1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案（審査終了のものを除く）
陪審法中改正法律案（政府提出）
刑事補償法中改正法律案（中村高一君外十名提出）
裁判所構成法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
大正十年法律第百二號中改正法律案（定年に因る退職判事檢事の恩給に關する件）（政府提出、貴族院送付）
刑事訴訟法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
陪審法中改正法律案（牧野賤男君外八名提出）
陪審法中改正法律案（野田文一郎君外二名提出）
大正十二年法律第五十二號中改正法律案（司法官試補及辯護士の資格に關する件）（森下國雄君提出）
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會議
昭和十二年八月四日（水曜日）午前十時三十分開議
出席委員左の如し
委員長 牧野賤男君
理事 中山福藏君 理事 河野一郎君
理事 松木弘君
岡本實太郎君 平川松太郎君
森田重次郎君 川崎末五郎君
鈴木英雄君 泉國三郎君
江原三郎君 世耕弘一君
飯村五郎君 長谷長次君
菊地養之輔君 田中耕君
馬場元治君
出席國務大臣左の如し
司法大臣 塩野季彦君
出席政府委員左の如し
司法政務次官 久山知之君
司法參與官 藤田若水君
司法省民事局長 大森洪太君
司法省刑事局長 松阪廣政君
司法書記官 齋藤直一君
本日の會議に上りたる議案左の如し
裁判所構成法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
大正十年法律第百二號中改正法律案（定年に因る退職判事檢事の恩給に關する件）（政府提出、貴族院送付）
刑事訴訟法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=0
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001・牧野賤男
○牧野委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、政
府提出貴族院送付、裁判所構成法中改正法
律案、同ジク政府提出貴族院送付、大正十
年法律第百二號中改正法律案、同ジク政府
提出貴族院送付、刑事訴訟法中改正法律案、
此三案ニ付テ質疑ヲ進メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=1
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002・平川松太郎
○平川委員 私ハ政府委員ニ三四點質問ガ
アルノデスガ、私バカリ質問スルヤウデス
カラ、誰カ外ノ人ニヤッテ貰ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=2
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003・牧野賤男
○牧野委員長 昨日カラノ質問ノ殘リガア
ルノデスガ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=3
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004・平川松太郎
○平川委員 私ハ留保シテアルノデス、司
法大臣ニ對スル質問ダケ打切リマシテ、他
ノ政府委員ニ對スル質問ハ留保シテアリマ
スカラ······併シ私バカリ質問スルヤウデス
カラ、他ノ人ニヤッテ貰ヲテ、後デ私ハヤラ
ウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=4
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005・牧野賤男
○牧野委員長 マダ四人程通告ガアルノデ
ス-泉君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=5
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006・泉國三郎
○泉委員 司法權ノ神聖ヲ保持シテ司法權
ノ威信ヲ保タシメンガ爲ニ、刑事訴訟法中
改正法律案、其審議ニ關聯シテ司法事務一
般ニ對スル二三ノ質問ヲ致シタイト思フノ
デアリマス、先ヅ第一ノ點ハ綱紀ノ肅正ニ
關スル問題デアリマス、私ハ司法部内ニ於
ケル綱紀ノ弛緩、今日ヨリ甚シイモノハナ
イト斯ウ思ッテ居ルノデアリマス、我ガ司
法部ハ、部內ニ於テ此綱紀ニ關スル限リハ、
外部カラ一指ヲダニ染メラレルコトナクシ
テ長イ間其尊嚴ヲ維持シテ來タノデアリマ
スガ、行政部及ビ地方自治團體等ニ於テ幾
多ノ贈收賄、其他ノ瀆職、公金費消、其他ノ
橫領、背任ナドト云フ悲シムベキ幾多ノ事
實ガ暴露セラレテ居リマスニ拘ラズ、司法
部ニ限ッテハ一點ノ弛ミモナカッタノデアリ
やく、カルガ故ニコソ司法部ハ其幾多ノ疑
獄事件ニ對シテ上天皇ノ御名ニ於テ、下
國民ノ全幅的信賴ノ下ニ、公正ニシテ嚴肅ナ
ル裁判ヲ爲スコトガ出來タノデアリマス、
然ルニ何事ゾ近來綱紀ハ殊ノ外ニ弛緩シ
テ、現職ノ檢事ナル者ガ贈賄ヲ强要シタ如
キ事實ガアッタヤウニ關西方面ノ或ル檢事
局-是ハ新聞デ見タノデアリマスルカラ
事實ノ程ハ分リマセヌガ、或ハ大阪デアッタ
ヤウニ記憶シテ居ルノデアリマスガ、サウ
云フ事ガ新聞紙ニ報ゼラレテ、吾々法曹人
ヲシテ愕然タラシメタコトガアルノデアリ
マス、昨年デアリマシタカ盛岡ノ地方裁判
所檢事局ノ監督ノ地位ニアル書記ガ、兩三
年ニ亙ッテ犯人ノ納付スベキ罰金約三千圓
程騙取費消シタト云フ事實ガ暴露セラレ
タノデアリマス、而モ檢事正ノ談トシテ發
表セラレタ所ニ依リマスレバ、罰金納付者
ヲ欺イテ、罰金ヲ受領スル權限ナキ者ガ騙
取シタノデアルカラ、被害者タル被〓人ハ
更、ニ罰金ヲ納メナケレバナラナイ、國庫ハ
被害者デナイト云ッタヤウナ法律論ヲ發表
シテ居ッタノヲ見タノデアリマスガ、罰金ヲ
納付スベキ犯人ハ檢事局ノ書記ニ一應納メ
テ、更ニ又徵收セラレルト云フコトニナリ
マスレバ、洵ニ遺憾千萬ナ事ト思フノデア
リマス、此種ノ例ハ盛岡ニ止マリマセズ、
東京ニ於キマシテモ-是亦新聞デアリマ
スルカラ、誤リガアリマシタラ訂正致シマ
スガ、沒收ニ係ル贋札ヲ書記カ雇ガ持出シ
テ使ッタト云フヤウナコトガ發表セラレテ
居リマス、關西カ北陸カノ裁判所ノ書記ガ
公金ヲ費消シタト云フヤウナ事實モ、暴露
セラレテ居ッタ筈デアリマス、洵ニ是等ハ
嘆カハシイ事態デアルト言ハナケレバナラ
ナイノデアリマス、事ガ司法部ニ關スル限
リハ、到底他ノ官廳ト同一ニ之ヲ論ズル譯
ニ行カヌノデアリマス、是等ハ勿論問題ヲ
起シマシタ者ガ善クナイニハ相違ナイノデ
アリマスルガ、裁判所若クハ檢事局ノ書記
トカ、若イ雇トカ云フ者モ同ジク人間デア
リマスルカラ、問題ヲ起シタ者ノミガ必シ
モ善クナイト言ッテ是ダケヲ責メル譯ニハ
行カヌノデアリマス、是ハ司法部一般ノ精
神ガ弛緩シテ居ルノガ、其原因ノ第一ト私
ハ思ッテ居ルノデアリマス、而モサウシタ
書記ヤナンカノ使ヒ込ガ數年間反覆シテ行
ハレテ居リマスルノニ拘ラズ、其數年後ニ
於テ初メテ發見セラレタト云フヤウナ事實
ヲ見マスルナラバ、是ハ監督ノ不行屆モ甚
シイモノデアル、斯ウ云フ風ニ私ハ見ルノ
デアリマス、又事務上ノ規定等ニモ、取扱
方法等ニモ、何等カノ缺陷ガアリハシナイ
カト云フコトヲ考ヘラレルノデアリマス、
是等ノ事ヲ私ガ見マスル場合ニ、其原因ノ
如何ニ拘ラズ、是等ハ司法ノ威信ヲ傷ケル
コトガ非常ニ大ナルモノデアリマシテ、今
ニシテ綱紀ヲ肅正スルコトナクンバ、遂二
國民ノ信賴ガ地ヲ拂フニ至ルデアリマセ
ウ、〓嘆措ク能ハザルモノガアルノデアリ
マス、司法當局ハ此事實ヲ如何ニ考ヘラレ
テ居ルカ、而モ之ニ對シテ何等カノ對策ヲ
講ゼラレテ居ルカ、若クハ講ゼラレテ居ル
トスルナラバ、其具體的方策ハ何デアル
カ、是等ノ諸點ニ付テ御腹藏ナキ御答辯ヲ
