1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時租税増徴法案(政府提出)
法人資本税法案(政府提出)
外貨債特別税法案(政府提出)
揮發油税法案(政府提出)
有價證券移轉税法案(政府提出)
明治四十年法律第二十一號中改正法律案(樺太に於ける租税に關する件)(政府提出)
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會議
昭和十二年三月十一日(木曜日)午前十時二十七分開議
出席委員左の如し
委員長 増田義一君
理事 高橋守平君 理事 三善信房君
理事 服部英明君 理事 森肇君
理事 宮澤裕君
太田信治郎君 松田喜三郎君
川崎末五郎君 升田憲元君
仲井間宗一君 小山倉之助君
松村謙三君 堀内良平君
作田高太郎君 村岡吾一君
矢野庄太郎君 篠原陸朗君
木暮武太夫君 太田正孝君
宮本雄一郎君 古河和一郎君
金光庸夫君 片山秀太郎君
石坂豐一君 水谷長三郎君
河野密君 加藤勘十君
伊禮肇君 渡邊泰邦君
出席政府委員左の如し
大藏省主税局長 石渡莊太郎君
大藏書記官 松隈秀雄君
專賣局部長 花田政春君
商工省工務局長 小島新一君
本日の會議に上りたる議案左の如し
臨時租税増徴法案(政府提出)
法人資本税法案(政府提出)
揮發油税法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=0
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001・増田義一
○增田委員長 是ヨリ臨時租稅增徵法案外
五件ノ委員會ヲ開キマス、加藤勘十君ノ質
問ガマダ終了シテ居リマセヌ、仍テ前日ニ
引續イテ發言ヲ許シマス、加藤勘十君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=1
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002・加藤勘十
○加藤委員 結局私達ノ聽カウト思フコト
ト、政府當局ノ御答トノ間ニハ、ドウモ
致セヌ點ガアリマシテ、是ハ認識ノ相違ト
云フヤウナ議論ノ問題デハナクシテ、具體
的事實ヲ觀ル上ニ、ソレ〓〓立場ヲ異ニス
ルコトカラ生レテ來ルト思ヒマスカラ、サ
ウ云フコトヲ幾ラ繰返シテモ仕方ガナイノ
デ、止メマス、ダガ此點ダケハ政府ニ御伺
シテ置カナケレバナラヌト思ヒマス、昨日
モ石渡政府委員ノ御答ノ中ニ、煙草ノ値上
ハ明ニ間接稅ノ性質ヲ有ッテ居ル、斯ウ云フ
コトヲ言ハレマシタガ、ソレハ吾々モ其通
リデアルト信ジテ居リマス、隨テ間接稅ノ
性質ヲ有ッテ居ル煙草ノ値上ヲ、唯一片ノ省
令ニ依ッテ直チニ政府ガ爲シ得ル、斯ウ云フ
コトハ甚ダ不穩當ダト思フノデアリマシ
テ、當然法律ニ依ッテ國民ノ意思ヲ基礎ト
シテ改正サレナケレバナラヌト思フノデア
リマスガ、此點ニ對シテ政府ハドウ云フ工
合ニ御考ニナッテ居リマスカ、聞ク所ニ依レ
バ、過去ニ於テモサウ云フ意見ガ屢〓議會デ
問題ニナッタサウデアリマスガ、サウ云フ場
合ニ、何時デモ唯サウ云フコトハ都合ガ惡
イトカ、或ハ煙草ノ仲賣業者ガ買占ヲヤル
カライカヌトカ云フヤウナ、色々ナ意見ガ
アッタサウデアリマスガ、今日ノ專賣局ト小
賣商トノ關係ハ、過去ノ其當時ノ元賣捌制
度ト云フモノガアッタ時代トハ大分違ッテ居
ルヤウニ聞イテ居リマスルカラ、法律ニ依ッ
テ若干審議サレル期間ガアルニシテモ、其
期間ニ大量的ニ買占ガ行ハレルト云フコト
ハナイト思ヒマスカラ、客觀的事實ノ相違
ト云フ點カラ言ッテモ、又間接稅ノ性質ヲ
持ッテ居ルト云フ點カラ言ッテモ、當然是ハ
一片ノ省令デナクシテ、法律ニ依ッテ改正サ
レル手續ガ執ラレナケレバナラヌト思フノ
デスガ、サウ云フコトニ對シテ政府ハドウ
云フ工合ニ御考ニナッテ居リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=2
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003・花田政春
○花田政府委員 只今ノ御尋ノ點ニ御答致
シマス、此問題ニ付キマシテハ、大藏大臣
竝ニ政府委員デアル專賣局長官ノ方カラ
モ、他ノ機會ニ色々御答致シタノデアリマ
スガ、御趣旨ノ如クニ、煙草ノ値上ノ問題
ヲ法律デ改正スル方ガ宜クハナイカ、少ク
トモ豫算ト關係サシテ、豫算等ノ審議ガ濟
ンダ後デ、之ヲ改正スル方ガ宜クハナイカ
ト云フコトハ、前々カラ議論ノアル所ナノ
デアリマス、煙草ノ値上ニ付キマシテハ場
合ガ色々アリマスガ、其中煙草ノ値上ガ財
政上ノ收入ヲ目的トシナイ場合、例ヘバ物
價ノ騰落ニ依ッテ煙草ノ生產費ニ異動ガ生
ジタ場合トカ、サウ云フコトデ煙草ノ値上
乃至値下ヲ行フ場合、ソレカラ或ハ外國カ
ラ煙草ヲ輸入シテ居リマスガ、其煙草ノ
價格ノ決定ヲスル場合トカ、新ナ製品ヲ發
賣スル場合ニ其價格ヲ決メルトカ、斯ウ云
フ場合ニハ之ヲ一々議會ノ協賛等ヲ經ルト
云フコトハ、議會ノ閉會中ト云フヤウナコ
トモアリマシテ、是ハ事實上、事業上非常
ニ不便ダト思フノデアリマス、此點ニ付テ
ハ御議論ガナイカト思フノデアリマス、ソ
レカラ今御話ノ單ナル財政收入ノ增加ヲ目
的トシテ定價ノ改正ヲ行フ場合、是ハ性質
上消費稅ノ引上ゲト同ジ結果トナルカラシ
テ、議會ノ協贊ヲ求メル方ガ宜クハナイカ
ト云フコトハ、御尤ノ御議論グト思フノデ
アリマス、唯實際上ノコトヲ申上ゲマスト、
今御話ノヤウニ、議案ノ提出カラシテ、其審
議ヲ經ル間ニ煙草ノ値上ト云フコトガハッ
キリ世間ニ知レルト云フ結果、相當長イ期
間ニ亙リマシテ煙草ノ買占、賣惜ミ等ガ行
ハレル、是ハマア其期間ヲ出來ルダケ短ク
スレバ宜イヂヤナイカト云フコトモアルノ
デアリマスガ、實際大體今マデノ事例ニ徵
シマシテモ、煙草ノ値上ト云フコトガ世間ニ
分リマスト、可ナリ前カラ其噂ニ依ッテノ買
占ガ行ハレルト云フコトデアリマシテ、サ
ウシテソレニ伴ッテ煙草ノ製造數量ヲ增加
シテ行クト云フコトハ、工場トノ關係、ソ
レカラ原料ノ關係カラ非常ニ困難ナコトデ
アリマス、若シソレニ應ジテドン〓〓製造
シテ行クト云フト、今申上ゲタヤウナ困難
ガ生ズルバカリデナク、事實上配給上ノ責
任ニ於キマシテモ、思惑ノモノニ比較的便
宜ヲ與ヘテ、サウシテサウ云フコトヲシナ
イ普通ノ消費者ニ非常ニ不便ヲ與ヘルト云
フヤウナコトガ行ハレルノデ、非常ニ事業
ノ經營上困難ヲスル譯ナノデアリマス、ソ
レカラ今御話ノ元賣捌人ト云フモノガ無ク
ナッタカラ、餘程其點ハ緩和サレタノデハナ
イカト云フコトデアリマスガ、是ハ從來ト
テモ元賣捌人ノ買占、賣惜ミノ方ハ、是ハ
帳簿、書類ニ依ッテ十分之ヲ監督シ得タノデ
アリマス、寧ロ一般ノ思惑ニ依ル消費增ト
云フモノハ、却テ消費者ノ方ノ思惑買ニ押
サレルト云フコトガ多イノデアリマシテ、
元賣捌ノナイ今日ト雖モ、買占、賣惜ミ等
ニ依ル一般消費者ノ受クベキ不便、ソレカ
ラ事業上ノ不利乃至歲入ノ齟齬ト云フ如キ
コトハ、元賣捌人ガ無クナリマシタカラト
云フコトデ、大シタ變化ガナイノデアリマ
シテ、御話トシテハ御尤ダト思フノデアリ
マスガ、唯、今申上ゲマシタヤウナ事カラ
シテ、直グサウ云フ風ニスルト云フコトハ
困難カト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=3
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004・加藤勘十
○加藤委員 ソレデハ御伺シマスガ、現在
ノ煙草ノ關稅ハ省令デ自由ニ伸縮出來ルコ
トニナッテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=4
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005・石渡莊太郎
○石渡政府委員 關稅ハ御承知ノ通リ總テ
法律デゴザイマシテ、議會ニ提案致シマス
ガ、一昨々年通商擁護法ト云フ法律ヲ制定
セラレマシテ、之ニ依ッテ或ル程度議會ノ協
贊ヲ經ナイデ關稅率ノ伸縮ヲ致スコトガ出
來ル、斯ウ云フ風ニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=5
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006・加藤勘十
○加藤委員 旣ニ煙草ノ輸入ニ付テ多少ノ
幅サウ云フ彈力性ガアルニシテモ、法律
ニ依ラナケレバ出來ヌト云フコトニナッテ
居ルノガ原則デアリマス、サウシテ又國内ニ
於テノ煙草ハ專賣品デアリマシテ、他ノ
般商品トハ其性質ヲ大分異ニシテ居ルト思
フノデス、隨テ其材料ノ相場ノ高低ニ依ツ
テ、直チニ煙草ト云フ商品ガ影響ヲ受ケル
トハ考ヘラレナイ、隨テ法律ニ依ッテヤル
ト云フコトガ窮屈デアルト云フコトノ第一
ノ理由ハ私ハ成立タヌト思フ、ソレカラ第
二ノ間接稅的性質ヲ持ッテ居ル煙草ノ値上
ニ對シテ、他ノ消費稅其モノガ法律ニ依ラ
ナケレバ改正ノ出來ナイト云フ時ニ、獨リ
煙草、殊ニ大衆ガ大キナ額ヲ負擔スル煙草
ノ値上ガ勝手ニ省令一ツデ出來ルト云フコ
トハ非常ナ矛盾デアルト思ヒマスルシ、今
政府委員ノ御答ニナッタヤウナ理由ハ-
ダカラ法律ニ依ラナクテモ宜イト云フ理由
ニハ私ハナラヌト思フノデス、第一ニ煙草
ノ消費者ノ買占ト云フコトヲ今言ハレマシ
タケレドモ、一體消費者ノ買占ト云フモノハ
ドノ位ノ程度デアルカ、私ハ殆ド是ハ想像
出來ヌト思フノデス、假ニ「バット」ヲ二ツ
買ハウト思ッタノヲ五ツ買フト云フコトハ
出來ルケレドモ、普通ノ消費者ガ五十個入
一箱ヲ買溜スルト云フコトハ出來ハシナ
イ、私ハ消費者ノ買溜ト云フコトハ問題ニ
ナラヌト思フシ、又小賣屋ガ賣惜ミ、買占
ヲヤラウトシテモ、是モ其店ノ平素ノ賣上
平均ヲ取ッテ見レバ自ラ限度ガアルシ、假ニ
其限度ヲ越エテ買占ヲシヨウトシテモ、煙
草ノ如キハ、殊ニ兩切ノ如キハ、少シ長ク
ナレバ、染ミガ出テ直グソレヲ買ッタ需要
者ガ見付ケル、古イ物ナラバ、是ハ古イ物
ダト云フコトガ分ルシ、黴ガ出テ來ルカラ
直グ分ル、隨テ多ク買占ヲスルト云フヤウ
ナコトハ、貯藏ニ於テ餘程完全ナ設備ヲ持
タナイ限リハ、大量的買占ナント云フコト
ハ出來ナイト思フ、隨テサウ云フコトモ私
ハ理由ニナラヌト思フ、假ニ萬一若干ノ買
点、賣惜ミガアルニシテモ、ソレハ非常ニ
微々タルモノデアッテ、直チニ製造能力ニ變
動ヲ來スト云フ程ニ大袈裟ナ買占ヤ、賣惜
ミガ出來ルモノデナイト思フノデアリマシ
テ、サウ云フ理由ニ依ッテ法律ノ改正ガ困難
ニハナラヌト思ヒマスガ、此際總テノ政治
ヲ公明ニ行フト云フ意味カラ言ッテモ、法律
ニ依ッテ改正スルト云フ工合ニ改メラレル
コトガ適當デナイカト思フ、此事ハモウ當
然ズット前カラ行ハレナケレバナラヌ、煙草
ノ定價ヲ上ゲタリ下ゲタリスルト云フコト
ヲ仰シヤイマシタケレドモ、今迄ノ私共ノ
知ッテ居ル限リニ於テ、下ゲラレタコトハ
遍モナイ、私共ハ煙草ノ朝日ガ六錢ノ時カ
ラ知ッテ居リマスケレドモ、今迄一遍ダッテ
下ゲラレタコトハアリマセヌ、隨テ何時デ
モ上ゲル時バカリデ、其上ゲル場合ハ、多
クハ生產費ガ增加シタトカ、或ハ原料費ガ
增加シタトカ、外國トノ競爭ガ起ッタトカ云
フノデナクシテ、殆ド常ニ財政的目的ノ爲
ニ、收入增加ノ目的ノ爲ニ値上サレテ居ル、
殆ド其場合バカリダト思ヒマス、隨テ煙草
ノ値上ハ間接稅ノ引上ト同ジ意味ヲ有ッテ
居ルカラシテ、是非トモ法律ニ依ルヤウニ
改メテ欲シイト思フノデスガ、今ノ理由ダ
ケデハ私ハ國民大衆ハ納得セナイト思フ、
如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=6
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007・石渡莊太郎
○石渡政府委員 私先程御答致シマシタノ
ハ、關稅全般ノコトヲ申上ゲタノデゴザイ
マシテ、煙草バカリノ輸入問題デハゴザイ
マセヌデ、甚ダ失禮致シマシタ、煙草ノ輸入
ハ是ハ專賣局ガ一手デヤッテ居リマスコト
デ、是ハ普通ノ關稅トハ關係ゴザイマセヌ、
左樣ドウゾ御諒承願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=7
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008・花田政春
○花田政府委員 只今ノ御話ノ前段ノコト
ニ付キマシテハ、是ハ私共事業ヲヤッテ居リ
マスル方ハ、實際サウ云フ風ニ考ヘテ居ル
ト申上ゲルヨリ仕方ガナイカト思ヒマス、
ソレカラ値上ノ問題ニ付キマシテハ、今此
處ニハッキリシタ數字ヲ持ッテ居リマセヌケ
レドモ、確カ七囘位煙草ノ定價ノ改正ヲ行ッ
タト思ッテ居マスガ、其中一囘煙草ノ値下ヲ
行ッタコトガアル、後ハ大體定價ノ引上ノ方
ダラウト思ヒマス、ソレカラ買占ノ額ト云
フモノモ、是モ非常ニ測定ヲスルト云フコ
トハ難カシイノデアリマスガ、大體私共ノ
方デ普通ノ場合ノ消費狀態ト、ソレカラ去
年ノ春頃カラ値上ノ風評ガボツ〓〓立ッテ
カラノ賣行ノ狀況トヲ比較シテ見マスト云
フト、買占デナイカト豫想サレル金額ハ約
五六百万圓位ニ上ルカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=8
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009・加藤勘十
○加藤委員 其點ハ結局又是モ見解ノ相違
ト云フコトニナッテシマフカラ仕方ガアリ
マセヌガ、昨日ノ專賣局ノ煙草ノ賠償ニ付
テノ質問ニ對シテ御答願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=9
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010・花田政春
○花田政府委員 昨日ノ御尋ノ問題デアリ
マスガ、直接御伺致シマセヌカッタノデ、或
ハ御尋ノ趣旨ト違ッテ居ル所ガアルカモ知
レマセヌガ申上ゲマス、御質問ノ趣旨ハ大
體製造煙草ノ基ヲ成ス原料ノ、葉煙草ノ耕
作者ト云フ者ヲ十分保護シナケレバ、基ヲ
養フコトニナラナイノヂヤナイカト云フコ
トデアッタヤウニ思フノデアリマス、此點ニ
付キマシテハ、私共モ全ク御話ノ通リダト
思フノデアリマシテ、專賣局ト致シマシテ
ハ、製造煙草ノ原料費、葉煙草ノ耕作者ノ
收入ノ關係、竝ニ產地保護ト云フコトニ付
キマシテハ、常ニ深甚ノ注意ヲ拂ッテ居ルノ
デアリマス、每年精細ナル生產費ノ調査ヲ
行ッテ、其牧支狀態ヲ明ニシテ居ルノデアリ
マス、調査シテ居ルノデアリマス、最近ノ
實情ヲ申シマスルト云フト、葉煙草ノ賠償
價格ハココ數箇年間一度モ引下ヲシタト云
フコトハナイノデアリマス、隨ヒマシテ葉
煙草ノ買入金ノ增額、之ヲ小サク申シマス
レバ、反當ノ收得金ノ多少ト云フコトハ、
ニ作柄ノ豐凶ト云フコトニ懸ッテ來ルノ
デアラウト思ヒマス、政府ノ方デハ買入金
額ヲ減少シテ、サウシテ益金ヲ增加シヨウ
ト云フヤウナコトハ考ヘテ居リマセヌ、益金
ノ增加ハ消極的ノ方面カラ申シマスレバ、
主トシテ事業ノ合理化ニ依ル節約、ソレカ
ラ積極的ノ方面ト致シマシテハ、煙草ノ賣
行ガ增進シテ來ル、是ハ消費增デアリマス
ガ、ソレニ依ル賣上ノ增ト云フコトカラ來
ルノデアリマス、次ニ二三ノ例ヲ引イテ、
耕作者ノ收支ノ實情ヲ御話ニナリマシタ
ガ、大體御承知ノ通リ煙草ノ耕作ト申シマ
スモノハ、各種ノ農作物ノ中デハ比較的人
爲ノ巧拙及努力ノ如何ト云フコトニ依リマ
シテ、反當收入金ノ增減ノ差ト云フモノガ
非常ニ大キイノデアリマス、卽チ御話ノア
リマシタ耕作地ノ撰擇ニ於キマシテモ、連
作ト云フコト-二年ナリ三年ナリノ連作
ヲ必要トスル、或ハ煙草其モノガ病害ニ弱
イトカ、色々耕作上ノ注意ヲ要シマス外ニ、
是ガ乾燥技術ニ依リマシテ、更ニ收得金ニ
差等ガ出テ來ル、殊ニ米國種ノ如キニナリ
マシテハ、耕作ガ非常ニ良ク出來テモ、乾
燥ガ惡イト云フト、マルデ畑出來ノ良サヲ
スッカリ駄目ニシテシマフト云フヤウナ、技
術上ノ關係ガ非常ニアルノデアリマス、ソ
レデ御話ニナリマシタ宇都宮管內ニ於テ、
松川葉、或ハ達磨葉ヲ耕作シテ居ッタモノヲ
止メサシテ、米葉ヲ耕作サシタ、其爲ニ反
當ノ收入金ガ達磨葉デハ百二十圓バカリ
アッタノガ、米國種ニナッテ六十圓位ニナツ
タ、是デハ非常ニ困ルデハナイカト云フ御
話デアリマシタガ、是ハ御承知ノ通リ近來
煙草ノ需要ト云フモノガ段々變ッテ參リマ
シテ、サウシテ口付乃至刻カラ兩切ノ方ニ
移ッテ行クト云フヤウナ狀況デアリマスノ
デ、自然其原料デアリマス葉煙草モ、內地葉
カラ米國種ニ變ッテ行クト云フ傾向ガアル
ノデアリマス、之ニ付キマシテハ、專賣局ト
シマシテハ注意ヲ致シマシテ、出來ルダケ
急激ナ轉換ヲシナイト云フコトニ努メテ居
ルノデアリマス、サウシテ轉換ヲスルニ致
シマシテモ、米國種ニ適當シテ居リマス暖
イ地方カラ、出來ルダケ先ニ轉換ヲスル、サ
ウシテ東北トカ、宇都宮トカ云フ所ハ、成
ルベク此後ニ轉換ヲサセルト云フヤウナ方
針ヲ執ッテ來テ居ルノデアリマス、殊ニ宇都
宮管內等ニ於キマシテハ、寧ロ是ハ或點カ
ラ申シマスト、耕作者ノ方デ、ドウセ達磨葉
ト云フモノハ前途非常ニ需要ガ少ナイ、ソ
レデアルカラシテ寧ロ將來性ノ非常ニ多イ
米國種ニ代リタイト云フヤウナ希望モアッ
タノデアリマス、ソレヲ參酌シテ米國種ニ
代ヘタト云フコトデアリマス、代ヘマシテ
後天候ノ不良トカ、ソレカラ耕作技術ニ馴
レナイト云フコトノ關係デ、所期ノ成績ヲ
擧ゲ得ナカッタモノト思フノデアリマス、大
體ノ成績ヲ申シマスルト云フト、昭和九年
作ニ於キマシテ反當九十五圓六十錢ガ平均
ニナッテ居リマス、ソレカラ昭和十年デハ九
十九圓八十錢ト云フモノニナッテ居リマス、
ソレカラ昭和十一年ニハ八十七圓二十錢ト
下ッテ居リマスガ、是ハ眞岡ト云フ出張所ガ
アリマスガ、其出張所ノ區域ヲ全部米國種
ニ代ヘタト云フコトカラ來テ居ルト思フノ
デアリマス、ドウモヤハリ前申シマシタヤ
ウナ技術上ノ關係ガアリマシテ、初メノ一
二年ト云フモノハ成績ガ惡イカト思フノデ
アリマス、此點ニ付キマシテハ政府デモ出
來ルダケ指導其他ニ努メテ、耕作者ノ利得
ノ多イヤウニ努メテ居ルノデアリマス、ソ
レカラ別ニ御話ノアリマシタ岡山縣ノ問題
デアリマスガ、是モ大體ノ反當收入ノ平均
ヲ申上ゲマスト云フト、九年作ハ百十九圓、
十年作ハ百十圓、十一年作ハ百二十圓ト云
フ風ニナッテ居リマシテ、反當六十圓ト云フ
モノハ特別ナ事情ニ依ルモノヂヤナイカト
思フノデアリマス、ソレカラ達磨葉ノ用途
ニ付テモウ少シ考ヘタラドウカト云フコト
デアリマスガ、是モ政府トシテハ出來ルダ
ケ轉換ヲ少カラシメル爲ニ、使ヘルダケハ
內地葉モ口付ナリ、兩切ナリ、口付ハ勿論
デアリマスガ兩切ニモ使フ、現ニ曉ノ如キ
モノハ達磨葉モ使ッテ居ルノデアリマス、是
ハ出來ルダケサウ云フ方針ニ致シマスガ、
消費者ノ方ノ嗜好ト云フコトモ相當考ヘナ
ケレバナリマセヌノデ、漸次成ベク打擊ノ
少イ程度ニ於テ、需要ノ少イ煙草ヲ轉換シ
テ行クト云フ方針ヲ執ッテ居ルノデアリマ
ス、大體斯樣ナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=10
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011・加藤勘十
○加藤委員 私ハ其煙草ノ栽培技術方面ノ
コトニ付テハ、全然知識ヲ持チマセヌ、唯
農民カラ愬ヘラレマシテ、其事ヲ此機會ニ
御問シタノデアリマスガ、サウスルト丁度
私ガ調ベタノハ其茂木ノ管內ノ耕作者ダッ
タノデス、隨テ今御話ノヤウニ耕作品種ノ
轉換期ニ於テ、マダ過渡期ノ技術ニ十分習
得シナイ狀況ノ下ニ於ケル農民ノ例ダッタ
ラウト思フデス、將來サウシマスト云フト
其米葉ヲ栽培シテ行キマスト、反當リノー
-是ハ勿論色々今仰シヤルヤウナ技術ガ伴
フニシテモ、大體平均ニシテドノ位ノ反當
リ收穫ガアルヤウニ見ラレマスカ、其點ヲ
一ツ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=11
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012・花田政春
○花田政府委員 是ハ今申上ゲマシタヤウ
ニ、宇都宮管內邊リハ米國種トシテハ非常
ニ適地デアルト云フコトハドウカト思フノ
デアリマシテ、是ハ瀨戶內海邊リガ本場產
地デアリマスカラ、自然其邊トノ反當收入
ハ違ヒマスケレドモ、現ニ出テ居リマス實
績ハ約百圓ニナッテ居リマス、アト此上一二
割增ス位ノモノハ出來ルカト思フノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=12
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013・加藤勘十
○加藤委員 其點ハ私ソレ以上ニ聽キマセ
又、更ニ私ノ御伺シタイノハ、租稅增徵法
案ノ持ッテ居ル性質ト、ソレカラ結城財政ノ
編成ノ上ニ於テノ矛盾デアリマスルガ、ヤ
ハリサウ云フ何處マデモ矛盾ハ矛盾トシテ
附纒ッテ居ルノデアリマシテ、其矛盾ガ何處
カラ出テ來ルカト言ヘバ、今日ノ國際情勢
ニ基ク軍事費ノ增大デアルト云フコトガ言
ハレルト思フノデアリマスルガ、ヤハリ其
矛盾ヲ常ニ大衆生活ノ犠牲ニ求メラレルト
云フコトハ、色々ナ方面カラ昨日モ其實例
ヲ擧ゲタノデアリマスルガ、是ハ避ケラレ
ナイ狀態ニナッテ居ルト思ヒマス、其一ツ
ニ是ハ直接增稅問題ニハ關係アリマセヌ
ガ、此問題ニ關聯スル矛盾政策ノ一ツトシ
テノ郵便貯金ノ利子ノ引下問題ガアルト思
ヒマス、前ノ馬場財政ノ案ニ依リマスト云
マ、郵便貯金利率引下ニ依ッテ生ズル預
金部ノ收得一千万圓ト云フモノガ計上サレ
テ、ソレガ全部デハ勿論アリマセヌガ、大
體大衆カラ奪ッタモノヲ大衆ニ與ヘルト云
フ形式デアルガ、兎ニ角國民保險法デアル
トカ、母子保護法デアルトカ、一通リ社會
政策的施設ニ之ヲ振向ケラレルヤウニ組マ
レテ居ッタ所ガ、今度結城財政ニ於テハ利率
ノ引下ゲガ幾ラカ緩和サレタガ爲ニ、預金
部カラ會計ノ繰入ハ六百万圓デ、馬場財政
ト較ベレバ四百万圓減額シテ居リマスケレ
ドモ、同時ニ、社會施設トシテノ國民健康
保險法ノ費用ナドモ著シク減額サレテシ
マッテ馬場財政ノ時ニ大衆カラ奪ッテ、大衆
ニ與ヘルト云フ形式スラモ失ッテ、奪フモノ
ハ多ク奪ッテ、與フルモノハ僅少シカ與ヘナ
イト云フ事實ヲ示シテ居ルト思フノデアリ
マスガ、是等ニ對シテハドウ云フ風ニ御考
ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=13
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014・石渡莊太郎
○石渡政府委員 此問題ハ只今仰シヤイマ
シタ通リ、直接ニハ稅ノ問題ニ關係アリマ
セヌガ、一應考ヲ申上ゲマスト、結局六百万
圓-郵便貯金ノ利下ト云フモノヲ或程度
ニ止メテ、今アナタノ御言葉ノ大衆カラ奪ッ
テ大衆ニ與ヘル、斯ウ云フ意味デハ大衆カ
ラ奪フコトガ少クナッタノデアリマスルカ
ラ一方ニ與ヘルコトモ少クナッタト、斯ウ云
フ結果ヲ踏ンデ居ルノデハナイカト思フノ
デアリマス、此問題ハ詳細ハ私關知シテ居
リマセヌノデ、是ハ大藏省ノ外ノ政府委員
カラ申上ゲタ方ガ宜イカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=14
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015・増田義一
○增田委員長 加藤君ニ御諮リ致シマス
ガ、昨日御質疑ノ商工省ニ關スル分ハ、商
工省ノ政府委員ガ出席サレマシタカラ、此
場合答辯ヲシテ貰ハウト思ヒマスガ、如何
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=15
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016・加藤勘十
○加藤委員 ドウゾ左樣御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=16
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017・小島新一
○小島政府委員 昨日加藤委員ヨリ御質問
ガアリマシタ其御趣旨ハ、最近一般的ニ物
價騰貴ノ趨勢ニアル際ニ「カルテル」若ク
ハ「トラスト」等ノ獨占事業ヲヤッテ居リマ
スモノガ、其操短等ニ依リマシテ、一ヵ月
於テハ、利益ヲ擧ゲツツ、而モ配給上ニ於
テ相當圓滑ヲ缺クヤウナ事態ガ生ズルコト
ニ對スル政府ノ考ハドウカト云フ風ナ御趣
旨ニ拜承致シマシタ、御尤ナ御質問ト私共
モ感ジテ居リマス、今日ノ如ク原料ノ騰貴、
或ハ例ヘテ見マスルナラバ稅ノ賦課ト云フ
ヤウナ、斯ウ云フ事情ノアリマス際ニ、特
ニ是等ノ事情ヲ機會ト致シマシテ、不當ナ
ル値上ヲ致シマスト云フヤウナコトハ、嚴
ニ政府トシテハ取締ルベキモノデアルト考
ヘテ居リマス、而シテ御承知ノヤウニ此重
要產業ノ統制ニ付キマシテハ、法律ヲ以テ
或ル程度ノ監督ヲ致シマシテ、同時ニ「カ
ルテル」竝ニ「トラスト」ノ事情ニ付キマ
シテハ各種ノ報告ヲ徵シ、檢査ヲ致シマシ
テ、其事情ヲ注意致シテ、出來得ルナラバ
當業者ノ技術的ノ作用、「カルテル」等ノ運
用ニ依リマシテ、今日ノ如キ事態ニ處シテ
一般ノ消費者、關係產業ノ利益ヲ害シナイ
ヤウニ、自治的ニ適當ニ運用ヲシテ行クコ
トヲ期待シテ居ルノデアリマスケレドモ、
併ナガラ若モソレ等ノ運用ノ結果ガ、今日
ノ如キ場合ニ於テ關係產業、竝ニ一般消費
者ノ公正ナル利益ヲ害スルト云フヤウナ事
情ノアリマス場合ニ於テハ、商工省ト致シ
マシテハ之ニ對シテ公益上必要ナル事項ヲ
命ズルコトヲモ考慮セザルヲ得ナイト考ヘ
テ居リマスガ、今日マデノ事情ヲ申シマス
ト、昨日モ例ニ御擧ゲニナッタサウデアリマ
スルガ、紙ノコトヲ申上ゲマスルナラバ、
御說ノヤウニ只今相當ノ操短ヲ致シテ居リ
マス、日本製紙聯合會ニ於キマシテ生產制
限ヲ致シテ居リマスルケレドモ、當業者ニ
於キマシテモ今日ノ狀況ヲ篤ト考ヘマシ
テ、此一月二月重ネテ操業短縮ノ率ヲ緩和
致シマシテ、而シテ需給ノ圓滑ト云フコト
ニ自ラ努力シテ居リマスルヤウナ事情デア
リマス、其他ノ「セメント」ニ於キマシテ
モ操短ヲ一部緩和致シテ居リマス、人絹等
ニ於キマシテモ、當業者ガ自治的ニ今日ノ
事態ニ處シテ操業短縮ノ運動ヲ如何ニスベ
キカト云フコトヲ、自ラ考究シテ居リマス
ルヤウナ事情デアリマス、綿絲ノ問題ニ付
キマシテモ御承知ノヤウニ此一三月ハ或ル
程度ノ緩和ヲ致シマス、一方昨年ノ暮ニハ
六十万錘ト云フヤウナ非常ナル增錘ヲ致シ
マシテ、是ガ作業ヲ開始シテ居ルト云フヤ
ウナ事情デアリマス、綿絲ニ付キマシテハ、
差當ッテ需給ノ關係ニ於キマシテハサシタ
ル不都合ガアルト云フヤウナ事情モ認メテ
居リマセヌ、併ナガラ是等ノ各重要產業ニ
付キマシテハ篤ト今後ノ事情ノ推移ヲ私共
ト致シマシテハ注意ヲ致シマシテ、是等ノ
「カルテル」、殊ニ「トラスト」等ニ於キマ
シテ、其經濟力ノ濫用ト云フコトニ依リマ
シテ、不當ニ需給關係ノ圓滑ヲ妨ゲルトカ、
或ハ價格ノ點ニ於キマシテ一般大衆ノ利益
ヲ害スルト云フコトノナイヤウニ十分是ハ
監督致シ、重要產業統制法ヲ改正シマシテ、
是等ノ取締ヲスルト云フ趣旨ヲ十分徹底致
シマスヤウニ注意致シテ居リマスルヤウナ
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=17
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018・加藤勘十
○加藤委員 只今ノ御答デアリマスガ、言
葉ダケ聽イテ居リマスルト云フト、ニシル
何ト言ヒマスカ、缺如スル所ナク總テノコ
トガ巧ク行ハレル、若クハ行ハウト云フ意
思ヲ有ッテ居ラルル如ク聞エルノデアリマ
スカ、實際ハ一寸モ其通リ行ッテ居ラナイ、
ダカラ其言葉ヲ其通リ實行シテ貰ハナケレ
バ是ハ實際ニ於テハ私ハ政府ノ一方ニ於
テ高物價抑制政策、其ノ一方ニ於テハ資本
家ノ「カルテル」「トラスト」ノ結成ニ依ル物
價吊上政策ト云ヒ、甚シク矛盾ヲ來スト思
フ、紙ノ資本家ガ獨占事業ノ上ニ於テドン
ナニ國ノ政策ヲ動カシテ居ルカ、是ハ何處
マデ事實カ事實デナイカ知リマセヌガ、私
ノ聞イタ所ニ依ルト、例ヘバ洋紙ノ獨占資
本家ハ、日本ハ加奈陀ニ對スル報復關稅ヲ
設定シタコトガアリマシタ、其報復關稅設
定前ニ紙ノ原料デアル「パルプ」材ヲ買占メ
テ、モウ報復關稅ガ設定サレテモ、少シモ
自分ノ原料輸入ニハ差支ノナイヤウ買占ヲ
先ニヤッテ置イテ、サウシテソレガ出來テシ
マッタ後ニ報復關稅ガ設定サレタ、斯ウ云フ
コトヲ私ハ一昨年亞米利加ニ參リマシタ時
ニ、加奈陀ニ居ル日本人ノ有力者カラ此事
ヲ聞イタコトガアリマス、サウスルト云フ
ト報復關稅ト云フモノハ、國ノ政策ノ一ツ
トシテ行ハレナケレバナラヌニモ拘ラズ、
其事ガ獨占資本家ニ依ッテ自由ニ利用サレ
タト言ヒマスカ、濫用ト言ヒマスルカ、兎
ニ角ソレガ冒瀆サレテ居ルト云フコトニナ
ルノデアリマスルガ、サウ云フヤウニ一ツ
ノ例ヲ以テ見テモ、國ノ政策ト云フモノガ
獨占資本家ガ强力ニ働キマスト云フト蹂躪
サレ勝チニナル、今マデ商工省ノ重要產業
取締ト云フカ、統制法ト云フモノ、アレガ色
色ナ問題ニ發動スル、發動スルト云フコト
ハ新聞記事デハ見マスケレドモ、實際ニ於
テアレガ適用サレテ「トラスト」ノ生產制
限、或ハ「カルテル」ノ價格統制ニ付テ具體
的ナ監督權ヲ發動シタコトハ餘リ聞カナ
イ、サウ云フコトデ要スルニ結局政府ノ政
策ト云フモノハ、獨占資本家ニ動カサレル
結果デハナイカト思フノデアリマスガ、斯
ウ云フコトガアッテハナラヌト思フノデア
リマス、サウ云フコトニ對シテ商工當局ハ
將來ドウ云フ工合ニシヨウト云フ御考デア
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=18
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019・小島新一
○小島政府委員 只今商工省トシマシテハ
統制法ノ運用等ニ於テモ特ニ發動シタ場合
ガナイヂヤナカラウカト云フ御話デアリマ
シタガ、私共トシマシテハ先程モ申シマシ
タヤウニ、特ニ命令ヲ以テ斯クノ〓ノコト
ヲ命ズルト云フコトヲ爲ス前ニ、出來ルダ
ケ當業者ヲ指導シ、監督ヲシマシテ、自治
的ニ今日ノ時勢ニ副フヤウニ自ラ「カルテ
ル」等ノ運用ニ付テ善處セシメテ行クト云
フヤウニ指導シテ行キタイ、所謂サウ云フ
方面ニ於キマシテノ指導ニ付キマシテハ從
來モ努力致シテ居リマシタガ、今後一層其
點ニ付キマシテハ吾々トシマシテ、其方面
ニ注意ヲ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマ
ス。而シテ只今ノ紙ノ例ニ付キマシテハ、
獨占的ノ資本力ヲ以テ今日ノ事態ニ副ハナ
イヤウナコトガアリマス場合ニ於キマシテ
ハ、私共トシテ十分之ニ付テハ取締ヲ致ス
考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=19
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020・加藤勘十
○加藤委員 其點ハ私チットモ得心ガ行カ
ナイノデスケレドモ仕方ガアリマセヌ、最
後ニ大藏當局ニ御伺スルノデアリマスガ、
結局彼レ此レノ說明ヲサレルニ致シマシテ
モ、現下ノ情勢ニ於テハ或ハ急激ニカ、或
ハ徐々ニカ物價ノ騰勢ハ熄ム所ヲ知ラナイ
ノデス、サウナリマスト、昨日モ現在ノ程
度ニ於テ資本課稅ガ大衆ニ轉嫁サレルト云
フコトハナイデハナイカト言ハレマシタケ
レドモ、私共ハサウ見テ居ナイ、是ハ現在
ノ狀態ニ於テモ必ズ大衆ニ轉嫁サレルノデ
ス、ソコデ問題ハ大衆ノ生活ヲ擁護スルト
云フ立前カラ、大藏當局トシテ經費多端ノ
折柄節約ヲシ得ルモノハ節約シナケレバナ
ラヌト云フ御考ニナッテオ居デニナルノデ
アラウガ、私共ノ聞イテ居ル限リニ於テ
モ、隨分此政府事業ノ民間ニ註文ヲ出サレ
ル場合ニ、不當ト思ハレルヤウナ高價格ガ
存在シテ居ル、若シ具體的ナ實例ヲ擧ゲヨ
ト云フコトデアルナラバ、私擧ゲテモ宜イ
ノデスガ、唯直接關係ノ商人ガ困ルコトガ
アルカラ、名前ダケハ擧ゲナイケレドモ、
現ニサウ云フコトガアル、サウ云フ方面ヲ
節約サレレバ豫算總額ニ於テモ私ハ相當ニ
事業其モノヲ縮少シナクテモ、減額ヲシ得
ル餘地ハ十分アルト思フ、豫算ノ使途ニ付
テ組マレタダケノモノハ、何デモ年度內ニ
使ッテシマハナケレバナラヌト云フ考ヲ以
テ金一パイノモノヲ使ハレルト云フ方針デ
アルカ、出來ルダケ節約ヲシテ翌年度ニ廻
シ得ルモノハ〓サレルト云フ方針デアリマ
スカ、其點ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=20
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021・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ御話洵ニ御尤ナ所
