1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年三月十二日(土曜日)午前十時十八分開議
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議事日程 第二十三號
昭和十三年三月十二日
午前十時開議
第一 昭和十二年度歳入歳出總豫算追加案(第二號) 會議(委員長報告)
第二 昭和十二年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號) 會議(委員長報告)
第三 豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件(追第一號) 會議(委員長報告)
第四 臨時軍事費豫算追加案(臨第一號) 會議(委員長報告)
第五 昭和十三年度歳入歳出總豫算追加案(第一號) 會議(委員長報告)
第六 昭和十三年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號) 會議(委員長報告)
第七 不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 漁業法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 産業組合自治監査法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 有價證券引受業法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔石橋書記官朗讀〕
昨十一日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議
院ニ通知セリ
昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案
昭和七年法律第一號中改正法律案
造幣局東京出張所廳舍其ノ他ノ新營費ニ
關スル法律案
對支文化事業特別會計法ノ特例ニ關スル
法律案
支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ財源ニ充
ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル
法律案
朝鮮事業公債法中改正法律案
軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關ス
ル法律案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
擔保附社債信託法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
昭和十二年度歲入歲出總豫算追加案第
二號)、昭和十二年度各特別會計歲入歲出
豫算追加案(特第一號)、豫算外國庫ノ負
擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件追
第一號)、臨時軍事費豫算追加案(臨第一
號)、昭和十三年度歲入歲出總豫算追加案
(第一號)、昭和十三年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案(特第一號)可決報〓書
不動產融資及損失補償法中改正法律案可
決報告書
產業組合中央金庫法中改正法律案可決報
〓書
漁業法中改正法律案可決報告書
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法
中改正法律案可決報告書
產業組合自治監査法案可決報告書
有價證劵引受業法案可決報告書
請願委員會特別報告第六號発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、昭和十二年度歲
入歲出總豫算追加案第一一號、日程第二、昭
和十二年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
特第一號、日程第三、豫算外國庫ノ負擔ト
ナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件追第一號、
日程第四、臨時軍事費豫算追加案臨第一號、
日程第五、昭和十三年度歲入歲出總豫算追
加案第一號、日程第六、昭和十三年度各特
別會計歲入歲出豫算追加案特第一號、會議、
委員長報告、是等ノ六案ヲ一括致シテ議題
ト爲スコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、副委員長千秋男爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
一昭和十二年度歲入歲出總豫算追加案
(第二號)
一昭和十二年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第一號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第一號)
一臨時軍事費豫算追加案(臨第一號)
一昭和十三年度歲入歲出總豫算追加案
(第一號)
一昭和十三年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第一號)
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報告候也
昭和十三年三月十一日
副委員長男爵千秋季隆
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔男爵千秋季隆君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=3
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004・千秋季隆
○男爵千秋季隆君 只今議題ニナリマシタ
昭和十二年度歲入歲出總豫算追加案第二
號昭和十二年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案特第一號、豫算外國庫ノ負擔トナル
ベキ契約ヲ爲スヲ要スル件追第一號、臨時
軍事費豫算追加案臨第一號、昭和十三年度
歲入歲出總豫算追加案第一號、昭和十三年
度各特別會計歲入歲出豫算追加案特第一
號以上ニ付キマシテ豫算委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、豫算委員會ハ
本月九日ヨリ十一日迄三日間開會致シマシ
テ、大藏大臣、陸軍大臣、海軍大臣ヨリ議
案ノ說明ヲ聽取致シマシテ、質疑應答ヲ重
ネマシタ、是ヨリ議案ノ大要ト質疑應答ノ
要旨ヲ御紹介致シマス、昭和十二年度歲入
歲出總豫算追加案第二號ハ、歲入六百十餘
萬圓、歲出二千百八十餘萬圓デアリマシテ、
差引歲入不足額千五百六十萬餘圓トナッテ
居リマスガ、右ノ歲入不足額ニ對シマシテ
ハ、昭和十二年度豫算實行上行ヒマシタ歲
出節約ニ依ル財源餘裕額ノ中ヨリ充當スル
計畫トノコトデアリマス、右歲入豫算ノ內
譯ハ、森林收入ノ增加二十餘萬圓、專賣局
益金ノ增加百十餘萬圓、刑務所收入ノ增加
四百三十餘萬圓、治水事業費分擔金ノ增加
二十餘萬圓、其ノ他二十餘萬圓デアリマス、
次ニ歲出豫算ニ計上致シマシタ金額ハ、經
常部千二十餘萬圓、臨時部千百五十萬餘圓
デアリマシテ、其ノ主要ナル經費ハ、北支
領事館警察ニ要スル經費ノ增加四百十餘萬
圓檢丁及新兵旅費ノ增加百四十餘萬圓、
警察費連帶支辨金ノ增加一一百三十萬圓、內
國稅拂戾金ノ增加三百萬圓、刑務所軍需作
業施行等ニ關スル經費ノ增加二百七十餘萬
圓小學校〓員俸給費臨時補助ニ要スル經
費二十萬餘圓、馬ノ生產增加施設ニ關スル
經費五十萬餘圓、中國地方其ノ他各地災害
復舊及應急施設費百十餘萬圓、農山漁村應