仰ギタイノデアリマス
第二點ハ人權蹂躪防止策ニ關スル質問デ
アリマスルガ、此點ハ極ク簡單ニ申シマ
ス、過日來平川君ヤ河野君等ニ依ッテ、暴露
セラレテ居ル神奈川縣下ノ問題ノ如キハ、
其最モ甚シイ例デアリマスルガ、大小輕重
コソ差ガアレ、斯ウシタ例ハ全國的ニ其例
ガ多イノデアリマス、殊ニ近來五·一五事
件以來政黨ノ力ガ衰へ、新官僚ノ勢力ノ勃
興以來、此傾向ガ甚シイノデアリマス、卽
チ政黨ノ政治的批判力ノ無力化ト同時ニ、
小官吏僚ノ鼻息ガ頗ル荒イノデアリマス、
人權蹂躪ヲ一箇ノ特權トサヘ考ヘルニ至ッ
テ居ルノデアリマス、是等ハ官僚獨善、官
僚「フアッショ」化ノ行動的ナ一面ノ現ハレ
ニ相違ナイノデアリマシテ、昨日來司法大
臣ハ旣ニ生ジタル人權蹂躪ノ事實ニ對シマ
シテハ、調査ノ上之ヲ罰スベキハ假借ナク
罰スル旨ヲ以テ答ヘマシタケレドモ、將來
再ビ斯ル不祥事ヲ繰返サナイヤウ努力ヲ願
フコトガ、更ニ重要ナル問題デアリマシ
テ、當局ハ大臣ノ訓示ノ場合ニ於テ、又ハ
檢事ヲシテ審査機關ヲ設置スルコトニ依ッ
テ、又ハ或ハ科學的捜査方法ヲ以テ、其作
用ト相俟ヲテ將來ヲ期シタイ旨ヲ以テ答ヘ
テ居ルノデアリマスルガ、具體策トシテハ
甚ダ物足ラナイヤウニ思フノデアリマス、
何時如何ナル大臣ト雖モ人權蹂躪勝手タル
ベシト云フ訓示ヲシタ者ハナイ筈デアリマ
ス、所謂其訓示ハ「フアッショ」的ナ官僚獨
善主義打破ノ爲ニ、主力ヲ集中セラレナケ
レバナラナイト思フノデアルガ、之ニ對ス
ル御所見ハドウデアルカ、更ニ檢事ニ依ル
審査機關ハ、詰リ審査專門ノ機關ノ設置デ
アルノカドウカ、若シ然リトスレバ其審査
機關ノ構成ノ〓要、其職務權限、身分保
障、其內容ト云フヤウナコトヲ承リタイノ
デアリマス
第二ハ科學的捜査デアリマスルガ、科學
的搜査ガ比較的捜査上效ヲ奏スルノハ、主
トシテ自然科學部門ニ於テヾアリマス、例
ヘバ簡單ナモノカラ言ヒマシテモ、指紋デ
アリマストカ血液デアリマストカ、或ハ法
醫學的ナ各方面、乃至分析科學的ナ各方面
等デアリマス、然ルニ犯罪ト云フモノハ、
斯ル自然科學的ナ方ト交涉ナシニモ尙ホ行
ハレ得ルノデアリマシテ、一般ノ政治犯罪
ノ如キハ其例ガ多イノデアリマス、ソレ等
ノ場合ニ對處スル搜査ノ方針如何、其他人
權蹂躪根絕、若クハ防止ノ爲ニ執ラレント
スル具體的方策トシテ、昨日述ベラレタ以
外ニ何等カノ方策ヲ持ッテ居ルカ、其點ヲ
御伺シタイノデアリマス
第三ハ司法警察官、檢事ノ捜査方法ニ關
スル質問デアリマス、司法警察官ガ犯罪ノ
搜査ニ當ッテ、被〓人ヲ長期ニ亙ッテ不法監
禁シテ居ルノハ實際ノ事實デアリマスル
ガ、此場合〓ネ非合法性ヲ免レンガ爲ニ、
被〓人ノ承諾ニ名ヲ藉ッテ、之ヲ勾引若クハ
拘禁シテ居ルノデアリマス、凡ソ過失ナキ
健全ナル意思ヲ以テ自分ガ自由拘禁セラレ
ントスルコトニ同意スル者ハ、事實上アリ
得ナイノデアリマシテ、强制的勾留ニ相違
ハナイノデアリマスルガ、之ヲ承諾ニ名ヲ
藉ッテ、其承諾ヲ得タリト稱シテ、何等ノ法
律ニ依ルニアラズシテ、被〓人ヲ拘禁シテ
居ル事實ガ多イノデアリマス、是等ハ判事
ノ令狀ニ依ル勾留デハアリマセヌノデ、如
何ニ長期ノ勾留デアリマシテモ、判決ノ場
合ニ未決勾留ニ算入セラレル權利ガナイ、
又刑事補償法ニ依ル辨償モ中々得ラレナイ
ト云フ洵ニ不合理ナ、サウシテ半合法化サ
レタル所ノ人權蹂躪デアリマス、被〓人ノ
承諾ノ上、又ハ法律ニ依ルニアラズンバ之
ヲ勾留シ得ザル所ノ立場ヲ固ク持タナケレ
バ、人權蹂〓ハ救ハレナイト思フノデアリ
やく、當局ハ此承諾ニ依ル勾留ヲ嚴禁スル
意思ハナイカ、又次ニ檢事ハ搜査ニ當ッテ、
ヤハリ被〓人ノ承諾ニ名ヲ藉ッテ、檢事局所
在他ノ宿屋等ニ數日、若クハ數十日被〓人
ヲ泊ラセテ置ク、被〓人ノ費用ニ於テ宿泊
セシメテ置ク、斯ウ云フ事實ガ往々ニシテ
アルノデアリマス、是等モ承諾ニ名ヲ藉ッ
テ、宿屋デハアリマスルガ、非常ニ長イ間
自由拘禁シテ置クノニ相違ハナイノデアリ
マス、ソレ等ヲ今後ノ搜査上全廢セシムル
意思ガナイカ、其點ヲ御聞キシテ置キマス
更ニ第四點デアリマスルガ、ソレハ被〓
人ノ思想的ナ背景、或ハ階級的背景、政治
的背景ニ依ッテ、其取締ヲ二三ニシテ居ル
モノニ關スル質問デアリマス、私ハ法治國
ニ於キマシテハ、立憲國ニ於キマシテハ其
被〓人ガ何レノ階級ニ屬シマセウトモ、如
何ナル思想系統ヲ持ッテ居リマセウトモ、
政治的ニハ如何ナル團體ニ所屬シ、乃至政
府ノ反對黨デアリマセウトモ、乃至ハ與黨
デアリマセウトモ、法ニ依ッテ之ヲ處斷ス
ル場合ニ、態度ヲ二三ニスベカラズト云フ
見解ヲ持ッテ居ルモノデアリマス、吾々ハ
曾テ思想的運動、階級運動ト云フヤウナモ
ノヲヤッタ經驗ガアルノデアリマスガ、此
場合ニ於キマシテ例ヘバ神奈川縣ノ集團放
火事件デアルトカ、或ハ選擧肅正運動ニ關
スル人權蹂躙デアルトカ、或ハ帝人事件デ
アルトカ云フヤウナ場合ニ、多クノ人權蹂
躪ガ問題ニナリマスケレドモ、階級的犯罪
ノ如キ場合ニ於キマシテハ、殆ド盥廻シニ
何等ノ理由ナクシテ數年間ニ亙ッテ勾留セ
ラレテ居ル事實ガ、澤山アルノデアリマス、
現ニ吾々ト雖モ幾多サウ云フ事實ヲ經驗シ
テ來テ居ルノデアリマス、是等ノ當局ノ立
場ト云フモノハ、洵ニ是ハ宜シクナイ態度
デアルト私ハ思ッテ居リマス、現ニ神奈川
縣ニ於キマスル昨年カノ人權蹂躪ガ問題ニ
ナリマシタ場合ニ、係ノ檢事デアリマシタ
カ、曾テ階級的犯罪ニ對シテハ寧ロ人權蹂
躪ヲ許容シテ居リナガラ、今ニナッテサウ
云フコトヲ言フノハ怪シカラヌト云フヤウ
ナ逆捻ヂヲ言ッテ居ルノデアリマスガ、サ
ウ云フ風ナ態度ヲ曾テ執リマシタコトガ、
軈テ捜査ノ「フアッショ」化ヲ來シマシテ、
サウシテソレガ特權デアルガ如クニ考ヘ
テ、人權蹂躪ガ尙ホ行ハレルヤウニナルノ
デアリマス、當局ハ此點ヲ何ト見ラレル
カ、尙ホ其思想乃至ハ政治的背景ノ如何ニ
依の り取締ノ態度ヲ二三ニセラレテ居ル
ガ、或ハ之ヲ將來ニ於テ改メル意思デアル
カ、其點ヲ御聞キシタイノデアリマス
第五點、是ハ豫審判事ノ書類ノ授受ヲ禁
止セラレタ場合ニ關スル事項デアリマス、
帝人事件カノ問題ヲ見マスル場合ニ、豫審
判事ガ被〓人間ノ書類ノ授受ヲ禁止シテ居
リマスルニ拘ラズ、檢事ガ豫審判事ノ許可
ナクシテ被告人間ノ、而モ自由ヲ慫慂スベ
キ書類ノ授受ヲシタト云フコトガ、暴露セ
ラレテ居ルヤウデアリマス、私ハ豫審判事
ガ一度書類ノ授受ヲ禁止シタ以上ハ、檢事
ト雖モ何人ト雖モ、其許可ナクシテ書類ノ
授受ヲ爲サシムルト云フコトハ、洵ニ違法
ナ處置デアルト云フヤウニ考ヘルノデアリ
マスガ、此點ニ關シテ當局ハドウ云フ見解
ヲ持ッテ居ルカ、或ハ檢事ノ如キハ是ハ搜
査權ノ範圍デアッテ、自由デアルト云フヤ
ウナコトヲ言ッテ居ル者モアルノデアリマ
スガ、司法省當局モサウ云フ風ニ考ヘテ居
ルカドウカ、帝人事件ニ依ラズ他ノ事件ニ
於キマシテモ、往々ニシテ自由ヲ誘導スベ
キヤウナ書類ノ授受ガ、取調ニ當ッテ行ハ
レテ居ル事實ガ多々アルノデアリマシテ、
吾々ハ斯ウ云フ弊害ヲ除カナケレバ、審理
ノ公正ハ期シ得ナイト思ッテ居ル、此點ニ
關スル當局ノ見解ヲ承リタイノデアリマス
更ニ第六點、是ハ豫審判事ノ證言ニ關ス
ル問題デアリマス、ヤハリ帝人事件デ豫審
判事ガ證人トシテ公判廷ニ招致セラレタ、
且ツ宣誓ヲ爲シタル上證人トシテ適格デア
ルトカ適格デナイトカ云フコトヲ愚圖々々
言ウテ、二度モ三度モ喚出サレテ居ルノデ
アリマス、吾々證人ノ義務ト云フモノハ法
治國ニ於ケル所ノ國民ノ義務デアッテ、何
人ト雖モ之ヲ避クベカラザルモノデアル、
斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、
然ルニ苟モ豫審判事トモ言ハレルモノガ、
自分ガ公判廷ヘ出テ來テ證人タル資格ガア
ルノカナイノカ分ラナイヤウナ話ヲシテ、
證言ヲ愚圖々々シテ居ルト云フコトハ、是
ハ一般ノ民衆ニ與ヘル影響ト云フモノハ洵
ニ大ナルモノガアルノデ、判事デサヘモ色
色ノ方面ニ氣兼ヲシテ、公正ナル證言ヲ爲
スコトガ出來ナイ、或ハ證人タルコトヲ忌
避シテ居ルト云フヤウナコトハ、軈テハ一
般ノ刑事、民事ノ證人達ガ、證人トシテ出
タ場合ニハ、成ベク都合ノ惡イコトハ言ハ
ナイ方ガ宜イトカ、或ハ其場ヲ胡麻化セバ