モゴザイマス、是ハヤハリ役人モ餘程頭ヲ
今アナタノ仰シヤッタヤウナ所ニ置キマシ
テ考ヘナケレバイケナイト思フノデゴザイ
マス、自動車一臺買フニ致シマシテモ、贅
澤ナ自動車ヲ買フト云フヤウナコトハ差控
八、最近ニ於キマシテモ中央官廳ニ於キ
マシテ自動車ヲ購入スル場合ニ於テハ、國
產ノ自動車ヲ買フヤウニ致シタイ、斯ウ云
フコトモ申シテ居ルノデゴザイマシテ、役
人ノ頭ハ出來ルダケ國內商品ヲ使フ、贅澤
ナモノハ買ハヌ、斯ウ云フ方向ニ向ハナケ
レバイカヌ、斯樣ニ思フノデアリマス、其
點ニ付テハ役人自體ト致シマシテモ、餘程
是ハ考ヘテ行カナケレバナラヌト思ヒマ
ス、ソレカラ最後ノ御尋ノ翌年ニ繰越ス積
リデアルカ、年度內ニ使ッテシマフ積リデア
ルカ、斯ウ云フ御尋デアリマスガ、勿論年
度內ニ經費ニ餘リガアッタカラト言ッテ、之
ヲ使ッテシマフト云フコトハ宜クアリマセ
ヌ、餘ッタモノガアリマシタナラバ、之ヲ次
年度ニ殘ス、斯ウ云フ方針ニシナケレバイ
カヌト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=21
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022・加藤勘十
○加藤委員 斯ウ云フ例ガアルノデス、或
ル官廳デ註文ヲ發セラレタ、サウスルト其
受ケタ商人ガ、ドウモ是ヂヤ値段ガ安過ギ
テ困ルカラ、何トカシテモウ少シ註文單價
ノ値上ヲシテ貰ヘヌダラウカト言ウテ、交
渉ニ行ッタ所ガ、ソレヂヤ見積リヲ出シ直シ
テ見ヨト云フコトヲ言ハレタノデ、更ニ念
ヲ押シテモウ一遍聞イタ所ガ、商人ハ是ガ
一「グロス」ノ値段ダト思ッテ居タ、所ガ役所
ノ方デ註文シタノハ一「ダース」ナノデス、
商人ガ註文ヲ受ケル時ニハ一「グロス」ノ値
トシテハドウモ窮窟デヤリ切レヌ、斯ウ思ッ
テ居ッタ所ガ、役所ノ方ハ一「ダース」ナノデ
ス、十二倍デス、斯ウ云フコトヲ私ハ具體
的ニ聽イテ居ルノデス、如何ニ註文ヲ出サ
レル場合ニ杜撰ダカト云フコトガ分ル、ソ
レカラ又或ル東京ノ官廳デスガ、大資本デ
ヤッテ居ル事業ニ對シテ、中資本デヤッテ居
ル同質ノ製品ガ三分ノ一位ノ値段デ出來
ル、中資本デヤッテ、隨テ材料モ中資本ノ程
度ニシカ買へナイガ、三分ノ一ノ値段デ出
來ル、ソレヲ大資本デヤッテ居ル工場デ、大
量的ニ原料ヲ買ヘバ、モット原料モ安ク出來
ルダラウシ、生產ノ機械ノ設備モ、規格ノ
統一モ完備シテ居ルダラウシスルカラ、生
產費モモット安ク出來ル、ソレニモ拘ラズ、
中資本デヤッテモ三分ノ一ノ値段ナラバ或
ル程度ノ利潤ヲ得ルコトガ出來ルノニ、大
資本デハソレノ三倍ノ値段デ官廳ニ納メテ
居ル、斯ウ云フ點カラ見マシテ私ハ官廳ノ
註文サレル場合ニ可ナリ杜撰ナ點ガアルノ
デハナイカ、之ヲ一々私共全般ニ亙ッテ具
體的ナ例ヲ擧ゲルト云フコトハ、事實上不
可能ナコトデアリマスガ、サウ云フ一ツ二
ツノ吾々ノ耳ニ響イテ來ル事實ヲ以テシテ
モ、他ニモ左樣ナコトガ行ハレテ居ルノデ
ハナイカト云フコトヲ想像セシムルノデ
ス、自動車ヲ役人ガ各役所デ買ハレル場合
ニ、能率ヲ擧ゲル爲ニハ、良イ「スピード」
ノ出ル自動車ヲ買ハナケレバナラヌ、ソン
ナコトヲ私ハ言フノデハナクシテ、モット基
本的ナ、民間ヘノ註文ヲサレル場合ノ嚴格
ナル監督ヲヤッテ貰ハナケレバナラヌト思
ヒマス、斯ウ云フコトデ豫算ノ額ガ餘計ニ
殖エテ行ッテハ堪ラヌト思フノデス、ドウデ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=22
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023・石渡莊太郎
○石渡政府委員 普通ノ場合ニ於キマシテ
ハ、決シテ一人ヨリ見積リヲ取ルコトハゴ
ザイマセヌ、數人ニ競爭ヲサセマシテ、サ
ウシテ間違ナイヤウニヤッテ居ルト思フノ
デアリマスガ、併ナガラ是ハ役人ト致シマ
シテモ、今御示シノヤウナ場合ニ於キマシ
テハ、出來ルダケ安ク品物ヲ買ヒタイ、斯
ウ云フコトデヤッテ居ルト思フノデアリマ
スガ、今御示シノヤウナ事例ガアリト致シ
マスルナラバ、恐ラクソレハ何カ間違ッタ
ヤウナ場合デアラウカト思フノデアリマ
ス、サウ云フ場合ノナイヤウニ出來ルダケ
注意致スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=23
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024・加藤勘十
○加藤委員 ソレハ指名入札デアリマス、
ダカラ入札權利ヲ持ッテ居ル者ハ何人カニ
限定サレテシマッテ居ル、鐵道疑獄ガ起ッタ
時ニ、鐵道疑獄ノ根源ハ談合、卽チ入札者
ガ或者ニ限定サレテ居ルト云フ所ニ、サウ
シテオ互ノ仲間デ話合フト云フ所ニ、アノ
疑獄ガ起ッタト聞イテ居ルノデアリマス、鐵
道省デナイ他ノ官廳カラ民間ニ註文ヲ發セ
ラレル場合ニ於テモ、多クハサウ云フ特殊
ナ者ニ指名入札ニナッテ居リマシテ、他カラ
安イ物デ以テ同一ノ製品ヲ競爭シヨウトシ
テモ、競爭ノ仲間入リガ出來ナイノデアリ
やくろ斯ウ云フコトデハ段々役人ガ物ヲ註
文サレル場合ニ「ルーズ」ニナッテシマヒ、
指名入札ノ競爭ノ範圍內ニ於テハ安イ物ヲ
使ヘナイト思ヒマス、サウ云フ安イ物ヲ買
フ限度ガ指名入札ノ人員ニ限定サレテシマ
フ、ソコニ私ハ結果ニ於テハ非常ニ高イ物
ヲ-役人ガ注意深イニモ拘ラズ、高イ物
ヲ買ハサレテシマフト云フコトニナル、斯
ウ云フコトハ十分ニ注意シテ戴カナケレバ
ナラヌト思ヒマス、若シコンナ事ガ何時マ
デモ續クナラバ、私ハ具體的ノ事實ヲ暴露
シテ見タイト思フ、今ハ私ハ其事ヲ遠慮シ
テ置キマス、商人ニモ影響スルコトデアリ
マスカラ、遠慮シテ置キマスガ、何時マデ
モ此事ガ續クナラバ私ハ暴露シテ見タイト
思フ、幾ツカノ事業ニ亙ッテサウ云フ例ヲ
持ッテ居リマス、ソレハ其位ニシテ、是ハ大
藏省トシテモソレ以上ニ御答ハ出來ナカラ
ウト思フカラ止メテ置キマスガ、更ニ私ノ
御伺シタイコトハ、サウ云フコトニ依ッテ結
局ハ何ンダカンダト言フケレドモ、大衆ニ
轉嫁サレル、大衆ニ轉嫁サレレバ大衆ノ生
活ト云フモノヲ考ヘル時ニ、勢ヒ大衆ノ購
買力ヲ增スヤウナ方法ガ考ヘラレナケレバ
ナラヌト思ヒマス、此前ノ濱口內閣當時ニ
官吏ノ俸給ガ引下ゲラレタ、是ハ月給百圓
以上ノモノデアリマシテ、百圓以下ノ人ニ
ハ直接關係ガナイヤウデアリマスガ、是ガ
爲ニ昇給ガ停止シタトカ、昇給ノ率ガ少ク
ナッタトカ云フコトデ、百圓以下ノ月給ヲ
取ッテ居ル人モ隨テ迷惑ヲ受ケテ居リマ
ス、アノ昭和五年ノ農業恐慌ノ唯中ニ於
テ、國費ハ極度ノ節約ヲサレナケレバナラ
ヌ、豫算總額モ全體デ十四億シカナカッタ、
今日ハ正ニ國費ハ倍額以上ニ達シテ居ルト
思フ、此國家ノ豫算ガ倍額以上ニ達シ、小
賣物價ガ二割以上騰貴シ、尙ホ今後引續イ
テ著シク物價ガ騰貴スルト云フコトガ見透
シサレル場合ニ、私ノ考デハ少クモ年額二
千圓程度以下ノ官吏ノ俸給ハ、減額サレタ
ダケ元ニ戾サレナケレバナラヌ、隨テソレ
ニ依ッテ百圓以下ノ人モ昇給率ヲ早メルト
カ、高メルトカ、或ハ同時ニソレニ關聯シ
テ、民間ノ低額所得者ノ收入モ增加スルヤ
ウナ方法ガ選バレナケレバナラヌ、サウ云
フコトハ今申シマスヤウナ無駄ナ、極ク少
數ノ特定ノ商人ニ非常ニ大キナ利益ヲ與ヘ
テ居ルト云フコトヲ嚴格ニ監督シ、制限ヲ
スレバ、ソレ位ノ費用ハ出テ來ルト思ヒマ
ス、之ニ對シテハドウ云フエ合ニ御考ニナ
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=24
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025・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ御尋デゴザイマス
ルガ、官吏ノ俸給ヲ此際引上ゲル意思ガア
ルカドウカ、斯ウ云フ御尋ダト思フノデア
リマスガ、是ハ御承知ノ通リ昭和六年ニ減
俸ヲ致シタノデアリマス、百圓以上ノ役人
ハ總テ減俸ニ相成ッテ居ル譯デゴザイマス、
ソレデ其當時カラ見テ物價ガ上ッテ來タガ、
之ヲ復活スルノ意思ガアルカドウカ、或
復活ト云フヨリモ下ノ方ニ增俸シテヤラナ
ケレバイカヌヂヤナイカ、斯ウ云フ御話ダ
ト思フノデアリマス、是ハ勿論物價騰貴ト
相關聯シテ考ヘラルベキ問題ダト思フノデ
ゴザイマス、今年ノ豫算ニハ提出シテゴザ
イマセヌ、今此問題ハヤハリ將來ノ物價ノ
騰貴ノ問題ト相關聯致シマシテ、考ヘラル
ベキ問題デアラウ、斯ウ存ジテ居リマス、
般ニ增稅ヲ致シテ、國民ガ相當多額ノ負擔
ノ增加ヲスル、斯ウ云フ場合ニ當リマシテ、
今玆ニ多少物價ガ騰ッタカラト云ッテ、直チ
ニ官吏ノ增俸ヲ斷行スル、斯ウ云フ譯ニモ
行カヌト思フノデゴザイマスルガ、是ハ物
價ノ騰貴ト相關聯致シマシテ、將來考究サ
ルベキ問題デアルト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=25
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026・加藤勘十
○加藤委員 私ノ制限サレマシタ時間ガ參
リマシタカラ、大體是デ質問ヲ打切ル積リ
デアリマスルガ、要スルニ政府當局ノ御答
ハ、私共カラ見レバ何トカ其場ノ辻褄ヲ合
セルト云フコト以外ニ、根本ノ點ニ觸レテ
居ラヌト思フ、非常ニ不滿デアリマス、全
體トシテ御答ハ非常ニ不滿デアリマスル
ガ、是ハドウモ已ムヲ得ナイ、唯不滿ノ意
ヲ有ッテ居ルト云フコトダケヲ結論トシテ
述ベマシテ、私ノ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=26
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027・増田義一
○增田委員長 伊禮肇君ニ發言ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=27
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028・伊禮肇
○伊禮委員 私ハ砂糖消費稅ノ改正ニ關シ
テ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス、今囘ノ消
費稅ノ方ヲ見マスルト、第二種分蜜糖十八
號未滿ヲ廢止致シマシテ、第二種分蜜糖二
十二號未滿ニ合併シ、六圓五十錢ノ稅率
ニ變更サレテ居リマス、私共ハ豫テカラ此
砂糖消費稅ノ改正ガアリマスル場合ニハ、
沖繩縣ニ於ケル糖業ノ助成ノ上ニ於テ稅法
上何等カ特殊ノ御考慮ヲ拂ッテ下サルモノ
ト期待シテ居リマシタガ、此案ヲ見マシテ
實ニ失望シタ者デアリマス、私ガ率直ニ申
上ゲマスレバ、今囘ノ改正案ニ於キマシテ
ハ、豫テ吾々ガ色々希望シテ置キマシタ其
點ヲ御斟酌下サイマシテ、セメテ沖繩產ノ
分蜜糖ニ限リ第二種ノ十八號未滿、卽チ現
行法通リニ据置イテ戴ケルモノダト希望
シ、又期待シテ居ッタ譯デアリマス、ナゼ斯
ウ云フコトヲ希望スルカ、此稅制ニ對シテ
不滿ヲ懷クカト云フコトハ無論政府モ御承
知ダト思ヒマスルケレドモ、極ク簡單ニ申
上ゲマスレバ、分蜜糖ハ豪灣ト南洋竝ニ沖
繩ニ於テ製造シテ居リマスガ、其生產「コ
スト」ガ非常ニ違フコトハ御承知ノ點ト思
ヒマス、第一臺灣、南洋等ニ於ケル此甘蔗
原料ノ生產費ガ非常ニ違フ、臺灣ニ例ヲ取
リマスト、甘蔗千斤當リノ栽培費ガ臺灣ハ
二圓二十錢、沖繩ハ四圓九十八錢九厘、二
倍半ニナッテ居リマス、隨テ會社ガ農民カラ
原料ヲ買收スル場合ニモ、臺灣デハ千斤當
リ四圓、沖繩デハ千斤當リ六圓强ニナッテ
居リマス、步留ニ於テ亦差ガアル、臺灣ハ
千斤當リ一割三分カラ四分アリマスカラ、
千斤カラ砂糖ガ百四十斤內外出マスケレド
モ、沖繩產ノ原料デハ百斤乃至百十斤シカ
出ナイヤウナ狀態ニナッテ居リマス、サウス
ルト砂糖百斤當リノ原料代ヲ比較シテ見マ
スト、臺灣ノ方ハ三圓强デ買收ガ出來ル、
沖繩デハ六圓弱デナケレバ買收ガ出來ヌ、
斯ウ云フ風ナ結果ニナルノデアリマス、ダ
カラ自然此原料ノ買收ガ高イ、製造費モ亦
割高デアル、土地ノ狭少トカ、原料ノ不足
トカ、サウ云フ爲ニ小工場ガ分立致シマシ
テ.臺灣ヤ南洋ミタヤウニ大量生產ノコト
ガ出來ナイ、其結果自然製造費ガ高マル、
販賣ノ方モ其通リデアリマス、交通不便ノ
爲ニ運賃トカ、或ハ保險料トカ、總テガ高
イ、一例ヲ申シマスルト、臺灣大阪間砂糖
百斤ノ運賃ハ二十六錢デアリマスガ、沖繩
大阪間ハ距離ハ遙ニ近イノデアリマスケレ
ドモ四十四錢二厘掛ッテ居リマス、ソレカラ
臺灣、南洋デハ全部賣採集區域ト云フ制度
ガ設ケラレテ居リマスガ、沖繩デハサウ云
フコトガアリマセヌ、此點ニ於テ既ニ此砂
糖ノ步留ニ影響ガ來ル、全部賣ノ採集區域
ガ決ッテ居リマスレバ登熟シタモノカラ漸
次收穫シテ行ッテ、所謂原料管理ノ合理化ガ
可能デアリマスケレドモ、沖繩縣ニ於テハ
サウ云フコトガ出來ナイノデアリマス、其
爲ニ先程申シマシタヤウニ、同ジ千斤カラ
臺灣デハ百三四十斤ノ砂糖ガ出來マスケレ
ドモ、沖繩縣デハ僅ニ百斤乃至百十斤位シ
カ出來ヌ、斯ウ云フヤウナ狀態ニナッテ居
ルノデアリマス、更ニ其他ニ自然條件ガ不
利デアル、交通ガ不便デアリ、灌漑排水ノ
施設ガ出來テ居ナイ、或ハ又暴風早害ガ
多イ、公租公課ガ重イ、色々ノ點カラシテ
不利益ナル狀態ニアルノデアリマス、御承
知ノ通リ臺灣ノ糖業ガ今日發達シ、餘リ儲
カリ過ギテ居ルカラ、消費稅或ハ關稅ヲ上
ゲナケレバナラヌト云フヤウナ御意見モ
アッタヤウデアリマスケレドモ、臺灣ノ糖業
ノ發達ト云フモノハ、無論是ハ認メザルヲ
得マセヌガ、此發達ハ成程資本家ノ努力ニ
モ依リマスケレドモ、其間ニ於テ政府ガ莫
大ナ經費ヲ投ジテ之ヲ奬勵シタノデアリマ
ス、保護助長シタノデアリマス、或ハ排水灌
漑ノ施設トカ、或ハ製糖機械ノ補助トカ、
種苗ノ改善、或ハ資金ノ融通、原料採集區
域制度ノ助長保護、斯ウ云フ色々ノ保護助
成ヲ致シタノデアリマスガ、沖繩縣ノ糖業
ニ對シテハ、從來此臺灣南洋ニ於ケルガ如
キ、或ハ最近ニ於ケル北海道ノ砂糖ノ如
キ、アア云フ助成ガナイ、極ク最近ニ於テ
振興計畫トカ、糖業助成ガ行レタノデアリ
マスガ、殊ニ製糖會社ニ對シテハ何等ノ保
護ガナカッタノデアリマス、隨テ此製糖會社
ノ徑路ヲ見マスト、大正九年ニ資本金九百
万圓デ創立サレテカラ、十年ニハ千二十五
万圓マデ資本ヲ增額致シマシタケレドモ、
其間增資シタリ、減資シタリ一進一退致シ
マシテ、遂ニ昭和八年ニ漸ク七百五十万圓
ニ喰止メタノデアリマス、而モ大正九年カ
ラ昭和八年マデ十三年ノ間無配當デアリマ
ス、漸ク昭和九年カラ普通株年二分ノ配當
ヲスルコトニナッタヤウナ狀態デアリマス、
是ハ臺灣ノ年一割二三分ノ配當ヲ續ケ、年
年積立金ガ增大シテ行キツツアル所ノ製糖
會社ト比較スレバ、如何ニ沖繩ノ糖業ガ窮
況ニ陷ッテ居ルカト云フコトヲ御想像出來
ルト思ヒマス、臺灣ニ對スル砂糖ノ儲カリ
過ギルト云フ聲ガ、同時ニ沖繩ノ糖業ニマ
デ影響スルト云フコトハ甚ダ遺憾デアリマ
ス、以上申述ベルヤウナ實ニ慘メナ經營、
慘メナ狀態ニアルノヲ十分御諒承願ヒタイト
思ヒマス、私共ガ玆ニ消費稅ノ問題ニ付キマ
シテ分蜜糖、特ニ沖繩製糖會社ノ業態ヲ申
上ゲ、臺灣トノ比較、其窮狀ヲ申上ゲテ消
費稅ノコトヲ御考慮願ヒタイト云フコト
ハ、何モ一會社ヲドウシヨウト云フ考デハ
アリマセヌ、沖繩ノ糖業ト云フモノハ一般
府縣ニ於ケル米、繭ト同ジ地位ニアル最モ
重要ナル產業デアリマス、又是レ以外ニナ
イノデアリマシテ、糖業ノ方針ヲ確立スル
ニハドウシテモ分蜜糖ト黑糖ト竝進シ、或
ル一定ノ步合ヲ以テ進マナケレバナラヌト
云フ立前カラデアリマス、御承知ノ通リ黑
糖ノミヲ造レバ、自然需給ノ「バランス」
ガ破レマシテ、黑糖ハ低落シマス、其結果
沖繩縣ノ農村民ハ非常ニ困窮シナケレバナ
ラヌ、隨テ或ル一定ノ割合ハ分蜜化シナケ
レバナラヌ、黑糖ノ需給ノ「バランス」ヲ取
ル爲ニ分蜜製糖會社ノ存在ヲ必要トスルノ
デアリマス、隨テ分蜜會社ヲ生カシテ立テ
テ行クト云フコトハ、沖繩ノ糖業ヲ生カシ
テ行クト云フ結論ニ到達スル譯デアリマ
ス、最近吾々ガ考ヘテ居リマスノハ、ドウ
シテモ此割合ヲ黑糖ヲ六七十万町程度、分
蜜糖ヲ四五十万「ピクル」程度マデ旨ク割合
ヲ持ッテ行カナケレバナラヌト云フ考ノ下
ニ進メテ居ルノデアリマスガ、此稅制ノ結
果、此方針ガ非常ニ困難ニナッテ來タノデア
リマス、今私ガ申シマスヤウナ方針ヲ執ッテ
行クニハ、ドウシテモ農民ヲシテ會社ニ原
料ヲ喜ンデ賣ラス、斯ウ云フ立前ヲ執ラナ
ケレバナラヌ、又會社トシテモモウ少シ原
料ヲ高ク買ッテ貰ハナケレバナラヌ、此方針
デ行カナケレバナラヌノデアリマスガ、沖
繩ニ於ケル原料販賣ノ方法ガ、黑糖ノ値段
カラ製造費二圓七十錢ヲ差引イタモノヲ以
テ原料千斤ノ買收費ト致スノデアリマス、
隨テ黑糖ノ生產費ト分蜜糖ノ生產費ハ此採
算ニ於テ相違ガ出來テ來マス、百姓ハ隣保共
助ノ美風ニ依リマシテ、勞力トカ畜力等ヲ
生產費ノ中ニ計算シマセヌ、所ガ會社ニ於
テハ是等ヲ計算シナケレバナラヌ、サウ云
フ所ニ相當ナ行違ガ出來マシテ、此方針ガ
確立シナイヤウナ狀態ニアルノデアリマ
ス、ソコデ如何ニシテ會社ヲシテ此原料ヲ
高ク買ハシムルカト云フコトニナルト、ド
ウシテモ他ノ方法デハイケナイ、製造費ヲ
安クスルカ、或ハ販賣費ヲ安クスルトカ、
サウ云フ點デハ到底行カナイノデアリマ
ス、此原料ノ方デ何トカシナケレバナラヌ、
サウスルニハ稅制ニ於テ臺灣糖、或ハ南洋
糖等ト相當ナ差ヲ認メテ貰ハナケレバナラ
ヌト考ヘル次第デアリマス、現ニ臺灣ニ於
ケル原料千斤當リノ買收費ガ三圓、沖繩ニ
於テ六圓何ガシニナッテ居ル、更ニ今囘ノ稅
制ニ依リマシテ黑糖ノ値段ト分蜜糖ノ値段
ノ開キガ接近シテ來ル、サウナルト原料代
ハ益〓上ル、此三圓ト六圓ノ差ガモット大キ
クナル結果ニナリマス、サウ云フ點ガアリ
マスノデ、今後益〓分蜜糖問題ガ困難ニナツ
テ來ハセヌカト憂フル次第デアリマス、ソ
コデ政府ハ是ハ暫定案デアッテ、更ニ將來之
ヲ考ヘ直スト云フコトデアリマスカラ、今
日ニ於テハ致シ方アリマセヌケレドモ、將
來此稅制ヲ更ニ根本的ニ改革ヲ爲サル場合
二、相當ナル御考慮ヲ願ヒタイト思フノデ
アリマス、私ガ先程カラ第二種十八號未滿
ヲ殘シテ、沖繩產ノ分蜜糖ダケハ從來通リ
ノ稅制ニシテ貰ヒタイト云フコトヲ希望シ
タカラト言ッテ、是ガ國庫ノ收入ニ影響シ、
或ハ臺灣ノ製糖事業ニ影響シ、或ハ消費者
ニ影響スルト云フコトデアレバ、斯樣ナ無
理ナ御願ハシタクアリマセヌ、所ガ私ノ今
御願スルヤウナ方法デ行キマスト、決シテ
國庫ニ損害ハナイノミナラズ、二十餘万圓
ノ增收ニナルト私ハ計算シテ居リマス、現
ニ此政府ノ改正案ニ依リマスト、昭和十年
度ノ砂糖デ計算シマシテ黑糖ガ九十二万
町、其稅金ガ百十万四千圓、分蜜糖ガ二十
八万「ビクル」、一「ピクル」六圓五十錢トシ
テ百八十二万圓、合計二百九十二万四千圓
デアリマス、所ガ私ガ御希望申上ゲルヤウ
ナ分蜜糖ダケ第二種十八號未滿ニ留保シテ
戴イテ、サウシテソレニ依ッテ分蜜、黑糖ノ
振割ヲ取リマシテ、黑糖七十四万町、其稅
金ガ八十八万八千圓、分蜜糖五十万「ピク
ル」之ヲ四圓五十五錢ト稅金ヲ見マシテ、
二百二十七万五千圓、合計三百十六万三千
圓デアリマス、斯ノ如ク此稅制ヲ私共ガ
沖繩糖業救濟ノ爲ニ十八號未滿ニ留保シテ
戴イテモ、國家ノ收入ニ於テ寧ロ二十四万
幾ラノ增收ヲ來シ得ルト考ヘルノデアリマ
ス、國家ノ收入ニモ影響ナク、更ニ又一千
六百万「ピクル」ト云フ日本ノ砂糖ニ僅カ二
十万「ピクル」ヲ增產シタカラト言ッテ大シ
テ影響スルモノデハアリマセヌ、又一般生
產ニ對シテ此增收ガ影響スル譯デモナイ、
又國家ノ收入ニモ、亦糖業者ニモ些シタル
影響ナク爲シ得ル點デアリマスカラ、此點
ハ十分ニ御考慮ヲ願ヒタイト考ヘル次第デ
アリマス、私ハ特殊ノ事情ヲ申上ゲテ甚ダ
遺憾デアリマスガ、事實ダカラ仕方ガアリ
マセヌ、是マデ米、繭ニ付テハ色々ノ保護
政策ヲ講ゼラレマシタ、或ハ米價ノ吊上ゲ
維持トカ、サウ云フ政策ヲ講ゼラレマシテ、
一般農村ノ爲ニハ相當ニ盡シテ居ラレマス
ガ、此政策ガ同ジ農民デアリナガラ、沖繩
縣ニハ何等恩惠ガナイ、ノミナラズ米ヲ買ッ
テ食ッテ居リマス結果、寧ロ生活上非常ナ壓
迫ヲ受ケル結果ヲ來シテ居ルノデアリマ
ス、斯ウ云フ特殊事情デアリマスカラ、卽
チ一般ノ米ニ相當スル砂糖デアリマシテ、
此砂糖ニ對シテハ十分ナル御配慮ヲ御願シ
タイト思フノデアリマス、更ニ今囘稅制ガ
改正サレルコトニナレバ、私ノ希望スル所
謂留保ノ案ガナイノデアリマスガ、併シ此
儘將來政府ガ稅制ノ改革ヲスル迄、更ニ本
格的ノ改正ヲサレル迄待ツト云フコトニナ
リマスト、沖繩ノ糖業ニ非常ナ打擊ヲ與ヘ
ルノデアリマス、ソコデ願ハクバ此稅制改
革ニ依リマシテ打擊ヲ受ケル所ノ分蜜糖原
料主作農民保護ノ爲ニ、又一般糖業助成ノ
爲ニ相當ナル助成金ヲ出シテ戴キタイト思
フノデアリマスガ、政府ニ於テハ其御意思
ガアリマスカドウカ、此點ヲ御伺シタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=28
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029・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今伊禮サンカラ沖繩縣
ノ分蜜糖ニ關スル御話ガゴザイマシタ、此
點ハ只今伊禮サンノ御話ヲ伺ッテ色々考ヘ
テ居ッタノデアリマスガ、臺灣ニ於キマスル
分蜜糖、沖繩縣ニ於ケル分蜜糖、是ハ今日
ニ於キマシテモ性質ガ全部同ジデアリマ
ス、ソレデゴザイマスカラ今日此稅法ヲ改
正致シマシテ分蜜糖ノ課稅ヲ百斤ニ付テ六
圓五十錢ト、斯ウ致シマシテ、臺灣モ六圓
五十錢、北海道モ六圓五十錢、沖繩モ六圓
五十錢ト云フコトニ致シマシタ所デ、今マ
デト同ジ稅金デアリマシテ、其爲ニ會社ガ
新ニ受ケル所ノ打擊ハゴザイマセヌ、ソレ
ハ多少稅金ハ上ルカモ知レマセヌガ、會社
ノ受ケル打擊ハナイト思フノデアリマス、
唯沖繩縣ニ於キマスル所ノ分蜜糖ガ、此稅
率デ困ルト申シマスコトハ、沖繩縣ニ於ケ
ル黑糖ガ百斤ニ付テ九十錢ガ、今度ハ一圓
ニ相成ル、斯ウ云フコトデ其間ニ十錢シカ
上ラナイ、然ルニ分蜜ハ二種三種合併シテ
四圓五十五錢ガ六圓五十錢ニナッテ、チヨッ
ト二圓バカリ上ルノデゴザイマスガ、其爲
ニ結局沖繩縣ニ於テハ分蜜糖ハ黑糖ノ倍ノ
開キニナル、其關係ガ黑糖ニ著シク有利ニ
ナッタ、隨テ分蜜ノ方ニ力ガ入ラヌ、ソッチ
ノ方ヘ行クモノハ少クナルノデハアルマイ
カト、斯ウ云フコトニ結局ハ落著クノデア
ラウト思フノデアリマス、ソレデアリマス
カラ、生產費其他ノ、アナタノ仰シヤッタ
コトハ大體ソレハ事實デアラウト思ヒマス
ガ、今日ニ於キマシテ沖繩縣ニ於ケル所ノ
產糖ハ黑糖ガ百十四万一千「ピクル」、ソレ
カラ分蜜糖ガ四十三万六千「ピクル」デゴザ
イマスカラ、結局沖繩縣ト致シマシテハ、
黑糖ガ大部分デゴザイマスガ、其黑糖ノ採
算ガ著シク下ッテ來ルト云フコトデアリマ
スガ、沖繩縣ノ砂糖全體ト致シマシテハ、
今囘ノ此砂糖ノ消費稅ノ改正ト云フモノ
ハ、決シテ不利ナル改正デハアルマイト思
フノデアリマス、卽チ分蜜糖ヲドウスルカ
ト云フ問題デゴザイマスガ、分蜜糖ハ、是
ハ大分不利益ヲ受ケル、ソレハ事實デゴザ
イマス、詰リ沖繩縣內ニ於ケル所ノ黑糖ト
分蜜糖ノ關係上、分蜜糖ガ非常ニ不利益ヲ
受ケルト云フコトハアルト思フノデアリマ
ス、是ハ今御話ノアリマシタヤウニ、沖繩
縣ノ砂糖ダケニ安イ稅ヲ課ケルト云フ譯ニ
ハ、是ハ中々行カヌト思フノデアリマス、
是ハ消費稅全般ノ問題デアリマシテ、北海
道ノ砂糖ヲ安クスル、小笠原ノ砂糖ヲ安ク
スルト云フヤウニ、或ル一地方デ出來ル所
ノ物ヲ指定致シマシテ、特別ニ其稅率ヲ安
クスル、斯ウ云フ譯ニハ行クマイト思フノ
デアリマス、ソレデ御話ガアリマシタ通リ、
ヤハリ分蜜糖ノ製造ト云フモノハ沖繩縣デ
絕對ニ必要デアル、サウシテ其方ニ砂糖ヲ
持ッテ行カセナケレバナラヌ、斯ウ云フ政策
カラ行キマスレバ、ドウシテモ是ハ沖繩縣
ノ島民ニ一定ノ補助ヲ與ヘテ、サウシテ其
方ノコトヲ考ヘナケレバナラヌ、斯ウ思フ
ノデゴザイマシテ、此考ヘカラ致シマシテ、
只今農林省ト大藏省ト折衝中デゴザイマシ
テ、恐ラクハ此議會ニ追加豫算トシテ補助
金ノ補給額ガ提出サレルモノト考ヘテ居リ
マス、ソレカラ沖繩縣ノ砂糖ニ付テサッパ
リ補助金ナンカ受取ラヌ、斯ウ云フヤウナ
オ話デゴザイマスガ、是ハ決シテサウ云フ
譯ノモノデハゴザイマセヌ、昭和二年以來
アノ時ノ砂糖消費稅ノ改正ニ伴ヒマシテ、
色々問題ガゴザイマシテ、其爲ニ沖繩縣ノ
黑糖ニ付テハ今日ニ於キマシテ相當ナ補助
金ガ行ッテ居ル筈デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=29
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030・伊禮肇
○伊禮委員 大體只今主稅局長ノ御說明デ
滿足致シマシタガ、最後ノ補助金ガ行ッテ居
ル筈ダト云フ御話デアリマスガ、是ハ今局
長ノ仰シヤル通リ相當ニ保護助成ヲ受ケテ
居リマス、私ガ先程申上ゲマシタノハ臺灣
ノ製糖會社ト、沖繩ノ製糖會社ノ比較ヲ申
上ゲタノデアリマス、一般糖業ニ對スル助
成ガナイト云フコトハ言ヒマセヌ、寧ロ相
當ナ助成ヲ受ケマシテ非常ニ感謝シテ居リ
マス、又今後ニ於テモ十分此點ハ今局長ガ
仰シヤッタヤウニ相當ナ保護助成ヲ希望致
シタイト思フノデアリマス、尙ホ局長ノ仰
シヤルヤウニ沖繩縣ノ黑糖ト分蜜糖トノ關
係カラ、分蜜糖ノ立場ガ非常ニ困難ニナッテ
來ル、斯ウ云フコトハ其通リ事實デアリマ
スガ、私ガ先程希望致シマシタノハ、臺灣
糖或ハ南洋糖、或ハ沖繩糖トノ間ノ生產
「コスト」ガ非常ニ違フ、此點ニ於テ會社ガ
非常ニ經營難ニ陷ッテ居ル、唯茲ニ稅差ヲ認
メラレルナラバ、稅制上ニ於テ相當ナ考慮
ガ出來ルナラバ、サウシテ戴ケバ、其處ニ
會社トシテハ更ニ一段ト營業難ヲ突破シ得
ルト、斯ウ云フ考ヲ以テ希望申上ゲタ次第
デアリマス、ソコデ私共ハ何時モ此消費稅
ノ問題トカ、或ハ關稅ノ問題トカ、色々ノ
問題デ、政府ニ陳情シタリ、或ハ御願シテ
居リマスガ、其都度實ニ本意ヂヤナイ、成
ベク斯ウ云フコトヲセズニ、如何ナル稅金
デモ、直接稅ニ拘ラズ、間接稅ニ拘ラズ、
何レデモ喜ンデ御引受ヲ致シタイト、斯ウ
考ヘルノデアリマスガ、今マデ申上ゲタヤ
ウナ事情デゴザイマスノデ、沖繩縣ノ現狀
ガ、何故ニ此砂糖消費稅マデモ、或ハ其他
ノ問題ニ付テ色々御願シナケレバナラヌカ
ト云フコトハ、旣ニ政府ニ於テハ御承知デ
アリマス、ソコデ私ハ此問題ハ單ニ消費稅
ノ手心トカ、或ハ保護助成トカ云フ其程度
ダケデハ到底イカヌ、更ニ一步ヲ進メマシ
テ、東北同樣ニ振興會社ヲ立テマシテ、ソ
レニ依ッテ積極的ニ總テノ產業ノ開發ヲシ
テ戴カナケレバナラヌ、斯ウ云フコトサヘ
政府ニヤッテ戴ケバ、消費稅デアレ、或ハ其
他ノ稅デアレ、總テ縣民ハ喜ンデ今日ノ何
倍カノ稅デモ持チ得ル時期ガ來ルト、斯ウ
考ヘルノデアリマス、現ニ南洋、臺灣、或
ハ東北邊リデハ此新興會社ノ計畫ガアリマ
スガ、沖繩縣ノ如キ、金利ガ高イ、資金ノ
涸渴シテ居ル所、或ハ金融機關ガナイ爲ニ、
農具トカ、肥料トカ、畜產トカ、產業ニ必
要ナル資金サヘ融通ヲ受ケルコトガ出來ナ
イ、交通モ不便ダ、而モ其交通ノ開發ガ出
來ナイ、斯ウ云フ風ナ所デハドウシテモ產
業振興會社ト云フモノヲ設立シ、卽チ半官
半民ノ會社ガ出來テ、ソレニ依ッテ產業ノ開
發ヲシテ戴カナケレバ、將來何時マデ經ッテ
モ此稅金ヲ平等ニ負擔スルヤウナ地位ニハ
成リ得ナイト思フ、斯樣ニ考ヘルモノデア
リマス、現ニ此東北地方ハ非常ニ疲弊困憊
シテ居ルノデゴザイマスケレドモ、沖繩縣
ハマダソレニ劣ラナイ、ソレ以上ノ困憊狀
態デアルコトハ御承知ノ通リデアリマセ
ウ、一例ヲ申シマスルト云フト、靑森縣ノ
農家ノ生產額ガ一戶當リ五百三十四圓六十
九錢、岩手縣ガ四百六十七圓四十七錢、日
本全國平均ガ五百十二圓四十五錢、斯ウナッ
テ居リマスルガ、沖繩縣ハ僅ニ二百二十七
圓三十四錢デアリマス、是ハ何カラ來ルカ
ト云フト、先刻申シマスヤウニ、交通モ不
便デアル、交通機關モ完備シテ居ラヌ、農具
ニ致シマシテモ、他府縣ノ農家並ニ農具ヲ
用意スルノニハ一千百万圓ノ資金ガ要ル、
肥料ニシテモ臺灣ノ五分ノ一シカ使ッテ居
ラヌ、サウ云フヤウナ狀態デアリマス、ダ
カラ單ニ稅制ノ問題ニ於テ手心ヲ御願シタ
リ、或ハ糖業ノ保護助成ヲ御願シタ所デ、
到底此程度ノ方法デハ他府縣ノ農村並ニ之
ヲ持ッテ行ッテ、一般同樣ノ稅金ヲ負擔セシ
メルト云フコトハ非常ニ困難ダト考ヘマ
ス、其意味ニ於キマシテ現在政府ガ御世話
下サッテ居ル所ノ沖繩振興計畫ト竝行致シ
マシテ、更ニ半官半民ノ振興會社ノ設立ヲ
シテ戴カナケレバ更生ハ出來ナイト考ヘル
次第デアリマスガ、政府ニ於キマシテ將來
之ニ對シテドウ云フ御考ヲ御持チ下サルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=30
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031・石渡莊太郎
○石渡政府委員 伊禮サンノ御尋ハ沖繩縣
振興計畫ニ伴ッテ、沖繩振興會社ト云フヤウ
ナモノヲ起ス考ハナイカ、斯ウ云フ御尋ダ
ト思フノデアリマス、是ハ只今東北ニ東北
振興會社ト云フモノノ設立ヲ見タノデゴザ
イマスガ、意見ト致シマシテハ北海道ノ振
興ニモ、或ハ斯ウ云フコトガ要ルノデハア
ルマイカ、沖繩ノ振興ニモ斯ウ云フモノガ
要ルノヂヤアルマイカ、斯ウ云フ風ナ意見
ガ大分アルノデアリマス、此點ニ付キマシ
テハ一ツ能ク政府ト致シマシテモ熟考致シ
テ見タイト存ジテ居リマス、唯沖繩ノ振興
計畫ノ問題ハ今日色々考ヘラレテ居ルノデ
ゴザイマスガ、主トシタモノハマア砂糖、
ソレカラ海產物、其他ノ物デアルカト思フ
ノデアリマスガ、最近色々アチラノ方ノ御
話ヲ聞イテ見マスト、中々農產物ニ致シマ
シテモ相當ナ施設ヲ致シマスレバ、決シテ
サウ惡イ土地デハナイ、餘程農產物ナドモ
能ク出來得ル、斯ウ云フコトヲ言ッテ居ル
人ガアルノデアリマシテ、政府ト致シマシ
テモ一ツ十分其點ハ留意シテヤッテ行キタ
イ、サウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=31
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032・伊禮肇
○伊禮委員 先日石渡政府委員カラ和蘭標
本色相ヲ以テ課稅スルニ付テハ、今後相當
〓究ノ餘地ガアルト云フヤウナ御答辯ガ
アッタヤウニ承ッテ居リマスガ、私共モ此色
相課稅ニ付テハ相當疑問ヲ持ッテ居リマス
ノデ、此點ヲ一二伺ヒタイト思ヒマス、此
色相其モノガ變化スルト云フ說モアリマス
ルガ、更ニ此適用ヲ受ケテ査定ヲ受ケル場
合ニ色々ノ問題ガ起リマスノデ、茲ニ政府
ノ御意向ヲ伺ッテ置キタイト思フノデゴザ
イマス、專門家ノ話ヲ聞キマスト、砂糖ノ
色相ト云フモノハ原料ノ品質ニ依ッテモ違
フシ、或ハ又栽培地ノ土質ニ依ッテモ違フ、
或ハ又土質、品種ガ同一ノ原料デアッテモ、
例ヘバ黑糖ニ於テ申シマスルト、樽詰ノ方
法トカ、或ハ時間ノ經過等ニ依ッテ更ニ變化
スル、斯ウ云フヤウナコトヲ聞イテ居リマ
ス、而モ黑糖ノ如キハ農產製造品デアリマ
シー、一日ニ五六百斤シカ製造致シマセヌ、
サウ云フ小サイ工場ガ縣下ニ四千餘箇所モ
アルノデアリマス、隨テ此人爲的ニ此色相
ヲ統一スルト云フコトハ困難デアリマス、
而モ此砂糖ノ取引ハ色相ニダケ依ルノデハ
ナクシテ、無論品質ニ依ッテ値段ハ決ル、斯
ウ云フコトニナッテ居リマスルガ、第一種甲
トシテ、樽入黑糖トシテ稅金ガ百斤當リ九
十錢ト云フモノガ、其製造技術ノ進步トカ
云フ爲ニ幾ラカ色ガ良クナッタ、此爲ニ第二
種十八號ノ分蜜ト同樣ナ課稅ヲサレテ大騷
ギヲシタ、技術ノ進步奬勵ヲシテ、却テ砂
糖ガ良クナッタ爲ニ缺損ヲスル、元モ子モ
ナクナッタ、斯ウ云フ風ナ結果ニ陷リマシ
テ、其爲ニ色々心配シテ居リマス、此點ハ
ドウモ私共能ク分リマセヌガ、此稅法ニ依
リマシテ、第一種甲九十錢トアリマスケレ
ドモ、若シ此色相ガ第二種ニ相當スレバ直
チニ第二種ノ課稅ヲサレルト云フコトニナ
リマスト、黑糖トシテハ非常ニ脅威デアル、
寧ロ此技術ノ奬勵トカ、進步發達ヲ圖ルコ
トガ出來ヌト云フコトニナルノデアリマス
ガ、是ハ飽迄モヤハリ色相本位デ樽入黑糖
デモ、特ニ保護サレタル樽入黑糖デモ色相
ニ依ッテハ二種糖三種糖ニ見ラレルノデア
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=32
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033・石渡莊太郎
○石渡政府委員 和蘭標本十一號未滿ノ砂
糖樽入黑糖ト斯ウナッテ居ルノデゴザイ
マシテ、十一號以上ノ色デアリマスレバ、
其上ノ級ノ課稅ヲ受ケルノデゴザイマス、
是ハ今アナタノ仰シヤッタヤウナコトニ付
テ二三年前ヨリ屢〓其話ヲ伺ッタノデゴザイ
マスガ、和蘭標本ト、斯ウ申シマシテモ、
實ハ和蘭標本ハ主トシテ是ハ分蜜糖ノ標本
デアリマシテ、樽入黑糖ノヤウナアヽ云フ
砂糖ガ和蘭デ別ニ出來ル譯デモゴザイマセ
ヌシ、白下糖デアルトカ、黑糖デアルトカ
