1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時租税増徴法案(政府提出)
法人資本税法案(政府提出)
外貨債特別税法案(政府提出)
揮發油税法案(政府提出)
有價證券移轉税法案(政府提出)
明治四十年法律第二十一號中改正法律案(樺太に於ける租税に關する件)(政府提出)
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會議
昭和十二年三月十日(水曜日)午前十時三十九分開議
出席委員左の如し
委員長 増田義一君
理事 高橋守平君 理事 三善信房君
理事 服部英明君 理事 森肇君
理事 宮澤裕君
太田信治郎君 松田喜三郎君
川崎末五郎君 升田憲元君
仲井間宗一君 小山倉之助君
内藤正剛君 堀内良平君
池本甚四郎君 作田高太郎君
矢野庄太郎君 篠原陸朗君
木暮武太夫君 松岡俊三君
紅露昭君 太田正孝君
宮本雄一郎君 金光庸夫君
片山秀太郎君 水谷長三郎君
河野密君 加藤勘十君
伊禮肇君 渡邊泰邦君
同日委員池本甚四郎君辭任に付其の補闕として村岡吾一君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
内務大臣 河原田稼吉君
大藏大臣兼拓務大臣 結城豊太郎君
出席政府委員左の如し
内務省地方局長 坂千秋君
大藏次官 賀屋興宣君
大藏省主税局長 石渡莊太郎君
大藏省書記官 松隈秀雄君
本日の會議に上りたる議案左の如し
臨時租税増徴法案(政府提出)
揮發油税法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=0
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001・増田義一
○增田委員長 是ヨリ臨時租稅增徵法案外
五件ノ委員會ヲ開キマス、森肇君ニ發言ヲ
許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=1
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002・森肇
○森委員 內務大臣ニ一二御所見ヲ伺ヒタ
イト思ヒマス、昨日內務省ヨリシテ頂戴致
シタ資料ニ依リマスト、昭和十二年度ノ道
府縣ノ豫算ハ稀ニ見ル增加ヲ〓ゲテ居リマ
ス、總計ニ於テ約八分ニ近イ增加、而モ各
縣ノ中デ群馬外五縣ト云フモノハ、多分是
ハ災害復舊等ノ關係デアリマセウガ減ジテ
居リマス、ソレニ拘ラズ、他ノ方面ノ平均
ニ於テ八分ノ增加、而モ其中ニハ、或ルモ
ノハ四割以上ノ增加ヲ告ゲテ居ルモノガア
リマス、或ハ二割ノモノアリ、三割ノモノ
アリ、最小限ニ至ッテ六分ノ增加ヲ〓ゲテ
居ル、斯樣ナコトハ、私ハ餘程時代ガ違ッテ
參ラナケレバ是マデニ見タコトノナイ例ダ
ト思ヒマス、此增加ノ裏面ニハ如何樣ナ事
情ガ含マレテ居ルカ、御說明ヲ願ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=2
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003・河原田稼吉
○河原田國務大臣 實ハ私マダ其御手許ニ
差上ゲタ表ヲ見テ居ラヌヤウナ譯デアリマ
シテ、寧ロ政府委員ノ方カラ御說明申上ゲ
ル方ガ便宜ダト思ヒマス、御諒承ヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=3
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004・坂千秋
○坂政府委員 各縣區々ニナッテ居リマシ
テ、總體ニ於キマシテハ相當ノ增加ヲ示シ
テ居リマスコトハ御話ノ通リデアリマス、
是ハ如何樣ノ事情ニ依ッテ其增加ガ來タカ
ト云フ御尋デアリマスガ、ソレハマア其縣
ソレ〓〓ノ事情モアルダラウト思ヒマス
ガ、大體ニ於キマシテ、ヤハリ各地方ノ要望
ニ隨ヒマシテ、アレ是レ事業ノ必要ガ生ジ
マシテ、其必要ニ依リマス事業ノ增加ガ、
自然豫算ノ增加ニナッテ居ルヤウニ考ヘテ
居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=4
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005・森肇
○森委員 一部分ニ付テハ只今ノ御說明ヲ
是認致シマス、併シ大體ヨリ申セバ二億二
千萬圓ノ配當ト云フモノヲ前ニ置イテ、而
シテ如何ニ其恩典ニ浴シテ餘計貰フカ、此
氣構ヘカラシテ增加シテ居ルモノガ非常ニ
多イト私ハ思ヒマス、私ハ實際ニサウ云フ
事實モ知ッテ居ルノデスケレドモ、何處ノ縣
ガドウダト云フコトヲ指サスコトハ止メマ
ス、兎ニ角之ヲ見越シテ豫算ノ編成ヲヤッ
テ居ル、其結果ガ斯ウ云フコトニナッテ居
テ、旣ニ豫算ハ成立致シテ居ッテ、目當ニシ
タ金ハ行カナイト云フコトニナルダラウト
思ヒマスガ、若シ左樣ナ場合ガアッタトシタ
ナラバ、內務大臣トシテハ如何ニ之ニ處セ
ラレルカ、此點御尋致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=5
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006・坂千秋
○坂政府委員 御尋ノ點デアリマスガ、是
ハ此稅制ガ新聞紙等ニ依リマシテ世間ニ出
タノデアリマスガ、內務省ト致シマシテ
ハ、昨年縣ノ豫算ヲ編成スル以前ニ通牒ヲ
出シマシテ、此稅ヲ見越シテ稅制ノ改正ガ
アルト云フ豫想ノ下ニ豫算ヲ組ンデハ相成
ラヌ、稅制ハ現在ノ儘續クモノトシテ、其
上ニ確實ナ見込ヲ取ッテ豫算ヲ組メ、此際
增稅ノ如キモノモ避ケナケレバナラヌト云
フコトヲ府縣ニ對シマシテ通牒ヲ出シマシ
タシ、又市町村ニ對シマシテモ同樣ノ趣旨
ヲ能ク示達シテ貰ヒタイト云フコトノ通牒
ヲ出シテ居ルノデアリマス、本內閣ニナリ
マシテモ重ネテ其趣旨ヲ-同ジ趣旨デア
リマスガ、通牒ヲ致シマシテ、決シテアレ
是レ思惑ト申シマスルカ、色々ナコトヲ考
ヘテ餘計ナ經費ヲ計上シタリ、豫算ノ膨脹
ヲ來シテハ相成ラヌト云フコトヲ嚴ニ戒メ
テ居ルノデアリマスカラ、私ハ左樣ナ事實
ハナイノデハナイカト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=6
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007・森肇
○森委員 是ハ幾度重ネテ申述べテモ結局
ハ議論ニナリマスカラ、私ハ是レ以上申ス
コトヲ避ケマス、併シ事實トシテ私共ノ知
ル限リヲ以テスレバ、昨年ノ八九月頃カラ
昨年ノ押詰リ、所謂年末ニ至リマスル迄ノ
間ニ中央ヨリシテ地方ニ色々油ヲ掛ケラレ
テ、サウシテ此馬場財政ニ基ク所ノ制度ノ
改革、若クハ稅制ノ改革等ガ非常ニ金科玉
條デアルカノ如クニ宣傳セシメラレテ、サ
ウシテ遂ニ斯樣ナ豫算マデモ生ムニ至ッタ
ト云フ事實ハ、是ハ掩フベカラザルコトデ
アルト私共ハ思ッテ居リマス、軈テ是ハ本年
ノ年度ガ終ッテ、明年度ノ開始ヲ致シマシタ
ナラバ、必ズ一ツノ難題トシテアナタ方ノ
前ニ現レテ來ルト思ヒマスカラ、之ニ付テ
ハ十分御〓究、御考慮ヲ願ッテ置カネバナラ
ヌト思ヒマス、私ハ是ガ若シ前ノ內閣ノ繼
續デアルナラバ、茲ニ責任ノ問題ニマデ及
ンデ議論ヲ致シタイノデアリマスケレド
モ、大臣、局長共ニ其後ニ御出デニナッタノ
デアリマスルカラ、此以上ノコトヲ申上ゲ
マセヌガ、併シ內務省トシテノ指導其宜シ
キヲ得ザレバ、僅ニ一年ノ間ニ於テモ斯樣
ナ經費ノ膨脹ヲ來スト云フ事實ガアルノデ
アリマス、私ハ一內務大臣トシテノ河原田
サンニ御尋申スト言フヨリモ、政府ヲ代表
サレル國務大臣トシテ茲ニ一ツ御尋ヲシテ
置キタイコトガアリマス、私ハ生レテ後常
ニ平民ノ生活ヲ續ケテ參リマシタガ、曾テ
過ッテ一度役所ノ飯ヲ食ッタ時代ガアルノデ
アリマス、其時分ニ痛感シタコトデアリマ
スガ、私ハ縣會ニ居ッテ、縣ノ豫算ヲ色々〓
究致シマス時分ニ、豫算ト云フモノハ何故
斯ウ頭ヲ捻ラナケレバ分ラナク作ルノデア
ルカ、モウ少シ明瞭ニヤッテ居タラバ宜カラ
ウト考ヘテ居ッタ其頭ヲ以テ、中央政府ノ豫
算ノ立前ヲ考ヘテ見ル時ニ、洵ニドウモ複
雜繁縟、其途ノ人デサヘモ十分ニ了解ノ出
來ナイヤウナ豫算ノ組立ニナッテ居ル、其複
雜ナル豫算ノ組立ノ裏ニ色々ナ「トリック」
ガアル、一々事實ヲ擧ゲテ申スコトハ避ケ
マスガ、是ハ御認ニナルダラウト思フ、大
藏省トシテハ成ベク豫算ノ數字ヲ減スコト
ニ力ヲ注ガレル、他ノ各省トシテハ成ベク
餘計金ヲ取ルコトニ努メル、其結果ガ局ト
シテ、省トシテ、課トシテ、一々其課ハ其
課其局ハ其局、其省ハ其省デ一ツノ城塞
ヲ築イテ、サウシテ大藏省ニ對スルト云フ
ヤウナ形ニナッテ居ル、デアルカラ澤山ノ金
ノ中ニハモウ既ニ古色蒼然トシテ苔蒸シテ
居ルヤウナ經費モアル、何カ役ニ立ッテ居ル
カ、使ッテ居リマスカラ役ニ立タヌノデハア
リマスマイガ、今日ノヤウナ困難ナル財政
ノ狀況ニ卽シテハ、モウ既ニ是ハ疾ノ昔ニ
削ッテ止シテシマッテ宜イヤウナ經費ガ、各
省ニマダ相當ニアルト私ハ思ヒマス、又或
ル意味ニ於テハ省ト省トノ對立ノ關係ヨリ
致シテ、例ヘバ農林省ト內務省ト云フモノ
ヲ比較シテ見ルト、昨年內務省ノ新規要求
ノ金ガ幾ラデアル、農林省ハ幾ラデアッタ、
今年內務省ニ幾ラ取ラレルナラバ、面目ニ
掛ケテモ農林省ハ幾ラ取ラナケレバナラヌ
ト云フヤウナコトデ、新規事業費ノ立前ヲ
作ル、又大藏省トシテモ査定セラルヽニ
當ラン、其見合ヲ付ケテ大體ノ査定ヲセラレ
ル、ソコデ妥協ガ出來テ來ル、斯ウ云フヤ
ウナ狀況デアルカラ、今ノ儘ニシテ御進ミ
ニナレバ豫算ハ唯增加スル一方、到底是ハ
減ルコトハナイ、最近ノ二十年間幾度カ稅
制ノ整理ガ行ハレ、幾度カ行政ノ整理ガ行
ハレタデアリマセウガ、其結果ハドウデ
アッタカト言フト、一二年ノ間幾ラカ數字ハ
減ッテ居ルガ、モウ三年目四年目カラハ更
ニ非常ナ勢ヲ以テ政費ハ增加致シテ居ル、
此事實ハ誰モ否定スル譯ニハ參ルマイ、ソ
レト云フノモ此機構ノ問題ニ手ヲ入レナイ
デ、唯表面ダケデ一時的ニ數字ヲ減シテ行
カレルト云フ結果ガ斯ウナッテ來タ、是ハ大
臣トシテ御認ニナルダラウト思ヒマス、或
ハ又各省別ニ一ツニシテモ宜ササウダト思
フヤウナ仕事ガ分レテ行ハレテ居ル、例
バ治水事業ニシテ考ヘテ見マシテモ、山ノ
奥ノ方ニ參レバ森林治水ト稱シテ色々砂防
ヤ植林等ガ行ハレテ居ル、ソレハ農林省ノ
山林局デヤッテ居ルカト思ウテ見ルト、內務
省土木局ニ於テヤッテ居ル仕事モアル、形ガ
違フカト云フト、要スルニ水ヲ治メル目的
ノ仕事デ、何等形ハ違ッテ居ナイ、或ハ中流
ニ至ッテハ內務省ノ河川工事デアル、サウカ
ト云ッテ下ノ方ニ行ッテ見ルト、今度ハ違ッタ
方面デ二ツノ工事ガ川ニ行ハレテ居ル、
方ハ何デアルカ、農林省ノ用排水幹線工事
デアル、一方ノ方ハ內務省ノ河川改修デア
ル、私共ノヤウナ一ツノ蟇口ニ入レテ居ル
金ヲ出シテ、一家ノ支出ヲ致シテ居ル者カ
ラ見レバ、如何ニモ不思議ナ金ガ政府ニハ
アルモノダト云フ感ジヲ致ス、役所ニ入ッテ
居ッテ其感ジガアリマスカラ、役所以外カラ
見テ不審ニ思フノハ當然デアリマス、或ハ
內務省ノ河川改修計畫トカ、其河川ニ直接
ノ連絡ヲ有スル用排水幹線ノ改修ト云フヤ
ウナ問題ガ、別々ニ計畫サレル結果トシ
テ、內務省デ既ニ堰止メラレタ所ノ堤防ヲ
態〓切崩シテ、農林省ノ用排水ノ計畫ヲシ
タト云フヤウナ事實サヘモアル、是モ御否
定ニナルマイ、斯ウ云フコトニモ十分ノ考
慮ヲ加ヘラレテ、根本的ノ改革ヲ遂ゲラレ
ナケレバ、私ハドウシテモ增稅ハ年々行ッテ
行カナケレバ足ラナクナッテ來ルト思ヒマ
ス、或ハ又先般來豫算委員會ニ於テ、陸海
軍ノ合セテ四千六百萬圓ノ金ヲ減スカ、殘
スカ、打切ルカ、大分アノコトデ議論ニナッ
テ居ッタノデアリマスルガ、私ハアレ等ノコ
トヲ議論スルドコロデハナイト思フ、今繼
續年度ヲ定メテ每年度ノ支出額ヲ計上サレ
テ居ル金モ相當ニアリマス、或ハ一年度限
リノモノモアリマスガ、事實ニ於テ其年度
內ニ其金ノ總テガ使ハレタト云フ事實ガア
リマスカ、無論一部分ニハアリマセウガ、
大部分ハ繰越シ、今借金シテヤッテ行クノダ
カラ其年度內ニ不用ノ金ハ繰越シテ借金ヲ
シサヘシナケレバ宜イト云フコトニナル、
若シ是ガ總テ國民ノ租稅ニ依ッテ賄ハレテ
居ルト云フ時代デアルナラバ、不用ノ金ヲ
國民カラ徵シテ、無利子デ以テ銀行ニ預ケ
テ置クト云フ結果ニナル、是等ノモノヲ十
分ニ檢討サレテ、其年度內ニナクテハナラ
ヌ程度ノモノヲ各省、各課、各局ニ於テ計
上スルコトニ止メルト云フコトニナッテ參
リマスナラバ、近頃世間ノ一部ニ唱ヘラレ
テ居ル經常臨時ノ豫算ヲ通ジテ一割ノ削減
ヲシテモ、國政ハ現狀通リニ行ハレルモノ
デアルト云フ意見ニハ、聽クベキモノガア
ルト私ハ思ッテ居リマス、事實役所ノ內部ニ
入ッテ考ヘレバ必ズ是ハ出來ル、一割位ノ
削減ハ私ハ出來ルト思フ、金ハ減ラスガ、
仕事ハ其儘ニシテ出來ル、併シ之ヲヤラウ
ト云フコトデアルナラバ、多年ノ歷史ト、
多年ノ傳統ノ上ニ動イテ居ラレル事務官諸
君ニ申シテモ、到底不可能ナ話デアル、私
ハ河原田內務大臣ガ內務省ノ長官トシテノ
立場ヲ離レラレテ、次ノ制度ノ改革、來ル
ベキ中央地方ノ財政、稅制ヲ考ヘラレル場
合ニ當ッテハ、所謂國務大臣トシテ、國務大
臣五ニ膝ヲ突合セテ一ツノ大方針ヲ確立サ
レシ、此豫算ノ上ニモ拔本的ノ改革ヲ加ヘ
ラナケレバ、到底其目的ヲ逹スルコトハ困
難デアルト思フノデアリマスガ、大臣ハ如
何ニ此點ヲ御考ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=7
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008・河原田稼吉
○河原田國務大臣 只今森サンノ御述ニナ
リマシタ地方稅、若シクハ地方財政、若シ
クハ豫算ノ編成、其施行ト云フコトニ對シ
テノ御言葉ハ洵ニ私ハ傾聽スベキ御意見ト
思フノデアリマス、是ハ國政ノ衝ニ當ル者
ハ此點ニ付キマシテハ、十分ナ注意ヲ拂ハ
ナケレバナラヌト思ヒマス、唯是ハ今囘ノ
例ヲ御參考マデニ申シマスト云フト、林內
闇ガ成立シマシテ、割合ニ其點ハ、或ハ自畫
自讃ニナルカモ知レマセヌガ、御言葉ノヤ
ウナ趣旨デ進行致シタノデアリマス、御承
知ノ通リ、前內閣ニ於テハ三十億四千萬圓
ト云フ豫算ガ出來マシタノデアリマスガ、
兎モ角現內閣ガ出來マシテ、一番急務ト云
フモノハ何デアルカト云フト、所謂物價ノ
暴騰ヲ抑ヘテ、サウシテ人心ヲ安定サセル、
是ガ何ヲ指置イテモ大事ナ要務デアルト云
フコトニ一同ガ一致ヲ致シマシテ、サウシ
テ短時日ノ間ニ兎モ角此豫算ノ面ヲ或程度
マデ減シタ、申ス迄モナク國家ト云フモノ
ガ一番ノ消費者デアリマスカラ、其豫算ヲ
或程度マデ緊縮スルト云フコトハ、需要供
給ノ上カラモ、亦人氣ノ上カラモ此物價ノ
暴騰ヲ抑ヘテ、人心ヲ安定セシメルデアラ
ウト云フコトデ、極メテ短時日ノ間ニ閣僚
ガ一致ヲシテ、右ノヤウナ方策ヲ立テマシ
タ譯デアリマス、御承知ノ通リ地方財政調
整交付金ノ二億二千萬圓ト云フモノモ、是
モ平素ノヤリ方デ行キマスレバ、中々將
來ニ於テモ議論ガアル所デアリマス、
併シ此方針ヲ體シマシテ、大局論カラ
是ハ將來ノ根本的ノ〓究ニ讓フテ、取敢
ヘズ斯ク〓〓ト云フヤウナ譯デ、其外
各省ニ於ケル豫算ノ緊縮、或ハ陸海軍ニ
於ケル豫算ノ緊縮ト云フコトモ大體ニ於
テ圓滑ニ、殆ド四五日間ニ決定致シタヤ
ウナ譯デアリマス、段々是ハ御述ニナリ
マシタヤウニ、國政ヲ運用スル上ニ於テ、
所謂政府ガ一團トナッテ進ンデ行クト云フ
コトハ極メテ必要デアリマシテ、サウ云フ
風ナ趣旨デ將來モ進ミタイト思ヒマス、重
ネテ只今ノ森サンノ御言葉ハ洵ニ御尤ナ御
意見トシテ私共ハ傾聽致シマシタノデアリ
ママ、御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=8
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009・森肇
○森委員 今囘ハ餘程周圍ノ事情ガ違ッテ
居リマスノデ、內閣トシテノ御仕事ニモ色
色ノ御便宜ガアッタト思ヒマス、御苦心ハ御
察シスルガ、便宜ガアッタニ違ヒナイ、併シ
此次ノ豫算ヲ編成サレル場合ニ至レバ、モ
ウ相當時ヲ過シテ參ルノデアリマスカラ、餘
程其點ニハ御留意ヲ爲サラナケレバ實效ヲ
收ムルニハ御困難ナ事情ガ起ッテ來ルト思
ヒマス、ドウシテモ是ハ事務官ヲ拔キニシ
タル國務大臣ノ大決心デオヤリニナルヨリ
外ニ途ハアリマセヌ、重ネテ此點ニ付テハ
御留意ヲ希フト同時ニ、御繰延ニナリマシ
タアノ豫算ノ內容ヲ見マシテモ、私共ハ寧
ロ繰延ヨリモ、削減サレテモ宜イモノガマ
ダアルト思ヒマス、アヽ云フ繰延ニ依ッテ
將來ノ約束ヲシテ行クト云フノデナクシ
テ、臨時、經常ノ兩方面ニ亙ッテヤハリ是
ハ數字ヲ御減シニナラナケレバナラヌ-
實際ニ御減シニナラナケレバナラヌ、サウ
ナッテ參レバ今後ノ國防、軍備ノ費用ガ如
何ニ餘計增シテ參ラウトモ、第二ノ增稅ヲ
シナクテモ濟ム、而シテ一割位ノ減稅ヲシ
テ行ケルト思フ、自分ノ知ル限リニ於テハ
兎ニ角人ガ多過ギル、柱ガ立チ過ギテ居ル、
斯ウ云フモノヲ餘程御整理爲サラナケレ
バ、何年經ッテモ本當ノ整理ハ出來ナイト
思フ、重ネテ此點ニ付テハ御注意ヲ喚起致
シテ置キマス
次ニ御伺シタイコトハ交付金ノ問題デア
リマス、七千萬圓ニ付テハ大體內務省トシ
テ-如何ニ之ヲ利用スルカノ腹案ヲ御持
チニナルコトデアルト思フ、三千萬圓ヲ增
加シテ一億圓ニナルコトハ間違ナイコトデ
アルガ、此一億圓ヲ昭和十二年度ノ所謂暫
定的ノ施設トシテハ如何ニ地方ニ御配當ニ
ナルカ、府縣市及町村ノ間ノ大體ノ見當ヲ
御話下サレバ宜イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=9
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010・河原田稼吉
○河原田國務大臣 前ノ七千萬圓ノ大體ノ
方針ニ付キマシテハ、過日申上ゲマシタ通
デアリマス、只今御述ニナリマシタヤウニ
實ハ此配當ト云フモノハ、餘程苦心ヲ要ス
ルト思ヒマス、唯稅ノ狀況トカ、或ハ財政
ノ狀況ト云フヤウナ千篇一律ノ標準デハ中
中立テニクイ、要スルニ是ハ農漁出村方面
ノ住民ノ負擔ノ輕減ニ充テルト云フ趣旨デ
アリマスカラ、其趣旨ヲ貫徹シナケレバナ
ラヌノデアリマシテ、隨ヒマシテ是ハ唯形
式一片ダケノ標準ト云フコトデハイカヌ場
合モアル、七千萬圓ノ場合ニハ割合ニ比較
的簡單デアリマシタケレドモ、更ニ三千萬
圓ガ加ハルト云フコトニナリマスト、是人
一層ノ苦心ヲ要スルト思ヒマス、隨ヒマシ
テ是ハ過日私モ申シ、又豫算總會等ニ於テ
決議ニナリマシタヤウナ、ソレ〓〓達識ノ
士ヲ網羅シマシテ、役所バカリデナク十分
ニ其方針ヲ樹立シテ配當ヲ致シタイ、斯ウ
云フ積リデアリマス、隨ヒマシテ是等ハ十
分ニ練ル必要ガアリマスノデ、マダ此處デ
ハ腹案ヲ申上ゲルヤウナ時機ニ達シテ居ラ
ヌト思ヒマスガ、ソレガ將來サウ云フ風ダ
ト云フコトニナリマスト困リマスケレド
モ、大體多少、係ノ方デ拵ヘツヽアルサウ
デスカラ、ソレヲ申上ゲルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=10
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011・坂千秋
○坂政府委員 是ハ只今大臣カラ御話ノア
リマシタヤウニ、唯私共ガ手許デ腹案ノヤ
ウニシテ考ヘル程度ノモノデアリマシテ、
政府ト致シマシテ、十分ニ決ツタモノデハ
ナイノデアリマスカラ、其點ハ御諒承ヲ戴
キマシタ上デ、一應腹案ノヤウナモノヲ申
上ゲタイト思フノデアリマス、大體府縣ヲ
通ジマシテ何レモ農漁山村住民ノ負擔ノ輕
減ニ充テル譯デアリマスガ、府縣稅ノ形式
ヲ通ジテ行キマス金ガ五千萬圓弱デアラウ
ト思ヒマス、市町村、殊ニ町村デアリマスガ、
極メテ財政ノ貧弱ナル市ハ含ム譯デアリマ
ス、ソレヲ通ジテ參リマスモノガ大體七千
萬圓强ニナルノデハナカラウカト、大體ノ
見當デアリマスガ思ヒマス、サウ致シマシ
テ其府縣ニ對シテ配當致シマス金ハ府縣ノ
課稅力-稅ヲ賦課スル力デアリマス、其
課稅力ヲ判定致シマシテ、之ニ逆比例スル、
卽チ課稅力ノ强イ處ニハ少ク參リマスヤウ
二、サウシテ一面雜種稅、或ハ地租附加稅
ノ廢稅、減稅ヲサセル積リデ居リマスノデ、
其結果府縣ノ稅ガ減リマスノデ、其減稅所
要額ノ一部ニ於キマシテハ、比例シテ府縣
ニ配當シタラドウデアラウカ、市町村ニ對
シテハ府縣ト同樣ニ一部ハ課稅力ニ逆比例
ヲ致シマシテ、又一部ハ戶數割ト云フモノ
ヲ標準ニ取リマシテ、非常ニ戶數割ノ高イ
處ニハ之ニ對シマシテ相當ノ金ガ參リマス
ヤウニ、戶數割ノ過重額、特ニ重イ額ヲ一定
ノ標準ニ依っテ判定致シマシテ、之ニ比例シ
テ配分スル、唯町村ニハ特別ノ事情ガ色々ア
リマス、是モ金額ハハッキリ決ッテ居リマセ
ヌガ、先ヅ五百萬圓見當ハ別途ニ殘シテ置
キマシテ、特別ノ町村ヲ色々〓究致シマシ
テ配當スル、斯ウ云フ裕リヲ取ルコトガ必
要デハナカラウカ、斯樣ナモノガ、極ク未
熟ナモノデアリマスガ、吾々ノ〓究致シテ
居ル要項デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=11
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012・森肇
○森委員 只今ノ配當ノ率等ニ付テハ、何
レ委員會等ニ掛ケテ大體ノ方針ヲ御決定ニ
ナルモノト思ヒマス、私ハ其時ニ本年度ニ
於ケル二千萬圓ノ配當ノ場合ノヤウナ、全
國囂々タル非難ヲ招クヤウナ配當ニハナル
マイト思ヒマス、之ニハ私ハ多クヲ期待致
シテ、ドウゾ非難ノナキ標準率ヲ定メテ御
配當ニナルコトヲ希望致シマスガ、唯之ヲ
配當サレル目標ハ恐ラク府縣ニ對シテハ雜
種稅ノ輕減デアリ、町村ニ對シテハ主トシ
テ戶數割ノ輕減デアリマセウガ、其雜種稅
ト云フノハドウ云フ方面ヨリ輕減シヨウト
云フ御腹案デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=12
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013・坂千秋
○坂政府委員 雜種稅ニ付キマシテハ、從
來カラ隨分整理ヲシナケレバナラヌ、稅ノ
性質ガ惡イ爲ニ廢メテシマッタラ宜カラウ
ト稱セラレテ居リマスモノ、或ハ稅率ガ非
常ニ高イ爲ニ輕減シナクテハイケナイダラ
ウト稱セラレテ居ルモノガ段々アルノデア
リマスガ、主トシテ社會政策的ノ見地カラ
見マシテ適當デナイト思ヒマス稅、而シテ
ソレハ割合ニ稅額ノ少イ稅デアリマスガ、
斯ウ云フモノハ此際廢メテシマヒタイト考
ヘテ居リマス、ソレカラ或ハ車ノ稅、特上
自轉車ノ稅デアルトカ、或ハ荷積小車-
小サナ車デアリマスガ、斯ウ云フモノハ非
常ニ稅率ガ大キイノデアリマスカラ、全部
廢メルコトハ到底許サレナイノデ、相當ノ
減稅ヲ致シタイト、斯ウ云フ風ナ考デ居ル
ノデアリマスガ、此內容等モ實ハマダハッ
キリト申上ゲル迄ニ達シテ居リマセヌノ
デ、大體細民稅、職業課稅ト云フモノハ廢
メテ、非常ニ負擔ノ高イト稱セラレテ居ル
モノヲ減稅シタイト、斯ウ云フ方針デ進ミ
タイト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=13
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014・森肇
○森委員 此間宮澤君、松田君等カラ既ニ
詳シク言及サレテ居リマス所謂國家事務ノ
地方委任ノ問題、之ニ付テハ松田君ヨリ數
字ヲ擧ゲテ詳シイ御質疑ガアリマシタ、ソ
レニ對シテ內務大臣ノ御意中ハ既ニ御表示
ニナッタ、ソレデ宜シイ譯デアリマスガ、私
ハ是ハ一ツ見ル方角ヲ變ヘテモウ一度內務
大臣ノ御意見ヲ伺ヲテ置キタイ、私共ノ頭ガ
古イカラカハ知リマセヌガ、私ハ明治二十
二年ニ初メテ自治制度ヲ布カレタ當時ニ、
アノ町村制ノ前文トシテ附セラレテ居ル市
町村制理由書ナルモノヲ讀ンデ見テ、如何
ニ此二十二年ニ初メテ自治制度ヲ設ケル時
分ノ氣持ト云フモノガ出不高デアリ、雄大デ
アリ、如何ニ精神氣魄ニ富ンデ居タカト云
フコトヲ追慕シテ已マヌノデアリマス、ソ
レカラ旣ニ五十年ヲ經テ、モウ相當熟シタ
ル自治制デナケレバナラヌノニ、今ノ地
方ノ自治ノ狀況ヲ見マスト、他力依存ノ念
ガ非常ニ高マッテ參リマシタ、窮迫シタ結果
デハアルガ、何處ニ一體自治ノ精神氣魄ガ
アルカト云フコトヲ尋ネタイ位デアリマ
ス、是モ私農林省ニ居ル時代ニ親シク見タ
コトデアリマスガ、茲ニ一夜ノ風ガ吹ク、僅
カ一夜ノ風ナンデス、モウ翌日ノ正午頃ニ
ナリマスト、其風ノ吹キマシタ地方ノ府縣
カラハ電報ガ參ル、如何ニモドウモ敏速ナ
電報デアリマス、而シテ其電報ノ內容ヲ讀
ンデ見ルト、昨夜ノ暴風デ全縣下ニ非常ナ
被害ガアル、之ニ依ッテ害ヲ被レル林檎ガ
何萬個、桑ノ葉ガドウナッタ、サウ云フコト
ヲ一々巨細ニ書上ゲタ電報ガ、而モ地方長
官カラ本省ノ方ニ達セラレル、恐ラク內務
省ニモ左樣ナモノガ參ルデアリマセウ、サ
ウシテ之ニ對シテ此儘ニシテハ、ドウシテ
モ地方ノ町村ガ助カラヌカラ、助成ヲ願フ、
サウシテ二三日スレバ其地方長官ヲ初メト
シテ運動ニ上ッテ來ラレル、ソコデ親シク實
地ニ行ッテ見ルトドウカ、私共ハ思ヒ半バニ
過グルモノガアル、私ハ丁度アノ災害ノ際
ニ農林省ニ居リマシタ關係上、命ヲ奉ジテ
全國ノ各府縣ニ參リマシタ、廻ラナイ處ハ
殆ドアリマセヌガ、其當時參リマシテ、實
地ヲ見タ結果ヲ上司ニ報告ヲ致スト云フ
ト、到頭最後ニハ「君ノ採點ハ辛過ギルサ
ウダゾ」ト言ハレタ位ノコトデアッタノデ
アリマス、斯樣ニシテ、匡救事業以來ノ地
方農村、山村、漁村、其他市ニ致シテモ同
様ドウモ他力本願ガ非常ニ多クナッタ、
此儘ニシテ行ケバ、私ハ地方ト云フモノハ
ドウナルカ心配ヲ致ス、ソレカラ内務省ト
シテノ地方自治體ニ對セラレル態度ヲ考ヘ
テ見ルト、以前ハ全ク指導デアリ、監督デ
アッタデアリマセウガ、今ハ指揮デアリ、命
令デアリ、干渉デアリマス、一ツノ補助ヲ
出スト云フ場合ニハ、必ズ政府ノ命令ノ儘
ニ動カナケレバ、其補助金ヲヤラヌト云フ
態度ヲ執ラレル、中ニハ人マデモ地方長官
ノ好ムト好マザルトニ拘ラズ之ヲ賣付ケ
ル、斯ウ云フ狀況デアルカラ、地方町村ト
シテ十分ノ恩典ニ與カラウト思フナラバ、
首ヲ垂レ、尾ヲ振っテ政府ニ對シテ媚ヲ呈
スルノ外ニ途ハナイ、而シテ一面ニ於テハ
ドウカト云フニ、委任事務ハ年々歲々殖エ
テ來ル、殊ニアノ統計調査事務ノ如キモノ
ハ、針位ノモノヲ與ヘテ、棒程ノ報酬ヲ求
メテ居ラレル狀況デアリマス、ソレデ此町
村役場ノ費用等ヲ今一寸簡單ニ見テ見マス
ト、町村ノ十一年度ノ數字ハ總計ニ於テ歲
出四億九千六百萬圓、約五億圓デアリマス、
其中ニ〓育費ガ二億一千七百萬圓、其次ニ
位スルモノハ役場費ノ七千二百萬圓、而シ
テ町村自體ノ仕事ヂヤナイト云フ論モアル
ガ、暫ク是ハ町村自體ノ仕事トシテ見テ、
土木費ニ幾ラ、勸業費ニ幾ラ、衞生費ニ何
程之ヲ調ベテ見ルト、殆ド九牛ノ一毛ナ
ンデス、卽チ此點カラ見ルト云フト、町村
役場ト云フモノハ一億圓ニ近イ金ヲ使ッテ
居ルガ、三百六十五日何ヲシテ居ルカハ大
體想像ガ付ク、卽チ自治體自體ノ爲ノ仕事
デナクシテ、國家ノ委任事務ノ爲ニ働イテ
居ル、斯ウ云フコトニナル、先般松田君カ
ラ指摘サレタ程ノモノヲ國家ノ委任事務ナ
リト稱シテ、之ニ報酬ヲ與ヘルカ與ヘザル
カノ問題ハ、之ヲ〓究スルコトガ適當デア
ルカドウカハ私ハ別ニ意見ガアリマスガ、
兎ニ角委任事務ガ多イコトハ大臣モ御認メ
ニナッテ居ル筈デアル、ソレデ之ニ對シテハ
町村ノ態度トシテ、是程ノ苦勞ヲ見ルノデ
アルカラ、其苦勞ニ對應スルダケノ費用ヲ
國家カラ出シテ貰ヒタイト云フコトヲ迫ル
ノモ一ツノ行キ方デアリマス、併シ私ハ左
樣ナコトヲ續ケテ參リマスコトハ、自治體
ノ精神氣魄ヲ奪フ結果トナッテ參リマスカ
ラ、政府トシテ今後此庶政一新ノ際ニ御考
ヲ願ハナケレバナラヌ、是ハ地方ニ對スル
委任事務ヲ整理セラレテ、成ベク地方ノ事
務ノ負擔ヲ輕クセラルヽ必要ガアルト思フ
ガ、此點ニ付テハ如何ニ御考ニナルカ、此
點ハ餘程重大問題デアルト思ヒマスカラ、
特ニ大臣ノ御意中ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=14
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015・河原田稼吉
○河原田國務大臣 段々御尤ナ御意見ヲ拜
承シマシテ、只今御述べニナリマシタヤウ
ニ我國ノ自治制ト云フモノハ、山縣內務卿
ノ非常ナ苦心ノ作デアリマス、日外私ガ申
シタカト思ヒマスガ、山縣內務卿ハ自分ノ
一番心配シ、且ツ功績ト思フモノハ、實ハ
自治制デアッタト云フコトヲ公ガ親近ノ人
ニ言ハレタ、果シテ是ガ旨ク行クカドウカ
ト云フコトヲ非常ニ心配シタ、軍制ノ確立
ト云フコトヨリモ、寧ロ自治制ノ確立ト云
フコトガ自分ノ功績デアッタト云フコトヲ
言ハレタ、斯ウ云フコトヲ私ハ先輩カラ聞イ
テ居ルノデアリマスガ、只今御話ノヤウニ
一面ニ於キマシテハ色々國ノ仕事ガ增シ、
隨テ委任事務ガ殖エル、又一方段々何ト言
ヒマスカ、自力ノ觀念ガナクナッテ來テ、何
事ニマレ國ノ方ニ賴ッテ行クト云フ傾向ニ
ナッテ來タコトハ御說ノ通リデアリマス、
是ハ實ハ非常ニ大事ナ岐レ目デアッテ、卽チ
總テ中央集權的ニ向フカ、或ハ地方自治ノ
確立ヲ更ニ期シテ行クカト云フ、今日ハ非
常ニ重大ナ時期ヂヤナイカト思フ位デアリ
マス、將來政府トシテハ此方針ヲ確立ヲシ
テ、サウシテ一方ニ於テ自治制ヲ確立シテ
行クナラ、其方面ニ向ッテ力ヲ注イデ行ク、
隨ヒマシテ中央カラ無暗ニ地方ニ指揮命令
ヲシタリ、或ハ色々ナコトヲソッチニ附ケ
ル、或ハ國費ヲ以テ斯ウ云フ風ニスルカラ、
斯々セヨト云フヤウナ、色々ナ註文ヲ付ケ
ルト云フコトニ付テモ、十分ノ注意ヲ加ヘ
ナケレバナラヌ、政府トシテモ非常ニ考へ
ナケレバナリマセヌガ、又一方吾々カラ申
スト云フト、ヤハリ國民全部ガ一ツ其積リ
ニナッテ行クコトガ必要ヂヤナイカト思ヒ
マス、此方針ハ重大問題デアリマスカラ、所
謂地方制度調査會等ヲ設ケマシテ、是亦官
吏以外ノ達識ノ人ヲ加ヘテ、日本ノ將來ノ
自治制ヲドウ云フ風ニ指導シテ行クカト云
フコトニ付テ、十分ノ〓究ヲ加ヘタイト思
ヒマス、御意見ノヤウニ國ノ委任事務ガ無
暗ニ殖エテ、市町村自體ノ仕事ヨリ殖エテ、
ソレデ追ハレテ居ルト云フコトハ御話ノ通
リデアリマス、之ヲ如何ニ整理シ處置シテ
行クカト云フコトニ付キマシテハ、是人
十分ナ檢討ヲ加ヘナケレバナラヌト思
ヒマス、方針ガ決リマシタ曉ニ於テハ、
政府バカリデナク、國民ヲ代表セラル
ル皆樣方ニ於カレマシテモ、一ツ十分自力
更生ノ御心持ヲ自治體ノ方ニ御傳ヘヲ願ヒ
タイ位ニ思フノデアリマスガ、更ニ之ヲ十
分〓究ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=15
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016・森肇
○森委員 此間是ハヤハリ宮澤君ヨリ申サ
レタノニ對シテ、大臣御答ニナッテ居リマ
ス、地方ニ獨立ノ財源ヲ與ヘル、今度ハ二
億二千萬圓ヲ與ヘテ戶數割ヲ全廢スルト云
フヤウナコトヲ言ハレタノデ、地方ハ非常
ニ有頂天ニナッテ居ッタノデアリマスガ、是
ハ私ハ自治制ノ將來カラ見テ宮澤君ト同樣
ニ斯樣ナコトハヤッテハイカヌト思ッテ居
ル、相當輕減ハ致サナケレバナラヌガ、地方
自治體ニ獨立ノ財源ヲ與ヘナケレバ自治體
ノ獨立ハ出來ヌ、何レ地租ノ問題ナリ、其
他ノ問題ガ起ルデアリマセウガ、馬場財政
ノ時ノヤウニ、地租ニシテモ、家屋稅ニシテ
モ一旦之ヲ國稅トシテ徵收シテ、其金ヲ其
儘市町村ニ返ヘサルヽト云フナラバ、私ハ
是ハ全ク不要ノコトデアルカラ、ヤハリ宮
澤君同樣ニ地方ニ初メカラ與ヘラレタ方ガ
宜イ、何モ昔ノ委讓論ヲ致スノデモ何デモ
アリマセヌ、御與ヘニナッタ方ガ一番宜シ
イ、ソレデ此冬マデニ是等ニ付テノ方針ヲ
御定メニナルナラバ、ドウカ此點ハ特ニ御
考慮ニナッテ、地方ニ如何ナル獨立ノ財源ヲ
與フルカ、サウシテ色々ノ手數ヲ掛ケナイ
デ濟ムカト云フコトニ付テ、成ベク事務ヲ
簡易化スルコトニ御留意ヲ願ヒタイト思ヒ
やく、ソコデ一ツ伺ヒタイコトガアリマス
ガ、基本財產、所謂市町村制理由書ヲ讀ン
デ見ルト、當時山縣サンノ理想デアリマ
セウ、アノ理想トシテハ將來年ヲ重ネテ基
本財產ヲ增殖セシメテ、其利息ト申シマス
カ利益ト申シマスカ、ソレヲ以テ町村ノ財
政ヲ賄フマデニ至ラシメタイ、アノ幼稚ナ
