1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時租税増徴法案(政府提出)
法人資本税法案(政府提出)
外貨債特別税法案(政府提出)
揮發油税法案(政府提出)
有價證券移轉税法案(政府提出)
明治四十年法律第二十一號中改正法律案(樺太に於ける租税に關する件)(政府提出)
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會議
昭和十二年三月十八日(木曜日)午前十時五十九分開議
出席委員左の如し
委員長 増田義一君
理事 高橋守平君 理事 三善信房君
理事 服部英明君 理事 森肇君
理事 宮澤裕君
太田信治郎君 松岡俊三君
松田喜三郎君 紅露昭君
川崎末五郎君 太田正孝君
升田憲元君 宮本雄一郎君
小山倉之助君 古河和一郎君
内藤正剛君 金光庸夫君
松村謙三君 片山秀太郎君
堀内良平君 石坂豐一君
作田高太郎君 岸田正記君
村岡吾一君 水谷長三郎君
矢野庄太郎君 河野密君
篠原陸朗君 加藤勘十君
立川太郎君 伊禮肇君
木暮武太夫君 渡邊泰邦君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣兼拓務大臣 結城豊太郎君
出席政府委員左の如し
大藏次官 賀屋興宣君
大藏省主税局長 石渡莊太郎君
大藏書記官 谷口恒二君
大藏書記官 松隈秀雄君
本日の會議に上りたる議案左の如し
臨時租税増徴法案(政府提出)
法人資本税法案(政府提出)
外貨債特別税法案(政府提出)
揮發油税法案(政府提出)
有價證券移轉税法案(政府提出)
明治四十年法律第二十一號中改正法律案(樺太に於ける租税に關する件)(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=0
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001・増田義一
○增田委員長 是ヨリ臨時租稅增徵法案外
五件ノ委員會ヲ開會致シマス、前囘ニテ質
疑ハ大體終了致シテ居リマスガ、木暮武太
夫君ヨリ此際極メテ簡單ナル質疑ヲナシタ
シトノ申出ガアリマスカラ、之ヲ許可致シ
マス-木暮武太夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=1
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002・木暮武太夫
○木暮委員 極メテ簡單ニ申上ゲマス、增
徵案第十九條ニ依ル法人ノ臨時利得稅ガ今
囘五割增徵ニ相成リマスルコトニ關聯致シ
マシテ、過去ニ於テ臨時利得稅法創設ノ精
神ガ實施ノ場合ニ歪曲サレテ居ル點ヲ發見
致シマシタノデ、政府ニ於テ十分ニ御考究
ノ上適宜ノ處置ヲ御執リ下サランコトノ意
味ニ於テ質問ヲ申上ゲルノデアリマス、大
藏大臣モ御聞キヲ願ヒマス、臨時利得稅創
設ノ理由ハ、御承知ノ通リ近年時局ノ影響
ヲ受ケテ、一方軍需產業、輸出產業等一部
ノ產業ガ、著シク其利得ヲ增加シテ居ルニ
反シテ、他方農山漁村等多年ノ不況ヨリ未
ダ恢復ニ至ラザルモノ少カラザルコトニ鑑
ミマシテ、是ガ不均衡ヲ調整スルト共ニ、
國庫收入ノ一助タラシムル爲ニ、時局ノ好
影響ニ依ッテ前者ガ增收シタル利得ニ對シ
テ課稅セントスルモノデアリマス、此精神
ガ同稅法立法ノ根據デアリ、兩院ノ協贊ヲ
得タルモ亦此點ニアリト信ジテ居ルノデア
リマス、然ルニ實際其施行狀態ヲ見マスル
ト、本法制定ノ精神ニ副ハザルモノモアル
ノヲ發見致シマシタコトハ、洵ニ遺憾千萬
デアルト思ヒマス、卽チ其一例ヲ示シテ大
藏當局ノ反省檢討ヲ促シ、其實施ヲシテ立
法ノ眞ノ趣旨ニ反スルコトナキヤウ、機宜
ノ處置ヲ執ルコトヲ要望致スモノデゴザイ
マス、玆ニ一ツノ例ヲ申上ゲマス、例ヘバ
是ハ私ノ方ノ縣デヤッテ居リマス水電ノ仕
事ノ例デアリマス、群馬水電株式會社ニ對
スル本稅ノ賦課ハ其一例デアリマシテ、同
社ハ其創立ハ昭和元年末デアリマスケレド
モ、水電事業ノ性質トシテ、數年ノ歲月ヲ
費シテ發電所ヲ建設スルニアラザレバ、營
業ヲ開始スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス、隨テ只今玆ニ例示致シマシタ會社モ、
昭和二年ニ發電所建設工事ニ著手致シマシ
テ、昭和五年六月ニ至ッテ漸ク發電所ガ完
成シテ、送電ヲ開始シテ、初メテ會社トシ
テノ營業ヲ始メタノデアリマス、隨テ此時
カラ初メテ會社ノ收益ヲ得タモノデアル、
斯ウ云フ會社ニ對シテ、本法規定ノ既往年
度ノ平均利益ノ計算ト云フモノハ、營業開
始以後ノ利益ノ平均デアルト云フコトハ、
立法ノ精神カラ見テ明カデアリマスルニ拘
リマセズ、本法施行規則第二條ニハ、「法人
ノ既往事業年度ノ平均利益ハ既往事業年度
ノ總數ヲ以テ其ノ各事業年度ノ利益ノ合計
額ヲ除シテ之ヲ計算ス」トアリマスカラ、
工事中ノ營業未開始期間ヲ加ヘテ、平均シ
テ算定致シマシテ、課稅致シテ居ル結果ト
シテ、洵ニ不合理ナルモノニナル、斯ウ云
フコトハ決シテ收益狀態ノ平均ヲ現ハスモ
ノデハナイノデアリマス、全ク無意味ノ數
字ガ茲ニ現レタコトニ相成ッテ居ルノデア
リマシテ、本法制定ノ眞ノ精神ニ反スルモ
ノト考ヘラレルノデアリマス、仍テ政府ハ
卽刻此非ヲ是正スル爲ニ、施行規則ヲ改ム
ベキデハアリマセヌカ、若シサウデアリマ
セヌケレバ、今囘ノ改正案ニ依ッテ五割ノ
增徵ノ結果トシテ、納稅者ハ從來不合理ナ
ル課稅ヲ負擔致シマシタ上ニ、益〓不合理ノ
重課ノ負擔ヲ重ネルト云フ結果ニ相成ルノ
デアリマス、以上ノ理由ニ依リマシテ、施
行規則第二條ニ、例ヘバ「但シ營業未開始
期間ハ之ヲ除ク」ト云フ意味ノ字句ヲ挿入
シテ、立法ノ精神ト背反セザルヤウ課稅上
ノ過誤ヲ改ムルト共ニ、納稅者ヲ納得セシ
ムル正シキ處置ヲ御執リニナルコトガ、當
局トシテハ必要デハナカラウカ、此點ダケ
ヲ御質問申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=2
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003・石渡莊太郎
○石渡政府委員 只今木暮サンカラノ御尋
ノ點デゴザイマスガ、臨時利得稅法ノ立前
ト致シマシテ、昭和四、五、六ノ既往年度
事業中、其期間ニ損ガアリマシテモ、是ハ
通算致ス、斯ウ云フコトニ相成ッテ居ルノ
デゴザイマス、サウシマシテサウ云フヤウ
ナ場合モアリマスノデ、事業年度ヲ平均致
シマシタ結果、收益率ガ非常ニ少イト云フ