宜イト云ッタヤウナ、非常ニ憂フベキ思想
ヲ培養スル因ニナルノデアリマス、此豫審
判事ハ自分ガ證言ヲ拒否シテ居リナガラ、
或ハ自分ガ監督官ニ出シタ所ノ書面ニ依ツ
テ其事實ヲ明ニシヨウトシタリ、又其書面
ト證言トノ內容ガ喰違ヲテ居ッタリシテ、左
樣ナ色々ナ事實ヲ見マスル場合ニ、非常ニ
吾々疑惑ニ堪ヘナイモノガアルノデアリマ
ス、此點ニ關シマシテ當局ハ、豫審判事ガ
證言ノ義務アリト思料スルカドウカ、又其
證言ヲ爲スニ付テ、何等カ之ニ對スル壓迫
ヤ何カナカッタカ、或ハ其後ニ於テ何等ノ
問題モ起ッテ居ナイカト云フヤウナコトニ
付テ、極ク簡單デ宜イノデアリマスルガ、
御答辯ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=6
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007・松阪廣政
○松阪政府委員 御答申上ゲマス、第一ノ
綱紀肅正ノ點デアリマス、司法部ノ綱紀ガ
嚴正ニ保持セラレナケレバナラヌト云フコ
トハ、是ハ洵ニ國家ニ取リマシテモ重要ナ
コトデ、御意見ノ通リデアリマス、從來司
法大臣ハ極力綱紀ノ肅正ニ努メテ居ルノデ
アリマシテ、現大臣ニ於キマシテモ今年春
ノ地方長官會議、所長、檢事正會同ニ於キ
マシテモ、司法精神ノ刷興ヲ高揚致シマシ
テ、極力綱紀ノ肅正ニ努メルト云フコトヲ
訓示シテ居リマス、各所長、檢事正ハソレゾ
レ地元ニ歸リマシテ、部下ノ判檢事ニ對シ
テ之ヲ又敷衍シ傳ヘテ居ルノデアリマス、
又往々ニシテ從來會計、或ハ罰金ノ納付、
證據物件ノ領置品ニ付テノ不正ガ行ハレタ
事實ガアルニ鑑ミマシテ、本年春司法大臣
ハ特ニ是等ノ監査ヲ嚴重ニシテ、六月末マ
デニ報告スベシト云フ訓令ヲ發シマシタ、
ソレニ從ヒマシテ各長官ハ嚴重ナル監査ヲ
致シ、色々報告ガ參ッタノデアリマス、其
監査ノ結果新ニ犯罪ノ不正ガアルコトガ
發覺シタ事實モ若干アルノデアリマスガ、
先程御述ベニナリマシタ關西方面ノ檢事ガ
賄賂ヲ强要シタト云フ事實ハ、是ハ絕對ニ
ナイノデアリマシテ、吾々モ今日マデ左樣
ナ事實ハ耳ニシテ居ラヌノデアリマス、唯
東京ノ書記ガ、是ハ確定判決後ノ廢棄處分
デアリマシタガ、押收物件ノ贋札ヲ窃ニ持
出シ、之ヲ行使シタト云フ洵ニ恐縮シタ事
實ガ發覺シタノデアリマス、本人ニ對シテ
ハ刑事上ノ處分ヲシ、又ソレ〓〓監督者ニ
對シテモ、責任ヲ執ル途ヲ講ジタノデアリ
マス、又金澤方面ニ於キマシテモ、先程申
ス通リ下級ノ書記ガ、罰金徵收ニ付テ不正
橫領シタ事實モアッタノデアリマス、斯樣
ナコトハ洵ニ遺憾トスル所デアリマスル
ガ、司法省トシマシテハ極力綱紀ノ肅正、
司法精神ノ作興ト云フコトニ對シテハ、努
力致シテ居ルノデアリマス、今後ニ於テモ
其點ハ極力ヤッテ行ク積リデアリマス
第二ノ人權蹂躪ノ問題ニ付テデアリマス
ガ、是ハ昨日モ司法大臣ガ申シマシタガ如
ク、將來必ズ再ビ斯樣ナ過チヲセヌヤウニ
努メル、先般二三警察官中左樣ナ事實ガ
アッタノハ、甚ダ遺憾トスル所デアリマス
ガ、將來ハ能ク徹底セシメマシテ、再ビセ
ナイヤウニ十分ナル監督ヲシ、指導〓養ヲ
スルト云フコトヲ申シテ居リマスノデ、十
分ニ其點ニ付テハ努力ヲ致ス積リデ居リマ
ス
ソレカラ檢事ノ審査ノ如何デアリマス、
是ハ昨日モ司法大臣カラ申シマシタガ、是
ハ省令ヲ新ニ發シタト云フノデハナク、司
法大臣ノ內命、訓令ニ依ッテ出シタノデア
リマスガ、各控訴院ニサウ云フ搜査ニ付テ
ノ當不當ニ付テ審査ヲスベキ係ノ檢事ヲ決
メマシテ、之ニ專任セシメ事務ヲ分擔セシ
メマシテ、左樣ナ事務ノ監督ヲヤラシ、非
違ヲ正シ、又不都合ナ點ガアレバ、其原因
ヲ是正スルト云フコトニ努メルコトニナッ
タノデアリマス、事務分擔ノ規定ヲ內部ニ
設ケタノデアリマス、ソレカラ科學的捜査
ノ方法デアリマスガ、是モ昨日大臣ガ申シ
マシタガ如ク、目下司法省ニ於テハ極力其
計畫ノ具體化ニ努メテ居ルノデアリマシ
テ、本年ノ通常議會ニハ、恐クハ其豫算ヲ
出シ得ルカト思ヒマスガ、是ハ色々捜査ニ
付テノ科學的方法ノミナラズ、取調ノ方法、
或ハ犯罪ノ原因等ノ根本的ノ調査モ致スノ
デアリマス、又將來ニ對スル對策等モ考へ、
之ニ對スル判檢事ノ〓養モ併セ行ヒ、又累
犯其他ノ原因ヲ根本的ニ調査スル部門モ
設ケル積リデ居ルノデアリマス、廣ク科學
的ノミナラズ如何ニシテ合理的ニ搜査ヲス
ルカト云フコトヲ、色々部門ヲ設ケテ調査
シ、判事、檢事竝ニ試補ヲシテ、ソレニ關
スル知識ヲ十分ニ授ケテ、完全ナル捜査ヲ
シヨウト云フ趣旨デアリマス、第三ノ承諾
留置ノ件デアリマスガ、固ヨリ御說ノ如ク
承諾ニ名ヲ藉リテ、拘禁スルト云フコトハ
不法デアリマス、承諾ニ名ヲ藉リルト云フ
コトハ承諾シテ居ナイコトデ、承諾ナキニ
拘ラズ承諾アッタト云フコトハ、是ハ不當
デアリマスガ、眞ニ承諾ノアル場合ニ之ヲ
禁止スルト云フ意思ハ、當局ハ持ッテ居ラ
ヌノデアリマス、實際ノ實情カラ申シマシ
テ、時々本人ガ心カラ承諾スル場合ガアル
ノデアリマス、例ヘバ田舍ノ地方ニ於キマ
スルト、夜遲クナルト交通機關ガナイ、宿
屋ニ泊レバ宜イガ宿錢ガ要ルカラ、警察ノ
保護室ニ一晩泊メテ吳レト云フヤウナコト
ヲ願出ル場合ガ屢〓アルノデアリマス(笑
聲是ハ事實アルノデス、併シ田舍ノ方ノ
話デス(「ソンナ馬鹿ナコトハナイ、ソレハ
明治時代ノコトダ」ト呼フ者アリ)ソレカラ
又其者ガ辯解スル場合モ、事實左樣ナモノ
ヲ貰ッタコトガナイ、ドウゾ本人ヲ喚出シ
テ下サイ、ソレマデハ此處デ待ッテ居マス
カラト云フコトヲ言フ者モアルノデアリマ
ス、ソレデ、絕對ニ禁止スルト云フコトハ、
一體本當ニ承諾ヲシテ居ルカ否カニ依ッテ
決スルノデアリマス、承諾ニ名ヲ藉リテ拘
束スルト云フコトハ、是ハ禁止シナケレバ
ナラヌ、左樣ナコトハシナイヤウニト云フ
コトヲ、屢〓注意シテ居ルノデアリマス、全
般的ニ承諾ノ有無ニ拘ラズ之ヲ禁止スルト
云フコトハ、致シ兼ネルノデアリマス、ソ
レカラ第四ノ思想的背景云々デアリマス
ガ、從來思想的背景ノ如何ニ依ッテ、檢察
當局ガ取締ヲ二三ニシタト云フ事實ハナイ
ノデアリマス、全ク搜査ノ立場カラ、犯罪ニ
ナルカ否カニ依ッテ決メルノデアリマス、相
手ハ何人デアルカ、思想的背景ガアルカド
ウカト云フコトニ依ッテ、取扱ヲ二三ニス
ルト云フコトハ是ハ全クナイコトデアル、
先般成程御說ノ如ク、或ル新聞記事ニ依リ
マスルト、或ル檢事ノ談トシテ左翼ノ方ニ
ハ或ル程度ノ人權蹂〓ハ當然ヤッテ咎メナ
カッタノニ、普通ノ選擧事件ニ於テハ答メ
ルノハドウ云フ譯デアルカト云フコトヲ、
私モ見タノデアリマス、ソレデ當該檢事ハ
其事件ノ責任ヲ負ウテ、旣ニヤメテ居リマ
シタガ、私其元ノ檢事ニ直接會ッテ聽イタ
ノデアリマスルガ、其新聞ハ誤傳デアッタ、
斯樣ナ話ヲシタコトハナイト申シタコトガ
アル、其後是ハ取消シ迄モシタノデアリマ
ス、是ハ全ク誤傳デアッテ、本人ガ左樣ナ
コトヲ申シタコトモナク、又思想的背景ニ
依ッテ取締ヲ二三ニシタコトハナイノデア
リマス、ソレカラ第五ノ豫審ノ書類授受ノ
問題デアリマス、刑事訴訟法ノ第百十二條
ニ依リマスルト「裁判所ハ罪證ヲ湮滅シ又
ハ逃亡ヲ圖ル虞アルトキハ勾留セラレタル
被告人ト他人トノ接見ヲ禁シ又ハ他人ト授
受スヘキ書類其ノ他ノ物ヲ檢閱シ其ノ授受
ヲ禁シ若ハ之ヲ差押フルコトヲ得」ト云フ
コトヲ規定致シテ居ルノデアリマスルガ、
此條文ニ付テハ、從來議論ノアッタ所デア
リマシテ、所謂被告人ト他人ト云フ他人ニ
ハ檢事ヲ包含スルヤ否ヤト云フ問題デアリ
マス、此他人中ニ檢事ヲ包含スルナラバ、
檢事モ亦許可ヲ受クルニ非ザレバ、被告人
ト接見スルコトモ出來ナケレバ、又他人ト
ノ書類ノ授受モ許可ガナケレバ出來ナイト
云フコトニナル、所ガ前段ノ被〓人ト他人
トノ接見ニ付キマシテハ、曩ニ大審院ノ判
例ニ依ッテ、此點ハ解決セラレタ問題デア
リマシテ、被〓人ト他人トノ接見ト云フ他
人ノ中ニハ、檢事ハ包含セヌノデアル、隨
テ檢事ハ接見禁止中ノ被〓人ニ面會スル場
合ニハ、豫審判事ノ許可ヲ得ルコトヲ要シ
ナイト云フコトニナッテ、此問題ハ解決シ
タノデアリマス、所ガ他人ト授受スベキ書
類ノ授受ニ付テ許可ヲ要スルカドウカト云
フコトニ付テハ、マダ判例ガナイ、又所謂
他人トノ接見ト同樣ナ理論ガ行ハレルナラ