ル當時ノ町村ヲ基礎トシテデアルカラ、其
理想ヲ有ッテ居ラレタヤウデアル、其理想
ノ達成ハ餘程困難デアリマセウ、時勢ノ進
ムト共ニサウハ行カヌデアラウ、行キマス
マイガ、併ナガラアノ自治制施行ノ當時カ
ラ內務省ノ指導其宜シキヲ得テ、秩序的ニ
此蓄積ヲ行ッテ居ッタナラバ、五十年後ノ今
日ニ於テハ各市町村ノ基本財產ガ相當ナ高
ニナッテ居ッタモノト私共ハ考ヘル、然ルニ
中途ニシテ之ヲ他ノモノニ利用スルコトヲ
許サレテ、理窟ノ上ニ於テ、形ノ上ニ於テハ
元ニ戾サナケレバナラヌヤウニナッテ居ル
ガ、事實ハ使ヒ放題デ無クナッテシマッテ居
ルト云フノガ、町村ノ實情デアリマス、私
ハ庶政一新ヲ企テラレテ、町村ノ獨立ヲ期
シテ行カウ、町村ノ自治ノ精神氣魄ヲ養ウ
テ行カウト云フコトデアルナラバ、此基本
財產ノ造成ニ付テハ、相當御考慮ニナラナ
ケレバナラヌモノダト思ッテ居ルノデアリ
マスガ、大臣ノ御意見ヲ承リタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=16
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017・河原田稼吉
○河原田國務大臣 御示シノヤウニ、昔ト
違ヒマシテ世ノ中ガ複雜ニナッテ、ソレ〓〓
又市町村デ施設シナケレバナラヌヤウナコ
トモ起ルト云フヤウナコトカラ、御話ノヤ
ウニ初メノ目的ガ中々達成出來ナカッタト
云フコトハ、御話ノ通リデゴザイマスガ、
是等ニ付キマシテモ十分〓究ヲ加ヘマシ
テ、ドウシタラ宜イカ、又此時勢ニ合フニ
ハドウ云フ風ナコトガ宜イカト云フヤウナ
コトニ付キマシテモ、十分〓究ヲ致シタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=17
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018・森肇
○森委員 是ハ內務省警保局トシテハ御承
知ニナラネバナラヌコトダト思ヒマス、左
樣ナ事實ガアルカナイカハ知リマセヌガ、
私共屢〓地方ニ於テ聞ク、又實際此頃ハ事實
ニ現ハレテ居ルト言フノハ警察ノ力ヲ以テ
町村ノ事務ノ內容ニ瓦ッテ「メス」ヲ入レ
テ、段々ニ町村長、助役其他ノ者ガ刑辟ニ
觸ルヽ者ガアリ、刑辟ニ觸レザルマデモ、
辭職ヲ條件トシテ事濟ミトナッテ行クト云
フヤウナノガ、近來非常ニ多イ、聞ク所ニ
セントル縣府ニ依リマシテハコヽ三年間
ニ各町村ニ向ッテ一巡ヅツ必ズ手ヲ著ケテ
見ルト云フ方針デ今進ンデ居ラレルト云フ
噂モアリマス、恐ラク是ハ警保局トシテハ
御承知ニナラヌコトハアルマイ、斯ウ云フ
コトニナッテ參リマスト云フト、元郡役所ナ
ドガアル時代デアリマスナラバ極メテ是ハ
平和ニ、左樣ナコトガ假ニアッテモ相當調停
協和ヲ致シテ、幸ニ事ナキヲ得テ町村自治
ノ名譽ヲ保ツコトガ出來タノデアリマス、
然ルニ近來ハサウ云フコトデ、所謂地方局
關係ノ方ノ手ガ及バナイ中ニ、警保局關係
ノ方ガ早ク手ヲ著ケルト云フ風ナコトデ、
ドウニモナラヌト云フコトガ屢〓地方ニア
ル、而モソレガ町村事務ニ從事スル人々ノ
識見修養ガ足ラナイ結果トシテ、實際ニ金
ヲ使ヲテ居ルンデモ何デモナイ、唯刑法上
ノ所謂橫領ノ罪ハ構成スル、背任ノ罪ハ構
成スルケレドモ、情ニ於テハ實ニ氣ノ毒ナ
モノデアル、事前ニ之ヲ相當ニ取扱ヒ、相當
ニ〓ヘテ參リ、指導シテ參リマスナラバ何
デモナク濟ミマスコトガ、近來ハドウモ檢
擧「フアッシュ」」盛盛ニ行ハレテ、町村ヲ紊亂
ニ導クヤウナ傾向モナイデハアリマセヌ、
之ニ付テハ內務大臣トシテ如何ニ御考ヘニ
ナルカ、餘程是ハ重大ナコトダト思ヒマス
カラ、一應御意見ヲ伺フノデアリマスガ、
更ニ之ニ附加ヘテ私共ノ最近ノ町村ニ付テ
一番憂ト致シテ居リマスコトハ、町村事務
ニ從事スル人々ノ知識經驗ノ其關係ニ於
テ、他ノ村民ト比較致シテ一向優レタ所ガ
ナイ、雨ノ如ク降ッテ參リマス所ノ法規命令
ニシテモ、讀ンデ而シテ之ヲ理解シ得ル所
ノ人ト云フモノガ十分ニ役場ニ揃ッテ居ナ
イ、サウ云フコトデ何ノ照會ヲシテ見テ
モ返事一ツ來ナイト思ッテ行ッテ見ルト、質
問サレタル事ノ理解ガ出來テ居ナイト云フ
ヤウナ事實サヘモアルノデアリマス、之三
付テハ內務省トシテモ國費ノ方ノ關係ニ於
テ、相當此指導ノ費用ヲ出サレテ、府縣ヲシ
テ町村事務ノ修練デモ爲サシメルト云フヤ
ウナコトニナッテ參ラナケレバ、私ハ町村自
治體ノ將來ハ實ニ恐ルベキモノガアルト思
ヒマスガ、內務大臣ハ如何ニ此點ヲ御考ヘ
ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=18
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019・河原田稼吉
○河原田國務大臣 段々町村自治體ニ於ケ
ル疑獄ト云フヤウナ問題ニ付キマシテ御話
ガアリマシタガ、是ハ別ニ政府トシテ若ク
ハ內務省トシテ其方針ヲ樹テヽヤレ、斯ウ
云フコトハ決シテナイ筈デアリマス、唯從
來多少サウ云フ爬羅剔抉スルト云フヤウナ
傾向ガアッタカモ知レマセヌ、是ハ只今御話
ノヤウニ市町村ノ吏員ニ色々ナ不慣レナ點
モアルシ、又中ニハ色々ナ事業ガ殖エマス
ト、ソコニ自然トヤハリ人間ノ弱點トシテ
自ラ誘惑ニ導カレルト云フコトモアリ、兩
方デアッタラウト私ハ想像スルノデアリマ
スガ、併シ此點ハ行政ノ妙味トシテ、唯單
ニ爬羅剔抉シテ人ヲ罪ニ陷レルト云フノガ
政治ノ要諦デモナイノデアリマス、本當ニ
:過ッテ偶ニサウ云フ風ナ法規ニ觸レルト云フ
ヤウナ場合ニハ、是ハ能ク十分諒承シテ適
當ニ指導シテ行クコトガ是亦ヤハリ必要ナ
コトヽ思ヒマスノデ、其點ニ付キマシテハ
十分適當ナ處置ヲスルヤウ注意ヲ加ヘテ行
キタイト思ヒマス
ソレカラ市町村、殊ニ町村ノ村アタリノ
吏員ガ段々物事ヲ處置シテ行ク上ニ於テノ
知識ニ缺ケテ行ク、昔ハ御話ノヤウニ町村
ノ仕事モ割合簡單デアリ、且ツ丁度郡役所
ト云フヤウナ中間機關ガアリマシテ、始終
巡ッテ步イテ適當ニ指導シタ、斯ウ云フ非常
ニ良イ機關ガアッタノデアリマスガ、今日
是ガナイコトハ洵ニ遺憾デアリマスガ、將
來御示シノヤウニ出來ルダケ一ツ町村吏員
ノ、〓養ト云フコトニ盡サセルヤウニ致シ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=19
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020・増田義一
○增田委員長 森委員ニ一寸申上ゲマス
ガ、貴族院ノ豫算委員會ヨリ內務大臣ノ出
席ヲ頻ニ要求サレテ居リマスルガ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=20
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021・森肇
○森委員 モウ是デ內務大臣ハ宜シウゴザ
イマス、アトハ局長カラ御伺致シマス、光
程雜種稅ニ付テノ整理方針ヲ御話ニナッタ
ノデアリマスガ、抽象的デナク、稅目ニ付
テ大體如何樣ノ方面ニ手ヲ入レヨウト云フ
御考デアルカ、御示ガ出來レバ結構デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=21
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022・坂千秋
○坂政府委員 先程モ申上ゲマシタヤウ
二、實ハ其內容ノ詳細ノハッキリ決ッタモノ
ハナイノデアリマス、何レ委員會ガ出來マ
シタラ、其方面デ十分ノ御審議ヲ願フ積リ
デ居リマスノデ、今日私其詳細ノコトヲ申
上ゲルコトハ如何カト考ヘマスガ、出來レ
バ御宥シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=22
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023・森肇
○森委員 御說明ガ御困リデアルト云フ事
情モ諒ト致シマス、强イテ申上ゲル譯デハ
アリマセヌガ、是ハ私共地方ノ事情ヲ愬ヘ
テ御參考ニ供シテ置キタイト思フコトハ、
近來地方町村ノ振興ニ付テ考ヘラレテ居ル
モノヽ中デ、最モ輕ク見ラレテ居ルモノニ、
漁村ガアルコトヲ忘レテハナラヌト思ヒマ
ス、而シテ他ノ農村、山村ノ諸君ハ近來餘程
世ノ中ニ自分ノ苦痛ヲ愬ヘル道筋ヲ知ッタ、
大分申央ニ向ッテモ陳情等ヲサレテ居ルノ
デ、農村山村ノ疲弊ノ狀況ハ能ク中央ニ通
ジテ居リマス、併シ漁村ノ人々ハドウモマ
ダソコマデ參ッテ居リマセヌ、例ヘバ雜種
稅中ノ漁業稅ノヤウナ、或ハ舟稅ノヤウナ
モノヲ現狀ノ儘ニ置カレルト云フコトニナ
ルト、餘程是ハ漁村ニ對シテハ不公平ナコ
トニナッテ來ルト思フノデアリマス、恐ラク
ハ地方局長モ御承知ニナラヌデアリマセウ
ガ、私ノ方ノ九州ノ端ノ長崎縣ノ如キハ、
全國有數ノ漁業縣デアリマス、隨テ漁民部
落ガ相當ニ多イ、本省アタリカラ視察サレ
タ時分ニ、長崎縣ノ漁村ハ非常ニ良イト云
フヤウナコトヲ言ッテ御歸リニナル方モア
ルヤウデアリマスガ、長崎縣ガ御導キヲシ
テ御見セシテ居ル所ノ場所ハ、多クハ繁榮
ヲ誇ッテ居ル所ノ漁村デアリマス、サウ云
フモノモ無論一割カ二割ハアルデアリマセ
ウガ、其他ノ部面ニ參リマスルト云フト、
著ノミ著ノ儘デ、一年中ヲ過シテ居ル漁民
ガ少クアリマセヌ、而シテ彼等ノ賴ミトス
ル所ハ何物モナイ、破レタル家ト、唯一艘
ノ舟ト、漁期每ニ必要トスル所ノ小サイ網
ヲ持フテ居ル位ニ過ギヌノデアリマスガ
方ニ於テハ舟稅ガ課カリ、一方ニ於テハ網
ノ種類ヲ異ニスル每ニ網稅ガ課ルト云フヤ
ウナコトデアルカラ、漁村民ナドト云フモ
ノハ殆ド働イテ食ウタアトハ全部租稅ニ充
テルト云フヤウナ狀態デアル、近來ニ至ッテ
ハ其租稅ヲ辨ズル所ノ費用スラナクシテ、
實ニ憐レムベキ狀況ニ陷ッテ居ル者ガ多イ
ノデアリマス、洵ニ尾籠ナ話デアルガ、漁
村ニシテ便所ヲ持タザル漁村ガマダ相當ニ
アル、平素ノ〓物ナド何ヲ食ッテ居ルカト
云フト、或者ハ一年中唯薩摩芋ノミ食ッテ
居リマス、或者ハ私共ノ方ニハ裸麥ガ主ト
シテ作ラレマスカラ、裸麥ヲ精ゲテ蒸シタ
物バカリヲ食ッテ居ル漁民ガ非常ニ多イ、ソ
レデ近頃私ノ縣ノ方デハ、是デハドウモ漁
民ガ助カリッコハナイノダト云フコトデ、半
農半漁ニ仕立テタ方ガ宜カラウト云フコト
カラ、大分漁民ニ土地ヲ持タシムル方策ヲ
執ッタノデアリマスガ、サウ云フ結果ガドウ
ナッテ行クカト云フト、漁村ハ段々漁民部落
デナクナル、隨ナ沿岸漁業ハ廢レテ來マス、
彼等ハドウシテモ喰フニ喰ハレヌカラ、勇
ンデ海上ニ出テ居ル、板子一枚下ノアノ海
ノ上ニ働イテ居ルノデアリマスガ、、土地ヲ與
ヘルト云フコトニナルト、モウ所謂二代以
後ノ者共ハ皆陸ニ上ッテシマフト云フヤウ
ナコトデ、此半農半漁ノ方ニ段々轉化セシ
メテ行クト云フコトモ、地方トシテハ非常
ニ問題ニナル、今ハソレモ好適ノ政策デハ
ナイト云フコトニナッテ居ル、雜種稅ノ整
理等ヲ行ハレルナラバ、此五千萬圓ノ中ノ
漁業稅ノ占メル部分ガ少ナイカラト云ッテ、
此整理ヲ忘レナイコトニ御留意ヲ願ヒタ
イ、漁業稅及舟稅ハドウシテモ御考ニナラ
ナケレバナラヌ、漁民ノ數ガ少ナイカラ、
金高ハ非常ニ少ナイケレドモ、一人當リノ
賦課額ト云フモノハ相當高率ニ上ッテ居リ
マス
ソレカラモウ一ツハ府縣營業稅、是モ賦
課セラルヽコトニ無理ハナイデアリマセウ
ケレドモ、之ヲ負擔シテ居ル者ノ樣子ヲ見
マスト云フト、場合ニ依ッテハ制限外課稅
ガ許サルヽ結果トシテ、今日ト雖モ恐ラク
國稅ノ最末等ト、府縣營業稅ノ一番上位ニ
位シテ居ルモノトノ間ニ於テハ、寧ロ府縣
營業稅ノ方ガ高率ノ課稅ニナッテ居ルヤウ
ナ結果モアルノデハナイカト思フ、御示ノ
此表ヲ見マスルト云フト、相當高イモノガ
大分アリマス、併シ其高イモノモ內部ヲ更
ニ能ク調査致シテ見マスナラバ、町村ニ依。ツ
テハ非常ニ高イモノガアル、又町村ニ依ツ
テハ非常ニ低イモノガアル、殊ニ漁村ナド
デハ是ガ高イノデアリマス、斯ウ云フコト
モ一ツ十分ニ御〓究ヲ乞ハナケレバナラヌ
ト思フノデアリマスガ、是等ノ點ニ付テ今
マデ御覽ニナッテ居ル所ヲ御述ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=23
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024・坂千秋
○坂政府委員 漁村ノ實情ニ付キマシテ御
意見ヲ拜聽致シマシタ、洵ニ御尤ノ御意見
デアルト思フノデアリマス、私共ト致シマ
シテモ其方面ノコトヲ決シテ閑却致シテ居
ル譯デハナイノデアリマシテ、實ハ寄リ
寄リ相談ヲ致シテ居リマスル際ニハ、只今
御示ニ相成リマシタヤウナ舟稅、或ハ漁業
稅ノコトモ常ニ問題ニ致シテ居ルノデアリ
そう、ハッキリトシタ內容ハ申上ゲ兼ネマ
スガ、出來ルダケ此方面ノコトモ考慮致シ
タイ積リデ進メテ居ル次第デアリマス
漁業稅ノコトニ付キマシテモ、國稅ノ營
業稅ニ比較シマシテ、負擔ガ少シ重イ虞ガ
アルト云フコトモ、是モ御尤ナ御意見ト思
フノデアリマス、唯先程申上ゲマシタヤウ
ニ、今囘ノ補給金ノ問題デハ差當リ有ユル
稅ト云フ譯ニモ參リマセヌノデ、先ヅ宅地、
地租ヲ除キマシタ以外ノ地租附加稅ト雜種
稅ソレカラ戶數割ト云フ所ハ、先ヅ大體
ノ目標トナルノデハナイカト思フノデアリ
マス、營業稅ノ方面ニマデ是ガ及ビ得ルカ
ニ付キマシテハ、尙ホ〓究ヲ致サナケレバ
ナラヌ相當困難ナ事情ガアルノデハナイカ
ト思フノデアリマスガ、是ハ又別途ノ方法
ニ依リ、或ハ此根本的ノ稅制改正ヲ致シマ
ス場合等ニ付キマシテハ、十二分ニ〓究ヲ
進メタイト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=24
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025・森肇
○森委員 大藏省ノ政府委員ニ一三簡單ニ
伺ヒマス、今囘ノ本委員會ニ付託セラレテ
居リマス所ノ揮發油ニ關スル法律、是ガ原
案デアルカ、修正案デアルカハ知ラヌガ、兎
ニ角是ガ愈〓確定議ト相成リマスレバ、之
ニ依ッテ自動車ノ營業ヲ致シテ居リマス者
ノ負擔ガ非常ニ增シテ來ルト思ヒマスガ、
之ニ付テハ何カ政府トシテソレニ對應スル
特殊ノ方策ヲ御執リニナルコトガアルノデ
アルカドウカ、ソレカラ他ノ委員會ニ付託
サレテ居ル關稅定率法ノ改正ニ依ッテ非常
ニ困難ヲ致シマス者ハ、重油ヲ利用シテ居
リマス所ノ小型漁船-百噸以下ノ漁船デ
アリマス、此小型ノ漁船ナドハ餘程窮境ニ
陷ルト思ヒマスガ、之ニ對シテ何等カノ施
設ヲ御持チニナルカ、救濟ノ途ヲ御考ニ
ナッテ居ルカ、之ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=25
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026・石渡莊太郎
○石渡政府委員 漁船ノ問題ニ付キマシテ
ハ、先般農林省ノ政府委員ガ御述ニナリマ
シタヤウナ方策ヲ以チマシテ、此燃料ノ引
上ニ依ル救濟ヲ致シタイト、斯ウ考ヘテ居
ルノデゴザイマシテ、二百萬圓程ノ豫算ヲ
計上致シマシテ、發動機ノ變更、其他ノ改
良ニ充テル豫定デゴザイマス、ソレカラ自
動車ノ方面ノ問題デゴザイマスルガ、是ハ
結局ドウモ自動車業者ガ負擔スルト云フ譯
ニハ行カヌト思フノデゴザイマシテ、大體
ニ於テ此負擔ハ國民ガ負擔シテ行クヨリ外
ニ仕方ガアルマイ、斯ウ思フノデゴザイマ
ス、隨テ出來ル限リ自動車業者ヨリモ、國民
ガ其負擔ヲ受ケ易イヤウニ仕向ケルヨリ外
ニ仕方ガアルマイト、斯ウ思フノデゴザイ
マシテ、ソレデ此點ハ寧ロ私ノ方ヨリハ商
工省、內務省各方面ニ於テ考へルダケ考ヘ
ナケレバナラヌト思フノデゴザイマスガ、
例ヘテ申セバ「メーター」制ニ依ル、斯ウ
云フヤウナコトモ考ヘナケレバナラヌノヂ
ヤアルマイカト思フノデゴザイマス、何處
マデ行ッテモ五十錢、三十錢、斯ウ云フヤ
ウナ制度デハ或ハ實行上色々ナ困難ナ問題
ガ起ルノカト思フノデゴザイマス、ソレカ
ラ又一面ニ於キマシテ、自動車稅、道路負
擔金、斯ウ云フモノヲドスウルカト云フ問
題モ茲ニ一ツアルカト思フノデゴザイマス、
ソレカラ是モ主トシテ內務省ノ方ノ問題カ
ト思フノデゴザイマスルガ、自動車ノ運賃
ノ引上ノ許可ナドト云フコトヲ容易ニシテ
吳レナイト、例ヘバ「メーター」制ニ致シ
マシテ、最初一哩ハ三十錢、「ガソリン」
ガ騰ルノダカラ幾ラカ上ゲルノダト言ッテ
モ容易ニ認可シナイ、斯ウ云フヤウナコト
モ、是ハ多少考ヘナケレバナラヌノヂヤア
ルマイカ、ソレカラ鐵道省アタリノ認可ガ
非常ニ遲レル、斯ウ云フヤウニ大幅ニガ
ソリン」ガ引上ゲラレル場合ニ於キマシテ
ハ、其方ノ關係モモウ少シ圓滑ニ致ス必要
ガアルノデハナイカ、マア色々ナ問題ガア
ルト思フノデゴザイマス、是等ノ問題ニ付
キマシテハ、關係各省ニ於キマシテマダ十
分ニ意見ノ交換ヲ致シテ居ナイ問題モゴザ
イマス、多少意見ノ交換ヲ致シテ居ル問題
モゴザイマスルガ、是等ノ問題ハ何レトモ
致セ、此揮發油稅施行ニ伴ヒマシテ愼重考
究サルベキ問題デアルト、斯ウ思ッテ居ル
次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=26
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027・森肇
○森委員 此臨時租稅增徵法案ト云フモノ
ガ成立ヲ致シマシテモ、是ハ近キ將來ニ於
テ更ニ改メラルヽコトハ、臨時デアルカラ
勿論デアリマス、其他ノ此委員會ニ付託サ
レテ居ル四ツノ稅、是モ次ノ議會ニ於テ稅
制財政ノ根本的ノ改革ヲ企テヨウト云フ
コトデアルナラバ、ヤハリ同ジヤウナ見合、
狙ヲ付ケテ、此方ニモ相當改革ヲ加ヘラレ
ナケレバナラヌモノヂヤナイカト私共思ッ
テ居ルノデアリマスガ、是ハドウ云フ御積
リデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=27
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028・石渡莊太郎
○石渡政府委員 臨時租稅增徵法案、是八
全ク臨時的ノ增徵デゴザイマシテ、總テノ
形ガ臨時的ニ出來テ居リマス次第デゴザイ
マス、ソレカラアトノ新稅ノ四ツノ法案デ
ゴザイマスガ、是ハ形式ニ於キマシテハ臨
時增徵デハゴザイマセヌ、永久法ノ形ヲ
採ッテ居ルノデゴザイマス、居ルノデゴザ
イマスガ、併シ此稅全體ニ付テ此次ニ考ヘ
テ持ッテ參リマス場合ニ於キマシテハ、勿
論引括メマシテ再ビ之ヲ考ヘ直ス必要ガア
ルト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=28
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029・森肇
○森委員 ソレカラ酒稅ノ方ノ關係ニ於テ
〓酒ノ造石稅ト麥酒ノ稅金ト云フモノガ增
稅ノ率ガ非常ニ違ッテ居ルヤウデアリマス
ガ、特ニ麥酒ニ課稅ヲ重クセラルヽ理由ヲ
此際明ニシテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=29
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030・石渡莊太郎
○石渡政府委員 洵ニ御尤ナ御尋デゴザイ
マシテ、麥酒ハ一體「アルコール」分カラ
申シマスレバ、サウ「アルコール」分ヲ持ツ
テ居ル譯デゴザイマセヌノデ、世界ニ於キ
マシテモ麥酒ノ稅金ト云フモノハ、比較的
低イ稅率デゴザイマス、併シ今日ニ於キマ
シテ酒ニ對シテ或ル程度ノ增率ヲ行フ必要
ガアル、斯ウ云フ點カラ見マシテ、酒全體
ヲ觀察致シマスルト、從來日本酒ノ製造高
ト申シマスルモノハ、近年殆ド增加致サナ
イノデゴザイマス、ソレデ是ハ稅金ダケノ
立場カラバカリ見ルノハイカヌカト思フノ
デゴザイマスガ、之ニ多クノ稅金ヲ課ケマ
シテモ、却テ消費ガ減ッテ、收入ガ殖エル
カト云フコトニ付キマシテハ可ナリ疑ガア
ルノデゴザイマス、大正十五年ニ御承知ノ
通リ酒ノ稅金ヲ三十三圓カラ四十圓ニ致シ
マシタ、一石當リ七圓ノ增稅ヲ致シタノデ
ゴザイマスガ、結局大正十五年カラ十年程
經チマシテ、今日ニ至リマスト云フト造石
數ガ減ッテシマッタノデアリマス、結局大正
十五年ニ增稅ヲシタガ國ノ收入ト致シマシ
テハ今日殆ド其效果ガ擧ッテ居ナイ、斯ウ
云フコトニナッテ居リマス、是ハ國民ノ嗜
好ノ變遷ニモ依ルノカト思フノデゴザイマ
スガ、サウ云フヤウナコトカラ致シマシテ、
〓酒ニ增率ヲ致シマシテモ、是ガ減リマシテ
ハ一向其目的ヲ達シナイノデゴザイマスカ
ラ、今囘ノ增稅ニ於キマシテモ比較的少イ
增率ヲ之ニ加ヘテ居ル次第デゴザイマス、
麥酒ハ此四五年間非常ナ造石デゴザイマシ
テ、大正六七年當時七十萬石カラ八十萬石
ノ間ニアッタノデゴザイマスルガ、ソレガ
來年度ノ收入ノ見積ト致シマシテハ百二十
萬石ニモ達シヨウカト、斯ウ云フ狀況ニ相
成ッテ居リマス、ソレデ是ハ今日國民ノ嗜
好ニモ向イテ居ルヤウナ狀況ニナッテ來テ
居リマスノデ、多少此方面ニ增率ノ率ヲ
高ク致シマシテモ、サウ消費ガ減ラヌノ
デハアルマイカ、殊ニ消費者ノ方面
カラ申シマシテモ、此方ガ擔稅力ガア
ルノデハアルマイカ、斯ウ云フヤウナ考
カラ致シマシテ、麥酒ニハ相當ノ增率ヲ
致シマシタ、併ナガラ麥酒一石三十五圓
ト云フ稅金ハ、是ハ各國ノ麥酒ニ對スル消
費稅ニ比較致シマシテモ隨分安クナイ消費
稅デアリマシテ、英吉利ガ此程度ノ課稅
ヲ致シテ居リマス外、此程度ノ課稅ヲ致シ
テ居ル國ハナイカト思フノデアリマスガ、
併ナガラ今日此酒類ニ對シテ增稅ヲ求メル
ト云フコトデアリマスルナラバ、ドウシテ
モ麥酒アタリニ相當ノ負擔ヲ求メルヨリ外
ニ仕方ガアルマイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=30
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031・増田義一
○增田委員長 政府委員ニ御尋シマスガ、
只今森委員ヨリ〓酒ト麥酒ノ課稅ノ割合ニ
付テ、麥酒ガ重過ギルト云フ御質問ニ對シ
テノ御答デアリマスガ、ソレニ〓酒ノ消費
高ガ殖エナイト云フコトハ、是ハ一ツハ國
民ノ衞生思想ノ進步デ、吾々ガ色々ナ宴會
ヘ行ッテモ、日本酒ヲ飮ム人ガ少クナッテ
水ヲ飮ム人ガ多クナッタコトハ實見シテ居
ルノデアリマス、サウシテ麥酒ハ必シモ中
流以上ノ人ガ飮ムトハ限ラナイノデ、近年
都會地ノ「サラリー·マン」階級、職工階
級等ノ勤勞社會ニ於テ中々消費サレル、聞
ク所ニ依ルト東京市內デ一番麥酒ノ賣レル
ノハ本所、深川ダト云フコトデアリマス、
是ハ卽チ裏カラ勞働階級ノ人ガ盛ニ飮ンデ
居ルト云フコトヲ立證シテ居ルノデアリマ
ス、農村ハサウハ參リマスマイ、ケレドモ
近年麥酒ヲ飮ムコトハ決シテ中流以上デナ
クシテ、其以外ニモ大變消費サレルト云フ
コトヲ政府ハ餘程御認ニナラヌト、此重稅
ハヤハリ一種ノ社會上ニモ影響スルコトデ
アッテ、成ベク消費稅ハ重クシナイガ宜イ
ト云フ議論ガ近頃盛ニナッ居ルノデアリ
マスノニ、麥酒ガ一石三十五圓「アルコー
ル」分ノ高イ日本酒ガ四十五圓デ、其差十
圓デハ甚ダ均衡ガ取レナイヤウニ思ヒマス
ガ、ソレヲ認メテ居ッテモ尙且ツ取ルノダ、
世界デ英吉利ノ外一番高イ稅ヲ取ルノダ、
斯ウ云フコトハ、或ル機會ニハ多少之ヲ緩
和スルト云フヤウナ考ヲ以テ、此際デアル
カラト云フ意味カドウカ、ソレヲ明瞭ニシ
テ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=31
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032・石渡莊太郎
○石渡政府委員 ドウモ麥酒ノ稅金ニ付テ
私少シ申シ過ギタカモ知レマセヌガ、決シ
テ安イトハ思ハヌノデゴザイマス、併ナガ
ラ此程度ノ稅金ハドウモ今日是ダケノ增徵
案ヲ組ミマス場合ニ於キマシテハ、已ムヲ
得ナイノデハアルマイカト思フノデゴザイ
やく、煙草ト酒ト砂糖、此三ツガ消費稅ト
致シマシテハ生活必需品ト云フ譯デゴザイ
マセヌノデ、此三ツガ今日ノ消費稅ノ課稅
物件ト致シマシテハ、最モ適當ナモノデア
ルト思フノデゴザイマス、「ソビエト」ニ於
キマスル消費稅ニ致シマシテモ、ヤハリ
酒、煙草、砂糖ト云フ所ガ最モ狙ハレテ居ル
所ノモノデゴザイマシテ、生活ニサウ、直
接ノ關係ハナイ、サウシテ或ル程度一般ニ
用ヒラレル、斯ウ云フコトカラ致シマシテ、
或ル程度ノ稅收入ヲ擧ゲ得ルト云フ點カラ
シテモ、ドウモ或ル程度ノ負擔ヲスルコト
ハ已ムヲ得ヌ、斯ウ思フノデゴザイマス、
今日ノ我國ノ酒ノ主ナル收入ヲ示シテ居リ
マスル〓酒、是ガ必シモ衞生上有害トハ思
ハヌノデゴザイマス、殊ニ近來ハ非常ニ發
達致シマシテ、衞生上ハドチラカト言フト
昔ノ酒カラ見ルト大分良クナッテ來テ居ル
ノデアリマスガ、衞生上良クナッテ來テ居
リマシテ、酒ノ消費額ガドウモ增加シナ
イ.斯ウ云フコトニナッテ居ルノデゴザイ
マシテ、之ニ增稅ヲシテモ、今日必要ナ程
度ノ增收ニナラヌト、斯ウ云フ場合ニ於キ
マシテハ、ドウシテモ麥酒ノヤウナモノガ
ヤハリ增稅ノ主ナ對象ニサレルヨリ外ニ仕
方ナイノヂヤアルマイカト、斯ウ考ヘテ居
ルノデゴザイマス、尤モ英吉利ニ於キマシ
テモ、一時麥酒ノ稅金ヲ一石當リ六十圓位
ニ引上ゲマシテ、其結果ガ却テ稅收入ガ非
常ニ減リマシテ、其後英國政府ニ於キマシ
テモ非常ニ驚キマシテ、翌年麥酒ノ稅率ヲ
下ゲマシテ、其後却テ收入ガ增加致シテ居
ルノデゴザイマス、只今委員長カラノ御話
ガゴザイマシタガ、若シ此稅率ヲ施行致シ
テ見マシテ、麥酒ノ消費ガ著シク壓迫サ
レ、減ッテ來ル、却テ稅收入ニモ惡影響ガ
アル、斯ウ云フヤウナ事態ガ見エルヤウデ
ゴザイマシタラ、政府ニ於テモ篤ト考慮ス
ルコトニ致シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=32
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033・増田義一
○增田委員長 今一言御尋致シマスガ「ア
ルコール」分量ノ多イ酒ガ一石ニ付テ五圓
ノ增稅、麥酒一石ニ對シテ急激ニ十圓ノ增
稅是ハ不均衡トハ御認メニナッテ居ルノ
デセウカ、ソレデ此急激ナ增稅デ麥酒ノ消
費ハ減ラナイト御認メニナッテ居ルカ、其
御見込ヲ一寸伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=33
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034・石渡莊太郎
○石渡政府委員 麥酒ノ消費、是ハ先ヅ此
程度ノ增稅デアリマスナラバ、消費ハ減ラ
ナイデアラウト、斯ウ見テ居ルノデゴザイ
マス、三分程ノ消費減ハ見タノデゴザイマ
スガ、百分ノ三程度初年度ニ於テハ減リハ
セヌカ、斯ウ見タノデゴザイマスガ、此程
度ノ增稅デアルナラバ餘リ減ルマイト、斯
ウ思ッテ居リマス、先般麥酒會社ノ方ニ見
込ヲ聽イタノデアリマスガ、麥酒會社ノ方
ニ於キマシテモ、先ヅ此程度ノ增稅デアル
ナラバ消費ハ減ルマイ、是レ以上ノ負擔デ
アルナラバ或ハ餘程減ルカモ知ラヌガ、此
程度ノ負擔デアルナラバ、先ヅ今日消費者
ニ於テ負擔シ得ラレル、隨テ消費ハ減ルマ
イ、斯ウ云フコトヲ申シテ居ルノデゴザ
イマシテ、私ノ方デモ減ルマイト思ヒ、麥
酒會社ノ方モ減ルマイト田心ヲテ居リマスノ
デ、先ヅ此程度ノモノデアリマスルナラバ
サウ減ルコトハアルマイト、斯ウ存ジテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=34
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035・森肇
○森委員 ソレヂヤ麥酒ノ增稅ト云フコト
ハ〓酒ニ對スル增稅ノ結果收入ガ殖エル
見込ガナイ、殖エナイカモ知レヌ、其ノ方
ヲ保護スル爲ニ重ク麥酒ニ課稅スル、斯ウ
云フコトガ考ヘラレテ、消費スル者ノ苦痛
ト云フヤウナ點ニハ何等考ヘ及ボシテ居ラ
レナイヤウニ見エルノデアリマスガ、其點
如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=35
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036・石渡莊太郎
○石渡政府委員 御尤ナ御尋デゴザイマ
シテ、私ノ申シ方ガ餘リ稅收入バカリノ
コトヲ考ヘテ居リマスヤウデ、只今ノヤ
ウナ御尋ヲ戴キマシテ、申譯ゴザイマセ
ヌガ、酒ノ方ヲ保護スル爲ニ麥酒ノ稅ヲ
上ゲテ、麥酒ノ消費者ノコトハ少シモ考
ヘテ居ラヌヂヤナイカ、斯ウ云フ御尋デ
ゴザイマス、併シ其點ハ決シテ左樣ナ譯
デハナイノデゴザイマシテ、酒ノ稅金
ガ今度五圓上ル、麥酒ハ十圓上ル、斯ウ
云フコトガ負擔ノ權衡ガ取レヌヂヤナ
イカト云フ御尋デアルト思フノデアリ
マスガ、併シ此酒ノ五圓ノ引上ト申シマス
モノモ、一方酒モ消費スル方ノ階級カラ致
シマシテ、此方ノ收入ガサウ殖エヌト云フ
コトハ、詰リ〓酒ヲ消費スル人々ガモウ是
レ以上餘リ負擔シ切レナイ、斯ウ云フ狀況
ニ立ッテ居ルノデハアルマイカト思フノデ
アリマス、麥酒ハ今日二十五圓ノ稅金ヲ背
負ッテ、サウシテ是ダケノ增石ヲ見テ居リマ
スコトハ、二十五圓ノ稅金ヲ背負ッテモマ
ダ消費スル方面ニ於テ大シテ苦痛デナイ、
マダ〓〓餘計ニ飮ム、斯ウ云フ結果デアル
ト思フノデゴザイマシテ、消費者ノ負擔方
面カラ見マシテ、酒ハ或ル程度ノ限度ニ達
シテ居ル、麥酒ハ消費者ノ負擔トシテ限度
ニ達シテ居ナイ、マダ此方ニハ餘力ガアル、
斯ウ云フ風ナ見方ヲシテ居ルノデゴザイマ
シテ、決シテ消費者ノ負擔ト云フコトヲ無
視シテ、斯ウ云フヤウナコトヲ計畫シタ、
斯ウ云フ譯デハゴザイマセヌ、尤モ此前ノ
大正十五年ニ於キマシテモ、〓酒ニ付テハ
七圓引上ゲタノデアリマスガ、麥酒ニ付テ
ハ此前ハ七圓引上ゲ、其前ニ於キマシテハ
十二圓カラ十八圓ト、六圓引上ゲタノデゴ
ザイマシテ、近年麥酒ニ付キマシテハ相
當强イ引上ゲヲシテ居ルノデゴザイマス
ガ、ソレニ致シマシテモ是ダケノ製造高ノ
增加ヲ見テ居リマスノデ、消費者方面ニ於
テ左樣ニ苦痛ニ堪エナイト感ゼラレルモノ
デモアルマイト、斯ウ存ジマシタ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=36
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037・森肇
○森委員 法案ノ內容ニ觸レテノ色々ノ質
問ハ、他ノ先輩同僚諸君ヨリ繰返サレテ居
リマスカラ、私ハ一切ソレニハ觸レマセ
ヌ、私ハ法案ニ餘リ深イ關係ヲ持タザル所
マデ論及シマシタノニ、時間ヲ與ヘラレタ
コトヲ私ハ感謝致シマシテ、私ノ質問ハ打
切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=37
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038・増田義一
○增田委員長 次ハ河野密君ニ發言ヲ許シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=38
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039・河野密
○河野委員 私御尋シタイノハ、實ハ少シ
全般的ナ問題デ、出刄庖丁ヲ振廻スヤウナ
議論ニナル譯デアリマスガ、サウ云フ意味
デ實ハ大藏大臣ニ御出席ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマスガ、如何デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=39
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040・増田義一
○增田委員長 一寸速記ヲ止メテ···
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=40
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041・河野密
○河野委員 大藏大臣ハ結城稅制デナク
テ、石渡稅制ダト言ッテ居ラレルト云フ話
デスカラ、石渡サンニ伺ッテ結構ナノデス
ケレドモ、私ガ一番最初ニ御伺シタイノハ
少シ抽象的ニナルヤウデアリマスケレド
モ、結城財政ノ根本的ナ方針ト云フモノヲ
伺ヒタイト思ヒマス、結城財政ト云フモノ