ト云フモノニ付キマシテハ、是ハ先ヅ大體
ニ於テ十一號未滿ノ砂糖ニ該當スルモノト
シテ扱ッテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=33
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034・伊禮肇
○伊禮委員 砂糖ノ問題ハ此程度デ打切ッ
テ置キマス、大體政府委員ノ御答辯デ滿足
致シテ置キマス
地方交付金ノ問題ニ付キマシテハ、各委
員カラ再三繰返サレマシタノデ、私ハモウ
少シ詳シク此點ハ御尋致シマセヌガ、我ガ
同盟ノ立場ト致シマシテ、極ク簡單ニ一言
御意見ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス、私共ハ
率直ニ申上ゲマスレバ、此稅制案ニ於キマ
シテハ、前ノ馬場案-相當非難ノアッタ
馬場案デハアリマスガ、地方ノ戶數割ヲ廢
シ、附加稅、雜種稅ヲ減稅シ、家屋稅ヲ國
稅ニ移管シ、サウシテ地方財政交付金制度
ヲ確立スル、此點ダケハ非常ニ贊成ヲ致シ
テ居ッタノデアリマス、現內閣ハ今囘ハ暫定
案デアッテ、次ニ根本的ノ稅制案ヲ出ス、斯
ウ云フ御言明ヲ致シテ居ラレマスガ、此問
題ニ付テ如何ナル御考デアルカ、更ニ馬場
案ヲ全然御認メニナラヌカ、或ハ又大體此
方針デ行カレル積リデアルカ、此點ヲ伺ッテ
置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=34
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035・石渡莊太郎
○石渡政府委員 交付金ノ問題ニ付キマシ
テハ、國稅、地方稅ノ改正ト相絡ンデ考ヘ
テ行カネバナラヌト思フノデゴザイマス、
併ナガラ前ノ案ト同ジヤウナコトデ行クカ
行カヌカ、斯ウ云フコトハ是ハ今後ノ〓究
ニ俟ツヨリ外仕方ガナイ問題デゴザイマシ
テ、今此處デアノ案通リノモノデ行クカド
ウカ、斯ウ云フコトハ一寸御答出來兼ネル
ト思フノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=35
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036・伊禮肇
○伊禮委員 私ノ質問ガ少シ間違ッテ居ル
カモ知レマセヌガ、前ノ案ノ通リト云フ意
味ヂヤアリマセヌ、地方稅制ノ改革方針ノ
コトヲ私ハ御聽キシタノデス、方針ハ吾々
トシテハ戶數割ヲ先ヅ廢止スル、サウシテ
更ニ附加稅、雜種稅ノ減免ヲヤル、家屋稅
ノ如キハ地方稅トシテハ色々不均衡ノ點ガ
アルカラ、是ハ國家ニ移管シタ方ガ宜イ、
斯ウ云フ風ナ立前デ進ンデ行ッテ、更ニ地方
ノ稅源ノ不足ハ交付金ニ依ッテ賄フ、此方針
デ行クコトヲ希望スルノデアルガ、政府ノ
御方針ヲ實ハ聽イタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=36
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037・石渡莊太郎
○石渡政府委員 是ハドウ云フ方針デ行ク
カト云フコトヲ先ヅ大體-是モ難カシイ
問題ダト思フノデアリマシテ、今後ノ〓完
ニ俟タネバナラヌト思フノデアリマスガ、
今囘ノ七千万圓ノ分配、又ソレニ增加サル
ベキ三千万圓ノ分配、斯ウ申シマスモノガ、
ヤハリ戶數割、雜種稅、地租附加稅ト、斯
ウ云フヤウナモノニ主點ヲ置カレルコトニ
ナリマスカラ、大體ノ方向トシテハ、私ハ
變リナイモノト思フノデアリマス、唯戶數
割ヲ全廢スルカドウカ、町村ノ稅ノ中デモ、
戶數割ト云フヤウナ主體ニナッテ居リマス
稅ヲ、全部廢メテシマフカドウカト、斯ウ
云フヤウナ點ニ關シマシテハ、是ハ餘程〓
究モシ、論議モ盡サナケレバナラナイカト
思フノデゴザイマス、是ハ此前ノ案モ戶數
割ハ廢止致シマスガ、之ニ代ルニ所得納稅
者以上ノ分ハ、所得稅ノ附加稅ヲ受ケテ、
之ニ依ッテ三千万圓カノ收入ヲ得ル、ン
カラ所得納稅者以下ノ分ハ戶數割ニ類似ス
ル所ノ獨立稅ヲ納メル、ソレデスカラ町村
稅トシテ徵收サレルノハ、所得納稅者以下
ノ人ダケガ負擔スルノデアル、サウ云フヤ
ウナ行キ方ガ善イカ惡イカト云フコトニ付
テハ、是ハ餘程檢討シテ見ル必要ガアルダ
ラウト、斯ウ云フ風ナ考ヘ方ヲ致シテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=37
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038・伊禮肇
○伊禮委員 次ニ御尋シタイコトハ自作農
地ニ相續稅ヲ免除スル意思ハナイカ、近時
資本主義機構ノ發展ニ伴ヒマシテ、中產以
下ノ農民階級ガ段々沒落シツツアリマスノ
デ、政府モ此點ヲ御心配ニナッテ、或ハ自作
農維持トカ、或ハ創設トカ、サウ云フコト
ニ努力シテ居ラルルコトト考ヘマス、此中
產階級ノ農民保護ノ意味カラ致シマシテ
モ、亦日本ノ特殊性タル家族制度ノ維持カ
ラ見マシテモ、所謂父祖傳來ノ土地、之ヲ
子孫ニ傳ヘルト云フ意味ニ於テ一定ノ限度
ノ自作農地ヲ相續財產ニ加ヘナイ、加算シ
ナイト、斯ウ云フ制度ニ依ッテ維持シナケ
レバナラヌト吾々考ヘテ居リマスガ、政府
ハ之ニ對シテドウ云フ御意見ヲ御持チデセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=38
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039・石渡莊太郎
○石渡政府委員 自作農地、是ハ一反幾ラ
致シマスカ、一反四百圓ト致シマシテモ、
家督相續ノ免稅點ガ五千圓デアリマスカ
ラ、一町二反以上ヲ持ッテ居リマセヌケレバ
課稅ヲ受ケマセヌ、ソレニマア政府カラ借
金デモシテ自作農地ヲ買ッタ、マダソレニ借
金ガアリマスレバ、其借金ノ額ハ引キマス
カラ、サウ自作農地ニ免稅ヲ致サヌデモ、
實際上課稅ヲ受ケナイノヂヤナイカト思フ
ノデアリマス、ソレニ五千圓デ二十五圓ノ
稅金デアリマシテ、我國ノ相續稅ハ下ノ方
ハ比較的輕イヤウニ思ヒマスノデ、只今ノ
所自作農地ヲ免稅致サナクテモサウ云フモ
ノハ大抵實際上課稅ヲ受ケナイノデハナイ
カ、將來課稅ノ最低限ヲ更ニ引下ゲル、斯
ウ云フコトヲ考ヘマス場合ニ於キマシテ
ハ、御說ノヤウナコトモ一應考ヘテ見ル必
要ガアルカト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=39
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040・伊禮肇
○伊禮委員 ソレカラ農村ノ大衆生活ガ段
段苦シクナッテ來マスガ、是ハ要スルニ色々
ノ支出ガ多クナッテ來ル、或ハ消費稅ガ段々
高クナッテ來ル、此點カラ來ルノデ、成ベク
此支出ヲ少クシテ、大衆生活ヲ樂ニサセタ
イト云フ意味カラシテ、一般ノ極ク最下低
ノ者ノ爲ニ濁酒或ハ藷燒酎、斯ウ云フモノ
ノ自家製造ヲ許可スル意思ハナイカ、更新
又煙草ノ自家用製造ノ許可ヲスル御意思ハ
ナイカ、是ハ國家ノ財政ニモサシテ影響ナ
イト私ハ考ヘマス、現ニ南洋トカ、或ハ沖
繩縣ノ久米島等ニ於キマシテハ煙草ノ所謂
專賣法ノ施行ガアリマセヌノデ、自由ニ煙
草ヲ自家製造出來ルヤウニナッテ居リマス
ケレドモ、事實ニ於テハ極ク餘程ノ貧困者
デナケレバサウ云フモノノ自家用ノ製造ヲ
致シテ居リマセヌ、殆ド九割九分迄ハ日本
ノ專賣局ニ於テ製造シタ煙草ヲ購入使用シ
テ居リマス、斯ウ云フ點カラ見テモ、斯ウ
云フ煙草ノ自家用製造トカ、或ハ濁酒、藷
燒酎ノ如キ自家用ヲ許可致シマシテモ、是
ハ國家ノ稅收入ノ方ニサシタル影響アリト
ハ考ヘマセヌ、併シサウ云フ下級民ノ生活、
或ハ趣味ノ爲ニハ非常ナ影響ガアルモノト
考ヘマスノデ、此點ニ付テ政府ノ御所見ヲ
伺ヒタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=40
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041・石渡莊太郎
○石渡政府委員 濁酒ノ問題ニ付キマシテ
ハ、自家用濁酒ト云フモノヲ認メタラ宜イ
ヂヤナイカト云フ御議論ハ、古クカラアル
議論デアリマスガ、是ハ稅務官廳ト致シマ
シテハ非常ニ神經質ニ考ヘテ居ル問題デア
リマシテ、今日御承知ノ通リ酒ノ稅金ト申
シマスルモノハ、相當大キナ稅金デゴザイ
マス、濁酒、藷燒酎等ニ自家用ヲ認メマシ
タ場合ニ、果シテトレ位稅收入ニ影響ガア
ルカト云フコトハ、餘程是ハ考ヘナケレバ
ナラヌ問題ダト思フノデゴザイマス、殊
近來ハ此濁酒ト云フモノガ、非常ニ國民ノ
嗜好ヲ失ヒマシテ、今日ニ於キマシテハ、
東北ノ一、二縣ヲ除キマシテハ、餘リ嗜好
致サレテ居リマセヌ、ソレデ明治ノ初年ニ
ハ三十万石バカリアッタ濁酒ノ消費量ガ、今
日ニ於キマシテハ、政府ノ免許ヲ受ケテ製
造シテ居リマスノハ、一年ニ五千石位デア
リマシテ、モウ十箇年、十五箇年位致シマ
シタラ、恐ラク此濁酒ノ消費ハ消滅シテシ
マフノデハナイカト思フノデアリマス、是
ハマア稅收入カラ申シマシテモ幾ラモアリ
マセヌシ、又國民ノ嗜好ヲ失ヒ掛ケテ居ル
ノデゴザイマシテ、今更斯ウ云フモノヲ農
村ノ嗜好品トシテ-自家用ノ濁酒ヲ認メ
マスコトハ、一種ノ奬勵デゴザイマスガ
斯ウ云フヤウナモノヲ奬勵シテ、サウ
シテ一般ノ〓酒ヲ壓迫シテ行ク、斯ウ云フ
コトモ如何カト考ヘルノデゴザイマシテ、
只今ノ所政府ト致シマシテハ濁酒、藷燒酎
ノ製造ト云フコトニハ反對ヲ致シテ居リマ
ス次第デゴザイマス、煙草ニ付キマシテモ
是亦同樣デアリマシテ、國家ノ財政ニモ相
當大キナ影響モゴザイマスシ、又其事ガ果
シテ將來認メテ行クベキ問題カドウカト云
フ所ニモ一ツノ大キナ問題ガアルト存ジテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=41
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042・伊禮肇
○伊禮委員 鑛產稅、金ニ對スル鑛產稅ノ
創設ヲサレマシタガ、貧鑛ノ所有者トカ、小
資本家ノ如キハ、此爲ニ非常ニ困ッテ居ル
ノデアリマス、例ヘバ精鍊所ヲ持ツコトガ
出來ナイ、其爲ニ精鍊費ガ相當ニ掛ル、例
ヘバ實收率ト稱シテ八〇%ヲ引カレテ居ル
ト言ヒマス、更ニ危險率トカ云フ名前ノ下
ニ一割ヲ資本家ニ引カレル、或ハ運賃ガ掛
ル、色々ナ方面デ困難ヲ來シテ居ルヤウナ
次第デアリマスガ、此稅ニ付キマシテ、特
別ノ資本ノ小サイ、或ハ貧鑛所有者、斯ウ
云フ經營難ヲ愬ヘテ居ルヤウナ者ニ對シテ
ハ、之ニ補助トカ、何カノ方法ハナイモノ
デセウカ、此點ヲ御伺シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=42
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043・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今伊禮サンノ御尋ノ點
デゴザイマスガ、是ハ或ハ商工省カラ御答
申上ゲタ方ガ宜イカト思フノデゴザイマス
ガ、從來非課稅デゴザイマシタ金鑛ニ對シ
マシテ、新シク鑛產稅ヲ課稅スルコトニ致
シタノデアリマスルガ、鑛產稅ノ立前ト致
シマシテハ、個々ニ調査ヲシテ、其經營資
本ガ大キイトカ、小サイトカ、或ハ利潤ノ
大小トカ云フヤウナコトデ稅率ヲ區別致シ
マスルコトハ、ドウモ困難ノヤウニ存ゼラ
レマシタノデ、金鑛ニ對シマスル稅率ハ一
律ニ致シタノデゴザイマスガ、斯ノ如キ立
法ヲ致シマシタ結果、貧鑛ヲ處理シテ居ル
者ニ付キマシテハ、困難ノ度ガ增シタト云
フコトニ付キマシテハ、洵ニ御說ノ通リデ
アラウト思フノデアリマシテ、此點ニ付キ
マシテハ何等カ別途ノ方法デ貧鑛處理ガ成
立ッテ行クヤウニ、ソシテ產金事業ガ發達ス
ルヤウニ工夫シナケレバナラナイカト思フ
ノデアリマシテ、商工省ニ於キマシテモ私
ハ餘リ詳シイコトハ知リマセヌガ、從來貧
鑛ヲ處理シテ產金事業ガ發達スルヤウニ、
前ニハ金ノ採掘ノ機械ヲ輸入スル場合ニ或
ル補助金ヲ與ヘテ居ッタカト思ヒマスシ、現
在ニ於テモ或ル程度ノ奬勵ノ方法ヲ講ジテ
居ルカト存ズルノデアリマシテ、今後此鑛
產稅ノ新ナル課稅ノ結果-狀況ヲ見マシ
テ、何等カ更ニ補助金等ノ必要ガアルナラ
バ、之ニ付テハ補助ヲスルトカ其ノ他ノ點
ニ付テ或ハ考ヘテ貰フト云フヤウナ餘地ガ
ナイ譯デハアルマイト存ジテ居ル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=43
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044・石渡莊太郎
○石渡政府委員 伊禮サンノ只今ノ御尋デ
ゴザイマスルガ、是ハ前ノ案カラ見マスル
ト、此稅率ハ上ッテ居ルノデアリマスルガ、
附加稅ヲ徵收致サナイコトニ致シマシテ、
附加稅額ヲ總テ之ニ含メタノデゴザイマ
ス、隨テ金ニ對シマスル稅率ハ此前ニ提出
致シマシタ案ニ比ベマスト、千分ノ六ダケ
ハ下ッテ居ルト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=44
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045・伊禮肇
○伊禮委員 最後ニ伺ヒタイノハ不當課稅
ニ對スル救濟機關ノ設置ニ付テデアリマ
ス、不當課稅ヲサレタ場合ニ救濟ノ方法ハ
アリマスケレドモ、今日ノ此制度ハ實際ハ
有名無實デ、第一非常ニ長引ク、其爲ニ
部ノ人ハ別トシテ、モウ大多數ハ途中デ泣
寢入ッテシマフ、斯ウ云フ風ナ狀態ニナッテ
居リマス、ソコデ此救濟機關ニ付テ、是ハ
私ノ意見デスガ、今ノ行政裁判ヲ二審制度
ニスル、サウシテ一審ハ地方裁判所カ少ク
トモ、控訴院ヲ第一審ノ行政裁判所トシ、
現在ノ行政裁判所ヲ第二審ノ行政裁判所ト
云フコトニシテ、敏速ニ此不當課稅ニ對ス
ル救濟ガ行ハレルヤウニ致シタイ、斯ウ云
フ風ナ考ヲ持ッテ居リマスガ、政府ニ於テ此
不當課稅ニ對スル救濟ノ方法ヲ何カ御考慮
ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=45
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046・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ伊禮サンノ御尋ハ
洵ニ御尤ナ御尋デアルノデゴザイマスル
ガ、只今アナタノ仰セニナリマシタ地方裁
判所ヲ一審トシテ、行政裁判所ヲ二審ニシ
タラドウダ、斯ウ云フヤウナ御意見デアリ
マスガ、實ハ此稅ノコトヲ今日ノ地方裁判
所ノヤウナ構成ノ所ニ持ッテ行キマシテモ、
是ハ中々片付カナイ、罰金ノ問題ナドハ今
デハ地方裁判所へ行ッテ居ルノデアリマス、
砂糖ノ脫稅デアルトカ、酒ノ脫稅デアルト
カ、斯ウ云フ問題ガ行クノデアリマスガ、
中々普通ノ判事諸公ニハ事柄ガ了解サレナ
イモノデアリマスルカラ、却テ行政裁判所
デヤルヨリモ遲滯スルヤウナ結果ヲ見テ居
ル事件ガ幾ラモゴザイマス、ソレデドウシ
タラ宜イカ、私共實ニ困ッテ居ル問題デア
リマスガ、或ハ出來ルナラバ稅務裁判所ト
デモ言ヒマスカ、今日ノ稅務官廳ノ傍ラニ
デモ-傍ラト申シマスコトハ、是ト別個
ノ系統ニサウ云フヤウナ裁判所デモ設ケテ
簡單ニ裁判シテ行ク、サウシテ尙ホ結末ガ
付カヌ場合ニ地方裁判所カ、行政裁判所ヘ
行ク、斯ウ云フヤウナコトニデモシタラ宜
クハアルマイカト思ッテ考ヘタコトモアル
ノデアリマスガ、果シテ行政官ガサウ云フ
裁判ヲヤルト云フコトガ適當カドウカ、サ
ウ云フヤウナ點モゴザイマシテ、今マデ數
囘〓究シタコトハアリマスガ、今日迄其儘
ニナッテ居ルヤウナ狀態デゴザイマス、不當
ノ課稅ヲ受ケテ居リナガラ三年モ五年モ引
張ラレテシマッテ、其爲ニ遂ニ泣寢入ッテシ
マフ、斯ウ云フコトハ國民ニ取ッテ重大ナル
稅ニ關スル問題デアリマスルカラ、政府ト
致シマシテモ、愼重ニ考ヘナケレバナラヌ
事デアリマス、此點ニ付テハ今後ニ於キマ
シテ十分考究スルコトト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=46
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047・伊禮肇
○伊禮委員 最後ニ日本ノ今ノ立前トシテ
國防費ハ第一ニ考ヘナケレバナラヌ、サウ
シテ此國防費ガ將來ドウナッテ行クカ見極
メガ付カヌ以上ハ、將來ノ財政計畫ハハッ
キリ申上ゲラレナイ、斯ウ云フ風ナコトヲ
大藏大臣ハ言ッテ居ラレマシタガ、今日ノ世
界情勢カラ申シマシテ、互ニ軍備ノ擴張ノ
競爭ヲシテ居ルヤウナ狀態デアリマスルカ
ラシテ、大藏大臣ガ將來ノ財政ハ分ラヌト
斯ウ仰シヤルノハ無理ハナイト私ハ考ヘル
ノデアリマス、或ハ增稅、或ハ公債ガドノ
程度マデ行クカ分ラヌ、國防ト云フモノハ
相對的デアルカラ、何時マデ行ッテモ滿足ト
云フコトハナイ、此方ガ國防費ニ二十億使ッ
テ、是デ滿足ダト思ッテ居ッテモ、相手ガ三
十億使ヘバ、又ソレニ應ジテ三十億ニ持ッテ
行カネバナラヌ、此調子デ行ケバ、ドノ程
度ニ止マルカ分ラヌト云フ狀態デアリマ
ス、英米ノ如キ餘リ利害ノ衝突ノナイヤウ
ナ所デサヘ、海軍競爭ヲ猛烈ニヤッテ居ルヤ
ウナ狀態デアル、ダカラ私共ハ不敏ニシテ
サウ云フ大キイ問題ノ見透シハ到底出來マ
セヌケレドモ、私共考ヘマスルト云フト、
此儘放任スルト、ドノ程度マデ行クカ分ラ
ヌ、互ニ相手ノ上ニ行カウト、其「バラン
ス」ヲ維持シツツ一步先ニ行カウト云フコ
トヲ考ヘルニ違ヒナイ、之ヲ放任スレバ各
國トモ或ハ骸骨ガ大砲ヲ引張ルヤウナ狀態
マデ行ッテ、卽チ平和ノ爲ノ國防ト云フモノ
ガ、却テ咬ミ付キ合ヒヲシテ危機ヲ早カラ
シメルト云フ結果ニナリハシナイカト考ヘ
ラレマス、サウ云フ意味カラスルト是ハ抛ッ
テ置クモノデハナイ、、寧ロ我國デモ宜シイ、
進ンデ世界ニ呼掛ケマシテ、互ニ禍根ヲ除
ク、何故國防競爭ヲシナケレバナラヌカノ
根本原因ヲ能ク調査致シマシテ、ソレヲ互
ニ胸襟ヲ披イテ解決シテ行ク、サウシテ或
ル程度ニ國防ヲ止メナケレバナラヌト云フ
所マデシナケレバナラヌト私ハ考ヘマス、
サウ云フ意見ニ對シテ、或人ハ、日本ハサ
ウ云フ資格ハナイ、國際聯盟ヲ脫退シタ日
本ダ、或ハ倫敦條約ヲ脫退シタ日本ダ、斯
ウ云フコトヲ言フ人モゴザイマスガ、私ハ
是ハ違フト思フ、日本ガアヽ云フモノヲ脫
退シタノハ、平和ヲ希望セヌカラデハナイ、
國防ヲ何處迄モ競爭シヨウト云フ意味カラ
デハナイ、寧ロ平和ヲ希望シ、國際間ノ國
防ノ「バランス」ヲ成ベク取ル意味ニ於テ
最高ヲ決メテ、サウシテ財政ト不釣合ニ行
カヌヤウニト云フコトカラ來タノデアッテ、
決シテ日本ハ之ヲ提唱スルニ不適當ナ無資
格者ヂヤナイ、斯ウ考ヘマス、ダカラシテ
私ハ之ヲ互ニ各國ガ或ル程度マデ疲レ切ッ
テカラ提唱スルヨリモ、早ク此提唱ヲ致シ
マシテ、サウシテ國防競爭ヲ或ル程度ニ打
切リタイ、斯ウ云フヤウナ考ヲ持ッテ居ル
ノデアリマスガ、政府ハ之ニ對シテ、世界
ニ呼掛ケルダケノ用意ト御考ガアルカドウ
カ、是ハ寧ロ總理大臣ニ御尋シナケレバナ
ラヌノデアリマスガ、石渡政府委員ハ先ヅ
總理大臣ニオ成リニナッタヤウナ御考デ此
點ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=47
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048・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今ノ御尋ハ少クトモ大
藏大臣カラ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=48
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049・伊禮肇
○伊禮委員 成ベク適當ナル機會ニ總理大
臣カラ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス、其點
ハ政府委員、或ハ委員長カラ宜シク御取計
ヲ願ヒマス、私ハ丁度時間ガ御約束ノ時間
ニナリマシタカラ、是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=49
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050・増田義一
○增田委員長 是ニテ休憩致シマシテ、午
後一時三十分カラ開會致シマス
午後零時五分休憩
午後一時四十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=50
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051・増田義一
○增田委員長 休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
マス、渡邊泰邦君ニ發言ヲ許シマス-渡
邊泰邦君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=51
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052・渡邊泰邦
○渡邊委員 私ハ大藏省ニ對シマシテ先ニ
質問シ、更ニ商工省ニ對シマシテ質問致シ
タイト思ヒマスノデ、商工當局ノ御出席ヲ
煩ハシタイト思ヒマス、大藏省ニ對スル質
問ハ、政府委員ノ方デ結構デアリマス、其
第一ハ所謂傳統的ニ健全財政ト云フ言葉ガ
屢〓用ヒラレテ居リマス、新聞紙其他ニ於テ
傳ッテ居ル、國民ハ一體健全財政ト云フモノ
ハドウ云フ基本ノ指導精神ニ立ッテ居ルノ
カト云フコトヲ知リタイノデアリマシテ、
其基本精神ハ極メテ漠然ト人々ノ頭ニ注込
マレテ居ルノデアリマス、是非此基本的ノ
氣持ヲ知リタイト云フノガ吾々ノ希望デア
リマス、大體健全ト云フ言葉ハ、不健全ト
云フ一ツノ何モノカヲ想定シテノ相對的ノ
言葉デアリマスカラ、隨テ不健全ト云フ狀
態ガ玆ニ想定サレナケレバ、健全ト云フ言
葉ガアリ得ナイト云フ見地カラ、其事ニ付
テ特ニ御伺シタイノデアリマス、增稅案ヲ
審議スルニ當リマシテ、是ガ基本トナル命
題ト存ズルノデアリマスカラ、其點ニ付テ
殊ニ石渡政府委員ハ永年大藏省生活ノ方デ
アリマシテ、調査會ノ長官心得モシテ居ラ
レタト聞キマスノデ、其點ニ對シテ明快ナ
ル御答辯ヲ得タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=52
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053・石渡莊太郎
○石渡政府委員 渡邊サンノ御質問デアリ
マスケレドモ、財政ノ方針ト言ヒマスカ、
財政ト云フモノハ一體其收支ガ均衡ヲ得テ
居ル、卽チ一億圓ノ歲出ニ對シテ一億圓ノ
普通歲入ガアリ、公債ヲ以テ支辨シテ行カ
ナクモ宜イト云フノガ財政ノ常道デアルト
思フノデアリマス、世ニ健全財政ト言ハレ
テ居リマスガ、大藏省デ別ニ健全財政ト云
フコトヲ言ッタコトハゴザイマセヌ、主トシ
テ是ハ「ジャーナリスト」ノ付ケタ名前ダト
存ズルノデアリマス、昭和七年以降公債
ガ多額ニ發行サレテ今日ニ至ッテ居ルノデ
アリマスガ、所謂健全財政ト云フ意味ハ、
出來ルダケ公債ノ發行額ヲ少クシテ、普通
歲入ヲ以テ國家ノ經費ヲ賄ッテ行ク、斯ウ云
フコトダト思ヒマス、併ナガラ文字通リノ
健全財政、卽チ國家ノ普通歲入ヲ以テ經費
ニ充テテ行クト云フ所ノ健全財政ト云フモ
ノハ、昭和七年以來行ハレタコトハゴザイ
マセヌ、其中デ健全財政ト謂ハレテ居リマ
ス所ノ藤井大藏大臣ノ時代ニ於キマシテ
モ、ヤハリ相當ナル公債ヲ發行シテ居ッタノ
デゴザイマス、要スルニ今日ノ財政ノ持ッテ
行キ方トシテハ公債ニ依ル、增稅ニ依ル、
サウ云フヤウナ各種ノ收入ヲ集メマシテ國
費ヲ支辨シテ行ク、斯ウ云フ風ナ行キ方ヲ
致シテ居ルノデアリマシテ、要スルニ今日、
健全財政ト言ヒ、其他ノ財政ト言ヒ、先ヅ
大體ニ於テ五十步百步ノモノデアルマイ
カ、斯ウ云フ風ニ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=53
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054・渡邊泰邦
○渡邊委員 サウスルト健全ト云フ字句ノ
ミニ囚ハレルノデハアリマセヌカ、所謂健
全ト云フコトヲ意味スル財政ト云フモノハ、
其時ト所ニ依リマシテ、其內容ヲ異ニスル
ト解釋シテ宜イ譯デスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=54
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055・石渡莊太郎
○石渡政府委員 實ハ私モ健全財政ト云フ
意味ハハッキリ分ラヌノデアリマスガ、本當
ノ健全財政ト云フ言葉ヲ字義通リ言ヒマス
レバ、收支ノ計算ガ合ッテ居ル豫算ガキチン
ト行ッテ居ル、卽チ普通ノ歲入、國庫ノ實質
的ノ歲入デ以テ國ノ經費ガ總テ賄ハレル、
斯ウ云フノガ意義通リノ健全財政デアルカ
ト思フノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=55
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056・渡邊泰邦
○渡邊委員 ソレ以上ハ意見ニナリマスカ
ラ、大體其位ニシテ置キマスガ、現在ノ制
度、所謂資本制度ハ此儘デハ到底國民生活
ノ安定ヲ期スルコトガ出來ナイ、之ヲ放置
シテ置クコトハ結局國民生活ノ桎梏ヲ增ス
所以デアルト云フコトガ、有ユル國家ノ統
制ノ機關トナッテ現ハレタ根本原因ヲ成シテ
居ルト存ズルノデアリマス、サウスレバ大
藏當局モ既ニ現在ノ自由主義的經濟組織、
ソレガ國家ヲ此儘ニ發展セシメルニハ非常
ニ國家ニ有害ナリト認メルノカドウカ、其
點ヲ一ツ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=56
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057・石渡莊太郎
○石渡政府委員 自由主義的經濟ト云フモ
ノハ、是ハ言葉ニ於キマシテハ色々ナ意味
ヲ持ツト思ヒマスルガ、絕對的ナ自由主義
經濟ト云フモノハ、是ハ未ダ曾テ行ハレタ
コトモアリマスマイシ、又今後之ヲ行フト
云フコトモアルマイト思フノデアリマス、
詰リ或ル程度ノ自由主義ヤ、或ル程度ノ統
制主義、或ハ又今日行ッテ居ルヤウナ專賣、
ソレカラ爲替ノ管理、斯ウ云フヤウナコト
ハ是レ皆絕對ノ自由主義ト云フコトデ行ッ
テ居ル譯デアリマセヌ、ソコニハ國ノ官營
事業モアリ、又統制サレタ所ノ事業モアル、
斯ウ云フコトニ相成ルト思フノデゴザイマ
ス、今後ニ於ケル此傾向ガ狭マルカドウカ
ト云フ問題ニナルノデゴザイマスレバ、是
ハ御承知ノ通リ今後ニ於キマシテ各種ノ事
業、例ヘバ燃料ノ問題ニ對シテモ、今日ノ
國際情勢ニ鑑ミマシテ、資源ノ燃料、斯ウ
云フヤウナ事業ニ付テハ、ヤハリ國デ以テ
興シテ行ク、又ソレニ對シテ相當、各方面
ニ於テ統制ヲ加ヘテ行ク、斯ウ云フ傾向ニ
ナッテ行クト云フコトハ、是ハ已ムヲ得ザル
所ノ傾向デアラウト、斯ウ思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=57
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058・渡邊泰邦
○渡邊委員 私ガ御尋スル先程ノ健全ト云
フ字句ノ意味モ、自由主義ト云フ字句ノ意
味モ、其含マレテ居ル內容ノ學究的意味デ
ハナイノデアリマス、一般新聞ニモ使ハレ
テ、社會ニモ用ヒラレテ居ル常識トシテ健
全財政ト云ヒ、或ハ自由主義經濟、自由主
義經濟組織、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ現在ノ自
由放任主義、資本主義ノ運行ノ形體デアル、
資本主義運行ノ形體ガ其儘デハイカヌカ
ラ、有ユル方面ニ統制ノ手ヲ伸バスト云フ
ノガ現在ノ國家ノ方針デアラウ、私ハ斯ウ
考ヘル、只今ノ御答辯ヲ伺ヒマスト、自由
ノ場合モアリ、統制ノ場合モアル、ソレハ
勿論デアリマスガ、其基本デス、ソレヲ統
制スル指導精神ハ今日ノ儘ノ自由主義經濟
組織、其言葉ノ意味ハ現今有ユル方面ニ於
テ用ヒラレテ居ル其常識的意味ト解釋シテ
行キタイノデアリマスガ、其言葉ノ意味ニ
於ケル自由主義經濟組織ハ、最早機能ガ頽
廢シテ、此儘デハ國家存立ニ有害ナル作用
ヲ爲スト云フ見地カラ、其統制ガ國家ノ權
力ニ依ッテ發動スルノデアル、吾々ハ斯ウ考
ヘタイノデス、如何デセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=58
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059・石渡莊太郎
○石渡政府委員 渡邊サンノ仰セラレマス
ル今日ノ自由主義ト云フモノハ、既ニ頽廢
シテシマッテ居ル、玆ニ統制主義ト云フ新ナ
經濟ノ行方ヲ考ヘナケレバイカヌノダ、斯
ウ云フ御考モ一ツノ御考ノ行方カト思フノ
デゴザイマス、併ナガラ今日ノ此經濟ノ實
情ニ於キマシテ總テヲ統制經濟ノ下ニ之ヲ
立ッテ行ク、斯ウ云フコトモ中々實行上各種
ノ難關ニ打突カル問題デアラウト思フノデ
ゴザイマシテ、今日ノ經濟ノ實情ニ應ジマ
シテ統制シテ行クベキモノニ付テハ統制ノ
方向ニ進ミ、又經濟ノ實情ニ於テハ自由主
義經濟ノ儘存置シテ行ッテ宜イト思ハレル
モノハ、其儘ノ狀態デ行ク、斯ウ云フヤウ
ナコトデアリマシテ、必ズ此統制主義ノ下
ニ總テノ經濟ノ狀況ヲ歸一、統一シテシマ
ハナケレバイカヌ、斯ウ云フ御考モ如何デ
アリマセウカ、中々サウ云フコトニ行クト
云フコトモ難カシイノデハアルマイカト、
斯ウ云フ風ナ考ヘ方ヲ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=59
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060・渡邊泰邦
○渡邊委員 私ガ御伺スルノハ個々ノ派生
的問題ニ付テ御伺シテ居ルノヂヤナイノデ
物ニ依ッテハ自由放任、其自由ニ依ッテ發明
開發ヲ得ルモノモアリマスカラ勿論自由ノ
狀態ニ存置スルコトハ宜イノデアリマス、
併シ統制ガ段々必要トサレテ居ル現在ノ事
實此事實ハ今ノヤウナ自由主義經濟組織
ガモウ缺陷ガ起キテ來テ、其缺陷ヲ矯メル
三、統制ヲ各種ノ部門ニ時ト處ヲ異ニシ
テ隨時行フコトガ必要デアルト云フ見地カ
ラ、統制ヲ行フモノデアル、サウ云フ見解
ニ立ッテ、其指導精神ニ立ッテ居ルモノデハ
ナイノデスカ、其點ヲ一ツ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=60
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061・石渡莊太郎
○石渡政府委員 隨時隨所ニ其必要ニ應ジ
テ統制經濟ノ必要ガアルト、斯ウ云フ點ハ
御同感デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=61
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062・渡邊委員
○渡邊委員 其點ハ分リマシタ、更ニ御伺
シタイコトハ、現在ノ增稅案ガ一番問題ト
サレテ居ルコトハ、所謂物價ノ騰貴デアリ
マス、此物價ノ騰貴ト云フコトハ世界的ノ
原因モアリ、又ハ公債增發、或ハ增稅ニ依
ル所ノ思惑ト云フヤウナコトガ重要ナル原
因ヲ成シテ居ルノデアリマセウガ、然ラバ
今此二億九千万圓位ノモノヲ增稅ニセヌ
デ、全部公債デ支辨スルト云フヤウナ場合
モ吾々ハ考ヘル、ソレデ增稅デ之ヲ賄ッタ方
ガ物價ノ騰貴ニ付テ、公債デ賄フノト其物
價ノ騰貴ニ影響スル相關關係ガドノ程度ニ
開キガアルカ、又ハドノ程度ニ社會ニ影響
スルカト云フ全面的ノ、全般的ノ見地ヲ
應御伺シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=62
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063・石渡政府委員
○石渡政府委員 此位ノ增稅デアルナラ
バ、此增稅ヲ止メテ寧ロ全部公債デヤッテモ
差支ナイノデハナカラウカ、物價騰貴ト云
フ問題ハ增稅ニ依ッタ方ガ起ルダラウカ、公
債ニ依ッタ方ガ起ルダラウカト、斯ウ云フ御
尋ダラウト思フノデアリマスルガ、是モ程
度問題デアリマシテ、公債ガ相當額發行ガ
出來ル、是ガ完全ニ消化サレテ行クト、斯
ウ云フコトデアリマスレバ、公債ニ依ルモ、
增稅ニ依ルモ、餘リ差ハナイカト思フノデ
ゴザイマス、增稅ハソレダケノ額ヲ-尤
モ稅ノ種類ニモ依ルノデゴザイマスガ、ソ
レダケノ金ヲ國民カラ取上ゲルノデアリマ
スカラ、何レカト申シマスレバ、經濟的ノ
