナ
  ラバ順調ニナリマスガ、物價騰貴ノ方ガ先
  ニ進ンデシマフ、物價騰貴ノ方ガ先ニ進ン
  デ賃銀ノ增加、或ハ報酬ノ增加ト云フモノ
  ガ後カラクッ付イテ行クノデスカラ、其間ニ
  於ケル所ノ消費者ノ苦痛ト云フモノハ甚ダ
  大ナルモノデアル、殊ニ生活必需品ノ騰貴
  ト云フモノニ付テハ、全ク消費階級ノ負擔
  ニ屬スルモノデアル、是ハ市街地トカ、農村
  トカ云フヤウナ區別デナク、全國民ノ頭ノ
  上デ斯樣ニ考ヘル、此原因ハ遡リマスルト、
  前ニ申上ゲタ世界的ノ物價ノ騰貴モアリマ
  セウガ、先ヅ大增稅ト、ソレカラ大豫算ノ
  膨脹ガ原因ヲ爲シ、サウシテソレガ遂ニ此
  結果ヲ生ンデ來ル、之ヲ若シ更ニ其結果ヲ
  見マスレバ、勞働賃銀ノ騰貴ハ必然的ニ製
  品ノ騰貴ニナル、其結果ハ豫算ノ執行ノ上
  ニ於テモ非常ナ支障ヲ來スコトガアル、斯
  樣ニ私共ハ考ヘル、サウシテ又豫算ノ上カ
  ラ見ルト、物價騰貴ニ關係ノナイモノモ大
  豫算ノ中ニハ含マレテ居ル、併シ大衆ハサ
  ウ云フ事ヲ仔細ニ調査スル暇ナクシテ、唯
  豫算ノ膨脹ト云フコトカラ物價ノ騰貴ヲ促
  ス、幸ニシテ結城藏相ガ此點ニ留意セラレ
  タ爲ニ、豫算モ大分減少ヲセラレタト云フ
  コトハアリマスケレドモ、將來ノ見透シノ
  上カラ言ヘバ、或ハ增稅ハヤラナイト云フ
  考ヲ持ッテ居ラッシヤッテモ、或ハ來年度ノ豫
  算編成ノ上ニ於テハ負擔ノ均衡ヲ圖ルト云
  フ上ニ於テ、多少ノ修正ヲサレナケレバナ
  ラヌト云フコトハ明カデアル、デアリマス
  カラ、茲ニ私ノ質問致シタイコトハ、寧ロ
  此消費階級ニ對シテ、要スルニ消費階級ノ
  負擔ニ屬スル所ノ、物價騰貴ト云フコトノ
  原因ヲ成ベク緩和スル上ニ於テ、生活必需
  品ニ對シテハ、寧ロ整理ノ場合ニ於テハ
  引下ゲ得ラレルモノハ引下ゲル位ノ方針ヲ
  以テヤッテ戴キタイ、是ハ社會政策的ナ立場
  カラ、物價騰貴ト云フモノト、消費稅ノ增
  加ト云フ、此二點ニ關聯シタコトデアルト
  信ジマスノデ、此點ニ付テ一應大臣ノ方針
  トシテノ御意見ヲ伺ッテ置キタイト考ヘマ
  ス

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• 003・結城豊太郎

  ○結城國務大臣　太田サンノ御說ノ物價騰
  貴ハ世界的ノ影響ヲ受ケテ居ルガ、殊ニ日
  本トシテハ豫算ノ關係、稅ノ關係カラ著シ
  クナッタト云フコトニ付テハ、其通リデアラ
  ウト思フノデアリマス、又消費者ノ負擔ニ
  ナル物價騰貴ガ-物價ガ騰貴致シマス場
  合ニハ、消費稅ノヤウナモノノ負擔ガ消費
  者ノ方ニ轉嫁サレテ行クト言フカ、其方ノ
  負擔ニナルコトハ、是モ御說ノ通リデアラ
  ウト思ヒマス、サウシテ其爲ニ一番困ルノ
  ハ、殊ニ此生活必需品ノ騰貴ノ場合ニ勞働
  者トカ、無產者デアルトカ云フ方面ニ一番
  ノ苦痛ヲ與ヘル、是モ御說ノ通リデアリマ
  ス、サウシテサウ云フ場合ニ勞銀ガ騰ルカ、
  斯ウ云フコトニナルト、勞銀ノ騰リ方ハ物
  價ノ騰貴ニ遲レルノデアリマスカラ、ソレ
  マデノ間一時困難ヲシナケレバナラヌト云
  フコト、是モ御尤デアラウト思フノデアリ
  マイ、ソレデ稅制ノ整理ニ當リマシテハ、
  社會政策的見地ニ立ッテ色々〓究シナケレ
  バナラヌコトガ多イノデアリマス、殊ニ消
  費稅ト物價ノ關係ナドニ付テハ、十分ニ〓
  究ノ必要ガアラウト思フノデアリマスガ、
  理想トシテハ此間申上ゲタヤウニ、消費稅
  ヲ成ベク輕減スルト云フヤウナコトニシタ
  イ、斯ウ思フノデアリマスガ、實行ノ上ニ
  於テハ中々難カシイ點モアルダラウト思フ
  ノデアリマス、ソレデ御說ノヤウナコトハ
  十分ニ參照致シマシテ、其邊ヲ〓究立案致
  シタイト考ヘテ居リマスカラ、ドウゾ御諒
  承ヲ願ヒマス

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• 004・太田信治郎

  ○太田(信)委員　先ニ申上ゲマシタ通リ、
  今囘ノ增稅案ハ全ク一時的ト言フカ、前內
  閣ノ提案ヲ或ル程度結城藏相ガ御修正ニ相
  成ッタノデアリマスカラ、之ヲ全面的ニ結城
  案ト私ハ見ルコトハ適當デナイト冐頭カラ
  申上ゲテ居ルノデアリマス、併ナガラ先日
  御退席ニナリマシタ後、主稅局長トノ間ニ
  質問應答ヲ取交シマシタ、ソレハ第三種所
  得稅、卽チ個人所得ノコトデアリマス、數
  字ニ關係シタコトヲ申上ゲルト大分時間ガ
  掛リマスカラ申上ゲマセヌガ、大體カラ申
  シマスルト、個人所得稅ノ中ノ約七割ハ小
  所得者デアル、五千圓以下トカ、若クハ二
  千圓以下トカ云フヤウナ、其人員ガ殆ド七
  割ニ達シテ居ルノデアリマス、是等ノ人ノ
  所得ガ增加シテ居ルカ否カ、斯ウ云フコト
  ハ今度ハ考ヘマスルト、其所得ハ增加シテ
  居ラナイ、併ナガラ今囘ノ大體所得稅ニ重
  課シタ方針ノ原因ハ、何處ニアルカト言ヘ
  バ、法人所得ハ既ニ十割ノ增加ヲシテ居ル、
  所得額ノ申告ガ增加シタカラ必ズソレガ多
  クナルトバカリハ申サレマセヌガ、先ヅ所
  得ノ增加シタト云フコトハ、擔稅力ガアル
  モノト見テ宜カラウ、ソレカラ第三種所得
  稅ニ於テハ約四割バカリノ增加ヲシテ居
  ル、デアルカラ之ニ依ッテ法人ニ重クシテ
  個人ニハ成ベク輕クシタ、重課ノ方針ハ大
  體サウ云フ所カラ來タモノデアルト伺ッタ
  ノデアリマス、又其通リデアリマス、唯茲
  ニ遺憾ナコトハ今ノ九十萬人ノ所得稅納稅
  者ノ約七割乃至八割ヲ占メテ居ル所ノ小所
  得者ノ所得ハ增加シテ居ラナイ、大所得者
  ノ方ハ增加シテ居ル、サウスルト軍需品、
  其他ノ非常ナ商工業ノ發展ニ連レテ自然增
  加シタ所ノ所得ノ增加ニ對シテ、增加率ヲ
  課ケルト云フコトハ御尤デアルケレドモ、
  小所得者ニマデ低イナガラモ兎ニ角之ニ及
  シタト云フコトハ、社會政策ト云フコトヲ
  無視シタ御考デハナイカ、斯ウ云フコトノ
  昨日質問應答ヲ繰返シタ、何故社會政策ヲ
  無視シテ居ルカト言ヘバ、二千圓以下ノ所
  得者ノ如キハ一箇月當リニスレバ、僅ニ百
  十六圓カ百二十圓位ニシカナラナイ、今數
  字ヲ詳シク申上ゲルコトハ省キマスガ、兎
  ニ角千五百圓以上二千圓乃至三千圓ト云フ
  ヤウナ階級ノ人達ハ所得ガ一向殖エテ居ラ
  ナイ、僅ニ月一圓カ二圓位殖エテ居ルノハ
  アリマス、先ヅ今ノ法人所得ノ如ク增加ヲ
  シテ居ラナイ、併シ此收入ヲ增加スル上カ
  ラ言ヘバ、是等ノ人々ニモ多少ハ負擔ヲシ
  テ貰ハナケレバナラヌ、全然是等ノ人々ニ
  負擔ヲサセナイト云フコトハ出來ニクイカ
  ラ、低イ增加ヲシナケレバナラヌ、斯ウ云
  フ結論ニ到達致シタ、是モ一理アリマス、
  見方ニ依ッテハ御尤デアリマス、併ナガラ個
  人所得稅ハ一體ドウ云フ風ニ分布シテ居ル
  カト云フト、先ヅ都會デ六割ヲ占メテ居ル、
  都會モ六大都市デ六割ヲ占メテ居ル、此都
  會デ六割ヲ占メテ居ル所ノ中ノ又小所得者
  ト云フモノガ全人員ノ上カラ言フト、今ノ
  七割モ占メテ居ル、斯ウ云フヤウナ趨勢デ
  アル、此小所得者ト云フモノハ、所謂中小
  商工業者、勤務者ニシテモ、俸給生活者ニ
  シテモ、極ク低イ方ノ側ニ屬シテ居ル、斯
  ウ云フ人達ハ胡麻化ガ利カナイ、ドウスル
  コトモ出來ナイ、例ヘバ大會社デアレバ役
  員賞與ヲ減ラシテモ、或ハ積立金ヲ減ラシ
  テモ是デ處理ガ出來ルデセウ、又大所得者
  ニ對シテハ、是ハ幾ラカヤリ方ニ於テ節約
  ガ出來ルデセウ、併シ一箇月ノ收入ガ百二
  十圓カ百五十圓ノ人ハサウ云フ餘地ガナ
  イ、勢ヒ負擔スル稅額ト云フモノハ僅カデ
  ハアルケレドモ、負擔力カラ言ヘバ重イコ
  トニナルト思フ、又此中小商工業者ハ、日
  本ノ有產階級ト無產階級トノ間ニアッテ、安
  全瓣ニナッテ居ル人達デアル、此人達ハ所謂
  名譽心モアルシ、又交際モシナケレバナラ
  ヌ、相當ナ位地ヲ保タナケレバナラヌ、小
  サケレバ小サイナリニ、ソコニ一ツノ非常
  ナル重任ヲ負ッテ居ル、デアルカラ斯ウ云フ
  人達ハ私ハ大事ナ人デアル、一面カラ申シ
  マスト、人數ガ非常ニ殖エタ、此人員ノ殖
  エタト云フコトハ、稅額ガ增シタ原因ニナッ
  テハ居リマス、其稅額ガ增シタノモ個人當
  リデ見レバ、今申シタ通リ殖エナイ、稅額
  ガ殖エタ原因ハ何處ニアルカト申シマス
  ト、今日ハ御承知ノ如ク每年人口ガ殖エル、
  九十萬人ナリ百萬人ナリ殖エル、其人口ノ
  六割ハ都會ニ集中サレル、其六割ノ都會ニ
  集中サレテ來ル人達ガ、先ヅ以テ何カ事業
  ニ取付カナケレバナラヌ、勞働者ニナレヌ
  人ハ商工業者ニナッテ、ソレガドウヤラ芽ヲ
  吹イテ所得稅ヲ納メルヤウナ立場ニ上ッテ
  來タ、デアルカラ是等ノ人ノ芽ヲ摘マナイ
  デ、伸バシテ行クト云フコトガ國庫收入ヲ
  增進スル上ニ於テモ、亦產業ヲ開發スル上
  ニ於テモ大變力ニナル人達デアル、ダガ今
  囘ハ此稅制案ガ出マシタノデ、之ニ對シテ
  今削減ヲ私ガ申出タ所デ、大局ニ影響スル
  所ガナイデアリマセウガ、兎ニ角人數ガ多
  イノデアリマス、サウ云フコトハ今此處デ
  私ハ申上ゲナイガ、唯左樣ナコトガ一體從
  來ノ稅制ノ仕組デアル、少シモ社會政策ニ
  私ハ留意シナイモノト思フ、今度ノ主稅局
  長ハ其點ニ餘程御留意ニナッテ居ルカモ知
  レマセヌ、幸ニシテ此民間ノ中小商工業者
  ノ狀況ヲ能ク御承知ノ大藏大臣ヲ得タコト
  ハ、恐ラク數十萬人ノ中小商工業者ノ非常
  ニ喜ンデ居ル所ダラウト思フ、農業方面カ
  ラ申シマシテモ、昨日伺フ所ニ依リマスト、
  農業者ノ中ノ小所得者ト云フモノハ、是ハ
  自己ノ勞力ノ報酬ヲ見ナイカラ所得ガ上ラ
  ナイ、若シ大會社ノヤウニ自分ガ働イテ居
  ル勞銀ヲ控除シタラ、是ハ所得ト云フモノ
  ハナクナッテシマフ、家中ノ親子、兄弟、妻
  子、總掛リデ農業ニ從事シテ居是ハ自
  作農ニシテモ、小作農ニシテモ、此小所得
  者ト云フモノハ家中ガ掛ッテ居ルノデス、大
  會社ナラバ報酬ヲ皆除ク、之ヲ營業費ノ中
  カラ除クコトガ出來ル、純所得ニナル、併
  シ此人達ノ所得ハ純所得ヂヤナイ、全ク自
  分ノ報酬ヲ見タラバ、恐ラク所得ニナラナ
  イ、寧ロ是ガ勤勞者デアレバ、家族ノ何人
  ト云フヤウナコトヲ挖除スルコトモ亦出來
  ルカモ知レナイ、生ジッカ稅ヲ納メテ居ル所
  ノ地方ノ小農デアル爲ニ、之ヲ家族ノ人員
  ヲ控除スル上ニ於テモ遠慮ヲシテ居ナケレ
  バナラヌコトガ出テ來ル、又交際ノ上カラ
  言ッテモ、町村費モ負擔シナケレバナラヌ、
  戶數割モ負擔シナケレバナラヌ、兵役ノ義
  務モ負ヒ、國防ノ總テノ經費ナドモ自然ノ
  間ニ斯ウ云フ人達ハヤハリ之ヲ負擔シテ居
  ル、或ハ月掛ナドヲシテ居ル、ソレデアル
  カラシテ、是等ノ小所得者ハ、必ズ政府當
  局ガ見ルヤウニ純所得デハナイ、純所得デ
  ナイ人ニ稅金ヲ課スルト云フコトハ、私ハ
  一體間違ッテ居ルト思フ斯ウ云フモノハ、
  來ルベキ稅制整理ニハ、寧ロ是ハ減稅ヲス
  ベキモノデアル、馬場藏相ハ千二百圓ヲ
  更ニ引下ゲル、低下スルナドヽ、途徹モナ
  イコトヲ言ッテ居ッタガ、是ハ全ク下情ニ通
  ジナイ、私ハ斯樣ナ見地カラ此所得稅ニ付
  テ、中小商工業者ノ、所謂小所得者ニ對ス
  ル大臣ノ御考ヲ一遍伺ヒタイ

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• 005・結城豊太郎

  ○結城國務大臣　所得稅ヲ納メテ居ル者ノ
  大部分ヲ-七割ト云ッタヤウナ御話デア
  リマシタガ-大部分ヲ占メテ居ル小所得
  者ノ所得ハ、近年餘リ增シテ居ラヌト云フ
  御話デスガ、ソレハサウデアラウカトモ思
  フノデアリマス、農村方面ノ所得者ハ、只
  今御話ノヤウニ、全ク自分達ガ働イテ、ソ
  レ等ノ費用ヲ見ルト喰フカ喰ハズカノ狀態
  ニアルヤウナノガ甚ダ多イノデアリマス、
  都會ニ於キマシテモ、ドウニカヤッテ居ルヤ
  ウナモノヽ、地方カラ出テ都會ニ來テ、商
  工業ヲ營ンデ居リマス者ノ中、殊ニ小賣ノ
  店ヲ開イテ居ルヤウナ方ナドハ、相當ナ暮
  シヲヤッテ居ルヤウデアリマスガ、內輪ニ
  入ッテ見ルト、是ハ卸賣商ヲ喰ッテ居ルノデ
  アリマシテ、卸賣商ニ十分支拂ヲシテ行ク
  コトニナルト、到底其利潤デ一家ヲ支ヘテ
  行クト云フヤウナコトナドハ難カシイ狀態
  ニナッテ居ルモノモアルト思フ、小賣商ハ卸
  賣商ヲ喰ヒ、卸賣商ハ生產業者ヲ喰フト云
  フヤウナ狀態ニナッテ居ッテ、ドウニカ立行
  クヤウナ現狀デハナカロウカト私ハ思フノ
  デアリマス、ソンナ工合ニ、甚ダ利潤ガ乏
  シイト云フノハ、共喰ヒガ多イ故デアリマ
  ス、何ト申シマシテモ、根本ハヤハリ人口
  問題、職業問題ニ觸レテ來ナイトイカヌト
  思フノデアリマスガ、唯近年ノ、例ヘバ
  貯蓄銀行ノ貯蓄ノ工合ナドヲ見マシタリス
  ルト、貯蓄銀行ノ相當ナ預金者ノ中ニハ、
  大抵名前ガ分ラヌヤウナ、ドウ云フ人ダラ
  ウト云フコトガ分ラヌヤウナ人ガ、中々貯
  蓄ヲシテ居ルヤウナ狀態モ都鄙ヲ通ジテア
  ルノデアリマス、其點ニナルト無名ノ貯蓄
  者ト申シマスカ、資產ヲ段々ニ拵ヘテ來ル
  人ガ多クナッテ來テ居リマス、是ハ一面カラ
  申シマスト、中堅階級ノ貯蓄力ノ上ニ於テ
  慶賀スベキコトダト思フ、郵便貯金ナドニ
  致シマシテモ、是ハヤハリ銀行ヲ利用スル
  ト云フコト迄ニ行カヌヤウナ、細カナ人達
  ノ貯金ガ集ッテ來テ居ッテ、中ニハ利廻ノ關
  係カラ郵便貯金ニ行ク人モ多イヤウデアリ
  マスケレドモ、大體ニ於テハ殆ド名前モ知
  レナイヤウナ、細カイ所得者ノ貯金ガ多イ
  ノデアリマス、是モ洵ニ中小所得者ノ爲ニ
  慶賀スベキコトデアリマスガ、ソンナ工合
  ニ必ズシモソレ等ノ人達ガ非常ナ窮境ニ
  在ルト云フコトモ、一〓ニハ言ヘナイノデ
  アリマシテ、又御說ノヤウニ小サナ所得者
  デアッテモ、斯ウ云フ重大ナ時局ニ我國ガ遭
  遇シテ居ッテ、軍備ノ充實ヲ初メ、種々ナル
  國費ヲ要スルコトニ理解ヲ持タレテ、サウ
  シテ自分達モソレニ對シテ、國家ノ爲ニ貢
  獻スルノダト云フ氣持ヲ有ッテ戴クヤウニ
  ト云フコトハ、豫テモ私申上ゲタヤウナ次
  第デアリマス、是モ大藏省ノ官吏ガ、何カ
  國民ノ有ッテ居ル財產ノ一部ヲ、吸取ルト云
  フヤウナ氣持デ徵稅ヲシテハイカヌガ、國
  民モヤハリイヤ〓〓ナガラ出スト云フ氣持
  デナシニ、此事態ヲ理解シテ、自分達モ相
  當ノ貢獻ヲスルノダト云フ氣持デ行ッテ欲
  シイト云フヤウナ考デ來テ居ルノデアリマ
  ス、其點カラ言ヘバヤハリ貧者ノ一燈、乏
  シイ中ニモ相當ナコトヲスルト云フ、隨テ
  國民全體ガ脫稅ナドヽ云フコトハ、非國民
  ノヤルコトデアッテ、甚ダ耻辱トスルコトデ
  アルト云フヤウナ風ニ、考ヲ有ッテ貰フヤウ
  ニナッテ戴キタイト思ッテ居ル、ソレデ今囘
  モ個人所得ニ付キマシテハ、小額ノ所得者
  ノ增稅率ト云フモノハ、著シク緩和ヲ致シ
  タ積リデアリマス、今後ニ付テモ其邊ノコ
  トニ付キマシテハ、十分ニ留意ヲシテ、成
  ベク御話ノヤウニ、折角芽ノ生エテ來ルモ
  ノヲ、芽ヲ摘ムヤウナコトハ、政府トシテ
  モ致スベキデナイ、出來ルダケ其成長ヲ援
  ケテ行カナケレバナラヌ、斯ウ云フ場合デ
  アルカラ、總テノ人ガ幾許ノ貢獻ヲスルト
  云フ氣持ニナッテ、自發的ニ貢獻ヲシテ欲シ
  イノデアリマス、同時ニ政府ノ方デハ芽ヲ
  摘ムヤウナコトヲシテ、サウシテ國民ノ財
  布ヲ傷メルヤウナコトハ、是ハ避ケナケレ
  バイカヌト、斯ウ思フノデアリマシテ、大
  體ノ方針ハソンナコトニ依ッテ稅率ヤ何カ
  ヲ〓究シ、取極メテ行キタイト、斯ウ考ヘ
  テ居リマス

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• 006・太田信治郎

  ○太田(信)委員　小農及中小商工業者ニ對
  シ大變御同情ノアル大臣ノ御意見ヲ伺ッテ
  私モ滿足ヲ致シマス、全ク大臣モ御話ニナ
  リマシタガ、私ガ先刻申上ゲマス通リ、此
  小所得者ト云フモノハ、例ヘバ工業者ニシ
  テモ自分ガ「ハンマー」ヲ持ッテ叩イテ居ル
  ノガ、若シ其工賃ヲ控除シタラ恐ラクハ所
  得ハナクナッテシマフ、營業者ニシテモ、小
  營業者ハ自己ガ販賣ニ從事シテ、朝カラ晩
  マデ働イテ居ル、若クハ家族マデモ働イテ
  居ル、使用人ノ賃銀ヲ差引ケバ、全ク無所
  得ニナッテシマウ、而モ是等ノ人達ハ餘リ所
  得ガ伸ビナイ、一面ニ於テハ寧ロ私共ハ喰
  込ンデ居ルト思フ、赤字ヲ出シテ居ル、赤
  字ヲ出シテ居ッテモ、ヤハリ所得稅ヲ納メナ
  ケレバナラヌ、尤モ其中ニハ事業家ニ依ツ
  テハ所得稅ヲ納メテ居ナイト見分ノ信用ニ
  關スルカラ無理ニモ所得稅ヲ納メテ、是ダ
  ケノ所得稅ヲ納メルト言フ人モアリマス、
  ソレハ色々アリマス、必シモ一樣ニハ申サ
  レヌケレドモ、併シ大體ニ於テハ今日ノ都
  會ノ小賣商、小問屋ハ恐ラクハ何レカニ其
  赤字ヲ押付ケナケレバ間ニ合ハナイト云フ
  ヤウナ事態ニ在ルノデアリマス、所デ過日
  此處デ御伺ヲ致シタ個人利子控除ノ問題デ
  ス、サウ云フヤウナ實ハ狀態ニ在ルノデア
  リマスカラ、據ドコロナク此補塡ヲスル爲
  ニハ何カ事業ヲ擴張スルトカ、貸家ヲ建テ
  ルトカ、或ハ工場ヲ擴張スルトカ、或ハ店
  舗ヲ增築スルトカ、色々ナ手段ヲ講ジナケ
  レバナラヌ、サウスルト勢ヒ之ヲ借入金ニ
  俟タナケレバナラヌ、サウスルト斯ウ云フ
  借入金ハ控除ガ認メラレナイト云フコトニ
  ナル、實際問題カラ言ヘバ、所得ヲ得ル爲
  ニ要スル資金デアルカラ、ソレガ明ニナレ
  バ引カレルノハ當然デアル、斯ウ云フ御辯
  明デモアリ、又其通リデモアリマス、所得
  稅法ノ上デモ其通リデアリマス、併シ此明
  カナラザルト云フコトガ、寔ニ一ツノ障碍
  ニナルノデス、ドウシテ明カナラザルカト
  云フト、是ハ稅務官吏ノ推定ニ俟ツコトガ
  多イノデアリマスケレドモ、私ハ是ハ稅法
  ニ缺點ガ一ツアルト思フ、例ヘバ田地ヲ買
  フノニ借リタ資金デアルナラ、ソレヲ農工
  銀行カラ借入レタトカ、或ハ產業組合カラ
  借入レタトカ云フコトハ、是ハ直グ分ル、
  サウ云フモノデ土地ヲ買ッタトカ云フコト
  ガ分ルケレドモ、一方ニ事業資金トシテー
  -農業家ト雖モサウデス、水車ヲ建テヤウ
  トカ、開墾ヲシヨウトカ云フコトノ爲ニ、
  田地ヲ抵當ニ入レテ借入ヲシテ、所得ヲ增
  スト云フコトヲ圖ラナケレバナラヌ、商人
  ハ店舗ヲ擴張スルトカ、或ハ工場ヲ擴張ス
  ルトカ云フコトニモ資金ガ要ルノデアリマ
  ス,ソレヲ「バランス」ヲ取ッテ明示シテ見
  セタナラバ、私ハ稅務官吏ハ差引クノヂヤ
  ナイカト思フ、所ガ多數ノ納稅者ニ聞イテ
  見ルト、事實ハサウデナイ、幸ニシテ法人
  ノ方ハ今度重課サレマスケレドモ、是ハ法
  人ハ決算期ニ於ケル「バランス·シート」ニ
  於テ明ニサレル、其處ハ明カデアル、大ニ
  宜シイガ、若シ小所得者ノ方ニ參リマスト、
  小所得者デナクテモ、一萬圓乃至五萬圓位
  ノ所得者モサウデス、第三種所得ハ多クハ
  推定ニ依ル、是ハ確ニ規則ニ缺陷ガアル、
  稅務官吏バカリヲ責メル必要ハナイ、〓西
  カラ言フト、私ハ斯ウ考ヘル、一體稅ト云
  フモノハ成ベク率ヲ輕クシテ、サウシテ皆
  ガ納メ宜イヤウニシテ、喜ンデ納メルヤウ
  ニスルコトガ宜イノヂヤナイカ、納メナケ
  レバナラナイカラト言ウテ喜ンデ納メル、
  稅務官吏ガ來テ吳レタラ嬉シイト云フヤウ
  ナ感ジヲ持ッテ來ナケレバナラヌ、所ガ頭カ
  ラ個人ハ脫稅ヲスルトカ、頭カラ仇敵ノ感
  ジヲ持ッテ徵稅ニ掛ルト云フコト、ソレ自體
  ガ間違ッテ居ル、所ガ一面ニ之ヲ聞イテ見ル
  ト、各稅務署ニ於テ每年調査ヲ致シマス、
  自然增收額ト云フモノヲ調ベテ、監督局長
  會議デスカ、大藏省ニ之ヲ屆出ル、何カ管
  內ノ稅額ノ增加スルコトヲ一ツノ名譽トス
  ルカ、或ハ希望トスルカ、或ハ上長ノ命令
  デアル、斯ウ云フヤウナコトガ行ハレテ居
  ルト云フコトデアリマス、ソコデ先ヅ第一
  ニ伺ヒタイノハ個人利子ノ控除ニ付テ何等
  カ的確ナ安心出來ルヤウナ方法ニ依ッテ、稅
  務吏ト衝突シナイヤウニシタイ、明ニ露骨
  ニ誠意ヲ示シタモノハ、ソレヲ控除スベキ
  方法ヲ御講ジ下サル御考ガアルカドウカ、
  隱匿ヲスルヤウナコトハ非常ニ困ル、之三
  付テハ昨日モ石渡局長ト質問應答ヲ繰返シ
  タノデアルガ、局長ノ意見モ一理アリマス、
  ソレハ實際分ルモノハ引クト云フノデス
  ガ、局長自身ガ行ク譯デハナイ、ソレハ一
  ツノ規則ノ下ニ働イテ居ル、稅務官吏ガ出
  張スルノデスカラ、此稅務官吏ノ方針ニ依ツ
  テ定マル、サウスルト隱蔽ヲシタ者ガ得ダ
  ト云フコトニナル、正直ニ出シタ者ハ正直
  ニ課稅サレル、ソコデ隱蔽ヲシテハイカヌ
  ト云フ考ヲ起サセルヤウニシナケレバナラ
  又、ソレニハ今ノ所得稅ノ徵收方法及屆出
  式ハ私ハドウモ感心シナイ、ダカラ一ツ之
  ヲ改良シテ戴キタイ、サウ云フ御考ガアル
  カドウカ、今大臣モ仰セラレタガ私ハ全然
  同感デアル、國民ノ義務トシテ喜ンデ納メ
  ルト云フ氣分ニシナケレバナラヌ、ソレニ
  ハドウモ頭カラ仇敵ノヤウナ考ヲ持ッテ徵
  稅ニ臨ムコトハ全然廢メナケレバナラヌ、
  ソレヲ廢メサセルニハ何カ方法ガナケレバ
  ナラヌ、最モ困難ヲ感ズルノハ個人ノ借入
  金ノ利子控除ノ問題ガ一番禍ヲナスト考ヘ
  テ居リマスノデ、之ヲ伺ヒマス

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• 007・結城豊太郎

  ○結城國務大臣　是ハ太田サンモ私モサウ
  云フコトヲ申スト、世間ガソンナ馬鹿ナコ
  トヲ考ヘテト云フコトヲ言フ人ガアルカト
  思ヒマスガ、全ク私モ納稅ト云フコトニ對
  シテ、何時デモ稅務官吏ガ來タ場合ニ喜ン
  デ應ズルト云フヤウナ氣持ニサセタイト思
  フ、是ハソンナコトヲ考ヘタッテ出來ルカ
  ト、斯ウ云フ風ニ思ハレヤウト思ヒマスガ、
  國稅ト云フモノハサウ云フ氣分デ行クベキ
  モノヂヤナカラウカト私ハ眞ニサウ思ヒマ
  ス、鬼面ヲシテ、人世生レテ收歛ノ吏トナ
  ル勿レト言ハレルヤウナコトハ、是ハ稅務
  官吏モ嫌ナコトデアリマス、國民モ亦其官
  吏ニ對シテサウ云フ氣持デハイケナイ、是
  ハ結局ハ〓育ノ力、又國稅ニ對スル理解ト
  云フヤウナコトカラ行クヨリ外ナイダラウ
  ト思ヒマスガ、ドウシテモヤハリサウ云フ
  風ナ氣持ニ導イテ行キタイト私ハ思ヒマ
  ス、中々實現ノ困難ナコトデハアリマスガ、
  是ハ實現出來ヌト言ウテ今ノ儘ニシテ置ク
  ベキデハナカラウト思ヒマス、ソレデサウ
  云フ場合モ考ヘマシテ、借入金ノ利子控除
  ト云フヤウナコトモ能ク〓究スベキコトデ
  アラウト思フノデアリマシテ、其邊ノ所ハ
  當局者ノ方デモ十分考慮致ス積リデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=7

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• 008・太田信治郎

  ○太田(信)委員　借入金利子控除ノ問題ニ
  對スル稅法ガ私ハ不完全デアル、其處ニ缺
  陷ガアル、寧ロ明ニソレガ稅法ノ上ニ現レ
  テ居レバサウ云フ支障ガ除カレル、デ私ハ
  實ハ馬場增稅案ノ調査ヲ致シタ當時ニ、此
  借入金利子控除ト云フコトヲ寧ロ法文ノ上
  ニ現ハスコトガ適當ナリト云フ意見ヲ持ツ
  テ居フタ、マア今囘ハ結城藏相ノ非常ニ同情
  ノアル御言葉ヲ戴イテ居リマスルカラ、其
  點ニ付テ寧ロ進ンデ政府カラ之ニ對スル省
  令ナリ、法令ナリ或ハ取扱規定ナリヲ御發
  布下サッテ、サウシテ一時ニハ行キマスマイ
  ケレドモ、順次其摩擦スル所ヲ緩和シテ、
  順次喜ンデ納稅ノ義務ヲ負擔スルト云フコ
  トニナリ、又收稅吏モ取扱ヒ宜イヤウナコ
  トニ順次行カセルヨリ仕方ガナカラウ、ソ
  レニハ何等カ法令ナリ、或ハ省令ナリ或ハ
  取扱規定ナリ、何カサウ云フヤウナ便法ヲ
  御考下サル御考ハアリマセヌデセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=8

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• 009・結城豊太郎

  ○結城國務大臣　能ク其邊ノ御趣旨ヲ體シ
  テ、何カサウ云フコトニ付テ方法ガアリマ
  スレバ考究致シタイト考ヘテ居ル次第デア
  リマス

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• 010・太田信治郎

  ○太田(信)委員　今囘ノ此政費ノ中ニ於テ
  已ムヲ得ズシテ此豫算ノ編成上ノ關係カラ
  節約繰延ヲ爲サッタコトハ、是ハ洵ニ巳ムヲ
  得ナイコトヽ私ハ思ヒマス、唯金高ノ大小
  ハ別ト致シマシテ、社會事業關係ノモノガ
  等シク其運命ニ遭ヲテ減額ヲセラレ、若クハ
  削除セラレタト云フヤウナ物柄ガ茲ニアル
  コトヲ私ハ遺憾ト思フ、是ハ若シ局長ニ詳
  カニ此數字ヲ擧ゲテ御說明ヲ伺ッタラバ、或
  ハ其施行上差支ナイ程度デアルトカ、何ト
  カ云フヤウナ色々ナ辯明ハ付クダラウケレ
  ドモ、其辯明ハ私ハ伺ハナクテモ宜シイ、デ
  アルガ例ヘバ一面カラ言フト、公益質屋ノ
  設備費デアルトカ、庶民金庫設立ノ準備費
  トカ、或ハ中小商工業ノ振興ニ關スル經費
  デアルトカ、斯樣ナモノハ氣持ノ上デモ私
  ハ成ベク減ラシタクナイト斯ウ思フ、併シ
  此豫算ニ現レテ居ルモノヲ必ズ使ハナケレ
  バナラヌモノデアルカ否カト云フコトハ、
  私ハマダ是ハ考ヘテ居リマセヌ、居リマセ
  ヌガ、併シ中小商工業振興ト云フコトガ今
  私ハ一番大事ナ問題ト考ヘテ居ルノデス、
  若クハ庶民金庫ノ設立ノ如キモ、是等モ其
  效用ヲ何處マデ發揮スルカト云フコトニ付
  テハ、私ハ又意見モアリマスルケレドモ、
  又公益質屋ノ如キモ、或ハ今日ノ公益質屋
  ノ制度ガ必ズ完全デアルトハ私ハ認メマセ
  ヌ、ガ斯樣ナ費目ニ付テハ一律一體ニ御考
  ニナラズニ、一ツ社會政策的ニ御考ヲ願ヒ
  タイ、一體私ニ言ハセルト、社會政策ト社
  會事業ト云フモノヲ兎角混同セラレル、何
  カ救濟事業ノヤウナモノガ社會政策ノヤウ
  ニ御考ニナッテ居ル方ガ隨分アリマスルケ
  レドモ、全ク私ハ其趣キヲ異ニシテ居ルト
  思フ、私ハ寧ロ無產階級モ中產階級モ、各
  自ガ獨自自足自給シテ發展シテ行クコトガ
  宜シイノダ、救濟ニ俟ツト云フコトハ決シ
  テ宜イコトデハナイト思フノデス、思フガ
  兎ニ角斯樣ナ僅カナモノデモ斯ウ云フ問題
  ニ對シテハ一ツ十分ナ御考慮ヲ私ハ願ヒタ
  イ、ソレカラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=10

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• 011・増田義一

  ○增田委員長　一寸太田委員ニ注意致シマ
  ス,只今ノ御質問ハ豫算ノ歲出ニ關スル間
  題ニ移ッテ居ルヤウデアリマスルガ、此場合
  ハ租稅制度ニ關係スル範圍內ニ止メテ行キ
  タイ、中央金庫云々ト云フヤウナコト迄ニ
  ナッテ來マスト、何處マデ範圍ガ廣クナルカ
  分リマセヌカラ、ドウゾ範圍ヲ限定シテ御
  質問願ヒタウゴザイマス