ハ馬場財政ヲ修正シタノダト云ッテ、臨時租
稅增徵法案ナルモノヲ御提出ニナッタノデ
アリマスガ、此臨時租稅增徵法案ノ精神ハ
馬場サンノ案ヨリモ負擔ノ均衡ヲ圖ラレル
ト云フ精神デ御出シニナッタノカ、或ハ其中
ニ社會政策的ナ意味ヲ含メルト云フ意味ニ
於テ前ノ案ヲ削ラレタノデアルカ、ソレト
モ產業ノ發展トカ、生產力ノ發展トカ、始
終結城サンノ言ハレル所ヲ主ニシテ御修正
ニナッタノカ、或ハ臨時ノ間ニ合セニ、唯鋏
ヲ持ヲテ御切リニナッタト、斯ウ言フノデア
ルカ、ソレヲ第一番ニ御伺シタイノデアリ
マス,ト云フノハ馬場サンノ案ト云フモノ
ハ世間デハ非常ニ不評判デアリマシタガ、
之ニ對シテ吾々ニハ又別個ナ考ヘ方ガアル
ノデアリマシテ、例ヘバ取引稅デアルト
カ、或ハ所得稅ノ免稅點ノ引下デアルト
カ、斯ウ云フ點ガ吾々トシテハ承認ハ無論
出來ナイノデアリマスケレドモ、少クトモ
全體ノ立前トシテ負擔ノ均衡ヲ圖ラウトシ
タト云フ努力ノ跡ダケハ、私之ヲ認メルコ
トガ出來ルト存ズルノデアリマス、例ヘバ
財產稅ヲ創設スルトカ、個人ノ營業稅モ免
稅點ヲ引上ゲルトカ、地方稅ノ負擔輕減ヲ
圖ヲタトカ云フヤウナ點ニ於テハ、確ニ私ハ
一ツノ進步ガアルト見ル者デアリマス、此
點ニ付テ之ヲ修正ニナッタ結城サンノ稅制
改革案ナルモノハ、一體ドウ云フ立前ヲ以
テ立案サレタノデアルカト云フコトヲ先ヅ
最初ニ御承リシタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=41
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042・結城豊太郎
○結城國務大臣 前內閣ノ稅制案ガ發表サ
レマシテ、ソレニ對シテ各方面ノ非難ガア
リ.苦情ガアッタノデアリマス、ソレハ私モ
注意シテ聞イテ居リマシタ、コンナコト
ニ私ハナラウトハ思ッテ居リマセヌデシタ
ガ、揣ラズモ出テ見マシテ、其儘ニハ置ク
譯ニハ行カヌト云フヤウナ氣持ニナッテ手
ヲケタ著ノデアリマスルガ、本當ニ改正ヲ
シヨウトスルト、中々時ガ要リマスノデ、
迚モ議會ノ會期中ニソレヲ訂正シテ十分ニ
自分ノ考モ入レ、理論デモ徹底スルヤウニ
建直シテ行クト云フコトハ不可能デアリマ
シタノデ、ソレデマア昨日モ此處デ申シマ
シタヤウニ、私ハ素人デアリマスケレドモ、
石渡君、其他ヲ煩シテ一生懸命ニ立案致シ
マシタノハ、ソレマデニ色々ナ方面カラ聞
エテ居ッタ國民ノ聲ト申シマスカ、世評輿論
ト云フヤウナコトニ主トシテ耳ヲ傾ケマシ
テ、ソレカラ今一番大切ナコトハ何ト申シ
マシテモ、國民ニ不安ヲ與ヘテ居ルノデア
リマスルカラ、不安ヲ除去スルト云フコト
ガマア政治ノ要諦デアルト私ハ考ヘマシ
タ、成ベク不安ヲ與ヘルトカ、或ハ官民ノ
間ニ摩擦ヲ起ストカ云フヤウナコトノアル
モノニ對シテハ成ベク除ク、ソレカラマア
茲ニ多少ノ考ヲ盛リマシタトスレバ、出
來ルダケ大衆ノ課稅ト云フモノヲ比較的輕
クシタイ、併ナガラ今日ノヤウナ財政ノ狀
況デアルカラ、ドンナ人デモ國民デアル以
上ハ、相當ニ分相應ニ納稅ヲシテ奉公ノ誠
ヲ效シテ行ク、又其人逹ニ自分達モ相當ニ
奉公ヲシテ居ルノダト云フコトノ矜持ヲ持
タシタイ、斯ウ云フ風ナ氣持ガ多少現ハレ
テ居リマシテ、ソレデ私ハ是デ完全ダトハ
思ヒマセヌノデス、サウ云フ不完全ナモノ
ヲ此議會ニ出スノハ怪シカラヌヂヤナイカ
ト云フ御叱リヲ受ケルカモ知レマセヌガ、
ソレデドウシテモ此次ノ議會マデニハモッ
ト檢討ヲシテ、色々ナコトニ付テ是ハ考ヘ
ナクチヤイカヌ、ソレデ取敢ヘズ是ハ臨
時增徵ト云フコトニシテ御協賛ヲ得ル、斯
ウ云フ氣持デ出シマシタヤウナ次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=42
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043・河野密
○河野委員 大藏大臣ノ意ノアル所ハ能ク
分リマスガ、ソレデ私ハ更ニ疑問ヲ深クス
ルノデアリマス、大藏大臣ハ、自分ハ斯ウ
云フコトニナルトハ考ヘナイ頃カラ、色々
ノ意見ニ耳ヲ藉シテ居ラレタ、斯ウ言フノ
デアリマスルガ、實ハ是ハ大藏大臣ニ御尋
シタイト思フノデスガ、ドナタノ手ニモ恐
ラク渡ッタト存ジマスルガ、日本商工會議所
ノ名前デ、大藏大臣ノ名前ノ上ニ貼紙ヲシ
テ出テ居リマスガ、各方面ニ稅制改革ノ意
見トシテ御配リニナッタモノデアリマス、此
稅制改革ノ意見、ソレカラ全國產業團體聯
合會ノ事務局カラ是ト一〓ニ付ケテ送ッテ
下サレタ產業重壓ノ稅制改革、之ヲ私達ガ
拜見致シマスト、大藏大臣ガ大臣ニ就任サ
レテカラ、改革サレタ稅制ノ方向ヲ見
マスト、日本商工會議所ノ會頭トシテ御
出シニナッタ意見ト、ソレカラ全國產業團
體聯合會ノ事務局デ御出シニナッタ意見ノ
方向ニ向ッテ是ハ修正サレテ居ル、之ニ要求
サレテ居ルコトハ其儘御容レニナッテ居ル、
斯ウ云フコトヲ私達ハ明ニ認メルノデアリ
マス、シテ見ルト大藏大臣ノ稅制ヲ御修正
ニナッタ方針ハ、御就任以前カラ持ッテ居ラ
レタ此方針ニ於テ御修正ニナッタト思フノ
デアリマス、サウ考ヘテ宜シウゴザイマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=43
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044・結城豊太郎
○結城國務大臣 其當時私モ商工會議所ニ
關係シテ居リマシタカラ與リ知ラヌトハ申
シマセヌガ、商工會議所ノ意見又產業聯合
團體デスカ、サウ云フ所ノ意見、ソレ等モ
確ニ傾聽スベキ一ツデアラウト考ヘマシ
テ、ソレ等ノ意見モ取入レマシタコトハ事
實デアリマス、其他ノ事柄ニシテモ必ズシ
モ其兩團體ナンカノ意見ノミニ追從シタト
云フノデハアリマセヌガ、ソレ等ノ意見モ
尊重シテ考ヘタト云フコトハ事實デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=44
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045・河野密
○河野委員 此兩團體ノ意見モ入レタト仰
セニナリマスガ、此兩團體ノ意見トシテ入
レテ居リマスコトハ其儘入ッテ居リマス、其
他ノ意見ト云フモノハ私達ノ知ル範圍內ニ
於キマシテハ、有ユル團體ノ意見ガ殆ド入"ツ
テ居ナイヤウニ思フノデアリマス、例ヘバ
酒造組合ノ中央會ノ意見デアルトカ、或ヘ
全國自動車業者ノ意見デアルトカ、私達ハ
不幸ニシテ斯ウ云フ多クノ人ノ意見ガ入。ツ
テ居ルコトヲ知ラナイノデアリマス、然
ルニ產業團體聯合會ノ意見、或ハ商工會議
所ノ意見ハ其儘ニ御採用ニナッテ居ル、是ハ
大藏大臣ガ能ク言ハレル大衆ノ輿論ニ聽ク
稅制ノ改革デアルト云フコトハ、聊カ趣キ
ヲ異ニスルト私ハ存ズルノデアリマスガ、
如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=45
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046・結城豊太郎
○結城國務大臣 當業者ノソレ〓〓ノ陳情
トカ意見ト云フモノニナリマスト、其利害
ニ立ッテノ主張ガ多イノデアリマスカラ、是
ハ餘程愼重ニ考ヘテ取入レナケレバナラヌ
カト私ハ思フノデアリマス、商工會議所デ
アリマストカ、產業團體デアリマストカ云
フモノハ、必ズシモサウハイカヌトハ思ヒ
マスガ、大體ハ公平ナ立場ニ立ッテ論議ヲ
シテ來ル所デアル、斯樣ニ見タ方ガ私ハ適
當デアッテ、或一部ノ人ガ言フヤウニア
言フモノハ資本家階級ノ、何カオ先ニデモ
ナッテ働クヤウナ風ニ見ルノハ少シ僻目デ
千年、割合ニ公平ナ意見ヲ審議シ齎ラス
モノヂヤナイカ、當業者ハ苦痛ヲ愬ヘル、
其苦痛ハ聽イテ行カナケレバナラヌガ、ト
モスルト其一部ノ利害ノ爲ニ他ノ事ヲ顧ミ
ナイ、或ハ輕視スルト云フヤウナ建言ヲサ
レルコトガアルカラ、是ハ餘程愼重ニ其
邊ノ論ヲ聽キ分ケナケレバナラヌ、斯ウ云
フ風ニ考ヘテ居ル次第デ、或ハサウ云フ當
業者ナンカノ主張ヲ入レナイヤウナ傾キガ
アッタトスルト、全體ノ上カラサウ云フコ
トガ無理ダト考ヘテ入レナカッタカトモ思ッ
テ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=46
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047・河野密
○河野委員 門口ノ議論ハ其位ニ致シマシ
テ、內容デ少シ御尋致シマスガ、結城大藏
大臣ハ常ニ馬場財政ノ行過ギヲ修正シタト
申サレテ居リマスガ、一體行過ギノ點ヲ修
正サレタ跡ヲ見マスト、吾々ノ承服出來ナ
イコトガ多イノデアリマス、一體直接稅ト
間接稅トノ方面ニ於テ何レノ增稅ヲ餘計緩
和サレタノデアリマスカ、又法人ト個人ト
ノ關係ニ於テ何レニ擔稅力ガノルトシテ修
正ヲ爲サレタノデアリマスカ、其點ヲ承リ
タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=47
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048・結城豊太郎
○結城國務大臣 極ク大體ノ氣持ダケヲ申
上ゲテ、細カイ所ハ石渡政府委員カラ御答
申上ゲマス、直接稅ノ方ニ重キヲ置イタト
云フコトヽ、法人ノ負擔ニ重キヲ置イタ、
斯ウ云フ氣持ハ間違ナイト思ヒマスガ、其
氣持デアリマ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=48
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049・石渡莊太郎
○石渡政府委員 御答致シマス、直接稅ト
間接稅ノ負擔ノ問題デアリマスガ、是ハ何
處カラ何處マデヲ直接稅ニ入レ、消費稅ニ
入レルカ、多少ノ問題ハアルト思ヒマスガ、
數字ノ計算ガ例ノ所得稅ノ附加所得稅七千
八百萬圓ヲ入レルカ入レヌカト云フ問題
ガ、此場合關係スルコトヽ思フノデアリマ
ス、附加所得稅ノ七千八百萬圓ト云フモノ
ハ、前ニ申上ゲテ置キマシタ通リ、所得稅
ノ頭ヲ撥ネテ、ソレヲ地方へ還元スルト云
フモノデアリマスカラ、是ハ國デ徵收スル
カ、地方デ徵收スルカト云フ問題デアリマ
シテ、形式上ハ國ノ收入ニ上ッテ來ルノデ
アリマスガ、負擔ノ問題トシテハ是ハ別段
變リハナイト思フノデアリマシテ、此點ヲ
考慮致シマシテ負擔ノ問題ヲ考ヘルノデア
リマスナラバ、直接稅ト認メラレル部分ノ
減ハ一千三四百萬圓デアリマシテ、アトハ
全部消費稅系統ニ屬スルモノヽ減デアルト
存ズルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=49
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050・河野密
○河野委員 只今御說明ガアリマシタガ、
私ノ計算ハ少シク違フノデアリマス、結城
藏相ノ案ニ依リマシテ前ノ馬場案ヲ修正サ
レタノヲ比較シテ見マスト、直接稅ノ總額
ニ於テ只今ノ附加稅ヲ拔イテ約八百四十八
萬七千圓ヲ削ッテ居ルト存ジマス、間接稅ノ
方デ八千二十五萬五千圓削ッテ居ルト私ハ
計算致シマス、之ニ先程ノ御話ノ附加稅ヲ
加ヘルカ加ヘナイカト云フ問題デアリマス
ガ、附加稅ヲ加ヘマスレバ、直接稅ヲ削ッタ
ノガ八千七百二十三萬三千圓トナルノデア
リマシテ、直接稅ノ削減ガ多クナリマスガ、
ソレハ地方デ取ッテ居リマス所得稅ノ附加
稅ヲ計算ニ入レ、ソレカラ馬場案ニ依ッテ
地方ノ所得稅ノ附加稅ヲ許シテ居ルト云フ
點ヲ計算ニ入レヽバ、七千八百萬圓、其儘
ハドウカト致シマシテモ、之ニ近イ額ハ加
ヘテ宜イノダト思ヒマス、サウスルト、
直接稅ト間接稅トノ削減ハ、極ク內輪ニ見
積ッテモトン〓〓〓私ハ計算致シマシタ、
單ニ之ヲ總額ノ點ダケデナシニ見テ、全
體ノ稅收入ト云フ點デ比較シテ見マスル
ト、私ノ計算ニ依リマスルト、直接稅ハ
馬場案デハ、全體デ入リマスルモノガ七
億九千五百餘萬圓デアリマス、間接稅デ
入リマスモノハ十億二千百餘萬圓デアリ
やく、結城案ニ依リマスルト、直接稅デ
入リマスルノガ七億七百餘萬圓、間接稅
デ入ルノガ九億二千六百餘萬圓デアリマ
ス、直接稅デ減少致シテ居リマスノガ八
千八百餘萬圓、間接稅デ減少ニナッテ居
リマスノガ九千五百餘萬圓、之ヲ見ルト、
如何ニモ間接稅ノ方ヲ少シ餘計ニ減ラシテ
居ルヤウニ見エルノデアリマスガ、私ハ其
內容ヲ見マスルト云フト、見積リデ減ラシ
テ居ルノデアリマス、專賣局益金ノ見込ヲ
減少シテ居ル、印紙收入ノ見込ヲ減ラシテ
居ル、是デ漸ク二千六百萬圓程減ラシテ居
ルノデ、是デ間接稅ガ九千五百萬圓餘計ニ
減ッテ居ルヤウニナッテ居ルノデアリマス、
之ヲ若シ印紙收入、專賣局益金ノ見込減ト
云フモノヲ取リマスルト云フト、直接稅ノ
方ヲ餘計ニ減ラシテ居ルト云フ私ノ計算ニ
ナルノデアリマス、私ハ此計算ニ間違ガナ
イ積リデアリマスガ、政府ハ如何ニ御考ニ
ナルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=50
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051・石渡莊太郎
○石渡政府委員 要スルニ問題ノ中心ハ、
附加所得稅ニアルト思フノデアリマス、此
附加所得稅ノ關係ヲドウ見ルカト云フコト
ガ、直接稅ニ餘計減ラシタ、間接稅ニ餘計
減ラシタト云フ問題ダラウト思フノデアリ
やく、此點ハ一ツ能ク御考ヲ願ヒタイト思
フノデアリマスガ、此七千八百萬圓ト云フ
モノハ、前ノ案デハ全部是ハ地方ニ行クノ
デゴザイマス、ソレデ其收入ハドウカト申
セバ、是ハ前ノ案ハ所得稅ニ對シテ三割ノ
附加稅ヲ取ル、此三割ノ中一割ハ附加稅ト
シテ府縣ニ取ラセル、アトノ二割ハ國デ徵
收シテ交付スル、斯ウ云フモノデアリマス
カラ、結局其二割ト云フモノヲ國デ徵收シ
ナイデ、地方ニ置クナラバ、附加稅率ハ三
割デス、ソレデ今ノ附加稅ハ幾ラカト計算
致シマスト、是ハ市街地ニ於キマシテハ皆
附加稅ヲ徵收シテ居リマス、東京ニ於キマ
シテハ、一圓ニ對シテ四十五錢徴收シテ居
ルノデゴザイマス、地方ノ農村等ニ於テハ
徵收シテ居リマセヌガ、其代リニ戶數割ガ
アル、斯ウ云フコトニナッテ居リマス、ソ
レデスカラ、此平均ヲ出シマスコトハ、非
常ニムヅカシイ問題デアリマスルガ、大體
ニ於テ之ヲ全國平均シテ見マスト、附加稅
ハ百分ノ四十二、斯ウ云フコトニ相成ルト
云フノデアリマシテ、總テ其計算ヲ基ニシ
テ計算シテ居ル模樣デゴザイマス、實際ニ
於キマシテ、東京ニシテモ、横濱ニシテモ、
名古屋ニシテモ、斯ウ云フヤウナ大都市ニ
於キマシテハ、皆此平均率ヨリ重ウゴザイ
やく、重ウゴザイマスガ、一應全體ヲ平均
致シマシテ四十二トシテ計算致シマシタ、
サウスルト、前ノ附加稅額ハ、詰リ今日ノ
所得稅ノ下ニ於キマシテ約一億近イ收入ノ
擧ッテ來ル附加稅デゴザイマス、是ハ法人
ノ所得ト第三種所得ト兩方合併シマシテ、
一圓ニ付テ四十二錢ト云フ全國ノ平均率ヲ
持ッテ來マスルナラバ、其收入トシテハ
億、或ハ一億少シ超エルカト思フノデゴザ
イマスガ、大體ニ於テ一億圓デアリマス、
ソレカラ今申シマシタ三割ノ附加稅ト云フ
モノハ、增稅致シマシタ額ニ對スル三割ノ
附加稅デアリマス、制限モ何モ一切認メナ
イデ、ピッタリ切ッテシマッテ、三割以上ノ
附加稅ハ絕對ニ認メヌ、斯ウ云フ風ニス
ル、サウスルト附加稅ガ減ズルカト云フト
減ジマセヌ、減ジナイト云フコトハ、增稅
シタ額ニ對スル附加稅デスカラ減ジマセ
ヌ、是ガ七千八百萬圓ト外ニ府縣ノ分ガ四
千萬圓バカリアリマスカラ、結局一億二三
千萬圓ノモノデアルカト思フノデアリマ
ス、隨テ今囘ノ案ニ依ル所得稅及ビ附加稅
ト、ソレカラ前ノ內閣案ニ依ル所ノ所得稅
ヲ入レテ、其上ニ附加稅ヲ引ッ括メタ額ノ
差ト云フモノハ一、二千萬圓ハアルカト思
ヒマス、ソレダケノ差デアッテ、決シテ茲
ニ七千八百萬圓モ八千萬圓モ開クモノデハ
ゴザイマセヌ、隨テ國デ取ッテ還スト云フ
稅金ヲ廢シテモ、ソレガ直接稅ノ負擔ノ輕
減ニナルト云フコトハ斷ジテゴザイマセ
ヌ、隨テ其額ヲ計算ニ御入レ下スッテ、只
今ノ提案ハ所得稅ノ減少ガ多過ギル、斯ウ
云フ御議論ニハ服スル譯ニハ行カヌト、斯
ウ申上ゲルヨリ致シ方ナカラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=51
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052・増田義一
○增田委員長 正午ヲ過グルコト三十七分
デアリマスカラ、是ニテ休憩致シマス、午
後一時三十分ヨリ開會致シ、河野委員ノ質
問ヲ繼續致シマス
午後零時三十七分休憩
午後一時四十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=52
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053・増田義一
○增田委員長 休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=53
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054・河野密
○河野委員 先程直接稅ト間接稅ノコトニ
付テ承ッタノデアリマスガ、次ニ法人ト個
人トノ負擔ノ均衡ノ問題ニ付テ、御伺シタ
イト思ヒマス、別ニ馬場案ニ拘泥スル必要
ハナイト思ヒマスケレドモ、一應順序トシ
テ、法人ト個人トノ負擔ノ均衡ノ點ニ付キ
マシテ、私ノ計算ニ依リマスルト、馬場案
ト結城案トヲ比較シテ見マスト、結城案ノ
方ガ輕少デハアリマスケレドモ、法人ノ負
擔ヲ輕クシテ居ルト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、計算ノ細カイ數字ハ略シマシテ、結論
ダケ申上ゲマスト、馬場案ニ依リマスル
ト、法人ノ負擔ニナリマスノハ、是ハ增徵
案モ引括メテヾアリマスガ、三億一千餘萬
圓。ソレカラ個人ノ方ガ二億六千六百餘萬
圓、此割合ヲ見マスト法人ノ負擔ガ五四·
四%、ソレカラ個人負擔ガ四五·六%、之
ニ對シテ結城案ニナリマスルト、法人ノ負
擔ガ二億九千餘萬圓、個人ノ負擔ガ二億四
千六百萬圓、其「パーセンテージ」ヲ取リマ
スト法人ノ方ガ五四、個人ノ方ガ四六トナ
リマシテ、僅カデアリマスガ個人ノ方ガ殖
エテ居ルノデアリマス、之ヲ昭和十一年度
ノ實行豫算デ見マスルト、丁度結城案ト同
ジ率ニナッテ居ルノデアリマスガ、私達ガ
之ヲ見マシテ、馬場案ニ於テハ相當法人ノ
負擔ヲ重クスル爲ニ努力ヲシタ跡ガ見エル
ト思ヒマスガ、結城案ニナリマスルト、ソ
レヲ著シク緩和シタヤウニ見エルノデアリ
やく、今迄數人ノ御質問ガアッタノデアリ
マスガ、其質問ノ趣旨ノ大部分ト云フモノ
ハ、大體ニ於テ法人課稅ヲ拒否サレルト云
フ方面ノ御質問ガ主デアッタノデアリマス
ガ、吾々ハ聊カ其點ニ付テ考ヘ方ヲ異ニシ
テ居リマスノデ、今度ノ臨時租稅增徵法案
ニ於キマシテハ、何レニ擔稅力アリトシテ
負擔ノ點ヲ御考ニナッタノデアルカ、私ガ
今申上ゲタヤウナ結果ニナルノヲ御承認ニ
ナルカ、其點ヲ承リタイト思フノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=54
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055・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ河野サンノ御尋デ
ゴザイマスルガ、最初ニ法人ト個人ノ負擔
ノ均衡、斯ウ云フコトノ御尋デゴザイマス
ガ、私ハ法人ト個人トノ負擔ノ均衡ト云フ
問題ハ、必シモ兩者稅率ガ同ジデナケレバ
イカヌ、斯ウ云フ問題デモナイト思フノデ
ゴザイマス、所得稅ノ本體ハ個人ノ所得稅
デアルト思フノデアリマスガ、之ニ法人ノ
所得ヲ如何ニ配シテ行クカ、法人ダケニ對
スル課稅ダケデモイケマセヌケレドモ、之
ニ對シテ配當ヲ受ケタ人ニモ課稅ヲスル、
斯ウ云フ兩方面カラノ課稅ヲ關聯シテ考ヘ
マシテ、茲ニ法人ト云フ一ツノ企業ノ形態
ニ關スル租稅ガ現ハレルト思フノデアリマ
ス、負擔ノ均衡ト云フコトハ勿論必要ナ事
デアルノデゴザイマスガ、一體法人ト個人
ノ負擔ノ均衡ト云フコトハ、サウ云フ言葉
ガアルカモ分リマセヌガ、實ハ私ハ餘リサ
ウ云フ言葉ニ遭ッタコトハナイノデゴザイ
マシテ、結局法人ノ負擔ト云フモノヲ、今
日ノ經濟狀況ニ於テドウ云フ風ニ課稅シテ
行クカ、斯ウ云フ問題ニ歸著スルノデアラ
ウト思ヒマス、英吉利ニ於キマシテハ御承
知ノ通リ法人ト個人ト最初ノ所得稅ニ於キ
マシテ同ジ稅率デ課稅シテ居ルノデゴザイ
マスガ、其他獨逸ニ致セ、佛蘭西ニ致セ、
亞米利加ニ致セ、皆法人課稅ト云フモノト
個人ノ課稅ト云フモノハ別デス、隨テ法人
ノ課稅ヲドウ按配シテ行クカト云フコトデ
アッテ、結局歸著スル所ハ法人ハ個人ノ營
ム企業ノ一形態デアッテ、個人其人ガ負擔
ヲ負フベキモノデ、ソレヲ法人トドウ喰合
セテ行クカ、斯ウ云フ問題デアラウト思フ
ノデゴザイマス、隨テ只今御尋ニナッタ第
一種ノ所得稅ガ餘計減ルトカ、第三種ノ所
得稅ガ餘計減ルトカ云フ問題ハ、大シタ論
議ノ價値ノナイ問題デアッテ、問題ハ其コ
トガ善イコトデアルカ、惡イコトデアルカ
ト云フコトノ論議ニ行クベキモノデハアル
マイカ、私ハ斯ウ云フ風ナ考ヘ方ヲ致シテ
居ルノデゴザイマス、併ナガラ此所得稅及
ビ臨時利得稅、法人營業收益稅、斯ウ云フ
ヤウナモノヲ引括メマシテ、此法人ノ利益
ニ關スル所ノ租稅ト、斯ウ云フモノハ今囘
可ナリ高率ニナッテ居ルノデゴザイマス、
隨テ其中ニ於テモ法人重課ノ原則ト云フモ
ノダケハ、今度ノ政府ニ於テチットモ緩メ
ヌヂヤナイカ、斯ウ云フ非難ガアルノデア
リマスガ、是モ別ニ法人ト云フモノヲ重課
シナケレバイケナイ、斯ウ云フ考カラ出發
シテ行ッタノデハゴザイマセヌガ、結局此
邊ニ負擔力ガアル、斯ウ思っタモノデゴザイ
マスカラ、此負擔力ニ付テ考慮致シタ譯デ
ゴザイマス、ソレデ只今御尋ノ第一種ノ所
得稅ハ元ノ撤囘致シマシタ原案ニ對シマシ
テハ二千九百萬圓減ッテ居リマス、ソレカ
ラ個人ノ第三種ノ所得ハ二千四百萬圓減ッ
テ居リマス、ソレデゴザイマスカラ、第一種
ニ餘計減ッテ居ルノヂヤアルマイカ、斯ウ
云フ御考デゴザイマスガ、此第一種ノ普通
稅率ニ付テノ增率ハ今囘同樣デゴザイマ
ス、ソレデ先程モ附加稅ノ關係ハ離レタト
私ハ御說明申シテ居ルノデゴザイマスガ、
附加稅ノ關係ヲ離レテ考ヘマスレバ、サウ
云フ數字ニ相成ルノデゴザイマスガ、超過
所得稅ヲ引上ゲマセメデ、臨時利得稅ヲ引
上ゲタノデアリマス、其臨時利得稅ノ法人
ニ屬スル分ガ千三百萬圓位アルカト思フノ
デゴザイマス、隨テ二千九百萬圓カラ千三
百萬圓ヲ引キマスト、法人ノ負擔ノ減少ハ
結局千六百萬圓程度ノ減少ダト思フノデゴ
ザイマス、個人ハ二千四百萬圓デゴザイマ
スカラ、個人ノ方ガ幾ラカ餘計ニ減少シテ
居ルノデゴザイマス、併ナガラコヽデ減少
シテ居ルカラト申シマシテ、直チニソレデ
ハ個人ノ稅金ガソレデ減ヲテ居ル、斯ウ云
フコトデアナタノ御質問ニ對シテ御答致セ
バソレデ宜シイカト云フト、サウハ行カヌ
ト思フノデス、是ハ此前ノ撤囘致シマシタ
案デハ第二種ノ所得ト云フモノヲ全然
削ッテ居リマシタ、此第二種ノ所得ガ今囘
ハ之ニ却テ增率致スノデゴザイマスカラ、
茲ニ其差額三千六百萬圓ト云フモノガ現ハ
レテ來ル勘定デス、此三千六百萬圓ガ、ド
レダケガ個人ノ分デ、ドレダケガ法人ノ分
ニ屬スルト云フコトハ、是ハハッキリ分リ
マセヌ、併シ茲ニ三千六百萬圓ト云フモノ
ガ現ハレテ來ル計算ニナッテ居リマス、ソ
レカラモウーツ御考ヲ願ヒタイト思フノ
ハ、此第二種ニ屬スル分ハ源泉課稅デアリ
マスカラ、昭和十二年度ニモ徵收サレ得ル
ノデアリマスガ、前ノ案デアリマスト、昭
和十二年度ニ於テハ綜合課稅ヲ受ケル方
ハ、既ニ前年度ニ源泉課稅ヲ受ケテ居リマ
スカラ、其分ニ課稅致ス譯ニハ行キマセ
又、隨テ資本利子ニ對スル綜合課稅ト云フ
モノハ一箇年間穴ガ開キマス、サウ云フ計
算デ第三種ノ所得ガ低目ニナッテ居ルト云
フ關係モゴザイマス、ソレカラモウーツハ
配當ノ例ノ二割引ト云フコトノ關係、其爲
ニ個人ノ所得ガ幾ラカ減ッテ居リマス、前
ノ改革案ニ於キマシテ個人所得稅ノ稅率ハ
三割程度ノ引上、斯ウ云フコトデアッタノ
デアリマス、今囘ハ五割程度ノ引上デゴザ
イマスカラ、其間ニ個人ノ負擔ニ付テハ寧
ロ引上ゲテ居ルノデアルマイカ、斯ウ云フ
御疑モアルカト思フノデゴザイマスガ、前
ノ案ノ三割ト云フモノハ、稅率ノ計算デ三
伺割ト云フコトデアッタサウデアリマシテ
稅額ヲ計算致シテ見マスルト、今囘ノ案デ
增稅シタヨリモ却テ幾ラカ多イ位ノ增稅ニ
ナッテ居リマス、大差ハゴザイマセヌ、之
ニハ一面ニ於キマシテ配當ノ全額ヲ課稅シ
テ債務ノ利子ヲ引ク、斯ウ云フコトニナッ
テ居ッタノデゴザイマスガ、ソレ等ノ關係
カラ第三種ノ所得ガ增シテ居ッタノデゴザ
イマスカラ、隨テ是ハ法人ノ企業ニ對スル
課稅全體トシテ考ヘルト、法人ニ課稅致シ
テ個人ニ課稅スル、之ヲ一括シテ考ヘル
ト、果シテ法人ガ減ッタノカ、個人ガ減ッタ
ノカ、此點ハドウモ今ハッキリシタ數字ハ分
ラナイノデスガ、形式上カラ行キマスレバ、
所得稅ダケハ仰シヤル通リ法人ノ減ノ方ガ
餘計デゴザイマス、併シ臨時利得稅ヲ入レ
テ考ヘマスレバ法人ノ減ノ方ガ少ウゴザイ
やっ、極ク形式的ニ申上ゲマスレバ、サウ
御答スルノガ一番宜イカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=55
-
056・河野密
○河野委員 數字上ノコトデアリマスガ、
第二種所得稅ハ仰セノ通リ私計算ニ入レマ
セヌデシタ、唯私ガ今申上ゲマシタノハ、
單ニ所得稅ダケヲ計算シタノデ、營業收益
稅、財產稅ト、今度改マリマシタ法人資本稅
ノ關係、臨時利得稅ノ法人ニ於ケル所ノ引
上ヲ無論計算ニ入レテノ話デアリマス、無
論是ハ計算ノ自ラ違フ點モアルト存ジマス
カラ、固執スル譯デハゴザイマセヌケレド
モ、少クトモ全體ノ立前トシテ法人ニ輕ク
スルト云フ考ヘ方ガ其間ニアッタコトダケ
ハ私ハ疑ヒ得ナイト信ズルノデアリマス、
勿論法人ト個人ノ負擔ノ均衡ト云フヤウナ
コトハ、言葉自身妙デアリマスケレドモ、
最近ニ於ケル法人ノ色々ナ利潤ノ增大ハ、
是ハ何人ガ見テモ明白ナ事實デアリマシ
テ、私ガ申上ゲル迄モナク、三菱經濟〓究
所ノ調査ニ依ル三百五十社ノ利益率ヲ見マ
シテモ、諸會社ノ利益率ガ昭和五六年度五
分九厘、或ハ四分五厘ト云フヤウナモノカ
ラ、今日ハ一割二分六厘ト云フヤウナ收益
率ヲ擧ゲテ居ルト云フヤウナ事實カラ見テ
モ、此方面ニ擔稅力ガアルノデアッテ、此
方面ニ負擔ヲ餘計ニ課ケルト云フコトハ、
當然ナコトヽ私ハ考ヘルノデアリマス、殊
ニ其點ニ付テ私ガ考ヘルノハ、サウ云フ點
コソガ、實ハ結城大藏大臣ガ、日本商工會
議所ヤ全國產業組合ノ意見ヲ餘リニ代表シ
過ギテ居ルト、吾々ニ考ヘラレル主要ナ點
ダト考ヘルノデ、御尋シタ次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=56
-
057・石渡莊太郎
○石渡政府委員 法人ノ所得稅、臨時利得
稅、ソレカラ法人營業收益稅、法人資本稅、
是等ノ點ヲ通ジテ、私ハアナタト同ジ考ヲ
持ッテ居リマス、今日ノ狀況ニ於テハ、法
人ニ重課スルヨリ外ニ實際增稅スル餘地ハ
ナイ、斯ウ思ッタノデゴザイマシテ、隨テ
法人ニ對スル重課ハ決シテ緩メタ譯デハゴ
ザイマセヌ、ソレデゴザイマスノデ、世ノ
中デモ法人ノ重課ノ點ダケハドウモ一向緩
メヌヂヤナイカ、斯ウ云フヤウナ非難ガア
ルノダト思フノデゴザイマス、法人資本稅
ノ率ヲ千分ノ一ニ致シマシタ、是ハ斯ウ云
フ種類ノ稅金トシテ一·五ト云フノハ最高
ノ稅率デアッテ、亞米利加ニ於ケル斯ウ云
フ種類ノ稅、其他ノ國ニ於キマシテモ、大體
千分ノ一ト云フ所ガ此種ノ稅ノ先ヅ常識ニ
合ッテ居ルモノデハアルマイカト思ッタノデ
ゴザイマス、ソレカラ超過所得稅ノ稅率ヲ
其儘ト致シマシタノガ、法人ニ對スル稅收
入ノ減リマシタ最モ大キナ點ダト思フノデ
ゴザイマス、此問題ハ先般來當委員會ニ於
キマシテモ色々議論ノアリマシタ通リ、小
資本ノ會社ニ非常ニ重課サレ、却テ積立金
ナドヲ餘計ニ持ッテ居テ、餘力ノ有ル所ノ
會社ハ殆ド納メナイ、斯ウ云フコトデアル
ノデゴザイマシテ、此稅金ヲ今日重課致シ
マスコトハ不適當ダト思タモノデゴザイ
マスカラ、之ガ稅率ノ引上ヲ取止メタ譯デ
ゴザイマシテ、如何ニモアナタノ仰シヤル
通リ儲カッテ居ル會社カラハ餘計ニ取リタ
イト思ッタ關係上、臨時利得稅ヲ一箇年延
期致シマシテ、此方ノ增徵ニ依ッテ儲カッタ
會社カラ相當餘計ニ收入ヲ得タイ、斯ウ云
フヤウナ考ヲ致シタノデアリマシテ、大體
ニ於キマシテハ私ハアナタノ御考ト同ジヤ
ウナ考ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=57
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058・河野密
○河野委員 其點ニ付テ尙ホ立入ッテ御伺
シタイト思ヒマスガ、アトデ御伺スルコト
ニシテ、次ニ是ハ度々御聽ニナッタコトデ
アリマスガ、私ハモウ一度念ヲ押シテ置キ
タイト思フ、臨時トハ如何ナルコトカ、斯
ウ云フノデアリマスガ、本年限リト云フ御
說明ガ度々ゴザイマシタ、法案其モノハ本
年限リト云フコトハ、臨時ト云フ名前ガア
ル以上ハ吾々モ左樣ニ承知スルノデアリマ
スガ、此臨時ト云フ意味ハ、增徵新設ノ內
容ハ此範圍ヲ將來ハ出デナイト云フ御考デ
アリマスルカ、ソレトモ增徵新設ノ具體的
內容モ改メテ、新規出直シノ、建直スト云
フ御考ニ於テノ臨時デアルノカ、此點ヲ第
一ニ御伺致シマス、ソレカラ此臨時增徵法
案ニ盛ラレテ居ル方針ト云フモノハ、吾々
カラ見ルト-立場ハ違フト思ヒマスガ、
私達ノ立場カラ見レバ極メテ不滿足デアリ
マスガ、此臨時租稅增徵法案ヲ御組ミニ
ナッタ此精神デ將來ハ進マレルノデアッテ、
精神ハ不變デアルガ、唯稅ノ整備ノ點ダケ
ヲ將來ニ殘スト云フ臨時ノ意味デアルカ、
其二點ヲ御尋致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=58
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059・石渡莊太郎
○石渡政府委員 臨時租稅增徵法案ト申シ
マスル臨時ノ意味ハ、是ハ申ス迄モゴザイ
マセヌ、此臨時增徵法ノ仕組ト云フモノハ
臨時ニ增徵致ス、斯ウ云フコトデゴザイマ
シテ、次ノ議會ニ於キマシテハ根本的ノ
改革案ヲ提案致シマシテ、更ニ御審議ヲ願
ヒタイ、斯ウ云フ考カラ致シマシテ臨時ト
斯ウ云フコトニ致シマシタ次第デアリマ
ス,幾多御不滿ノ點モアラウカト思フノデ
ゴザイマス、私共考ヘマシテモ不滿足ナ點
モゴザイマスガ、是等ノ點ハ一應十分見直
シマシテ、根本的ニ凡テノ事ヲ考ヘテ見タ
イト斯ウ云フ風ニ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=59
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060・河野密
○河野委員 重ネテ伺ヒマスガ、サウスル
ト此方針モ御改メニナル御意思ナンデス
カ、大體此處ニ盛ラレテ居ル「イデオロギ
し」ト言フト少シ變デスガ、大體斯ウ云フ
方針デオヤリニナル、大キナ變化ハナイト
仰セラレルノデスカ、其點重ネテ御伺致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=60
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061・石渡莊太郎
○石渡政府委員 大體斯ウ云フ方針デアル
ト申上ゲル譯ニ行カヌト思ヒマスガ、之二
ハ例ヘバ、此增徵法案デ法人ニハ或ル程度
ノ重課ヲシタガ、來年ハ此法人ノ重課ハ止
メテシマフカ、斯ウ云フ問題モ含マレルノ
カト思フノデゴザイマスガ、大體今日增稅
致ス部分ト致シテハ、所得稅ヲ中心ニシテ
-總テノ稅制ノ改革ノ本ニ相成ルノハヤ
ハリ所得稅デアラウト思フノデアリマス
ガ、サウ云フヤウナコトヲ申心ニ致シマシ
テ考ヘテ行クヨリ外仕方ガナイ、隨テ所得
稅相續稅ト云フヤウナモノヽ增徵ヲ今年
是ダケ引上ゲテ置イテ、來年ハ引上ゲルノ
ハ止メテシマフカト云フト、サウ云フ譯ニ
モ行カヌダラウト思ヒマス、併ナガラ考ヘ
方ト致シマシテハ、總テ兩方ヲ通ジマシテ
ノ根本的ノ見方ニ基キマシテ改革ヲシテ行
クト、斯ウ云フ風ナ頭デ行キタイト考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=61