バ許可ヲ要シナイ、併ナガラ其點ハ未解決
ノ問題デアリマスルカラ、理論ハアリマス
ルケレドモ、マダ判例トシテハ解決サレテ
居ラヌ、唯事實上ノ取扱トシテハ、事件ガ
旣ニ豫審ニ繫屬シタ以上ハ、豫審判事ノ許
可ヲ得ルト云フノガ妥當デアルコトハ申ス
迄モナイ、是ハ豫審ノ事務ノ進行上、手續
上妥當デアリマスルカラ、許可ヲ得ルコト
ハ私ハ宜イト思フノデアリマスル、ソレダ
カラ成ベク許可ヲ得ルヤウニスベキガ當然
デアルト考ヘテ居リマスルガ、法律論トシ
テ左樣ナコトニナル、第六ノ豫審ノ證言ニ
關シマシテ、帝人事件ノ御話デアリマスル
ガ、是ハ目下公判ニ繫屬シテ居ッテ、近ク
檢事ノ論〓ガ行ハレルト云フ現ニ公判ニ繫
屬中ノ問題デアリマスルカラ、此點ニ關ス
ル豫審判事ノ證言云々ニ付テノ答辯ハ、司
法省トシテハ、是ハ差控ヘナケレバナラヌ
ト思ヒマス、以上ヲ以テ御答辯ト致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=7
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008・泉國三郎
○泉委員 承諾ナキニ拘ラズ承諾ニ名ヲ
藉ッテト云フ質問ニ對スル答辯ノ中ニ、實
際ノ承諾ヲ得テ勾留スル場合ガアル、斯ウ
云フ御答辯デアリマスルガ、成程一日泊ル
ト言ッタヤウナ場合ニ、或ハ物ガ分ラナイ
者ニハ、サウ云フ者ガアルカモ知ラヌケレ
ドモ、同意シテ二箇月モ三箇月モ承諾シテ
留置場ノ中ニ居ルト云フ者ハ、恐ラク先ヅ
世ノ中ニ常識的ニ考ヘテ見テモナイノデア
リマス、其點ニ關スル當局ノ答辯ハ承服出
來ナイ、併シ其コトニ付テ自分ダケガ繰返
シテ應酬シマシテモ、他ノ發言ノ機會ヲ得
ラルベキ人達ニ對シテ濟マヌノデアリマス
ルカラ、私ハ此點ヲ承服出來ナイト云フコ
ト、ソレカラ過去ニ於テ思想的背景ヤ、政
治的背景ニ依ッテ取締ヲ二三ニシタコトガ
ナイト云フ點、其點ト、ソレカラ檢事ハ所
謂他人デハナイト云フコトハ、判例ガアル
カモ知レヌケレドモ、檢事自身ガ被〓人ニ
手紙ヲヤルノデハナクシテ、他人ノ手紙ヲ
持ッテ來テヤルノデアルカラシテ、其分ニ
付テハ檢事ト雖モ他人ノ文書ヲ授受スルコ
トニナルノデアリマス、當局ハ之ニ對スル
判例ガナイト云フノデ、其答辯ヲ囘避セラ
レルコトニ對シテ、此三點ニ付テハ自分ハ
當局ト全然別個ノ考ヲ持ッテ居ル、其答辯
ガ承服出來ナイト云フコトダケヲ申上ゲマ
シテ、質問ヲ打切ッテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=8
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009・牧野賤男
○牧野委員長 森田君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=9
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010・森田重次郎
○森田委員 時間モ大分迫ッテ居ルヤウデ
アリマスルカラ、要點ダケ申上ゲマス、第
一ニ御伺致シタイコトハ、人權蹂〓ノ問題
ノ起ル一番ノ本ハ、警察官ガ非常ニ捜査ノ
點ナドデ、素朴的ナ考ヲ持ッテ居ル者ガ多
イカラダト思フノデアリマス、地方ナドヲ
能ク見マスルト、事件ヲ成ベク多ク片付ケ
タ者ガ早ク昇進スル傾向ガアル、ソコデド
ウシテモ數字的ニ早ク片付ケヨウト云フコ
トニナリマスト、拷問ヲヤッタ方ガ一番早
ク片付ク、サウ云フ所カラ警察官ノ昇進ノ
標準ト云フモノハ、ドウモ拷問ヲ多クヤッ
テ早ク片付ケタ者ガ、早ク昇進スルヤウナ
傾向ニアルヤウニ思ハレルノデアリマス、
其點ニ對シテ果シテドウ云フ風ナ御觀察ヲ
持ッテ居ラレマスルカ、之ニ對シテ御答辯
ヲ願ヒマス
第二點ハ司法主任ナドノ立場ト云フモノ
ハ署長ニナル一ツノ段階ニアルカノヤウ
ナ傾向ニナッテ居リマス、隨テ犯罪捜査ノ點
ナドデモ今ノヤウナ形デ行ッタノデハ、到底
新シイ複雜セル形ノ犯罪ノ多クナッタソレニ
適應スル姿デハナイヤウナ氣持ガスルノデ
アリマス、ソコデ是ハ司法主任ナドノ地位
ヲ高メルコトニ依ッテ、專門化セル形ヲ取ツ
タラドウカ、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居ルノ
デアリマスルガ、是等ニ對シテ司法當局ハ
ドウ考ヘテオ居デニナリマスカ、其次ハ今
囘ノ選擧デ、私ノ縣ナドデモ初メテアッタ
ノデアリマスルガ、夜ニナリマスルト、要
所要所ニ警官ガ居ッテ、サウシテ通行人ヲ唯
誰何スル程度ナラ別トシテ、懷中ニ手ヲ入
レテオ金ヲ持ッテ居ルカ居ナイカヲ一々檢
査シタ實例ガアルノデアリマス、是ハ一體
一般的ナ訓令、內訓トデモ云フヤウナモノ
ノ下ニヤラレテ居ッタノカドウカ、サウスル
ト、一體是ハドウ云フ法的根據デ、サウ云
フ無理ナコトヲスルノデアルカ、此點、其
次ハ選擧違反ニ對スル裁判ノ仕振リト云フ
モノハ、他ノ裁判ノ仕振リト比ベマスル
ト、非常ニ急グ傾向ガアル、全般的ニ考ヘ
テ、促進ト云フコトハ私等ハ惡イトハ考ヘ
テ居リマセヌガ、但シ之ニ依ッテ適正ヲ缺
クト云フコトガアリ得ル、一般ノ事件デモ
サウデアリマスルガ、選擧違反ニ付テハ特
ニサウ云フ傾向ガ多イ、證據申請ナドヲ致
シマシテモ、極メテ簡單ニ之ヲ一蹴致シマ
シテ、サウシテグン〓〓ト裁判シテ行クト
云フ傾向ガアルノデアリマス、是亦司法當
局ガ、サウ云フヤウナ方針ノ下ニ行カウト
云フ何等カノ考ガアッテ、一般的方針トシ
テ爲サレテ居ルノデアルカドウカ、此點、
其次ニ御伺致シタイコトハ、是ハ私等ノ前
前囘カラノ選擧違反ニ對スル司法當局ノ態
度ニ對スル一般論ナノデアリマスガ、政黨
ガ醇化シテ行ク爲ニハ、選擧法ヲ嚴重ニ厲
行スルト云フコト、此點ニ付テハ私等ハ別
ニ異存ガナイノデアリマス、然ルニ其方法
ガ今マデ非常ニ緩ク、大抵ナモノハ大目ニ
見ルト云フヤウナ形、或ル意味カラ見ルト
云フト、警察官ソレ自體ノ考ヘ方ト云フモ
ノハ、全ク司法權ヲ眞面目ニ實行シヨウト
云フ心持デハナカッタ、ソコデ私等ハ當時
其點ヲ非常ニ憂ヘテ居ッタ、然ルニ或ル程度
マデ墮落シテ來タト見ラルヽモノヲ是正シ
テ行クコトハ構ハナイ、是正シテ行クコト
ハ構ハヌガ、一時的ニ非常ニ急激ナル態度
デ之ヲ變更シテ行ク、而モ一般民衆ニ對ス
ル啓蒙運動ト云フモノハ一向爲サレテ居ラ
又、僅カバカリ爲サレテ居ッタトシテモ、ソ
レハ甚ダ不徹底ナモノデ、其不徹底ナ形ニ
於テ俄ニ身ヲ飜シテ、今マデ手ヲ握ッテ居ッ
タノデハナイカト思ハルヽ者ガ、俄ニ己レバ
カリ正シイ立場カラダト云フヤウニ、非常
ニ嚴重ナ態度ヲ御執リニナラレタ、是等ハ
私等ハ全般的ナ考ヘ方トシテ、司法權ノ運
用ガ民ノ怨嗟ノ的トナリ、司法行政ト一般
民衆トノ間ニ非常ナ深イ溝ヲ造ル、是ハ將
來洵ニ恐ルベキ傾向ダト思フ、何故之ヲ穩
健ナル形デ而モ段々ニ强ク、ソレデモ違
反ガ起ッタラ、モウ少シ强クナルト云フ形デ
進ンデ行カナカッタカ、此點ニ對シテ私ハ
非常ナ疑問ヲ持チマス、是ハ果シテ當局
トシテドウ云フ御見解ヲ持ッテオ居デニナ
ルカ、此點ヲ御伺シタイ
次ニハ具體的ナ問題ニ對スル點ヲ御伺致
シタイ、新潟縣ニ起ッタ問題デアリマス拷
問ニ依ッテ而モ警官ノ暴行ニ依ッテ起ッタ事
犯デアリマス、ソレヲ何遍モ〓訴シタノデ
アリマスガ、檢事ハ一向之ヲ採用シテ吳レ
ナイ、仕方ガナイカラ民事訴訟ヲ提起シ
タ、此事件ガ二件アルノデアリマス、民事
訴訟ヲ提起致シマシタ所ガ、二件トモ原告
勝訴トナリマシテ、警官ノ方ガ、百圓前後
ノ金額デハアリスガ損害賠償ニ應ゼヨト云
フ判決ガアッタノデアリマス、一ハ控訴中、
一ハ今上告中ト云フコトデアリマス、是ハ
果シテ斯ウ云フ事實ガアルカナイカヲ司法
省ノ方デハ御存ジニナッテ居ルカドウカ、此
點ヲ御伺致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=10
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011・松阪廣政
○松阪政府委員 御答致シマス、第一ト第
二ニ付キマシテ併セテ御答致シマス、司法
警察官ガ拷問ヲヤルノハ、事件ヲ早ク片付