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• 012・太田信治郎

  ○太田(信)委員　更ニ伺ヒタイノハ、是ハ
  昨日來色々御議論ノアリマシタ地方財政交
  付金ノ問題テアリマスガ、此問題ハ繰返シ
  テ私ハ別ニ議論ヲ致ス必要ハナイ、今日漸
  ク是ガ解決ヲ-マダ告ゲタカ告ゲナイカ
  知レマセヌガ、告ゲントスルヤウデアリマ
  ス、此問題ニ付テハ私ハ考ヘマセヌガ、更
  ニ今將來ノ增稅ノ考ノ中ニ於テ此地方財政
  ニ振向クベキ資金ヲ減ラシタ、之ヲ將來增
  稅スル場合ニ於テハ地方ニ財源ヲ求メネバ
  ナラヌト云フ、增稅ト地方財政交付金トノ
  間ニ因果關係ヲ持ッテ居ルモノデアリマス
  カラ、此時ニ私ハ一言申上ゲテ置キタイト
  思フ、私共ハ此地方財政交付金ト云フノハ
  餘程難カシイ問題デアル、是ハ寧ロ地方財
  政ノ獨立ト云フモノハ、獨立ノ財源ヲ與ヘ
  テ地方ガ自足自給スベキコトガ本質デナケ
  レバナラヌ、其萬已ムヲ得ザルモノヲ地方
  財政交付金ニ於テ補ッテ行ク、補助シテ行
  ク、補助ノ方ガ本旨デナイ、サウスルト今
  度ノ稅制改正ニ伴ヒ、又將來ノ稅制改正ニ
  伴ヒ、此地方ノ經費ヲ負擔スル所ノ地方費
  ト云フモノニ付テハ、是ハ國稅ト相俟ッテ餘
  程關係ヲ持ッテ居ル、現在現ハレタ所得稅ダ
  ケニ於テモ、マア交付金ノ問題ハ姑ク別ト
  シテモ、地方財政トハ大分關係ハ持ッテ來
  マスガ、今年ハ此儘地方財政ニ付テハ最早
  ソレ〓〓決議ヲ經テ居リマセウカラ、御手
  ヲ御入レニナル餘地ハナイデアリマセウケ
  レドモ、明年度ニ起ル所ノ此國稅ノ改正ニ
  伴フ地方財政ノ整理ニ付テハ、所謂地方費
  ノ負擔ニ付テハ、大體私ハ獨立ノ財源ヲ與
  ハハ、自足自給主義ヲ採リ、ソコデ萬已ム
  ヲ得ナイ、所謂ソレデ以テ自足自給ニ至ラ
  ヌモノニ對シテ補助ヲスル、或ハ交付金ヲ
  ヤル、斯ウ云フ制度デナケレバ私ハナラヌ
  ト思フ、サウスルト云フト、此處デモ尙ホ
  申上ゲテ置キタイノハ、地方自治ハ自足自
  給ノ觀念ガアッテ地方自治ヲスルナラ宜イ
  ガ、補助金ト相俟ッテ、或ハ地方ノ財政ノ豐
  カナルニ乘ジテ、不急ナ事業ヲシテ居ル所
  ガ必シモ私ハナイトハ見ナイ、又或ル地方
  ニ依リマスト云フト、實ニ酷イ生活ヲシテ
  居ル、私共知ッテ居ル範圍ニ於テモ、岩手縣
  ノ一部ニ於テハ米ヲ食フコトガ出來ナイ
  デ、稗ヲ食ッテ居ルヤウナ所ガアル、斯ウ云
  フヤウナコトヲ申上ゲルト、甚ダナンデス
  ガ、稗ヲ常食ニシテ居ル日本人ガアルカト
  云フ御話ガアルカモ知レナイガ、實際斯ウ
  云フ所ガアル、ソレハ非常ニ難カシイ問題
  デアリマスケレドモ、昨日ドナタカカラ御
  質問ガアッタヤウデスケレドモ、此地方財政
  交付金ニ付テハ或ハ特別會計ノヤウナモノ
  ヲ設ケテ、サウシテ一旦徵收シタモノヲ貧
  窮町村ニ交付スル、所謂徵收交付ノ役割ヲ
  スルベキモノガ必要デハナイカト云フヤウ
  ナ御議論モ出タヤウデアリマシタ、今度ノ
  財政交付金モドウ云フ形ニ於テオヤリニナ
  ルカ、私ハマダ伺ッテ居ナイガ、大體ニ於テ
  私ハ地方財政ト云フモノハ、ドウシテモ本
  旨トシテハ獨立スベキモノデアッテ、自給自
  足デ行クベキモノデアル、ソレニ負擔力ノ
  耐ヘナイ所、又實際ニ於テ救濟ヲシナケレ
  バナラヌモノニ向ッテ之ヲ交付スルト云フコ
  トデアレバ、一方ノ高イ所ヲ持ッテ來テ、之ヲ
  低イ所ニ與ヘルト云フコトノ觀念ガ、ハッキ
  リソコニ分ラナケレバイカヌ、ソレニハド
  ウシテモ將來別ニ地方財政ニ關スル特別會
  計ノヤウナモノニ、一旦徵收シタモノヲ取
  入レテ、更ニ其中カラ交付スルト云フコト
  ヲ明カニ判明サセルコトガ、其町村ニ對シ
  テ大變將來町村ノ自治ヲ發達スル上ニ於テ
  必要デハナイカ、大體左樣ニ私ハ考ヘル、
  サウスルト結論カラ申シマスレバ、地方財
  政整理ニ付テハ、大體私ハ自給自足ノ本旨
  足ラザルモノニ補フ、補フトシタナラバ、
  是ハ今マデノヤウニ各種ノ方面ニ小出シニ
  スルヤウナコトヲシナイデ、寧ロ徵收シタ
  モノヲ一ツノ特別會計カラ低イ所ニ交付ス
  ルト云フヤウナ、明カニ判明シタ方法ヲ御
  採リニナッタ方ガ宜シイノデハナイカ、斯樣
  ニ考ヘルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=12

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• 013・結城豊太郎

  ○結城國務大臣　地方財政ノ獨立ト云フコ
  トニ對スル御意見、隨テ交付金ノ善シ惡シ
  ニ付テノ御考、至極御尤ナ點ガアルト思フ
  ノデアリマス、此地方ノ財政整理-是ハ
  中央ヨリモ寧ロ地方ノ財政整理ガ必要ヂヤ
  ナイカト私ナドハ思ッテ居ルヤウナ次第デ
  アリマシテ、地方ノ財政整理ト伴ッテ、其邊
  ノ所ヲ十分ニ考ヘナケレバナラヌノデアリ
  やく。果シテソレダケノコトガ出來ルカ出
  來ナイカ、非常ナ大キナ仕事デアリマスノ
  デ、荷ガ重過ギヤセヌカト思フヤウナ氣ガ
  致シマスガ、出來ルダケ一ツヤッテ見タイト
  考ヘテ居リマス、隨テ此次マデニハ、中央
  地方ヲ通ジテ其邊ノ稅制ノコトニ付テ、十
  分ニ〓究シタイト思ッテ居ル次第デアリマ
  シテ、御說ノ點ハ大變ニ參考ニナルコトガ
  多イト思ヒマス

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• 014・太田信治郎

  ○太田(信)委員　私ハマダ揮發油稅其他ニ
  付テモ、御質問申上ゲタイコトガアリマス
  ルガ、實ハマダ政府カラ資料ガ廻ッテ居リマ
  セヌ、且ツ大藏大臣ノ時間モナイヤウニ伺ツ
  テ居リマスカラ、他ニ大藏大臣ニ御質疑ノ
  方ガアルヤウニ承知致シマスノデ、私ハ本
  日ハ是デ止メテ他ノ御方ニ御讓リスルコト
  ガ、是ハ公德上宜シイカト考ヘマス

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• 015・増田義一

  ○增田委員長　宮澤裕君ニ發言ヲ許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=15

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• 016・宮澤裕

  ○宮澤委員　本案ニ對スル質疑ノ詳細ナル
  コトニ關シマシテハ多數堪能ナル諸君カラ
  質問サレルコトヽ致シマシテ、私ハ大體全
  貌ニ付テ大藏大臣ノ御意見ヲ聽キ、且ツ自
  分ノ意見モ御參考ニ御聽取ヲ願ッテ置キタ
  イト思ッテ多少準備ヲシタノデアリマスル
  ガ、旣ニ多クハ同僚諸君カラ質疑ガ交換サ
  レタノデアリマスカラ、極メテ其一部分ニ
  對シテ大體的ノ質問ヲ致シテ御意見ヲ拜聽
  シテ置キタイト思ヒマス、ト申シマスノハ
  當面ノ稅制ノ審議ニ必要ナバカリデナク、
  十二年度ニ於キマシテハ仰セノ通リ中央地
  方ヲ通ジテノ大稅制改革ヲ樹立サレ、根本
  的ノ豫算ヲ編成御提出ニナルト云フヤウナ
  御話ガアル場合デアリマスルカラ、將來ノ
  コトニ關シマシテモ色々ナ意見ヲ交換シ、
  御意見モ聽キ國民ノ主張モ御聽取願テ置
  キマスコトハ極メテ重要ナルコトヽ信ジマ
  ス、以上ノ考ヲ以テ質問致シタイト思フノ
  デアリマス
  馬場財政、結城財政ヲ通ジテ見マシテ、
  多少ノ金額ニ相違ハアルニ致シマシテモ大
  增稅計畫ニ違ヒハゴザイマセヌ、而シテ斯
  ノ如キ國庫ノ增收ヲ必要ト致シマスル主ナ
  ル原因ハ國防費ノ增大ニアリマスルコトモ
  固ヨリ言フ迄モナイノデアリマス、是ニ於
  テ大藏大臣ニ劈頭ニ御意見ヲ拜聽シタイノ
  ハ、結城藏相ハ曾テ本會議ノ壇上ニ於テ、
  私ハ高橋大藏大臣ト馬場大藏大臣ノ中間ヲ
  行クモノデアルト云フヤウナ御話デアリ
  マス、高橋サンハ固ヨリ結城藏相御懇意ノ
  間柄デアリマスルシ、能ク御承知デアリマ
  スルガ、出ヅルヲ制シテ入ルヲ計ッタカノヤ
  ウニ考ヘテ居ルノデアリマス、馬場藏相ハ
  出ヅルヲ計リ入ルヲ計ッタヤウナ方針デ財
  政ノ切盛リヲオヤリニナッタカニ承知致シ
  テ居ルノデアリマス、其中間ト云ヒマスト、
  或ハ入ルヲ制シテ出ヅルヲ計ル譯ニ參ラヌ
  ダラウト思ヒマスシ、又出ヅルヲ制シ入ル
  ヲ制スルト云フコトハ尙更出來ヌダラウト
  思フノデアリマス、果シテ然ラバドウ云フ
  ヤウナ方針デ此非常時ノ稅制計畫ナリ財政
  ノ切盛リヲ御擔當ニナル御考デアルカ、實
  ハ私共今非常時トカ準戰時狀態ト言ハレテ
  居リマス、其宣傳ハ那邊カラ起ッタカト云フ
  コトハ別ニ致シマシテ、自ラ此宣傳ガ普及
  シテ如實ニ非常時デアリ準戰時狀態デアル
  カノ情勢ヲ馴致致シマシタ、是ハ事實デア
  リマス、斯ウ云フ非常時、殊ニ財政ノ難局
  ヲ擔當サレル結城サン自身ニ對シテハ洵ニ
  是ハ容易ナラヌ御決心デアリ、御迷惑ノコ
  トヽ拜察シ御同情申上ゲテ居ルノデアリマ
  スガ、大體ノ腹ダケハ御決メニナリマセヌ
  ト、此非常時ノ財政切盛リハ容易ナラヌコ
  トデアリ、又タ容易ナラヌ結果ニナリハ
  セヌカト云フコトヲ吾々思ッテ居リマスノ
  デ、大體ノ御決意ノ程ヲ平易ニ御說明願ヒ
  タイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=16

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• 017・結城豊太郎

  ○結城國務大臣　高橋サンノ方針ト申シマ
  スカ、ヤラレマシタ時ハ情勢ガサウデアッタ
  カラデモアラウト思ヒマスガ、ソレニ高橋
  サントシテハ產業界ノ事モ能ク考ヘラレテ
  國民ノ力ト云フモノニ付テモ非常ニ考ヘラ
  レテ居ッタト思フノデアリマシテドウモ今
  增稅ヲスベキ時ヂヤナイ、是ハ增稅ヲスル
  コトニナルト折角芽生エテ來タノヲ摘ムコ
  トニナルカラト云フヤウナ御考ガアッタヤ
  ウニ思ヒマス、モウ少シ產業界ヲ育テヽカ
  ラニシナケレバイカヌト云フヤウナ御考、
  ソレカラ都會ノ商工業者ニ致シマシテモ、
  地方ノ農村漁村ノ方々ニ致シマシテモ、高
  橋サンノ目カラ見ルト、ドウモサウ負擔ヲ
  サセテハ氣ノ毒ダト云フヤウナコトニ見エ
  タラウト思フノデアリマス、隨テ高橋サン
  トシテハ先以テドノ位ノ收入ヲ得ルコトガ
  出來ルカト云フコトニ腐心サレテ、國民ニ
  餘リ迷惑ヲ掛ケナイヤウニト云フ御考、同
  時ニソレナラバ足リナイモノヲ赤字公債ニ
  依ッテ補ッテ行フタラ宜カラウト云フコトニ
  ナルト、赤字公債ダッテソンナニ無暗ニ發見
  スベキモノヂヤナイ、或ル限度ニ止メテ置
  イテ、赤字公債ノ市價ガ下ラヌ程度ニ置ク
  ベキモノデアルト、斯ウ云フ風ナ御考デアッ
  タラウト思フノデアリマス、ソレデ自然ニ
  是ダケシカ歲入ハナイノダ、ソレダカラ節
  約シテ貰ハナクテハイカヌ、斯ウ云フ風ナ
  氣持デ主ナル歲出ノ陸海軍ノ費用ト云フモ
  ノニ臨マレタト私ハ想像スルノデアリマ
  ス、馬場君モヤハリ其考ニハ變リハナイト
  思ヒマスガ、併シ周圍ノ環境ト申シマスカ、
  其時ノ情勢ト云フモノハ二·二六ノアトヲ
  引受ケマシテ、其後ノ隣國ノ情勢ヤ何カニ
  急變化ヲ來シタヤウナ事情モアリマシテ、
  ドウモ高僑サンノヤウナコトバカリモ言ツ
  テ居レヌ、應急ノ設備ハドウシテモシナケ
  レバナラヌト云フコトニ深イ認識ヲ持タレ
  タ、ソレデアリマスカラドウモ國民ニハ無理
  デアルカモ知レナイガ、是ダケノ增稅ヲ負
  擔シテ貰ハナクチヤイカヌ、又赤字公債ニ
  シテモ出來ルダケノモノヲ發行シテ、サウ
  シテ軍備ノ充實ニ充テナケレバナラヌト云
  フ方ニ白然方向ハ向イテ行ッタト私ハ思ヒ
  やく、是モ決シテ無理ナコトデハナイ、誰
  ガ其時ノ財政ノ當局者ニナッテ居ッテモ、サ
  ウ云フ風ナ考ニナラザルヲ得ナカッタト私
  ハ思フノデアリマス、ソレデ高橋サンノヤ
  ラレタ事、馬場君ノヤラレタ事ナドニシテ
  モ、其時ノ情勢カラ見テ、是ハ當然ノ事デ
  アラウト思フノデアリマスガ、偖テ併シ前
  內閣ニ依ッテ作ラレタ豫算ガ世間ニ公表サ
  レル、增稅案ガ發表サレル、ソレニ關稅ノ
  改正ニ付テモ發表サレルト云フコトニナッ
  テ見ルト、世間ハ驚イタト申シマスカ、ド
  ウモソレハ困ル、斯ウ云フヤウナコトニナッ
  テ、苦情ガ方々カラ出テ參リマス、ソコニ
  一部ノ商人ガ思惑ヲ致シマストカ、隨テ輸
  入ガ急增スル、「ストック」ヲ賣惜シンデ物
  價ヲ騰貴セシムル、斯ウ云フヤウナ結果ヲ
  來シタ、ソレハ畢竟我國ノ生產力ト云フコ
  トニ伴ハヌ程度ノ膨脹デアッタト言ヘバ言
  ヘルノデアリマスルガ、一ツハ急激ナ豫算
  ノ膨脹、增稅ト云フコトニ對スル驚キデアッ
  タラウト思フ、經濟界ノコトニ付キマシテ
  ハモウ御承知ノ通リ出來ルダケ急激ナ變
  化ヲ避ケルト云フコトガ必要デアリマシテ、
  徐々ニサウ云フ方向ニ向ッテ行クナラバ、サ
  ウ惡影響ヲ來スヤウナコトノナイヤウナモ
  ノニ對シマシテモ、急ニ其事ヲヤラウトスル
  ト、飛デモナイ結果ヲ見ルコトガアルノデ
  アリマス、デ國民ハ最近ニ於テ國ノ內外ノ
  情勢ニ付テノ理論モ段々ニ持ッテ居リマスノ
  デ、軍備ノ擴張ト申シマスカ、充實ニ付テ
  ハ已ムヲ得ヌ、ソレ等ノ國費ヲ賄フ爲ニハ
  相當ノ增稅モ已ムヲ得ヌ、又公債ノ發行ガ
  アッタ場合ニハ、ソレ等ノ消化ニ付テ自分達
  ニ手傳ッテ行ケルモノナラバ手傳ッテ行カ
  ウ、斯ウ云フ氣持ハ持ッテ來タノデアリマ
  ス、コヽデ稅率ガ增スト云フコトニ付テハ、
  サウ異存ガナイト思フ、併ナガラ色々稅金
  ニ付テ非常ナ不安ヲ感ジマストカ、其爲ニ
  色々ノ摩擦ヲ生ズルヤウナコトノアルモノ
  ニ對シテハ、是ハ避ケナケレバナラヌト云
  フヤウナ考カラ、組閣匁々其邊ノ檢討ヲ致
  シタノデアリマス、併シ〓究ヲシテ見マス
  下、私共ハモウ一段中央地方ヲ通ジテ根本
  的ト申シマスカ、全體ノ檢討ヲ必要トス
  ル、ドウモ此儘ニ唯斧鉞ヲ加ヘタト云フ
  カ、一二ノ是正ヲヤッタヾケデハソレハ姑息
  デアッテ、モウ少シ〓究ヲ要スル、併シ其〓
  究ヲスルニハ日ガ足リヌ、已ムナク其一部
  ノ訂正ヲ致シテ、サウシテ非常ナ負擔デハ
  アリマスガ、其負擔ニ對シテ臨時租稅增徵
  ト云フヤウナ形ニ於テ、國民ニ負擔ヲシテ
  貰フ、斯ウ云フヤウナ意味合デ、出マシタ
  ヤウナ次第デアリマス、ソレデ私ハ高橋サ
  ン、馬場君ノ中間ヲ行クト云フヤウナ甚ダ
  曖昧ナ考ヲ申シマシテ、譯ガ分ラヌノデア
  リマスガ、ソレハ要スルニ國費ノ一番大キ
  ナ部分ヲ占メテ居ル陸海軍、是ハドウシテ
  モ國ノ情勢カラソレダケノ充實ヲ要スルコ
  トハ、大體ニ於テ國民モ承知ヲシテ居ルコ
  トデアリマスルガ、モウ一段私共ハソレ等
  ニ付テノ理解ヲ持チタイ、又財政ノ狀況ト
  カ、或ハ國ノ生產力トカ、國民ノ富力、ソ
  レ等ノコトニ付テ軍當局ノ方デモット理解
  ヲ持ッテ貰ッテ、サウシテ此程度デアルナラ
  バ、軍備ノ充實ニモ差支ガナイ、又國民ニ
  負擔ヲシテ貰ッテモ差支ガナカラウ、斯ウ云
  フ所ノ相互ノ理解ニ依ッテ案ヲ作ッテ行キタ
  イ、ソレデ一方ニ偏シテ入ルヲ計ルトカ、
  出ヅルヲ計ルトカ云フヤウナコトバカリニ
  傾イテ行ク譯ニ行カヌ、ソコデ相互ノ理解
  ニ依ッテ考ヘテ行カネバナラヌト云フ所カ
  ラ、自然其中道ヲ步ムト云フヤウナ氣持ニ
  ナッタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=17

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• 018・宮澤裕

  ○宮澤委員　御意見ヲ聽イテ稍〓明瞭致シ
  マシタガ、恐ラクサウ云フ御考デアラウト
  ハ拜察シテ居ッタノデアリマス、ト申シマス
  ノハ御承知ノ通リ、近時非常ニ國費ノ膨脹
  ヲ來シタ、其原因ハ國防費ニアルノデアリ
  マスルガ、國防費ノ要求ハ高橋大藏大臣時
  代カラモ中々熾烈ニ行ハレテ居タ、所ガ高
  橋大藏大臣ハ御承知ノ通リ、獨リ國防ヲ以
  テ國力ハ完成スルモノデハナイ、所謂國防
  產業兩立ニアラザレバ、眞ノ國力ト云フモ
  ノハ培養出來ルモノデハナイト云フコト
  デ、一面國防ノ充實ニ留意サレルト同時ニ、
  產業ノ發達ニモ留意サレ、其方面ノ經費モ
  可ナリ御計上ニナルコトニ常ニ努力ヲ拂ハ
  レタヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、隨ヒ
  マシテ年々膨脹セントスル國庫ノ豫算モ二
  十二三億ニ食止メテオ居デニナッタト思ヒ
  マス、是ガ馬場藏相ニナリマスルト、一番
  三十億ヲ突破スルヤウナ非常時財政ニナツ
  タ、而シテ其五割ニ近イモノガ國防費デア
  ル、隨テ其大膨脹ハ是ガ大增稅計畫トモナ
  リ、赤字公債ノ募集トモナッタノデアリマス
  ルガ、實ハ高橋サンハ此等ノ要求ニ對シテ
  ハ死ヲ以テ當ラレタト思フ、アヽ云フ國家
  ニ功勞アリ、隨一ノ財政ノ權威トモ申スベ
  キ八十ノ老齡ノ國家ノ元勳ガ、アヽ云フ兇
  刄ニ倒レ、敢ナキ最後ヲ遂ゲラレマシタ原
  因ノ一ツモ、高橋大藏大臣ハ國防ニ無理解
  デアッタト云フコトヲ以テ誤解ヲ受ケラレ
  タカニ聞イテ居ルノデアリマス、在世中ニ
  ハ若イ所謂靑年將校ト申シマスル者ガ屢〓
  直接談判ニ行ッテ、國防費ノ充實計上ヲ强要
  シタカニ聞イテ居リマスルガ、釋迦ニ說法
  デ聞キ流シテ居タ、ソレデ遂ニアヽ云フ御
  氣ノ毒ナ最期ヲ遂ゲラレタト云フヤウニ聞
  イテ居ルノデアリマスガ、ソレニ比ベマス
  ルト、馬場大藏大臣ハアレダケノ豫算ヲ計
  上サレマスルノニモ、私共內容ハ餘リ存ジ
  マセヌケレドモ、豫算閣議ニ於テ僅ニ一時
  間カ一時間半足ラズデ閣議ガ完了シタ、三
  十億三千八百萬圓ノ豫算ヲ決定スルノニ、
  閣議ガ一時間カ一時間半足ラズデ終了シ
  ク、是ハ一面ノ內閣ノ何ト申シマスルカ、
  統一振リヲ御吹聽ニナル宣傳デアッタカモ
  知レマセヌガ、國民カラ見レバ如何ニモ冷
  淡デ且ツ國民ノ窮乏ニ無理解デハナイカ、
  サウ云フヤウナ財政ノ切盛リデアッタナラ
  バ誰デモヤレルノダ、斯ウ云フ感ヲ懷カシメ
  タノデアリマス、是ハ仰セノ通リ時代ノ認
  識ガ必要デアリマス、國際關係ノ變化モ固
  ヨリ吾々ハ諒解致シテ居リマス、ケレドモ
  苟モ政治ハ迎合政治デナク指導政治デナク
  チヤナラヌ、言フガ儘ニ、要求サレルガ儘ニ
  計上スルノデハ、恐ラク是ハ際限ガナカラ
  ウト思ヒマス、私ガ申ス迄モアリマセヌケ
  レドモ、大藏大臣モ既ニ御承知ノコトデアラ
  ウト思ヒマスケレドモガ、所謂繼續費ト云フ
  形デ、陸海軍ノ多分ノ經費ガ年々取ラレテ
  居リマスルガ、旣定繼續費ノ上ニ追加繼續
  費ト云フモノガ十一年度デモ十二年度デモ
  必ズ要求サレテ居ル、是ハ容易ナラヌ額ニ
  上ッテ居ル、五年計畫ハ斯ウデアル、七年計
  畫ハ斯ウデアルト申シマシテモ、其翌年ニ
  ナルト又復新ニ新規繼續費トシテ追加計上
  サレルト云フコトニナッテ、殆ド底止スル所
  ヲ知ラヌト云フ今日ハ狀態ニナッテ居ルノ
  デアリマス、斯ノ如クシテ然ラバ國防ノ安
  全感ガ期セラレルカト云ヘバ必シモサウデ
  ハナカラウト思フ、ト申スノハ私ガ申ス迄
  モアリマセヌケレドモ國防費ト云フモノハ
  比較的ノモノデアル、此方ガ國防ヲ充實ス
  レバ向フモスルノデアリマス、向フガ國防
  ヲ充實スルカラト云フテヤッタノデハ際限
  ガナイ、某外國ノ軍事評論家ガ日本ヲ評シ
  テ言フノニ、日本ト云フ國ハ全ク侵略主義
  デアリ帝國主義デアル、年一年ト國力ヲ揚
  ゲテ國防ノ充實ノミニ腐心致シテ居ル、斯
  ウ云フ風ニ侵略主義、帝國主義ヲ以テ國防
  專門ニヤル國ニ對シテハ平和ノ條約モ或ハ
  協定モ出來ルモノヂヤナイ、國防ニ對シテ
  ハ國防ヲ以テ臨ムヨリ外ハナイ、而シテ日
  本ガ極東ノ安定力ナリト云フケレドモ、日
  本ノ國際的ノ地位ト云フモノハ千九百三十
  二年ヲ以テ是ハ最高峰トスル、三十三年、
  三十四年ニナルト二番目ニモ三番目ニモ落
  チテ居ル、所謂「フアスト·レート」カラ「セ
  カンド·レート」ニモ「サード·レート」ニモ
  落チテ來タ、日本ニ對シテハ國防ヲ以テ對
  立スル外ニ方法ハナイノダカラ、ドウシテ
  モ國防力ヲ充實スルノダ、サウ云フ國ニ露
  西亞アリ英國アリ亞米利加ガアル、結局支
  那モ中央ノ結束ヲ固クシテ日本ニ對スル抵
  抗力ヲ殖ヤシテ來タ、デアルカラ日本ノ國
  際的地位ハ三十二年ガ最高峰デアルト云フ
  コトヲ批評シテ居リマスガ、是ハ皆樣モ御
  讀ミニナッテ御承知デアラウト思ヒマス、私
  ハ之ヲ此儘受入レルモノデハアリマセヌ、
  或ハ是ハ揶揄宣傳デモアリ、直チニ之ヲ受
  ケルモノデハアリマセヌケレドモ、採ッテ以
  テ他山ノ石トシテ聽イテ置カナケレバナラ
  ヌ言葉デアルト思フノデアリマスガ、斯ウ
  云フ事情ニ今日ハアルノデアリマス、然ル
  ニ此軍部當局ヲ向フニ廻シテ財政ノ切盛リ
  ヲセラレル大藏大臣ノ御苦心ハ容易デナカ
  ラウト思ヒマスガ、大藏大臣ハ數日來ノ御
  答辯ヲ拜聽致シマスト云フト、自分ハ最早
  是以上增稅ヲスルノ意思ハナイ、唯不均衡
  ヲ是正シテサウシテ負擔ノ公平ヲ期スル爲
  ニ稅制ヲ改革スルコトガ來年度ノ自分ノ狙
  ヒ所デアルト云フヤウナ御話ヲナサッテオ
  居デニナル、固ヨリ是ハ結構ナコトデ、其
  御決心ノアル所ハ諒トスルノデアリマスガ、
  果シテ今ノヤウナ情勢デアッテ大藏大臣ノ
  御考ノ如ク是以上增徵ハシナイ、唯負擔ノ
  公正ヲ期シ、擔稅力ノアル所ニ應能課稅主
  義ヲ鹽梅シテ所謂租稅ノ不公平ノ是正ヲス
  ルニ止マルノデアルト云フ所ノ御理想ガ實
  現出來ルデアラウカドウデアラウカ、是ハ
  衆望ヲ擔ッテ臺閣ニ列シテ此非常時ノ財政
  ヲ切盛リナサル大藏大臣ト致シマシテ、其
  御決心ナリ御理想ヲ以テ御立チ下サルト云
  フコトハ全クサウナクテハナラヌト私ハ敬
  意ヲ表スルノデアリマスガ、目下ノ時局ヲ
  案ジテ是以上增稅ヲシナイデヤレルモノデ
  アルカ、是以上赤字公債ヲ增大シナイデヤ
  レルモノデアルカ、私ハヤレルコトヲ希望
  スルノデアリ、欲スルノデアリマスガ、是
  ハ容易ナラヌ決心デナケレバ行ハレヌコト
  ト思フ、其點ニ付テモウ一度御決心ヲ拜聽
  シタイト思フノデアリマス

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• 019・結城豊太郎

  ○結城國務大臣　來年ノ計畫ニ付キマシテ
  ハ私ニ取ッテハ非常ニ難カシイ課題デアリ
  マシテ、果シテヤリ得ルカ、ドウカト云フ
  コトヲ疑ッテ-疑フト云フヨリハ懸念ヲ
  持ッテ居ル次第デアリマスガ、出來ルダケノ
  コトハ致ス積リデアリマス、此赤字公債ノ
  方ハ場合ニ依ルト消化ヲシ得ルヤウナ狀態
  ニ置イテ置キマスレバ、或ル程度ノ增減ハ
  差支ガナカラウカト思フノデアリマス、併
  シ何時マデモ此赤字公債ニ、何ト申シマシテ
  モ借金デアリマスカラ、ソレヲ少クスルヤ
  ウニ努メテ行クコトハ然デアリマスル
  ガ、已ムヲ得ナケレバサウ云フコトモ是ハ
  考ヘラレルノデアリマス、增稅ニ付キマシテ
  ハ私ハモウ高橋サンノ考ヲ踏襲スルト云フ
  コトデハアリマセヌガ、全ク國民ノ負擔力
  カラ考へ、又產業界ヲ好クシテ行クト云
  フ上カラ考ヘタリナンカ致シマスルト、サ
  ウドウモ是以上ニ國民ノ負擔ヲ增スヤウナ
  コトハ出來ルダケ是ハ避ケタイト私ハ思ッ
  テ居ル、隨テマダ餘力ガアルカラ增稅ヲ主
  ニシテ計畫ヲ立テルト斯ウ云フノヂヤアリ
  マセヌデ、マア整理ヲ主トシテ、重點ヲ整
  理ト云フコトニ置キ、負擔ノ公平ト云フヤウ
  ナコトニ重點ヲ置イテ計畫ヲ進メタイト
  思ッテ居リマスガ、其結果或ル方面ニハ增稅
  ト云フコトニナラヌトモ限リマセヌガ、增
  稅ヲ主ニシテ計畫ヲ立テルベキデハナイ、
  又增稅ニ付テハ國民ノ負擔力其他ノ點カラ
  考ヘテ、サウ度々多クノ負擔ヲ增加スベキ
  デハナイ、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、
  ドウシテモ情勢カラ金ガ要ルト云フ場合ニ
  ハ色々ナコトヲ私ハ考ヘナケレバナラヌト
  思ヒマス、單ニ租稅ト赤字公債ノミニ依ッ
  テ賄ッテ行クト云フノヂヤナシニ、色々ナコ
  トヲ考ヘテ行カナケレバナラヌト思フノデ
  アリマスルガ、偖テソレヲ今ドウ云フコト
  ニ依ッテヤッテ行クカト云フヤウナコトヲ、
  腹案モ出來マセズ、未熟ナ考ヲ持チ、又此
  方ノ考ダケデハイカヌ、相手方其他ノ考ニ
  依ッテ色々考究シテ行カネバナラヌヤウナ
  コトモアルノデアリマスルカラ、マア其邊
  ノコトニ付テハ餘リ手形ヲ出サヌデ置イ
  テ、サウシテ考ガ熟シマシタナラバ斷行シ
  テ行クト云フヤウニ、斯ウ云フ不言實行デ
  行キタイト斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=19

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• 020・宮澤裕

  ○宮澤委員　御承知ノ通リ只今國際情勢ガ
  容易ナラヌ時デアリ、隨テソレニ卽應シテ
  國防モ切盛リシテ行カナケレバナラヌ、充
  實サシテ行カナケレバナラヌト云フ御意見
  モ固ヨリアリマスルガ、ドウモ今日國際關
  係ガ年一年紛糾致シマスシ、摩擦ガ起キテ
  來ルノハ私ハ寧ロ他カラ仕掛ケルヨリモ、
  日本ガ仕掛ケテ居ルノデハナイカ、斯ウ云
  フ風ニ邪推サレル部分ガ相當アルノデアリ
  マン、況ヤ國防ト云フモノハ外交ノ背景ト
  ナルベキ筈ノモノガ、外交ヲ後ヘニ從ヘテ、
  國防ガ先廻リシテ到ル處デ摩擦ヲ過大ナラ
  シメテ居ル、國際關係ヲ却テ紛糾ナラシメ
  テ、而シテ國際關係ガドウデアル、國際情
  勢ガ惡化シトルナドト云フノデ、國防費ガ
  過重スルノデハ全ク際限ガナイト考ヘテ居
  ルノデアリマス、國民ノ考ノ中ニモサウ云
  フ考ハ相當アルノデアリマス、是ハ藏相ト
  致シマシテハ、閣僚ノ一人トシテ閣內ニア
  ラレルノデアリマスカラ、寧ロ是ハ外交第
  一六〇、國防ハ第二義ト云フヤウナ風ニ立テ
  直シテ貰ヒタイト思ヒマス、大體國防ハ外
  交ニ追從スベシ、外交ノ背景タルベキ本然
  ノ地位ニ國防ヲ引戾シテ貰ヒタイ、外交ヲ
  先ニ立テヽ貰ヒタイ、斯ウ云フヤウニ閣議
  ヲ指導シ國策ヲ樹立シテ今後ノ對外關係ニ
  對應シテ貰ヒタイト思フノデアリマスガ、
  サウ致シマスルナラバ、私ハ自ヅト所謂平
  和ノ條約モ協定モ出來テ、必ズシモ尖リ合ッ
  テ遂ニハ國家ヲ救フベカラザル危機ニ陷ラ
  スヤウナ危險モ未然ニ防止シ得ラレル、殊
  ニ反面ニ於テ國民ノ無駄ナ過重ナル負擔モ
  茲ニ自然ニ輕減サレルヤウニナルノデハナ
  イカト云フコトヲ思フノデアリマスカラ、
  是モ稅制ヲ論ジマス上ニ於テ、重大ナル關
  係ヲ爲シテ居ルト思フノデアリマスカラ、
  斯ウ云フコトヲ申上ゲルノデアリマス、而
  シテ大藏大臣ノ只今ノ御話ニ依ッテ行キマ
  スルト云フト、成ルベク增稅ハシナイ、シナ
  イガマダ自分ノ考ハ未熟デアルカラ、能ク
  〓究ヲシテ見タイガ、成ベクハ增稅ハシナ
  イ考デアル、己ムヲ得ヌ場合ハ、赤字公債
  ニ依ッテ之ヲ賄ッテ行ケルノヂヤナイカト云
  フヤウナ御話ニ承ッタガ、ソレデ宜シイノデ
  アリマスカ、或ハソレハ違ヒゴザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=20

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• 021・結城豊太郎

  ○結城國務大臣　足ラヌ所ヲ赤字公債ノミ
  ニ依ッテ補フト云フノデハアリマセヌ、其他
  ニモ何カ考ヘラレルコトガアルダラウ、斯
  ウ思ッテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=21

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• 022・宮澤裕

  ○宮澤委員　要スルニマダ調査〓究ガ熟シ
  テ居ラヌガ、成ベクハ增稅ヲシナイガ、場
  合ニ依ッテ負擔ノ公平ト同時ニ增稅ヲシナ
  ケレバナラヌ場合ガアルカモ知レヌ、今
  茲デ明言スルコトハ出來ヌ、而シテ赤字公
  債ヲ殖ヤサナケレバナラヌ場合ガアルカモ
  知レヌト云フコトノ御答辯デアリマスル
  ガ、是ハマア御尤デアラウト思フノデアリ
  やく、ソレニ付キマシテ此際特ニ御留意ヲ
  再應願ッテ置キタイノデアリマスガ、中央地
  方ノ負擔ノ公平ト云フコトデアリマス、固
  ヨリ大藏大臣モ數次ノ御囘答ニ依ッテ此點
  ノ御留意ノアリマスコトハ、能ク私モ理解
  出來マシタノデアリマスガ、大正ノ初頃カ
  ラ昭和ノ十年頃マデ、大凡二十四五年ノ間
  デアリマスケレドモ、國稅ノ一ニ對スル地
  方稅ノ增加ハ三倍ニモナッテ居ル、更ニ又地
  方ニ於キマシテモ都會ト農山漁村、所謂郡
  部ト都市、言換ヘレバ町村ト市デアリマス
  ガ、此間ニ於ケル負擔ハ又市ヲ一トスルナラ
  バ町村ヲ三トスルヤウナ開キノアル過重
  ナル負擔ガ町村ニ課セラレテ居ル、是ハ申
  ス迄モゴザイマセヌガ、社會事情、經濟事
  情ノ變化等ニ依ッテ地方ニ於ケル課稅客體
  ト認ムベキ人モ物モ、競ウテ都會ニ移動シ
  テシマッテ居ルノデアリマス、而シテ擔稅力
  ノナイ極メテ貧弱ナル地方ノ農山漁村
  民ガ、其地方ニ留マッテ過重ナル負擔ヲ
  背負ハナケレバナラヌト云フヤウナコト
  ニナルノデアリマスカラ、實ハ農山漁
  村民ハ五六倍ノ無理ナ負擔ヲスルヤウ
  ナ狀態ニ置カレテ居ルノデアリマス、
  デアリマスカラ稅制ノ計畫ヲ根本的ニ
  御樹テニナリマスル上ニ於テ、所謂國庫
  ノ經常歲入ノ增大ヲ圖ラルヽコトモ是ハ
  固ヨリ已ムヲ得ナイコトデアリマスル
  ガ、所謂擔稅能力ニ應ジテ應能課稅ヲヤル
  ト云フ上カラ行キマスルト、地方ノ農山漁
  村ト云フモノニ最モ留意シテ御改革下サル
  コトガ稅制改革ノ根本眼目デナクテハナラ
  ヌ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマスルガ、
  之ニ付テ私多少ノ數字ヲ持合シテ居リマス
  ルケレドモ、旣ニ時間モゴザイマセヌカ
  ラ、斯ウ云フコトハ省略致シマスケレドモ、
  特ニ一ツ御留意願ヒタイ、此點ニ付テ一段
  ノ御高配ヲ願ハナケレバ我國ニ於ケル所謂
  自治ノ基本デアル地方ノ農山漁村ト云フモ
  ノハ自ラ衰退セザルヲ得ナイ、只今太田君
  ノ御話デアリマスルガ、人口ガ百萬增大シ
  テモ其六割ハ都會ニ皆居住シテ居ルノダト
  云フ御話ガアリマシタガ、兎ニ角多少採算
  的ニ算盤ヲ彈キ、農業ト云フヤウナモノヲ
  經濟的ニ比較考究致シマスル者ハ、今日晏
  如トシテ農村ニ留マッテ居ルコトハ出來ナ
  イノデアリマス、モウ今日居リマスル者ハ
  宿命的ニ農村ニ留マッテ居ル、苟モ算盤ヲ
  握ッテ自分ハ經濟活動ヲヤラウト云フ者デ
  アリマス限リ農村ニ留マッテ農山漁村ノ仕
  事ハ出來ナイト云フノガ今日ハ實情ニナッ
  テ居ルノデアリマス、先年來米穀法ニ依ツ
  テ米價ノ上騰ガアリ、又昨年繭ノ値上リニ
  依ッテ一時小康ヲ得テ居リマス、先日本會議
  ニ於テ大藏大臣ハ農村ノ景氣ハ稍、〓好イデ
  ハナイカト云フ御話ガアリマシタケレド
  モ、是ハ瀕死ノ病人ニ唯一時的ニ「カンフ
  ル」注射ヲシ、食鹽注射ヲシタト云フニ過
  ギナイノデアリマス、決シテ彼等ガ病氣ヲ
  恢復スルト云フ狀態ニ置カレテ來タト云フ
  ノデハナイノデアリマス、依然トシテ彼等
  ハヤハリ食フヤ食ハズノ瀕死ノ病人ノ狀態
  ヲ十數年來、二十數年來續ケテ居ルト云フ
  ノガ今日ノ農村ノ實情デアリマスカラ、此
  點ヲ私ガ申上ゲルマデモアリマセヌガ、十
  分ニ御留意ニナッテ、今囘ノ稅制改革ニ當ワ
  テハ負擔ノ公平、負擔ノ均衡ト云フコトニ
  於テハ此農山漁村ト云フモノニ最モ御留意
  ヲ下サッテ、此計畫ヲ樹立シテ戴キタイト思
  フノデアリマス
  以上ハ私ノ大藏大臣ニ對スル希望デアリ
  マスルガ、次ニ昭和十三年度、卽チ來年ノ
  豫算ヲ編成ナサレルニ當リマシテ、大凡御
  考ハアルカト思フノデアリマスガ、十三年
  度ノ此稅收入ノ總額ト云フモノヲ大凡ドノ
  位ノ御見込デオ居デニナルデアリマセウ
  カ、中々是ハ困難ナコトデ、或ハマダ御〓
  究ニナッテ居ラヌカト思フノデアリマスル
  ガ、併シ是レ以上成ベク增稅ヲセヌノデア
  ルト云フ御考デアリ、成ベク赤字公債モ殖
  サナイ程度デアルト云フヤウナ御考デアル
  トスルナラバ、大凡ノ見當ハ御付キニナツ
  テ居ルノデハナイカト思ヒマスガ、其邊ノ
  見當ハ如何デゴザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=22