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062・河野密
○河野委員 斯ウ云フ點ヲ御伺スルノハ、
私ハ經濟ト云フノハ、大體租稅ガ斯ウ云フ
方向ニ行クト云フコトデ計畫ガアルト思フ
ノデアリマス、ソレハ直グニ一般ニ響イテ
來ルノデアリマシテ、例ヘバ「アルコール」
ノ專賣ガアル、「アルコール」ノ專賣ガ施サ
レルト云フコトデ、旣ニ「アルコール」ノ專
賣ト云フコトガ發表ニナレバ、ソレガ勞働
者ノ賃銀ニマデ影響シテ來ル、是ハモウ政
府ノ御方デハ御考ニナレナイヤウナ所マデ
影響ガハッキリシテ來ル、織物消費稅ガ出來
ルト云フノデ、ソレニ依ッテ、生產ノ額ニ影
響ヲシテ來ル、サウ云フコトガ、先ニアル
ト云フコトデ、皆計畫ヲ樹直シテ居ルノデ
アリマス、酒造稅ニ致シマシテモ其通リデ
アリマス、ソレヲ內閣ガ迭ル度ニ直グ方針
ガ變ルト、前ニハ織物消費稅ヲ止メタガ、
今度ハヤルト云フヤウナコトデハ、非常ニ
一般ノ業者ト云フモノハ困ルダラウト思ヒ
マス、サウ云フ意味ニ於テ、增徵新設ノ範
圍トカ具體的ナ方針ト云フモノハ御立テニ
ナルベキ筈ダト思フノデアリマスルガ、臨
時ト云フ意味ハサウ云フ點ニ付テ、ドウ云
フノデアルカト云フコトヲ、明確ニ御伺ス
ル必要ガアルト存ジテ伺ッタ次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=62
-
063・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今河野サンノ御尋デゴ
ザイマスルガ、如何ニモ根本的ニ考ヘ直ス
ト云フコトデハ、相續稅ハ今年ハ十割モ增
徵スルト言ッテ置イテ、來年ハ相續稅ハ全然
增徵シナイト言フ、斯ウ云フ法律案ヲ作ラ
レタンデハ、此法律ノ施行最中ニ相續ヲ開
始シタ者ガ非常ニ迷惑スルト、斯ウ云フ點
モアルヂヤナイカト思ヒマス、ソレカラ織
物消費稅アタリモ、止メルト言フタリ、ヤル
ト言ッテ見タリスルノヂヤ非常ニ困ル、斯ウ
云フ點モアルカト思ヒマス、ソコハ自ラ程
度ノ問題ダラウト思フノデゴザイマスガ、
地方財政ヲ引括メテ考ヘテ見ルト云フコト
デアリマスルナラバ、ヤハリ之モ相當ナ改
正ヲ致サナケレバナラズ、今囘增稅シナカッ
タト云フモノハ、必ズモウ再ビ增稅ハヤラ
ヌト、斯ウ云フ譯ニモ行カヌト思フノデゴ
ザイマス、斯ウ云フ點ハ或ハ國民ニ御迷惑
ノ點モアルダラウト思フノデゴザイマス、
思フノデゴザイマスルガ、兎ニ角中央地方
ヲ通ジマシテノ稅制ノ整理改革ト云フコト
ハ、中々是ハ國民經濟ノ各方面ニ及ボス影
響ガ極メテ甚大デゴザイマスノデ、實ハ餘
程愼重ニ考ヘテ見タイト思ッテ居ルノデゴ
ザイマシテ、隨テ其間ニ多少ノ不行屆ガ起
リ、多少ノ話ノ行違ヒガアッテ、止メタト
思ッタラヤルト云フヤウナコトガ、場合ニ
依ッテハ起ルヤウナコトガアルカモ分リマ
セヌガ、其點ハ斯樣ナ事情デアリマスノデ
一ツ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=63
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064・河野密
○河野委員 其點ハソレダケニ致シマシ
テ、次ニ少シク根本ノ問題デアリマスガ、
私結城大藏大臣ガ御居デニナル時ニ聽キタ
イト思ッタノデアリマスガ、時間ガナクテ御
出來ナカッタノデアリマス、是ハ臨時租稅增
徵法案ノ審議ニ當リマシテ、根本的ニ考ヘ
ナケレバナラナイコトハ、大藏大臣ノ考ヘ
方ト、陸軍大臣-軍部大臣ノ考ヘ方ニ根
本的ナ意見ノ違ヒガアルト云フ點デアリマ
ス、此點ハ私ハ是非大藏大臣ニ御伺シタイ
ト思ッタノデアリマスガ、大藏大臣ノ考ヘ方
ハ、兎ニ角急激ナル變化ヲ避ケテ漸進主義
デ行カウ、出來ルダケ統制主義ヲ止メテ行
カウ、斯ウ云フヤウナ考ヘ方デ、軍事費ニ
付テモサウ云フ立前カラ之ヲ消化スルト云
フ考デ行カウ、斯ウ云フヤウナ御考ノヤウ
ニ私ハ拜聽致シマスケレドモ、私達ガ陸軍
大臣ヲ通ジテバカリデナシニ、陸軍ノ中ニ
存在シテ居ル考へ方ヲ伺ッテ見マスルト、兎
ニ角總テヲ今現在戰時體制ニ直サナケレバ
ナラヌ、先ニ行ッテ國民ガ一杯ノ飯ヲ半杯
ニ減ストカ云フヤウナコトヲシテ貰ッテモ、
時既ニ遲イノデアッテ、今シナケレバナラ
又、サウ云フコトヽ私ハ非常ニ喰違ヒガ來
テ居ルト思フ、陸軍大臣ノ要求スルノハ、
今日直グアレダケノ金ヲ投出シテ吳レト要
求シテ居ル、大藏大臣ハ之ヲ濟シ崩シニヤッ
テ行カウト云フ考、私ハ其間ノ考へ方ト云
フモノガ、根本的ニ違ッテ居ルモノト思フ、
ソコデ是ハ臨時ト御定メニナッタノデアル
カラ、臨時デアルカラ增稅スルコトモ直グ
可能ダ、アレハ一年限リノモノデアルカラ
可能ダト、斯ウ云フ風ニ御考ニナル、逃途ハ
幾ラモアルノデアリマスガ、私ハ陸軍ノ當
局ノ考へ方、軍事當局ノ御考へ方ガ、今必
要ナンダト云フ、コヽ一年カ二年ノ間ガ最
モ必要ナンダト云フ考ヘ方カラ行ケバ、增
稅ヲ今臨時ト云フ名前ヲ附ケヨウトドウシ
ヨウト、ソレハ增稅ハ必至ダト思フ、今年ハ
二億九千萬圓デアルケレドモ、來年度ニ是
以上ノ增稅ガナイト言フコトハ、斷ジテ出
來ナイト思フノデアリマス、ソレハ大藏大
臣ハ多少ノ稅ノ整理ニ依フテ、ドッチカニ重ク
ナルヤウナコトガアルカモ知レナイガ、增
稅ハヤラナイ積リダト云フヤウナ考ヲ、ソ
レトナク遠廻シニ述ベテ居ラッシヤイマス
ガ、私ハ此間ノ事情ガ納得出來ナイシ、國
民全體トシテモ、此喰違ヒト云フモノニ付
テ、明快ナル御考へ方ヲ伺ハナケレバ、吾
吾ハ之ニ納得スルコトハ出來ナイノデアリ
マス、結城大藏大臣ノ御說明ニ依ッテ陸海
軍當局ハ、其抱持スル所ノ、今マデ叫ンデ
來タ急進主義ト云フモノヲヤッテ行カナイ
ノデ、結城大藏大臣ノ漸進主義ニナラレタ
ノカ、所謂抱合ノ內容ト云フモノハドウ云
フモノカ、ソレヲ私ハ根本的ニ聞カシテ戴
キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=64
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065・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ御說ハ能ク大藏大
臣ニ御話致シマセウ、大藏大臣カラ御答致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=65
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066・河野密
○河野委員 ドウモ相手ガ居ナイノデ甚ダ
張合ガナイノデゴザイマスガ、私達ハ今斯
ウ云フ感ジヲ持ツノデアリマス、丁度吾々
ハ決勝點ノナイ「マラソン」競走ヲヤッテ
居ルヤウナ感ジガスル、非常時ト云フ名ノ
下ニ戰時體制ヲ採ルト云フ、一體戰時體制
ト云フモノハ何時マデ續クカ、決勝點ノナ
イ「マラソン」競走ヲヤッテ居ルヤウナモノ
デ、此間ニ於テ何時マデガ戰時體制カト云
フ目安ガ著クナラバ、國民ハ安心スルケレ
ドモ、今ガ戰時體制デ、是カラ又大ニ戰時體
制ガ續イテ行クノダト云フナラバ、國民ハ
全ク不安デ、ドウ云フコトガ吾々ノ頭ノ上
ニ起ッテ來ルノカ、增稅ノ計畫ニシテモ何
處マデ深クナッテ來ルノカト云フコトニ付
テ、非常ナ不安ヲ持ッテ居ルト思フ、非常時
非常時ト申シマスガ、非常時ノ體制ト云フ
モノハ必要ダト思フ、斯ウ云フコトハ後デ
私ハ質問シタイト存ジマスガ、「ガソリン」
ノ如キモノモ、液體燃料ノ關係ニ於テ、恐
ラク關稅ヲ御增シニナッテ居ルト思ヒマス
ガ、一體非常時ダカラ「ガソリン」ガ高イガ
其高イ「ガソリン」ヲ使ヘト云フ、是デコヽ
二年ナリ三年ナリナラバ、御互ガ我慢スル
ケレドモ、「ゴール」ノナイ「マラソン」競走
デ、何時マデ高イモノヲ買ハサレルカ、何
時マデヤルノカト云フコトガ分ラナケレ
バ、國民ハ到底私ハ今日ノ財政ニ-如何
ニ大藏大臣ガ御說明ニナッテモ、鞠躬如トシ
テ處女ノ如ク御答辯ニナリマシテモ、私
決シテ此點ニ於テ國民ハ納得スルモノヂヤ
ナイト存ジマス、甚ダドウモ相手ガナクテ
憤懣ノヤリ場ガナイノデアリマスガ、サウ
云フ意味ニ於テ私ハ御尋スルノデアリマス
ガ、結城大藏大臣ハ二億九千萬圓ノ增稅ハ
大體ニ於テ支障ナク增稅ガ出來ルト、斯ウ
御考ニナッテ居リマスカ、私達ハ前ノ馬場增
稅案ガ發表ニナッタ時ニ、四億二千萬圓ト云
フヤウナ厖大ナル增稅案デアルガ、馬場增
稅案ニハ私ハ一ツノ考へ方ガアッタト思フ、
此四億二千萬圓ノ增稅ヲスルニハ、今マデ
ノヤウナヤリ方デハ此增稅ヲ決シテ國民ニ
納得セシムルコトモ出來ナイシ、之ヲ支障
ナク徵收シテ行クコトモ出來ナイ、ダカラ
經濟機構ニ或點マデ統制力ヲ設ケテ、輸出
ノ統制モヤラウシ、輸入ノ統制モヤラウシ、
物價ノ統制モヤラウシ、金融方面ノ統制モ
ヤラウト云フ統制ノ强化ニ依ッテヤッテ行カ
ウト云フ御考ガアッタト思フノデアリマス
ガ、ソレカラ僅カ一億三千萬圓ヲ御引キニ
ナッテ二億九千萬圓ニナサレタ結城大藏大
臣ハ、之ヲサウ云フ馬場サンガ考ヘラレタ
ヤウナ、所謂統制ト云フ或ル特殊ノ手段ヲ
講ズルコトナシニ、是ガ十分ニ實現シ得ル
モノト御考ニナッテ居ルカ、支障ナク出來
ルト御考ニナッテ居ルカ、其點ヲ御伺シタイ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=66
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067・石渡莊太郎
○石渡政府委員 河野サンノ只今ノ御尋
ハ、方針ト致シマシテ是ダケノ增稅ヲヤル
ノデアルナラバ輸出統制モ行ヒ、輸入統制
モ行ヒ、更ニ物價統制モ行ハナケレバ、是
ダケノ增稅ヲ行ヘナイノデハアルマイカ
ト、斯ウ云フ御尋デゴザイマシテ、其問題
ハ大藏大臣カラ御答致シマス方ガ適當カト
思フノデゴザイマスルガ、此稅ヲ施行スル
ト云フコトニ付テ、輸出統制、輸入統制、
又ハ物價統制ト云フコトガ必要デハナイカ
ト、斯ウ云フ御尋デゴザイマスルナラバ、
此稅ヲ施行致シマスルコトニ付キマシテ
ハ、私ハ別ニサウ云フヤウナコトヲ致サズ
トモ施行シ得ルト、斯ウ思フノデゴザイマ
スルガ、其他ノ關係カラ致シマシテ、或
金融、又ハ爲替、關稅-關稅ト云ヒマス
カ、對外ノ收支關係、サウ云フヤウナコト
カラ致シマシテ輸出統制、輸入統制又ハ物
價統制ヲ行フ必要ガアルカドウカ、斯ウ云
フコトデアリマスナラバ、自ラ別箇ノ問題
デゴザイマスルガ、此程度ノ增稅ヲ行ヒマ
スルト云フコトデアルナラバ、私ハ格別今
アナタノ仰シヤイマシタヤウナ各種ノ統制
ヲ行ハズトモ、此位ノ增稅ハ實行出來ルノ
デハアルマイカト斯ウ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=67
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068・増田義一
○增田委員長 河野委員ニ一言御參考マデ
ニ申上ゲテ置キタイノハ、御言葉ノ中ニ戰
時財政、戰時體制ト云フ御言葉ガアルガ、
前ノ馬場財政ニ於テモ準戰時ト云フ御言葉
ガアッタケレドモ、ドウモ戰時財政、戰時體
制ト云フコトハ、外ヘ聞エテモ如何カト思
ヒマスノデ、御注意マデニ一寸申上ゲテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=68
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069・河野密
○河野委員 大藏大臣ガ御見エニナラナイ
ノデ別ノ方面ノ御質問ヲ申上ゲマス、馬場
前大藏大臣ノ計畫致シマシタ增稅案ト云フ
モノニ對シテ、各方面カラ非常ナ反對ガ起ツ
タ、是ハ御承知ノ通リデアリマスガ、私ハ今
日一體增稅難ガ非常ニ叫バレテ居ルノデア
リマスガ、其日本ノ增稅ノ歷史ハ、私ガ申
上ゲル迄モナク、日〓戰爭ノ後、日露戰爭
ノ最中カラ後、ソレカラ大正九年、ソレカ
ラ今囘ト斯ウ私ハナッテ居ルト存ジマスガ、
國民所得ト租稅トノ關係ヲ考ヘテ見マスル
ト、明治二十五年以來國民所得ト租稅トノ
關係ハズット低率ニナッテ來テ居ルト思ヒマ
ス、是デ見ルト租稅ノ負擔ト云フモノガ今
日ノ國民所得ニ比較シテサウ多クナイト考
ヘルノデアリマスガ、ソレニモ拘ラズ增稅
ガ非常ニ難シイト言ハレテ居ルノハドウ云
フ理由ニ基クノデアルカ、私ノ考ヲ申上ゲ
マスト云フト、今日增稅ガ非常ニ困難ダ、困
難ダト言ハレテ居ルノハ、今マデ增稅ト云フ
モノハ大體間接稅ノ方面ニ爲サレテ來タノ
デアリマス、日〓戰爭後ニ於ケル增稅デア
リマシテモ、日露戰爭後ニ於ケル增稅デア
リマシテモ、皆間接稅ノ負擔ニナッテ居ルト
存ジマス、是ハズット直接稅、間接稅ニ分ケ
タ〓迄ノ統計ヲ見マシテ、直グニ了解スル
コトガ出來ルト存ジマスガ、明治二十七年
ニ直接稅ノ割合ガ五割六分五厘デアッテ、間
接稅ノ割合ガ四割一分九厘デアッタノガ、一
番低イ大正元年ノ頃ニナリマスト、直接稅
ガ三割二分二厘デ、間接稅ガ六割七分八厘
ト云フコトニナッテ居ル、是ガ其後少シヅツ
位置ヲ〓倒シテ參リマシテ、昭和十一年度
ノ實行豫算ニ依リマスト、直接稅ガ四割四
厘、間接稅ガ五割九分六厘、斯ウ云フ計算
ニナッテ居リマス、昭和十二年度ノ豫算ヲ見
マスルト云フト、結城案ニ依リマシテモ其
關係ガ直接稅ガ四割三分二厘ニナリ、間接
稅ガ五割六分八厘ニナルヤウナ計算ニナル
ト思ヒマス、私ハ今日增稅難ガ叫バレルト
云フノハ、要スルニ直接稅ノ增稅ガ殖エテ
來タト云フ點ニ基因スルノデアッテ、謂ハバ
有產者稅ガ殖エルト云フコトガ今日ノ增稅
ニ反對スル聲ノ高イト云フ理由ダト思ヒマ
ス、此點ニ付キマシテ御意見ヲ承リタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=69
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070・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今河野サンノ御尋ノ國
民所得ト租稅負擔トノ變遷ノ關係デゴザイ
マスガ、是ハ恐ラク河野サンノ御手許デ御
調査下サッタノハ、內閣統計局デ發表致シマ
シタ數字ダト思フノデアリマスガ、此數字
ハ實ハ相當推算ヲ用ヒタ數字デゴザイマシ
テ、多少根據ニ乏シイヤウニ思フノデアリ
マシテ、私共之ヲ審査シテ見タノデゴザイ
マスガ、ドウモ信憑スルコトガ出來ヌ點ガ
アルノデアリマス、實ハ其儘ニシテ居ル次
第デアリマスガ、大體統計局デ國民所得ニ
對シテ調査致シマシタノハ最近デアリマシ
テ、昭和五年ニ豫算ヲ貰ッテヤッタノデアリ
マシテ、アトハ一應ノ推算ノヤウニ思フ
ノデアリマス、ソレデマア是ハ何レデ
モ宜シウゴザイマス、兎ニ角サウ云フヤウ
ナ關係カラ、昔ハ相當國民所得ニ對シテ增
稅額ガ大キカッタ、今囘ハ比較的小サイノ
ニ相當ノ反對ガアルガ、ソレハ直接稅ノ方
ニ相當ナ負擔ヲ課ケルカラデハアルマイ
カ、斯ウ云フ御尋デゴザイマス、何時モ增
稅ノ時分ニハ相當ナ確執ガゴザイマス、大
正九年ニ於キマシテモ配當賞與ヲ綜合課稅
ヲ致スト云フ改正ヲ致シタノデゴザイマス
ガ、是モ非常ニ反對シタ者ガゴザイマシ
テ、可ナリノ確執ガゴザイマシタ、ソレカ
ラ其前ノ日〓戰爭、日露戰爭當時ニ於キマ
シテモ、間接稅ノ增徵モゴザイマシタガ、
同時ニ所得稅、地租、各種ノ租稅ノ增徵モ
ゴザイマシタ、相續稅ノ創設致サレタノモ
日露戰爭中デゴザイマス、斯ウ云フヤウナ
コトカラ考ヘマシテ、直接稅ト間接稅トノ
割合ト云ヒマスモノモ、ヤッパリ國民ニ相
當ナ所得ノ大キナモノガ現ハレテ來ル、資
產家モ出來テ來ル、斯ウ云フコトニナッテ
來マスレバ直接稅ガ相當增シテ來ルト云フ
コトニ相成ルノデアリマシテ、其結果直接
稅ト云フモノガ漸次發達シテ來タ、斯ウ見
テ戴イタ方ガ宜イノデハナイカト思ッテ居
リマス、日露戰爭當時ニ於キマスル所得稅
ノ稅率モ、高イ稅率デゴザイマシテ、其當
時ノ稅率ヲ以テスレバ、恐ラク世界一ノ稅
率デアッタカモ分ラヌト思フノデゴザイマ
ス、結局直接稅ノ所デ餘計ニ相成ッテ來ル
ト云フコトハ、國民ノ負擔ニ堪ヘル所ノ階
級ガ相當餘計ニナッテ來ル、斯ウ云フコト
デハアルマイカト思フノデアリマシテ、話
ハ少シ別デゴザイマスガ、「ソビエト」ニ於
キマシテハ、殆ド全體ガ消費稅デゴザイマ
スガ結局消費稅ノ負擔ト云ヒマスモノガ、
ヤッパリ或ル程度アルト云フコトハ、國民
ノ全體ニ於キマシテ直接稅ノ負擔ニ堪ヘ得
ルト云フ階級ノ少イ場合ニ於キマシテハ、
已ムヲ得ヌ現象ダト思フノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=70
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071・河野密
○河野委員 ドウモ數字ガ信賴出來ナイト
云フノデアリマスカラ、是ハ已ムヲ得マセ
ヌガ、先刻私ガ申上ゲマシタヤウニ、日〓
戰爭デモ、日露戰爭デモ-日〓戰爭ハ大
體地租ト間接稅ノ上デ增サレタト思ヒマ
ス、日露戰爭ハ多少ノ直接稅ハアリマスル
ガ、是亦地租ノ增徵ト間接稅ノ增徵ニ依ツ
テ私ハ爲サレタト考ヘテ居リマス、日〓戰
爭後ノ增徵ハ國民所得ニ對シテ約九分位ノ
增徵デアリマスシ、日露戰爭ノ最中ノ增徵
ハ國民所得ニ對シテ一割一分位ノ增稅ニ
ナッテ居リマス、今日ノ國民所得ヲ假ニ百
三十五億ト致シマスレバ、馬場案ニ依リマ
スレバ三分一厘、結城案ニ依レバ二分一厘
ノ增稅ニシカ當ラヌノデアリマス、此增稅
スラ非常ナ反對ガアル、而モ全國產業團體
聯合會デアルトカ、日本商工會議所トカ、
其他有產者ノ方面ニ於ケル反對ガ猛烈ニ
旭フ、有產者ノ方面ニ於テハ其代表者ヲ
出シテ修正スル機會ヲ持ッテ居ルガ、體
大衆ノ間接稅ト云フモノハ何人ガ之ヲ代表
シテ、何人ガ之ヲ修正スルカト云フコトニ
ナリマスト、吾々ハ非常ナ不安ヲ感ズルノ
デアリマス、御承知デモアリマセウガ、明
治三十七八年ノ時ノ增稅ハ、同ジク臨時ノ
增稅トシテ之ヲ徵收シタノデアリマス、臨
時ノ增稅トシテ增徵シマシタガ、是ガ日露
戰爭ガ濟ンデ見テ、賠償金ガ取レルト思ッ
テ、賠償金ガ取レタラ稅金ガ減ルダラウ、
斯ウ云フ考ノ下ニ、私ハ一割一分ナドト云
フ增稅ヲ甘ンジテ受ケタノダラウト思ヒマ
ス、ソレガ出來ナカッタト云フコトガ、ア
ノ日比谷ノ事件ヲ惹起シタ根本ノ原因ダラ
ウト今日追想致シマスガ、サウ云フ意味ニ
於テ若シ非常時ト云フモノガ長ク續ケバ、
其非常時ノ負擔ト云フモノガ、間接稅、消費
稅ノ方面ニ於テ段々加重サレル、恐ラク結
城大藏大臣ガ言ハレルヤウニ、今年ハ臨時
トシテ是ダケ取ルノダ、斯ウ云フコトデ取ッ
テモ、是レ以上ノ增徵ハ有產者ノ方面ニ不
可能ダラウト思フ恐ラク有ユル制度ニ依ツ
テモ不可能ダラウト思フ、一方ニ於テハ準
戰時體制ヲ具ヘルト云フ意味ニ於テ、ドウ
シテモ增稅ガ必要ダト云フノデアルケレド
モ、吾々ノ歸結トシテハ、是ガ非デモ消費
稅間接稅-大衆負擔ノ方ニ課ッテ來ル
ニ違ヒナイト思フ、ソコデ私ハ臨時ト云フ
ノハドウ云フ意味カ、一體間接稅ノ方面ノ
負擔ガ課ッテ來ル意思ガアルカナイカト云
フコトヲ、眞劍ニ心配シテ居ルノデアリマ
ス、カルガ故ニ諄イヤウデアリマスガ、先
程モ御尋シタヤウナ譯デアリマシテ、吾々
ハ唯增稅ダカラドウトカ言フノデナシニ、
ドウモ增稅ノ內容ガ、嘗テ日〓戰爭ノ當時
ニ於テ地租ト間接稅ニ依ッテ爲サレ、日露
戰爭ノ當時ニ於テモ地租ノ增徵ト間接稅ノ
增徵ヲ主體トシテ爲サレタト云フ其事ヲ、
今日亦準戰時體制ノ下ニ强行サレルノデハ
ナイカト云フ點ニ付テ、多大ナ心配ヲ持ッ
テ居ル、其點ニ付テノ明快ナル御意見ヲ承
リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=71
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072・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ河野サンノ御尋デ
ゴザイマスガ、日〓戰爭、日露戰爭ト云フ
モノガ、間接稅ノ增徵ト地租ノ增徵ニ依ツ
テ賄ハレタ、今後ニ於ケル增稅モ主トシテ
間接稅ノ增徵ニ依ッテ賄ハレルノデハアル
マイカト、斯ウ云フ御尋ト思フノデゴザイ
やく、是ハ先程モ申シマシタ通リ、日〓戰
爭、日露戰爭當時ニ於ケル我國ノ增徵ノ致
シ方ト致シマシテハ、外ニ致シ方ガナカッ
タノデハナイカト思ッテ居ルノデゴザイマ
ス、所得稅ヲ增徵致スニ致シマシテモ、可
ナリノ增徵ヲ致シテ居ッタノデゴザイマス
ガ、收入ガ少イ其當時ノ經濟事情カラ見マ
シテ、ソレヨリ外ニ行キ方ガナカッタノデ
ハアルマイカト思フノデゴザイマス、今日
ノ場合ニ於キマシテ、ソレデハ今後ノ增稅
ヲ消費稅ニ持ッテ行クノデアラウト云フ御
尋デゴザイマスガ、是ハ出來ルダケソッチ
ノ方へ持ッテ行クコトヲ避ケタイト思ッテ居
リマス、先程モ麥酒ノ話ヲ致シマシテ、言
過ギタノデゴザイマスガ、砂糖消費稅モ今
日相當ナ所マデ行ッテ居リマス、其他〓凉飮
料稅ニ致シマシテモ、是等各種ノ消費稅モ
或ル程度決シテ輕イ稅金デゴザイマセヌ、
ソレカラ織物消費稅ト云フヤウナモノハ、
是亦世界ニ類ノナイ稅金デアルト思フノデ
アリマシテ、斯ウ云フヤウナ消費稅方面ニ
於キマシテモ、個々ニ見テ既ニ相當行ッテ
居ルノデアリマシテ、此方ノ增稅ヲ主トシ
テ行クノデハアルマイカト云フ御尋デアリ
マスルナラバ、此方ノ增稅ハ出來ルダケ少
クシテ行キタイ、斯ウ云フヤウナ考ヲ持ツ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=72
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073・河野密
○河野委員 能ク分リマシタ、次ニ御尋シ
マスノハ先般大藏大臣ガ豫算ノ分科會デ、
軍需會社ノ增稅問題ニ付テ言及サレタノデ
アリマスガ、軍需會社ノ超過利潤ニ對シマ
シテハ、出來ル限リ增稅ヲシテ行ク方針
ダ、之ニ或ハ强制公債ヲ持タセルトカ、サ
ウ云フヤウナ方針デハ行カナイ積リダ、增
稅ヲスルト云フ方針ダト云フ御話デアリマ
シタガ、此點ニ付テ政府デハ軍需工業會社
ニ於ケル特別ナル超過所得ノ問題ニ付テ
ハ、ヤハリ普通ノ會社竝ニ其超過所得ニ稅
ヲ課スルト云フ考デ行カレルノデアリマス
ルカ、ソレトモ何等カノ特別ナル立法ヲ爲
サレル方針デアリマスルカ、又將來ハ强制
公債ヲ持タセルトカ云フヤウナ御方針デア
リマスルカ、其點ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=73
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074・石渡莊太郎
○石渡政府委員 先般河野サンカラ大藏大
臣ニ御尋ノゴザイマシタ、軍需會社ニ對シ
テ統制ヲ加ヘテ行クカドウカ、又是等ノモ
ノニ對シテ强制公債ヲ持タセルカドウカ、
斯ウ云フ問題ヲ御尋デアッタノデアリマス
ルガ、私共稅ノ方ノ立場ト致シマシテハ、
今日ノ臨時利得稅ノ增徵ト云フコトヲ以
テ、是等ノ或ル程度ノモノヲ國ニ納メル、
斯ウ云フコトデ行クヨリ外ニ仕方ガナイト
思ッテ居ルノデゴザイマシテ、若シモ軍需會
社ガ儲ケガ多過ギルト云フコトデアリマス
ルナラバ、寧ロ軍需會社ノ儲ケヲ制限ス
ル、斯ウ云フ方向ニ向ッテ行ッタ方ガ宜イノ
デアッテ、租稅ヲ新ニ起シテ、更ニモウ
段ノ臨時利得稅ノヤウナモノヲ取ル、斯ウ
云フコトハ實ハ今日ノ所考ヘテ居リマセヌ
ノデゴザイマシテ、是等ニハ寧ロ稅以外ノ
途ヲ取ッテ行ッタラ宜イノデハナイカト、斯
ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=74
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075・河野密
○河野委員 先程ノ質問ト關聯スルノデア
リマスガ、增稅計畫ガ不可避デアッテー
-私ハ將來ハ不可避デアルト存ジマスル
ガ、今年ハ是デ間ニ合ッテモ來年以後ニハ
增稅ガナイト云フコトハ不可能デアルト存
ジマスガ、不可能デアルト考ヘマシテ、若
シ大藏當局ノ御答辯ノヤウニ、消費稅ノ方
面ニソレヲ轉嫁シテ行キ得ナイト、斯ウ御
考ヘデアルトスルナラバ、ドウシテモ私ハ
ソコニ考ヘラレル稅金ガ自ラ限定シテ來ル
ト思フノデアリマス、ガ軍事豫算ヲ若シ削
ルコトモ出來ナイシ、軍事費ノ年度割ヲ變
ヘテ繰延ヲスルコトモ出來ナイト云フコト
デアリマスルナラバ、第二次、第三次增稅
三、其增稅トシテ考ヘラレルノハ私ハ財
產稅ト、ソレカラ土地增價稅デアルト考ヘ
マス、財產稅ニ付テハ今度法人資本稅ト云
フモノヲ政府ガ拒否サレル程、左樣ニ惡イ
モノトハ考ヘテ居リマセヌ、何故ニ財產稅
ヲ御止メニナッタノデアルカ、此點ヲ伺ヒ
タイ、土地增價稅ニ付テ土地增價稅ヲ新設
サレル御意思ガアルカナイカ、私ノ承リマ
ス所ニ依リマスルト、先年東京市ニ於テ輕
微ナル土地增價稅ヲ計畫セラレタ時ニ、大
藏當局ガ之ニ同意ヲ與へラレナカッタ、其
理由ハ土地增價稅ト云フモノハ、委員長ニ
叱ラレルカモ知レマセヌガ、所謂戰時ノ時
代ニ於ケル最モ有力ナル財源トシテ之ヲ
取ッテ置カネバナラナイカラシテ、之ヲ今
東京市ニ許スコトハ相成ラヌトノ御言明デ
アッタト承ッテ居リマス、私ハ今日土地增價
稅ト云フモノハ極メテ有力ナル財源デアル
ト存ジマスルシ、政府ノ取ッテ置キノ財源
デアルト存ジマスガ、併シ準戰時ト言ハレ
ルヤウナ今日ノ時代ニ於テコソ、私ハモウ
土地增價稅ヲ御取リニナッテ差支ナイト思ッ
テ居リマスガ、政府ハ上地增價稅ヲ新設サ
レル御意思ガアルカドウカ、ソレカラモウ
一ツ第三ノ點ト致シマシテ、私達ハ所得稅
ト、ソレカラ財產稅ト云フモノヲ睨ミ合デ
所得稅ノ補完トシテ財產稅ヲ設ケルト云フ
コトデハナシニ、綜合的ニ所得稅モ引括
メテ財產稅ト云フヤウナモノヲ考ヘテ居ル
ノデアリマスガ、サウ云フ點ニ付テハ御考
ガアルカドウカト云フ點ヲ御尋致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=75
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076・石渡莊太郎
○石渡政府委員 先般或ル經濟ノ專門家ガ
參リマシテ、ドウモ今マデノ稅金ト云フモ
ノハ、何ト申シマスカ、自由主義ノ時代ノ
稅金デアッテ、サウ云フ稅金バカリデハイ
カヌ、ドウシテモ此統制經濟下ノ稅金ト云
フモノヲ考ヘナケレバイカヌ、ソレニハ今
モアナタガ仰シヤッタヤウニ例ヘバ軍需會
社ガ儲カルナラバ、サウ云フモノ、又關稅
デ保護シテ行カナケレバナラヌト云フモノ
ガアルナラバ、關稅デ以テ保護シテ行ク、
併シ其爲ニ特別ニ儲カルモノ、サウ云フヤ
ウナモノニ付テハ統制經濟ト云フコトガ進
ンデ行ケバ行ク程サウ云フ片チンバナ現象
ガ起ルノデアルカラ、是等ニ向ッテハ普通
ノ稅金デハイカヌ、卽チ或種ノ「コントロー
ル」サレタ經濟狀態ニ於ケル稅金ト云フモ
ノヲ考ヘナケレバイカヌノデハナイカト云
フコトヲ言ッテ居ッタ人ガアリマシタ、私
サウ云フヤウナ考ヘ方モ、或ハ今後ノ經濟
狀態ニ應ジテハ必要デハアルマイカト思ッ
テ居ルノデアリマスガ、是等ハ何レモ〓究
未熟ノ問題デアリマスカラ、今此處デ何ト
モ御答辯致シ兼ネル問題デゴザイマスガ、
結局此軍需品會社ニ對スル、何ト申シマス
カ、統制ノ問題ト言ヒマスカ、或ハ自制ノ
問題ト言ヒマスカ、兎ニ角サウ暴利ヲ貪ル
ト云フコトハ致シテ居ラヌト思フノデアリ
マスガ、儲カルモノハ或ル程度ニ抑ヘル、
或ハ稅金デ取ルト云フ方向ニ進ンデ行キマ
スコトニ付キマシテハ、全然御同感デゴザ
イマス、今御尋ノ第一ノ問題ハ財產稅ノ間
題デゴザイマスガ、財產稅ノ問題ハ本質ト
致シマシテハ、財產稅ト言フモノハ相當是
ハ面白イ稅金デゴザイマス、ソレデゴザ
イマスカラ、今後ニ於キマシテハ餘程此問
題ハ〓究シテ行カナケレバナラヌト思フノ
デゴザイマス、唯此稅金ハ詰リ地租、家屋
稅トノ關聯ヲドウスルカ、財產稅其モノ
ヲ起スト斯ウ云フコトデアレバ、如何ニ
モ財產ニ課稅シテ、財產家ニ辛ク當ルヤ
ウニ見エルノデアリマスケレドモ、其
實ハ稅率モ低イ稅率デアリマシテ、今
日ヤッテ居リマス所得稅ノ補充稅タル
財產稅ハ、實ハサウ財產家ニハ辛ク當
ラヌ稅金デアリマシテ、結局地租家屋
稅デ行クカ、財產稅デ行クカ、ソレトモ特
別所得稅デ行クカ、補完稅體系ヲドウスル
カト云フ問題ニ過ギヌヤウニ私ハ思フノデ
ゴザイマス、千萬圓ノ者ニ一萬圓ヅツ稅金
ヲ取ッテ見タッテ、其財產ヲナクスルニハ一
千年掛ルノデアリマシテ、決シテ此財產稅
ハ財產ヲ減ラスト云フモノデハゴザイマセ
Z、寧ロ所得稅ノ重課、個人所得ノ重課ト
云フノガ實際ノ財產所有者ニハ一番應ヘル
稅ハダト思ッテ居リマス、財產所得ノ大キナ
者卽チ大所得者ト云フモノハ、大體ニ於
キマシテ資產ヨリ生ズル所得デアリマスノ
デ、資產階級ニ重課スルト云フコトハ、財
產稅ヲ賦課スルト云フコトヨリモ、所得稅
ノ一分ノ重課、五厘ノ重課ト云フ方ガ餘程
響クノデアリマシテ、若シ資產階級ニ重課
スルト云フ意味デアリマスナラバ、財產稅
ト云フモノハ左程效果ノナイ稅金ダト私ハ
思フノデゴザイマス、サウ云フ意味デナシ
ニ、資產所得ノ重課ト云フコトヲ補完稅的
ニ考ヘテ行クト、斯ウ云フコトデナラバ意
味ガアルト思フノデゴザイマシテ、格別私
ハ財產稅ニ對シマシテ不贊成デハゴザイマ
セヌ、不贊成デハゴザイマセヌガ、此稅ヲ
ヤルノデアルナラバ各種ノ狀況ヲ餘程考慮
シナケレバナラヌ、斯ウ思フノデゴザイマ
ス、卽チ不動產ニ對スル所ノ補完稅、動產
ニ對スル所ノ補完稅、サウ云フモノト關係
ヲ一體ドウスルノカ、ソレカラ調査ノ致シ
方、サウ云フコトニ付テノ關係ハ餘程是ハ
考慮スル必要ガアルト思フノデゴザイマ
入、ソレカラ土地增價稅ノ問題デゴザイマ
スガ、土地增價稅ハ、只今御話ノアリマシ
タ點ハ、大藏省ニ於テ戰時ニ之ヲ留保スル
ト云フコトデ差止メタコトハゴザイマセ
ヌ、唯其昔都市計畫ノ財源トシテ土地增價
稅ヲ起サウト云フコトガゴザイマシタ、其
時ニ土地增價稅ハ勅令ヲ以テ起スコトハ不
都合デアル、土地增價稅ヲ起スノデアルナ
ラバ、法律ヲ以テ議會ノ協賛ヲ得テ起セト、
斯ウ云フコトガ衆議院ト貴族院ノ內輪カラ
シテノ御主張デゴザイマシテ、ソレデ都市計
畫ノ財源トシテ勅令ヲ以テ起サウトシタコ
トヲ止メタコトガゴザイマシタ、併ナガラ
土地增價稅ハ英吉利ニ於キマシテモ、獨逸
ニ於キマシテモ、國稅トシテ施行致シマ
シタコトハ大體ニ於テ失敗致シテ居ルノ
デゴザイマス、最近ニ於テハ千九百三十
年デゴザイマシタカ、三十一年デゴザイ
マシタカ、勞働黨內閣ノ「スノーデン」ガ
土地增價稅ノヤウナモノヲ起スヤウナ計
畫デ土地ノ評價ヲ始メタノデゴザイマス
ガ、是モ結局有耶無耶ニナッテシマヒマシ
テ、實行サレナイヤウニ思ッテ居リマス、土
地增價稅モ理窟ハ非常ニ宜イ稅金デゴザイ
マスガ、國稅トシテノ收入ハ比較的多クゴ
ザイマセズ、手數ガ非常ニ厄介デゴザイマ
シテ、實ハ今日ニ於キマシテハ大抵止メテ
シマッテ居ルト思ッテ居リマス、唯地方稅ノ
財源トシテ、東京市トカ、橫濱市トカ、大
阪市トカ云フヤウナ、發展シテ行キマス地
方ノ財源トシテハ、將來考慮シテ見ル必要
ガアルト思ッテ居リマス
ソレカラ第三ニ御尋ノ所得稅ト財產稅ト
ヲ引括メタ租稅、斯ウ云フコトヲ考ヘタ
カ、斯ウ云フ御尋デゴザイマスルガ、是一
一面ニ於キマシテ不動產ニ付テハ、今日英
吉利ニ於キマシテモ、獨逸ニ於キマシテモ、
佛蘭西ニ於キマシテモ實行致シテ居ル所デ
ゴザイマスガ、詰リ自分ノ住ンデ居ル住宅
-住宅ト云フモノヲ所得ニ見積ッテ所得
稅ヲ課稅スル、斯ウ云フ意味ニ於テ英吉利
ノ所得稅アタリモ「プロパテイ·エンド·イ
ンカム·タックス」ト云フコトヲ言ッテ居リマ
スガ、サウ云フ「プロパテイ·エンド·インカ
ム·タックス」ト云フ意味ニ於キマスレバ是
ハ今日我國ニ於キマシテハ一方ニ家屋稅ガ
アルノデアリマシテ、此家屋稅ノナイ國ニ
於キマシテ、其自分ノ住ンデ居ル所ノ家屋
ノ所得ヲ見積リ引括メテ綜合課稅ヲ致ス、
斯ウ云フヤリ方ヲ我國デヤルカドウカト云
フコトニ付テハ、一方ノ家屋稅ノ問題ヲ考
ヘテ行カナケレバナラヌカト思ッテ居リマ
ス、ソレカラ更ニ是ハ北歐デ主トシテヤッテ
居ル問題デアリマスガ、財產價額ノ千分ノ
三ト云フヤウナ程度ノモノヲ所得稅ニ加ヘ
テ課稅スル、此行キ方ハ北歐ノ所得稅ノ行
キ方デアリマシテ、瑞典、諾威、丁抹、和
蘭ト云フ所ノ北歐ノ諸國ニ於テ行ッテ居ル
所デアリマシテ、斯ウ云フヤウナ行キ方ガ
善イカ惡イカ、多少疑問ノ所モアルノデゴ
ザイマシテ、是等ニ付キマシテハ一ツ十分
今後ノ稅制ノ整理ニ於キマシテ考慮致シテ
見タイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=76