急施設ニ關スル經費ノ增加五十餘萬圓、石
油消費規正實施ニ要スル經費二十餘萬圓、
靑年移民ニ關スル經費六十餘萬圓、傷痍軍
人保護應急施設ニ要スル經費十餘萬圓、臨
時軍事費特別會計へ繰入レ百十餘萬圓デア
リマス、次ニ昭和十二年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案特第一號ハ、對支文化事
業關東局、海軍工廠資金、海軍火藥廠、
帝國大學、官立大學、帝國鐵道、朝鮮總督
府朝鮮鐵道用品資金、臺灣總督府竝ニ健
康保險ノ各特別會計ニ關スルモノデアリマ
ス、次ニ豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約
ニ關スル件追第一號ハ、一般會計ニ於テハ
軍需關係資財確保損失補償金ニ關スルモノ
デアリ、特別會計ニ於テハ海軍工廠資金特
別會計ノ造船造兵材料購入費ニ關スルモノ
デアリマス、次ニ臨時軍事費豫算追加案臨
第一號ハ、歲入四十八億八千六百五十餘萬
圓歲出四十八億五千萬圓デアリマス、先
ヅ歲出豫算ニ付テ大要ヲ申述ベマスレバ、
陸軍臨時軍事費三十二億五千七百萬圓、海
軍臨時軍事費十億四千三百萬圓、豫備費五
億五千萬圓デアリマス、次ニ歲入ニ付テ申
述ベマスレバ、今囘ノ臨時軍事費財源モ、
前囘ニ於ケルト同樣大部分ヲ公債ニ依ルコ
トトシ、公債及繰替借入金四十四億三千三
百四十餘萬圓ヲ計上シテアリマス、公債以
外ノ歲入ハ合計四億三千二一百十萬餘圓デア
リマシテ、今其ノ内譯ニ付テ大體ヲ申上ゲ
マスレバ、先ヅ第一ニ一般會計ヨリノ繰入
金三億千八百三十萬餘圓デアリマスガ、是
ハ今囘ノ增稅及煙草ノ値上等ニ依ル增收額
ヲ繰入ルヽモノデアリマス、次ハ各特別
會計ヨリノ繰入金デアリマシテ、通信事業
千六百萬圓、帝國鐵道四千萬圓、關東局
四百二十餘萬圓、朝鮮總督府二千六百四十
餘萬圓、臺灣總督府千三百八十餘萬圓、樺
太廳二百六十餘萬圓、計一億三百十餘萬圓
デアリマス、尙歲入總額ガ歲出ニ比較致シ
マシテ增加シテ居リマスガ、是ハ七十一議
會ニ於キマシテ協贊セラレタル歲入豫算
中、北支事件費借入金三千六百五十餘萬圓
ハ、之ガ借入實行ヲ見合セルコトト相成リ
マシタル爲、之ニ因ル歲入不足ニ充當スル
必要ガアル爲增額シタモノデアリマス、尙
此ノ臨時軍事費豫算追加案ニ關シマシテ、
陸海軍大臣ノ說明ノ大要ヲ申シマスレバ次
ノ通リデアリマス、先ヅ陸軍大臣ハ去ル一
月十六日ノ帝國政府ノ重大聲明ニ依リ、作
戰モ第二期ノ段階ニ入リ、長期作戰ノ下ニ
錯綜セル國際關係ニ處シ、克ク第三國ノ干
涉策謀ヲ未發ニ制シ、以テ毅然トシテ帝國
出帥ノ目的ヲ貫徹スル爲ニハ、直接當面ノ
戰力ヲ維持强化シテ、作戰遂行ニ遺憾ナカ
ラシムルハ勿論、益〓右作戰ヲ推進スベキ諸
般ノ準備ヲ爲シ置クノ要、緊切ナルモノアリト
考フルノデアリマスト申述ベラレ、今囘ノ豫
算ノ内容ヲ次ノ如ク列擧致サレマシタ、一、
遣外部隊竝ニ之ニ應ズル內地補充留守部隊
等ノ〓ネ一箇年分ノ一般維持費、竝ニ戰爭
遂行ニ必要ナル人馬、兵器、彈藥等ノ消耗
補充ニ要スル經費、二、事變ノ長期的態勢
ニ應ズル爲、戰力ノ强化、竝ニ之ニ伴フ一
部遺外部隊ノ交代整理ヲ行フ爲ノ經費、三、
今後ノ作戰ヲ考慮シ、從來非準備ノ儘來リ
シ作戰資材中、目下ノ狀勢ニ應ジ、緊急不
可缺トスルモノノ準備ニ要スル經費、四、航
空要員ノ補充其ノ他航空戰力充實ニ要スル
經費、五、還送患者ノ收療施設擴充ニ要ス
ル經費、六、戰傷病死者ニ對スル特別賜金、
七、占據地域ニ於ケル主要鐵道ノ新管理經
營機關成立迄ノ復舊、管理、運營ニ關スル經
費八造兵設備ノ增强及戰備材料整備ニ
要スル經費、又海軍大臣ハ、今囘ノ豫算ニ關
スル經費ニ付、其ノ內容ノ項目ヲ擧ゲテ、支那
各方面ニ派遣ノ艦船、航空隊、陸戰隊、特設部
隊等ニ要スル人件費、竝ニ軍需品卽チ兵器、
彈藥、被服、糧食、需品、燃料、港用品等
ノ調達ニ要スル經費、航空、通信、工作、
補給等、各種施設ノ急速整備ニ要スル經費、
徴傭船舶費、應召員ニ要スル經費、各種戰
時給與、戰死者ニ要スル各種賜金、手當金
等デアルト申述ベラレマシタ、次ニ昭和十
三年度歲入歲出總豫算追加案第一號ハ、次
ニ御說明申上ゲル如ク、同特別會計追加案
追第一號ト共ニ、臨時軍事費豫算追加案臨
第一號ニ直接關係ヲ有スルモノノミデアリ
やっく、歲入歲出共ニ三億八千六百四十餘萬
圓デアリマシテ、右歲入豫算ノ內譯ハ、支
那事變特別稅法制定ニ依ル增加二億六千八
百六十餘萬圓、臨時利得稅法改正ニ依ル增
加三千八百二十餘萬圓、臨時租稅措置法制
定ニ依ル減少三百七十餘萬圓、煙草値上等
ニ依ル專賣局益金ノ增加千二十餘萬圓、歲
入補塡ノ財源ニ充ツベキ公債金ノ增加七千
三百餘萬圓デアリマス、又歲出豫算ノ內譯
ハ臨時的增稅竝ニ負擔輕減ニ關スル臨時的措
置ニ伴ヒ要スル經費三百餘萬圓、國債整理
基金繰入金ノ增加六千六百二十餘萬圓、
臨時軍事費特別會計繰入三億千七百十餘
萬圓デアリマス、次ニ昭和十三年度各特別
會計歲入歲出豫算追加案特第一號ハ、專賣
局、國債整理基金、公債金、關東局、朝鮮
總督府、臺灣總督府、樺太廳及其ノ他陸海
軍ノ作業會計等ノ各特別會計ニ關スルモノ
デアリマス、右ノ內各外地特別會計ニ屬ス
ルモノハ、何レモ內地ニ順應シテ實施スル
臨時的增稅、竝ニ負擔輕減等ニ關スル臨時
的措置等ニ伴フ歲入ノ增減、及ビ之ガ徵稅
費、竝ニ臨時軍事費特別會計ヘ繰入ノ增加
等ニ關スルモノデアリマス、又各外地特別
會計ノ繰入金ハ、臨時的增稅及煙草ノ値上
ニ依ル歲入ノ增加額ヨリ、徵稅費等ヲ控除
シタルモノノ八割ヲ繰入レムトスルモノデ
アリマシテ、其ノ金額ハ關東局七十餘萬圓、
朝鮮總督府八百九十餘萬圓、臺灣總督府二
百八十餘萬圓、樺太廳三十餘萬圓、計千二
百八十餘萬圓デアリマス、以上ニ於キマシ
テ計數等ニ關スル說明ヲ終リマシテ、是ヨ
リ質疑應答ノ大要ヲ申上ゲマス、尙陸海軍
大臣竝ニ外務大臣ヨリ軍事竝ニ外交ノ說明
ガアリマシタガ、是ハ速記錄ニ讓リマスコ
トヲ御承知ヲ願ヒマス、尙祕密會ニ於キマ
シテ陸海軍大臣竝ニ外務大臣ヨリ、詳細說
明ガアリマシタコトヲ御報告申上ゲテ置キ
マス、一委員ヨリ、公債募集ハ十二年度ハ
三十二億圓程デアッタガ、十三年度ハ七十億
と圓ニテ略、倍額トナッタ、卽チ一箇月ニ五六億
圓ノ募集トナリマス、是等ノ公債資金ヲ得
ル爲ニハ貯蓄ガ必要デアル、ソレニハ爲替
水準ノ維持、物資ノ需給ノ調節、消費ノ節
約ガ必要ト思フ、是ハ公債ヲ引受クル經濟
狀態ヲ作ル爲デアル、而シテ公債ノ引受ニ
ハ軍需會社ノ重役、社員、竝ニ一般利潤ア
ル會社ノ重役社員等ニ、强制的ニ適當ノ割
合ニ公債ヲ持タシムルコトガ雙方ノ爲ト思
フガ、其ノ考ナキヤ如何ト云フノニ對シ、
藏相ハ御說ハ御尤デアル、但シ法律上ノ强
制ニ依ッテ持タス考ハナイ、其ノ人々ノ自覺
ニ依リタイト思フ、尙貯蓄ノ奬勵、民間公
債ノ奬勵ハ、近ク追加豫算ニ要求シヨウト
云フコトヲ言ハレマシタ、又日本銀行ノ保
證準備ノ擴張セラレムトスル時、通貨ノ節
約ノ爲ニ證劵、殊ニ小切手ノ使用ヲ奬勵シ
テハ如何、殊ニ納稅ニ小切手ヲ使ッテハ如何
ナルモノカト云フニ對シ、藏相ハ同感ナル
旨答ヘラレマシタ、又支那ニ於ケル廣汎ナ
ル新占據地ニ資金工作ヲシテ、日本ヨリモ
輸出シ、又其ノ地方ヨリ物資ガ得ラレ、日
滿支「ブロック」ガ出來ルコトトナレバ、蔣介
石ヲ屈服スル所以ト思フ、政府ハ此ノ點ニ
關シテ如何ナル方策アルカト云フニ對シ、
同ジク藏相ハ、物資ヲ日支ニ輸出入スルコ
トハ經濟建設上必要デアル、殊ニ支那ニ於
ケル棉花、鹽石炭等ハ最モ有望デアル、
要スルニ占據地ノ民衆ノ生活ノ安定ヲナシ、
交通、鐵道ヲ促進シ、開發會社ヲ起シ、資
金ヲ供給シ、日滿ニ惡影響ヲ來タサザル範
圍內ニ於テ努力シヨウト答ヘラレマシタ、
次ニ爲替管理ノ爲ニ物資ノ需給甚ダシク不
足デアル、故ニ內地ニアルモノノ外、外地、
滿洲、北支ヨリ入ルヽ外ナイ、卽チ自足自
給ノ外ナイガ如クデアル、斯クテハ物價騰
貴ヲ來スコトトナル、本豫算ニハ多少アル
ガ、今日ノ追加豫算ニハ生產力擴充增加ノ