效果トシテハ寧ロ「デフレーション」的ノ效
果ガアル、公債ノ發行ハドチラカト言ヘバ
「インフレーション」的ノ效果ガアル、斯ウ
云フヤウナコトヲ言ハレテ居ルノデアリマ
シテ、普通ノ場合ニ於キマシテモ、增稅デ
行クカ、公債デ行クカト云フコトハ、公債
デ行キマス方ガ物價騰貴ニ幾ラカ關係ヲ
持ッテ來ル、斯ウ云フコトガ言ヘルト思フノ
デゴザイマス、併ナガラ今日ノ場合ニ於キ
マシテハ隨分公債モ累積致シマシテ、實〓
多額ナ額ニナッテ居ルノデゴザイマス、昭和
十二年度ニ於キマシテモ、相當多額ノ公債
ヲ發行致サナケレバナラヌ狀態デゴザイマ
シテ、今日ノ場合ニ於キマシテハ、物價問題
カラ行キマシテモ、亦公債ノ消化問題カラ
行キマシテモ、此程度ノモノハ增稅ニ依ッタ
方ガ、總テ旨ク行クノデハアルマイカ、斯
ウ云フ風ナ考ヘ方ヲ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=63
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064・渡邊委員
○渡邊委員 只今ノ御話能ク分リマシタ、
公債ハ「インフレ」ヲ刺戟シ、增稅ハ국)
レーション」ノ形態ニ陷リ易イ、サウスレ
バ產業ノ急速ナル發達ガ、現在ノ日本ノ國
家ノ經濟ヲ救フ一ツノ途デアルト云フ大藏
大臣ノ觀方、其觀方ト「デフレーション」ヲ少
シデモ起スヤウナ增稅トハ、其點ニ於テ矛
盾シヤセヌデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=64
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065・石渡政府委員
○石渡政府委員 渡邊サンノ只今ノ御意見
デゴザイマスルガ、普通ノ場合ニ於キマシ
テ增稅ト公債ト云フモノガ左樣ナ傾向ヲ持
ツコトハ否ミ難イダラウト思ヒマス、ソレ
デ髙橋大藏大臣ガ昭和七年來數年間此稅制
ヲ其儘ニシテ置カレタノモ、實際ハ能ク分
リマセヌガ、ヤハリ其邊ノ御考ガアッタノ
デハアルマイカト思フノデアリマス、併ナ
ガラ旣ニ今日ニナッテ來マスト、御承知ノ通
リモウ大分公債ヲ持ッテ居リマスル銀行ニ
致シマシテモ、相當是ハ多額ノ公債ヲ持ッテ
居リマス、昨年來公債ノ賣行ト云フモノモ、
左樣ナ狀態カラ致シマシテ、先年ニ比較ヲ
致シマシテ餘リ思ハシクゴザイマセヌ、ソ
レデ是等ノ點カラ考ヘマスレバ、此際我國
ニ於テ產業ヲ興ス、斯ウ云フ上カラ見マシ
テモ寧ロ公債ノ發行額ヲ餘計ニ致スヨリ
モ、ソコハ增稅ニ依ッテ是ダケノ收入ヲ得
ル、斯ウ行キマシタ方ガ經濟界ニ於キマス
ル總テノ狀態ヲ圓滑ニ運轉シテ行ク途デハ
アルマイカ、斯ウ云フヤウニ考ヘル次第デ
ゴザイマス
○渡邊姿員御話ヲ聽イテ居ルト「マンチェ
スター」學派ノ重商主義時代ノ考ガ未ダ
ニ殘存シテ居ルヤウニ思フノデゴザイマス
ルガ、ソレハマアソレトシテ、此物價ノ抑
制ヲ他ノ方面デ考ヘナケレバナラヌト云フ
コトハ、必然的ニ金融ノ統制ヲ不可分ト私
共ハ考ヘマス、此點ニ付テ將來國民生活ノ
安定ヲ圖ル上ニ於テ、物價ノ統制ヲスルナ
ラバ、必然的ニ金融ノ統制ニモ手ヲ仲バサ
ナケレバナラヌ、吾々ハ斯樣ニ考ヘマスガ、
其點ノ御考ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=65
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066・石渡政府委員
○石渡政府委員 金融統制ヲヤルカヤラナ
イカ、斯ウ云フ問題ハ、是ハ寧ロ私カラ御
答スルコトハ甚ダ不適當ダト思フノデアリ
RV.ソレデ勿論是ハ個人的ノ意見トシテ
申上ゲルノデアリマスカラ、大藏省トシテ
サウ云フコトヲ考ヘテ居ルカ居ラヌカト云
フコトハ、別問題ニシテ戴キタイト思フノ
デアリマスルガ、物價騰貴ヲ抑制スル、斯
ウ云フ問題カラ行キマスレバ、私ハ個人ノ
意見ト致シマシテ金融統制、ソレニ當然赴
クノデアラウ、斯ウ思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=66
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067・渡邊委員
○渡邊委員 寧ロ大藏省ノ責任ニ於テ聞カ
ヌデモ、アナタノ御意見トシテ聞イテ宜イ
ノデスガ、サウスルト今ノ結城サンヤ日本
銀行ノ池田サンハ、所謂資本主義、マア無
產黨ノ言葉デ言ヘバ金融資本ノ制覇ト申シ
マスカ、金融資本ノ產業制覇ト云フ言葉ヲ
以テ表現サレルヤウニ一般カラ認識セラレ
テ居ルノハ、是ハ事實デアリマス、其事實ハ
國民生活安定トハ凡緣ノ遠イモノデアルト
云フ風ニ吾々ハ考ヘマス、其點ニ付テアナ
タ個人ノ御考デ宜シウゴザイマスガ、如何
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=67
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068・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今渡邊サンノ御意見デ
ゴザイマスガ、實ハ私モ其點ニ付キマシテ、
大藏大臣ノ御意見ヲ伺ッタコトハゴザイマ
セヌノデアリマスガ、本年ノ一月ニ商工會
議所デ、商工會議所ノ會頭トシテ大藏大臣
ノ御演說ヲ伺ッタノデアリマスガ、其時ニ大
藏大臣ノ御演說ハ、統制經濟ト云フ方面ニ
餘程向ハレルヤウナ演說デアッタノデアリ
マシテ、私ハアナタノ御考ニナッテ居ルヤ
ウニ「マンチェスタースクール」ノ經濟學者
ダトハ思ッテ居リマセヌ······(笑聲)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=68
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069・渡邊泰邦
○渡邊委員 能ク分リマシタ、時間ガアリ
マセヌカラ、モウ一ツ御伺致シマスガ、國
稅ハ隨分其徵收ガ苛酷ニ取扱ハレテ居ルト
云フ問題ガ各所ニ起リマシテ、今日デハ相
當緩和シテ居ル事實モ拜聽シテ居リマス
ガ、併シ又國稅ニ對シテ相當嚴重ナル督促、
或ハ差押、競賣ト云フモノガ、困ッテ居ル人
ニ無慈悲ニ行ハレテ居ル事實モ吾々ハ耳ニ
スルノデアリマス、昨年竝ニ一昨年ニ於ケ
ル國稅徵收不能ノ爲ニ、個人若クハ法人ニ
差押若クハ競賣シタ大體ノ數ガ御分リニナ
リマシタラ、御知ラセ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=69
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070・石渡莊太郎
○石渡政府委員 差押及競賣ノ件數ノ御尋
デゴザイマスルガ、昭和九年度ニ於キマシ
テハ差押ヘマシタノガ十一万八千件デゴザ
イマス、競賣致シマシタノガ一万一一千件デ
ゴザイマス、ソレカラ昭和十年度ニ於キマ
シテハ、差押致シマシタモノガ十一万四千
件デゴザイマシテ、競賣致シマシタノハ九
千件デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=70
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071・渡邊泰邦
○渡邊委員 ソレハヨク〓〓ノ事デ差押競
賣スルノダトハ思ヒマスガ、サウ云フ事ヲ
受クル爲ニ、ドウニカ暮シテ居タ人ガ、ソ
レキリ破產シテ行方知レズニナッタト云フ
例ハ非常ニ澤山アルノデス、サウ云フ人ニ
對シテ何トカ緩和シテ、今日借リタ金デサ
ヘモ、金錢債務調停法デ、每月僅カ宛納メル
ト堪ヘテ吳レルト云フヤウナ際デスカラ、
年賦トカ、月賦ニシテ僅カ宛取ルト云フ風
ニシテ、此不況ノ際ニ、差押若クハ競賣ヲ
緩和スル方法ハヤレヌモノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=71
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072・石渡莊太郎
○石渡政府委員 稅務署ニ於キマシテモ、
從來トモ差押ハ隨分致シマス、納メナイ場
合ニ行キマシテ紙ヲ貼ルノデゴザイマスル
ガ、競賣致シマスノハヨクー〓ノ場合デゴ
ザイマシテ、競賣致スコトハ實ハ、出來ル
ダケ控ヘテ居ルノデゴザイマス、ソレデ只
今御話ノアリマシタヤウナ、差押ヲ致シマ
シテ稅金ヲチビ〓〓持ッテ來マスモノヲ受
取リマシテ、ソレガ入ッタ所デ差押ヲ解ク、
サウ云フ風ナコトヲヤッテ居ルノデゴザイ
マシテ、アナタノ今仰シヤッタヤウナコトヲ
行ッテ居ルノデゴザイマス、ソレデモ競賣件
數ガ一年ニ一万件ニモ達シマスコトハ非常
ニ遺憾デアリマスノデ、出來得ル限リ今後
ニ於キマシテ、アナタノ今仰シヤッタヤウ
ナ趣旨ヲ以テ實際上取扱ヒタイト思ッテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=72
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073・渡邊泰邦
○渡邊委員 アナタハ本省ニ居テ御存ジナ
イデセウガ、田舍ヘ行クト隨分稅務署ノ役
人ガ直グ差押シテ、競賣スル、其爲ニ泣カ
サレル人ガ相當大勢アルノデ、現ニ私ナド
モ差押ヲ屢〓サレテ居ル、ソレデ其時分ニ何
トカ月賦ニシテ負ケテ吳レロ、月二圓ヤ三
圓ナラ納メラレルカラ、サウシテ吳レロト
言フト、ドウシテモ言フコトヲ聞カナイ、
月賦ナドデハ取ラナイ、二度分カ三度分ナ
ラ取ルケレドモ、ソンナ每月月賦ナドデハ
大藏省ハ取ラヌノダト言ッテ競賣サレツツ
アルノデス、其點ハ御緩和願ヒタイト思ヒ
マス、ソレカラ次ニ御伺シタイコトハ、煙
草ノ値上デス、煙草ノ値上ハ國民ノ代表ニ
相談ナシニ出來ルヤウニナッテ居リマスガ、
之ヲ今後立法化シテ、國民ノ代表ト相談シ
テ、サウシテ値上スルト云フヤウナ、法律
ニスルヤウナ御考ハアリマセヌデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=73
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074・石渡莊太郎
○石渡政府委員 此問題ハ私ハ能クハ分リ
マセヌガ、先程專賣局ノ政府委員カラ致シ
マシテ、施行上困難デアルト云フコトヲ言ッ
テ居リマスノデ、尤モカト思ッテ居ル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=74
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075・服部英明
○服部委員 一寸關聯事項デ······只今渡
邊君カラ質問ノアリマシタ强制執行ヲス
ル、其前ニ於テ區役所ヘ稅金ヲ納メニ行キ
マスト、强制執行セラレタル場合ニ於テハ、
旣ニ罰金カ何カ、手數料ト云フモノヲ二十
錢カ三十錢カ附加セラレテ居ルノデアリマ
ス、其强制執行ヲ避ケンガ爲ニ、極メテ善
意ニ國稅ヲ區役所へ持ッテ行ッテ、其手數料
ヲ後デ納メルカラ、國稅ダケ先以テ領收シ
テ吳レト言ッテ請求シマシテモ、其手數料ト
一緒デナクンバ之ヲ領收シナイト云フノ
デ、稅官吏デスカ、役場員デスカ、拒絕シ
テシマフノガ實際デスガ、サウ云フ事モア
ルモノカ、如何デスカ、其手數料ト云フモ
ノハ手續上ノモノデス、ソレヲ手數料ト共
ニデナケレバ領收シナイト云フノデ、遂一
感情ヲ損ネテ本稅ヲ納メナイ、ソコデ强制
執行ガ來ル、爭ガ出ルト云フコトニナリマ
スガ、其場合ニ於テ國稅ダケヲ納メテ、後
カラ手數料ハ-違約料ト云フカ、督促料
ト云フカ、後カラ納メル、斯ウ云フヤウナ
場合ニハ之ヲ緩和スル方法ハナイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=75
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076・石渡莊太郎
○石渡政府委員 督促手數料ノ方ガ先ニ納
メルベキモノデゴザイマシテ、是ハ民事訴
訟法アタリデモサウカト思フノデゴザイマ
スガ、實體ノ債權ヨリモ先ニ手數料ヲ納メ
ルト云フコトニ相成ッテ居ルノデゴザイマ
シテ、ヤハリ二十錢ノ手數料モ先ニ御納メ
願ハヌトイカヌト思フノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=76
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077・服部英明
○服部委員 其說明デ能ク分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=77
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078・渡邊泰邦
○渡邊委員 今日ノ朝日新聞ニ出テ居ル各
稅ノ自然增收ノ見込額發表デスガ、、是ハ大
藏當局カラ發表サレテ居ルモノデアリマ
ス、增稅委員會ハ發表シタノガ出デ居ルノ
デスガ、今マデ高橋サン時代ニハ非常ニ豫
想ヨリモ餘計貰ッタ、稅金ガ餘計取レタ、非
常ニ國民ノ擔稅力ガ多クナッタト言ッテ喜ン
デ居ル、所ガ事實ハ豈圖ンヤ差押或ハ競賣
酷イコトヲシテ搔キ集メテ居ル事實ガアル、
ソレデ國民ガ非常ニ稅金ヲ餘計拂ッタ、國
ノ力ガ非常ニ良クナッタカラ、公債ヲ發行セ
ヌデモ宜イト言フヤウナ議論ヲ盛ニサレテ
居ッタノデスガ、サウ云フ嫌ヒハナイデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=78
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079・石渡莊太郎
○石渡政府委員 サウ云フ事實ハゴサイマ
セヌ、競賣件數ハ昭和八年、九年、十年ト
云フモノハ、特別ニ增加シテ居ル譯デハゴ
ザイマセヌ、只今申上ゲマシタ數字デモ、
九年度ト十年度デハ、十年度ノ方ガ著シク
減少シテ居リマスガ、九年度ト十年度デハ
十年度ノ收入ノ方ガズット餘計デゴザイマ
ス、ソレデ其數字ヲ申セバ、是ハ所得稅ニ
於テ著シク增加シテ居ル、法人ノ所得稅ガ
約三倍ニ相成ッテ居リマス、ソレカラアト砂
糖消費稅、織物消費稅、斯ウ云フヤウナモ
ノモ著シク增加シテ居ルノデゴザイマシ
テ、決シテ差押、競賣、之ニ依ッテ稅收入ノ
增加ヲ圖ッテ居ルト云フ風ナコトハ全然ゴ
ザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=79
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080・渡邊泰邦
○渡邊委員 ソレハ勿論差押、競賣デ圖ル
譯ヂヤナイノハ分ッテ居リマスガ、去年差押
ヤ競賣ガ多ケレバ、今年ハ威嚇ニ依ッテ、其
力ニ依ッテ畏縮セシメテ無理ニデモ取上ゲ
ルト云フ方法ヲ執ッテ居ルノデス、地方ノ稅
務署デハモウ直グ差押ヲスル、彼處ノ家ハ
稅金ヲ納メナイカラ、差押ヲサレテ潰レタ
カラ、俺ノ所デハ無理シテモ稅金ダケハ納
メナケレバナラヌト云フノデ、產業ニ及ボ
ス影響ハ非常ニ大キイノデス、是ハ一ツ諒
解ヲ得テ置キタイト思ヒマス、此質問ハ是
デ止メマス、ソレカラ砂糖ノコトデ一寸御
伺シタイノハ、明糖事件デス、有名ナ明糖
事件ニハアナタガ津雲君ニ答辯セラレタノ
ヲ聽イテ居リマシタ、アノ時、所謂百斤ヲ
臺灣カラ持ッテ來ル時分ニ、百二斤乃至百三
斤デスカヲ、大體途中デ目減リガアルモノ
トシテ大藏省デハ承諾シテ居ルノダ、脫稅
デハナイ答辯ニナッタヤウニ承ッテ居リマス、
今デモ-其後ソレハ依然トシテ繼續シテ
アノ事件ノ結末ハドウ云フ風ニ付イテ居リ
マスカ、其經過ヲ御伺シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=80
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081・石渡莊太郎
○石渡政府委員 明糖事件ノ問題ハ、只今
渡邊サンノ仰シヤッタノトハ少シ相違ガゴ
ザイマス、是ハ臺灣カラ原料糖ヲ持ッテ來
ル、此方デソレヲ精糖ニ精製致ス、其場合
ニ原料糖百斤ニ付テ精製糖ガ九十五斤出來
ルト、斯ウ云フコトヲ製糖會社トノ間ニ協
定致シマシテヤッテ居ッタ、ソレガイカヌト、
斯ウ云フ話デアッタノデゴザイマス、其他
ニ砂糖會社ニ於キマシテ不正ナコトモゴザ
イマシタ、其方ハ罰金ヲ取ッテ片付キマシ
タコトハ御承知ノ通リデゴザイマス、ソレ
カラ前ノ方ノ、百斤原料糖ヲ持ッテ來テ、實
際上精製糖ガ九十八斤出來テモ百斤以上ニ
相成ッテモ九十五斤トシテ稅務署ガ査定ス
ルノハイカヌト、斯ウ云フ話デアッタノデゴ
ザイマスガ、是ハ其後引續キマシテ此協定
ヲ致シテ居リマセヌノデゴザイマス、今日
ニ於キマシテハ百斤出來レバソレニ課稅ヲ
スル、九十斤シカ出來ナケレバ其九十斤ニ
課稅スル、斯ウ云フコトニ致シテ居ルノデ
ゴザイマシテ、其當時カラズットサウ云フ
扱ヲ致シテ居リマス、隨テ其當時ノ扱ヒ
方ト今日ノ扱ヒ方トハ全然別デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=81
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082・渡邊泰邦
○渡邊委員 能ク分リマシタ、此間法ガ動
搖シタ時分ニ必然的ニ「ギルダー」ニ影響
シテ、其影響ガ日本ノ砂糖會社ニ影響シテ、
砂糖會社ノ株ガ下ッタノハ御承知ノ通リデ
ゴザイマス、大藏省ノ當局ノ何ガ新聞ニ出
テ居ッタノヲ見マスルト、法ニ對スル日本ノ
影響ハチットモナイ、極メテ輕微ダト云フヤ
ウナコトガ出テ居リマスルガ、實際商賣シ
テ居ル人ニ聞イテ見マスルト、必シモサウ
デハナイ、殊ニ三國會議ナドノ模樣ガドウ
ナルカト云フコトハ、日本ノ經濟界ニ取ッテ
極メテ重要ナ問題デアルガ、斯ウ云フコト
ハ一體大藏省ハドウ云フ風ニ考ヘテ居ル
カ、聽イテ貰ヘヌカト云フヤウナ話モアッタ
ノデアリマシテ、御伺スルノデアリマスガ、
所謂蘭領印度ト申シマスガ、主ニ瓜哇デア
リマス、瓜哇ノ砂糖ニ對スル佛蘭西ノ資本
ガ相當動イテ居ルト云フコトデアリマス
ガ、其額ガ大體調ベガ付キマスデスカ、御
伺シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=82
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083・石渡莊太郎
○石渡政府委員 蘭領印度ノ糖業ニ對シマ
シテ佛蘭西ノ投資額ガドノ位アルカ、斯ウ
云フ御尋デゴザイマスルガ、是ハ現在ノ調
査ヲ持ッテ居リマセヌノデゴザイマスガ、四
五年前ノ統計デハ、蘭領印度ニ於キマスル
砂糖工場ハ、和蘭人ノ經營シテ居リマスモ
ノガ百五十二、日本人ノ經營シテ居リマ
スモノガ一ツ、其他ニ歐洲人ノ經營シテ居
リマスモノガ六ツデゴザイマス、此六ツノ
中ニ或ハ御尋ノ佛蘭西ノ資本ガ入ッテ居ル
カモ分リマセヌ、其點ハッキリ分リマセヌノ
デゴザイマスガ、法ガ下ッテ、ソレガ我國ノ
糖業ニ關係シテ來ル、斯ウ云フコトハ、佛
蘭西ガ蘭領印度ノ糖業ニ投資シテ居ルカド
ウカト云フ問題トハ別ノ問題デゴザイマシ
テ、佛蘭西ガ法ヲ下ゲルト、和蘭ガ同時ニ
自分ノ所ノ「ギルダー」ヲ切下ゲルデアラ
ウ、斯ウ云フコトニ關聯致シマシテ「ギル
ダー」ガ下ル、サウスルト瓜哇ノ砂糖ガ下
ル、サウスルト我國ヘノ競爭力ガ增加スル、
斯ウ云フコトデコチラノ砂糖ガ下ル、斯ウ
云フコトニ相成ルモノト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=83
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084・渡邊泰邦
○渡邊委員 其事ハ大體分リマシタ、三國
會議ノ模樣、所謂見透シニ付テハ大シタコ
トハナイデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=84
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085・石渡莊太郎
○石渡政府委員 三國會議ト申シマスト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=85
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086・渡邊泰邦
○渡邊委員 經濟會議デスネ、佛蘭西、英
國.米國三國會議、三國協定ト言ヒマスカ、
三國協定會議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=86
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087・石渡莊太郎
○石渡政府委員 其問題ハ私共ハッキリ分
リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=87
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088・渡邊泰邦
○渡邊委員 宜シウゴザイマス、次ニ砂糖
ノコトデモウ一ツ御伺シタイノデスガ、北
海道ノ「ビート」糖デスガ、是レノ租稅ヲ取
ル關係上、是ハ將來ドウ云フ風ニ--駄目
デスカ、一體アレハ大藏省ノ見地カラ言ッ
テドウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=88
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089・石渡莊太郎
○石渡政府委員 「ビート」糖ハ御承知ノ通
リ北海道、ソレカラ樺太ニ幾ラカ取レマ
ス、是ハモウ北海道ハ非常ニ熱心デゴザイ
マシテ、最近工場ノ數モ二ツ程增加致シマ
シテ、北海道ニ於キマシテ今日重要產業ノ
一ツトシテヤッテ居ルノデゴザイマス、最近
ノ成績カラ行キマスルト、極メテ良好ナノ
デゴザイマス、併シドウモ遺憾ナコトハ
未ダニ之ニ對シマシテ少カラザル補助金ヲ
與ヘテ居ルノデゴザイマス、一方ニ北海道
ニ於テ補助金ヲ與ヘテ砂糖ヲ造ルガ、補助
金ヲ與ヘナイデモ砂糖ハ臺灣等ニ於テ幾ラ
モ出來ルト云フ關係上、一體北海道デソン
ナニ砂糖ヲ作ル必要ガアルカドウカ、是ハ
一ツノ問題デアラウト思フノデゴザイマス
ガ、併ナガラ北海道ニ於キマスル糖業ハヤ
ハリ是ハ必要ノ產業ダラウト思フノデゴザ
イマス、ソレデ北海道ノ人々ニ言ハセマス
下、モウ暫ク補助金ヲヤッテ戴ケバ、アトハ
ズット安イモノガ生產サレルコトニ相成ル
デアラウ、斯ウ云フコトヲ言ッテ居ルノデ
ゴザイマシテ、北海道ニ於キマスル糖業ノ
將來ト云フモノハ、是ハ相當開ケテ行クモ
ノダラウト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=89
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090・渡邊泰邦
○渡邊委員 能ク分リマシタ、大體ソレデ
終リデアリマス、次ニ商工省ニ御伺シタイ
ノデアリマスガ、物價ノ統制ハドウシテモ
增稅、公債增發ニ依ル關係上、國家ガ之ヲ
シナケレバナラヌト思フノデアリマスガ、
其物價ヲ統制スルニ當リマシテ、現實ニ「セ
メント」ノ如キハ、ハッキリ統制サレテ居リ
マス、橫濱渡シ幾ラト云フ風ニハッキリ統
制サレテ居リマス、所ガ「セメント」ノ品
物ハ統制サレテ居リマスガ、之ヲ包裝スル
紙ト云フヤウナモノハ、段々上ッテ來ル、表
面ノ値段ダケハ統制サレテ居リマスガ、紙
ガ上ッテ來ルカラ、ソレダケ高ク賣ラウト
思ッテモ、所謂統制ノ値段ニハ其幅ガアル
コトハ勿論デアリマスガ、役所ハ中々許可
シナイ、其爲ニ其統制ニ依ッテ非常ニ困ル者
ハ統制サレタ者ダケガ困ッテ、サレナイ者
ハ非常ニ樂ナ實情ニ在ルコトハ御承知ノ通
リデアリマス、ソレカラ日本ノ產業デハ御
承知ノ通リ紡績、肥料、殊ニ人絹ノ如キハ
四割强ノ操短デアリマス、其操短ニ依ッテ
ノミ高率ナ配當ヲ維持シ、其利潤ヲ高メチ
居ルノモ事實デアリマス、斯ウ云フ風ニ一
方商工省ノ考カラ、自分ノ主觀的ノ見地カ
ラ統制シ、一方其統制ニ依ッテ備カル者ガア
ルカト思ヘバ、一方非常ニ高率ナ配當ヲス
ル者ガアル、或ハ統制ヲ全クセラレナイデ、
王子製紙ノ如キ巨利ヲ博シテ居ル者モア
ル、之ヲ一般民衆カラ見ルト、所謂三井系
デスカ、王子製紙ナドハ政治家ト結託シ、
或ハ官僚ト關聯シテ巨利ヲ博シテ居ルノデ
ハナイカ、北海道ノ山ヤ樺太ノ山ハ坊主ニ
ナッテ居ル、斯ウ云フ者ガ非常ニ巨利ヲ博シ
テ、而モ統制サレルモノハ非常ニ慘メナ者
ト、一方良イ者ガアッテ、非常ニ區々デアル、
其主觀カラ派生スル所ガ非常ニジグザグニ
ナッテ居ルノハ、アナタ方御承知ノ通リデア
リマス、統制ト云フコトニナルト、之ヲ全
面的ニ基本的ニ、一ツノ國家ガ統制スル指
導精神ノ下ニ有ユル客觀情勢ヲ把握シテ、
其上ニ一ツノ統制ノ組織ヲ作ルト云フコト
ハ、極メテ喫緊ナ問題デナケレバナラヌト
私共ハ考ヘテ居リマスガ、之ニ對スル御意
見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=90
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091・小島新一
○小島政府委員 御尋ノ物價ノ問題デアリ
マスガ、是ハ非常ニ難カシイ問題デアリマ
シテ、遽ニ之ヲ統制シ、而モ之ヲ抑制スル
ト云フヤウナコトハ、非常ニ困難ナ事デア
ラウト思ヒマス、而シテ只今御話ノヤウニ、
產業ノ種類ニ依ッテ統制ガ區々デアル、其爲
ニ業界全體ヲ見テハ不公平ナ場合ガアリ得
ルト云フ御話ノ御趣旨ニ付テハ、私共同感
デアリマス、此點ニ付キマシテハ私共トシ
テモ產業上竝ニ經濟上、重要ナ品種ニ付テ
ハ全般的ノ統制ニ付テノ非常ナ關心ヲ持ッ
テ居リマス、只今ノ統制ノ制度ト致シマシ
テハ、先程モ申上ゲマシタ通リ、重要產業
統制法ガゴザイマス、此統制法ニ於キマシ
テハ、今日重要ナル產業ニ付テハ殆ド全部
網羅シテ指定ヲシテ居リマス、而シテ是等
ノ產業ノ「カルテル」「トラスト」ト云フモノ
ニ付キマシテハ、十分監督ヲ致シテ居リマ
スル次第デアリマスガ、是等ノ問題ニ付キ
マシテハ御趣旨ノヤウニ全般ヲ見渡シマシ
テ、其間ニ不公平ガナイヤウニ、均衡ヲ得
マスルヤウニ、十分監督ヲ致シテ參リタイ
ト思フノデアリマス、更ニ今後ノ物價ノ問
題ニ付キマシテハ、單ニ製造ノ方面ノミナ
ラズ、配給ノ方面ニ付キマシテモ十分注意
スル必要ガアラウト思ヒマシテ、折角考究
ヲ致シテ居リマス、根本的ノ統制ノ組織ヲ
ドウスルカト云フヤウナ問題モアラウカト
思ヒマスケレドモ、是等ニ付テモ篤ト考究
致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=91
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092・渡邊泰邦
○渡邊委員 大體分リマシタガ、其統制ノ
指導精神ト云ヒマスカ、所謂國家ガ其必要
ヲ感ジテ統制スル、國家ガ必要ヲ感ジテ統
制スル以上ハ、今ノ營利主義-個人主義
ヲ指導原理ト爲ス營利主義ガ、國家ノ存在
ニ相當障碍ヲ成ス場合ガ段々起キテ來ルト
云フヤウナ場合ハ、其營利主義ニ一ツノ斧
鉞ヲ加ヘルト云フ風ナ見地カラ、所謂今日
ノ資本主義制度ガモウ行詰ッテ居ルノダト
云フ觀方モ吾々ハスルノデス、其觀方ニ立ッ
テ、其原則ノ現ハレニ對シテハ、國家ノ爲
ニハ此制度ノ改廢モ已ムヲ得ナイト云フ風
ナ一ツノ「オリヂン」ニ立ヲテ統制セラレル
必要ハナイノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=92
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093・小島新一
○小島政府委員 今日ノ產業組織ノ問題ニ
付キマシテ、色々觀方ガアラウカト思フノ
デアリマス、私共トシマシテハ大體今日ノ
ヤウナ「カルテル」制度ニ依リマシテモ、其
事業ガ健全ナル發達ヲ期待シ得ル、是ノ監
督取締ノ方法ニ依リマシテハ、今日ノ社會
事情、經濟事情ニ卽シマシテ別段支障ガナ
イモノト、斯樣ニ考ヘテ居リマス、例ヘバ
肥料ノ如キモノニ付キマシテモ、是ハ一ツ
ノ組合制度ニ依リマシテ十分之ヲ監督致ス
コトニ依リマシテ、生產者ニ偏セズ、又消
費者ニ偏セザル、公正ナ價格モ期待シ得ル
ノデハナカラウカ、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=93
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094・渡邊泰邦
○渡邊委員 御話ハ能ク分ルノデス、其商
工省ガ監督シテ統制スル、サウスルト其監
督スルノハ商工省-マアアナタ方ノ主觀
ナンデス、其主觀ガ監督ノ全體ニ働ク、其
主觀ハ如何ナル客觀ノ認識ニ依ッテ生レル
カ、其主觀ガ如何ナル指導精神ニ依ッテ生レ
ルカ、ソコノ一點ヲ聽キタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=94
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095・小島新一
○小島政府委員 商工省トシマシテハ是等
ノ當業者ノ監督ニ付キマシテハ、單ニ生產
者ノミノ利益等ヲ考ヘルモノデアリマセヌ
デ、日本ノ產業經濟全般ノ見地カラ、其事
業ヲ監督シツツ參ルベキモノト考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=95
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096・渡邊泰邦
○渡邊委員 是レ以上ハ議論ニナリマスカ
ラ止メマス、私ニ與ヘラレタ時間ハ大體盡
キマシタ、是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=96
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097・増田義一
○增田委員長 此際一言致シマス、委員會
ノ慣例ニ依リマシテ、各政派會派等ノ交涉
ノ上デ、自ラ發言ノ順序ガ定ッテ居リマスノ
デ、只今ノ渡邊君ノ質疑ニ依ッテ慣例ニ依
ル一巡ヲシタ譯ナノデアリマス、是カラ最
初ノヤウナ發言ノ順序ニ依ッテ二巡スルノ
デアリマス、此二巡ノ場合ニハ、豫算委員
會ヲ初メトシテ主ナル問題ノ委員會デハ、
發言ノ時間ヲ成ベク短クシ、場合ニ依ッテ
ハ制限シタコトモアルノデスガ、玆ニハ制
限スルト云フコト迄ハ申シマセヌガ、慣例
ハ大抵一時間以內ト云フコトニナッテ居リ
じく、此事ヲ御含ミノ上デ、出來ルダケ簡
潔ニ、又成ベク重複ヲ避ケタ御質疑ヲ特ニ
御願シタイノデアリマス、此事ヲ申上ゲテ、
偖テ第二巡ノ發言順序ニ依リマシテ川崎末
五郞君ニ發言ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=97
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098・川崎末五郎
○川崎委員 私ガ政府ニ御尋致シタイト
思ッテ居リマシタ事モ、旣ニ段々同僚先輩諸
君ノ御質疑ニ依リマシテ明瞭ニナッタ點ガ
多イノデアリマス、殊ニ委員長ノ御注意モ
ゴザイマスカラ、極ク簡單ニ、私ノ尙ホ御
確メ致シタイト思フ點ニ限ッテ一二ノ質問
ヲ致シタイ、ソレニ先ダッテ一言希望竝ニ
將來ニ付テノ政府委員ノ御意見ヲ確メテ置
キタイト思フ事ガアルノデアリマス、ソレ
ハ吾々ノ先輩同僚諸君カラ、餘程一般的ニ
或ハ各稅種ニ付テノ個々ノ御質問ガアリマ
シテ、略〓盡キタヤウニ思フノデアリマス
ガ、併シ吾々愈〓此法案ニ付テ意見ヲ定メル
ニ付キマシテ、其中ニハ更ニ御當局ナリ、
特ニ主務大臣タル大藏大臣ノ明瞭ナル御方
針ナリ、意見ヲ確メナケレバナラヌ點ガア
ルヤウニ思フノデアリマス、左樣ナ意味ニ
於テ第二巡目ノ發言ヲ許シテ戴イタノデア
リマスガ、私ト致シマシテモ、特ニ大藏大
臣カラ直接ノ御意見ナリ、御答辯ヲ伺ヒタ
イ點ガ一、二ゴザイマス、併シ會期モ切迫
致シテ居ル際デアリマスカラ、一々大藏大
臣ノ出席ヲ見ルマデ質問ヲ留保スルト云フ
ヤウナコトヲ致シテ居リマシテハ、或ハ此法
案ノ審議上如何カト思ヒマスニ依ッテ、委員
長ノ御意見竝ニ政府委員ノ御考ニ依リマシ
テハ、私ハ便宜此際大藏大臣ニ直接御答辯
ヲ伺ヒタイ事項モ簡單ニ一應此席ニ於テ申
述ベテ置イテ、ソレニ付テ委員長竝ニ政府
委員カラ能ク其趣旨ノアル所ヲ大藏大臣ニ
御傳ヘ下サイマシテ、其答辯ハ尙ホ希望ト
致シマシテ、單ニ此處ニ於テノ一時的ノ應
答ノ意味デナクシテ、其答辯ニ付キマシテ
ハ、大臣竝ニ大藏當局ニ於テ能ク御考ノ上
デ、簡單デ宜シウゴザイマスカラ、明瞭ナ
御答辯ヲ後デ戴クト云フコトニ御取計ヒ願
ヘマスナラバ、其意味ニ於テ御尋致シタイ
コトガアルノデアリマス、先ヅ此取扱ニ付
テ委員長竝ニ政府委員ノ私ノ希望ニ對スル