モノニ付キマシテハ、七分ダケハ見テ行ク、
其資本金ニ對シテ七分ダケノ利益ガアッタ
ト、斯ウ考ヘテヤルノデゴザイマシテ、隨
テ其七分以下ノ場合ニハ七分ニシテ行ク、
斯ウ云フコトデアルノデアリマシテ、是等
ノ點カラ致シマシテ法人ヲ設立シタ後ニ於
キマシテ、開業準備ノ爲ニ事業年度ニ著手
シ得ナカッタトシテモ、斯ウ云フ期間モ是ハ
通算シナケレバイカヌ、斯ウ思フノデゴザ
イマシテ、此點ハ此前ニ施行致シマシタ戰
時利得稅ニ付テモヤハリ同樣ニ扱ッテ居ッタ
ノデゴザイマス、更ニ臨時利得稅法案審議
ノ際ニ於キマシテモ、其期間ニ「ストライ
キ」ノアッタ場合ニ一體ドウスルカ、特殊ノ
事情ノアッタ場合ニ一體ドウスルカ、斯ウ云
フ御尋モ數々アッタノデゴザイマスガ、是
等ハ何レモ七分ト云フ含ミガアルノデゴザ
イマスカラ、其程度デ以テ算出シテ行クヨ
リ外ニ仕方ガナイ、、斯ウ申上ゲタノデゴザ
イマスガ、併ナガラ是等ノ旣往事業年度中
ニ特殊ノ事情アッタルガ爲ニ、平均ノ利益率
ガ著シク落チル、斯ウ云フモノニ付テハ法
規ノ許ス限リニ於テ寛大ナル扱ヒヲ致シタ
イ、斯ウ申上ゲタノデゴザイマスガ、此場
合ニ於キマシテモ今日ノ法規ノ許ス限リニ
於キマシテ、斯ウ云フ會社ニハ寬大ニ取
扱ッテ行キタイ、斯ウ云フ風ニ存ジテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=3
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004・木暮武太夫
○木暮委員 只今ノ御答大體ニ於テ能ク諒
承致シマシタ、最後ノ法規ノ許ス限リ寛大
ニ宜ク取扱ッテ戴クト云フコトハ、洵ニ結構
ナ御言葉デゴザイマシテ、ドウゾ此點特ニ
御留意下サイマシテ、サウ云フ氣ノ毒ナモ
ノニ對シマシテハ、當局ハ御同情アランコ
トヲ切望ニ堪ヘマセヌ、私ノ質問ハ是デ宜
シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=4
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005・増田義一
○增田委員長 是ニテ質疑ハ終了致シマシ
タ、直チニ討論ニ入リマス-川崎末五郞
君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=5
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006・川崎末五郎
○川崎委員 私ハ只今議題ト相成ッテ居リ
マスル臨時租稅增徵法案外五件ニ付キマ
シテ、吾々ノ同僚委員ノ大體ノ意嚮ヲ代
表致シマシテ、玆ニ私ノ意見ヲ申シ述ベタ
イト思ヒマス、今囘ノ政府ノ增稅案ニ付キ
マシテハ、之ニ依ッテ二億九千万圓ト云フ
多額ノ增徵竝ニ新稅ノ增收ガ行ハレル譯デ
アリマスルガ、之ヲ先ノ廣田內閣ニ依ッテ
議會ニ提案サレマシタ當初ノ豫算及ビ稅制
改革案ニ比較致シマスレバ、一億六千万圓
以上モ緩和サレテアルノデアリマスルガ、
併ナガラ國民一般ニ對スル此增稅及ビ新稅
ノ負擔ト云フモノハ相當ノ犠牲デアリ、苦
痛デアリ、隨テ產業或ハ國民生活ノ上ニ餘
程影響ノアルコトト思フノデアリマス、殊
ニ今囘ノ臨時租稅增徵案外五件ノ新稅ノ法
案ニ付キマシテハ、先ノ馬場案ニ之ヲ比較
致シマスルト、相當課率其他緩和サレテ居ル
點モアリマスルシ、又馬場案ニ於テ最モ問
題トナッテ居リマシタ彼ノ取引稅ノ如キ、又
財產稅中ニ於キマスル個人ノ財產稅ノ如キ
ハ、之ヲ今囘御見合セニナリマシタヤウナ
廉モゴザイマスルケレドモ、私ハ先ノ馬場
案ノ中央地方ヲ通ジテ稅制改革ニ付キマシ
テ、アノ際ニ於テ政府ノ目標ト致シマシタ
租稅ノ負擔ノ均衡ヲ圖リ、隨テ動產ト不動產
トノ間ニ於ケル負擔ノ均衡ヲ圖リ、或ハ個人
ト法人トノ間ニ於ケル同樣ノ點、又地方ト中
央ヲ通ジテノ兩者ノ平衡ヲ圖ル、サウ言ッタ
ヤウナ點ニ付キマシテ、私ハソコニ相當ノ
根據ガアリ、理路一貫シテ居リマシテ、アノ
租稅體系ニ付テハ私ハ大體ニ於テ之ヲ認ム
ベキモノデアルト思フ、苟モ國家ガ財政上
ノ需要ニ從ッテ稅ノ增收ヲ圖ラナクチヤナ
ラヌト云フ場合ニ於テハ、アア言ッタ行キ方
ガ宜イノデハナイカ、唯併ナガラ馬場案ノ
內容其モノニハ、個々ノモノニ付テハ吾々
直チニ之ヲ承服シ難イモノガ多々アリマス
ガ、其考ヘ方御方針トシテハ私ハアア云フ
風ニヤルベキモノデハナイダラウカト思
フ、然ルニ今囘ノ政府ノ御提案ニ相成リマ
シタモノヲ見マスルト、今申上ゲタヤウナ
意味ニ於テハ、各方面ニ於テ吾々ハ遺憾ト
セザルヲ得ナイ點ガ多々アルノデアリマ
ス、是等ノコトハ同僚ノ委員カラモ審議中
ニ御質問アリ、ソレ〓〓政府ノ見解モ伺ヒ、
又私自身ト致シマシテモ御尋致シテ居ッタ
ヤウナ次第デアリマスガ、政府ハ組閣〓々
ノ際デイラッシヤイマシテ、十分サウ云フ方
面ニ於テ〓究スルノ遑ガナイ、殊ニ臨時租
稅增徴法案ノ如キハ、唯當面ノ必要ニ從ッテ
目下ノ應急ノ措置トシテ之ヲ立案サレテ、
大藏大臣御自身ニ於カレマシテモ是ハ應急
策デアッテ、理想的ノモノ、或ハ完全ノモノ
トハ思ハナイ、缺點モアルダラウガ、先ヅ此
際我國ノ現在ノ內外ノ情勢、財政上ノ必要
カラ、鑑ミテ、ドウカ之ヲ承認シテ吳レ、
斯ウ云フヤウナ御答辯モ再々伺ッテ居ルヤ
ウナ次第デアリマス、隨ヒマシテ吾々ハ左
樣ナ意味ニ於テ政府ノ意ノアル所モ之ヲ大
イニ諒ト致シマスルガ、併シ此儘デハ幾多
ノ方面ニ於テ吾々ハ缺陷ガアルト云フコト
ハ、委員會ニ於テ申述ベタ通リデアリマ
ス、豫算ノ通過ヲ致シマシタ此際ニ於キマ
シテハ、餘リニ財政上ノ缺陷、歲入ノ缺陷
ヲ來スト云フコトモ如何カト思ヒマスノミ
ナラズ、又豫算通過ノ際ニ於テ吾々議員ニ
於キマシテハ、將來政府ニ於テハ中央地方
ヲ通ジテノ根本的ノ稅制ノ改正ヲ行ハレル
ト云フコトヲ條件ニ致シテ居ルヤウナ次第
デアリマシテ、本委員會ニ於キマシテモ其
點ニ付テハ、殆ド總テノ委員諸君ガ此點ハ
一致シテ强調サレテ居リ、又政府ニ於テモ
度々此點ニ付テハ其意ノアル所ヲ御答辯相
成ッタ次第デアリマス、私達ハ其點ヲ信賴致
シマシテ、卽チ必ズ次ノ議會マデニハ政府
ニ於カレマシテ中央地方ヲ通ジテノ根本的
ノ稅制改革ヲ一ツ行ハレマシテ、ソレニ依ッ
テ從來吾々ガ惱ンデ居リマス所ノ租稅ノ負
擔ノ不均衡ヲ是正シ、公正ニスルト云フ
コト、其事ハ單ニ中央地方ヲ通ジテ、地
域的ノミナラズ、各職業、各階級、總テ
ノ方面ニ亙ッテ、既ニ委員會中ニモ申上ゲ
マシタヤウナ意味ニ於テ一ツ根本的ニ御
考願ヒタイ、尙ホ個々ノ稅ノ課率ナリ、
又方法ノ點ニ付キマシテハ委員會ニ於テ