コトハ軍需資財調達ノ爲ト云フ外少シモナ
イ、此ノ點如何ト云フニ對シ、商相ハ御說
御尤デアル、戰時工作機械ノ爲ニ、法律ニ
テ損失補償ヲシテ奬勵シツヽアル、又豫算
外ノ施設トシテ「パルプ」ノ資材ノ爲ニ濶葉
樹ヲ拂下ゲル等、諸種ノ施設ヲ爲シツヽア
リト答ヘラレマシタ、又物價ノ騰貴ハ供給
ノ伴ハヌ爲デアル、生產資財、消費資財ノ
騰貴、殊ニ日用品ノ騰貴ハ國民生活ヲ脅カ
スモノデアル、最近ノ晒木綿、燐寸ノ上騰
ハ其ノ甚ダシキモノデアル、政府ノ政策ノ
爲ニ斯カル影響ノアルノハ不都合デアル、
百貨店其ノ他小賣商ノ自由ニ任セズ、適當
ノ取締ヲ必要トスルノデハナイカト云フニ
對シ、商相ハ、軍需品ノ原料等ハ配給ノ統
制ヲモ爲サムト思フ、鐵、銅、「パルプ」、ヽ「ゴ
ム」等ハ供給少ク、需要多キ故ニ生產、配給、
需要者ニ組合ヲ作ラシテ統制シヨウ、併シ
價格ヲ決メルニ、網以外ニ脫スルモノアリ
テ困ルニ依ッテ網ヲ細カクシヨウ、又木綿、
燐寸等ハナカ〓〓統制困難デアル、是等ハ
國內ノ需要ヲ少クスルモノデアレバ、國民
モ消費ヲ節約スル外ナイノデアル、物價ヲ
公定シテモ陰ガアッテ效果ハナイノデアル、
故ニ政府ハ暴利取締法ニ、賣惜買占メノ外
ニ、販賣ノ値段ト數量ヲ屆ケシムルコトト
シテ之ヲ防ギツヽアリト答ヘラレマシタ、
又陸海軍ニテ多數ノ豫算ヲ放出シテ物ヲ買
フニ當リテ、連絡ナキ爲物價高クナリ又整
ハナイ、共同購買局ヲ作リ、商工省デヤリ
テハ如何ト云フニ對シ、商相ハ、陸海軍ハ
其ノ特殊ノモノハ別ニスルモ、商工省ニ於
テハ、其ノ他ノ方面ハ陸海軍ト協力シテ物、
價配給ノ調節ヲシタイト思フ、此ノ議會
ニ臨時物資調整局ノ如キモノヲ要求セムト
思フ、要スルニ今日ノ商工省ノ機關ハ不十
分デアルト答ラヘレマシタ、又貿易ハ本年
二月末ノ統計ニ依レバ、輸出入減ニテ入超
モ減デアル、入超ノ減ハ宜キガ如キモ輸出入
ノ減ハ大イニ寒心ニ堪ヘナイ、是ハ貿易管
理ノ不當ナル爲ノ如クデアル、此ノ追加豫
算ニモ貿易振興ノ費目ガナイ、政府ノ將來
ノ對策如何ト云フニ對シ、同ジク商相ハ、
御尤ノコトデアルガ、外國商人ガ昨年ハ物
價高ヲ見込ンデ輸入セルモノガアッテ、其ノ
滯貨ガアルコトト、米國ノ不景氣、農作物
ノ不作、印度ノ綿業ノ發達等ノ爲減退シタ
ノデアル、將來ノ爲替管理ハ能ク善處シヨウ
ト答ヘラレマシタ、其ノ他物價、消費ノ統
制及事變後ノ反動等ニ付キマシテ質疑應答
ガアリマシタ、次ニ巨額ノ公債消化ニ付、
貯蓄ノ奬勵ヲスルガ宜イ、軍需產業者ヨリ
其ノ利潤ヲ消費セズシテ、貯蓄シテ公債ニ
振向ケル必要ガアルト思フ、又銀行、信託、
保險等ニテハ、信用アルモノハ其ノ固有財
產ヲ公債ニ向ケシムルヲ必要トスルト云フ
質疑ニ對シ、藏相ハ、貯蓄ノ奬勵ハ御同感
デアル、戰費ノ放出ニ依リテ增加シタ預金、
信託金等ハ公債等ニ振向ケタキモノデアル、
但シ法律ノ根據ニテ强制セムトハ思ハナイ、
自由ニ株劵、社債其ノ他ニ放資サセル積リ
デアルト答ヘラレマシタ、又郵便貯金ヲ大
イニ奬勵スル必要ガアル、二千圓限度ヲ三
千圓限度ニ引上グル時期ニ達シテ居ルト思
フ、奬勵ノ方法ハ通帳ニテ納稅スルガ宜イ、
購買組合ニテモ通帳ニテ決濟スルガ宜イ、
又郵便貯金ヲ日步計算ニスル必要ガアル、
小切手ノ納入ヲ許ス必要アリト思フ、振替
貯金ノ引上モ必要デアル、是ハ通貨膨脹ノ
防止ト物價對策ノ爲デアルト尋ネラレタル
ニ對シマシテ、遞信當局ハ、貯金奬勵ハ御
同感デアル、是ハ講演ヤ「ポスター」等
依ッテ奬勵シテ居ル、國民總動員ニテモヤッ
テ居ル、振替貯金ニハ小切手納入ヲ許スガ、
貯金ニハ用ヒテ居ラナイ、日步計算ハ事務
的ニ困難デアル、振替貯金ハ支局ヲ新設シ、
電信ニテ早ク出入ノ出來ルヤウニシテ居
ル、貯金通帳ニテ納稅スルコトハ考慮セム
ト答ヘラレマシタ、次ニ大藏大臣ハ一員ノ
要求ニ應ゼラレマシテ、支那法幣ノコトニ
付キ左ノ如ク演述セラレマシタ、卽チ北支
ハ中國銀行其ノ他ノ法幣流通シテ居ルガ、蔣
介石ノ勢力ニ依ル貨幣ノ流通スルノハ面白
クナク、又朝鮮銀行劵ヲ多分ニ流通スルモ
不可デアルカラ、北支新政權ガ出來タノヲ
好機トシテ、新發劵銀行卽チ中國聯合準備銀
行ヲ作リ、支那各銀行ニ參加サセ、又資本ノ
半額千五百萬圓ヲ我ガ國ニテ引受ケテ、興
業正金、朝鮮ノ三銀行ニテ融通セシメテ
居ル、而シテ漸次新劵ニテ舊來ノ法幣ヲ引
上ゲル積リデアル、發劵高ハ三億圓位ノ積
リデアルガ、將來ハ增加スルコトト思フ、
準備ハ大體銀ニテ六千萬圓程保有シテ居ル、
圓ニ「リンク」サス積リデアル、後ニハ金圓
ト「パー」トナルト思フ、併シ北支ハ日滿ノ
如ク貿易管理ナキ故ニ、日滿ノヤウニハ旨
ク行カヌノデアル、要ハ國際收支ヲ良クス
ル必要ガアル、尙必要ノ時ニハ一億圓位ノ
「クレヂット」ヲ與ヘル積リデアル、綏遠方
面ハ餘程宜ク蒙疆銀行ガ活躍シテ居ルトノ
說明デアリマシタ、次ニ近衞總理大臣ハ過
日本豫算審議ノ節、一員ヨリ憲法ト國體ト
ノ關係ニ關スル質問ニ對シ、此ノ委員會ニ
テ答辯ガアリマシタ、是ハ諸君御承知ノコ
トト存ジマスガ、大切ナコトデアリマスル
カラ速記錄ニ載セル意味デ御報告申上ゲ
マス、首相ノ答辯ハ次ノ通リデアリマス、
卽チ帝國憲法ハ申ス迄モナク萬古不易ノ
我ガ國體ヲ昭示シ給フト共ニ、此ノ萬邦
無比ナル國體ヲ基礎トシテ、統治權行使ノ
形式態樣ヲ定メラレタノデアリマシテ、我ガ
尊嚴ナル國體ハ、帝國憲法ノ條章ノ間ニ躍
如トシテ顯現シテ居ルノデアリマス、從ッテ
實際政治ハ、帝國憲法ノ條章ヲ基準トスベ
ク、臣民ハ帝國憲法ノ條章ヲ循行スベキハ固
ヨリ當然デアリマシテ、是ガ我ガ國體ノ本義
ヲ顯揚スル所以デアリマスコトハ御所見ノ
通リデアリマス、併シナガラ帝國憲法ヲ解
スルニ當リテハ、帝國憲法御制定ノ根本精
神ノ在ル所ヲ十分ニ會得シ、國體ノ本義ヲ
愆ルコトナキヲ期セネバナラヌコト亦言ヲ
俟タヌ所デアリマス、又政〓其ノ他百般ノ
事項、總テ萬邦無比ナル我ガ國體ノ本義ヲ
基トシテ、愈〓其ノ眞髓ヲ顯揚シナケレバナ
ラヌコトハ、昭和十年岡田內ガ再度ノ聲
明ヲ爲シテ、國民ノ向フベキ所ヲ明カニシ
タ通リデアリマスト答ヘラレマシタ、之二
對シマシテ質疑者ハ、滿足ナル旨表明セラ
レマシタ、斯樣ニシテ質疑ガ終了致シマシ
タカラ討論ニ入リマシタ處、三人ノ委員ヨ
リ贊成意見ヲ陳述セラレマシタ、次ニ其ノ
梗〓ヲ申上ゲマス、一委員ハ臨時軍事費豫
算ニ對シマシテ、前述ノ陸海軍大臣ノ說明
ノ主旨ニ贊意ヲ表シ、又十二年度ノ陸海軍
ノ國防豫算ニ協贊シタル所以ヲ陳述セラレ
マシテ、其ノ延長タル事變豫算ガ不脅威不
侵略ノ性質ノモノデアリ、且ツ自然ノ成行
デアルコトヲ力說セラレマシタ、尙軍事費
ノ放出ガ一箇年五十億圓ニモナルコトデア
ルカラ、經濟的ニ至大ノ影響ノナイヤウニ
注意セラレ、國際貸借ノ惡化、惡性(3)
フレ」乃至物價昂騰ナキヤウ、對處策ヲ講
ゼラレタシトテ贊成ヲ表セラレ、他ノ追加
豫算案ニモ贊成ノ意ヲ述ベラレマシタ、次
ニ一委員ハ、此ノ豫算、特ニ軍事豫算ニ對
シマシテ贊意ヲ表スルト共ニ、此ノ豫算ノ
遂行ニ、國策ノ遺憾ナクシテ、國運ノ隆昌
ナラムコトヲ希望スルト前提セラレマシテ、
第一、時局解決ノ鍵鑰ナル蔣政權ノ打倒、
其ノ兵力ノ殲滅、第二、我ガ用兵ノ結果、
我ガ力ニ依リテ建設セラルベキ親日防共ノ
文化的支那國ノ建設、第三、內政ニ關スル
戰後ノ政策等ヲ十分ニ完成セラルヽコトヲ
切望スル旨ヲ陳述セラレマシタ、殊ニ第三
ニ付キマシテ、殖產工業ニ速カニ著手スベ
キコトヲ力說セラレタノデアリマス、六一
他ノ一委員ハ滿洲事變ト支那事變トハ大ニ
事情ヲ異ニスル、北中支ハ列國ノ關係ガア
ルノミナラズ、天產物等大ニ豐カナル土地
デアル、軍事ハ固ヨリ必要デアリ、忠勇ナ
ル將士ノ奮鬪ニ依リマシテ今日ノ戰果ヲ收
メ、又將來モ益〓國國ヲ宣揚スルコトト思
フガ、軍事ト共ニ大ニ「シビル」工作、卽チ
文化工作ガ必要ト思フ、故ニ大藏、遞信、
商工、鐵道、外務其ノ他文化方面ノ進出ガ
必要デアル、國家トシテ總テ協力シテ十分
ノ戰果ヲ收メラルヽコトヲ望ムト陳述セラ
レマシテ、殊ニ軍事豫算ニ贊意ヲ表サレマ
シタ、斯樣ニ致シマシテ討論ガ終結セラレ