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• 023・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今昭和十三年度ノ租稅
  歲入ノ見積リハ大凡幾何カト云フ御尋ガゴ
  ザイマシタガ、昭和十三年度ノ歲入ヲ見積
  リマスノハ、ドウ致シマシテモ本年ノ秋頃
  ニナッテ各種ノ材料ヲ集メマシテ、昭和十三
  年度ノ歲入ヲ見積ラナケレバナラヌト思ヒ
  マス、ソレデ今日歲入ノ見積リ、租稅ガ大
  凡ドノ位ニナルカト云フコトハ一寸分リ兼
  ネルノデゴザイマスガ、併ナガラ自然增收
  ト看做スベキモノハ昭和十二年度ニ於キマ
  シテハ、昭和十一年度ノ豫算ニ見積リマシ
  タ數字ト、昭和十二年度ニ見積リマシタ數
  字トデハ一寸六千萬圓程ノ自然增收ヲ見込
  ンデ居リマス、ソレデゴザイマスカラ同樣
  ナ自然增收ガ見込マレルト致シマスレバ五
  千萬圓、六千萬圓ノ自然增收ガ昭和十三年
  度ニ見込メルノデハアルマイカト思ッテ居
  リマス、尤モ昭和十二年度ニ於キマスル歲
  入數字ハ各種ノ增稅ヲ織込ンデアルノデゴ
  ザイマスカラ、ソレ等ノ增稅ヲ織込ンデ昭
  和十三年度ノ自然增收ガ如何相成ルカ、斯
  ウ云フコトニハ多少茲ニ考慮ヲ要スル點モ
  アルカト思ッテ居リマス、一應數字ノ點ヲ御
  答致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=23

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• 024・宮澤裕

  ○宮澤委員　是ハ無理ナ御尋デアッタト思
  フノデアリマスガ、併シヤハリ前ニ御話ガ
  アリマシタ通リニ今度ノ新稅計畫ノ稅ノ方
  ニ付テハ其儘恆久的ノ稅制トシテ留メテ置
  キタイガ、增稅案ノ方ニ付テハ多少之ヲ修
  正シナケレバナラヌト云フヤウナ御考ノヤ
  ウニモ聞イテ居ルノデアリマス、自然增收
  ノコトモアルシ、自然增收ハマア大體今主
  稅局長ノ御話ノ通リ見當ガ付クノデアリマ
  スガ、其範圍デ之ヲオヤリニナルト云フコ
  トニナリマスルト、ドウシテモ來年ノ總歲
  出ト云フモノヽ大體ノ目安モ付クノデアリ
  マスガ、私ハ前ニ申シマスヤウナ風ニ大
  藏大臣ガ之ヲ如何ニ御氣張リ下サリ、御
  奮鬪下サイマシテモ今日ノ膨脹事情ヨリ
  考ヘテ推定致シマスル時ニ、十三年度ニ或
  ハ今年度程度ノ豫算デ濟ムカドウカ、或ハ
  斯ウ云フヤウナ情勢デ行キマスルナラバ、
  遂ニ馬場財政ノ三十億ヲ突破スルガ如キ豫
  算ノ膨脹ヲ自然ニ來スノデハナイカト云フ
  コトヲ氣遣ヒマスルガ爲ニ、斯ウ云ウコト
  ニ對スル御決心ナリ御考ナリヲ聽イタノデ
  アリマス、併シ其點ニ付テ是レ以上、具體
  的ニ御返事ヲ要求スルコトモ無理カニ思ヒ
  マスカラ此點ハ此程度ニ止メテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=24

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• 025・増田義一

  ○增田委員長　ソレデハ是ニテ休憩致シマ
  ス
  午後零時二十分休憩
  午後一時三十九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=25

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• 026・増田義一

  ○增田委員長　休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
  マス

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• 027・太田信治郎

  ○太田(信)委員　議事進行ニ付テ申上ゲタ
  イト思ヒマス、御許ヲ願ヒマス

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• 028・増田義一

  ○增田委員長　太田君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=28

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• 029・太田信治郎

  ○太田(信)委員　此增稅ノ委員會ニ付テ
  ハ、所管大臣及ビ主稅局長トノ間ニソレゾ
  レ質問應答ヲ繰返サレテ居リマスルケレド
  モ、兎ニモ角ニモ私共十數年ノ議會生活ニ
  於テ、今囘ノ增稅ノ如ク、一時ニ增稅ニナッ
  タト云フコトハ、實ニ未曾有ノ增收豫算
  デアリマス、尙ホ是ガ臨時增徵法トシテ出
  サレ、更ニ殘サレタ問題ハ負擔ノ均衝ヲ圖
  ルト申セバ稅制整理ヲシナケレバナラヌト
  云フ問題ガ將來ニ殘サレテ居ルノデアリマ
  ス、斯ノ如キ重大ナ問題ニ對シマシテハ、
  兎ニ角本委員會ニ總理大臣ノ御出席ヲ求メ
  テ、一應總理大臣ノ御意見ヲ伺フト云フコ
  トハ、最モ私ハ必要ナコトヽ存ジマス、委
  員長ニ於カセラレマシテ、一ツ總理大臣へ
  御交渉ノ上、適當ナル機會ニ於テ總理大臣
  ノ御出席アランコトヲ御願ヲ致シタイト
  思ッテ、私ハ茲ニ議事進行ト致シテ申上ゲタ
  次第デアリマス

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• 030・増田義一

  ○增田委員長　承知致シマシタ-宮澤君
  ノ質疑ガ尙ホ繼續中デアリマス、休憩前ニ
  引續イテ發言ヲ許シマス-宮澤君

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• 031・宮澤裕

  ○宮澤委員　只今太田委員カラ議事進行ニ
  付テ御發言ガアリマシタヤウニ、私ハ根本
  方針ニ付テノ質疑ヲ致シタイノデアリマス
  カラ、成ルベクハ總理、已ムヲ得ナケレバ大
  藏大臣ニ御出席ヲ願ッテ根本方針ヲ質シテ
  置キタイト云フコトハ萬々ノ願デアルノデ
  アリマスガ、大藏大臣スラ中々御出席ガ出
  來マセヌ、之ヲ待ツコトモ後ニ多數ノ質問
  者ガ控ヘテオ居デニナリマスノデ出來マセ
  ヌ、已ムナク今日ハ引續イテ質問シタイト
  思フノデアリマス、主稅局長ガ御出席デア
  リマスガ、無論主稅局長ノ御答辯ハ、大藏
  大臣ナリ、總理大臣ノ御答辯デアリ、隨テ
  政府當局ノ御方針ナリトシテ質問スルコト
  ニ致シタイト思ヒマスルカラ、左樣御諒承ノ
  上、御答辯ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
  十三年度ノ豫算ノ膨脹ノ事情ヲ私ハ豫想
  致シマスルガ、大凡ドノ位來年度ハ豫算ヲ計
  上ナサルオ考デアルカ、卽チ歲入出ノ御決
  定ニナル氣デアルカ、見透シガ付クナラ
  バ、御答辯ヲ願ヒタイト申上ゲタノデアリ
  マスルガ、中々ハッキリ致サナイヤウデアリ
  やく、御無理モナイコトヽ思ヒマスガ、併
  シヤハリ私ノ想像致シマス限リニ於テハ、
  中々本年度竝デ之ヲ食止メルト云フコトハ
  困難デハナカラウカ、然ラバ稅制ヲ根本的
  ニ改革スル上ニ於テ、負擔ノ均衡ヲ圖ルト
  云フコトモ固ヨリデアリマスルガ、何程カ、
  何レノ方面カニ此增稅ナリ新稅ノ創設ハ已
  ムヲ得ヌコトニナルノデハナイカト云フコ
  トヲ思フト同時ニ、來ルベキ稅制改革ノ根
  本方針ニ付イテ進ンデ御伺シタイト思フノ
  デアリマス、昨日デアリマスカ、木暮君ノ
  質問ニ對シテ、馬場大藏大臣在職中ニ計畫
  サレタ取引稅ハ之ヲ見合ス氣デアルト云フ
  コトノ御言明ガオアリニナッタノデアリマ
  スガ、尙ホ其稅制案中ノ資本稅デアリマス、
  是ガ相當社會ノ問題ニナッテ居ッタノデアル
  ガ、今囘ノ修正案ニ於テハ、此個人ノ財產
  稅ト云フモノハ茲ニ取止メニナッテ、法人資
  本稅ト云フ意味デ法人財產稅ノミガ提出ニ
  ナッテ居リマスガ、個人財產稅ト云フモノハ
  將來トモ是ハ御創設ニナラヌ氣デアリマス
  カ、及ビ法人資本稅ハ是レ以上增額ヲナサ
  ラヌ氣デアリマスカ、其點ニ付テハッキリ
  御答辯ヲ願ッテ置キマス

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• 032・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　個人ノ財產稅ニ付テ本年
  昭和十二年ニ於テ行ハレル所ノ稅制ノ整理
  ノ際ニ於テドウ扱フカ、斯ウ云フ御尋デゴ
  ザイマスガ、個人ノ財產稅ハ先般木暮サン
  ノ御質問ニ對シテ大藏大臣カラ御答ノアリ
  マシタ通リ、大藏大臣ハ成ルベク之ヲ登場
  サセナイデアラウト斯ウ云フ御答ガアッタ
  ノデアリマスガ、個人ノ財產稅ニ付キマシテ
  ハ實行上考慮ヲ爲スベキ點アリト思フノデ
  アリマス、卽チ果シテ此財產稅ガ不動產稅
  ニ至ラザルヤ、又其評價ノ問題、是等ノコ
  トニ關シテ種々困難ナル問題ガアルト思フ
  ノデゴザイマス、理窟トシテ個人ノ財產稅
  必ズシモ惡クナイト思フノデゴザイマス
  ガ、併ナガラ今年行ヒマス所ノ稅制ノ改正
  ニ於キマシテハ、個人ノ財產稅ト云フモノ
  ハ如何相成リマスカ、恐ラクハ是ハ實行致
  サレナイノデハアルマイカ、斯ウ云フヤウ
  ナ觀測ヲ致シテ居ルノデアリマスガ、併ナ
  ガラ是ハ餘程〓究シタ後デナイトハッキリ
  シタコトハ申上ゲ兼ネルノデゴザイマス
  ガ、個人ノ財產稅ノ執行ニ付キマシテハ餘
  程ノ〓究ト考慮ガ必要デアラウト存ジテ居
  リマス、ソレカラ法人ノ資本稅ハ千分ノ一
  ノ稅率デゴザイマスガ、是モ此稅金ノ性質
  ニ鑑ミマシテ此稅率ヲ引上ゲマスコトハ餘
  程愼重ナル考慮ヲ必要トスルノデアラウ、
  斯ウ云フ風ニ考ヘチ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=32

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• 033・宮澤裕

  ○宮澤委員　サウ致シマスト云フト結局所
  謂所得稅中心ニ考ヘテ行カナケレバナラヌ
  ト思フノデアリマス、此現時ノ情勢ヲ見
  テ國費ノ膨脹ハ或ル程度ハ已ムヲ得ナイ、
  國民モ之ニ對シテ適當ノ負擔ヲスルコトハ
  モウ已ムヲ得ナイト、大體一般ニ覺悟ガ出
  來テ來タカノヤウニ想像致シテ居リマス、
  固ヨリ太田君ノ御話ノヤウナ風ニ少額所得
  者ニ過重致シマスコトハ~是ハ何レノ方面カ
  ラ考ヘマシテモ御留意ヲ願ハナケレバナリ
  マセヌガ、多額所得者ニ對シテ適當ノ所得
  稅ヲ增徵致シマスト云フコトハ是ハ已ムヲ
  得ヌコトデアリ、又同時ニ國民ノ覺悟モ既
  ニ出來テ居ルト私ハ信ジテ居ル、中ニハ所
  得稅一本ノ議論ヲナス人サヘモアル、是一
  無論國民ノ所得ハ所謂利得デアッテ、其所得
  ニ對シテ國氏ノ總損失ヲ引イテ、債權債務
  デ言フナラバ債務ノ利子ヲ引ク、サウシテ
  殘存所得ニ全部國費ノ負擔ヲ命ズルノガ適
  當デアル、而シテ少額ハ少額相應、唯ノ一
  圓ノ所得者ニ對シテモ少額ハ少額ナリニ負
  擔セシメテ國費ノ負擔ニ充テル、而シテ利
  害休戚ニ共ニ任ジテ居ルト云フコトヲ納稅
  ノ上カラモ自覺セシムルコトガ是ハ稅制ノ
  根本精神デナクチヤナラヌト云フ風ナ議論
  ヲスル人サヘアルノデアリマスカラ、兎モ
  角何レニ致シマシテモ所得稅中心デ增收ヲ
  圖ルト云フコトガ國民ノ輿論デモアリ、理
  窟モソコニナイカト私ハ思ッテ居ルノデア
  リマス、前ノ馬場財政ニ於テハ大凡十割ノ
  增額ヲ計畫サレ、府縣ノ交付金ノ爲ニ附加
  二割ト云フモノヲモ本稅ノ外ニ別ニ設ケラ
  レタ、隨テ金額ニ致シマスト、本稅ガ二億三
  千萬圓ノガ四億四千萬圓、ソレニ附加二割
  ヲ課ケテ、八千萬圓バカリノ附加二割ノ增
  稅計畫ガオアリニナッタノデアリマス、大體
  目ノ子算用デ申シマシテモ從來ノ所得稅納
  稅者カラ二億七千九百萬圓ヲ取リ、新納稅
  者カラ二千一百萬圓ヲ取リ、而シテ三億萬圓
  ノ增收計畫ガ所得稅部門ノミニ於テサヘ計
  畫サレタヤウニ聞イテ居ルノデアリマスガ、
  今囘ハ臨時增徵デハアリマスケレドモ、僅
  ニ所得稅ニ於テ一億六千萬圓デアリ、臨時
  利得稅ヲ之ニ加ヘマシテモ一億八千萬圓ニ
  ハ足ラヌノデアリマスガ、私共カラ致シマ
  スレバ、此部門ニ依ッテモウ少シ稅制ヲ按
  排スルコトニ依ッテ增收計畫ヲ圖ルノガ當
  然ヂヤナイカ、斯樣ニ思ッテ居ルノデアリ
  マスガ、政府當局ノ御考ハ如何デアリマス
  カ、念ノ爲ニ御意見ヲ伺ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=33

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• 034・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今ノ宮澤サンノ、所得
  稅ヲ中心ニシテ增徵ヲシタラドウカ、斯ウ
  云フ御話デゴザイマスガ、是ハ全ク御同感
  デゴザイマシテ、今囘ノ臨時增徵モ主トシ
  テ所得稅ヲ中心ニ致シマシテ之ニ對スル增
  稅ヲ致シマシタ次第デゴザイマス、其增稅
  ハシタガ、元ノ撤囘致シマシタ案ニ比較致
  シマシテ少イデハナイカ、斯ウ云フ御尋デ
  ゴザイマスガ、個人ノ所得稅ニ付キマシテ
  ハ前ノ案ハ三割增徵ヲ行フ、斯ウ云フコト
  デアッタノデゴザイマスガ、今囘ハ約五割ノ
  增徵ヲ行ッテ居リマス、尤モ前ノ案ノ三割ト
  申シマスモノハ色々計算ノ仕方ガアッタヤ
  ウデゴザイマシテ、結局只今提案致シテ居
  ゝリマスル增徵案ト略^同樣ナル增徵案デア
  リマシテ、今囘提出致シマシタノハ幾ラカ
  低イカト思フノデゴザイマスガ、略,同樣ナ
  增徵案デゴザイマス、ソレカラ法人ニ付キ
  マシテハ結局超過所得稅ノ增徵ヲ止メタ、
  其點ガ變ヲテ居リマスガ、併ナガラ是モ普通
  所得稅ノ十割引上ゲト云フコトハ全然同ジ
  デアリマスシ、超過所得稅ノ增徵ヲ止メマ
  シタ代リニ臨時利得稅ノ增徵ヲ致シテ居リ
  マスノデ、其差額ガ幾ラカ負擔ノ輕減ニナッ
  テ居ルカト思フノデゴザイマスガ、略〓同樣
  ナ增徵ノ割合デアリ、略^同樣ナ增收ノ計畫
  デゴザイマス、唯其間ニ差ガゴザイマスノ
  ハ、計算上大キナ差ガ出テ來マスルノハ、
  只今御話ニナリマシタ附加所得稅ノ問題デ
  ゴザイマス、附加所得稅ハ國ニ於キマシテ
  附加稅ヲ增徵致シマシテ之ヲ府縣ニ分配ス
  〓、斯ウ云フ案デアッタノデゴザイマス、今
  日ノ府縣市町村ノ附加稅ヲ大體平均致シマ
  スルト四二%位ニナッテ居ルカト思フノデ
  ゴザイマスガ、四二%ノ此附加稅ハ止メテ
  シマフ、其代リニ附加所得稅二〇%、其外ニ
  附加稅トシテ一〇%、結局三〇%ノ附加稅
  ト云フモノヲ取ル、其附加稅ノ一部ヲ國デ
  以テ徵收シテ分配スルカ、地方ニ置イテ置
  クカト云フ斯ウ云フ問題デアルノデゴザイ
  マシテ、前ノ案デハ形式上ハ國ノ稅金トシ
  テ、徵收致シマシテ分配致シマスカラ七千
  八百萬圓バカリ餘計ノ增徵ニ相成ッテ居ル
  譯デアリマスルガ、實質上ニ於テハ是ハ附
  加稅ノ一部ト見ル方ガ適當デアルカト思フ
  ノデゴザイマシテ、之ヲ差引致シマスルト、
  結局前ノ案ト今度ノ案ト千四五百萬圓ノ差
  デアラウカト思フノデゴザイマス、隨ヒマシ
  テ所得稅ノ增徵ハ今囘ノ稅整案ニ於キマシ
  テモ可ナリ思切ッタ所マデ行ッテ居ルヤウニ
  思ッテ居ル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=34

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• 035・宮澤裕

  ○宮澤委員　無論私ノ申シマスル馬場案ニ
  於ケル所得稅ノ增收額ハ平年額デアリマ
  ス、十二年度ト今結城財政ニ於テ御計畫ニ
  ナリマシタ臨時增收ト比較致シマスレバ、
  仰セノ通リ、私ハハッキリ計算ハ致シテ居
  リマセヌケレドモ、千數百萬圓ノ金額ノ差
  額ニナルデアラウト思フノデゴザイマスル
  ガ、何レニ致シマシテモ所得稅ハ所謂經過
  年度ガアリマシテ、前年度ノ所得ニ對スル
  課稅デゴザイマスルカラ、ハッキリシタ計算
  モ出來テ居ラヌノデアリマスルケレドモ、
  馬場案ト云フモノハ可ナリ所得稅ニ對シテ
  重課ヲスル、所謂所得稅中心ト云フコトヲ
  如實ニ稅額ノ上ニ於テ發揮シテ居ラレルカ
  ト思フノデゴザイマシテ、其點カラ申シマ
  スルナラバ、尙ホ增徵餘力ガ此方面ニアル
  ノデハナイカ、又稅ノ本質カラ申シマシテ
  モ之ニモウ少シ增徵セシムルコトニ依ッテ
  國費ヲ負擔セシムルコトガ本當デハナイ
  カ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマスルガ、
  稅制改革ニ於テ增稅計畫ノ必要ガアル場合
  ヲ假定致シマシタナラバ、モウ少シ此方面
  ニ手ヲ入レテ貰ヒタイ、斯樣ニ思ッテ居ル、
  附加二割ノ問題デゴザイマスルガ、是モ地
  方ノ附加稅其他ヲ輕減致シマスルト同時
  ニ、財源ノ補給ハ必ズ他面ニ於テシナケレ
  バナラヌ、之ニハ附加二割ト云フヤウナ方
  法モ一ツノ方法デハナカラウカ、是ハ地方
  ノ稅制ノ整理、或ハ整理ト同時ニ交付金ノ
  問題ナドニ關聯スル問題デゴザイマスケレ
  ドモ、何レニ致シマシテモ附加二割ノ七八
  千萬ト云フモノヽ擔稅餘力モ尙ホ所得稅方
  面ニハ存シテ居ルノデハナイカ、又是ガ應
  能課稅ノ眞ノ稅制計畫デハナイカ、斯樣ニ
  思ッテ居ルノデアリマス、御參考ニ御聽取リ
  願ッテ置キタイト思ヒマス、尙ホ國稅ニ關聯
  シテデアリマスルガ、今度ノ馬場案ニ於キマ
  シテハ府縣稅デアル家屋稅ヲ中央ニ移管ス
  ル、サウシテ地租ト營業收益稅ト共ニ之ヲ
  所得稅ノ第一補完稅トシテ租稅體系ヲ整ヘ
  ルト云フコトニ御苦心ニナッテ、此家屋稅ヲ
  中央ニ移管サレルコトニナッテ居ッタヤウデ
  アリマスガ、次ノ稅制計畫ニ於テモ中央ニ
  ヤハリ家屋稅移管ヲナサレルノ意思アリヤ
  否ヤト云フコトヲ一應御聞キシテ見タイノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=35

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• 036・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　家屋稅ヲドウスルカト云
  フ問題ハ古クカラアル問題デアリマシテ、
  之ヲ中央ニ移管シテ、サウシテ國ニ於テ之
  ヲ調査シ、是ガ課稅標準ヲ決定シテ、函数
  於テ或ル程度ノ稅額ヲ徵收スル、斯ウ云フ
  コトヲヤッタラドウカ、ソレデナケレバ今日
  ノ補完稅トシテノ實質的稅制ガ立タヌ、斯
  ウ云フ意見ハ昔カラアル論デアリマシテ、
  昭和六年ニ於テモ是ガ調査ヲ大分進メマシ
  タ、今囘モサウ云フ企テガアッタ譯デアリマ
  スガ、ソレ等ノ點モ餘程考究シテ見タイト
  存ズルノデアリマス、卽チ何カ準則ヲ設ケ
  マシテ、府縣市町村ニ於テ是ガ調査ヲ全國
  統一サレタ方針ノ下ニ行ヒマスカ、ソレト
  モ國自體デ課稅ノ標準ヲ決定致シマスカ、
  併ナガラ收入ヲ全部國ノ方ニ移ス、斯ウ云フ
  ヤウニハ今日ノ場合ハ行カヌノデアラウト
  思ヒマス、何レニ致シマシテモ是ハ地方ノ
  收入トスル、斯ウ云フ立前ハ一寸變更スル
  譯ニ行カヌノカト思フノデアリマス、サウ
  スルト之ヲ國デ調査スベキカ、地方デ調査
  スベキカ、何レニ致シマシテモ家屋稅ノ課稅
  標準ト云フモノヲモウ少シハッキリシ、稅率
  ト云フモノモ一定シタ稅ラシイ稅ニシナケ
  レバイカヌノデハアルマイカ、斯ウ考ヘテ
  居リマシテ、之ヲ國ニ移管シテ再ビ之ヲ還
  元スルカドウカト云フコトニ付キマシテハ
  餘程〓究シテ見マセヌト、結論ニ到達スル
  コトハ困難カト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=36

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• 037・宮澤裕

  ○宮澤委員　此家屋稅ヲ國ニ移管スルカド
  ウスルカト云フ御決心ハマダ付イテ居ラヌ
  ト云フヤウニ聽キマシタノデアリマスガ、
  仰セノ通リ家屋稅ハ府縣稅デアルノデアリ
  マスガ、稅額ニ於テ本稅ハ十年度豫算デ
  三千九百萬圓バカリデアリマスガ、市町
  村附加稅ニ於テ是ハ六千六百萬圓ニモナッ
  テ、本稅附加稅合算スルト一億以上ノ稅
  ニナッテ居ルノデアリマス、而モ其課稅狀
  態ハ、各府縣極メテ區々デアッテ、確ニ
  惡稅ノ一ツニナッテ居リマス、是モ大整理ヲ
  シナケレバナラヌコトハ事實デアリマス、
  大整理ノ根本ハ無論賃貸價格ノ調査ヲヤリ
  直シテ、課稅ヲ公平ニスルコトノ根源ヲ匡
  スト云フコトハ固ヨリデアリマスガ、ソレ
  ヲヤリマスト同時ニ、此稅ヲ中央ニ移管ヲ
  シテ、サウシテ租稅體系ヲ整ヘルト云フコ
  トハ、如何ニモドウモ稅制ノ體系ニ囚ハレ
  タ官僚集中主義ガ、遺憾ナク此點ニ發揮サ
  レテ居ル弊害デハナイカト思ッテ居ッタノデ
  アリマス、幸ニ此點ガ今囘ハ臨時租稅增徵
  ノ方面ニ於テハ何モ現レテ居リマセヌ、曖
  味ノ間ニ附セラレテ居ルノデアリマスガ、
  私ハ實ハ國家ガ一切合財地方ノ財源ヲ取上
  ゲテ國家ニ集中シテ、サウシテ地方自治體
  ニハ筆先一本ニ依ル交付金ニ依ッテ、強化
  行カウト云フヤウナ大體ノ稅制計畫ト云フ
  モノハ、根本的ニ誤リガアル、無論國ノ根
  本ハ地方自治體ニ在ル、自治體ノ鞏固ハ財
  政的ノ獨立ト云フコトガ本義デナケレバナ
  ラヌ、然ルニモ拘ラズ唯稅源ヲ國ニ取上ゲ
  テ、官僚ノ机上ニ於テ分配スルト云フコト
  ニナリマスルト、地方自治ノ獨立ト云フモ
  ノハ全ク破壞サレテシマヒ、所謂依存主義、
  依賴主義ヲ發揮シテ、偏ヘニ地方自治體ノ
  破壞ト云フコトハ斯ウ云フコトニ原因スル
  ノヂヤナイカト云フコトヲ非常ニ昨年來憂
  ヘテ居ッタノデアリマス、寧ロ私ハ此際地
  方ニ財源ヲ與ヘテ、地方自治體ガ自己ニ於
  テ獨立スルコトガ完全ニ出來ナイ迄モ、自
  己ノ市町村ヲ賄フ稅源ノ七八割、八九割位
  マデハ、自分デ徵稅シテ、自分デ財政計畫
  ヲ立テヽ市町村ノ收支ヲ賄ッテ行クト云フ
  程度ニ國家ガ仕向ケルノガ、今日自治制ヲ
  益〓發達セシメル、所謂稅制指導ノ方針デハ
  ナイカト思フノデアリマス、其意味ニ於キ
  マシテ、寧ロ是ハ中央ニ移管スルニアラズ
  シテ、此際市町村ニ移管シテハドウカ、前
  ノ馬場案ノ時分モ中央ニ移管スルヨリモ此
  稅源自體ヲ被徵稅地ノ市町村ニ其儘交付シ
  テハ如何ナモノデアルカ、仰セノ如ク稅額
  ニ相當スル金額ヲ還元スルノヂヤナクシ
  テ、稅額自體ヲ還元スル、殖エレバ殖エタ
  モノヲ皆ヤルノデアルト云フノナラ、結果
  ハ同ジヂヤナイカト言ッタノデアリマス、然
  ルニ地方ニ之ヲ委シテ置クト、益ニ增徵ガ激
  シクナッテ再ビ負擔ノ過重ニ惱ムコトモ此
  處ニ原因スルノデアルカラ、國家ガ之ヲ
  應取上ゲテ全國一樣ニ賃貸價格ヲ査定シ
  テ、サウシテ課稅率ヲ決定シテヤルナラバ、
  是デ立派ニ稅制ノ整理モ出來ルト同時ニ、
  公平ナル負擔ガ出來ルノダ、斯ウ云フ御主
  張デアッタノデアリマスガ、私ハ前ニ申シマ
  スルヤウナ意味ニ於テ、寧ロ是ハ地方ニ移
  管スベキモノデアル、市町村ニ之ヲ移管ス
  ベキデアル、所謂稅額ヲ移管スルニアラズ
  シテ稅源ヲ移管スベキモノデアル、同時ニ
  之ニ關聯シテ地租モ被徵稅地ノ市町村ニ移
  管スベキモノデアル斯樣ニ思ッテ居ルノデ
  アリマス、從來地租ノ委讓ニ付キマシテハ、
  私ノ屬シマスル政友會ハ多年唱道シテ居〃
  タノデアリマスガ、民政黨側ニ於テハ寧ロ
  交付金ノ全額負擔ヲ御主張ニナッテ居リマ
  シテ、多少ソコニ於テ政策上ノ相違ハアッタ
  ノデアリマスケレドモ、今日私何モ從來ノ
  經緯ニ囚ハレテ地租ヲ委讓シロ、家屋稅ヲ
  地方ニ委讓シロト言フノヂヤナイノデアリ
  9-7.地方ノ自治體ヲ維持スルニハ自治體
  ノ財政ヲ壞サヌ範圍ニ於テ稅制ノ整理ヲナ
  スト云フ意味ニ於テ、家屋稅ト地租トハ稅
  源自體ヲ市町村ニ委讓スルコトヲ主張シ之
  レニ依ッテ、地方ノ財源ヲ培養スルコトガ必
  要デアルト信ジマス、若シ馬場稅制案ノ如
  ク之ヲ全部中央ニ移管スルコトニ依ッテ唯
  稅額ヲ與ヘルト云フコトニナリマスレバ、益、s
  地方ニ濫費ヲ奬勵スルバカリデナク、請託
  或ハ運動、陳情ニ依ッテー官吏ノ諸君モ困
  ルダラウト思フガ、吾々議員ト致シマシテ
  モ全ク應酬ニ困惑スルダラウト思フノデア
  リマス、斯ウ云フ弊害ヲ豫見スル上カラ致
  シマシテモ、稅源ヲ地方ニ與ヘテ地方ノ財
  政的ノ獨立ヲ益〓圖ルト云フコトガ地方ノ
  所謂自治ノ本義ニ副ヒ、且ツ之レヲ發達セ
  シムル根本ナリト考ヘテ居リマス、其金額ニ
  於キマシテハ、地租モ五千八九百萬圓デアッ
  テ、六千萬圓ニ足ラヌモノデアリマス、馬
  場稅制案ニ依リマスルト、之ヲ二割位減稅
  致シマスカラ、五千萬圓足リ足ラズノ稅額
  ニナルノデアラウト思ヒマス、兩方委讓致
  シマシテモ馬場案ニ依リマシテ八千萬圓足
  リ足ラズノ稅源ニナッテ居ル、サウシテ之ヲ
  地方ニ與ヘテ置イテ其不足分ダケヲ國家ガ
  或ハ營業收益稅ナリ或ハ所得稅ナリ中央ニ
  於テ徵稅シタ金額ヲ以テ交付金トシテ足ラ
  ズ前ヲ賄ッテヤルコトガ眞ノ稅制改革デア
  リ同時ニ地方自治ヲ活躍セシムル原因デア
  ル、斯樣ニ考ヘテ居リマス、之ニ對スル御
  意見ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=37

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• 038・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今ノ宮澤サンノ御意見
  ハ交付金トシテ金ヲ交付スルヨリモ、寧ロ
  有力ナル財源ヲ地方ノ團體ニ與ヘタ方ガ宜
  クハアルマイカ、斯ウ云フ御意見デアッタ
  ト思フノデアリマス、是ハ一ツノ有力ナル
  御議論デアリマシテ、若シ何カ財源ヲ與ヘ
  ルト假定致シマスナラバ、ヤハリ是ハ地租、
  家屋稅ト云フヤウナ問題ニ相成ッテ來ルノ
  デハナイカト思フノデアリマス、果シテ財
  源ヲ與フベキカ、交付金デ行クベキカ、是
  等ノ問題ニ付キマシテハ一ツ愼重ニ考究致
  シテミタイト存ズルノデアリマス、今此處
  デ必ズアナタノ御意見通リ稅源ヲ與ヘタ方
  ガ宜イ、斯ウ申上ゲル譯ニモ行カヌノデア
  リマスガ、只今ノ御議論ハ御尤ナ點ガ幾多
  アルヤウニ思フノデゴザイマシテ、之ニ付
  キマシテハ一ツ愼重ニ考究致シテミタイト
  存ジマス、ソレカラモウ一ツ申上ゲテ置キ
  マスガ、先程ノ所得稅ノ增額デアリマス
  ガ、平年度ト云フ御話デゴザイマシタガ、
  前ノ案ニ依リマスルト只今計算致シタ所デ
  ハ所得稅ノ總額ガ三億四千萬圓、其中ニ附
  加所得稅ガ九千六百萬圓、斯ウ云フコトニ
  ナッテ居リマスノデ、結局二億四千萬圓程
  ノ此前ノ總額デアッタカト思フノデアリマ
  ス、今度ノ案ニ依リマスト所得稅ノ總稅額
  ガ平年度ニ於キマシテハ一億八千五百萬
  圓.ソレカラソレニ臨時利得稅ガ一千九百
  萬圓程ノ增收デアリマスノデ、結局三、四
  千萬圓少イ、斯ウ云フコトニ相ナルカト思
  フノデアリマス

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• 039・宮澤裕

  ○宮澤委員　家屋稅及地租ノ地方委讓ニ付
  キマシテ有力ナル意見トシテ、參考トシ考
  慮スルト云フ御答辯ヲ承ッテ極メテ滿足ニ
  思フノデアリマス、ソレニ付テ何時モ行ハ
  レマスル議論ハ家屋稅ヤ地租ヲ地方ニ委讓
  スルト又地方費ノ膨脹ト同時ニ之ニ重課ス
  ルノ憂ハナカラウカ、及ビ地租ヲ委讓スル
  コトニ依ッテ地籍事務ハドウスルト云フコ
  トガアリ、及ビ東京、大阪ノ如キ家屋稅ガ
  澤山納マル所ニハ、却テソレニ依ッテ益〓
  稅額ノ多數ヲ得テ、地方トノ負擔ノ不均衡
  ガソコニ出來ハシナイカト云フヤウナ質問
  ガ能ク行ハレルノデアリマスガ、是ハ無論
  財政當局トシテ既ニ御考及ビノコトヽ信ジ
  テ居ルノデアリマスケレドモ、私ハ無論負
  擔ノ輕減ヲ地方ニ與ヘ、同時ニ均衡モ圖
  リ.同時ニ地方ノ獨立ヲ圖ルト云フ意味デ
  斯ウ云フも張ヲスルノデアリマスカラ、斯
  ウ云フコトガアッテハ萬成ラヌノデアリマ
  ス、ソレヲ防グ方法ハ家屋稅ニ付テハ全國
  一樣ニ此賃貸價格ヲ政府ノ力デ査定スル、
  サウシテ一樣ニ賃貸價格ヲ決定シテ行ク、
  無論何年置キカニ之ヲ更正シナケレバナラ
  ヌト思ヒマスガ、國家ガ國家事務トシテヤ
  ル、而シテ之ニ對スル課率ヲ國家ガ決メテ
  嚴守サセル、是レ以上ニ課率ヲ變更スルコ
  トモ增徵スルコトモ許サヌト云フコトニシ
  テヤルコトニ依ッテ、此家屋稅ノ苛斂誅求
  ハ自ラ防ゲルト思フノデアリマス、尙ホ地
  租ニ付キマシテモ同樣デアリマス、土地ノ
  賃貸價格ヲ國家ガ査定シテ、課率ヲモ國家
  ガ決メテ、之ヲ一定年度間嚴守セシムルト
  云フコトニ依ッテ、是モ防ゲルノデアリマ
  スガ、地籍事務ハ中々廣汎デアリ複雜デア
  ルニ違ヒアリマセヌ、之レヲ地方ニ行ハシ
  ムルト云フコトハ相當困難デアルト思ヒマ
  スカラ是ハ厄介デモ國家ガ管掌シテ宜カラ
  ウト思ヒマス、獨逸ノ如キモ斯ウ云フ形式
  デ地方ニ地租ヲ委讓シテ而モ國家ガ地籍事
  務ヲ行ッテ居ルカニ聞イテ居ルノデアリマ
  ス,斯ウ云フ風ニヤレバ杞憂ハ自ラ解消ス
  ル、所謂杞憂ハ杞憂ニ終ルノデハナイカ、
  ト斯樣ニ思ッテ居リマス、ソレカラ東京、大
  阪ノ如キ大都市ニ於テハ却テ多數ノ稅源ヲ
  得ルコトニナルト言ハレルケレドモ、一定
  稅額ニ達スレバソレ以上ノモノハ打切ッテ
  國家ガ之レヲ取上ゲ地方交付金ニ廻スト云
  フコトモ出來ルノデハナイカ、ト考ヘマス
  カラ、ヤリ方ニ依ッテハ左樣ニ難事デハナ
  イ、多少ノ支障缺點ハアルニ致シマシテ
  モ、左程ノ苦勞モナク斯ウ云フ支障ハ補正
  是正スルコトガ出來以テ此目的ハ達成シ
  得ルト思ッテ居リマス、願クハサウ云フ意
  味ニ於テ次ノ稅制改革ニ於テハ一ツ此ノ方
  法ニ依ッテ案ヲ樹テヽ戴キタイ、斯樣ニ私
  ハ希望致スノデアリマス
  尙ホ只今所得稅ニ付キマシテ、馬場案平
  年度ノ增收ト臨時增徵案トノ比較ガアリマ
  シタ、私モ再應調ベルコトニ致シマスガ、
  一應御意見トシテ拜聽致シテ置キマス
  進ンデヤハリ地方稅ノ整理ニ付テノ問題
  デアリマスガ、其レハ戶數割デアリマス、
  戶數割モ是ハ目下市町村ニ於ケル隨一ノ獨
  立本稅デアリマス、此稅ガ嘗テ府縣稅デアッ
  タモノヲ市町村ニ委讓スルコトニ依ッテ市
  町村ノ獨立ノ財源トモ致シ及ビ其事情ニ
  依ッテ實情ニ卽シタル公平ナル負擔ヲ爲サ
  シムルト云フコトヲ理由トシテ、此稅ガ市
  町村ニ委讓サレテ十數年ニナルト思フノデ
  アリマス、其實績ニ徵シマスト殆ド目標
  モナク、課ケ易イニ從ッテイツシカ、戶數
  割ハ益〓重稅ニ重稅ヲ續ケテ所謂是ガ地方
  稅中ノ惡稅ノ一ツニ今日ハナッテ居ルノデ
  アリマス、地方ノ稅制ノ整理改革ハ先ヅ戶
  數割カラト言ハレル位今日ハ惡稅ノ一ツト
  サレテ居ルノデアリマス、此稅ハ申ス迄
  モナク日本獨特ノ稅種デ外國ニハ其例ガナ
  イヤウニ思ッテ居リマス、而シテ之ニ依ッテ
  地方ノ財政ハ大部分賄ハレテ來テ居ルノデ
  アリマス、今日ノ稅收入ニ於テモ十年度ノ
  豫算ニ於テ、町村ニ於テ一億二千萬圓、市
  ニ於テ千七百萬圓デアリマスカラ、一億三
  千七百萬圓、正ニ十四億ニ垂々トスル稅ニ
  ナッテ居リマス、十一年度、或ハ十二年度
  ニ於テハ一億四千萬圓ヲズット突破シテ居
  ルト思ッテ居リマス、サウ云フ風ニナッテ居
  リマスガ爲ニ、是レアルガ爲ニ地方ノ地主
  ト云フモノハ自分ノ墳墓ノ土地ヲ去ッテ都
  會ニ流出ル、サウシテ不在地主ト云フ
  モノヲ拵ヘテ益〓地方ハ其負擔ノ過重
  ニ惱ンデ居ルト云フ結果ニナッテ居ル
  ノデアリマス、ドウシテモ此稅源ハ此
  際整理シナケレバナラヌ稅源デアル、併シ
  之ヲ全廢致シマスルト云フ馬場案ガ正シ
  イカ、或ハ之ヲ輕減シテ行クト云フ案ガ
  正シイカト云フコトハ、是ハ大ナル疑問デ
  アラウト思フ、全廢致シマスルコトハ却テ
  極端ニ失シテ、地方ノ財政ノ仲縮性ヲ全ク
  茲ニ奪ッテシマフコトニナリハセヌカト思
  フノデアリマスルガ、或ル程度ノ戶數割ヲ
  存置シテ、一定程度ニ徵收ヲ制限シテ、或
  ハ三分ノ一ニ止メルカ、半分ニ止メルカト
  云フコトハ、自ラ外ノ釣合トノ關係モアリ、
  〓究問題デアラウト思ヒマスルガ、全廢ス
  ルヨリモ寧ロ此形ハ存置シテ置イテ、而シ
  テ此徵稅ヲ制限スルト云フコトガ、地方稅
  制ニ適應セル對策デハナイカ、斯樣ニ考ヘ
  テ居リマスルガ、之ニ對スル御意見ハ如何
  デゴザイマセウカ