各委員カラソレ〓〓希望モアリ、意見モ
アリマシタノデアリマスガ、是等ノ點モ
左様ナ場合ニ於テハ十分御參酌相成リマ
シテ、一ツ完璧ヲ期セラレンコトヲ私ハ希
望シ、其事ヲ期待致シマシテ、大體ニ於テ
此臨時租稅增徵法案外五件ニ付キマシテハ
贊意ヲ表スル次第デアリマス、併ナガラ是
ハ吾々ガ之ヲ理想ノモノトシテ、最モ適當
ナ最善ノモノトシテ、吾々ハ決シテ喜ンデ
協賛スルノデハアリマセヌ、多々不滿ナ點
ハアリマスルケレドモ、現在ノ情勢ニ鑑ミ
テ實ハ不承不承之ヲ承諾スルヤウナ次第デ
アリマス、此點ハ十分ニ御考願ッテ、來ル議
會マデニハ最善ノ案ヲ一ツ御出シ願ヒタイ
ト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、尙ホ左樣
ナ意味ニ於テ、政府ノ財政上ノ都合モアリ
マスルノデ、今申上ゲタヤウナ次第デアリ
マスカラ、吾々ハ成ベク此法案ニ手ハ著ケ
タクナイト云フ考ヲ以テ臨ンダノデアリマ
ス、併ナガラ差當リノ問題ト致シマシテモ、
一二ノ點ニ付テハ吾々ハ此法案ヲ此儘認メ
ルコトガ出來ナイ箇所モアリマスルノデ、
ソレ等ノ點ニ付テ、私ハ以下申述ベマスル
三個ノ點ニ付テソレ〓〓修正致シタイト考
ヘルノデアリマス、尙ホ本法ノ施行、又將
來ノ稅制改革ニ付キマシテ吾々數箇條ニ
亙ッテノソレ〓〓ノ希望意見ヲ持ッテ居リマ
スルガ、是等ノ點ハ後デ申上ゲマスルガ、
附帶決議トシテ其事ヲ決議シ、政府ハ其吾
吾ノ意ノアル所ヲ、其決議ノ內容ヲ誠意ヲ
以テ實行サレンコトヲ吾々ハ要望シ、又其
事ヲ期待シテ本案ニ贊成致シタイ、修正事
項ヲ申上ゲマス、第一ハ臨時租稅增徵法案
デゴザイマスガ、其第六條第一項中「同十
万圓以下ナル所得、所得稅額ノ百分ノ四十
五」トアリマシテ、其次ニ「同五十万圓以
下ナル所得、所得稅額ノ百分ノ五十五」ヲ
加フト云フヤウニ一ツ訂正シタイト思ヒマ
ス、尙ホ同條第三項中「同十万圓ヲ超エ」
ノキト「五十万圓以下ナル所得、同五十万
圓ヲ超エ」斯ウ云フコトヲ加ヘタイノデア
リマス、是ハ法案ノ點デアリマスカラ、モ
ウ一度讀ミマス
第六條第一項中「同十万圓以下ナル所得
所得稅額ノ百分ノ四十五」ノ次ニ「同五十
万圓以下ナル所得所得稅額ノ百分ノ五十
五」ヲ加フ
同條第三項中「同十万圓ヲ超エ」ノ下ニ
「五十万圓以下ナル所得、同五十万圓ヲ超
エ」ヲ加フ
是ハ別ニ說明ヲ要セヌト思ヒマスガ、簡單
ニ一言申シマスレバ吾々ノ修正ノ理由ト致
シマシテハ、今囘ノ所得稅ノ增徵ニ付キマ
シテハ、各所得ニ從ッテノ累進區分ガ稍〓粗
大ニ失シテ、隨テ其間ニ於テ負擔ノ公正ヲ
缺ク嫌ノアルノヲ私達ハ遺憾トスルノデア
リマス、殊ニ一万五千圓以下ニ於テ、吾々
ハサウ言ッタ意味ニ於テ增徵稅率モ變更シ
タ方ガ宜イト思フ位デアリマスガ、是ハ稅
收ニモ多大ノ影響ガアリマスカラ、暫ク吾
吾ハ隱忍シタ次第デアリマス、隨テ唯十万
圓ト百万圓ノ間ガ餘リニ飛過ギテ居リ、此
間ノ所得者ニ餘程不公平ヲ來ス虞ガアリマ
スノデ、先ニ申上ゲタヤウナ意味ニ於テ茲
ニ一ツノ階段ヲ設ケタイト思フノデアリマ
ス、是ガ第一點デゴザイマス
第二ト致シマシテハ、有價證劵移轉稅法
案デアリマスガ、其第八條ヲ左ノ如ク改メ
タイト思フノデアリマス
營利ヲ目的トセザル法人ニシテ所得稅法
其ノ他ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課セラレザ
ル者ハ有價證劵移轉稅ヲ納ムルコトヲ要
セズ
原案ノ第八條「國、北海道、府縣、市町村
其ノ他命令ヲ以テ指定スル公共團體ハ有價
證券移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ」此規定
ヲ今申上ゲマシタヤウニ修正致シタイト思
フノデアリマス、其理由ト致シマシテハ、
國、北海道、市町村其他ノ命令ヲ以テ指定ス
ル公共團體、是ガ免稅サレルコトハ當然デ
アリマスガ、之ヲ所得稅ノ免稅ナリ、或ハ
資本利子稅ニ於テ免稅ノ點ト比較致シマス
ト、此有價證劵ノ移轉稅ニ付キマシテハ、
只今申シマシタ營利ヲ目的トセザル法人
デ、公共團體以外ノモノニ所得稅又ハ法人
資本稅ニ於テハ免稅サレテ居ルニモ拘ラ
ズ、有價證劵移轉稅ニ於テハ免稅サレナイ
モノガアルノデス、例ヘバ財團或ハ社團法
人ニ於テノ圖書館、學校、神社佛閣、斯ウ
云ッタヤウナモノ、或ハ產業組合、商工組
合、輸出組合、斯ウ云ッタモノニ付テノ免稅
ガナイノデアリマス、是ハ今申シマシタ意
味ニ於テ、所得稅及ビ法人資本稅ト比較シ
テ、少シ不均衡デハナイカト思フノミナラ
ズ、實際的ニ見テ、國家ノ文化政策、或ハ
產業政策カラ申シマシテ、只今例示致シタ
ヤウナモノニ付キマシテハ、之ヲヤハリ有
價證劵ノ移轉稅ニ於テモ免稅スルヲ至當ナ
リト考ヘルガ故デアリマス
其次ノ第三ト致シマシテハ、法人資本稅
デゴザイマスルガ、其第八條ノ一部ニ私ハ
修正ヲ加ヘタイト思フノデアリマス、卽チ
第八條第三項中「及積立」及「及其ノ事業年
度末ニ於ケル積立金額」ヲ削ル、斯ウ云フ
修正案ヲ玆ニ持ッテ居ルノデアリマス、是ハ
錯雜致シマスカラ讀ンデ見マス、第三項ニ
「所得及積立金額ナキ法人ノ法人資本稅ハ
之ヲ免除ス前二項ノ規定ニ依リ算出シタル
稅額ガ其ノ事業年度ノ所得金額及其ノ事業
年度末ニ於ケル積立金額ヲ超過スルトキハ
其ノ超過額ニ相當スル法人資本稅ニ付亦同
ジ」斯ウ云フヤウニ規定サレテ居ルモノヲ、
吾々ハ斯ウ修正致シタイト思ヒマス
所得金額ナキ法人ノ法人資本稅ハ之ヲ免
除ス前二項ノ規定ニ依リ算出シタル稅額
ガ其ノ事業年度ノ所得金額ヲ超過スルト
キハ其ノ超過額ニ相當スル法人資本稅ニ
付亦同ジ
斯ウ云フヤウニ第三項ヲ修正致シタイト思
フノデアリマス、其修正理由ト致シマシテ
ハ、法人資本稅ト雖モ私ハ租稅ノ大體ノ原
則カラ申シマシテ、所得又ハ收益ノナイ所
カラ、稅金ヲ徴收スルト云フヤウナコトハ、
然ルベカラザルコトデアリマスノミナラ
ズ、今囘ノ法人資本稅ニ於キマシテモ、政
府ハヤハリ資本其モノカラ稅金ヲ取ラレル
ト云フヤウナ御考ヂヤナカラウ、唯資本額
ト云フモノハ課稅標準デアリマス、稅源ハ
ヤハリ其法人ノ所得又ハ收益ト云フモノカ
ラ御取リニナルモノデアラウト思フノデア
リマス、此會社其他ノ法人ニシテ、其事業
年度ニ於テ收益トカ所得ガナイ時、言換へ
テ見レバ、缺損ヲシタ場合ニ於テモ租稅ヲ
取ルト云フ御考デハナカラウト思ヒマス、
サウシテハイケナイ、本案ニ於キマシテハ、
此事業年度自體ニ於テ缺損ヲ致シマシタ
時、所得ガナクテモ、其法人ガ積立金ヲ持ッ
テ居ル時ニハ、尙ホ左樣ナ場合ニ於キマシ
テ課稅サレル、斯ウ云フコトニナッテ居ル
ノデス、私ハ是ハ甚ダ法人ニ對シテ酷ナル