マシタ、仍テ贊否ヲ起立ニ問ヒマシタ處、
全員起立、豫算追加案六案トモ原案通リ全
會一致可決致サレマシタ、右御報〓申上ゲ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ討論ニ移
リマス、子爵井上匡四郞君
〔子爵井上匡四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=5
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006・井上匡四郎
○子爵井上匡四郞君 私ハ只今上程セラレ
テ居リマスル豫算案六案ニ對シテ贊成ヲ致
ス者デアリマス、是等豫算案ノ中心ヲ成ス
モノハ臨時軍事費デアリマス、今私ハ玆ニ
其ノ贊成ノ趣旨ヲ一言申述ベタイト考ヘマ
ス、昨年七月支那事變突發以來茲ニ八閱月
ニナリマス、此ノ短期間內ニ於ケル陸海皇
軍ノ戰績ハ、實ニ世界ノ戰史ニ類例ヲ見ザ
ル程ノ驚異的效果ヲ齎シテ居リマス、卽チ
陸軍ニ於テハ北支、中支ノ野ニ酷寒ト鬪ヒ、
炎熱ヲ冒シ、瘴癘ニ襲ハレ、困苦缺乏ニ耐
ヘ、健闘力戰到ル處デ敵ノ大軍ヲ擊碎殲滅
シ、今ヤ我ガ軍ノ占領セル地域ノ廣大ナ
ル、北ハ津浦京漢線ニ沿ヒ將ニ大黃河ヲ越
エムトシ、南ハ敵ノ咽喉上海ヲ占據シ、長
江ニ沿ヒ旣ニ首都南京ヲ攻略シ、其ノ面積
八十七萬平方「キロメートル」、實ニ我ガ帝
國ノ領土以上ニ達シテ居リマス、斯クテ彌
ガ上ニ日本帝國ノ武威ヲ發揚シタノデアリ
マス、又我ガ海軍今囘ノ上海戰ニ於ケル當
初ノ陸戰隊ハ、必然的ニ其ノ數ハ極メテ少
數ナリシニ拘ラズ、善戰能ク敵ノ大兵ノ進
出ヲ阻止シ得テ、後續部隊ノ上陸ヲ可能ナ
ラシメ、之ニ參戰ノ機會ヲ與ヘタ、加之其
ノ空軍ハ旬日ナラズシテ敵ニ甚大ナル損害
ヲ與ヘ、一擧其ノ制空權ヲ獲得シテ、我ガ
軍事行動ヲシテ愈〓活潑容易ナラシメマシタ、
是ハ眞ニ不滅ノ功勳デナケレバナリマセ
又、又山東ヨリ廣東ニ至ル沿岸ノ全長ハ實
ニ三千「キロメートル」ニ至ルノデアリマス、
我ガ海軍ハ敢然此ノ封鎖ヲ斷行致シマシ
ク、時恰モ季節風ニ際シ、怒濤狂湧、艦內
ノ生活ハ決シテ容易ノ業デハアリマセヌ、
我ガ將兵ハ晝夜兼行、身心ヲ碎イテ國家ノ
爲完全ニ其ノ責務ヲ盡シツツアルノデアリ
マス、實ニ我々銃後ノ國民ノ感激措ク能ハ
ザル所デアリマス、私ハ此ノ機會ニ於テ貴
族院議員ノ一人トシテ、我ガ陸海軍將兵ニ
對シ、深甚ナル敬意ト感謝ノ意ヲ表セムト
致スモノデアリマス、上述ノ如ク皇軍ハ戰
爭其ノモノニ付テハ實ニ遺憾ナキ發展ヲ遂
ゲ、大々的效果ヲ收メテ居ルノデアリマス、
併シナガラ今回皇軍出動ノ眞目的ハ、單ニ敵
軍ヲ勦滅シ、軍閥膺懲ノ實ヲ擧グレバ卽チ
足ルト云フ如キ簡單ナルモノデハナイノデ
アリマス、遙カニ高遠ナル理想、東洋永遠
ノ平和ノ基礎ノ確立、是ガ出師窮極ノ目的
デ、且國民上下ノ理想デアルノデアリマス、
從ッテ萬一ニモ中道ニ於テ挫折シ、目的ノ達
成ガ不能ト云フガ如キコトニデモナッタラ、
必ズヤ我々ノ苗裔ハ、我々現代人ヲ目シテ
無意義ナ戰役ニ幾十億ノ國帑ヲ濫用シタ先
人ダトナシ、深ク怨嗟シテ已マザルコトデ
アリマセウ、故ニ我々ハ此ノ目的貫徹ノ爲、
毅然トシテ邁進スベキデアリマスガ、抑〓此
ノ事業タルヤ世界歷史ニ新時期ヲ作ル程度
ノ大命題デ、其ノ達成ハナカ〓〓容易ノ業
デハアリマセヌ、ソレハ今囘武士道國日本
ノ執ッタ軍事行動以上ノ聰明ト、忍耐ト、努
力トヲ要求サレル次第デアルト確信致シマ
ス、日本近代史上最モ重大ナル事件トシテ
ハ、內ニ於テハ維新ノ變革、對外關係トシ
テハ日露ノ戰役デアルト思フノデアリマス、
對內問題トシテノ維新ノ變革ガ、如何ナル
狀態ニ迄國內ヲ鼎沸セシメタルカ、又如
何ニ外夷ノ跳梁跋扈ニ困惑シタカ、實
ニ想像以上ノコトデアッタノデアリマス、
日露戦役ハ幸ニ我ガ國ノ勝利ニ歸シ、青
年日本ハ之ニ依ッテ辛ウジテ西力東漸ノ
大勢ヲ阻止スルコトヲ得タ、併シ此ノ戰役
ハ眞ニ國運ヲ賭シタ戰爭デアッタノデアリ
マス、サウシテ私ハ玆ニ日露戰爭ト今囘ノ
事變トヲ比較シ、主觀的ニ觀察シテ見マス
ルニ、前者卽チ日露戰爭ノ方ガ、其ノ複雜
性ニ於テ著シク簡單デアッタト思フノデア
リマス、何トナレバ同役ハ、露軍ヲ滿洲ノ
野ニ擊破シ、闔外ニ追放スレバ卽チ足リタ
ノデアリマス、今囘ノ事變ガ支那中央政權
タル蔣介石及ビ其ノ軍閥ノ擊破討滅ニアル
コトハ勿論デアリマスガ、此ノ間我ガ國ハ
常ニ北方ヨリスル力强イ壓力ニ對シ、終始
準備工作ニ從ハネバナラナイ、又我々ハ對
支戰鬪ニ邁進スル一面ニ於テ、其ノ最終目
的達成ノ過程トシテ、複雜多端ナル和平工作
ヲモ實行セネバナラナイノデアリマス、以
テ禹域ニ於テ我々ガ當面セル問題ノ如何ニ
複雜デアリ困難デアルカガ想像サレルノデ
アリマス、東洋ノ盟主日本ハ、再ビ建國以
來ノ大業ヲ成就スベク、今ヤ陣痛上ノ惱ヲ
體驗シツヽアルノデアリマス、皇國ノ安危
興亡ガ一ニ此ノ成否如何ニ懸ッテ居ルノデ
アリマス、政府ハ玆ニ見ル所アリ、國民ニ
對シ精神總動員ヲ要望シテ居リマス、時局
ハ頗ル重大デアリマス、苟モ生ヲ日本ニ享
ケタル限リ文武官民、老若男女ヲ問ハズ、
總テガ皇國ニ殉ズル決意ヲ以テ同心戮力、
國事ニ力メ民業ヲ勵マネバナラヌ大切ナ秋デ
アルト信ジマス、併シ飜ッテ見ルニ、國家
ノ現狀ハ果シテ斯カル情勢ヲ馴致シツヽア
ルカ、相剋的狀態ハ旣ニ解消セラレタノデ
アルカ、官吏間ノ相剋問題ニ付テハ、官吏
ガ從フ所ノ政務ニ勤勉ナル結果デアルト云
フ說モアリマス、併シ是ハ政務ヲ平面的ニ
觀察シタ說議デアリマス、立體的ニ生起ス
ル相剋ハ內容極メテ深刻デ、到底平面的ナ
ル解說ノ能ク盡シ得ベキモノデハアリマセ
ヌ、然ラバ何ヲカ立體的ノ相剋ト言フカ、
觀念上ノ相違、ソレニ淵源シテ生起シ來ッタ
所ノ相剋デアリマス、而シテ此ノ相違セル
觀念ガ互ニ交錯シ接觸シタ場合ノ關係ハ、
決シテ平面幾何學上ノ單純ナル線デナク、
甚ダ複雜シタ形相ヲ呈スルノデアリマス、
先日、本議場デ某閣僚ト某有力議員トノ間
ニ、所有權ノ性質ニ關スル論議ガ鬪ハサレ
マシタ、後者ハ所有權ハ憲法ノ確保スル所
ノ私權デアル、前者ハ國家ノ利益ハ當然私
人ノ利益ニ優先スルト主張サレタノデアリ
マス、是ハ明カニ觀念上ノ大イナル相違カ
ラ生ジタ議論デアリマス、而シテ窃ニ思フ
ニ、斯クノ如キ相違撞著ハ國內到ル所ニ充
滿シテ居ルコトデハナイデアラウカ、斯ク
テドウシテ相剋ナキヲ得ルカ、亦相剋ナキ
ヲ期待シ得ベキカ、怪ムベキノ至デアリマ
ス、私ハ既述ノ兩說中何レガ是カ、何レガ
非ナルカヲ論及セムトスル者デハアリマセ
又、併シ非常時國家ノ國務ヲ擔當スル廟堂
諸公ニハ、自ラ國民ヲシテ其ノ嚮フ所ヲ知
ラシムベキ大責ガアリマス、卽チ政府ハ宜
シク國民ニ對シテ其ノ指導精神ヲ明示シ、
之ヲ鼓吹シ、徹底セシムベキデアリマス、
苟モ此ノ大事業ヲ前ニシテ、國內ニ上述ノ
如キ觀念上ノ相剋ガアリ得ルトスレバ、折
角政府ニ於テ宣傳セル國民精神總動員モ、
到底其ノ目的ヲ達スルコトガ出來ズ、遂ニ
ハ皇軍出動ノ大理想ヲモ忘却シ、赫々タル
軍事行動モ或ハ窮極ニ於テ徒勞ニ歸スルヤ
ウナ憂ガ全ク無シトハ斷言シ難イノデアリ
マス、政府ハ須ク想ヲ玆ニ致シ、善處セラ
レムコトヲ切望スル次第デアリマス、扨昨
年私ハ二十餘億ノ軍事費ヲ協贊スルニ當リ、
此ノ壇上ヨリ皇軍奮起ノ理由ヲ述べ、支那
ノ覺醒ヲ促シタノデアリマス、然ルニ蔣介
石ハ遂ニ日本ノ眞意ヲ解スル能ハズシテ、
首都ノ陷落スルヤ邊境重慶ニ逃レ、半バ共
產黨ノ捕虜トナッテ、儚ナキ長期抗戰ヲ豪
語シ、國民ノ利害休戚ニ付テハ全ク顧慮
スル所ガナイ、其ノ愚ヤ及ブベカラズデ、
其ノ殘忍性ハ眞ニ唾棄スベキデアリマセ
ウ、斯クテ我ガ政府ハ彼蔣介石ヲ否認シ、
爾後一箇ノ政權トシテ取扱ハザル旨ヲ堂々
天下ニ聲明スルニ至リマシタ、自然ノ情勢
デアリマス、支那ハ世界ニ最モ古イ國ノ一
ツデアリ、其ノ長キ歷史ノ中ニハ、其ノ名ヲ
史上ニ留メタ英傑ガ多數輩出シテ居ルノデ
アリマス、併シ近代ノ支那ニハ人材ガ生レ
ナイ、其ノ中ニ强ヒテ求ムルナラバ僅カニ
指ヲ例ノ革命ノ師父孫逸仙及ビ其ノ弟子蔣