ケル爲ニヤルノデ、早ク片付ケレバ昇進ガ
早イカラデハナイカト云フ御意見デアリマ
スガ、從來司法警察官ノ拷問事件ガ起リマ
シタ結果、ソレヲ調ベテ見タ所ニ依リマス
ト、其動機ハヤハリ多クハ職務ニ熱中致シ
マシテ、自由ヲ得タイト云フ所カラ起ルノ
ガ多イノデアリマス、或ハ又調べ中ニ相手
ガ非常ニ無禮、傲岸不遜ナ態度デ逆襲スル
ト云フヤウナ時ニ、ツイ腹ヲ立テヽヤルト
云フヤウナコトガ多カッタ、事件ヲ早ク片
付ケテ昇進シタイ爲ニ人權ヲ蹂躪シタト云
フ例ハ私共存ジナイノデアリマス、ソレカ
ラ通行人ヲ訊問シ懷中物ヲ調ベルト云フ點
デアリマスガ、是ハ不審訊問ニ關スル規定
ガゴザイマシテ、法令ニ基イテヤッテ居ル
ノデアリマス
第四ノ選擧ノ促進ニ付キマシテハ、是人
選擧法ニモ規定シテアリマス通リ、選擧ハ
或ベク早クヤルト云フコトニナッテ居リマ
ス、早クヤルト云フ方針デハアリマスガ、
固ヨリ適正ヲ期セナケレバナラヌノデ、拙
速デモドウデモ宜イカラ早クヤレト云フノ
デハ無論ナイ、兎ニ角人權ニ關スル重大ナ
問題デアリマスカラ、裁判ハ何處マデモ愼
重ニヤラナケレバナラヌ、唯他ノ事件ト繰
替ヘテ早クヤレ、順序ニ拘ラズ早クヤレト
云フ趣旨デアリマシテ、固ヨリ適正ニ愼重
ニヤレト云フ根本方針ニ於テハ、變リハナ
イノデアリマス、促進ノ爲ニ拙速ヲ尊ンデ
モ何デモ宜イカラ早クヤレト云フ考デ、司
法省ハヤッテ居ルノデハ決シテナイノデア
リマス
第五ニ選擧違反ニ對スル一般論ノ御話デ
アリマシタガ、成程一般ノ犯罪ノ檢擧ニ付
キマシテハ、御說ノ通リ從來幾ラカ緩慢ニ
ヤッテ居ッタモノヲ、俄ニ嚴正ニヤルト云フ
コトハ、是ハ多クノ場合ニ取締方法トシテ
妥當デナイコトガ多イ、寛大ニシテ居ッタモ
ノヲ漸ヲ逐ウテ嚴重ニシテ行クト云フノ
ハ、私モ宜イト思ヒマス、其點御同感デア
リマスルガ、昭和十一年ノ選擧ニ於テハ、
取締ガ可ナリ嚴重デアッタコトハ、私モ承認
スルノデアリマスガ、ソレハ恰モ十一年ニ
ハ丁度選擧法ガ改正ニナリマシテ、從來ノ
選擧法ニ依リマスルヨリハ一層嚴重ナ、極
メテ嚴正ノ規定ヲ設ケラレテ居ルノデ、選
擧法ノ精神カラ申シマシテ、從來ノ選擧ト
一變シタル嚴重ナル取締ヲ要求シテ居リ、
嚴重ニ處罰ヲ要求シテ居ルノデアリマスル
カラ、司法當局トシテハ、ヤハリ法律ガ改
正セラレマスルト、其法律ノ精神ニ依ッテ
ヤル外ハナイノデアリマシテ、從來ノ選擧
法ニ依ッテ寛大ニ扱ッタモノヲ、選擧法ハ同
ジダガ、俄ニ嚴重ニヤッタト云フ次第デハ
ナイノデアリマスカラ、其點ハ御諒解願ヒ
タイト存ズルノデアリマス、第六ニ新潟縣
ノ問題デアリマシタガ、拷問ニ依ッテ何デ
モ告訴ヲシタガ、採用セヌト云フ御話デア
リマスガ、事實ガアレバ〓訴ヲ採用セヌト
云フコトハ、絕對ニナイ筈デアリマス、採
用サレナカッタトスレバ、恐クハ拷問ノ事實
ニ對スル立證ガ完全ニ付カナカッタ爲ニ、〓
訴ガ採用セラレナカッタノダト思ヒマスガ、
民事訴訟ノ點ニ付キマシテハ、民事局長ノ
話デハ未ダ其報〓ヲ受ケテ居ラヌト云フコ
トデアリマスカラ、其點申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=11
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012・大森洪太
○大森政府委員 只今御尋ニナリマシタ最
後ノ點デアリマスガ、民事訴訟ノ提起ノ間
題ニ付テハ、未ダ報告ヲ受ケテ居リマセヌ、
此席上デ初メテ承ッタヤウナ次第デ、私モ甚
ダ迂遠デ恐縮ニ存ジテ居ルノデアリマス、
早速取調ベルコトニ致シタイト思ヒマス、
ソレデ此委員會外デ結構デスガ、若シ裁判
所ノ名前、凡ソノ年月日等ガ御分リデアリ
マスレバ御知ラセ下サレバ、大變好都合デ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=12
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013・森田重次郎
○森田委員 六日町裁判所ト新潟地方裁判
所デアリマス、ソレデ一ツ御伺致シタイデ
スガ、若シ今申上ゲマシタヤウナ意味デ、
是ハ民事訴訟法デモ立證ハ十分ダト云フノ
デ敗訴ニナッテ居リマス、斯ウ言ッタヤウナ
事柄ハ、要スルニ檢事ガヤラウト思ヘバヤ
レル、ソレヲ最初カラ自分ノ部下カ、何
カデアルカラ庇フト言ッタヤウナ氣持カラ、
結局證據不十分ト云フコトニナルノダ、斯
ウ思フ、若シ斯ウ云フヤウナ判決デモ確定
致シタト云フコトニナリマシタナラバ、其
際ノ一體當局ノ態度ハドウ云フ形ヲ御執リ
ニナル御積リデアルカ、其點ヲ一ツ御伺シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=13
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014・松阪廣政
○松阪政府委員 只今ノ御尋デアリマシタ
ガ、告訴事件ノ結末ガ或ハ嫌疑不十分デ不
起訴ニナリマシタノカ、ソレトモ微罪デア
ルノカ、或ハ起訴猶豫ニナッタノカ、其點ガ
分リマセヌノデ、實ハ御答致シ兼ネルノデ
アリマスガ、是モ承ルコトガ出來マスレバ
私ノ方デ調査ヲ致シテ見タイト思ヒマス、
被告人ノ名前、警察ノ名前デモ、或ハ〓訴
人ノ名前デモ分リマスレバ、御知ラセヲ願
ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=14
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015・森田重次郎
○森田委員 此程度デ·····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=15
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016・牧野賤男
○牧野委員長 次ハ長谷君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=16
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017・長谷長次
○長谷委員 實ハ此後デ直グ同僚飯村君ノ
御質問等モアリマスシ、又他ノ委員ノ方々
ノ質問應答ト重複シタ點ヲ避ケテ、極メテ
簡單ニ一二點ヲ御質問申上ゲマス、司法部
ノ明朗化ト云フコトガ、現在ノ時局ニ於テ
一番大切ナコトデアルト云フコトハ、モウ此
處ニ居ラレル所ノ全委員ノ方々、又政府ノ
方々モ痛感セラレテ居ル所デアルダラウト
存ジマス、ソレニ對シテ十分ニ賞罰ヲ明ニ
シナケレバナラヌト云フ立場カラ、所謂人
權蹂躪ニ對スル所ノ十一一分ノ攻擊ヲ、先程
マデ私逹拜聽致シマシタガ、ソレニ對シテ
政府ノ意向モ承リマシタ、實ハ其根源ニ遡ッ
テ、モウ少シク私達ガ政府ノ意向ヲ承リタ
イト思フコトガアリマス、ソレハ第一點ト
致シマシテ、搜査ノ態樣ニ於キマシテ、現
在ノ警察官ト云フモノガ、特ニ司法ヲ掌ル
所ノ警察官ト云フモノガ、行政廳ノ監督下
ニアルガ爲ニ、少クトモ自己ノ立身出世、
榮達、サウ云フヤウナコトヲ考慮致シマシ
テ、或ル場合ニ於テハ馘首ト云フヤウナ恐
怖ノ念ニ驅ラレマシテ、動モスルト間違ッタ
行動ニ出ヅル節ガアッタノデハナイカト思
ハレルノデアリマス、特ニ選擧違反トカ、
瀆職事件トカ、主ニ自白以外ニ證據ガ無イ
ト云フ事犯ニ對シマシテ、多ク此人權蹂躙
ト云フ問題ガ起ッタノデアリマス、カルガ故
ニ政府ニ於キマシテハ、先ヅ第一點デアリ
マスルケレドモ、此司法警察官中一部分ヲ
特定致シマシテ、檢事ニ直屬セシメタ、所
謂裁判所關係ニ直屬セシメタ司法警察官ヲ
作ルト云フ所ノ御意思ト云フモノニ對シ
テ、現在竝ニ將來ノ御見解ト云フモノヲ、
御聞キ致シタイノデス、ソレガ第一點デス、
ソレカラ第二點ハ、假ニ其問題ヲ離レマシ
タト致シマシテモ、出來ルコトナラバ、犯
罪搜査ノ中心ヲ檢察官ニ置キタイト斯ウ考
ヘテ居ルノデゴザイマス、現在ノ選擧違反
ニシロ、瀆職ニシロ、今問題ニナフテ居ル所
ノ神奈川縣下ニ於ケル放火事件ニシロ、斯
ルモノニ對シテ、眞ニ力トナッテ活躍シテ
居ル者ハ警察官デアリマス、此警察官ハ先