モノデアル、是ハ俗ニ申シマスガ、延テハ
國家ガ法人會社ニ對シテ蛸配當ヲ强要スル
ヤウナ意味ニモナルヤウナコトデアッテ、斯
樣ナコトガ出來マスレバ、結局其會社ノ事
業ヲシテ萎靡沈衰セシメ、結局產業ノ生產
力ヲ減損セシムルコトニナルト思フノデア
リマシテ、甚ダ是ハ好マシクナイト思ヒマ
スカラ、今申シマシタヤウナ趣旨ニ於テ此
點ヲ修正致シタイト思フノデアリマス、以
上申シマシタ三箇ノ點ニ付キマシテ、私ハ
修正ヲ致シタイト思フノデアリマス、其他
ノコトニ付キマシテハ、卽チ外貨債特別稅
法案、揮發油稅法案、明治四十年法律第二
十一號中改正法律案、此三案ハ原案ノ儘全
部之ヲ贊成致シタイト思フノデアリマス
尙ホ次ニ申上ゲタイト思ヒマスノハ、曩
ニ一言致シマシタ附帶決議ヲ讀ンデ見マ
ス、是ハ數項ニ亙ッテ居ル爲ニ先ヅ第一ニ之
ヲ朗讀致シマス
附帶決議
第臨時租稅增徵法ノ適用ヲ昭和十二
年度ニ限定シ政府ハ速ニ官民ヨリ成ル
權威アル調査會ヲ設ケ中央地方ヲ通ズ
ル根本的稅制改革ヲ行ヒ特ニ直接稅間
接稅ノ調整ヲ圖ルベシ
第二稅制改革ニ當リ營業收益稅及ビ自
作農地ノ地租免稅點ヲ適當ニ引上グベ
シ
第三第三種所得稅ノ決定ニ際シテハ負
債ノ利子ハ其ノ原因ノ如何ヲ問ハズ總
テ所得金額中ヨリ控除スベシ
第四相續稅ニ不動產ノ物納制度ヲ認ム
ベシ
第五揮發油稅ノ收入ヲ財源トシ其ノ中
ヨリ相當額ヲ道路改良費ニ充テ且ツ地
方稅中營業用自動車稅ノ輕減ヲ圖ルベ
シ
第六政府ハ租稅ノ賦課徵收ニ當リ嚴ニ
職權濫用ヲ愼ミ苟モ苛察ニ亙ラザルヤ
ウ注意スベシ
只今朗讀致シマシタ此六ツノ條件ヲ附帶決
議トシテ私達ハ此事項ヲ政府ニ於テ誠實ニ
實行サレルコトヲ條件、希望ト致シマシテ、
前ニ申シマシタヤウニ、ソレ〓〓各法案ニ
付テ或ハ修正シ、或ハ無修正デ之ヲ贊成致
シタイト思フノデアリマス、尙ホ一言致シ
テ置キマス、今申上ゲマシタ第五ノ揮發油
稅ニ關シマスルコトハ、是ハ揮發油稅法案
ニ附帶シタモノト致ス次第デアリマスガ、
其他ノ事項ハ之ヲ臨時租稅增徴法案ニ主ト
シテ力ヲ入レテ、私達ハ此附帶決議ヲ附ケ
タ次第デアリマス、此附帶決議ヲ致シマシ
タ各條項ニ付テノ趣旨ハ、今更私ガ說明ヲ
スル迄モナク、委員ニ於テモ承知願ッテ居リ
マス譯デアリマス、政府ニ於テモ十分是等
ノ點ニ付テハ、吾々ガ委員會ニ於テ審議中
ニ交ハサレマシタ政府ト委員ノ間ノ質問應
答ニ於テ、十分ニ意ノ在ル所ヲ御諒解願ッ
テ居ルコトト思ヒマスルカラ、時間ノ關係
モアリマスルノデ、玆ニ說明ヲ省略致シテ、
尙ホ是等ニ付キマシテハ同志ノ者ヨリ本會
議ニ於キマシテ、ソレ〓〓詳細ニ討論ノ際
ニ意見ノ發表ガアルコトト思ヒマスカラ、
私ハ之ヲ省略致シマス、唯一言ダケ致シテ
置キタイノハ、第一ノ根本的ノ稅制改革ノ
コトニ付テハ、言フ迄モアリマセヌガ、特
ニ直接稅、間接稅ノ調整ヲ圖ルベシト云フ
コトヲ書イテ居リマス、文字ニハ現ハレテ
居リマセヌガ、不動產ト動產トノ負擔ノ衡
平均衡ヲ圖リ、地方中央ヲ通ジテノ負擔ノ
均衡ヲ圖ルト云フコトハ、諄イヤウデアリ
マスルガ、私達ハ其點最モ必要ナルコトト
考ヘマスルノデ、特ニ其事ダケヲ一言附加
致シテ置キマス、以上私意見ヲ發表サシテ
戴キマシタガ、冀クハ同僚諸君ニ於カレマ
シテモ、私ノ此修正意見竝ニ附帶決議ニ御
贊同願ヒマシテ、私ガ只今發言致シマシタ
ヤウニ、臨時租稅增徵法案、有價證劵移轉
稅法案、法人資本稅法案ニ付キマシテハ、
ソレ〓〓修正ニ贊成ヲ願ヒマシテ、其他ノ
法案ニ付キマシテハ、政府ノ原案ニ御贊成
下サランコトヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=6
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007・三善信房
○三善委員 私ハ只今議題トナッテ居リマ
ス臨時租稅增徵法案、其他ノ諸案ニ對シマ
シテ、修正及ビ附帶決議ヲ致シタイト思ヒ
やく、其修正ノ條文ハ、只今民政黨ノ川崎
君カラ御出シニナッタト同樣ナ修正ノ字句
デアリマスカラ、此點ハ省略致シマス、尙
ホ附帶決議ニ付キマシテモ、同樣ノ附帶決
議デアリマスルガ故ニ、玆ニ私ガ其附帶決
議ノ文案ヲ申上ゲルコトヲ省略致シマス、
サウ致シマシテ、我黨ヲ代表致シマシテ此
修正及ビ附帶決議ニ對シマシテ、其修正ノ
理由及ビ附帶決議ヲ附シマシタル所ノ理由
ニ付キマシテ、極ク簡單ニ說明致シタイト
思フノデアリマス、修正ノ點ハ先程川崎君
カラ言ハレマシタヤウニ、所得稅法ノ改正
ニ關スル件及ビ有價證劵移轉稅法案、法人
資本稅法案ニ關スル件、此三案デアリマシ
テ、其理由ハ只今川崎君カラ申サレマシタ
ノトサウ大シタ相違ノ點モナイノデアリマ
スカラ、重複ヲ避ケマシテ申上ゲマセヌ、
尙ホ附帶決議ニ對シマシテノ其理由モ大同
小異デアリマシテ、別段改メテ申上ゲル迄
モナイコトデアルト思ヒマスガ、私ノ所見
ヲ申上ゲマシテ、我黨ノ附帶決議ヲ附シタ
ル其理由ノ一端ト致シタイト思フノデアリ
マス、政府ハ臨時租稅增徵法案、其他諸法
案ヲ今期議會ニ提案セラレタノデアリマス
ガ、此臨時租稅增徵法案、其他ノ法案ハ歲
出ノ莫大ナル增加ニ伴ヒマシテ、其結果歲
入ノ增加ヲ圖ラネバナラヌ、其爲ニ臨時應
急ノ處置トシテ制定セラレタモノデアリマ
シテ、所謂文字ノ通リ應急臨時立法デアリ
マスルコトハ、申ス迄モナイコトデアリマ
ス、併ナガラ其內容ヲ點檢致シテ見マスル
ト、直接稅及ビ間接稅ニ於キマシテ、所得
稅ヲ初メ外八稅目ニ付テノ增稅デアリマ
ス、又新ニ法人資本稅及ビ其他三稅目ノ新
稅ヲ設ケラレテ居リマス、隨テ稅制全般ニ
對シマシテハ、相當廣範圍ニナッテ居ルト思
フノデアリマス、併ナガラ私共ガ其內容ヲ
檢討致シマスルニ、唯臨時的ニ設ケラレタ
ノデアリマスルガ故ニ、稅制ノ根本的改革
ヲ意味シタル點ハ少シモナイト思フノデア
リマス、此點ガ私共頗ル遺憾トスル所デア
リマス、併ナガラ大藏大臣ハ屢〓此委員會ニ
於キマシテ、來年度ニ於テハ地方中央ヲ通
ジタル稅制ノ根本的改革ヲ爲スト云フコト
ヲ言明致サレタノデアリマス、隨テ私共ハ
此法案ニ對シマシテハ、幾多マダ修正セナ
ケレバナラヌコトモアルト考ヘル、決シテ
滿足ヲ持ツ者デハアリマセヌ、不滿ノ點ガ
洵ニ多イノデアリマス、併ナガラ大臣ノ來
年度ニ於テ必ズ中央地方ヲ通ジタル稅制ノ
根本的改革ヲ爲ス、此言明ニ信賴ヲ致シマ
シテ、不滿ナガラ若干ノ修正ヲ加ヘテ、其他
ノ案ニ對シテ贊成致ス者デアリマス、先ヅ
私共ガ此附帶決議ヲ附シマシタ所ノ第一ノ
點ハ、稅制改革ニ當ッテ、營業收益稅及ビ地
租ノ免稅點ヲ相當ニ引上ゲルト云フコトハ