介石ニ屈スルデアリマセウ、孫文ノ三民主
義ノ失敗ハ旣ニ周知ノ事實デアリマス、蔣
介石ハ其ノ後ヲ承ケ、事實上南京政府ノ首
班トナリマシタ、併シ彼ハ崇高ナル傳統文
化ノ偉大性ニ盲目デアリ、國弊ヲ摘抉スル
ダケノ聰明ト勇斷トニ缺ケテ居ッタ、彼ハ歐
米ノ物質文明ニ陶醉シ、其ノ奴隷ヲ以テ終
始シマシタ、尤モ彼蔣介石ヲシテ斯ク迄似
而非的人物タラシムル主要原因トシテハ、
我々ハ其ノ妻宋美齡一派ノ感化ヲ度外視ス
ル譯ニハ參リマセヌ、支那ノ現在ノ上流社
會ニハ、美齡型ノ人物ガ極メテ多數デアリ
マス、彼等ハ幼少ノ頃カラ歐米ニ育チ、歐
米ノ〓育ヲ受ケタ者デ、彼等ヲ以テ我々ガ
道德上ノ基礎ヲ共ニスル隣人ダトシテ、之
ニ接近セムトスルコトハ實ハ大ナル誤リデ
アリマス、事實彼等ノ中ニハ同僚相互間ニ
於ケル日常ノ對話ニ英語ヲ使用スル者ガ多
數アルノデアリマス、卽チ彼等ハ皮膚ノ色
ニ於テノミ我々ニ似テ居ルガ、其ノ思想ハ
全ク歐米人デ、祖先ノ創造シタ精神文化ノ高
峰「仁」ノ何タルサヘ理解シナイノデアリマ
ス、卽チ彼等ハ決シテ我々ノ考ヘテ居ル支
那人デハナイノデアリマス、是等所謂歐米
派政客、或ハ歐米耽溺靑年者流ノ政治觀念
ハ、當然歐米人ノ世界觀カラ出發シテ居リ
マス、其ノ歐米人ノ世界觀ハ勿論白人文明
ヲ以テ文明ノ嫡流トスルモノデ、彼等ノ目
ニ映ズル東洋ハ、自己ノ文明ヲ培養スベキ
材料及勞働力以外ノ何モノデモナイ、從ッテ
斯カル世界觀ノ上ニ立ッタ所ノ國際觀念ハ、
東洋人トシテノ我々ハ正シキ價値ノ〓倒サ
レタ不當至極ノモノデアリマス、併シ歐米
デ〓育ヲ受ケタ彼等ハ、之ニ對スル批判能
力ヲ持タナイ、是ガ從來日支親善ニ對スル
根本的障害ヲ爲シタモノデ、遂ニ今日ノ事
變ヲ招來シタ、實ニ〓嘆ニ堪ヘナイ次第デ
アリマス、ガ併シ今日支那ニモ尙支那古來
ノ〓義ヲ以テ、其ノ思想的基礎トナス者ガ
少クナイ上ニ、日本留學生中ニハ、現ニ相
當有力ナル者ガアリマス、彼等ハ曾テハ〓
ネ革命ノ先驅者デアッタ、サレバ今日以後我
我ガ支那ニ働キ掛ケル場合ハ、斷然是等ノ
階級ヲ考慮ノ中ニ入レネバナリマセヌ、彼
等ハ日本ノ眞意ヲ了解シ得ル者デアリ、又
了解セシメネバナラヌ重要ナ階級デアリマ
ス、私ハ先ニ今時ノ事變ヲ日露戰爭ト比較
シテ、其ノ複雜性ヲ略述致シマシタガ、「ソ」聯
以外ノ外國關係ニ於テ觀マスルニ、日露戰
爭當時トハ月鼈ノ差ガ存スルノデアリマス、
卽チ日露戰爭當時ハ英米初メ歐洲ノ諸國ハ
〓ネ日本ニ對シ滿腔ノ同情ヲ寄セテ居リマ
シタ、今日ハ之ニ反シ獨伊以外ノ全部ガ支
那側ニ走ッテ居リマス、是ニハ政治上、經濟
上又ハ國防上、廣汎ニ亙ル重疊シタ理由モ
アルデアリマセウ、併シ現在日本ノ支那事
變ニ對シテ懷ク眞意ガ、英米其ノ他ニ理解
セラレテ居ラヌコトハ事實デアリマス、少
クトモ英米二國ノ大衆ニハ理解サレテ居リ
マセヌ、是ハ日本ノ爲ニ大イニ不利益デア
リマス、蓋シ英米政府ハ人民ノ意思ニ反シ
タ政治行動ハ執ラヌ主義ノ國家デアルカラ
デアリマス、支那事變勃發以來、英米ノ我
ニ對スル非難ノ聲ガ漸ク熾烈ヲ極メルニ
至ッテ、國民使節ナルモノヲ派遣シテ、日本
ノ眞意ヲ說明シ、其ノ諒解ヲ得ルコトヲ努
メタノデアリマスガ、是ハ到底大ナル效果
ヲ擧ゲ得タトハ思ヘマセヌ、軍事行動ニ關
スル限リ、皇軍ノ威力ヲ以テスレバ四河雲
南ノ邊境ト雖モ、之ヲ討伐スルコトハ必ズ
シモ不可能デハナイノデアリマセウガ、併
シ事變終熄後ニ於ケル支那ノ和平工作ハ、
ドウシテモ歐米ノ完全ナ諒解ナシニハ望
ミ得ナイト思ハレルノデアリマス、和平
工作ノ第一ハ、大衆ヲ從來ノ地方軍閥ノ苛
歛誅求ヨリ救濟スルニアリマス、聞ク所ニ
依レバ二十年先ノ稅金ヲ徴收シテ居ル所サ
ヘモアルト云フコトデアリマス、收歛モ亦
極マレリト言ハザルヲ得ナイ、又他方ニ於
テハ地方產業ヲ興シ、大衆ヲシテ衣〓ノ資
ヲ得セシメルニアリマス、支那ノ中原ヲ貫
通スル黄河ノ改修ノ如キハ、文化的施設ト
シテ必ズ爲サネバナラヌ大事業デアリマス、
又黃河ハ將來大ナル發電能力ヲ有スルノデ
アリマス、併シ是等ハ期畫的ノ大土木事業
デアルノデアル、數億ノ資金ヲ要スルノデ
アリマス、日本ハ宜シク胸襟ヲ開イテ、歐
米ノ資本家、技術家ノ前ニ日本ノ理想ヲ披
瀝スベキデアルト思フノデアリマス、又彼
等ノ旣存利權ヲ尊重スベキコトハ勿論、之
ヲ助長シテヤル位ノ襟度ヲ示スベキデアル
ト思フノデアリマス、從來ノ日本ハ其ノ視
野ガ餘リニモ狭キニ失シタ憾ミガアリマス、
豪宕デ、雄渾デ、而モ典雅、是ガ古來日本
人ノ尊イ性格デアルノデアリマス、支那ハ
夜郞自大デ遂ニ國家ヲ滅スニ至ッタ、殷鑑遠
カラズ、國民ハ深ク自省スル必要ガアルト
思フノデアリマス、私ハ繰返シテ申シマス、
皇軍出動最終ノ目的ハ支那ノ建設デアリ、
所詮ハ東洋永遠ノ平和ノ基礎ヲ作ルニアリ
マス、其ノ成敗ハ實ニ國家ノ消長ニ關スル
次第デアリマス、從ッテ政府ハ最モ周到嚴肅
ナ熊度デ、其ノ解決ニ從ハネバナラナイ、
最近ニ於ケル歐米外交界ノ情勢ハ各國ノ責
任者間ノ直接ノ折衝ニ俟ツ所ガ多イノデア
リマス、本問題ノ重要性又斯クノ如シトス
ルナラバ、日本ノ外交モ茲ニ一轉機ヲ劃シ、
本問題解決ノ爲ニ總理大臣又ハ外務大臣自
身歐米ニ出張シ、彼等當局ト樽爼應酬スル
コトガ最モ有效ナル方法デハナイカト思フ
ノデアリマス、但シ時局重大、政務多端、
長ク外國ノ旅行ヲ不能トシマスナラバ、別
ニ方法ヲ考究スルモ必ズシモ不可デナイデ
アリマセウ、卽チ此ノ場合ハ少クトモ一國
ヲ代表スルニ足ル大材ヲ擧ゲ、使節トシテ
政府ニ代ッテ日本ノ眞意及將來ニ對スル方
針等ニ關シ熟談ヲ遂ゲシムベキデアリマス、
私ハ固ク信ジマス、歐米ノ完全ナル理解ナク
シテ、日本ノ窮極目的理想ヲ達成スルコト
ハ不可能デアルト云フコトヲ、以上ノ私見
ニ對シテ政府ノ御考慮ヲ煩スコトヲ得レバ
無上ノ幸ト思ヒマス、以上ノ私見ヲ述べ、
私ハ豫算案全部ニ贊意ヲ表シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=6
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007・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ討論ハ終
リマシタ、是ヨリ採決ヲ致シマス、御異議
ガナケレバ六案全部ヲ問題ニ供シマス、六
案全部、贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=7
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008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 全會一致ト看做
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=8
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009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第七、不動
產融資及損失補償法中改正法律案、日程第
八、產業組合中央金庫法中改正法律案、日
程第九、漁業法中改正法律案、日程第十、
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法中
改正法律案、日程第十一、產業組合自治監
査法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ
續委員長報告、是等ノ五案ヲ一括シテ議
題トスルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=9
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010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長園田男爵