御意見ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=98
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099・増田義一
○增田委員長 委員長トシテハ御希望ニ副
フヤウニ取計ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=99
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100・石渡莊太郎
○石渡政府委員 御尤ト思ヒマスカラ、左
樣ニ取計ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=100
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101・川崎末五郎
○川崎委員 只今委員長ノ御言葉竝ニ石渡
政府委員ノ御意見ヲ伺ヒマシテ、私モ左樣
ニ御取計ヒ願ヘマスレバ、私自身ノ質問ノ
順序モ都合好シウゴザイマスト同時ニ、本
案ノ審議ニ付キマシテモ好都合ト存ジマス
カラ、其ヤウニ十分ニ私ノ希望ヲ御取計ヒ
下サランコトヲ御願致シマス、其意味ニ於
テ既ニ同僚先輩カラモ質問ガアリマシタ
シ、又單ニ本委員會ニ於テノミナラズ、本
會議或ハ豫算總會ニ於テモ觸レラレタ問題
デ、吾々議員ノ意見、之ニ對スル政府ノ意
向モ略〓分ッテ居ル點モアリマスルケレド
モ、吾々此稅法ノ委員會ト致シマシテ、此
法案ヲ審議シ、之ニ付テノ私達ノ意見ヲ定
メル意味カラ申シテ重要ナル點ト思ヒマス
ルカラ、サウ云フ意味ニ於テハ稍〓ソレ等ト
重複致シマス嫌ガアルカモ知レマセヌガ、
簡單ニ申述べタイト思フト同時ニ、簡單ニ
御意見ダケ伺ッテ置キタイト思フノデアリ
いや、以下一、二御伺致シタイト思フコト
ハ、石渡政府委員カラ御答辯ニナリマシテ
モ結構デアリマスガ、併シソレノミナラズ、
ソレ等ノ點ニ付テハ大藏大臣カラ省議ヲ能
ク御纒メニナッテ明瞭ニ御答辯願ヒタイト
思フノデアリマス、今更私ガ一般論ヲ蒸返
ス必要ハナイト思ヒマスルケレドモ、併ナ
ガラ總テ增稅ヲ計畫致シマス場合ニ於テ
ハ、第一積極的ニハ其增稅ト一國ノ產業、
財政、金融、總テノ實質的方面ニ如何ナル
影響ヲ持來スカト云フコトヲ考ヘナケレバ
ナラヌコトハ當然デアリマスガ、少クトモ
消極的ニ於キマシテハ、國家ノ需要ヲ滿ス
爲ニ增稅ガ必要デアル場合ニ於テハ、其增
稅ヲ爲ス先ヅ其前提ト致シマシテ國民ノ各
階級ニ亙リ、又各職業間ニ亙リ、或ハ地方
的ニ於キマシテハ、地方ト中央ト、又國家
及ビ公共團體ヲ通ジマシテ、國稅ト地方稅
トモ、是等ハ軈テ最終ニ於テ國民各自ニ其
負擔ガ掛ルコトヲ思ヒマスレバ、ソレ等ノ
各般ノ總テノ方面ニ通ジマシテ、地方的ニ
或ハ職業的ニ、階級的ニ、又各租稅團體ヲ
權力ヲ以テ、國家竝ニ市町村、府縣ト云フ
モノヲ通ジテノ其負擔ガ公正ニ分配サレ
テ、サウシテソレ等ヲ綜合シテノ所謂負擔
ノ衡平、均衡ガ保タレテ居ナクテハナラヌ
ト云フコトガ私ハ第一ノ前提デナケレバナ
ラヌト思フ、此意味ニ於キマシテ、我國ノ
現在ニ於キマシテハ、地方ト中央トヲ見マ
シテモ、又社會ノ各階級ノ層カラ見マシテ
モ、又農、商、工ト之ヲ極ク大雜把ニ分ッテ
モ、其各職業間ニ於キマシテ、之ヲ國稅或
ハ地方稅其他ノ公課公租ニ類スベキ公共的
ノ性質ヲ帶ビタ所ノ負擔ヲ綜合シテ考ヘマ
スレバ、ソレ等ノ負擔ノ分配ト云フモノハ
衡平デナイ、確ニ「バランス」ヲ失シテ居ル
場合ガ多イト云フコトハ今更私達ガ論議ス
ルマデモナイコトデアッテ、大體社會常識ヲ
持ッテ居ル者ハ、モウ說明ヲ俟タズシテ自明
ノ事トシテ、旣定ノ事實トシテ之ヲ承認シ
テ居ル次第デアル、此意味ニ於テハ遺憾ナ
ガラ非常ニデコボコガ多クテ、不均衡ニ惱
ンデ居ル、斯樣ナ場合ニ於テ、增稅ヲ企圖
サレル場合ニ於キマシテハ、先ヅ私達カラ
言ヘバ、此デコボコヲ直シ、地均シヲシテ、
サウシテ衡平ナ地均シヲシタ上ニ於テ增稅
ヲ計畫シナケレバナラヌ、デコボコノ儘、唯
其時ノ必要ニ依ッテ繼足シヲシテ、更ニ重イ
稅ヲ、均衡ト云フコトヲ考ヘズニ打掛ケル
ト云フコトハ、是ハ國民ト致シマシテハ、
單ニ新ニ課セラレル增稅ノ負擔ノミナラ
ズ、不均衡ナ、不平均ナ負擔ヲ掛ケルト云
フコトニ於テ、其犧牲、之ニ感ズル苦痛ト
云フモノハ幾層倍スル場合ガ多イ、現在ニ
於テ、一般カラ言ヘバ輕イ負擔ト思ハレテ
居ルモノ、ソレニ對シテノ增稅ハ暫ク忍ブ
トシテ、現ニ今重過ギル負擔ヲ被ッテ居ル地
方、例ヘバ地方的ニ言ヘバ農村トカ、或ハ
職業的ニ言ヘバ大體ニ於テ農民ト云フヤウ
ナ立場カラ言ヘバ、今マデ重イノニ尙ホ且
同ジ荷物ヲモウ一ツ加重シテ掛ケラレルト
云フコトハ、之ニ感ズル負擔ト云フモノハ
私ハ非常ニ痛切デアルト思フ、是ガ卽チ地
方財政調整交付金ノ增額ナドニ付テ、全國
ガ期セズシテ、各町村擧ッテ、津々浦々聲ヲ
一ニシテアノ增額ヲ叫ンダ所以デアラウト
思フ、是ガ私ハ增稅ノ上ニ付テ第一ノ前提
ニシナケレバナラヌ工作デアッタト思フ、又
シナケレバナラヌト思フ、第二ニハ苟モ國
家ノ公共ノ財政デアリマスカラ、私經濟ト
趣ヲ異ニスルト致シマシテモ、增稅ヲ必要
トスル場合ニ於テハ、先ヅ從來ニ於ケル國
家ノ行政費ト云フカ、其政治ニ要スル經費、
卽チ政費ト云フモノハドウシテモ是レ以上
切詰メルコトハ出來ナイ、節約ヲスルコト
ハ出來ナイ、絕對必要デアル、尙且ツソレ
ニ國防費トカ、其他產業トカ、或ハ國民生
活安定、色々積極的ニシナクチヤナラヌ經
費モアルガ、從來ノ經費ニ於テハ一文ノ無
駄モナイ、節約スルコトガ出來ナイ、ギリ
ギリ結著、切詰メテドウニモ斯ウニモ行カ
ヌカラ、セメテ增稅ヲシテ增收ヲ圖ラナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フコトデナクテハ
私ハイケナイト思フ、此意味ニ於テ前
ノ廣田內閣ノ豫算案ノ編成振、又馬場
財政ニ依ル增稅案ニ付テハ-增稅案
ノ問題ハ姑ク別トシテ、豫算ノ編成振
カラ見テ、私ハ此點ニ遺憾ヲ感ジテ居ツ
タ、此間吾々ノ同僚ノ專門ノ方カラ經濟的
ノ影響、其他ノコトヲ話サレマシタガ、私
ハサウ云フコトハ今日ハ敢テ觸レナイ積リ
デアリマス、一般政費ノ問題デアリマス、
此意味ニ於テハ林內閣、結城大藏大臣ニナ
リマシテカラ、馬場財政ノ豫算ニ對シテ若
干ノ修正ヲ加ヘテ減額ヲ圖ラレテ、三十億
ガ二十八億臺ニ減ッタ、是ハ或ル意味ニ於テ
結構ナコトデ、衆議院モ旣ニ其豫算ヲ協賛
シテ貴族院ニ送ッタヤウナ譯デアリマスル
ガ、併シアノ總額タルヤ私ノ今申シマスル
意味ニ於テノ政費ノ節約ト云フコトハ何等
現レテ居ラナイ、唯アレハ新規ニ計上サレ
タモノノ一二ヲ少シヅヽ削ッテ行ッタニ過ギ
ナイ、是ハ意見ニ亙リマスケレドモ、私ノ
見ル所デハ、過去五六年間ニ於テ年々膨脹
致シテ居リマシタ國家ノ財政カラ申シマス
レバ、本當ニ役人モ、民間モ協力一致シテ、
現在ノ日本ノ國步艱難ノ危局ニ善處スル意
味ニ於テ犧牲奉公ノ精神ヲ以テ當ルナラ
が、私ハ一般ノ經常ノ行政費、人件費ニ於
テモ、事務費ニ於キマシテモ相當ノ節約ヲ
圖リ得ル餘地ガ多々アルト思ヒマス、ソレ
ニモ拘ラズ馬場財政ノ豫算ノ編成振ハ、私
ハ事實ノ如何ハ承知致シマセヌガ、道路傳
フル所ニ依リマスレバ、各省ノ要求シタ豫
算ノ中ニハ、例ノ從來ノ豫算分捕ノ戰術ニ
依ッテ吹掛ケテ行ッタ、大藏省ハドウセ之ヲ
何割天引スルダラウ、是ダケ査定スルダラ
ウト云フノデ吹掛ケタモノヲ、容レラレテ
啞然トシテ、サウシテコンナニ人ハ要ラヌ
ノニト云フコトモ、或省ノ或ル一部ニ於テ
ハ傳ヘラレテ居ル、是ハ唯風說トシテ傳ッテ
居ルノデアルカラ、果シテサウ云フ噂ガ眞
實ナリヤ否ヤハ私ハ知リマセヌ、併シ從來
ノ大藏省ノ豫算編成振カラ申シマスレバ、
所謂火ノナイ所ニ煙ハ立タヌデ、確ニ一部
ニ於テハサウ云フ事實モ吾々ハアッタモノ
デアラウト云フコトヲ斷定シテモ敢テ誤リ
ナイト思フ、斯樣ナ意味カラ申シマスレバ、
新規要求ニ於テモ左樣ナコトデアル、殊ニ
從來ノ經常費ニ於テ物件費、人件費、其他ノ
節約ヲスル餘地ガアッタ筈デアルシ、又シナ
クチヤナラヌ、サウシテ切詰メテ、尙且ツ
豫算ノ歲計ニ於テ不足ヲ來スカラ是ダケ增
稅シナクチヤナラヌ、緊縮節約シテ、其事
實ヲ誠意ヲ以テ國民ニ披瀝シテ、斯樣ナ事
情デアルカラ、是非增稅ハ是ダケ必要デア
ル、國防費ニ於テモ積極的ニ必要ナ事實ヲ
明ニシ、其他ノ政費ニ於テモ其事實ヲ明ニ
シテ、消極的ニ於テモ是ダケ始末シタガ、
ドウシテモ是ダケハ將來ノ國家ノ財政ヲ
賄ッテ行ク爲ニ最小限度絕對ニ必要ダ、是ガ
爲ニ增稅ガ是ダケ必要ダト云フコトヲ明ニ
シテ貰ハナクチヤナラヌ、吾々ハ本當ニ增
稅ト云フコトニ付テ國民ト共ニ、國家ガ必
要ナラバ喜ンデ負擔スベキデアル、併ナガ
ラ能ク納得シテ喜ンデ負擔サセナケレバナ
ラヌ、唯權力、唯國防ノ必要ダト云フヤウ
ナ威迫ヲ以テ吾々ニ增稅ヲ强ヒルト云フコ
トハイカヌト思フ、此意味ニ於テ私ハ根本
ノ問題トシテ增稅ニ付テハ其二點ガ吾々ノ
納得ノ行クヤウニナッテ行カナケレバ、此增
稅問題ハ審議ノ餘地ハナイト思フ、併シ是
等ニ付キマシテハ內閣モ迭ッテ間モナイノ
デアリマシテ、臨時增徴法案ニ相成ッテ居ル
ヤウナ次第デアリマスカラ、根本的ニ此點
ヲドウシロト言ッタッテ是ハ無理カモ知レマ
セヌ
次ニ來年度ノ豫算ノ編成或ハ從來度々有
ユル機會ニ於テ大藏當局ナリ、結城大藏大
臣ガ言明サレ、答辯サレテ居ルヤウニ、中央
地方ヲ通ジテノ稅制ノ根本的ノ改正ヲ行ハ
レル、今囘デ增稅ハ濟ンダノデセウガ、其
際若シ增稅モ試ミラレルナラバ、ソレハ單
ニ負擔ノ衡平ト云フ意味デオヤリニナルカ
モ知レナイ、寧ロ其後ノ方ガ宜イノデセウ
ガ、私恐ラク推測スルニ來年度ニ於テハ多
少ノ增稅ハ殘ッテ居ル問題デ、加味サレルモ
ノト思ッテ居ル、左樣ナ場合ニ於テハ今申シ
タヤウニ、私ガ申上ゲタ負擔ノ均衡化、政
費ノ節約ヲ圖ルト云フコトヲ前提ニ置イテ
之ヲ先ヅヤッテカラ行フト云フコトニシテ
戴キタイノデアル、此點ニ付テハ私ハ特ニ
大藏大臣ヨリ省議トシテノ明瞭ナル御答辯
ヲ伺ハナクチヤナラヌ、吾々ガ此增稅案ニ
對スル態度ヲ決定スル場合ニ於テハ、先ヅ
其點ニ付テ大藏當局ノ明確ナル御意見ヲ
伺ッテ置カナクチヤナラヌ、是ガ第一點デア
リマス
ソレト關聯シテ居リマスガ、曩ニ私ガ關
聯致シマシテ大藏大臣ニ御尋致シタ點デア
リマス、之ヲ重ネテ今此處デ觸レル必要ハ
ナイヤウデアリマスガ、私ハ此臨時增徵法
案ト來ルベキ根本的ノ稅制改革トノ關係ニ
付テ御伺ヲ致シタ、ソレニ對スル大藏大臣
ノ御答辯ハ一應ゴザイマシタガ、私其時拜
聽致シタノデハ、稍〓マダ不明瞭ナル點ガ
アッテ、私トシテハッキリ呑込ムコトガ出來
ナカッタ節ガアルノデアリマスカラ、此點モ
併セテ明瞭ニ簡單ニ伺ッテ置キタイ、、卽チ曩
ニモ申シマシタヤウニ、今囘ノ臨時增徴案
ハ謂ハバ間ニ合セデ、兎ニ角本年度ノ國家
ノ需要ヲ滿ス爲ニ是ダケノ增收ヲ圖ル爲ノ
增稅案デアルガ、根本的ニヤル場合ニ於テ
ハ有ユル角度カラ能ク〓究ヲシ直シテ、サ
ウシテ新ナル立派ナ理想的ノ增稅案ヲ一ツ
編立テテ貰ハウ、其場合ニ於テ今囘ノ此法
案ニ盛ラレタ臨時增徵案ノ如キモノガ、來
ルベキ改正ニ付テノ參考ノ基礎案ニナルト
云フ意味ナラバ、吾々ハ其意味デ此法案ヲ
審議シナクチヤナラヌ、全然白紙ニ立還ッ
テ御〓究ニナリ、檢討サレルト云フナラバ
本年度限リノモノトシテ多少不滿ノ點ガ
アッテモ、吾々ハ眼ヲ瞑ッテデモ此案ハ兎ニ
角本年度差當リノ國家ノ需要ヲ滿ス爲ニ認
メヨウト云フ考ニモナリ得ル譯デアリマス、
寧ロ私ハ結城大藏大臣ヲオ助ケスル意味ニ
於テ御尋シタ積リガ、遂ニ非常ニ固クオナ
リニナッテ、問ヘバ問フ程蓋ヲシテシマフヤ
ウナ態度ヲ御執リニナッテ、サウシテ白紙ニ
立還ッテヤルト仰シヤッタガ、併ナガラ今囘
ノ案ニ付テモヤハリ參考ニシテ、最後ニ於
テハ結局此程度ニ於テハ是ガ土臺ニナッテ
行クト云フ風ニシカ吾々ハ諒解シ得ナイヤ
ウナ御答辯ニナッタ、私ハ何モ大藏大臣カラ
私ノ希望通リノ答辯ヲシテ下サイト云フノ
デハアリマセヌ、明瞭ニ白紙ニ立還ッテ其
檢討ヲオヤリニナルノカ、或ハ此增徵案ヲ
大體ノ骨子トシテ、之ヲ參考ニシ、基礎ニ
シテ編立テテ行カレル御考デアルカ、其點
ヲハッキリ御答ヲ願ヒタイ、ソレガ私達ガ此
臨時增徴法案ノ審議ヲ進メ、吾々ノ意見ヲ
決定スルニ付テモ、重要ナル「キーポイン
ト」ニナルト思ヒマスカラ、其意味デ御答ヲ
願ヒタイ
次ニ豫算總會ノ劈頭ニ於テ、私達ノ先輩
ノ勝サンカラモ御質問ガアッタヤウニ私ハ
聞イテ居ッタノデアリマスルガ、此臨時租稅
增徵法、是ハホンノ間ニ合セノモノデアル、
來年度ニ於テハ諄イヤウデアリマスルガ、
根本的ニ改正サレル、サウスレバ是ハ間ニ
合セデアルカラ、來年度ニ新ナルモノガ出
來ルノデアリマセウカラ、私ハ其意味ニ於
テハ此臨時增徵法ト云フモノハ、豫メ明瞭ニ
是ノ有效期限ヲ限定シテ置イテ然ルベキモ
ノデハナイカ、モット具體的ニ言ヘバ、例
バ此附則ニ本法ハ昭和十二年度限リ之ヲ廢
止スルト云フコトデ私ハ十分デアル、斯ウ
思フノデアリマス、之ニ付テノヤハリ大藏
當局ノ確固タル明瞭ナル御答ヲ戴キタイト
思ヒマス、ソレデ先走ッタヤウデアリマスル
ガ、豫メ私ガ申上ゲテ置キマスガ、ソレハ
困ルト仰シヤルニ相違ナイ、將來ノコトヲ
今豫想スル譯ニモ行キマセヌガ、假ニ御困
リニナルト仰シヤルナラバ、此點ヲ吾々ハ
寧ロドウ云フ意味デ御困リニナルカト云フ
コトヲ質サナクチヤナラヌ、時間ヲ節約ス
ル爲ニ、私ハ略〓大藏當局ノ御困リニナル點
ヲ御想像申上ゲテ、ソレニ付テノ私ノ意見
ヲ申述ベテ置カウト思フ、假ニ中央地方ヲ
通ジテノ此稅制改革ノ根本案ガ次ノ通常議
會、次ノ豫算編成、卽チ十三年度ノ豫算編成
マデニ、ソレガ間ニ合ハヌト云フコトヲ惧
レラレテ居ルナラバ、是ハ私ハ惧レル必要
モナケレバ、又ソレガ出來ナイト言ヘバ、
是ハ寧ロ大藏當局ノ怠慢デアル、サウ云フ
コトハアルベキモノデハナイ、必ズシナク
チヤナラヌモノデアルシ、サウ云フコトハ
ナイヤウニ私ハ御努力爲サルコトト考ヘ
ル、此點ニ付テ大藏省ハ御困リニナルベキ
事情ガアルベキ筈ハナイ、サウシテ次ニ考
ヘルコトハ、假ニ來ルベキ議會ガ解散、其
他ノ特殊ナ事情ニ依ッテ豫算ガ不成立ニナ
リ、隨テ折角出タ法案モ議會ニ於テ審議サ
レナイ、而モ是ハ十二年度限リデ效力ガ消
滅スル、ソコデ「ギヤップ」ガ出來ルト云フ
コトヲ惧レラレルナラバ、解散其他如何ナ
ル理由ニ於テデアリマシテモ、サウ云フ場
合ニ於テハ、恐ラク私ハ緊急勅令ノ手段ニ
依ルナリ、或ハ緊急財政處分ナリ、ソレ等ニ
十分依リ得ルノデアリマスカラ、サウ云フ
ヤウナ政治上ノコトヲ御懸念ニナッテ、此增
徵法案ニ期限ヲ付スルコトハ困ルト仰シヤ
ルコトハ理由ノナイコトデアルト思フ、若
シ議會ニ於テ審議シテサウシテ此樣ナ案ガ
出來ナイト困ルト云フナラバ、是ハ期限ガ
アッテモナクテモ、新ナル根本ノ法案ガ出タ
場合ニ於テハ、議會ハソレニ對シテ審議ヲ
進メテ行クノデアルカラ、其事ガ本法ヲ期
限付ニスルコトハ困ルト云フ理由ニハナラ
ヌ、何レノ方面カラ申シマシテモ、政府ガ
眞面目ニ忠實ニ稅制改革ヲ根本的ニヤリ直
シテオヤリニナルト云フ、サウ云フ御決心
ガアレバ、此法案ハ一年限リデ見合セデア
ルカラ、一年限リデ用事ハナイ、反古ニシ
テ宜イト云フコトハ當然デアルト思ヒマス
カラ、期限ヲ付ケルコトニ何等御異議御異
存ハナイト思ヒマス、之ニ付テノ簡單デ宜
シウゴザイマスカラ、明瞭ナル御答ヲ御願
シテ置キタイト思ヒマス、以上三點ニ付キ
マシテハ是ハ大藏大臣カラ御答辯ヲ戴キタ
イト思ヒマスガ、一應石渡政府委員ニ於テ、
多少ノ御答辯ガゴザイマシタレバ、此際伺ッ
テ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=101
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102・石渡莊太郎
○石渡政府委員 最初ノ二ツノ御尋ハ大藏
大臣ヨリ御答ヲ致スコトニ致シマシテ、私
ハ御答致シマセヌ、第三ノ問題デアリマス
ルガ、是ハ一ツ餘程御考ヲ願ヒタイノデゴ
ザイマス、一年限リノ期限ヲ付スル、斯ウ
云フコトデゴザイマシテ、是ハマア先ノ問
題ニモ關係スルカモ知レマセヌガ、此ノ次
ノ改革案ノ立案ニ當リマシテハ無論今度ノ
臨時增徴案ハ再檢討致シマス、致シマスガ、
川崎サンノ御言葉ガ實ハ此間カラ少シキツ
イカト思ヒマス、全部白紙ニシテ考ヘロ、
斯ウ仰シヤルノデスガ、是ハ先般來ノ質問
應答、其他ニ於テモ自ラ其間ニ御分リニナッ
テ居ル點モアルダラウト思フノデアリマス
ガ、例ヘバ相續稅ノ引上、之ヲ全部白紙ニ
シテ考ヘテ、相續稅ハ來年ハコンナ引上ハ
止メテシマフノデアルト云フコトニナレ
バ、昭和十二年四月一日カラ十三年三月末
日マデニ相續ヲ開始シタ人ダケガ此高率ノ
課稅ヲ受ケル、サウ云フコトニナッテハ非常
ナ不合理ダト思フノデアリマス、隨テ其間
自ラ白紙ニ還スモノモゴザイマセウ、ソレ
カラ又白紙ニ還シ得ザルモノモアルト思ヒ
マス、是等ハ何レ總テニ亙ッテ再檢討ハ致ス
ノデゴザイマスガ、其間ニ自ラ判斷セラル
ベキ所ガアルダラウ、斯ウ思フノデアリマ
ス、再檢討シナイカト仰シヤレバ、全部ニ
亙ッテ再檢討致シマスガ、全部ニ亙ッテ白紙
ニナッテ考ヘロト仰シヤッテモ、是ハ既ニ今
日ノ現行法ヲ白紙ニナッテ考ヘラレザル如
ク、全然白紙トシテハ考ヘラレナイ點モア
ルノデゴザイマス、ソコハ一ツ御諒解願ヒ
タイト思フノデゴザイマス、ソレカラ最後
ノ御尋ノ一年限リノ期限ヲ付シタラドウ
ダ、斯ウ云フコトデゴザイマスルガ、是ハ
先般來御答シテ居ッタノデゴザイマスガ、政
府ハ次ノ議會ニ案ヲ持ッテ來ナイ爲ニサウ
云フコトヲ言ッテ居ルノヂヤナイカ、斯ウ云
フコトデアリマスルガ、是ハ決シテサウ云
フ譯デハゴザイマセヌノデ、出來ルダケノ
努力ヲシテ持ッテ參リタイ、斯ウ言ッテ居ル
ノデゴザイマス、ソレカラ解散ニナッタ時分
ニハ緊急勅令ニ依レバ宜イヂヤナイカト云
フ御話デゴザイマス、又若シ通ラナカッタ時
分ニモ緊急處分ニ依レバ宜イヂヤナイカ、
斯ウ云フ御考ト思フノデアリマスガ、緊急
處分トカ、緊急勅令ニ依ル場合ハ、是ハ極
ク變態ナ場合デアリマシテ、財政ニ關スル
限リハ何處マデモヤハリ國民ヲ代表サレル
所ノ衆議院ニ於テ決議サレ同意サレタモノ
デ行キマセヌケレバ、政府トシテモ頗ルヤ
リニクイ點ガアルダラウト思ヒマス、隨テ
サウ云フ緊急勅令トカ、緊急處分トカ云フ
變態的ノコトニ依リマセズ、私共ハヤハリ
是ハ議會ノ御協賛ニ依ッテ行キタイト考ヘ
テ居リマスカラ、當分ノ間ト云フコトデ其
點大事ヲ踏ンデ居ル譯デゴザイマシテ、決
シテ私共ガ怠慢ニ依ル口實ヲ玆ニ求メヨウ
ト云フ譯デハゴザイマセヌ、尤モ此點ハ更
ニ大藏大臣カラ答ヘヨト云フコトデゴザイ
マスカラ、何レ御答致スコトニナルト思ヒ
マスガ、一應ノ意見ダケ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=102
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103・川崎末五郎
○川崎委員 以上私ガ御尋致シマシタコト
ハ總テ是ハ大藏大臣ガ其場限リデハナクシ
テ、之ニ付テ省議ヲ纒メラレテ、サウシテ
省議トシテ御決メニナッテ、ソレヲ大藏大臣
カラ御答辯願ヒタイト云フコトヲ申上ゲテ
置キマス、只今石渡政府委員カラノ御話ハ
ソレノ準備ノ意味デ伺ッテ居ル譯デアリマ
ス、尙ホ只今政府委員ノ御答辯ニ依リマシ
テ、私ガ御尋致シテ居リマシタ本當ノ意思
ガ、私ノ言葉ノ訥辯デアリ、又言葉ガ非常
ニ惡ウゴザイマシタ爲ニ、十分私ノ申上ゲ
ルコトガ御諒解願ヘナカッタヤウナ節モア
ルヤウニ思ヒマスノデ、其點ヲ釋明的ニ申
上ゲテ置キタイコトモアリマス、私ガ先ニ
申上ゲタ白紙ニ立返ッテヤルカト云フコト
ニ付テ言葉ガキツイカラト云フ御話ガアリ
マシタガ、サウ云フヤウニ解釋サレマスレ
バ洵ニ恐縮デ、オ氣ノ毒デアリマス、先に
言ッタヤウニ私ハ餘リキツイ意味デハナイ
ノデス、要スルニ極ク碎ケテ平凡ニ言ヒマ
スレバ、此增徵法案ガ一旦之ヲ認メラレレ
バ之ニ付テ或ル意味ニ於テハ若干デハナ
イ、ヒドイ增率デアリ、增徵ニナルト思フ
點モアル、是等モ吾々ガ一年限リダカラ、
今度全體的ニ檢討サレテ、全部ノ負擔ノ衡
平ヲ圖ルト云フヤウナ案ガ出テ來タナラバ
緩和サレルデアラウ、一年限リダカラ認メ
テヤッテモ宜イト云フ氣持モ實ハアル、ソ
レガ一旦此法案ヲ認メレバ、曩ニ議會モ之
ヲ認メテ居ルヂヤナイカ、例ヘバ資本利子
稅ニ於テモ所得稅ニ於テモ、以下一二御尋
スレバ自然私ノ考ガ分ルト思ヒマスガ、
年限リナラバ我慢スルトシテモ、是ガ土臺
トナルナラバ幾ラ大藏省ガ何ト言ウテモ、
政府ガ何ト言ウテモ吾々トシテ國民代表ノ
意味ニ於テ困ルト云フ點モ一二ナイデモナ
イノデアリマス、ソレモヤハリザックバラン
ニ碎イテ言ヘバ、一旦認メレバモウ旣ニ昨
年增徵案ノ時ニ議會モ承諾シテ通ッテ居ル
ノダカラト云フノデ、ソレガ基礎ニナッテヤ
ラレルノデハナイカ、殊ニ租稅ナドニ付テ
ハ吾々素人ガ逆ニアナタニ申上ゲルコトハ
ナイノデアリマスガ、此意味ニ於テハ租稅
ナドト云フモノハ一旦之ヲ決メルト中々是
ハ容易ニ變更ガ困難デアル、殊ニ一旦吾々
ヨリ與ヘテシマッタラ、中々大藏省ガ御返シ
ニナルモノデハナイ、與ヘタナラバ中々御
返シニナルモノデハアリマセヌ、增稅ヲ承
認シタナラバ、今度地方稅輕減モヤルト云
フコトデアルガ、濱口內閣ノ時ニハ軍備縮
小ニ伴ッテノ輕減モ致シマシタケレドモ、ア
ア云フノハヨク〓〓ノ時デ一旦與ヘタナラ
バ大藏省ガ御返シニナルヤウナコトハナイ
ト思フ、サウ云フ意味カラ言ヘバ是ガ參考
ニナルト云ッテモ、此案デ認メタナラバ將來
重クナルコトハアルカモ知レナイケレドモ
-次ニ根本的ノ改正デ更ニ追加シテ取ラ
レル場合ハアッテモ、今承知シタモノヲオ前
ノハ去年取過ギタカラ、今度ハ返シテヤル
ト言ッテ御返シ願フ、卽チ輕クサレルコトハ
困難デアルト思フ、サウ云フコトデハ實際
困ル、ソレナラバ此案ヲ此意味デ一旦吾々
ガ承認シタ以上ハ、大藏省ガ返シテ吳レヌ
ト云フ意味ナラ吾々ハ其覺悟デ審議ヲシナ
ケレバナラヌ、來年度ニ於テハ之ヲヤッテ見
テ、議會ニ於テ意見ガアレバ、ソレニ依ッテ
虛心坦懷ニ再檢討スルゾ、又審議ニ當ッテモ
サウ云フ態度デ朗カナ拘泥シナイ熊度デ臨
ムト云フナラバ宜シイケレドモ、大體是ガ
一旦決マレバ、ソレヲ基礎ニスルト云フコ
トデアレバ、私ハドチラノ態度ヲ執レト云
フコトヲ迫ルノデハアリマセヌ、唯ドチラ
ノ態度デ臨ムカ、ソレニ依ッテ吾々ニ覺悟ガ
アリマス、ダカラ其意味ヲ能ク御考ヲ願ヒ
タイ、ソレカラ此期限ヲ附スル場合ニ於テ
モ、最後ノ場合ニ於テ來年度折角提案シタ
ケレドモ、議會ニ於テ審議ガ捗ラナイ、或
ハ色々ナ故障ガ起ッテハ困ル、併シソレハ巳
ムヲ得ナイヂヤアリマセヌカ、ソレハ其時
ニ依ッテ善處スルヨリ仕方ガアリマセヌ、サ
ウ云フ場合ニ於テ私ハ緊急勅令ニ依レトハ
申シマセヌ、財政處分トシテ緊急勅令ニ依ッ
テモ宜イヂヤナイカト云フノハ、假ニ議會
ガ解散スルト豫算不成立デ其通常議會ト云
フモノガオ流レニナッテ、總テノ法案ガ審議
サレナイ、サウ云フ場合ニ於テノ處置トシ
テハ緊急勅令ニ依リ、サウシテ尙ホ必要ナ
場合ニ於テハ緊急財政處分ニ依ッテモ宜イ
ヂヤナイカ、是ハ當然日本ノ憲法ニ於テ與
ヘラレテ居ル途デアル、憲法ハサウ云フ場
合ヲ豫想シテ運用サレル譯デアリマス、併
ナガラ通常議會ガ開カレ、サウシテ吾々ノ
同意ヲ經ナイカラト云ウテ、緊急勅令デヤ
レト云フコトハ私ハ言ハナイ、從來ノ內閣
ニ於キマシテモサウ云フ場合ニ於テハ私ノ
今言ッタヤウナ途ヲ執ッテ居ル、其點ヲ餘計
ナコトデアリマスケレドモ、申上ゲテ置キ
マス、以上申上ゲタ意味ニ於テ、諄イヤウ
デアルガ、此三要點ニ付テ省議ヲ纒メテ、
サウシテ大藏大臣カラ成ベク速ニ御答辯願
ヒタイ、是ガ吾々ガ此稅法ヲ審議スル根本
的ノ態度ヲ決メル要點ナノデアリマス、之
ヲ承知シナイ以上ハ吾々ノ態度ハ決ラヌ、
其點ヲ御斷リ申上ゲテ置キマス、成ベク速
カナル機會ニ於キマシテ明確ナル御答ヲ願
ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=103
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104・石渡莊太郎
○石渡政府委員 無論大藏大臣カラ御答致
シマスガ、只今ノ此再檢討再考ト云フヤウ
ナ問題ニ付キマシテ、今アナタノ御話ノア
リマシタコトハ、私モ思違ヒガアッタカト思
ヒマスガ、其點ダケナラバ私ハアナタノ仰
シヤッタ通リニ考ヘテ居リマス、恐ラク大藏
大臣ニ於カレマシテモアナタノ考ヘテ居ラ
レル以外ニハ互ラヌデアラウト考ヘマス、
是ハ大藏大臣カラモ御答致スノデアリマス
ガ、今囘此議會ヲ通ッテ居ルカラ、一旦議會
ヲ通ッタノデアルカラ是デ行クノダ、斯ウ云
フヤウナコトヲ基礎トシテ言張ルヤウナコ
トハ致シマセヌ、是ハアナタノ仰シヤッタヤ
ウナ朗カナ氣持デ御審議ヲ願フコトニ相成
ルデアラウ、斯ウ思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=104
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105・川崎末五郎
○川崎委員 大體前提トシテ今申上ゲタヤ
ウナ御尋ヲ致シタノデスガ、是ハ其程度ニ
止メマシテ、今度ハ極メテ各論ヲ、末梢論
ニ亙ッテノコトヲ一二御尋致シタイ、順次御
尋致シマス
第一ハ所得稅ノ點デアリマスガ、第二條
ニ於テ所得稅ノ普通所得及〓算所得ニハ增
徵サレルガ、超過所得ハ增徵シナイ、是ハ
前ニ度々御說明ガアッテ能ク諒解シテ居リ
マス、此點ニ於テ普通所得及〓算所得何レ
モ現在ノ稅率ヲ倍ニサレタ、其倍ニサレル
ト云フコトニ付テハドウ云フ意味デ倍ニサ
レタノカ、一應ソレヲ伺ッテ見タイ、同ジ倍
ト致シマシテモ、百分ノ五ヲ百分ノ十ニスル
ト云フコトト、百分ノ二十ニスルト云フコ
トハ、其間同ジ倍ニシテモ餘程納稅者ノ受
ケル苦痛ト云フモノハ違フノデ、此意味ニ
於テ百分ノ十ヲ二十ニシタ方ノ普通所得ハ
別ニシマシテ、〓算所得ニ至リマシテハ少
シ過重デハナイカト云フ嫌ヒガアリマス、
其點ニ付テノ當局ノ此立案ノ趣旨ト、私ガ
今申シマシタヤウナ〓算所得ノ百分ノ十ヲ
二十ニシタコトハ少シ過重ニ過ギヤシナイ
カト云フコトニ付テノ御答辯ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=105
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106・石渡莊太郎
○石渡政府委員 現行法ニ於キマスル〓算
所得百分ノ十ト申シマスモノハ、是ハ人ニ
分配ヲ致シマシテ、サウシタ場合ニ個人ガ
受クル課稅、斯ウ云フ意味ノ課稅ト、ソレ
カラ法人ニ對スル所ノ課稅ト、此二ツノモ
ノヲ含ンデ居ルノデゴザイマス、ソレデゴ
ザイマスノデ今日ノ〓算所得百分ノ十ト云
フモノハ、其百分ノ十ノ中ノ百分ノ五ト云
フモノハ、是ハ法人ノ普通所得ニ相當スル
分デゴザイマス、ソレカラ後ノ百分ノ五ト
云フモノハ個人ノ綜合課稅ニ該當スル部分
デゴザイマス、ソレヲ一括致シマシテ〓算
所得トシテ課稅致シテ居ルノデゴザイマス
ルガ、詰リ〓算所得ハ、〓算期間中ニ分配
ヲ受ケタモノハ個人ニ課稅致シマセヌ、普
通ノ配當デアリマスレバ、配當ヲ受ケレバ
其配當ハ個人ニ課稅致シマス、所ガ此〓算
所得ノ場合ニ於キマシテハ、分配ヲ受ケテ
モ個人ニハ課稅致シマセヌ、ソレデゴザイ
マスルカラ、此稅率ガ今日百分ノ十ニ相成ツ
テ居ルノデゴザイマス、今囘ノ改正ニ當リ
マシテハ、法人ニ對スル稅ヲ、百分ノ五ヲ
百分ノ十ト致シタノデゴザイマスルカラ、
從來ノ〓算所得ノ稅率ノ中ニ含マレタ百分
ノ五ト云フモノハ、是ハ十ニ致サナケレバ
ナラヌ、ソレカラ一面ニ於キマシテハ個人
ノ所得稅ト云フモノハ總體トシテ五割平均
ニ引上ゲラレテ居ルノデゴザイマス、ソレ
カラ配當ノ控除率四割ヲ一一割ニ改メタノデ
ゴザイマス、是等ヲ考ヘ併セテ見マスルト
大體百分ノ二十、斯ウ致シテ置キマスレバ
個人ノ受ケル所得ノ稅率、ソレカラ法人ノ
普通所得ノ稅率、斯ウ云フモノノ合計額ト
略〓匹敵致スノデ、大體ニ於キマシテ百分ノ
二十デ宜カラウト、斯ウ考ヘマシタ次第デ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=106
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107・川崎末五郎
○川崎委員 私ハ全ク素人デアル爲ニ政府
委員ニ餘計ノ御手數ヲ煩ハスコトハ恐縮デ
スガ、只今ノ御答辯ニ依リマシテ、要スル
ニサウスルト從來カラモサウ云フ方針デ
アッテ、〓算所得ノ方ニ於テハ、法人ノ解散、
其他ノ場合ニ於テソレ〓〓株主其他ニ其金
ガ分配サレル、其場合ニ於テ其〓算所得稅
ヲ課セラレテ、此方カラノ分配、個人ノ所
得ト言ヒマスカ、兎ニ角收入ニハ財產所得
稅ハ全然課稅サレナイ譯デスネ、假リニ株
式ナラバ四割控除、ソレヲ併セレバ個人ノ
所得ノ-所得ト云フト語弊ガアリマス
ガ、少クトモ收入ヲ所得ト看做シテ、ソレ
ニ對シテノ課稅ガ之ニ含マレテ居ル、個人
ノ財產所得稅ニ相當スベキモノモ加味サレ
テ居ル、斯ウ云フ譯デスネ、サウ致シマシ
テ百分ノ五ガ現在百分ノ十ニナッテ居ル、ソ
レヲ又倍ニスルト云フコトニナル、サウシ
テ只今ノ均衡ガドウカト云フ御話デアリマ
スガ、第三種所得ニナレバ、是ハ累進率ガ
加ハルカラ、之ニ依ッテ分配ヲ受ケタ個人カ
ラ言ヘバ、其人ノ總所得額ニ依ッテ是ハ餘
程率ガ變ッテ來ル譯デアリマス、サウ云フコ
トニナリマセウ、株式ニ付キマシテノ配當
金ナラバ現行法ニ依ッテ四割控除、四割控除
ヲ受ケタ後ノ賦率ニ於テモ、今言ッタヤウニ
個人々々ニ依ッテ非常ニ變ッテ參リマス、サ
ウ言ッタ場合ニ於テ-是ガ根本ニ立入ル
ノデスケレドモ、斯ウ云フヤウナモノニ付
テ百分ノ五ト十ノ現行法ガ果シテ宜イカド
ウカト云フコトニ遡ル譯デス、少クトモ今
囘株式配當ハ四割ヲ二割ニサレタト云フヤ
ウナコトヲ考ヘマシテ、果シテ只今政府委
員ノ御答辯ノヤウニ十ヲ二十ニシタカラ大
抵ノ「バランス」ガ保テルト仰シヤルコトニ
付テハ、吾々數字的ニモウ少シ御說明ガ願
ヘナクチヤ、果シテソレデ宜イカ、其意味
ニ於テ私ハ百分ノ五ニ對シテハ、半分ノ方
ハ宜クッテモ、財產所得稅ニ準ズベキモノ、
其意味デ加味サレタ部分ニ於テハ一率ニ倍
ニスルト云フコトハ-一體財產所得稅ニ
於テ平均何割ノ增徵ニナッテ居リマスカ、今
囘ハ其點カラ申シマシテモ稍〓酷ヂヤナイ
カト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=107
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108・石渡莊太郎
○石渡政府委員 如何ニモ仰シヤル通リ個
人ノ稅率ハ累進課稅デアリマス、其累進課
稅ヲ源泉課稅デ見テ居ルノデゴザイマスル
カラ、其間ニ一體ドウ云フ根據ガアルノカ、
斯ウ云フ御尋ダッタト思フノデアリマス、是
ハ只今ノ〓算所得ヲ源泉課稅ニ致シマシタ
時分ニ、其當時個人ノ所得稅ノ平均稅率ト
云フモノヲ算出致シマシテ、ソレデ先ヅ百
分ノ五程度、斯ウ云フコトデ決メマシタ次
第デゴザイマス、ソレデ詰リ個人ガ負擔ス
ル分ト云フモノヲ百分ノ五ト、斯ウ見テ、
其稅率デ課稅致シテ居ルノデゴザイマス、
然ラバ今囘ノ增稅ニ當ッテ其百分ノ五ト云
フモノヲ十ニ見ルト云フコトハヒド過ギル
ヂヤナイカ、斯ウ云フ御話ダラウト思フノ
デアリマスルガ、是ハ平均ニ於キマシテ個
人ノ所得稅ハ五割增加致シテ居リマス、ソ
レデゴザイマスカラ、其點ニ付キマシテハ
百分ノ七·五トデモシタ方ガ宜イノカモ分
リマセヌガ、併シ其外ニ只今ノ配當ノ控除
率ノ引上ヲ致シテ居ルノデゴザイマシテ、
是レ又個人ノ關係ニ付テハ少カラザル負擔
ノ引上デアルノデゴザイマシテ、ソレ等ノ
點ヲ考ヘマシテ、先ヅ百分ノ十位ガ宜カラ
ウカ、斯ウ考ヘマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=108
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109・川崎末五郎
○川崎委員 此點ハソレ以上ハ意見ノ相
違水掛論ニナルカラ止メマス
次ニ御伺致シタイノハ今度ハ第三條ニ移
ル譯デスガ、法人ノ普通所得ヲ計算スル場
合ニ於テ、國債ノ利子ニ付キマシテハ相當
優遇サレテ居ルヤウデアッテ、此第一項ニ
依ッテ百分ノ七十ニ相當スル金額ヲ控除サ
レル、從來ハ此點ハドウナッテ居ッタノデセ
ウカ、一應伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=109
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110・石渡莊太郎
○石渡政府委員 從來ハ非課稅デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=110
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111・川崎末五郎
○川崎委員 初メテ玆ニ國債ノ利子ニ付キ
マシテ法人ノ所得ニ計算サレルヤウナ工合
ニ相成ッタコトハ、私ハ寧ロ至當デアラウト
思フ、此意味ニ於テハ私ハ至當デアラウト