私ガ申ス迄モナク大臣自身モ御分リノコト
デアルト思ヒマス、現在ノ中小商工業者及
ビ中小農家ガ、如何ニ稅ノ爲ニ苦ンデ居ル
カト云フコトハ申ス迄モナイコトデアリマ
シテ、此免稅點ヲ相當ニ引上ゲラルルコトハ
正ニ當然ナコトデナケレバナラヌト思ヒマ
ス、此點ニ付キマシテハ特ニ御注意ヲ願ハ
ナケレバナラヌト思ヒマス、第三種所得稅
ノ決定ニ際シマシテ負債ノ利子ヲ控除スル
ト云フ點ハ、現在ニ於キマシテモ負債ガアレ
バ、控除セナケレバナラヌノデアリマスケ
レドモ、中々稅務署ハ控除致シマセヌ、何
トカカトカ言ッテ明ニ一ツノ目的ノ爲ニ此
負債ガ起サレテ居リマスニ拘ラズ、其負債
ノ利子ヲ控除スルコトハ致シマセヌ、此點
ハ特ニ注意致サレテ、將來其負債ノ利子ニ
對シテ控除スルノミナラズ、其原因ノ如何
ヲ問ハズ、總テ所得稅額中ヨリ利子ヲ控除
スルト云フコトヲ期スルコトガ適法ナリト
考ヘルノデアリマス、相續稅ノ不動產物納
ノ點ニ付キマシテハ、是ハ一般ノ委員カラ
モ御述べニナリマシタ通リニ、此相續稅ヲ
稅務吏ガ勝手ニ決メマシテ、殊ニ不動產及
ビ山林ノ如キニ對シマシテハ、稅務吏自身
ガ勝手ニ其値段ヲ決メマシテ、而シテ之ヲ
賣リ拂ハントシテモ、中々是ガ賣却ハ出來
マセヌ、斯樣ナ場合ニ於キマシテハ、政府
ガ當然政府デ決定セラレタル所ノ價格ニ於
テ、引取ラレルコトハ正ニ當然ナリト思フ
ノデアリマスガ故ニ、此點相續稅ノ物納ハ
政府ニ於テ將來考慮サレナケレバナラヌコ
トデアルト思ヒマス、揮發油稅ノ收入ノ中
カラ相當額ヲ道路改良費、其他營業用自動
車稅ノ減稅ニ充テヨト云フヤウナコトモ、
今囘揮發油稅ガ十錢增課セラルルノデアリ
マスガ故ニ、自動車營業者ハ無論ノコト、
一般大衆ニ向ッテモ相當負擔ヲ課スルコト
ニナリマスガ故ニ、自動車營業者ノ苦痛及
ビ一般大衆ハ之ヲ課セラルルコトニ依リマ
シテ重イ負擔ヲ負フノデアリマスガ故ニ、
其根本原因ニナルベキ所ノ、自動車營業者
ノ苦痛デアル此稅ノ高イノニ對シテ、減稅
ヲ爲シ、或ハ道路ヲ改良シテ自動車交通
ノ上ニ付キマシテ支障ナカラシムルト云フ
コトハ「ガソリン」ノ値上ト共ニ考ヘナケ
レバナラヌコトト思ヒマス、獨リ稅金ノミ
ヲ上ゲテ、其他ノ施設ヲ怠ルガ如キコトハ
爲政者ノ爲スベキコトデナイト思ヒマスガ
故ニ、此點ハ大衆的方面カラ考ヘテモドウ
シテモ爲サラナケレバナラヌ事柄ト思ヒマ
ス、政府ハ租稅ノ賦課徵收ニ當ッテ、、嚴ニ其
職權ノ濫用ヲ愼ンデ、苟モ苛酷ニ亙ルヤウ
ナコトガアッテハナラヌト云フコトハ、當然
過ギル程當然デアリマシテ、稅務吏ハ往々
ニシテ苛酷ナル取調ヲ爲シテ、營業者ノ家
ノ中ニ入ッテ不當ナル調査ヲ爲スト云フコ
トガ往々アルノデアリマスガ故ニ、特ニ此
點ニ對シテ注意ヲシテ戴カナケレバナラヌ
ト思ヒマス
最後ニ私ガ申上ゲタイト思ヒマスノハ、
中央地方ヲ通ズル所ノ稅制ノ統制デアリマ
ス、先ヅ直接稅ト間接稅ニ付キマシテ考ヘ
テ見マスト、今日我國ノ直接稅ト間接稅ト
ノ比例ハ、直接稅ガ先ヅ今マデハ四割デ、
間接稅ガ六割デアル、今度ノ租稅增徵法案、
其他ノ法律案ニ依リマシテ、此點ハ稍〓緩和
サレタカノ觀ガアリマスケレドモ、我國ノ
現在ノ社會情勢カラ見マスルト、餘リニモ
直接稅ガ輕クシテ、間接稅ガ重クハナイカ、
直接稅ハ申ス迄モナク負擔力アル者ガ納メ
ル所ノ稅金デアリマス、間接稅ハ一般國民
大衆ガ納メナケレバナラヌ、負擔力ノナイ
者デモ間接稅ハ納メナケレバナラヌノデア
リマスガ故ニ、此點ハ特ニ注意シテ戴カナ
ケレバナラヌト思ヒマス、殊ニ物價騰貴ノ
趨勢ニアル所ノ今日ニ於キマシテ、國民大
衆ハ生活不安ニ陷ラントシテ居リマス、然
ルニ國民大衆ノ生活必需品デアル消費物ニ
對シテ高率ノ課稅ヲサレルナラバ、益〓生活
難ニ陷リマシテ、社會不安ノ情勢ヲ來サヌ
トモ限ラヌノデゴザイマスガ故ニ、此間接
稅ニ付キマシテハ特ニ注意ヲサレマシテ、
稅制ノ上ニ過ノナイヤウニセラレンコトヲ
希望スルモノデアリマス、國民負擔ノ均衡
ヲ圖リ、稅制改革上最モ注意シナケレバナ
ラヌコトハ、農村ト都市トノ問題デアラウ
ト思ヒマス、此農村ノ負擔ト都市ノ負擔ノ
均衡ガ取レテ居ラヌト云フコトハ、政府自
身モ御承知ノコトデアルト思ヒマス、併ナ
ガラ大藏大臣ハ如何ニモ農村ニ對シテ理解
ガナイ、斯ウ云フコトヲ一般ノ人ガ言ッテ居
ルヤウデアリマス、相當今度ノ議會デ理解
ヲ御深メニナッタトハ思ヒマスケレドモ、今
尙ホ農村ノ實情ハ十分御承知デナイカモ知
レマセヌカラ、若干農村ノ實情ニ付テ申上
ゲマシテ、今後稅制ノ根本改革ヲ爲サレン
トスル場合ノ御參考ニシテ戴カナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、元來前廣田內閣
ノ時分ニ中央及ビ地方ヲ通ズル所ノ稅制
改革ヲ爲サレマシテ、地方ノ稅制改革ト
云フコトニ對シテ特ニ意ヲ用ヒラレタノ
デアリマス、隨テ地方稅制ノ改革ニ當ツ
テ、地方ノ歲入ノ缺陷シタル其金額ヲ、先
ヅ中央ノ方カラ交付金トシテ交付スルト云
フコトニナッタノガ、廣田內閣ノ大ナル使命
デアッタト思ヒマス、玆ニ初メテ交付金制度
ガ確立致サレタノデアリマス、今囘ノ林內
閣ハ漫然七千万圓ニ加フルニ三千万圓、
億圓ヲ出サレタノデアリマスケレドモ、之
ヲ以テ決シテ地方交付金制度ノ確立ヲ見タ
ト言フコトハ出來ナイト私共ハ思フノデア
リマス、卽チ地方制度ノ稅制ノ根本改革ヲ
爲サレテ、之ニ歲入缺陷ガアッタ場合ニ、ソ
レニ對シテ交付金制度ヲ定メナケレバナラ
ヌト云フノガ、其根本ノ方針デナケレバナ
ラヌト思ヒマス、併ナガラ私共ハ徒ニ交付
金ノミヲ要望スル者デハアリマセヌ、交付
金ノミニ依ッテ農村ヲ更生セシメヨウト言
フ者デハアリマセヌ、ヤハリ負擔ノ均衡ヲ
圖ッテ貰フト云フコトガ其第一ノ原因デア
リマス、ソコデ私共ガ多年唱ヘテ居リマシ
タ通リニ、地方ニ獨立ノ財源ヲ與ヘヨ、地
方ニ獨立ノ財源ヲ與ヘテ貰ヘバ、中央カラ
交付金ヲヤッテ戴カヌデモ宜シイノデアリ
マスカラ、少クトモ稅制改革ヲ爲サレル場
合ニ於テハ、此事ニ留意セラレマシテ、-
地方ハ獨立ノ財源ニ依ッテ地方自治ノ運用
ヲ爲シ得ラレルヤウニ考ヘラレル、是ハ其
稅制改革ニ當リマシテ大イニ注意セラレナ
ケレバナラヌ點ダト思フノデアリマス、今
地方ト都市トノ比較ヲ簡單ニ申上ゲマスレ
バ、直接國稅ト云フモノハ先ヅ國民ノ負擔
力ニ應ジテ納メル所ノ稅金デアルガ故ニ、
此直接國稅ニ對スル地方稅ノ負擔ノコトヲ
考ヘテ見マスト、都市ハ直接國稅一圓ニ對
シマシテ九十錢、農村ハ直接國稅一圓ニ對
シテ三圓二十錢、卽チ三倍半ノ重キ地方稅
ヲ納メテ居ルノガ今日ノ實情デアリマス、
之ヲ他ノ方面カラ見マシテ、收入所得カラ考