不動產融資及損失補償法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月十一日
委員長男爵園田武彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
產業組合中央金庫法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月十一日
委員長男爵園田武彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
漁業法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月十一日
委員長男爵園田武彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月十一日
委員長男爵園田武彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
產業組合自治監査法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月十一日
委員長男爵園田武彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔男爵園田武彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=10
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011・園田武彦
○男爵園田武彥君 只今議題トナリマシタ
ル不動產融資及損失補償法中改正法律案外
四件ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上
ゲマス、是等ノ法律案ノ提出理由ニ付キマ
シテハ、曩ニ本議場ニ於キマシテ、政府當
局ヨリ御說明ガアリマシタノデ、重ネテ申
上ゲル必要ハナイカト存ジマス、唯其ノ要
點ノミヲ簡單ニ申述べマシテ、御參考ニ供
シタイト存ジマス、尙審議中ノ質疑應答中
ニ於キマシテモ主ナモノノミヲ御紹介申上
ゲテ、詳シキコトハ速記錄ニ依リテ御了承
ヲ願ヒタイト存ジマス、又委員會ハ去ル三
月八日以來、前後三囘ニ互リ熱心ニ審議ヲ
重ネマシタ次第デアリマス、不動產融資及
損失補償法中改正法律案、是ハ大藏省所管
デアリマス、之ニ付キマシテ申上ゲマスレ
バ、此ノ法律ハ昭和七年ニ制定セラレマシ
タモノデアリマシテ、其ノ趣旨ハ銀行ノ有
スル不動產固定資產ヲ資金化シ、其ノ活動
ヲ圓滑ナラシメヤウト致スコトニアッタノ
デアリマス、而シテ此ノ不動產資金ノ融通
期間ハ三箇年ト定メラレタノデアリマスガ、
昭和十年ニ當時ノ資金化ノ情況ニ照シマシ
テ、引續キ其ノ期間ヲ三箇年間延長シ、本年
九月末ヲ以テ終了スルコトトナッテ居ルノ
デアリマシテ、本法ニ依ル資金融通高ハ昭
和十二年交迄ニ累計五千百餘萬圓ニ達シテ
居ルノデアリマスガ、銀行ノ不動產固定資
金ノ情況ニ鑑ミ、又事變ノ際デモアリマス
ノデ、本施設ハ之ヲ存續致スコトガ適當ナ
リトセラレマシテ、其ノ期間ヲ更ニ三箇年
延長セムトスルモノデアリマス、尙本法ニ
依ル資金ノ融通期限ハ本法施行ノ日ヨリ十
五箇年以內トアリマスヲ、今囘融通期間ヲ
更ニ延長致シマスル時ハ、現在ノ儘デハ不
動產資金ノ融通期限トシテハ短キニ失シマ
スノデ、融通期間ト同樣三箇年ヲ延長致シ
マシテ、十五箇年以內トセラレテアルヲ十八
箇年以內ト改メラレマシタル點デアリマス、
次ニ產業組合中央金庫法中改正法律案、農
林省所管デアリマス、此ノ改正要點ヲ申上
ゲマスレバ、一ハ、漁業組合聯合會及漁業協
同組合ヲ產業組合中央金庫ニ加入セシメ得
ルコトトシタ點デアリマス、是ハ最モ此ノ
改正法律案ノ重要ナ點デアリマシテ、之
ニ關聯シマシテ各條項ノ改正ガ行ハレテ
居ルノデアリマス、二ハ、產業組合中央金庫
ノ資本金ヲ五百萬圓增加スルコトト爲シタ
ル點デアリマス、內二百五十萬圓ヲ限リ政
府ノ出資トスルコトデアリマス、三ハ、評議
員ノ定員ヲ現在二十名以內トアルヲ三十名
以內ト改メマシタ點デアリマス、四ハ、產業
組合中央金庫ノ年賦償還貸付額ノ制限、卽
チ現行法ノ拂込出資金及產業債劵ノ發行額
ノ二分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ズトアルヲ、
產業組合中央金庫ガ政府資金ノ融通ヲ爲ス
場合ニ於テハ、之ヲ適用セザルコトト爲シ
タル點デアリマス、五ハ、產業組合中央金庫
ノ餘裕金ノ運用ヲ便ナラシムル爲、其ノ運
用方法ヲ擴張シ、現在ハ國債證劵地方債證
劵ノ買入ノミ出來ザリシヲ、更ニ進ンデ之
ガ應募又ハ引受ヲ爲シ得ルコトトナシ、及
ビ產業組合聯合會ノ發達ヲ圖ル爲必要ナル
施設ヲ行フ法人ニ對シ、主務大臣ノ認可ヲ
得テ短期貸付ヲ爲スコトヲ得トナシタル點
デアリマス、六ハ、產業組合中央金庫ノ事
業年度ハ、現在ハ六箇月トナッテ居ルノヲ、
組合金融ノ近狀ヨリ見マシテモ、又一般產
業組合ノ事業年度トノ關係上モ、金庫ノ事
業年度ハ產業組合ノ例ト準ズルコトガ適當
ト認メラレ、從來ノ規定ヲ削除シ、產業組
合法ヲ準用スルコトトナシタル點デアリマ
ス、是ハ產業組合中央金庫法第二十三條ノ
削除デアリマス、七ハ、產業組合中央金庫
ノ事業年度ヲ一箇年又ハ六箇月ト致シマシ
タガ、貸付金利子最高步合ハ必ズ六箇月每
ニ定メルコトガ必要デアルト認メラレ、從
來每年度ノ初ニ於テ定ムル規定デアリマシ
クモノヲ、事業年度ニ從ヒ、六箇月每ニ主
務大臣ノ認可ヲ得テ定メシメ、其ノ期間內
ニ之ヲ變更セムトスル時モ亦同樣、主務大
臣ノ認可ヲ受クルコトトナシタル點デアリ
やく、八ハ、產業組合中央金庫ヲ創立初期
ヨリ十五箇年間、政府出資ニ對シテ剩餘金
ノ配當ヲ爲スコトヲ要シナカッタノデアリ
マスルガ、其ノ期間ガ近ク滿了致スノデ、
政府以外ノ者ノ出資ニ對スル配當ト同率ノ
配當ヲ政府ノ出資ニ對シ爲サムトスルコト
ハ妥當デナク、且又產業組合中央金庫ノ基
礎ヲ鞏固ナラシムルモノデナイノデ、其ノ
間區別ヲ設ケテ、政府以外ノ者ノ出資ニ對
スル配當ガ一定率以下ナル場合ハ、政府ノ
出資ニ對スル配當ヲ制限スルコトトナシタ
ル點デアリマス、而シテ此ノ度增加シマシ
タル政府ノ出資二百五十萬圓ニ對シテ同樣
之ヲ適用スル點デアリマス、次ニ漁業法中
改正法律案ニ付テデアリマス、一ハ、漁業協
同組合ニ對シ組合員ノ貯金ノ受入ニ關スル
施設ヲ認メ、併セテ加入豫約貯金、家族貯
金ノ受入ヲ爲スコトヲ認メ、又漁業組合ノ
系統機關デアル漁業組合聯合會ニ對シ、所
屬組合又ハ所屬聯合會ノ貯金ノ受入ヲ爲ス
コトヲ認メタル點デアリマス、二ハ、日本
勸業銀行、日本興業銀行、北海道拓殖銀行
又ハ產業組合中央金庫ガ漁業組合及漁業組
合聯合會ニ對シ資金ノ供給ヲ爲スニ際シ、自
己ノ信用ノミニテハ資金借入不可能ノ場合
ハ、漁業組合聯合會ヲシテ保證ヲ爲スコトヲ得
セシメ、資金供給ノ圓滑ヲ圖ラムトスル點
デアリマス、三ハ、漁業組合又ハ漁業組合聯
合會ガ、水產物ヲ遠隔地へ共同出荷スルコ
トガ增加シテ參ッタノデ、漁業組合聯合會
ガ所屬組合又ハ聯合會ニ對シテ手形ノ割引
ヲ爲スコトヲ認メ、代金決濟ヲ速カナラシ
メ、且圓滑ヲ圖ルコトトシタル點デアリマ
ス、次ハ產業組合中央金庫特別融通及損失
補償法中改正法律案ニ付テデアリマス、本
法ハ昭和七年十月一日施行セラレタモノデ
アリマシテ、當時經濟界ノ不況ノ爲、農村金
融機關トシテ重要ナル地位ヲ占メテ居リマ
スル信用組合聯合會ノ貸付金ガ、甚ダシク
固定シマシタノデ、產業組合中央金庫ヲシ
テ、政府ノ損失補償ノ下ニ、所屬信用組合
聯合會又ハ所屬信用組合ニ對シ特別融通ヲ
爲サシメ、其ノ固定セル債權ヲ資金化シテ、
金融ノ途ヲ開ク目的デ制定セラレタモノデ
アリマス、而シテ昭和七年十月一日ヨリ昭
和十二年十二月末ニ至ル迄ノ間ニ、中央金
庫カラ信用組合及信用組合聯合會ニ貸付ケ