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• 040・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　戶數割ノ問題モ亦古クカ
  ラノ問題デゴザイマスルガ、御承知ノ通リ
  此稅ハ明治ノ初年カラ施行サレテ居ル稅デ
  ゴザイマシテ、大正十五年ニ府縣ノ戶數割
  ヲ止メルト云フ迄ハ、二億三四千萬圓アッ
  タノデゴザイマス、之ヲ府縣ノ戶數割ヲ止
  メ、ソレカラ一面ニ於キマシテハ義務〓育
  費-小學校〓員俸給費、之ヲ國庫支辨ニ
  致シテ居リマス金ヲ增シテ行ク、此兩方面カ
  ラ致シマシテ戶數割ヲ出來ルダケ少クスル、
  斯ウ云フ計畫ヲ致シマシテズット參ッテ來タ
  ノデゴザイマシテ、一時カラ見マスト今日
  ノ戶數割ハ約半分程ニナッテ居ルト思フノ
  デゴザイマス、昭和六年アタリノ非常ナ不
  況ノ際ニ於キマシテハ、餘程少クナッタノ
  デゴザイマスルガ、最近時局匡教費ノ關係
  其他カラ致シマシテ、再ビ戶數割ガ增加シ
  テ來ルト云フ傾向ヲ辿ッテ居ルノデゴザイ
  マス、戶數割ノ存廢如何ノ問題ハ極メテ重
  大ナ問題デアリマシテ、稅其モノト致シマ
  シテ果シテ適當ナ稅デアルカ、或ハ何カ之
  ニ代ルベキ所ノ稅種ガアルカ、市町村ノ獨
  立財源トシテ是ヲ存置スルトスレバ如何ナ
  ル改正ヲ行フベキカ、サウ云フヤウナ問題
  ハ是ハ恐ラク今後ニ來ルベキ所ノ地方、國
  ヲ通ズル稅制改正ノ中心問題ニ相成ルデア
  ラウカト思フノデゴザイマス、今日私ヨリ
  此稅ヲドウ致スト云フヤウナ大膽ナコトハ
  勿論言ヒ得ナイノデゴザイマスガ、御意見
  モアリマスカラ、十分此稅ノ將來ノ問題ニ
  關シマシテハ注意シテ〓究ヲ續ケテ行クコ
  トニ致シタイト存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=40

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• 041・宮澤裕

  ○宮澤委員　御留意御注意ニ依ッテ對策ヲ
  御考ヘ下サルコトハ結構デアリマスガ、私
  ハ此稅ヲ存置スルト云フコトニ於テハ反對
  致シマセヌ、併シ今日ノ稅收ヲ其儘認メテ
  存置スルト云フコトニ於テハ、絕對ニ反對
  デアリマス、無論政府モ御言明ヲナサラヌ
  迄モ凡ソ其御心持ノアルコトヽ私ハ拜承致
  シマスルガ、少クトモ半額程度位ハ此稅ヲ
  切下ゲテ存置スルト云フ程度ニ御決心ヲ
  願子稅制計畫ヲ御樹テヲ願ヒタイト私ハ
  考ヘテ居リマス、是亦地方ノ實情ニモ卽シ
  タヤリ方デハナイカ、斯樣ニ私ハ考ヘテ居
  ルノデアリマス、此上トモ一ツ御留意ヲ以
  テ御善處ヲ願ヒタイト思ヒマス、次ギニ先
  頃矢野君カドナタカノ直接稅ト間接稅トノ
  割合ニ關スル質問ニ對シテ、是ハマダ能ク
  調ベテ居ラヌト云フコトノ御言明ガアッタ
  ノデアリマヌ、マダ數日後ノ今日デアリマ
  スカラ、御調査濟ミデナカラウト思ヒマス、
  十三年度ノ稅制改革ニ於テドウ云フ割合
  デヤルカノ大體ノ調査位ハ出來テ居ルカト
  モ思ッテ居リマス、馬場サンハ嘗テ議會ニ於
  テ、大衆課稅卽チ消費稅ハ成ベク之ヲ課サ
  ナイ方針デ、稅制計畫ヲ樹テヽ見タイト云
  フコトノ御話ガアッタノデアリマス、所ガ呈
  示サレタ案ニ依リマスルト消費稅ト云フモ
  ノガ可ナリ課セラレテ居ル、平年度ニ於ケ
  ル五億九千萬圓ノ中ニ取引稅マデモ之ニ入
  レ、煙草ノ値上ヤ關稅マデモ之ニ入レマス
  ト三割八九分、總稅收額ノ略〓四割近イモノ
  ニナッテ居ッタカト思フノデアリマスガ、今
  囘ノ臨時增徵法案ニ依リマシテハ比較的割
  合ハ少ナクナッテ居ルト考ヘテ居リマス、一
  體一般ノ直接稅額ヲ增シナガラ消費稅ヲ全
  ク課ケナイ、大衆課稅ハ見合スノダト云フ
  コトハ、是ハ理想デアリマセウケレドモ出
  來得ナイコトデハナイカ、私共カラ言ヒマ
  スレバ今日ノ消費稅ト云フモノハ或ハ酒ト
  カ、織物トカ、砂糖トカ、今度ハ揮發油稅
  モ課ケラレタノデアリマスガ、ソレカラ煙
  草デアルトカ云フヤウナモノダケガ、多ク
  ハ消費稅ノ全部ノヤウニ考ヘラレテ居ルノ
  デアリマス、一般生活必需品ニ稅ヲ課スル
  ト云フコトハ兎モ角ト致シマシテモ、モウ
  少シ奢侈的方面ニ此消費稅ヲ見出スコトニ
  依ッテ、此方面ニ稅收ヲ計畫スルコトモ一ツ
  ノ方法デハナイカ、考へ方ニ依ッテハ酒ハ
  今日釀造家ナリ其他取扱人ノ方カラモ色々
  ナ陳情ガアッテ二割ガ高イノ、四割ハ高イ
  ノ、五割ハ高イノト云フ聲モアリマスガ、
  私ハ是ハ酒ノ種類ニモ依ルコトデ、酒ノ等
  級ニ依ッテ、其稅額ニ差等ヲ付ケ、モウ少シ
  稅收ノ增徵ヲ圖ルト云フコトモ已ムヲ得ナ
  イデハナカラウカ、之ヲ換言致シマスレバ
  既設ノ稅種ノ方面ニ於テモマダ增收ヲ圖ル
  方法ガアリ、尙ホ奢侈的其他ノ方面ニ於テ
  御考究ニナルナラバ、消費稅ノ範圍ヲモウ
  少シ擴大シテモ可ナルベク必ズシモ、此數
  種ノ消費稅ニ限局スル必要ハナイヂヤナイ
  カ、斯ノ如クシテ國費ノ負擔モ此方面ニ見
  出シ得ルノデハナイカト私ハ斯樣ニ思ッテ
  居リマス、只今太田サンカラモ御話ガアッ
  タノデアリマスガ、無論生活ノ必需品ニ付
  テ課スルコトニヨッテ大衆殊ニ其日稼ギノ
  人達ニ非常ナ負擔ヲ課スルヤウナ大衆課稅
  ハ、是ハドノ方面カラ考ヘマシテモ御注意
  御留意ヲ願ハナケレバナリマセヌノデアリ
  マスガ、尙ホ逸セラレテ居ル方面ガ澤山ア
  ルノヂヤナイカト云フ風ニ考ヘテ居ルノデ
  アリマス、直接稅ト間接稅ノ比率割合ガハッ
  キリ致シマセヌコトニ對シマシテモ、斯ウ
  云フコトニ對スル御考ハ如何デアリマセウ
  カ、モウ是デ消費稅ハ徵稅シ盡シタモノデ
  アル、是以上ハ課ケラレナイト云フヤウニ
  思ハレルカ、或ハ擔稅力ガアルト御考ニナッ
  テ居ラレマスカ、其御意見ヲ拜聽致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=41

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• 042・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　宮澤サンノ仰シヤイマス
  通リ必ズシモ名義ニ捉ハレナイデモ宜イノ
  デアラウト思フノデゴザイマシテ、消費稅
  デアルカラト言ッテ必ズシモソレガ一般
  大衆ノ負擔ニ相成ル譯デハゴザイマセヌ
  シ、直接稅デアルカラト云ッテ、ソレガ直チ
  ニ富裕階級ノ負擔ニ屬スルト云フモノデモ
  ゴザイマセヌ、只今御話ノアリマシタ戶數
  割モ、是ガ直接稅デアルコトハ疑ヒナイ所
  デゴザイマスガ、是等ハ確ニ減ズル必要ガ
  ゴザイマセウ、ト同時ニ消費稅デアリマシ
  テモ奢侈品ニ屬スル部類等ニ於テ、尙ホ擔
  稅餘地ガアルデハナイカ、斯ウ云フモノハ
  一般大衆ノ負擔スルモノデハナイ、サウ云
  フ所ニ擔稅餘力ヲ見付ケタラドウダ、斯ウ
  云フ話ダト思フノデゴザイマス、洵ニ御尤
  ナ御意見デゴザイマシテ、ソレ等ノ點ニ付
  キマシテモ一ツ十分考究致スコトニ致シマ
  ス、決シテ消費稅ト云フ名義ニ捉ハレテ、
  擔稅餘力ノアルト云フ方面ニ關シマシテモ
  負擔ノ餘地ヲ見出ダスコトヲ怠ルト云フコ
  トハ致サナイ積リデゴザイマス、唯是ガ最
  モ從來カラ躊躇モ致シ、困難ヲ感ジマシタ
  點ハ、奢侈的ノ消費ニ屬スル部類ノ消費物
  件、消費金額ト云フモノガ、集メテ見マスト
  比較的少イノデゴザイマシテ、隨テ是等ニ
  課稅致シマシタ所デ國家ノ歲入トシテハ幾
  ラモ入ッテ來ナイ、唯手數ガ餘計デアッテ、幾
  ラモ入ッテ來ナイ斯ウ云フヤウナ一ツノ大
  キナ缺點ヲ持ッテ居ルノデゴザイマス、其結
  果獨逸ニ於キマシテモ佛蘭西ニ於キマシテ
  モ奢侈品ノ課稅ト云フモノハ近來漸次廢メ
  テ行ク傾向ニアルノデゴザイマス、英國ニ
  於キマシテモ一時此稅ヲ起サウト云フコト
  デ、委員會ヲ作リマシテ、頻リニ〓究致シ
  タノデゴザイマスガ、結局委員會ニ於テモ
  色々ナ角度カラ〓究致シマシタ結果、到頭
  此稅ヲ起サナイコトニ致シマシタ、亞米利
  加ニ於キマシテハ一般賣上稅ヲ起スト云フ
  政府ノ提案ニ對シマシテ、議會ニ於テ此案
  ヲ修正致シマシテ、或一定ノ奢侈的物品ニ
  限ッタ賣上稅ト云フモノヲ起スコトニ致シ
  タヤウデゴザイマス、隨テ只今御呈示ニナ
  リマシタヤウナ點ニ付キマシテハ、一ツ十
  分考究致シテ見タイト存ジテ居リマス、是
  等ノモノニ對シテ稅ヲ起スカ起サヌカト云
  フコトハ勿論今日私ヨリ申上ゲ兼ネル次第
  デゴザイマスルガ、只今御呈示ニナリマシ
  タ方法ニ付キマシテハ更ニ一層ノ〓究ヲ進
  メテ行キタイト、斯ウ考ヘテ居ル次第デゴ
  ザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=42

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• 043・宮澤裕

  ○宮澤委員　實ハ主稅局長トハ屢〓個人的
  ニヨク御話モ聽イテ居リマスシ話シ合ッテ
  居リマスノデ餘リ空々シイ質問モ出來ヌノ
  デ困ッテ居ルノデアリマスガ、要スルニマダ
  擔稅餘力ガ色ンナ方面ニ殘ッテ居ル、其擔
  稅餘力ヲ漁ルコトニ依ッテ、相當ノ無理カラ
  ヌ增收計畫ガ立テラレルノデハナイカ、實
  ハ斯樣ニ思ッテ居ルノデアリマス、而シテ是
  ガ已ムヲ得ザル不可避ノ國費ノ膨脹ニモ是
  ガ多少役立ツダラウト思フシ、又地方ニ於テ
  働ケドモ食へナイ憐ムベキ農山漁村ノ國民
  ニ對スル救濟ノ交付金トモナッテ交付サレ
  マスナラバ、ソレガ卽チ今日ノ善政デハナ
  イカ、ソレガ卽チ又廣義國防デハナイカ、
  斯樣ニ思ッテ居ルノデアリマス申ス迄モア
  リマセヌケレドモ、此消費稅ハ任意課稅デ
  アリマシテ、强制課稅デアリマセヌカラ、
  知ラズ識ラズ課稅サレルノデ、課稅モシ易
  イノデアリ同時ニ苛歛誅求トモナリ易イカ
  ラ注意ハ必要デアリマス、是ガ直接課稅ニ
  ナリマスト、中々サウ參リマセヌ、併シ消
  費稅モ餘リ課稅ガ高クナルト物價ガ上リマ
  スカラ自ヅカラ消費ガ減ル、隨テ稅收入モ
  減ルト云フコトモアリマスルケレドモ、奢
  侈稅ノ如キニ於キマシテハ多クハ金持ノ擔
  稅力ノアル者ガ負擔スル間接稅デアリマシ
  テ、比較的樂ナ稅收ガ圖ラレルノデハナイ
  カ、斯樣ニ思ッテ居ルノデアリマス尙ホ地
  方ノ交付金ガ今日三千萬圓ノ增額ノ決定ガ
  出來テ、一億萬圓ノ金ガ大體交付サレルコ
  トヲ聞イテ居ルノデアリマスガ、私ハ前ニ
  申シマスヤウニ地方ニ獨立ノ財源ヲ與ヘ、
  成ベク交付金ノ金額ハ少ナイ方ガ宜イ、何
  モ彼モ中央ニ依存スル依賴心ヲ起スト云フ
  コトハ最モ禁物ダト思ヒマス、成ルベク地
  方ニ獨立財源ヲ與ヘテ獨立セシムルト同時
  ニ地方ニ獨立ノ產業ヲ與へ、獨立ノ生計ヲ
  營ミ、働ケバ採算ガ採レル、是デ生業ガ成
  立ツンダト云フヤウニ政治ヲ支向ケルノガ
  此際先決問題デハナイカ、高橋前々藏相ノ
  御話ニナリマシタヤウニ、自力更生ト云フ
  コトヲ地方民ニ考ヘシムルコトガ政治ノ要
  諦デハナイカ、ソレニハ金ヲ與ヘルト云フ
  コトハ反ッテ地方ニ墮落ノ氣風ヲ起サシメ
  而シテ濫費ヲ奬勵スルト云フ結果ニナッテ來
  ルノデアリマシテ、一時ハ宜イカモ知レマ
  セヌガ、永遠ノ策デハナイ、却テ私ハ町村ヲ
  奮起セシメ、更生セシムル所以デハナイト
  斯樣ニ思ッテ居ルノデアリマス、色ンナ地方
  稅制ノ改革、負擔ノ公平是正ヲヤラレル上
  ニ於キマシテモ、此邊ノ御留意ガ必要デア
  ルト思フ、成ベクハ地方ノ救濟ヲスル前ニ
  自カラ更生ヲスル方法ヲ政府ガ御立テニナ
  ルト云フコトガ今日ノ根本問題、政治ノ眞
  諦デアルト思ッテ居ルノデアリマス、尙ホ此
  際モウ一ツ御所見ヲ拜聽シテ置キタイト思
  フノデアリマスガ、今囘ノ臨時增稅計畫ニ
  於テモ、前ノ馬場案ニ於テヾモデアリマス
  ガ、是ダケ國費ノ膨脹ヲ來シテ、各方面ニ
  稅種ヲ漁ッテ增稅計畫ガ提示サレタニモ拘
  ラズ、恩給法ト云フモノニハ一ツモ手ヲ觸
  レテナイノデス、是ハ當時色々ナ評判ガア
  リマシテ、官吏ガ自分ニ影響スルコトデア
  ルカラ一ツモ手ヲ觸レヌノデアル、之ニ手
  ヲ付ケヌノハ片手落チデハナイカト云フ議
  論ガ相當民間ニアルノデアリマス、私モ是
  ハ一考ヲ要スベキ問題ダト思フノデアリマ
  スルガ、恩給ト云フテモ年金モアリ或ハ
  時賜金モアリ、家族扶助料モアルノデアリ
  マスガ、マア扶助料デアルトカ、一時賜金
  デアルトカ、年金ト云フヤウナモノハ別デ
  アリマスガ、唯問題ハ恩給デアリマス、此
  恩給ニ致シマシテモ、固ヨリ是ハ國家ニ功
  勞ガアリ、社會ニ貢獻ノアッタ人ニ對スル
  老後ノ給與デアリマスルカラ、之ニ對シテ
  私ハ彼是言フノデハアリマセヌケレドモ、
  併シ一面各方面ニ稅種ヲ漁リ盡シ殆ド耐ヘ
  ルカ耐ヘンカト云フ程マデニ負擔ヲ致シテ
  居リマスル際ニ、今日恩給取得者中ニハ多
  額ノ恩給ヲ貰ヒツヽ、或ハ銀行會社ニ勤メ、
  或ハ市役所デアルトカ、或ハ其他公私ノ諸
  方面ニ奉職スルコトニ依ッテ相當ノ手當ヤ
  給與ヲ受ケテ居ルノデアリマス、ソレト恩
  給額トヲ合シマスト寧ロ在官中ニ貰ッタ給
  料ヨリモ多額ノ收入ヲ取ッテ居ルノデアリ
  VX.先年或法制上制限ガ出來テ多額ノ取
  得者ニ對シテハ控除方法モ行ハレテ居ルノ
  デアリマスルガ、併シ今囘ノ稅制改革デハ
  恩給方面ニ於テ少シノ觸手ヲモ加ヘラレテ
  居ラヌノデアリマス、斯ウ云フ過大ノ利得
  ヲ得テ居ル者カラハ或一定ノ制限ヲ
  附シテ給與額ヲ遞滅スルトカ、或ハ
  之ニ對シテハ特別ノ課稅ヲスルトカ
  課稅ガ出來ヌマデモ、一定ノ給與年限
  ヲ停止シテ給與ヲ見合ハセテ置クト云
  フコトニ依ッテ、積極的收入ハ生ジナク
  トモ、消極的ニ支出ヲ減ズル方法ガアルノ
  デハナイカ、斯樣ニ思ッテ居ルノデアリマ
  ス、十一年度ノ豫算デハ恩給額ガ一億八千
  二十六萬九千圓ヲ示シテ居リマス、受給人
  員ハ三十六萬四千人デアリマスガ、其中武
  官ガ四分ノ三ヲ占メテ居リ、文官ガ四分ノ
  一デアリマス、受給金額ニ於テハ大體兩者
  差異ハナイト思ッテ居リマス、デアリマスル
  カラ斯ウ云フ風ナ金額デアッテ、十一年度ノ
  歲出總額-經常歲出ニ比ベマスルト云フ
  ト此金額ガ一割三四分ニナッテ居ルヤウニ、
  私承知致シテ居ルノデアリマス、ヤリ方ニ
  依ッテハ相當ノ國費ノ負擔ヲ輕減スルコト
  ガ出來ルンヂヤナイカト思フノデアリマ
  ス、之ニ對シテ何カ御考ヘ及ビノコトガア
  ルデアリマセウカ、對策ヲ御考ニナッテ居ル
  デアリマセウカ、御意見ヲ伺ヒタイト思ヒ
  マス

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• 044・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　恩給ニ付キマシテハ是ハ
  私ヨリ御答致スコトハ不適當カトモ思フノ
  デゴザイマスルガ、一昨年デゴザイマシタ
  カ一昨々年デゴザイマシタカ恩給法ノ改正
  ヲ致シマシテ、兩院ノ御協賛ヲ得タ譯デゴ
  ザイマスルガ、ソレニ依リマスレバ、他ノ
  所得ガ五千圓以上デアッテ恩給ガ千圓以上
  ナル場合ニハ、千圓ヲ超過スル部分ノ支給
  ヲ停止スル、但シ恩給ノ二割ヲ超エテ停止
  シナイ、斯ウ云フ規定ガアルノデゴザイマ
  ス,ソレデ外ノ銀行會社等ニ行キマシテ俸
  給ヲ受取ッテ居ル者ガ五千圓以上デアッタ場
  合ニ於キマシテハ、或ル程度其恩給額ヲ停
  止致シテ居リマス、ソレデ是ハ稅務署カラ
  是々ノ人ハ今年幾ラノ所得ノ決定ガアッタ
  カラト云フコトヲ恩給局ニ通知シ、稅務署ト
  恩給局ト連絡ヲ取リマシテ、或ル一定ノ恩
  額給ノ支給ト云フモノヲ停止致シテ居ル、
  ソレカラ尙ホ其當時是モ御記憶ダト思フノ
  デゴザイマスルガ、文官ハ百分ノ一ノ國庫
  納付金ヲ致シテ居ッタノデゴザイマスルガ、
  之ヲ倍ニ致シマシテ、昇給シタ分カラソレ
  ニ依ッテ行ク、斯ウ云フコトニ致シマシテ、
  今日文官ハ百分ノ二、武官ハ一切國庫ノ引
  去金ガゴザイマセヌノデアリマシタガ、是
  モ百分ノ一引クコトニ致シマシテ、其改正
  ガツイ一兩年前ニ行ハレマシテ、恩給受給者
  ニ於キマシテハ相當ナ制限ヲ受ケテ居リマ
  ス次第デゴザイマシテ、是ハ私ヨリ御答致
  スコトハ或ハ不適當カト初メニ申上ゲタノ
  デゴザイマスガ、私ノ考デハサウ云フヤウ
  ナコトガアリマシテ後マダ一二年ノ問題デ
  ゴザイマスルカラ、今暫ク其方ノ經過ヲ見
  タ上デナイト、一寸更ニ進ンダ改正ト云フ
  コトハムヅカシイノデハアルマイカ、斯ウ
  云フヤウナ感ジガ致シテ居リマス

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• 045・内藤正剛

  ○内藤委員　一丁

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• 046・増田義一

  ○增田委員長　關聯事項デスカ-內藤正
  剛君

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• 047・内藤正剛

  ○內藤委員　當局ニ伺フノデアリマスガ、
  滿洲國ニ官吏トナッテ居ラレル內地ノ人デ
  スカ、此收入ハ、外國カラ得ルノデアリマ
  スルカラ、外國デ得テモ、ヤハリ所得ハ同
  樣デアリマスガ、所得稅ヲ課シテ居ラレマ
  スカ、滿洲國カラ得ラレル人ニ付テハ所得
  稅ヲ課サヌト云フコトニナッテ居リマスカ、
  ソレヲ一言伺ッテ置キタイ
  ソレカラモウ一言-度々御尋スルノハ
  恐縮デスガ、モウ一ツ御伺シタイノデスガ、
  今軍人ノ恩給ノ御話ガアリマシタガ、寸
  緣ガ遠イカモ知レマセヌガ、此頃隨分軍部
  ノ異動ガ澤山アルヤウデアリマスガ、他ノ
  文官ニ比シテ武官ノ異動ガ多イヤウデアリ
  やっ。此旅費ナンカノ支給額ガ相當多額ニ
  上ッテ居ルヤウニ聞クノデスガ、固ヨリオ上
  ノ都合デアリマスガ、餘リニ異動スルコト
  ニ依ッテ旅費ニ大キナ金ヲ食フヤウナコト
  ハアリマセヌデセウカ、大藏省ガ各省ノ豫
  算ヲ査定サルヽ時ニ、サウ云フコトマデ御
  考慮ニナッテ御交渉ニナッタデセウカ、此金
  ハ大キナ金ダト私ハ思ヒマスノデ、一寸御
  伺致シマズ

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• 048・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　旅費ノ問題ニ付キマシテ
  ハ能ク一ツ調ベマシテ御答致シマス、ソレ
  カラ滿洲國ノ官吏ガ所得稅ノ賦課ヲ受クル
  ヤ、斯ウ云フ御尋ダト思フノデゴザイマス
  ルガ、御承知ノ通リニ內地ニ住所ヲ有スル
  者ガ此方デ所得稅ヲ納メル譯デゴザイマシ
  テ、住所ノナイ者ハ納メマセヌノデスカラ、
  滿洲國ノ官吏デ內地ニ駐剳致シテ居リマス
  ル役人ハ所得稅ヲ納メル筈デゴザイマスガ、
  滿洲國ニ住ンデ居リマスル滿洲國ノ役人ハ、
  是ハ所得稅ヲ納メマセヌノデゴザイマス

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• 049・内藤正剛

  ○内藤委員　違フ、質問ノ趣旨ヲ御聽取リ
  下サイ、日本人ニシテ滿洲國ノ官吏トナッテ
  居ル者デ滿洲國カラ支給ヲ受ケテ居ル者、
  支給ヲ受ケル人ハ日本人ナンデスカラ、滿
  洲國ノ官吏ニナッテ滿洲國カラ受ケテモ所
  得ハ日本人ガ受ケテ居ルノデスガ、例ヘバ
  東京ニ於テ相當高位高官ノ人ガアルノデス
  ガ、斯ウ云フ人ハ所得稅ヲ拂ッテ居リマスカ
  拂ッテ居リマセヌカ、斯ウ云フノデス

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• 050・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　日本人デアリマシテモ外
  國人デアリマシテモ、外國ニ住ンデ居ル者
  ニハ課稅致シマセヌ

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• 051・内藤正剛

  ○内藤委員　私ノ言フノハ詰リ日本人ノ官
  吏デアッテ滿洲國ノ官吏ヲ兼ネテ居ル人ガ
  アルノデス、全然滿洲國ノ官吏デ向フノ方
  デヤルノナラバ其說明デ足リルカモ知レマ
  セヌガ、日本人ノ官吏デ滿洲國ノ官吏ヲ兼
  ネテ居ル者、サウ云フ者ハドウナッテ居リマ
  スカ

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• 052・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　日本人ノ官吏ニシテ滿洲
  國ノ官吏ヲ兼ネテ居ル者ガアルカドウカ、
  是ハナイダラウト思ヒマス、但シ日本人ノ
  官吏デアリマシテモ內地ニ住所ヲ有セズ外
  國ニ住所ヲ有シテ居ル者ハ日本人デアリマ
  シテモ課稅致シマセヌ、所得稅ハ住所地ニ
  依ッテ居リマスカラ本人ノ住所ガ外國ニア
  リマスレバ課稅致シマセヌ

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• 053・内藤正剛

  ○内藤委員　モウ一ツ御伺致シタイ、日本人
  ノ勅任官ニシテ勅任恩給ヲ取ル人ニシテ滿
  洲國ノ官吏ニナッテ居ル人ハ恩給關係ハド
  ウ云フヤウニナッテ居リマスカ

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• 054・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　恩給ノ關係ハ斯ウナッテ
  居リマス、日本ノ役人デアッタ者ガ勅任恩給
  デモ何ノ恩給デモ同ジデスガ、滿洲國ノ役
  人ニナッテ向フノ俸給ヲ受取ッテ居ルト云フ
  者ニ對シテ、此方ノ恩給ヲ停止スルカドウ
  カ、斯ウ云フ御尋カト思フノデゴザイマス、
  是ハ停止シテ居リマセヌ、日本ノ會社カラ
  支給スルト云フヤウナモノニ付キマシテハ
  是ハ停止致シマス、例ヘバ南滿洲鐵道株式會
  社ガ滿洲ニ本店ヲ持ッテ居リマス、是ハ關東
  洲ト言ッタ方ガ宜イカモ知レマセヌガ、、彼方
  ニ本店ヲ持ッテ居リマスガ、其方カラ俸給ヲ
  受ケテ居リマシテ一定ノ額ニ達シマスレバ
  其恩給ハ恩給法ニ依ッテ停止致シマス、ガ外
  國カラ受ケテ居ル俸給ハ其人ガ或ハ滿洲國
  カラ俸給ヲ受ケテ居ル人モゴザイマセウ、或
  ハ南洋方面デ收入ノアル人モアリマセウ、
  或ハ南米方面ニ行ッテ商賣ヲシテ居ル人ガ
  アルカモ知レマセヌ、是等ノ所得ニ付キマ
  シテ一々其所得ヲ調査致シマシテ其恩給ヲ
  停止スルカドウカト云フ判斷ヲ致スコトハ
  極メテ困難デゴザイマス、隨テ獨リ滿洲國
  ノ役人バカリノ問題デハゴザイマセヌ、總
  テ外國ニ居ッテ所得ヲ得テ居ル者ニハ停止
  致サナイコトニシテ居リマス

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• 055・内藤正剛

  ○內藤委員　日本ニ居住スル日本人ニシ
  テ、外國法人ノ會社ニ勤メテ居ル者ハ、先
  程當局カラ御說明ノ如ク從來ヨリ餘計收入
  ガアッタ場合ニ於テハ恩給ノ制限ヲ受ケテ
  居ル、外國カラ受ケル場合モ、外國法人タル
  日本ニ在ル會社カラ支給ヲ受ケル場合ト異
  ナル所ハナイト思フ、一方デハ取ッテ一方デ
  ハ取ラナイト云フコトハ不都合デナイカト
  思フコトガ一ツ、尙ホ一ツハ恐ラク住居ト
  云フコトヲ標準ニサレタ御答辯デアラウト
  思ヒマスガ、主人ガ向フデ稼イデ居リマシ
  テモ內地ニ女房子供ヲ殘シ、子供ヲ學校ニ
  ヤル、御佛壇モアルト云フノデスカラ、生活
  ノ本據ハヤハリ內地デハアリマスマイカ、
  向フデ働イテ居ルノハ單ナル一時的ノ居住
  地ヂヤナカラウカト思フノデスガ、此住居
  竝ニ居住地ニ關スル當局ノ御意見ヲ承リタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=55

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• 056・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　外國ノ會社カラ一定ノ額
  ヲ受ケテ居リマシテ、內地ニ住ンデ居ル日
  本人ノ恩給ハ其額ヲ標準ニシマシテ停止致
  シマス、ソレカラ外國ニ住ンデ居ル者ガ外
  國デ受ケル所ノ給料ヲ標準ニシテ、恩給ヲ
  停止シナイノハ不公平ヂヤナイカト云フ御
  尋デアリマスガ、是ハ內地ニ住ンデ居リマ
  ス者ニ付テハ、其者ガ何處カラ給料ヲ受ケ
  ルカト云フコトハ、皆コチラノ稅務署ニ於
  キマシテ調査致シマスノデ、一定ノ標準ガ
  ゴザイマス、又外國ニ住ンデ居リマス者デ
  モ內地ノ會社カラ受ケル者ハ、是ハ分リマ
  ス、デアリマスカラ其程度ニ依リマシテ、
  恩給ノ停止ヲ行ッテ居リマス、併シ外國ニ住
  ンデ居ル者ハ縱令ソレガ日本人デアリマセ
  ウトモ、何レノ處カラカ收入ヲ得テ居ルノ
  デアリマスガ、其收入ノ額ガ果シテ幾許デ
  アルカ、サウ云フコトハ一切調査シテ居ラ
  ヌノデアリマス、又是ハ分リッコハアリマセ
  ヌ、デアリマスカラ外國ニ住ンデ居ル者
  デ、外國ノ會社政府等カラ俸給等ヲ受ケテ
  居ル者ニ付テハ、ソレヲ標準ニ致シマシテ
  恩給額ヲ停止スルヤウナコトハ致シテ居ラ
  ヌ次第デアリマス、ソレカラ滿洲國ノ役人
  デ女房子供ガコチラニ居ル者ハ、一體住所
  ハ何處カト云フ御尋デアリマスガ、役人ノ
  住所ハ大體ヤハリ其勤務シテ居ル處ニアル
  ト斯樣ニ考ヘテ居リマス

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• 057・内藤正剛

  ○內藤委員　私ハ滿洲國カラ出テ居ル本ヲ
  見テ居リマスガ、此本ハ恐ラク大藏省ニア
  ルト思ヒマス、之ニハ官等ガ皆書イテアリ
  俸給ガ書イテアル譯デアリマス、大藏省ハ
  サウ云フヤウナモノガ出テ居ッテモ、滿洲カ
  ラ出テ居ル本ハ參考資料ニハシナイト仰シ
  ヤルノデスカ、分ラヌト仰シヤルガ本ハ出
  テ居ル、ソレヲドウ云フ風ニ御考ニナリマ
  スカ、滿洲國公報ト云フモノニ官等ナドガ
  出テ居リマスガ、是ハ內地ニ來テ居リマ
  ス、オ分リニナラヌト云フコトデスガ、
  分レバ取ルト云フ御意見ナラバソレヲ御覽
  ニナレバ宜イ譯デアリマス、之ヲ知ラヌト
  云フナラバ其不明ヲ天下ニ謝セラレテ、今
  後注意スルト仰シヤッタラドウデセウ、ア
  ルモノヲ分ラヌト仰シヤッタノデハ私共ハ
  滿足ハ出來ナイノデアリマス、課稅ノ根
  本ガ違ヘバ兎モ角デスガ、分ラヌト云フダ
  ケノ意味ナラバ分ル方法ガアルコトヲ〓ヘ
  テ置キマス

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• 058・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　ドウモ分ッタ者ダケニ付
  テ停止スルト云フ譯ニハ行カヌト思フノデ
  アリマス、ソコニヤハリ一定ノ原理原則ヲ
  置カナケレバイカヌト思フノデアリマス、
  甲ナル人ハ滿洲國政府ノ役人ヲシテ居ッテ
  分ル、ダカラ其者ニハ停止スル、一方ノ者ハ
  支那ノ會社ニ勤務シテ居ッテ、滿洲國ノ役人
  ノ三倍位ノ月給ヲ取ッテ居ルガ、分ラヌカラ
  其者ニハ停止シナイト云フ譯ニハイカヌト
  思フノデス、ソレデスカラ偶〓滿洲國ノ官吏ま
  ノ俸給ガ分ッテ居リマシテモ、外國ニ住ンデ
  居ッテ外國ノ政府會社等カラ俸給ヲ受取ッテ
  居ル、サウ云フ者ノ恩給ニ付テハ差引シナ
  イト云フコトニシテ置キマセヌト、其間ニ
  非常ナ不均衡ガ起ルト思フノデス、此點ハ
  假令實際分ッテ居ル者ガアッタトシテモ已ム
  ヲ得ナイコトカト在ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=58

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• 059・服部英明

  ○服部委員　是ハ辯護士ノ報酬デスガ、日
  本人ガ日本內地ニ住所ヲ有シテ辯護事務ニ
  從事シテ居ル、ソレガ偶外國ノ辯護事務ヲ
  シテ外國ノ政府乃至ハ外國人カラ多額ノ報
  酬ナリ謝金ヲナリヲ貰ヒ受ケタト云フ場合
  ニ、分ラナイ場合ニハ課稅ノ方法ハナイノ
  デスガ、其顯著ナルモノニシテ分ッタ場合
  ニハドウ云フ工合ニサレマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=59

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• 060・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　勿論ソレハ課稅致シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=60

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• 061・宮澤裕

  ○宮澤委員　是ハ今御答辯ガアリマシタ
  ガ、數年前ニ稅法ノ改正ガアッテ、五千圓以
  上ノ年收者ニ改正ニナッタコトモ記憶シテ居
  リマス、尙ホ此恩給積立金ヲ文武官ノ各位
  ガヤッテ居ルコトモ知ッテ居リマス、併シ今
  囘各方面ノ稅源ヲ漁リ盡シテ居ルニモ拘ラ
  ズ、官吏ハ何等恩給法ノ改正ヲ受ケテ居ラ
  z、此方面ニ付テハ積極的ニモ消極的ニモ
  稅法ノ改正ヲシテ居ラヌト云フ非難ガ實ハ
  相當アルノデアリマス、其當否ニ付テハ別
  ト致シマシテモ、實ハ地方ヘ行キマシテ
  モ、中央ニ於キマシテモ、稀ニハ四十ソコ
  ソコノマダ壯年ニシテ恩給ニ坐食シテ居ル
  者モアリマスシ、前ニ申スヤウニ多額ノ收
  入ヲ取テテ五千圓以上ノ收入トシテ相當ノ
  稅法ノ制限ヲ受ケテ居ルニ致シマシテモ、
  尙ホ贅澤ナ裕福ナ生活ヲシテ居ルト云フヤ
  ウナ者ヲ見ル時ニ、地方ノ者ガ之ニ相當ノ
  怨嗟ノ聲ヲ放ツコトモ無理カラヌコトヽ思
  フノデアリマス、或ル意見トシテハ、此恩
  給年限ト云フモノハ十年ハ十二年デモ、十
  五年ガ十七年デモ宜シイガ、五十歲トカ五
  十五歲ニナラナケレバト云フヤウナ支給年
  齡ノ制限ヲシテハドウカ、或ハ年齡ニ依ッテ
  差等ヲ付ケテ支給シテハドウカト云フヤウ
  ナ議論モ相當アルノデアリマス、詰リ斯ウ
  云フ大增稅ガ行ハレテ國民負擔ガ一擧ニ急
  激ナル加重ヲ致サレマス時ニ、官廳方面デ
  モ斯ウ云フ聲ヲ他山ノ石トシテ聽イテ置ク
  コトガ必要デハナイカ、又斯ウ云フ際ニ當
  局カラ一通リノ言明ヲ聽イテ國民ニ知ラシ
  メルコトモ私共ノ責任デハナイカ、斯樣ニ
  思ヒ質問ヲ致シマシタ、是以上御答辯ガア
  レバ何デスガ、是以上私ハ御答辯ヲ要求致
  シマセヌ、是ダケノコトヲ申上ゲテ置キマ
  ス、尙ホ外ニ歲出ニ付テ、ヤハリ稅制ノ關
  聯スル質問ガ少シ殘ッテ居リマスガ、是
  ドウシテモ大藏大臣ガ御出席ニナラナイト
  質問致シ兼ネマスノデ、御出席ノ上ハ少時
  間ヲ御與ヘ下サル意味ニ於テ私ノ質問ハ此
  程度ニ打切リタイト思ヒマス