ヘテ見マスト、三百圓乃至千圓ノ所得アル
所謂中農、此中農ノ三百圓乃至千圓ノ所得
者ノ負擔ト都市ノ三百圓乃至千圓ノ收入所
得者ノ負擔トヲ比較致シマスト、地方稅ニ
於テ一戶平均都市ガ約三十二圓デアルノ
ニ、農村ハ六十六圓デアル、卽チ二倍ノ負
擔ヲ爲シテ居リマス、是等ノ事實カラ考ヘ
マシテモ、收入本位トシテ考ヘマシテモ、
農村ガ如何ニ負擔ガ重イカト云フコトヲ容
易ニ立證スルコトガ出來ルト思フノデアリ
やく、私ハモウ一ツ見逃スコトノ出來ヌノ
ハ、農村內ノ自作農ト小作農、斯ウ云フ方
面ヲ考ヘテ見マスト、ヤハリ三百圓乃至千
圓ノ所謂中農ノ實情ニ於テ考ヘテ見マス
ト、自作農ハ一戶平均百十一圓、小作農ハ
五十九圓、同ジ收入所得ノアル者ガ、自作
農ナルガ故ニ百十一圓、小作農ナルガ故ニ
五十九圓ト云フ、是ハ統計ノ示ス所デアリ
ママ、所謂自作農ナルガ故ニ約二倍近クノ
地方稅ヲ多ク負擔シテ居ル、是ハ何ヲ物語
ルモノデアルカト申シマスレバ、所謂自作
農ナルガ故ニ戶數割ノ賦課ガ多クナッテ、多
ク負擔ヲ致シテ居ルト云フコトデアリマ
ス、政府ハ自作農奬勵ノ爲ニ今囘ハ特ニ意
ヲ用ヒラレマシテ十億圓ヲ出シテ、サウシ
テ二十五箇年間ニ一百万戶ノ自作農ヲ創設
維持セント致シテ居ラレルノデアリマス、
然ルニ最近ノ狀況ヲ見マスルト、自作農ハ
依然トシテ減退ノ狀勢ヲ迪ッテ居リマス、勿
論社會情勢及ビ農村ノ不況カラ來ル所ノ小
作農ノ增加デハアリマスガ、自作農ヲ維持
創設セント致シテ居ッテ却テ自作農ガ減ル
ト云フコトハ、此間全ク自作農デアルガ故
ニ重イ稅金ヲ課セラレルト云フコトガ根本
原因ヲ成シテ居ルト思フノデアリマスルガ
故ニ、此戶數割ト云フコトニ對シマシテハ、
特ニ注意ヲ拂ッテ、政府ガ今囘自作農創設ヲ
シテ維持セントスル所ノ其目的ニ向ッテ矛盾
ノナイヤウニ施設ヲ爲スコトガ最モ緊要ナ
リト信ズル者デアリマス、斯樣ニ私共ガ申シ
マスレバ、此附帶決議ノ精神ハ容易ニ御判斷
ガ出來得ルコトデアルト思フノデアリマス
唯私共ガ最後ニ此附帶決議ヲ付ス必要モ
ナイト思ッテ居リマスコトハ、臨時利得稅ノ
問題デアリマス、此臨時利得稅ハ高橋大藏
大臣ノ言明ニ依リマシテ、是ハ恒久的ノ稅
デハナイ、卽チ恒久的稅案ノ場合ニハ是ハ
廢止スルト云フコトヲ、屢〓議會デ言明セラ
レテ居リマス、其高橋藏相ハ今日亡イノデ
アリマスケレドモガ、其約束ハヤハリ今日
依然トシテ存在致シテ居ルノデアリマス、
然ルニ明年度ニ於テ政府ハ本格的ナ稅制ノ
根本整理ヲ爲シテ、議會ニ提案スルト云フ
コトヲ屢〓言明セラレテ居ル、然ルニ臨時利
得稅ノ期間ハ十三年度マデ一箇年延長ト
ナッテ居ルガ、是ハ藏相ノ言ハレル言葉ト餘
リニ矛盾シテ居リマスルガ、藏相ハ來年度
ニ於テ根本的ノ改革ヲ爲サレルナラバ、此
事ハ玆ニ延長ヲナスマデモナイコトデアル
ト思ヒマスガ、是ハ附帶決議ニナサズトモ、
當然ノコトデアルト思ヒマスルガ故ニ、玆
ニ附帶決議カラ省イタヤウナ次第デアリマ
ス
以上申上ゲマシタ私ノ修正ノ論點及ビ附
帶決議ヲ付シマシタル所ノ大體ノ要旨ハ御
分リニナッタト思フノデアリマス、最後ニ藏
相ハ來年ノ稅制ノ根本改革ヲ爲スニ當リマ
シテハ、官民合同ノ權威アル所ノ機關ヲ作
ル、是ハ當然ナサラナケレバナラヌ、一方
的ニ官僚獨善デ以テオヤリニナレバ今度ノ
ヤウナ、或ハ吾々ガ不滿ナ所ノ稅制改革案
ガ出來、或ハ前內閣デヤッタ所ノ斯樣ナ非難
囂々タル所ノ案ガ出來マスカラ、少クトモ
藏相ハ、屢〓此委員會ニ於キマシテ、私ハ民
意ニ聽キマス、民意ヲ尊重シマスト云フコ
トヲ言ハレルナラバ、民意ヲ尊重スルナラ
民意ニ聽カナケレバナラヌ、所謂官民合同
ノ機關ヲ設ケラレルコトハ當然過ギル程當
然ナコトナリト思ヒマスルガ故ニ、此點ニ
付キマシテハ特ニ大臣ノ注意ヲ喚起シテ、
吾々ノ附帶決議ノ實現ニ勇往邁進セラレン
コトヲ望ミマシテ、其他ノ諸案ニ對シマシ
テハ贊成ヲ致ス者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=7
-
008・増田義一
○增田委員長 森肇君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=8
-
009・森肇
○森委員 旣ニ民政、政友兩黨ノ代表者ヨ
リ詳細ノ趣旨理由ヲ申述ベラレマシタカ
ラ、私ハ重ネテ之ヲ陳述スルコトヲ省キマ
ス、修正ニ於テモ附帶決議ニ於テモ兩黨ヨ
リ提出セラレタルト同樣ノモノヲ之ニ私ヨ
リモ修正ヲ加ヘ、附帶決議ヲ加ヘタイト思
ヒマス、是ヲ以テ贊成ノ意思ヲ表明致ス次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=9
-
010・増田義一
○增田委員長 河野密君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=10
-
011・河野密
○河野委員 私ハ臨時租稅增徵法案外五件
ニ對シテ反對ノ意見ヲ述べントスル者デア
リマス、私ガ之ニ對シテ反對ノ意見ヲ述ベマ
スルノハ、吾々ガ豫算ニ對シマシテ既ニ組
替返上論ヲナシタコトト對應スルノデアリ
マスルガ、本案ニ對シテ反對スルノハソレ
バカリデハナク、本質的ニモ亦反對ノ意見
ヲ有ッテ居ルノデアリマス、部分的ニ見マス
ル時ニハ、例ヘパ外貨債特別稅、法人資本
稅ノ設置ノ如キ、或ハ臨時利得稅ノ增徵ノ
如キ贊意ヲ表スルニ吝カナラザルモノモア
ルノデアリマス、又所得稅ノ增徵ニ致シマ
シテモ、相續稅ノ增徵ニ致シマシテモ、其
稅率ノ點ハ暫ク別ト致シマシテ、此兩稅ヲ
增稅ノ眼目トスルト云フ精神ニハ贊成デア
ルノデアリマス、併シ是等ノ局部的ノ點ヲ
除キマスレバ、臨時租稅增徵法案外五件ハ
全ク體系ヲ成サザルモノデアリマシテ、吾
吾ノ要求スル所トハ甚シク懸絕シテ居ルノ
デアリマス、私ハ此意味ニ於テ此增稅法案
全體ヲ一體ト致シマシテ反對ノ意見ヲ述べ
タイト存ズルノデアリマス、以下其理由ヲ
申上ゲマス
第一、是等ノ增稅案ハ本年度限リノ臨時
ノモノデアルト云フノデアリマスガ、例ヘ
バ直接稅ト間接稅トノ增徵比率ニ於キマシ
テ、或ハ法人ト個人トノ課稅割合ニ於キマ
シテ、或ハ地方ト都市トノ負擔ノ均衡ニ於
キマシテ、何等ノ一貫セル體系ヲ有ッテ居ラ
ナイノデアリマス、隨テ政府ノ聲明ニモ拘
リマセズ、屢〓ナル御辯明ニモ拘ラズ、大衆
課稅ノ增徵ハ酒稅、砂糖消費稅等ノ增徵或
ハ揮發油稅ノ創設等ニ及ビマシテ極メテ大
デアリマス、是ガ反對ノ第一ノ理由デアリ
マス
第7、所得稅及ビ相續稅ヲ增徵ノ眼目ト
スルト稱シナガラ、其增徴計畫ハ極メテ不
徹底デアリマス、例ヘバ所得稅ニ於テ第一
種所得稅ニ輕クシ、第二種所得稅ヲ源泉課