ラレマシクル金額ハ五千七十萬圓餘ニ達シ
テ居リ、本法ニ依ル特別融通期間ハ、昭和十
年ノ法律改正ニ依リ、三箇年ヨリ六箇年ニ
延長セラレタノデアリマスルガ、本年九月
末ヲ以テ終了スルコトト相成ルノデアリマ
シテ、全國ノ信用組合ノ實情ハ尙相當ノ固
定債權ガアリマスルノデ、之ヲ更ニ三箇年
延長スルコトトシテ、今日ノ事變下ニ於
テ、組合金融ノ疏通ヲ圖ル必要ヲ認メラレ
テ、此ノ改正ヲ行フコトト相成ッタノデ
アリマス、最後ニ產業組合自治監査法案
ニ付テデアリマス、本案ハ曩ニ第七十囘帝
國議會ニ提出セラレ、貴族院ニ於テハ可決
セラレタノデアリマシテ、當時衆議院ニ
付託中解散トナリマシタノデ、不成立
ニ終ッタモノト全ク同樣ノモノデアリマス
ルカラ、玆ニ其ノ內容ノ說明ハ省略致サ
セテ戴キマス、質疑ノ主ナルモノヲ御紹
介申上ゲマス、不動產融資及損失補償
法中改正法律案ニ對シ、一委員ヨリ、右ニ
付テノ今日迄ノ成績竝ニ實況等ハ如何ニ相成ッ
テ居ルカトノ御問ニ對シ、政府ハ、此法案制
定當時、卽チ昭和七年頃ハ經濟界ガ相當不
況デアッテ、農村、漁村等モ相當疲弊困憊ヲ
シテ居ッタノデ、銀行方面ニモ相當ノ不動產
固定資金ガアッタガ、其ノ後情況ハ漸次好調
ヲ示シテ參ッタノデ、資金トシテハ約五千萬
圓位シカ出テ居ラヌ、又損失補償法ハ今日
迄一度モ行ッタコトガナイトノ御答辯デア
リマシタ、農林省所管ノ產業組合中央金庫
外三件ニ付キマシテハ、種々質疑應答ガアッ
タノデアリマス、一委員ヨリ、漁業組合ノ
ミノ中央金庫ノ設置ヲ政府ハ考ヘテ居ラヌ
カトノ御間ニ對シマシテ、政府ハ、是ハ今
日迄度々問題トナッタノデアリマスルガ、目
下ノ所デハ、產業組合中央金庫ニ加入セシ
ムルコトヲ適當ト認メタノデアル、又是ハ
多額ノ經費ヲ要スルノデアルカラ、只今ノ
處其ノ考ハ持ッテ居ラヌトノ意味ノ御答辯
デアリマシタ、又一委員ヨリ、之ニ關聯シ
テ、從來餘リ顧ミラレナカッタ所ノ漁業方面
ニ對シ、今囘ノ改正法律案ハ誠ニ結構デア
ルト思フガ、政府ハ更ニ北洋、南洋方面ノ
漁業等ニ、進ンデ其ノ發展ヲ期スル考ガア
ルカトノ御問ニ對シマシテ、政府ハ、本法
ノ適用ハ中小漁業組合等ニアルノデアルガ、
勿論大資本ヲ要スル所ノ漁業ニ付テハ、別
ニ之ガ助成發達ヲ期シタイト考ヘテ居ルト
云フ意味ノ御答辯デアリマシタ、又一委員
ヨリ、水產物ノ價格ノ締制ヲ缺イテ居ルガ、
政府ハ之ニ付テノ對策ガアルカト云フ御質
問デアリマシタ、之ニ對シテ農林大臣カラ、
今後漁業組合ノ產業組合中央金庫ヘノ加入
ニ依リマシテ金融ノ途ガ開カレ、且之ニ依
リマシテ共同販賣、或ハ共同買入等ノ途ガ
開カレルノデアルカラシテ、此ノ點ヲ是正
シテ極力遺憾ナキヲ期スル考デアルトノ御
答辯デアリマシタ、又一委員ヨリ、我ガ國
ノ茶ノ、是ハ主ニ靜岡縣ノコトト存ジマス
ガ、產業ニ對シマシテハ、世界的ニ輸出サ
レテ居ルガ、此ノ度更ニ滿洲方面ニ進出シ
テ居ルガ、之ニ對スル助成金、又ハ補助金
ヲ與フル意思ハナイカト云フ問ニ對シテ、
農林大臣ハ、此ノ事ニ付テハ目下詳細ナル
報告調査ヲ得テ居ラヌカラ、篤ト調査ノ上
考慮シタイト云フ御答辯デアリマシタ、其
ノ他重要ナル質疑應答ヲ重ネタノデアリマ
スルガ、是等ハ先刻申上ゲマシタ通リ、速
記錄ニ依ッテ御覽ヲ願ヒタイト存ジマス、討
論ニ入リマシテ、一委員ヨリ、是等ノ改正
法律案ハ誠ニ時宜ニ適シタルモノデアリ、
尙日本ノ水產業ハ重大性ヲ持ツノデアル
カラ、政府ニ於カレテモ一層ノ努力ヲ拂
ハレタイトノ希望ヲモ併セテ述ベラレマシ
テ、贊成ノ意ヲ表セラレマシタ、又他ノ委
員ヨリモ同樣ノ贊成ノ意見ヲ述ベラレタノ
デアリマス、採決ノ結果、是等全案ハ、政
府提出原案通リ、全會一致ヲ以テ可決ト相
成リマシタ次第デアリマス、右御報〓ヲ申
上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=11
-
012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、五案ノ採決ヲ致シマス、五案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=12
-
013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=13
-
014・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=14
-
015・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=15
-
016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=16
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017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=17
-
018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 五案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、五案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=18
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019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=19
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020・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=20
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021・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=21
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022・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=22
-
023・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認言
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=23
-
024・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 五案ノ第三讀會
ヲ開キマス、五案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=24
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025・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=25
-
026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十二、有
價證劵引受業法案、政府提出、第一讀會ノ
續委員長報告、委員長三室戶子爵
有價證劵引受業法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月十一日
委員長子爵三室戸敬光
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵三室戶敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=26