程申上ゲマシタヤウニ、行政廳ノ監督ヲ受
ケルト云フ風ナ立場ニナッテ居ル、之ヲ何ト
カ改メマシテ出來ルコトナラバ、檢察官自
身ガ、或ハ手不足カモ知レマセヌガ、出來
ルダケ犯罪捜査ノ特ニ面倒ナ事件ノ搜査ノ
中心ト云フモノヲ、檢察廳へ引上ゲテ貰ヒ
タイ、是ガ第二ノ御尋致シタイ點デアリマ
ス、ソレカラ第三點ハ、是ハ私達ガ辯護士
ト云フ立場カラ申上ゲルノデアリマスルケ
レドモ、實ハ昨今事例ガ一二アルノデアリ
マスルガ、非常ニ辯護士會長ヲ輕ンズルト
云フ風ナ風習ガ、裁判所ニアルノデアリマ
ス斯樣ナコトデハ有爲ナル所ノ辯護士ガ、
司法ニ關與致シテ貢獻致シタイ、努力致シ
タイト云フ風ナ氣持ヲ持ッテ居ル其自尊心
ガ、非常ニ傷付ケラレルノデアリマス、是
ハ具體的ノ事例ヲ申上ゲルト御恥カシイヤ
ウナコトニナリマスガ、出來ルコトナラ
バモウ少シク此辯護士階級ヲ御利用ニナ
リ、御尊重ニナッテ、或ハ協力セラレルヤウ
ナ機會ヲ與ヘラレテ、サウシテ下々ノ意見
ヲ代表スル所ノ辯護士團ノ意見ト云フモノ
ニ付テモ、尊重セラレルヤウナ機會ヲ御作
リニナル所ノ御意思、之ヲ具體的ニ御尋ス
ルト、或ハ司法相談會トデモ言フノデス
カ、搜査相談會トデモ言フノデスカ、何等
カ此民間側ノ人達ガ安心シ得ル所ノ代表者
ヲ出シテ居ル會合ヲ設ケテ、其會合ニ於テ
各種ノ事件ニ對スル所ノ或ル程度マデノ御
發表、或ハ審査等ヲ爲シテ戴キタイ、サウ
云フ會ヲ作ラレル所ノ御意思ガアルカドウ
カ、是ガ第三點デアリマス、私ハ陪審事件
ニ關シテ質問ノ點モアルノデ、出來ルダケ
其時ニアトノ點ヲ申上ゲタイト存ジテ居リ
マスルガ、最後ノ一點ハ、司法當局ニ於テー
實ハ吾々モ過去ニ於テ檢察官ノ職責ノ末
席ニ居ッタ者デアリマスルケレドモ、實ニ檢
察官位酷使虐待サレテ居ル所ノ高等官ハナ
イノデアリマス、私ハ其點ハ斷言シテ憚ラ
ナイノデアリマス、是位ニ虐待サレテ居ル
所ノ高等官ハナイ、少クトモ現在ニ於ケル
所ノ各行政廳ヲ調ベテ見タナラバ、此檢察
廳ニ於ケル所ノ高等官位虐待サレテ居ルモ
ノハナイノデアリマス、此人員ノ不足ト云
フモノガ延イテハ過勞ニナリ、或ハ焦慮ト
ナッテ事案ノ審査ニ對シテ過チヲ起シ、或ハ
指揮命令ニ缺クル所ガアルト云フ風ナ懸念
ガアルノデアリマス、ドウカシテ此點ニ對
シテモ、吾々ノ希望スル所ハ、次期ノ議會
ニ於テ速ニ司法當局ニ於テハ、モウ少シク
此捜査機關ヲ擴充スル所ノ豫算ヲ計上セラ
ルヽ御意思アルカドウカ、ソレカラソレト
關聯致シマシテ、先程承リマシタガ、企畫
廳モ宜カラウ、調査部モ宜カラウガ、併シ
訓練ト其人ヲ得ナケレバ、本當ノ仕事ハ出
來ヌノデアリマス、此點ニ關シマシテハ、
ドウカシテ十二分ノ訓練ノ行屆クヤウナ
方法ニ付キマシテ、何等カ內部ニ於ケル所
ノ機關ヲ御設置願ヒタイノデアリマス、是
等ヲ取纏メマシテ、甚ダ杜撰デアリマシタ
ガ、簡明ナ御答辯ヲ得マシタラ幸ヒト存ジ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=17
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018・松阪廣政
○松阪政府委員 只今ノ御質問ニ對シテ御
答ヲ致シマス、第一ノ點デアリマスガ、搜
査ノ中心ヲ檢事ニ置ケト云フ御說、洵ニ御
尤デアリマス、刑事訴訟法モ檢事ヲ以テ捜
査ノ中心ト致シ、警察官ヲ以テ補助機關、
輔佐機關ト致シテ居ル、唯御承知ノ通リ現
在ハ全國四百數十名ノ檢事デアリマシテ、
而モ第一審ノ檢事ハ、ソレヨリ更ニ減ル譯
デアリマス、何處マデモ檢事ガ中心ニヤッテ
行キタイノデアリマスケレドモ、選擧違反
トカ濱職事件トカ難シイ自白ヲ根據トスル
モノニ付キマシテハ檢事事ガ主トシテヤッテ
行キタイト云フ方針デハアリマスガ、何分
ニモ人員不足ノ爲ニ、其點ガ十分ヤリ得ナ
イト云フ實情ニ在ルノデアリマス、併ナガ
ラ搜査ノ中心ヲ檢事ニ置ケト云フ御意見ニ
對シテハ、何處マデモ其方針、其趣旨ニ依ッ
テ、私共ハヤッテ行クツモリデ居ルノデア
リマス
ソレカラ司法警察官ヲ、檢事ニ直屬セシ
ムルノ件デアリマスガ、是ハ嘗テハ司法省
トシテモ、多少ノ具體案ヲ持チ、左樣ナ計畫
ヲ立テタ事實ガアル、併ナガラ司法警察官
ノ身分ノ保障ガ立チマシテ、其後ハ警察官
ノ司法警察官トシテノ態度處置等ニ付テ
モ、餘程從來ヨリ改マル所ガアリマシタノ
デ、只今直チニ直屬ノ司法警察ヲ實施スベ
キカ否ヤト云フコトハ、寧ロマダ〓究ノ時代
デアリマシテ、直チニ實施スルト云フコト
ハ申上兼ネルノデアリマス特ニ昨年ヨリ
此司法警察官ノ〓養訓練ノ規定ヲ設ケマシ
テ、檢事ヲシテ其訓練ヲヤッテ居リマス、今
後モ當分引續キ之ヲ行フツモリデアリマス
ガ、其成績モ非常ニ良好デアリマス、隨テ
ソレ等ノ點デ、良好ナル成績ヲ得ルカドウ
カト云フコトモ亦、此直屬司法警察官ヲ設
置シ得ルヤ否ヤト云フコトニモ、關聯ヲ持
ツノデアリマス、此點ハ今少シ〓究致シタ
イト存ズルノデアリマス、辯護士會長ヲ輕
ンズルノ風習ガアルト云フ御話デアリマス
ガ、私ノ承知シテ居ル所デハ、辯護士會長
ヲ尊敬コソスレ、輕ンズルト云フヤウナコ
トハ、毛頭ナイト思フノデアリマス、機會
アル每ニ出來ルダケ私共ハ協力ヲ求メテ居
ル、辯護士會ガ司法參與ノ重要ナル機關デ
アルト云フコトモ、司法省モ十分ニ考ヘテ
居ルノデアリマス、各地ニ懇談會ヲ設ケマ
シテ、判檢事ノ幹部級及ビ辯護士ノ代表ノ
方々數名ガ寄集ッテ、色々執務上ノ協議ヲ
致シタリ、懇談ヲ致シタリ、意思ノ疏通ヲ
圖ルコトヲ現ニ致シツヽアルノデアリマ
ス、之ヲ十分利用シテ行キタイト思フノデ
アリマス、又御協力ヲ求メルト云フコトモ
多々アルダラウト思フノデアリマスカラ、
サウ云フ點ニ付テハ、將來モ十分〓究致シ
タイト思フノデアリマス、次ハ檢察官ガ現
狀甚ダ酷使サレテ居ルト云フ、極メテ檢察
官ニ對スル御同情ノアル御言葉ヲ賜リマシ
タコトハ、實情認識ノ深イ點ニ對シテ、私
共非常ニ感謝スルノデアリマス、御承知ノ
通リ人員不足デアリマスガ、從來カラ見マ
スト事件ト云フモノハ非常ナ勢ヲ以テ增加
シツヽアル、サウシテ單ニ數ノミナラズ、
內容ガ非常ニ複雜ニナリ、難カシクナリ、困
難ヲ極メテ居ルノデアリマスガ、其割合ニ
ハ檢察官ノ增員ト云フモノハ、中々豫算ノ
關係デ行ハレ難イノデアリマス、併ナガラ
本年度ニ於テモ若干增員ヲ致シマシタ、來
年度ニ於テモ亦其豫算ヲ計上スル積リデ居
リマスルシ、司法省ト致シマシテハ大藏省
ニ對シテ事情ノ許ス限リ增員ヲ圖ヲテ、此檢
察官酷使ノ實情ヲ緩和シタイト云フ考ヲ
持ッテ居ルノデアリマス、檢察官酷使ノ現
狀ニ對スル御同情ニ對シテハ、感謝致ス次
第デアリマス、ソレカラ訓練ノ點ニ對シテ
モ、〓養訓練ニ付テハ更ニ一ツノ範ヲ垂レ
テ、必ズ適當ニ實行セラレルコトヽ思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=18
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019・飯村委員
○飯村委員 私ヨリモ極メテ簡潔ニ、先程
來同僚委員ヨリ質問セラレマシタ事項ハ之
ヲ避ケマシテ、簡潔ニ質問致シタイノデア
リマス、今日マデ國民ノ多クハ、他ノ役所
ハ兎モ角ト致シマシテ、司法部竝ニ軍部ニ
對シマシテハ、大體ニ於キマシテ國民ハ絕
大ノ信賴ヲ拂ッテ來テ居ッタト、私ハ考ヘテ
居ッタノデアリマス、然ルニ最近軍部竝ニ
司法部ニ對スル國民ノ考ヘ方ニ動搖ヲ來シ
テ居ルト云フノガ、今日ノ現狀デアル、昨
日來平川君又河野委員等ノ質疑ニ對シマシ
テモ、司法大臣ヨリハ司法ノ威信ヲ失ハレ
ントスルガ如キ狀態ハ、之ヲ認メテ居ルト
申サレマシタガ、斯ノ如ク司法ノ威信將ニ
失ハレントスルガ如キ此狀態ヲ、如何ニシ
テ打破スルカ、此根本原因ヲ探求シ、之ヲ
改善セナケレバナラヌト云フコトガ、今日
朝野トモ留意ヲ致サナケレバナラヌ所ノ大
問題デアルト私ハ存ズルノデアリマス、司
法當局ニ於カレマシテハ、一ニ此點ニ深キ
關心ヲ持チ、孜々トシテ努力サレテ居ルコ
トハ、私ハ承知致シテ居ルノデアリマスル
ガ、此見地ニ於キマシテ、私ハ二三司法部
ノ革新ト申シマセウカ、自分ノ考へ方ト致
シマシテハ、其根本的根幹ト考ヘマスル點
ニ付ア、二三質疑ヲ試ミタイト思フノデア