稅ニ還元シ、第三種所得稅ノ累進稅率ヲ馬
場案ニ比シテ緩和スルナド、吾々ノ要望ス
ル所ト益〓懸絕シ來ッタノデアリマス、吾々
ハ所得稅及ビ相續稅ヲ中心ト致シマシテ累
進的ナル合理的ノ體系ヲ要求スルノデアリ
マシテ、此點ニ於テ此臨時租稅增徵法案外
五件ニ對シテ反對セザルヲ得ナイノデアリ
マス
第三、租稅ノ增徵ハ窮極ニ於テ大衆ニ轉
嫁セラレルモノデアリマスガ、就中消費稅
ハ直接大衆ノ懷ロヲ狙フ意味ニ於テ惡稅ナ
リト稱セラレテ居ルノデアリマスガ、我國
ニ於テハ長ク消費稅ニ依存スルノ狀態デア
リマス、近年輿論ノ趨向ニ鑑ミマシテ、直
接稅ニ重課ノ方針ヲ採リツツアルカノ如ク
ニ思ハレルノデアリマスガ、尙ホ消費稅、
所謂間接稅ニ依存スル傾向ヲ覆スニ足リマ
セヌ、直接稅中ニ於キマシテモ大衆轉嫁ノ
可能性ノ多イ收益稅-營業收益稅或ハ地
租ノ減免ヲ中止シタルガ如キ、到底吾々ノ
容認スルコトガ出來ナイ所デアリマス
第四、結城大藏大臣ハ其就任前稅制整理
ニ對シマシテ、日本商工會議所、日本經濟
聯盟等ノ意見ヲ代表シテ所見ヲ發表サレマ
シタガ、就任後ノ修正方針ハ、所得稅ノ增
徵緩和ト言ヒ、同ジク所得稅ニ於ケル株式
控除ノ復活ト言ヒ、財產稅ノ廢止ト言ヒ、
其修正方針ト云フモノハ、全ク在野當時ニ
於ケル意見ニ從ヘル跡ガ歷然トシテ居ルノ
デアリマス、苟モ一國ノ大藏大臣ガ一部ノ
意見ヲ代表シテ稅制整理ノ方針トスルガ如
キコトハ、國民大衆ノ容易ニ承認シ難キ所
デアリマシテ、是レ吾々ノ斷乎トシテ反對
スル理由デアリマス
第五、結城大藏大臣ハ軍部大臣ト其時局
認識ヲ異ニ致シテ居リマス、軍部大臣ノ計
畫シテ居リマス繼續豫算ヲ其儘ニ致シテ置
キマシテハ、到底將來ノ財政計畫ノ見透シ
ガ付カナイト云フ根本觀念ヲ持ッテ居ラレ
ルニモ拘リマセズ、故ラニロヲ拭ッテ其點
ニ觸レナイノデアリマス、唯抱合ヒナル言
葉ニ依ッテ一時ヲ糊塗シ、目前彌縫ノ稅制政
策ヲ立テテ居ラレルノデアリマス、ソレ故
ニ將來ハ是レ以上ノ增稅セズトモ言明致サ
レマセヌシ、スルトモ言明サレマセヌシ、
一年後ノコトハ一年後ノ情勢ニ委セル、成
行ニ委セルト云ッタ如キ態度デアリマス、斯
ノ如キコトハ責任アル一國ノ國務大臣ノ執
ルベキ態度ニアラズト信ズルノデアリマ
ス、彼ノ不人氣デアリマシタ馬場財政ト、
今比較的好人氣デアルト謂ハレル結城財政
ト比較シテ見マスルノニ、根本デアリマス
ル軍事豫算ニ對シテ年度割ニ變更ヲ加ヘル
トカ、或ハ緩急ニ應ジテ削減ヲ加ヘタトカ
云フ其事實ガナイ限リニ於テハ、結局同一
ノ規模ニ還元スベキモノデアルト吾々ハ考
ヘルノデアリマス、赤壁ノ賦ニ「逝ク者ハ
斯ノ如ク、而シテ未ダ嘗テ往カザル也、盈
虛スル者ハ彼ガ如クニシテ、而シテ卒ニ消
長スル莫キ也」ト云フ言葉ガアリマスガ、
馬場財政ト結城財政ノ關係モ丁度其樣ナモ
ノデアリマシテ、表面ニ起伏スルモノハ如
何ニモ消長アルカノ如ク見エルノデアリマ
スガ、其本質ニ於テハ未ダ何等ノ消長ヲ認
ムルコトガ出來ナイノデアリマス、兩者ノ
相違ハ唯馬場財政ニ曲リナリニモ一個ノ
「イデオロギー」ガアリ、結城財政ニハ何等
ノ「イデオロギー」ガナク、目前ノ事象ヲ唯
一時彌縫シテ行クト云フ點ニ其相違ガアル
ダケデアリマス、此點吾々ノ反對ノ第五ノ
理由デアリマス
第六、國民所得ト增稅ノ關係トヲ歷史的
ニ見マスルノニ、今日ノ國民所得ト其分布
狀態ヲ以テ致シマスレバ、高率ナル累進ニ
依ル直接稅本位ノ增稅ハ必シモ至難ニアラ
ズト吾々ハ考ヘルノデアリマス、然ルニ之
ニ觸レズシテ間接稅中心主義ノ傳統ヲ守ラ
ントスル所ニ無理ガアルノデアッテ、生產力
擴充ノ美名ニ隱レテ、資本ノ蓄積ニ向ッテ
稅收入ヲ圖ラザル所ニ大ナル缺點ガアルト
信ズルノデアリマス、過グル日〓戰爭ガ地
租ト消費稅ニ依ッテ賄ハレ、日露戰爭ガ地租
ノ增徵ト消費稅ノ增徵ニ依ッテ賄ハレタコ
トハ、今日以後ニ於テハ之ニ根本ニ於テ革
正ヲ加ヘナケレバナラナイト信ズルノデア
リマス、此點ニ何等ノ考慮ヲ致サレナイ點
ニ於キマシテ、吾々ハ斷々乎トシテ反對セ
ザルヲ得ナイノデアリマス
第七、要スルニ軍事豫算トノ關係ニ於テ
昭和十三年度ニ於テ又增稅ヲ爲スコトガ必
至デアル現狀ニ於キマシテハ、少クトモ臨
時增徵ト云フ手段ニ出ルコトナクシテ、中
央地方ニ亙ル根本的ナ稅制體系ノ改革ヲ
此際ニ於テ行ヒ、以テ負擔ノ均衡ト、衡平
ナル稅制改革ヲ此際ニ於テ樹立スベキモノ
デアルト吾々ハ信ズルノデアリマス、此意
味ニ於テ吾々ハ間ニ合セデアル本案ニ對シ
マシテ速カナル合理的租稅制度ノ確立ヲ要
求スル意味ニ於テ反對ヲスルノデアリマ
ス
最後ニ私達ハ租稅改革ニ對スル吾々ノ根
本的態度ヲ列擧致シマシテ、以テ大藏大臣
ガ稅制改革ニ對シマシテ根本的ナル手段ヲ
講ゼラレル場合ノ參考トシテ吾々ノ要求ヲ
實現セラレンコトヲ希望スルノデアリマ
ス、吾々ノ意見ヲ讀上ゲマス
一、所得稅、相續稅ヲ中心トシテ增收計
畫ヲ立テ、免稅點ヲ引上ゲ、高率ナル累進
賦課トスベシ、一、第一種所得稅ニ累進稅
率ヲ設ケ、第二種所得稅ハ綜合課稅トナシ、
第三種所得稅ニ於テハ勤勞所得控除ヲ增
シ、株式控除ヲ廢シ、更ニ高率ナル累進制
トスベシ、一、營業收益稅ノ免稅點ヲ所得
稅ノ免稅點ト均衡ヲ得ル程度ニ引上グベ
シ、一、相續稅ノ免稅點ヲ引上ゲ、更ニ高
率累進制トスベシ、一、酒稅ノ增徵、砂糖
消費稅ノ增徵、揮發油稅ノ新設ニ反對ス、
地方稅制ノ改革ヲナシ、交付金制度ヲ
確立シ、雜種稅ノ整理廢減、府縣營業稅ノ
廢止、戶數割ノ廢止ヲ斷行スベシ、一、財
產稅、土地增價稅ヲ新設シテ稅收入ヲ圖ル
ベシ、以上デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=11
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012・増田義一
○增田委員長 加藤勘十君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=12
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013・加藤勘十
○加藤委員 私ハ政府ノ原案デアル臨時租
稅增徴法案其他ノ件竝ニ只今ノ修正意見ニ
反對スルモノデアリマス、反對ノ理由ハ本
會議ニ於テ述べマスルカラ、此處デハ其要
項ノミヲ申上ゲルコトニ致シタイト思ヒマ
ス、本案ハ實質ニ於テ結城財政ノ根幹ヲ成
スモノデアリ、而シテ十二年度豫算ノ歲入
ノ中心ヲ成スモノデアルト存ジマス、サウ
シテ十二年度ノ豫算ノ歲出ノ中心ハ言フ迄
モナク軍事費デアリマス、隨テ軍事費ヲ賄