-
027・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 有價證劵引受業法案
ノ委員會ノ〓要ヲ申上ゲマス、本案ハ旣ニ
御承知ノ如ク法文二十條ト附則ヲ以テ構成
サレテ居リマシテ、其ノ提案ノ理由ハ先頃
政府當局ヨリ御說明ガゴザイマシタガ、之
ヲ要約致シマスレバ、社債其ノ他有價證劵ノ
引受募集ノ現在ノ情況ニ鑑ミマシテ、其ノ
重要性ヨリ、從來ハ放任ノ姿デゴザイマシタ
ガ、此ノ法案ニ依リマシテ特ニ免許制度ニ
依ッテ監督ヲ行ヒ、起債界ノ公正ナル仕事
ニ依リマシテ、安全ナル發達ヲシタイト云
フノガ本案ノ趣旨理由デゴザイマス、先頃
卽チ去ル九日本議場デ可決ニナリマシタ有
價證劵業取締法ハ、稍〓法案ノ名ガ似テ居リ
マスガ、是ハ專ラ產業界ノ發達ニ資スル爲
ニ設ケラレタモノデゴサイマスルノデ、自
ラ其ノ間ニ區別ガゴザイマス、其ノ重要ナ
ルモノハ、取締法ノ所管ハ商工省デゴザイ
マスガ、只今議題ニ上ッテ居リマスル法案ハ
大藏省ノ所管ニ相成ル次第デゴザイマス、
委員會ハ先ヅ說明ヲ受ケマシテ質疑ヲ繼
續致シマシク、質疑ハ殆ド各條ニ亙ッテ細
カク問答ヲ交ハサレマシタガ、玆ニ御報告
ヲ申シマスルノハ、其ノ中ノ主ナルモノニ
止メタイト思ヒマス、殊ニ法案ノ六條カラ
十九條ニ至リマス十四箇條ハ、銀行業法、
信託業法、無盡業法等ト大體同一ノ規定デ
アリマシテ、卽チ是等ノ引受業者ニ對スル
監督竝ニ罰則ト云フヤウナ規定デゴザイマ
スカラ、是ハ殊更御報告申ス要ハナイト考
ヘマス、其ノ他ヲ大體逐條ニ依リマシテ申
上ゲマスガ、第一條ノ第二項ニ有價證劵ノ
種類ハ勅令ヲ以テ定ムト云フノデアルガ、
ドウ云フ種類デアルカト云フ質問ニ對シマ
シテ、大體國債、地方債、或ハ社債、又追ッ
テ生ズルデアラウ所ノ恩給債劵デアルトカ、
庶民債劵ト云フヤウナモノデアルサウデゴ
ザイマス、從ヒマシテ所謂株劵等ニ關スル
モノハ、此ノ中カラハ除外サレルノデゴザ
イマス、此處ニモ矢張リ證劵業取締ノ方ハ
商工省ニ關係シ、本案ハ大藏省ニ關係スル
ト云フ一ツノ現レガハッキリ致シテ居ルヤ
ウナ次第デゴザイマス、次ハ第四條デゴザ
イマスガ、四條ニハ引受業者ノ附隨事項ト
云フコトガ書イテアルガ、ドウ云フコトデ
アルカト云フ質問デゴザイマシタ、是ハ當
然生ズル事項デアリマスルカラ、例ヘバ代金
ノ代理支拂ヲ致ストカ云フヤウナ、當然行
ハナケレバナラヌコトデアル、又其ノ反對
ニ或ハ擔保デ金錢ヲ貸ス、手形ノ裏書ヲス
ルト云フヤウナ類ノコトハ、是ハ引受業者
トシテハ一步進ンダ仕事デアリマシテ、是
等ハ特ニ大臣ノ許可ノアッタ場合ニノミ許
スノデアル、斯ウ云フ說明デゴザイマシタ、
次ハ第五條ニ於キマシテ、證劵引受業者ハ
他ノ法律ノ制限ニ拘ラズト云フコトガアル
ガ、是ハドウ云フコトデアルカ、是ハ新商法
施行法ノ五十六條ニ於キマシテ、特ニ規定
ヲ設ケマセヌト此ノ引受業者ハ其ノ仕事ガ出
來ナクナルノデアリマスルノデ、商法施行法
ノ規定ノ例外規定ノ爲ニ斯ウ云フ條文ヲ置
イタノデアル、斯樣ナ說明デゴザイマシタ、
六條以下十九條ハ前申上ゲタヤウナ譯デ省
略ヲ致シマス、第二十條ニ至リマシテ銀行、
信託會社又ハ特別ノ法律ニ依リ設立セラレ
タル法人、此ノ法人ハドウ云フモノデアルカ、
此ノ質問ニ對シマシテ、當局ハ只今ノ所デ
ハ東洋拓殖會社ヲ考ヘテ居ルノデアル、次
ニ附則ノ第一項卽チ「本法施行ノ期日ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム」、凡ソ何時頃施行サレルノ
デアルカト云フ問ニ對シマシテ、成ルベク
早ク施行致シタイガ、色々諸般ノ手續等モ
アル爲ニ七月頃ニナラウト考ヘル、斯樣ナ
答辯デゴザイマシタ、以上申上ゲマシタ所
ガ委員會ニ於ケル質問ノ主ナモノデゴザイ
やく、續キマシテ討論ニ入リマシテ、一委
員ヨリハ、從來ハ放任セラレテ居ッテ稍〓色々
ノ弊害ガ生ジテ居ック、或ハ會社同志ノ間ニ
無用ノ競爭ヲ起ス、又或ハ弱小會社トモ言
フベキモノハ無理ナコトヲ致シテ、甚ダ起
債界ノ發達ニ妨ゲヲスルヤウナコトモアッ
ク、此ノ法案ガ成立スレバ誠ニ結構デアル
ト云フコトニ依ッテ贊成ヲサレマシタ、又一
委員カラハ折角斯ク罰則迄設ケテ監督サレ
ルノデアルカラ、今少シ嚴重ニサレタ方ガ
宜イト迄私ハ思フノデアル、ドウカソレガ
故ニ十分ニ此ノ法ノ施行ヲ嚴重ニヤッテ御
貰ヒシタイ、此ノ心持ヲ以テ贊成致シタイ
ト云フヤウナ御發議ガゴザイマシテ、政府
ニ於キマシテモ十分此ノ法案成立ノ上ニ
ハ、完全ニ此ノ法ヲ施行スル考デアルト云
フ御答ヲ得マシテ、斯クテ採決ニ入リ、全
會一致ヲ以チマシテ本案ハ可決致スベキモ
ノト認メマシタ次第デゴザイマス、以上御
報〓申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=27
-
028・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=28
-
029・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=29
-
030・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=30
-
031・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=31
-
032・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=32
-
033・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=33
-
034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=34
-
035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=35
-
036・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=36
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037・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=37
-
038・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=38
-
039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=39
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040・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=40
-
041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=41
-
042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 次會ノ議事日程
ハ決定次第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、
本日ハ是ニテ散會ヲ致シマス
午前十一時五十三分散會
貴族院議事速記錄第二十一號
正誤
頁段行誤正
二五二三一六時々自治
二五三〃三五行政曉星
二五六二八-九大臣代議士発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02319380312&spkNum=42
4. 会議録のPDFを表示
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