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• 062・小山倉之助

  ○小山委員　先程砂糖關稅ノ額ヲ御伺致シ
  マシタガ、御分リニナッタカト存ジマスガ

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• 063・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　砂糖ノ關稅額ト云フモノ
  ハ殆ドナイト思ッテ思リマス、是ハ「ジヤワ」
  糖ヲ輸入致シテ參リマスモノハ、之ヲ精製
  糖ニ致シマシテ支那へ輸出致シマス、其間
  多少商賣ノ關係デ內地ニ落チルモノガアル
  カト思フノデゴザイマスガ、比較的少イ筈
  デアッテ、砂糖ハ今日殆ド自給自足ノ域ニ達
  シテ居ルノデゴザイマスカラ、外國カラ入
  リマス砂糖ハ之ヲ精製糖ニ致シマシテ支那
  方面ニ輸出スルト、斯ウ云フコトデアリマ
  シテ、其輸出スル時分ニハ關稅モ皆戾シマ
  スカラ、隨テ今日砂糖ノ關稅收入ニナッテ
  居ル額ト云フモノハ極メテ少イト、斯ウ
  思ッテ居リマス

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• 064・小山倉之助

  ○小山委員　今度ノ增徵案デ砂糖ノ消費稅
  ヲ一割五分上ゲルコトニナッテ居リマスガ、
  ドウモ此消費稅ヲ殖ヤシテ行クト際限ノナ
  イコトデアリマシテ、大衆ノ課稅ヲ行フ度
  ニ增加スル、ソコデ私ノ非常ニ疑問ニ思ッ
  テ居リマスノハ、砂糖ノ關稅ハ殆ド收入ガ
  ナイ、收入ガナイ程關稅率ガ高イ、隨テソ
  レダケ外國カラ一「ピクル」ト雖モ入ル餘地
  ガナイ、ソレ程關稅ガ高イト私ハ認メザル
  ヲ得ナイノデアリマス、卽チソレダケ內地
  ノ砂糖業者ヲ保護シテ居ル、禁止課稅ヲ以
  テ內地ノ砂糖業者ヲ保護シテ居ル、內地ノ
  砂糖業者ヲ保護シテ居リマスカラ砂糖會社
  ノ株モ非常ニ高ケレバ、一方ニ於テハ配當
  モ相當多イト云フコトニナッテ居ル、最早日
  本ノ砂糖業者ハソレ程ノ高イ關稅デ以テ保
  護シナクテモ宜イ程度ニ達シテ居リハシナ
  イカドウカト云フコトヲ伺ヒタイ、私共ハ
  砂糖會社ノ方ニサウ云フ計算ヲ求メマス
  ト、マダ〓〓此關稅ヲ下ゲテ貰ッテハ困ル、
  モット之ヲ高クスレバコソ砂糖ノ保護ガ出
  來ルノデアルガ、ソレ以上安クシタラ大變
  ダト云フ〓デアリマスカラ砂糖ノ關稅ヲモウ
  少シ下ゲテモ、現在ノ砂糖業者ヲ破壞スル
  程度ニマデ至ラナイノデハナイカ、ソレダ
  ケ砂糖ノ所謂價格ト云フモノヲ一般ニ安ク
  提供スルコトガ出來ルノデハナイカ、其安
  イ程度ニナレバ或ハ此砂糖消費稅ト云フモ
  ノハ一割五分位上ゲテモ、二割ニナリマシ
  テモ、或ハ一割八分ニナリマシテモ消費稅
  ノ方デ加減ガ出來ルノデハナイカ、其御調
  査ヲ曾テナサレタコトガアルカドウカ、將
  來又ドノ程度マデ關稅ヲ引下ゲ得ルカト云
  フコトヲ御〓究ナサレタカドウカ、此點ヲ
  御伺致シタイノデゴザイマス

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• 065・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今小山サンノ御尋ハ洵
  ニ御尤ナ御尋デゴザイマシテ、私ハ此砂糖
  ノ關稅ノ問題ニ付キマシテハ餘程愼重ニ考
  慮スベキ點ガアルト思フノデゴザイマス、
  是ハ旣ニ數年前ヨリシテ、砂糖會社ガ餘リ
  儲カルヂヤナイカ、隨テ此關稅率ヲ引下
  ゲタラバ宜イヂヤナイカ、結局昭和七年ニ
  行ッタ三割五分ノ關稅ガ高過ギタノデハア
  ルマイカト斯ウ云フ疑問モアッタノデゴザ
  イマシテ、其後屢〓此關稅ニ付テノ〓究ヲ
  政府トシテモ致シタノデゴザイマシテ、
  二囘關稅引下ト云フヤウナコトガ新聞ニモ
  出タコトガゴザイマス、ドウモ是ハ甚ダ困
  リマスコトニハ、臺灣ノ砂糖ヲ關稅引下ニ
  依ッテ下ゲル、斯ウ云フコトニナリマスト、
  マア砂糖ノ値段ガ下ル、砂糖ノ値段ガ下ル
  下、御承知ノ通リ沖繩縣ノ砂糖、ソレカラ
  北海道、各方面ニ於キマスル砂糖ガ、ソレ
  ハ困ル、關稅ヲ下ゲラレタノデハ自分等ハ
  堪ラヌノダ、斯ウ云フノデ、殊ニ沖繩縣ニ
  於テハ中々是ハ必死ノ防禦運動ガ始マルノ
  デゴザイマス、ソレデ既ニ一二囘此點ニ付
  キマシテ沖繩縣デ出來ルヤウナ砂糖ニ付テ
  ハ關稅ヲ引下ゲナイノダ、臺灣デ出來ルヤ
  ウナ砂糖ニ付テノ關稅ヲ引下ゲルノデ、沖
  繩縣デ出來ルヤウナ下級糖ニ付テハ引下ゲ
  ナイノダ、ソレダカラ君等ノ方ハ暫ク其儘
  見テ居テ吳レナイカ、斯ウ云フコトヲ話シ
  タコトガアッタノデアリマス、サウシマシ
  タ所ガ結局沖繩縣產出ノ砂糖ト云フモノハ
  全國デ出來マス砂糖ノ一割位ノモノデゴザ
  イマスガ、自分ノ方ノ砂糖デ以テ砂糖ノ値
  段ヲ左右スル譯ニイカヌノダ、其爲ニ臺灣
  ガ落チルト云フコトデアルナラバ結局沖繩
  縣ノ砂糖モ落チテ來ル、ソレダカラ臺灣糖
  ガ下ゲラレルコトガ自分等ノ方ニ大變苦痛
  ダ、斯ウ云フノデ中々必死ノ運動デ、結局
  衆議院ニ於キマス請願ノ委員會等ニ於キマ
  シテモ、兩方面カラノ陳情ニ接シテ、委員
  會ハ或ハ私ノ記憶ノ間違カモ分リマセヌ
  ガ、何レトモ採決シ兼ネルヤウナ狀態ニ立
  至リマシタコトハ、是ハ一二年前ノコトデ
  アルヤウニ思フノデゴザイマス、其後私ハ
  稅務ノ方ト一時緣ヲ切ッテ居タノデゴザイ
  マスガ、前ニ一月二十日ニ提案致サレタ
  一般關稅ノ改正モ、私ハアトデ見タノデゴ
  ザイマスルガ、砂糖關稅ニハ觸レテゴザイ
  マセヌデシタ、ソレデ砂糖ノ關稅ヲドウス
  ルカト云フコトハ一ツ今後ニ於テ十分〓究
  シテ見タイ、斯ウ云フコトデ實ハ其儘ニ
  ナッテ居ッタ模樣デゴザイマス、此問題ハ
  面ニ於キマシテ、砂糖ヲ安クスルト云フコ
  トニ付テ考慮シナケレバナラヌノハ、一ツ
  ハ仰シヤル通リ關稅ノ問題デアリマスガ、
  一ツハヤハリ臺灣ニ於ケル米作ノ關係デゴ
  ザイマシテ、米ヲ臺灣デ拵ヘテ內地ト同樣
  ナ値段デ賣レル、斯ウ云フコトデゴザイマ
  スノデ、米ガ非常ニ有利ナモノデゴザイマ
  スカラ、隨テ此砂糖ヲ臺灣ノ農民ガ安ク作
  ラナイデ、此二三年來頻リニ砂糖ノ値
  ガ上ル、米ノ値段ガ上ルト同時ニ砂糖
  ノ黍ヲ賣ル値段モ上ルト斯ウ云フコト
  デゴザイマシテ、昭和六年、七年當時
  ニ於キマシテハ、砂糖黍ノ買收値段ガ大
  分下ッタノデゴザイマスガ、此一二年最近
  ノ狀態ニ於キマシテハ、再ビ黍ノ買收値段
  ガ上ッテ來ル、米ノ値段ノ騰貴ニ連レテ上ツ
  テ來ル、斯ウ云フコトデゴザイマスノデ、
  先般來臺灣ノ糖業者ニ、燃料政策ノ關係上
  「アルコール」ヲ安ク拵ヘタラドウダト云フ
  ヤウナ相談ヲ致シマシタ際ニモ、中々此米
  ノ問題ガ引掛ッテ旨ク行カヌノデゴザイマ
  ス、ソレデ結局マア砂糖ノ値段ノ下リマス
  コトハ、非常ニ吾々トシテモ希望致スノデ
  ゴザイマスガ、一面ニ於テ關稅ノ問題ト、
  ヤハリ農耕地ノ方面ノ問題ヲ解決シテ行ク
  ヤウナ方法ニ向ヒマセヌト、生產費ハ高ク
  ナリ、關稅ハ下ルト云フヤウナコトデ其間
  ノ板挾ミニナッテシマッテモイカヌヂヤナイ
  カ、結局農耕地ノ方ノ問題ガ、或ハ根本的
  ノ解決策デハアルマイカ、斯樣ナ感ジガ致
  シテ居ルノデゴザイマシテ、前內閣ニ於キ
  マシテモ、砂糖ノ關稅ヲドウスルカト云フ
  問題ハ、解決ヲ見ズ、實ハ其儘引繼ガレタヤ
  ウナ次第デゴザイマスノデ、只今仰シヤイ
  マス通リ、此問題ハ今後ニ於ケル重要ナ問
  題トシテ、獨リ砂糖バカリノ問題デハゴザイ
  マセヌ、臺灣ニ於ケル米作ニ關聯シテノ問
  題又燃料國策トシテノ「アルコール製造
  ノ上カラ見テノ問題、各方面ノ問題ガ茲ニ
  關聯シテ重ナッテ來テ居リマスノデ、是ハ早
  急解決サレナケレバナラナイ問題デハアル
  マイカト、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス次
  第デゴザイマス

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• 066・小山倉之助

  ○小山委員　大變詳細ニ御意見ヲ伺ヒマシ
  テ洵ニ滿足致シマスガ、唯私ノ憂ヘマスコ
  トハ、幼稚產業デアレバ之ヲ保護スル價値
  ガアリマスケレドモ、旣ニ發達シ切ッタト
  言ハレルヤウナ、爛熟シタヤウナ日本ノ砂
  糖會社ヲ、高イ關稅ヲ以テ之ヲ保護シテ、非
  常ナ利益ヲ擧ゲサシテ、サウシテ一方ニ於
  テハ消費稅ヲ上ゲテ大衆ニ重課スル、斯ウ
  云フ非難ガ大分アルノデアリマスカラ、ヤ
  ハリ相當發達シタ工業ニ對シテハ關稅ヲ下
  ゲテ、サウシテモウ餘リ儲ケ過ギル、餘リ高
  過ギル場合ニハ、外國カラ相當ノ原料ガ
  入ッテ來ルト云フヤウナ際ドイ所マデ持ッテ
  行ッテ、サウシテ會社自體モ改良ヲスルヤウ
  ニ-今デハ色々ナ理由ヲ付ケテ、過去ノ
  利益ヲ其儘維持シテ行カウ、サウ云フ風ナ
  疑モアルノデアリマスカラ、其點ニ付テハ
  將來トモ御〓究願ヒタイノデアリマス、今
  沖繩縣ノ御話ガ出マシタガ、沖繩デ生產サ
  レル僅カバカリノ砂糖ヲ保護スル爲ニ、全
  體ニ餘リニ過當ノ利益ヲ得サセルト云フ結
  果ニナリマシテハ、是モ亦吾々ノ希望ト餘
  程離レテ居ルノデゴザイマシテ、沖繩ノ砂
  糖ナリ、或ハ北海道ノ砂糖ハ別ノ方法デ是
  ハ保護シテ貰フ、極ク僅ノ「パーセンテー
  ジ」ヲ持ッテ居ル所ノ生產地ヲ保護スルガ爲
  ニ、大量生產ノ大會社ニ對シテ過當ノ利益
  ヲ與ヘルト云フヤウナコトハ、將來トモ注
  意シナケレバナラヌ重大ナル問題ト考ヘテ
  居リマスガ爲ニ、此問題ニ一寸觸レタ次第
  デアリマス、砂糖ノ消費稅ヲ又何等カノ機
  會ニ上ゲルト云フヤウナコトガナイトモ限
  ラヌノデアリマス、旣ニ馬場案ニ於キマシ
  テモ、二割以上ノ增稅ヲショウト云フノデ
  アッタガ、之ヲ一割五分ニ減ラシタト云フ程
  度ニ過ギナイノデアリマスカラ、是ハ何時
  上ゲラレルカ分ラナイノデアリマス、消費
  稅ガ上ル每ニ、今ノヤウナ大會社ヲ保護ス
  ルト云フヤウナ氣分ヲ國民ニ與ヘルノデア
  リマスカラ、其點特ニ御留意ヲ願ヒタイト
  思フ
  マダ商工省ノ政府委員ガ御見エニナッテ
  居リマセヌカラ、御見エニナルマデノ間御
  伺致シマスガ、酒造稅ニ對シテ、私共ニ色々
  陳情ガ參ッテ居リマスガ、、馬場案ニ於キマシ
  テハ、所謂新シイ酒、從來ノ釀造法ニ依ラ
  ナイ酒ト、舊來ノ釀造法ニ依ッテ居ル酒ノ
  率ヲ大體同ジ程度ニ上ゲタヤウデアリマス
  ガ、今囘ハ之ヲ御廢止ニナッタノデアリマ
  スカ、將來ハドウ云フ風ニナサルカ、又現在
  ノ取扱ハドウナッテ居リマスカ、此點ヲ承リ
  タイ

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• 067・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今ノ御尋ノ新シイ酒ト
  仰シヤイマスノハ、或ハ新〓酒ト申シマス
  ル例ノ「アルコール」カラ漸次之ヲ酒ニ致シ
  マスル所ノ、酒精含有飮料トシテ査定致シ
  マスル理〓邊リデ造ッテ居リマスル酒ノコ
  トカト思フノデゴザイマスガ、是ハ前ノ案
  ニ於キマシテハ、今日四十二圓ノ稅金ヲ五
  十二圓ニ致スト云フ筈デゴザイマシタ、ソ
  レカラ普通ノ〓酒、是ハマア四十四圓、四
  十六圓、四十八圓、五十二圓ト云フヤウナ
  差別ハアッタノデアリマスガ、マア四十八圓
  程度ノ課稅ヲ受クルノガ多カッタラウト思
  フノデアリマスガ、結局四十八圓ト五十二
  圓ノ間ニ四圓ノ差ガゴザイマス、今囘ハ酒
  ノ方ヲ三圓落シマシテ四十五圓ニ致シタノ
  デゴザイマス、ソレカラ一方ノ酒精含有飮
  料ノ方ハ二圓落シマシテ五十圓ノ課稅、斯
  ウ云フコトデゴザイマスノデ、其差ガ五圓
  アルノデゴザイマスガ、何レモ下ルノハ下
  リマシタガ、サウ大シタ開キハナイ積リデ
  アリマス

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• 068・小山倉之助

  ○小山委員　此稅率ハ今五圓ノ開キガアル
  ト仰セラレマシタガ、ヤハリ五圓ノ開キ程
  度デ將來ノ御計畫ヲ御進メニナルノデアリ
  マスカ、是ハ暫定的ノモノデアリマスカ、或
  ハ馬場案ノ如ク大體同ジ程度ニ持ッテ行カ
  ウト云フ考デアリマスカ

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• 069・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　此前ノ案ニ於キマシテモ
  同率デハゴザイマセヌ、〓酒ノ中ノ特別ニ
  割水ノ效クト云フヤウナモノガ五十二圓ト
  ナッテ居ッタノデアリマスルガ、恐ラク此五
  十二圓ノ適用ヲ受ケル酒ト云フモノハ殆ド
  ゴザイマセヌト言ッテモ宜イ位デ、大體四
  十八圓ノ適用ヲ受ケルモノデアッタ模樣デ
  アリマス、隨テ一方ハ五十二圓、一方ハ四
  十八圓ト、四圓位ノ課稅ノ差デアッタカト
  思フノデアリマス、今囘ハ一方ハ五十圓一
  方ハ四十五圓デゴザイマスノデ、其下ッタ差
  ハ一圓デゴザイマス、ソレデゴザイマスガ、
  一體此新シイ酒、〓酒ト云フ名義ガ當ルカ
  ドウカ分リマセヌガ、是ハ一面ニ於キマシ
  テ、水ガ餘計ニ割レルト云フヤウナ關係カ
  ラ致シマシテ、今日非常ナ賣行デゴザイマ
  ス、其酒ガ果シテ旨イカ不味イカト云フコ
  トハ別ト致シマシテモ、兎ニ角非常ナ賣行
  ヲ示シテ居リマシテ、每年增石ニ次グニ增
  石ヲ致シテ居リマスノデ、普通ノ〓酒ガ寧
  ロ減退ニアリマス所ヘ、コチラノ方ハ非常
  ナ增シ方デゴザイマスカラ、多少コチラノ
  負擔ヲ引上ゲテモ宜イノデハアルマイカト
  思ッテ、其間ニ差等ヲ置イテ引上ゲマシタ次
  第デゴザイマス、將來之ヲ同ジニスルカド
  ウカ、斯ウ云フ御尋デゴザイマスルガ、將
  來ノ問題ト致シマシテハ、是ハ餘程考究致
  シテ見ナイト一寸今日ノ所御返事致シ兼ネ
  ルノデアリマス

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• 070・高橋守平

  ○高橋委員　關聯シテ質問ヲ御許シ願ヒマ
  ス

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• 071・増田義一

  ○增田委員長　高橋君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=71

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• 072・高橋守平

  ○高橋委員　今酒ノ造石稅ノ問題ガ出テ居
  ルノデ承リタイノデゴザイマス、馬場案デ
  ハ等級ヲ作ヲテ課稅シタト心得テ居リマス
  ガ、今度ハ一本デ行クコトニナッテ居リマ
  ス、ソコデ御伺シタイノハ、農村ノ立場カ
  ラ考ヘマシテ負擔ノ不均衡デアルト云フコ
  トハ色々ノ點デ言ハレテ居リマスシ、又事
  實デアリマシテ、ヤハリ其關係カラ酒ノ稅
  ノ問題ヲ御尋シテ見タイノデアリマス、ト
  云フノハ御承知ノ通リ同ジ〓酒ノ中デモ一
  升五圓ノモノモアレバ、七十錢ノモノモア
  ル、ソレガ皆同ジヤウニ、一律一體ニ今囘ノ
  改正デモ一石ニ付テ四十五圓ト云フ課稅ヲ
  シテ居ルト云フコトニナリマスト、其割合
  ガ五圓ニ對シテモ一升四十五錢デアリマス
  ガ、七十錢ノ〓酒ニ對シテモ四十五錢取ラ
  レル、サウ云フコトニナリマスト、田舍ノ
  本當ニ困ッテ居ル連中ガ飮ンデ居リマスル
  酒ハ七十錢ヲ割ルヤウナ酒デアル、サウスル
  ト其諸君ハ實質ノ酒ノ代ノ倍以上ノ稅金ヲ
  消費稅トシテ取ラレルト云フ結果ヲ見ル、
  方都會地デ裕福ナ生活、資產ノアル者達ガ
  飮ム酒ハ、五圓デハアルケレドモ其稅金ハ
  割合ニ少イト云フ風ナ點デ、當然酒ノ價格
  ニ依ッテ等差ヲ付ケテモ然ルベキモノダト
  考ヘルノデアリマス、ソコデ私共ハ前ノ馬
  場案ノ時ニ或種ノ等差ヲ付ケタニ對シテ、
  其等差ノ付ケ方ガマダ不十分デハアルマイ
  カ知ラント云フ疑念ヲ持ッタコトモアルノ
  デゴザイマス、所ガ今囘ハ又昔ニ還元サレ
  テ一本ノ課稅率ニナッテシマッタト云フコト
  ハドウモ課稅ノ公平ノ失シテ居ルノデハ
  ナイカ知ラント、斯ウ考ヘルノデアリマシ
  テ、來ルベキ議會マデニハ中央地方ヲ通ジ
  テノ稅制ノ改正ヲナサル御意思ヲ度々御發
  表ニナッテ居リマスルノデアリマスルカラ、
  此次ニ御改正ナサイマス時ノ考へ方、酒ノ
  賣買價格ニ依ッテ相當ニ差別ヲ付ケタ稅額
  ニスル御考ガアルカドウカ、其點ヲ一ツ承
  リタイ

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• 073・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今高橋サンカラノ御尋
  ノ點ハ洵ニ御尤ナ點デアリマス、理窟カラ
  申シマスレバ、ヤハリ是ハ從價稅ガ最モ負
  擔ノ均衡ヲ得ルノデハナイカト思ヒマス、
  併シ酒ヲドウシテ從價稅ニシタラ宜イカト
  云フコトハ、中々名案ガナイノデゴザイマ
  ス、ソレデ實ハ從來カラモ屢〓之ヲドウシ
  タラ從價稅ニ出來ルデアラウカト云フコト
  ヲ苦心致シタノデゴザイマスガ、結局名案
  ガゴザイマセヌ、製造元デ造ッタ時分ノ價
  格デ行クカ、サウスルト販賣會社ノヤウナ
  モノヲ拵ヘテ、其處ヘ安ク賣ッテ其處カラ
  高ク賣ルコトニシタ場合ハドウスルカ、是
  ハ結局酒ノ販賣系統ヲ押ヘテ行カナケレバ
  分ラナイ、ソレト困リマスコトハ、酒ノ値
  段ノ髙イ安イガ銘柄ニ依ル場合ガ可ナリ多
  イノデアリマシテ、或ハ從價稅ト云フモノ
  ハ昔カラアル有名ナ銘柄ヲ指定シテシマッ
  タ方ガ手取早イノデハアルマイカト云フヤ
  ウナ感ジモ致シタノデゴザイマス、中々此
  從價稅ハ實行上難カシイモノデゴザイマス、
  ソレデ前ノ撤囘致シマシタ法律案ノ酒ノ稅
  金是ハマア從質稅ト呼ンデ居リマシタノ
  デ、是ハ從價稅デハナイト私ハ存ジテ居ル
  ノデゴザイマスガ、是モ實ハ私ガ了解致シ
  マスルノニ日ガ淺イモノデゴザイマスカ
  ラ、十分ニ能ク分ラヌノデアリマスルガ、
  此五十二圓ノ一番最高稅率ノ適用ヲ受ケル
  酒ガ、或ハドウモ農村方面デ用ヒラレルモ
  ノガ此中ニ入ッテ居ルノデハナイカト云フ
  疑ヲ私起シタノデアリマス、ソレデ是等ノ
  從質稅ハ納稅者モドウモ能ク分ラヌ、又徵
  稅官モ能ク分ラヌ、非常ニ此方法ガ難カシ
  イモノデゴザイマスカラ、サウ云フヤウナ
  コトヨリモ一應現在ノ酒造稅ヲ其儘ヤッテ
  置キマシテ、一ツモウ少シ是ハ考ヘテ見タ
  イ、果シテ此方法デ從價稅的ニ行ケルモノ
  デアリマスルナラバ、是ハ面白イ行キ方ダ
  ト思フノデアリマスガ、ドウモ此行キ方ガ
  果シテ從價稅的ニ行クノカ、或ハ逆ニ高イ
  酒ガ安イ稅金ヲ受ケテ、安イ酒ガ或ハ高イ
  稅金ヲ受ケルノデハナイカト、斯ウ云フヤ
  ウナ疑ヲ私一寸持ツモノデゴザイマスカラ、
  アノ案ヲ此處デ說明スルダケノ實ハ自信ガ
  持テナカッタノデゴザイマス、此點ニ關シマ
  シテハ一ツ十分〓究致シマシテ、適當ナル
  名案ガゴザイマシタナラバ、御希望ニ副フ
  ヤウニ致シタイト存ジテ居リマス、唯、今
  オ前ソレヲ持ッテ來ル確信ガアルカト斯
  ウ仰セデゴザイマスト、一寸私ニ其確信ハ
  今日ノ所ゴザイマセヌ

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• 074・高橋守平

  ○高橋委員　大體政府ノ意ノ有ル所ハ諒承
  致シタノデアリマスガ、ナニシロ此稅額ハ
  相當ノ數字ニ上ッテ居ル問題デアリマシテ、
  此相當ノ數字ニ上ル稅額ノ對象物デアリマ
  スル〓酒ガ全ク只今モ御話ノアルヤウナ風
  ニ、又先刻私ガ申上ゲタヤウニ、非常ニ價格
  ニ差額ガアルノデゴザイマスカラ、一升六
  十錢ノ酒モアレバ一升五圓以上ノ酒モアル
  云フ風ナ形デアリマシテ、是ガ一律ニ課稅
  サレルト云フコトハ非常ニ不均衡、不公平
  ト云フ風ニ常識的ニ考ヘラレルノミナラ
  ズ、ソレガ延イテハ無產階級ノ人達ガ餘計
  重稅ヲ受ケルト云フ風ナ關係ニモ考ヘラレ
  ルノデアリマスカラ、困難デアルカラシテ
  ドウモ已ムヲ得ヌト云フ風ナコトデナク、
  困難ダガ一ツ是ダケヤッテ除ケテ見セヨウ
  ト云フ御手腕ヲ發揮セラレンコトヲ希望致
  シ·フース

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• 075・小山倉之助

  ○小山委員　商工省ノ政府委員ガ見エマシ
  タカラ、「ガソリン」ニ關係スル問題ト取引
  所稅ニ關スル問題ニ付テ御伺致シタイト思
  ヒマス、先ヅ「ガソリン」ノ方カラ御伺致シ
  マスガ、丁度此「ガソリン」稅ハ只今大藏省
  ノ政府委員ニ御尋致シマシタ通リニ、砂糖
  ノ消費稅ノ如ク大會社、大資本家ヲ擁護シ
  テ、サウシテ大衆ニ重課ヲスルノダ、サウ云
  フ疑ヲ持タセル所ノ著明ナ例デアリマス、
  御承知ノ如ク石油業法ガ制定セラレマシ
  テ議會ヲ通過シテカラ、初メテ日本ニ於ケ
  ル某會社ガ其株價モ上騰スレバ、配當モ亦
  增加シテ行ク、今ヤ破竹ノ勢デ行ッテ居リマ
  スガ、一方ニ於テハ消費者ノ方ハ非常ニ困ッ
  テ居ル、例ヘバ此統制ガ行ハレマシタガ爲
  ニ-少シ「ガソリン稅ノコトハ橫道ニ入
  ルヤウデアリマスガ、御聽取ヲ願ヒタイノ
  デアリマス、各地方ニ於テ、特ニ東北地方
  ニ於テ大型漁船ナリ、或ハ小型漁船ナリ、遠
  洋、近海ノ漁業ニ當ル漁船ガ「ガソリン」ノ
  供給ガ不十分ナ爲ニ非常ナ困難ヲ致シマシ
  テ、一定ノ時ニ「ガソリン」ノ供給ヲ受ケル
  コトガ出來マセヌ、遠洋カラ歸ッテ來テ其
  港ニ一日カ二日待ッテ、更ニ出掛ケヨウト致
  シマシテモ、油ノ供給ガ能ク行カヌ、是ハ
  販賣統制デ以テ其供給ガ豐カデアリマセ
  ヌ、低廉ニシテ豐富デナイ、高價ニシテ頗
  ル供給ガ不足ヲシテ居ルノデアリマス、私
  ハ邪推スルノデアリマスガ、過般大隆丸ガ
  沖デ遭難ヲシタ、是ハ石油ガ「タンク」カラ
  漏レタンダト云フコトデスガ、其時私直感
  致シマシタノハ、是ハ石油ガ漏レタンヂヤ
  ナイ、恐クハ石油ヲ澤山積ムコトガ出來ナ
  クテ、其積ムコトガ出來ナカッタコトヲ漏
  レタト言ハナケレバ犯罪ニナル爲ニ-石
  油ノ供給ノ足ラナイノニ無理ニ僅カバカリ
  積ンデ出タンヂヤナイカ、是ハ全然私ノ邪
  推デアリマス、併シ大型漁船或ハ小型漁船
  デ近海ニ出掛ケル船ガ、油ノ供給ガ受ケラ
  レナイ、油ヲ適當ノ時期ニ得ルコトガ出來ナ
  イ爲ニ、彼等ハ僅ナ「ガソリン」ヲ積ンデ出掛
  ケテ行クト云フコトガ多イノデアリマス、卽
  チ石油業法ガ通過シタガ爲ニ、一方ニ於テ
  ハ會社ノ方ハ非常ニ利益ヲ受ケル、一方ニ於
  テハ値ガ上ッテ、一方ニ於テハ會社ノ基礎ハ
  鞏固ニナッタ、ソレハ鞏固ニナルノハ結構デ
  アリマス、併ナガラ一方ノ大衆ノ要求ニ應
  ズルコトガ出來ナイヤウナ、サウ云フ仕組
  ガ長ク繼續致シマスレバ、政府ノヤリ方ハ
  徒ラニ事業ノ保護ヲシテ、サウシテ大衆ヲ
  見ナイ、卽チ此度ノ「ガソリン」ノ如キモ輸
  入稅ニ於テ五錢、又消費稅ニ於テ五錢、十
  錢急ニ上ゲル、皆サンノ如ク自家用ノ自動
  車ヲ御持チニナッタリ、官廳ノ自動車ニ御
  乘リニナル方ハ御困難ヲ御感ジニナリマセ
  ヌデセウガ、私共圓「タク」黨ニ取リマシテ
  ハ洵ニ重大ナル影響デアリマシテ、各陳
  情者モ此際之ニ對スル色々ナ不平ヲ吾々ニ
  述ベテ參ッテ居ルノデアリマス、併シ消費
  稅ガ高イト云フヤウナコトハ言ッテ居リマ
  スガ、之ニ對シテ反對ノ態度ヲ執ッテ居ナ
  イヤウナ者モアリマス、國家非常時ノ際デ
  已ムヲ得ヌ、デアルカラ其消費稅ノ負擔ニハ
  應ズルガ、地方ノ公課、或ハ地方ノ稅金ヲ
  下ゲテ貰ヒタイト云フヤウナ希望ノ者モア
  ルノデアリマスガ、左樣ナ希望ヲシテ居リマ
  ス一方ニ於テ、石油業法ニ於テ約束シタル
  所ノ所謂「ガソリン」ノ貯藏、或ハ油價ノ恆
  久性ト申シマスカ、絕對動カヌト云フ譯ニ
  ハ參リマセヌガ、「フラクチエーシヨン」ト
  カ、餘リ暴騰サセルコトヲ防グト云フヤウ
  ナコトノ約束ハ實行サレテ居ナイ、政府ハ
  サウ云フ業法ヲ發布シテ、國民ニ約束シタ
  コトハ實行サレテ居ナイデ、サウシテ値ヲ
  上ゲル、非常時ノ財政ヲ賄フ爲ニ値ヲ上ゲ
  ルト云フ方ニ力ヲ入レテ居ッタナラバ、軈テ
  大衆ハソレニ對シテ不平ヲ懷ク、大衆課稅
  ヲスルモノデアッテ一部少數ノ利益ヲ圖ル
  モノダ、斯ウ云フ疑ガ何時マデモ解ケナイ
  ノデアリマス、只今石油業法ノ事ヲ申スノ
  ハ稍〓的外レノヤウニ考へラレルカモ知レ
  マセヌガ、今囘ノ「ガソリン」稅增徵ニ付テ、
  之ニ對シテ國民ノ疑ヲ解カントシテ居ル所
  デアリマスカラ、其貯藏ノ狀態竝ニ今マデ
  ノ經過ヲ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=75

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• 076・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　石油業法ニ基キマスル貯
  油義務ノ履行ニ付テ御質問ガゴザイマシタ
  ガ、此貯油義務ノ履行ニ付キマシテハ、色
  色實行上ニ困難ナ點ガゴザイマス、殊ニ外
  國會社ノ關係ニ付テ色々困難ナ問題ガゴザ
  イマシテ、御承知ノ通リ、此貯油義務ノ履
  行ニ關シマシテハ、或ル程度其施行期限ヲ
  延期致シタト云フヤウナ事實モゴザイマ
  ス、是ハ實情ニ應ジマシテ、或ル程度其施
  行期日ヲ延期スルト云フヤウナ已ムヲ得ザ
  ル狀態ニナッテ居ッタノデアリマス、併ナガ
  ラ此貯藏義務ニ付キマシテモ、其後各會社
  ニ於キマシテ、之ニ對シテ十分ニ從フト云
  フコトニナッテ居リマシテ、現在ハ內地會社
  ニ於キマシテハ、完全ニ之ヲ履行致シテ居
  リマス、又外國會社ニ付キマシテモ、或ル
  程度ノ措置ヲ講ジテ、此義務ヲ完全ニ履行
  スルト云フコトニ付テハ大體ノ諒解ヲ得マ
  こと、現ニ其實施ヲ致スト云フ過程ニアル
  ノデゴザイマス、決シテ此貯藏義務ニ付テ
  怠ッテ居ルト云フヤウナ關係ハゴザイマセ
  ヌ
  尙只今御質問ノ當面ノ內容ニハナッテ居
  リマセヌデシタガ、此「ガソリン」ニ付テ、
  非常ニ其稅ガ高クナッテ、隨テ「ガソリン」ノ
  値段ガ高クナリ、自動車營業者等ニ對シマ
  シテ、非常ナ影響ヲ生ズルト云フ御意見デ
  ゴザイマシタガ、此點ハ洵ニ御尤ト感ズル
  ノデゴザイマス、只今御意見ニモゴザイマ
  シタヤウニ、「ガソリン」ニ對シテ或ル程度
  ノ負擔ヲスルト云フコトハ、燃料政策ノ立
  前カラ見テ洵ニ已ムヲ得ザル事情デアルノ
  デゴザイマスガ、當面ニ於テ是ガ自動車營
  業者ニ對スル影響ト云フモノモ相當考ヘナ
  ケレバナリマセヌコトハ勿論デゴザイマ
  ス、隨テ之ニ付テハ現在或ハ其業者ノ代表
  者其他各方面ノ學識經驗者、權威者ヲ集メ
  マシテ、此自動車營業者ニ對スル營業ノ改
  善、統制、其外色々ナ事項ニ付テ目下色々
  其〓究ヲ致シマシテ、之ニ依ッテ生ズル影響
  ノ緩和ニ折角努力致シテ居ルノデゴザイマ
  ス、此點モ附加ヘテ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=76

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• 077・小山倉之助

  ○小山委員　國民ニ約束シタ貯藏ノ狀態、
  サウ云フコトハ最初約束シタ通リニハ行。ツ
  テ居ナイガ、其約束ニ近イヤウニ今努メテ
  居ル、斯ウ云フ御話デアリマシタガ、ソレヲ
  御努メニナルコトハ洵ニ結構デアリマス、
  將來トモ十分其點ニ御留意ヲ願ヒタイト思
  ヒマス、唯私共ガ茲ニ非常ニ疑間ニ思ヒマ
  スノハ、何セ日本デノ需要ハ二百六十萬瓲
  ト言ハレテ居リマスガ、二百六十萬瓲ノ中、
  二十二萬瓲シカナイ、僅ニ五分七厘程度シ
  カ出來ナイ、此日本ノ石油ニ對シテ餘リニ
  保護ガ急ニシテ、之ヲ焦ッテ早ク其全部ノ
  需要ヲ充タサウト言ッテモ、ソレハ中々ムヅ
  カシイ、容易デハアリマセヌ、人工的ノ石油
  ヲ造ラウト致シマシテモ、ソレガ何時ノ時
  代ニ成功スルカ、何時ノ時代ニ其需要ヲ充
  シ得ルカ分ラナイヤウナ狀態デアリマス、
  早ク自給自足ヲヤラウト御考ニナル結果、
  餘リニ功ヲ急イデ、足リナイ所ノ其供給ヲ
  益〓不足ニシテ、其供給ガ滑ラカデナイ爲ニ
  起ル所ノ國家ノ損害、殊ニ漁業方面ノ損害
  ハ相當大キイモノデアリマス、デアリマス
  カラ、自足自給ト申シマシテモ、全體ノ需
  要ノ五分七厘位ノ程度シカ出來ナイ、此石
  油ヲ豐富ニ供給スルト云フコトガ一般ノ利
  益ニナル、豐富ニ提供セシムルト云フ方策
  ヲ立テナイデ、僅ニ製造シテ居ル所ノ一ツ
  カ二ツノ會社ヲ保護センガ爲ニ、多數ノ不
  利益ヲ招クト云フヤウナコトハ、是ハ國家
  全體ノ所謂「ユニフオーム」、全部ニ行渡ッタ
  產業ノ發達ヲ期スル上ニ、非常ニ影響ヲ與
  ヘルモノデアリマスカラ、其點ニ付テハ將
  來トモ御留意ヲ願ヒタイ
  ソコデ私ハ大藏省政府委員ニ御尋スルノ
  デアリマスガ、「ガソリン」ノ消費稅ヲ上ゲ
  ルト云フコトハ、「ガソリン」ノ値ヲ上ゲル
  ンツ、其値ヲ上ゲルノハ詰リ是ハ酒精ト强
  制混合サセルンダ、酒精ガ高イガ爲ニソレ
  ト稍〓並行スルヤウニ「ガソリン」ノ値ヲ上
  ゲテ行クノダ、斯ウ云フ風ニ私共ハ理解シ
  テ居ルノデアリマスガ、「ガソリン」ノ値
  上、消費稅ノ增徵ト云フノハ斯ウ云フ目的
  カラ出テ居ルノデアリマスカ、其點ヲ御伺
  致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=77