リマス、申上ゲル迄モナク、司法部ハ生殺
與奪ノ大權ヲ奉ジテ行フ所ノ機關デアリマ
ス、裁判ハ決シテ單ナル事務デハナク、最
高ノ政務デアルト私ハ考ヘテ居ル、隨テ司
法部ニ職ヲ奉ゼラルヽ人達ニ於カレマシテ
ハ、常ニ戰々兢々トシテ天皇ノ大御心ニ
副ヒ奉ル所ノ考ヲ以テ、判檢事諸公ハ奉行
スベキモノデアルト私ハ確信ヲ致シテ居
ル、洵ニ裁判ハ國家ノ生命デアリマス、國
家ノ存スル所必ズ裁判ガアル、殊ニ刑事裁
判ニ於テ其然ル所以ヲ痛感致スノデアリマ
ス、然ルニ今日、先刻申シマシタ通リノ非
難囂々ノ聲ガ高イト云フコトハ、餘程考へ
ナケレバナラナイ問題デアル、然ラバドウ
云フ風ニシテ司法當局ニ於カレマシテハ其
弊ヲ打破シ、是正シ、改善ヲ圖ラントスル
ノデアルカ、此點ニ付テ御伺ヲ致シタイノ
デアリマスルガ、私ハ何ト致シマシテモ、
法規ノ改廢、整備、是ハ勿論デアリマスル
ガ、ソレヨリモ先ヅ第一ニ考ヘナケレバナ
ラヌコトハ、司法部ノ人事ノ刷新、是ガ根
本デアルト私ハ考ヘル、私ハ此見地ニ於テ
此前提ノ下ニ疑ヲ質シタイノデアリマス、
今日司法部ニ假ニ判檢事ト申シマセウ、譬
ヘテ申シマスト判檢事諸君ハ他ノ行政官ト
同ジ大學ヲ出、同ジ學問ヲ修メテ出ル、唯試
驗ヲ受クル時ニ受檢科目ガ二三違フ、而シ
テ試驗ヲ通過シマシタ後ニ於テ一年半ノ期
間デアリマスガ、事務修習ノ期間ガアル、
是ダケノ違ヒデアリマス、同ジ學校ヲ出テ
試驗ヲ受ケル時ニ二三ノ科目ガ達フ、而シ
テ司法官ニナル者ハ、司法官トシテ實務修
習ヲスル、是ダケノ違ヒデアル、然ルニ其職
責ハ他ノ行政官廳ニ職責ヲ奉ズル職責ニ比
ベテ、天地霄壤ノ差ガアルト云フコトハ申
スマデモナイ、卽チ司法部ニ奉職セラレル
諸君ハ、直接天皇ノ大權ヲ國民ニ發動ス
ル大權奉行ノ職責ヲ有スル、全ク他ノ行政
官ト天地霄壤ノ差ノアル職責ヲ有スル、然
ルニソレ等ノ司法官ノ養成ト申シマスカ、
極言致シマスト全ク同ジ學校ヲ出、同ジ學
問ヲ修メ、受驗科目ガ違フダケダ、斯ウ私ハ
極言致シタイ、固ヨリ今日ノ判檢事諸君ハ
皆立派ナ方デアリマセウ、左樣ニ確信シテ
居ル、立派ナ方ガ職ヲ奉ジテ居ルニ拘ラズ、
斯ノ如ク非難囂々ノ聲ガ起リマス以上ハ、
是ヨリモモット立派ナ人達、モット偉イ人達
ヲ判檢事ニ致サナケレバナラヌノデハナカ
ラウカ、斯樣ニ私ハ考ヘル、併ナガラ私ハ
現在ノ判檢事諸君ガ決シテ惡イト云フノデ
ハナイガ、繰返シテ申シマスガ悉ク立派ナ
人デナケレバナラヌ、又左樣ニ確信シテ居
リマスガ、左樣ナ偉イ立派ナ方々ガ此職ヲ
盡サレテ居ルニ拘ラズ、尙且ツ今日ノ如ク
非難ノ聲ガ高イ以上ハ、モット〓〓立派ナ
人ヲ拵ヘナケレバナラヌ、卽チ司法部ノ人
員養成ニ付テ、現在ノ制度ニ滿足サレテ居
ルカ、勿論司法大臣ハ滿足致サレテ居ラヌ
ヤウニ私ハ拜察スルノデアリマス、前議會
ニ於キマシテモ同僚ノ岡本委員ノ此點ニ對
スル質問ニ對シテハ、司法一元論ニ個人ト
シテハ贊成シテ居ルト云フヤウナ御答辯ニ
ナッテ居ル、私ハ司法一元論ガ宜シイト云
フノデハナイガ、今日ノ現狀ニ滿足シテ居
ラレヌトスレバ、司法官ノ養成ニ付テ而モ
今日ノ弊ヲ是正シ、司法ノ威信ヲ保持シ、
ソレヲ高メル意味ニ於テ、司法官ノ養成ニ
付テハ如何ナル對策ヲ執ラントセラレルノ
デアルカ、此點ニ付テ先ヅ御尋致シタイノ
デアリマス
〓鹽野國務大臣御尋ノ點ニ付キマシテ御
答ヲ致シマスルガ、近來司法部ニ對シテ非
難ノ聲ガ相當高クナリツヽアルノハ事實デ
アリマス、隨テ其聲ノ高マルニ從ッテ司法
部ニ對スル信賴ガ失ハレントシツヽアルト
云フコトモ言ヘルノデアリマスガ、之ニ對
シマシテハ洵ニ御說ノヤウニ部內ノ人事刷
新ト云フコトニ考ヲ致シマスト同時ニ、左
樣ナ非難ノ聲ガドウシテ起ルノデアルカト
云フ原因ヲモ一ツ探求スル必要ガアルト考
ヘテ居リマス、此民間ニ於ケル司法部ニ對
スル非難ノ聲ト云フモノヲ熟々考ヘテ見マ
スト、色々其間ニ誤解モ多々アルヤウニ感
ゼラレルノデアリマス、元來司法ノ職務ハ
極メテ消極的ノ仕事デアリマシテ、事件ガ
アレバ之ヲ處理スルト云フコトヲ以テ足リ
ルノデアリマス、他ノ行政殊ニ福利行政ノ
如ク、國民ノ利益ヲ直チニ助長スルト云フ
方面ノ政治トハ、大層趣ヲ異ニシテ居リマ
ス爲ニ、事件ニ關スル人ハ裁判檢察ノ諸君
ニハ接觸致シマスガ、他ノ大部分ノ國民
ハ是ト離レテ居ル關係ニ立ッテ居リマス、
而シテ其職ヲ執ル職員ハ受動的ニ手許ニ來
ル事件ヲ處理スルコトニ沒頭致シテ居リマ
シテ、其仕事ニ如何ニ活動シツヽアルカ
ト云フコトヲ、國民ニ熟知セシムル機會ヲ
持ッテ居ラナカッタノデアリマス、又熟知セ
シムルニ努メルヤウナ方法ヲ致サナッカタ
ノデアリマス、是ガ爲ニ直接裁判若クハ檢
察ニ接觸セラレタル國民ノ一部ノ非難ノ聲
ガ、往々ニシテ之ヲ知ラザル多數ノ國民ヲ
シテ、其聲ニ雷同ト申シマスカ、同意ヲ致
サセル傾向ガアルヤウニ思ハレマス、是ニ
於テ司法部ノ實際ノ狀況ト云フモノヲ國民
全部ニ周知セシムル方法ヲ執ルコトガ、先
ヅ一ツノ方法、司法部ノ信賴ヲ失ハナイヤ
ウニ、寧ロ信賴ヲ得セシムルヤウニスル爲
ノ一ツノ方法ト致シマシテ、實際ノ狀況ヲ
國民ニ周知セシムルト云フコトガ、必要ナ
リト感ジテ居ルノデアリマス、卽チ今後ニ
於キマシテハ機會アル每ニ、司法ノ職員ガ
如何ナル仕事ヲシテ、如何ナル狀況ニアル
カト云フ實情ヲ國民ニ知ッテ貰フヤウニ、
積極的ニ働キ掛ケヲ致ス考デ居リマス、サ
ウシテ國民全體ニ於ケル誤解ノナイヤウニ
スルコトガ、先ヅ一ツ必要デアリマス、斯
ウ考ヘルノデアリマスガ、勿論其本ハ裁判
所若クハ檢事局ニ接觸セラレタル國民ノ聲
ガ本デアリマスルカラ、其聲ニシテ眞ニ非
難スベキモノヲ非難シタル聲ナリト致スナ
ラバ、自ラ省ミテ內ニ於テ大イニ之ヲ自ラ
省ミ、自ラ戒メル、大イニ刷新ヲ致サナケ
レバナラナイ、第二段ト致シマシテハ內部
ノ職員自身ガ精神作興ト申シマスカ、自已
ノ重大ナル責任、自ラ爲ス事務ハ國家ノ正
義ノ具現デアル、具體化デアル、夢疎カナル
態度デハ相成ラヌト云フコトヲ深ク自覺シ
テ、執務上ニ於テ司法精神ヲ振起作興スル
ト云フ方面ニ注意ヲ致シ、又人事ノ異動、其
他刷新ニ關スルコトヲモ行ヒ、進ンデハ職
員ノ〓養ニ付テ十分ナル努力ヲ致サネバナ
ラヌト考ヘテ居リマス、此〓養ニ付キマシ
テハ、若キ向法官試補ノ〓養ハ固ヨリデア
リマスルガ、進ンデ現ニ在職スル所ノ職員
ノ再〓育ト云フコトガ必要ナリト考ヘテ居
リマス、ソレヲ實施スベク種々工夫ヲ致シ
テ居リマシテ、豫算ノ許ス範圍、又、職務ニ
支障ヲ來サヾル範圍ニ於キマシテ、之ヲ實
施シツヽアルノデアリマス、試補ノ〓養ニ
付テハ、相當ノ年數ヲ必要トスルノデアリ
マスケレドモ、現在直チニ年數ヲ延バシマ
スルト、職員ノ補充ニ困難ヲ來シマスル關
係カラ、先ヅ本年度ヨリ半箇年ノ延長ヲ致
シン、從來一年半ノ〓養ヲ二年間ニ致シ、
サウシテ其〓養ノ方針モ餘程改良ト申シマ
スルカ、刷新シタル方針ニ依ッテヤル計畫
ヲ立ッテ居ルノデアリマス、其以外ニ於キ
マシテ在職在官ノ判事檢事ニ付キマシテ
ハ、成ベク多數ノ者ヲ中央ノ東京ニ招集致
シマシテ、之ヲ相當期間訓練ヲスルト云フ
方法ヲ執ッテ參ルノデアリマス、本年度ニ
ナリマシテカラ、旣ニ左樣ノ性質ヲ帶ビタ
會同ヲ二囘ヤッテ居リマスルガ、今後ニ於
キマシテモ續イテ之ヲ繰返シテ參ル考デ居
リマス、左樣ナ譯デ、洵ニ御說ノ通リ、司
法官ノ職務ノ重大ニシテ、而シテ之ニ當ル
者ノ人間ノ優秀ナルベキコトガ最モ必要ダ
ト考ヘテ、其點ニ大イニ努力ヲ致シテ居ル
次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=19
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020・飯村五郎
○飯村委員 只今司法大臣ヨリ極メテ御懇
篤ナル御答辯ヲ得マシテ感謝致シマス、次
ニ極メテ簡單ニ御質問ヲ御許シヲ願ヒタイ
ト思ヒマス、長谷委員ヨリモ一言觸レタノ
デアリマスガ、本員ノ見ル所ヲ以テ致シマ
スレバ、過去ノ司法豫算ハ、司法ノ尊嚴ヲ
擁護シ、國憲國法ヲ保持スル見地ニ於テ、
甚ダ貧弱デアッタト斷言スルニ躊躇致サヌ
ノデアリマス、斯ノ如キ貧弱ナル豫算ヲ過
去數十箇年間踏襲ヲ致シマシタ爲ニ、茲
職員ノ人員不足トナリ、持遇ノ菲薄、隨テ