思フガ、併シ苟モ之ヲ非課稅カラ課稅ニス
ルヤウニ方針ヲ御變へニナッテ、之ニ臨マレ
タ場合ニ於テ、非課稅ヲ課稅ニシタケレド
モ、實際ニ於テハ其十ノ中七ツハ堪忍シテ
ヤルト云フコトニナッテ來ルコトハ、ドウ
モ私ハ餘リ控除ガヒド過ギハセヌカト思
フ、是ハヤハリ國債ヲ非常ニ優遇スルト云
フ現レデアッテ、世間體ガ惡イモノダカラ、
斯ウ云フ增徵モヤル、何モカモ稅金ヲ總テ
漁ッテヤル場合デアルカラ、今マデノヤウ
ニ國債ヲ無罪放免ニシテ置ク譯ニ行カヌカ
ラ、少シハ引張ッテ來ルケレドモ、實際ニ於
テハ肚ハ成ベクコイツハ放シテ置キタイ、
優遇シテ置キタイト云フヤウナ意味デアル
モノダカラ、捕ヘテ來タケレドモ、結局十
ノ中七ハ逃ガシテヤッテ、三ツシカ捕ヘナ
イ、是ハ一ツノ國債優遇ノ現レダト思フノ
デアリマスガ、是ハ意見ニナリマスカラ、
是レ以上私ハ餘リ申上ゲマセヌガ、百分ノ
七十、七ツマデ逃シタ、此程度ヲ、ドウ云
フ立場カラ、ドウ云フ「スタンダード」カラ、
斯ウ云フヤウナ百分ノ七十、マデヲ逃ガシ
タノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=111
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112・石渡莊太郎
○石渡政府委員 今日ノ國債ノ立場カラ申
シマスレバ、或ハ是マデ非課稅ニ致シテ居
リマスモノヲ、此際課稅致スト云フコトニ
付テハ、多少無理ナ點ガアルカトモ思フノ
デゴザイマス、是ハ國債ガ是ダケ每年々々
發行サレテ居リマス折柄デゴザイマスカ
ラ、或ハ免稅ノ特典ト云フモノヲ其儘維持
シテ行ッタ方ガ宜イカトモ思ッタノデアリマ
スカ、併ナガラ投資サレマスモノハ國債バ
カリヂヤゴザイマセヌ、是ハマア御存ジノ
通リ社債、株劵色々ナモノガアルノデゴザ
イマシテ、此際國債以外ノ方ノ稅金バカリ
上ゲマシテ、國債ヘノ投資ト云フモノヲ從
來通リ免稅ノ儘優遇致シテ置クト、斯ウ云
フコトニ致シマスレバ、其間ニ、投資ニ非
常ナ差等ガ出來ルノデアリマスカラ、其點
寧ロ國債ニモ課稅シ、一方ニ於テハ今マデ
通リノ利廻上ノ間差ト云フモノヲ認メテ置
イタラ宜カラウト、斯ウ云フコトカラ致シ
マシテ、百分ノ七十ト云フモノヲ控除スル
コトトシタノデアリマス、斯ウ致シテ置キ
マスレバ、大體ニ於キマシテ從來ノ利廻ノ
間差ト云フモノヲ維持サレ經濟界ニ激變ヲ
與ヘナイデ濟ムデアラウト考ヘマシタ結果
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=112
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113・川崎末五郎
○川崎委員 從來ト急激ナ變化ヲ好マナ
イ、一言ニシテ言ヘバ、斯ウ云フ御趣旨デ
アルヤウニ思フノデアリマス、ソレハ全部
トハ言ヒマセヌガ、御尤ナ節モアルノデア
リマス、一體私ハ國債ヲ從來餘リニ稅法上
ニ於テ實ハ優遇シ過ギテ居ッタ、何モ私ハ他
ノ國債以外ノ公社債ナリ、株式ニ贔屓スル
意味デハアリマセヌガ、實際ニ於テ日本ノ
今マデノ國債ニ對スル稅法上ノ政策ト云フ
モノハ、私ハ餘リニ國債ヲ大事ニシ過ギタ、
優遇シ過ギタ、マア今囘ハ一般ノ增稅ト共
ニ國債ニ對シテモ、少シ課稅スルヤウニナッ
テ來タコトハ、寧ロ私ハ宜イ傾向ダト思ッテ
居ル、併シ急激ナ變化ヲ好マナイコトハ、
是モ御尤デス、サウ云フ意味ナラバ、體
此第九條ニ於テモ、ヤハリ貯蓄銀行ガ所有
スル國債ノ利子ニ對シテハ、要スルニ免除
サレルノデセウ、此ノ限ニ在ラズト云フノ
ハ、サウ云フ意味デセウー-私ノ解釋ガ誤ッ
テ居ルカ知レマセヌガ、若シサウトスレバ、
マダ〓〓隨處ニ國債ヲ優遇シ過ギテ居ル傾
向ガアルコトヲ私ハ遺憾ニ思フノデアリマ
スガ、將來ノ稅制改革デハモウ一度再檢討
ヲ願ハナケレバナラヌト私ハ思フノデス、
尙ホ國債、其他ノ公社債、或ハ株式ノ利廻
關係ノ御懸念ノ點モ今伺ヒマシタガ、ソレ
ナレバ吾々ハ逆ニ今囘ノ增稅ニ付テ、殊ニ
他ノ株式ノ方ハ、今度ハ單ナル所得稅ニ於
テモ餘程虐待ヲ蒙ッテ居リマスガ、其他ノ稅
法ニ於テモ、有價證劵移轉稅ニ於テモ、或
ハ資本利子稅、總テノ方面ニ於テ株式ガ非
常ニ虐待サレテ居ル、是等ノ課稅ヲ積レ
バ、今マデノ國債ト公社債、殊ニ株式ト云
フモノハ、利廻關係カラ言ヘバ、各方面ニ
於テ非常ナル懸隔ガ出テ來ルト云フコト
ヲ、吾々ハ素人デアルカラ分リマセヌケレ
ドモ、一般ノ關係當事者カラ、各方面ノ人
カラ伺ヒマス、又一々ソレ等ニ付テ聞イテ
見、又調ベテ見ルト、其點歷然ト指摘サレ
ル點モアルノデアリマス、此點カラ言ヘバ、
只今ノ石渡政府委員ノ國債ニ付テノ御懸念
ハ御尤デアリマスガ、何故其御懸念ヲ株式
ニ對シテモ御拂ヒニナッテ、同情ヲ御持チニ
ナラナカッタカト私ハ思フノデアリマス、ソ
レハ又同僚諸君カラ旣ニ御尋シテ居ル點モ
アリマスルカラ、私ハ質問ト云フヨリ寧ロ
御警告ヲ與ヘテ御注意ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=113
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114・石渡莊太郎
○石渡政府委員 株式ニ對シテ虐待ヲ致ス
ト云フ考ハ毛頭アリマセヌ、前ノ案カラ比
較致シマスレバ、或ハ法人ノ超過所得稅ノ
增稅ヲ緩和シ、ソレカラ株式ノ配當ニ付キ
マシテモ全額課稅、債務利子控除ト云フノ
ヲ八割課稅ニ爲シ、法人資本稅ノ稅率ヲ引
下ゲ、法人全體ト致シマシテ、前ノ撤囘致
シマシタ案ニ比較致シマスレバ、餘程緩和
シテ居ルト思フノデアリマス、此點カラ申
シマスレバ、國債ノ源泉課稅ト云フモノ
ハ、前ノ撤囘案デモヤハリ百分ノ六デアッ
タガ、今度モ亦百分ノ六デアリマス、是ハ
所得稅ト資本利子稅トノ相違ハアリマスケ
レドモ、課率ハ源泉課稅ニ於テ百分ノ六デ
アリマス、ソレデアリマスノデ、株式ニ對
シマシテ特別ニ待遇ヲ惡クスルト云フヤウ
ナ考ハ毛頭持ッテ居ラヌノデアリマス、又之
ヲ客觀的ニ御考ヘ下サッテモ、國債ノ方ハ
五分ノ利子デアリマシタノヲ三分五厘ニ借
換ヘテ居ルノデアリマス、其他社債等ニ於
キマシテモ、皆是ハ今日四分一厘程度ニ落
チテ來テ居リマス、旣ニ其差額ニ於キマシ
テ、三割以上ノ課稅ヲ受ケテ居ルノト殆ド
同樣ナコトニ相成ッテ居リマス、然ルニ株式
ノ方ハ如何デゴザイマスカ、殆ド此一兩年
間增配ニ增配ヲ致シテ居ルヤウナ狀況デア
リマシテ、今日ノ場合ニ於テ負擔力ト云フ
モノハ相當殖エテ居ル、是ハモウ疑フベカ
ラザル點デアルト思フノデアリマス、彼此
レ今日ノ場合此資本利子ト株式ト云フモノ
トヲ考ヘテ見マスト、株式ニ於テ相當ノ負
擔力ガアル、斯ウ言ッテモ差支ヘナカラウ
ト思フノデアリマス、隨テ今囘ノ增徵案ニ
於キマシテモ、大體マアアナタノ仰セノア
リマシタ通リ、株式ノ方面ニ於テハ相當ナ
負擔ノ增加モアルノデアリマスガ、此程度
ノ增加ニ於テ、株式ヲ壓迫スル、イヂメル
ト云フヤウナ程度ニハ至ッテ居ナイ、斯ウ信
ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=114
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115・川崎末五郎
○川崎委員 石渡君ノ御說明デ、一應御趣
旨ノ在ル所ハ能ク諒解致シマシタ、重ネテ
言葉ヲ費ス必要ハアリマセヌガ、私ハ此機
會ニ於キマシテ一言致シテ置キタイノハ、政
府ガ國債ノ消化ト言ヒマスカ、國債ノ發行
ヲ容易ナラシメル爲ニ、國債ヲ或ル程度マ
デ優遇シ、之ヲ保護サレルコトハ是ハ必要
デアリ、已ムヲ得ナイカモ知レヌト思ヒマ
ス、併シ逆ニ其度ガ過ギルト、反對ノ影響
ヲ受ケルモノハ生產ノ方面デアッテ、ソレガ
爲ニ生產資金ト云フモノガ寧ロ國債ノ方ニ
振向イテシマフ、是ガ爲ニ結城大藏大臣ガ
念願トシテ居ラレマス、所謂生產力ノ一元
化擴充ト言ヒマスカ、擴張ト言ヒマス
カ、產業資金ノ充實ト言ヒマスカ、豐富ニ
供給スルト言ヒマスカ、サウ云ッタ方面ト
ハ鼬ゴッコニナルノデアリマス、一方ガ良ク
ナレバ一方ガソレダケ惡イ影響ヲ受ケルヤ
ウニナルト思フ、私ハ何モ理窟ヲ申スノデ
アリマセヌガ、サウ云フ惧レヲ有ッテ居リ
VX、其意味カラ言ヘバ、餘リニ國債ノミ
ヲ政府ガ優遇スルト云フコトハ、却テ其所
期ノ目的ト逆ノ作用ヲ起ス虞ガアリマスカ
ラ、其點ニ付テ御考ヘ願ヒタイ、同時ニ根
本的ノ稅制改革ニ於テハ其點ヲ一ツ能ク御
考ヘ願ヒタイト云フコトヲ私ノ希望トシテ
申添ヘテ、此點ハ是デ止メテ置キマス、次
ニ第六條ニ移ルノデアリマスガ、此第三種
ノ所得ニ付テハ他ノ同僚諸君カラ色々御質
問モアリマシテ、政府ノ意ノ在ル所モ一應
伺ッタノデアリマスカラ、重ネテ申上ゲル必
要モナイノデアリマスガ、唯一言申シテ置
キタイコトハ、何ト申シマシテモ此階級區
分ガ今囘ハ大雜把ト云フカ荒イ、隨テ本當
ノ負擔ノ公平ト云フコトガ保テルカドウカ
ト云フコトハ吾々ノ疑問トスル一點デアリ
マス、同時ニ次ノ稅制改革案ハ是ガ基礎ニ
ナッテハ困ルカラ、是ハ白紙ニ立返ラナケレ
バナラヌト思フガ、其點ニ付テノ關係ヲ伺
ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=115
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116・石渡莊太郎
○石渡政府委員 此增率ノキザミガ粗イコ
トハ御說ノ通リデアリマシテ、是ハ全ク臨
時增徴ノ爲デゴザイマス、是等ハ勿論白紙
ニ立返リマシテ考ヘタイト思ヒマス、ト同
時ニ御審議下サレマスアナタ方ニ於キマシ
テモ、白紙ニ立返ッテ此前ヨリモ增稅デア
ルヂヤナイカト言ハナイヤウニ御願致シタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=116
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117・川崎末五郎
○川崎委員 次ニ第七條ニ移ルノデスガ、
是ハモウ理窟ヲ私ハ拔キニシマス、一體株
式ノ配當ノ四割控除ヲ二割ニ下ゲタ、臨時
增徵法案ニ於テハ-他ノ方面ニ於テハ馬
場案ニ對シテ今度修正ヲ加ヘラレテ、差當
リ根本的ノ方針ニ關スルモノナドハ差控
ヘラレタ點ガ多イヤウニ思フ、左樣ナ意味
カラ言ヘバヤハリ是等モドウセ此次ニ根
本的ニ改正サレル案ナラバ、此處デ卒然ト
シテ持ッテ來ナクテ-殊ニ馬場案ニ依レ
バ何割控除ト云フコトヲ止メテ、株式取得
ニ要シタ負債ノ利子ヲ控除スルト云フ案ニ
出テ居ッタヤウデアリマス、是等ニ付テ吾々
ハ相當意見モアレバ希望モアッタノデアリ
マス、サウ云ッタヤウニ根本的方針ガ變ルコ
トハ別トシテ、率ガ吝臭イ話デ今マデ百分
ノ四十控除シタノヲ半分捲上ゲテヤレト云
フヤウニナル、コンナコトハ根本的改正ノ
時マデ御待チニナッテ然ルベキダト思フ、是
ダケハ、二割控除デ二割取ラナケレバナラ
ヌト云フコトハ意地張ラナクテモ宜イ問題
ヂヤナイカト思ヒマス、是カラ生ズル稅收
入ハドレダケ增加スルカ知レマセヌケレド
モ、是ニマデ當ラナクテモ宜イト思ヒマス
ガ、ドウ云フ譯デ斯ウナッタノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=117
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118・石渡莊太郎
○石渡政府委員 此問題ハ多年ノ懸案デゴ
ザイマシテ、多年本議場等ニ於キマシテモ
論議致サレタ問題デアリマス、政府ト致シ
マシテモ他日增稅ヲ行ヒマス場合ニハ此點
ハ必ズ考ヘルト云フコトヲ貴衆兩院ニ於キ
マシテモ屢〓申シテ居ッタコトデアリマス、
殊ニ昭和七年ノ農業恐慌以來、配當ガ四割
ノ控除ヲ受ケテ居ッテ農業ノ所得ガ控除ヲ
受ケヌト云フ法ハナイ、是ハサウ云フコト
ヲ言ハレル方ニモ觀念上正解サレテ居ナイ
點モゴザイマス、配當ニ付テハ法人ニ於テ
モ課稅ヲ受ケ、同時ニ個人ニ於テモ課稅ヲ
受ケルト云フ點モゴザイマスガ、斯ウ云フ
コトヲ云ヘバ如何ニモ大藏當局ガ資本家ト
相結ンデ何カ不正ヲ考ヘテデモ居ルカノ如
キ口吻ヲ以テ御叱リヲ受ケタヤウナコトモ
アリマスノデ、是ハ出來ルダケ近イ機會ニ
於キマシテ適當ニ處理致シタイト存ジテ
居ッタ點デゴザイマス、是ハ既ニ前ノ撤囘致
シマシタ案ニ於キマシテモ、全額ヲ課稅シ
テ債務ノ利子ヲ控除スルト云フコトニ相
成ッテ居タノデゴザイマシテ、斯ウ云フヤウ
ナ改正ハ獨リ此處バカリデゴザイマセヌ、
砂糖消費稅ニ於キマシテモ或ル程度ノ改正
ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、是ハ所得稅
ノ增徵ヲ提案致シマスニハ、實ハ最小限度
ノ改正ダト思ッテ是ダケヲ持出シマシタ次
第デゴザイマス、之ニ依リマシテ增收ニナ
リマス金額ハ二千八百万圓デゴザイマシ
テ、是ハ今囘ノ增徵案ノ主要ナル部分ヲ占
メテ居ル譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=118
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119・川崎末五郎
○川崎委員 此點モ同僚諸君カラ度々質疑
ガ重ネラレテ居リマスシ、只今政府委員ノ
御答辯モアリマシタカラ、コレ以上申上ゲ
ルコトヲ私ハ差控ヘマス、併シ私カラ言ヘ
バ、從來ノ長イ間ノ懸案デ、問題ニナッタ點
デアリマセウ、同時ニソレダケ私ハ是ハ重
要ナ問題ダト思フ、殊ニ馬場案ニ於テハ
全然根本的ニ全額ヲ課稅スル、併シ是ハ取
得ニ要シタ負債ノ利子ヲ控除スル、先ニモ
言ッタヤウニ、其負債ノ利子ヲ控除スルト云
フコトニ付テハ、所得稅法全體トシテ、私
ハ自分デ希望モアリ意見モアルノデスガ、
サウ云フコトヲ言フ積リモナケレバ、必要
モナイ、兎ニ角是ハサウ云ッタ意味ニ於テ重
要ナ問題ノ一ツデアリマス、是ハ私カラ言
ハスレバ、兎ニ角今度ハ臨時增徵デアッテ、
間ニ合セデアッテ、本年度ノ豫算編成ニ於
テ、本年度ヲ賄フ爲ノ經費ガ要ルカラソレ
ダケ徵ルト云フ意味ニ過ギナイノデ、輕ク
取扱フ、又輕ク取扱フ意味ニ於テ吾々モ朗
カニ審議シテ居ル、是ガ若シ永久ノ基礎ニ
ナルト云フノナラ、先程カラロガ酸ッパクナ
ル程度々言ッテ居ルヤウニ、眞面目ニ其意味
デ嚴正ニ、嚴重ニヤラナケレバナラヌ、政
府ニ對シテ、マア〓〓政府ガ斯ウダカラト
云フ風デナク、嚴正ニヤラナケレバナラヌ
ト思フノデス、斯ウ云フ重大ナ案ヲ持ッテ來
テ臨時增徵案ト云フ名前ヲ付ケラレル、サ
ウ云フ意味デ眞劍ニ御ヤリニナルナラバ、
先刻言ッタヤウニ、根本的ニ地ナラシヲシテ
貰ッテ-全般ニ亙ッテ公正ナル稅制案ナラ
バ好イガ、サウデナク一時ノ間ニ合セデ、
株式ダケヲ四割控除デ納ッテ居ルノヲ二割
ト云フノハ少シドウカト私ハ思フ、是ハ潔
ク撤囘サレル意思ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=119
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120・石渡莊太郎
○石渡政府委員 斷ジテ撤囘スル意思ハア
リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=120
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121・川崎末五郎
○川崎委員 撤囘サレナクテモ、ヤリタケ
レバ吾々ハ議員ノ權能ヲ以テヤリマス
次ハ飛ンデ營業收益稅デスガ、今囘ハ營
業收益稅ニ付キマシテハ、個人ノ營業收益
稅ニ付テハ、全部御觸レニナラナカッタノデ
アリマスガ、馬場案ニ依レバ相當ノ免稅點
ノ引上ガアッタノヲ、之ヲ廢止スル、必ズシ
モ馬場案ヲ踏襲サレル必要ハナイノデアリ
マスガ、此馬場案ヲ踏襲サレズ、個人ノ方
ハ全然現行法通リニ-是ハ大藏當局トシ
テハ相當ノ御考ガアッテナサレタコトデア
リマセウガ、吾々同僚ノ委員カラ先ニ御質
問申上ゲタカモ知レマセヌガ、私時々席ヲ
立ッテ居ナカッタモノデスカラ、極ク簡單デ
宜シウゴザイマスカラ、要領ダケヲ御答辯
願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=121
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122・石渡莊太郎
○石渡政府委員 營業收益稅ノ免稅點四百
圓ヲ六百圓ニ引上ゲルト云フコトヲ止メタ
ノハ、一體ドウ云フ譯カ、斯ウ云フ御尋デ
ゴザイマス、是ハ個人ノ營業收益稅ノ免稅
點ハ、實ハ免稅點ト云フ言葉ガ多少語弊ガ
アリマスノデ、是ハ川崎サン能ク御承知ノ
通リ、府縣稅トノ分界點、斯ウ申上ゲタ方
ガ好イカト思フノデアリマス、今日原則ト
シテハ此營業收益稅ヨリモ其分界點以下ノ
營業稅ノ方ガ幾ラカ安クナル立前ニナッテ
居リマス、併シ此點ハ先般森サンカラ御質
問モアリマシタ通リ、實際ニハ國稅ノ營業
者ヨリモ、却ッテソレ以下ノ營業者ノ方ガ
負擔ガ重イ場合モゴザイマス、ソレデ此免
稅點ヲ引上ゲマシタ所デ、ソレ等ノ關係ヲ
餘程調節致シマセヌト、果シテ其負擔ガ安
クナルカドウカト云フコトモハッキリ致シ
マセヌカラ、是等ハヤハリ將來ノ稅制整理、
卽チ下ノ方ノ營業稅ヲ地方財政ニ委讓スル
カドウカト云フ問題ニ付テハ、ヤハリ是ハ
此次ノ稅制整理ニ一般的ノ問題トシテ考ヘ
タ方ガ宜シイト、斯ウ云フ考ヘカラ致シマ
シテ今囘ハ取止メマシタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=122
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123・川崎末五郎
○川崎委員 此個人ノ營業收益稅ニ付キマ
シテハ、只今石渡君ノ御說明デ能ク諒承致
シマシタ、御尤ノヤウニ伺フノデアリマス、
ソコデ此免稅點ト申シマシテモ、是レ以下
ノ國稅ノ課稅ヲ受ケナイ者ハ、營業者ハ、
ソレ〓〓府縣稅、地方稅ニ於テ課稅セラレ
ルコトハ御示シノ通リデアリマス、而モソ
レ等ガ時ニ府縣ニ依リ、地方ニ依リマシテ
國稅ノ營業稅ヲ納メタ方ガ却テ實際ノ負擔
ガ、總テノ附加稅ヲ合セテモ、其方ガ輕ク
テ府縣ノ營業稅ノ方ガ却テ高イト云フ場合
ガアルコトヲ、私ハ承知シテ居リマス、ソ
レダケ地方ニ於テ負擔ト云フモノガ公正ヲ
保タレテ居ラヌ、輕重ガアル是等ノ地方ニ
於テ負擔ノ輕重ガナイヤウニ、ソレガ爲ニ
是正ヲ要望スルト云フコトガ、實情ノ一ツ
ニ於テ現レテ居リマス、ダカラ其立前ハ、
ヤハリ立前トシテハ事實ハサウデアルガ、
立前トシテハヤハリ國稅ガ重クテ地方稅ガ
輕イト云フ立前デ、國稅ヲチヤントシテ置
クコトガ宜シイ、又將來モ此立前ヲハッキリ
シナイト實際ニ於テ是ヲ國ノ方デ免稅シテ、
地方ニ委讓シテモ、却テ個々ノ營業者ハ、
ソレガ爲ニ重イ負擔ヲ蒙ルノダ、免稅點ヲ
引上ゲテモ宜イトカドウカト云フ議論ニ對
シテ、ソレヲ援用サレルコトハ困ル、立前
トシテハ、國稅ガ重クテ地方稅ガ輕イ、國
稅ニ付テハ現在ノ中小商工業者ノ窮迫シタ
ル狀況ニ鑑ミマシテ、ヤハリ國稅トシテハ、
相當引上ゲテ貰フ方ガ宜シイ、是ハ次ノ稅
制改革ノ時ニハヤハリ左樣ナ意味ニ於テ御
考慮ヲ願ヒタイ、サウシテ相當ナ引上點マ
デ上ゲテ貰ヒタイト云フノガ希望デアリマ
ス、此點ニ付テ念ノ爲ニ政府委員ノ御考ヲ
伺ッテ見タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=123
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124・石渡莊太郎
○石渡政府委員 今ノ川崎サンノ御意見ハ
能ク承ッテ置キマシテ、十分考慮致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=124
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125・川崎末五郎
○川崎委員 次ニ相續稅ノコトデゴザイマ
スガ、是ハ同僚ノ松尾委員カラモ希望ヲ
盛ッタ質問ガアッタノデアリマス、實際自分
ガ相續ヲ受ケテ、相續稅ヲ課セラレテ見ル
ト、地方ノ者ハ、實際此點ニ、不動產、殊
ニ山林ヲ持ッテ居ル場合ニ於テハ、相續稅ヲ、
實際納メル時ニ苦勞ヲ致スノデアリマス
ガ、是ハ曩ニ松尾君ガ縷々實情ヲ申述ベテ
希望ヲ加味シタ質問ヲ致シタノデアリマス
ガ、私ハ御尤デアルト思ヒマス、私達ハ貧
乏人デアリマスカラ、自分自身ノ體驗トシ
テハアリマセヌガ、能ク諒解シ得ルト思
フ、本當ニアレバ實質ヲ穿ッテ居ル御尋デ
アリマス、斯ウ云ッタ意味ニ於テ今囘此法
案ニ於キマシテハ或ル條件ノ下ニ不動產
ノ納稅點ニ於テ、從來ノ七年ノ年賦延納
ヲ、十年ニ延長サレタ、是ハ洵ニ結構ト思
ヒマスガ、吾々カラ言ヘバ此十年ガ、假リ
ニ曩ニ松尾委員ガ希望ヲ中シテ居ッタヤウ
ニ、其相續財產ガ、主トシテ不動產ニナッ
テ居ル場合ニ於テハ、或ハ物納ヲ認メテ吳
レルヤウニシテ吳レ、是ハ殊ニ山林業者ノ
長イ間ノ希望ノヤウニ思ッテ居リマスガ、恐
ラク是ハ政府トシテモ困難ト考ヘルデアラ
ウト思フノデアリマスガ、其物納制度ヲ御
認メニナレバ、是ハ確ニ人助ケデアリマス、
殊ニ林業家、百姓ニハ助ケニナリマス、ケ
レドモ恐ラク政府トシテハソコ迄ハ御寛大
ナ御意思ハアルマイト思ヒマス、セメテ此
分納ノ期間延長デ我慢シヨウト云フコトニ
ナレバ、十年ト云フノハマダ吾々カラ言ヘ
バ短過ギル、今度ハ百分ノ五トカ、百分ノ
十トカ、倍以上、是ヲ倍ニシテ居ルカラ、
七年ヲ十四年ハ、半パダカラ十五年位ニ延
長スル意思ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=125
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126・石渡莊太郎
○石渡政府委員 此年賦延納ノ期間ハ、只
今川崎サンカラ色々御注意ゴザイマシタ
ガ、是ハ餘リ長ク致シマスト、却テ其間ニ
經濟狀態ノ變化ガ起ッテ、巧ク行カヌ、ト斯
ウ云フコトヲ言フ人モアルノデゴザイマ
ス、ソレデ世界ノ立法例ノ一番長イモノモ
英吉利ニ於キマシテモ、不動產ノ多イモノ
ハヤハリ十箇年ニナッテ居ルノデアリマシ
テ、十箇年ト云フノハ可ナリ長イ期間ダト
思ッテ居リマス、ソレカラ只今御話ノアリマ
シタ山林ノ問題デゴザイマスガ、山林ニ付
テノ納稅上ニ關スル問題ハ實ハ、昭和五年、
六年當時、其前ニ起リマシタ相續、卽チ昭
和三年四年當時ニ起リマシタ相續稅ガ、山
林ガ暴落シタ爲-昭和五年六年當時ハ暴
落シタ、其爲ニ木ヲ伐ッテ賣ッテモ、昭和三
年當時ノ時價カラ見ルト、ドンナニ伐ッテモ
追付カヌ、坊主ニシテモ、追付カヌト、斯
ウ云フ風ナ時代モアッタノデアリマス、此當
時ニ於キマシテハ、私共モ是ハ餘程心配致
シマシテ山林ノ課稅ト云フモノハ、一體ド
ウナルノカト、斯ウ云フ風ナ考マデ致シテ
居ッタノデアリマスガ、幸ヒニ致シマシテ、
其後サウ云フヤウナ狀況ハ、今日其影ヲ潜
メタノデゴサイマスルガ、丁度昭和六年、
七年當時ニ於キマシテハ、山林ノ相續稅ヲ
苦痛トサレテ、アッチデモコッチデモ、滯納
ガアッタコトハ事實デアリマス、ソレハ其當
時相續稅ヲ納メル爲ニ、山林ヲ伐採スル、
サウスルト所得稅ガ掛ッテ行クノデゴザイ
マス、デスカラ山林ノ相續稅ヲ納メル爲ニ、
山林ヲ伐ル、所得稅ガ掛ル、又伐ッテ行ク、
斯樣ナコトデ、非常ニ苦痛ニサレタ向キモ
アッタノデアリマスガ、一ツ是等ノ點ハドウ
持ッテ行クカト云フコトニ付キマシテ十分
考ヘテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=126
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127・川崎末五郎
○川崎委員 實際相續稅ニ付キマシテモ、
ドウモ不動產重課ト云フコトハ、是ハ覆フ
ベカラザル事實デアリマス、不動產ノ中デ
モ、又田畑ハ今ノ相續稅關係ニ於テハ、山
林ハ相當困難ナ事情ニアッタガ、此山林ガ一
番事實困ルノデアリマス、今同情アル御答
辯ガアッテ、吾々ハ其點ハ諒ト致シマス、是
ハ將來ノ稅法改正ノ時ニ其點ハ篤ト御考ヲ
願ッテ善處サレンコトヲ希望スノデアリマ
ス
次ニ鑛產稅ニ付キマシテハ、今囘銀鑛及
ビ金鑛ニハ新ニ課稅サレルコトニ相成ッタ
ヤウデアリマス、是ハモウ諄イコトハ申シ
マセヌガ、從來政府ト致シマシテハ、此鑛
業政策ノ中ニ於キマシテ、金銀ノ產出ヲ奬
勵スル意味デ、餘程他ノ方面ニ於テハ政府
ハ之ヲ助長シ、之ヲ保護スルヤウナ政策ヲ
御採リニナッテ居ッタ、稅法ニ於テハ今マデ
是ガ免除サレテ居ッタノモサウ云フ意味デ
アッタノデセウシ、又ソレ以外ノ他ノ助長的
ノ方面ニ於テ餘程金銀ノ產出ヲ助長スル爲
ニ此方面ニハ保護ガアッタノデアリマス、其
他ノ方面ニ於テハ今囘未ダ何等政府ノ方針
ガ變ッタヤウニ伺ハヌノデスガ、稅法ニ於テ
ハ玆ニソレヲ撤囘シテ課稅サレルト云フコ
トハ一般ノ金銀產出ノ助長政策ト云ヒマス
カ、政府ノ方針ト矛盾スルヤウナ嫌ガアル
ト思ヒマス、此點ハドウ云フ御考デアリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=127
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128・石渡莊太郎
○石渡政府委員 是ハ此前提出致サレマシ
タ案ニハ金銀鉛、是ダケニ對シテ課稅サレ
ル案ニナッテ居ッタノデゴザイマス、金ニ付
キマシテハ是ハ御承知ノ通リ其產出ニ付キ
マシテハ、是ハ從來カラ頻リニ奬勵シテ居
ルノデゴザイマス、奬勵シテ居ルノデゴザ
イマスルガ、同時ニ又一面ニ於キマシテハ
金ノ買上價格ノ引上ゲ等ニ依リマシテ、今
日ニ於キマシテハ其金鑛ノ中ニハ隨分利益
ノ多イモノモゴザイマス、隨テ今日此金鑛
銀鑛ニ對シテ此千分ノ十三程度ノ租稅ヲ賦
課致シマシテモ大シタ影響ハアルマイ、斯
ウ云フ考カラ致シマシテ課稅スルコトニ致
シタノデゴザイマス、尤モ金鑛ニ付キマシ
テハ此前提出致シマシタ案ハ更ニ此上ニ千
分ノ六ガアッタノデアリマスガ、其千分ノ六
ハ之ヲ引込メマシテ普通ノ鑛產稅通リノ課
稅ヲ致ス、斯ウ云フコトニ致シテ置キマシ
タ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=128
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129・川崎末五郎
○川崎委員 サウ致シマスルト敢テ之ニ
依ッテ政府ガ金銀ノ產出ノ從來ノ奬勵方針
ヲ變更シタト云フ意味ヂヤナイノデスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=129
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130・石渡莊太郎
○石渡政府委員 サウ云フ意味デハゴザイ
マヨム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=130
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131・川崎末五郎
○川崎委員 次デ今度ハ酒稅ニ移リマスガ、
一體馬場案ニ依リマスレバ、年來ノ問題ノ
一ツデアリマシタ所謂造石稅ヲ廢メテ、庫
出稅ニスルヤウナ案ガ出來上ッテ居ッタヤウ
ニ思ハレルノデアリマス、酒稅ノ政策ト云
ヒマスカ、其方カラ見レバ造石稅ガ宜イカ
庫出稅ガ宜イカ、之ニ付テハ各〓議論モア
リマセウシ、又現在ノ〓酒ノ釀造界ノ實情
カラ見マシテ其何レガ適當デアリ、又個々
ノ釀造業者カラ見レバ之ニ依ッテ受ケル影響
ニ好影響ヲ受ケルモノモアレバ惡影響ヲ受
ケルモノモアリマセウシ、種々雜多デアラ
ウト思フ、一〓ニ之ヲ言フコトハ出來ナイ
ト思フノデアリマスガ、サウ云フ事ニ付テ
ノ意見ヤ議論ヲ私ハ此處デ致ス積リヂヤア
リマセヌ、先ニモ他ノ同僚ノ委員カラノ質
問ニ對シテ御答辯ガアッタヤウニ思フノデス
ガ、此點ハ稍〓重要ダト思ヒマスルカラ、特
ニハッキリシタコトヲ一ツ御伺シテ置キタ
イト思ヒマス、從來ノ質問ト重複スル場合モ
アルカモ知レマセヌガ、其點ハ其意味デ御
許シヲ願ヒタイ、一言ニシテ申シマスレバ、
私ハ理論的ニ言ヘバ、理想カラ言ヘバ造石
稅ヨリモ庫出稅ノ方ガ宜イヂヤナイカ、實
際ノ方法手續ノ定メ方ニ依ッテハ又優劣ハ
アリマスガ、先ヅ一般的ニ言ヘバ、理論的ニ
言ヘバ庫出稅ノ方ガ宜イヂヤナイカトハ私
モ思フシ、其點ヲ主張スルナレバ其稅ハ私
ハ是認スル者デアリマスルガ、併シ是ハ日
本ノ現在ノ釀造界ノ實情ニ照シマスレバ、
單ナルサウ云フ理想ヲ以テ推スコトハ出來
ナイト云フノガ實際デアル、此意味カラ言
ヘバ私ハ理論トシテハ認メルガ、實際ニ於
テハ之ヲ否定シテ、寧ロ現在ノ儘ニ於キマ
シテハ、現狀ニ於テハ造石稅ヲ維持サレテ
馬場案ヲ撤囘サレテ造石稅トサレタコトヲ
寧ロ吾々ハ大藏省ノ石渡君ノ其英斷ニ敬意
ヲ表シ贊成スル者デアリマス、併シ是ハ臨
時增徵ノ法案デアリマシテ、將來ノ根本的
ノ稅制改革ニ於キマシテハドウシテモ此問
題ハ何レトモ更ニ再檢討セラレナクチヤナ
ラヌ、酒稅ニ於テハ是ハ重要ナル一ツノ問
題デアラウト思フ、此意味ニ於テ私ハ政府
ニ其意見ヲ確メテ置キタイト思フノデアリ
マス、尙ホ私ノ意見モ餘計ナコトデハアリ
マスガ申上ゲマスレバ、要スルニ理想カラ
言ヘバ私ハ庫出稅ガ宜イト思フ、併シ卒然
トシテ此庫出稅ニ變更スレバ之ニ因ル業界
ノ影響ト云フモノハ非常ナモノデアル、恐
ラク二、三割、甚シキニ至レバ四、五割ノ
中小釀造家ハ破綻ノ憂目ヲ見ル、幾ラ少ク
テモ一一、三割ト云フモノハ事實ニ於テ破綻
スルダラウト思フ、之ニ對シテ救濟ノ途ヲ
講ジテサウ云フコトノナイヤウニスル他ノ
方法手段ヲ當局トシテ講ジラレナケレバ、
卒然トシテ大藏省ガ庫出稅ニスルト云フコ
トハ私共ハ絕對ニ宜クナイト思フ、併シ今
ノヤウニ庫出稅ニスル爲ニ影響ヲ蒙ル所ノ
中小釀造家ヲ救濟スルコトハ、是ハ考慮シ
テ置カナケレバナラヌ、又之ニ對シテ政府
ハ餘程決心覺悟ヲシテ、殊ニ財政上ニ於テ
直接ノ稅收入ニ於テモ一時的デハアリマス
ガ相當ナ影響モアリマスシ、又積極的ニ資
金ノ融通ヲスル上ニ於テ相當ノ改良ヲサレ
助成ヲサレナケレバ是ハ到底行フコトハ困
難デアル、其準備ガアッテ庫出稅ヲ御採リ
ニナルナラバ吾々ハ是ハ認メル、其準備ナ
シニ庫出稅ヲヤルト云フコトハドウシテモ
吾々ハ認メラレナイ、又サウ云フコトヲサ
レテハ困ル、斯ウ云フ考ヲ此庫出稅ト造石
稅ノ問題ニ付テハ持ッテ居ルノデスガ、簡單
デ宜シウゴザイマスカラ、今囘政府ガ馬場
案ノ庫出稅ヲ廢メラレテ造石稅ニ還元サレ
タ其御趣旨ト、將來之ニ對シテ來ルベキ稅
制改革ニ於テ如何ナル方針ヲ以テ御臨ミニ
ナルカ、將來ノコトハ其時ニ考ヘルト云フ
オ座ナリデハ困ルケレドモ、大抵石渡君ト
シテハ此點ニ付テハ一家ノ見識ヲ以テ庫出
稅ヲ廢メテ造石稅ニ還元サレタト思ヒマス
カラ、其點ニ付テ勇敢ニアナタノ卒直ナ意
見ヲ御聽カセ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=131
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132・石渡莊太郎
○石渡政府委員 アナタノ御意見ニ私ハ大
體ニ於テ其感ヲ同ジウ致スノデゴザイマ
ス、是ハ洵ニ理窟ト致シマシテハ庫出稅ハ
宜シウゴザイマス、ガ今日ノ實情ニ於キマ
シテハ之ヲ其儘實行致シマスコトハ、只今
アナタノ仰シヤッタ其儘ノコトデゴザイマシ
テ、是ハ中々實行困難ナ點ヲ含ンデ居ルト
思フノデゴザイマス、ソレデ若シ庫出稅ヲ
實行致スト云フコトデアリマスナラバ、各
種ノ場合ヲ餘程愼重ニ考慮致シマシテ、ソ
レ等ノ惡影響ノナイト云フコトヲ十分見定
メマシタ上デ、更ニ只今最後ニ御示シノ國ノ
收入トノ關係ヲ十分ニ見極メマシテカラデ
ナイト是ハ肚ヲ決メラレナイ問題デアルト
私ハ思フノデゴザイマス、唯普通ノオ座ナ
リノコトヲ言ハズニ今此處デ私ノ意見ヲ率
直ニ言ヘ、斯ウ云フ御話デゴザイマスガ、
是ハ今アナタモ御考ニナッテ居リマス通リ
中々ムヅカシイ問題デアリマシテ、實ハ今
日私ト雖モ此次ニ庫出稅ニシタラ宜イカ、
造石稅ニシタラ宜イカ、率直ニ申上ゲマス
レバドウモ今ハッキリシタ考ヲ持ッテ居リマ
セヌ、ト同時ニ又是ハ御承知ノ通リ一方ニ
ハ何デモ彼デモ庫出稅ヲ實行シロト云フ、
アノ人達ハ、先般來中々激〓シテ居ル狀態
デアリマス、ソレカラ又一方ニ從來通リ造
石稅ニシロト言フ者モ、是亦必死ノ覺悟ヲ
以テ色々ナコトヲ言ッテ來テ居ルノデアリ
マスカラ、今日私ノ立場トシテ此處デ造石
稅ニ依ルカ、庫出稅ニ依ルカト云フコトヲ
今申上ゲルト、可ナリノ波紋ヲ描クヤウナ
點モアルノデゴザイマシテ、實ハ是ハ愼重
ニ、モウ少シ時日ヲ與ヘテ戴イテ考ヘテ見
タイノデアリマスガ、今アナタノ仰シヤイ
マシタ通リノ事柄ガ、實ハ此問題ノ裏面ニ
於テアリマシテ、其實現ニハ非常ニ困難ヲ
伴フト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=132
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133・川崎末五郎