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077・河野密
○河野委員 大藏大臣ニ對スル質問ヲ留保
致シマシテ、此地方稅制ノコトニ付テ少シ
御尋シタイト存ジマス、地方稅制改革ノ根
本方針ニ付テ御尋シタイノデアリマスガ、
地方稅ニ對シテハ大體政府ノ御方針デハ附
加稅主義ヲ御採リニナリ、是カラサウ云フ
方針デ御整理ニナル積リデアリマスルカ、
ソレトモ地方ニハ獨立ノ財源ヲ與ヘルト云
フ獨立稅主義ノ方面デ御方針ヲ立テル積リ
デスカ、前ノ馬場稅制案ハ大體附加稅主義
ニ段々移シテ行カウト云フ御考ノヤウニ私
ハ拜見シタノデアリマスガ、今度ハ其點ニ
付テハ極メテ曖昧模糊トシテ居リマスガ、
ドウ云フ御方針デアリマスカ伺ヒタイト存
ジマス
ソレカラ第二ハ交付金ノ問題デアリマス
ガ、交付金ノ制度ト云フモノハ大體地方稅
制ノ改廢ニ充テルノガ主眼デアッテ、唯金ヲ
地方ニヤル補助金トカ助成金トカ云フ意味
デハナイト私ハ存ジマスルガ、今度之ヲ
年限リト云フ意味デ一億圓御與ヘニナッノ
カ分リマセヌガ、アレハ交付金ト云フノデ
ハ全然ナクテ、一種ノ助成金ノヤウナモノ
デアルト思ヒマス、甚ダ交付金ノ本旨ト離
レルト存ジマスルガ、此點伺ヒタイト存ジ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=77
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078・石渡莊太郎
○石渡政府委員 詳細ハ內務省カラ御答致
シタ方ガ宜イカト存ズルノデアリマスガ、
地方ノ財政ヲ附加稅デ行クカ、獨立稅デ行
クカ、ソレトモ交付金デ行クカ、結局其三通
リノ行キ方ガアルノデハナイカト思ッテ居
ルノデゴザイマス、ソレデ是レハ今日モ地
方ハ相當獨立シタ稅モ持ッテ居リマス、戶數
割雜種稅、家屋稅、斯ウ云フヤウナ獨立
稅ヲ持ッテ居ルノデゴザイマスガ結局獨立
シタ稅ト、附加稅ト、交付金ト、三者取混
ゼルト云フヤウナコトニ相成ルカト思フノ
デアリマスガ、併シ是等ハ何レモ今後ニ於
キマスル〓究問題デゴザイマスノデ、今日
ノ場合ハ私ヨリ此點ヲハッキリ申上ゲ兼ネ
ルト思フノデゴザイマス、ソレカラ第二ノ
交付金ノ問題デゴザイマスカ、交付金ハ地
方財政ヲ整理スル、斯ウ云フコトデ渡スノ
デハアルマイカ、ソレヲ唯補助金ノヤウニ
シテ渡スノハイカヌヂヤナイカ、ト云フ御
話デゴザイマス、今囘七千萬ラ交付スル、
更ニソレニ三千萬圓ノ增加ヲスル、斯ウ申
シマスル此交付金ハ、全部ガ地方稅ノ負擔
ノ輕減ニ充テラレルト、斯ウ云フモノデゴ
ザイマシテ、結局稅制ノ關係ニ於キマシテ
輕減サレルモノデゴザイマスノデ、左樣御
承知願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=78
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079・坂千秋
○坂政府委員 私一寸御質問ノ御趣旨ヲ誤
解致スト惡イノデアリマスガ、大體今主稅
局長カラ伺ヒマシタ所ニ依リマスト、獨立
稅ニ依リマスカ、附加稅ニ依リマスカ、是
ハ從來カラモ、獨立稅主義ト言フノモオカ
シイ言葉デアリマスガ、獨立稅、附加稅、
各々一得一失ガアリマシテ、一利一害ノア
ルコトハ學者ノ議論シテ居ル所デアリマシ
テ、必シモ附加稅デナクチヤナラヌ、獨立
稅デナクチヤナラヌ、ドチラカ一本建デ行
カナクチヤナラヌト云フコトモアリマセヌ
ノデ、現在デモ御承知ノヤウニ、獨立稅ト
附加稅ト混同シテヤッテ居ル譯デアリマス、
隨ヒマシテ、將來稅制ノ根本ヲ考へマス場
合ニモ、能ク其利害得失ヲ考ヘナケレバナ
リマセヌシ、又抽象的ナサウ云フ利害關係
ダケデアリマセヌデ、具體的ニ獨立稅ニハ
何ヲ取ルカ、附加稅ニハドノ種類ノモノヲ
取ルカト云フコトヲ頭ニ置イテヤリマセヌ
ト、抽〓的ニハ決メ難イト私ハ思フノデア
リマス、隨ヒマシテ、根本ノ稅制ノ改正ヲ
致シマス際ニハ、ソコラノ點ニ付キマシテ
モ十分ニ考慮致シタイヤウナ氣持デ居ル譯
デアリマス、ソレカラ交付金ガ一種ノ助成
金ノヤウナ性質ニナッテ居ルト云フコトハ
面白クナイデハナイカト云フヤウナ御說デ
アルヤウデアリマスガ、交付金ト云フモノ
モ數年前カラ議論ハ相當アリマシタ、併シ
實現致シマシタノハ、漸ク本年度ノ二千萬
圓ガ補給金ト云フ名前デ現ハレタノデアリ
VX、十二年度ニ於キマシテ、約一億ノ金
ガ具體的ナ問題トナリマシタノデアリマシ
テ、此金ノ性質ニ付キマシテモ、之ヲ論ズ
ル人ノ立場カラハ、色々議論ガアルヤウニ
思フノデアリマス、馬場案ト申シマスカ、
此前考ヘラレマシタ案デハ、之ト稅制ト組
合セマシテ、所謂稅ト交付金トヲ兩方組合
セテ、ソコデ一ツノ地方財政ノ根本體系ヲ
作リ上ゲテ居ッタヤウデアリマス、今囘ノ
億圓ハ稅ノ根本改正ヲ延シマシテ、取敢ヘ
ズ交付金ガ計上セラレマシタ爲ニ、稍〓趣ヲ
異ニシテ居ル點モアルノデアリマス、一種
ノ財政援助金ノ形ニナッテ居リマスコトモ
事實デアリマスガ、斯樣ナ意味ニ於キマシ
テ此交付金ト申シマスカ、補給金ヲ使フコ
トモ强チ間違デアルトモ思ハナイノデアリ
マスケレドモ、併シ斯ウ云フ性質ノモノニ
補給金ナリ、交付金ガ限ルト云フコトハ、
勿論ナイノデアリマス、此交付金ヲドウ云
フ程度デ、ドウ云フ意味合ニ於テ、ドノ範
圍ニ運用スルカト云フコトハ、隨分ムツカ
シイ問題デアルト思フノデアリマシテ、是
ハ又根本稅制ト相絡ンデ十分ニ〓究致シタ
イト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=79
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080・河野密
○河野委員 私ハ交付金ト云フモノハ、大
體中央ノ稅ノ財源ニ依ッテ是々ノ金ヲ、是々
ノ稅ヲ廢止スル爲ニ與ヘルトカ云フヤウナ
性質ノモノデナケレバ交付金ト言フコトハ
出來ナイ、唯漫然ト地方ノ貧窮セル農山漁
村ヲ霑スノダト云フヤウナ意味ニ於テハ、
一種ノ助成金トカ、補助金トカ云フヤウナ
モノダト思ヒマス、ソレデアレバ色々ナ地
方ノ有力者ガ出テ來テ運動スルト、運動シ
タ所ニ餘計行クト云フヤウナ結果ニナルナ
ラバ甚ダ面白クナイヂヤナイカ、其點ヲ御
尋シタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=80
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081・坂千秋
○坂政府委員 今度ノ豫算ニハ補給金ト云
フ名前デアリマスガ、是ハ色々運動、請託
等ニ依リマシテ動カサレ、又其爲ニ利益ヲ
受ケタリ、不利益ヲ受ケタリスルコトガア
リマシテハ面白クナイト思フノデアリマ
ス、御意見ノ通リデアリマス、隨ヒマシテ
交付金ヲ交付致シマス場合ニハ、一定ノ基
準ヲ作リマシテ、キチントシタ機械的ナ、
惡ク申シマスト杓子定規ニナルト云フヤウ
ナ非難ヲ受ケルカモ知レマセヌガ、キチン
トシタ標準ヲ十分〓究致シマシテ、其標準
エ基キマシテ算盤ヲ彈イタ數字ニ依ッテ交
付サレル、斯ウ云フ結果ニ致シタイト考ヘ
テ居リマス、隨ヒマシテ運動、請託ノ結果
增減ヲ生ズルコトハナイ、是ハ非常ニ弊害
ガアルコトヲ吾々ハ非常ニ恐レテ居ルノデ
アリマス、唯府縣ニ付テハ其必要ハナイト
思ヒマスガ、町村ニハ一萬二千ノ町村ガア
リマシテ、其狀況モ色々違ヒマスカラ、町
村ノ方ニ交付致シマスモノヽ大部分ハ、今
申シマスヤウナキチントシタ標準デ、動キ
ノナイ所デ、町村役場ガ算盤ヲ彈イテ見レ
バ、自分ノ方ハ幾ラ來ルカト云フコトガ直
グ分ルヤウナ風ニヤリタイト思フノデアリ
マス、町村ノ區々ノ事情ニ應ズル必要ガア
リマスノデ、別箇ノ複雜ナル一定ノ抽象的
ナ基準ハ作ルノデアリマスガ、別途ノ方法
デスル途ヲ開イテ置ク必要ハナイデアラウ
カ、此程度ニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=81
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082・河野密
○河野委員 能ク分リマシタ、是非トモサ
ウ云フヤウニヤッテ戴キタイト存ジマス、此
點ガ非常ノ政界ヲ混濁セシメル材料ニ使ハ
レルコトヲ吾々ハ不愉快ニ堪ヘナイノデア
リマス、其點嚴重ニ一ツ御願ヲシテ置キマ
ス、ソレカラ馬場案ニ依リマスルト、二億
二千萬圓ノ交付金ハ大體特別地稅及ビ附加
稅ノ五割減、府縣營業稅及ビ同附加稅ノ五
割減、雜種稅ノ二割減ト云フ方針デアッタ
ト承ッテ居リマス、是ハ吾々大イニ贊成ヲ
スルノデアリマスガ、先日ノ七千萬圓ノ場
合ニ於キマシテハ、地租ノ輕減ニ一千萬圓
ヲ充テ、ソレカラ雜種稅ノ輕減ニ一千萬圓
ヲ充テ、アトハ戶數割ノ減免ニ充テルト、
斯ウ云フ御說明デアッタヤウニ思ヒマス、本
日政府委員カラノ一億圓ノ配分ニ付テノ內
容ヲ承リマスルト、大體府縣稅ハ三千萬圓、
市町村稅七千萬圓、其內譯ヲ申シマスルト
大體府縣ニ於テハ雜種稅ノ廢減ニ御充テニ
ナル、市町村ニ於テハ戶數割ノ廢減ニ御充
テニナル、斯ウ云フノデアリマスガ、先日
七千萬圓ノ時ハ地租輕減、雜種稅輕減、戶
數割ノ輕減、斯ウ云フコトデアッタガ、今日
ノ御說明ノ配分方法ガ違フヤウニ存ジマス
ガ、其點ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=82
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083・坂千秋
○坂政府委員 午前ニ申上ゲマシタ言葉ガ
足リマセヌ爲ニ、十分了解シテ戴ケナカツ
タコトハ恐縮ニ思ヒマスガ、實ハ是ハ午前
申上ゲマシタヤウニ、ハッキリト決ッタ程度
ヲ申上ゲ兼ネルノデアリマスガ、私共ノ腹
案ト致シマシテハ、七千萬圓デモ一億圓ト
ナリマシテモ、大體稅ノ種類ニ付テハ變更
スル必要ハアルマイト考ヘテ居リマス、隨
ヒマシテ府縣ニ付キマシテ三千萬圓弱ト申
シマシタガ、其金ハ府縣ノ地租附加稅デア
リマス、宅地ヲ除キマシタ其他ノ土地ノ地
租附加稅ノ輕減、雜種稅ノ輕減ニ充テル、市
町村ニ七千萬圓强ト申シマシタ其金ハ、大
部分ハ戶數割、ソレカラ雜種稅ノ附加稅、
其輕減ニ充テル、根本ノ方針ニ付キマシテ
ハ、變ヘル必要ハナカラウヤウニ私共ハ考
ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=83
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084・河野密
○河野委員 府縣デ地租ノ附加稅ノ輕減ニ
充テラレルト云フ話デアリマスガ、府縣ト
シテハ私地租ノ附加稅ヨリ先ニ、特別地稅
及其附加稅ガ考ヘラルベキダト思ヒマス
ガ、如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=84
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085・坂千秋
○坂政府委員 ドウモ言葉ガ何時モ不十分
デアリマシテ、恐縮デアリマスガ、特別地
稅ノ關係モ、地租附加稅ト同樣ニ取扱ヒタ
イト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=85
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086・河野密
○河野委員 今マデナマクラノヤウナ質問
デ恐縮デゴザイマスルガ、是カラ少シ刺身
庖丁位ノ質問ヲシヨウト思ヒマス、最初ニ
所得稅ニ付テ御尋致シマス、最初ニ御尋シ
タイノハ、第一種所得稅ニ何故免稅點ヲ設
ケラレナカッタカ、何故其累進稅率ヲ設ケラ
レナイカト云フ點ヲ御尋シタイト思ヒマ
ス、小サナ會社ニ第一種所得稅ガ重イト云
フコトハ度々聞ク所デアリマスガ、是ハ累
進稅率ヲ御設ケニナッタナラバ、其點ガ緩和
サレルノデナイカト思ヒマスルガ、累進稅
率ヲ御設ケニナル意思ガアルカドウカ、御
尋シタイト思ヒマス、ソレカラ第一種所得
稅ノ稅率ハ、第三種所得稅ノ稅率ヨリモ、
或ル程度ニ行クト低率ニナルト存ジマスル
ガ、前者ガ比例稅デアルトカ、累進稅デア
ルトカ、之ヲ强制サレル御意思デアリマス
カドウカ、御尋致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=86
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087・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今河野サンノ御尋ハ法
人ノ稅率ニ關シマスルコトデゴザイマス
ガ、法人ノ稅率ヲ現在ニ於ケルガ如ク、比
例稅ニセズシテ、累進稅率ニシタラ如何デ
アルカト云フコトハ、確ニ一ツノ御議論デ
アルト思フノデゴザイマスルガ、法人ニ付
キマシテハ、課稅ノ沿革モゴザイマシテ、
大體ノ沿革カラ申シマスルト云フト、法人
ト云フモノハ成程、一個ノ獨立シタ經濟主
體ト見ラレルノデゴザイマスルケレドモ、
其後ロニハ幾多ノ株主ナルモノガアルノデ
ゴザイマシテ、多數ノ人ノ資本ヲ集メマシ
テ、營業ヲ法人ノ形ニ於テ致シマスガ、是
ハ實ハ多數ノ人ノ營利手段ニ過ギナイト云
フヤウナ見方モ出來ルノデゴザイマシテ、
ソコデ法人ノ課稅ハ其背後ニアル所ノ株主
ニ對スル課稅ヲ源泉ニ置イテ行ッテ居ルト
云フヤウナ見方ガアルノデゴザイマス、サ
ウシマスルト云フト、背後ニアリマスル所
ノ株主ナルモノハ、色々區々デアリマシ
テ、或ハ相當資產家モアリマスレバ、或
ソレ程資產ノナイ者モゴザイマス、隨テ之
ヲ源泉ニ於テ課稅ヲ致スト云フコトニ致シ
マスレバ、ドウシテモ比例課稅以外ニハナ
イヤウナ次第デアリマス、是ガ法人ガ大體
比例稅ヲ以テ進ンデ來タ理由デアルト思フ
ノデアリマス、然ラバ今日ニ於テハ法人ノ
課稅ガ、個人ノ所得ヲ源泉デ課稅スルト云
フ意味ガ薄ライデ來タ、法人實在說モ生レ
タ位デ、法人ヲ獨立經濟主體ト認メテ居ル
點ガ强クナッタカラ、累進率デ課稅シタラ
ドウカト云フ御議論デゴザイマシテ、外國
ノ立法例等ニ於キマシテモ、亞米利加等ニ
於キマシテハ、大體試ミノ案ノヤウデアリ
マスガ、或ル程度ノ輕イ累進率ヲ以テ課稅
スルコトヲ、今日始メテ參ッテ居リマスガ、
我國ニ於キマシテモ、直チニ法人ノ所得ニ
隨ヒマシテ、累進率デ課稅シタガ宜イカド
ウカト云フコトハ、餘程〓究シテ見ナケレ
バナラナイ問題ダト思ヒマス、隨テ今直グ
今後ノ法人ノ課稅ガ、累進稅率ヲ採用スル
コトニ可能カドウカト云フコトハ御答シニ
クイト思ヒマス、ソレカラ法人ノ率ハ普通
所得ニ對スル率ガ百分ノ十デアリマシテ、
是ハ個人ト比較シマスト、個人ノ最高率ヨ
リモ低クナッテ居ル、法人、個人間ノ比較ニ
付テノ御話ガゴザイマシタガ、先程申上ゲ
タヤウニ、法人ハ法人トシテノ負擔力ヲ見
テ、現在ノ百分ノ五ノ比例稅率ハ、マダ增
徴スル餘力アリト見マシテ、十割引上ゲテ
百分ノ十ト致シタヤウナ次第デ、個人ノ稅
率ハ個人ノ累進稅率トシテ增徵ノ餘地ヲ、
法人ヨリモ幾分低目ニスルノヲ適當ト認メ
マシテ、個人ノ方ハ五割引上ゲタト云フヤ
ウナ次第デアリマシテ、法人ノ率ヲ個人ノ
ドノ程度ノ所得者ニ比較セシメルノガ宜イ
カト云フコトハ、中々比較ノ取リ難イモノ
デアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=87
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088・河野密
○河野委員 第一種法人超過所得ニ對スル
課稅ヲ馬場案ハ百分ノ七以上ヲ超過所得ト
シタノデアリマシタガ、之ヲ何故ニ現在ノ
ヤウニ据置ニ改メタノデアルカ、是ハ恐ラ
ク私馬場案ニ於テハ臨時利得稅ヲ御廢メニ
ナル積リデアッタト思ヒマスガ、馬場案ニ於
テモ臨時利得稅ハ其儘ニナッテ居ッタ、之ヲ
百分ノ七ニ据置ニシタノハ、現在ノ如キ低
金利時代ニ於テハ法人ヲ安クシ過ギルノデ
ハナイカト考ヘマスガ、如何デゴザイマス
カ、モウ一ツ第二種所得稅ノ綜合課稅ハ是
ハ稅ノ收入ノ技術的方面カラ反對ガアルヤ
ウデアリマスガ、是ハ第三種所得稅ニ綜合
スルノガ私ハ公平デアルト思ヒマスガ、其
點ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=88
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089・石渡莊太郎
○石渡政府委員 超過所得稅ヲナゼ改正ヲ
シナカッタカト、斯ウ仰シヤルノデゴザイマ
スガ、超過所得稅ヲ改正シナカッタコトハ
此前申上ゲマシタ通リ、超過所得稅ト申シ
マスモノガ、今日一般ノ法人稅ノ苦情ノ種
ニナッテ居ルト思ヒマス、大抵ノモノハ此
點カラ生ズルノデゴザイマス、ト申シマス
コトハ資本金ガ比較的少クテ積立金モ少ナ
イト、斯ウ云フ會社ガ忽チ重課ヲ受ケル、
積立金ノ多イ會社ハ超過所得稅ナドハ殆ド
課稅ヲ受ケヌト云フノガゴザイマス、斯ウ
申シチヤ何デゴザイマスガ、一流ノ紡績會
社、二割幾分ノ配當ヲヤッテ居ルヤウナ紡績
會社ハ、嘸ゾ超過所得稅ヲ納メルコトデア
ラウト思フト、殆ド納メマセヌ、ソレハ納
メナイノハ積立金ガ大キクテ、其積立金ト
資本金ヲ合セタ動イテ居ル所ノ資本ニ利益
金ヲ比較スルト、七分カ六分カシカニ當ラ
ヌ、斯ウ云フ譯デアリマシテ、配當ハ何割
ト云フコトヲ言ヒマスガ、運用資本金ガ
大キイカラ超過所得稅ハ課稅ヲ受ケナイト
云フ譯デゴザイマス、ソレニ反シテ比較
的少額ナ積立金シカ持ッテ居ナイ會社ハ相
當ナ課稅ヲ受ケル、ソレデアリマスノデ、
此稅ヲ此際增徵致シマスコトハ、稅ノ實際
カラ行キマシテモ、亦理窟カラ行キマシテ
モ、私ハ廢メタ方ガ宜カラウ、之ヲ引上ゲ
ルヨリハ寧ロ臨時利得稅ヲ引上ゲタ方ガ宜
カラウト、斯ウ思ッタノデ超過所得稅ヲ其
儘ニ致シマシテ、臨時所得稅ヲ引上ゲマシ
タ次第デゴザイマス、ソレカラモウ一ツノ
御轉ノ第二種ノ綜合ヲ何故廢メタカト、斯
ウ云フ御尋デゴザイマスガ、是ハ全般ヲ通
ジテノ問題デゴザイマスルガ、詰リ今囘ノ
改正ハ現行法ヲ基礎ニ致シマシタ所ノ臨時
增徵デ行キマシタノデ、隨テ第二種モ其儘
ニ致シマシテ、ソレニ增率ヲ行ッタト、斯ウ
云フ次第デアリマス、ソレデハ一體何故現
行法ニ於テ、第二種ト云フモノヲ源泉課稅
ニシテ置イテ綜合課稅ニシテ居ラナイカ
ト、斯ウ云フ御尋デアリマスルガ、是ハ大
正九年ニ銀行預金ノ利子ト云フモノハ綜合
課稅デアッタ綜合課稅デアッタ所ガ、一向稅
金ガ入ラナイデ、稅務署デモ此始末ニ困フ
テシマヒマシテ、配當ヲ綜合課稅ニ致スト
同時ニ、此方ヲ源泉課稅ニ移シタノデゴザ
イマス、其當時ト今日トデハ狀況ガ餘程變ヲ
テ居リマスカラ、今日綜合課稅ニ致シマシ
テモ、收入ガサウ入ラナイト云フコトハナ
イカト思ヒマスケレドモ、マア此點ニ付キ
マシテハ、一ツ將來十分考究スルコトニ致
シマス、ソレトモウ一ツ斯ウ云フ理由ガ今
目アルコトダケハ、御考ヲ願ッテ置キタイト
思フノデアリマス、今日ハ普通ノ經濟狀態
デハアリマセズ、一方ニ於テ政府ハ公債ヲ
賣ラテ行カナケレバナラヌト、斯ウ云フ時期
ニアリマスノデ、變態的ノ經濟狀態ノ下ニ
アリマス、隨テ茲ニ國債ノ利子ト云フモノ
ニ對シテ、サウ思ッタヤウニ負擔ノ衡平ノ見
地カラ之ニ對シテ課稅スル譯ニモ行カヌト、
斯ウ云フヤウナ關係ガアリマスレバ、之二
關シマシテヤハリ資本ノ利子ト云フモノ
ハ、一貫致シマシテ餘リ理窟通リニハ行カ
ナイ點ガアリハシナイカ、隨テ此前ノ案モ
國債ハ源泉課稅ニスル、サウスルト銀行ノ
定期預金ト云フモノモ源泉課稅ニスル、斯
ウ云フコトニ相成ッテ居ッタカト思フノデゴ
ザイマシテ、今日ノ經濟ガ多少變態的ノ所
ガアルノデゴザイマシテ、此點モ餘程考慮
ニ入レテ考ヘル必要ガアルカト思ッテ居リ
マス、大體ノ御答ト致シマシテ、左樣御諒
承願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=89
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090・河野密
○河野委員 此點ハ私ハ最初ニ申シマシタ
法人ノ擔稅ノ問題ニナリマスノデ、十分御
考慮ヲ願ヒタイト思ヒマス、其次ニ是ハ非
常ニ細カイ問題デアリマスガ、所得稅法ノ
十六條ヲ御覽願ヒタイト思ヒマスガ、此所
得稅法第十六條ノ第一項ニアリマスル家族
扶養費トシテ子供、老人、不具癈疾者一人
ニ付キ百圓ノ控除ヲスルコトニナッテ居リ
マスガ、是ハ大ニ吾々ノ方カラノ御願ナン
デアリマスガ、百五十圓ニ一ツ引上ゲテ戴
キタイト思フノデアリマス、是ハ大正十五
年ニ出來タ法律デアリマスガ、控除額ヲ五
割程引上ゲテ百五十圓ニ是非シテ貰ヒタイ
ト思ヒマスガ、政府ノ御意見ヲ伺ヒマス、モ
ウ一ツハ其第十六條ノ三ニアリマス「自己
若ハ家族又ハ其ノ相續人ヲ保險金受取人ト
スル生命保險契約ノ爲ニ拂込ミタル保險料
ハ年額二百圓ヲ限リ」云々、是ハ所得控除
ト云フコトニナッテ居リマスガ、生命保險料
ヲ控除スル以上ハ、吾々ノ立場カラ云ッテ、
健康保險ニ對スル保險料ノ控除、ソレカラ
新シク出來マシタ法律ノ退職手當積立金法
ニ依ル積立金ノ控除デスガ、之ヲ一ツ是非
此中ニ入レテ戴キタイ、是ハ當然負擔ノ衡
平ノ見地カラ、營利會社デアル生命保險ノ
保險料ヲ控除スルノデアリマスカラ、健康
保險或ハ退職積立金ニ依ル退職手當積立金
ノ負擔金ヲ控除スルノガ當然ダト考ヘルノ
デアリマス、最近ノ軍需會社ノアレニ依ッ
テ之ヲ適用スレバ、千二百圓カラ免レルト
云フモノハ非常ニ澤山アル、其點ノ一ツ御
意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=90
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091・石渡莊太郎
○石渡政府委員 將來ノ改正ニ當ッテ此家
族ノ扶養控除ノ問題、ソレカラ健康保險ノ
拂込金、ソレカラ退職積立金ト云フヤウナ
モノヲ考ヘテ吳レト云フ御話デゴザイマス
ルガ、一ツ此點ニ付キマシテハ十分考慮ス
ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=91
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092・河野密
○河野委員 ドウカ忘レナイヤウニ一ッ···
(笑聲)次ニ營業收益稅ノコトニ付テ
言御尋致シマスガ、個人營業ノ免稅點ヲ引
上ゲマシタノハ、詰リ四百圓カラ六百圓ニ
引上ゲタノハ、是ハ馬場案ニ於テ最モ喝采
ヲ博シタ點デハナカッタカト私ハ考ヘテ居
リマスルガ、此點ヲ現在ノヤウニ改メラレ
タノハ甚ダ遺憾ニ存ジマス、此點ハ是非ト
モ將來引上ゲテ戴キタイノデアリマスガ、
政府ノ御意思ハ如何デアリマスカ、ソレカ
ラ免稅點ヲ引上ゲルノニ所得稅ノ免稅點ト
ノ釣合上、是ハ今日ノ營業收益稅ハ其營業
スル人ノ俸給ト云フモノモ其中ニ含マレテ
居ッテ、ソレニ依ッテ生活ヲシテ居ルノデア
リマスカラ、少クトモ所得稅ト同ジ位ニ引
上ゲルノガ當然ト存ジマスルガ、政府ノ御
所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=92
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093・石渡莊太郎
○石渡政府委員 營業收益稅ノ免稅點ハ現
行法ハ四百圓デアルノデアリマシテ、ソレ
ヲ六百圓ニ改正スルト云フコトガ此前ノ案
デアッタノデゴザイマスルガ、是ハ斯ウ云
フ關係ニ相成ルト思フノデアリマス、營業
收益稅ノ免稅點ヲ上ゲルト申シマスカ、上
ゲルコト自體ハ、是ハ大シテ負擔ニ關係ガ
ゴザイマセヌ、今日森サンカラモ午前中ニ
御質問ガアッタノデスガ、却テ地方ノ營業
者ノ負擔ガ重イノデハナイカ、國ノ最低限
アタリノ納稅者ヨリハ却テソレ以下ノ地方
ノ營業者ノ負擔ノ方ガ重イノデハナイカ、
サウ云フ點ヲ一體ドウスルカ、斯ウ云フ御
質問モアッタ位デアリマシテ、私ハ多少ハ
今日デモ免稅點以下ノ方ガ輕クハ相成ッテ
居ルト思フノデアリマスガ、是ハ免稅點ト
申シマシテモ、實ハ免稅點デハゴザイマセ
ヌデ、國ト地方トノ課稅ノ分界點ト申シタ
方ガ宜イカト思フノデゴザイマス、隨テ之
ヲ引上ゲルト云フコトハ、一面ニ於テソレ
ダケノ額ヲ地方ニ委讓スルト云フコトデア
リマス、隨テ其委讓財源ヲ以テ地方ハ營業
稅ノ額ヲ減ズルカ、ソレモモット下ノ方ヲ
廢メルカ、或ハ低クスルカ、稅率ヲ低クス
ルカ、斯ウ云フ問題ニ關聯シテ來ルト思フ
ノデゴザイマスガ、是ハヤハリ一種ノ稅制
ノ整理デゴザイマスカラ、今囘ノ增徵案ニ
ハ此點ハ含マセマセズ、今後ニ於ケル所ノ
稅制改正ノ場合ニ於キマシテ斯ウ云フモノ
ヲ引括メテ考ヘタイ、斯ウ思ッタ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=93
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094・河野密
○河野委員 次ニ私ハ酒稅ノコトデ御尋シ
タイト思ヒマス、酒稅ニ付テ色々非難モア
リマシタガ、前案デハ從質庫出稅ト云フモ
ノヲ設ケタノデアリマス、從質庫出稅ヲ今
度御廢メニナッタノデアリマスガ、私ハ庫出
稅ニ付テハ別個ノ意見モアリマスルケレド
モ、從質庫出稅ヲ御廢メニナッタ理由ガド
ウ云フ理由デアルカ、又將來從質庫出稅ト
云フモノハ、兎ニ角臨時增徵案デアリマス
カラ、來年度ニ於テハ之ニ從フト致シマシ
テ、其次ノ年度ニハ從質庫出稅ヲ復活ナサ
ル御意思デアルカドウカト云フコトヲ御尋
シタイト思ヒマス
ソレカラ先程モ非常ニ議論ニナリマシタ
ガ、麥酒ノ稅金ト〓酒ノ稅金ト酒精含有飮
料水ノ稅金ト、皆ソレ〓〓稅率ガ違ヲテ居
ルノデアリマスガ、今度ハ酒精含有飮料水
ハ十圓上リマシテ五十二圓、ソレカラ〓酒
ハ五圓上ッテ四十五圓、麥酒ハ十圓上リマ
シテ三十五圓、斯ウ云フ風ニナッテ居リマ
ス、之ヲ彈キ出シタ根據ハ一體何處ニアル
ノカト云フコトヲ私達ハ疑フノデアリマス
ガ、酒精ノ含有料ニシマスト、大體今度ハ
酒精一度ニ付テ一圓八十錢ノ稅金ヲ二圓十
錢ニ上ゲテ居ルノデアリマスガ、酒精ノ含
有料カラ行キマスルト、斯ウ云フ計算ハ出
テ來ナイト思フノデアリマス、麥酒ガ大體
六度位ノ酒精デアルシ、〓酒ハ平均十八度
位ノ酒精ヲ含ンデ居ルノデアリマス、新日
本酒ト云フ、所謂酒精含有飮料水ニ依リマ
スルト、是ハ色々アルト思ヒマスガ、兎心
角酒精ノ度カラ之ヲ割出シタモノデナイコ
トハ事實デアリマス、サウスルト一體何處
ニ根據ヲ置イテ斯ウ云フ稅率ヲ割出サレタ
ノデアルカ、此點ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=94
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095・石渡莊太郎
○石渡政府委員 最初ノ御尋ハ從質庫出
稅之ヲ實行スルカト云フ御尋デゴザイマ
ス、是ハ二ツニ分ケテ考ヘナケレバイカヌ
ト思フノデアリマス、一ツハ從質稅デアリ
マシテ、一ツハ庫出稅デゴザイマス、從質
稅ト申シマスモノハ、實ハ政府デハ別ニ從
質稅トハ言ッテ居ナカッタト思フノデゴザイ
マス、通稱從質稅デゴザイマスガ、是ハ實
ニ私此稅ノ方ヲ暫ク御無沙汰シテ居リマシ
テ、調査局ニ於テ此話ヲ聞イタノデアリマ
スガ、實ハ何遍說明ヲ聽キマシテモ、何遍
稅法ヲ讀ミマシテモ、分ラナイノデゴザイ
マス、實ハ今日ニ於テモ私ニ此問題ハ分リ
マセヌ、ソコデ今回之ヲ持ッテ議會ニ行ッテ
提案ヲシテ說明ヲ致スダケノ私ニ自信ガア
リマセヌデシタ、ソレデ此次マデニハ一ツ
十分〓究ヲ致シマス、致シマスガ、私ノ一
番恐レテ居リマスノハ地方ノ酒ノ質ガ非常
ニ良クナッテ來タノデゴザイマス、ソレデス
ガ、今日其惱ミノ一ツノ問題ハ質ノ良イ酒
ガ高ク賣レナイ、高ク賣レナイノデゴザイ
マスカラ其點ガ一番困ッテ居ル折角酒ノ質
ハ良クシテ見タガ、ドウモ高ク賣レナイ、
サウシマスルト其高ク賣レナイ酒ニ重イ稅
金ヲ課スル、却テ西宮邊リノ東京邊リヘ來
マス灘ノ酒ノ高ク賣レテ居ル酒ノ中デ、サ
ウ質ガ良クナイモノガアル、是ハ低イ稅金デ
濟ム、サウスルト却テ私共ハ初メ從價稅ヲ考
ヘタガ、其從價稅ヲ考ヘマシタ結果ガ却テ高
ク賣レルモノガ安イ課稅ヲ受ケ、安イモノ
ガ高イ課稅ヲ受ケル、サウスルト丁度從價
稅ト反對ノヤウナ現象ガ起リハセヌカ、斯
ウ云フ心配ガ私ニ殘ルノデアリマシテ、此
點說明ヲ求メマシテ私ソレヲ聽イタノデア
リマスガ、ドウモ腑ニ落チ兼ネルノデアリ
マスノデ、實ハ提案致シマシテ御說明ヲ致
ス勇氣ヲ持チマセヌデシタ、此次ノ議會マ
デニハ一ツ十分攻究致シタイト存ジテ居リ
マス、ソレカラ庫出稅ハ、是ハ先程モ御話
ガアリマシタ通リ、酒造組合中央會ノ數年
ニ亙ル熱心ナル希望デゴザイマス、此問題
ニハ率直ニ私申セバ二ツノ缺點ガゴザイマ
ス、一ツハ比較的大酒屋デアリマシテ、品
質ノ良イ酒ヲ造リマシテ長ク持ッテ居ル、サ
ウ云フ酒屋ハ此庫出稅ニ依ル所ノ利益ヲ可
ナリ受ケマス、同時ニ地方ノ酒屋ノ、拵
テ直グ賣ッテシマフ、斯ウ云フ酒屋ハ不利益
ヲ受ケマス、ソレデ之ヲ早急ニ施行致スコ
トニハ可ナリ田舎ノ造リ酒屋ニ於テ實行困
難ナ點ヲ相當含ンデ居リマス、潰レテシマ
フ、斯ウ云フ問題ヲ反面ニ於キマシテ多分
ニ含ンデ居ルノデアリマス、ソレカラモウ一
ツノ實行ノ難點ハ、初年度カ又ハ其翌年度
ニ於キマシテ國ノ收入ガ數千萬圓減ルノデ
ゴザイマス、是ハ庫出シノ遲レル關係上遲
レマスカラ、其收入ハ翌年度ニ入ッテ來ル、
ソレデスカラ酒ノ收入ト云フモノハ翌年度
翌年度ニ入ッテハ來マスガ、併ナガラ其初年
度ニ失ハレル所ノ數千萬圓ノ金ト云フモノ
ハ是ハ永久ノ損失デアッテ、酒ノ稅金ヲ廢
メルト云フ時ニ於テ、初メテ其終ヒノ年度
ニ於テ現レル所ノ金デアルノデゴザイマシ
テ、此點ガ從來カラモ私達ハヤッテモ宜イ
ケレドモ、斯ウ云フ財政狀態ノ際ニ更ニ減ツ
テハイカヌト云フコトデ、數千萬圓ノ赤字
ヲ拵ヘテマデ實行スル問題デアルカドウ
カ、斯ウ云フ點デ實ハ難點ガアッタノデア
リマス、ガ併シ此點ハ前囘實行スルト云ツ
テ法律モ提案致シ、一部ノ酒屋ニ於キマシ
テハ極メテ熱心ナル主張ガアルノデゴザイ
マシテ、何トカ實行可能ナ途ガアルノデア
ルナラバ此次ノ議會マデニ十分是ハ攻究致
シマス、但シドウモ小酒屋ヲブッ潰シテシ
マフヤウナ形デハ是ハ餘程考ヘモノデハナ
イカ、斯ウ思ッテ居ルノデアリマス、ソレカ
ラ酒精含有飮料ニ付テハ一一割程度ノ增稅、
酒ニ付テハ一割程度ノ增稅、麥酒ニ付テハ
四割ノ增稅、如何ニモ區々デヲカシイデハ
ナイカ、斯ウ云フ御尋デゴザイマス、洵ニ
御尤デゴザイマスガ、ドウモ今日ノ場合酒
類總テヲ通ジテ一律ニ之ヲ增稅スルト云フ
譯ニ行キマセヌノデゴザイマス、行カヌコ
トハ先程モ一寸申上ゲマシタ通リ、〓酒ト
云フモノハドウモ減ッテ來ル、濁酒ト云フヤ
ウナモノハ殆ド絕滅ニ瀕シテ居ル、ソレデ
ゴザイマスカラ、此絕滅ニ瀕シテ居ルヤウ
ナ濁酒ニハ增稅ヲシナイ、ソレカラ〓酒ニ
ハ幾分ノ增稅ヲスル、酒精含有飮料ニハ其
程度ヲモウ少シ多クシタ增稅ヲスル、ソレ
カラ麥酒ハ非常ナ造石-非常ナト申シテ
ハ語弊ガアルカモ知レマセヌガ、多分ニ伸
ビテ居リマスノデ、之ニハ擔稅力カラ見テ
モウ少シ多イ率ヲ盛ッテ行ク、斯ウ云フコト
ニ致シマシタ次第デゴザイマス、只今御尋
ノゴザイマシタ新式〓酒、是ハ理〓等デ拵
ヘテ居リマスル酒デゴザイマスルガ、是ハ
「アルコール」ヲ拵ヘマシテ、之ニ色々ナモ
ノヲ混ゼテ製造ヲシテ居ルノデゴザイマ
ス、是ハ無論〓酒ヂヤゴザイマセヌガ、〓
酒ニ似タヤウナモノトシテ拵ヘテ居ルノデ
ゴザイマスルガ、是モ相當混水ガ利キマス
ノト、原料ガ糖蜜、芋等デゴザイマスルカ
ラ、非常ニ安ク出來ル、隨テ他ノ酒、普通
ノ酒等カラ比ベルト非常ニ今日伸ビテ居リ
ママ、營業狀態カラ致シマシテモ相當良好
デ、酒ノ分量カラ致シテモ、非常ニ增加致
シテ居リマスノデ、此程度ノ增稅デアルナ
ラバ差支アルマイト、斯ウ思ヒマシタ次第
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=95
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096・河野密
○河野委員 只今私說明ヲ求メマシタノ
ハ、區々ナノヲ別ニ非難スル意味デハナ
カッタノデアリマシテ、私ハ區々ナ所ニ實
ハ非常ナ意味ガアルト考ヘテ居ルノデアリ
マスガ、唯政府ニハ只今マデ此種類ハ是ダ
ケノ稅金ヲ取ッテ居タカラ此位增ス、此種
類ハ是位取ッテ居タカラ此位增サウト云フ、
目分量デ大體增稅サレタト云フコトハ、今