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• 078・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　「アルコール」ノ混用ノ問
  題ハ、寧ロ是ハ副ノ問題デゴザイマシテ、
  正面ノ問題ハ寧ロ石炭液化、其他ニ依ル所
  ノ液體燃料自給ノ目的カラ來ルノデゴザイ
  マシテ、「アルコール」ノ値段ト云フモノハ
  勿論關係ハ致スダラウト思フノデゴザイマ
  スカ、併シ「アルコール」ノ混用ト云フ問題
  ハ、全體ノ一%カラ漸次二〇%マデ及ブ、
  卽チ石油全體ノ數量ノ二〇%ダケ混用ス
  ル、斯ウ云フコトデアリマスカラ、比較的少
  イ問題デアリマシテ、液體燃料自給ノ問題
  ハキトシテ、私ハ石炭液化ノ問題ダト思フ
  ノデゴザイマス、「アルコール」ハ只今ノ計
  畫ハ比較的初メハ少イノデゴザイマシテ、
  二%位入レテ行キマシテ、漸次增シテ行
  ク、斯ウ云フコトニ相成ルノデゴザイマス
  カラ、專賣局ノ計畫ト致シマシテハ、寧ロ
  「アルコール」ハ「ガソリン」ノ値段ト同ジ値
  段デ賣リタイ、隨テ多少ノ損失ハ政府ニ於
  テ負擔シテ行ク、斯ウ云フ計畫ニナッテ居ル
  ノデゴザイマス、尤モ果シテサウ云フ計畫
  デ行クカ、又將來ノ問題ト致シマシテハ
  「アルコール」ノ混用、多少高イ「アルコー
  ル」ヲ强制的ニ入レテ「ガソリン」ノ値段ガ
  其爲ニ結局一錢カ二錢上ルト云フコトヲ忍
  ンデ行クカ、是ハ將來ノ問題デゴザイマス
  ルガ、今日ノ問題ト致シマシテハ「アルコ
  ール」ヲ安ク賣リマシテ、其損失ハ國ニ於テ
  負擔シテ行ク、斯ウ云フ計畫ヲ致シテ居
  ル次第デゴザイマスカラ、從ッテ「アルコー
  ル」ノ爲ニ「ガソリン」ノ消費稅ヲ上ゲルト
  云フ譯ノモノデハゴザイマセヌ、併シ上ゲ
  テ行ッタ方ガ幾ラカ損失ヲ少クスルコトガ
  出來マスカラ、其點モ勿論必要デゴザイマ
  セウ、ケレドモ其點ハ寧ロ副作用ノ問題カ
  ト、斯ウ存ジテ居ルノデゴザイマス

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• 079・小山倉之助

  ○小山委員　サウ致シマスト、「ガソリン」
  ノ消費稅ヲ上ゲルノハ、日本ノ燃料國策カ
  ラ出テ居ルノダ、斯ウ解釋シテ宜シウゴザ
  イマスカ

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• 080・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　左樣デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=80

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• 081・小山倉之助

  ○小山委員　サウ致シマスト、關稅ヲ五錢
  上ゲ、消費稅ヲ五錢上ゲ、卽チ十錢上ゲタ
  ガ爲ニドレダケノ國策ニ效果ガアルノデス
  カ、其例ヲ一ツ御示シヲ願ヒタイ

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• 082・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　ドウシテモ石炭液化ヲシ
  テ行クニ際シマシテハ「ガソリン」ノ値ガ安
  イノデハ其工業ハ起リマセヌ、隨テ今日ノ
  場合ニ於キマシテ、一方ニ於テハ關稅ヲ五
  錢上ゲ、消費稅ヲ五錢上ゲ、合セテ十錢上
  ゲテ居ルノデアリマス、將來石炭液化ノ傾
  向カラ行キマスト、此程度ノモノデ宜イ
  カ、或ハ將來尙考ヘナケレバナラヌカト云
  フ問題ハ、一方ニ於テ石炭液化ニ依ル所ノ
  石油ノ生產費ノ問題トモ關聯シテ來ルト思
  フノデゴザイマス、英吉利ニ於キマシテ千
  九百二十八年ダト思ヒマシタガ、石炭液化
  ノ仕事ヲ始メル場合ニ於テハ八片程ノ關稅
  ヲ賦課致シマシタ、或ハ關稅ダケデ宜イノ
  カモ分リマセヌガ、併ナガラ先刻來ノ御話
  ニモゴザイマスヤウニ、內地ノ或ル一二ノ
  會社ガ、ソレデハ餘リ儲ケルデハナイカト
  云フヤウナ點モアルノデゴザイマスカラ、
  一面ニ於テ關稅ヲ上ゲ、一面ニ於テ消費稅
  ヲ賦課シ、全部關稅ヲ引上ゲテ、內地ノ一二
  ノ會社ガ餘リ儲カルヂヤナイカト云フヤウ
  ナ非難モ或ル程度マデ之ヲ抑ヘマシテ、此
  消費稅ノ賦課、關稅ノ賦課、其兩方面カラ行
  キタイト思ヒマシテ、關稅ト消費稅トニ賦
  課シタ次第デアリマス

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• 083・小山倉之助

  ○小山委員　御趣旨ハ能ク分リマシタガ、
  サウ致シマスト、今ノ液化デスガ最新式デ
  出來タ所ノ石油ノ生產費ト云フモノハ餘程
  安ク出來テ、其液化サレタモノハ市場デ以
  テ十分使ハレル程度ニ達シテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=83

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• 084・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　只今ノ御質問デゴザイマ
  シタガ、其前ニ先程說明ガ少シク或ハ惡カッ
  タノデハナイカト思ヒマス、貯藏ノ義務デ
  ゴザイマスルガ、貯藏ノ義務ハモウ一度御
  答致シマスルト、色々迂餘曲折ハゴザイマ
  シタガ、現在ハ內國會社ハ之ヲ實行シテ居
  リマスルシ、外國會社ニ付キマシテハ、色
  色「トラブル」ハアリマシタガ、其間ノ交渉
  ハ解決致シマシテ、目下其實施ノ手續中デ
  アルト云フコトヲ申上ゲマシタノデアリマ
  ス
  ソレカラ只今ノ第二ノ問題デゴザイマシ
  タガ、人造石油ハ實ハ是カラ起サウト云フ
  仕事デゴザイマシテ、是ガ爲ニハ目下立案
  ノ準備ヲ致シテ居リマスル帝國燃料會社、
  及ビソレカラ出資ヲ受ケマス各工場ニ於テ
  大體七年後ニ於テ二百萬瓩見當ノ自給自足
  ヲ致シ、供給ヲ致ス、斯ウ云フ目的ヲ以テ
  目下色々其計畫ヲ致シテ居ルノデアリマ
  入、其生產費ハ勿論當初ハ或ル程度高イノ
  デアリマスルガ、七年後ニ於テハ〓究モ進
  ミマスルシ、又規模モ擴大致シマスルト、
  自然ニ其生產費ハ低減ヲ致シマシテ目的ヲ
  達スルコトガ出來ルデアラウ、斯樣ニ考ヘ
  テ居リマス、而シテ是等ノ燃料政策ヲ實行
  致シマスル場合ニ於テハ、一面ニ於テ國家
  ハ相當多額ノ經費ヲ負擔シナケレバナリマ
  セヌガ、併ナガラ他面ニ於テ天然石油ノ方
  ガ非常ニ安イ、是モ御承知ノ通リデアリマ
  スルガ、日本ノ石油ト云フモノハ、外國ノ
  石油ト較ベマスルト極メテ安イノデゴザイ
  NX,隨テ非常ニ安イ石油ヲ土臺ニ致シマ
  スルト、此新シイ工業ノ振興ガ莫大ナ經費
  ガ掛リマシテ實行ガ非常ニ困難デアル、隨
  テ或ル程度ニ於テ石油ノ價格ヲ調節致シ、
  而シテ之ニ依ッテ一方面ニ於キマシテハ、新
  シク興ル工業トノ間ノ價格ノ差ヲ少ク致シ
  マス、他面ニ於テハ租稅ノ增徵ニ依ッテ生
  ズル所ノ經費ヲ是等必要ナル費用ニ充テ
  ル、兩方面ノ目的ヲ以テ斯クノ如キ施設ヲ行
  ハウ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デゴザイマス、
  隨テ是カラ興リマスル所ノ人造石油事業ノ
  生產費ハ、興リマスル當初ニ於キマシテハ
  或ル程度高イコトハ是ハ當然覺悟シナケレ
  バナラナイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=84

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• 085・小山倉之助

  ○小山委員　ドウモ大藏省ノ政府委員ト商
  工省ノ政府委員トノ御答辯ニ對シテ、私ハ
  ドチラヲ信ジテ宜イカ分ラヌト思ヒマス
  ガ、是カラ興ル人造石油ノ値段ト、現在利
  用シテ居ル所ノ値段トヲ合致サセルガ爲ニ
  上ゲタト云フヤウナ御考ヘデアレバ、人造
  石油ノ値段ガ上ッテ來レバソレニ追隨シテ
  何處マデ「ガソリン」ノ値ガ上ゲラレルカ分
  ラナイ、消費稅モ上ゲラレレバ、關稅モ上
  ゲラレル、現在十錢上ゲラレルノデアリマ
  スガ、其値段ニ追隨シテ行クト云フコトニ
  ナレバ、將來二十錢上ゲラレルカ、三十錢
  上ゲラレルカ、マダ出來モシナイ、商品ト
  ナッテ賣ッテモ居ナイ、將來ドレダケノ損害
  ヲ被ルカ分ラヌ、サウ云フ見透シノマダ確
  然ト付カナイ工業ノ生產費ト云フモノヲ目
  標トシテ「ガソリン」ヲ上ゲラレルト云フコ
  トデアレバ、是ハ國民ハ何ノ爲ニ稅ヲ收メ
  ルノカ、寧ロソレヲ液化工業ノ爲ニ使フト
  云フコトデアレバ理論モ通リマス、併シ一
  般租稅トシテノ收入ノ爲ニ其「ガソリン」ダ
  ケニ付テ上ゲラレルノハドウカ、ヤハリ國
  家ノ別個ノ政策トシテ現レテ來ルノデアリ
  マセウガ、ドウモ政府委員ノ御返答カラ見
  マスルト、ヤハリ此目的ハ酒精ト「ガソリ
  ン」ヲ混合サセテ行カウ、斯ウ云フ所カラ
  出發シテ居ルノヂヤナイカ、若シサウデナ
  イト仰シヤレバ、吾々一般消費者ト致シマ
  シテ、國民ト致シマシテハ、關稅ヲ上ゲ、
  消費稅ヲ上ゲテ、又復是ハ各會社ノ利益ヲ
  增進サセルノヂヤナカラウカ、斯ウ云フ疑
  ヲ持ツノデアリマスカラ、特ニ其點ヲモウ
  一度明確ニ御答ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=85

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• 086・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　私ノ申上ゲ方ガ惡イノデ
  ゴザイマシテ、液體燃料ノ關係ハ主ト致シ
  マシテ商工省デゴザイマスノデ、若シモ私
  ノ答辯ト商工省ノ政府委員ノ答辯トノ間ニ
  多少デモ齟齬ガアリト致シマスナラバ、ソ
  レハ私ノ答辯ガ間違ヒデアッテ商工省ノ政
  府委員ノ答辯ガ本當ダト云フコトニ御承知
  置ヲ願ヒタイト思ヒマス、只今小山サンノ
  再度ノ御尋デゴザイマスルガ、「ガソリン」
  ノ値、石油ノ値ヲ或ル程度以上ニ上ゲナケ
  レバ、石油ニ代ル代用燃料工業ガ興ラヌ、
  興ルノニ非常ニ不便デアル、斯ウ云フコト
  ハ事實デアルト思フノデゴザイマス、ソレ
  デゴザイマスルカラ、液體燃料工業ヲ興サ
  ウト云フ場合ニ於キマシテハ、勢ヒ「ガソリ
  ン」、石油ノ値ヲ引上ゲル政策ヲ採ル、斯ウ
  云フコトハドウデモ已ムヲ得ナイ方法デハ
  ナカラウカト思フノデアリマス、只今ノ
  御尋ハ石炭液化ノ問題ヨリモ、寧ロテル
  コール」ニ重點ヲ置イタ問題デハナイカ、
  斯ウ云フ御尋デアルト思フノデゴザイマス
  ルガ、ソレハ私考ヘマスノニ「アルコール」
  ノ問題ハ佛蘭西ニ於キマシテモ、獨逸ニ於
  キマシテモ、露西亞ニ於キマシテモ、何レ
  ノ國ニ於キマシテモ此「アルコール」ノ混用
  ト云フコトヲヤッテ居ルノデゴザイマスカ
  ラ、「アルコール」ノ混用ノ問題モ勿論重視
  致サナケレバナラヌ問題デゴザイマスル
  ガ、併シヤハリ液體燃料問題ノ主體ハ、石
  炭液化デアリマシテ、「アルコール」ハ代用
  燃料ノ中ニモ含マレマスケレドモ、ソレハ
  比較的副的ナ位置ニアルモノダト、斯ウ御
  承知下サッテ宜イノデハアルマイカト思フ
  ノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=86

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• 087・小山倉之助

  ○小山委員　政府委員ノ御答辯ハドチラデ
  モ宜シウゴザイマス、勿論値ガ高ケレパ新
  シイ「ガソリン」ヲ興スノニ便利デアリマス、
  又「アルコール」ト混用スルト云フコトニナ
  レバソレダケ「ガソリン」ノ整理ガ出來ル、
  ソレハドチラデモ結構デス、實ハ私之ニ付
  テ御質問ヲ申上ゲタイト云フ趣旨ハ、最初政
  府ガ此案ヲ發表サレマシタ時ニ「アルコー
  ル」ト混用サセルノダ、ソレニハ「アルコ
  ール」ノ値ガ高イカラ、ヤハリソレト大體
  竝行スルヤウニ「ガソリン」ノ値ヲ上ゲテ行
  キタイノダ、サウスルト割合ニ混用ハ容易
  ニ行ク、併シソレカラ生ズル損害ガアルカ
  モ知レナイカラ一ツ燒酎ノ專賣ヲスルノ
  ダ、所ガ今度燒酎ノ專賣ガ御取止ニナッタ
  樣子デアリマスカラ、燒酎ノ專賣デ以テ儲
  ケタ金デ損害ヲ塡補シヨウトシテ居ルノ
  ガ、燒酎ノ專賣ヲ止メルト云フコトニナレ
  バソレダケ損害ヲ國家ガ負ハナケレバナ
  ラヌ、或ハ之ヲ更ニ增稅ヲシテ一般消費者
  ニ之ヲ向ケルト云フ考カ、ソコニ私ハ疑點
  ヲ持ッタノデアリマスカラ、其點ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=87

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• 088・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　燒酎ノ專賣ヲ致シ、其益
  金カラシテ「アルコール」ノ損失ヲ補塡シテ
  行ク、是ハ私ハ同ジ關係ダラウト思フノデ
  アリマス、燒酎ヲ專賣カラ切離シマシテ從
  來通リノ民間ノ事業ニ致シマシテ、是カラ
  消費稅ヲ徵收スル、斯ウ致シマシタ所デ專
  賣益金ノ中ニ現レルカ、燒酎ノ消費稅額ト
  シテ現レルカ、其點ハ國ノ收支ニ於テモ同
  ジダト思フノデアリマス、燒酎ヲ離シテ專
  賣局デソコニ損ガアリマシタ所デ、一方八
  於テ燒酎ノ稅金ガ上ッテ來ル、斯ウ云フモノ
  デアリマスナラバ、專賣益金ガ減ッテ燒酎ノ
  稅金ガ殖エル、燒酎ヲ專賣ニスルナラバ燒
  酎ノ稅金ガ減ッテモ專賣ノ益金デ以テ「アル
  コール」ヲヤッテ行ク、結局國ノ財政ト致シ
  マシテハ右ヘ行クカ左へ行クカデ、ソコニ差
  異ノナイ問題ダト思フノデゴザイマス、燒酎
  ニ依ッテ莫大ナ專賣ノ益金ガアルカ、斯ウ云
  フコトデゴザイマスレバ、御承知ノ道リ燒
  酎ハ先般來大分御議論モゴザイマスガ、〓
  ネ庶民階級ノ飮ムモノデアルカラ、之ニ對シ
  テ僅カバカリデモ外ノ酒ト一〓ニ增稅スル
  ノハ怪シカラヌ、斯ウ云フ御說デゴザイマ
  スノデ、燒酎ヲ專賣ニ致シマシテ是カラ莫
  大ナ益金ヲ出スト云フ譯ニモ行キマスマ
  イ、隨テ其點ハ燒酎ヲ專賣カラ離シマシテ
  モ離サナクテモ、全體ノ收支計算ト致シマ
  シテハサウ大キナ開キノアルモノデハアル
  アイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=88

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• 089・三善信房

  ○三善委員　先程政府委員ト小山君トノ質
  問應答ノ中ニ現レマシタ「ガソリン」ノ問題
  デアリマスガ、今固「ガソリン」ニ對シテ關
  稅及ビ消費稅ラ課ケラレルノデアリマス
  ガ、是ハ液體燈料ノ國策トシテヤルノダ、
  斯ウ云フコトハソレハ其通リデアラウト思
  ヒマス、然ルニ先程政府委員ノ御答辯ハド
  チラノ政府委員ノ言ハレマシタコトデモ、
  石炭液化ノ爲ニ液化ノ生產費ガ幾ラデ出來
  ルカト云フコトハマダ分ッテ居ナイ、又
  無水「アルコール」ノ生產費ト云フモノガマ
  ダハッキリ分ッテナイヤウデアリマス、國
  家ガドレダケノ損ヲスレバ、宜イカト云
  フコトニ付キマシテハ、生產費ガ分ラヌケ
  レバ出來ナイ、只今大藏當局ノ述べラレタ
  通リニ、或ハ燒酎ノ專賣益金ヲ當テラレヤ
  ウト、或ハ他ノ稅金ヲ當テラレヤウト、ソ
  レハ別問題ト致シマシテ、兎ニ角國家ガド
  レダケノ損失ヲシタナラバ、此液體燃料國
  策ガ遂行セラレルカト云フコトハ重大問題
  デアリマス、ソレニハ生產費ガ分ラヌケレ
  バ出來ナイ、今マデノ「ガソリン」ニ付テ、
  關稅ニ五錢、消費稅ニ五錢上ゲデ、サウシ
  テ折合ガ取レルカドウカ、是ハ主トシテ生
  產費ノ問題ニナッテ來マス、ソレニ依ッテ差
  額ヲ、或ハ國家ガ損失ヲシナケレバナラヌ
  ト云フコトニナリマスカラ、此生產費ト云
  フモノハ、重大ナ問題ト思ヒマスガ、之二
  對シテノ大體ノ見當ガ付イテ居リマスレ
  バ、此際承ッテ見タイト思ヒマス

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• 090・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　人造石油ヲ製造致シマス
  ル場合ニ、先程申上ゲマシタヤウニ、當初
  ハ相當或ル程度生產費ガ高ク、七年後ニ於
  テハ其生產費ガ下ガル、而シテ其一般ノ天
  然ノ石油トノ差額ニ付キマシテ、ドウスル
  カト云フ問題デアリマスルガ、現在ノ石油
  ハ、先程申上ゲマシタヤウニ、各國ノ石油
  ノ値段ニ比ベマシテハ非常ニ低イノデゴザ
  イマシテ、各國ニ於テモ或ル程度之ニ對シ
  テ高率ナ稅金ヲ課ケテ居ル、斯ウ云フ關係
  デ一方面ニ於テハ、日本ニ於キマシテモ、
  此天然石油ニ對シマシテ稅ヲ課ケテ或ル程
  度價格ヲ、其意味ニ於テ調節ヲスル、ソレ
  デモ勿論人造石油ノ生產費ハ差額ガ相當ゴ
  ザイマスカラ、ソレハ一定ノ計畫ニ從ヒマ
  シテ、人造石油ノ製造會社ノ方ニ對シマシ
  テ助成金ヲ交付スル、兩々相俟ッテ人造石
  油事業ノ確立ヲ期シタイ、斯ウ云フ關係デ
  ゴザイマス、生產費ニ付キマシテハ極ク正
  確ニハ、只今申上ゲルノハ如何カト考ヘマ
  スルガ、全體ノ仕組ハサウ云フヤウナ仕組
  ニナッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=90

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• 091・三善信房

  ○三善委員　私共ハ生產費ガハッキリシナ
  ケレバ、國家ガドレダケ損失ヲシテ宜イカ
  ト云フコトガ分ラヌト思ヒマス、デ大體私
  共懸念シマスノハ、果シテ其石炭液化ガ巧
  ク行ッテ、サウシテ「ガソリン」ノ關稅ノ五
  錢引上ゲト、消費稅五錢引上ゲニ依ッテ「バ
  ランス」ガ取レテ行クカドウカ、若シ取レ
  ナイトスレバ、其差額ハ、ドレダケ國家ガ損
  失シタラ宜イカ、若シ國家ガソレ以上ノ損
  失ガ出來ヌト云フコトニナレバ、更ニ「ガ
  ソリン」ノ關稅ト、消費稅ヲ上ゲヤシナイ
  カ、茲ニ私共心配ヲ持ツ譯デアリマス、若
  シサウ云フコトニナレバ、大衆ノ爲ニ非常
  ニ迷惑ヲ來ス點モアリマスカラ、此點ガ私
  共ハ非常ニ心配デゴザイマスカラ、ドレダ
  ケノ生產費デ出來ルカ、是ハ餘程御考ニナ
  ラナケレバ、今後民間デ會社ヲ興サウト御
  考ニナッテモ、生產費ガ分ラヌケレバ、會
  社ヲ興シヤウガナイ、政府デ「アルコール」
  ノ專賣ヲシヤウト言ッテモ生產費ガ幾ラデ
  出來ルカ分ラヌデ、專賣シヤウト云フヤウ
  ナ、ソンナ杜撰ナコトデハイカヌト思ヒマ
  ス、一ツ是ハハッキリト御答辯ナサラヌケ
  レバイカヌト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=91

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• 092・篠原陸朗

  ○篠原委員　昨日承ッタ時ニハ、低溫乾餾
  ト瓦斯合成ト兩方アッテ、瓦斯法ニ付テハ
  水素ハ廢物利用ニ依ル方法ニ依ルナラバ、
  尙ホ低廉ニナル、斯ウ仰シヤッタ、デスカ
  ラ凡ソノ方法、吾々ハ技術者ヂヤナイデス
  カラ、アナタノ方デ凡ソ方法ガ分ッテ居ル
  限度デ、ドノ方法ガ凡ソドノ位デ、ドノ方
  法ガ凡ソドレ位カ-ソレカラ昨日ノ大臣
  ノ御答辯ノ中ニ「ガソリン」ヲ高クスル爲
  ニ、一方デハ自動車ニ對スル保護ヲ徹底サ
  セテ、サウシテ自動車ニ對スル免稅、其ノ
  他ノ方法ヲ採ル、サウシテ「ガソリン」ハ高
  イケレドモ自動車ハ安クスル、此方法ニ
  依ッテ獨逸ハ非常ニ潤ウタト云フ話デアリ
  マスガ、何カコチラデハ、漁船ニ對シマス
  ル油ノ課稅問題ガ起ッテ居リマスガ、之上
  對シテ漁船ニ對スル「エンヂン」カ、其他ニ
  補給ガアルサウデスガ、ソレハ昨日大臣ノ
  仰シヤッタヤウナ「ガソリンニ」對スル自動
  車ノ保護見タヤウナモノヲ其漁船ニ對シテ
  ハ實行スル方法ガ今一寸現ハレテ居ラヌ、
  ソレデアリマスカラ、一方瓦斯方法ガ起ル
  ト同時ニ、ソレ等ノ對象物ノ保護論ヲ商工
  省ハ御考ニナッテ居リマスカ、十二年度豫
  算ニハ其一端ハアルト云フ御話デアリマス
  カラ、何カ自動車ノ方バカリデナシニ、更
  ニ「ガソリン」對人造石油ノ瓦斯方法ト云フ
  モノト、併セテソレヲ緩和スル、其邊ノ方
  法モ、一〓ニ御答辯願ヘマセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=92

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• 093・川崎末五郎

  ○川崎委員　一寸關聯シテ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=93

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• 094・増田義一

  ○增田委員長　川崎君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=94

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• 095・川崎末五郎

  ○川崎委員　今ノ三善君ト篠原君ノ御質問
  ニ關聯シテ御尋ネシマス、私ハ素人デスカ
  ラ-又他ノ機會ニ御說明ニナッタカモ知
  レマセヌガ、今ノ日本ノ液體燃料ノ問題ニ
  付テ、今後ドウ云フ計畫デ、片方デ關稅ヲ
  課ケテ片方デ消費稅ヲ課ケテ、サウシテ助
  成シテ行ッテ、一方ドウ云フ計畫デ年々所
  謂代用燃料ト言ヒマスカ、人造石油ト云フ
  モノヲ供給サレル御見込デアリマスカ、僅
  カノモノヲ助成スル爲ニ、片方ノ國民大多
  數ノ大衆ニ消費稅ヲ課テ居ル、其利害得失
  ヲ考ヘナケレバナラヌ、實際ニ於テ今囘ノ
  關稅竝ニ消費稅ノ增徵ニ依ッテ、片方デ助
  成シテ年々ドレダケノ人造石油ナリ、サウ
  シタモノガ供給サレルヤウナ計畫ガ立ッテ
  居ルノデスカ、ソレノ見込ト實際ノ計畫ヲ
  一ツ御知ラセヲ願ヒタイ、極ク少數ノモノ
  ヲ助成スル爲ニ、多數ノ大衆ニ莫大ナ負擔
  ヲ課ケル、其間ニ-ドチラヲ採ルカ、私
  共ノ考デ言ヘバ、初ハ極ク少數ナラ、ソレ
  ニ對シテ政府ハ別途ノ方法デ助成シテ、或
  ル程度多數ノモノガ出來テ、是ガ一般大衆
  ニ供給シ得ルヤウニナッテ來テ初メテ一般
  大衆ニ對スル犠牲モ考ヘテ、サウ云フコト
  ヲ按排サレテ宜イト思ヒマスガ、サウ云フ
  意味デ其計畫モ伺ッテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=95

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• 096・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　只今生產費ノコトニ付テ
  詳細御質問ガアリマシタ、此點ニ付キマシ
  テハ、此處ニ鑛山局長ガ參ッテ居リマスカ
  ラ、或ル程度詳細御說明ヲ出來ルコトヽ存
  ジマス、尙ホソレニ關聯致シマシテ、自動
  車營業、一番自動車營業ニ影響ヲ生ジマス
  ルト思ヒマスガ、之ニ對シテドウ云フ方法
  ヲ考ヘテ居ルカト云フ御質問デゴザイマシ
  タガ、先程申上ゲマシタヤウニ、此自動車
  營業ニ及ボシマス影響ニ付キマシテ、色々
  是ハ勿論考ヘナケレバナリマセヌ、隨テ自
  動車營業改善委員會ト云フモノヲ商工省ニ
  置キマシテ、自動車業ノ方ノ代表者デアリ
  マスルトカ、其他各方面カラ權威者ヲ集メ
  テ色々考究ヲ致シテ居リマシテ、ドウ云フ
  コトヲ考ヘテ居ルカト申シマスルト先程御
  話申上ゲマシタ稅ノ問題、自動車ノ稅、或
  ハ道路負擔ト云フヤウナ問題モ其一ツデア
  リマスシ、又此營業ニ關スル統制ヲ圖ルコ
  トガ必要デアル、此營業ノ國策ニ付テドウ
  云フ方針ヲ執ッテ參リマスルカ、或ハ又自
  動車營業者ノ共同組合ヲ作リマシテ「ガソ
  リン」ノ共同購買ヲスルトカ、或ハ其共同
  組合其モノニ依ッテ統制ヲ圖ルトカ其他色
  色ノ〓究事項ガゴザイマス、又商業組合ノ
  結成ト云フヤウナ問題ハ現ニ大阪ニ於テハ
  其商業組合ノ結成ガアリ、共同購入ニ付テ
  モ其效果ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、其他
  爲スベキ色々ノ事項ニ付テ目下銳意考究中
  デゴザイマシテ、是等ノ考究ノ結果ニ基イ
  テ自動車營業ニ對スル影響ニ付テ十分善處
  ヲ致シテ參リタイト、斯樣ニ考ヘテ居ルノ
  デアリマス、ソレカラ人造石油ノ製造事業
  ト云フモノハ大體ドノ程度ノモノヲ目標ト
  シテ居ルカト云フ御質問デゴザイマシタ
  ガ、是ハ揮發油ト重油ト各一七年後ニ於テ
  二百萬「キロ」ヲ標準ト致シテ居ルノデアリ
  マス、大體是等ノ數字ハ其間ノ自然需要增
  加量ト云フモノヲ標準ト致シテ計畫ヲ樹テ
  テ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=96

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• 097・川崎末五郎

  ○川崎委員　今御伺シタ其七年後ト申サレ
  マスルガ、七年後ニドレダケ-同時ニ七年
  後マデ來年度カラ順次其產額ガ出テ來ルノ
  デアリマスルカ、或ハ出テ來ナイノデアルカ、
  七年後ニ於テ出テ來ルナラバ、ソレマデ政
  府ニ於テ他ノ別途ノ方法ヲ御考ニナリマス
  カ、其時ニ私ハ「ガソリン」稅ノコトハ考ヘ
  テモ遲クハナイト思フ、具體的ニ今年カラ
  來年、其次ニドレダケソレニ依ッテ「ガソリ
  ン」ガ出來テ來テ、ソレガ一般市場ニ供給
  サレルカ、ソレヲ御伺シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=97

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• 098・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　其間ニ順次數量ハ增加致
  シテ參リマス、其數字ハ只今此處ニ持ッテ
  居リマセヌカラ、又後程御示シヲ致シタイ
  ト思ヒマス、唯極ク大雜把ニ考ヘテ見マシ
  テ、七年後ニ二百萬「キロ」ヲ供給スルト云
  フコトハ、現在カラ其實行ニ掛ラナケレバ
  ナリマセヌ、又此人造石油事業ト云フモノ
  ハ非常ナ經費ヲ要スルモノデゴザイマシ
  テ、例ヘバ十萬「キロ」ヲ製造致シマスル場
  合ニ、何千萬圓ト云フ金額ガ必要ニナッテ
  來ルノデゴザイマス、是ハ現在カラ全力ヲ
  擧ゲテ此事業ニ著手スルコトヲ要シ、又國
  ニ於キマシテモ全力ヲ擧ゲテ助成ヲスルコ
  トモ必要デゴザイマスルカラ、此燃料政策
  ニ關スル施設ハ、必シモ七年後ニ初メテヤッ
  テ宜イト云フモノデハナイカト考ヘテ居ル
  ノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=98

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• 099・川崎末五郎

  ○川崎委員　私ハ其助成サレル方針ニ付テ
  ハ、何等議論シタリ異議ヲ申立テタリシテ
  居ルノデハアリマセヌケレドモ、併シ七年
  後ニ政府トシテハソレダケノ決心ヲシテ居
  ラレヽバ、「ガソリン」稅ハ一般ノ市場ニ供
  給サレル分量ヲ見テ相當御考ニナッテ宜ク
  ハナイカ、ダカラ產額ガ極ク少額ノ場合ニ
  於テハ、ソレニ對スル政府ハ別途助成ノ方
  法ヲ講ゼラレテ、他ノソレ以外ノモノニ對
  シテ多額ノ犠牲ヲ拂ハナクテモ宜イヂヤナ
  イカト考ヘル、七年後ニ相當供給サレルヤ
  ウニナレバ、ソレニ應ジテ一般ニ消費稅ヲ
  課ケラレタラ宜イノデハナイカ、政府ハ現
  在ニ於理想的ノ第一ノ計畫ガ七年後ニ於
  テ二百萬「キロ」デスカ、其時ニナッテ初メテ
  消費稅ト云フモノヲ考ヘル、ソレマデハ來
  年度ニ於テハ十萬瓲或ハ二十萬瓲、漸次製
  造シテ行クナラバ、二十萬瓲ヤ三十萬瓲ノ
  モノハ、ソレニ對スル別途ノ政府ニ於テ助
  成ノ方法ヲ講ゼラレルコトガ、寧ロ私ハ適
  當デハナイカト、斯ウ思フノデスガ、議論
  スルノデハアリマセヌガ、其意味デ御尋致
  シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=99

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• 100・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今川崎サンノ御話モゴ
  ザイマシタガ、是ハ餘程御考願ネバナハラ
  ヌ點ガアルト思フノデアリマス、マア金ガ
  餘程アリマス時分デアリマスナラバ、或ハ
  川崎サンノ行キ方モ一ツノ行キ方カト思フ
  ノデアリマスルガ、一方ニ於テハ今日トシ
  テハ中々財政上容易ナラヌ時分デアリマス
  カラ、或ル程度ノ收入ヲ考へテ、ソレニ依ツ
  テノ補助金ト云フモノヲ考ヘナケレバナラ
  又、其補助金モ少クシテ行カナケレバナラ
  又、斯ウ云フ關係ニアリマスノト、モウ一
  ツハ政府ガ斯ウ云フ業ヲ興シマス最初ニ
  當ッテ、決意ヲ示シテ是ダケノ「ガソリン」稅
  ヲ引上ゲテモヤルノダト、斯ウ云フコトデ
  行キマセヌト一般ノ投資モ出テ來ナイ、是
  ハ非常ニ大キナ事業デゴザイマスノデ、各
  方面ニ於テ餘程躊躇サレテ居ル事業デゴザ
  イマス、其邊ノ所ハ是ハ初メニ決意ヲ示サ
  ナケレバ餘程難カシイ問題ヂヤナイカト思
  ヒマス、ソレダケ御答致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=100

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• 101・堀内良平

  ○堀內委員　一寸關聯シテ······、一寸揮發
  油ニ付テ伺ヒタイノデアリマスルガ、先刻
  來伺ッテ居リマスト揮發油ノ消費稅ハ國策
  遂行ノ爲デアル、國策遂行ト云フコトハ何
  カト云ヘバ、一方ニ於テ石炭液化カ、何カノ
  代用品ヲ作ルノニ「ガソリン」ガ斯ウ安クテ
  ハ此代用品ガ作レナイ、ダカラ値上ヲスル
  ト云フコトデアリマス、私共ハ贊成ハ出來
  ナイコトデアリマスガ、併シ假ニサウ云フ
  御話ヲ本トシテ御伺致シマスルガ、然ラバ
  關稅ヲ五錢上ゲ、消費稅ヲ五錢上ゲテ十錢
  上ゲル、今市中ノ建値ガ五十一錢デアリマ
  スカラ六十一錢ト云フコトニナレバ、石炭
  液化ガ大體ドノ位ノ値段デ出來ヤウカ、又
  多少不足ハシテモ其他ノモノハ、政府デ補
  助デモヤッテヤラウト云フコトヲ考ヘテ居
  リマス、ソコデ其石炭液ノ事業ハドウナル
  カト云ヘバ、五千萬圓ノ會社ヲ興シ、サウ
  シテ之ヲ半官半民トシテ政府ガ半分出資シ
  テ民間ニ半分出資サセル、サウシテ此會社
  ヲ拵ヘテ、其處デ石炭液化ノ事業ヲヤルト
  云フ御計畫ノヤウデアリマシテ、是ハ兩々
  相俟ッテノ問題デアッタヤウニ私共ハ考ヘ
  ル、然ルニ今囘此石炭液事業ノ會社ヲ御取
  止メニナッテ、今後ヤルノダケレドモ是ハ民
  間ノ施設ニ俟ツ、斯ウ仰シヤル、民間ノ施設
  ニ俟ッテ果シテ何時出來ルノデアリマセウ
  カ、一向左樣ノ目途ハ付カナイト思フ、併
  シ民間ノ資金ヲ集メテ會社ヲ拵ヘルニシテ
  モ、政府ガ之ニ配當ヲ補償スルトカ、或ハ
  又何カ補助デモ與ヘルトカ云フヤウナコト
  ニナッテ指導シマシタナラバ是ハ出來ルデ
  アリマセウ、併ナガラサウ云フヤウナコト
  ヲ爲サル御意思ガアルトシマシテモ,是八
  又其法案ヲ御提出ニナルカ、ソレニハヤハ
  リ次ノ議會ノ開會ヲ待タナケレバナラヌ、
  サウシマスルト、少クモ臨時議會ガアレバ
  別デアリマスガ、通常カラ見テ一年位ハ此
  計畫ハ出來ナイコトニナル、サウシマスル
  ト、今囘稅金ヲ引上ゲル所ノ國策ト云フコ
  トノ趣旨ハモウ立タナクナッテシマフ、當然
  此爲ノ國策デアリ、其爲ノ增稅デアルト云フ
  コトニナッテ、一方ノ石炭液化事業ト云フモ
  ノガ出來ナクナッタト云フ場合ニハ、此揮發
  油稅ト云フモノハ御取消ニナルノガ當然ダ
  ト思フ、先般來此輕油「ガソリン」ハ日本ハ
  安イ、日本ハ安イガ外國ハ高イ、ソレデ日
  本ガ安クテハ是ハ「ガソリン」ノ代用品ガ出
  來ナイト仰シヤルカモ知レマセヌガ、外國
  ニ於テモ中々一定シテ居ラヌ、隨分稅金ヲ
  過重ニ課ケテ居ル所ハ高イ、サウデナイ所
  ハ安イ、ソレニ依ッテ私共ハ先日資料ヲ請
  求シタノデアリマスガ手許ニ參リマセヌ、
  「ガソリン」ト自動車ハ不可分ノモノニナッ
  テ居リマスルガ、今日日本デハ自動車稅ト
  云フモノガ雜種稅トシテ相當課ッテ居ル、而
  モ其上ニ國稅トシテ消費稅ガ課ッテ居ル、又
  關稅ガ課ッテ三重ニナッテ居ル、斯樣ナ國ハ
  何處ニモナイノデアリマス、ソコデ先日篠
  原君カラ世界各國ノ稅金ノ種類ヲ調ベテ廻
  ルトカ云フ御話ガアッタノデアリマスガ、ソ
  レハ全ク其必要カラデアッタト思ヒマス、私
  共ハソレデ日本全國ヲ通ジテノ雜種稅ノ內
  譯ヲ知リタイト思ッテ資料ヲ要求致シテ居
  ルノデアリマス、ソコデ一方此「ガソリン」
  ノ値ガ高クナルトドウ云フ結果ニナルカト
  申シマスト、是ハ大衆課稅ニナルノデアリ
  マス、「ガソリン」ガ高クナハバソレダケハ自
  動車業者ノ商賣ガ非常ニ苦シクナッテ來ル、
  商賣ガ苦シクナルト云フコトデ、屢〓商工省
  ニ業者ヨリ陳情致シマスト、ソレデハ値ヲ
  上ゲタラ宜イデハナイカ、斯ウ率直ニ仰シ
  ヤル、中ニハ代表ガ行ッテ話シタ所ガ、儲カ
  ラナケレバ廢メタラ宜カラウ、賃金ヲ高ク
  スレバ差支ナイデハナイカト云フヤウナコ
  トヲ仰シヤッタ方モアル、中々今日ノ世ノ中
  ニ於キマシテ、此自動車ト云フモノハ大衆
  ニ利用セラレテ働イテ居リ、又大衆ニ非常
  ニ重大ナ關係ヲ持っテ居ル、簡單ニ「ガソリ
  ン」ノ値ガ高クナッテ、商賣ガ出來ナケレバ
  廢メタラ宜カラウ、或ハ賃金ヲ直グニ引上
  ゲタラ宜カラウト云フ、サウ云フ譯ニハ行
  カナイ、サウ云フコトヲ言フナラバ、モウ
  社會大衆ガドンナニ負擔ヲ重クサレテモ一
  向構ハヌト云フ非常ニ不親切ナコトニナ
  ル、寧ロ自動車業者ガ賃銀ヲ上ゲタイト
  言ッテモ、大衆ニ迷惑ヲ掛ケル譯デアルカラ
  サウ云フコトヲシテハナラヌト言ッテ御差
  止メニナルベキデアラウト思フノデアリマ
  ス、ソレニ對シテ業者ノ方カラハサウ値ヲ
  上ゲルト却テ迷惑ヲ來スカラト云フコト
  デ、賃銀ノ値上ヲ計畫セザル先ニ稅金ヲ上
  ゲテ、賃銀ヲ値上ゲスレバ差支ナイデハナ
  イカト云フコトヲ仰シヤルノデアリマス
  ガ、其御親切ノ點ハ姑クト致シマシテ、
  方ノ對象ニナッテ居フタ所ノ會社ガ出來ナク
  ナッテシマッテ、サウスルト一年間-先刻
  小山君カラモ其問題ニ觸レタヤウデアリマ
  スガ、其會社ガ何時出來ルノカ出來ナイノカ
  分ラヌノニ一方ニ消費稅ヲ上ゲテ、其消費
  稅ハ大衆課稅トナルベキ、最モ人ノ生活ニ
  大變關係ヲ及ボスベキモノデアル、其石炭
  液化會社ガ出來ナケレバ、國策トシテノ方
  針ハソレデ一時中止シナケレバナラヌ、サ
  ウ云フ考カラ見マスト、此「ガソリン」消費
  稅、關稅ト云フモノハ寧ロ其會社ガ出來テ、
  サウシテ只今ドナタカカラモ御質問ガアッ
  タヤウデアリマシタガ、幾ラデ出來ル、サウ
  云フ案ガ立ヲテサウシテ此通リデアルカラ
  代用品ガ出來ルト云フヤウナコトニナリマ
  ス爲ニ、是ハ御中止ニナッタ方ガ宜カラウ
  ト思フノデアリマスガ、ソレニ對スル大藏
  省商工省御當局ノ御考ヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=101

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• 102・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　只今石炭液化ノ燃料會社
  ヲ取止メニナッテ、或ハ民間ノ會社ヲ政府ガ
  助成スルトカ、或ハ次ノ議會ノ問題ニソレ
  ハ自然ナルノヂヤナイカト云フ御質問デゴ
  ザイマシタ、此燃料會社ノ豫算ガ一應豫算
  ノ上カラ削ラレマシタノハ、之ヲ止メルト
  云フ意味デ削ッタノデハアリマセヌ、新大
  臣ガ全般ノ計畫ニ付テモウ一應再檢討シ
  テ、確信ヲ得テカラ出サウ、斯ウ云フ考デ
  ゴザイマス、此改案ニ付キマシテ目下〓究
  致シテ居リマス、不日是ハ成案ヲ得テ此議
  會ニ御提案ヲスルコトニ相成ルコトヽ考ヘ
  テ居リマス、其組織等ニ付キマシテモ、大
  體今成案ヲ得ツヽアルノデゴザイマスガ、
  サウ云フ關係デ此燃料會社、卽チ人造石油
  事業ノ中心ニナリマス計畫ガ次ノ議會ニ廻
  サレルト云フヤウナ關係デハアリマセヌカ
  ラ、是等ノ計畫ヲ土臺ニシテ、只今ノ問題
  ニ付テモ御審議ヲ御進メ願ヒタイ、斯樣ニ
  考ヘルノデアリマス

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• 103・堀内良平

  ○堀內委員　其計畫ガ一時御取止メニナッ
  タト云フコトデアリマスカラ、一方ノ增稅
  ノ方モ其部分ヲ一時御取止メニナッタラド
  ウカ、斯ウ思フノデアリマスガ、其點ニ付
  テ.