○川崎委員 只今ノ石渡君ノ御話ハ能ク了
解致シマシタ、言外ノ御考マデヲ-此點ハ
石渡君ノ御苦心ノアル所マデモ能ク推察致
シ、非常ニ敬意ヲ拂ヒマス、此問題ハ兎ニ
角一面ニ於キマシテハ大釀造家ト云フカ、
サウ言ッタ方面、殊ニ中央聯合會ノ方面カラ
言ヘバ、庫出稅一本ト云フコトヲ言フデセ
ウガ、又聲ハ餘リ高クナイカモ知レマセヌ
ケレドモ、地方ニ於ケル數カラ言ヘバ多數
ノ中小釀造家ガ、之ニ對シテ非常ナ恐怖ヲ
持ッテ居ル譯デアッテ、卒然トシテ庫出稅ガ
行ハレタ場合ニハ、彼等ハ直チニ破產ノ已
ムナキニ至ルコトヲ恐レテ居ルヤウナ者
モ、隨分アルヤウニ思フノデアリマス、此
間ノ問題ニ付キマシテ利害得失ナリ、實際
ノ實情ヲドウシタラ宜イカト云フコトヲ、
十分御同情ヲ以テ一ツ見テヤッテ戴キタイ
ト思ヒマス、我々ハ庫出稅ニ唯無理由ニ反
對スルノデハアリマセヌ、理論トシテハ私
ハ寧ロ認メテ居ル、私ハ庫出稅ヲ主張シタ
イノデアリマス、併シ是ガ爲ニ一方ニ於テ
受ケル影響トカ、中小釀造家ガ之ニ依ッテ受
ケル困難ヲ考ヘレバ、ソレヲ犠牲ニシテ迄
モ一本調子デ理論的ニ庫出稅ヲヤリ、サウ
シテ一方ノ者ニ之ニ依ッテ特別ノ利益ヲ受
ケサセテ、其爲ニ他ノ者ヲ犠牲ニスル、之
ヲ私達ハ愼マナケレバナラヌ、サウ云フコ
トデアッテハイカヌト思フノデアリマス
ガ、ドウカ其意味ニ於テ庫出稅ヲヤル場合
ニ於テハ、今申シタヤウナ意味ニ於テ、總
テノ中小釀造家ニ補償ヲ與ヘ、安心ヲ與ヘ、
又救濟ノ途ヲ講ジテ、十分ニ手當ガ出來ル
ダケノ確信ガアッテ、親切ニヤルダケノ用意
ガナケレバナラヌト云フコトヲ申上ゲテ、
ソレ以上庫出稅ニ反對スル理由ハアリマセ
ヌ、寧ロ庫出稅ヲ早ク實現サシタイト思ヒ
マス、併シ其用意ガ必要デアルカラ、此用
意ヲ考ヘテ貰ハナケレバナラヌノデアリマ
スシ、其手當ナクシテ卒然トシテヤッテハ困
ル、諄イヤウデアリマスガ、只問題ガ重要
デアルカラ誤解ノナイヤウニ、私ハ申上ゲ
テ置クノデアリマス、次ニ私ハ實ハ酒ニ付
テハ相當或ル意味デ有名ニナッテ居ルノデ、
餘リ酒ノ贔屓ヲスルヤウデ滑稽デアリマス
ケレドモ、今申シタヤウニ此〓酒ノ方面ニ
於テハ、一部ニ於テ、相當健實ニ業務ヲ繼
續シテ居ル人モアリマスケレドモ、中小釀
造家ハ年々若干ヅツ減ッテ行ク、卽チ廢業ガ
多クナッテ居ル、結局ソレハサウ云フ人ノ營
業ガ思ハシクナイ、不振ナ爲デアル、是ハ
他ニ個人ノ事情モアリマセウケレドモ、〓
括シテ言ヘバ、〓酒ト云フモノハ左程有望
デナクシテ、他ノ方面ノ壓迫脅威ヲ受ケル
ヤウナ關係モアルシ、增稅ト言ヘバ、今マ
デハ常ニ造石稅ノ增徵バカリト云フヤウナ
コトデアッタモノデ、是ハ又ヤリ宜イモノデ
スカラ、サウ云ッタ關係デ益〓增稅ノ度每ニ
醸造家ハ其立場ガ段々押詰メラレテ行クヤ
ウナ觀ガアリマス、併シ一方ニ於テハ決シ
テ酒造家ガ是ダケ稅金ヲ納メルノデハアリ
マセヌ、結局轉嫁サレテ原則トシテ直接消
費者ガ納メルノデアリマス、併シ中間ニ於
テ取次イデ納稅スル義務ヲ持ッテ居ル以上
ハ、ソレニ依ッテ大ナル影響ヲ事實ニ於テ受
ケルノデアリマスカラ、大局カラ見テソレ
等ニ依ッテ惡影響ヲ受ケ、〓酒業者ガ衰微ニ
傾キ行ク、此點モ考ヘテ見ナクテハナラヌ、
斯樣ナ意味ニ於テ馬場案ニ於キマシテハ〓
酒ノ釀造業者ニ對シテ一定ノ免許制度ニシ
テ、或ル意味ニ於テ是等ヲ保護スル意思モ
アッタヤウナコトヲ伺フノデアリマスガ、今
囘ハサウ云フコトニモ相成ッテ居ラヌヤウ
ニ思フノデアリマスガ、此點ニ付テハ政府
ハドウ云フ御考ヲ持ッテ居ラレルカ、又將來
ニ於テ稅制改革ヲ根本的ニナサル場合ニ於
テ、ヤハリ是モ十分同情ヲ以テ御考ニナル
御意思アリヤ否ヤ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=133
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134・石渡莊太郎
○石渡政府委員 川崎サンノ御尋ハ、酒類
販賣業者ニ對スル免許制ヲ採用スル意思ア
リヤ否ヤト云フ御尋カト思フノデアリマ
ス、是ハ昔カラノ古イ問題デアリマシテ、
〓究致シテ居ッタノデゴザイマスガ、此前ノ
撤囘案ニ於キマシテハ、是モ實行スルト云
フコトニ相成ッテ居ッタノデアリマス、是八
マア希望ガアリ、異議ノナイ問題デアルナ
ラバ、或ハヤッテ宜イ問題デハナイカト思ッ
テ居ルノデアリマス、但シ是ガ實行ノ點ニ
於テ如何カト思ハレマスモノハ、詰リ販賣
業者ヲ免許ニ致シマスレバ、隨テ堅實ナル
人ガ販賣業者ニナル、斯ウ云フコトヲ前提
ト致シマスレバ、酒ノ代ヲ拂ハナイノハ、
販賣業者ガ拂ハナイノカ、オ客ガ拂ハヌノ
カ、其點ニ餘程疑問ガアルノデス、オ客ガ
金ヲ拂ハヌ、酒ヲ飮ンダ其金ヲ拂ハヌ、ソ
レヲ小賣業者カラ無理ニ取立テレバ、今度
ハ小賣業者ガ弱ッテシマフデスカラ、結局
何處マデ追ッ駈ケテ行キマスカ、待合ガ酒
屋ニ金ヲ拂ハヌ、待合ヘハオ客ガ金ヲ拂ハ
ヌ、サウ致シマスト、是ハ結局何處マデ追ッ
駈ケテ行クカ、追ッ駈ケルコトガ、果シテ小
賣屋マデデ宜イカドウカト云フコトニ、實
ハ疑問ガアッタモノデゴザイマスカラ、今日
迄實行致サナカッタノデアリマス、當業者ニ
於キマシテモ相當熱心ナル希望モアルコト
デアリマスノデ、此次マデニハ一ツ十分ニ
考ヘテ見タイト思ヒマス、出來得ルナラバ
實行モヤッテ見タイト思ッテ居ルノデアリマ
ス、今暫ク時日ヲ藉シテ戴キタイト思ッテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=134
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135・川崎末五郎
○川崎委員 只今ノ石渡君ノ御答辯洵ニ恐
縮デゴザイマスガ、私ハ尙ホ簡單ニ申上ゲ
テ置キマス、實際ニ當局カラ御覽ニナッテ、
何事ニ付テモ利害ノ伴フモノデアリマス
カラ、唯一方ノ言フコトダケヂヤ輕々ニモ
ノヲ斷ズル譯ニ行キマセヌケレドモ、併シ
私達ノ希望カラ言ヘバ、先ニ申シマシタヤ
ウナ意味ニ於テ、是ハヤハリ將來免許營業
ト云フコトニシテ、或ル意味ニ於テ彼等ノ
業態ヲ安定ナラシメ、安心ヲ與ヘルト云フ
コトモ、私ハ必要デアルト信ジテ居リマス、
相成ルベクハ來ルベキ場合ニ於テハ、是等
ハ免許制度ニシテ、彼等ニ同情ヲ持ッテ或ル
意味ニ於テ保護ヲシテヤルト云フ意味デ、
善處サレンコトヲ希望ダケ申述ベテ置キマ
ス、次ニ今囘ノ酒稅增徵ノ稅率ノ點デアリ
マスガ、是ハ馬場案ニ依ル場合ト今囘トハ、
全然立テ方ガ違ッテ參ッテ居ルノデ、敢テ私
ハ馬場案ヲ今囘ノ臨時增徵ノ此案トノ比較
ヲ致ス意思ハゴザイマセヌ、寧ロ臨時增徵
ノ意味カラ申シマスレバ、今囘御取リニナッ
タ此取扱ノ方ガ、寧ロ宜イノヂヤナイカ
ト私ハ思フ、酒ノ稅ニ付テハ先輩同僚カラ
モ話ガアリマシテ、私達素人デ能クハ分リ
マセヌケレドモ、何シロ兎ニ角是ハ理想ト
致シマシテハヤハリ何ト言ヒマスルカ、斯
ウ云フヤウナ現在ノ造石稅ヨリモ從價稅ト
言ヒマスルカ、或ハ從質稅ト言ヒマスルカ、
馬場案ヲ假ニ從質稅ニ類シタモノト言ヘ
バ、結局私ハ酒ノ消費稅ニ付テハ從價稅ガ
理想トシテハ一番宜イノヂヤナイカト思
フ、唯從價稅、或ハ稍〓ソレニ近イ從質稅ト
云フモノガ、實際ニ於テ行ッテ困難ガ伴フ場
合ニ、困難ヲ打切ッテ旨ク運用ガ出來ルカ
ドウカト云フコトガ、恐ラク當局ノ御惱ミ
ニナッテ居ル廉デアラウト思フ、ソレサヘ克
服スルコトガ出來レバ、勿論是ハ從價稅ガ
適當ダト思フ、併シ馬場案ノ從質稅ニ付テ
ハ、アレニハ隨分吾々モ果シテアレガ旨ク
運用出來ルカドウカ、又實際ニ於テアレデ
本當ニ公平ノ負擔ト云フモノガ贏チ得ラレ
ルカドウカ、多大ノ疑問ヲ持ッテ居ッタ、今囘
ハ馬場案ガ消滅解消致シマシテ此案ニナッ
タノデ、此憂ハナクナッタノデアリマス、
併シ此點ニ付テ伺ッテ置キタイト思セマス
ルコトハ、各條ニ亙ッテ恐縮デアリマスル
ガ、要スルニ從來モ二十三度以下ノ〓酒、
白酒竝ニ酒精分三十度以下ノ味淋、燒酎、
是ハ現在ト同ジデ、是等ニ付テハ四十圓ガ
四十五圓ニ値上ゲサレルコトニナッタノデ
アリマス、此際ニ於テ〓酒ト燒酎、或ハ味
淋ノ如キガ同一ノ値上ニ原則トシテ相成ッ
タト云フコトニ付テ、私ハ一ツノ疑問ヲ持ッ
テ居ルノデアリマス、言フマデモナク私達
ガ石渡君ニ釋迦ニ說法ヲスル必要ハアリマ
セヌケレドモ、〓酒ト申シマシテモ、ソレ
ハピンカラキリマデ、所謂灘ノ〓酒モアレ
バ地方ノ地酒モアリマスケレドモ、併シ〓
括シテ〓酒ト燒酎ト言ヘバ自ラ之ヲ消費ス
ル者ノ範圍ガ違ッテ居ル、社會層ト言ヒマ
スルカ、サウ云フモノガ違ッテ居ル、大體ニ
於テ言ヘバ〓酒ハ上層階級、兎ニ角資力ノ
アル有產階級ガ多ク、無產階級、大衆階級
モ酒ヲ用ヒヌコトハナイガ、酒ヨリハ燒酎、
旨イ酒ハ飮ミ得ナイガ、「アルコール」含有
飮料ヲ必要トスルヤウナ人ガ用ヒル、ト申
スト失禮デアリマスガ、失禮ヲ申上ゲル意
味ヂヤアリマセヌデ、無產大衆ガ多ク燒酎
ヲ飮用シ、之ヲ要スルニ消費スル、酒ハソ
レ以上ノ方々、有產者ガ之ヲ用ヒル、斯ウ
云フコトニナル、隨テ是ガ消費稅デアリマ
スカラ、此稅ガ直チニ轉嫁スルカドウカ、
消費稅ニ付テノ轉嫁ノ問題ニ付テハ、先輩
ト石渡君ト隨分長イ度々ノ應酬ガアリマシ
タカラ、私ハソレヲ蒸返ス意思ハアリマセ
ヌ、併シ其間ニ於テ石渡君ノ御考ハ略〓吾々
モ了解シタ、ソレハヤハリ經濟上ノ實際ノ
現象トシテハ兎モ角トシテ、立法ノ立前カ
ラ致シマスレバ、石渡君ハ或ル程度マデハ
消費稅ト云フモノハ「コスト」ニ相當スルト
云フ御話モアッタ場合モアッタ、兎ニ角サウ
云ッタ意味ニ於テ、是ハ轉嫁スベキモノデア
ルシ、轉嫁サレルト云フコトガ大體普通ノ
場合ノ運ビダラウト云フ立前デ、御臨ミニ
ナッテ居ルヤウニ伺ッテ居ッタ、果シテサウデ
アリマスルナラバ、ヤハリ今囘ノ燒酎ト〓
酒ノ場合ニ於キマシテ、燒酎モ〓酒ト同ジ
ヤウニ大衆ニ是ハ轉嫁サレテ行クト言ヘ
バ消費稅ハ大體ニ於テ大衆課稅ニ相當ス
ルモノデアリ、其中ニ於テモ燒酎ト酒ヲ較
ベレバ一層ノ是ハ大衆課稅、覿面ノ大衆課
稅デアル、燒酎ノ如キヲ〓酒ト同一率ニ、之
ニ增稅スルト云フコトハ、其意味ニ於テ吾
吾カラ言ヘバ、稍〓腑ニ落チヌ點ガアルノデ
スガ、先ヅ此點ニ付テノ政府ノ御考ヲ伺ヒ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=135
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136・石渡莊太郎
○石渡政府委員 川崎サンノ御尋ハ、〓酒
ト燒酎ト云フモノヲ同ジ程度ニ增率スルト
云フコトハ、如何ナモノデアラウト云フ御
尋デアルト思フノデゴザイマス、此點ハ大
正七年デゴザイマシタカ、其當時モ問題ニ
ナッタノデアリマシテ、結局燒酎ト云フモノ
ハ其度數ニ於テ餘程恩典ガアルノデアリマ
ス、卽チ〓酒ニ於キマシテハ二十三度、斯
ウ云フコトニナッテ居ルノデゴザイマスガ、
實際ノ〓酒ハ先ヅ十七八度ノモノデゴザイ
マスガ、其〓酒、ソレカラ燒酎ハ是ハ實際
飮用致シマスル時分ニハ、モット低イモノニ
ナルト思フノデアリマスガ、造ル時分ニハ
三十度マデ造ッテ宜シイト云フコトニナッテ
居ルノデアリマス、〓酒ハ二十三度マデハ
造レマセヌ、ドウシテモ十七八度ガマア最
高程度ノ酒精分デゴザイマスガ、燒酎ニ至
リマスルト是ハ蒸餾酒デアリマスノデ、三
十度ピッタリノ燒酎ヲ拵ヘテ、ソレニ水ヲ割
ルト云フコトニ相成ルノデゴザイマスカ
ラ、同ジ四十五圓ノ稅金ヲ取リマシテモ、
其〓酒、燒酎ヲ一合飮ミ、一升飮ム、斯ウ
云フ場合ニ於テハ燒酎ノ方ノ稅ガズット緩
和サレルト思ヒマス、其點ハ酒精分三十度
ヲ超エル四十五度以下ノ燒酎ニ於キマシテ
モ、一度每ニ一圓七十錢、其一圓七十錢ニ二
圓十五錢ヲ加ヘナケレバイケナイコトニナ
ルノデゴザイマスガ、ソレモ相當緩和サレ
テ居ルノデゴザイマシテ、斯ウ云フ點ニ於
キマシテ燒附ニ付キマシテハ、實際上相當
緩和サレテ居ル譯デゴザイマス、ソレヲド
ウゾ御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=136
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137・川崎末五郎
○川崎委員 一應御答辯了承致シマスガ、
實ハ了承致シ兼ネル、成程只今ノ酒ト燒酎
ニ付テ、其酒精分ノ御說明モアリマシタガ、
一應御尤ノヤウデアリマスルケレドモ、酒
ハ酒トシテノサウ云フヤウニシテ普通出來
テ居ッテノモノデアル、燒酎ハ元來ガ濃イモ
ノデアル、酒精分カラ言ヘバ濃度ガ高イ、
是レ自體ガ燒酎ノ本體デアル、其場合ニ於
テノ酒精ノ含有量ノ高イノト低イノト同率
ニ取扱ッテ、ソレデ十分ニ「バランス」ガ取レ
テ居ルヂヤナイカト仰シヤルノハ、稍〓私ハ
如何カト思フノデアリマス、假ニ例ヘバ「コ
ニャック」「ブランデー」、葡萄酒ト云フコトニ
ナレバ、外國ニ於テ其消費稅ハドウナッテ居
ルカ知リマセヌガ、葡葡酒ガ或ル程度ニ於
テ酒精分ガ少ク、「ブランデー」ガ多イガソレ
自體ガ或ル意味ニ於テノ本質デアル、ソレ
ヲ其酒精分ヲ比較シテヤルト云フコトハド
ウカ、ヤハリ燒酎ハ初メカラ度ノ高イモノ
デアッテ、地方ニ依ッテ違ヒマセウガ、普通ナ
ラバ三十度ト言ヘバ、是ハ大體ノ普通ノ燒
酎寧ロ或ル意味ニ於テ低イ、酒ハ二十三
度ハ高ク、十七八度ガ普通デスカラ、是等
ハ普通ノ燒酎トシテヤハリ考ヘナケレバナ
ラヌ、ドウモ互ニ水ヲ增セバ宜イヂヤナイ
カト云フ議論ハ、是ハドウカト思ヒマス、ソ
レハ水ヲ割ッテ飮ム場合モアリマスケレド
モ、吾々ガ今言ッタヤウニ葡萄酒ト「コニャツ
ク」「ブランデー」「ウイスキー」ト考ヘルノ
ト同ジヤウニ取扱ッテ貰ヒタイト思ヒマス、
唯酒精ノ度ニ於テ、味淋ナラ味淋、燒酎ナ
ラ燒酎ト云フモノハ、ソレ自體ニ付テノ濃
度ガ違フノニ、一度每ニ付テ割增シヲ取ル
ト云フコトハ聞エマスガ、只今ノ〓酒ト燒
酎ニ於テハソレハ聞エマセヌ、併シ是ハ議
論ニ亙リマスカラ、此程度ニ御考願ヒタイ
ト云フコトデ止メテ置キマス、併シ私ハ燒
酎ト酒トヲ同率ニ値上ヲスルト云フコト
ハ、大衆消費者ノ立場カラ言ッテ、不當ナリ
ト言ハザルヲ得ナイノデアリマス、次ニ同
ジ燒酎ノ中ニ於キマシテモ、連續式蒸餾機
ニ依リ製造シタル燒酎ニ付テハ、一石ニ付
キ二圓ヲ加ヘル、是ハ吾々素人ニハ一向分
リマセヌガ、是ハドウ云フ意味デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=137
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138・石渡莊太郎
○石渡政府委員 連續式蒸餾機ニ依リ製造
シタル燒酎ト申シマスノハ、是ハ所謂新式
蒸餾機ニ依ッテ製造致シマシタ燒酎デゴザ
イマス、此連續式蒸餾機ト申シマスル新式
蒸餾機ハ「アルコール」製造機械デアルノデ
アリマシテ、其「アルコール」製造機械ニ依
リ作リマシタ「アルコール」カラ製造致シマ
シタ燒酎、斯ウ云フモノニ付キマシテハ從
來ハ同ジ稅率デアッタノデゴザイマスガ、是
ハ一面ニ於キマシテ酒精含有飮料ニ極メテ
近似致シテ居ル所モアルノデゴザイマシ
テ、モノニ依リマシテハ酒精含有飮料デア
ルカ、燒酎デアルカ分ラヌモノガアルノデ
アリマス、デアリマスカラ或ル場合ニハ、
之ヲ燒酎ト判斷シ、或ル場合ニハ之ヲ〓酒
含有飮料ト判斷シナケレバナラヌ場合モア
リマス、ソレデ此燒酎ヲ從來ハ普通ノ酒精
燒酎ト同樣ニ取扱ッテ居ッタノデゴザイマス
ルガ、今囘臨時增徵ニ當リマシテハ、此方
ニ擔稅力アリト認メマシテ、二圓ヲ加ヘマ
シタ次第デアリマシテ、其擔稅力ハ何處ニ
アルカト申シマスレバ、是ハ「アルコール」
ヲ製造シマシテ、「アルコール」カラ燒酎ヲ
製造スルト云フ點カラ考ヘマシテ、一 、二、
於テ酒精含有飮料稅ガ二割程度上ルノデア
リマスカラ、二割程度上ルヨリハ幾ラカ安
ク、酒ヨリハ幾ラカ高ク、斯ウ思ウテ其中
間ニ稅率ヲ決メタノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=138
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139・川崎末五郎
○川崎委員 今伺ヒマスト、此但書ハ所謂
新式蒸餾機ヲ指シタノダ、斯ウ云フヤウナ
御說明デゴザイマシタガ、サウ致シマスル
ト、此連續式蒸餾機ニ依ラナイ方法デ製造
シタ燒酎ハ、全部普通ノ所謂舊式ト言ヒマ
スカ、サウ云フコトニ當ル譯デアリマスネ、
スルト主トシテ是ハ連續式蒸餾機ニ依ッテ
製造シタト云フコトニ依ッテ區別スル譯デ
スカ、サウ致シマスルト、所謂從來ノ舊式
ノヤリ方ニ依レバ、何ト言ヒマスカ、兜式
ノ蒸餾機ニ依ッテヤッテ行クト云フコトニナ
リマスガ、ソレガ假ニ連續式蒸餾機ニ依レ
バ二圓增徴セラレルト云フコトニナレバ、
アノ製造工程ヲ-現在ニ於テハ稅金ノ關
係ガアリマセヌカラ、サウ云フコトヲ工夫
シタ人モアリマセヌガ、假ニ稅金ガ一石ニ
付テ二圓モ違フト云フコトニナレバ、將來
恐ラク連續式ノ、所謂法律ガ定メテ居ル所
ノ連續式ノ蒸餾機ニ依ラナイ他ノ方法ニ依
ルコトヲ、當業者ガ工夫シヨウト努力スル
デセウ、若シソレガ成功シテ假ニ大兜式ノ
蒸餾機ニ依ッテ、一遍ニ醪ヲ百石モ二百石モ
入レテ、サウシテ所謂連續式デナクテ大兜
式蒸餾機ニ依ッテ燒酎ヲ製造スルモノガ出
テ來タラ、是ハドチラニ當ルコトニナリマ
セウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=139
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140・石渡莊太郎
○石渡政府委員 御尤ノ御尋デゴザイマス
ガ、是ハ連續式蒸餾機-今日ノ新式蒸餾
機ハ總テ連續式蒸餾機デアリマスカラ、連
續式蒸餾機ト玆ニ書イタ次第デアリマス、
今アナタノ御尋ニ相成リマシタヤウニ、若
シ玆ニ連續式蒸餾機ヲ使ハズニ、何ト言ヒ
マスカ單式蒸餾機ニ依ッテ同ジヤウナモノ
ヲ拵ヘタラドウカト云フ御尋デゴザイマス
ガ、是ハ先程アナタガ繰返シテ御述べニナ
リマシタ通リ、臨時增徵デアルノデゴザイ
マシテ、實ハ此點ハ、今年一年又ハ一年半
位ノ間ハ、サウ云フモノハ出來ヌ、斯ウ云
フ見据ノ下ニ、斯ウ云フ風ニ書イタノデゴ
ザイマシテ、是ハ將來相當長イ期間ニ於キ
マシテ、斯ウ云フヤウナ文句デハ迚モイカ
ヌト云フコトデアリマスレバ、又考ヘナケ
レバナラヌト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=140
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141・川崎末五郎
○川崎委員 マア其兜式ト連續式ノコトハ
此邊デ止メマセウ、ガ要ハ是ハ冗談ノヤウ
デアルガ、私ハ眞面目ナ問題トシテ取扱ッ
テ居ルノデスシ、又眞面目デス、是ハ一石
ニ二圓モ格差ガアルト云フコトニナレバ、
恐ラク將來アナタノ仰シヤル新式釀造燒酎
業者ト云フモノハ、サウ云フ點ヲ工夫ヲス
ルダラウト私ハ思フノデス、果シテ現在ノ
釀造技術ガ-吾々ノ素人ノ考デハ、石
二圓モ違ヘバ、而モ法律デチヤント連續式
云々ト來テ居レバ、ソレ以外ノ製造ナラバ
二圓ノ割增ガナイトナレバ、私ハ工夫スル
ト思フ、私ガ當業者ナラバサウ云フコトヲ
技術者ニ命令シテ、一生懸命ニ〓究ササウ
ト思フ、ダカラサウ云フ點モ考ヘテ言ヘ
バ是ハ、不眞面目ナ問答デモナイ、眞面目デ
ス、是ハ恐ラク當業者トシテハ、努力スル
ダラウト思ヒマス、尙ホ引續イテ御尋致シ
マスルガ、先ニ申シマシタヤウニ、燒酎全
體トシテハ、是ハ大衆ガ消費スルモノデア
ルカラ、〓酒ト同率ニスルト云フコトハ面
白クナイト思ヒマスガ、其燒酎ヲ、今ノヤ
ウナ意味ニ於テ、所謂新式燒酎ト、今度ハ
何ト言ヒマスカ、新式ニ對シテ舊式ト言ヒ
マスカ、或ハ單式ト申シマスカ、兎ニ角サ
ウ云ッタヤウナ新式以外ノ燒酎ニ付テ、何故
ニ石ニ付テ二圓ノ格差ヲ設ケラレタカ、是
ガ私ノ諒解ニ苦ム點デアリマスルガ、只今
伺ヒマシテ、又先刻モ私ガ誰カノ關聯質問
ノ時ニ、一寸御伺シタ記憶モゴザイマス
ガ、石渡君ハ率直ニ御答ニナッテ、私モ非常
ニ愉快デスガ、此點先ニ御話ノアッタコト
ハ、率直ニ考ヘレバ、此格差ヲ二圓設ケタ
ト云フコトハ、新式燒酎ハ擔稅力ガアルカ
ラト云フヤウナ御話ノヤウデアリマスル
ガ、併ナガラ此擔稅力ト云ッテモ、アナタハ
大體ニ於テ日本ノ消費稅ノ建方ニ付テハ、
斯ウ云フモノハ總テ消費者ニ窮極ニ於テ轉
嫁サレルト云フ建前デ、總テ御說明ニナ
リ、又サウ云フヤウニナッテ居ル、事實ニ於
テ經濟ノ事實現象トシテハ、サウ單純ニ行
クモノデハアリマセヌガ、法ノ建前トシテ
ハ消費稅ハ終局ニ於テ消費者ニ轉嫁シテ、
消費者ガ負擔スルト云フ建前デアル、サウ
云フ建前カラ來ラレタナラバ、擔稅力アリ
トスレバ、結局新式燒酎ヲ飮用スル者ハ、
舊式ノ燒酎ヲ飮用スル者ヨリモ、二圓ノ擔
稅力ヲ多ク持ッテ居ルト云フコトニ歸着シ
ナケレバナラヌノデスガ、サウ云フコトニ
解釋サレテノ今ノ擔稅力デアリマセウカ、
如何デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=141
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142・石渡莊太郎
○石渡政府委員 私ノ言葉ガ聊カ明瞭ヲ缺
イテ居ッタカト思フノデアリマスガ、此擔稅
力ト申シマシタコトハ、之ヲ普通ノ〓酒、燒
酎ニ考ヘテ、品物ソレ自體ト致シマシテ、
方ノ此連續式ノ蒸溜機ニ依リマスノハ、「ア
ルコール」ヲ製造致シ、其「アルコール」
ニ依ッテ燒酎ヲ拵ヘルト、斯ウ云フノデアル
ノデゴザイマシテ、其間普通ノ燒酎ヨリモ
餘程低廉ニ出來ル、水モ餘計混ザル、斯ウ
云フヤウナ關係カラ致シマシテ、總テ普通
ノ燒酎ニ比較致シマシテ非常ニ有利デゴザ
イマス、ソレデ近來此方面ノ燒酎ハ、相當
石數モ增加致シテ居リマシテ、之ニ多少ノ
增率ヲ致スト云フコトハ、却テ此〓酒燒酎
ト云フ風ナモノノ課稅ノ建前トシテ至當
デアラウ、斯ウ考ヘマシタ次第デゴザイ
マス、是ガ消費スル方面カラ考ヘテ、此燒
酎ヲ飮ムモノガ四十五圓ノ燒酎ヲ飮ムモノ
ニ比較シテ、普通ノ燒酎ヲ飮ム人ヨリモ此
燒酎ヲ飮ム人ノ方ガ、何ト言ヒマスカ所得
階級トシテ上層階級ガ飮用スル、斯ウ云フ
コトデハゴザイマセヌ、此普通ノ燒酎、酒
ニ比ベマシテ四十五圓デハ却テ其增稅ガ低
クナル、酒ヲ四十五圓ニ增稅ヲシ、酒精含
有飮料ヲ五十圓ニスルノデアルカラ、此燒
酎ト云フモノハ四十七圓程度ノ課稅ヲ受ケ
ルノガ相當デハアルマイカト、斯ウ考ヘマ
シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=142
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143・川崎末五郎
○川崎委員 石渡君ハ御專門デ私ハ素人デ
スカラ、幾ラ素人ガ食ッテ掛ッテモ、マルデ太
刀山ニ子供ガブツカルヤウナモノデ、一向
相撲ニハナリマセヌケレドモ、併ナガラア
ナタノ御說明ハ、ドウモ吾々素人ノ腑ニ落
チヌ所ガアッテ困ル、第一アナタハ新式燒酎
ハ「アルコール」ヲ水デ少シ稀釋シタモノ
ト言フ、專門ノ御方ガサウ仰シヤレバ單純
ニサウ考ヘテ宜イカモ知レマセヌガ、吾々
ハ新式燒酎ト雖モ爾ク左樣單純ナモノトハ
考ヘナイ、第一ニサウ云フ考へ方デ新式燒
酎ハ「アルコール」ヲ水デ稀釋シタモノダカ
ラ原價ハ安イ、ソレデ儲ケテ居ルカラ稅金
ヲ取ルノダト、斯ウ云フヤウニ一口ニ言ヘ
バ伺ヘルデアリマスケレドモ、是ハ苟モ政
府トシテ、國家トシテ稅ヲ考ヘル場合ニ於
テハ、モウ少シ愼重ニ同情ヲ以テ正確ニ考
ヘテヤッテ貰ハナケレバナラヌト考ヘマス、
尙ホサウ云ッタヤウナ意味ニ於テ酒精ヲ水
デ稀釋シタト云フモノデアルナラバ、今囘
ノ所謂新式燒酎ト否トノ區別ハ、連續蒸餾
機ニ依ッテ製造シタカドウカト云フコトニ
歸着スル、假ニ芋ヲ原料トスル芋燒酎ニ取ッ
テ考ヘマスレバ、鹿兒島地方ニ於ケル所謂
芋燒酎モ相當「アルコール」ガ强イ、恐ラ
ク新式燒酎ト雖モ其製造ノ操作ニ於テハ、
所謂連續式ノ蒸餾機ニ依ッテヤッタ場合ト、
鹿兒島地方ニ於テ所謂兜式蒸餾機ニ依ッテ
蒸餾スルモノトハ、原料ト云ヒ、其製造方
法ニ於テ變リハナイ、隨テソレカラ出來タ
所ノモノニ付キマシテハ、假ニ「フーゼル」
ガ多少加ッテ居ルトカドウトカ、品質ニ於テ
多少差ガアリマシテモ、ソレ以外ニ於テ舊
式ト新式トハ大シタ差別ハナイ、「コスト」
ノ問題ニナレバ別ニ問題ガアリマスカラ別
ニ申上ゲマスガ、サウ云フ意味ニ於テ製法
カラ言ッテモ、唯新式燒酎ハ「アルコール」ニ
水ヲ入レテ稀釋シタモノデアル、サウシテ
儲ケテ居ルカラ少シハ擔稅力ガアルノデハ
ナイカト云フコトハ、少シドウカト思フ、
ソコニ理論ノ徹底ヲ缺ク、理論ダケヲ言フ
ノデハナイガドウモ少シ思想ノ混亂ヲ來シ
テ居リハシナイカト思フ、卽チアナタハ消
費稅ニ於テハ、總テ消費稅ハ原則トシテ消
費者ニ轉嫁サレル、隨テ之ヲ實際ニ於テ負
擔スルモノハ消費者デアル、斯ウ云フ立前
カラ總テ御臨ミニナッテ居ルガ、新式燒酎ニ
ナルト、結局アナタノ反對ノコトニナル、
今囘ノ石二圓ノ增稅ト云フモノハ、消費者
ガ負擔セズシテ現在ノ製造業者ガ今儲ケテ
居ルカラ、懷ロガ暖イカラソレカラ出スノ
ダト、斯ウ云フ風ニシカ受取レヌ、或ハ私
ノ耳ガ惡クテ聞キ違ヒガアッタノカモ知レ
マセヌガ、ドウシテモサウ云フ風ニ私ハ受
取レルノデアリマス、果シテサウナラバ日
本ノ消費稅ノ立前カラ言ッテ、是ダケ例外ノ
取扱ヲスルト云フコトハ、私トシテハ面白
クナイト同時ニ、サウ云フヤウナコトニナ
レバ、アナタノ增稅委員會ニ於テノ最初カ
ラノ消費稅ニ付テノ御立場ナリ、國ノ消費
稅ニ付テノ立前ト云フモノハ、全然ブチ壞
サレテ御破算ニ願ハナケレバナラヌ、消費
稅ノ轉嫁問題、是ハ理論トシテ中々困難ナ
問題デアリマシテ、實際ニ於テモ困難ナ問
題デアリマス、サウ云フ問題ニ付テ私ノヤ
ウナ素人ガ、アナタニ喰ッテ掛ッテ爭ハウト
云フノデハナイガ、是ハ結局消費稅ニ付テ
消費者ガ負擔スルト云フ立前カラ臨ンデ居
ラレテ、此新式燒酎ニ於テハグルット變ッテ、
現在ノ製造業者ガ利益ヲ得テ居ルカラ負擔
能力ガアルトシテ、ソレニ負擔サスト云フ
ノハ聊カ不滿足デアル、現在ノ狀態ガドウ
デアルカ存ジマセヌガ、假ニアナタノ仰シ
ヤルヤウニ、サウ云フ風ニ儲カッテ居ルト
スレバ、ソレハ他ノ方法デヤルベキヂヤ
ナイカ、卽チ會社組織ナラバ營業收益稅モ
納メテ居ル、利益ガボロケレバ超過所得稅
モ納メル、法人所得稅モ納メル、所謂燒酎ニ
シタッテ、酒ニシタッテ、營業者トシテノ、
法人トシテノ利益ガアレバソレダケノモノ
ヲ納メテ居ル、結局稅金ト云フモノハ、ア
ナタハ業者ガ負擔スレバ宜イト御考ニナル
カモ知レナイケレドモ、サウハ行キマセヌ、
結局ニ於テハ是ハ消費者ガ負擔スル、其割
合ガ多少······新式燒酎業者ガ營業狀態ガ現
在ニ於テ、漸ク政府ノ保護指導宜シキ點モ
アッタデアリマセウガ、ソレニ依ッテ現在經
濟狀態ガ良イノデアルカラ、是ハ現在ノ石
二圓ト云フモノヲ直チニ消費者ニ轉嫁サレ
ルト云フコトデナシニ、其間ニ於テ緩急ハ
アリマセウケレドモ、是ハ併ナガラ何時マ
デモ續クモノデアリマスカラ、一ト月半年
ト云フ間ハ緩和サレルカモ知レナイガ、結
局ニ於テ此石二圓ハ消費者ガ負擔スル、新
式燒酎ヲ消費スル大衆ガ、之ヲ負擔スルノ
デアルト思フ、是ハ迚モ斯ウ云フ經濟現象
ト云フモノハ法律デ取締ルト云フコトハ、
幾ラ官憲ガ喧シク言ッタッテ結局或程度マデ
ハ······全部トハ申サヌケレドモ大部分ト云
フモノハ、窮極落ル所ニ落付クノデアリマ
ス、ドンナ所ヲ流レタッテ、一滴ノ水モ結局
ハ大海ニ落付クト同ジデ、落付ク先ハ大衆
ガ是ダケノ格差ヲ負擔スルモノト言ハナケ
レバナラヌシ、又今新式燒酎ガ儲ケテ居ル
カラ、二圓位出シタッテ宜イト云ッテモ、ソ
レハ一時ハ、今急ニ石二圓ノ格差ヲ付ケタ
ケレドモ、オ前ハソレダケ上ゲチヤイカヌ
ト言ッタラ上ゲナイデセウ、統制其他ノ點ニ
於テ泣ク子ト地頭ニハ勝テナイ道理デ、現
在ノ稅務當局ノ意ニ反スレバ、却テ江戶ノ
仇ヲ長崎デ討タレチヤ困ルト云フノデ遠慮
ヲシマスケレドモ、斯ウ云フ經濟問題ハ結
局ニ於テ彼等ハ利潤利益ト云フモノヲ目的
ニシテ居ルノデアルカラ、大衆ニ轉嫁サレ
ルト云フコトハ、私太鼓判ヲ押シテモ宜イ、
ダカラ何時サウ云フ時代ガ來ルカ、ドノ程
度マデガ大衆ニ轉嫁サレルカ、現在ノモノ
ヲ燒酎製造業者ガ或ル程度マデ我慢シ、ド
ノ程度ヲ以テ進ンデ行クカ、其時期、其割
合ト云フコトハ今ハッキリハ言ヘマセヌケ
レドモ、石二圓ト云フモノハ大部分結局ニ
於テ何時カ、而モ遠クナイト思ヒマス、二
年三年先ヂヤナイ、モウ一年經タナイ中ニ、
サウナッテ行ク、是等ノ點ヲ御考ニナレバ、
今ノアナタノ單純ナ御考ダケデ、新式燒酎
ト舊式燒酎ニ付テ石二圓ノ格差ヲ付ケルト
云フコトハ、ドウシテモハッキリ分ラナイ、
若シアナタガ仰シヤルヤウニ、現在ノ新式
燒酎業者ガ儲ケテ居ルカラ、ソレダケ取ラ
ウ、「アルコール」ヲ水デ稀釋シタモノデア
ル、新〓酒ト殆ド變リガナイト、斯ウ云フ
理論デオヤリニナルナラバ、是ハ餘程其點
ニ付テ嚴正公平ニ御再考ヲ願ハナケレバナ
ラヌ節ガアラウト思フ、モウ一度ハッキリシ
タ所ヲ御伺致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=143
-
144・石渡莊太郎
○石渡政府委員 色々御話ヲ伺ヒマシタ
ガ、私ハ決シテ新式蒸餾機械ニ依ッテ製造
致シテ居ル燒酎業者ガ、儲カッテ居ルカラ、
之ニ對シテ餘計ノ消費稅ヲ課ケルンダト、
斯ウ申シタコトハ一囘モアリマセヌ、是ハ
其會社ガ儲カッテ居ルカドウカ、斯ウ云フ
コトハ直接稅ニ於キマシテ所得稅、法人資
本利子稅、利得稅、斯ウ云フモノニ於テ追
窮サルベキ問題デゴザイマシテ、會社ガ儲
カッテ居ルカドウカト云フコトハ、是ハ消
費稅ニ關係ハゴザイマセヌ、其事ヲ先ヅ第
一ニ申上ゲテ置キマス、ソレカラ今囘酒類
ノ增稅ヲ致シマスニ付テ「ビール」ハ四割、
酒精含有飮料ハ二割、酒ハ一割二分五厘、ソ
レカラ新式燒酎ハ一割七分ト云フヤウナ、
區々ナヤリ方ヲシテ居ルノハドウカト云フ
御尋ガ、此間モアッタノデアリマシテ、之ニ
付キマシテハ其當時モ申上ゲタノデアリマ
スガ、近來酒類ノ中ニサッパリ殖エナイモ
ノモアリ、多少增加スルモノモアリ、著シ
ク增加スルモノモアル、隨テ是等ノ酒類ノ
消費狀況ニ鑑ミテ、稅率ノ上ゲ方ニ加減ヲ
シタ、隨テ酒ノヤウナ造石數ガ、サッパリ增
加シテ來ヌト云フモノハ、ソレヲ飮ム所ノ
擔稅者ト言ヒマスカ、稅ヲ負擔スル所ノ人
人ニ於テ、モウ或ル程度飽和狀態ニアル、
ソレデアリマスカラ、一方酒ガ餘リ消化サ
レナイ、是以上增稅シテモ却テ減ッテシマヒ
ハセヌカト云フ心配ガアル、「ビール」ニ至ッ
テハ頻ニ造石數ガ增加シテ居ル、隨テ之ニ
對シテハ四割ノ增稅ヲシテモ尙ホ玆ニ負擔
力ガアル、此間モ御話ヲ致シマシタ通リ、
ソレハ「ビール」ヲ飮ム人モ或ハ勞働者ナド
ガ相當多イカモ知レマセヌ、併ナガラ兎モ
角「ビール」ト云フモノハ、マダドン〓〓增
石シテ居ルノデアリマスカラ、今日ノ稅率
ガ旣ニモウ行詰ッテ居ルト云フ狀況デハナ
イ、是ハ或ル程度ニ今日尙ホ擔稅力豐カデ
アル、今日ノ稅ヲ脊負ッテモ、マダ相當增加
シテ行ク、斯ウ云フ見方カラシテ四割ノ增
稅ヲシタ、酒精含有飮料其次、新式蒸餾機
械ニ依ル所ノ燒酎其次、〓酒ガ一番ビリデ、
最モ增加シナイデドンー〓減ッテ行クノハ
濁酒デアリマスカラ、濁酒ハ全然今度ハ增
稅致サナカッタ、斯ウ申上ゲタ次第デアリ
マス、サウ云フ觀點カラ見テ行キマシテ、
今度ノ酒稅ノ增率ニ付テ幾分ノ差別ヲ置イ
タ次第デアリマス、「ビール」會社其モノガ
儲カッテ居ル、新式ノ燒酎會社ガ儲カッテ居
ルカラ、ソレニ對シテ消費稅ヲ課ケルンダ、
斯ウ云フ意味デハ決シテアリマセヌカラ、
其點ドウゾ左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=144
-
145・川崎末五郎
○川崎委員 エライ時間ヲ取リマシテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=145
-
146・増田義一
○增田委員長 川崎君、燒酎ノコトデスカ、
其次ノ問題デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=146
-
147・川崎末五郎
○川崎委員 燒酎ノコトヲモウ一ツ二ツ
ト、ソレカラ次ノコトヲ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=147
-
148・増田義一
○增田委員長 燒酎ノコトハモウ大抵ニシ
テ、若シ何ナラバ此處ニ松隈政府委員ガ居
ラレルカラ、松隈君ニ一應說明シテ貰ッタ
ラ如何デスカ、其方ガ却テ捗取ハ致シマセ
ヌカ、同ジコトヲ繰返スト云フコトハ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=148
-
149・川崎末五郎
○川崎委員 私ハ同ジコトヲ繰返シテ居ル
譯ヂヤアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=149
-
150・増田義一
○增田委員長 政府委員ノ方ハヤハリ同ジ
コトヲ繰返サレルノデ、ソレ以上ハ言ハレ
ヌノダカラ、ドウデスカ、松隈君ハ國稅課