當然ノ歸結ト致シマシテ職員ノ負擔ニ過重
ヲ招來致シタノデアリマス、此陣容ヲ以テ
此負擔過重ニ於テ此事務ヲ極メテ懇切ニ、
迅速ニ適正ニ處理センコトヲ要求致シマス
コトハ、要求スル者ノ無理デアリマス、私
ハ全ク木ニ緣ッテ魚ヲ求ムルノ類デアラウ
ト考ヘルノデアリマス、私共ガ敢テ此言ヲ
爲シマスノハ、世間多クノ識者ノ間ニ於
テ、今後ノ鹽野法相ナラバ思切ッテ司法部
ノ刷新ヲスルト云フ聲ガ高イノデアリマ
ス、私共ハ非常ナル司法大臣ニ期待ヲ掛ケ
テ居ルノデアリマス、故ニ敢テ此言ヲ致ス
ノデアリマスガ、司法當局ト致シマシテ
ハ、斯樣ナ現狀デアルコトハ、ヤハリ人權
蹂躪ナドト云フ非難ノ聲ノ起リマス確ニ
ツノ根本原因ヲ成シテ居ルト、私ハ確信ヲ
致シテ居ルノデアリマス、繰返シテ申シマ
スガ、我ガ司法大臣ニ對シマシテハ必ズ司
法ノ革新ヲ斷行スルデアラウト云フ期待
確信ヲ持ッテ居ル國民ガ多イノデアリマス、
司法當局ハ此現狀ニ鑑ミマシテ、司法部職
員ノ增員優遇ノ方策ヲ決定スル態度アリヤ
否ヤ、所見如何ヲ御尋致シタイノデアリマ
ス、又此態度アリト致シマスレバ、豫算ノ
許ス限リト云フノデハナク、堂々トシテ何
ト致シマシテモ豫算ヲ取ラナケレバナラヌ
ト云フ鞏固ノ考、卽チ司法部ガ大權ヲ奉行
スル所ノ機關デアル、天皇ノ大權ヲ直接國
民ニ發動スル最高ノ職務デアルト云フ見地
ニ於テ、司法部ノ豫算ニ協賛致シマスノ
ハ、軍部豫算ニ對シマシテ有ユル犧牲ヲ拂ッ
テ吾々國民ガ協贊ヲ致シマスト同樣ノ態度
ヲ以テ、司法部ノ豫算ニ對シテハ協賛ヲ致
サナケレバ相或ラヌ、又犧牲ヲ拂ハナケレ
バ相成ラヌト云フ確乎タル意見ヲ懷ク者デ
アリマス、敢テ司法大臣ノ意見ヲ質シタイ
ノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=20
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021・塩野季彦
○鹽野國務大臣 洵ニ御說ノ通リ司法部ノ
豫算ハ少額デアリマシテ、多年殆ド變リノナ
イヤウナ狀態デアリマス、隨テ是ガ事務ノ
上ニ多大ノ影響ヲ及ボシテ居ルコトハ、是
ハ申スマデモナイノデアリマス、洵ニ本職
ニ對シテ多大ノ御期待ヲ蒙ルコトハ甚ダ光
榮デアリマスガ、微力ニシテ到底御希望ニ
副フコトハ出來ナイ、御希望ノミナラズ、
司法內部ニ於ケル希望ニ對シテモ同樣ニ、
豫算增額ノ希望ノ熱烈ナルモノガアルノデ
アリマス、之ニ對シテ私ト致シマシテハ、
大イニ努力致ス決心デ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=21
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022・飯村五郎
○飯村委員 職員ノ配置ノ點ニ付テ一言御
1.
尋致シタイノデゴザイマスルガ、最近各方
面ニ於キマシテ行政ノ明朗、林內閣ノ時代
ニ於キマシテハ、河原田內相ガ窓口行政ノ
明朗ト云フヤウナコトヲ力說致サレタノデ
アリマスガ、斯樣ナコトハ司法部ニ於カレ
マシテモ、最モ肝要デアルト私ハ考ヘテ居
リマス、私ハ內部ノ事情ハ能ク分リマセヌ
ノデ、或ハ誤ッテ居リマシタラ御訂正ヲ願ヒ
タイノデアリマスガ、吾々國民ノ實生活ニ
直接關係ヲ有シマスルノハ、主トシテ區裁
判所ノ事件ダト私ハ考ヘテ居リマス、控訴
院大審院ノ事件デハナイ、私ハ茨城デア
リマスルガ、吾々ノ同〓ノ國民ガ下妻區裁
判所ヤ其他デ、十圓ノ爲ニ訴ヘルトカ、五
圓ノ貸金ノ爲ニ訴ヘル、吾々ノ〓里ニ於キ
マシテハ大審院、控訴院ハ殆ド必要ガナイ
ト云フ位デ、國民ノ實際生活ニ直接關係ヲ
有シマスルモノハ下級裁判所デアリマス、
區裁判所デアリマス、斯樣ナ見地カラ致シ
マシテ、區裁判所ノ職員ト云フモノニハ、
極メテ學識經驗ノ豐富ナル練達、堪能ノ士
ヲ配置スルノガ至當デハアルマイカト、私
ハ考ヘルノデアリマス、現在配置ノ實情ガ
果シテ左樣デアリマスルカドウカ、出來ル
ダケ立派ナ方ヲ區裁判所ノ監督判事ニスル
必要ガアル、殊ニ地方ニ於テ然リデアリマ
ス、或ハ北海道デアルトカ、九州デアルト
カ-東京ナラバ先輩アリ、友人アリ、知
己アリ、判決文ヲ書ク場合ニ、自分ガ判斷
ニ迷フ場合ニ於キマシテハ友人、先輩、先
生ノ〓ヲ受ケルコトガ出來ルガ、北海道ノ
山ノ中、九州ノ山奥ナドデハ、判斷ニ迷フ
場合ニ於キマシテハ、是等ノ相談相手ガナ
イ、隨テ立派ナ判決ガ出來ルモノデハナイ
ト私ハ思フ、斯樣ナ見地ヨリ致シマシテ、
殊ニ地方ノ區裁判所ニハ立派ナ人ヲ置カネ
バナラヌ、其裁判所ニズット居リマシテモ、
勅任判事、勅任檢事ニモナレルヤウナ仕組
ニ致サナケレバ、宜シクナイノデハナイカ
ト私ハ考ヘテ居ル、左樣ナ司法部ノ職員ガ
下級裁判所ニ居リマスト、控訴、上告ト云
フ數モ少クナルノデハナイカ、私ハ斯樣ニ
考ヘテ居ルノデアリマスガ、之ニ對スル司
法當局ノ所見ヲ質シタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=22
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023・塩野季彦
○鹽野國務大臣 第一線ノ事務ノ大切デア
リマスコトハ、洵ニ御說ノ通リデアリマ
ス、殊ニ監督ノ裁判所ノ判檢事等ニ於キマ
シテハ、最モ練達堪能ノ士ヲ得ルベキガ相
當ト考ヘテ居ルノデアリマス、從來モ左樣
ナ方針デ人ノ配置ヲ致シテ居ッタノデアリ
マスケレドモ、遺憾ナガラ人事ノ配置ガ思
フ通リニモナラナイデ居ルノデアリマシ
テ、之ニ付キマシテハ御說ノヤウニ、區裁
判所ノ判事、檢事ト雖モ、相當ノ待遇ヲ爲
シ得ルト云フ制度ヲ改正スル必要ガアルカ
ト考ヘテ居リマス、此點ニ付キマシテハ十
分〓究ヲ致シマシテ、改良ヲ致シタイト考
ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=23
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024・飯村五郎
○飯村委員 最後ニモウ一點御許ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、司法制度改善ニ關スル調査
會ノ今日マデノ調査ノ經過ヲ、御伺致シタ
イノデアリマス、又司法制度ノ改善ニ關シ
テ、各地方裁判所竝ニ辯護士會、其他朝野
ノ各〓體ニ對シマシテ、司法當局ガ諮問ヲ
致サレテ居ルノデアリマス、是等ノ官廳、
民間ノ各〓體ヨリ司法當局ニ提出致シマシ
タル是ガ答申、此點ニ付テ或ハ參考書類ト
シテ書類ニ依ッテ、御差支ナクバ御配付ヲ
願ヒマシテモ、ドチラデモ宜シウゴザイマ
スガ、此點ニ付テ最後ニ御尋ヲ致シタイノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=24
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025・塩野季彦
○鹽野國務大臣 御尋ノ點ハ相當浩瀚ナモ
ノデアリマスカラ、書類ニ依ッテ差上ゲマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=25
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026・飯村五郎
○飯村委員 滿足致シマス、是デ本案ニ對
シテノ私ノ質問ハ打切リマス
〔速記中止〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=26
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027・牧野賤男
○牧野委員長 ソレデハ本日ハ是ニテ散會
致シマス、次會ハ明日午前十時ヨリ開キマ
ス
正午散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007112975X00419370804&spkNum=27
4. 会議録のPDFを表示
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