ノ御說明ニ依ッテ私共ニ能ク分ッタノデアリ
マスガ、ソレナラバ政府ニ御尋シタイノデ
アリマスガ、一體政府ハ〓酒ト麥酒ト、所謂
新日本酒ト言ヒマスルカ、合成酒ト言ヒマ
スルカ、サウ云フモノヽ生產費ヲドノ位見
積ラレテ、ソレガ今市場ニ於テドレダケノ
販賣價格ヲ持ッテ居ルガ故ニ、此位ノ增稅
ハ堪ヘ得ルト云フ見透シヲ持タレテ增稅サ
レタノデアリマスルカドウカ、其點ニ付テ
ハ單ニ全クノ目分量デオヤリニナッタノカ
ドウカ、此點ヲ私ハ御尋シタイト思ヒマス、
私ガ申上ゲル迄モナク、日本酒ノ生產ハ年
年減ッテ居リマス、最初大正十五年ニ約一
萬軒アリマシテ、四百八十萬石程ノ生產ガ
アリマシタモノガ、昭和十年ニナリマスル
ト、七千三百餘軒ニナッテ、三百七十萬石ニ
酒ハ減ッテ居ルノデアリマス、是ハ何デ減ル
カト言ヒマスルト、御承知ノヤウニ競爭デ
減ルノデアリマス、所ガ麥酒ノ方ハ是ハ十
四社デ-慥カ十四社ト思ッテ居リマスガ、
十四社デ非常ナ統制ヲヤ。テ、價格ノ統制ヲ
ヤッテ居ルノデアリマス、麥酒ノ方デアリ
マスルト、假令稅金ガ高クナリマシテモ、
之ヲ大衆ニ轉嫁スルコトハ價格ノ統制デ直
チニ出來ルノデアリマス、所ガ日本酒ノ方
デアリマスルト、非常ナ競爭ガ激甚ナ結果、
決シテ是ハ大衆ニ轉嫁サレルバカリデナシ
ニ、業者ノ負擔ト云フモノモ相當澤山ニア
ルノヂヤナカラウカ、茲ニ私ハ酒造業者ノ
非常ナ惱ミガアルノデハナカラウカト思フ
ノデアリマスガ、大衆ニ負擔ヲ掛ケルノダ
カラ麥酒ヲ上ゲル、斯ウ云フノデハナクテ、
私ハ寧ロ率トスルナラバ、麥酒ノ方ニ餘計
ナ課稅ヲシテ、〓酒ノ方ニ課稅ヲ少クスル
ト云フ御精神ガモット現ハレテモ宜イト思
フノデアリマス、麥酒ハ御承知ノヤウニ外
國ニ輸出モ出來マスガ、日本酒ノ輸出ト云
フモノハ絕對ニ不可能デアリマス、斯ウ云
フヤウナ點デ、ソレナラバ日本酒ハ自然ノ
消長ニ任シテ、潰レタラソレデ宜イヂヤナ
イカト、斯レ云フ御考カモ知レマセヌガ、
是ハ農村ノ米ノ消費ニ非常ニ關係ヲ持ッテ
居ルノデアリマシテ、私ハ其點ヲ放置スベ
キモノデアルカドウカト云フコトニ付テ疑
ヲ持ツノデアリマス、其點私ハ麥酒ノ增稅
ヲ十圓ニ止メル、前ニハ十五圓ニ增稅シテ
稍〓〓酒ノ率ニ追付イテ來ヨウトシタノヲ、
ソレヲ五圓減額サレテ十圓ノ程度ニ止メ、
〓酒ノ方ハ四十五圓ニシテ、其開キガ尙ホ
十圓アルト云フノハ日本酒ニ對シテマダ私
ハ認識ガ足ラナイノヂヤナイカト、斯樣ニ
考ヘルノデアリマス、勞働者トカ一般市民
ガドッチヲ餘計ニ嗜好スルカト云フ點ハ、
私ガ言フ迄モナク、刺戟ノ强イ日本酒ノ方
ヲ餘計ニ飮ムコトハ明白デアリマス、殊
農村方面ニ於テハ絕對的ナ日本酒ノ需要デ
アリマスルガ、サウ云フ點ヲ彼是レ考へ合
セテ、私ハ日本酒ノ負擔ガ餘リニ重キニ過
ギルノデハアルマイカト考ヘルノデアリマ
ス、ソレカラ新日本酒デアリマスガ、此點
モ生產費ヲ御伺シタイト思テテルノデア
リマスガ、新日本酒ノ生產費ハ非常ニ少イ
ト思ヒマス、是ガ段々日本酒ノ領域ヲ侵シ
ツヽアル、殊ニ前ノ馬場案ニアリマシタ合
成混和ヲ許スト云フコトニナリマスト、殆
ド新日本酒ニ二割程度ノ日本酒ヲ加ヘルナ
ラバ、ソレニ依ッテ今日市場ニアル普通ノ
日本酒ト同ジモノガ出來上ルト言ハレテ居
ルノデアリマスルガ、此方針ヲ執レバ恐ラ
ク日本酒ノ造石高ト云フモノハ、尙ホ遙ニ
減少スルカト思ヒマス、政府ハ此點ニ付テ
モ絕對ニ兩者ノ混和ヲ禁止サレル方針デア
リマスカ、或ハ其〓酒ノ造石高ガ減リマシ
テモ、新日本酒ト云フモノヲ御奬勵ニナル
御方針デアリマスカ、其點ヲ御伺シタイノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=96
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097・石渡莊太郎
○石渡政府委員 麥酒ノ生產費、酒精含有
飮料生產費、斯ウ云フモノヲ一々調ベマシ
テ、實ハ其程度ヲ決メタト云フ譯デハゴザ
イマセヌ、大體造石ノ趨勢、其他カラ顧ミ
マシテ、大體此程度デ宜カラウ、斯ウ云フ
譯デ決メマシタ次第デゴザイマス、只今御
尋ノ合成酒-酒精含有飮料ト日本酒トノ
混和、之ヲ認メルカ認メヌカ、斯ウ云フ問
題デゴザイマスガ、是ハ今日ハ御承知ノ通
リ禁ジテ居リマシテ、之ヲドウモ認メマス
レバ、仰シヤル通リ日本酒ハ減ッテ來ルノ
デハナイカト思ヒマス、此點モアナタト同
感デアリマス、ソレデ今後之ヲドウ致シマ
スカ、餘程問題デゴザイマスガ、今日ノ場
合日本酒ガ餘リ減ルヤウナ策ヲ執ッテ、酒精
含有飮料デアル所ノ合成酒ヲ奬勵シテ行ク
譯ニ行クマイト思フノデゴザイマス、前ノ
案ニ於キマシテハ、是ガ合併ヲ認メタノデ
アリマシテ、私モ此點如何ト思ッテ尋ネタ
コトモアッタノデアリマスルガ、ソレハ一面
ニ於テ原料ノ「アルコール」ヲ專賣トスルト
云フノデアリマシテ、其專賣ノ方デ引締メ
ルカラ、此方ガ急激ニ增加スルト云フコト
ハアルマイ、斯ウ云フ話デアッタノデゴザ
イマスガ、日本酒ト酒精含有飮料-新日
本酒トノ混和ハ、餘程是ハ考慮ヲ致スベキ
問題デアラウト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=97
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098・河野密
○河野委員 尙ホ御尋シマスガ、政府ハ此
前ノ案ニ依リマスト、燒酎ノ專賣ヲ計畫サ
レマシテ、是ハ今度御廢メニナッタヤウデ
アリマスガ、燒酎ノ專賣ハ尙ホ計畫ヲ續行
サレルノデアリマスカドウカ、此點御伺
致シマス、ソレカラモウ一ツ、昭和十三年
度カラ大藏省ハ酒類全體ノ專賣制ヲ實現ス
ル爲ニ御調査ニナッテ、其買上價格ナリ、或
ハ其專賣ノ實施ノ色々ナ調査モ漏レ承ッテ
居ルノデアリマスガ、此酒類ノ全體ニ對ス
ル專賣制度ヲ豫定ノ如ク昭和十三年度ヨリ
御ヤリニナル御意思デゴザイマスカドウ
カ、又昭和十三年ガ遲レマシテモ、專賣制
ヲ實施サレル御意思ガアリマスカドウカ、
御伺致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=98
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099・石渡莊太郎
○石渡政府委員 燒酎ノ專賣ハ、今囘ハ臨
時ノ增徵デゴザイマスノデ、專賣ニスルノ
モ如何カト思ッテ、其儘トシテ增徵致シマシ
ク、燒酎ノ中ニモ沖繩縣ノ泡盛トカ、九州
ノ諸燒酎ノヤウナモノガアルノデアリマシ
テ、是等ノ專賣ト云フモノハ、話ヲ聞イテ
見マスト、其處デ酒ヲ買ッテ、其製造者ニ賣ッ
テヤル、其處カラ買フテ其者ニ賣ッテヤル、
斯ウ云フノデアリマスカラ、實ハ稅金ト
チットモ變ラヌノデ、サウ云フヤリ方デア
ルナラバ、私ハ稅金デアラウト專賣デアラ
ウト、實際ニ於テ同ジコトデアリマスカラ、
强イテ專賣ニスルノモ如何ナモノデアラウ
カ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居リマス、唯新
式ノ機械ニ依リマスル燒酎、是ハ此前モ御
話ガアリマシタ通リ、是ハ「アルコール」デ
アッテ、「アルコール」ニ或ル程度ノ味付ケ
加水ヲ致ス、斯ウ云フモノデゴザイマスカ
ラ、是ハヤリ方ニ依ッテハ相當ナコトガ出
來ルカト思フノデゴザイマス、ガ今日之ヲ
專賣ニ致スカドウカト云フコトハ、餘程〓
究致シマセヌト云フト、何トモ申上ゲ得ラ
レナイヤウニ存ジマス
ソレカラモウ一ツノ、來年度カラ總テノ
酒ニ對シテノ專賣ヲスルト聞イテ居ルガ、
ソレヲ實行スルカ、斯ウ云フ御尋デゴザイ
マスガ、總テノ酒ニ對スル專賣計畫ハアリ
マセヌ、專賣局デサウ云フコトヲ致シテ居
ルコトモ聞イテ居リマセヌ、ソレハ恐ラク
間違ダラウト思ヒマス、但シ酒專賣ニ付キ
マシテハ數年前ヨリ屢〓問題ガアルノデゴ
ザイマシテ、若シ此酒ニ依ッテ數億圓ト云フ
ヤウナ收入ガ上ルノデアルナラバ、今日
ノ我國ノ財政狀態ト致シマシテ、相當是ハ
面白イ財源デ、又取上ゲナケレバイカヌ問
題ダラウト思ヒマスガ、今日マデノ〓究ニ
依ッテハ、酒全體ヲ取上ゲマシテ專賣トシテ
モサウ莫大ナ收入ヲ得ラレヨウトモ思ヘヌ
ノデゴザイマス、酒ノ負擔モサウ引上ゲズ
ニ、若シモ國ニ於キマシテ莫大ナ收入デモ
入ル、斯ウ云フ目鼻ガ付キマスレバ格別、
ソレデゴザイマセヌケレバ、今日ノ所別ニ
サウ云フ計畫ハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=99
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100・河野密
○河野委員 餘リ諄イヤウデスガ、去年ノ
九月カ十月ニ慥カ大藏省案トシテ發表サレ
タヤウニ-發表サレタノカ、漏レ出タノ
カ知リマセヌガ、サウ云フモノガアルト私
ハ存ジマスガ、其點ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=100
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101・石渡莊太郎
○石渡政府委員 サウ云フモノハナイ積リ
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=101
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102・河野密
○河野委員 ソレヂヤ、尙ホ調ベテ若シア
リマシタナラバ御尋致シマス、其點ハ其位
ニ致シマシテ、次ニ揮發油稅ノコトヲ引續
キ御伺致シマス、揮發油稅ヲ設ケラレマシ
タ趣旨ハ、是ハ此前日露戰爭ノ當時ニ石油
稅ヲ設ケタト云フ趣旨デ、單ナル稅收入ノ
見地カラ之ヲ御考ヘニナッタノデアリマス
ルカ、ソレトモ液體燃料トカ云フヤウナ燃
料政策ノ見地カラ關稅引上竝ニ揮發油稅ノ
設置ト云フコトヲ御考ヘニナッタノデアリ
マセウカ、此點ヲ先ヅ御伺シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=102
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103・石渡莊太郎
○石渡政府委員 揮發油稅ヲ創設致シマス
コトハ、一面ニ於キマシテ關稅ノ增徵ト相
俟チマシテ、之ニ依ッテ燃料國策ノ遂行ヲ
致シタイ、斯ウ云フ考カラシテ起シタノデ
ゴザイマシテ、單ニ收入ヲ得ントスル目的
ノミデハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=103
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104・河野密
○河野委員 燃料國策ト申シマスルガ、燃
料國策ノ主眼點ハ私ハ液體燃料ダト伺ッテ
居リマスルガ、此液體燃料ノ點ニ付テハ勿
論大藏省ノ御所管デハナイノデアリマスル
ガ、液體燃料ノ採算點ハ伺フ所ニ依リマス
ルト七十二三錢デアル、是ト拮抗スル爲ニ
今「ガロン」五十一錢モシテ居リマスル揮發
油ヲ六十一錢ニ引上ゲタノデアル、斯ウ云
フコトヲ伺ッテ居リマスルガ、是ハ其通リデ
ゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=104
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105・石渡莊太郎
○石渡政府委員 一方ノ液體燃料、例ヘバ
石炭液化、酒精ノ製造デゴザイマスルガ、
是等ノ採算點ハ先般商工當局カラ御說明ガ
ゴザイマシタ、ソレカラ「アルコール」ニ付
テハ專賣局長官カラ御話ガゴザイマシタ
ガ、今日ノ計算ハ大體アヽ云フヤウナ計算
デゴザイマシテ、ソレ等ニ基キマシテ此際
十錢ヲ引上ゲル、斯ウ云フコトニシタモノ
デゴザイマス、ソレデハ七十錢マデ引上ゲ
ルノデハアルマイカト、斯ウ云フ御尋モア
ルカト思フノデゴザイマス、是ハ政府ト致
シマシテハ、出來得ル限リ此引上ノ稅率ヲ
少ク致シマシテ、一方生產費ヲ出來ルダケ
少クシテヤッテ行キタイ、斯ウ思ッテ居ルノ
デゴザイマシテ、只今ノ所此六十一錢ト云
フモノヨリ上ゲル考ハゴザイマセヌガ、併
ナガラ是ハ將來ドウシテモイカヌト云フ場
合ニ打突カリマシタナラバ、其時ニ又是ハ
考ヘナケレバイカヌ點デアラウト思フノデ
ゴザイマスガ、今日只今ノ所、是レ以上ニ
引上ゲル見込ハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=105
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106・河野密
○河野委員 私達ハ最近消費稅ノ分野ガ色
色ナ形ヲ變ヘテ出テ來テ居ルノヲ非常ニ警
戒スルノデアリマスガ、揮發油稅ト云フモ
ノガ液體燃料、燃料國策ノ意味カラ設ケラ
レルト云フ意味ニ於テ、高イ「ガソリン」ヲ
買ハサレル、ソレバカリデナシニ、其「ガソ
リン」代ト云フモノハ、是ハ一般ノ大衆ニ
轉嫁サレルモノデアリマスガ、其轉嫁サレ
ル爲ニハ、所謂交通統制トカ云フヤウナコ
トヲ御考ニナッテ居ルヤウナ御話モアッタノ
デアリマスガ、吾々ハ其間ニドウモ腑ニ落
チナイ種々ナル噂ヲ聞クノデアリマス、例
ヘバ東京ニ於ケル交通統制問題ヲ中心ニシ
テ、東京ノ市電ヲ拂下ヲシ、靑「バス」、市
「バス」其他ノモノヲ一〓ニシタ一種ノ大交
通會社ヲ作ッテ交通統制ヲヤルト云フヤウ
ナ噂ヲ頻ニ聞クノデアリマス、斯ウ云フコ
トハ益々以テ大衆ニ對スル負擔ノ增大ヲ加
ヘルモノト存ジマスルガ、此點ニ付テノ御
所見ヲ承リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=106
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107・石渡莊太郎
○石渡政府委員 是ハ液體燃料自給ノ策ト
致シマシテ、色々考ヘラレルノデアリマス
ルガ、結局ハ「ガソリン」ガ斯ウ安クテハ總
テノ代用燃料政策ト云フモノハ全ク立タヌ
ノデゴザイマシテ、ドウシテモ此「ガソリ
ン」ノ値段ト云フモノガ或ル程度以上、合
理的ナ或ル價格以上デアリマセヌト、代用
燃料ノ計畫ト云フモノハ實際立タヌノデア
リマス、ソレデナケレバ國家ハ非常ナ損失
ヲシテ、之ヲ一般會計カラデモ支辨スル、斯
ウデモシナケレバ迚モ出來ナイト思フノデ
ゴザイマス、ソレデ之ヲ他ノ國ノヤリマシ
タ跡ニ考ヘマシテモ、亞米利加ハ勿論ソン
ナ必要ハゴザイマセヌ、相當石油ヲ豐富ニ
有ッテ居ルノデゴザイマスガ、英國ニ於キマ
シテモ石炭液化ヲ始メマス時ニハ、約八片
ノ關稅ノ引上ヲ致シテ居リマス、ソレカラ
獨逸ニ於キマシテモ今日一「ガロン」一圓見
當ノ關稅ヲ賦課シテ居リマス、ソレデ滿洲
ニ於キマシテモ一「ガロン」一圓ト、斯ウ云
フコトデ滿洲ニ於キマスル代用燃料ノ方策
ガ略〓立ツト云フコトヲ言ッテ居ルノデアリ
マスガ、近頃ノヤウニ一「ガロン」四十錢、
五十錢ト云フヤウナ事デハ、如何ナル代用
燃料ノ方策モ實ハ立チ兼ネルノデアリマシ
テ、隨ッテ之ヲ或ル程度ニ引上ゲテ行ク、斯
ウ云フコトハ、液體燃料ヲ自給致シマスル
方策カラ言ッテモ他ニ策ガナイノデハアルマ
イカト、斯ウ思フノデゴザイマス、ソレナラ
バ全部關稅ニ依ッタラ宜カッタヂヤナイカ、
關稅ノ外ニ消費稅ヲ起サヌデモ宜イヂヤナ
イカ、斯ウ云フ御考ガアルカト思フノデゴ
ザイマスガ、一面ニ於キマシテ、關稅バカ
リ上ゲマスルト、內地ニ於キマスル少數ノ
會社ガ非常ニ利得ヲ致シマスル關係ニモ相
成ルノデゴザイマシテ、一面ニ於テ關稅、
一面ニ於テハ消費稅トシテ、內地ニ於キマ
スル所ノ會社モ可ナリ其負擔ヲ受ケル、斯
ウ云フコトニシテ行ッタナラバ、宜クハナイ
カト云フ考カラ、半分ハ關稅、半分ハ消費稅ト
致シタ次第デゴザイマス、ソレカラモウ一
ツノ御尋ノ交通統制等ヲヤラレタノデハカ
ナハナイ、サウ云フ事ハ廢メタラ宜イダラ
ウ、斯ウ云フ御尋カト思フノデゴザイマス
ガ、此交通統制ノ問題ハ、實ハ調査局ニ居リ
マシタ時分ニ私多少關係ヲ致シテ居ッタノ
デゴザイマスガ、東京市邊ノ交通ノ狀況ハ
非常ニ雜多デアリマシテ、今ノ御話ノアリ
マシタ東京市ノ電車ノ如キハ、經濟極メテ
良好デハゴザイマセヌ、斯樣ナ電車、自動
車、ソレカラ是ハ鐵道省ニ於キマシテ迚モ
承知致サナイ點デゴザイマスルガ、此東京
市ノ近郊ノ省線、斯ウ云フ風ナモノヲ一括
シテ、茲ニ一ツノ系統ノアル所ノ交通統制
ト云フモノヲ行ッタラドウカト云フコトデ
アリマシタ、此計畫ハ進ンデモ居リマセヌ
シ、熟シテモ居リマセヌケレドモ、斯ウ云
フ事ハヤハリ國トシテ考ヘナケレバイケナ
イ、一ツノ重點デハアルマイカ、斯ウ云フ
ヤウナ考ヘ方ヲ致シテ居ルノデゴザイマス
ルガ、此計畫ハ其後一向進捗致シテ居リマ
セヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=107
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108・河野密
○河野委員 私ハモウ大體是デ質問ヲ終リ
マスガ、只今ノヤウナ御話ニ依ッテ考ヘテ
見マシテモ、大體一種ノ非常時ト云フ名前
ノ下ニ、國民ノ負擔ヲ過重ニスル、斯ウ云
フヤウナ點ガドウモ私ノ考ヘ方カラ免レ得
ナイト思フノデアリマス、サウシテ其方向
ヲ動モスレバ只今ノ交通統制ノ問題ニシマ
シテモ、一種ノ民有國營ノヤウナ形ヲ採。ツ
テ、半官半民ノ會社ニヤラセル、其間ノ監
視或ハ之ニ對スル統制力ト云フモノヲ議會
ノ權限外ニ置イテ、サウシテ寧ロ一種ノ統
制ヲ强化シタ少數ノ者ダケノ利益ニスルト
云フヤウナ傾向ガ私ハ非常ニ注意ヲ要スル
ト思フ、此點ハ强イテ御答辯ハ求メマセヌ
ガ、最後ニ先程私ガ非常時ノ問題ニ付テ、軍
部大臣ト大藏大臣トノ御所見ヲ異ニスルト
申シタ點ニ付テノ質問ト共ニ、若シ大藏大
臣ガ四時半頃ニ御見エニナリマシタラ、先
ニ一ツ質問サシテ戴キタイコトヲ留保シ
テ、一應質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=108
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109・増田義一
○增田委員長 加藤勘十君ニ發言ヲ許シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=109
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110・加藤勘十
○加藤委員 實ハ私モ此法案ノ性質ニ付テ
大藏大臣ニ御伺シタイト思フノデアリマス
ガ、併シ石渡政府委員ガ大藏當局ノ全責任
ニ於テ答ヘテ戴クナラバ、局長デ十分デア
ルト思ヒマス、第一ニ私ノ御伺シタイト思
ヒマスルコトハ、結城財政ハ、馬場財政ヲ
以テシテハ幾多ノ國務遂行ノ上ニ支障ガア
ル、故ニ之ヲ訂正、修正シナケレバナラナ
イ、斯ウ云フ立場ニ立ッテ十二年度豫算ノ
總額ニ於テモ減額ヲセラレ、稅制整理案ノ
全貌ニ付テモ一應之ヲ撤囘シテ、此臨時租
稅增徵法案ヲ出サレタノデアリマスガ、馬
場財政ノ稅制整理案ト云フモノハ、準戰時
財政政策ノ體系ヲ立テル、其爲ニハ負擔ノ
公正ト社會政策的意義ヲ持タセタモノデア
ル、斯ウ云フコトヲ說明サレタノデアリマ
スルガ、此臨時租稅增徵法案ノ性質ノ中ニ
ハ、馬場財政ノ性質トシテ規定セラレタモ
ノヲ其儘御承認ニナルノデアリマスルカ、
ソレトモ全然サウ云フ性質マデヲモ一擲シ
テ、純粹ノ臨時的ナ性質ノモノトシテ之ヲ
御出シニナッタノデアルカ、此點ヲ先ヅ御伺
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=110
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111・石渡莊太郎
○石渡政府委員 今日ノ財政ニ於キマシテ
增稅ト云フコトハドウシテモ考ヘナケレバ
イカヌ、斯ウ云フコトデアリマスノデ、增
稅ハ致スガ、其負擔ノ衡平ト云フコトニ付
キマシテハ、出來ルダケ現行法ノ增徵ニ
當ッテ盛込ム、斯ウ云フコトニ致シタノデゴ
ザイマス、隨テ前ニ提出致シマシタ稅制改
革案ニ付キマシテモ、取入レテ然ルベシト
思ヒマシタモノハ、之ヲ皆取入レマシタ次
第デアリマス、戰時體系カドウカ、ソレハ
御意見ニ依ル所ガ多イト思フノデアリマス
ガ、ドウモ增稅ト云フモノハ戰時ノ增稅デ
アリマシテモ、平時ノ增稅デアリマシテ
モ、マア增稅ノ行キ方ト云フモノハ、サウ
區別ハナイノデハナイカ、斯ウ思ッテ居ル
ノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=111
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112・加藤勘十
○加藤委員 其點ニ付テハ多少ノ見解ノ相
違モアリマスルガ、餘リ深ク議論ヲスル積
リハアリマセヌカラ省キマスガ、唯負擔ノ公
正ヲ圖ルト云フ馬場財政ノ性質ヲ此法案ニ
於テモ出來ルダケ斟酌シタト、斯ウ言ハレ
ルノデアリマスガ、ソレナラバ負擔ノ公正ト
云フコトニ付テドノヤウナ意ヲ用ヒラレタ
カ、數字ノ上デ見マスレバ、成程多クノ人
人ノ御聽ニナリマシタヤウニ、間接稅ト直
接稅トノ間ニ總額ニ多少ノ差ガアリマスケ
レドモ、私達ガモット根本的ニ考ヘテ見ナ
ケレバナラヌコトハ、負擔ノ公正ト云フモ
ノハ、唯單ニ直接稅ガ多イ、間接稅ガ少イ
ト云フコトダケデ負擔ノ公正ハ圖ラレルモ
ノデナイト云フコトデアリマス、當然直接
稅トシテ資本家ニ課稅セラレルモノデアッ
テモ、其大部分ノモノハドウ云フ形式ニ於
テカ、勤勞大衆ニ轉嫁セラレル、或ハ「コ
スト」ノ引下ゲ、或ハ課稅ヲ俸給生活者ノ
賞與トカ、勞働者ノ賃銀トカ、或ハ勞働强
化トカ、サウ云フ點ニ-後カラ詳シク私
ハ其內容ヲ申上ゲヨウト思ヒマスガ、サウ
云フヤウニ轉嫁サレルト思フノデス、隨テ
眞實ニ負擔ノ公正ヲ圖ラウト云フナラバ、
十分ニ擔稅能力ノアル者ニ擔稅セシムル、
サウシテソレガ他ニ轉嫁サレルト云フヤウ
ナ場合ニハ、其轉嫁ヲ防止スルト云フ方法
ガ講ジラレナケレバ、本當ノ負擔ノ公正ト
云フコトニハナラナイト思フノデアリマス
ガ、此點ニ對スル御所見ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=112
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113・石渡莊太郎
○石渡政府委員 御尤ノ御尋デアリマシ
テ,轉嫁ヲスル關係ヲ見ナケレバ、租稅ガ
果シテ衡平カドウカ分ラヌ、斯ウ仰シヤル
ノデアリマス、御尤ダト思フノデアリマス
ガ、此轉嫁ノ關係ヲ見テ各種ノ增案ヲ決メ
ルト云フコトハ、是ハ非常ニ難カシイコト
デアリマス、難カシイコトデアリマスル
ガ、マア從來カラ此轉嫁ノ一番困難ダト認
メラレテ居リマスモノハ、第三種所得稅
-個人ノ所得稅ノ累進稅率デアリマス、
是ガ累進稅率デアリマセヌト、比較的轉嫁
ガ利クガ、累進稅率デアルト、果シテ自分
ガ轉嫁シタダケノ人ガ轉嫁出來ルカドウ
カ、是モ能ク分ラヌノデアリマシテ、隨テ
マア轉嫁シニクイ、斯ウ云フコトニ相成ッテ
居リマス、ソレカラ相續稅デアリマスガ、
是モマア轉嫁ノ極メテ困難ナ稅金デアリマ
シテ、產業界ニモ大シタ惡影響ト云フモノ
ハ起ラヌ、卽チ會社ヲ支配シテ居ル人ガ皆
一齊ニ死ンデシマフ譯ヂヤアリマセヌデ、
三十人中一人位ガ死ンデ行クノデアリマス
カラ先ヅ是モ經濟界ニサウ變動ハナイ、斯
ウ云フヤウナ稅金ハ大體ニ於テ轉嫁ハアル
マイト思フノデアリマス、最モ問題デアリ
マスノハ、法人ノ所得稅ガ轉嫁スルカドウ
カト云フコトデアラウト思フノデゴザイマ
ス、是モ實際問題トシテハ、或ル程度轉嫁
致スコトモアルト思フノデゴザイマス、不
景氣ガヤッテ來ルト、配當ヲ減ズルカ、從業
者ノ給料ヲ減ズルカ、斯ウ云フ場合ニ於キ
マシテ、ドウシテモ賃銀ヲ減ラスト云フ方
向ニ進ムノデゴザイマセウ、ソレト同ジヤ
ウナコトデ、ソレダケ增稅ヲ受ケテ會社ガ
ヤッテ行クノニ困難ダト云フヤウナ場合ニ
ハ、或ハ配當ヲ減ジラレル場合、賃銀ニ影
響シテ來ルト云フヤウナコトモアルカモ知
レマセヌガ、今日ノ場合ニ於キマシテ、是
ダケ事業界ガ旺盛ヲ極メテ居ッテ、サウシ
テ失業者ノ少イ時ニ當リマシテ、此程度ノ
增稅ヲ致スノデアルナラバ、是ガ爲ニ賃銀
ニ影響ヲシテ來ルヤウナコトハ、先ヅ萬々
アルマイ、斯ウ云フ風ナ考ヘ方ヲ致シテ居
リマス次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=113
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114・加藤勘十
○加藤委員 其點ニ付キマシテハ尙ホ御尋
致シタイ事ガアリマスルノデ、後カラ申上
ゲマスガ、唯轉嫁ノ形式ニ付テ、相續稅ナド
ハ私共モ轉嫁サレナイ租稅ノ唯一ノモノト
思ッテ居リマス、其他ニモ取引所稅トカ、
有價證劵移轉稅トカ云フヤウナモノハ直接
轉嫁ハサレナイト思ヒマスガ、私共今一番
問題ニスルノハ、資本利子稅デアルトカ、
超過所得稅デアルトカ、斯ウ云フヤウナモ
ノガ轉嫁サレルト思ヒマスガ、ソレハ後ニ
モット深ク御尋スルコトニシテ、サウスルト
結局此增稅案ト云フモノハ色々ナ點ガ考慮
サレマスガ、軍事費ガ增大スルト云フコト
ガ增稅ヲ餘儀ナクセシムル一番大キナ理由
デアル、斯ウ云フコトニ思ハレルノデアリ
マスガ、此點ニ對シテハドノヤウニ御考ニ
ナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=114
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115・石渡莊太郎
○石渡政府委員 軍事費ノミト云フ譯ニモ
行カヌカト思ヒマスガ、詰リ昭和七年、八
年當時カラ致シマシテ、增稅ヲ致シマシ
タノハ昭和九年ニ臨時利得稅ヲ創設シタ
ダケデアリマシテ、アト年々數億ノ赤
宇、七億、八億、九億ト云フヤウナ歲
入不足デ今日マデ來テ居ルノデゴザイマシ
テ、此狀態ハ今後トモ引續クト思フノデア
リマスガ、斯ウ云フヤウナ時代ニ於キマシ
テ、唯公債ヲ發行シテ居ッタノデハ、今日ノ
狀況カラ致シマシテ、財政上困難ガアル、
斯ル場合ニ於テハ或ル程度ノ增稅ヲ行ッテ、
實質的ニ普通歲入ノ增加ヲ圖ル必要ガア
ル、斯ウ云フ譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=115
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116・加藤勘十
○加藤委員 馬場財政ニ依ッテ編成サレマ
シタ十二年度豫算ノ使途ノ費目ヲ總括シ
テ、各省全體ヲ一括シテ計算シテ見マスト、
三十億三千何百萬ノ總豫算ノ中ニ十四億九
百六十萬圓ト云フモノガ陸海軍ノ直接ノ軍
事費ニ充テラレテ居ッテ、今日ノ國民生活安
定ノ爲ニ色々行ハナケレバナラナイ社會政
策ノ費用ト云フモノハ、僅ニ六千三百二十
一萬何千圓シカ計上サレテ居ラヌ、ソレカ
ラ又衞生費-國民ノ保健衞生ノ設備ヲ完
備シナケレバナラヌ今日、一方ニ於テハ結
核患者ノ防止デアルトカ、結核ノ豫防デア
ルトカ、色々衞生施設ノコトガヤカマシク
言ハレテ居リマスガ、是ノ費用ハ僅ニ八百
八十五萬圓シカ取ラレテ居ナイ、サウ云フ
ヤウニ使途ノ費目ヲ分類シテ見マスト、陸
海軍ノ直接ノ費用ト云フモノガ非常ニ大キ
ナ額ヲ占メテ居ル、私ハ斯ウ云フ使途ノ分
類ニ從ッテ見マシテモ、此樣ナ大キナ豫算ガ
組マレルト云フコトハ、主トシテ軍事費ガ
非常ニ厖大化シテ居ルト云フコトガ大キナ
原因デアラウト思フノデアリマスガ、其點
ハ率直ニサウ御認メニナリマシタラ如何デ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=116
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117・石渡莊太郎
○石渡政府委員 是ハ今年ノ豫算デ十四億
ノ軍事費ガアルカラト云ッテ、茲ニ是ダケノ
增稅ガ行ハレタカドウカト云フコトハ、必
シモ其間ニ因果關係ガアルトハ思ヒマセ
ヌ、是ハ昨年マデ總テノ收支ガ合ッテ居ッタ、
今年此處デ十四億ノ軍事費ヲ含ンダカラト
云ッテ此際是ダケノ增稅ヲスル必要ガアル
ト、其間ニ必シモ因果關係ガアルモノトハ
思ヒマセヌ、唯此數年來赤字公債ニ次グニ
赤字公債ヲ以テヤッテ來タ、ソレガ積リ積ッ
テ遂ニ百億ヲ超シタ、斯ウ云フヤウナ過去
ノ狀態モズット考ヘテ來マシテ、ドウシテモ
此場合此處デ增稅スル必要ガアル、斯ウ云
フコトニ相成ッタモノト斯ウ思ッテ居ル次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=117
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118・加藤勘十
○加藤委員 私ハ議論ニ亙ル點ハ省キマ
ス、一切議論スル積リハアリマセヌガ、過
去ノ日本ノ增稅ノ歷史ト云フモノヲ見マシ
タ場合ニ、戰爭ト云フヤウナ特殊ナ事態ノ
發生シタ時ハ別デアリマスガ、サウデナイ
時ニハ、所謂健全財政政策ノ方針ガ執ラレ
テ、一方ニ於テ增稅ガ行ハレタ時ニハ他ノ
一方ニ於テハ公債ガ減額サレテ居ルト思ヒ
やく、然ルニ今年度ノ豫算ノ編成ヲ見マス
ルト、一方ニハ此樣ニ大キナ增稅ガ行ハレ
テ居ルニ拘ラズ、他ノ一方ニ於テハ赤字公
債ガ殖エテ居ル、此處ニ私ハ馬場財政ガ所
謂準戰時財政政策ト銘ヲ打ッタ理由ガアル
ト思ヒマス、サウシテ成程結城財政ニ於キ
マシテハ、赤字公債ノ發行ハ總額ニ於テ馬
場財政ノ當時トハ幾ラカ減少シテ居ルト思
ヒマスケレドモ、依然トシテ前年度ヨリ殖
エテ居ルト云フ點ニ於テハ間違ナイノデア
リマシテ、其點カラ行クナラバ、今ノ石渡
政府委員ノ御答ハ增稅ニ依ッテ公債ノ發行
ヲ減少若クハ抑制スルト云フコトノ趣旨ニ
ハ合ハヌト思フノデスガ、此點ハドウデア
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=118
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119・石渡莊太郎
○石渡政府委員 其點ハ洵ニ至難デゴザイ
マシテ、今日ノ場合、一方デハ增稅モシ、
方デハ更ニ赤字公債モ發行シテ行ク、斯ウ
云フヤウナコトデナケレバヤッテ行カレナ
イ、ソレハアナタノ仰シヤル通リ、一カラト
ハ增稅ヲシテ居ル、ソレデ以テ赤字公債ヲ
減シテ行ク、斯ウ云フ行キ方ガ或ハ宜イノ
カ知レマセヌガ、今日ノ場合サウ云フコト
ハ容易ニ實行ガ出來ナイノデアリマス、出
來ナイケレドモ、增稅致サナケレバ更ニモッ
ト赤字公債ヲ發行シナケレバイケナイ、少
クトモ增稅シタダケハ赤字公債ト云フモノ
ハ減ッテ行ク、斯ウ云フコトデゴザイマス
ノデ、ヤハリ增稅ノ必要ハアルモノト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=119
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120・加藤勘十
○加藤委員 政府委員ノ御答ハ著シク詭辯
ダト思ヒマス、實際增稅ガ善イトカ惡イト
カ、赤字公債ガ多イトカ少イトカ云フコト
ヲ私ハ御聽キシテ居ルノデナクシテ、此樣
ニ一方ニ於テハ大增稅ガ行ハレ、他ノ一方
ニ於テハ前年度ヨリモ赤字公債ガ增發サレ
ルト云フ此事態ハ、斯ウシナケレバ現在ノ
狀態ヲ切拔ケテ行クコトガ出來ナイト云フ
コトハ何ガ主タル原因デアルカト言ヘバ、
軍事費ノ增大ガ主タル原因デハナイカ、斯
ウ言ッテ御尋シテ居ルノデスカラ、ヤリ切レ
ナイト云フ原因ガ軍事費ノ增大ニアルト云
フコトハ私ハ政府當局トシテ御認メニナル
コトガ妥當デハナイカト思フノデスガ、如
何デスカ、大藏大臣ガイラッシヤイマシタ
カラ、大藏大臣カラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=120
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121・結城豊太郎
○結城國務大臣 豫算デ御覽ニナリマスヤ
ウニ、軍事費ノ增大ハ御話ノ通リデアリマ
ス、ソレデアルカラ國民ニモ負擔ヲ掛ケ
ナケレバナリマセヌシ、赤字公債モ增發シ
ナケレバナラヌヤウナ狀態デアリマス、併
ナガラ軍事費ノ增大ハ、是ハ餘儀ナイ事情
ニアルト云フコトモ亦御諒承願ハナケレバ
イカヌト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=121
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122・加藤勘十