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• 104・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今商工次官カラ仰シヤ
  イマシタ通リデゴザイマシテ、不日提案サ
  レルコトヽ思ッテ居リマス、又今日現ニ斯ウ
  云フヤウナ國策ニ順應致シマシテ、朝鮮滿
  洲各方面ニ於キマシテ此計畫ヲ進メテ居ル
  所モアルノデアリマス、隨テ此稅ノ法案ヲ
  此議會カラ撤囘致ス意思ハゴザイマセヌ

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• 105・増田義一

  ○增田委員長　三善君續イテ篠原君、其他
  ヨリノ質問ニ對シ、鑛山局長ヨリ答辯セラ
  レルト云フコトデアリマス、大貝政府委
  員

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• 106・大貝晴彦

  ○大貝政府委員　先程カラ生產費ニ付テ御
  質問ニナリマシタノデアリマスガ、生產費
  ハ此間大臣カラモ申シマシタヤウニ、事業
  計畫ガ完全ニ遂行ヲセラレマスルノト、サ
  ウデナク、其當初ト非常ニ價格ガ違ッテ參リ
  マスノハ、是ハ申スマデモナイノデアリマ
  スガ、其石炭或ハ其他ノ關係デ價格ノ色々
  ナ變動ヨリ生ジマスルコトモ、固ヨリ申ス
  マデモナイト云フコトモ御承知ノ通リデア
  リマスルガ、大體私共今日色々ノ方面カラ
  〓究致シマシテ、生產費ハ是位ト見テ置イ
  タナラバ大差アルマイト云フ極ク大體ノ標
  準ヲ申上ゲテ置キタイト思フノデアリマス
  ルガ、一「ガロン」七十錢見當ニ見ル、ソレカ
  ラ合成ニ於テハ六十數錢-六十二三錢ト
  見テ、ソレハ今後四箇年計畫ガ遂行セラレ
  タル後ニ於キマシテハ、餘程安クナリマシ
  テ、今後四箇年計畫ノ遂行後ニ於テハ特ニ著
  シイ値上ヲ必要トシナイノデハナカラウカ
  ト云フ風ニ見テ居ルノデアリマス、尙ホ現
  在液化事業ニ著手シテ居リマスル事業家ノ
  意見等ヲ御參考ニ申シマスレバ、六十錢以
  內デ自分ノ所ハ出來ルト云フコトヲ申シテ
  居ル所モアルノデアリマシテ、一々ノ細カ
  イ標準ヲ申上ゲルノハ中々困難ト思ヒマス
  ルガ、大體其邊デ御諒承ヲ戴イテ大ナル間
  違ハアルマイカト思ッテ居ルノデアリマス

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• 107・三善信房

  ○三善委員　一寸關聯シテ······只今ノ政府
  委員ノ御說明デ液化ニ對シテハ生產費ガ七
  十錢、無水「アルコール」ニ對シテハ六十二
  錢ト云フヤウナ·······(「無水「アルコール」ハ
  答辯ハナイ」ト呼フ者アリ)ソレデハソッチ
  ノ方ヲモウ一ツ一〓ニ御答辯下サッテカラ
  デ宜シウゴザイマス

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• 108・増田義一

  ○增田委員長　酒精專賣、無水「アルコー
  ル」ノコトニ付テハ專賣局長官カラ御答辯
  ガアリマスカラ、此際發言ヲ許シマス

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• 109・荒井誠一郎

  ○荒井政府委員　私此席ニ居リマセヌデ、
  御質問ノ趣旨ニ或、ハ副ハヌ點ガアルカモ知
  レマセヌ、其時ニハ又御答申上ゲマス、大體
  揮發油混入用ノ「アルコール」ノ生產費ニ付
  テノ御尋ト承知シテ居リマスガ、是ハ今日
  ノ所デハ一「ガロン」當リガ六十八錢四厘ト
  計算致シテ居リマス、サウ致シマシテ然ラ
  バ之ヲ幾ラニ揮發油ノ輸業入者トカ或ハ生
  產業者ニ賣渡ス計算ヲシテ居ルカト申シマ
  スト、大體今度ノ消費稅及ビ關稅ノ値上ニ
  依リマシテ、市價ガ六十一錢ニナルト考ヘ
  マシテ、其六十一錢ヨリ賣捌人ノ手數料、運
  賃等ガ大體七錢位掛ルト云フヤウナ豫定ニ
  考ヘマスルト、五十四錢ト云フコトニナリ
  マス、隨テ是ガ賣渡シニ依リマシテ、專賣
  局トシテハ一「ガロン」當リ十四錢四厘ノ損
  失ニナル計算ニナッテ居リマス

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• 110・三善信房

  ○三善委員　只今ノ政府委員ノ說明ニ依
  リマシテ、石炭液化ニ對シテハ七十錢、無
  水「アルコール」ハ六十八錢、無水「アルコ
  ール」ニ對シテハ一「ガロン」十四錢四厘ノ
  損失ヲスル、斯ウ云フ御意見デアリマシタ
  ガ、サウシマスルト、十二年度ノ計畫ニ於
  テ無水「アルコール」ヲドレダケ造リ、或ハ
  石炭液化ガドレダケ出來ル、其爲ニ之ニ對
  スル所ノ國家ノ損失ガ幾ラニナルト云フ御
  計算ガ出來ルト思ヒマス、ソレト「ガソリ
  ン」ノ關稅及ビ其消費稅ニ對照致シマシテ、
  果シテ其「ガソリン」ノ關稅ノ上ッタノト消
  費稅ノ上ッタノト收支ガ採レルノデアルカ、
  或ハ又餘裕ガアルノデアルカ、隨テ「ガソ
  リンヲ」サウマデ上ゲル必要ハナイノヂヤ
  ナイカト云フ議論ガ出ヤシナイカト思フ、
  此點ノ計數ガ明ニナレバ、「ガソリン」ヲサ
  ウマデ上ゲル必要ハナイノヂヤナイカト云
  フ考モ浮ンデ來マスカラ、之ヲ一ツ正確ニ
  承ッテ見タイト思ヒマス

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• 111・大貝晴彦

  ○大貝政府委員　此揮發油混入用「アルコ
  ール」ハ、十三年度カラ賣出スコトニナッテ
  居リマシテ、十二年度ハ之ヲ製造シ、或ハ
  外カラ購入スル爲ノ準備ダケヲ致スコトニ
  ナッテ居リマス、十二年度ニ於テハ損失ハア
  リマセヌ、石炭液化ノ方ノ數量モ勿論調べ
  テ居リマスルガ、其前ニ一ツ御聽取願フテ置
  キタイノハ、液化事業ノ如キ巨大ナ資本ヲ
  要スル事業ヲ遂行致シマスルノニ當リマシ
  テ、適正ナル價格マデ國家ガ油ノ値段ヲ持
  チ來スコトガ出來ナイヤウデハ事業家トシ
  テハ容易ニ其事業ニ著手スルコトハ出來ナ
  イト考ヘルノデアリマス、先程申上ゲマシ
  タ如ク、六十錢以內デ製造ガ出來ルト云フ
  事業家ニ致シマシテモ、國家ガ少クトモ六
  十錢ノ所マデ値上ゲシ、サウシテソレニ對
  スル必要ナル助成ヲスルト云フ固イ決心ガ
  ナケレバ、此事業ハ決シテ起キナイモノト
  私ハ考ヘルノデアリマシテ、先ヅ以テ國家
  トシテハソレダケノ重大ナ決心ヲ持ッテ此
  事業ニ進ンデ行カナケレバナラナイモノ
  ト.斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、私共ト致シマシテハ、今年度關稅五錢、
  消費稅五錢、都合十錢上リマシテ、ソレガ
  液化事業ノ助成金トビッタリ合フト云フヤ
  ウナコトデナク、國家トシテソレダケノ所
  マデ價格政策ヲ進メテ行クト云フ決心ヲ示
  ス必要ガドウモアルモノト考ヘテ居ルノデ
  アリマス、尙ホ數字等ハ勿論持,テ居ルノ
  デアリマスガ、前提ト致シマシテソレダケ
  ハ御諒承ヲ願ハナケレバナラヌノデアリマ
  ス

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• 112・三善信房

  ○三善委員　只今ノ政府委員ノ御說明モ或
  ハ尤モラシイ點モアリマスケレドモガ、私
  ハ恐ラク十二年度デ政府ハ缺損ナサラヌデ
  濟ム譯デハナイカ、損失ノ爲ニ金ガ要ラナ
  イノヂヤナイカ、無水「アルコール」ハ勿論
  要リマセヌ、石炭液化モドレダケ造ルカ分
  リマセヌガ、工場ヲ建テタ後ニ造ルノデア
  ルカラ、ソレハ來年ハ要ラナイノデハナイ
  カ、政府ノ決心ヲ示サヌト民間ニ事業ハ起
  ラヌト云フケレドモ、十三年度ニ於テ相當
  ノ缺損ヲスルト云フ考ヲオ持チナラ、何モ
  十二年度カラ豫メ金ヲ餘分ニ取ッテ貯メテ
  オ置キニナル必要モナカラウト思フ、今大
  衆課稅ト云フコトニ付テ大分喧シイ問題ニ
  ナッテ居ル時ニ、消費者大衆ニ對シテ、交通
  機關ノ自動車ノ「ガソリン」ノ上ルヤウナコ
  トハ洵ニ迷惑千萬デスカラ、其點ハ十分御
  考慮ナサラナケレバイカヌト思ヒマス、是
  ハ意見ノ相違ニナルカモ知レマセヌガ、其
  ヤウナ來年要ラヌ金ヲ國策ダカラト云フ考
  カラ御用意ナサル必要モナカラウト思ヒマ
  ス,ソレモ亦國家ノ財政上ノ上カラ言ハレ
  ルナラバ是ハ別デスガ、先程カラ聽イテ居
  ルト、所謂液體燃料ノ國策ノ上ニ「ガソリ
  ン」ノ値段ヲ上ゲルノダト云フガ、ソレナラ
  バ何モ來年カラ上ゲル必要ハナイ、其點ニ
  付テ違ヲタ御意見ガアレバ承リタイ

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• 113・荒井誠一郎

  ○荒井政府委員　揮發油混入用ノ「アルコ
  ール」ヲ造リマスルニ付キマシテハ、政府ト
  シテ是ハ將來ノ損益ト云フコトモ考ヘテ計
  畫ヲ樹テナケレバナラナイノデアリマス、
  固ヨリ一方ノ關稅ノ收入ナリ、或ハ消費稅
  ノ增徵ヲ當テニシテ損益ヲ計算スル譯デハ
  アリマセヌ、是等ハ一般ノ歲入ニナルノデ
  アリマシテ、決シテ目的稅デアルトハ考ヘ
  テ居ラナイノデアリマス、併シサウ云フ計
  畫ヲ樹テマセヌケレバ、ヤハリ石炭液化事
  業デモ同ジデアリマスガ、「ガソリン」ニ混
  入スベキ「アルコール」ノ計畫ハ樹テ惡イ次
  第デアリマス

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• 114・川崎末五郎

  ○川崎委員　段々伺ッテ居リマシテ、私ナン
  カ一層分ラヌヤウニナッタ節モアルノデス
  ガ、只今三善君カラノ御意見ハ、丁度私ガ
  最初〓括的ニ言ッテ置イタノト全ク合致シ
  テ居ル譯ナノデ、私共ハ敢テ液體燃料ノ國
  策ニ對シテ反對スル意味モナケレバ、ソレ
  ニ對シテ必要デアルナラバ、假令大衆課稅
  ニナル「ガソリン」ノ消費稅ダッテ、或ハ揮發
  油稅ダッテ、敢テ之ヲ拒マウトスル者デハ
  アリマセヌ、併ナガラ關稅ノ五錢ヲ課ケ、
  更ニ「ガソリン」稅ヲ五錢增シテマデ、片
  方ニ人造石油ノ製造ヲ助長スルト云フ御趣
  旨ハ宜イデスガ、然ラバ實際ニ於テ將來年
  年ドウ云フ計畫ヲ以テヤッテ行ク、來年度カ
  ラ著々ドウ云フヤウニ進行シテ行クカ、サ
  ウシテ無水「アルコール」ナリ人工石油ガド
  レダケ產額ガ出來ルカ、而シテ生產費ノ「コ
  スト」ハドノ位ノモノカ、斯ウ云フコトヲ
  睨ミ合シテ適當ニ考ヘナケレバナラナイ、
  手ッ取リ早ク申セバ、來年度ハ準備デ、無水
  「アルコール」ハ恐ラク一立モ專賣事業トシ
  テ生產出來マイト思ハレル、又人造石油ニ
  シテモ、是ハ現在多少アルカモ知レマセヌ
  ガ、今度政府ニ於テ企圖サレル新規ノ事業
  トシテハ、本年度末マデニ恐ラク十萬「キ
  ロ」ト纒ッタ液體燃料ガ製造サレルモノデナ
  イ、其場合ニ於テ、實際市場ニ供給サレナ
  イニモ拘ラズ、一方ニ於テハ既ニ此四月一
  日カラ「ガソリン」ニ對シテ現實ニ關稅ハ五
  錢ソレニ「プラス」消費稅ノ五錢ガ課セラ
  レルト云フコトニ付テ、私共ハ其處ニ政府
  トシテモ餘程御考ヲ願ヒ、又更ニ是ハ將來
  ノ基本ノ計畫ヲ國策トシテ樹テルノデスカ
  ラ、製造業者ニ對シテモ相當安心ヲ與へ、
  補償ヲ與ヘテヤラナケレバナラナイ、吾々
  ハ此法律ヲ全然否定スル譯デハナイ、例へ
  バ七年度ニ於テ完成スルニ付テハ、價格ハ
  或ハ七十錢ガ必要ナラバ七十錢マデ吊リ上
  ゲテ、サウシテ彼等ニ採算ガ取レルヤウニ
  シテヤラナケレバナラヌト思フ、今ソレヲ
  ヤラレルダケノ稅金ガ幾ラ課ケレバ宜イト
  云フコトニナレバ、ソレハ其七年分ノモノ
  デ今カラ法律ヲ制定シテモ宜イ、併シ必要
  以外ノモノヲ直ニ四月一日カラ實施スルト
  云フコトハ必要ナイト思フノデアリマスル
  ガ、其點諄イヤウデモハッキリトシテ置キ
  マス、尙ホ序ニ甚ダ恐縮デスガ、「アルコー
  ル」專賣ノコトニ付キマシテ、オ門違ヒデア
  リマスケレドモ、幸ヒ專賣局長官ガオ見エ
  ニナッテ居リマスカラ、簡單ニ御伺シテ置キ
  タイコトハ、曩ノ馬場案ニ依リマスルト、
  「アルコール」ノ專賣ニ伴ッテ燒酎ヲ同ジク
  專賣スルト云フヤウナ案デアッタヤウデス、
  ソレガ今度ノ政府ノ案ニハ何等觸レテ居ラ
  ナイノデアリマス、アレハドウ云フ譯デア
  リマセウカ、燒酎ノ專賣ハ御斷念ナサレタ
  ノカ、燒酎ニ付テハ從來通リノ造石稅ガ增
  徵ノ案ノ中ニ出テ居リマスガ、將來ニ於テ
  又々燒酎ヲ馬場案ノヤウニ專賣ニシヨウト
  云フヤウナ御考ガアリマスルカ、ソレヲ明
  瞭ニ伺ッテ置キタイ、私ノ考ヲ一言申シマス
  ルナラバ-理由ナンカ諄イコトハ申上ゲ
  マセヌ、前ノ馬場案ニ於テ酒精ヲ專賣スル
  爲ニ燒酎ヲ專賣ニスルヤウナコトハ、甚ダ
  迷惑デアルト同時ニ馬鹿氣タコトデアル、
  アヽ云フ馬鹿氣タコトハ將來御考ニナラヌ
  方ガ宜カラウト思ヒマスカラ、伺ッテ置キマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=114

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• 115・大貝晴彦

  ○大貝政府委員　十二年度カラ油ガ出ナイ
  ノニ、關稅或ハ消費稅ヲ課ケルコトガ不都
  合デハナイカト云フ御話デアリマシタガ、
  實ハ來年度ニ於キマシテモ五月以後ニ油ノ
  生產セラルヽ確實ナル見込ガアリマシテ、
  其基礎的ナ數字ヲ持ッテ居ルノデアリマシ
  テ、決シテ將來ノ空漠タル計畫ノ下ニサウ
  云フ法律ヲ出シテ居ル譯デハナイノデアリ
  やく、來年少クトモ揮發ニ於キマシテ二萬
  四五千、重油ニ於キマシテ四萬以上ノモノ
  ガ出ルト云フコトヲ基本ニ考ヘテ居ルノデ
  アリマス、尙ホ逐次增加致シマシテ十八年
  ニナリマスト先程御說明申シマシタヤウニ
  百萬瓩マデ揮發油ガ出ル、重油ニ於テモ大
  體同ジヤウナ數字ニ達スルノデアリマシ
  テ、決シテ明年度油ガ出ナイノニ而モ關稅
  或ハ消費稅ヲ課ケルト云フヤウナ考デハ毛
  頭ナイ譯デアリマスルカラ、其點御諒承ヲ
  願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=115

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• 116・小山倉之助

  ○小山委員　私ハ五錢ト云フ消費稅ニ對シ
  テ御質問申上ゲテ見ヨウト思ヒマス、大分
  國策ノ根本問題ニ迄觸レマシテ、私ノ五錢
  ト云フ此僅カナ金ノ問題ヲ論ジテ居リマシ
  タ頭ガ少シ變ニナリマシタガ、又其五錢ノ
  問題ヲ續ケル譯デアリマス、色々質問應答
  ノ中ニ、商工省ノ政府委員ノ御答ノ中ニア
  リマシタ卽チ新シイ事業ヲ起ス場合ニハ政
  府ハ十分ナル決心ヲシナケレバナラヌ、詰
  リ其結果ハ大衆ノ消費稅ノ上ニ現レテ來
  ル、是ダケ値ヲ上ゲテヤル、是ダケ關稅ヲ
  課ケテヤル、是ガ卽チ新事業ヲ起サセル政
  府ノ一大決心デアルト云フ風ニ窺ハレルノ
  デアリマスガ、アレハ洵ニ間違ッタ考デアリ
  マシテ、國民ニ消費稅ヲ肩替リシテ多クノ
  徵稅ヲシテ、ソレヲ基礎トシテ一二資本家
  ノ事業ヲ起サセルナドト云フコトハ是ハ根
  本的ニ間違デアリマシテ、私ハ其點ニ付テ
  ハ少カラザル不平ヲ持ツノデアリマス、詰リ
  其思想ガ今日大衆課稅ニ對シテ、之ヲ提ゲ
  テ政府ノ方針ニ對シテ國民ガ怨嗟ノ聲ヲ放ツ
  テ居ル所以デアリマス、寧ロ政府ト致シマ
  シテ、殊ニ商工省ニ對シテ私ハ申上ゲタ
  イ、何カ商工省ニ關係ノアル新シイ事業ヲ
  起ス場合ニハ、何時デモ大衆課稅ヲ以テ之
  ニ資源ヲ與ヘルト云フヤウナ態度デハ是ハ
  甚ダ國民ノ好マザル、寧ロ之ニ對シテ反抗
  的意氣ヲ以テ反對セザルヲ得ナイ事柄デア
  リマスカラ、將來御注意ヲ願ヒタイト思ヒ
  Vマ、今日ハ新シイ事業ノ爲ニ儲ケテ居ル
  會社ガ澤山アリマス、國家的ノ事業ハ寧ロ
  サウ云フ連中ガ進ンデヤルベキモノデアル、
  幾多ノ例ヲ擧ゲテモ宜シウゴザイマス、朝
  鮮ニ於テ成功シタ人モ、滿洲ニ於テ成功シ
  タ人モ、內地ニ於テ成功シタ人モ、サウ云
  フ國策ノ事業ニ大投資ヲシテ、サウシテ民
  衆ニ煩ヲ掛ケナイト云フ態度ニ行クベキデ
  アルト私ハ思ッテ居リマスガ、併シサウ思ヒ
  マシテモ商工省當局ハサウ思ハナイト仰シ
  ヤレバソレハ議論ニナリマスガ、若シ私ノ
  申上ゲタコトニ少クトモ反省スル點ガアリ
  マシタラ、將來御反省ヲ願ヒタイト思フノ
  デアリマス、私ハ五錢ノ問題ニ還リマス
  ガ、ナゼ私ガ此五錢ヲ固執スルカト申上ゲ
  マスト、先程石渡政府委員カラ御答ガアリ
  マシタ通リ、一方ハ新シイ仕事ニ刺戟ヲ與
  ヘルノダ、ソレヲ擁護スル意味カラ上ゲル
  ノダ、一方ハ又「ガソリン」ト酒精ト混和ス
  ル點ニ於テモ上ゲル必要ガアル、私ハ洵ニ
  其通リデアルト思フ、ドチラニソレガ引掛ッ
  テモ上ゲルコトハ宜シイト致シマシテ、唯
  私ハ茲ニ疑問ヲ懷キマシタノハ、政府ハ損
  害ヲ受ケタ場合ニ燒酎ノ專賣デ以テ之ヲ補
  フ、斯ウ云フコトヲ宣傳サレタノデアリマ
  ス、何故損害ガ起ルカ、「ガソリン」ガ安クテ
  酒精ガ高イ、其高イモノト安イモノト混ゼ
  ルノデアルカラ、政府トシテハ國民ノ消費
  ヲ考ヘテ、酒精ノ生產費ノ高イ所デ之ヲ混
  入サセル譯ニ行カヌカラ、政府ハ少シ我慢
  シテ安イ所デ混入サセヨウ、其酒精ヲ安イ
  所デ賣渡シテ混入サセレバ其點マデ稅金ヲ
  上ゲル譯ニ行カヌカラ、先ヅ五錢程度ニシ
  テ置カウ、是ハ洵ニ結構ナコトデアリマシ
  テ、酒精ト混入サセルト云フコトハ便利デア
  リマセウ、併ナガラソレニ依ッテ起ル損害ヲ
  迄燒酎ノ專賣デ以テ補フ、斯ウ云フコトデ
  アリマスカラ、此燒酎專賣ヲ御止メニナル
  ト云フコトニナレバ恐ラクハ政府ハ損ヲシ
  テ迄燒酎ノ値段ヲ下ゲルヤウニスル、、燒酎ノ
  値段ガ高ケレバソレダケ「ガソリン」モ高ク
  シナケレバナラヌ、政府ハ將來混入ノ必要
  ガアル場合ニ「ガソリン」ノ値段ト追隨サセ
  ルガ爲ニ尙ホ五錢以上ノ値上ヲスル茲ニ餘
  地ヲ存スルヤウニシナケレバナラヌ、私ハ
  ソレヲ心配スル、ソレハドウ云フ御考デア
  リマスカ、若シ混入サセル場合ニハ酒精ノ
  値段ヲ高ク供給シナイデ、政府ハ損ヲシテ
  モ成ベク安クスル、政府ノ損害ヲ以テ此混
  入ヲ强制サセル意味デアリマスカ如何デア
  リマスカ、其點ヲ一ツ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=116

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• 117・増田義一

  ○增田委員長　一寸政府委員ニ希望シマ
  ス、只今ノ小山委員ノ答辯ニ加ヘテ川崎委
  員ヨリノ將來燒酎ヲ專賣ニスルヤウナコト
  ハナイカト云フコトノ御返事ト、商工省ノ
  政府委員ニ一言致シマスガ、先程篠原委員
  カラ商工大臣ガ他ノ席デ一方ニ「ガソリン」
  ノ方ハ稅ヲ上ゲルケレドモ、他ノ方ニ於テ
  自動車ノ爲ニ保護スルト言ハレタコトニ付
  テ、其內容ニ付テ質問セラレテ居リマス
  ガ、之ニ對スル御答辯ヲ要求シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=117

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• 118・荒井誠一郎

  ○荒井政府委員　只今御尋ノ「アルコール」
  ヲ揮發油ニ混入シマス爲ニ政府ハ損失ヲ蒙
  ルノデアリマスガ、是ハナゼ此損失ヲ蒙ル
  カト申シマスト、六十一錢ト云フ市價ガ出
  來マスレバ、ソレヲ更ニ「アルコール」ヲ
  混入スルコトニ依リマシテ上ゲサセナイト
  云フコトカラ政府ハ損失ヲ負擔スルト云フ
  コトニナッテ居ルノデアリマス、此上更ニ損
  失ヲ少クスル爲ニ「ガソリン」ノ價格ヲ上ゲ
  ルト云フコトハ今日ハ考ヘテ居リマセヌ、
  併シ「ガソリン」ノ價格ガ上リマスレバソレ
  ダケ損失ガ少クナルト云フコトハ是ハ當然
  デゴザイマス、ソレカラ燒酎ノ專賣ニ付テ
  御尋ガアリマシタガ、是ハ一〓ニ致シテ御
  答辯申上ゲマス、ナゼ燒酎ヲ專賣ニスル
  計畫ヲ立テタノカト云フコトデアリマス
  ガ、是ハ詳細ハ此處デ申述ベルコトハ略
  シタイト思ヒマスガ、政府ガ無水「アル
  コール」ヲ製造スルニ付キマシテモ、色
  色原料關係モ共通ニナリマスシ又技術等
  ニ於テモ亦共通ノ關係ガアリマスノデ、
  一括專賣ニシタ方ガ宜カラウト云フ考
  ヲ以テヤッタノデアリマス、決シテ燒酎
  ヲ飮用スル者ノ負擔ニ於テ、一方ノ揮發油
  ニ「アルコール」ヲ混入サセヤウト云フ政策
  ヲ遂行スルト云フ積リハナカッタノデアリ
  V.X.寧ロ燒酎ノ專賣ニ依リマシテ、消費
  者ニハ安イ燒酎ヲ供給シタイト云フ考モ
  アッタノデアリマシテ、各種ノ社會政策的ノ
  理由モアリ、色々ノ理由カラ燒酎ノ專賣ヲ
  ヤラウト云フコトデアッタノデアリマスガ、
  併シ是ハ色々倉出稅ノ關係モアリマシタシ、
  色々ノ關係デ、稅制ノ根本整理ノ際ニ更ニ
  檢討シヨウヂヤナイカト云フコトニナリマ
  シテ、今度ハ提案致サナカフタノデアリマ
  ス、今後ノ〓究ニ依リマシテ、燒酎ハヤハ
  リ稅法ノ改正ノ時ニ、從前ノ取扱ニスルノ
  ガ宜シイト云フコトデアリマシタナラバ從
  來通リ造石高デ行キマス、又其際ニ他ノ取
  扱方法ガ宜シイト云フコトデアレバ、其方
  ニ改正スルカモ知レマセヌガ、今日ハソレ
  ハ確ニ申上ゲル譯ニハ參リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=118

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• 119・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　先程ノ私ノ說明ガ足リナ
  クテ、三善サン、川崎サンニ或ハ誤解ヲ招
  イテ居ル點ガアルカト思フノデゴザイマス
  ガ、此「ガソリン」稅ヲ創設シ、關稅ヲ引上
  ゲルト云フコトハ勿論燃料國策カラ來テ居
  リマスガ、ソレニ依ッテ相當ナ收入モアルコ
  トデゴザイマス、是等ノ收入ヲ以チマシテ
  直チニ之ヲ「アルコール」ノ製造ニ充テ、石
  炭液化ノ製造ニ充テ、其他各種ノ液體燃料
  ノ資源ニ充テルト云フコトヂヤゴザイマセ
  ヌ、併ナガラ茲ニ數百萬圓ノ金ヲ投ジテ、
  「アルコール」ノ工場ヲ創設スル、或ハ石炭
  液化ノ會社ニ投資スル、其他石炭ノ採掘、
  石油ノ資源ニ付テノ經費ヲ現ニ支辨シテ居
  ルト云フコトハ是ハ事實デゴザイマス、隨
  テ是等ノ收入ヲ唯我國ノ燃料國策ト全然無
  關係ニ徵收シテ、ソレヲ使ッテシマウノヂヤ
  ナイカト斯ウ云フ御疑ハ是ハサウ云フコト
  ハアリマセヌ、其收入ノ爲ニ液體燃料ノ幾
  多ノ施設ニ充テルコトニ非常ニ便利ニナッ
  テ居ルト云フコトハ事實デゴザイマス、ソ
  レカラ又「アルコール」ニ致シマシテモ、先
  程專賣局長カラ御答ガアリマシタ通リ、專
  賣局ノ專賣事業トシテノ御計畫ハ、本年ハ
  各地ニ工場ヲ造ル準備ヲスルト云フ金ガ主
  タルモノデゴザイマスガ、民間方面ニ於キ
  マシテモ「アルコール」ヲ製造致シテ居ル者
  モゴザイマス、ソレカラ朝鮮ニ於キマシテ
  モ既ニ數百萬圓ヲ投ジマシテ、著々準備致
  シテ居ル者モゴザイマス、又臺灣ニ於キマ
  シテモ相當大規模ノ下ニ「アルコール」ノ製
  造ニ著手致シテ居ル者モアルノデアリマ
  ス、是等ノ關係カラ致シマシテ、決シテ此
  計畫ガ十二年度ハ何モシナイデ、十三年度
  カラスルノニ、十二年度ハ稅金バカリ取ッ
  テ、政府ハ丸儲ケダト、斯ウ云フコトハ決
  シテゴイマセヌ、是ハモウ著々各地ニ於キ
  マシテ「ガソリン」ガ是ダケ要ル、サウシテ
  高クナルト云フ約束ノ下ニ、ソレ〓〓皆準
  備ヲ進メテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=119

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• 120・篠原陸朗

  ○篠原委員　今ノ御答辯ニ關聯シテ-獨
  逸ハ自動車ガ豐富デアリマス、交通方面カ
  ラ之ヲ課稅ノ目的デドウ營業スルカ、斯ウ
  云フ場合ニ今他ノ委員カラ「ガソリン」ノ値
  上ヲサレルト非常ニ大衆ノ負擔ニナッテ困
  ル、是ハ全然課稅シナイデ濟メバソレニ越
  シタコトハアリマセヌ、併シ自動車ニ課稅
  セラレタ場合ニハ自動車ガ壞レテ休ンデ
  居ッタ場合ニモ稅ノ目的ニナッテ、一日五十
  哩シカ乘ラナイ人ト、一日五百哩乘ル人ト、
  其場合ニ自動車ニ課稅スレバ其處ニ何等ノ
  變リガナイ、自動車ノ利用性ヲ課稅目的ニ
  移シマスレバ、「ガソリン」デ取ルノガ宜イ
  「ガソリン」デ取ルノガ宜イカ、自動車デ取
  ルノガ宜イカ、斯ウ云フ議論ガ自ラ生ズル
  モノト私思フノデアリマス、交通上如何樣
  ニ營業シ、利用サレテ居ルカト云フコトヲ
  課稅目的ニシテ、サウシテ稅收入ヲ取ラウ
  ト云フ場合ニハ、私ハ動イタ實際ヲ取ッテ課
  稅標準ニスルコトニ致シタナラバドウカ、
  「ガソリン」見タイナ動力關係ノヤウナモノ
  ヲ課稅標準ニ採ルト云フ方ガ、自動車其ノ
  モノヲ課稅標準ニ採ルヨリハ合理的デハナ
  イカ、政府ハ何カソレニ付テ將來御〓究爲
  サル御考ガアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=120

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• 121・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　自動車ノ課稅ノ仕方ト致
  シマシテハ一方デハ,ガソリン」稅ヲ取リ、
  一方デハ自動車ニ課稅ヲスル、兩方面カラ
  行ッテ居ルト云フコトハ、是ハ亞米利加ニ於
  テモサウデゴザマイス、英吉利ニ於テモサ
  ウデゴザイマス、獨逸ニ於テモサウデゴザ
  イマス、一方ニ於テハ「ガソリン」稅モ取ル
  ト同時ニ自動車稅モ取ル、兩方トモ取ッテ居
  リマス、亞米利加ハ各州トモ自動車稅ガ非
  常ニ低ウゴザイマス、英吉利ニ於キマシテ
  モ、獨逸ニ於キマシテモ、是ハ其稅源ハ或
  ハ地方ニ還元致シテ居ルノデゴザイマス
  ガ、課稅標準トシテハ國デ統一シタ一ツノ
  課稅標準デヤッテ居リマス、ソレハ只今アナ
  タカラ御示シノアリマシタ馬力デゴザイマ
  スガ、馬力ヲ標準ニシテ居ルノガ多イヤウ
  ニ思ッテ居リマス此點ハ或ハ統一ヲシテ、
  自動車稅ヲ統一スル必要ガアラウト思ヒマ
  ス、併シ自動車稅ハ止メテシマッテ「ガソリ
  ン」稅ダケデ行クト云フ譯ニハ行カナイト
  思ヒマス、日本ノ營業用自動車ニ付テハ各
  府縣トモ比較的低イ課稅標準デ行ッテ居ル
  ヤウニ思ヒマスガ、イツモ此問題ヲ〓究シ
  テブッツカルノハ乘用自動車ガ非常ニ高イ、
  ダカラシテ統一シテ稅金ヲ引クト云フヤウ
  ナ場合ニハ實ハ乘用自動車、各個人ノ持ヲテ
  居リマスル乘用自動車ノ稅率ト云フモノハ
  各國ニ比較シテ非常ニ高イノデス、下ゲル
  ト云フトイツモ此問題ニブッツカッテ來ルモ
  ノデスガ自分デ自動車ヲ持ッテ乘ッテ居ル人
  ノ負擔ヲ下ゲテ、或ハ寧ロドチラカト言フ
  ト營業用ノ自動車ノ方ガ上リ目ニナル、サ
  ウ云フヤウナコトハドウデアラウト云フノ
  デ、今マデ躊躇シテ居ル譯デアリマスガ、
  將來ノ問題トシテハ自動車稅ノ統一ノ問題
  ト云フモノハ、是非トモ考ヘテ行カナケレ
  バナラヌト思ッテ居リマス但シ油ダケニシ
  テ、自動車ノ課稅ヲヤメルト云フノハ、ム
  ヅカシイノデハナカラウカト思ッテ居リマ
  ス、ソレカラ先程堀內サンカラ日本ノ自動
  車ト云フモノ程コンナニ負擔サセラレテ居
  ル所ハナイ、斯ウ云フ御話デアリマシタガ、
  ソレハ或ル程度自家用ノ自動車ニ付テハ御
  說ノ點モアラウカト思ッテ居リマス、併シ課
  稅ノ仕方ト致シマシテハ自動車ニ課稅シ、
  油ニ課稅シ、其上ニ自動車ノ販賣ニ、一一家
  幾ラト云フヤウニ課稅シテ居ル所モアルノ
  デアリマシテ、サウ云フ點カラ言ヒマスト、
  日本ノ自動車稅ガ必シモ一番高イト言フ譯
  ニ行カヌカトモ思フノデアリマス、高イ所
  モゴザイマス、ゴザイマスガ、併シ是等ノ
  點ニ付テハ將來餘程〓究シテ行カナケレバ
  イカヌト思ッテ居リマス

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• 122・仲井間宗一

  ○仲井間委員　今ノ燒酎專賣ノ答辯ニ關聯
  シテ一言御伺ヒシタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=122

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• 123・増田義一

  ○增田委員長　ーイ、先程ノ篠原委員カラ
  ノ自動車ニ對スル何カ保護ノコトニ付テ、
  商工大臣ガ他ノ席デ御發表ニナッタコトガ
  アルト云フコトデスガ、ソレニ對スル御答
  辯ハ如何デスカ

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• 124・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　只今委員長カラ御話ガゴ
  ザイマシタ自動車稅デアリマストカ、或ハ
  道路負擔金デアルトカ、色々ナモノガ自動
  車關係ニ付テ公租公課トシテ課カッテ居リ
  やく、是等ノ問題ニ付キマシテハ、此「ガ
  ソリン」ニ關スル稅ヲ上ゲマスルニ付テ自
  動車營業者ニ及ボス影響ヲ緩和スルト云フ
  方面カラ考ヘナケレバナラナイ一ツノ重要
  ナ項目デアル、斯樣ニ考ヘマシテ、先程カ
  ラ度々申上ゲマスル商工省ノ申デ目下設置
  セラレテ居リマスル所ノ自動車營業改善調
  査委員會ト云フ所デ一ツノ重要ナル〓究項
  日トナッテ居ルノデアリマス尙ホ御參考マ
  デニ申上ゲテ置キタイト思ヒマスルガ、自
  動車營。業改善調査委員會ニ於キマシテハ。
  其外或ハ其營業ノ統制ノ問題デアリマスル
  トカ、或ハ原料消費ノ合理化ノ問題デアリ
  マスルトカ、我ハ運賃ノ問題デアリマスル
  トカ、色々ノ事項ヲ目下調査ヲ致シテ居ル
  ノデゴザイマスルガ、其點ダケヲ申添ヘテ
  置キマス