ハンガ爲メノモノトシカ見得ラレナイ、是
ガ第一ノ反對理由デアリマス、第二ノ反對
理由トシマシテハ、負擔ノ均衡ヲ圖ルガ如
〃、社會政策的外貌ガ僞裝サレテ居リマス
ケレドモ、其實質ニ於テハ少シモ負擔ノ均
衡ハ圖ラレテ居ナイ、吾々ハ負擔ノ均衡ナ
ル言葉ハ決シテ單ナル形式ノミヲ指スノデ
ハナクシテ、實際ニ擔稅力アルモノト擔稅
力ナキモノト、更ニ資本ニ依ル所得ト、勤
勞ニ依ル所得ト、斯ウシタ實質上ノ擔稅者
ガ何處ニアルカト云フ點カラ負擔ノ均衡ト
云フモノガ割出サレナケレバナラナイト云
フコト、第三ニハ現在ノ物價趨勢ト本案ト
ヲ比較檢討致シマスルト、本案ハ著シク物
價騰貴ノ趨勢ヲ助長スルモノデアルト云フ
コトハ爭ハレナイコトデアリマシテ、物價
騰貴ガ大衆ノ生活ニドノヤウナ影響ヲ與ヘ
ルカト云フコトハ、今更言フ迄モナイコト
デアリマス、其大衆ノ生活ヲ脅威スル物價
騰貴ヲ著シク助長スル此稅制案、之ニハ反
對デアリマス、斯ウシタ主要ナル、三ツノ
點更ニ細カイコトハ本會議デ述ベマスガ
故ニ、是デ反對ノ意思ダケヲ表明シテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=13
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014・増田義一
○增田委員長 伊禮肇君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=14
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015・伊禮肇
○伊禮委員 贊否ノ意見ヲ留保致シテ置キ
マス、本會議デ述べマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=15
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016・増田義一
○增田委員長 渡邊泰邦君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=16
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017・渡邊泰邦
○渡邊委員 私ハ本案ニ反對デアリマス、
詳細ハ本會議ノ討論デ述ベマスルガ、國民
生活ニ非常ニ重大ナ影響ヲ及ボス斯ノ如キ
法律案ガ、臨時ノ名ノ下ニ頻々トシテ行ハ
レルコトハ、現在ノ國民ガ將來ニ對シテ非
常ナル不安ヲ懷クト云フ見地カラ反對デア
リマス、唯反對ノ意思ヲ表明シテ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=17
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018・増田義一
○增田委員長 是ニテ本委員會ニ付託セラ
レタル議案ノ討論ハ終了致シマシタ、是ヨ
リ採決致シマス
先ヅ臨時租稅增徵法案ニ付テ決ヲ採リマ
ス、本案ニ對スル川崎末五郞君及ビ三善信
房君共同提案ノ修正動議ニ贊成ノ諸君ハ起
立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=18
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019・増田義一
○增田委員長 起立多數、本案ハ修正可決
サレマシタ
次ニ法人資本稅法案ニ付テ決ヲ採リマ
ス、本案ニ對スル川崎末五郞君及ビ三善信
房君共同提案ノ修正動議ニ贊成ノ諸君ハ起
立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=19
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020・増田義一
○增田委員長 起立多數、本案ハ修正議決
サレマシタ
次ニ有價證劵移轉稅法案ニ付テ決ヲ採リ
マス、本案ニ對スル川崎末五郞君及ビ三善
信房君共同提案ノ修正動議ニ贊成ノ諸君ハ
起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=20
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021・増田義一
○增田委員長 起立多數、本案ハ修正議決
サレマシタ
次ニ外貨債特別稅法案、揮發油稅法案及
ビ明治四十年法律第二十一號中改正法律案
ヲ一括シテ決ヲ採リマス、此三案ニ贊成ノ
諸君ハ起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=21
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022・増田義一
○增田委員長 起立多數、三案共ニ可決致
シマシタ
次ニ臨時租稅增徵法案ニ附スベキ川崎末
五郞君及ビ三善信房君共同提案ノ附帶決議
ニ付テ決ヲ採リマス、此附帶決議ニ贊成ノ
諸君ハ起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=22
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023・増田義一
○增田委員長 起立多數、本附帶決議ハ決
定致シマシタ
次ニ揮發油稅法案ニ附スベキ川崎末五郞
君竝ニ三善信房君共同提案ノ附帶決議ニ付
テ決ヲ採リマス、此附帶決議ニ贊成ノ諸君
ハ起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=23
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024・増田義一
○增田委員長 起立多數、本附帶決議ハ決
定致シマシタ、是ニテ本委員會ニ付託セラレ
タル議案全部ヲ議了致シマシタ、去ル二月
二十三日第一囘ノ審査ヲ開始致シマシテカ
ラ茲ニ十四囘、其間熱心ニ審議ヲ重ネラレ
タル諸君ノ勞ヲ多ト致シマス、玆ニ當委員
會ヲ終了スルニ當リ、委員諸君ノ御勵精ニ
對シ委員長ヨリ深ク感謝ノ意ヲ表シマス、
本日ハ是ニテ散會致シマス(拍手)
午後零時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013733X01519370318&spkNum=24
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