○加藤委員 今ノ大藏大臣ノ御答ハ率直ダ
ト思ヒマスガ、唯問題ハ、此軍事費ノ增大
ト云フコトガ今年度デ打切ラレ、ソレデ其
次カラハ平常ノ狀態ニ財政狀態モ立返ルト
言フナラバ、是ハ認メラレルト思フノデス、
ダガ豫算ニ編成サレテ居リマス繼續費ヲ見
マスト云フト、陸軍ノ繼續費ハ繼續費ダケ
デ十二年度カラ十八年度マデニ十八億五千
萬圓計上サレテ居ル、之ニ海軍ノ繼續費ヲ
加ヘマスト三十億ヲ超スト思フノデス、此大
キナ繼續費ガ背後ニ存在シテ居ル十二年度
ノ豫算ト云フモノハ、私ハ當然引續イテ今
後數年間ト云フモノハ、此ヤウナ厖大ナ豫
算ガ編成サレナケレバナラヌト云フコトニ
ナルト思フノデスガ、此點ニ付テハ如何デ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=122
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123・結城豊太郎
○結城國務大臣 繼續費トシテ御協賛ヲ
願ッタモノニ付キマシテハ、大體是ハ必要ナ
モノト見テ戴カナケレバナラヌト思フノデ
ス、丁度河野サンノ質問ト關聯シテ居ルヤ
ウデアリマスカラ、御一〓ニ御答シタ方ガ
好イト思ヒマスガ、河野サンノ御質問ハ、
軍部大臣ノ考ハ急進主義ノヤウニ思ヘル、
又大藏大臣ハ漸進主義ノヤウニ思ヘルガ、
其間ニ喰違ハナイカ、恆久的稅制ノ場合ニ
於テモ、大藏大臣ハ此程度デ增稅ハ成ベク
ヤラスト云フコトヲ言ッテ居ルガ、軍部大臣
ノ考デハ第二、第三ノ增稅ヲ必要トスルヤ
ウニ思フガドウダト云フ御尋デアッタト思
ヒマスガ、ソレデ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=123
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124・増田義一
○增田委員長 河野君ニ發言ヲ許シテ、サ
ウシテ一〓ニ說明シテ貰ッタ方ガ時間ガ省
ケルト思ヒマスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=124
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125・河野密
○河野委員 私ノ言フノハ大體其通リデア
リマスガ、其要點ハ斯ウ云フ點デアリマス、
陸軍ノ主張ハ今日必要デアル、今此計畫ヲ
實行シテ、今金ヲ出シテ貰ハナケレバ間
ニ合ハナイノダ、先ニナッテ幾ラ國民ガ國防
ニ-卒ザ鎌倉ト云フ時ニ獻金ヲシテ吳レ
タリシタッテソレハ駄目ダ、今必要ダ、所ガ
結城大藏大臣ノハ、濟シ崩シニ行カレヨウ
ト云フ考ヘ方デアル、其點ニ非常ニ喰違ガ
アル、若シソレガ、能ク結城大藏大臣ガ言
ハレル抱合々々ト云フ、此抱合ト云ノコト
ガ若シアルナラバ、軍事豫算ノ上ニ於テ年
度割ニ變更ガナサレタカ、或ハ軍事豫算ニ
付テ或ル種ノ繰延ト云フモノノ內容ガ軍部
大臣ト大藏大臣ノ間ニ於テ本當ニ御話合ヲ
ナサレタカ、ソレハ抱合ト云フ言葉デナシ
ニ、實際內容ヲ言ッテ吳レ、內容ハ繰延、
或ハ年度割ノ變更ト云フモノハ具體的ニ御
話合ガアッタカラ、ソレデ抱合ト言ハレル
ノカ、其點ヲ私ハ質問シテ居ルノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=125
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126・結城豊太郎
○結城國務大臣 丁度御一〓ニ申上ゲマス
ト或ハ双方ノ御答ニナルカト思フノデアリ
マスルガ、軍部ノ必要トスルコトノ迫ッテ居
ルコトハ御察シノ通リデアリマス、ソレハ國
際情勢カラ餘儀ナイ事情ニアルト云フコト
ハ、是ハ軍部大臣ノ說明、其他カラ御諒察
ヲ戴イタコトヽ思フノデアリマスガ、併ナ
ガラサウ言ッテ見タ所デ、國力ニ副ハナイ、
其爲ニモウ直グニ物價ガ暴騰ヲスルトカ、
國民ノ生活ニ脅威ヲ與へルトカト云フヤウ
ナコトガ起ッテ來ル、詰リ色々ナ惡影響ト申
シマスカ、現〓ガ起ッテ來ルヤウナコトヲ顧
ミナイデ、ソレヲヤルト云フヤウナコトニ
モソレハ行キマセヌノデアリマスル、ソレ
ダカラ是ハ日本ノ經濟力、色々ナ點カラ考
察シテソレニ適應シテ、サウシテ外ノ侮ヲ
受ケナイダケノ程度ニ數年ノ間ニヤッテ、國
防ノ充實ヲ完成スル、斯ウ云フ氣持デアリ
マシテ、其點ニ於テハ軍部當局者ノ方ニ於
テモ私共ト變リハナイノデアリマス、財務當
局者ハ徒ニ經費ヲ減スコトノミ考ヘテ居リ
マセヌト同時ニ、軍部當局者ノ方デモ無法
ニ經濟力ヲ考ヘズニ豫算ノ要求ヲスルト云
フヤウナコトハナイ、今マデモナカッタラウ
ト思ヒマスルガ、一層私ハ來年度ノ豫算ヲ
編成スルニ當ッテ其邊ノ所ヲ相互ニ理解シ
合ッテ協力シテヤッテ行カウ、此處ガ一口ニ
申シマスト抱合デ行カウト、斯ウ云フ風ナコ
トデアルノデアリマス、增稅ナドニ付テモ
私ハ無論デアリマスルガ、軍部當局者ニシ
テモ、國民ニコンナニ負擔ヲ掛ケチヤイカ
ヌ、一面ニ國民生活ノ安定ト云フコトヲ考
ヘテ行カナケレバナラヌノニ、增稅ノ負擔
ヲ重クスルト云フコトハ、ソレハ忍ビヌ、或
ハ一時國民生活ノ安定ト軍備ノ充實ト云フ
コトニ矛盾ヲ來スヤウナコトハアルカモ知
レヌガ、併ナガラ軍備ノ充實ハ機械其他ノ
整備ニアラズシテ、根本ハ人間デアリ、魂
デアルノダト、斯ウ云フ風ナコトデアルナ
ラバ、國民ノ生活ヲ脅威シテ何ノ軍備ガア
ルノダト、斯ウ云フコトニ於テハソレハ軍
部當局者ト雖モ決シテ異存ハナイト私ハ思
フノデアリマス、併ナガラソレデアリマス
ルカラ、此增稅其他ニ付テハ出來ルダケノ
負擔ヲ輕クシ、衡平ニ行渡ルヤウニシタイ
ト云フ考ニ於テハ決シテモウ是ハ變ラヌト
思フノデアリマスルガ、サウ云フ風ニシテ
行キマシテモ、尙ホ此繼續費ノ如キハ相當
ナ高ニ上ッテ居ル、サウシテ隣國、其他ノ
情勢カラ見マスルト、中々此處デ猶豫ノ出
來ナイヤウナ情勢ガ伏在シテ居ル、ソレ等
ハ外交其他ノ手段ニ依フテ出來ルダケノ緩
和ヲ講ジナケレバナラヌト云フコトハ無論
デアリマスルガ、迫ッテノ情勢ト云フモノニ
對シテ相當ノ備ヲシナケレバナラヌト云フ
コトニナルト、如何ニモ此處デ厖大ナ軍備
ヲ要スルト云フコトニナリマス、併シ此厖
大ナル軍備モ使ヒ方ニ依ッテハ必ズシモ不
生產的ト云フヤウナコトモ考ヘラレマセ
ヌ、又其歲出ヲ旨ク運轉-廻轉スルコトニ
注意致シマスレバ、又相當ニ國富ヲ增進ス
ルトカ、經濟力ヲ增ストカト云フヤウナコ
トニモナリマス、其邊ノ運用ハ今後軍ノ當
局者トモ能ク話合ヲシテ滑カニ、サウシテ
潤ヒノアルヤウニシテ行カネバナラヌト、
斯ウ思ッテ居ルノデアリマスルガ、此軍備
ガ急ニ減ルト云フヤウナコトハ繼續費ノ上
カラ觀マシテモ、是ハ中々望ミ得ナイト思
フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=126
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127・加藤勘十
○加藤委員 色々御意見ヲ承リマシテ其中
ニハ隨分私共ハ見解ノ相違スル點モ持ッテ
居リマスルガ、意見ニ亙ルコトハ一切省キ
マシテ、唯大臣ノ只今ノ御言葉カラ結論ヲ
引出シテ見マシテモ、此增稅ハ軍事費ノ增大
ガ大キナ原因ヲ爲シテ居ル、サウシテ其軍
事費ノ增大シテ行クト云フコトニ付テハ、
現下ノ國際情勢カラ觀テ避ケ得ラレナイ事
柄デアルト云フ御意見デアリマシタガ、此
點ニ付キマシテハ吾々ハ今日ノ國際情勢ニ
對スル認識、是ガ實際本會議ニ於テモ、豫
算委員會ニ於テ傍聽シマシテモ本當ニ十分
ニ聽クコトガ出來ナカッタノデアリマス、私
達ハ私達ノ立場ニ於テ今日ノ國際情勢ヘノ
認識ヲ持ッテ居リマスカラ、是モ私ハ今此處
デハ申上ゲマセヌ、唯吾々ハ國民生活ヲ犠
牲ニシテモ尙ホ且ツ必要トスル厖大ナル軍
事費ヲ捻出シナケレバナラヌト云フ差迫ッ
タ國際情勢ノアルト云フ其事ニ對シテ、今
マデノ政府當局ノ政治的手段、ドウスレバ
此危機ヲ緩和スルカト云フコトニ付テノ政
治的手段ト云フモノガ非常ニ怠慢デアッタ
ト云フコトヲ私共ハ言ハザルヲ得ナイノデ
アリマスガ、是ハマア今ノ內閣ノ責任デナ
イト言ハレヽバソレ迄デアルカモ知レマセ
ヌガ、少クトモ軍事勢力ト云フモノハ外交
手段ニ隨伴セラレナケレバナラヌモノデア
リマシテ、軍事勢力ガ第一線ニ出テ來テ、
政治手段ガ後カラ喰付イテ行クト云フ
コトハアリ得ナイコトヽ思フノデアリマ
ス、隨テサウ云フ點ニ付テハ將來少クトモ
此內閣ニ於テハ政治手段ヲ第一義ニ考ヘ
テ、如何ニシテ此國際的危機ヲ緩和スルカ
ト云フコトノ方向へ主要努力ヲ向ケテ戴キ
タイ、此事ヲ私ハ强ク希望シテ置クモノデ
アリマス、ソレカラ唯問題ハ斯ウ云フヤウ
ニシテ兎モ角モ當面此國際的情勢カラ割出
シテ厖大ナル軍事費ガ必要デアル、而モ是
ガ當分避ケルコトガ出來ナイト云フコトニ
ナリマスルト云フト、是ガ國民生活ノ上ニ
ドウ云フ影響ヲ與ヘルカト云フコトハ、是
ハ十分ニ御考ニナッテオイデニナルコトデ
アラウトハ思ヒマスガ、此點ドノヤウニ御
考ニナッテ居リマスルカ、先ヅ其點ヲ一ツ御
伺シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=127
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128・結城豊太郎
○結城國務大臣 一面ニ於テ斯ウ云フ國際
情勢ニナッテ、マア非常ニ厄介ナ時ニナッテ
居ル、ソレヲ來シタ原因ト申シマスカ、其
事ニ付キマシテハ遺憾ノ事モアッタカモ知
ラヌト思フノデアリマスルガ、兎ニ角現在
ノヤウナ情勢ニ立至ッテ居ル、國民生活ノ安
定ト云フコトヲロニハ申シマスガ、求メル
所ハ臥薪嘗膽ト云フ所ニ私ハ行クダラウ、
ソレハ爲政者トシテハ出來ルダケノ國民生
活ノ安定ト云フコトヲ心懸ケテ行カナケレ
バイカヌト思フ、臥薪嘗膽ヲ求メチヤイカ
ヌト思フガ、國民ガソコ迄時代ヲ諒解シテ
呉レマスナラバ-國民ノ方ガヤハリ是ハ
臥薪嘗膽デ以テ此困難ヲ乘切ラウト、斯ウ
云フ風ナ氣持デ來ナケレバイカヌノヂヤナ
イカ、併シ政府當局トシテハ何處マデモ假
令ソレガ不可能デアッテモ、生活ノ安定ト云
フモノヲ色々ナコトニ於テ考究スルダケノ
心構ヘヲ私ハ要スルト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=128
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129・加藤勘十
○加藤委員 其點ニ付キマシテ、若シ眞ニ
國民ガ臥薪嘗膽ヲシナケレバナラナイ國際
情勢ニアルト云フコトヲ國民全體ガ意識シ
マスレバ、私ハ其事ハ困難デナイト思ヒマ
ス、何トナレバ過去ニ於テ北〓事變ニ依ル
アノ屈辱ノ下ニ續イテ來タ日露ノ戰爭、ア
ノ期間ハ正シク私ハ日本ノ歷史ノ上ニ於テ
モ、國民的臥薪嘗膽ノ時代デアッタト思フ、
今日ノ國際情勢ニ對シテ、國民ハ一體ドノ
ヤウニ理解シテ居ルカ、政府當局ハ國民ニ臥
薪嘗膽ヲ必要トサレル今日ノ國際情勢デア
ルト御認メニナルカモ知レマセヌガ、國民
ノ多クハ私ハ今日ノ國際情勢ト云フモノニ
對シテ、當時ノ日本ノ國際的ニ置カレタ地
位ノ如クニハ感ジテ居ナイト思フノデス、
隨テ政府當局ダケガ國民ニ臥薪嘗膽ヲ求メ
ラレルト雖モ、國民ノ國際情勢ニ對スル納
得ガ行カナケレバ、私ハ此事ハ困難ダト思
ヒマス、隨テ今日ノ狀態ニ於キマシテハ、
ドウシテモ國防費、卽チ軍備充實ノ爲ニ政
府當局ガ國民ニ臥薪嘗膽ヲ求メラレルト云
フ意味ニ於テ、國民生活ト云フモノガ結局
犧牲ニナッテヰルト思フノデアリマス、サウ
シマスト一體國防ト云フモノヽ性質ガドウ
云フコトニナルカト云フコトヲ私ハ是非御
尋シナケレバナラヌコトニナリマス、コン
ナコトハ餘リ子供染ミタ質問カト思ヒマス
ルガ、併シナガラ一方ニハ實際ニ國民生活
ノ窮乏ガアリ、政府ハ國民ニ臥薪嘗膽ヲ求
メラレル國際情勢デアルト言ハレルガ、國
民大衆ハ今日ノ國際情勢ヲ其樣ニ理解シテ
ハ居ナイ、茲ニ私ハ政府當局ト國民大衆ト
ノ間ニ、非常ニ大キナ「ギヤップ」ガアルト思
フ、此「ギヤップ」ヲ埋メルト云フコトハ、政
府ノ當然ノ責任デナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、私共ノ理解スル國防ト云フモ
ノハ申ス迄モナク國ノ安全性ヲ保ツト云フ
コトデアリ、國民生活ノ安定ヲ保ツト云フコ
トノ爲ニ必要デアルト思ッテ居ルノデアリ
マスルガ、現在ノヤウニ、國民大衆ガ國際情
勢ニ對シテソレ程切迫シタルモノト思ッテ居
ナイ狀態ノ下ニ臥薪嘗膽ヲ求メラレル、サウ
シテソレガ自分ノ生活ノ窮乏ヲ招來スルト
云フコトニナレバ、一體何ノ爲ノ國防デア
ルカ、國防費ノ增大サレルコトニ依ッテ、却
テ自分達ノ生活ガヨリ一層攪亂サレルト云
フコトニナレバ、國ノ保全性ヲ保チ、國民
ノ生活ノ安定ヲ求メナケレバナラヌ其爲ニ
コソ存在スル國防ト云フモノガ、何ンノコ
トヤラ譯ノ分ラヌコトニナッテシマウ、結局
手段デアルベキモノガ目的ニ轉化サレテシ
マフト思フ、私ハ是デアッテハナラヌト思
フノデアリマスルガ、此點ニ對シテ大藏大
臣ハドウ云フ工合ニ御考ニナッテオ居デニ
ナリマスルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=129
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130・結城豊太郎
○結城國務大臣 言葉ノ相違デハアリマセ
ヌカラ、一言申上ゲテ置キマスガ、私ハ政
府當局カラ臥薪嘗膽ヲ求ムベキヂヤナイ、
併ナガラ國民ハ其覺悟デ來ラルベキデア
ル、ソレハ詰リアナタノ御話ノヤウニ、國
民ガ時代ニ理解ヲ持チ諒解ヲシテデナケレ
バ出來ナイノデアル、斯ウ云フ意味デアリ
マシテ、政府トシテハ何處マデモ考ヘナケ
レバナラヌコトハ、國民生活ノ安定デアラ
ウト思ヒマス、併シ國民トシテハヤハリ臥
新嘗膽ト云フ氣持ヲ以テ進ンデ行カナケレ
バナラヌノデアルガ、ソレハヤハリ時代ヲ
諒解スルコトガ第一義デアラウ、斯ウ思フ
ノデアリマス、ソレデサウ云フ風ナ理解ガ
ナイ、今マデ理解ヲ與ヘナイナラバ或ハ怠
慢ト言ヘルカトモ思フノデアリマスルガ、
私ハ一朝事ノ有ル場合ヲ豫想シテ色々ナコ
トヲ國民ニ〓へ込ムト云フコトノ利害モ是
ハ餘程考ヘナケレバナラヌト思フノデアリ
マシテ、理解ヲ與ヘルニシテモ與ヘヤウガ
餘程アルダラウト思フノデアリマス、併ナ
ガラ其理解ナシニ一朝事有ル場合ニ遭遇
シタ時、果シテ擧國一致ノ實ヲ擧ゲ得ルカ
ト云フコトニナリマスト、理解ナシニハ行
ケナイト思フノデアリマシテ、其邊ハ言葉
ノ上デナシニ、眞ニ大切ナ所デアリマスル
ガ、政府當局モ、政黨モ、國民モマア皆考
ヘテ行カネバナラヌ難カシイ所ト思フノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=130
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131・加藤勘十
○加藤委員 私共モ決シテ偏狭ナル主觀的
ナ立場ニ立ッテ居ルノデハナイノデアリマ
シテ、眞ニ日本ノ將來ノ正シイ發展ヲ痛切
ニ思フ點ニ於テハ何人ニモ負ケナイ熱意ヲ
有ッテ居リマス、其熱意ニ基イテ現在ノ國際
情勢ヲ見ル場合ト、ソレカラ此國際情勢ニ
對スルコヽ數年來ノ歷代政府當局ノ見ラル
ル所ニ依ル國民的ノ〓ヘラレ方ト-今大
藏大臣ハ或ハ怠慢デアルカモ知レヌト言ハ
レマシタガ、吾々カラ見マスレバ怠慢ドコ
ロデハナイ、非常ニ多クノ努力ヲ注ガレテ
居ラレル、滿洲事變以來有ユル機會ヲ通シ
テ非常時ト云フコトガ强ク宣傳サレマシ
テ、私ハ大體餘リ日本ノ總テノ事柄ニ最大
級ノ形容詞ガ用ヒラレ過ギルト思フ、今ニモ
火ガ付クヤウナ、外交デハ焦土外交ト云フ
ヤウナ最大級ノ形容詞マデ用ヒラレテ、餘リ
ニモ强ク國民ニ緊張ヲ强ヒラレタ、滿洲事
變ノ直後ニ於キマシテハ國民ハ政府ナリ、
サウシタ官邊的ナ宣傳ニ依ッテ相當緊張シ
タト思フ、私共ハ滿洲事變ニ對シテモ見解
ヲ異ニシテ居リマス、是ハ吾々ノ見解ハ別
デアリマスヨ、併シ國民大衆ハ可ナリ强イ
程度ニ緊張シタト思ヒマス、所ガ其緊張ノ
對象ニナルベキ客觀的狀態ト云フモノハ〓
ヘラレタヤウニハ動イテ行カナイデ、却テ
逆ノ方向ニ動イテ行ッテ居ル、斯ウ云フコト
ガ國民ニ今日ノ國際情勢ヲ〓ヘル場合デ
モ、十分ナル具體的ナ客觀的條件ヲ中心ト
シテ〓ヘラレナイコトニハ、唯政府當局ガ
頭ノ中デ考ヘラレタコトヲ其儘國民ニ强要
サレテモ、私ハソレハ〓育ニナラヌト思
フ、隨テ正シイ國際情勢ヘノ理解ニナラナ
イト思フ、私ガ何故斯ウ云フコトヲ言フカ
ト申シマスト-是ハ此席デ言ウテ善イカ
惡イカ知リマセヌガ、日本ノ大正七年ノ「シ
ベリヤ」出兵ト云フモノハ、色々ノ論議ガ此
問題ニ付テハ交サレテ居リマス、當時私ハ
一兵卒トシテ野戰部隊ニ召集サレタ、ソレ
カラ殘留部隊ニ移サレ名古屋ニ居ッタノデ
アリマスガ、當時ノ名古屋ノ師團參謀ハ私
ヲ呼ンデ、今度ノ「シベリヤ」出兵ガ失敗デ
アッタト云フノハ、國民ニ何ガ故ニ「シベリ
ヤ」ニ出兵シナケレバナラナカッタカト云フ
コトヲ說明スルコトガ出來ナカッタ、是ガ今
度ノ「シベリヤ」出兵ガ旨ク行カナカッタ所
以デアルト云フコトヲ、私ニ直接語ッテ居
ルノデアリマス、現在ノ國際情勢ニ致シマ
シテモ、私ハ其憾ミガ多分ニアルト思
フ、政府當局、軍事當局ハ頻リニ今日ノ
國際的危機ヲ唱ヘラレマスルガ、國民
ニハ何ガ一體危機デアルカト云フコトニ
付テ具體的ナ說明ガナイ、唯現在危險ナ
狀態ニ在ル、切迫シタ狀態ニ在ルカラ危險
デアルト云フコトダケデハ、私ハ國民大衆
ハ理解シナイト思フ、吾々モ今日ノ國際情
勢ガ決シテ平和ナ安穩ナ狀態ニ在ルトハ認
メマセヌ、相當切迫シタ狀態ニ在ルト云フ
コトハ認メマス、ダカラソレ故ニ尙一層政
治的手段ガ必要デアル、國際的ニ切迫シタ
危機ノ下ニ在ルカラ、仕方ガナイカラ、軍
事的勢力ヲ增大スルコトニ依ッテ何トカヤッ
テ行カウト云フコトニナッテ、却テ何トカ
シヨウト云フコトガ火花ヲ散ラスヤウナ結
果ニナラナイトモ限ラナイ、斯ウ云フコト
ニ對シテ國民ガ安心シテ今日ノ國際情勢ヲ
正當ニ認識シ得ラレルヤウニ〓ヘルト云フ
方向ヲ取ラレルナラバ、其ノ樣ナ方向ヲ取
ラレナケレバナラナイト思フノデアリマ
ス、之ヲ痛切ニ感ズル、サウ云フ點カラ此
軍事費ガ增大スルガ故ニ、已ムニ已マレナ
クシテ斯ウ云フ增稅ガ行ハレル、赤字公債
ノ發行ガ行ハレルト云フ、此財政方針ニ對
シテモ當然ソコカラ考へラレナケレバナラ
ヌト思フ、私共ハサウ云フ立場ニ於テ此稅
制案ヲ見タイト思フ、此點ニ付テハドウ云
フ工合ニ御考ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=131
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132・結城豊太郎
○結城國務大臣 今ノ國民ノ理解ヲ求メル
コトニ付テハ出來ルダケノ方法ヲ講ズルコ
トニ致シマス、求メナケレバ理解ナシニハ
何ノ軍費ゾ、何ノ戰爭ゾト云フコトハ私モ
考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=132
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133・加藤勘十
○加藤委員 ソレデハ大藏大臣ノ御言葉ヲ
其儘實際ニ行ッテ戴キタイト思ヒマス、ソ
レカラ更ニサウ云フ前提ニ立ッテ、偖テ今度
ノ臨時租稅增徵案ヲ見マス-是ハ必シモ
大臣デナクトモ政府委員ノ方デ結構デス
ガ、サウ云フ立場カラ此稅制案ヲ見マスル
場合ニ、當然資本家ニ色々ナ直接稅ガ課リ
マスルガ、ソレハ私ハ結局ハ今日ノヤウナ
大衆ガ政治的自由-コンナ抽象的ナ言
葉ヲ使ッテ惡イカモ知レマセヌガ、資本家側
カラー多ク持テル者カラ加ヘラレタ壓迫
ヲ阻止スル權利ヲ持ッテ居ラナイ日本ニ於
テハ、結局ハ大衆ニ轉嫁サレルト思フ、先
程石渡政府委員モ或種ノモノハ大衆ニ轉嫁
サレルデアラウガ、景氣ノ好イ今日、此程
度ノ增稅ナラバ大衆ニ轉嫁サレナイデアラ
ウト云フコトヲ言ハレマシタガ、私ハ今日
ノ時代ニ於テハ結構大衆ニ轉嫁サレルト思
フ、其轉嫁サレル形式ト云フモノハ色々ナ
手段ガ執ラレルト思フノデアリマスガ、今
日唯稅金ガ殖エタト云フコトダケデ、大衆
ハ今日ノ收入ノ程度ニ於テハ相當苦痛デス、
此上更ニ自分達ニハ稅金ト云フ形式デ課ッ
テ來ナイガ、資本家側ニ對スル租稅迄ガ何
等カノ形式ニ於テ轉嫁サレテ、此負擔ヲモ
負ハナケレバナラヌト云フコトニナルト、
大衆ノ生活ハ非常ニ窮乏化シテ來ルト思
フ、之ニ對シテドウシテモ私ハ現在ノ狀態
ニ於テ大衆ノ生活ニドウ云フ形式ニ於テヾ
モ轉嫁サレナイト思ハレル所ハ尙更ノコ
ト。轉嫁サレルニシテモ、是ハ轉嫁セシメ
ナイヤウニ、食止メル方法ガ講ゼラレナケ
レバナラヌト思フノデアリマスガ、此點ニ
對シテハ大藏大臣ハドウ云フ工合ニ御考デ
ゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=133
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134・結城豊太郎
○結城國務大臣 今ノ直接稅ガ大衆ニドレ
ダケノ轉嫁ヲスルカト云フコトニナルト、
私ハハッキリシタ考ハ持チマセヌ、是ハ餘程
色々ナコトヲ〓究シテ見ヌト分ラナイト思
フノデアリマスガ、又其時ノ情勢ニ依ッテ
モ是ハ餘程違フノデハナイカト思フヤウナ
氣ガ致シマスガ、其點ニナルト甚ダ私共ハ
〓究ガ不十分デアリマスガ、御趣旨ノコト
ハ、能ク稅務當局ノ方トモ話ヲ致シマシテ
〓究スルコトニ致シマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=134
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135・加藤勘十
○加藤委員 一寸ソレハ私ノ質問ノ焦點ヲ
外レタ御答ノヤウニ思ハレルノデアリマス
ガ、私ハ是ガ大藏大臣ノ租稅徵收ノ手段ニ
依ッテ防止サレルトハ思ハナイ、又ドレダケ
具體的ニ大衆ニ轉嫁サレルカト云フ數字的
計算モ、是モ誰モ實際ニ於テ出來ヌト思ヒ
やく、ケレドモ社會ノ現實ヲ見マスル場合
ニ資本家ノ方ニ稅金ガ課セラレヽバ、是.
モウ馬場財政ガ發表サレマシタ時ニ、當時
ノ新聞ニハ細カク色々ナ情勢ガ報道サレテ
居リマシタガ、ソレ等ノ中ニハ當然資本家
ニ課セラレル重稅重課ト云フモノハ、俸給
生活者ヤ勞働者ニ轉嫁サレルト云フコトガ
報道サレテ居ッタノデアリマスガ、私ハソレ
ハ實際ダト思フ、ソコデ私ノ言フノハ、サ
ウ云フヤウニ色々ナ社會的現實トシテ轉
嫁サレル場合ニ、之ヲ喰止メル力ガ勞働者
ナリ俸給生活者ナリト云フ者ニナケレバ、
今日ノ苦シイ生活ハモウ一步追詰メラレテ
シマフ、ダカラ實際此處デハッキリシタ言葉
デ言ヘバ、若シ斯ウ云フ場合ニ勞働者ガ「ス
トライキ」ノ手段ニ依ッテ之ヲ喰止メルト
カ、俸給生活者ガ團結シテ團體ノ力デ喰止
メルトカ、サウ云フ手段ガ今日ノ社會ニ於
テハ或ル程度迄ハ認メラレテ居ルガ、或ル
程度以上ハ認メラレヌ、ソコデ實際ニ於テ
ハ全部ガ全部稅金ガ大衆ニソックリ其儘轉
嫁サレルトハ思ヒマセヌシ、言ヒマセヌケ
レドモ、其中ノ或ルモノガ大衆ニ轉嫁サレ
ルト云フノデアリマスガ、其或ルモノガ大
衆ニ轉嫁サレル場合ニ、其轉嫁ガ大衆ノ生
活ニドンナニ苦シキ思ヲ致サセルカ、之ヲ
思フ時ニ其轉嫁ヲ喰止メル手段ガ大衆ニ與
ヘラレナケレバナラナイ、本來ナラバ是ハ
内務當局ノ意見ヲ御尋シタイト思ッタノデ
スガ、是ハ大藏大臣カラ御伺スルノハ無理
デアルト思ヒマスガ、要スルニサウ云フ大
衆ニ組織ノ手段ガナイカラ、大藏當局トシ
テハ資本家ニ對スルサウ云フ方面ニ、十分
ナル政治的考慮ヲ拂ッテ行カナケレバナラ
又、斯ウ云フ意味デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=135
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136・結城豊太郎
○結城國務大臣 私モ徵稅ノ方法ニ依ッテ
轉嫁スルトカ何トカ云フ風ニハ考ヘテ居リ
マセヌデシタ、又數字的ニソレヲドノ位轉
嫁スルト云フヤウナ取調ハ中々ムヅカシイ
ト思フノデアリマス、此轉嫁モ必シモ惡イ
結果ニナラヌ、ソレガ經濟界ノ自然ノ流レ
ガソコニ行ク、オ互ニ苦痛ナシニサウ云フ
風ニ行クヤウナ場合モ是ハ考ヘラレルノデ
ハナカラウカト思フノデアリマシテ、轉嫁
スルガ、必シモ大衆ノ苦痛ト云フヤウナコ
トニ又考ヘヌデモ宜イノヂヤナイカト、私
共甚ダ不十分デアリマスガ考ヘテ居リマ
ス、ソレデモ轉嫁スルモノヲ盡ク防ゲト云
フコトハ、サウ云フコトハドウカト思ッテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=136
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137・増田義一
○增田委員長 加藤君、大藏大臣ハ他カラ
用ガアルヤウデスカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=137
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138・加藤勘十
○加藤委員 政府委員デ結構デス、今大藏
大臣カラ色々御話ガアリマシタガ、私ハ得
心ガ行キマセヌ、唯政府ノ今度ノ稅制案ニ、
馬場財政ニ名ヅケラレタ社會政策的意義ヲ
持タセルト云フコトガ引繼ガレテ、サウシ
テ增稅總額二億九千二百十萬圓ト云フモノ
ノ內容ヲ見マスルト、其內間接稅ガ六千七
百九十二萬圓デアリ、直接稅ガ、殊ニ法人
ニ對スル增稅ガ二億圓、個人ニ對スル分ガ
約一億圓、斯ウナッテ居ルノデアリマスガ、
此法人ニ餘計課シテ、個人ニハ僅カニ直接
稅ガ多ク、間接稅ガ少イト云フ、此形ダケ
ガ社會政策的意義ヲ持ッタモノデアルヤウ
ニ若シ理解サレテ居ラレルナラバ、私ハ飛
ンデモナイ間違ダト思フノデスガ、此點ニ
對シテハドウ云フヤウナ御考ヲ持ヲテ居ラ
レマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=138
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139・石渡莊太郎
○石渡政府委員 租稅ノ負擔ノ轉嫁ノ問題
ニ付キマシテハ、先程加藤サンカラ御話ガ
アッタノデゴザイマスルガ、サウ云フ關係ヲ
姑ク措イテ考ヘルノデアリマスナラバ、別
ニ政府ハ今度ノ增稅ガ社會政策デアルト、
斯ウ云フコトヲ言ッテ居ルノデハゴザイマ
セヌガ、併ナガラ增稅ト致シマシテハ所得
稅ニ重キヲ置イテ增稅ヲシタト、斯ウ申シ
テ居リマスコトハ其通リデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=139
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140・加藤勘十
○加藤委員 ドウモ質問ト答辯トノ「ピン
ト」ガ合ハヌヤウデアリマスガ、先程大藏大
臣モ轉嫁ガ必シモ大衆ノ生活ニ惡イ影響ヲ
與ヘルトバカリハ思ハヌト仰セラレタノデ
アリマスガ、是ハ實際ドウ云フ所カラサウ
云フコトヲ言ハレタノデアリマスカ、譯ガ
分ラヌノデアリマスガ、私ハソレガドノヤ
ウニ影響スルカト云フコトニ付テ、最近ノ
物價ノ情勢ト、ソレカラ俸給生活者、勞働
者ノ生活トノ模樣ヲ-大部分ノ數字ハ政
府カラ發表シタ數字デアリマスルガ、先程
ノヤウニ政府カラ發表シタ數字ガ信用ガ出
來ヌト云フコトニナレバ別問題デスガ、少
クトモ其數字ニ基イテソレヲ一ツ私ハ見テ
見タイト思フノデス、第一ニ最近ニ於キマ
スル物價ノ趨勢デアリマスガ、之ヲ生產手
段ト消費手段トノ二ツニ分ケテ見マスル
ト、昭和十年ノ十二月ト昭和十一年ノ十
二月トノ間ニ於キマスル生產財ノ騰貴率
ハ、明治三十年カラ大正三年ノ平均ヲ百ト
シテ計算致シマスルト、一三六·二カラ一五
九·〇、二割二分八厘ノ騰貴ヲ示シテ居ル
ノデス、ソレカラ消費財ニ付テ見マスレ
バ、同ジ年度デ一五六·九カラ一六四·八、
七分九厘ノ騰貴ヲ示シテ居リマス、此物價
騰貴ノ趨勢ヲ、小賣物價ト卸物價ニ分ケテ
見マスルト、同ジ年度ノ間ニ卸物價ノ方ハ
一九一·九カラ二三三·三、實ニ一年間ニ四
一·四、四割一分四厘ト云フ暴騰ヲ遂ゲテ
居リマス、小賣物價ニ付テ見マスルト、
五五·六カラ一六九·八、一割四分二厘ノ騰
貴ヲ遂ゲテ居ルノデアリマス、是ガ大衆ノ
生活ニ影響セヌナント云フコトハアリ得ナ
イコトダト思フノデスガ、更ニ生活必需品
ノ數種ニ付テ、ドウ云フ騰貴率ニナッテ居
ルカト見テ見マスルト、昭和六年ノ十二月
ヲ一〇〇ニシマシテ、米ガ今年ノ一月デハ
一七〇·八ニナッテ居リマス、ソレカラ麥酒
ハ幾ラカ減ッテ九三·五ト安クナッテ居ルヤ
ウデアリマスガ、日本酒ハ一一五·二、醬油
ハ一〇九·五、製粉ガ二一八·七、倍以上高
クナッテ居リマス、ソレカラ砂糖ハ一二九·
二、三割近ク上ッテ居ルシ、味噌ハ一二九·
茶ガ一〇二·二、羅紗ノヤウナ類ガ一
四六·二、是ナンカモ五割近ク上ッテ居ルノ
デアリマス、斯ウ云フヤウナ直接贅澤品デ
ハナイ、ドウシテモ無クテハナラナイ生活
必需品ガ、此樣ナ値上リヲシテ居ルノデア
リマシテ、是ハ全ク馬場財政ガ、アノ厖大
ナル十二年度ノ豫算ヲ編成シタト云フコト
ガ新聞ニ報道セラレタコトガ、著シク此物
價ヲ高メテ居ルノデアリマス、此樣ニ物價
ガ高メラレテ生活ヲ壓迫サレテ居ル、然ラ
バ低額勤勞所得者、官吏、勞働者、俸給生活
者ト云フモノガ、ドンナ狀態ニアルカト云
フコトノ一例ヲ取ッテ見マスルト、是ハ官公
吏學校〓員、サウシタ俸給生活者ノ狀態
デアリマスルガ、昭和九年末現在ニ依リマ
スト、官吏ノ總數ガ、文官ガ四十九萬四千
五百七十二人、武官ガ二萬三千七百五十七
人、宮內省ノ官吏ガ四千六百九人、合計五
十二萬二千九百三十八人アリマス、此中文
官官吏ノ平均年俸ハ七百二十圓、ソレカラ
武官ハ能ク分リマセヌガ、宮內官ノ平均年
俸ハ九百三十一圓、平均ノ官吏ノ俸給額ガ
如何ニ少額デアルカト云フコトガ分ルノデ
アリマス、ソレカラ地方公吏、府縣吏員ノ
數ガ一萬五千七百十八人、是ハ昭和八年末
ノ現在デアリマスガ、年俸ハ平均五百七十
二圓ニ過ギナイ、ソレカラ市ノ吏員ガ三萬
九千七百四十三人デアリマシテ、是ガ八百
六十九圓デアリマス、ソレカラ町村吏員ノ
數ガ六萬三千百六十四人デ、其平均年俸ガ
四百二十一圓、如何ニ少額ト云フコトガ分
ル、更ニ〓員ニ付テ見マスルト、〓員ノ數
ハ全部デ三十五萬四千九十一人アリマシ
テ、其小學校本科ノ〓員ノ月給ガ六十圓二
十六錢、中學校〓員ノ平均ガ百圓二十五錢、
斯ウナッテ居リマス、ソレカラ一般ノ俸給
生活者、官吏、公吏以外ノ月給生活者ガド
ノヤウナ收入デアルカト云フコトヲ、中央
職業紹介事務局ノ調査ニ依リマスル昭和九
年、十年ノ模樣ヲ取ッテ見マスルト、大學ヲ
卒業シタ人ノ初任給ノ平均月給ハ昭和九年
ニ技術者ガ七十九圓十七錢、事務ノ方ガ六
十四圓九十九錢、是ガ十年ニナルト前者ガ
六十五圓五十錢後者ガ六十三圓四十四
錢初任給ガ切下ゲラレテ居ル、ソレガ更
ニ專門學校出ヲ取ッテ見マスト、技術者ガ
六十四圓七十一錢カラ五十九圓八錢ニ減
リ、事務ノ方ハ五十六圓六十五錢ガ五十四
圓六十三錢ニ減ッテ居ル、更ニ中等學校出
ヲ取ヶテ見マスト、技術者ノ方ハ昭和九年
ガ四十圓四十二錢、是ガ幾ラカ殖エテ四十
三圓三十七錢ニナッテ居リマス、事務者ノ
方ハ三十五圓一錢ガ三十四圓五十四錢、斯
ウ云フ工合ニ減ッテ居ル、之ヲ全體中等學
校以上ノ學校ヲ出タ人ノ初任級ノ平均ヲ
取ッテ見マスト、技術者ガ昭和九年ニハ六
十一圓四十三錢デアッタモノガ、昭和十年
ニハ五十五圓九十九錢ニ減ッテ居ル、事務者
ノ方ハ五十二圓十八錢ノモノガ五十圓八十
七錢ニ減ッテ居ル、更ニモウ一ツ內容ニ付
テ見マスルト、是ハ鐵道省ノ現在判任官以
下ノ俸給狀態デアリマスルガ、判任官ノ數
ガ二萬八千人アル、此中ノ一萬九千五百人、
卽チ八割ト云フモノハ月給ハ九十五圓以下
デアリマス、ソレカラ雇員ノ總數ガ八萬五
千人アッテ此中ノ九割三分、傭人ガ十萬一
千人アッテ、此中ノ九割八分ト云フモノガ
月給七十五圓以下デアリマシテ、最モ多イ
ノハ六十圓前後ト云フ僅ナモノデアリマ
ス、ソレカラ東京市ノ例ヲ採ッテ見マシテ
モ、市ノ吏員ノ書記ノ平均給ガ八十四圓デ
アリ、區ノ書記ガ八十圓、區ノ準書記ト云
フ雇員給ガ僅ニ四十六圓、小學校ノ〓員ガ
東京市デハ平均ガ七十六圓ニナッテ居リマ
ス、ソレカラ東京府ノ警官ノ府費デ支辨シ
テ居ル人々ノ俸給ガ幾ラデアルカト申シマ
スト、警部補ガ平均六十二圓乃至六圓、巡