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• 125・仲井間宗一

  ○仲井間委員　今ノ燒酎ノ專賣ニ付テ一言
  シタイト思ヒマス

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• 126・増田義一

  ○增田委員長　ドウゾ簡單ニ御願致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=126

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• 127・仲井間宗一

  ○仲井間委員　專賣局長官ニ伺ヒマスガ、
  此燒酎ノ專賣ハ直接ニハ燃料國策トハ關係
  ハナイガ、「アルコール」トノ關係、又一面
  消費者ニ安イ燒酎ヲ提供致シタイガ爲ニ專
  賣ヲ計畫致シテ居ッタト云フ風ニ私聞イタ
  ノデアリマスガ、左樣ニ承ツテ宜シウゴザ
  イマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=127

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• 128・荒井誠一郎

  ○荒井政府委員　大體ニ於テサウデゴザ
  イマス、サウ云フコトモ考ヘテ專賣制度ヲ
  實施スル積リデアッタト云フコトニ御承知
  ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 129・仲井間宗一

  ○仲井間委員　ソレデハ石渡政府委員ニ
  ツ御尋致シマス、今專賣局長官ハ燒酎ノ專
  賣ハ消費者ニ廉價ナル燒酎ヲ提供致シタイ
  ガ爲ニ專賣ヲ實施致シタイ計畫デアッタ、斯
  ウ述ベラレテ居リマスルガ、今ノ增稅案ヲ
  見マスルト、燒酎ニ對シテ增稅ヲシテ居リ
  マス、馬場案ノ際ニ安イ燒酎ヲ消費者ニ提
  供致シタイト云フ御考デアッタノニ、餘リ長
  イ期間ヲ經過セズニ、又何等社會情勢ガ變
  化セザル中ニ、直チニ高イ燒酎ヲ提供スル
  ヤウナ案ニ變更サレテ居ルノデアリマスル
  ガ、其理由ニ付テ何カ根據ガアッテサウサ
  レタカ、其點ヲ御尋致シマス

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• 130・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　專賣事業デ安イト云フコ
  トニナルカ、民間デ高イト云フコトニナリ
  マスカ、其邊ノ關係ハ餘程難カシイ問題デ
  アラウト思ヒマス、政府デ安ク賣ル積リデ
  モ實際問題トシテ中々旨ク行カヌ場合モア
  ルカモ分ラヌノデアリマスガ、專賣局デハ
  出來ルダケ安ク賣ラウト努力サレタト云フ
  コトデアッタト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=130

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• 131・仲井間宗一

  ○仲井間委員　ドウモ大藏省內部デ御爭ヒ
  ニナラレテモ困リマスガ、要スルニ大藏省
  ハ大臣初メ省ヲ統轄シテ一ツノ方針ニ向ッテ
  進マナケレバナラヌト思ヒマス、燒酎ヲ消
  費スル階級ニ對シテ何カ同情ガアルヤウナ
  社會政策ト言ヒマセウカ、サウ云フ意味デ
  安イ燒酎ヲ提供スル積リデアッタ、サウ云フ
  考デアッタ、其考ハ實ハ吾々ハ敬服スルノデ
  アリマス、所ガ一週間カソコラモ經過シナ
  イ中ニ大藏省ノ一角カラドウモ四十圓ガ五
  圓モ上ルト云フヤウナ、而モ一石ニ對シテ
  一圓五十錢ノ增率デアッタノヲ二十錢上ゲ
  テ一圓七十錢ニナッテ居ル、サウシテ消費稅
  必シモ消費者ガ負擔シナイ場合モアリマス
  ルガ、燒酎ニ對スル消費稅ハ大方消費者ガ
  負擔ヲシ、消費者ニ轉嫁セラレル稅金ダト
  思フ、唯其食違ヒハ金額ノ問題デハナイ、
  一方デハ安イ燒酎ヲ提供シタイト云フ考デ
  アルノニ、片一方デハ又高ク賣ッテ茲ニ增
  收ヲ圖ルト云フ兩方食違ッタ一ツノ政策ヲ
  持ツコトニ付テ吾々不安ニ感ズル譯デア
  ル、其點ハドウ云フヤウナ御考違ヒデアッ
  タノカ、伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=131

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• 132・荒井誠一郎

  ○荒井政府委員　私ノ申スコトガ徹底シテ
  居ラヌト思ハレマスカラ、モウ一應申上ゲ
  やく、詰リ專賣事業ニ致シマシテ-今デ
  申シマスレバ消費稅ヲ取ッテ居ルノダガ、其
  負擔ノ轉嫁等ガ色々ノ經濟情況デ是ハ決ル
  ノデアリマスガ、專賣ニ致シマスレバ、適
  當ナ負擔關係ヲ決メルコトガ出來ル、隨テ
  其關係カラモ、モウ少シ安ク供給出來ルダ
  ラウ、又販賣機構等モ隨分複雜デ中途デ多
  數ノ手ヲ經テ行キマスルガ爲ニ、原價ノ安
  イモノガ相當ニ高クナル、又稅金モ非常ニ
  高イモノデアリマスルカラ原價ニ拘ラズ、
  稅金ニ依ッテ取引サレル、稅金ニ依ッテ取引
  サレルト言フト少シ論ニ合ハヌヤウナ說明
  デアリマスガ、實際稅金ガ高イノデ、是ハ非
  常ニ尊イモノダト云フコトカラ高クモ賣ラ
  レルト云フコトモアリマスノデ(笑聲)サウ
  云フ關係カラ各國デモ色々ノ專賣ヲ實行シ
  テ居ルヤウナ情況デアリマス、サウ云フ點
  デ私ガ申上ゲタノデアリマシテ、稅金ヲ幾
  ラ課スルカト云フコトハ又別問題ト御承知
  ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=132

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• 133・仲井間宗一

  ○仲井間委員　モウ關聯事項デ是レ以上同
  ジコトハ進メタクハアリマセヌガ、唯最後
  二、今私ノ耳ニハ彌縫的ノ說明トシカ伺ハ
  レマセヌガ、要スルニ安ク提供シタイト云
  フノト、現實ニ現ハレタ所ノ今囘ノ政府ノ
  案ニ依ッテ燒酎ガ高ク提供サレルト云フ事
  實トヲ見マシテ、如何ニモ矛盾シテ居ルノ
  ダ、ソレガ一箇年モ二箇年モ或ル時期ヲ經
  過シテ社會情勢ガ違フナラバ兎モ角、何等
  違ハナイ、馬場サンノ時代ト結城サンノ時
  代ト何等違ハナイ、而モ其間ニ立ッテ居ラレ
  ル兩局長ノ間ニモ何等サウ考ガ違ッテ居ル
  筈ハナイト思フノデアリマスルガ、斯ノ如
  キ案ガ出タ爲ニ色々矛盾ガアル、ソコニ大
  藏省內部ニサウ云フ案件ニ對スル〓究ガ統
  一シテ居ナカッタノデ、斯ウ云フ案ガ出來タ
  ト云フコトヲ唯私ハ御察シ申上ゲマシテ、
  又後ノ機會ニ讓リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=133

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• 134・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　或ハ私ノ申上ゲ方ガ惡
  カッタノデ誤解ヲ受ケマシテ甚ダ申譯ゴザ
  イマセヌ、燒酎ヲ何故此際專賣カラ外シタ
  カ、斯ウ云フ御尋デゴザイマスガ、ソレハ
  只今專賣局長官カラ言ハレタ通リ今囘ノ
  案總テガ暫定案デアリマスルノデ、專賣ニ
  付テモ多少論議ノアリマスル問題モアリ、
  先程川崎サンカラモ御說ガゴザイマシタ
  ガ、一應再檢討スル必要ガアル、斯ウ考へ
  マシテ中止ヲ致シタ次第デゴザイマス、專
  賣局デ安ク賣ルト斯ウ云ッタモノヲオ前ハ
  一體增稅ヲシテ甚ダ怪シカラヌデハナイカ
  ト云フ御尋デゴザイマスガ、酒一般ヲ通ジ
  テ增稅致スノデゴザイマスノデ、燒酎モ其
  他ノ酒モ引括メマシテ或ル程度ノ增稅ヲ行
  フ、斯ウ云フ次第デゴサイマス、私伺ッテ居
  リマスル所デハ、燒酎ヲ專賣ニ致シマシテ
  モヤハリ是ハ或ル程度ノ增稅ト同ジ意味ノ
  モノガ考ヘラレテ居ッタ模樣デアリマス、
  詰リ其點ニ付キマシテハ、或ル程度ノ增加
  ト云フコトハ已ムヲ得ナイコトデハナカラ
  ウカト思ヒマス、唯其間ニ專賣ヲヤッテ、專
  賣事業ガ「スムース」ニ行ッタ場合ニハ、專賣
  局ノ收入ト云フモノハ多少多ク出テ來ルカ
  ト云フ、斯ウ云フ問題ハアルト思ヒマス、
  マア大體ニ於テ左樣ナ考デ致シマシタ次第
  ハ御諒承ヲ願ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=134

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• 135・仲井間宗一

  ○仲井間委員　今私ハ專賣ヲ贊成シテ居ル
  ト云フ立前カラ御聽キシテ居ルノデハナイ
  ノデアリマス、何故ニ專賣ヲ撤囘シタカト
  斯ウ言ハレマスト、コッチガ專賣ニ贊成シテ
  居ッタヤウニ聞エマスガ、サウデハナイ、私
  ハ專賣ハハッキリ反對ダト申上ゲテ置キマ
  ス、唯ハッキリ聽キタイ主眼點ハ、專賣局長
  ノ御考ニナッテ居ルノト主稅局長ノ御考ニ
  ナッテ居ルノト違フ詰リ消費者ニ對シテ安
  ク提供シタイト考へテ居ルノト、消費者ニ
  高ク供給シテ國家ニ收入ヲ上ゲタイト云フ
  ノト違フ結果ニナッテ居ル、ソレヲ私見マシ
  テ、ドウシテ大藏省內部ニサウ云フ考ノ
  違ッタ方ガ現レタノカト云フコトヲ聽キタ
  イ、ソレダケデアリマス、今マデノ御答辯
  ニ依リマシテ分リマシタカラ更ニ御答辯ヲ
  求メヨウトハ思ッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=135

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• 136・小山倉之助

  ○小山委員　私ハ「ガソリン」稅ニ對スル質
  問ハ此程度ニ打切リマシテ、取引所稅ニ付
  キマシテ御質問申上ゲタイノデアリマス、
  馬場案ト結城案ト比較對照致シテ見マス
  ト、多少ノ喰違ヒハアリマスガ、此取引所
  稅ニ於ケル政府ノ態度ガ丸ッ切リ變ヲタト云
  フヤウナ感ジヲ持ッタ稅率ハナイノデアリ
  やくろ、實ハ先ニモ關聯事項ニ於テ私ハ御伺
  ヒシタノデアリマスガ、此稅率ヲ所謂結城
  案ト申シマスルカ、短期萬分ノ二·七長期萬
  分ノ四·五、之ヲ御決メニナルニ付キマシテ
  ハ、大藏省ハ商工省ノ諒解ヲ得タ、商工省
  ト協議ノ上決定シタンダト斯ウ云フ御答デ
  アリマシタノデ、私モ其儘信ズルノデアリ
  マスガ、然ラバ馬場案ノ時モ同樣ニ商工當
  局ガ御相談ヲ受ケテ斯ウ云フヤウニ御承認
  ヲ御與ヘニナリマシタカドウカ、此點ヲ御
  伺致シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=136

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• 137・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　大藏省トハ常ニ協議ヲ致
  シテ立案ヲ致シテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=137

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• 138・小山倉之助

  ○小山委員　ソレハ御尤モデアリマシテ、
  協議ノ上御發表ニナルト云フコトハ洵ニ結
  構デアリマスガ、現行案ニ依リマスルト、
  御承知ノ通リ短期ハ萬分ノ一·五ニナッテ居
  リマス、長期ハ二·五デアリマス、其差ハ一
  分デアリマス、然ルニ馬場案ニ依リマスル
  ト、短期ハ萬分ノ三、長期ハ萬分ノ三·五デ
  アリマシテ、其差ハ〇·五デアリマス、然ル
  ニ結城案ニ依リマスルト、短期ハ萬分ノ二·
  七デアッテ、長期ハ萬分ノ四·五デアリマ
  ス、實ハ私ハ此取引所ノ問題ニ付テハ全ク
  素人デアリマシテ、中々之ヲ理會スルコト
  ハ困難デアルト考ヘテ居リマシタカラ、隨
  テ此〓究ヲ怠ッタノデアリマスガ、併シ餘リ
  ニ裏腹ナ變化ノ仕方デアリマスノデ、多少
  興味ヲ持チマシテ〓究シタノデアリマス、
  之ヲ要スルニ此案ト云フモノハ、馬場案ニ
  於キマシテハ大體長期ノ取引ヲ重ンズル、
  結城案ニ於キマシテハ稅率ヲ今ノ一·五、
  二·五ヲ八割ヅツ上ゲタノデアリマスカラ、
  是ハ同ジ率デ上ゲタノデアルカラ公平ト言
  ハレルノデアリマセウ、併ナガラ其差ニ於
  テハ實ニ一·八ニナッテ居ル、現行ニ於テハ
  馬場案ニ於テハ〇·五、今度ノ案ニ
  於キマシテハ一·八デアリマシテ、比率ハ同
  ジニナッテ居リマスガ、現行案ト實ニ〇·八
  ノ差ヲ生ジテ居リマス、卽チ馬場案ニ於テ
  ハソレダケ長期ヲ重ンジテ、長期ニ關心ヲ
  持ッテ、是ガ保護助長ヲ圖ルト云フヤウニ見
  エルノデアリマス、然ルニ結城案ニ於キマ
  シテハ寧ロ長期ヲ虐待シテ、サウシテ短期
  ヲ主トスル如ク見エル、斯ノ如ク全然裏腹
  ノ態度ヲ商工省ニ於テ之ヲヤハリ正當ト御
  認メニナッタノデアリマスカ、卽チ前內閣ノ
  時ニ於テハ長期ヲ援助スルコトガ適當ナリ
  ト認メ、現內閣ニ於テハ長期ヲ虐待スルコ
  トヲ適當ナリト御認メニナッタノデアリマ
  スカ、此點ヲ御伺シタイノデアリマス

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• 139・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　此取引所ニ於ケル〓算取
  引ニ付キマシテ長期取引ガ適當デアルカ、
  或ハ短期取引ガ適當デアルカト云フコト
  ハ、是ハ極メテ困難ナ問題デアルノデゴザ
  イマス、此點ニ付キマシテハ短期取引制定
  當時色々理想ヲ持ッテ此制度ヲ行ッタノデゴ
  ザイマス、併ナガラ其後ノ實績ヲ見マスル
  ト、短期取引ニ付テモ尙ホ十分ニ考慮ヲ要
  スル點ガアルト考ヘテ居ルノデゴザイマス、
  先般ノ改正案ニ於キマシテハ大體ニ於テ長
  期ノ方ニ有利ニ改正案ガ出來テ居ッタノデ
  ゴザイマス、此考へ方ニモ一應ノ理窟ハ十
  分ニアルト考マス、併ナガラ是等ノ長期短
  期ノ關係ヲ如何ニスルカト云フコトハ取引
  所ノ行政ノ問題ト致シマシテモ極メテ重要
  ナ問題デゴザイマス、是等ノ根本問題ニ付
  キマシテハ尙ホ十分ニ檢討ヲスル必要ガア
  〓、今般ノ改正案ハ極ク差當リ現行制度ヲ
  基礎ニ致シマシテ、或ル程度ノ增率ヲスル
  斯ウ云フ制度デアリマスガ故ニ、現在ノ課
  率ヲ標準ト致シテ長期短期ニ一樣ニ一定ノ
  稅率ヲ以テ增加スル、斯ウ云フコトハ暫定
  的法律案ト致シマシテハ已ムヲ得ナイコト
  デアラウカト思ヒマシテ御同意致シタ次第
  デアリマス、尙ホ此長期短期ノ問題ニ付キ
  マシテハ、此機會ニ十分ニ檢討ヲ致シマシ
  テ、適當ナ課稅方法ヲ考ヘテ見タイ、斯樣
  ニ考ヘテ居ルノデアリマス

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• 140・小山倉之助

  ○小山委員　此案ハ暫定案デアルカラ一時
  承諾ヲシタ、併シ將來ハ十分考ヘテ適當ナ
  方法ヲ御執リニナル、實ハ私ハ是ハ臨時增
  徵案トハ言ッテ居リマスガ、政府モ臨時增
  徵案デアルカラ或ル稅目ノ如キハ變更スル
  ト斯ウ云フ風ニ宣明ハシテ居リマス、併ナ
  ガラ之ヲ大局カラ見マスト、中々一日決メ
  タラバ、變更ノ出來ナイモノモアリマス、又
  他ノ稅ト關聯シテ變更スルコトヲ適當トシ、
  又變更シ得ル點モアリマス、併シ此取引所
  ノ稅金ノ如キハ、此稅金卽チ其制度ニ現レ
  テ來ルノデアリマシテ、所謂長期ヲ此際滅
  スカ滅サヌカ、長期取引ヲ衰退セシムルカ
  衰退セシメナイカト云フ、是ハ重大ナ影
  響ノアル問題デアリマシテ、殊ニ市場ニ
  對シテモ相當影響ノアル重大ナ問題デア
  ルト思フノデアリマス、サウ云フ重大ナ
  案ヲ僅カ二箇月カ三箇月ノ間ニ、或ハ長
  期ニ贊成シ、或ハ長期ヲ虐待スルコトニ贊
  成ナサルコトハ、餘リニ私ハ考ヲ急速ニ轉
  廻シ過ギヤシナイカト思フノデアリマス、
  斯ウ云フ問題ニ付キマシテハ、寧ロ商工當
  局ハ十分御主張ナサレテ、ソシテ自ラ信
  ズル所ヲ一ツ行ヒニナッタラドウカト思フ
  ノデアリマスガ、アナタハ私共ガ若シ之ニ
  修正案ヲ出サウト致シマシタ場合ニハ、ソ
  レニ御贊成ニナル御決心ガアリマスカドウ
  デアリマスカ、ソレヲ一ツ御伺シタイ

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• 141・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　只今長期ヲ非常ニ虐待ヲ
  シテ之ヲ滅スト云フヤウニ此案ヲ御解釋ニ
  ナラレマシタヤウデゴザイマスルガ、私共
  ト致シマシテハサウ云フ積リハ少シモゴザ
  イマセヌ、長期、短期ヲ如何ニ取扱フカト云
  フコトハ、是ハ極メテムヅカシイ問題デア
  リマスルガ故ニ、一先ヅ現在ノ課率ヲ標準
  トシテ取扱フノガ、差當リノ立法トシテハ
  適當デアラウト、斯樣ニ考ヘテ之ニ贊成ヲ
  致シタノデゴザイマス、取引所ノ行政ノ間
  題トシテ、〓算取引ヲ短期ニ重キヲ置ク
  カ、長期ニ重キヲ置クカト云フコトハ、先
  程モ申上ゲマシタヤウニ、取引所行政ノ重
  要ナ問題トシテ、目下調査會其他ニ於テ銳
  意考究ヲ致シテ居ルノデアリマスルカラ、
  現在ノ狀態ニ於ケル法律ト致シマシテハ、
  此程度ノ改正ガ已ムヲ得ザルモノデアリ、
  又妥當ナ改正デハナカラウカト斯樣ニ考ヘ
  テ居ル次第デアリマス

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• 142・小山倉之助

  ○小山委員　丁度一·〇ト一·八トハ殆ド二
  倍近イ增徵ニナッテ居リマス、茲ニ二倍近
  イ差ヲ生ジテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ
  大キナ差ハ、暫定的ニ決メテモ、ソレガ長
  期或ハ短期ノ兩方ニ非常ナ影響ヲ與ヘル、
  之ニ依ッテ或ハ衰滅ニ歸スルノデハナカラ
  ウカト云フヤウナ懸念ヲ覺エル程ニ大キナ
  影響ヲ與ヘルトハ御考ニナラナイノデス
  カ

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• 143・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　增徵シテ萬分ノ四·五ト
  云フコトニスルコトニ依リマシテ、長期取
  引ガ衰滅ニ歸スルト云フ程度ノ影響ガアル
  モノトハ考ヘテ居リマセヌ

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• 144・小山倉之助

  ○小山委員　サウ御考ニナラヌト言ヘバ、
  是ハ意見ノ相違デアリマスガ、今マデハ一·
  ○デサヘモ長期ノ方ハ段々衰ヘテ行ク、ソ
  シテ、私共ノ〓究ハ短イノデ、ソレガ當ル
  カ當ラナイカ分リマセヌガ、實ハ短期取引
  ハ三十日ト決ッテ居ルガ、殆ド是ハ萬年取
  引ト云フヤウナ工合ニ代行機關ニ依ッテ其
  決濟ガ延ピテ行クノダ、世間デハ長期ノ方
  ニ投機的氣分ガアルト一般ニ言ハレテ居ル
  ノデアリマスガ、實質ニ於テハ寧ロ短期ノ
  方ニ非常ナ投機的商取引ガ行ハレテ居ル、
  寧ロ短期ガ博奕ダ、長期ハ長イ間ニ證劵ノ
  賣買ヲスルノデアリマシテ、一方ニ於テハ
  金融ノ助ケニモナル場合モアリ、一方ニ於
  テハ、市價ノ調節ヲ圖ルト云フヤウナ働キ
  モシテ居ル、六十年間ノ歷史ガアリ、他デ
  ハ是ガ倒レタケレドモ、東京ニダケ發達シ
  タモノダ、東京ニ於テノミ發達シタ此長
  期ハ、僅ノ稅金ノ差デモ其盛衰ヲ現シテ
  -實際上ニ於テ盛衰ヲ現シテ來ルノデア
  ルカラ、寧ロ投機ヲ抑ヘルト云フ考カラ言
  フナラバ、短期ノ方コソ是ハ增稅スベキ
  グ、サウ云フ風ナ意見モ非常ニ多イノデア
  リマス、寧ロ短期ノ方ヲ增稅シテ長期ノ方
  ヲ優遇スベキヂヤナイカ、此心持ガ容レラ
  レテゴザイマスカドウデアリマスカ、卽チ
  馬場案ニ於テハ、短期ヲ十割上ゲテ三ト爲
  シ、長期ヲ四割上ゲテ三·五ト爲シ、其差
  ヲ〇·五ニ縮メタト云フコトハ、卽チ六十
  年間ノ歷史ヲ持チ、一般カラハ投機取引ノ
  如ク思ハレテ居ルガ、實ハ最モ堅實ナ發達
  ヲシテ居ル所ノ長期ヲ保護シヨウト云フ精
  神カラ出タモノダ、斯ウ云フ風ニ解シテ居
  リマシタ、然ルニ、只今モ、此前御質問申上
  ゲマシタ時モ、石渡政府委員カラ御答ガア
  リマシタガ、本當ノ取引ハ寧ロ短期ニアル
  ノダト云フ風ニ仰セラレマシテ、短期ヲ奬
  勵シテ、短期ノ〓算取引ヲ助ケルノダト云
  フヤウニ言ハレタガ、私共ノ淺イ〓究デハ
  アリマスルガ、其〓究ニ依リマスルト、短
  期ノ方ハ寧ロ博奕デアル、短期ノ爲ニ非常
  ニ損害ヲ被フテ居ル者ガ多イ、長期ハ寧ロ
  之ヲ調節シテ居ルノダ、一旦市場ニ大波瀾
  ノ起リマシタ時ニ、長期ノ働キト云フモノ
  ハ非常ニ其財界ヲ調節スルニ有效ナ働キヲ
  スルモノデアル、ソレガ最モ財的ニ堅實ナ
  發達ヲシテ居ル東京ニ發達シタノダ、博奕
  ノ早イ大阪邊リデハ、段々長期ノ方ガ衰へ
  テ短期ノ方ニ集中サレテ來タノデアル、詰
  リ東京ニ於ケル長期ト云フモノハ、是ハ〓
  算取引ノ最後ノ牙城ダ、此最後ノ牙城ヲ守
  ラウトスル證劵界ノ人モアリ、事業界ノ人
  モアルノデ、此最後ノ牙城ヲ守ラセンガ爲
  ニ茲ニ〇·五ノ差ヲ置イテ、サウシテ之ヲ
  多少保護シテ行カウ、投機的性質ヲ帶バナ
  イ堅實ナ長期取引ヲ發達サセヨウ、此精神
  ガ馬場案ニ織込マレテ、ソレニ商工省ノ當
  局ガ贊成セラレタ、然ルニ今度ハソレト全
  然裏腹ナ、日本ニ一ツシカナイ、最モ發達
  シタ此最後ノ牙域ヲ、寧ロ短期ヲ以テ征服
  サシテシマウ、其牙城モ陷レテシマフト云
  フヤウナ、所謂短氣ナ考ヲ持ッテ······(笑聲)
  「シヨウートサイト」ナ考ヲ持ッテ之ヲヤッタ
  ト云フコトハ洵ニ遺憾デアルト云フ意見モ
  相當漲ヲテ居ルノデアリマス、大藏當局ト
  商工當局トノ間ニ可ナリ大キナ變化ヲ來シ
  タコトニ付テハ相當遺憾ノ意ヲ表シテ居ル
  者ガ多イノデアリマス、大藏省ノ方針ハ、
  兎ニ角稅ヲ取リサヘスレバ宜シイ、昨日私
  ハ大變失禮ナコトヲ申上ゲマシテ、思想傾
  向ガ分ルト申上ゲマシタノハ、既得ノ權利
  ヲ害シテモ、兎ニ角澤山取リサヘスレバ宜
  シイ、收稅ノ目的ヲ達スレバ宜シイト云フ
  ヤウナ中々强イ御考ニナッテ居ルノデハナ
  イカ、其强イ御働キヲ、一部デモ之ヲ牽制
  シテ置クノガ商工省ノ立場デナケレバナラ
  ヌ、所謂市場行政ヲ取扱フ監督官廳デナケ
  レバナラヌ、其監督官廳ガ、所謂朝令暮改
  デ、ドノ內閣ニデモ直グ自分ノ意見ヲ捨テ
  テ之ニ從フ、ソレハ暫定的デアルカラ差支
  ナイト云フヤウナ態度ハ是ハ御改メニナッ
  テ、此際十分御主張爲サルコトハ御主張爲
  サッタ方ガ宜イ、臨時ト申シマシテモ茲ニ
  半年ナリ一箇年ナリ行ハレルノデアルカ
  ラ、ヤハリソレダケ大キナ影響ヲ與ヘルコ
  トニナッテ來ル、商工當局ハ御再考ヲ爲サ
  ル御考ハナイカドウカ、此點ヲ重ネテ御伺
  ヲ致シタイノデアリマス

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• 145・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　只今前囘ノ改正案ト今囘
  ノ改正案ガ全然裏腹デアッテ、前囘ハ短期ヲ
  抑壓シ、今囘ハ長期ヲ抑壓スルト云フ風
  ニ、正反對ニ變ッタト云フヤウナ御話デゴ
  ザイマシタガ、私共ガ考へテ居リマスノハ、
  前囘ハ稅制全般ニ亙ッテ改正ヲスルト云フ
  ヤウナ案デゴザイマシタガ、今般ハ差當リ
  ノ改正ヲスル、サウ云フ考デゴザイマスルカ
  ラ、長期、短期ト云フ根本的ノ、ドチラガ善イ
  カ、ドチラガ惡イカ-善イ惡イト申シマ
  スルト語弊ガアルカモ知レマセヌガ、只今
  御話ノヤウナ、ドチラガ投機的デアルカド
  ウカト云フヤウナ問題ハ、姑ク之ノ〓究ヲ
  保留致シマシテ、現在ノ稅制ヲ標準ト致シマ
  シテ、暫定的ニ或ル一定ノ增徵ヲスルト、斯
  ウ云フ立前デアリマスルカラ、考ヘ方ニ於テ
  非常ナ裏腹ナ、正反對ノ立法ト必シモ考ヘ
  テ居リマセヌ、尙ホ序ニ短期ガ投機的デアル
  カ、長期ガ投機的デアルカト云フコトハ、
  此兩取引ニ付テソレ〓〓一長一短ガゴザイ
  マス、勿論短期取引ヲ大正十一年ニ制定致
  シマシタ當時ニ於キマシテハ、之ニ非常ナ
  理想ヲ持ツテ居ッタノデゴザイマス、其後
  ノ實績ニ徵シマスルト、當時ノ理想ガ其儘
  ニ現レテ居ルカドウカト云フコトニ付テ
  ハ、十分ニ檢討ヲ要スル事項ガ多イト思ヒ
  マスルガ、現在ノ狀況ニ於キマシテモ、長
  期ニハ長期ノ特色ガアリ、短期ニハ又短期
  ノ特色ガアリマシテ、此優劣ヲ一〓ニ斷定
  スルト云フコトハ、極メテ困難ナ問題デア
  ルト考ヘテ居リマス、隨テ取引所制度ノ調
  査會等ニ於キマシテモ、此取引ガドウ云フ
  ノガ宜イカ、或ハ更ニ短期、長期以外ノ取
  引方法ガ必要デアルカト云フヤウナ色々ナ
  問題ニ付キマシテハ、目下銳意考究中デア
  リマス、隨テ今般ノ改正案ハ、差當リ現在
  ノ稅制ヲ根據ト致シマシテ、一率ニ之ヲ增
  徵スルト云フ程度ニ止メタ、斯ウ云フ關係
  デゴザイマス

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• 146・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今小山サンカラ色々御
  述ニ相成リマシタ事ニ付テハ、大體商工次
  官カラ御說明ニナッタト思フノデアリマス
  ガ、元ノ案ニ於キマシテハ、短期十割、長
  期四割、斯ウ云フ案デアッタノデゴザイマ
  ス,是ハ御承知ノ通リダト思フノデゴザイ
  マスガ、ソレニ付キマシテ大分世論囂々ト
  致シマシテ、實ハ私主稅局長ニナリマシ
  テ、早速色々民間ノ意見其他ヲズット一應
  聽イタノデゴザイマスガ、其際ニモ短期ト
  長期トヲ一〓ニシロト、斯ウ云フ說ガ大分
  アッタノデアリマス、ソレデ寧ロ是ハ取引
  所自身モサウ云フ意見ヲ發表シテ居ッタ模
  樣デゴザイマス、是ハ或ハ長期ガ四割ダッ
  タカラ、短期モソレト同ジニシロ、卽チ十
  割カラ四割マデ引下ゲロ、斯ウ云フ御要求
  デアッタノカモ分リマセヌ、ガ同ジ率ニシタ
  ガ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フ御意見ガアッ
  タノデアリマス、是ハ私モ其前カラ、ドウ
  モ今日ノ稅率ガ、長期ガ高クテ短期ガ安
  イ、ソレヲ短期ニ餘計ナ增率ヲシテ、長期
  ニ少クスルト云フコトハ、今日ノ稅率ヲ引
  繰返シテシマフ一ツノ行キ方ヂヤナイカ、
  ソレデ先程モ御話ノアリマシタ通リ、暫定
  的ニ行クノデアルナラバ、ヤハリ一率デ
  行ッタ方ガ宜クハナイカト、斯ウ考ヘマシタ
  次第デアリマシテ、之ヲ同ジニ行キマシ
  テ、サウシテ其間ノ稅ノ負擔ヲドウスル
  カ、斯ウ云フコトデ計算致シマシテ、短期
  十割、長期四割ト云フモノト大體總體ノ稅
  金額ガ幾ラカ落チル、幾ラカ少クナル、斯
  ウ云フ程度ニ致シマシテ、算盤ヲ彈キマシ
  タ所ガ八割ト云フ數字ガ出來タノデアリマ
  シテ、特ニ更ニ增徵スルト云フ考ハアリマ
  セヌデゴザイマシタ、前ト同ジ稅收入デ、
  ソレヨリ幾ラカ低クト云フ程度デ決メタノ
  デゴザイマス、一旦決メレバ此次モ其儘オ
  前持ッテ行ッテシマウダラウ、斯ウ仰シヤラ
  レマスガ、一ツ此次ノ機會ニ於キマシテ
  ハ、十分ソレ等ニ付キマシテハ、商工省ト
  御相談致シマシテ、決定致シタイ、斯ウ存
  ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=146

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• 147・小山倉之助

  ○小山委員　兩政府委員ノ御答辯デ能ク了
  解致シマシタ、村瀨政府委員ノ仰シヤイマ
  スル通リ、根本的ノ稅ノ改革デアッテ、全般
  的ニ最モ公平ナ場合ニハ三·〇、三·五ト斯
  ウ御決メニナッタ、詰リ馬場案ガヤハリ一番
  公平ナンダ、今度ノハ唯一寸ノ間ヤルンデ
  アンナ、一時的ノ問題デアッテ、軈テ改正
  スルンダカラ八割增稅ニ贊成スル、改メ
  テチットモ差支ナインダ、斯ウ云フ風ニ
  私ハ聽取レルノデアリマシテ、又主稅局長
  ノ方モ率直ニサウ云フ風ニ御認ニナル、是
  ハ暫定的案ダ、ダカラ之ヲ今固執スルノデ
  ナイ、後デ改メルノハ差支ナイ、併シ私ハ
  主稅局長ガ斯樣ニ御改メニナッタコトニ付
  テハ、決シテ私ハ其處ニ御無理ハナカラウ
  ト拜察スルノデアリマス、ヤハリ八割上ゲ
  テ置イタラ宜イヂヤナイカ、前ノ馬場案ヂ
  ヤ相當非難ガアルカラ、平等ニ上ゲリヤ文
  句ハナイヂヤナイカ、此趣旨ハ私能ク拜承
  スルコトガ出來ルノデアリマス、併シ其結
  果從來ハ唯僅ニ一分デアッタノガ、今度ハ
  一分八厘ニナッテシマフ、從來ハ五分位ノ程
  度デ長期ヲ多少保護シテー-東京ニシカ
  殘ッテ居ナイ六十年間ノ歷史ヲ持ッテ居ル、
  而モ相當財界ノ混亂ノ起ッタ場合ニハ有效
  ナ働ヲスル此證劵ガ段々殖エテ來ルニ從ツ
  テ、此證劵ノ値段ノ調節ヲ圖ルニモ、又長
  期ヲ堅實ナ商賣ヲサセルニモ必要ダト云フ
  唯一ノ機關、其唯一ノ機關ガ偶然ニモ從來
  ハ一分デアッタモノヲ、之ヲ五分ニ直シテ、
  之ヲ保護助長シテ行カウト云フ此考ガ、
  分八厘デ破壞サレタト云フ結果ニ陷ヲタコ
  トハ、是ハ主稅局長モ或ハ偶然ヂヤナカッ
  タカト思フ、サウ云フ結果ニ陷ルコトヲ豫
  想サレナカッタカモ知レナイ、ソコデ臨時
  ダカラ、將來改メルノデアルカラ之ヲ固執
  シナイ、斯ウ云フ風ニ仰シヤルノデアリマ
  スカラ、是非一ツ商工當局ト大藏當局トノ
  間ニ御協議下サイマシテ、斯樣ナ問題ハ直
  グ所得稅ヲ上ゲタトカ、個人所得稅ヲ一寸
  上ゲタトカ云フ問題ト違フノデ、非常ニ
  是ハ市場ニ影響ヲ與ヘル問題デアリマスカ
  ラ、十分御協議ノ上、今マデ馬場サンノ場合
  ニハ、又色々ノ御意見ヲ伺ッテ御決メニナツ
  タンデセウ、又主稅局長ガ御改メニナッタ
  ニ付テハ色々世間ノ御批判ヲ聽カレテ、ソ
  レデ御改メニナッタノデアリマセウ、今度
  ハ議會ニ於テ私共モ相當方々カラ意見ヲ注
  入セラレ、又自ラ〓究シタコトヲ、所謂吾
  吾國民ノ代表者トシテノ批判モ、此處ニ又
  御聽キニナルノデアリマスカラ、ドウゾ之
  ヲ御聽キノ上適當ニ此點ニ付テ協議アラン
  コトヲ、私ハ切ニ希望スル次第デアリマ
  ス、御協議ナサル御意思デアリマスカ、ド
  ウデアリマスカ、之ヲ一ツ御伺致シタイノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=147

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• 148・村瀬直養

  ○村瀨政府委員　只今ノ御言葉ヲ返シテ甚
  ダ恐縮デゴザイマスガ、現在ノ程度ニ於テ
  ハ、此改正案デ參リマスノガ適當デハナカ
  ラウカ、斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=148

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• 149・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　大體商工省ノ御意見ト同
  ジデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=149

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• 150・内藤正剛

  ○内藤委員　一寸關聯シテ-本日直チニ
  御囘答ヲ求メマセヌケレドモ、今ノ取引所
  ノコトデ關聯シテ御尋シマス、私ハ三十年
  來取引所ノ二三丁附近ニ住ンデ居リマシ
  テ、長期短期ノコトハ能ク知ッテ居ルノデ
  アリマス、今日私ハ順番デアリマセヌカ
  ラ、長期竝ニ短期ノ弊ハドウ云フモノデア
  ルカト云フコトハ、私ハ代議士トシテデナ
  ク、辯護士トシテモ能クアラヲ知ッテ居リ
  マスガ、此處デソレヲ具體的ニ申上ゲテ波
  瀾ヲ生ゼシメヨウトハ思ヒマセヌケレド
  モ、昨日來主稅局長ノ御話ノ中ニ、長期ヨ
  リハ短期ヲ保護シタイト云フ御趣旨ノヤウ
  デアリマシタガ、今小山委員カラモ御質問
  ガアッタ如ク、殆ド短期ハ賭博ニ似タヤウ
  デアリマス、政府ニ於カレマシテハ、長期
  竝ニ短期ヲ御認メニナッテ居リマスノニ、短
  期ニ付テ本當ノ取引ガドノ位出來テ居ルカ
  ト云フコトハ、統計ヲ御調ベニナッタノデ
  セウカ、此法文ノ中ニ、賣買契約解除致シ
  マシテモ稅ヲ取ルト云フノハ、詰リ短期取
  引ガ殆ド賭博ニ類スルヤウナコトガ多イノ
  デアッテ、現物ノ取引ガ少イト云フコトヲ、
  如實ニ物語ルモノデハナカラウカト思フノ
  デアリマス、此長短ノ問題、特ニ兩方ヲ八
  割ヅツニヤッタト云フコトニ付テハ、私ハ
  多少ノ意見ハ持ッテ居リマスガ、政府ニ御尋
  スルノハ-今日御答ヲ求メヨウトハ存ジ
  マセヌガ、次會ニ、短期取引ニ依リ〓算サ
  レタル受渡ノ數量、竝ニ長期ニ依ッテ全國
  的ニ受渡サレタ數量ガ御分リニナレバ、御
  答辯ヲ願ヒタイト存ジマス、其上デ私共意
  見ガアレバ一論戰ヤルコトヲ躊躇致シマセ
  ヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=150

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• 151・増田義一

  ○增田委員長　本日ハ此程度ニ於テ止メマ
  シテ、小山委員ノ質問ハ尙ホ繼續致シマ
  ス、次會ハ明後六日午前十時ヨリ開會致シ
  マー、是ニテ散會致シマス
  午後五時四十三分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X00719370304&spkNum=151

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