長デ專門ノ方デアラウト思ヒマスカラ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=150
-
151・川崎末五郎
○川崎委員 私ハ同ジコトヲ繰返シテ居ル
積リハゴザイマセヌガ、若シアリマシタラ
其箇所ヲ御指摘ヲ願ヒマス、政府トシテノ
責任ヲ以テ御答辯ニナレバ人ヲ撰ビマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=151
-
152・増田義一
○增田委員長 ドウゾ其御積リデ-川崎
君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=152
-
153・川崎末五郎
○川崎委員 段々御說明ガゴザイマシタ
ガ、要スルニ「ビール」ト云ヒ、新式燒酎ト
云ヒ、其業態ガ現在儲カッテ居ルカラ、ソレ
ニ負擔サス意味ニ於テノ値上デナイ、又ソ
レヲ製造業者ニ負擔サスト云フ意思デナイ
コトヲ明瞭ニ御答ニナリマシタ、其點ハ能
ク諒承致シマシタ、サウ致シマスレバ、結
局是等ハ酒稅ノ本來ノ性質上、ヤハリ消費
者ニ窮極ニ於テ轉嫁サレルト云フコトヲ、
御認メニナッテ居ル譯ニナリマセウ、サウ致
シマスレバ、今ノヤウニ燒酎ニ於テモ、新
式ト云ヒ、舊式ト云ッテモ、結局燒酎ハ同ジ
大衆下層ノ者ガ之ヲ消費スルモノデアル、
サウスレバサウ云フモノニ付テ新式ト舊式
兩方ニ於テ二圓ノ格差-新式ダケノモノ
ニ付テ二圓ダケ稅ヲ餘計課ケル、併シ實際
ノ市價ト云フモノハ別デス、現在ニ於テ新
式燒酎ト舊式燒酎ニ於テ、相當ノ格差ヲ持ッ
テ賣ラレテ居ルト云フコトモアリマスカ
ラ、實際ノ市價ト云フモノハ別デスガ、併シ
稅金トシテハ、新式燒酎ヲ飮ム者ハ舊式燒
酎ヲ飮ム者ヨリモ、同ジ酒ヲ飮ンデモ二圓
餘計ニ取ラレルト云フ結論ニ落ルト云フコ
トヲ御認メニナッタコトニナル、是ガ私ハ宜
クナイト言ッテ御尋シテ居ルノデス、又現ニ
燒酎ニ於キマシテハ舊式ト云ヒ、新式ト云
ヒマシテモ、是ガ實際ニ於テ、舊式ノ燒酎モ
新式ノモノヲ若干加ヘテ市場ニハ販賣サレ
テ居ルノデアリマス、新式ノ燒酎ト雖モ舊
式ノ-例ヘバ粕取リ燒酎ノ如キヲ入レテ
賣ラレテ居ル、此間ニ於テ多少混合ノ割合
ハ違ッテモ、現在事實市場ニ現レテ居ルモノ
ハ、純粹ノ新式燒酎モナケレバ、純粹ノ舊式
燒酎モナイト云フノガ實情デアル、ソレハ
大藏當局デ能ク御承知デアラウト思フ、サ
ウ云フコトヲ考ヘレバ、益〓此問題ニ付テ、
稅法ニ於テ斯ウ云フ取扱デ格差ヲ設ケルノ
ハ如何デアルカ、寧ロ從來ノヤウニ是ハ
律ニサレタラ宜クハナイカト云フコトハ私
ハ考ヘテ居ルノデアリマス、委員長ノ御注
意モアリマシタカラ、燒酎ノ點ハ此程度デ
止メマス、最後ニモウ一二點御質問致シタ
イコトガゴザイマスガ、他ニ關聯質問ガア
ルサウデスカラ一應·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=153
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154・宮澤裕
○宮澤委員 只今川崎君ト主稅局長トノ應
答ヲ聞イタノデアリマスガ、燒酎ノ消費稅
轉嫁ニ關スル問題デアリマスガ、ドウモ主
稅局長ノ從來ノ答辯ニ比シテ其處ニ明瞭性
ヲ缺イテ居ラヌカト思フノハ、川崎君ハ、
此舊式ト新式ト消費者ガ違フノデアルカ、
擔稅力ノ相違シタ者ガ消費スルモノデアル
カト云フコトノ駄目ヲ押シテ居ラレルノデ
アリマスガ、サウトハ思ハヌト云フコトデ
アル、然ラバドウシテ之ニ差等ヲ付ケルカ
ト言フト、此新式ノ燒酎ノ方ハ「アルコー
ル」ニ水ヲ割ッテ行クノデアルカラ、ト云フ
コトデアル、サウスルト誰ガ考ヘマシテモ
生產費ガ安イカラ、結局其稅ハ之ヲ生產ス
ル營業者ガ負擔スルト云フ結論ニナラザル
ヲ得ナイノデアリマス、消費稅ハ間接稅デ
アリマスルカラ、必ズ之ヲ消費シマス者ニ
何時カハ轉嫁サレルコトハ、是ハモウ蔽フ
ベカラザル事實デアル、デアリマスカラ、之
ヲ結局轉嫁サセナイデ、ヤハリ舊式ト同ジ
ヤウナ値段デ賣出シテ行カウトスレバ、業
者ガ損ヲスルカ、損ヲシナイトスレバ結局
之ヲ消費者ニ轉嫁サレルト云フコトヨリ外
ナイノデアリマス、燒酎ノ問題ヲ、サウ諄
諄言ヒタクハナイノデスガ、明敏ナ主稅局
長ノ答辯トシテハ一寸受取リニクイコトダ
ト思フシ、將來ノ爲モアリマスカラ、私ハ之
ヲ一應申上ゲテ置キマス、敢テ御答辯ハ求
メマセヌケレドモ左樣ニ私ハ思ッテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=154
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155・松隈秀雄
○松隈政府委員 新式燒酎ト舊式燒酎ノ稅
率ニ二圓ノ差ヲ設ケマシタコトニ付キマシ
テ只今御質問ガゴザイマシタ、大體主稅局
長ガ御答ニナッタ通リデ特ニ附加ヘル程ノ
コトモナイノデアリマスガ、斯ウ云フ點ヲ
一點申上ゲテ見マシタナラバ或ハ幾分御
諒解ヲ得易イノデハナイカト思ヒマスノデ
蛇足ノヤウデゴザイマスガ一點申述ベサシ
テ戴キタイノデゴザイマス、先程ノ說明ニ
モアリマシタ通リ、新式燒酎ト云フノハ是
ハ大體ニ於テ酒精ナンデゴザイマス、舊式
燒酎ニ風味ガアル、卽チ粕カラ採ッタモノハ
粕ノ臭ガスル、ソレカラ藷カラ採ッタ藷燒
酎ニハ特異ノ臭ガ附イテ居ル、卽チ是ハ舊
式燒酎ノ方ガ不完全蒸餾ナンデゴザイマス、
元來如何ナル醪デアリマシテモ、〓酒粕デ
造リマシタ醪デアリマシテモ、或ハ藷ヲ原
料ト致シマスル醪デアリマシテモ、又ハ其
他ノ澱粉ヲ原料ト致シマスル醪デアリマシ
テモ、蒸餾ガ完全ニ行ハレレバ總テ純酒精
ニナル筈ナンデゴザイマス、所ガ新式蒸餾
ニ依リマスルト大體ニ於テ蒸餾ガ完全デゴ
ザイマスル爲ニ、其原料ノ如何ヲ問ハズ、
詰リ原料ガ藷デアラウト、粕デアラウト其
他ノ澱粉デアラウト、皆、無臭酒精ニナル
ノデゴザイマス、然ルニ舊式燒酎ノ蒸餾機
械ニ依リマスト、其點ハ蒸餾ガ不完全デ、
隨テ原質品ガ移行スルカラ特異ノ臭ト味ヲ
付ケル、舊式燒酎ニ特別ノ風味ガアルト云
フノハ此純酒精ノ外ニ雜分ガアルカラナン
デゴザイマス、隨ヒマシテ新式燒酎ノ製造
ハ蒸餾ガ殆ド完全デ、大體ニ於テ出テ來マ
スモノハ九十四五度位ノ酒精ナンデゴザイ
マスガ、高イ度數デ査定ヲ受ケマスコトハ
稅法上不利ニナッテ居リマスル關係上、出ル
前ニ水ヲ加ヘテ丁度三十度ニナルヤウニシ
テ査定ヲ受ケルト云フコトニナッテ居リマ
ス,是ハ「アルコール」度數ノ高イモノガ
出マスノヲ完全ニ三十度マデニシテ、ソコ
デ査定ヲ受ケルノガ一番有利デアルカラデ
アリマス、所ガ舊式ノ方ノ蒸餾機ニナリマ
スト云フト、蒸餾ガ不完全デアリマシテ、
成程最初ノ中ハ九十度ノモノモ出、六十度
ノモノモ出、或ハ四十度ノモノモ出マスケ
レドモ、終ヒノ方ニナルト愈〓出ガ惡クナッ
テ、三十度ノモノスラ採レナクナリ、ソレ以
下ノモノスラ採レナイヤウニナル、所ガ稅
率ノ盛リ方ハ三十度デアッテモ現在四十圓、
二十八度シカナクテモヤハリ四十圓ト云フ
風ニナッテ居リマス、最初ハ相當ノ度數ガ出
マスケレドモ、終ヒニ至ルニ從ッテ度數ガ
落チテ參ルノデアリマスガ、ソレハ三十度
少シ切レマシテモ-餘リ低イモノハ取リ
マセヌケレドモ、三十度少シ切レマシテモ
四十圓ハ取ラレル、斯ウ云フ點ガ舊式燒酎
ノ不利ナ所デゴザイマス、ソコデ三十度ノ
査定ヲ受ケマシタモノハ實際ニ於テ之ヲ飮
ム場合ニ相當加水シ薄メテ飮ム、詰リ四十
圓ノ稅金ガ假ニ倍薄メラレルトスレバ一石
二十圓ノ負擔ニナル譯デゴザイマスガ、今
申シマシタヤウニ舊式ノモノニ付キマシテ
ハ、時ニ三十度ノモノモ採レナイトスレバ、
幾ラカ水ヲ割ッテ稅率ヲ安クスルト云フ點ニ
於テ不十分ト申シマスカ、新式ノモノニ及
バナイ點モアル、是等ノ點ヲ考ヘマスルト
云フト、新式蒸餾機ニ依ルモノノ方ヲ幾ラ
カ高メニシテ置イテモ、ソコニ說明ガシ得
ルノデハナイカ、寧ロ三十度ノモノヲ自由
ニ採リ得ナイト云フヤウナ狀況ニアルモノ
ニ付テハ、幾ラカ緩和シテヤラナイト云フ
ト、機械ノ精巧粗雜ト云フコトカラ來ル差
ガ割リ水ニ影響シテ、動モスレバ稅負擔ニ
差ヲ生ゼントスル點ニ對シ政府ガ何等顧ミ
ナカッタト云フヤウナコトニナッテハ不十分
ヂヤナイカ、ト斯ウ云フ點モ考慮シタ一點
ナノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=155
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156・宮澤裕
○宮澤委員 只今御說明ヲ聽イタノデアリ
マスガ、結局簡單ニ之ヲ要約シマスレバ、
一方ハ製造ガ簡單デアリ、一方ハ難カシイ、
製造ニ難易ガアッテ生產「コスト」ノ大小ニ
關係スルモノノ說明デアルヤウニ思ヒマス
ガ、主稅局長ガ言ハレタヤウナ風ニ之ヲ調
節致シマスノハ、自ラ所得稅ノ關係モアラ
ウシ、法人資本稅ノ關係モアラウカラ、他
ノ方法デ御ヤリニナルト云フコトガ當然デ
ハナイカト思フ、燒酎ハ新式デアリマシテ
モ舊式デアリマシテモ、何レモ庶民大衆ガ
用ヒル消費物デアリマス、之ニ餘リ差等ノ
付イタ課稅ヲ課ケテ間接稅ヲ殖ヤシマスト
云フコトハ、假令臨時的ノ政策デアッテモ、
所謂庶政一新ト申シテ國民生活ノ安定ヲ主
張セラルル現內閣トシテハ、執ッテハナラヌ
政策デアルト思ヒマス、若シ多クノ收益ヲ
擧ゲテ居ル所ガアレバ、他ノ稅種ニ依ッテ之
ヲ調節スルト云フコトガ正シイ稅法ノ方法
デハナイカ、斯樣ニ私ハ思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=156
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157・三善信房
○三善委員 一寸關聯シテ申上ゲマス、今
段々說明ヲ聞キマシタガ、是ハ消費稅デア
リマスカラ、結局消費者ニ掛ルコトハ論ノ
ナイ所デアリマス、生產費ガ高ク掛ルカラ
稅ヲ安クスル、生產費ガ非常ニ安イカラ稅
ヲ高クスルト云フコトハ理論ニ合ハナイト
思フ、私政府委員ノ說明ヲ先程カラ聞イテ
居リマスト、ヤハリ品質ノ上ニ於テ相違ガ
アル、品質ノ上ニ於テ新式蒸餾機デヤリマ
スモノハ、先程御話ノヤウニ九十五六度マ
デ蒸餾シタモノヲ水ヲ混ゼテ、製造者ガ査
定ヲ受ケント欲スル適當ナ度數ニシテ、其
上デ査定ヲ受ケルヤウニ製造シツツアル譯
デアリマス、其製造シタモノハ一應全ク無
水程度マデ蒸餾サレタモノデアリマスカ
ラ、全ク無味無臭、殆ド品質ニ於テ普通ノ
舊式蒸餾機デ製造シタモノトハマルッキリ
品質ガ違フト思ヒマス、一方ノハサッキ御話
ノ通リニ舊式蒸餾機デヤッタモノハ非常ニ
色々ナ臭氣ガアリマスシ、又色モ着イテ居
ルノデス、是ハ御承知ノコトダト思ヒマス
ガ、一般ノ嗜好カラ言ヒマスト其方ハ餘リ
好ミマセヌ、ソレダカラ市場ノ賣行ト云フ
コトカラ言ヒマシテモ、市場ノ價格ニ於テ
モ普通ノ鹿兒島ニアリマス舊式蒸餾機ニ依
ル藷燒酎ト、新式ノ蒸餾機ニ依ッテ造ッタモ
ノトハ、其間ニ品質ノ上ニ相違ガアルト思
ヒマスガ、此點ハドウ云フ風ニ御考ニナッテ
居リマスカ、若シ其品質ノ上ニ於テ異ル點
ガアルトスレバ、自然ソコニハ相當ナ差違
ガ生ジナケレバナラヌト思フノデスガ、其
點ヲ一應承ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=157
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158・松隈秀雄
○松隈政府委員 三善サンノ御尋デアリマ
スガ、品質ノ相違ノアルコトハ事實ナンデ
ゴザイマス、唯併ナガラ酒ノ問題ト申シマ
スモノハ、純酒精ニナッテ品質ガ飛切リ良ク
ナッタカラト言ッテ、ソレデ宜イカト言ヘバ、
ヤハリ人ノ嗜好品デアリマスカラ、或ル程
度マデハ雜分ガ入ッテ居ルノガ所謂旨味ヲ
出ス所デゴザイマシテ、隨テ現在デモ舊式
燒酎ヲ幾ラカ新式燒酎ニ混ゼタモノガ相當
歡迎サレテ居ルヤウナ譯デアリマス、此點
ハ品質ダケデ直グニ問題ハ片付ケル譯ニ行
カナイ點ガアルト思ヒマス、ソレカラ先程
ノ御尋ノ中ニ生產費ガ違フカラ稅率ニ差等
ヲ設ケタコトニ結局ナルデハナイカト云フ
御話デアリマスガ、生產費ガ違フコトハ確
ニ違ヒマス、併シソレデ差等ヲ設ケタト云
フコトデハナク、出テ參リマシタ燒酎ガ或
ル程度ニ於テ度數等ガ加水上詰リ水ヲ割ル
上ニ於テノ利、不利ガアルカト云フ點ヲ主
トシテ說明シタ積リデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=158
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159・石渡莊太郎
○石渡政府委員 ドウモ御諒解ヲ得ナイノ
デ、甚ダ遺憾デゴザイマスガ、是ハマア私
共ノ考ガ間違ッテ居ルト申スノカモ分リマ
セヌガ、是ハ實ハ斯ウ云フ考ナンデゴザイ
マス、一體新式蒸餾機ニ依ル所ノ-マア
是ハ今更申上ゲテハイカヌノカモ分リマセ
ヌガ、新式蒸餾機ト云フモノハ本當ハ燒酎
ヲ造ル機械ヂヤナイノデゴザイマス、是ハ
「アルコール」ヲ造ル機械デアッテ、サウシテ
其「アルコール」ヲ造ッテ、其「アルコール」ニ
舊式燒酎ヲ混用シタリシマシテ、ソレヲマ
ア燒酎トシテ扱ッテ居ルノデゴザイマス、ソ
レデドウシテソレヲ燒酎トシテ扱ッタカト、
斯ウ言ヒマスレバ、ソレハ今日ノ酒造稅法
ニソレデモ該當スルト-原料トカ蒸餾ト
カノ點カラ言ッテ該當スルト、斯ウ云フコト
デアッタモノデゴザイマスカラ、之ヲ燒酎ト
シタノデアリマスガ、丁度今カラ二十一二
年前ニ之ヲ燒酎トシテ扱フカ扱ハヌカト云
フ問題ガアッタノデアリマス、卽チ「アルコ
안ニ水ヲ入レテサウシテソレニ元來ノ
燒酎ト云フモノヲ混入シテ、ソレガ果シテ
燒酎デアルカドウカト云フコトニ付テ可ナ
リ疑ガアッタノデゴザイマス、ソレヲ大正四
五年頃ニ燒酎ナリトシテ扱ッタノデアリマ
ス、ソレデゴザイマスカラ、アノ當時ノ統
計ヲ御覽下サルト、燒酎ガ大正三四年カラ
大正七八年頃マデノ間ニ三倍位ニナッテ居
リマス、其當時ノ狀況トシテハ斯ウ云フノ
ガ燒酎カト云フ位ノコトデ、實ハ「アルコ
ール」ヲ本ニ致シマシタ燒酎デアッタノデゴ
ザイマス、今更ソレヲオ前ノヤッテ居ルノ
ハ燒酎デナイ「アルコール」含有飮料ダト、
斯ウ云フ譯ニモ行キマセヌノデ、其後ズッ
ト燒酎トシテ扱ッテ今日ニ至ッテ居ルノデ
アリマスルガ、一體其機械カラ申シマシテ
モ、「ギョーム」式トカ「イルゲス」式トカ云
フ佛蘭西ヤ獨逸ノ機械デ、我國固有ノ燒酎
ガ出來ル筈ノモノデハナイ譯ダッタノデゴ
ザイマス、マアサウ云フヤウナコトニナッテ
今日ニナッテ來テシマッテ居ルノデスガ、之
ヲ鹿兒島ノ藷燒酎、ソレカラ普通ノ酒粕ニ
依ッテ出來ル所ノ燒酎、ソレカラ又沖繩ノ泡
盛ノ燒酎ト比較シテ見ルト、是ハ全ク別ノ
酒ナンデゴザイマス、本當ハソレデ寧ロ酒
精含有飮料トシテ之ヲ扱ッタ方ガマア合理
的デアルノカモ分ラヌノデス、併シ是ハ多
年燒酎トシテ扱ッテ居ルノデゴザイマスカ
ラ、今更私ガ玆デ酒精含有飮料トシテ扱フ
ベシ、斯ウ云フコトハ勿論言ヒマセヌガ、
唯サウ云フ關係カラ致シマシテ、此「アル
コール」ヲ拵ヘテソレニ依ッテ作ル燒酎ダモ
ノデゴザイマスカラ、是ハ今日相當ナ發展
ノ仕方デアッテ、サウシテ又造石數モ相當ニ
アル、造石數ガ相當ニアルト云フコトハ
面ニ於キマシテサウ云フヤウナコトデ以テ
大量生產デドン〓〓安クシテ行ク、安クシ
テ行ク所ハ宜イデセウ、此方ハ宜イデセウ
ケレドモ、他ノ酒ニ比較シテ是ダケガ特別
ニ安クシテ行クト云フ、斯ウ云フコトデア
リマシテハ普通ノ燒酎ト云フ方ガ壓迫ヲ受
ケルコト是當然デアルノデアリマシテ、或
ル特別ノサウ云フヤウナ燒酎ダケニ對シテ
特別ナ稅率ヲ置イテ之ヲ安クシテ行クノト
同ジ結果ニナッテ居ルノデゴザイマスカラ、
ソノ爲ニ他ノ酒ガ壓迫ヲ受ケルト、斯ウ云
フ關係ニ相成ッテ來ルト思フノデゴザイマ
ス、ソレデ今囘ノ此臨時增徵ニ當リマシテ
モ之ニ幾分增率ヲ致サウト、斯ウ云フヤウ
ナ考ヘヲ致シタ次第デゴザイマシテ、答辯
ガ拙デ、御諒解ヲ得ナイコトヲ非常ニ殘念
ニ存ズル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=159
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160・川崎末五郎
○川崎委員 大分時間ヲ拜借致シマシテ恐
縮デスカラ、モウ大抵ナ所デ止メマス、燒
酎ノコトハ是デ止メルコトニ致シマス、併
シ此點ニ付テハ愈〓本當ノ本音ガ、出テ來タ
次第デアリマシテ、是カラモウ少シ落付イ
テ質問應答ヲ重ネルノガ本來デアリマスル
ガ、委員長ノ御注意モアリマスノデ、殘念
ナガラ今政府委員ノ御答辯ガ本當ノ所ニ
稍〓觸レテ來タヤウナ次第デアリマスガ止
メルコトニ致シマス、唯ソレガ爲ニ私ハ飽
マデモ消費稅ノ立場カラ行ケバ、此消費者
大衆ガ消費スルノデ、サウ云フ意味デ御考
ヲ願ハナクチヤナラヌ、或ハ製造者ノ利益
云々ト云フコトハ是ハ別ノ問題デ考慮サル
ベキモノダト云フコトヲ先程ノ止メトシテ
申シテ置キマス、此點ハ本案ノ審議ニ於テ
モ、亦將來ノ稅制改革ニ於テモ此程度デ燒
酎ノ問題ハ打切リマス
次ニ極ク簡單デスガ法人資本稅デスガ、
第七條ニ於キマシテ營利ヲ目的トシナイ法
人ニシテ所得稅法其他ノ法律ニ依リ所得稅
ヲ免稅サレル者ハ之ヲ免稅スル、斯ウ云フ
規定ガゴザイマスネ、其點デ、第七條ノ所
得稅法其他ノ法律ニ依リ、所得稅ヲ課セザ
ル法人、ソレハ一體ドウ云フモノデセウ
カ、之ヲ一ツ御示シヲ願ヒタイ、營利ヲ目
的トシナイモノデアッテ而モ此法人ニ依ッテ
免稅ヲ受ケナイモノ、是ハ具體的ニ言フナ
ラバドウ云フモノガ之ニ當ルモノデアリマ
セウカ、主ナルモノヲ御示シヲ願ヘレバ宜
イノデアリマス、參考ニ伺ッテ置キタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=160
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161・石渡莊太郎
○石渡政府委員 「營利ヲ目的トセザル法
人ニシテ所得稅法其他ノ法律ニ依リ所得稅
ヲ課セザルモノ」ト申シマスモノハ、例ヘバ
產業組合其他中間法人ガゴザイマス、商業
組合トカ輸出組合トカサウ云フモノハ皆課
稅ヲ受ケマセヌ、ソレカラ課稅ヲ受ケルモ
ノハ一體ドウ云フモノダト斯ウ云フ御尋デ
ゴザイマスルガ、是ハ相互保險會社、是ハ營
利法人トハ認メナイカモ分リマセヌ、營利
法人デハアリマセヌガ、所得稅ノ課稅ヲ受
ケルノデゴザイマスカラ、隨テ法人資本稅
ノ課稅ヲ受ケルト斯ウ云フコトニ相成ルノ
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=161
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162・川崎末五郎
○川崎委員 是ハ大體ノ御例示ヲ願ヒマシ
テ一應諒解致シマシタガ、モウ少シ具體的
ニ知リタイト思ヒマスカラ後デ書面デ各列
擧致シマシテ一ツ御知ラセ願ヘレバ結構デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=162
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163・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今主稅局長カラ申上ゲ
タ通リデゴザイマスガ、是ハ二ツノ要件ヲ
具備シテ居ル場合ニ於テ、法人資本稅ヲ課
稅シナイ、詰リ營利ヲ目的トシナイト云フ
ノガ第一要件、ソレカラ所得稅法其他ノ法
律ニ依リ所得稅ヲ課セラレナイモノト云フ
ノガモ一ツノ要件、此二ツノ要件ヲ具備シ
テ居ル場合ニ於テ初メテ免稅スルト云フノ
デアリマス、隨テ一方ノ要件ニハ該當シテ
居ルケレドモ他ノ要件ニハ該當シテ居ナイ
ト云フ場合ニハ課稅ヲ受ケル、斯ウ云フコ
トデアリマス、ソコデ先程御話ノアリマシ
タ通リ、公益法人ト云フモノヲ例ニ取リマ
スト云フト民法三十四條ニ依ッテ設立サレ
マシタ財〓法人社團法人等ハ、營利ヲ目的
トシナイモノデアリマス、ソレカラ所得稅
法ニ依ッテ所得稅ヲ課稅シテ居リマセヌカ
ラ、是ハ法人資本稅ガ課カリマセヌ、ソレ
カラ更ニ御話ガアリマシタ產業組合、商業
組合其他ノ、所謂中間法人ト云フモノデゴ
ザイマスガ、是モ營利ヲ目的トシナイモノ
デアッテ、所得稅法其他ノ法律ニ依ッテ所得
稅ヲ免稅サレテ居リマスカラ、完全ニ兩方
ノ資格ニ該當シテ居リマス、其他ノ法人デ
疑問ノアリマスノハ、今モ御話ガアリマシ
タ通リ、例ヘバ相互保險會社ト云フモノハ、
是ハ營利法人トハ普通ニ言ッテ居リマセヌ、
隨テ一方ノ條件ニハ該當スルノデアリマス
ガ、所得稅法ニ依ッテ是ハ課稅ヲ受ケテ居リ
マス、隨テ片方ノ資格ヲ具備セザルコトニ
依ッテ課稅サレルノデアリマス、ソレカラ重
要物產製造業ヲ營ンデ居ルモノハ、開業ノ
年及ビ其翌年カラ三年間所得稅ヲ免稅サレ
テ居リマス、ソレカラ製鐵業奬勵法ニ依ッ
テ製鐵業者ハヤハリ是モ開業ノ年及ビ其翌
年カラ、十五年間所得稅ヲ免除サレテ居リ
マス、其他自動車工業ノ會社等ニ付テモ、
所得稅ヲ免除サレテ居ルノデアリマスガ、
是等ハ所得稅法其他ノ法律ニ依ッテ特別ノ
目的ヲ以テ免稅ハサレテ居ル、隨テ後者ノ
條件ニハ該當スルノデアリマスガ、元來ガ
營利ヲ目的トスル法人ニ當ッテ居リマス爲
ニ、前者ノ條件ニ該當シナイト云フコトニ
依ッテ、法人資本稅ガ課カルモノト御諒承願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=163
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164・川崎末五郎
○川崎委員 大體御說明デ能ク分リマシ
タ、殊ニ松隈君カラ法文ノ解釋マデ御〓ヘ
願ッテ、甚ダ結構デスガ、私ハサウ云フ解釋
ノコトヲ伺ッテ居ルノデナクテ、事實ノ適用
ダケヲ伺ッテ居ル、學校へ行ッテ居ルヤウナ
氣ガ致シマシテ有難ウゴザイマシタ、最後
ニ一言御伺シテ置キタイ、揮發油稅ノ問題
ニ付キマシテハ、先ノ關聯質問デ大分色々
ト御話ヲ伺ッタノデスガ、私ハソレヲ繰返ス
意思ハアリマセヌガ、結論ダケデ政府ノ御
意見ヲ伺ッテ置キタイ、段々此問題ヲ突詰メ
テ參リマスト、ザックバランニ申上ゲマスレ
バ、燃料國策ノ爲メ人造液體燃料ノ奬勵助
長ノ爲ニ、或ル程度「ガソリン」ノ價格ヲ引
上ゲル必要ガアル、ソレガ爲ニ一方ニ於テ
關稅ヲ增シ、一方ニ於テ資本利子稅ヲ課ス
ル、結論ハソコニ落著クノデアリマス、ソ
レ以外ニ或ハ純粹ノ國庫ノ歲入ノ增收ヲ圖
ル意味ニ於テ之ヲ計畫サレテ居ルナラバ、
今マデ私達ノ伺ッテ居ル點ニ於キマシテハ、
其意味ニ了解致サナカッタノデアリマスガ、
其意味モ加味サレテ居ルノデアリマスカ、
ハッキリ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=164
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165・石渡莊太郎
○石渡政府委員 勿論收入ノ點モ加味サレ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=165
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166・川崎末五郎
○川崎委員 此「ガソリン」稅ハ單ニ燃料國
策ノ意味ニ於テ、他ノ液體燃料ノ生產ノ助
長助成ヲ圖ル爲ニ、或ル程度價格ヲ吊上ゲ
ルト云フ以外ニ「プラス」國家ノ一般歲入ノ
增加ヲ圖ル爲ニ、ヤハリ消費稅ヲ課シタ、
斯ウ云フヤウニ考ヘテ宜シイノデスカ、是
ハ重大ナ問題デアリマスカラ重ネテ伺ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=166
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167・石渡莊太郎
○石渡政府委員 此揮發油稅法案ノ理由書
ニ「揮發油ニ課稅シ燃料國策ノ遂行ニ資ス
ルガ爲揮發油稅法ヲ制定スル等ノ必要アリ
是レ本案ヲ提出スル所以ナリ」ト斯ウ書イ
テゴザイマス、是ガ只今御尋ノ燃料國策ノ
遂行ニ資スルガ爲メ、此揮發油稅法ヲ起シ
タト斯ウ書イテアルノデゴザイマス、此燃
料國策ノ遂行ニ資スル爲ニ、單ニ此消費稅
ヲ賦課シテ、此消費稅ニ依ッテ五錢ダケ値ヲ
上ゲル、斯ウ云フコトダケカト云フ御話デ
アリマスト、ソレバカリデハゴザイマセヌ、
ソレモ確ニ重要ナ一ツノ行キ方デゴザイマ
スト同時ニ、目的稅デハゴザイマセヌガ、
是等ノ收入ニ依リマシテ、一面ニ於テハ石
油ノ試掘費、ソレカラ燃料會社、ソレカラ
樺太ノ石油ノ試掘費、サウ云フヤウナモノ
ニ數千万圓ノ金ガ要ルノデゴザイマスガ、
サウ云フヤウナ各種ノ燃料國策ノ遂行ニ資
スルガ爲ニ此收入ヲ相當アテニシテ居ルト
言ッテハ語弊ガゴザイマスガ、兎ニ角サウ云
フモノノ爲ニ金ヲ出シ易イ狀況ニ置イテ居
ル、斯ウ云フコトハ事實デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=167
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168・川崎末五郎
○川崎委員 只今ノ政府委員ノ御說明ヲ
伺ッテ略〓輪郭ヲ明ニシタノデアリマス、ソ
コデ討論ヲ致ス意味デゴザイマセヌガ、相
當私ハ之ヲ眞面目ニ考へナクチヤナラヌト
思ヒマスカラ、稍〓議論メイタヤウナ意味ガ
アリマシテモ、ソレハ御許シ願ヒタイ、私
ハ成ベクソレヲ避ケタイト思ッテ居リマス、
段々伺ッテ參リマスレバ、此揮發油稅ハ消費
稅デアルガ、或ル意味ニ於テ目的稅ノ意味
ガ加味サレテ居ル、卽チ諄イヤウデアルガ、
先ニ言ッタヤウニ燃料國策ノ爲ニ、相當「ガ
ソリン」ノ價格ヲ吊上ゲル必要ガアルト云
フ意味モアルヤウニ伺ッテ居ッタノデスガ、
外ニ目的稅トシテ、他ノ液體燃料ノ生產ヲ
助長スル爲メ、國家ガソレニ各種ノ施設或
ハ會社其他ノ關係當局者ニ補助ナリヲス
ル、其國家ノ經費マデモ之ニ依ッテ支辨スル
意味モ加ッテ居ル、直接目的稅デナクテモ、
其意味ニ於テ目的稅ノ性質ヲ加味シテ居
ル、私ガ先ニ御尋シタノモソレモ勿論含マ
レマス、分類致シマスレバサウデアリマス
ガ、ソレ以外ニ一般國家ノ歲入ノ爲ニ增收
ヲ圖ル意味ニ於テノ部分モ之ニ加ッテ居ル、
目的稅ノ性質ノモノモ之ニ含マッテ居ルコ
トハ分リマシタ、サウ解釋シテ宜シウゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=168
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169・石渡莊太郎
○石渡政府委員 結局是ハ斯ウ云フコトニ
相成ルト思フノデアリマス、詰リ此稅ノ收
入ガ一般會計ニ入リマシテ、サウシテ一般
會計カラ、サウ云フヤウナ各種ノ燃料國策
ニ對シテ金ヲ支出スルト云フコトガ便宜ニ
ナル、シ易クナル、斯ウ云フコトデアルト
存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=169
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170・川崎末五郎
○川崎委員 計數ノコトヲ餘リ諄ク言フコ
トハ恐縮デアリマス、ザックバランニ言ヘバ
之ニ依ッテ年々增收ガアリマセウ、其計畫
ト其方ノ收入ト、ソレカラ燃料國策ニ依ッテ
政府ガ將來出サウト云フ其經費トノ「バラ
ンス」ガ、ドウナルカト云フコトヲ、早ク伺
ヘレバソレデ宜イノデス、サウシテ餘レバ
ソレダケ他ノ方ニ補足サレル、斯ウ解釋ス
ル、吾々ハ政治的ニ常識的ニモノヲ判斷ス
ル爲ニ、要スルニ其事ヲ伺ヘバ宜イ、政治
的ニ言ヘバソレデ宜イノデスガ、ソレハ後
ニ伺ヒタイト思ヒマス、モウ一言ニシテ私
ノ質問ヲ打切リタイト思ヒマスガ、今ノヤ
ウニ假ニ「ガソリン」稅ノ五錢ノ中ニ、目的
稅ノヤウナ意味ノ性質ノモノヲ加味サレテ
居ル、又一般稅ノ補足ニモナッテ居ルト云
フナラバ、此際ニ於テ斯ウ云フ一般大衆ノ
結局負擔スル消費稅ニ於テ、國家ノ上カラ
燃料政策ノ必要ナルコトハ認メマスケレド
モ、ソレガ爲ニ特ニ大衆ヲ搾ッテマデサウ
云フコトヲヤッテハ、眞ニ國家ノ液體燃料ノ
將來ノ爲ニ必要ナラバ、十五億ノ軍事費モ
吾々ハ兎ニ角負擔ニ甘ンジテ居ル際デアリ
マスシ、是等ノ燃料國策ト云ヒマスカ、液
體燃料ノ問題モ結局スル所一般產業ノ意味
モアリマセウガ、モット〓〓重點ヲ、殊ニ近
時ニ於テ置カレテ居ルノハ國防上ノ重點ガ
多イト思フ、ダカラサウ云フ場合ニ於キマ
シテハ僅ノコトヨリモ、此十五億ニ垂ント
スル國防費、軍事費カラ云ヘバ、ヤハリ其方
面カラ一般的ニ私ハ支辨サレテ、是ガ爲ニ
目的稅的ニ特ニ私ハ大衆ヲ搾ル所ノ「ガソ
リン」稅ニ依ッテ此收入ヲ得ルト云フヤウナ
コトハ御考ニナラナクテモ宜イト云フヤウ
ナ議論ヲ立テタイ、又吾々ハサウ要求シタ
イ、尙ホ商工當局ナリ大藏當局ノ御說明ニ依
リマシテモ、所謂燃料國策ト云ヒマスカ、具
體的ノ施設計畫ニ至リマシテハサウ急ニ運
バヌヤウニ承ッテ居ル、若シサウ云フ意味デ
アルナラバ「ガソリン」稅ヲ抑ヘテ-曩ノ
馬場財政ノ時ノヤウナ、馬場財政ハ途中ニ
シテ倒レテ、稅制案ハ立テタガ、煙草ノ値
上ダケシテシマッタ、大衆ニ最モ負擔ノ掛
ル煙草ダケ上ゲテ後ハ知ラヌ顏シテ居ル、
今度ハ又「ガソリン」稅ダケ上ゲテ、アト液
體燃料ノ方ハ知ラン顏スルト云フノデハ、
曩ノ馬場財政ノ煙草値上ノ轍ヲ蹈マレテハ
困ルカラ、一ツ國家ノ燃料政策ト云フ、其
方ノ施設ガアッテ、實際ニ於テ「ガソリン」
ガ年ニ何万瓲デモ或ハ何百「リツトル」デモ
出來テ來テ、ソレガ實際市價ニ於テ此程度
デ行ッテ賣ラナクテハ引合ハヌ、ソレヂヤ
ヤッテ行ケヌ、故ニ「ガソリン」ノ方モ引上
ゲル、又ソレガ爲ニ費用ガ要ルト云フナラ
バ其時ニ一ツ睨ミ合ッテヤラウヂヤアリ
マセヌカ、其意味ニ於テ、是ハ一年ヤ二年
延シタッテ宜イデセウ、唯國家ガ意思ヲ表
示シテ置カナクチヤナラヌト云フ議論ガ
アッタヤウニモ思フガ、ソレナラバ此法律
ノ實施ハ昭和何年度カラ之ヲ實施スル、サ
ウスレバ宜シイ、私ハサウ云フ風ニシタイ
ト思フノデスガドウデセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=170
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171・石渡莊太郎
○石渡政府委員 中々サウ行キ兼ネルノデ
ゴザイマシテ、是ハ川崎サンモ御承知ノ通
リ、昭和十二年度ニ於キマシテモ、燃料國
策ノ各種ノ費用ト云フモノガ計上サレテ居
ルノデゴザイマス、是等ハ何レモ燃料國策
ノ遂行上必要ナル經費デゴザイマシテ、是
ハヤハリ是等ノ收入ヲ肚ノ中ニ置キマシテ、
アレダケノ莫大ナ金ヲ計上致シタ次第デゴ
ザイマス、ソンナモノハ本稅ニ依ラズニ、
他ノモノニ依ッタラ宜イヂヤナイカ、斯ウ云
フ御說モアルカト思ヒマスガ、併ナガラ「ガ
ソリン」ノ値ヲ引上ゲルト云フコトガ、一面
ニ於テヤハリ代用燃料ノ製造ヲ促進致スコ
トニ相成ルノデゴザイマシテ、旣ニ內地、
朝鮮、臺灣各地ニ於キマシテ、代用燃料ノ
製造ニ付テハ旣ニ著手致シテ居ルノデゴザ
イマシテ、此際是ニ對スル消費稅關稅ノ程
度ノ値上ト云フコトハ已ムヲ得ナイコトト
思フ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=171
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172・川崎末五郎
○川崎委員 曩ニ御願シテ置キマシタアノ
點ニ付テノ質問ヲ留保サセテ戴キマシテ、
一般ノ質問ハ是デ打切リタイト思ヒマス、
最後ニ只今ノ「ガソリン」稅ニ付キマシテ
申シテ置キマスガ、國家ノ燃料政策上ドウ
シテモ必要デアレバ、或ル程度國民ハ犠性
ヲ拂フシ、此點ニ付テハ國民モ覺悟シナケ
レバナラヌト私ハ思ヒマスケレドモ、般
ノ政費マデ之ニ依ッテ補足スル、或ハ今ノヤ
ウニ一般ノ燃料國策ノ助成ノ爲ノ經費マデ
之ニ依ッテスルト云フコトハ少シ過ギタモ
ノデハナイカ、吾々ノ求メル限度ハ、液體
燃料ヲ奬勵スル爲ニ、液體燃料ノ市價ヲ或
ル程度最小限度是デナクテハ引合ハヌト云
フ程度マデ「バランス」ヲ取ル爲ニ引上ゲ
ルノハ已ムヲ得ヌト云フナラバ、其程度ノ
增稅ハ吾々ハ篤ト考ヘテ見マセウ、併ナガ
ラソレ以上ニ、何ニデモヤル、サウ云フ部
分ガ若シアルトスレバ、是ハ斷ジテ承服ス
ルコトハ出來ナイ、是ハ國民大衆ノ生活ノ
爲ニ出來ナイト云フ意思表示ヲ致シマシテ
私ノ質問ハ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=172
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173・増田義一
○增田委員長 是ニテ散會致シマス、明日
ハ午前十時ヨリ開會致シマス
午後五時三十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01219370311&spkNum=173
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