査部長ガ五十九圓、巡査ガ五十五圓カラ五
十九圓、實際ニハ四十圓ノ俸給ニ諸手當ヲ
加ヘテ六十圓內外ト云フノガ一番多イ、斯
ウ云フコトニナッテ居ルノデアリマス、此樣
ナ少額勤勞所得者ガ、物價ノ騰貴ニ依テド
ンナニ苦シメラレルカ、其具體的ナ例ヲ私
達ハ鐵道省ノ官吏ノ是ハ實際ニ家計簿ニ基
イテ調査シタノデアリマス、ソレハ月給八
十五圓貰ッテ居ル人デアリマスガ、是ハ馬場
財政ノ當時ニ調ベタモノデアリマスガ、馬
場財政ニ依ル增稅ガ行ハレマスルト-是
ハ間接稅デスヨ、間接稅ニ依ッテ、自分ノ負
擔ガ高クナルコトニ依ッテドレ位ノ影響ヲ
受ケルカト云フコトヲ見タノデアリマスル
ガ.ソレニ依ッチ見マスルト、此人ハ八十五
圓ノ月給ヲ貰ッテ居ッテ、夫婦ノ外ニ子供ガ
二人、都合四人生活デアリマスガ、實際每
月ノ計算ハ赤字デアリマス、ヤッテ行ケナ
イノデス、ダケレドモ、此家計簿ニ依リマ
スルト、每年三箇月分ノ賞與ヲ貰ッテ居ル、
此賞與デ辛ウジテ生活ヲ維持シテ居ル、是
ハ鐵道省ノ例デアリマシテ、マア今度ノ增
稅案ガ通過シタカラト云ウテ、鐵道省ダケ
ガ其影響ヲ受ケル譯デハアリマセヌカラ、
直チニ鐵道省ノ官吏ガ彼此レドウ斯ウト云
フコトヲ言フノデハアリマセヌケレドモ、
此樣ニ日本ノ現在ノ勞働者ヤ、俸給生活者
ノ實際ノ生活基準ト云フモノハ、單ニ俸給
賃銀ト云フ名目的ナモノダケガ、生活費ノ
基準デハナクシテ、之ニ賞與ト手當、斯ウ
云フモノガ生活費ノ基準ニナッテ居ル譯デ
ス、資本家ニ大キナ增稅ガ課セラレルト云
フコトニナリマスレバ、恐ラク此俸給生活
者ニ對スル賞與ト勞働者ニ對スル諸手當、
最小限ニ於テ是等ノモノガ削除サレ、減額
サレルト云フコトハ、火ヲ賭ルヨリモ明ダ
ト思フノデス、斯ウ云フ事實ヲ見マスル時
ニ、ドウシテモ斯ウ云フ人々ニ影響ノ及ブ
ヤウナコトハ何トカシテ喰止メナケレバナ
ラヌ、一方ニ於テ國ノ政治ノ全般的ナ方針
トシテ、國民ニ臥薪嘗膽ヲ求メナケレバナ
ラヌ必要ガアル、又今日ノ情勢ニ於キマシ
テハ、國民ニ全體トシテ或ル程度ノ犠牲ヲ
忍ンデ貰ハナケレバナラナイ、斯ウ云フ方
針ガ採ラレテ居リマスル時ニ、其國民生活
ニ幾ラデモ餘裕ヲ付ケルト云フコト迄ニ行
カヌトシテモ、セメテハ最大限ノ苦痛ヲ幾
ラカ緩和スルト云フ意味ニ於テモ、斯ウ
云フヤウナ低額勤勞所得者ニ對スル影響ヲ
何トカシテ防グト云フコトガ講ジラレナケ
レバ、如何ニ一方ニ於テ國際關係ノ重大性
ガ說カレ、臥新嘗膽ヲ求メラレ、犧牲ヲ强
要サレルト雖モ、犠牲ニハ或ル程度ノ限度
ガアリマス、其限度以上ニハ犠牲ヲ求メル
コトハ私ハムヅカシイト思フノデス、斯ウ
云フ意味ニ於キマシテ、是非トモ斯ウ云フ
勤勞生活者ニ對スル轉嫁ノ影響ヲ喰止メル
方法ガ講ジラレナケレバナラヌト思フノデ
アリマスガ、是ハ一片ノ言葉ノ先デハムヅ
カシイト思ヒマス、實際ノ問題トシテ之ヲ
ドウスルカト云フコトニナレバ、吾々ハ結
論トシテハ是等ノ低額勤勞所得ニ依ッテ生
活シテ居ル大衆ニ對シ、斯ウ云フ影響ヲ阻
止スル力ガモット與ヘラレナケレバナラヌ
ト思ッテ居リマスルガ、其力ハ今此處デド
ウ斯ウナルモノデハアリマセヌガ、斯ウ云
フコトヲ少クトモ十分考慮ノ上ニ置カレ
テ、此稅制案ト云フモノガ組立テラレナケ
レバナラヌシ、又審議モサレナケレバナラ
ヌト思フノデス、先日來ノ皆サンノ質問、
之ニ對スル政府當局ノ御答ヲ聽イテ居リマ
スルト、マアソレ〓〓ノ角度カラ御問ニ
ナッテオ居デニナルヤウデハアリマスルガ、
何トシテモヤハリ國民生活ヲドウスルカ
ト云フコトガ一番中心ニナッテ聽カレナケ
レバナラヌト思フノデス、擔稅力ノアル者
ハ、自分ノ稅金ヲ負擔スルト云フコトニ付
テ、多イヨリ少イ方ガ宜イト云フ意味デ色
色ナ質問ヲ爲サルシ、サウ云フコトノ要求
希望モ述ベラレルデアリマセウガ、ソレ等
ノコトヲ綜合シテ、國民生活ヲドウスルト
云フコトヲ中心トシテ考ヘラレマスル時、
少クトモ斯ウシタ-私ハ農村地方ノコト
ニ付テハ餘リ詳シクアリマセヌカラ述ベル
コトハ出來マセヌガ、少クトモ都市居住ノ
全勤勞大衆ノ生活ヲ思フ時ニ、此稅制案ガ
サウ云フコトヲ考慮スルコトナクシテ-
唯言葉デハナク、實際考慮サレルコトナク
シテ審議サレルト云フコトニナリマスレ
バ、私ハ斯ウ云フモノニ對スル國民大衆ノ
信賴ト云フカ、巳ムヲ得ナイト云フ諦メノ
觀念ト云フカ、サウ云フモノガ薄ラギハセ
ヌカト斯ウ思フノデアリマス、斯ウ云フコ
トニ對シテハ大藏當局ハドウ云フ工合ニ考
ヘテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=140
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141・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ加藤サンノ御話
ハ、都會地ニ於ケル勤勞生活者ガ、各種ノ
增稅ニ依ッテ或ハ直接ニ間接ニ生活ヲ壓迫
サレヤセヌカ、斯ウ云フ御尋ダト思フノデ
ゴザイマス、其點ハ洵ニ御心配御尤ノ點モ
アルノデゴザイマシテ、今日ノ俸給生活者
ガ〓シテ俸給ガ低イ、サウシテ其俸給ノミ
ニ依フテ生活シテ居ル結果、多少ノ稅ノ負擔
ニ依ッテモ直チニ生活ガ脅カサレヤセヌカ、
斯ウ云フ御心配デ、洵ニ御尤ダト思フノデ
ス、私共現ニ稅務ノ方ニ從事シテ居ルノデ
ゴザイマスガ、稅務官吏ノ俸給ナドモ非常
ニ僅ナモノデアリマシテ、不斷其生活狀態
ニ對シテハ洵ニ同情シテ居ルノデゴザイマ
スガ、今囘ノ此增稅問題ト只今ノ物價騰
貴ソレト此生活ノ關係デゴザイマスル
ガ、昭和六年ヲ總テ基準ニシテ先程カラ御
話ガアッタヤウデゴザイマスガ、昭和六年
當時ニ於キマシテハ、御承知ノ通リ物價ガ
安過ギテ困ル、ソレデ結局物價ガ餘リ安イ
コトモ結局俸給所得者ノ利益デハアリマセ
ヌノデ、其爲ニ產業界ガ疲弊スル、潰レル、
斯ウ云フヤウナコトガ起リマシテ、結局物
價ヲ引上ゲナケレバイカヌト、斯ウ云フ政
策ニ轉換致シマシテコヽ數年參フタノデゴ
ザイマス、サウシテ我國ニ於キマシテ物價
ハ幾ラカ上ッタノデアリマスルガ、併ナガ
ラ失業者ノ數ハ減ッテ來タ、職工等ノ給料
ヲ貰フ人達モ幾ラカ給料モ上ル、賞與モ增
加スル、斯ウ云フ傾向ニナッテ來タ模樣デ
ゴザイマスルガ、併ナガラ一方ニ、ソレダ
ケヂヤイカヌ、物價ガ或ル程度ニ止マレバ
宜イケレドモ、ソレガ止マラナイデ、東方
物價ガ上ッテ行クト云フコトデアルナラ
バ、是ハ中々ノ一大事デアリマス、今後
我國ニ於ケル所ノ最モ大キナ問題モ此
物價問題デハアルマイカト思フノデア
リマスガ、併ナガラ此物價ノ上リマシ
タコトハ、先程アナタノ仰シヤイマシタヤ
ウナ、獨リ國ノ財政ノ關係バカリデハゴザ
イマセヌ、小麥ニ致セ、鐵ニ致セ、斯ウ云
フモノハ世界的ノ物價ノ騰貴ノ影響ヲ受ケ
テ居ルノデゴザイマス、歐洲ガ不作ダ、亞
米利加ガ不作ダト云フ所ヘ持ッテ來テ、歐羅
巴諸國ニ於テ頻リニ小麥ヲ買込ム、斯ウ云
フコトデアリマスノデ、隨テ小麥モ騰貴ス
ル、斯ウ云フコトニ相成ルダラウト思フノ
デアリマス、ソレデゴザイマスカラ物價騰
貴モ或ル程度世界的ノ經濟關係ノ影響ヲ受
ケル、サウ云フコトハ當然デアルト思フノ
デアリマス、隨テ最近ニ於ケル物價ノ騰貴
及ビ今後ニ於ケル騰貴ガ今囘ノ增稅ト如何
バカリノ關係ガアルカ、ドウ云フ風ニ關係
スルカト云フコトハ、是ハ極メテ難シイ問
題デゴザイマス、唯最近ノ新聞アタリデ見
マスルト、法人ノ稅金デ餘計ニ所得ガ上ッ
テ取ラレテシマフト云フコトデアルナラ
バ寧ロ從業員ノ俸給トシテ餘計ニ出シテ
シマヘバ損金トシテ會社ノ利益カラ落チル
ノデアルカラ、結局稅金ハ少クナル、斯ウ
云フ關係カラシテ俸給賞與ト云フモノヲ餘
計ニ支出スル傾向ガアルト斯ウ云フコトガ
書イテゴザイマス、マアサウ云フ會社バカ
リデハ勿論アリマスマイ、アリマスマイガ、
稅金ガ餘計ニナッテ、其稅金ヲ拂フ位デアル
ナラバ從業者ノ給料ヲ上ゲルト云フ會社ガ
アルナラバ、サウ云フ會社ニ對スル影響
ハ、寧ロ是ハ好影響ガアルカト思フノデア
リマス、併ナガラサウ云フヤウナ好影響ノ
アル會社バカリデナイコトハ、私モ其通リ
ダト思フノデアリマシテ、其影響ガ、ドノ
程度ニ起ッテ居ルカト云フコトハ是ハ用意
ガアルカト云フ御尋デゴザイマシタガ、之
ヲ精細ニ計算致シマスコトハ容易デゴザイ
マセヌ、隨テ先ヅ此日常生活ニ關係ノアル
所ノ消費稅的ノモノハ引上ゲヌ、增稅致ス
ニシテモ程度ヲ緩和スル、直接稅、相續稅、
ソッチノ方面ノモノハ相當キツク行ク、斯
ウ荒ッポク考ヘテ行クヨリ外ニ仕方ガナイ
ノデアッテ法人ノ稅金ヲ引上ゲタカラ、是
ガ職工ノ賃銀ニドウ云フ風ナ影響ガアルダ
ラウカト云フコトハ、一々突詰メテ此稅金
ヲ決メル譯ニハ行カヌダラウト思ヒマス、
ソコハ中々サウ云フ計算ヲ致シ兼ネルノデ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=141
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142・加藤勘十
○加藤委員 只今ノ御答ノヤウニ、具體的
ニドレダケノ影響ガアルカト云フコトヲ數
字的ニ目盛ヲシテ稅制案ヲ考慮スルト云フ
コトハ、ソレハ出來ヌト云フコトハ能ク分
リマス、私モ亦ソンナニ杓子定規ナキチキ
チトシタモノヲ言ウテ戴キタイト云フヤウ
ナコトハ考ヘテ居リマセヌガ、少クトモ政
府ガ一ツノ此樣ナ國民生活ニ大キナ影響ノ
アル政策ヲ實行サレヨウト云フ場合ニハ、
サウ云フ點マデモ十分ナル考慮ガ拂ハレテ
行ハレナケレバナラヌ、斯ウ云フ政治的態
度ヲ要求-要求ト言フカ、之ニ對スル御
考ヲ御伺シテ居ルニ過ギナイノデアリマ
ス、ダカラソレハ再ビ茲ニ私ハ繰返シマセ
ヌ、唯物價騰貴ノ問題ニ付キマシテハ、
勿論政府ガ厖大ナ豫算案ヲ組ンダト云フコ
トダケガ原因デナイ、世界的高物價ノ風潮
ニ馴致サレタモノデアルト云フコトヲ私共
モ認メマス、ダガ、本會議デモ政府當局ガ言
ハレタヤウニ、馬場財政ノ編成ニ依ッテ思
惑ト云フモノガ物價ヲ相當ニ吊上ゲテ居ル
ト云フコトハ言ヒ得ラレルト思フノデス、
ソレバカリデハナイ、吾々ハ資本家ガ現在
此高物價政策ノ上ニ-政府ノ低金利政策
モ影響シテ居ル、唯豫算ガ大キイト云フバ
カリデナク、低金利政策モ影響シテ居ル
シ、資本家ノ「カルテル」「トラスト」編成ニ
依ル生產制限、市場相場ノ協定ト云フコト
干、非常ニ大キナ影響ヲ持ッテ居ルト思フ
ノデアリマス先程申シマシタヤウニ一方
ニ於テハ卸小賣ノ物價ガ著シク騰貴ヲ遂ゲ
テ居リマス時ニ、ソレナラバ國民大衆ガ全
部品物ノ需要ニ對シテ享樂シテ居ルカト云
フナラバ、私ハ國民生活ハ先程申シマスヤ
ウナ少額ノ所得ニ依ッテ到底自分ノ欲スル
モノヲ享樂スル程ニ購買シ得ナイ狀態ニア
ルト思フノデス、ソレ故ニ此際一方カラ言
フナラバ、生產制限ガサレテ居ルト云フヤ
ウナ事態ガ緩和サレテ、生產力ガ全體トシ
テ働イテ、品物ヲ豐富ニ市場ニ提供シテ、
サウシテ大衆ヲシテ自分ノセメテハ生活ニ
必要ナルモノヲ安ク購入シ得ラレルヤウナ
方法ガ講ジラレナケレバナラヌト思ヒマス
ルガ、是ハ或ハ大藏當當ノ權限外デアルカ
モ知レマセヌガ、日本ノ重要物產ノ生產制
限ヲ一寸一ツ二ツニ付テ見テ見マスルト、
昭和十一年十一月ノ現在ニ於キマシテ、紡
績ハ三割三分八厘ノ操短ヲヤッテ居リマス、
絹紡ハ四五·一%ノ生產制限ヲヤッテ居ル
シ、人絹ガ三五%、晒粉ガ五〇%、洋紙ガ
四三·七%、「セメント」ガ五九·五%、斯ウ云
フヤウナ高率ナ生產制限ヲヤッテ居ルノデ
アリマス、殊ニ洋紙ノ如キハ日本ノ代表的
獨占事業トシテ、殆ド今王子製紙ノ手ニ獨
占サレテ居ルト言"テモ宜イ位ナ狀態デア
リマシテ、市中ニハ非常ニ紙ガ高クテ困ッテ
居ル時ニ、尙ホ四割三分以上ノ生產制限ヲ
ヤッテ居ル、ソレナラバドレ位ノ利益ヲ擧ゲ
テ居ルカト言ヒマスルト、十一年上期ノ利
益率ニ付テ見マスルト、紡績事業ニ於テハ
三〇·一%ノ利益率ヲ擧ゲテ居ルシ、人絹ハ
二割八分六厘、ソレカラ晒粉ハ化學工業全
體トシテ見マシタ場分ニ一割九分四厘、洋
紙ノ如キハ二割六分、「セメント」ハ一割八
分五厘、斯ウ云フヤウナ高率ナル利益率ヲ
擧ゲテ居リマス、配當率ニ付テ見マシテモ、
紡績ガ一割四分七厘、人絹ガ一割二分八
厘、晒粉ガ九分七厘、洋紙ガ一割、「セメ
ント」ガ八分デアリマス、斯ウ云フヤウナ利
益率ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、一方ニハ
此樣ナ「カルテル」「トラスト」ノ結成ニ依ツ
テ生產制限ヲヤリ、高率ナル利益率ヲ擧ゲ
ツヽ、他ノ一方ニ於テハ大衆ノ購買スルコ
トノ出來ナイヤウナ、物資ガ不足ヲシテ高
イ、此生產制限ガ緩和サレルト云フコトニ
ナリマスレバ、市場ニ豐富ナル物資ガ供給
サレマシテ、品物ハ値段ガ幾ラカ安クナ
ル、斯ウ云フコトニ對シテ政府當局ハドウ
云フ方法ニ依ッテ取締ルト言フト語弊ガア
ルカモ知レマセヌガ、此物價騰貴ヲ緩和シ
ヨウト云フ方針ヲ執ラレルノデアリマセウ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=142
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143・増田義一
○增田委員長 加藤君ニ一寸御注意ヲ申上
ゲマスガ、只今ノ質問ハドチラカト云フト
商工省ノ關係ニナリマスネ、尤モ御趣意ハ、
消費稅ト物價騰貴-又加藤君ノ御意見デ
ハ直接稅モ物價騰貴ニ影響スルト迄仰シ
ヤッタノダガ、ソレハ御意見トシテ大分細
カナ御說明デアッテ稅制直接ニ關係ハ乏シ
イヤウニモ思ハレマスカラ、今後ハ成ベク
豫テ諸君ニ希望シテ居リマスヤウニ、直接
稅制ニ關係スル程度ニ御質問ヲ進メテ戴キ
タイ、是ハ委員長ノ希望デアリマス、ドウ
ゾ其御含デ願ヒマス、尙ホ加藤委員ニ申上
ゲテ置キマスガ、今ノヤウナ御質問デ商工
省ニ關係スル場合ニハ、前以テ商工省ノ政
府委員ノ出席ヲ要求シテ下サイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=143
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144・加藤勘十
○加藤委員 サウ云フコトニヨク慣レヌモ
ノデスカラ-ダケレドモ、是ハ私ハ稅制
案トハ密接ナ關係ヲ有シテ居ルト思フノデ
ス、ソレダケハ委員長ノ御注意デアリマシ
タガ、御含ヲ願ヒタイ、私ノ質問ハ長イコ
トハアリマセヌ、斯ウ云フコトハヤハリ十
分ニ全體ガ理解シテ居ラヌトイカヌト思ヒ
マスカラ御尋スルノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=144
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145・増田義一
○增田委員長 尙ホ大藏省ノ政府委員ニ直
接ノ御質問ガアルナラ御繼續願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=145
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146・加藤勘十
○加藤委員 ソレデハ其點ハ商工當局ノ御
答ヲ聽クコトニシマシテ、モウ一ツ伺ヒマ
ス、先程私ハ俸給生活者ノ收入狀態ヲ明ニ
シタノデアリマスルガ、先程大藏大臣ノ御
言葉ノ中ニモアリ、石渡政府委員ノ御言葉
ノ中ニモアリマシタノデ、サウ云フコトヲ
斟酌致シマシテ、一體勞働者ノ賃銀狀態ト
云フモノガドウ云フ狀態ニアルカ、之ヲ是
非トモ明ニシテ置カナケレバナラヌト思フ
ノデアリマスカラ、其點ヲ明ニシタイト仔
ジマス、而モ一番中心的ニ考ヘラレルコト
ハ、小賣物價ト勞働者ノ賃銀收入トガドウ
云フ關係ヲ有シテ居ルカ、此例デアリマス
ガ、之ヲ日本銀行ノ大正三年ヲ百トスル小
賣物價ノ指數デ大正十五年ヲ百ト換算シテ
サウシテ賃銀ヲ割フタモノヽ實質賃銀、卽チ
物價ト收入賃銀トガ、ドウ云フ關係ヲ持ツ
テ居ルカト云フコトヲ見テミマスルト、昭
和六年ニ實質賃銀ト云フモノガ一三三·
ヲ示シテ居リマシタノニ、昭和十一年九月
ニナリマスト一一三·一、此五年バカリノ間
ニ一割五分以上實質賃銀ガ下ッテ居リマス、
是モ收入ト物價ト切離スコトノ出來ナイ關
係ニ於テノ實質賃銀ヲ見タノデアリマス
ガ、此樣ニ物價ガ直接生活ニ影響スルト云
フコトガ數字的ニ明カデアリマスルカラ、
此物價ニ又直接ノ關係ヲ有シテ居ル消費
稅更ニ直接稅ノ問題ガ、斯ウ云フコトニ
迄考慮サレナケレバナラヌト思フノデアリ
やする。ソレカラ更ニ內閣統計局ガ調査シマ
シタ昭和九年カラ昭和十年八月ニ至ル迄ノ
工場勞働者ノ家計簿ノ狀態、是ハ最初カラ
月額五十圓以上百圓以下ノ世帶九百六世帶
ニ付テ、一世帶平均ノ家族ガ四·一人當リ
トシテソレヲ計算シタモノガ出サレテ居リ
やく、 8ソレニ依リマスルト、一箇月ノ實際
ノ收入ハ家族ノ收入マデ包含シタモノヽ平
均ガ八十七圓十三錢、此八十七圓十三錢ニ
對シテ實際ノ支出ガ七十六圓四十五錢、斯
ウヤッテ見マスルト、九圓何十錢ト云フ剩餘
ガ月ニ出テ居ルガ如クニ見エマスルガ、其
〓費、居住費、光熱費、被服費、文化費、
色々ナモノニ內譯ヲ分類シテ見マスルト云
フト、不時ノ病氣、其他ノ災難ニ備ヘル
餘裕ガ一厘モ取ッテ居ナイ、サウ云フモノヲ
見マスレバ、結局一家全部ヲ擧ゲテ得タ收
入ガ辛ウジテ其時ノ全家族ノ生活ヲ維持ス
ルニ過ギヌト云フヤウナ狀態ニアルノデ
ス、是位私ハ個人ノ生活ニ取っテ差迫ッタ狀
態ハナイト思フ、是ガ昭和十年ノ問題デア
リマスルカラ、其後ノ物價騰貴ト賃銀趨勢
トヲ較ベテ見マスルナラバ、是等ノ勞働者
ノ家庭ガ如何ニ生活ニ困ッテ居ルカト云フ
コトガ明瞭ニ分ルダラウト思ヒマス、私
尙ホ賃銀ニ付テハ陸海軍ノ工廠ニ於ケル狀
態モ聽イテ居リマスガ、ソレハ私ハ餘リニ
諄々シイカラ省略シマスガ、サウ云フヤウ
ニ俸給ニシロ、賃銀ニシロ、決ッタ收入デ働
イテ居ル者ガ、物價騰貴ト云フモノガ非常
ニ苦シイ、我慢ガ出來ヌ以下ニ生活ヲ切下
ゲラレテシマフ、之ヲ能ク頭ニ入レテ置イ
テ戴キタイト思フノデアリマス、ソレカラ
又物價ニ對シテ是ハ政府ノ方デハ煙草値上
ナドハ稅金デハナイトカ、或ハ是ガサウ大
シテ物價騰貴ニ拍車ヲ掛ケルモノデハナイ
トカ、斯ウ言ハレルカモ分カリマセヌガ、吾
吾ハ煙草ノ値上ノ如キハ明ニ間接稅ノ一種
デアルト思ッテ居リマス、ソレハ稅金ノ性質
ヲ持ッテ居ルカ、持ッテ居ラヌカト云フコト
ニ付テハ、見解ノ相違ト云フコトニナリマ
スカラ、或ハ御答ガナイカモ知レマセヌガ、
併ナガラ是ガ少クトモ物價ヲ吊上ゲル、
方ニ於テハ政府ハ物價ヲ何トカシテ、餘リ
ニ騰貴セシムルコトヲ喰止メナケレバナラ
ヌ、サウ云フ政策ヲ執ッテ居ラレル時ニ、政
府自ラガ物價騰貴ニ拍車ヲ掛ケルヤウナ煙
草ノ値上ヲヤラレルト云フコトニ付テハ、
私ハ政策上ノ矛盾ガアルト思フノデアリマ
スガ、此點ニ對シテハ大藏當局ハドウ云フ
御考デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=146
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147・石渡莊太郎
○石渡政府委員 煙草ノ專賣ハ仰シヤル通
リ、是ハ間接稅ノ徵收ノ一形式デアリマス
ルノデ、間接稅ノ一種ダト思ヒマス、此値
上ヲ何故ヤルカ、物價ヲ引上ゲハセヌカ
ト、斯ウ云フコトデゴザイマスルガ、是ハ
國ノ收入ヲ增ス爲ニ增稅ヲヤル、斯ウ云フ
コトデアリマスレバ、直接稅トシテハ所得
稅、間接稅トシテハ酒、煙草、砂糖、等ヲ考
ヘルヨリ外ニハ、サウ大キナ增收ノ途ハナ
イノデアリマスカラ、增稅ヲスルト政府ガ
肚ヲ決メレバ、ヤハリドウモ所得稅、酒
煙草、砂糖、斯ウ云フモノヲ考ヘル外ニハ、
實ハ增收ニ相成ルモノハゴザイマセヌカ
ラ、隨テマア增稅スルト言ヘバ問題ハ其邊
ノ所ニ落チテ來ルノデアラウト思フノデア
リマス、ソレニ因ル所ノ幾分ノ物價騰貴ヲ
惹起シハセヌカ、斯ウ云フ問題ハ、是ハヤ
ハリ酒ノ增稅ト云ヒ、砂糖ノ增稅ト云ヒ、
何レデモ同ジヤウナ問題デアルト思フノデ
アリマス、多少物價騰貴ヲ惹起スト云フ作
用ハゴザイマセウ、ゴザイマセウケレドモ、
ソレ以上ニ國ガ或ル程度ノ收入ガ必要ダト
云フコトデアリマスレバ、ドウシテモソコ
ヘ落チテ行クヨリ外ニ仕樣ガナイ、斯ウ云
フ譯ダラウト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=147
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148・加藤勘十
○加藤委員 其矛盾ニ付テドウシテモ私ハ
得心ガ行カナイノデアリマスガ、先程ノ他
ノ委員ノ質問ニ對スル石渡サンノ御答ノ中
ニモ今仰シヤッタト同ジヤウナコトガ言ハ
レテ居リマシテ、酒トカ煙草ト云フヤウナ
モノハ直接ノ生活必需品デナイカラ、或ル
程度ノ我慢ハシテ貰ハナケレバナラヌト云
フコトガ述ベラレタノデアリマスガ、私ハ
私個人ガ一本ノ煙草モ喫マナイシ、ハケノ
酒モ飮ミマセヌカラ、ドンナニ煙草ガ高ク
ナッテモ、酒ガ高クナッテモ、個人的ニハ何
等ノ痛痒ヲ感ジマセヌガ、併ナガラ今日非
常ニ激シイ勞働ニ從ッテ居ル勞働者ガ家や
歸ッテ來テ飮ム一杯ノ晩酌、是ハ私ハ十分
ニ考ヘラレナケレバナラヌト思フノデス、此
勞働者ガ綿ノヤウニクタ〓〓ニ疲レテ家ニ
歸ッテ來テ飮ム一杯ノ晩酌ト云フモノハ、是
ハ生活必需品デス、是アルガ故ニグッスリ
寢テ明日ノ勞働力ヲ囘復スルコトガ出來
ル、是スラ手ニスルコトガ出來ヌト云フコ
トニナレバ、明日ノ勞働力ト云フモノハ其
晩ノ休養ニ依ッテ囘復シナイ、小ニシテ
ハ個人ノ勞働力ノ問題デアリマスガ、大ニ
シテハ日本ノ生產力ノ源泉デアル勞働力ノ
問題ニモ關シテ來ルト思ヒマス、是ハ私ハ
ソレ以上ニ理屈ハ言ヒマセヌガ、サウ云フ
コトモ考慮ニ入レラレナケレバナラナイト
云フコトヲ言フニ過ギナイノデアリマス、
ソレカラ今ノ煙草ノ問題デアリマスガ、國
ガ現在ノ狀態ニ於テドウシテモ或ル程度ノ
-或ル程度ト云フヨリモ、實際此樣ナ大
キナ增稅デアリマスガ、斯ウ云フ增稅ヲヤ
ル場合ニ當然考ヘラレル一ツノ對象デア
ル、斯ウ云フコトヲ仰シヤイマシタガ、ソ
レナラバ此葉煙草ノ栽培ニ當ッテ居ル農民
ニ對シテ、專賣局ハ一體ドウ云フ態度ヲ執ツ
テ居ラレルカ、私ハ此葉煙草栽培ノ農民
ガ、現在ノ專賣局ノ苛酷ナル手段ノ爲ニ非
常ニ苦シメラレテ居ルト云フコトヲ、岡山
縣ノ實例モ聞キマシタ、栃木縣ノ實例モ聞
イテ居リマス、是ハ今專賣局當局ガオ居デ
ニナラヌカラ私ハ專賣局當局デナクテモ宜
イト思フ、大藏當局全體トシテ此點ニ對シ
テハ、モット〓〓葉煙草栽培ノ農民二割,
テ考ヘラレナケレバナラヌ、增稅ヲ必要ト
スルト云フコトハ先程色々言葉ヲ濁サレマ
シタガ、究極スル所、軍事費ガ增大スル、其
軍事費ハ今日ノ國際情勢ニ應ズル爲ニ已ム
ヲ得ナイ、其國際情勢ニ應ズル軍事費ト云フ
モノハ、結局長イ將來ノ國ノ安全性ヲ保ツ
上カラ已ムヲ得ナノソレナラバ國ノ安全
性ノ重要ナル要素デアル農民ノ生活ト云フ
モノガ考ヘラレナケレバナラヌノデアリマ
シテ、其農民生活ヲ考ヘラレル場合ニ、コ
ンナニマデ苛酷ニ虐メツケテ、サウシテ是
ダケノ收入ヲ得テ、サウシテ大部分ガ軍需
品ニ投ゼラレルト云フコトニ依ッテドウシ
テ國民ノ多數ヲ占ムル農民ガ-葉煙草ノ
栽培者ハ農民ノ中ノ大多數デナイカモ知レ
マセヌガ、併シソレハ重要ナル要素デアリ
やく、ソレガコンナニ虐メラレヽバ、ソコ
ニ國ノ稅金ノ徵收、政府ノ事業ト云フモノ
ニ對シテ怨嗟ノ聲ヲ持ッテ來ルニ相違ナイ
ト思フノデス、ソレデドウ云フ狀態ニナッテ
居ルカト云フコトヲ申シマスト、是ハ栃木
縣ノ具體的ノ一例デアリマス、ソレニ依ル
ト葉煙草栽培ノ三反步當リ-何故三反步
ヲ基準ニシタカト云ヒマスト、三反歩以上
ノ耕作デナイト乾燥土藏費ノ貸付ガシテ貰
ヘヌカラ三反步ヲ標準ニシタノデアリマス
ガ、三反步ノ生產費ガドレダケ掛ルカト云
マ、肥料代ガ九十圓、乾燥資金償還年賦
金ガ四十圓、是ハ大體三百圓位ヲ借リテソ
レデ乾燥ノ土藏ヲ造ッテ居ル譯デアリマス、
ソレカラ燃料資金ガ六十圓、耕作組合費ガ
六圓、其他ノ諸費ガ十圓、勞働力ト云フモ
ノハ見テ居ラレナイ、農民ノ勞働力ト云フ
モノヲ見ナイデ總計二百六圓掛ッテ居ル、
而モ勞力ハ見テ居リマセヌガ、私ハ實際葉
煙草ヲ乾燥スル現場ヲ見マシタケレドモ、
現在「バット」ノ材料ニナッテ居ル亞米利加葉
煙草ヲ乾燥スル爲ニハ、四日三晩ト云フモ
ノハ同ジ溫度デ石炭ガ焚カレテ「オンドル」
ヲ通シテ熱ガ保タレル、若シ少シデモ溫度
ニ高低ガアルト、葉ニシミガ澤山出來テイ
カヌカラ、ドウシテモ四日三晩ハ不眠不休
デ本當ニ徹夜デヤラナケレバナラヌ、サウ
云フヤウナ激シイ勞働ヲシテ、而モ其勞働
賃銀ガ見込マレナイデ總計二百六圓掛ル、
ソコデ一體幾ラノ收入ニナルカト言ヘバ、
最上ノ煙草ガ出來タ場合ニハ相當ノ有利ナ
利廻ニナルヤウデアリマス、二百圓以上ニ
モナルヤウデアリマスケレドモ、サウシミ
ノ出ナイ、色モ好ク、巧ク乾燥スルト云フ
ヤウナコトハ、ドウシテモ少イト思フ、殊
ニ惡イ場合ニナリマスト、ソレガ燒カレテ
シマッテ駄目ニナッテシマフ、大體專賣局カ
ラ賠償金トシテ貰フノハ三反步當リ百五十
圓、隨テ五十六圓ト云フモノハ三反歩ノ耕
作ニ付テ損ガ行ク、是ハ實際ニ葉煙草ヲ栽
培シテ居ル農民ガ私ノ所ニ持ヲテ來タ書付
デアリマス、私モ此間栃木縣ニ行ッテ茂木
ノ傍ノ農民ノ耕作狀態ヲ見テ來タ、此樣ニ
シテ農民ヲ苦シメテ、サウシテ政府ガ煙草
ノ値上ヲヤッテ莫大ナ利益ヲ得テ居ル、十二
年度ノ値上ニ依ル增收ヲ別ニシテモ年額二
億カラ儲ケテ居ル、十二年度ニハ二千五百
萬圓ノ利益ノ增收ヲ見込ンデ居ル、農民ハ
コンナニ苦ンデ居ル、斯ウ云フコトデハ政
府自身ガ最モ惡辣ナル資本家ノ行爲ヲ爲シ
テ居ルモノデアルト言ハレテモ、私ハ仕方
ガナイヂヤナイカト思フ、一體ドウ云フ工
合ニ之ヲ御考ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=148
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149・石渡莊太郎
○石渡政府委員 加藤サンノ計算ヲ能ク拜
見致シマシテ、專賣局ニモ見テ貰ハウト
思ッテ居リマス、只今煙草ノ耕作農民ニ對
シ政府ガヒドイヂヤナイカ、斯ウ云フ御疑
デノ御質問デゴザイマスガ、私能ク其方ノ
コトハ存ジマセヌガ、今日マデ私共ノ聞イ
テ居リマス所デハ、普通ノ畑ヨリハ餘程收
入ガ好イ、是ハ獨リ役所ノ方カラバカリ聞
イテ居ル譯デハゴザイマセヌ、殊ニ昭和六
七年當時普通ノ畑ハ非常ナ値下リデ困ッテ
シマッタ場合ニ、煙草ノ耕作ヲシテ居ッタガ
爲ニ、ソコノ村ガ全ク恐慌ニ襲ハレナカワ
タ、斯ウ云フコトモ聞イテ居ルノデゴザイ
ひじ、ソレデ今アナタノ御述ニナッタ農民
ガ非常ニ苦痛ヲ受ケテ居ル、斯ウ云フコト
ヲ私伺フノハ實ハ初メテヾゴザイマシテ、
私共今マデ聞イテ居リマスノハ煙草ノ耕作
ハ非常ニ有利ナ事業デアル、各方面ニ於テ
引張リ風デアル、斯ウ云フ風ニ實ハ聞イテ
居ッタノデゴザイマス、又最近ニ於キマシテ
モ政府ノ行キ方ト致シマシテ、出來ルダケ
外國カラ買フコトヲ止メマシテ、內地デ以
テ煙草ヲ拵ヘル、斯ウ云フ方向ニ進ンデ居
ルノデアリマス、各地カラ每年々々專賣局
ニ煙草ノ耕作ヲ要求シテ來ル其反別モ非常
ニ大キイモノデゴザイマスルカラ、政府ト
致シマシテモ出來ル限リ之ヲ內地デ以テ拵
ヘルヤウニ仕向ケル、亞米利加カラ買フ煙
草ヲ非常ニ減ジテ來ル、斯ウ云フヤウナコ
トニ致シテ居ルノデゴザイマス、實ハアナ
タカラ今サウ云フ苛酷ノ扱ヲ受ケテ居ルト
云フ御話ヲ伺ヒマシテ、非常ニ意外ニ存ズ
ルノデアリマス、此點私能ク存ジマセヌカ
ラ、專賣局ノ方ニ能ク話ヲ致シテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=149
-
150・加藤勘十
○加藤委員 ソレデハモウ少シ今ノコトニ
付テ附加ヘテ置キタイト思ヒマス、是ハ栃
木縣ノ例デアリマス、ソレニ依ルト現在
-五六年前マデハ達磨種ト云フモノヲ栽
培シテ居ッタ、是ハ主トシテ刻煙草ノ原料デ
アリマス、所ガ最近「バット」ノ需要ガ非常
ニ多クナッタノデ、此達磨種ノ栽培ヲ廢メテ
亞米利加種ヲ栽培スルヤウニ、專賣局カラ
强制的ニ作替ヲ命ゼラレタ譯デアリマス、
ソレデ今ハ米國種ノ葉煙草ヲ作ッテ居ルノ
デスガ、此達磨種デアリマスト、天日デ
乾燥スルコトガ出來ル、乾燥ヲスル爲ニ費
要ガ要ラナイ、デスカラ比較的無駄ガナク
テ普通ニ乾燥ガ出來ル、サウシマスト一反
步當リ百二十圓位ノ平均デ賠償サレル譯デ
ス、所ガ之ニ對シテ今度松川種ト云フモノ
ガ流行ッテ、是ハ主トシテ外國へ出ス葉煙草
デアリマス、之ヲヤリマスト農民ハ費用ガ
比較的掛ラヌデ、一反當リ九十圓位ノ賠償
金ガ貰ヘル、ダカラ之ヲヤリタガッテ居ル、
所ガ政府ハ强制的ニ米國種ノ葉煙草ノ栽培
ヲ求メテ居ル爲ニ、ソレヲヤリマスト、是
ハ非常ニ乾燥ニ費用ガ掛ルバカリデナク、
土地ガ何處ノ土地デモ旨ク行クト云フ譯ニ
行カナイ、隨テ最上級ノモノハ反當リ二百
圓位ニ賠償サレル、其代リニ瘠地ノ惡イモ
ノニナルト五十圓以下ニナッテシマフ、平
均シマスルト五六十圓位ノモノニナッテシ
マフ、斯樣ナ狀態ニナッテ居ルノガ今日ノ
葉煙草栽培者ノ實情デアリマス、斯ウ云フ
狀態ニ對シテ、農民ハ何ヲ一番希望シテ居
ルカト云フト、今ノ土藏ヲ作ル乾燥資金ヲ
貸付ケテ貰ッテ居ルガ、ソレヲ何トカシテモ
ウ少シ償還ヲ延期シテ貰ヒタイト云フコト
ヲ强ク希望シテ居ル、實際ニ於テ收入ガ支
出ニ伴ハナイ、サウ云フ事ガ强ク要求サレ
テ居ル、ソレカラ一番大キナ不平ハ、專賣
局デ一寸惡イモノニナルト、勝手ニ値段ヲ
決メテシマッテ賠償金ト云フ名目デ下ゲラ
レル爲ニ、農民ノ意思希望ト云フモノハ、
一ツモ專賣局ニ容レラレナイ、斯ウ云フコ
トガ一番强イ農民ノ不平ナンデス、現在農
民ガ一番希望シテ居ル事ハ、何トカシテ前
ノ達磨種ヲ改良加工シテ、卷煙草ノ材料ニ
ナルヤウニ技術的ナ工夫ヲシテ貰ヘナイダ
ラウカト云フコトヽ、ソレカラ專賣局ガ今
外國ヘ出ス爲ニ、松川種ガ有望ダ〓〓ト言ツ
テ、今ノ亞米利加種ヲ栽培シテ居ルモノヲ
强制的ニ作替ヲ命ゼラレテ、ソレヲヤル
ト、又何年カ經ッテソレハ工合ハ惡イト云
フノデ、別ノモノニヤラレテシマフト云フ
ヤウニ、絕エズ耕作種別ノ强制作替ヲ命ゼ
ラレル、斯ウ云フ事ノナイヤウニシテ貰ヒ
タイト云フコトデス、其他耕作奬勵ニ對シ
テ責任ヲ負ッテ貰ヒタイトカ、色々希望ハア
リマスガ、兎ニ角サウ云フヤウニ實際ニ愬
ヘル所ノナイ農民ガ、相當專賣局ノ扱ヒニ
對シテ不平ヲ持ッテ居ル、斯ウ云フ事ニ付
テモ併セテ政府當局ノ御意向ヲ、議會ヲ通
シテ葉煙草栽培者全體ニ知ラシメテ戴クコ
トガ出來レバ、葉煙草栽培者ノ農民ハ非常
ニ安心スルダラウト思ヒマス、是ハ是非御
願シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=150
-
151・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ御話ハ能ク專賣局
ノ方ニ通ジマシテ、更メテ御答スルコトニ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=151
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152・加藤勘十
○加藤委員 委員長、モウ一時間カ一時間
半位アルト思ヒマスガ、明日ノ朝ニシテ戴
ケマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=152
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153・増田義一
○增田委員長 尙ホ質問通告者ガ多イノデ
アリマスカラ、明日ハ一時間位ノ程度デ成
ベク切詰メテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=153
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154・加藤勘十
○加藤委員 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=154
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155・増田義一
○增田委員長 ソレナラ本日ハ此程度ニテ
散會致シマス、明日ハ午前十時ヨリ開會致
シマス
午後五時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01119370310&spkNum=155
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